勇者と魔王がアイを募集したFINAL (1000)

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「今まで」」」



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≪皆様へのお願い≫

・喧嘩はおやめ下さい。最後まで仲良くいきましょう!



≪あらすじ≫

勇者、ハイ「「ありがとうございました!」」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1390820254

遅くなってしまって申し訳ないです!
はたして明日(今日)起きれるのか……?

投下します。

581

--失われた王国--

ざっ

勇者「さぁ、ついたわ。ここが私達の本拠地よ」

ひゅおおぉ

アッシュ「……近づき始めてから気づいていてたことだが」

ポニテ「やっぱここ……」

ツインテ「あの時の……!」

盗賊「あれ? ポニテらここに来たことあったん?」

ちんちんぷらぷらさせながらポニテに近づく盗賊。

ポニテ「! ちょ、ちょっとパパ! 前隠してよ!!」

盗賊「あー、ごめんごめんー」

勇者「……はぁ」

頭を抱える勇者。

582

--失われた王国--

ぱちっ

勇者は着けていたマントを取り外して盗賊に渡す。

勇者「ほら、これで前隠して」

ポニテ「駄目だよママ! マントが汚れちゃうじゃない!!」

盗賊「えっ!?」

ツインテ「な、なんてゆうか随分個性的なお父さん……ですね」

アッシュ「個性的で済ましていいのか……」

レン「ただの変態にゃ」

ハイ「ですね……」

魔法使い「ぶほっwwwちんちんぷらぷらwwwwソーセージwwww」

キバ「あ、元に戻っちゃった!」

583

--失われた王国--

がやがや

難民男「あ、勇者様だ!」

難民女「勇者様! みんな! 勇者様が帰ってきたわ!!」

わー!

一斉に勇者の周りに集まる人々。

難民青年「勇者様おかえりなさい!!」

難民少女「おかえりなさーい!!」

勇者「ただいまみんな。新たに運び込まれた人たちはどう?」

難民老人「今若いのが怪我人達を治療しています。……ですが、何せ数が多くて人手が……」

老人は顔を曇らせた。

584

--失われた王国--

勇者「わかった。新しい怪我人は治療塔にいるの? 私も手伝いに行くわ」

難民中年「!? だ、駄目です! 勇者様は働き過ぎですよ! 少しはお休みになられた方が……」

難民眼鏡「そうだそうだ! それくらいは自分たちの手でやるさ……! 何から何まで勇者様に任せてたんじゃ、勇者様に申し訳がねぇ!」

わー! わー!

盗賊「……」

その光景を見ていた盗賊は、静かに昔のことを思い出していた。



  --過去--

  ザワザワ

  勇者は処刑場の真ん中で拘束されていた。頭に布を被せられていて、勇者からは周りが見えず、周りからは勇者の顔を確認することが出来ない。

  一般人A「あれが魔族ですか……まぁ恐ろしい! 首から下は人間と全く変わらないじゃないですか」

  一般人B「ちょっと小さいわね。子供なのかしら……でもきっとあの布の下は醜い顔に違いないですよ」

  一般人C「おらー!! よくも西の王国潰しやがったな!!」

  一般人の投げた石が勇者の頭部に当たる。

  勇者「づっ!!」

  兵士K「投石をやめなさい!!」

  勇者の頭にかぶせられた布が赤く染まっていく。

  勇者「……」

585

--失われた王国--

盗賊「……」

わー! わー!

盗賊「……ふ」

盗賊の口角があがってしまうのも無理はない。

ツインテ「……凄い……」

ハイ達が見たのは、人々に心の底から心配されている勇者の姿だった。

アッシュ「……これが勇者……か」

人々は辛い状況にありながらも勇者に笑いかけている。

ポニテ「私達が……目指したもの」

人々は勇者がいることで、少しも絶望していなかった。

勇者「……ありがとうみんな。でも私は大丈夫だから」

勇者はそう言って微笑んだ。

586

--失われた王国--

ざっ

盗賊「あー、みんな落ち着けってー。勇者にだけやらせはしないよ。強力な回復魔法を使えるの、俺達がいっぱい連れてきたからさ」

ざわ……

難民老人「あ、盗賊だ……」

難民男「あの役立たず!……どうせまた今回も勇者様に迷惑をかけたに違いねぇ!」

難民女「このごくつぶしー!」

難民少女「ろしゅつきょー!」

難民人妻「死ねー!」

難民中年「勇者様から離れろー!」

わー! わー!

打って変わって怒号が飛び交う。

ハイ「……なんですかこの違い」

レン「一体この男何したのにゃ……」

盗賊「はっはっはっ、愛してるよー」

はらり

マントが取れて真っ裸で手を振る盗賊だった。

587

--失われた王国--

ツインテ「勇者さん」

勇者「ん?」

ツインテ「あの……治療、ボクも手伝っていいですか?」

勇者「……もちろん。ツインテの治療能力の高さは知ってるわ。是非手を貸してね」

ツインテ「は、はい!」

ポニテ「あ、じゃあ私もなんか手伝う!」

アッシュ「ふん、施術なら俺も多少出来るぞ」

ハイ「時間制限がありますが私も……」

レン「レンは道具とか器材作るにゃ」

ぞろぞろ

難民中年「あの子らも勇者様が? でもちっと若くねぇか?」

難民老人「勇者様が選んだ人たちだ……きっと大丈夫に決まってるさ」

588

--失われた王国、治療塔--

竜子「おせーぞ代表! 外に薬草取りに行くのにどれだけ時間かかってんだ!!……ってなんだ、随分大人数になったな」

代表「王国の入り口らへんで会ったんでね。一緒にやってきたんだ。はい、薬草」

ばっ

竜子は薬草をひったくるように受け取った。

うぅう……

ツインテ「ひどい……これ全部怪我人ですか……?」

治療塔のフロアは広い。それが一階から四階まで全て怪我人だと言うのだ。

竜子「全部じゃないね。もう死んじまってるのもいる。24時間以内に蘇生しなきゃいけないんだが蘇生しただけじゃ回復しきれない! またしばらくすると治しきれなかった傷が開いて死んじまうんだ! くそ!!」

勇者「今のここの責任者は貴女なの?」

竜子「そうだよ! あのハゲ、結界が弱まってるから見てこなきゃいけないとか言って出てった!」

ハイ「ハゲ?」

589

--失われた王国、治療塔--

アッシュ「はっ、なんだ、寄生系のめんどくさい魔法攻撃でも受けて苦しんでるのかと思ったぜ」

ポニテ「ほんとだね~。回復不能攻撃を受けてるわけじゃないみたいだし」

竜子「はっ!? お前ら何言ってんだ!?」

レン「くあぁ。レンは指輪の生成だけやってればよさそうにゃ……むにゃ」

ハイ「です、ね」

竜子「だからぁ!!」

ツインテ「あ、あの……」

おずおずとツインテが手をあげる。

ツインテ「ボクが治しても、いいですか?」

590

--失われた王国、治療塔--

竜子「……どいつをだ?」

ツインテ「えっと、この塔にいる人たち全員、です」

竜子「」

竜子は口を開けて固まった。

竜子「……このくそ忙しい時に何を言い出すかと思えば……」

竜子は振り返って患者の患部に薬草を塗る。

竜子「お前みたいな餓鬼一人で何ができるってんだよ! 状態異常になってるやつも少なくない。そいつらの症状を全部見極めて治療して回復させる。これだけで一体どれだけの手間がかかると思ってんだ!」

アッシュ「いいぞツインテ。やっちまえ」

アッシュは親指で指図。

ツインテ「は、はい。奥義、絶対回復領域」

ぱぁああ

ツインテの奥義展開と同時に暖かい魔力が空間を満たしていく。

患者「う、うぅ……ん? なんだ……? この暖かな光は……」

591

--失われた王国、治療塔--

ぱぁああ

患者「! い、痛くなくなった……!? あの深い傷が一瞬で治った!?」

重症患者「……暖かい……なんて、暖かいんだ……」

ツインテ「……」

ツインテは目を瞑り、指を組んで拝んでいるようだった。

ぱぁああ

竜子「!? はぁ!? ほんとに……全員いっぺんに治してるっていうのか……?」

きらきらきら

少年患者「綺麗……」

青年患者「女神様……女神様だ……」

老人患者「ありがたや……ありがたや……」

ぞろぞろ

動けるようになった患者達はツインテに向かって拝み始める。

592

--失われた王国、治療塔--

竜子「ひ、一人回復させるだけでも結構魔力もってかれるんだぞ……? それを状態異常回復や蘇生まで同時にやってるっていうのか……? 何百人単位で!?」

ぱぁああぁあ

ポニテ「ずっとこれが当たり前のように旅してきたけど、よくよく考えるととんでもないことだよねー」

目が==なポニテ達。

アッシュ「全くだ。結婚したい」

レン「相変わらずレンのツインテは ああ!う…美しすぎます!」

ハイ「はぁ。長旅の疲れも取れます~」

竜子「……ばけもんじゃねぇか」

593

--失われた王国、治療塔--

ツインテ「こんな感じで……うわっ!?」

目を開けたツインテ。するとフロアにいる全員がツインテに向かって土下座をしていたのだ。

ツインテ「い、一体何が……」

ざっざっ……

?「……ん? ツインテ、ちゃん? ツインテちゃんかい!?」

ツインテ「!? この、声は……」

振り返るツインテ。

?改め賢者「やっぱり! ツインテちゃん無事だったんだね!!」

ツインテ「お父さん!?」

踊子「ほら言ったじゃないですか~私達の子が簡単にやられるわけないって~」

ツインテ「お母さん!!」

賢者と踊子が現れた。

盗賊「おっす賢者さん。ただいまー」

勇者「私達さっき帰ってきたとこなの。結界は大丈夫だった?」

賢者「えぇもちろんです。これから全員の治療をしようと思ったのですが……やれやれ、さすがは僕の自慢の子供だ」

賢者はツインテに近寄って頭をなでた。

賢者(……けれど……あの時から一切成長していない……)

踊子「……」

594

--失われた王国、治療塔--

う、うぅ……

ポニテ「!? ツインテちゃんの絶対回復領域で治せない人が!?」

アッシュ「! そうか。欠損か……例え魔法でも無から有は生み出せない。ここに無いものは治すことが出来ない……」

ツインテ「!」

ツインテは西の王国でのレンを思い出す。

アッシュ「どれ……回復が出来ないのなら苦しみが長引くだけだ。いっそ俺が楽に……」

しゅぴぃん

アッシュはナイフを抜く。

ポニテ「!! アッシュ君!!」

すたすたすた

???「げほっ、ごほっ」

アッシュが近づいたその人物は血を吐いた。

595

--失われた王国、治療塔--

すたすた……

アッシュ「……!?」

???「がはっ!……ぜぇ……ぜぇ……」

からん

アッシュは、ナイフを落とす。

???「はぁ、はぁ……お久しぶり、ですね……あなたの声が、聴こえたと思ったら……」

腹部に巻かれた包帯の隙間から血が滲んでくる。

アッシュ「そんな……」

???「大きく、なりましたね。アッシュ」

弱々しく笑うその人物は、秘書。

アッシュ「お母、様……」

ハイ、ツインテ、ポニテ、レン「「「!?」」」

596

--失われた王国、治療塔--

ツインテ「えっ!? アッシュ君のお母さん!?」

ポニテ「そんな、こんな再会だなんて……」

勇者「……やっぱり」

レン「……」

アッシュ「そんな! なんでお母様が、こんな!」

アッシュは地面に膝をつき、秘書の右手を握る。

???改め秘書「……皆の、いるところで、その呼び方をしてはいけない、と、言ったでしょう?」

アッシュ「く……」

秘書「ふふ……さすがに、魔族の相手はきつくて……失敗して、食いちぎられてしまいました」

アッシュ「!」

秘書の腹部の左側が異様に凹んでいる。

597

--失われた王国、治療塔--

アッシュ「……お母様」

秘書「呼んでは、いけないと、言っているのに……困った子」

秘書は震える左腕を伸ばしてアッシュの頬に触れる。

アッシュ「お母様……!」

アッシュの頬に一筋の涙が流れる。

こつ、こつ

盗賊「お」

その場に現れた西の王に気づいた盗賊は道をあけた。

こつ、こつ、こつ

アッシュ「……? 西の王? なぜここに」

西の王「……勇者が次に戻って来た時に話がある。そう言っていたな? 話を聞きに来たぞ。秘書よ」

598

--失われた王国、治療塔--

秘書「ご足労、おかけしました。ぐっ!」

ぼたたっ

アッシュ「! お母様! 無理するな!!」

秘書はなんとかして上半身を起こそうとしている。

西の王「……」

秘書「はっ、はっ……西の王様。お伝えしたいことがございます……」

西の王「なんだ?」

秘書「この子、アッシュは……私が作り上げたホムンクルスです」

アッシュ「!?」

ハイ、ツインテ、ポニテ、レン「「「!?」」」

勇者「……」

西の王「ホムンクルス……人工生命か。確か国際法で禁止されている禁術だが……お前一人でやったのか?」

レン(……)

秘書「いえ、私は人を殺すしか能の無い女……ご想像の通り、研究員に手伝わせました」

ぼたたっ

アッシュ「……そんな……」

秘書「私は……はぁ……生まれてからずっと闇の道を歩んで来ました……だからこそ、光に……憧れました。勇者という、人類の希望に……」

599

--失われた王国、治療塔--

アッシュ「お母様……」

秘書「でも私では成ることが叶いません……成れるわけもありません。この手はいつだって人の血で真っ赤に染まっていました……勇者とはまるで対極の存在でした……でも、だからこそ、せめて……私は夢を見ました……」

西の王「……」

秘書「この子を勇者にする。それが夢です。……そのためにこの子には勇者因子を組み込んでいます……もっとも、人造勇者が持つ危険性、暴走を恐れた私達は何重にもリミッターをかけました……ふふ、そのせいで今も表面には出てこないようですが……」

秘書は弱々しく笑う。

秘書「ラッカーの、サンプルも組み込みました……私が殺した、暗殺組織の先代の毒属性です。私の人殺しスキルも組み込んであります」

西の王「……何を組み込んだかなどとはどうでもいい。そのアッシュの、ベースとなっているものは誰だ? 誰の血を使い、お前はそのホムンクルスを作ったのだ?」

秘書「私の血……そして、貴方様の血でございます」

アッシュ「!!」

ツインテ(それって)

西の王「……こいつのことは自分が育てた最高の切り札と聞いていたが……そういうことだったのか」

アッシュ「……」

秘書「……はい」

アッシュ「お、お母様! じゃ、じゃあいつもカーテン越しに話していたお父様は」

秘書「あれは私の配下の者よ……今まで騙していてごめんなさい」

600

--失われた王国、治療塔--

西の王「……お前が言いたいのは……これを、我が子として認めろ、と言うことか?」

アッシュ「ッ!」

秘書「はい……何を勝手なことと、思うでしょう……恥知らずの私でさえ、そう思います……本当ならばこれは、誰にも喋らずに墓場まで持っていくつもりでした……うっ!」

ばしゃっ

アッシュ「お母様! もういい! やめろ!!」

ぐぐ……

秘書「でも、もう私は長くはありません……そう悟った時……言わずにはいれなくなったのです。貴方様から、認めの言葉を聞かずに死ぬわけにはいかなくなったのです……!」

秘書は全ての力を振り絞って上半身を起こそうとしている。
眼はもはや虚ろ。焦点も合っていない。

西の王「……」

秘書「ひゅー、ひゅー……西の王様……」

ざわ、ざわ

アッシュ「……お」

西の王「俺は王だ。王が法を破るわけにはいかない。……それが俺の血をベースに作られたホムンクルスだなどと、認められるはずがない。ホムンクルスは禁忌の存在だ」

アッシュ「」

西の王はそう断言する。

秘書「……ひゅー、ひゅー」

勇者「……」

盗賊「……」

601

--失われた王国、治療塔--

西の王「あ、あの日の過ちか。そうだ、思い出した。こいつはあの時の子か」

ぽんっ

わざとらしく、西の王は手を叩く。

アッシュ「……へ?」

西の王「思い出した思い出した。あぁなるほどなぁ。そういうことか。お前は俺の立場を思って今まで内緒にしてくれていたのだな。はぁ~……まさか出来ていたとはなぁ」

ざわざわ

ハイ「……あはは」

ポニテ「……いやいやそれはそれでスキャンダルじゃん」

西の王「法に触れているわけではない」

賢者「……」

踊子「そう……そういうことにするのね」

すっ

秘書「……あ」

西の王は秘書の手を取った。

西の王「……今まで……俺に尽くしてくれたこと、深く感謝する。……ろくな礼もできずにすまなかった」

秘書「あ……」

西の王「……俺とお前との子、アッシュは俺に任せてゆっくり眠れ」

アッシュ「」

秘書「」

つー

秘書「ありが、とう……ございます」

秘書は生まれて初めて泣いた。




…………
……


黒づくめの男「……はっ? 今なんと申されました?」

黒づくめの男は汗をたらしながら聞き返す。命令を聞き返すなど、本来ならばありえないことだ。

秘書「暗殺者の心得がなっていませんね。二度言わねばわかりませんか? ならばあえて言いましょうもう一度。……明日の幼稚園の運動会、アッシュの活躍がばっちり見える場所を今のうちからしっかり確保しておけ、と言ったのです」

黒づくめの醜男「お、お言葉ですが……明日は前々から追っていた砂漠の風の団員が、西の王国近辺に現れるという情報が……」

秘書「聞き返した次は口答えですか! そんなことはどうでもいいのですよ! ちゃんと場所を確保し、この魔法式ハンディ○ムでアッシュの勇士を取るのです!! それがお前達の明日の任務です!!」

黒づくめ一同「「「ははっ!!」」」

しゅたたっ!

秘書の気迫に押された黒づくめの者達は一瞬でその部屋からいなくなる。

秘書「……はぁ」

秘書はためいきをつくと、胸元にしまっていたブローチを開く。

秘書は、

秘書「……ふふ」




嬉しそうに笑った。

オーバーしてすいません!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

またもや遅くなってしまいました!
それでは投下していきます。

602

--過去、王国--

兵士X「――俺が騎士団分隊長の座に?」

受付「えぇ。普通入団してすぐにこの座につけませんよ? 全ては王様のご好意……感謝することです」

兵士X「……」

受付「……どうしました? 不服そうな顔ですね。よもやこの程度では満足できないと?」

受付は書類から目を離して兵士Xの顔を見る。

兵士X「いや、功績が認められたのは素直に嬉しいのだが……夢への方向が違うものだから」

受付「? 夢への方向?」

兵士X「……俺は……西の王国を再建したいと思っている」

兵士Xは受付の目を見て言った。

受付「……たかが兵の分際で大きく出ましたね。……夢だなどと……馬鹿らしい」

603

--過去、王国--

とんとん

受付「夢を見るのもいいですけれど、それより現実を見なくてはいけませんよ。今の貴方がそんなことを言ったところで誰も本気になどしません」

兵士X「……全くだな」

兵士Xは苦笑する。

兵士X「一人では到底不可能な夢だ。強力な協力者が必要不可欠、だ」

兵士Xは独り言のように呟く。

受付「……」

兵士X「……君は、どうなんだ?」

受付「は? なにがです?」

兵士X「君に夢は無いのか?」

受付「」

兵士X「なんだか君は、ただの鋭利なナイフのように思える」

604

--過去、王国--

受付「……」

兵士X「自分の意思も、趣味も何もない。ただ単に主に命じられることを遂行する一本の」

しゅぴぃん

受付のナイフが兵士Xの喉元に当てられる。

受付「雇用主に対して随分と口が過ぎますね……わかっているのですか? 貴方程度の命など、所詮替えのきく消耗品に過ぎないことを」

兵士X「そして、ナイフのような寂しい輝きをした瞳をしている」

受付「!?」

少しだけ、たじろぐ受付。

兵士X「君の夢はなんだ? それはあの老いぼれの下で手を汚し続けることで叶うのか?」

受付「っ……わたしに、夢など……」

兵士X「無いのか? それなら君は……」

受付「黙れ!」



ナイフの先端が兵士Xの首に埋没する。

つー

兵士X「……感情、あるじゃないか。それなら執着するものもあるんだろう? そして夢も」

受付「!」

605

--過去、王国--

受付の脳裏に勇者の姿が浮かんだ。

受付(心が、揺さぶられる……精神攻撃?……いや、ただ単に)

兵士X「……」

受付(本心を、言い当てられただけ)「……私に夢があったとしたら、一体なんだというんですか……貴方に何の関係が?」

兵士X「俺の夢に協力して欲しい。その代わり、俺もまた君の夢に協力する」

受付「……は、は? いきなり何を言って」

兵士X「俺が夢を叶えるのにもっとも必要なのは君なんだと、直感でそう思った。その戦闘力、巧みな権謀術数……君の力、俺に貸してくれ……!」

ずっ!

兵士Xはナイフに突き刺されながらも顔を近づける。

受付「!」

ぽた、ぽたた

606

--過去、王国--

受付(こ、この人……!)

ぽたっ、ぽたたっ

ナイフは相当深く入っている。

受付「……貴方なら……私の夢を、叶えられるというんですか?」

受付は、視線を泳がせながら言葉をつむぐ。

兵士X「叶えてみせる。そのために必要ならば……俺の人生を賭けよう」

受付「!!……他人の夢のために、自分の人生を賭けると……?」

兵士X「あぁ。だから、俺の夢のために力を貸してくれないか……?」

受付「……」

ぽたっぽたたっ

二人は長いことそうしていた。床一面が赤く染まるほど……。



ぴちゃっ

受付「……いいでしょう」

ずるっ

受付はナイフを引き抜いた。

受付「貴方を……次の私の主としましょう」

兵士X「うっ……げほっ……気を失う前で、よかった」

そう言って兵士Xは青い顔で笑った。

607

--失われた王国、墓地--

ざっ、ざっ

アッシュ「……」

西の王「……」

西の王はスコップを使って地面を掘っている。
死んだ秘書を墓地に埋めるために。

ざっ、ざっ

アッシュ「……」

西の王「こんな、ものか。本来ならもう少しまともな葬儀をやってやりたかったがな。今は有事、仕方がない。手が空いているものには仕事が待っている」

アッシュは軽くなってしまった秘書を穴に運んだ。

すっ

西の王「……」

608

--失われた王国、墓地--

花を持たせ、そして土をかけていく。

ざっ、ざっ

西の王「……」

アッシュ「……」

ざっ、ざっ

西の王「……バカな女だ。子供が欲しい、の一言も言えないとはな」

アッシュ「!」

スコップを動かす西の王が喋る。

アッシュ「黙れ……お母様を……悪く言うな」

西の王「……」

西の王はアッシュを一瞥すると、再び土をかけていく。

ざっ、ざっ

西の王「……互いの夢のために協力すると……約束しただろうに……」
ひゅぅうう

小さく呟いた言葉は風にかき消されてしまう。

609

--失われた王国、墓地--

ざっ……

作業が終わると西の王は空を仰ぎ、腰を叩く。

西の王「ふー……なんてざまだ。こんな単純作業で体を重く感じるとはな……いくら一線を退いて長いとはいえ」

アッシュ「……」

アッシュは母の墓をずっと見つめていた。

西の王「アッシュ……秘書との約束だ。バックアップが必要なら、俺が出来る範囲で手を貸そう。だが、俺はお前の親にはならない」

アッシュ「……!」

振り返るアッシュ。

西の王「秘書の手前ああ言ったが、あれは嘘だ。お前を我が国の王子として迎えることは無い」

そうきっぱりと西の王は言う。

アッシュ「……あぁ、わかっている。俺だって、今更あんたを父親と呼ぶつもりは無い!」

西の王「あぁそれでいい。お前の親は秘書だけなのだからな」

アッシュ「」

ぐっ

西の王はアッシュにナイフを差し出した。

西の王「これはあいつのナイフだ。お前が持っておけ」

そして西の王は踵を返した。

ざっ

西の王「……お前はお前の思うがままに進め。何にも縛られることなく、母の夢を、叶えるために」

610

--失われた王国、東--

がやがや

賭博師「お、いた参謀長さんよ」

参謀長「ん? あぁ賭博師さん。貴方は無事でしたか」

参謀長ともこもこに抱きつくようにして眠っている姫を見つけて走り寄る賭博師。

賭博師「あぁなんとかな……色んなもんをうしなっちまったけどさ。いやぁここには色んな人がいるから見つけるのも大変だったぜ」

賭博師は姫を見る。

姫「すー、すー」

姫の目元には泣きはらした跡が。

賭博師「……そっちも大変だったみたいだな」

参謀長「見ての通りですよ。盛大にやられました」

参謀長は手を広げてジェスチャー。

参謀長「まさか既に敵がもぐりこんでいたとは思いませんでした。あのGのやろぉ……」

賭博師「Gさんかよ、まじか……っと、募る話もあるだろうけどさ、先に他のやつらの居場所教えてくれないかな? あいつの……病気のこともあるしさ」

参謀長「あぁ、調教師さんをお探しでしたか」

賭博師「あー、すまねぇな自分のことばっかりで」

申し訳なさそうに頭をかく賭博師。

参謀長「彼女なら死にました。生き残ったのはここにいる私達と研究員さんと機械兵士だけです」

賭博師「         」

参謀長「そういえば最後の言葉を預かっています。貴方といられて幸せでした、と」

賭博師「         」

611

--失われた王国、中央広場--

魔剣使い「侍様! ご無事でしたか!?」

侍「おぉ! 魔剣使い殿。おぬしこそ無事だったか……いや、本当に不幸中の幸いでござるよ」

二人は抱き合って再会を喜ぶ。

魔剣使い「……少し、若返っていませんか? 皆さん」

通信師「体を少しいじられましたからね。所謂全盛期の肉体ってやつです」

魔剣使い「! すごい……! 皆さんが全盛期の姿だなんて、なんて心強い!」

符術師「期間限定だったけどなー」

魔剣使い「……へ?」

医師「もう私達五人は戦うことが出来ないんですよ。反動でね」

医師は震える手を見せる。

612

--失われた王国、中央広場--

すたすたすた

ツインテ「けどまさかアッシュ君がホムンクルスだったなんて……びっくりしました」

ポニテ「全く気づかなかったよね。でもそんなの関係ないよ。だってアッシュ君はアッシュ君だもん」

レン「……ポニテ」

ハイ「はい、そうですねポニテ先輩」

盗賊「ポニテ……お前ほんといい子に育ったんだなぁ……」

盗賊は泣きながらポニテの胸に顔をうずめる。

勇者、ポニテ「「さりげなく娘にセクハラすんな!!」」

どぎゃっ!!

盗賊「おごぶっ!?」

勇者とポニテによる同時ツッコミを受けて痙攣しながら地面に倒れる盗賊。

レン「さすが親娘にゃ……」

賢者「相変わらず、なのかな盗賊君は……」

踊子「みたいですね~」

613

--失われた王国、中央広場--

盗賊「いてて……でもま、この分だと言っても大丈夫だろう」

盗賊は立ち上がって砂をはらう。

勇者「! え、と、盗賊……?」

おろおろと盗賊に近寄る勇者。

ポニテ「へ? 何を?」

勇者「そ、それはまだ早いんじゃ……」

盗賊「何言ってんだ。今のポニテになら言っても大丈夫だよ。ちゃんとしっかりとした大人になった」

ポニテ「え、えへへ……」

ポニテは褒められてとりあえず胸を張る。

盗賊「それに、最終決戦に挑むんだから、自分のことはちゃんと知っておかなきゃいけないだろう?」

勇者「う……で、でも」

賢者「? 何か打ち明けたい秘密でもあるのかい? 盗賊君」

盗賊「うん、ポニテ、お前実は火の精霊だから」

614

--失われた王国、中央広場--

盗賊はいつものように、にこにことした表情で、勇者はおろおろとしながら盗賊とポニテの顔を交互に見ている。

ポニテ「」

ツインテ「」

レン「」

ハイ「」

賢者「え、えぇ……?」

踊子「そ、それはまた~……どういうこと?」

ポニテ「えええーーーーーーーーーーーーー!? ぱ、パパママそれどういうこと!?!?」

盗賊「あぁ。だからお前は種族で言えば人間じゃなくて精霊ってこと。ん、半精霊かな?」

ハイ「いきなり人じゃないよ宣言!?」

レン「人間失格にゃ!!」

615

--失われた王国、中央広場--

どさっ

ポニテ「……」

ポニテは地面に膝をつく。

勇者「ぽ、ポニテ!」

勇者は駆け寄ってポニテの肩を抱く。

賢者「盗賊君、それはどういうことなんだい?」

盗賊「……簡単に言ってしまえば、勇者のちっちゃな体で子供を作るのはちょっと危険だと思ったわけでありまして」

踊子「嘘ばかり~」

踊子はふふふと笑う。

踊子「盗賊君みたいなペド野郎が、母体を危険にさらすとか、その程度で子作りを断念するとは思いません~」

勇者の顔が真っ赤になる。

盗賊「ひどい言われようだな!?……ちぇ……怖かったんだよ、俺らに子供が出来るのが」

616

--失われた王国、中央広場--

盗賊「勇者は、王様とトリガーから勇者の生まれ方ってやつを知らされててね、俺もそれを勇者から教えて貰った」



  王様「勇者因子を持つ者は生まれからして違うのだ。王の家系、伝説の人物の血筋、竜の子孫。全て特殊な生まれ方をしている」



賢者「ごく……」

盗賊「そして俺らは魔王を倒した勇者パーティだ。英雄だ。偽ることの出来ない過去だ。しかも片方は魔王になりかけた勇者……その間に出来た子供が次の勇者になる可能性は……間違いなく高いと思った」

踊子「……」

盗賊「生まれてくる子がもし勇者因子を持っていたら? 更に、勇者が何かの拍子に魔王になってしまったら?……そんな最悪の事態になっちまったら、どうなる……?」

ポニテ「……」

盗賊「俺は勇者を護るために次の勇者と戦うと誓ったよ。敵が誰だろうと関係ないとも勇者に言った。でもそれが、その相手が……自分の子供だったら……?」

勇者「……ッ」

唇を噛み締める勇者。

ツインテ「……なんて、壮絶な……」

賢者(それが事実だとしたら、それを僕らも知っていたなら……僕たちも子供を作ろうだなんて、思わなかったかもしれない……)

盗賊「……」

ポニテ「……」

盗賊「……俺はあまりにも悩んだせいでいんぽになった」

賢者、踊子「「はっ!??!」」

617

--失われた王国、中央広場--

踊子「あ、あんたって人は~! 娘の出生に関する大事な話の最中になんちゅう~!!」

盗賊「うっ……せっかくの、勇者との、うっ、ううっ……」

泣き始める盗賊。

レン「こいつ最悪にゃ……」

人の親をこいつ呼ばわり最悪呼ばわりのレン。

ハイ「子が子なら親もって感じですね……」

呆れ顔のハイ。

ポニテ「……」

盗賊「すん……でも勇者は子供が欲しがってたし、俺もすんごい欲しかった。勇者の子供だよ? クッソ可愛いに決まってんじゃん。そしたら見るに見かねた火の精霊様が俺達に提案してくれたんだよ。二人の魂をベースにした新しい命を作り出すことに協力してやろうって」

賢者「!」

勇者「南の島の守り神、火の精霊様だよ」

618

--失われた王国、中央広場--

ポニテ「お、おかしいと思ってたんだ……超レアスキル、魔力変換炉……。魔法王国の図書館にあった書物に記録されていることと、私の性質は全然違った……これはむしろ精霊の特性に近い、って思ってたんだ……だから私、どうせならこれを有効に利用しようとして、精霊化を……考え付いたのに」

ツインテ「……確かに精霊様の体は魔力で出来ていると聞きます……体を維持するのも魔力……本来ならその激しい魔力消費をなんとかするために、魔脈張りめぐる妖精郷から動かない……。でもポニテさんは人間として動き回るから、エネルギーが足りなくて、いつも代替エネルギーとしての食事の量が多かったんだ……」

レン「……思い返せば色々とヒントはあったにゃ」

盗賊「大体さー、おっぱい見てみろよー。こんなんだぞ勇者の。おっぱいマウスパッドの商品化出来ねぇんだぞ? ポニテと全然違うじゃんよ」

勇者の胸板を撫でながら説明する盗賊。

勇者「……あの時火の精霊様にお願いしたのよ。ここだけはなにとぞ、なにとぞって、ね!!」

どごっ!

盗賊「おぱぁう!?」

勇者の肘鉄で悶絶する盗賊。

ポニテ「……私、パパとママの、実の子供じゃ、無かったんだ……」

涙を流すポニテ。

619

--失われた王国、中央広場--

盗賊、勇者「「それは違う!」」

二人は叫んでいた。

ポニテ「っえ」

盗賊「生まれ方がちょっと特殊なだけだよ。言っただろ? 俺らの魂をベースにしてるって」

勇者「ポニテは紛れも無く私達の子供なんだよ!!」

がばっ!!

勇者はポニテを抱きしめていた。

勇者「……ポニテ、確かにあなたは私がお腹を痛めて産んだ子じゃないよ……? でも、私はいつもポニテを想ってきた。ずっと愛してきたよ?……嬉しかったよ。私に、本当の家族が出来たって思った……」

盗賊(あれ? 俺と結婚した時は?)

勇者「いつも大事に想ってきたよ……私はお腹は痛めてない、でも、ポニテを想って、ずっと心を痛めてきたんだよ」

ポニテ「……ママ……」

二人とも涙を流している。

盗賊「……」

鼻を搔いたり後ろを見たりして落ち着かない盗賊。

賢者「~~」

お前も何か言えよと指図する外野。

620

--失われた王国、中央広場--

盗賊「まぁ、そういうことだよ。お前は昔も今もこれからも、ずっと俺らの子供だ。ただいい機会だし、この後の戦いのために自分が精霊種だってことを自覚して貰いたかったんだ。精霊ならではの戦い方も意識できるなら、ポニテが生き残る確率があがると思うから」

盗賊は腰を下ろしてポニテの頭を撫でる。

ポニテ「うん……パパのバーカ」

ポニテはぐしゃぐしゃに泣きながら笑った。

盗賊「うん、馬鹿なんだ」



レン「……やれやれ。結局仲のいい家族って所を見せ付けられただけみたいにゃ」

母親を思い出して少し寂しいレン。

ハイ「ですね……」

ツインテ「ぐすっ」

ツインテはついつい貰い泣き。

賢者「! つ、ツインテ、君は大丈夫だよ!? 君とフォーテはちゃんと僕らの子だ!! ちゃんと滅茶苦茶セックスして出来た子だから!」

踊子「何をトチ狂ってんですかあなた~」

ツインテ「あ、はは……別にボクは心配して」

ドクン!

ツインテ「――え」

ばちん!!

リボンが二つとも弾ける。

レン「! このタイミングで人格が変わるのかにゃ?」

ポニテ「ぐすっ……あれ? こんなの、見たこと無い……」

ツインテの髪の毛が短くなっていく。

しゅぅう

ハイ「ツインテ先輩の髪型が、セミロング、に?」

踊子「一体、何が~?」

勇者「……」

ツインテ?「ふぅ……お初にお目にかかる、かな?」

ツインテ?が顔を上げた。

ふぁさっ

ツインテ?「『僕』はツインテ。ツインテの主人格。言わばツインテゼロだ」

ほんとは勇者募集と酒場募集の間にある西の王と秘書の物語を書いてみたいなーと思ったこともあったんですが気づいたらこんなことに。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

あ、あれ!? 落ちてたのが直ってる!?
投下します!

621

--失われた王国、中央広場--

ざわ

ポニテ「雰囲気が……変わった」

ツインテ「……」

レン「今までも色んな人格を見てきたけれど、でもこれはなにかが決定的に違うにゃ……」

ハイ「なんといいますか……無機質な感じがします……」

アッシュ「ツインテ……お前」

ポニテ「!? 何しれっと参加してるの!? アッシュ君お墓の方に行ったんじゃなかったの!?」

レン「ツインテの話になるとワープでもなんでもござれにゃこの変態!」

622

--失われた王国、中央広場--

ざわざわ

賢者「ツインテゼロって……え?」

踊子「私たちも一度も見たことが無いですね~……」

ツインテ「そうだね。僕はあまり表面に出てこなかったから」

落ち着き払っているツインテ。

アッシュ「おいお前、いきなり現れておいて……主人格と言ったな」

ツインテ「言ったとも。アッシュ」

にこりと笑いながらアッシュを見るツインテ。

レン「!」

ポニテ「呼び捨て!?」

アッシュ「……主人格を名乗るやつは他にもいたような気がしたが、主人格はいつものツインテールのツインテだろ。アイツが最も表層に出ていたのを一緒にいた俺達が知っている。だから」

盗賊「それよりもなぜ今になって出てきたのか、って方を先に聞くべき事なんじゃないの?」

鼻をほじりながら盗賊は言う。

623

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「あのツインテが本当のツインテであることを確認するよりも優先すべきことなどあるか!!」

怒鳴るアッシュ。

盗賊「ひぃ! 今時の若者は怖いよぉ!!」

くすくす

ツインテは笑う。

ツインテ「その人の言う通り、他にも確認すべきことがあるだろうに。なぜ最初にそれを聞いて確かめなくてはいけないと判断したのか……その焦りよう……それは君がもう自分で理解しているからなんじゃないのかい?」

アッシュ「」

ポニテ「……」

レン「この存在感……今までと桁が違うのにゃ」

ハイ「まるで、フォーテさんを前にしているような感覚です」

624

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「そ、そ……」

ツインテ「……」

アッシュ「存在感の大きさが証拠になるか!!」

ツインテ「そうか。じゃあ全部教えてあげるよ。どうせ僕もそのつもりで出てきたんだし」

勇者「……」

ツインテ「全ての勇者達が魔王になる瞬間に願った想い……『次こそはハッピーエンドを』。僕はそんな勇者達の強烈な願いが星の内部に蓄積することで生まれた魔力生命体なのさ」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ「……はい?」

625

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「つまり、僕は魔王とその後ろにいるトリガーを打倒し、この永遠に続く戦いを終わらせるために創られた存在なんだ」

賢者「い、いやちょっとまって……ツインテは、え?」

勇者「……残念だけど赤姫もそのことを観測していたと言っていたわ。ツインテの言ってることは本当のことよ」

踊子「!……あ、赤姫様がそんなことを~……?」

勇者「黙っててごめん。私も最初に聞いた時は貴方達に話そうか迷ったんだけど……」

賢者「……」

ツインテ「いいかな? 話を続けさせてもらうと、僕は形を持たない存在だったから体が必要だった。そしてそこの二人の子供として生まれることになった」

賢者「……」

踊子「……」

ツインテ「だけど誤算が一つ起きる。トリガーが僕の存在に気づいたんだ。そして僕の思うようにはさせまいと、僕の一部を変質させて、フォーテを作り上げた」

賢者「!?」

626

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「勇者因子を使わずに魔王を倒すために創られた僕。それに気づいたトリガーは、逆に魔王以外の強力な力で勇者を滅ぼしてしまうことにしたんだろう」

勇者「魔王の数はもう足りているからね。勇者が魔王になるのを待つ必要は無い。これ以上魔王の骨は必要が無い」

ハイ「……」

ツインテ「僕は魔王を倒すよりも先に倒さなくてはならないものを見つけた。フォーテを。生まれたばかりの僕はフォーテを倒すために自分を改良していくことにしたんだ」

ツインテはさらさらと何の感情も込めずに言葉を紡ぐ。

ツインテ「最初に僕が作ったのは防御機能。目の前のフォーテから自分を守るために僕は盾を作り出した。どんな攻撃にも耐えられる無敵の盾を」

そう言ってツインテは魔力を操り、水で髪にウェーブのかかった自分の顔を作り出す。

アッシュ「! あの時のツインテ……まさかその機能というのは多重人格か!?」

ツインテ「そう。各ステータスをまんべんなくあげるんじゃなく、一つのものを特化させたものじゃなければフォーテには対抗出来ないと思った。ただ、たった一つのことしか出来ないのであればそれもまたフォーテには適わないだろう。特化しつつも色んなことが出来るようにする。それには、多重人格がベストだと思ったんだよ」

ポニテ「……攻撃のストレート。情報のサイドテール」

レン「防御のウェーブ……そして……治癒の、ツインテール」

ツインテ「完全に特化した人格をいくつもそろえることで、自分だけで最強のパーティを組める。先代の勇者も似たようなことをやっていた」

627

--失われた王国、中央広場--

勇者「……」

ツインテ「最初に生み出したウェーブは初めてだったせいか精神の作りがいまいちでね。大人しすぎてコミュニケーションもとりづらいものになってしまった」

アッシュは震えている。

ポニテ「……それが本当だとしたら、君は何に特化してるの?」

ツインテ「ん? 僕? 僕は精神操作。もしくは生成、なのかな?」

アッシュ「ふ、ふざけるな」

ツインテ「?」

アッシュ「あ、あのツインテは……お前の作りものだっていうのかよ!?」

がしっ!

ツインテ「……」

アッシュはツインテに掴みかかる。

ツインテ「……そうだよ。対フォーテ戦にとって最も重要な人格だ」

アッシュ「っ」

ツインテ「治癒機能。あれは人の心すら癒し、全てを愛で包み込む。対フォーテ用に作り上げた、フォーテが好むように調整した人格だ」

628

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「」

ツインテ「僕の最高傑作と言ってもいい。現にフォーテはあのツインテの前では骨抜きだった」

アッシュ「」

アッシュの指から力が失われていく。

ツインテ「君もそうだったんじゃないのか? 反応を見ればわかる、君もツインテを好んでいたんだろう? だからそんな風に動揺している。でも恥ずべきことじゃないよ、あれは誰にでも愛されるように、そう作り上げたんだから」

アッシュ「」

アッシュはツインテから手を離した。

ツインテ「……落ち込まないでよ。最初に僕がデザインしただけで、各人格は一人でに育って行ったんだから。生まれこそ異質なれど、今はれっきとした人間として生きている。それは君らと変わらないだろ?」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

629

--失われた王国、中央広場--

踊子「! まさかあの時、旅に出たいって言ってきたのって!」

ポニテ「? あの時って、最初の時のこと?」

踊子「そう、あの日ツインテちゃんは旅に出たいと言ってきた。魔王を倒さなくてはならないって……本当は私の可愛い可愛いツインテちゃんを、たった一人で旅に行かせたくは無かったんだけれど……」

ツインテ「ご想像の通り、あの時は僕が意識を操らせて貰った。内気なツインテを旅出たせるには、親に旅に出ろと言われるのが一番だと思ったから」

賢者「……」

ツインテ「……僕はまだまだ実戦で力を磨かなくてはならなかった。だから旅にでなきゃいけなかったんだよ。……そんな顔をされると心が痛む」

勇者「……今になって出てきた理由はなに?」

勇者がツインテに質問する。

ツインテ「僕がどんな存在であるかを知ってもらうために。同じ志を持つ者が他にいるのだから協力するのが得策だ」

630

--失われた王国、中央広場--

レン「……しかし……」

ハイ「最強のホムンクルスに半精霊……そして対魔王用に作られた多重人格……このパーティはとんでもないですね……」

影が薄いハイは顔を引きつらせている。

ツインテ「とりあえずフォーテは僕にまかせて欲しい。それを言いたかった。そのための戦力は整えた」

勇者「……」

盗賊「ま、そういうのは後だな。うん後」

ツインテ「へ……?」

盗賊の間の抜けた声が辺りを黙らせる。

盗賊「作戦会議はこれからやるのよ、自己紹介はしてもいいけどさ、役割分担はこの後でだ」

ツインテ「あ、あぁ、すまない……」

強大な存在感を持つツインテが全裸のおっさんに謝ってしまう。

盗賊「というわけで、これからバーベキューをします」





ツインテ「……はい?」

ハイ「私の口癖が!」

631

--失われた王国、中央広場--

ジュー

侍「いやぁ旨そうな匂いでござるなぁ!」

わいわいがやがや

勇者「……あんた買出しって、まさかこれをやるために?」

盗賊「そうだよ? 言ってなかったっけ? あちちっ」

勇者「……はぁ。魔王との最終決戦が控えてるっていうのに、あんたは……」

盗賊「はふはふっ! だってさぁ、こうしてたら緊張もほぐれるかと思ってさ。それに最後の晩餐になるかもしれないんだぜ? そしたら旨いもん食いたいじゃん?」

勇者「ポジティブなんだかネガティブなんだか」

632

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「……」

アッシュは一人ぽつんと川を見ている。

アッシュ「……はぁ」

がさ

ツインテ「あの、アッシュ君。向こうで食べないんですか? 皆さん楽しんで食べてますよ?」

ツインテは元のツインテールのツインテに戻っていた。

アッシュ「ツインテ……」

ツインテはお皿に肉と野菜を取って持ってきてくれていた。

ツインテ「はい、アッシュ君の分取ってきちゃいました。明日は決戦がありますし、緊張して食欲がわかないのもわかりますけど、それでも食べないと駄目ですよ?」

633

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「……」

  ツインテ『あ、それと今言ったことは他の人格に教えないでね。意識しちゃうと作戦に支障がでるかもしれないので。このことは君達が心許せる人間だと判断したから教えた事なんだ』

アッシュはツインテの言葉を思い出しながら皿を受け取る。

がっ

アッシュ「……くっそーーー!!」

がつがつがつがつ!!

ツインテ「! ちょ、ちょっとアッシュ君、急いで食べたら体に悪いですよ!」

おろおろと心配しているツインテ。

アッシュ「こんなにも天使なのに! 天使なのに!……違う、ツインテは、ツインテなんだ!! 関係ねえええええええええええええええ!!」

がつがつがつがつ!!

赤姫「呼んだ?」

634

--失われた王国、中央広場--

ブラ「ツインテ、ちゃん?」

ツインテ「え?」

ツインテは後ろから声をかけられる。

ツインテ「……! ぶ、ブラさん!? ブラさんですよね!? 生きてたんですね!」

ブラ「やっぱりツインテちゃんなのね!」

がばっ

抱き合う二人。

番犬「ツインテたちがここに来ていたことはすぐにわかっていたんだが立て込んでいたようなのでなバウ」

メイド「ま、無事で良かったと言っておいてやるでございます」

ちびメイド「ですますー!」

やみ「おにくおいしー」

635

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「……あの戦争以降見なかったからな。死んでいたものと思ってたぞ」

メイド「ふん、それは私達の台詞でございます。あんなよわっちいツインテ達では……今はそこそこやるようでございますが」

アッシュをじろじろと見ているメイド。

ツインテ「……あの、さっきから気になっているんですけど、この子ってまさかヤミさんですか?」

ブラ「……違うの。私の子供、やみ。よ」

やみ「? おねえちゃんだれー?」

アッシュ「やはり別人か。ならヤミはどうした?」

メイド「……あの戦争の時に連れ去られました。恐らくは魔王側に」

アッシュ「!!」

番犬「一通り探し回ったのだが見つけられなかったバウ。だからずっと機会をうかがっていたバウが……」

メイド「まさか……ここに戻ってくるなんて、でございます」

メイドは懐かしそうに、忌々しそうに失われた王国を見渡した。

636

--失われた王国、中央広場--

きゅいーん、ががー

研究員「ふぅ。やっぱり新型の機械兵士を整備するには時間がたりないですー。旧型のウーノちゃん達とは構造が全然違っていますからぁー」

研究員はテンテンの体を直しているのだが、思ったように進まない。

ざっ

参謀長「やっぱりお前も生きてたか」

研究員「? んー? 誰です?……って思ったけど、あぁ魔導大老ですか。まだ生きてたんですねぇ。ってか若返っちゃってるし。うらやましい」

参謀長「その名前はもう捨てました。ほら肉を持ってきた。食いな」

研究員「あーはーはー。しかし懐かしいですねー。魔導長ちゃんは元気してますー?」

参謀長「……わかりません」

研究員「相変わらずですねー」

637

--失われた王国、中央広場--

しゅぴっ! きぃいいいいいいん!!

レン「く、後半日でどれだけ指輪のコピーを作れるのか……時間との勝負にゃ!」

キバ「大丈夫? 私も手伝おうか?」

レン「キバさん。助かるにゃ」

ハイ「私はレン先輩のお口に肉を運び続けますから。安心して指輪作ってください」

ざっ

代表「なぁ指輪の件聞いたんだけれど」

キバ「うわ、亜人保護団体の代表だ……」

レン「何しに来たにゃ。今レン達は忙しいのにゃ」

代表「露骨に嫌われてるなぁ僕、仕方ないけど。いや、その魔王の指輪の作戦を聞いたんだけど、それ無理だろ。動いてる魔王の指に指輪はめるとか」

レン「にゃ!? そ、そんなのわかってるのにゃ! だからこの指輪にホーミング機能とかつけてなんとかしようとしてるところなのにゃ!」

代表「……それよりもさ。僕らがマントルに書いた魔法陣、あれの内容を変えちゃうほうが得策だと思わないかい?」

638

--失われた王国、中央広場--

レン「! どういうことにゃ?」

代表「だから、僕らは蘇生不可能の魔法陣をマントルに書き込んだんだけど、その内容をその指輪と同じ効果に書き換えるんだよ。そうすればこの星の全ての魔王の力を無効化できるんじゃないか?」

レン「!! 考えつかなかったにゃ……ん、でもそれ明日までに間に合うのにゃ? マントルとか凄い時間かかりそうにゃ」

代表「え? 明日? 明日なの最終決戦? そりゃ無理だよ、知らなかった」

ハイ「安易な希望を持たせて奪い取る……これが詐欺師の手口」

代表「ひどっ!?」

わいわいがやがや

そんな様子を遠くから眺めている盗賊達。

盗賊「……うーむ。しかし思った以上に時間が足りなかったな」

勇者「そうね。あの子達のために作った修練の塔……入れてる時間無いわね」

盗賊「うん。まぁ、ないもんはしょうがない。あるもんだけでやってかないとね」

639

--失われた王国、中央広場--

ざわざわ

勇者「じゃあみんな集まったかな?」

ざわざわ

盗賊「慰霊祭兼作戦会議兼最後の飲み会を楽しんで貰ってると思うんだけど、これから作戦会議の時間だよー」

がやがや

護皇「おう、楽しんじゃいるけど酒がたりないぜよーー」

がはははー

ツインテ「ぜ、全然慰霊な感じがしません……」

ハイ「っていうかお酒いれるのに作戦会議って」

はしゃぐ古株勢と、ハテナマークが頭の上に浮かんでいる若者勢。

640

--失われた王国、中央広場--

勇者「頭がクリアなうちに大事なこと話しておくわ。まず魔王について。踊子」

踊子「はい~」

ぴききっ

勇者は踊子に合図をして、氷のボードを作らせる。

勇者「実は魔王には種類があるって理解出来る? ……種類ってわけでもないか。現代の魔王と過去に魔王だったもの。両方ともトリガーが別ルートからひっぱり出してきた魔王なんだけど、無敵設定を搭載しているのは現代の魔王、つまり別ルートの私だけなのよ」

カッ、カッ

ポニテ「平然と別ルートって……」

侍「凄い会話になってるでござるな……」

カッ、カッ

勇者「この魔王の無敵設定を突破出来るのは現代の勇者のみなの。つまり今は私とハイちゃん」

ハイ「は、はい!」

アッシュ「……その現代の勇者やら現代の魔王、っていう縛りはなんなんだ? なぜ他の奴等には無敵設定やそれを突破する力が無い? 身体の構造にそれほど違いがあるとも思えん」

勇者「元も子も無いけれど、理由は至極簡単、ルールがそれを認めないためよ。トリガーが作り上げた強力なルール。それがちゃんと機能している限り正式な勇者と魔王は一人ずつ……なんだけど」

ハイ「! 今は……勇者さんと私がいる?」

勇者「そう。それに今は違うけど十代目も同時期に存在していた……。これはイレギュラーで済ませていいものじゃないはずなのよ」

ツインテ「……」

勇者「ルールが崩壊しかかっている……そのせいで色んなことのつじつまがおかしくなっている」

ツインテ「だからリセット……なんですか?」

赤姫「そうだな。トリガーはバグの無い初期状態に戻そうとしているんだよ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

直った! ごぶしゃたしてます!
このまま直らなかったらどうしようかと考えてました。
それでは投下していきます。

あ、雪で怪我とかは無いです! ただ大変ではありました……。

641

--失われた王国、中央広場--

勇者「リセット……私たちはなんとしてもそれを阻止しなくちゃならない。そのためにはトリガーが従える魔王達と戦うことになるわ」

ざわざわ

アッシュ「ただでさえ化け物みたいに強い魔王が複数いるとはな……無理ゲーの極みだ」

ポニテ「正直絶望するよ……」

レン「でも、そのためのレンなのにゃ! 魔王の力を抑える指輪、必ず量産してみせるのにゃ!」

ハイ「ほんと便りにしてますレン先輩!」

ツインテ「でも……できることなら魔王さん達と戦いたくないな……」

642

--失われた王国、中央広場--

勇者「これから赤姫から聞き出した各魔王の特徴を言っていくわ。誰なら相性良く戦えるか、『みんな』も考えて欲しい」

赤姫「その前に残像兵力を確認しておいた方がよくないか?」

勇者「……そうね。じゃあ先に残存兵力を発表するわ」

ざわ

勇者「まずは先代勇者パーティである私達。勇者、盗賊、賢者、踊子」

盗賊「あと関連メンバーで魔法使いだ」

魔法使い「……俺をついでみたいに言うな……」

心の古傷が抉られる魔法使い。

勇者「後は同じ勇者つながりで、勇者仮パーティからツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ」

ツインテ「み、みんなの前で紹介されるのって……」

ハイ「は、恥ずかしい……ですね」

643

--失われた王国、中央広場--

勇者「次に人類最高レベルの戦力、五柱。残念ながらその中でも最強の聖騎士は死んでしまったけど、他の四人は健在よ。魔導長、護皇、射王、元賢帝」

レン「……あれ!? そういえばレンも五柱なのに当然のようにすっとばされてるにゃん!」

盗賊「さっき勇者仮パーティで説明したじゃないか。二回も説明はいらないだろ」

ざわ

失われた王国民「あの聖騎士が……死んだ……?」

西の王国民「そんな……人類最強とうたわれたあの人が……」

人々は不安を隠せない。

賢者「ま……そうなるだろうね」

踊子「しょうがないじゃないですか~死んじゃったもんは~」

盗賊「だよね。悩んだって戦力が増えるわけじゃないんだし、あるもんで戦い抜かなくちゃ」

赤姫「お前らほんとポジティブだよなぁ」

644

--失われた王国、中央広場--

勇者「次、西の王国。変化師と包帯女とテンテン」

西の王「まて……俺が入っていないのはなぜだ?」

勇者「……みなまで言わせる気? 残念だけど、貴方を戦力と呼ぶわけにはいかないわ」

西の王「! 確かに俺は長いこと戦いから離れてきた……だが今は戦力があまりに少ない状況だ。なら盾でもなんでも使い道はあるだろう?」

アッシュ「西の王……」

勇者「いいえ、連携の邪魔になるだけよ。勇者討伐戦争の時ならまだしも、今の貴方にはその価値すら無い」

西の王「ッ!」

盗賊「お、おいさすがに言い過ぎだって……」

おろおろしている盗賊。

賢者「確かに一部の変人を除けば絶望的な年齢ですね。時を重ねるごとに熟成していく魔法系のジョブとは違って、普通のジョブは肉体の老化には勝てません」

西の王「……」

645

--失われた王国、中央広場--

勇者「次は東の王国。魔剣使い。以上」

魔剣使い「……」

侍「うーむ……口惜しいでござるよ」

医師「今の我々ではバックアップも満足にこなせないでしょうが、せめてこの命尽きるまでがんばらさせていただきます」

勇者「うん、その意気やよし。次……まとめて言うわ。北の王国、南の王国、王国、魔法王国。残存兵力無し。以上」

ざわわ!!

