【艦殺(艦これ)】アトロオーシャン・イン・ネオサイタマオーシャン (900)

◆新スレ◆

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442646537

(新規の読者の皆さんへ : このSSは艦これとニンジャスレイヤーがカラテ化学反応を起こして生まれたなんかです。なお実際のげんさくとは実際異なる部分があるのでごりょうしょうください。)

◆前作な◆
ウェルカムトゥ・ネオサイタマ・チンジフウェルカムトゥ・ネオサイタマ・チンジフ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433088222/)
ラスト・クチクカン・ガール・スタンディング
【艦殺(艦これ)】ラスト・クチクカン・ガール・スタンディング - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434927358/)
なお最初に更新する話はラスト・クチクカン・ガール・スタンディングに収録されている作品の続きなので見なければ分かりませんと思う。なので今すぐカンムスオン、しよう!以上です。◆蟹◆

◆なお更新メントは明日な◆

◆◆◆◆夜スリケン◆◆◆◆

【システム・オブ・チンジフ・ストラグル】続き

両陣営からシャウトと共にカラテ砲が一斉射撃された!次々と空中で衝突し相殺爆発されるが逸れた砲弾も少なくない、双方ともに散会して回避する。両陣営無傷!「クローンヤクザ妖精ちゃん達!てぇーッ!」「「「「ざっけんなこらー!!」」」」キヌの合図を受けたクローンヤクザ妖精達はヤクザガン連射!BLAMBLAMBLAM!!ナムアミダブツ!さっそく数の暴力だ!

「私にお任せあれ!イヤーッ!」仲間達を守るようにインターラプトしたのはフソウだ!次々と弾丸がフソウのカラテ艤装に着弾するがほぼ全てがはじき返された!

彼女のフジサンめいたカラテ艤装は破壊力だけでなく防御力にも優れる。その装甲板には「艦娘を守るオムラ社の装甲板」と大きく刻印されている。看板に偽り無し!「「ぐわーっ!」」不幸にも跳弾が当たってしまったクローンヤクザ妖精が海に落下し爆発!インガオホー!

「オムラのインダストリの前では無力ですわ!ヤヨイ=サン!」「イヤーッ!」ヤヨイはフソウのカラテ艤装を踏み台にして大きく跳躍、空中で手首の鎖につながれたタタキブツシテタオスをなぎ払うように投擲する!「「「「あばーっ!?」」」」一撃で多数のクローンヤクザ妖精が海にハエめいて叩き落された!

しかしヤヨイの攻撃はこれだけでは終わらない!自由な方の腕で手近なクローンヤクザ妖精の頭を掴むとそれを他のクローンヤクザ妖精に力任せに投げつける!「イヤーッ!」「ぐわーっ!」「あばーっ!」ヤヨイは跳躍を繰り返しながらタタキブツシテタオスを投擲しつつ、素手のカラテでクローンヤクザ妖精を次々と爆殺してゆく!ゴウランガ!殺戮の申し子!

◆寝休憩、短くてすまんな、本当にすまん◆

◆寝すぎた、再開する◆

「ファック!?アイツマジで駆逐艦なのかよ…化物じゃねーか!」キソは戦場を飛び回るヤヨイを見て悪態をつく。「ひるむな者共!どうせクローンヤクザ妖精達はソウル吸収装置で集めた後に再生チェンバーで蘇る!それに替えならいくらでもいるのじゃ!」トネの指示を受けた部下たちはそれぞれの敵に向かってブースト加速し肉薄!無論ネオサイタマの艦娘たちもそれに応戦する!

「姉貴だけでなくアタシ達の事も忘れんなよッ!」カコはすでにクローンヤクザ妖精の包囲網を突破しキソに接近していた!「シューッ!シュシュシュ!」そのままキソに殴りかかる!

「イヤーッ!」キソは左右の連打をブレーサーでガード!これはカコのボックス・カラテの基本ムーブメントである!鋭い連続パンチを受けたキソは防戦一方を強いられる。

「おらおらおらーッ!防御してるだけか!?」カコの嵐めいた乱打は止まらない!「そうだ…防御してるだけだぜ…」しかし防御しつつもキソは不敵な笑みを浮かべている。そして次の瞬間…カラテストレートを受けたキソのブレーサーから火炎が噴き出した!「グワーッ!?」思わず怯むカコ!

「次はコッチの番だな!オレのカトン・ジツを見せてやるぜーッ!イヤーッ!」キソは炎を纏ったカラテパンチを繰り出した!「グワーッ!」カコはガードするがガードの上からも火炎が彼女にダメージを与えている!アツイ!

「イヤーッ!」キヌに応戦していたアガノがキソに向かってゼロセンを投擲するる。援護攻撃だ!「ゼロセン?…要らないねェー!そんなモンは!イヤーッ!」しかしキソのブレーサーから噴き出した火炎が壁めいて立ちはだかった!ゼロセンは空中溶解!「ファック・オフ!そんなおもちゃのヒコーキは効かねぇッての!」

彼女は先天的にカンムスソウル由来の炎に対する耐性を備えている。ゆえに専用装備であるカトン・ナックルから噴き出す炎を間近で浴びても何らダメージは無い!そしてもちろんカラテ艤装にも装束にも防火加工が施されている、つつましやかなサイズの下着にもだ!

「いざ尋常に勝負です!イヤーッ!」ミニガンの掃射でクローンヤクザ妖精を駆逐していたフソウの元に回転ジャンプで飛びかかる影がひとつ!先程キソの火球と共にアンブッシュを行ったヒエイである。クローンヤクザ妖精に気をとられていたフソウに空中カカト落としを放つ!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」フソウは体制を立て替えて装甲板でカカト落としを受ける。鈍い金属音と共に装甲板がひしゃげた!「そんな!オムラの装甲板が!?」クローンヤクザ妖精の一斉射撃を受けてもビクともしなかった装甲板が一撃で破損した!

「イヤーッ!」そしてそのままヒエイはショートフックを放つ!「グワーッ!」その拳はフソウのガードをすり抜け脇腹に命中!フジサンめいたカラテ艤装を装備する彼女の身体が数m後ろに引き下がるほどの衝撃である。「ぐうっ…まだまだっ!」しかし優れたカンムス耐久力を持つフソウはこれに耐え、大口径カラテ砲を発射する!「インダストリ!」

だがヒエイは真っ向からこの強力なカラテ砲弾に立ち向かう!「イヤーッ!」「なっ!!」ヒエイの放った回し蹴りはカラテ砲弾を弾き飛ばした!カラテ砲弾は海上に着弾し爆発する。フソウが驚くのも無理はない、なぜ砲弾を蹴り飛ばすような事が可能なのか?答えは…そう、カラテである!彼女の持つ恵まれたカラテセンスが成したワザなのだ!

「私はカラテがある限り負けません!かかってきなさい!」まさにノーカラテ・ノーカンムス!キョート・シテンノのひとりである彼女はグランドマスターナガトに次ぐカラテの持ち主なのだ。なお先程から彼女のスカートがめくれ上がって下着があらわだがこれは単に気づいていないだけである。なんたるストイックさか!?

一方旗艦であるカガはこの戦況を分析しながらクローンヤクザ妖精を淡々と撃ち落としていた。(まずいわね、フソウ=サンが相手している子は相当の手練。ヤヨイ=サンがいなければもっとひどい状況になったかもしれないわ…)カガを含む残りの4人でも十分すぎる任務だと思われていたが提督の指示によるヤヨイの配属は思わぬ助けとなった。

(提督、あなたは「これ」が起こるであろうと予測していたの?相変わらずの慧眼ね…)「おやおやカガ=サン?イクサの最中に物思いかのぉ?」深いクマをたたえた目を細めていたカガは一瞬で声をかけた相手に向き直る!「大した度胸じゃなぁ?思いびとの事でも考えていたのかの?」「…あなたには関係ないわ、トネ=サン」部下たちに指示を飛ばしていたトネがカガの方ににやにやとした笑いを向けていた。

「あなたの方こそ自分は安全な位置から指示するだけ?それとも指示するしか能が無いのかしら」「フン!粗野で愚鈍な闘犬同士の殺し合いは震えるほどに怖いからな。ほれ、臭いも獣じみておろう?実際たまらぬ!ゆえに私はこの位置がよいのじゃ!この位置が!」お互いカラテ以前に舌戦において一歩も譲らぬ!しかしトネは嫌味を飛ばしながらもカガのことを一片たりとも甘くみてはいない。

カガもそれは同じだった。お互いのソウルの格は相当に高い。カガは理解していた敵の中でトネが一番の実力を持っているであろうことを!「まあよい…ならばこのワシが!直々に相手をしてしんぜようぞ!」 トネは扇子を懐にいれると奇妙なカラテの構えをとった!カガも矢筒から3本の矢を引き抜き弓につがえる!

「ククク…貴殿が相当の使い手であろうとワシのジツの前ではお遊戯に過ぎぬのじゃ!カガ=サン!ワシに恐怖し、屈服せよ!」トネの身体にカラテが漲る!彼女の装備していた箱型のカラテ艤装が一斉に展開した。そこから現れたのは…おお、ナムアミダブツ!拠点制圧型超多連装カラテミサイルポッドである!

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#40【駆逐艦ヤヨイ】ネオサイタマ・チンジフ所属。口元に豹の牙を模した白銀のメンポをつけた小柄な艦娘。10フィートに匹敵する鎖付き巨大錨「タタキブツシテタオス」の使い手。アクロバティックに戦場を飛び回る。素手のカラテも凄まじくそのワザマエはもはや駆逐艦娘の範疇を超えている。じつは最初期のメンバーであるヒュウガやカガとは同期。非常に寡黙なので仲間から怒っているのではないかとよく間違われる。◆艦◆

◆夜な?◆

◆↑今日の◆

◆ハテナマークもついてるし昨日とはひとこともいっていないのでもんだいありません。しかしまた昨日のSSのサーバーがおかしかったのでご要ぼうがあれば管理人はケジメする。始まりな◆

【KANMUSLAYER】

「ワシの力を!とくと味わえ!イヤーッ!」トネが空に向かって右セイケンヅキを繰り出す!DOUDOUDOU!!カラテミサイルが9発連続発射!すべてがカガに向かって高速接近する。なんたる悪魔的マルチプル攻撃か!

しかしカガはこれに真っ向から向かい合う。ブレのない瞳のまま一気に3本の矢を射た!「イヤーッ!」トネのカラテミサイルとほぼ同速度の矢は途中でそれぞれが3つのコウクウキに分裂!カラテミサイルと衝突し相殺破壊する!

「イヤーッ!」トネはすかさず空に左セイケンヅキを繰り出す!またしてもカラテミサイルが9連射されカガに迫る!これに対してカガは電撃的な速度で新たに3
本の矢をつがえ射た!「イヤーッ!」またしても9発すべてが相殺破壊!

カガは矢を射たコンマ1秒後にはブースト加速し瞬時にトネの側方に回り込む!そして無防備な方向から身を沈めた姿勢のまま矢を連続発射した!「イヤーッ!」

「無駄じゃ!イヤーッ!」だがトネはカガの方も見ずに右セイケンヅキを繰り出す!するとミサイルポッドを支えるアームの一つが高速旋回しカガの方向に向きなおった!DOUDOUDOU!!迎撃カラテミサイルがコウクウキと相殺破壊!

「イヤーッ!」カガはカラテミサイルの爆風に隠れながら大きく跳躍する!そして空中で身体をひねりながら…おお、ゴウランガ!矢筒から6本の矢を取り出しつがえ射た!それはすべてが4つに分裂しトネに降り注ぐ。合計24発だ!

しかしトネはその場所から一歩も動かず左セイケンヅキを繰り出す!「イヤーッ!」カラテミサイルポッド全門が頭上に高速展開し迎撃カラテミサイル発射!DOUDOUDOU!!またしてもすべて相殺破壊!

「中々やるではないかカガ=サン!たいした搭載数じゃ!」着地し再び矢をつがえるカガを見てトネは不敵に笑った。通常これだけのカラテミサイルを打てば血中カラテが尽きているであろうことは間違いない!

しかしトネに疲弊した様子はまったく見られない。トネは全ての艦娘のなかでもずば抜けた血中カラテを誇っている、ゆえにほぼ無尽蔵のカラテミサイルを生成し撃ち出すことが可能なのである!彼女の膨らむべき部分への栄養は全てカラテミサイルに本人も無意識のうちに回されているのだ!

◆平◆寝休憩、みなさんも寝なさい◆坦◆

◆アニメイシヨンは地上波版にも大きく期待を寄せているので再開する◆

【KANMUSLAYER】

しかしトネに疲弊した様子はまったく見られない。トネは全ての艦娘のなかでもずば抜けた血中カラテを誇っている、ゆえにほぼ無尽蔵のカラテミサイルを生成し撃ち出すことが可能なのである!彼女の膨らむべき部分への栄養は全てカラテミサイルに本人も無意識のうちに回されているのだ!

「イヤーッ!」しかしカガは顔色ひとつ変えずにコウクウキを射出!「イヤーッ…!」しかしカガのシャウトに重ねるようにしてどことなく控えめなシャウトと共にコウクウキが高速射出されカガの放ったコウクウキを横から撃ち落とした!敵側艦娘のインターラプトだ!

「新手…?」カガはいつの間にかトネを守るように死角から滑り込んできた艦娘を目認した。「ドーモ、改めましてズイホウです…」ズイホウはやや控えめな声で再アイサツした。

なぜカガほどの艦娘がズイホウの接近に気づかなかったのか?それは彼女が人と喋るのが恥ずかしいから喋る事もシャウトもなるべく抑えていたからだった。ズイホウは極度の人見知りである。

(中々の速度の攻撃…厄介ね)カガの相手を算段するような視線を受けたズイホウはやや眼を逸らした。視線を受けるのが恥ずかしいからだ。「そうじゃカガ=サン!ワシが直々に相手してやると言ったであろ?二人がかりでな!イヤーッ!」トネは再びカラテミサイル連射!「イヤーッ…!」ズイホウも控えめなシャウトと共にコウクウキを射出し高速旋回する!

致命的な攻撃を躱しながら飛び交うカラテミサイルを淡々と撃ち落としてゆくカガを不敵な笑みで見ているトネは内心冷や汗をかいていた。トネほどの艦娘とてコウクウキをほんの短時間であれだけ叩き込まれたのは初めての体験だからだ。

クウボ・カンムスクランの艦娘たちのカラテは型にとらわれないキュウドーである事はカンムス・カラテに精通する読者諸氏には周知のことであろう。クウボ・カンムスクランの艦娘はいついかなる体勢からでも常に己の最大威力でコウクウキを射ることが絶対的な必須条件だ!イクサの場において悠長に弓を引き絞っている暇などないのだ。仮に水上を滑りながらしっかり弓を引き絞っていたらブザマに犬死にするだけである。

◆また寝休憩、小出しに毎日更新してゆくのだなあ◆

◆な再開な◆

しかもカガのワザマエはトネの見てきた空母娘の中でもずば抜けて優れている。キョートにもこれ程の使い手はいないだろう。なのでトネは二人がかりでの力押しを抜け目なく選択したのだ!彼女の用心深さはグランドマスターの中で随一である。

(ワシのカラテミサイルとズイホウ=サンのフォローがあればカガ=サンに応戦することは十分に可能!ならば…)トネはカガに向けたミサイルポッドを一つ残し、残りの3つを上方に展開した!「ネオサイタマの三下どもめ!まとめてワシのカラテを味わうがいいのじゃ!イヤーッ!」

トネはその場でセイケンヅキ連打!DOUDOUDOUDOUDOUOUOU!上方に大量のカラテミサイルが射出され…おお、ナムアミダブツ!それぞれカラテを打ち込み合う残りの艦娘たちのイクサの場に嵐めいて降り注いだ!

「なっ…うおっ!?」そのカラテミサイルはキソのカトン・ジツを巧みなフットワークで回避しながら互角に撃ち合っていたカコめがけて飛んできた!「イヤーッ!」「グワーッ!」カコはカラテミサイルこそ躱したがキソの回し蹴りを受けてたたらを踏む!

カラテミサイルは弾幕を張りヒエイを牽制していたフソウにも接近する!「イヤーッ!」フソウは残った左装甲板でなんとか受けるが左装甲板破壊!「イヤーッ!」フソウの砲撃を回避し続けていたヒエイは一気に接近し拳を打ち込む!「イヤーッ!」フソウは自らの腕でそれを防ぐ!しかしこの交戦距離はカラテ砲撃によって場を制圧するフソウにとって圧倒的に不利だ!

そしてこの嵐のごとく降り注ぐ破壊の雨の中、ズイホウのコウクウキを撃墜していたカガの視界は捉えていた。「…!」カラテミサイルが直撃し、弾け飛ぶアガノのカラテ艤装が。

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#41【重巡洋艦トネ】キョート・チンジフ所属、グランドマスター位階の艦娘。恐るべき暗黒カラテミサイルの使い手でありその圧倒的な制圧力は1人で1小隊並みの戦力を誇る。尊大な性格でよく胸を逸らして威張るが平坦である。また私生活は妹のチクマに大きく頼っている。好きなものはアイスとラムネ、嫌いなものは豊満な女性(妹は除く)◆艦◆

◆シヨンは最終回、更新は明日か明後日な◆

◆アニメシヨンの天狗リアリティショックがヘッズたちのずのうを焼いた。作者もニューロンがそん傷しましたが更新します◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「グワーッ!」アガノはひざをついた。彼女は突如として体の全身から力が抜けていく感覚を自覚する。しかしまだ自身の理解は追いついていない、それほどにカラテミサイルの攻撃は意識外からの攻撃であった。

(だ…め…まだイクサは…!)アガノがなんとか立ち上がろうとしたその時、すでにアガノと交戦していたキヌがワン・インチ距離まで接近していた!

「もらったぁーっ!イヤーッ!」キヌの両腕に装備されたダブルキャノンブレーサーによるダブルキャノン・ダブル・ポン・パンチが直撃!「グワーッ!」アガノはワイヤーアクションめいてなすすべもなく吹き飛ばされた!

「アガノ=サン!」フソウが吹き飛ばされるアガノへの追撃を防ごうとせんとするがフソウはヒエイへの応戦を強いられている。それは他の仲間たちも同じだった、援護攻撃もできないほどに敵艦娘たちの攻撃は激しさを増していたのだ!

そして吹き飛ばされるアガノに降り注ぐのは…おお、ナムアミダブツ!追撃カラテミサイルだ!もはやアガノには避けることも、防ぐこともできなかった。「サヨナラ!」再びカラテミサイルが着弾したアガノは爆発四散した。

「そ、そんな!!」「う…うおおおーッ!アガノ=サンーッ!!」フソウとカコの叫びも虚しくアガノは装束はボロボロになり意識を失い、海を漂っている。大破してしまった艦娘がその場で復帰する事は絶対的に不可能なのである。

「マイッタカ!これがあたしの暴力!あたしのカラテと暴力が組み合わされば実際三倍の凄さになるんだ!」キヌは威圧的にダブルキャノン・ブレーサーを打ち鳴らせる。「ハッ!これで多対5から多対4になったというわけじゃ。多対0になるのも時間の問題じゃな!」トネも威圧的に胸を逸らし、ズイホウを蹴り飛ばして体勢を整えたカガを見やる。

「…そう、大した問題じゃないわ。戦力が多少減っただけよ」カガの返答はぞっとするほど冷淡であった。しかし彼女の目の色は明らかに変わり、手に持った弓が小さく軋むがそれに気づく者は彼女自身以外誰もいない。

◆朝に続く◆

>>105でアガノは爆発四散ではなく大爆発四散しました。訂正ケジメして再開します◆

(仲間がやられたというに顔色ひとつ変えないてか…!流石噂どおりの冷血空母娘じゃの)カガのわずかな変化に気づくよしもないトネは余裕を感じさせつつも警戒を解かない。再びカラテミサイルポッドをカガに向けて展開する。

「フン!その減らず口もここまでゆくと滑稽じゃ!そろそろワシのカラテミサイルの真髄を…」「イヤーッ!」その時である!再びカラテミサイルによる制圧攻撃を行おうとしたトネの50m後方で鋭いシャウトが響き渡った!

そのシャウトの主はオバケめいた大きさの鉄塊を肩に担いだまま大きく跳躍したのだ。そう、すでに大量のクローンヤクザ妖精を80%近くまで殲滅したヤヨイである!

しかし凄まじいカンムス跳躍力を持つヤヨイといえどトネとの距離を詰めるには1度の跳躍では不可能だ。(ついに来たか…しかし貴公の英雄譚もここまでじゃ!)トネはヤヨイ側に向き直るとカラテミサイルポッドを次のヤヨイの予想着地地点に照準を合わせた!

だが!「イヤーッ!」ヤヨイがトネの予想着地地点に降りてくることはなかった。「何!?」ヤヨイは空中で跳躍を繰り返しながらこちらに接近している!しかし艦娘の中に誰一人とて空中を蹴ることができる者などいるはずがない。ヤヨイのジツか!?

しかしこれはヤヨイのジツなどではない!おお、見よ!ヤヨイの足元を!「あばーっ !?」「ぐわーっ!?」ヤヨイの足場になっていたのはもはや涙目になって後退していた哀れな残りのクローンヤクザ妖精たちである!ヤヨイは次々とクローンヤクザ妖精を海に蹴落とし爆殺しながらトネの方向に向かって跳躍を繰り返しているのだ。伝説の艦娘、ブル・ヘイケを思わせる驚異的なムーブメントだ!

「ヌウーッ!コシャクなことを!イヤーッ!」トネは空中10mまで迫ったヤヨイに対しカラテミサイル迎撃!アブナイ空中では限りなく無防備だ!

「イヤーッ!」しかし空中で身をひねったヤヨイにはカラテミサイルは当たらぬ!その腕に10フィートにも達する得物を持っているとは思えないほど流麗にカラテミサイルを回避し、その間をかいくぐりヤヨイはタタキブツシテタオスを両手で掴むと尋常ならざる膂力を込めトネの頭上から叩きつけた!「イヤーッ!」

この瞬間、味方だけでなく敵でさえもトネがネギトロになるであろうことを予感する。それほどにヤヨイの攻撃は絶望的であった。このイクサはネオサイタマの英雄たる彼女が終止符を打つのか!?

SPLAAAAAAAAAAASH!!攻撃の余波により海面から大きく水しぶきが上がった。水しぶきが収まった、そこには無残にネギトロ大爆発四散したトネの残骸が…否!そこに居たのはネギトロ死体などではなかった!ただトネは口元を再び口元を扇子で仰ぎつつ、にやつきながら立っているのである!

なぜヤヨイの絶望的な攻撃に対しトネは無傷なのか?その答えを知るには読者諸氏にはヤヨイの持つタタキブツシテタオスに注目して頂きたい!打ち付けられたタタキブツシテタオスはトネの数十センチ手前で止まっている、まるで見えない壁に阻まれているかのように。

しかしさらに目を凝らせば見えてきたはずだ。トネの1mにも満たない周囲には球状の濃密カラテ粒子空間で包まれている、カラテバリアだ!「愚か者めが!ワシのカラテ粒子は防御に転ずることも可能なのじゃ!」ヤヨイはタタキブツシテタオスにさらに力を込める!「イヤーッ!」だがカラテバリアはビクともしない、なんたる絶対防御か!

「効かぬといっておるのじゃッ!イヤーッ!」扇子を再び懐に入れたトネがセイケンヅキを打つとカラテバリアが発光し炸裂!「グワーッ!」ヤヨイはタタキブツシテタオスごと大きく吹き飛ばされる!「姉貴ーッ!」イヤーッ!」だがヤヨイは吹き飛ばされながらも前方にタタキブツシテタオスを投擲し急ブレーキ!大きく水しぶきを上げながら着水する。ヤヨイ自身にはダメージこそないが再びトネとは距離を取られてしまった。

恐るべきはトネの尋常ならざる血中カラテだ、トネのカラテバリアタタキブツシテタオスの一撃にも耐えてみせるというのか!?そう、可能なのだ。彼女の膨らむべき部分への栄養すらもカラテバリアに回すことでトネの壁めいた身体から生み出されるカラテの壁は想像を絶する程に硬い!硬いすぎるのだ!「善哉!貴公らの反撃はモハヤコレマデ!安心して…滅びよッ!!」トネのカラテミサイルが再び火山弾めいて戦場に降り注いでゆく!

【KANMUSLAYER】

◆最近忙しかったのでニューロン加速そうちによる作者の強化を試みている。成功すれば頻度があがるとおもいます。失敗したら次の作者を使うのでごあんしんください。以上です。◆

◆…10110加速して01いる010110101◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

(これまでのあらすじ: この広範囲の海域はネオサイタマとキョートのほぼ半ばに位置する海域であり二つのチンジフの合同演習やシンスイシキ・リチュアルの行われる聖なる海域である。しかしこの場に響き渡っていたのは演習などではなく本物のイクサにおける壮絶なるカラテであった!)

「グワーッ!」鉄壁の守りを誇るフソウがよろめいた!ヒエイのチョップが左ミニガンに命中し破壊されてしまったからだ。一方のヒエイにも疲労の色こそ見え始めているがフソウに比べるとまだ余裕があるような面持ちである。

「ハァーッ…!残念です、やや卑怯な状況であなたと戦うのは」フソウは時折飛来するカラテミサイルに対応を強いられている。そのせいでヒエイに決定打を与えられないでいるのだ。「構うものですか…イクサはイクサ!そこには卑怯などという概念は存在しませんわ!」フソウは己を強いてカラテを構えなおす。

この2人の性格はある意味同じであった。正々堂々正面から相対し、一方はカラテで、もう一方はインダストリで殲滅するのがやり方である。だが容赦なきイクサの場においては自己のセイシンテキを投げ捨てても敵を打ち破らなければならないのだ。でなければその先に待つものは無残な大爆発四散である!

「イヤーッ!」「グワーッ!」そして別の場所でも容赦なきカラテは続いている!キソのカトン・ストレートがカコを捕らえたのだ。「グワーッ!」カコは海面を水しぶきを上げながら吹き飛びカラテ艤装は小爆発四散!「捕らえ…たぜェー…!クソが…!」一方のキソも何発かボックス・カラテの一撃を食らったようで荒い息を吐いている。

そしてカラテミサイルのほぼ半数ずつをヤヨイ、ズイホウと戦っているカガに向かって連射していたトネはひとつのイクサが終わりに近づいてくるのを確認した静かにほくそ笑んでいた。(ワシの血中カラテといえど多少の充填は必要。しかし奴らは数を減らしたカラテミサイルでも十分押し切られつつある!それに…)

トネはズイホウの戦うカガに視線を移す。カガはほぼ半数のカラテミサイルとズイホウの高速攻撃に対し互角に応戦している。恐るべきカラテであることはトネも認めざるを得ないがトネは予測していた、カガの血中ボーキ成分は無限ではない!つまりガス欠が近いということを予感していたのだ!

そしてトネの目は捕らえたのだ、カガの放ったコウクウキがわずかに弾速が落ちている事を!(来たッ!行けキヌ=サン!奴の後ろから叩き込んで沈めい!)「ヨロコンデー!」トネの漆塗り小型IRCからの通信を受け取ったキヌはヤヨイへの攻撃の手を止め、ズイホウに応戦しているカガに急速接近してゆく!

しかしカガは急速接近するキヌに気づいている様子はない、ズイホウの連続カラテチョップを捌いている最中でありキヌの方には視線を向けていない!「殺ったァーッ!イヤァアアアアーッ!!」キヌはダブルキャノン・ダブル・ポン・パンチをカガの背中に向けて繰り出した!

