幼馴染「ねえ新隊員、立って歩くカエル見た?」(195)

新隊員「ただいま」

女「おかえりなさーい、3ヶ月間の災害派遣お疲れ様でした」

新隊員「娘は?」

女「おばあちゃんと一緒に寝ちゃった」

新隊員「そう……」

女「さみしい?」

新隊員「んー、ちょっとね」

女「まだ小さいからね、もうおねんねの時間でしょ。私がサービスしてあげるからそんな寂しそうな顔しないの。
えーと、お風呂にする、ご飯にする、それとも寝……」

新隊員「バカ殿のギャグがサービス?」

女「違うわ、全員集合よ」

新隊員「そういうことじゃなくて……ご飯食べたいな」

女「もう準備できてるわよ、ちゃんと手洗ってね」

・・・お食事後・・・

新隊員「おいしかった。うちのご飯食べたら生き返った気がする」

女「よかった。3ヶ月間ほとんどうちに帰れなかったからきつかったでしょ」ニコ

新隊員「うん。でも、女さんも招集されて災害派遣に行ってたでしょ」

女「私は1週間入浴支援に行っただけだから……。でも、思ったよりは大変だったわ、4kgやせちゃった」

新隊員「そう言えば、可愛い予備役が入浴支援に来てたって話題になってたよ」

女「私のこと?」

新隊員「たぶん。同じ名字だけど知り合いかって聞かれたから」

女「へー」

新隊員「32才って言ったらみんな驚いてたよ、二十歳そこそこかと思ったって」

女「なんで18才って言っといてくれないのよ」

新隊員「18才の軍曹がいるわけ無いでしょ」

前に書いたもの ”男「幼馴染上等兵、ちょっと頼み事が・・・」”
男「幼馴染上等兵、ちょっと頼み事が・・・」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/internet/14562/storage/1378987351.html)
の続きですが、独立して読めると思います。

年齢 女 > 男 = 幼馴染 > 新隊員
階級 男 >> 女> 幼馴染 = 新隊員
身長 男 > 女>> 新隊員 ≧ 女
夫婦 男 = 幼馴染 新隊員 = 女

と、だけ認識してもらえば十二分です

一応キャラの補足をしますと、女は、中堅下士官でしたが東北の農家を継ぐために退職し今は予備役、
新隊員は、当時その部隊で一番下っ端のチビでしたが今は下士官に。女性がずっと上の歳の差カップル、
ちょっとした油断でできちゃった結婚、今はマスオさん状態。
男は、女が当時所属していた部隊の小隊長、幼馴染は同じ部隊に所属していた上等兵で男の幼馴染み、二人は結婚しています。

女伍長「あのね・・・来ないの・・・」新隊員「誰が?」
女伍長「あのね・・・来ないの・・・」新隊員「誰が?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/internet/14562/storage/1390096347.html)
女「本当にエッチなのは新隊員ではなく女伍長でした!」
女「本当にエッチなのは新隊員ではなく女伍長でした!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394706944/)

上の二つも、読んでもらえるとすごく嬉しい。読まなくてもわかると思いますが。
長々書いてきましたが、今回のもので完結します

電話  ring ring ring

新隊員「はい、もしもし?」

???「あんたよくも、嫁入り前の女の子を妊娠させたわね!」

新隊員「は?何の事でしょうか」

???「シラをきる気なの!」

新隊員「あの、どちらにおかけですか?」

???「あたしの声を忘れたの!」

新隊員「ひょっとして、その能天気に大きな声は……幼馴染上等兵!」

???(幼馴染)「上等兵じゃないわ。伍長よ!あたしだって昇任したのよ!」

新隊員「お久しぶりです!お元気ですか・・・って元気そうですね」

幼馴染「元気よ!」

新隊員「でも、ボク女の子なんか妊娠させてないですよ」

幼馴染「あたしの女さんをたぶらかして赤ちゃん産ませたじゃないの」

新隊員「なんだ、女さんのことか。女の子じゃないで……」

女  ガンッ!!

新隊員「ウウッ、グーハヤメテ・・・・・・」

女「女の子よ!電話代わって……あ、もしもし幼馴染?」

幼馴染「あ、女さんですか。ご無沙汰してます」

女「どうしたの今日は?」

幼馴染「災派*も一区切り着いたのでたまにはお会いしたいなって。娘ちゃんの顔も拝ませてもらいたいし」
      (*業界では、災害派遣を略して災派と言います)

女「いつでも良いわよ。いつが都合良い?」

幼馴染「あたしもいつでも良いんですけど」

女「じゃあ、来週の土曜日にする?」

幼馴染「男も連れてって良いですか?」

女「もちろん。食べちゃうわよって言っといて」

幼馴染「大喜びしますよ、そんなこと言ったら」

女「どうかしら。じゃあ待ってるわ」

今日はここまでです

なんで、日本を部隊にしてるのに自衛隊の階級じゃなくて旧軍の階級なの?

>>13
前編ではかなりリアルにどこかの話を書いたもので、情報漏えいといわれないための保険です。
元とはいえそこらへんは神経質になるのです。ですから、一言も○○隊の話とは書いていません。
今前編を見返すと、2箇所ほどスレスレのところが……まあ、外の人が見ればそんなつまらない事と感じる程度の事ですが

新隊員「ああ、びっくりした。何で幼馴染さん急に電話かけてきたんだろう」

女「入浴支援に行ったとき、たまたま同じところで勤務したのよ」

新隊員「そのとき、入籍前に娘ができたこと言った?」

女「うん」

新隊員「なんて言ってたの?」

女「あなたを百叩きするって」

新隊員「あの人ならホントにするかもしれない……」

女「あの子なりの愛情表現よ」

新隊員「愛情表現なら優しくしてくれる方がいいんだけど……」

女「だから、私が優しくしてあげてるでしょ」

新隊員「だったらね……」

女「ダメ、先にお風呂入ってから」

新隊員「じゃあ一緒に入ろう、体洗って」

女「体ぐらい自分で洗えるでしょ」

新隊員「洗い方忘れちゃった」

女「しょうがない人ね」

新隊員「でさ、娘がおなかにいるときに……」

女「あれ、またするの?」

新隊員「うん、それとね……」

女「欲張りなんだから。だけど3ヶ月がんばったご褒美だものね、あなたがして欲しいことしてあげる。先にお風呂行って待ってて……」

・・・次の週・新隊員と女のうちの庭先・・・

新隊員「あ、幼馴染上等兵!」タッタッタ

幼馴染「新隊員!」タッタッタ

新隊員「お久しぶ……」

幼馴染 右ストレート

新隊員 クラッ「うぅっ、本気のパンチ……ひどいじゃないですか!3年ぶりにあったのに」

幼馴染「籍も入れる前に妊娠させるなんて最低よ!百叩きするつもりだったのを一発にしてあげたんだから感謝しなさい」

新隊員「そんな……」

幼馴染・新隊員「………」ジー

幼馴染・新隊員  ハグ

幼馴染「元気だった?」ギュ

新隊員「はい……」

・・・一方、その傍ら・・・

女「小隊長、お久しぶりです」

男「もう小隊長じゃないよ」

女「すみません、つい。今は司令部勤務でしたね。お元気そうでなによりです。でも、男さん、少々奥さんのしつけがなってないんじゃありません?
夫の見てる目の前でほかの男抱きしめるなんて」

男「久しぶりに会ったんだからしょうがないよ」

女「もう、幼馴染に甘いんだから。で、男さんは?」

男「え?」

女「私たちも久しぶりにあったのに……」

男「そりゃあ、あの……」

女「私は構いませんけど」

男「え、だけど、その僕は……」

女「……あいかわらず臆病な人……」

男「……」

女「だから好きよ、フフ……コラ、幼馴染!いい加減私の旦那を返しなさい!」

幼馴染「別にこんなの欲しくないです」

女「もう、あいかわらずね。変わりない?」

幼馴染「はい」

新隊員「そんなことないですよ」

女「え?」

新隊員「オッパイが大きくなってる」

女 ガンッ!!

