勇者と魔王がアイを募集したFINAL+ (1000)

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「終わってねーじゃねーか!」」」



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・喧嘩はおやめ下さい。最後まで仲良くいきましょう!



≪あらすじ≫

勇者、ハイ「「嘘つきー!」」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412617970

遅れました!
それでは続きを投下していきます!

441

--暗黒森林、酒場--

わいわいがやがや

アッシュ「――さて、それじゃあさっそくツインテ奪還の作戦を練るぞ。各々、何か思うことがあるなら好きに言え」

レン「じゃあまずレンから。実はレンは大分前から王国の、いや元王国の絵師と連絡を取っていたのにゃ。そして予定では明日の競売の最中に奪還しようと計画していたにゃ」

侍「む。レン殿もそうでござったか。実は我々もそうなのでござる。ほらこの手紙」

ぱらっ

ハイ(あ、この手紙は……)

ハイはこの手紙を見たことがあった。

レン「侍達もだったのかにゃ。レン達の計画では舞台の中からポニテが、会場からレンが、会場の外からは絵師が事を運んで混乱のうちにツインテを奪還するつもりだったにゃ。……でもこの面子が揃った今なら、明日まで待つ必要は無いんじゃないかと思い始めてるにゃ」

アッシュ「夜のうちに盗み出す……セオリーだな。だがそれは向こうも一番警戒していることだろう」

レン「……夜の番人かにゃ」

ハイ「夜の……番人?」

侍「なんかえろい」

442

--暗黒森林、酒場--

アッシュ「夜の番人。闇競売の運営が雇っていると噂されている魔法拳闘士のことだ。夜のみと限定されるが、その実力は五柱と同等、もしくはそれを上回るものらしい」

ハイ「!! 五柱レベルってそんな人がここにいたんですか!?……あ、でも実力者である皆さんがこれだけいるならなんとかなったり?」

レン「……魔導長と同レベルかもしれないって時点でレンは闘いたくは無いにゃ」

レンは暗い顔でそう呟く。

侍「拙者も嫌でござる。競売品保管庫はいわば奴の城。テリトリー内で五柱レベルと戦うのは無謀にもほどがあるでござるよ」

ハイ「ですよねぇ……」

ユー「……」

ユーは話に加わらずもくもくとご飯を食べている。

アッシュ「……お前夜の番人のことを知らないみたいだが、前の俺達はどんな流れになったんだ?」

アッシュはハイに質問した。

443

--暗黒森林、酒場--

ハイ「はい、えっと、そもそも前回に私がここに着いたのは明日のお昼頃なので、この時間帯に皆さんが何をしていたとかはわかりません」

レン「凄まじく奇妙な文章にゃ」

ハイ「でも明日の昼、行動を起こすまでは会場全体、特に変わった様子はありませんでした。多分皆さんも大人しく機会を伺っていたんじゃないかと思います」

アッシュ「なるほど」

侍「というか前回ここで起きたことを全部説明して欲しいでござる。これから起こる情報を知っているのなら、ことを有利に運ぶのが随分容易になるでござる」

ハイ「そうですね。確か……ツインテ先輩の競売の時間になった所で、会場にたくさんの人たちが雪崩れ込んで来ました。今思うと先輩達の協力者さんの行動かもしれません」

レン「ふむにゃ」

ハイ「それでどさくさまぎれに私と皆さんが飛び出しました。そしたら各国の三強さん達が襲い掛かってきて乱戦になりました」

アッシュ「三強は誰がいた?」

ハイ「んっと、西の槍兵さん。黄金王国の突撃長さん。東の剣豪さんと魔剣使いさん。あと王国のフォーゼさんとかも居ましたか」

侍「オールスターじゃん」

444

--暗黒森林、酒場--

アッシュ「……昼も相当きついな。それだけの数の三強がいたんじゃ、無事に奪還出来るとは思えん」

レン「レンも同意見にゃ。昼と夜、どっちにするか……」

侍「まさに前門の虎、肛門の狼でござるな」

きゅっとお尻の穴がしまるアッシュ。

ハイ「でもツインテ先輩を連れて森に逃げ込むことは出来たんですよ」

アッシュ「ほう。さすが俺」

レン「きっとレンが活躍したに違い無いのにゃ」

侍「いやいやそこはきっと拙者でござるよ」

ユー「……」

自分自分と指を指すユー。

アッシュ「ふん、奪還出来る未来があったのなら今回もその通りでいいだろう。情報が全く無い五柱レベルのテリトリーに踏み込む危険度に比べたら当たり前の結論だ」

レン「やれやれ。随分と気が楽になったものにゃ。オヤジ、ミルクお代わり」

侍「はっはっはっ。みんな気が緩み過ぎでござるよ。どれ、拙者も料理を追加するでござるかな」

ハイ「あっ、でもその後フォーテさんが現れるんですよ」

445

--暗黒森林、酒場--

ガシャン!

アッシュ「……」

レン「……」

侍「……」

ポタポタ

レンはミルクの入ったグラスを落としてしまう。

ハイ「あれ? 皆さん?」

アッシュ「すまん。もう一回頼む」

レン「レンからも頼むにゃ。亜人の聴覚を持ってしても聞き取れなかったにゃ」

侍「拙者も最近耳が遠くなってしまってござる」

ハイ「フォーテさんが来ます」

アッシュ「……」

レン「……」

侍「……」

446

--暗黒森林、酒場--

アッシュ「……夜忍び込んでツインテを奪還しよう」

レン「それしか無いにゃね。例え保管庫に五柱が三人待ち構えていてもお釣りが来るにゃ」

侍「はっ、はっはっ、相変わらずアッシュ殿らはフォーテ殿が苦手でござるなぁ」

がたがたがた

三人は汗をだらだらと流しながら震えていた。

ハイ「え? さっきはテリトリー内の夜の番人さんはやばいからやめとこうって話になったんじゃ」

バンッ!!

アッシュ「お前バカか! フォーテは昼でも夜でも 『五柱? 何それ美味しいの?』 レベルでやばいだろうが!!」
 
レン「全くにゃ! 本当に未来から来たとは思えないレベルの発言にゃ!」

侍「フォーテ殿はなぁ……相性とかそういうレベルの話じゃないでござるからなぁ」

ハイ「わ、私だってフォーテさんは本気で怖いですけど……」

アッシュ「……で? フォーテが現れてどうなる? 俺らは皆殺しにされるのか?」

ハイ「いえ、ツインテ先輩を連れ去るだけです」

447

--暗黒森林、酒場--

アッシュ「ん? それだけか?」

ハイ「はい。まぁ、その時の私はめちゃくちゃビビッてたので何があったのか良く覚えていませんが、誰かが死んだだとか、痛い目にあったりとかは無かったです」

レン「ふむ……ツインテさえ奪還出来ればいいということなのかにゃ? それでフォーテはどこにツインテを連れ去るのにゃ?」

ハイ「後からわかったことですが、ツインテ先輩はどうも魔王達と一緒にいたみたいなんです」

アッシュ「! フォーテはやはり魔王側の……ち、じゃあ連れて行かれるわけにはいかねぇな」

ハイ「でも最終的にツインテ先輩は私達のパーティに合流するんですよ」

レン「なんなんだにゃ」

448

--暗黒森林、酒場--

ハイ「でもそうですね……それだと大量に人が死んでしまう未来に繋がるかもしれない……なんとなくだけど、ツインテ先輩はここで自由にしておくのが正解な気がします」

ユー「……」

レン「人死のことはわからないけれど、ツインテに関してはわかりきったことにゃ。なんとしてもツインテを奪還する。そのためにこの三年間頑張って来たのにゃから」

アッシュ「あぁ……それが例え、あのフォーテと戦うことになろうともな」

侍「ござるよ」

アッシュ達は互いに表情を確認して頷いた。

ハイ「じゃ、じゃあ皆さん、もしかして……」

アッシュ「あぁ……」

がたっ

アッシュは静かに立ち上がる。

アッシュ「夜のうちに行こう」

足はまだ震えていた。

449

--暗黒森林、保管庫、牢屋--

ホーホー

ポニテ「ふぅ。まぁまぁお腹も膨らんだし、寝るかな」

ごろん

見張り「か、かひゅー」

横になるポニテと、からからに干からびてミイラみたいになっている見張り。

ポニテ「ん?」

その時ポニテは何かの気配を感じ取る。

ポニテ「……誰かが戦闘してる? この建物、魔石を素材にしてるせいか感覚が乱反射して探知がうまく出来ないけど……でもなんか懐かしい感じもする」

……ドォン……

パラパラッ

ポニテ「それに、強い」

450

--暗黒森林、保管庫、上フロア--

夜の番人「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

ヒュボボボッ!!

アッシュ「!!」

ギィン!!

レン「! アッシュ! 大丈夫かにゃ!?」

ズザザザー!!

アッシュ「……ち」

ぽたぽた

夜の番人の拳のラッシュをナイフで防いだアッシュ。だが勢いを殺すことは出来ず、口から血を垂らしていた。

アッシュ(風圧でこれか……いやそれよりもこいつ、今の俺と同等以上だと?)

既にアッシュの眼は反転し、人殺しモードになっている。

夜の番人「ここは大事な宝の蔵でし。盗人を叩き殺すのはぼくちんの役目でし」

マスクを被った二メートルの大男は甲高い声でそう語った。

451

--暗黒森林、保管庫、上フロア--

窓から差し込む月明かりだけが頼りの薄暗い部屋の中で、ハイ達と夜の番人は対峙している。

じりじり

レン(想像以上にゃ。昼を対価に夜に特化するスキル、超夜行性)

ゴゴゴゴゴ……

侍(この身のこなし……スキルでの強化が無くとも十二分に強者。それを肉体も精神も夜にのみ順応するように仕上げたのでござるな……そしておそらくこの建物にもなんらかの魔法がかかっているでござる)

アッシュ(ち……どの道簡単にはいかねぇか)

ユー「……」

じりじり

ハイ「私何も出来無そう」

夜の番人「きっきっきっ。そんなに悠長に構えてていいでし? 物音がすれば周りの見張り達もここに来ちゃうんでしよ? そうすれば袋叩きでし!」

レン「にゃはは。その心配はご無用にゃ」

夜の番人「でし?」



ホーホー

外の見張り「ふわぁあ……この警備もやっと今日で終わりだ。明日からはぐっすり寝られるなぁ」

巨大な保管庫の外側にいる見張りはのん気にあくびをしている。

ゴーレム「もっ」

そして草むらには三体のゴーレムが目を光らせて潜んでいた。

452

--暗黒森林、保管庫、上フロア--

レン「この建物から出る音は封印させてもらっているにゃ。だから増援があんたを助けに来ることはきっと無いと思うにゃ。つまり、五体一。これは変わらないのにゃ」(これが精神的揺さぶりになればいいんだけどにゃあ)

夜の番人「そ、それは、本当でしか? そ、それじゃあ」

ユー「……」

しゅぴぃん

何かを感じ取ったユーはレイピアを引き抜いて構える。

夜の番人「それじゃあ……やつらにおもちゃを取り上げられることも無いんでしね?」

アッシュ「おいそこの、ハイ! お前も加勢しろ!」

ハイ「あ、は、はい!」

ドンッ!

次の瞬間、アッシュすら反応出来ない速度で夜の番人が接近し、

がっ!

アッシュ「!」

アッシュの頭部を掴んで地面にたたき付けた。

ドガァアアアアアアアアアアアアン!!

453

--暗黒森林、保管庫、上フロア--

アッシュ「がっ!」

崩れる床、落ちていくアッシュと夜の番人。

夜の番人「さーさ! 楽しいカーニバルの始まりでしーーー!!」

侍「! いかんでござる!」(ここで分断されては万が一にも勝ち目が無い!)

レン(下は更に暗いにゃ、ここより劣悪の環境じゃきつ過ぎるにゃ!)「練成、鞭!!」

ばしゅっ!

レンは鋼鉄製の鞭を瞬時に練成すると、夜の番人に対して振るった。

ばしゅるる!

そしてそれは夜の番人の足に巻きついて縛り上げる。

ぶらん、ぶらん

夜の番人「ん? もしかしてぼくちんを下に行かせないつもりでしか?」

……どぉん!

アッシュが落下した音が響き渡る。

454

--暗黒森林、保管庫、上フロア--

ぎしっ

レン「侍!」

侍「心得た!」

たたたたたたた!!

侍は鞭を足場に駆け下りた。
そして刀の柄に手をかける。

侍「スキル!」

夜の番人「遠慮せずに一緒に降りちゃえばいんでしよ、ほらっ!」

ぐいっ

レン「!」

夜の番人が鞭を引く。するとそのパワーに耐え切れなかったレンが穴へと連れ込まれてしまう。

侍「居合!!」

シュパアッ!!

不測の事態にも動揺せず、夜の番人に向けて刀を振るう侍。

バキィンン!!

侍「」

夜の番人「きしし。こんなナマクラでぼくちんは切れないでしよ?」

しかし、侍の刀は夜の番人の肘鉄によって粉砕されてしまう。

ドォオオオン!!

455

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

しゅうぅううう

レン「げほっごほっ……! み、みんな大丈夫かにゃ!?」

亜人の聴覚を最大限に発揮してもみんなの居場所は特定できない。
猫亜人三大希少種の一つ、白雪種の力で建物と対話しようとしても、建物は完全にあちら側についているため声が聞こえない。

ぽたっ

夜の番人「残念~この子は大丈夫じゃないみたいでし」

レン「!」

ぽたたっ

夜の番人が片手で持っているものは、無残にも引き千切れた侍の死体だった。

レン(あの侍が……子の短時間でこうも簡単に!)

ばしゅっ

レンが槍を練成しようとするのだが、

ドッ!

レン「にゃっ!!」

夜の番人「そうはさせないでし~」

ドガアアアン!!

簡単に吹き飛ばされてしまう。

456

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

レン「ぐ……軽くはたかれただけなのに……皮膚の下に簡易的な鎧を仕込んでいるのにこのダメージ……」

ずんっ

夜の番人「さぁ、猫ちゃぁん。肉を脱ぎ脱ぎしましょうでし~」

ずんっ、ずんっ、

夜の番人「きししししし!」

びし

夜の番人「ん?」

その時夜の番人の頭に小石が当たる。

ひゅるるるるるる!

ハイ「条件達成! レベル2、騎士!」

ハイは落下しながら変身し、ランスを突き出した。

夜の番人「おっ」

ぎしぃいん!

しかし夜の番人は左手でそれを弾き、右手でハイの腹部を叩いた。

があああああん!!

ハイ「ごふっ!?」

夜の番人「あれ? 鎧なのに思ったより柔らかいでしね?」

457

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ひゅん!

夜の番人「!」

更に高速で落下してきたユーが死角から夜の番人を切りつける。

ギャギャギャッ!!

ユー「!」

しかし猫の引っかき傷程度のダメージしか与えられない。

夜の番人「んー、痛いじゃないでしかぁ!」

ひゅぼっ、ひゅぼぼっ!!

夜の番人のラッシュをかわしてそれを捌くユー。

バシバシバシバシ!

しかしどんどん後ろに押されていってしまう。壁際に追い詰められたら今度は捌けない。

???「どいて!!」

ユー「!」

薄暗い保管庫の中で凛とした声が響いた。

しゃっ

ユーがその声に反応してその場を離れると

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

真っ赤な火炎が夜の番人を襲った。

夜の番人「! ぐやああ!?」

458

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

夜の番人「あちっあちっ!」

ざっ

アッシュ「遅くなった。大丈夫か?」

レン「アッシュ、それにポニ!……そっか、先に落下してからポニテを開放しに行っていたのにゃね」

アッシュ「あぁ、出来ればツインテも連れてきたかったんだが、どうやらこの階層より更に下に閉じ込められているらしいな」

ゴオオオオオ!!

???改めポニテ「へへん、どうだみたか私の炎は! ついでに明かりもつけてやったぜ!」

しゅぅうう……

ポニテ「あ、あれ?」

この建物は光を軽減する魔法がかけられているようで、光を発する炎は徐々に弱まっていった。

ハイ「げほっ……あ、ポニテさん。よかった。お久しぶりです」

ポニテ「え? 誰この子……会ったことあったっけ?」

レン「自己紹介は後にゃ。とりあえずこいつをぶちのめさないとツインテを奪還できないにゃ」

アッシュ「あぁ。そしてさっきの火に対する慌てよう……暗いところに居るボスのお決まり設定、光が苦手。案外当たってるかもしれねぇな」

夜の番人「あちちっ!……ふぅ……そこのお前、よくもやってくれたでしねぇ……?」

夜の番人は鼻息荒く、歯をがちがちと鳴らしていた。

ポニテ「やば、強そうじゃん!……いやかなり強そうだね」

一瞬喜ぶも徐々に焦りが強くなるポニテ。

……ズズ

夜の番人「」

459

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ(……今の、寒気……)

ユー「……」

夜の番人「だっ、だだ、奪還? だっかん、ダッカン。だっかかかかんん?」

ぶる、ぶるるっ

夜の番人の調子がおかしい。

ズズズズ……

ユー「!」

ぎし、ぎしぎしぎしぎしっ!

建物全体が軋み始める。それはまるで何かの泣き声のように。

ぎしぎしぎしぎし!
ズズズズズ!!

ハイ「この、感覚は……!!」

460

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

心の中で恐怖と不安が大きくなっていく。

ぎゃあぁあぁぁあぁあぁあぁぁぁ!!

耳を覆いたくなる断末魔のような絶叫とともに、辺りが血の臭いで汚染されていく。

お……おぁあ……おぉお

そして血に濡れた死者の腕がそこら中から大量に出現しハイ達を取り囲んでいく。

ズズズズズズズズ

ポニテ「まさか……このタイミングで……!」

夜の番人「お、おごぽぉっ!」

ぶじゅっ、ぐじゅぷっ!!

夜の番人の体が縦に真っ二つに裂けていく……。

レン「嘘……にゃ」

ズズズズ

そこから流れ出る地獄の臭いとともに、

ズズズズズズズズズ

   ?「――奪還? 何を言ってるのかなぁ。お姉ちゃんは、僕のものなんだよぉ?」

ブシャーーーーー!!

血しぶきの中から禍々しき者が生まれ出でる。

アッシュ「……フォーテ」

?改めフォーテ「ふふふ、お久しぶりだね。お兄ちゃん達。お姉ちゃんのお迎えついでに殺しに来てあげたよっ」

死と闇を纏い、髪を四つに分けて束に纏めた絶世の美少女がそこにいた。
美少女じゃないけど。



ハイ「嘘……なんで今ここに……? 今日はまだ……来ないはずじゃ?」

またもやガチキチヤンデレシスコン美少女男の娘、フォーテちゃん参上!


