志希・フレ・かな子「とんでいっちゃいたいの」 (29)

志希・フレ「「と・と・と・とんでいっちゃいたいの~君のところに~♪ 波打ち際飛び跳ねな~がら~♪」」

P「あ~お前ら、ご機嫌な所悪いが、まだ海まで二時間はかかるからな、そんなテンションだと、海だと持たないぞ」

フレ「え~プロデューサー、もっと飛ばしてよ~。光の速さで行けば10時間くらいで付くでしょ~。あ、逆に遅くなっちゃった☆」

志希「お~すご~いフレちゃん。相対性理論の逆バージョンだ~。命名してフレデリカ理論。フレちゃんてんさ~い♪」

フレ「いやいや~志希ちゃんほどでも~」

志希・フレ「わっはっは☆」

P「あ~君たち……人の話をだね……」

かな子「ごめんなさいプロデューサーさん。二人とも、海に行けるってなってからテンションがおかしくて……」

P[別にかな子が謝ることじゃないさ。まぁ志希フレの二人がまともな事言ってる方が逆にちょっと心配になるしな……でもあんまりはしゃぎすぎるようなら、かな子がストッパーになってくれよ?」

かな子「はい。がんばります。でも、プロデューサー。海の家を利用するんですよね? 楽しみです。はやく焼きそばやかき氷を食べたいです♪」

P(海に行くってのに、初っ端の話題が食べ物か……だめだこいつ、速くなんとかしないと……いや、かな子もちょっとは痩せたけどな……)

P(そう思いながら、未だにワチャワチャ騒いでる志希フレと、何を食べようかと嬉しそうに思案しているかな子を見て俺は、元気だねえと呟いた)


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P(今年の5月から始まり、8月中旬に終わった全国ツアー)

P(動員、ライブの出来、ファンの満足度、グッズの売上――と、諸々大成功に終わった)

P(勿論、ライブを成功させる為に、アイドル達が一生懸命レッスンやら打ち合わせやらを頑張った事は言うまでもない)

P(ただ、そうなると必然、遊びや趣味に使える時間も減る訳であり……元気が有り余っている若いアイドル達からして見れば、どうしてもその反動は来る訳で)

P(そして、たまたまライブの数日後、2日ほどまるまる予定が空いていた志希フレの二人が海に行きたいと騒ぎ出した。それにプラス、行きたそうにしていたかな子も誘って、今現在、こうして4人で車で海に向かっているという訳だ)


ブオオオォ……(車を駐車場に止める音)

P(事故ることもなく、特にトラブルもなく――まぁ、車内はわいわいうるさかったが――無事に到着、と)

P「よーし、お前らー。海着いたぞ―」

志希・フレ「海だー!!」

たたた(車を飛び出して、海に向かっていく二人)

かな子「あ、待って志希さん、フレデリカさん! プロデューサーさんと一緒に荷物を下ろすのが先・・・」

P「うおおおおおおおお、海だー!!」

ざっぱーん(志希・フレ・Pの3人が海に飛び込む音)

かな子「って、プロデューサーさん!? な、なにやってるんですかぁ!」

P「ばっかかな子お前! ここではしゃがなきゃいつはしゃぐんだ! 海だぞ! 母なる海だぞ! お前も来いかな子!」

フレ「そうだよかな子ちゃん!」

志希「その服の下、私達と同じで水着でしょー? かな子ちゃんもカモ~ン!」

かな子「え、ええ……わ、わかりました。私も行きます~!」

ばしゃばしゃばしゃ(全員で水を掛け合う)