新隊員「うっ、星が飛んでる……ん?」

幼馴染「……」

新隊員「あれ?幼馴染さんの攻撃がない……」

女「ん、そういえば確かに……太ったわけじゃないわよね……あの洗濯板の幼馴染が……ひょっとして……赤ちゃんが?」

男「え!ホント?!」

幼馴染「まだ、わからないわ。生理が遅れているだけだと思ってたから……けどちょっと遅すぎるかなって」

女「どれくらい?」

幼馴染「1ヶ月くらいです」

女「あ、そうだ。検査薬の残りがあるから見てみる?古いからちゃんと反応しないかもしれないけど」

幼馴染「検査薬の残り?」

女「妊娠したときに……籍入れる前だったから……そのちょっと心配で……」

幼馴染「女さんだけは、入籍前にこんなものが必要になるようなことをする人じゃないって信じてたのに」

女「だって、新隊員がどうしてもって……」

新隊員「また、ボクのせいにする。あの時は女さんが……」

女「そうじゃないでしょ。あなたがか弱い私をむりやり……」

新隊員「どこがか弱いんですか、腹筋割れてるような人が」

女「少しぐらい筋肉あったって、男の人の方が力は強いでしょ」

幼馴染「あの、どっちでも良いんですけど……」

女「ゴメン……どこだったかな……あ、これこれ」

幼馴染「えーと……真ん中のところにおしっこをかけるのね」

新隊員「じゃあ、いっしょにトイレへ……」

女・幼馴染  ガツン

新隊員「うう……ツープラトンの攻撃……」

幼馴染「どうしてあんたが付いてくるのよ!」

新隊員「だって初めて使うから……」

幼馴染「説明書ぐらい読める」

新隊員「でも一人で見るの心細いでしょ?」

幼馴染「そりゃあそうだけど……女さんの時は見たの?」

新隊員「そのために部隊から呼び出されたんですから」

幼馴染「え、女さん、おしっこするところ見せたんですか……」

女「ちょ、ちょっと、誤解されるような事言わないでよ!検査キットを見てもらっただけよ」

幼馴染「AVを二人で見てたって言ってたから、そういうプレイもしてるのかと思いました」

女「しないわよ、そんなこと」

幼馴染「でも、よく二人で変なコスプレしてエッチしたって……」

男「ほんと?そんなことをしてたの?」

女「お、男さんがいるのに、な、なんてこと言うのよ。う、嘘ですからね、そんなの」アタフタアタフタ

男「その慌て方で嘘って言われても……」

女「……やっぱりわかりますか……」ガックリ

男「どうせ新隊員にせがまれたんでしょ?」

女「そうなんです。それでしょうがなく……」

新隊員「またボクのせいにするんだから」

女「うるさいわね。じゃ、幼馴染、行きましょうか」

幼馴染「え、どこに?」

女「だからトイレ……」

幼馴染「いいです!一人で行きます!」

幼馴染「ねえ、男。やっぱりちょっと来て」

女「結局自分で見るのが怖いんだから。男の人に見せるぐらいなら、私に見せた方が良いのに。そう思いませんか?」

男「一応僕は夫なんだけど」

女「あ、ごめんなさい、そうでしたね。トイレは、そこの廊下の奥ですから」

男「ちょっと行ってくる……」

男「ここか」open

幼馴染「開けないでよ!」

男「だって来いって言うから」

幼馴染「結果だけ見てくれればいいの」close

音姫と同じ音  doorチョットダケopen

幼馴染「見てくれる?」ソロソロ

男「うん……線が出てるだけで色が変わったって感じじゃな……」

新隊員「これですよ、これ!」

男「うわっ、いつの間に来てたんだ!」

女「男さん、おめでとうございます!」

男「わっ、女さんまで」

幼馴染「なんでみんなで見てるのよ!恥ずかしいでしょ!みんなどっか行って!!」

女「別にあなたのおしっこに興味ある訳じゃないから。トイレから早く出てらっしゃい」

今日はここまでです

・・・居間に帰って・・・

幼馴染「もう、恥ずかしいじゃないですか、みんなにおしっこかけたものみられたら」

女「ゴメンゴメン。少しでも早く知りたかったのよ。でも良かったわね」

幼馴染「ありがとうございます」

女「でも、これ100%信用できるわけじゃないから病院にちゃんと行きなさい。それから、ハイヒールなんか履かないのよ、ただでさえあなたは鈍くさいんだから。
あと、そんなミニスカートもやめときなさい。脚が自慢なのはわかるけど……」スゴクウラヤマシイ

幼馴染「はい」

女「それはいいとしても……」

幼馴染「?」

女「今、あなたのいるところ司令部でしょ。代休とか有給休暇取りにくいし産休も好きなようには取れないわよ、人目を気にしないなら別だけど」

幼馴染「そうですよねぇ」

女「転属した方が良いかもね、まあ、補給所か、人のいっぱいいる部隊でもないと」

幼馴染「補給所か部隊か。ねえ、男。どこか良いところない?」

男「そんな都合の良いところないよ」

女「新隊員の部隊に行ったら?あなたが今いる駐屯地からそんな離れているわけでもないし」

幼馴染「でも、妊娠したので転属してきました、なんて言ったら白い目で見られないかな」

女「現場の部隊はいつも人手不足だから妊婦さんだってまじめにやれば重宝されるわ。あなた、モス*何持ってる?」
(*業界の中で使える資格みたいなものです)

幼馴染「人事と文書ですけど」

女「その二つは女の子としてベストよ。持ってる人少ないし、演習の時留守番してても役立つから。それに新隊員もいるでしょ。少しは手助けになると思うわ」

新隊員「ボクに出来ることならお手伝いしますよ」

幼馴染「ありがと。それ良いかもしれないですね。でもそんな都合良く転属できるかなあ」

女「フフフッ。人事班勤務経験者の女予備軍曹がやり方を教えてあげましょう。新隊員の駐屯地に行く用事無い?」

幼馴染「たまには……」

女「そうしたらね、新隊員のところに出来るだけ顔出して。おやつを少し多めにもって。あなたはそれだけで良いから」

幼馴染「それだけで良いんですか?」

女「幼馴染は美人だしスタイルも良いから、それで十分よ。あと、新隊員と話す時は、できるだけ敬語を使って」

幼馴染「それは難しい……」

女「努力しなさい。そうしたら新隊員、連隊本部のね・・・・(秘密保全上略)・・・・、で、男さんは司令部勤務でしょ、人事部の・・・・(秘密保全上略)・・・・」

男「え、そんなことしていいの?」

女「法律規則には一切違反していません。まあ、良いことじゃないかもしれませんけどね」

男「やっぱり女さん怖い」

女「失礼ですね、助けてあげようとしてるのに」

幼馴染「でも確かにそれだったら転属できそうですね」

女「同じ部隊になったからって私の旦那様と浮気したら許さないからね」

幼馴染「それはあたしだけに言われても。ねえ、新隊員?」

新隊員「変なところでボクに振らないでくださいよ」

幼馴染「脚だけならあたしだって負けてないですよ。ねえ、新隊員?」ホラ、ドウコノアシ

新隊員「だからボクにふらないでってば」

女「そりゃあ、私チビだもの。幼馴染みたいに脚長くないわよ……でも、新隊員は私の脚を好きって言ってくれたもの、ね?」

新隊員「う、うん」

幼馴染「あ、口ごもった」

女「ふーん。幼馴染、そういう事言うの?男さん、幼馴染ったら、私の夫を誘惑するそうですよ。それだったら、私たちも二人で夜の町に消え・・・」

幼馴染「ちょ、ちょっと待ってください!」

女「男さん私の胸きれいって言ってくれましたよね」ダッチューノ

男「お願いだから僕にふらないで。後がホントに怖いんだから」

幼馴染「別に胸が小さくても良いって言ったよね」

男「う、うん」

女「あ、口ごもった」

幼馴染「男の滑舌が悪いだけです!」

女「私の方が優しいでしょ?御料理も上手だし」

男「確かに……っていうか、話が変わってきてない?」

女「あ、ごめんなさい。つい悪ふざけがすぎましたね。そう言えば幼馴染、少しは料理上手になったの?」

幼馴染「そのう、チンするぐらいなら……」

女「それは料理じゃないわよ。ちゃんと練習しなさいって言ったでしょ。あかちゃんにオッパイあげるにはしっかり栄養とらなきゃいけないんだから。
遊びに来たときは教えてあげる」

