妖狐の国の座椅子あふたー (179)


本編

妖狐姫「わらわの座椅子となるのじゃ」
妖狐姫「わらわの座椅子となるのじゃ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1489062020/)

のおまけ的なスレ

初見の方も本編の方をぜひ読んでいってください

お願いします
(-ω-)



祝言の日から一ヶ月。

あの忙しくていろんなことがあった一週間と比べて、その日々はまったりと特に騒がしいこともなく過ぎていった。

男「んー…?」

まだ少し肌寒い朝、俺は何かが木に突き刺さる音で目が覚めた。

男「くぅこ~?」

くぅこ「はっ、主殿。起こしてしまったでごじゃるか?」

襖を開けて縁側へ出ると、庭でくぅこが木の板を的に手裏剣を投げていた。

男「いや別にいいんだけどさ。体の方はもう大丈夫なのか?」

くぅこ「てんこ殿のお陰でもうすっかり元気でごじゃるよ。本日より護衛任務に戻るでごじゃる」

くぅこは胸をトンと叩いて任せろと言わんばかりに張り切っていた。

男「ははっ…無理はするなよ」

くぅこ「心得たでごじゃるよ。主殿はまだもう少し寝ててもいいでごじゃるよ?」

男「いや、折角だからもう起きとくよ…二度寝して深眠りし過ぎててんこさんに叩き起こされるのもアレだしな」

俺は縁側に腰をかけながら半笑いでそう言った。

男「手裏剣投げ、見せてくれよ」

くぅこ「…これは修行の一環で見せ物ではないでごじゃるが」

くぅこは少し恥ずかしそうにそう言うと木の板から手裏剣を引き抜きもう一度距離を取った。

くぅこ「せぃっ!」

彼女がもう一度投げた手裏剣は板の中心部に墨で描かれた円に見事命中した。

男「おお~」

俺が軽く拍手をあげると彼女は何とも言えない様子で俺の顔を見た。

くぅこ「こんなもの見てて楽しいでごじゃるか?」

男「俺の世界にはダーツっていうスポーツがあってな…それ見てる気分」

くぅこ「なるほど。主殿の世にも忍者がいるでごじゃるか」

男「いやまあそのダーツやってる人は忍者じゃないんだけど…」

くぅこ「抜け忍ということでごじゃるか」

男「いや、多分そうでもないと思う」

…俺の語彙力が無いせいか、俺はあちらの世界の文化を伝えるのに度々手を焼くことがある。

もっと真面目に大学行ってればなって…

くぅこ「忍道を志さない者が投てきを極めるとは…理解苦しむでごじゃる」

くぅこ「主殿の世では謎の才に満ち溢れた者ばかりでごじゃるな。主殿もその例にもれないでごじゃるよ」

くぅこ「主殿も『だーつ』やってたでごじゃるか?」

男「いや…」

男(偏見だけど日本じゃリア充や意識高い系の嗜むスポーツって印象あるよ俺は…)

くぅこ「そうでごじゃるか。主殿の凛々しき投てき…少しばかり見てみたかったでごじゃるな…」

彼女の残念そうな顔を見ると俺は頭を抱えられずにはいられなかった。

男(ぼっちでもダーツやっとけばよかったぁ…)

男(カッコよく的に当てて『主殿!格好いいでごじゃるよ!』とか言われてみたかったなぁ…)

こういう具合に俺のあちらでの後悔の念は積もるばかりである。

…だから尚更こちらでは後悔しないように生きていこうと決めたわけだが。


男(ちょっとやってみようかな)

男「くぅこ、俺もちょっとやってみるよ。手裏剣の投げ方教えて」

男(今からでも遅く無い!隠れて練習してチョーカッコいい主殿見せてやるからな!)

くぅこ「ふぇ…?何故唐突に…まあ、いいでごじゃるが…」

男「貸して貸して」

彼女の持っていた手裏剣を何気なく手に取った。

くぅこ「あっ!安易に持つと危な…」

手裏剣の四箇所の刃先が俺の手のひらに同時に食い込んだ。


「ぎゃっ…ぎゃああああああああ!!!!」



…………

妖狐姫「…で、わらわを愛でるためのその手を勝手に負傷したというわけか」

妖狐姫「正にあほうじゃな」

いくら包帯があってもさすがに薬品を塗ったばかりの臭い手で妖狐姫を撫でることはできない。
彼女は心の底から機嫌を悪くしていた。

てんこ「旦那様…その手が自分だけの手ではないということを、もう少し自覚して欲しいな」

男「返す言葉もありません」

くぅこ「せっしゃが付いていながら…申し訳ないでごじゃるよ…」

妖狐姫「よい。うにゅは何も悪くないぞ?全てはそのあほうの自業自得じゃ」

くぅこ「せっしゃが付いていてこれだと、せっしゃが居なかったらどうなってしまうのか心配でごじゃるよ…」

くぅこの憐れみの視線が心に突き刺さる。

男(やめてくれ…そんな目で俺を見ないでくれ…)

自分でもよく分からないが俺はくぅこの前では必要以上に格好をつけようとする所がある…

だから逆に彼女にこうも下げた目で見られると辛いのだ。

くぅこ「でも今日からまたせっしゃが隣にいるから大丈夫でごじゃるな!」

駄目だ…くぅこは完全に保護者感覚だ。

妖狐姫「いやくぅこ…まだじゃな」

くぅこ「ほぇ?」

完全に今日から復帰する気満々だったくぅこを妖狐姫が止めた。

妖狐姫「その、なんじゃ…わらわは今までうにゅに頼り過ぎておる節があった…」

妖狐姫「その結果前のような悲劇を生んでしもうた…。あれはわらわのせいじゃ。反省しておる」

妖狐姫が珍しく人に向かって頭を下げた。

くぅこ「やっ!頭を上げて頂きたいでごじゃる!あれはせっしゃの慢心から生まれた油断もあってのこと…仕方ないでごじゃる」

妖狐姫「まあそう下手に出るでない。そこでじゃな…うにゅには普段の感謝の気持ちも込めて本日は休暇を取ってもらいたいのじゃ」

妖狐姫「偶にはその忍者装束を脱いで一般の街娘のように街で羽を伸ばしてもよかろう?」

男(なるほど。妖狐姫も偶にはいいこと言うじゃないか)

てんこさんやくぅこが我がままに振り回されながらもこのお姫様についてきたのは、彼女のこういうところを知っていたからかもしれない。

くぅこ「とっ、とんでもないでごじゃるよ!ただでさえこの一月、布団の中でこもっているばかりだったというのに…」

くぅこ「何か任務を貰えなければ満足に羽を伸ばすことなど、かえってできないでごじゃるよ…」

社畜の鑑である。

妖狐姫「ふむ…ならそうじゃな…」

妖狐姫は顎に指を添えて少し考えると何かいいことを思いついたのか拳で手のひらをポンと叩いた。

妖狐姫「そのあほうを街に連れていくのじゃ。そやつはまだ街に対しての馴染みが薄いからの。よい機会じゃろ、そやつにいろいろ教えてやるのじゃ」

くぅこ「え…そんなことしていいでごじゃるか…?」

妖狐姫「…そのような薬臭い奴の上に座ろうなどとは思わんわ。座椅子、うにゅは一日反省するのじゃぞ」

男「はいはい…」

妖狐姫「こういうときくらい真面目な返事をせんか!」

男「はぃ…」

男(母ちゃんかよ…)

てんこ「声が小さい!」

男「はーい!!」

男(先生かな?)

くぅこ「伸ばさぬ方がいいでごじゃるよ」

男「はい…」

男(優しいお姉ちゃんやこれは…)

…俺には、なんか保護者みたいな人がいっぱいいた。

………………

くぅこ「ま、待たせてすまにゅでごじゃる…」

屋敷の門の外でくぅこが出てくるのをまっていると、花柄で紺色の着物を着たくぅこが門から出てきた。

私服らしい私服の彼女を見るのは初めてだったが…

くぅこ「へ、変ではないでごじゃるか…?」

男「可愛い」

良くも悪くもそれしか出てこなかった。

向こうで女の子との絡みが無いに等しかった俺を許して欲しい。

くぅこ「か、かたじけにゃい…」

それでも素で照れながら喜んでくれるとは…

何故俺は向こうの世界でこんな女の子に出会えなかったのか。

男「ただ、もうちょっと派手なくぅこも見てみたかったなって。桃色とか赤色とか」

くぅこ「暖色の衣装は落ち着かないでごじゃるよ…」

男「まあそっちの方がくぅこらしくていいかもな」

男「それじゃあ行こっか。今日は一応くぅこの休暇だし、くぅこの行きたいとこ連れて行ってくれよ」

くぅこ「しょーち」

…………

屋敷から少し離れると俺が転移鳥居をくぐって一番最初に出た街の繁華街のような場所に着た。

今日も大勢の人がいる。

あの日と比べると商人が増えて華やかさが増した。
いや、これがこの街の本来の姿だったのかもしれない。

男(やっぱり人が多いところってちょっと苦手だけど…)

前の世界にいたころよりかは耐性がついた。

前の世界にいたころはこういう場所に出ると、人がいっぱいいる中に自分だけ浮いているような気がして嫌だった。

他の人は家族や友人や恋人と仲良く話しながら歩いているのに、俺だけは一人だったから…なんとなく疎外感を覚えていたのかもしれない。

男(ということは今俺が大丈夫なのはなんとなくこの空気に溶け込めている気がするからってことか…?)