◆寝休憩◆

◆再開する◆

しかしカガは急速接近するキヌに気づいている様子はない、ズイホウの連続カラテチョップを捌いている最中でありキヌの方には視線を向けていない!「殺ったァーッ!イヤァアアアアーッ!!」キヌはダブルキャノン・ダブル・ポン・パンチをカガの背中に向けて繰り出した!

「ヤッター!暴力のおかげでキンボシ・オオキ…」キヌが勝利を確信した瞬間、キヌの拳は宙を切っていた。「イ…だっ、え?」そして唖然としたキヌの眼前数センチには拳があった。無論キヌの拳ではない!カガの拳である!

「イヤーッ!」「アッバーッ!?」CABOM!!ナムアミダブツ!カガの拳がキヌの顔面に到達した瞬間、小爆発が発生しキヌはあまりの衝撃にキリモミ回転し海面にほぼ平行にワイヤーアクションめいて吹き飛ばされた!「んなっ…何じゃとおおおおおーッ!?」トネは目を剥いて驚愕!今のほんの僅かな瞬間に何が起こったのか!?

時間を数秒前に戻してみよう。カガはキヌが自らの背後に来たタイミングにズイホウをチョップの間をかいくぐりカウンターパンチで吹き飛ばし、さらにその反動を利用しキヌの攻撃を躱すと共にクウボ・カンムスクランのヒサツ・ワザの一つである超至近距離でコウクウキ・バクをセイケンヅキに重ねて放つ、バクセンキ・ケンを繰り出したのである!

「グワーッ!あたしの暴力がグワーッ!通じないなんてグワーッ!?」顔面が黒コゲになったキヌはキリモミ回転しながら絶叫する。そして心の中でアプレンティス時代のメンターであったジュンヨウの助けを請うた。(うわあああーん!マスター・ジュンヨウ=サン!わたしに道を示してくれーッ!!)

そしてキヌのニューロン内に現れたジュンヨウはこう語りかける。((ヒャッハー!何事も暴力で解決するのが一番だぜ!))しかしこの状況は暴力ではどうにもならなかった。「サヨナラ!」キヌはキリモミ回転を続けながら大爆発四散した。

(ばかなッ!あの状況からキヌ=サンを大破させるとはなんというワザマエ…!まさか弾速が落ちていたということもブラフてか!?)しかし唖然とするトネをよそにカガはガクリと膝をついてしまった。

(…む?)カガは頭を振って立ち上がるズイホウに追撃もせずに荒い息を吐いている。(ボーキ切れ…どうやらそれはブラフではないようじゃなぁ〜!)ナムサン!いかな優れた搭載数を誇るカガといえど血中ボーキ成分は有限である。おびただしい数のカラテミサイル、クローンヤクザ妖精、ズイホウのコウクウキを撃ち落とし続けていればアウトオブ・アモーは避けられぬのだ!

(まずい…わ…早く補給を…)カガは胸元から何かを取り出そうとするが手が震えもつれてしまう。ボーキ中毒の末期症状だ!「死ね!カガ=サン!イヤーッ!」DOUDOUDOUDOUDOU!!勝利を確信したトネはヤヨイへ向けていたカラテミサイルポッド全門をカガに向け、一斉射撃する!

「!」切磋にカガは防御しようとするがそのような事が無意味なのは残酷なほど十分に理解していた。これだけのカラテミサイルを食らえば大爆発四散が避けられぬはずがない!「はーっはっはっはーッ!勝ったッ!旗艦が大破すればモンドムヨーで我々の勝利なのじゃあーッ!!」トネは瞬時に懐から扇子を取り出し高速で扇ぎながら高らかに勝利宣言した!

だがその時である。着弾しようとするカラテミサイルとカガの間に何者かが突如インターラプトした。それはフジサンめいた巨大な影であり…カラテミサイルは吸い込まれるようにフジサンめいた巨大な影に全弾着弾!「グワーッ!」苦悶の声と同時にカラテ艤装の部品が周囲に弾け飛んだ!

(…は?)トネはポロリと扇子を取り落とした。何が起こったのだ?トネの目の前には大爆発四散したカガがブザマに海に浮かんでいるはずだった。しかしそのフジサンめいた巨大な影は不屈めいて自分とカガの間に立ちふさがっている。

目を大きく見開き硬直していたカガはやがて絞り出すように、自分を護った仲間の名を呼んだ。「…フソウ=サン…」口の端から血を垂らし、カラテ艤装は完全に大破し、装束が引き裂かれてもなお、フソウはカガに向けて微笑んだ。「無事で…なによりですわ…!」

この時、敵味方どちらの艦娘もクローンヤクザ妖精でさえも攻撃の手を止め、今起こった出来事に目を向けていた。「がはっ!本当に…残念なのですわ…」フソウは血を吐きながらも倒れようとはしない。「オムラのインダストリの存在意義は…艦娘を、仲間たちを、チンジフを守るためにある!けれど…ひとりは守れなかった…!」

「………」フソウに向かい合うカガは雷に打たれてしまったように微動だにしない。「だからもうこれ以上は誰も傷つけさせないのですわ…私がどうなろうとも!オムラ!そしてネオサイタマ・チンジフ!バンザイ!」そしてフソウはガクリと膝をつき自らのチンジフとオムラ本社の方向に倒れ、大爆発四散した。「サヨナラ!」

沈黙が支配したイクサの場で、最初に動いたのはフソウに向き合っていたカガであった。「………」カガは何も言わずに立ち上がり、自分達の敵であるトネを見た。(ッ…!?)カガに視線を向けられたトネはソウルに直接カタナを突きつけられたような恐怖心を味わった。もはやカガは怒りを隠そうとしなかった。なんとか押しとどめていた感情は行き場を無くし、溢れ出している。

「…そうね、もう誰も傷つけさせたりしない、あの時みたいに」カガは誰ともなくつぶやいた。いつの間にかその手には3本の注射器が握られている。「だから、そのために…」異常なアトモスフィアを感じ取ったキョートの艦娘たちはほぼ同時に条件反射めいてカラテの構えをとる!そして彼女は…3本の注射器を自分の首筋に突き刺した。「…貴方たちを直ちに殲滅する」

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#42【空母ヲ級】シンカイセイカンヤ所属。シックスゲイツ直属の深海凄艦娘。その謎めいた瞳からは感情を読み取るのは困難でありその真意は測り難い。通常の深海凄艦娘でありながらシックスゲイツの面々に匹敵するかそれ以上の実力を持つとされ、触手アームから悪夢的な数のコウクウキを撃ち出す。接近戦では触手カラテにより敵を殲滅する。ちなみに帽子型カラテ艤装は脱げる。目を開けたまま寝る謎の癖がある。◆艦◆

◆午後な〜◆

◆朝をまたぐだろうかと思われる◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

カガの美しい首筋に突き刺された注射器のシリンジから正体不明の液体が彼女に流れ込んでゆく!「ンアーッ!!」カガはうめき声をあげ、びくりと身体を震わせた。「ぐ…無駄なあがきをしても無意味じゃ!いくらBKTアドレナリン(注釈 : バケツアドレナリン)を使おうとて…すでにそちらの戦力はロウソク・ビフォアザ・ウインドであろ!?」確かにトネが言った通り注射器の中に入っていたのはBKTアドレナリンだ、しかしそれは「半分」だけである。

カガの使用した注射器の中にはBKTアドレナリン、そして純正ボーキ成分が配合されている。しかもそれは純度100%に達する!本来ならば心停止に陥った時にでもないと使わないほど強力な薬だが、それを彼女は3本も使ったのだ。致死量の一歩手前である!

「ハァーッ…!ハァーッ…!」ゆっくりと顔を上げたカガの目は真赤に血走り、ブッダデーモンめいた輝きを湛えている。(ヒッ!)その目を正面から受けたトネは失禁しかけ、思わず内股になる。(なんという気迫ッ…これは…まるで!)トネは恐怖を振り払うように頭を振ると部下たちに指示を飛ばした!「何をやっておるか!三人がかりでカガ=サンを囲んで棒で叩けィ!」彼女の指示を受けたヒエイ、キソ、そしてズイホウは猛然とカガに襲い掛かった!

先陣を切ったのはヒエイだ!「イヤーッ!」カガを回転トビゲリで強襲する!「…イヤーッ!!」しかしカガはその攻撃に対してその場から一歩も動かず、爆発的な速度で手を繰り出しヒエイの足をつかんで回転トビゲリを止めてみせた!「なっ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!」そしてヒエイの足を持ったまま海面に叩きつける!「イヤーッ!」「グワーッ!」もう一度叩きつける!ヒエイは衝撃あまり海面をトランポリンめいてはじけ飛ぶ!「グワーッ!」

「ブッダファック!クスリキメたくらいで調子にのんじゃねーッ!」カガの側面に回り込み、キソの振りかぶった足から炎が噴き出した!カトン機構は足にも搭載されている!「イヤーッ!!」キソは爆発的な速度のカトンブーストキックを放った。「イヤーッ!」しかしカガはこれを爆発的な速度でブリッジ回避!「イヤーッ!」「グワーッ!」そしてその姿勢からムーンサルトキックを放ちキソの顎を蹴り上げた!キソの身体が数センチ浮き上がる程の威力である!

しかしカガに襲い掛かった敵は三人であり攻撃の手は未だ止まぬ!ズイホウはカガの頭上に跳躍していた。「…イヤーッ!」ズイホウがやや強めのシャウトと共に放った矢が4機のコウクウキに分離!コウクウキは旋回し、カガを四方向から包囲するように突撃した!ズイホウがこの動作にかかった時間はわずかコンマ7秒、マスター位階のワザマエは伊達ではない!

「イヤーッ!」だがこれも加速するカガのニューロンにはスローモーション同然の速度でしかなかった。跳躍したカガは空中スピンキックでコウクウキ4機すべてを叩き落とす!「イヤーッ!」ズイホウのコウクウキ・ジツ破れたり!さらにカガは空中で無防備なズイホウを放ったコウクウキで逆に撃墜してみせた!「イヤーッ!」「グワーッ!」ズイホウはウケミもとれず、海面に叩きつけられ苦悶!「グワーッ!」

おお、ゴウランガ!何たる空母娘の型にとらわれない変幻自在かつ神がかりなカラテか!3人の手練れを相手にしてもなお、カガは圧倒している。BKT成分とボーキ成分の過剰摂取によりブーストされたカガの身体能力は駆逐艦娘並みに早く、軽巡洋艦娘の並みに軽やかで、戦艦娘並みに力強いのだ。

さらに普段はイクサの邪魔にならないように巻いてあるサラシは千切れ、装束の上からでもあからさまである豊満な胸がカガのムーブメントに合わせて激しく揺れる!何たる躍動感であろうか!

「ヌウウーッ!貴公の反撃もそこまでじゃ!ワシのカラテミサイルで今度こそ!」歯・みしていたトネは3人を相手取るカガにカラテミサイルの照準を向けようとした。だが!「イヤーッ!」鋭いシャウト共に巨大な鉄塊がトネに向かって投擲された!「なッ!?イヤーッ!」トネは辛うじてカラテバリア展開防御!凄まじい衝撃でトネは数メートル後ろに後退する。

(ぐうっ!この攻撃は…!)トネはその巨大な鉄塊、タタキブツシテタオスの飛んできた方向を睨みつけた。そう、タタキブツシテタオスに繋がる鎖の先を握っていたのはネオサイタマの英雄と名高いヤヨイに他ならない!「イヤーッ!」ヤヨイは尋常ならざる膂力で得物を片手で引き戻した!

「無駄なことを!いくら攻撃してもワシのカラテバリアは…」「イヤーッ!」トネの言葉を待たずヤヨイは再度タタキブツシテタオスを投擲!「イヤーッ!」しかしトネのカラテバリアに阻まれはじき返される!

「無駄なことを!いくら攻撃してもワシのカラテバリアは…」「イヤーッ!」トネの言葉を待たずヤヨイは再々度引き戻したタタキブツシテタオスを投擲!「イヤーッ!」しかしトネのカラテバリアに阻まれはじき返される!

「無駄なことを!いくら攻撃してもワシのカラテバリアは…」「イヤーッ!」トネの言葉を待たずヤヨイは再々々度引き戻したタタキブツシテタオスを投擲!「イヤーッ!」しかしトネのカラテバリアに阻まれはじき返される!

「無駄なことを!いくら攻撃してもワシのカラテバリアは…」「イヤーッ!」トネの言葉を待たずヤヨイは再々々々度引き戻したタタキブツシテタオスを投擲!「イヤーッ!」しかしトネのカラテバリアに阻まれはじき返される!

何度もカラテバリアに阻まれようと投げる!投げる!ヤヨイは投げ続ける!ヨーヨー・トイを扱うが如く何度も何度も叩きつけてゆく!「ぐううううーっ!動けん!いい加減にするのじゃーッ!」しかしトネがいくら防御しようとヤヨイは手を止めぬ!「う…おお…!カガ=サンの邪魔はさせねえぞーッ!」ダウンしていたカコもダメージを顧みず立ち上がり、防戦一方のトネにカラテ砲連射!トネはカラテミサイルはおろかその場から一歩も動けない!

「イヤーッ!」「グワーッ!」その一方でカガはいまだ三人の艦娘を圧倒していた。重いカラテ・ストレートを食らったキソは吹き飛ばされて小爆発四散した!しかしキソをフォローするためにヒエイとズイホウが立ちはだかった。「イヤーッ!」「イヤーッ…!」ヒエイはゼロセンを投擲し、ズイホウはコウクウキを射る!

しかしカガはわずかに身をそらすだけでこの攻撃を回避し、最大搭載数まで補給された矢筒に手をかける。そして弓にかけられたカガの手には!おお…ブッダも照覧あれ!その手に握られていたのは10本の矢であった。その10本すべてを引き絞り、カガは一度に撃ち出した!「イヤァアアアアアアーッ!!」

ゴウ!空を切り裂くような音とともに矢は一本につき4機に分裂!計40機のコウクウキが3人に一度に襲い掛かった!「「「イヤーッ!!」」」3人は辛うじて後転回避するがコウクウキから発生した空気の刃が3人の装束のみを切り裂いた!半裸!「「「ンアーッ!!」」」そしてなおも飛び続けていたコウクウキ40機は3人の先にあった巨大な岩に大穴を穿ち消滅した。

「うううっ…!」なんとか体勢を立て直したズイホウが顔を上げると恐るべきヒサツ・ワザを終えたカガと目が合った。その赤く輝くようにも錯覚される目に睨み付けられるがズイホウは勇気を振り絞り、弓に矢をつがえる!カガもほぼ同時に弓に矢をつがえ、両者同時にコウクウキを射た!「「イヤーッ!!」」

そう、同時に一本の矢を射た。少なくともズイホウにはそう見えた、そう見えたはずだったのだ。お互いの放った矢から変化したコウクウキは相殺破壊された。しかしそれは「1機」だけであり、ズイホウの伏し目がちな目に映ったのは衝突時の小さな爆炎から出てきたのは自分に向かってくる「2機」のコウクウキだった。

(…え?ナンデ?撃ち落した、はずじゃ)ズイホウを驚愕が襲うよりも先に2機のコウクウキはすでに彼女の懐に到達していた。ズイホウの平坦な胸の前で小爆発が2度起こる。「……う…あ…」ズイホウは声にならない叫びを上げ、崩れ落ちた。「あなた、結構素早いみたいね」

崩れ落ちたズイホウに向けているカガの目は凄まじく、容赦なきアトモスフィアを放っている。「でも悪いわね、あなたがひとつ撃つ間に…わたしは3つ撃てる。それだけよ」この時ばかりは普段は仲間と話す時でも、自分の姉妹と話す時でさえもあまり小さい声しか出せないズイホウでも大きな声を出すことができた。ソウルの叫びめいて。「…サヨナラ!」ズイホウは大爆発四散した。

【KANMUSLAYER】

(親愛なる読者の皆様へ : 最近誤字脱字インシデントが多発の傾向ににありますがニューロン加速そうちの副作用とは何ら関係ないと思う。さらに研修を重ねていくことでモーター作者・改善になるようにしてゆくだろう。以上です)

◆艦◆カンムス名鑑#43【重巡洋艦スズヤ】キョート・チンジフ所属。グランドマスター位階。古代ローマカラテの正統後継者。彼女はグランドマスターの中でも新参だが強気な自信にそぐわぬ恐るべきかつ油断ならぬ使い手。ネオサイタマの提督に恋文を送ったことがあるのは黒歴史である。◆艦◆

◆午後な◆

◆実際今日の午後◆

KANMUSLAYER】

ーーーーーーそうだ、あの日からだ。あの日からすべてが変わったーーーーーーーー

硝煙の匂い、破壊の限りを尽くされた中央司令室、倒れ伏せる仲間たち。もう戦える者など残っていなかった。自分を攻撃から庇って大破したヒュウガを抱いた彼女は絶望していた。

そして決して逃げまいと歯を噛み締めて立ち向かう「あの人」に伸ばされる白い手、その手の持ち主の赤く光る瞳、口元に浮かぶ邪悪な笑み、彼女は何もできなかった。恐怖という感情が彼女を支配していた。

何もかもが終わろうとしていたその時、涙を流し続ける彼女の瞳に映ったものがあったのだ。それは春のつむじ風めいて「あの人」を手に入れんとしていた者に躍り掛かった。その桜の髪飾りには、桜の首飾りには確かに見覚えがある。そうだ…あの時、わたしは

「…ゴホッ!ゴホーッ!」突如としてカガは大きく咳き込んだ。とっさに口を覆った手の平には血がついている。その鮮烈なまでの赤さは幸か不幸か、彼女に現実感を取り戻させたのだ。

「チクショウ…クソッタレ…!」「ズイホウ=サン…くっ!」残る二人に視線を戻し、口を拭いながらカガは何が起こったのか思い出そうとした。(今…のは?)ズイホウを大爆発四散させたその直後から記憶が混濁していた。それはほんの僅かな瞬間でしかなかったがあのソーマト・リコールめいたものは何だったのだろうか?ボーキ成分の過剰摂取のせいで起こった幻覚だったのだろうか。

しかしこの過去の幻視はボーキ成分の過剰摂取により様々なセイシンテキが混ざり、溶け合うカガのニューロンに混ざり合い、やがて消えた。(そんなことより残りは二人…そうすれば、最後は)

だがまさにこの時カガの身体はすでに危険な状態にあった。彼女の今の状態は言わば壊れかけの車に無理矢理ニトロエンジンを積み込み、トップスピードで走り続けている状態と同義である。その車がいずれ爆発炎上してしまうであろうことは想像に難くない!

残る二人をカイシャクせんとして鬼気迫る表情で歩を進めるカガには自分の身体が大爆発四散寸前まで迫っていることに気づいていない。BKT成分による鎮痛作用が身体の痛覚を麻痺させているのだ!

このままではカガは残る二人ともに刺し違える、もしくは最悪の場合実際死ぬだろう。しかしカガは再びヒビの入った弓に矢をつがえている!おお、ナムアミダブツ!誰かカガを止める者はいないのか!ブッダよ寝ているのですか!?

「…ザザ…重点…ザザ…重、点な!!」その時である!着信を知らせる電子音声が今まさにコウクウキを射んとしていたカガの懐から鳴り響いたのだ!(.…え?)カガは手をピタリと止め、硬直した。

「ザザ!緊急事態につき強制通信モードな!」『…こちらネオサイタマ・チンジフの提督だ。』「!!」そしてカガのIRCから聞こえた声は他ならない!自分たちの司令官、提督の声であった!「敵の通信…?」「イクサの最中に…電話かよ!ナメやがッて!」カラテ警戒する二人に目もくれず、カガの意識はIRCに釘付けである。

『状況は把握した。アガノ=サンとフソウ=サンのバイタルサインを確認したが大破したようだな…』「それ…は…」しかしなぜこの状況で通信機能が回復したのか?それは先ほど大爆発四散したズイホウが持っていたIRCジャマーが大爆発四散の余波で破壊されてしまったからだ。

「…ですが戦闘は継続できます。残りの敵は3人、こちらの残存戦力も3人です…!勝機は」『ダメだ、直ちに撤退しろ』再び戦闘を継続しようとするカガに告げる言葉はつとめて冷静であり、有無を言わせぬアトモスフィアを放っていた。

「し、しかし!それではこの海域を放棄する事になってしまいます!」『ダメだ、お前たち3人のバイタルも確認したがカコ=サンも危険な状態だがお前はそれ以上に危険だ。戦闘をすぐさま放棄しろ。』提督はカガの申し出に聞く耳を持たない。カガはなおも必死に言葉を続けた。「このままでは…アガノ=サンとフソウ=サンのカタキを討てません…!私は大丈夫です!だから…」

『ザッケンナコラー!!』しかし次の瞬間、IRCから鳴り響いたのは凄まじい怒声と何かの破壊音であった!その声を聞いたカガはビクリと震え、その表情はみるみるうちに狼狽し、激しく叱られた子供めいて崩れ始めた。「…あ…う…ああ…」震える言葉は言葉にならない。

『これ以上お前たちが…お前が傷つくことは絶対に許さん!今すぐ!直ちに!帰投しろッ!!』提督が声を荒げることなどほとんどないことである。それほどまでに提督の声には絶対的な響きがあった。「…………了解、しました…」そしてカガから発せられた声は極めてか細く、弱々しかった。

そしてトネをカコと共にその場に押しとどめていたヤヨイはやおら片耳に手を当て、一歩後退した。そしてこのイクサで初めて言葉を発した。「カコ=サン。潮時よ。撤退命令が出たわ」

「姉貴!?」「提督からの命令、これ以上は蛇足」そして、「イヤーッ!!」防御を続けるトネを牽制するようにタタキブツシテタオスを打ち振るとヤヨイは踵を返した。

「ハァーッ…ハァーッ…!待ってくれよ姉貴!もう少しで二人のカタキを取れるのに!!」しかしフソウをおぶさり、得物を持たぬ方の手でアガノを担いだヤヨイは何も言わずにカコを見た。「わ、わかったよ姉貴…だからそんなに怒らないでよ…」「別に怒ってないわ」カコがトネを振り返りながら後に続く。トネは追わぬ。

(なんじゃ?彼奴らが後退してゆく…?)有利の状況にあったにも関わらず撤退してゆくネオサイタマの艦娘たちを見てトネは訝しんだが、それはすぐさま勝利の愉悦へと変わった。「ククク……はーっはっはっはっはっはっ!!!見よ者ども!彼奴等が這う這うの体でブザマに逃げてゆくぞッ!!」トネは扇子を海に落としたことも忘れ高笑いしながら腕を高速旋回!しかしその手に扇子はない。

「ファック!待ちやがれあの女!目がムカつくんだよ!目が!」「落ち着いて下さいキソ=サン。逃げる敵は追っちゃダメですよ!いくら悔しいからって」「悔しくねェし!」ヒエイはキソをなだめている。岩場のかげで震えていた残りのクローンヤクザ妖精たちが恐る恐る顔を出し始めた。「多少のインシデントはあったが我々キョート・チンジフの勝利には変わりなし!ワシがいる以上は当然の勝利なのじゃーッ!はーっはっはっはっはっはっはーッ!!」凄惨たるイクサの後に響くのはトネの高笑いのみである。

「…通信を終了する」その戦場から数100キロ離れたネオサイタマ・チンジフの中央指令室、提督は虚脱したように椅子にもたれかかった。指令室は静まり返っている。「あ、あの…提督=サン…」秘書艦代理のタカオがおずおずと話しかけようとするが提督はすぐさま返事をした。「すぐに補給部隊を向かわせろ。大破した者が二人いる、大至急だ」「は、はいっ!」指令室にいる艦娘たちは慌てて業務に戻ってゆく。

(カガ、お前はまだ過去に囚われているのか…?いや、それは俺も…か)提督はしばらく椅子から動かなかった。しかし軍帽を被り直すと部下たちへの指示に戻っていった。

「ハァ…ハァ…うう…」撤退を続けるカガの顔には美しい顔にそぐわない怯えた表情が浮かび、がたがたと震え続けている。カコが声をかけようとするがヤヨイは静かにそれを遮る。「あの時、あの時、何故私は…!」うわ言めいて呟くカガの瞳からとめどなく涙が溢れ出し、海に落ちていった。

【KANMUSLAYER】

◆朝な〜◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

キョート・チンジフ、「円卓の間」

円形の豪華な装飾を施された広間の頭上には黒曜石を切り貼りした巨大な腕を持つ化け物を討ち取る伝説の艦娘がレリーフされている。この円卓の間での雑務を負うのはキモノを着たクローンオイラン妖精たちである。彼女たちの瞳は激務のせいでマグロめいて死んでいる。

円卓のザブトンにアグラ、または正座している艦娘たちの顔は緻密に計算された照明角度によって覚束ない影となっている。彼女たちはチンジフの中枢、グランドマスター位階の恐るべき手練れたちである。そして最も高くなっているザブトンの上にちょこんと座っているロードの前に跪くのはそのグランドマスターのひとり、トネだ。

「ご機嫌麗しゅう、マイロード…このトネが見事作戦をA勝利で収めてきたのでございます!」盛った!彼女は戦果を大幅に盛ったのだ。昨日のイクサはどう考えても戦術的B勝利がいいところである。しかしそこに知略を巡らすのがトネのやり方だ!「ウン、クルシュナイ」ロードはゼロセン・トイで遊ぶのに夢中だ。

「ロードは大儀であったとおっしゃっています」「ハハーッ!アリガタキシアワセー!」言葉を代弁したタイホウの言葉にトネは深々と頭を下げた。しかしその下げた顔には他人には見せられないくらい愉悦に崩れた顔があった。(ハハハハーッ!!ヤッタ!ヤッタのじゃ!キンボシ・オオキイ!オオキスギルぞッ!これでワシの評価はウナギ・ライジングなのじゃーッ!!ウハハハーッ!!)トネは今すぐ扇子で仰ぎたい衝動に駆られる!

「ハッ!やるではないかトネ=サン!」「ウン、がんばったね」「Grazie!(ありがとうございました)制圧した海域は我々のチンジフの経済と株価において良い効果をもたらすでしょう」「良いわね、Danke!」「やるじゃーん」「カラテがない癖に中々だな!」他のグランドマスターからも賞賛の声が上がる。「ククク…!オソレイリマス…」トネは愉悦を堪えられずに口元を歪めている。

「それでは、次の議題に参りましょうか」「クク…それではワシはこれで」トネは自分のザブトンに戻ろうとした。「待ってください。次の議題も昨日のイクサについてです」「…へ?」タイホウに引き止められたトネは虚を突かれたようにぽかんとした。「そうです…昨日のイクサでの、損失額についてまだ話していませんでしたね」

(損失…額?あっ)トネは昨日のイクサを思い返した。鬼瓦クルーザーは完全大破、クローンヤクザ妖精はほぼ全滅、クマノ、キヌ、ズイホウが大破(しかも全員自分の派閥)「…と、被害はこんなところです。ローマ=サン、計算を」「ハイ」キョート電算機室室長でありキョート経済のコントロールを任されているローマはUNIX電卓を叩き始めた。

「クローンヤクザ妖精の蘇生費用…その他雑費、掌握した海域の利益を引いて…ムムッ!ヒヤリ・ハット!?3万弾薬!4万燃料!2万鋼材!1万ボーキサイトの損失ですッ!」そしてローマが叩き出した数字は実のところあまり芳しくないキョートの経済に決して小さくはない打撃を与えるには十分な額であった!「エ…エエーッ!」トネはあまりの額に驚愕し、座ろうとしていたザブトンから転げ落ちた!