かな子だけとべない可能性。重量的に

フレデリカ「くらえ!プロデューサー!どっばしゃー! ほら、かな子ちゃんも一緒に!」

かな子「わ、わかりましたっ! えいっえいっ!」

P「おっ。てめっ、やったな、フレデリカ、かな子! おらっ、くら……って痛っ、めっちゃ痛っ!? な、なんだ!?」

志希「ふっふーん♪ギフテッドな志希ちゃんは水鉄砲も天才的なのだ♪」

P「ちょ、おまっ! 志希おまえマジで辞めろ!! マジ痛え!! 死ぬっ! 死ぬっ!」




30分後。

海の家にて。

P「あ~……かな子……すまんな……ストッパーになってくれよ、とか言いながら、なんか俺の方がはしゃいじゃってよ……」

かな子「あはは……まぁ、はしゃぐプロデューサーさんも新鮮でしたよ」

P「久々の海だからつい……あと浮き輪とかの用意、手伝ってくれてサンキューな」

かな子「いえいえ。プロデューサーさんは、運転頑張ってくれましたし」

P「まぁ、車持ってるの俺くらいだしな。志希フレの二人は運転免許持ってるかも怪しいし……ったくあの二人はロクに手伝いもしねーでずっと遊びやがって……」

かな子「あはは……まぁ、二人はレイジーレイジーですから」

P「お前は本当にいい子だな……つーか、今更だけど、お前らって普通に仲いいんだよな?」

かな子「はい、そうですよ。じゃなきゃ、一緒に来ませんって♪」

P「ま、だよな。あーでも、お前らってどんな会話してんだ?」   

かな子「えーっと、志希さんは良く、私がお菓子作ったあとの匂いをクンクン嗅いできますよ。それでお菓子の香り付けのアドバイスとかしてもらってますし。フレデリカさんにはお菓子を上げるかわりにファッションの指南をしてもらってます」

P「ほほう」

かな子「それに、『とんでいっちゃいたいの』の収録だって、3人で仲良くやったんですよ。だから心配ご無用です♪ むしろ収録の時に思いましたもん、『え、プロデューサーさんって、わたしたちが仲いいことまで知ってたんだ。やっぱりすごいなぁ』って」

P「あー……なんとなーく仲いいとは思ってたけど、正直、選んだ理由は志希フレ二人の声とかな子の声質がマッチするかと思っただけなんだか……ま、楽しく収録出来たんなら良かったよ」

かな子「はい、収録のあと、そのまま三人で話題のスイーツ食べに行きましたよ、美味しかったですし、話も盛り上がりました♪」

P「そりゃあなにより。かな子を選んで正解だったな。……それにしても、あの曲、いい曲だよなぁ」

かな子「ですよね……『とんでいっちゃいたいの』を収録してから、ずっと海に行きたいと思っていて……だから今日、来れて本当に良かったです」

P「おー。そりゃあ良かったぜ……っておいおいかな子よ。まだ来たばっかりなのに、なんかもうそろそろ帰る時の会話みたいになって来てるぞ」

かな子「あ、あはは……今年の夏……っていうか、春先からずっと全国ツアーの準備やらなにやらで忙しかったじゃないですか、だから、遊ぶのも久々で、緊張してるっていうか、なんか肩の力が抜け切らないっていうか……」

P「あー、まぁ、分からんでもないがな……俺もアイドルのみんなも、超忙しかったしなぁ……特にお前は、福岡じゃあ初のセンターだった訳だし」

かな子「……はい……」

P「……」

P(俺の言葉に、かな子は、ちょっと遠い目をしていた)

P(思い出してるんだろう。福岡公演の事を)

かな子「……」

P「なぁ、かな子」

かな子「……はい」

P「今更だけどさ……改めて、初めてのセンター……初めての座長、お疲れ様。すげえかっこよかったぜ、かな子」

かな子「……ありがとう、ございます」

P(俺自身も、ちょっと思い出していた。かな子が必死に福岡公演を盛り上げ、成功させようと、奮闘していた時の事を)

P(夜遅くまでスタッフやメンバーと打ち合わせしたり、ダンスや歌のレッスンをいつも以上に張り切ったり、大好きなお菓子もライブの時にほんのちょっとでも痩せて見えるように我慢したりと……)

P「お前は、ちゃんとセンターとして、座長として、最後までしっかりやり遂げた。莉嘉や亜季とかの年が離れてたり飛鳥とか志希とかキャラ濃いメンツをちゃんとまとめられたのも、お前の優しい人柄あってこそだ」

かな子「……そんな事はないですよ、みんなが公演を成功させようと努力したり頑張ってくれたおかげです……」

P「……確かにそこは否定しないけど、努力や頑張りだって、みんなが違う方向を見てたら上手く行かないからな。お前がみんなを一つにしたから、ライブはあんなに盛り上がったし、ファンのみんなだって、喜んでくれたんだよ」

P「お前は頑張った。えらいぞ、かな子。だから今日くらいは気緩めて、好きなだけ遊んで、楽しんでくれよ」

P(俺がそう言って、かな子の頭を軽く撫でると……)

かな子「……うっ……ぐす……ありがとうございます……」

P(なんとかな子は何故だか知らんが泣き出した)

P「お、おい、なんで泣くんだよかな子!」

かな子「うっ……だって、思い出したら、つい……初めてのセンターはやっぱり不安でしたし、でもその分、ライブ中はものすごく楽しかったですから……」

かな子「それに、ライブの最後のあいさつのとき、ファンのみなさんも、メンバーも、プロデューサーさんも、みんなとっても暖かく見守ってくれて、それが本当に本当に嬉しくて……」

P「わ、分かったから、泣き止んでくれ、な!」

P(うわ、あいつ泣かせた、みたいな周りの目がきつい!)