一人じゃないから、くぅこと一緒だから…ってことか。

くぅこは…俺のなんなんだろうな。

主従関係って言ったらそれが正解だろうしそれまでなんだけど…別の言い方をしたら何が一番近いんだろう…。

前までは妹や友人って感じだったけど、今はそれもちょっと違う気がする。

男(やっぱり…)

くぅこ「…主殿?」

男(こい…び…)

『むぅ~』

そこまで考えたところで頭の中に誰かさんのふくれっ面が横切ったのでやめた。

くぅこ「どうかしたでごじゃるか?」

男「なんでもないよ」

それでもやっぱり…そういう雰囲気を作りたい自分がいるわけで…

男「手、繋ごっか」

くぅこ「ふぇっ!?ひ、ひめしゃまに見られたら…まずいでごじゃるよ…」

男「今は誰も見てないよ」

くぅこ「そ、それもそうでごじゃるな…しかし…」

ちょっと強引に手を繋いだ。

くぅこ「あ…」

男「嫌だったか?」

とか聞くけどここで真顔で「嫌」とか言われたら多分一週間くらいへこんでたと思う。

ってか泣きながら屋敷に走ったと思う。

俺くぅこ大好きすぎだと思う。

妖狐姫に殴られても仕方ないと思う。

くぅこ「…嫌ではないでごじゃるが」

男「なんかデートみたいだな」

くぅこ「『でーと』?また知らない単語でごじゃる」

男「なんかこうやって、仲の良い男の人と女の人が二人きりで出かけること…?かな?」

くぅこ「仲の良い男女…恋仲ということでごじゃるか…?はっ!」

くぅこ「はっ、はわわっ…こ、これは違うでごじゃるよっ!けして主殿とそういう仲になりたいとかそんなのでは…」

くぅこ「ない…で、ごじゃるよ…」

紅い顔をそらした彼女の言葉は詰まっていた。
耳はぴょこぴょことしていて、尻尾は左右に揺られていた。

この世界の住人の真意は本当に分かりやすい。
彼らはそのことに気がついているのだろうか。

まあ言わないけど…。

男「俺は別に良いけどな…」


男「くぅこと恋人でも」


つい、調子に乗って戯言が出てしまった。

くぅこ「なっ…!」

くぅこ「駄目でごじゃるよっ!冗談でもそのようなこと、言ってはいけないでごじゃるっ!」

男「あ…」

くぅこは怒っていた。

くぅこは本当にいい子だから…自分の気持ちを抑えているのだ。


男「…ごめん」

くぅこ「せ、せっしゃも…いきなり怒鳴ってしまって…申し訳ないでごじゃる…」

男(なんか浮かれちゃってたな…)

二人とも、大通りの中で立ち止まって黙り込んでしまった。


それでもお互い、手は離さなかったけど…



くろこ「あれ?くぅこじゃん。普通の着物なんて珍しいね」

俺たちの沈黙を断ち切ってくれたのは普通の街娘の格好をしたくろこだった。

くろこは忍者装束でもあまり忍者という感じがしないが…着物は派手で若干胸元を開いて着崩した様子は正にこの世界のギャルだ。

くぅこ「くろこ殿…久しいでごじゃるな」

男「くろこじゃないか」

くろこ「ふーん。なんか主人が変わって姫様から兄ちゃんになったってのは聞いたけど…本当だったんだ。一緒にいるの初めて見たからさ」

くぅこ「先日は主殿がお世話になったでごじゃるよ」

くろこ「あっ!その件なんだけどさ、まだ兄ちゃんからお代もらってないんだよね!くぅこ団子奢ってよ!」

くぅこ「せっしゃも丁度茶屋に向かっていたところでごじゃるよ」

くろこ「んじゃ付いていこーっと」

俺たちはくぅことくろこの行きつけの茶屋へ向かった。

…………

三人で団子を食べているとくろこが突然とんでもないことを言い出した。

くろこ「姫様ってまだ全然子どもって感じだけど…兄ちゃんは姫様とはもうヤッたの?」

くぅこ「はにゃっ!?」

男「んっ!?ごぅっ…」

思わず団子を喉に詰まらせてしまった。

男「んっー!んっー!」

くぅこ「主殿ー!お、お茶でごじゃるよ!」

男「ごくっ…ぷはっ…はぁ、はぁ…おまっ、いきなり何言い出すんだよ…」

くぅこ「そっ、そうでごじゃるよ…まだ明るいでごじゃる…」

くろこ「いや、子どもって言ってもやっぱ夫婦だからもう済ませてるのかなーって…」

くろこは竹串を噛みながら真顔でそう言った。

男(これが最近の女の子というやつか…)

ちなみに答え合わせをするとだ

男「…まだそういうことはしてない」

俺たちの初夜は大変微笑ましいものだった。

…………………………

男「妖狐姫~?もう俺も寝ようと思うんだけど」

妖狐姫「んにゅ…くぅくぅ…」

男「起きないとほっぺぷにぷにしちゃうぞ~ほれほれ」

妖狐姫「んっ…んぅ…くぅくぅ…」

男「起きないな。もう俺もこのまま寝るか」

…………………………

今思うとだ

男(保育園かな?)

くぅこ「当たり前でごじゃるよ…まだ姫様には早いでごじゃるよ」

男「俺も、そう思う」

くろこ「そんなこと言って実は兄ちゃんが腰抜けなだけだったりして…ぷぷっ」

男「なっ!お前なー」

くろこ「なんか兄ちゃんそういうの慣れてなさそうだし、アタシが相手してあげよっか?…お金くれたらさ」

くろこは大きく開いた胸元をさらにひらひらさせながらにやにやと笑った。

男「かっ、からかうなよ」

俺は頬づえをつきながらそっぽを向いたが目線だけは釣り糸に引っかかった魚の様に彼女の胸元に引き寄せられていた。

男というのは何故こうも脳みそと他の部分が違う生き物になることが多いのだろう。

…設計ミスってますよ神様。

くぅこ「や、やめるでごじゃるよくろこ殿。主殿も困っているでごじゃる」

くろこ「くぅこもしかして妬いてんの?」

くぅこ「むぅ…くろこ殿は相変わらずでごじゃるな…主殿!出るでごじゃるよ」

男「うぇっ?あっ、くぅこ?」

くぅこはくろこから逃げるようにして俺の手を引くとお代を払って茶屋から飛び出した。

くろこ「…くぅこも相変わらずだね。…可愛い」

……………


くぅこ「まったく…くろこ殿は失敬でごじゃるな。主殿は腰抜けではないでごじゃるよ」

くぅこ「主殿、先ほどのくろこ殿の話は気にする必要はないでごじゃる」

くぅこ「姫様にはまだお早い話でごじゃるし、その、せっしゃもまだ殿方と…そういう経験はないでごじゃるゆえ…」

くぅこ「はわっ!せ、せっしゃは一体何を…今のは聞かなかったことにして欲しいでごじゃるよっ!」

茶屋を出たあとのくぅこは一人慌ただしく俺を励ましてくれた。

まあ、気にしてないんだけど…。

男「ははっ…もういいって」

男「で?次はどこ行く?」

くぅこ「あっ…広場の近くのうどん屋でごじゃるよ!あそこのきつねうどんはなかなかのものでごじゃる」

男「よく食べるな~」

くぅこ「腹が減ってはなんとやら…でごじゃるよ!」

…………………

くぅこ「満足でごじゃるよ~」

男「なんかくぅこって見た目以上に食べるんだな…」

くぅこは大きいどんぶりのきつねうどんを三杯ほどペロリと平らげていた。

一体彼女の小さな身体のどこにそんな大きな胃袋があるのだろうか…

くぅこ「忍者は任務の中でまともに食事を取れる時間が少ないでごじゃるゆえ、こういうときに沢山食べておくでごじゃるよ」

くぅこ「…本当は食べなくても動けるのが理想でごじゃるが」

くぅこ「でもさすがに食べ過ぎてしまったでごじゃるな…これも寝たきりだったせいでごじゃる」

男「ちょっと広場で休んで行くか」

俺は憩いの広場の木でできたベンチに並んで腰掛けた。

ふと下を見ると自分の膝が空いていることに気づく。

男(そういえば今日は、まだ誰も乗せて無かったな)

妖狐姫を乗せていることが殆どとなった俺の膝は、空いていると何処か寂しそうに見えた。

くぅこ「…主殿?」

男「くぅこ、座る?」

くぅこ「ふぇ?し、しかしっ…せっしゃ今食事を終えたばかりの身、重たいでごじゃるよ…」

男「大丈夫だよ。妖狐姫も食ったあとよく座ってるし、ってか寝てるし…」

くぅこ「恥ずかしいでごじゃるよ…」

男(うっ…)