「さて…トネ=サン、これについて何か弁解はありますでしょうか?あるのならばですが」「そっ…それは…その…!」タイホウのブリザードめいた視線を受けたトネの顔から冷や汗が噴き出す。「それにいつも貴方のサポートをするように決められていたチクマ=サンはどうしたのですか?なぜ昨日の作戦には同行していなかったのですか?」「あっ」

トネの頭の中に浮かぶのは数日前の作戦を任されたそのすぐ後にした妹のチクマとの会話だった。(チクマ!チクマチクマー!やったのじゃ!重要な作戦を任されたのじゃー!)(まあ、流石トネ姉さんですね。早速準備をしなきゃ)(ククク…待て待て、今回はワシひとりに任せておけぃ!)(姉さんひとりで…?大丈夫なのですか?)(そうじゃ!もうチクマの世話ばかりになっておられん!それにワシの方がちょっとだけお姉さんなのじゃからな)(うーん、でも…)(安心せい!チクマは温泉旅行にでも行って普段の疲れを癒してくると良いぞ!はははーっ!)(それじゃあ…お言葉に甘えさせてもらおうかしら。うふふ、ガンバッテね、トネ姉さん)

(そうだ…ワシが、大丈夫だって、ひとりで…)トネは己のウカツに口をぱくぱくとさせ唖然とした。「さて…それについても弁解は?できるのならば」タイホウの氷河期の到来めいた視線を受けたトネは慌てふためきながら必死に言葉を探した!「そっ…そそそそそそそれはの!?色々とありまして!派閥内の業務とか!部下たちとの慰安旅行とか…ほっ…ほ、ほら!あれですじゃッ!つまり…そう!行かれぬから!」

「ザッケンナコラー!!」「アイエエエエエ!?」タイホウの怒号を受けたトネは尻餅をついた。「行かれぬからってどういうことですかオラー!?この損失どうするつもりなんですかコラー!バカハドッチダー!!」タイホウは顔を真赤に染めて激怒しヤクザスラングを叫ぶ!コワイ!

(そ、そんなッ!こんなはずじゃ…ワシ、ワシの手柄が…!)タイホウの怒気に当てられたトネはガクガクと震えている。「ネエネエ。レップウホシイ」何が起こっているの知ってか知らずかロードは怒りのあまり息を切らしたタイホウの服をくいくい引っ張っている。

「ハァーッ…!ハァーッ…!ダメです」「エ…デモ、イイコニシテタラ、イッカゲツニイッカイ…カッテ、クレルッテ…!」「ダメなのです!これからしばらくは何もかも節約せねばならないのです…!」おお、ナムアミダブツ!ゼロセン・トイをポトリと落としたロードの目には涙が浮かび、その表情はみるみるうちに崩れ始めていくではないか!

「ろ、ロード」「ウワーン!バカ!カエレー!」「グワーッ!」大泣きするロードの投げたゼロセン・トイが額にぶつかりトネは再び転倒!そしてトネの目にもみるみるうちに涙が浮かび始めたではないか!「な、なぜじゃあ〜!なぜこうなるんじゃーッ!ウワーン!」鳴き声のデュエットである!

「その、まあ…なんだ。トネ=サンも頑張ったと思うぞワシは、うん」「よしよし」「ウワーン!」ムサシとウンリュウに慰められ、トネは情けないやら恥ずかしいやら少し嬉しいやらの感情がないまぜになって泣くしかない!

(ウワーッ!チクマー!ウワアアアアアアン!)しかしチクマが温泉旅行から戻ってくるまであと3日である。ケオスと化した円卓の間でただひとつ、天井に刻まれたレリーフの伝説の艦娘だけが凛として空を見つめていた。

【システム・オブ・チンジフ・ストラグル】終わり

◆磁気嵐により酉が乱れました。なお明日は天狗が来る。備えよう◆

◆◆◆予告通り天狗が来る◆◆◆

カガたちの部隊が襲撃を受けるのとほぼ同時刻、ここはトコロザワ海3番海域である。この場所には前時代の兵器が墓標めいてところどころに座礁しているブキミ極まりない場所だ。

「ハァーッ…ハァーッ…うう…!」その残骸のひとつに身を預け、荒く息を吐いている者がいる。彼女の名はナトリ、ネオサイタマ・チンジフ所属の艦娘だ。「こんな…ことに、なるなんて…」ナトリの装束はところどころが綻び豊満な胸元もあらわである。彼女は手負いだった。

ナトリはキズの痛みに耐えながらも、先程起こった事態を整理しようとした。事の顛末はこうである、トコロザワ海に本部を構える暗黒メガチンジフ・シンカイセイカンヤ、通称セイカンヤには鹵獲した艦娘たちを捕縛し監禁する施設があるという情報を掴んだネオサイタマ・チンジフ情報司令部はナトリを含む少数の偵察部隊を送り込んだ。

しかし現地で待ち伏せしていたのはセイカンヤの深海凄艦娘ではなく、自分たちと同じ艦娘…キョート・チンジフの艦娘たちが突如として強襲してきたのだ。激しい攻撃にさらされた偵察部隊は散り散りになり、ナトリも撤退の最中であった。

(一体何が起こってるの…!?キョートのみんながいきなり攻撃してくるなんて!とにかく今は応急処置を…)ナトリが応急処置キットを取り出そうとした…その時!「イヤーッ!!」鋭いシャウトと共に空を切るような音を発するゼロセンが投擲された!

「ンアーッ!?」そのゼロセンは咄嗟に身をそらしたナトリの右手を掠めた!取り落とした応急処置キットは無慈悲にも海中に沈んでゆく。「ううっ!こ…これは!」ナトリの右手に鋭い痛みが走る。その傷口は凍傷めいて赤く腫れ上がっている!いかなるジツか!?

「惜しいわね!ドーモ、カツラギです!」キズを抑えるナトリの前に、回転ジャンプで降り立った航空母艦娘がアイサツした!その両手には何らかの機構が搭載されていると思われるブレーサーが装着されている。「くっ…!ナトリです。なぜ私たちに攻撃を!?味方のはずなのに!」

「フン!味方?悪いけどモンドムヨーであんたたちは敵と見なすわ!」カツラギはナトリの言葉に取り合わない!カツラギの特殊ブレーサーから超低温の冷気が吹き出す。精製されたのは氷のゼロセンである!「イヤーッ!」すかさずカツラギは氷ゼロセンを投擲する!

「イヤーッ!」ナトリも迎撃ゼロセンを投擲する!しかし相殺破壊されるかと思われたナトリのゼロセンはカミソリめいた鋭さを帯びた氷ゼロセンに真二つに分断されてしまった。なんたる切れ味か!「ンアーッ!」これを避け損ねたナトリは横腹を浅く切られ転倒!「イヤーッ!」「ンアーッ!」すかさずカツラギは倒れたナトリを踏みつけた!非道!

「もう終わり?私の氷ゼロセンに手も足も出ないってわけかしら?フフフ」「ン…ンア…」ナトリは押さえつけられて動けない。「あんたを大破させた後に鹵獲しろって言われてるんだけど、その前に…」カツラギはナトリの豊満な胸にイラついた視線を投げかけている。そしてナトリの上体を立ち上がらせると、破れかけている装束に手をかけ、一気に引き裂いた!「イヤーッ!」「ンアーッ!?」

「アイエエエ…」ナトリは涙目になり必死に胸を隠そうとする。「あーっはっはっは!スッキリした!邪魔なものぶら下げてるからいけないのよ!」特に理由などない!ただ暴力を振るいたくなっただけだ。そしてカツラギの胸は平坦だった。

(誰か!誰か助けて下さい!)ナトリは心の中で助けを求めるがそれに応えるものはいない。マッポーの海域に救いはないのだ!「それじゃあトドメよ!あばよナトリ=サン!あんたの大破理由は任務中の不幸な大爆発四散事故だーッ!!」カツラギはナトリを今まさにカイシャクせんと腕を振り上げた!

……だがその時!座礁した船の残骸にあった窓を突き破り、カラテ艤装を改造したかと思われる巨大なジェットエンジンを装備した謎の人物が突如としてエントリーしたのだ!一体何者か!?誰が彼女を呼んだのか!ヤクザスーツと巫女服を掛け合わせたかのような冒涜的な装束、そしてその顔にはテング・オメーン!両腕には赤漆塗りのオートマチック・ヤクザガン!

「エッ!?誰!?誰よあんた!!」カツラギは狼狽し、謎の侵入者を指差す。「そ、そのテング・オメーン!まさかあんたは!」カツラギの脳裏にある人物の名が浮かんだ。最近ウワサとなっている正体不明の存在にして、孤独なカンムスハンター!「……神々の使者!ヤクザ天狗参上デース!」

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#45【軽巡洋艦ナトリ】ネオサイタマ・チンジフ所属、長良型姉妹の三女。無鉄砲な姉たちと違い奥ゆかしくやや気弱な性格である。しかしそのバストは姉たちと同じく豊満であった。偵察任務が得意。今回、ある事件に巻き込まれたようだが…◆艦◆

◆◆◆「イヤーッ!」作者は夜スリケンを連続投擲した!◆◆◆

【KANMUSLAYER】

「エッ!?誰!?誰よあんた!!」カツラギは狼狽し、謎の侵入者を指差す。「そ、そのテング・オメーン!まさかあんたは!」カツラギの脳裏にある人物の名が浮かんだ。最近ウワサとなっている正体不明の存在にして、孤独なカンムスハンター!「……神々の使者!ヤクザ天狗参上デース!」

どことなくドス効いた声が海に響く!(((ワッザ!?神々の使者ですって?何言ってんのよこいつ?)))「ド、ドーモ、ヤクザ天狗=サン、カツラギです」ただならぬ存在感と口上に気圧され、カツラギはアイサツを決める。その時!「ザッケンナコラーデース!!」ヤクザガンが火を噴いた!

違法強化された赤漆塗りのオートマチック・ヤクザガンが、論理トリガによって弾丸20発を高速射出する!BLAMBLAMBLAM!「グワーッ!?」アイサツを完了していないカツラギ!この卑劣な奇襲を受け、左ブレーサーが破壊された!壊れた電気器具めいて火花が弾け飛ぶ!

「アイエエエエエ!」身を屈めて恐怖におののくナトリ!「イヤーッ!」3連続側転からの側宙で、仕切り直しを測るカツラギ!彼女の持つ脚力は常人の3倍である!機敏なパルクールを決め、兵器の残骸の上に着地!ヤクザ天狗に対して氷ゼロセン投擲動作!「イヤーッ!」

だがオメーンの奥で怪しく光る瞳は、この艦娘の機動を完全に捕捉していた!ヤクザ天狗は容赦なく左のヤクザガンを抜き放つ!「スッゾコラーデース!」銃火が横一文字!「グワーッ!」カツラギの腹部に凄まじい衝撃が走る!上半身が後ろに倒れ、投擲されかけた氷スリケンは明後日の方向に飛んでゆく!

「サヨナラ!」カツラギは大爆発四散!そして白目を剥いて意識を失った!……静謐。オートマチック・ヤクザガンから零れ落ちる薬莢の音だけが、トコロザワ海に鳴る。左右どちらも1マガジンの消費である。今回は鮮やかな勝利であった。

「ハァーッハァーッハァーッ……あなたは一体」ナトリは小さく失禁しながら、謎のカンムスハンターを見上げていた。ヤクザ天狗は返事を返さない。ブラウン色の長髪。ちょこんと立った毛の束。背中に背負うのはカラテ艤装を改造したかと思われる巨大な背負い式ジェットエンジン。両手に持つは赤漆塗り違法強化オートマチック・ヤクザガン。

「……運営はボーを振り上げ、ある艦娘の入渠時間が本来仕様より短かったことを修正し……川の水は血に変わり、川の魚は死に、エジプト人はナイルの水を飲めなくなったのデース」ヤクザ天狗は意味不明の一節を呟きながら、意識を失っているカツラギへと近づく。そしてその平坦な身体をつかみ、上を向けさせた。

ヤクザ天狗はセンベイを4枚、エビフライを一本取り出すとセンベイをカツラギの両目と平坦な両胸に重ね、口にはエビフライを咥えさせた。続いて自らの小便と紅茶を秘密の割合で混ぜた聖水入りの真鍮フラスコを取り出し、それを振りかけた。「ブッダエイメンデース!」…これは彼女が考えた艦娘や深海凄艦娘を蘇らせぬためのモージョーであった。彼女は狂っていた。

ヤクザ天狗は踵を返し、兵器の残骸の上に転がるカツラギとナトリのカラテ艤装に目を落とす。「…………」それを持ち上げると、唖然として座り込んでいたナトリのもとへ向かった。「た、助けてくれてありがとうございます!自分のカラテ艤装を無くしたら3日間ケジメ(飯抜きのこと)になっちゃうし!あなたの正体は…」

「ザッケンナコラーデース!」「ンアーッ!?」ヤクザ天狗は唐突にナトリを平手打ちした!「何を勘違いしているのか知らないが私は決してコンゴウ=サンなどではないのデース…そしてこれはカンムスハントの報酬として頂戴するデース」ヤクザ天狗は無慈悲に言い放った。「エッ!」ナトリは困惑する。「そ、それは困」「ザッケンナコラーデースッ!」ヤクザ天狗の右平手打ち!「ンアーッ!」「スッゾコラーデースッ!」左!「ンアーッ!」倒れるナトリ!

ゴ、ゴウランガ!このヤクザ天狗という女性は、果たして何者なのか!?ただの狂人なのか!?ヤクザなのか!?艦娘ではないだろう!!それとも天狗なのか!?あるいは!?……ナトリは泣きじゃくりながら大爆発四散を覚悟した!「アイエエエエ…許してください。渡しますからぁ…だから命だけは」すると……ヤクザ天狗は手を差し伸べ彼女を引き起こしたのだ!

「すまんな、本当にすまんデース。贖罪の聖戦には軍資金が必要なのデース…」ヤクザ天狗は豊満な胸同士を突き合せ、ナトリの背中を叩いた。テング・オメーンの奥で、彼女は涙を流しているようにも思えた。ナトリは何が起こっているのか理解できず、腫れた頬を摩りながら呆然と座り込んでいた。

「ではここまでデース!」ヤクザ天狗はカラテ艤装を掴み上げ、兵器の残骸に足をかけた。巨大なジェットエンジンが爆音を上げ始める!浮遊するヤクザ天狗!「また邪悪な艦娘が出たら私を呼べ!サラバデース!」ブッダ!彼女は現れた時と同じように、また颯爽と消えてゆくのだった!

ナトリは呆然と去っていくヤクザ天狗を眺めていた。ヤクザ天狗の高笑いか、あるいはジェットエンジン音か、その残響はすぐにトコロザワの闇に消え、再びあたりは静寂に包まれた。ナトリはへたり込んだまま、改めて失禁した。

【KANMUSLAYER】

(親愛なる読者の皆さんへ : 本文中に出てきた「氷スリケン」なるなぞの単語は何かのオバケが囁いて出たノイズのようななんかですのでお気になさらないでほしい。しばらく本編の更新は休むが天狗回はまだ続くのでごあんしんください。皆さんにコーメントンやしつもんを書いてもらえるとなんか高まる。以上です)

( ー)<ドーモ久しぶりだな!ザ・ヴァーティゴです!しっかし分からないよなぁ…ヤクザ金剛=サンって一体何者なんだろうね。え?何か間違ってるって?とにかく質問には答えていくぜ!

>>キソーは剣を使わないの?

( ー)<この世界線の艦娘たちの装束や装備は史実とは全く異なってると言ってもいいと思うぜ!だってほら、カラテしなきゃならないんだからブレーサーや足甲は必須だろう?装備だってその艦娘のバトルスタイルに合わせたものを装備しているはずだ。特に装束に関しては個性が出てるよな、ソウリュウ=サンとかは何も着てないけどネオサイタマに来てからはあまり脱がなくなったらしいぞ。どうしたんだろうな?

>>ナチ=サンの現状はミョウコウ=サンの耳に入ったのだろうか

( ー)<ああ、任務中にその知らせを受けたらしい。相当驚いてたみたいだけど仲間と一緒にその任務はA勝利を収めていたぞ!中爆発四散してたけどな。

>>ズイホウ=サンについてくわしく!

( ー)<彼女には熱心なファンでもいるのかい?とにかく彼女はワザマエと平坦さを買われてトネ=サンの派閥でマスター艦娘の位階にある実力者だ。しかし極度の人見知りなので何もかもが奥ゆかしすぎるのがタマにキズだな。しかしどうしても友達になりたい人がいたら手作りのタマゴ焼きを渡しているそうだ。何も言わずに渡された子の方は何が何だか分からないみたいだが味はおいしいって言ってたな。

>>加賀さんのブリッジ回避は30度くらい余分に傾きが必要そう

( ー)< う〜ん…どうしても胸部装甲の差は艦娘たち各々にとってあまりある差なのは確かだ。しかしそれをカラテに利用する艦娘だっているんだぜ?自分の壁めいた身体に相手の攻撃してきた四肢を固定してしまうジツとか、揺れる胸の反動でカラテの威力を高める艦娘とかもいる…と思う。これからに期待しよう!更新は明日か明後日かららしいぞ。それじゃまた会おう!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

ナトリが敵艦娘と天狗に襲撃されてからしばらく後、キョートからの追っ手を巻いたネオサイタマの艦娘たちは再び合流していた。「よしっと…大丈夫?ナトリ=サン」「は、はい。ありがとうございます」ナトリはアブクマに応急処置してもらった腕を動かす。痛みはあるがまだ大丈夫だ、小破は免れたようである。

「この人やっつけたんでしょー?でも何か変な匂いがする気が…」同じく合流したシマカゼはスマキにされたカツラギをつついている。「き、気のせいですよ!」ナトリは先ほど起こった事を言おうか迷ったが言うのは止めた。何と説明すればいい?天狗が出たとでも?どうかしていると思われてしまうのは想像に難くない。

「カラテ艤装は壊れちゃいましたけどゼロセンはあります!だから任務を続けましょう!」ナトリは気を取り直すように言った。アブクマとシマカゼは怪訝な表情を浮かべているが、そんなことよりもナトリは先ほどの出来事を忘れようと必死だった。(そうだと…きっとあれは何かの夢だったんだ!私がヤバレカバレでなんとかカツラギ=サンを倒したってことで…うん!きっとそう!)

「無理はしないでね。と言っても目的地はすぐそこにあるんだけど…」アブクマが視線を向けた先の海上には倉庫めいた建物が建っている。その物々しい見た目と反して、立て看板には「BKTドリンク製造工場跡地、立ち入り厳禁な」という言葉と共にマスコットのバケツボーイが描かれている。

しかし視線を周囲に移して頂きたい。建物の周りにはサングラスで巧妙に偽装されているが大きなサイバネ頭のヤクザスーツの警備員が巡回している。察しの良い読者諸氏にはもうお分かりになられただろう!護衛があからさまにクローン軽巡洋艦なのだ!

「やっぱり情報は正しかったみたいね!ここはセイカンヤの施設…拘置場に違いないわ!」アブクマは戦闘に備え、四門のカラテ砲を展開する。「でも護衛がいるようです。まずはあのクローン軽巡洋艦をなんとかしないと」「よーしっ!シマカゼに任せて!」シマカゼは背負っていたモーター連装砲=チャンを起動した。

「そーれ!がんばれ連装砲=チャン!」シマカゼが手をかざすとモーター連装砲=チャンはまるで命があるかのようにコクリとうなずく。これはシマカゼのユニーク・ジツ、テレキネシス・ジツだ!シマカゼは思考を大・中・小のモーター連装砲=チャンとリンクさせることでジョルリ人形めいて操ることができるのである。そしてこの中にあたるモーター連装砲=チャンは建物まで近づくと、壁をこんこんと叩いた。

「なんだ?」「どうしましたか」「音がしました」「何ですか」「わかりません」「わたしが見ます」過度に丁寧語をプログラミングされたクローン軽巡洋艦同士が電子ヤクザ音声でやり取りする。片方のクローン軽巡洋艦が壁の影を覗き込んだ。

するとモーター連装砲=チャンはクローン軽巡洋艦が覗き込むのと同時に自分の頭に装備されたサイレンサー付きのカラテ砲で顔面を撃ちぬいた。(グワーッ!)絶命したクローン軽巡洋艦はバタリと倒れこむ。残る一人が反応する時間すら与えず、ナトリとアブクマはゼロセンを投擲する。((イヤーッ!))(グワーッ!)残る一体も後を追うように絶命した。ワザマエ!

「片付いたね!」「中へ入りましょう」三人は「デグチ」「非常識」とネオンで書かれた裏口の小さなドアを開き、侵入した。中にはもうひとつドアがある、どうやら施錠されているようだ。

しかしこの程度の防犯など艦娘たちにとってはショウジ戸に等しい。「イヤーッ!」アブクマはゼロ距離カラテ砲撃でドアノブを粉々に破壊した。そして先に進んだ三人の目の前にダイヤルロック式の鉄扉が現れる。「どうしよう?」「私が開けます」進み出たナトリは鉄扉に耳を当て、ダイヤルを回し始めた。

その一分後、ガチャリと音がすると、鉄扉は静かに開きはじめる。「開きました!」「ありがとうナトリ姉さん。二人とも警戒を!」アブクマの言葉に二人は頷くと、シマカゼは小・中のモーター連装砲=チャン、ナトリはゼロセンを構える。中に敵がいるかもしれないからだ!「「「イヤーッ!」」」三人は同時に鉄扉の向こうへ転がり込んだ!

そして薄暗い闇の中にあったのは両側を鉄格子で囲まれた広い通路であった。「やっぱり…!きっと捕まったみんなはここにいるわ!」「ねえねえ見て!この中にいるのって!」シマカゼが指さした鉄格子の先には小窓から差す月明りに照らされ、うずくまっている艦娘がいる。ナトリはそのクセのある黒髪と、破けた装束から除く小柄な体には不釣り合いな豊満な胸には見覚えがあった。行方不明になっていた仲間のウシオである!

「助けにきましたウシオ=サン!返事をしてください!」ナトリは鉄格子を掴むとうずくまるウシオに声をかける。すると、「…う」小型サーチライトを当てられたウシオはゆっくりと顔を上げた。「無事だったんですね。待っていて下さい、今助け…」「アッ…アイエエエエエエエエ!!許してください!もう構わないでください!これ以上はおかしくなっちゃう!こわれちゃいます!アイエエエエエエ!!」ナトリの顔を見たウシオは突如として絶叫した!その顔は恐怖に怯え、床には失禁の跡を描いている!

「ど、どうしたのウシオ=サン!?落ち着いて!」「アイエエエエエ!女の子どうしでなんで…アイエエエエ!!」アブクマの言葉が聞こえないかのようにウシオは泣きじゃくっている。「二人とも!まだ捕まってる子たちがいるよ!」シマカゼの指差した方からもうめき声が聞こえてくる。

「アーッ!?豊満な胸!コワイ!豊満コワイ!アーッ!!」「エヘ…エヘ…もっとしてください…エヘ…」泣き叫びながら鉄格子をガタガタと鳴らし泣き叫ぶのはムラサメ、おかしな表情で下半身をまさぐっているのはイソナミである。二人ともネオサイタマの艦娘だ!

「一体何があったの…?」「とにかくどうにかしよう!」狂乱する仲間たちに対し困惑しながらも3人は鉄格子を破壊しようとした。その時!「…侵入者なのね、あなたたち。そうでしょう?」薄暗い室内に突如として二つの青い光が現れたのである!オバケか!?いや違う!その青く光る瞳は深海凄艦娘に他ならないのだ!

「だから、あなたたちを、排除する。ドーモ、重巡ネ級です」電撃的にカラテの構えをとった3人に対し、青い光を放つ瞳の持ち主は静かにアイサツした。「戦いは避けられないか…!ドーモ!アブクマです!」「シマカゼだよ!」「ナトリです!」3人もアイサツを返す。すでに戦闘態勢はとっている。ナトリがやや負傷しているとはいえど万全の態勢である!

ナトリは改めて周りを確認した。ネ級以外に敵の気配は無い。(相手は重巡洋艦級1人、こちらの戦力でも十分勝てる!はやく倒してみんなを助け)「…へェへへへへ。3人なら勝てる、そう思ってんだろ?」しかし、室内にこの中の誰のでも無い声が響いた。「…え?」その邪悪なアトモスフィアをまとった声は天井から聞こえてくる。

「甘いんだよなァー、無事に帰れるわけねーってのに。へへへ…」そして振り返ったナトリの目の先、自分たちの入ってきた鉄扉近くの天井、そこに何者かがコウモリめいてぶらさがっている。「お前たちもここにいるヤツらみたいに壊れちまうんだ…アタシに大破させられてな。ドーモ、戦艦レ級です」チロリと見えた赤い舌、それ以上に赤く光る瞳が、3人を射抜くように見つめていた。

【KANMUSLAYER】

◆午後な〜◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

(これまでのあらすじ : 偵察任務中であったネオサイタマ所属の艦娘ナトリは絶体絶命の状況に陥ってしまう。しかしサイオー・ホースか謎の人物、ヤクザ天狗に命を助けられる事になる。だが新たなる危機がナトリ達、そして2人の仲間達に襲いかかるのであった…)

「イヤーッ!」その天井にぶらさがっていた艦娘は回転ジャンプで床に降り立った。闇のように黒いフード、大きくはだけられた胸元、つる下げられた一対のダガーナイフ、そして腰に装着されているのは蛇めいた邪悪なカラテ艤装である!「つーことで今からアンタらは死ぬぜ?同情はしねーけどなァー…」

その童顔に似合わぬ、限りなく邪悪な笑みを浮かべるレ級の赤く光る瞳に睨まれた3人をニューロンに直接ナイフを突きつけられたような恐怖感が苛む!ナトリは思わず身震いした。

ナトリはその赤い瞳に見覚えがあった。クローン駆逐艦やクローン軽巡洋艦には極たまに、通常よりも数段強力な個体が存在している。そしてその個体に共通するのは赤い瞳である。しかし深海凄艦娘にそのような個体が存在しているなど前例が無いのだ!

「しっかしなんだ、駆逐がひとりに軽巡が2人、おまけに片方は手負いかよ?つまんねーな…ネ級=サン!おめーに一匹やるよ」「うん」2人の深海凄艦娘は自分たちを挟み討ちするように立っている。前門のタイガー、後門のバッファローめいたアブナイ状況だ!「私たちの仲間にこんな酷いことをしたのはアナタなの!?答えなさい!」アブクマは4門のカラテ砲を突き付ける!

「はぁ?アタシはそんなシュミもキョーミもねェよ。そいつらを大破させたのはアタシだけど、この監獄に気まぐれでくる港湾セイキ=サンがオモチャにするッて持って帰るんだ。んで、帰ってきたらこうなってただけだ」おお、ナムアミダブツ!シンカイ・シックスゲイツの1人である港湾セイキは非常に性において奔放であり、鹵獲した艦娘を強制相互前後するのが趣味のひとつなのである!

「コワイ!アーッ!?」「アイエエエエエ!」「エヘ、あたし今体温何度あるのかな…エヘ」彼女たちがおかしくなってしまった原因は、狂乱状態の提督には及ばないにしても苛烈な数々の陵辱を湾口セイキに繰り返し行われてしまったからなのだ。ムゴイ!確かに艦娘と深海凄艦娘は実際敵対関係にある。だが考えて頂きたい。ここまでされる謂れはない!

