日野茜が増えた日 (64)


P「……あー疲れた」

P「あそこの部長さん、妙に話長いし小難しくて相手するのちょっと大変なんだよなぁ…」

P「でも、次のイベントの話も上手くまとまったし。良しとしよう」


P「帰ろ帰ろ。ぼくはつかれてしまいました」

P「って、お昼過ぎちゃってるよ……コンビニ寄って昼飯でも買ってくかぁ」



………。




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【事務所】


ガチャ


P「お疲れさまでーす、戻りまし…」


日野茜「ま、待ってください! 逃げないで!」ドドド

??「ぷー!」テテテ

若林智香「わわっ、茜ちゃん…! そんなに走り回ったら危ないよ!」

茜「でも…」

??「ぷぷ!」ガッシャンパリン

姫川友紀「うわわ、花瓶がー!」

智香「あぁ……机の上もぐしゃぐしゃに…」

??「ぷぅ!!」ドタバタ


P「わーお」


P「いきなりなんじゃこりゃ」

友紀「わっ、プロデューサー!」

智香「お、おかえりなさいです…」

P「なに事務所で遊んでんの…」

友紀「遊んでなんかいないよぉ! プロデューサーも手伝って…、


茜「待ってー!」ズザザ

??「ぷーーっ!」ドドド

P「げっ こっち来た」

友紀「っ! 危ない!」

茜「…っとぉ!? ぷ、プロデューサー! 避けてくださーい!!」

P「は、はいっ!」スッ

??「ぷぉーーー!!」

茜「うおおおおぉ!!」


ドドド…




シーン…


P「……」

友紀「…行っちゃった」

智香「だ、大丈夫ですか?!」

P「あ、うん……大丈夫だけど」

友紀「ホッ、よかったー…」

P「今のは一体」

智香「…えっと、その」

友紀「あたしらも、どっから説明したら良いか…」

P「……とりあえず、片付けるか」



――


~フレッシュ☆掃除中~


P「パソコンは壊れて……ないな。ひと安心」

智香「落ちてたファイル、とりあえずこっちにまとめておきますね?」

P「サンキュ。あーあー、書類も散らかっちゃって…」

友紀「雑巾持ってきた!」

P「おう。破片注意しろよ、指なんか絶対切るんじゃないぞ」

友紀「分かってるってー」

智香「みんなでお掃除してると、なんだか年末の大掃除みたいですね!」

友紀「ついでにワックスもかけちゃう?」

智香「窓も拭いちゃいましょうか☆」

P「…楽しそうだね君ら」

友紀「いやぁ、それほどでも」

智香「えへへ」

P「褒めてないぞ」


P「でさ、掃除しながらで良いんだけど」

友紀「うん」

P「……さっきの何?」

智香「茜ちゃんのこと、ですよね」

P「それもあるけど、一緒にいた…


友紀「いてっ」

P「?! おい! 指気を付けろって言ったろ!」

友紀「いや…掃除機かけてたら、ちひろさんの電卓足に落っことしちゃってさ」

P「…そうかい」

智香「大丈夫ですか?」

友紀「へーきだよ!」


P「……それと、なんか一緒に走ってたちびっこいの。避けるまでもなく俺の足の間をくぐっていったやつ」

智香「もはや茜ちゃんのタックルを避けるのがメインになってましたね」

P「すげー動き回るからよく見えなかったんだけどさ。何? まさかお前ら、猫でも拾ってきたの?」

智香「ねこちゃんではない……とは思いますけど」



友紀「智香ちゃん智香ちゃん! ほら見て、雑巾丸めたらボールみたいになるんだよ!」

智香「おぉー!」

友紀「箒構えて! これで野球しよっ!!」

智香「わーい♪」

P「お前も少しは説明しろぃ!」

友紀「プロデューサーはキャッチャーね? 女房役!」

P「知らん! っていうか掃除しろ掃除!」


友紀「だって、あたしもよく分かんないんだもん」ブー

P「はぁ?」

智香「…色々総合すると、多分茜ちゃんだと思うんです」

