【モバマス】シンデレラたちのお昼前 (31)

 ここは都内の某所にある、美城プロダクション所有の女子寮。
 日々研鑽し、高みを目指すアイドルが、心と体を休ませる憩いの場所。
 今日も可憐なシンデレラたちは、気の向くままに時をすごす・・・・・・






小梅「ら、蘭子ちゃん……あれ、やって……」

蘭子「我が友小梅! 良かろう、我が腕の中で息絶えるがよい!」


 今日はみんなで買い物に行くっていうから、わざわざウチはここまで遊びに来たっていうのに……


小梅「お、おじゃまします……」

蘭子「えいっ」ギュー

小梅「わぁー、ほかほか……♪」


 今はともだちたちがイチャイチャしているのを眺めている。

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小梅「えへぇ……」


 デカいテレビでゲームをしてた蘭子の膝の間に、小梅がスポっと収まってる。 立膝に挟まれてうれしそうって

いうか蘭子、足長いなっ! ウチと同い年とか嘘なんじゃないのか?


美玲「なぁ、なんでウチはみせつけられてるんだ?」

飛鳥「二人共寒いのが苦手でね。 いつもあんな感じだよ」ピロリン

 
 あ、こいつ写真とりまくってる。


美玲「オマエな……」

飛鳥「みなまで言わなくていい。 ちょっとTwitterで拡散するだけさ」

美玲「オマエ……ほんとオマエ……」

飛鳥「だって可愛いじゃないか。 世界中と共感したくなるのは、ある種の原始的な欲求さ」


 さっきから携帯鳴りまくってたのはツ○ッターかよ! かしこぶってるけど本当はバカなんじゃないのかって思った

のはこれで何度目だろう。 いや、それ以前に……


美玲「勝手にあげちゃダメだろっ! ちょさくけん?とかなんかそんなヤツっ!」

飛鳥「肖像権だね。 際どくなければファンサービスのうちって事で許可はもらっているよ」


 安心して被写体になってくれ、と飛鳥がスマホをこっちに向けてきた。 パシャパシャと角度を変えながら数ショット。

今じゃもう当たり前になってるけど、アイドルになる前なら考えられないことだよなこれ。


美玲「おい、ちゃんと撮れてるんだろうなっ」

飛鳥「もうアップロードしたよ」


 どれどれ…… 携帯のアプリを立ち上げるてっと…… お、結構いいジャン! お気に入りのブランドから選び抜いた

組み合わせはウチのワイルドな魅力を十分にひきたてている。 フフン、眼帯がキマってるじゃないか……

飛鳥「一匹狼を気取っていても、液晶画面でぬくもりをかじるものなのかい?」


 飛鳥は、やれやれと首をふりつつ、知ったようなことを言ってきた。


美玲「それ、輝子のヤツに借りたCDの歌詞だろ? 知ってるぞ」

飛鳥「ぐぅ……!」


 へっ、ザマァミロ! 飛鳥は打たれ弱いからな、しばらくは静かになるだろ! 