P「あ、そうだ、何か食べるか? かき氷とかどうだ?」

かな子「……はい、お願いします……」

P「よっしゃあオッケー! 任せろ! すぐとってくるぜ!」

P「お待たせ!いちご味好きだったよな?練乳付きだぞ!ほら、食べてくれ!」

かな子「……ありがとうございます……」

P(そう言うが、かな子はかき氷に手を伸ばそうとせず、せわしなく俺とかき氷を交互に見ている)

P「……どうした。食べないのか?」

かな子「……いえ、その……センターを頑張ったご、ご褒美が欲しいなぁ、なんて……」

P「……」

P(ご褒美……つまり食べさせて欲しいってことか?)

P「ったく……しょうがないな。今日だけは甘やかすよ。ほら、あーん」

かな子「え、えへへ♪ あーん♪」

P「……美味いか?」

かな子「はい、とっても♪」

P「そりゃあなにより。ほら、あーん」

かな子「あーん♪」

P(……何だか餌付けしてる気分だな……)

かな子「えへへ、すっごく甘いですね、このかき氷♪」

P「そりゃ練乳付きだしな」

かな子「……そういう意味じゃないんですけど……」

P「?」

かな子「まぁ、いいです。それより、プロデューサーさんもどうぞ♪ はい、あーん♪」

P「……いや、俺はいい」

かな子「遠慮なさらず、はい、あーん♪」

P(……別に、今更間接キスやらあーんやらを恥ずかしがるほどウブな年じゃないが、かな子は気にしないのか? いや、大丈夫だよな、多分……)

P「……あーん」

かな子「どうですか? とっても甘いでしょう?」

P「あー……うん、まぁ……」

かな子「えへへ♪ それじゃあまた食べさせてください、プロデューサーさん♪」

P(……結局、ほとんど全部、かき氷をかな子にあーんした)

P(こんなにかな子が甘えてくるとは思わなかったが……でもまぁ、さっきまで泣いてた奴とは思えないくらい上機嫌になったので良しとしよう)

P「満足したか?」

かな子「はい、お口の方は大満足です。あっ、でもプロデューサーさん」

P「なんだ?」

かな子「えっと、できればオイルも塗って欲しいんですけど……」

P「……あ、アホ。そこまで甘やかすか。自分で塗れ」

P(……やばいな。一瞬、かな子が色っぽく見えた。平常心、平常心……)

かな子「……うう、残念です。って、プロデューサーさん、どこ行くんですか?」

P「トイレだ」

P(落ち着け……落ち着け……一旦トイレ行ってクールダウンするぞ、俺……)




かな子(プロデューサーさん、行っちゃった)

かな子(ちょっと甘えすぎちゃったかな……でも、これくらいならいいよね……私、頑張ったもんね……)

かな子(……プロデューサーさんは、私のこと、どう思ってるんだろ)

かな子(……聞きたいけど、でも、勇気が出ないな……)

かな子(怖気づいてても、仕方ないのに……)

P(よし、やっと落ち着いたぞ……)

P「ただいまかな子……って、あれ?」

志希「おかえりープロデューサー♪」

P「志希か、かな子はどうした?」

志希「かな子ちゃんは、海に行ったよー。あたしはちょっと疲れちゃったから、休憩~。ちょうど入れ替わりだね」

P「なるほど」

志希「いやー、それにしても、志希ちゃん海なんて久しぶりだから、ちょっと興奮しちゃったよねー」

P「そりゃよかったよ。わざわざ連れてきた甲斐があったってもんだ」

志希「うん、ありがと。あっ、そうだプロデューサー。お礼に、背中に日焼け止め塗ってあげる、いい匂いがする奴~♪」

P「日焼け止めまで匂いにこだわるか……」

志希「あ、そのあとは、プロデューサーがあたしに塗ってね♪」

P「……今日はみんな、甘えたがる日なのか?」

志希「?」

志希「いやー、それにしてもさ、プロデューサー。全国ツアー、楽しかったね」

P「やってる最中はめちゃ忙しくて、大変だったけど、ま、同意だ。これだから辞められないよな」

志希「確かに♪ ……でもさぁ、プロデューサー」

P「なんだ、志希」

志希「……終わらなかったらいいのにね」

P「……何の話だ?」

志希「……この時間、この夏がさー」

P(……その口調が少し悲しそうで、俺は志希に目をやった)

P(志希は俺を見ず、雲ひとつない空や澄んだ海を見つめている)