目線を下にそらして恥じらうくぅこが可愛らしくて、逆に彼女を意地でも乗せたくなった。

男「修行。ご無沙汰だったろ?」

くぅこ「…それもそうでごじゃるな。では、お言葉に甘えて」

くぅこが久しぶりに俺の膝椅子の上に乗った。

彼女の身体を抱えるようにして両腕で抱く。

男「手、包帯してるけど…いいか?」

くぅこ「かたじけないでごじゃる」

くぅこ「んっ」

くぅこ「こうして主殿に撫でて貰えるのも久しぶりでごじゃるよ…」

男「尻尾と同時に撫でても大丈夫になったんだな」

くぅこ「修行の成果でごじゃるよ」

彼女の銀色の尻尾は気持ちよさそうにゆらゆらと揺れていた。

くぅこ「のどかでごじゃるな~」

くぅこ「こうしてまた主殿の手の温もりに包まれただけでも、まだ生きててよかったと思えるでごじゃる」

くぅこ「せっしゃは幸せ者でごじゃるよ」

くぅこは少し首をこちらへ向けて笑顔でそう言った。

男「くぅ…こ…」

男「っ…」

くぅこ「あっ…あまり張ったお腹をさすらないで欲しいでごじゃるよ…」

男「この中にうどん三杯分かー」

くぅこ「やぁ…降りるでごじゃるよぉ…」

男「ごめんごめん」

しかしだ…俺もただ彼女をからかいたかったわけではない。

男(なんだろう…すごくドキドキする…)

それくらいの冗談でごまかさなければ、この謎の高揚感がくぅこにバレてしまいそうだったから…

以前までの修行ではこんなことはなかったのに。

男(もしかして俺は…)

彼女に、恋をしてしまったのだろうか…

俺は自分を必要としてくれている妖狐姫とこれからも寄り添って行こうと決めた。
その気持ちは今も変わらないし、もちろん妖狐姫のことも好きだけど…

このくぅこへの気持ちは、妖狐姫へのとは少し違う。

自分の存在価値とか自分を認めてくれる人に応えたいとか、そんなんじゃなくて…

もっと単純で、純粋な気持ち…

男(只々、『好き』なだけ)

そのことに気がついてしまうと急に全てを意識してしまう。

今俺の膝椅子の上にくぅこが乗っていて、俺は彼女に触れていて、彼女の柔らかいお尻が、自分の上にあって…

総括すると、こんなにも…近くて…

もっと彼女に触れていたくて…

男「くぅこ!」

くぅこ「ふぇ?何でごじゃるか?」

男「今日は休日だから、いっぱい甘えてもいいぞ」

くぅこ「だっ、駄目でごじゃるよ…姫様の主殿にそんなことはとても…」

男「休日くらい主従とか家来とか忘れて自分のやりたいこといっぱいしようぜ」

くぅこ「何を言っているでごじゃるか!休日でも関係ないでごじゃるよ!せっしゃは主殿の家来でごじゃる」

どこまでも律儀というか実直というか…。

いや、俺が軟弱過ぎるのか?

男「ふーん。じゃあ今日も俺が命令したら言うこと聞くんだな?」

くぅこ「それはその通りでごじゃるが…」

男「言ったな?もう取り消せないからな!」

くぅこ「なっ!?一体何をする気でごじゃるか!?とても悪い顔をしているでごじゃるよ!」

男「それじゃあ主人からの命令…」


男「今日一日は我慢するな!全力で俺に甘えろ!」




くぅこ「ふぇ…しょ、しょれは…」

男「できるよな?」

くぅこは俯いて小さすぎる声で何やら言い訳を言っていたがやがて吹っ切れたように顔をあげると沸騰したような紅い顔で口を開いた。

くぅこ「あ、主殿は鬼畜でごじゃるな…命令なら仕方ないでごじゃる…」


くぅこ「や、屋敷に戻ったら…いっぱぃ…抱擁して…なでなでして欲しぃでごじゃる…」



男「承知した!」

俺はくぅこを膝から降ろすと立ち上がり、彼女の手を引いて駆け出した。

くぅこ「わっ!」

男「あとちょっと買い物済ませて、屋敷に帰るか!」

………………

てんこ「なんだ?もう帰ってきたのか」

男「やっぱりあんまり屋敷の人間が外に出てたら目立つかなーって思いまして…」

てんこ「まあ旦那様は尻尾を持たぬからな。それもそうか」

てんこ「で?何故くぅこと手を?」

くぅこ「こ、これは…主殿と街ではぐれたらと…」

男「休日だから!」

てんこさんにそう伝えると俺は走って部屋へと戻った。

てんこ「…?妙だな」

なうろうでぃんぐ…

(-ω-)

…………

寝室の襖を閉じるとほぼ同時にくぅこを抱きしめ座り込んだ。

ペットをあやすようにわしゃわしゃと彼女の髪を撫でる。

くぅこ「んっ…主殿…本当にいいでごじゃるか?」

男「いいも何も、命令だからな」

くぅこは俺の服を握ると顔を前に押し付けた

くぅこ「主殿っ!主殿っ!」

俺の胸の中、いつもの堅苦しい空気を失った普通の女の子がそこにいた。

くぅこ「お慕いしているでごじゃる…」

男(…やばっ)

命令のせいとはいえ少しだけ大胆になったくぅこを俺はもっと乱してみたくなった。

揺れる尻尾を揉むようにして撫でると彼女は快感に身を震わせた。

くぅこ「ひぁっ…んっ…それはぁ…らめでごじゃるよぉ…」

男(もしかして感じてる?)


くぅこ「んっ…んっ…はむっ…」

押し寄せる快感に耐えるためか、それとも単に甘えているのか、くぅこは俺の首筋を甘く噛んだ。

男「うぁ」

くぅこ「ぺろっ…れろっ…主殿の味がするでごじゃる…」

男「珍しくいたずらっ子だな」

くぅこ「…せっしゃこの一月ずっと我慢していたでごじゃる…そしてこれからも…この気持ちを抑え続けようと思っていたのに…」

くぅこ「主殿はひどいでごじゃるよ…責任をとって欲しいでごじゃる…」

男「ごめん」

蕩けた顔で俺を見上げる彼女の口を、俺はついに我慢の限界を超え口で塞いでしまった。

くぅこ「んむっ…ちゅっ…ちゅっ…」

くぅこ「ちゅるっ…るるっ…」

男「ぷはっ…」

くぅこ「…せっしゃ嬉しさと恥ずかしさで溶けてしまいそうなほど…全身が熱いでごじゃるよ…」

男「ならもう、溶けてしまえばいいさ」

彼女のはだけた着物の胸元に手を入れた。

くぅこ「ひぃあっ…あっ…んぅ…」

彼女の慎ましい胸は激しい心臓の鼓動を隠しきれず俺の手のひらにそれを伝えた。

くぅこ「小さくて申し訳ないでごじゃるよ…」

男「俺はくぅこの全部が好きだから小さくても関係ないよ」

胸の突起をくりくりと指ではじく。

くぅこ「あっ…ひゃっ…あぁっ…」

尻尾と同時に弄ると彼女は俺を強く抱きしめて爪を立てた。

くぅこ「あっ…らめっ…らめでごじゃるぅ…」

さらに尻尾を強く握るとくぅこは大きく身体をはねて痙攣した。

くぅこ「ひゃああああっ!?あっ…あっ…」

男「気持ちよかった?」

耳元でそう囁くと彼女は目をぎゅっと瞑りこくこくと無言で頷いた。

もはやくぅこの仕草何もかもが可愛くみえてくる。
全てが俺にとって誘惑の術となっているのだ。

俺は二人で背中を流しあったあの日を思い出していた。


………………



『我慢できなくなったら…どうなってしまうでごじゃるか…?』


………………


男(その答えの続き…今なら…)

俺はあの日と同じように彼女を押し倒した。

くぅこ「ひゃんっ…主殿…」

男「くぅこ…」

俺の欲望の塊は熱をもって肥大化していた。

この熱を…くぅこに押し付けたい…
くぅこをめちゃくちゃにしてしまいたい…

男(でも…)

ここまで来てやはり俺は腰抜けなのか、頭の中に妖狐姫への罪悪感がわいてきた。

くぅこ「主殿…修行でごじゃるよ…」

男「えっ?」

くぅこ「今からすることは…姫様のための修行でごじゃる」

くぅこはそう言うと妖狐姫の姿に変化し、膝と手を畳に着くと尻尾を振ってお尻を突き出した。

くぅこ「はぁ…はぁ…」

男(こ、これは…修行…)

くぅこの腰に手を置くとお尻がぴくんっとはね、彼女の濡れた秘所からは透明の液体が糸を引いて落ちた。

興奮に揺れる尻尾が俺の中の雄を煽る。

煽られた雄を彼女の太ももで挟み込みゆっくりと又に擦り付ける。

くぅこ「んぁっ…」

くぅこから垂れ続ける液体がモノに絡み、前後運動を潤滑なものにした。
もう少し上に傾けると本当に挿れてしまいそうだ。

男(くっ…これだけでも…すごいっ)

くぅこ「あっ、あんっ…あっ…あっ…」

上に強く擦り付けると敏感なくぅこは高い声で喘いだ。


くぅこ「はぅ…んっ…」

片方の手で尻尾を掴んで徐々に動きを加速させる。

くぅこ「ひぃぁ…やぁ…ぁ…」

くぅこ「はぁっ…んっ…ふぁっ…んはっ…」

男「くぅこの太ももすっげぇ柔らかくて…気持ちいい…」

くぅこ「あくっ…んぅ…主殿の…あったかぃでごじゃるぅ…」

くぅこは太ももの間隔をさらに狭めた。
彼女の柔肌が俺を優しく包みこむ。

男「うっ…くっ…」

二人から出た粘液がにちゃにちゃと練られ、官能的な音が俺の脳内を痺れさせた。

気がつけば俺の腰はくぅこを求めて勝手に動いているようだった。

彼女の肌に自分の臭いをすり込もうとする様はまさに獣のオスだ。

くぅこ「はんっ!あっ…ぁっ…」

弾力のあるお尻が腰に当たっては跳ね返る。

男「もっ…出すぞっ!」

俺はくぅこの太ももの間から引く抜くと手で扱きながら彼女のお尻に白濁液をぶちまけた。

男「うっ」

くぅこ「ひゃっ…あちゅい…」

さすがに集中力を切らしたのか、くぅこは元の姿に戻ると畳に力なく崩れた。

くぅこ「はぅぅ…」

男「ハッ…ハッ…」

くぅこ「主殿…せっしゃ…」

「旦那様?夕食の用意ができているぞ」

襖の外側からてんこさんの声が聞こえた。

くぅこ「ひゃっ、ひゃぃ!」

「なんだ、くぅこもそこにいるのか」

男(まずっ!)