とはいえ、そうなると話し相手が居なくてヒマだし、ウチも小梅たちに混ざるかな……


蘭子「ふっ」

小梅「ああー……」

蘭子「とおっ」

小梅「おぉー……」


 二人してカーブの度に、右へ左へと体を倒している。 ああいるよな、レースゲームで体ごと曲がっちゃうヤツ。

その不思議な動きを目で追っていたら、いつの間にかゴールへたどり着いていたようだ。 順位はまあ、うん……


美玲「なんていうか……ちょっとヘタだな?」

蘭子「おお、いつの間に我が背後へっ!? その、我は虚構の箱庭の影響を受けやすいゆえ……」

小梅「蘭子ちゃんが揺れるから……うごいちゃう……えへ……」


 なるほど、小梅はぎゅってされてるからな。蘭子が動けば一緒に動いちゃうのか。 ゴールした後も、蘭子は小梅を抱きしめて

起き上がりこぼしか、動物園のパンダみたいにグラグラ遊んでいる。 なんだかだんだんアトラクションみたいに見えてきた。

ウチもやってみたい。

美玲「な、なあ、 ウチもそれやりたいんだけど、いいか?」

蘭子「マ○カー?」

美玲「違うっ! 足の間でああーってなるヤツ!」

小梅「ふへへ……だめぇ~……♪」

美玲「えっ、なんで!?」


 なんでだ!? もしかして小梅はウチにいじわるしてるつもりなんだろうか。 ううーん、困ったぞ……

小梅は時々ちょっかいを出してくるけど、すごい笑顔だから言い返しにくいんだよ。 こいつなりの甘え方

なんだって知ってるから引っ掻くわけにもいかないし。


蘭子「そういうこといっちゃだめ。 めっ」

小梅「うん」


 あ、すっとどいたぞこいつめ。 ていうか年は1コ下だけど同じ学年だよな? 完全にちっちゃい子扱いしてる

けどギモンに思わないのか。 まあいいや、今は蘭子と遊ぶのが優先だ!


蘭子「さあくるがよい!」

美玲「おうっ! じゃまするぞッ!……おおっ」



 蘭子のカラダぽっかぽかだな! そういえば風呂あがりって言ってたっけ……? いい匂いだし、クーラーで冷えてたから

すごい気持ちがいいぞ……


蘭子「我が抱擁は地獄の揺り籠……いつまで抗えるかしら……?」

美玲「あー……これ良いな……」

小梅「そ、そうでしょ……すごい落ち着くの……」


 胸を枕にして寄りかかった状態で、半袖の腕を蘭子の素足でギュッと挟まれる。 さらさらの肌と肌が直にこすれあって

他では中々味わえない感触にうっとりとする。 レッスンで結構鍛えてるハズなのに、ふにょふにょぷにぷにと筋肉が一切

感じられない抱かれ心地も格別だ。 首筋が蘭子の胸に埋もれる形で支えられて、尋常じゃない幸福感。

あ゛ー……めっちゃくつろぐ……


美玲「ウチもこの枕欲しい……今日泊まってっていいかー……?」

蘭子「くひひひっ、あたまくすぐったいよ~」

小梅「抱き……抱かれ枕……?」

一応、シンデレラたちの朝の続きになります。
風呂シーンは取り敢えずスキップしました。

飛鳥「生憎だが、今日はボクとの先約があるからね。 3人じゃ狭すぎる」

美玲「なんだ、もう立ち直ったのか」


 しぶといヤツだな。 若干目線を漂わせながら、飛鳥はウチらの横に座ってコントローラーを操作し始めた。


飛鳥「まだ時間もある。 どうせなら4人で対戦でもしようじゃないか」

美玲「ヤダ」

飛鳥「ええ……」


 目に見えてしょんぼりとしている。 普段は斜に構えてる癖にマジでメンタル弱いな。 あーもう、ちょっと悪いこと

した気になっちゃうジャン!