P(……いや、空も海も見ていないか)

P(ぼんやりと空想の景色を思い浮かべている、そんな目だ)

志希「最近あたし、アイドルがすごく楽しくてさー。もうね、志希ちゃんの人生史上最高の一日を更新しまくりな毎日だったわけ」

P「……いいことじゃないか」

志希「……うん。とってもいい事だなって私も思うよ。最高の仲間がいて、最高のファンがいて、ステージから最高の景色が見れて……」

P(志希はそこでようやく俺を見て、ちょっとだけ頬を赤くする)

志希「……最高のプロデューサーが居てさ……もうこれ以上、望むのは贅沢かなーって思うくらい、楽しい毎日で、最高の夏だよー」

志希「だから、だからかなー……なんか終わって欲しくないなーって……」

P「……」

P(珍しく、志希がアンニュイな感じになってる)

P(まぁ、それだけ全国ツアーが楽しかったって事だろうが……)

P「志希……お前なぁ、なんか燃え尽きたみたいな感じになってるけど、俺のプロデュースの腕を見くびってないか?」

志希「……え?」

P「だってそうだろ? 要はこれ以上楽しいことが望めそうにないって勝手に想像して、勝手に燃え尽きてるんだろう?」

志希「そ、そういう訳じゃ、ないけどさ……」

P「一応言っておくけどな、全国ツアーなんてまだまだ序の口だぜ? お前たちがもっともっと輝けるようなイベントやライブを、俺はたくさん考えてるんだよ」

P「それで、そのイベントやライブには、志希、お前が必要不可欠だ。お前がいないと、俺はものすごく困る」

P「これからも俺は、ずっとお前の傍にいて、お前を退屈させない。だから、燃え尽きるには、まだまだ早いぜ、志希」

志希「……プロデューサー……」

P「それにずっと続けばいい、なんて志希らしくないだろ?」

P「そう思うくらいアイドルとしての今を楽しんでくれてるのは、お前をスカウトしたプロデューサーとして、誇らしい限りだけどさ」

P「思い出に浸るなとは言わないが……科学的に見て、新陳代謝は生きていく上で必須だろう?」

P「楽しい思い出だけじゃあ人は生きていけない。それになにより、思い出だけを抱えて生きていくのは――」

志希「……生きていくのは?」

P「刺激がない。お前が一番欲しいものが手に入らない人生を、お前は送りたいのか? 志希」

志希「……ふふん、言ってくれるねえ、プロデューサー。」

志希「でもさぁ、プロデューサー。そこまで言うからには、とーぜん、脳みそ蕩けちゃうような、エンドルフィンとアドレナリン出まくりの毎日、遅らせてくれるんでしょ?」

P「おう、その通りだ……という訳で、早速、刺激を与えてやろう」

志希「え?」

ひょい(Pが志希をお姫様抱っこする)

志希「えっ……な、なにす――」

P「だりゃあああああ!!」

だっだっだっだ(志希をお姫様抱っこしたまま、砂浜から海へ駆けるP)

ざっぱーん(そして、志希を海へ放り投げるP)

志希「うわっ……ぷはぁ! ちょ、ちょっとぉ、何すんのさプロデューサー!」

P「ふふん、どうだ。志希、ギフテッドでジーニアスなお前でも、今の俺の行動は予測不可能だったろ? ちょっとは刺激を与えられたか?」

志希「た、確かにそうだけど……プロデューサーって、案外、ゴリ押しするっていうか……ばか?」

P「ほっとけ。それにバカと天才は紙一重って言うだろ。あと、たまにはバカになった方が楽しいぞ、志希」

志希「……あはは。色んな科学実験したけど、プロデューサー以上に予測不可能だった事はないよ、もう♪」

P「……褒められてるって、認識でいいのか?」

志希「にゃはは、さぁ、どうかなー♪」

P「……まぁ、何でもいいけど。それとな志希。さっきのアンニュイなお前も悪くないが、やっぱり俺は、そうやって笑ってるお前の方が好きだ」

志希「……う、うん」

P「さて、それじゃあ焼きそばでも食うか? 海の家で食う焼きそばやら唐揚げやらはお高いコース料理よりも美味いからな、びっくりするぞ」

志希「……うん」

じー(プロデューサーの背中を見つめる志希)

志希(……ねぇ、プロデューサー)

志希(あたし、本当に今、毎日楽しいよ)

志希(だから……だからあたし、ちょっとだけ怖いよ)

志希(今まで、どんなものも飽きるまでの遊び道具だって思ってたの)

志希(科学実験も、飛び級した大学だってそう)