男「ちょっ、ちょっと待っててください!すぐ行くので!」

「あまり姫様を待たせるなよ」

てんこさんの足音は遠ざかって行った。

男「ふぅ…くぅこ、行こっか」

くぅこ「しょ、しょーちでごじゃるよ」

男(さすがにこれは言い訳できないよな)

はだけた着物のくぅこを横目に俺は胸を撫で下ろした。

………………


妖狐姫「くぅこ、本日は羽を伸ばせたかの?」

くぅこ「お、おかげさまでごじゃるよ」

夕食を食べながらも何故かくぅこはもじもじと太ももをこすり合わせて落ち着かない様子だった。

そういえばてんこさんが来る前、彼女は何を言おうとしていたのだろう。

てんこ「くぅこ?厠なら行ってきていいぞ」

くぅこ「大丈夫でごじゃるよ」

妖狐姫「ふん…。座椅子、うにゅはしっかりと反省したのかの?」

男「まあ…」

妖狐姫「なんじゃ!うっすい返事じゃのう!」

くぅこ「姫様、主殿は本日せっしゃが連れ回してしまって少々疲れてしまっているのでごじゃるよ」

男「そう、そんな感じ」

てんこ「相変わらず体力がないのか…それでも殿方なのか?」

妖狐姫「ふんっ!とにかく…夕食が終わった後はまたしっかりとわらわの座椅子を務めるのじゃ!」

男「え、今日一日はもういいんじゃないの?」

てんこ「旦那様…姫様は昼間からずっとご立腹なのだ。やはり旦那様がいないと落ち着かないご様子だ。癒して差し上げろ」

てんこさんが耳打ちした。

男(ふーん。つんつんしてるけどやっぱり根は甘えん坊のまんまなんだな)

夕食を食べ終えた後、俺は妖狐姫の部屋に残った。

………………

男「手使ってもいいのか?」

妖狐姫「よい。その手がなければうにゅに価値なぞないのだからなっ」

男(まだつんつんしてんな)

男「そーかいそーかい」

包帯を巻いた手で妖狐姫の頭を撫で回す。

妖狐姫「んっ…」

男「これでちょっとは落ち着いたか?」

妖狐姫「…手がなければ無価値というのは言い過ぎじゃな。取り消そう」

妖狐姫「うにゅは座椅子じゃなくともわらわの夫なのだからの」

まったく…分かりやすいツンデレだ。

男「俺も勝手に怪我してごめんな。次からはもっと気をつけるよ」

妖狐姫「分かればよいのじゃ。分かればの」

妖狐姫「のぅ…座椅子…」

男「ん?どうした?」

妖狐姫はいつもの高飛車な物言いから、いきなりしおらしく俺に声をかけてきた。

妖狐姫「わらわとうにゅは…めおと…なのじゃろう?」

男「まあ、そうだな。一応な、ちゃんと祝言あげたし」

妖狐姫「しょの…わらわとうにゅの子供はいつになったらできるのじゃ?」

男「うぇっ!?」

男(な、なぜよりによって今日そんなピンポイントなことを…)

男「あーえっと…うーん…」

男「妖狐姫は、子供欲しいの?」

妖狐姫「そ、それはまだよく分からぬが…」

妖狐姫「仲の良い夫婦にはコウノトリとやらが子供を授けてくれるのではないのか?」

男「……は?」

妖狐姫「てんこが言っておったのじゃ!仲の良い夫婦にはコウノトリとやらが子供を運んできてくれるらしいのじゃ!」

俺は手のひらで額を叩いた。

勝手に決めつけていた。

あっちの世界では教育がしっかりしていたから知ってて当たり前みたいな世の中だったし
妖狐姫は同年代の女の子よりかはずっと大人びてるから全部知っているものだと思っていた。

妖狐姫「座椅子…?なんじゃその人を哀れむような目は」

男「妖狐姫、それてんこさんから聞いたのいつ?」

妖狐姫「うにゅと籍を入れて三日ほどだったかの」

男(てんこさんおい)

顔を真っ赤にして適当にごまかしたてんこさんの顔が容易に想像できる…

妖狐姫「わらわとうにゅはまだ仲睦まじい関係ではないということかのぅ」

男「ははっ…どうだろうな…」

妖狐姫「座椅子…わ、わらわは…」

妖狐姫「うにゅこと、愛しておるからの…」

男「え…」

こんなにも素直でまっすぐな妖狐姫は、久しぶりに見たかもしれない。

妖狐姫「…じゃからできるだけ怪我なぞして欲しくはないのじゃ」

男「ありがと…」


そらから暫く妖狐姫を優しく抱いて撫でていると、彼女は静かに寝息を立てて眠ってしまった。

妖狐姫「むにゅ…ざいしゅ…すぅ…すぅ…」

男(なんかこの無垢な寝顔見てると…)



てんこさんの気持ちも、ちょっと分かる気がするよ…



なうろうでぃんぐ…


(-ω-)

……………………

くぅこ「主殿、もう眠るでごじゃるか?」

夜、寝室に戻って布団を被っていると枕の方からくぅこが俺の顔を覗き込んできた。

男「久しぶりにいろいろあったからな。疲れた」

くぅこ「勿論姫様にもでごじゃるが、主殿も本日は付き合っていただき感謝するでごじゃる。久しく街娘の気分になれて楽しかったでごじゃるよ」

男「俺も楽しかったよ。ありがとう」

ふとくぅこの姿を見ると彼女はもういつもの忍者装束に戻っていた。

男「あれ、もう着替えちゃったんだな。まだ日は変わってないのに」

くぅこ「…名残惜しいでごじゃるが、忍者の仕事はこれからでごじゃるゆえ」

いつもの忍者装束、いつもの真面目なくぅこ。

しかし彼女はまだどこか我慢している顔をしていた。

男「くぅこ、もういいのか?」

くぅこ「ふぇ?」

男「甘えるの」

くぅこ「そ、それは…せっしゃもまだ主殿に甘えていたいでごじゃるが…主殿ももう就寝ということで、迷惑はかけられないでごじゃる」

男「布団、入るか?」

俺は少しよると掛け布団を上げて空いた場所を叩いて見せた。

くぅこ「主殿…」

男「今日はまだ終わってないぞ。我慢しない約束だったろ?」

くぅこ「…失礼するでごじゃる」

くぅこは少し狭い布団の中をごそごそと潜りんだ。

くぅこ「狭くないでごじゃるか?」

男「狭いほうがくっつけていいだろ?」

…いいのは俺の方だが。

くぅこ「主殿の吐息がかかってしまうほど近いでごじゃるよ…」

人肌同士の密着による体温の上昇からか、くぅこの顔はうっすらと桃色に火照っていた。

男(…なんかえろい)

今日のこともあって変に意識してしまう。

男(やばい…なんか話さないと…)

