勇者と魔王がアイを募集したFINAL幕 (699)

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≪皆様へのお願い≫

・喧嘩はおやめ下さい。最後まで仲良くいきましょう!



≪あらすじ≫

五年半にも渡る戦いがついに終わりを迎える……。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436811939

大変おそくなりました。それでは投下していきます。

1001

--対ウェイトレス領域--

ボロッ……

召喚士「あーあ、魔王人形もウェイトレスと一緒に砂になっちまったでやんす。戦力になると思ったのに」

鷲男「じょ、冗談じゃありませんよ! あんなのをコントロールするなんてとてもとても!」

人形師「確かに我々には手のあまるものでしたねぇ。人間、身の丈にあったことをしないと待ってるものは自滅ですよぉ」

召喚士「……で、やんすな。なら仕方ないでやんす」



ビィ「召喚士さん達、みーっけです★」

鷲男、調教師「「!?」」

まるでワープでもしてきたかのようにビィがその場に現れた。

召喚士「この娘っ子はおいら達らしく」

人形師「自分達らしいやり方でやりましょうかねぇ」

ボッ

しかし召喚士と人形師は予想していたとでもいうかのように、瞬時に攻撃に移った。

どがぁあああああああああああああああああああん!!

1002

--対ウェイトレス領域--

ビィ「……っとぉ」(見てたのに気づいてたの? いや、この人達そこまで優れたもの持ってなかったはず……)

ぼしゅぅうう……

黒い煙が辺りを包んでいく。

ビィ(めくらまし……確かにネクロマンサーの索敵能力は高くない)

召喚士「全くとんでもないお譲ちゃんでやんす。先ほどの火の攻撃、君がやったでやんすね?」

人形師「恐ろしいですねぇ。どいつもこいつも化物で本当にやになっちゃいますよぉ」

ビィ(んー、声が反響して場所が特定できないな。吹き飛ばしちゃえばすぐにわかるけど……それじゃあ面白くないよねぇ★)

召喚士「おかげさまで温存なんてしてる余裕なんてないのでやんす。計画をぶっ壊した分とくと味わえでやんす」

人形師「1000回以上同じ戦場で戦ってきた者同士が持てるパーティスキル」

召喚士、人形師「「盟友!!」」

ドンッ!!

ビィ「……おやおや?」

1003

--対ウェイトレス領域--

ぼっ!!

五頭巨象「ぱおおおおおおおん!!」

超蠍「ぎしゃああああああああ!!」

サイクロプス「おんぎゃあああ!!」

ビィ「!」

煙を吹き飛ばして現れたのは三体の巨大なモンスター。

サイクロプス「ぐごぎゃああああ!!」

ズズーーーーン!!

そしてサイクロプスが拳を振り下ろし、大地を砕く。

ビィ(大型モンスターを三体同時に召喚? やりますねー召喚士さん。でも)

五頭巨象「ぱおおおおおおおおおおおおおお!!」

どぎゃっ!!

突進してきた五頭巨象に魔力を込めた拳を叩きこむビィ。

五頭巨象「ぱ、おぉ、おおおおおおおおん」

ずずずーーーん!

ビィ「今更こんなの通用しませんよ?」

ドギャッ! ドゴッ!!

続けて超蠍とサイクロプスを共に一撃で沈めた。

1004

--対ウェイトレス領域--

シャッ!

ビィ「!」

ジャック「ぁおqw38t0jdl」

ビィ「人形ですか……? 頚動脈をねらったみたいですが、その程度のナイフで切れるとでも?」

ぼふっ!!

陸王もこもこ「オア283ghぁkらwれおhじゃぺろhgk!!」

どぎゃっあああああああああああああ!!

今度は巨大な陸王もこもこがビィに襲い掛かる。

フォンフォン!!

巨大な鉤爪を振り回す陸王もこもこ。

がしっ!

ビィ「だから、こんなのは全部一緒なんですよ。ちっちゃい人形だろうがおっきな動物だろうがー」

ざくっ!

ジャック「3うとうぇいぐじゃおうぃjg」

ビィ「」

ジャックのナイフがビィの太ももに突き刺さる。

1005

--対ウェイトレス領域--

ビィ(ナイフが、刺さった……? 今の私に?)

召喚士「おいら達を甘く見たでやんすね?」

人形師「我々なんかに傷をつけられるとは思わなかったでしょう? でも人は戦いの中で必ず隙を作るものなんですよぉ」

陸王もこもこ「あおあいうぇrごあいwごあい!!」

どどどどど!!

ビィ「確かに、ちょっと遊び過ぎちゃったかもしれませんねぇー」

ザンッ!!

ビィは手刀で接近する陸王もこもこの首を刎ねた。

ブンッ

ビィ「これからはもう少し魔力の強度をあげておきます★ もう何も通しませんよ?」

キラン

その時、また煙の中で何かが光る。

ビィ「また次の召喚獣? それともお人形さんの方ですかぁ?」

ダッ

現れたのは、

ビィ「!!」

赤き絶壁――

魔王勇者「ああああああああああああああああああ!!」

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

1006

--対ウェイトレス領域--

召喚士(っし! 入ったでやんす!)

人形師(さすがに魔王の一撃は痛かろうですよぉ!)

ビィ「……あぁ、そういえばこのルートだと召喚士さんの幻想召喚、変わるんですよね。レアケースだったから驚いちゃいました」

魔王勇者「!」

確かに魔王勇者の剣はビィを捕らえた。だが、ビィには傷一つ無い。

ビィ「自分の眼で見た魔王の恐怖。そりゃあ昔話より強烈ですよね。自分の中の最強が入れ替わったとしてもおかしくない★」

召喚士(……あれでノーダメ? うーん、さっきのはラッキーパンチだったようでやんすね)

人形師(駄目で元々ぉ、ならこれはどうですかぁ!)

シュルル!!

人形師は糸を操り、ビィに向かって攻撃する。

ビィ「……くす。いいですよ。最後まで、しっかり付き合ってあげます」

魔王勇者「……」

ボロッ

魔王勇者は既にビィによって砂に変えられていた。


す、すいません、開始したはいいんですがさすがに明日にダメージが残りそうなので中断させてください。
また今日の夕方辺りに投下しにきます。
増量しておきますのでなにとぞ!!

それでは・・・

今朝はすいませんでした! その、夕方でもないのは更に増量してたためでして……はい!

それでは続きを投下していきます。

1007

--対ビィ領域--

ヒュオオオオオ

カブト「――で、どうする気だ。奴は一体誰がどうやって倒す?」

盗賊「うぅん。困った、ねぇ……」

勇者「正直かなり厳しいと思うわ。今の戦力では特に」

ユー「……」

ハイ「……」

俯いたまま顔をあげようとしないハイ。視点は定まらず、小刻みに震えていた。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

ハイ「!!」

ビクッ!

オオオオオオオオオオオオオン……

少し距離の離れた場所で巨大な火柱が上がった。それは誰かがビィの犠牲になった証。

盗賊「んー……ビィちゃんめ。残った俺達の仲間を少しずつ殺していってやがるよ……」

ハイ「ッl」

1008

--対ビィ領域--

勇者「時間が経てば経つほど不利になるわ……早いとこ動かないと本当に何も出来なくなる」

スッ

そう言って勇者は大剣を持って立ち上がる。

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

今度は別の場所で巨大な氷の柱が出現する。

カブト「ッ! 奴め、やりたい放題か。魔王ではなく、ただの人間がここまで脅威になるとは……」

ハイ「……」

ハイは少しだけ口を開き、

ハイ「……もう、無理かもしれません」

と小さな声で呟いた。

1009

--荒野--

ザッ……

ビィ「侍先輩ー、みーっけっ★」

通信師「!!」

侍「ふー……他の者達と合流しようとしていた矢先にそちらから来るとは……ビィちゃん殿、少しばかりせっかちさんでござるよ」

賭博師「俺らだけでも集まれたのは偶然か? それとも君が何か仕組んだ?」

ビィ「いーえ? 私は何もしていませんよ。それにしても偶然だなんて言葉、貴方らしくないですね。確率を操る賭博師さん★」

通信師「……はぁ、出会っちゃったなら仕方ありませんね……戦うしか、無い!」

医師「出来てせいぜい時間稼ぎ……ですかね。でも……ただ死んでやるつもりはないですよ」

符術師「小指の爪くらいは引き千切ってやる!! 覚悟しな!!」

ビィ「くすくすくす……黄金世代の皆さんかぁ。皆さんは私を楽しませてくれるのかな?」

ビィは両手に持っている召喚士と虎男の頭部を放り投げた。

ドチャッ

侍(やれやれ……ツインテ殿、アッシュ殿、ポニテ殿、レン殿、そしてハイ殿……後は頼んだでござる)

1010

--対ビィ領域--

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

遠くの地で巨大な放電が発生する。

ハイ「!」

びくっ!

カブト「……何? 今なんと言った、ハイ」

雷のことなど意に介さず、カブトはハイに先ほどの台詞について問いただした。

ふるふる

ハイ「……い、今のビィは、とんでもない力を持っています。勇者因子は効かないし、フォーテちゃんの力でも敵わなかった……その上ビィには何万回も繰り返したことで手に入れた、未来の情報を持っている……」

ゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

遠くの地で大地が隆起する。

勇者(! あの場所は……)

ハイ「た、ただでさえ勝ち目が薄い敵なのに、その上どんどん仲間が、消されていく……こんなの、無理ゲーじゃないですか……!」

盗賊「ハイちゃん……」

ハイ「……ッ」

ざり

ハイは地面の砂を握り締める。

ハイ「今回も、駄目、だったっ!」

1011

--対ビィ領域--

ドンッ!

ハイ「やり直したのに!……全部捨てて、やり直したのに……っ!! わ、私が、どこかで間違えたから……!」

ドンッ! ドンッ!!

地面を叩くハイ。血が滲んでもハイは叩き続けた。

ザッ

勇者「――それでも、私は諦め無いわ」

ハイ「」

すたすた

勇者は先ほど大地が隆起した場所に向かって歩き始めた。

勇者「絶望的なのはわかってる。奇跡が起きないこともわかってる。でも諦めたく無いのよ……私の大事な人たちが殺されるっていうのに、それを黙って見てなんていられない……!」

勇者は速度強化魔法を自分にかけ、走り出した。

ドンッ! 

1012

--対ビィ領域--

盗賊「あ、おい! 勇者一人で行くの!? 作戦とかそういうのいいの!?」

ひゅううううぅうううう……

盗賊「……もう。人の話聞かないんだから」

ぎりっ……

ハイ「わ……私だって」

ぎりっ!

ハイ「私だって、皆さんが死んじゃうのは、やですよ!!」

ぽた、ぽたたっ

ハイは大粒の涙をこぼした。

ハイ「ひっ、ひっ! し、しかも、皆さんを……皆さんを殺してるのは私なんですよっ!? 私がいなければ、こんなことにならなかったのに……!! もう、何をしたらいいのか、どうやって償えばいいのか……わからない!!」

ぽろぽろ

盗賊「……ハイちゃん」(そんな風には見えなかったけど、ハイちゃんの精神はとっくに限界に来てたんだな……今までの時空を越えた旅で色々抱えている所に、別ルートとはいえ、仲間を虐殺している自分を見させられてるんだ……精神に来ないわけがない)

カブト「……」

1013

--河岸--

ザッ

ビィ「あれあれー? ヤミさん結局そっち側についちゃうんですか? いいんですか? トリガーが黙ってないですよー?」

ヤミ「黙れ……俺は俺の意思で動く。貴様らの仲間などごめんだ。俺はこいつらを守ると決めたのだ!!」

ビィ「」

ビィは驚いたような顔をした後、

ビィ「くすくす。おっかしいんだー★ 人喰いの吸血鬼さんが人間側につくんですかぁ? くすくす。大体そっちにいったところで居場所なんて無いと思いますよ……?」

ブラ「あります! ヤミ様の帰ってくる場所は私達の所です! 例え過去でどうしようもない過ちを犯していたとしても、それは昔のヤミ様で今のヤミ様ありません! 後悔しましたし償いもします!! ヤミ様はあなたたち魔王とは違う!!」

ビィ「……過ちは過ちですよ? どれだけ人が変わったからって、どれだけその後いいことをしたからって……まぁいいです」

ぼっ!!

ブラ「」

ヤミ「!? ブラ!!!!」

ビィの放つ魔力弾がブラの胸部を吹き飛ばした。

ビィ「どうせ結局全部仲良く死ぬだけなんですから★」

1014

--対ビィ領域--

盗賊「その、なんていうか君じゃないから君の気持ちを完全に理解することはできないんだけど責任と不安でいっぱいいっぱいになってるのはわかるというか、えっと、その」

ハイ「ぐす……あ」

ぴたりとハイの動きが止まる。

盗賊「ん? どうかした? ハイちゃん」

ハイ「ありました……まだ……終わらせない方法が、一つだけ、ありました」

盗賊「! さすがハイちゃんだ! 絶望しててもなんだかんだ思考を巡らせてる! それはなんだい!? 俺達はどうしたらいいんだ!? 教えておくれ!!」

ハイ「……」

ハイは少しだけ顔をあげる。

ハイ「……ビィは、ずっとループしてるって、言ってました」

盗賊「うんうん言ってたね。それで? それが攻略の糸口になるのかな?」

ハイ「なら――私も、ループしたらいいんです」

盗賊「……ん……」

ハイの瞳に光は宿っていなかった。

1015

--対ビィ領域--

盗賊「あー……えっと……そのぉ」

ハイ「あ、あぁ、良かった……。そうだ、そうですよ。ビィがループしてるのなら私にだって出来るはず……! あは! 良かった。まだ終わらない。まだハッピーエンドになる可能性が残ってるっ!」

ハイは泣きながら笑った。

盗賊「んー……それは、確かに一つの手ではあるけど……」

ハイ「わ、私頑張りますから! 次こそきっと皆さんを救ってみます! だ、だから、ループする方法を今から探さなくちゃ!」

ユー「」

ぱんっ!!

ハイ「」

盗賊「! ユー君!」

ユー「……」

ユーがハイの頬を叩いた。

1016

--草原--

どぐしゃあぁああ!!

鎧使い「ごぼっ!!……じゅ……じゅう、だい、め……」

上半身だけとなった鎧使いは、空に手を伸ばそうとして力尽きた。

ぱたっ

ビィ「ふんふんふーん★ 全くもって順調ですねー。というか皆さん弱すぎて少々やりごたえが……おや? おやおやこの反応は?」

ビィは鎧使いに近づいていき、鎧を破壊する。

バキバキバキ!

ビィ「――わぁお。こんなところにありましたか、十代目が回収していた魔王の骨。これがあれば……いやいや。とりあえず回収しておきましょうかねー★」

ぴくっ

ブオン!!

背後からビィに斬撃を放つ勇者。しかしそれはかわされてしまう。

勇者「! やっぱりかわされたか!」

ビィ「あれぇ? 勇者さんじゃないですか。なんでこんなところにいるんでしょう? もしかして」

ドギャッ!!

勇者「ッ!!」

ビィは杖で勇者を殴る。

ビィ「わざわざ殺されに来ちゃいました?」

1017

--草原--

ズザザーーーーー!!

勇者「がはっ!……く」(手加減、してくれてるせいかな? なんとか受け止められた……)

ぶらん

勇者(……両腕とアバラ6本いっちゃったけど、ね)

きゅいぃーん

勇者は即座に回復魔法をかけ走り出した。

ダダダダダダダダッ!!

ビィ「? 姿を見せるだけ見せて走り去っちゃう……? やですわー、それ、もろ罠に誘い込もうとしてるじゃないですかー……でも、楽しそうですね」

ザッ

ビィ「いいですよ。楽しませてください鬼ごっこ。捕まったら死亡ですけど★」

1018

--対ビィ領域--

ハイ「――ユーさん……?」

ハイは叩かれた右の頬に手を当ててユーの顔を見る。

ユー「~~~~~~~~!!!!」

ハイ「!」

ユーは今までに無い形相で、声に出せずともその思いを伝えようとしていた。

がしっ!

ハイ「いたっ」

ハイの肩を力強く掴み、何かを訴えている。

ハイ「ゆ、ユーさん痛い、痛いです」

カブト「……その男が言わんとしていることは俺でもわかる」

ハイ「……え」

カブト「確かに現状はどうしようもないほど絶望的だ。大局的に見ればお前の案が一番現実的かもしれん」

盗賊「……」

カブト「だが今を生きている俺達はどうなる……お前は次に行くだけだ。しかし俺達には今しかないんだ。次のために全てを諦めろと、お前は言うのか?」

ハイ「――」

1019

--草原--

ずる、ずる……

勇者「はーっ、はーっ、はー……」

右腕と左足を失った勇者は地面を這って進んでいる。

勇者(あと、少し、もう少し、で!)

ずる、ずる!

ビィ「あれあれ? もう限界ですか勇者さん? まぁ大分頑張った方ですよ★ さすがは勇者さん、誇ってくれていいんですよー」

くい

勇者「っ」

ビィは勇者の右足を掴むと、

ぶちちちっ!!

勇者「!!」

蟻の手足をむしるかのように引き千切った。

1020

--草原--

ぶしゅー!!

勇者「ぐっ!! っつ……!」

ビィ「で? この後はどうするんですか? 何か計画があったんですよね? でなきゃあんな軽はずみなことしませんよね? どうです? 望んだ場所までこれましたかー?」

どくどくどくどく

ビィ「それとも貴女の頑張りは全て無駄に終わっちゃいました?」

勇者「はぁ、はぁ……ふふ……」

汗を垂らしながら笑う勇者。

勇者「……えぇ、おかげさまで来れたわ」



ビィ「!」

ズバッ!!

ビィの背後から現れ、その背中を切り裂いたのは、秘書。

ビィ「何っ!?」

秘書「――その根性、少しだけ見直しましたよ、勇者」

勇者「貴女に褒められるなんて、ね」

1021

--草原--

ぼたっぼたぼた……ぼたたっ!

ビィ「う、そ……」

ビィの背中から夥しいほどの血が流れ出る。

ビィ「この私が、こんな傷を!?」

ズババッ!!

ビィ「ギャッ!?」

秘書の追撃がビィを切り刻む。

勇者「お前は魔王にならなかったからこそ私達勇者の力が通用しなかった。でもそれなら今のお前はなんだ?」

ぶしゅーーー!

千切れかかった左腕から血が噴出するビィ。

ビィ「ぐ、ぐそっ! ならレベルアップして対応するまでです!! じょっ」

秘書「もう遅い!!」

ズンッッ!!

ビィ「あっ、ぎ!」

秘書のナイフが心臓を貫いた。

勇者「そう、今のお前はただの強い人間だ。それなら」

秘書「私の敵じゃない」

ビィ「!!」

1022

--草原--

ビィ「そ、んな、ば、かな!」

ビィは胸に突き刺さったナイフを引き抜こうとするのだが、

秘書「貴女の魂のあり方は不快です。消えてしまいなさい!!」

ふぉんふぉんふぉん、ずばしゃあぁあああああああ!!

止めとばかりに、秘書は、ビィを五つの肉塊に分解した。

ぶしゃあああああああああああああああああああああああああああ!!

勇者(うわぁ、フラッシュバック)

ぼどぼどぼどっ!

ビィ「あ、う……う、うそ! やだ……こんな……こんな! やだ、や……痛い……いた……いです……」

どくどくどくどくどく……

ビィ「こんな、こんなこと、で……」

ビィは痙攣を繰り返した後、一切動かなくなった。

ど、くん……

勇者「――確認した、ビィは完全に死んだわ」

秘書「当たり前です。私が殺しで失敗するはずがありません」

1023

--草原--

勇者「ふー……なんとかなって、よかった……」

秘書「! ちょっと貴女」

がばっ!

秘書は勇者を抱えて起こす。
勇者もまた甚大なダメージを受けていた。

秘書「こんなに無茶をして……まだトリガーとの戦いが残っているのを忘れたのですか? こんなの、段取りが違うじゃない」

勇者「仕方ない、でしょ……はぁ、はぁ……今勝たなきゃ、次は望めないんだから…・・・へへ」

秘書「それはそうですが……? 何がおかしいんです? 気持ち悪い」

勇者「昔と……少しだけ状況が似てるけど、今は左手があるな、って」

ぐっ

勇者は左手を動かして笑う。

1024

--草原--

秘書「はぁ……とうとう脳に血がいかなくなりましたか。危ない状態ですね、待っててください。すぐに回復魔法を使える者の所に……」

ずる……

秘書「……」

秘書が、止まる。

秘書「――馬鹿な」

ビィ「くすくす。相変わらずいい腕です秘書さん★」

バッ!!

秘書が振り返ると、ビィは何事も無かったかのように元の姿でにやにやと笑っていた。

ビィ「くすくす。お忘れですか? 私はネクロマンサーです。ネクロマンサーの魔法の中には、死体となった自分を自分で操るものがあるんですよー★」

勇者「!」

秘書「ッ!」

グッ!

ビィ「ナイフを握ってももう無駄ですよ★ 貴女の力は、死者には通じないんですから★★★」

1025

--対ビィ領域--

ユー「……」

ごしごし

泣き止んだハイは涙を拭いて顔をあげる。

ハイ「……す、すみませんでした。カブトさんの言う通りです。私、取り乱してしまって……それに自分勝手で、失礼なことを言ってしまって……」

盗賊「い、いやいやそんなに気にしなくてもいいさ。誰だってこんな状況なら悪いことばっか考えちゃうんだから。だから落ち込まないでハイちゃん。な?……ほらー、義兄さんも優しい言葉かけたげてよぉ。義兄さん表情硬いから誤解されちゃうんですよ?」

カブト「だ、誰が義兄さんだ!」

ユー「……」

ユーはまだ力強くハイの瞳を見つめている。その瞳は、

諦めるな。最後まで頑張れ

と語っているように見える。

ハイ「……はい、泣き言を言ってしまってすみませんでしたユーさん。私も、諦めないで最後の最後まで抗ってみます!」

ユー「!……!」

ユーはその台詞に満足したのか親指を立て、ハイの頭をなでた。

どちっ

盗賊「」

ごろごろ……

カブト「!!!!」

ビィ「へぇ。まだ頑張るんだ? えらい! えらいぞぉーハイちゃん。その意気だ! 頑張れー私っ★」

ハイ「」

突如ビィが姿を現し、何かをハイの目の前に放ってよこした。
それは

ごろ

ビィ「あ、それそこで落ちてたんだけど、よかったらどうぞ★ え、私の分? いいのいいの、私はもういっぱい集めちゃったからさっ!」

勇者の生首だった。

ハイ「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

1026

--対ビィ領域--

バッ!!

盗賊「」

カブト「」

ユー「」

ハイの叫び声をきっかけに、三人が激昂とともに駆け出した。

盗賊「て、めええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

ビィ「くす」

が、

ずぎゃ!!

一撃でカブトの首を刎ね、

どずん!!!

ニ撃目で盗賊の心臓を握りつぶし、

ぎょしゃ!!

三撃目でユーの頭部を破壊した。

ハイ「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああああ、あああ、あああああああああああああああああああああああ!!」

ビィ「……残っ念★ これでハイちゃんの仲間ー……みーんな死んじゃったねっ★」

ぶしゃああああああああああああああ!!

三人の血を全身で浴びるハイ。

1027

--対ビィ領域--

ハイ「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

バッバッ!!

狂乱し、自分の体についた血を拭おうとするハイ。

ビィ「くすくすくすくす。大事な仲間の血だよ? そんな扱い方ひどいと思うなぁ」

がしっ

ハイ「!」

ビィはハイの顎を掴んで顔を近づけた。

ハイ「あ、う!」

ビィ「さっきしてた話……じつはちょびっと聞こえてたんだよねぇ。今回駄目ならループすればいいや、ってやつ」

ハイ「あ、ああぁ、あああ」

ビィはにこりと笑い、そして

ビィ「ばっかじゃないの」

ベギギッ!

ハイ「!!」

ハイの右足を踏み潰した。

1028

--対ビィ領域--

ハイ「あ、あぁああああああ~!!!!」

ビィ「あれがどれだけ苦しいものなのか、ハイちゃんは何にもわかっちゃいないんだねそうだよね」

ス……ゴジャッ!!

ハイ「ぎっっっ!!」

ビィ「バカ。バカバカ。本っ当にバカ。バカの王様だよハイちゃんってさー」

ドチャッ!! ズジャッ!! べジャッ!

ハイ「ぎゃっ! あぎっ!! ひぃっ!!」

ビィ「……最初はみんなを助けるためだー、って、勇んでループを望んだんだったよねー。もちろん、それが出来たのは偶然でバグみたいなもんだったんだけど、その時は本当に嬉しかったんだよねぇ」

どごっ!

ハイ「げっ!」

顔面を蹴られたハイは顔を抑えて蹲る。

1029

--対ビィ領域--

ビィ「私には何度もチャンスが与えられた。それはそれはとても凄いこと★ 駄目な私でもきっといつかは世界を救えるはず★ だって私は勝つまでやめるつもりはないんだから★ それならいつかは夢見た未来に必ず行くことが出来るっ★」

ごっ!! がっ!! どごっ!! ずごっ!! べきっ!! ばきばきぃっ!!

ハイ「っ! がっ! げぁ!! がはっ! あぁっあ!!」

ビィ「だから何度も何度も私はループした。世界中の色んなコトを覚えて、傾向と対策もばっちりにして、何度も何度も死ぬ気で挑んだ★」

ごすっ…………ごすっ! がすっ! どごっ! ばきっ!! ぶじゅっ!!

ハイ「ぎゃっ!!……あ……あっ! ああ……あ」

ビィ「でもね」

どぽっ……

ビィ「何百回挑んでも、みんなが死ぬルートしか無かったの」

1030

--対ビィ領域--

ハイ「ひゅー、ひゅー、ひゅー……」

ビィ「色んな戦法を試した。色んな人に頭を下げて協力を頼んだ。色んな魔法やスキルも覚えた。必要とあらば邪魔になる人を殺したりもしたし、あえて傍観に徹したこともあった。裏切った振りして魔王側についたり、ばれて拷問の末魔族に改造されたこともあった★」

ハイ「ひゅー、ひゅー……あ、あぁ……」

ビィ「でも私は諦めなかったよ? なんでって? 当たり前じゃないですか……だって大好きなみんなのためだもの。何千回も何万回も何億回も何兆回も繰り返して頑張ったのになんでだよっ!!」

どぎゃっ!!

ハイ「ッ!!!!」

どぽっ……ばつんっ!

ビィ「はぁ、はぁ、はぁ……簡単なことだったんだよ……これは無限のチャンスじゃなくて終わらない悪夢だったんだ……私達が勝つ可能性なんて……最初から存在してなかったんです……」

ぬちゃ、びろろろろ……

ハイ「ひぃ……い」

ビィ「私がやっていたのは当たりが無いくじを永遠とやっているだけだったんだ」

1031

--対ビィ領域--

ハイ「あ、あ、あ……」

ビィ「そのことに気づいてしまった私の心は折れちゃった★ もう何をやっても駄目ー。降参降参ー。はいもう無理ですー。ぎぶあっぷー」

ハイ「はっ……はっ……は」

ビィ「でも、終わらなかったんだよ。心は折れたのに。もう、繰り返したくないのにこの悪夢は私の意志じゃやめられなかった……って、おーい、まだ死んじゃ駄目だよー? はい、回復魔法レベル1」

ぱぁあ

ハイ「っ……はっ! はっ、はっ、はっ!」

ビィ「終わらなかったんだよこんなのがずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとさぁあああああああ!!!!」

グサッグサッグサッ!

ハイ「ぎっあああああああああああああああああああああああ!!」

1032

--対ビィ領域--

どくどくどくどくどくどく……

ビィ「なんでこんなに辛くて苦しいことが終わらないの? もうやだよ。大好きな仲間が死ぬ所なんてもう見たくない」

ぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっ

ハイ「ひっ、ひぃ、ああ、ああああ!!」

ビィ「私は必死に考えた。どうやったらこの地獄から抜け出せるのか。抜け出せるためならなんだってやるのに、って」

ぼっ ぼおおおおおおおおおお

ハイ「っ!! ~~あ~~!!」

ビィ「そしたらわかっちゃったんだ。ね、ゲームだと思ってみて? ゲームってさ、全クリを目指すものでしょ? メインストーリーをクリアしたくらいじゃ、そのゲームはまだまだ終わりじゃないんだよね★ ……っと、はい、回復魔法かけたげる」

ぱぁあ

ハイ「あ、あ゛ぁ……ひっ!」

ビィ「……多分私はまだ回収してないエンドがあるんだ。だからこのループは終わらないんだ。このループを一刻も早く終わらせるためには、自分から回収しにいかなきゃ、って、思ったの★」

ずるるるるるる、ぶじゃじゃっ

ハイ「あ、ぁあ、あ……」

ビィ「どうせ実りもしない希望なんてあるだけ無駄なのに……その糞みたいな希望の数だけ私は苦しめさせられることになるんだ……そんな希望いらない。だから私は、私の手で、全ての私(可能性)を殺すことにしたの」

ハイ「あ、あ、あ、あ、あ、あ」

1033

--対ビィ領域--

ハイ「あ  あ  あ  あ」

びく、びくん

ビィ「さぁ、このルートでの私。君ももう終わり。私は次に行くよ。次の私を殺しに」

ビィの人差し指がハイの額にふれた。

ビィ「……もしかしたら君はこれで解放されちゃうのかもね……。私これだけ繰り返してきたけれど、何度もループしてる私に出会ったことないんだぁ★」

ずぶ

ハイ「あ、あ……」

ずぶぷっ……

ハイの額にビィの指が埋没していく。

ビィ「さよなら」

                                        ぽっ

ビィ「……? 何これ……光ってる……雪?」

その時ビィの人差し指に光る何かが落ちてきた。
空を見上げると、小さな光は辺り一帯に降っているのがわかる。

ビィ「暖かい光り……これ……なぜか懐かしい」

1034

--対ビィ領域--

ぱら、ぱらぱら……

ハイ「つ……つい、ん……て、せん……ぱい」

ビィ「……助けを求めても無駄だよハイちゃん。あの塔に入った場合、87%の確率で二度と出てこないんだから★ もし出てこれても戦えない状態だったり人数が欠けてる確率が残りの13%。つまり、一度たりとも先輩達が間に合うことは無かったの★ これは変えようの無い100%の出来事……★」

ハイ「あ、しゅ……せ、んぱ、い。ぽに、て、せ、んぱい」

ビィ「……この程度で精神に異常をきたすとか、どれだけ弱いのハイちゃん……。私が君の何億倍辛い思いをしてきたか……幸せだねハイちゃん。いっそ私もそうなれたら楽だったのに★」

ぎりっ

ビィ「――本当はもうちょっと私の辛さを分かち合ってもらいたかったけど、もうあまり時間が無いからね。名残惜しいけど、これで」

ハイ「先輩」

ビィ「……? 今、普通に喋れて」

ひゅっ

ビィ「!? え!?」

ハイの姿が一瞬で消えた。

ビィ「何が起きて……こんなことは今までに一度も」
    


 「俺達の後輩に、なんてことしやがる」



ビィ「!?」

1035

--対ビィ領域--

ビィ「!! この声は……嘘、間に合うわけが無いんですよ……? だって、絶対に」


 「ハイちゃんのことだけじゃない。パパやママ……他にも色んな人たちをよくも……ひどいよ!」


ビィ「う、嘘! ありえない!! こんなの絶対に!! 私が知らないことなんて起こるはずが無いのに!!」


 「でも……貴女も悲しい人です」


ビィ「! そこか! 火属性攻撃魔法レベル3!!」

どぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

振り向き様にビィは極大の火属性魔法を放った。

どじゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!

ビィ「!? わ、私の魔法が、防がれて!? そんな、馬鹿な!!」

もくもくもく……

ツインテ「だから貴女も、救ってあげます。ビィさん」

ビィ「!!!!」

1036

--対ビィ領域--

しゅぅうぅう……

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

水蒸気の中から現れたのはツインテ、ポニテ。そしてハイを抱きかかえているアッシュ。

ハイ「先輩、方……」

アッシュ「よく一人で頑張ったなハイ。遅くなってすまなかった」

ポニテ「ほんとだよ。ゲームオーバーぎりぎりみたいな世界になってるじゃん。間に合ってよかったー!」

ツインテ「でも、もう大丈夫ですよ。後はボク達に任せてください」

ツインテはにっこりと微笑んだ。

ビィ「三人で多重障壁魔法を張ったから防げた……? いやそれでも今のを防いだのはおかしいでしょ、私のレベル3だよ? ありえない!……結局勇者の力も発現してないし、どうやったら今みたいなことが出来るのっ!?」

ハイ「!……ほ、本当だ。先輩方からは勇者の力が、感じられない……塔での修行は失敗、だったんですか?」

1037

--対ビィ領域--

アッシュ「いや成功だ。それも完璧にな」

ハイ「……はい!?」

ポニテ「まぁ見てたらわかるよ。いや、今までの私達を見てくれてたならわかるよ」

ツインテ「ふふ。そういうことですね」

ハイ「は、はぁ……」

三人はこの状況だと言うのに涼しい顔をしている。

ビィ「……はぁ。はは、はははは! なんだ、そうなんだ? 驚かさないでくださいよ。やだなぁもう。さっきのもそこのユーさんが死ぬ前になんか残しておいたからとかそういうことなんでしょ? あははっ! そんな余裕ぶっちゃって、なんですか? 余裕が無さ過ぎて開き直っちゃった口ですか!?」

予想外の出来事に直面し焦りが隠せないビィ。

アッシュ「ビィ」

ビィ「!」

名前を呼ばれただけでびくりと反応するビィ。

ビィ「……なんですかぁ先輩★」

アッシュ「お前のルートでは俺達は助けにいけなかったんだろう? すまなかったな」

ビィ「」

1038

--対ビィ領域--

ビィ「は、はぁ!? いきなり、何言ってるんですか……? 意味がわかりませんよ……★」

アッシュ「ハイ。もう体は大丈夫なはずだ。立てるな?」

ハイ「え? あっ、いつの間に……!」

ツインテ「ふふ。皆さんももう大丈夫なはずです」

ビィ「!?」

バッ!!

勇者「う、ん……」

盗賊「むにゃむにゃ」

ビィ「嘘……」

ビィが振り向くと殺したはずの人たちが皆生き返っていた。

ビィ「!! さっきの光……あれは蘇生と回復魔法だったんですか……!?」

アッシュ「ほら遠くに行ってろハイ。せっかく元に戻ったのに巻き込まれたらまた治療しなくちゃならねぇからな」

ざっ

ハイ「で、でも私達全員で挑んでも無理だった相手なんですよ!? お言葉ですが、ゆ、勇者の力も持たない先輩達じゃ!!」

ツインテ「くす。大丈夫ですよハイさん。ボク達は」

ポニテ「勇者だから」

ハイ「!!??」

1039

--対ビィ領域--

ぱんっ

アッシュ「っし、じゃあやるか」

ポニテ「うん。修行の成果を……私達の今までの旅の成果を見せてあげないとね!」

ツインテ「はい。ボクも頑張ります」

そういうと三人は手を合わせて円になる。

盗賊「! やべぇ勇者! UFO呼び出すやつだあれ!」

勇者「今度ばかりはそのシリアスキラー切っとけ!!」

ぎり

ビィ(ありえない……ありえないありえないありえないありえないありえないこんなの今までに一度だって無かったんだ絶対に今回だって失敗するのに失敗しなきゃだめなのにじゃなきゃなんのために今まで私は苦難を受け続けてたのだっておかしいたった一度失敗したくらいのあいつがあいつだけがこんなルートなんて絶対におかしい!!)



ツインテ「――禁術魔法」

ポニテ「改良型っ!」

アッシュ「三位一体……!!」

ぼっ!!!!

1040

--対ビィ領域--

ぎゅるるるるるるるるるるるる!!

ハイ「!! 先輩達の体が、混ざり合っていく……!?」

カブト「! あれは禁術・融合の亜種か!? バカめ!! あれは溶け合って二度と同じものには戻らない最悪の魔法だぞ!!」

ぎゅるるるるるるるるるるるる!!

盗賊「……いや、まぁ大丈夫でしょ義兄さん」

勇者「えぇ……あの三人なら、きっと大丈夫。お互いのことを心の底から理解して、様々な困難を共に乗り越えてきたあの三人なら」

ぎゅる、ぎゅるるるるるるるるるるるるるる!!

ビィ「嘘だ……こんなの、絶対に!!」





   ポニテ「あ、そうだ!! いいこと思いついちゃった」

   ポニテは嬉しそうに顔を綻ばせる。

   アッシュ「この三人とも勇者だと言うのであれば……」

   ポニテ「私達三人で競争しようよ!!」

   ツインテ「……?」

   アッシュ「俺らの中で一番最初に魔王を倒したやつが……」

   ポニテ「誰が魔王を倒せるか♪ それで、倒した人が」

   ツインテ「……え?」

   アッシュ、ポニテ「「真の勇者だ!!」」





ゴゴゴゴゴゴゴ!!……ばち、ばちばちばちぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!



灰色の髪の毛は三つの束に分けられている。



ばちばち、ばちっ!!



背中から展開された触手は羽のように揺れている。



しゅぅうう……

  

両手には赤と紫の剣をそれぞれ持っている。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ…… 



他を圧倒する凄まじい力を放つその者の名は、

勇者「一人では勇者になれなくても、三人なら、きっとなれる」

ばんっ!!

?????「真勇者、参上」

酒場募書き始めた時から考えてたことがついに書けました。五年越しの夢ですね。
ちなみにフォーテちゃんが四つのテールになったのは真勇者(トリプルテール)が先に考えられていたからなのです。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました。それでは更新していきます。

1041

--対ビィ領域--

ばちっ! ばちばちっ!!

?????改め真勇者「……」

ごごごごごごご……

盗賊「う、おおお? 何もしてないのに凄いパワーを感じる!! 一体どうなってんだ!?」

勇者「これで、勇者が五人揃ったわ!」(でも……あれ? 予想してたのと違う。何この圧力……三人が融合すれば強くなるとは思ったけど……まさかここまで凄いなんて)

ビィ「ふ、ふふふ★ 確かに勇者因子を感じます……本当に勇者になれた、ってことですかぁ先輩方。良かったですねぇ★」

真勇者「……」

ビィ「だからって……今の私に勝てると思ってるんですかああああああああああああああああああああ!?」

ドンッ!!

ビィが全力で真勇者に突っ込んでいく。

ビィ「はあああああああああああああああああああああ!!」

そして莫大な魔力をこめた拳を突き出した。

1042

--過去、修練の塔、九階--

ばしゅん!

勇者「――と、まぁ。こんなものね。どう? 見てみた感想は」

ツインテ「え、えっと、勇者さんが……分裂しましたね」

アッシュ「なるほど、確かに面白い魔法ではある。それを俺達が身に付けたらいいんだな?」

ポニテ「でもマ……わ、私達がそれを習得したら3×5で14体になるのは数的に凄いと思うんだけどさ」

ツインテ「ポニテさん15です……」

ポニテ「でも、正直分割しただけじゃ魔王に立ち向かえる気がしないんだけど……」

勇者「ちっちっちっ。この魔法の本質を見なきゃだめだよ三人とも」

ツインテ「本質、ですか?」

勇者「そう。これは分離と融合の性質を持つ魔法なんだ。自分の体をプログラミングされた人格に五つに分離し、そしてその後元の私にちゃんと戻るように融合する、というものなの」

ポニテ「ほえ?」

勇者「これを逆に考えると、三つの違う存在を一つに融合させることが出来、その後、元の三人に分離させることも出来る、というわけなのよ」

アッシュ「!!?? ツインテと!! 融合!! ですかっっっ!!!???」

勇者(凄いうれしそう……)

ポニテ(きもい)

ツインテ(嫌なのかな……)

1043

--過去、修練の塔、九階--

アッシュ「つまり! それは!! つつつ、ツインテと! 融合しちゃう魔法なんだなっ!?」

ポニテ(駄目だこいつツインテちゃんと融合することしか頭にないよ)

勇者「正確には三人だけど、飲み込みいいね君」

少し呆れ顔の勇者。

ポニテ「しかし融合かぁ……そんな手段があるとは思わなかった。けど本当にそれで強くなれるの?」

勇者「単純に強くなれるわ。ただそれがどこまで強く慣れるかは君達次第だけど」

ツインテ「ボク達、次第……」

勇者「まぁ最低でも既存の勇者レベルの実力にはなれると思うわ」

ポニテ「最低でも!?」

勇者(私の見立てだともっと凄いことになると思うけどね)「よし、じゃあさっそく始めていくわ。時間無いんでしょ?」

ツインテ「は、はい。ボク頑張ります!」

アッシュ「頑張っちゃうだなんてそんな/////」

勇者(イケメンなんだけど内面が少し盗賊に似てる気がする……)

1044

--過去、修練の塔、九階--

きぃん!! ばしゅうううううううううううう……

勇者「う、うそ……一回目で成功しちゃった!?」

真勇者「……」

真勇者はうっすらと瞼を開いた。

勇者「いい? 今三人の人格が混ざり合っていると思うけど、自分のことを忘れちゃだめよ? 完全に溶けて元に戻れなくなっちゃうから」

真勇者「……ぐ、ぐ……」

勇者「本来なら問答無用で混ざり合って溶けてしまう魔法なの。でも貴方達ならなんとかなるはずよ。お互いのことを心の底から理解して、様々な困難を共に乗り越えてきた三人なら!」

真勇者「ぐ!!」

勇者「それに加えてアッシュ君の保存の力が三人を……あ、あれ? 思ったより難儀してるみたいね? 一度分離しなさい!」

真勇者「う、ぐぅ!!」

勇者「早く! 戻れなくなるわよ!」

真勇者「あ、あぁ……!」

勇者(失敗した!?)

真勇者「あ、アッシュ君が、離れようとしないん、です」

勇者「……アッシューーーーーー!!」

真勇者「心の中で、お尻、触られてるような、気がします」

勇者「アーーーーッシューーー!!!!」

1045

--過去、修練の塔、九階--

ばしゅんっ!

ツインテ「はぁ、はぁ!」

アッシュ「ふーっ、ふーっ!」

ポニテ「ぜひー、ぜひー!」

勇者「お疲れ様。これで5回目の成功ね。最初はどうなることかと思ったけれど、大分使いこなせるようになったわね。最後のはうまく混ざれてたと思うよ」

ポニテ「さ、最初からうまくいってたんだよ! アッシュ君が足を引っ張るから!」

アッシュ「だ、だってさ……」

ツインテ「あはは……」

勇者「うん。よし。じゃあ修行はここでおしまいかな」

ぱんっ

勇者は手を叩く。

ポニテ「え……」

勇者「九代目勇者の名において融合の魔法をマスターしたものとみなす。さぁ、急いで現実世界にお帰り」

アッシュ「ふぅ……そうだな。時間も押している。これだけやれるようになれば、もう不安は無い」

アッシュの顔は自信に満ちていた。

ツインテ「そう、ですね。ボク達ならきっと魔王でも倒せちゃいますよ」

ツインテの顔に不安は無い。

アッシュ「言うようになったじゃないかツインテ……喜ばしいことだ」

ポニテ「……」

1046

--過去、修練の塔、九階--

勇者「さぁみんな。あの門が帰り道だよ」

スッ

勇者は門を指差した。

アッシュ「ふむ。世話になった。あんたのおかげで俺はとてもいい思いを……げふん! じゃあ行くぞみんな」

すたすたすた

ツインテ「あ……」(ポニテさん、いいんですか?)

ポニテ「……」

ポニテはもじもじとしていたのだが、一度勇者の方に振り返り、

ポニテ「じゃ、じゃあ……また……未来で!」

ダッ!

一瞬だけ手を振って駆け出した。

勇者「待って」

ぴた

勇者「名前、なんて言うの?」

ポニテ「……え?」

勇者「君だけ名前聞いて無いから」

1047

--過去、修練の塔、九階--

ポニテ「あ、えっと……その、ポニテ……」

勇者「ポニテ、か。なるほどね。二人がその名を呼んでいるのは知ってたんだけどさ、愛称とかかもしれなかったし確認しておきたかったのよ」

ポニテ「う、うん……じゃ」

勇者「へぇポニテか」

すた

ポニテは門に向かって進んでいく。

勇者「ちょっと変わってるけど……いい名前。名前付けるの、盗賊に任せて良かったな」

ポニテ「」

ポニテは、ゆっくりと振り向いた。

勇者「頑張りなさいね、ポニテ。私の娘なんだから」

ポニテ「」

1048

--過去、修練の塔、九階--



ポニテは踵を返す。

ポニテ「ま……ママ……気づいて、たの?」

ざっ

勇者「うん」

ざっ、ざっ

ポニテ「だ、だって私、そんな、娘だってわかるようなの、何も、無いのに……特徴とか、受け継いでるのか怪しいし、だって……」

ポニテの声は震え、瞳は涙で滲んでいる。

勇者「――わかるよ。大事な子供のことだもん」

ポニテ「」

ぽろ、ぽろぽろぽろ

ポニテ「ママー!!!!」

だっ、がばっ!!

体格差も考えずに勇者に飛びつくポニテ。

ポニテ「うわぁああぁああぁあああん!! ママーーーー!!」

勇者「よしよし、おっきくなっちゃってもー」

ぷよん

二つの意味で涙を溢す勇者だった。

1049

--過去、修練の塔、九階--

ポニテ「うぐー。えぐっ、ぐすっ。びえー」

アッシュ「ち……汚い顔だ。これで顔を拭け」



アッシュはツインテLOVEと書かれたハンカチをポニテに渡す。

ポニテ「ぐずっ、ありがどあっじゅぐんー」

ちーん

アッシュ「お約束だな!」

勇者「じゃあ……これで本当にお別れ」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

勇者「未来を頼んだよ三人とも」

勇者は笑う。

ツインテ「はい」

アッシュ「おう」

ポニテ「任せてママ!」

1050

--対ビィ領域--

ビィ「」

しゅぅううう……!!

ハイ「う、そ……」

ビィの魔力を込めた拳を真勇者は右に持つ剣の柄で軽々と受け止めていた。

ぎしっ

真勇者「どうした? こんなものか?」

ビィ「!! この程度の攻撃を受け止めたくらいでいい気にならないで下さいよ先輩ッいいいいいい!!」

ババッ!!

ビィは一瞬で距離を取り、

ぼっ!!

巨大な魔力球を両手に作り出す。

魔導長「!? ちょっ! しゃれにならないなの!!」

ビィ「火属性対単体攻撃魔法、レベル4&雷属性対単体攻撃魔法、レベル4!! レベル1であの威力だったんですよ? これがどれだけやばいかわかりますよねぇ!?」

真勇者「……」

1051

--対ビィ領域--

ゴゴゴゴゴ……

勇者「まずいわ! あのバカみたいな魔力……下手な受け方をしたらこの星ごと持っていかれる!」

盗賊「まじで!?」

勇者「避けたら終わり、相殺させてもその時の爆発で終わり……あの子達ちゃんとわかってるのかしら!」

真勇者「……」

ぼけー

しかし真勇者は眠そうな顔をしていた。

勇者「あ……やばい」

カブト「く!? 精神が混ざり過ぎて意識がはっきりしていないんだ!」

ビィ「くす。なんだ、さっきのは偶然か……★ まぁなんでもいいですよ、死んでくださるなら、ねっ!!」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ビィは真勇者に向けて魔力砲を放った。

ハイ「!? しまっ」

1052

--対ビィ領域--

真勇者「!」

バシィイイイイイイイイイイイン…………

真勇者は接近する魔力砲撃を剣の一振りで上空へと吹き飛ばした。

ビィ「!? 剣で、弾いた!?」

しゅうぅううう

そしてそれは暗黒の宇宙へと消え去った。

真勇者「……終わりか?」

ビィ「!」

ダッ!!

ビィ「はあああああああああああああああ!!」

ビィは激昂し、杖を振りかぶる。

ガギィイイイイイイイイイイイイイン!! 

ビィ「あっりえないでしょう!? 先輩方はぁ! ずっと役に立たなくてェ、私のレベルアップくらいでしか役に立てなかったんですよぉ!? それが、おかしいじゃない、ですかっ!! なんで!! なんでぇえ!!!!」

ガガッドガッガガギィイイイイイイイイイイン!!

盗賊「ぐぅおおお!?」

ビリビリビリビリ!!

勇者「くっ! 衝撃波でこっちが吹き飛びそうだわ!」

1053

--対ビィ領域--

ドガァアアアアアアアアン!!

盗賊「ぐおぅ! 地形が変わるなんて優しいもんじゃねぇ!」

フォン

ビィ(……速いし硬い……ありえないくらいのスペックです。確かに三体融合ならかなりのパワーアップでしょうよ……でもこれは!!)

ドギイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

ビィ(!? 前腕で防がれた!?)

真勇者「……銀蜘蛛の絶対的な防御力の秘密は、その表面の特殊な加工にあった」

ビィ「!」

バッ!

一度離れ、追撃を放つビィ。

ギガァアアアアアン!!

しかし、今度は脇腹に入ったというのに真勇者は無傷だった。

真勇者「機械になることは出来ないが、凹凸なら魔力で再現できる。アッシュの器用さがあれば」

ビィ「!!」

1054

--対ビィ領域--

ビィ(銀蜘蛛の特性をまねた、ってこと?)「……! 六属性複合攻撃力強化魔法レベル4!!」

ぼきゅっ!!

ビィは魔力を一点に集中させる。

びききききききいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

ビィ「――なら、これでも防げますかぁ!?」

真勇者「防ぐ必要は無い」

ぼひゅっ!!

ビィの杖は真勇者の体を素通りしてしまう。

ビィ「なっ!」

真勇者「余にはポニテの霊化の力もあるのだから」

シュババッ!!

今度は真勇者が細い触手を伸ばし、ビィの体をがんじがらめにしてしまう。

ビッシィいい!!

真勇者「そしてこれはウェイトレスの糸操技術……もうわかるだろ? 余は全ての力を託された存在なのだ」

ビィ「ッ!!」

1055

--対ビィ領域--

ぎしっぎししっ

ビィ「ッ!!」

真勇者「仲間が身を挺して時間を稼いでくれたおかげで余はここに立っている」

ビィ「……」

真勇者「先人達が力を貸してくれたおかげで余はお前に立ち向かえる」

ビィ「……ッ」

真勇者「みんなが支えてきてくれたおかげで……ここまで来れた。これが人の和だ。一人のお前に勝ち目は無いぞ、ビィ」

ビィ「ふ、ざけるな……」

ギシッ!

真勇者「……」

ビィ「ふざけるなあああああああああああああああああ!!」

ドバアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

カブト「あいつ、魔力を全身から放出して無理やり糸を吹き飛ばした!」

ビィ「はぁ、はぁ――だから、何?」

1056

--対ビィ領域--

真勇者「……」

ビィ「人の和? はい……? 他人なんて所詮駒でしかないんだよ……仲間なんて信用できないんだよ……!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「う、この期に及んで更に魔力が増幅するだと?」

ビィ「すぐ死ぬ癖に……簡単に死ねる癖に……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ビィ「私はどうやっても、いつになっても、なにがあっても、死ね無いのにぃいいいいいいい!!」

ばりばりばりっ!!

ビィ「一緒に生きられない癖に、仲間なんてどうでもいい! 仲間なんているものかああああああああ!!」

ハイ「……っ」

どろり

ビィが血の涙を流す。するとそれがビィの全身を覆っていった。

真勇者「!」

ずぐっ……

そしてビィは手刀で自分の胸部を貫いた。

ビィ「最終条件、達成……レベル4、アークエネミー」

ズズズズズズズズズズズ!!

ハイ「!!」

ビィ「バッドエンド直行の、絶望のフラグをおっ立ててやるッッッ!!」

1057

--対ビィ領域--

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

勇者「ここで魔王化!? 真勇者は勇者因子を持っている。余計勝ち目が無くなるのになぜ……?」

ハイ「違います。確かに勇者から受けるダメージは増大しますが、火力そのものはさっきより更にあがります」

勇者「ッ! まさか」

ハイ「……相打ち覚悟で、壊すつもりです。全てを」

ビィ「……」

ガッシャーン

杖の形になっていたバイコーンが変形し、パイルバンカーになる。

ハイ「正直……スケールが違い過ぎます。もう彼女の力はどこまでのことが出来るのか……わかりません」

ビィ「さ亜、ファ意ナるバトル堕よ。先輩方ッ★」

きらん

ハイ「……あれは……」

1058

--対ビィ領域--

ビィ「はああああああああああaあああaaaああああああああああああ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアン!!