幼馴染「ありがとうございます……」

女「じゃあ、お昼にしましょうか。今日はご馳走してあげるけど、つぎ来た時は一緒に作るのよ。わかった?」

幼馴染「来週からお願いします……」

今日はここまでです

一人じゃなかった…ほっ…

・・・2週間後、女と新隊員の家・・・

娘「…ゴ、…ゴ」

新隊員「ゴって何かな?」

女「たぶん、イチゴが食べたいのよ」

新隊員「イチゴのゴか。よくわかるなあ」

女「毎日一緒にいるもの」

新隊員「そうか。娘はお母さんといつも一緒なんだね」

娘「…リ」

新隊員「り?クリかな」

女「……そうかもね」

新隊員「クリと一緒?」

女「さあ、どうかしら。ねえ、それよりね、車もう一台欲しいと思わない?」

新隊員「まあ、有ったら便利かもね」

女「でしょ。このパンフレット見て……」ゴソゴソ

新隊員「ずいぶん丸っこい車だね。軽?」

女「軽じゃない。アバルトって言うんだけどね」

新隊員「ふーん、どこの車、マツダ?」

女「えーと、Fiat 500って車をちょっとパワーアップして、足回りを……」

新隊員「ちょっと待って。フィアットって外車だよね?」

女「まあ、そんな気も……」シッテタノ

新隊員「フランスだっけ?」

女「イタリアだけど……」ヤッパリシラナイノネ

新隊員「ふーん。で、今乗ってるミニはどうするの」

女「あれも気に入ってるから当分乗るけど、古いから労わりながら乗らなきゃいけないでしょ。たまにはストレス発散で目いっぱい走りたいのよ」

新隊員「もうお母さんなんだから、暴走族みたいな真似しちゃだめだよ」

女「良いじゃない、たまには」

新隊員「でも高いんじゃないの?外車なんでしょ?」

女「たいしたこと無いわよ。税金入れても350万あれば……」

新隊員「ダメ。軽でいいじゃん。こんな小さい車に350万なんて贅沢です」

女「ね、いいでしょ?オ・ネ・ガ・イ」スリスリ

新隊員「あっ、そんなところスリスリしたって誤魔化されないからね」キライジャナイケド

女「それなら軍曹の命令よ、新隊員伍長、買いなさい!」

新隊員「結婚したら命令なんかしないって自分で言ったじゃん」

女「じゃあ、意見具申」

新隊員「却下」

女「ケチ。フェラーリ買ってくれって訳じゃないのに」

新隊員「女さんだって僕の給料知ってるでしょ」

女「災害派遣手当て出るじゃない」

新隊員「増えた分税金払わなきゃいけないんだから。それに来月から僕だって公務員だから給与カットされるんだよ」

女「でも、生活に困ってるわけじゃないんだから、かわいい妻のささやかな楽しみを認めてくれたっていいじゃない!」

玄関 ガラガラ

幼馴染「こんにちわ。料理の修業に来ました……え?」

女「買ってくれなきゃ家出する!」

幼馴染「えーと、なにが……?」

新隊員「外車が欲しいって駄々こねてる最中。僕が無駄遣いしちゃダメだっていったんで、むくれてるんですよ」

幼馴染「それは、新隊員の言う事のほうが正しい気がするんですけど……」

女「あなたも、新隊員の肩を持つの!私の事を尊敬してるとか目標とか言っておいて」

幼馴染「それとこれとは……」

幼馴染「ねえ、新隊員、女さん、こんなわがまま言う人だったっけ?」コソコソ

新隊員「結婚してからはときどき……」コソコソ

女「なに二人で内緒話してるのよ!男さんならきっと味方してくれるのに……。そういえば今日は一人なの?男さんは?」

幼馴染「女さんに盗られたら大変ですからね……というのは冗談で、当直です」

女「あら残念、艶っぽいところを見せようと思ってたのに。今度来たらメイドさんのコスプレしてあげるって言っといて」

幼馴染「はい、わかりました」

女「じょ、冗談よ。本当に言ったらダメだからね」

幼馴染「えー、私も見たかったのに」

女「するわけないでしょ。新隊員に見せるだけでも恥ずかしいのに」

幼馴染「じゃあ、新隊員にしてもらいましょうよ。女の子の服着させたら本当にかわいいんですから。見た事ないでしょ」

女「……そうねえ、まあ小柄だしこういう顔立ちだから似合うでしょうけど」

幼馴染「男が新隊員のこと女の人と間違えて自分の部屋に泊めたこともあったでしょ?」

女「そういえばそんな事もあったわね」

新隊員「高校生のころ女装コンテストでは無敵でしたからね。まあ、今でも幼馴染さんから男さんを奪い取るくらいの自信はありますけど」

幼馴染「だったら、女さんをあたしのものにする。学生時代、結構女の子から告白されたんだから。バレンタインのチョコだって10や20じゃなかったのよ」ドヤ

新隊員「そんなに渡したんですか?」

幼馴染「貰ったの!手作りのもあったんだから。あたしがその気になれば女さんだって……」

女「二人して馬鹿な事言ってるんじゃないの。私に女の子といかがわしいことをする趣味はありません。今日は肉じゃがの練習するわよ。簡単だから」

幼馴染「そうなんですか?」

女「まあ、普通は練習なんかしなくてもできるけどね、皮剥いて煮れば良いんだから。一人でもできるように、味付けはすき焼きのタレでしましょう。
肉は牛でも豚でも大丈夫よ、好きなの入れて。脂身がある方が甘みが出るんだけど、油とか気にする?」

幼馴染「全く」

女「どうしてそれでそのスタイルになるのよ。神様はなんて不公平なのかしら…」ブツブツ

幼馴染「夕食のあと、牛丼やカツ丼を食べても腹筋が割れてる人に言われたくないんですけど」

女「そう言われると……えーとね、沸騰させないのと入れる順番だけ気をつけてね。じゃあ、ジャガイモとニンジンの皮を剥いて」

幼馴染「皮むきですか。えーと、ピーラーは……」

女「……」ジト

幼馴染「無いですよね。えーと包丁で……」テヲキラナイカナ

女「先が思いやられるわね」

幼馴染「すみません。先が思いやられるって言えば、保育園が足りなくてなかなか入れないらしいんですよ……ジャガイモが逃げた!……保育園入れる良い手無いですか?」

女「いくら私だって保育園までは……近くにいてくれれば子守りぐらい手伝ってあげれるけどね……あ、そうだ!」

幼馴染「何か良い方法が?」ア、ニンジンモニゲテイク…

女「うちの離れに住まない?」

幼馴染「女さんのうちの離れですか?」

女「うん。ちょっと前まで、私のおばあちゃんが住んでたんだけどね。今誰も使ってないから。三部屋あるしバリアフリーでリフォームしてあるから赤ちゃん育てるのにちょうど良いでしょ」

幼馴染「でも、保育園は?」

女「私が面倒見てあげるわよ。一人見るのも二人見るのも一緒だもの。手伝ってくれる人もいるし」

幼馴染「お母さんですか?」

女「まあ、そんなところね」

幼馴染「でも、お家賃は?」

女「税金保険込みで350万円」

幼馴染「税金保険込みって?」

女「あ、そこは気にしないで」

幼馴染「えーと350万円て1年あたりですか?」

女「ううん、買って。なんなら何十坪か畑もつけてあげるわよ。どうせ遊ばせてるだけだから」

幼馴染「そんな安くて良いんですか?」

女「リンゴの収穫手伝ってくれたらね」

新隊員「ねえ?」ツンツン

女「ん、なに?」

新隊員「車買いたいだけでしょ?」ツメタイシセン

女「な、なんのことかしら。わ、私はただ困ってる後輩の手助けをしてあげようと……」シドロモドロ

新隊員「外車なんて贅沢だよ。それにそんな勝手なことしたらお母さんに怒られるよ」

女「大丈夫、あなたに車買ってあげる為って言えば。お母さんあなたにメロメロだもの」

新隊員「またボクをだしにしてお母さんにおねだりするの……」

女「あなただって幼馴染がお隣さんになったら嬉しいでしょ?」

新隊員「まあ、それはそうだけど。あ、そろそろ肉じゃが良いんじゃないの?」

幼馴染「えーと、どうなんでしょう?」

女「ちょっとジャガイモを楊枝でさしてみなさい」

幼馴染 ツン「あ、良い感じです」

女「じゃあ、小鉢とタッパーに盛って……ちょっと味見…モグモグ…そうねえ、これだったら娘にも食べさせられるかな」

幼馴染「ホントですか?」ヤッタ

女「本当よ。娘、はいアーン」

娘 パク「……う、う」パシパシ

幼馴染「なんて言ってるんですか?テーブル叩いてるけど、怒ってるのかな」

女「たぶん早く早くって言ってると思う」

幼馴染「じゃあ気に入ってくれたってことですよね、良かった」

女「新隊員もちょっと食べてみて」

新隊員「うん……パク…う……うーん」

幼馴染「なに変な顔してるの」

新隊員「味がない」

幼馴染「そんな訳無いでしょう、娘ちゃんがあんなおいしそうに食べてるんだから…パク…あ、ほんとだ……あれ?」

女「赤ちゃんは薄味なものしか食べてないからこれでちょうど良いのよ。大人には物足りないけどね。だけどこれぐらいであなたも慣れといたほうが良いわ。
妊娠中塩分取りすぎると尿毒症になっちゃうから。男さんに出す分はもう少し味を濃くしなさい」

幼馴染「はい……気をつけます」

女「そうだ、帰るときお米もって行くと良いわ」

幼馴染「え、良いんですか?」

女「もうちょっとして、つわりがひどくなるとね、御飯の匂いもつらくなるから。これ、うちで食べる為に作ったお米だから少しは食べやすいはずよ」

幼馴染「本当になにからなにまで気を使ってもらって。あ、そろそろ帰らないと」

女「気をつけて帰るのよ。普段と体の調子が違うんだから。あとお家の事、良いお返事待ってるわ」

幼馴染「帰って男と相談してみます」

・・・男と幼馴染のうち・・・

幼馴染「・・・・って、女さんが言ってくれてるんだけど」

男「ありがたい話だけど、そこまで甘えちゃって良いのかな?」

幼馴染「あたしもそう思うんだけどね、女さんお金がいるみたいよ」

男「生活が苦しいのかな?結構、リンゴ畑も広かったよね?」

幼馴染「そうじゃないわ。外車買いたいんだって。だけど無駄使いはダメだって新隊員に怒られてたわ」

男「あの女さんが怒られるのか……」

幼馴染「まあ、怒られてるっていうより、新隊員に甘えてる感じかな」

男「ふーん」イイナ

幼馴染「そんなうらやましそうな顔しないの。で、どうしよう?」

男「そこに住みたいんだろう?」

幼馴染「うん」

男「あそこからなら僕も通勤できないことはないし、350万なら家賃としたって高くないよ。それにうちは2馬力*だし、何とかなるよ」
*業界では夫婦共働きを2馬力といいます。二人とも幹部の場合はツインターボとも