また俺の中の劣情が爆発してしまいそうだ。

男「そうそう聞いてくれよ。さっき話してたんだけどさ、妖狐姫の奴まだコウノトリが赤ちゃんを運んできてくれると思ってたんだぜ?」

男「まだ早い以前の問題だったな」

くぅこ「そ、そうでごじゃるか…大変でごじゃるな…」

男「てんこさんがそう教えたんだってさ。しかも結構最近らしいし…あの人から教えるのは無理だろうな」

くぅこ「では主殿が姫様に教えてあげるでごじゃるか?」

男「まあ、近いうちにな…このまま間違ったこと信じさせてるのも可哀想だし」

くぅこ「…なら主殿はまぐわいに慣れておかなければならんでごじゃるな」

男「まあそうだなー……ってくぅこ?」

くぅこの様子が何か変だ…思えば夕飯から落ち着いてなかったが…

顔は蕩けていて息も荒い。
尻尾もぱたぱたと激しく振られている。

まるで発情した動物のようだ。

くぅこ「しょ、しょれにっ…主人のせーよくを処理するのも家来の仕事でごじゃる…」

男「く、くぅこ…?」

なんかくぅこがくぅこじゃないみたいだ…。

くぅこ「主殿ぉ…」

くぅこは俺の手をとって自らの股ぐらに押し付けた。

男「わっ…」

布ごしのはずだが俺の手はぬるりとした液体に触れた。

くぅこ「せっしゃ夕方から身体の疼きが治らないでごじゃるよ…先ほども風呂場で一人慰めていたでごじゃるが…それでも治らないでごじゃる」

くぅこは親指を加えるとねだるような視線を送りながら言った。

くぅこ「主殿の…欲しいでごじゃる…」

男「え、そっ、それは…はむっ!?」

腰抜けな俺が戸惑っているとくぅこから強引に口づけされた。

くぅこ「ん、ちゅぅ…くちゅるっ…んちゅ…」

男「んっ、うむっ…んぱぁっ」

くぅこ「はぁ…はぁ…ちぇっちゃと修行…嫌でごじゃるか?」

男「あーもうっ!」

くぅこ「はわわっ!」

俺はくぅこの両肩を持って彼女を仰向けにすると覆いかぶさった。

男「嫌なわけ…ないだろ…」

くぅこ「えへへ…嬉しぃでごじゃる…」

くぅこはシミになったふんどしの紐を解くと、足を上げて花弁を開いた。

犬の服従にも似たそのポーズに俺はさらに興奮した。

くぅこ「ここに…主殿の…ご立派なものを…挿れて欲しいでごじゃるよ…」

男「ここで、いいんだよな…」

俺は彼女が開いてくれた場所に今までに無いくらい膨張したものをあてがった。

くぅこ「んっ…」

くちゅりと音がなると同時にくぅこが軽く喘ぐ。
俺はゆっくりと腰を沈めていった。

くぅこ「あっ…あッ…」

男「ぐっ…」

びしょびしょに濡れていたからかくぅこの聖域は意外にも簡単に俺を受け入れた。

あともう少し力を入れれば奥に届きそうだ。

男「ちょっと休むか?」

俺はくぅこを心配してそう聞いたが彼女は首を横に振った。

くぅこ「そのまま…一気に挿れて欲しいでごじゃる…」

男「そうか…ならっ!」

くぅこ「はうっ!!」

俺は一気に腰を落とした。
先の方で彼女の一番奥を叩くのを感じた。

くぅこ「はっ…うぅっ…ぐっ…」

男「くぅこ!涙が…」

くぅこ「はぁっ…はぁ…!にゃんのこれしき…耐えられなければ忍道は歩めないでごじゃるよ…」

くぅこ「でも少しばかり…主殿の接吻が恋しいでごじゃる…」

男「いくらでも」

俺たちは繋がったままもう一度口づけした。

くぅこ「ちゅっ、れろっ…はむっ…ちゅっちゅっ…」

お互いの愛を交換しあうように舌を絡めた。

口を動かしながら彼女の全身を触る。
何処を触ってもびくびくするくぅこは全身性感帯のようだった。

そのまま暫くお互いが息苦しくなるまで、口づけを続けた。

くぅこ「んはっ…はぁ…はぁ…主殿…動いて欲しいでごじゃる…」

俺は静かに腰を上下し始めた。

くぅこ「んぁっ…あんっ…ひぅうんっ…」

男(くぅこの中ぬるぬるしてて…あったかい…)

くぅこ「あぁっ…あっ…あっ…あっ…」

くぅこ「あふっ…んっ…んっ…」

腰を落とす度にくぅこの中からは透明の液体が溢れ、布団にそれを染み込ませていた。

俺も最初はぎこちなかったが、次第に腰使いにも慣れてきた。

男「ちょっと速くするぞ」

くぅこ「んっ…はんっ…ぁん…」

腰を動かす速度を少し上げた。

加速すると同時に俺とくぅこの肌がこぎみよくぶつかる音が部屋に響く…

くぅこ「はぁ…はぁ…あんっ!あんっ!」

くぅこ「主殿ぉ…しゅきっ…しゅきっ!」

くぅこの喘ぎ声もさらに高いものへと変わっていく。

男「俺もだぞ。くぅこ」

身体を密着させてさらに奥を刺激する。

くぅこ「ひんっ!…んっ…はっ…」

男「ふっ…ふっ…」

くぅこ「あ、主殿っ!少し止まって欲しいでごじゃるっ!」

突然くぅこからのストップがかかった。

男「っと…痛かったか?」

くぅこ「もう痛くはないでごじゃるが…快楽に溺れ…大事なことを忘れてしまっていたでごじゃるよ…」

男「大事なこと?」

くぅこ「これは主殿の修行でごじゃる。やはり姫様の姿でなければ…今変化するでごじゃ…」

男「駄目だ」

くぅこがそう言って手を合わそうとした瞬間俺は彼女の手を掴んでそれを止めた。

くぅこ「ふぇ?」

男「俺、くぅこの姿のままがいい…」

くぅこ「しっ、しかしそれでは意味が…」

男「今は『くぅこ』としたいんだ…」

くぅこ「はわ……」

男「駄目、か?」

くぅこ「あっ…あぁっ…」

男(うぁっ!?)

急にくぅこの中がきゅんきゅんと締め上げられた。

男(な、なんだ?ちょっと危なかった…)

くぅこ「はぁ…はぁ…主殿ぉ…ちぇっちゃ…嬉しすぎて少しばかりたっしてしまったでごじゃるよ…」

男(あ、ああっ…)

恥ずかしそうに口を手で覆う彼女を見た俺の視界は一瞬ぐらついた…



俺の中の、獣の檻が崩壊したような気がした。




くぅこ「ひゃあぁ!?」

男「くぅこっ!くぅこっ!」

くぅこが愛しくて愛しくてたまらなくなった俺は彼女の腰を持って激しく打ち付けた。

くぅこ「あっ!やっ!はげしっ…!激しぃでごじゃるよぉ!」

男「ごめっ…もっ…止められそうにないっ!」

くぅこ「ひぎっ!あっ!あぁんっ!」

くぅこ「らめっ!らめぇ!きもちいいでごじゃるぅ!」

突けば突くほどうねるように締め付けられる…もしやあまりの敏感さにずっとイッてるのだろうか。

俺はくぅこの涙を拭うと彼女の口から垂れる唾液を舐めとり、そのまま舌を彼女の口の中へと入れた。

その間も腰の動きは止まらない。

俺たちは一瞬口づけしてはお互いを見つめあい、そしてまた口づけすることを繰り返していた。

くぅこ「ぷはっ…いぃっ…んぅ!んっ!んっ!ぷはっ!」

俺たちはこのまぐわいの本来の目的をも忘れて愛し合っていた。

そして俺もとうとう限界を感じてきた。

押し寄せてくる射精感…

このこみあげてくる俺の種子は、今目の前でよがるメスを…くぅこを孕ませようとするため出ようとしているのか…

そう思うと尚更興奮した。
これは生物の性だろうか…

くぅこ「あぁっ!なにかおっきぃのくりゅっ!くりゅでごじゃるよぉ!」

男「俺もっ!そろそろヤバイっ!抜くぞっ」

くぅこ「!!やらぁっ」

男「なっ!?」

引き抜こうとするとくぅこは足でがっちりと俺の腰を固定した。

くぅこ「やぁでごじゃるっ!抜いちゃやらぁ!」

男「ちょっ!くぅこ!?やばいってっ!」

男「でっ、出るっ!」

くぅこ「ひゃああああっ!!!」

俺はくぅこの一番奥に押し当てるとそこに大量の濃い種子をはき出した。

ドクンッドクンッと脈打つ欲望はくぅこをじわじわ内側から犯した。



くぅこ「んっ…んっ…あちゅぃの…いっぱぃでてりゅでごじゃりゅ…」

男「ハァ…ハァ…」

くぅこ「はぅ…ふぅ…ふぅ…」

足の力が弱回ると俺はやっとくぅこから引き抜いた。
一滴残らず彼女に注ぎ込んでしまった後だった。

彼女に入りきらなかった種子は泡を立てて溢れでる。

一体どれだけの量を出したのだろう…。

やがて身体中の熱は冷め、だんだん冷静になってきた。

男(や、やっちまったぁ…)

男「く、くぅこぉ…大丈夫なんだろうな…」

くぅこ「主殿は本当に鬼畜でごじゃるな…こんなに出されたらせっしゃ主殿の赤子を孕んでしまうでごじゃるよ…」

男「え…だってくぅこがっ!はぅっ」

くぅこは俺に抱きつくと、軽く俺の唇を舐めて笑った。

くぅこ「ぺろっ…くくっ」

くぅこ「主殿…せっしゃ今とっても幸せな気分でごじゃるよ…」

男「くぅこ…」

俺は彼女の笑顔に弱すぎる。

彼女の笑顔を見たら、らしくない多少のおいたは許してしまいたくなる…

そして

それはまた、俺にとっての誘惑の術となる…

男「くぅこ~!」

くぅこ「ひゃ、ひゃうっ!」


くぅこの休日は…まだ続く…



………………


くぅこ「主殿!ほんっとーにっ申し訳ないでごじゃるっ!」

男「え?」

次の朝、俺は起きてから早々顔を真っ赤にしたくぅこから土下座された。

くぅこ「昨日はどうかしていたでごじゃるよ!主殿に…無理やり…あっ、あのようなことを強いてっ…!」

男(やっぱりあのくぅこはいつものくぅこじゃなかったんだな)


『発情くぅこ』とでも名付けようか



くぅこ「うぅ…恥ずかしぃでごじゃるよ…」

男「顔上げてよくぅこ。そりゃあ少し焦ったけど…俺はああいうくぅこも大好きだぞ?」

くぅこ「しっ、しかしあれも休日の浮かれたせっしゃが生み出してしまったもの…もう本日からは大丈夫でごじゃるよ」

男(えっ、あのくぅこはもう見れないってことか!?それはやだなー)