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

大っ変お待たせいたしました!
本日より再開していきたいと思います。あ、57の書き込みは私です。トリ付け忘れててすみません。

そして再開するわけなんですが、少し日が開いちゃって流れもあれだし、他のやつを見たいという声もあったので、先代勇者である大勇者の物語、

俺、勇者だけど魔王に求婚しにいく

を先にやっていきたいと思います。

今まで休んでしまった分を取り戻すべく、この一週間出来るだけ毎日来れたらなと思います(これない日があれば生暖かい目でなにとぞ……)。それでは投下していきます。



--火山--

ゴオオオオオ……

大剣士「くそ! 一体なんなんだこいつは……何をやってもすぐ回復してしまう!」

オオオオオオ

火の魔王「……」

灼熱のフィールドの真っ只中に、炎を纏う鳥亜人の少女がいた。

ざり

それに対峙するは五人の人間……。

しゅううぅう

大賢者「っ、傍にいるだけで回復力が奪われている……これではわずかなダメージでも致命傷になりうる。めんどくさい相手だな」

じゅっ、じゅじゅっ

大盗賊「そしてこの広範囲攻撃、いやスリップダメージ……このままじゃジリ貧ですね。どうするんです大勇者?」

大盗賊は筋肉質な大男に尋ねる。

大勇者「え? すまん、何も考えてない」

大盗賊「ですよねっ!」



--火山--

大剣士「……こいつに聞いても無駄だ。こいつはきっと拳でものを考えてる」

ジャキ

大剣士が大剣を構えて前に出る。

大剣士「大魔法使い、何かいい策は無いか? ワンパンしてくるような相手じゃないみたいだが、あまり時間は無いぞ」

大魔法使い「そうは言っても瞬間完全再生持ちへの有効な手は知らないわ……でもあいつの過去を見れば何かわかるかもしれない」

大魔法使いは一冊の本を取り出した。

大賢者「過去読みの書か……」

大盗賊「なるほど。つまり我々はあいつの毛を取ってくればいいんですね」

ざっ、ざっ

大剣士と大盗賊が火の魔王に向かっていく。



--火山--

大剣士「大賢者、大盗賊。俺が最初に行く。サポートしろ」

ダダダ!

大賢者「了解だ。だが前に出すぎるなよ? 危なくなったらすぐに戻って来るんだぞ?」

きぃん

大賢者は魔力を貯め始める。

大盗賊「承知しました」

じゃら

大盗賊は投げナイフの用意をする。

大勇者「俺は? 俺はどうしたらいいの大剣士?」

大剣士「知るか! リーダーが指示を仰ぐな! っ……お前は適当に大魔法使いを守っとけ!」

大勇者「わかった!」



--火山--

火の魔王「……」

ボオオォオ!!

大剣士たちの接近に伴い火の魔王は掌に魔力を集め、そして

ドバアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

大剣士たちを薙ぎ払うようにそれを放つ。

大賢者「ほら危ない! 水属性防御魔法レベル2!」

バシャアアアアン!

迫る炎を大賢者の魔法が防ぎきる。

大賢者(っと、やはりか。属性の相性というのもあるが、やつの攻撃能力自体低いようだ。状態異常などでじわりじわりと削るタイプと見た……しかし大剣士前に出過ぎじゃないだろうか。ひやひやする)

ダダダダダダ!

大剣士「はぁあああああああああ!!」

ダンッ!

跳躍する大剣士と魔力を纏って巨大化していく大剣。

大剣士「スキル、魔力斬り!」

ズバアアアアアアアアアアアアアアン!!



--火山--

火の魔王「……」

ボロロッ

周囲の魔力ごと叩き切られた火の魔王は、体がばらばらになって地面に落ちていく。
だが、

しゅんっ!

火の魔王「……」

それも一瞬で再生してしまう。

大剣士(再生に使う魔力を全て消滅させてしまえばいいと思ったが……これは簡単には削りきれない)

大盗賊「土属性生成魔法レベル4、小月!」

ブゥウン!

大盗賊は上空に小さな月を作り上げる。

大盗賊「更にスキル、身体強化・獣化、狼」

アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

大盗賊は狼の姿に変身した。



--火山--

シュタタタタタタ!!

火の魔王「……」

目にも止まらぬ高速移動で大盗賊は火の魔王を翻弄する。

ズガッ! ズガガッ!! ズガガガッ!!

大盗賊(やはり通常の攻撃ではほとんど意味が無い……)

ガブッ! ブチィッ!!

大盗賊は火の魔王の腕を噛み千切る。

火の魔王「……」


大盗賊(ならばやはり過去読みの書に頼るほかないですね)

シュタタッ

大盗賊は腕を咥えたまま走り、大魔法使いのもとに行く。

大魔法使い「よくやったわ。これであいつの過去がわかる」

大魔法使いは毛を一本取って本に挟んだ。



--誰かの過去--


11月14日
今日も変わらず素晴らしいぱいぱいをしていますね大魔法使いは。ほんと。
たゆんたゆんとプリンのように揺れていて思わず前かがみです。露出は少ないのになんでかエロいんですよねあの服装。狙ってやってるんでしょうねきっと。いけない人だなぁ。


大魔法使い「……」

大盗賊『どうしました? あいつの過去にヒントはありましたか?』

大魔法使い「……いや、間違えてあんたの毛を挟んじゃったみたい」

大盗賊『やれやれ、うっかりさんですね。うかつに仲間の過去を覗くものではありませんよ? まぁ私は見られて困るような過去は無いので問題ありませんが』


11月16日
やったー! これ大魔法使いのおぱんちゅだ! きゃほーい! ど、どうしましょう。狼に変身して嗅いでみましょうか……いや狼の嗅覚は人の数百倍、それはさすがに自殺行為……いや、うん。やらずに後悔するよりやって後悔です!! 土属性生成ま


大魔法使い「帰ったら話があるからね」

大盗賊『……やれやれ困りましたね。一人の女性とそういう関係になる気はないのですがね。だが女性に恥をかかせるのは紳士としてあるまじき行為、帰ったらちゃんと聞いてあげましょう』



--火山--

ぺらぺら……

大魔法使い「なるほど……貴女もやっぱり一度死んでいるのね」

ギィィィン

大魔法使いが魔力を練り始める。

火の魔王「」

それに反応した火の魔王が大魔法使いに視線を向けた。

大剣士「! 突破口が見えたか。大賢者、大盗賊! 俺達でこいつを足止めするぞ!!」

大賢者「あぁ! だが大剣士、一旦下がったらどうだ! 危ないことは大盗賊に任せておけ!」

大盗賊『わおーーーーん』

どがああああああああああああああああん!!



--火山--

ぱきぱきぱき……

大魔法使い「……」

大魔法使いの魔力が徐々に形を成していく……。

大勇者「ほう……」

それはまさに

バキィン!

銀の槍。

大魔法使い(私の推測が正しければ、きっとその槍はこんなものだったはず!)

大剣士(!?……大魔法使いめ……バカみたいに魔力を込めたな……これは俺達まで巻き込まれるか?)

大魔法使い「どこまで再現できたかわからない……でもこれならきっといけるはず!」

大賢者(知るだけでそれを魔法として再現してしまう……味方ながら恐ろしい才能だな。まぁ大剣士には劣るが)

10

--火山--

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

槍が攻撃態勢に入るとけたたましい音をあげる。

火の魔王「」

それを火の魔王はじっと見つめていた。

大魔法使い「受けよ! 呪いの槍いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

カッ!!

























 

11

--王都、酒場--

わいわいがやがや

客「それでは皆様方ー。今回も無事に魔王討伐を達成した大勇者パーティの功績を称えてーーーーーーーー」

客達「「「かんぱーーーーーーーーい!!!!」」」

がしゃあああん!!

大勇者「やーどうもどうも。みんなありがとう!」

わははははと笑いながら手を振る大勇者。

大剣士「く、今回お前ほとんど役に立って無かったじゃないか……」

大賢者「まったく……今回の勝利は実質大剣士の働きによるところが大きいというのに」

大魔法使い「はぁ、誰が倒したって同じだろ? 私達はパーティなんだから」

大盗賊「そうですよ。細かいことは気にしない気にしない。大きいものだけ気にしていきましょう」

ちらっちら大魔法使いの胸元を見ている大盗賊。

大剣士「魔王討伐が細かいことだと!?」

だんっ

大魔法使い「ほーらー。すぐかっかしないの。あんたほんと頭硬いんだからー」

大剣士「なんだと!? お前らが緩過ぎるだけなんだ!」

大賢者「その通りだ。大剣士は間違ってなどいない」

12

--王都、酒場--

マスター「ほい、追加のビールと食い物ね」

どん

大勇者「お、いつも悪いなマスター。うるさくしちまって」

マスター「なんの、こっちはそのおかげで儲かってるんだ。悪いことなんてあるかよ」

客「そうだそうだ、気兼ねなく飲みな勇者様よぉ!!」

ぎゃはははと騒ぐ外野。

マスター「でもよ、毎回こんなところで宴開いてていいのかい? 城でちゃんとしたのが用意されてんだろ?」

大勇者「俺は堅苦しいのよりこういう方が割りにあってんだ。それよりマスター、今日はあいついないの?」

マスター「ん? あぁ、あの娘なら」

がたん、ちりんちりーん

??「はぁ、はぁ……」

マスター「今来たよ」

??改めウェイトレス「はぁ、はぁ……ごっめーんマスター、遅れちゃったー」

ウェイトレスが汗をかきながら酒場に入ってきた。

13

--王都、酒場--

マスター「まったく、よりにもよってこんな日に遅刻だなんて困るよウェイトレスちゃん」

ウェイトレス「だからごめんってー。急いで準備するからさ」

大勇者「よっ、ウェイトレス。また遅刻か?」

ウェイトレス「よっ、大勇者。また遅刻って、私そんないつも遅刻してるわけじゃないんだからなー?」

ウェイトレスはにこやかに笑いながら酒場を横断していく。

客「遅いよウェイトレスちゃーん。ウェイトレスちゃんがいないと俺、ここの酒おいしく感じないんだからー」

ウェイトレス「あはは、ごめんねー」

マスター「おう、まずいっつーなら出ていきな」

客「う、嘘嘘冗談だってばー」

わははははは

ウェイトレス「あっと、そうそう」

ウェイトレスは歩みを止めて振り返る。

ウェイトレス「魔王討伐おめでとう」

大勇者「……おう!」

ずずー

大魔法使い「……」

大魔法使いは渋い顔で酒を飲んでいる。

14

--王都、酒場--

わいわいがやがや

ウェイトレス「へいおまちー!」

でんっ

ウェイトレスは山盛りの肉を大勇者達のテーブルに置く。

大剣士「む? 俺らはこんなの頼んでないぞ?」

ウェイトレス「これは私からのおごりなんだなー。魔王討伐祝いのねー」

客「なんだよウェイトレスちゃーん。俺らにもおごってくれよー」

ウェイトレス「そうだねー。おじさんたちも魔王を倒してきたらおごってあげるよー」

あははははは

大盗賊「なるほど、それならありがたく受け取るとしましょうか」

大剣士「く、物をもらうのに金銭を払わないのは……何だかすっきりしない」

大魔法使い「ほんと頭かったいなー……将来はげんぞ?」

大勇者「うめーうめー!」

大賢者「大剣士、肉ばかりではバランスが悪いぞ。ほらサラダを取ってきた。コレを食べろ」

15

--王都、酒場--

わいわいがやがや

大魔法使い「――やっぱり今回もそうだったよ。あの魔王も過去に一度死亡してて、そして何者かによって無理矢理甦させられていた……」

ごと

大剣士「……魔王達を影で操る存在、か……恐ろしい話だな」

大盗賊「本当にそんな奴がいるんでしょうか」

大賢者「魔導大老が作り出した過去読みの書が壊れていなければ、な」

大魔法使い「……」

大勇者「大魔法使い? どした?」

大魔法使い「あ、いや……なんでもないわ」

大魔法使いは慌ててジョッキに口を付けた。

大魔法使い(そして……今回の魔王も元々は……勇者だった……このことはまだみんなには言えない……言えるはずがない……)

ウェイトレス「……」

16

--王都、酒場--

大剣士「しかし今回で5体の魔王を倒したことになる。残すは鋼の魔王一体……」

大賢者「うむ。途方も無い戦いに思えたが……ついにここまで来たな」

大魔法使い「そもそもなんで6体も魔王がいるのかって話だけど」

大盗賊「でももうひとふんばりですよ」

大勇者「あぁ……これでやっと平和な世界が作れる」

大勇者の一言を噛み締める四人。

ウェイトレス「……」

かちゃん

ウェイトレス「でもさ……もうここらへんでやめにしない?」

ウェイトレスはそう切り出した。

17

--王都、酒場--

大剣士「何? どういうことだウェイトレス? 魔王達のいない安全な世界が欲しくないのか?」

ウェイトレス「……そういうことを言ってるんじゃないよ。確かに全部の魔王がいなくなった方が平和になるのかもしれない。でももう君たちは十分戦ったよ。魔王の勢力を6分の1にまでおいやった……後は他の人たちに任せて少しずつ最後の魔王を追い詰めていけばいい」

大賢者「……まるで我々が最後の魔王を倒してはいけないような言い草だな」

ウェイトレス「違うってば。魔王討伐がどんだけ危険なことなのか君たちは感覚が麻痺してるんだよ。本当ならいつパーティが全滅したっておかしくない敵なんだ。今まではなんとかなってきたけれど、次も大丈夫って保証は無い……私は……君たちを失いたくない」

客「……」

客2「……」

いつのまにか酒場は静まり返っていた。

大剣士「……お前は俺達の力を信じてなむぐっ」

大剣士の口が大勇者の手で塞がれた。

大勇者「――ならなおさらだ。俺達でも危険な相手を、他のやつらにやらせるわけにはいかないだろ?」

ウェイトレス「……う」

大勇者「大丈夫さ、俺達は負けない。誰一人欠けることなく、ちゃんと生きて帰ってくる」

大勇者はにこりと笑う。

だんっ

大勇者は机の上にあがる。

大勇者「ここに宣言する。俺達は必ずや全ての魔王を倒し尽くし、世界を平和にしてみせると!!」

18

--王都、酒場--

しーん……

大剣士「ふん、かっこつけマンめ」

大剣士はにやりと笑っていた。

大賢者「今更だな」

大賢者は大剣士が零した酒を拭いている。

大魔法使い「途中でやめるなんてかっこ悪いしね」

大魔法使いを髪の毛をくるくるしている。

大盗賊「それに倒した分だけ報酬がでますしね」

大盗賊はテーブルに乗ってる大魔法使いの胸をガン見している。

客「おうー! 世界を頼むぞ大勇者達ー!!」

客2「ちゃんと無事に帰ってこいよー!!」

大勇者「任せろー!!」

わー

ウェイトレス「……」

ウェイトレスは暫く沈黙し、

ウェイトレス「……はぁ。わかったわかった」

とため息をついた。

19

--王都、酒場--

わいわいがやがや

大賢者「大剣士そのくらいにしておけ。飲みすぎはよくないぞ。あとそろそろ九時になる。もう帰って寝る準備をせねば」

大剣士「えぇいいちいちうるさいやつだ! お前は俺の母様か!」

大魔法使い「うぃーひっく。ふん、何さ何さ何さ!」

大盗賊「大魔法使い。熱いでしょう? もう一つボタンをはずしてみたらどうでしょう? なんなら私が手伝いますよ」

わいわいがやがや



--王都、池--

すたすたすた

ウェイトレス「ふー。いい気持ちー」

大勇者「お前なー、飲みすぎだぞ? っていうかなんで店員が俺らより飲んでんだよ」

ウェイトレス「いーじゃんいーじゃんべつにー」

ウェイトレスは池の周りをくるくるとまわっている。

大勇者「おいおい。池に落っこちるぞー」

つるっ

ウェイトレス「あ」

大勇者「!」

だっ!

ばしゃっ!!