友紀「うんうん」

P「なに言ってんだ、茜はさっき目の前通ってっただろ」

友紀「話せばちょっと長くなるんだけどさぁ」

智香「かくかくしかじかで済ませちゃダメでしょうか」

P「ダメです。ちゃんと説明しなさい」

友紀「チアチアボンボン!」

P「言いたかっただけだろ今の」


智香「……まず、話は先月くらいに遡ります」

P「そんなに戻るの?!」

友紀「だから長くなるって言ったじゃーん」

P「…まあいいや。それで?」

智香「その日アタシたちは、レッスンから帰ってる途中でした」

友紀「なんかさ、茜ちゃんレッスン中もずっと暗かったんだよね」

P「ほう、珍しい」

智香「言われてみれば、しばらく元気なかったような気もするし……どうかしたのかなって思って」

友紀「悩みがあるなら言ってみなよ、って声かけてみたんだ」

P「ふむふむ」

智香「そうしたら、茜ちゃんがアタシたちに打ち明けてくれたんです」



茜『…私、増えたいんですっ!』


友紀「ってさ」

P「音速で理解の粋を越えてくんだね」

友紀「あたしも、最初聞いた時ビックリしちゃったよ」

智香「でも、茜ちゃん本気だったんです!」

P「もっと別のことで本気になった茜を見たかったよ俺は」

友紀「本気で悩んでたってこと! あたしたちにとってはそんなことでって言うようなことでもさ」

智香「3人の中で、自分だけ増えてないのが悔しかったらしくって」

P「…まぁ、茜らしいと言えばらしいかな」


P「……ん? ちょ、ちょい待って、こないだ増えたのは友紀だけじゃなかったか?」


智香「アタシもこの前、公園で増えたんです♪」

P「公園に遊びに行ったみたいなノリで衝撃発言するのやめろ」

友紀「大変だったよね、みんなずぶ濡れでさ」

P「あ、あの日か…」

智香「茜ちゃん、順番的に次は自分の番って張り切ってたんですよ?」

P「そんな順番ないから…」

友紀「『このままだと2人に置いていかれる』って言って聞かないんだもん」

P「どの辺が先を行っていることになるんだ」

智香「うーん……人生経験とか?」

P「人生で増える経験したのなんて世界中探しても2人しかいないと思う」

友紀「えぇっ、そんなにレアなの? 誰と誰!?」

P「お前らだよ!」

友紀「あ、なるほど」

P「頭痛くなってきた…」


友紀「でね? ここ最近茜ちゃんと、増えるための特訓してたんだよ」

P「特訓とは」

智香「手始めに、毎日反復横跳びです☆」

P「おそろしく原始的だぁ」

友紀「『茜殿にはチャクラを練るのはまだ早い故、まずは残像を残すところから始めてみましょう』ってあやめちゃんに教わったんだよね」ニンニン

P「なぜ真っ先に教えを乞うのがニンジャなんだってばよ」

智香「分身できるようになれば問題解決かなぁと思いまして」

P「日野茜をどうするつもりなんだお前らは」


友紀「ところでさ、チャクラって何?」

P「知らん。俺に聞くな」


智香「いざ増えた時のアフターケアもバッチリです!」

友紀「茜ちゃんが、もう1人の茜ちゃんとしっかり話せるようにトミージョンもしっかりやってきたんだっ」

P「シミュレーションじゃないのそれ」

友紀「ああそうそう、それそれ」

P「肘の手術してどうするよ」

智香「鏡を用意してですね…」

P「ああもう分かったぞ、雪美に習ったんだろ」

智香「鋭い!」

P「何なんだよ一体……なんでみんな増えることに対してそんなに積極的なんだ」

智香「だって、一生懸命な茜ちゃんを応援してあげたいじゃないですかっ!」

友紀「そうだよ! あんなに頑張ってるんだもん!」

智香「気持ちはみんな一緒なんですっ」

P「お前ら…」


智香「まぁアタシは正直、自分と会話するのに練習なんて要らないとは思うんですけどね?」

P「台無しかよ」


