男「町内防衛のバイト」 (25)

注意

※書き溜め無しの見切り発進

※地の文レス→台詞レス→地の文レス→台詞レス的な台本形式

※過去作で察して下さい↓
自販機「100円入れてね、ラードが出るよ!」

勇者「腕を1000本にしてください」

姫「顔面キモッ!」騎士「黙れブス」

ころばし屋「本当にころばす覚悟はあるか?」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457658766

幼い頃の夢はTVの中に出てくる『特別な力を持った主人公』だった
その時は何の根拠もなかったが、「自分には特別な力が眠っている」と思っていた
信じていた

だが、現実は非情だ
与えられた力は『主人公』の持つような『特別な力』でなく、それこそ『主人公』に相対する雑魚が持つような『半端な力』であった
そして、その時全てを理解する

自分はこの世界における主人公ではなかったことに
だから―――、

その1「インチキ効果も大概にしやがれ」



男「……えーと、それで説明は以上です」

「「「……」」」

男「なにか質問があればどうぞ」

新人A「あの、最終的に時給はいくらになるんですか?」

男「あー……。まあ、2年やってる俺が2700円なんでそこまで上げ幅は期待しない方がいいです」

新人B「おれ質問いいですか?」

男「どうぞ」

新人B「定期考査前とかは休んでいいんですか?」

男「俺も含めてそうですが、学生は定期考査期間中は休んでも大丈夫です」

新人B「ほっ……」

男(もっともその定期考査を受けれるかどうかはまた別の話だけど)

新人「あの」

男「はい」

新人「あの人は」ビッ

???「……ブツブツ……ブツブツ……」

カタカタカタターンッカチカチッ

男「ああ……」チラッ

時計<18:24

男「まだ作業が終わってないみたいだけど、そろそろ紹介を兼ねて挨拶をしてもらおうかな」

男「支部長!作業中すいませんが時間的にあれなんでお願いします」

???→支部長「んっ……、もうそんな時間か」ヨッコラセ

ギシッ

奥の方でPCで作業さしていた男がゆっくりと腰をあげ立ち上がる
武将髭を蓄え髪は芝生、白のTシャツにジャージ姿
一見ホームレスに見えなくもないが、PCに表示されている先ほどまで使用されていたファイル名には

ドキュメント:経済学○○島

と記載されている為恐らく学生なのだろう
吸っていた煙草を灰皿になぶるようにすり潰し、気だるそうにこちらに向かって歩いてくる
先ほどバイトリーダーの男が「支部長」と呼んでいたあたり、どうやらこの男が事務所のオーナーらしい

他の2人はなんとも言えないような顔をしていた
恐らく「ハズレ」を引いたと思っているのだろう
ただ、私には分かる

この支部長と呼ばれる男は間違いなく『強い人間』だと

支部長「俺が支部長の○○だ。名前で呼ばれると寒気がするから支部長と呼んでくれ」

「「「……」」」

支部長「以上」

男「以上で終わらせないで下さい。なんか気の利いたことでも言って下さい」

支部長「メンドクセッ」

男「……」

支部長「あーあー!言えばいいんだろ!」

支部長「ゴホンッ、そうだな、どっかのゲームで「生きろ、とにかく生きて帰れ」的なこと言ってた上司ポジな奴がいたが、あれ言うとフラグ立つからお前らも不用意に「生きる」とかのポジティブワード使うなよ。経験上言った奴の8割がた死んでるから」

「「「……」」」

支部長「悪い悪い、言い方が悪かったな。そんな顔すんなって」

男「……」

支部長「ま、気楽に行こうぜ。緊張もまた死亡フラグだ。のんびりいこうぜ」

支部長「……こんなんでいいか?」

男「まあ、いいんじゃないんでしょうか」

新人(いいんだ)

支部長「と、そろそろ時間じゃないのか?」

男「そうですね」

「「「……!」」」

ブツッブツッ―――

スピーカーから接続音が漏れる
先程前のゆるい雰囲気はかき消され、静寂が場を支配する
いよいよ『バイト』が始まるようだ
4秒後、部屋の中にアナウンスの淡々とした声が響き渡る

『2丁目の交差点に未確認の生物が出現しました。すぐに直行して下さい』

女性らしき声色が行き先を告げる
途中で息継ぎが聞こえたあたり人間が喋っているのだろうが、抑揚のないその声はまるで機械のようだ
私の言えたことではないが

「じゃ、お前ら汚れていい格好に着替えて各自交差点付近に集まれ」

そう言うと放送が終わると同時に支部長は部屋から出ていった
前もって連絡は受けていたため、既に汚れてもいい格好で来ていた私たちも支部長の後を追い部屋をでた

新人A「その格好でいくの?」

新人「なにか問題?」

新人A「いや、それでいいなら別にいいと思うけど」

新人(セーラー服の何がいけないんだろうか)

男「あ、新人さんはちょっと待ってください。2人は先行している支部長に着いて行ってください」

新人B「了解しました」

新人A「うっす」

タッタッタッタッタッタッ........