美玲「ウチ、甘やかされるので手一杯だモン」

蘭子「美玲ちゃんかわいい。 ぎゅー」

美玲「オアー」

飛鳥「どうしてもゲームがしたい訳じゃない。 わけじゃないが、蔑ろにされるのは愉快じゃない」

美玲「じゃあ小梅にこれやってもらえばいいじゃん……」

小梅「えっ」

飛鳥「えっ」


 ウチ、なんかおかしなこと言ったか? 困惑した表情で見つめ合っている小梅と飛鳥を尻目に、ウチは蘭子の手を

お腹の前に回して密着度を高める。

小梅「えっと……じゃあ、おいで……?」

飛鳥「えっ? ボクが前なのかい? 本気で?」

小梅「小梅に、お任せ……!」

飛鳥「ああ、うん、じゃあ」

小梅「ぷぎゅう」


 飛鳥が寄りかかった流れで、小梅が後ろにひっくり返った。 だめだ、これじゃただの枕であって、ここまでの

安心感は得られない。 そんな評論家みたいなことを思ってみたりしながら二人のやりとりを観察する。


飛鳥「ボクが思うに、小梅では安楽椅子的なレゾンデートルを満たすに足りていないんじゃないだろうか?」

小梅「お、重い……ううー……」

飛鳥「温かいんだけど若干クッション性が足りないね。 有り体に言うと胸骨が頭にあたって痛い」

小梅「し、しつれい……だよ……!」

飛鳥「ぶっ!」


 小梅が飛鳥を足でホールドして、袖で顔をペシペシと叩く。 なるほどな、取り敢えず写真、とっておくか。

 一段落ついた後、小梅が細すぎて心配だからカロリーを持ってくると言い、飛鳥はリビングから出て行った。

なんかふんだり蹴ったりだった気もするし、席を変わってやることにする。


小梅「はずかしめをうけた……」

美玲「何言ってんだ。 ほら、交代してやるぞっ!」

蘭子「ひゃっ! 何をするか!?」


 なんとなく、胸を揉んでから立ち上がった。コンプレックスがあるわけじゃないんだけど、羨ましいものは

羨ましい。


美玲「何を食べたらこんなに大きくなるんだ……」

小梅「ハンバーグと……プリン……? よいしょ」

蘭子「再び相まみえたな、死霊の申し子!」ギュー

小梅「わぁい」


 結局さっきの状況に戻っちゃったなこれ。 とりあえずゲームは消してテレビでもつけておくか……

でもこの時間に見るものなんて無いんだよなー。

 そんなことを思っている時に限って何かしら起きるもので、つけたまま流れているニュースには良く知っている

顔が映っていた。



美玲「んおっ?」

蘭子「む、外星より来たる者よ」

小梅「菜々ちゃんが……ニュース番組……?」

美玲「違和感バリバリでビックリだぞ」


 スーツの中に一人だけ小柄なメイド服が座っていて、驚くほど場にそぐわない。 真面目な顔で選挙について

討論している様子が、ウチのツボにじわじわと揺さぶりをかける。 意外性という意味ではこれ以上ないキャスティングだろう。


――つまりですね、やっぱり若い人たちが選挙について知る、理解することが大事だと思うんですよ。

ナナが学生の時も政治なんて、総理大臣がえらい、くらいの知識しかなかったわけで。 その状態で

どうやって興味を持たせるかって言うと、歴史的知識より現在について実践的な教育を……


小梅「ううーん……?」

蘭子「察するに、難しい話をしている」


 すげえ頭悪そうな結論がでた。 いやウチもちんぷんかんぷんだけどさ。


――そういえば、昨今ではTwitterやSNSを利用した選挙活動も話題になっていますが、若者代表として安部さんは

どのような感想をお持ちですか?