友紀「うーん……そこに関しては自分で経験してないから、あたしは何とも言えないんだよねぇ」

智香「あ、そっか」

P「さっきから智香が一番ズレてるように聞こえるのは気のせいかな…」

智香「そうですか?」

P「俺の心の支えだったあの頃の智香ちゃんは一体何処に行っちゃったの」

智香「何事も、チャレンジと経験あるのみですからっ☆」ペカー

P「精神性が眩しすぎる」

友紀「増えて一皮剥けたよね、智香ちゃん」ウンウン

P「共感できるところが何一つ見当たらない」

智香「だけど……待てども待てども、もう1人の茜ちゃんは現れませんでした」

P「当たり前なんだよなぁ」

友紀「『日野茜が増えた日』なんてスレッドも、いつまで経っても作成されないね」

P「何の話だ」

智香「こんなに時間がかかるなんて、やっぱり引出しが少ないんだなとそろそろバレている頃でしょう」

P「その辺にしといてやれ」

智香「そこでアタシたちは気付いたのです……このままではダメだ、やり方を変える必要がある、ということに…」

友紀「特訓は一時中断して、初心に立ち返ってみようってことになったんだ」

智香「"どうすれば増えるのか?"ではなく、"どうやって増えたんだっけ?"を改めて思い出すことにした訳ですね!」

友紀「逆転の発想ってやつ!」

P「"人は増えない"って根本に戻ってこれたのは1人もいなかったんだな」

友紀「ここまでが、昨日までにあった出来事だよ」

P「……それで?」


友紀「プロデューサーの机の中にさ」

P「うん」

友紀「茜ちゃんのポスターしまってあったでしょ?」

P「やめろや」


友紀「……あ、別に変な意味じゃないからねっ」

P「変な意味ってなんだ なんで知ってるんだ」

智香「2枚入ってましたね」

P「やめろ」

智香「もしかしてこの間のフェスでダブったやつですか」

友紀「そうそう、2周年の時のアレ」

P「やめろやめろ」

友紀「スカチケでやっと茜ちゃんお迎えしたー! …って喜んでたら、その後の無料10連ですぐ2枚目引いてたやつ」

P「やめろォ!」


P「そ、そんなんじゃないからあのポスター。いつもの業者さんから貰ってたやつだから」

友紀「そうだったの?」

智香「友紀さん、きっとそういう設定なんですよ」

P「設定ってなんだ」

友紀「あ、なるほどね」

P「納得するんじゃないよ」

友紀「とにかくさ、ポスター2枚あったじゃん?」

P「……まぁな」

友紀「それをね、貼ってみようって話になったの」

P「おい!」

智香「作戦プランその1ですっ♪」


智香「でも、前にあんなことがあってから事務所にポスター貼るの禁止していましたよね?」

P「そうだな。俺が決めたことだし、それは知ってる」

友紀「あたしは冗談か何かだとおもってたんだけどねぇ」

P「絶対ダメだぞ。あんな事態はもうこりごりなんだよ、友紀はお前1人で十分だ」

友紀「……ふーん」

智香「ダメだって言われるのは分かりきっていたので、結局貼るのは諦めましたけど。良い機会だったので、ナイショでこっそり貰うことにしました☆」

P「……あっ、ホントだ無くなってる!」

友紀「どこに仕舞ったのか知らないけどさ、他のポスターもまとめて全部見当たらないんだもん」

P「お前らの妙なアグレッシブさには頭が下がるよ…」


智香「次に向かったのが例の公園です」

友紀「智香ちゃんが増えたところだね」

智香「あの噴水に飛び込めば、また増えられるんじゃないか……これが、作戦プランその2です!」

P「しょうきをうたがう」

友紀「それで、3人でまた公園行ってみたんだけどさ…」

P「そしたら?」



友紀「池の水全部抜かれてたんだよね」

P「マジか」

智香「あそこでも収録していたんですね」

P「一時期ブームだったもんなぁ」


ガチャ!