志希(でも、このアイドルっていう職業も、仲間も、ファンのみんなも、今までにないくらい刺激的で、楽しくて、夢中になってる)

志希(遊び道具なんかとは思えない)

志希(それに、プロデューサーと一緒に居ると、どんな事でも楽しくて……最近はずっと、プロデューサーのことばかり、考えてる)

志希(……だから、ちょっとだけ怖い)

志希(飽き性のあたしの興味が、こんなに続いたのは、初めてだからさ……)

志希(……わかんないんだ、どうしたらいいのか)

志希(……進めない。あるいは進みたくないのかな、あたし)

志希(もっとキミを好きになるのが怖くて……)

数十分後。


P「さーてと、それじゃあ。そろそろ俺ももうひと泳ぎしてきますかね。志希も来るか?」

志希「……Zzz……」

P(……嘘だろ。さっきまで飯食ってたのに、もう寝てやがる……さてはこいつ、昨日の夜も徹夜で実験でもしてたな……? 肌に悪いから徹夜は辞めろって言ってるんだけどな)

P(でも、どうするかな。寝てる志希を一人で放っておくのもアレだし……ん? 誰かこっちに走ってくるような……?)

かな子「ぷ、プロデューサーさーん! 大変ですー!」

P「かな子か、どうした? ってか、あれ? フレと二人で遊んでたんじゃなかったのか?」

かな子「それが……ちょっと大きな波が来て……それに流されたら、フレデリカさんとはぐれちゃって……」

P「……マジか。ったく、子供じゃねえんだから……」

かな子「すみません、私も探したんですけど、見つからなくて……どうしましょう?」

P「別にかな子が謝る事じゃないさ。とりあえず俺が探してくる。なんだかんだあいつ目立つし、すぐ見つかるだろ。その代わりかな子は志希を見といてくれ」

かな子「はい、わかりました。お願いします」



5分後。

P(さーて、あの自由な金髪お姫様はいずこに…………あ、いた。おいおい、随分遠くまで流されたなあいつ)

P(ってか……なんか男二人組に絡まれてるな……まぁあいつ、見た目だけなら、超絶美少女だしなぁ……)

P(しょうがねえな、助けに行くか)

DQN男1「ねえねえ、キミ可愛いね。遊ぼうよ」

DQN男2「一人でいるってことは、ナンパ待ちでしょ? 絶対俺らといる方が楽しいからさー」

フレデリカ「えー、どうしよっかなー。うーん、フレちゃん、困っちゃうー♪」

DQN男1「てか、キミってハーフ? 金髪綺麗だねー」

DQN男2「あれ? ってか俺、お姉さんのことどっかで見たことあんなー。お姉さん、なんか芸能界とかやってる?」

フレデリカ「えへへー、さぁどうでしょう♪ あ、ごめんねー。それじゃあそろそろフレちゃんは友達の所に戻りまーす♪」

DQN男1「……ちょっと待てよ。いいじゃん、遊ぼうって」

DQN男2「可愛いからってお高く止まってんじゃ――」

P「……あ、いたいたフレデリカ。おーい、戻るぞ」



フレデリカ「あ、プロデューサー♪」

DQN男1「あ? 誰あんた?」

DQN男2「急に出てきてなんだてめえ。俺らがこの子と喋ってたんだけど」

P「あ、それはどうもすみません。でも一応彼女俺の恋人なんで、ナンパとかそういうのだったら、やめてもらっていいですか?」

フレデリカ「…………ぇ………」

DQN男1「ちっ、んだよ男いんのかよ。いやでもお姉さん、こんな男より俺らと居るほうが絶対楽しい――」

P「――それ以上彼女に近づかないで貰えますか」

ゴゴゴゴゴ(凄むP)

DQN男1「…………う」

DQN男2「あっ、思い出した! お姉さん、宮本フレデリカじゃね? 確かアイドルの!」

P「あっはっは。そうっすね。こいつハーフで顔も似てるから、よくそう言われるんですよ」

P「――で、それがなんか関係ありますか?」

ゴゴゴゴゴ(さらに凄むP)

DQN男2「……いや、その……」

DQN男1「お、おいもう行こうぜ……その人よく見たら筋肉やべえよ。俺らじゃ勝てねえって」

ダッダッダ(逃げるようにどこかへ行くDQN達)

P「ふぅ、追っ払えてよかった。ったく、なにやってんだよフレデリカ」

フレデリカ「あ、あははー、ごめーんプロデューサー、波に流されちゃって……なんか気がついたらあの人達に絡まれちゃって……」

P「いつもの調子で適当に相手して、適当に逃げときゃ良かったのに……って、訳でもねえか。俺が来たから良かったけど、あいつらめんどくさそうだったし」

P「まぁいい。とりあえず一旦海の家戻るか。志希もかな子もいるしな」

フレデリカ「うん、そうしよー♪ って、うわっ!」

どでーん(フレデリカが転ぶ音)