――へっ? あーあのスマートフォンのおしゃべりできる?やつですよね? ナナの携帯だとあまりむずかしいこと

ができなくて……


 ウチのおばあちゃんと似たようなこと言ってるな。さっきまでのキリッとした顔から一転して、冷や汗が見えるくらい

にテンパッてるのがわかる。 見た目は同い年ぐらいなんだけど、不思議なヒトなんだよな。


蘭子「菜々ちゃん大人みたい……!」

小梅「う、うん、かっこいい……! でも……ツイッター知らないみたい……」

蘭子「ふむ……次の会合の折にでも我らが叡智を授けるのも良いな」

小梅「そうだね…… でも、めずらしいね…… お、おうちの人が……厳しいの……かな?」

美玲「ぶふっ! ふっへっへっへっ……」

蘭子「?」小梅「?」


 そうか、こいつらは寮が違うもんな。 初日にお酒の瓶を抱えて寝てるのを発見した時はちょっとした事件だったんけど、

知らなきゃわからないか。 今思えば、菜々のやつがちょいちょいおばあちゃんみたいなことを言ってたのも、ボロが

出てるだけだったんだよな。 まあ、誤魔化しといてやるか。

美玲「ツイッターっていえば、さっき飛鳥がオマエたちの写真のせてたぞ」

蘭子「ふぇっ! 我が探知結界に反応しないとはっ!」

小梅「き、着替え終わってて……よかった……」

美玲「ほらこれこれ。 ……うわ、20分でどんだけRTされてんだよ」


 さすがアイドルだよな。 自分の事を棚に上げたような考えが浮かぶあたり、ウチはまだまだアイドルとしての自覚が

足りないのかもれない。 二人といえば、ウチのスマホでカッコイイポーズを投稿しまくっている。 タイムラインがちょっと

したお祭り騒ぎだ。 ウチの写真も伸びてるには伸びてる。


美玲「ちょっとフクザツだよなー……あッッつッッッッ!」

飛鳥「やあ、何やら悩んでるようだね」

美玲「おっまえ何やったんだっ!? はっ! コーヒーあてたのか????」

飛鳥「二人の人気と比較してアンニュイになってたってところかな?」

美玲「もうどうでも良いんだよそんなコトっ!」


 マジでどうでもいい。 今はコイツがウチの首筋にコーヒーカップをくっつけた事への復讐心で頭がいっぱいだ。


美玲「おいっ! やるなら冷たい飲み物でやれよっ! 普通にっ!」

飛鳥「やれやれ、『普通』だなんて、導き手たる偶像には相応しくない言葉さ」

美玲「アイドルとかじゃなくて熱いんだよバカ! せめて温いのでやれよっ!」

飛鳥「えっ、温いコーヒーは不味いじゃないか」

美玲「せいっ!」

飛鳥「あ゛ぃっっっ!」


 ウチの怒りを指先に込めておデコを撃ちぬいてやった。 ふん、トレイを落とさなかった根性は褒めてやるとしよ

う。

美玲ちゃんの口調難しくないですかね

美玲「ウチの攻撃を受けて膝をつかないとは中々やるな」

飛鳥「言うに事欠いてそれか……穴あいてない?」

美玲「目の間のちょっと下に二つ」

飛鳥「キミは知らないかもしれないけど鼻っていうんだよ」

美玲「良い事を知った。 それで、何持ってきたんだ?」


 飲み物が2種類とビニール袋とクッキー……? 片方のコップはコーヒーで良いとして、もう一つは何だろ?