茜「そこから先は私が説明しましょうっ!」

??「ぷ!」


友紀「あ、帰ってきた」

智香「おかえり!」

茜「ただいまです、友紀さん智香ちゃん!」

P「ちっこいの頭に乗ってるし」

智香「わぁ、かわいいー♪」

茜「プロデューサー! お疲れ様です、先程は失礼しました!」ペコリ

??「ぷ、ぷーっ!?」ワタワタ

P「あぶないあぶない、落っこちちゃうぞ」


友紀「仲良くなれたんだ?」

茜「はいっ! お腹が空いて少し気が立っていたのでしょう、一緒にご飯を食べたらすっかりご機嫌です!」

??「ぷー♪」

智香「へぇ……アタシたちと同じものを食べるんだ」

友紀「何を食べさせてあげたの?」

茜「給湯室の棚に置いてあったカレーメシを!」

P「急に宣伝か?」

茜「何のことやらさっぱりわかりません!」

P「すっとぼけやがってこやつめ」

茜「無駄にウマかったです!」

P「無駄とか言うなし」

茜「好評発売中ですよ!」

P「どこ向いて喋ってるんだ」

茜「プールに落ちて智香ちゃんが増えたことを思い出して、私たちはあの日を再現しようと思ったのです!」

友紀「茜ちゃん、噴水ね? プールじゃなくって」

茜「しかし、あいにくお風呂の水はすべて抜かれてすっからかんでした…!」

智香「お風呂でもなくって」

茜「帰ろうかと振り返った刹那、不意に私たちの間を風が吹き抜けます!」

茜「思わず手から滑り落ちた私のポスターのうち1枚が風に煽られ、噴水の中央にふわりと吸い込まれていきました!」

友紀「だから噴水じゃない……って合ってるや。噴水だった」

P「なんでポスター持ち歩いてたの」


茜「僅かに中に残っていた水溜りにポスターが浸かり、見る見る内にふやけていきます。ああ憐れ、私のポスターさん…」

茜「増える手立ても失った上にポスターまで駄目にしてしまったと意気消沈…」

茜「諦めかけたその時! 私たちの目の前で、濡れたポスターから急に眩い光がっ!」

P「おお?」



茜「…そしてまぁなんやかんやあって、この子が現れたのです!」

??「ぷぃ!」

P「一番肝心なとこふわっふわだな」


友紀「や、ほんとにそんな感じだったんだって」

智香「光に目が眩んでたらいつの間にかいたっていうか」

P「えぇ……良いのかそんなんで…」

茜「良いんです! なんたって、ようやくもう1人の私に会えたんですから!」

P「確かに髪の毛といい顔つきといい、どことなく茜の面影があるような…」

智香「茜ちゃんのポニーテールの上に更にポニーテールが乗っかって、動く度にみょいんみょいんしてますね♪」

P「語彙力」

友紀「重くないの?」

茜「問題ナシですっ!」ミョイン

??「ぷ!」ミョイン

友紀「へぇー…」

P「さっきからその『ぷ』ってやつ何なの? 鳴き声?」


友紀「でも、サイズ感は全然違うよねぇ。2頭身だし、頭に乗るぐらいおちびちゃんだし」ツンツン

??「ぷーっ!」ガジ

友紀「あいたーっ?!」

茜「あわゎ、ちょっ、ダメですよ!?」

P「こいつ噛んだぞ」

智香「怒っちゃったんでしょうか」

P「大きさのことちょっと気にしてるのかもしれん」

智香「ますます茜ちゃんっぽいです☆」

茜「ち、ちっこいとか、別に気にしてませんから…っ」


友紀「指に気を付けろってのはこのことだったんだね…」ヒリヒリ

P「いや違うけど」

智香「大丈夫ですか?」

友紀「うん…」

智香「友紀さんにはまだ懐いていなかったのかもしれませんよ」

友紀「お世話してないもんね…」

茜「ご飯は大事ですから!」

P「デジモンか何か?」

智香「たまごっちの可能性もあります」

P「まあ、何でも良いけど。それでこいつは…」スッ


??「ぷー!!」ガブリ

P「っでぇ!!」

茜「だ、ダメですってば! めっ!」

智香「プロデューサーさんにも噛むんですね…」

友紀「指なんか差すからだよ」


P「昔近所の犬に噛まれたの思い出した…」ジンジン

智香「だ、大丈夫ですか…」

P「うん…」

??「ぷぷぷぅ!」

茜「"コイツ"じゃないって怒ってます!」

智香「何て言ってるか分かるの?」

茜「はいっ!」

友紀「すごいや、いつの間にか意思疎通もできてる」

P「できればそのまま躾けまでやってほしいところだな…」


茜「無闇に噛んじゃダメですよ? ぷちちゃん」

友紀「ぷちちゃん?」

茜「はいっ! ぷーぷー鳴くちっちゃい私なので、ぷちちゃんです!」

智香「名前まで付けちゃった」

P「……まあ、こいつって呼び続けるのもなんだかな」

??「ぷー!」ガルル

P「ちょ、悪かったって。ごめんごめん」

茜「ぷちちゃん、めっ! シッダウン、ぷりーず!」

P「犬か」


――


ぷちあかね「ぷぅー…♪」

友紀「あはは、ぷちちゃんも頭撫でられるの好きなんだね」ナデ

P「すっかりご機嫌だな」

智香「きっとなつき度が上がったんですねっ☆」