幼馴染「ありがとう。でも、女さんと浮気しないよね?」

男「すると思う?」

幼馴染「わからないから聞いてるんでしょ」

男「できるものならしたい」

幼馴染「あのねー!」

男「ごめんごめん。するわけないじゃん」

幼馴染「だってさ、身長以外女さんに勝てるところなんて思いつかないんだもん。不安になるじゃない」

男「幼馴染らしくもない。幼馴染だって十分綺麗だよ。まあ、お料理は勝てなさそうだけど」

幼馴染「そうだ、これ、女さんのうちで練習してきた肉じゃが」

男「美味しそうじゃん……パク……上品な味だね」

幼馴染「味付け失敗して超薄味になっちゃった。次からもうちょっと味濃くするから。でも妊娠してる間はこれぐらいの薄味に慣れなさいって女さんが言ってた」

男「僕もこれで良いよ」

幼馴染「ありがとう。でも無理しなくても……」

男「いつものよりおいし……あ、いや……」

幼馴染「どうせあたしの料理は…ブツブツ…赤ちゃんのために上達しなきゃ」

男「ちゃんとしたもの食べたらきっと健康にもお肌にも良いんじゃないかな。女さん、子供産んでも前と全然変わらないじゃん」

幼馴染「そうなのよね。スキンケアの仕方も教えてもらおうっと。そう言えば最近目がチカチカしてる感じがするの、妊娠したせいかな」

男「痛い?」

幼馴染「ううん。目の端を影がよぎるような感じがするの」

男「なんか聞いたことがあるな。飛蚊症って言うんじゃなかったかな」

幼馴染「妊娠するとなるの?」

男「いや、確か糖尿病の・・・」

幼馴染「え、あたし糖尿病なの?!」

男「そんなことないと思うけど。今度検診行くときに聞いてみたら」

幼馴染「うん、そうする」

今日はここまでです

・・・2週間後・女と新隊員の家・・・

幼馴染「こんにちは……あれ、女さんはいないの?」

新隊員「あ、幼馴染さん。今ちょうど、娘と散歩に出ちゃったところなんですよ。なんか娘がご機嫌斜めで」

幼馴染「そうか、赤ちゃんて生まれてからも大変なんだね」

新隊員「寝かし付けるのなんか大変ですよ。抱っこしないとぐずるし、寝たと思って布団の上におくとすぐ目を覚ますし。
うちは、女さんがしてくれるから良いけど小隊長、じゃなかった男さん大変だろうな」

幼馴染「そうね……じゃない!ちょっと待って。あたしだってちゃんとするわよ」

新隊員「"子守で疲れたなあ。今日は早く寝たい。ちょっと男、赤ちゃんを寝かせてくれない……"って言わないかなあ……」チラ

幼馴染「うーん、言っちゃうかも……。どうして人の弱いところを突っつくのよ。女さんだってたまには言うでしょ?」

新隊員「言わないですよ。次の日が休みの時は寝かしつけてって言われるときもありますけど」

幼馴染「まあ、たまには早く寝たいだろうし」

新隊員「違いますよ。寝かしつけるまでちゃんと起きて待っててくれますよ」

幼馴染「そうなんだ、やっぱり女さんてすごいな。きっとお父さんに赤ちゃんとコミュニケーションとってもらおうと思ってるんだろうね」

新隊員「うーん、それもあるのかもしれないですね」

幼馴染「それも?」

新隊員「やっぱり女さんが寝かしつけるときはボク先に寝ちゃうでしょ。だから……あ、なんでもないです」

幼馴染「だから、なに?」ピーン

新隊員「なんでもないです」

幼馴染「赤ちゃんを寝かしつけたあと二人ですることって何かしら?」

新隊員「そのまあ、いろいろと……」

幼馴染「ふーん、いろいろねえ。そう言えば、そのいろいろを妊娠してる間はどうしてたの?」

新隊員「気になりますか?」

幼馴染「そういうわけじゃないけど、一応知識として……」

新隊員「えーと、そういうことする気はなかったんだけどそのやっぱりガマンできなくて……」

幼馴染「もう、あんたも少しは我慢しなさいよ」

新隊員「ボクじゃないですよ、女さんですよ」

幼馴染「そんな訳無いでしょう、あんなしっかりした人が」

新隊員「だってそうなんだもん。いつも最初はそんな事する気無いって、意地を張るんです。ボクだけ満足してくれればいいって。でも、そのうち、やっぱり自分もって……。
妊娠したときだって、中に出さなければ大丈夫だよねって言って始めたのに女さんが放してくれなかったから、ああなっちゃったわけで……。
そういえばつわりは、きつくなってきましたか?」

幼馴染「少しね。でも、軽いほうなんじゃないかな。あ、だけど飛虻症って言うのかな、黒い影がちらちらする感じがするんだよね。女さんは、そんな事言ってなかった?」

新隊員「あ、それ、ボクもたまになりますよ。女さんがなったってのは聞いたことないけど」

幼馴染「あんたが?」

新隊員「雪とかで明るい所から部屋の中に入ったら目の調整が上手くいかないんだって女さんが言ってました」

幼馴染「暗調応*が上手くいかないって事?」
*暗いところで目を慣らすことを業界では暗調応といいます

新隊員「たぶん。ほら、まっくろくろすけってあれのことだって」

幼馴染「そうかなあ?」

新隊員「あ、でも、女さんが屋根裏にトトロが2,3匹いるって言ってたから、なんか妖怪にとりつかれたのかも」

幼馴染「そんなわけないじゃん」

女「ただいまあ」ガラガラ

幼馴染「お帰りなさい」

女「もう来てたのね、ごめんなさい。この子がちょっとぐずっちゃって」

幼馴染「本当に可愛い。だっこしても良いですか?」

女「どうぞ、よいしょ」

幼馴染「おいで、ご機嫌直った?……おめめパッチリね。お母さん似かな、お父さん似かな。うーん、佳い匂い」

女「離乳食になる前はもっと乳臭かったのよ。あら、幼馴染に初めてだっこされたのに随分リラックスしてる。幼馴染のこと気に入ったのね。嫌いな人だと逃げようとするのよ」

幼馴染「良かった。そう言えばおうちの件、男に相談したらありがたい話だねって」

女「じゃあ、商談成立ね?」

幼馴染「女さんが良ければ」

女「もちろんよ!」

新隊員「でも、それと車買うのは別の話だからね」

女「意地悪言わないで。ね、お願い。良いでしょ。ちゃんと言うこと聞くから……」スリスリ

新隊員「もうしょうがないんだから、子供みたいに。お母さんには自分で言ってよ」

女「ありがとう、だから新隊員好き!」

新隊員「で、その車はオートマ?」

女「えーと、オートマもあるけど、この車は珍しくマニュアルが設定されててね……」

新隊員「でも娘を乗せてるときはオートマのほうが安心じゃない?」

女「そうだけど、マニュアルの方が楽しいのよ。セカンドで踏み込むとね、エンジンがダイレクトに……」

新隊員 ジー

女「………オートマでいい」マケタ

女「……あ、そうだ、幼馴染、離れを見に行く?見もしないで家を買うって訳にもいかないでしょ?」

幼馴染「あ、お願いします」

・・・はなれ・・・
女「ここよ。この周りの畑もつけてあげる。建物と併せてだいたい100坪くらいあると思うわ」

幼馴染「建物も綺麗ですね」

女「おばあちゃんが住むためにリフォームしたからね。でも骨組みは昔のうちを使ってるんだって。
大工さんが言ってたけど、今だったらこれだけの材木そろえられないって言うぐらい良い木使ってるらしいわ。
手入れちゃんとすればいつまでも住めますって。こっち玄関ね」ガラガラ

幼馴染「中は意外に近代的ですね」

女「バリアフリーよ。赤ちゃんが出来ても安心でしょ」

幼馴染「はい。おばあちゃんが住んでたって言うわりに、あんまり使ってた感じがしませんね」

女「おばあちゃんすぐ施設入っちゃったから、ちょっとしか使ってないの。あ、何人か泊まって貰ってるけど、おばあちゃんが出たって話は聞いてないから心配いらないわ、たぶん」

幼馴染「そう言えば屋根裏にトトロがいるとか……」

女「え、トトロ苦手なの?」

幼馴染「あの大きいのがいたら、さすがに驚くでしょう」

女「じゃあ大丈夫、小さいのだから」

幼馴染「もう。すぐからかうんだから」

女「ハハハ、どう、このおうち?」

幼馴染「凄くいいです。男も気に入ると思います」

女「良かった。じゃあ、都合の良いときに引っ越していいわよ……さてと、ディーラーに電話しなきゃ。車の色は何が良いかな。
やっぱり赤かしらね、ありがちだけど。でも水色もかわいいな……」