魔導長「……疾風ちゃんや迅雷ちゃんがいたら少しは楽になったのに、なの」

ポニテ「そんな……お姉ちゃん達がやられた……の!?」

レン「くっ……死者があまりに多過ぎるにゃ」

ツインテ「一体……どれだけの犠牲者が……」

勇者「次よ、黄金王国。姫、参謀長、研究員。そして機械兵士三姉妹」

646

--失われた王国、中央広場--

姫「姫ちゃんがんばる……亡くなった人たちの分も」

勇者「次は失われた王国よ。占師とシャーマン。ちなみにシャーマンは私のパーティに入ってもらっているわ」

シャーマン「いえーい」

勇者「……国家単位はこれで終わりかしら。なら次は砂漠の風」

どよ……

北の難民「さ、砂漠の風!?」

東の王国民「そんな、なんでそんな犯罪者達まで」

鬼姫「はぁー……。全くひどい言われようっすねぇ、否定はしないっすけど」

当然のようにアッシュの隣にいる鬼姫。

アッシュ「鬼姫! お前、生きていたのか!」

鬼姫「当たりまえっすよ。あたしがそう簡単にやられるはずがないっす。仲間は……全部失っちゃった、っすけどね」

そういう鬼姫の左腕は無かった。

アッシュ「ッ……」

勇者「鬼姫、以上」

647

--失われた王国、中央広場--

勇者「次、亜人保護団体から、代表、熊亜人、護衛姉、護衛妹」

ざわざわ

代表「うぅむ。あれだけのことをした後だから皆の視線が痛いな」

護衛姉「……」

護衛妹「……」

西のおっさん「こいつらのせいで……俺の妻は……!」

盗賊「おいおい、過去はあれでも今は大事な同士なんだ。みんな変な気起こすんじゃないよー」

西のおっさん「うるせーポークビッツー! 黙ってろ!!」

盗賊「いやポークビッツはこっちだって」

そう言って賢者のズボンを下げる盗賊。

ずるり

勇者「何を話してるんだ何、きゃっ!?」

賢者「どうも。シャウエッセン賢者です」

踊子「ポークビッツ風情が随分大きく出ましたねぇ~」

648

--失われた王国、中央広場--

勇者「つ、次! 人造勇者と無所属。カブト、影月、キバ、X、amazon、シン。そして竜子にブラ、番犬、メイド、ちびメイド。……これで全部かしら?」

ざわざわ

賭博師「……さすがに死にすぎてて笑えないな……」

賭博師の笑顔には力が無かった。

盗賊「……それでも残った俺達で必ず勝たなくちゃいけないんだ。でないと未来は無いんだからな」

ツインテ「……」

ハイ「……」

勇者「……誰が生き残ったかわかったところで、いよいよ敵の魔王についての説明に入るわ」

勇者が手を後ろにかざす。

勇者「氷属性生成魔法、レベル3」

パキキ

すると、勇者の後ろに氷の彫像が立ち並んだ。

649

--失われた王国、中央広場--

勇者「じゃあ左から説明していくわ」

勇者は一番左の蜘蛛の形の彫像を指差す。

勇者「これは初代勇者にして二代目魔王、銀蜘蛛。こいつはテンテン等と同じく、機械と呼ばれる古代の兵器よ。復活しかけていたトリガーを再び封印しちゃうくらい強いわ」

赤姫「硬い装甲と凶悪な攻撃能力を持っている。同じ機械兵器で無ければまともにダメージを与えられないだろうね。その逆もしかり。同じ機械兵器で無ければ攻撃を受けることも難しい……っと、そうそう。そういえばファイナルウェポンの赤の剣と青の剣も持ってたなぁ」

包帯女「機械兵器……それならテンテンがいる!」

研究員「ふふん。私の娘たちもいますよー」

勇者「えぇ。銀蜘蛛は彼女らに任せることになるわね」

650

--失われた王国、中央広場--

赤姫「ただそれもやつらがちゃんとこっちの望みどおりの組み合わせで戦ってくれたらの話だがな。地形変化使いがいたらその問題もクリアできるんだが」

勇者「……次に二代目勇者にして三代目魔王、桃鳥。彼女は不死鳥亜人と呼ばれる伝説級の存在。その特性はあの銀蜘蛛でさえ滅ぼしきれなかった超再生能力。まともな攻撃では何百年攻撃し続けたとしても倒せないでしょう……」

赤姫「倒す手段はずばり一つ。寿命を削りきる呪いの槍しかないだろう。膨大な寿命とはまた違う仕組みだからな。呪いの槍は十分有効だ。使い手はまだ生き残っているか?」

変化師「! の、呪いの槍は……槍兵が使えたが今は……」

レン「一応レンが錬成出来るにゃ。……でも使い手としては大きく劣るのにゃ。一人での運用は難しいにゃ」

勇者「……痛いわね。レンには他の仕事があるんだけど……でも背に腹は変えられない。桃鳥の相手はレンと連携が取れる仲間達に任せるしかないわね……。続けるわ。次は三代目勇者にして四代目魔王、茶肌。彼は最速の魔王と呼ばれていて」

盗賊「あ、そいつは帰り道に俺が倒しちゃった」

勇者「!……え、倒したって、こいつを?」

赤姫「ほほぅ。めんどくさいのが早々と退場してくれたな。行幸行幸」

アッシュ「帰り道に倒した……? くそ、間抜けに見えてやはり相当のやり手なのか!」

ポニテ「ど、どうなんだろ……自信無いよ……」

651

--失われた王国、中央広場--

勇者「じゃあ次、四代目勇者にして五代目魔王、腹黒。彼は最強の魔法使い。何かを改造するということに非常に長けているわ」

ハイ「あ、その人私が倒したんじゃ……?」

勇者「あ、そうだった」

ざわざわ

赤姫「うぅむ……。こいつもかなりやっかいな奴だったんだがな……具体例を出すと、一切姿を見せることなく魔王を完封しちゃったくらい」

ハイ「!! そ、そんな人だったんですか……!?」

赤姫「搦め手、変化球の類いにおいては超一級だ。……が、これも慢心と油断のなせる技かな? ほいほい人前に姿を見せるなんて生前では考えられんなー。どうせトリガーに思考を弄られているんだろうな。弱体化もいいとこだ」

ざわざわ

南の王国民「すでに二体も魔王を倒しているなんて……」

王国民「これは……思ったよりも希望はあるんじゃないか?」

勇者「次、五代目勇者にして六代目魔王、ヤミ」

ブラ「!」

ツインテ「えっ!?」

アッシュ「あいつ……?」

ポニテ「そんな……」

ブラ「……」

番犬「……」

652

--失われた王国、中央広場--

赤姫「こいつはトリガーが作り出した自分の分身だ。言わばトリガーの勇者ルートと呼べよう。一体トリガーが何を思ってこいつを作り出したのか……それは我々にはわかんない」

侍「わかんないのかよ」

勇者「彼は吸血鬼に似た特性を持つわ。エネルギーを吸収したり配下を増やしたり……。本来なら数の暴力で攻めてくるのが怖いんだけど……今はこっちの人の数が大幅に減っちゃったから吸収される人の数も少なくなる。今の状況においては他の魔王と比べてそれほど怖い相手じゃないかも」

メイド「て、てめぇ! ヤミ様を侮辱するなでございます!」

番犬「そうバウ! ヤミ様はハンデを背負っていたとしても、ここにいる人間を打ち殺すことなんてわけないんだバウ!」

レン「おい、どっちの味方にゃ」

赤姫「あー……魔王となり勇者に討たれたヤミ。それをそこの一人と一匹が、ヤミの死体に力を持たせた……」

メイド「ギクッ!」

番犬「なぜそれを……」

赤姫「私が知らないと思うてか。つまり別ルートからトリガーが引っ張ってきたんじゃなくて、ただ洗脳しているだけ、ということになる。それならばどうにかして洗脳を解いてやることが出来るかもしれないな。例えば……歌とか」

ブラ「! 歌ですか!? わ、私ヤミ様を取り戻すために歌います!」

勇者「うん。ただ……一人のパワーじゃ魔王の精神防御を抜けないと思う。セッションならあるいは、といったところだな」

アッシュ「! 吟遊詩人がいるぞ。あいつに演奏をやらせたらどうだ?」

盗賊「いや、あいつ死んじゃったって。王国勢は全滅だよ」

ツインテ「……」

653

--失われた王国、中央広場--

勇者「……次よ。六代目勇者にして七代目魔王、蝿男。こいつは回避特化のイライラする魔王よ。過去に私達の乗った船を襲ったのもこいつ」

ポニテ「! 因縁の相手じゃん!」

盗賊「ちなみにニートを作るきっかけをくれた相手でもあります」

勇者「攻略するには必中系……でいくしかないと思うわ。最初から必中スキルを連打していれば倒せると思う。ただし回避を何度も成功させちゃったら……」

赤姫「人類全滅を覚悟しないとな」

アッシュ「……強いんだか弱いんだかわからないやつだな」

レン「相変わらず魔王は規模がでかいにゃ」

盗賊「初見殺しなだけだよ、多分。アレ以来戦ってないからわかんないけどさ」

654

--失われた王国、中央広場--

勇者「次、七代目勇者にして」

ズビュル

赤姫「! 来る!!」

勇者「!」

ツインテ「……え?」







ズズズズズズズズズズズズズズズ!!

ハイ「!?」



  オオオオオオオ        オオオオオオ

          オオオオオオオ         オオオオオオ

オオオオ オオ          オオオオオオオ


オオオオ                                      オオオオ                                          オオオオオ

オオオ        オオオオオ     オオオオオオオ!!



一瞬で、辺りが夜よりも暗い闇に汚染されていく……。

655

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「! こ、この感覚!」

アッシュ「フォーテか!?」

ポニテ「……感覚は似てる……でも今までよりも寒気がする……!」

ズズズズズズズズズズ

盗賊「ち……予想より早かったな」

勇者「うん……」

ハイ「……」

オオオオォオォォオ

死者の腕があらゆる場所から生え始める。

656

--失われた王国、中央広場--

赤姫「……」

ビチビチッ

空間が裂け、そこから……

にゅるっ

フォーテ?「やぁ……皆さんお集まりのようで。パーティーでもやってたのかな?」

ぞろ

銀蜘蛛「フンフフーン」

桃鳥「なのですっ!」

通信師「そ、そんな……」

ぞろろっ!

フォーテを先頭に魔王達が現れた。

657

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「フォーテちゃん!? 良かった……無事だったんだ……」

ツインテは顔を手で覆い隠し、涙を零す。

赤姫「……いや違うよ。残念だけどフォーテなのは殻だけだ」

ツインテ「……え?」

赤姫「フォーテは、トリガーが作り出した対勇者因子を持つヨリシロだ……今中に入っているのは」

フォーテ?改めトリガー「そう、僕だよツインテ」

ツインテ「!?……と……トリガー、さん……」

ポニテ「! こいつが……」

アッシュ「トリガー……」

レン「フォーテの体を奪ったのかにゃ……」

ハイ「許せません……!」

トリガー「フォーテの精神は壊れてしまったからね。それなら有効に使わなくてはもってないないだろう?」

658

--失われた王国、中央広場--

ざわざわ

符術師「お、おいおい、いきなりラスボスのお出ましか……? こっちはまだ準備だってできてねーのに……」

魔導長(いやそれよりも……対勇者因子……? それは一体)

トリガー「ははは。みんなには悪いと思ってるけれど、僕は勇者が強くなるまで待ったりはしないんだ」

ズズズズズズズズズズ!!

闇が……世界の全てを飲み込んでいく。

護皇「ッ! なんて、力ぜよ……!」

ハイ「! と、止めないと!」

だっ!

ハイが誰よりも早く飛び出した。

勇者「! ダメ! 闇雲に突っ込んじゃ!」

659

--失われた王国、中央広場--

ひゅんっ

銀蜘蛛「ゴメンネー」

ハイ「!?」

ハイの前に銀蜘蛛が現れ、その大きな前足が振りおろされる。

ドガァァァァアァアン!!

アッシュ「!! ハイ!」

ポニテ「ハイちゃんっ!!」

トリガー「……」

しゅうう……

銀蜘蛛の足の下には潰れたハイの死体が……



盗賊「……はぁ。おいおい、とりあえず飲み会に遅れたら駆けつけ一杯でしょーが」

ハイ「……はい?」

死体が無かった。
盗賊がすんでのところでハイを抱き抱えて回避していたのだ。

660

--失われた王国、中央広場--

脳筋「駆けつけ……」

ウェイトレス「一杯?」

盗賊「あぁ、そうだ。せっかくツインテちゃん達が美味しい料理を作ってくれたんだ……。それを食べないうちに戦い始めるなんてなぁ……俺が許しても賢者さんが許さないぞッ!!」

賢者「……え、え!? ぼ、僕ですか!?」

踊子「……盗賊さんは誰かに怒る時は、自分じゃなくて誰々も怒ってたよ、っていう一文を添えるタイプの人間みたいですね~」

魔法使い「最低だな……男らしくない」

シャーマン「まぁまぁ。自分の発言に力は無いと理解してるんだ。多目に見てやろうぜ」

盗賊「なんか俺が非難の対象に!?」

蝿男「で、ででで、でも」

桃鳥「そーですねー。ツインテちゃんがいなくなってからは、料理はウェイトレスさんが担当してたから……正直、まともな料理にありつきたい、って、私思っちゃってます……」

ヤミ「……」

ウェイトレス「なっ!? まるで私の料理がまずいみたいな言い方じゃないッ!!」

魔王勇者(クソマズだもん……)

桃鳥(クソマズって私思っちゃってます……)

ウジ虫(く、クソマズ!)

ヤミ「まずい!」

ドゴォ!

ウェイトレスは真顔のヤミをぶん殴る。

脳筋「そうか? 俺は好きだけどなー! はっはっはっ!」

魔王勇者(黙れ味覚音痴……!)

わいのわいの

トリガー「……はぁ……シリアスキラー……本当にめんどくさい人だね君は。せっかくの緊迫の場面だと言うのに……」

いつぞやコメントでいただいたシリアスキラー、盗賊の常時発動スキルとして勝手に採用させていただきました!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

次回は……水曜とか、かな?

こんばんは。
寝るまでは水曜日ナンデスヨ。

それでは投下していきますね。

661

--失われた王国、中央広場--

トリガーは深くため息をつく。

トリガー「いいだろう。この流れで決着をつけるのは僕としても本望じゃないしね。それに……少し話をしたい人もいるしね」

赤姫「……」

勇者「一時停戦……って考えていいわけ?」

トリガー「うん。誘って貰っているわけだし? この最後の晩餐に僕らも参加させてもらうよ」

賭博師「う、うお……」

医師「魔王がバーベキューに参加って……」

ざわざわ

難民「い、いくらなんでも敵側と仲良く飯なんて食えるか!!」

双方に動揺が広がっていく。

662

--失われた王国、中央広場--

パンっ

盗賊が手を合わせる。

盗賊「おし、じゃあトリガー坊主、ちょっとこっち手伝ってくれ」

トリガー「……へ?」

盗賊「いやちょっと肉焼く人間が不足しててさ。怪我人ばっかでやんなっちゃうんだよ」

てへへと笑う盗賊。

トリガー「……ん?」

ぎゅっ

そして有無を言わさずにトリガーを引っ張っていく。

トリガー「ん、ん……? もしかしてそれを僕に……やれって?」

盗賊「うん。代わりにうまい飯食わせてやるからさー」

トリガー「……魔王を統べる僕に肉を焼くのを手伝えと言うのか……」

トリガーはまさかの絶望の表情。

663

--失われた王国、中央広場--

たったったっ

二人を見送る勇者とレン。

勇者「……レン、これが最後のチャンスよ。指輪の複製を急いで」

レン「わかったにゃ。ちょっと手先の器用なのもらっていくにゃ」

ちょいちょい

レンは手で合図をし、人を誘って塔の中に入っていく。

ざっ

魔王勇者「……」

そして、一人になった勇者の前に魔王勇者が現れた。

664

--失われた王国、中央広場--

勇者「……」

魔王勇者「……」

勇者達は見つめあって立っている。

魔王勇者「……本当なら今すぐにでも偽物を消し去りたいけど……今は押さえてあげるわ……」

勇者「……そうね。私達の決着はしかるべき流れの中で……」

ピリピリ!

侍(い、一触即発の空気でござるよ……)

符術師(あんな化け物達の戦いには巻き込まれたくねぇなぁ……)

魔王勇者「……」

勇者「……」

盗賊「おーい貧乳ー」

勇者、魔王勇者「「!?」」

がばっ!

勇者と魔王勇者は同時に胸を隠した。

貧乳、魔王貧乳「「ひ、貧乳って言うな!!」」

そして同時に叫ぶ。

侍「あらかわいい」

665

--失われた王国、中央広場--

ブラ「や、ヤミ様……」

ヤミ「……」

ブラはヤミに近づいていく。

ブラ「ヤミ様……ヤミ様ですよね?」

ヤミ「……」

ヤミはゆっくりと眼を開く。

ブラ「ヤミ様……やっと……やっと!」
ヤミ「誰だお前は」

ブラ「……え」

ヤミは家畜でもみるかのような眼でブラを見ている。

666

--失われた王国、中央広場--

メイド「あの目付き……やっぱり」

番犬「あの頃に、戻ってしまっているバウ……」

ブラ「ヤミ、様……あ、あの」

ヤミ「俺は六代目魔王、ヤミだ。気安く人間が話しかけていい存在ではないぞ」

ギン!

ブラ「ぶっ」

ヤミの放つプレッシャーがブラを吹き飛ばした。

ふわ

やみ「!? ままー!」

メイド「! スキル、雷動!」

ギャギャギャ!

メイドは高速で駆け寄ってブラを抱き止める。

667

--失われた王国、中央広場--

メイド「大丈夫でございますか?」

ブラ「あ……メイドさん……」

メイド「……ヤミ様がブラにこんなことをするなんて……本当に記憶をいじられてしまったようでございますね」

メイドはヤミを睨んだ。

ヤミ「……」

番犬「間違いないバウ。あの目は全てを狂わされ、魔王になってしまった時のあの目によく似ているバウ……」

ざっざっ

ブラ達を守るように番犬がやってくる。

ヤミ「……我がしもべらよ、なにゆえそんなものの身を案じている? なにゆえ主である俺にそんな目を向けている?」

668

--失われた王国、中央広場--

メイド「……お言葉ですがヤミ様。ブラを大事になさらないヤミ様など、私達のヤミ様と認めるわけにはいきません」

ヤミ「……なんだと? 俺は俺だ、何を言っているんだ?」

番犬「すまないバウ、ヤミ様。我らもちょっと前まではそんなこと気にもしなかったんバウが……ブラと生活をしていくうちに思い出してしまったのバウ。我らの愛したヤミ様は、お優しいお方だったということに」

番犬は悟ったような顔をしている。

番犬「今のヤミ様は我々のヤミ様とは違うバウ……。そして元の正気なヤミ様を取り戻すためならば、我らは貴方に弓引く覚悟があるのだバウ」

ヤミ「ほう……しもべであるお前達が、この俺と戦うというのか?……正気でないのは一体どちらの方だ?」

ヤミのプレッシャーは強大で、三人の体力をじわじわと削っていっている。それでもメイドと番犬の決意の目は変わらない。

ブラ「お二方……」

ヤミ「……」

ヤミはブラとメイドと番犬を眺めている。
そして

ヤミ「……ふん。愚かな者共よ……残り僅かの生を楽しんでおけ」

ザッザッ

ヤミはその場を去っていった。

669

--失われた王国、中央広場--

がくっ

ブラ「っ……ヤミ様……」

ヤミが見えなくなってからブラは崩れ落ちた。

ブラ「ヤミ様……ヤミ様……」

ててててっ

やみ「ままー? やみはここにいるよー? なんでないてるのー?」

メイド「……」

ブラ「うっ……うぅ……」

ぽろぽろと涙を零すブラ。

ぱしっ

そのブラの頬をメイドが軽く叩いた。

ブラ「」

メイド「……泣いてる場合か、でございます。ヤミ様の洗脳を解く可能性であるとすれば、それはブラの歌声だけなのだと……彼らもそう言っていたでございましょうが」

ブラ「」

メイド「お前がしっかりしなくては困るのでございます。ヤミ様を取り戻す作戦は、全てお前の歌にかかっているのだから……」

べろり

番犬はブラの顔を舐める。

番犬「期待しているバウ。我らの主のために……我らのために」

ちびメイド「あー! ぺろぺろしてるでございますですー!」

やみ「ぼくもぺろぺろー!」

ブラは涙をぬぐった。

ブラ「……はい!」

670

--失われた王国、中央広場--

盗賊「ちょっと料理遅くない!? みんな待ってんだけど!」

じゃーじゃー

トリガー「む、む……申し訳ない。今チャーハンが出来上がるから……って、なんで僕がチャーハンまで作ってんのさ」

おぉぉおおおぉぉお

トリガーは死者の腕を使って大量のチャーハンを作っていた。

トリガー「てかバーベキューなのにチャーハンて」

盗賊「つべこべゆうなよ! みんなが食べたいっていうんだから仕方ないんだよ!」

バンバン!

テーブルを叩く盗賊。

トリガー「頼む。頼むからもう少し僕を恐れてくれないかな? 仮にも僕は、この世界を作ったり管理したりこれから壊そうとしている存在なんだよ?」

盗賊「えー……でも料理遅いし……」

トリガー「え、えー……」

トリガーはもう自分でもどうしたらいいのかわからなかった。

671

--失われた王国、湖--

ワー、ワー

お祭り騒ぎの広場から少し離れた場所に湖がある。

トリガー「ふー……やっと開放されたよ……」

そのほとりをトリガーはとぼとぼと歩いている。肉と野菜が山盛りに乗せられたお皿を持って。

トリガー「お」

赤姫「……よっ」

湖の前のベンチには赤姫が座ってトリガーを待っていた。

トリガー「……君に会ったら最初になんて声をかけようか、そんなことを何年も悩んだことがあったけど……やぁ、久しぶり。どれくらいぶりだろうね」

赤姫「2000と14年ぶり、かな」

トリガー「そんなになるのか……僕はやることが多かったからな……次から次へとやることばかりで……あっという間だった」

赤姫「私は退屈だったよ。観測することくらいしかやることが無かったからな」

トリガー「……」

672

--失われた王国、湖--

ワー、ワー

赤姫「お前に決して滅ぶことの無い体に変えられたせいでな。まぁ貴重な体験ではあったよ」

トリガー「……随分性格変わったんじゃない?」

赤姫「お前こそ……随分落ち着いた……危うさすら突破してしまったんだな」

トリガー「? 何を言ってるのかわからないけれど……とりあえずこれでも食べようか。せっかくくれたものだし……赤姫様もお一ついかがですかな?」

トリガーはお皿に視線をやった後、執事のような振る舞いをする。

すっ

赤姫「ふん……お前が執事だった頃が懐かしいな」

トリガー「そう……だね。いまや僕は君の憎き敵となってしまった……」

赤姫「敵? 違うぞ、私はあの時言っただろ?」

トリガー「……?」

トリガーはあの時に該当する言葉をメモリの中から探していく。


   
     赤姫「私達はこれからは主従じゃなくなるんだよ? 友達なんだからね」



トリガー「……はて……」

おそらくこれだろうというものを見つけたのだが、トリガーはシラを切った。

赤姫「私は今でもお前を友達だと思ってる」

のに言われた。

673

--失われた王国、湖--

ワー、キャー

トリガー「……」

赤姫「……」

トリガー「僕には勿体ないよ」

トリガーはそう言って串に刺さった肉に噛み付いた。

じゃり

トリガー「……裏側真っ黒こげじゃん」

赤姫「どれ、私も」

赤姫も手にとる。

がり

赤姫「……誰だろうなぁあ焼いたのこれ。最後の最後で詰めが甘い」

674

--失われた王国、湖--

ワー、ギャー

トリガー「赤姫」

赤姫「ん?」

トリガー「僕は十個目の魔王の骨を手に入れる」

赤姫「」

トリガー「あの時以上の力を手に入れ、今度こそ理想の世界を作る。僕に滅ぼされずに、君達が安全に幸せに生きていける世界を」

赤姫「十個目、だと?」

トリガー「僕も当初は九個でやるつもりだった。でも、長い年月の中で思考が変わったんだ」

赤姫「……九個なら別ルートの勇者のを使えばいいと思っていたが……なるほど、この世界の勇者を十個目にする予定なのか!」

トリガー「……」

赤姫「あいつにこだわりでもあるのか? それとも別ルートから魔王を引きずり出す力はもう残ってないということか?」

675

--失われた王国、湖--

すっ

トリガーは返答せずに無言で立ち上がる。

トリガー「……ご馳走様。赤姫、久しぶりに君と喋れて楽しかったよ」

ざっざっ

トリガーは広場に戻っていく。

赤姫「トリガー! 私は……私達はお前を必ず止める」

トリガー「……」

赤姫「……ん? 広場の方が妙に明るい……?」

振り向いてみて初めて気がついたことだった。

トリガー「僕を止めることなんて、出来やしないよ」

ワー、ギャー!

赤姫「!」

トリガー「圧倒的なまでの戦力差に加えて……君達は対抗策を練る時間も無かったんだ」

ワー、ギャアアアアーー!!

赤姫「!! 広場が!!」

トリガー「さぁ、生き残っているものは後何人かな?」

676

--失われた王国、湖--

赤姫「トリガー! お前!!」

トリガー「僕は魔王だよ? 悪の代名詞たる魔王が奇襲をかける……当たり前のことだと思わないかい?」

赤姫「……!」

ダッ!!

赤姫は広場に走る。

トリガー「……見に行ってもいいことなんてないのに」

ざっざっ

トリガーはゆっくりとその後を追っていく。



--失われた王国、中央広場--

ざざっ!

赤姫「!!」

ごぉおぉおおおぉお!!

???「……」

燃える広場。
その中心には黒いフードを被った人物がいた。

677

--失われた王国、中央広場--

???「……」

ぴちゃっ

黒いフードの人物が握るナイフから血が滴っている。
辺りには無残にも斬殺された死体が転がっている。

勇者「赤姫!」

赤姫に気づいた勇者が声をかけた。

赤姫「勇者! 状況はどうなっている!? 魔王達につけていた見張りは何をしていた!?」

勇者「赤姫違うわ、これは魔王が起こしたことじゃないのよ」

赤姫「……何だと?」

勇者「魔王は今もちゃんと監視がついてるわ。こいつは……普通に結界を解除してここに進入してきたのよ!」

赤姫「……そんなバカな話があるか。魔族にこの結界を解除することは出来ないはずだぞ……」

勇者「えぇ。だからあれは人間なのよ」

678

--失われた王国、中央広場--

ひゅっ

黒いフードが音も無く駆ける。

勇者「!」

ぎぃいいん!!

勇者は迫るナイフを弾き、返しの刃で首を狙うのだがもう一本のナイフで防がれてしまう。

ぎぃんぎぃんぎぃいいん!!

熊亜人「げほっ……」

代表「熊亜人君を一撃……? 一体なんなんだ奴は……」

熊亜人を介抱している代表は、目の前の惨状をありえないものでも見るかのように眺めている。

魔導長「どいて勇者さん!」

勇者「!」

きぃいいいいん!!

魔導長「捕らえるなの! 拘束魔法レベル4!」

ばしぃん!!

強力な拘束魔法が黒いフードを捕らえる。

679

--失われた王国、中央広場--

???「……解除」

ばしゅっ

魔導長「!? 簡単に解除されちゃったの!?」

勇者(この動き……)

ひゅひゅ!

???「……」

ぎぃんぎぃいん!!

気を抜けば一瞬でやられる。勇者でさえそう感じさせるほどの使い手……。
あの剣豪よりも鋭い攻撃……。

盗賊「風属性移動速度上昇魔法、レベル4!」

勇者「!」

???「!」

ひゅっ、ぎぃいん!!

横から割り込んできた盗賊が黒いフードを吹き飛ばした。

ゴロゴロゴロゴロゴロ!

盗賊「どけ勇者! お前は魔王達から眼を離すな!! こいつは俺がやる!」

680

--失われた王国、中央広場--

すたすた

トリガー「なんだ。魔王達は僕の言いつけどおり待機してたんだ? てっきり命令なんて破って、一緒に暴れてるものだとばかり思っていたよ」

そこにトリガーが現れる。

桃鳥「もぐもぐ。だって食べ物美味しいし、どうせなら満喫しちゃおうかなって私思っちゃってます」

脳筋「右に同じく」

二人はハムスターのように頬に食べ物を詰め込んでいた。

トリガー「はぁ、やれやれ……」

トリガーは、盗賊と黒いフードの男が対峙しているのを見る。

勇者「と、盗賊、気をつけて! もしかするとそれは……」

じゃり……

盗賊「……あぁ、なんとなく嫌な予感はしてるよ。まさか今以上に悪い展開になるとは思わなかったんだけどなぁ……」

???「……」

じゃり……

間合いを計る二人。

トリガー「ふふ。盗賊。実は僕は君を結構評価してるんだよ。君は才能も運もからっきしな存在だ。なのに運命を切り開いていこうとする力は中々のものだ……正直骨が折れる」

盗賊「……」

トリガー「だから君の対抗策として特別に用意させてもらった」

???「」

ひゅっ、ぎぃん!!

黒いフードが斬りかかり、盗賊がナイフで受けとめる。

ふわっ

生じた風でフードが取れる。

するっ

勇者「!」

盗賊「……うーわ……まじかー……」

フードの下から現れた顔、それは……

トリガー「名を『盗賊王』という。全てのルートから探し抜いた、君の最強の姿さ」

???改め盗賊王「……」

サーバーが落ちていなければ四周年目にこれをやろうと思っていたのですがずれてしまいました。人生上手くいきませんね。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

>>136 乙!
現在の魔王側戦力は
トリガー、銀蜘蛛(二代目魔王)、桃鳥(三代目魔王)、
ヤミ(六代目魔王)、蠅男(七代目魔王、現在ウジ虫?)、
脳筋(八代目魔王?)、大魔王(九代目魔王)、魔王勇者(十代目魔王)、
ウェイトレス、盗賊王、ウェンディゴ、カトブレパス、ニンフ
かな?
盗賊は本来の盗賊(現在ニート)と魔族化したウェンディゴ、別ルートの盗賊王と三パターンいるのか
どれも空気読めないのは変わってなさそうだけどwwwwww
三人の対決は面白そう
盗賊王は空気を壊すムードブレイカーってところか

こんばんは。たまにはちゃんと月曜日の間に……

現在の魔王側戦力は
・トリガー(フォーテの肉体)
・銀蜘蛛(二代目魔王)
・桃鳥(三代目魔王)
・ヤミ(六代目魔王)
・ウジ虫(七代目魔王、蝿男)
・ウェイトレス(八代目魔王、大魔王)
・脳筋(九代目魔王、勇者募集の魔王、大勇者)
・魔王勇者(十代目魔王)

盗賊王、ウェンディゴ、カトブレパス、ニンフ、あと戦えないけどQ、ですかね。

それでは投下していきます。

681

--失われた王国、中央広場--

勇者「全てのルートの中で……」

盗賊「最強の……俺?」

盗賊王「……」

ひゅばっ!!

盗賊「っ!」

ぎぎぎぎぎぎぎぃん!!

盗賊王がナイフを振るう。素早く洗練された動きだったが、その攻撃が盗賊には予測できていた。

盗賊(わかる……その次は、こうだろ?)

ぎぃん!!

盗賊王「!」

盗賊(ち……自分だから癖とか思考が限りなく似てやがる……つまり……どちらも裏をかくことが出来ないってことねー……)

682

--失われた王国、中央広場--

ぼぉおおぉお……

燃える広場を背景に、二人の盗賊がナイフを構えて対峙している。

盗賊王「……」

盗賊「おいおい、真面目すぎるだろその顔。俺そんな顔して戦ったことあったかなー」

盗賊王「……」

盗賊「……無視かい」

ぽたっ

盗賊「……あれ?」

盗賊は気づく。いつのまにか左手の甲を切り裂かれていたことに。

盗賊(さっきの、攻防でか? 全部見切ったと思ったんだけど……)

盗賊王「……」

ちゃき

盗賊王は再びナイフを握りなおし、

ひゅ!!!!

盗賊「!!」

ぎぎぎぃん!!

盗賊に斬りかかる。

683

--失われた王国、中央広場--

ざわざわ

たくさんの人が見守る中で盗賊と盗賊王が斬り合っている。

勇者(くっ、こんな状態だしみんなでかかれば簡単だけど)

赤姫(まだ魔王が動いていない……仮にも今は停戦中……あれがトリガーの手のものであることはわかりきったことだが……)

魔導長(今は盗賊さんに任せた方がいいの……?)

ぎぎぎぎぃんぶしっ! ぎぎぎずばっぎぎぃん!!

盗賊「つっ!!」

互角の戦いを続けているように見える二人……だが、

ずばっ!!

盗賊「ッ!!」

斬り合えば斬り合うほど、少しずつ盗賊の体に傷が増えていく。

盗賊「づっ!!」

ぎん、ぎぎぃん!!

トリガー「言っただろ盗賊君。彼は最強の君自身なんだと。自分のことだから思考や動きの癖はわかるだろう。でも彼は戦いの経験が君よりも豊富なんだ。そして何より若い……それらが少しだけ、だが確実に君の全てを上回っている」

684

--失われた王国、中央広場--

ぎぃん!! ぶしっ!!

盗賊「いっつ!」

盗賊の肩が切り裂かれる。

勇者「! 盗賊!!」

盗賊(まいった、これはきついわ……どんなルートを歩んできたのか知らないけど、こいつ全然遊びってもんが無い……それに肉体は全盛期っぽいし……おっさんにはきついですわぁ……!)

盗賊王「……」

ぎん、ぎん! ぎぎぎんっ!!

盗賊王の攻めが一段と鋭くなり、盗賊は少しずつ後退していく。

ぎぎん! 

盗賊「ッ」

ぐらっ

盗賊が一瞬体勢を崩した隙を盗賊王は見逃さない。

685

--失われた王国、中央広場--

盗賊王「風属性攻撃魔法、レベル3」

びゅおおおおぉおおお!!

盗賊を狙う風の魔法。

ダッ!!

それを盗賊は右横に跳躍してかわす。

盗賊王「……」

しかし、それも読まれていた。

盗賊(はんっ、ここで追撃をしてくることなんてこっちだってわかってるさ!!)

盗賊はナイフで防御しようとするのだが

ズバッ!!

その速さに間に合わない。

盗賊「ッ! がっ!!」

ずびっ

盗賊の太ももを盗賊王のナイフが深く抉る。

686

--失われた王国、中央広場--

ぶしゃぁ!!

盗賊「づう!!」

だっ!!

たまらず盗賊は飛びのいて後退する。

びちゃ、びちゃちゃっ

盗賊「はぁ、はぁ、はぁ……」

盗賊王「……」

左足から夥しい量の出血をし、息も上がっている盗賊に対し、涼しい顔で構えている盗賊王。

勇者「盗、賊……」

トリガー「どんな強者にでも付け入る隙というものは存在する……君ならよくわかるだろう。一回りも二回りも君より強い化け物達を、工夫することで退けてきた実績があるんだから……」

盗賊「……」

687

--失われた王国、中央広場--

トリガー「でも自分が相手ならどうだい?」

シャッ!!

盗賊王が駆ける。

ぎぃん!!

盗賊(っ、この体勢からナイフによる二撃目を俺ならやらない、俺なら)

どがっ!!

盗賊王の膝蹴りが盗賊の顔面を打つ。

盗賊「ぐがっ……!」

鼻の骨が折れ、前歯がかけて鼻血も噴出。盗賊は前のめりで地面に倒れこもうとする。

盗賊王「」

追撃のチャンス。だが盗賊王は一瞬待った。

ひゅば!

盗賊「!」

その二人の間にできた空間を盗賊のナイフが通る。

盗賊王「……」

盗賊王にはカウンターが来ることがわかっていたのだ。

トリガー「最強の自分に勝つことは、魔王に勝つことよりも難しいのさ」

688

--失われた王国、中央広場、塔--

わーわー

ツインテ「……なんだか広場の方が騒がしいような……ッ!?」

レン「ツインテ、今は指輪の複製が第一にゃ。気になるのはわかるけど手を動かして欲しいのにゃ」

がが、ががががー!

ツインテ「わ、わかってます……わかってますけど……と、盗賊さんが、戦ってます……」

ポニテ「!? パパが!? なんで!?」

だっ

二人は窓から顔を出して広場を見る。

盗賊「はっ、はっ」

盗賊王「……」

そこには何者かと戦っている血だらけの盗賊の姿があった。

689

--失われた王国、中央広場、塔--

ぎぎん!!

足を引きずりながら盗賊は戦う。

盗賊「うっおおおおお!!」

くんっ

盗賊はつい癖でフェイントを入れてしまう。だがそれがフェイントであることなど、盗賊王には当たり前のように見抜かれている。

ずばっ!!

盗賊「!!!!」

盗賊王のナイフが盗賊を袈裟斬りにする。

勇者「と」

盗賊王「……」

魔王勇者「……」

どさ

勇者「盗賊ーーーー!!」

690

--失われた王国、中央広場--

ぶしゅっ!! ぼたっ、ぼたっ

盗賊「がっ……!」(くっそ、深い……!! さすが俺。自分の防御力の薄さを知りつくしたいい攻撃だぜ……)

ぐぐぐ

盗賊は上体を起こすのが精一杯といった感じで、立ち上がりはしなかった。

盗賊王「……」

勇者「と、トリガー! 止めさせて! 私達は今停戦状態のはずでしょ!?」

叫びながら勇者は思う。

トリガー「……あぁそんなことも言ってたっけ。なら停戦はもう終わりにしようか」

勇者「」

なんて間抜けなことを口にしているのかと……。

トリガー「ふふ」

相手は、魔王。

691

--失われた王国、中央広場--

ざっ

脳筋「なんだ、もうやっていいのか?」

がしゃんがしゃん

銀蜘蛛「チェー、セッカクオイシソーナ、オイルミツケタノニー」

ささささ

ウジ虫「う、うひ、うひひ」

ぱたぱた

桃鳥「あっ、いいこと思いつきました! さっさとお掃除しちゃって私達だけでバーベキューの続きをしちゃえばいいんですよ!」



ヤミ「……」

すたすた

ウェイトレス「色々レシピも教えて貰ったし、料理のレパートリーがまた増えたわ。みんな楽しみにしておくんだね!」

えーーー? っと魔王達は一斉に不満を漏らす。

ざり

魔王勇者「……なら、もうやっていいのね? トリガー」

692

--失われた王国、中央広場--

赤姫「うっ……」

魔王達がぞろぞろと広場に集まってくる。

トリガー「うん、そうだね……」

バッ!!

魔導長「ッ!」

護皇「はぁ……」

元賢帝「結局こうなっちゃうのねぇ……」

射王「まだこのことを知らないやつらにも教えないとな」

周囲の人間も戦闘態勢に入る……のだが、

オオォオオォオオオォオオ

終結した魔王達。
彼らが集まるだけで凶悪な負のオーラは存在感を増し、

南の王国難民「うっ」

西の王国難民「ぐ、え……」

ばたばた

ただの人間は近くにいるだけで倒れていく。

693

--失われた王国、中央広場--

トリガー「じゃあ、長きに渡ったこの戦いも終わりにするとしようか」

ズっ!!

魔王達が戦闘状態に入ろうとすると、

魔導長「!」

元賢帝「お、押される!?」

護皇「まるで、分厚い壁があるようぜよ……」

射王「……!」

変化師「お、おで」

溢れた魔王の魔力が周囲を押しつぶし始める。

勇者(完全に空気が飲まれてる……! こんな、こんな心構えじゃ……やられちゃう!)

ズズズズズズズズズズズズズ!!!!

694

--失われた王国、中央広場--

盗賊「ちょっと待ってってばさ」



盗賊王「……」

トリガー「……」

勇者「……へ」

盗賊の気の抜けた声が広場に響く。

盗賊「今さー、せっかくもう一人の自分との対決っていう面白いことやってんだよ? せめてこの対決が終わってからでいいんじゃない?」

よいしょっ、っと言って盗賊は立ち上がる。まるで生まれたての小鹿のようにぷるぷると震えながら。

盗賊「あいたっ、いたたっ……ちょっごめん、たんま、手当てしていい?」

盗賊は盗賊王に向かって言う。

魔導長「……」

闇の気配が雲散霧消していくのがわかる。

盗賊「……大体さ、なんらかの代償払ってまでこいつを別ルートから引っ張り出してきたんでしょ? ならこの決闘がちゃんと決着つくまで見ておかないと勿体ないんじゃないの?」

トリガー「……いや、別にそういうのはどうでもいいっていうか」

695

--失われた王国、中央広場--

盗賊「もったいないよー。海外から有名選手呼び出しておいて没収試合で終わらせちゃうようなもんだよ? チケット買ってたファンは怒るよ? 払い戻しだよ?」

トリガー「いやチケットとかファンとかそういうの意味わかんないし……」

盗賊「おい俺。俺も不完全燃焼とかやでしょ?」

盗賊王「……」

さすがに無言の盗賊王。

盗賊「ほらそこの魔法少女! コーラとポップコーンをトリガー君に渡してあげて!!」

魔導長「え? わ、私?……わかったなの」

たたたたたた

魔導長は屋台に急いで走っていってコーラとポップコーンをトリガーに渡す。

さっ

魔導長「ど、どうぞなの」

トリガー「あ、ありがと……」

ぽかーんとしている魔導長とトリガー。

盗賊「ほら変化師君、ぼさっとしてないで観客席作って!」

変化師「……お、おで、地形変化系のスキルは、無い!」

盗賊「かいりきでどうにでもなるよ!!」

変化師「お、おで!?」

ずずずずずずず

なった。

696

--失われた王国、中央広場--

勇者(ま、毎度のことだけど……)

シャーマン(強引過ぎる……)

踊子(こんなんでなんとかなるのかと思っちゃうんですけど~……それでも)

赤姫「……空気を変えてしまうのが主人公か……」

みんなはなんだか知らないけれど盗賊を見ている。

トリガー「……」

医師「っと……今はこの程度しか処置できないですけど、どうですか?」

盗賊「ん……ありがとう。これなら大分ましだ」

だんっ!

盗賊が怪我した足で地面を蹴る。

ぶしゅっ

医師「やさしく使ってください!!」

697

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「ふーん……」

ヤミ「あれがトリガーが言ってた力か」

脳筋「こっちの俺もあいつにやられたらしいけど、まぁ、理解できるかな」

ウジ虫「ひひひ」

桃鳥「まぁ……別にいっか、って気持ちになっちゃいますね!」

銀蜘蛛「ネーネー、マダジカンアルナラ、オイルノミニイッテキテイイー?」

魔王勇者「……」

トリガー「……」

しばらくトリガーはぼーっとその様子を眺めていた。そして、

トリガー「……はぁ。困った困った……長いこと準備をしてきた僕としては中途半端な気持ちでリセットしたくないんだよ……それをこんなふざけたノリにして……」

どさ

トリガーは客席に腰を下ろす。

トリガー「……仕方ない。これは契約だ。君達の決闘の決着がつくまで手を出さない。でもそれが終わったら問答無用でリセットするからね? 二度目は無いよ?」

勇者「!」

ざわ!

盗賊「オーケーだ。恩に着るよトリガー」

トリガー「……とはいっても、今の君に勝てる見込みがあるのかな?」

698

--失われた王国、中央広場--

ざわざわ

盗賊「悪い、待たせたな」

盗賊王「……」

腕組みをして待っていた盗賊王に話しかける盗賊。

盗賊王「くっくっ……」

盗賊王が笑う。

盗賊「お、やっと表情が変わったな」

勇者「盗賊……」

変化師「……」

ムードに流された勇者と変化師はなぜかチアの格好をしている。

盗賊王「まったく茶番も茶番だ……くだらない」

盗賊「そういうなよ。てか一人だけシリアス気取れると思うなよ? お前だってさっきまでは無口だったんだぜ? それが喋らずにはいられないくらい雰囲気に飲み込まれちまってるのを気づいてるか?」

盗賊王「……」

盗賊王は腕組みを解く。

盗賊王「俺は……俺のそういうところが一番嫌いだったんだ」

699

--失われた王国、中央広場--

ぎいいいいいいいいいん!!

盗賊「ぎっ!!」

盗賊王「俺は貴様を殺す……そして勇者と決着を付ける!!」

勇者「!」

魔王勇者「!」

ぎんぎぎいん!!

盗賊「なるほど、それがお前の戦う理由か……」

雰囲気を変えてみせた盗賊だったが、依然として実力差は変わらず、大ダメージまで受けている盗賊が盤面を打開することは厳しい。

ぎんぶしっ!

盗賊「づっ!」

勇者(盗賊が……最後の時間稼ぎをしてくれてる……!)

勇者は汗ばんだ手でポンポンを握りしめる。

トリガー「そういえば君、もう四十台だよね?」

700

--失われた王国、中央広場--

ぎぎぎぎぎん!!

盗賊王「風属性対単体攻撃魔法、レベル2!」

盗賊「スキル、透視眼!」

ぎぃいん!!

護皇「……ッ……」

二人の戦いを見て気づかないうちに拳を握り締めている護皇。

ぴくん

ウィトレス「ん……?」

何かの反応を感じたウェイトレスは塔の方に視線をやる。

ウェイトレス「これ……私の指輪か。トリガー、どうやら面白いことをやってるみたいだよ」

トリガー「ん? あぁ、気づいてるよ。後ろの塔でしょ?」

ウェイトレス「あれ知ってた? 止めないの? みえみえの時間稼ぎじゃん、契約なんて反故にしたっていいじゃない」

トリガー「うん。まぁ……僕らの勝利が99.9%から99%に落ちる程度のささいなことだよ。最後の悪あがき、させてあげるさ」

トリガーはポップコーンを口に運ぶ。

ウェイトレス「ふーん……」

蝿男はばればれでもまだ言うべきじゃなかったかも……orz



色々過去の見返して見ると、設定が食い違ってるのがたくさんあって頭を抱えたりしてます。
質問に答えた時はその流れで作っていたんですが、後にこっちのほうが面白いよな、って思って設定付け足しちゃったりすると……。
長い期間書くのは難しいですね。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すいません、急ぎの用事が入ってしまったので水曜辺りに投下しに参ります。。。

すいません遅くなってしまって……。


アッシュvs盗賊王についてコメントがあったので少し。

Q・盗賊王とアッシュがやったらどうなるの?
A・アッシュがスキル人殺しを使ったらいくら盗賊王でも瞬殺されてしまいます。ただ同スキル持ちの秘書とは違いスキル発動までにタイムラグがあるので、発動前までに勝負を決めれたら盗賊王の勝ち、無理ならアッシュの勝ちって感じですかね。


それでは投パンツ履いて下さい。

701

--ハイちゃんの前回までのあらすじ--

ハイ「魔王が攻めてきたんですけど停戦になりました。それで向こうが停戦の約束を一方的に破ろうとしてるんですが、こちらとしてはまだ準備が出来ていないので出来る限り時間を稼ぎたいんです。現段階ではあっちの方が強いわけですし、全ては向こうの匙加減一つ……。攻撃してくるから応戦したのはやまやまなんですが、全員で手を出したら本格的に開戦になっちゃうんじゃないか、っていう不安がありますし、とにかくうやむやな感じで対応に困ってる今です」

702

--失われた王国、中央広場--

ギギギギギン、ダン!

盗賊「がはっ!」

弾き飛ばされ地面を転がる盗賊。あれから一撃たりとも盗賊王にダメージを与えていない。

盗賊(まっじぃ……もう時間稼げねぇぞこれ)

盗賊王「……ち、しぶといな」

ギィン!

符術師「なにやってんだよ、もっと魔法とかスキル多用した方がいいんじゃないのか!?」

侍「いや……」

賭博師「どんな策でも見破られちまうんじゃ、結局魔力の無駄にしかなんねぇと思う。純粋に攻めていった方が、まだ無駄なく済むのかもな」

703

--失われた王国、中央広場--

盗賊「はっ、はっ……うーん、まいったなぁ……おい俺、一体どんな人生送ってきたらそうなるんだ?」

盗賊王「……こんな世界でぬるく生きてるお前にはわからん」

ギィン!

盗賊「は、はぁ!? こっちだって色々あんだよ悩みが! 自分だけが辛いとか思うなよ!?」

ズバッ!

盗賊「痛い!」

ボタタッ……

もはや盗賊は立っているのがやっと……いや、立っているのが不思議なほどに痛め付けられていた。

盗賊王「終わりだ」

キィィン!

盗賊「!」

盗賊王の魔力のほとんどがナイフに込められる。

704

--失われた王国、中央広場--

盗賊王「トリガー。約束はわかってるな? こいつを倒したら俺は勇者と戦う。世界を滅ぼすのはその後だ」

トリガー「……わかってるさ、約束しよう。さっきみたいな軽はずみなことはしないさ」

バチバチ!

盗賊「へ……この上奥義でくるってか。もう俺瀕死なのによー」

盗賊王「貴様の顔は不愉快だ。粉々になって消えうせろ」

盗賊「……俺の顔はお前の顔だよ?」

バチバチバチ!

魔導長「っ。魔力の総量自体は大したことないけれど、とても練り上げられたいい魔力なの……」

護皇「あぁ、あれを盗賊の防御力で受けることは不可能ぜよ」

元賢帝「スピード的に避けることも出来ない……万事休すねぇん」

705

--失われた王国、中央広場--

盗賊「……仕方ないね!」

盗賊王「奥義」

ダッ!!

盗賊王が駆ける。そして避けることの出来ない一撃を放つ。

しばっ

盗賊王「盗賊ブレエイイイイイドオオオ!!」

盗賊「」

ドギャシャァアァァアァアァアァアァアァアァアァアアァン!!

勇者「と、盗賊ーー!!」

叫ぶ勇者と吹き荒れる魔力風。

……ぎし

盗賊王「!!」

706

--失われた王国、中央広場--

盗賊「……」

ギリギリギリギリ!

盗賊王の奥義は、不可視の障壁によって防がれていた。

盗賊王「な!? 俺の奥義を……受け止めただと!?」

ぶぅん

盗賊「空間設置魔法罠、ディフェンスタイプ」

盗賊王「!?」

盗賊「……これの防御力は相手の放った攻撃力に依存する。だからいくら強くても、正面突破は無理だぜ」

707

--失われた王国、中央広場--

盗賊王「く、空間設置魔法罠……だと? それは魔力不足で俺には使用出来ない技のはずだ……それを……」

盗賊「あぁ、そうだよ。魔族にでもならない限り、凡人である俺が一人で使えるような技じゃない。それはお前も知ってる通りさ」

ブゥン……

盗賊王の奥義を形成する魔力が消滅すると同時に障壁が消えていく。

盗賊王「……お前」

盗賊「もう少し待ってたかったんだが……奥義、共有・勇者の型」

バチバチバチィ!!