友紀「ロックになったの?」

P「そっちの夏樹じゃなくって」

茜「皆さんとも仲良くなれて、何よりです!」

P「…ま、噛まれるよりは遥かにマシか」


P「……さて、ようやく話を戻すとして」

友紀「何の話だっけ?」

P「このちっちゃい茜は一体何者なんだっつー話だな」

茜「もう1人の私です!」

P「これが?」

茜「増えました!」

P「…にわかには信じられないぞ? こんな小さいのに茜だなんて」

ぷち「ぷーっ!」

P「あぁ、ちっこいって言ったらダメなのか……めんどくさいな…」

茜「正真正銘、日野茜です!」

P「どうしてそう言い切れるんだ…」

茜「えーと、その……それはもう、ドカーンと!」

P「正真正銘の意味ちゃんと調べておこうね」


P「新種の犬か猫だったりしないよねマジで」

茜「そ、そんなことありません! 私なんですよ!」

P「そうは言ってもだな」

友紀「でも確かに。今の段階だと、本当の本当に茜ちゃんなのかどうかは分からないんだよなぁ」

茜「そんなぁっ! 友紀さんまで!?」

智香「ま、まぁまぁ。客観的にはって意味ですよね、友紀さん」

P「…ふむ」


P「ぷちの茜に質問です」

ぷち「ぷ?」

P「好きな食べ物は?」

ぷち「ぷぷ!」

茜「お茶です!」

P「……好きな飲み物は」

ぷち「ぷぷー!!」

茜「カレーですっ!!」

P「血液型」

ぷち「ぷーぷー!!!」

茜「AB型ですね!!!」

P「ちょっとずつで良いから、ボリューム落としてくれるかい」

茜「はいっ!!!!」

P「耳がこわれちゃう」キーン



友紀「あれ、茜ちゃんが答えてるだけなんじゃないの?」

智香「一応ぷーぷー言ってるみたいですけど」

友紀「判別付きにくいなぁ…」

P「……うーむ」

P「そういえばここにおにぎりがあるんだけどさ」スッ

ぷち「ぷーっ♪」ピョーン

茜「お米ですかっ! ……って、しまった出遅れた!」

ぷち「ぷ!!」バク

P「いっっだぁーー!!!」

茜「くぅっ! フットワークの差がここで響くとは…っ!」


友紀「指ごといったね」

智香「あの白米への反応速度、間違いなく茜ちゃんですね」

友紀「あたしもさっき噛まれたとこぶり返してきた。いてて」


――


P「親指まで逝ったわ」ズキズキ

智香「…大丈夫ですか」

P「うん…」

茜「でもこれで、私だと分かって頂けたでしょうかっ」

智香「指と引き換えにね…」

P「俺の昼飯もだよ」

智香「お昼だったら、アタシのお弁当一緒に食べましょう?」

P「良いのか…?」

智香「もちろんですっ☆ …はい、絆創膏貼り終わりましたよ」

P「ありがとう……うぅ、ともかすき…」グス

智香「ふえぁっ!☆? ちょっ やだぁ、急にそんな……??☆!♪」

P「混じってる混じってる。悪かったよ変なこと言って」


ぷち「ぷー♪」モグモグ

友紀「良い食べっぷりだねぇ」

茜「ありがとうございますっ!」

P「俺の昼飯はそんなに美味いか」

ぷち「ぷー」モグ

茜「『ツナマヨよりおかかの方がよかった』だそうです!」

P「あ? なんだお前 ツナマヨ派の俺に喧嘩でも売ってんのか」

友紀(ツナマヨ好きなんだ…)

ぷち「ぷぷぷ」

茜「『お茶もあればもっとよかったな』って」

P「わがまま言うなし」

ぷち「…っ?!」ケホケホ

友紀「わ、むせた」

茜「うわー! 大丈夫ですかぷちちゃーん!?」

P「あーもう分かったよチクショー! お茶もやるから! ほれっ!」


ぷち「ぷ!」

茜「『ご馳走様でしたっ!』」

P「はいはい、お粗末さまです……ハァ」


智香「い、いやいや♪! アタシ、まだチアもアイドルも続けたいですし、そんなこと!」

友紀「智香ちゃんはさっきから何をぶつぶつ言ってるの?」

智香「で、でも……プロデューサーさんがどうしてもって言うなら、アタシは……えっと、その…っ!☆」

P「おーい、そろそろ戻ってこーい」


P「増えるってこんなんだったっけ…?」

茜「と、言いますと」

P「なんだろうこの……何? 肩透かし感というか、期待外れ感というか…」

茜「…っ。私、期待外れ、でしたか…?」

P「あぁいや違う。そういう期待はしてない。ちょっと言葉のチョイス間違えたわ」

茜「そう、ですか…。私には、期待、できないと……」シュン

P「違う違う、そういう意味でもなくって」



友紀「ひどーい」

智香「…さいてー」

ぷち「ぷー」

P「外野はちょっと黙っててくれ」


茜「わ、私、どうすれば……もっと頑張らないといけないでしょうか…?」

P「どうって、今まで通りで良いんだけど」

茜「ようやく……ようやく増えることができて、お2人に追いつけて! やっと自信を持って、ユニットのメンバーとして胸を張れると思えたんです…!」

P(いつの間にそんな大層なレベルの話になっちまったんだ)