きょうはここまでです

前のスレ落ちてないんだから前のに書けばいいのに

>>96
そうなんですが、直接話がつながるのが前スレではなく、落ちてしまったスレなので分けて立てました

・・・その日の夜・・・

女「……♪つらにくさ、ねんころろ……ようやく寝てくれた」

新隊員「ねえ」

女「あら、起きてたの。めずらしい」

新隊員「うん」

新隊員「言うこと聞いてくれるって言ったでしょ」

女「え?う、うん……」

新隊員「久しぶりに腕枕して」

女「言うこと聞くってそういう意味じゃないでしょう。それに腕枕って男の人がしてくれるもんでしょ。重いのよ、結構……」

新隊員「ボクが2等兵の頃はしてくれたじゃん」コロ

女「もう。してあげたんじゃなくて、あなたが勝手に……胸をいたずらしちゃダメ。あっ……」

新隊員「やっぱり女さんの胸きれい……」

女「ありがとう、でも娘におっぱいあげてたからね……」

新隊員「全然変わらない気がするけどなあ」

女「そう?まあ、それなりに鍛えてるからね」

新隊員「もうそろそろ、娘から返してもらってもいいよね」

女「さあ、どうかしら。娘にお願いして御覧なさい、お父さんにおっぱい返してって」

新隊員「そうする」

女「しょうがない人ね、娘のもの取り上げるなんて。あ、そうだ、今度幼馴染が引っ越して来る前にね……」

新隊員「うん」

女「会ってもらいたい友達がいるんだけど……」

新隊員「……」

女「まあ、友達って言っても……」

新隊員「……」

女「ん、新隊員?」

新隊員「Zzzzz……」

女「あれ、もう寝ちゃった。胸をいたずらしながら寝るなんて娘とすること一緒じゃない……期待させといて……」

今日はここまでです

・・・2週間ぐらいあと、温泉旅館・・・

女「たまには家事から解放されて,女二人でお泊まりってのも悪くないでしょ」

幼馴染「でも、新隊員に悪いことしましたね、留守番させちゃって」

女「いいのよ。どうせ家でお母さんといちゃついてるんだから」

幼馴染「お母さんと?」

女「ほら、うち男の子いなかったでしょ。だからうれしくてしょうがないみたいよ」

幼馴染「新隊員は見た目もかわいいし、素直な子ですからね」

女「今ね、うちのお母さん、新隊員に車買ってあげる気満々なの、一緒に温泉行くって。私には免許取るお金だってくれなかったのに」

幼馴染「そういえば、このあいだそんな事言ってましたね」

女「新隊員をだしにするといろいろ買ってもらえるのよ」

幼馴染「いいなあ、お婿さんを通り越して、孫が二人いる気分なんじゃないですか」

女「そうかもね。でも新隊員に怒られるのよ」

幼馴染「怒られる?」

女「うん、ちゃんとお給料の中で生活しなきゃダメだってお説教されるの」

幼馴染「うれしそうですね」

女「なにが?」

幼馴染「新隊員に怒られるのが……」

女「わかる?」

幼馴染「その顔を見れば」

女「うらやましいでしょ?」

幼馴染「ほんとにもう。大隊長ですら頭が上がらないと言われた、あの女伍長が新隊員に説教されて喜々としてるなんて言ったら、前の部隊の男どもはみんな自殺するんじゃないですかね」

女「そんなことないって。そんなことよりさ、ここ景色良いでしょ」

幼馴染「そうですね、それにいいお湯。温泉につかるとやっぱり疲れがとれますね」

女「まだおなかが大きくないからわからないだろうけど、結構筋肉痛になったりするから」

幼馴染「でも、女さん相変わらずどこもたるんでませんね。今も鍛えてるんですか?」

女「特別何をしてるって訳じゃないんだけどね。この間プールに行った言ったとき、よその子供に進撃の人みたいって言われちゃった」

幼馴染「この腹筋ですもんね。でもそれがわかるってビキニ着てたんですか」

女「だって、新隊員がビキニ着て欲しいっていうんだもの」

幼馴染「部隊にいるときは、海やプールに行くときでも競泳水着ばっかりだったですよね」

女「結婚するまで、競泳水着しか着たことない。あ、中学生まではスクール水着か。だからね、ビキニ着るといろいろはみ出しそうで怖いのよ」

幼馴染「はみ出すって、そんなきわどいのを?」

女「大体このあたり、ちょっと日焼けのあとが残ってるでしょ……」

幼馴染「サンバカーニバルの人が着てるのと同じようなもんじゃないですか。お母さんになってまたよくそんな大胆なものを」

女「そのう、新隊員が……」

幼馴染「また新隊員のせいにして。ま、この胸なら人に見せたいのもわかりますけどね」

女「別に他人に見せたいわけじゃないわよ、新隊員が喜ぶから……」

幼馴染「でも、どうしてこれだけ筋肉質なのに胸が大きいんですかね?いいなあ」モミモミ

女「ダメよ、勝手に触っちゃ。娘のものだからね」

幼馴染「そういえば"娘"ってあたしの名前によく似てますよね」

女「そうなのよ、ちょっと聞いて。新隊員たら妊娠してる私によ、よその女が好きでその女みたいになって欲しいからこの名前にするって言うの。
ひどいと思わない?そういう時って普通お母さんみたいになって欲しいって言うもんじゃないの?」

幼馴染「あたしにいわれても」

女「ホントは、あなたと新隊員の子じゃないの?」

幼馴染「そ、そんな。まだ新隊員とはそんなことして……じゃない、あたしと新隊員で何かしたからって女さんに赤ちゃん生ませられるわけ無いでしょう!」

女「あ、気がついた?」

幼馴染「そこまで馬鹿じゃないですよ」

女「まだしてないって言ったわね」

幼馴染「いじめないでくださいよ、言葉の綾じゃないですか」

女「夫の浮気相手は早めにつぶしておかないと」

幼馴染「浮気なんかしませんよ!だけど、娘ちゃん今頃おうちで寂しがっていないですか、ママがいなくて」

女「大丈夫。とっくに乳離れしてるし、お父さんにもなついてるし。それにここぞとばかりおばあちゃんが抱え込んでるでしょ。
まあ、あの二人で手が回らないところを手伝ってくれる友達もいるし」

幼馴染「お近くに住んでいるんですか」

女「うん。しょっちゅううちに来てるから、そのうち会うと思うわ」

幼馴染「そうですか」

女「そうだ、今度は四人で混浴の温泉行こうか」

幼馴染「良いですね。あ、でも新隊員に見られるのは恥ずかしいな」

女「減るもんじゃあるまいし。それより男さん、私のこときれいって言ってくれると思う?」

幼馴染「人に浮気するなって言って自分はする気満々じゃないですか!」

女「ばれちゃった?」

幼馴染「このオッパイが憎い」モミモミ

女「私だってこの脚が許せない」スリスリ

幼馴染「あ、そんなきわどいところ触っちゃダメで……あっ…」

女「どうしたの」

幼馴染「周囲の目が……」

女「いけない、つい部隊のお風呂でふざけあってる気分になっちゃった。チョット気まずいわね。もう、あがろうか……」

ここまでです

・・・数ヶ月後、女のうち・・・

女「カレーは作れるようになったわね」

幼馴染「少々手に傷も作りましたけど……」

女「これくらい出来るようになれば、男さんにもあかちゃんにも見放されないですむでしょう、たぶん」

幼馴染「お手数掛けました」

女「随分おなか目立つようになってきたわね。そういえば男の子?女の子?」

幼馴染「超音波で見た感じだと男の子みたいです」

女「そうなの、男さんもあなたも背が高いからかっこいい男の子になるでしょうね。お母さん気が気じゃないんじゃない?」

幼馴染「そんなの20年くらい先の話ですよ」

女「判らないわよ、今の子成長が早いから。そうだ、年頃になったらお隣のおばさんに恋心を抱いて、なんてことが……」

幼馴染「それぐらいだったら、男を上げますからそれでガマンしてください」

女「男さんも雑に扱われて。なんなら先に貰っといても良いけど」

幼馴染「もう、そんなことばかり言って。今日のカレーの味はどうですか」

女「どうかな。娘、こっちおいで、あーん」

娘 パク「う、う」パシパシ

女「おいしいって」

幼馴染「つまり味がないって事ですよね」

女「良いのよ、最初からそのつもりで作ったんだから」

幼馴染「でも大人には物足りないですよね……」

女「だって男さんは、あなたが作れば、なんでもおいしいって食べてくれるでしょ」

幼馴染「うちの亭主の行動をよくご存知で」

女「部下としてお仕え申し上げましたから。でも私たちが食べるにはもうちょっとアクセントが欲しいわね……ソースとブラックペッパーを足して……
あれ、らっきょが無い。ゴメン、幼馴染、ちょっと娘見ててくれる?コンビニでらっきょ買ってくる」

幼馴染「はい」

女「ちょっと、行ってきます」ガラガラ

幼馴染「……娘ちゃんて目がパッチリしてて本当に可愛い。まつげも長いし。お父さんもお母さんも可愛い顔してるものね。
うちの子もこんなかわいいと良いな。あら、娘ちゃんどこ行くの」