真勇者「ッ」

瞬間移動に近い速度で繰り出されるビィの攻撃、真勇者はそれに反応して防ごうとするのだが左腕が吹き飛ばされてしまう。

ぶぶちぃ!

ビィ「アハハハは! さすガのゆウ者様モ、こレハきつゐィ……!? アハハハは葉ッ!!」

ドガァアンギィガアアアンン!! ズガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

盗賊「う、すげぇ……俺の眼でも追いきれないくらいの速さで動いてやがる……」

ぎゅるるる

ビィ「!」

真勇者「超再生。桃鳥のこの力もツインテがいれば再現できる」

ビィ「だっ、蚊ッ、ラっ」

ズズズ

ビィ「どオ死たぁあぁaaaァアアアアアアアあアアアアアアアア!!!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ビィは左手から極大の魔力砲を放つ。

魔法使い「おいおい……無詠唱であの威力かよ……デュクシwwww」

キバ「笑ってる場合!? 上から打たれたんだよ!? 地表に当たれば……」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

真勇者は避けることなくそれを受け止めた。

ビリビリビリビリッ!!

真勇者「ッ!」

1059

--対ビィ領域--

ビィ「死ねッ! しねっ! シネッ! しネっ! シネシネシネ視ね死ねしねしね死ねしねシネ市ねェエエエエエエエエエエ!!」

ずぅんん!!

真勇者「くっ!」

ズズズズズズズズズズズ!!

ビィ「止メだ! 六属性複合対単体攻撃魔法、レベル5!」

ぽう

勇者「!!」

レン「!?」

盗賊「まじ!?」

ブゥウウウゥゥウウウウウウウウウン……

ハイ「うそ……あれを、撃たれたら負ける! 真勇者先輩ッ!!」

真勇者「!」

ドギャァアアアアン!!

真勇者は魔力砲を吹き飛ばした後、宙に浮くビィを見た。

ギュギュギュギュギュギュ……

ビィ「あはッ★ もウ遅イ……出来ちャっタ★」

ビィが構えるパイルバンカーの先端部分に、ピンポン玉程度の大きさの黒い球体があった。

スッ

真勇者は静かに剣を構える。

1060

--対ビィ領域--

勇者「ッ! 盗賊! 少しでも加勢するわよ! 今ならビィも動けないはず!」

盗賊「まじかい。俺が手を貸しても意味がなさそうな気がするが……やらないわけにはいかねぇか」

ハイ「待ってください!」

勇者「ハイ……? 待ってる時間なんて無いわ!」

ハイ「真勇者先輩が……任せろって、言ってる気がします」

勇者「……え」

スッ

真勇者「火に加え水」

ぴちょん

真勇者は火の剣に水属性を加えた。

真勇者「更に土、風」

どっ、ひゅる

真勇者「雷、氷」

ばりっ、きぃん

盗賊「六属性を迎え撃つには六属性ってことか……?」

勇者「……」

真勇者「――そして、毒」

じゅる

盗賊「!?」

真勇者は左手に持っていた剣をその剣と合わせた。

1061

--対ビィ領域--

ギギギッギギギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

ビィ「は、ハァ!? 欠陥属性を、マぜたぁア?」

バチバチバチバチバヂヂヂヂイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

その剣は、

勇者「凄い……なんて剣……」

十代目「……あぁ。美しい」

盗賊「あー、そっか。そういえば勇者ってのは欠陥属性も使おうと思えば使えるんだっけ。なるほど盲点だったわ」

勇者「……違うわ盗賊。あれは勇者でも真勇者にしか出来ないことよ」

盗賊「ん? お前らは出来ないのか?」

勇者「うん。確かに私達も欠陥属性を使えるわ。けど決して使いこなせるわけじゃない。そんな半端な力をあれに組み込んでも形を維持できないわ」

盗賊「……」

バチバチバチッ……イィイイイイイン

勇者「欠陥属性も使いこなせるあの子達だからこそ――あの剣は、七色に輝くのよ」

真勇者「――七属性複合攻撃魔法、虹色剣!」

キイイイイイイイイイイン……

ハイ「七つの属性が一切反発し合っていない……まるで、音色みたいです」

1062

--対ビィ領域--

ビィ「……ッ!! た、たカガ一色増えタ所デェなん堕ってイウのサッ!! 食ウウゥぅラえエエエえエエ!!」

ドッッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

真勇者「……はぁっ!」

しんっ

ビィ「」

真勇者の一振りは

どばぁ!!

ビィ「   」

遠く離れたビィの魔法と、、

ビィ「                             ぎ」

ビィを切り裂いた。

ずばああん!!

ビィ「ッッッぎゃあああああアアアアアアアアあああああああああああ嗚呼アア嗚呼!!!!」

どっがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

魔力の爆発は時空の歪みの中に吸い込まれて消滅した。

1063

--対ビィ領域--

ひゅるるるるるる……どちゃっ! ぱらぱらっ……

ハイ「ひ、一振りでビィを……」

どすんっ!

フォーテ「さすがお姉ちゃんだねっ!! 凄いやっ!! 綺麗なだけじゃなくて最強なんだっ!! あはっ!!」

ハイと腕を組み、目をきらきらさせて真勇者を眺めているフォーテ。

ハイ「ふぉ、フォーテちゃんいつの間に……」

どちゃっ!

ハイ「!」

ビィ「ぐ……」

そして、ビィがハイの目の前に振ってきた。

ビィ「が、ぐ……」

ぼろ……

ハイ「……ッ」

ビィはもう、消滅しかけている。

1064

--対ビィ領域--

ビィ「はぁ、はぁ……マタ、まヶタ……? 魔タ、黒星ナノ? 黒星、黒星……ずっと、永遠に……あ、アァaa……★」

ぼろろっ……

手足のつま先から砂となり消えていくビィ。

ビィ「マた、私、ダケ……ワタし……」

ビィは血の涙を流しながら震えている。腕に力を込めて体を起こそうとするのだが、

ぼろっ! どさっ!

腕が砕けて倒れてしまう。

からん、からん……

ビィ「!」

ハイ「!」

その時、ビィの目の前に一枚のメダルが振ってきた。

ビィ「あ、ああ、亜アァ亜ああ……!」

ずる、ずるる……

それを見たビィは這ってメダルに近づいていく。

1065

--対ビィ領域--

真勇者「……」

ずる、ずる

ハイ「それ、は……」

フォーテ「? ハイお姉ちゃん?」

ぽたっ

フォーテはハイが涙を流しているのに気づく。

ずる、ずる……

ビィ「私ノ、宝、モノ……大事ナ、ダイジな……a!」

ずる、ぼろぼろっ

体中が崩れていくのも構わずにビィは必死に進む。

ビィ「大事ナ、ダイジ……」

ハイ「ッ」

たっ!

カブト「!! ハイ油断するな! 魔王はそうなっても危険だ!」

たたっ

ハイは駆け寄り、メダルを拾った。

ハイ「そんなに、これが……大事なんですか?」

1066

--対ビィ領域--

ビィ「大、じ! カエして! KAえしいいてえ!」

ハイ「はい……」

すっ

ハイはビィの顔の目の前にメダルを置いてやる。

ビィ「ダイジ、大事……たかラ、物……」

ビィはそれが手元に来ると、安心したように表情を崩す。

ハイ「……」

それを見てハイはぽろぽろと涙を零す。

真勇者「……」

ハイ「……仲間なんてどうでもいい、なんて……嘘、だったんですよね……」

ビィ「タカら、宝……」

ハイ「私達がレベルアップをするには、心から信頼できるパーティメンバーがいなきゃ出来ないんです……道具としか見れないような相手がパーティにいても無理なんです。貴女は……自分の気持ちに気づかなかったんですか?」

ビィ「だい、ジ……ジ、じじ……」

ハイ「――そんなわけ、無いですよね」

1067

--対ビィ領域--

ぼろぼろ……

ハイ「ビィ……ありがとうございました」

ビィ「……ジ?」

ハイ「貴女の存在が、きっと最後のフラグだったんです」

ビィ「……」

ハイ「きっとハッピーエンドへの道をこじ開けるには、数えきれないほどの挫折と努力を積み重ねた貴女が私達の敵として現れなければいけなかったんだと思うんです」

ビィ「!!」

朦朧としていたビィの瞳が大きく見開かれる。

ハイ「ビィが、多分、最後の条件、なのかと」

ビィ「う……そ」

ぼろっ……

1068

--対ビィ領域--

ハイ「最初に貴女の襲撃にあったことで私は身構えることが出来ました。修練の塔に入るのも何かを感じて躊躇しました」

ビィ「……」

ハイ「それのおかげで先輩方は急いで修行を終えてきてくれたんだと思うんです。直前まで一緒にいた私達が、いつまでたっても入ってこない……それはきっと、外でトラブルが起きたからだ、と、思ってくれたはずです」

ビィ「」

真勇者「……」

ハイ「結果先輩達は、一度も間に合わなかったと言った貴女の見てきたものを狂わせた……貴女が間に合わせたんです」

ビィ「そんな……嘘……」

ビィはハイの顔を見上げる。

ビィ(確かに、最初に、接触した時にハイを、殺さなかったケースは、少ない……で、も、それが……こんな、こと、に……繋がる、なんて……)

ぼろっ……

ビィ「あ、は」

ハイ「ビィ……」

ビィ「あはははは、ははははは……!」

ぼろっ……

1069

--対ビィ領域--

ビィ「まるで、私、ピエロじゃないですか……」

すっ

ハイはしゃがんで、残ったビィの腕にそっと触れた。

ハイ「……ピエロなんかじゃない。貴女が今までずっと頑張って来てくれたから、このルートが生まれたんです」

ビィ「」

ハイ「感謝します。そして、お疲れ様でした……!」

かぽっ、かぽっ

バイコーン「ぶひるん……」

パイルバンカーから元の姿に戻ったバイコーンがビィに近づいていく。

ぺろっ

そしてビィの顔を舐めた。

ビィ「バイ、ちゃん」

1070

--過去--

ざぁあああああああああ

ビィ「……ごめんねユニちゃん。私もう汚れちゃいました……だからあなたに、二度と乗ることができない」

血まみれになって寂しげに笑っているビィ。

ユニコーン「……」

かぽっ、かぽっ

ユニコーンは、ビィが虐殺した死体の破けた腹に自分の顔を突っ込んだ。

ビィ「!? 何してるの!! やめなさい! そんな不浄なものに触れちゃ駄目! こらっ!」

がしっ!!

ビィはあわててユニコーンを連れ戻そうとするのだが、ユニコーンは言うことをきかない。

ビィ「駄目! 駄目駄目!! あ……」

ずるる……

ユニコーンの毛並みが頭部から順に真っ黒に染まっていく。

ビィ「あ、あぁあ!! そんな、堕ちてしまった……!」

ぺたん

ユニコーン改めバイコーン「ぶひるん」

ビィ「あなたは……綺麗なままでいいのに……あなたまで、汚くならなくて良かったのに……っ」

でも

ビィ「」

それじゃあ君のことを乗せてあげられないから

ビィ「」

確かにビィにはそう聞こえた。

1071

--対ビィ領域--

ぼろ……どく……

バイコーン「ぶひるん」

ぺろぺろ

ビィ「ふ、ふふ……バイちゃん、くすぐったい、です」

ハイ「! これって……」

ビィの体の大半は砂となって消えた。が、

どくどく……

ハイ「砂……じゃ、ない。血が、出てる……」

どくどくどく……

ビィ「ふん……ハイ……」

ハイ「……はい?」

ビィ「貴女も、負けちゃえばいいんです」

ビィはにっこりと笑って、

がく

息を引き取った。

ハイ「……」

ハイが大事にしていたメダルは、

ハイ「……負けませんよ。貴女の頑張りを、無駄に出来ないですから」

牛乳瓶の蓋になった。

1072

--対ビィ領域--

ひゅぅうぅううぅぅう

勇者(……魔王、魔族の死は砂となって消えるさだめ……でもビィは最後に、人間に戻ったのね)

ハイ「……」

ハイはビィに手を合わせている。

勇者(絶望……しなかったのね)

ぺろん

ハイ「わっ」

バイコーンはハイの顔を舐めている。

ハイ「やめてくださいユニ……あ、えっと……」

バイコーン「ぶひるん」

ざっ

調教師「最後の戦いに力を貸す、って言ってます」

賭博師「はー、やれやれ。やっとおっかないの倒せたみたいね。みんなも少しずつここに向かってきてるよ」

賭博師たちがハイ達と合流した。

ハイ「力を、貸してくれるんですか?」

バイコーン「ぶひるん」

ハイ「……ありがとう、ございます!」

かぽ、かぽっ!

ユニコーン「ぶるるっ!」

ハイ「あ、ユニちゃん。今までどこいってたんですか」

1073

--対ビィ領域--

盗賊「んー……」

がりがり

盗賊「悲しい敵だったなぁ。せっかく強い相手を倒したってのに、全然嬉しくねぇもん」

勇者「そうね。でも気を抜けないわ。なにしろ次は……」

トリガー「そう、僕が相手だからね」

全員「!?」

ひゅうううぅううううううう……

ハイ「! 来ましたね、トリガー!」

トリガー「うん。そろそろ出番だと思ってね。来させてもらったよ」

ふよふよと宙に浮いているトリガー。その態度からは焦りも気負いも一切感じられない。

トリガー「やれやれ、大分計算違いだよほんと。ビィちゃんの勝ち負け自体はどっちでもよかったんだけどさ、やっかいな敵を増やしてくれちゃうわ……」

トリガーはちらりと真勇者を見る。

トリガー「最後の最後で絶望をやめて魔王の骨が完成しなくなるわ……」

トリガーは牛乳瓶の蓋を見る。

トリガー「はぁ……余計なことしかしてくれなかったよビィちゃんは」

ハイ「」

がし

ハイ「トリガーーーーー!!」

ハイは地面に落ちている石を掴み、トリガーに向かって投げた。

すかっ

トリガー「当たらないさ。まだホログラムだもの」

1074

--対ビィ領域--

トリガー「まぁ、魔王の骨を回収してくれたことはよかったかな」

トリガーがビィの死体に目をやると、

ふわっ

ハイ「!」

ビィが集めた魔王の骨が浮遊する。

トリガー「二代目の王冠」

ぽう

トリガー「三代目のナイフ、四代目の腕輪、五代目のペンダント、六代目の杖……」

ヤミ「……」

トリガー「そっか。これ未完成だった。君が半分だけ死んでみせるとか器用なことしてくれたせいでね」

トリガーとヤミは無言で見詰め合っている。

トリガー「続いて七代目の目玉、九代目の石版、そして十代目のワニの剥製」

勇者「! 別ルートの私から、奪ったのか!」

トリガー「そうだよ。そのために呼び寄せたようなものだから」

1075

--対ビィ領域--

トリガー「更に別ルートの魔王達が持っていた8個がこちら」

ハイ「!!!!」

トリガー「本当ならこの世界の魔王の骨が10個あれば良かったんだけどね。別ルートから呼び出したものは、ルートを使った僕が動かなくなったら消滅してしまうのだから」

ハイ「……!」

スっ

カブト「KAGEROU!!」

ドンッ!!

時の止まった世界でカブトは跳躍し、魔王の骨を8個奪う。

カブト「魔王の骨の破壊は不可能。そんなことは既に試している! だが、このまま渡すわけにはいかない!!」

どくん

カブト「……何?」

どくん、どくん

時の止まった世界で魔王の骨が脈動する。

ぐちゃり

そして魔王の骨が溶け合い混ざり始める。

1076

--対ビィ領域--

カブト「!?」

ばしゅんっ!

盗賊「魔王の骨が消えた!? そうか、義兄さんのせいだね!」

勇者「お兄ちゃん!」

カブト「ぐっ!!」

ぐねぐねぐねぐね!!

カブトの腕の中で魔王の骨はうねっている。

トリガー「もう無駄さ。今更ね。手を離したほうがいいよ? 君もそれに取り込まれちゃうから」

ばしゅっ!!

カブト「!?」

魔王の骨はトリガーの下へと飛んでいく。

トリガー「さぁ人類の皆さん、悪あがきはよしなね。もう終わりなんだ」

ぐちゃっ!!

残る魔王の骨も融合する。

ぐちゃぐちゃぐちゃっ!!

トリガー「僕のヨリシロが出来上がるよ」

1077

--対ビィ領域--

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ「」

トリガー「」

真勇者「ふむ……確かに硬いな」

蠢く魔王の骨の集合体を切りつけた真勇者。

トリガー「……やめて欲しいな。魔王の骨は傷つかないとはいえ、これは大事なものなんだ。これで僕は世界を救済し……あれ? 赤姫を助ける、だっけ?」

ハイ「!……やっぱり……」

ざり

赤姫「トリガー」

そこへ現れたのは、赤姫。

トリガー「赤姫……やぁ、お久しぶり。何か用かな?」

赤姫「トリガー……貴方を解放しに来たわ」

トリガー「解放? さて、何のことだかよくわからないな」

赤姫「貴方がわからなくても関係ない。覚えておいて。私は諦めない女になったのよ」

トリガー「……」

ずぷ

トリガーの姿が魔王の骨の中へと入っていく。

1078

--過去--

勇者「トリガーの弱点?」

ハイ「はい。弱点、と言えなければ突破口と言いますか……」

盗賊「いや何でもいいさ、あのトリガーが相手なんだ。なんでも気づいたことがあるなら言ってくれ」

ハイ「私が未来から来た、ってことは皆さんに説明した通りです。で、私は未来であるssを読みました」

十代目「この世界のことが書かれていたもののことだろう?」

ハイ「はい。それはQさんというロボットが書いていたものだったので、もしかしたら勘違いで書いている部分もあるのかな、ってたまに感じてたことがあるんです」

勇者「それは?」

ハイ「トリガーの言ってることがおかしいんです」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

盗賊「いつもじゃね?」

1079

--過去--

ハイ「そ、そういうことじゃないんです! そりゃあ、どこまで建前と本音を使い分けていたのかわかりません。でも、前と後で言ってることが違うなって思う箇所が多かったんです」

盗賊「人間ならよくあることだよ」

赤姫「それは壊れたロボットだからじゃないか?」

ハイ「っ。それを言ったらそうなんですけど……でもあの話を一気に見た私はなぜか気になってしまって……そんな時に決定的だったのが未来でトリガーに会った時でした」

十代目「ふむ」

ハイ「彼は私達の戦いの後のことを語りました。でもその中でおかしいことを言っていたんです」



  トリガー「ツインテは名も無き治療員団の初代医院長に。アッシュは新王国の王として世界を安定させ、ポニテは妖精や精霊達との駆け足になった。レンは魔法学校を復活させたし、君は新設された騎士団の隊長となって戦った……」



勇者「……それの何がおかしいの?」

ハイ「ツインテさんの話があるのがいけないんです。だってツインテさん……最終決戦で呪いの槍を受けて、死んでいるんですから」

盗賊「!!」

1080

--過去--

盗賊「つまり、どゆことだってばよ?」

ハイ「それから私、無い頭を振り絞って考えました。ユーさんと相談したりもしました」



ユーは静に親指を立てている。

盗賊「あれ無視?」

ハイ「そして一つの仮説を立てたんです。ルートとは、別ルートとの間に道を作り、干渉することが出来る能力である。のであれば、あちらからの干渉も許してしまうのでは、と。それがトリガーに悪影響を及ぼしているんじゃないか……」

赤姫「……ほう」

ハイ「ルートはエネルギーの消費が激しいとユーさんが言ってました。でもそれでもトリガーはあまりにもルートを使用したがらなかった。後一回だとか、何らかの制限を自分に課していました。なぜなのか……それは、ルートを使う度に別ルートのトリガーの意識が自分の中に流れ込んできてしまって、自分の意識や記憶と混同してしまうからなんじゃないか……」

盗賊「! つまり……自分でも何がなんだかわからない、ってこと?」

盗賊は真面目な顔でそう言った。

ハイ「まぁ、はい。そんな感じです」

勇者「……」



   トリガー「……僕は死を選んだ古代種達が作った、人類の最後の希望の鐘」

   勇者「よく……わからない」

   トリガー「この循環でも人類の発展が止められないような不測の事態が発生した時、僕は魔王の意志で人類をリセットするよう、プログラムされている」



勇者(確かにあの時からおかしいと思ってた。なんで死を選んだ人たちが、人々をわざわざ抑制するシステムなんか作ったのかって……)

十代目「……」

勇者「……でもごめん、もしそれが真実だったとしてもトリガーの弱点になりえないわ」

ハイ「え」

勇者「だって、何を考えているのかわからない相手の方がよっぽど戦いづらいもの」

歯切れが悪いので増量してしまいました。でもなんかまた歯切れが悪いような。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

勝手に魔王の骨まとめ
二代目(銀蜘蛛) おもちゃの王冠→王冠
三代目(桃鳥) ???→ナイフ
四代目(茶肌) ???→腕輪
五代目(腹黒) ???→ペンダント
六代目(ヤミ) ???→杖
七代目(蠅男) ???→目玉
八代目(ウェイトレス) 弟から貰った指輪→指輪
九代目(脳筋) ウェイトレスから貰った手紙→石版
十代目(魔王勇者) 白ワニ(勇者の母親)の剥製?→ワニの剥製

魔王の骨になると形状が変わる?
ついでに今までのエピソード(魔王の骨になった後)

王冠 熊亜人が使用。擬似魔王化
ナイフ 盗賊王が東の王国から奪う。その後盗賊王が使用(外伝)
腕輪 代表から貰った牧師が使用
ペンダント 天使の攻撃を防いだ(外伝)
杖 盗賊王が南の王国から奪う(外伝)
目玉 盗賊王が使用。魔王化(外伝)
指輪 魔王の力を抑える効果。貧乳さんが装着中
石版 特になし
ワニの剥製 魔王勇者と融合

だれか追加、訂正してくれ

こんばんは、遅くなりました。


えっと、ほとんど覚えて無いので設定表からそのまま引っ張ってきました。もしかしたら矛盾があるかもしれませんがなにとぞ……。
本当は各々特殊能力がありました。一々覚えるのが面倒だろうなぁと思ってひっそり無かったことにしました。



二代目(銀蜘蛛)    王冠・いんらんちゃんが海辺で拾ってくれたガラクタの王の称号。
           効力・一定時間魔王と同等の戦闘能力を得る。

三代目(桃鳥)     ナイフ・母親が自殺するようにと送ってきたナイフ。多分呪いの槍系。
           効力・死の呪いをかける。

四代目(茶肌)     腕輪・一緒に旅をした病弱な少女が作った腕輪。
           効力・魔力増幅。

五代目(腹黒)     ペンダント・彼のストーカーからプレゼントされたペンダント。彼女の顔が描かれた絵が入っている。
           効力・攻撃を弾く。

六代目(ヤミ)     杖・王が名誉を称え送ったもの。
           効力・感覚、認識をずらす。

七代目(蠅男)     目玉・死の呪いをかけられた自分の目玉。
           効力・千里眼。

八代目(ウェイトレス) 指輪・弟から貰った指輪。
           効力・力を封じる。

九代目(脳筋)     石版・ウェイトレスから貰った手紙。

十代目(魔王勇者)   ワニの剥製・勇者の母親の剥製。

勇者         石の心臓・盗賊の心臓。

ビィ         メダル・初めてもらった仲間の証。




なぜ牛乳瓶の蓋がメダルになったのか→魔王の骨になる際になんか似たような価値のあるものに変換されます。

なぜハイがメダルを見てわかったか→ビィが大切にしていることとその形状からなんとなくわかったようです。ハイも同じく大事に持っているので。

1081

--対ビィ領域改め、対トリガー領域--

ごぽん

トリガー「……」

オオオオオオオオ……

トリガー(憎悪、絶望……ありとあらゆる負の感情が渦巻いている。それもそのはずか、これはそれらを溜めるものなんだからね)

トリガーは融合した魔王の骨の中に頭まで入っていく。

ずぷん……

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

トリガー(凄まじいね。さすが勇者達の感情だ。やはり最高だ)

ぐ、ぐぐぐ

トリガーの角が少しずつ肥大化していく。



  目を覚ました時は全てが燃えていた。
  サーカス会場は潰れ、団員は千切れて、団長は貼り付けられていて。

  ゴオォオウ

  人の死体の山の上に誰かが立っている。

  トリガー「……君の心の声が聞こえた」

  勇者「あ、あう……う」

  男の子はまっすぐにこちらを見ていた。
  男の子の頭の角は心なしか大きくなっているように見える。

  トリガー「……」

1082

--対トリガー領域--

ググ、グググ!

トリガー(負の感情はこの世最強のエネルギー……)

ギギッギギギ

トリガーの角は憎悪を吸って巨大化し続ける。そしてとうとうその大きさはトリガーの身長を超えてしまった。

トリガー(僕は、それを吸って元の僕に戻る)

バギン!!



勇者「――さぁ今のうちに最後の準備だ」

ぎごぎごぎごぎご

蠢く魔王の骨を外から見ている勇者達。

ハイ「あの……準備もいいんですが、変形中の今叩く、ってわけにはいかないんでしょうか?」

赤姫「さすがにトリガーも無防備ではない。超強力な防御壁を張っている。下手な攻撃をすればこちら側が全滅しかねないレベルのをな」

ハイ「……ならやめておきましょう。ごめんなさい、レベル1状態だとそれすらわからなくて」

十代目「完成するのを待てばいい。元より不意打ちは好まない」

ユー「……」



真勇者「なら、さっそくハイをレベル4にまで持っていく」

チャキ

ハイ「え」

1083

--対トリガー領域--

ズババッ!!

ハイ「」

勇者「」

十代目「」

ユー「」

真勇者が二本の剣で、自分を含めて五人同時に両断する。

シュイーン

そしてすぐさまくっつけた。

ハイ「……!? あれもう!? 攻撃と回復はやっ! さ、最終条件達成、レベル4、勇者!」

ドンッ!!

勇者(斬られた瞬間わからなかった)

十代目(気づいた時には繋がっていた……)

ユー「……」

1084

--対トリガー領域--

レン「……」

それを作業しながら見ているレン。

レン(まぁ、仕方の無いことにゃけど、ハイは彼らのこともパーティと認めたってことにゃよね、レベルアップ出来てるってことは……ちっとむかつくのにゃ……)

ぷー、っと頬を膨らませるレンだった。

ばちばちっ!!

ハイ「……! レベルアップ完了です、勇者さん!」

勇者「よし、これで勇者が五人揃ったわ。勇者だけのパーティ、完成ね」

ザンッ!!

十代目「ふ。本来なら絶対にありえないパーティ、か」

勇者←イレギュラー
十代目←正統な勇者
ハイ←イレギュラー
ユー←イレギュラー
真勇者←イレギュラー

十代目「……あれ?」

1085

--対トリガー領域--

ぱからっぱからっ

ユニコーン「ひひーん」

バイコーン「ぶひひーん」

ダッ!!

ユニコーンとバイコーンがハイに向かって跳躍、そしてパイルバンカーへと変形していく。

ギュルルルル、ガッシーーーーン!!

ハイは右腕にユニコーンを、左腕にバイコーンを装備した。

ハイ「ユニちゃん、バイちゃん……どうか私に力を貸してください」

盗賊「ダブルパイルバンカー!!……なんだそのロマンがロマンを積んでる武装」

秘書(小回りきかなさそうですね)

1086

--対トリガー領域--

ぎちごちぐちげちッ!

魔王の骨の動きが激しくなっていく。

勇者「……そろそろトリガーの方も終わりそうね。みんな、覚悟はいい?」

ハイ「はい!」

十代目「あぁ」



真勇者「問題ない」

勇者「よし。じゃあ……最初から全力でいくわよ。私達のこの戦いで、未来の全てが決まるのだから……」

スッ

がしぃーーーん!

勇者達は各々の武器を重ね合わせた。

レン「こっちもゴーレムの配置完了にゃ。いつでもいけるのにゃ」

1087

--対トリガー領域--

ズズズズ

トリガー「ヤレヤレ……準備万全ミタイダネ」

勇者「えぇ、おかげさまで……そっちも気分良さそうじゃない」

トリガー「ソリャアァネェ。ドレダケコノトキヲマッタコトカ……イヤァナガカッタ」

ぐに……ぐにぐにぐにぐに!!

魔王の骨は一気に形を成していく。

しゅぅううう……

ハイ「これが……トリガーのヨリシロ……」

トリガー「……」

トリガーは実体を手に入れた。その姿は、角の生えた巨大な赤子……。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

トリガー「さぁ――最終決戦といこうか。人類、いや、勇者諸君」

1088

--対トリガー領域--

トリガー「行くよ。そぉら」

ぽぽぽぽぽぽぽぽ

トリガーは周囲に強力なエネルギーフィールドを張り巡らせた。

勇者「リーダースキル、勇者の陣!」

ドギィイイン!!

トリガー「勇者の陣……? はて、初耳だ。なんだいそれは?」

赤姫「――パーティ全員が勇者である時のみ発動するリーダースキルだ。効果は強力だが本来なら実現しえないリーダースキル……だがこの日のために拵えたのだ。トリガー、お前を救うために」

トリガー「……へぇ。それはそれは、楽しみだね……」

ぎょごごごごごごご!

ハイ「! 凄い! 全ステータスがかなり強化されている! 私が私じゃないみたいです!」

十代目「ぶっつけ本番で調整できなかったが……確かにこれは凄いな」

トリガー「ちょっとくらい強くなった所で無意味なのに……無駄ながんばりだよ」

ぱきゅーーーーん

トリガーが掌をかざすと、漆黒のエネルギーが収束していく。

ギュボボボボボボボ

勇者(あ、まずい)

ハイ(あれ? 簡単に作ってるけど……)

レン「!? 宇宙王もこもこの一撃並みのやばさを感じるのにゃけど、気のせい……?」

1089

--対トリガー領域--

トリガー「気のせいかどうか、味わってみるといいよ」



勇者「!? 全員、防御障壁!!」

どぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

ユー「っ!!」

ビリビリビリビリビリビリ!!

盗賊「やっべぇなこれ! 当たったらまじ! まじ!」

レン「あ、あの一撃を五人で完全に防ぎきれてることも凄いにゃ……あれ? 1、2、3……三人?」

シュンッ!!

トリガー「! 攻撃をすり抜けてきたの?」

トリガーの後ろに回りこんでいたハイと十代目は

十代目「はぁ!」

どがぁん!

ハイ「やぁ!!」

どぎゃああん!!

各々の武器でトリガーに攻撃する。

1090

--対トリガー領域--

トリガー「……驚いたよ。あれを三人で受け止めたっていうのかい? 大した防御力だ。人間の出せる域じゃない」(いや……それもそうだけど、この子達、息ぴったり過ぎだね)

ちらっ

もこもこ「むむむむー」

通信師「……」

トリガー(なるほど、もこもこネットワークと通信師の援護で意思疎通を高速化してるのか)「ふ、何が全員防御障壁だよ」

勇者(う、速攻でばれたかしらね)

ハイ(それより私達の攻撃でダメージ受けてる気がしないんですけど……)

十代目(気にするな、想定内だ。次)

シュバッ!!

勇者「はああああああああ!!」

ガギィイイン!!

勇者が跳躍しトリガーに斬りかかるも、そのフィールドによって防がれた。

1091

--対トリガー領域--

勇者「はぁあああ!!!!」

ギギギギギギギギギギギギン!!

トリガー(手数だけ……じゃない。的確に、ほんの少しだけ弱まった場所を斬りつけている。伊達に20年も勇者やってないね)「でも」

ドッギイイイイイイイイイイイイイイイン!!

勇者「!!」

エネルギーフィールドが炸裂し、勇者が吹き飛ばされる。

盗賊「!」

トリガー「その程度じゃ敗れな」

フォン

ドギャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

トリガー「!!」

真勇者「……」

弾かれた勇者の後ろから、真勇者が七色の魔力を放った。それはトリガーのフィールドを突破し、トリガーにダメージを与える。

トリガー「ぐ、君達は……ざ、ざ」

1092

--対トリガー領域--

だだだだっだだだっだだっだん!

踊子「ふぅ、スキル、飛行能力付与の舞! さぁ皆さん~好き勝手やりまくっちゃってくださいな~」

いぃん

十代目(! 飛行能力か。感謝する)

勇者(踊子、助かるわ)

しゅいーん!

四人は空を自由に飛び交った。

トリガー「目障りだね……落ちてもらうよ」

きぃいいいん!!

レン「!! さっきのやつを全方位に撃つつもりかにゃ!?」

ユー「!!」

ダッ!!

それを見たユーはレイピアを構え、トリガーに向かっていく。

1093

--対トリガー領域--

賢者「ッ!」

スッ……

賢者「……く、どうやら魔力暴発は効かないみたいです。試してはみたんですが……」

シャーマン「おいバカもの、あんなの暴発させたら地上が吹き飛ぶだろうが……しかし効かないとこを見るとやはり魔力では無いようだの」

賢帝「みたいねぇん。てゆうか、魔力だとか魔力じゃないとかもうどうでもいいの。化物共のインフレがひど過ぎてついていけないわぁ……」

代表「だね。僕らでは束になっても敵わない……魔力供給でせめてものバックアップといこう」

ごぅんごぅんごぅん

円陣になっているゴーレムの中心にいるレン。

レン(……ここにいる全員の魔力を届けるにゃ。だから、頼むにゃ。勝ってにゃ!!)


どぎゃああああああああああああん!!

トリガー「! 僕が攻撃を宇宙に向けて放った……? なるほど、使ったね? ルート」

ユー「……!!」

ギギギギギィン!!

ユーはトリガーに斬撃を叩き込む。

トリガー「君は昔も今も、僕の邪魔ばかりするね。   ざ」

1094

--対トリガー領域--

ハイ(しかし、ほんっと硬いですね。防御シールドに全振りですか? 全然通りません!)

真勇者(まるで大事な何かを守っているかのようだ)

ユー(……)

勇者(もしくは何かを……みんな、前にハイちゃんが言ってた仮説のこと覚えてる?)

十代目(トリガーが狂っている、という話か?)

勇者(その話の後のことよ。もしかしたらがあるかもしれないから、そのことを頭の隅に置いておいて)

ハイ(はい!)

十代目(なるほど、了解した)

ぎぎぃいいいん!!

トリガー「また、テレパシーで会話かい? いいよ、どうせ君達人類はこのまま全滅するんだ、今のうちに好きなだけお喋りするといい」

どぎゃあああああああああああああああん!!

そしてさらりと放つ魔力弾を真勇者がなんとか弾く。

真勇者「ぐ、弾くので精一杯だ……」

トリガー「愚かな人類……やはり僕が管理しなくちゃならないんだよ。愚かなゴブリン。誰からも殺されないために」

ハイ「……」

1095

--対トリガー領域--

きゅーんどがぁあぁぁああん!!

トリガー「っ、君達だってモンスターにはなりたくないだろう? でも殺さないためには仕方無かったんだ。そうでもしなくちゃいけなかったんだ。僕が僕から護るためにはがっ」

ドドドドドン!!

トリガーの直上から魔力弾を当てたハイ。

バッ!

十代目「いいぞ、追い討ちをかける。六属性複合攻撃魔法、レベル3!」

きぃいいん

勇者「六属性複合攻撃魔法、レベル4!」

どぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

二人の魔力砲がトリガーに命中する。

どごおおおおん!!

トリガー「ぐっ、ざっ……邪魔をして欲しくないなぁ……。僕はこの力で赤姫を元に戻したいんだよ。天使からワニに、絵本は書かれていたんだ、外宇宙によって」

赤姫「……」

ひゅーん、どがどがどがぁああああん!!

トリガー「っづ……やはり蛇足なだけだ。人類は全て絶滅させておかなきゃならないね。だって人は大切な物なんだから」

ハイ(……トリガーに攻撃を与える度に言ってることがころころ変わってる……やっぱり、トリガーあなたは……)

1096

--対トリガー領域--

ドゴオオオオオオン!!

トリガー「ッ! 僕は、赤姫のために人類を滅ぼしてモンスターに管理させるために別ルートから人類を護るんだ……その為には王の子供が憎悪で勇者なんだァアl!」

真勇者(余達の攻撃がそれほど効いているとは思えないが、行動が緩慢になってきた……今の動きなら最大の一撃を与えられる!)

ダッ!!

トリガー「その程度の攻撃で僕をリセットするつもなのかい?……げ、げげ……ろ」

ハイ「ッ!?」

ドギャギャギャギャギャギャ!!

トリガーが放つ黒い光弾を全てかわした真勇者は二つの剣を強く握り、

ぎゅ

真勇者「トリガー覚悟!! スキル、X斬り!!」

ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

トリガー「あは、                      gに、にげ」

ハイ「!! 真勇者先輩離れて下さいっ!!」

真勇者「ッ」

ズギャシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

真勇者の斬撃は、誰も傷つけられなかったトリガーの防御を破った。

1097

--対トリガー領域--

ばぎ

ハイ「あ、あれ?」

ばき、ばきききききき!!

全身にひびが入っていくトリガー。

真勇者(? ハイはああ言っていたが、離れる必要は無かった。これで……ッ?!)

ばきっ……

トリガー「に、にgえ、るん、d……」

トリガーは痙攣を始め。赤姫に手を伸ばす。

トリガー「に、にに、に……逃げ、ろ!」

そして叫んだ。

勇者「!?」

ゴゴゴゴゴゴ……

???「……やれやれ、随分と耐えてくれたものだこのポンコツめ。ロボット風情が人の邪魔などしおって」

その謎の声はトリガーの中から聞こえてきた。

ハイ「!!」

1098

--過去--

勇者「――だって、何を考えているのかわからない相手の方がよっぽど戦いづらいもの」

ハイ「……まぁ、そうかもしれません……」

十代目「……」

勇者「……でも、有益な情報だったわ。精神にがたが来ているなら付け入る隙もあるはず」

赤姫「ふむ……」

赤姫は一人何かを考えている。

勇者「どうしたの? 赤姫」

赤姫「いや、な。そこまで追い詰められるほどになるまでルートを使わなきゃいけなかった場面というのが、今までに存在していなかったような気がしてな」

十代目「ならルートの危険性を知らなかったのではないか?」

赤姫「いやそれはない。あの時トリガーは一瞬だが全知全能に近い存在になったのだ。別次元との接触の怖さを知らなかったとは思えない」

ハイ「……だとすると」

ハイは汗をたらしながら喋る。

ハイ「あえてそれをやらせている人物がいるのかもしれません……」

1099

--過去--

勇者「あえて、トリガーにやらせている……?」

ハイ「はい」

勇者「待ってハイ。あのトリガーにそんなことを強要できる人物なんかいやしないわ。それにやらせるメリットが考えられない」

ハイ「――一人だけ、いるんです。あのssを見た私しか気づけなかったのかもしれませんが」

勇者「……?」

ハイ「メリットはこうです。その人はある時トリガーの中に進入しました。その人はトリガーの思想に影響を与えることは出来たけれど、完全に支配することは出来なかった。それどころか逆にトリガーに押さえ込まれてしまった」

赤姫「……!」

ユー「……」

ハイ「その人はトリガーを完全に操るために精神を揺さぶろうとしたんです。トリガーの精神が壊れてしまえばトリガーを乗っ取って自分の目的を果たすことが出来るから」

赤姫「嘘よ……」

勇者「……そいつの名は?」

ハイ「その人の名前は」

1100

--対トリガー領域--

ばぎ!

トリガーの体の中から二つの腕が飛び出し、左右に開いていく。

ばぎぎぎぎぎぎ!!

???「全く馬鹿なことをしたものだ……こんなことなら最初から自分の手でやるべきだった」

トリガー「こん、な、こと、に、な」

ばぎん!!

トリガー「」

トリガーを破壊し、中から飛び出した者は、

勇者(誰?)

十代目(誰だ?)

真勇者(誰だ)

ハイ「……!」

ユー「……」

赤姫「お」

???「ん?」

赤姫「お父、様」

???改め大統領「おお……久しいな我が娘よ」

トリガー初期設定について
トリガーは絶望をエネルギーとした人類を滅ぼすための最終兵器、という設定でした。
初代勇者に倒され封印されたトリガー。彼は元の力を取り戻すために勇者に呪いをかけ、勇者と魔王の永遠の戦いを作り出しました。そして勇者が絶望を感じ魔王となるその時の絶望を食らうたびにトリガーの角が伸びていく。これを10回繰り返すことでトリガーの角は完全な長さに戻り、復活する。勇者や人間達はトリガーの絶望という名の食料を生み出すための存在だったのです……。

しかしこれをやる前にある作品が先に世に出てしまいましたので変更を余儀なくされました。おかげでトリガーの設定の迷走は私自身よくわからんことになってしまいした。こんなことってあるのですね。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました。それでは投下していきます。

1101

--対トリガー領域--

ズシャッ!

地面に着地する大統領。

大統領「……」

ゴゴゴゴゴ

赤姫「……まさか、ハイが言っていた通りになるなんて……!」

ハイ「ということはやはりこの人は……大統領、さん?」

大統領「ほう、この時代でも私のことを知っているものがいるのか……ふ、なんてな。全てのことはトリガーを通じて知っている」

盗賊「角の生えた髭のおっさん……? こいつが例の?」

ハイ「皆さん構えて下さい。彼が、全ての元凶です!!」

バッ!!

大統領「……元凶とは随分な言い草だな。まぁ君達からしたら私が最大の敵であるということは否定しないがな」

余裕の笑みを見せる大統領。

赤姫「……お父様」

大統領「……赤姫よ。お前には失望したぞ。せっかくの大役だというのに役割を放棄するとはな……こうなっては親の責任だ。私がお前に代わって、人という種を終わらせるとしよう」

ハイ、盗賊、真勇者「「「!!」」」

1102

--対トリガー領域--

赤姫「どうして……どうしてです? なぜそこまでして人を滅ぼさなくてはならないのですか、お父様……!」

大統領「なぜ?――極めて簡単なことだよ赤姫。それは、どんなものでも完結することで輝くからだ」

赤姫「……え? 完結……?」

予想外の返答に、赤姫は動揺してしまう。

大統領「そうだ。どんな素晴らしい作品であれ、未完で終わればそれはもはやゴミだ。完結しない作品に価値など無い」

赤姫「……」

大統領「そして蛇足な引き伸ばしも等しく価値が無い。いいところですぱっと終わるべきなのだ。それが作品のためでもある」

赤姫「……お父様は……人類そのものが作品だと、おっしゃるのですか?」

大統領「あぁそうだ。だから私は人と言う素晴らしい作品を完結させてやりたいのだ。これ以上の発展を望めなくなったこの種を、晩節を汚す前に盛大に終わらせてやる……つもりだったのだ……」

大統領は手で顔を覆った。

大統領「……だが計画は失敗し、この有様だ……もはや随分と蛇足が続いてしまった……」

ズッ

大統領の体から謎のエネルギーがあふれ出していく。

大統領「――それも仕方が無いと割り切ろう。素晴らしい作品ほど終わり際を見誤るものだとしてな。では諸君」

ゴッ

大統領「終わりたまえ」

1103

--対トリガー領域--

ダッ!!

ハイ、勇者、真勇者、十代目、ユーの五人が一斉に大統領に飛び掛った。

大統領「ほう、私の話を聞いておいてまだ抗おうというのか。人類の汚点どもめ」

どががぁああああ!!

五人の攻撃を両腕で防ぐ大統領。

勇者「!……当たり前でしょ? あんたみたいな考え方に賛同できる人間がいるものか!」

大統領「ふん、ほとんどが賛成だったのだぞ。お前達のようなまがいものとは違う、成熟した心を持った愛すべき本当の人間達だったからな」

ハイ「! 私達も人間です!」

大統領「」

ドゴッ!!

大統領の殴打によって吹き飛ばされたハイ。

ハイ「げぶっ!?」

大統領「ふざけるなよまがいものめ……! 我ら人類に成りすます寄生虫め!」

ドガガガガッ!!

勇者「がっ!」

真勇者「ぐっ!?」

十代目「がはっ!」

ユー「!」

今度は残る四人に神速の打撃を加えて吹き飛ばした。

大統領「……お前達と話すことなど何も無い。ただ終われ」

1104

--対トリガー領域--

フォンッ!

勇者「!」

吹き飛ばされている最中の勇者の目の前に瞬間移動してくる大統領。

大統領「ふん!」

ドンッ!!

勇者「ッ!!」

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

大統領は追撃を加え勇者を大地にたたきつけた。

勇者「がふッ!!」

大統領「我が娘の姿を真似たものよ、安らかに終われ」

大統領はエネルギー弾を勇者に向けて放った。

ドギャアアアアアアアアアアアアアアン!!

1105

--対トリガー領域--

しゅぅうう……

勇者「ぐっ……!」

大統領「む? まだ息の根があるのか?」

ユー「!!」

ガギィイン!!

大統領「ぬう? はるか地平のかなたに吹き飛ばしたつもりだったが……」

ユーが大統領を後ろから斬りかかった。だが大統領の体は無傷。

大統領「はっ!」

ドガンッ!!

今度は振り向き様に裏拳を放つ大統領。しかしユーはそれをレイピアで防いだ。

ビリビリビリッ!!

大統領「……ほっ!」

ドンッドドドン!!

ユー「!!」

だが続けざまに繰り出される打撃技に耐え切れず、後方へと吹っ飛んだ。

1106

--対トリガー領域、後方支援所--

ヒュンッ、ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ユー「……!」

飛ばされた場所は盗賊やフォーテ達がいる後方支援所。

しゅぅうううう……

盗賊「げほっごほっ! おいおい、大丈夫かよユー君。ほら手」

駆け寄って手を差し伸べる盗賊。

ユー「ッ……」

ぐい

フォーテ「あそこまで桁違いだと何度も使わざるを得ないよね、ユーお兄ちゃん」

ユー「!……」

盗賊「? 何のお話?」

こつん

フォーテはユーと自分の額をくっつけた。

盗賊「何そのご褒美!?」

フォーテ「僕の力も残り少ないけど、これ、全部ユーお兄ちゃんに託すねっ。これで、お姉ちゃん達を守ってあげて!」

ぶぅうん……

ユー「……」

ユーは力強く親指を立てた。

1107

--対トリガー領域--

十代目「はぁあああ!!」

ヒュンッ!

大統領「? お前もか。変だな……ふんっ」

ドゴォッ!!

十代目「ぐふぅ!!」

ダダダダダッ!

真勇者「はぁ!!」

ザキィイイイン!!

真勇者の斬撃が大統領の二の腕を切り裂いた。

ぶしゅっ!

大統領「! ほぉ。お前は少しはやるようだな」

真勇者「せい!!」

ギギ、ギギギギギッギギン!!

真勇者の超高速の斬撃を素手で捌いていく大統領。

ドンッ!!

そして掌から発射されたエネルギー波によって真勇者は吹き飛ばされる。

1108

--対トリガー領域--

大統領「ふははは、これがカラテだ」

ざざざーーー!!

大統領「! またか。また踏みとどまった……」

ダダダダダダ!! 

ユー「ッ!」

ガキィンッ!

大統領「……お前か。お前だな? お前が、私の攻撃に何かしてるな……?」

ぎり、ぎりりりりり!!



--対トリガー領域、後方支援所--

盗賊「すっげぇ戦いだ……今までと比べてあんまり派手さはないけど、一発一発が必殺の一撃だって、俺でも見てわかるぜ……」

フォーテ「変なおじちゃんでもそれがわかるんだ? そうだよ、あれはもうフォーテ達では踏み込めない世界……」

賢帝(フォーテちゃんが言うと重さが違うわねぇん……)

ガガガガァアアン!!

フォーテ「ちなみにあの一つ一つの攻防、毎回ユーお兄ちゃんがルートを使って最低限にまでダメージを減少させてるんだよ」

盗賊「!? 毎回!?」

フォーテ「そう……そしてルートを使っても攻撃を避けることができないんだ……ルートの力の大本は向こうだからね」

盗賊(……そうか、さっき渡していたのはルートの力か)

1109

--対トリガー領域--

ハイ「ユーさん!」

ユー「!」

チュギィン!

大統領から一旦離れ、距離を取るユー。

ハイ「行きます! 奥義!」

そして挟み撃ちの形から、

ユー「奥義、勇者ラッシュ」

ハイ「ダブル勇者ショット!!」

大統領に向かって奥義を放った。

ドギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

大統領「子供だましだ!」

ぶわっ!

ハイ「!?」

大統領は二人の攻撃を全く意にも介さず、一直線にハイに向かって行って、

ドゴオォン!!

ハイを殴りつけた。

1110

--対トリガー領域--

十代目「ぐっ……」(全戦士の力だけじゃない、自然からも力を吸い取っているというのに……この様か……)

勇者(まずい……あれだけの魔王の骨を吸ったあいつは、もはや魔王なんて超えた存在だ……)

赤姫「お父様……いえ、貴方はもう、お父様じゃない……魔王を超えし魔王……超魔王」

大統領改め超魔王「魔王? 心外だぞ我が娘よ。私はただのどこにでもいる人間だ」

ドンッ!!

ユー「!」

十代目「ぐあッ!」

超魔王がエネルギーを解放するだけで、斬りかかろうとしたユーと十代目は吹き飛ばされてしまう。

ずざーー!

超魔王「……だが魔王とは人を滅ぼす者の名……人の歴史を滅ぼす身である私は、確かに魔王と呼ぶにふさわしいのかもしれないな……いいだろう、甘んじてその名、貰い受けよう」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

超魔王「私は超魔王だ。かかってこい勇者どもよ」

1111

--対トリガー領域改め対超魔王領域--

勇者「はぁっ!」

ハイ「やー!」

十代目「だぁあ!!」

ユー「!」

ぎぎぎぎぃいん!!

四人同時に超魔王に切りかかるもその全てを簡単に防がれてしまう。

ギギギィン! ギギギイィン!!

超魔王「む?」

しかし四人は攻撃を続ける。お互いのことを知り尽くしたような完璧なタイミングでの連続連携攻撃。

ギギギ、ギギギギギギギギギ、ギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

超魔王「む、こいつら……」

スッ

勇者「奥義、勇者スラッシュ!!」

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

そして一瞬の隙をついて勇者が奥義を放った。

1112

--対超魔王領域--

ぽた、ぽたぽた

超魔王「む……」

超魔王の体には確かに切り傷が。

十代目(入った!)

ハイ(入りました! やっぱり私達の力が全く効かないわけじゃない!!)

ぽた、ぽた……

超魔王「……やってくれるなトリガー。お前が勇者と魔王の設定を施した理由が今わかったぞ」

ユー「!」

超魔王「お前は自分自信を破壊してもらいたかったのだな……そして、万が一に私が表に出てきた時のための保険でもあった……」

しゅるるる!! ぎしっ!

真勇者「ウェイトレスの糸!」

真勇者は隙を見逃さず超魔王を捕縛する。

真勇者「叩き込め!!」

十代目「! 奥義、勇者バスターーーーーーー!!」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ゼロ距離から放たれるmap奥義。

ビリビリビリビリビリビリ!!!!

超魔王「ふん」

がしっ!

十代目「!?」

だが超魔王は奥義を受け続けながらも、平然と十代目の顎を掴んだ。

ばぎゃっ!

1113

--対超魔王領域--

十代目「ッ!? げっ」

顎を握りつぶされる十代目。

超魔王「魔王には勇者の攻撃が効く……それがなんだ。弱点でも作ったつもりだろう。 しかしもはやそれは、些細なことよ」

きぃいいいん!

顎をつかんだ掌にエネルギーを集める超魔王。

ハイ「! 離してください!!」

ズガァアン!!

パイルバンカーを顔に叩き込むハイ。だが超魔王は微動だにしない。

勇者「はぁ!」

ギィン! ズギィン! ギギィンガァアン!!

ユー「!!」

ズギャギャギャギャギャギャアアアン!!

勇者とユーの連撃ですら超魔王は無反応。

ドギャーーーーーーー!!

そして放たれる光弾。十代目の頭部は消え去った。

1114

--対超魔王領域--

真勇者「! 絶対回復領域!」

ぶぅううん!

勇者(真勇者がいれば殺されたってすぐ蘇生できる。でも)

ハイ(仲間が一人でも死んでしまうと)

ぶぅぅん

残りの四人のステータスが下がってしまった。

十代目(勇者が五人揃っている時のみ使えるリーダースキルと、十代目がやっていた自然からのバックアップが一時的に切れてしまった!)

超魔王「なるほど、全員で全員を補っているのか。ならば」

じゅる

十代目が完全に蘇生した瞬間に、

ズギャッ!!