男「あ、そうそう主人からの新しい命令」

くぅこ「ふぇっ!?いきなり何でごじゃるか!?」

男「休日とか関係なく、いつでも何処でも甘えたいときは我慢せずに俺に甘えることっ!いいな?」

くぅこ「なななっ!やっ、やはり主殿は鬼畜でごじゃるよっ!」

男「ははっ、なら鬼畜のままでいいや」

くぅこ「むぅ…で、でも…」

男「ん?」

くぅこ「いつでも甘えていいということは…せっしゃが治らなくなったときは、また修行相手にしてくれるでごじゃるか…?」

男「大歓迎」

鼻血を垂らしながら親指を立てる
そりゃあそうだ。

くぅこ「…即答は気色悪いでごじゃる」

会って初日のような蔑まされた目で睨みつけられた。




男「うっ…悪かったからそんな目で見ないでくれよ…」



くぅこ「ぷっ…くくっ…主殿…これからも、ずっと…」









「お慕いしているでごじゃるよ」







くぅこあふたー
おわり








なうろうでぃんぐ…

(-ω-)


すみませぬ…読み込み故障中…(´-ω-`;)

↓暇つぶし過去作ディスク↓


魔法使い「え、えろ魔道士です…」
魔法使い「え、えろ魔道士です…」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1471637375/)


ロリ淫魔「こっ、今夜あなたを殺しにきました!」
ロリ淫魔「こっ、今夜あなたを殺しにきました!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1487074244/)

体調を崩したり
話を上手くまとめられなかったり
没ネタを別のSSに作り変えて別板で垂れ流したりして長い間くたばっていました。

もしかしたらもう読んでくれる人もいないかもしれませんが

垂れ流したときます。

「はふぅ…今日も疲れたのじゃ。商人との堅苦しい交渉にはまだまだ慣れんの…」

「はいはいお疲れ様」

「の~座椅子ぅ~…やはり仕事中もうにゅに座ってはいかんのか?もともとそのためにうにゅを連れてきたのじゃが…」

「やっぱ駄目だろ…。商人さん困惑すると思うぞ」

「むぅ~…やじゃやじゃ!やーなのじゃ~!」

「てんこも許してくれぬし…あやつもケチなやつじゃのぅ」

「ははっ…あんまてんこさん困らせるなよ?」

姫様の部屋の前、襖に聞き耳を立てて私は二人の会話を聞いていた。

姫様と旦那様…最近二人の仲はどんどん良くなっていっている。

まあ、一応夫婦なのだから仲睦まじいのはいいことなのだが…

てんこ「はぁ…」

最近このように二人の空間に割って入るのが気まずくもなってきた。

ただだ、ただ私は夕食の準備ができたことを告げに来ただけなのに…
なぜこうも業務連絡すら躊躇しなければならないのか…

控えめに襖を叩く。

てんこ「失礼します」

妖狐姫「む、ああ…てんこか」

てんこ「その、夕食の準備が整いました…」

男「夕食だってさ、立てって」

妖狐姫「このまま食事をしてはいかんのかの?」

男「やだよ。俺が食べにくいだろ?」

妖狐姫「仕方ないのぅ…」

男「俺はこたつかなんかか?」

てんこ(なんなのだこの桜色のほのぼのした空間は…)

いづらい…

てんこ「それでは…お食事の方をお運びします」

私は逃げるように部屋を立ち去ると食事を運びだした。

てんこ(そうだ、くぅこはどうなのだろう)

くぅこはいつもあらゆるところから二人を見守っている。
彼女はあの空間にいるのが苦痛ではないのだろうか。

彼女ならこの気持ちも分かってくれるかもしれない。

今夜にでも彼女に相談しよう。

………………


と、思っていたのだが…

夕食の光景は私をさらに憂鬱にさらした。

くぅこ「じっー…」

男「ん?どうしたくぅこ」

くぅこ「はっ!なんでもないでごじゃるよ」

男「ははーん…さては俺の三色団子がまだ残ってたから狙ってたな?」

くぅこ「そ、そんなことはないでごじゃるよ。そこまで食い意地をはってはいないでごじゃるっ」

男「いいよ。あげる」

くぅこ「本当でごじゃるか?かたじけないでごじゃるよ」

男「はいあーん」

くぅこ「ふぇ…?」

男「早く口あけないとあげないぞ?」

くぅこ「なっ…」

男「ほらほら」

くぅこ「む…あ、あーん…あむっ…」

くぅこ「もにゅもにゅ…まったく…相変わらず主殿は鬼畜でごじゃるよ…」

恥ずかしそうに旦那様からそっぽを向きながらもくぅこはどこか嬉しそうにしていた。

てんこ(く、くぅこっ!?なぜ貴様がそのような乙女じみた顔をするのだ!?)

そういえばあの二人、休日の日から妙にどこか近い気がする。

くぅこが旦那様に近いというか…
旦那様もくぅこに近いというか…

とにかく最近あの二人からは主従を超えた何かを感じる…。

深くは詮索せんが

…怖いからな

妖狐姫「くぅこよ、自分の分がありながら他人からもせがむとは…はしたないとは思わぬのか」

くぅこ「も、申し訳ないでごじゃるよ…」

男「別にいいだろ。くぅこが団子好きなのは妖狐姫も知ってるだろ?」

妖狐姫「…うにゅはちとくぅこに甘すぎるのではないか?」

男「いつも護ってもらってるんだから普通だろ」

くぅこ「主殿…」

妖狐姫「むぅ~!くぅこだけずるいではないかっ!あと二個あるのじゃろ?わらわにもよこさぬか!」

男「はいはい…」

てんこ「っ~!」

私は見てられなくなった。

その許容できない空気を断ち切りたくて残りの米をかきこむように口に入れるとわざと大きな音を立ててお盆を持ち上げた。

妖狐姫「む?」

男「え?」

くぅこ「ふぇ?」

てんこ「…ご馳走であった」

いつもはみなが食べ終わるのを待つのだが、私は自分だけのお盆を持って部屋を出た。

男「てんこさんどうしたんだろ」

妖狐姫「あやつも団子が欲しかったのか?」

くぅこ「姫様…さすがにそれはないと思うでごじゃるよ」

………………

縁側での足取りは酷く重く感じた。

あの空間に、私はいない。
…いらないのかもしれない。

少し前までは、私もあの場所にいたはずなのだが…

…………………………

妖狐姫「てんこ、今日からうにゅもわらわと同じ部屋で食べるのじゃ」

てんこ「え…いえしかし私は…」

妖狐姫「父上がいなくなってしまっての…すこし寂しいのじゃ…駄目かの?」

てんこ「姫様…」

…………………………

今の姫様には旦那様がいる。

てんこ(くぅこも旦那様が来てから随分と変わったな)

昔は同じく姫様を護る者として、同僚や妹のように可愛がってきたが…

今は何処か遠い存在のように思えてしまう。

てんこ(まるで旦那様が私から全て奪っていったみたいだ)

てんこ(っ!しっかりしろ私!旦那様はもう正式なこの屋敷の人間だ!)

てんこ(そのようなつまらぬ嫉妬の感情は祝言の日に全て捨てたはずであろう!)