幼馴染「ん、カエルが入ってきてたのね。ダメよ、おイタしたら。ばっちいから」

娘「リ、リ」

幼馴染「カエルさんとにらめっこしてるの?娘ちゃん怖くないのかしら?でもこのカエル逃げないのね。堂々としてるからトノサマガエルかな?」

幼馴染「さてと、娘ちゃんこっちおいで。ご飯食べるわよ。はいアーン」

娘 パク、モゴモゴ、パシパシ

幼馴染「喜んでくれるのね、良かった……でも大人にはおいしくないってことなんだよね」

・・・10分後・・・

女「ただいま……あ、食べさせといてくれたんだ。ありがとう。娘、良かったわね」

娘 パチパチ

女「そう、楽しかったの。泣かなかった?」

幼馴染「ご機嫌でしたよ。カエルとにらめっこしてました。女の子なのに全然怖がらないんですね」

女「……まあ、しょっちゅう家の中に入ってくるからね。アマガエルだった?」

幼馴染「いいえ、茶色っぽいカエルでしたけど」

女「じゃあ、アカガエルね」

幼馴染「うちの中に何種類もカエルがいるんですか?」

女「周りに田んぼがあるからね。電灯に虫が寄ってくるでしょ、それを狙ってカエルがいっぱい来るのよ。それでこの子もなれちゃってるんだと思うわ。幼馴染はカエル嫌いな方?」

幼馴染「別に嫌いじゃないですけど。女の子ですからね、そんなに興味がないって言うか……カエルが好きなんですか?」

女「好きって訳じゃないけどね。まあ、佃煮にするぐらいカエルいるから諦めてね」

幼馴染「え、食べるんですか?」

女「例えに決まってるでしょ。食べないわよ、そんなもの」

幼馴染「安心しました。あ、こんな時間だ。今日はそろそろ帰ります」

・・・その日の夜・男と幼馴染の家の寝室・・・

幼馴染「なんかモヤモヤするなあ」

男「なにブツブツいってるの?」

幼馴染「なんかすっきりしないのよ」

男「なんか酸っぱいものかサイダーでも持ってこようか?」

幼馴染「そういうのじゃないの。でも、ありがとう、大丈夫だから。おやすみなさい」

男「おやすみ」

幼馴染「なんだろう、この釈然としない感じは……そうだ、カエルだ!畳の部屋にカエルが……絶対ない事じゃないけど……
でも、カエルがいる理由とか、種類とか、女さんは何ですぐ説明できたんだろう、見てもいないのに?
女の子がカエルに興味持つわけなんかない。まあ、偏見かもしれないけど・・・・・・」

幼馴染「なんかまだ忘れてることが……飛虻症だ。何で、あたしと新隊員がなるんだろう、二人とも糖尿病なんか縁のない健康だけが取り柄みたいな人間なのに」

幼馴染「あ、でも目の調整の問題って女さんが言ってるんだっけ。雪の中から部屋の中へ入ると目の調整が追いつかないって。でも、今は冬じゃないから雪なんかない……」

幼馴染「女さん、何か隠してる?何を……黒い影……カエル……まさか……でもあれは昔の童話の中の……。
それにあれは港町にあるはず、こんな山の中じゃない。だけど女さんなら"味方"に選ばれても不思議じゃないかも……。
来週女さんの家に行ったら、女さんに……聞くわけにいかないか。新隊員に何か知らないか聞いてみよう」

・・・次の土曜日、女のうち・・・
幼馴染「こんにちは……」ガラガラ

新隊員「シーッ」

娘「ウ、ウェーン!アーーーン!!」ジタバタ

新隊員「ああ、もうちょっとで寝そうだったのに……」

幼馴染「すみません、あのお昼寝中とは・・・」

女「いいのいいの。しょうがないわ。奥の部屋で寝かしてくる。昨日の夜もぐずってまともに寝かしてもらえなかったから、ちょっと娘と一緒にお昼寝してもいいかな?」

幼馴染「新隊員と世間話してますから休んでください」

女「ごめんね」パタパタ

新隊員「ボクが料理教えてあげてもいいですけど。これでも調理師免許持ってますから」

幼馴染「いやよ。あんたなんかに教わったら女の沽券にかかわるの!」

新隊員「ほんとは女さんよりボクの方がうまいのに」

幼馴染「プライドの問題よ。そんなことよりさ、カエルいるでしょ?」

新隊員「いくらでもいますよ」

幼馴染「うちの中にもいるよね?」

新隊員「たまに入ってきますね」

幼馴染「立たない?」

新隊員「え、カエルを見てですか?そう言う趣味は……」

幼馴染「趣味……?ち、違うわよ。た、立つって新隊員のその…あれじゃなくて、カエルよ」

新隊員「カエルが?」

幼馴染「うん、立って歩くカエル見なかった?」

新隊員「立ち上がるカエルが発見されたんですか?」

幼馴染「違うけど」

新隊員「じゃあ、立たないでしょう」

幼馴染「……そうだけど……あ、女さん子供の頃、海軍の基地がある港町に住んでたことある?」

新隊員「ここと、前に僕たちがいた駐屯地だけですよ。まあ、おもしろくないことがあるとしょっちゅう家出するって騒いでますけど……いったいどうしたんですか?変なこと聞いて」

幼馴染「おかしな事言うと思うかもしれないけど」

新隊員「いつもの事じゃないですか」

幼馴染 ボディーブロー

新隊員「ウウッ……三原順子じゃないんだから、限度ってものが……」

幼馴染「あたしは真剣に話してるの!女さん何か隠し事してると思うの」

新隊員「それは……」

幼馴染「何か知ってるの?」

新隊員「知ってる訳じゃないけど……すべてを受け止められるっていう自信ができるまでは過去を聞かないでって」

幼馴染「えーと、そういうこともあるでしょうけど……そういう話じゃなくて……」

新隊員「幼馴染さんだって秘密の一つや二つあるでしょ?」

幼馴染「あたしは無いわよ。ずっと男が気がついてくれるの待ってたんだもの」

新隊員「へー、幼馴染さん美人だからすごいモテてたと思ってたのに」

幼馴染「あたしのことキレイって思う?」

新隊員「うん」

幼馴染「なんか照れるじゃない」

新隊員「女さんほどじゃないですけど」

幼馴染「そりゃそうでしょうよ。女さんに勝てるとは思ってないわよ、あたしだって」

新隊員「でも、幼馴染さんも若い隊員の中では負けないぐらい人気ありましたよ」、

幼馴染「ほんと?!」

新隊員「ほら、女さんて仕事も出来るし、体力もあるし、かわいいし、人柄もいいし、パーフェクトな人ってイメージがあったじゃないですか。
だから、怖いわけじゃないんだけど近寄りがたいって言うか……。だけど幼馴染さんて、ちょっと天然なところがあるから親しみやすいって」