今度は勇者の頭部が叩き潰されてしまう。

超魔王「一人ずつ潰していくか。蘇生が間に合わなくなるのはいつになる?」

1115

--対超魔王領域、後方支援所--

フォーテ「! 即死攻撃を防げなかった!? そんな、ルートがもう弱まってきている……ユーお兄ちゃん、もう限界なの……?」



--対超魔王領域--

ガガガガガァァン! ズギャッ!!

真勇者「く、今度はハイか!」

しゅぅいいいん

超魔王「む? ははは、なんだこれは。私まで回復させているじゃないか。間抜けめ」

ギギィン! 

超魔王「うるさいぞ?」

どぎゃっ!!

抗っていたユーも顔面を砕かれる。

真勇者「あぁ、これはそういう類の術だからな」

ひゅん!

超魔王「?」

す、ずぎゃぁあああん!

超魔王「ぬ!?」

正面から向かっていった真勇者が超魔王を切り裂いた。

1116

--対超魔王領域--

ぶしゅっ!

勇者(! 今当たり前のように超魔王の防御を読んで攻撃した!)

超魔王「……そうか、お前のそれには相手の癖を読み取る力があったのだったか」

真勇者(今こいつのダメージ履歴を見た。こいつが受け切れなかった攻撃の角度とパターンを、もこもこネットワークにあげたぞ)

きゅいぃん

ハイ「! ユーさんが復活しました! これで、なんとか立て直せましたね……!」

ざっ!!

五人の勇者が再び超魔王の前に立つ。

超魔王「……なるほどな」

顎に手をやり何かに一人納得している超魔王に、

真勇者「――七属性複合攻撃魔法、虹色剣!」

ひゅ、ずばあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

真勇者は虹色剣を叩き込んだ。

1117

--対超魔王領域--

ずばっしゃあああああああああああああ!!

ハイ(! やった、超魔王を両断しました!! ってゆうか真勇者先輩、頭一つ抜けてるどころの強さじゃないです!)

勇者(……これで終わりだなんておもっちゃいないわ、でもこの流れならいける……!! 確実にダメージは与えられているもの!!)

超魔王「……理解した」

じゅるる!

超魔王の切断面から紫色の粘液が飛び出し、二つに分かれた胴体をくっつけた。

じゅるる、ぴた

超魔王「理解した。お前達は少々だが厄介であることを。私の方が圧倒的に強いのにも関わらず、何か嫌な流れを感じる」

勇者(ふふ、気付いた? こっちは主人公補正持ちが全員集合してるのよ? 多少の無茶なら押して通れる!)

超魔王「――なので、だ」

ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん

超魔王は両の掌にエネルギーを溜め始めた。

超魔王「手っ取り早くいかせてもらうことにした」

ハイ(超エネルギー弾!? 防御を!!)

ボシュッ

勇者「……え?」

超魔王が放った二つのエネルギー弾は、

……オオオオオオォォォン

ハイ「……今、どこに、放ちました……?」

……オオォオン

超魔王「……星の中枢だ」

1118

--対超魔王領域--

どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

ハイ「!」

ユー「!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオゴゴゴゴッゴ!!!!

凄まじい揺れが地上にいる全員を襲う。

真勇者「ぐ! こいつ、星を攻撃しやがった!」

十代目「ぐああっ!! 星が、星が苦しんでいる声が、断末魔が!!」

自然の声が聞こえる十代目は絶叫に苛まれている。

ゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴ……!!

超魔王「ふふふ、ははははははは! どうだ、せめてもの贈り物だ。偽りのお前らにはもったいないくらいの贈り物だ。最後にどでかい花火が見られるのだからな」

真勇者「! 貴様ぁあ!!」

ひゅん、ざぎぃいんん!!

超魔王「――もはやお前らは終わっているのだ」

どんっ!

超魔王は真勇者を突き飛ばすと、

ふわっ

宙に浮いた。

……ゴゴゴゴ……

超魔王「星は、今死んだ」

1119

--対超魔王領域--

超魔王「せめてもの慈悲だ。最後は自分の好きな者の所に行って死ぬがいい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ハイ「ま、待て」

超魔王「残り時間は後五分程度だ。急げよ?」

しゅいーん

そして超魔王は飛んで行ってしまう。

勇者「」

ハイ「……」

十代目「……く」

ユー「……」

真勇者「こんな……こんな幕切れだと……?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

五人は呆然と立ち尽くしていた。

1120

--対超魔王領域--

盗賊「……実を言うと地球はもうだめです。突然こんなこと言ってごめんね。でも本当です」

びくっ!?

驚くハイ達。いつのまにか盗賊が五人の傍にまで来ていた。

盗賊「よっ」

勇者「ば、ばか……こんな時まで何言ってんのよ……! あんた空気読みなさいよ……ネタなんて言ってる場合じゃないのよ……」

盗賊「読めない字だってあるのにそんな高等なもの俺に読めるわけないだろ。ほらほら元気だせよみんな、落ち込んだってしょうがないじゃない?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

大地は隆起し、火山からはマグマが流れ出している。

ハイ「っ……」

勇者「……ごめん……駄目だった……みんなに助けてもらって、頑張ったつもりだったんだけど……」

勇者は涙ぐむ。

盗賊「ごめん? 謝る必要なんかねぇよ! 俺らが出来ないから代わりにやってもらってんだもん。駄目だった? そいつはまだ早いぜ。まだ何もかも終わって無いだろ?」

勇者「え……?」

盗賊「星くらいなんとかなるだろ」

盗賊はしわの増えた顔で笑った。

ハイ「」

真勇者「」

盗賊「だぁかぁらぁ、とりあえず君らは君らが出来ることをやってくれ」

ビシッ!

盗賊は天を指差す。それは超魔王が飛んで行った先を指している。

盗賊「――魔王を倒すのはお前らの役割だぜ、俺の憧れだった勇者さん達よぉ?」

残り数回ですね。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは! 遅くなりました……

追いついたカキコありがとうございます! もうすぐ終わりですが最後までよろしくお願いします。
それでは投下していきます。

1121

--対超魔王領域--

ゴゴゴゴゴゴ

勇者「……」

盗賊「……」

しばし無言で見つめあう二人。

勇者「……そうね。わかった、行くわ」

勇者は……困ったように笑った。

盗賊「――おう、こっちは俺達に任せて行ってこい。祝賀パーティーの準備して待ってるからな」

勇者「うん……行こう、みんな。まだ終わりじゃないよ」

ハイ「……ですね。もう諦めるのは飽きましたし、不完全燃焼です」

十代目「そうだな……やれるだけのことはやるか」

ユー「……」

b

真勇者「……」

勇者(踊子、飛行能力付加、もう一回頼むわ)

踊子(!……よーし、了解ですよ~! 私史上最大の舞を見せてあげます~!!)

1122

--対超魔王領域--

ドンッ! どひゅううううううん……

盗賊「……行った、か」

きらん

飛んでいく勇者達を見上げる盗賊。

ズズズ……

そこに闇が現れる。

フォーテ「でも、任せろって言ったって……なんとかする方法、あるの? おじちゃん」

盗賊「んー……」

盗賊は困ったように笑って汗をたらす。

盗賊「……やれるだけのことやっとかないと気持ち悪いだろ? 例え9回裏に100点差だとしてもさ」

フォーテ「……」

盗賊は全てを悟ったかのような、疲れた表情をしていた。

……ざり

盗賊「ん?……!? お前は!!」

1123

--大気圏--

ヒュオオオオオ……

超魔王「む?」

ドヒュウーーーーーー!!

下方から接近する七色の魔法を避ける超魔王。

超魔王「……お前ら……」

ゴオオオオオ……

超魔王は追ってくる五人の勇者を視認した。

超魔王「……既に終わった存在だと言うのに、まだあがくつもりか!」

勇者「当たり前よ! はぁあ!」

ドキィン! ドドガキィン!!

次々に超魔王に接近し斬り付ける勇者達。

超魔王「っ、もうお前達に勝利はないのだぞ? 例え私を倒したとしても、お前らが帰る場所は既に無いのだ!」

1124

--大気圏--

勇者「」

ズバッ!!

超魔王「む」

ぴっ

勇者の大剣が超魔王の腕を切り裂いた。

勇者「――だから、どうしたの!?」

ハイ「はぁあああ!!」

ドガァアアン!! ドガガァアン!! ドガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイのパイルバンカーがラッシュのように放たれる。

ハイ「――それでも、貴方を倒さなきゃならないんですっ!」

十代目「ちえぇい!!」

ズバン、ズババン!!

超魔王「ッ」

十代目「それが、勇者の責務なのだ……!」

超魔王「――だとしたら愚かな存在だ」

きゅぼ

無数のエネルギー弾が超魔王の周りに出現する。

超魔王「消えろ」

勇者「!」

ドボガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

1125

--大気圏--

しゅぅううう

超魔王「!」

ばちっ、ばちばち!

真勇者とユーが張った魔法障壁が、超魔王の攻撃から全員を守っていた。

真勇者「……お前を倒すことを信じてくれている仲間がいるのだ……そしてその仲間が、任せろと言ったのだ。余らは仲間に信じられている限り戦う。そして仲間を信じて戦い、勝つ!」

ユー「ッッッ!」

シュンっ!

超魔王「っちぃ!」

ドギィイイン!!

迫るユーの攻撃を防ぐ超魔王。

ユー「……今こそ、終わらせる時だ、魔王」

1126

--対超魔王領域--

ドォン……ドガァアアン……

斧女「凄い……あんな高いところで戦っている……」

研究員「魔力は宇宙空間でも自在に動けるように作られたものらしいですからねー。むしろホームグラウンドなのかもしれないですよー」

ズガァアアアン……

参謀長「研究員、星を治す手段を思いつきましたか?」

研究員「さすがにこの短時間ではー……何分、考えたことすらなかったことですからー」

参謀長「……ですね。私もです」

弓女「……」

熊亜人「……」

筋隊長「……」

ドガァアアン……

人々はただただ天空での戦いを見上げている。

1127

--大気圏--

ドガァアアアアアアアアアアアアン!!

超魔王「ッ」(どうしたことだ……? 少しずつ奴らの動きが良くなっていく……)

勇者「はぁっ!!」

ヒュヒュッ、ズバアァアン!

超魔王「グッ!」

勇者の大剣が超魔王の右足を切り落とす。

真勇者(明らかに奴の動きが鈍くなっている……奴の使う力が魔力じゃないことが原因か……?)

ドガァン! ズギャアン! ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!

超魔王「がっ、ぎっ!!」

真勇者の高速コンボが超魔王を切り刻む。

超魔王「目障りな、むしけらどもがぁあああ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアウ!!

超魔王は凶悪なエネルギー砲を勇者達に向けて放つも、

真勇者「逆転バリアー!」

ずる

超魔王「」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

跳ね返されてしまう。

1128

--大気圏--

超魔王「こんなものを跳ね返されたところでぇ!」

ボッ!

真勇者「魔王は自分の攻撃では傷つかない。それは既に知っているぞ!」

ズギャアアアアアッ!!

超魔王「ぎっ!?」

超速で突進してきた真勇者は、両手の剣で超魔王を串刺しにしたまま飛んで行く。

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

ハイ「! 真勇者先輩! どこへ!?」

イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

真勇者が向かった先は、月。

真勇者「このまま、叩きつける!」

超魔王「串刺し、だと!? うじむしの、分際でぇ!!」

キィン

超魔王は両手に巨大なエネルギー弾を作り出し、真勇者に向けて放つ。

ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

それとほぼ同時に二人は月の表面に突っ込んだ。

1129

--対超魔王領域--

ゴゴゴゴゴ……

盗賊「ほら手を休めるな! 自分に出来ることを考えて行動していけ!」

わーわー

レン「! レンなら、何か出来るかもしれないにゃ!」

盗賊「駄目だ! レンちゃんは今まで通り勇者達に魔力を供給し続けてくれ。星がなんとかなっても魔王を倒せなかったらどの道終わりなんだ」

参謀長(……とはいえそれでは我々は魔力を吸い上げられている状態……これで星までどうにかするというのはあまりに……)

魔導長「無謀なの。でも、だからこそ燃えるなのっ」

いつの間にか隣にいた魔導長は満面の笑顔。

参謀長「……ですか」

参謀長もつられてにやりと笑う。

竜子「っってー! そういうおっさんが何にもしてねーじゃねーか!!」

盗賊「え、俺に出来ることなんてあるの!?」

魔法使い「ぷぎゃーーーーwwwww星乙ーーーーーwwwww」

キバ「あ、戻った」

1130

--宇宙--

超魔王「……」

砕けた月から離れた宇宙空間に超魔王が漂っている。

超魔王「ぬ……なぜだ、なぜこうまで手間取ってしまうのだ」

右の掌を閉じて開く。

超魔王「力の差は歴然だというのに……む」

そして超魔王の目の前に巨大な宇宙船が現れた。

超魔王「我らが母艦……! やっとたどり着けたか……そうだ、これさえ手に入ればもはやどうでもいい……」

超魔王が宇宙船に接触すると、

どがぁああん!

外壁を破壊し、中へと進入していく。

超魔王「懐かしい……あの頃のままよ……!」

1131

--宇宙--

ハイ「真勇者先輩! 真勇者先輩! 大丈夫ですか!?」

真勇者「!」

目を開く真勇者。

ハイ「良かった……体は治っているのに中々目を覚まさないから心配しました……!」

勇者「真勇者、超魔王はどこ?」

真勇者「!……わからぬ。月に叩き付けた所までは覚えているのだが、その直ぐ後に余は粉々にされてしまったからな……」

勇者「違う、探して欲しいのよ。ツインテのサイドテールの力なら超魔王を探すことが出来るでしょ?」

真勇者「! なるほど……」

そういうと真勇者は無数のリングを作りだし、宇宙空間にばら撒いた。

ひゅばっ!

真勇者「どうも持っているスキルが多過ぎると何を使えたかわからなくなる傾向があるな……」

ハイ「何ですその贅沢な悩み……」

1132

--母艦--

プシュー

超魔王「ふぅ、この玉座も久しぶりだな。また座ることになろうとは思わなかったが……」

超魔王は積もった埃を払い、玉座に腰掛けた。

超魔王「……接続開始」

……ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

超魔王の右腕が変形しメインコンピューターに接続される。

超魔王「まずは全艦にエネルギーを回すか。それから掌握、、を、づっ!?」

ガクガクと超魔王の足が震えだす。

超魔王「な、ん、だ、こ、れ、は」

……クスクスクスクスクス

超魔王「だ、れ、だ、、、い、や、こ、の、こ、え、は」

一切身動きが取れなくなった超魔王の体の中から、その笑い声は聞こえてきた。

???「……この船を掌握するためには力を解放しなくてはならない。でもその程度のリソースの割き方では貴方を乗っ取れ無いと思っていた。だが、それに加えて勇者達から損害を受けていたならば……」

超魔王「お、ま、え、は、つ、ぶ、し、た、は、ず」

???「僕が乗っ取るチャンスが生まれるだろうと思っていた。そう、僕は勇者達を信じていたのさ。魔王でありながらね」

ぎぎ、ぎぎぎぎぎぎ!!

超魔王の体が変化していく。

超魔王「き、さ、ま」

???「貴方があの時僕を破壊してくれたおかげだよ。今の僕に不要な人格を全て切り捨てて、方向性を同じくする僕達だけで構成し直すことが出来たのだから……」

ブヅン

超魔王「ぎっ!?」

???「――さらばだ、人類の王。ラスボスには僕こそふさわしい」

超魔王の意識は完全に消え去った。

1133

--対超魔王領域--

ゴゴゴゴゴ

赤姫「……」

どごおおおおん

赤姫はただ死にゆく大地を眺めていた。

だだだ

盗賊「あ、いた赤姫ちゃん! ちょっとこいつのこと頼む!」

赤姫「? この期に及んで私に何をさせようと……!? な、なぜお前が!!」

盗賊が連れてきたのは、

トリガー「……」

盗賊「トリガーが変身した赤ちゃんの奴、あれがぶっ壊された残骸が残ってただろ? そしたらさっき物音がしてさ、見てみたらこれよ」

赤姫「トリ、ガー……」

トリガー「……赤姫、話は後だ。この星を救いたいんだろう? なら僕にはその手立てがある」

赤姫「!? え……?」

トリガー「疑うのも無理は無いことだと思う。でも嘘なんかじゃないんだ。僕は、人を救いたい」

1134

--宇宙--

シューン……

真勇者「反応はここのようだが……ん? あれ、か?」

ハイ「! なんです……? 巨大な……鉄の竜……?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

ユー「!」

その巨大な体は今もなお変形を繰り返している最中だった。

ユー「ッ!」

それを見たユーは焦りを感じ、一人飛び出して行った。

???「――やれやれ、相変わらず君は一直線だね」

勇者「!! この声は……」

???「もうちまちまと君達とやるつもりは無いよ。一撃だ。一撃で決着をつけようじゃないか」

その聞きなれた声は……

ハイ「……トリ、ガー?」

???「うん、僕だよ」

巨大な竜の頭部が勇者達に向いた。

1135

--対超魔王領域--

トリガー「時間が無いから手短に言うけど、星を救うのは簡単な話だ。星の核が壊されたのなら、もう一度星の核を作ればいい」

盗賊「え、まじ? そんなことも出来るの? それで何もかも元通りなの?」

赤姫「そんなわけあるか! 大体簡単に作ると言うが、そんなもの直ぐに作れるわけがない……」

トリガー「作れるさ。まずはそうだな、星の中枢へと至る道を作ろう。それだけが今の僕らに出来ることだ……」

赤姫「……」

トリガー「……信用出来ない、よね。ならば少しだけ語るよ」

トリガーは宇宙を見つめながら喋りだした。

トリガー「僕がルートによって人格と記憶がぐちゃぐちゃに入り乱れている状態になっていたのは知っているよね。それが大統領の策略だったことも」

赤姫「……」

トリガー「そしてあの時僕の精神の均衡は完全に破壊され、押さえつけていた大統領が表に出てきてしまった。でもそれを望んでいたものがいるのさ」

ぎりっ

トリガー「僕の負の側面達だ……彼らは、邪魔な僕を切り離すチャンスをずっと待っていた」

1136

--宇宙--

ゴゴゴゴゴ……

臓物がよせあつまったような醜い胴体と四対の手足。

ばさ、ばさ……

星を覆うかのような巨大な二対の羽と十六個の巨大な眼球を持つドラゴンの頭部。それが今のトリガーの姿だった。

???「くすくすくす。大統領に植え付けられた意思だったけれど、今ではこれは大切な僕の意志なんだ。誰かに滅ぼさせたりしない。人類は、この僕が滅ぼさなくちゃならないんだ」

ゴゴゴゴゴゴゴ

???「さぁ、ラストバトルだ。抗えるなら抗って見せなよ、勇者達?」

ゴゴォーーーン

鐘のような音とともにトリガーの口が開いていく。

ハイ「魔王、トリガー……わかりました、ならば私達の全てを、ぶつけます!」

ザンッ!!

勇者達が各々の武器を構えた。

???改め魔王トリガー「――ならば君達のこれまでの全てが無駄だったんだと、教えてあげるよ」

1137

--宇宙--

ぎぎ、ぎぎぎぎいぃいいいいん……

トリガーの口の中でエネルギーが収束していく。

ハイ(!!……予想はしてましたけど……怖い……ありえないほどのエネルギーです……)

パイルバンカーを持つ手が震えるハイ。

十代目(この分だと軽々と星を消し飛ばしてしまいそうだな……)

剣を持つ手に力が入る十代目。

勇者(あの星にある全ての魔力を集めても……きっと敵わないわね)

困ったように笑う勇者。

ユー「……」

ただ無言でその時を待つユー。

真勇者「……まず一つだトリガー、お前には否定を一つぶつけてやる」

魔王トリガー「……何?」

ハイ「え?」

真勇者「お前は前にこの世最強のエネルギーは負の感情だと言っていたな? だが、それは違う」

真勇者は星に手をかざす。

真勇者「最強のエネルギー、それは、愛だ!」

1138

--宇宙--

魔王トリガー「」

勇者「」

ユー「」

十代目「」

ハイ「……え? いきなり何を言い出したんですか……?」

さすがにフリーズする面々。

真勇者「考えてみろ。負の感情をエネルギーに変えることが出来るのなら、愛だって力に変えられるはずだ。両方とも強い感情エネルギーなのだから」

勇者「!……なるほど。確かにありえるわ……何よりトリガーに皮肉が利いてていいかも」(それに駄目でもポニテの魔力変換炉なら魔力に変換できそうだし)

ハイ「……え!? 何がですか!? 本当に、え? どうするつもりなんですか!?」

不適に笑う勇者と真勇者。

勇者、真勇者「「ありったけの愛を集めてトリガーにぶつける」」

魔王トリガー「」

ハイ「は、はいいいいいいいいいい!?」

1139

--宇宙--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王トリガー「ふ、ふふふ……嘘でしょ? そんな思いつきを、最後の最終決戦に使うつもりなのかい?」

勇者「……」

真勇者「……」

十代目「……どの道魔力だけじゃ足りないしな。もうなんでも試すしかなさそうだ……」

ある意味諦めた感じの十代目。

ユー「……」



ハイ「……はぁ、もういいです。私は皆さんに任せます……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王トリガー「……おいおい、最後だよ? 本当にそんなんでいいの? こっちとしてもガチでやりたいんだけど」

勇者「私達は本気よトリガー」

真勇者「あぁ、愛の偉大さを知るがいい」

1140

--宇宙--

魔王トリガー「……そうかい、わかったよ。ならば僕もこうしよう」

ズズズズズ……!

ハイ「! なっ!? 更にエネルギーが上がった!?」

魔王トリガー「……今その星がどんなことになっているのか、わからないわけじゃないだろう? 崩壊する直前の星だ、天変地異のオンパレードさ。数多くの人たちが嘆き、悲しみ、苦しんでいるんだよ」

勇者「! 負の感情……更にそれを集めているのね……!」

ズズズズ……

魔王トリガー「君達が愛を募るというのなら、僕は哀を募るとしよう。君達は、皮肉にも人の力によって滅ぼされるんだ」

ズズズズズズ!!

更に強大に、凶悪になっていくトリガーのエネルギー弾。

勇者(1140

--宇宙--

魔王トリガー「……そうかい、わかったよ。ならば僕もこうしよう」

ズズズズズ……!

ハイ「! なっ!? 更にエネルギーが上がった!?」

魔王トリガー「……今その星がどんなことになっているのか知らないわけじゃないだろう? 崩壊する直前の星だ。天変地異のオンパレード、き

っと数多くの人たちが嘆き、悲しみ、苦しんでいることだろう」

勇者「! 負の感情……」

ズズズズ……

魔王トリガー「君達が愛を募るというのなら、僕は哀を募るとしよう。君達は、人の力によって滅ぼされるんだ」

ズズズズズズ!!

更に強大に、凶悪になっていくトリガーのエネルギー弾。

勇者(……盗賊、聞こえてたわよね?)



--対超魔王領域--

盗賊(え、うん、聞いてたけどさ……本気?)



--宇宙--

勇者(もちろん本気よ。ラブ&ピース。愛は世界を救うんでしょ? さぁ、ありったけの愛を私達に集めて!!)

勇者は満面の笑顔で大剣を構えた。



--対超魔王領域--

盗賊「……」

フォーテ「……らぶ?」

盗賊「……えーと……そういうことらしいです、皆さん。愛を、どうやって送るのかわからないけど、送りましょう?」

みんな「「「え、えー……」」」

ゴゴゴゴゴゴ

ハイ「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王トリガー「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者と魔王がアイを募集した。

宇宙空間で音がーうんぬんは魔力のおかげでなんとかなっているのです!


というわけで、次回最終回です。次の月曜の夜10時くらいから投下したいと思います(多分)
それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

お待たせいたしました。最終回(?)です。

勇者候補パーティーその二、その三については、当時は

ツインテは二人に順位をつけず、単純に上と考え、
アッシュとポニテはツインテを一番と考えていた、らしいです。でもどのような解釈でも正解かと思います。

それでは投下していきます。


最後に皆さんにいつから見ていただいていたのかとか聞いてみたいですね。

1141

--対超魔王領域--

ゴゴゴ……

盗賊「ふぅ……星もどうにかしなきゃならないってのにさぁ……こりゃ更に急いでやるしかないみたいだ。通信師ちゃん、聞いてた?」

通信師(はい、聞いていました。なので盗賊さんが言いたいことはわかってます。でも……私の力じゃ広範囲過ぎて厳しいですよ……)

ズズズ……

その時通信師の下に闇が広がり、そこからひょっこりフォーテが顔を出した。

フォーテ「それ、フォーテが手伝えばできることっ?」

通信師「!……フォーテちゃん……でき、出来ます!」

盗賊「よっし! じゃあお願いするよ、あとトリガー! 中枢へ至る道ってのはどうしたらいいよ!」

トリガー「魔導長と魔法使いがいればなんとかなるかな。それは僕達だけで受け持つから心配しなくていいよ」

盗賊「そうか。じゃあトリガー達は別行動だ。よろしくな!」

魔法使い「うぇー……?」

魔導長「了解なの。最後の大仕事、やったるなのっ!」

魔法使い「……ファーーーーwww」

1142

--避難区域--

ドゴオオオオン!!

ヒューーードガアアァアアン!!

東の負傷兵「うぅ! もう、おしまいだ……まさか、まさか星が無くなっちまうなんて……ちくしょぉ! やっぱり人は魔王には勝てなかったんだあぁ!」

わーきゃー!! どどどどどどどど!!

???「盗賊……」

パニックを起こしている民衆の中に、一人落ち着いて空を見上げている老齢の女性がいた。

ザザッ

盗賊(……あー、あー。テステス。もう喋っていいのよね?)

突如盗賊の声がテレパシーとなってみんなの心に届いた。

???「……!?」

通信師(いいですよ)

盗賊(うむ。あのー、すいませんー。わたくし盗賊と言うものなんですがぁ。えぇーちょっと皆様にお願いがありましてね……?)

ざわ、ざわ……

盗賊(皆さんもご存知の通り、現在魔王との最終決戦中なわけなんですが、ちょっーとばかし分が悪いんですよ。具体的に言うと勇者達は負けかけてるしこの星は爆発しかけてます)

1143

--避難区域--

ざわ、ざわざわ

西の避難民「な、なんだこいつ……この非常時に間の抜けた喋り方しやがって!! ふざけてんのか!」

東の避難民「そうだそうだ!」

北の避難民「大体お前らがしっかりしないからこんなことになったんだ!! どう責任とってくれるんだ!!」

わーきゃー!

盗賊(うっ)



--宇宙--

ゴゴゴゴ

魔王トリガー「ふふ……この世界に満ちる負の感情がわかるかい? どんどん溜まっていくよ……。そっちはまだ大して集まってないみたいだけどね」

ハイ「ッ!」

魔王トリガー「さぁ、もっとだ人間達よ。集え負の力。世界を憎悪と悲哀で埋め尽くすんだ!!」

ズヌゥウウ!!

魔王トリガーは何かの波動を星に放った。

1144

--対超魔王領域--

盗賊「ぐぅ……こいつら、てんで人の話を聞きやがらねぇでやんの。なんてやつらだ!」

賢者「盗賊君……今みんなは不安と恐怖に支配されています。言葉を選ばなくては逆効果ですよ」

盗賊「そうは言っても俺ビジネスマナー受けてないし……」

踊子「社会不適合者~」

うぅうん……

フォーテ「ん? 何か空から降ってきたよ?」

通信師「え……?」

それは呪いに精通したフォーテにしか感知できないほど微弱な力の波。

フォーテ「……これは負の感情を増幅させる力だ。僕達なら何の問題も無いけど、抵抗力の無いただの人間達が受けるとまずいよっ」

1145

--避難区域--

西の避難民「ち、ちくしょう……! 全部、全部お前らのせいだぁ!!」

うぉーーー!!

突如暴徒と化す避難民達。

わーきゃー!!



--対超魔王領域--

符術師「うお、まじかよあいつら! くそ、あっちにはろくに戦えるやつがいねぇ! 暴動止めらんないぞ!!」

剣豪「おい東の王。お前がやってやれ。王の言ならいくらか正常に戻してやれるんじゃねぇのか?」

東の王「……確かに王の言ならある程度コントロールは出来るだろうな」

盗賊「まじですか! じゃあお願いします東の王様!」

東の王「だが、王の言では人々を説得することしか出来ない。王の言葉では愛を生み出すことは出来ないのだ」

盗賊「ッ」

東の王「――ここはお前の役目だ、盗賊」

1146

--避難区域--

北の避難民「どうせ、どうせ何もかも終わっちまうんなら最後くらい好き勝手してやる!!」

わーきゃー!!

???「……およしよ! みっともない!」

北の避難民「っだよ、なんだばばぁ! 口出すんじゃねぇよ! 関係ねぇだろ!!」

???「まだ戦ってる人たちがいるってのになんだい情け無いッ!! 赤ちゃんみたいにぴーぴーぴーぴー! それが大の男のすることかいッ!?」

ビリビリビリッ!!

北の避難民(な……なんだこの圧倒的な母ちゃん力(パワー)は……)

死んだ母にしかられた時のことを思い出して尻込みする北の避難民。

スッ

老婆は天空を指差した。

???「……あそこで今も戦っている人たちがいる。でもそれは自分のために戦っているのかい……? 違うよ! 私達みんなのために戦ってくれてるんだろ!? あんたらに非難する資格があんのかい!?」

北の避難民「ぐ……」

ざわ、ざわ……



--対超魔王領域--

盗賊「? あれ? 勝手に暴動が治まりかけてるんだけど」

1147

--避難区域--

ざわ、ざわ……

???「……あの子達さっき、何かお願いがあるとか言ってただろ? 聞いてやってくれよ……それが最後になるのならなおのことさ……」

ざわざわ

周囲の人たちが暴れている人たちを見ている。

北の避難民「……ッ……すまん……」

ざわざわ

その老婆の言葉が波のように伝わっていって、ついには暴動が治まってしまった。

???「……」(やれやれ全く……手のかかる子だよあの子は……まだ私に助けられるかね)

ざざっ、ざー

盗賊(あ、騒ぐの終わった? もう喋っていいかな?)

イラッ!!

まとまりかけてた避難民達の心は逆に一つになったという。

???改め盗賊の母(あ、のバカ息子……!)

1148

--避難区域--

盗賊(やー、何分学が無いもんで、色々みんなの神経逆撫でする発言しちゃうかもしれないけど、そこはごめん流してくれ。今本当に時間が無いんだ。だから簡潔に説明していくよ)

ざわざわ

盗賊(あ、一つ注意しておくと、今、魔王が負の感情を集めてる。だからみんなに暴れまくられると俺達がどんどん不利になっちゃうんだ。気をつけてくれ)

じろっ

北の避難民「……ぐ、わ、悪かったよ」

周囲の人達に睨まれてばつが悪そうにしている。

盗賊(でもそれとは逆に、勇者達は今、愛を募集してるんだ。この愛ってのが抽象的でよくわからないんだけど、家族や仲間を大切に思う、そういう気持ちでいいんだと思う。それをあそこで戦ってるあいつらに、少しだけわけてやって欲しいんだ)

ざわざわ……

盗賊(確かに危うい状況だけど、まだ終わっちゃいないんだ。星についても、何とかできる可能性を見つけた)

おぉ、と、一部で歓声があがる。

盗賊(……大体もし終わっちゃうにしても、一矢むくいた方がいいよな? それに誰かを憎んで死ぬよりは、誰かを愛しながら死んだ方が気持ちいいと思うんだよ)

ざわざわきもちいいざわ……

盗賊(あ、気持ちいいで思い出したけど、今上で戦ってるメンツの中に俺の嫁さんと娘がいるんだけどね? 嫁さん極度の貧乳なのに娘が巨乳に育ってくれてね?)

……ひゅーん、どがぁああああん!!

空から火と七色の魔力砲を打ち込まれて死亡する盗賊。


--宇宙--

勇者「あっのバカ! 人前で何を言ってんのよ!!」

真勇者「……」

十代目「貴重な魔力が……」

ハイ「精密射撃すぎるんですがそれは」

1149

--避難区域--

しゅぅう……

盗賊(……というわけでだ、俺達だけじゃ魔王を倒せない)

どういうわけだざわ

盗賊(だから――自分の愛する人を守りたいなら力を貸してくれ! 償いっていうかお礼っていうか、ともかくこれが終わったら、俺が出来ることならなんでもしますから!! だから頼むよ!)

ん?ざわ……

南の避難民「……」

南の避難民幼女「ぱぱぁ……」

南の避難民「……」

南の避難民は、自分の手を握り締めている娘を見たあと、その手を強く握りしめた。

ぎゅ

1150

--各地--

ゴゴゴゴゴ

盗賊の母「盗賊……」

盗賊の母は手を合わせ目を瞑って祈る。

秘書「……アッシュ」

神父「この声……あの時のよく死ぬ子か……大きくなったようですね……」

西の王「……ふんっ」

料理屋「あいつめ……知らない間に随分差ぁつけられちまったな」

サキュバス「負けたら承知しないよ、ど貧乳」

ワーウルフ「……私達の時代もこうだったならと、考えてしまいますね」

ミイラ「え? 貧乳って、え? ちょっとまって?」

白ワニ「あらまぁ! そんなことになっていたの!?」

ヴァンパイア「気付いておらんかったのか……?」

グリフォン「イエス、マムッ!」

D城門兵A、D城門兵B「「カットインラブ注入!」」

D亜人王「……」←見てない振り

鷲男「……」

東の王「……ふ」

北の王「たのんますー! まじたのんますー!!」

召喚士「ここまでやっといて負けるのは嫌でやんす! 最後はハッピーエンドがいいのでやんす!」

人形師「ほっほっほっ」

剣豪「ち……最後の戦での役回りがこれかよ。武人らしくねぇなぁ」

1151

--各地--

がちむち「頑張れお譲ちゃん達ー!! 俺らがついてるからなーー!!」

マッスルひげ「ツインテちゃーん! ツインテちゃーーーんんん!!」

屈強な男「ツインテちゃーん! ツ、ツーっ、ツイイーッ!! ツイーッ!!」

マスター「……頑張ってください」

村のおばさん「あらいやだ!」

射王「ふぁあぁあ……」

ナビ子『いえぇーい!』

メイド「……」

番犬「ばうっ!」

ちびメイド「ございますっ!」

ヤミ「……」

やみ「……?」

ブラ「ツインテちゃん……頑張って」

魔剣使い「どうかっ……!」

果物屋「メロン」

符術師「負けんなよー! 絶対いけるぞーーー!!」

通信師「耳元でうるさいです符術師」

占師「おやおや」

包帯女「ツインテ、アッシュ、ポニテ!」

義足「負けないさ、あの子等なら」

テンテン「……えぇ、そうですね」

1152

--各地--

太男「貧乳ってもしかして……」

細男「大男も思いましたか? まさかあの時の貧乳では!?」

中男「ひーんーにゅーうー」

研究員「さー、どうなりますかねー」

ペガサス「J・クロフォードデース!」

人造魔王(あんま出番無かったナー……)

賭博師「ツインテ様……」

調教師「どうか……女神の力で」

盾男「ツインテちゃんはぁはぁ!」

弓女、斧女「「きっも!」」

実況「さぁさぁさぁ人類の最後のあがきとなるのか! それともこれが未来への一歩となるのか!! どう思いますか解説さん!」

解説「もう五分たったっしょ」

ウーノ「機械の祈りに意味があるかわかりませんが……」

ドゥーエ「ロボットにだって愛はあるよ!」

トーレ「十代目様……」

ウーノ、ドゥーエ「「え」」

1153

--各地--

受付嬢(あの時の……頑張って……!)

鬼姫「ぶちのめすっすよ! あたしのアッシュくーーーん!」

変化師「あ、アッシュはおでも狙ってる……ライバルだな」

宿の店主「皆さん……頑張って!! 無事に帰ってきてくださいね!」

義賊「行くぞ、応援フォーメーション!」

義賊右「サー」

義賊左「イエッサー」

疾風「もし駄目でも恨むだけや! 気を張ってしっかりやり!」

迅雷「う、恨んじゃだめだよ」

いちばぁ「じっちゃの分までがんばるんじゃぞ」

給仕(あのダースの子か……)

黒づくめの集団「「「……」」」

槍兵「……なんか宗教みてぇだな」

伊達男「こいつはぁ素敵だ……」

ほくろ通行人「たいこ叩きます」

占隊長(やっぱ盗賊さんかっこいいかも……)

忍隊長「……ニンッ!」

筋隊長「レベルを上げて筋肉で殴ればいけーーる!」

蜂隊長「ぶーん」

鯱隊長「ぴちぴち、ぴち……」

1154

--各地--

シノビ「……」

護皇「やれやれぜよ」

侍「ツインテ殿、アッシュ殿、ポニテ殿、ハイ殿……」

東の憲兵「また君は!! こんな時に何を膨らませとるんだ!!」

医師(知らないふり知らないふり……)

監獄長「いやぁ立派な刀ですねぇ!」

大臣(も、もしかしたら恩赦があるかもしれない……?)

包帯犬亜人「お姉ちゃん……」

宿男「ひーっひっひっ」

市松人形「……ニィ」

ぴっち『え、今ぴっち達中に入ってないのに笑ったっぴ……?』

ぱっち『こわ……ものほんっぱ……』

僧侶「きゃはは! 実は」

絵師「ぎゃはは! 姉妹です!」

戦士「う、うす……」(今そんな発言しなくても)

1155

--各地--

吟遊詩人「それでは愛を歌にのせて~」

狐男「こーん」

犬亜人「わーん」

虎男「が、がおー……」

軍師「ブレーメンかな?」

狐娘(兄貴バカやってんなぁ)

フォーテ「お姉ちゃん……」

花師「フォーテちゃんのお姉さん頑張ってください」

風水師「やったれあるー!」

占星術師「星はまだ終わって無いって言ってるのよ」

聖騎士「ぶるあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

おばちゃん達「「アラララアラアラアラアラアラアラアラアラアラアラ」」

1156

--各地--

姫「姫ちゃんも応援するよーー!」

参謀長「えぇ、初めて役に立てそうなのでがんばってください」

たんぽぽ星人「ひでぇ……」

突撃長「このおいぼれの最後の命、全て応援で使い切って見せますぞ!」

潜入長「やめれ」

族長「サンボウッ!」

もこもこ達「「「もきゅー!」」」

北の老兵「あの者達を愛さずにはおれんよ……」

北の兵長「おいじいちゃん顔近いぞ。あっちだあっち」

商人「あの時はありがとうなー!」

悪役(うお、あの時のやつじゃん、近づかないどこ)

眼鏡学生「レン先生ー!」

筋肉学生「ファイトだぞー!!」

ヤモリ学生「ふんっ」

チャラ学生「くそ、さっさと勝っちまえ!」

大カバ亜人「いやー! 今戦ってるハイっちゅうのはわしの部下なんだぎゃっ! 凄いみゃ?」

召使「うるさいです近寄らないで下さい」

1157

--各地--

右審査員「じー」

中審査員「じー」

左審査員「じー」

競売警備長「猫ちゃん頼んだぜぇい……?」

紳士金持ち「お……お……おぱんちゅ」

まっちょ奴隷「お、おい大将。あんたはやんなくていいのか? なんかみんなやってやすぜ?」

奴隷王「……」

亜人保護団体幹部達「おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!」

代表「え、何言ってるんですかこの人達……」

護衛姉妹「「……」」

熊亜人「先ほどスキルかけてたがお?」

鎧使い「ま、全く私がいないと駄目なんだからっ! 仕方が無いから応援してあげる! 勝ちなさいよ? 十代目ッ!」

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「愛ゆえに……」

賢帝「死ぬのはゴメンだわ。だから勝って頂戴」

Q「……」

土の精霊「モグ」

ケンタウロス「負けたら承知しないよ」

D先生「……」

竜子「ハイ……負けんなよ」

1158

--各地--

賢者「ツインテちゃん……勇者さん……みんな……」

踊子「大丈夫でーすよ~あなた。きっとあの子らならやってくれますって~」

レン「それもそうにゃ。いつだって、どんなに困難な時だって、私達はなんとかしてきたのにゃ」



--草葉の陰--

?「お、おで」



--各地--

後誰残ってるか覚えてないので人造勇者一同。

カブト「!?」

影月「いいんか!? それでいいんか!?」

キバ「最低……」

一号「実は生きてたよわし」

1159

--穴--

しゅぅうう……

トリガー「ご苦労二人とも。これで穴は出来た。後は彼らを待つだけさ」

魔導長「ふぅ、つっかれたーなの。星中にひびがはいってたからやりやすかったけど」

魔法使い「でwもwこれであいつら勝てなかったら意味なしwwwwwpgrwwwwww」



--各地--

ゴゴゴゴ

赤姫「……さぁ、私達に出来ることは、全てやったよ……」

1160

--宇宙--

ゴゴゴゴゴゴ……

魔王トリガー「……!」

ハイ「――人と人の繋がりって、凄いですよね。盗賊さん達やツインテさん達が歩んできた人生があったから、今や全ての人たちが手を結んでいるんです」

ゴゴゴゴゴゴ……

ハイ「本当に凄い……これが、私達の物語です。私達の、力です!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

魔王トリガー「……ばかな」

ハイ達の下に集まった愛は、トリガーのエネルギーの数百倍もの大きさになっていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

ハイ「……無駄なものなんて、何も無い。全部、大切なものなんですよ」

1161

--宇宙--

勇者「……見ろトリガー! この星の光を! お前達が絶望した時代とは違う! 今彼らは心の底から明日を望んでいるんだ! 簡単に命を手放したりしない、人は未来を欲しているんだッ!」

魔王トリガー「……」

トリガーはかつての人類を思い出す。全てを悟ったかのように、なんでもないかのように死を選択した人類を。

真勇者「……所詮お前が使うのは負の力。それでは愛には遠く及ばない」

トリガー「……」

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!

愛のエネルギーは無色となり、恒星以上に輝きだした。



--各地--

イイイイイイイイイイイイイイイン

盗賊「おー、綺麗綺麗。六色七色を経て無色へと至る、か」

踊子「うるせーですよ違う意味でのむしょく~」

1162

--宇宙--

魔王トリガー「……なら見せてみるがいいよ、その愛の力とやらをさぁ!」

きゅいいいい、ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

魔王トリガーは負の力が込められたエネルギー弾を放つ。

勇者「行くよ、みんな!」

ハイ「はい!」

真勇者「あぁ」

ユー、十代目「「始終奥義……」」

ぎゅるるるるる

五人の力によって無色のエネルギーが巨大な剣の形になった。

ゴゴゴゴゴゴ!

ハイ、勇者、真勇者「募集剣ッ!」

ブンッ!!

魔王トリガー「!」

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

1163

--宇宙--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

募集剣と負のエネルギー弾が激突した時の衝撃波が星を襲う。



--各地--

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

レン「にゃぁあ!!」

ビリビリビリ!!

盗賊「こんなに離れてるのにこの衝撃波……頑張れよ、勇者! ポニテ!」



--宇宙--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

勇者「っく、ぐぅ!!」

ハイ「凄い、パワー、です!」

真勇者「だがそれでも勝たねばならん……!」

十代目「あぁ、負けられないんだ!」

ユー「!」

ググ、ググ……

魔王トリガー「ははは、愛ってのは見せかけだけなのかな? どうやら押し切れそうだよ」

グググググ!!





   「執事」

魔王トリガー「」

その時赤姫がトリガーの脳裏を過ぎる

魔王トリガー「」



ハイ「! 愛の力が増えた!? い、今です皆さん!!」

ズッ

ハイ、勇者、真勇者、十代目、ユー「「「はぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」

魔王トリガー「!……………………ふ」

ドギャッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

募集剣はエネルギー弾を切り裂き、魔王トリガーへ到達する。

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

ハイ、勇者、真勇者、十代目、ユー「「「いけえええええええええええええええええ!!!!」」」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

トリガー「……ちぇ……やっぱり、愛は……邪魔だ、ね」

カッ

1164

--各地--

……ッドォォオオン!……

盗賊「! なんかすっげぇ爆発したけど、どっち、だ!?」

レン「ツインテ達に、決まってるにゃ……決まってるのにゃ!!」

賢者「……ッ」

踊子「大丈夫ですよ~……あの子達を信じましょう~」

震えている賢者と踊子の手。

フォーテ「……飛び散ったエネルギーが僕の索敵を邪魔してよくわかんないっ!」

竜子「ハイ!」

代表「ハイちゃん!」

……うぅう

盗賊「……?」

うううううぅううう!!

ぼっ!

雲を突き破って落下してきたのは、

きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

真勇者「ッ!」

1165

--各地--

盗賊「やった! 勝ったんだな!? そして真っ先にパパの所に!? おいで! スピード落としてからおいでー!」

賢者「ばっ、盗賊君! あれ僕の子供あるんですからね! 抜け駆けはだめですよ!」

きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

盗賊、賢者「「……いや、ここへ来てその加速はおかしい……」」

しゅぽっ!!

盗賊「ひぃっ!?……あ、あれ?」

真勇者は更に加速して、魔法使い達が掘った穴へと入っていった。

賢者「ん……?」

盗賊「……!? トリガー! てめぇ!!」

トリガー「――ご察しの通りだよ。今、真勇者だけに、この世界の守り方をテレパシーで教えた」

賢者、踊子、レン「「「!?」」」

トリガー「だって、彼らしか無理だからね」

1166

--各地--

きいいいん! ずだんっ!!

その真勇者を追うようにハイ、勇者、十代目が空から降りてくる。

ハイ「はぁ、はぁ!! し、真勇者先輩はどこです!?」

勇者「あの子、戦いが終わったらいきなり! すごく深刻な顔してた!」

盗賊「い、いきなりきてその穴の中にすっぽりと入っちゃった! どうしよう!?」

あわわあわわ

赤姫「トリガー!……皆でやれることじゃないのか……?」

トリガー「……無理だよ。犠牲も無く終わるのはね」

盗賊、勇者「「!?」」

トリガー「……これしか無いんだ。無論邪魔もされるだろうことはわかっていた。だから内緒にしてたのさ」

盗賊「トリガー!」

通信師「と、とりあえず、魔王との戦いは、勝った、んですよね?」

ハイ「え? あ、はい。それは、勝ちましたけど」

通信師「……き、聞きました皆さんーーーー!」



--各地--

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

1167

--穴--

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

どんどん星の中核へと潜っていく真勇者。

真勇者「……!」




--過去、宇宙--

しゅぅううう……

ハイ「はっ、はぁ、はぁ、はぁ……」

勇者「んぐっ、はぁ、はぁ……」

十代目「やった、のか……?」

うぅうう……

真勇者「どうやら、そのようだな」

ユー「……」



ハイ「」

ぼろっ

ハイ「やった、やったよ、ビィ……」

真勇者「……」

――ツ

トリガー(真勇者、とか言ったね。聞こえるかな? 僕のテレパシー)

真勇者(! トリガー!?)

1168

--過去、宇宙--

トリガー(あぁ僕だよ。あ、でも気にしないでくれ。そっちの僕は完全に倒されたよ。僕は地上で分離したもう一つの、性質の違うトリガーだと思って欲しい)

真勇者「……」

トリガー(敵意は無いよ。それより急いで君に伝えることがあるんだ。それは、世界の守り方だ)

真勇者(……何?)

トリガー(この星を守りたいなら僕の言う通りにするんだ。時間はもう無いからね。いいかい?――)

真勇者「……!」

ハイ「えぐっ、ぐすっ! ふぐぅ!」

勇者「ほらほらハイちゃん、もうそんなに泣かないで? 下に戻ってからいっぱい泣こう?」

そういう勇者の眼にも涙が。

十代目「そうだな。さすがに今日は、疲れた。もう何もできん」

ユー「……」

ユーがジェスチャーで星のことは大丈夫なのか? と伝える。

勇者「えぇ。私の自慢のバカに任せてきたんだもん。きっと何か考え付いてるわ。駄目なら……駄目でも頑張ったもの」

真勇者「……」

勇者「真勇者、貴方もお疲れ。さぁみんなで」

ぎゅんっ!!

勇者「え、ちょっ!?」

ハイ「!? 真勇者さん!?」

突如降下した真勇者を追って三人も地球へ降下する。

ユー「……」

しかしユーだけは宇宙空間に残った。

ユー「……役目は、終わった。後は……」

ぼろっ……

ユーの体が光の粒となっていく。

1169

--穴--

じゅぅうう……

真勇者「! スキル、精霊化!」

ぼしゅっ!

服が熱さで溶け始めたので真勇者は霊体に変化し、更に下を目指す。



--各地--

北の避難民「やったあああああああああああああああああああああああ!!」

わーきゃー!!

北の避難民「ごめんな婆さんさっきは! あんたの言う通りにしてよかったよほんと! さっきは情けなくてごめん!!」

盗賊の母「なぁにいいよ……それにしても、よくやったねぇほんと」

わーきゃー!

人々は歓喜の声をあげている。

ゴゴゴゴゴ

北の避難民「……あ、魔王は倒しても星は……あ、いや星もなんとかなるっていってたよな!? そうなんだよな!?」

ざざっ

通信師(お、お伝えします。今、星を治すために、ある人たちが星の内部に向かいました)

ざわざわ

通信師(えっと、ある人物によるとこれで星は元通りになるらしいのですが……)

ざわざわ

通信師(その人たちは……戻って来れない、そうです)

ざわ!

1170

--穴--

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

真勇者「……」

ざざっ

トリガー「手順はさっき伝えた通りだけど、もし不安ならいつでも聞いてね。出来る限りのことをするつもりさ」

真勇者「!……なるほど、これが噂に聞いた勇者にのみ見えるトリガーというやつか。いつの間に来たんだ?」

トリガー「勇者に会うのに距離は関係ないのさ……さて、少し黙るとするよ。君も心の整理が必要だろうからね」

真勇者「へぇ……驚いたな。あの話に聞いてたトリガーが優しさを見せるとはな」

トリガー「僕はやさしいさ。君達の味方なんだから」

真勇者「……」

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

真勇者(……やれやれ。なんとか魔王を倒せはしたが……こうなるとはな……)

真勇者は静かに眼を瞑った。

1171

--真勇者、心の中--

ツインテ「や、やりましたね、皆さん! ついに魔王を倒して完全勝利? です!」

アッシュ「あぁ」

ポニテ「そうだね……」

少しぎこちない三人。

ツインテ「あ……さすがに……この終わり方は、予想してません、でしたよね?」

無理して笑うツインテだったが、次第に頬が引きつっていく。

アッシュ「……」

ポニテ「……うん」

ツインテ「でも……ボクの命でこの世界を救えるのなら、それは、とても、恐れ、多いな、って。み、皆さんを、巻き込んでしまう、のは、心苦しい、んですが」

ぼろ、ぼろぼろ

ポニテ「ッ」

ポニテはツインテを抱きしめた。

ツインテ「みな、皆さん、いい人達でした……だからっ、死んで欲しくないんです……だから、ボクは……」

ぼろぼろっ

アッシュ「あぁ……! わかってる! 俺も一緒だ!」

ポニテ「心苦しいだなんて水臭いよツインテちゃん。だって真勇者の意思はみんなの意思なんだよ? 私だって望んでやってるんだから……ね?」

ぼろぼろ

アッシュ「行こう、三人で……俺達三人なら、星でも救えるということを証明してやろう!!」

ツインテ、ポニテ「「うんっ!!」」

1172

--穴--

ゴオオオオオオオオオオオオオオ

トリガー「……もうすぐ最深部だ。心の準備は出来たかい?」

真勇者「……無論だ」

ざ、ざざ

通信師(き、聞こえますか? 聞こえますか? 真勇者さん)

降下する真勇者の心にテレパシーが届く。

真勇者(あぁ聞こえるぞ。どうした? 何か上でトラブルでも起きたか?)

通信師(いえ、それ、が――で、――ね)

真勇者(……もうすぐテレパシー範囲の外か……)

通信師(皆さん、に事情を説明、しま――た、そし―ら)

真勇者(……?)




