ウェイトレス「……あはは」

大勇者「あっぶねー……」

慌てて抱きとめた大勇者。ウェイトレスは片足が水につかる程度で助かった。

20

--王都、池--

ウェイトレス「やー、ごめんねーありがとー」

けらけらと笑いながら大勇者の頬をぺちぺちするウェイトレス。

大勇者「……」

ウェイトレス「あえ? 何? おこってんのー?」

大勇者「い、いや違う。そうじゃなくてな……」

大勇者は頭をかきながら視線を逸らして言う。

大勇者「さっきのことだけどな」

ウェイトレス「さっき? 魔王討伐?」

大勇者「そうだ。そ、それでな。もし魔王を倒し終わったら……お前に話があるんだ」

ウェイトレス「へ?」

大勇者「……は、話があるんだ」

大勇者の顔が赤いのは酒のせいではない。

ウェイトレス「……ふーん?」

大勇者「な、なんだよ!」

ウェイトレス「あはははは。はいはいわかりました。じゃあ……その時は酒場で待ってるよ」

ウェイトレスはしょうがなさそうに笑った。

というわけで復帰第一弾でした。うまくいけば今週中でけりがつくはず……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。早くもきつくなってきた第二段……

それでは投下していきます。

21

--王都--

大勇者「うし、じゃあ出発するぞ!」

大剣士、大賢者、大魔法使い、大盗賊「「「おうっ!」」」

マスター「一昨日帰ってきたばっかりじゃないか。もう少しゆっくりしていったらいいのに……」

大勇者「悪いなマスター。善は急げって言うだろ?」

大盗賊「緊張の糸が完全に切れてもいけないですしね」

大賢者「大剣士、ハンカチ持ったか? ティッシュはある?」

大剣士「だから母様か!」

ざり

ウェイトレス「ふぁあ。まぁ死なない程度に頑張ってきてねー」

寝巻き姿で見送りに現れたウェイトレス。

マスター「失うのは怖いとか言ってたわりには随分さばさばしてるねウェイトレスちゃん……」

22

--王都--

ウェイトレス「っと」

すたすたすた

大勇者「?」

ウェイトレス「ん、選別よ。朝早く起きて作ってあげたんだから感謝しなさい!」

そういって手渡してきたのは大きな包み……

大勇者「……ま、まさか」

ウェイトレス「そ、お弁当よ。あんたいっぱい食うからって、みんなのまで食べちゃダメだかんねー?」

大勇者「お、おおおお、おお」

滝のように汗を垂らしながらガクガクと震える大勇者。

大盗賊「は、はは……そ、そんな心のこもった弁当、私達にはもったいないですよ。ねぇ?」

大魔法使い「そ、そうよね。大勇者にここは譲ってあげるわ」

大勇者「!?」

大剣士「お、俺も……遠慮するぞ」

大賢者「大剣士の分の弁当は私が作ったのでいらぬ!」

マスター(果たして魔王のもとまでたどり着くことが出来るのか……)

23

--王都--

ざっ

大勇者「お」

聖騎士改め竜騎士「……」

大勇者「兄貴……なんだ、見送りに来てくれたのか?」

竜騎士「ばぁかめぇ……こぉれをわたしにぃぃぃ、きぃただぁけだぁあ」

ふぉんっ

そういうと竜騎士は巨大な骨のついた燻製肉を投げて渡す。

ぱしっ

竜騎士「親父殿からのぉ、選別だぁ……」

大勇者「おぉ、サンキュー! ドラゴンの燻製肉かこれ!」

大盗賊「ど、ドラゴン……? 竜種を食べるのですか?」

大勇者「実家ではいつも食ってたよ。好物なんだ」

大盗賊「生物の頂点である竜種をいつも食べていた……? 恐ろしい家庭環境のようですね……」

24

--王都--

竜騎士「話はぁそれだけだぁ……」

ざっ、ざっ

大勇者「ありがとな兄貴。わざわざ」

竜騎士「ふん。これで魔王討伐などというお遊びも終わりだぁぁ……。戻ったらみっちり鍛えてやぁるぅ、覚悟しておけぇい」

ざっ

大勇者「あぁ」

大剣士「く、魔王討伐がお遊びだと……? 相変わらずだなお前の兄貴は」

大勇者「まぁ、仕方ねぇよ。自分より弱い俺なんかが勇者に選ばれちまったんだから……。俺で勤まるんじゃあ、魔王討伐もたいしたことないって思ってるのさ」

大剣士(お前より強い奴など……そうはいないんだがな)

25

--草原--

ざっざっざっ……

大勇者「――でさぁ……これどうしよう……」

大勇者は手に持ったウェイトレスの弁当を持って振り返る。

スッ

みんなは無言で顔を逸らした。

大盗賊「私はお腹いっぱいなので……」

大魔法使い「同じく」

大剣士「う、受け取ったお前が責任を持って全部食え!」

大賢者「蘇生はしてやるぞ」

大勇者は禍々しいオーラを放つ弁当を見つめる。

大勇者「……ごくり」





--草原--

ぽたっ

大勇者「オオオォォオオ」

大盗賊「腐ってやがる……」

大魔法使い「……まさか食っただけで溶けるレベルとは思わなかったわ」

26

--鋼山--

がち、がちん

大勇者「凄いところだな……地面が鉄で出来てやがる」

大賢者「かつて空から落ちてきた巨大な何かがそのまま山になったというが……」

大魔法使い「一切植物が根付いて無い。まさに死の大地ね」

大剣士「……本当にこんな所に魔王がいるのか?」

大盗賊「仕入れた情報では銀色の蜘蛛のような化物がいるそうですよ。圧倒的戦闘力で、王国の42部隊を全滅させたそうです」

大剣士「……もしかすると今まで一番強い魔王なのかもしれないな」

がしゃん

大勇者「!」

ぷしゅー

山の天辺に人でない何かがいる。

??「kぞあうぇ8rくいはうrぐいえrg」

大剣士「……なるほど、奴がそうか」

??改め鋼の魔王「ぽpうぇいいあじょいhg」

四足歩行の蜘蛛型ロボット、鋼の魔王が現れた。

27

--鋼山--

じゃき

大剣士「よし、俺が先に行く」

大剣士が大剣を構えて進んでいく。

大勇者「ちょっ、お前いつもずるいぞ! 毎回最初に戦ってんじゃねぇかよ! 前回はよくわからんうちに終わっちまったし、俺だって戦いたいぞ!」

大剣士「えぇいうるさい! こういうのは有能なものが最初に」

じゃこっ

大勇者、大剣士「「!!」」

バルバルバルバルバル!!

大賢者「なっ」

ドガガガガガアアアアアアアアアアアアアン!!

鋼の魔王の銃口が一斉に火を吹いた。

鋼の魔王「……」

しゅぅうう……

大剣士「なんだ今の攻撃は……」

大勇者「速い……何かを飛ばしているようだが、弓よりも全然小さいぞ」

大盗賊「やられました……この二人は今の攻撃スピードについていけなかった……」

大盗賊の周りには大魔法使いと大賢者の死体が。

28

--鋼山--

大剣士「早くも二人死亡か……さすが魔王。先制で殺してくる」

大盗賊「先制……三番目の魔王の時が一番やばかったんでしたっけ。確か魔王を見ることなく大賢者以外死亡したんですよね」

大勇者「それに比べるとまだましだな」

ぱんっ

大勇者は不適な笑みを浮かべる。

大剣士「ち、こうなったら作戦もくそも無いな。各々好きにやるぞ」

大盗賊「腕がなりますね」

鋼の魔王「……」

がしゃん!

鋼の魔王の肩が開き、大きな砲塔が姿を現した。

大勇者「いくぞ!!」

29

--鋼山--

ばるるっ!

しゅばっ!!

鋼の魔王の射撃を避けながら接近する三人。

ちゅいんちいん!

大勇者「おららっ!」

右側から接近するのは大勇者。強化した拳で銃弾を弾く。

ぎぎぎん!!

大剣士「はぁああああ!」

左側から接近するのは大剣士。大剣で銃弾を防いでいる。

大盗賊「……」

残る大盗賊の姿は見えない。

大勇者「おっら!」

大勇者の拳が、

大剣士「ちえぇい!」

大剣士の大剣が

ドギイイイイイイイイイイイイイン!!

鋼の魔王の装甲を叩く。

30

--鋼山--

ジジッ、ジジジッ!

大勇者「! なんだこの感触!」

大剣士「衝撃が、流されてる!?」

どがぁあん!!

いきなり地面が爆発する。

大勇者(攻撃を流された? く、足場が崩れて)

大剣士(バランスが)

ジャコ

鋼の魔王の銃口が二人の顔に向けられる。

ジャカカカカッ!!

鋼の魔王「!」

しかしその全ての銃口にナイフが突き刺さった。

大盗賊「私のナイフは依然変わらず百発百中です」

31

--鋼山--

大勇者「だが防御が抜けない」

大剣士「どうするか」

大勇者「こういう時は」

大剣士「全力で叩くに限る」

大勇者「土属性攻撃力強化魔法、レベル4!」

ばきぃん!

大剣士「火属性攻撃力強化魔法、レベル4!」

ぼおおお!

大盗賊「……スマートじゃないですね」

大勇者「スキル、指パッチン百連撃!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!

大剣士「スキル、乱刃!!」

ズババババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!

大盗賊「ちょ」

どがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!

32

--鋼山--

大勇者(左右からの挟み撃ち……これならどうだよ)

大剣士(ふん、力を流す暇など、与えん)

ぼふぉ!

大勇者、大剣士「「!?」」

だが土煙の中から鋼の魔王が現れる。

がしゃぁあん!

大勇者「全くダメージが無いってわけじゃなさそうだが」

大剣士「大ダメージってほどでも無い……か」

しゅる

大盗賊「! 糸です! 避けて!」

しゅるるるるる!!

銀蜘蛛の体から出てきた細いワイヤーが三人を襲う。

しゅばばばばばばばば!!

大勇者と大剣士は高速で繰り出されるワイヤー攻撃をかろうじて避け続ける。

ぴぴっ

大勇者(つっ、あと一瞬注意が遅ければ)

大剣士(やられていた……!)

33

--鋼山--

ドンッ!!

大剣士「!」

鋼の魔王が跳躍する。そして巨大な作業用アームで、

ドガアアアアアアアアアアアアアン!!

大剣士を叩き潰す。

ぶしゅっ!

大剣士「ぐっ!!」

大剣で受け止めたものの、大剣士はその衝撃で腕から出血する。

大勇者「大剣士!」

がしゃん

助けようと寄ろうとした大勇者を

どがああああああああああん!!

バズーカで撃退する鋼の魔王。

大勇者「がはっ!!」

大盗賊「っっ! よくわからない武器のオンパレードですね」

34

--鋼山--

キュドドドドドドド!!

全方位に射撃する鋼の魔王。

チュチュチュチュチュン!!

大剣士「ぐっ、く!」(どいつもこいつも本当に化物だ……)

チュンチュン!

大勇者「づっ、いちち!」(だてに魔王と呼ばれてるわけじゃない……)

鋼の魔王「イw3うおあwhごあうぃえgじゃえ」

大盗賊「でもだからと言ってどうにも出来ないわけじゃない! スキル、透視眼!」

きらりん!

大盗賊(一番装甲が脆い部分……そこか!)

しゅかかっ!!

大盗賊の投げたナイフが鋼の魔王の間接部分に僅かに刺さる。

大盗賊「土属性同化魔法、レベル4!」

びききっ!

ナイフが刺さった部位が土のように変化していく。

35

--鋼山--

大盗賊「ナイフが刺さってる場所を一時的に脆くしています! 大剣士!!」

大剣士「あぁ!!」

ぼぉう!!

大剣士の体を炎が包む。

大剣士「奥義――」

その炎は徐々に横にずれていき、四つの分身となる。

じゃききっ

大剣士「五連スラッシュ」

ズバババババババーーー!!

四人の分身とともに強力な斬撃を放つ大剣士。

鋼の魔王「!」

びしっ、ばきいいいいいいいいいん!!

鋼の魔王の強固な外壁が剥がれ落ちた。

36

--鋼山--

大剣士(ち、全力の奥義でさえ、弱った部分を狙わなければダメージが通らないのか。俺もまだまだ甘い……)

大盗賊(動き続けている魔王の弱点をピンポイントで切り裂いた……こんなことが出来るのは世界広しと言えど大剣士しかいませんね)

大勇者「――よくやった」

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

魔力を溜め、仲間を信じ、その時を待っていた大勇者。

大勇者「奥義ッ!!」

装甲を破壊され、宙に浮かされてしまった鋼の魔王にそれを防ぐ手立ては無い。

大勇者「勇者パンチ」

ゴッ































        ッッッッッッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!

37

--鋼山--

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

正真正銘ただのパンチ。
だが大勇者が渾身の魔力を込めて繰り出すそれは、

ボボボボオッ!!

衝撃波で山すら吹き飛ばす。

鋼の魔王「ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」

ドガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

大勇者「……」

……しゅぅうう……

大剣士(ぐ、こいつ……相変わらずとんでもない威力だ……)

大盗賊(うーむ……)

ガシャァアン

大剣士(あれほどの威力なのに魔王はあまり遠くまで飛んでいって無いし)

大盗賊(衝撃のほとんどが内部にいったってことなんですかね? 恐ろしい……)

38

--鋼山--

バチッバチバチッ

鋼の魔王「おあ;、いrghjkっぉpふぁsdg」

大剣士「! まさか、あれを食らってまだ息があるのか?」

大盗賊「驚きですね……さすがに虫の息なんでしょうが……」

ガシュッ

大勇者「ん? なんか背中から出てきたぞ。赤い剣?」

鋼の魔王「zいksk……」

ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ、ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

それはミサイルに変形すると、白い煙をあげて空に向かっていった。

大勇者「……」

大剣士「……」

大盗賊「……なんでしょうアレ。なんかいやな気がするんですけど」

39

--鋼山--

大剣士「あれから魔力は感じない……だが今までもこいつは魔力とは違う攻撃手段を使っていた」

大勇者「ってーと、あれは最後のすかしっぺってやつか?」

大盗賊「最後のすかしっぺと言っても魔王のすかしっぺですからね。それがどんなものになるのか」

オオオオオオオオ……

大勇者「……まぁもう届かないしな。見届けるしかないか」

大剣士「! お前はいつもお気楽だな!」

大盗賊「なんでしょう。なんか本能的に凄いやっちまった感がするんですが、あれ」

三人は天へと上っていくそれを眺めていた。

40

--上空--

ばさっ、ばさっ

丁度その上空に巨大なドラゴンに乗った竜騎士がいた。

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

竜騎士「ふん……あの愚弟ぃめがぁ……いつも爪がぁあ、あむぁああいのだぁあ」

シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

竜騎士の目の前をミサイルが通過して更に上へと向かっていく。

竜騎士「スキル、大雷槍おおぉおおう!!!!」

バチバチバチッ!!

竜騎士は宇宙空間に到達したミサイル目掛けて雷を放つ。

ぴかっ



--鋼山--

大勇者「お? なんか爆発したぞ」

大剣士「……ふん、ただの花火だったということか。驚かせやがって」

大盗賊「拍子抜けですね。さぁ二人を回収して帰りますか」

大勇者「あぁ。これで……魔王は全部倒したんだ!」





--王都、酒場--

ぴくっ

ウェイトレス「」

がしゃぁん

ウェイトレスは持っていた料理の皿を落としてしまう。

マスター「どうしたんだいウェイトレスちゃん。君らしくも無い」

ウェイトレス「……はい」

マスター「……大丈夫かい? なんだか顔色がよくないみたいだけど」

ウェイトレス(……そう……全部……倒しちゃったんだね)

ズズ……

思ったより早く終われるのかもしれない……。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

魔王の一覧教えてくれ
忘れてる

脳筋以前は銀蜘蛛と茶肌と腹黒とヤミとウェイトレスは覚えてる
前回冒頭の火の魔王ってのは全然記憶にないわ

>>115
勝手に作った魔王の呼び名と特徴
○初代勇者(銀蜘)防御特化、核ミサイルを連射する土木用機械
○二代目勇者(桃鳥)回復特化、自動蘇生で蘇る不死鳥亜人
○三代目勇者(茶肌)スピード特化、戦闘民族で呪いの槍の使い手
○四代目勇者(腹黒)魔翌力特化、相手を生体爆弾にできる
○五代目勇者(ヤミ)バランス型?、メイド、番犬、ナビ子の主。エナジードレインで攻撃
○六代目勇者(蠅男)回避特化、回避するたび強くなるニート
○七代目勇者(ウェイトレス)技術特化?、歴代魔王を操る人形師
○八代目勇者(脳筋)攻撃特化、指パッチンで相手をぶっ飛ばす脳筋
○九代目勇者(勇者、魔王勇者)バランス型?、貧乳
○十代目勇者(蒼天の猫亜人)バランス型?、地球から魔翌力を吸い上げステータス上昇

>>117
火の魔王はフェニックスの桃鳥でしょ

こんばんは遅くなりました……きびしい!
あ、魔王は118さんが作ってくださったのでばっちしです! ありがとうございます!!
詳しいエピソード付きのはまた今度にでも書きたいと思います。

それでは投下していきます。

41

--草原--

ざっ、ざっ

大賢者「くっ! この大賢者、一生の不覚! あぁもあっさり死んでしまうとは情け無い!」

大剣士「気に病むな。魔王はどいつもこいつも化け物だった。誰かが生き残って勝てればそれでいい」

大魔法使い「ったく、後衛はああいうのに弱いんだからちゃんと守ってよね!」

大勇者「う、すまん……」

大盗賊「やれやれ」

大勇者一行は傷を癒しながら王都へと向かっていた。

大盗賊「でもこれで全ての魔王を倒したのですね……私達が望んだ平和な世界がついに……」

大勇者「あぁ……ん?」

オオオオオオ……

大剣士「なんだあの亜人の軍勢は……王都に向かっているのか?」

大魔法使い「凄い数……それにあの様子……ただごとじゃないわね」

亜人達は各々武器を持っていた。

大勇者「……」

42

--草原--

ズンッ、ズンッ

亜人王「……」

大勇者「先頭を歩いてるのはあの亜人王か……よし、ちょっと話を聞いてくる」



大魔法使い「う、嘘でしょ!? 何を聞きに行くってのよ! 絶対あれ戦争しにいくとかそういうレベルよ? ぱっと言って話なんかしてもらえる雰囲気じゃない!」

大勇者「雰囲気とかは知らん。だから行って来る」

大剣士「あれの行き先は王国だろうからな、俺らに関係ないことじゃあない。俺も行くぞ」

ざっ、ざっ、ざっ

大魔法使い「あ、あの空気読めないバカ二人はぁ~~!!」

大賢者「大剣士はバカではない。ピュアなんだ」

大魔法使い「うっさい過保護!」

43

--草原--

ざっ、ざっ

烏男「む、なんだ貴様らクァー。そこで止まれクァー」

大勇者「俺らは大勇者パーティだ。敵意は無い。ただ亜人王と話をしにきたんだ」

ざわ

烏男「だ、大勇者!?……ほ、本物なのクァー?」

二人の顔を観察する烏男。

大剣士「ち、俺らの顔を知らんのか……全部の魔王を討伐したというのにこの程度の知名度とはな」

大勇者「仕方ねぇさ。しらねぇ人はしらねぇもんだ……。じゃあ何を見せたら俺が大勇者だって信用してくれる?」

烏男「何って……」

大剣士「ふん、手っ取り早いのはこれだろう」

ジャキッ

大剣士は大剣に手を伸ばす。

烏男「くあっっ!?」

大勇者「あ、なるほど、魔王を倒した実力を見せれば納得してくれるかもな! よぉし」

大勇者は肩を回す。



大魔法使い「遠くて聞こえないけど、絶対あいつらなにかしらの理由つけて戦うわよ」

大盗賊「……」

44

--草原--

その時辺りが暗くなる。

ひゅぅううん、ズゥン!!

大勇者「!」

大剣士「なっ!? 先頭にいたはずじゃ」

空から3メートルもある亜人王が落ちてきた。

ぱらぱら……

亜人王「……」

烏男「あ、亜人王様……」

大勇者(こんな巨体なのにジャンプして来たのか……)

大剣士(あの図体で接近に気づかなかったぞ……)

ぶふぉーーーー!!

亜人王が強烈な鼻息を出す。

亜人王「下がっていろ。こいつらは大勇者とその従者だ。間違いない」

烏男「!? は、はっ!」

大剣士「!? 従者だと!? ふざけるな! 俺は」

亜人王「一体何の用だ、小僧よ……」

45

--草原--

大勇者「――まぁ用ってもんじゃないんだ。ただこの集団はどこに何をしに行くのかと思ってさ」

亜人王「どこに、何を、だと?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

大剣士(! こいつ殺気を……)

がちゃがちゃ

周囲の亜人達も武器を構えだした。

亜人王「……我らは不当に殺された我が同胞の……無念を晴らしに行くのだ!!」

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

亜人王が発するプレッシャーが、周囲にいるものを吹き飛ばす。

ざざざー!