P「お、おい、どうした? 大丈夫か?」

フレデリカ「あはは……安心したら、なんか気が緩んじゃったみたいで……あっ……どうしようプロデューサー……足首が痛い……捻ったかも……」

P「お前……今日、本当にどうした? まぁいい……ったく、しょうがねえなぁ……ほら、背負ってやるよ」

フレデリカ「……ありがと、プロデューサー」



てくてく(フレを背負って歩くプロデューサー)

フレデリカ「うーん、プロデューサー号は、快適な乗り心地ですなー♪」

P「おー、そりゃあ何より……っていうか、ほんとお前は自由だな」

フレデリカ「それがフレちゃんだからねー☆ うーん、白い砂浜、青い海、輝く太陽、そしてプロデューサーとフレちゃん♪ これぞ日本の風物詩☆」

P「俺たちはいつから風物詩になった……」

フレデリカ「いいでしょ、最高の夏って感じで♪ 私、ずーっと日本の海に来たかったんだー。去年パパとママと一緒に来たけど☆」

P「お前もう降りろ……」

フレデリカ「そんな事言わないでよ~フフンフンフーン♪」

P(……何が楽しくてこんな上機嫌なんだか……いつものテーマソングまで口ずさんでるし……)

フレデリカ「あ、ところでプロデューサー。さっきは助けてくれて、ありがと」

P「……別に普通だ。てかこっちこそ悪かったな。一応、ああいう輩が少なそうな海を選んだつもりだったんだか……」

フレデリカ「んーん♪ 気にしてないよー☆ ていうか、プロデューサーこそ気にする必要ないってば。もーせっかくのオフで海なんだから、笑ってよー」

P「……ま、それもそうか。あーそれとアレだ。さっきは勢いで恋人とか言っちゃったけど、大丈夫だよな? ネットに晒されたりしないよな?」

フレデリカ「んー、完全にプロデューサーに怯えてたし、大丈夫じゃないかな? ま、だいじょーぶだいじょーぶ。ケセラセラ、ケセランパサラン♪」

P「それ後半違うだろ……この適当娘め」

フレデリカ「ありゃ、バレたかー♪」

P(俺のツッコミに、フレデリカが嬉しそうに笑う振動が、背中越しに伝わってくる)

P(ほんと、こいつと居ると退屈しないっていうか、いい感じに脱力できるな……)

フレデリカ「それにしてもさー、プロデューサー。すっごく鍛えてるねー。胸板とか超厚いし、腹筋とかバキバキだし……なんでこんなに?」

P「別に大した理由じゃないさ」

フレデリカ「実は世界初のプロデューサー兼ボディビルダーを目指してるとか?」

P「なんでそうなる……まぁ、アレだ。一言で言うなら、お前らを守る為だよ」

フレデリカ「え?」

P「さっきみたいなケースもそうだけど、万が一イベントやライブで暴漢が現れた時に、いつでも警備員さんが近くにいてくれるとは限らないからな」

P「そんな危険が起こった時に何も出来ないのは嫌だし、お前らを傷つけられるのはもっと嫌だからな。それだけの事だよ」

フレデリカ「……ふーん、そっか。それだけ私達のこと、大事に思ってくれてるんだね、プロデューサー……」

P「……まぁな」

フレデリカ「あはは、プロデューサー、照れてる。かわいい♪」

P「あーもう、うっせーなー」

フレデリカ「顔、赤いよプロデューサー。頬ツンツン☆」

P「やめい……」

フレデリカ「でもさ、さっきのプロデューサー……ちょっとかっこよかったよ」

P「……そりゃあどうも」

フレデリカ「プロデューサーのこと、大分見直しちゃった」

P「むしろ俺は今までお前がどういう風に俺を見てたかの方が気になるが……」

フレデリカ「それは気にしない方向で♪ ……でもプロデューサーには、本当に感謝してるよー」

P「……何のことだ?」

フレデリカ「だってさー、ちゃらんぽらんで、適当なアタシがさー、アイドルっていう職業に付けて、LIPPSやかな子ちゃんやアイドルのみんな、それにあたしを応援してくれるファンのみんなにも会えたしさ」