「ま!アタシにゃそんなシュミはねーけどさ…ヘェヘヘヘ」レ級はつる下げたダガーナイフを瞬時に引き抜き、曲芸めいて手元でスピンさせる!「…相手を一方的にブッ壊すのは大好きだぜ?へハハハハハハハハーッ!!イヤーッ!!」そしてレ級は尻尾型カラテ艤装を床に叩きつけ、その反動で三人に向かって飛び掛かった!

「イヤーッ!」レ級はシマカゼ、ナトリに向かってダガーナイフを打ちふるう!「イヤーッ!」「イヤーッ!」シマカゼは側転、ナトリはブリッジで回避!あまりにもハヤイ斬撃で二人の髪が数本宙を舞う!「あなたの相手は、私。イヤーッ!」レ級の攻撃に続くようにネ級はカラテチョップをアブクマに放つ!「イヤーッ!」アブクマは両手の砲塔をクロスして受け止める!すでにイクサは始まっているのだ!

「ナトリ=サン援護して!シマカゼ、いっきまーす!」シマカゼはテレキネシス・ジツを発動し、モーター連装砲=チャンを大中小三体すべてを起動する!「わかりました!イヤーッ!」ナトリはゼロセンを投擲しレ級を牽制!「イヤーッ!」レ級はダガーナイフでゼロセンを斬り飛ばす。「いいぜェ!二人同時にかかッてきやがれーッ!」レ級は身を翻し、尻尾型カラテ艤装を前方を薙ぎ払う様に打ちふるった!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」シマカゼはこれを小ジャンプ回避!「イヤーッ!」ナトリは着地の隙を突かれないようゼロセンを援護投擲する!「イヤーッ!」しかしレ級は回転の反動を利用した斬撃でこれすらも叩き落とした!タツジン!「イヤーッ!」すかさずシマカゼは空中浮遊させたモーター連装砲=チャン達を突撃させる。

「へえ?ブリキのおもちゃッてか?ナメんなよ!」レ級はまずモーター連装砲=チャン・大の放ったカラテ砲弾をブリッジ回避、その姿勢のまま尻尾型カラテ艤装を床に打ち付け反動サマーソルトキック!「イヤーッ!」「ピガーッ!」鋼鉄製のボディが陥没する!さらに攻撃してきたモーター連装砲=チャン・中の体当たりを身を捻ってかわし、暴れ馬めいた後ろ蹴りで弾き飛ばした!「イヤーッ!」「ピガーッ!?」

しかしシマカゼの怒涛の連続攻撃は終わらぬ!この隙をつくようにレ級の死角に回り込んだモーター連装砲=チャン・小がゼロ距離砲撃…する前にレ級は素早い体重移動で死角に向きなおり、砲塔を斬り飛ばした!「イヤーッ!」「ピガーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」しかももう片方のダガーナイフでシマカゼのフィニッシュムーブであるかかと落としすらガードしてみせた!ゴウランガ!なんたる隙の無いカラテか!

「ッ!」「へハハハーッ!一気に勝負をつけるつもりだったようだがアテがハズレたな!」さらにレ級は瞬時に身を沈めると、両側に向かってダガーナイフを突き出した!「イヤーッ!」突き出されたダガーナイフをシマカゼはなんとかバク中で回避するが、砲塔を斬られひるんだモーター連装砲=チャン・小はこれをもろに食らい、顔めいた部分にダガーナイフを深々と突き刺された!「ピガッ!ピガガガガガッ!!」悲鳴めいた電子音が悲痛に鳴り響く!

「まず一体!イヤーッ!」「ピガガガがガーッ!」そして無慈悲にもさらにダガーナイフをねじ込まれたモーター連装砲チャン・小は火花を上げて機能を停止した。「思ったよりやるじゃねーか。所詮人形遊びだがなァー!」レ級はダガーナイフに突き刺さったモーター連装砲=チャン・小を投げ捨てると。ナイフの刃を地面と水平に構えた。ナイフを持つ両腕も水平に大きく広げ、そのまま形の良い尻をもつ腰を落とした。…この奇妙な構えは果たして、いかなるカラテか!?

◆初めのレスで深海凄艦娘を艦娘と書いてしまったのでケジメ寝休憩します◆

◆艦◆艦娘名鑑#46【軽巡洋艦アブクマ】ネオサイタマ・チンジフ所属。長良型姉妹の末妹だが、チンジフには姉妹の中でいち早く着任した。四門のカラテ砲を自在に使いこなし、その火力は重巡洋艦級にも匹敵する。同期のセンダイをライバル視している。気が強い割に少しのことで極端に驚いたりする性格をしている。バストは普通であった◆艦◆

◆艦◆艦娘名鑑#47【駆逐艦シマカゼ】ネオサイタマ・チンジフ所属、サイキック・カラテを得意とする素早い駆逐艦娘。大中小のモーター連装砲=チャンとの連携攻撃は敵に付け入る隙を与えない。以前は天真爛漫の聞かん坊の問題児であったが提督直々の研修を受けたことでやや素直になったらしく、なぜか装束の露出度も上がったという。彼女と提督の間にはタツ【閲覧により削除】◆艦◆

◆再開な◆

「まず一体!イヤーッ!」「ピガガガガガーッ!」そして無慈悲にもさらにダガーナイフをねじ込まれたモーター連装砲チャン・小は火花を上げて機能を停止した。「思ったよりやるじゃねーか。所詮人形遊びだがなァー!」レ級はダガーナイフに突き刺さったモーター連装砲=チャン・小を投げ捨てると、ナイフの刃を地面と水平に構えた。ナイフを持つ両腕も水平に大きく広げ、そのまま形の良い尻をもつ腰を落とした。…この奇妙な構えは果たして、いかなるカラテか!?

「し、シマカゼ=サン!」「ダメ…!来ないでナトリ=サン!」援護しようとしたナトリをシマカゼはその場に押し留めた。シマカゼは気づいていた、おそらく次の敵の攻撃は絶対的に致命的な一撃がくるであろうことを!「…イヤーッ!!」レ級は放たれた弩の矢めいて突撃する!

「イヤーッ!」シマカゼは残りのモーター連装砲=チャンを一列に並べ防御の構え!だがなおもレ級はバッファロー殺戮武装鉄道めいた突撃のまま、左右のナイフで襲いかかった!「イヤァアアアーッ!!」「ピガーッ!!」ナムアミダブツ!モーター連装砲=チャン・大の胴体を一瞬で切断した!部品が弾けとび爆散!

「そんな!?」レ級はなおも突進を続ける!「イヤーッ!!」「ピガーッ!!」を暴れ牛の獰猛なツノめいて正面に向けたダガーナイフがモーター連装砲=チャン・中に突き立てられる!そして最後のシマカゼに襲いかかったのは…邪悪な尻尾型カラテ艤装だ!「アミーゴッ!イヤーッハハハーッ!!」「ンアーッ!!」

おお、ナムアミダブツ!尻尾型カラテ艤装の先に搭載されたワニのアゴめいた先端がシマカゼに噛みつき、レ級がその場で勢いをつけ一回転!そのままシマカゼを投げ飛ばした!「イヤーッ!」「ンアーッ!!」「そ、そんな!!」ナトリの横をワイヤーアクションめいてシマカゼは吹き飛ばされてゆく!

そしてシマカゼの飛ばされた先にいたのは…ネ級と互角以上に戦っていたアブクマだ!アブナイ!このままでは激突は避けられない。しかしアブクマの鋭敏なカンムス反射神経は飛ばされてくるシマカゼを瞬時に把握!「イヤーッ!」「ンアーッ!」アブクマはシマカゼを咄嗟に受け止めた!

だがネ級はこの隙を見逃さぬ!「仲間を、気遣ってる場合?」瞬時に間合いを詰め、近距離カラテ砲撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」アブクマはシマカゼを庇いながら何とかこれを防ぐ!左手のブレーサーが吹き飛ばされ、たたらを踏む!

「ふ、2人とも!大丈夫ですか!?」ナトリは仲間2人の危機に思わず意識を向けてしまった。「余所見してる場合かァー!?イヤーッ!」すかさずレ級はナトリに向かって尻尾型カラテ艤装を振るう。「ンアーッ!」尻尾型カラテ艤装はナトリの身体に巻きつき、一切の動きを拘束してしまった!「ウカツ!」

ナトリはこの拘束から抜け出そうともがいた。しかしさらに巻きつきが強くなる!「ンアーッ!」ナトリは苦悶!「そんな…そんなッて驚いてばかりだなおめーら?無理もねーがなァー…ヘェヘヘ」残忍に笑うレ級は掴んでいるモーター連装砲=チャン・中の首部分にナイフを突き立てる。「ピガガーッ!」「こいつみたいに首を…こーやって?」

その無慈悲にも突き立てられたナイフはモーター連装砲=チャン・中の首を胴体から切り離した!「こうするのもいいかかもなァ!?ヘェヘヘハハハハハーッ!!」「ピガガガガガーッ!!」ムゴイ!「ン…ア…」「まぁいいや。このまま締め付けてやるよ…漏らしちまってブサマに命乞いするまでなァー」床に落ちたモーター連装砲=チャンの首を踏みつけるレ級の顔は、蹂躙への喜びに歪んだ。

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#48【戦艦レ級】シンカイセイカンヤ所属、シックスゲイツ直属のエリート戦士。彼女の扱うサソリ・カラテのナイフと尻尾型カラテ艤装のコンビネーションはいかなる対象であろうとも徹底的に破壊する。残忍極まりない性格をしており艦娘をいたぶる事を楽しんでいる。馬のヒヅメのような足をしているがこれは低い背をごまかすためにシークレットブーツを履いているだけである。尻の形が良い◆艦◆

◆艦◆カンムス名鑑#49【重巡ネ級】シンカイセイカンヤ所属、レ級のサイドキック的な立ち位置にある深海凄艦娘。粗暴で口数の多く小柄なレ級に対し彼女は感情表現に乏しく、口数は少なく長身。イクサの場においてもレ級をフォローする事が多い。公私においても仲が良いのか、休みの日にはレ級になすがままに連れまわされているらしい◆艦◆

◆午後な〜◆

【KANMUSLAYER】

(う…あ…意識が…助け…)ナトリの唇は悲痛な祈りを口ずさんでいた。だがブッダからは応答なしだ。寝ているのだろう。打つ手なしか?…だが、だんだん閉じていく目蓋の奥でナトリの目は、ここで何の偶然かひとつの牢屋にふられた囚人番号を見たのだ!

ナトリの目に飛び込んできたその囚人番号は「8-93」その数字はつまり…「893」!ヤクザの勝利を暗示する神秘的な獣の数字「893」!彼女は藁にもすがる想いで、最後の希望を呼んだ!夢だと思いたかったあの出来事を、今は夢ではなかったと願いながら!「……助けてください……ヤクザ天狗=サン!」

CRAAASH!!はめ殺しの窓が突如割られ、何者かが牢獄内へと突入してきた!ナトリの悲痛な叫びが彼女を呼んだのか!?あるいはトコロザワ海の闇を徘徊していた孤独なるハンターが、偶然にも邪悪なカンムスソウルを感知したのか!?それは常人の与り知るところではない!だがいずれにせよ彼女は現れた!

「ザッケンナコラーデース!」どことなくドスの聞いたヤクザスラング!唸りをあげる背負い式小型ジェットエンジン!見よ!アクロバット回転飛行のまま、赤漆塗りのオートマチック・ヤクザガンが火を噴いた!BLAM!BLAM!BLAM!「グワーッ!?」咄嗟に避けようとしたレ級の尻尾型カラテ艤装に着弾!「ンアーッ!」ナトリの拘束が解け、彼女は床に倒れ伏せた!

謎の侵入者は巨大なものから小型なものに換装したジェットエンジンの噴射を停止し、立膝状態で床に着地する。ワザマエ!「ああ…!そのテング・オメーン!……あなたは、あなたはやはり……!」その女性を指差すナトリの視界は涙に曇る!彼女こそは孤高のカンムスハンターにして神々の使徒!「正義の執行人……ヤクザ天狗参上デース!」

「何者…!?ドーモ、ネ級で」「ザッケンナコラーデース!!」「グワーッ!?」思わずアイサツを返そうとしたネ級を容赦なき重金属弾が襲う!それを近くで目の当たりにしたアブクマはあまりにもタイヘン・シツレイな行いに絶句した!

戦闘前、または一度のみのアンブッシュの後のアイサツは艦娘や深海凄艦娘たちの絶対的な礼儀である事は古事記にも書いてある。しかし彼女、ヤクザ天狗にはこの道理など通じない!この天使か、はたまた狂人は艦娘であるはずがないからだ!「…提督はボーをいきり立たせ、ある艦娘のある場所に突き立てたデース」「グワーッ!」ヤクザ天狗はなおもネ級に向かってヤクザガン連打!

ネ級は弾丸の雨に怯むが、その優れた耐久力を持ってガードを固めながらその中を突き進む!「イヤーッ!」ヤクザ天狗を排除するために!「…そして提督は容赦なくその艦娘の身体を掴むと、激しく前後に動いたデース。艦娘はヤメテと言ったが提督は返事の代わりに3度突いたデース」急に照準が変更され、ネ級は脚に重金属弾被弾!「グワーッ!?」

姿勢を崩したネ級にヤクザ天狗はヤクザガン集中砲火!その場から一歩も動くことなく!「グワーッ!!」「やがてその艦娘がもっとしてくださいと言うと、提督は返事の代わりに8度突き….…すると塵が舞い上がり、ブヨの大群が人と家畜を襲い、ニンジャは運営の鳩尾を五度殴ったデース」ゴウランガ!銃口から煙を立ち上らせ、謎めいたモージョーを口ずさみながら、ヤクザ天狗は悠然と振り返る!黒いヤクザスーツには傷ひとつない。一方のネ級の装甲部分はまるでネギトロだ!

「…すまんな、本当にすまんデース」ヤクザ天狗は過大なダメージで動けなくなったネ級を無表情に見下ろしていた。その声は、誰にも聞こえぬほど小さく厳かだった。「私は、お前達全員をジゴクへ送り返すデース。私があの日、お前達を解き放ったのだから…」そして彼女は腰に吊るした聖水瓶へと手を伸ばす。

ナトリは何が起ころうとしているのかを悟った。ヤクザ天狗はまた、奇怪な艦娘祓いのエクソシスト的儀式を行おうとしているのだ。禍々しい光景から目を背けようとしたその時…ナトリの視界の端に、凄まじい勢いでヤクザ天狗に飛びかかるレ級が映った。「ヤクザ天狗=サン!アブナイ!」

「……何デスって!?」ヤクザ天狗は聖水瓶を投げ捨て、二挺拳銃を握り直す。だが彼女が振り向いたその時!憤怒の表情を浮かべたレ級の低空トビゲリが彼女の体側面に直撃したのだ!「ウオオオーッ!よくもアタシのダチを!イヤーッ!」「グワーッ!!」ワイヤーアクションめいて吹っ飛ぶヤクザ天狗!ナ、ナムサン!

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#50【航空母艦カツラギ】キョート・チンジフ所属、アデプト位階の艦娘。両手に装備された特殊ブレーサーから生成される氷ゼロセンは優れた貫通力を誇る。グランドマスター・マスター・ウンリュウの妹だが姉たちと決定的に異なる特徴があり、それを指摘すると泣いて怒る◆艦◆

◆マスターを連呼してしまったのでアイフーォンの変換きのうはケジメします◆

◆なお今日の午後な。以上です◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

低空トビゲリがヤクザ天狗の左体側に命中!左腕に装着されたサイバネ強化外骨格が砕け、銃がグリップを逃れる!レ級は後方へとムーンサルト回転着地!逆にヤクザ天狗は壁に向かって直線的に弾き飛ばされた!アブナイ!違法サイバネで強化されているとはいえ、彼女は艦娘の能力など持っていないのだ!

冷たく硬い壁が近づく!ヤクザ天狗の死を期待するかのように、牢獄内に鳴り響いていたセイカンヤのイメージアイドル軽巡凄キの歌う堕落的アイドルソングがクライマックス的なループを迎えた!ナムサン!「……ッケンナコラーデースッ!」ここでヤクザ天狗は背中のジェットパックをIRC制御し、空中で体勢を立て直す!タツジン!

ヤクザ天狗はオリンピック水泳選手のように体を一回転させ、両足の黒いヤクザヒールの裏で壁を蹴った。微かに軋む膝のサイバネ強化外骨格!息を呑むように鳴り止む堕落的アイドルソング!前方回転の後着地し、レ級に銃口を向ける!「スッゾコラーデース!」再びアップテンポの堕落的アイドルソングが鳴り響く!

アタシったらカワイイヤッター!ネオサイタマに放火しよ?今すぐに放火しよー!ズンズンズンズズキューワキューキュキュ!憤怒の形相で再び突き進むレ級。ヤクザ天狗は残された右の銃で迎撃体勢を取る。だがテング・オメーンに搭載された網膜ディスプレイには「制御不能な」の文字が明滅!先程の衝撃でIRC系に破損か!?

狭い牢獄内でジェット飛行戦闘は危険。論理制御を失った銃で深海凄艦娘に対抗するのは自殺行為。時間を稼がねば。ヤクザ天狗はオートマチック・ヤクザガンを収め、ドスブレードを懐から抜き放つ!「ザッケンナコラーデース!」

両者のカラテが激突した!外付けサイバーアイで敵の動きを解析しながらドスブレードを振るうヤクザ天狗。だがいかに彼女とて、セイカンヤのエリート戦士であるレ級の肉弾戦能力は凄腕のカンムスハンターを遥かに凌駕していた。攻撃をブリッジやダッキングでかわしつつ、サソリ・カラテをヤクザ天狗に叩き込む!

「イヤーッ!!」肩や腕をかすめた後、ヤクザ天狗の腹部そして胸部へと重い連撃!「オゴーッ!」ヤクザ天狗は吐血し、行き場の無くなった血液の一部は、オメーンの両眼の穴から血涙か何かのように漏れ出した。コワイ!サイバーアイには「ジリー・プアー(徐々に不利)」の緊急アラート!

ナトリは唖然としてこの光景を見つめていたが、目の前に転がってきたヤクザ天狗のオートマチック・ヤクザガンの存在を認めると彼女のニューロンは急速に現実感を取り戻した!(ヤクザ天狗=サンが倒されたしまったらわたしたちは…もう)アブクマはゼエゼエと息を吐き、膝をついている。気を失ったシマカゼを庇いながらの戦いは相当に応えたようだ。まだ加勢できるような状況ではない。

「イヤーッ!」レ級はカラテの応酬の中、ヤクザ天狗に向かって左ダガーナイフ投擲!このままではモーター連装砲=チャンの二の舞か!?だがヤクザ天狗は咄嗟の判断で小型ジェットパックを作動させ、空中バックフリップ。そこから体を捻り、レ級の即頭部に対してボレーキック!「シャッコラーデースッ!」「グワーッ!」怯むレ級!

しかしレ級の左腕は、ヤクザ天狗の脚を固くホールドしていた。痛烈なナイフ斬撃を振り下ろすレ級。危険を感じ、ジェットエンジン噴射で逃れようとするヤクザ天狗。だが遅い!サイバネパーツが砕ける嫌な音が鳴り、ヤクザ天狗の右膝サイバネ強化外骨格が破壊された!「グワーッ!」

レ級は目の前の友人の仇であるヤクザ天狗をいたぶることに全神経を集中させていた。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ここに外付けサイバーアイに「制御下の拳銃だ」の文字。懐に手を伸ばす!その銃口を叩き斬るレ級!反撃が許されない!「イヤーッ!」「グワーッ!」

ナトリにはもはや逡巡している時間は無かった。ヤクザ天狗が倒されてしまえば次は誰だ?次は自分たちだ!ナトリは残り少ないカラテを込め、拾い上げたオートマチック・ヤクザガンの論理トリガを引いた!「イヤーッ!!」

「本人認証できませんドスエ」しかし銃からはナトリの覚悟を嘲笑うかのような電子マイコ音声!「エッ!?…ナ、ナンデ!?」ナトリが引金を何度も引く。そのたびに電子マイコ音声がリピート「本人本人本人認証本人認証できませんドスエ」万事休すだ。ナトリは銃を取り落とし、天を仰いだ。「ダメだ…これじゃ…もう」ナトリの閉じた瞼の裏に、仲間たちや自分の姉妹、提督の顔が浮かび、涙があふれた。

「イイイイヤアアアーッ!」レ級の強烈なボディブロー!「グワーッ!」ヤクザ天狗はまたオメーンの眼から血を噴出し、2、3歩よろよろと力無く前進すると、そのままうつ伏せに倒れて失禁し、痙攣を始めた。「ザッ…ケ…」「ハァーッ…!ハァーッ…!よくもダチをやりやがって!」レ級は息を整えている。「まだ怒りたりねえ!小便かけて火ィつけてやるぜ!」おお、ブッダ!惨すぎる!あまりにも惨すぎる仕打ち!だがこの絶望を止められる者はいない。

……KーRAAAAAAAAAASH!!しかし次の瞬間!ヤクザ天狗が飛び込んできた隣の窓ガラスが粉々に破砕!力なく涙をながしていたナトリ、ダメージの残る身体を無理やり立たせようとしていたアブクマ、下着をずらししゃがみこもうとしていたレ級は突然の出来事にくぎ付けになる!

スローモーションめいて鈍化した三人の視線の先には、ガラスの破片舞い散る牢獄内にキズ一つなく、腕を組んで直立不動の姿勢を取る一人の艦娘!「ドーモ……」赤黒い艦娘装束に身を包んだそのニンジャは、「憲」「兵」と彫られた鋼鉄メンポから憎悪に満ちた声を吐き出しながら、レ級に対してアイサツを決める!……おお、彼女は!?彼女はまさか!?「……センダイです!敵艦、殺すべし!」

【KANMUSLAYER】

◆今日な◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

「ドッ!?ドーモ!レ級です!何だテメエは!?」センダイの突然のエントリーに面食らったレ級は慌てて下げていたショートパンツを履き直そうとする。だが!「イヤーッ!」「グワーッ!」センダイの容赦なきカラテパンチが側頭部に突き刺さった!レ級はバランスを崩し、床に顔面強打!形の良い尻が持ち上がった格好で倒れてしまった。なんたるブザマ!

「ち、ちょっとセンダイ=サン!?なんでアンタがここにいるのよ!!」面食らったのはレ級だけではない、アブクマも増援があるという通信は来ていないからだ。「私の専用IRCに異常アラートの通信があった。だから私はここにいる」センダイは油断なくカラテ警戒しながらさらりと答える。

しかしこの牢獄がある海域からチンジフまでは相当の距離がある。とても数時間で到達できるような距離ではない!だがいかにしてセンダイはやりとげたのか?答えは…そう、スシである。艦娘にとって最も効率的なエネルギー源であるスシを、センダイは継続的に補給しながら海上を全力疾走してきたのである!

さらにスシに加え、センダイの優れたカンムス持久力、呼吸法、最適なスプリントフォーム全てのカラテ相乗効果の結果、彼女の消費したスタミナは実際ゼロといっても過言ではない!全身からキリングオーラを発するセンダイは荒い息を吐くこともなく敵を見据えている。すべては邪悪なる深海凄艦娘を沈めるためだ!

「助けに来てくれた…っての?」「そうだ」「ふ、ふん!私は別に助けてって言ってないからね!でも…い、一応礼は言っておくけど!」アブクマは同時期に着任したセンダイに対抗意識を持っている。しかしこの状況におけるセンダイのインターラプトは実際アブナイ状況にあった自分たちにとって、ブッダの慈悲とも思える希望だからだ。

「アブクマ=サン、囚われている三人を今のうちに助けだしてほしい。此奴は私が倒す」「ひとりでやるつもり…!?あたしも援護くらいは!」センダイは動かないレ級にじりじりと距離を詰めていく。「否、この状況で三人を救出できるのはオヌシだけだ。あちら側にいるナトリ=サンが私がどうにかする」アブクマはややためらったが、決断的に仲間が捕えられている檻の方向へ踵を返した!「…分かったわ。でも絶対に死ぬんじゃないわよ!この夜戦バカ!」「うむ」

センダイの見据える先にいるレ級はブザマな恰好からしばらく動かなかったが、形の良い尻をぶるりと震わせると「イヤーッ!」上げかけたショートパンツを引き裂きながらブレイクダンスめいて立ち上がった!そしてその目はセンダイにも勝るとも劣らぬキリングオーラを放っている!「クソッたれがァ!誰が何人こようが全部アタシが!ブッ壊してやるッ!!」「よかろう、敵艦殺すべし!」

二人はほぼ同時に仕掛けた!「「イヤーッ!!」」ナムサン!どちらも初手クロスカウンターである!しかし両者これを身をそらして回避!センダイはすかさずショートフックを放つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」レ級は裏拳をあててこの攻撃を弾く!間髪入れずにミドルキックをセンダイに叩きこむ!「イヤーッ!」「グワーッ!」

怯むセンダイに向けレ級は残った右ナイフの斬撃を繰り出す!「イヤーッ!」しかしセンダイは瞬時にバックステップ回避!「イヤーッ!」そしてもう一度踏み込んでのひじ打ち!「グワーッ!」レ級はガードが間に合わず、これを鳩尾に食らい苦悶!

「イヤーッ!」センダイはさらなる追撃のカラテストレート!「イヤーッ!」レ級は自由な左手でセンダイの手首を掴み止めた。無防備なセンダイの頭上から尻尾型カラテ艤装を振り下ろす!「イヤーッ!」「グワーッ!」センダイは左のブレーサーでこれを受け止めるがあまりの衝撃で身が沈む!なんたる一撃の重さか!

両手がふさがってしまったセンダイに対して手数で勝るレ級はナイフを突きを繰り出す!「イヤーッ!」アブナイ!「イヤーッ!」「グワーッ!」だがセンダイは激烈なフロントキックでレ級を蹴り飛ばした!ナイフが掠った鋼鉄メンポから耳障りな金属音が鳴る。両者は一旦距離を取り、カラテを構えなおす。ゴジュッポ・ヒャッポ!

「ペッ!へェヘヘヘ…!ほかの奴らと違って中々やるみてーだなァ?センダイ=サン…覚えたぜェー」床に血を吐き捨て、顔面を強打した時に出た鼻血をぬぐうレ級は、連戦をものともしない邪悪な闘志と自信をいまだ発している。センダイは痺れが残る左腕をムチのように振るい痺れを取り払った。「そうだ。今からオヌシを大破させるのが私だ。ジゴクのミヤゲに覚えておくがよい」センダイは挑発的に手招きする。レ級は相当の使い手である。しかしカラテ!カラテあるのみだ!カラテで勝る者がこのイクサの勝者となるのだ!

【KANMUSLAYER】

◆午後な〜◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

レ級は片手のナイフをちらつかせながら、センダイはにじり足で互いの出方をうかがっている。タツジン同士のカラテではウカツな初手は自殺行為になるからである。ナトリはその様子を固唾を呑んで見守るしかない、レ級に締め付けられた時、関節をひねってしまったようで身体に力が入らないのだ。

(敵と戦えるのはもうセンダイ=サンしかいない…神さま!センダイ=サンに勝利を!)祈るナトリの声に応えるように、最初に仕掛けたのはセンダイだ!「…イヤーッ!」ゼロセンを高速投擲!「イヤーッ!」さらにカラテ砲追撃!隙のないコンビネーションだ!