そう自分に必死に言い聞かせていたが

それでもこの心の靄はなかなか晴れなくて…

また自分が嫌になって…

てんこ「姫様ぁ…くぅこぉ…」

縁側には、情けない塩水が一滴…


また一滴と…



このとき、私の心は少しおかしくなってしまったのかもしれない。

私はヤケになってしまった。


少しでも姫様とくぅこの近くにいたくて…







てんこの憂鬱






……………………

次の日

てんこ「姫様、街へ買い出しに行ってまいります」

妖狐姫「そうか、気をつけての。後座椅子に部屋へ来るように伝えるのじゃ」

てんこ「はっ、承知しました」

私は襖を閉めて縁側へ出ると丁度旦那様とくぅこに鉢合わせた。

てんこ「おお!丁度よかった。旦那様、姫様がお呼びです」

男「ああ、そろそろそんな時間かなと思ってたんだ」

くぅこ「ではせっしゃは引き続き見回りを…」

てんこ「くぅこ!私はこれから買い出しへ出るのだ。貴様もついて来ないか?」

くぅこ「ふぇ?珍しい誘いでごじゃるな…しかしせっしゃは生憎見回りがあるでごじゃるゆえ」

てんこ「たまにはいいじゃないか。ほら、団子でも奢ってやろう。好きだろう?」

くぅこ「む…むぅ…」

男「くぅこ、いいんじゃないか?もしてんこさんが街でガラの悪い連中に絡まれでもしたら大変だろ?」

くぅこ「てんこ殿がそのような輩に遅れを取るとは思えぬでごじゃるが…」

てんこ「別にそのままの格好でもいいんだ。それとも…私と出かけるのは嫌か?」

やはり私では駄目なのか…くぅこ…

くぅこ「け、決してそういうわけではないでごじゃるが…もしせっしゃもてんこ殿も不在のこの屋敷に白昼堂々不届き者が来ないとも限らないでごじゃるよ」

男「心配すんなって!もし悪い奴が来たら俺がくぅこから教えてもらった手裏剣で追い返してやるさ!」

くぅこ「…主殿は一度たりとも的に手裏剣を当てたことは無かったと記憶しているでごじゃるが」

男「うぐっ…や、やってみなくちゃ分かんねーだろ」

くぅこ「主殿は戦が不向きな殿方、無理をする必要はないでごじゃるよ」

男「ぐぐぐ…だーもう!なんか悔しいから命令っ!今日はてんこさんについて行くこと!」

くぅこ「はぁ…主殿は困ったらすぐそれでごじゃる…全く困った主人でごじゃるな」

くぅこ「てんこ殿、主殿からの命令とのことででごじゃる。本日はてんこ殿について行くでごじゃるよ」

てんこ「は、はぁ…」

少しくぅこの意思ではない気もするが…
まあこれで久しぶりにくぅことも二人きりだ。

楽しむとしよう。

………………

てんこ「もぐもぐ…ここの茶屋の団子は何度食べても飽きないな。本当に美味だ」

買い出しの用事を終えた私は約束通りくぅこを茶屋に招いていた。

くぅこ「…今日は一体どうしたでごじゃるか?」

くぅこは団子を食べ終えると不思議そうな目で私を見つめていた。

てんこ「え?あ…あの…その…」

てんこ「少しな…寂しくなってしまったのだ…」

くぅこ「寂しく?何故でごじゃるか?」

てんこ「旦那様がこの世に来てからというもの…姫様やくぅこの隣にはいつも旦那様がいるだろ?自分の居場所がなくなってしまったような気がしてならんのだ」

くぅこ「…我慢しているでごじゃるか?」

てんこ「我慢?何をだ」

くぅこ「姫様のお隣にいることでごじゃるよ」

てんこ「くぅこ、何を言うか。我慢も何もないだろ?今姫様にとって最も近い存在であるべきは旦那様だろ」

てんこ「それは仕方のないことだろ…仕方のないことなんだ…」

俯くとまた涙が出そうになったので私は上を向いた。

くぅこ「それを我慢というでごじゃるよ」

くぅこは呆れ気味にため息を吐くと一つ提案した。

くぅこ「一度姫様と二人きりになった方がいいでごじゃるな。時間はせっしゃが作るでごじゃるよ」

てんこ「へ?」

私がきょとんとした顔でくぅこを見ると彼女は一口茶をすすってから言った。

くぅこ「てんこ殿の様子がおかしいままだとせっしゃも姫様も主殿も心配するでごじゃる」

くぅこ「てんこ殿の居場所がなくなるわけないでごじゃるよ。むしろないと困るでごじゃる。姫様にも同じ相談をしたらきっと同じことを言うと思うでごじゃるよ」

くぅこ「…我がままな姫様と危なっかしい主殿を置いてこのまま何処かへ行かれでもしたらせっしゃの身が持たないでごじゃる」

てんこ「くぅこ…貴様は変わったな」

てんこ「今の貴様は伸び伸びとしている。前と比べると何処かたがが外れたようだな」

くぅこ「耐え忍ぶ者としては失格でごじゃるが…そうかもしれないでごじゃるな」

てんこ(くぅこも私の知らないところで少しずつ変わってるんだな…)

そう考えると彼女をいつまでも妹扱いしていた自分が恥ずかしくなってきた。

てんこ(これを機に私も変われるだろうか)

てんこ「…そういえば時間を作るって言っていたがどのようにして作るのだ?」

くぅこ「多少強引な方法でごじゃるが上手くやってみせるでごじゃる」

くぅこ「本日の団子の恩は返させてもらうでごじゃるよ」

………………

次の日、私はくぅこの指示通り領地主の仕事を終えたばかりの姫様の部屋へと向かってた。

てんこ「失礼します」

妖狐姫「てんこか。座椅子はまだ来ぬのかの?」

てんこ「ええっとですね…旦那様は取り込み中とのことでして…」

てんこ「本日は旦那様の代役としてこのてんこが姫様の座椅子となりますっ!」

妖狐姫「…取り込み中じゃと?」

姫様の眉間にシワが寄る。

てんこ(う…これでは後で旦那様が叱られるな。少しでも穴埋めしなければ…)

てんこ「旦那様は本日少しばかり風邪気味とのことでして…その、姫様にうつすといけないということで…」

妖狐姫「はぁ…そうかの…なら本日はうにゅに頼むとしよう。偶にはよかろ」

てんこ(おぉ…)

後は頼んだぞ…くぅこ。

……………………

男「そろそろ座椅子の時間だな」

くぅこ「あ、主殿!待って欲しいでごじゃるっ」

男「ん?どうした?」

くぅこ「せ、せっしゃたった今主殿とかたく抱擁を交わしたくなったでごじゃるっ」

男「え…?まだ昼間だぞ?それに後で妖狐姫にいろいろ言われたら嫌だし…」

くぅこ「せっしゃ主殿から我慢することを禁止されているでごじゃるゆえ…」

くぅこ「あ、主殿ぉ…駄目でごじゃるか…?」

男「くぅこ…」

男「くぅこぉ!!!」

くぅこ「まふっ」

男「しょうがないなぁくぅこは!でも俺はそんな珍しく甘えん坊なくぅこも大好きだぞ~!」

くぅこ「んっ、そっ、そんなにしたら髪と服が乱れてしまうでごじゃるよぉ」

くぅこ(…ゆーわくの術の使い方がだんだん分かってきたでごじゃるな)

………………

てんこ「姫様…いかがでしょうか」

私は姫様を膝の上に乗せて丁寧に頭を撫でていた。

妖狐姫「…むぅ」

てんこ「…やはり旦那様でなければ満足されませぬか?」

妖狐姫「悪くはないのじゃがの、あやつはやはり別格じゃからな。もはやあやつと他の座り心地なぞ比較する方が愚かなのかもしれんの」

てんこ「っ…」

私の心は、重く沈んだ。

このただでさえどこか追い詰められた精神状態だぞ?沈まぬ方がおかしいだろう。

私の精神はそこまで硬く強固なものではない。

てんこ「ひ、ひめさまぁ…」

妖狐姫「てんこ…?」

ついに耐えられなくなった私はあろうことか姫様のお美しい黄金色の長髪を涙にて汚してしまった。

妖狐姫「どっ、どうしたというのじゃてんこ!何処か痛むのかの!?」

てんこ「実は…旦那様が風邪というのは全くの嘘なのでございます…」

妖狐姫「は…?嘘とな?」

てんこ「ただ…最近この身が姫様から遠のいている気がしてならなくて…」

てんこ「わだしはっ…もうごの屋敷に必要なぎ存在なのでじょうが…」

どうかしている
何よりも先に姫様に涙を落としてしまったことを謝罪すべきことは分かっているというのに…

それでも今の私は己の中にたまった負の感情を放出せずにはいられなかった。

もしくぅこの言う通り、姫様がくぅこと同じことをおっしゃってくださるというのなら
早く癒して欲しかった。

いつから私はこんなにも醜き者になってしまったのだろう。

だが姫様の反応は私が求めていたものと少し違っていた。

妖狐姫「馬鹿者」

てんこ「きゃんっ!」

姫様はこちらを向くと私の額を軽く小突いた。

てんこ「姫…様…」

妖狐姫「はぁ…何を言い出すかと思えばくだらぬ…実にくだらぬのう」

妖狐姫「なんじゃ?座椅子の奴にあほうでもうつされたか?まさかうにゅの口からからそのような冗談が出るとは」

妖狐姫「うにゅが屋敷からいなくなるなぞ考えられぬわ!もちろん父上や母上のように先を逝くこともわらわは許さぬぞ」

妖狐姫「…じゃからそのようなつまらぬ悩みでわらわの着物を汚すでない」

姫様はそこまで言うと機嫌が悪そうにぷいとまた前を向いた。

てんこ「姫様…」

てんこ(嬉しい)

くぅこの言う通りだった。
私はまだ必要とされていた。

それが確認できただけでも私は歓喜した。

てんこ「ひめさまぁ~!」

妖狐姫「んなっ!?やめんかっ!そのような顔でひっつくでないっ!」

私は開き直った。

てんこ(多少醜くたっていいじゃないか)

いつも私はこの方に振り回されているのだ。

てんこ「うっ、うっ、ずびっ…」

妖狐姫「ひっ!こ、これぇ!」

てんこ(このくらいの褒美、求めてもバチはあたらぬでしょう?)

てんこ(父上様…)




気がつけば私もまた、変わっていたのだな。

自分の気がつかぬ内に私もここまで我がままになっていたとはな…


………………

てんこ「もーしわけありませんっ!姫様っ!」

しかしまぁ落ち着いてみるとやはり恥ずかしくなるもので…

私は恥ずかしさと申し訳なさに畳に土下座していた。

妖狐姫「ごほんっ…まあよい。どうせ汚れた衣服を何とかするのもうにゅの役目なのじゃからな…表をあげるのじゃ」

てんこ「はぁ…」

妖狐姫「しかしなんじゃ…そのようなことを考えてしまう辺りうにゅも相当疲れておるの。くぅこと同じじゃな…うにゅにも多少なりとも癒しが必要じゃろう」

妖狐姫「うにゅにはわらわの知るこの世で最上級の極楽を与えてやろう」

てんこ「い、いえ私にはそのようなものは…!」

とは言っても私も生きる者…姫様の思う最上級の極楽…

てんこ(全く気にならないわけではないが…)

妖狐姫「本日わらわが眠る間の一夜だけ、座椅子を貸してやろう」

てんこ「は…?」

私は瞬間固まった。

てんこ(それは…この私が旦那様の上に座るということか…?)