幼馴染「誰が天然よ!」

新隊員「ボクが言ったんじゃないですよ。でも、キレイだし、モデル並みに背も高くてスタイルもいいでしょ」

幼馴染「そういわれると、なんか気分いいわね」

新隊員「あれで胸が人並みなら文句無いのにって」

幼馴染「大きなお世話よ!」

新隊員「でも、一度お願いしたいってみんな言ってました」

幼馴染「あのね、そういうことは直接本人に言わないの!どうして男ってそういうくだらない事言うのかしら」

新隊員「すみません」

幼馴染「あんたもおんなじこと考えてたの?」

新隊員「え、ボク……」

幼馴染「そう」

新隊員「だって幼馴染さんは男さんが好きだったんでしょ」

幼馴染「そんなこと聞いてない。あんたはあたしをどう思ってたかって聞いてるの」

新隊員「……ボクは、部隊に来てすぐ女さんと……」

新隊員・幼馴染「…………」

幼馴染「……そりゃあそうよね。女さんがいたらあたしなんか眼中に入るはずないよね……」

新隊員「……幼馴染さんと、その……と思わない人はいないと思うけど……思うんだけど……ボクは……幼馴染さんは、ボクのお姉ちゃんだから。そうじゃないと……」

新隊員・幼馴染「…………」

幼馴染「ゴメンね、馬鹿な事言って。忘れて」

新隊員「すみません」

幼馴染「ううん。話がそれちゃったわね。えーとね、あなたも黒い影がちらつく気がするって言ってたでしょ。それってこの家に来てからじゃない?」

新隊員「そうですね。でも、それは雪の中から家の中に……あ、今、雪は……」

幼馴染「でしょ。たぶんね、あたしたち調べられてると思うの」

新隊員「調べられてるって……スパイに?いくらボク達が軍人だって、スパイされるほど大物じゃないでしょう?たかが伍長ですよ」

幼馴染「そうじゃない。女さん、屋根裏になんかいるって言ったでしょ」

新隊員「え、トトロが僕達を調べてるの?」

幼馴染「屋根裏にいるのトトロじゃないのよ」

新隊員「そりゃあ、トトロがほんとにいるとは思ってないですけど。じゃあ、なにが?」

幼馴染「それを女さんが隠しているの」

新隊員「考えすぎですよ、いくらなんだって。だって、家の中にカエルがいたっていうのと黒い影がちらつくっていうだけなんでしょ」

幼馴染「あたしの勘よ」

新隊員「当たりましたっけ?」

幼馴染「たまに……」

新隊員「でしょ」

幼馴染「そんなこといいから、娘ちゃんのピアノ貸してくれない?」

新隊員「ここにありますけど。そのおもちゃのピアノをどうするんですか」

幼馴染「ピアノから離れて。後ろを向いて、目をつぶって」

新隊員「え、こっくりさんでもするんですか?怖いですよ」

幼馴染「そんなことしないわ。あたしがいいって言うまで黙ってて」

新隊員「はい」

今日はここまでです

やっぱりわかる人はわかりますよね

幼馴染「……コホ……いつか、あたしたちトモダチになれますか。今すぐでなくてもいいの、もしなれるのなら、ピアノを鳴らして……」

シーン

新隊員「何も起き……」

ピアノ ぽん、ぽぽーん

幼馴染「……鳴った……」ヘタ

新隊員「なんで鳴ったのかな。ん?なんだ、たまたまカエルがいたずらしただけみたいですよ」

幼馴染「カ、カエル!アマガエル、それ?!」

新隊員「自分で見ればいいじゃないですか」

幼馴染「腰が抜けて立てないの」

新隊員「そんなカエル嫌いなんですか?」

幼馴染「違う。そのカエルに触っちゃダメよ。どこか変わったとこない?」

新隊員「ごく普通のアカガエルですけど」

幼馴染「そう……」

新隊員「器用だな、このカエル。アグラかいた」

幼馴染「え!」

新隊員「あれ首のところをゴソゴソしてる。脱皮するのかな。カエルって脱皮したっけ。あ、首が取れた!うわっ中から小人が……」バタッ

幼馴染「あ、新隊員!しっかりして!」

小人「こんにちは」

幼馴染「コ、コ、コロ、コロボックル……」

小人「驚いた?」

幼馴染「は、はい」

小人「でも知ってたでしょ」

幼馴染「ええ。だけど、本当に……。あの、名前を聞いてもいいですか?」

小人「クリノヒメ」

幼馴染「ク、クリノヒメ!つ、つまりオチビ!」

小人(クリノヒメ)「オチビは私のお母さん」

幼馴染「じゃあ、風の子が……」

クリノヒメ「お父さんよ」

幼馴染「あなたの呼び名は?」

クリノヒメ「ない」

幼馴染「呼び名がないって、ヒイラギノヒコと同じ?」

クリノヒメ「そんなところかな、面倒くさいんだけどね」

スリッパ  パタパタ

女「どうしたのクリノヒメ、姿見せるの赤ちゃんが生まれてからって言ってたじゃない?」

クリノヒメ「ピアノ鳴らしてって言われたら、私だってドキドキしちゃうじゃない」

女「なんで?」

クリノヒメ「女は、ママ先生とヒイラギの奥さんが初めて会ったときの事知らないの?」

女「知らない……幼馴染知ってる?」

幼馴染「ええ、まあ。子供のころ本で読んだので」

クリノヒメ「コロボックルの女の子にとって人間とトモダチになるときピアノを鳴らすって言うのが憧れなのよ。コロボックルの本読んでって何回も言ったでしょ!もう」

女「だって子守で忙しいのよ」

クリノヒメ「最初に言ったの20年前よ!子供なんかいなかったでしょ」

女「本読むのそんなに好きじゃなかったんだもの。だけど姿はまだ見せないって言ってたじゃない。ピアノの音をならすだけで良かったんじゃないの」

クリノヒメ「そのつもりだったんだけど鍵盤で滑って転んじゃって」

幼馴染「あ、それで音がひとつだけじゃなかったんだ」

女「あ、ピアノに娘のよだれがついてる」

クリノヒメ「で、痛くて動けなかったところを新隊員に見つかっちゃったのよ」

女「あ、そうだ新隊員も起こしてあげなきゃ。いいでしょ?」

クリノヒメ「うん」

女「新隊員、大丈夫?起きなさい」

新隊員「う、ううん……あ、女さん、こ、小人が……」

クリノヒメ「それはこんな顔をしてましたか」

新隊員「こんな顔?……また小人……」クラッ

女「あ、新隊員しっかりして!もう、クリノヒメ!何でそういういたずらをするの!」

クリノヒメ「こんな驚くとおもわなっかんだもの。ゴメンなさい」

新隊員「ボクの顔盗らない?」

クリノヒメ「盗らないわよ、のっぺらぼうじゃないんだから」

女「ほんとにいい齢して悪戯ばっかりしてるんだから」

クリノヒメ「30過ぎて暴走族のまねをしようとしてる人に言われる筋合いはないわよ」

女「暴走族の真似なんかしないもの、ちょっと峠を攻めてみたいって……あら、幼馴染どうしたの、キョトンとした顔して」

幼馴染「子供のころ読んだ本には人間とコロボックルが口げんかするなんてシーンは無かったものだから、ちょっと頭の整理が……」

クリノヒメ「そりゃあそうよ、この人以外暴走族でトモダチになった人なんていないもの」

幼馴染「え!女さん暴走族だったんですか?そうなの新隊員?」

新隊員「らしいですよ。当人は暴走族じゃなくて、みんなでバイクに乗ってただけって言い張ってますけど」

女「暴走族じゃない、無線会よ」ブツブツ

クリノヒメ「小山にいた頃だったらこんな子トモダチにする許可なんて下りないわ。20年くらい前にね、港町から引っ越してきて裏山の公園に新しく城を作ったの。
大部分は港町にまだ残ってるんだけどね。そのころは近くに女しか子供がいなくて。で、小学生のころから女を調べてたんだけど、中学生ぐらいからグレてね」

幼馴染「そうなんですか?」

女「そんな悪い事してないわ。みんなでツーリングに行ってたぐらいよ」

幼馴染「中学生なのに?」

女「……後ろに乗ってただけだってば」

幼馴染「普通に走っただけですか?」

女「幾分マフラーの性能に問題があるバイクが多かったけど」

新隊員「普通の子はしないでしょ?」

幼馴染「そうね」

女「人のことをまるで不良みたいに…」ブツブツ

新隊員・幼馴染「不良でしょ!」

女「ハイ……」イイカエセナイ

クリノヒメ「で、わたしも無理だって思ったんだけど、オハナさんが見捨てたらダメだって。きっと立ち直る子だからって」

女「やっぱりオハナさんはクリノヒメと違って人を見る目があるのよ」ウンウン

クリノヒメ「なに言ってるの、わたしが見捨てたらトモダチにもなってないんだからね。少しは感謝しなさいよ」

幼馴染「ひょっとしてオチャメさんて女さんのことかと思ったんですけど」

クリノヒメ「ルルルルっ」

女「大きなお世話!」

幼馴染「?」

クリノヒメ「ゴメン。つい早口になっちゃって。オチャメさんはもっと上品で落ち着いた人よ」

女「私より10歳ぐらい年上なんだって。会った事ないけど」


幼馴染「そうか、あの本書かれたのずいぶん前のことですもんね。だけどクリノヒメってすごく若くって言うか幼く見えますよね、女さんより年上なのに。
魔法かなんか使ってるんですか・・・」

クリノヒメ「魔法なんか使えないわよ」

幼馴染「そうなんですか……」チョットザンネン

女「あ、でも昔からコロボックルに伝わってるって言ってた化粧水みたいなものあるじゃない。あれ使うと肌の調子がいいわよ。
ほら、しわとかしみとかほとんど無いでしょ?」

幼馴染「本当だ。それが女さんの若さの秘訣ですか?」

女「うーん、お母さんも童顔な方だからそれだけじゃないと思うけど、これも効いてると思うわ」

クリノヒメ「結構あれ作るの大変なんだから。トリカブトとか使うから難しいのよ」

女「トリカブト!そんな猛毒を?」

クリノヒメ「割合が難しいのよ。だけど、うまく使うと皺がでにくくなるの」

女「ボトックスみたいなものかしら。あたしももらえますか?」

クリノヒメ「いいわよ、薬草集めるの手伝ってくれたらね。人間が使う量を私たちで集めるのは大仕事なのよ。あとドクダミをね……」

新隊員「あのう……」

女「ん、なに?」

新隊員「こんなすごいことが起きてるのに、美容の話なんかどうでも……」

女「何言ってるの、美容と子育て以上に大事な話あるわけ無いでしょう」

幼馴染・クリノヒメ  ウンウン

幼馴染「そういえば子育て手伝ってくれる人ってひょっとして」

女「そう、クリノヒメ」

クリノヒメ「また勝手なこと言って。わたし知らないわよ……って言いたいけど、子供はかわいいし、間借りしてる身だからね」

幼馴染「間借り?」

クリノヒメ「元々城があったところがこの間の地震で崩れちゃってね。で、しょうがなく女の家の屋根裏に引っ越したのよ。
あ、もうこんな遅くなっちゃった。そろそろ帰らなきゃ」