   「「「頑張れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

!!」」」

びくっ

真勇者「!?」

1173

--穴--
  
  「ありがとおおおおおおおおおおおお!!」

            「頑張れー!」

   「すまねぇ! 若いのに全部おしつけちまって!!」
  
                   「帰ってきてくれ! 絶対だ!!」

      「ありがとう! 本当にありがとう!!」

 「ごめんねえー!」

   「ツインテちゃーん! 愛を送るからー!! これもエネルギーに変えてくれー!」

                   「うわああああああああああ好きだあああああああああああああああ!!」

 「あいがとぉー」

                 「ごめん! 星を頼むよー!!」

      「代わりになれたらよかったんだけどねぇ……」
 
   「無事帰ってきてねーーーーー!!」

わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


真勇者「」

切れかけていたテレパシーだったが、驚くほどのボリュームで人々の声が真勇者の心に届いた。

  ハイ「バカ! 先輩達のバカーーっ!! なんで私を置いていったんですか!? やっぱり私じゃ頼りにならないからですか!? ひどいです!! 仲間はずれにしないで下さいよぉー!! うわぁああああん!」

真勇者「ハイ……」

  盗賊「……ごめん、かける言葉が見つからない……うえぇえ……」

真勇者「パパ……」

  賢者「ツインテ……帰って来るんだぞ。待ってるからな!」

  踊子「ですよ~? 一日でも早く帰ってこないと、この人の頭の毛ゼロになっちゃいますからね~」

真勇者「は……情け無い、みんな涙声じゃないか」

  秘書「……誇りに思います………………ッ」

真勇者「お母様……」

  勇者「……しっかりやんなさい。そしてちゃんと帰ってきなさい」 

真勇者「……ッ……帰り、たいけど、それは、無理だ」

  ハイ「先輩方のことだから心配してませんがっ! 絶対諦めないでくださいねッ!? 絶対に、何年かけても、私達が助けに行きますからッッ!!」

真勇者「」

1174

--穴--

  ハイ「方法がなくても探し出します! 絶対無茶でも助けます!! だからっ……!……だから、それまで……頑張ってください……」

真勇者「……」

  ハイ「土産話、いっぱい、聞かせて、もらいますからね……」

通信師(……聞こえ、まし、た、か? みな、さ――あな、――) 

づづ、づーーー

真勇者「……」

そして、とうとうテレパシーの射程範囲外へ来てしまう。

真勇者「……あぁ、待ってる」

ゴゴゴゴゴ……



--コア--

真勇者「……」

トリガー「着いたね。ふう、どうやらギリギリだったみたいだ。さぁ時間はないよ?」

ゴゴゴゴゴ

真勇者「……」

キッ!

真勇者「あぁ!!」

バババッ!!

凄まじい熱の中を真勇者は軽やかに動いていく。

真勇者「はぁああ!!」

そして真勇者は魔力で出来た糸で一部を縫い合わせる。

真勇者「……三人だから寂しくは無い。が、待ってるぞ、ハイ」

真勇者はその身の全てをエネルギーに変えていく。

ゴゴゴゴゴゴゴ……




1175

--コア--























ゴォン……

1176

--三年後--
















ぱからっ

すいません、インターバル入ります。
もしかしたら明日とかになってしまうかもわかりませんが、少し休憩ください。最後なのにすいません!

遅くなりました。それではエピローグ初めて行きたいとおもいます。

1177

--東の王国--

……ぱからっ、ぱからっ

ハイ「ふぅ、確かこっちの方であってる、はずなんですが……」

キバ「あ、ハイちゃーん」

ハイ「あ、キバさん。こんにちわー。久しぶりですー」

キバ「お久しぶりー。ユニちゃんも久しぶりだねー」

ユニコーン「ひひん」

キバ「今日はどうしたの? 配達?」

ハイ「はい、配達です。これ、キバさんと魔法使いさんに」

そう言ってハイは手紙を渡す。

キバ「あ、そうか。そろそろなんだ……」

ハイ「はい……あの、魔法使いさんどうしてますか? ちゃんと働いてます?」

キバ「ん、だめ。一時は魔法王国で講師勤めてたんだけど……あの性格でしょ?」

ハイ「あ、はは……」

キバ「で問題起こしてクビになって、それ以来ふさぎ込んじゃってさぁ。今は私がパートで食いつないでるけど、子供達も大きくなるし、早く新しい仕事についてもらいたいわ」

ハイ「ははは……大変ですねぇ……」

キバ「笑い事かなー? ハイちゃんもそろそろお婿さん探さないとまずいんじゃないのー?」

ハイ「」

キバ「あ、ごめんなさい」

1178

--街道--

ぱからぱから

ハイ「ぶつぶつぶつぶつ」

ユニコーン「ひ、ひひん?」

ハイ「う、う……そ、そんなことは言われなくたってわーかってますよっ! こちとらもう三十なんですからぁあ」

泣き崩れてユニコーンにもたれかかるハイ。

ハイ「仕方ないじゃないですかぁ! 私はやることでいっぱいだったんですから……」

ユニコーン「ひひん?」

ハイ「あ、違いますよ、そこ右です。後侍さんにも渡さなきゃですから」

ユニコーン「ひひーん」

ハイ「ぐすん……もう男なら誰でもよくなって来た感はありますね」

ユニコーン「ひひん!?」

ハイ「まぁ誰でもって言いますけどある程度顔はよくてある程度収入はよくてやさしい人じゃなきゃ駄目ですけどね」

ユニコーン「ひ、ひひーん……」

1179

--東の王国--

侍「やや! よく来てくれたでござるよハイ殿!」

ハイ「ノー! ハグは駄目です! はいこれ、レン先輩からのお手紙です」

侍「もーつれないでござるなぁハイ殿は」

ハイ「侍さんももう少し東の三強である自覚を持ってください! こんな所で私なんかといちゃいちゃしてるところ誰かに見られたらことですよ!」

侍「なんかではござらん。ハイ殿は素敵な女性でござる」

ハイ「ぴゃっ!?」

侍「それに英雄の中の英雄でござる。釣り合わないというのであればむしろ拙者のせいでござるよ」

ハイ「……奥さんの耳に入るってことを言いたかったんですけど」

侍「お手紙ご苦労でござった」

ハイ「まぁもう見られちゃったんですけどね」

通信師「……」

侍「……」

通信師「去勢」

1180

--東の王国--

侍「そうだハイ殿、もう一つ伝えておかねばならないことがあったでござるよ」

ハイ「はい?」

侍「以前ハイ殿が調べていた出自についてでござる」

ハイ「――え」

侍「いや、結局どこの出身なのかはわからなかったでござるが、一つ手がかりを見つけたのでござる」

ハイ「てが、かり?」

侍(かり……)「さよう、実はハイ殿は、双子だったでござる」

ハイ「……ビィのことですか?」

侍「違うでござるよ。双子の弟がいるらしいのでござる」

ハイ「……」

侍「……乱世ー!!」

通信師「言いたかっただけだろーーー!」

1181

--砂漠--

ぱからっぱからっ

ハイ「私に双子の弟……そんなの、いるのかな?」

ぱからっぱからっ

ハイ「……家族、か。なんか、いいな」

にへっと笑うハイ。

ハイ「優しい子だと、いいな。落ち着きが無くても人のことを思って行動できる優しい子……」

……おぉおおおん

ハイ「ん?」

おおおおおおおおおおおん!!

まっちょ奴隷「ひゃっはー!!」

奴隷王「いけー! ぶっとばせー!!」

ぶおおおおおおおおおおん!!

砂上船で暴れまくる奴隷王とその支配下たち。

ハイ「何あのマッドマックス……あんなのが家族だったら終わりだなー」

ぱからっぱからっ

1182

--砂漠の風、アジト--

鬼姫「やーお久しぶりっすハイちゃーん。お元気でしたっすかー?」

姫「姫繋がりで姫ちゃんもいるよっ! いるよっ!?」

ハイ「皆さんお久しぶりです。お変わりないようで」

姫ちゃーん、と姫とスキンシップを取るハイ。

ハイ「姫ちゃんはなんでここにいるんですか?」

姫「あのね!? 参謀長が忙しいから邪魔だって言ってね!? ここにつれてこられたの!!!!」

ハイ「……なる」

鬼姫「あー、例のことっすかこの手紙。了解でっす。ちゃんと遅れずにいきますっす」

ハイ「よろしくです」

鬼姫「しかし……無事でよかったすよ」

ハイ「はい?」

鬼姫「最近ここらを荒らしまくる暴走族みたいなのが現れたっす。魔度魔苦巣とかいう」

ハイ(絶対さっきのやつらだ……)「ん? ここらへん砂漠の風のなわばりだと思うんですけど、野放しにしておいていいんですか?」

鬼姫「やー……痛いところつかれたっす。実はこいつら中々手ごわくって手間取ってるっすよ」

ハイ「鬼姫さんが手間取るレベルなんですか!? こわ……」

鬼姫「首領以外雑魚みたいなんすけど、その首領がちょっと厄介で、職業がまさかのレベルらしいっす。あたしはまだ遠目に見ただけなんで部下の情報なんすけど」

ハイ「え」

1183

--北の王国--

忍隊長「では私はこれで」

ハイ「あ、護衛ありがとうでした。鬼姫さんや皆さんによろしくお伝えください」

忍隊長「承知しました。では」

しゅばっ!

ハイは見えなくなるまで手を振って忍隊長を見送った。

ハイ(……でも、レベル使い、か……もしかして……いやいやそんなわけないよね。さぁ仕事仕事!)

召喚士「ようこそ北の王国へでやんす」

ハイ「うわぁああ!?」

どしゃっ!

ユニコーンから転げ落ちるハイ。

召喚士「そんなに驚かなくてもいいのにでやんすよ。ハイちゃんが門の近くに来てるのを見つけたから飛んでやってきたのにでやんす」

ハイ「あ……すいません久しぶりでびっくりしちゃって。あはは」

差し出された手を掴むハイ。

召喚士「そうでやんすよね? そうでやんすよ。久しぶりで会いたかったのはこっちもなんでやんすよ!」

ハイ(え、そんなことは言ってない)

召喚士「聞いてくださいやんすハイちゃん! 実はあれからまだオイラ達の後継者が現れないでやんすよ! オイラと人形師は一体いつまで三強で頑張ればいいのでやんすか! 早く南の王国なんかでのんびり余生を過ごしたいというのにっ!!」

ハイ「あはは……」

召喚士「射王も五柱なんてものに入っちゃうからまた一人減って大変なのでやんすよ! 羨ましいでやんす五柱! 聞いてるでやんすかハイちゃん! あ、ハイちゃんうちの国に来るといいのでやんすよ、そんで三強やるといいのでやんす。今なら洗剤とかつけるでやんすから」

ハイ「い、いえ遠慮しておきます。それに私、レベル4無くなっちゃったし戦力には……あ、はいこれ! 手紙です! ではっ!」

ぱからっ!

召喚士「あ、待つでやんすよハーいーちゃーーーーんーーーーーーーー……」

1184

--北の王国--

ハイ(あー危ない危ない。召喚士さんの話につき合わされるとどんどん仕事遅くなっちゃうからなぁ……後は……)

ぱからっぱからっ

秘書「? あら、ハイ。久しぶりですね。元気でしたか?」

ハイ「!? 秘書さん!? 何でここに!?」

ユニコーン「ひひーーーん!」

秘書「いえ、国同士の技術協力の一環です。具体的には秘密ですが」

ハイ「あ、無理に聞こうとは思ってないので。あの、これ秘書さんに渡そうと思ってたんです」

すっ

秘書「あらこれは……やっと、ですね」

ハイ「はい! やっとです!」

秘書「わかりました……では仕事をちゃっちゃと終わらせて向かいます」

ハイ「はい。私もさっさと仕事終わらせちゃいます。それでは失礼します」

秘書「あ、待ちなさい」

ハイ「え?」

秘書「飴です、持って行きなさい。少し、疲労が見えましたから……気をつけて」

ハイ「あ、ありがとうございます」

1185

--草原--

ぱからっぱからっ!

ユニコーン「ひひーん!」

ハイ「ユニちゃん本当早くなったよね。おかげで随分移動が楽になっちゃった。あ、はい、ユニちゃんも飴」

ユニコーン「ひひーん!」

まさかの鼻にいれるハイ。

ユニコーン「ごえっ!!」

ハイ「後は……っと、あそこにはどうやっていくんだっけ?」

ぱからっぱからっ

ハイ「! あそこだ! 行くよ! ユニちゃん!」

ユニコーン「ぶひ、ひ、ひひーーーん!!」

だっ!!

1186

--失われた王国--

かぽっかぽっかぽっ……

ハイ「!」

シャーマン「結界を突破した感覚がしたから誰かと思えば、ハイじゃないか。久しぶりだな」

ハイ「どうもー。勇者さん達いますか?」

シャーマン「いるよ。いつものところだ」

ハイ「ありがとうございます」

シャーマン「で、何の用だ?」

ハイ「これです」

ハイはちらりとその手紙を見せる。

シャーマン「…・・・なるほど」

1187

--失われた王国--

しゃっ、しゃっ

白ワニ「あー、背中気持ちいい、ありがとうね勇者」

勇者「気にしないでお母さん。ん?」

かぽっ……

ハイ「お久しぶりです勇者さん。白ワニさん」

勇者「ハイ! 久しぶり! 何年ぶりかしら!」

ハイ「二年ぶり、くらいなんですけど……」

ハイは勇者の頭の天辺からつま先までじっくりと見る。

ハイ「……あ、あれ?」

勇者「あはは。みんなから驚かれるのよ」

ざっ

ミイラ「ふん、これが自然なのだ」

勇者「お父さん」

ハイ「あ、お久しぶりです」

ミイラ「あぁ……」

がしっ

白ワニ「あら?」

ミイラは白ワニを抱えてどっかに行ってしまう。

ハイ「……私嫌われてるんでしょうか」

勇者「気にしないで。誰にでもああだから。きっと自分のやったことがことだけに、どう接していいのかわからないのよ」

ハイ「そんな……」

勇者「……来て、盗賊にも会ってあげて」

1188

--失われた王国--

ざっ、ざっ

ハイ「とーぞくさん?」

盗賊「!? ハイちゃん! ハイちゃんじゃないか!」

畑仕事をしていた盗賊は鍬を放り投げてハイ目掛けて走ってくる。

ヴン

カブト「……投げちゃあ危ないだろ?」

時を止めたカブトは、鍬を掴んで盗賊の首筋に当てる。

盗賊「は、はい……すいません」

勇者「全く、もういい歳なのにいつまでたっても子供みたいなんだから」

盗賊「やー、すまんすまん……で、ハイちゃん、何しに来たんだい? もしかして……」

ハイ「はい。そのもしかしてです」

盗賊「!? 俺の養女になってくれる決心がついたんだね!? やったー!!」

ゴゴッ!!

勇者とカブトの拳が盗賊の顔面と後頭部を陥没させる。

盗賊「ごめん回復魔法頼める?」

1189

--失われた王国--

ハイからもらった手紙を読む盗賊達。

盗賊「……やー……やっと、か」

勇者「もう、でもあるわ。長かったけど、短かったもの」

盗賊「そう、だな」

ハイ「……ですね」

カブト「……」

無言で頷いているカブト。

盗賊「でも、俺も関わりたかったなぁ。適材適所ってのはわかるんだけどさぁ」

ハイ「それ私もです。あんなこと言っちゃったのにこの有様ですから」

笑いあう盗賊とハイ。

ハイ「――っと……私まだ行かなきゃならないところがあったんです。名残惜しいですが失礼しますね」

盗賊「あ、待った。これもって来なよ」

そういう盗賊は笹で包んだおにぎりと竹で出来た水筒を渡す。

ハイ「あ、ありがとうございます」

盗賊「荷物になっちゃうかもしれないけどさ、美味しいから。どうせ携帯食とかしか食べてないんでしょ?」

ハイ「ぎく」

勇者「これも携帯食だけどね」

盗賊「ち、違う! なんていうか愛のこもってないぱさぱさしたやつのことを言いたかったんだ!」

ハイ「これ愛篭ってるんですか?」

盗賊「いっぱい」

ハイ「勇者さん浮気してますよ?」

1190

--失われた王国--

ハイ「ではー」

ぱからっぱからっ

ぼっこぼこの顔で手を振る盗賊。

盗賊「はー……やっと、だな」

勇者「もう、だね」

盗賊「……ふふ」

勇者「……えへへ」

盗賊「しっかしやっぱ驚いてたなハイちゃん。勇者の体見て」

勇者「そりゃあ、ね」

くるりと回る勇者。
勇者の体は、成長していた。外見年齢で言えば17歳前後と言ったところか。

勇者「……あの戦いで魔王の呪縛も解けた、からかな? 詳しいことはわからないけど、ただの人間に戻っちゃった」

盗賊「ただの、って。それが幸せなことなんだぞ?」

勇者「知ってる。私幸せだよ? これで盗賊と一緒に老いて死ねるからね」

そう言って勇者は笑う。

盗賊「あぁ――後は、娘だな」

勇者「うん!」

1191

--失われた王国--

赤姫「ハイめ……私達には挨拶せずに行っちゃった……」

トリガー「見ればわかる、忙しそうだった。なら仕方ないさ」

椅子に座っている赤姫に紅茶が入ったカップを置くトリガー。

こと

赤姫「……」

スッ……

トリガー「……」

赤姫「……なぁトリガー」

トリガー「なんだい赤姫」

赤姫「一つ、聞きたいことがあるんだ。あの三年前の戦いのことでだ」

トリガー「僕に答えられることならなんでも」

赤姫「あの時だ。トリガーが哀を、勇者達が愛を募集したあの時。なぜトリガーは愛が集まりきる前に攻撃しなかったんだ?」

トリガー「……」

赤姫「そもそもトリガーは更に力を集める必要が無かったんだ。自分の持ってるエネルギーだけで全てを無に返すことができた。それをしなかったのはやはり……トリガーは勇者に倒されることを望んでいたのか?」

赤姫は一冊の本をトリガーに突きつける。
タイトルはブリキの魔王と五人の勇者。

トリガー「――それは、僕には答えられないな」

赤姫「トリガー」

トリガー「ただ僕なら……愛と戦ってみたくなったのかも、と、考えるかもね」

赤姫「……」

トリガー「愛には勝てないと知っていても」

1192

--荒野--

びゅうおおおおおおおお……

ハイ「……ここですよ、ユニちゃん」

ユニコーン「ひひーん」

ぱからっぱからっ……すたっ

ハイ「……お久しぶりです。前来たのは三年くらい、前、ですかね……ご無沙汰でした」

ハイは岩に向かって話しかけている。
その岩には、ユー、と書かれていた。

ハイ「……やー……いざ面と向かうと、言葉が出てきませんね。岩なのに……あ、そうだ盗賊さんからもらったおにぎりお供えしましょうかね。んしょっと」

ハイは荷物からおにぎりを取り出し、一つを岩に備える。

ハイ「一つは私のです。も一つはユニちゃんのです」

ユニコーン「ひひん♪」

もぐもぐ

ハイ「あ、ほんとだ、美味しい……」

1193

--荒野--

びゅうおおおおおおおお……

ハイ「……あの後、探し回ったんですからね? いっぱい、いっっっぱい探したんですからね? この星の隅々まで、大気圏を越えて宇宙にまで行って……それでも、どこにもユーさんはいなくて……別れの挨拶もしないでいなくなるなんて、本当にユーさんらしいです」

サッ

ハイは岩の埃を払う。

ハイ「……みんなは力を使い果たして……なんて言ってますが、私は違うと思うんです。ユーさんは役目を果たしたから、元の世界に帰っただけなんですよね? ユーさんの成り立ちを知ってるから、私にはわかるんです」

ユニコーン「ひひん……」

ハイ「あれから大変だったんですよ? えっと、暗黒森林がただのバザー会場になったり、賢帝さんがあれをちょんぎったり……えっと、えーーっと」

はぁ、とため息をつくハイ。

ハイ「……思えば色んなことがありました。たくさんの困難がありました。何度も諦めようかと思いました。……本当何度心が折れかけたか……」

びゅおおお……

ハイ「でも、いつも貴方は支えてくれましたね。本っ当に感謝しています。今まで、ずっと見守ってくれて、ありがとう……」

そう言ってハイはユーの墓に手紙を置いた。

ハイ「……これ凄いこと書いてあるんだけど、手紙じゃ、読めないかな?」

こほん
と咳払いしたハイ。

ハイ「――ツインテ先輩達が帰ってきます。レンさんや研究員さん達が中心になって三年間頑張ってくれたんです。星の核の代替物を作ったとかで。それで今、核になったツインテ先輩達と交換しているんです。そしてついに明後日、ツインテ先輩達が地上に現れます」

スッ

ハイは立ち上がりユニコーンの手綱を握る。

ハイ「……では、ユーさん。またどこかでお会いしましょう」

1194

--  --

そして

1195

--失われた王国--

赤姫「……おい、さすがに今日まで寝坊とか私でも引くぞ」

勇者「だ、だよねぇ!? ほら! 起きろって言ってんのに盗賊がもぉ!」

盗賊「むにゃむにゃ」

トリガー「……ねぇ、本当に僕も行かなきゃ駄目なのかな……」

勇者、赤姫「「駄目に決まってるでしょ!?」」

トリガー「……はい」

勇者「ほら盗賊これ来て! 早く!」

盗賊「んー……」

ぼりぼり

トリガー「やれやれ、大変そうなことで」

盗賊「……」

トリガー「……? なんだい?」

盗賊「――バッドは置いてけよ?」

トリガー「」

盗賊「……」

トリガー「……そんなものはもう切り捨てたさ」

盗賊「……そうかい」

勇者「ほ、ら! 話しこんでないで出発するよ!」

赤姫「トリガーも!」

盗賊、トリガー「「あっ、はい」」

1196

--空--

グリフォン「急行します!」

びゅおおおおおお!!

トリガー「やれやれ……魔王を失業しただけでこうまで威厳が落ちるものかな。これが無職というものか……」

盗賊「わかるぜ……でも今俺は無職時代に戻りたいがね」

勇者「今もそんなに働いてないくせに!?」

トリガー「……」

盗賊「……なぁ失業したなら再就職しないか?」

トリガー「え?」

盗賊「もちろん魔王にじゃないぞ? 丁度募集してんのがあんだよ」

トリガー「……」

盗賊「農家、一緒にやろ」

トリガー「……」



  勇者と魔王がアイを募集した
     
     最終部、『リクルート』


盗賊、勇者、トリガー「「「今更!?」」」

1197

--穴付近--

ばさっ、ばさっ

ハイ「あ、おそーい!! 何やってるんですか勇者さん達!!」

勇者「ほんっとごめんね! バカ盗賊がね!?」

盗賊「ごめんこの前買ったラノベが面白くて……」

ハイ「娘よりラノベですか!?」

勇者「ごめんごめんてハイちゃん。それで、どう、だったの?」

ハイ「……それが」

勇者「……え?」

ハイが視線をそらしながら指差す場所には……

ぽにて「あ! ままだー!」

とてとてとてとて!

勇者「……ん?」

ぽふっ!

ぽにて「おぶっ!」

ハイ「なんか……パワー使い過ぎたせいで、幼女化しちゃったらしいです……」

盗賊「幼女きたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ミイラ「MAGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

1198

--穴付近--

あっしゅ「お、おかあさま……」

秘書「!」

秘書はしばらくがくがくと震えていたが、

だきっ!!

秘書「可愛い!!」

あっしゅ「お、おかあ、さま。くるしい……」

西の王「良かったな、秘書よ」

秘書「あ……」

秘書はアッシュと西の王の顔を交互に見つめる。

秘書「に、西の王。こんな時ではありますが、一つ伝えなきゃいけないことがあります……」

あっしゅ「!」

西の王「ん? なんだ?」

秘書「それは……」

あっしゅ「おかあ、さま」

秘書「それは……」

西の王「……」

ぎゅっ

秘書「アッシュは、私の大事な、自慢の息子です」

あっしゅ「」

西の王「……そうか。羨ましい限りだ」

1199

--穴付近--

ついんて「おかあ、さん」

踊子「やだー! ちょー可愛いです~~~!!」

フォーテ「ぺろぺろ! ちっちゃいお姉ちゃん超ぺろぺろ!!」

賢者「僕もぺろぺろ!」

踊子、フォーテ「「触るなパーフェクトはげ!」」

どがっ!!

わーわー

ハイ「……なるほど、犠牲も無く終わるのは無理、って、こういうことだったんですか?」

トリガー「……いや? 僕はあの時、三人の命を犠牲にしなければ星を救えないと、本気で思っていたよ?」

ハイ「……」

トリガー「だからこの程度ですんだのは、彼らの命を救ったのは、君達人の力、というわけさ」

ハイ「……どーなんですかねー」

トリガー「……なんだいその眼は」

ハイ「いーえ? 何はともあれ、先輩方も助けられて一安心です。出来れば……各魔王や、別ルートのトリガーも助けてあげたかったんですが……」

トリガー「……犠牲はつきものだよ。そんなことがわからないようじゃいつまでも一人身のようだよ?」

ハイ「」

トリガー「ごめん、おちょなんさんみたいな顔やめて……」

1200

--穴付近--

盗賊「やー、なんにせよ今日はめでたい日だ! 祝おう! 全員でこのままパーティだ!!」

ぽにて「きゃはーい!」

レン「そう思って既に用意はしているのにゃ」

勇者「うん、さっきからパーティ会場見えてたからね……」

ついんて「あうー?」

あっしゅ「あれ……」

ぉおおおん……

ハイ「! この不快な音は……」

ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

奴隷王「ひゃっはー! 平和な時代にこんにちわだこらぁ!!」

フォーゼ「!? 俺とキャラ被ってんぞこるぁ!」

ぶぉんぶぉん!

奴隷王「何か人がいっぱい集まってるからここにあるもん全部いただきにきた……んだぜ……」

勇者「……」

十代目「……」

亜人王「……」

フォーテ「……」

聖騎士「ぶるうるうあああああああああああああああああああああああああああ!!」

まっちょ奴隷「……大将、これ、無理っすよ。やばいっすよ戦力差」

奴隷王「……そのようだな!」

ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!

ハイ「逃げた!?」

1201

--穴付近--

鬼姫「あ、あいつらっすよ魔度魔苦巣」

ハイ「やっぱり!?」

侍「あ、あいつっすよハイちゃんの弟さん」

ハイ「!? 嘘ぉ!?」

……おおおぉぉおん……

勇者「……ハイ? どうする?」

ハイ「……皆さんはパーティの準備しててください。私はちょっと、しめてきます」

盗賊「ハイちゃんだけで大丈夫か?」

ハイ「いえ、聖騎士さんと亜人王さんとフォーテちゃんと十代目さん借りてきます」

レン「完全に殺す気にゃん……」

ハイ「バカは死なねば治りません。では、行きますよ皆さん!!」

わー!!







   勇者と魔王がアイを募集した
        完

………
……












大いなる物語は幕を閉じた。だが、
積み重ねたものは無くならない。
彼らの生き様は皆の心にしかと刻まれた。
歴史がこれからどう進んでいくのか、それは誰にもわからない。
さぁ、次の冒険が待っている。
マントヒヒ













    募集シリーズ
      完

以上でこのssシリーズは完結です! 皆様長い間本当にありがとうございました!!

あ、最後ですので、出来ればどれくらいの人数の方に見ていただいていたのか知りたいので、ここらへんから見ていたよー、みたいな感じのコメでもいただければ嬉しいです。

しばらくの期間、質疑応答などなんでも答えますので、よろしくお願いします。

>>269 乙!
最初から読んでたよ!
最初はROMだったけど、勇者募集の真ん中くらいから書き込んでた
まさかここまで長くなるとは予想してなかったけど、最後まで読めて良かった
奴隷王がハイちゃんの弟だったとは……

これで募集シリーズは完結だけど
次回作の予定があれば知りたい

お疲れさまー!!!
最後はハッピーエンドで終わって本当に良かった
できることなら後日談というかツインテ達のその後も見てみたいな
読み始めたのはもこもこの時からだよ

大作完結本当にお疲れ様でした
完結が嬉しくもあり悲しくもあり……複雑ですが、
約5年楽しませてもらったことは事実です! ありがとう!

前も言った気がするけど、安価で魔法使いリストラしたの俺ですww

安価といえば、暗黒森林のシーンでツインテへの行動安価を間違えた場合、人類滅亡BAD ENDなんでしたっけ。
それで完結しなくてよかったです。

長い間お疲れ様でした。
最初から読んでました。初めてのssがこれで本当に良かった。
またどこかでQw0さんのお話を読めることを切に願ってます
あと、これからもツイッターを更新してくださいねww

勇者スレを探してみたらたまたま立って間もないスレだった記憶
いつだったか、エイプリルフールの企画ででたあの子もどっかの分岐なんかな

大変乙!
三年くらい前からかな

ところでついんてあっしゅぽにては精神年齢も幼児化したのかしら

こんばんは。皆さんたくさんのコメント、ありがとうございました。
昨日は投下時間までにエピローグが書き終わらなかったりとアクシデントがありましたが、無事終われて何よりです。
それでは質問?などに答えていきます。



>>270さん
奴隷王は元々ハイのライバルポジでしたが、これ以上新キャラ出すのはまずいかな……? って思って強引に話から消しました。まあその後普通に新キャラのビィとか出してますけど……。でもせっかく出したのにもったいないかと思って最後にまた出しました。彼のレベル4で魔王になれる設定はビィに引き継がれています。

次回作についてですが、筆を折ることも考えましたが、せっかくですし何かしら書こうかなと思ってます。ssはもうお腹一杯なので小説っぽいのかもしれないですが(実力的に書けるかはわかりませんが)。



>>279さん
後日談は一応設定だと、その後ツインテとアッシュとポニテがそれぞれ学校を設立して~みたいな話を考えてました。書くかはまだわからないです。



>>281さん
魔法使いをリストラした方ですか! あれは最良の選択でした!



>>282さん
あの選択肢は手を差し伸べる回数で難易度が変わる予定でした。確かこんな感じで、

4回→ツインテを取り返しフォーテも仲間になる。ループすることなく超イージーモード。ツインテ達無双で勢い余って死者まで復活するハッピーエンド確定ルート。
3回→ツインテを取り返し、ハードモードだけどハッピーエンドへ。
2回→ツインテを取り返せず、ループの果てにハッピーエンドへ。
1回→ツインテを取り返せず、ループの果てにメリーバッドエンド。(勇者募集のトゥルーエンドに該当)
0回→容赦なし強制バッドエンド。後、第四弾へ。(第四弾は現代が舞台)

なお実際は前情報全くなしにこれは不適切だと思い直し、2回ルートに修正されて入ってます。フォーテ仲間になっちゃったのは、まぁ勢いですね。
1回ルートの場合、ラスボスがツインテ+フォーテの融合魔王だったかと。
細かいところはそんなに考えてませんでした。当然4回ルートが選択されるだろうと勝手に思っていたのでw



>>283さん
ありがとうございます!
こ、これからはツイッターも更新します!


 
>>284さん
エイプリルフール企画はもういっそ、全部別ルートの世界、ということで。



>>286さん
ツインテ達は精神年齢は『そこまで』下がっていません。しかし戦闘力などはほぼ初期状態になってしまいましたね。





質問などはこんな所でしょうか?

感想は素直に嬉しかったです。改めてありがとうございました。

コメントありがとうございます! 一つ一つが身に染みます。やってきたかいがありました!



しかし……今更であれなんですがちょっとスレの残りがもったいないですよね。

お疲れ様でした!いつからか忘れたけど最初のほうから読んでました
質問↓
盗賊「これでよし、と」

闘士「こんな夜中まで……家族への手紙かい?」

盗賊「え!?あ、うん」

声に驚いて振り向くと、闘士が裸の上半身をシーツから出してこちらを見ていた。

闘士「そうか。おれも恋しいよ故郷が……。去年の今頃は何をしていたっけなぁwwww」

盗賊「……」

西の王国から旅立って三カ月くらいたったのだが、わかったことがある。闘士は男同士二人きりの状態になると、普段とは結びつかないほど饒舌になるのだ。

闘士「ほら、暖かくなってきたとはいえ夜はまだ冷える。ベッドに入りなよwwww」

変化師も「男二人だけだと饒舌」を受け継いでますか?

貧乳さんは成長が再開して貧乳じゃなくなったのでしょうか
それとも貧乳のままでしょうか

そういえばフォーテちゃん今まで呪術使い過ぎてボロボロになってたけど、体は平気なのかな?
フォーテ割と好きだからその後は気になる

こんばんは。コメ返しに来ました。
コメント一つ一つが身に染みまする……。
こんな長いssを最後まで読んでくれた皆様には本当に感謝しかないです……。



>>304さん
懐かしい設定が……はい、部屋に男同士で二人きりの状態になると饒舌になります! 槍兵は槍で突く側なのによく貫かれているそうですよ。

>>307さん
貧乳さんは、これでやっと私の胸も大きくなる! とうきうきして毎日を過ごしていました。が、現実は非情でした。魔王化のせいにすることすら出来なくなった勇者は、絶望のあまり数年間家出しました。ヤンキーパツキン勇者時代です。

>>308さん
初期設定だと寿命はあと数年とかそんな感じでした。しかしハッピーエンドパワーとツインテの癒し効果で寿命は一般人レベルに戻りました!(雑)












そしてこっそり安価。3票先に入った方ということで。
1・10年
2・1000年

こんばんは!

というわけで、
ルート1をこっそり進めていきたいと思います。



--荒野--

ひゅおおおおぉぉおおおお

ズズズ……

何も無い荒野に、突如時空の裂け目が現れる。

ズズズ、すたっ

??「……」

?「……くす」

そして、そこから二人の少女が現れた。



--失われた王国--

ぴく

トリガー「この……反応は」

麦藁帽子を被りとうもろこしを手に持っているトリガーは、遠く離れた地で起きた何かを感じ取った。

がさがさ

盗賊「おーいトリガー、休んでる暇無いぞー? 嵐が来るみたいだから収穫を急がないと」

トリガー「……うん、わかってる」

びゅおおぉぉおおぉ

トリガー(ふぅん……こういうこともあるのか)

赤姫「……」

紅茶を飲みながら盗賊達の作業を見ていた赤姫も手を止めた。

赤姫「……なんだか嫌な感じね」

それから数ヵ月後……。



--魔法王国、ユニオン、校長室--

魔導長「よく来たなの三人ともっ。首を長くして待ってたなの」

ポニテ「ぶっすー……」

ツインテ「あ、あの、ポニテさん、態度悪い、ですよ……?」

アッシュ「ふん、来たくて来たわけじゃない」

ツインテ「アッシュ君まで……!」

勇者「……ごめんね魔導長。うちの子が勉強したくないって駄々こねちゃって……全く、実年齢だとそろそろ三十だっていうのに……」

付き添いで来ていた勇者がため息をついた。

ポニテ「だってー! ポニテ勉強したくないんだもん!! 学校ならちょっと前にレンちゃんと行ったので十分でしょ!? なんで今更学校なんかに行かなきゃいけないのさ!」

勇者「全っ然足りてない十分じゃない。ポニテ、あんたが人並みに出来ることと言ったら戦闘と食べることくらいじゃないの」

びしっ!! と指差す勇者。

勇者「これからの時代、戦闘能力だけじゃ食べていけないのよ?」



--校長室--

ポニテ「いーもん。適当に旦那さん見つけて養ってもらうし。なんならパパと一緒に農家やるし」

勇者「あんたみたいなの貰ってくれる人なんていやしないわ。後農家なめるんじゃありません」

ポニテ「うー!」

ばちばちと火花を散らす勇者とポニテ。

魔導長「……なんだか無理言って来てもらっちゃって悪いなの」

勇者「気にしないで魔導長。こっちとしては今回のことは渡りに船だと思ってるから」

ポニテ「ふん!」

ツインテ「ポニテさん……」

アッシュ(まぁ俺はツインテとまた一緒にいられるからいいんだけどな!)



--教室--

こつこつ

女人狼「――今から13年前に最終決戦と呼ばれる、人類の存亡をかけた決戦がありました」

教科書を読みながら教室を歩く女人狼。

女人狼「最後の希望である七勇者に導かれ、我々人類側は死闘の果てに魔王を倒し、勝利しました。でも、その代償は決して軽いものではありませんでした」

こつこつ

女人狼「この星の崩壊の危機こそ避けられましたが、核が一度破壊されたせいで、世界を満たしていた魔素が大幅に減少してしまったのです。はい、ゾンビ娘さん。この魔素とは一体なんですか?」

がたっ

ゾンビ娘「はい。魔素とは自然の中にある魔力の元となるものです。それを私達は呼吸とともに体内に取り入れて魔臓器で魔力に変換し、私達が使う魔法やスキルに使用しています」

女人狼「はい、よろしいです。ではオーク太郎さん。魔素が減少したことでこの世界に何が起きましたか?」

オーク太郎「ぶひ。魔法が使いづらくなりましたぶひ」

女人狼「……まぁいいでしょう。魔素が大幅に減少したことで魔力を練りづらくなり、結果的に強力な魔法の使用が難しくなりました。そしてこの13年の間で生まれた子供達の魔力量も、徐々に減少していっています……」

こつこつ

女人狼「このままではやがて、自力で魔法を使える者はいなくなるでしょう」



--校長室--

魔導長「――もしこんな時に魔王、もしくはそれレベルの脅威が現れたとしたら……私達はきっと、立ち向かうことすら出来ずに滅ぼされてしまうなの……。だから私は脅威に対抗できるようにこの学校を作ったの。世界中の知識と技術を集めたこの学園、ユニオンを」

アッシュ「……それに俺達と何の関係があるんだ?」

魔導長「君達には普通の生徒としてこの学校に通って貰いたいなの。もちろん身分を隠して。君達みたいな凄い子がいるとわかれば、他の子達にもいい刺激になると思うなの」

勇者「……なるほど」

ツインテ「身分を隠して、ですか?」

魔導長「そうなの。まぁ13年前の最終決戦にいた英雄が、まさかこんな外見になってるとは思わないだろうけどね」

ツインテ達の現在の外見は大体15歳前後である。

ぱんっ

魔導長「じゃあまぁこんな感じなの。後は学園の案内はレンちゃんに任せるなの」

こんこん

レン「失礼するにゃ」

ポニテ「お、レンちゃんじゃん」

アッシュ「その格好……ちっ、まさかかつての仲間に勉学を教えられるというのか……?」

ツインテ「レンさん、五日ぶりですね」

レン「久しぶりにゃツインテ。しかしいつ見てもツインテは可愛いのにゃ」



--教室--

きーんこーんかーんこーん

女人狼「はい、では一時間目はここまでです。各自予習復習を忘れないように。それにしても……遅いですね」

女人狼は時計を確認する。

キマ「はいはいはーい! 先生ー、先週話してた転入生は今日来るんじゃないんですかー?」

女人狼「そう、なんですが、何か手違いでもあったのでしょうか。あら?」

窓の外から中庭を見た女人狼はツインテ達の姿を確認する。

女人狼「……どうやらその転入生達は今校内を見学中のようですね」

キマ「嘘ー!? どれどれー!?」

だだだだ!

ゾンビ娘「三人……いますね」

オーク太郎「丁度同じくらいの年頃ぶひ」

キマ「ねーねー、全員このクラスなんですか!?」

女人狼「はい、そうですよ。全員このE組に来ます」

イバ「ちっ」

教室の隅で机に突っ伏している男子生徒が舌打ちする。



--教室--

きーんこーんかーんこーん

レン「二時間目は作成の時間にゃ。でもまず転入生を紹介するにゃ。入るにゃ」

がららー

ポニテ「うおー! この子達がクラスメイト? やっほー! ポニテだよー! みんなよろしくねー!!」

アッシュ「あんなにぶーぶー言ってたくせにノリノリかよ」

ツインテ「あはは……」

レン「えっと、左から大食らいのポニテに陰険なアッシュ、そして世界一可愛いツインテにゃ。みんな仲良くしてやってにゃ。特にツインテ」

ポニテ、アッシュ「「おい!?」」

レン「あ、でもツインテと仲良くし過ぎたらキレるのでよろしくにゃ」

ざわ

ゾンビ娘「え、ツインテって、もしかして中央王国の王女様……?」

オーク太郎「!! そういえばあの気品ある顔! 見たことある気がするぶひ!!」

ツインテ「あ、い、いや、その、ボクは……」

アッシュ「……ただの同姓同名だ。一国の王女がこんなところに来るわけないだろうが」

レン「こんな所っておい」



--教室--

ツインテ(……そうだ、公式ではボクは女の子ってことになぜかなってしまってるし、ここでそれを逆手に取ればごまかせるかも!)「み、みなさん! ボクはツインテ王女と何の関係ありません……その証拠に、ボクは男の子ですから!!」

ゾンビ娘「……」

オーク太郎「……」

イバ「……」

キマ「……いや、それはないっしょー」

ツインテ「ぐ……男子らしく短パンはいてきたのにまるで信用されてないです……」

ポニテ「まぁ無理だよね」

アッシュ「可愛いもん太ももぴちぴちだし」

ぱんぱん

レン「はいはいみんな、ツインテちゃんはツインテ王女となんの関係も無いにゃ。わかったにゃね? わかったらこの話はおしまいにゃ」

オーク太郎「いやでもあの可愛さを見間違えるとは到底思えないぶひ……」

レン「はい今後このことについて喋ったものは内申点下げるにゃー。オーク太郎君マイナス一点ー」

オーク太郎「えぇ!?」

10

--教室--

かっ、かかっ、かっ

レン「では、この錬金術用語で言うエーテルとは一体何か。はい、ツインテ。答えるにゃ」

ツインテ「え!? え、えっと……ご、ごめんなさい、まだ習ってないところなのでわからないです……」

レン「そうだったにゃーー! ごめんなのはこっちにゃツインテ! これはこちらの不手際なのにゃ! 内申点+10点!」

オーク太郎「えっ!?」

アッシュ「ひいきが過ぎる!」

レン「はい次、ポニテ答えてみるにゃ」

ポニテ「えっ!? 今それは私達にはまだ早いってことで決着がついたんじゃないの!?」

レン「はい口答えしたので極潰しポニテは-200点にゃ」

ポニテ「ひどい! ひどすぎるよレンちゃん! 持ち点どんなことになってるの!?」

がぁん!

ゴーレムがポニテの頭を叩く。

ポニテ「痛い!? 体罰まで!?」

レン「教師に向かってちゃん付きとはどういうことにゃ。-2点」

ツインテ(ちゃん付けの方が軽いんだ……)

イバ「……」

11

--教室--

きーんこーんかーんこーん

レン「じゃあ今日はここまで。起立」

ゾンビ娘「礼、ありがとうございました」

ありがとうございましたー

レン「じゃあツインテ達、お昼に食堂でにゃ」

がらららっ

アッシュ(がばがばじゃねぇか。隠す気ねぇな……)

ひょこっ

キマ「ねーねー君達ー。どっから来たのー? なんだかレン先生と仲よさげだったけど、知り合いだったりするの?」

八重歯を見せて笑う少女、キマがツインテ達に話しかけてきた。

ツインテ「あ、はい……そうですね、昔、近くに住んでいたもので……」

キマ「ん? 三人とも?」

ポニテ「えっと……うん。かな……?」

冷や汗を垂らしながら対応する二人。

アッシュ「……」

キマ「へー。この時期に三人同時に転入ってだけでも珍しいのに、三人とも知り合いなんだ?」

ツインテ「あ、はは……」

12

--教室--

きーんこーんかーんこーん

キマ「ありゃ、もう休み時間終わっちゃった。じゃあまた後でお話しようねポニテー!」

ポニテ「おっけー!」

ツインテ(10分でめっちゃ仲良くなってる……)

がららら

調教師「おやようございます皆さん、あら?」

教室に入ってきた調教師がツインテ達に気付いた。

調教師「あ、そういうことでしたね。お久しぶりですツインテ様、お元気でしたか?」

調教師は跪いてツインテを拝んだ。

ゾンビ娘「!?」

オーク太郎「ツインテ、様?」

ツインテ「ちょっ、ちょーー!」

ポニテ(え、私達のこと内緒にしとくっていうやつ教師陣に行き渡ってないの?)

アッシュ(あえて自分達側からばらしていくのか)

キマ「……」

13

--教室--

きーんこーんかーんこーん

調教師「それでは終わりにします。起立」

ゾンビ娘「礼、ありがとうございました」

ありがとうございましたー

調教師「それではツインテ様、恐れながらお先に失礼いたします」

ツインテ「あ、はは……」

どたどたどたどた!

キマ「どゆことー!? なんで調教師先生、ツインテちゃんのこと様つけて呼んでたのー!?」

ツインテ「え、えっと、その、これは……あ、遊び! 遊びなんですよそういう! 昔そういう、その……」

キマ「? そういうことができるくらい仲良いんだ?」

ツインテ「は、はい!」

キマ「また昔近くに住んでたの?」

ツインテ「は、はい!」

キマ「……レン先生は北の王国出身で調教師先生は黄金の王国だよね? 二人と家が近かったって、ありえないよね? どういうこと?」

ツインテ「」

アッシュ(いかん、ツインテの処理能力を超える一手だ!)

ポニテ「ひ、引越しが多くてね! ははは!」

キマ「あー、引越しかー!」

ツインテ「そ、そうなんですよ、うち引越しが多くて」

キマ「三人とも同じように引越ししまくってたってこと?」

ポニテ「……うん」

アッシュ(うんじゃねぇよ)

14

--教室--

きーんこーんかーんこーん

キマ「あ、次は……じゃあ、三人とも、これ終わったら一緒に昼ごはん食べようね!」

たたたたー

ポニテ「く……昼休みずっと質問攻めされたら隠し切れないかもしれない……」

アッシュ「全部バカ教師共のせいだ。俺達のせいじゃない。もうばらしちまおうぜ」

ツインテ「あはは……」

がらら

ツインテ「あ」

魔法使い「……」

ドアから入ってきたのは魔法使いだった。魔法使いはツインテ達を一瞥すると教卓まで歩いていき、

魔法使い「授業を始める」

と言った。

アッシュ(よし、やっとまともな奴が来た!)

ポニテ(っていうか教師陣全員知り合いパターンなの?)

キマ「……」

イバ「……」

15

--教室--

魔法使い「――であるからして、今や欠陥属性どころか雷、氷属性のものすら出生が確認されていない」

アッシュ(スキル、テレパシーもどき)

ぱりっ

ポニテ(お? なんか来たぞ?)

アッシュ(ツインテ、ポニテ、授業が終わり次第ダッシュで食堂まで行くぞ。これ以上あの女に根掘り葉掘り聞かれては心が休まらない)

ツインテ(あはは……です、ね)

ポニテ(どっかで三人で嘘固めとかないといけないねー。了解だよー)

ばちっ

魔法使い「俺の授業中にお喋りか?」

アッシュ「!」

アッシュのスキルは魔法使いによってかき消されてしまう。

魔法使い「俺の授業中は私語厳禁だ。それが例え、大気を震わさないものだとしてもな」

アッシュ「う、うぐぅ……」

16

--教室--

きーんこーん

魔法使い「授業はここまでだ」

とんとん

魔法使いは教科書を持つとさっさと出て行ってしまう。

がらっ

アッシュ(よし!)

キマ「ねー! ツインテ達ー、ごは」

アッシュ「風属性移動速度上昇魔法、レベル2!」

ぼっぼっぼっ

アッシュは自分とツインテとポニテに魔法をかけ、

どひゅん!

キマ「……ん?」

一瞬で教室から走りさった。

ゾンビ娘「! 強化魔法を三人同時に!?」

17

--廊下--

ダダダダダ!

アッシュ「ふん、今のがきんちょはろくに魔法を使えないと聞く! ならこの速度に追いついてこれるものはいまい!」

ポニテ「自慢げに逃げたことを語っとる……」

ツインテ「昼休み終わったらまた話聞きにきちゃいますけどね……」

ジッ

キマ「スキル、雷動」

どひゅん!!

アッシュ「!?」

アッシュ達を抜きさって目の前に現れたキマ。

ばちばちっ

キマ「もー、速いってば三人ともー。よっぽどおなか空いてたんだね。でもだめだよ廊下は走っちゃ!」

アッシュ(……もちろん全力で走ってたわけじゃ無かったが……最近のガキにしてはやるな)

キマ「……にしても、アッシュ君て、凄いね……魔法の展開速度、効果、両方とも凄かった! なんていうかやりなれてる感じ?」

アッシュ「……実戦で使ってたからな」

キマ「実戦? 何の?」

アッシュ「ん……さ、サーカスでだ」

18

--食堂--

がやがや

キマ「へー! 三人ともサーカスで働いてた時期があったんだー!? あ、だから色んな地域に行ったことがあるんだ? そこで先生達と出会ったとか?」

アッシュ「そ、そういうことだ」

ポニテ(アッシュ君……とっさにしては中々いい嘘だったよ!)

ツインテ(これでこの件は納得してくれたでしょうか……)

キマ「はー。でも世界中を旅してきたんだー? いいなー。キマもしたいなー冒険してみたいなー」

キマはアップルパイを食べながら窓の外を見ている。

ツインテ「キマさんもきっと出来ますよ」

ツインテが言う。

ツインテ「まずはこの学園を卒業してからになりますが、頼りになる仲間と一緒ならきっとどこにでもいけます。ボクでさえ出来たんですから」

ポニテ「……ツインテちゃん」

アッシュ「ふん」

キマ「うーん……でも許してくれなさそうなんだよなー。主におやじがー」

ツインテ「キマさんのお父さん、がですか?」

キマ「うん、うちのおやじめっちゃ頑固だから。ツインテちゃん達も見てわかったでしょ? おやじ無口だし私達のこと子供扱いばっかするんだよ。今は何にも出来ないんだから、素直に学業のことだけ考えてろって。まじむかつくよー」

アッシュ「……見てわかった? どういうことだ、俺達が知ってる人物なのか?」

キマ「ん? あぁ言って無かったっけ。私とイバのおやじ、さっきの先生の魔法使いなんだよ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「え」」」

19

--食堂--

ツインテ(魔法使いさんの、娘さん……?)