大剣士「ぐ! いきなり地雷を踏んだか……? だが……同胞の無念だと……?」

大勇者「……」

亜人王「む」

唯一吹き飛ばされなかった大勇者はその場に踏みとどまっている。

46

--草原--

大勇者「不当に殺されたってのは、人間にか?」

亜人王「そうだ。だから復讐しにいくのだ。それが自然の摂理だ」

大勇者「ん……何があったのか詳しく教えちゃくれないか?」

穏便にしようと優しく話しかけるのだが、

亜人王「断る! 貴様ら人間どもと話すことなど、もう何も無い!!」

ドォオオオン!!

亜人王の強烈な魔力が吹き荒れる。

ぱらぱら……

大勇者「……そっか。どうも怒りで我を忘れているらしいな」

亜人王「ぬ?」

大勇者「今のあんたらが王国に向かえばたくさんの死人が出るだろう……それを勇者である俺が黙って見てるわけにはいかない」

亜人王「ならどうする小僧……我らを止めてみるか?」

大勇者「あぁ」

亜人王「!!」

大勇者「俺は頭がまわらねぇからな。どうやりゃ上手くことが収まるかなんてわかんねぇ。だからこの体で出来ることをやるだけだ」

亜人王「……貴様に何が出来るというのだ」

大勇者「その怒りの捌け口になってやるよ。それで少しは頭も冷えるだ、ろっ!」

ドゴオオオオン!!

烏亜人「!?」

大勇者は亜人王の腹部をぶん殴った。

47

--草原--

大剣士「な」

烏亜人「な……」

大魔法使い「な、何やってんだあのバカはーーーーーーーーーーーーーー!!」

岩陰に隠れて様子を伺っていた大魔法使いはつい大声で叫んでしまう。

大盗賊「あ、亜人王に喧嘩を売った!? ある意味魔王クラスの戦闘力を持ってる人ですよ亜人王は!?」

大賢者「ち、サポートするぞ大剣士!」

ひゅおおおぉお……

大勇者「……かってぇな」

ぶちっ

亜人王「」

亜人王の怒りが頂点に達した。

亜人王「ぱおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!」

どがあああああああああああああああああああああああああん!!

亜人王の拳が大勇者を吹き飛ばす。

大勇者「がはっ!?」

どおおおおおおおおおおおおおおん!!

48

--草原--

大剣士「この馬鹿者が!……だが、その案乗ったぞ!」

ジャキィン!!

大剣士も大剣を構えて亜人王に向かおうとするのだが、

烏男「き、きさまらぁ! 王に対してなんという狼藉をくあああああああああああ!!」

大剣士「!」

ガキガキガキイイイイイン!!

周囲にいた亜人の兵士達が大剣士に一斉に襲い掛かった。

ガキィン!

大剣士「く! これでは亜人王のもとにいけんではないか!」

大賢者「大剣士ーー!! 今助けるからなーーーー!! 水属性範囲攻撃魔法レベル4!!」

どばしゃあああああああん!!

狼亜人「ぐあはああー!!」

烏亜人「他の仲間くあぁ!? 己人間め! だまし討ちとは卑怯くあぁ!」

大魔法使い「あぁああもうううううう!!」

49

--草原--

ずぅん、ずぅん、ずぅん!!

亜人王「ふーっ! ふーっ!」

大勇者「がはっ……効いたー……こんな一撃久しぶりだぜ」

岩にうちつけられて起き上がったばかりの大勇者に迫る亜人王。

ずんずんずんずんっ!!

亜人王「人間めぇ、人間如きがぁあ!!」

ドガァアアアアアアアアアアアアアン!!

振り下ろされた拳を間一髪で避ける大勇者。

大勇者「よっぽど頭に血がのぼってるみたいだなぁ王様!」

どがぁあん!!

大勇者は亜人王の脛を全力で蹴るのだが、

ギロッ

大勇者「うそ、効かないのか?」

どがああああああああああああああああああああああああああん!!

50

--草原--

わーわー!!

大魔法使い「うーわー……もうなんか戦争みたいになっちゃってるじゃないのさ……」

大盗賊「こっちの人数はたった三人ですけどね」

わーわー!!

大剣士「俺が世界最強の剣士、大剣士様だ! 斬られたいやつからかかってくるがいい!」

ずばぁ!!

大魔法使い「……ただ暴れたいだけだろあのバカどもは……」

猫亜人「あ! まだあそこに仲間が隠れてるにゃ!」

兎亜人「全員とっつかまえて拷問した後縛り首にしてやるぴょん!」

大盗賊「あちゃ……見つかってしまいましたね。どうします?」

わーわー!!

大魔法使い「~~っ」

がばっ!

大魔法使いは立ち上がる。

大魔法使い「……もうしらん!」

ぎゅいいいん!!

大魔法使いの両の掌に氷の魔力が集められる。

51

--草原--

バキャキャキャキャキャーーーーーーン!!

猫亜人「にゃっ!? 一瞬で草原を凍らせちゃったにゃ!」

兎亜人「人間のくせになんて魔力だぴょん!」

大魔法使い「あっはっはっはっ、かかってこーい!」

ひゅーどーん! ばきばきぃん! どががー!

四方八方に強力な魔法を連射する大魔法使い。

大盗賊「やれやれ……」(いくら亜人の基本スペックが高いといえど、魔王と六度も戦って生き残った我々を舐め過ぎですよ)



どがあああああん! どががぁああああん!!

大勇者「ごふっ!!」

亜人王「ぱおおおおおおおおおおおおおおおおん!!」

速く重い攻撃を幾度と無く繰り出す亜人王。さすがの大勇者も防戦一方に。

大勇者「はぁ、はぁ……いいね、なんていうか好感が持てるよ。魔王はどいつもこいつも拳で戦うような奴じゃなかったからさ、あんたの拳には魂が篭ってるっていうか! げはっ!!」

52

--草原--

亜人王「ふーっ! ふーっ……小僧……」

自分の全力の攻撃を大勇者は耐えている。亜人王は驚きを隠しきれない。

大勇者「? どうした、殴り疲れたのか? なら」

びりびりぃ

大勇者はぼろぼろになった上半身の服を破り捨てる。

大勇者「今度は俺の番だ!!」

ひゅっ!

大勇者は跳躍し、

大勇者「っらぁああ!!」

ドゴオオオオオオオオオオン!!

亜人王「っっ!!」

亜人王の顔面を殴った。

ズズズッ

ほんの少しだけ亜人王はずり下がる。

53

--草原--

亜人王「小僧ッ……」

大勇者「おおおおおおおおおおおおおお!! スキル、剛拳百連撃!!」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!

亜人王「がっ! がぐあ!!」

指パッチンの数百倍の威力のある剛拳を雨霰と放つ大勇者。

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!

亜人王「がっ、が、がああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガガガッガガガガッッッッガガ、ガガガガガッガガガガ! ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!!!!!

亜人王「っ!」

ゆらっ

大勇者「」

どずううううううううん!!

亜人王が尻餅をつく。

54

--草原--

大勇者「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

亜人王「ふーっ、ふーっ、ふーっ」

大勇者と亜人王は睨みあっている。

ずずぅん

亜人王「人間の分際で……怒りの捌け口になってやるだと……?」

大勇者「なんだ? 何かおかしいか?」

亜人王「うぬぼれるな!」

どがぁああん!!

大勇者「ッッッッ!!!!」

亜人王の拳が大勇者のガードごと打ち崩す。

亜人王「貴様程度の矮小な存在で我らの怒りを受け止めきれるものか!!」

大勇者「はぁっ、はぁっ……」




  「ならぁ……二人ならぁ、どうだぁ?」

55

--草原--

亜人王「む」

ひゅうううううううう、どんっ!!

上空のドラゴンから飛び降りてきたのは、竜騎士。

ぱらぱら

竜騎士「むぅぁあったくうう……お前といううやつぅはぁ……道草をせずにかえるぅぅこともできんのかぁ……」

大勇者「あ、兄貴……なんでここに?」

竜騎士「……なぁにぃ、散歩をしておったぁだけのことよぉ……」

大勇者「実家からここかなり遠い気がするんだが」

竜騎士「しゃあああらああぁあっぷううう!!」

鼠亜人「あ、亜人王様を狼藉者から守るでちゅー!」

わーわー!!

集まってくる亜人達。

大勇者「うお。この数はちとめんどくさいな……兄貴、こいつらの相手してやってくれないか? 俺亜人王と話(決闘)があるし」

竜騎士「な、なんだとぉ!? お前は実のあぁあにぃいを、便利に使おうぅってかぁああ?」

56

--草原--

鼠亜人「仕留めるでちゅよー! へけっ!」

わーーーーー!!

亜人王「やめよ」

ぴたっ

亜人の群れが、亜人王の一言で停止する。

亜人王「人間が一匹や二匹増えたところで同じこと……この程度に他のものの手を煩わせるわけにはいかん」

鼠亜人「で、ですが亜人王様! 万が一が」

亜人王「お前達の力を借りねばこの我が負けるとでも言うのか!」

ビビクッ!!

鼠亜人「そ、そんなことは……」

亜人王「ならば手を出すな。貴様らは他の人間どもの相手をしていろ」

鼠亜人「は……、はっ!」

竜騎士「ふむぅ……なめられたものだなぁあ……」

大勇者「いや、てか兄貴もどっか行ってくれ。これは俺と亜人王の問題だから」

竜騎士「だからなんでそんなこと言っちゃうのぉおん!!」

57

--草原--

竜騎士「未熟なりぃ我が愚弟よぉ……魔王六体を倒したといえどぉ、まだケツが青いと見えるぅぅ……」

大勇者「な、なんだよ……あれ? てかまだ六体目倒したことは公表されてないはずなんだけどなんで知って」

竜騎士「とおにかああああくうう!……やつはぁ、お前一人では敵う相手ではぁないぃ……」

大勇者「……いや、やってみなきゃわからんだろ」

竜騎士「だからまだケツがブルゥだと言うのだぁ……敵の実力も計れんようではなぁあ」

竜騎士は静かに汗を垂らしていた。

大勇者(!! あの傲慢で滅茶苦茶強い兄貴が汗を……?)

竜騎士「真に強いものはぁ……敵の実力を見極める力もぉ高いのだぁ……何事もぉ死んだらそこまでぇなのだからなぁ……」

大勇者「……」

ずぅん!!

亜人王「ふーっ! ふーっ!」

竜騎士「やつはぁ、現世界最強の男ぉ……我ら兄弟ぃ二人がかりでかかっても勝てるかぁわからんのだぁ」

58

--草原--

大勇者「……え、まじ?」

竜騎士「まぁじぃ……」

大勇者「……頑張ればなんとかいけるかなぁって思ってたんだけどな。ちぇ、傷つくな」

亜人王「くだらぬおしゃべりぃぃはあぁ、もうすんんだかぁああああ?」

大勇者「亜人王、兄貴の喋り方うつってるぞ」

竜騎士「我はもとよりぃぃお喋りをしにきたのではなぁあいいい……ともかぁくぅ……世界最強の称号はぁ、今日限りでお前のものではぁ……無くなるのだぁ」

竜騎士が構える。

大勇者「!!」(まさか兄貴、二人がかりで倒して堂々と世界最強を名乗る気なんじゃ!?)

亜人王「ふん……我にここまでほざいたのは貴様らが初めてだ」

ずんっ!!

亜人王が本気になる。

亜人王「来い。格の違いを見せてやる」

59

--草原--

ばきゃぁあん!!

大魔法使い「あー、疲れる! もういつまでたっても終わんないじゃないのさ! どんだけいるのよこいつらー!」

どしゅどしゅ!

大盗賊「戦える亜人のほとんどを連れてきてるようですからね。ほんと戦争を起こしに来たんでしょうか」

大魔法使い「……それならなんとしても止めなくちゃだけど」

どがぁあん!! どがああああああああああああああああああああああん!!

大魔法使い「! なんだか凄い闘いになって……って、あれ竜騎士いんじゃん!! なんで!?」

大魔法使いは亜人王と戦う竜騎士の姿を確認する。

どどどどどどおおん! どがああああああああああああああああん!! ばりばりいいいいい!!

大剣士「! さすがだな……あの亜人王相手にあそこまで戦えるとは……」

大賢者「これが史上最年少で五柱候補になった人間……」

どがああああああああああああああああん!!

竜騎士「んんんんんんぶるるぅぅぅぅぅぅああああああああぁあああああぁぁぁぁぁ!!!!」

60

--草原--

竜騎士「おおおおおおおお!!」

どがががががっ!! がががっ!!

亜人王「ぬぅ!!」(こいつ……中々やりおる)

竜騎士は速い殴打と隙をカバーする雷魔法で亜人王に反撃の暇を与えない。

大勇者「!」(やっぱり強いぞ兄貴! 二人がかりじゃなきゃ勝てないって言ってたけど、全然一人でも通じて)

ぼっ!

竜騎士「」

その攻撃を全て跳ね除けて亜人王は張り手を繰り出した。

どおおん!!

竜騎士「っ!」

ずざざー

大勇者「!……あれだけ最善の攻撃を与え続けたのに……」

ずぅん!!

亜人王「だが、所詮人間風情……種族の差は越えられん!!」

竜騎士「……ふむぅ……やはり最強とはこうではなくてはなぁ……」

ちなみに
大勇者→勇者募集でいうところの魔王
大剣士→勇者募集でいうところの王様
大賢者→勇者募集でいうところの大賢者
大魔法使い→勇者募集でいうところのサキュバス
大盗賊→勇者募集でいうところのワーウルフ
となっています。



それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

あばばばば

それでは投下していきます

61

--草原--

わーわー!

大剣士「しかし、王国の目と鼻の先でこんなことになるとは……この騒ぎに気づいて兵士が出てきたらまずいな」

大賢者「それなら心配いらないぞ大剣士。既に結界を張ってある。外からはこれを認識できないだろう」

大剣士「!……ふん、いい働きだ」

大賢者「当然だ。お前の片腕なのだから」



わーわー!

ぽたっぽたぽたっ

竜騎士「ぶるぅうああぁ……」

大勇者「はーっ、はーっ……ははは」

亜人王「……何がおかしい」

大勇者と竜騎士は血だらけの泥だらけ。だが

大勇者「食物連鎖の頂点の竜より象の方が強いなんて、変な話だなと思ってさ」

大勇者は不適に笑う。

62

--草原--

竜騎士「竜は最強ぉぉうではあるがぁ極めようとしないぃぃ。最強であるがゆえにそれ以上を……求めないぃぃ。極めようとする力は人特有のものだぁ……だからこの亜人王が竜より強かったとしてもぉぉおかしな話ではないぃ」

ぴっ

竜騎士は折れた鼻を直し、血を飛ばす。

大勇者「なるほどな……けどいいもんだな」

竜騎士「……何がだ」

大勇者「兄貴と肩を並べて戦うのも。なんだかんだで初めてだからな」

竜騎士「……ふん」

ずぅん!

亜人王「くだらぬ! とっとと死ねぇい!!」

どがぁああん!!

亜人王の攻撃を二人は紙一重で避ける。

亜人王「!」

竜騎士「はぁあ!!」

大勇者「おぉお!!」

ドドドドン!!!!

両サイドからのボディブローが亜人王を襲う。

亜人王「がっ!」

63

--草原--

亜人王(こいつら、あれだけ痛めつけてやったのに、動きがよくなっている……?)

竜騎士(愚弟も会得していたかぁ……我が一族が得意とするスキル、超逆境!)

フォン

亜人王「!」(動きがとらえられない? なんなんだ、この残像を帯びた動きは)

ススススススススス……

亜人王(あれだけ我の攻撃を受けたのだ。立っているのがやっとのはず……なのに、なのに)

ふぉん、ふぉふぉふぉふぉん

亜人王の攻撃を全てかわしていく大勇者。

大勇者「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

どごっ!!

亜人王「ッッッ!!」

大勇者の拳が亜人王の腹部を叩く。

亜人王「ぐはぁ!!」

その時、初めて亜人王は血を吐いた。

64

--草原--

亜人王(なんなのだこれは)

ふぉんふぉん

大勇者と竜騎士が亜人王の攻撃を避け続ける。

竜騎士「はぁああ!!」

どがぁあん!!

亜人王「ぐぬぅ!」

大勇者「うおおおりゃああ!!」

どごおおおん!!

亜人王「がはっ!!」

ヤモリ亜人「あ、亜人王様が押されている!!」

亜人王(あと一撃、あと一撃与えれば殺せるというのに、なぜ当たらぬのだ!)

竜騎士「このスキルは武の真髄。今の我らを」

大勇者「荒れた心で捕らえることはできん」

どぎゃああああああん!!

二人の拳が亜人王を吹き飛ばす。

65

--草原--

びしゃしゃっ

亜人王「……」

大勇者「……」

竜騎士「……」

亜人王「荒れた心では……捉えられぬ……か」

大勇者「あぁ、自分を見失っているものには絶対に負けない」

亜人王は大勇者の眼を見続けている。

大勇者「……報復をしにいくと言っていたな」

亜人王「……」

大勇者「そりゃ……全部の人間がいいやつなんだと言いたいわけじゃない。中には悪いやつもいる……だからきっと、あんたたちに報復されるようなことをやったやつがいるんだろう」

亜人王「……」

大勇者「でもまだ早いだろ? 戦争するには。まずは話し合いをしようぜ」

亜人王「……人間と話すことなどない。もうずっと昔から我らは耐え忍んできたのだ」

66

--草原--

大勇者「どうしても戦うっていうのか? どちらにも死人がたくさん出るんだぞ? 全く関係無い人達まで巻き込まれるんだぞ」

亜人王「……」

ぼぉん!!

亜人王の繰り出す拳を避ける大勇者。

大勇者「人間も亜人も根っこは同じ人だ。殺し合いはすべきじゃない」

亜人王「だが人間は我らを人とは思わないではないか!! その道理は通じぬぞ!!」

どがぁあああん!!

亜人王のかかと落しが地面を砕く。

大勇者「っ、俺らは違う。そんなこと思ってねぇ! 信じろ!」

亜人王「信じられぬ! たとえそうだとしても他の人間はそうではない!」

どがああん!!

大勇者「なら変えてみせるさ! 俺は……勇者だ!!」

ばきぃっ!!