袋からはほんのり磯っぽい臭いがしているような気がする。 ウチの悩んでいる顔を見て溜飲を下げたのか、得意そう

な声で飛鳥が言った。


飛鳥「ま、見てのお楽しみさ。 食べるならテーブルの方が良いかい?」

美玲「せっかくだし二人のとこで良いんじゃないか?」

飛鳥「それもそうか。 一応、新聞敷いておこう」

美玲「それはウチが持ってきてやる。 あっ、ここはウチに任せて先にいけっ!」

飛鳥「あって言った」


 仕方がない、今思いついちゃったんだから言わざるをえない。

 飛鳥の声を聞き流しながら適当な新聞紙を探す。 頻繁に遊びに来るとはいえ、そこは勝手知ったらない他人の女子

寮。 家具や間取りも全然違っていて、持ってきてやるとは言ったもののどこにあるのか検討もつかない。 流石にマガ

ジンラックの雑誌をとってくのはおかしいよな。


美玲「あ、なんだテーブルの上か」


 読むもんだしそりゃそうだよな。 ともあれ、見つかったならさっさと持って行こう。 おやつと3人がウチを待ってい

るに違いない。

飛鳥「見つかってよかった。 良く考えたら美玲はここに住んで居ないことに気がついてね」

美玲「そこはオオカミとしての勘だな」


 ふふん、と少し得意になりながら新聞紙をフローリングの上に広げていく。


小梅「き、きっと……第六感が発達してるんだね……すごい……」

美玲「ふふふ、やめろよ」

蘭子「獣宿す封印の魔眼(アイオブザワイルドカオス)!!」

美玲「やめろよ……」


 蘭子は何かとウチのことを仲間扱いしてくるけど、この眼帯はあくまでファッションなんだ。 そういえば今日は

服を買いに集まったんだったな。 色々あって忘れてたけど、けしてダラダラと遊ぶために来たわけじゃないぞ。

と成ればまずは………… まずはおやつを食べてからでいいか、うん。


美玲「それで、飛鳥は何を持ってきたんだ?」

飛鳥「コーヒーとココア、お茶請けにマカロンの皮とさきイカさ」

蘭子「皮?」

小梅「いか?」


 マカロンの皮ってなんだ? 確かにハンバーガーのパンみたいなつるっとした形をしている。 よく見ればかな子

が差し入れに持ってきてくれたマカロンの一部に見えてきた。 それにしてもさきイカってなんだよ、味はともかく

見た目の相性最悪だろ。 お洒落な菓子箱に入ってる緩衝材とかわんないぞこれ。


飛鳥「そんな胡乱な目で見ないでくれないか。 ワイルド推しなキミは硬いモノ好きそうだと思って持ってきたんだ」

美玲「いや、ウチのワイルドさはそういうのじゃない…… 好きだけどさ」

飛鳥「因みにさきイカなのは、先日菜々さんが大量におすそ分けをしてくれたからだよ」

蘭子「母星より届きしものなり」

 
 うさみん星のイカか…… 直にビニールって事は市販品じゃないのか? なんにせよあのヒトは自分の設定を隠す

気があるんだか無いんだかわかったもんじゃないな。

小梅「うさみん星人……ふたたび……」

飛鳥「再び?」

美玲「ああ、さっきテレビにでててな。 ツイッターつかえないらしいぞ」

飛鳥「キミが気にしてたツイッターだね」


 蒸し返してきやがった。 もう忘れかけてたっていうのに、ちょいちょい余計なことをするんだよな。


蘭子「ふむ、何事かマキナの箱庭に心乱されることが?」

美玲「いや悩みってほどじゃないけどさ……」

飛鳥「なに、ファンの多さについて考えていただけだよ。 偶像としての意識が高いのはいいことさ」

美玲「もういいってば…… ん、これは確かにマカロン」


 普通のクッキーとは違う、カリカリジャクジャクとした歯ごたえにほんのり香る卵白の風味の特徴的な味わい。

今食べたのはラズベリーか? 色ごとにフレーバーが違う、少し高級感のあるお菓子とミルク入りのコーヒーで

ゴキゲンなおやつタイムを満喫する。


美玲「そういえば、勝手にコーヒー選んだけどよかったか?」

小梅「甘いほうが……好きだから……」

蘭子「ココアすき」

美玲「ならいいや」


 ウチが蘭子の隣りに座って、続いて座ってきた飛鳥に挟まれ、4人で団子になる。 とても暖かい。

 まだ予定の時間までには余裕がある。アイドルになってからは引っ越しをしたり、学校と仕事の両立でケッコー

忙しかったから、こういう時間はとても貴重な気がしている。 カチッカチッと、壁掛け時計の音が聞こえるほど

ゆっくりと針が進んでいく。 両目を閉じても不安にならないってのはすごく嬉しいことなんだろうな。

ウチは一匹狼だけど、今の空気は悪くない。


美玲「でもあれだな、これやっぱさきイカが強すぎるぞ」

飛鳥「そうだね…… マカロンがさっと溶ける分、イカがメインを主張している」


 蘭子と小梅はひたすらイカを噛みしめて幸せそうだ。 写メっとくか……
 
 もうそろそろコーヒーもなくなるというタイミングで、後ろから声をかけられた。


周子「あったあったー。 もう、今日の新聞は使ったらあかんって言うてんのにー」

美玲「げっ」

周子「あっ! 美玲ちゃんじゃーーーん!」


 いきなりお腹をホールドする形で抱っこされた。 コイツはすごいいじめっこで、ウチを見つけるとこうやって

いじわるしてくる悪いヤツなんだ。 目を合わせようとしてもつい逸しちゃうし、ウチの野生が危険を感じ取っている

んだと思う。


周子「プルプル震えてかいらしいなあ」

蘭子「妖狐の霊力の前には孤狼も子犬同然か……」

飛鳥「離してやってくれないか…… 目的は新聞なんだろう?」

周子「そーだった」

 
 ぱっと床に降ろされたウチは慌てて蘭子のところに逃げ出した。

蘭子「わっ……そんなに怯えなくても良いのに」

周子「そーよそーよー」


 そんなことを言われても怖いものは怖いんだ。 底の知れない真っ黒な瞳が動いたかと思うと、今度はビニール袋

をロックオンして、鼻をひくひくさせ始めた。 やっぱり何をしてても肉食獣のそれに見える。


周子「イカ?」

小梅「いか。……いる?」

飛鳥「美玲、御狐様はお供え物をあげれば祟らないらしいぞ」
 
美玲「うちにふらないで……」
 
周子「そんなに怯えんといてよ。 しゅーこちゃんに会いに来てくれたんでしょ? それっ!」

蘭子「ひゃっ」 小梅「わっ」 美玲「ぎゃあっ!」


 しまった! 隠れてるから安心だと思ってたのに! 予想以上に長くて真っ白な手で3人まとめて捕まってしまった。


美玲「会いに来てないもんっ! 今日は五人で服買いに行くんだよ! てゆーか離してっ!」

周子「いちにーさんしー……やっぱあたしも?」

美玲「ちーがーうー!」


 ふへへへへとにこにこしながら問いかけてくる。 わかっててわざとからかってるってるんだコイツは!