アッシュ(そういえば子供が生まれたとか、そんなことを風の噂で聞いたような)

ポニテ(私のパパママのかつての仲間、の子供か……そう考えると同学年でおかしくないね)

アッシュ「ん? イバ、っていうのは誰だ?」

キマ「同じクラスにいたでしょ? やる気なさげな男子。あれが私の双子の弟」

イバ「双子の兄だ」

ツインテ「!?」

かつかつかつ

カツ丼を持ったまま隣を通り過ぎるイバ。

キマ「何言ってるの! 私がお姉ちゃんなんだから! 戸籍にだってそう書いてあるし!」

イバ「俺は認めてねぇ」

キマ「むー……!」

イバは離れた席に一人で座るとカツ丼を食べ始めた。

ツインテ「双子、ですか」

20

--食堂--

こつ……

キマ「そうなんだけど……性格も外見も全然私達似てないんだよ? イバはいつも無気力でやなことばっか言って来るし、ほんと嫌い」

ツインテ「そんな……姉弟なのにそんなこと言っちゃ駄目ですよ」

こつこつ

キマ「そんなこと言ったって仕方ないもん……。それより明日はゾンビ娘ちゃんとオーク太郎君も呼んで一緒にご飯食べようね? 同じクラスメイト同士、早く仲良くならないとだよ!」

こつ

ツインテ「そうですね。ボク達も早く皆さんのことを知りたいですし」

こつ……

?「――隣、座ってもいいかな?」

ツインテ「……!?」

キマ「あ、どうぞどうぞ空いてますからー……って、あれ? また見たことないお顔だ」

?「今日からこの学園に転入することになってね。E組に」

キマ「嘘ぉ!? 私達のクラスに!? 転入生三人だけじゃなかったんだ!?」

?「うん、よろしく頼むよ」

スッ

そう言って手を差し出した。

キマ「うん、こちらこそー!」

?「君達も、よろしく」

アッシュ「……ッ」

ポニテ「……あれー……?」

少女は頭部に羊のような巻き角が生えていた。
その姿、その振る舞い、その話し方……性別という違いさえ無ければまるで……

ツインテ「トリ、ガー……」

?改めメリガー「……メリガーだ。よろしく」

というわけでその後の短編です。またのんびり書いていきたいと思います。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すいません、今日?の投下は難しいです。また夜に来ます。

遅くなりました、投下していきます。

21

--グラウンド--

ざわざわ

女人狼「えー、急ですがもう一組の新入生を紹介します」

ツインテ「……」

女人狼に紹介されたのは二人の少女。



--過去、食堂--

ツインテ「メリ、ガー……?」

メリガー「そう。女トリガーだからメリガー。わかりやすい名前だろう?」

緊張しているツインテと、不敵な笑みを浮かべているメリガー。

キマ「ん? ん? もしかして……みんなって、メリガーちゃんと知り合いだったりするの!?」

アッシュ「いや……他人の空似だったようだ」(この世界のトリガーじゃあないな)

ポニテ「あはは、知人によく似ててねー。うちで農業してるお手伝いさんにー」

22

--過去、食堂--

メリガー「へぇ、僕が農業? 選択肢が違うとこうまで変わるのか。興味深いね」

キマ「え? 僕? 選択肢?」

ツインテ「……」

メリガーの雰囲気はかつてのトリガーに酷似している。

ツインテ「メリガー、さん。貴女は何のためにここへ」

かつん

??「メリガー、勝手に出歩かないでもらおうか」

アッシュ「!」

メリガー「あー……ごめんごめん。ちょっと気になった人たちがいてさ。挨拶しておこうとね」

??「全く、好き勝手出歩かれるこっちの身にもなってみろ」

メリガー「ごめんよ、女騎士」

23

--過去、食堂--

??改め女騎士「はぁ……」

鎧を身に纏った金髪ロングの少女は、困ったようにため息をついた。

ツインテ(この人はメリガーさんのお連れさんでしょうか? 綺麗な人……)

ポニテ「? あれ?」

アッシュ「おいお前それはなんだ?」

アッシュは女騎士が腰に差している剣を指差して言った。

女騎士「? 見ての通り剣だが?」

アッシュ「そんなことはわかっている。この学校への武器の持ち込みは禁止のはずだが?」

女騎士「あぁ……そういうことか。それなら特別に許可を貰っているから気にしないでくれ」

アッシュ「特別な許可だと……?」

女騎士「あぁ……しかしおかしな規則だな。目に見える武器だけを取り上げた所で、なんの意味も持たないというのに」

アッシュ「……何?」

女騎士「そうだろう? 我々が用いる魔法は、この剣に勝るとも劣らない武器になりうるものだ。もし危険だからという理由で武器を取り上げるのなら、魔法も同じように封印せねばならないはずだ……こんな穴だらけのルールに何の意味があるのか疑問が生じる」

アッシュ「……ルールはルールだ。それにここは食堂だ、武器を持って食事をする気か? その剣は預けて来い」

女騎士「……悪いがこの剣を手放すことは出来ない」

バチッ

ツインテ「あわわ……なぜか喧嘩モードに!?」

キマ「ちょ、ちょっと二人とも!? 冷静になろーよー!」

24

--過去、食堂--

アッシュ「……」

女騎士「……」

メリガー「やれやれ、仕方ないね。じゃあ僕達は席を外そうかな」

がた

メリガー「……また後で」

かつかつかつかつ

二人は食堂から出て行った。

アッシュ「……」

キマ「ちょっとーアッシュくーん? なんかぴりぴりしすぎじゃない?」

アッシュ「うるさい……お前は知らないからそんなことが言えるんだ」

ポニテ「アッシュ君!」

アッシュ「あのトリガーが、連れて来た奴なんだぞ」

アッシュの拳は震えていた。

ツインテ(アッシュ君は今、あえて戦いに持ち込もうとしてた……)

25

--グラウンド--

女騎士「私の名前は女騎士だ。前いた場所との環境の違いに少々戸惑っている。色々と不慣れな部分があると思うが、そこは多めに見て欲しい。よろしく頼む」

ぱちぱちぱちぱち

ツインテ「……」(確かにこの人もこの世界の人じゃない……)

女人狼「ではメリガーさんと女騎士さん、次の時間は近接戦闘の授業ですが大丈夫ですか?」

ポニテ(トリガーがたった一人一緒に連れて来た存在……)

女騎士「大丈夫だ、問題ない」

メリガー「僕は準備してないから今日は休ませてもらおうかな」

きーんこーんかーんこーん

すたすたすた

槍兵「ふあぁ……おー餓鬼どもー授業の時間だぜぇ……あり?」

ツインテ「あ、槍兵さんだ……」

槍兵(そういやそんな話を魔導長が言ってたっけか……)「あー、新入生だな、話は聞いてるぞ。俺のことは知ってると思うが近接戦闘担当の槍兵だ。よろしくな」

ツインテ「あ、よろしくお願いします」

アッシュ(ようやくまともな奴が来たか)

26

--グラウンド--

槍兵「っと、準備体操は終わったし、じゃあとりあえず新入りどもの力を見ておこうか。お前らも見たいだろ?」

キマ「! 見たい! ポニテ達の実力!」

オーク太郎「見たい! ツインテちゃん達が汗塗れになっているところを!」

ツインテ「ひぇ」

アッシュ「……俺も知りたい相手がいる」

アッシュはすました顔をしている女騎士を見る。

槍兵「んじゃ新入生達は組み手だ。殺さないなら全力でやっていいぞー、危なそうなら俺が止めるけど」

ツインテ「な、なんて物騒な……」

槍兵「ちょい前なら死ぬまで戦え、っていうところなんだがな、最近は蘇生の成功率が低くなっちまったからなぁ」

ゾンビ娘「それ以前に蘇生魔法の使い手はもはや希少ですからね」

ツインテ(そうなんだ)

27

--グラウンド--

ザッ

アッシュ「さっき出来なかったからな。俺はお前とやりたい」

女騎士「ほう……」

ポニテ「あ、アッシュ君たらいきなり女の子に向かってやりたいだなんて!!」

キマ「ぷぷぷー! 最っ低ー!」

ポニテとキマがにやにやと笑っている。

アッシュ「うるせぇぞポニテ!」

ポニテ(っと、茶化すのはこれくらいにしておこうかな。女騎士ちゃんの実力が知りたいのは私もだしね……)

キマ「ねぇねぇポニテ! 組み手私とやらない?」

ポニテ「え、キマちゃんと? 新入生同士だけでやるんじゃないの?」

とポニテは槍兵の顔を見る。

槍兵「別にそんなこと言ってねぇぞ。一人休みみたいだしな、どのみち人数はあまるだろ」

ひらひらと手を振るメリガー。

ポニテ「そっかぁ。うん、いいよキマちゃん! やろっか!」

槍兵「手加減したれよ」

と槍兵はぼそりと呟いた。

28

--グラウンド--

ツインテ「あれ?……ボクはどうしましょう……」

槍兵「どうする? 俺とやるか?」

ツインテ「う……なんか友達がいないから先生と組んでる感が凄いのでやめときます……」

槍兵「……」

ゾンビ娘「では私がお相手しましょう」

槍兵「ん、委員長か。よしツインテはゾンビ娘とだ」

ザッ

ゾンビ娘「よろしくお願いします、ツインテさん」

ツインテ「あ、よ、よろしくお願いします」

ぎゅ

ゾンビ娘が差し出した手を握るツインテ。その手は冷たかった。

オーク太郎「僕達はだべってりゃいいだけだから楽ぶひね」

イバ「だりー……」

29

--グラウンド--

女騎士「武器はいいのか? 実技用の武器を貸し出してるのだろう?」

アッシュ「使い慣れてない武器を使うくらいなら無い方がましだ」

女騎士「ほう」(なるほど、戦い慣れてるな)

ざり

女騎士「正々堂々を尊ぶ私だが、そうまで言うのなら手加減はしない」

ずららっ

女騎士は剣を引き抜いた。

女騎士「師範、開始の合図を」

槍兵「俺は先生だ。んじゃ行くぞ、試合ー開始」

ドンッ!!

開始の合図とともに走り出すアッシュ。

アッシュ「毒属性生成魔法、レベル3」

ぎゅちちっ!

女騎士(一瞬でナイフを作り上げた?)

ドギィイイン!!

30

--グラウンド--

ギンギンギンギィイイン!!

女騎士(っ、毒属性でよくもここまで硬度を維持できるものだ……よっぽど器用なんだろう、な!)

ギィン!

アッシュ(俺の斬撃を全て弾き返した!? く!)

ギギギギギギギギギギギギギギィン!!

アッシュ(こう、なれば、スキル、人殺し!)

ぎゅるん!!

女騎士「」

女騎士のタイミングを破壊し、予測不能の斬撃を放つ。

ズバシャアアアア!!

31

--グラウンド--

キマ「何アレ……すっご……」

ポニテ(アッシュ君ガチやん……隠し通す気皆無やん)

ポニテとキマはアッシュ達の戦いを眺めている。

キマ「えへへ。あっちばっか見てちゃだめだね。じゃあやろっかポニテちゃん!」

ポニテ「そうだね!」

槍兵「はいじゃあこっちも試合開始ー」

キマ「いきなりいっくぞー! 雷属性全身強化魔法、レベル2!」

バチチッ!!

ポニテ「!」

キマの体は電撃を纏った。

キマ「そりゃー!」

ダンッ!!

ポニテ(わ、はや!)

ドガァアン!! ババチッ!!

キマの電撃を帯びた肘鉄がポニテの脇腹に命中する。

32

--グラウンド--

どがぁあん!!

キマ「……わ、わぁ! ごめんポニテちゃん! アッシュ君達の戦いがあまりに凄かったからつい力入っちゃった! 大丈夫!?」

ぱんぱんっ

ポニテ「うん、大丈夫! キマちゃんやるねー! いい一撃だったよー!」

キマ「……あれ? 無傷?」

ポニテは立ち上がって埃を払う。

ポニテ(雷属性の格闘タイプか……面白い!)

ぼっ!

キマ「!」

ポニテは両拳に炎を纏う。

ポニテ「ならば私は火属性の格闘スタイルだ!」

33

--グラウンド--

ガガッガガガガッ!!

キマ(!! ポニテちゃん、強い! 攻撃は重いし防御は硬い、反応も速いし判断もいい!)

ポニテ(戦いの無い時代に産まれてここまで動けるもんなんだ? 魔力が弱まった影響も感じさせないくらいのパワーだし!)

どがぁっ!!

キマ「!」

ポニテ「!」

二人の拳が同時にお互いの顔にヒットする。

ばばっ!

キマ「へへっ! やったなー? スキル、雷動!」

ぎゅん!

ポニテ「!」

しゅばっ

ポニテの後ろに一瞬で回りこんだキマは回転蹴りを放った。

どぎゃっ!

34

--グラウンド--

どがっ! どががが!

ぎんぎんぎぎん!

ゾンビ娘「……どっちも凄い戦いですね」

ツインテ「えぇ、本当に……」

ゾンビ娘「では私達もそろそろ」

ツインテ「あ、はい」

ゾンビ娘「……」

ツインテ「……」

見詰め合う二人。

槍兵「おーいどうしたよ二人とも。とっくに開始の合図だしただろうが」

ゾンビ娘「いえ、私は回復タイプなのでツインテさんが仕掛けてくるのを待ってるんです」

ツインテ「ぼ、ボクも自分から行くのは苦手なので、その……」

ゾンビ娘「……」

ツインテ「……」

槍兵(平和だなぁ……)

35

--グラウンド--

ががっ、ががががっ!

キマ(な、なんだろうこの感覚。上手いこと誘導されてるような感じ? なんだか数段上の実力者と戦ってるみた、い……!)

ポニテ(そういえば雷動ってメイドさんのスキルだよね? もしかしてヤミ君たちとも関係があるのかな?)

がががっ!

キマ(っ! なら……ちょっと本気だしちゃおうかな)

ズズ

ポニテ「!」

キマ「スキル、吸け!!」

イバ「やめろキマッッ!!」

びくっ!

キマがスキルを使おうとした瞬間、その戦いを見ていたイバが怒鳴って止める。

キマ「う……」

ズズ……

キマの力が収まっていく。

36

--グラウンド--

ゾンビ娘「もしや……ツインテさんも回復タイプなのですか?」

ツインテ「は、はい!」

ゾンビ娘「弱りましたね……一応格闘術もそこそこ訓練していますが、自分から向かっていくのは得意ではありませんし……」

ツインテ「あはは……」

ゾンビ娘「ではこうしましょう。二組の試合で傷ついた彼らの治療で勝負するというのは?」

ツインテ「! いいですね、平和で! そうしましょう!」

ぽん、と手を叩くツインテ。

槍兵「組み手の意味とは……」

ズガァアアアアアン!

ゾンビ娘「っと、さっそく片方の試合が終わったようですね」

37

--グラウンド--

しゅううぅう……

ポニテ「あははー! 私の勝ちだね、キマちゃん!」

キマ「うぐー、悔しい!!」

二人の服はボロボロになっている。

キマ(くー。あそこで吸血鬼化出来てたら負けなかったのにー……イバのバカー、変なところだけ石頭なんだから!)

ポニテ(やーびっくりしたなー。でも久しぶりに面白い戦いできてポニテちゃん満足!)

すたすたすた

ポニテ「やっほーツインテちゃん、そっちの組み手も終わったのー?」

ツインテ「いえ……私達は治療で戦うことになって」

ポニテ「なんじゃそりゃ」

ツインテ「それよりも、アレ見てください」

ポニテ「アレ?」

ツインテが指差す先には……

ポニテ「――え?」

38

--グラウンド--

アッシュ「はっ、はっ、はっ……! ぐっ!」

女騎士「いやはや恐れ入った……まさかそんな隠し玉を持っていようとはね」

アッシュの首元に突きつけられる女騎士の剣。

アッシュ「俺が、負けた……だと?」

女騎士「善戦だったが、今度は武器を持った君と戦いたい」

シャララ

女騎士は剣を鞘にしまった。

ポニテ「……え? あの対人に関して最強クラスのアッシュ君が、負けた?」

ツインテ「え、えぇ……人殺しは使ってなかったんでしょうか」

槍兵「使ってたぜ、しっかりとな」

ツインテ、ポニテ「「!?」」

槍兵「その上で負けたんだあいつは。完璧にな」

39

--グラウンド--

メリガー「まぁ無理も無い話さ」

ベンチに座って戦いを眺めていたメリガーが喋り始める。

メリガー「そこの少年は対人特効のスキルを持っていたんだろうけど、女騎士はそれの上位互換を持っているからね」

アッシュ「!?」

メリガー「彼女固有のスキル、屈殺……その効果は、ある特定種を除いた全存在に対して特効を持つ能力だ。それには無論、人も含まれる」

ツインテ「! そんな凄まじいスキルが……」

キマ「?? 何言ってるのかさっぱりだー?」

メリガー「対人と対人で戦えば、勝敗は素のスペック次第となる。が、女騎士はその点でも優れているからね。少年が敗れるのも当然というわけさ」

女騎士「やれやれ、全部披露する気か。今日は饒舌だなメリガー」

ポニテ(……確かに……この人、すんごい強い感じがしてる。まるで十代目さんやママみたいな……)

40

--グラウンド--

ツインテ(あのトリガーがたった一人しか護衛を連れてこなかったのは、女騎士さんだけいれば十分だということなんでしょうか……)

女騎士「ふう、しかし久しぶりだなこんなに汗をかいたのは。まさか人同士の戦いでこうも魂が揺さぶられるとは思わなかった」

アッシュ「っ!」

さわやかな女騎士とくやしさから顔を歪ませるアッシュ。

とてとてとて

オーク太郎「女騎士ちゃんお疲れ様だぶひ。かっこよかったぶひよ。良かったらこのタオル使うぶひ」

女騎士「あぁこれはすまない、ありがたく使わせていただ…………え」

がくがくがくがくがくがくがくがくがくがく!!

オーク太郎「? どうしたぶひ?」

女騎士「ばっばばばばっ、ばかな!? なななななぜこんなところに、お、おおっおっオークがいるんんんあぁああああああ!?」

ぶわっ!

全身から汗を撒き散らして動揺する女騎士。

アッシュ「え」

オーク太郎「最初からいたぶひ。ってか失礼ぶひ、人種差別ぶひよ?」

オーク太郎は女騎士に近づいていく。

女騎士「お、おお、んオーーク!!」

ばっりぃいいいん!!

女騎士の鎧がなぜかぶっ壊れて服がびりびりに破けてしまった。

ポニテ「」

どさっ

女騎士「くっ…殺せ!」

いつの間にか女騎士は鎖でつながれていたという。

メリガー「……屈殺が効かない特定種ってのはもうわかったかな?」

今回は送れちゃってごめんなさい……。


あと10年後が知りたいキャラがいたら教えてください。そいつらも話にからませますので。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました!
女騎士というジャンルの人気さが伺い知れる……

それでは投下していきます。

41

--寮、食堂--

女騎士「くっ……まさかこんなことが起こりうるとは……幸先が悪いな」

ジャージ姿でトレイを持っている女騎士は、忌々しそうに遠くにいるオーク太郎を睨んでいる。

オーク太郎「……めっちゃ睨まれてるぶひ。僕何かしたぶひ? はぁはぁ」

イバ「喜んでんじゃねーよ」

ツインテ「女騎士さんはオークさんが苦手なんですか?」

女騎士「苦手なんてものでは無い。天敵だ」

ツインテ「て、天敵……?」

女騎士「話せば長くなるので今は割愛するが、私の世界では……」

がちむち「おぉツインテちゃん! 久しぶりだな、元気してたか!?」

マッスルひげ「俺たちゃ校長から話を聞いてからずっとこの日を楽しみにしてたんだ!」

屈強な男「さぁさぁ俺達の漢飯、食ってくんな!」

ポニテ「おじちゃん達……ここで再就職したんだ? 相変わらずツインテちゃんのこと好きねー」

キマ「え!? 寮監さん達とも知り合いなの!? どんだけー!?」

42

--寮、食堂--

女騎士「」

からんからーん

突然女騎士がトレイを落としてしまう。

アッシュ「? おい、どうかしたのか? 震えてるぞ」

女騎士「あ、脂ぎった、男……あ、あぁ、あぁあああああああああああああああああああああ!!」

ばっりーん!

アッシュ「!?」

ツインテ「え……!?」

またしても女騎士の服がびりびりに破れ散り、どこからともなく現れた鎖が女騎士の手足を縛った。

がっしーーん

女騎士「くっころーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

屈強な男「……なんだこの危ないお譲ちゃん……」

43

--寮、食堂--

ツインテ「と、とりあえずこれを!」

ツインテは上着を脱いで女騎士にかけた。

女騎士「くっ、無念……!」

唐突に舌を噛み切ろうとする女騎士。

アッシュ「いやいやいやいやいや」

がっ!

咄嗟に口に手を入れるアッシュ。

がぶり

アッシュ「ッ……おいこれはどういうことだメリガー。説明しろ」

メリガー「うん……まぁこれも屈殺のデメリットだよね」

肉団子を自分の皿に取りながら語るメリガー。

ポニテ「? 特定種がどうとかって奴?」

メリガー「うん。もうこの際だから全部言っちゃうけど、女騎士はオークとか蛮族とか脂ぎった臭そうな男は駄目なんだよね」

女騎士「もががもがが」

アッシュ「俺の指ごと噛み切ろうとするのやめてくれ」

がちむち達は自分の腋の臭いを確認している。

44

--寮、食堂--

カチャカチャ

女騎士「くっ、一度ならず二度までも……屈辱だ」

女騎士はとても悔しそうな顔で食卓についている。

アッシュ「……なんだかとても難儀な能力だな」

ポニテ「あの三馬鹿おじちゃん達にも勝てないとか正直やばいよ。戦闘力5の雑魚だよ」

ツインテ「二人とも、そんな言い方したら駄目ですよ」

アッシュ「しかしあれだな、俺が女騎士に勝てなかったのは俺がイケメンだという証明にほかならない。イケメンとは罪なものだ……」

ポニテ「でたでたアッシュ君のナルシスト」

ツインテ「自慢はよくありませんよ?」

アッシュ「ゴメンツインテ」(……しかし、不思議だな。このメリガーというやつは。そんなにおいそれと女騎士の秘密を俺達にばらしても構わないのか? たった一人だけ連れて来た戦力なんだろう……?)

ずずー

メリガーは美味しそうに味噌汁を飲んでいる。

ばたーん!

レン「ツインテー! レンと一緒にご飯食べるにゃー!」

45

--寮、食堂--

すりすりすりすり

レン「えへへーツインテー、ツインテー」

ツインテにべったりくっついているレン。

ツインテ「ちょ、レンさ……先生。引っ付き過ぎです。ご飯食べられないですよぉ」

レン「大丈夫にゃあ、レンが食べさせてあげるにゃあ」

じー

キマ「……本当に仲いいんだねーレン先生とツインテちゃん……ちょっとやばいくらいに」

レン「そりゃそうにゃー。レンとツインテは将来を誓い合った仲なのにゃー」

キマ「えっ!? って、女の子同士じゃだめですよそれー、あはははー」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

ツインテ「へ、変な噂たっちゃうからやめてください……先生と生徒がこんなことしてるってだけでもまずいんですよ?」

レン「にゃ、にゃあ……つ、ツインテに嫌われることだけはしたくないのにゃ……大人しくするのにゃあ」

そっとツインテから離れるレン。

ばたん

錬金術師弟子「あ、レン先生ここでしたか! 今日は研究発表の打ち合わせがあるって言ったじゃないですか! のんびりご飯なんて食べてる暇ないんですよ!!」

レン「げっ」

だだだだだがしっ

レン「うぅ……また明日にゃツインテー」

首根っこを捕まれてずるずると引きずられていくレン。

ポニテ「……何しに来たんだレンちゃん……」

46

--寮、食堂--

カチャカチャ

ポニテ「しっかし、せっかく綺麗で強そうな鎧だったのにもったいなかったねー。ばらばらになっちゃってさー」

女騎士「気にすることは無い。あれは後三時間もすれば自己修復が終わるはずだ」

ポニテ「へ……?」

メリガー「所謂魔法武器の一つだ。女騎士の鎧は生きた鎧、非情に強力な防御能力を持ち、更に再生能力まで備えている」

ツインテ(魔法武器……今まで見たことがあるのは魔剣使いさんの魔剣と斧女さんの魔斧……くらいかな)

アッシュ「……」

メリガー「なんで、って顔してるね。アッシュ」

メリガーはにやにやとアッシュの顔を覗き込んでいる。

メリガー「少しだけど、僕がこの世界でやったことはもう知ってる。君が警戒するのはなんら不思議なものではない」

アッシュ「!」

キマ「? やったこと?」

47

--寮、食堂--

メリガー「ならもう一つ言っておこうかな。彼女の持つ剣は聖剣と呼ばれるものでね。振るうだけで凄まじい力を発する。それは先ほど君も味わったと思うけど」

女騎士「やれやれ、人の秘密を全部言う気かメリガー……」

やれやれとため息をついて女騎士はナイフとフォークでたくわんを口に運ぶ。

メリガー「そしてそれにはリスクが伴う。そのリスクとは、聖剣と彼女の魂がリンクしていることだ」

ツインテ「リンク……?」

メリガー「あぁ。言わばこの剣は彼女の命そのものなんだよ」

アッシュ「!?」

女騎士「……完全に破壊されれば私も死ぬ。真っ二つに折れたくらいじゃ死にはしないが、かなりのダメージを受けることになる。ゆえに手放せないのだ」

ツインテ(だからさっき……)

メリガー「どうだろう? 僕達の強みと弱点を包み隠さず喋ったんだ。そろそろ警戒を解いて仲良くしてくれないかな?」

アッシュ「……」

ツインテ「アッシュ君」

アッシュ「――目的を、まだ聞いていない」

メリガー「……」

アッシュ「なぜこの世界に来たのか、その理由を聞けないうちは無理だ」

キマ(何言ってんだろうこの人たち。中二病かな)

48

--寮、食堂--

メリガー「……」

アッシュ「言えないのか? ならやはり……」

女騎士「我が世界を……救うためだ」

ポニテ「え? 我が世界って、どういうこと?」

メリガー「……」

女騎士「それは……」

マッスルひげ「おいこら、食堂にこんなもの持ち込んじゃだめだろうが」



女騎士「え……」

マッスルひげは女騎士が腰に差していた剣を手に取った。

マッスルひげ「いいか? 食事をする場所にこんな無粋なものを持ち込んじゃだめだ。育ちが知れるぞ?」

女騎士「……」

マッスルひげ「……おいなんとか言って」

ばっきーん!!

女騎士「がはっ!?」

マッスルひげ「うぇえ!? こ、この剣勝手に折れたぞ!?」

マッスルひげが触ったせいで剣は真っ二つに折れてしまう。女騎士は盛大に吐血。

ポニテ「お、女騎士ちゃーーーーーん!?」

床に倒れる女騎士。そして当然のように衣服は破れていた。

アッシュ「生きんのハードモード過ぎんだろ!」

49

--寮、105号室--

ぎぃ、ばたん

ツインテ「やれやれ大変でしたね」

アッシュ「あぁ全く……転校初日からとんでもない日だ……」

ツインテ「女騎士さん、あの後医師さんに介抱されてましたが……大丈夫だったんでしょうか」

アッシュ「さぁな」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ツインテ「あ、ボク達の荷物、届いてますね」

アッシュ「あぁ……」

50

--寮、106号室--

ポニテ「はぁはぁはぁはぁ!!」

キマ「ポニテー、なぜ部屋につくなり涎垂らしながら壁に耳をつけてるのさー」

ポニテ「だって、だって!! ついに、ついにこの時が来たんだよ!!」

キマ「えー? 何言ってるか全然わかりませーん。っていうか、ツインテちゃんがなんで男のアッシュ君と一緒の部屋なのかなー。問題じゃないー?」

ポニテ「いやぁ、それがねぇ」



--寮、105号室--

アッシュ「……」

アッシュは一人ベッドの上に座って瞑想している。

しゃわー

アッシュ「……」

シャワーの音を聞くアッシュはどこかそわそわしている。

51

--寮、105号室--

キュッ……

アッシュ「!」

きぃ、ぱたん

アッシュ「……」

ぎぃ……

ツインテ「ふぅ、いいお湯でした。お先にいただいちゃいました」

アッシュ「お、おおお、おう!」

バスタオルで髪の毛を拭きながら風呂上りツインテが現れた。

アッシュ(ぱ、パジャマ姿もどう見てもおにゃにょこ……)

ぽたぽたと鼻血を垂らすアッシュ。

ツインテ「あれ? 大丈夫ですかアッシュ君。鼻血出てますけど……」

52

--寮、105号室--

アッシュ「あ、いや! これはなんでもない! なんでもないから気にするな! な!」

ツインテ「? そうですか?」

アッシュ(く、わかっていようともやはり可愛い! なぜ、なぜこんな可愛い子が)



--寮、106号室--

キマ「え……う、嘘、でしょ? だって、だって!」

ポニテ「嘘じゃないよ。ツインテちゃんは正真正銘、男の子だよ」

ポニテはそう言って再び壁に耳をつけた。

ポニテ(あの全てが溶け合って一つになった時、私達の間に秘密なんて何も無くなったんだ。信じがたいことだけど、ツインテちゃんは男の子だった。そして……)



--寮、105号室--

ツインテ「……」

アッシュ「じゃ、じゃあ俺も、シャワー浴びてくる」

ツインテ「――もしかして、ボクのせい、ですか?」

アッシュ「え?」

ツインテ「その、鼻血」


--寮、106号室--

ポニテ(アッシュ君の想いも、全て伝わってしまった……だから、やばいのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

キャーキャー言いながら壁に顔をこすり付けるポニテ。

53

--寮、105号室--

アッシュ「い、いや、これはその、これは、だな!」

ツインテ「ボクのこと……好き、だったんですよね?」

アッシュ「!?」

ベッドの端に座って髪を拭いているツインテは、少しだけ振り返ってアッシュを見た。

ツインテ「もしかして……今でも、好きでいてくれてるんですか?」

アッシュ「!!……っう……」

ダカダンッチャーラーラーラーラーラーラー(月9の主題歌っぽい音楽が流れ出す)

ツインテ「ボク……男の子、なんですよ?」

チャーラーラーラーラーラーラー

54

--寮、105号室--

アッシュ「お、お……お、俺は、俺が好き、なのは、その……」

ツインテ「……」

心なしかツインテの瞳は潤んでいる。

アッシュ「ツインテは、ツインテだから、性別なんか……関係無い、わけで……」

ツインテ「……」

スッ

アッシュは、一歩足を前に踏み出した。



--寮、106号室--

ポニテ「ま、まじで!? まじでまじで!?」

キマ「ポニテきもーい」



--寮、105号室--

ぎしっ……

ツインテ「……」

アッシュ「だから、男だったと、しても!」

55

--寮、105号室--

ばんっ!!

鬼姫「やっほーっす!! アッシュ君聞いて聞いてーー? あたしコロシアムで優勝しちゃったっすー! てへぺろー!!」

ツインテ、アッシュ「「!?」」

いきなりドアを開けて入ってきた鬼姫にびっくりする二人。

鬼姫「ほら見て見てトロフィーっす! 一番にアッシュ君に見てもらおうと思って西の王国から走ってきたんすよー!? おかげで汗臭いっすけどー!」

アッシュ「お、お、お前なんでいきなりっ! っていうかなんで俺の場所がわかったんだ!」

鬼姫「だって鬼姫ちゃんには地獄感覚シリーズがあるっすからね!」

ツインテ「……」

すっ

ツインテは二人の横をすり抜けてドアの所まで歩いていく。

すたすたすた

アッシュ「つ、ツインテ?」

ツインテ「……積もる話もあるでしょうから、ボクは席を外しますね」

にっこりと笑うツインテ。

ツインテ「ごゆっくり……」

アッシュ「」

ぱたん

アッシュ「ツインテ……?」

鬼姫「? どしたっすか?」


--寮、106号室--

ポニテ「あのバカ鬼!!」

だんっ!!

56

--寮、屋上--

ひゅうぅうう

ツインテ「……」

がくっ

ツインテ「……ボクも……何してたんだか……」

真っ赤な顔を隠してしゃがみ込むツインテ。

57

--研究室--

錬金術師弟子「……どうでしょうか?」

義足「いいね……さすがレンちゃんの研究チームだ。もうここまで形になっているとは思わなかった。魔力発動外部装置」

義足はグローブを眺めながら言う。

レン「義足の研究があったからこその成果にゃ。レン達はただそれを改良したに過ぎないのにゃ」

そう言ってレンは義足の義足を指差した。

義足「謙遜するなよレンちゃん。これは俺のこれより全然凄いものだ……俺の義足もこっちのやつに代えたいくらいさ」

レン「そう言ってもらえると頑張ったかいがあるにゃ……けど、研究員が生きていたならもっと早く、もっといいものが出来上がっていたのににゃ……」

義足「……彼は決して許されないようなことを沢山してきたんだ、恨みを持っているものも大勢いたことだろう。あの最後は……因果応報だ……まだ犯人は捕まってないんだっけ?」

レン「英雄殺しなら数年前からハイ達が追ってるにゃ」

義足「そうか……それならいつか解決するだろう。っと、重い話になってしまった。今日は素晴らしい日だというのにな。さぁ飲もうレンちゃん。いい店を取ってあるんだ。あ、そこの君も来たらいい」

錬金術師弟子「あ、はい! ありがとうございます!」

58

--ジャングル--

じゃぷ、じゃぷ……

フードを被ったニ人組がジャングルの沼地を行く。

ずる……

?「ん……? 何かいるぞ! 気をつけろ!」

ばしゃっ!

アナコンダ「しゃああああああああああああああ!!」

??「!」

突如沼から飛び出してきたアナコンダが後ろを歩いていた女性に襲いかかった。

ガウガウガウーーン!!

女性は咄嗟に銃を抜いて応戦するも、アナコンダの分厚い皮の前ではほとんど意味をなさない。

アナコンダ「っしゃああああ!!」

?「へっ! 一瞬ひるみゃあ十分間に合う、ぜっ!!」

どがっ!!

前を歩いていた女性が割って入り、彼女の拳がアナコンダの頭をぶっ叩いた。

アナコンダ「しゃ、じゃあぁああああ!!」

ばしゃーーーん

?「っうし、丁度いいや。こいつを晩飯にしようぜ、ハイ」

??改めハイ「そうしようか、竜子ちゃん」

59

--ジャングル--

ばちばち……

?改め竜子「むぐっ……かってぇなこいつ……味は悪くねぇけど……火通しすぎたか?」

ハイ「……」

竜子「ハイ、どした? 噛み切れないか?」

ハイ「あ、いや、大丈夫です。ちょっと考え事してただけだから。あむ……うわ、かたっ」

竜子「……」

がさごそ

斧女「ここにいたんですか。探しましたよ?」

傭兵「もうなんか食べてる! いいなぁ!」

ユニコーン「ひひん」

鳥や果物を手に持ってジャングルから現れた斧女達。

竜子「おっせーぞお前ら……これ食わせてやるから早くそれ食わせろ」

60

--ジャングル--

ぱちぱち

傭兵「あちっ! あちちっ! 竜子姉さんこれ熱いし硬い! これ本当は食えないっしょ!?」

竜子「文句言うな食えるっつーの。コレ全部お前のだから残すなよ!」

傭兵「嘘っしょ!? 無理ですってこれ、俺の体積よりでかいじゃないっすかー!」

ぎゃーぎゃー騒いでる竜子と傭兵。

斧女「ハイ? どうかしましたか?」

ハイ「……いえ、ちょっと」

竜子「あぐっ。お、やっぱり鳥はうめー。ほれハイ、食え! 美味いぞ、んっ!」

半ば強引に鳥の足を押し付ける竜子。

ハイ「あ、ありがとう竜子ちゃん」

傭兵「……どうかしたんすか? ハイ姉さん」

ハイ「いえ……」

ハイは鳥の足を受け取った。

ハイ「……結局人間て、守る価値が無かったのかもって、思っちゃって」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。
すいません、書き上がらなかったので半分だけ投稿します。

61

--ジャングル--

ぱちばち

斧女「……」

傭兵「え、あ、あの……」

気まずい雰囲気を察した傭兵がおろおろとする。

竜子「……人を殺したからって、頭のねじはずれちまったのかハイ?」

ハイ「!」

傭兵「え……?」

斧女「ちょっ、竜子さん、その言い方はひどいと思います」

竜子「うるせー! たかが十数人殺したくらいで気が滅入って自分を見失ってんじゃねぇぞバカハイ。さっきの言葉には……失望したぞ」

ハイ「……ッ……ごめん……」

竜子は荒々しく肉を噛み千切る。

竜子「いいか? 私らは暴徒を鎮圧したに過ぎない。それだけだ。任務なんだ。気に病むな」

斧女「……」

竜子「お前が守った人間達だろ? 守った奴がそんなこと言ってどうするんだよ……今大事なことは、この事件を一刻も早く解決することだろう?」

ハイ「……ごめん、竜子ちゃん」

62

--ジャングル--

ぱちぱち……

四人はそれぞれ寝袋の中に入って睡眠をとっている。

ハイ「……ぐす」

斧女「……」(この二年間、私達は人間の闇を見すぎてしまった……特にハイさんは、今まで人を殺すような生き方をしてこなかっただけに、反動が大きいのでしょうね……)

がさごそ

斧女は寝袋から抜け出して近くの川へ行こうとする。

ゴーレム「も?」

斧女「しっ、少し歩いてくるだけです。見張りをしっかり頼みましたよ」

見張り用のゴーレムと会話し、みんなを起こさないように静かに移動する斧女。

たしたし

斧女(それにしても……今回の事件は異常過ぎる……)

63

--教室--

女人狼「では今回はこのユニオンについて勉強していきましょう。皆さんは既に知っていることと思いますが、ユニオンとは、魔導長校長先生が世界平和のために設立した組織の名称であり、この学校の名前でもあり、私達が住むこの町の名でもあります」

アッシュ(知っている。お母様はとんでもないものを作り上げる気だと言っていたな。世界のパワーバランスを壊しかねない、と)

女人狼「ユニオンは世界の中心に位置しており、ありとあらゆる知識や技術が集まる場所です。完全に中立の立場ですが、世界平和に害無す存在には容赦しません」

ポニテ(来るときに見たけど、この町は色んな王国の特徴があったね。東とか北の民族的なものも売ってたし)

女人狼「世界平和のためにユニオンが作り出した特別部隊があります。その名はガーディアン。世界各地に派遣されるガーディアンに所属しているのは歴戦の勇士達です。有名なところでは十代目さんが所属しています」

おおー、と生徒達から声があがる。

ツインテ(あの戦いで勇者の力を失ったのに今でも頑張ってらっしゃるんだ……凄い……)

64

--校長室--

ぼりぼりぼり

魔導長「あ、この煎餅とっても美味しいなの。お土産ありがとうなの!」

姫「でしょー? えへへ、持ってきて良かったー!」

参謀長「姫様、そちらの方達にもお渡しするべきですよ」

姫様「あ、ごめん! もちろんみんなにあげるつもりだったんだよ? はい!」

鬼姫「わーありがとうっすー!」

代表「僕は結構」

ぼりぼりぼり

魔導長「で、手紙を読んでここにきてくれたっていうことは、つまり……」

姫様「うん! すっごい素敵な話だと思ったよ! 私達も参加したい!」

鬼姫「あたしも賛成っすー。お仲間に加えてくださいなー」

代表「まぁ僕に拒否権無いですからね」

三人の顔を見る魔導長。

魔導長「……嬉しいなの。みんなが一緒になってくれたらユニオンはもっと素敵なことが出来るなの!」

参謀長(ユニオンの核である魔法王国に、我が黄金王国、それに砂漠の風と亜人保護団体が加わるとなれば……世界最大規模の団体が出来上がる。それを誰に舵取りさせるつもりなのかな、魔導長)

ばたん

賢者「はぁ、はぁ……すみません遅れました」

参謀長(!? 王国の、賢者……だと?)

65

--校長室--

魔導長「へ……あ、いえ、ようこそおいでくださいましたなの。どうぞお席に」

賢者「いやぁかたじけない。ふー……」

どさ

参謀長(小国である魔法王国や黄金王国が集うのとはわけが違う……あの王国の王がなぜこんな所に……?)

魔導長「……賢者さん、それでどういったご用件ですなの?」

賢者「はい、この手紙、読ませていただきました」

ぱらり

賢者は胸ポケットから手紙を取り出した。

魔導長「それは……」

賢者「世界中の知識を集め、世界中の力を纏め、世界を守るための組織……あなたの考えたプランはとても素晴らしいものだと思いました」

参謀長(まさか)

賢者「ので、我が王国も、ユニオンの一部として世界に貢献したいと考えています」

参謀長「!?」

魔導長「あ、はは……いやぁ……大変嬉しい申し出なんですが、正直……そう言ってくれるとは思っていませんでした、なの」

参謀長(じゃあなんで手紙出したんだよ)

66

--校長室--

魔導長「だって五大国の、しかもあの中央王国ですから……ですが、いいのですか?」

賢者「といいますと?」

魔導長「ユニオンには、王という概念がありません。人々が考え、人々が動かしていくんです。つまりユニオンの一部となるということは貴方の王位は……」

賢者「そのことですか。はい、承知しています。私が王位から退くだけで民が豊かになる可能性がある……安いものです」

魔導長「」

参謀長(確かに最終決戦移行、人口が減った王国は衰退を始めている。あの巨大な国を回しきれなくなっているんだ……それをユニオン加入でどうにか出来れば、ということか)

魔導長(これだけの集まりだ、広い土地が欲しい。だから王国にも条件付で土地を貸してもらえないかと思ってたけど……まさか王位を捨てる覚悟でここに来るなんて……)

ぎゅ

魔導長「ありがとうございます賢者さん。その申し出に感謝いたします! ぜひ賢者さんには重要なポストについていただいて」

賢者「え、いや私は失われた王国に行こうかと思っているので」

魔導長「へ」

67

--校長室--

魔導長「失われた王国……つまり、表舞台から姿を消す、という意味ですなの?」

参謀長(脱落者の受け皿……表に居場所が無くなった者達の土地、か……)

賢者「はい。私は前の時代の人間です。これからの世界は若者達が作るべきだと思いましてね。私は引退しようかと」

魔導長「そう、ですか……いや、人様の覚悟をどうこう言うつもりはないですなの。ですが、少し寂しくなりますなの」

賢者「はっはっはっ」

参謀長(後は他人任せとはちょっと無責任過ぎやしないか……まぁいいか。それこそ他人の都合だ。何にせよ、これでユニオンは強力な存在となる)

ぼりぼり

姫「姫ちゃんむずいことよくわかんないからお煎餅食べる」

鬼姫「鬼姫ちゃんもー」

68

--北の王国--

ぼろっ

召喚士「ここも、でやんすか」

北の王「……深刻やなぁ、土地の衰弱が」

北の王は土を手にとって調べている。

召喚士「元々北の王国の国土は寒くてやせた土地ばっかだったでやんす。魔力を使った魔力農法で今までなんとかなってきたでやんすが……」

北の王「魔力が枯渇し始めている今となっちゃあ、それもうまくいかんなぁ……」

召喚士「どうするでやんす? 北の王」

北の王「……今度の集会でちっと言ってみるわぁ……でないと」

どさっ

北の王「この国の未来があかん」

69

--東の王国--

東の憲兵「こらー! 待てー!!」

盗人「はぁ! はぁ! はぁ! あいてっ!!」

どさっ!

転んだ盗人を捕まえる東の憲兵。

東の憲兵「大人しくしろこの馬鹿者!……む」

盗人「くそ! 離しやがれ!!」

じたばたじたばた

東の憲兵「またか……」



--東の王国、塔--

その様子を塔の窓から眺めている魔剣使い。

魔剣使い「……」

学術師範「どうかしましたか? 魔剣使い殿」

魔剣使い「いや、また物取りが出たようで」

学術師範「またですか……困り者ですね、あの避難民達には」

魔剣使い「……避難民のせいと決まったわけでは」

学術師範「いえそうに違いないですよ。最終決戦の時にこの国に避難しに来たまではいいが、迷惑にもそのまま居ついてしまった者達……一生懸命働いてくれるのならばなんの文句も無いのですが……この国に馴染もうとせず犯罪ばかり……治安が悪化する一方だ」

魔剣使い「……」

学術師範「人道的がどうとか言う前に追い出してしまうべきでしたな」

70

--西の王国--

義足「あははは! やった! ついに成功したぞ! わははは!」

施設の中を駆けまわる義足。

ガチャリ

包帯女「うぃーす義足ー。飯持ってきてやったぞー、ってうわ!?」

がばっ!

扉を開けて入ってきた包帯女に抱きつく義足。

包帯女「ちょ!? おおおおま、一体何を!?」

義足「聞いてくれ包帯女! ついに出来たんだ!!」

包帯女「あ?」

義足「この前魔法王国で……あぁ今はユニオンか? で、そこで研究発表を行ってきたんだけど、色々参考になるものがあってさ」

包帯女「ん……?」

義足「帰ってきてからずっといじくってたんだ。そして今日ついに! これを完成させることが出来たんだ!!」

ぼっぼっぼっ

包帯女「……なんこれ」

義足「蒸気機関さ!」

包帯女「……だからなんそれ」

義足「魔力が枯渇した後の世界を支配する力さ!!」

包帯女「……なんか機械っぽいけど、すっごいちゃっちいっていうか、テンテンを見た後だとガラクタにしか見えないっていうか」

義足「」

包帯女「あ、ごめん……」

今週中に半分投下しにこれたらなと思います。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!

結局風邪ひいたりなんなりでこれませんでしたー。いつか+10どっかでしたいです。

それでは投下していきます。

71

--ユニオン--

ひゅうううぅう

賭博師「わりぃな調教師。親父が倒れちまったから東の王国に戻らなきゃならなくなった……」

調教師「え……」

賭博師「親父がいなくなったら、跡を次ぐのは俺じゃなくて弟だ。でもあいつ一人で国を背負えるとは思えないんだ……だから俺が支えてやらないと」

そう言って賭博師は手紙を見せた。それは弟から賭博師に当てた手紙だった。

調教師「……わかりました。そういうことであれば私もついていきます。貴方とならどこへでも」

賭博師「さんきゅーな。でもお前は駄目だ」

ぽん

賭博師は調教師の肩に手を置いた。

調教師「え……」

賭博師「だって、教え子がいるってーのに中途半端に投げ出しちゃ駄目だろう? それにお前にはツインテ様や姫ちゃん様についていて欲しいんだ」

72

--ユニオン--

調教師「っ……ですがご主人様、ユニオンに身を置くものは他の国の政治に関わってはならないというルールがあります。だからご主人様がそちらに行ってしまったら、我々は……」

賭博師「……スパイだと疑われるから、今後は気軽に会えないかもしれないな」

調教師「……」

賭博師「ま、そこは魔導長さんに上手く頼み込んでみるさ。同じ釜の飯を食った仲だ、ある程度はわかってくれるはず」

調教師「ですが……」

賭博師「……そんな顔するな。俺達がそれぞれ違う陣営に所属することで生まれるメリットもある。俺とお前がいる陣営……つまり東の王国とユニオンが仲良くしやすくなるだろ?」

調教師「……」

つー

調教師は無言で涙を流す。

賭博師「またさ、会いに来るから」

調教師「はい……どうかお体に気をつけて……」

73

--宇宙、母艦--

びこーんびこーん

テンテン「……」

テンテンは母艦の窓から寂しそうに地球を眺めている。

ウーノ「本当に、よろしかったのですか?」

テンテン「……何がだ?」

ウーノ「親しくしていたご友人がいたのでしょう? これからの人類のためにと、行き過ぎた科学技術を全て回収したその真意は理解できます。でも貴方自身まで身を隠す必要があったのでしょうか……」

テンテン「私達もオーバーテクノロジーだ。人の傍にいれば確実になんらかの影響が出てしまう」

コンコンと自分の頭を叩くテンテン。

ドゥーエ「まぁ……私は別にいーけどさー。地上のみんなとはお別れだけど、お姉ちゃん達とは一緒だしー」

トーレ「……」

テンテン「……そう悲観するな。彼らが発展し、自力でここに来れるようになれば、また会える」

ウーノ「……そうですね。彼らの何世代後になるかはわかりませんが……」

テンテン「……それに、この流れはまずい気がするんだ」

ウーノ「え?」

74

--王国--

賢者「そうか……やっぱりそうなるか」

軍師「はいだぜぃ……すみませんだぜぃ」

賢者「民を思っての決断だと、理解してくれているんだろう?」

軍師「もちろんですだぜぃ。民を第一に考える賢者様のお考えは素晴らしいと思うだぜぃ。でも王国としての文化や歴史が終わってしまうのが我々には耐えられないんだぜぃ……我々は、王国を守るためにこの体になったのだから……」

賢者「……そうか」

踊子(まぁ議会でも荒れに荒れましたからねぇこの話題~。なんの犠牲も無しに決着着くわけないですよね~)

賢者「……これからどうするつもりなんだ? あてはあるのかい?」

軍師「とりあえず……世界中を三人で見て回ろうかと思っているだぜぃ。自分達の生きる道を、自分達で探したいのだぜぃ」

賢者「そうか……」

すっ

賢者は立ち上がり、手を差し出した。

軍師「……お世話になりましたぜぃ。あの時のことは、本当に申し訳ないだぜぃ」

ぐっ

賢者「あれは仕方ないことだったんだよ、気にしないで。今までこの国のために、ありがとうね」

軍師「……だぜぃ」

軍師、オーズ、フォーゼが下野した。

75

--教室--

キーンコーンカーンコーン

女人狼「それでは今日はここまでです。では委員長、号令を」

ゾンビ娘「はい。起立、礼」

ありがとうございましたー

どてっ

ポニテ「うげー……授業無理ー勉強嫌いーもうやだーお菓子食べたいー」

机に突っ伏してむくれるポニテ。

ツインテ「そうですか? ボクは皆さんとお勉強できて楽しいですけど」

ポニテ「ぶー、ツインテちゃんは優秀だからそう思うんだよー。さては勉強できない人の気持ちがわからないなー?」

ツインテ「ボクだってそんなに出来るわけでは……」

アッシュ「……」

ポニテ「てか気に食わないのはアッシュ君だよ! なんだよこの前の小テスト満点て! 脳筋だと思ってたのに!」

アッシュ「失礼な奴だな。俺は戦闘でも頭を使って戦っているつもりだぞ? 勉強も戦闘とさほど変わらん、パターンを見つけてしまえば全貌が見えてくる」

ポニテ「それ歴史の暗記物とかにも当てはまるのー?」

76

--教室--

がやがや

キマ「ねーねーポニテ達ー、移動しなくていいの? 次体育だよ?」

がたっ!

ポニテ「体育! そうだ、次は私が給食の次に好きな体育だった!! 急いで着替えなきゃー!」

ポニテは体操着袋を持って立ち上がる。

ツインテ「そうですね、ボク達も早く着替えちゃいましょう」

そういって上着に手をかけるツインテ。

キマ「ちょっ、わーーーー!! 何やってるのよツインテちゃん!? 女子は女子用の更衣室があるんだからそっちで着替えなきゃ駄目じゃない!!」

ツインテ「え……でもボク男の子なので」

にっこり笑うツインテ。

キマ「はうっ! かわいいっ!!……って、まだ言ってるの!? こんなに可愛い子が男の子なわけないでしょ!? さぁ早く立って!!」

ツインテ「え、あの!」

ポニテ(どうしよう……これ。どうしたらいいんだろ。信じられないけど、私達はもう真実知っちゃってるしなぁ……)

アッシュ(ツインテは、男!……だが男子が見ている前で着替えさせるわけにはいかないのもまた事実!! あぁ、見せてたまるのものか、あの玉肌を!!)

ぽたぽた

ポニテ「アッシュ君鼻血」

77

--教室--

とことこ

オーク太郎「別にいいじゃないブヒかぁ君達。本人が男の子だって言ってるんブヒからさぁ」

キマ「オーク太郎! あんたツインテちゃんの裸が見たいだけでしょ!? 汚らわしい、この豚野郎!!」

オーク太郎「まさかクラスメイトにそこまで言われるとは思わなかったブヒ」

頬を染めるオーク太郎。

女騎士「そうだぞツインテ。女子なら女子らしく女子部屋で着替えるべきだ。わけのわからないことを言ってみんなを困らせるのは感心せんぞ」

アッシュ「……」

大事な部分は鎖で隠れているものの、素っ裸で壁に繋がれている女騎士がカッコイイ声で言った。

オーク太郎「まぁ痴女はほっといて」

女騎士「くっころ!」

オーク太郎「人を外見で判断するのは良くないことブヒよ。君達はちゃんとツインテちゃんの性別を確認したんブヒか? 憶測でものを言っているのならばそれは、差別と変わらないブヒ」

アッシュ「まさかの正論!」

78

--教室--

キマ「え、確認、って……だって……」

じーっとツインテの股間を見るキマ。

さっ

キマ「……普通、人の股間なんて、見ないよね……?」

ポニテ「え? まぁ、そうかな?」

ツインテ「当たり前です!」

オーク太郎「ツインテちゃん」

ぽん

オーク太郎はツインテの肩に優しく手を乗せる。

オーク太郎「さぁツインテちゃん? 自分が男だと言い張るのなら、おちんちんをみんなに見せて証明するブヒよ」

全員「「「!!??」」」

ツインテ「な、なななななに、何を言ってるんですかぁあああああああ!? ひ、人にあ、あそこを見せるなんて、そんなの変態さんじゃないですかっ!!」

オーク太郎「ブヒヒヒ、誤解を生んだツインテちゃんが悪いんブヒよぉ! なーに、気兼ねすることなんてないブヒ。生えてようが生えていまいが、僕にとっちゃあどっちもご褒……げふげふん。さぁ勢いよくいってみようかぁ……さぁ、さぁさぁさぁ!!」

ツインテ「た、たすけてーーー!!」

ドゴオオオオオオオオン!

ポニテとキマのダブルエルボーがオーク太郎の後頭部を直撃し、床に叩き付けた。

しゅぅうううう

ポニテ「さいってー」

キマ「しね豚」

79

--教室--

オーク太郎「それが死なないんブヒなぁ……」

ゆらり

ポニテ「!?」(え!? 今私思わず手加減無しでやっちゃったんだけど!?)

メリガー「ほう、あの豚君もレアスキル保有者だったか……」

女騎士「なんだと!? それは一体どういうことなんだ!? 説明しろ、メリガーーー!!」

ゴゴゴゴゴゴ

オーク太郎「ブヒヒ……レアスキル、超ドM体質!……攻撃を受けるとその数値分の体力が回復すると同時に、攻撃力や防御力などの各種ステータスが強化されるんだブヒッヒッヒッ」

アッシュ「無敵じゃねぇか!」

ポニテ「どうやったら勝てんだこれ!」

80

--教室--

バツン

その時ツインテのリボンが弾け飛んだ。

アッシュ「! この演出は!!」

ポニテ「久々の!?」

ガシッ!!

オーク太郎「……ぶひ?」

メギギギギギギギ!!

アイアンクローを決められるオーク太郎。

オーク太郎「ぶ、ぶひっ!?」

ツインテ「……てめぇ……調子こいてんな?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

キマ(え、何コレ!? なんかツインテちゃんが一気にヤンキーみたいに!?)

オーク太郎(何コレ!? あのおしとやかなツインテちゃんからは想像もできない行動ブヒ!! でも……これはこれでありブヒ!)

ぐしゃっ!

オーク太郎「ぶひょっ!?」

ぽたぽた!!……べちょ

ツインテのアイアンクローがオーク太郎の頭部を握りつぶし、教室中に脳みそが飛び散った。

81

--教室--

オーク太郎「ぼ、暴力には屈しない、屈しないブヒよぉ! はぁはぁ!」

アッシュ(な!? 瞬間再生だとぉ!?)

ポニテ(もはやドMとかそういうレベルの話じゃない!!)

ツインテ「てめぇ……中々面白い体質してるじゃねぇかよ。え? 豚公ー」

ぎゅるり

ツインテはドリル型の触手を展開する。

ちゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!

オーク太郎「ぶっひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

ツインテ「痛みを回復に? ぶっ壊されても瞬時に回復? はっ、じゃあお前……無限に食える豚肉ってことじゃねぇーか!!」

アッシュ(いやちょっとそれは……)

ポニテ(さすがに亜人種は無理ってゆーか……)←何食わぬ顔

ツインテ「はっはぁー! 喜べてめーら! 今日は豚肉食い放題だーーーー!」

きーんこーんかーんこーん

キマ「あ、授業始まった」

82

--体育館--

槍兵「あれ……? なんでお前らだけなの? 他のやつらは?」

ゾンビ娘「おかしいですわね……ちょっと確認してきます」

イバ「先生ー、今日はもう休講にしよーぜ」

槍兵「……先生悲しいぞぉ」

83

--体育館--

槍兵「やっと集まったかお前らは……」

ツインテ「ち、なんで俺が餓鬼のままごとに付き合わなきゃなんねーんだよ」

ジャージ姿のツインテが耳をほじりながらぼやく。

ツインテ「ん? おー、久しぶりじゃねぇか槍兵。元気してたか? お?」

どかっ

挨拶代わりに槍兵のケツを蹴るツインテ。

槍兵「……ツインテ。先生のお尻は蹴るもんじゃないぞ?」

ツインテ「あー?」

アッシュ「すまん、槍兵……先生。気にしないでくれ。頼むからそのまま進めてくれ」

ポニテ「ツインテちゃんにも色々あるお年頃なんだよ」

槍兵「……まぁいいや、じゃあさっそくだが時間も押してることだし始めようか」

??「先生ー、いつになったら始まるんですか?」

アッシュ「む?」

ザンッ!

槍兵の後ろにいたのは九人の学生達。
先頭に立っているのは褐色肌の少年。

槍兵「あぁすまんな。やみ」

84

--体育館--

??改めやみ「別に先生に謝られるようなことじゃないです。でも時間は有限ですからね、やるならさっさとやりたいじゃないですか」

キマ「げ、やみだ……」

ポニテ「え? やみって……あぁ、ブラちゃんの子供かぁ!! いつの間にか大きくなってー! むぐっ!」

アッシュがポニテの口を塞ぐ。

アッシュ(これ以上説明がめんどくさくなるような言動は慎め!)

キマ「え? 今ブラちゃんって……もしかしてブラおばさんのこと知ってるの!?」

アッシュ「あ、あぁ、えーと……いや? 今のはちんちんブラブラって言っただけだ。だよな? ポニテ?」

ポニテ(よりによってそんな言い訳やだよ!)

女騎士「知り合いなのか? キマ」

キマ「まぁ……家族ぐるみの関係だから知り合いっていうか……でも」

やみ「久しぶりだな、キマ、イバ」

イバ「……」

キマ「私は、あいつ好きくない。っていうか、A組自体がめっちゃ嫌い」

女騎士「A組……?」

キマ「通称エリート組。私達のこと見下してんのよ」

85

--体育館--

キマ「もー先生ーどういうことー? なんでA組がいんのー?」

槍兵「今日はA組と合同で体育をしようと思ってな。お前らもたまには他の組と遊びたいだろ?」

キマ「やだー! どうせやるならBとかCとかD組とがいいーーー!!」

槍兵「お前……高校生にもなってわがまま言うんじゃないよ。しかも向こうに聞こえるようにさ……」

くすくすくす

やみ「ま、実力差を考えればそう思ってしまうのも無理ないことだよキマ。でも大丈夫さ、何やるにせよちゃんと手加減してレベルを合わせてやるからさ。な?」

あははははと笑うA組連中。

キマ「むっかー! ほら見たでしょ!? 自分達が優秀だからってあーなんだよ!? むかつく! まじむかっ!」

ポニテ「あはは、はしたないよキマちゃん、あんなこと言われたくらいで取り乱しちゃったらさ。たかだか15,6年程度しか生きてない子供のいうことで一々怒ってちゃ大人げないよ?」

アッシュ「あぁ全くだポニテ。これくらいで腹を立てては向こうの思う壺だ。まぁだが口の利き方がなっちゃいないのは事実、人生の先輩として社会の厳しさをガキに教えてやるのもやぶさかではない。屋上へ行こうぜ、久しぶりにキレちまったよ」

青筋を立てている二人。

イバ(お前らだって高校生じゃん)

槍兵(そういや見た目これだけど実年齢30くらいだしなこいつら)

86

--体育館--

やみ「で? 何をやるんです? 槍兵先生」

槍兵「ん? ドッジボールだ」

ポニテ「ってもうドッジボールの時点で仲良く出来るわけないじゃんバカー!! 最初から憎しみ合わせるつもりの球技選択だろ駄目槍男ー!!」

槍兵「あっはっはっ。たまには感情むき出しで暴れまくってぶつかり合え。若いうちはそういうのも必要だと思うぞ」

キマ「うっせーオヤジー!」

槍兵「口悪っ!」

アッシュ「……ふ。だがチャンスと言えばチャンスだ。俺達の実力を奴らの体に直接教え込んでやれる」

ポニテ「! なるほど……アッシュ君、悪い顔してますなぁ」

アッシュ「ふはは真顔なんだけど?」

ゾンビ娘「仕方ありませんね……あまり乗り気ではありませんが、これも成績に入るんですよね?」

槍兵「もちろん入るぞ。勝った方には中間テストに20点+してやるよ」

ゾンビ娘「では――やるしか無いですね」

とことことこ

オーク太郎「あのーアッシュ君、ポニテちゃん」

アッシュ「なんだ豚野郎」

ポニテ「何豚太郎君」

オーク太郎「オーク太郎ブヒよ。それよりあれ見るブヒ」

ポニテ「ん?」

ツインテ「……」

いつの間にかツインテの髪型はウェーブになっており、体育館の隅で静かに体育座りをしていた。

オーク太郎「なんかさっきまた感じ変わっちゃったブヒ。ツインテちゃん大丈夫ブヒか?」

アッシュ「うん、外野やってもらおう」

87

--体育館--

わーわー

やみ「さぁて始めますか」

蜂娘「やみ……ジャンプボールは私にやらせて……」

やみ「構わないよ。よろしくね蜂娘」

ブーン

ポニテ「よぉーし、ジャンプボールは私やるから!」

腕まくりして前にでようとするポニテの肩を掴んで止める。

アッシュ「下がってろポニテ、俺がやる」

ポニテ「にゃんだと!?」

アッシュ「瞬発力なら俺のほうがある、だろ?」

ポニテ「っ……ぐぅ!」

キマ(あれ? あのポニテが簡単に引いちゃうんだ? つまりそれだけアッシュ君の実力を認めてる感じか)

槍兵「よし、じゃあ始めるぞー。あ、掛け声とかわからんからいっせーので投げるからな」

88

--体育館--

槍兵「ほいじゃいっ、せーの、せっ!」

ひょい

槍兵が投げたボールに飛びつく二人。

ぱしっ!

蜂娘(! 速い!)

一瞬早くボールを手にしたのはアッシュ。

蜂娘(なら)

ちょん

完全に遅れた蜂娘はボールを抱え込もうとするアッシュの手にかすかに触れた。

アッシュ「!」

ダンッ!

着地する二人。

アッシュ「……」

蜂娘(悪いけど……この時間はずっと麻痺っててもらうよ……)

とろり

蜂娘の爪から何かの液が垂れた。

アッシュ「……なるほど、なんでもありってことか」

蜂娘「……あれ?」

やみ「!」(蜂娘の毒を受けたはずじゃ……?)

アッシュ「悪いが、毒は効かないぜ?」

ドシュッ!!

蜂女「!」

アッシュが投げたボールをかろうじて蜂娘はかわすが、

どかっ!

後ろにいた男子にヒットしてしまう。

89

--体育館--

ポニテ「ひゅー! アッシュ君かっーくいいーー!」

キマ「うお! A組からボール取っただけじゃなくあっさり一人倒しちゃった!?」

アッシュ「……」

キマ「あれ? ボールは?」



やみ「ここさ」

どかっ!!

オーク太郎「ぶひー!」

てんてんてん!

槍兵「はいオーク太郎アウトー」

キマ「え? え? え?」

アッシュ「あいつめ……味方に当たったボールが地面に落ちる前に回収しやがった」

ポニテ「結構速く動くねー。あれも多分メイドさんのスキルだよね」

ゾンビ娘(え、この二人見えてたの?)

90

--体育館--

アッシュ「ポニテ、ボールを渡せ」

ポニテ「仕方ないなぁ、はいよ」

ぱしっ

アッシュ「……」

じゅるり

アッシュはボールの表面に毒を塗りたくった。

アッシュ「さぁこれで、捕球自体ができない、ぞ!」

ボッ!

やみ「あおーーーーーーーーーーん!」

ぶわっ!

アッシュが塗った毒が弾け飛んだ。

アッシュ「!」

ぱしっ

やみ「捕球? 簡単だけど?」

アッシュ(遠吠えか……あれは魔力を遠ざける力があった)

ポニテ(番犬ちゃんの!!)

槍兵「あぁ、ちなみに言っておくがこいつを知らない新入生諸君。やみは次世代最強だから」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました。それでは投下していきます。

91

--体育館--

わーわー

ポニテ「うーん、みんなで球技やるのも楽しいもんだねー!」

アッシュ「まぁ、たまには新鮮でいいな」

やみ「はぁはぁ……」(あいつら……全然当たらない……ってか疲れてない)

蜂娘(他のやつらは全員外野においやったのに……しぶとい……)

キマ「あの二人、すごー!」

イバ「……」

オーク太郎「A組の猛攻に耐え続けてるぶひ……ダメージ的には僕も大丈夫なんぶひが」

槍兵「おーいお前ら後五分で授業終わるぞー。もし決着つかなかったらチャイムが鳴るまでに内野が多かった方の勝ちな」

ポニテ「ありゃま。このままだとうちらの負けだねアッシュ君」

アッシュ「だな。仕方ない少しだけ本気出してやるか」

キマ「何その格好いい台詞!!」

92

--体育館--

蜂娘「なんだと……? E組のくせに、生意気……!」

ぼっ!

ポニテ「じゃあ私が取るよー!」

やみ(ばかめ、蜂娘の超回転を込めたボールが簡単に取れるものか)

ぎゃりぎゃりぎゃりいいいいいいいいいいん!! しゅぅうう……

蜂娘「!」

やみ「なっ」

ポニテ「あててー、手の皮向けちゃったよ……」

やみ(あっさり、取りやがった……)

アッシュ「よくやった、そら貸せ」

ポニテ「えー? 私取ったんだよー? いいとこどりするのー?」

アッシュ「そうだ、ほら早く」

ポニテ「むー……」

ぽい

ポニテはむくれながら両手の修復に入る。

アッシュ「さて、と」

アッシュは軽く構え、やみに向けて投げた。

93

--体育館--

ふわっ

やみ(なんだこれは、一体どんな球がくるかと思えば山なりボールじゃないか)

やみはそれを取ろうと手を伸ばす。だが、

ぼす、てんてんてん……

やみ「――え」

蜂娘「!? や、やみ!? なんでそんな簡単なボールを!?」

やみは捕球に失敗してしまう。

やみ「な、え!?」

ポニテ(ノーアクションで発動してタイミング壊しちゃうこれ、やっぱりチートだよね。球技やればいいのに)

94

--体育館--

バシッ!!

A組女子「あう!」

キマ「! 学年三位まで倒した! 後一人だ!!」

オーク太郎「いや、これはもう終わりぶひよ」

キマ「え?」

オーク太郎「今のでコート内の人数は2対1。それに加えてボールは今アッシュ君が持ってるぶひ。そして残り時間は1分くらい」

ゾンビ娘「内と外でボールを回していれば勝利ですね」

オーク太郎「そういうことですぶひ」

女騎士「お、オークの癖に解説するだと……!!」

オーク太郎「偏見も甚だしいぶひよ……」

キマ「でも……あのエリートのA組に落ちこぼれの私達が勝っちゃうなんて、凄い……!」

95

--体育館--

A組女子「うそ……私達が負けちゃうの? あのE組に!?」

A組男子「E組に負けるだなんて、親になんて言ったらいいんだ……」

やみ「……」

アッシュ「今日まで知らなかったがひどい言われようなんだな我がクラスは」

ポニテ「でも格上って言われてる人たちをぶっ倒すのはなんであれ、気持ちがいいもんだよねー」

蜂娘「……どうした? 来ないのか?」

蜂娘は捕球の構えを取っている。

蜂娘「このまま時間切れで終わっていいのか……? ちゃんと決着をつけたいと思わないのか?」

キマ「へーんだ! 勝てばいいのよ勝てばー! 二人ともー! 気にしないでボール回しでいいよー!」

オーク太郎「ぶひひひ! そうぶひよ、欲しいのは勝ったという結果だけ。僕らがどれだけ活躍したかとかどうでもいいぶひ!」

ゾンビ娘「……ほとんど役に立てなかったですからね私達」

女騎士「くっ! せめて近くにオークがいなければ私は!!」

メリガー「なんにせよもう後三十秒ほどかな」

96

--体育館--

アッシュ「ほれポニテ、投げていいぞ」

ぽん

ポニテ「え? わーい、最後譲ってくれるの? ならー、今までのこと許してあげよっかなー!」

キマ「!? ちょっ、もうちょっとで終わりなんだからパス回しでいいじゃん!」

アッシュ「駄目だ、完璧に勝つ」

キマ「ちょー!? もし取られて反撃されたら!」

アッシュ「俺達E組は、A組に完全勝利するんだ」

キマ「」

オーク太郎「ぶひっ!」

ポニテ「ほー……そこまで言うかアッシュ君。じゃあ、このポニテちゃんも全力で投げちゃおかな」

みしっ

蜂娘「え?」

ポニテが魔力を込めると空間にひびが入ったような音がした。

97

--体育館--

ポニテ「そぉー、れっ!」

どぎゅんっ!!

蜂娘「!?」

どぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!

蜂娘「がっ」

受け止めようとした蜂娘は、そのまま外野まで吹っ飛んでいった。

どがーーーん!!

やみ「」

キマ「」

蜂娘「げ、げほ……」

イバ「……死んだんじゃねぇか?」

きーんこーんかーんこーん

槍兵「ほい、じゃあE組の勝利だ。負けたA組は後片付けしてから教室に戻るよーに」

やみ「っ!? 何事も無かったかのように……ぐ」

オーク太郎「ぶひ? そんな特典が。これは嬉しい誤算だぶひ」

さりげなく倒れた蜂娘の傍でしゃがみ込むオーク太郎。

98

--教室--

キマ「っっかっったーーー! わはーい!」

ゾンビ娘「キマさん、うるさいですよ。もう少し静かにお願いします」

キマ「でもでもA組に勝ったんだよ!? 委員長は嬉しくないの?」

ゾンビ娘「それは……嬉しいですけど、少々複雑な気持ちといいますか」

キマ「なーにごちゃごちゃ言ってるんだね、素直に勝利を喜びなさいよ!」

オーク太郎「全くキマちゃんのA組コンプレックスは激し過ぎるぶひ。いくらA組を落とされたからって」

キマ「な、何をー? 今頃他のクラスだって噂してるに決まってる。これは世紀の大勝利なのよ!? 喜んで何が悪いの!」

わいわい

アッシュ「……」

ポニテ「なんてゆーか……平和だねぇ……」

アッシュ「こんなことで一喜一憂とは羨ましいな」

ポニテ「うん、私は本気で羨ましいよ。アホなことで心の底から笑えなくなっちゃったもん、最近」

アッシュ「……これは驚いた。お前はいつまでも昔と変わらないものだと思っていたぞ」

ポニテ「ねー、私もそう思ってたよ。歳は取りたくないねー」

アッシュ「……」

ツインテ「……ボク達はまだ十分若いですよ」

ぽんっと二人の肩に手を乗せて微笑むツインテ。

アッシュ(あ、元に戻ってる)

99

--教室--

メリガー「面白い見世物だったね。やー、この世界は平和だ平和だ」

女騎士「うむ。若人が青春の汗を流して人生を謳歌している。いい世界だ」

アッシュ「……なぁメリガー。お前の目的は何だ? そろそろ話したらどうだ?」

メリガー「うーん……ここじゃあちょっと言いづらいかなぁ」

ぱしーん

アッシュ(スキル、テレパシー。これならどうだ?)

ポニテ(うえ!? アッシュ君いつのまにそんな……あぁ、保存か)

ツインテ(自分が受けた魔法やスキルを一時的に自分の中に保存しておくアッシュ君の特性……)

アッシュ(一度使ったら無くなるがな。で、どうだ? 誰にも邪魔されずに語れるようにしてやったぞ)

メリガー(ふむ……そうだね。ここまでしてもらって悪いし、じゃあ話しちゃおうかな)

女騎士(……)

メリガー(それについてはまず、僕達のルートについて話しておかなきゃならないね)

100

--教室--

メリガー(僕達のルート。そうだね、仮にこの世界をAルートとして、僕達がいた世界をZルートとしようか。Zルートはね、今滅びの道を辿りつつあるんだ)

アッシュ(……お前が滅ぼそうとしているんじゃないのか?)

メリガー(やだな、そんなことあるわけないじゃないか。僕はね、かなり早い段階から人間側に付いたトリガーなんだよ)

ポニテ(へー。でも本当かなー?)

女騎士(彼女の言っていることは本当だ。我々はメリガーの庇護の下、長い間平和を享受してきた。言わば彼女は守り神のようなものなんだ)

ツインテ(人側についたトリガー……ということは、魔王が存在しない世界、ということになるんですか?)

メリガー(いやいるんだなこれが。ただし魔力管理機関としての存在だけどね)

アッシュ(魔力管理機関? なんだそれは)

メリガー(君達が使う魔力。これは感情にかなり影響されるものなんだ。特に負の感情ほど魔力に力を与えてしまうというのはもう知っているかな?)

ツインテ(一応は)

101

--教室--

メリガー(実はこれを何も考えなしに使い続けるとね、世界中に悪意の魔力が蔓延していってしまうんだよ。魔力を使えば使うほど世界が汚れていく。それを防ぐために浄化装置である魔力管理機関が必要となるのさ)

ツインテ(そうだったんですか……この世界で言うと、精霊様達がそれに当たるんでしょうか?)

メリガー(かな? 多分魔王にもやらせていたと思うけどね)

アッシュ(……)

メリガー(話を戻そう。僕はね、ずっと人間の味方をしてきたんだ。でも、いつも人間達は滅びの道を探り当ててしまうんだよ)

女騎士(五年ほど前に、ある国が魔王を利用して兵器を開発しようとした。それが引き金となって世界中の色々なバランスがドミノ倒し敵に崩れてしまったんだ。そのせいで今、Zルートは世界大戦の真っ只中にある)

ツインテ(世界、大戦……?)

メリガー(人殺しの祭典さ。僕を作った元々の人類もそんな歴史を持っていた。不思議だね……歴史は繰り返してしまうんだよ。何も知らないはずなのに、結局同じような道を辿ってしまうんだ)

女騎士(……メリガーが言うには、今のZルートの世界も、過去に何度か世界大戦で滅びたという……そして今回の戦いは星の許容を越える可能性がある、と)

ツインテ(!!)

メリガー(だから僕は人類を救う手がかりを得るために別ルートを旅することにしたんだ。でもこの世界も似ている……この世界を取り巻く嫌な流れ……きっとこの世界も、近いうちに世界大戦が始まる)

102

--ユニオン、会議場--

魔導長「では次の議題に移らせていただきますなの。っと、北の王様?」

北の王「ちょっとよろしいでっしゃろか?」

北の王は手を上げて魔導長に尋ねる。

魔導長「どうぞなの」

北の王「もうしわけない。いや、我が国のことなんですがね? 昨今の魔力不足のせいで畑が痩せ細ってしまってるんですわ。うちは元々寂しい土地ですし、これから冬がきます。今の状態だと食料に不安があるんですわ……」

魔導長「なるほど。それは大変なの。では全体で助け合って行きましょうなの。足りない分の食料は話し合ってみんなで援助させていただきますなの」

北の王「あぁありがとうございますありがとうございます、その申し出、心より感謝いたします……でも心苦しいのですが、それとは別に土地を少し割譲してはいただけないでっしゃろか」

魔導長「土地、なの?」

北の王「はいな。備えあれば憂い無し、って言いますやろ? いざと言う時のために凍らない土地と港が欲しいんです。やはり自分の所の食くらい、自分でなんとかしたいんですわ」

西の王(……当然の考えだな。自分達の胃袋をずっと捕まれている状態ではまともに外交など出来まい。だが……)

魔導長「近い港、と言うと……隣接しているのは東の王国ですなの」

魔導長はちらっと新東の王の顔を見る。

新東の王「……事情は把握しました。心中お察し申し上げます」

北の王「お、おぉ! では」

新東の王「支援はもちろんさせていただきます。ですが、我が国としても領土を失うわけにはいかないのです」

103

--ユニオン、会議場--

北の王「し、新東の王……」

新東の王「すみませんが……今は国内のことで手一杯なのです。領土のことでは相談に乗ることができません。食料支援はなんとかしますので……」

鷲男「無理を言ってはなりませんよ北の王殿。いきなり領土を分けろと言っても、それは簡単な話ではありません。しかし心配することは無いですよ、あの最終決戦で生まれた我らの絆の力。助け合って行こうではありませんか」

魔導長「……ですなの。北の王様もそれでいいなの?」

北の王「えぇ……いきなりとんでもないことを言ってしまいました。申し訳ないです。支援感謝いたします」

すとっ

北の王(……東の王国からあぶれた奴が北の王国の国境付近で暴れまわってることをカードにもっと強く出るべきだったか? いや、今の流れはそういう流れではないわな……)

西の王(しかし……一気に力をつけてきたな、ユニオン。各国の王が集まる話し合いの場で議長を務めるようになるとは……これではないがしろにできんぞ……)

鷲男(ユニオン……まさか王国まで飲み込むとは思わなかったが……さてどうなることか)

魔導長「では続いて、邪風について話し合いたいと思います」

104

--砂漠の町--

不審な男「ぎゃる、ぎゃるるるるるっる!!」

ハイ「! またですか!?」

口から泡を吹き、視線の定まらない不気味な男はありったけの力を込めてハイに殴りかかった。

ふぉん

ハイ「ッ!」

しかしハイがかわしたことで男の拳は岩に命中、

どがぁあああん!!

男は自分の右腕もろとも岩を砕いた。

ぼたっぽたっ

竜子「完全にいかれてやがる。ハイ、出来ないならどいてろ! 私がやる!」

ハイ「ッ! 殺さない、手は……?」

バッ!

飛び掛る男。

竜子「ねぇよ!!」

どぐしゃあああああああああああああああ!!

竜子の拳が男の胸部を貫いた。

不審な男「ぎしゃああああああああああああ!!」

竜子「!? まだ生きて」

ズパッ

その時男の首が飛んだ。

105

--砂漠の町--

どさっ、ぶしゅーーーー

護衛姉「危ないところでしたね」

ひゅひゅっ、ちん

護衛姉は刀を振って血をはらった後鞘へと収める。

斧女「護衛姉妹! やっと合流ですか、待っていましたよ」

護衛妹「すみません、色々と調べたいことが多かったので」

ハイ「……」

ハイは男の死体から目を離せずにいる。

護衛妹「……蘇生は無駄ですよ、ハイ。彼も最悪のドラッグ、デビルを使用しています」

ハイ「ッ」

竜子「……しっかしめんどくせぇもんを作ったもんだぜ……本人の意識をぷっつんさせて操るくそったれな薬物……しかも解毒や解除の魔法でどうにかできねぇからぶっ殺すしか止める方法がねぇなんてよぉ……!」

どんっ

竜子は地面を叩く。

106

--砂漠の町--

こそこそ

傭兵「あ、あの、終わりました?」

竜子「あっ! てめー何隠れてんだ!! 一体何のために高い金払って雇ったと思ってんだぼけっ!!」

傭兵「えぇえ!? 俺の仕事は主に道案内っすよ!? 俺悪くないです!」

竜子「うるせー! 殴らせろ! むしゃくしゃしてんだ!」

傭兵「死にますって! 竜子さんバカ力なんですから!」

わーぎゃー!

護衛姉「誰です? あれ」

斧女「貴女達二人に偵察を頼んだ後に雇った傭兵君です。ここまでの道案内を頼みました」

護衛妹「……部外者を巻き込むのは関心しません。彼のためにも、機密のためにも」

斧女「ユニオンの紹介ですからそこは安心だと思います。さて」

ざっ、ざっ、ざっ

斧女は傭兵の所へと歩いていく。

斧女「傭兵君、約束のお金です。ここまでありがとう」

じゃらっ

傭兵「え? 契約だと東の丘までですよ? まだかなり遠いですけど、ここでいいんですか?」

斧女「いいんです。ここからの旅はいっそう危険なものとなるでしょう。だから貴方は先に帰りなさい」

竜子「……ふん、元々この二人が合流するまでって計画だったんだよ。だからお前の仕事は終わり……っとにもうハイ! いい加減しゃきっとしやがれ」

ぐいっ

ハイの腕を掴んで強引に立たせる竜子。

107

--砂漠の町--

傭兵「ではお気をつけてー!!」

竜子「おう! お前も気をつけろよなー! 次会ったら絶対殴るかんなー!」

傭兵「ははは……」

手を振って分かれるハイ達と傭兵。

ひゅおぉおぉおぉぉおお

傭兵「……」




--砂漠--

ざっ、ざっ、ざっ

竜子「はあっ!? おいおい、東の王までやられたってのか!?」

護衛姉「はい。表向きは病気で倒れたということになっていますが、確かです。まだ東の王が死んだことは外には漏れていません」

斧女「名のある人物だけでも、研究員に賢帝に東の王……まさかこんな大事件になるとは」

ハイ「……ッ……私のせいだ」

護衛妹「ハイ、いいえ、貴女のせいではないです。まさかこんなことになるとは誰も予想がつかなかったはず」

ハイ「いえ私のせいです!! 私が、あの時非情になりきれていたら……」

竜子「……バカ言え、あの面子で取り逃したんだ。それだけ奴は一筋縄じゃいかないってことだろ」

ハイ「奴隷王……」

108

--赤の山、邪風本拠地--

伝達係「ご報告いたします! 今傭兵からテレパシーによる連絡が届きました」

王の間では四人の男女がテーブルを囲んでいた。

奴隷王「おう。やつはなんだって?」

伝達係「はっ! 現在捜査隊を尾行中、目標は予定通りのルートを進行、とのことです!」

青狼将軍「奴隷王様、どういたします?」

黄太将軍「ふふ、あっしに任せていただければすぐに片付けますよぉ」

赤薔薇将軍「相手は歴戦の英雄達なのでしょう? 貴方一人で片付けられるのかしらぁん」

黄太将軍「なぁんだとぉ!?」

奴隷王「うるせぇい」

ぴたっ

奴隷王「まだ泳がせておけと伝えろ。いいな」

伝達係「は、はっ!」

奴隷王「くっくっ。バカかお前ら……せっかく楽しい戦争を始めるんだ。まだ準備が整っていないうちに始めちゃ早いだろうがよ。なぁ」

奴隷王は後ろを振り向く。
そこには貼り付けにされた人造魔王がいた。

109

--ユニオン、会議場--

魔導長「奴隷王が作り上げた悪の組織、邪風。ここに新たに、賢帝さんが率いていた教団の残党が加わりました」

西の王「! 亜人保護団体と砂漠の風の構成員も大分参加したと聞くが、それが本当なら今やその規模はかなりものになるな」

鬼姫「てへへー。面目ないっすー。好きなところに行っていいとあたしが言ったばっかりにー」

北の王(しれっとこの会議に参加してるし)

鬼姫「しかし早い所潰した方がいいと思うっすよ、あれかなり危険っす。そのうち手がつけられなくなるっすよ」

魔導長「わかってるなの。そのためにガーディアンチームを派遣しているなの……皆さん、邪風はかなり危険な組織なの、ぜひ皆さんのお力も借りたいなの」

鷲男「われわれにとっても脅威です。喜んで協力させていただきますよ」

西の王「同感です」

北の王「はいな」

新東の王「……了解です」

110

--寮、屋上--

メリガー「どうやらこの世界でもことは起きそうだね」

女騎士「……結局こうなるのか」

メリガー「Zルートを救う手がかりがあるかと期待したのが間違いだったかもしれないね。人は同じような歴史を作るように出来ているんだ……」

女騎士「……この世界の人はいい人達ばかりだ。出来ることなら我らと同じ道を歩んで欲しくない」

メリガー「やれやれ、自分の世界も大変だっていうのに……君は全くお人よしだね」

女騎士「メリガーに似たのだ」

メリガー「……僕はお人よしなんかじゃないさ。ただの臆病者だ」

ぎぃ

オーク太郎「あ、お風呂空いたブヒよ二人とも」

女騎士「己オーーーーク!!」

ばっりぃいいいいん!!

オーク太郎「……ここ脱衣所じゃないブヒよ?」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すいません、今日明日は本当に辛いので短い盤投下しにきました。

邪風は自分が風邪引いてた時に考えた組織なのでひっくり返して邪風ですね。


それでは投下していきます。

111

--教室--

キマ「んもー、すっごい気分いい! 今日も登校中にみんなから噂話されちゃってんだぜ! えへ! あいつらA組に勝ったんだってよー、って!」

にまにましながらポニテにくっつくキマ。

ポニテ「そんなに凄いことなんだ? ただドッジボールで勝っただけなのにー」

キマ「ドッジボールとはいえ勝利は勝利! A組は最強の集団でね、この一年間、全ての分野で頂点を取り続けてきたんだよ。そして何かある度に他のクラスは見下されてきたんだ……だからこそ、他のクラスの子達からしたらA組に一泡吹かせた私たちは勇者みたいなもんなんだよ!」

ポニテ「ふーん?」

キマ「鼻ほじるな!」

ツインテ「凄いんですね、A組の皆さん。でも、本当にどの分野でも勝てなかったんですか?」

キマ「うぐ……そりゃあねぇ。あいつら才能あるし勉強しまくりで頭もいいしルックスいいし、悔しいけど性格以外は完璧なのさ……」

アッシュ「だがお前ら双子の方が強いだろ」

キマ「……え?」

イバ「……」

シーンと教室が静まり返る。

112

--教室--

ゾンビ娘「……」

ポニテ「だよねー、私も思ったー。あれだけ戦えるキマちゃんがA組の子達に簡単に負けるとは思えない」

キマ「……まぁ吸血鬼化を使えれば、結構マシに戦えるのかもしれないけど……」

イバ「……俺達はまだ使いこなせないんだ」

ポニテ「あー……」

アッシュ(無くてもいい線いくとおもうがな)

キマ「きっとおやじの血が混ざったからだなー、上手く制御できないの」

ツインテ「へ?」

キマ「だってママは滅多にやらないけど、吸血鬼化を使いこなしてるもん。だから多分おやじのせいなんだよ」

アッシュ「おいおい魔法使い……先生、のせいって、そりゃないだろ」

キマ「あるもん。だってあの人本当駄目駄目だし! 家にいてもずーっと無口だし魔法もろくに使わないし! 昔は凄かったとかお母さんは言うけどさ、それ絶対嘘に決まってるもん!」

ポニテ(可哀想だな魔法使いおじちゃん……)

113

--教室--

ツインテ「あまりお父さんのことを悪く言うもんじゃないですよキマちゃん。魔法使いさ……先生、は本当に凄い活躍をされたんですから」

キマ「凄い、活躍?」

ツインテ「はい。あの人の戦いぶりを見てきたボク達が保証します」

キマ「……見てきた、って、ツインテちゃん達の年齢でそれおかしくない?」

ツインテ「あ……」

アッシュ「と、とにかく、自分の親をそんな風に言うもんじゃない。ここまで育ててもらったんだ、親には感謝しないといかんぞ」

キマ「むー、説教くさーい」

ポニテ「まぁまぁ。じゃあ元の話に戻すと、A組に勝てなかったのは実力のせいじゃなくて、A組には勝てないって思い込んでるせいだったんじゃないのかなって、そういうことよー」

ポニテはキマに後ろから抱きついた。

ツインテ「です。お二人だけじゃなく、ゾンビ娘さんもオーク太郎君も、A組のみなさんと比べて劣っているなんてことは無いと思いますよ」

にっこりと笑うツインテ。

ゾンビ娘「そ、そう言ってもらえるのは、嬉しいです……」

オーク太郎「やっぱりツインテちゃんいい娘ぶひ……娶りたい……」

アッシュ「殺そ」

114

--教室--

すたすたすた
べしっ

キマ「あいた!」

イバ「身内の悪口を外で言ってんじゃねぇ。だせぇぞ」

キマ「なっ!?」

すたすたすた

イバはそのまま教室を出て行ってしまう。

キマ「あ、次の授業移動か……って叩くんじゃないよバカ弟ー!!」

がたたた、たったったっー!

ポニテ「やれやれ……なんというか、ほほえましいね。兄弟ってさ」

アッシュ「面倒くさいだけだろ、俺は一人っ子でよかったと思っている」

ポニテ「憧れたりしない? 私めっちゃするんだけど」

アッシュ「しない」

ツインテ「兄弟、か……」

115

--監獄、第100層--

かつーん、かつーん

後輩看守「うぅ……まさか配属された初日に最下層まで来させられるだなんて思っても見なかった……」

先輩看守「なんだお前、びびってるのか? だらしない奴だな」

後輩看守「だ、だって100層ですよ!? 地上の光が一切入らない暗黒の場所! そこに収監されているのは最悪の犯罪者共!! 俺なんて近づいただけで死ぬ自信ありますよ!? いやだぁ、食われて死ぬのだけは嫌だぁ!!」

先輩看守「ばかやろー、囚人は魔力を封じる檻の中だぞ? どうやってお前を食うんだよ」

後輩看守「……やつらにかかれば鉄格子なんて簡単にぶっ壊せちゃいそうじゃないですかぁ……こえーよーまだ死にたくねーよー……」

先輩看守「はぁ……そんなんじゃこれからやっていけないぞ?」

ガチャ、ギィ……

後輩看守「うわ! 地獄の蓋が開いた!? もうおしまいだー!!」

先輩看守(うるっさ)「おい、食事の時間だぞお前ら」

……

しかし返事は無い。
囚人達は、

フォーテ「天にまします我らがツインテおねーちゃんよ……」

囚人共「「「さーいかわ」」」

祈りをささげていた。

116

--監獄、第100層--

フォーテ「……ん、食事が来たみたいだよおじちゃん達っ。ご飯にしようか」

にっこりと笑うフォーテ。

ざわざわざわ

囚人達は祈るのをやめ看守達の方を向く。

後輩看守「どどどどっきーーーん!? な、なんすかあの超美人!!?? なんでこんな地獄の入り口に女神がいるんすか!?」

先輩看守「うるさい黙って食事を運べ、ほら」

後輩看守「や、やー……たまげたなぁ……」

デカ囚人「おらさっさとよこせやボケぇぇえ!!」

ガァアン!!

鉄格子に体当たりする囚人。

後輩看守「ひ、ひいっぃい!? 他の囚人は想像通りだぁ!?」

先輩看守「お預け食らえば犬でも吼える。ちゃっちゃと運ぶぞ」

フォーテ「くんくん。今日はシチューかっ。僕シチュー大好きっ」

117

--監獄、第100層--

後輩看守「は、はい、どうぞ!」

すっ

フォーテ「ありがとうっお兄ちゃんっ」

後輩看守「ずきゅーーん!?」

美しく育ったフォーテに微笑まれるだけで後輩看守はめろめろになってしまう。

刺青囚人「てっめぇフォーテちゃんに色目使ってんじゃねぇぞこらぁああ!!」

ガァアン!!

後輩看守「うひぃぃいい!?」

ずるっ

驚いた看守は足を滑らせてしまう。

オオオオオオオオオオ

ぽすっ

後輩看守「うひっ!!……あ、あれ? 痛くない?」

地面にたたきつけられると思った後輩看守だったが、自分の体を死者の腕が受け止めてくれていたことに気付く。

118

--監獄、第100層--

後輩看守「え、え……? 何コレ?」

先輩看守「おいフォーテ、魔力を使っちゃいけないと言っただろう」

フォーテ「えへへ、ごめんねっ、だってこのお兄ちゃんが転んじゃいそうだったからさっ」

すとん

死者の腕が後輩看守を地面に下ろしてやる。
そしてバイバイと手を振って闇の中へと消えていった。

後輩看守「え……魔力? 魔力って、この檻にいる間は使えないんじゃ?」

先輩看守「こいつは規格外なのさ」

こわもて囚人「どぅるるるるぁああああ!! てめぇ助けてもらっといてどんな言い草じゃくそがぁあああ!!」

ガァアン!!

先輩看守「ふん、転ばせとけばよかったのさ。さてフォーテ、飯を食いながら聞いて欲しい」

フォーテ「何かな?」

先輩看守「少し面倒な事件が起きた。よってお前の力を借りることとなった」

カリアゲ囚人「それが人にものを頼む態度かなすびぃいいいいい!!」

ガァアン!!

フォーテ「くすっ。いいよっ! それが僕の贖罪だからねっ!」

119

--運動場--

ガガッゴッ!

女騎士「ふむ、この間に比べればいい動きだ。この短期間で合わせられるようになるとは驚きだぞ」

ドカッ!!

アッシュ「ぐはっ!!」

ズザザー

ポニテ「嘘ー……人殺し発動したアッシュ君が武器ももたない女騎士ちゃんに一方的にぼこられてる……」

ツインテ「しかもあれ全然本気じゃないですよね……」

アッシュ「ぐぅ! やればやるほど力量差を感じるばかりだ!!」

ダンッ!

女騎士「何恥じることは無い。アッシュ、君はその歳のわりには素晴らしい動きだ。この私が保証しよう、君はいい戦士になれる」

アッシュ「くっそ上から目線じゃねぇか!」

キマ「ねぇねぇポニテー、ツインテちゃんー見てみてー」

ポニテ「ん?」

ツインテ「どうしました?」

オーク太郎「……」

そこにはリアカーに乗せられたオーク太郎が。

キマ「これからこの豚野郎を使って実験します! 少しずつこいつが女騎士ちゃんに近づいていったらどういう反応を見せるのか! どの距離からバッリーンっていくのか!! それを調べてみたいと思います!」

ポニテ「キマちゃん結構えぐいね」

オーク太郎「いやまったく」

120

--運動場--

キマ「では15メートルから」

ずずず

キマ「どう?」

女騎士はすました顔で談笑している。

ポニテ「いやーさすがにこの距離なら変化ないでしょー」

キマ「そっか。じゃあ一気に10メートルだ!」

ずずず
ぴっ

ポニテ「あ、スカートの端っこが少し破れてスリットみたいになってきた」

ツインテ「本人気付いて無いのに服に影響でちゃうんですね」

キマ「では8メートル」

ぷっ、ぴりり

ポニテ「うお、長袖だったのに半そでになっちゃったよ!」

キマ「まだ服にしか影響ないか……それ! 5メートルだ!」

びりっ、びりり

ポニテ「……本人は気付いてないのかすっごいお上品そうな顔してるけど服は相当破けてきたね。鎖もスタンバイ始めてる」

ツインテ「なんで気付かないんでしょうか……」

キマ「じゃあ4メ」

ビリビリビリーバリーイイイイイイーン!!

女騎士「く、くっころおおーーーーーー!?」

キマ「よし、四メートルか!」

ポニテ「半径四メートル以内に近づかれたらアウトなのか……」

ツインテ(教室内どうやって過ごしてるんだろうか)

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。投下しにきました。


種族変換……! なるほど、盲点でした。変換しまくればなんとかなるかもしれませんが、その時は原型とどめてなさそうですねw

それでは投下していきます。

121

--失われた王国--

むしゃむしゃむしゃむしゃ

盗賊「んー。外で食べるおにぎりおいしい……やっぱおにぎりっつったら鮭だよなぁ。そんで海苔もパリパリじゃなくてしなびたっていうの? これ。これがまた優しいんだ」

こぽぽぽ

勇者「はいお茶」

盗賊「あぁ、ありがとう」

ずずずー

盗賊「……はぁ、勇者のいれてくれたお茶も美味しい……幸せ」

勇者「はいはい」

ぴーひょろろろー

盗賊、勇者「「平和だねぇ……」」

122

--失われた王国--

トリガー「――――」

盗賊「ん? どこからか今日の仕事をさぼったトリガーの話し声がしますよ?」

勇者「サボったんじゃなくて、今日は用事があるから休ませてくれって言ってたじゃないさ」

盗賊は声のする方角を見る。

盗賊「丘の上の休憩所か……赤姫もいるな」

勇者「あのQとかいう旧式ロボットもいるわね……あれ?」

ユー「――――」

盗賊、勇者「「な、なんか普通にいるーーーー!?」」

123

--プール--

きーんこーんかーんこーん

鯱隊長「よし授業はここまで! プールから上がれー」

ざばっ、ざばー
ぴちゃぴちゃ

ポニテ「ふう。やー楽しかった! 鯱と一緒に泳げるプールなんて世界中でもここくらいじゃない!? 下を見た時にでっかいのが泳いでるあの衝撃! ドキッとしていいよね!」

ツインテ「駄目ですよポニテさん、先生を鯱呼ばわりは。鯱亜人さんなんですからちゃんと分けないと」

鯱隊長「……」

ポニテ「それにしてもツインテちゃん、やっぱり水着は女性用なんだね?」

ツインテ「ボクは男性用の水着を受け取ろうとしたのですが……手渡されたのはこれでした」

ポニテ「まぁ……当たり前だよね! ツインテちゃんがおっぱい丸出しで泳いでたら事件だよね」

ぱしゃっ

キマ「しっかし不思議だよねー。着替えの時にツインテちゃんの股間見ようとしたのに光の帯が隠すようにしてて見れなかったしー。あれも魔法なのー?」

ツインテは、キマとポニテにむりやり女子更衣室に連れ込まれて着替えさせられたのだった。キマは未だにツインテを女の子だと思っているらしい。

ツインテ「うぅ……生徒手帳にも男って書いてあるんですけどね……」

124

--教室--

ポニテ「体育の後はおっいしいご飯っ!」

ゾンビ娘「ちょっとポニテさん? 大食缶を運んでくるのを忘れてますよ。ポニテさんも今日、給食当番だったでしょう?」

ポニテ「う! 楽しみにしすぎて忘れてた! ごめんね、今取ってくるから!」

がららー

女騎士「その必要は無いぞ、私が持ってきた」

教室のドアを開けて女騎士が入ってきた。

ポニテ「あ! ありがとうー女騎士!」

女騎士「ふ、気にするな。騎士として当然の勤めだ」

ツインテ「女騎士さん、強いだけでなく礼儀正しくて優しくて、本当に凄いお人です……ボクもあんな風になりたいです」

アッシュ「おい入り口で何してる。邪魔だぞ」

ドン

女騎士「んほぉぉおおおおぉぉおぉッ!?」

ツインテ「!?」

アッシュ「な、なんだ? お尻にちょっと当たっただけでなんて声を……?」

メリガー「あ、忘れてた。女騎士はお尻めっちゃ弱いから」

ツインテ(弱点多いな……)

125

--空--

バッサバッサ

聖騎士「ぶるぁあぁあぁ!!……孫のぉ、墓参りィ……今回は時期が少しずれてしまった、ぬぁあああ……」

灰竜「ぐるぉうう……」

聖騎士「……お前ぇえぇだけだぁあ……我の気持ちを理解してくれるううううのはぁああ……ん?」

その時聖騎士は何かを察知する。

聖騎士「あそこにぃ……強者がおるなぁ……?」

聖騎士はユニオンの学園都市を睨んだ。



--教室--

女人狼「では次を女騎士さん、読んでください」

女騎士「はい、了解です」

女騎士は立ち上がると咳を一つし、美しい声で教科書を読み始めた。

女騎士「イヤぁぁ助けてママー」

ツインテ「!?」

オーク太郎「すみませんブヒ、それ僕の本ブヒ」

126

--教室--

ポニテ「どんな本学校に持ってきてんだよ……」

ゾンビ娘「軽蔑します」

キマ「軽蔑するしむしろ軽蔑する……」

女騎士「お前がママになるんだよ」

オーク太郎「真顔で続き読むのやめるぶひ」

ぅぅぅうぅぅぅぅうんんどがっしゃあああああああああああああああああああああああん!!

女人狼「きゃあぁ!?」

その時何かが校庭に落下した。

ゴゴゴゴゴ……

キマ「い、隕石……?」

アッシュ「! 違う! あれを見ろ!」

しゅうううううううううう

聖騎士「……」

ツインテ「あ、聖騎士さんですね」

127

--教室--

ポニテ「なんだ聖騎士のおじちゃんか」

聖騎士「ぶるぁあああ!! そこの教室にいる強者よおぉぉ……素直にぃぃぃ出てくるがぁいい!! そして我と死合いをしようぞぉおおお!!」

ポニテ「何言ってんだあのおっちゃん。強者? 誰のこと言ってんの?」

キマ「ご、ご、ご……五柱の聖騎士!? 初めて見た!! わーすごいー!!」

ゾンビ娘「人類最強といわれる聖騎士様がなぜここに……? あ、後でサインでもいただけないかしら……」

ポニテ「お、なんだこの温度差」

女騎士「……今しがた殺気を当てられた。どうやら狙いは私らしいな」

ふぁさっ

女騎士は長い髪を靡かせながら窓へ近づいていく。

女騎士「あの御仁は私との戦いを望んでいるらしい」

128

--教室--

こつこつこつこつ

アッシュ「なぜ呼ばれているのが自分だと思った? テレパシーでも受けたのか?」

女騎士「いや、言うなれば強者同士の直感とでも言おうか」

アッシュ「……あ?」

遠まわしに弱者と言われたと思ったアッシュはぴきりと来る。

ひゅうううう、だんっ!

女騎士は窓から飛び降りた。

女騎士「……」

聖騎士「……くっくっ……」

女騎士を視認した聖騎士は嬉しそうに笑う。

聖騎士「ふはははははは!! ……あの戦い以来ぃぃ、どうも楽しめる相手がいなくてなぁああ……!! お前のような奴を待っていたのだぁあああああああああ!!」

バッ!!

聖騎士はマントを放り捨てる。

女人狼「あ、あの聖騎士様ー!? 今は授業中ですので勝手なことをされては」

聖騎士「ぶるあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ドンッ!!

聖騎士は魔力を放出していく。

女人狼「ひ、ひいいい……私では止められません……」

129

--教室--

ゴゴゴゴゴ!!

キマ「す、すごい……なんてパワー……この校舎ごと吹っ飛んでっちゃいそうだよ……!!」

オーク太郎「ぶ、ぶひー!? ば、化物ぶひ……! 一人の人間がここまでの魔力を持っているだなんて!!」

イバ「……」

メリガー「ほう」

ツインテ「あぁ……やっぱり聖騎士さんも弱体化は免れなかったんですね」

ポニテ「うん。昔に比べるとちょっと弱くなってるねー」

アッシュ「それが歳による劣化では無さそうだから十分凄いがな」

キマ「なんか凄い冷静に分析してる!?」

130

--校庭--

ゴゴゴゴゴ!!

女騎士「うむ、素晴らしい魔力だ。妥協の無い鍛錬の積み重ねを感じる……」

ふぉんっ
がしっ!!

女騎士はどこからともなく飛んできた聖剣をキャッチする。

女騎士「私も一人の騎士。決闘の申し入れがあれば受けるのみだ! さぁ、どこからでもいいぞ!!」



--教室--

ポニテ「いや、駄目っしょ……汗臭いガチムチおっさんじゃん相手。ほれーくっころ言う前に戻ってこーい」

メリガー「その必要は無いよ」

ポニテ「え?」



--校庭--

聖騎士「ではいくぞ」

女騎士「あぁ」

ひゅ、

どぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

聖騎士の一撃を女騎士はあっさり受け止めた。



--教室--

メリガー「汗臭くても気品や誇りがある奴は大丈夫なんだ」



--食堂--

マッスルひげ「ぶえっくし!!……んん……なんか今誇りも気品も無いって悪口言われたような」

すみません、またもや書ききれませんでした。水曜日くらいに後半を投下しにきたいと思いますのでなにとぞ!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。続きを投下しに来ました。

水着はスクール水着です。スクール水着です。

それでは投下していきます。

131

--教室--

ガガガッギィイイイン!!

わーーー!!

各クラスの生徒達が窓から顔を出して観戦している。

ビリビリビリ!!

キマ「す……凄い凄い! 聖騎士って本当に凄い強い!! あの聖騎士の戦いを生で見れるなんて超感激だよー!」

ゾンビ娘「えぇ本当に……! でも女騎士さん、その聖騎士様と渡り合ってます、よね?」

オーク太郎「……女騎士ちゃん、まじもんの化けもんぶひ……」



--校庭--

ギ、ドオオオオオオン!!

聖騎士「ぶるぁあああああ!! やるではないかぁ!! それでこそ我が認め」

女騎士「そちらの腕前も素晴らしい」

ズバッ!!

聖騎士「!?」

女騎士の聖剣が聖騎士の体を切り裂いた。

聖騎士(は、速い!? この我が防御しそこなうとは……ぐっ!)

132

--校庭--

おおおお……

どよめく生徒達。

やみ(あいつはE組の転入生の一人……く、どんだけ厄介な奴があのクラスに揃っているんだ!)



ぽたっぽたっ

聖騎士「ふは……ふはははは!! 面白い……面白いぞぉ娘ぇええ!!」

バッ!!

聖騎士「ならば見せてやる我が最強形態!! 竜人モオオオオオオオオオオド!!」

メキメキメキッ!!

聖騎士の皮膚が鱗のようになり、背中からは翼が生え、爪が伸びて尻尾が生える。

女騎士「なるほど」

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

聖騎士「!?」

133

--校庭--

聖騎士(こ、いつ……!)

ぶきゅっ!!

聖騎士の肉体が一瞬で再生する。

聖騎士(強い!)

ボボボッ!!

聖騎士の強烈かつ高速の殴打が女騎士を襲うのだが、

ヒュンッ、ズババババッ!!

全て避けられてしまい、逆に聖騎士が切り刻まれた。

ぶしゅああああああああああああああああ!!

聖騎士「お、奥義! r」

ズバアアアアアアアアアアアアン!!

聖騎士「ッッ!!」




ポニテ「渡り合うどころじゃない……」

ツインテ「女騎士さんが聖騎士さんを押してますね」

アッシュ「それも、圧倒的に」

134

--校庭--

ぎゅるっ!

聖騎士「ッはー! はっー!!」(この、我が、何も、出来ない、だと……?)

聖騎士はもはや再生するのが精一杯だった。

女騎士「スキル、光剣レベル2」

ズォ!

聖騎士「」

至近距離から放たれた光の剣が聖騎士の上半身を吹き飛ばした。

ゴゴゴゴゴ!!

光の剣はそのまま雲を吹き飛ばし、空に穴を空けた。

キマ「!?」

ゾンビ娘「!」

オーク太郎「あー……」

最強と信じていた聖騎士が一方的にやられているのを見て絶句する生徒達。

135

--校庭--

もぞ、もぞもぞ、ぴくぴく

聖騎士「ぐ……ぐ」

体の大部分を失ったものの、なんとか修復に成功する聖騎士。

しゅぅうううぅうう……

女騎士「やはりな。貴殿ならばこの程度のダメージなど問題無い、と確信していたよ」

不適に笑う女騎士。

聖騎士「……」

女騎士「久しぶりの強敵だ。正直心が疼いてしょうがない! 小手調べはここまで……全力で行かせてもらおううか!」

スチャッ

女騎士「我が奥義は先ほどのスキルの7600万倍の威力になるが、貴殿なら真っ向から渡り合えるだろう!」

聖騎士「いや無理。もうやめる。我の負けでいいです」

136

--校庭--

女騎士「え」

シーン

女騎士「……と、そうか。このままでは周囲に甚大な被害がでてしまうものな。ここは若人が集う学び舎であった……戦いに夢中になってしまって周りが見えていなかったようだ」

聖騎士「……いや」(なんだこいつ……あの呪い少女レベルの化物じゃないかぁ……く、こんな化物がこの世界にいたなんてぇえ……)



アッシュ「え? ノーダメ? ノーダメで聖騎士倒しちゃうの? そりゃ……俺が勝てないわけだ……」

ツインテ「こうまで戦力差があるとチートスキルの自動蘇生も、ただの罰ゲームみたいなもんですからね」

ポニテ「生き返った瞬間にまた殺される……うぅ、考えたくもない悪夢だよ」

ツインテ「回復が逆に苦しめる道具になるというのは考え物ですね……回復魔法を悪用する人が出ないといいのですが」

アッシュ「え?」

ツインテ「え?」

137

--校庭--

女騎士「お手を、聖騎士殿」

聖騎士「う、うむぅ……」

女騎士は倒れた聖騎士に手を差し伸べ立たせてやる。

女騎士「いや実にいい経験をすることが出来た。心より感謝する」

聖騎士(まさかこんな小娘に完敗とはなぁ……我も隠居する時が来たのかもしれんなぁ……)

てってってー

オーク太郎「聖騎士様ー!! 是非サインを書いて欲しいぶひーーー!」

聖騎士「ぬ?」

ポニテ「!? うわ、あの豚君いつの間に!?」

聖騎士「小僧、我はサインなどうわついたものは」

女騎士「ひ、ひぃ!?」

がくがくと震えてもらしてしまう女騎士。

んじょー!

聖騎士「!?」(な、なぁんだぁこいつの怯えようは!?)

オーク太郎「そこをなんとかお願いするぶひーーー」

女騎士「ら、らめぇええええええええええ!!」

ばっりーん!!

聖騎士「!?」

138

--校庭--

ひゅるるるるる、どっしーん

オーク太郎が女騎士の傍を通過しただけで女騎士は鎧をばらばらにしながら吹っ飛んだ。
そして校庭に生えている大木にぶつかって自動で鎖で縛り上げられる。

女騎士「くっ、ころ……」

聖騎士「なぁあああんとおおおおおおおおお!?」

オーク太郎「さぁこれに書いて欲しいぶひ! 聖騎士様のサインとあらば女子達に見せれば人気者に……ぶひぶひん!」

聖騎士(このちっこくてぇぶさいくなオークの少年を見た瞬間、確かにあの小娘は驚愕の表情をしておったぁ……)

聖騎士はごくりと唾を飲む。

聖騎士(特別な力は感じない……どう見ても弱そうだぁ……ぐぅ……だがあの小娘の力も我は見抜けなかったではないか)

聖騎士は自分の親指を噛むと、そこから出てきた血を利用してオークのTシャツにサインを書いた。

オーク太郎「わー……血文字……」

聖騎士(あの小娘より強い者がここにはおるのか……若い世代は腑抜けばかりと思っておったが……これは隠居するしかぁないなぁあああ)

聖騎士は何かに納得し、灰竜にまたがって飛んでいってしまった。

ばさっばさっ

女騎士「しゅ、しゅごいのぉ……」

139

--教室--

レン「さてアクシデントはあったにゃけど、授業やるにゃよ」

ゾンビ娘「はい先生」

レン「今日はみんなに凄いもの見せてあげるにゃ。にゃにゃーん!」

レンが取り出したのはグローブ。

ポニテ「レンちゃん何それー? なんか中二病の人がよくつけてる穴あき手袋みたい」

レン「ポニテ-200点」

ポニテ「うわあああああ先生先生! レン先生ー! もう点数下げるのやめてー!」

ツインテ「あはは……また勇者さんにテレパシーで怒られちゃいますね……」

キマ「レン先生ーそれなんですー?」

レン「これは魔法発動補助装具にゃ」

キマ「……なんて?」

レン「実際にやってみせるにゃ。まずはここに魔鉱石を入れるにゃ。みんなも知っての通り、魔鉱石は魔力を含んだ鉱石にゃ」

かち

穴の部分に小さい魔鉱石をいれるレン。

ぽう

ツインテ「! 魔力反応が」

140

--教室--

レン「今いれたのは風の魔鉱石にゃ。本来ならレンは風の属性魔法は使えないにゃ。でもこれを使えば……」

フォウッ

アッシュ「! 今のは風魔法!……そうか、義足のあの義足と似たようなものか」

レン「そうにゃ。あれを軽量化し、コストを抑えたものがこれだと思ってもらって構わないにゃ。そしてこのカードを差し込むと。ほい」

ぽん

レンは風の盾を作った。

レン「っとまぁ、カードに術式が埋め込んであるので、誰でも好きな魔法を使えるのにゃ」

アッシュ「!?」

ツインテ「の、ノーリスクでですか?」

レン「魔鉱石と魔法カードを買うのでお金はかかるにゃ。でもそれさえクリアしちゃえば魔力が足りなくても、属性がちがくても、苦手な魔法でもなーんでもできちゃうのにゃ!」

ポニテ「まじか……」

レン「これからの世代はどんどん魔法が使いづらくなるにゃ。だからこれが必要になると思ってレンは作ったのにゃ。これをまず最初にツイン……みんなに見せようと思って」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました!

20レス書くのがこんなに大変だったとは……

それでは投下していきます。

141

--教室--

ツインテ「本当に凄い発明です。これがあれば誰でも気軽に魔法を使える時代が来るんですね……」

レン「ま、全く素養が無いと使えないけどにゃ。自分の魔力で点火するようなものだから」

ポニテ「……でも、なんか実感わいた」

レン「実感? なんのにゃ」

アッシュ「あの戦いの代償だ……本当にこれからは魔法が使いづらくなっていくんだな」

レン「……ここ10年間の統計によると、戦前に生まれた人たちの魔法能力は80%~60%にまで落ちていることがわかったにゃ」

ツインテ「……」

レン「戦後はもっと悲惨にゃ。戦前の平均値を100とすると70前後の魔法能力しかないにゃ。生まれながらにこれにゃ。ゆっくりと衰退していくなんてもんじゃないのにゃ」

アッシュ「生活面で魔法に頼っている部分は多々ある。ここまで急速に使えなくなると今の生活を維持することもできなくなるな」

レン「そうにゃ。だからコレが必要になるのにゃ」

ポニテ「ここ10年で雷属性と氷属性を持つ子供は生まれてないらしいしねー。私達の代でもレアだったけどさー、属性でも衰退が始まってるんだねー」

キマ「ポニテ……私達の代って、私達ほぼ同世代じゃん」

レン「……! アッシュ、ポニテ! 先生にタメ口聞いたからマイナス100点!!」

アッシュ、ポニテ「「自分も忘れてたくせに!!」」

142

--失われた王国--

魔導長「――っていう話なわけですなの」

盗賊「はぁ……なるほどねぇ……」

勇者「ちょっと、盗賊ちゃんとわかってるの?」

盗賊「んー……」

ガーデンテーブルに煎餅とお茶を置いて三人は話し合っている。

盗賊「話の内容云々より、なんで俺達なんかにその話をしに来たのか。そこがわからないかな」

魔導長「またまたー。私は盗賊さんのこともちゃんと評価してるなの。あの最終決戦を勝てたのはみんなが頑張ってくれたから。でもみんなを頑張らせることが出来たのはハイちゃんや盗賊さん達のおかげなの! 影の功労者なの!」

盗賊「ぐすっ」

魔導長「と、盗賊さん?」

勇者「あー……褒められなれてないからこの子……誰にも評価されない寂しい人生だったから」

盗賊「死んだみたいな言い方……てか誰にもって」

143

--失われた王国--

勇者「でも魔導長、質問の答えになってないよ。なんで私達にそんな大事なことを話に来たのか。私達に何を期待しているの?」

魔導長「……」

盗賊「助けを求めるなら手を貸そう。でも邪風を壊滅させるために一緒に来てくれ、っていうんならお断りだぞ。基本的に俺らはリタイアした存在なんだ。積極的に世界のバランスを壊すようなことをしたくない」

魔導長「世界のバランス……」

盗賊「そういう意味じゃ俺はユニオンがあまり好きじゃない」

勇者「ちょっと!」

盗賊「あれはあまりに大きすぎる。世界のパワーバランスが崩れてしまった」

魔導長「……なんとなく気に入って貰えない気はしてましたなの。でも、私にも貫きたい夢と正義がある。そのためにユニオンは必要だったなの」

盗賊「まぁ……個人的に気に入らないだけだ、潰せとは言わないさ。俺らは表の政治には関わらない。リタイアした者を受け入れるだけだ」

魔導長「えぇ、それで構いませんなの」

勇者(……私達が不介入だということを確認しにきたの……?)

144

--失われた王国--

ぱんぱんっ

魔導長「フォーテ、出ておいで」

オオオオオオオオオオ

盗賊、勇者「「!?」」

ぽんっ

フォーテ「やっほー! おじちゃんにお姉ちゃん、久しぶりっー!」

魔導長の影から現れたのはフォーテ。

盗賊「おぉ! フォーテちゃん! 久しぶりじゃないか! 確か投獄されてるって聞いたけど」

フォーテ「魔導長お姉ちゃんのお手伝いするために、特別にでてきちゃったのー! あ、煎餅だ! ねぇ、食べていいっ!?」

勇者(手伝い!?)「あ、えぇ、いいわよ。今お茶も用意するわ」

フォーテ「わぁい!」

ばりばりっ

盗賊「……フォーテちゃんを、使うのか?」

魔導長「はいなの」

盗賊「さっき言った話とは違うことにか?」

魔導長「はいなの」

145

--失われた王国--

ぼりぼり

盗賊「ん~……なんだかまた血が流れることになりそうだぞ……」

魔導長「あら、心外ですなの、私はフォーテをそんなふうに使ったことは一度たりとも無いなの。フォーテちゃんに対する侮辱でもあるなのよ?」

盗賊「う……ごめんなフォーテちゃん、そういうつもりじゃなかったんよ……」

盗賊の膝の上に座り煎餅を食べているフォーテの頭をなでながら謝る。

フォーテ「んーん、フォーテ気にしてないよっ。フォーテ、おじちゃんのこと好きだからっ!」

にへー

盗賊「! フォーテちゃん……お小遣い足りてるかい?」

勇者(ほんと丸くなったわねフォーテ)「はいフォーテちゃん、ちょっと甘くしといたから」

フォーテ「わぁいありがとう勇者お姉ちゃんっ大好きっ!」

勇者「……お小遣い欲しい?」

146

--失われた王国--

勇者「で、なんでこの子を今になって出したわけ?」

魔導長「盗賊さんの共有をこの子に教えて欲しいなの」

勇者「共有、を?」

魔導長「最終決戦以前に、通信師がもこもこちゃんねるの力を借りてパワーアップしたことがあったなの。覚えてるなの?」

盗賊「さぁ……そんなこと書いてあったっけ?」

勇者「おい」

魔導長「……もこもこちゃんねるの情報共有能力は言わばテレパシーの上位互換。これを更にアップグレードするために貴方の力が借りたいなの」

フォーテ「既にもこもこちゃんねるはフォーテの中にはいってるー!」

盗賊「共有っつったって、ほとんど変わらないと思うんだけどなぁ……」

魔導長「もこもこちゃんねるが共有できるのはあくまで情報だけ。貴方の共有はもう一つ上の次元にあるなの」

147

--東の王国--

東の衛兵「――とまぁ、ここの所妙なんですよ」

賭博師「んー……参ったなぁ」

がちゃ

新東の王「? どうしました兄上」

東の衛兵「これはこれは新東の王様」

敬礼する東の衛兵。

賭博師「いやね、また北東の山で死者がでた。今度は三人。きのこ狩りに出かけた家族だそうだ」

新東の王「またですか……あそこは北との国境付近……元々善意で取らせてもらっていたわけですが……この前の会議のことが原因でしょうか?」

賭博師「おいおい、決め付けるのは早いぞ。山賊でもいるのかもしれねぇ……一応ちゃんとした警備隊を向かわせるのと、トラブルが起きないように向こうさんに連絡いれとかないとな」

新東の王「わかりました。私が連絡しておきましょう……はぁ」

賭博師「大丈夫か? あまり寝てないんだろ」

新東の王「国内のことでてんやわんやですからね。ほんと兄上がいてくれてよかった」

賭博師「……」

148

--北の王国--

北の王「……」

がさ

召喚士「で、なんて書いてあったでやんす?」

北の王「また北東の山で死者が出たんやと。は~」

召喚士「またでやんすか……こっちも前の事件の後調べさせているでやんすが」

こんこん

人形師「人形師でぇす」

北の王「入ってええでー」

がちゃ

人形師「おや、召喚士もいたんですかぁ」

召喚士「やんすでやんす」

人形師「北の王、犯人がわかりましたぁ」

北の王「! 誰やったん? うちの国のもんやったんか?」

人形師「はいー……それも国境警備隊でしたぁ」

149

--北の王国--

北の王「はぁ……なんでや……」

どさりと椅子に座り込む北の王。

人形師「警備隊は東の民がこちら側に深く入りすぎていたため警告を発したと、しかし抵抗され身の危険を感じたので処理した、と言ってましたぁ……」

北の王「前回もか? 前々回もか?」

人形師「はいぃ……」

北の王「っとに余計なことをしてからに……」

召喚士「例の会議のことが原因でやんすかね。結構国民で反感を持つ者多いでやんすよ」

北の王「むー……なんとか東の王と話してみるわ」

召喚士「……嫌な空気でやんすね。世界中がぴりぴりしてるでやんす。魔王がいた時とはまた違った感じやんす……」

150

--教室--

ポニテ「えへへーアッシュ君うんこーえへへー」

アッシュ「う、うるさい! トイレでうんこして何が悪いんだ! 何が悪いんだ!」

ポニテ「えーだって学校でトイレとかえへへー」

アッシュ「ぐ、ぐ……そ、早退してやるちくしょーーー!!」

ダダダッバンッ!!

ツインテ「あぁアッシュ君!?」

キマ(平和だなー)

イバ「小学生かよ」

きーんこーんかーんこーん

女人狼「はーい授業を始めますよー」

151

--教室--

ポニテ「体育祭!?」

女人狼「えぇ、丁度一ヵ月後に体育祭があります。ですので今のうちから体を鍛えておいてくださいね」

女騎士「ほう体育祭。実に楽しそうじゃあないか。なぁメリガー」

メリガー「残念だけどボクはインドアなのよね」

がたっ!

キマ「ポニテ! 絶対優勝するよ!!」

ポニテ「ん? お、おう。そりゃやるからには勝ちにいくよー」

キマ「なんだ? 覇気が足らないな! いい? これは学校中のクラスによる対抗戦なんだよ。つまりまたA組と戦うことになるんだ!! 大勢の目の前でA組をボッコボコにしてやれたら……んー考えただけでも気持ちいい!」

ツインテ(動機が不純です……)

女人狼「ただ……校長が今回は少し趣向が変わるかもしれないとおっしゃっていました」

キマ「ふぇ?」

女人狼「それがどういったものになるのかはわかりません。追って連絡します」

152

--赤の山、邪風本拠地--

ひゅおおぉおおぉお……

魔導長「ここか、なの」

ざざざざ!

邪風構成員「なんだてめぇは!! ここがどこだかわかってんのか!? おお!?」

ぞろぞろと湧き出てくる構成員。

魔導長「わかっているなの。奴隷王さんとちょっと話がしたいだけなの。案内して欲しいなの」

邪風構成員「あぁん? んなこと言われてほいほい通すと思ってんのかぁ!? 一人で来るなんていい度胸だぜぇい!!」

邪風構成員2「……おい、こいつどっかで見た顔だと思ったら、五柱の魔導長じゃねぇか!?」

ざわざわ!!

魔導長「なの。さぁ案内してくれる?」

ダンッ!!

奴隷王「おもしれぇ……案内してやりな」

邪風構成員「!? 奴隷王様!!」

漆黒の城の最上階のドアが開かれて奴隷王がその姿を現した。

魔導長「……」

153

--赤の山、邪風本拠地--

カツンカツンカツン、ギィィィイ……

魔導長「お招きありがとうなの」

奴隷王「……こんなカビくせー所にわざわざようこそ。ユニオンの魔導長さんよぉ」

青狼将軍「……」

黄太将軍「……」

赤薔薇将軍「……」

魔導長(幹部三人はご同席か)

奴隷王「で? 話し合いとは一体どんな用件なんだ?」

ぐびっ

テーブルに足を乗っけて酒を呷る奴隷王。

154

--赤の山、邪風本拠地--

魔導長「……私はね、貴方達のことを必要悪だと思っているなの」

奴隷王「……は?」

魔導長「世の中にはどうしても普通に暮らせない人たちがいるなの。ドロップアウトすることも出来ないどうしようも人たち。そういう人の受け皿になってる邪風は、世界の構成に必要だと思ってるなの」

青狼将軍「!! きさまぁ!!」

奴隷王「言うじゃねぇか五柱様。さすが人の指針となるようなお方は言うことが違う……で? そのどうしようもねぇ俺らに何の話だ?」

魔導長「だからある程度の規模まではしょうがないことと思って見逃していたなの。でも最近の貴方達はちょっと大きすぎるなの」

スッ

将軍三人が静かに戦闘態勢に入った。

奴隷王「……だからなんだ? じゃあ邪魔になったから潰しにきたってか?」

155

--赤の山、邪風本拠地--

魔導長「規模を縮小してもらいたいなの。出来れば半分くらいに」

黄太将軍「ッ!! 黙って聞いてればこの女ぁあ!!」

魔導長「っと、言った所で出来るわけが無いことくらいこっちにもわかってるなの。これが通れば悪の組織なんてやってないだろうし」

ゴゴゴゴゴ

奴隷王「のらりくらりとはっきりしねぇな」

奴隷王が上体を起こす。

奴隷王「……魔導長、今世界は魔力が枯渇していってんだ。これは魔法を主体に戦う奴らにとっちゃ大打撃だぁな。いくらあんたが最強の魔法使いだからといえ影響はもろにでてるだろ。今の俺達相手じゃ勝機はねぇぞ?」

魔導長「……でしょうね」

魔導長は三人の将軍が手を伸ばしたものを分析する。

魔導長(弓に三節棍に本。どれも魔武器なの)

156

--赤の山、邪風本拠地--

奴隷王「二度と聞かねぇ。魔導長。あんた何しに来たんだ?」

魔導長「……和平を結びに来たなの」

奴隷王「……はぁ?」

魔導長(盗賊さんの話術が効いてるといいなのだけど)「私は争う気が無いなのだから仲良くなりましょうなの。共に世界のバランスのために」

奴隷王「……俺達は悪の組織だぜ……? わかっていってんのか?」

魔導長「わかっていってんのなの。もし同意してもらえるのなら多少の支援の用意があるなの。まぁこちらにも飲んで貰わなくちゃならない用件があるのだけど」

奴隷王「なんだ」

魔導長「ドラッグの禁止と各国に送り込んでいる構成員の撤去、それと人造魔王を返して欲しいなの」

奴隷王「……」

魔導長「……」

奴隷王「できねぇ相談だ。俺らはてめぇらみてぇなのとはつるまねぇ」

157

--赤の山、邪風本拠地--

ドシュッ!!

三人の将軍が一斉に魔導長に攻撃をしかける。

奴隷王「死ね五柱。人を見下してものいってんじゃねぇぞ」

ドギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアア!!

赤薔薇将軍「取った……!?」

魔導長「……ありがとうなの。これで正当防衛成立なの」

奴隷王「!?」

三人の将軍の攻撃は、魔導長の影から伸びた無数の死者の腕によって防がれていた。

魔導長「正義代表としてはこちらから攻撃するわけにはいかないからね」(なんてね)

ぽんっ

フォーテ「フォーテちゃん、さんっじょう!!」

魔導長「フォーテ」

フォーテ「わかってるっ、この三人はもう済ませたよっ」

158

--赤の山、邪風本拠地--

赤薔薇将軍「ッ、この白い腕に触られたらなんかゾクって……ッ! よくも気持ちわるいまねを! 火属性攻撃魔法レベル4!!」

ボボボッ!!

魔導長「凄いなの。こんな世界になってからは私でも4が限界なのに……さすが魔武器なの」

ドドォォン!!

赤薔薇将軍「魔力障壁をはった? ふふ、でも今の貴女じゃ防ぎきることは……ぐっ!?」

青狼将軍「どうした赤薔薇! !? これは!!」

ぷすぷす……

赤薔薇将軍の左腕がこげていた。

青狼将軍「反撃か!? いつのまに……」

魔導長「あまりなめないで欲しいなの。いくら不意打ちされたからって貴女程度の魔法、完全に防ぐことくらいわけないなの」

しゅうぅうう……

しかし魔導長の左腕はこげている。

魔導長「どう? 身をもって味わった感想は」

赤薔薇将軍「……?」

159

--赤の山、邪風本拠地--

魔導長「今貴方達三人には、与えたダメージを共有する呪いを打ち込ませてもらったなの」

赤薔薇将軍「なっ!?」

魔導長「これで自分が攻撃したダメージは全て自分も食らうことになっちゃったなの……少しはわかったなの? 人を傷つける痛みというものを……」

赤薔薇将軍「ッ!!」

魔導長「あ、自分が直接手を下さなくてもダメージは跳ね返ってくるから気をつけてなの。ふふふ……残念、もう貴女達は誰も傷つけることが出来ないなの」

奴隷王「てめぇ……!!」

フォーテ「はいっ、おじちゃんもっ」

ぺたぁ

奴隷王「!?」

魔導長「奴隷王、解除は考えない方がいいなの。もっと恐ろしい呪いを受けたくなければね」

魔導長は黒い笑顔を見せる。

160

--赤の山、邪風本拠地--

奴隷王「……解きやがれ」

魔導長「ふんふーん」

ぺら

魔導長は一枚の紙をテーブルに落とした。

魔導長「……人類は戦い続けねばならないなの。敵でもなんでも、でなくては社会の負の感情が募っていくなの。闘争は人によって必要不可欠。この十数年でそれが身に染みたなの」

奴隷王「……世界大戦……?」

魔導長「そう、各国の代表者達によるガチバトル風ガス抜き。邪風にもこれに参加してもらいたいなの」

奴隷王「……ッこんな誰も攻撃できない体でか!? サンドバッグになれってか!?」

魔導長「安心して。大会中はその呪いを一時的に切ってあげるなの。この呪いは話をちゃんと聞いて貰うために使ってるだけなの」

奴隷王(そうには見えネェな)

こつこつ

魔導長「大会に参加するメリットは君達にもあるなのよ? 勝者には凄い景品を用意してるなの。欲しいものはなんでも手に入るわ」

魔導長は奴隷王に近づいていく。

魔導長「わかったか? ひよっこ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

近々終わると思います。

こんばんは。久しぶりにまともな時間にこれました。

それではさっそく投下していきます。

161

--赤の山、邪風本拠地--

魔導長「まぁここまでやっといてあれだけど、これはあくまで提案なの。貴方達が自発的に参加してくれることを私は願ってるなのよ」

魔導長は紙をひらひらとさせている。

バッ!!

奴隷王「ッ……受け入れなければこのままなんだろ……? 何が提案だ、これは脅迫だろうが!!」

魔導長「あら、悪の組織のボスともあろう者が、脅迫されてるー、なんて泣き事言うとは思わなかったなの」

奴隷王「ッ!!」

がりがりがり!

魔導長「署名ありがとうなの。詳細は追って伝えるなの」

奴隷王「けっ!! 覚えてやがれよっ!!」

162

--空--

びゅおおおおおお

フォーテ「ねー、魔導長お姉ちゃんっ」

ぴょこっと影から頭を出すフォーテ。

魔導長「ん? なぁに? 寒いなの?」

フォーテ「ううん、ちがくて。さっきのこと。なんであんなめんどくさいことしたの? 僕ならあの場にいた人達全部やっつけちゃえたよ? あの人達、悪い人達なんでしょっ?」

魔導長「……うん、悪い人なの。確かにフォーテなら全滅させられる。でもそれじゃあだめなの。何事も器が必要なのよ」

フォーテ「器?」

魔導長「ゴミ箱が無ければ、部屋中ゴミだらけになっちゃうでしょ?」

フォーテ「あー」←わかってない

魔導長「……なんとかなるといいなぁなの」

163

--失われた王国--

勇者「やっぱり血を感じるわ」

盗賊「ん? いきなりどうした?」

勇者「魔導長のことよ。彼女は信頼出来る人物だと思ってるわ。でも、あの魔導元帥と腹黒の血筋……彼女も結果のために過程を選ばないところがある」

盗賊「んー……」

盗賊はぼりぼりと顎髭をかく。

勇者「魔導長は最終決戦の後の世界の影響を受けてかなり弱体化したわ。でもそれは私達も同じ……現に私は勇者の力を失い、今では火属性しか使えない……」

勇者は深刻な顔で言う。

勇者「あの子がもし事を起こしたら、私達じゃ止められないわ」

164

--失われた王国--

盗賊「……硬く考え過ぎなんだよ勇者はさ」

ぽんぽん

盗賊「大丈夫だろきっと。ユニオンはちっと力をつけ過ぎたとは俺も思うけど、魔導長はうまく動いてくれるさ。道を間違えた時に過ちを正してくれる仲間が傍にいっぱいいるんだからさ」

勇者「……そうね。あの子達がいる限りは、安心かも、ね」

たたた

農家のおじさん「おお勇者さん、ここにいましたか。実はうちの家内が料理を作りすぎてしまいましてな。はははっ。よかったらうちで夕飯食べて行きませんか??」

勇者「え? 本当?……この間もご馳走になったばかりなのに……なんだか悪いわね」

農家のおじさん「いいえー、気にしないで下さいよ! こっちのミスなんですから! ささっどうぞどうぞ! 勇者さんみたいな美人がいてくれたら我が家の食卓も華やかになるというものです!!」

盗賊「……」

盗賊は感慨深そうに勇者を眺めている。
皆を守り、皆に慕われる者、『勇者』。かつて盗賊が思い描いた勇者像が、この地で現実のものになったのだ。
ここに至るまでの道は険しく、辛いものだった。その苦労を共に乗り越えてきたがゆえに、盗賊は自分のことのように嬉しく思のだった。

盗賊(よかったな勇者……やっぱり『勇者』はこうでなくっちゃな)

ザッ

農家のおじさん「あ、お前は呼んでねぇから」

べっ!

歩き出した盗賊につばを吐きかけるおじさん。

盗賊「……俺何かしたっけ」

165

--教室--

ポニテ「第一次世界大戦inユニオンーーー!?」

ざわざわざわ

女人狼「えぇ、今朝の朝会で校長が……なんでも各国、各団体から三人一組の精鋭を選抜し、大衆の目の前で戦うのだそうです……」

アッシュ「ほう、コロシアムのようだな」

ポニテ「国対抗の武闘会ってことだよね!? わー! 超楽しみだああーーー!!」

ツインテ「各国から精鋭を三人選抜って、出場するのも難しそうですね……」

キマ「はいはいはーい、先生質問ー」

女人狼「はいキマさん」

キマ「それ私達も出られるんですか? 私達学生ですけど」

女人狼「はい。きちんと書類を提出し、代表として認められる実力があるのなら……とルールに書いてありますね」

わー!!

166

--教室--

ビッ

ゾンビ娘「先生、私達の場合、所属はユニオンということになるのですか?」

女人狼「生徒達は母国、もしくはユニオン代表として出場することを選択出来ます。ですがルールにより、一度出場したら今後はずっとその国の戦士となり、他の国の代表として出場する権利を失うそうです」

キマ「ん? 今後?」

女人狼「今回は第一次、ということです。これは4年ごとに行うようです」

ポニテ「!! うおー! 楽しそうだー!!」

アッシュ「……三人、か」

ツインテ「三人、ですね。それに所属……」

ポニテ「何々? 二人とも真剣な顔しちゃってー!!」

アッシュ「……他の拘束ルールが無い以上、代表争いには三強達も入ってくるということだ。これはかなり枠が少ないぞ」

ポニテ「あ」

女人狼「そうそう、ユニオンに所属している先生方は他の国の代表として出ることが出来ません。所属はユニオンですから。先に言うべきでしたね」

ポニテ「!? じゃああの先生達が全員ライバルになるの!? うち凄い人いっぱいいるのに!?」

167

--教室--

ぽろろ~ん

吟遊詩人「僕は辞退したよ~」

キマ「あ、音楽の先生」

絵師「ぎゃはは! 今更国の威信にかけた戦いに出る歳じゃないしー」

オーク太郎「芸術の先生もきたひ。自分の授業どうしたぶひ?」

ポニテ「なるほど……一度選んだら他を選べない……あ、でも」

ポニテとツインテとアッシュが見つめあう。

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

168

--校長室--

ぺらり

参謀長(なるほど……メリガーから知らされた世界大戦の危機をこうやって回避しようと考えたのか……戦争をスポーツで代用する、か……確かに世界大戦が起こるという予言はなんとかなるかもしれんが、本質の解決になるのか……?)

魔導長「どうなの? 参謀長教頭」

参謀長「……今は、面白い案、だと言っておきましょう。どこまで成功にもっていけるかは今後の頑張り次第ですね」(最近はましになったと思ったがまだまだ甘いな。どれ娘の尻拭いは父親の務め。早速裏で動き出すか)

魔導長「ありがとなの。あ、それと参謀長教頭ー?」

参謀長「どうしました? 魔導長理事長」

魔導長「うん、あのね? 邪風……育てたの貴方でしょ、おとーさん」

参謀長「……………………」

魔導長の瞳からハイライトが消えている。作画ミスではない。

169

--校長室--

参謀長「な……なんのことやら。それに私は貴方の父では」

魔導長「調べはついてるんだよぉお父さんんんん!!」

ばさばさばさっ!!

大量の資料がテーブルの上に置かれた。

魔導長「……共通の敵を作り上げて人類を一つにまとめようとしてたのかな……魔王と同じように。いや、それだけじゃないよねぇ?」

魔導長はゆっくりと立ち上がり参謀長に向かって歩いていく。

魔導長「悪に対抗するために戦力を増強する……そんな大義名分をユニオンが得るために育ててたのかな? かな……?」

参謀長「……………………」

魔導長「結果、ユニオンはお父さんの思い通りに大きく大きくなったの……でもちょっと、やりすぎかなぁって、私思うなの……」

参謀長「……………………」

魔導長「なんとか言えよ」

170

--屋上--

ポニテ「もっしゃもっしゃ」

アッシュ「珍しいな。ポニテが三人で屋上で飯を食おうだなんて」

ツインテ「何か思うところがあったんですか?」

ポニテ「ごっきゅ。うん。率直に聞くよ」

ポニテは食事をやめる。

ポニテ「二人はどこの代表を目指すの?」

ツインテは一瞬戸惑ったが、にっこりと笑って答えた。

ツインテ「――ボクはユニオンに所属します。ボクの故郷の王国がユニオンの一部になりましたから」

アッシュ「……俺はもちろん西の王国だ。お前は?」

ポニテ「私は、南の王国だよ!」

アッシュ「ほう……見事に別れたな」

アッシュはにやりと笑った。

171

--屋上--

ツインテ「しかし、南の王国、ですか? ポニテさんは盗賊さん達が住んでいる失われた王国に所属するものだと思ってました」

ポニテ「んー……あそこはリタイアした人が住む場所だからね。前に進む若者の場所じゃないんだよー」

アッシュ「確かにな。今回もあそこは参加しないだろうし」

ポニテ「うん。あ、嫌いって意味じゃないよ? むしろ大好き! 穏やかでのんびりしたいい所だもん。空気もいいし食べ物おいしいし! ポニテもいつかはパパとママがいるあそこで一緒に住もうと思ってる」

ポニテは立ち上がる。

ポニテ「でも、それは今じゃないの。だって私は、まだ前に進めるから。頑張って頑張って死ぬ気で人生を楽しむんだ。いつか前に進めなくなる日まで」

ツインテ「……そうですね」

アッシュ「親離れだな」

ポニテ「だから私、南の王国に所属する。みんなと、本気で戦ってみたいから! それが、今私が一番したいこと!」

アッシュ「ふん……それはいいがなぜ南の王国なんだ? 何かあてがあるのか?」

ポニテ「うん。お父さんお母さんの代からのね!」

172

--屋上--

ツインテ「でも……一時といえどみなさんと別れちゃうんのは寂しいですね」

ポニテ「うん……それと同じくらいわくわくもしてるけどね!」

アッシュ「おいおい余裕だなポニテ。お前そんなんでちゃんと選抜戦勝ちあがってこれるんだろうな?」

ポニテ「もちもちー。ぶっちゃけ南で強いのなんて虎ちゃんくらいしかいないっしょー」


--南の王国--

虎男「へぶちっ!」


--屋上--

アッシュ(魔力が減少した現状、魔法をメインに闘うタイプは弱体化された。だからこそ武術や肉体性能で戦うタイプ、亜人は今回の戦いにおいて最大の敵になるかもしれないな)

ツインテ(まずボク……勝ち抜けるのかな)

ツインテは自分の掌を見つめ、そして握る。

ツインテ(いや勝つんだ。ボクも、皆さんと戦いたいから!)

173

--寮--

次の日。

ポニテ「じゃあみんな! 次は三ヵ月後、本戦でお会いしようー! さらばじゃ!」

グリフィン「ひょえーーーーー」

ばっさばっさ

ツインテ「慌しくいっちゃいましたね」

アッシュ「本戦が三ヵ月後なら仕方あるまい。普通何年後とかだろうに」

ツインテ「それだけ、早めなくちゃならない理由があるんでしょう」

アッシュ「さて、どうだか」

ザッ、ザッ

女騎士「さてはとは思ったが……もしや今飛んでいったのはポニテか?」

ツインテ「あ、女騎士さんおはようございます。そうですよ、南の王国に向かわれました」

女騎士「むぅ……そうか。もう少し早くツインテ達を見つけられていたら……」

アッシュ「? どういうことだ?」

ひょこっ

ハイ「あ、お久しぶりです先輩方」

ツインテ「!? は、ハイさん!?」

ハイ「はい~ご無沙汰してます」

174

--寮--

アッシュ「本当に久しぶりだな。もう三年以上会ってないだろ……少し痩せたか?」

ハイ「あはは……仕事が忙しかったもので……。しかし先輩方も大変そうですね。ポニテ先輩ともお会いしたかった」

ツインテ「大丈夫ですよ、三ヵ月後にはきっと会えますから」

ハイ「世界大戦、というやつですね? 一応話は聞いています」

女騎士(旧友との再会か……年齢が少し離れているような気がするが、友情に歳の差は関係ないか)「それでは私は失礼する。ごゆっくり」

くるり、ざっ、ざっ

女騎士はかっこよく踵を返し、目を瞑ったまま歩き出した。

ツインテ「あ、ありがとうございました女騎士さん!……って! 女騎士さん、待って!!」

女騎士「ん? どうした、礼ならいいぞ。人助けは騎士の務めだ!」

ツインテ「前見てください前! 今曲がり角から!」

オーク太郎「……」

ツインテ「オーク……太郎さんが……」

女騎士「んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ばりいいいいいいいいいいいいいいいん

ハイ「なんだか変わった知り合いが増えたみたいですね……」

175

--寮--

ハイ「へぇ、世界大戦とはそういったものなんですか。魔導長さんも何か考えがあってのことなんでしょう。あ、お茶ありがとうございます」

ツインテ「はいユニちゃんもにんじんですよ」

ユニコーン「ぶひるん!」

外から窓を開けて顔だけ部屋にいれているユニコーン。

ハイ「でも一応決着がついたんですね、お仕事」

ハイ「……はい。邪風が一気に引いたので……」

がさごそ

アッシュ「さてと、俺も西の王国に帰るとするか。じゃあなツインテ。ハイ、ゆっくりしていけよ」

ハイ「え!? も、もう行っちゃうんですか!?」

アッシュ「話を聞いていなかったのか? 俺は西の王国で選抜戦に出るんだ。ポニテ同様、今出発しなくては遅れる」

ツインテ「いってらっしゃいアッシュ君。この部屋のことは任せてください」

にっこりと笑いながら傍までくるツインテ。

アッシュ「……名残惜しい」

ツインテ「え?」

アッシュ「いや、なんでもない」

ハイ「はぁ……勝てないなほんと。ずずっ」

176

--食堂--

カチャカチャ

キマ「……私でも、頑張れば代表に選ばれるのかな? ん……さすがにそれは、無理だよねあはは」

きゃーきゃー

A組女子「やみ君代表戦出るんだって!? すごーい!」

A組男子「でもなんで母国の南の王国じゃなくてユニオンで出るんだ?」

キマ「!?」

やみ「僕はユニオンが好きだからね。ここの代表になれるようがんばってみるよ」

きゃーきゃー

イバ「あいつもユニオンの選抜戦に出るのか」

キマ「!? あ、あんたいつのまにそこにいたのよ!?」

目の前に座っていたイバに驚くキマ。

イバ「ずっと前からだぜ? 全く」

イバは食べ終わり空になったトレーを持って立ち上がる。

イバ「ちなみに俺は故郷の東の王国で出るぜ」

キマ「!! あ、あんたも出るの? 選抜戦」

イバ「箔があると就職に便利そうだからな。お前も出るのか出ないのか、さっさと決めろよ」

177

--教室--

オーク太郎「しっかし凄いぶひねぇ。国の代表を決める狭き門だと言うのに、我がクラスではツインテちゃん、アッシュ君、ポニテちゃん、それにキマちゃんにイバ君まで出るらしいぶひ。いくら新時代育成機関の学生だって言っても、みんなやる気あって凄いぶひ」

ゾンビ娘「……」

オーク太郎「女騎士ちゃんが出ないのは以外だったぶひね。こういう試合みたいなの好きそうだったぶひが。めちゃくちゃ強いし」

女騎士「ふ、私はこの世界の者じゃないからな。さすがにそこまで出張るわけにはいかない」

全裸でかっこつける女騎士。

ゾンビ娘「実は……私も本国から、選抜戦に出場しろという旨の手紙が送られてきました」

オーク太郎「え!? ゾンビ娘ちゃんの母国って確か……」

ゾンビ娘「北の王国です。私なんかが呼ばれるくらい人手に困っているようですね。レン先生も北の王国に戻る気は無いようですから」

オーク太郎「……ってことは6人出るぶひ? 凄いぶひ。A組より多いんじゃないかぶひ?」

178

--失われし王国--

盗賊「もー……表舞台には関わらないって言ったのにー」

盗賊と勇者は魔導長から送られた手紙を読んでいる。

勇者「参加チームが足りないのでお願いします。お祭りだと思って是非参加してくださいなの……って。あはは。どうする? 盗賊。ポニテも南の王国の代表で出てくるだろう、ってさ」

盗賊「うーん……」

シャーマン「悩むことはない。お祭りなんだろう? 参加したらいい」

にゅっ

カブト「同感だ。祭りはいいものだとおばあちゃんが言っていた」

にゅっ

盗賊「……それだけじゃないんだよなーこれ」

179

--寮--

真っ暗な部屋の中、ベッドで足を抱えて座っているキマ。

キマ「ポニテは南、アッシュ君は西、ゾンビ娘ちゃんは北、イバは……東か……私も出身で考えるなら東にするべきなんだけど」

ぼふ

キマはベッドに倒れこむ。

キマ「私は、どうしよう……。そもそも学生の私なんかが代表になれる可能性は低いんだ……でも、最初から無理だって、諦めたく無い」

キマの覚悟が決まる。

キマ「……決めた、私、ここで出る!」

180

--校長室--

魔導長「あ、言い忘れてたけどハイ、貴女にも代表戦にでてもらうから」

ハイ「はいいぃいいいい!?」

失敗した伏線メモ1

踊子の心臓について。踊子の心臓は鬼の心臓といってました。あれ考えてた時は鬼が回復力高い設定だったんですかね。その力がツインテに受け継がれて自動蘇生能力を手に入れるわけなんですが、鬼なんですよね。竜じゃなくて。
この際鬼にも自動蘇生能力あるということにしましょうか……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました投下します。

181

--ユニオン、選抜会場--

ざわざわざわ

受付嬢「選抜戦出場の方はこちらで登録を済ませてからご入場下さいー」

キマ「う、うぅ……人がいっぱいいるよ……まさかこれ全部参加者?」

ざわざわ

ツインテ「参加するのは学生のボク達だけじゃないですからね。国中の腕に覚えがある人達が集まって来ているんでしょう」

キマ「うっ……お腹痛くなってきちゃった……」

ツインテ「わかります、緊張しちゃいますよね。回復魔法かけましょうか?」

キマ「ううん、精神的なものだと思うから大丈夫……」

ツインテ「ある程度なら精神も癒せますよ、はい」

ぽう

キマ「……あれ? なんか元気でてきた! ツインテちゃんそんな魔法まで使えるの!?」

ツインテ「こういうことしかボク出来ませんから」

182

--ユニオン、選抜会場--

ざっざっ

マッスルひげ「よぉツインテちゃん! 出るって聞いたから俺達応援しに来ちゃったぜ!」

ツインテ「あ、皆さん。来ていらしたんですね」

がちむち「昼飯作ってきたんだ。後でみんなで食べような!」

ツインテ「それは楽しみです! ありがとうございますっ」

屈強な男「ほわぁ……ツインテちゃんのその笑顔を見れただけで来たかいがあった……」

キマ「……ツインテちゃんもっと緊張してるかと思ったけど、案外余裕なんだね……」

ツインテ「緊張ですか? してますよ。でも、昔と違って、今はちょっと楽しい緊張なんです」

キマ「楽しい、緊張?」

ツインテ「はい」

ツインテはにこりと笑う。

183

--ユニオン、選抜会場--

ブラ「あれ? もしかしてツインテちゃん?」

ツインテ「! お久しぶりですブラさん!」

メイド「久しぶりでございます。それにキマも」

番犬「ばうー」

キマ「ブラおばさんに師匠と番犬! ひさし……ってあれ!? そうか、ツインテちゃん知り合い、だったんだっけ??」

ツインテ「! あ、そうなんですよ、昔にちょっと~」(そうだった……ボク達の素性は隠してるんだった。気をつけないと)

ツインテは冷や汗をかいている。

ツインテ「ぶ、ブラさん達はなにしにここに?」

ブラ「私の息子が出場するから見に来たのよ」

184

--西の王国、選抜会場--

ざわざわ

秘書「準備は出来ていますか? ちゃんとハンカチは持ちましたか?」

アッシュ「大丈夫ですお母様。というか試合にハンカチはいらないのでは?」

わーきゃー

たくさんの観客が今か今かと試合開始の合図を待っている。

秘書「人としてのエチケットです。それは戦いに赴く状況でも、ないがしろにしていいものではありません」

アッシュ「わかりました……。それでは行ってきます。勝利をこの手に」

ザッ!

秘書「やだ何今の台詞うちの子カッコイイ」

185

--南の王国、選抜会場--

わーきゃー!

実況鳥亜人「勝者、ポニーーーーーテーーーー!!」

ポニテ「いえーーーい! 決め顔ダブルピース!」

わーわー!!

虎男「うぅむ。やはり強いがおあの小娘……これは鍛えがいがあるというものがお」

亜人王「ふふふ、彼女ならきっとこの国を背負って立ついい戦士になるだろう」

鷲男「そうですね。あの二人の子供なら……」

186

--ユニオン、選抜会場--

キマ「っと、そろそろ私の試合の番だ」

ツインテ「そういえばブロックを聞いていませんでした。ボクはAブロックなんですが、キマさんはどこですか?」

キマ「Cブロック。良かった、ツインテちゃんとは戦う心配なさそうだね」

ツインテ「ですね。お互いブロック優勝して、一緒に代表になりましょうね」

キマ「うん! じゃあ行って来る!」

ツインテ「はい、行ってらっしゃい」

たたたた

ツインテ「うん、緊張はいい感じにほぐれたようですね。本当なら応援しに行きたいのですが、すぐにボクの試合始まっちゃので……」

かぽかぽ

ハイ「ツインテ先輩、おはようございます」

ツインテ「あ、ハイさん、おはようございます。ユニちゃんもおはよう」

ユニコーン「ひひーん」

187

--ユニオン、選抜会場--

ツインテ「今日はどなたかの応援ですか? それともお仕事とか?」

ハイ「仕事と言えば仕事ですね、実は私もこの度選抜戦に参加することになりまして……」

ツインテ「え? そうなんですか?」

ハイ「はい。ちなみに私はBブロックです。ツインテさんと戦わずに済んだのが、せめてもの幸運といいますか」

ツインテ「? なんでボクのブロックを知っているんですか?」

ハイ「あ、すいません。実はブロックの分け方を知っているんです。運営側の息がかかっているので」

ツインテ「あ(察し)」

ハイ「戦歴やステータスを参考にして、上位三名は潰しあわないように別ブロックに分けてるんです。強い人が同じブロックに固まってしまったら、せっかくの優秀な人材が無駄になってしまいますからね」

ツインテ「なるほど……」

ハイ「なのでツインテ先輩と、自分で言うのもなんですが私は別ブロックということになりました。……あ、この話は他の方には秘密ですよ?」

ツインテ「あ、そうですよね。わかりました。でもついでにもう一つ教えてもらえませんか?」

ハイ「Cブロックに配置されている上位三名のうちのもう一人、ですか?」

ツインテ「はい」

ハイ「それは」

188

--ユニオン、選抜会場--

実況骨亜人「そぉれではぁあご紹介いたしましょう!! 赤コーナー、ユニオン学園1年E組いいいい、東の国出身のハーフヴァンパイアー、キーーーーマーーーー」

わーーーーー!

キマ「え、えへへ、ど、どうもどうも」

照れながら手を振るキマ。

実況骨亜人「続きましてえぇ、青コーナー、同じくユニオン学園所属ぅ、1年D組ぃぃぃ、ユニオン出身のD組男子ぃいいいいいいいい!」

わーーーーー!

D組男子「おすっ!」

キマ(うわ、学年で一番凄い体格の人やん……いきなりそんなのと当たるのかぁ……)

キマは首を振る。

キマ(いや弱気になってどうする! 全部で7回も勝たなきゃならないんだ……誰が相手だろうと、叩きのめすのみ!)

ばりっ

実況骨亜人「準備はよござんすねぇ? レディイイイイイイイイイイイイイイイファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイトォォ!!」

カーン!

189

--ユニオン、選抜会場--

ドス、ドスッ!!

D組男子「先手必勝ぅぅううう!!」

キマ「!」

D組男子が巨体を揺らしながらキマに接近。

キマ(この人はあまり魔法に通じて無かったから特殊なしかけは無いと思うけど、出来れば長引かせて打ち合いにしたくない。ここは)

ばりばりばり!

キマ「雷属性全身強化魔法、レベル2!」(最初から全力だして一発で終わらす!!)

ぎゅんっ!!

D組男子の攻撃を避けたキマは、

ドガッ!

回り込んで後頭部を肘打ちし、

キマ「スキル、発雷!」

バリバリバリ!!

掌から出る電気を浴びせた。

190

--ユニオン、選抜会場--

ばちばちっ!

D組男子「」

ふら……

よろけたD組男子は、

D組男子「ふ」

にやりと笑ってキマの右足を掴んだ。

キマ「え!?」

D組男子「よぉいしょおおおお!!」

ぶぉん、どごおおおおん!!

キマ「きゃんっ!」

そしてキマを地面に叩き付ける。

キマ「いたた~……なんであれ食らって余裕なの!? ポニテちゃん達じゃあるまいし!」

D組男子「ははは、対戦相手のことは全部調べてあるのさ。ほれ」

ちらり

キマ「! 魔鉱石・対雷!? そんなもの服の下に仕込んでおくとか、反則じゃん!!」

D組男子「武器を使うのも、道具を使いこなすのも才能の一種でであり問題無い。これは大会規定だよ」

191

--ユニオン、選抜会場--

D組男子「どれもういっちょう!!」

ぶぉん!

キマ「! させるかおりゃ!」

バリバリバリ!!

D組男子「ふ、効かない、よっ!!」

どごおおおおおおおん!!

キマ「ぎゃんっ!!」

再び地面にたたきつけられたキマは、頭部から血を流す。

キマ「づ……」

ぽたっ

D組男子「A組に勝ったからどれだけ凄いのかと思ったがこの程度か……もう諦めたらどうだい?」

キマ「……やだ、諦めるものか」

バリバリバリ!!

D組男子「……そうか」

どごおおおおおおおおん!!

192

--ユニオン、選抜会場--

キマ「ッッ!!」

どくどくどく

実況骨亜人「おぉーと、これは決まってしまったかー? キマ選手起き上がってきませんーー」

キマ(ぐ……駄目だ、雷魔法効かないし、単純な肉体じゃ勝てない……そんなの、無理じゃん)

キマは薄れゆく意識の中で敗北を確信する。

メイド「お前は、その程度なのかでございます!」

キマ(……え? この声、師匠?)

キマはうっすらと目を開く。

ちびメイド「そんな弱い子に育てた覚えは無いでございますですー! 立てでございますー!」

キマ(ちび師匠まで……私の応援しに、来てくれたの?)

193

--ユニオン、選抜会場--

グググ

D組男子「! まだ起き上がるのか? もう終わったとおもったのに」

立ち上がろうとするキマに近づいていくD組男子。

メイド「雷が効かないのなら」

ちびメイド「物理で殴ればいいだけでございますー!」

ばりっ!

キマは再び全身に電気を纏う。

D組男子「……それは、効かないんだよぉ!!」

ひゅっ

接近するD組男子から距離を取ったキマ。

キマ「確かにこれだけならね、でも、雷属性移動速度上昇魔法、レベル2!」

ばりっ!

D組男子「はっ、それが一体なんだと言うんだ?」

キマ「更にスキル、雷動!!」

ドンッ!!

キマは最高速度でD組男子に体当たりした。

194

--ユニオン、選抜会場--

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

D組男子「!?!?」

めぎめぎめぎ!!

D組男子「ぎっ!?」

ちゃっかり肘打ちで突進していたキマ。その拳はD組男子のみぞおちにしっかりと刺さっている。

D組男子「ごっ、ごはぁあああ!!」

ずずーーーん

キマ「はっ、はっ、はっ……や、やった?」

D組男子は泡をふいて倒れていた。

実況骨亜人「こーーれはキマリでしょうーー! キマちゃんの、勝利ーーーーーーーーーーー!!」

わーーーー!!

メイド「……やれやれ、初戦から躓くようではお先真っ暗でございます」

ちびメイド「まぁ勝ったんだからいいじゃないでございますですかー」

メイド「……ふん」

195

--ユニオン、選抜会場--

治療スタッフ「はい、これで怪我は大丈夫なはずです」

キマ「ありがとうございましたー」

治療スタッフ「お大事にー」

ザッ

キマ「ふぅ、しんどかった……これが後6回も続くとか、私大丈夫かな?」

ツインテ「お疲れ様ですキマさん」

タオルと飲み物を渡すツインテ。

キマ「あ、ツインテちゃん! ありがとー」

ツインテ「聞きました。キマさん勝ったみたいですね、おめでとうございます」

キマ「ありがとう。ギリギリだったけどね……ツインテちゃんはどうだったの?」

ツインテ「ボクもなんとか勝てました。運が良かったです」

マッスルひげ(なんとか!? 運が良かった!?)

がちむち(ツインテちゃんの対戦相手は一生トラウマ負っただろうな……)

屈強な男(恐ろしい……でもそれ以上に可愛い)

196

--西の王国、選抜会場--

わーわー!

実況「決まりましたーーー!! Aブロック優勝は、アッーーーーーーーーーーーーーシューーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

わー!!

アッシュ「ふん、当然の結果だったがな。三強レベルもいないんじゃ準備運動にすらならん」

秘書「よくやりましたアッシュ。ご褒美に今日の晩御飯はオムライスにしましょう。今配下の者達にとっておきの食材を取りにいかせていますから、楽しみにしていなさい」

アッシュ「お母様……なんかキャラ違う」



--南の王国、選抜会場--

実況鳥亜人「くぇーーー!! やっぱりAブロック優勝はこの娘! ポニテだーーーーー!」

わーきゃー!!

ポニテ「いぇーい! ぴーすぴーす!!」

虎男「ぐぬぬ。さりげなくAブロックに次期三強候補を入れておいたんだけど、あっさり倒されてしまったがお」

鷲男「彼女はこの世界を救ったあの勇者の一人なのですから。これも当然の結果ですよ、虎男」

197

--ユニオン、選抜会場--

キマ「あ~~~しんどっ!」

ツインテ「お疲れ様ですキマさん。やりましたね、後一つ勝てば決勝ですよ! ファイトですね!」

キマ「ふえぇ……正直さっきの外部の人に勝てたのは運だったよー。もう凄い技ばっか覚えててさ! 泣きそうになっちゃったよ私!!」

ツインテ「ふふ。でもその凄い人に勝ったんですよキマさんは」

キマ「あ……」

ツインテ「ここまで勝ち上がってこれただけでも十分に凄いことだと思います。もうそろそろ、自分に自信を持っていい頃ですよ?」

キマ「な、何言ってんのよツインテちゃん! 私は元から、自信満々なんだから……」

キマはツインテの眼を見る。

キマ「……ばれてたか」

ツインテ「……少しだけ、自分と同じ感じがしましたので」

198

--ユニオン、選抜会場--

キマ「うん……そう。私何にも無いからね、本当は自信なんてなかったんだ。だから私、自分がどこまでやれるのか知りたかった。代表戦は自分試しには丁度いい舞台だと思ってね」

ツインテ「それで競争率が一番激しいユニオンの代表戦を選ぶなんて、中々出来ることじゃないと思います」

キマ「まぁ弟と同じところが嫌だっていうのもあったんだけどね……しかし何度も極限の戦いを味わうとさ、今まで出来なかったようなことがいくつも出来るようになった気がする……この短時間で」

ツインテ「濃厚な実戦経験ですからね。それだけ経験を積んだんです」

キマ「ツインテちゃん。私、少し強くなれたかも」

ツインテ「はい。もっと強くなれると思いますよ」

キマ「私、優勝したい」

ツインテ「最初からそれが目的だったのでは?」

キマ「あの時は、嘘。でも今は、嘘じゃないの」

スッ

キマは拳を突き出した。

キマ「本気で優勝したいと思ってる。それで、ツインテちゃんと一緒に世界大戦に出て、アッシュ君やポニテ達と戦いたい!!」

199

--ユニオン、選抜会場--

ツインテ「……えぇ、是非一緒に行きましょう。きっと楽しいはずです」

キマ「うん! っと、もう時間だ。じゃあ行って来るねツインテちゃん!」

タッ

ツインテ「あ、お気をつけて! 次の相手は」

タッタッタッ

ツインテ「……」

ひょこっ

ハイ「言わなかったんですね、次の相手のこと」

ツインテ「……多分キマさんも薄々わかっているでしょう……」

200

--ユニオン、選抜会場--

わーわー

キマ「……」

実況骨亜人「さぁさぁ、ついに来たよCブロック準決勝! 次の対決もなんとユニオン学園の生徒同士の対決だぁ! この学園どうなってんだぁ!?」

わーわー

キマ「……」



--過去、ユニオン、選抜会場--

ハイ「Cブロックに配置されている上位三名のうちのもう一人、ですか?」

ツインテ「はい」

ハイ「それは」

ハイは回りに人がいないか確認した後つぶやいた。

ハイ「やみ君です」

ツインテ「……やっぱり、ですか」

ハイ「はい。ブラさんの血を受け継ぎ、メイドさんや番犬さんの能力を会得した新世代のハイブリッド戦士。そのポテンシャルは並ではないです」



--ユニオン、選抜会場--

やみ「やぁキマ。よくここまで勝ち上がってこれたね。幼馴染として嬉しいよ」

キマ「ふん、余裕ぶっていられるのも今だけよ、やみ。今日は私が勝たせてもらうんだから!」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました。それでは投下していきます。

201

--ユニオン、選抜会場--

ざわ、ざわ……

ツインテ「……」

群集は固唾を呑んでその試合を観戦している。

ざっ

ハイ「ツインテ先輩、今どうなってますか?」

ツインテ「あ、ハイさん。いい試合……というよりは、一方的な試合になってますね」

キマ「……ぐ」

ぽた、ぽたぽた

キマは全身から血を流している。

やみ「……しぶといね」

202

--ユニオン、選抜会場--

実況骨亜人「! おぉーっと、観客席に先ほどブロック優勝を決めた二人が来ているぞーーー!? ツインテ選手とハイ選手だー!」

わー!

ツインテ「あはは……どうもー」

ハイ「う、視線をこっちに誘導しないでくださいよ」

キマ(ツインテちゃんが見に来てくれてるのに変なところは見せられない……)「って、あれ? もしかしてAブロックとBブロックの戦いはもう終わったの?」

やみ「そりゃそうさ、なにせ僕たちは三時間も戦ってるんだから」

キマ「!」

気をそらした瞬簡にやみが接近していた。

ドガッ!

キマ「ぐ!」

咄嗟にガードをするキマだったが、リングアウト寸前にまで追い込まれる。

203

--ユニオン、選抜会場--

ビッ、ビビッ!

再び距離を詰めるやみを迎撃しようと拳を突き出すがそれらはかわされてしまう。

やみ「風属性攻撃力上昇魔法歌、レベル2」

やみは歌いだす。すると風がやみの体にまとわりついていく。

キマ(ブラおばさんゆずりの天性の歌声、厄介すぎる!)「雷属性攻撃魔法、レベ」

やみ「あおーーーん!」

ふっ

キマが放とうとした魔法がやみの遠吠えでかき消される。

やみ「スキル、雷動」

ドギャッ!!

そして畳み掛けるようなやみの攻撃、肘鉄がキマの顔面を強打する。

204

--ユニオン、選抜会場--

ドザザー!!

やみ(当たる寸前に体を捻ったか。おかげでリングアウトを免れた……でも、そろそろ限界じゃないの?)

キマ「……」

ツインテ「キマさん……」

ハイ「もしかして、あんな攻防が何時間も続いているんですか? こんなの……嬲り殺しです」

ザッ

キマ「へへ……」

ツインテ「でも、キマさんはそれでも立つんです。勝利を得るために。……嬲り殺しじゃないですよハイさん。これはれっきとした戦いです」

205

--ユニオン、選抜会場--

やみ「吸血鬼の代名詞とも言われる高い再生能力。君の打たれ強さはまさしくそれだ。僕も超火力の技が無いのが悔やまれるよ、ここまで長引かせて苦しませてしまったからね」

キマ「紳士ぶらないでよやみ。っていうかもう終わったみたいな発言じゃない」

やみ「……終わったも同然だろ? もう限界のはずだ」

キマの足はガクガクと震えている。

キマ(まぁ……実際強がりなんだよね。だましだましやってたけどもう、動かないかも)

キマは血を失い過ぎたせいで意識が朦朧としている。

キマ(A組のエースやみにここまで粘ったんだから、大健闘、かな)

キマはぼーっとした目で空を見ていた。

???「んんwww 勝利以外ありえないですぞwwww」

キマ(ん? なんか聞いたような声が)

くるりと振り返るキマ。

魔法使い「……」

すると後ろの観客席に魔法使いが険しい表情で立っていた。

206

--ユニオン、選抜会場--

キマ(? 親父がいる……空耳かな? あの親父があんなこと言う訳無いし、どうせ大会の警備とかで見回りしてるだけだろうし)

キマは視線を戻す。

???「んんwww ファイトですぞファイトですぞwwww キマちゃんの勝利を心より願ってますぞwwwww」

くるっ

魔法使い「……」

振り返るキマ。だがそこには厳格な表情の魔法使いしかいなかった。

キマ(……おい変質者がいるみたいだから仕事しろよ親父)

207

--ユニオン、選抜会場--

ツインテ「キマさーん! 頑張ってくださいー! 諦めちゃだめですよー! 一緒に出るって、約束したんですからー!」

キマ「はぁー……ツインテちゃんたら私の気も知らずにしんどいこと言ってくれちゃってさー……でも……約束しちゃったんだよね」

やみ「あーあ……そのまま諦めておけば良かったのに。スキル、雷動」

ギッ

キマ「スキル、雷動!」

ヂッ! ガガァアン!!

超高速で動く二人が激突する。

キマ(歌による強化でパワーもスピードもあっちが上、下手な魔法は吹き飛ばされる……もはや私には、これしかない)

キマは自分の腕を滴る血液を舐めた。

キマ「――吸血鬼化」

208

--ユニオン、選抜会場--

ゴゴゴゴ……

やみ「!」

ツインテ「この気配は……吸血鬼」

魔法使い(……使うのか)

ぎちっぎちちっ!

血がキマの肉体を覆っていく。

しゅぅうぅ……

ハイ「表面が、灰になっている? ! そういえば吸血鬼は日光に弱いんですよね? キバさんやヤミさんを見ていた限りじゃその設定を感じさせなかったですけど」

ツインテ「伝承の吸血鬼だと、そうですよね」

ブラ「そのことについてヤミ様に聞いたことがあるんですよ」

ツインテ「! ブラさんいきなり!?」

ブラ「さっきの実況さんがツインテちゃん達の居場所を教えてくれたのできちゃいました。えへ」

209

--ユニオン、選抜会場--

ブラ「ヤミ様が言うには、昔の吸血鬼の強さは今の時代の強さとは桁違いなんだと言ってました。例えばキバさんのような時代とともに血が薄れてしまった吸血鬼は、吸血鬼としての強さや特性が薄まったおかげで弱点がほぼ無くなったらしいです。でも逆を言えば弱点の無い吸血鬼は能力が落ちた劣化品。出来損ないみたいなものらしいです」

ツインテ「キバさん泣いちゃうな……でもそれならヤミさんは? 古い吸血鬼で戦闘能力も強かったですけど、日光とか大丈夫でしたよね? にんにくもりもり食べてましたし」

ブラ「ヤミ様は永い眠りから覚めた後めっちゃ弱体化してたので吸血鬼の特性も弱まりそこまで苦にならなかったみたいです」

メイド「私の保存ミスでございます。ちゃんとジップロックしとくべきだったでございます」

ブラ「あとは私の料理をおいしく食べるために適応しようとしたら人間ぽくなっちゃったんだとか。これも愛の力なのかしら……」

ツインテ「えと……た、確かに食べ物で体質は変わりますよね」

ハイ「でもだとしたら」

しゅぅーーーー

キマ「ぐる、るる」

ハイ「日光で苦しむほどの吸血鬼特性を持つキマちゃんは、先祖返りか何かで、とっても強い、ってことですよね?」

210

--ユニオン、選抜会場--

じゅぅうううう!!

キマは自分の血で鎧を作り日光を遮断しようとしているのだが、自分の血で作った鎧では結局日光には抗えない。

ヤミ「夕方の日光と言えど、5秒で全身灰にならない奴は吸血鬼の中でも下だ」

ツインテ「今度はいきなりヤミさん!? 来てたんですか!? ってか生きてたんですか!?」

ヤミ「何気にひどいこと言うねツインテは」

しゅぅうう

キマ「ぐ、る」

ざんっ!

キマは闘技場のリングに指を突き刺し、引き剥がす。

がらがらが

ハイ「! なるほど日よけにしたわけですか」

ヤミ「それでも日光を完全に防げたわけではない。今の弱った体では限界も近いぞ」

211

--ユニオン、選抜会場--

ドンっ!!

キマが飛ぶ。

やみ「! スキル、雷動!」

キマ「があああああああああああああ!!」

ドガガガァアン!!

突進してきたキマを受け流すやみ。

ぶしゅっ!!

やみ(触れただけでこの有様か!)

キマ「ぐるるるらあああああああああ!!」

やみ「!」

ドガァアアアアン!!

キマの手刀がやみを襲う。

212

--ユニオン、選抜会場--

ぽたたたっ

やみはかろうじてそれを受け流した。だが深い傷を胸に作られてしまう。

やみ(このっ、くたばりぞこないがぁ!)

キマ「があああああああああああああ!!」

ガガァアン!

ヤミ「……勝負あったな。あの馬力、やみではどうしようもあるまい」

メイド「でございます」

番犬「そうばうなぁ。残念ばう」

ブラ「ぐすん」

ツインテ「……」

ガガガガガ!!

まだ全力で戦っている二人を見ながら、ツインテ達は同じ結論に至った。

213

--ユニオン、選抜会場--

ざわざわざわ

A組男子「嘘だろ……? うちのエースがE組の女子に負けちまうのかよ……」

A組女子「やみ君……化物相手で可哀想」

ガガガガッガァアン!!

やみ「ぐっ」

キマ「私ノ、勝ちだ!」

ドゴォン!!

キマの拳がやみの腹に入る。

やみ「ごっふ……」

どさっ

キマ「……」

214

--ユニオン、選抜会場--

実況骨亜人「こ、これは!? ついに、ついに決まったかーーー!? 勝者はーーーーーーー」

キマ「……」

実況骨亜人「キマ選手だああああああああああああああああああああ!!」

わーーーーーーーーーーーーーー!!

ツインテ「……やみ君には悪いですけど、勝利おめでとうございます、キマさん」

ハイ「ナイスファイトでした。キマちゃん」

パチパチパチパチパチ

キマ「うぐ」

しゅうう

キマは吸血鬼を解き、リングに倒れこんだ。

どさっ

ハイ「……しかしなんで最後まであれを使わなかったんでしょうか。三時間も長々と戦うより序盤で使った方が体力的にも余裕があったんじゃないでしょうか」

ヤミ「恐らくあの娘は吸血鬼の力を使いこなせていないのだろう。だから極力使いたく無かったはずだ。ゆえに、もし自分が暴走したとしてもろくに暴れられないように、自分が弱った状態で使う必要があった……そんな計算だったんだろう」

ヤミは倒れたキマを見る。

ヤミ(もっとも最後まで戦い抜いたこの精神力があれば、最初から使っても大丈夫だったろうがな)

215

--ユニオン、選抜会場--

ぱん、ぱんぱん

実況骨亜人「それでは、栄えある第一回ユニオンの選抜代表の三人をご紹介したいと思いますー!!」

わーわーわー!!

ツインテ「あははは、なんだか恥ずかしいです」

ハイ「いくつになっても緊張しますね人前に立つのは」

キマ「かちんこちん」

実況骨亜人「左から、Aブロック優勝者、ツインテ選手ーー! Bブロック優勝者、ハイ選手ーー! Cブロック優勝者、キマ選手でーーす! どうぞ皆さん、暖かい拍手を彼女らにー!!」

88888888888888888888888

キマ「はぁ、まさか本当に勝ち残れちゃうとは思わなかったかも……」

ハイ「何言ってるんですか、それでは勝者として敗者に申し訳が立たないですよ? びしっと立ちましょう」

キマ「は、はい!」

216

--東の王国、選抜会場--

魔剣使い「中々悪くないメンバーだな」

イバ(まさか本当に勝ち残れるとは思わなかったな……しかし)

??「ごじゃる」

イバ(とんでも無い奴が世の中にはいたもんだ。魔剣使いさんの弟子? 10歳の子供がまさか……)



--北の王国、選抜会場--

召喚士「わかってるでやんすわかってるでやんす。結局おいら達がでるはめになるのでやんす。はぁ」

人形師「この前ひ孫が生まれましたよぉ~」

ゾンビ娘(私なんかが代表になれてしまうなんて、本当に人材不足なんですねこの国……)

217

--南の王国、選抜会場--

虎男「選抜チームのリーダーは俺がお。わかったがおね?」

ポニテ「了解ー! 私は戦えればそれでいいよ!」

蜂娘(……こいつの戦い方見てたけど、本当に同じ学生? まるっきり化物じゃない……)



--西の王国、選抜会場--

アッシュ「あ、ツインテ勝ち残った。わかる。だって俺達通じ合ってるもん」

義足「あんまり戦いの場に出たくないけど、発明品を世に知らしめるチャンスではあるからね仕方ないね」

変化師「と、とりあえず今日はおでの家でミーティングするので二人はパンツ洗ってくるように」

218

--監獄、選抜会場--

フォーテ「わくわく! 久しぶりにツインテおねーちゃんと戦えるなんて、楽しみっ!」

オオオオ

死者の腕が拍手をしている。

義賊「俺ら囚人なのになんでわざわざそんな戦いに出なきゃならないのか……」

悪役「色々恩恵があるんだからやらないわけにはいかないでしょ? まぁ、それにしても数合わせでうちらを選ぶかねー」



--赤の山、邪風本拠地--

奴隷王「こうなったらやるしかねぇ……ひっかきまわすぞ」

赤薔薇将軍「はっ!」

青狼将軍「はっ!」

奴隷王「後悔させてやる。魔導長……」

219

--失われた王国--

盗賊「俺でたくねーよー」

勇者「うじうじ言わないの! じゃんけんで決めたんだからしょうがないじゃない!」

盗賊「こーゆー時だけ勝っちゃうんだもんなぁ俺……てか負けた奴が出場とかにしたらよかったのに」

カブト「男ならぐだぐだ言うな。そうおばあちゃんが言っていた」

盗賊「むぅ……」

トリガー「全ては必然だよ。君が出るということはそこには何かしらの役割があるんだろう」

ユー「……」



盗賊「んー……そんなもんかねぇ」

トリガー「それに……そろそろ動きそうだ」

盗賊「?」

220

--ユニオン--

魔導長「役者は出揃ったの。さぁ、夢の喧嘩祭り開幕なの!!」





そして月日は流れる。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すいません、色々あってダウンしてました……。
続きは近いうちに投下しにきますので、よろしくお願いいたします。

こんばんはー。
色々心配させてしまって本当にすいません。暖かいお言葉に救われます。

それでは投下していきたいと思います。

221

--ユニオン、会場--

ザッ

アッシュ「よぉ」

ツインテ「あ、アッシュ君! お久しぶりです。元気そうでなによりです!」

ポニテ「おーヒッサシブリー! 物語の流れ的に全員勝ち残ることはわかってたけど、全員代表になれてよかったねー!」

アッシュ「おい」

会場にて数ヶ月ぶりに顔を合わせる三人だった。

ポニテ「――っと、三人揃ったし、とりあえず宣言しておくよ」

こほんとポニテは咳をする。

ポニテ「私負けないからね。全員倒して優勝しちゃうんだから!」

アッシュ「……それはこっちの台詞だ。俺はお前達のことを過小評価していない。全力であたらせてもらう」

ツインテ「ボクも……今回は勝ちにいきますから!」

フォーテ「お姉ちゃんに勝つ気でいるとかくっそ受けるんですけど身の程知らずにも程があるっていうか」

アッシュ、ポニテ「「!?」」

ツインテ「ふぉ、フォーテちゃん? いつからそこに……」

ズズズ

ツインテの影に潜んでいたフォーテだった

222

--ユニオン、会場--

フォーテ「ツインテお姉ちゃーーん!! 久しぶり過ぎるよー! 会いたかったんだよーーーっ!?」

むぎゅっ! ぐりぐりぐり!

ツインテ「わぶっ! もうフォーテちゃんたら……でもなんで? フォーテちゃんは今お勤め中だったはずでは……?」

フォーテ「あれ? ツインテお姉ちゃん参加者の名前見てないのっ?」

ツインテ「……はい。レンさんから見ないほうが実際会った時に驚けるからと内緒にされていたんですが……こういうことだったんですね」

ザッ、ザッ

レン「そういうことにゃ」

ハイ「お久しぶりです先輩方。この間は挨拶出来じまいだったですから……」

アッシュ「おおハイ、久しぶりだな」

ハイ「はい、久しぶりです先輩……ショタ先輩いい……」

レン「……ハイ、お前もいい歳にゃ。そろそろケッコン相手探せにゃ。誰か紹介してやろうかにゃ?」

223

--ユニオン、会場--

パン、パパーン

アッシュ「そろそろ開会式が始まるか。移動するぞ」

ツインテ「えぇ……続きはリングの上で」

ポニテ「おう!」

がっ!

三人は拳を合わせた。

レン「……うーん。なんだか羨ましいにゃ。こんなことなら選抜の件、パスしなきゃ良かったかもしれないにゃ。今になって後悔にゃ」

ハイ「まぁ、若い人の発掘もこの大会の狙いですからね。……私よりレン先輩が出た方がよかった気もしますが」

レン「何言ってるのにゃ。英雄が出ないでどうするのにゃ」

224

--ユニオン、会場--

魔導長「皆様、遠路はるばるお集まりいただきありがとうございますなの」

わーわー

盗賊「……ねぇ、勇者さん?」

勇者「しっ、静かにしてよ」

盗賊「静かにしたいけど、義兄さん見あたらないんだけど大丈夫なの?」

勇者「なんか昔の友達の結婚式に出席するから少し遅れるそうよ。なんなら時を止めてでも走ってくるでしょう。大丈夫よ」

盗賊「ぬーん……不安だなぁ」

225

--ユニオン、会場--

魔導長「それではさっそく対戦表を発表しましょうなの。八人による魔法を使って公平に決めた組み合わせなの。やらせとかないから安心してなの」

バッ!!

巨大な紙が公開される。

ポニテ「ほー」

召喚士「ふむ……」

ハイ「……やばい」

アッシュ「!」

イバ「おいおい……」

フォーテ「お姉ちゃんと当たるのは準決勝かーっ!」

盗賊「とりあえず最後か……」

奴隷王「けっ……」

226

--ユニオン、会場--

一回戦、北の王国vs南の王国

 虎男、蜂娘、ポニテvs召喚士、人形師、ゾンビ娘


二回戦、ユニオンvs西の王国

 キマ、ハイ、ツインテvs変化師、義足、アッシュ


三回戦、東の王国vs地獄監獄

 魔剣使い、子侍、イバvsフォーテ、義賊、悪役

 
四回戦、失われた王国vs邪風

 勇者、カブト、盗賊vs赤薔薇将軍、青狼将軍、奴隷王



魔導長「対戦方法は勝ち抜き戦。相手を殺したらだめ。それ以外の細かいルールは各自確認してなの。それでは第一回戦を始めるなのー」

227

--ユニオン、会場--

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

魔導長「!?」

その時、会場の観客席が爆発する。

魔導長「! 何事なの!?」

ゴゴゴゴゴ……

???「ア゛ー……」

????「オオ……」

それは虚ろな眼をした集団。

アッシュ「なんだ奴らは……この祭りに乗じてテロか?」

ハイ「! あれは!」

竜子「! やつらと同じ?」

228

--ユニオン、会場--

ゴゴゴゴ

メリガー「来たな」

女騎士「あぁ……」

オーク太郎「ぶひ? メリガーちゃん達あれを知ってるぶひ?」

メリガー「あぁ。知りすぎてるくらいだ」

メリガーは冷めた目で集団を眺めている。

メリガー「負の亡霊と呼ぶべき存在。あれが争いの火種だよ」

オーク太郎「……え?」

メリガー「行き場を失った……負の感情の塊さ」

229

--ユニオン、会場--

ゴゴゴゴ

アッシュ「……ツインテ、あいつらどう思う?」

アッシュの瞳は光っている。

ツインテ「何か……まとわりついてますね……魔王の力に、少し似ているような」

キマ「魔王の力って、二人が何を知ってるのさ」

ゴゴゴゴゴ

???「ア゛ー……!」

群集の一人がこちらに視線を向けた。

ツインテ「服装から見てもただの一般人にしか見えないのに、この魔力量は変ですね……」

ハイ「っ! 危ない!」

きゅいん

ツインテ「え」

亡霊のような男の口が開き、魔力弾が放たれた。

230

--ユニオン、会場--

ドガァアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ「ッ!?」

オオオオオオオオオオ

眼を開くツインテ達。
すると目の前にあったのは、死者の腕が重なりあってできた盾だった。

ツインテ「……フォーテ、ちゃん。防いでくれたの?」

フォーテ「当たり前だよ……お姉ちゃんを傷つけるものは、誰であろうと許さないっ!」

ぎょんっ!

フォーテは呪いの魔力を解放する。

トリガー「殺しちゃうのかい?」

ツインテ「! トリガーさん」

いつの間にかツインテ達の傍にトリガーが立っていた。

トリガー「殺しちゃうのかい? あれらはただの人間なのに」

231

--ユニオン、会場--

ツインテ「!」

アッシュ「トリガー。お前、何か知っているな」

トリガー「もちろん、今回はそれを君達に伝えに来たんだ。あれらはね魔王がいないせいで生まれた現象なんだよ」

アッシュ「……何?」

トリガー「君達はもう知っているだろうけど、魔王は世界中の負の感情を糧にする存在だ。ならその魔王が消えたらどうなると思う?」

アッシュ「……」

ツインテ「……世界中の負の感情が処理されずに、溢れかえってしまう……ってことですか?」

トリガー「ご名答」

ハイ「そ、そんなばかな! それじゃあ人の生活には魔王が必要不可欠だということになってしまう!」

トリガー「そこまでは言わないよ。でも君は見てきたんじゃないのかい? 魔王亡き後のこの世界で戦い続けた君なら」

ハイ「」

トリガー「眼と耳を疑いたくなるような事件ばかりでなかったかい?」

232

--ユニオン、会場--

ドゴオオンドガァアアアン!!

トリガー「人々から生まれた負の感情は、魔力を通じて世界に溶けていく。やがてそれらは集まって、心が弱い者や不健康な心にとりつくのさ」

???「ア゛ー……」

トリガー「彼らに全く非が無いとは言わない。弱者は食われるさだめだし、心の底に黒い物をもっていたんだろうから。でも、一度でも罰せられるようなことをした者が、あそこにいるだろうか」

ツインテ「……」

トリガー「彼らは弱いだけだ。弱い者に負が集まっただけだ」

ドガァアアン!!

トリガー「魔王と勇者がいなくなった世界で平和を手に入れたいのなら、ここからが本当の戦いになるんだ」

ハイ「私が竜子ちゃんと戦ってたのは……」

ストッ

メリガー「……やぁ、こちらのルートの僕」

トリガー「む、別ルートから来た僕か。観戦でもしに来たのかい? この惨状を」

メリガー「うん。この世界はどう対処するのだろうか、とね」

233

--ユニオン、会場--

ドガァアアン!!

魔導長「ッ! なんてこと……全力全開の奥義でさえ、レベル4魔法と同程度の攻撃力しかないなんて……!」

???「ア゛ー……」

キマ「ちょっとみんな話してる場合じゃないよ! 私達も避難しなきゃ! 校長先生ですら苦戦してるよ!!」

アッシュ「お前は早く避難しろ。俺は残って戦う」

シャキィン

アッシュはナイフを引き抜く。

キマ「!? はぁ!? 学生がどうにかできるような相手じゃないって!!」

ツインテ「でも……結局誰かが戦うことになるんです。ボクも残ります」

ハイ「ご協力感謝します先輩方。では行きましょう!」

フォーテ「フォーテも行くー!」

シュバッ!!

飛び出すツインテ達。

キマ「う、嘘……なんでそんなに、勇気があるの?」

234

--ユニオン、会場--

ゴォン、ドガァアン!

キマ「……ッ」

トリガー「無理することはないよ。自分の力量も弁えずに特攻するのは仲間の足を引っ張ることになるからね。恐怖を感じるのなら一刻も早く避難するべきだ、それは彼らのためにもなる」

キマ「……うん」

キマの足はがくがくと震えている。

ドガァアン!

キマ「私、踏み出せない……こんなに、怖いなんて思わなかった……」

ドガァン!!

キマ「これが殺し合いなんだ……こんな雰囲気、私耐えられない」

メリガー「無理も無い。今の世界は、表向きは平和だったからね」

235

--ユニオン、会場--

ズシャッ!

???「ア゛ー……ア゛ー」

キマ「えっ!?」

トリガー「っと、ほら、早く逃げないから向こうから来ちゃったじゃないか」

???「ア゛ー……」

ずる、ずる

メリガー「余裕そうだけど、トリガー。君に何か対抗手段はあるのかい?」

トリガー「いや? 僕に戦闘能力なんてものは無いよ。君は? 護衛かなにかを連れて来たんじゃないのかい?」

メリガー「彼女なら一人で戦いに行ったよとっくに。ってことはこれは……」

ずる、ずる

???「ア゛ー……」

トリガー、メリガー「「中々にピンチって奴だね」」

キマ「冷静に分析してる場合じゃないいいいいいいいいいいいい!!」

236

--ユニオン、会場--

???「ア゛ー……!」

ぎゅるっ

男の掌に魔力球が形成され、キマ達に向けて放たれようとしている。

キマ「ひっ!!」

魔法使い「――伏せろ!」

ビッ!! ドギャアアアアアアアアアアアン!!

魔法使いが後方から放った雷が男を吹き飛ばした。

???「ギィヤアアアアア……!」

キマ「へ……?」

ザッ

魔法使い「もう、大丈夫だ、キマ」

キマ「親父ィ!?」

237

--ユニオン、会場--

キマ「も、もう大丈夫だって、何言ってんのさ駄目親父!」

魔法使い「……」

ひゅるるるる……どがぁあん!!

キマ「きゃぁあ!?」

魔導長「げふんっ!!」

がらがらがら……

二人の横に空から魔導長が落ちてきた。

魔導長「あいたたた……思った以上に手ごわいなの……ぐぬぬ、修行は怠けてなかったんだけどなぁ……」

魔法使い「魔導長校長……」

魔導長「あ、魔法使いさん。丁度良かった、あいつらに見るもの見せてやって欲しいなの。現在まともに渡り合えるのはあなたくらいのものなの」

キマ「……へ?」

魔法使い「しかし……」

魔法使いはキマを見る。

魔導長「この子達は責任を持って私が守るなの。ちょっと疲れたから選手交代ってことでよろしくなの」

238

--ユニオン、会場--

魔法使い「そういうことなら……」

ひゅんっ

そう言って魔法使いは戦場のど真ん中へと向かう。

キマ「! お、親父が最前線に!? ちょっと無理ですよ校長ー! あいつ大して強く無いんだから、駄目親父が死んじゃうじゃん!!」

魔導長「へ……? 駄目親父って、もしかして魔法使いさんのことを言ってるなの?」

キマ「そうですよ!! あぁあ! あんなのでも死んだらお母さん絶対悲しむもん……! だからやめさせてください、無駄死にだよ!!」

魔導長「……キマ? 貴女のお父さんは全然駄目じゃないなのよ?」

キマ「へ……?」

魔導長「何を勘違いしているのかわからないけれど、貴女のお父さんは現ユニオンで最強の人物なのよ?」

キマ「……は?」

239

--ユニオン、会場--

キキキィン! ドガァオオン!!

???「ア゛ー……」

アッシュ「づっ! こいつら結構やりやがる。よくわからん力がまとわりついているせいで人殺しがうまく機能しやがらねぇ!」

ツインテ「でも種族判定はやっぱり普通の人間です。完全に殺しちゃうようなことは出来ないですね……!」

ポニテ「うぐぐ……悔しいけど二人が援護しに来てくれなかったらちょいとやばかったかも。なんか魔力吸収すんだよねこの人たち」

ずる

ツインテ「!? ポニテさん後ろ!」

???「ア゛ー……」

ポニテ「!? しま」

バリバリバリバリ!!

???「ギィヤアアアアア……!」

ポニテ「ッ! 援護射撃!? 助かった……でも、こんな時代にこんな強力な魔法を使えるなんて……誰?」

ザッ!!

魔法使い「疲れたなら下がっていろひよっこ共」

240

--ユニオン、会場--

バリリ、バリバリバリバリイイイイイイイイイイイイ!!

???「ギィヤアアアアア……!」

アッシュ「!? あ、ありえん! これは完全にレベル4魔法の威力だ。それをこんなにも連射できるだと……」

ツインテ「凄い……どうやってこんな魔力を……?」

バリバリバリ!!

魔法使い「……雷属性範囲殲滅攻撃魔法、レベル4」

ドギャギャギャギャギャアアアアアアン!!

???「ギィヤアアアアア……!」

アッシュ「っづ!!」

ポニテ「あ、あの頃から少しも衰えてない気がする……!」

ツインテ「こんなことって、あるんですか!?」

魔法使い「ウェヒヒーーーーーwww」

恐らく、次回で最終回となります。
随分長かったですが、このssシリーズの最終回となるでしょう。

それでは疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m



一口メモ
ちなみにいつだかのコメントを見返していて思ったのですが、自分が好きなキャラは召喚士と人形師だったりします。そのせいで他の三強より活躍させちゃった感がありますね。

こんばんはー。それでは最後の投下をしていきたいと思います。

241

--ユニオン、会場--

シュウゥウウ……

キマ「……う、嘘……なんで? なんであの親父があんなに強いの……!?」

キマは驚愕しながら無双する魔法使いを見ている。

魔導長「――彼は最終決戦を戦った英雄の一人だもの。今でも強いのは不思議なことじゃないなの」

キマ「……お母さんの付き人とかそういうのだと思ってた……」

魔導長「キマちゃんが見てきた魔法使いさんの姿がどんなものなのか私にはわからないけど、ちょっと魔法使いさんを過小評価しすぎなの。私がユニオンを設立した際に、何が何でも最初に確保しようとしたのは彼なのよ?」

キマ「!? え゛っ!?」

魔導長「誰だって世界で一番強い人間を自分の所に引き入れたいって思うのは当然でしょ?」

キマ「せ、世界で一番!? う、嘘ぉ!?」

魔導長「嘘じゃないなの」(魔力を大量に必要とする竜と鬼亜人とフォーテちゃんは除いてね)

バリバリバリッ!!

魔法使い「雷属性MAP攻撃魔法、レベル4」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ「す、ごい……殲滅力もさることながら周囲に被害が及ばないようにしているし、やりすぎないよう手加減もされている……」

242

--ユニオン、会場--

魔導長「魔法使いさんは魔力が失われていくこの世界に唯一対応しているなの。だからこそ彼は最強なの」

キマ「……特異体質、ってこと、ですか?」

魔導長「いいえ、努力の結晶なの。魔力不足を詠唱魔法と紋章魔法の融合によって補っている……そんな芸当が可能なのは、本物の天才の彼だけ」



ゴゴゴゴ

?????「ぎゅるあぁああああああ!!」

魔法使い「!」

人々の負の念が集まって巨大な集合体となっていく。

ゴゴゴゴゴゴ!!

魔法使い「……」

ずたっ!!

女騎士「遅れてすまない、助太刀に来たぞ!……とはいえ、あいつは少々厄介そうだな……」

?????「うううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

全長50メートルの巨大な靄が出現する。

243

--ユニオン、会場--

アッシュ「っちぃ! あれをやるしかなさそうだなツインテ、ポニテ!」

ツインテ「あれって……あれですか!?」

ポニテ「! そうだ、その手があったー!」

魔法使い「その必要は無い、下がってろ」

アッシュ「……何? いくらあんたでもあれは簡単にはいかんだろ」

バリバリバリバリバリ!!

それに対する答えであるかのように、魔法使いは全身から魔力を放出する。

ツインテ「きゃあぁあ!?」

アッシュ「ッ!! まだこんなに魔力が!?」

ぱりっ……

魔法使い「雷属性対単体攻撃魔法」

魔法使いは自らの右手に全ての魔力を込めていく。

魔法使い「レベル、5」

244

--ユニオン、会場--

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

???「」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ

???「ギッ」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

魔法使いのレベル5魔法が謎の群集を吹き飛ばした。

魔法使い「……」

パリッ、パリパリ

キマ「」

魔導長「あれが彼なのよ、キマ……現在世界で唯一レベル5を使える規格外の魔法使い……」

キマ「ご、五柱の人たちでもレベル4が限界って聞いたのに……レベル5!?」

ぽん

魔導長はキマの頭に手を乗せる。

魔導長「これからはちゃんとお父さんを見てあげるなの」

魔法使い「あばばばばばばばばばばばばばばwwwwwww」

245

--ユニオン、会場--

しゅうう……

????「アー……」

?????「オー……」

ぞろぞろ

魔法使い「む……」

倒しきったと思った魔法使いだったが、その後方から更に靄人が現れた。

ザッ

アッシュ「疲れたなら下がっとけおっさん」

魔法使い「む……」

ポニテ「だね。あんなの見せられたら黙ってらんないでしょー!!」

ツインテ「久々ですけど、やるしかなさそうです」

すっ

三人は右手を合わせた。

ツインテ「――禁術魔法」

ポニテ「改良型ーっ!」

アッシュ「三位、一体!!」

ぼっ!!!!

246

--ユニオン、会場--

ぎゅるるるるるるる、どどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!

真勇者「……」

バチッ!!

三人は融合に成功して真勇者となった。が……

勇者「あれ、あの時よりちょっと小さいな」

盗賊「そら合体してる元の三人が子供だからなぁ、っとぉ!?」

ズガッ!

???「アー……」

勇者「気を抜いちゃ駄目よ盗賊」

ズバッ!!

???「アー……!」

盗賊「集中してないつもりはねぇよ。ただ俺も歳なんだよ、50だよもう……」

勇者「心は若いままでしょ? ほらがんばれがんばれ!」

盗賊「くそったれー!」

247

--ユニオン、会場--

どすんっ!!

盗賊「」

勇者「……え?」

盗賊達に接近する靄人を吹き飛ばした存在……それは巨漢の男だった……。

しゅぅううう……

盗賊「……」

その男はズシンズシンと音をたてながら盗賊達に歩み寄っていく。

闘士「……お、おで」

盗賊、勇者「「いっ!?」」

248

--ユニオン、会場--

ザッ

竜子「……はぁっ!? ちょっなんでアンタが!?」

ウェイトレス「いぇーい、加勢しちゃうぞーい」

すたっ

ハイ「……えっ!?」

ビィ「うふふふー☆ ドッペルゲンガー発見ー」

ざわざわ

トリガー「……これは一体……なんで別ルートの死人が、ここに……?」

トリガーは次々に現れる彼らの姿を見て驚愕する。

メリガー「本当にわからないのかい? 僕には想像がつくけどな。トリガー、君大分無茶しちゃったようだね。色んなルートいじくりまわしたでしょ?」

トリガー「……ちょっとだけだよ」

メリガー「ちょっとだけ、ねぇ……」

トリガー「……」

メリガー「やれやれ。君のせいでこの世界は、色んなルートがこんがらがって混ざり合う特異点になっちゃってるよ」

トリガーは信じられないといった表情で眺めている。

トリガー「こんなことも……起こりうるのか」

メリガー「まぁ、とどめは別ルートから僕達がこの世界に来ちゃったせいなんだろうけど」

249

--ユニオン、会場--

ひゅうぅうう

盗賊「闘……士……?」

闘士「お、おでだ。久しぶりだな。盗賊」

ぼろっ

思わず盗賊の目から涙がこぼれる。

盗賊「……うわ……」

闘士「な、泣くな盗賊。熱い抱擁は後でじっくりしてやる。い、今はそれよりもこいつらを倒すのが先だ!」

勇者「闘士……」

ざっ

賢者「……やれやれ同窓会するなら僕たちも呼んでくれなきゃ困りますよ盗賊君」

踊子「本当本当~。水臭いですよ~?」

賢者と踊子が盗賊達の下に集った。

勇者「……ふふ、今呼ぼうとしてた所だよ。やっぱりこの五人だからね。思い出すね、あの頃を……」

勇者はかつての自分達を思い出している。盗賊達との出会いから共に戦ったあの過去を……。

盗賊「ちっくしょー……やってくれるぜ魔導長ちゃん! 嫌でもテンションあがっちまうじゃねーかよ、こんな仕掛けがあったんじゃあさぁ! こうなりゃ暴れてやる……あの頃みたいに! 行くぞみんな!」

勇者、賢者、闘士、踊子「「「おうっ!!」」」

250

--ユニオン、会場--

どがーんどかかーん

魔導長「あの負の靄は魔力がたくさんあるところに集まるというのは知っていたので、ここで一網打尽にしようという考えではあったけれど……まー、もちろんこんなことまで想定していたはずもなく……」

ザッ

腹黒「……」

魔導長「あー……どうもどうもご先祖様ー。魔力があまり使えない息苦しい世界にようこそー」

腹黒(あー……俺の直系だとすぐわかるぜ……)

ドゴオオオオオオオオオオン!!

聖騎士「ぶるああああああああ!! こんな楽しそうなイベントやってるなんて、何で教えてくれなかったのぉおおおう!!」

何かをかぎつけて空から降ってきた聖騎士。

魔導長「あ、聖騎士……いや、竜騎士さんでしたっけ。だって貴方、一身上の理由から引退するって言ってたから」

聖騎士改め竜騎士「ぶるあああああああああああ!! こんな楽しそうなことは参加するに決まってるぶるああああああああああああああああああああ」

脳筋「お、兄貴じゃん」

竜騎士「」

脳筋「久しぶり! まぁびっくりするよな。俺にもなんだかよくわからなくてさ、なんでかこんなところに出ちまったんだか」

竜騎士は言葉が無い。

脳筋「でもまぁ例えどこだろうと襲われてる人は見過ごせネェ。弱者を助けるのが強者の務めだ。だろ? 兄貴」

脳筋は昔のようにニカッと笑う。

竜騎士「……うんっ!!」

251

--ユニオン、会場--

ひゅおおおおお

ハイ「……貴女、なんで、なんでこんな所にいるんですか……?」

ビィ「さぁなんでだろうねー……ふふふ☆」

???「アー!」

どぉおん!

ビィ「あらあら集まってきちゃったよ? 話してる場合じゃないんじゃないのかなー?」

ハイ「くっ!」(よくわかんないけど、ビィからは嫌な感じがしないし……とにかく、戦わなくちゃ!)

ビィ(ここに来ちゃった理由は正直私にもわからないんだけど……なんだかお祭りみたいだし? 楽しませてもらっちゃおーっと)

きぃいいいいいいいいいいいいん!!

ハイ、ビィ「「条件達成レベルアップ!!」」

ばりぃいいん!!

ハイとビィは同時にカウガールの衣装に変わり、互いの背中を預けて銃を連射する。

ズガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

???「ギィイヤアアアアアアア」

????「グオアオオオオオオオ」

ハイ達の連射により、取り囲んでいた靄人が片っ端から倒されていく。

キンッ、キキンッ

ビィ「くすっ。バイちゃんのおかげで私の方が一丁多いから、どうやったって私の方がたくさん倒せちゃうねー☆」

ハイ「! まだまだ、ユニちゃんの力はこんなもんじゃ無いんですから! さぁユニちゃん頑張ってください! なんならケツから弾丸出してください!!」

ユニコーン「ひひん!?」

ハイは、楽しそうに笑っていた。

252

--ユニオン、会場--

ドガァアアアアン!!

???????「ぎゃぼおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ずずずずうううううううううううううん!!

真勇者「……」

女騎士「ほぉう……これがツインテ達が融合した姿か……! まさかこれほどまでにパワーアップするとはな……私も一人の騎士として、是非手合わせ願いたいものだ」

真勇者「……いいだろう。それは余も望むところ。だがそれは」

女騎士「わかっている。こいつらを全て倒し終わってから、だな!」

ズババババババアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

召喚士「すっごいでやんす……あの二人めちゃくちゃぶっ飛ばしてるでやんす」

人形師「……私達も負けちゃいられないですねぇ」

ウェイトレス「ほいほいー。次はこっちに手を貸してあげよーじゃないの」

銀蜘蛛「ボクモ!」

桃鳥「私も」

召喚士「ちょ、オーバーキル過ぎでやんす!!」

ドガガガァアアアアアアアアアアン!!

253

--ユニオン、会場--

しゅうう……

メリガー「やれやれ……せっかくの試みが失敗に終わっちゃったね、魔導長。こんなに会場がボロボロになっちゃったんじゃあ大会続行は無理だ。靄人を呼び寄せたまではいいけれど、これじゃあねぇ」

メリガーはすっかりボロボロになった会場を見て言う。

魔導長「そうね。すぐには無理なの。でも、またやるなの。会場が直ったら……すぐにでも」

トリガー「……」

メリガー「……目のつけどころはよかったと思うよ。なんでも発散させることこそが健康につながるからね、戦争をスポーツで回避しようという案は確かに面白かった。……でも、それで本当に争いを回避できるかな……この連鎖を、抜けられるかな?」

メリガーの瞳は前髪で隠れている。

魔導長「んー……私には、どうなるかなんてわからないなの」

魔導長は困ったように笑う。

魔導長「私は神様じゃないから何が最善の手かわからないなの。だからいつも自分が正しいと思うことを一生懸命やるだけ。諦めずに最後までやったというこの意思を、未来の誰かが受け継いでくれるかもしれない……そうしていつの日か本当の意味で解決する時が来たらいいなって、私は思うだけなの」

メリガー「……」

魔導長「結局はみんなの頑張り次第。私はいつか私達の思いを叶えてくれるその人が現れるまでの繋ぎなの」

254

--ユニオン、会場--

メリガー「……」

トリガー「……だってさ」

メリガー「うん……」

メリガーは暫く考えるようにして空を眺めていた。

メリガー「やれやれ、ヒントがあるかもと覗きに来た僕が浅ましく思えてきたよ。ろくに努力してなかったという事実を突きつけられてしまった。後世が受け継ごうと思うほどの努力、か……」

トリガー「カンニングもある意味努力かもしれないがね」

メリガー「努力している人からしたら怠惰な方法だよ……うん、人間はやっぱりいい。僕たちロボットには生み出せない何かがある」

魔導長「……参考になったなの?」

メリガー「そうだね。とりあえず、辛い現実から目を背けるのをやめることにするよ」

トリガー「……」

メリガー「元のルートに戻るさ」

255

--ユニオン、会場--

???「う、うぅ? ここは」

ツインテ「気がつかれましたか? もう大丈夫ですよ」

ツインテの触手が全面に展開され、同時に人々を癒していく。

キマ「すご! 駄目親父も凄……かったけど、ツインテちゃんもやっぱり凄い! さっきの合体?もとんでもなかったし!」

マッスルひげ「そらそうだよ。ツインテちゃんは最終決戦で魔王を倒した勇者の一人だかんな」

魔導長「あっ」

マッスルひげ「あっ?……あ」

キマ「え、何それ……」

魔導長「……まぁ……隠し事って言ってもがばがばだったしねぇ……」

キマ「え、え……?……なんてね……あの戦いを見ちゃたんだもん、素直に納得できるけど……そうだったんだ」

256

--ユニオン、会場--

女騎士「見事な手際だなツインテ。この数ヶ月ずっと見ていたが、やはりお前の治療は素晴らしいものだ。見ているこちらまで癒される……誇っていいぞ」

ツインテ「えへへ、ありがとうございます」

すたっ

メリガー「女騎士」

女騎士「ん? どうしたメリガー」

メリガー「帰るよ、元の世界に」

アッシュ「!?」

女騎士「……そうか。手立ては見つかったのか?」

メリガー「見つかった。見つかったというか気付かされたって感じだけど」

女騎士「そうか。それは行幸だ。ふむ。急だが……それもやむなしだな」

ツインテ「え!? 女騎士さん達帰ってしまわれるんですか!?」

257

--ユニオン、会場--

女騎士「あぁ。元よりこっちに来たのは目的があったからだ。それが成されたのであれば帰るのが普通だろう?」

ツインテ「そんな……急過ぎます……」

アッシュ「おい、さっき後で戦うと言ってただろうが。やらずに帰る気か」

ポニテ「そうだよ! 今はちょっと魔力不足で融合解けちゃったけど……もうちょいすればまた融合できるから!」

女騎士「それでもお互い万全の状態ではあるまい?」

ポニテ「っ、まぁ、そうだけど」

女騎士「ふ……そんなに焦る必要は無いのかもしれないぞ」

アッシュ「あ?」

女騎士「――全ての世界は繋がっている。ここは、ルートの特異点なんだからな」

女騎士は会場にいる人々を見て言った。健闘を立てて肩を叩き合っている人たちや、傷ついたもの達に治療を施す人たち……全て女騎士の世界から無くなったものだった。

女騎士「ここはいいルートだ。私達のルートもここのようにしたいと思う。だからこそ一刻も早く帰る」

258

--ユニオン、会場--

ぶぅん

メリガーが何も無い場所で手を振ると、別ルートへの道が生まれた。

メリガー「では。世話になったね」

女騎士「達者でな皆。あちらが平和になったらまた来るぞ」

ツインテ「はい、その時を楽しみにしています!」

アッシュ「ふん。その時は融合無しで戦えるようになっておく」

ポニテ「ぐぬぬ、本当はもっと一緒に遊びたかったのに……ばいばいは言わないから! またねー!」

女騎士「……あぁ!」

びゅわん……

そして、別ルートへの扉が閉じた。

259

--ユニオン、会場--

ざわざわ

レン「やれやれ後片付けが大変になっちゃったにゃ。ここまできたら一度会場をぶっ壊してから新しく作りなおす方が簡単じゃないのかにゃ」

魔導長「いい案なの。その時はレンちゃんに頼むなの」

レン「うげー……言わなきゃよかったのにゃ」

ポニテ「くーっ……大会だけでなく女騎士ちゃんとの戦いも取り上げられちゃった……うぅ、うずうずするよぉ……」

ツインテ「ポニテさん落ち着いてください。皆さん疲れてるんですからしょうがないんですよ。ほら飴ちゃんあげますから」

ポニテ「もごもご……おいちぃ」

アッシュ「……俺はまだ出来るぞ」

勇者「さすが子供なだけあって元気だな」

盗賊「ぜぇぜぇ……俺はもう無理だぜ」

勇者「……ふむふむ。よくよく考えて見れば、お行儀よくリングで戦う必要も無い気がしてきたぞ?」

にやりと不敵に笑う勇者。

盗賊「ゆ、勇者何考えてやがる……もうやだぞ? 俺は休むんだ。もう一生分戦った!」

ざわざわざわ

盗賊「お、おい、ムードがなんか……」

260

--ユニオン、会場--

ざわざわざわざわ

竜騎士「ぶるあああああああああああああああ!! これだけの猛者が集まっておきながら解散だとぉお!? 納得できるかあああああああああああああああああああああああああああ!!」

ハイ「い、いやいやいや、戦ったじゃないですかいっぱい! よくわからない靄とー!」

侍「拙者の刀も久々にうずいてござるよ」

レン「……」

ざわざわざわざわ

魔導長「ふむ……ふむふむ。この流れは、そういう流れなの? まだやりたりないって?」

トリガー「何、結局やるのかい? はぁ、動物みたいだね。いいんじゃないかい? 好きなだけやっちゃえば」

虎男「っていうかなんで出場選手以外もやる気になってるがお。それじゃあ選抜とは何の意味があったがお」

侍「はっはっはっ。まぁいいではないでござるかぁ。無礼講無礼講、これはもはや祭でござる。楽しまなきゃそんそん!」

魔導長「んー……じゃーあー、とりあえず、会場にいる全員でルール無用のバトルロイヤルやろっか、なの」

ざわ

ハイ「……はい?」

魔導長「ただし優勝商品は変えるなの。今回の優勝商品は五柱の聖の資格なの!」

ウオーーーーーー!!

魔剣士「! 確か五柱になると色んな待遇がよくなったり税金とかも免除されるんですよね!?」

賭博師「五柱……五柱になれば俺もモテモテに……はっ!?」

調教師「」

竜騎士「ぶるあああああああああああああああ!! それは! 我の称号だぁあああ!! うかうか引退なぞしてられん、取り戻してやるぅううううううう!!」

脳筋「ははは、元気だな兄貴は」

ハイ「やるんですか!? 本当に今からやるんですか!? みんなぼろぼろなのに!? 信じられない!」

ツインテ「あははは……ずっと、こんなどたばたが続いていくんですかねー」

アッシュ「あぁ。退屈はしなさそうだ。悪くない」

ポニテ「そうこなくっちゃ! 二人とも決着つけちゃうよー!」

勇者「ほらっ、盗賊も早く!」

盗賊「んもー……やれやれ」

魔導長「それでは、試合ー開始ぃ!!」

わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

261

--ユニオン、会場--

こつこつこつ

赤姫「……随分にぎやかで楽しそうだことだ」

トリガー「赤姫……ユー」

ユー「……」

赤姫「やれやれ……色んなことがあったが、その集大成がこれか」

トリガー「そうだね……随分時間がかかってしまったよ。こんなどうでもいい光景を見るまでにさ」

赤姫「全部お前のせいだろ」

トリガー「いやそれはそうなんだけど……」

わーわー!!

赤姫「――ふ、冗談だ。それもひっくるめて、まぁ楽しかったぞ、お前との戦いの日々も」

トリガー「……」

ユー「……」



わーわー!!

楽しそうに戦う人たちを見下ろす三人。

赤姫「……これからの物語に私達観測者は必要ない……。行くぞトリガー、付いてこい」

トリガー「……うん、赤姫。どこへでも」

三人は誰にも見られることなく会場を後にした。






                       END

というわけでこれにて終わりにしたいと思います。
最後は色々思い返しながら書いてましたが、やっぱ長くなり過ぎちゃったなと思います。勇者募集でやりたいことの大半は終わってましたしね……。それでも長い間見てくださった方やコメントを下さった方達には本当に感謝しかないです!
もしよかったらまたいつか読み返してやってください。今まで本当にありがとうございました。


あ、疑問質問などあればそれは受け付けますので!

沢山のコメントありがとうございます! 
また何か書くかもしれません。その時はツイッター辺りで連絡させてもらうことになると思います。

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