新人「なにか問題でもありましたか。この格好ではダメでしょうか?」

男「いや、そうじゃなくて……」

新人「……転校生が転校初日になんでこんなバイトやってるのか、という事?」

男「正直驚いてると同時に警戒してます」

新人「……一応人間だし、あなたの立場からすれば味方サイドだから心配しないで」

男「ならいいです」

新人(の割にはまだ警戒されてる……)

新人「話は帰れたら出来ますし、今は現場に行きましょう」

男「ですね」

現場に向かって走っているが、その道中人っ子1人見かけない
先に聞いてはいたが、これが噂の『人払い(ワン・ナイト)』というもののようだ
ざっくりと説明するなら、無意識に人間をその場から離れるように仕向ける一種の催眠のようなものを特定の範囲に発生させる能力……
どっかで聞いたことのある能力だが、やはり目の当たりにすると凄まじいものだ

などと考えていると前方からボールのようなものが勢いよく私に向かって飛んできた
避けても良かったがなんとなくキャッチする

ふさっ

あ、これ……

新人「ナイスキャッチ頭」

男「みたいですね」

新人「この顔は新人2人で顔じゃないから、早速民間の犠牲者がでたみたいですね。この頭どうしましょうか」

ヒョイッ

男「!そこらへんに捨てといてください」

新人「え、」

男「よくあることですから。さ、早く現場に行きましょう」

新人「……」ポイッ

ドチャ........

タッタッタッタッタッタッ........

現場に着いた時、既に交差点は見るも無惨な状態になっていた
信号機は柱の真ん中から真っ二つに切断され、新車と思わしき車も真っ二つに雪され、付近のお店の窓ガラスもあらかた切断され上辺の方が地面に落ちて粉々になっている
そして、足元には格好からして新人Aと思わしき肉体が胴体真っ二つになって転がっていた
もちろん既に仏様になっている……、多分
南無阿弥陀仏アーメン

交差点の真ん中には今回のターゲットと思わしきものが、巨体を揺らしつつ腕に着いてる趣味の悪い装飾の鎌を上下に振り回しながら暴れていた

チュートリアルの相手にしては幾らか大きすぎる気がしないでもないが、現実はチュートリアルですらハードモード仕様らしい

「我が名はキーリーカ・マ!さあ、早く出てこい!残りの2匹も我が鎌の餌食にしてやらんこともなくはないと宣言してやらんこともないぞ!」

新人「まだこっちに気づいてない……」

男「このカマキリが今回のターゲットみたいですね」

プルルルル........