茜「やっぱり私では、力不足ということでしょうか……頑張って増えたのに、今のままでは、ダメ…」

P「ああもう…」


P「…大丈夫、茜のことちゃんと期待してるし、信じてる」

茜「っ、本当ですかっ」

P「本当。増えてないからって、仲間外れになんかする訳ないだろ。変な劣等感拗らせなくても良いんだよ」

茜「…」

P「言葉間違えたのは謝るから、あんまり落ち込まないでくれ。そのままのお前が一番なんだから」

茜「……はいっ!」

ぷち「ぷ!」

P「お前さんには言ってない……まあいいや」



友紀「あたし、外野ならやっぱりセンターやりたいなぁ」

智香「良いですよね真ん中! センターのトスアップは、チアの花形ですしっ♪」

友紀「ポーンって飛ぶやつでしょ? ジャンピングキャッチ、憧れるよねぇ…」

P「ほらまたそうやって話が逸れる! 絶妙に噛み合ってないし!」

茜「…えへへっ」


P「何回話を戻せばいいんだ今日は」

P「俺はさ、もっとドカドカと茜がやってくるのを想像して身構えてた訳だよ」

智香「なるほど、それで肩透かしですか」

P「増えるって言ったら、前のユッキの時みたくなるもんだとばっかり思ってたから」

P「ほら、同じ大きさ? というか1/1サイズ? がいっぱい出てくる、みたいな…」


ぷち「ぷー?」

茜「ややっ! ぷちちゃん、電卓に興味があるんですかっ」

ぷち「ぷ!」

茜「落ちていたこれは、ちひろさんのものでしょうか。少しお借りしましょうか!」


P「……自分でも何言ってるか段々分かんなくなってきたわ。そもそも増えるってこと自体意味分からんのに」

友紀「感覚ってやっぱりだんだん麻痺してくるよね」

智香「アタシはもう、慣れましたよ☆」

P「そりゃ何度も目にしてりゃそうなるよ!」


ぷち「ぷー…」ポチ、ポチ

茜「そうそう。16、たす、32で…」

茜「はい! 答えは48! 良くできましたっ」

ぷち「ぷぃ!」

智香「おぉ、賢い…」

P「ホント楽しそうだね君たち」


友紀「でもさ、プロデューサー。考えてもみてよ」

P「あん?」

友紀「智香ちゃんの時に思ったけど、同じ顔がずらずら並ぶってちょっと不気味な状態じゃん? あたしの時もそうだったみたいだし」

P「…まあな」

友紀「部屋に茜ちゃんいっぱい入ってきてみんなでボンバ―してたかもしれない可能性と、今のこの状況。どっちが良かった?」

P「それは…」チラ


智香「お手とかできるのかな? はいぷーちゃん、お手!」

ぷち「ぷ!」タッチ

智香「おぉー!」

茜「じゃあ続いて……お座りです!」

ぷち「ぷぷ!」スッ

智香「かわいい~~!」

茜「素晴らしいっ、綺麗な体育座りですね! 流石は私! 流石ぷちちゃん!」

智香「次はね、次は……!」

キャイキャイ


P「……」




P「こっちかな」

友紀「だよね」


P「色々言いたいことはあるのに、こうして見てるとなんかもうどうでも良くなってくる」

友紀「ふふ、かわいいよねぇぷちちゃん。……指噛まれたけど」

P「噛まれ仲間だな」

友紀「あはは、そだね」

P「チワワにノックアウトされた例のお父さんの気持ちも、今なら分かる気がするよ」

友紀「そ、それはちょっと老け込みすぎなんじゃ…」

P「もしくは子供が増えた父親の感覚なのかもしれない。茜の妹みたいでさ」

友紀「こども…」

P「いや、サイズ感的には孫のできたおじいちゃん? うーむ…」

P「まぁ何であれ、微笑ましいことには変わりないな」

友紀「……」


友紀「……プロデューサーにもさ、」

P「おう」

友紀「子ども欲しいとかって、あるの?」

P「んー? 何だ急に」

友紀「…」

P「そりゃまぁ、結婚できたらいつかは、くらいに思ったりはするけど。それが?」

友紀「……あ、あはは。ゴメン、変なこと聞いちゃった」

P「は?」

友紀「うん、何でもない。忘れてっ!」

P「はぁ」



茜「プロデューサー! 私たち、ぷちちゃんと少し走ってきます!」

智香「あれ? 散歩に行こうって話じゃなかった?」

茜「友紀さんも、どうですかー!」

友紀「あっ! ま、待って、一緒に行くっ」


友紀「じゃ、じゃーねプロデューサー! あたしも行ってくるから!」

P「あ、おう……気を付けてな」

茜「では行きますよぷちちゃん!」

ぷち「ぷー!」

茜「うおおおぉ、ボンバーー!!」

智香「ちょっと待ってよぉ! 散歩じゃないのー?!」


タタタ…



P「みんな行ってしまった」

P「……何だったんだ」



P「…げっ! そういえば全然掃除終わってないじゃん!」

P「うへぇ……これ1人で片付けんのかよぉ…」



――





P「…それからの話。もしくは、後日談」


P「急に現れたぷち茜だったけれど、捨て猫…もとい捨てぷちにする訳にはいかず」