大勇者は亜人王の顔面を殴った。

大勇者「みんなが幸せになるために邪魔なものを、全部この拳でぶっ飛ばしてやる」

67

--草原--

ずずぅん!!

竜騎士(……信じろといいつつぶん殴るあほがどこにいるぅうう)

大勇者「はぁ、はぁっ、はぁっ……」

ぽたぽた……

竜騎士(む、さすがに大勇者の出血が多い。そろそろ限界かぁ)

ぐぐぐ……

竜騎士「! まだ起き上がるかぁ……さすがにタフすぎるぞぉ……」

亜人王「ふぅ……ふぅ……」(なぜだ。やつに怒りをぶつける度に、やつの拳で殴られる度に、怒りが消えていく……)

大勇者「人を守る勇者として、あんたたちをここから先に行かせることはできん……王国のやつらのためにも、あんたたちのためにも。そのためなら俺達は……全力で邪魔をするぞ」

亜人王「……」

ざっ……

そこに大剣士が現れる。

大剣士「ここは引いてくれ亜人王。引いてくれれば後日、公式的に話をする場所を設ける」

亜人王「……お前は?」

大剣士「俺は王国の第一王子、大剣士だ。それくらいどうにかできる力はある」

亜人王「……」

68

--草原--

亜人王「……その身分と約束をどうやって信じさせる?」

大剣士「信じてもらうしかない」

亜人王「……」

亜人王はボロボロになった大勇者の顔を見る。

亜人王「……それを言うために、この闘いをはじめたのか?」

大勇者「?」

大剣士「あぁ、疲弊でもしなけりゃ、俺達の話なんか聞いてくれなかっただろう?」

亜人王「」

大勇者「う」

がくっ

大勇者は膝をつく。

竜騎士「ぐ、血を流しすぎだ馬鹿者がぁ。コレを食えぇ。竜胆丸だ」

大勇者「あぁ、悪いな兄貴」

亜人王は辺りを見回した。

見たところ死亡しているものはいない。全て戦闘不能に、もしくは疲弊させられているだけのようだった。

亜人王「……馬鹿者だ」

69

--草原--

ずぅん

亜人王は

ずぅんずぅん

王国とは真逆の方向に歩き出した。

大勇者「亜人王……」

亜人王「今日はもう疲れてしまった。戦うには休養を取らねばならぬ」

ずぅんずぅん

亜人王「……話し合う気があるのなら、それまでに場を用意しろ」

大剣士「! わかった。我が血にかけて誓おう」

ずぅん

亜人王「……ふ……皆のものぉおおーーー!! 撤収だぁああああああああああ!!」

亜人王の呼びかけに反応し、亜人達は彼について歩き出した。



大魔法使い「……終わったの?」

70

--王国、東の問--

門番「!? だ、大勇者様方じゃないですか!? だだだ大丈夫なんですか!?」

大勇者「あぁ、ちょっとね。裏ボスにうっかり遭遇しちゃって」

門番「と、ともかく王都へとお連れします! こちらの馬にお乗りください!」

わーわー

大剣士「? やけに騒がしいな。何かあったのか?」

門番「何があったかじゃないですよ!! 今王国全土で大騒ぎになっているんですよ! それもこれも大勇者様一行が、全ての魔王を倒してくださったから!!」

ぎぃいい

大きな門を開くと

わーーーーー!!

門番「歓喜です!! 王国のみんなが!!」

花が舞った。

71

--王国、東の町--

わーきゃー!

大勇者「あー……そういや魔王倒したんだった。すげぇ闘いしてたから忘れてた」

大剣士「忘れんなよ!」

そばかす娘「きゃー大勇者様ー!! ありがとーーーー!!」

大工のオヤジ「よくやってくれたなーーー!!」

わーきゃー!!

国中で花が舞い、音楽が奏でられ、人々の笑顔でいっぱいだった。

たたたた

肉屋のおばちゃん「大勇者ちゃん! うちの肉好きだったろ!? これ食べておくれよ!!」

警護兵「ちょっ、大勇者様は疲れてるんだ! 近づくんじゃない!」

大勇者「やー、ありがとうおばちゃん。あぐ。あーうめぇ!」

わーきゃー!!

剣豪改め少年剣士「……本当に、全部の魔王を倒してきちゃったっていうのか……?」

少年剣士が人ごみの中から大勇者達を見ている。

ぱからっぱからっ

大剣士「……」

少年剣士が憧れのまなざしで見ているのは大剣士。

少年剣士「……く、俺もいつかあの人みたいになりたい……!!」

72

--王国、東の町--

ぱからっぱからっ

大魔法使い「う~……正直このパレードみたいなの疲れるわぁ。あんなに戦った後だし……」

警護兵「あれ? 伝書鳩の報告だと四日前に魔王を倒されたと聞きましたが」

大魔法使い「その後にとんでもないのとやりあったのよ。まったく……あれの後処理もしなきゃならないし、魔王を倒したってのにやること山積みね」

大盗賊「何も無いよりはいいではないですか。勇者家業、魔王いなけりゃただのニート、なんてことわざもあるくらいですし」

大魔法使い「一生遊んで暮らせるくらいの褒賞金は出るでしょう? ニートでいいじゃないのさ。この後はゆっくり暮らしたいわー」

大剣士「たるんでる! これだから一般庶民は……! 俺はむしろこれからだぞ? 魔王討伐はスタート地点だ。俺は父様の跡をつぎ、世界をよりよくしていかねばならないのだから」

大魔法使い「はいはい、頭の硬い理想主義の正義の味方さん、よろしく頼むわ~」

大剣士「きさま!」

大賢者(しかしこれで大剣士に箔が付いた。第二王子や第三王子が王位継承にからむことはもう無いだろう……)

73

--王国、東の町--

ぱからっ、ぱからっ

大魔法使い「……ねぇ~、ちょっとちょっとー」

警護兵「あ、はい。なんでしょうか?」

大魔法使い「さっきから同じところ通ってない? 王都に繋がる橋はそっちだよ? もしかして道わからないとか?」

警護兵「いえ、そういうことではないのです。ただ王都側から連絡が来なくて……」

大剣士「? 王都から連絡が来ない? 我々が帰って来たことを父様達は知らないということか?」

警護兵「それはお伝えしてあります。ただ今日に限ってあちらの兵と連絡が……おかしいなぁ……」

大勇者「んー……なぁ、俺腹減ったし行きたいところあるから橋渡ってくんない?」

警護兵「う……でも連絡がないと、その」

大賢者「責任は大勇者が持つ。第一こんなめでたい日にこんなことで罰を与えたりはせんさ」

警護兵「……それもそうですね。わかりました。それではこのままお連れいたします」

ぱからっ、ぱからっ

74

--王都--

ひゅぅうううぅ……

大勇者「……なんだ? なんだか随分活気がないな?」

大魔法使い「ほんとほんと。魔王を倒してきたっていうのに失礼しちゃう……あ」

大勇者「あ?」

大魔法使い(なるほど……これどっきりってやつね? まぁ六回とも同じような祝い方じゃ芸が無いものね。正直飽きてきてたし)

警護兵「? おかしいな……大勇者様、少し兵舎を見てきてもよろしいでしょうか。すぐ近くにあるので」

大勇者「あぁ、いいよ」

警護兵「ではすぐにもどってまいりますので。ここで待っていてくださいね? はいやっ!」

ばからっ! ばからっ!

大剣士「……いまいちわかってないやつだな。別に先導者も警護も俺達にはいらんというのに」

大賢者「あれも仕事なのだ。そう言ってやるな」

大魔法使い「……」

大魔法使いがもじもじしている。

75

--王都--

大魔法使い(! そういえばここらへんにあったわよね、確か)

すたっ

大魔法使いは馬から飛び降りる。

大魔法使い「ちょっと私もそこらへん見てくるねー」

大盗賊「……何か気になることでもあったのですか? どれ、私も同行しましょう」

すたっ

大魔法使い「や、いいから。私一人で行きたいから。ついて来なくていいから」

大盗賊「何をおっしゃいますやら水臭い。いやアンモニア臭い。仲間じゃないですか、私も行きますよ」

大魔法使い「……あんたわかってて言ってんな?」

大盗賊「何がです? 小刻みに太ももを揺らしているのと何か関係しているのですかー?」

わざとらしく?的な顔をする大盗賊。

大魔法使い「……わぁーったわよ。ちょっと……イレに行ってきたいのよ」

大盗賊「ん? なんです? どこに行きたいですって? え?」

大魔法使い「ト……レよ」

大盗賊「トレ? どこです? ちゃんとはっきりと私のこの耳でも聞こえるような」

大魔法使い「トイレに行きたいって言ってんでしょおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ばつん!

大魔法使いは声に魔力を乗せたため、至近距離にいた大盗賊の鼓膜が破れた。

76

--王都--

すたすたすた!

大魔法使い「全く、ふざけたやつねあいつは! 外見は紳士ぶってるくせになんでこう!……しかしほんと静かね。あれほどの大声出したのに誰も出てこないなんて」

大魔法使いは窓から家の中を覗く。そこには椅子に座っている老夫婦の姿が見えた。

大魔法使い「いないわけじゃないのよね……ほんと手の込んだどっきり作戦」

じゃり

大魔法使い「あ」

その時大魔法使いは町の角を曲がるウェイトレスを見つけた。

大魔法使い「ウェイトレス……? ははぁん。ついどっきりのこと忘れて外にでちゃって、丁度私達の姿を確認したから慌てて隠れようとしている、そんなところかな?」

ダッ

大魔法使いはウェイトレスを追いかけた。

大魔法使い「ぷぷぷ、驚かせてやろーっと……ウェイトレスにはいつもむかつかされてるしね!」

ダダダダッ

大魔法使いは走って角を曲がり、ウェイトレスの肩を掴んだ。

グルン!!!!

その瞬間、ウェイトレスの首が勢いよく真後ろを向いた。

ウェイトレス「……」

大魔法使い「あ……」

見開かれた瞳……驚かされたのは大魔法使いの方だった。

77

--王都--

どくんどくん!

大魔法使い「な、なに、よ……」(なんて、顔してんのよ……)

ウェイトレス「……大魔法使い……か」

大魔法使い「! そ、そうよ……あ、あんたここで一体なにやってんのよ……」(な、何言おうかぶっとんじゃったじゃない……!)

ウェイトレス「何を……何を……」

ウェイトレスの焦点は定まらない。

大魔法使い「? あんたなんかおかしいわね? 体調悪いの?」

ウェイトレス「体調……どうだろ……」

心ここにあらずのウェイトレスにだんだんとイライラしてくる大魔法使い。

大魔法使い「ちょっと、ちゃんと目を見て話しなさいよ!」

がっ

ウェイトレスは手を振りほどいてふらふらと歩き出した。

78

--王都--

大魔法使い「こ、こんの~~!!」(何よその態度!! 私なんかじゃライバルにならないっての!?)

すたすたすた

大魔法使い「……」

すっ

大魔法使いは過去読みの書を取り出した。

大魔法使い(いっつも何考えてるのかわからないやつだったけど今日はもっとひどい……でも私にはこれがあるんだから!! これであんたの考えてることも恥ずかしいことも全部まるっとお見通しなんだから!!)

大魔法使いはウェイトレスに近づいて髪の毛を……

すっ

大魔法使い「……」

すたすた

大魔法使い「……はーあ。やめたやめた。そんなことしなくても……私は勝ってやるんだから」

79

--王都--

大盗賊「遅かったですね。うんこ?」

大魔法使い「色々あったんだバカ!! それより警護の人はまだ来ないの? 遅くない?」

大剣士「あぁ、遅い。しかしそれよりも、この王都全体の雰囲気が気になる……これはおかしいぞ」

大魔法使い(はっはーん。まだこいつら気づいてないのね)

大賢者「ふむ……私達だけで城に向かうとするか?」

大剣士「あぁ、そうしよう」

大魔法使い「でも警護の人が帰って来た時に私達がここにいないと可愛そうじゃない?」

大剣士「そう思うんならお前だけ残ってろ」

ぱからっぱからっ

大魔法使い「ぐっ! あんたたちはほんっと……」

大剣士と大賢者は城に向かって進んでいく。

大魔法使い「……大勇者はどうするの?」

大勇者「俺は酒場に顔だしてみたいかな」

大魔法使い「むぅ……じゃあ私も付き合う」

大盗賊「では私」
大魔法使い「あんたはここで警護の人待っててね」

すたすた

大盗賊「……はい」

80

--王都、酒場--

ぎぃいい

大勇者「マスター? いないのか?」

大魔法使い「なによ昼間っからカーテンして。おまけに明かりもつけずに。酒場畳んでお化け屋敷にでもするつもり?」

ぴくん

大勇者「!! この臭い……」

大魔法使い「!!……これカーテンじゃない……血が黒くなって窓に張り付いてるんだ……」

ぎぃ……ぎぃ

大勇者「……誰だ?」

店の奥に椅子に座って左右に揺れている何かがいる……。

ウェイトレス「……」

ぎぃ、ぎぃ

大勇者「ウェイトレス……?」

ぴた

大勇者が名前を呼んだ瞬間、ウェイトレスの動きが止まる。

ウェイトレス「ま、マッtえ、TAよ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すいません、今日の午後に投下にきます。

こんばんは!
一週間毎日は少し厳しかったです……

それでは昨日の分投下していきます。

81

--王都、酒場--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……

大魔法使い「ウェイトレス、なんだよな……? これはさすがに凝りすぎよ。この血だって何の血を……」

ぐい

その時大魔法使いは後ろから現れたマスターに引っ張られ店の外へと投げ出された。

どさっ!

大魔法使い「きゃっ!?」

ぎぃ、ばたん

大勇者「! 大魔法使い!」

ぎし……

ドアが閉められたことで真っ暗になった酒場。その暗闇の中を何かが動いている。

ぎし、ぎし

大勇者「お前……ウェイトレス、なのか?」

ぎし……

82

--王都、酒場--

大勇者は六度の魔王との戦いで、魔王特有の気配というものがあることに気づいた。

ぎし

今、ウェイトレスからそれが感じられる……。

ぎし

それも、今までとは比較にならないほど強力な……。

ウェイトレス「……ま、まって、たよ。ききき、君が、待ってて、って言ってたから、まって、たたたんだ、よ」

大勇者「……」

ウェイトレスとの距離は約1m。

大勇者「……なぜだ」

ウェイトレス「え?」

大勇者「なんで、こんなことになっちまったんだ」

ウェイトレス「……」

大勇者の拳が震えている。

83

--王都、酒場--

大魔法使い「ちょっと、何するのさ!」

マスター「ぶ、ぶがいしゃは、はは、は、そとで、おねが、いし、ます」

カチカチと歯を鳴らしながら喋るマスター。

大魔法使い「!……改造されてる……操られている……? どっちにしても一切魔力を感知させずにこんな芸当ができるなんて、一体」

ざり、ざり……

大魔法使い「!?」

町中から虚ろな表情の人間達が集まってきた。

大魔法使い「……そういうこと。全部操られてるってことなのね。私達が帰還する前に王都だけ丸ごと!!」

フォン!!
ぱきぃん!!

投げつけられた斧を空中で凍らせる大魔法使い。

大魔法使い「……ウェイトレスも操られてるだけなのよね……?」

84

--王都、酒場--

ドオオオオオオオオオオオン!!

大魔法使い「!?」

大魔法使いが戦闘態勢に入ったその時、目の前の酒場が大爆発を起こした。

大魔法使い「ちょっ!? だ、大勇者ーーー!!」

大勇者「くっ」

ぼふっ

煙の中から姿を現す大勇者。

大魔法使い「大勇者! よかった……!」

……オオオオオオ

大魔法使い「!」

炎上する酒場。そしてその中でどす黒い闇が渦巻いていた。

ゴゴゴゴ……

大勇者「……っ」

85

--王都、酒場跡--

こつ、こつ……

同じように煙の中から現れるウェイトレス。

大勇者「!」

しかしその給仕服は真っ黒に染められている。

大魔法使い「なに……この凄い感覚。こんな悪寒、感じたことない……」

ウェイトレスは目を閉じ、そしてゆっくりと開いた。





ウェイトレスウェイトレス「あーしんどかった!」

大勇者「……」

大魔法使い「……はい?」

緊迫した空気を破壊するかのようなあっけらかんとした台詞。

大勇者「……」

ウェイトレス「やー……も、すっごい大変だったんだからなー君達のせいでさー。ずっと息できない状態で海の中潜ってる感じ? なんとか耐えて待ってようと思ったんだけど……やっぱり簡単じゃあなかったなー」

大魔法使い「う、ウェイトレス……?」

いつもと変わらないカラっとしたウェイトレスそのままだった。だが気配は違う……。

大勇者「……」

86

--王都、酒場跡--

ウェイトレス「……あー、でもやっぱまずいかも。心の中ですごいぐるぐるいってる。なるほどこれじゃあ……え? あー、はいはい、わかったってば。何度も言わなくても大丈夫だって」

ウェイトレスは見えない何かと喋っている。

大魔法使い「幻覚……? いやそれよりもなにさこの感覚は……あれじゃまるで……まるで」

大勇者「お前は魔王なのか?」

大魔法使い「!!」

ウェイトレス「……」

大勇者の問いに、ウェイトレスはこくりと頷いた。

ウェイトレス「これで伝えるのが一番だと思ってさ。詳しくはコレを見てね」

ひゅっ

ウェイトレスが飛ばしてきたのは血で染まった赤い手紙。

ウェイトレス「……じゃ、私はもう行くから」

それだけ言うとウェイトレスはガルーダを呼び寄せてそれに乗った。

87

--王都、酒場跡--

大魔法使い「な、何がなんだかわからない!! どういうことなのよ私にも説明しなさいよ! 手紙なんかじゃなくて言葉で説明しろ!!



ウェイトレス「……本当なら人間のうちに君達に全部説明するつもりだったんだけどね、ちょーっと遅かったかな。今はそれで勘弁してよ」

大魔法使い「は!?」

ウェイトレス「だって、これ以上ここにいたら君達のこと殺しちゃうもん」

ぞく

ウェイトレスのプレッシャーが大魔法使いを凍りつかせる。

大魔法使い(!! な、何よこれ……い、息も出来ないじゃない……!)

ウェイトレス「手紙を読んでそれでも納得したのなら砂漠の聖地に来て。……私は二度と会わないほうがいいと思うけど」

大勇者「……ウェイトレス」

ウェイトレス「ごめんね」

大勇者「ウェイトレス」

ウェイトレス「……だから、やめたほうがいいって言ったのに」

誰にも聞こえないくらいの声量でウェイトレスは呟いた。

ばさっ!