美玲「ショーコに決まってんだろ!」

周子「……いないけど? 出かけるならそろそろいい時間になるんちゃう?」


 ……………………あれっ!?

小梅「しょ、輝子ちゃんなら……小梅の部屋で……寝てる……」

飛鳥「次はもう少し早く伝えたほうがいいね……」

蘭子「ふむ、となれば蔓延る腐海の主を覚醒めさせねばな」

飛鳥「ボクは着替えと……軽く化粧でもしようかな」

周子「ちゃんと日焼け止めも塗ってきー。 片付けはまかせてくれていーよ」


 はーいと返事をしながら、3人ともそれぞれ散っていってしまった。 どうしよう、とりあえず小梅についていこうかな。

 今思えば、その一瞬の迷いが運命の分かれ道だったんだろう。 歩き出そうとした瞬間、背後から白い手が伸びてきて

ウチの脇腹をガシっと掴んだ。 そのまま、ヒュッと引っ張られ、ジェットコースターのような浮遊感とともに体勢を崩す。

背中からくる衝撃を予想し、目を固く閉じてしまう。


美玲「うわぁああああっ!…………あ?」


 目を開けたら周子が上から覗き込んでいた。 


周子「やあ」

美玲「ひっ!」

周子「美玲ちゃんはあたしと一緒に待ってようね。 抱っこ好きなんでしょ?」

美玲「なぁっ!? なんで知ってるんだっ! やっぱり妖怪なのか!?」

周子「ひどくない? 単にTwitter見てたからだってー。 写真可愛かったよー」


 そもそも新聞の場所わかったのも美玲ちゃん達のつぶやき見てたからだしと言ってそのままギューってされる。

うぐ……蘭子より少し冷たいけどより包まれてる感じは悪く無いな…… Tシャツごしの胸もちょうどいいサイズだし。


周子「どう、気持ちいい?」

美玲「ぐぅ……今だけここにいてやる……」

周子「ふへへへ」


 別にキライなわけじゃないし、落ち着けるから仕方がない。

それにまあ、褒められたら嬉しくなるなんて、あたりまえだしな。

ここは都内の某所にある、美城プロダクション所有の女子寮
青春を謳歌する乙女たちが心を通わせあう憩いの場所
寂しがり屋と構いたがり、出逢えるならばきっと良いこと・・・・・・

蛇足

輝子「ヒィィィィィィィ!イヤダァァァァァァァァァァァ!」←布団ガード

蘭子「ふぐぐ……! なにゆえもがきあらがうのかっ! 昨日行くって言ったのにっ!」グググ

小梅「な、なにも……怖くない……よ……?」

飛鳥「そうそう、むしろボクたちやキミ向けの場所と言ってもいい」

輝子「あ……聞き間違えちゃった……か……? どこに行くんだって……?」←出てきた


蘭子飛鳥小梅「「「原宿」」」


輝子「ヒャァァァァァ!若者の街じゃねぇかァァァァァァァァァッ!!」←布団ガード

小梅「あっ」

飛鳥「往生際の悪い……っ!」

蘭子「この際、無理矢理着せ替えてもいいのではないだろうか。 せっかくだし可愛く!」


輝子「タスケテクレェェェェェエェェェェ!」

これで終わりです。
ここがおかしい、もっとこうした方が良いというアドバイスがありましたら、ぜひ言っていただけると嬉しいです。
お付き合いいただいてありがとうございました。

シチュエーションが思いついたらゆっくり書いていきます。
答えられるかは不明ですが、こういうのが見てみたいとかもあればぜひ聞かせていただきたいです。

いや、やっぱりリクエスト募るとか思い上がりも甚だしいんで撤回します

ありがとうございます、見てて読みやすいかどうかが書いててわからないんですよね。
次はそこを意識してみようと思います。

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