P「里親を探す訳にも、まさか保健所に連れてく訳にもいかず」

P「他にどうすることもできない以上、最終的にウチの事務所で面倒を見ることになったのである」



P「食事担当、主に日野茜。主食は米、おりこうさんにしてた日にはおかずも付いてたりする」

P「散歩担当も茜。散歩っつーかランニングだけど」

P「ていうかもうほぼ全部茜が世話してると言っても過言ではない。やっぱり、当人だけあって気も合うみたいだ」


「…お、おぉ? なんだオマエ。すげーすばしっこいんだな」

ぷち「ぷ!」

「走るの好きなのか。なら、公園行ってオレとサッカーしようぜ!」

「晴さん、小さい子にあまり危ない遊びは…」

「だいじょーぶだって、危なくねーよ。ホラ、橘も行くぞ!」

「あ、ちょ、ちょっとぉ…!」

ぷち「ぷぷー!」



P「あれからみんなと遊んだり、」


「あー! あなたがぷちちゃんですね?」

「事務所をぐちゃぐちゃにしたのは、あなたの仕業だって聞いてます! お掃除するの大変だったんですよ、もうっ!」プンスコ

ぷち「ぷー…」

「これからは、部屋を汚したらちゃんと自分でもお掃除すること! 分かりましたか?」

ぷち「ぷ!」

「……ふふ、良い子ですね」

「そうだっ。今から帰って、お昼ご飯のハンバーグを作ろうと思うんだけど、あなたも一緒にどうですか?」

ぷち「ぷー♪」



P「家事を手伝ったり、寮にお呼ばれしたり」


ぷち「…」

「…おや、ボクに何か用事かい? それとも、興味の対象はこちらかな」

「でも残念。今日は読み聞かせをしてあげられる程、時間があるワケじゃあないんだ」

「どうしてもと言うのなら、この本はキミに預けていくよ。誰か他の人に頼んで…」

ぷち「ぷー」グイ

「……フフッ。こらこら、エクステを引っ張るのはよしてくれ」

「あぁ理解った、理解ったよ全く…。悪いけど、こっちはあげられないんだ」

「今予備のをあげるから、遊ぶならそちらで……ちょっ ダメだって」



P「一緒に読書(?)したりとか」

P「特に大きな事件や問題もなく、事務所のみんなにも好意的に受け入れられているようだ」



「ま、待ってくれ! 取れる、取れちゃうってば!」

ぷち「ぷぃー♪」グイグイ

――


P「馴染んでるよなぁ」

智香「ですねぇ」

友紀「すっかり事務所のチームメイトだね!」

P「増えたやつはいつかまたいなくなるのかって心配してたけど、今の所そんなこともなさそうだし」

友紀「いなくなるどころか、存在感は増していく一方だよ?」

智香「みんなからも、たくさん可愛がられてますっ」

P「人気者で何より」


友紀「さっきも、茜ちゃんと元気にランニングしてた!」

智香「ええっ! まだ走ってるんですか?!」

友紀「へ? まだって、どういう意味?」

智香「ぷーちゃん、昨日から10時間ぐらいぶっ続けで走ってるんですよ!」

P「バケモノかよ、どんな体力してるんだ」

友紀「歌とかダンスとか、たまにみんなと混じってレッスンしてたりもするよね」

智香「ちっちゃいのに体力ありますよね!」

P「事務所の仲間が1人増えたのかペット感覚なのか、ちょっと怪しいところだな…」

智香「そろそろポイントをステータスに回してあげても良い頃合いかな…」

P「何の話だ」

智香「こっちの話です♪」


P「しっかし、1人くらい不思議に思ったりしないものだろうか」

友紀「なにを?」

P「何って、ぷちの生態とかさ。どっから来たの、とか」

友紀「かわいいからセーフってことで良いんじゃない?」

智香「茜ちゃんが増えたって認識すらしていない人もいるかもしれません」

P「…何度も言うけどさ、俺はそもそも増えるってのが意味分かんないんだけど」

友紀「まぁまぁ、今さら細かいことは良いじゃん。あんまり悩むと禿げちゃうよ?」

P「ハゲねーよ、変なこと言うな」ペチ

友紀「あいたっ」

智香「あ、あはは…」

P「全く…」


P「でもま、あのサイズだしあんまり困らなくて正直助かったよ。増えるだの何だのはもうこれくらいで勘弁してもらいたいところだな」

友紀「……」

智香「?」

友紀「…あ、あのね プロデューサー」

P「ん? どったの」

友紀「えっと、そのことで1つお願いがあるんだけどさ」

P「お願い?」

友紀「じつは、あたし…」


友紀「あたしも、ぷちちゃん欲しいの!」

P「は?」

智香「友紀さん?」

友紀「だって羨ましいんだもん! 茜ちゃんはいっつもぷちちゃんと走ったり遊んだりできてさ!」

P「お前も一緒に遊んでもらえば良いじゃん」

友紀「茜ちゃんの方にいっぱい懐いてるから、いっつもあっちに付いて行っちゃうんだよぉ」

P「まぁ、そりゃ茜のぷちだしな」

智香(友紀さんが遊んでもらう側なんだ…)


友紀「あたしにもぷちちゃんいれば、一緒にキャッチボールとかできるし!」

P「いやあの大きさで野球とかできないでしょ」

友紀「できるよ!」

P「グローブとか絶対持てないって」

友紀「ちっちゃいゴムボールなら無くても大丈夫だし!」


友紀「ねーねー良いでしょー? あたしも欲しいよー!」

P「おもちゃねだるみたいに言うな」

友紀「ちゃんとお世話もするからさぁ」

P「ペットねだるみたいに言うな!」

友紀「ねえってばー! ほーしーいー!」

P「ええい引っ張るなうるさい……智香もなんか言ってやってくれ」

智香「……アタシも、いたら嬉しいかなぁ、なんて。あはは…」

P「えぇ…」


友紀「あたしのポスター出してよぉ! どこに隠してるの?」

P「……ありません。処分しました」

友紀「ええー! あんなにあったのに?!」

P「だって不気味だったし」

友紀「もったいない…」

P「しゃーないだろ、またどっかで貰えるって」

友紀「ぶー…」


P(……まぁ、ホントは全部俺ん家に保管してあるんだけど。捨てるの勿体無かったし)

友紀「なんか言った?」

P「何でもないでーす」

智香「…アタシ、まだお仕事先でポスター貰えてない」

P「あー…まぁ、全部が全部ポスター作ってるって訳じゃないからなぁ」

智香「……」ショボ


P「ポスターなんかで落ち込むことないぞ」

友紀「そうだよ! これから先、どこかで貰える機会あるって! 絶対!」

智香「そう、でしょうか…」

P「うむ。貰いすぎて困ることになるんならポスターなんて無い方がマシ、ぐらいのつもりでやって行かなきゃ」

友紀「…ちょっと、それ誰のこと言ってんの?」

P「さあね」

友紀「絶対あたしでしょ」

P「違いますー、増えて迷惑かけた野球アイドルの話なんてしてませんー」

友紀「やっぱりあたしのことじゃん!」

智香「……ふふ」


友紀「あったまきた! こうなったら、ポスターいっぱい貰えるように頑張っちゃうんだから!」

P「いやだから、ありすぎても…」

友紀「お仕事頑張って、あたしもぷちゆっきー手に入れてみせる!」

智香「アタシも!」

P「モチベーションの上げ方それで良いのか…」

友紀「智香ちゃんの分もポスター貰えるように、まとめて営業よろしくね! ふんっ!」

智香「よろしくお願いしますねっ♪」

P「……はいよ、了解」



バンッ!


茜「私も! お仕事、もっとしたいです!」

ぷち「ぷ!」

智香「あ、2人ともおかえりー♪」

P「お前さんたちはもうちょっと静かにドア開けなさいよ…」

友紀「ちょっと! 茜ちゃんにはもうぷちちゃんいるでしょ! ズルい!」

茜「お仕事にズルいもぬるいもありません! 全・身・全・霊! 全・力・疾・走! 水も沸騰させる勢いで、乗り込みますからっ!」

友紀「まずはあたしと智香ちゃんの分からだよ! ね、智香ちゃん」

智香「ぷーちゃんくらい軽かったら、アタシ1人でも持ち上げられるかなぁ…!」

友紀「あれ? ちょっと、聞いてる?」

茜「やってみましょうか、ぷちちゃん、ゴー!」

ぷち「ぷー!」ピョーン

智香「レッツゴー♪ ……わぁ、できました!」

茜「やりました!!」

友紀「あ! だったら、6人でチアとかもできるんじゃない?」

茜「それ良いですねっ! チアもお仕事も、ドンと来いです!!」

智香「なら、ぷーちゃんたち用の衣装も準備しなきゃですねっ☆」

ぷち「ぷぷー!!」


P「だああぁ待った待ったストップ! これ以上増えたら、お前らうるさくってしょうがないんだよぉーー!!」




おしまい!



ガシャ回したらぷち手に入るって一体どういうシステムなんすかね

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