そしてガルーダとともに飛び立つ。

88

--王都、酒場跡--

ぱきぱきぱき

大魔法使い「ま、て……って」

ウェイトレス「?」

ぱきぱきぱきぱき!!

大魔法使い「待てって、言ってんで、しょおおおおがあああああああああああああ!!」

ばっきゃーーーーん!!

大魔法使いと範囲攻撃魔法を放つと、氷の波が町を覆いつくしていく

ウェイトレス「無詠唱で? すご」

ばりぃん!!!!

しかしウェイトレスが差し出した人差し指で軽々と止められてしまう。

ウェイトレス「ま、そんなもん私にはきかないけどね」

大魔法使い「ならこれは?」

ウェイトレス「!」

すたっ

大魔法使いは同時に氷の階段を作り、それを駆け上ることでウェイトレスの真横にまで接近していた。そして、

ばきっ!!!!

ウェイトレスの顔を殴った。

89

--王都、空中--

大勇者「! バカ! 危険だ!!」

ウェイトレス「……」

大魔法使い「バカ! 勝手にいなくなられたら困るのよ! あんたとはこれから戦って勝つ予定だったんだから!……こういうのとは別の戦いで!」

ウェイトレス「……はてな?」

きょとんとした顔のウェイトレス。

大魔法使い「なのにあんた! こんな、勝ち逃げなんか……!」

ウェイトレス「あー……そういうことか。ごめん。後は任せるよ」

大魔法使い「何言って! っ!」

ぼっ

ウェイトレスが掌に集めた小さな魔力球。それは咄嗟に大魔法使いが張った魔法障壁を軽々とぶち破った。

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

90

--王都、酒場跡--

大勇者「大魔法使い!」

だだだっ!!

大勇者は落下地点まで走り大魔法使いを受け止めた。

がしっ

大魔法使い「うう……」

大勇者「っ、ウェイトレス……」

ウェイトレス「……じゃあ、本当にさよなら」

ばさっ、ばさっ!

大勇者「……」

オオオオオオオオ

大勇者と大魔法使いを囲む傀儡となった王都の人間。

マスター「かち、かちかちかち……」

ばりばりばりばり!!

マスターの体が裂け、中から百足の化物が現れる。

マスター改め百足男「ぎちぎちぎち」

大勇者「……」

91

--王都、酒場跡--

王都民「ああぁあ、あぁあ……」

ゾンビのように大勇者達に近づいてくる人々。

大勇者「……」


  俺のせいなのか


王都民「ぎしゃああああああああああああああ!!」


  ウェイトレスがあぁなったのも、こいつらがこうなったのも


スッ

大勇者は静かに指を弾く。

ボボボボボボボボ!!!!

王都民「ぎゃぶっ!」

すると人々の頭部が次から次へ爆発していく。

ボボボボボ!!

百足男「ぎしゃああーーー!!」

大魔法使いを抱いたまま襲い掛かる百足男の攻撃を避け、

ぼっ!!

右の拳で介錯する。

92

--王都、酒場跡--

たたたた

大盗賊「大勇者ー!! 大丈夫ですか!?……っと」

ぴちゃっ

その場に駆けつけた大盗賊は惨劇を目の当たりにする。

大勇者「……」

大魔法使いを抱いている大勇者は血の海に立っていた。

……ぱからっぱからっぱからっ!!

大剣士「くそ、くそっ!! なんでこんなことにぃ!」

大賢者「……」

大盗賊「! 大剣士と大賢者……」

そこに大剣士と大賢者が戻ってきた。

大賢者「……城のものは……全て傀儡にされていた……王でさえも」

大盗賊「!!」

大剣士「くそ! 説明しろ!! くそ!! なぜだ!!」

大賢者「大剣士……」

大剣士はやり場の無い怒りを抱えたまま叫ぶ。

大勇者「大盗賊、大魔法使いを頼む」

大盗賊「え? あ、はい」

大盗賊は大勇者から大魔法使いを受け取る。

すっ

そして大勇者は赤い手紙を取り出した。

93

--王都、酒場跡--

大盗賊「……なんですかそれは?」

大勇者「ウェイトレスが俺に渡してきた手紙だ」

大剣士「! ウェイトレスだと? 奴は無事だったのか? 今どこにいる? このことについて何か知っているかもしれん!」

大勇者「……」

かさ

問いに答えず大勇者は手紙を開いた。

大剣士「おい……聞いているのか大勇者!! こんな時にお前はなにを」

大勇者「大剣士、悪いが少し黙っててくれ。これを読みたいんだ」

大剣士「」

ずずず……

大勇者の無言の圧力が大剣士に冷静さを取り戻した。。

大勇者「わかったら全部話す。だから少し待っててくれ」

ぺら

94

--赤い手紙--

 拝啓

 あれ? 前略だっけ? ごめんね私ろくに手紙も書いたことないからちゃんとした風に書けないや。今回ばかりはおちゃらけ無しで報告したかったんだけど、それもどうやら無理みたいですわー。

 えっと……何から話したもんかな。

 大勇者が最初に王都を旅立った時から、いつかこの日が来るだろうって覚悟してたんだけどね。頭の中で何度も何度も構成を考えたはずなんだけど、いざペンを握ると上手く整理できないもんだね。

 よし、結論から書きますか。この手紙を見てる頃にはもうわかっているとは思いますが、私は魔王です。私が魔王です。この時代を統治する正統な魔王です。

 その魔王がなんで酒場でメチャカワなウェイトレスをしていたのかというと色々と遡らねばなりません。君も心の準備が必要だと思うから覚悟して欲しいんだけど、実は私も元々勇者でした。約700年くらい前のね(黄金王と会ったこともあるよ。凄いでしょ?)。

 私は非常に優秀な勇者だったし、人形達からの情報もあったから、当時の魔王(回避コンボしてくるちょーうざいやつ)を簡単に倒すことに成功しました。どうやって倒したかとか色々武勇伝を語りたいところではあるけれど、時間が無いのでそこは割愛するね。



 私は確かに魔王を倒した。でもそれはいわばスタート地点。本当の闘いはそこからだったの。

95

--赤い手紙--

 私の人形達はそのルールをずっと前から教えてくれていた。魔王を倒した勇者がその後の魔王になるというルールを……。

 これは人形達が全員経験してきたことだった。最初私は歴代の勇者を人形にして戦ってるつもりだったんだけど、それは半分当たりで半分はずれだったんだ……。

 それを知ってから私はずっと考えていた。彼らの情報通りだといつか私も魔王になる。そう遠くないいつか。前兆は数え切れないほどあったしね。

 なので私は魔王を倒す前からその対策を練り続けた。バッドエンドが未来に待っていると言うんなら、それを全力で回避しようとするのは当たり前のことだよね。それにせっかく私が世界を救ったんだから、いつまでも平和でいて欲しいじゃん? 世界を救うために魔王を倒すのに、倒すことで次の魔王が出来ちゃうなんて本末転倒にもほどがある。
 


 私が魔王にならないように考えた作戦、それは魔王の力の分散。

 魔王の力や意思に私が完全に汚染される前にそれらを分割することを思いついたの。そしておそらくこれは私にしか出来ないことだと思った。

 私がこのシナリオを食い止める。もう誰もこんな目に合わないようにするために。

96

--赤い手紙--

 力の分割は考えていたのよりずっと難しかった。言わば自分の心を引き千切るに等しい行為。危うくそれがきっかけで魔王化するところだったのは言えない話だし笑えない話。力の入れ物は私が使っていた人形達を使うことでクリア。元々彼らも魔王だったわけだから許容量も相性もばっちりだった。

 そしてその後どうなったかというと、力を分割した私は魔王に成らずに済んだんだよね。黒いものは依然として残ってはいたけれど許容できる範囲だった。私の計画は概ね成功した。

 まぁ、完全な人間には戻れなかったけどね。そのせいでぴちぴちの肌のまま800年も過ごせちゃいましたし。
 
 これが誤算。
 
 当初の予定だと私が寿命で死ねばこのシナリオは終わると思っていたんだけど、どうやらそれは無理みたいなので、私が分割した魔王達を管理することにしたんだ。同じ場所に置いといたら合体とかして強力になってコントロール不可とかになりそうで怖いから、全部離れた場所に隔離して、眠らせた。



 魔王達を眠らせたのはいいんだけど、ぶっちゃけ退屈だった。

 平和な時代が続いてくれてるならそれは喜ばしいことなんだけどさ。イベントが全く無いのもどうかと思うのよね。あ、人間同士の小競り合いとかはあったけど。あれはちょっとむかついたね。あんたら誰のおかげでその生活を享受できてると思ってんだごるぁ!って。

 そういうのばかり見てると、だんだんバカらしく感じてきちゃったんだよね。せっかく人が身を粉にして作った平和の中で、人々はそれを当たり前のように振舞って争いを続けてるんだもん。

 そう考え出したら……飽きが加速した。

97

--赤い手紙--

 今の生活があほらしく感じてきた私は刺激欲しさにちょっくら町に行ってみることにした。魔王はちゃんとコントロールできてるし、ほんの少しの間だけ。計画は万全。何の心配も無かった。

 これが大体3年前。よく我慢したと思わない? 900年くらいずっと聖域の中で食っちゃ寝して耐えてたんだよ? たった一人で。
 ……あれ? 私何年前からあんな生活してたんだっけ? わからなくなってきちゃった。
 
 まぁ、そのせいもあってかこの世界は新鮮そのものだった。あの時代には無かったものがいっぱいあったし、私の時代にあったものが改良されて残ってたりした。あぁ、私の頑張りは無駄じゃなかったんだってその時思った。色んな発明も土台には私の功績があったからであって、ようは新しい発明は全部私の手柄みたいなところあるし。

 それで昔を思い出して少しだけ人間生活をエンジョイしようと思ったの。酒場のマスターに雇ってもらって、家を借りて、飲んで、食って、笑って。

 そんな時に、君に会った。

98

--赤い手紙--

 会った瞬間、確信した。こいつが次の勇者なんだと。

 多分君も何かを感じたと思うけど、それは多分潜在的に私の中の魔王を感じ取ったんだね。

 こいつが今回の勇者か。でも残念だけど君の出番はないよ。なんせしっかりものの私がいるからね。ただちょっとだけ気になるから観察してみよう。最初は本当にそんな感じだった。



 でも会う度に。話す度に。どっかに遊びに行く度に。





 どんどん君のことが好きになっていった。

 そうしたらそれに比例するかのようにどんどん不安が膨らんでいった。

 私が少しでも間違えたらこの生活が吹き飛んでしまう。そもそも何の保証も無かったんだ。今まで魔王にならなかったのはたまたまで、明日にでも私の理性は無くなって人を襲ってしまうかもしれない……。
 そして、私は君に殺される……。

 そんな考えが頭をちらついて離れなくなった。前はもっとドライにこなせていたのに。今はもう無理になっていた。

 日に日に自分がわからなくなっていった。


 そしてあの日、全ての魔王が活動を再開してしまったんだ。

99

--赤い手紙--

 魔王が動き出したのを知った君は、当然のように魔王を倒しに行くと言った。その時にふと思ったんだ。もしかすると、私が暇をもてあましてここにやってきたのも、全部シナリオだったのかもしれない、って。



 大勇者が私の魔王を倒す度に、分割したはずの力が流れ込んでくるのがわかった。そのまま消滅しとけばいいのにさ、そううまくは出来てないってことなんだろうね。

 万一の時のためにつくっておいた魔王の力を封じる指輪があったから君には気づかれなかったと思うけど、私は随分前から魔王になりかけてたのさ。

 でもこの指輪は未完成だった。完成させるにはまだまだ時を必要としていて、このペースだと完成する前に全ての人形魔王が倒されてしまって、全ての力が私に流れ込んできて……私は完全に魔王になってしまう。

 だから言ったんだ。もうここでやめないか、ってさ。……まぁ、無理だと思ったけどね。なんというか運命というか、抗えない力を感じてた。もうきっと、この流れを私に止めることは出来ないんだと。

 流れ込む魔王の力と意思。それは分割した時よりも濃く、多くなっていた。当たり前か、当時はまだ完全に魔王になる前だったんだし。

 私がこの半覚醒の状態で居続けるには苦痛が伴うの。手を離したスプーンが下に落ちるのを拒むのと同じようにね。いっそ魔王になっちゃう方が楽なんだけど、君に待っててって言われたから、せめて人間の姿で会いたいと思う。

 ……例え苦痛を和らげるために何をしでかしたとしても……。








 じゃあ最後に私のい場しょを かいておくね。私がま王になったらさ漠のせい域にいるから。できるかぎりのことをするつもりだけど、君がだめ
だと判 断したなら殺し  に来て欲しい。

                                  けえぐ
   


 わたしはやっぱりこのシナリオをとめられなかった。

100

--王都、酒場跡--

大勇者「……」

かさっ

全てを読み終えた大勇者はそれをたたんで懐にしまった。

大剣士「……何が書いてあった? ウェイトレスはなんと?」

大勇者「魔王を裏で操っていた奴の正体がわかった」

大剣士「!! なぜ今……そうか、この事態を引き起こしたのもそいつの仕業ってわけか! そいつは今どこにいる!? もしやそれがウェイトレスなのか!?」

大勇者「……」

ざっ

大勇者は何も言わず背を向けて歩き出した。

大剣士「おい大勇者!! 他にはなにが書いてあったんだ!!」

大勇者「俺のことが好きだって」

大剣士「……はぁ!? お前何言ってんだ!? ちょっとそれよこせ! 俺にも見せろ!」

大勇者「やだよ、好きな女からのラブレターだぜ?」

大剣士「……は、はあああああああああああああ!?」

大勇者「じゃあちょっくら魔王に婚約を申し込みに行ってくる」

心配していただきありがとうございます。心配させてしまって申し訳ありません。

とりあえずようやくタイトル回収です。先週で終わるなんて完全な思い違いでした……


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました! それでは投下していきます!

はいそうです、砂漠の聖域は隠しダンジョンの正式名称になります!

101

--王都、上空--

ばさっ、ばさっ

ウェイトレス「……」

悲しそうな顔のウェイトレス。

ウェイトレス「……ん?」

ばさっ

ウェイトレス達に接近する飛行物体。

ばさっばさっ!

竜騎士「ぶるぅぁぁああ……」

ウェイトレス「あ、誰かと思えば大勇者の兄ちゃんじゃん」

竜騎士「まぁさかぁ……お前がラスボスだったとはなぁ……」

ウェイトレス「……全部見てたんだ? まー、ラスボスになるつもりは無かったんだけどね」

竜騎士「……元より裏切るつもりで我が弟に近づいたのだな女狐めぇ!!……ゆるぅせん……我が弟のぉ純情をもて遊んだことを後悔するがいいぃ!!」

バリバリバリーーー!

ウェイトレス「……やれやれ、相変わらずのブラコンさんだねー」

102

--王都、上空--

竜騎士「最初から手加減無しよぉぉぉぉ!! 竜人モオオオオオオオオオオオオオドオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

ぶちぶちぶちぃ!!

盛り上がる筋肉で服が破けていく。

ウェイトレス「! 嘘、竜亜人……? いやでも少しいびつ……まさか」

竜騎士「感謝するがいぃ……これを見るのはお前が始めてだ女狐めぇ……。我は自分の手で倒した竜を食らいぃ続けた。その結果がぁこれなぁのぉだぁ!!」

竜騎士の頭部からは角が生え、鱗が全身を覆った。

ウェイトレス「吸収の因子があるってことなのかな……こりゃびっくら人間だー」

竜騎士「我は全てを倒しぃ! 全てを捕食しぃ! 全てを我が力と変えるぅぅぅ!! ゆえに最強無て」

ドオオオオオオオオオオン!!