プッ

『どうした』

男「支部長今はどこです?」

支部長『角のマック2階席から観察中。お前らも早くこい』

男「了解しました」

ピッ

新人「逃げるの?」

男「どちらかと言えば合流ですね」

カマキリ「んんんんんんんん!?こっちから気配がする気が!」

男「おっと、見つかる前にはやく角のマックに行きましょう」

新人「らじゃ」

シュタッ

カマキリ「そこぉん!」グルン

シーン

カマキリ「気の所為ぃんか」

新人「セーフ」

トタットタットタトタットッ

支部長「こっちこっちぃ」

男「新人Bはどうしたんです?」

支部長「新人Aが死んだのみて速攻で逃げやがった」

男「はあ、ではペナルティで1週間無給で窓ふき清掃でもさせましょうかね」

新人「それはいいとして、あれはどうしましょうか」

支部長「まず俺の能力じゃ無理。あいつなんかソニックブーム撃ってくるから近寄れねぇ」

男「それなら俺も無理ですね。待ちガイルみたいな戦法されたら攻撃のしようがないですし」

新人「では私がやります」ハイ

支部長「できるのか?なんかさっき新人Aも同じこと言って傷もつけられずに退場しちゃったけど」

新人「まあ、あれがかなり高次元の存在なら厳しいでしょうが……。あの程度、私の力なら多分ワンパンで沈められます」

男「……」

支部長「どんな能力か気になるねぇ」

口で説明するより実際見た方が分かり易いと思う……、恐らくは
そう言って私は腹の前で掌を合わせ、上下に離す

バチバチッ

と、手の平の間で電気が帯状に発生する
研究所の人からは「エ○チャージみたいだな」と笑われたが、実のところその車のCMを参考にしている

「エネ○ャージみてぇだな」

案の定支部長は同様の反応をしている
一方男の方は興味なさげにこちらをただ眺めていた

何故か無性に腹が立った
ここで一発どデカイのぶちかまして男を驚かせてやろうか
カマキリには悪いが久しぶりに私の力の調整に手伝って貰おう

照準をカマキリに合わせ、躊躇なくその力を前方に放つ

『超破壊(イエロー・レイン)』

バチッ!

放たれた電気のレーザーはマックの壁を突き破り、カマキリに一直線に飛んでいく
当たる直前にカマキリが気づいたが……、もう遅い
レーザーはカマキリの巨体をすっぽりと包み込みカマキリを白く染め上げる
そして、一瞬の内にカマキリは断末魔を残すことなく消滅した

ついでに新人Aの死体も消滅していたが見なかったことにしよう

支部長「こいつはすげぇな」

新人「まだこれでも出力はかなり抑えてます。全力出しちゃうと人がいるところにも飛びますから」

支部長「ぶっちゃけあのレーザーの最大射程てなんぼ?」

新人「5kmですかね」

支部長「ああ、それなら民間人巻き込むからこれからも抑え目に頼む」

新人「分かりました」

男「これが噂の『超破壊(イエロー・レイン)』ですか、なるほど」

新人「まるで知っていたかのような口ぶりですね」

男「いや、まさか新人だとは思わなかったですけど。風の噂で某とあるアニメに出てくるビリビリ能力に近い能力の開発に成功したと聞いていたので」

新人「これだけではないけどね」

男「それが本当なら大したインチキじみた能力ですね」

新人「まあ、欠点がないわけでもないんだけどね……」

........ズシン

支部長「っ!新人頼む」

男「了解しました」ドッ

ガシッ

新人「わぷっ!」

ズババンッ!

先ほどまで私たちの立っていた場所は十字に抉られていた
あれは……

「我が名はクイーンキーリーカ・マ!先ほどの攻撃で貴様らの場所は分かった。が、逃したようだな」

もう1匹……
いや、アナウンスでも1匹しかいないとは言ってなかった気がする

それはさておき、

「なんで飛んでるの?」

「?すぐに着地しますから安心してください」

いや、そういうことじゃなくて
なぜ私の体は男と一緒に空中に浮いているのだろうか
空中浮遊能力、これが彼の能力なのだろうか

と思いきや次の瞬間には体が地面に向かって急降下する
地面にぶつかって肉塊になることはなかったが、危うくリバース仕掛けるところだった
うえ、酸っぱい

私たちの着地地点に支部長が転がり込んでくる
眼前には先ほどのカマキリに比べてもふたまわりほど図体の大きなカマキリが、こちらに紫の鋭い瞳を向け立っていた

男「はやくこいつも『超破壊(イエロー・レイン)』で倒してください」

新人「実はこれ溜めなしでは撃てないから、あのカマキリの動き的に撃つ前にこっちが討たれる」

支部長「詰んだ?」

新人「はい、ほぼ確実に」

女王カマキリ「さあ、我が腕で終わらせてやろう」

新人「あ……、あいつの口もと良く見たら」

支部長「あれは新人Bのバンダナだな」

男「まさかこんな方法で窓ふき清掃から逃げるとは。予想外でした」

新人「彼も予想外だったと思う」

女王カマキリ「死ね」

ブンッ!

「ちょっと待っry」

ドチャンッ!

突如としてカマキリと私たちの間に割って入った……、割ってとんできた人はカマキリに高速でブチあたり爆発四散し頭だけ私たちのもとにきた
何言ってるか自分でも分からないけどとにかく頭が一刻前同様にこっちに……、あれ、この顔どっかで

「やあ」

そう言って頭はこちらを向く
あ、この顔はさっき捨てた

「さっきは時間の関係上紹介していませんでしたね。彼は俺たち同様バイトの人間。まあ、今日はシフト外だったけど」

そう男が説明している間に、頭だけの男は首からグチョグチョと音をたてながら衣服ごと全身が再生していた

「初めまして、ここでバイトしている○○だ。ノッポと呼んでくれ」

「どうも」

なるほど、確かにノッポと呼ばせようとするほど大きい体だ
その背丈は有に2mは超えてる
しかしまあ、このノッポと名乗る男の能力はミサイルのようにぶち当たって再生する能力か……
お気の毒に