女「ということで、仲良くやってね。あと、幼馴染、みんなが見てるからね、うちのお父さんを内緒で誘惑なんてできないわよ」

新隊員「ねえ、女さん」ツンツン

女「なに?」

新隊員「みんな見てるってことはさ、ボク達がその……してるのも見られてるの?」

女「寝室の中は入らないって約束になってるけど」

新隊員「でも寝室には娘がいるから最近は居間で……」

女「あっ!……ねえ、クリノヒメ。あの、エーと……」

新隊員「わたしなんにも見てないわよ」

女「ほっ、良かった……」

クリノヒメ「新隊員にメイドさんのかっこさせてるところなんかね。じゃあねー」シュッ

女「うっ……幼馴染、なんか聞こえた?」

幼馴染「結構はっきりと。いくらかわいくたって新隊員に女装なんかさせないって昔言ってたのに」

女「そのう……そうは言っても、男さんも幼馴染も見てるのに私だけ見たこと無いって言うのがちょっと悔しくて……」

幼馴染「すごくかわいかったでしょ?」

女「うん……あのさ、できたら男さんには言わないで欲しいんだけど」

幼馴染「どっちを?メイドさん?暴走族?」

女「両方」

幼馴染「いまさら何でそんなこと気にするんですか」

女「だって男さんには大人のいい女と思ってもらいたいんだもの」

幼馴染「どうして夫の浮気の後押しになりそうな事をあたしがしなきゃいけないんですか!」

女「あなただってことあるごとに私の夫に抱きつくでしょう」

幼馴染「じゃあ、一晩、新隊員貸してくれたら黙っててあげます」

女「……だったら言ってもいい」プイ

幼馴染「そう言うと思いました。でも、まあ、その・・・」ツンツン

女「なに?唇指さして」

幼馴染「キスしてくれたら内緒にしてあげても良いかなって」

女「まだそんなこと言ってるの?30すぎた主婦とキスして何が楽しいのよ」

幼馴染「あこがれの人とキスしたいって言うのは、当然の欲望だと思うんですけど」

女「あなたの初恋の人は男さんでしょ?」

幼馴染「あれはもう釣り上げた魚ですから」

女「男さんもかわいそう。私と結婚した方がきっと幸せだったでしょうに。一体、男さんと新隊員と私、誰が一番欲しいのよ?」

幼馴染「それぞれオンリーワンですからねえ。みんな。女さんは?」

女「少なくともあなたじゃないわね」

幼馴染「やっぱり新隊員ですよね?」

新隊員  ウンウン、トウゼン

女「違うわよ」

新隊員「いや、あの……」

幼馴染「あの…まさか……そんな……」

女「幼馴染わからないの?」

幼馴染「分からないって言うか、わかりたくないって言うか……」

女「馬鹿ね、十月十日すればわかるわよ」

幼馴染「十月十日すれば……?なんだ、そういうことか。もう、もったいぶって」

女「じゃあ、キスすればいいのね」

幼馴染「大人のキスでお願いします」

女「はいはい」チュー

幼馴染「幸せ……女さんにこんなキスしてもらえるなんて。男と前の部隊の女の子達に自慢しよう。写メ撮って良いですか」

女「ダメッ!レズと思われたらどうするのよ」

幼馴染「子供がいるんだから大丈夫ですよ。あ、考えてみたら女さんを挟んで新隊員とも間接キスね」

新隊員「間接だったら、唇だけじゃなくて、ち…モゴモゴ…」イキガトマル

女「余計なこと言わないのっ!」

幼馴染「えっ?唇だけじゃないって……」

女「……」モジモジ

幼馴染「…ち?……あっ、えーと、つまり、そのあれを間接……」

女「………あのう……男さんにはこれも内緒……」マッカッカ

今日はここまで、あとほんのちょっとです

・・・約20年後、連隊長室・・・

knock knock
副官「お客様がお見えですが?」

男「通して……あ、女さん」

女「どうですか、連隊長室の居心地は」

男「みんな緊張した顔して入ってくるんだよ。別に怒ったこともないのに」

女「それは偉いんだからしょうがないでしょう。娘が言ってましたよ、男おじさんがあんなえらいと思わなかったって。
うちに来た時はお母さんの前でオドオドしてるのにって」ニコ

男「オドオドしてる訳じゃないんだけど……」

女「家では幼馴染の尻に敷かれてるって言ったらどうですか」

男「部隊ではいい奥さんのふりをするんだよ、幼馴染みは」

女 「ふりなんてかわいそうに。可愛い奥さんじゃないですか、サザエさんみたいににぎやかで。でも珍しいんじゃありません?
自分の奥さんがいる部隊に連隊長として着任なんて」

男「たぶん初めてじゃないかな」

女「朝霧新聞の取材が来たりして」

男「勘弁してよ」

女「ずっと単身赴任ばっかりだったから新鮮でしょう?でも、幼馴染が連隊長令夫人か・・・」

男「そう呼んだら張り倒すって中隊の人間には言ってるらしいよ」

女「あの子らしいわね。そういえばあの子も新隊員も中隊の先任ですものね」

男「二人ともよく中隊をまとめてくれてるよ。本当に助かる」

女「そうそう、今日は新入隊員の父兄として来たんでした。うちの娘をよろしくお願いします」

男「幼馴染のいる中隊に配属するつもりだよ」

女「幼馴染いじめないかしら、昔私に怒られた恨みを晴らそうとして」

男「そんなことするわけ無いよ。今だって幼馴染は、女さんのこと神様みたいに思ってるもの。それより娘ちゃん、女さんに似て可愛いから悪い虫が付かないか心配だよ。
女さんが入隊してすぐのころ、中隊の独身者全員から付き合ってくれって言われたんでしょ?」

女「そんな事もありましたね、中隊だけじゃないし既婚者もいたけど。あ、まさかうちの子に手を出そうと思ってるんじゃないでしょうね?」

男「思うわけないじゃないか」

女「でしょうね、自分の子供の彼女にチョッカイ出すわけには行かないですものね」

男「えっ!?息子と娘ちゃん付き合ってるの?」

女「やっぱり知らなかったんですね。相変わらず鈍感というか……」

男「だって、うちの子は士官学校に入校中だし、まだ18……」

女「立派に思春期よ。むしろ遅いぐらいでしょ。自分と一緒にしたらだめよ」

男「でも、いつの間に……」

女「いつの間にって言われても、息子君は生まれたときから娘と一緒に育ちましたからね。息子君がね、士官学校に入校する前の晩に告白したんですって。
これからは単なる幼なじみとしてじゃなく彼女としてつきあってくれって」

男「で、娘ちゃんは何て?」

女「だから、子供の彼女って言ったでしょ」

男「ああ、そうか」

女「チャンス上げても指くわえて見てたお父さんよりよっぽど勇気あるじゃない」

男「そこまで言わなくったっていいじゃないか。だけどそんな事まで娘ちゃんは話してくれるんだね」

女「息子君もよ。二人とも私が育てたみたいなものだもの」

男「ひょっとしてもう、その……」

女「さあ、さすがにそこまでは……」

シュッ、トン
クリノヒメ「よく言うわね、なにが”私が育てた”よ。それはわたしのせりふよ」

女「どうしてそういうことを言うのよ。せっかく格好良く決めたと思ったのに……」

男「それはいいとして、そのう……」

クリノヒメ「まだよ。まあ、止める気は無いけどね。でも安心して、娘にはちゃんと言い聞かせてあるから」

女「なんて?」

クリノヒメ「年上なんだから、舞い上がって避妊もしないでエッチするようなまねしたらダメよって」

女「……」

クリノヒメ「お母さんた……」

女「わ、わかったからそれ以上言わなくていい!」

クリノヒメ「フフ、じゃあね」シュッ

女「はぁ……どうしてクリノヒメは、私にいいかっこさせてくれないのかしら……」

男「女さん……」

女「はい?」

男「女さんはずっと憧れの女神様だよ、かっこつけなくても」

女「なに言ってるんですか。もう、私いくつだと思ってるの」

男「さあ。考えたことなかったな……」

女「じゃあ、今でも二人だけでいたら襲いかかりたいと思う?」

男「10分我慢する自信がない」

女「それは残念だわ」

男「なんで?」

女「10分後にはうちの子たちの入隊式が始まりますからね。男さんも行かなきゃいけないでしょ。もう時間ですよ」

男「入隊式もっと遅くすれば良かった」

女「しょうがない人。ちゃんと入隊式の訓辞を持ちましたか?」

男「うん」

女「ハンカチ、ティッシュは?」

男「小学生じゃないんだから」

女「ゴメンなさい、つい……でもネクタイ曲がってますよ。気が利かない副官ね。直しますからこっち来て…ちょっと上を向いてください」

男「幼馴染には、こんなことしてもらった事ないな……」

女「…キュッ…これでよしと。男さんにもうちょっと勇気があれば毎朝こうしてあげてたかもね」

男「それも楽しかっただろうな」

女「でも、幼馴染と結婚したこと後悔してないでしょ」

男「うん。女さんも?」

女「もちろんよ。新隊員抜きの人生なんて考えられないわ。でも男さん、たまには誘惑されたいと思わない?」

男「結婚前、女さんに"幼馴染を泣かせたら許さない"って言われたからね」

女「余計なこと言わなければよかった」

男「心にもないことを」

女「さあ、どうかしら」

男「だけど、たまに思うんだ、あの夜だけでももう一歩踏み出せていたらって……」

女「私も……。さあ、入隊式に行きますよ、連隊長殿。 ビシっと決めてください!」

                               お わ り

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