台詞をさえぎって極大の魔力弾が打ち込まれる。

竜騎士「ごふっっっ!?!?」

ウェイトレス「悪いんですけど私急がしいんでー、じゃ」

竜騎士「かっは……い、一撃だとぉお……!? め、女狐めぇええええええええ!!」

ひゅるるるるる……

竜騎士は叫びながら落ちていく。

103

--王都--

大勇者「ん、今あっちの方角ですごい魔力反応が……」

大剣士「えぇい、話をそらすんじゃない! 全部話すと言っただろ!? 魔王に婚約だとかふざけたことを言う前にちゃんと説明しろ!!」

大勇者「……言ったっけ?」

大剣士「おのれあっさりと!!」

大賢者「いや違うぞ大剣士、本気の顔だあれ」

大勇者「んー……」

大勇者は頭をぼりぼりとかいた後、ため息をつきながら口を開いた。

大勇者「ウェイトレスが今までの魔王を操ってた本物の魔王だった」

大剣士「!!」

大賢者「信じられん……まったくそんなそぶりなど見せなかったのに……」

大盗賊「人間を観察していたということなんでしょうか」

大勇者「……」

104

--王都--

大剣士「……告白がどうのというのはお前なりに決着をつけに行く、と解釈していいんだな?」

大勇者「ん」

大剣士「……はぁ」

すたっ

大剣士は馬から下りた。

大剣士「俺の父様と母様は半モンスター化していた。元に戻す手段が無いと判断したため、この手で葬ってきた」

大勇者「!」

よく見ると大剣士の大剣は血でぬれていた。

大剣士「――なぁ、俺には敵を討つ権利があるとは思わないか?」

大勇者「……」

105

--王都--

大剣士「それでもお前は一人で向かう気なのか?」

大盗賊「大剣士……」(いやしかし言ってることは至極同然……)

大勇者「じゃあ、はっきり言おう。俺の勘だけど、お前達じゃ無理なんだ」

大賢者「!?」

大盗賊「な!?」

大剣士「無理というのは?」

大勇者「何も出来ずに瞬殺されるだろうってことだ」

大賢者「!……」

大盗賊「い、いくらなんでもそんな言い方は……」

106

--王都--

大剣士「それは勘か?」

大勇者「勘だ」

大剣士「そんな相手にお前ならどうにかなるのか?」

大勇者「俺にしかどうも出来ない」

それは脳筋だからこそ感じ取った答え。

大賢者「むちゃくちゃな……」

大盗賊「さすがにそんな理由で」

大剣士「……わかった」

大賢者「なに!?」

大盗賊「納得しちゃうんですか!?」

大剣士「するしかないだろ。こいつは嘘をつくタイプじゃあない。なら本当に俺らが戦ってもダメな相手なんだろう」

大勇者「……すまねぇ」

大剣士「謝るな。ただし道中は付いて行くぞ」

大勇者「え」

大剣士「途中でお前に倒れられても困る。お前には父様と母様と我が国民の仇を討ってもらわねばならないんだ」

大勇者「……あぁ、任せろ相棒」

107

--王都--

大剣士「さて、じゃあさっそく向かうか」

大賢者「大剣士、王都をどうするつもりだ」

大剣士「城の中に弟達はいなかった。きっと外にいたんだろう。兵に伝えておけば上手くやるだろう」

大賢者「……それでいいんだな?」

大剣士「俺は今敵討ちのことで頭がいっぱいで他のことを考えるつもりはない」

そういうと大剣士は馬に乗り、大勇者を促した。

大勇者「……よし、ぱぱっと行って終わらせてくるか」





……ザリ

五人の後姿を遠目で見ている者がいた。

警護兵「はぁ、はぁ……ど、どうなってるんだ……」

血まみれながらも生還した警備兵。

ずる、ずる

警備兵「く、行ってしまわれたか……何をそんなに急いで……ん?」

警備兵は瓦礫の傍に落ちている一冊の本を手に取った。

108

--死の砂漠--

びゅおおおおおおおおおおお

大魔法使い「ちょっと! 私が寝ているうちになにがどうなってこんなことになってんのよ!!」

大剣士「おい! 本当にこっちであってんだろうな!?」

大勇者「いや勘で来たんだけど」

大賢者「お前の闘いの勘は信じられるがそっちの勘は信じられん!!」

大盗賊「大勇者が見てた手紙に、何か書いてあるものだと信じてついてきてみればこれですよ!」

大剣士「というかここお前の元ホームグラウンドなんじゃないのか?」

大盗賊「……あ」

大剣士「いや、あ、っていうか……」

109

--死の砂漠--

大盗賊「そもそもどこに行きたいのかすら知らないんですよね。大勇者、どこに行きたいんですか?」

大勇者「砂漠の聖域とかいう場所」

大盗賊「……あ、あー! 聞いたことあります……けどそこに入るには亜人王に話を通さなくちゃいけないとか。なんでも亜人にとって大事な場所だとかで」

大剣士「む、亜人王か……」

大賢者「ついこの前会ったばかりだな」

大勇者「面識持っておいてよかったな。じゃあ話をしに直行するぞ」

大剣士「……」

大賢者「礼の会談の件、なんにも進展してないのに別件で行っても大丈夫なんだろうか」

大剣士「わからん。ただこちらも緊急事態だ。許してくれるだろう。あの男は大きな男だった」

大賢者「どこを見ていた?」

大剣士「ん?」

110

--王都、城--

第二王子「これは一体……これが父上なのか? こっちは……母上」

魔族と化した王や城の者達を見てショックを受ける第二王子。

第三王子「ち、父上……だれが一体こんなおぞましいことを……」

第三王子は泣き崩れる。それを支える側近の兵士達。

参謀長改め魔導大老(これは十中八九魔王側の仕業……全ての魔王を討伐したという報告を受けていますが、どうやらイレギュラーな事態が起きたようですね)

近衛兵「おいきさま! 止まれ! ここはお前のような兵士が入れる場所ではない! わきまえよ!!」

警備兵「ですがお伝えしたいことがあるのです! どうかお目通りを!!」

ワーワー!

研究員「なにやら騒がしいですねー。私でよければお話を伺いますよー」

近衛兵「研究員様!……しかし」

研究員「ここで騒いだら両殿下の気分を害されますー。ただでさえこんなことになってしまったというのにー。さ、別室で聞きましょうー」

警備兵「は、はい!」

111

--南の集落--

ばささっ

鷹男「亜人王、王国から人間が来たぞ」

亜人王「! 随分早い……あの人間達め、大きな口を叩くだけはある。我が出よう」

どすどすどすどす

亜人王(我の目に狂いは無かった……あの男に任せていれば人と亜人の種の隔てなく、平等で平和な世界を作ることが……)

亜人王は静かに口角をあげた。

どすどすどす

亜人王「待たせたな人間」

大勇者「お、亜人王この前ぶりー。実はさー、砂漠の聖域?の場所を教えてもらいたいんだよ。亜人王なら知ってるって聞いてさ」

亜人王「……え?」

大勇者「あ、出来れば地図描いてくれ。多少下手でもこの際許すから」

亜人王「え……」

大剣士「これやべーだろ」

112

--南の集落--

亜人王「……小僧……よもやあの約束を忘れたのではあるまいな……」

大勇者「あの約束?」

まじでわからん顔をしている大勇者を押しのけ大剣士が前にでる。

大剣士「もちろん覚えている。だが今回ここに来たのは緊急事態が起きたからなんだ」

亜人王「緊急事態……だと?」

大剣士「あぁ。俺達が倒した六体の魔王を、裏で操っていた者が現れた」

亜人王「!? なんだとぉ!?」

大賢者(大剣士、王都の被害のことは)

大剣士(わかっている)「そいつは王国の各地で暴れた後に砂漠の聖域に逃げ込んだらしい。ゆえに我らはこれを討伐するために追っている」

亜人王「む……魔王に関しては我々も対岸の火事ではない。そういうことであれば協力しよう」

大剣士「感謝する」

大勇者(約束って……また喧嘩しようぜってやつだっけ?)

113

--南の集落--

大剣士「事態は一刻を争う。出来るだけ早急に地図と情報が欲しい」

亜人王「わかった」

ずんっ

亜人王が立ち上がる。

亜人王「そういうことなら我も戦いに出向こう」

大賢者(! そうなるか)

亜人王「我が同行すれば地図などいらん。戦力も増えるし言うこと無いであろう?」

大剣士「……だが」

大勇者「いや、戦力はもういらないんだ」

亜人王「……なんだと? 我の力を無償で貸してやろうと言うのだぞ? はっきり言ってここにいる者の中で一番強い自信がある」

大勇者「そういうんじゃねぇんだ。あいつは俺じゃなきゃ倒せない……。なぜだかそれがはっきりとわかるんだ。あんたがついてこようが全人類が援軍に来ようが、あいつの前じゃ意味が無い」

亜人王「!?」

114

--南の集落--

亜人王(この亜人王に向かって意味が無い呼ばわりとは小僧!……だがこの眼、本気の眼だ……よくはわからんが確信しておる。そして本気で我の身を案じておる……)

大勇者「失礼な言い方ですまなかったな。でもそういうことなんだ」

亜人王「……」

大剣士「俺らも砂漠の聖域の入り口まで同行するだけだ。その後は全てこいつ一人にかかっている」

亜人王「……随分とよくわからないものを信じているな……」

大剣士「……こいつを信じるということはつまりはそうなるんだ」

亜人王と大剣士がしょうがなさそうに笑う。

亜人王「――わかった。地図を渡そう。武運を祈ってる」

大剣士「! 感謝する亜人王。かつてかわした約束、必ず果たしに帰ってくる」

115

--王都、城--

ぺら……

研究員「ほほほー! これは凄い……魔導大老が作ったのは知ってましたがこれは面白いですねー」

研究員は過去読みの書を読んで興奮している。

警備兵「研究員様! わかっていただけましたか!?」

研究員「わかってますよー。本当に面白いのはこの内容ですー。これは驚きの新事実ですよー」

研究員は満面の笑みを浮かべる。

研究員「これは急いで準備をしなきゃいけませんねー」

警備兵「それよりも先に両殿下に報告をお願いします! 研究員様から直接おっしゃっていただければ!!」

研究員「……」

警備兵「? 研究員様?」

研究員「その前に一つやらなきゃいけないことがありますねー」

警備兵「なんです? 私に出来ることがあればなんでも」

ぼふっ

警備兵「!?」

研究員は隠し持っていた薬玉を警備兵に投げつけた。

警備兵「ごほっ!? なっ、研究員様これは一体!……ぐ」

どさ

研究員「なぁに。ちょいとここ数日間の記憶を無くすだけですから安心してお眠りなさいよー。ふふふ……」

116

--死の砂漠--

ホー、ホー

大魔法使い「ちょっと男共! 絶対に覗くんじゃないわよ!?」

大剣士「ふん、誰が貴様の裸を見たいなどと思うか」

大賢者「全くだ。大体一番疲れているのは大剣士なのだから一番風呂は大剣士に譲るべきだというのに」

大盗賊「まぁまぁレディファーストですよ透視眼」

流れるようにスキルを使う大盗賊。

ひゅっ

その瞬間氷の魔法が大盗賊の眼球をぶち破った。

大盗賊「んぎゃーーーーー!!」

大賢者「……いつものお前なら避けられるだろうに」

117

--死の砂漠--

ひゅおぉぉお……

大勇者「しかし夜になっちまったか。さっさと着いておきたかったんだがな」

大盗賊「砂漠をなめてはいけませんよ。今回は運よく巨大な岩があったから良いものの、本来なら南の集落に戻るところです」

大勇者「だけど……」

大剣士「急いては事を仕損じる」



大剣士はコーヒーの入ったカップを大勇者に差し出した。

大勇者「……そうだな。すまねぇ」

大勇者はそれを受け取り口をつける。

大賢者「……」

118

--死の砂漠--

大魔法使い「だから覗くなって言ってんじゃないのよ!!」

大盗賊『わおーん!』

大魔法使いの攻撃を避ける狼状態の大盗賊。

大魔法使い「おすわり!」

大盗賊『へっへっ!!』

バッキャーーーン!!

反射的に命令に従ってしまった大盗賊をレベル4魔法が襲う。

大勇者「しっかし、あんなことがあったっていうのにいつも通りだな俺ら」

大剣士「……」

大勇者「……すまねぇ。さすがに親父さん達の死はそう簡単に吹っ切れるもんじゃねぇよな」

大剣士「そうだな……だが、お前らが傍にいるせいで思ったよりダメージが和らいでいる」

大賢者「……」

大勇者「せいってなんよ」

119

--死の砂漠--

大盗賊『きゃいんきゃいん!』

大魔法使い「このバカ犬ーー!!」

暴れまわる二人とそれを遠めに見ている三人。

大剣士「やれやれ、あいつらに気を使わせてしまうようじゃ俺もおしまいだな。いつもどおりを振舞わせてしまっているとは」

大勇者「だな……」

大賢者「……そろそろ寝る時間だ。寝不足は体に良くない」

立ち上がる大賢者。

大剣士「……」

大勇者「……」

大剣士はコーヒーを口に含み、しばらくしてから、

大剣士「仲間というのは……いいもんなんだな」

と呟いた。

120

--死の砂漠--

翌日。

ざっ、ざっ……

大剣士「もう少しだ。この分なら何事も無く着きそうだな」

大勇者「だな。よし、いっちょ気合いれていかないとな!」

大剣士「あぁ。全てはお前にかかっている。人類の命運も、俺の両親の仇もそして」

大賢者「……」

大剣士「――ウェイトレスのことも」

大魔法使い「……」

大勇者「……あぁ、わかってるよ。全部ちゃんと終わらせてくるさ」

……ォォオ

大盗賊「! 三時の方向から何か来ますね……それも一人や二人ではない、大軍……?」

大魔法使い「大賢者、サーチ!」

大賢者「わかっている。水属性空間把握魔法レベル4」

ぶぅん

大賢者「」

びょおおおおオオオオオオオオオオオオオオオ

大剣士「なんだ、何が近づいてくる……ん? あの旗は……」

ざっざっざっざっざっざっ

大賢者「どういうことだ……? 王国の一個師団が向かってきている……」

実は大剣士はパーティ結成当時は、
魔王討伐など俺だけで十分だー、仲間?何それ美味しいの?

的なキャラだったんですけど……最初を省いたせいで印象が薄くなってしまいました……。



それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました。

はい、研究員も参謀長も実際高齢です。ただ研究員は肉体改造、参謀長(魔導大老)は若返りの魔法や不死の魔法などで実年齢からは想像できない肉体の持ち主です。
ちなみに二人は四代目勇者の子孫であり、従弟同士です。アイ募の三部で会話してたりもします。


魔導大老の話をしますと、ブラが受けた子供を作る魔法の製作者だったりします。当時はいろいろな理由から出生率が低下していたので何かいい方法は無いか貴族に頼まれて作り上げました。使い手次第ですね。
あと魔導長の実の父だったり、秘書(受付)に暗殺されてたりします。


それでは投下していきます。

121

--死の砂漠--

ざっ、ざっ、ざっ

王国騎士「……」

大剣士「……なぜだ。なぜ我が王国の兵士達がここに武装して集まっている……」

大賢者「止まれ! なぜお前達がここにいるのだ! 一体誰の命でここにいる!!」

第二王子「私ですよ。大賢者」

ざっ

大賢者「!!」

騎士達の中から現れたのは第二王子。

大剣士「……これは一体どういうことだ? なぜ兵を動かしている」

第二王子「なぜ、ですって?」

大剣士と第二王子が見つめあう。

第二王子「……私は信じていたのですよ兄上。貴方ならこの国をより良くしてくれるものと……それを……」

大剣士「? 何が言いたい?」

第二王子「あなた達を内乱罪で処刑します」

大勇者、大剣士、大賢者、大魔法使い、大盗賊「「「!?」」」

122

--死の砂漠--

大魔法使い「え……何それ意味わかんない。なんでいきなりそんなことになってるのさ」

第二王子「言い逃れはよしてください。魔王を手引きし、国王や国民を斬殺したことは既にわかっているのですから」

大剣士「!! なんだと!?」

大賢者「何をおっしゃいますか! 人々のために魔王を討伐してきた我々がそんなことをするとお思いか!! いいがかりはよしていただきたい!!」

第二王子「は、いいがかりですと……? 父上たちを弔うことなく逃げるように王国から去っていった……これは明らかに不自然な行為だ。そんな者達の言うことを信じろと?」

大剣士「急務があったのだ! 国内のことはお前達に任せておけばよいと!」

第二王子「それに」

すっ

第二王子が懐から出したのは

大魔法使い「! それは過去読みの書!? 嘘、いつの間に落としてたの……?」

第二王子「これで大勇者、貴方の過去を見させてもらいました。ゆえに全てわかっているのです。貴方方が何をしでかしたのか。そして、これから貴方がどのようになっていくのかも……」

大勇者「……」

123

--死の砂漠--

大賢者(さ、最悪だ……全てが最悪のタイミングで最悪な方向に進んでいる……どうする大剣士)

大剣士「……ち」

第二王子(みなまではいいません。ですが兄上ならもうわかっていることでしょう?)

第二王子は笑みを浮かべる。

第二王子(さぁ早く折れてください。勇者が魔王になるということをばらされたくないでしょう? 私も同じなんですよ。それをばらしてしまってはこれから勇者と名乗れなくなってしまうのだから)

大剣士「……」

第二王子(ふふ、手に取るようにわかりますよ、兄上は彼にこれ以上汚名を被せたく無いのですね? 人々のために戦ってきた男が魔王呼ばわり……それだけは避けたいはずだ。彼を人として死なせてやりたいのなら……)

王国騎士「大剣士様……否定なさらないのですか……?」

しゃき、じゃき、ずらっ

兵達が剣を抜き構え始める。

王国騎士団長「わ、我輩は大剣士様を信じておったのです……残念だ」

大賢者「きさまら不敬であるぞ! 誰に向かって剣を向けているのだ!!」

第二王子「黙りなさい。もはや貴方たちは罪人だ。もはやその汚れた身、王国に連れ帰ることすら許されない。ここで散りなさい」

124

--死の砂漠--

大剣士「……ふざけるな。我らがそんなことをするわけが無いだろう? 法廷でもなんでも開け、そこで潔白を証明してみせる」

第二王子「……その手には乗りませんよ。貴方達を王国に入れたら今度はどれだけの被害が出ることか……」

王国騎士「……」

大盗賊「やれやれ困りましたね、こんな濡れ衣で死ぬなんてまっぴらごめんですよ。でもあれが相手の手の内にある以上、我々も辛いのは確か……」

大盗賊が小声で囁く。

大盗賊「とりあえずあれ取り返してきましょうか」

大勇者「ん、そだな。あれは大魔法使いの持ち物だ。頼む」

大盗賊「ですがその後のことは頼みましたよ。私が得意なのは盗むことだけですから。第二王子の記憶や、兵士の不信感を消すことはできません」

ざっ、ざっ

王国騎士「! 止まれ大盗賊!」

大盗賊「何が止まれですか。そっちはこれから私らを殺そうというんでしょう? これから殺すわけだが一切抵抗をしてはならないとおっしゃりたいんですかね。そんなの」

ひゅっ!!

王国騎士「!?」

大盗賊「まかりとおるわきゃないでしょう」

大盗賊が姿を消した。

大盗賊「スキル、インビジボォ」

125

--死の砂漠--

王国騎士団長「く! 姿を消すスキルだ! 円陣を組み第二王子様を守れー!!」

第二王子「い、いいのですか兄上!? 私は全てを知っているのですよ!? こんな……ひ、ひぃ! お前達、私を守れ!!」



大魔法使い「大勇者今のうちに」

大勇者「ん?」

大魔法使いは親指で聖域を示す。

大魔法使い「あんたは行くんだ」

大勇者「え」

大魔法使い「え、じゃない。そのために私達は来たんだろ? 目的を忘れてるんじゃないよ。今ならあいつらも大盗賊に夢中だ」

わーわー!

大魔法使い「それにもしあんたが……魔王を倒して戻ってこれれば、交渉の材料に使えるかもしれない」

大勇者「……」

大賢者「……そうだな。行け大勇者。ここは我々に任せろ」

126

--死の砂漠--

大勇者「けどお前らこれ……いや、わかった。悪いが行かせてもらうぜ」

ざっ

大勇者はみんなに背を向け、一人聖域へと向かっていく。

わー!わー!

大勇者「こんなことになっちまってすまなかった。だが死ぬなよ、大剣士」

大剣士「…………あぁ」

大剣士は震えていた。

大盗賊「っし!!」

しゅぱぁああん!

第二王子「!? しまった!!」

しゅたっ、たたたたたーーーー!!