フレデリカ「ほんと、いくら感謝してもしきれないよー」

フレデリカ「だからさー、プロデューサー……アタシ、そんなプロデューサーのこと」

P「……」

フレデリカ「……ジュテーム」

P「……はいはい、俺もジュテームしてるよ。ジュテームジュテーム」

フレデリカ「あーもう、本気にしてないでしょプロデューサー」

P「ライブ後、テンション上がって、誰彼かまわずジュテーム言いまくるお前の姿を、普段目の当たりにしてるもんでな」

フレデリカ「だってしょうがないでしょー。ライブ楽しいんだもん」

P「そりゃあ結構な事だけど……つーかさ、フレデリカ」

フレデリカ「なに?」

P「さっきからお前の捻ったはずの足が、ガンガン俺の足に絡みついてきて、お前が全く痛そうな素振りをしてないんだが」

フレデリカ「うん」

P「実はさっき捻ったっていうの、嘘だろ?」

フレデリカ「うん♪」

P「……てめえフレデリカ!! ふざけんじゃねえぞ!! 楽しようとしやがって!!」

フレデリカ「うわぁーん、プロデューサーが怒ったー☆」

だっだっだっだ(Pから逃げるフレデリカ)

P「待てフレデリカ!!」

フレデリカ「ふっふっふ、くらえプロデューサー、志希にゃん直伝殺人水鉄砲♪」

P「ぐおっ! 痛えっ! し、死ぬっ! てめえこのフレデリカ!! さっき助けてやったのにこれか!!」

フレデリカ「ふふっ、プロデューサー、そういう顔も素敵だよ☆」

P「うるせえこのアホ娘!」

バシャバシャ(水を掛け合う二人)

10分後

P「……あー、なんかいい年こいて、騒いじまったなぁ……」

フレデリカ「あはは、プロデューサーといると、本当、楽しいっ♪」

P(こっちは全然楽しくない、と言おうと思ったが……フレデリカの心底楽しそうな顔を見たら、なんだか怒りも消え失せた。ほんと、美少女は得だな)

P(それに、さきほどのまでのやりとりも、本気で楽しくなかったと言えば、嘘になるし)

P「そりゃどーも……ったく、本当にフレデリカはフレデリカだなぁ」

フレデリカ「そうだよー、フレちゃんはフレちゃんだからフレちゃんなのです☆」

P「……大したやつだよ、お前は……じゃあ、いい加減戻るぞフレデリカ。ほれ」

フレデリカ「はーい♪ ……って、なんでしゃがんでるの、プロデューサー?」

P「さっきの連中が、なんだかんだ怖くて、ちょっと甘えたくなったから、足くじいたなんて嘘までついたんだろ? 怖い時は、誰かにすがりたくなるもんだしな」

フレデリカ「……」

P「だから、いいよ。中途半端にしないで、最後まできっちり甘やかす。ほれ、来い」

フレデリカ「……ありがと、プロデューサー……よーしそれじゃあプロデューサー号、光の速さでしゅっぱーつ!あ、でもフレデリカ理論だと遅くなっちゃうんだった」

P「それまだ引きずってたのかよ」

フレデリカ「フフンフンフーン♪ フレデリカー♪」

P「聞いてねえし……」

P(まぁご機嫌なようで何よりと苦笑しつつ、俺はフレデリカを背負いながら海の家へと歩み始めた)

フレデリカ(……ねえプロデューサー)

フレデリカ(さっきのジュテームって言葉、本当だよ)

フレデリカ(ついふざけた感じで言っちゃうけど、プロデューサーのこと、本気でそう思ってるの)

フレデリカ(でも、言えないよ。だって、言ったら終わっちゃうもん)

フレデリカ(プロデューサーや、他のアイドルのみんなやファンのみんなとの関係、崩れちゃうもん)

フレデリカ(それでもいいから告白する……そんな勇気があったらいいんだけど……)




数十分後。


P「さてと、それじゃあ俺は、身体を鍛えるのも兼ねて、ちょっと海を泳いでくるわ」

かな子「あ、プロデューサーさん、行ってらっしゃいです。私達はちょっと休んでますので」

志希「行ってらっしゃいプロデューサー。はいフレちゃん。あーん」

フレデリカ「あーん。かな子ちゃんもフランクフルト食べる?行ってらープロデューサー♪」

かな子「あ、はい。いただきます」

フレデリカ「ん。はいどーぞ。あーん♪」

P(あー……なんか動画にしたらめちゃくちゃ売れそうなくらい、平和的っていうか、癒される光景だな……)

P「じゃあ行ってくるから。だいたいあっちらへんにいるから、なんかあったら声掛けてくれ」

かな子「はい、わかりました」

P「さーてと……波がある分、いつも行くジムのプールより気合入れて泳がねえとな」



じー(プロデューサーの後ろ姿を見つめる3人)