盗賊王「その、力、は」

かつて盗賊王が喉から手が出るほど欲しかった力……。

盗賊「俺みたいな凡人は努力したところであんなもんよ。未だに一人じゃなーんも出来ないしな」

盗賊王「ゆう、しゃ、の」

盗賊「でも、俺は一人じゃねぇ……俺はみんなに力を借してもらって生きてきたんだ」

トリガー「……」

708

--失われた王国、中央広場--

ざっ

盗賊王「……ぐ」

大半の魔力を失った盗賊王と、ぼろぼろではあるが勇者の力を持っている盗賊。

ざり

盗賊王は無意識に一歩下がる。

盗賊「……どうせお前、ずっと一人で戦ってきたんだろ? じゃなきゃそれ、到底たどり着けない力だ……」

ざり、ざり

盗賊「ずっと頼らずに生きてきたんだな……確かにお前強いよ。でも、それは一人の力でしかない」

盗賊王「スキル、マジックドレイン!」

ぼぅ

盗賊王のナイフがほのかに光る。
魔力を使いきった後、魔力を自力で補充出来るようにわざと残していたのだ。

盗賊「……それも、誰かに回復してもらうっていう、選択肢は無かったのか?」

709

--失われた王国、中央広場--

盗賊「一人で戦うお前と、みんなと一緒に戦う俺。いくらお前一人が強くたって、勝てるわけ無かったのさ」

ざり

盗賊王「ッ! まだ終わったわけではない!!」

盗賊王が叫ぶ。

盗賊「……」

盗賊王「お前に、俺の何がわかる……」

盗賊「わからない。お前も説明する気ないだろうしな」

盗賊王「……」



盗賊「……楽にしてやるよ。お前の悪夢、終わらせるしかないみたいだからな」

どっ!

盗賊は跳ぶ。

710

--失われた王国、中央広場--

勇者(盗賊のニートは切り札の一つだったのに……決戦前に使わされてしまった……。あれもハイのレベルと同じように、時間制限と再使用までの充電期間がある……最終決戦にはもう、使えない……!)

ザザザザザッ!!

盗賊王「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

盗賊王が盗賊を迎撃しようとする。
あくまで魔力を失っただけ、単純な体術はさほど衰えていない。

盗賊「カブトの型」

ぶぅん

盗賊王「!?」

しかし、盗賊は斬り合う直前に共有する力を代えた。

盗賊「KAGEROU」

ドンッ!!

盗賊王「」

勇者「」

赤姫「」

盗賊「時は止まる」

711

--失われた王国、中央広場--

ざっ

盗賊「さっきまでの戦闘で、普通に突っ込んだら勇者ですらまずいってことがわかったからな。念には念をいれさせてもらう」

盗賊王「」

盗賊はナイフを構える。

盗賊「……やれやれ。まさか自分の首を自分で落とすはめになるとはな」

盗賊王「」

盗賊は何も答えない盗賊王の顔を眺める。

盗賊「……じゃあな、ルートを間違えた俺」

                                       オォ

盗賊「はっ!?」

                                                               オォオ

盗賊「何かが聞こえる!? 時間停止中だぞ……俺が発している音以外は……」

   オオ  オオオ   オオオォオオ      オォオ!!

盗賊「……ご、ふっ……?」

盗賊の腹部を

オオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオォオ!!!!

死者の腕が貫通していた。

712

--失われた王国、中央広場--

盗賊「ごばっ!!」

びちゃちゃっ!!

盗賊は吐血する。

盗賊「なん、だと?」

時が止まった世界で、死者の腕は軽やかにうごめいている。

トリガー「はははははははは」

盗賊「!? トリガー!?」

後ろを振り向くとトリガーが笑っている。

盗賊「な、なぜ」

トリガー「残念だったね、盗賊。その厄介なスキル対策は事前にしておいたのさ。フォーテが呪いをかけて、ね」

ドグシャ!!

盗賊「!!!!」

二本目の腕が盗賊の胸を貫いた。

713

--失われた王国、中央広場--

……ッゥゥゥンド!!

勇者「!?」

スキルの効果時間が切れ、元通り時が動き出す。

盗賊王「?……!? なっ!?」

盗賊王の横には、死者の腕に串刺しにされた盗賊の姿あった。

勇者「と、盗賊ーーー!?」

駆け寄ろうとする勇者。

しゅんっ!

ウェイトレス「よっと」

どがっ!

それをいとも容易く押さえつけるウェイトレス。

勇者「あぐっ!」

ウェイトレス「へぇ、トリガーの言う通りだ。勇者の力無くなってるわ」

勇者「!!」

714

--失われた王国、中央広場--

盗賊「がっ……」

盗賊王「おいトリガー!! これはどういうことだ!! 決着がつくまで待てと言っておいただろうが!!」

トリガー「決着はついてたさ。盗賊がニートの力を使った瞬間にね」

魔導長「ッ!」

魔導長達は再び構える。なぜならもう、交渉の余地は無いと判断したからだ。



トリガー「……盗賊が持つ天性の資質、シリアスキラー……それを彼はニートという職業で昇華させ、完全なものとした……」

トリガーが立ち上がる。

トリガー「シリアスな流れをギャグ路線に持っていくことも出来るこの力……これが少々やっかいでね。どうやって潰そうかずっと考えていたんだ」

トリガーは歩き出す。

トリガー「ただシリアスキラーは盗賊がニートでなければ不完全なものになる性質があった。つまり、共有で他者の職業の力を使えば、その瞬間だけニートでは無くなる……」

トリガーは盗賊に近づいていく。

トリガー「すなわちニートではない盗賊にシリアスキラーの効力は無く、そして」

ウェイトレス「勇者の力を貸し出してる今の勇者に、勇者の力は無い」

勇者「!」

トリガー「そ、返却時間が来るまではただの貧乳だ」

貧乳「!!」

715

--失われた王国、中央広場--

盗賊王「きさま……トリガー!! よくも俺の戦いを汚したな!! 俺は」 

トリガー「盗賊を倒すことで、自分が選んだ道の正しさを証明しようとしてるんだろ?」

盗賊王「ッ!?」

トリガー「そんなに驚かないで欲しいな。大体一緒なんだ、闇に落ちた者の戦う動機なんてさ」

盗賊王「!」

トリガー「そうだ、役に立ったご褒美にいいことを教えてあげるよ盗賊王。君や魔法使いがなぜ勇者に固執するのかを」

盗賊王「! なんだと……?」

トリガー「それは魔王の力のせいさ。魔王の力は周囲の心を染め上げる。洗脳というよりは麻薬みたいなもんだ。一度手を出したらやめられない……無理に引き離せば人格が損傷するほどの、ね」

盗賊王「」

トリガー「ははは、君の復讐劇とやらも結局は振り回されていただけなのさ、勇者に」

盗賊王「と、トリガー!!!!」

べちん!!

精神が揺らいだ瞬間、トリガーは死者の腕で盗賊王の首をはねた。

どさっ

トリガー「君は盗賊に共有を使わせた……役目は終わったんだ、盗賊王」

716

--失われた王国、中央広場--

赤姫「トリガー!!」

叫ぶ赤姫。もはや赤姫にはそれしか出来ることが無かった。

トリガー「さぁて、と」

ズブッ!!

盗賊「」

勇者「……え?」



--失われた王国、塔--

がたがたがた、ばんっ!!

ポニテ「終わったー!! 出来たよパパママー!! 指輪全部完成した……よ……?」

窓から体を乗り出したポニテが見たものは



どくん、どくん

勇者「あ、あぁ……」

トリガー「やはり出来ていた。ほら、みなよ勇者。君の一番大切なもの……君の魔王の骨だ」

盗賊の心臓を天に掲げる死者の腕だった。

717

--失われた王国、中央広場--

どくん、どくん

盗賊の心臓が動いている。

オォオオォオオ

死者の腕がトリガーにそれを渡す。トリガーがそれに触れると周りについた血が蒸発する。

しゅうぅう

どくん、どくん

トリガーが持つ盗賊の心臓、それは脈打ちながらも、まるで骨のようだった。

ポニテ「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ぼおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

ポニテが精霊化し、トリガー目掛けて飛来する。

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

ポニテ「!」

桃鳥「駄目ですよ邪魔しちゃ、って、私思っちゃってます」

しかし桃鳥が間に入り、ポニテの攻撃を受け止めた。

718

--失われた王国、中央広場--

ポニテ「うああぁぁ!! パパーー!! パパー!!」

桃鳥「おとなしくしてなくちゃ駄目ですよー」

じたばじたばた!!

盗賊「」

ぽた

盗賊は

盗賊「」

既に死亡していた。

赤姫「く! やむをえない! 皆のもの、戦うぞ!!」

魔導長「!! 通信師!」

通信師「えぇ、もちろん全員に通達してますよ!!」

ダダダダダ!!

アッシュ「くそ! ポニテのやつ一人で飛び出しやがって!!」

ツインテ「自分の父親があんなめに合わせられたら……気持ちはわかります」

レン「行くにゃ!! 魔王制御輪!!」

バシュバシュバシュバシュ!!

レンの掌から指輪が放たれる。

719

--失われた王国、外れ--

魔法使い「ち! 最悪なことになったぜ!」

ダダダダダ!!

通信師からの知らせを受けた魔法使いは中央広場を目指す。

……ぶぅん

魔法使い「? 結界が、弱まってる……?」

ぶつん

魔法使い「!? バカな!? 結界が無くなっただと!?」

しゅん!

ニンフ「あら~見たことある人間が~」

魔法使い「!?」

カトブレパス「どうします? 始末していきます?」

ウェンディゴ「そう、だな。あいつ強いからな。念のために俺がやっとくよ」

魔法使い「……きさまら」

結界が切れたと同時に魔族が失われた王国に侵入する。

720

--失われた王国、結界塔--

ひゅんひゅん、しゅたっ!

魔剣使い「そこで何をしているのですか!?」

魔剣使いが駆けつけた時には既に結界の祭壇が破壊されていた。

X「く、くそ……」

そしてぎちぎちとぎこちなく動くXがそこにいた。

魔剣使い「! 人造勇者X……! 貴方も魔王側についたということですか……?」

X「違う! 体が、言うことをきかんのだ……!」

魔剣使い「!?」

X「体を操作されている……魔王の中に、人形師がいるというのか……! い、いつのまにこんな細工を!!」

Xは向き直り、魔剣使いに拳を振るう。

どがああああん!!

魔剣使い「ぐっ!!」

Xの攻撃は魔剣使いにかわされ床を破壊、その衝撃で塔全体が崩れていく。

ず、ずずずずずず……

魔剣使い(人造勇者が気づくことも出来ずに操作されてしまうなんて……)

X「は、早く広場に行け!! 結界が無くなった今モンスターが押し寄せてくる! それまでに決着をつけるんだ!」

魔剣使い「!! はい!」

どしゅ!

魔剣使いは塔から飛び降りて中央広場を目指す。

ハイ「今なら言える……」








ハイ「私、影薄くないですか?」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました。それでは投下していきます。

721

--失われた王国、占塔--

うわぁああああああ

中央広場の方角から大きな歓声があがる。
まるで祭りのような。まるで戦争でもしているかのような。

占師「……やっぱり……運命には抗えないのかねぇ」

占師は占いの炎を見続けている。

722

--失われた王国、中央広場--

ワーワー!!

がちんっ

銀蜘蛛「アレレ? ナンカワッカガクッツイタヨー?」

桃鳥「これは……」

ヤミ「……」

ウジ虫「ひ、ひひひ」

ウェイトレス「……へぇ~、この短時間で完成させられたんだ?」

脳筋「ん? 力が出ないぞ?」

魔王勇者「……」

各魔王に指輪が装着される。

レン「指輪装着完了にゃ! 皆、行くにゃ!!」

賢者「勇者さん!」

踊子「ショックなのはわかるけど、今はこいつらの相手が最優先ですよ~! 盗賊君は終わってから蘇生させましょ~」

ふぉん

勇者「力が戻った……!」

ばちん!

ウェイトレス「おっと」

盗賊への共有時間が終了し、勇者に元の力が戻った。そして勇者はウェイトレスを跳ね除ける。

723

--失われた王国、中央広場--

魔導長「でも困ったなの……思ったよりパワーダウンしてない……」

ゴゴゴゴゴゴゴ

トリガー「指輪を完成させたことは素直に褒めてあげるよ。でもそれだけでひっくり返せるかな……?」

元賢帝「……確かにそうねぇ。個別に戦えるなら大分楽なんだ・け・ど……」

射王「地形変化系の能力持ちが生き残っていたなら分散出来たんだがな」

ざっ

脳筋「トリガー、一番手俺が行っていいか?」

脳筋は嬉しそうに腕を回す。

トリガー「いや、さすがに魔王の力を封じられている状態なんだから、全員でかかったほうがよくない?」

脳筋「えー? 俺チームプレーは得意じゃないんだよー。なぁ、いいだろみんなも?」

銀蜘蛛「イヤダイ! ナンバーテキニ、イチバンハボクダイ!」

ヤミ「俺が戦えば全てが終わるぞ」

ウェイトレス「私も鈍ってたから久々にやりたいんだよねー!」

トリガー「……協力とかないの?」

724

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「……当たり前っちゃあ当たり前なんですけど、あの人たちは元々勇者なわけなんですよね」

アッシュ「魔王の力を封じたら、元々の勇者としての力が出てくるってわけか……」

レン「それでもパワーダウンはしたのにゃ! 付け入る隙はあるはずにゃ!」

じゃーんけーん

ハイ「じゅ、順番決めてますよこの状況で……ありえない」

アッシュ「……」

ダッ!

アッシュは走り出し、ポニテを押さえつけている桃鳥に斬りかかる。

桃鳥「? わっ」

ずばっ

アッシュの一撃は桃鳥の首を切り裂く。
だが、

桃鳥「わー、びっくりしちゃいました」

一瞬で再生。

ドッ!

桃鳥「うぐっ!」

しかし続けざまに回転蹴りを放ち、桃鳥はポニテの上から吹き飛ばされる。

725

--失われた王国、中央広場--

ズザザー

桃鳥「あいたたた……」

ウジ虫「も、桃鳥、大丈夫? ひひ」

桃鳥「油断しちゃいましたー」

アッシュ「冷静になれポニテ。今しくじったら全てが終わるぞ」

ポニテ「……うん……ごめん」

ポニテは立ち上がり、トリガーの掌の中にある盗賊の心臓を見つめる。

アッシュ「俺らのやることを忘れるなよ」

ポニテ「うん、わかってる!」

ポニテとアッシュは構えた。

726

--失われた王国、中央広場--

びびっ

通信師(いいですか皆さん、よく聞いてください。これから代表と参謀長さんからの作戦を伝えます)

ハイ(あ、テレパシーが)

通信師(今魔王達が一番手を決めていますが、我々はそれに相性がいいキャラを選んでぶつけます。それが誰になるかはまだわかりませんが、その人たちには一番手の魔王をトリガー達から引き離してもらいます)

勇者(……)

通信師(ある程度離れたら、一番手に総戦力の三割を動員し一気に殲滅、残りの戦力で同時にトリガー達を叩きます)

鬼姫(たった一人に対して三割っすか……大盤振る舞いっすね)

通信師(これでも少ないくらいとの分析らしいです。本当ならもっと分散させたかったんですが……)

魔導長(作戦、わかったなの)

射王(了解した)

727

--失われた王国、中央広場--

ざっ

脳筋「……よし!」

銀蜘蛛「ワーイ! イチバンハボクダネー!!」

ヤミ「……」

ウェイトレス「何がよしだ、負けてんじゃん」

ずしゃ

銀蜘蛛「ジャアボクカライキマース! ミンナー、ヨロシクネー」

銀蜘蛛はぶんぶんとマニピュレーターを左右に振った。

通信師(銀蜘蛛が一番手のようですね。担当は同じ機械兵士、テンテン、ウーノ、ドゥーエ、トーレに任せます!)

728

--失われた王国、中央広場--

テンテン「待ちくたびれたぞ」

ドドドドドドドド!!

煙をあげて、マントを装着したテンテンが空から現れる。

バサァ!!

銀蜘蛛「!! テンテンサン! テンテンサンジャナイカ! ヒサシブリー!」

トリガー「あれ? 知り合い?」

テンテン「銀蜘蛛……お前いつの間に勇者だの魔王だのといった存在になったんだ」

銀蜘蛛「エヘヘー。テンテンサンガ、スリープジョウタイ二ハイッテカラ、イロイロアッタンダヨネー」

シャン

更に銀蜘蛛を囲むように機械兵士三姉妹が降り立つ。

729

--失われた王国、中央広場--

ウーノ「ぴぴぴ……戦闘用機械兵士では無いようですね」

ドゥーエ「ただ装甲はおもいっきり頑丈に作られてるみたい」

トーレ「更に自分で勝手に魔改造しまくっちゃった、と」

三姉妹はそれぞれ銀蜘蛛を分析している。

テンテン「……もっと広い場所でやろう。ついてこい」

ぼぼぼぼぼぼ

テンテンは銀蜘蛛に合図を送ると飛んでいく。

銀蜘蛛「オッケー!」

どひゅん!

銀蜘蛛はそれを追うように跳躍した。

730

--失われた王国、中央広場--

通信師(彼女らの砲撃戦に対応できるのは魔導長と射王、貴方達しかいません。彼女らとともに銀蜘蛛の撃破を)

魔導長(わかったなの)

ぴるるるるるる

魔導長は射王を抱えると飛び上がった。

トリガー「なるほど。あの戦力で銀蜘蛛を叩くつもりか」

勇者「卑怯だなんて言わせないわ。なんでもありの貴方達を倒すためなのだから!」

トリガー「卑怯だなんて言うつもりはないよ。ただ、甘く見すぎなんじゃないかな、ってね」

ざざっ

シン(皆さんすいません、人造勇者のシンです!)

そこにもう一人テレパシーを送信してくるものがいた。

通信師(シンさんどうしました?)

シン(予想通りではありますが、先ほど結界が破られました……どうやったかはわからないんですが、Xさんが操作されてました。どうやら強力な人形師系の使い手がいるみたいです)

通信師(……わかりました。それでは作戦通り、人造勇者の皆さんは外から来るモンスターの相手をよろしくお願いします)

731

--失われた王国、中央広場--

勇者「……」

ざり

脳筋「あれ? まとめて銀蜘蛛が相手をすると思ったんだけど……これ、どうやらまだチャンスあり?」

勇者「一人減った。たった一人だが、これはチャンスだ!」

シャシャ!!

鬼姫と竜子が勇者の横を走り抜き、魔王達の前へ。

鬼姫「奥義、鬼咆哮!!」

竜子「奥義、絶対零度ビーム!!」

トリガー「!」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

亜人最強種、鬼と竜による二大奥義が魔王達を奇襲する。

ドガガガガガガガガガガガガァア!!!!

元賢帝「す、すっごい出力……! 範囲は魔導長のあれには及ばないけど、威力だけなら同等かそれ以上ね……!」

732

--失われた王国、中央広場--

ガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

鬼姫「……」

しゅうぅううう……

竜子「……」

侍「……やったか?」

アッシュ「その台詞を言うなーーーー!!」

ゆら

勇者「!!」

桃鳥「けほ、こほ。皆さん大丈夫ですか? って私思っちゃったりします」

勇者(やはり桃鳥はノーダメージか……!)

ウェイトレス「わー、やばかったわー。ヤミ君が盾になってくれなかったらひとたまりも無かったよー」

ウェイトレスはヤミを掴んで盾代わりにしていた。

ヤミ「……」

魔王ヤミを倒した。

アッシュ「やれてたーーーー!!」

733

--失われた王国、中央広場--

ウジ虫「……」

さりげなく魔王ウジ虫も倒してた。

竜子「おら! ぼさっとすんな! さっさと私らを回復しな! 来るよ!」

賢者「! 水属性回復魔法レベル4、魔力供給レベル4!」

じゅわぁん

賭博師「鬼姫さん、あんたは悪いがこっちだ」

賭博師は鬼姫に回復アイテムを投げる。

ひゅん、ぱしっ

鬼姫「別にどっちでもかまわないっすよ。サンキューっす」

きゅぽん、ごくごくごく

脳筋「ふぅーん。兄貴も亜人王のおっさんもいないからまともなやついないんじゃないかと心配したけど」

鬼姫「……」

竜子「……」

脳筋「結構強いじゃんか!」

ぼわぁ!

変化師「す、スキル、身体変化」

煙に乗じて変化師が脳筋に接近していた。

脳筋「!?」

変化師「竜口!!」

ドッ!!

734

--失われた王国、中央広場--

トリガー「……やれやれ」

おおぉおおお

死者の腕で作った繭のようなものの中からトリガーが現れる。

トリガー「やめてもらいたいもんだよ。僕はいたって普通のボディなんだからさ」

トリガーはため息をついた。

しゅぅうう……

変化師「!?」

脳筋「悪くないぜ!」

ドガッ!!

ゼロ距離から変化師の攻撃を受けた脳筋だったが、大したダメージも無く、即座にカウンターを変化師に放つ。

変化師「ぐっ!!」(お、重い! ただのパンチが、なんて重い一撃なんだ……!)

シャシャシャ!!

鬼姫、竜子「「!!」」

それを見た鬼姫と竜子が脳筋に攻撃を繰り出した。

ドガシイイイイン!!

鬼姫「ッ! あっさり受け止められると、さすがのあたしもショックっす」

鬼姫の蹴りを右手で、

竜子「……っち」

竜子の殴打を左手で受け止めた脳筋。

脳筋「俺わくわくすっぞ!」

735

--失われた王国、中央広場--

ドガ、ドガガガガガガガ!!

眼で追うのがやっとの攻防。肉弾戦最強レベルの世界。

鬼姫(片腕を失ってる状態とはいえ……)

竜子(二体一で同等? 自信がぶっ壊れるぜ!!)

ガガガガガガガガガ!!

変化師「ぬ、ぬおおおおおおおお!!」

そこに変化師が突っ込んでくる。

脳筋「スキル、指パッチン三連撃」

ボボボ

鬼姫「」

竜子「」

変化師「」

ドガアアアアアアアアアアアアアアン!!

しかし脳筋のスキルが三人を吹き飛ばしてしまう。

脳筋「これが俺の指パッチンだ」

踊子「私達よくあんなのに勝てましたね~……」

賢者「あの時はあまりやる気無かったみたいだし……」

736

--失われた王国、中央広場--

勇者(これでも分が悪いの……!? 聖騎士と虎男が存命だったなら……!)

ダッ!!

勇者は大剣を構え、単身トリガーに向かって駆け出した。

トリガー「おや、来るのかい? 勇者」

しゅ

ガギイイイイイン!!

魔王勇者「……」

勇者「くっ……」

その攻撃を魔王勇者が止める。

ギリギリギリ

魔王勇者「言ったでしょ……? お前は私が斬る、って」

勇者「邪魔よッ!」

737

--失われた王国、中央広場--

ぎぃん、ギギギギギギギギィン!!

斬りあう勇者と魔王勇者。

ハイ「今のうちに皆さん、お願いします!」

ツインテ「わ、わかりました!」

アッシュ「おう」

ポニテ「うん!」

レン「いくにゃ!」

ぴっ

アッシュのナイフがハイの薄皮一枚を綺麗に裂く。

ハイ「条件達成、レベル2、盾兵!」

ドン!

ハイが盾兵にレベルアップした。

738

--失われた王国、中央広場--

ドシュドシュドシュッ!!

ツインテ「」

ポニテ「」

レン「」

続けてアッシュはツインテ、ポニテ、レンの首を跳ね、

アッシュ「」

そして自害する。

ドシュッ!!

ハイ「……条件達成、レベル3、賢者! 更に条件達成!!」

ドドンッ!!

ハイの魔力が高まっていく。

ハイ「レベル4、勇者!!」

ガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

わずか数秒でハイはレベルマックスになることに成功する。

ツインテ「自動、蘇生」

じゅる

そしてツインテは常時発動スキルにより蘇生し、

ツインテ「奥義、絶対回復領域!!」

ぽわあぁあああん!!

アッシュ「……ふん」

ポニテ「さっすがアッシュ君、手際いいねー! 死ぬまで殺されたことに気づかなかったよ」

レン「これで、完璧な状態にゃ!」

三人の蘇生が完了し、五人が構える。

ハイ「行きましょう、皆さん! 最終決戦です!!」

739

--失われた王国、中央広場--

侍「ツインテ殿達……見事な連携でござる……自己犠牲にそんな使い方があるとは……」

侍はハイ達の後姿を見て目頭を熱くする。

ばさっ、ばさっ

桃鳥「残念だけど今の私達も勇者だから。勇者因子は別に怖く無いんだよって私思っちゃってます!」

ばさっ!

桃鳥がツインテ達に向かってくる。

ハイ「ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっだからっ!!

ユニコーンが跳躍しパイルバンカーになるとハイの手の中に。

じゃきぃーん!

桃鳥「スキル、百突き!」

桃鳥は足の鉤爪で突きのラッシュを放つ。

ハイ「突き比べといきますか!」

どがぁあああああああああああん!!

740

--失われた王国、中央広場--

ギィンギギイィイン!!

魔王勇者「はああああああああああああああ!!」

ぶん、ぶん!

勇者「ッ!」

ぎぃん、ずばぁ!!

魔王勇者「ッ!?」

勇者の大剣が魔王勇者の剣を弾き、そのまま胸部を切り裂いた。

ぶしゅっ!

魔王勇者「がふっ! な、なんでこんな私が、簡単に……」

魔王勇者は血にぬれた自分の掌を見つめている。

勇者「馬鹿ね……魔王状態ならいざ知らず、同じ条件で私に勝てると思っていたの?」

魔王勇者「な、なんですって……?」

勇者「私のことだからわかるのよ。昔の私の心の弱さを……」

魔王勇者「!?」

チャキ

勇者「私は人に剣を振るう時、怯えが出ちゃっていたのよ……そう、迷いを捨てるまでは、ね」

以前の勇者ならば、盗賊の死を目の当たりにして立ち上がることなど出来なかった……。

勇者「私とあんなの違いは心の強度よ!!」

魔王勇者「!」

ドギイイイイイイイン!!

ウェンディゴ「……つー……相変わらず激烈な打ち込みだぜ」

勇者「!?」

二人の間にウェンディゴが乱入する。

ウェンディゴ「待って、くれよ勇者」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

ご心配をおかけしました。
や、やっちまった……せっかくのエイプリルフールの直前で倒れるなんて……。うぅエイプリルフール……。
あ、過労と風邪のコンボでした。もうほぼ治りかけてます。今後はこういうことないようにしないと……。

それでは投下していきます。

741

--失われた王国、中央広場--

勇者「……」

盗賊と同じ声を聞き、勇者は一瞬動きを止めてしまう。
が、

勇者「待つわけなんて、ないでしょ」

チャキ

盗賊の死体を横目で確認した勇者は大剣を握りなおす。

勇者「私とあなたたちは、敵同士なのよ!!」

魔王勇者「ッ! どきなさい!」

ドン!

魔王勇者はウェンディゴを跳ね除けて大剣を構える。

742

--失われた王国、中央広場--

勇者「奥義」

魔王勇者「奥義」

ヒュォォオオォオォォオオ……

ツインテ「あ、勇者さんの、奥義?」

ゴゴゴゴゴゴ

勇者と魔王勇者を中心に魔力の渦が発生する。

アッシュ「あのレベルの実力者同士の奥義の打ち合いだと……?」

レン「しかも両者とも攻撃型の奥義っぽいにゃ……余波でこっちにまで影響でそうにゃ!」

ポニテ「ちょっ! 余所見しないで! こっちだって今魔王と戦ってるんだよ!?」

ドフッ、ドフドフっ!

ポニテの攻撃が桃鳥を削るも一瞬で再生してしまう。

桃鳥「今は私も勇者ですけどー」

743

--失われた王国、中央広場--

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!

大量の魔力が圧縮され、二人の大剣にまとわりつく。

符術師「お、おい、離れたほうがよくないか?」

通信師「確かに、あんなのが激突したら……」

すちゃっ

勇者「勇者……」

ざんっっっ!!

魔王勇者「スラアアアアアアアアアアアアアアアアッッシュ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

魔力で強化された勇者の大剣と魔王勇者の大剣が鍔迫り合う。

ぎ、ギギギギギギギギギ!!

ドゴォン!

侍「うお!?」

ドガァン!

賭博師「おわっ!?」

お互いの魔力が干渉し、千切れ飛んだ魔力が周囲を破壊していく。

744

--失われた王国、中央広場--

バリィ! バババドォオオン!!!!

魔王勇者(今の私は魔王の力を封じられている。そのせいで火力は下がっちゃうけど、勇者因子に遅れをとることも無い! この奥義も、互角か……)

ギャリィン

魔王勇者「!?」

しかし勇者は奥義の途中で剣の流れを変えた。

魔王勇者(何ッ!? 勇者スラッシュにこんな動きは!!)

勇者「……連」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

そして一回転して二度目の攻撃を魔王勇者に叩き込んだ。

魔王勇者「!!!!」

ブシャァアアアアアーーーー!!

ウェンディゴ「魔王勇者ーーーーーーーーーーー!!」

745

--失われた王国、中央広場--

ばしゃ、ばしゃしゃ!!

魔王勇者「なっ、げほっ……がはっ! な、なんだ、それ……それは」

勇者「いつまでも昔と同じままじゃ芸が無いからね、改良したのよ。全ての魔王を一人で倒せるように」

魔王勇者「勇者スラッシュ・連……だと」

魔王勇者は斬られた傷口に手を当てるのだが、あまりに出血が激しく意味をなさない。

ウェンディゴ「!」

がばっ

ウェンディゴは倒れかけた魔王勇者を支えた。

魔王勇者「そんな、私が、負けた。……偽者だって、言うの?」

魔王勇者はぶつぶつと呟いている。

746

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「はぁああああああ!!」

シュバッシュバババッ!!

アッシュのナイフが桃鳥をバラバラに分割する。

桃鳥「残念、無駄なんですよー」

しかし一瞬で桃鳥は再生してしまう。

アッシュ(くそっ、ツインテの絶対回復領域を相手にしているようだぜ……!)

桃鳥「火属性範囲攻撃魔法、レベル4」

ぼおおおおおおおおおおおお!!

ハイ「つっ! 火力はあまり高くないですけど、じわじわ削られてます! 高耐久低火力なボスとか!!」

レン「でも回復ならこっちにもツインテがいるのにゃ! これがもう少しで完成するからみんな耐えてにゃ!!」

桃鳥「完成?」

桃鳥はレンがいじっているゴーレムを見る。

747

--失われた王国、中央広場--

桃鳥「なんだか、嫌な感じがします……」

アッシュ「ち、注意がそっちにいっちまった! やるぞポニテ!」

ポニテ「おうよ、アッシュ君!」

バッ!

桃鳥「!」

血と炎の剣の二刀流のポニテと、二つのナイフを構えたアッシュが桃鳥に接近する。

ズババババッ!!

そしてバラバラ。

桃鳥「そんなことしたってー」

アッシュ「更に奥義、ポイポイポイズン」

じゅわ

アッシュは毒を帯びたナイフで桃鳥の切断面を斬りつけた。

桃鳥「無駄なのにー」

しゅん、ぶくぶく

やはり再生してしまう桃鳥。

桃鳥「……あれ?」

748

--失われた王国、中央広場--

しかし再生速度が遅くなっていた。

桃鳥「あれ? なんで?……もしかして何かしました?」

アッシュ「あぁ……ちょいと試しに毒を打ち込ませてもらった」

桃鳥「……!」

アッシュ「回復する能力自体を汚染してみた。どうだ、効果のほどは?」

桃鳥「……」

しゅるしゅると切り裂かれた部分が直っていく。だが先ほどまどの回復スピードでは無くなっていた。

アッシュ「なるほど。効果ありだな!」

ポニテ「うお!? アッシュ君が強敵相手に役に立ってる!?」

桃鳥「……こんなことやっても無駄なのに、って私思っちゃってます」

ぼっ!!

749

--失われた王国、中央広場--

桃鳥の全身が燃えあがる。

ツインテ「! 浄化の炎! 自分の中の毒を外に出すために全身を焼いている!?」

ボボボボボ!!

ポニテ「全焼状態からでも戻っちゃうなら、バッドステータスはほぼ無効……つまりアッシュ君の能力じゃ一切勝ち目ないね!」

レン「やっぱり安定のアッシュ役立たずにゃ」

アッシュ「」

がくりと跪くアッシュ。

桃鳥「このままだと埒が明かないので、勝負を決めさせてもらいますね」

ぼふっ

火の中から新たに誕生した桃鳥はそう宣言する。

桃鳥「奥義、回復の渦」

ぼぼぼぉおお!!

750

--失われた王国、中央広場--

ぼおおお! ぼおおおお!!

桃鳥の体から炎が噴出し、辺り一帯を覆った。

アッシュ「地形変更系の奥義か……? 面倒だな」

レン「効果がわからないうちはうかつに動いちゃだめにゃ! アッシュ!」

ポニテ「逆だよ!」

ドッ!

ポニテは桃鳥に突っ込んでいく。

ポニテ「こっちにはツインテちゃんの回復があるんだ。少しでも時間かけずに行くべきなんだよ!」

ボッ!!

ポニテは精霊化状態で桃鳥に攻撃する。

ボフボフッ!!

桃鳥「中々いい判断だと思います。正しいか正しくないかは別として」

751

--失われた王国、中央広場--

ポニテ「く、やっぱり回復速度が戻ってる!……いや、これって」

桃鳥「火属性範囲攻撃魔法、レベル4」

ぼおおおおおおおおおおおおおおお!!

桃鳥が放つ全体攻撃がツインテ達を襲う。

ハイ「あちっ!」

アッシュ「またこれか。レベル4にしてはそこまで威力高くねぇから怖くねぇ! ツインテ!」

ツインテ「はい!」

レン「でもレベル4はレベル4にゃ。ちゃっかり火傷状態になってるし。ツインテの魔力切れが狙いかもにゃ」

アッシュ「お前はさっさと最終調整しておけ。……ツインテ、まだか? この火傷も地味につらいんだぞ」

ツインテ「あれ……か、回復魔法が、機能しません……」

アッシュ「……は?」

752

--失われた王国、中央広場--

桃鳥「ふふん」

アッシュ「! この奥義の効果か!」

ポニテ「はぁああ!!」

ぼふっ! ひゅんっ!

ポニテ「! 錯覚じゃない、さっきより回復速度があがってる!!」

桃鳥の回復速度は既に肉眼で見えないレベルになっている。

レン「……こっちは回復が使えなくなり、向こうは更に回復力があがってるってことかにゃ?」

アッシュ「いや、魔力の流れを見てみたが……どうやら吸われてるみたいだぜ回復力……全ての回復力があいつに集まってる……」

じゅっ

ハイ「……え? じゃ、じゃああいつを倒さない限り私達は回復できない、ってことですか?」

桃鳥「火属性範囲攻撃魔法レベル4」

ぼおおおおおおおおおおおおおおお!!

アッシュ「あっち!……ぐ……避けられない範囲攻撃に」

レン「火傷のバッドステータス……このままだとじわりじわりと殺されるにゃ」

753

--失われた王国、中央広場--

アッシュ「……ち、ってことは、やっぱりこれしか倒す手段が無いみたいだな」

アッシュはにやりと笑う。

レン「そうみたい、にゃ!」

バキィイイン!!

ゴーレムが変形し、そこから現れたのは銀の槍。

桃鳥「!! それは、その槍は!」

桃鳥の嫌な予感が的中する。なぜならそれは桃鳥の唯一の死の形……。

レン「ポニテ! また頼むにゃ!」

ポニテ「あい、よっ!!」

ポニテはレン達の所にまで戻るとその槍を掴んだ。

バシッ!!

桃鳥「『呪いの槍』……そう……私はまたそれにやられちゃうんですね」

桃鳥は避けられぬ運命を見るかのようにそれを見ていた。

ポニテ「食らえ!! 呪いの槍!!」

きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

ぼろぼろっ

不死身の桃鳥の体が崩れていく。

桃鳥「……三度目、か」

ドガァアアアアアアアアン!!

754

--失われた王国、中央広場--

トリガー「あれ?」

トリガーは桃鳥の反応が消えたのを感じ取る。

トリガー「呪いの槍の使い手、まだこのメンバーの中に残ってたか……。ふむ。思ったよりこれはまずい流れなのかな」

トリガーは残った魔王の数を数える。

トリガー「銀蜘蛛とウェイトレスに脳筋……? あれ、もう三体しか残ってないのか?」

ずるる

ヤミ「俺を忘れるな」

トリガーの影からヤミが出現する。

トリガー「あれ、死んだのかと思ったよ君。二人の合体奥義食らってさ」

ヤミ「死ぬものか。否、俺に死など無い」

トリガー「そうだったね、ノーライフキング」

ばさっ!

ヤミは黒いマントを翻す。

755

--失われた王国、中央広場--

ヤミ「それにあいつもまだ死んではいない」

ヤミの視線の先には血まみれになりながらも剣を構える魔王勇者がいた。

トリガー「そうか。彼女もいたね。……でもびっくりしたな」

ヤミ「何がだ」

トリガー「君達魔王じゃなくなった途端に弱体化しすぎじゃない?」

ヤミ「……誰でも慣れがある。ずっと魔王だったんだ。それがいきなり勇者の位にまでパワーダウンされたとあっては、力の配分が難しい」

トリガー「……」

ヤミ「それにやつらは我らを研究している。完璧とはいえないが、我らに相性がいいものを選んでぶつけてきている」

ウェイトレス「はっはっはー。そんなの言い訳だね」

ヤミ「なに……?」

ウェイトレス「いくら弱体化させられちゃったからとは言え、それでも私達は勇者なんだ。素のスペックはあいつら以上なんだよ?」

トリガー「一部の壊れを除いてね」

ヤミ「……そうまで言うのなら、お前が直接戦えばいいじゃないか」

ウェイトレス「だってじゃんけんに負けたしー」

ウェイトレスは椅子に座って足をぶらぶらとしている。

ウェイトレス「それに、私は最後にやった方がいいんじゃない?」

暗黒微笑。

756

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「あー、あと」

脳筋「おらー!」

ドゴッッッ!!

変化師「ッッッ!!!!」

どっがぁああぁん!!

北の兵士「う、うわぁ!! 変化師様がふっとんできたああ!!」

ウェイトレス「あいつ一人でいけそうじゃない? あの馬鹿への対策は無いみたいだけど」

ヤミ「……確かにそうだな」

ざっ

ヤミ「……?」

そこに、

ブラ「や、ヤミ様!」

ウェイトレス「おっ? なんだなんだヤミ君。君にもご指名が入りそうじゃないか」

ヤミ「……」

メイド「……」

番犬「……」

ブラ達が現れた。

757

--失われた王国、中央広場--

ヤミ「なんだ貴様ら……」

ブラ「ヤミ様……私達と戦ってください!」

ヤミ「……」

ブラとヤミはみつめ合っている。

ヤミ「……我と戦う……? 貴様ら程度で俺と戦うなどという次元に行けると思っているのか?」

ずるるる

ヤミの闇が広がっていく。

メイド「! 威圧か!」

ずるるる!!!!

ウェイトレス「なんで? 行ってきたらいいじゃん。トリガーには私がついておくからさ」

ヤミ「……」

そんなムードをぶっ壊すようなウェイトレス。

トリガー(相変わらずだなぁウェイトレスは)

ヤミ「……ふん、わかった、いいだろう。あえてその宣戦布告に乗ってやろう」

ざっ

ヤミ「案内しろ。貴様らの墓場にな」

ざっざっ

ヤミはブラ達についていく。

ざっざっ

メイド「……ここまでは何とかなったでございますが……本当にこんなんでなんとかなるんでございましょうか」

メイドはブラに呟いた。

ブラ「するしかない、するしかないんですメイドさん!」



ざっざっざっ……

ヤミ「ん? ここは……」

ヤミが連れてこられたのは……

ヤミ「ライブ会場?」

ブラ「私達がヤミ様の心を開放する!」

758

--失われた王国、中央広場--

竜子「はぁ、はぁっ……」

元賢帝「ちょ、ちょっと……嘘でしょ?」

鬼姫「げほっごほっ!」

脳筋「いやー、この時代は中々強いのがいるなぁ!」

ひゅぅうううう

現在、脳筋と戦っているのは、鬼姫、竜子、変化師、魔導長、護皇、射王、元賢帝、熊亜人、護衛姉妹、賢者、踊子、シャーマン、包帯女、魔剣使いの15人。つわもの揃いの変則3パーティ。
そう、五柱クラス四人を組み込んだ3つのパーティで挑んでいるのだ。

魔導長「そ、それで、勝てないの……?」

脳筋にダメージが無いわけではない。15人による猛攻は確実に脳筋の体力を削っていた。
だがそれでも押されているのは……

脳筋「よーし、今度はこっちからいくぞ!!」

ドンッ!!

脳筋が走る。向かう先は、護皇。

護皇「!!」

シャッ!

護皇は防御系最高職の達人。全ての攻撃をいなし、無効化する。

ドゴッ

護皇「ッぐ!」

だが、脳筋の持つパワーは、逸らすことを許さない。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

護皇は吹き飛ばされてしまう。

759

--失われた王国、中央広場--

護衛姉「はあぁああ!!」

護衛妹「いやあああ!!」

ジャリン!!

一瞬の隙をついて護衛姉妹が脳筋を斬りつける。が、

ばきぃいん!!

護衛姉妹の刀は砕け散った。

ボボッ!!

そして指パッチンで吹き飛ばされる。

包帯女「はああああああああああああ!!」

ドガアアアン!!

包帯女の魔力を込めた一撃も、脳筋の腹筋の前では無意味。

ばいん!

跳ね返されてしまう。

760

--失われた王国、中央広場--

脳筋「どうしたどうした、もう終わりかね?」

脳筋はただ単純に、強い。

射王「スキル、効果付与、切断」

どひゅっ!

射王の放つ矢を

びし!

二本の指で受け止め破壊する脳筋。

脳筋「むん!」

ドンッ!!

脳筋が地面を踏み抜くと、

ドガァアアアアアン!!

大地が崩壊する。

ゴゴゴゴゴゴ……

単純に速く、単純に硬く、単純に強い。ただそれだけの勇者。
それが

鬼姫「困ったっす……一つ聞きたいんすけど、これの更に強化版の魔王を倒したのって、まじなんすか?」

踊子「ま、魔王になれば勇者因子という弱点が追加されますから~……」

賢者「……あれ? こいつ勇者状態だと無敵なんじゃ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

乙です!

質問ですが、桃鳥が3度目って言ってますが、今回と茶肌にやられたときと、あと一回はなんですか?

それと、魔導長と射王は銀蜘蛛のところにいるのでは…??

>>264
作者じゃないけど勝手に返答
七代目勇者のときに一度復活している
たぶん八代目勇者に倒されているはず

酒場勇者1スレ目より(一部改変)
初代については設定が少年じゃなくロボットに変わった

歴代勇者について

○初代勇者(銀蜘):赤竜と青竜をその身に宿す少年。普段竜達は剣の形をしている。王国の初代王様でもある。

○二代目勇者(桃鳥):魔王を倒した後の彼女が、魔王として覚醒するまでの話。

○三代目勇者(茶肌):最も好戦的な勇者。勇者だが忌み嫌われていて、彼は一人で旅をする。

○四代目勇者(腹黒):人望に厚く有能で礼儀正しい勇者。とは表の顔で……。主人公は勇者パーティーに憧れる戦士(斧)の少女。仲間達とともに勇者パーティーを追っかける。

○五代目勇者(ヤミ):封印された初代魔王の分身。大災害を引き起こしてしまう。

○六代目勇者(蠅男):魔王に死の呪いをかけられたせいで強制的に旅に出る。大災害後の世界を立て直す。

○七代目勇者(ウェイトレス):魔王の骨を媒介にして、歴代六人の魔王を操る勇者。

○八代目勇者(脳筋):指パッチン等格闘系の技を得意とする。奥義勇者パンチは山すら消し飛ばす、歴代最強の勇者。武器は素手。お人好し。

○九代目勇者(勇者、魔王勇者):貧乳。現在も生きている?(生きてた!)

○十代目勇者(蒼天の猫亜人):現時点で複数人存在する?(フォーテに倒された)

あと、酒場勇者の3スレ目に各勇者のエピソードがちょっと書いてある

こんばんはー。ご心配おかけしました。もうほぼ完治しましたー。



>>264さん
や、やっちまもった……orz 辻褄合わせるようにします。(しました)申し訳ないです……。完全に熱で頭が馬鹿になっていたようです。ともあれご指摘ありがとうございます!!



桃鳥の三回目については265さんが推測してくださったとおりです。265さんありがとうございます!

大勇者の時代に出てきた魔王達というのはウェイトレスが操っていた魔王(人形)で、それぞれ

鋼の魔王(銀蜘蛛)
火の魔王(桃鳥)
獣の魔王(茶肌)
知の魔王(腹黒)
闇の魔王(ヤミ)
蝿の魔王(蝿男)

という名称で当時の人たちに識別されてました。この火の魔王っていうのが勇者募集でちらっと話しにでてきた、

大賢者「あれは禁術、呪いの槍!!」

王様「火の魔王を倒した時のあれか……」

って部分に繋がります。

魔王になった時に茶肌にやられ、人形になってからサキュバス(大魔法使い)にやられ、また今回もレン達に呪いの槍でやられることになりました。まさに呪いですね。


それでは投下していきます。

761

--  --

かつて東の町に竜殺しと呼ばれた男がいた。

強靭な肉体を持ち、最強の生命体である竜種を、ただの魔力を込めた拳で殴り殺す漢……。



彼には二人の息子がいた。

長男は、後に五柱の一角となる聖騎士。

そして次男は、大勇者と呼ばれ、世界を救うことになる、脳筋……。

762

--失われた王国、中央広場--

竜子「おらぁっ!」

ドゴォッ!

氷の魔力を纏った拳が脳筋にヒットする。

脳筋「うぉっ?」

パキパキ

竜子「このパワー馬鹿が……。氷結だ、そのまんま凍っちまいやがれ!!」

パキパ……じゅ

竜子「! 氷が溶けるだと!? くそ、そういや火属性も使えたんだったな勇者様は!!」

脳筋「いや、ただ俺の筋肉が熱いだけさ」

むきむきっ!
じゅおおおおおおおおおおおおおおおっ!

変化師「……」

鬼姫「……ちょっと、何立たせてるっすか!」

763

--失われた王国、中央広場--

変化師「す、スキル、身体変化、竜口!」

竜子「スキル、竜拳!!」

ドガガァン!

左右から同時に攻撃する二人。

脳筋「……竜か」

ズガン!!

変化師「!?」

竜子「げほ!?」

脳筋「若い頃に親父達とよく狩ったなー」

脳筋の拳が二人を吹き飛ばす。

764

--失われた王国、外れ--

ひゅうぉおおおぉぉぉおお

魔法使い「………………」

ぴちゃ
ぴちゃちゃ

ニンフ「まさか……たったの一人で魔族二人と渡り合うなんて~……」

カトブレパス「さすがだよ。魔法使い君。だが僕らはほぼノーダメ、君は瀕死だ。勝ち目なんて無いんだよ」

魔法使いはボロボロになって立っている。

魔法使い「……」

カトブレパス「このままむざむざ死ぬのは嫌だろう? だから、さぁ、君もこっちに来るんだ。今度はずっと一緒にパーティを組もう」

カトブレパスは手をさし伸ばした。

魔法使い「……ふ」

ニンフ「?」

魔法使い「でゅ、でゅふwwwwwwwwwwwwwwwwwwwでゅふふふふふふふふふふふふふwwwwwwwwww」

765

--失われた王国、外れ--

魔法使い「でゅふーーーーーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwちょwwおまwwwwうぇwwwwwwwwwwwwwwwww」

魔法使い突如大爆笑。

ニンフ「……なんです~? この気持ち悪い笑い方~」

カトブレパス「えーっと……昔の魔法使い君の笑い方だ……」

若干引き気味の二人。

魔法使い「お前らwwww笑わすんじゃねぇよwwwww」

ニンフ「……癇に障るんでやめてもらえます~? それ~」

魔法使い「むwざwむwざw死ぬのが嫌とかwwwwwばあーーーーかじゃねぇの?wwwwww俺らはもう、一度死んでんだよwwwwwいまさら死ぬのなんか怖くネェwwww」

カトブレパス「……」

魔法使い「ひーーwwひーーww」

魔法使いは腹を抱えて笑い転げている。

カトブレパス「魔法使い君……」

魔法使い「寝ぼけるな。そちら側になどいくものか」

766

--失われた王国、外れ--

ぎぃん、バチイイイイイ!!

ニンフ「ギャッ!?」

魔法使いから放たれた雷がニンフを焦がす。

カトブレパス「!? ばかな! 無詠唱魔法で魔族にダメージを与えるだなんて!!」

魔法使い「はっ」

びりびりぃ

魔法使いは自分の上着を破り捨てる。

カトブレパス「!! その紋章は……まさか!」

魔法使いの上半身に隈なく描かれた紋章。それは紋章魔法の刺青である。

魔法使い「油断して近づいてきてくれてありがとうよぉ!」

ばちっ!!

カトブレパス「がっ!?」

今度はカトブレパスを雷が直撃する。

767

--失われた王国、外れ--

カトブレパス「ッぐ……紋章魔法……そんなものまで手に入れていたのか……! だがこの火力、先ほどまでと違うのはなぜ?」

ニンフ「うー……感電して動きづらいですね~、えっ!」

ダンッ!

ニンフが踏み込んで蹴りを放つ。

ぼっ!

魔法使い「」

ひゅん!!

しかしその蹴りを魔法使いはかわした。

ニンフ「なっ!? インファイターでも無い奴が私の攻撃を!?」

ばちばちっ

カトブレパス「違う! それも紋章魔法だ! 魔法使い君は色々な魔法の術式を書き込んでいる!!」

魔法使いは、紋章魔法で移動速度上昇を自身にかけていた。

魔法使い「天才ですからwwwwwww」

768

--失われた王国、外れ--

ドゴッ!!

ニンフ「ぐっ!」

魔法使いの拳がニンフを捉える。

ズザザー!!

ニンフ「……魔法使い如きの格闘技で、魔族にダメージが通るですって~?」

ぽたっ

ニンフの口から血がたれている。

カトブレパス「おかしい……魔力が明らかに増えている……なぜだ……?」

魔法使い「ふひひwww貴様らにはわかるまーーーーーーーーーーーいwwwwww」

バチバチバチ!!

カトブレパス「……もしかしてその笑いが関係しているのかな?」

魔法使い「……」

カトブレパス「思い返せばその笑いをし始めてからだし……その笑いが魔力を高める役割をはたしていたりして……」

魔法使い「あんたのような勘のいい人は嫌いだよ」

769

--失われた王国、外れ--

ニンフ「ふん……いくらちょっとくらいパワーアップしたからって、私達魔族二人に勝てると思ってるんですか……? 大体そんなのが出来るなら追い詰められる前にさっさとやればよかったじゃないですか~」

魔法使い「こっちにもwwこっちのww事情があんだよww」

カトブレパス「……」

ぎょろ

その時カトブレパスの眼球が動く。

カトブレパス「! ニンフさん! 上です!」

ニンフ「!」

しゅん、どがぁあっ!!

ニンフ「ッ!!」

キバ「ちぇっ、外しちゃったかー」

魔法使い「うぇwwww遅過ぎwww俺wwwもう半死wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwぷぎゃ」

キバ「ごめんねー魔法使いー。でももうモンスター片付けたからさ。あとは」

ざっ

キバ「こいつら倒して中央広場に行くだけだよ」

ニンフ「……」

770

--失われた王国、中央広場--

ひゅーーん、どがぁあん! どごおん!

軍師「……あれ?」

通信師「? どうかしました? 軍師さん」

どがぁああん!! どがどがぁあん!!

脳筋「ははははは!!」

鬼姫「くっそ、この筋肉ダルマ!!」

軍師は戦場を見渡す。

軍師「……銀蜘蛛との戦いに向かわせたはずの魔導長と射王が戻ってきているだぜぃ?」

通信師「え」

どがぁあん!

通信師も魔導長達の姿を確認する。

通信師「! そういえば……いつの間に……」

軍師「銀蜘蛛との戦いが終わって加勢に来たのかだぜぃ? テンテン達はどうなっただぜぃ?」

通信師「今通信してみます。……ん……駄目です、なぜか電波が乱れていて……」

ドオオオォオオオォオオオォオオォオオオォオオオオォオオンッッッッッ!!

軍師「!? テンテン達が飛んでいった方からすごい爆発が!」

通信師「なに、あの雲……」

771

--失われた王国、中央広場--

トリガー「相打ち、か」

ウェイトレス「何々? どうかしたー?」

ぎぃいん!!

トリガーに斬りかかろうとする勇者の剣を、ウェイトレスの蹴りが弾く。

勇者「くっ!!」(全力で勇者スラッシュを放った反動で、いまいち体にキレが無い!)

トリガー「銀蜘蛛が逝ったよ。機械兵士達と相討ちだった」

ウェイトレス「あらま」

トリガー「それにしても……随分遠くでやってくれたからよかったものの、もう少し近かったら全部台無しだったね。あの馬鹿、追い詰められたからって全部ぶっ放そうとしてたよ」

ウェイトレス「それは……怖いなー……」

ぎぃんぎぃいん!!

勇者(なんの話をしている……銀蜘蛛……?)

ぎぃん!

勇者(いやまて、それじゃおかしい!! ならなんで)

魔導長「」

射王「」

勇者(あの二人が敵を倒す前に戻ってきているんだ……?)

ウェイトレス「気づいちゃったかな?」

勇者「!! しま」

ガヅン!!