想像できない。

妖狐姫「うにゅがそのような落ちた気分になってしもうたのはわらわとの関わりが遠のいたように感じたからじゃろう?」

てんこ「確かにその通りですが…それと旦那様にどのような関係が?」

妖狐姫「まだ気付かぬのか。わらわとうにゅが遠のいたのではない。うにゅと座椅子がまだ遠い関係にあるということじゃ」

てんこ「私と旦那様が?」

妖狐姫「うにゅと座椅子はこの同じ屋敷に住まう者でありながらまだ完全に打ち解けてないと見える。よい機会じゃ、世間話でもして今晩にて溝を埋めてみてはどうじゃ?」

妖狐姫「そのように不安がる必要なぞない。わらわも稀にあやつに座りながらあやつの世の話を聞くのじゃが」



妖狐姫「…案外楽しいものじゃぞ?」


………………

てんこ「…と、いうわけだ」

そしてついに夜が来てしまった。
私は旦那様を部屋へ呼んだ。

男「へ、へぇ…そうなんですか…」

旦那様といえど殿方

てんこ(姫様の提案とはいえ自分から殿方を寝室に招いたことなど初めてだっ…)

私は変に緊張していた。

落ち着けず不自然に天井へと目をやってしまう。

てんこ(くぅこぉ…どうせ何処かに隠れているのだろう?どうせなら降りてきてはくれないのか?)

気配すら感じ取れないくせにくぅこに助けを求めてしまった。

男「とりあえず…座りますか?」

旦那様も少し困惑した顔のままだったが座布団の上に胡座をかいた。

てんこ「あ、あぁ…」

私も立ち上がり旦那様の方へ歩く。
旦那様に尾の方を見せ、ゆっくりと腰を下ろしていく…

私のお尻が旦那様の膝椅子に収まった。

しかしだ、姫様やしらこ様と違って私は身体の大きさが違う。
微妙に収まらない身体は徐々にずれていってしまう。

男「おっとっと」

てんこ「はうっ!?」

突如旦那様が私の腹に腕を回して抱き寄せた。

男「あっ!すみませんっ!」

てんこ「あ、いや…私こそすまない…」

それから私たち二人はすっかり固まってしまった。

旦那様もこのような状態で何を話せばいいのやらと困っている様子だ。

てんこ(そういえばこうして座った後は…)

てんこ「…撫でるのではないのか?」

男「うぇっ!?え、えぁ…頑張ります…」

男「まあ俺も日々精進してるんで、お客様用もバッチリですよ。…多分」

てんこ(お客様用…)

その言葉が何処か引っかかった。

てんこ「私は…お客様ではないぞ…」

男「え?」

てんこ「私は…私もっ!旦那様と同様のこの屋敷の者なのだ!」

てんこ「だ、だから…だから…」

声は詰まり続け上手く言えない…
上手く説明できないが…

てんこ(嫌だ…嫌なのだ…)

『お客様』では…

男「てんこさん…?」

目を強く瞑って捻り出すような声で言った。

てんこ「私もっ!姫様と同じように愛でて欲しいぃっ!」

男「は…?え…?は…?」

てんこ「…駄目だろうか?」

恐る恐る後ろを見ると旦那様は豆鉄砲を食らった鳥のような顔をしていたが、やがて真剣な面持ちになって言った。

男「難しいかもしれないけど…やってみます…」

てんこ(難しい…か…)

てんこ「何故難しいのか、理由を聞いてもよろしいか?」

男「あー、俺いっつも妖狐姫を撫でるときは可愛いものを愛でるって感じなんですけど」

男「てんこさんは可愛いって感じじゃなくて…そう、大人の女性って感じで、美しいって感じだから…」

てんこ「う、美しい!?」

まさか旦那様からそのような目で見て貰えていたとは…

てんこ(…素直に嬉しくはあるが)

てんこ「そうか…礼を言う…」

またも小声になる。
さっきからずっと調子を狂わされている気がする。

男「あ、でも今のは可愛かったです」

腹に回されていた片方の腕が頭へと移動した。

頭の上で旦那様の手のひらが動く。

てんこ(確かに…柄ではないな…)

だがそこには同時に確かな安らぎも存在した。

てんこ(落ち着く)

目を閉じればそのまま睡魔に飲み込まれてしまいそうなほどの癒しを感じる。

てんこ(これが姫様の思うこの世で最上級の極楽)

てんこ(ああ…今なら羞恥心など放り捨てて何でも喋ってしまいそうだ…)

立派な美酒を飲んで心地よく酔っているときと同じような感覚だ。

男(お、尻尾が揺れてる)

てんこ「…旦那様は私のことはお好きか?」

男「なっ!?」

旦那様の手が止まってしまった。
言い方が悪かったな。

てんこ「深い意味ではないんだ」

てんこ「前に旦那様は私から嫌われていると思っていたと言っていたな。あれを聞いてからな、少しその逆も考えてしまうんだ」

てんこ「私からの当たりが厳しすぎてむしろ私が旦那様から嫌われてしまっているのではないのかとな」

男「いや!そんなことは全然…」

てんこ「先に言っておこう。私は旦那様のことが好きになってきたよ」

男「え」

てんこ「私たちはどちらもこの屋敷に住まう者、姫様にとって無くてはならない存在…」

てんこ「姫様もくぅこも合わせて、私たちは血こそ繋がってはいないが家族なんだよ」

てんこ「つまらぬ嫉妬の情に流されてそんな大事なことも私は忘れていたのかもな」

てんこ「姫様に私と旦那様の間にある溝を指摘されてな、ここではっきりさせておきたいんだ」

てんこ「もし私に今も苦手意識があるならはっきり言ってくれ、これから好かれるように努力する」

男「…俺は」

私を抱く旦那様の腕に少し力が入った。

旦那様は顔を私の耳元に持ってきて呟いた。

男「嫌いな奴を膝に乗せてこんなに強く抱きしめたりはしません…」

てんこ(へ…)

男「今はもうそのくらいには…俺もてんこさんのこと、好きですよ」

てんこ「ふぇ?え…ぇ…」

自分でも分かるくらい顔が熱くなっていくのを感じる…

てんこ(ついさっきまではどんな恥ずかしい言葉を並べたって平気だったのにっ!)

頭を撫でる手が止められたからだろうか、完全に醒めてしまった。

男「あ、俺も深い意味ではないですよ?」

てんこ「くっ、あ…わ、分かっているっ!!」

てんこ「ぬ~!ああああああああ!!!」

てんこ(なんだこれはなんなのだこの気持ちはっ!)

よくわからない胸騒ぎがする

男「てんこさん!?」

嬉しいような恥ずかしいような…しかしそれらとはもっと違うような…

とにかく今はあの酔いしれた頭に戻りたい

私は旦那様の膝の上でじたばたと身悶えながら懇願した。

てんこ「も、もう一度!頭を撫で回してくれっ!今度は尻尾も頼むっ!」

男「あ…はい…」

その後旦那様に身を任せっきりとなった私は結局彼の上で寝息を立てることとなってしまった。

………………

てんこ「はっ!」

私は布団から飛び出すように身体を起こした。

てんこ「もう朝か」

てんこ「そうか…私はあのまま…む、旦那様は…」

部屋中を見渡すも当然旦那様の姿は無かった。

てんこ「はぁ…」

てんこ(そもそも私がわざわざ布団に入れてもらっているのだ。当たり前だろう)

旦那様のことを考えると昨晩のことを思い出してしまう。


…………………………………………

『今はもうそのくらいには…俺もてんこさんのこと、好きですよ』

…………………………………………


てんこ「う…」

てんこ「あぁぁぁぁ!」

わしゃわしゃと髪をかき回して無理やりにでも忘れようとするもあのときのなんともいえない気持ちが胸を離れない。

てんこ「うぅ~…」

……………………

男「くぅこ、はい団子」

くぅこ「あーん…む…」

俺の最近の楽しみは夕食にでた団子でくぅこに餌付けすることだ。

自分の分が減ってしまうが俺の出した団子串に食いつくくぅこが最高に愛らしいのでなかなかやめられない。

くぅこ「…もぐもぐ」

そのあと恥ずかしそうにそっぽを向いてもぐもぐする様子もいい。

妖狐姫「これ座椅子!はようわらわにもよこさぬか!」

男「…はいはい」

ついでのように妖狐姫にもあげないといけないのが玉に瑕だ。

これはまあ…税金みたいなもんだろう。

てんこ「…だ、旦那様!」

男「え?」

…今日はてんこさんの説教も込みか。

やってることは確かに行儀が悪いとはいえさすがに辛い。

てんこ「しょ、しょの…」

男「ん?」

…なんか様子が違う?

てんこ「わた、私も…」

てんこ「旦那様の団子が…ほし、ぃ…」

男「…は」

くぅこ「ぶっ!?」

妖狐姫「ほぇ…?」

てんこ「ひ、姫様はともかく…くぅこにあって私にないというのはおかしいではないか…」




「…いいだろう?」






てんこの憂鬱

おわり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年04月04日 (火) 18:27:00   ID: MvDksRaE

くぅこ可愛ええ…(*´`)
可愛ええ…

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