「イヤーッ!」しかしこれを瞬時に察知したレ級はダガーナイフをコンパクトに振りかざしゼロセンを弾き飛ばす!続けて襲い来るカラテ砲弾は尻尾型カラテ艤装の先端に装備された小口径カラテ砲で相殺!隙のない防御シーケンスだ!無論これでイクサが決すると考えていないセンダイ。レ級に姿勢を低くしてのダッシュで一気に距離を詰めにかかった!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」レ級は迎撃カラテチョップを姿勢を低くしたセンダイに振り下ろす!「イヤーッ!」しかしセンダイは急ブレーキをかけるとその場で側転しカラテチョップを回避!レ級が手を引き戻す前に側面から回し蹴りを叩き込む!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」だがこのクリティカルめいた一撃はフレキシブルに可動する尻尾型カラテ艤装に割り込むように防がれてしまった。「バカがーッ!こっちには手が3本あるッて言ってもいいんだぜ!?イヤーッ!」レ級は高速ナイフ斬撃連打!センダイはコンパクトなステップで次々と繰り出されるナイフを回避してゆく。しかし手数で圧倒的に勝るレ級!このままではジリー・プアー(徐々に不利)だ!

だがこのままおめとめと押し切られるセンダイではない!「イヤーッ!」ナイフをブレーサーで弾くようにガードすると、カラテパンチと共にゼロ距離カラテ砲発射!「イヤーッ!」「イヤーッ!」レ級はあやまたずブリッジ回避!しかしこれもセンダイの予想範囲内である!「イヤーッ!」ブリッジ体勢のレ級に対し足払いを繰り出す!「グワーッ!」レ級はバランスを崩し、地を舐める!

「イヤーッ!」床に倒れたレ級に対し、センダイは容赦なきカイシャク・ストンピングを繰り出す!しかし次の瞬間、レ級の身体が倒れた状態にもかかわらず空に跳ね上がった!センダイの足はレ級の顔面ではなく床に叩き込まれてしまう。この奇妙なムーブメントを可能としているのは他ならぬレ級の尻尾型カラテ艤装である!

天井すれすれまで反動ジャンプしたレ級は空中で身を翻し、勢いをつけてセンダイに尻尾型カラテ艤装を振り下ろした!「イヤーッ!」これを避けられぬと判断したセンダイは両腕をクロスして対空防御!「イヤーッ!」攻撃を受け止めた瞬間、センダイの全関節が悲鳴を上げる程の衝撃を襲う!「ヌウウウーッ!」センダイはメンポの奥で歯を食いしばった。

これを好機と見たレ級は床に降り立つと大ぶりの薙ぎ払いを放つ!「イヤーッ!」センダイは防御時のダメージをキアイで耐えブリッジ回避!「イヤーッ!」数センチ上を尻尾型カラテ艤装が通過し…その先には邪悪な笑みを浮かべるレ級がいた。「とったッ!イヤーッ!」そしてブリッジ姿勢のセンダイにナイフを突き立てにかかる!この攻撃を回避するのは不可能と言っても過言では無いほどの状況である。オーテ・ツミか!?

センダイの危機にナトリは悲鳴を上げかけた。しかし次の瞬間!センダイの目がカッと見開き、振り下ろされるダガーナイフを…おお!ゴウランガ!両の掌で挟み取ったのだ!今やブリッジ体勢のセンダイを支えるのはそのしなやかな脚、そして首の筋肉のみである!「イヤーッ!「ヌウウウーッ!」なおもナイフを突き立てんと両腕でナイフをねじ込もうとするレ級!そしてそれに耐えるセンダイ!奇妙な体勢ではあるが、その間では壮絶な命のやり取りが行われている!

「ハァーッ!無駄な足掻き!テメーはもうオシマイだ!!」レ級は硬く握ったナイフに力を入れ続ける!それに対しセンダイはこの体勢においてあからさまに無理がある。「ヌ…ウッ…!」ナイフがセンダイのめくれあがったしなやかな腹部に近づいてゆく!「もう力負けかァ!?死ね!センダイ=サン!このまま死ねーッ!!」レ級はセンダイの姿勢を崩すべく、尻尾型カラテ艤装を振りかざした!ナイフにかかりきりのセンダイはこの攻撃に対抗する術が無い!おお、このままネオサイタマの死神は壮絶なる大爆発四散を遂げてしまうのか!?

…だが!「……ザッケンナコラーデースッ!!」三人を牢から助け出し、レ級にゼロセンを投擲しようとしたアブクマよりも速く、どことなくドスのきいたヤクザスラングと共に重金属弾が10連射された!BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!その弾丸すべては吸い込まれるようにレ級の尻尾型カラテ艤装の根元に全弾着弾!「グワーッ!?」レ級は完全なる意識外からの攻撃に大きく仰け反った!

そしてその硝煙立ち上るオートマチック・ヤクザガンの持ち主は、おお!見よ!ヒビの入ったテング・オメーンの奥から尋常ならざるアトモスフィアを発するその瞳の持ち主は!慢心創痍であったはずの孤独なカンムスハンターにして、神々の使者、そして正義の執行人!ナトリは涙をあふれさせ、その名前を三度呼んだ!「ヤクザ天狗=サン!!」「今だ!センダイ=サン!その邪悪な深海凄艦娘を滅せよ!!」

「…イヤーッ!!」センダイはナイフを挟む手のひらに凄まじい力を込める!そして…ナイフが半ばからへし折れた!「何!?グワーッ!!」センダイがすかさず放った蹴り上げはレ級の顎に命中!レ級のニューロンが激しくスパークする!そしてネックスプリングでセンダイの瞳にはセンコめいた赤い光!センダイは腕を振り上げ、装備されたカラテ砲の砲口が天を向く!「イイイイ…!」全身にカラテが漲る!

「…イヤァアアアアアーッ!!」そして振り下ろされたカラテチョップ共に天に放たれるカラテ砲弾!反動加速したチョップの速度はもはや音速の域に達し、体勢を崩したレ級の尻尾型カラテ艤装を、根元から切断した!「グワーーーーーッ!!」切断面から鮮血めいて緑色のオイルが噴き出した!

「イヤーッ!」床に倒れかけたレ級の身体の周りに何か縄のようなものがひらめく!それはセンダイの愛用するドウグ社のカギ付きフックロープだ!「グワーッ!」レ級は瞬時にスマキにされ、センダイに持ち上げられた。「イヤーッ!」センダイは拘束したレ級の顔面にカラテパンチを叩き込む!「グワーッ!」センダイの手を離れ、吹き飛ばされるレ級!しかし!「イヤーッ!」センダイはレ級に繋がれたドウグ社のカギ付きフックロープをすかさず引き戻す!再度カラテパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」

すかさずセンダイは引き戻して殴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」引き戻して殴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」引き戻して殴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」引き戻して殴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」引き戻して殴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

「ア…バッ…そんな、このアタシ…が…!」破けたショートパンツはもとより、低い背をごまかすために履いていた馬の蹄めいたシークレットブーツもどこかに吹き飛び、レ級は糸の切れたジョルリ人形めいて力なく下半身が下着一枚となった体をだらりと垂らしている。「…死ねーッ!センダイ=サン!」背後から思いがけず叫び声!

「イヤーッ!」片手でレ級を吊り上げたまま、センダイは後ろ回し蹴りを放つ!友の危機に対し、虫の息でアンブッシュをこころみたネ級の顔面に蹴りが直撃!キリモミ回転して吹き飛ばされた!「グワーッ!」ネ級は断末魔を残し大爆発四散した!「サヨナラ!」

「クソったれ…よくもアタシのダチを…ネ級を…クソ…!」「オヌシは私の仲間たちを容赦なく傷つけた。全てはインガオホーだ、ハイクを詠め。」レ級は歯を食いしばりながら悔し涙を流した。「うぐ…アタシのカラテ/クソッたれの艦娘に勝てなかった/直ったらダチと勝つ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

レ級がハイクを読み終わると同時に、センダイは拳を叩き込む!「イヤーッ!」「サ!」「イヤーッ!」「ヨ!」「イヤーッ!」「ナ!」「イヤーッ!!」「ラーッ!!」そして小柄な暴君にして、恐るべきカラテの持ち主、戦艦レ級は壮絶な大爆発四散を遂げた!

【KANMUSLAYER】

◆今日か明日な◆

(親愛なる読者の皆さんへ : 今日に更新しようと思ったがむりげなので明日にしました。しかし今までの名鑑に更新情報があるのでだす。それを今後もだしてゆくことだろう。以上です)

◆艦◆カンムス名鑑#10.5【正規空母カガ】ネオサイタマ・チンジフ所属。美しい艦娘であるがその表情は常に虚ろで目元には隈をたたえている。かつてマルノウチ・スゴイデカイチンジフ(現 : ネオサイタマ・チンジフ)の設立当時にはヒュウガと2人で副秘書艦を務め、提督を心の底から献身的にサポートしていた。しかしある事件を機に心を意図的に閉じるようになる。ボーキ成分の過剰摂取による爆発的なカラテは敵からすれば悪夢に等しい。戦闘時の邪魔と断じてさらしを巻きつけているが胸はかなり豊満◆艦◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

「ハァーッ…!」センダイのメンポの隙間からジゴクめいた蒸気が溢れ出した。行き過ぎた殺艦衝動は身を滅ぼす、一歩間違えれば大爆発四散していたのはこちらだったかもしれない。着任したての頃、ヤヨイに教わった「敵が死ぬまで殴りなさい」最終的な勝負を決めたのはこのインストラクションありきであった。

殺艦衝動を落ち着かせたセンダイは床にマグロめいて倒れ伏せているレ級とネ級を見やった。敵にも仲間がいる、友がいる、そんなことは分かっている。しかしセンダイは自分の仲間や友を守るために一切の慈悲を捨て去ったのだ。すべてはあの時から…だが今は語るべきではあるまい。

「ゴホッ!ゴホーッ!すまん…デース、本当にすまんデース…」センダイはよろよろと起き上がった正体不明の人物に視線を移す。「私があの時…お前たちを解き放ったからデース。すべては、ゴホッ!ゴホーッ!」センダイはこの女性を知らない。しかしネ級の外装に残った弾痕から敵ではないという判断を下していた。

「…アナタもなのデース、センダイ=サン。あのカタルシス、その時に、ニンジャソウルが…ゴホーッ!」礼を告げようとしたセンダイはその言葉を聞いた途端、大きく動揺した。「ヤクザ天狗=サン。あなたは一体どこまで知っているのだ…!」

センダイが歩を進めようとした、その時!ZTOOOOOOOM!!牢獄内に凄まじい破砕音が鳴り響いた。ナムアミダブツ!これはレ級とネ級があらかじめ用意しておいた、緊急時にこの施設を破壊するための爆破装置が作動したのだ!牢獄に瓦礫が降り注ぐ!「ンアーッ!」ナトリがアブナイ!

「ちょっとセンダイ=サン!ヤバイわ!すぐにでもこの牢獄は崩れて無くなる!」アブクマとなんとか意識を取り戻したふらつくシマカゼが、助け出した3人に肩を貸しながら出口へ向かっている。「アンタも早く!」「すぐに行く!イヤーッ!」センダイはアブクマの返答を待たず、動けなくなっているナトリ、そしてヤクザ天狗の方へ駆け寄ろうとした。

だが!ZTOOOOM!巨大な瓦礫が進もうとするセンダイ前に落下する!「グワーッ!」なんとかバックフリップでの回避に成功するがナトリへの救出ルートが完全に分断されてしまった!「イヤーッ!」センダイは瓦礫を破壊するために拳を叩き込むが時間がかかり過ぎる!間に合うはずも無し!

しかしこの破壊の中、ヤクザ天狗は身体中の痛みに耐えながら切断されたレ級の尻尾型カラテ艤装を拾い上げた。「破壊されたサイバネと下着の洗濯代にはやや不足…」そう呟くとヤクザ天狗は血咳を吐きながらうずくまっているナトリを掴んで起こした。「起きるのデース」

「私を呼んだな。贖罪の戦いには、積極的ドネートが必要デース」ナトリにはもう動く力も残っていないようだった。「でも…もう渡せるものなんて」「払えぬのなら、お前を天狗のワンダーランドに連れてゆくデース」ヤクザ天狗は片腕でナトリを抱きかかえると、ジェット噴射で飛び立った!「アイエエエエエエエエエエ!」キリモミ回転しながら二人は天井を突き破り、呆気にとられたセンダイを残してトコロザワの夜闇へと消えた!


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「遅い…遅すぎ!なにやってんのよアイツ!マジで死んじゃうわよ!?」段々と崩れてゆく牢獄を見ながらアブクマは狼狽する。「アブクマ=サン、大丈夫だよ。センダイ=サンは…何て言ったってニンジャだし」ようやく意識がハッキリとし始めたシマカゼは未だ精神不安定の状況にある三人をなだめている。「い、いくらアイツだからってあんなのに巻き込まれたら流石にオシマイよ!今から助けに」「イヤーッ!」

アブクマがヤバレカバレで崩れゆく牢獄に向かおうとしたその時。赤黒い影がロケット砲弾のように飛び出し、仲間たちの前に着地した!おお、彼女は!「…バカ!心配かけんじゃないわよ!もう…」「えへへ、ただいま!」泣き笑いのような表情になってしまったアブクマに対し、センダイは人懐こい笑みを浮かべて答えた。

「やっぱり無事だったんだね!あれ、その二人って…」センダイは近くの岩場に大破したレ級とネ級を寝かせた。彼女たちを崩壊する牢獄から助け出したのは単なるセンチメントではない、次に二人を待っているのはタツタによる過酷なインタビューであろう。二人の口は堅いかもしれないがタツタなら何とかしてくれるとセンダイは思った。尋問の内容は知る由もないが。

「ちょっと待って!ナトリ=サンは?」「ああ、うん。大丈夫だと思う」「はぁ!?」アブクマは困惑するがセンダイは脱力したように岩に座り込んだ。「きっとあの人は悪い人じゃないと思うんだ。それに…どこかで会ったことがるような感じもしてさ」


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ヤクザ天狗は、彼女だけにしか認識できないイービルスピリットめいた追ってをまくように夜の海を飛び回った後、ナトリの知らない海域までやってきた。ヤクザ天狗はそこに隠されたヤクザクルーザーへと無線IRCを発信し、その屋根を自動展開させた。

「ンアーッ!」船の中に落下したナトリは、苦痛に顔を歪めた。船内のスピーカーが耳障りに鳴る。最初に助けてもらったとき、ヤクザ天狗の手によってナトリの胸の谷間に密かに仕込まれた小型発信盗聴器が、ヤクザクルーザー内の受信装置とハウリングを起こしたのだ。

ヤクザ天狗は船内にあるソファに身を沈めた。テング・オメーンの奥で、激痛に歯を食いしばった。彼女もまた、先程の戦いでサンズ・リバーを渡りかけていたのだ。「お礼は……」ナトリが喋り、ハウリングが起こる。ヤクザ天狗はスイッチの1つを切った。まだ船内には微かな盗聴受信音が十数種類聞こえている。

ナトリには自分に仕掛けられた盗聴器を含め、まだこれらの音声の意味を理解できなかったが、このクルーザーの中が異常な世界であることはすぐに解った。窓や壁のいたるところに、作戦立案書の切れ端や、写真や、手書きのメモなどが貼ってある。その中にはナトリ自身の写真、そして顔が黒く塗りつぶされた白い軍服を着る人物の写真もあった。

「…ア、アハ、ハハ…」「え…?」なにやらヤクザ天狗の様子がおかしい。彼女は頭を抱えて何かをブツブツと呟いている。「てい、と….く…触ってもいいけど…さ、時間と場所を…アハ…」ていとく?彼女は今「提督」と言ったのか?しかしヤクザ天狗の様子はどう見ても狂人のそれである。ただのうわ言だろうか。

「…早く、続けるのデース。カネはどこデース……聖戦のための寄付金は。カンムス殺害報酬を支払うのデース」顔を上げたヤクザ天狗はナトリをテングオメーンの奥から睨みつけた。「アッハイ」ナトリは懐から簡易メディキット、携帯食料、ボーキ補給ドリンク、わずかなクレジット素子などを取り出す。チンジフからの支給品だ。しかし、この程度でヤクザ天狗が満足するだろうか?ナトリは恐怖におののいた。

「……」ヤクザ天狗はそれらを受け取り、船内の小タンスに仕舞った「……足りんが、しばらく待ってやるデース。邪悪な艦娘が出たら、また私を呼ぶデース」「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」ナトリは緊張の糸が切れたように、粗い息をした。「どうしたのでーす?深海凄艦娘の恐怖が残っているのデスか?」

「アイエ…」ナトリは言葉に詰まった。目の前のヤクザ天狗に恐怖しているのだとは、とても言い出せない「……アッハイ、怖かった…です」「これを使うがよいデース」ヤクザ天狗はセンベイと謎の聖水瓶を取り出して渡した「センベイを額に当て、その聖水を飲み干すのデース。悪夢が浄化されるのデース」

「あ、あの、お礼は……」「不要デース。私の個人的な贖罪行動……ゲホッ!ゲホオーッ!」自動IRC操縦されるヤクザクルーザーは一段と速度を上げ、夜の海を疾走した。「アッハイ……」ナトリはヤクザ天狗が言うようにセンベイを額に当て、聖水を飲み干した「どうデース、ピンク色の光が見えたデスか?」「見えません、なんか変な味がします…」

「そんなはずはないデース…!」ヤクザ天狗の厳しい声がヤマヒロを恐怖させた「目を閉じてみるのデース」「……アッハイ」ナトリはそれに従った。「どうデース、ピンク色の光が見えてきたデスか?聖水は美味しいデスか?」「……アッハイ、見えてきました、おいしいです…」ナトリは嘘をついた。そうしなければ身に危険が及ぶ気がしたからだ。

「深海凄艦娘の恐怖が薄れてきたデスか?」「……アッハイ、薄れてきました」「聖水の小瓶を見るのデース……よし、邪悪なカンムスソウルの影響が黒い水となって小瓶に移ったデース。見えるデスか?」「……アッハイ、黒くなっています」ナトリはまたも嘘をついた。改めてこの人は完全に狂っているのだと思った。

「闇医者のところへ運ぶデース」とヤクザ天狗。「お礼はもう……」「ならば天狗のワンダーランドに行くデスか?お前は優れた艦娘デース。鍛錬次第では、私のような聖戦士になれるかもしれんデース」「いえ、いいです……」もしやこの人は仲間を求めているのではないか?ナトリはヤクザ天狗の狂気と、孤独な物悲しさを悟った。

ナトリは思った、この人は何らかによってもたらされた一瞬の狂気を、ずっと続けて…完全に狂ってしまったのだと。それ以上のことを詮索したり想像したりするのは止めにした。自分もまた、底知れない狂気へと引きずり込まれそうな気がしたからだ……

……数日後。ナトリは応急処置をされた状態でネオサイタマ・チンジフの前に捨て置かれ、ヤクザ天狗はいずこかへと姿を消した。ナトリは悪夢を見続けているようだった。いつか、遠い将来、またあの人の名を呼んでしまう自分を予想しながら……

【アトロオーシャン・イン・ネオサイタマオーシャン】終わり

(親愛なる読者の皆さんへ : 一部で原作完全再現のためのコピペ・ジツの誤作動によりフロスト・なんたら=サンや鎧ヤクザ=サンなどの正体不明の人物に関するオノマトペが出てしまいました。これらの責任により、あほになってしまった作者は天狗のワンダーランドに連れて行かれたのでごあんしんください。以上です)

◆艦◆カンムス名鑑#51【ヤクザ天狗】非艦娘?たったひとりでキョート・チンジフとシンカイセイカンヤに孤独な闘いを続けているとウワサされるカンムスハンター。黒のヤクザスーツ風巫女装束と天狗面、カラテ艤装を改造したかと思われる小型または大型ジェット、オートマチック拳銃という出で立ちで現れる。そしてその精神は致命的な異常をきたしていると言う他ない。なおこの件とは全く関係ないが、キリシマやヒエイたち姉妹の長女であるコンゴウが任務中に行方不明になっており現在捜索中である◆艦◆

◆お知らせ◆忍殺本編にもヤマヒロ=サンが出てきたので作者もこれを予想していたということで天狗のワンダーランドからもどってこれました。次の話の構想は出来ているがその間に別の話もしたいと思う。おそらく原作の人気エピから出る。来週には始まるだろう◆ブッダイエメン◆

◆思えばもう次の週なので始める◆

【ビヨンド・ザ・カグコインデカッタ・フスマ・オブ・サイレンス】

彼女は目を開けた。目の前にはひとつの部屋があった。

以前の彼女なら、ただそこで途方に暮れていたことだろう。しかし彼女…ハツカゼの踏んでいる場数は伊達ではない。この空中に浮かぶ部屋のさらに上にある黄金立方体。これも慣れた。ハツカゼは迷うことなくその空中に浮かぶ部屋のドアノブに手をかける。

(オジャマシマース…)ハツカゼは小さくつぶやきながらドアを開ける。部屋の中には円形のベッドがある、そのベッドの上には二つの影のシルエット。2人とも女性のようだ。その2人はベッドの上で激しく絡み合っている。

(ウェー…女同士で?こりゃあヘヴィな体験だわ)目を逸らしたくなる気持ちを抑え、ハツカゼはベッドの上を凝視する。片方は非常にグラマラスな髪の長い女でもう片方はクセのある長髪の小柄な女、しかしその体には不釣り合いな豊満なバスト。どうやら同意の上ではないようでグラマラスな女がむなしく抵抗する小柄な女を激しく愛撫している。

根気強くその様子を見守るハツカゼ。ウカツに手出しはできない。最悪の場合は患者の精神が崩壊したり、自分がおかしくなってしまう可能性もあるからだ。やがてハツカゼはグラマラスな女のシルエットのその影に、タコの形を認めた。

(ここでもタコか…よし)ハツカゼは懐に手を入れると、ウツボを取り出した。ウツボはタコの天敵ともいえる生物である。そしてハツカゼは振りかぶると、ウツボをグレネードめいて影に投げつけた。

「…う」「ふぅ、どうウシオ=サン?少しは楽になった?」ハツカゼはマインド潜行を止め、現実に戻った。ここは医療ケア部門の長であるハツカゼの治療室だ。ベッドの上のウシオにかざしていた手を離す。

「ハ、ハイ。なんだか気持ちに整理がついたというか…と、とにかくありがとうございます!」ウシオは不思議そうに目をしばたたかせた。「はいはーい!私も私も!とーっても気分が楽になったわ!」「あ、あの…私もです。女の子どうしなら…ノーカウントですよね?」すでに治療が終わったムラサメとイソナミも大事なさそうだ。「そうか…そりゃあよかったわ」3人の連続マインド治療は流石に負担が大きかったようだ。ハツカゼはイスにへたり込む。

「ウフフ、お疲れ様。ありがとうねハツカゼ=サン」脱力するハツカゼの肩を叩くのはこの治療を要請したタツタだ。「どうみんな?もう前線に戻れそうかしらぁ?」タツタは笑顔を三人に向ける。「スタンバイオーケーよ!でも…ノーカウントといってもなー」「ひゃあああ…思い出しただけで恥ずかしいですぅ」「も、もうおヨメにいけないかもしれません…」

「ウフフ、そうねえ。とりあえずここに並んでくれる?」タツタは自分の目の前を指差した。3人が不思議そうに横一列に並ぶと、タツタはすかさず3人を無言で平手打ちした。「「「ンアーッ!?」」」

タツタはニコニコと笑っている。「また相手に捕まるようなくだらないブザマを晒したらもう助けてあげないからねぇ〜?もしまた捕まってしまったらあなたたちは取引の価値すらない敵のメスブタ奴隷オイランという職が待ってるわよぉ?」「「「ハイ、ゴメンナサイ」」」3人は小さく失禁した。

◆寝休憩、タツタ=サンはやさしみにあふれている◆

◆再開な◆

「ウフフ、よろしい。でも、まだ心残りってことよねぇ〜?」タツタは自分の小型IRCに表示されているカレンダーのようなものに目を通した。「…そろそろかしらぁ?3人とも?提督=サンがあなたたちのために直々にカウンセリングしてくれるわぁ。3人同時にね…ウフフ」

「エッ!提督が!?」「わたしなんかに貴重なお時間を?え、えへへ…」「で、でも提督=サンに話さなきゃいけないんですよね?い、イソナミがあんなことやこんなことをされたとか…恥ずかしいです」3人の反応は至極まんざらでもなさそうである。「安心していいわよぉ?提督=サンはとーっても…ウフフ、やさしくしてくれるから」そしてタツタの目は優しかった。

治療室を出て行く4人を見送りながらハツカゼはいまだイスに身を預けていた。(提督直々にかぁ、いいな…私もしてほしいな)最近「あの夢」はあまり見なくなったがやや寝不足の生活は続いている。(でも提督が優しく?あんなぶあいそなのに?想像できないわー)大きく伸びをすると、細身なハツカゼの腹がちらりと覗く。彼女は駆逐艦娘の中でも見た目の年にしては少々小柄だ。

そう、小柄だからこそあの時の激突事故で想像をはるかに超えて吹き飛んでしまったのだろう。あれ以来、廊下などでミョウコウと鉢合わせると驚きのあまりに失禁しそうになる。実際少し出た。「ハァー…他人を治療する前にまず自分のトラウマを克服するべきかな…」部屋の奥を見やると部下である二人のクローン医療妖精たちがせっせとカルテの整理をしている。自分が手を貸すほどの仕事量ではないようだ。

(午後からの受診の予定は今のところナシか。休憩がてら昼寝でもするかあ)あくびを噛み殺し、行儀悪く腹をぽりぽりとかきながらハツカゼは患者用ベッドに寝そべろうとした、その時!「おいハツカゼ=サン。ちょっといいか?」思わず入口の方から男の声!ハツカゼはちいさく飛び上がりその男を、自分たちの司令官であり、ひそかにあこがれているその男の名前を呼んだ。「てっ!提督!?ち、違うの!これはサボってるってわけじゃ!」

アタフタと弁明しながらだらしない服装を直すハツカゼを見る提督は、ややあきれたように頭をかいた。「別に注意しにきたワケじゃねぇ。休める時には休んでも構わん」しかしそう言う提督の顔色はやや悪く、目の下にはうっすらとクマが浮かんでいる。「あ、ああ…うん。アノ、提督は大丈夫?なんか調子悪そうだけど…」「アー…気にするな。チト寝てないだけだ…」

思えば最近はセイカンヤの事のみならず、キョートとの本格的な交戦があったばかりだ。提督の仕事量は凄まじいだろう。「無理しないでね…それで今日はどうしたの?ち、治療なら!ヨロコンデ…」「いや、俺のことは今のところいい。ハツカゼ=サン、ちょっと付き合ってくれ」「エッ!?」

提督のどことなく憂いを帯びた視線を受けたハツカゼの心臓の鼓動はおもむろに早くなる!(てっ、提督から直接!?付き合ってって!?ヒュウガ=サンがそろそろ遠征任務から戻ってくるころなのに!?そ、そんな抜け駆けを!?え、エヘ…エヘ)赤面して思わずニヤついてしまったハツカゼに対し提督は怪訝な表情だ。「聞いてるか?」「…ハッ!!うんうん!わ、わたしでよければ是非!ふ、ふつつかものですがよろしくお願…」「まぁいい、付き合ってほしいッてのは、お前の『あの夢』についての事でだ」「…エッ?」