勇者の胸部を矢が貫いた。

ポニテ「!? ママ!?」

772

--失われた王国、中央広場--

勇者「」

通信師「……え」

元賢帝「ちょっと、フレンドリーファイア!? なにやってんのよぉお!」

射王「……」

矢を放った射王は無表情。

参謀長「! 違う! 射線が脳筋を狙ったものじゃない!!」

どっ

勇者は膝をつく。

ウェイトレス「私の予習してたんじゃないの? 勇者」

赤姫「っ! しまった……」

魔導長「全力、全開」

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

魔導長は飛び上がって全ての魔力を一点に集約する。

踊子「でますか~星光破壊砲~」

賢者「いや……まってくれ、魔導長さん、こちらに向けてないか?」

魔剣使い「!!」

魔導長「奥義、星光破壊砲」

かっ



ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

773

--失われた王国、中央広場--

しゅううぅうう……

元賢帝「あ、あんたたちさっきから、おかしいわよ……」

賢者「うっ……」

とっさに張った、護皇、元賢帝、賢者、踊子による多重障壁。だがそれで全ての威力を軽減できるはずもなかった。

熊亜人「ぐ……」

変化師「うぐ……」

しゅうぅうう

脳筋「おいおい、仲間割れか? せっかく楽しめてたのに」

脳筋はがっかりした表情で辺りを見回す。
誰もが大ダメージで満足に立ち上がることも出来ない。

勇者「……うかつだった……あの二人はとっくにあんたに……」

勇者は回復魔法をかけようとするのだが効果が現れない。

勇者(回復不能攻撃……!)

ウェイトレス「そう、私のスキル。ココロノイト。あの二人が飛び立つ瞬間、一瞬の隙をついて操っちゃったのさ」

勇者「……!!」

ウェイトレス「まぁ私の力だけじゃないんだけどね。脳筋の常時発動スキル、脳みそ筋にくん。目の前の戦闘以外のことには意識を割きづらくなるスキル。これが無かったらいくら私でも操れなかっただろうし」

勇者(く、それのせいで今まで不思議に思わなかったのか……!)

774

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「トリガー。もういいんじゃない? 勇者もこんなだし、さっさと目的果たしちゃおうよ」

ウェイトレスが見えない糸で勇者を縛り上げる。

びしっ!

勇者「ぐ!」

アッシュ「ツインテ、ポニテ、レン、ハイ! お前らはポニテの母親の所にいけ!」

ツインテ「え?」

ポニテ「言われなくてもいくけど!」

ハイ「アッシュ先輩はどちらに?」

アッシュ「俺は」

ざざざざざ!!

脳筋「ん?」

ぎぃいいいいいいいいいん!!

アッシュのナイフが脳筋の指で止められる。

アッシュ「俺は、こいつを倒す」

脳筋「……ほう」

775

--失われた王国、中央広場--

だだだだだ!

ウェイトレス「あらま。なんか突っ込んできちゃってるよ。なら」

しゅん!

魔導長「」

射王「」

二人の五柱がハイ達の前に現れる。

ウェイトレス「せっかくだしこの子らに相手を頼んじゃおうかな」

レン「! 魔導長にお兄ちゃん……」

ハイ「操られてるんです……! 容赦なく倒すしかないですよ!」

レン「ッ! レンは魔力の使いすぎで全力出せないにゃ! だから同じく奥義を放ったばかりの魔導長の相手をするにゃ!」

ポニテ「オーケー! 私は射王さんをやるよ! 奥義、SOF!!」

ぼおっ!!

炎の塊になったポニテは射王に突っ込んだ。

ハイ「ツインテ先輩! ポニテ先輩のサポートお願いします!」

ツインテ「は、はい!」

776

--失われた王国、中央広場--

だだだだだだ!

ハイ「レン先輩は私のサポートよろしくお願いします!」

レン「わかったにゃ!」

ガキン!

ハイはパイルバンカーを構える。

魔導長「無属性拘束魔法、レベル4」

しゅるる、びしぃ!!

ハイ「きゃっ! っく! レン先輩!」

レン「さっそくとか、猫使いが荒いにゃ! 練成、封印解除のボトル!」

ばしゃぁ!

レンが乳白色の液体の入ったボトルをハイにぶちまけると拘束魔法が消滅する。

魔導長「!」

ぬる

ハイ「た、助かりました……けど……ビジュアル的に……」

777

--失われた王国、中央広場--

ぼっ、ぼぼぼっ!

射王の放つ矢がことごとくポニテの急所を狙い撃つ。だが、

ぼおおおおおおおおおお!!

ポニテ「炎に、矢なんか効かないんだから!!」

ふぉん、どがああああああああああああああああああああああん!!

炎の大剣を振るポニテ。

射王「ッ!」

ぼぼっ

避けながらも矢を放つ射王。

ポニテ「だから効かないってーの!」

頭部を貫かれたポニテ。再生しきるまで視覚が機能していないそのわずかな合間に、

射王「スキル、効果付与、破魔」

どぱっ!

ポニテ「!?」

避けられない一撃。
その矢がポニテを貫くと、ポニテは爆発四散。下痢めいて飛び散った。

ツインテ「ワザマエ!」

778

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「って、そんなこと言ってる場合じゃない! 水属性魔力供給レベル4!!」

ぎゅいいいいん!!

ポニテ「ぶはっ!! し、死ぬかとおもったよ……! さすが五柱……物理技が効かない相手への対処法まであるんだね」

ツインテ「はい、油断しちゃ駄目ですよ。なんていったってあの人はレンさんのお兄さんなんですから……」

射王「……」

ポニテ「だね……ほんとなら、レンちゃんが倒したかっただろうね」

ツインテ「……え?」

ポニテ「ごめんね、私が倒しちゃうから!!」

ぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

ツインテ「あつっ!? ものすごい熱量ですっ!」

ポニテ「矢も弓も物質なんだもん、媒介を溶かしちゃえば変なスキルをつけることも出来ないよね?」

じゅうぅう

射王「……」

元々射王は遠距離からの狙撃を得意としている。狩人、弓兵の職業は防御が薄いのが世の常。

射王「……」

広範囲攻撃に対する防御方法は、無い。

どんっ!

ポニテ「せい!!」

ポニテが跳躍し、巨大な炎の大剣で射王をぶったたいた。

どがぁああああああああああああああああああああああああああん!!

779

--失われた王国、中央広場--

ぴるるるるる

レン「ハイ! 魔導長に接近するにゃ! 魔導長はハイの接近戦に対応できないにゃ!」

ハイ「はいっ!……でも空飛ばれると接近できないっていうか……」

レン「足場はレンが作るにゃ! 練成!」

ばしっ!

どぉんどぉんっどおおおおおん!!

魔導長「!」

無数の柱が地上からせり上がっていく。

ハイ「すごい……これなら確かに駆け上がれそうです!」

とっ、とっ、とっ!

ハイはぐんぐん魔導長に近づいていく。

魔導長「無属性魔法障壁魔法レベル4」

ばしぃいん!

ハイ「はああああああああああああああああああ!!」

どぎいいいいいいいいいいいいいいいん!!

ハイのパイルバンカーが魔導長の魔法障壁と激突する。

ギギギギッギギイギギイイイイイイイイン!!

レン「っ! さすがの硬さにゃ……これは抜けないかにゃ……!」

ハイ「まだです! ユニちゃん!」

ドギャルルルルルル!!

魔導長「!?」

レン「先端が、ドリル回転!?」

ぎゃぎゃぎゃ、どぎゃあああああああああああああああああん!!

魔導長「」

ハイ「……すみません、魔導長さん」

ズバシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

780

--失われた王国、中央広場--

ひゅひゅひゅひゅひゅん!!

脳筋「! ほぉ、やるじゃないか!」

脳筋の攻撃を軽やかにかわすアッシュのフットワーク。

脳筋「足は速いしいい眼も持っている。加えてこれは……タイミングをずらしているのか?」

アッシュ「ちっ! 何が脳筋だ。ちっと戦っただけで全部見透かしてんじゃねぇぞ!」

脳筋「ははは。ふんっ」

ぼっ!

アッシュを捕らえられないと判断した脳筋は空を叩き、衝撃波で吹き飛ばすことにした。

アッシュ「ぐお!?」

ぼふううう!

脳筋「食らえ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

体勢を崩したアッシュにラッシュをかける脳筋。

ふぉ

アッシュ「……まったく、俺の相手はいつも最強クラスのやつばかりだな」

どがああああああああああああああああああああああああん!!!!

脳筋のラッシュがアッシュに叩き込まれ……

脳筋「……む? いない?」

すと

脳筋の後ろにアッシュが降り立つ。

脳筋「!?」

しゃん

アッシュ「……だが俺にはこれがある」

アッシュの眼はいつの間にか裏返っている。
スキル、人殺し。

ぽたっ

アッシュ「最強の勇者様だろうが、人は人……人ならば俺の敵じゃない。そう。お母様の力が宿るこの眼にはな」

ぶしゅ

脳筋の硬い皮膚が切り裂かれていて、心臓の部分からじわじわと血が滲み始める。

脳筋「……まいったなー……まさかそんなナイフで、やられる、なんて、ね」

アッシュ「失せろ最強」

脳筋「天晴れ」

ずずぅううん

隠蔽兵(魔剣使い)の話

実は隠蔽兵は、ツインテパーティに加入するかもしれなかった人物の一人でした。どっかの選択肢でサムが仲間になるルートと彼が仲間になるルートで分岐があったのです。ゲームとかでよくあるどっちを仲間にするか、という……。

元々想定していたのは隠蔽兵が仲間になる流れだったんですが、今となっては考えられないですね。アイ募につなげることも当時は考えていませんでしたし。




それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

超おそくなりました。投下します。

781

--失われた王国、中央広場--

ずずぅううん

トリガー「なるほど……勇者化させたのはこれが狙いだったわけか……あの暗殺者の女の子と同じ能力持ちとは……」

沈む脳筋を見ながらトリガーは呟いた。

トリガー「これが切り札」

アッシュ「……」

ウェイトレス「ふっふっふっー。だがまだ甘いなー、少年」

しかしウェイトレスは高笑い。

ウェイトレス「そんな的確に急所に攻撃なんて、普段ならまだしも今は出来ないんだよねー。なぜなら脳みそ筋にくんの効果は精密動作性も下げちゃうんだから!」

ボロ

しかし、静かに砂になっていく脳筋。

ウェイトレス「あ、あれ?」

782

--失われた王国、中央広場--

しゅぴぃん

アッシュはナイフについた血をはらう。

アッシュ「ふん、自慢じゃないが不安でしょうがなかったんでな」

ざっ、ざっ、ざっ、ざっ

アッシュはウェイトレスに向かっていく。

ウェイトレス「不安、だったから……?」

アッシュ「念のため17回斬っといた」

ウェイトレス「!!」

ポニテ(ほんと自慢じゃなさすぎて……)

レン(用心とビビりは紙一重にゃ)

783

--失われた王国、中央広場--

トリガー「……ふむ」

トリガーは静かに目を閉じる。

トリガー「はぁ、まいったね。予想外だ」

そして、あのトリガーがため息をついた。

トリガー「ヤミは帰ってこないし魔王勇者は戦意喪失。モンスターも魔族もやって来ない。残る戦力は……」

ウェイトレス「あ、もしかして私だけ?」

トリガー「ってことになるね」

自分を指さすウェイトレスに頷くトリガー。

ウェイトレス「あっちゃ~……。随分やられちゃったねー」

その時、

ざざっ!!

784

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「おろ?」

?「じゃんじゃじゃーん! 皆さま方、おまっとうさんやでー!」

??「ふん」

中央広場に駆けつけた影が二つ。

ハイ「っ! まさかこのタイミングで敵の増援!?」

咄嗟に身構えるハイ。

賢者「……いや、違うよ。あの人達は味方だよ」

踊子「そうですよ~。勇者さんを倒すために作られた、小汚ない人造勇者さん達です~」

?「や、やな説明の仕方するな自分……まぁ全否定はでけへん、って小汚ないってどゆことや!」

びしぃっ!

一人ツッコミする片方の影。

勇者「影月……それに、カブトお兄ちゃん」

785

--失われた王国、中央広場--

?改め影月「ま、それはおいといて。外のモンスターどもはわいらがぜーんぶぶったおしたで!」

治った両腕で腕組みをしているのは影月。

??改めカブト「残るは……貴様らだけだ。トリガー」

自慢のポーズを決めているのはカブト。

侍「残る魔王は後一体……」

トリガー「……」

ハイ(追い風! こっちは戦力が増えて向こうは後が無い……この流れなら、いけるかもしれない!)

786

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「わぉ……。絶対絶命ってやつ? どうするのトリガー?」

トリガー「どうするの、って……」

人類の残った全ての戦力が中央広場に集結している。

ツインテ「魔導長さん達の蘇生完了しました! スキルの効果も解除成功です!」

魔導長「うぅ……五柱のくせに情け無くて死にたいなの」

射王「あぁ。その借りはしっかり返さないとな」

ザン!

ツインテ「あと皆さんの体力回復しときました!」

賢者「うちの子マジ有能!」

ザザン!

トリガー達を囲む人々……。

勇者「! ついに」

赤姫「ついに、追い込んだ」

787

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「と、トリガー! まずいんじゃないのこれ……」

ウェイトレスは自分達を囲む人たちを見ながら汗を垂らす。

トリガー「だからさっきから困ってるって……」

アッシュ「これで、終わりだ。諸悪の根源よ」

ポニテ「あ、そういえば魔王を最初に倒した人が勇者だ、っていう約束してたよね、それが今なんじゃない!?」

ツインテ「うわ、凄い懐かしい……四年くらい前のことな気がします」

ざわざわ

レン(みんなの心に力が戻ってきたにゃ……! やはり人間は群れるものなのにゃ!!)

ハイ「さぁ皆さん、今まで犠牲になった皆さんの頑張りを無駄にしないために……ここで彼らを倒しましょう!」

トリガー「……」

シャン

勇者が大剣を構える。

勇者「トリガー……覚悟は、いいわね?」

788

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「あ、う……」

がくがくと震えるウェイトレスは瞳に涙を浮かべている。

魔王勇者「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」

魔王勇者は何かを呟き続けている。

ウェンディゴ「くそ……十代目との一戦で随分力もがれたからな……今の俺でどこまでやれるのか……」

ウェンディゴは魔王勇者を庇うようにして立っている。

アッシュ(魔王勇者もさっさと処理しておきたいが、傍に魔族がいる……さすがに無用心には近づけん。なら)

シュッ!!

一番最初に動いたのはアッシュ。

ウェイトレス「!?」

狙うはウェイトレス。

789

--失われた王国、中央広場--

ざざざざざざ!!!!

ウェイトレス「な、なめんなよー!?」

迎撃しようと回し蹴りを放つウェイトレス。

ぼっ

しかしそれがアッシュには当たらない。

ウェイトレス「!? タイミングが狂わされて!!」

ズバッ!!

そして踏み込んだアッシュのナイフがウェイトレスの右腕を切り裂いた。

ぶしゅっ、どさっ

ウェイトレス「ッ!……」

アッシュ「ダルマだ」

ドシュドシュドシュドシュドシュ!!

ウェイトレス「がっ!!??」

ウェイトレスの四肢は全て切断される。

790

--失われた王国、中央広場--

どさどささっ

ポニテ「う、うおぉ……あざやか……あんだけ手間取った歴代勇者の一人をあっさりと倒しちゃうなんて。割り込むことすら出来なかったよ!」

レン「おかしいにゃ。アッシュが役に立つなんて天変地異の前触れにゃ!!」

ツインテ「れ、レンさんさすがにひどいですよ!」

ハイ「勇者キラーすぎる……かっこいいですアッシュ先輩! 私も殺してください!」

危ない発言のハイちゃん。

ウェイトレス「あ……あ……」

どくどくどく

切断面から夥しい量の血が流れていく。

トリガー「……」

ウェンディゴ(!? あのウェイトレスさんまでやられちまった!? くそ、本当にどうする気なんだトリガー!)

791

--失われた王国、ライブ会場--

ヤミ「で、貴様は何をする気なんだ?」

ブラ「ヤミ様の洗脳を、歌で治します」

ヤミ「……何?」

メイド「戦いではどうやってもヤミ様に適いませんでございます」

ベースを担ぐメイド。

番犬「だからこそ、出来ることをやらせてもらうバウ」

ドラムの前に立つ番犬。

ヤミ「……狂ったか。そんなふざけたことに我が付き合うと思っているのか!」

どんっ!!

ヤミが放つ威圧がブラ達を襲う。

792

--失われた王国、中央広場--

ブラ「んっ!!」

メイド「ぐっ……!!」

番犬「相変わらずの、威力バウ……でも」

番犬はスティックを咥えて叩く。

ダララン!!

メイド「私達は、ヤミ様に戻っていただくためなら!!」

メイドが演奏を始める。

ヤミ「何!? こいつら俺の威圧の中で……」

がくがく

ブラ「で、では一曲目……聞いてください」

ヤミ「!? バカな!? ただの人間が俺の威圧に耐えているだと!?」

793

--失われた王国、中央広場--

じゃかじゃかじゃかじゃん

メイド「ヤミ様の言う通り、ブラはただの人間でございます……ほんの少し小突くだけで息絶える脆弱な生物でございます。でもブラには成し遂げなければならないものがある。だからこそ彼女は『聖』の位についた!!」

番犬「五柱の一席、『聖』。聖騎士が亡くなり空席となったその座についたのは彼女なのだバウ!! 聖母、ブラの歌声を聞くがいいバウ!!」

ブラ「トリイアングラー!」

ズンッ

ブラ「♪~~~~~~~!!」

ブラが歌う。

ヤミ「!!……な、んだ、これ、は」

ブラ「♪~~~~~~~!!」

ブラの歌声が失われた王国全体に響く。

ヤミ「ぐ……こんなもの初めて聞いたはずなのに……なぜだ……なぜかどこかで、聞いたことが」

ブラ「♪~~~~~~~!!」

794

--失われた王国、中央広場--

ずんどこずんどこずんどこ

メイド(効いてるでございます……! 魔力を乗せた歌……ブラならヤミ様の心の闇をきっと!)

番犬(吹き飛ばせるバウ!!)

ブラ「♪~~~~~~~!!」

ヤミ「うっぐ!!」

頭を抱えてしゃがみ込むヤミ。
そして覚えの無い記憶が脳内を駆け巡る。

ヤミ「剣の町、館、吸血鬼……なんだ、なんだこれは……」

ブラ(ヤミ様、お願い!! 戻ってきてください!!)「♪~~~~~~~!!」

ヤミ()

795

--失われた王国、中央広場--

ドガン!!

ウェンディゴ「ごほっ!!」

ずざーーー!!

射王「ふぅ……」

魔導長「弱っていたとはいえさすが魔族なの」

元賢帝「五柱四人がかりでないと安全に倒せないなんて、いやぁねぇ」

護皇「でもこれで、敵に戦えるのがいなくなったぜよ」

トリガー「……」

ウェイトレス「そんな……こんな、こんなことって……」

アッシュ(ん? まだ生きている? 最初の一撃が致命傷になってないってことか……?)

すら

アッシュは再びウェイトレスに近づいていく。

ウェイトレス「……じゃあ」

ウェイトレスは呟く。

アッシュ「?」

ウェイトレス「じゃあ全部私が倒しちゃうしかないじゃない!」









ハイ「……はい?」

796

--失われた王国、中央広場--

しゅる

アッシュ「!?」

見えない糸による攻撃をアッシュはかろうじて避ける。

アッシュ「な、まだこんな力がのこって」

ドブズン!!!!

アッシュ「……あ?」

アッシュの腹部を大きな剣が貫通していた。

ぽたっ、ぽたたっ

銀蜘蛛?「イェーイ、ギングモ、イッキゲキハー」

剣は後ろにいた銀蜘蛛の前足から飛び出ている。

勇者「!?」

アッシュ「!? き、きさま」

しゅるしゅるしゅるしゅる

ウェイトレスの体と四肢が縫われて繋がっていく。

797

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「よっと。なーんちゃってね、どう? 迫真の演技だったかなー?」

トリガー「どうだろうね。君はちょっと意地が悪いよね」

ウェイトレス「えー? そんなちょっとしたお茶目じゃないのさー」

お茶らけるウェイトレス。

ポニテ「え、銀蜘蛛って……あの魔王の?」

レン「いつの間に出てきたにゃ!? っていうかアッシュが!」

ツインテ「そうでした! アッシュ君、今助けます!!」

ばさっ!

桃鳥?「それは駄目ですって私思っちゃってます」

その時桃鳥が急に現れ、ツインテ達の行く手を遮った。

ハイ「!? あ、あなたは先ほど私達が倒したはずじゃ!!」

798

--失われた王国、中央広場--

勇者「ろくに動かないから使えないのだとばかり思っていたが……」

赤姫「最悪だ……」

魔導長「魔王が復活したなの!? ッ! とりあえず攻撃を再開なの!! 無属性攻」

ぼおおおおおおおん!!

魔導長が杖に魔力を集めた瞬間に暴発を引き起こした。

魔導長「きゃあああああ!!??」

腹黒?「駄目ですよ、そんなみえみえの大技なんて。実戦じゃ使えませんよ?」

ハイ「!?」

ざざっ

茶肌?「……」

ヤミ?「……」

ウジ虫?「……」

ウェイトレスの周りに、次々と倒したはずの魔王達が現れる。

799

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「さぁあて、と。やっと私の出番だね」

ウェイトレスはくるくると回っている。

ツインテ「これは、一体、ど、どういうことなんですか!? さっき戦って魔王さん達がまた……!」

勇者「……あの時は説明できなかったけど……こいつは人形師系の勇者なのよ。しかも」

赤姫「……奴が操る人形は、歴代の勇者達だ」

ツインテ「」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ「……はい?」

800

--崩壊した失われた王国、中央広場--










しゅぅうううぅうううぅうう

瓦礫の山の中で立っているウェイトレス。

その周りにあるのは無数の死体。

ガラ

軍師「か、関係無かったんだぜぃ……こいつの、前では……今までの、戦いなんて」

参謀長「ち……。魔王達はチートばかりだとわかっていたつもりでしたが……こいつは、次元が違う」

元賢帝「どんなに追い詰めたとしても、最後にこいつが残っているなら同じことなのね……」

ツインテ「み、皆さん、今回復を」

ツインテが魔法を使おうとしたが、

どすっ

ツインテ「……」

そのツインテを槍が貫く。

茶肌?「……」

茶肌の持つ、呪いの槍が。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました。それでは投下していきます。

801

--崩壊した失われた王国、中央広場--

勇者「!!」

しゅぅうう……

ツインテ「あ、れ……?」

茶肌?「……」

アッシュ「ば、ばかな! ばかな!! ツインテェ!!」

ぼろ

ツインテの体が……静かに崩れていく。

ポニテ「つ、ツインテちゃん絶対回復領域を! 早く!!」

ボロボロ……

レン「の、呪いの槍は……寿命を削るのにゃ……そして寿命は……寿命だけはどんな魔法をやっても……元に戻せない……のにゃ」

レンはひきつった表情で涙を溢れさせている。

ハイ「ツインテ先輩!!」

802

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ダダダダ!

ハイはツインテに駆け寄ろうとする。

ハイ「ッ!」

ボロ

ツインテ「……ごめんなさい皆さん。最後の最後まで、僕、役に立てなくて……」

アッシュ「ツイ――」

ツインテは申し訳なさそうに笑った。

ドーン! ドガーン!!

ウェイトレス「ほれほれー! 抵抗しないとあっさり死んじゃうぞー?」

周囲では残る戦力が魔王人形によって殲滅されている。

803

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ずる

下半身が無くなったツインテは槍から外れて地面に落下した。

ハイ「ツインテ先輩!!!!」

懸命に手を伸ばすハイ。だが、

ツインテ「皆さん……どうか最後まで、諦めないでくださいね?」

ハイが触れる直前で

ボッ

ハイ「ッ」

ツインテは

アッシュ「」

ポニテ「う、あ」

レン「……」

消滅した。

804

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ばしゅ

それと同じくしてハイのレベルアップが解かれる。
パーティメンバーが一人いなくなったため、レベル4の条件を満たさなくなったのだ。

アッシュ「ば……かな」

ポニテ「嘘だ……ツインテちゃんが……嘘だぁ……」

レン「にゃあぁあぁあぁあぁ!! にゃあぁあぁあぁあぁ!!!!」

ハイ「ツインテ……先輩……」

ざざっ

ハイは何も無い地面をまさぐっている。

ハイ「そんな……こんなあっけなく……嘘……」

茶肌?「……」

チャキ

茶肌の槍が、ハイを次の目標とした。

805

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ドーン! ズガガーン!

元賢帝「くそっ、たれええええええええええええ!!」

ひゅひゅひゅひゅん!!

蝿男?「ひひひ」

元賢帝の全ての攻撃がかわされる。

トリガー「ふふ、シリーズ1~6のラスボスを同時に相手にする感覚はどうだい? これはかの大勇者でさえ味わったことが無いからね」

ウェイトレス「あ、そういえばそうだね。あの時は各個撃破されちゃったからなー」

ドオオオン!!

影月「!?」

脳筋の拳が影月に直撃し、

グッパオォン!!

影月の肉片が粉々に飛び散った。

806

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー「……そういえばさっき君たち面白いことを言っていたね。総戦力の三割をつぎ込んで銀蜘蛛を倒すとかどうとか」

通信師「!……テレパシーも傍受されていたのか……」

トリガー「そういう言い方をするならば、このウェイトレスは……そうだね、僕の魔王軍の総戦力の『約五割』ってことになるね」

魔導長「」

どごおおおおん!!

元賢帝「そん、な……たった、たった一人で」

射王「ち……これほどまでに犠牲を払って来たっていうのに……」

姫「人類の90%を犠牲にしてやっと追い込んだと思ったのに……!」

護皇「やっと、折り返し地点、っていうことかぜよ……」

807

--崩壊した失われた王国、中央広場--

どぉん! どごおぉん!!

踊子「くっ、そぉ!!」

ボロボロになった踊子がドリルキックを放つも、

びしっ!

腹黒?「無策で宙に飛び上がるなんて、少しよくない戦法ですよ?(単細胞レベルのバカだな!)」

腹黒の拘束魔法によって封じ込められてしまう。



ざっ

脳筋?「さぁ、リターンマッチといこうか。あの時は色々あって楽しめなかったからな。今度こそ、ちゃんとした戦いに……」

ひゅっ

勇者「ッ! くっ!」

キン! ガガキン!

勇者と脳筋が斬り合い、打ち合う。

808

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ボボボッ、ビュッ!

勇者「!」

脳筋の攻撃がかすり、占師にもらった懐中時計がすっ飛んでいく。

カン、カラン!

勇者(つーっ……、魔力を大量に失った今の状態で脳筋の相手は……!)

キン!

勇者(きつ過ぎる!)

脳筋?「隙あり!」

ボボッ!

勇者「!? しまっ!!」

一瞬の油断。
避けられぬコースに脳筋の拳が飛んでくる。

809

--崩壊した失われた王国、中央広場--

カブト「KAGEROU!!」

ドンォオン!

脳筋の拳が勇者に触れる直前でカブトのKAGEROUが発動し、時が止まった。
時の止まった世界、動くことが出来るのはカブトのみ。

カブト「勇者……お前だけは、死なせない……!」

ババッ!

カブト「……」

カブトは勇者を抱えて移動させると、すぐに元の位置に戻ってくる。

カブト「脳筋め……この時間停止中に少しでもダメージを与えておく!」

ズギャッ!!

810

--崩壊した失われた王国、中央広場--

カブト「!? がっ!?」

ぼたっ、ぼたっ

攻撃をしようとしたカブトの胸部を死者の腕が貫いた。

トリガー「残念だったね。僕にこれはもう効かないんだよ」

カブト「!?」

静止した時の中をトリガーが平然と歩いている。

トリガー「さっきも披露したのに同じ手を……あ、そういえば君は見てなかったんだっけ? あれ」

ズルル

カブト「ぐ!、くそ……!」

!ンオォンド

時が再び動きだす。

811

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ぼたたっ

勇者「え……ッ!?」

脳筋の拳の代わりに勇者の目の前にあったものは、血塗れになったカブトだった。

脳筋「うお!? 消えた!?」

カブト「ぐ………………」

ぼたぼたぼたっ

勇者「お兄ちゃん!?……時を止めた、のね」

カブト「お……おばあちゃんが……言っ……て」

ずる、どさ

勇者「」

カブトはそのまま倒れ、二度と動くことが無かった。

勇者「ッ!……」

トリガー「……さぁ、どんどん戦力が消えていくよ?」

812

--崩壊した失われた王国、中央広場--

銀蜘蛛?「バキューン!」

ビスビスッ!

魔導長「う……な、の……」

どさ

魔導長が死亡した。


桃鳥?「これでもう、再生できないですよね?」

ボボボボボ

元賢帝「ちくしょお……この私が、女の子に、やられるなんて」

どさ

元賢帝が死亡した。


茶肌?「お前、中々、強い、戦士、だった」

シャリン

射王「……」

どさ

射王が死亡した。


腹黒?「中々楽しい戦いでしたよ(け、長引かせやがって)」

ばちっ

護皇「…………無念、ぜよ……」

どさ

護皇が死亡した。

813

--崩壊した失われた王国、中央広場--

鬼姫が死亡した。
竜子が死亡した。
変化師が死亡した。
護衛姉妹が死亡した。
シャーマンが死亡した。
魔剣使いが死亡した。
侍が死亡した。
符術師が死亡した。
通信師が死亡した。
賭博師が死亡した。
医師が死亡した。

814

--崩壊した失われた王国、中央広場--

影月が死亡した。
シンが死亡した。
アマゾンが死亡した。
姫が死亡した。
参謀長が死亡した。
軍師が死亡した。
代表が死亡した。
研究員が死亡した。
包帯女が死亡した。

815

--失われた王国、ライブ会場--

メイドが死亡した。
ちびメイドが死亡した。
番犬が死亡した。

ブラ「や、ヤミ、様……」

ヤミ「……」

ヤミはブラの首を掴んで持ち上げている。

やみ「ままをいじめるなぁああ!!」

やみはヤミの足をぽかぽかと殴り続けているのだが、効果はまったくない。

ブラ「やっぱり……私達の力だけじゃ、ごほっ! ヤミ様の心を震わすことは、できなかった……のですね」

ブラは一筋の涙を流し、死亡した。

やみ「うわぁああん! ままー!!」

816

--崩壊した失われた王国、中央広場--

シャシャシャシャシャ!!

ポニテ「! アッシュ君後ろ!!」

アッシュ「え……」

蝿男?「ぶーん!」

どしゃ!!!!

レン「!? も、もう嫌にゃあああああああああああ!! アッシュまで、アッシュまで死んじゃう!!」

ぼたっ

西の王「……ごふ」

アッシュ「!? おま……西の、王……」

西の王「……」

西の王は蝿男からの攻撃を、盾となってアッシュを護ったのだった。

蝿男?「ひ、ひひ、無駄なことを……死ぬまでの時間が少し増えただけじゃないか、ひひひ」

アッシュ「何をやってるんだ! アンタは!!」

西の王「黙れ、逃げろ……この戦いは、もやは勝てるものではない」

817

--崩壊した失われた王国、中央広場--

アッシュ「ッ!……今更逃げたところで、一緒だ……万全とはいえないまでも、最後のチャンスだったんだ……仲間も死んだ……ツインテも死んだ……もう、希望は、無い」

西の王「……」

じゃりん

西の王はツインソードを抜く。

西の王「あきら、めるな……」

アッシュ「……?」

西の王「生きているうちは、諦めるな……諦めるのは、死んでからにしろ!」

ドン!!

西の王はアッシュを突き飛ばし、武器を構えた。

蝿男?「ひ、ひひ。賞味期限の切れたおっさんが」

脳筋?「お前、たった一人で俺らと戦う気なのか?」

西の王「げふっ」

西の王は吐血する。

アッシュ「む、無茶だ……」

818

--崩壊した失われた王国、中央広場--

銀蜘蛛?「ソウ、逃ゲ場ナンテ、モウコノチジョウノドコニモ存在シナイ」

桃鳥?「さっさと諦めちゃった方が絶対楽ですよー?」

茶肌?「……」

腹黒?「あがくというのは、可能性がある者だけが行うべき行為です」

魔王人形たちがアッシュ達を取り囲んでいる。

脳筋?「その勇気は賞賛に値する……」

ばきばき、ぶしゃっ!

西の王「……ッ!!……!」

……アッシュ達の目の前で西の王はひねり殺される。

アッシュ「……」

ポニテ「う……」

レン「……」

ハイ「ま、まだ可能性が……可能性……が」

ハイは落ちている懐中時計を無意識のうちに拾って握り締める。

ハイ「ま……だ……」

つー

ハイ達は、


諦めた。

819

--崩壊した失われた王国、中央広場--

勇者「はっ、はっ、はっ……」

血まみれになり、もはや立つこともままならない勇者。

ウェイトレス「一人で随分がんばったじゃーん。勇者、あんたやっぱり強いよ」

トリガー「うん。最後にふさわしい戦いだった……よくぞここまで耐えたね」

勇者「はっ、はっ……」

トリガー「敬意を表して、最後は僕の手で引導を渡してあげるよ」

赤姫「ま、待て! トリガー!!」

どぎゃ!!!!

勇者「」

トリガー「対勇者因子。完全な勇者である君には、これ以上ないほど有効だ」

死者の腕が勇者の腹部を貫通する。

820

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ドスドスドスドス!!

続いて右手左手右足左足も貫かれ、持ち上げられてしまう勇者。

トリガー「あぁ……この時を……一体どれだけ待ち望んだか……」

トリガーは勇者の左手の指輪に触れた。

勇者「う……ぐ」

トリガー「ほら、君の魔王の骨もあるよ」

トリガーは盗賊の心臓を見せ付ける。

勇者「……!」

トリガー「さぁ……遂に君が本物の魔王になる番だ」

する        

かーーーん

トリガーは勇者がつけている指輪を外し、放り捨てた。

勇者「」

ぎち

勇者につなぎ止めていた指輪が外された。
それはすなわち……。

びき、びききっ!!

勇者の体から闇が染み出してくる。

じゅる、じゅるるる

トリガー「さぁ、さぁさぁさぁ!! 見せてくれ!!」

勇者「ふ」

しかしその時、勇者は笑った。
魔王へと変貌していくその瞬間に。

勇者「これを、待ってたわ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。久しぶりのゲリラです。
それでは最後の投下していきます。

821

--崩壊した失われた王国、中央広場--

オオオオオオオオ

トリガー「これを待っていた……? 絶望し過ぎて死を望んでいたということなのかな?」

勇者「いいえ……違うわ」

勇者の体を、黒い靄のようなものが覆っていく。

賢者「あ、あの時と一緒だ……あの戦争の時と」

踊子「勇者、さん」

グシャ!

賢者と踊子は銀蜘蛛に踏み潰されてしまう。

勇者「ッ!!……く!」

オオオオオオオオ

勇者の鎧が漆黒に染まる。

822

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー「違うだって……? 君の魔力はもうからっぽのはずだろ? 体力も限界。仲間もいない……。君に残された手なんてもう何も無いはずだ」

勇者「」

ぎし、みちちっ!

勇者は死者の腕を引きちぎろうとしている。

勇者「う、っく!」

ぼたぼたと傷口から血がたれていく。

トリガー「だから無駄なんだって。君の力じゃ」

ぶちっ!

トリガー「!? 何……?」

しゅううううううううううううううううう!!

勇者の体から魔力が吹き出した。

トリガー「な! ありえない……君の魔力は既に……はっ!」

一旦距離を置こうとするトリガー。

勇者「そうよ……魔力変換、レベル4!」

ぼっ!!

しかし勇者はそれを追う。自分の体を魔力に変えながら……。

823

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー「回復手段はもう無いというのに……特攻とはね」

勇者「咄嗟に考えたにしてはいい策だと思わない? トリガー!」

ボッ!!

勇者は魔力で漆黒の大剣を作り上げる。

腹黒?「!! まずいですよ! 急いでトリガーを護らないと!」

ダッ!!

桃鳥?「え? え?」

勇者「はああああああああああああああ!!」

ぼっ、ぼぼっ!

勇者の体が少しずつ消滅していく。それは自身を推進力として使っているからに他ならない。

トリガー「……君に消えられたら困るんだけどね、おとなしくしていてくれないかな?」

オオオオオオオオオオオオオオオ!!

トリガーは死者の腕で勇者を押さえつけようとするも、

ズババッ!!

勇者「――それに対勇者因子はあっても、勇者因子は無いんでしょ?」

ズバババッ!!

トリガー「!?」

ズバババババッ!!

勇者「今の私は、勇者じゃないんだから!」

824

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー(……。勇者のままでは僕にダメージを与えられない。だからわざと君は……魔王化したのか……!)

フォン、ズバッ!!

トリガー(魔力も使い切ることで、僕を完全に油断させ……)

逃げるトリガー。
援護に向かっている魔王達。
だがそれよりも一手だけ、

トリガー「僕が一人で近づいてくるようにしたのか!」

勇者「終わりよ、トリガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

バンッ!!

勇者の大剣が倍以上に膨れ上がる。

勇者「奥義、魔王スラッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッシュウウウウウ!!」

フォッ

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

トリガー「ぐ!」

ブチブチブチブチブチィィィイ!!

防御に回した死者の腕が全て断ち切られ、その黒の刃は



トリガー「」

トリガーに直撃する。

825

--崩壊した失われた王国、中央広場--

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

銀蜘蛛?「クッソーーー!!」

腹黒?「ち、魔力暴発レベル4!」

ドォオン!!

勇者「ぎゃっ!!」

勇者の魔力化した左足が吹き飛んだ。

脳筋?「指パッチン、百連撃!!」

ボボボボボボボボボボボボボッ!!

強烈な風圧の弾丸が勇者の体に無数の穴を空ける。

勇者「あ、ぐッ!!」

トリガー「……」

ぶしゅ! ぶしゃしゃっ!!

勇者の体がボロボロと崩れていく。
だが、

勇者「こ……この手だけは、放さない!!」

血のようなものを吐き出しながら、勇者は大剣を更に強く握った。

826

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

トリガー「……まいったね。魔王を統べる僕が……まさか魔王の力で……」

ブシュ! ぶしっ! ビキキッ!!

トリガーの体全体にひびが入っていく。

勇者「……ッ!!」

赤姫「――」

ウェイトレス「こ、こら! 何を諦めたようなこと言ってるのさトリガー! あと少し、私達がそこに行くまでふんばれ馬鹿!!」

集まってきた魔王達が勇者の剣を弾こうとするのだが、

トリガー「――見事な一手だったよ、勇者。でも次は、こうはいかないよ」

ズシャ

銀蜘蛛?「」

桃鳥?「」

茶肌?「」

腹黒?「」

蝿男?「」

ウェイトレス「」

脳筋?「」

トリガーが、

トリガー「……」

両断された。

どがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんん!!

827

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ハイ「!」

アッシュ「……まさか」

ポニテ「ママ……勝った……の?」

レン「あの状態、から……一人で?」

ぱき、ぱきぱきぱき……

トリガーの体が砕けて消滅していく。

勇者「はぁっ、はっ、はっ、はっ……」

ぱきぱきぱき

脳筋?「うお……まじで消えてってる……」

ウェイトレス「う、嘘でしょー? 勝ち確だったのに!? ほんのちょっとの油断のせいで!?」

茶肌?「……土壇場での判断力、想像もつかない、思考の外からの一手……勇者はそれを、やってのけた」

桃鳥?「……はぁ~……キングが前線に出るといいことがありませんって、私思っちゃってます」

腹黒?「……ファック!」

828

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ぱきぱき

銀蜘蛛?「……」

銀蜘蛛は振り返って勇者を見る。

銀蜘蛛?「オメデトウ……勇者チャン。君ノ勇気ノ勝利ミタイダ」

ガチンガチン

銀蜘蛛は両腕のアームで拍手でもするかのようにガチガチと鳴らしている。

勇者「はぁ、はぁ……」

脳筋?「確かに……あの状況に陥りながらも最後まで諦めなかった……素晴らしい精神力だ。あの頃の面影も無い」

ぱちぱちぱち……ぱちぱちぱちぱちぱち!

魔王達は勇者を賞賛する。

しゅぅううううう……

そして、主を失った魔王達もまた消滅し始めた。

829

--崩壊した失われた王国、中央広場--

赤姫「トリガーがいなくなれば、ルートから生じたものはルートに戻る……」

しゅうううぅう

勇者「はぁ……はぁ」

脳筋「だが勇者よ、お前の魔王化はもう止まらない所まで来ている」

勇者「ハァ……ハa」

ぽたっ

勇者「」

ずりゅうるり!!

ハイ「! 勇者さんの頭部から角が……!」

以前と同じように、否、以前よりも大きな角が生えていた。

脳筋「全身を魔力に変換し、そのまま消滅するつもりだったのかもしれないが……魔王の再生能力ならば簡単に復元してしまうだろう……。

勇者「」

脳筋「これからお前は……お前が望む未来のために、大事な決断をしなくてはならない」

ゆshあ「hあ……はあ……」

しゅうぅう

脳筋「……それを見届けることが出来ないのは心残りだな……さらばだ、下水道の少女よ」

ぱきーーーーーん!

全ての魔王が、消滅した。

ポニテ「ま、ママ……」

否、

ゆう、しゃ「あ、アァアアアああアaaaaaaaaaaaaaア!!」

一人の魔王を除いて……。

830

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ポニテ「ママ!!」

レン「ぽ、ポニテ! 危ないにゃ!!」

がしっ!

レンは飛び出したポニテの腕を掴む。

ポニテ「は、放して! ママが、ママが!!」

アッシュ「おいおい……いまだに勝ったのかどうなのか疑心暗鬼なんだが……これはどういった展開だ? まだ終わっちゃいないってことなのか?……」

yuusha「うああaaaaaあああああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

ドクン、ドクン!

盗賊の心臓が勇者と融合を始めている。

ハイ「あ、赤姫様! どうにか出来ないんですか!? このままじゃ勇者さんが!」

赤姫「……」

ハイ「赤姫様!!」

赤姫「……完全なる魔王化を止める方法は……一つしかない」

ポニテ「何!? それは何!? 早く教えてっ!! ママが苦しんでるんだからッッ!!」

アッシュ「……ち」

見当がついたアッシュは眼を背けた。

ゆうしゃ「aaaaaaaaaaaaaaa!!」

赤姫「……まだあいつに人間らしさが残っている間に……『殺す』」

ポニテ「!?」

831

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ハイ「」

レン「そんにゃ……」

アッシュ「やっぱりそうか……」

ゆうsha「あ、ggggがあううううう!!」

苦しむ勇者は血を振りまきながら、少しずつ姿が変わっていく……。

ポニテ「う、そだ」

赤姫「……嘘じゃない」

ポニテ「うそだ」

すた

ポニテは地面に倒れこむ。

ポニテ「嘘だ……そんなの嘘だ……まだ……助かる手段がどこかに……きっと」

ハイ「ポニテ先輩……」

赤姫「……正直な所……もう完全に駄目だと思っていた……。その絶望の状況を、あいつは一人でなんとかして見せた」

赤姫は悲しげな表情で勇者を見ている。

赤姫「紛れも無い勇者だ……。出来ることなら私だって助けてやりたい……だが、それはもう、かなわない」

ポニテ「かなう!!」

ハイ「……赤姫様、あの指輪をもう一度つけても駄目なんですか……?」

赤姫「既にあれは……押さえこめるレベルを超えている」

ハイ「……」

832

--崩壊した失われた王国、中央広場--

赤姫「――問答している場合じゃないぞ。このままでは再び魔王が出現する。そうなったらもうなすすべは無い……。全てを犠牲にして手に入れたせっかくのチャンスを、無駄にするのか……?」

赤姫は苦しんでいる勇者を見つめている。

赤姫「魔王のいない世界。作るなら、今だ」

ポニテ「うっ、うぅ……」



泣いているポニテのもとに、

ずる、ずる

足を引きずるようにして、

ゆうshあ「亜……あ……」

レン「ひっ!?」

勇者がやってくる。

yしゃ「ポニテ、なんde、なiteる、ノ?」

異形化の進んだ体で……

ずる、ずる

ポニテ「ま、ま……」

ゆsっ「泣き虫、ネ……そンナンじゃ、駄目yおポニテ。貴方たち歯、コレから世界を元にモドシテいく使命ガあるンだから」

ワニのような手で勇者はポニテの顔にそっと触れる。

ポニテ「ママ……」

ゆうしゃ「残ってる人口ハ、100人チョッとシカイナイ……これkらガアナタタチの、本当ノ戦い……」

833

--崩壊した失われた王国、中央広場--

yuu者「イママデ以上に、大変な戦いが、あるカモシれ無い……でも、モウ私達は助ケテ、アゲラレナイん堕よ? これkラは、貴方たちダケで進まなくちゃイケナイの」

ポニテ「すん、すん……」

勇者「最後二、アナタタチの成長した姿を見せて、頂戴……私ヲ安心サセテ頂戴……」

アッシュ「ッ」

レン「ポニテのママさん……」

ハイ「う、うあぁあっ……」

勇者「――さぁ、ミンナ、武器をもって……これが……君達に最後にしてあゲラれるこ戸だ。君達を……勇者にしテアげる」

そう言って、異形化の進んだ顔で勇者は笑う。

ポニテ「う、うぅ……!!」

ポニテはボロボロと涙を零す。

チャキ……

ポニテ「ママ……ママ……」

アッシュ「……」

チャキ

レン「……」

チャキ

ハイ「……ッ」

チャキ

勇者「赤姫、後はお願いね」

赤姫「……あぁ」



ポニテ「う……う、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

834

-- --


















835

--新王国--







そして八年後……。






836

--新王国--

ばたん

新大臣「アッシュ国王! 大変であります!」

アッシュ「……どうした騒がしい」

机で執務をこなしているアッシュは新大臣を睨む。

新大臣「それが南方のモンスターの様子がおかしいとのことです。明らかにここを目指して進軍しているとか……」

アッシュ「南方か……丁度あいつらもそっちにいたな。ならばポニテ討伐隊長に向かわせろ。奴なら一人でどうにでもなる」

新大臣「はっ! 直ぐに伝書鳥を放ちます!」

ばたん

レン「やれやれ、父親の真似事は大変そうにゃね」

アッシュ「ふん……慣れないことだがな。それでも俺達がやっていかなくちゃならないんだ……」

837

--南方砂漠--

ぴいーぴー

ポニテ「ん?」

ばさばさっ

ハイ「あ、軍の伝書鳥ですね」

ポニテ「なんだろ……また追加の命令かな?」

ポニテは伝書鳥から手紙を受け取り餌を与えた。

ばさっばさっばさっ

ハイ「なんて来たんですかポニテ先輩?」

がさ

ポニテ「どれどれ? むー……なんか南方のモンスター達の様子が変なんだってさ。それを討伐してこいってー」

ハイ「なるほど……アッシュ先輩はほんと人使いが荒いですねー。じゃあ、さっと行ってぱっと終わらせちゃいましょうか。よいしょっ、と」

ハイは荷物をユニコーンに乗せる。

ポニテ「ううん、規模的に私一人でなんとかなりそうだよ。だから私一人で行く。ハイちゃんとはここで一旦別行動ね」

ハイ「え、大丈夫ですか?……まぁ、ポニテ先輩が負ける所なんて想像できないですけど」

ポニテ「そーそー、だーいじょうぶだってー! それよりハイちゃんに命令ね、合流するまでに西方方面にある魔王の骨の欠片の情報、ちゃんと仕入れておいてね」

ハイ「うわっ……そういう下調べが一番疲れるんですよ……?」

ポニテ「へへへ、知ってる。というわけでじゃーね! ばいばーい!」

ぼぼぼっ

ポニテは自身を火の魔力に変えて飛んでいってしまう。

ハイ「うぅ……上司はいつの時代もいいものではないです……」

838

--南方砂漠--

ざっ、ざっ

ハイ「はぁ……どっかで冷たい水が飲みたいですねぇ……このままじゃ干からびちゃいます……ねぇ、ユニちゃん?」

ユニコーン「ひひーん」

ぱからっぱからっ

ハイ「……」

じゃら

ハイは懐中時計を取り出して、握りしめた。

ハイ「あの時砕け散った魔王の骨の回収……あれから何年も探しているけど成果は中々得られませんね……」

ユニコーン「ひひん」

ぱからっぱからっ

ハイ「魔王が現れる可能性は一つだって残しちゃいけない……それがあの戦いで生き残った私達の責任……」

ぱからっぱからっ……ぴくっ

ユニコーン「! ひひん!」

ハイ「え? 嫌なが感じがする?……まさか!」

839

--南方砂漠--

馬「ぶるるるっ!」

がらがらがらがら……

壊された馬車の脇に二人の人間の姿が。

商人「う、ぐ……ま、前にもこんなことが……」

奴隷王「ほほう……これがあの伝説の秘宝か……」

奴隷王は赤黒い何かの欠片を太陽にすかしてみている。

奴隷王「力を感じる……くくっ! これがあれば、俺はもっとつよくなれる!!」

それを遠くから見ているハイ。

ハイ「また強盗ですか……。すっかりこの辺りの治安も悪くなりました……なんてぼやいても仕方がありませんね。さぁ、いきますよ、ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!!」

ぱからっ、ぱからっ、ぱからっ!!

ハイ「勇者さん達の意思を受け継いだということを、証明するために!!」










  勇者と魔王がアイを募集した
   第三部、リベリオン
       完



--大宮駅--

『三番線に電車が到着します。危険ですので、白線の内側にお下がり下さい』

ハイ「」

ハイは目をぱちくりとさせている。

ぷあぁーーーーん

きききぃーーーー

ハイ(あ……今ぼーっとしてた……あれ? 今……何考えてたんだっけ?)

ぷしゅー

『大宮ー、大宮ー』

ハイ(何か懐かしいことだったような気がするんだけど……って、今はそんなこと考えてちゃ駄目ですね。今日の単語テストの勉強しなくちゃ)

ハイは電車に乗り込むと単語帳を取り出した。

ぱら

ハイ(recruitmentは……募集)

『ドアが閉まります』

ぷしゅー







  勇者と魔王がアイを募集した
     
     最終部、『』

とういわけで(三部)最後の投下でした。

これにて最後の最後の話に突入します。どうか最後までお付き合いしてもらえたらと思います……。

それでは皆さん良いゴールデンウィークを。
(来週は来れない可能性が微レ存……)

こんばんは。GW楽しめましたか??

それでは最終部始めていきたいと思います。



--高校--

護衛姉「でさー」

護衛妹「嘘ー」

朝の教室で女子生徒二人が楽しそうに話をしている。

ガララッ

代表「ん」

竜子「お」

教室にハイが入ると同時に二人の生徒が反応する。

スタスタ

ハイ「おはよーです」

代表「おはよう」

竜子「おう、遅いぞハイ! お前らしくもない。なんかあったのか?」

真面目そうな男子生徒とスケバンっぽい女子生徒がハイと挨拶をかわす。



--高校--

ハイ「何にもないですよ。ただ風で電車が遅れちゃっただけなのです」

どさ

ハイは机にカバンを置きながらそう答えた。

竜子「ふーん……確かにあの線弱いもんなー」

すたすた どかっ

竜子はハイの机の前に行って椅子に座った。

竜子「なぁなぁ! 今日終わったらどっかよってこうぜ。陸上部休みなんだよー」

ハイ「今日? まぁ……大丈夫かな?」

竜子「やったぜ! 実はこの前店で見たワンピが超気になっちゃってさー、売れちゃう前に買っちゃいたいなーって」

ハイ「ワンピ……この前もそんなこといって靴買ってたけど、お金大丈夫なんですか? 今月は私も厳しいのでもう貸せませんよ?」

竜子「大丈夫だって。なんとかしたからさ」

ハイ「……まさかいかがわしいバイトを……?」

竜子「古着とか売っただけだから!!」

ハイ「使用済み下着……」

竜子「そっちにもってかないでよ!!」

顔を真っ赤にして怒る竜子だった。



--高校--

竜子「ってわけよー」

ハイ「あはは」

きゃいきゃい

代表「……ちょっと竜子ちゃん、小テストの勉強しなくていいのかい?」

女子高生同士の会話に、左隣にいる代表が口を挟む。

竜子「……あ!? なんだよ代表! 人が楽しい放課後の話をしてるっつーのに、なんで現実に引き戻すようなこと言うかなー!……てかなんで私だけに言うんだよ!」

代表「だってハイちゃんは勉強してきただろうし」

さも当然とばかりに代表は返す。

竜子「っ……してるのかハイ?」

ハイ「……ちょっとね」

ハイはちょびっと、のポーズ。

竜子「うぐ……大きい点数を取る事がそんなに大事なのかよ……」

竜子は頭を抱えてしまう。

ハイ「点数稼ぎが学生の使命ですから」



--高校--

スタ、スタ……

熊亜人「あ、あの、そこ僕の席なんグマ……もうHR始まるしそろそろ退いて欲しいグマ……」

竜子が占領している席の持ち主が現れた。

竜子「あ?」

熊亜人「く、クマ……?」

竜子はメンチを切っている。

ハイ「なんでメンチ?」

竜子「うっせーぞ熊公っ! お前なんか立ってろ! なんかしんねーけど、お前には随分苦労させられた気がして顔見るだけでむかつくんだよ!!」

熊亜人「く、クマーー!? 理不尽クマよーーー!!」

席の持ち主を追い出す暴挙。

ハイ、代表((迷惑な奴だなー……))



--高校--

キーンコーンカーンコーン

人形師「――というわけなのでぇ、皆さん気をつけて下校してくださいねぇ」

ざわざわざわ

帰りのHRが終わった。

がたがたっ

坊主「あー、終わった終わったー。よし、じゃあさっそく野球部に行こうーかなーっと」

ガシッ

首根っこを掴まれる坊主。

坊主「……野球部に」

地味子「行くわよ坊主君。……我らがラヴクラフト部に」

ずるずる

坊主「……」

引きずられていく坊主。少なくともグラウンドに行くことはないのだろう……。



--高校--

がやがや

竜子「よっしゃー行くぞハイー! さっさと準備しやがれーー」

ハイ「はいはい、ちょっと待ってくださいね」

スッ、スッ

ハイは急いで鞄に教材を詰め込んでいく。

竜子「……うわ、それ全部もって帰る気か? 相変わらずハイは真面目だなー」

ハイ「あれ? これ宿題でてるんだけど……あ、竜子ちゃんには関係無いですよね。朝来て写すだけですもんね」

竜子「うん」

ハイ「うんじゃないが」

胸を張っての、うん、だったそうな。



--高校--

竜子「そうだ、代表もこいよ。お前どうせ暇だろ?」

代表「へ?」

竜子は同じく帰り支度をしている代表に声をかける。

竜子「私らの遊びに特別に連れてってやるよ、感謝しな!」

代表「いや、暇な日なんて概念は僕には存在しないなぁ……」

竜子「は? 何わけわかんないこと言ってんだ。美少女JK二人とお出かけできんだぞ? 四の五の言わずについてこいや」

ハイ「自分で美少女って言っちゃうスケバンってどうなの」

代表「美少女かどうかはともかく、正直な所、女の子二人とお出かけなんて僕にはハードル高すぎるんだよね」

竜子「? んでだよ」

代表「ハーレムを妄想することはしょっちゅうあっても、実際にハーレムになったら胃が痛くなるほどストレスを感じて喜べない……そんな矛盾した精神を持っているのが僕ら非モテだからさ」

ハイ「ははは……」

代表「それになんかおごらさせられそうだし」

竜子「あ? 電車賃くらい払うわ」

代表「……他のは?」



--廊下--

どかっ

ハイ「きゃっ!?」

スー「アイタタ……OHー、悪いデース! 余所見してましたデース!」

曲がり角でハイと外国人の女の子がぶつかった。

竜子「ちゃんと前見て歩けよあぶねーだろー!」

怒鳴りながらも手を差し伸べる竜子。

スー「ソーリーソーリーデース」

ハイ「別にどこも怪我してないですし、大丈夫ですよ。これからは気をつけてくださいね」

スー「了解デース。シカラバッ!」

ばひゅん!