「なにか失礼なことを考えてはいないかい?」

そんなことはない、……ない

女王カマキリ「まだいたのか!」

新人「さ、ノッポさん。カマキリが死ぬまでミサイル特攻を」

ノッポ「いや、そういうことはできないんだけど」

支部長「使えねぇな」

男「ですね」

ノッポ「いや、お前らはオレの能力知ってたよね!?」

新人「じゃあさっきのはどうやって……」

女王カマキリ「数が増えたところで関係ない、4匹まとめて死ね」

ブンッ!

???「させないよ!」

女王カマキリ「!」グルリッ

ズバンッ!

支部長「お、切られた鉄骨がこっちに」

新人「危なっ」ピョン

ズガラガーン........

???「みんな大丈夫?」

支部長「助かったー」

新人「あの人は?」

ノッポ「彼女がぼくを吹っ飛ばしたりしてた能力の持ち主でぼくの妹のリボンだ」

リボン「隙は作ったからは後はよろしくー」

女王カマキリ「小娘!」ギラッ

新人「!」バッ

男「ここは俺に任せろ」

バンッ!

そう言ったと思ったけど時にはもう既に男の体は天高く跳んでいた
いや、あの早さ、動きは『移動した』の方が正しいのかもしれない
男の手にははいつの間にか某シャーマン王よろしくの馬鹿デカいグローブ状の物がつけられ、眼下に捉えた女王カマキリに向けて突き出されていた

「ぶっちゃけいつでも出来たけど、気分がな。こんな能力でも主人公的な演出で倒してみたいしね」

女王カマキリは気づかない、未だにリボンに気を取られている

「終(しま)いだ」

それは流れ星の如く一閃の光となって女王カマキリの体を貫通した
女王カマキリは何かを言おうと口を開いたが、声は発せられることはなくその体は粉微塵になって消滅した

「あんたもかなりのインチキ能力」

「……そうですかね?」

今見ただけでは男の能力は判らなかったが、あれはどう見ても速さ云々の動きではないのは誰の目で見ても明らかだ
後で根掘り葉掘り、今日早速出された課題の答えでも教えて貰いながらついでに話してもらおう

プルルルル........

ガチャ

支部長「あ、俺だけど。対象の殲滅に成功したから後片付けよろしく」

『了解しました。御勤め御苦労様でした』

支部長「あとさ、新人A・B死んだから遺族手当て頼む」

『承知しました』

ピッ

支部長「さて帰るか、まだお前らもバイト時間ないだしな」

男「分かってますよ」

新人「分かりました」

支部長「お前らもお疲れ、後で上の方に出すように言っとく」

ノッポ「助かります」

リボン「じゃあまたねー」

スタスタスタ........

男「どうでした、初めての業務は」

新人「時給の割にハード過ぎる」

支部長「だよなぁ」

新人「でも、ここが私にとってはちょうどいいから続ける予定」

男「そうですか」

支部長「振り返ってみたけど今日俺なんもしてねぇな」

時は現代

私たち一般人の知らぬところでは当たり前のように突然変異で危険な生物が生まれたり、外宇宙から侵略者がやってきたりしている

これはそんな町の驚異から皆を守ってくれる命懸けのバイトの物語






その1「インチキ効果も大概にしやがれ」 END

次回予告

「一発目で物語の概要やら世界観を伝えきれない情報不足な話は大体打ち切りになるんだよな」

「つまりこれの場合はエターナル?」

「だから次回は説明回になる」

「それは絶対ににつまらない」

「次回『その2ドロップアウトボーイ』ライディングデュエル、アクセラレーション!」

プロフィール

新人

AGE:16・♀

→当所の予定では無口もしくは口数の少ない設定にする予定だったか、書き溜めなしの見切り発信が故にモブが早めに死んだ為喋らざるを得なくなった

転校生

研究所にいたらしい。健全な研究所かどうかは不明

超破壊(イエロー・レイン)
→電気をレーザー状にして撃つ。エネチャージ。
射程は5km。長い

他にもまだまだ能力が!(※エセ科学が面倒なので某ビリビリような電気の特性を生かした能力には多分なりません)

久しぶり過ぎて感覚忘れた……
一応気が向いたら更新予定

近いうちに前と同じ感じの短編立てる予定
そっちのスタイルの方がしっくり来るならこっちは続けずHTML化するかも

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom