ロールシャッハ「Heaven's fall」 (111)

そこは暗闇だった。
死の後には地獄が待っている、そう思っていたが、どうやらそれすら空想だったようだ。




分かっていたはずだ。

運命等と言うものは無く、全てが偶然の塊なのだと。

知っていたのだ。

ならば死後の世界なんてものも、無くて当然ではないか。

ロールシャッハ「何も無いこの暗闇で過ごすというのも、ある意味では"地獄"か。」

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ロールシャッハ「Humm…しかし手記すら無いとは…」

ロールシャッハ「まぁ、何も無い状況を記し続けても意味は無いか…」

???「もし、そこの御仁よ。」

どうやら先客が居たらしい。

ロールシャッハ「…まさか先客が"サムライ"とはな…」

小次郎「お主…なかなか珍妙な顔をしているな…私は佐々木小次郎と申す。…ほう、その顔の模様…動くのか」

ロールシャッハ「…ここは何だ?死後の世界なのか?」

小次郎「…そう思って貰ってかまわんよ。あと、我々よりも先客がおるようだぞ。」

そうサムライが言うと、闇に無数の顔が浮かび上がった。
と言っても、皆ドクロの様な覆面をつけているが…

???「本来ならば、このような自体はあり得ん事だ。」

???「我ら以外のものが"アサシン"として召喚されるという事自体、今までの"聖杯戦争"では起こり得なかった事。」

ハサン「そして何より、まさか聖杯が…」

ロールシャッハ「おい、何をワケの分からない事を言っている。ここは死後の世界だろ。」

ハサン「死後の世界…言い得ては居るが…ほれ、時間切れのようだぞ。」

ロールシャッハ「???」

そうして俺は、光に包まれた…

ー柳洞寺、門前ー

キャスター「…そんな!?私が失敗したというの!?」

光に包まれたかと思うと、いきなりヒステリックな淫売が目の前で喚き散らしていた。

ロールシャッハ「…全く意味がわからん…」

Hummm…ここが日本の冬木市で…今目の前にあるのが柳洞寺という寺院である…という情報が何故か"理解できる"…
そして何より…

ロールシャッハ「何故俺が…日本語を話せる??」

キャスター「サーヴァントは現在の知識を持った上で召喚される…あなた知らないの?いえ…そんな事ありえるわけが…」

ロールシャッハ「よく分からんが…お前の様な淫売が誰なのか興味が無いし、知ろうとも思わない。なので、ここでサヨナラだ。」

キャスター「…どうやら主従関係をわからせる必要があるみたいね。令呪を持って命ず"私の命令に、従いなさい"」

ロールシャッハ「…理解不能だ。誰がお前の命令なぞ訊くか」シュッ

こんなアタマのイカれた女に付き合う義理はない、なので、フックを使ってこの場を離れる事にした。

キャスター「!?そんな!?令呪が通用し…?令呪が、無い!?」

キャスター「…じゃあ私が召喚した"アレ"は、一体なんだというの?」

トリテスト

…フックはあるが、手記とマメが無いのは落ち着かないな…

ひとまず、この"冬木市"という街を歩いてみるか…


ー衛宮邸前ー

…なぜだか、この屋敷に引き寄せられた様な気がする。
いや、正確にはもう一か所、引き寄せられた"洋館"があった。
そこでは何も起こらなかった。
すれ違った少女に、なにか胸の奥を引き裂かれるような思いを抱いたが…

それ以外は特段、洋館で変わった事は無かった。

だが、いかにもというべきか、この日本風の屋敷では違った。

全身を青タイツで覆った男が突っ込んで行くのが見えたからだ。

ロールシャッハ「これが、日本での初仕事になるのか…」

屋敷の中へは、フックを使って潜入。
既に、賊と家主が出くわしたようだ。

すぐにでも向かおうとしたが、家主の少年はある程度の心得がある様で、上手く躱し、逃げている。

ならば、賊がもっとも油断する瞬間…獲物を仕留めようとする瞬間に、俺が賊を[ピーーー]。

ロールシャッハ「…家主が物置に逃げ込んだか…頃合いだな…」


ー物置ー
ランサー「もしかしたら…お前が七人目の」シュッ

ロールシャッハ「…そう上手くはいかないか…」

ランサー「…テメェ…一体何モンだ?」
ランサー「まぁいい。悪ぃな。見られたからには死んでもらうぜ。」

明らかに相手の方が力量は上。
だが、あの少年が逃れられればそれでいい。

そう思い、少年の方を見たがまだ逃げてはいなかった。


少年の真下が光り輝くのを見て、俺は闇に落ちていった。

ー闇の中ー

小次郎「おや?随分と早かったな。御仁よ。」


俺は、何故かあの闇の中に居た。
俺は狂ってしまったのか?

小次郎「御仁よ。何が何やらわからぬ、という様子だな。」

ロールシャッハ「あぁ。その通りだ。サムライは、相手の顔を見れば何でもわかるのか?」

苛立ちからか、皮肉めいた事を言うと

小次郎「"ここに居る者"は皆、お主を良く知っているとも。」

ロールシャッハ「…どういう意味だ?」

小次郎「なあに、直にわかる事だロールシャッハ殿。」

何故、このサムライは俺の名を知っている。

小次郎「…そろそろ時間か…では、私がお主に力を貸そう。」

そしてまた、光に包まれる。

次の瞬間俺の目に映ったのは、賊が俺の腹に、赤い槍の先を突き刺す寸前だった。

ロールシャッハ「!?」

俺は、無意識の内に槍を掴み、腹が貫かれるのを防いでいた。

…無意識?

ランサー「ほう…中々やるじゃねぇか。だが、アンタの相手は後みたいだ。」

そういうと、賊は庭に向かって跳んだ…
なんだあの跳躍力は…

???「マスターを助けて頂き、感謝します。」

いつの間にか、背後に鎧を纏った少女が立っていた。

セイバー「後は私に任せて、しばしお待ちください。」

そういうと、少女も庭に向かって跳んだ。

???「あ、あの!」
士郎「さっきはその…ありがとうございます!!」

ロールシャッハ「…何故逃げなかった…少年。」

士郎「あ、俺、衛宮士郎って言います。…逃げなかった理由は…腹が立ったんです。」

士郎「俺や貴方の命をどうとも思わない…あの男に…」

ロールシャッハ「…そうか」

俺の見た光景は、まさに超人の戦いだった。

賊は槍を使い少女を追い詰めようとするが…少女の扱う武器が見えん。

なるほど、だから賊は本来の戦い方が出来ず…逆に追い詰められているのか。

…だが、何故あの動きを、俺は目で終えている?

ランサー「ゲイ…ボルグ!!」

賊がそう叫んだ瞬間、槍が伸び、少女に刺さった。
だが、急所には刺さらなかったようだ。

ランサー「そこの男にも言っておく。もし俺を追うなら…決死の覚悟で挑んでこいっ」ギリッ

無論、そのつもりだ。
が、流石に

ロールシャッハ「理解が追いつかんな…」

士郎「え?」

どうやら、口に出してしまったようだ。

士郎「あ、そうですよね。いきなりこんな…あの女の子も気になるし、俺はあとから行くんで、良かったら向こうで休んでてください。」

そう言って俺をリビングに案内した矢先

セイバー「マスター、どうやら外に他のサーヴァントが居るようですので」

そう言うと、人間が飛ぶには余りにも高すぎる塀を飛び越えていった。

士郎「え!?いや待てって!?」
士郎も後を追っていった。

…余りにも、情報が少な過ぎる…

十分後に、士郎と少女が帰ってきた。
新たな客人を連れて。

???「・・・衛宮くん。この変質者は誰なのかしら?」

赤いコートを羽織った少女が、俺を指差しながら言い放った。

ロールシャッハ「いきなり変質者呼ばわりとは・・・豚のように結んだ髪から察するに、脳みそが家畜並と見える。」

あの髪型はツインテールという・・・どうでもいい情報が頭に入ってきたが、この女は豚だ。
それ以外に無い。

凛「・・・察しが悪いようだからハッキリ言ってあげる・・・どこの誰だか知らないけど、出て行きなさい。」
士郎「ちょっと待ってくれ遠坂!!この人はさっき、俺を助けてくれたんだ!」

・・・俺とした事が、大切なことを忘れていたな。
ロールシャッハ「挨拶が送れたな、衛宮士郎。俺の名は、ロールシャッハだ。」
”士郎の方を向いて”自己紹介を済ませる。

凛「ロールシャッハ?なにそれ。その顔に巻いている布切れも、ロールシャッハに掛けてるわけ?痛ったいヤツねぇ~。」
ロールシャッハ「・・・先ほどから気になっていたのだが、士郎。日本の豚は言葉を発するのか?それとも、こういう鳴き声なのか?」
凛「・・・本っ当にアッタマきた!!アンタみたいな変質者なんてねぇ!!」

アーチャー「待て、凛。一般人に魔術を使う気か。」

アーチャー「マスターが失礼したな、ロールシャッハ。私の事は、アーチャーと呼んでくれ。」

セイバー「挨拶が遅れました、私の事はセイバーと呼んでください。」

この二人は、士郎と同じくマトモな人間のようだ。
少し安心する。

ロールシャッハ「Humm…アーチャーにセイバー、そして豚か…」

豚を見ながら皮肉混じりに言うと、流石に観念したようだ。

凛「あーもー!!悪かったわよ、いきなり変質者呼ばわりして!!私は遠坂凛!!豚呼ばわりは辞めて!!」

ロールシャッハ「…最初から、そうすればいいんだ。遠坂凛。」




それからは、この街で何が行われているかを聞く事となった。

聖杯戦争…
サーヴァント…

俺が最初に浮かんだ言葉が

ロールシャッハ「狂っているな」
凛「…それ、どういう意味かしら?」

どうやら、口が滑ってしまった様だ。

ロールシャッハ「狂っている。自分たちの願いを叶うため殺し合い、一般人に見つかれば口封じの為に[ピーーー]。酷く自己中心的で、反吐が出る。」

俺の言っている事に反論出来ないようで、遠坂凛は口を閉ざした。

セイバー「…気になったのですが…あなたはそもそも、何者なんですか?」

俺が何者なのか。
哲学的な問いの様に聞こえるが、この世界における俺は、一体何者なのか。

少なくとも、"人間"という枠に留まっているとは思えない。

故に、サーヴァントという事になるのだろうか。

アーチャー「少なくとも、サーヴァントでは無いな。」

いきなり、浮かんだ答えを否定された。

凛「…そうね。もしロールシャッハがサーヴァントなら、私が気付かないわけが無いし、そもそも魔翌力が感じられない。」

士郎「サーヴァントは、マスターの魔翌力を必要とするからか?」

凛「その通りよ、衛宮くん。」

ならば、俺は結局の所…
ロールシャッハ「ただの一般人…という事になるのだろうが…」

凛「…何よ。何か言いたげね?」

普段の俺ならば、決して自分の事は話さないだろう。
だが、今は余りにも情報が少な過ぎる。

なので、所々を掻い摘んで話す事にした。

凛「…あなたを呼び出した女の事は気になるわね。でも、ニューヨークにあなたみたいなヒーローが居たなんて、初耳よ?」

それは、お前がモノを知らないだけだろう。
と言いそうになったが、寸前で堪えた。

先程から士郎が、何やら小型の機械を操作している。

士郎「…う~ん。確かに、ニューヨークにヒーローが居た、なんて事実は無いようだぞ。ロールシャッハさん。」

そう言うと、士郎は機械を俺に向けた。

ロールシャッハ「…これは…携帯電話か。」

電話だけでなく、メールやインターネットで情報を調べる事が出来る…か。
調べた結果出なかった、という事は…

凛「アナタ、嘘を付いているわね?」

遠坂凛が、嬉々とした声でそう言った。
非常に、嫌味ったらしい。

士郎「いや…でもただの一般人が、あのサーヴァントの攻撃を防ぐ事が出来るか?それも、素手で槍を掴むなんて。」

凛「…見間違い…ってわけじゃないわよね、彼が居なかったら衛宮くん死んでただろうし。」

アーチャー「ならば、"ロールシャッハは、異世界から召喚された"という結論はどうだろうか?」

凛「…つまり、サーヴァント召喚に失敗して異世界人を呼び出してしまったって事?それ、ドジの範疇を越えてるわよ…」

お前が言うか、という目をしたアーチャーが遠坂凛を見つめている気がする…

士郎「だとすると、ロールシャッハさんの世界ではヒーローが悪人を懲らしめて、大活躍してたってことかぁ~。」

輝きに満ちた瞳で、コチラを見つめる。
だが、現実は

ロールシャッハ「そうでもないさ。」

そう呟いた瞬間、沈黙が訪れる。

俺が端的に"ニューヨークでヒーロー活動をしていたが、ある日突然、柳洞寺の女に召喚された"としか話していないから、俺の世界の結末を彼らは知らない。

"死体の上に築かれた平和"

こんな選択を、彼らがしない事を望む。

これから、教会に向かうのだそうだ。
なんでも、聖杯戦争に参加するために、管理人の似非神父とやらに会う必要があるのだそうだ。

ロールシャッハ「俺は、ここで待つ事にする」
そう言って、教会の前で立ち止まった。

何故だろう、酷くきな臭い。
教会そのものも"似非"ではないだろうか。

セイバー「では、私もここで待ちます。」

黄色い雨合羽を着せられたセイバーが言う。
ヨロイの上に雨合羽…酷くシュールだ。

士郎「じゃあ、言ってくるよ。」
士郎と遠坂凛は、教会に入っていった。

セイバー「…一つ、訊きたい事があります。」
ロールシャッハ「…何だ?」

セイバー「もし、貴方の手に聖杯が渡ったとして、貴方は元の世界への帰還を願いますか?」

…俺は、Dr.マンハッタンによって殺された筈だ。
死した人間が、元の世界に戻った所で意味はない。

そもそも、俺はあの世界を否定して殺されたのだ。

ロールシャッハ「さあな。その時に考えるさ。だが、願うならば"聖杯の破壊"だな。」

ビクッ…とセイバーが反応した様に見えた。

ロールシャッハ「先程も言ったが、俺は聖杯戦争そのものを否定している。自分の願いのために他者を殺す、その事でもって機能する聖杯、全てが狂っている。」

聖杯と言うものを、俺は見た事が無い。
だが、その存在自体が"どうしようもない悪"に感じて仕方がない。

セイバー「やはり…貴方は似ている…」

ロールシャッハ「似ている?」

セイバー「…私が聖杯戦争に参加するのは、今回で二度目になります。」

遠坂凛曰く、聖杯戦争の参加者は、聖杯によって導かれる…だったか。
だとしたら、偶然とは思えない。

ロールシャッハ「この世に"運命"等というものは有りはしない。だが、"偶然"とは思えんな。」

何か、作為的な物すら感じる…

セイバー「前の聖杯戦争において、私のマスターの名は"衛宮切嗣"でした。」

衛宮…なるほどな。

セイバー「今にして思えば切嗣は、目的の為には決して手段を選ばない"信念"のような物があった。」

セイバー「どんなに非道で、残酷な手段であっても、聖杯を手に入れる為ならば何でもしました。」

ロールシャッハ「…俺には、そいつが悪人にしか思えんな。」

正直な感想だった。
自分の願いのために、荒ゆる手段を使う。
俺は、そういう奴等を狩り続けてきた。

セイバー「ですが…切嗣は私に、聖杯の破壊を命じました。もはや、手に入れる寸前であったにもかかわらず。」

ロールシャッハ「…」

セイバー「だから、アナタに会って、話して、考えるようになったんです。」

セイバー「切嗣には切嗣の正義があって、それこそ何かを救う為に聖杯を望んだのではないかと。」

しかし、それを破壊した。
何故か。

その答えを、俺は知っている。

ロールシャッハ「恐らく、聖杯は衛宮切嗣の信念と相反する物だったのだろうな。」

"願い"は叶う。
だが、その願いに辿り着くまでに貫いてきた"信念"と反する。

だから、聖杯を壊そうと考えた…

いや、そうだろうか?
聖杯が信念と相反さないものであっても…

俺はあの凍てつく大地の上で…
何をした?

それからすぐ、士郎達が戻ってきた。

…士郎は、聖杯戦争に参加するそうだ。
だが、彼は自身の願いの為に人を殺すようなクズでは無い。

誰かがそうする前に、聖杯を悪用させない為に戦うと言っている…
真っ直ぐな、恐ろしい位に真っ直ぐな少年だ。

その帰り道…

???「こんばんは、お兄ちゃん。」

雪のように白く透き通った少女と、何かを決意したかの様な目でこちらを見る、巨人に出会う。

士郎「…あ、昼間の。」

セイバー「…士郎。下がって。アレはサーヴァントと、そのマスターです。」

それを聞いた途端に、小さな怒りが地のそこから湧き出ているのを感じた。

まだ10歳程の少女が、殺し合いに参加させられている。
ここまで腹が立ったのさ、児童ポルノの存在を知った時以来だ。

凛「…随分と派手なサーヴァントじゃない、あんた。」

イリヤ「初めまして、凛。私は、イリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと言えばわかるかしら。」
凛「アインツベルン!?」

名乗りを一通り終えた後、イリヤは俺を見た。

イリヤ「…アナタは?」
ロールシャッハ「俺は、ロールシャッハだ。」

イリヤ「ふ~ん…アナタ…」
イリヤは考え込んでいる。

その間、巨人はずっと俺を見ていた。
狂気をはらんだ雰囲気とは裏腹に、彼の瞳からは信念を感じる事が出来た。

イリヤ「…帰るわよ、バーサーカー」
そういうと、バーサーカーと呼ばれた巨人はイリヤを肩に乗せ、この場を去っていく。

イリヤ「あっ!!お兄ちゃん、私のサーヴァントの真名を教えてあげる!!」

真名…サーヴァントの本来の名。
かつての英雄たちの名。

まさに、歴史の道標とも言うべき者達の名だ。
それを知られことによって、弱点を推察される可能性があると遠坂凛が喚いていたが…

イリヤ「私のサーヴァントはね、ヘラクレスなの!!」

嬉々として叫び、イリヤは闇に消えた。

凛「…メジャー中のメジャーね。そら真名言っちゃうくらい余裕あるわ…」

ロールシャッハ「士郎。イリヤとは顔見知りなのか?」

士郎「いや。昼間、すれ違ったときに言われたんだ。お兄ちゃんって。」

向こうは士郎の事を知っているのか…

セイバー「…」

彼女は、隠し事が下手だ。

士郎「ところで…なんだけどさ、ロールシャッハさん。」

ロールシャッハ「なんだ?士郎。」

士郎「しばらく、ウチに住みませんか?」

そして俺は、士郎の家に招かれる事となった。

遠坂凛が、しきりに"風呂"を勧めてきた。
俺が"必要ない"と応えると

凛「えーと…ほ、ほら!アメリカじゃ、湯船に浸かるなんて事はしないんでしょ?どういう理由であれ、せっかく日本に来たんだから、日本の文化に触れとくのも、悪くないでしょ?」

凛「ぜっったいに、入るべきよ!!」

ハッキリと"臭うからどうにかしろ"と言わない所をみると、アレでも俺に気を使っているのだろう。

もう少しからかってやるのも面白いと思ったのだが

士郎「そうだな、じゃあロールシャッハさんが風呂に入っている間、俺は食事の準備でもするよ。と言っても、簡単な物しか出来ないけど。」

と家主がいうので、従う事にした。
衣類は洗濯する必要が無い事を伝えると、凛がギョッとした表情をしたかと思うと、その後すぐに安堵の表情を見せた。

大方、俺の衣類に染み付いた匂いが残る事に絶望し、しかし誰も俺の衣類に触れる必要が無くなった事に安堵したのだろう。

士郎は実直で正義感の強い少年で、遠坂凛は表情豊かな歳相応の少女。

そんな彼らが、殺し合いに参加させられている事に改めて怒りを感じた。

ロールシャッハ「…最後にシャワーを浴びたのは…」
そう、牢獄に囚われていた時だ。
冷たい水を、俺が捕らえたクズどもが住まう場所で浴びた。

ロールシャッハ「…体を洗ってから、入るべきだろうな」

現代の情報が脳内に入ってくるといっても、それくらいの事は理解出来た。

シャー…

ロールシャッハ「…ボディソープ…シャンプー…これはトリートメントか?」

…士郎はゲイなのか?

いや。
この時代では普通の事だ。
石鹸すら殆ど使わない俺にとっては慣れん事だが…

ロールシャッハ「…」ゴシッゴシッ

いくら洗おうが、石鹸の匂いでごまかそうが、あの日の事は決して消えない。

ロールシャッハ「…」シャー…

俺が、ロールシャッハとなったあの日の事は…

ロールシャッハ「…」チャプッ

しかし、ここまで落ち着きを感じられるのは、あの日から初めての事だ。
ロールシャッハになる前の、今の俺の顔と出会った時以来かもしれない。

士郎「あ、ちょうど良かったみたいですね、サイズ。」

セイバー「よくお似合いですよ、ロールシャッハ。」 

口々に、俺のパジャマ姿の感想を述べる中

凛「…クッ…ククッ…そ、そのマスクは、は、外さないのね…ククッ」ブルブル

笑いたければ笑え

士郎「こんなものしか用意出来なかったけど、皆も良かったら食べてくれ。」

凛「湯豆腐…なかなか渋いわね。」

士郎「実は、さっきのイザコザの前に夕飯を済ましちゃっててさ。朝食のことも考えると食材がギリギリで…そういえば、アーチャーは?」

凛「アーチャーなら、霊体化させて家の周りを警戒させてるけど」

士郎「そっか、一応全員分の用意はあるんだけど…」

そうして、食事が始まった。
俺はマメ缶の様な缶詰があれば良いと言うと

アーチャー「ロールシャッハよ、豆腐は大豆で出来ている。」

その情報は先程頭に流れ込んできたが、やはり不思議だ。
これがマメとは。

凛「というか、食べる時くらい外しなさいよ、マスク。」
ロールシャッハ「断る。これが俺の顔だ。」

凛「とか言いながら、アンタ、その顔を捲りながら食べてるじゃない!」
士郎「まあまあ…で、味はどうですか?」

ロールシャッハ「…すまんな、士郎。普段からロクな食事をしていなかったので、味には疎いんだ。」

凛「味オンチって事ね。」
何とでも言え。
食事なぞ、マメ缶と角砂糖があれば良い。

セイバー「ハムッハフッ…」

本来ならば、サーヴァントに食事は必要ないらしい。

だが

士郎「せっかく用意したんだしさ」

と、士郎がセイバーに食事を勧めてから、あの様子だ。
ニューヨークの住人も、不味いバーガーを貪り食う奴ばかりだったが…

セイバー「士郎!!とても美味しいです!!」
士郎「そっか、嬉しいよ。」

セイバーの祖国は、余程の飯の不味さだったのだろう…

凛「…提案なんだけど」
士郎「なんだ?急に。」

凛「私達と、同盟を組まない?」

ロールシャッハ「…意外だな。明日からは敵同士だ、とでも言うと思ったが。」

凛「正直な話、本来ならそうしてるでしょうね。そうさせない理由が…」

アーチャー「君、と言うわけだ。ロールシャッハ。」

なる程…彼らからして見れば俺の能力は未知数で得体もしれない…

アーチャー「私個人としては、君自身に興味がある。極めて直感的な話だが、何か"繋がり"のような物が、僅かだが感じる。」

セイバー「…奇遇ですね、アーチャー。私も彼を一目見た時から、言いようの無い"親近感"のような物を感じているのです。」

…やはり俺がここに存在する事と、聖杯戦争は関係があるのだろうか…

凛「じゃあ、難しい話は終わり!残りをチャッチャと片付けちゃいましょ!」
凛「あ、あと衛宮くん。私、今日からここに住まわせて貰うわ。」

士郎「…え?」

ロールシャッハ「…まだ未成年の学生が同棲だと?遠坂凛、文字通り"メス豚"になる気か?」

凛「豚はやめてって言ったでしょ!!…あのね、あなた達がこれから相手にするのは"魔術師"と"英霊"なのよ?今のままの士郎じゃ、危ういのよ。だから、
私が士郎に魔術をレクチャーするの。」

凛「それにこの家、無駄に広いじゃない。間違いなんて起こりゃしないわよ。」

士郎「いやいや、勝手に話を進めるなよ。そもそも荷物とかは」

凛「アーチャーに持って越させるわ。それに、同居するんだからちゃんと役割も果たすわよ。料理は交代制にしましょ。」
アーチャー「ハァ…」

いきなり同居人が4人も増えるとは、士郎には同情する…

それからがまた大変だった。
セイバーが事もあろうに士郎と同じ部屋で寝ると言い出したのだ。

ロールシャッハ「…セイバー。俺はお前だけはマトモな女だと思っていたが…」

凛「アンタねぇ…」

セイバー「いくらロールシャッハと言えども聞き捨てなりません!そもそも私は女など、とうに捨てた身です!!」

士郎「いや、いくら何でも同じ部屋ってのは困るよ。」

結局、士郎の部屋の隣に俺とアーチャーが住む事になり、セイバーは凛が住む部屋の近くにある空き部屋に住む事になった。

怪しい動きをした際に、マスターを人質に出来るという名目でアーチャーが提案し、セイバーがしぶしぶ了承した。
男女の居住スペースを離す事が出来たので、アーチャーには称賛を贈りたいところだ。

そして俺は、慣れない"布団"という寝具で身を包み、目を瞑った…

士郎「…しっかし今日は大変だったな、藤ねぇや桜には何て言い訳しよう…」

まぁ、アーチャーは霊体化出来るし。
ロールシャッハさんとセイバーは…爺さんの古い知り合いでいいか…
いや、ロールシャッハさんのマスクはどう言い訳すれば…

士郎「そういえば、ロールシャッハさんのマスクの柄って動くんだよな…」

…事故後の整形手術で、あのマスクをつけているってのは…さすがに失礼だよな…

とりあえず、朝起きてから考えるか。








…ここは、何処なんだろう。
小高い丘には、幾本もの剣が突き刺さり、幾人もの兵士たちが朽ちている。

その丘の頂上で、兵士たちを見つめているのは…

士郎「セイ…バー?」

???「君たちには、彼の事も知ってもらう必要がある。」

誰かがそう言うと、一瞬真っ暗になった。
そして今は、さっきとは全く違う雰囲気の場所に居る。

士郎「…なんだ?ここ。何かの工場?」

ワン!ワン!ヴゥ~…

何処かで犬たちが啼いている…

工場の中は、廃墟みたいだけど誰かが住んでるみたいだった。

士郎「住めば都ってやつなのかな?」

犬「ワン!ヴゥ~…ワン!ワン!」

二匹の犬が何かを奪い合っているのが見えた。

士郎「ハハ…勝手に住んで、しかも犬まで飼っちゃうなんて凄いな…」

正面の入り口に周り、入ると朽ちたマネキンが幾つも見えた。

士郎「うっ…何か、こういうの不気味だよな…」

そのマネキン達と共に、焼却炉のような物が一つある…


開けたくない…


そう思ってるのに…
焼却炉の扉が開き、中から女児向けのプリントが施された布切れを見つける。

士郎「…どういう…事だよ…」

こんな場所に女の子が住んでるなんて思えないし、ましてや焼却炉で女の子の服を焼くなんて…

普通なら考えられない…



そして、キッチンでナタを見つける。
それを手に取り、ふと視線を下にずらすと、かなり深い切り傷が何本もあった…

犬「ヴゥ~…ワン!ワン!ワン!」

この部屋の窓から、犬が何を奪い合っているのかがハッキリとわかった。

士郎「…骨…」

窓には薄っすらとロールシャッハさんが映っていた。

そうか…
これはロールシャッハさんの過去なのか…

ロールシャッハさんの手には、ナタがにぎられている。

そのまま外に出て、赤く血走った目をした犬に、そのナタを振り下ろした。

それからずっと、血だらけの犬の死体を抱えたまま、ロールシャッハさんは廃墟に隠れた。

士郎「…」



男「フレッド?バーニィ?どこダァ?」

ガシャーン!!

男「うわあああぁああ!!」

犬の死体を叩きつけたのがロールシャッハさんなのか、それとも俺なのか、もうわからなくなっていた。

ガシャーン!!

男「ぎゃああああああ!!」

目下には、みすぼらしく薄汚い男が、犬の死体の下敷きになって喚いている。

俺じゃない…女の子とは関係ない…とかなんとか言いながら…

普通なら

「女の子の事なんて一言も言ってない!!」

と怒り狂って、この男をぶん殴るか、殺してしまうかも知れない。

でも、ロールシャッハさんはそうしなかった。

焼却炉があった部屋に男を鎖で繋ぎ、灯油を撒いた。

そして、ノコギリを一つ男の足下に置いて、火を放った…

男「嫌だあぁあああ!!熱ぃぃぃ!!ガッ!ゴホッ!」

醜い悲鳴が止んでもなお、天に上っていく煙を見続けていた。

士郎「…グスッ…こんな…どうして…ヒック…」

俺は、かつての事を重ねながら思った。

"神様なんて、居やしない"

だから彼は、「ロールシャッハ」になったんだと理解した。

風呂に入り、食事を摂り、寝床に就く。
そして朝に目覚める。
当たり前の事なのだろうが、俺にとっては酷く新鮮だった。

今まで、睡眠はとっていたつもりだったが、どうやら違っていたようだ。

ロールシャッハ「HUM…そろそろ着替えたいな…」

だが、士郎は部屋に居ないようだ。
朝の五時だというのに。

…昨日の今日だ。
あの賊が再び襲ってきた可能性もある。

…アーチャーが居ない。

ロールシャッハ「嫌な予感が当たっていなければいいが…」

昨日の事を思い出し、あの倉庫に向かう。

すると

士郎「トレース…オン…」

…これが魔術というものなのか。
俺は、話し掛ける事もせずに、ただひたすら士郎の魔術に魅入っていた。

???「あ、あの…どちら様ですか?」

後から声がしたので振り向く。

ロールシャッハ「…あの洋館の…」
桜「え…?初対面…ですよね?」

…あの時は夜だった。
こちらに気がつかなかったのだろう。

しかしあの時の彼女は、まるで漆黒を纏ったような雰囲気だった気がするが…

士郎「あ、ああ、桜。おはよう。」
桜「おはようございます、先輩。あの、コチラの方は…」

水玉柄のパジャマにマスク。
士郎は、一体どう説明するのだろう。

士郎「その事はさ、皆が揃ってからにしよう。」
桜「皆?あ、藤村先生ですね。」

士郎「いや…う~ん…まぁそう言う事にしとこう。」

そして士郎は、桜と共にキッチンへ向かう。
…士郎がゲイではない事がわかったが、まさか家に女を簡単に招き入れる様な男だったとは。

後で話す必要があるな。

凛「…おはよう」

自室に帰る途中、遠坂凛と出くわす。
彼女は、ひどく淀みきった目で挨拶をしてきた。

ロールシャッハ「眠れなかったのか?」

凛「…それもあるわ。」

凛「一つ、質問しても?」
ロールシャッハ「あぁ…別にかまわんが。」

凛「…もしアンタの秘密を、アンタが知ってる奴が勝手にバラしたらどう思う?」

…返答に困る質問だ。

ロールシャッハ「…軽蔑するだろうな。バラした奴を。」

凛「そう…」

何が言いたかったのか、よく分からない。

ロールシャッハ「俺からも質問がある。アーチャーはどうした?」

凛「朝になったら霊体化するように言っておいたの。これから人が増えるわけだし。」

まだ、誰かが来るのか?

自室に戻り、これからの事を考える事にする。

真っ先に浮かんだのが、あのイリヤという少女を保護する事だ。
あの少女も魔術師なのだろうが、いくら何でも幼すぎる。

保護をした後で、イリヤを聖杯戦争に参加させたクズを見つけ出し、殺す。

聖杯は願いを叶える。
ならば、少女をその奪い合いに参加させる理由は何か。

簡単な事だ。
奪う為だ。
用が済めば殺す、そう考えているかもしれない。

だが。
その為にはヘラクレスと戦う必要があるだろう。

ロールシャッハ「HUM…確実に負けるだろう。しかし…」

俺は気になっていた。
ヘラクレス、彼は悪党には見えなかった。
狂気を纏いながらも、彼の瞳には信念が宿っている様に思えたからだ。

士郎「ロールシャッハさん、朝食の準備が出来たんで来てください。」

ロールシャッハ「…わかった。」

リビングに向かう途中、セイバーと出くわした。

セイバー「おはようございます、ロールシャッハ。」
ロールシャッハ「…あぁ。」

セイバー「先ほど、士郎の家族だという女性とお話をしたのですが、中々に快活な方でした。」

ロールシャッハ「ん?俺も女とあったが、どちらかというと大人しい部類の人物だったぞ?」

セイバー「…アレを大人しいと言うならば、世の人間は皆口をきかないに等しいですよ…」

やや疲れ気味の様子でそう言った。
…しかし、俺からしてみれば、アレを快活だというならば遠坂凛は狂人に等しいと言う事になる。

ロールシャッハ「これから顔合わせのようだから、どちらの目が正しいか分かるだろう。」

そう言って俺たちは、リビングに足を踏み入れる。

リビングは、極めて異常だった。
何故ならば、霊体化しているアーチャーを除けば男は俺と士郎だけ。

あとは皆、女だった。

藤村「セイバーちゃん!と…え~っと…ど、どちらさま?」
桜「先ほどは失礼しました。…そちらの女性はどなたですか?」

なるほど、俺とセイバーが顔を合わせた人物は別々の人物だったのか。
しかし、士郎。
あまりにも手癖が悪い。

…士郎が、ゆっくりと入室する。

士郎「え~っと…ゆっくり、順を追って説明を」
凛「ちょっと、士郎!朝食の準備が出来たなら私も読んでくれたっていいでしょ!?」

藤村・桜「…」

士郎「まず、何故遠坂がここに居るのか説明する。」
凛「それには及ばはいわ。私から説明する。」

凛「実は、ウチに通ってる水道管が破損してしまったみたいで、改修中なの。」
凛「それで、今はホテル暮らしをしてるって話したら、空き部屋を使えば良いって言ってくれたのよ。」

桜「…先輩から…言ったんですか?」
士郎「えぇ?ああ、まぁ…」

凛「幸い、"今は保護者も居る"って事なんで、お言葉に甘えたってわけ。藤村先生、何か問題あります?」

藤村「え?ん~…じゃあ、問題無し!!」
桜「せ、先生?」

藤村「まぁまぁ、話は最後まで訊きましょう。それに、いっちばん気になってるのは…」

俺を指差している。
当然の事か。

士郎「じ、じゃあ、俺から説明するよ。」
士郎「彼は…"シャッハさん"だ。」

凛(さすがに"ロールシャッハ"じゃあねぇ…あのマスクだし…)

士郎「そして、その隣に居るのが、シャッハさんの娘さんで"セイバー"だ。」

セイバー「!?」

藤村「セイバーちゃんは分かるけど、シャッハさんも、その…外国人なのね…」
ロールシャッハ「祖国はアメリカだ。」

士郎「実は、シャッハさんは爺さんの古い知り合いなんだ。わざわざ訪ねてきてくれたんだし、こっちに居る間はここに住んでもらおうかなって…」

藤村「その話は、取り敢えず置いておきましょう。それより…」

藤村「何でこの人ヘンなマスク被ってんのおぉ!?しかも、なんか蠢いてるし!!お姉ちゃんでも、さすがに怖いよおおぉ!?」

士郎「これにも、実はワケがあるんだ。」
士郎「二人は、治験って知ってるだろ?」

桜「たしか…お薬が正常に働くか、そして安全性も保たれているかを確認する為の試験ですよね?」

士郎「あぁ、そうだ。で、このマスクも実は"治験"なんだ。」
藤村「お薬じゃなくて、マスクの治験?お姉ちゃんそんなの、聞いた事ないぞ★」

士郎「さっき自分で行ったじゃんか、藤ねぇ。これは、模様が動くマスクなんだ。」
士郎「このマスク、なんでも感情によって模様が変わるんだ。つまり、つけている人の表情になるわけなんだ。」

士郎「このマスク、顔に大怪我を負ってしまったりした時に、その治療中につけるものらしいんだ。ね?シャッハさん?」

ロールシャッハ「…あぁ。その安全性を確かめる為に、食事中でさえつけていなければならない。」

藤村「食事中も?」
ロールシャッハ「ああ、なのでマスクを口が出るように捲りながら物を食う。」

藤村「それは大変ですねぇ…先ほどは失礼しました。お二人共、どうぞこの家を使って下さい。」

…そもそもマスクなぞに治験をする必要があるのか、と訊かれたらどうするつもりだったのかは、考えない事にしよう。

それからは、朝食を摂りながら二人に士郎との関係を確認した。

間桐桜、元は彼女の兄と士郎が友人関係にあり、そこから知り合ったらしい。
その兄について訊くが、士郎も苦笑するだけだった。

問題は藤村だ。

彼女は、切嗣に対する思い入れが強く

藤村「で、シャッハさんは、どういう経緯で切嗣さんと知り合ったの?」

と、しつこく聞いてくる。
知らない人物の事など、分かるはずもないので

ロールシャッハ「よく、"娘"の面倒を見てくれていた。それだけだ。」
と、セイバーに興味が行くように仕向けた。

…セイバーからの視線が刺さる。

どうやら藤村は、俺達が切嗣と友人関係にあるようだから受け入れたようだった。
セイバーは、切嗣の事を良く思っていない節がある。

凛「本当に、マスクを被ったまま食べてんのね…」ボソッ

ロールシャッハ「マメと角砂糖を食う程度には困らん。」
そう言って、スープを啜ると

凛「そのスープにも、大豆が入ってるわ。あと、さっき魚にかけてた"醤油"も、元は大豆よ。」



今までに無い程の騒がしい朝食が終わり、士郎達は登校する。

驚くべき事に、藤村は彼らの通う学校で教師を勤めているという。
…この国の教育に、些か不安を感じる。

そして、ようやくいつもの服装に戻る事が出来た。


ロールシャッハ「…」

そのまま、外に出る事にする。
今は朝の八時だ。
昼時まで、情報を収集する事にする。

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