少女はお辞儀をした後、また全速力で走っていった。

竜子「全然こりてねぇじゃねぇかあいつ……怪我したらどうすんだ!」

ごそ

代表「……ん!? 今ゴギブリがいたような……」

10

--街--

魔導長「ゆ・び・お・り!」

ワーキャー!!

ビルの大ビジョンには、国民的アイドルがアップで映し出されている。

ハイ「歩いていくとちょっと遠いですねぇ」

ハイは自転車を押して歩いている。

槍兵「おう兄ちゃん、これ買ってかねーか?」

代表「……はい?」

露天のお兄さんに声をかけられる代表。

槍兵「これだよこれ、この槍。いいだろう? いい出来だろう? しびれるだろう?」

きらりん

代表「い、いえ……」

竜子「うお! それまじもん? イカス!!」

槍兵「お! わかるか槍の魅力が! そうだぜこれは本物だ! その気になればこれでなんでもブッさせるんだぜ!?」

東の憲兵「不振人物を発見しました」

11

--デパート--

ハイ「おまたせ」

竜子「ユニコーン号はちゃんと停めたのか?」

ハイ「ちょ、私の自転車のことユニコーン号って言うのやめてください!」

代表「ユニコーン号?」

竜子「ハイは自転車にユニコーン号って名前つけてんだよ。可愛いだろ?」

ハイ「それは子供の頃の話です……!」

ちん

受付「上へ参りまーす」

代表「っと、エレベーターきちゃってるよ。そんなこと話してないで乗ろう」

すたすたすた

受付「ドアが閉まりまーす」

ちん

竜子「はぁ、でも売れちゃってたらどうしよう。電車賃使ったのに無かったらショックだなー」

ハイ「その気持ちはわかります。でも無かったなら諦めるしかないですよ。そうしたらまた今度古着屋でも巡りましょう」

竜子「? 古着屋?」

受付「五階でーす」

代表「この下が透けてるエレベーターって、高所恐怖症には拷問なんだよなぁ……ん? 下が透けるっていうことは下から見たらスカートは……ひらめいた!!」

受付「通報でーす」

12

--デパート--

竜子「あー、残っててよかった私のワンピー!」

ハイ「ワンピって漫画の方かよ!」

竜子は大きな画集に頬擦りしている。

代表「……」

そして引きずり回された代表は虚ろな瞳でコーヒーをすすっている。

ズズー

13

--デパート--

ハイ「っと、結構長居しちゃいましたね」

ハイは時計を確認し、帰り支度を始める。

竜子「ん? なんだ、もう帰っちゃうのか?」

ハイ「一人暮らしですから。竜子ちゃんには関係無い宿題もありますしね」

精一杯の皮肉攻撃。

竜子「なんだよー。飯食ってこーぜー」

ハイ「……」

しかしそんな高度な口撃は竜子には通用しない。

ハイ「言ったでしょ? 今月は厳しいんです。外食してる余裕は私には無いのです」

竜子「ちぇー」

竜子はストローでぶくぶくと泡を立てている。

14

--デパート--

ハイ「じゃあお二人とも、ごゆっくり」

代表「さよならハイちゃん、また明日」

首を傾けるハイと手を振る代表。

竜子「あ」

代表「あ?」

そして驚いた声を上げる竜子。

ハイ「?」

竜子の視線の先には二人の男女がいた。ぱっと見頼り無さそうな男子と背が低い女子。

竜子「うわ、勇者先輩だ。隣にいるのは……彼氏かな?」

ハイ「知り合い?」

竜子「うちの部の副部長。うわー、デート中かなぁ。見つかったらお互い気まずいよなぁ……ちょっとハイ、まだ行かないで盾になっておくれよー」

お願い、と竜子は手を合わせた。

ハイ「えぇ?……もう……」

しぶしぶともう一度席に座るハイ。

勇者「 」

盗賊「 」

ハイ「……」

何を喋っているのかまではわからないが、二人は随分と楽しそうだった。

15

--夜道--

シャーー

夜道を自転車で行くハイ。

ハイ「はぁ、予定より遅くなっちゃった。今日はもう買い置きのグラタンでいいかなぁ」

キィ、スタ、スタ

家の前に着くと、鞄から鍵を取り出す。

カチャカチャ、ガチャ

ギィ

ハイ「ただいまー」

バタン

ぱち

電気を付けて居間に向かう。

ドサッ

ハイ「ふー、重かったぁ。あ、雨戸閉めなきゃ」

がらがらがら

16

--自宅--

チン

電子レンジの音が鳴る。

ガチャ

ハイ「あち!……鍋掴み鍋掴み」

電子レンジからグラタンを取り出したハイはそれをテーブルに置き、コップに牛乳を注ぐ。

トクトクトクトク

ハイ「そうだ。宿題で調べなきゃいけないことあるんだった。行儀悪いけどご飯食べながらパソコンしますか」

ぽち

パソコンの電源ボタンを押す。

ハイ「……独り暮らしだと一人言が増えていけないですね……」

ぶぅん

17

--自宅--

ハイはグラタンを持ってパソコンの前に行く。

ハイ「えっ、と……大宮市の歴史、っと」

カタカタカタカタ

ハイ「しかしこの宿題、パソコン持ってない人はどうやって調べるんでしょう」

カチッカチカチ

ハイ「……もぐもぐ」

検索しながらスプーンでグラタンを口に運ぶお行儀悪いハイちゃん。

カチカチ

ハイ「みんなどうせwikiで調べるだろうし、私は個人サイトでも見てみようかな。なんかそういうの無いかな」

カチカチカチ

ハイ「みんな大好きググル先生ーー」

トップには富士山の絵が描かれていた。

18

--自宅--

カチャカチャカチャ……ッターン!

検索ワードをいれてエンター。

ハイ「これよさそうかも……ん……これは……あからさまに変なサイトですね。バナーばっかり」

カチカチ

ハイ「あ、間違って押しちゃった……もぐ」

カチカチ

カチカチ

しかし

ハイ「ん……」

飛ばされたサイトには見覚えがあった。

19

--自宅--

全体的に黒色のサイト。若干どころか怪しさ全開である。

ハイ「もぐ……このサイト、最近やたら目につきますね。そんなに色んな所にリンクが貼ってあるわけじゃないのに……なんでだろ」

ここ一週間、ハイはこのサイトに飛ばされてしまうことが何度かあった。
マウスのクリックミス。くしゃみ……理由は様々ではあるが、その度に飛ばされるのは決まってこのサイト……。

ハイ「変なの」

カチカチ

ハイ「……もぐもぐ……小説のサイト? なんだか少し変わった書き方ですね。文の最初に名前が書いてあるなんて」

カチカチ



――本来ならば興味を持つはずがないものだ。
ハイは恋愛系の、しかも決まった作者の作品しか読まない食わず嫌いなのだから――。

20

--自宅--

しかし

ハイ「……少しだけ……読んで見るとしましょうか」

カチ

なぜだか懐かしい感じがして、ハイはそれを読むことにした。

ハイ「題名は」

カチ


















ハイ「……『勇者募集してたから王様に会いに行った』」

本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
それでは読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。

書き込まれてる作品名が知らないのばかりなので、ぐぐるのがちょっとした楽しみになってます。

それでは投下していきます。

21

--自宅--

チュンチュン

ハイ「……」

ほんの少しのつもりだったのだが、気づけば夜が明けていた……。

ハイ「……」

なぜだがわからないが涙がハイの頬を伝っている。

カチ

決して感動したとかそういう涙ではない……。

ハイ「なんでだろう……私」

ただ何か不思議な懐かしさを感じていた。
心を震わせ、涙を流させるほどに。

ハイ「と、いけない。もう朝だ……学校行く準備しなきゃ」

ハイはパソコンを消して仕度を始める。

22

--自宅--

がちゃ、バタン、かちゃ

家の鍵を閉める。

ハイ「……」

そして自転車を押して門をくぐる。

ぎぃ

ハイ「……ユニコーン号……」

ふと、自分の自転車を見る。子供の頃から使っている、古くてぼろい自慢の愛車だ。

ハイ「私……なんでユニコーン号って、名前つけたんだっけ……」

23

--学校--

がららっ

ハイ「おはよぉ」

竜子「おーす!……って……お前顔ひどいな……隈できてるぞ?」

熊亜人「ぐま?」

竜子「お前じゃねぇ引っ込んでろ!!」

どごす!

熊亜人「ふぁん! ひどいぐま!」

ハイ「ははは……いやぁちょっと徹夜しちゃいまして……」

どさ

ハイは机に荷物を置きながら答える。

代表「夜更かしは美容によくないよ。ハイちゃんらしくないことだけど、宿題が手間取ったのかい?」

ハイ「あ……宿題忘れた」

竜子「おいおい、なにやってんだよハイらしくねぇ。じゃあ私は誰に見せて貰えばいいんだよ」

ハイ「……」

24

--学校--

人形師「皆さん、おはようぉございまぁす」

ハイ「……」

ハイは教壇に立つ人形師を凝視する。

ハイ(なんでだろう……先生が昨日見たSSの登場人物と被る……なんというか、私が想像した人物像にそっくりで……)

勇者募集してたから王様に会いに行ったに出てくる人形師と、自分の担任が被って見えて仕方のないハイ。

ハイ(……なんでだろう)

人形師「そぉれでは一時間目は私の国語でぇすよぉ」

25

--学校--

すたすたすた

竜子「いやー買えた買えたー。購買名物名状しがたきパン。四限目終わってダッシュしたかいあったぜー」

竜子はグロテスクなパンに頬ずりをしている。

聖騎士「ぶるぅあぁあぁ! 花壇を踏むんじゃあ……ぬぇええぇぇえ!!」

ハイ「!」

その時中庭から特徴ある怒声が響いた。

魔法使い「ふひひwwwwwごwめwんwww」

盗賊「ひぃ! ごめんなさいごめんなさい!」

聖騎士「んんまぁてぇええいい!!」

どたどたどた!!

竜子「あのバカ男子ども、事務のおっさんに目つけられてるよ」

ハイ「……」

26

--学校--

すたすたすた

闘士「に、西高にいい筋肉してるやつが、い、いるらしい」

賢者「闘士君……。本当に君は筋肉のことしか頭に無いんですね」

ハイ「……」

廊下ですれ違う上級生。一度も見たことが無いはずなのに、どこか懐かしい気がしている。

ハイ(デジャブ……なのかな?)

さわっ

竜子「……おい、今あのでかいの、眼鏡のケツ触ってたぞ……」

代表「なるほど、HOMOじゃねーの」

ハイ「代表君、いつからいたんですか……?」

なぜか少しだけ頬が紅潮している代表。

27

--学校--

ハイ「……」

あのSSを読んでから、ハイは奇妙な感覚に悩まされていた。

竜子「おいおいどうしたハイー。最近元気無いな」

ハイ「あ、竜子ちゃん……」

気がつかないうちに授業が終わり休み時間になっていた。
終了の挨拶の時にハイが起立しなかったのを竜子は見ていたのだろう、心配して声をかけにきたのだった。

竜子「どうしたよ? なんかあったか? 悩みあんなら私聞くぜ?」

ハイ「……」

竹を割ったような性格の竜子に、ハイはいつも助けられていた。

ハイ「うん、大丈夫だよ。悩みってほどのことじゃないから」

竜子「……本当か?……」

ハイ「本当にそんなんじゃないって……ねぇ竜子ちゃん、一個変な質問するよ?」

竜子「ん?」

ハイ「竜子ちゃんって氷を操れたりする?」

竜子「……は?」

ポカンとしている竜子。

ハイ「あ、ははは……ごめんなんでもない」

ハイは笑って誤魔化した。

竜子「……」

ハイ「それじゃ喋るきわどい服を着て戦ったりしてたことは?」

竜子「お前それちがくねぇか?」

28

--帰り道--

シャララララ

ハイ「……はぁ」

いつの間にか自転車から降りていたハイは、自転車を押して歩いている。

ハイ(待ち行く人も)


  王様「そろそろ会社が終わったくらいの時間になるかな」


ハイ(スーパーの店員も)


  サキュバス「いらっしゃいませー!」


ハイ(どうしても……どうしても何かと被る)

カー、カー

29

--帰り道--

ハイ「帰ったら……また見よう。確かあれには続きがあったはず」

あのssは三部作だったはずなのだ。

ざっ

がちむち「うほぉ、女子高生だ女子高生!」

ハイ「え」

前方から歩いてくる三人組。

マッスルひげ「こらこらやめなさいよ怯えてるじゃないかぁ」

屈強な男「こんな夜中に一人歩きは危険だよぉ? ひっく」

ハイ「いや、まだ夕方なんですけど……」

夕方から酒臭いおっさん達に絡まれるハイ。

30

--帰り道--

ずい

がちむち「俺は本当はツインテールが好きなんだけどなぁ。ねぇしてみない? ツインテール」

さわ

ハイ「ちょ、やめてください汚い」

ばしっ

ハイは肩に触れたがちむちの手を払いのける。

屈強な男「……あらあら、いけないなぁお嬢ちゃん。ひっく。暴力はだめだよぉ」

マッスルひげ「こらこら君たち、怯えてるじゃないかぁ」



三人に取り囲まれるハイ。

ハイ「!」

助けを呼ぼうにも、この道は人通りが少ない……。

ハイ「……やば」

31

--帰り道--

ばっ!

ハイは無意識のうちに折り畳み傘を手に取っていた。

マッスルひげ「おやおやなんだいそれはぁ。それで俺たちと戦おうっていうのかい? 怖いなぁ」

がはははと笑う三人。

ハイ(っ! こんなの構えたところで勝てるわけ無い……でも私は……これで戦っていたような気がして)

ぐい

ハイ「あっ!」

傘を持っている手を握り締められるハイ。
男の力に適う筈も無く、自由を奪われる。

がしゃん!

自転車が倒れる。

ハイ「は、離してください!」

体の芯に力を込める。それだけで昔は不思議な力が出せた気がした。こんな人たちなど簡単に吹き飛ばせるような何かを……。

ハイ(昔って、いつ?)

32

--帰り道--

がちむち「まぁ悪いようにはしないからさぁ、ちょっとおじさん達とご飯食べに行こうよぉ」

ハイ「しゅ、宿題があるので、行けないです」

マッスルひげ「いいじゃないのぉ、ちょっとだけだからさぁ。心配しなくてもおごったげるからさぁ」

ハイ「そんな心配なんてしてないです!」

若い女性が拉致られて、山中で死体で発見された……そんなニュースを唐突に思い出した。
それが今は、もしかすると……自分の身に起きようとしているのではないか……?

ハイ「っ」

もっと強大な敵と戦っていた気がするのに……。

屈強な男「俺達いい店知ってるんだよー」

今のハイは、こんなどこにでもいそうな男達にすら、抵抗できずに殺されてしまうのだ。

















トリガー「やめなよ」

時が凍りついた。

33

--帰り道--

ハイ「」

いつの間にかその少年は立っていた。

トリガー「やめなよ。その子嫌がってるじゃないか」

もう一度その少年は言った。

がちむち「あ……いや」

面食らったのか酔いが冷めたのか、三人は途端に大人しくなる。

屈強な男「俺達はただちょっとご飯に誘おうとしてただけで……」

トリガー「その子、泣いているみたいだけれど?」

ハイ「え?」

ぽろ

自分でも気づかない間にハイは涙を流していた。

34

--帰り道--

マッスルひげ「ご、ごめんね! 俺達ほんと、ご飯に行きたかっただけなんだけど、怖がらせちゃったね!」

慌てふためく三人組。

ぽろぽろ

がちむち「ほ、ほんとごめん! これ、少ないけど、これで美味しいものでも食べてね! じゃ!」

どひゅーん

ハイに強引に諭吉を握らせて走り去る三人組。

トリガー「やれやれ……彼らの言うことは本当だと思うよ。ただ一緒にご飯が食べたかっただけ……。彼らは駄目な人間だけど、悪い人間じゃあないからね」

まるで知っているかのように話す少年。

ハイ「はぁ……」

トリガーは自転車を起こしてスタンドを立てる。

がちゃん

ハイ「……」

怖かったというのは本当だった。でも涙が流れ出たのは違う理由のような気がする。
それは……

ハイ「あの」

トリガー「?」

ハイ「……私、貴方に会ったこと、ありますか?」

35

--帰り道--

トリガー「……」

少年は投げかけられた質問にすぐに返答しようとせず、しばらくの間黙っていた。

ハイ「……」

トリガー「……いや? 初めてだと思うけど」

ハイ「そう……ですか」

少年は後ろを向く。

トリガー「あまり遅くにここを歩かないほうがいいよ。通るなら自転車で時間をかけずにね。それじゃあ僕は行くよ」

ざっ

少年は歩いていく。

ハイ「……」

36

--自宅--

がちゃ、ばたん

ハイ「ただいま……」

荷物を置いて手を洗いに洗面所へ。

ぽと

ハイ「ん?」

ぎゅっと握り締めていた諭吉が落ちる。今の今まですっかり忘れていたのだ。

ハイ「……あのおっさんズ……お金を払えば許して貰えるとか思ってるんでしょうかねぇ」

しかしそれは別として、金欠気味の今の状況にはありがたい臨時収入だった。

すっ

ハイは拾ってポケットに入れ、手を洗う。

じゃー

ハイ「……あの人……」

トリガーの顔が頭を過ぎった。

37

--自宅--

がちゃっ

ハイ「うわ、しまった。今日スーパー行ったのに野菜とか大事なもの全然買ってない」

冷蔵庫を開けたハイが絶望の声をあげる。

ハイ「はぁ……今日もまたグラタンですね」

ばたん

ハイ「ま、いっか。今日もあの長いだけのss読むんだから、料理に時間割いてられない」


ちん


昨日と同じようにグラタンを温めた後、パソコンを立ち上げて例のサイトへ。

ハイ「……今の私、まるで引きこもりみたいですね。もぐ」

38

--自宅--

ハイ「『酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった』……昨日のより短いといいな」

かちかち

ハイ「勇者募集は長かったのに最後は唐突に終わっちゃったからな。今度はそうじゃないといいんだけど」

かち

ハイ「ん、『盗賊だけど今日勇者に解雇された』……? 外伝?……外伝なら読まなくていっか」

かちかち

ハイ「……」

酒場募集を読み始めたハイは、冒頭に出てくる三人組が気になった。なぜだか今日会ったあの三人組のような気がして……。

ハイ「……うつうつします」

39

--自宅--



~少女読書中~



ハイ「 」


ハイ「!?」


ハイ「……」


ハイ「////」


ハイ「ッ!!」


ハイ「ーーーーーーーー」






……ちゅんちゅん

40

--自宅--

ハイ「なげぇよ!!!!!!!!」

ガッ!!

朝までに読みきれなかったハイだった。

ハイ「そして二徹かよ!!」

寝てないのでテンションがハイになるハイだった。

(あれ? このペース……)


本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
それでは、読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました! それでは投下していきます!!

41

--通学路--

しゃー

ハイ「うー、眠いよぉ……でも読みきれなかったし、また今日も徹夜かな……」

ハイは目をこすりながら自転車に乗っている。

ハイ「でもま、今日を乗り切れば明日から休みだし、なんとかなるよね」

しゃー

男子高校生「   」

女子高生「   」

しゃー

仲良く二人乗りしている他校のカップルが、ハイの横を通っていく。

ハイ(いいなぁ……青春っぽい。危ないことだけど、でも、少し憧れちゃいますね)

ハイは楽しそうに笑う二人をうらやましそうに見ている。

ハイ(……はっ! 何言ってるんですか私。私だってまだ青春真っ盛りなのに……でもなぜだろう。なぜか27歳くらいまでずっと一人身な気がする……)

しゃー

ハイ(というか今のカップル、デパートで見た先輩達とどことなく似てますね)

42

--学校--

がら

ハイ「お、おはようございますー」

竜子「おわっ!? ど、どうしたよハイ! 昨日より疲れた顔してるぞ!?」

ハイ「そんな顔してますー?」

どさり

ハイは荷物を机に置くと倒れるように竜子に抱きついた。

竜子「おいおい本当に大丈夫か?」

代表「あら^~」


43

--学校--

きーんこーんかーんこーん

ハイ「お、終わった……」

竜子「……」(あのハイが授業のほとんど寝てたぞ? これはまじでなんかおかしい)

がたたっ!

ハイは急いで荷物をまとめると席を立つ。

竜子「!? お、おいハイ!」

ハイ「ごめん竜子ちゃん! 私用事あるから! また月曜日ね!」

たたたたたたた

竜子「な、なんなんだ……?」

代表「僕今日一度も会話しなかったな」

44

--通学路--

しゃーーー

ハイ(早くあれが読みたい……何か大切なことがあそこに書かれている気がするんだ……忘れちゃいけない何か……そんななんだかよくわからない感じのものが!)

帰路を急ぐハイ。



トリガー「……」

それを遠くから見つめるトリガー。

45

--自宅--

ききー、がちゃ、ばたん!!

ハイ「ただいまー!」

どささっ

ハイは鞄や買ってきたものをテーブルに置くと、すぐさま自分の部屋へ。

かち

ぶぅううんん

ハイ「……ちょっと古いパソコンだから立ち上がるまでが長いのよね。今のうちに洗濯物取り込んでおくか」

とんとんとんとん



トリガー「……」

隣の家の木の上から覗いているトリガー。

46

--自宅--

ハイ「昨日(今朝)は二部が終わった所までだったよね。ツインテ先輩の腕が無くなっちゃったのにそんな理由があったなんて。さぁ続き続き」

どさ

ハイは椅子に座ってパソコンと向き合った。

ハイ「……ん?」

ハイは少しだけ戸惑った。

ハイ「ツインテ……先輩? いつから私、キャラクターを先輩呼びするようになったんだろ」



トリガー「……」

ベッドの下から覗いているトリガー。

47

--自宅--

かち、かちかち

ハイ「……もこもこ編、長過ぎじゃない……?」

ハイは買ってきたパンをむしゃこらしながら一気に読み進めていたのだが、酒場募集はあまりに長く、さすがに疲れがごまかせなくなってきた。

ハイ「うん、お風呂はいっちゃいましょうか」

とんとんとんとん

階段を下りていくハイ。

がちゃ

ハイ「本当なら湯船にじっくりつかりたいところですけど……今は時間がもったいないと感じてしまうのでシャワーだけで済ませましょう」

しゅる



トリガー「……」

ドアの隙間から覗いてるトリガー。

ハイ「さっきから視線を感じるんですけどっ!?」

48

--自宅--

ほかほか

ハイ「はー、さっぱりしましたー。これで続きに戻れます」

ハイはタオルを肩にかけたまま再びパソコンに向かった。

ハイ「今日で酒場募集は読みきります!!」








ちゅんちゅん

ハイ「はっ!……寝落ちしちゃった……?」

決意むなしく四部の途中で力尽きたハイ。

トリガー「……はっ!?」

同じくベッドの下で力尽きていたトリガー。

49

--自宅--

しゃかしゃか

歯を磨いているハイ。

ハイ(……今日中に読み終わるかなー……一度ちゃんと寝ないとなー)

じゃー

ハイ「……よし!」

ハイはメロンパンをオーブントースターで暖めると、牛乳と一緒に自室に持って行った。

50

--自宅--

かー、かー

夕方時。

ハイ「や、やっと読み終わった……長いよー。しかもこれ、バッドエンドじゃない?……あ、まだ続きがある……」

ぴんぽーん

ハイ「え、誰か来た。新聞の勧誘、かな? ハーイ!」

どたどたどた

ハイは慌てて玄関に向かう。

ハイ「どちらさまですかー?……ひっ!?」

ドアスコープで外を確認すると、大きな目玉がこちらを覗いていた。

竜子「あはははー、びっくりしたー?」

代表「君はいつまでたっても子供っぽいことが好きだね」

ハイ「え、竜子、ちゃん? それに代表君?」

訪問者は竜子と代表だった。

51

--自宅--

竜子「やー、昨日様子がおかしかったからさー。心配になって見に来たのよー」

ハイ「そこまで心配させちゃってたんですか私……なんだか申し訳ないで、す……?」

ハイは竜子が後ろに持っているビニール袋に気づいた。それはお菓子でパンパンになっている。

ハイ「……」

代表「まぁ、こういうことだよ」

代表もペットボトルのジュースを何本も持っている。

ハイ「……うちでパーティでも始めるつもりなんでしょうか?」

竜子「イエス」

ハイ「いやイエスじゃないんですけども」

52

--自宅--

竜子「かんぱーい!」

ハイ「はうぅ……お菓子に目が眩んで、つい入城を許してしまいました……一生の不覚です」

竜子「いーじゃねーかよ、どうせ一人で寂しくしてたんだろ? ぱーっとやろうぜー」

ハイ「はい……って、別に寂しかったわけじゃないですから!」

竜子「おっと代表、パスだ」

竜子はそういって代表に何かを投げる。

ふわり

代表「ん? なんだこ……れは!?」

ハイ「!?」

投げつけられたものはブラ・ジャー。

竜子「はっはっはっ! 年頃の乙女が下着を脱ぎ散らかしてるんじゃねーぞー」

ハイ「何やってるんですか貴女は!!」

代表「暖かい……」



ブラ「?」

番犬「へっ、へっ、へっ!!」

ハイの家の前を散歩中のブラが通る。

53

--自宅--

わいわい

竜子「こんのどーてーがー!」

代表「竜子ちゃん、さすがに飲み過ぎだよ。というかなぜジュースでこんなテンションになれるんだい?」

竜子「ひっく」

代表「……まさか」

竜子「細かいことを気にしてんじゃねーぞー!!」

がぶっ

代表「ぎゃーーー!?」

わいわい

ハイ(はぁ……楽しいは楽しいですけど、今の私はあれが気になってしょうがないのです)

ハイはオレンジジュースに口を付けながらパソコンの方をチラ見する。

竜子「……」

54

--自宅--

竜子「なぁハイ」

ハイ「はい?」

竜子「お前、なんか最近悩みあんだろ?」

ハイ「え」

竜子は今までとはうって変わって真剣な表情でハイの目を見つめる。

ハイ「……前も話した通り、何もありませんよ」

ハイはそれとなく目をそらした。

竜子「……私は、親友なのに隠し事なんて水臭いぞ、なんて言う気はねぇ。誰にだって言いたくないことはあるからな」

代表「……」

竜子「でも本当に困ってることがあるなら遠慮しないで言うんだぞ? 私らはいつでもお前の味方なんだからな?」

ハイ「」

ハイは、言葉に詰まってしまう。

55

--自宅--

竜子「……」

ハイ(……適いませんね、竜子ちゃんには。真正面からどストレートな言葉で来られたら、私……困っちゃいますよ)

ハイは……自然と柔らかい表情になっていく。

ハイ「……大丈夫です竜子ちゃん。本当に大丈夫ですから。本当に困った時には、ちゃんと竜子ちゃんに相談しますから」

代表「宿題以外でね」

代表が一言付け足して竜子が殴る。

竜子「……うし、わかった。それが聞けりゃ今は十分だ」

すっ

竜子は立ち上がると代表も立たせる。

代表「え? え?」

竜子「邪魔したなハイ。そろそろ私らは帰るぜ」

ハイ「え? もう?」

代表「……もういいのかい? 竜子ちゃん」

竜子「あぁ。じゃあなハイ。月曜日学校でな!」

にこっと笑って、竜子は去って行った。

ハイ「……はい」

56

--自宅--

ハイ「――さて、もう二人に心配をかけないためにも、この胸のもやもやを一刻も早くなんとかしなくては」

ハイは再びパソコンの前へ。

かち、かちかち

ハイ「……これが最終章……」

かちっ




ハイ「勇者と魔王がアイを募集した」

57

--自宅--

かち、かちかち


かちかち


かち……かち


かちっ







かち……

ハイ「これ……私、知ってる……」

58

--自宅--

かち


 砂漠の真ん中で古ぼけた地図を見ている少女。
 傘を差し、帽子を被った少女は大きなリュックサックを背負ってユニコーンにまたがっている。

 配達屋「おっかしいなー。ユニちゃん、ユニちゃんの目なら何か見えます?」

 ユニコーン「ぶひるん」



かち


 巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

 配達屋「さっきの巨大モンスター!? 私を追ってきたんですね……!」

 配達屋は荷物を放り出してユニコーンにまたがる。

 ユニコーン「ひひーん?」

 配達屋「えぇそうですよ。私は犯人より荷物を優先します。ですが荷物より人命なのです」



かち


 ユニコーンは巨大蠍の顔目がけて跳躍する。

 配達屋「はああぁー!」

 魔力で練り固められた氷の槍が、

 ズブッ!!

 巨大蠍「ッ!!」

 巨大蠍の頭部に突き刺さった。




ハイ「これ……そうだ、この後、侍さんが来てくれて……」

59

--自宅--

かち


 ?「おやおや。たまには散歩もしてみるもんでござるな。何もない辺鄙な所だと思っていたのに、まさかこんな麗しき女性と出会えるだなんて」

 刀を持った男が巨大蠍の死骸越しに話し掛けてきた。



ハイ「!! ほ、ほら、そうだ、そうだよ。やっぱり私、これを知ってるんだ……」

かちかち!

ハイ「しかも、体験したことがあるかのように、鮮明に映像が思い出される……なんで?」

かちかちかち!!

ハイ「昔見たことあるとか?……違う、これはそんな昔の作品じゃないし、何より全部自分視点で思い出される……」

かちかちっ!

ハイ「……」

ハイは知らない間にぼろぼろと涙を零している。

60

--自宅--

かち!


 アッシュ、ポニテ、レン「「「じゃあオレ<私、レン>達をツインテ<ちゃん>のところにまで運べ<運んで、運んでにゃ>」」」

 いーい笑顔で三人は配達屋を取り囲んだ。

 配達屋「……い……いや……いやーーー!!」

 いやーー
 いやー
 いやぁ

 森に悲鳴がこだました。



かちかち!!


 ハイ「う、ぐぅ」

 眼をぐるぐると回しているハイ。

 ハイ(な、にこれ……頭がふわふわしちゃって)

 ハイは完全に混乱している。

 ポニテ「おパンツだよ早く!!」

 ハイ「は、はい…」

 スッ

 アッシュ「は…ハイさん」



かちかちかち!!


 ハイ「あの、それより皆さん? その前に気になることあるんじゃないでしょうか?」

 ひゅぅううう

 アッシュ「……俺も実は気にはなっていた」

 ポニテ「はいはいはーい! 私も気になってたよ!」

 レン「レンもにゃ」

 ハイ「そうですか、よかったです。実は私だけなんじゃないかと思ってました」

 ひゅうぅうう

 ハイ「これ……世界滅んでますよね?」



……かち

ハイ「……うっ……あぁ……」

ハイの涙は止まらない。

ぽたっ、ぽたぽたぽたっ

ハイ「思い……出した……全部、全部思い出した……」

ハイは号泣している。

ハイ「これは……私なんだ……私の、物語……」

ハイはパソコンの画面に手を当てている。
まるで元の世界に戻ろうとしているかのように……。

もし一気に読もうとしたらどれくらいかかるんでしょうかねほんと(遠い目)



それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。

よ、四日!? そんなに速く読めちゃうものなんですか……すごい。

それでは投下していきます。

61

--自宅--

ハイ「……ぐす」

ハイはひとしきり泣いたあと、疲れてそのまま眠ってしまった。

ハイ「……すん」

ハイが寝言を言った。

ハイ「皆さん……」

ハイは気づいたのだ。
親である勇者達があの年齢になっているということは、ツインテ達はまだ、この世界に存在していないことになる。

辛かった時に支えてくれたあの仲間達は、もう。



--学校の屋上--

ひゅううぅう

トリガー「……」

誰もいない真夜中の校舎。トリガーはハイの家の方向に視線をやっていた。

62

--自宅--

ちゅんちゅん

じゅー

ハイ「……」

日曜日の朝。
ハイは目玉焼きを作っている。

ハイ「あの話は実際にあったこと……紛れもない私の物語……でも……」

じゅー

ハイ「……」

思い詰めたようなハイ。目玉焼きはとうに黒焦げになっている。

63

--町--

ぶぉおぉおん

ハイ「……」

ハイは無意識に家の外に出ていた。
自分の知るあの世界と今の世界。どちらが正しいのかを確かめようとしたのか……それはハイにすらわからない。

ぶぉおぉおん

ハイ「……」

ハイは行き交う車に目をやった。
そして唐突に右手の手のひらを車に向ける。

ハイ「氷属性攻撃魔法、レベル2」



ぶぉおぉおん

ハイ「……」

何も起こらない。
詠唱はむなしく、恥ずかしく響いた……。

64

--町--

ハイ(魔力を感じない……)

ハイは自分の手のひらを見つめている。十六年間普通に生きてきたことを証明する、柔らかい少女の手のひらがそこにはあった。

ハイ「……」

ざっ

  「まいったね。こんなことは始めてだ」

ハイ「!?」

真後ろから声をかけられた。

聞き覚えのある声に反応して即座に振り向くハイ。そこに立っていたのは……

トリガー「……」

ハイ「トリ……ガー」

65

--町--

トリガー「……やっぱりか……」

名を呼ばれたトリガーは考えるように顎に手をやる。

ハイ「……!」

トリガー「ふむ、話したいことがあるよ。どうかな、そこのスタバでお茶でも」

ハイ「……はい?」

トリガー「気にしなくていいよ、お金は僕が出すから」

ハイ「……………………はい?」

66

--スタバ--

しゃがー

符術師「いらっしゃいませー! ご注文はお決まりですかー?」

トリガー「えっと、僕は抹茶がいいな。これ、クリームが乗ってるやつ」

符術師「はーい! サイズはどうされますかー?」

トリガー「このスモールで」

符術師「はーい! トールですねー」

トリガー「ほら君も頼みなさい」

ハイ「……キャラメルマキアート、トールで」

符術師「はーい!」

67

--スタバ--

カチャカチャ

ハイ「……」

トリガー「……」

カップルや学生達が回りで話している中、ハイとトリガーは無言でストローに口をつけていた。

ずぞぞー

トリガー「……さて、何から話そうかな」

ハイ「……」

ハイは身構えている。

トリガー「大丈夫、危害を加えたりしないよ。僕は君の敵じゃない」

ハイ「……信じられません」

トリガー「そう、か……まぁでもどのみち今の君には何も出来ないだろう?」

ハイ「っ!……」

確かに今のハイでは戦うことは出来ない。魔力が使えないのでは抗うことすら不可能なのだ。

68

--スタバ--

トリガー「やれやれ……その反応、完全に記憶があるみたいだね」

トリガーはストローに口をつける。

ハイ「……」

トリガー「じゅるる」

ハイ「……トリガー……この世界は、何?」

耐えられずハイから質問する。
それを聞いたトリガーは驚いたように目を丸くした。

トリガー「この世界は何? だって? 言ってることがわからないな」

ハイ「……」

トリガー「この世界はこの世界だ。まごうことなき現実の世界。夢や幻なんかじゃあない。それは君もわかっているだろう?」

ハイ「……」

そんなことはハイにもわかっている。わかっているからこそ困っているのだ。

69

--スタバ--

ハイ「……すいません、質問を変えます。あれから……この世界に一体何があったんですか?」

ハイは、整理のつかない頭で凡そ完璧に近い質問を紡ぎだした。

トリガー「あれから……あれからというと、あの最終決戦の後からってことでいいのかな?」

ハイ「はい……」

こと

トリガーはカップをテーブルに置く。

トリガー「最終決戦……最終決戦ね……。あぁ、あれは本当に大失敗だった。なにせ勝ち確の状態からひっくり返されて敗北したんだからね。……はぁ……」

思い出してため息をつくトリガー。

トリガー「思い出すだけで胃が痛いよ……。あれからしばらく僕は魔王達に『無能』とか『慢心王』とか『大破進軍』とか色々なことを言われ続けたからね……」

ぽこぽことストローから空気を逆流させるトリガー。

70

--スタバ--

ハイ(そこは私もちゃんと思い出してました。私達は勇者さんの機転でからくも勝利したんだ)

トリガー「と、ごめんごめん。君が聞きたいのはその後か。そうだね……君らは三十年かけて、魔王に関するもの全てを処分していったね。中々の手際だったよ実際。覚えてる?」

ハイ(そうだ……私達は魔王の骨のかけらを集めて滅却したんだ……)

ハイはあの戦いの後の記憶を取り戻しつつある。

トリガー「ツインテは名も無き治療員団の初代医院長に。アッシュは新王国の王として世界を安定させ、ポニテは妖精や精霊達との駆け足になった。レンは魔法学校を復活させたし、君は新設された騎士団の隊長となって戦った……」

ハイ「……」

どれも全部あの後にあったことだ。私達は再び住みやすい世界を作るために色んなものと戦ったんだ。

トリガー「君のことにスポットを当てて話すと、君は三十才の時にある男性と結婚したね。そして一人の娘と二人の孫に恵まれ、最後は農村に腰をすえ、六十二年間の生涯を終えた。君は幸せそうに息をひきとったよ。やりきった、そんな顔で。……ここまでが君のストーリーだ。わかるね?」

ハイ(……うん、覚えがある……私達の代で何の驚異も無い世界に変えられたって……そう満足して死ねたことを……)

あれを言葉にするならばハッピーエンドに他ならない。本当に苦しい人生ではあったけど……最終決戦で沢山のものを失ったけれど……最後は全てを乗り越えて幸福を手に入れたのだ。

あの最後に味わった満足は、幸福だった……。

71

--スタバ--

トリガー「ここからか、君が前世の記憶を取り戻してもわからないのは。まぁ死んでるんだから当然だけどさ」

そう前置きして、トリガーはまるでなんでもないかのように言った。

トリガー「そして君たちが全員死んだ十数年後、僕は力を取り戻したので復活した」









ハイ「!?」

トリガー「で、リセットした。その結果が今というわけさ」

ハイ「!!?? なっ……」

ハイは混乱した。

ハイ(何を、何を言って……)

……無理やりバッドエンドを回避し、その後みんなで幸福な世界を作り上げたはずだった……満足して死んだはずだった。

でも、



『ハッピーエンドにだって続きはある』

72

--スタバ--

トリガー「ハッピーエンドっていうのは都合のいい解釈だ、って知ってるかい? 一番見栄えがいい部分で切っているだけなんだよあれは。金太郎飴のように、どこを切っても同じような幸せしかないと勘違いしているんだろうね」

ハイ「」

トリガー「エンドとは連続する世界の一瞬の表情でしかないことをわかっちゃいない。だから君みたいに取り乱す。『幸せに終わったんだからその後も幸せが続くに違いない』って」

ハイ「」

それじゃあ、あのみんなで護った世界は

トリガー「簡単だったよ。侵攻を開始して12秒後にはリセットが完了した」

ハイ「」

あれだけの犠牲を払って手に入れたのに

トリガー「……そんなに愕然とすることかい? あの時の僕は本体じゃない。また準備が出来次第、行動を再開することはわかっていたことだろう?」

ハイ「」

73

--スタバ--

そんな……そんな……

トリガー「……どうして君だけ前世の記憶を取り戻してしまったのか……そこのところを詳しく聞きたかったんだけど……今日はもう無理そうだね」

ハイは力なくうなだれている……。

トリガー「また話をしよう。今日のことは周りに話さないでくれると嬉しいな」

ガタッ

トリガー「もっとも、誰も信じないだろうけど」

立ち上がるトリガー。

ハイ「ま、まって」

ハイも立ち上がった。

ハイ「い、今はあの頃より何年経っているんですか……?」

トリガーはハイの目を見つめながら、

トリガー「四千二百七十三年」

と答えた。

74

--町--

ハイ「……」

ハイはふらふらと左右に揺れながら町を歩いている。

ハイ(幻覚でも、なんでもない……だって私はこの世界で十六年間生きてきたのだから)

ふら

ハイ(お父さんとお母さんに大事に育てられた。幼稚園で竜子ちゃんと出会って、小学校にあがって代表君と知り合って。中学校の時にお父さんとお母さんが海外出張ばかりになったけれど、それは寂しいことではあったけれど……でも今の高校でも何不自由なく暮らせている……)

ふら

ハイ(……日常に戻ることは簡単だ。以前と同じように振舞えばいいだけ……でも、もうあの過去を忘れることは、出来ない)

ふらふら

ハイ(けれど……この世界に魔力は無い……私に武器は、何も無い)

ふらふら、ふら

ハイ(仲間もいない……同じ記憶を持つ人もいない……私は……この世界で、一人ぼっちなんだ)

75

--自宅--

がちゃ

ばたん

ハイは家に帰ってきてドアを閉める。そして少しの間寄りかかった。

ハイ「……」

もう本当に何も無かった。
力も、仲間も。
あの世界も。

ハイ「……」

何の力が無くとも、仲間がいなくとも、それでも戦うことくらいは出来る……。
でも、過去へは戦いに行くことが出来ない。

ハイ「……っ」

表情を変えないハイの頬を静かに涙が伝う。

76

--自宅--

ぐし

ハイ「……あ」

涙をぬぐうハイは、あることに気づいた。

ハイ「……まだ……あった」

もう何も無いはずのハイ。

でも……







ハイ「……あのSSは……誰が一体何のために……?」

77

--自宅--

だだだだだだだ!!

ハイ「はっ! はっ! はっ!」

ハイは階段を駆け上がりパソコンを起動させる。

ぶぅううん

ハイ「はっ、はっ、はっ……」

かち、かちかち

そしてブックマークしておいた例のSSの最新のスレを開いた。

ハイ「……でも……私、ここからどうしたら……」

一縷の望みでこのスレを開いたハイ。でも何が正しいのか。どうしたらいいのか。

ハイはゆっくりとキーボードに手を置いた……。

79

と打ち込んだ。





そして

この時を待っていたよ。

というわけで今回は特殊な感じの投下でした。

スペシャルサンクスハイちゃん!



それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。投下に来ました。


アッー! 駆け足じゃありません架け橋です! すいません……


トリガーは基本的に魔力が動力源ではないので問題無いのです。



それでは投下します。

81

--自宅--

ハイ「……これ、って」

自分がスレに書き込んで数秒、スレ主が意味深なレスを書き込んだ。

ハイ「……」

ハイは面食らっている。
確かに書き込んだのは自分なのだが、まさか反応があるとは思っていなかったのだ。

ぽーん

その時メールが一通届く。

ハイ「メール……?」

ハイはそのメールを開いた。

ぽち

ハイ「?」

そのメールには何も文字が書かれていなかった。

82

--自宅--

ぷぅうぃん

ハイ「え?」

突然、勝手にスカイプが立ち上がった。

ハイ「私起動させてないけど……」

ぷーぷー

そして電話がかかってきた。もちろん知らない相手からである。

ハイ「……」

ハイは一瞬戸惑ったが、

ハイ「……」

ぽち

電話を取ることにした。

83

--自宅--

ぷっ

ハイ「!?」

あちらはカメラを使っているようで、向こうの顔が画面に映っている。

???「やぁ、初めまして」

ハイ「は、初めまして……」

カメラに映っている顔は、人では無かった。デフォルメされたロボットのような顔。右目は大きく損傷していて痛々しい。
ちょっと連装砲ちゃんに似たフォルム。

???「やっぱり驚いてるようだね」

ハイ「そりゃ、まぁ……」

長い年月を感じさせるボロボロになったロボット。

???改めQ「僕の名前はQ」

そのボロットはQと名乗った。

84

--自宅--

ハイ「貴方は……あのSSの作者、なんですよね?」

タイミングから、そしてなんとなく直感でハイはそう思った。

Q「うん。この次元での、ね。まぁ作者というのも変な話だけれど」

ぎぃぎぃと音を鳴らしながら動くQ。

ハイ「……Q……過去編に出てきたトリガーと一緒にいたロボット……」

ハイはSSを思い出す。トリガーが狂った時に傍にいたロボット。あの最終決戦の時もまだ動いていたらしいが、姿を見るのは初めてだ……。

Q「さて、ハイ。残念だけど時間が無い。もうすぐこれにトリガーが気づいてしまうだろう」

ハイ「え」

Q「……トリガーはリセット後、全ての生物、気候、その他もろもろの行動を操っている。一部の隙も無くスケジュール通りに動くように」

ハイ「!?」

Q「完全なる統治された世界。それが今の世界だ。だからこそ君や僕のこういった行動はトリガーの目につきやすい」

85

--自宅--

ハイ「え、ちょ、ちょっと待ってください……完全なる、統治?」

ハイは混乱する。

ハイ(じゃあ記憶を取り戻しつつあったあの時にトリガーが私の前に現れたのは、予定通りに動かなくなった私というエラーが現れたから……? いや、それよりも)

今までの人生、学校での会話、竜子ちゃん達との友情……それら全てがプログラムされていたことになる……?

Q「……あれから僕は様々な方法を使って勇者達の復活、捜索をしようとした。でもその全てが悉く失敗した」

Qはガタガタと動いている。

Q「気づけば何千年も、経っていた。あまりに長い戦いだった……」

ハイ「……」

混乱するハイをよそにQは話を続ける。

Q「でも、無駄じゃあなかった。やっと、『君達』を見つけることが出来たのだから」

86

--自宅--

ハイ「君、達……?」

ハイははてなまーくを頭に浮かべている。

Q「……これが残された最後の手段。……ハイ、懐中時計は持っているかい?」

ハイ「懐中時計、ですか?」

Q「そうだ。占師から勇者に手渡された最後の希望。最終決戦の時、それは君の手に渡っただろう?」

ハイ「懐中時計……って、それ前世の時の話じゃないですか! 今も持っているわけないじゃないですか!」

Q「そうだね。でも、そうかな?」

ハイ「え……」

Q「魂の結びつきが強いなら、たとえどれだけの時間、距離が離れようとも傍にあるものだ」

87

--自宅--

ハイ「そんな魔法みたいなことって……ッ! そ、そういえば……」

Q「心当たりがあるかい?」

ハイ「はい。昔縁日で手に入れた懐中時計……今思い返してみると、あれはあの時の懐中時計だったのかも……」

Q「それは今どこに?」

ハイ「探してみます」

がた

ハイは立ち上がり自分の部屋の中を探し回る。

がさごそ

ハイ「……でも、懐中時計があったからって、何か変わるんですか?」

Q「変わるさ」

88

--自宅--

がさごそ

ハイ「どこにしまったっけ……」

Q「……」

ハイが探している間、Qは動かなくなった。スリープモードというやつだろう。

ハイ「……どうせですから、探してる間、色々と質問に答えてくれませんか?」

きゅい

Q「いいよ。時間を有効的に使わないとね」

スリープモードは一瞬だった。

ハイ「Qさんはトリガーの目的って、わかりますか?」

Q「……人類の統治。人類が再び、完全なる破滅に辿り着くことがないように管理する。それがトリガーの目的なんだと僕は考えている」

ハイ「……」

89

--自宅--

ハイ「人類をゆりかごの中でコントロールすることがトリガーの目的……大事に大事に護るために、リセットすることも構わない……」

Q「一応矛盾はしていない。トリガーが重視しているのは人という種であって個ではないのだから」

ハイ「……そうでしょうか。私はトリガーが矛盾だらけに思うんです」

Q「え」

がさごそ

ハイ「あ、アーッ!! 思い出した!! あの懐中時計竜子ちゃんにあげちゃったんだった!」

Q「え」

ハイ「あれがあれば本当になんとかなるんですよね!?」

Q「……なるよ」

ハイ「そうですか……」

スッ

ハイは静かに立ち上がった。

ハイ「今から返してもらってきます!」

90

--道路--

たったったったったっ

ハイ「はっ、はっ、はっ……」

何度も通いなれた竜子の家への道。

ハイ「はっ、はっ、はっ……」

普段なら必ず自転車で来るところを、なぜか走って行くことにした。

ハイ(トリガーのプログラムから逸脱したいと思ってこうしたの? それとも、動揺しているの?)

それは自分でもわからない。

ハイ(……私、竜子ちゃんと今まで通りにおしゃべりできるかな?)

真実を知ってしまったハイ。
自分の唯一無二の友達は、ハイの友達であるよう設定された存在なのだ……。

ハイ「……っ!」

自然と涙ぐんでしまう。

91

--竜子家--

竜子「おうなんだよ急に家まできて。なんかあるなら電話してくれりゃいいのに」

ハイ「……あ」

インターホンを鳴らしたことで現れた竜子。竜子はがりがりきゅんを口に咥えて腹をかきながら現れた。

ぼりぼり

ハイ「……ははっ」

拍子抜けした。
いつもと変わらない竜子はいつもと変わらない表情でハイを見ている。

竜子「? どした?」

ハイ「ううん、なんでもない」

多少のエラーにも柔軟に対応できるのか、それとも自分が竜子の家に来ることも予めプログラムされたことなのか。
今のハイにはわからない。

ハイ「竜子ちゃん、昔あげた懐中時計あったでしょ? あれ返して欲しいんです」

92

--竜子家--

竜子「うぅん? 懐中時計?」

竜子はよくわからないといった表情でがりがりきゅんをしゃぶる。舐る。舐め回す。

ハイ「……」

竜子「ん、懐中時計ね。そういやあったなそんなん。まぁいいけど、どうしてだ?」

ハイ「え?」

竜子「なんでこんなタイミングで……そんな汗までかいて必死になってるのかなって」

ハイ「え、えっと……」

竜子「……もしかして鑑定団かなんかですごい値打ちついたとか?」

ハイ「いや、そんなんじゃないけど」

竜子「はは、冗談だよ。ちょっと待っててくれ。今持ってくるわ」

そう言って竜子は家の中に戻る。

93

--竜子家--

ハイ「……」

ハイは竜子の家を見る。何度も遊びに来た事のある第二の我が家。

ハイ「……あ」

玄関の靴入れにハイと竜子の落書きがあるのを発見する。

ハイ「これ……小学校の時か……あの時はおばさんにいっぱい怒られちゃったっけ」

目を瞑れば思い出す懐かしい記憶。

ハイ「……」

どたどたどた

竜子「ハーイ」

ぽいっ

ハイ「うわっ」

竜子はハイに懐中時計を投げてよこした。

がちゃ

ハイ「っと……これだ」

前世の記憶と一致する、あの懐中時計が自分の掌の中にあった。

94

--竜子家--

竜子「そんなの何に使うんだ?」

棒だけになったがりがりきゅんを見て、何の文字も書かれていないことを確認している竜子。

ハイ「さぁ……何に使うんだろう」

竜子「はぁ? 自分でわからねぇのかよ」

ハイ「うん、ごめんね」

竜子「……」

ハイ「でもありがと。じゃあまた学校で」

ハイは踵を返す。

竜子「――また学校で会えるんだよな?」

ハイ「え……?」

ハイは振り向いた。

竜子「……」

竜子は真顔だった。

竜子「……わり。なんか……もう会えなくなる気がしたんだ」

ハイ「」

ハイはぎゅっと懐中時計を握る。
その胸騒ぎは、ハイにもあった。

ハイ「会えるに……決まってるじゃないですか」

ハイはにっこりと笑った。

95

--自宅--

がちゃ、ばたん、どたたたたた、がらっ!!

ハイ「はっ、はっ、はっ! きゅ、Qさん、持ってきましたよ、懐中時計!」

Q「こっちからは見れないから確認できないけれど、君の魂がそうだというのなら間違いないんだろう。よくやった」

ちょっとお前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな的な台詞を言われる。

ハイ「で、これをどうするんですか? これは何が出来る道具なんですか?」

Q「それは時の一族の長、占師が生涯をかけて完成させた時の秘宝……それを使えばセーブポイントに戻ることが出来る」

ハイ「!? え、そ、それって……」

Q「名づけるならば、禁術魔法コンティニュー。僕も正確なことはわからないけれど、それがあれば最終決戦の前に戻ることが出来るらしい」

ハイ「」

ハイは絶句した。
様々な魔法が跳梁跋扈していた前世の時代、チートじみた魔法も多々あったが、それらをはるかに上回るとんでもない効果だったからだ。

ハイ「そんなことって……ほ、本当に可能なんでしょうか?」

Q「おそらく、としか言えないね。その魔法は初めて使われるものだから」

ハイ「……」

でももし過去に戻ることが出来るなら、今度はトリガーとの戦いに終止符を打つことが出来るかもしれない……。

96

--自宅--

ハイ「それで、これってどうやって使うんですか?」

Q「……」

ハイ「Qさん?」

Q「わからない」

ハイ「え?」

Q「僕はそこまでしか知らないんだ」

ハイ「……え?」

とんでもない宝物のように感じた懐中時計が、一瞬で古びたがらくたになった気がした。

Q「でも使い方なんて些細なことだよ」

ハイ「は、はいーー!? 些細なことじゃないですよ! 使い方もわからないんじゃ、こんなのただの懐中時計ですよ!?」

Q「ぎ……そう取り乱さないで欲しい。大声出されるとガタがきてるボディに響いちゃうからさ」

ハイ「はーっ、はーっ!」

取り乱すハイと、対照的に落ち着いているQ。

Q「……そのアイテムを入手したことで新たなルートが開けた。後はそのルートを選ぶだけなんだ」

97

--自宅--

ハイ「ルートを選ぶ、って……ルートを操ることが出来るのはトリガーだけじゃないですか。トリガーを利用するんですか?」

Q「違う。ルートを選ぶことが出来るのはトリガーだけじゃあない。もう一人、いや他にも無数にいるんだ」

Qはそう断言するのだが、

ハイ(……。あのルートっていう神の如き力を使える存在が他にいるとは思えない……)

ハイはにわかには信じられない。

Q「僕が待っていたのは君だけじゃない。ルートを扱える彼らが集まるのを待っていたんだ」

ハイ「彼……ら? さっきもそうですけど、君たちを待っていた、って言ってましたよね? 私以外の誰を待っていたんですか?」

Q「彼、彼らは初代勇者よりも前に存在していた『原初』、勇者の『起源』とも呼ばれる存在だ」

ハイ「そんな存在が……?」

Q「彼はその昔、最初にトリガーに立ち向かった。少年という名でね」

ハイ「! そういえば、そんな人も過去の話に出てきましたね……」

98

--自宅--

Q「それはトリガーに最初に戦いを挑んだ勇気あるもの……」


    トリガー「囚われの姫を助けるために、剣を手にして敵の城に乗り込んでくる……か。まるで勇者のようだね君は」

    少年「はっ。お前は自分で自分のことを魔王だって言いたいのか?」


Q「それはトリガーのコアに接触したがゆえに、ルートを操る力を得たもの……」


    少年の赤い剣は、既に刺さっていた青い剣を押し込む形になった。

    トリガー「ぎっ」

    そして青い剣がトリガーのコアに到達する。

    ドクン

    少年「俺の力の全てを使って、このままお前を封印する!!」


Q「……だが彼はトリガーが様々な次元にバラバラに吹き飛ばしてしまった……」


    トリガー「敬意を表そう勇者よ。君は僕のもっとも危険な、敵だった」

    ずずず

    少年「ぐ、ぐう!?」

    トリガー「ただ殺すだけじゃ生ぬるいからね。このまま色んな次元、空間にばらまかさせてもらう。僕の持てる全ての力を使用して」

99

--自宅--

ハイ「そうか――」

ハイは理解した。

ハイ「トリガー以外にルートを操っていた存在……そういう、ことだったのね」

Q「――彼の魂は色んな時代、色んな次元、色んな国に飛ばされてしまった……僕はそんな彼らを一つの場所に集めるために、このSSを書いていたんだ。記憶を取り戻させるために」

ハイ「それって、つまり……」

Q「好むと好まざるとにかかわらず、魂に導かれて開いてしまう……このSSにはそういう細工をしていたんだよ」

ハイ「じゃあ……様々な次元に吹き飛ばされた原初の勇者は……」














Q「そう、このSSを読んでいるもの達だ」

100



記憶がアンロックされました。

ここ二、三回の内容は、合わない人には合わない話な気がします。



それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

今日は投下では無いのですがこんばんわ。

自分はssだからこそ出来る作品を作りたいなぁ、って思ってこういう展開の流れにしています。
批判ばっかりだったらどうしようかと思ってましたが、この分なら安価とっても大丈夫な気がしました。

あ、ちなみにこれは登場人物のQが書いていた、っていう流れであって、私がキャラと会話してるわけではないです。




それでは原初の勇者・ユー(you)が姿を取り戻したので、月曜までにキャラクターメイキングをお願いしたいのです。読者さん達の意識の集合体的な感じです。喋ることは出来ず、全て「……」で表現します。

・全部が全部反映されなかったらすいません。
・全部の項目を選ばなくてもいいです。性別だけとかでも構いません。
・票数の多さとかから判断させてもらいます。
・その他とかは望むものを書いてください。

よろしくお願いします!m(__)m



・性別 
1、男
2、女
3、その他



・種族
1、人間
2、亜人
3、その他



・年齢
1、()



・武器(大剣とかがいいなら剣を選択後、大剣と追記してください)
1、剣
2、拳
3、槍
4、斧
5、鎚
6、銃
7、弓
8、杖
9、その他



得意属性
1、火
2、水
3、土
4、風
5、雷
6、氷
7、無
8、毒
9、金
10、霧
11、臭
12、時



特化させたいステータス
1、物攻
2、魔攻
3、防御
4、速力
5、運
6、器用さ



得意スキル
1、()

遅れました、こんばんは!

安価ありがとうございます! ユーの設定の参考にさせていただきました。話の中で少しずつ明かせていければなと考えています。
それでは投下していきます。

101

--自宅--

ゴゴゴゴゴゴゴ

ハイ「あらゆる次元に散らばる勇者達が、ここに集められていた……」

ハイはディスプレイに映る掲示板を見る。

Q「……これで最後のピースが、揃った」

ぱあぁあぁあぁあぁ!

ハイ「っ! この光は!?」

無数の光の粒が世界中から飛来する。
そしてそれは結合し、徐々に人の形になっていく。

ぴかっ

ハイ「うぉっ、まぶし!」

じゅうううう……

??「……」

ハイ「これが……この人が……」

Q「最初の勇者、ユー」

102

--自宅--

ユーと呼ばれた、細剣を帯刀した若い男性が目を開く。

??改めユー「……」

ハイ「これで……この人がいれば本当になんとかなるん、ですね?」

Q「なる。いや、君たちがするんだ。バッドエンドの無い世界に」

ハイ「……」

ごくりと唾を飲む。

ハイはこの世界でやっと、希望を見つけた気がした。





「やって、くれたね」

103

--自宅--

ハイ「!?」

Q「!!」

ザッ

ハイの部屋の中に

ハイ「トリガー……」

トリガー「僕に感知されずにこんなことをしていたなんて……さっさと破壊しておくべきだったよ、Q」

トリガーが現れた。

ハイ「く!」

サッ!

ハイはカッターを手にして構える。例えそれが無意味なこととわかっていても。

104

--自宅--

トリガー「念には念を入れて除去したと言うのに……まさかこんなことが起こるとはね……」

ざっ

ユー「……」

トリガーとユーは見つめあう。

トリガー「……」

ユー「……」

トリガー「……なるほど、一度はバラバラに砕け散った魂。再び一つに集まったとしても同じようにはいかないか」

喋らないユーを見てトリガーは察する。

トリガー(だがこの力は驚異であることに違いない……ここで、始末する)

ゆらっ

105

--自宅--

ガチッ

ハイ「え」

カチコチカチコチ……カチコチカチコチ!!

その時、懐中時計の針が反時計回りで回り出した。

ハイ「! 今まで一度も動かなかった懐中時計が!!」

カチコチカチコチカチコチカチコチ!!

懐中時計から魔力が吹き出して、ハイとユーをドーム状に覆った。

ヴヴヴヴヴヴ……

トリガー「一体これは……把握してないことが多すぎる……」

トリガーはそれに触れようと手を伸ばした。

Q「時間転移魔法だよ」

トリガー「……!!??」

106

--自宅--

ハイ「え……」

ハイはトリガーが驚いたことに驚く。
ハイの知る限り、トリガーがこんなに驚いたことは無かったはずだから……。

トリガー「……」

トリガーはしばらく呆然とし、それに視線を移した。

Q「――君が欲しかった力だろう?」

トリガー「……」

Q「科学では無理だった。でも魔法なら方法があるかもしれないと、あの時そう考えていたんじゃないのか?」

トリガー「……」

107

--自宅--

ヴヴヴヴヴヴヴ

トリガー「これで……過去に戻れるのか?」

Q「恐らく」

トリガー「……」

トリガーは、一瞬だけ表情を変えた。

ハイ「」

――それに気づいたのはハイのみ。

トリガー「ふう……なるほどね。この結末をやり直すために過去へ飛ぶのか。そして僕を倒す、と」

Q「……そうだ」

トリガー「ありえない話だよ」

トリガーはいつもの余裕を取り戻していた。

108

--自宅--

トリガー「ハイ。君は本気で過去に戻ろうと言うのかい?」

ハイ「……はい」

トリガー「なぜだい? そんなにこの世界が気に入らないのかい? この世界は争いが無い世界なんだよ?」

トリガーは語る。

トリガー「全ての者に役割を与え、誰も苦痛に苛まれることの無い希望の世界。かつて君たちが魔王を倒し、そして作り上げようとした世界そのものじゃないか」

ハイ「……」

トリガー「……ツインテ達がいないことが不満なのかい? それならこの後生まれる予定になっているよ。彼らの存在を消したわけじゃあない。僕はあの時戦った者達を全て復活させようとしているんだ」

ハイ「……それが気に入らないんですよ」

トリガー「……何?」

ハイ「なんでもかんでも貴方に管理されてることが気に入らないって、私は言っているんです!」

109

--自宅--

トリガー「何を言い出すのかと思えばくだらない。たとえ管理されていようとも、何不自由なく暮らせていけるのであれば、それは幸せじゃないか」

ハイ「トリガープログラム」

ぴくっ

と、トリガーが反応する。

ハイ「人類を抹殺するためのプログラム。栄光ある人類の歴史に蛇足を作らせないために強制的に人類を終わらせる……それが貴方を蝕んでいる行動原理……」

ユー「……」

ハイ「そしてそれを回避するために貴方は……人類を人類じゃない形にしたんだ……完全管理された人類……そんなもの人とは呼べない……家畜だ」

トリガー「……」

ハイ「でもそうすることで、貴方は自身の破壊衝動から逃れることが出来たんだ」

110

--自宅--

トリガー「……」

ハイ「あの時代までは魔王に文明を圧迫させることで管理してきた……でも勇者というイレギュラーが現れてから貴方の計画が狂い始めた。世界に打ち込んだルールが次々とほころびを増やしていって、とても制御できるものじゃなくなってしまった……だから今のこの世界のような、貴方が人類を完全に管理する計画に変更したんですよね?」

トリガー「……まぁ結構当たっているかな。けど何かい? 君はそういう理由があるからこそ、この世界は受け入れられないと?」

ハイ「はい」

トリガー「ふむ……でもいいのかな? この世界には竜子や代表と過ごしてきた君の人生があるはずでは?」

ハイ「」

その言葉はハイの脳裏に竜子と代表の姿を過ぎらせた。

トリガー「……君が過去に飛べば歴史を変えられるかもしれない。でもそうしたら未来であるこの世界は消滅するだろう。バタフライエフェクトというやつだ」

Q「ハイ、トリガーの言葉に耳を貸すな!」

トリガー「どちらにせよ、君は竜子達と永遠に別れることになるんだよ?」

111

--自宅--

ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ハイ「……」

ユー「……」

Q「ハイ……! しっかりするんだ!」

トリガー「黙りなよQ。君はハイを駒にしているだけに過ぎない。君は彼女の今の生活を考えたことはあったのかい?」

Q「!!」

トリガー「あのまま何も知らずにいれば、ハイは友達やかつての仲間たちと楽しい人生を送っていけたはずなのに。君はもう一度ハイをあの戦場に送り込もうとしているんだ」

Q「」

ハイ「私……は……」

ハイは震えている。
この世界での出来事は夢や幻なんかじゃあない。

トリガー「君はハイに、一つの世界が消滅する選択をさせようとしているんだ」

ハイ「私は」

112

--自宅--

ぱんっ!!

トリガー「」

Q「」

ユー「……」

ハイは自分の頬を両手で叩く。

ハイ「……私は、それでも過去に戻ります」

トリガー「……愚かな……誰も今を変えて欲しいと願うものはいないんだよ? 全ての人が救われた世界なんだよ??」

ハイ「違います。それは違います」

トリガー「管理された世界に幸せは無いと言うのかい? そんなものは君のエゴだ。君は知らないんだ、かつての人類がどれほどの血の連鎖を作り上げてきたか……それ」

ハイ「まだ貴方が救われていません」

113

--自宅--

トリガー「」

トリガーは、

トリガー「」

あまりに想定外の言葉を聞いたために、しばらくの間停止した。

ハイ「私が考える勇者は、全てを救うんです。それが例え……魔王でも」

トリガー「」

Q「ハイ……」

ハイ「私達は貴方を止めに行きます。でもそれは倒すってことじゃない……あのssを読んでいて、そう考えを変えました」

ユー「……」

ユーは静かに目を瞑る。

ハイ「貴方を倒して、貴方も、世界も、人類の未来も救います!! だから私は過去に戻らなくちゃいけないんだ!!」

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!

114

--自宅--

トリガー「は……ははは……こんなことを言ってきたのは、君が初めてだよ……」

トリガーは手で顔を押さえる。

ハイ「――Qさんのおかげで全てを知れたからです」

Q「ハイ……」

トリガー「……本当に愚かだよ。君たちに僕は止められない。そんなことはわかっているだろうに」

ハイ「いえ――それがそんなことないんです。実は私勝機を見つけちゃいました。トリガー、貴方の矛盾をね」

Q「!?」

トリガー「……なん、だと?」

ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!

魔力が臨界を迎えようとしている。

ハイ「それに今はユーさんもいます。きっと、きっとなんとかなるはずです!」

トリガー「……」

115

--自宅--

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!

Q「! ハイ、ユー。そろそろ時間だ!」

ハイ「はい……」

ハイは窓の外の世界に視線を送る。

ハイ「……さよなら」

トリガー「この世界を滅ぼしてでも、過去を変えたいのか。僕を……救いたいというのか」

トリガーは、もう魔力のドームに触れようとしていない。

ハイ「ふふ、トリガー。もうその脅しは私には聞きませんよ」

トリガー「……なんだって?」

ハイ「貴方の力、ルート。それがこの世界がきっと無事に残るっていう証拠ですよ。世界は分岐して独自の世界をなしているんですから」

トリガー「!!」

ヴヴヴヴヴヴ!!

ハイ「まぁ……」

ヴヴ!!

ハイ「駄目だったら死ぬ気で謝りますけ」

ばしゅん!!!!

116

--自宅--
   


                 んんん……




しゅうぅううう……

トリガー「……」

ハイとユーの姿が完全に無くなった。

Q「……行った……か。何も変わったように思わないところを見ると……ハイの仮説の方が正しいのかな?」

トリガー「さぁね……」

トリガーは窓の外を見つめている。

117

--謎空間--

ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるる!!

ハイ「きゃ、きゃあああああああああああああああ!! 目が回る目が回っちゃいますうううう!!」

ユー「……」

虹色に光る空間の中をきりもみ状態で飛行するハイとユー。

そして……






ばちっ!!

118

--郵便局--

大カバ亜人「あぁ忙しい忙しいみゃあ。あれも売ってこれも売って……くそっ、競売が近いのに普通に仕事なんてしてられないみゃあ!!」

郵便局員「あ、あの所長。今回は配達物が多過ぎるので人手が足りないのですがどうしたら……」

大カバ亜人「うるさいみゃあ! いちいち上司に話を聞かんで自分で考えろみゃあ!!」

ばんっ!!

郵便局員「ひっ、ひいい!! す、すいません!」

大カバ亜人「まったく!」

どすどすどす

郵便局員「……あの、どちらに?」

大カバ亜人「葉巻!!」

バンッ!!

思い切りドアが叩きつけられる。

119

--郵便局--

大カバ亜人「全く……無能な部下を持つと上は苦労するみゃあ……」

すぱー

大カバ亜人は雲ひとつ無い晴天に煙を吐く。

……ばちっ

大カバ亜人「ん? 今なんかばちってなったみゃあ?」

ばちばちっ

大カバ亜人「ありゃま……晴れてるのに雷かみゃあ? 珍しいこともあるもんで……」

ばちばちばちばちばちっ!!!!

大カバ亜人「か、かばーーーーーー!?」

バチバチバチバチバチバチバアチィイッィイイイ!!!!




ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン!!

120

--郵便局--

しゅぅう……




ばちっばちばちっ……

大カバ亜人「あ、あがっ……あががが……」

しゅぅううううぅううう

大カバ亜人は突然の出来事にパニックを起こし、おしっこを漏らしていた。




ダダン、ダン、ダダン

ダダン、ダン、ダダン

そして、煙の中心には……

ハイ「……げほっごほっ」

全裸のハイとユーがいた。

ばちばちっ

ハイ「げほっ…………あいるーびーばっく?」

やっと剣と魔法の世界に帰ってこれました。


それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました、こんばんは!


はい、最終章はこれから始まるといっても過言ではございまsすいません……。


は、ハイちゃんの肉体は……。



それでは投下していきます!

121

--郵便局--

大カバ亜人「なにが……起きたみゃあ?」

しゅううぅうぅ……

ハイ「魔力の流れを感じる……」

ハイは自分の掌を見つめている。そして体を覆う魔力の存在を懐かしく感じた。

ハイ「私達、戻ってこれたんでしょうか?」

ユー「……」

こくり

ユーは無表情のまま頷いた。

ハイ「! きゃあっ!? わた、わわわ私達裸じゃないですか! ナンデ!?」

まいっちんぐ、とハイは身体を隠す。

ユー「……」

真顔のユーはゆっくりと同じポーズを取った。

122

--郵便局--

ハイ「……って、そんなことしてる場合じゃないですね。ここはどこで今はいつなのか調べないと!」

ざり

大カバ亜人「誰かと思えば、ハイじゃないか……」

ハイ「! 所長! あ……ここ郵便局だ」

ハイは見覚えのある場所だと気づく。そう、ここはかつての勤め先なのだ。

大カバ亜人「一体何をしてるんだみゃあ……。今の爆発はお前のせいなのかみゃ? その隣の男はうちの職員じゃないみたいだが、誰なんだみゃ」

ハイ「所長! 今日は何年何月何日ですか!?」

大カバ亜人を遮るハイ。

大カバ亜人「かばっ!?……そ、そんなの1010年2月23日だみゃあ……なんでそんなことを……」

ハイ「1010年2月23日……!!……北の王国が滅ぼされるより前だ!」

123

--郵便局--

ハイ「やった……! ちゃんと戻って来れたんですね! しかもあの悲劇の前に!!」

興奮するハイ。

大カバ亜人「き、北の王国が滅ぼされるゥ? 何を言ってるんだみゃあ……さっきの爆発で頭がおかしくなったのかみゃ?」

ハイ「でもその日まで一週間しかない……助けに行かなきゃ!」

だっ!

ハイは全裸で駆け出した。

ユー「……」

それを追うようにユーも駆けていく。

ダダダダダ!

大カバ亜人「……プレイかな?」

124

--郵便局--

ダダダダダ!

ユニコーン「……ひひん?」

ハイ「っ! ユニちゃん! 会いたかった……!」

がばっ!

ユニコーン「ひひん!?……ぶるる……」

涙ながらに抱きつくハイと突然のことに驚くユニコーン。
彼にとっては数時間会っていないだけなので、ハイの行動は理解できなかった。

ハイ「……っと、悠長にしている時間は無いんです。ユニちゃん、いきなりですが走ってもらいますよ!」

がちゃがちゃ

ハイは近くに置いてある備品をユニコーンに積んでいく。

125

--郵便局--

ひょこ

馬係「おうハイちゃんか? どうしたんじゃそんなに慌てて……どわっ!? 裸!? 裸ナンデッ!?」

ハイ「きゃっ!! そうだ忘れてました……ちょっと更衣室行ってきます」

たたた、ばたん

ユー「……」

更衣室に走るハイを仁王立ちしながら見送るユー。

馬係「……」

ユー「……」

馬係「……プレイ中だったかな?」

126

--郵便局--

ハイ「馬係さん! さっそくですけど私出ます!」

馬係「おう? 長距離配達かい? そんな知らせは受けて無いのじゃが……」

馬係はそう言いながらもユニコーンに荷物を積んでいく。

ハイ「訳あっていかねばならないんです……」

馬係「訳?」

ハイ「えぇ、世界を護るために」

馬係「ひょっ?」

馬係は驚いたような声を出す。

ハイ「……」

馬係「……そうか。それなら行くといいさハイちゃん。世界をよろしく頼むよ」

しかし穏やかな表情で大きめの水筒を二つハイに渡した。

ハイ「……疑わないんですか? 意味のわからないこといって早退しようとしてるだけかもしれないですよ?」

自分で言っといてなんですが、とハイ。

馬係「ふふふ。だれが、ハイちゃんのいうことをうたがうものですか」

ハイ「お、おばあちゃん……!!」

馬係「おじいちゃんじゃよ」

127

--郵便局--

ガラガラガラ

扉を開ける馬係。

ハイ「……じゃあ、行ってきます!」

馬係「あぁ、行っておいで」

ハイは馬係と握手をし、ユニコーンとともに地平線を見据える。

ハイ「はいよー、ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!」

ぱからっぱからっぱからっぱからっぱからっ!

馬係「……」

馬係は旅立つハイを見送った。




ユー「……」

馬係「……そんで、お前さんはいかなくていいのかな?」

ユー「……」

ダッ!

言われて走り出すフルチン。

馬係「ちょっ! せ、せめてこれを持ってきなさい!」

馬係は慌ててユーにマントを渡す。

ユー「……」

ペコ

ユーはお辞儀をすると、颯爽とマントを羽織ってフルチンで走り出した。

馬係「……大丈夫かなぁ」

128

--草原--

ぱからっぱからっぱからっぱからっ

ダダダダダ!

並走するハイとユー。

ハイ「すいません貴方のこと完全に忘れてて……でもユニちゃんには処女じゃないと乗れないし」

さりげなく自爆しちゃうハイ。

ユー「……」

ぶんぶん

気にするなとばかりに手を振る裸マント。

ユー「……」

さっ、ささささ

そしてユーが野球のサインを出すような動作を取る。

ハイ「え? どこに向かっているか、ですか? それはもちろん北の王国です。あの悲劇から私達の滅亡は始まったんですから……」

さささささ

ユー「……」

ハイ「どうやって止めるのか、ですか?……そうですね、侵略自体を止めることは出来ないでしょう」

129

--草原--

ぱからっぱからっぱからっぱからっ

ダダダダダ!

ハイ「でも、結末を変えることは出来ると思うんです」

ユー「……」

ハイ「北の王様に事情を説明して、魔王が襲撃をかける前に国民全員を避難させようと思ってます」

ユー「……」

ささささ

ハイ「えぇ……簡単には信じてもらえないでしょう。私が未来から来た……時をかける成人女性だということは……」

ぱからっぱからっぱからっぱからっ

ダダダダダ!

ハイ「でもやるしかありません!! ユーさんも力を貸してください!」

ユー「……」

130

--草原--

ぱからっぱからっぱからっぱからっ

ダダダダダ!

ハイ「……え? 未来から来たこともそうだが、そもそも私には説得力が足りない……ですか?」

ユー「……」

ユーはコクコクと頷いている。

ハイ「……そうか。確かにそうですね。私には王の言や独裁者の言のような、説得力をあげるスキルが無い……。未来から来たっていう、ただでさえ突拍子も無い話なのに……こんなんじゃまともに聞いてもらえるわけが無い……」

そもそも王と直接話をすることが出来るのかそれすら怪しい、とハイは続ける。

ハイ「なるほど……まずはそのスキルを持つ人物を探さなくちゃいけないんだ。それでいて私のような一般人とも会ってくれて、私の話を信じてくれるような人を……」

ユー「……」

ユーはコクコクと頷いている。

131

--草原--

ぱからっぱからっぱからっぱからっ

ダダダダダ!

ハイ「説得力をあげる言系のスキル持ち……私が知る限りだと、亜人保護団体の代表君。王国の軍師さん。西の王国の西の王様。黄金王国の参謀長さん。それと盗賊さん、か。多分、各国の王様は全員持っているんだろうけど、絶対とは言い切れないし」

ハイは旅の中で起きたことを思い出していく。

ハイ「この中で私が会うことが出来るのは、そして話を信じて貰えるのは……」

ユー「……」

ハイ「……やっぱり盗賊さんしかいない!」

ハイは手綱を握り締める。

ハイ「行こうユーさん! ユニちゃん!! 失われた王国へ!!」

ユニ「ひひーーーーん!!」

132

--死の砂漠--

びゅおおおおぉおお

砂嵐が二人と一匹を攻め立てる。

ざっ、ざっ

ハイ「はぁ、はぁっ……確か、この辺のはずだったんだけど……」

ハイ達は死の砂漠の中心をさ迷っている。

ざっ、ざっ

ハイ「はぁ……はぁ……」

死の砂漠の中心地はあらゆる生命の存在を許さない。
ほとんど一般人である通常状態のハイが耐えられるわけが無かった。

ハイ「おか、しいな。見つかりません……前は、もっと簡単に行けたん、だけ、ど」

ずる

ユニコーン「!? ひひん!!」

どさっ

ハイは砂の上に落ちる。

133

--死の砂漠--

ユー「……」

そっとハイを担いでユニコーンに乗せるユー。

ハイ「はーっ、はーっ……」

ユー「……」

ハイが強くなれるのは戦闘時のみである。それ以外はただの27歳の女性……。

びゅおおおおおぉおおぉお

力尽きるのは時間の問題だった。

ズシーン

ユー「!……」

ユニコーン「ひひん!?」

その時、

巨大蠍「ぎしゃあぁああ!!」

巨大蠍が姿を現した。

134

--死の砂漠--

ハイ「こ、このモンスターは……」


  配達屋「!? この鳴き声!」

  悪役「う、うわぁぁぁ!?」

  巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

  配達屋「さっきの巨大モンスター!? 私を追ってきたんですね……!」


ハイ「あの時の……そうか、ここらへんを棲家にしていたんですね」

ハイは鞄からパチンコを取り出そうとするのだが、

ぽろ

手に力が入らないため掴み損ねて落としてしまう。

ハイ「う、目も、かすんで……」

巨大蠍「ぎしゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

135

--死の砂漠--

咆哮とともに巨大蠍は鋏を振り下ろした。

ぶぉん!!

ユニコーン「ひ、ひいひひーーーーん!!」

ユー「」

ばっ

刹那、ユーはマントを翻し、腰に帯刀している二本の細剣、レイピアを抜いた。

しゃん……

ユー「……スキル、二段突き」



ボッ、ボッ!!!!

巨大蠍「」

ハイ「……あ」

薄れゆく意識の中で、ハイは巨大蠍の鋏を吹き飛ばすユーの剣を見た。

136

--失われた王国--

ぴちょん

ハイ「ん……ここは」

??「気がついたか?」

ぼんやり

ハイ「あ、はい。ここはどこですか? ユーさん」

??「俺はユーさんじゃぁねぇぜよ」

ハイ「!!」

ガバッ

ハイは飛び起きた。

??「んん。元気があってよろしいぜよ」

髭面長髪のホームレス的存在が立っていた。

ハイ「貴方は……護皇さん」

??「俺か? 俺は護皇……あれ? 俺ら会ったことあったっけぜよ?」

名乗る前に自分の名前を言われて、護皇は不思議そうな顔をする。

137

--失われた王国--

ユー「……」

すたすたすたすた

ハイ「あ、ユーさん」

??改め護皇「なんだ、ユーさんてこの男のことかぜよ。無口だからなんにもわからなかったんぜよ」

ユー「……」

もぐもぐ

ユーはジェスチャーで葡萄の美味しさを表現した後、ひと粒ハイの口に入れた。

ハイ「あむ。本当だ、おいしい」

護皇「そらそうだ、ここの果物はなんでもうめぇ。ここは楽園だからな」

ハイ「知ってます。護皇さん、私達盗賊さんに会いに来たんです。今どこにいらっしゃるかわかりますか?」

護皇「……あれ? なんでこの子なんでも知ってるぜよ?」

138

--失われた王国--

じゃり

占師「ふぇっふぇっ。予言の子でも現れたのかい?」

そこに占師が現れた。

ユー「……」

護皇「予言の子……? まさかこの子がぜよ?」

ハイ「あっ……そういえばこの懐中時計……元はと言えばおばあさんが勇者さんに渡したんですよね?」

ハイは時を越えても身に着けていた懐中時計を占師に渡す。

占師「!……間違いないね。これは私が生涯をかけて作っていたものだよ……昨日いきなり無くなってしまったものだから、もしかしてと思っていたんだが……」

占師はハイの頬に手をあてる。

占師「戻ってきたんだね? 未来から」

ハイ「!!……はい!」

139

--失われた王国--

占師「そうかいそうかい……勇者ちゃんに渡すつもりだったのだが、これもめぐり合わせなんだろう。で、ここには何をしに来たんだね?」

ハイ「盗賊さんに会いに来たんです!」

占師「あの青年か。なるほどなるほど……」

占師は窓の外を指差した。

占師「あの子なら先ほどどこかに出発しようとしていたけれど、今ならまだ追いつくかもしれないね」

ハイ「っ! わかりました、ありがとうございます!!」

がばっ!!

ハイは飛び起きて装備を掴んだ。

ハイ「あ……助けてくれてありがとうございます護皇さん。このお礼はいつか返しに来ますから」

護皇「いやぁ、もうそこのあんちゃんからお礼もらっちゃってるから気にしないでぜよ」

護皇の手にはハイのパンツが握られていた。

ハイ「!? いつの間にっ!?」

ユー「……」

140

--失われた王国--

だだだだだだだ!!

ハイ「ま、待ってくださあああいい、盗賊さああああん!!」

盗賊「ん?」

旅の格好をし、今まさに出発しようとしている盗賊を呼び止めるハイ。

ハイ「はっ、はっ、はっ……よ、よかった、まだいてくれた……」

ユー「……」

盗賊「誰かな? 見たこと無いけど……」

盗賊は顎に手をあててハイとユーを交互に見た。

ハイ「わ、私……私は……ハイと言います」

ユー「……」

盗賊「ふむ。やっぱり聞いたこと無いな。それでそのハイちゃんが俺になんか用かい?」

息を整えるハイ。

ハイ「ふー……。話を聞いてもらいたいんです……」

盗賊「話?」

ハイ「その……わ、私……未来から来たって言ったら、笑いますか?」

盗賊「笑わないよ。俺、タイプの女の子の言うことだけは絶対に信じることにしてるから」

ハイ「そんな理由で信じちゃうんですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

ユー「……」


あれ? ユーが変態キャラに……。ど、読者さんとは同一の存在じゃないのでお目こぼしを……!

それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

質問なんですが、ユーはバラバラにされた少年が再び形を取り戻した、という解釈であってますか?(少年

遅く、なりました……


え、えっとユーの装備に関しては裸ベルトみたいなのを想定してました。描写不足ですみません!




>>575
はい、そうです。時系列的に言うと、

少年はトリガーによってバラバラにされて、色んな次元に吹き飛ばされてしまった。

魂の欠片が過去を忘れ、それぞれ成長した姿が読者である皆様方。

そしてQによってこのssに集まるよう誘導され、再び一つになる。ただし色んな性格が混ざり合ったため以前とは違う姿、キャラに。

といった感じです。



それでは投下していきます!





141

--失われた王国--

ホーホー

ハイは半日かけて、これからこの世界に起こることと未来での出来事を細かく盗賊に説明した。

パチバチ……

盗賊「……」

ハイ「――という感じなんですが……」

盗賊「……」

ハイ(凄い険しい顔で悩んでる……ことの重大さを理解して、これから何をすべきか考えてるんだろうな……。やっぱりポニテ先輩のお父さんです、頼りになる!)

盗賊(話が複雑かつ難しくてよくわからん。あとうんこしたい)

142

--失われた王国--

盗賊「つまり、このままいくとよくないことが起きるってことでいいのね?」

ハイ(……私の半日がすぅごい曖昧かつ簡単な一言でまとめられてしまいました……)

少しショックなハイ。

盗賊「……うーん、頼ってきてくれた所悪いんだけど、俺一人で北の王を説き伏せるのは無理だね」

ハイ「えっ!?」

思いがけない一言によりハイは驚いた声を出す。

盗賊「えっていうか。北の王は普通に強敵だよ。道化演じてるけどキレる人だ……。そもそも王に会うことすら難しい」

俺はお尋ね者だからねー、と盗賊。

ハイ「そん、な……」

盗賊「説得力を強化すればまた別だけどな」

ぶっ!

143

--失われた王国--

ハイ(今のおなら、かな……いやでも盗賊さんこんな真剣な表情で話してるんだし、きっと聞き間違いだよね)「説得力を強化、っていうのはどうするんですか?」

盗賊「信じたくさせるような状況に持ってくしかないね。言葉以上の何かで」

ぶっ、ぶぶっ!

ハイ(……完全におならですね、臭いが……でも真剣に話をしてるわけだし、生理現象ですし、ここは平静を装わないと)「な、なるほど。盗賊さんには何か策があるんですか?」

ばぶりっ! 

盗賊「一応ね。後は向こうさんがどれだけ手を貸してくれるのかに関わってるんだけどさ」

ぶっ……びちちっ!

ハイ(今の音はまずい!)「あ、はい。……あの、盗賊さん……」

盗賊「どうかした?」

ぶりりりりっ!

ハイ「……盗賊さん……トイレ行ってきたほうがよくないですか?」

盗賊「……あ、いい? じゃあちょっと失礼するよ」

すっ

ひょこひょこ歩きで森の中に消えていった盗賊。
おしりがとてもこんもりしていたという。

144

--失われた王国--

盗賊「おいおっさん、これに署名してよ」

護皇「ぜよ?」

あれから盗賊は用があると言って護皇の家に寄り、一枚の紙を差し出した。

護皇「これなんぜよ?」

盗賊「なんでもいいから早く書くぜよ」

護皇「そんなこと言ってもよくわからんものにサインなんて出来ないぜよ」

盗賊「いいんだよほれぇ、さっさと書くんだよじじぃ!」

ハイ「無理やり契約させる人みたい!!」

ユー「……」

145

--失われた王国--

盗賊「じゃあちょっと未来から来たハイちゃんと世界救ってきます」

しゅるり

包帯を巻く盗賊。

護皇「いいのかぜよ? お嬢ちゃんのこと待たなくて。計画が狂うぜよ?」

盗賊「勇者には先に行動を起こすって言っといてくれ。どうもこのままじゃ間に合わない気がするんだ」

護皇「……わかったぜよ。気をつけて行ってくるぜよ」

盗賊「おう、ここの守りよろしく頼みますよ。じゃあ行こうぜハイちゃん、ユー君」

ハイ「あ、はい!」

ユー「……」

すたすた

ハイ「ちなみにどこに向かうつもりですか?」

盗賊「あぁ、それはな、黄金王国さ。しばらくよろしくな」

盗賊が仲間になった。

146

--黄金王国、牢獄--

がしゃーん

黄金兵「まったく、ふざけたことしやがって……。判決が出るまでそこで震えてるんだな」

盗賊「……」

ハイ「……」

ユー「……」

牢獄に入れられているハイ達。

盗賊「ち、あれくらいで牢獄にぶち込むとか。ひどい対応だぜ……」

ハイ「あ、当たり前ですーーー!! だから真正面から行こうって私言ったじゃないですかーーー!!」

147

--黄金王国、過去--

ハイ達が捕まる三時間前……。

がやがや

ハイ「うわぁ。私黄金王国はじめて来ましたけど、活気が凄いですねぇ!」

ハイ達は黄金王国のマーケットの中を歩く。

盗賊「まだまだ成長途中の国だからな。他の国とはハングリーさが違うよ」

黒肌のおばちゃん「お兄さんお嬢ちゃん、フルーツ、とてもおいしい、甘いよ!」

露天のおばちゃんがフルーツを買えと差し出してくる。

ハイ「あ、私達観光に来たわけじゃないので……資金もそんなに無いですし」

盗賊「美味そうだね。おばちゃん三つ下さい」

黒肌のおばちゃん「まいどー!」

ちゃりん

盗賊「はい、ハイちゃんにユー君、おあがりよ。腹が減っては戦はできんよ」

ハイ「は、はぁ……」(こんな簡単にお金使っちゃって大丈夫なのかな)

148

--黄金王国、過去--

しゃぐしゃぐ

盗賊「甘えぇ! なんだこれ。失われた王国のフルーツばりに美味しいじゃん!」

しゃり

ユー「……」



ハイ「あむ……確かに美味しいです。っていうかあそこで食べたのと似てる感じがします」

盗賊達は桃に似た果物を味わっている。

盗賊「あー美味かった。ねぇおばちゃん」

黒肌のおばちゃん「おかわり? もっとあるよ!」

盗賊「いやいやもうお腹いっぱい。それより聞きたいことあるんだけどさ」

盗賊はおばちゃんに近づいて言った。

盗賊「姫様って、どこにいるか知ってる?」

149

--黄金王国、過去--

黒肌のおばちゃん「姫、様?」

盗賊「そうそう」

ハイ(そういえば聞いたことがあります。黄金王国の支配者である姫様は、支配者階級にふさわしくないほどフリーダムな方だと。国民を愛し、一切偉ぶらないその姿に国民からの信頼は厚く、一説にはあの黄金で出来た城も国民のために開放し、今ではお年寄りの集会所になってるまである、と……)

まぁ最終決戦の時に近くにいたんだけど、とハイ。

盗賊「俺達姫様に話があって来たんだ。でも真正面からじゃ会ってくれなそうでさー」

盗賊のマントが揺れ、隙間からナイフがちらりと見えてしまう。

黒肌のおばちゃん「!!」

盗賊「姫様は護衛もつけずに外で遊びまわってるらしいって噂聞くしさ、そんならおばちゃん達が居場所知ってるんじゃないかって思うんだけど、どう?」

じり

ハイ「……あ、あの盗賊さん」

じりじり

ユー「……」

さっきまで活気で賑わう通りだったのだが、一瞬で殺気で埋め尽くされる。

150

--黄金王国、過去--

ハイ「盗賊さん……絶対私達怪しまれてますって……」

黄金王国はまだ国民の数が少ない。
それゆえ仲間意識が非常に強く、よそ者が入国すればたちまち知れ渡ってしまう。

ざわざわ

黒肌のおばちゃん「姫様の場所、知らない。買わないなら、行け」

盗賊「そっか。じゃあサンキューなおばちゃん。これ美味かったよ」

盗賊は手を振って歩いていく。

すたすたすた

ハイ「と、盗賊さん、どうするんですかこんなに目立っちゃって……素直に真正面から謁見手続きした方がいいと思います」

盗賊「はっはっはっ。俺らみたいなどこの馬の骨ともしれないやつらに、国家元首がぱっと会ってくれるわけないじゃないの。顔見知りならともかくさー」

ハイ「……。じゃあ……どうするんですか?」

盗賊「どうしようね」

ハイ「は、はい?」

ジロジロ

周囲の視線がハイ達を逃がさない。

151

--黄金王国、過去--

すたすたすた

盗賊「……いい国だ」

ハイ「え?」

盗賊「国民全員が姫様の身を案じてるよ。ただ居場所聞いてナイフ見せただけなのに」

ハイ「! やっぱりさっきのわざと見せてたんですか! なんでそんなこと!」

ざわざわ

盗賊「……こっちであってるみたいだな」

ハイ「え?」

盗賊「人が増えてってる。しかも進行方向を塞ぐようにしてね」

152

--黄金王国、過去--

ハイ「それは単純に、私達にこの国の中を歩き回られたく無いだけなんじゃ……」

盗賊「その可能性が無いとは言わない。けどね、さっきおばちゃんに質問した時に観察眼使ったんだ」

ハイ「え……」

盗賊「そしたら一瞬だけ意識をこっち側に向けた。周囲にいた人の中で、一人だけ小走りでこっちに走っていったのもいる」

ハイ「……いつのまに」

盗賊「今は太陽が真上に来ててあっついよな。こんな時は川遊びでもしたいもんだ」

……ザー

盗賊「ここに来る前に地図で確認したんだけど、この近くに川があるみたいなんだよね。どうだろ、丁度今頃そこにいるんじゃないかな? 姫様は」

ハイ「!!」(や、やっぱりこの人……ただのうんこもらし野郎じゃない!!)

153

--黄金王国、過去--

ざり

黒肌の男「立ち去れ。これ以上進むことは許さない」

黒肌の髭男「立ち去れ」

屈強な男たちが盗賊の前に立ちはだかる。

盗賊「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ハイ(! 戦闘になりそうな予感……! でも話し合いに来ただけなのに。しかもこんな)

後ろを見ると、戦闘経験のなさそうな女子供までもがハイ達を睨んでいる。

ハイ(一般人となんて、戦えない……)

盗賊「はっはっはっ、やだなー。こっちは争う気なんてないんだってばー」

盗賊は笑いながらハイとユーの手を握る。

盗賊「スキル、トリプルインビジボォ」

ばしゅん

黒肌の男、黒肌の髭男「「!?」」

盗賊達の姿が見えなくなった。

154

--黄金王国、過去--

ざざざざざ!!

ハイ「透明化スキル!? ど、どうするつもりなんですか? 盗賊さん!」

わーわー!!

民衆は盗賊達を見つけようと大騒ぎしている。

盗賊「さー……どうしようね?」

ハイ「無計画!?」




--黄金王国、過去--

参謀長「なに、賊が?」

執務をこなしていた参謀長の耳に盗賊の話が入る。

155

--黄金王国、過去--

ぺらり

部下から渡された入国許可証を見る参謀長。

参謀長「……! 護皇一行……だと?」

ばちっ

参謀長(……魔力筆跡も確かに彼のものだ……だとしたら、賊は何者だ? どうやってこれを入手した……)

参謀長は顎に手をあて考える。

たんぽぽ星人「どうすんだ参謀長。このままじゃ国中ひっかきまわされちまうぜ?」

参謀長(……報告では透明化スキルを使って逃げているという……ならなぜそのスキルを最初から使わなかった? わざわざ騒ぎを大きくしてまで……)

たんぽぽ星人「参謀長?」

すっ

参謀長「――決まっているでしょう。我らが姫を狙うものは、例えなんであろうと打ち倒すのみ」

156

--黄金王国、過去--

わーわー!!

盗賊「あー、しんどっ!」

びゅぅん

ジャングルに入った所でインビジボォを解く盗賊。

盗賊「あー……歳は取るもんじゃないねぇ……ただでさえ役立たずの俺がますます弱くなっちまうよ」

盗賊は肩に巻いたタオルで汗を拭く。

ハイ「……」

盗賊「あれ? どうしたのハイちゃんむくれちゃって。可愛い」

ハイ「盗賊さんが何をやろうとしてるのかおっしゃってくれないからです!!」

盗賊「まぁまぁそう怒らないでよ」

ぷにぷに

盗賊「こっちも無い頭振り絞って策を考えてんだからさ」

ハイ(……そのわりには、楽しそうです)

157

--黄金王国、過去--

ざー

盗賊「お、やっぱりいたね姫様」

盗賊達は木の上から川にいる姫の姿を確認する。

ハイ「姫様はいましたけど……姫様以外の人もいっぱいいますよ?」

姫のいる川を全方位から守るようにして兵士達が立っていた。

盗賊「見えない相手がどこから襲って来るのかわからないから、うかつに安全な場所に護送することも出来ないのかな?」

ハイ「そうですね。そして三強が来るまでの時間稼ぎだと思います」

盗賊「うん、だろうな」



ざー

姫「? これは一体なんの遊びかな? かな?」

黒肌の英雄「――姫様ご注意ください。敵がお命を狙っているのです」

姫「今バカってゆった!?」

158

--黄金王国、過去--

盗賊「うん、よし」

ぽん

盗賊は手を叩く。

盗賊「ハイちゃん、ユー君。ちょっと囮をしてください」

ハイ「……はい?」

盗賊「あそこから川に向かって大声で走ってってください。そしたら俺が逆側から姫様にアプローチします」

ハイ「……」

平然と作戦を提案する盗賊に対して、

ハイ「……あの、言いたく無かったんですけど」

盗賊「うん」

ハイ「私あんまり強く無いんです」

盗賊「大丈夫、俺のが弱いから」

159

--黄金王国、過去--

ハイ「私の職業、レベルは色々と条件が難しいんです。今の状況ではレベル2、騎士になるがいいのでしょうけど、ユニちゃんがいなくちゃ条件を達成できないんです。でもユニちゃんは入り口に繋いできちゃったから……」

盗賊を無視して話を続けるハイ。

盗賊「あぁそうなの? なんかそういうのあるの? めんどくさいね」

ハイ「うぅ……そうなんですよ」

ぽん

ユー「……」



ユーはハイの肩を叩き、サムズアップ。

ハイ「……なんですか? バカにしてるんですか?」

ユー「……」

違う違うとジェスチャーをしてから再びサムズアップ。

盗賊「あ、なるほどそういうことね」

ハイ「? 何がそういうことなんですか?」

盗賊「騎士になるにはユニコーンが必須って言ってたけどさ、ようは騎乗できたらいいんでしょ?」

160

--黄金王国、過去--

びしっ

黒肌の敏感「あたっ……小石?」

ハイ「じょ、条件達成っ!! レベル2! き、騎士っ!!」

ばしゅうー!!

ユー「!」

だからっだからっだからっ!!

黒肌の英雄「!? なんだ、なんだあれは!」

ハイ「や、やけくそだーーー!!」

ユーにまたがるハイが川に向かって突進する。
ユーはまるで馬のように疾走する。

黒肌の英雄「と、取り押さえろー!!」

わーー!!

しゅん

黒肌の英雄「!?」

兵士達がハイを取り押さえようと向かったその時、一陣の風が吹き、それは姫の傍に現れた。

姫「ふにゃ?」

ぱんっ

盗賊「ドーモ。ヒメ=サン。トウゾクです」

それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

死んでしまう!(こんばんは)


>601さん
ニートは本来、回避系(現実逃避)の職業です。共有(盗賊系職業スキルの《盗む》の発展型)と組み合わせて自己流に解釈し改良したのが盗賊の新職業、ニートです。
同じニートでも動き方が変わってくるのはニートに対する認識が違うということで一つ……。

ちなみにニート以前の共有よりもニート後の方が効果があがっています。より他力本願に特化した存在になっています。
ちなみにちなみに盗賊が最初に共有を使った描写があるのは勇者募集の第四部の人造勇者戦です。


それでは投下していきます。





161

--黄金王国、過去--

姫「とう、ぞく?」

きょとんとした顔の姫。

黒肌の英雄「くっ!! 姫様!!」

しゃきぃん! 

黒肌の英雄が剣を抜き盗賊に斬りかかろうとするも、

ドッ!!

黒肌の英雄「ッ!!」

ドサッ

その前に盗賊が黒肌の英雄の首に手刀を放ち、気絶させる方が早かった。

盗賊「やぁ姫さん、乱暴になっちゃって悪いね。これでも話があって来ただけなんだぜ」

姫「話? 姫ちゃんに?」

盗賊「うん、ちょっと重大なことが……あれ?」

しゅぅう

いきなり霧が出現し、盗賊の視界が奪われる。

162

--黄金王国、過去--

潜入長(奥義、霧霧巣!! 姫様は渡しません!!)

ザザザザザ!!

その場に潜入長が現れた。

黒肌のふとっちょ「この霧は潜入長様の!! やった! 間に合ったぞ!! これで姫様は無事だ!」

しゅうぅうう

盗賊(なんだこれ……探知が全然出来ない……スキル、透視眼)

きぃいいん

しかし、目の前にいたはずの姫の姿でさえ捕らえることが出来ない。

盗賊(これでも駄目なのか……となると)

ザザザザザ!!

潜入長(姫様に手を伸ばした瞬間、仕留める!!)

潜入長は盗賊達に近づいていく。

163

--黄金王国、過去--

盗賊「よし」

潜入長(私の姿を確認することなく死になさい!)

しゅばっ!!

盗賊「逃げよ」

すかっ

潜入長「!?」

盗賊はダッシュで後方に逃げていく。

ばしゃばしゃばしゃばしゃ!

潜入長「そんな……姫様が狙いだったんだろうに……いくら不可解なことが起きたからって、目標を目の前にして逃げるんですか……? 信じられない」

姫「あれ? この霧なにこれー!?」






ハイ「私はいつまで暴れてればいいんですかー?」

164

--黄金王国、過去--

ほーほー

夜。

ハイ「はぁ、はぁ……」

盗賊「おうハイちゃん。お疲れ」

ハイ「お、お疲れじゃないですよ……あれから、みんなをまくのに、大変、だったんですから、ね」

息を整えるハイと汗一つ見せないユー。

ユー「……」

ハイ「それで――姫様は、無理だったんですか?」

盗賊「無理だったね。後少しだったのになー」

もっちゃくっちゃ

盗賊はジャングルにあった果物を食べている。

ハイ「……なんか軽いですね。本気さが感じられません……」

盗賊「そうだ、聞いておきたいことがあったんだよハイちゃん。ちょっといいかな」

ハイ「え?」

盗賊「パンツの色についてなんだけど」

165

--黄金王国、過去--

参謀長「逃がしたんですか」

潜入長「すいません……まさかあの状況で即座に後退するとは思わなくて……」

おろおろと慌てる潜入長。

参謀長「――いえ、よくやりました。姫を守りきったことだけでも評価に値します。優先順位を間違えなかった貴女の決断は正しい」

潜入長「! あ、ありがとうございます!」

参謀長(……しかし半日かけて捕まらないとは……)「たんぽぽ星人、もこもこ。貴方たちにも動いて貰いますよ」

たんぽぽ星人「! おう。腕がなまってたところだぜ!」

もこいち「もきゅ。進化した我々の情報能力ならきっと一瞬もきゅよ!」

参謀長「あぁ、そうだと思ってる……頼りにしてるよ」

166

--黄金王国、過去--

ぴくっ

盗賊「……」

ジャングルの中で睡眠を取っていた盗賊は何かの気配を感じ取って起き上がる。

盗賊「……多いね」

ハイ「むにゃむにゃ……どうかしたんですか?」

盗賊「ハイちゃんもユー君も起きて。どうやら向こうも本気を出してきたみたいだぜ」

ザザザザ……

ハイ「! ジャングルの中を何かが移動してます?」

盗賊「そろそろ罠地帯にさしかかるようだが……こいつらはどう反応するかな?」

167

--黄金王国、過去--

ばちぃん!!

たんぽぽ星人A「いったっ!? な、なんだこれ痺れれレレレ!!」

たんぽぽ星人B「! おいやっぱり罠があるみたいだぞ、参謀長の言っていた通りだ! 罠がありそうな位置と魔力の固有振動値をもこもこちゃんねるにうpるぞ!」

たんぽぽ星人C「――情報確認した。もこもこ細胞を組み込んだのは正解だったな。俺の分身能力と相性が抜群だぜ!」

たんぽぽ星人B「よし、次のフェーズに移行する。ここからは弓の出番だ」

すっ

弓を持ったたんぽぽ星人たちがジャングルの奥に向かって弓を構える。




盗賊「ありり? 最初のやつ以外綺麗に罠をかわしてくる……モンスターの場所も丁寧に避けてるし……まずいな、移動するぞ」

168

--黄金王国、過去--

ひゅひゅひゅひゅ!!

盗賊「! 矢を撃ってきたか」

ハイ「うわっ! 反撃しなきゃ!」

すっ

ユーはハイを止めた。

ハイ「え? なんで止めるんですか?」

盗賊「向こうは四方八方、弓で攻撃している……ってことはまだうちらの場所がわからないってことだ。大体の場所まで絞れてるんだろうけど」

ハイ「反撃したらばれちゃう、ってことですか」

盗賊「そそ。ここは少しずつ後退していこう。敵がいない場所を通って」

169

--黄金王国、過去--

すすす

たんぽぽ星人D「いたかー?」

たんぽぽ星人E「いないでー」

がさがさ

盗賊(こんな所にまでいるなんて。向こうさんかなりの兵を俺らの捜索に動員してる……。まぁ、あれだけ騒いだやつがいまだに自分の領土をうろうろしてるんだから当たり前か)

盗賊はにやりと笑う。

ハイ(どうするんですか? 盗賊さん)

盗賊(……このまま姫さんの所に特攻しちゃおうかな)

ハイ(え)

盗賊(こんだけ兵が出てきてるってことは逆に姫の警護は手薄になってるはずだからね)

ハイ(……もしかして兵を引きずりだすために昼間あんなことを……?)

盗賊(偶然偶然。でも思った以上なので包囲網を抜けれるか心配だなぁ)

170

--黄金王国、過去--

ぽんぽん

ユーが盗賊の肩を叩く。

ユー「……」

盗賊(え、ユー君が囮になるって?)

こくこく

盗賊(うーん……)

ハイ(さすがにこの数じゃ厳しいんじゃないですか……?)

ユーは任せろとばかりに自分の胸を叩く。

盗賊(……うん、任せたぜユー君。君ならなんとかなるだろうし)

171

--黄金王国、過去--

ガサガサ!!

たんぽぽ星人F「!! おいこっちいたぞー!!」

ユー「……」

腕を組んでマントを棚引かせているユー。

たんぽぽ星人G「! 後ろにも二人いるぞ! 全部で三人、情報通りだ。狙いつけて撃てー!!」

ばしゅばしゅばしゅばしゅ!!

ぎぎぎぎっぎいいんん!!

ユー「……」

ユーは二本のレイピアで飛んできた矢の全てを叩き落とす。

たんぽぽ星人H「ちっ、当たらなくてもいい、あの三人をここに足止めするんだ!」

ばしゅばしゅばしゅ!!

172

--黄金王国、過去--

たんぽぽ星人I「俺が行く!」

ババッ!!

たんぽぽ星人F「! あれは近接特化個体! みんな、あいつを援護しろ!!」

ばしゅばしゅ!!

ユー「……」

一直線に走ってくるたんぽぽ星人。それをユーは矢を落としながら迎え撃つ。

しゃりん

たんぽぽ星人I「うおりゃああああああああああああ!!」

どぎいいいいいいいいいん!!!!

たんぽぽ星人I「!! こんな細い剣で俺の拳を止めやがった!?」

ユー「――スキル、土属性防御剣」

いつのまにかユーの剣は、鉱石のようなもので覆われていた。

173

--黄金王国、過去--

ぎぎん、ぎぎぎぎん、どしゅっ!

たんぽぽ星人I「がはっ!」

たんぽぽ星人J「!? 近接特化個体がやられたぞ! しかもあっさり!」

ユー「……」

ザザザザザ!!

たんぽぽ星人K「うお、向かってきやがった!?」

ズバババババババババ!!

木々をかわし矢を落とし、視界にいるたんぽぽ星人全てを一瞬で切り裂いた。

ぶしゅっ!!

たんぽぽ星人L「こ、こいつ……」

たんぽぽ星人M「は、速くて、強い」

どささささ!!

ユー「……」

174

--黄金王国、過去--

しゅ

ユー「」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

突撃長「――ほっ。わしの不意打ちをあっさりと受け止めるとはやりますですじゃ!」

巨大な斧を持った老人がユーに向かって喋りかける。

シャシャシャッ!!

ユー「!」

ふぉんっ!!

潜入長「! 私の攻撃までもかわすなんて……!」

じりじり

ユー「……」

突撃長と潜入長が現れてユーを囲む。

たんぽぽ星人L「へ、へへ。うちの三強レベルの二人だぜ……お前ら三人もここまでだ」

175

--黄金王国、過去--

タタタタタ

盗賊「やー。町には兵が少なくて楽ちんだなー。はっはっはっ」

ハイ「土属性魔法、分身改……自分の分身を自分以外の姿に変えて操る魔法。そんな魔法もあるんですね」

盗賊「全く便利な魔法だ。あちらさんはまだ俺らがあのジャングルにいると思ってるんだろうな」




ギギギギィン!!

潜入長(く! この男私達二人を相手に互角にやりあってる!!)

突撃長(残りの二人に手を出させないとは余裕ですじゃな……しかしいつまでそれが続きますかじゃ!)

ユー「……!!」

ギギギギギギン!!

176

--黄金王国、過去--

ササササササ!

黒肌の筋肉「……」

兵たちの真横を透明化してすり抜けていくハイ達。

ハイ(にしてもこのインビジボォもめちゃくちゃ便利ですね……誰にも感知されずに移動できるとか)

盗賊「……」

ハイ(才能が無い人だって聞いてたけれど、こうやって色んな技を駆使して生き抜いてきたんだろうな……一つのスキルや魔法に対する理解が深いように感じる)

盗賊「……」

ぶっ

黒肌の筋肉「? 何だ今の音は? おならみたいなのが聞こえたが……」

ハイ「……」)

177

--黄金王国、過去--

ざっ

ハイ「ここが姫様のお家……ですか?」

盗賊「何事も無くここまで来れちゃったな。本当に警備が薄いというか」

盗賊は窓に近づいて中を見る。

姫「くー、すー」

盗賊「いるな。よし……」

かちゃかちゃかちゃ、かきん

ハイ「うわ、鍵開けちゃいました」

盗賊「だって俺本職盗賊だし。今はニートだけど」

ハイ「最低な経歴ですね」

178

--黄金王国、過去--

すた、すた

盗賊は姫のいるベッドにまで近づいていく。

ハイ「と、盗賊さん。さすがにこれは怪しくないですか? 姫様の周りに護衛が一切いないなんて、そんなことありえるんですか?」

盗賊「ん? ありえないんじゃない?」

ハイ「! だったら」

盗賊「まぁいいからいいから。それにここにいる姫様は本物なんだよねー。透視眼で確かめたから間違いない」

すっ

盗賊は手を伸ばした。

参謀長「その手を引っ込めてもらおうか」

ハイ「!?」

ぎぃ

暗闇の中に、壁を背にして参謀長が立っていた。

盗賊「……いたんだ?」

ハイ(そんな、盗賊さんでさえ気配に気がつかなかったなんて!)

179

--黄金王国、過去--

盗賊「……」

参謀長「……」

にらみ合う二人。

盗賊「君は……参謀長さんでいいのかな?」

参謀長「……」

参謀長は無言で盗賊を見つめている。

参謀長(この国を引っ掻き回せるほどの人物が誰なのか色々と考えてはいたが……こいつは誰だ? この包帯男。私の記憶にこんなやつはいない。一体どこの勢力のものだ?)

盗賊「話があって来たんだが、聞いてもらえたりするかな? 出来れば紅茶とかも出して欲しいんだけど」

参謀長「ふっ、この状況で何を言うかと思えば。話は聞くさ。拷問室でな」

ハイ「っ」

ハイが腰のパチンコに手を出そうとした瞬間、

ばちっ

ハイ「きゃっ!?」

手に電流が流れ、パチンコを落としてしまう。

ハイ「な、何今の?」

参謀長「私が許したこと以外しないほうがいい。ここは私の領土内なのだからな」

180

--黄金王国、過去--

盗賊(領土に関するスキル……? 中々面白い能力じゃん。噂に聞いてたのよりずっといい)

参謀長「さて、武器を捨てて姫から離れてもらおうか。もし抵抗するというのならこのまま……」

ぎり

盗賊「っ!」

ハイ「んっ!? 心臓が、わしづかみされてるみたいに痛くて苦しい……!」

ぎりぎりぎりぎりぎり

盗賊「うぎっ!……わ、わかった……降参だ」

ハイ「!?」

ごと

盗賊はあっさりとナイフを捨てて手を上げた。

はらり

その時に白い紙が一緒に落ちた。

ハイ(え、えぇ!? 一体この人はなんなんですか!? こんな無謀なことして捕まるだけですか!?)

参謀長「……ひっとらえろ」






がしゃーん

--黄金王国、牢獄--

ということで現在。

ハイ「うぅ……もう日数が無いのにこんな所で無駄にしちゃうなんて……」

ハイはよよよと泣いている。

ユー「……」

ユーは傷一つ無い体をタオルで拭いている。

盗賊「ハイちゃん、無駄じゃないさ。そろそろあれに気づいてくれるだろうから、もうすぐ釈放されるよ」

ハイ「え……」

盗賊「それまでもうちょっと。ここでリラックスして待ってようぜ」

盗賊は鼻歌を歌っている。

それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れてすみません。


はい、ユーは勇者なので全属性使えますが、メインで使っていく属性は土です。


それでは投下していきます。

181

--黄金王国--

突撃長「ふひー。久しぶりに暴れさせてもらったですじゃ。しかしあの男、本当に強かった……」

タオルで汗を拭いている突撃長。

潜入長「っ……私達を誰も傷つけないように加減して戦っていた気がします……しかも最後はいきなり投降するし……屈辱の極み!」

親指の爪を噛んでいる潜入長。

たんぽぽ星人「誰も傷つけないようにって、俺の分身めっちゃ斬られてたんだけど?」

残りの自分の数を数えているたんぽぽ星人。

潜入長「それはあなたが人として見なされて無かったからです」

たんぽぽ星人「ひどい!」

突撃長(ひどいっていうか、本当に人じゃないでしょうに)

182

--黄金王国--

がちゃ、ぎぃ

そこに参謀長が現れる。

参謀長「お疲れ様でしたお二方。怪我は無いと聞きましたが大丈夫ですか?」

突撃長「ほっほっ。心配かけてしまいましたな。我らならこの通り大丈夫ですじゃよ」

参謀長「そうですか。それは良かった」

たんぽぽ星人「おい、ナチュラルに俺をはぶくなよ」

潜入長「それより参謀長様。賊はどうしてますか?」

参謀長「……とりあえず牢獄にいれてあります。尋問は日が昇ってから行うつもりです」

183

--黄金王国--

バタバタバタ

部屋の外が慌ただしい。

突撃長「なにやら先ほどから賑やかですな。トラブルでもあったのですじゃ?」

参謀長「いえ、賊があの者達だけとは限らないので警備を強化させてるんですよ。兵には負担をかけてしまいますが」

突撃長「――なるほど、確かに。この老兵、そんなことにすら気づけなかったとは……。日を増すごとに衰えていくこの体……もういっそ死んでしまいたいですじゃ……」

参謀長「そこまで悲観しないでください突撃長さん。貴方はよくがんばってくださっている」

参謀長は落ち込む突撃長の肩に手をおく。

潜入長「……なおさら早く尋問すべきなんじゃないんですか? 仲間がいるのかどうか、彼らに直接聞けばいいじゃないですか」

参謀長「そうなんだけど、ね」

ぴら

参謀長はある紙を見せる。

184

--黄金王国--

突撃長「なんですかな? これは」

参謀長「賊の主犯格とおぼしき男がこれ見よがしに落としていったものです」

その紙にはこう書いている。



 かに りんご かぼちゃ しま なし しろ なし


    彼女はなんでも知っている
未来からきた姫の友人より



突撃長「……なんですじゃ? これ」

参謀長「わかりません」

185

--黄金王国--

潜入長「それもなんなのか直接聞いちゃえばいいんじゃないんですか?」

参謀長「……」

突撃長「……」

潜入長「な、なんですかその無いわー、っていう目!」

参謀長と突撃長の二人は深いため息をつく。

参謀長「だってクイズを出されたっていうのに、すぐ答えを聞きにいっちゃうのは自分で愚か者だ、って言っているようなもんじゃないですか」

突撃長「そうですじゃそうですじゃ。まったく、ロマンが無い」

潜入長「ロマン……そんなこと言ってる場合じゃないんじゃ……」

186

--黄金王国--

参謀長は椅子を引き寄せて座る。

参謀長「まぁ冗談は置いといて……私が思うにですね、この一連の行動は全て、我々を試そうとして行ったものだと思っています」

突撃長「!?」

潜入長「試す……?」

参謀長「えぇ。我々の性能を試しつつ、その上で自分らの有能さをこっちに宣伝している……そんな感じですね。組むに値するのかどうなのか、と」

潜入長「ふ、ふざけてる!」

参謀長「ええ、まったく」

参謀長は顎に手を当てる。

参謀長「……現在我々は後手に回っています。今兵士達に彼らの情報を集めて貰っていますが、どうせ大したことはわからないでしょう。だから私はこの時間を利用して、彼らが何のメッセージを私達によこしたのか読み解くつもりです」

尋問をするにしても、彼らの情報を持っているのと持っていないのでは大きな差がでますから、と参謀長。

187

--黄金王国--

がちゃ

姫「ふぁあぁあ。みんな何の騒ぎなの? 姫ちゃん眠いのにー」

もこもこを引きずりながら下着姿の姫が現れる。

突撃長「姫様……起こしてしまいましたな」

潜入長「ひ、姫様、今は立て込んでますので寝所に行きましょう?」

潜入長が慌てて姫のもとにかけよった。

参謀長「……姫様。これがなんだかわかりますか?」

参謀長は姫に例の紙を見せる。

姫「ふぇ? かに、りんご?」

姫は寝ぼけ眼をこすりながらそれを受け取った。

姫「んぅ? んーん。これは天才の姫ちゃんでもわからないね!」

参謀長「でしょうね」

姫「今バカってゆった!?」

突撃長(遂に被害妄想による幻聴まで……)

188

--黄金王国、牢獄--

ハイ「――あの時落とした紙に、そんな理由があったんですか?」

盗賊「そうだよー。ちゃんとした理由があったのさー」

ハイ「……何を書いたのかわからないですけど、それで本当になんとかなるんでしょうか」

盗賊「大丈夫だよきっと。あの参謀長って人、頭よさそうだったし」

ハイ「よさそう、って。そんなの見た目で判断してるだけじゃないですか」

盗賊「見た目で判断してるわけじゃないよ」

盗賊は鼻をほじる。

盗賊「……あの時俺は上手く兵をおびき寄せたつもりだったし、ちゃんと人気の無い所を通って姫さんの所に侵入したつもりだった。でもそれは全部向こうの計算通りだったのさ。あえて被害を出させないために兵と接触させなかったんだ」

ハイ「え」

ユー「……」

ちくちくちく

ユーは自分のマントを材料にして何かを作っている。

189

--黄金王国--

突撃長「!……もしかしてこの文章は我々を混乱させるために意味不明なことを書き連ねただけなのではないですじゃ?」

潜入長「っ! それですよきっと! あの包帯男とか見るからにうさんくさいし……何か深い考えがあって動いてるなんてとても思えません!」

参謀長「……何も考えてない、とは思えないんですよ」

参謀長はぼそりと呟いた。

潜入長「え……」

参謀長「あの賊は途中から私の策に気づいてましたし」

突撃長「!? なんですと!?」

潜入長「そ、そんなのありえないですよ!」

参謀長「ありえるんですよ。でなければ姫様の寝所に入った時にあそこまで落ち着いていられないはず……。つまりやつは罠だと知りつつも飛び込んだ……それがもっとも姫様に近づける手段だったから」

190

--黄金王国--

潜入長「じゃ、じゃあ……あの人たち……」

参謀長「我々に殺される心配が無いという、確信を持っていなきゃ出来ない行動ですね。よほど重要な情報を持っているのか。あるいは……」

潜入長「……ただの狂人、という線は?」

参謀長「無いとは言えません」

姫「ねーねー、姫ちゃんめんどくなっちゃったから寝ていい?」

姫はあくびをしている。

突撃長「おっと、忘れておりましたですじゃ。ささ、行きましょう姫様。寝不足は体に毒ですじゃ」

突撃長が姫を連れて部屋を出て行こうとする。

くるっ

参謀長「……!」

二人の後姿を見た参謀長に電撃が走る。

191

--黄金王国、牢獄--

早朝

ちゅんちゅん

ぎぃ

ハイ「うーん、むにゃむにゃ……? まぶしっ!」

暗い牢獄の中に朝日が差し込んだ。

黄金兵「……出ろ。参謀長様がお前らに話があるとさ」

ハイ「!!」

盗賊「……待ってました。」

ぽんぽん

ユー「……」

ユーはハイの肩を叩く。

ハイ「なんですかユーさん?……え? これ私に、ですか?」

こくり

ユーが手渡したのは自作のパンツだった。

192

--黄金王国--

こんこん

黄金兵「失礼します。賊を連れてまいりました」

参謀長「ご苦労様。入れ」

黄金兵「はっ」

ぎぃ

潜入長「……」

突撃長「……」

参謀長「……」

部屋の中にいる三人がプレッシャーを放つ。

姫「お? 昨日の包帯男だー」

193

--黄金王国--

盗賊「やぁやぁ。昨日はどうもー」

ハイ「ちょっ!? 盗賊さんフレンドリーすぎやしませんか!?」

参謀長「……」

参謀長は一切表情を崩さずに、紙を盗賊のほうに投げ捨てた。

ひら ひら ぱさ

盗賊「どうやら意味はわかったみたいだね?」

参謀長「……なぜこのことを知っている?」

参謀長の表情が険しくなる。

194

--黄金王国--

ハイ(!! ここまで険しい表情になるなんて……盗賊さんは一体何を書いたんだろう……)

盗賊「書いてあっただろ? なんでも知ってるって。未来から来たんだって」

潜入長「たわごとを!! そんなわけあるもんか! どうせどっかから盗み見ていたんだろう!?」

参謀長「潜入長さん、少し落ち着いてください」

掴みかからんばかりの潜入長を参謀長が制す。

潜入長「だ、だって!」

参謀長「盗み見られていたにせよ、それはそれで問題なんですよ。我々が知らない間に、この者達は黄金王国最大級の秘密を知っていた……」

潜入長「ッ!!」

盗賊「さすが。これがどういう意味なのかわかったみたいだな」

参謀長「……あぁ」

参謀長は深いため息をつく。

参謀長「……あそこに書かれていたのは」



    姫様のパンツの一週間のローテーションだ

195

--黄金王国--

ハイ「!? は、はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

盗賊「うむ、ご名答!」

盗賊は誇らしげな表情だ。

ハイ「な、何を書いてるんですか何をぉ!!……はっ!? あの時私に聞いてきたのはそういうことだったんですか……」

ぴくっ

参謀長がわずかに反応する。

ハイ「なんでいきなりそんなことをと思ってましたけど……まさかこんな……」

盗賊「……今のでもうわかったと思うけど、未来から来た、っていうのはこの子なんだよ参謀長さん」

そういって盗賊はハイの頭に手を乗せる。

盗賊「この子は今から一年後に姫様と仲良くなって友達になったらしい。それでその時、姫様のおパンツローテーションのことを聞いたんだとさ」

ハイ「……仲良く、っていうほど長い付き合いではありませんでしたけど、まぁ寝食を共にしましたからね」(最終決戦の時に)

姫「姫ちゃんとその子が……友達?」

196

--黄金王国--

参謀長「ふむ……目的はなんだ? 我々に早急に近づいて話をしなければならないほどの何かがあるのだろう?」

潜入長「!? 参謀長様! 信じるんですか!? たかがパンツのローテーションがばれたくらいで!!」

突撃長「ですじゃですじゃ!」

参謀長「たかがじゃないんですよ潜入長さん。ある曜日を除けば、姫様のパンツの柄が外部にばれることはありえないんです。それは私が保証します」

突撃長(……パンツの柄の話ですじゃよね?)

参謀長「私だってこの者達が言っていることを完全に信じたわけじゃない。時間移動の魔法は過去の私でさえ作りえなかったもの……そうやすやすと信じられません」

盗賊「……」

参謀長「だが何かしらの強力な情報源をもっていることは確かです。それを我々に見せたということは、その力を我々に買って欲しいということ」

盗賊「……」

参謀長「いや、違うか……それならこんな急で危険な行動をする理由にはならない……何か切羽詰ったものを感じる……なるほど、何か危険が迫っていて我々の力が必要ということだな?」

盗賊「うん」

197

--黄金王国--

参謀長「それはどの程度の規模の危険か?」

盗賊「人類全滅」

潜入長「!?」

突撃長「!? な、なっ!?」

参謀長「……なるほど、了解した。では話をしてもらおうか。そちらの持っている情報の全てを」

潜入長「ちょっ、ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ参謀長様! 勝手に話を進め過ぎです!」

突撃長「そうですじゃ! 我々理解がおっつきませぬ! ひ、姫様だってそうですじゃ!」

姫「なーなー。お前、未来から来た姫ちゃんの友達なのか?」

姫はハイの服を引っ張りながら聞く。

ハイ「え? あ、は、はい」

198

--黄金王国--

ぱああああ

っと、姫の表情が明るくなる。

姫「そうか! お前は姫ちゃんの友達なのだな! きゃっほー! 友達ー!!」

ばふっ

姫はハイに抱きついた。

姫「姫ちゃん家臣はいても人間の友達はいないからな! 嬉しいぞーー!!」

突撃長「ちょっとーーーーー!! 何で賊に接近してるんですじゃ姫様ーーー!!」

姫「賊じゃないよ、友達だよ!」

頬を膨らませながら姫は怒る。

突撃長「も、もうちょっと疑いを持って欲しいですじゃ! この者達は姫様に危害を加えるつもりかもしれませんのですじゃよ!?」

姫「え? 危害を加えるつもりなのか?」

姫はハイに聞く。

ハイ「いえ、そんなことないです」

姫「ほらみろ!」

突撃長「ですじゃー!!」

199

--黄金王国--

潜入長は頭を抱えている。

参謀長「突撃長殿。そこらへんにしておきましょう。話を聞いてみたいと思います」

突撃長「で、ですがこの者達が嘘を言っている可能性も……」

姫「嘘って何? 食べ物?」

突撃長「バカだ!!」

姫「今バカってゆった!?」

ぴょんぴょん!

跳ねる姫。
その時ふわりと姫のスカートがめくれ上がった。

盗賊「あ、なし、って梨じゃ無いのね」

200

--黄金王国--

盗賊「じゃあほれ、ハイちゃん。説明したげて」

盗賊はハイの背中を押す。

ハイ「は、はい……じゃあ信じて貰えるかわかりませんが、これから起こることを話させてもらいます」

ハイは一歩進んで参謀長の眼を見る。

ハイ「……これから数日後、北で魔王軍が動き始めます。そして北の王国がわずか半日で壊滅します」

参謀長「!」

突撃長「なっ!」

潜入長「ば、バカな!!」

ハイ「――全てはそこから始まったんです。人類の滅びの道が……そしてこのままだとまたバッドエンドに辿り着いてしまう……だから私は歴史を修正したいんです。北の王国の人たちを助けたいんです!」

盗賊「……」

ユー「……」

潜入長「さ、参謀長様……」

参謀長「……半日で一つの王国を滅ぼすような相手だ……我々が力を貸した所でどうにかなるのですか?」

ハイ「……全員が最終決戦に揃っていれば……何とかなると思います! いえ……」

ハイは大きく息を吸い込んだ。

ハイ「――何とかしてみせます」

・ちょっくら設定・
実は各主人公達は、各々一人で一パーティの動きが出来るようなギミックになっていました。

・勇者のアリスパーティ(五分裂)
・ツインテの多重人格(五人格)
・ハイのレベル(五職業)

がそれにあたります。





盗賊(え、主人公……?)







それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました。

それでは投下していきます。

201

--黄金王国--

ざっ

黒肌の兵士「参謀長殿。準備整いました」

参謀長「ご苦労」

ハイ「ふぇぇ……ほ、ほんとに国を動かせちゃった」

ざっ、ざっ

黄金王国の兵の約半数が整列している。

参謀長「ではゆくぞ。北の王国を救いに」

ぽてっ、ぽてっ

姫「あ、ちょっとまって参謀長ー。姫ちゃんまだいつものお菓子持ってきてなくて、ちょっとまって」

参謀長「しゅっぱーつ」

姫「待ってって、言ってるのに!! びえー!!」

202

--草原--

ざっざっざっ

ユニコーン「……」

ぱかっ、ぱかっ、ぱかっ

ハイ(ユニちゃんのことすっかり忘れてた……)「でも盗賊さん。あんな約束しちゃってよかったんですか?」

盗賊「あんな約束? どれのこと?」

ハイ「ほら、

  参謀長『しかし盗賊殿。これだけの数の人間を動かすのです。もしなにも起きなかったら……その時はどう責任を取るおつもりですか?』

  盗賊『じゃあその時は失われた王国の半分あげるよ』

ってやつです……」

盗賊「あぁ、あれね」

ハイ「あれね、じゃなくて……」

203

--草原--

盗賊「それはまぁなんとかなるでしょー」

ハイ「……」

盗賊「あれ?……また呆れさせちゃったかな?」

ハイ「いえ、そうじゃないんです!……これは私が言い出したことなんだから、本当なら対価を出すのも責任を取るのも私のはずだったんです。それなのに、盗賊さんや他の方々に迷惑をかけてしまって……未来から戻ってきても助けられてばかりです私……」

ハイはうつむいてしまう。

盗賊「おいおい、気にしないで行こうぜハイちゃん。大体ハイちゃんは私利私欲のためじゃなくて、人々を助けるために動いてるんじゃないか。なんでもかんでも一人で背負うことなんて無いさ、俺だって一緒に担がせてくれよ」

盗賊はそう言ってハイの頭に手を乗せる。

ハイ「……盗賊さん」

盗賊「俺達に借り貸しは無しだ」

204

--草原--

参謀長「借り貸し無し……ね」

ぱから、ぱから

馬に乗った参謀長がハイ達に横につく。

ハイ「参謀長さん?」

参謀長「少し話をしてもいいですか?」

ハイ「へ?」

断りを入れてから参謀長が話し始める。

参謀長「――二ヶ月ほど前の話になるのですが、遠征していた我が国の兵士達が、死の砂漠で迷ったことがあるんですよ」

ハイ「遠征、ですか」

参謀長「はい。オリョールに」

ハイ「オリョール!?」

205

--草原--

ぱか、ぱか、ぱか

参謀長「方角もわからないまま歩き回ったせいで、体力は限界を向かえ、水は底をつき、後は死を待つばかりとなった彼らの前に……ふと、一人の包帯男が現れたそうです」

盗賊「……」

ハイ「へー。包帯男ですかー。怪我人かな?」

参謀長「その包帯男はオアシスまで兵士達を導き、兵士達の体力が戻るまで面倒を見ると、丁寧にも黄金王国まで案内してくれたらしいのです」

ハイ「包帯男……ミイラかな? いずれにせよいい人みたいですね」

参謀長「……。黄金王国に着き、何かお礼がしたいと兵士達が包帯男に言うと、『礼ならいい、困った時はお互い様だ。でももし俺が困ったことになったら、その時は力を借りに来る。そんで借り貸しは無しだ』と言って煙のように姿を消したそうです……おならの臭いとともに」

ハイ「オナラ……」

ハイは盗賊の方を見て、盗賊は顔をそらす。

206

--草原--

ぱから、ぱから

参謀長「変な話でしょう。兵士たちの間では怪談の一つになっているんですよ。……そうそう、変な話と言えばあのパンツローテーションも少しおかしかったんですよ」

ハイ「え? おかしかったって、何がですか?」

参謀長「いえね、あの紙に書かれていた順番は、

   かに、りんご、かぼちゃ、しま、なし、しろ、なし

でした。でも実際に姫様にローテーションをお聞きしたところ、

   かに、りんご、かぼちゃ、なし、しま、しろ、なし

だったんですよ」

ハイ「え、えぇー!……そうだ、確かにそうですよ。え、私そう言いませんでしたっけ盗賊さん! それとも言い間違えちゃいました!?」

盗賊「ど、どうだったかなー」

参謀長「ま、多少順番が違えども、ここまでパンツの柄を言い当てたのだから十分と言えば十分なんですがね。誰だって他人のパンツローテーションの話なんて覚えていないでしょうし。普通なら」

ハイ「まるで私が変態みたいな言い草!」

207

--草原--

参謀長「ただなんとなく気になることがあったんで、何かあるんじゃないかと紙を眺めていたら……」

盗賊「……」

参謀長「頭の文字だけを注目したら、
 
か り か し な し な

と読めたんです」

ハイ「かりかしなしな……借り貸し……無しな?」

盗賊「……」

ぴひゅー、ぴひょー

盗賊は吹けない口笛を吹いている。

参謀長「……随分遠まわしかつ、微妙な効力の暗号ですよね。相手側が気づかないんじゃ意味が無いと思いますが?」

盗賊「う、うるさいな……! パンツローテーションだけじゃパンチ弱いかと思って、咄嗟に考えたやつなんだよ!」

ハイ「……パンツだけに、パンチ」

208

--草原--

ハイ「え、順番変えてまで言いたかったことって、それだけ?」

盗賊「……」

参謀長「……」

盗賊「姫様の秘密と俺が助けた兵士のこと、それとこっちの実力を見せたらなんとか話をいい方向にもっていけるかなーって思ったんだよ……」

ハイ「……回りくど……。やっぱり真正面から堂々とお話をしにいったほうがよかったんじゃないですか?」

盗賊「……。実際に見てみた感想としては活気があっていい国だったよ。統治してるやつもいいやつなんだろうと思ったし。でもハイちゃんは知らないのかもしんないけどさ……黄金王国は結構変な噂があったんだよ。例えばあの研究員を内緒で匿ってるとか」

参謀長「ぎく」



--黄金王国--

研究員「ぶぇっくしょーい!」

ウーノ「? 風邪ですか?」

209

--草原--

ハイ「あー……西の王国で騒ぎを起こして行方不明になった人ですか……確か国際指名手配されてましたよね。でもまさか黄金王国にいたりはしませんよ」

参謀長「そうですね」

盗賊「あともこもこを飼いならしてるとか」

参謀長「ぎくぎく」

ハイ「あの東の王国を壊滅寸前にまでおいやった未知のモンスターですか? まさかそんなことあるわけないですよ」



--草原--

もこじ「もきゅんっ」

姫「あれー? どしたの? 寒い?」

ぎゅっ

もこじ「寒くないもきゅ。むしろ暑いもきゅ。離して欲しいもきゅ」

210

--草原--

盗賊「というわけで俺も試したかったのさ。もし変な国だったらその時は……」

参謀長「……」

ハイ「……。でもそれを言うなら他の国に力を貸してもらいにいけばよかったのでは? 東の王国とか」

盗賊「うんにゃ、東の王国は駄目だ。王が頭硬すぎる。西の王国も駄目だ。秘書が問答無用で殺しに来る。王国も……新しい大臣のせいでなんだかんだで戦いになって長引いちゃうだろうな」

ハイ「……南の王国は? って、自分で聞いておいてなんですけど、北の王国まで遠過ぎますか」

盗賊「そゆこと。残るは魔法王国と黄金王国。この二つはどっちでもよかったんだけど、黄金王国の方が北の王国まで近かった、っていうのと力を割いてくれそうだった、ってのが選んだ理由かな」

参謀長「随分と正直に話してくれる人だ……で、結局うちは合格だったんですか?」

盗賊「さっきも言った通り、いい国だよ。試して悪かった。あんたも国民から好かれてていい人そうだし、研究員とかを匿うのもきっと何か理由があるんだろう」

ハイ「!? え、やっぱり匿ってたんですか?」

盗賊「なんとなくそんな気がする」

ハイ「なんとなくて」

わいわい

参謀長(……残念。少し私を勘違いしてますよ。世の中には作戦のために兵を犠牲にしても、悪く思われない指揮官というのもいるんです)

211

--草原、夜営--

パチパチ……

盗賊「ん」

ばしゅっ

盗賊「ふぅ~……」

ハイ「何をしてるんですか?」

水の入ったコップを持ったハイが盗賊に話しかける。

盗賊「いや、ちょっとね。あ、ありがとう」

盗賊は水を受け取る。

ハイ「共有、でしたっけ。それ」

盗賊「ぶっ!」

盗賊は口に含んだ水を噴出した。

ハイ「えっ!? 大丈夫ですか!?」

ぽたぽたっ

盗賊「……いや、俺これ見せたことないよね? やっぱり未来から来てるからばれてるんやなーって」

212

--草原、夜営--

パチパチ……

盗賊「勇者と情報を共有してたんだよね」

ハイ「!……そうか。技とかを引き継げるってことは、戦いの経験も引き継いでるはず……つまり記憶の一部も共有できるってことですね?」

盗賊「察しいいね。今回は俺らだけじゃ分が悪そうなんで呼んでおいたのさ」

ハイ「勇者さんが参戦……心強いです!」

盗賊「……今まで心細かった?」



パチパチ

姫「これこれーそこのものー」

ユー「?」

ユーは俺? とばかりに自分を指差す。

姫「そうそう貴方貴方ー! マントしか付けてないからかわいそうだなー、さむそうだなーって、ずっと思ってたんだよねー。姫ちゃん優しいから!」

213

--草原、夜営--

ユー「?」

姫「だからー。優しい姫ちゃんはー」

ぽぉう

姫の両手に魔力が集まっていく。

姫「いいものプレゼントしちゃうのだーーー!」

ばちいぃいいいいいん!!

ユー「っ……」

しゅううぅうううぅう……

突然の閃光。そして白煙。

ユー「……!?」

中から現れたのは、

姫「黄金属性生成魔法、黄金鎧!」

まるでどっかのゴールドセイントみたいなユーの姿がそこにあった。

214

--草原--

翌日。

ぺかー

ハイ「まぶしっ!」

盗賊「ど、どうしたんだいユー君! なんだか眩し過ぎて君のことが見れないんだけど!」

ユー「……」

ユーは嬉しそうににこにこしているのだが誰もそれに気づけない。

ぱか、ぱか

参謀長(魔力を帯びた黄金製の全身鎧……ち、今からそんなに魔力使ってて大丈夫なのか?)

姫「くー、すぴー」

もこいち「なんだか疲れて眠っちゃってるもきゅ」



ジュッ!

盗賊「ギャー!! 太陽光を虫眼鏡であれするみたいな感じで眼が焼けたー!!」

215

--北の王国--

盗賊「……」

ユー「……」

ハイ「……すんなり、入れましたね」

盗賊「そりゃあ、いきなりとはいえちゃんとした国家元首が来てるんだ。追い返すなんてことはできないだろうさ」

がちゃ、ぎぃ

北の王「あんらぁ、お久しぶりでんなぁ姫様~。相変わらずおうつくしゅー!」

にこにこと笑いながら部屋に入ってきた北の王。

ざっ

参謀長はすぐに立ち上がり頭を下げる。

参謀長「お久しぶりです北の王様。このような急な訪問で、本当に申し訳ありません」

北の王「いやいやあんさんのことや、何か深い理由があるんやろ~? 聞きましょ。どうかしたんでっか?」

どすんと音を立てて北の王は玉座に座る。

参謀長「はい。実は……」

216

--北の王国--

北の王「――なんですって? 魔王軍が五日後に攻めてくるから、それまでにこの国から全ての国民を脱出させろ、と?」

参謀長「はい」

北の王「それはまたえらいこっちゃ……いや、疑うわけではないんやけども、それは一体どこの誰が言うてはるんでっか?」

すっ

参謀長はハイに手を向ける。

参謀長「彼女です。彼女は未来からやってきたそうです」

北の王「み、未来から!? それはほんまでっか?」

ハイ「は、はい」

北の王「……」

ハイ「……」

北の王「……ぶ」

ハイ「ぶ?」

北の王「ぶわっはっはっはっはっ!!」

北の王は腹を抱えて笑い出した。

217

--北の王国--

北の王「ひー、ひー……いやぁえろうすんません。でもあまりに突拍子が無くってですなぁ……」

参謀長「北の王様。ですが時に関する魔法があるのは貴方もご存知のはずです。時間転移魔法があったとしても」

北の王「おかしくはない。でも私は見たもんしか信じられんのですわ……。なんなら今ここでそれ見せてくれはりまっか?」

ハイ「い、いえ。あれは私一人でやったものではないので……」

北の王「……となると……どうやらその話、信じられそうにないですわ」

ハイ「え、えぇ!? そんな……」

参謀長「……では、信じて貰うにはどうしたらいいでしょうか?」

北の王「……準備があるんでっか? そんな与太話を『信じてもいい』と、私が私を騙せるほどの何かを……」

北の王の顔つきが商売人の顔になる。

参謀長「はい――。姫様」

姫「おっけーい!」

ぴょーん!

姫は立ち上がって窓を勢いよくあけた。

218

--北の王国--

ばんっ!
びゅおおおぉおお!!

姫「う、うひいー! さぶうー!!」

北の王「な、何をやるのかわかりまへんが、寒いんで早く頼んます! このままじゃ凍え死んでまう!!」

姫「よぉーし! 黄金属性変換魔法、レベル4!!」

ビイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイム!!!!

ハイ「!?」

ばちばちばちばちばちぃいいいい!! ぴかーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!

ハイ「……なっ」

盗賊「ほぉー……」

参謀長「……これはとりあえずお気持ち、ということで」

ぴか、ぴか、ぴか

北の王「……なんてぇ、こった……」

姫「えへへ! すごいっしょ! はぶしっ!」

姫の放った魔法は、山一つを丸々黄金に変えた。

219

--北の王国--

参謀長(あまり他国に黄金を持たれたくは無かった。が、これも仕方あるまい)「いかがでしょう。少しは話を信じたくなってもらえましたか? この国を一時的に放棄してくださるのであれば、更に好きなものを黄金に変えさせていただきます」

北の王「ひゃ、ひゃー! すんごい魔法でんなぁ! 錬金術とはまさにこうあるべき!! すんばらしぃ!!」

北の王は飛び跳ねて喜んでいる。

参謀長(ふりだろ)

北の王「……いやでもいくら黄金を積まれてもねぇ……国民には国民の生活があるんですわ。慣れ親しんだ我が家を放棄するのは簡単じゃおまへん」

盗賊(この感じ、信じたな。いや、信じて無くても話に乗る気になった。後は……)

参謀長「――それはわかっております。国民の生活は我々が責任を持ってサポートするつもりです。衣食住、不自由させる気はありません」

北の王「そうはいってもねぇ……」

盗賊「……」

かつ、かつ

盗賊「はい、これどうーぞ」

北の王に近づいた盗賊は一枚の紙を渡す。

北の王「だれでっかあんた……けったいな格好やなほんま。なんでっかこれ……ん? 護皇!?」

盗賊「もしこの国に魔王軍が攻めてこなかったなら、失われた王国の半分をあんた達にあげるよ。って書いてありますよん」

北の王「!」

220

--北の王国--

盗賊「そこは寒くないし山も少ないから人が住める場所が多いのよ。北の王国の人たちが楽に全員住めるんじゃないかな」

北の王「……ほんものの護皇はんのサインでんな……。あんさんは誰でっか?」

盗賊「……盗賊だ。元勇者パーティの一人のね」

北の王「!!」

参謀長「!」

ハイ(あれ! 言っちゃうの!?)

しゅるり

盗賊は包帯を少しだけ解く。

北の王「その顔……あの時魔族を連れて逃げ出した勇者の男に似てまんな……本物でっか」

盗賊「ろんのもち」

北の王「……国際指名手配犯でっせ?」

盗賊「知ってるよ」

北の王「……参謀長はん。あんさんはなんてもんと手を組んでるんでっか?」

参謀長「……」

ハイ「はわ、はわわわ!」

盗賊「はぁ……あーもう、めんどくさいなぁ」

北の王「……なんですって?」

盗賊は頭をかきながらめんどくさそうに言い放つ。

盗賊「お前らが死んだら俺達人類の勝ち目が薄くなるんだよ。つべこべ言わないでさっさとここから非難しなさい」

オリョールは出撃だけどね!



それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。投下にきました。

はい、ユーの奴ではつい金、って書いちゃいましたけど、黄金属性は欠陥属性です。
毒、黄金、霧、臭、時で欠陥属性は全種類ですかね(多分)。

欠陥属性は遺伝されなくなり、淘汰されていった属性です。一般的に雑魚扱いですが、中には強力すぎるがゆえに使い手が少なくなったものもあります。


それでは投下していきます。

221

--北の王国--

ざわ

召喚士「ぶ、無礼なやつでやんすね! なんなんでやんすか!」←実はいた。

北の王「……」

盗賊「……」

ハイ(い、一国の王に対してその言葉使いはあまりにも……!)

ユー「……」

重い沈黙が流れ、そして

北の王「……はぁ。ええでしょ」

ハイ「!?」

北の王「あんさん方の要求、いや……アドバイス受けさせてもらいまひょ」

222

--北の王国--

召喚士「王……この話を信じるのでやんすか?」

北の王「はいな。……どうやら損得を気にしている場合じゃないようなんで」

北の王はにこりと笑って立ち上がる。

すっ

北の王「そうと決まれば早いほうがいいでんな? 民間人を輸送する手段はどう考えてますのん?」

ハイ「あ、はい! それには私の勤め先にある大きめの船や砂上船で行いたいと思ってます。配達、運輸ならあそこが適任です」

参謀長「そしてそれの警備は我々がやります」

北の王「ふむふむ。わかりました。それではその旨を国民に伝えなければあかんのでごめんやっしゃ」

北の王はおじぎをして部屋から出て行く。

ぎぃ

召喚士「……」

それに追随する召喚士。

223

--北の王国--

ばたん

参謀長「……」

ユー「……」

盗賊「……ふひぃー。どうにか説得出来たみたいやね!」

びしっ!b

ユー「……」

びしっ!b

ハイ「いや、びしっ! じゃないですよ……あれ、怒らせて全部ダメになるパターンじゃないですか。成功したからよかったですけど」

参謀長「ですね。確かに少し考えなしでしたね盗賊さん」

盗賊「う……ごめんなさい」

参謀長「――でもそこがよかったのかもしれません」

ハイ「へ?」

224

--北の王国--

カッ、カッ、カッ、カッ

召喚士「我が王……何か考えがあってのことなんでやんすよね? あんな与太話、今時子供でも信じないでやんすよ」

北の王「いやぁ、多分あれ本当のことでっせ」

召喚士「やんす!?」

北の王「少なくとも彼らはそれを本当のことだと思っているんですわ。私のスキル、嘘発見にひっかからへんでしたから」

召喚士「それは……極度の妄想癖という可能性はないでやんすか?」

北の王「ありえます」

召喚士「だったら!」

北の王「でも違うでしょきっと。私のカンがそう言ってるんですわ」

召喚士「!……王のカンは当たるでやんすからねぇ……」

225

--北の王国--

カッ、カッ、カッ、カッ

北の王「――彼らを信じようと思った理由は、彼らが失うものがあまりにでか過ぎるゆうこってす」

召喚士「……」

北の王「普通あそこまでしますか? 未来から来たなんていう、よくわからん情報のために。けど五柱の護皇はんらも含め、結構な大物がそれに賛同しとる……それはあの情報がある程度は真実味があるいうことでんな」

召喚士「……みんな裏で手を組んでるって可能性は無いでやんすか?」

北の王「裏ねぇ……。でもあれだけの条件に匹敵するものが我が国にあるとは思えないんですわ」

召喚士「……」

北の王「極めつけはあの男の言う台詞でんな。私らが死んだら勝ち目が無くなる……。つまり彼らもただ人助けがしたいわけやないんや。戦力である私らに死なれたら困る……つーことは、やっぱりこれは人類の存亡をかけた、ほんまもんの事件なんや、と……」

もちろん嘘発見使って聞いてたからこれも本心のはずやで、と北の王。

召喚士「……正直おいらはまだ納得できないでやんす。でも……おいら達はあんたについていくだけでやんすから」

北の王「……おおきに」

226

--北の王国--

次の日。

がたごとがたごと

大カバ亜人「はぁああいいいいいい!! よくやったぞ!! いきなり出て行った時はクビにしてやろうかと思ったものだが……ハイ、今回の件はお手柄だみゃあ!!」

バンバン

ハイ「あ、いえ。ははは……痛いです」

がたごとがたごと

大カバ亜人「ほら貴様らはとっとと仕事しろ仕事!!……いやぁ、ボーナスは弾むぞハイ。これでわしも大事なコレクションを切り売りしなくてよくなるというもの……あ、でも一度出品したものは取り下げられない決まりみゃあ……まぁ、自分で買い直せばいいかみゃ。アピールにもなるだろうし……くふふ」

ハイ「……」

227

--北の王国--

北の王「進んではりまっか?」

ハイ「北の王様」

大カバ亜人「あぁ、北の王様、このたびは我が社を利用していただきありがとうございますみゃぁ!」

北の王「あぁはいはい。うちが仕事頼んだわけやないで? あんたんとこを雇ったのは黄金王国やさかい」

大カバ亜人「いえ、それでも挨拶はしておかみゃあいけないと思いまして!」

北の王「ま。挨拶は大事やね。じゃあもうわかったからちょっと席を外してくれまへんか? ちょっとハイちゃんとお話したいんで」

大カバ亜人「ハイと……? わ、わかりました。では私はここで」

頭を下げて去っていく大カバ亜人。

ハイ「私に話、ですか?」

北の王「せや~」

228

--北の王国--

北の王「未来から来たって言ってはりましたな?」

ハイ「は、はい。信じて貰えるかわかりませんが……」

召喚士「……」

北の王「私らの最後、知ってたりします?」

ハイ「……はい。北の王国から逃れてきた難民の話を、噂で聞いただけですけれど」

召喚士「最後って……おいら達が死ぬってことでやんすか? ははは、そんなまさかぁ!」

ハイ「えと、国民の大半を逃がすために、半日ほど魔王を足止めしていたそうですよ。お二人で。確か金ぴかに光る人を召喚したとかで」

召喚士「!!」

北の王「金ぴか? 召喚と言えば召喚士のことやろうけど、そんな召喚獣持ってたっけ?」

召喚士「いないでやんす……けど」(おいらの奥義なら、多分出てくるのは……)

229

--北の王国--

北の王「――でも少し安心しましたわ」

ハイ「へ?」

北の王「魔王に襲撃を受けた世界の私らが、国民を守るためにそこまでやれたんやな、って」

召喚士「……」

ハイ「北の王様……」

北の王「でももし今そんなことが起きたら一目散に尻尾巻いて逃げ出してしまいますわー! おーこわ!!」

自分の肩を抱いてガタガタと震える北の王。

ハイ「……」

230

--  --

そして……






その日が訪れる。

231

--北の王国、城壁--

チチッ、チチチッ

北の老兵「ふぁあ……えぇ、天気じゃ」

老兵は見張りもろくにせずに、城壁に腰をかけて空を眺めていた。

ガチャガチャ

北の新兵「む」

北の老兵「はぁ……心休まるのぉ」

北の新兵「おいじいさん! あんた仕事しないで何やってんだ!」

北の老兵「んん……またうるさいのが来おったか」

北の新兵「うるさいじゃねーよ! 俺らの仕事は見張りだっていうのに何サボってんだよ!」

北の老兵「別にサボってるわけじゃないわい。仕事はしとる。敵の気配はせん」

北の新兵「けっ! 何が気配だよ! 勇者討伐戦争を生き抜いたかなんだか知らないけどよ、仕事はきちっとこなしてくれよっ!」

ったく、と呟いて北の新兵はその場から去っていった。

232

--北の王国、城壁--

北の老兵「……まったく。老骨のいたわり方を知らんやつだ……」

老兵は、一年中雪が積もっている北の大地に目をやった。

北の老兵「この国も大きくなったものよの……」

老兵は、北の王国の建国の日を思い出す。

ず……

北の老兵「ん……? 影?」

北の大地を巨大な影が覆っていく。

北の老兵「これほどの影を作るほどに、大きな雲があったかいの」

老兵は空に視線を戻した。

ずず……

北の老兵「!……なんじゃあれは……」

233

--北の王国、城壁--

ずずず……

北の老兵「鳥、いや……モンスターか……?」

ずずずず……

北の老兵「!? ち、違う!! あれは城なのか!? まさか!!」

老兵が目を凝らすと、空飛ぶ城の周りをモンスターの群れが飛んでいた。

北の老兵「!!」

老兵は立ち上がり、撞木を手に取ると力一杯鐘を鳴らした。

ガーン!!!!

北の老兵「敵襲だーー!! 『本当に』魔王軍が来たぞーー!!」

ガーン!!
ガーン!!
ガーン!!

234

--北の王国--

ガーン!!
ガーン!!
ガーン!!

盗賊「さー……本当に来ちゃったね」

ハイ「はい!」

参謀長「……うーん」

北の王「ひゃー、驚いた……これでも結構信じていたつもりだったんやけども、本当に起きると驚き&ショックでんなぁ……」

ハイ「でも大丈夫ですよ。今回は私達もいます。同じ結果にはさせません!!」

北の王「……ハイちゃん」

盗賊「んだな。時間稼ぎしなきゃならん民間人はいないし、いざとなったら逃げればいい。……ってあいつ遅いな……何やってんだろ」

235

--北の王国、上空--

ごぅんごぅんごぅん

カトブレパス「……おかしいですね」

フランケン「ど、どうした。な、なにがおかしい?」

カトブレパス「いえね、なんというか北の王国全体に人の気配が無い気がするんですよ。煙もあがっていない……生活感が感じられない」

ニンフ「薪が無いんですよきっと~でも寒いからひきこもってるんです~」

ウェンディゴ「……どう思う魔王勇者。なんか罠の臭いがするぜ?」

魔王勇者「……関係無いわ」

ザン!

魔王勇者は大剣を床に突き立てる。

魔王勇者「――人間を全て抹殺することに変わり無しよ。罠だろうがなんだろうが、全て壊すのみ」

カトブレパス「……魔王勇者さん……」

ウェンディゴ「魔王勇者……後で一緒に床直そうな」

魔王勇者「……うん」

236

--北の王国、東地区--

ズンッ!!

フランケンが魔王城から落下し、地面に激突する。

しゅううぅう

フランケン「あ、あで?」

しかし誰もいないのでフランケンは頭をひねった。



--北の王国、西地区--

カトブレパス「やはり……誰もいない……まさか我々の襲撃を予測したというのですか?」



--北の王国、南地区--

ニンフ「ぶっ殺す人間どもがいないです~超つまんないです~~~~~!」

237

--北の王国--

研究員「攻撃、開始ー」

びかっ!!


どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんん!!


--北の王国、上空--

ウェンディゴ「おわああああああああ!?」

魔王勇者「くっ!」

ウェンディゴ「なんだ? 砲台か!?」



しゅごおーーー

魔王城の外には完全武装した機械兵士三姉妹が飛んでいる。

ウーノ「くすくす。久しぶりの戦闘、楽しみですわ」

ドゥーエ「えへへ、おもいっきりやっちゃうぞーー!!」

トーレ「砲雷撃戦、よーい」

ビービービー!!

三姉妹の高火力レーザーが容赦なく魔王城を攻撃する。

どがあああああああああああああああああああああああん!!

238

--北の王国--

北の王「……すさまじい戦闘力でんなぁ、おたくのとこの兵士さんはぁ……」

参謀長「恐縮です」

姫「えへへー! 姫ちゃんえらい? えらい?」

召喚士「さて……モンスター達の駆除いくでやんすよ!」

ユー「……」

こくりと頷くユー。



--北の王国、上空--

どがぁああん!!

がたがたがたがた!!

ウェンディゴ「ち! このままじゃ落とされる!」

ダダンッ!!

ウェンディゴは魔王城の窓から外に出て、手すりも何もない外壁を走る。

ウーノ「! 標的B出現。排除開始しますわ」

ドゥーエ「おっけぃ! ドゥーエ援護するよ!」

トーレ「私は雑魚どもを蹴散らしておきます」

239

--北の王国、上空--

ビー、ビー!!

ウェンディゴ「やっかいな火力だな……古代の力か。空間設置魔法罠、ミスタイプ!」

ヴン!

ウーノ「?」

フォンフォン!!

ウーノ「! この距離で私達の攻撃が外れる? なるほど、確率変動系の魔法ですわね? それなら、アンチマジックフィールド展開」

ぐにゃり

ウェンディゴ「!? 罠が解除された!?」

どぉおおおおおおんん!!

魔法罠を解除されたウェンディゴは、次に放たれたレーザーをもろに受けてしまう。

ウェンディゴ「がっ!! くそ……」

240

--北の王国--

どぉおおおん……

盗賊「すげー……あれが別ルートの魔族になった俺かー。自分一人の魔力で空間設置魔法罠使えてるよー」

ハイ「でもそれにさらりと対応しちゃいましたね、あの機械兵士さん」

空中戦を眺めている二人。

どぉん、ちゅどおぉおん、ががががががが!!

そして一方的に攻められている魔王城。

ハイ「っと、盗賊さん。私達もモンスターや、地上に落ちてきた魔族を倒しにいかないと!」

ユニコーン「ひひん!」

盗賊「あぁ。しかしこりゃ勇者いらないかもな……はっ!? てかあいつ遅いよ! 何やってんだよ!」



--西の王国--

勇者「……あれ? 西って言ってなかったっけ?」

追いついた方々、お疲れ様でした。追いついた報告は結構嬉しかったりします。
てか二日でアイ募を読むとかすごい……。


それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

いつも遅くなってしまうのでたまには早く!

こんばんは。

続きを投下していきますね。

241

--北の王国--

ひゅおおおぉぉお

ドゥーエ「えいっ! アンチスキルフィールドだぁ!」

びゅわっ!

ドゥーエがフィールドを展開し、ウーノのフィールドに重ねがける。

しゅぅ……

ウェンディゴ「っ! スキルまで!」

ウェンディゴは透視眼が効力を失ったことに気付き、すぐさま目視と反射神経による回避に切り替えた。

シャシャシャ、ドォン!ドドォン!!

ウェンディゴ「まずい……らちがあかないぞ……! エネルギー切れを期待するしかないか?」

242

--北の王国--

ドォン! ドゴォン!

魔王勇者「くっ、何をやってるウェンディゴ! もう私が直接やるぞ! いいな!」

ガッ!

ウェンディゴ「来るな!」

魔王勇者「っ!」

窓に足をかけたところで魔王勇者の動きが止まる。

ウェンディゴ「……襲撃が読まれてたり、こいつらといい、わけわかんねぇことだらけだ。この分だとこいつらまだ何か隠してるに違いない……だから安全が確保されるまでもうちょい中で待ってて下さい」

魔王勇者「っ、私にこのまま黙って見ていろって言うの?」

ウェンディゴ「違う、信じて待ってろって言ってんの」

魔王勇者「」

魔王勇者の頬が僅かに紅潮した。

243

--北の王国--

ドォン! ドォン!

ウェンディゴ(とは言ったもののどうやって打開するかなぁ……このままじゃ尻尾巻いて退散するしかないぜ)

ウーノ「っ! ちょこまかと!」

ビービー!
シャシャ!

ウェンディゴは回避しながら何気なく地上に眼をやった。

ワーワー

そこではモンスター相手に奮闘する人間達の姿があった。

ウェンディゴ(……ん? おかしくねぇか? 魔法とスキル封じられてんのにモンスターと戦えるわけねぇだろ……)

ぴくっ

ウェンディゴ(あぁ……なるほど、効果範囲ね)

ウェンディゴはにやりと笑う。

244

--北の王国--

ビービー!
シャシャ!

ウェンディゴ(よくよく考えてみりゃこの魔王城だって動力は魔力エンジン。魔力を封じてるんなら効果範囲にいるこの魔王城だっておっこちてるはず)

シャッ

ウェンディゴ(ってことはコアに届かない程度の効果範囲……それか魔王城、つまり非生物には効き目が無い……もしくはその両方ってことだな?)

シュタッ!

ウェンディゴは魔王城の外壁を走る。

ウェンディゴ「魔王勇者! 魔王城の右腕を伸ばしてくれ!」

魔王勇者「! わかった!」

ゴゴゴ

ドゥーエ「はれ? お姉ちゃん、なんかあれ動いてない?」

245

--北の王国--

ウーノ「まさか……」

ゴゴゴゴゴゴ

ウーノ「この城、動くの?」

ブォオオオオオオオオオオン!

魔王城の畳まれていた右腕が動き始め、ウーノ達を襲った。

ウーノ「く!」

シュゴー!

しかし空を駆けるウーノ達には当たらない。

シュタタタタタ、シュタッ!

ウーノ「!?」

ドゥーエ「!!」

だがそこにウェンディゴが追撃を加える。

ウェンディゴ「へっ!」

246

--北の王国--

ウーノ「! こいつ伸ばした腕の上を走って!?」

ウェンディゴ「おぅりゃ!」

ザギィン!

ウーノ「っ! きゃあぁあ!!」

ウェンディゴの爪がウーノを切り裂くも、

びりびり

ウェンディゴ(かってぇ……全然ダメージ与えられんぞ)

ほぼノーダメージ。

ドゥーエ「! よくもお姉ちゃんを!」

ウェンディゴ「……」

きゅいぃん

空中でウェンディゴはドゥーエにロックされる。

247

--北の王国--

ビー!
シャッ!

ウェンディゴの胸部に放たれたレーザー、それをウェンディゴは銃口の角度から射線を見極め、身を捩って回避した。

ドゥーエ「うそっ!?」

ウェンディゴの避けたレーザー。その斜線上には……

ドジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

トーレ「!? づっ!!」

どごおおぉおおおおおおぉおおおん!!

……トーレがいた。

トーレ「な、ぜ?」

レーザーは、空からモンスターを排除していたトーレの背部に命中し、貫通した。

ドゥーエ「と、トーレちゃん!」

248

--北の王国--

ひゅるるるるるるるるるる!!

研究員「……まっずいねー。うちの三姉妹は対機械兵士用の装備じゃ無いんだよねー。だから同士討ちを狙われると……」



デガシャァ!

トーレ「ぐ……ぐ」

ばちっばちばちぃ!

地上に落下したトーレは立ち上がろうともがいているが、あまりにダメージは大きい。

トーレ「何が、おきた?」



すたっ

ウェンディゴは魔王城の右腕に着地して機械兵士達を観察している。

ウェンディゴ(魔力もスキルもダメなら同士討ちを狙うしかない……まぁこんなうまくいくなんて思わなかったけどね)

249

--北の王国--

ドゥーエ「トーレちゃんごめんなさい! あの、あの!」

ウーノ「ドゥーエちゃん! それよりも今はこっちに集中なさい!」

ドゥーエ「っ!」

ウェンディゴ(さぁてと。もう次は同士討ちを警戒してあまり近づいてこれないだろうな。あんたらの味方は地上にもいるんだし)

シャッ!

ウェンディゴは魔王城の外壁を走る。

シュバババババ!!

ウーノ「……!」

また飛び掛ってくるかと考えていたウーノ達だったが、ウェンディゴは逆に離れていった。

ウェンディゴ(アンチフィールドの範囲はあまり広くないんだろ?……なら追いかけてくるしかないだろ?)

250

--北の王国--

ウーノ「……!」(今度はフレンドリーファイアはさせないようにもっと慎重に狙い撃てばいいだけ……でもそれをあいつにかき回されてしまう気がする……どうする……)

命を持たぬ、機械兵士のカン。

ドゥーエ「お姉ちゃん! 追う必要はないよ! このまま魔王城そのものを破壊しちゃえばいいんだから! そうすれば万事解決でしょ!?」

ウーノ「! そうね……」

だけどウェンディゴが完全に視界から消えるのはまずい、と、ウーノはそう感じていた。

ヒュイイイイン!

しかし他に良策もなく、ウーノはドゥーエ同様、銃を構えた。

251

--北の王国--

ざっ

ニンフ「お?」

ハイ「あら?」

ほぼ同時刻。ニンフとハイが戦場で出会う。

ニンフ「やっとおもちゃはっけーん~!!」

ダッッ!!

ハイ「魔族! しまっ」

襲撃に備えて構えようとするハイ。

ボッ!!

だが、

バッキャッ!!

ハイ「ッッ!」

レベル2状態のハイでは魔族のスピードについていけず、ニンフの蹴りがハイの頭部を粉砕した。

ビシャシャーーー!!

252

--北の王国--

ハイ「」

ドサッ
びくっ、びくくっ

ニンフ「……うわ、手応え無さすぎですね~……」

ドクドクドクドク……

血を吹き出すハイの死体を、まるでゴミのように見るニンフ。
ハイは一切の抵抗も、レベルアップする間もなく、瞬殺されてしまったのだ……。

ぴくっ

ニンフ「ん……あ~やっと見つけました~。他のやつらはあの塔にいるみたいですね~」

邪悪な笑みを浮かべるニンフ。その目線の先には、参謀長や姫達がいる塔があった。

253

--北の王国--

ざり

盗賊「お?」

フランケン「お、おで?」

ほぼ同時刻、東の町にて盗賊とフランケンがあいまみえる。

盗賊「これは……魔族化した闘士……か!?」

フランケン「ふ、ふ、ふぅうううううううううううううう!!」

盗賊は変わり果てたかつての友を、複雑な表情で見ていた。

フランケン「と、盗賊うぅうう!!」

ズシン!

フランケンが盗賊のケツに狙いを定め、襲い掛かってきた。

盗賊「もう一度……俺が殺すしかないってか……?」

254

--北の王国--

バシューバシュー!!
ドガァアァン!!

ウーノとドゥーエによる一斉射撃で、魔王城は燃え上がる。
この分ならものの数分で魔王城は粉砕されるだろう。

ウェンディゴ「ぐぅ……そう来たか……まぁそう来るか。でも、それでいいのか?」

ぶぅん

ある距離までくると、ウェンディゴに魔力が戻った。

ウェンディゴ「うしっ。魔王城はでかいからな。端まで行けば何とかなると思ったけど、何とかなったぜー?」

ウェンディゴはしゃがみ込んで魔王城に手をあてる。

ウェンディゴ「空間設置魔法罠、ミラータイプ」

きぃん!

ウェンディゴは、
魔王城自体を罠に変えた。

255

--北の王国--

キキキキキンン!!

ウーノ「っ」

ドギャギャギャギャギャアアアアン!!!!

ドゥーエ「う、そ」

ウーノ達が放ったレーザーは、

フォン、フォフォン!! ドガァアアアアアアン!!

ウーノ「――、――っ!」

全て跳ね返されて、北の王国を無差別に襲った。

ドガドガドガドガドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ばち、ばちばち

ウーノ「ぐ……やはり……目を離すべkでは、無かったa……」

ドゥーエ「おねえ、cch」

ひゅるるるるるる

自らのレーザーで貫かれたウーノとドゥーエは地上に落下する。

256

--北の王国--

ウェンディゴ「あー……いんやぁ、強いやつらだった……もうだめかと思ったよ……まじで」

ウェンディゴは深いため息とともにへたり込む。



魔王勇者「ジャイアントキリング……魔族化しても健在か」

魔王城内部で魔王勇者はウェンディゴの勝利を感じ取った。

ウェンディゴ「魔王勇者ー掃除は終わったぞー。ここはもうアレをやっちまうしかないんじゃねーかー?」

外から聞こえてくるウェンディゴの声。

魔王勇者「アレ?」

ウェンディゴ「この魔王城の真の力を見せてやるのさー」

魔王勇者「……それはまだ私に外に出るな、ってことなのね?」

魔王城の動力は魔王勇者自信。まだ魔王城を使うということはつまりはそういうこと。

ウェンディゴ「ち、違うよー」

魔王勇者「……はぁ、わかったわ」

ジャッ!!

魔王勇者の座る椅子から赤い線が延びていく。

魔王勇者「たまにはこういう戦い方も悪くないもの」

257

--北の王国--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

参謀長「ん? 何か動きがおかしいな……」

魔王城の動きを観察していた参謀長が呟く。

姫「何? 何がおかしいの? 姫ちゃんの可愛さがおかしいくらい可愛いの?」

参謀長「うるさいあほ」

姫「バカってゆった!?」

北の王「やれやれ。しかし手が生えましたもんなぁ。このままいくと……人型になっちゃったりして~」

研究員「!!……さ、さすがにそんなロマン溢れることにはー……」

参謀長「で、ですよね……」

研究員と参謀長はわくわくしながら魔王城を眺めている。

258

--北の王国--

ニンフ「あらお外ばかり見てていいのかしら~?」

ざっ

参謀長「!?」

北の王「!! 魔族!? しまった!!」

外に注意が向いていたのはほんのわずか。だがその魔族はそのわずかな時間でこの塔の最上階にまでやってきていた。

ニンフ「見張りがよっわいよっわいで~ニンフさんは退屈なのです~。だからぁ~」

ひゅっ、ごとっ

姫「!?」

ニンフは見張りの兵の首を投げ捨てる。

ニンフ「貴方たちは私を楽しませちゃってね~?」

どがぁぁ!!

ユー「……」

がらがら……

その時、城壁を破壊してユーが現れた。

参謀長「! ユーさん……!」

259

--北の王国--

研究員「助けがきたー。でも単騎ですかー……」

ニンフ「あらあら~。随分元気がありあまってそうな子はっけ~~ん」

ニンフはくるりと回ると、まるでダンスを踊るようにしてユーに近づいていく。

ユー「……」

ニンフ「くすくす。あんな登場シーン、かっこいいですね~。じゃーあ~。かっこつけて入ってきたご褒美で~、最初に殺してあげますね?」

ドンッッッッッッ!!

ニンフは全身から強烈な魔力を放ち、それを身に纏うと跳躍した。

北の王「! な、なんちゅう魔力量や!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

魔力の流れが渦になり、その全てが圧縮されてニンフの右足を中心として回る。

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

参謀長(! この集約された魔力! これは魔導長の星光破砕砲以上の破壊力になるぞ!!)

参謀長「ばかな! 魔族はこんなものを連発できるのか!?」

フッ

ニンフ「奥義、スーパ~タイフーンドリルキィイイイイック!!」

ギュリリリリリリリリリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!

まるで部屋の中に竜巻が出来たかと思うほどの暴風が吹き荒れ、余波だけでその階層をぶっ飛ばした。

どっごおおおおおおおおおおおおおおおーーーん!!

ぎし

ニンフ「」

しかしユーは右手で持ったレイピアでそれを受け止めて、

すぱっ

左手に持ったレイピアでニンフの足を切断する。

ニンフ「!?!?」

260

--北の王国--

ニンフ「ばっ!!」

ざく

……そして二つのレイピアでニンフの心臓を貫いた。

ニンフ「」

北の王「」

研究員「」

姫「」

参謀長「」

ユー「……」

ぶっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

まさかの一瞬の攻防……ニンフは、

ニンフ「がばっ!? そ、そんな……この私が、こんなあっさりと!!!??? う、嘘よっ!! うs」

ニンフは、

ユー「……」

ザァアアアァ……

砂となって消えた。

北の王「……」

研究員「……」

姫「……」

参謀長「……え?」

パーティーは5人で始めてパーティーとなります。ゆえに5人揃っていない状況だとハイちゃんは……。


それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました!
今となっては連続はきついですね、すいません。

はい、ツインテ達はそんな感じで過ごしてます。あのオークションの前ですからね。

それでは投下していきます。

261

--北の王国--

ザァアアァ……

ユー「……」

ピッ

レイピアについた血をはらうとそれも砂となって消える。

北の王「魔族を……」

参謀長「瞬殺……?」

ユー「……」

ブンブン

安全が確保されたことを確認したユーは、みんなに手を振ると、入ってきた穴の中に戻っていった。

262

--北の王国--

ワーワー

召喚士「やんすぅ……」

カトブレパス「ふ、たった一人で魔族である私と渡り合うなんて……さすが年期が違いますね、召喚士さん」

カトブレパスの魔眼に注意を払い、物陰に隠れている召喚士。

召喚士(何言ってるでやんすか……。渡り合うとかジョークが過ぎるでやんすよ)

どくどくどく

右肩の出血が止まらない。恐らく召喚士が受けたのは回復不能攻撃……。

263

--北の王国--

ざり

カトブレパス(しかし厄介ですね召喚の職業は。局面に応じて有利な召喚獣で戦うことができる……その万能性たるや、他の職業の比じゃないですね)

ぐぉん

召喚士(魔力が動いた! 来るでやんすか!)

カトブレパス(――けど、あくまで本体はただの一般人なんですよね)「行きますよ、範囲攻撃魔法、魔眼光殺法!」

バババババババーーーー!!

カトブレパスの魔眼が光り、周囲一体を無差別に攻撃し始める。

召喚士「今でやんすっ! 召喚、来るでやんすよ! コカトリス!」

ドン!

召喚士「コカァー!!」

バサッ!

魔方陣から飛び出したコカトリスは同じように魔眼の呪いを放った。

バシィー!!

264

--北の王国--

バババババババ!

カトブレパス「! なるほど面白い! 文字通り眼には眼を、ってわけですか!!」

バチバチバチバチ!

呪い同士のぶつかり合い。コカトリスの魔眼がカトブレパスの呪いを食い止めている。

カトブレパス「でも」

バリ……

コカトリス「コカァ!?」

石化耐性を持つコカトリスが、手足の先から石になっていく。

ぱきぱきぱき

カトブレパス「甘いですね……残念ながら魔族とモンスターでは全てにおいて格が違うんですよ……そぉら!」

バリバリバリー!

カトブレパスが魔眼の力を強めると拮抗は一瞬で崩れ、

コカトリス「コ、コカァー!!」

ビシィ!

コカトリスは完全な石像となってしまった。

265

--北の王国--

召喚士「……」

ぱきっ

カトブレパス「……召喚士ともあろう方があまりにぬるい手を……。これも老いのせいなのですかね」

カトブレパスはゆっくりと近づいていく。

カトブレパス「でもまぁ中々楽しむことができました。チェックメイトです」

ざっ

召喚士「まだでやんす! 召喚、移しカエル!」

ぼふん!

カトブレパス「この場に及んでまだ召喚? 移しカエル……?」

移しカエル「げこげこー!」

ぴょこん

体長30cmほどのカエルが出現すると、それはコカトリスの周りを跳ね回る。

召喚士「移しカエル! コカトリスの石化ステータスを、そっくりそのままあいつに移し変えるでやんすよ!」

移しカエル「げこー!」

バシィー!

266

--北の王国--

移しカエルの体が光ったかと思うと……

カトブレパス「っ!? これは……」

ピシピシ……

最高レベルの石化耐性を持つカトブレパスが石化していく。

カトブレパス「私が、石化? そんなばかな……ありえない!?」

召喚士「ありえなくないでやんすよ。石化耐性持ちを無理やり石化させるほどの呪い……あんたそれをさっき放ったでやんしょ?」

カトブレパス「!!」

コカトリスの石化が徐々に解除され、代わりにカトブレパスの身体が石になっていく。

パキパキパキ!!

カトブレパス「――だからあえて先ほど、コカトリスを出したのですか……!?」

召喚士「ちっちっちっ。老いではなく熟成……伊達に年季入ってるわけじゃないのでやんす」

カトブレパス「う、うあああああああああああああああああ!!」

パキィイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

267

--北の王国--

カトブレパス「……」

召喚士「えへ、えへへへ……思い知ったでやんすかー。これが北の王国最強の隊長、召喚士様の実力なのでやんすー。あ、お姉さん方、サインは一列に並ぶのでやんすよー」

召喚士は白目をむきながら涎をたらしている。

カトブレパス「やれやれ。今頃どんな夢見てるんでしょうね。召喚士さんとまともに手合わせせずに終わってしまうなんて。味気ない」

カトブレパスは右の掌に魔力を集め、召喚士に向けて放った。

ぼしゃっ!!

召喚士「おぎゃっ」

召喚士の頭部がトマトのように破裂する。

カトブレパス「幻術……魔眼使いに対する対策が甘かったですね」

ざり

カトブレパス「!」

ユー「……」

そこにユーが現れる。

カトブレパス「もう一人……追加ですか」

268

--北の王国--

ざっ、ざっ

カトブレパス「? 真正面から堂々と……また随分と無用心ですね! 石化の魔眼!!」

びしぃっ!!

ユー「……!」

パキパキッ

カトブレパスの魔眼にやられ、足元から徐々に石化していくユー。

カトブレパス「自信がおありのようですが、石化しちゃえばどんな強者もこの有様です」

ぎぎぎ、ざっ

ユーは石化しながらも足を前に出す。

カトブレパス「!?」

ぼろっ

するとユーの外側を覆っていた石化が崩れていく。

カトブレパス「!?!?」

269

--北の王国--

ざっ、ぱきっ、ざっ、ざっ

カトブレパス「石化をものともせず歩くですって!? ……石化耐性持ちか……ならば更に威力をあげるまでです!」

ばしいいいいいいいいいい!!

ざっ

カトブレパス「!? バカな!!」

しかしユーの歩みを止めることは出来ない。

ざっざっ、ざざざざざ!!

ユーは走り出す。

カトブレパス「ならば幻術眼!」

ぴきーん!

ざざざざざ!!

それでもユーは止まらない。

カトブレパス「まさか……全耐性……!?」

270

--北の王国--

カトブレパス(めんどうですね、防御タイプか……それもかなりの高レベル……! 搦め手を得意とする僕じゃキツイですね)

ざざざざざ!! だんっ!!

ユーはレイピアを構えて飛び掛る。

カトブレパス「ならば僕の十八番で行きましょう」

ひゅぼっ

カトブレパスは両の掌に巨大な魔力球を作り上げた。

カトブレパス「魔力暴発レベル4」

ぼっ

ユー「」

どがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!

271

--北の王国--

オオォオオォオオ……

北の王国の五分の一を消し飛ばすほどの大爆発。その爆心地で動くものが……。

カトブレパス「はぁーっ、はぁーっ」

ずる、ずるるっ

決死の自爆技で体の大半を失ってしまったカトブレパスは、回復魔法と魔族特有の再生能力で体を修復中だった。

ズンッ

カトブレパス「――」

ユー「……」

その再生中の体をユーのレイピアが貫く。あれだけの爆発を零距離から受けたにも関わらず、ユーは無傷に近かった。

カトブレパス「かはっ!……ば、化物じみた防御力ですね……こんなの、ありです……か」

ざぁあ……

カトブレパスは砂と化した。

272

--北の王国--

盗賊「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

フランケン「ふ、ふんぬらばぁああああ!!」

どがぁあああああああああああああああん!!

フランケンのタックルをギリギリの所で交わした盗賊。

盗賊「あ、あぶねぇあぶねぇ! 動きは早くないけど、巻き込み範囲が広過ぎる!」

しゅたっ

盗賊は一旦距離を置こうと跳躍するのだが、

フランケン「す、スキル、ホモの眼光!」

ギンッ!!

盗賊「!」

すたっ

元いた場所に着地してしまう。

フランケン「こ、これでおでからは逃げられない……」

盗賊「ち……性別アンチスキル……!」

盗賊の菊がヒクヒクと動いている。

273

--北の王国--

どがぁあん! どががああぁああん!!

盗賊「っく! 当たり構わず暴れやがってもー!」(ち、煙で闘士がどこにいるのかわからん!)

ぴくっ

盗賊(? アンディ!?)

盗賊の菊門がわずかな風の乱れを感知した。

ふぉん、ドガァーーーーーッ!

フランケン「!? よ、避けた?」

盗賊「はん! お前の居場所は俺のアンディ(括約筋)が教えてくれるのさ!」

ザザザザザリィイイーーーンッ!!!!

盗賊のナイフによる乱れ斬り。

フランケン「……おで」

しかしフランケンの皮膚は硬い。

盗賊「ちぇ……こりゃ俺一人じゃ勝てないかも」

274

--北の王国--

ズドオオオオオン!!

フランケン「お、お前のケツを、ふわふわあなるにしてやる!」

ドガァアアアアン!!

盗賊「っく……!」

瓦礫ごと吹っ飛ばされてしまう盗賊。

ズザザー!

盗賊「硬くて強い……単純だけど、単純ゆえに強いな」

ズンッ、ズンッ

フランケン「お、おで!」

盗賊「やっぱり、お前は強いよ。闘士」

275

--北の王国--

盗賊(俺一人の魔力じゃ空間設置魔法罠は使えない……今できるのはこんくらいだけど)

シャシャシャ!

盗賊は一瞬で罠と魔法罠を設置する。

ズンッ!!

だがフランケンがあっさり踏み抜き、そして破壊してしまう。

盗賊(やっぱダメだ。罠は早いやつほど有効だ。でも闘士は遅いからな。遅くて硬いとか相性最悪だ)

ドガガァアアアンン!!

盗賊「やべっ!」

考え事をしていた盗賊はフランケンの攻撃にかすった。ほんの少し脇をかすっただけなのに、

ボキキィッ!

盗賊「っ!……ひゅっ……アバラもってかれた……!」

276

--北の王国--

ズンッ、ズンッ!

フランケン「ふしゅるるるる……」

ひと回りもふた回りもも大きなフランケン。
繰り出される一撃がまともに当たれば、大抵の人間は一瞬であの世行きだろう。

盗賊「……」

ズンッ!

フランケン「と、とうぞく。おまえ、ほんきじゃないな?」

盗賊「……いや、全開ばりばりだぜ。出し惜しみ無しでやんなきゃ魔族と戦えるかっての」

フランケン「いや、ちがう」

フランケンは盗賊を指差した。

フランケン「お、おまえは、まだなにかかくしてる……つかうきがないだけで」

盗賊「……」

盗賊は魔族になってしまったフランケンの眼を見つめる。

盗賊「……お前は昔から勘がいいやつだったよな」

フランケン「ほ、ほんきでたたかえ、とうぞく。お、おれはほんきのおまえとたたかいたい。せいかくにいえば、とうぞくがほんきでたたかってまけたところを、おでがほんきでほりたい。そうしたい」

盗賊「へ、変態だ……」

フランケン「へんたい? しんがいだな」

277

--北の王国--

盗賊「しかし参ったな……打つ手無しか。このままじゃ掘られちまうなぁ」

フランケン「……ほ、ほんきをだすきはないのか」

ズゥン

フランケンが湯気を発しながら一歩ずつ前へと進む。

盗賊「わりいな……俺は……俺だけの力でお前を倒したいんだ」

フランケン「……」

盗賊「お前を殺しちゃったのは俺なんだからさ。今更他のやつらの手を借りるのは引けるのよ」

フランケン「……」

ズゥン!

フランケン「……そ、そうか……残念だ」

フランケンは拳を引いて必殺の構えに移る。

278

--北の王国--

盗賊「つってもまだ手が無いわけじゃないぜ?」

ぼっ

フランケン「?」

盗賊は全身の魔力を高めていく。

盗賊「自己暗示魔法、勇者ライフ!」

ぼしゅん!!

フランケン「ゆ、勇者……ライフ?」

びゅおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

吹き荒れる風。その中心で盗賊は静かに目を瞑った。

 「……ばれ……れ」

フランケン「! こ、このこえは……ゆしゃさん……?」

風の中でかすかに聞こえる声。それは勇者のものだった。

 「がんばれ……がんばれ」

フランケン「!!」

フランケンは見た。
竜巻の中心で眼を瞑っている盗賊。そしてその前にチアの衣装に身を包んだ勇者が、

勇者「がんばれ♥がんばれ♥」

と言って盗賊を励ましているのを!!

279

--北の王国--

盗賊「うおおおおおおおおおおおおお!! みなぎってきたああああああああ!!」

きぃいいいいいん

風が弾け飛び、そして盗賊の右手のナイフに集まっていく。

しゅるるるるるるるる!

フランケン「む、む」

それを見たフランケンは身構えた。あれを無策に受けてはいけないと、野生の勘で察したのだ。

ひゅぅおおおおおおおおおおおぉぉ!!

風が吹き荒れる。

盗賊「……」

フランケン「……」

盗賊「……なぁ、闘士」

フランケン「……な、なんだ?」

盗賊「俺、お前に言っておきたいことがあったんだ」

フランケン「……」

チャキッ

盗賊はナイフを構える。

盗賊「俺は……ホモじゃない」

280

--北の王国--

シャッ!!

盗賊は走り出す。
盗賊の最高速とも言える速度でフランケンに向かっていく。

シャシャシャシャシャシャ!!

フランケン「う、うおおおおおおおおおおおおお!!」

どがあああああああああああああああん!!

フランケンは地面を破壊して盗賊の進路を塞いだ。だが

シャシャシャッ!

盗賊は宙に浮いた地面の破片を、飛び石のように渡って移動する。

フランケン「ま、またまたそんなうそいっちゃってーーーーーー!!」

フランケンは盗賊目掛けて拳を突き出した。

ボウッ!!

盗賊「嘘なんかじゃない! 俺は、俺は! 俺はノンケなんだああああああああああああああああああああああああああ!!」

シュッ

フランケンの右拳を紙一重でかわし、そして

フランケン「!」

ズギャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

盗賊「……」

フランケン「……」

ぽたっ

盗賊のナイフがフランケンの胸をわずかに斬った。

281

--北の王国--

ぽたたっ

盗賊「……」

フランケン「……ず、ずっと……そんなんじゃないかって……じつは、きづいてた」

ぽたっ

盗賊「……」

ぽたっ、ぽたたっ

盗賊「……スキル、盗む……」

盗賊の左手には、フランケンの心臓が握られていた。

ざぁあ……

盗賊「……すまねぇな。闘士。俺はまた……またお前を殺しちまった」

フランケン「……ふ……ふふ。な、なんだかよくわからないが、とうぞく」

ざぁあ……

フランケン「きにするな」

フランケンは穏やかな笑みを浮かべながら、最後に盗賊のお尻を撫でると砂になって消えた。

盗賊「……闘士……」

盗賊は空を見上げた。

ちょっと飛び出してしまいました。いけないいけない。


それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。遅くなりました。

カトブレパスの件について
魔族はモンスターと違って基本、二足歩行化します。でもカトブレパスに二足歩行は似合わなかったかもしれませんね。描写が遅くてすみません。

召喚士「コカァー!!」
は完全な誤字です。ご指摘ありがとうございます。電車で吹きましたw

それでは投下していきます。

282

--北の王国--

しゅうぅう……

盗賊「はぁ……けどどうすっかねー……かなり体力もってかれた……。他の奴等の相手を今からするのは、共有を使ってもきつい……」

ぺたり

盗賊はその場に座り込む。
魔族を一対一で倒すという偉業、その奇跡には代償が必要だ。

盗賊(また寿命削っちまった……しょうがないけど)

砂となって消えていくフランケンを眺めている。

283

--北の王国--

ゴゴゴゴゴ

魔王勇者「! ニンフ、カトブレパス、フランケンの霊圧が……消えた……?」

ゴゴゴゴゴ

ウェンディゴ「……ち」

それぞれの位置から二人は仲間の死を知る。

魔王勇者「……よくも……」

ゴゴゴゴゴ

魔王勇者は両手で顔を隠して肩を震わせている。

魔王勇者「よくも……よくもよくもよくもオオオオオオオオー!!」

魔王城「グゥアァアオォオォオォォおおおおおおおおおおォぉ!!」

魔王勇者の怒りに同調するように、魔王城が吠えた。

284

--北の王国--

参謀長「あれは!」

バキバキ!!

変形していく魔王城。

北の王「数年前にも同じような光景を見ましたで……でっかいやからに北の王国が踏み荒らされるのを……」

ゴゴゴゴゴ

魔王城は空中で胎児のような姿となり、そして

ヒュウゥ……ズッズーーーン!!

地面に落下した。

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !

その衝撃波で周辺にあった町は吹き飛び、離れた場所の建物も揺れで倒壊してしまう。

285

--北の王国--

参謀長「無茶苦茶しやがって……」

ゴゴゴゴゴ……

魔王城「フー! フー!」

魔王勇者「全て殺せ……DX超合金魔王城!!」

魔王城「グゥアァアオォオォオォォォ!!」

魔王城の叫び。その破壊的な音波は山を崩すほどの威力があった。

ビリビリビリ!!

盗賊「ち……! 座ってばかりはいられねぇか!」

ダダダ!

盗賊は足に力を入れて立ち上がり、魔王城に向かって走り出した。

ふわっ

ウェンディゴ「――不安要素を残しておくわけにはいかないな」

盗賊「!?」

その盗賊の目の前に、ウェンディゴが降り立った。

286

--北の王国--

ズバシュッ!!

盗賊「――っ」

そしてウェンディゴは盗賊の首を切り裂いた。

ボタタタッ

盗賊「げっ……ごほ」

慌てて左手でナイフを構え、右手を傷口に手を当てる。

盗賊(油断、した……罠や不意打ち、そんな陰険な攻撃を得意とするやつが、向こう側にもいたのによ……!)

ぽたっぽたたっ

盗賊の血は止まらない。

ウェンディゴ「ここで死んでおいてくれ、俺」

287

--北の王国--

ぽたっ、ぽたっ

盗賊「ひゅーっ、ひゅー……」

かたかたかた

意識を失いそうになりながらも、盗賊はナイフを構え続けている。

ぽたぽた

ウェンディゴ「……諦めの悪さは相変わらずか」

盗賊(ぐ……こいつは、どの分岐の俺なんだ? せめてそれだけでも……)

ウェンディゴ「――諦めずに戦い続ける。それだけが俺の持ち味だったんだもんな」

ウェンディゴはどこか悲しそうな目で盗賊を見ていた。

盗賊(? なんだその言い方……引っかかるな)

ウェンディゴ「……! 血の落ちるのが止まったぞ!? まさか!」

盗賊「ち、気づくのがはえーぞ! 俺のくせに!!」

ブゥン!

奥義共有、賢者の型。
盗賊は賢者の力を共有して自らの傷を治療していたのだった。

288

--北の王国--

ウェンディゴ「あぁ、あれの改良版か……相も変わらず俺ってやつはめんどくさいな」

盗賊(この力の目星もついてるのか? じゃあ……あそこまでは俺と同じ道を辿っていたのか……)「めんどくさいのはお互い様だぜ! 魔力暴発、レベル2!」

シャッ

盗賊がウェンディゴに向けて魔法を放とうとした瞬間、

ドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュ!!!!!!

盗賊「!? がっ、は……」

ウェンディゴ「……空間設置魔法罠、カウンタータイプ」

無数の魔法の槍が盗賊を貫いていた。

盗賊「すでに、貼ってたのか……」

ウェンディゴ「あぁ。透視眼が甘いぞ、俺」

盗賊「――、――……」

ぽた、ぽたたっ

伸ばしていた腕が力なく落ちる。

盗賊「」

ぽた……

盗賊は死亡した。

ウェンディゴ「お前は俺が見てきた中で……まぁまぁ速い敵だった」

289

--北の王国--

ズズゥーン、ズズゥーン

魔王城「がぁああああああああ!!」

参謀長「……く」

北の王「参謀長はん。何かいい手ありまへんか?」

参謀長「手持ちの駒では正直……研究員さん、回収した機械姉妹の方は?」

研究員「あの子らを元に戻すまでに、最速でも一週間はかかるねー」

参謀長「……でしょうね。となると現時点では……」

姫「よっし! 姫ちゃんがなんとかしちゃうぞー!」

ぱんぱかぱーん!

暗いムードを壊すように姫が机の上に立ち、無い胸を張る。

参謀長「あとは……盗賊さんやユーさんに任せるしかありませんね。我々と兵士は撤退の準備を始めましょう」

姫「む、無視しちゃらめぇーーー!!」

290

--北の王国--

参謀長「はぁ……そんなこと言ったって姫様、貴女、金を産むしかとりえが無いでしょう?」

姫「遠まわしに無能ってゆった!?」

北の王(金を産めるだけで超有能な気がするんや)

姫「むぅ~! じゃあそこで見ているがいー!」

ギンッ!!

姫が魔力を開放する。それだけで城が軋んだ。

ビリビリビリビリ!!

北の王「! な、なんちゅう魔力や!! こんな力が!」

姫「黄金属性攻撃魔法ー、星降らし!!」

きらんっ!

……ひゅぅうううぅうううううううん!!!!

何かが上空から落ちてくる。

291

--北の王国--

キラン

ウェンディゴ「ん?」

どがぁああああああああああん!!

ウェンディゴ「う、うおぉおおお!?」

ウェンディゴのすぐ傍に大きな金の塊が振ってきた。

しゅうぅうう……

ウェンディゴ「あぶねぇ……隕石か? 人の頭くらいあるじゃん。後で持ってかえろ」

きらん

ウェンディゴ「ん?」

きらんきらん

ウェンディゴ「……ん?」

きらきらきらきらきらきらきらりんきらんきらきらきらきらきらん!!!!

ウェンディゴ「うっ、お……」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

まるでスコールのように金が降り注いだ。

ウェンディゴ「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!??」

292

--北の王国--

どぎゃっ!!

ウェンディゴ「っ!!」

そのうちの一つがウェンディゴの左肩に命中し、そのまま骨を砕いた。

ウェンディゴ「いっ、てぇ……!!」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

ウェンディゴ「ぐっ! これは人間の仕業なのか!?」



姫「きゃははは! どーだー!! 見たかー!」

ガガォオンドガァアアン!!!!

参謀長「国全体がやられてるんですがそれは」

北の王「夢のような光景でんな。二重の意味で」

293

--北の王国--

魔王城「ふぅううー!!」

ドガガガガガガガガガガガ!!!!

魔王城は降り注ぐ金をものともせず歩いていく。

ズズゥーン、ズズゥーン!!

北の王「あいやー。しかしあのデカ物はんには効いてないみたいでっせ」

姫「むぅー!!」

参謀長(魔力を大量に含む金属である黄金を、雨霰と全身に受けてもまだ進むのか……)

ズズゥーン、ズズゥーン!!

姫「そ~ん~な~ら~! 黄金属性攻撃魔法、黄金の大星!!」

参謀長「って、それ以上無駄に魔力を使わないで下さい姫様!」

しかし姫の魔法は発動してしまう。

294

--北の王国--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ウェンディゴ「やっと降り終わったか……って、今度はなんだ?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

大地が震え、巨大な影が迫る。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

ウェンディゴ「……嘘ぉ」

ぶわっ!

雲を吹き飛ばし現れたのは、

北の王「……この国オワタ……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

北の王国の領土をすっぽり覆うほどの、巨大な黄金だった。

295

--北の王国--

ウェンディゴ「規模がでか過ぎる!! 魔王勇者ーーー!!」

魔王勇者「っ!」

魔王城「ぐおおおおおおおおおおおおおお!!」

がしぃいいいいいいいいいいいいいいい!!

魔王城は落下する黄金を受け止めようと手を伸ばす。

ズズズズゥウウン!!
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

受け止めた時の衝撃で大地が割れる。



北の王「なんかこれEVAで見たことありますわ!」

研究員「ゼルダでも見た! 後三人足りない!」

参謀長「これやつらが受け止めてくれなきゃ私らも全員死ぬレベルじゃないか……」

姫「むふー!」

なぜかドヤ顔の姫。

北の王(なんで黄金がダメなのかちとわかった気がしますわ)

296

--北の王国--

ガガァアン!! ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

魔王城「ぐおおおおおおおおおお!!」

びしっ、ばきばきぃ!!

魔王城の頑強な両腕にひびが入り、少しずつ崩れていく。
巨大な黄金の勢いは止まらない。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

ウェンディゴ「まじか……金に押しつぶされて死ぬとか……人によっては嬉しいんだろうけど」

とんっ

その時、魔王城の口から魔王勇者が飛び出した。そして、

ブゥン

大剣を呼び出し、構える。

魔王勇者「魔奥義、魔王スラッシュ」

フォン、ズ

闇を纏った大剣が黄金に触れる。

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

北の王「!?」

参謀長「なにぃ!? 一振りであの黄金を破壊しただと!?」

姫「……」

297

--北の王国--

ゴゴゴゴゴゴ……

魔王勇者「……」

ふぉん、どごぉん!!

砕けた黄金が北の王国に降り注ぐ。その中で優雅に浮遊している魔王勇者。

ウェンディゴ「……あれをぶっ壊しちまうのか……やー、さすがは勇者様だわ」

ふぉん、ふぉん

魔王勇者「……?」

黄金の雨の中を移動する何かに気づく魔王勇者。

しゃしゃっ

そしてそれは魔王城に向かっているようだった。

ユー「奥義」

それはユー。
二つのレイピアを体の前で交差した構えを取った。

298

--北の王国--

魔王城「ごご……?」

ユーの接近に気づいた魔王城はゆっくりと方向を転換する。

しゅ

だがもう遅い。

ユー「勇者ラッシュ」

ぼっ

ぼぼっ

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボッ!!!!!!!!!!

魔王勇者「!?」

ウェンディゴ「!」

魔王城「 がっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

黄金の雨でさえ崩れなかった外壁が、

ドガガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

レイピアのラッシュによっていとも容易く粉砕された。

そして巨大な岩石の破片が空を飛ぶ。

魔王勇者「その、力は……!」

ユー「……」

どごぉん、どががぁあん!!

今北の王国では、金と石の雨が降っている。

299

--北の王国--

ウェンディゴ「いっ!? 魔王城をぶっ壊しただと!? そんなこと人が出来るわけ……」

ドォン、ドガガァアアン!!

魔王勇者「……」

ユー「……」

金と石の雨の中で、ユーと魔王勇者は見つめ合っている。

ドォン、ドガガァアアン!!



ユー「……」

最初にユーが走り出し、

ぼっ

魔王勇者「……」

続いて魔王勇者が飛ぶ。

ウェンディゴ「いやまて魔王勇者! そいつはまずい!! いくな!!」

ユー「」

魔王勇者「」

ウェンディゴの制止むなしく、ユーと魔王勇者の剣が、

ドギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

空中で激突した。

300

--北の王国--

ウェンディゴ「くっそ! こうなりゃサポートするっきゃねぇ!!」

ひょっ、しゅた!

ウェンディゴは跳躍して家の屋根に乗った。

?「でも残念~それはかないません~」

ウェンディゴ「!?」

どがっ!!

ウェンディゴは突如現れた人物から回し蹴りを食らう。

ざざざー

ウェンディゴ「……おいおい」

??「水属性蘇生魔法、レベル4」

ぱぁああ

蘇生魔法の光りが盗賊の体を優しく包む。

???「やれやれとんでもないことになっているじゃないか。もっと早くに賢者に情報を共有すべきだったのではないか?」

ザッ!!

ウェンディゴ「踊子、賢者、シャーマン……」

むくり

盗賊「……おぉ、みんな来てくれたのか」

復活した盗賊が目を覚ました。











その頃……

--南の王国--

乳でかくなる教教祖「この体操をすれば、必ずお乳は大きくなります。それでは声を出して元気にやっていきましょう。はい、ワンツー、ワンツー!」

勇者「ワンツー、ワンツー!……は!?」

それでは本日の投下はここまでになります。

疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。たまには月曜日のうちに……。

人がいるといいのですが(って言っても大した分岐じゃないんですが)。それでは投下していきます。

301

--北の王国--

ヒュゥウウウウゥウウ

ウェンディゴ「……」

ざり

踊子「さぁて、私と踊ってもらいましょうか~別ルートの盗賊さん~?」

ウェンディゴ「踊子さん……」

ざっ

賢者「道を間違えたとはいえ盗賊君だ……出来ることなら戦いたくないんだけどね」

ウェンディゴ「賢者さん……」



シャーマン「私は別に言うこと無い」

ウェンディゴ「……シャーマンさん」

302

--北の王国--

すた

盗賊「……本当は一騎討ちでやりあいたかったんだけどな。でもこんな状況だし私情は挟んでられないよな」

ウェンディゴ「俺……」

ザンッ!

新生勇者パーティー(勇者不在)がウェンディゴの前に立ち並ぶ。

踊子、賢者、シャーマン(((フランケン戦で私情挟みまくって共有使わなかったくせに)))

盗賊(共有使わなくてもわかるぞみんなの心の声が)

ウェンディゴ「……」

ウェンディゴはしばらく盗賊達を眺めていた。
そして……

ウェンディゴ「……相手にとって不足無し」

ぼぅ

全身から魔力を発して完全な戦闘モードに。

303

--北の王国--

ビリビリ!

賢者(! このプレッシャー……やはり魔族ですね……強い!)

踊子(典型的な、味方だと弱いのに敵になったら厄介なパターン、ですね~)

賢者達はちらちらと横にいる盗賊を見た。

盗賊(なんかバカにされてるような気がするのは気のせい?……)

じりじり

シャーマン「おい、忘れてるのかお前ら。あれも盗賊なんだぞ?」

賢者「え? 何を今さら……そんなこと百も承知ですよ」

ジリジリジリジリ

ウェンディゴ「相手にとって不足無し……なので」

シャッ!

ウェンディゴが跳躍する。

踊子「!!」

ウェンディゴ「引かせてもらうよ! バイバイ!」

賢者「!?」

304

--北の王国--

盗賊「し、しまった!!」

シャシャシャ!!

ウェンディゴはあっという間に逃げてしまった。

踊子「ぐ……本当逃げ足は早いんですから~……」

踊子はキッ、と盗賊を睨む。

賢者「し、失念していました……勝ち目が薄いと判断した戦いを、盗賊君がするわけがない……」

賢者は盗賊を見てため息をつく。

盗賊「こ、これー! 戦え俺ー! お前がしっかりしてないと俺の評価も下がるんだぞー!?」

だぞー
だぞー
ぞー

305

--北の王国--

シャーマン「――で、どうする? 追うのか? あれを」

盗賊「……やめよう。俺のことだから逃げ道に罠しかけまくってるよ。一対一に持ち込むためのしかけもしてるだろうから、追えば各個撃破される可能性が高い」

賢者「く……魔族になりスペックの上がった盗賊君の厄介さははんぱないですね」

シャーマン「陰険」

踊子「そ~ろ~」

盗賊「!?」

シャーマン「はげ」

踊子「ポークビッツ~」

賢者「僕のことじゃん!?」

306

--北の王国--

踊子「……でもどうするんです~? このままだとあの魔族、あそこに向かっちゃいますよね~?」

賢者「……確かに」

ギィン! ガガァン!

盗賊達は、空中で繰り広げられるユーと魔王勇者の戦いに目を向けた。

盗賊「そうだな……じゃあ透視眼で周囲を索敵しながらゆっくり進むことにする。みんな離れるなよ?」

賢者「了解」

踊子「仕方ないですね~」

シャーマン「……」

307

--北の王国--

ギィァン! ギィン! ガガギィン!!

ユーと魔王勇者の壮絶な斬り合い。

ユー「……」

魔王勇者(こいつ……!)

手数のユーと精密な剣技の勇者。

ギギギギギィン!!

二人は数百と打ち合ったが、両者ともダメージを受けていなかった。

魔王勇者(やはり勇者の力を持ってる……! だとすればこいつの一撃を受ければ致命傷になりかねない……)

ギィン!!

風属性魔法で飛翔するユーは旋回しながら次の攻撃を放とうとしている。

びゅおおおぉお!

308

--北の王国--

魔王勇者(だがそれは向こうも同じことだ! 私の魔力に耐えきれるものは、誰一人としていない!!)

ボアッ!!

ユー「!」

魔王勇者の全身を包む魔力が漆黒の炎と化す。

ボボボボボボボボボボボボボッ!!

魔王勇者「魔王技、深淵に飲まれよ!」

ドギァアアアァンン!!

魔王勇者が大剣を振るうと、黒の炎が空を覆っていく。



ゴゴゴゴゴゴ!!

盗賊「! 範囲攻撃か!」

賢者「いやMAP攻撃です! しかも特大の! これは避けきれない!!」

闇が全てを燃やし付くそうと地上に迫る。



ユー「……」

それを見たユーは、そっと右手を掲げた……。
















①親方! 空からパンツが!
②親方! 空からスク水が!

※先着一名でお願いします。五分経ってなかったらオートで始まります。

309

--北の王国--

②親方! 空からスク水が!

パリィィン!

魔王勇者「!?」

魔王勇者が渾身の魔力を込めて放った闇の炎は、全てスク水に変わった。

ウェンディゴ「! は、はぁっ!?」

ひらひらひらひら

賢者「ばかな……ありえない……」

盗賊「これは……まさか……」

盗賊はあり得ないといった表情で落ちてきたスク水を一枚手に取った。

そのスク水の名前の場所にはゆうしゃ、とひらがなで文字が書かれていた。

盗賊「これゆうしゃのスク水じゃん! うほほーい!!」

賢者「ツインテちゃんとフォーテちゃんの急いで探さなきゃ!」

きゃっきゃっ

シャーマン「おい順応はえーぞクソ男子共」

踊子「まったくです~」

310

--北の王国--

ウェンディゴ(なんだこれは……事象を捻じ曲げたのか……? まるで)



ひらひらひらひら

舞い散るスク水の中、魔王勇者は驚愕していた。

魔王勇者「この力……この力は……」

ドキュッ!!

戸惑う魔王勇者にユーが迫る。

ユー「……」

ボッ!!

風属性の飛翔魔法に火属性の飛翔魔法を重ね合わせたユー。その速度は爆発的に増加する。

ぎゅんっ!

魔王勇者「しまっ!」

ザシィン!!

311

--北の王国--

ぴちゃ

ウェンディゴ「……つ」

魔王勇者「!? ウェンディゴ!!」

ユーのレイピアが魔王勇者を貫こうとしたその時、魔王勇者とユーとの間にウェンディゴが割り込んだ。

ピチャッ

レイピアはウェンディゴの脇腹を貫通し、血がレイピアを伝って落ちていく。

ガシッ!

ユー「!」

ウェンディゴ「捕まえたぜ……よくわからん勇者さんよぉ」

ウェンディゴは貫かれた状態でユーの両腕を掴んだ。

312

--北の王国--

ユー「!」

振りほどこうとするユー。

バシィン!

ユー「!」

その腕に魔力で出来た縄が巻きついていく。

ウェンディゴ「残念、もうにげられないのさあんたは」

魔王勇者「! 自分に罠を張っていたの……?」

ウェンディゴ「魔王勇者! ぼさっとしてんじゃねぇよ! やれ!!」

魔王勇者「!」

ユー「……」

ギシギシッ!

313

--北の王国--

盗賊「こんなところにまで罠かけやがって! スキル、罠解除!」

ぱきぃん

賢者「恐るべき念の入れようですね……同じ思考を持つ盗賊君じゃなければ、例え透視眼を持っていても全てを見つけることは出来ないかもしれない」

踊子「このびびり~」

盗賊「慎重な男と言ってください」

シャーマン「あ」

盗賊「あ?」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

空が爆発する。

ひゅるるるるるるるる

盗賊「!! あれは!」

焼け焦げて落下する物体、それはユーだった。

314

--北の王国--

魔王勇者「はぁ、はぁっ……」

ウェンディゴ「俺ごと斬ればよかったのに。あれじゃまだ生きてるぜ多分」

魔王勇者「……うるさいわね……もう、ごめんなのよ」

魔王勇者は小さく呟いた。



参謀長「……ユーさんが敗北した」

落下していくユーを遠くから見つめている参謀長達。

研究員「盗賊君の仲間がかけつけたみたいだけどー、果たしてあの勇者君に勝てるのかなー? 私の勘だとあれは魔族じゃなくて魔王だよねー」

北の王「……」

315

--北の王国--

盗賊「……まじい」

ユーの敗北を知り、盗賊は冷や汗を垂らす。

踊子「……ふん、仲間が一人減ったのは辛いですけど~、まぁやってやりますよ~。あっちは二人、こっちは四人です~。二倍ですよ二倍~」

賢者「そう簡単にいけばいいんですが……」

シャーマン「……なぁ、目標は達成したようなもんだろ。ここは撤退でいいんじゃないか?」

シャーマンの突然の提案。

盗賊「へ?」

シャーマン「市民への犠牲は0。兵達の被害も最小限。おまけに敵の魔族を三体も倒したんだ。十分だろう」

盗賊「いやぁ……そう考えちゃいますか」

シャーマン「あっちだって相当消耗しているはずだ。逃げる奴を追うほど、体力は残って無いんじゃないか?」

賢者「……」

踊子「……」

盗賊「――でも、みんなの死体はどうなるんだ?」

シャーマン「……めぼしいのだけ連れてかえるしかないな。それすら可能かわからないが」

盗賊「じゃあダメだろ」

316

--北の王国--

シャーマン「――ダメ、とは? ここで我々まで死んだら最悪だぞ? 恐らく人類の敗北は避けられないことになる。計画はおじゃんだ」

盗賊「わかってるけどダメなんだよ、そういう戦い方じゃ」

盗賊は罠を解除しながら進む。

盗賊「ハイちゃんは言ってたぞ。全員が最終決戦に揃っていればなんとかなる、ってな。だから少しの戦力も犠牲にできない」

シャーマン「……」

盗賊「それになにより」

賢者、踊子「「見殺しにはできない」」

シャーマン「」

盗賊「……わかってるよ分が悪いことくらい。でもこのまま引いたらダメなんだ」

シャーマン「……」

踊子「うふふ~。それに~知らないんですか~?」

賢者「ピンチの時には、ヒーローが来るんですよ」

317

--北の王国--

  ひゅぅううぅううう



シャーマン「ヒーロー……?」



  ひゅううううううううううう



盗賊「あぁ。物語はそういう風に出来てるのさ。なぁ」



  ひゅうううううううううううううううううううううう!!



盗賊「勇者」



ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!



グラグラグラ

北の王「こ、今度はなんでっか!? 隕石!?」

参謀長「何かが飛んできたみたいですが……これは」

研究員「ほうほうー……なんだか面白いことになってますねー」

318

--北の王国--

しゅうぅううう……

土煙が舞う。

?????「……」

ウェンディゴ「なにかがものすごいで飛んできたぞ……」

魔王勇者「……」

魔王勇者はそれが何か探っている。

魔王勇者(この魔力パターン……なんだか懐かしい気がする……だれだ? なんだか、胸が締め付けられるようだ)

ぶぉおおうう!

?????「……」

落下してきた者が、大剣を振り回して土煙を吹き飛ばす。

魔王勇者「!?」

落下地点の中心にいたものは、勇者――。

?????改め勇者「……」

チャキッ

大剣を構えるは、もう一人の赤き絶壁。



盗賊「ほぉら来た」

319

--北の王国--

魔王勇者「」

ウェンディゴ(!?……そういうことか……くそっ!)「おい魔王勇者、ここは一旦撤退しよう!」

がしっ!

魔王勇者「何、あれ……何で、私があそこにいるの?」

ウェンディゴ(トリガーの奴……このことを知ってて!!)「聞いてるのか魔王勇者! 引くぞ!」

ばしっ!

魔王勇者はウェンディゴの手を振り払う。

魔王勇者「撤退? そんなことするわけないでしょ? 私は魔王……全てを滅ぼす者よ」

魔王勇者は明らかに動揺している。

魔王勇者「大体、フランケン達を失ったのに今更……引けるわけなんて無いでしょ!」

ぼおおおぉ!!

魔王勇者は魔力を発する。

ウェンディゴ「くっ!!」(ダメだ、俺の言葉じゃ止めることができない!)

魔王勇者「私の偽者なんかわざわざ用意して……無駄なあがきだわ。消してくれる……」

320

--北の王国--

たたたっ

勇者「!」

賢者「勇者さん!」

踊子「勇者さ~ん~」

勇者「みんな……遅れてすまない」

勇者と合流する盗賊達。

踊子「もう~遅いじゃないですか~待ってたんですよ~?」

むぎゅっ

踊子は勇者に抱きついた。

勇者「もふっ。す、少し道が混んでいたんだ」

おっぱいに埋もれた勇者は複雑な顔つきで踊子を引き剥がす。

勇者「敵は……あれだな。よし、行くぞみんな!」

盗賊「行くぞみんなじゃねーよ」

れろ

盗賊は勇者の耳の穴に舌をいれる。

勇者「ひゃうっ!? な、なななななな!! いきなり何をするんだぁ!!」

どすん

大剣を手放して両耳をガードしてしりもちをつく勇者。

盗賊「うるさいよ。どんな道を通ってくればこんなに時間かかるんだよこのまな板! こっちはハラハラしたんだぞ?」

勇板「だ、だから道が混んでたんだってば! 謝ったでしょ!?