【KANMUSLAYER】

◆午後な〜◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

一歩先を歩く提督に続き、ハツカゼはおずおずとついて行く。キョートとの交戦事件がひと段落したおかげか、チンジフ内にはいつもよりたくさんの艦娘たちがいるようだ。非番の仲間も多いようで、立ち話をする者、親しい友人たちを引き連れて娯楽スペースに向かおうとする者たちもいる。

気だるげに歩を進める提督は駆け寄ってくる駆逐艦娘たちを退けながら、手を振る者に軽くアイサツを返しながら地下へ続くエレベータへと向かう。その横顔に疲れは見えるが、やはり端正な顔立ちである。(…それにしても)ハツカゼは思わずにやけてしまう。普段、提督の側を歩けるのは秘書艦のヒュウガ、秘書代理のタカオ、ストーカーのアタゴくらいである。他の艦娘たちが提督に付き添えるなどそうそうないことだからだ。

(メギツネェ…!)(呪われろ…呪われろ…)(アアアダブ)なんだか自分に対する恐ろしい呟きが聞こえる気もする。ハツカゼはところどころに現れる負のオーラに意識を向けないようにした。しかしなぜ多くの艦娘たちは提督に強く、または密かに惹かれてしまうのか?このようなハーレムめいたものは堕落的量産型アニメーションやタイトルも内容も薄い小説にはよく見られる光景だ。しかしこれは現実世界での話である。

それは簡単な話だろう。このチンジフに「異性」とも言える存在はいないからだ。艦娘たちは無論「女性」しかいない、クローン妖精たちは性別不明だがそもそもサイズが違いすぎる。それに加え提督は…なによりもまず部下たちの事を考えている。普段こそ素っ気ないが、いざというときは自分の地位をかなぐり捨て、艦娘たちのために行動できる人だ。少なくともハツカゼはそう思っている。

女性として生まれたからには、艦娘たちが初めて会う異性である提督のことを大なり小なり想ってしまうのは無理もないことなのだろう。つくづく罪作りな人だともハツカゼは思った。もし、その想いがねじ曲がってしまったら、今頃チンジフはある艦娘のようなサイコパスのレズのサディストの集団になってしまっていたかもしれないが。

(オオイ=サンの治療をした時はマジでヤバかったっけ…あそこにはもうマインド潜行したくないわ)ある記憶を思い出して気分が悪くなるハツカゼ。「おい、どうした?」「ウープス…な、なんでもないわ…」「おかしなヤツだ。とにかく着いたぞ」提督が壁に着いたボタンを押すとエレベータの扉が物々しい音を立て、開いた。

◆寝休憩な◆

◆作者は搾取的ブラックバイトメントから生還したのできょうはこうしんします。午後な◆

(親愛なる読者の皆さんへ : 更新を予定していましたが突発的用事メントのじじょうによりダメになりました。作者は速やかにケジメし、詳細なカンムス名鑑を3人分同時更新でお詫びとさせて頂きますのだなあ)

◆艦◆カンムス名鑑#52【駆逐艦ムラサメ】ネオサイタマ・チンジフ所属。元気で声がでかい。港湾セイキに舌を入れられてキスされた◆艦◆

◆艦◆カンムス名鑑#53【駆逐艦イソナミ】ネオサイタマ・チンジフ所属。控えめで気が弱い。港湾セイキに全身をくまなく舐め回された◆艦◆

艦◆カンムス名鑑#54【駆逐艦ウシオ】ネオサイタマ・チンジフ所属。控えめで気が弱く豊満。港湾セイキに全身をくまなく愛撫された◆艦◆

◆上記の名鑑で述べられたのは青少年のなんかに配慮したので事実のほんの一部に過ぎません。なお3人は元気に満ち溢れている。遅れたが始まる◆

(オオイ=サンの治療をした時はマジでヤバかったっけ…あそこにはもうマインド潜行したくないわ)ある記憶を思い出して気分が悪くなるハツカゼ。「おい、どうした?」「ウープス…な、なんでもないわ…」「おかしなヤツだ。とにかく着いたぞ」提督が壁に着いたボタンを押すとエレベータの扉が物々しい音を立て、開いた。

2人を乗せたエレベーターは粛々と下降してゆく。せっかく2人きりなのだから何か話題を振ろうともじもじするハツカゼに対し、提督はおもむろに口を開いた。「いいかハツカゼ=サン。これからお前に見せるものは…このチンジフの最重要機密のひとつだ」「きっ…機密!?そんなものを!?わ、わたしに!?」

ハツカゼは狼狽するが提督は冷静な目つきのままだ。「このことを知っているのは艦娘たちの中でもそういない。しかしお前の言っていた「あの夢」に関係あることかもしれんのでな」「つまり…私があの夢を見た原因が…その機密に?」「可能性がないとも限らん」

あの恐ろしいイメージが、その意識を発している何かが自分が暮らしているチンジフの中にいたということになるかもしれないのだ。ハツカゼはごくりと唾を飲む。「とにかく心の準備をしとけ。それにお前は…極端なビビり屋だしな」「んなっ!?そ、そんな事…」「ある。この前ミョウコウ=サンとすれ違っただけですっ転んでたの見たぞ」「んむっ…!」

「着任してそこそこ経つクセにビビり症は治ってねえみてーだな。そこに関してはアブクマ=サンといい勝負だぜ」悔しそうに頬を膨らませるハツカゼに対し、提督は小馬鹿にするように笑った。ハツカゼはその笑顔にどきりとしたが、ゴキブリが出ただけで、驚きのあまり派手に転び中爆発四散したアブクマと一緒にされる謂れはない!

「フン!私だって一応場数(イクサはないけど)踏んでんのよ!ちょっとのことじゃビビったりしないわ!」「どうだかな」そんなやり取りをしているとエレベーターが止まった。目的の階層についたようだ、扉が開いてゆく。ハツカゼは怒ったように扉に向かう。「ナメないでよ?私は詳しいんだ。特にマインド潜行の危険性ってのは…」「ドーモ」「アイエッ!?」

扉が開くがいなや、エレベータ内から出ようとしたハツカゼの数インチ手前に誰かが立っている!驚き後ずさってしまったハツカゼは着ていた白衣の裾を踏み転倒!「グワーッ!」ナムサン、後頭部強打!「…何やってんだ」頭を抑えて悶えるハツカゼを提督は呆れながら立たせた。

「い、いだ…あなたは」「ヤヨイよ」エレベーターの扉を開け前に立っていた艦娘は目礼した。そう、彼女こそが過去のマルノウチ抗争を最前線でたったひとりで引き受けたとされる、チンジフでも最高クラスのワザマエ持つネオサイタマの英雄とも名高いヤヨイである!

ハツカゼは面と向かってヤヨイに会ったのは初めての事である。自分とそう変わらぬ背丈と体格にもかかわらず、その謎めいた表情、薄く開いた瞳、閉じた口元、全身から漂うタツジン的オーラにハツカゼは思わず怯んだ。「ど…ドーモ。ハツカゼです」「知ってるわ、医療ケア長の人」「アッハイ」ハツカゼはぺこりと頭を下げた。

「いきなりですまんな。準備はできてるか?」「ええ」提督に対しヤヨイは短く返す。どうやらヤヨイは相当に口数が少ないらしい。提督に向けるその表情はどこか怒っているようにも見えるが、ハツカゼにはヤヨイのそのような感情はまったく読み取れなかった。「分かった、後は大丈夫だ。だから…」「次の命令は、何?」

ヤヨイは提督を見つめ続けている。「あなたの命令を、頂戴」その表情からは何も読み取れない。提督はやや怯んだが頭をかきながらやや目をそらして答えた。「アー…いや、今はいい。待機しててくれ」「そう」そう言うとヤヨイは2人にクルリと背を向け、近くにある小部屋の中へ入っていった。

ハツカゼは困ったような表情の提督を驚いて見た。いつも不機嫌そうで、常に冷静な提督には非常に珍しい表情である。一度も見た事がない。(や、ヤヨイ=サンって…一体何者?)ハツカゼがあれこれ考えてるうちに提督は廊下の奥へ歩を進め始めた。「人の顔をジロジロ見るな…とっとと行くぞ」「アッ!待ってよ!」ハツカゼは慌てて提督の後を追う。廊下の切れかけた電球が、不吉の前兆のようにチカチカとまたたいた。

【KANMUSLAYER】

◆さらに午後な◆

【KANMUSLAYER】

薄暗い通路を提督とハツカゼはしめやかに進む。通路の両端には鉄格子、それが意味するのはつまり(牢獄ってわけね…)ハツカゼは先ほどからいくつかのソウル反応を感じていた。しかしそれは自分たち艦娘のソウル反応ではない、深海凄艦娘の邪悪なソウル反応である。

「…ヤヨイ=サンは」「へ?」提督は歩きながらおもむろに口を開いた。「ここの看守長だ、任務のない間はな」「へぇー…でもナンデ?ヤヨイ=サンってスゴイ人ってのは誰でも知ってるけどこんな…」「ウラの部署にいるのかってか?」提督は言葉につまるハツカゼに振り向き答えた。

提督の表情はいつにもなくシリアスである。「ここには…下っぱはともかく、とんでもないヤツが1人いる」「とんでもないヤツ?でも、そんなヤバイ感じはないけど」ここで感じる深海凄艦娘たちのソウルの反応はかなり弱まっている。何よりも拷問や尋問を一手に引き受けているタツタのおかげだとハツカゼは思った。なぜか提督に対する恐怖心も伝わってくるがそれは知る由もない。

「とにかくソイツのためだ。いざっていう時に抑止力となるのが…ヤヨイ=サンくらいしかいねえんだよ」提督はしばらく歩き続けていたが、突き当たりの牢屋に着くと足を止めた。「ここだ」「この牢屋?」特に強い反応はない、牢屋の中にいるというのが分かる程度の小さな反応だ。「むむ…ほんとにここなの?」ハツカゼは訝しんだ。

「そうだ。ハツカゼ=サン…備えろよ」ハツカゼは薄暗い牢屋の中に目をこらす。牢屋内の簡素なベッドの上に誰かが寝そべっている。その者が着る黒いドレスから伸びる白いしなやかな足には足枷がはめられており、鎖がベッドの足につながっているようだ。(この人がとんでもないって?うーん、そんな風にヤバいと思え………ッ!?)

牢屋を覗きこもうとしたハツカゼは大きく後ずさり、思わず後ろにいた提督にぶつかってしまう!「おい…!」「ハ….ハァー…ハァー…!こ、このひと、だれ…!?」動悸が止まらない、汗が噴き出す、足がガクガクと震えた。なぜか?そのベッドに寝そべっていた者がおもむろにハツカゼに目を合わせてきたからだ!

(ナンデ…!?いままで、感じなかったのに、これ、ナンデ!?)混乱するハツカゼをよそに、その赤い瞳の持ち主、危険を感じるほどの妖艶なアトモスフィアを醸し出す深海凄艦娘は2人の姿を認めるとチロリと赤い舌を出し、笑った。「…ふふふ。来たのね?おもしろいコを連れてるじゃないの…」

その声は自分の頬を直接舐められたような感覚すら感じさせる。しかしそれは不快感ではない、それが心地よく感じてしまうのだ!「う…う…!」ハツカゼは思わず提督の軍服の裾を握りしめる。「できれば会いたくなかったがな…元気そうだな。残念ながら」提督に怯んだ様子はない。しかしハツカゼは提督のニューロンの乱れを感じ取った。

「相変わらずつれないわね。そこもイイけど…」その長身の深海凄艦娘は立ち上がりこちらに歩を進めると、怯えるハツカゼの顔を楽しげに覗き込んだ。「ドーモはじめましてハツカゼ=サン…私は戦艦棲キです。セイカンヤで一番エライのよ?ふふふ…」目の前に鉄格子を隔てて立っているのはとんでもない何かである。ハツカゼはようやくそれを理解した。

【KANMUSLAYER】

◆状況はかなりシリアスな。よってこのSSに猥雑は一切無い。続きは後日になる。以上です◆

◆夜な〜◆

ハツカゼはアイサツを返そうとした。しかし声が出てこない、恐怖のあまり口をぱくつかせることしかできないのだ。それになぜこの人は自分の名前を知っているのだ?この人の前で自分の名前は出していない!「あらら?アイサツは返さなきゃだめよ?貴方ニュービーの子?じゃないわよねぇ…」

戦艦棲キはにこりと笑った。その笑顔は同性でさえもどきりとしてしまうような美しさを醸し出している。しかしそれ以上に…ハツカゼの心を支配していたのは恐怖だった。それは何かとてつもなく暗い、深海の闇めいた言葉にできぬ恐怖。「セイカンヤで一番エライ?囚われの身でよく言えたモンだな」「囚われてあげてるのよ?今のところはね…ふふふ」

戦艦棲キはハツカゼから視線を外し、提督を舐め回すように見つめた。「それにしても…結構溜まってるみたいじゃないの。どう?私がスッキリさせてあげようか…?」戦艦棲キは自分の舌の上に指を這わせながら黒いドレスの片方の肩紐を下ろし、豊満な胸元を強調する。「貴方のスキなこと何でもさせてあげるわよ…ふふふ」なんたる破廉恥か!

提督は戦艦棲キの肢体を目の当たりにし、やや眉をひそめたが突き放すように吐き捨てた。「…ほざいてろ。ハツカゼ=サン、落ち着いたか?」「お…オーケーオーケー…なんとか、大丈夫よ」ようやく心が落ち着いてきた。しかしいまだ窺い知れぬ恐怖のアトモスフィアはこの場に渦を巻いている。一体この女性は?セイカンヤで一番エライというのはどういうことなのだろうか。

「コイツは確かにセイカンヤのトップだ、2年前までな」「にねん…まえ?」提督はハツカゼの疑問に答えるように静かに語り始めた。「お前が着任したのは1年と半年前くらいだが、知っているだろう?2年前のあの事件を」かつてネオサイタマ・チンジフは別の名前であり、このチンジフ自体も別の海域にあった。しかしそこはもうすでに無い。「…マルノウチ抗争?」ハツカゼは思い出した、あの大規模なイクサを、自分が生まれる前の大事件を。

「あ・た・り。あの時、セイカンヤの指揮をとったのがこの私ってことよ、ふふふ」ハツカゼと提督のやり取りを微笑しながら眺めていた戦艦棲キはまるで懐かしむように話に割り込んできた。「あのイクサは良かったわねぇ〜…私に挑みかかり大爆発四散する子、固まっちゃう子…失禁しちゃう子もいてすごく楽かったわぁ」

「…お前はあっちいってろ」提督が彼女を睨みつけると戦艦棲キは肩をすくめ、ベッドの上に寝そべった。「とにかくだ、その抗争で前のチンジフは無くなっちまった。だが…その代わり親玉のコイツを鹵獲したというわけだ」しかしハツカゼには信じられなかった。この人がセイカンヤのトップならばなぜセイカンヤとのイクサがいまだ続いているのか?彼女を引き合いに出せば、セイカンヤを降伏させることも可能かもしれないのに。

「今私を取り引きに使えばいいと思ったでしょう?」「エッ…」戦艦棲キはハツカゼの心を読み取ったかのように口を開いた。「でも残念ねえ、私がいなくてもカワイイ部下たちがなんとかしてくれるの。現に今もセイカンヤは動き続けている…それに」赤い光を湛える瞳が提督の顔に向けられた。「貴方、『あの子』がまだ生きてるって思ってるんでしょ?ふふふ…だから手を出せないのよ」

「………」提督は何も言わなかった。しかしハツカゼには伝わってくる。彼のニューロンの大きな乱れだけではない、固めた拳が微かに震えから彼の大きな動揺が。「アノ…提督」「…本題だハツカゼ=サン。お前の夢の原因はコイツか?」その言葉は質問を拒絶するような響きを帯びている。ハツカゼは押し黙り、戦艦棲キの方へと意識を集中する。

ハツカゼがマインド潜行を自らのジツと認めたのは最近のことである。今までは単なるイメージとしか思っていなかったが、一部の艦娘たちが持つとされるユニーク・ジツのひとつ、ユメミル・ジツ。この力が自分にあるということをようやく認めたのだ。(そうだ…今大切なのはあの夢のこと。これを早く、解決…)

…しかし!「…ンアーッ!」意識を集中させていたハツカゼは突如として大きく仰け反った!「何!?」提督も尋常ではない事態を察し、崩れ落ちかけたハツカゼを抱きしめ支えた!「どうしたハツカゼ!」「う…あ…!うう…!」ハツカゼの鼻から血がたれる。次の言葉が出てこない。「…あらあら?」戦艦棲キはやや驚いた様子でハツカゼを見た。

「こ…の…」「なんだ!?何があった!」ハツカゼは絞り出すように声を出した。「この人…じゃない…の…もっと、おそらく、別…の」残りの言葉は出なかった。ハツカゼが意識を失ったからだ。「くそッ!」提督はハツカゼを抱きかかえると踵を返し、エレベーターの方向へと駆け出した。

そして1人、牢屋に取り残された戦艦棲キは静かに微笑した。「あの子、今私の頭の中を覗こうとした…ユメミル・ジツ、おもしろいじゃないの」その微笑は相手を意識に関係なく魅了するような、見た者のニューロンに直接指を這わせるような、恐ろしいほど魅力的な微笑だった。「ハツカゼ=サン、あの子もほしくなっちゃったわ…ふふふ」

【KANMUSLAYER】

(親愛なる読者の皆様へ : 今回の更新ではアイキャッチのし忘れや、文書の乱れなどの偶発的あほインシデントがありました。この原因は作者が抗アレルギー鼻炎薬をキメていた副作用の眠気からと思われます。クスリはやめましょう。以上です)

◆なお今日な◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

あれから数時間後、ハツカゼは草木生い茂る森の中にいた。「ふう…」ハツカゼは汗を拭う。ここは彼女のある意味仕事場といってもいい精神世界ではない。れっきとした現実である。その証拠に、背の高い樹木の間からのぞくのは黄金立方体ではなく初夏の太陽だ。

(にしても…気絶してしまうとは情けないわね…わたし)草を掻き分けながらハツカゼは数時間前の事を思い出した。ハツカゼの目が覚めた時、そこにいたのは心配そうにこちらを覗き込む二匹の助手のクローン医療妖精、カルテを書くメディカル長のチョウカイ、そして提督だった。「提督!ハツカゼ=サンが!」「目が覚めたようだな」

「う…ここは…?」いまだ意識があやふやなハツカゼに、提督は辛い思いをさせてしまった事を詫びた後、ハツカゼが気を失ってしまい、チンジフのメディカルセンターに運び込んだ事を話した。「提督…あたし」「今は休め。何があったか話すのは後でいい…すまなかったな」最後に提督はもう一度詫びると、メディカルセンターを出て行った。

その後にハツカゼを診察してくれたチョウカイから言われたのは、身体のどこにも異常がない事、もう起き上がっても大丈夫という事、提督から今日の仕事はもう休んでいいという事。ハツカゼはフートンで寝て過ごそうかとも思ったが、ニューロンにチリチリと焼きつくような感覚が残っている。それを払拭するため、気分転換に外出したというわけだ。

「よしっと、結構取れたわね!情報通りだわ」ハツカゼは集めた薬草の束をバッグに入れる。この薬草は香を焚くと実際心地よい癒しの効果がある。自分の仕事にも大変役立つだろう。資源採取マップに新たに追加されたばかりの場所だが、来たかいがあった。(これだけ取れればいいか…うーん、結構スッキリしたな)

しかし気分転換になったとはいえ、まだハツカゼには疑問が残っている。あの時、戦艦棲キにマインド潜行を行おうとしたら弾き出されてしまったことはよく覚えている。覗き見る程度のつもりだったがそれでも彼女の邪悪で強固なニューロンはハツカゼを強く拒絶したのだろう。鼻血が出たのはその反動である。

そして何より「あの夢」の原因は戦艦棲キではなかった。弾き出されたとき、一瞬だが彼女の精神世界を垣間見た。しかしそれはハツカゼにしか分からないが、あの夢とは全く異なる感覚であった。(あの人が原因じゃないとしたら何が私にあの夢を見せているんだろ…あーあ!やっかいな特技のせいよね…絶対)

今回は色々なことが多すぎてハツカゼにはいまだ整理がつかない。しかし、ひとつ気になったこともあった。(戦艦棲キ=サンが言ってた『あの子』っていったい誰なんだろ)提督が生きているのを信じていると戦艦棲キは言っていたが、嘘か誠かは分からない。しかし提督のあの反応…もしかして本当なんだろうか?

「ドーモォ」小岩に腰掛け物思いにふけっていたハツカゼは突然声をかけられた。「え?あ、ドーモ!」ハツカゼは慌ててオジギした。いつの間にか近くにしゃがんで、草をむしっている女性がいる。ソウルの反応は無い、ただの一般人か?この人もこの小島に薬草を探しに来たのだろうか。「アナタも探しにきたの?ここに…」そう話しかける女性はつば広の白い帽子をかぶっており、表情はうかがい知れない。

「ア、ハイ。ちょっと薬草を探しに来たんです。仕事の一環というか…リフレッシュのためというか」「ヘェ、そうなの」その女性はハツカゼの横に腰掛けた。女性着ている短いワンピースのスリットから雪のように白い太腿がこぼれる。そして引き締まったウエストと豊満な胸と尻!実際グラマラスな女性である。(なんだろこの人?でもタカオ=サン並みにスゴイ…!)

「エート、私に何か用ですか」「ネオサイタマ・チンジフのコでしょアナタ」「え?」女性と自分のスタイルを比べてやや悲しくなっていたハツカゼは面食らった。(なんで私がチンジフの艦娘だって知ってるの?でもこの人、アタゴ=サン並みにスゴイ…!)なぜかハツカゼは視線をそらせない。女性は脚を高く蹴り上げて組んだ。もはやなぜかハツカゼはそれを凝視!

「汗をかいちゃった。脚を舐めてよ」「え?」何をいきなり?訳がわからぬ。ハツカゼはぎょっとした。ハツカゼは女性を見上げた。そう。見上げたのだ。ハツカゼは既に跪いていた。女性の目元は帽子に隠れて分からない。微笑しているということしか分からない。

「従順になってよ。カワイイ子」「ハイ」ハツカゼは即答した。(え?ナンデ?)「足首を舐めてキレイにして、早く」「ハイ」(ナンデ?ナンデ私は即答?ちくしょう!でも実際スゴイ脚してる。ヒュウガ=サンみたいに!でも…)ナムアミダブツ!ハツカゼは女性の足首をぺろぺろと舐め始めた。「アカチャン」女性はコロコロと笑った。

ハツカゼは苦悶した。(助けて!)女性はワンピースの胸元をはだけ、豊満な乳房を露わにした。「じゃあ、気持ちよくしてよね」「ハイ」(何で私はこんな?こんな趣味はない。でも実際スゴイおっぱいしてる!私の100倍はスゴイちくしょう!でもこれは明らかにヤバイ!!)

このままでは絶対にまずい。この女性は実際スゴイ(だがそんな趣味はない)アカギ=サン並みにスゴイ。でもこんなのはおかしい。わかる。不条理だ。わかる。(助けて!)ハツカゼは女性の胸を揉みながら、ブッダに祈った。女性は喘ぎ始めた。「アカチャン…アカチャン!」その時!女性の帽子が脱げ、地面に落ちた!

「…ぎゃあああああーっ!?ぎゃあああっばぁー!?アバーッ!?」その女性の眼を見たハツカゼは、乳房を揉みながら狂ったように絶叫!だが逃れられぬ!手の動きもとめられぬ!女性の眼が赤い光を放つ!女性は小岩に腰掛けながら、両脚でハツカゼをガッチリと抱え込んでいる!

「ファハハハハハ!ファハハハハハ!」女性は狂笑する!ナムサン!ハツカゼが胸を揉んでいる女性は、深海棲艦娘だったのだ!ハツカゼが叫ぶ!「アーッ!アーッ!アーッ!」「ファファファ!ドーモハツカゼ=サン!あたし港湾セイキっていうの!アカチャン!もっと愉しませて!愉しませてよ!」「アーッ!アーッ!アーッ!」殺される!犯される!殺される!逃げられない!港湾セイキの眼が光る!彼女の指先がハツカゼの顔を撫で回す!腰を擦り付ける!ナムアミダブツ…ナムアミダブツ!

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#55【重巡洋艦チョウカイ】ネオサイタマ・チンジフ所属。メディカル長を務める艦娘。ハツカゼが精神治療のスペシャリストだとすれば、彼女はビョーキやケガの治療のスペシャリストである。常日頃激しい戦いを繰り広げる仲間たちを医療サポートする。真面目で、チンジフの中では数少ない常識人。姉のマヤがあほなのに対し明らかに知能指数が高い◆艦◆

◆午後な?◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

センダイは選曲マシンを操作していた手を止めた。「…あれ?今何か聞こえなかった?」不思議そうにあたりを見回すが特に異常はない。「は?イスズ=サンの歌声以外に?」ドリンクを飲んでいたアブクマは怪訝な表情を浮かべた。

「うん。なんか…助けてって聞こえた気がしてさ」センダイの隣ではイスズが大きく手を振りかぶりながら持ち歌を熱唱している。「んでんでんでっ!にゃあ~ん!」「ハイハイ、かまってかまってほしいのー。あんたの空耳じゃないの?」「うーん、そうかな」センダイは自分の専用小型IRCを確認する。モニターには「異常なしな」の文字。

「やっぱり空耳?」「ちょっと!せっかくの休みなんだから仕事のことなんてほっときなさいって。次はアンタの番よ!」「うん」センダイは選曲マシンに意識を戻す。本日センダイは非番の日である。なので同じく非番の仲の良いアブクマとイスズと共にチンジフ内の娯楽カラオケ施設である「タラバー歌カニ」に来ているのだ。

いかなセンダイ程の殺戮者でも休むときは休む。そうでなければ溜まったストレスがイクサにおいても弊害となるやもしれぬ。センダイはバイオタラバ蟹の足を齧りながらおかしな空耳について考えるのをやめ、どの曲を歌おうか考えた。

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「ヤメロー!ヤメロー!」ハツカゼは虚しく叫んだ。彼女は施術ベッドに横たえられ、その脇に立つのは淫靡な微笑を浮かべる深海棲艦娘。なぜかハツカゼは下着姿にされ拘束されているのだ!「ヤメロー!ヤメロー!」「目覚めたばかりなのに元気じゃないの。ファハハ!」

その深海棲艦娘、港湾セイキはハツカゼの腹部に指を走らせる。「ンアッ!」ビクリと身体を震わせるハツカゼを港湾セイキはうっとりとした顔で見つめる。「とってもカワイイ。今すぐファックしていい?」「アイエッ…!ヤメロー!」

「イヒヒーッ!港湾セイキ君!ファックするのはやめておきたまえ!この艦娘を検査中なのですからねェ!」当て身で意識を失ったハツカゼが連れてこられた場所が全く分からぬ暗い研究室の中にはこの二人だけではなく、もう一人誰かが素っ頓狂に笑いながらパソコンを高速タイピングしている。

(もう一人…エッ!?)必死に抵抗していたハツカゼは、そちらのもう一人に気が付くと目をむいて驚愕!その者から感じるものは他でもない、カンムスソウルの反応だったからだ!「ナンデ!?艦娘が深海棲艦娘とナンデ!?」あり得ぬ!なぜ敵同士にも拘わらず、協力してハツカゼを拘束しているのだ!?

「イヒヒーッ!おっと!アイサツが遅れましたねェ。ドーモ!カトリです!カトリ先生と呼んで下さいねェ!」白衣を着、眼鏡をかけたおかしな目つきをしている艦娘は高速タイピングを続けながらアイサツした。彼女はシンカイセイカンヤの潤沢な資金を思うままに使用して狂気の研究に邁進する悪魔的センセイである!

「ハッ…ハツカゼです!カトリ先生!?なんであなたがここに!?」「ただいまキョート・チンジフから出向中です!それにしても…アーッ!今までこんな面白い艦娘を見逃していたなんて!もったいなスギル!アーッ!」ハツカゼは、口の端から泡を吹きながら、興奮のあまり椅子ごとグルグル高速回転するこの艦娘を知っている!もともとはキョート・チンジフ所属のマッドサイエンティストだ!

「ファハハ…不思議なの?艦娘と深海棲艦娘が協力していることが」港湾セイキはハツカゼの身体に指を這わせながら顔を覗き込む。「ンアッ!そ、そうよ!一体ナンデ…」「ダーメ。教えてあげない…でもキョートとセイカンヤはチンチン・カモカモ(親密な関係)にある。これだけ教えといてアゲル」港湾セイキは悪戯っぽくウインクした。

(なんですって!?とんでもないことになっちゃった…!)ハツカゼはにわかに青ざめた。キョートとセイカンヤにつながりがあるという説もあったが、まさに現実となってしまったのだ!今すぐこのことを提督に、仲間たちに伝えなければ!しかし今は脱出しなければダメだ!「ちくしょう!私をどうするつもりよ!」ハツカゼは困惑を押し殺し、精いっぱい強がってみせる。

「アナタが欲しいって人がいるのよ。だから情報で誘い出し…捕まえたってワケ」「じ、じゃあ私は罠にはめられたってこと…!?それにその人って誰よ!?」「ダーメ。それも教えてアゲナイ」ハツカゼは自分の行動を悔いた、自分はウカツにもセイカンヤの罠にはめられたのだ!

「ねェカトリ先生。うまくやってよね」「イヒヒーッ!任せてください!私の脳手術で従順な艦娘にしてあげましょう!」カトリ先生は勢いよく椅子から飛び降りると、ハツカゼの瞼を無理やり開き、瞳孔を観察!「グワーッ!ヤメロー!」「しかしユメミル・ジツ!素晴らしい!面白いですねェ!」「手術が終わったらこの子ファックしてイイ?」「好きにするといいですねェ」「ヤメロー!ヤメロー!」

このままではハツカゼは脳をいじられたあげく犯されてしまう!それだけは絶対に避けなければ!脱出して皆に伝えなければ!「ちくしょう!やってみなさいよ!私はどんな責め苦にもまけないぞーッ!」ハツカゼはバタバタと暴れ、拘束されたベッドが軋む!ヤバレカバレ!

「アーッ!暴れると脳改造できませんねェ!港湾セイキ君!」「アイ、アイ」カトリ先生に指示された港湾セイキは手元のリモコンのボタンをおもむろに押した。「くそーッ!拷問装置か何か!?私は色々と詳しいんだ!絶対に負けたりしな…アイエエエエエエエエエエ!?」

しかし次の瞬間!明るくなった部屋の「それ」を目にしたハツカゼの強がった表情はどこかに吹き飛び、恐怖のあまり絶叫した!それを見た瞬間ハツカゼは思い出したのだ。あの時の恐怖、へし折れかけた首の痛み、ダイナミックな姿勢を!ハツカゼの目に飛び込んできた「それ」は…ミョウコウの等身大中破パネルである!「アーッ!アーッ!アーッ!アイエエエエエ!?ミョウコウ=サン!?ミョウコウ=サンナンデ!?アーッ!!」

◆アイフォーンの誤作動につき再度◆
【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#56【練習巡洋艦カトリ】キョート・チンジフ所属のマッドサイエンティスト。通称カトリ先生。カンムスソウル研究施設、イモータル・カンムス・ワークショップ(IKW)主任研究者。全艦娘の中でも最高と言っても過言ではないほどの知能指数を有しており、自分の興味が惹かれる対象に対し仲間から引かれる程の狂気的な喜びを見出す。全てを思考能力に回しているせいで生活力が皆無である◆艦◆

◆そして今日の午後更新になりうる◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

(これまでのあらすじ : ネオサイタマ・チンジフの艦娘、ハツカゼは特殊なジツであるユメミル・ジツを持つ鍼灸師だ。彼女はチンジフにおいて仲間たちの精神ケアを行っている。しかし彼女は「ある夢」を見るようになる)

(その原因を探るために、彼女は提督と共にチンジフの最高機密の一つである人物と面会する。しかしハツカゼはブザマにも気を失ってしまう。さらに気分転換のために出かけた先でセイカンヤの卑劣な罠に嵌ってしまったのだ!このままではカトリ先生に脳改造された後、港湾セイキにファックされるのは確実!私が何したってんのよちくしょう!)

しかし次の瞬間!明るくなった部屋の「それ」を目にしたハツカゼの強がった表情はどこかに吹き飛び、恐怖のあまり絶叫した!それを見た瞬間ハツカゼは思い出したのだ。あの時の恐怖、へし折れかけた首の痛み、ダイナミックな姿勢を!ハツカゼの目に飛び込んできた「それ」は…ミョウコウの等身大中破パネルである!「アーッ!アーッ!アーッ!アイエエエエエ!?ミョウコウ=サン!?ミョウコウ=サンナンデ!?アーッ!!」

ハツカゼはバタバタと暴れる!このままでは自分の精神が持たない。ハツカゼは首を左側に必死に捻った!しかしハツカゼの左側の視界に飛び込んできたのはミョウコウの等身大中破パネル!二枚目!「アイエエエエエエ!?左にもミョウコウ=サンナンデ!?」ハツカゼは絶叫!

ハツカゼはバタバタと暴れる!このままでは自分の精神が持たない。ハツカゼは首を身体の下側に必死に捻った!しかしハツカゼの下側の視界に飛び込んできたのはミョウコウの等身大中破パネル!三枚目!「アイエエエエエエ!?下にもミョウコウ=サンナンデ!?」ハツカゼは絶叫!

ハツカゼはバタバタと暴れる!このままでは自分の精神が持たない。ハツカゼは首を身体の上側に必死に捻った!しかしハツカゼの身体の上側の視界に飛び込んできたのはミョウコウの等身大中破パネル!四枚目!「アイエエエエエエ!?上にもミョウコウ=サンナンデ!?」ハツカゼは絶叫!

ハツカゼはバタバタと暴れる!このままでは自分の精神が持たない。ハツカゼは首を天井の方向に必死に捻った!しかしハツカゼの頭上の視界に飛び込んできたのは天井に貼られたミョウコウの等身大中破パネル!五枚目!「アイエエエエエエ!?頭上にもミョウコウ=サンナンデ!?」ハツカゼは絶叫!

「アーララ、本当に効くとは思わなかったわ」「特定の艦娘に対する異常なまでの恐怖心!興味深いですねェ!」「アイエエーエエ!アイエエーエエ!」もはやハツカゼは小失禁!ナムアミダブツ…!ベッドに下着姿で拘束されたハツカゼの四方八方すべての方向に威圧的にミョウコウの等身大中破パネルが配置されていたのだ!常人が見れば、精神不安定の末、発狂死しかねない空間である!コワイ!

◆なぜか作者のあたまがおかしくなってきたので明日に再開する◆

(親愛なる読者の皆さんへ : 更新を予定しておりましたが作者の暗黒合法搾取的バイト行為のためにダメになりました。明日の朝二延長されるだろう。作者は今は静かに憩っている。以上です)

◆未だ作者は憩っている。今日中には始まりそうにないので容赦なくケジメしました◆

◆艦◆カンムス名鑑#57【戦艦棲キ】かつてシンカイセンカンヤのトップであった深海棲艦娘。過去に領海を大幅に失ったマルノウチ抗争においてある艦娘と刺し違える形で拘束され幽閉された。囚われの身でもなお、不敵で妖艶なアトモスフィアを帯びる豊満な容姿を持つ。事あるごとに提督を誘惑するがその真意は全くもって不明。その刺し違えたといわれる艦娘についても詳細は不明である◆艦◆

◆復活◆

◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

「小さな星の〜小さな秘め事〜誰も知らない秘密のキーワード!はいっ!」「魔・カ・セ・テ!トゥ…な」センダイは上げかけていた手を下げた。「ちょっと!あんたも合いの手しなさいよ。ムラハチするわよ!」隣のイスズは不満げにセンダイの服の裾を引っ張った。しかしセンダイはあたりをキョロキョロと見回している。

「イスズ=サンには…聞こえてないの?」「ワッツ?何のことよ?」「いや、だって悲鳴が…」「はぁ〜?アブクマ=サンのシャウト以外聞こえないわよ!」センダイは頭をぶんぶんと振った。やはり今のも空耳なのだろうか?ましくは自分が沈めてきた敵艦の恐怖の残滓がニューロンにこびりついているのだろうか?

(オバケ?…んなわけないよね)もう一度小型IRCを確認する。そこには「異常なしな」の文字。やはり何も起こっていない。「ほらほら!そんなシケたツラしてんじゃないわよ!次は私とアンタでデュエットいくわよっ!」「アー…うん」今はとにかく遊ぼう。センダイはマイクを持って立ち上がった。

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「アイエエエエ…一体私に、私になにするつもりなのよぉ…」先程の強気な表情から一転、半ベソをかきながらハツカゼはつぶやいた。相当に精神衰弱している。「さっき言ったでしょ?アナタを私達セイカンヤのモノにするのよ。アタシが手取り足とり教えてアゲルからさ」港湾セイキはハツカゼの身体を隠微に撫で回す!

「ンアッ!ワケが…わからない!」「アカチャン。アタシたちセイカンヤはいずれこの海全てを支配する。全てをね」「アイエエ…!」「ある人がアナタのそのテレパスに興味を持った。ユメミル・ジツ…秘密を暴く力。自分でも分かってるんでしょ?ネオサイタマなんかで人生終わらせる気?」「やめて!」ハツカゼは抗った。

「私はあそこが家なんだ!みんなのところへ戻りたい!セイカンヤなんて行きたくない!」「アハハハハハ!アカチャン!」港湾セイキは身を離し、部屋の隅のソファに腰掛け、寛いだ。「ま、後は慣れね。アナタが知らないことも、おいおいわかる」「ちくしょう…!」次にカトリ先生がハツカゼの顔を覗き込んだ。「話は済みましたか?それでは、施術に移りましょうねェ」

「エッ?施術?」「特に歯ですねェ。脳手術をする前にアナタの故障箇所を直すのも契約内ですから。アナタには虫歯がある!」ウカツ!最近アンコ・ビスケットばかり食べていたハツカゼの奥歯には虫歯があった。チョウカイに直してもらおうと思っていたが痛みが治まっていたから忘れていたのだ!

「安心してください!私が直してあげましょう。麻酔なしで」「え?」「ええ、麻酔なしで」「ナンデ!」カトリ先生は電動ドリルをガン・スピンさせる!「だから麻酔なしで!麻酔を打つ時間が勿体無くて効率的ではない!」「痛みはどうすんのよ!?」「君も艦娘だろう!キアイでなんとかしたまえ!」「アイエエエ!?ヤメロー!ヤメロー!」

カトリ先生は手際よく金具でハツカゼの口を開き、固定した!「あばばばばばば!アババババババババ!」ハツカゼはベッドをガタガタと揺らすが逃れられぬ!無力!ハツカゼには抵抗の手立てが無い!「見つけたァーッ!イヤーッ!」カトリ先生がシャウトと共にハツカゼの奥歯にドリルをねじ込んだ!「アバーッ!アバーッ!」激痛!ニューロンが爆発し、視界がホワイトアウトする!

「ヤメロー!ヤメロー!やめ…エッ?」ハツカゼは叫ぶのをやめた。自分の眼下では施術ベッドに横たえられた、白目をむいて激しく痙攣する艦娘と、その口にドリルを意気揚々としてねじこむ艦娘、隅のソファで退屈しのぎに自慰をする深海棲艦娘。彼女、ハツカゼは幽体離脱めいて己を見下ろしているのだ。「死んだの?私?」その声が届くことは無い。

【KANMUSLAYER】

◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

め…エッ?」ハツカゼは叫ぶのをやめた。自分の眼下では施術ベッドに横たえられた、白目をむいて激しく痙攣する艦娘と、その口にドリルを意気揚々としてねじこむ艦娘、隅のソファで退屈しのぎに自慰をする深海棲艦娘。彼女、ハツカゼは幽体離脱めいて己を見下ろしているのだ。「死んだの?私?」その声が届くことは無い。

(違う…死んで、ない?)しかしハツカゼは死んでいなかった。これは自分のユメミル・ジツの力である事を彼女は理解した。それはほとんど本能による理解であり、すべての道理を通り越した上でハツカゼは自覚したのだ。(…いや、いい。気持ちを切り替えるのよ。気持ちを)ハツカゼは自分に言い聞かせる。

彼女が無力に見守る中、カトリ先生はアタッシェケースを開き大量の電気メスを吟味していた。(ちくしょう、私の身体に何しやがる気なのよ……)ハツカゼは歯噛みする。「ねえ、ついでにこの子の性感を100倍にしてよ」港湾セイキが笑う。「残念ながらそのオプションは契約外ですねェ」しかしカトリ先生は涎をたらさん勢いである。

(ナムサン)彼女は泣きたい思いだった。だが眺めていても意味が無い。ハツカゼは浮上する。ベッドが、連れ去られた先の仮説研究テントが、それを取り囲むクローンヤクザ妖精が、まんまと誘導された小島があっという間に遥か下に遠ざかった。さらに遠ざかると近海に位置するチンジフさえも眼下にある。

(スゴイ…!これも私の力なの?でも、今はとにかく)ハツカゼは神経を張り巡らせる。チンジフ内には多数のカンムスソウル反応。それは大中小、色も様々な光としてハツカゼの眼には写っている。あの光に一斉に助けを求めればいいだろうか?それは無理だろう。近海にあるといってもチンジフとの距離がありすぎる。ハツカゼは残酷な事に、これも本能的に理解した。

◆寝休憩◆

◆遅れて再開◆

(ちくしょう!スゴイ力のクセに肝心の時に役にたたないなんて…ん?)ハツカゼの意識はある一つの光に目が止まる。(あの光…)その光はワイヤーフレームめいたチンジフの一室にある3つの光のうちの一つ、他の光とはあからさまに違う禍々しきアトモスフィア、そして赤黒い光を放っている。(…べし)(え?)そして光から何かの声がする。

(コロス…べし)(へ?殺す?)(殺すべし、敵艦殺すべし…!)(んなっ…)(敵艦!殺すべし!)(アイエッ!?)その禍々しき声にハツカゼは思わず怯んだ!(な、何アレ!?コワイ!)そのノロイめいた声は断続的に続く。(殺すべし…殺すべし…!)まるで呪詛めいている!

(でも待てよ…チンジフの中にいるって事は、味方って事よね…)ハツカゼは心を落ち着かせて考える。(殺すべし…敵艦殺すべし)ゾッとする呪詛がハツカゼの意識に絡みつく。(全敵艦!殺すべし!)(よし…!)しかしもう怖がらない。赤黒い光に意識を集中させる。(殺すべし…敵艦殺すべし…)(ちょっと!願いを叶えてあげるわよ!)

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「いつもぴょんぴょん可能!楽しさ求めてもうちょっと!はじけちゃえ!」「………」「へっ!?」イスズは前のめりにつんのめった。つい先ほどまでノリに乗って共に歌っていたセンダイの歌声が止まったからだ。はしゃぎながらタンバリンを叩いていたアブクマも勢いあまった様子である。「ちょっとセンダイ=サン!なんなのよもう!」「歌止めてんじゃないわよ!最初から歌い直し…」

…だが!「「…アイエエエエエエエエエエ!?」」ナ、ナムアミダブツ!!次の瞬間!イスズは立ったまま失禁し!アブクマはソファごと後ろに転倒し後頭部強打!なぜか!?自分たちの友人の目が殺戮者のそれに変わり、「憲 兵」の禍々しきカンジが刻まれたメンポが装着されていたからだ!「イヤーッ!」センダイは持っていたカラオケマイクを充電台にストライクすると、部屋のドアをトビゲリで破壊し猛然と飛び出した!

「「アイエエエ!!ニンジャ!ニンジャナンデ!?」」急性NRSを起こした2人の叫び声を背にしながらセンダイは出撃ドックに向かって赤黒い風めいて駆ける!「「「ンアーッ!?」」」廊下にいた艦娘たちのスカートを風圧で捲り上げながら駆ける!頭の中に響く、声に導かれるままに!

【KANMUSLAYER】

◆ほんじつの午後な◆

◆明日の朝にまたぐと思う◆

【KANMUSLAYER】

「…アッバーッ!!」凄まじき激痛!ハツカゼの身体が跳ねる!「治療完了ですねェ!私にかかればものの10分で出来上がりですッ!」「アバッアバッ…ま、まだ…誘導できて…な」ハツカゼを再び襲った激痛は、彼女を精神世界からジビキ網めいて引き戻してしまった。まだあの赤黒な光を正確な場所へ導き切れていない!

(ヤバイ…ヤバイヤバイヤバイ!あとどれくらい助けてもらうのにかかるの!?これ以上は…)「さて!次の歯に移りましょうか!」「エッ!?」カトリ先生は両手に持ったドリルをダブル・ガンスピンさせている!「あなたもう一本虫歯ありますよ?ついでにそちらも治療重点ですねェ!」「や、やめ」「イェーハーッ!イヤーッ!」「アッバーッ!!」モンドムヨー!カトリ先生の治療は継続中である!

ハツカゼは必死に意識を逸らそうと努めた。カトリ先生はどう考えても変態であり、サディストかどうか分からないがとにかく変態である。ハツカゼの精神を崩壊させ、容易に脳手術を「アバーッ!アッバーッ!アッバーッ!アーッ!」

ハツカゼの視界が涙でくもる。カトリ先生はいまや二本のドリルを奥歯にねじ込んでいる!「アバーッ!!」「アッハハハハハ!」港湾セイキが笑う!苦痛のパルスがハツカゼの世界を吹き飛ばす!ナムアミダブツ!「アガガガガッ…助け……!アガガガガッ…助け……!」「イヒヒヒーッ!この治療と脳手術が終わったらさらに肉体改造を加えてあげましょう!」

「アガガガガッ….アガガガガッ….助けて…ここ…….ここよ」「うわ言ですかねェ?艦娘のくせに情けない耐久力!そちらも改造が必要ですねェ!」「アハハハハハ!」「助け…こっち……助け……」「ホラホラ!ホラホラ!アナタを改造して腹筋をつけてあげましょう!ステキでしょう?腹筋ヒロインですよ!?」

「アガガガッ…助け…助け…こっち……ここ」「アーア、反応も薄くなってきたわね」港湾セイキがあくびをした。「あとね、大爆発四散させちゃダメなのよ?」「シンパイゴムヨー!ギリギリ耐えれるように調整してあります!」「アラそう。でもさ、あたしが暇…」「ホラホラ!ホラホラ!」カトリ先生は聞く耳持たぬ!治療しながら改造計画を立てるのに夢中だ!「ホラホラ!ホラホラ!ほら…」





「W a s s h o i !」




部屋内の天窓が、掛け声と共に割れ砕けた!飛び込んだ影はその瞬間ジゴクめいた跳び蹴りをカトリ先生に向けて繰り出す!「イヤーッ!」「アイエッ!?」反射的に身を竦めるカトリ先生!「イヤーッ!」港湾セイキが瞬時に割り込み蹴りをガード!なんたるカンムス反射神経!

「イヤーッ!」襲撃者は着地と同時に更にもう一撃!港湾セイキの脳天めがけチョップを振り下ろす!「イヤーッ!」港湾セイキは両腕をクロスしガード!いつの間にか彼女の両腕にはカギ爪めいたブレーサーが装着されている!「イヤーッ!」襲撃者はその腕を掴むと、イポン投げめいて港湾セイキを投げる!

「イヤーッ!」投げ出された港湾セイキは空中でクルクルと回転し着地!「イヤーッ!」襲撃者はそこへゼロセンを連続四機投擲!「イヤーッ!」カギ爪が全てを叩き落とす!「イヤーッ!」襲撃者は斜め後ろの四つん這いになって逃げようとしていたカトリ先生の尻をいきなり後ろ足で蹴る!「グワーッ!?」

カラテがほぼ皆無であるカトリ先生は鹿めいたキックをまともに受け、タンスの角に頭を打ち付ける!「グワーッ!」タンスの棚の上に飾られていたミョウコウの顔をかたどったダルマがその衝撃で落下し、カトリ先生の脳天を直撃!「グワーッ!」 悶絶不可避!

「アガーッ!」ハツカゼが叫ぶ。「イヤーッ!」襲撃者はその金具を一撃でむしり取った!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」さらにチョップを連続で繰り出し、拘束ベルトをあっという間に破壊!ハツカゼが絶叫する!「ぶはーっ!!ブッダアスホール!そ、それと周りのミョウコウ=サンをなんとかして!」

改めてこの狂気的な空間を確認した襲撃者はやや目をひそめた。「イヤーッ!」しかし襲撃者はすかさゼロセンを全方向投擲しミョウコウの等身大中破パネルすべてを粉々に粉砕!(すまぬ、ミョウコウ=サン!)そして心の中で仲間に詫びる!

「ドーモ、はじめまして港湾セイキです」港湾セイキが先手を打ちアイサツした。「その憲兵のメンポ!あなたセンダイ=サンだよねェ!ウワサには聞いてるわ!」「いかにも」センダイが振り向き、アイサツを返す。「ドーモ、港湾セイキ=サン。センダイです。敵艦殺すべし」

「センダイ=サン…ですと!?」カトリ先生がずれた眼鏡を直して立ち上がる。「ドーモ、カトリです。最も正体不明で興味深い艦娘かつニンジャの対象!何故ここにあなたが現れるのですか!?」「知らぬ」センダイはハツカゼを見た。自分を呼んだのは彼女の声である。

「カーッ!ペッ!」ハツカゼはベッドから飛び降り、口に溜まった血を吐き出し、そしてオジギした。「あ、あなただったのねセンダイ=サン…!私があなたを呼んだの。ハツカゼよ…た、助かった」「無事か?」「あまり無事じゃないかも…」ハツカゼは小失禁したのを思い出し、やや内股になった。「私の服はどこかな」

「アナタが倒した私たちの部下を覚えてる?」港湾セイキが言った。「あンたが大破させたリ級=サン、チ級=サン、レ級=サン、ネ級=サン…」「そ奴らがどうした」センダイは睨み返した。「ちょっと!そいつの眼をまともに見るとヤバイわよ!」ハツカゼが口を挟むが、センダイは港湾セイキの視線を受けて立つ。

「くだらないセンチメントだけど。私たちセイカンヤのひとりひとりは血より強い絆で結ばれてる」港湾セイキは言った。「カワイイ部下たちということもある。でも上下関係も関係なく、それは強い絆よ」「……」「やってくれたわよね?センダイ=サン」「オヌシも仲間たちの後を追え」「イヤーッ!」

【KANMUSLAYER】

◆作者の冬休みメントにつき更新強化月間、しかしバイトはある◆

【KANMUSLAYER】

「イヤーッ!」港湾セイキの投げたセイカンヤ仕様のゼロセンにセンダイが投げ返したゼロセンがぶつかり合い、消滅した。次の瞬間二人はワン・インチ距離まで互いに接近していた。即座に打撃応酬が開始される!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ぶつかり合うチョップ!

「イヤーッ!」港湾セイキが鋭い踏み込みからの爪斬撃を繰り出す!「イヤーッ!」センダイは一瞬早くブリッジし回避した。だがもう片方の爪が振り下ろされる!「イヤーッ!」センダイはブリッジ姿勢からバックフリップし追撃を回避!飛びずさりながらカラテ砲発射!「イヤーッ!」

しかし港湾セイキは蝶めいた軽やかな動きで砲弾を最小限の動きでかわし、ステップで踏み込みながら脚を高く蹴り上げ、踵落としで襲撃!「イヤーッ!」センダイは側転で回避!着地点近くにいたカトリ先生に蹴りを見舞う!「イヤーッ!」「グワーッ!」ナムサン!当然カトリ先生はガードできず、再び床に転倒!

「イヤーッ!」転倒したカトリ先生にすかさず服を着たハツカゼが襲いかかり、尻を力任せに蹴る!「グワーッ!」「散々やりやがって!舐めるんじゃないわよ!イヤーッ!」「グワーッ!」「私を改造ですって?イヤーッ!」「グワーッ!」「胸だけならいいわよ!イヤーッ!」「グワーッ!」

「グワーッ!助けて下さい!港湾セイキ=サン!」尻を蹴られながらカトリ先生が悲鳴を上げる。「無理言わないでよ!こっちはこっちで大変なんだから!」センダイの打撃をいなしながら港湾セイキは返答する。「イヤーッ!」回し蹴りだ!「イヤーッ!」センダイは腰を落としてこれを回避!

卓越したカラテを放っている港湾セイキに一瞬の隙ができた!回し蹴りが戻る速度よりもはやく、センダイは斜め上に拳を突き上げた。斜め45度のポムポム・パンチだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」なんたる技の切れ味!グラマラスな港湾セイキの身体が跳ね上げられる!「イヤーッ!」センダイは追って跳躍!組みつきにゆく!

これはアラバマオトシ!敵を羽交い締めにして共に落下、脳天から地面に叩きつける暗殺カラテ技!勝負あり……否、見よ!港湾セイキの淫靡かつ柔軟極まる関節の動きを!センダイはグラップし損ねる!「何!」「アハッ!ひっかかった!」港湾セイキは一瞬にして上になり、両脚で彼女の首を挟み込む!「フフフどうなるかしらァ」

「ウヌッ!」センダイは抵抗するが、港湾セイキの両脚はまるでタコの足のごとくセンダイに絡みつき、逃さぬ!そのまま港湾セイキはセンダイを抱え込んだまま空中でムーンサルト回転!勢いを乗せて床に叩きつける!「イヤーッ!」「グワーッ!」

自身も似た技を持つセンダイは、チャドー由来の受け身でこの空中投げの衝突ダメージを最小限に留めた。だが港湾セイキは機会を逃さず、センダイのマウントを取ったのである!「フフフ!アカチャン」港湾セイキが腰をグラインドさせ笑う! ナムサン!

「イヤーッ!……イヤーッ!」マウントを跳ね返そうとセンダイは力を込める。だが、そのグラビアモデルめいた外見からは想像できぬほどの怪力がセンダイの両肩を押さえつけている!港湾セイキは身を屈め……赤い舌がセンダイの額を舐める!「アナタもカワイイわねェ、この平坦な胸もカワイイ」「黙れ!」センダイは激昂!

センダイがもがく……港湾セイキの瞳が赤に光る!「グ……グワーッ!」「ファハハハハ!アカチャン!」「え?形勢逆転なの?」カトリ先生を蹴り続けていたハツカゼが蒼ざめた。その隙を捉え、カトリ先生がハツカゼの脚を掴む!「イヤーッ!」ハツカゼは転倒!「グワーッ!」

「ゲホッ……手間をかかせてくれますねェ!」カトリ先生はハツカゼの尻を蹴り返す!「グワーッ!」「艦娘の中でも最高の知能指数を持つ私の脳細胞をいくつも殺してくれましたねェ!イヤーッ!」「グワーッ!」「いわばこれはカンムス科学技術全体における損失!イヤーッ!」「グワーッ!」「許せませんねェ!イヤーッ!」「グワーッ!」 ナムアミダブツ!こちらも形勢逆転である!

【KANMUSLAYER】

◆朝でも更新◆

【KANMUSLAYER】

「ゲホッ……手間をかかせてくれますねェ!」カトリ先生はハツカゼの尻を蹴り返す!「グワーッ!」「艦娘の中でも最高の知能指数を持つ私の脳細胞をいくつも殺してくれましたねェ!イヤーッ!」「グワーッ!」「いわばこれはカンムス科学技術全体における損失!イヤーッ!」「グワーッ!」「許せませんねェ!イヤーッ!」「グワーッ!」 ナムアミダブツ!こちらも形勢逆転である!

「イヤーッ!」「グワーッ!あんた」「イヤーッ!」「グワーッ!熱く」「イヤーッ!」「グワーッ!熱くなり過ぎ」「イヤーッ!」「グワーッ!なり過ぎよッ!」ハツカゼがカトリ先生のストンピング足首を、掴んだ!「ちょっとウカツでしょ!これは!」「な……アバババッ!?アババババーッ!?」

途端にカトリ先生の身体が痙攣を始める!ハツカゼはこめかみに指を当て、眼と鼻から血を流す。マインド潜行だ!彼女はこのままカトリ先生を大爆発四散させるつもりだった。だがリラックスしていない相手では一筋縄でゆかぬか、気絶させるのがやっとだった。「あ…バ…」

「思い知ったかちくしょう!」泡を吹いて大股開きで転倒したカトリ先生にもう一度蹴りを入れると、ハツカゼは港湾セイキとセンダイの方向へ向き直った。自分を救った艦娘であり憲兵でありニンジャである彼女は今、港湾セイキに覆い被さられ、名状しがたいジツの洗礼を受けている最中だ。「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」ナムサン!

ハツカゼは淫靡な地獄絵図と割れた窓とを素早く見比べる。一方には悪夢めいた殺し合い……しかも救援者はこのまま倒されそうな状況ときたものだ。もう一方には……自由!このまま仮設研究施設を飛び出し、チンジフまで逃げてしまえばいい。それで全て終わりだ。「実際、選択の余地は無いでしょ……」

「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」「ファハハハハハ!アカチャン……アカチャン!」港湾セイキは腰を揺すりながら上体を仰け反らせた。そして再び屈み込み、センダイの顔を覗き込む!「ネエネエ!あなたはファックするとき声を抑えるの?それとも声を出しちゃうの?今から試してアゲル!ねぇ!」

「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」「……選択の余地なんてものは無いのよ!」ハツカゼは駆け出す!「ファハハハアカチャン!アカチャンアバッ!?アバーッ!?」港湾セイキがスタンガンを首筋に当てられたように反応し、痙攣!彼女の両こめかみに後ろから当てられたハツカゼの指!

「ウ……ウワッ!」ハツカゼはフィードバックにひるんだ。マインド潜行が拒絶されたのだ。なんたる邪悪かつ強靭なカンムス精神力!後ろへ弾き飛ばされそうになるが、彼女は必死でかじりついた。「GRRRRRRRR!」獣じみた唸り声を上げ、港湾セイキがハツカゼをもぎ離そうとする!

「つれないヒトだなッ……」ハツカゼは暴れる港湾セイキの首を肘の内側でガッチリとロックした。「へへへ…!さっき私をファックするって言ってたでしょ?心変わり?私も混ぜなさいよ!」「GRRRRRR!」襲いかかるカギ爪より早く、ハツカゼは己の額を港湾セイキの後頭部に押し当てた!「イヤーッ!」

自分の額を相手に押し当てる!原理はわからぬが、これが一番強力な潜行方法であることをハツカゼは理解していた。途端に二者の間で超自然のトンネルが拓かれ、ハツカゼの意志はエネルギーの流れめいた存在と化して港湾セイキのニューロンに突入した!「アアアアアア!」 ハツカゼの視界が光に包まれる!




「……から生まれた。私たちは」



「しかし私たちは繁殖することができません」「カンムス技術をもってしても無理なのですか?」「不可能よ」「クローンを使っても…?」「根本的な解決にはなっていないわね」「女の子どうしなら?」「とにかくこのままでは私たちが辿る道は滅びの道。ただそれだけ」

「でも大丈夫よ」「なぜです?」「なんかいい手があるのか?」「私たちだけでは繁殖できない。でも繁殖する機能はある」「どういうこと?」「つまり『種』さえあれば、私たちは繁栄できる」「そうすれば…」「そう、いつかはこの海さえ支配できるのよ」「流石姫様!」「マジか!」

「しかし『種』などどこにあるのでしょう?」「いるじゃないの。『あそこ』に」「エ?」「あそこって、アイツらのトコだよな」「まさか…姫様!?」「フフフ…」「その『種』ってアイツか!?」「まさか片方のコドモのほうじゃないわよね!」「もちろん。あっちはまだ幼すぎる。役に立たないわ」「そうすると…つまり?」「つまり…そのう」




「フフフ…そうよ…さえ手に入れば、私たちは種族繁栄…いずれ…そう….」



「うわあああッ!」ハツカゼは耐え切れず地面に叩き伏せられた。「何だってのよ!今のは!?」「グワーッ!」港湾セイキが身悶えする!「イヤーッ!」「グワーッ!」この隙を逃さず、センダイは港湾セイキの身体をブリッジ動作で弾き飛ばす!マウントが破られた!

空中で危うくバランスを取り着地した港湾セイキに、センダイは決断的速度でツカツカと接近してゆく。「スゥーッ!ハァーッ!」ゴウランガ!早歩きしながらのチャドー呼吸!在りし日に、センセイから授かったチャドー呼吸だ!港湾セイキが横目でハツカゼを睨む!「よくも…よくもあたしの頭の中を…!あたしは反対してるのよ!絶対に女の子しかイヤなんだから!」「え?」そしてセンダイに向き直る!

「あンたの負けよ、往生際の悪い奴」港湾セイキはカラテを構える。装備したカギ爪ブレーサーに特殊な機構めいた振動が発生!センダイは早歩きで接近!「…イヤーッ!」港湾セイキの指先から何かが一斉に放たれる!

それは10本のダート型の刃物!カギ爪ブレーサーの指先が射出されたのだ。なんたるテックにもとづいた高度な攻撃!仮にこの一瞬の予備動作でゼロセンを投擲できる艦娘がいるだろうか?殆どおらぬ!「イヤーッ!」早歩きするセンダイの両手が残像を伴って高速で閃く!

「な…何ですってェー!?」ワザマエを目撃したハツカゼが思わず叫んだ。センダイは早歩きしながら両手を前に掲げて見せた。その手にはの間には10つのダート刃物が全て挟み取られている!ゴウランガ!すでにこの手の攻撃はソウリュウのセンタクバサミ・ジツを受けたときに打ち破っている!なんたるカンムス動体視力そしてカンムス器用さそしてカンムス学習能力であろうか!

「イヤーッ!」港湾セイキがさらに追撃ゼロセンを投擲!「イヤーッ!」センダイは指に挟んでいたダート刃物をツブテめいて投げつける。それぞれがぶつかり合い相殺消滅!その時には既にセンダイは床すれすれまで身を沈めてダッシュしている!「イヤーッ!」

急加速で一瞬にして港湾セイキの足元へ潜り込んだセンダイは、組んだ両拳をハンマーめいて振り上げる!「イヤーッ!」立ち上がる膝のバネ力と両腕の勢いが乗った強烈な打撃は、港湾セイキの咄嗟のガードをたやすく崩した!「なッ……」港湾セイキの両手が強制的に開かれる!

「イヤーッ!」センダイはこの機を逃さぬ!さらに半歩踏み込んだその姿勢は必殺のポン・パンチ!だがその時「イヤーッ!!」港湾セイキの瞳が赤にストロボ発光する!ナムサン、これは彼女の奥の手のひとつ、最大出力ヒュプノ・ジツだ!「ヌウッ!」

敵の自我を支配し、服従させる恐るべきジツ……港湾セイキはジツにかけた艦娘を強制前後する淫乱的存在なのだ!センダイはハツカゼの警告を覚えており、彼女の眼に焦点を合わせぬようにしていた。しかしこの最大出力のジツはそれでもお構い無しだ!

だが!「グワーッ!?」悲鳴を上げたのは……港湾セイキである!「なによこれ……なんなのよこれは!」ヒュプノ・ジツを阻害された港湾セイキが悶える!「私だ!」見よ、それはハツカゼだ!床に膝をつき、己の両こめかみに人差し指と中指を当てている。両目と鼻から血を流す壮絶な有様!

「あンたちょっとウカツよね!ゲホッ!」ハツカゼがニヤリと笑いながら咳き込む。「精神攻撃やるなら気をつけないと….…ファイアーウォールが開いちゃうわ。私もいい勉強になった。あンたと触れ合うのも三度目だしね…否性的な意味で!」「アアアーッ!」そして再度踏み込むセンダイ!ポン・パンチ! 「イヤーッ!」「グワァーッ!」身体をくの字に折り曲げ、港湾セイキが吹き飛んだ!

【KANMUSLAYER】

◆艦◆カンムス名鑑#57【港湾セイキ】セイカンヤ、シックスゲイツのひとりである深海棲艦娘。相手を催眠状態に陥らせるヒュプノ・ジツの使い手。なお非常に性に奔放。ジツだけでなくカラテも強く、カギ爪ブレーサーや暗殺武器を用いる。妹が2人いるらしく、その1人は同シックスゲイツの飛行場キ。生粋のレズビアンであり経験が皆無にも関わらず男性嫌いである◆艦◆

◆今日な〜◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【KANMUSLAYER】

港湾セイキは吹き飛ばされてなお、空中で姿勢を制御し、床に足をつきブレーキをかける!「イヤーッ!」壁に叩きつけられるのを回避するが床にヒビが入るほどの衝撃だ!「ぐウッ…!」港湾セイキは自分のダメージを推し量る。戦闘不能ではないが、かなりの痛手には違いない。

(クソッ!これがカワイイ部下たちを殺ったワザマエか…!)センダイは未だ尽きぬ殺意でこちらにジリジリと歩を進めている。その傍らにはへたり込むハツカゼ。そして自分の横には泡を吹いて大股開きで気を失っているカトリ先生がいる。「ジリー・プアーってワケね…」港湾セイキは再びカラテを構え直す。彼女とてシックスゲイツのひとりである。そんなヤワな戦士ではない!

センダイはゼロセンを構える。それに対抗しようと、港湾セイキもゼロセンを構えようとした瞬間!「「イヤーッ!」」部屋内に二重のシャウトが響き渡る!ドアを蹴破り、2人の艦娘が新たにエントリーした!「ドーモ!アブクマです!」「イスズよ!」2人はセンダイの横に並び立ち、カラテ砲を構える。もちろん狙いは港湾セイキただ1人だ!

「アブクマ=サンにイスズ=サン。なぜここが」「ったく!ひとりで勝手に突っ込んでんじゃないわよ!」「でもまぁ…ホントに助けを求めてる仲間がいたとは思わなかったけどね!」ハツカゼは慌てて3人の後ろに隠れる。2人は急性NRSから持ち前のカンムス精神力で復帰した後に、センダイの識別信号を追ってここまで来たのだ。無論この仮設研究所を囲んでいたクローンヤクザ妖精は殲滅済みである!

「アラアラ!カワイイ子がまた2人増えたわねェ。まとめてファックしてあげたいとこだけどさぁ…」港湾セイキは胸の谷間から何かを取り出す。3人は一斉に身構える。それはゼロセンか?否!グレネード爆弾だ!「イヤーッ!」港湾セイキはアンダースロー投擲!3人は咄嗟に防御の姿勢をとる。しかし3人を襲ったのは凄まじい閃光と、耳をつんざくような高音だった!「「「グワーッ閃光弾!」」」

3人はなんとか目と耳を覆うが、すでに備えていた港湾セイキはカトリ先生を抱えると、大きく跳躍した!「イヤーッ!」センダイの突き破った天窓から屋外に飛び出る!「「「イヤーッ!」」」3人は眩む視界の中、ゼロセンを投擲しカラテ砲を放つ!しかしその全ては空を切った。

3人の視界がほぼ同時に復帰すると、そこにはもはや誰もいなかった。「逃げられたわね」「負わなくては…ウッ!」後を追おうとしたセンダイがガクリと膝をついた。精神攻撃のダメージが未だ残っているのだ。「無理しないで!追うのはやめましょう。えーと、ハツカゼ=サンだよね?彼女は助かったんだし」「うん。ふぅ…」センダイはメンポを外した。その表情はいつも通りのセンダイの顔に戻っている。

いかに彼女といえどダメージを負ったまま、ハツカゼを守りながら戦うのには不安がなかったといえば嘘になる。だが実際2人のインターラプトのおかげで難を逃れることができたのだ。「うぐぐ…目が…目が!どうなったの!?私助かったの!?」3人の後ろでは閃光を避け損なったハツカゼが悶絶している。「アー、ハイハイ。大丈夫ハツカゼ=サン?ケガはない?」アブクマがハツカゼを助け起こす。

しかしハツカゼの顔を見たアブクマは驚愕し目を見開いた。「アイエッ!?あなた顔面血まみれじゃないの!ゴアいわ!大丈夫じゃないじゃない!」「へ…ヘーキヘーキ。ただの鼻血よ!」ようやく視界が戻ったハツカゼは慌てて顔を拭う。手のひらにベットリと血が付いている。「でも確かに…大丈夫には見えないわ。コレ」

「でもハツカゼ=サン。どうやってわたしを呼んだの?」センダイはアブクマに肩を貸してもらっているハツカゼに問うた。「わたしとアブクマ=サンには何も聞こえてなかったのよ?」イスズも怪訝な表情である。「エート…なんて説明すればいいのか…とにかく、提督に伝えなければいけないヤバイことがあるのよ。ヤバイことが…」

今日はあまりにも多くの事が起こりすぎている。今まではつとめて平和に過ごせてきたのに…この先、自分がとんでもないことに巻き込まれていってしまう予感がしてならない。(ちくしょう!とんでもない厄日だわ!とにかく…とにかく…パンツ、洗いたい…ちくしょう)帰路につく4人を照らす夕日は、やがて地平線の向こうへ沈んでいく。そしてハツカゼは結局臨時休暇がなくなってしまったことに気づき、ガックリと肩を落とした。



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(…そう。失敗したのね。残念だわ)彼女は閉じていた目を開くと、甘い溜息をついた。その仕草はそこはかとなく性的であり、この牢獄には不釣り合いにも思える。そして彼女、戦艦棲キは身を起こすと、鉄格子の外に立っている艦娘に視線を移す。「…4分経過」その艦娘は小さく呟きながらも戦艦棲キから視線を外さない。その表情は限りなく氷めいた無表情である。

「…ねえ。ヤヨイ=サン?たまにはお話でもしない?毎日顔をあわせているんだからさあ」「あなたとの会話は、命令に無い。」戦艦棲息キが話しかけるがその艦娘からの返答は取り付く島も無い。彼女は肩をすくめる。「もう…いつまでたっても分からないわね。アナタだけは」「4分30秒経過」

「…5分経過。見回りを終了する」その艦娘、ヤヨイはだれともなく呟くと無感情に踵を返した。「ねえってばぁ…じゃあひとつだけ教えてよ」戦艦棲キは去るヤヨイの背中に向かって話しかけた。しかし彼女の歩が止まる様子はない。

だが戦艦棲キはそれでもヤヨイの背に語りかける。「教えてほしいのよ!ヤヨイ=サン。あなた一体何のために戦ってるの?」その言葉を聞きたヤヨイは、歩を止めず振り向かずに、しかし、答えを呟いた。つとめて無表情に、無感情に。




「…私にあるのはあの人の命令だけ。ただそれだけ。それ以外には何もないわ」






【ビヨンド・ザ・カグコインデカッタ・フスマ・オブ・サイレンス】終わり


( 一)<ドーモ!ザ・ヴァーティゴです。セイカンヤのやつらは一体何を企んでるんだろうな?これからも物語から目が離せないぜ!あと提督が誰だろうが前後する鬼畜だと思われてるみたいだがそんなことはないぞ!ちゃんと寝た提督ならだけど。

>>レ級ちゃんに友達が…

( 一)<この物語のヴィラン的組織であるシンカイセンカンヤといえどその運営体系はチンジフとそう変わらないんだ。だから休暇だってあるし一緒に遊ぶ友達とかがいてもおかしくはないだろう?ひとりひとりの誕生日パーティーとかやってるみたいだし、みんな結構仲がいいらしいぞ。

>>カラテだけで戦ったらカトリセンセイとハツカゼどっちが強いの?

( 一)<そうだなあ…どっちもどっちだと思うけど、2人ともカラテは圧倒的にからきしだ。カトリ先生は研究することしか頭にないし、ハツカゼ=サンは戦うのがキライだからね。多分2人まとめてかかってもクマノ=サンに負けるレベルだろう。

◆しつもんは常時受け付けている。なおなんとなく短編を思いついたのでやる◆

【デイ・オブ・ザ・ロブスター】

ブンブブブンブーン、ブンブブブンブンブーン、ブンブブブンブーン、ブンブブブンブンブーン。湿ったベース音が、「ボーキセツヤクシテ」とミンチョ体で書かれたドアの奥から漏れる。ここはネオサイタマ・チンジフ第26駐屯基地。しかしそこの所有権はすでにネオサイタマにない。

その中であくせくと働いているのはクローンヤクザ妖精である。この駐屯地はすでにキョートによって制圧されてしまったのだ。壁に掛けられたハンニャ面、カタナ、「労災なし」「残業代なし」「休憩なし」と書かれたショドーがブラックな本質を語る。

そしてその中のタイル張り大浴場の床に、タオルを巻いたクローンヤクザ妖精が8人。むせ返るようなスチームが室内を支配し、正座する彼女ら(?)の額に浮かんだ緊張の汗と入り混じる。その湯気の奥にはフジサンを描いた壁があり、煮えたぎるセントウから立ち上る湯気と合わさって神秘的なアトモスフィアを醸し出す。

(はうう…大変なことになっちゃっいました…)そして部屋の隅には誰かが転がされている。彼女の名はタイゲイ、この駐屯地に駐在していたネオサイタマ・チンジフの艦娘である。しかし今やタイゲイは極小のビキニを着せられ、全身を荒縄で縛られている。「ンアーッ!」食い込む荒縄が彼女豊満な胸を強調する!

「ざっけんなこらー!この中に1人!」そしてその前に立つ1人、チーフヤクザ妖精がヤクザガンを持って叫ぶ。「この中に1人サボりの常習犯がいる!そいつのおかげでわたしたちのグループは飯抜きになってしまった!」…正座する8人のクローンヤクザ妖精たちは全員、チーフヤクザ妖精のただならぬ怒りに圧倒され押し黙っていた。

「だってめっこらー!?名乗り出ろおらー!」チーフヤクザ妖精はタオルを脱ぎ、おもむろに背を向ける。立ち上がって酒瓶を持つ邪悪なワータヌキのタトゥーシールがあらわになり、恐るべき形相で手下たちを睨めつけていた。コワイ!普通なら即座に失禁しかねないシチュエイションである。しかし……クローンヤクザ妖精たちは口を割ろうとしない。

(あうう…早く逃げなきゃ!)部屋の隅に転がされているタイゲイは何とか拘束から逃れようと体をくねらせる。しかし彼女にからみつく荒縄がそれを許さない!「ンアーッ!」ナムサン!豊満な胸がさらに強調される!このままでは水着がずれてしまうぞ!「ンアーッ!やだあっ!」

チーフヤクザ妖精は正座クローンヤクザ妖精たちの周囲を苛立たしげに飛び回る。天井から吊るされたスピーカーからはこのサツバツとした状況にはどこか不似合いなアイドル楽曲が漏れ出す。ブンブブブンブーン♪ブンブブブンブンブーン♪私だけを見てー♪ネオサイタマのクソアイドルじゃなくてー♪この私ー♪軽巡セイキ=チャンだけー♪アカチャーン!

「すっぞこらー!」チーフヤクザ妖精が突如銃底で1人を殴る!「あばーっ!?」クローンヤクザ妖精の一人が涙を流して卒倒!ナムアミダブツ!「名乗り出ねえなら順にフロに沈めるぞ!わたしはそれだって構わねえ!全員殴れば確実に裏切者も混じってるからな!」つぶらな瞳で威圧する。「435番=サンです、435番=サンが裏切り者です」恐怖に耐えかねたクローンヤクザ妖精が、隣のクローンヤクザ妖精を指差した。「ひっ!」型式番号435番のクローンヤクザ妖精は声を詰まらせる。

「435番てめっこらー!!」顔を真っ赤にして怒り狂ったチーフヤクザ妖精が、435番の口に銃口をねじり込む。「むごっ!?」目を剥く435番。肩を掴まれフロへと強引に引きずられていく。そして力づくで投入!ナムサン!「あいええええええ!」首だけ出し絶叫する435番!

「なんでサボったんだこらー!連帯責任になっちまうんだぞこらー!ブッダも怒るぞこらー!」チーフヤクザ妖精は吐き捨てながら銃口を引き抜く。「答えねえとトリガー引くぞコラー!」「げほっ!げほーっ!だ、だって!休みもない!ごはんも少ない!こんなのやってられ…」

日頃の恨み辛みを吐こうとしたその時!いずこからともなく二機のゼロセンが飛来し、435番の顔面に深々と突き刺さった!「あばーっ!?」そのままフロに沈む435番!「「「「「「「あいえええええええええ!?」」」」」」」残された7人は絶叫する!

「ドーモ、ロブス…アキグモです」突然フスマが開き艦娘が姿を現した。その両腕にはロブスターめいた恐るべきハサミ武器が備わっているのだ。「あいえっ!?アキグモ=サン!?」「悪い子たちはここにいるのかしら?オシオキしに来たのよ!この私が直接ね!イヤーッ!」アキグモは前転しながらゼロセンを連続投擲する!

「あいええええええ!?」次々とゼロセンが着弾し爆殺されていくクローンヤクザ妖精たち!タツジン!クローン妖精は爆死しても、いずれ再生チャンバーで蘇らせることができるのだ。そしてその蘇生費用は実際安い!「イヤーッ!」ハサミでチーフヤクザ妖精の首を掴むロブスター!「ぐわーっ!」

(はわわ…!このままじゃまずい!)部屋の隅に転がされているタイゲイは何とか拘束から逃れようと体をくねらせる。しかし彼女にからみつく荒縄がそれを許さない!「ンアーッ!」ナムサン!股にも縄が食い込む!このままでは水着がずれてしまうぞ!「ンアーッ!誰か直して!」

そのままアキグモはチーフヤクザ妖精を熱湯の中に叩き込み、首だけを出して押さえ込んだ。「熱い!あいええええ!熱い!」なんたる非道!「あなたたちの班の仕事滞ってるのは知ってるわよね?それもこれも全部連帯責任よッ!そこに転がってるタイゲイ=サンをチンジフに持ち帰るついでにあなたたちに罰を…」

恐るべきおしおきが執行されようとしていたその時!いずこからともなく2機のゼロセンが飛来し、アキグモの尻に深々と突き刺さった!「アイエエエエエ!?」絶叫するアキグモ!さらにいずこからともなく2機のゼロセンが飛来し、アキグモの尻にさらに深々と突き刺さった!「アイエエエエエ!?」

「Wasshoi!」赤黒い艦娘装束を纏った謎のニンジャが、天井から突如出現し、空気を切り裂くような3連続回転と共に着地した。そして一瞬の隙も無いオジギを決める。「ドーモ、ロブス…アキグモ=サン。センダイです」「ど、ドーモ!センダイ=サン!アキグ…ロブスターです!?」

「や、やった!助けにきてくれたんですね!」部屋の隅に転がされているタイゲイは何とかセンダイの方へ身体を向けようとする。しかし彼女にからみつく荒縄がそれを許さない!「ンアーッ!」ナムサン!縄が彼女を締め付け、大股開きに開脚させる!水着がずれかかっているぞ!「ンアーッ!恥ずかしいです!」

センダイはタイゲイを一瞥した後、アキグモに向き直る。「豊ま…敵艦、殺すべし」センダイと名乗ったニンジャは、低く押し殺した声でそう告げ、「憲」「兵」と彫られた鋼鉄メンポからジゴクめいた息を吐く。「そんな……センダイ=サン、何故……あんたがここに…」恐怖におののくアキグモ。その内股は恐怖のあまりに濡れている。

「イヤーッ!」恐怖を振り払い、ハサミを構え駆けこむアキグモ!だが機先を制するようにセンダイがスリケンを投擲!「イヤーッ!」「グワーッ!」ロブスターの顔面に突き刺さる!センダイはさらに駆け込み、脳天へカラテチョップを叩きこんだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」

「グワーッ……馬鹿な……馬鹿な……こんなの、任務にないよぉ…」頭に凄まじきカラテを叩き込まれたアキグモは、振り上げたハサミをガチガチと鳴らしながら歩き回り、フロの中へとブザマに転落した。「グワーッ!……サヨナラ!」キョート・チンジフの送り込んだハサミ武器を装備した恐るべき艦娘は、そのまま爆発四散を遂げた!

ブガー!ブガー!ブガー!何らかの非常装置が発動したのだろう。駐屯基地内はレッドアラート・ボンボリの光によって支配された。壁に描かれたフジサンが血のごとき赤に染まり、古事記に予言されたマッポー・アポカリプスの光景を暗示する!「このままじゃ爆発しちゃいます!」タイゲイが開脚したまま叫んだ!

「イヤーッ!」センダイは連続側転を決めてタイゲイの横に急ぐと、カンムス筋力によって彼女を左腕だけで抱え上げる。一刻の猶予も無い。センダイの額に汗が滲む。右手でニンジャロープを投げ放ち、天井に先端フックをめり込ませると、大きく後ろにジャンプし反動をつけた。

閃光、そして爆発!紅蓮の炎に包まれる駐屯基地!ナムサン!「「「「「「「あばーっ!?」」」」」」」当然中にいたクローンヤクザ妖精は全員爆死!あの2人もまた、ロブスターとともにサンズ・リバーへ送られてしまったのか?「……Wasshoi!」おお、見よ!間一髪!タイゲイを抱えたセンダイが、ロープを使った振り子運動で、爆炎を背にガラス窓を突き破った!

センダイは冷たい夜の海へと着地すると、タイゲイを下ろし、荒縄を切断した。「あ、ありがとうございますセンダイ=サン。基地の中でお茶を飲んでたらキョートの皆さんがいきなり…」「キョートの手はここまで来ているということか」センダイはメンポを外してチラリとタイゲイを見る。「あの…できれば着るものを…この格好、寒くて、恥ずかしくて」「アー…うん。あのさ、タイゲイ=サン」「はい」「なんていうかさ、エート…毎日なに食べたらそんなにさ…その…」

【デイ・オブ・ザ・アキグモ】終わり

(親愛なる読者の皆さんへ : 短編により1000まで埋まるのでは?と思っていたがもちませんでした。なので次のスレを立てましたのでごりょうしょうください。後はロブスター感想とかコメントーンを書いたりメモ帳にすればいいと思う。以上です)

◆次スレな◆
【艦殺(艦これ×忍殺)】ブレードカンムス・ヴェイカント・ヴェンジェンス
【艦殺(艦これ×忍殺)】ブレードカンムス・ヴェイカント・ヴェンジェンス - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450699298/)

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