かな子(……プロデューサー、後ろ姿もかっこいいなぁ……)

志希(……考えてみれば、お姫様抱っこなんてされたの、プロデューサーが初めてだったなぁ……)

フレデリカ(プロデューサーの背中の感触、今もまだ残ってる……)

かな子(やっぱり、どうしても知りたいな……プロデューサーが、私のこと、どう思ってるのか……。そうしたら、そうしたら私……)

志希(プロデューサーへの想いが、胸の中でこぼれそうなくらい溢れてる。でも、これ以上、進むの、怖いよ……)

フレデリカ(プロデューサーに本気で告白したいけど、言ったらダメだよね……)

かな子(はぁ……プロデューサーの心の中に……)

志希(進まなくていい……ずっとこんな日々が終わらないように……はぁ、最初に戻れたらなぁ……プロデューサーと出会った日に……今すぐにでも)

フレデリカ(世界中に二人きりだったら、他の人のことも考えないで、プロデューサーに真剣に告白出来るかな? はぁ、そんな世界に……)

志希・フレ・かな子「「「とんでいっちゃいたいなぁ……」」」


志希・フレ・かな子「「「……」」」


かな子「…‥あははっ」

志希「にゃははー」

フレデリカ「フンフーン☆」

かな子「す、すごい偶然でしたね、今。ふふっ」

志希「うーん、二人でハモるっていうのはそこそこあるけど、3人でハモるっていうのは、なかなかないと思うよ―」

フレデリカ「あ、それとフレちゃん、なんとなーくだけど、3人が考えてる事も一緒だと思うな―」

かな子「……そうですね、そんな気がします」

志希「とある人物について、で間違いないでしょ?二人とも」

かな子「……はい、そうですね」

フレデリカ「おー、さすが志希にゃん、わかってるぅ……あっ、そうだ。はーい、ここでフレちゃんから二人に提案があります」

かな子「なんですか、フレデリカさん?」

フレデリカ「今からその人物のところに、言葉通り、文字通りに――とんでいっちゃおう♪」

P(……ふぅ、疲れた。たまにはいいな。海で泳ぐってのも……遊んでる人の邪魔しないで泳ぐのも、水泳版障害物競走みたいで、新鮮だったし)

P(さてと、それじゃあそろそろあの3人のところへ帰るとする――)

P「――って、おぉ!?」

P(俺は思わず、ドッキリにマジでひっかかった芸人みたいな声を出していた)

P(何故なら振り返ると、いつの間にか俺の近くにいた志希、フレデリカ、かな子の三人が一斉にジャンプして俺に――とんできたからだ)

ざっぱーん(志希・フレ・かな子・Pの4人が派手に水しぶきをあげる)

P「う、うおお!? あ、あ、あぶねえだろうがお前ら! なんだなんだ! なにかあったのか?」

フレデリカ「んーん、なんでもないよ、プロデューサー☆」

かな子「はい、なんでもありません♪」

志希「なんでもにゃーい♪」

P(……俺の質問に答えず、お互いの目を見てニヤニヤしながら、そう答える3人)

P「まぁ何もないんならいいけど……なんだ、急に。正直に言え。お前ら何がしたいんだ?」

P(俺のその問いに、3人は顔を見合わせて、ますます笑みを濃くして、こう答えた)


志希・フレ・かな子「「「とんでいっちゃいたいの!」」」


P「……はぁ?」

P(俺のその声に3人は何も言わず、ただただ楽しそうに、だけどどこかちょっと切なそうに笑っていた)

P(……よくわからなかったけど、白い雲が流れる綺麗な空と、元気一杯に照りつける太陽をバックにした3人の水着姿がすごく眩しくて、言葉にできないほど綺麗で……)

P(なんだか本当にその内背中に翼でも生えて、どこかへとんでいけそうな3人だな、とぼんやり思った)

これで終わりです
夏が完璧に終わって冷え込んてきた時に夏のSSですみません
あと、書き込んだあとに気付いたのですが、かな子がPのこと、「プロデューサーさん」ではなく、「プロデューサー」って呼んでる部分があります。ごめんなさい
でも「とんでいっちゃいたいの」は本当にいい曲なので良かったら聞いてください!youtubeで視聴も出来ます!
それとこれが収録されてるMASTER SEASONS SUMMER!の次回作
MASTER SEASONS AUTUMN!は明後日発売です。良かったらそっちも是非!!
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。

なつだな
おつ


>>3
ミノフスキークラフト装備すればとりあえず飛べるから…(スパロボ感)

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