大盗賊「はぁ! はぁ! 取り返してきましたよ、過去読みの書」

大賢者「でかしたぞ!」

大盗賊は過去読みの書を大魔法使いに渡す。

大魔法使い「ごめん私のせいで。ありがと」

大盗賊「なんのですよおっぱい」

127

--死の砂漠--

ざわざわ

王国騎士団長「おのれ……第二王子様の所有物まで奪うとは……どこまで堕ちれば気が済むのか大勇者一行よ!!」

大盗賊「堕ちたとは心外ですね。我々は何も変わっちゃぁいませんよ。といいますかこの本は元々大魔法使いのものですし」

王国騎士「む……? なっ! おい大勇者がいないぞ!? いつの間に!?」

大魔法使い「はん、あんたたちがうちのわんこと遊んでる間に行ったよ。まぬけ」

第二王子「く……わ、私をこけにするのがそんなにお好きですか兄上……!」

大剣士「……そんなつもりは無い。兵を引け第二王子。お前は誤解している」

第二王子「この期に及んで世迷いごとを……!! 行け兵達よ!! あれはもはや王族の大剣士ではない! 魔王の手先ぞ!!」

わああああああああああああああああああああああああああ!!

大剣士「!!」

雪崩のように兵士が突っ込んでくる。

128

--死の砂漠--

第二王子「討ち取れーー!! 討ち取ったものには褒美を取らすぞーーー!!」

わーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

大魔法使い「ち、戦うしかないね!」

大盗賊「残念、人との戦いは終わったと思ったのですがね……」

大賢者「大剣士! 来るぞ剣を構えろ!!」

大剣士「馬鹿者! 我が国の兵に、民に剣を向けられるわけが無いだろう!?」

大魔法使い「はぁあああ!? 何言ってんのこのアタマカタイ君は!?」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

大賢者「……! 大剣士! 生き残ることを考えろ! お前はまだ死んではならない男なんだ!」

ひゅぼぼぼぼ!!

走る兵達の頭上を追い越した火の魔法が、雨のように降り注ぐ。

大賢者「! 水属性防御魔法レベル4!!」

じゅじゅじゅっ!! どぉおん! じゅっ! どどどおおおん!!

大剣士「……何のために今まで戦ってきたと思っている! 俺達は人を守るために戦ってきたんだぞ……」

129

--死の砂漠--

大剣士「王は民を斬らない……だから」

ぶわっ

土煙を突破してきた第一陣が、

大盗賊「はあああああああああ!!」

がぎいいいいいいいいいいん!!

大盗賊と接触する。

わあああああああああああああああああああああああああああああ!!

ぎんぎんがきぃん!!

大魔法使い「ちょ、大剣士本当に戦わない気!? 前衛なんだからしっかりしてよ! あぁもう! 氷属性生成魔法レベル3!」

ぱきぃん!!

わあああああああああああああああああ!!

大魔法使いは氷の剣を生成し迫り来る兵の剣を受けた。

がきいいいん!!

大剣士「……っ!!」

ぎり……

130

--死の砂漠--

わああああああああ!!

第二王子「く……くく……」

騎士たちに守られている第二王子は大剣士達の戦う姿を眺めている。

第二王子(これで兄上を殺せば私が王になれる……そして同時に、魔王の手先を倒した勇者となるのだ)

第二王子は汗を垂らし、引きつりながら笑う。

第二王子(どうです兄上。勇者になれず勇者の従者になった貴方と違って、私は本物の勇者になることができるんですよ!)

わああああああああああ!!

大盗賊「く! 数が多い!」

きぃんぎぃいいん!!

大魔法使い「これじゃ! 詠唱時間をかせげっ! ない!」

大賢者「大剣士!!」

大剣士の大剣を持つ手は震えている。

大剣士「俺が民を斬って、どうするのだ……!」

131

--隠しダンジョン地下七階--

ニンギョ「ああああああああああああああああ!!!!」

大勇者「ふっ」

ぼぼぼっ!!

大勇者が三度拳を振るうと、その拳圧でニンギョの首が吹き飛んだ。

大勇者「ここにいるの結構強いな。先も長そうだ……早く戻らなきゃいけねぇのに」

どごおおおおおん!!

ミノタウロス希少種「ぐおあああああああああ!!」

大勇者「俺はさっさとウェイトレスに会いに行かなきゃならないんだよ。邪魔、すんな」

ドゴオオッ!!

眼にも映らぬジャブがミノタウロスの腹部を丸ごと吹き飛ばす。

132

--死の砂漠--

わーわー!!

研究員「……」

戦場の後方で研究員は闘いを観察している。

研究員「勇者は魔王になる……実に面白いですねー。それが本当なら……くー、研究してみたいですー。早く捕まえてくれないですかなー」

133

--死の砂漠--

王国騎士「はああああああああああああ!!」

シュパッ!

大魔法使い「つっ!」

ぶしゅっ!!

大盗賊「!? 大魔法使い!!」

大魔法使い「かすり傷よ! でもこのままじゃ埒があかないわ、大盗賊わんちゃんやって時間稼いで! 私が一撃で終わらせる!」

大剣士「な、大魔法使い貴様!」

大魔法使い「うるさい! わかってるわよ!!」

大盗賊「心得ました。土属性生成魔法レベル4、小月!」

ブゥウン!

大盗賊は上空に小さな月を作り上げる。

大盗賊「更にスキル、身体強化・獣化、狼」

アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

大盗賊は狼の姿に変身した。

134

--死の砂漠--

王国騎士団長「大盗賊の獣化! 下がれお前達では無理だ! 私がでる!」

ひゅばっ! がきいいいいいいいいいいん!!

大盗賊『ぐっ! この速さに対応ですか。さすが騎士団長殿』

ぎんぎんぎぃいいいいいいいいいいん!!

王国騎士団長(速い。だが何も出来ない速さではない!!)「お前達は大魔法使いをやれ!!」

わあああああああああああ!!

一斉に大魔法使いに向かっていく騎士達。

大魔法使い「っ! まだ魔力練り上がってないってのに、大賢者!!」

大賢者「大剣士を守りながらお前まで守れると思うか? 無理だ!」

大魔法使い「だから過保護過ぎるっつーの!!」

王国騎士「魔王の手先め! 死ね!!」

ひゅん!

135

--死の砂漠--

大盗賊『』

すっ! ずばああああ!!

王国騎士「がはっ!?」

王国騎士を後ろから斬り付けたものは大盗賊。

王国騎士団長「! 私の太刀筋をもう読みきって切り抜けただと!?」

どしゃああん!!

大盗賊『……これでも我々は六体の魔王を討伐しているんですよ?』

ゴゴゴゴゴゴゴ……

王国騎士「……く」

大盗賊『大勇者パーティをなめないでいただきたい』

136

--隠しダンジョン地下六十九階--

ドラゴン「ぎゃああああああああああああああああああああす!!」

どごおおおおおおおおおおおおおおおん!!

登場したドラゴンを一撃で吹き飛ばす大勇者。

大勇者「結構深くまできたな。でももうそろそろだ」

かつんかつんかつん

大勇者「なんでかわかる……お前が近いってのを感じるんだ」

かつんかつんかつん

大勇者「……魔王討伐の時も少し感じてた。あれと似ている。でも今度のはそれらと比較にならないくらい、強く」

かつん


--隠しダンジョン地下七十階--

大勇者「……最深部か……壁も床も緑色に光ってら。綺麗だな」

   「でしょ? 私のお気に入りの場所さ」

最深部の奥には

大勇者「よ、会いに来たぜ。ウェイトレス」

ウェイトレス「……」

ウェイトレスと天使がいた。

137

--隠しダンジョン地下七十階--

ウェイトレス「……」

大勇者「……」

しばし見詰め合う二人。

ウェイトレス「……はぁ。まー……ぶっちゃけ来ると思ったよ君のことだからさ」

ウェイトレスは静かに眼を瞑り、開く。

ウェイトレス「決心は、ついたのかな?」

大勇者「ん」

かつん、かつん

大勇者「正直ここに来るまで迷ってた」

ウェイトレス「……そうなんだ?」

138

--死の砂漠--

大盗賊『残念ながらここから先は通行止めなんですよ。通すわけにはいきません』

血まみれの大盗賊と息がきれている兵士達。

王国騎士「く……これだけの人数を相手に一人でもちこたえるとは……!」

大魔法使い「――オーケー大盗賊、準備できたよ」

王国騎士「!?」

大魔法使いの掌には巨大な魔力球が作り上げられていた。

大魔法使い「褒美として無事帰れたらおっぱいを揉ませてやる」

大盗賊『まじ!?』

大魔法使い「……氷属性範囲攻撃魔法」

ぱき、ぱきぱきぱきぱきぱき!!

魔法の起動だけで周囲の空気が凍り付いていく。

王国騎士「く! 逃げろみんな!!」

王国騎士団長「いや、間に合わん」

大魔法使い「レベル4!!」

バッキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

139

--死の砂漠--

ひゅおおおおおお……

大賢者「……なるほど、辺り一面を氷付けか……。これなら彼らが我々に向かってくることも、死んで蘇生が間に合わなくなることも無い……」

大剣士「大魔法使い……」

大魔法使い「こいつらはあんたのもんだ。だからこいつらを殺すかどうかの責任もあんたのもんだ。これはあんたが背負うべき責任だろ」

大剣士「……」

大魔法使い「だから……後はあんたに任せたよ」

大剣士「……了解した。すまない」

大賢者「さて、あとは一人か」

第二王子「ひぃ……こ、こんな、全て氷付け……化物め……!」

大剣士「……」

140

--隠しダンジョン地下七十階--

ウェイトレス「迷ってたんなら、どうする? ここまで来ちゃったけど、やめる? 私は寛大だからエンカウント後でも逃がしてあげるよ」

大勇者「まじか」

ウェイトレス「まじ」

大勇者「んー……でもそれはいいや。もう決めたからよ」

ウェイトレス「……」

大勇者「出来ることなら闘いたくは無かったが……そうもいかん。俺は勇者でお前は魔王なんだから」

ウェイトレス「……」

ウェイトレスは床を見つめている。

大勇者「それに、あんな約束だけどお前との約束を破りたくもないしな」

ウェイトレス「」


         
     大勇者「ここに宣言する。俺達は必ずや全ての魔王を倒し尽くし、世界を平和にしてみせると!!」



ウェイトレス「……うん」



大勇者は静かに構える。

大勇者「――大好きだウェイトレス。ぶち殺してやるから覚悟しろ」

そう言って大勇者は微笑んだ。

ウェイトレス「……そのセリフ、そっくりそのまま返すわ」

ウェイトレスもまた微笑んだ。

大勇者「これが俺達の結婚式だ。盛大にやろう」

ダッ!

大勇者が駆ける。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

また遅れてしまった……

勇者募集と盗賊解雇とこの話は最初からある程度話を考えてあったので矛盾は少ない感じだと思います。盛り込んだままボツになってしまった設定とかもあるのですが、それはまたぼちぼち……

それでは投下していきます。

141

--隠しダンジョン地下七十階--

ダダダダダダ!!

大勇者「……」

スッ

ウェイトレス「……」

大勇者が飛び、天使がレーザーを放つ。

カッ、ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

ウェイトレス「!」

空中で衝突する拳とレーザー。

大勇者「あああああああああああああああああああああ!!」

ばしぃん!!

ウェイトレス「嘘!? 拳でレベル7魔法相当の攻撃を吹き飛ばした!?」 

142

--隠しダンジョン地下七十階--

ビー! ビー!!

連射されるレーザーを次々に弾いていく大勇者。

ドガァン! ドガガガァアン!!

レーザーと拳による強烈な応酬。そのどれもが地形に傷跡を残すほどの莫大な魔力をまとった一撃。

ウェイトレス「レーザーを雲散させやがった……本当無茶苦茶な奴だなー。普段よりステータスがあがってる気がするけど……なるほど孤軍奮闘持ちか……」

ぶぅん

ウェイトレスは魔力で作った糸を展開する。

ウェイトレス「脳筋バカには搦め手でいかないと、ねっ!」

しゅばばばばば!!

大勇者「はぁっ!!」

どんっ!!

迫るウェイトレスの糸を気合で吹き飛ばす大勇者。

ウェイトレス「なんだこの脳筋搦め手も効かない!」

143

--隠しダンジョン地下七十階--

どおぉん! ずどおん!!

ウェイトレス(天使がパワー負けするとか! くー、一体なんなら大勇者をぎゃふんと言わせられるのよ。この短時間で一通り私の手の内は見せちゃったし……って私戦闘中にごちゃごちゃ考え過ぎ!)

大勇者「おらぁっ!」

どぉん!!

大勇者の拳が天使を弾き飛ばす。

天使「ぃqyうぃおうばえgじゃ!」

ウェイトレス(考えがさっきからまとまらない……思考に関与する自動スキルも持ってるっぽい? うーん、大勇者のくせにむかつくじゃん!)

そういうウェイトレスの表情は笑顔。

ドォンドォン!!

汗を撒き散らし、踊るように戦う二人。

ウェイトレス(今までで一番強い敵……ほとんど情報の無い最強の宿敵……焦りながら、ドキドキしながら本気で戦える……本当……楽しいな)

大勇者「……へっ」

大勇者もまた笑顔だった。

ドガガガガガガアアアアアアアアアアン!!

ウェイトレス(いつまでもこれが続けばいいのに)

大勇者「」

タンッ

ウェイトレスの糸と天使の攻撃を読みきった大勇者は全てをギリギリで回避し、

ボッ

ウェイトレス「」

ウェイトレスに一撃を入れた。

144

--隠しダンジョン地下七十階--

ずぐっ

スローになる感覚。

ウェイトレス(いっ……なに、これ……想定していたレベルとはかけ離れてる……そうか、これが勇者の力……魔王を倒す魔王特効の力)

大勇者「!」

ドギャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

ウェイトレスを突き抜けた衝撃波は隠しダンジョン全体にひびをいれる。

ウェイトレス(一撃とは、思わなかったな……もっと、楽しみたかったのに)

ぶしゃああああああああ!!

大勇者「ウェイトレス!!」

がしっ!

大勇者は崩れ落ちるウェイトレスを抱きかかえた。大勇者もまたウェイトレスの脆さに驚いていた。

天使「……」

戦闘をやめ、二人を見守っている天使。

ウェイトレス「がはっごほっ……あ、あは……やられちった」

血を吐きなお笑うウェイトレス。

ウェイトレス「……さすが勇者様だね。私が見込んだだけはある」

ウェイトレスはそっと大勇者の頬に手を伸ばす。

大勇者「ウェイトレス……」

145

--隠しダンジョン地下七十階--

ウェイトレス「この天才人形師ウェイトレスちゃんを倒しちゃうなんてやるじゃん。少ししか戦えなかったけど、今までで一番わくわくしたよ……。今まで戦ってきた強敵は全部攻略本付きみたいなものだったし、どんな相手なのかわからないってのは、痛快だった」

大勇者「俺も楽しかったぞ。今までで最強の相手だった」

ウェイトレス「くすっ……でも私が魔王人形全部使ってたら負けなかったから」

大勇者「ふっ、そうかもな」

ウェイトレスの体重が少しずつ軽くなっていく。

大勇者「……」

ウェイトレス「……後悔してるの?」

ウェイトレスは大勇者の心を見透かしたように問う。

大勇者「……してるさ。もうどのことに対して後悔しているかわからん程度には」

ウェイトレス「ははは。人間は後悔する生き物だから後悔は悪いことじゃないよ」

スッ

ウェイトレスは大勇者に指輪を渡す。

ウェイトレス「でも絶望はダメ」

146

--隠しダンジョン地下七十階--

大勇者「これは……?」

ウェイトレス「君の次に大事な私の宝物。私の弟がくれた人間に戻るための道具……」


  ウェイトレスの弟「姉ちゃんは使命を果たしたらただの女に戻るんだ。その時にこういうのの一つでも持ってないと不便だろ?」


ウェイトレスは旅立ちの日のことを思い出す。

ウェイトレス「これは私の想いの結晶。千年に渡って力を込め続けたこの指輪なら、魔王の力を完全に封印できると思う」

大勇者「!?」

ウェイトレス「……いや、してみせる。想いで足りないなら呪ってでも」

ウェイトレスは覚悟を決めた眼をしている。

大勇者「手紙で未完成だと言っていた指輪か! 完成しているのなら今すぐつけろ! そうすればお前を殺さずに済む!」

ウェイトレス「うぅん、それは違う。これはまだ完成していない。これにはまだ魂が入っていないから」

大勇者「……?」

ウェイトレス「時間だけじゃこれを完成させることは出来なかった。この指輪はね、私が死ぬことで初めて完成するの」

大勇者「!?」

147

--隠しダンジョン地下七十階--

大勇者「」

絶句する大勇者。

ウェイトレス「その指輪は私の核。破壊すれば私は死ぬ。……そして残った指輪の残骸は私の血を吸って、魔王の骨として完成する」

大勇者「」

大勇者の掌にあるものはウェイトレスの命。

ウェイトレス「私はもうどうやっても魔王として終わる運命しかない。でも君は違う。この私の指輪が魔王にはさせない」

これがシナリオを止めるウェイトレス唯一の策だった。

大勇者「っ……お前を殺した俺にそれをつける資格はない……俺だけ、のうのうと生きるわけにはいかない」

ウェイトレス「生きて」

びきっ

ウェイトレスの手足がひび割れていく。そして中から人形のような材質の皮膚が露出する。

148

--隠しダンジョン地下七十階--

ウェイトレス「生きて、私のために。世界を平和にするって、そう言ったでしょ?」

大勇者「……言った……言ったがそれは」

ウェイトレス「君みたいな脳筋が魔王になったら世界が終わっちゃうよ? それじゃあ、ダメだよね?」

びきびきびき

ウェイトレス「……ちぇ、もうリミットみたい。……大勇者、指輪を壊して。私の体が変質し始めてるよ」

大勇者「ウェイトレス……」

ウェイトレス「その魔王の骨を取り込もうとしてるみたい。そしたら全部台無しなんだよ私の千年間」

大勇者「……」

大勇者はしばらくの間動かない。

ウェイトレス「大勇者……お願い」

大勇者はそっとウェイトレスの手を握る。

大勇者「――あぁ、世界を任せろ。俺がお前の意思を継ぐ。お前の戦いを無駄にはしない」

それを聞いたウェイトレスは目をつぶって笑う。

ウェイトレス「よかった」

びきびきっっ!!

ウィトレス「……それでは我が夫、大勇者は、健やかなる時も病める時も、世界を救うことを誓いますか?」

大勇者「……誓います」













バキッ

149

--死の砂漠--

第二王子「あ、兄上……」

大剣士「……」

氷の大地と化した死の砂漠で、あえて凍結させなかった第二王子と対峙している大剣士。

大魔法使い(さぁどうするつもり大剣士?)

大盗賊「……」

大賢者「大剣士……」

第二王子「わ、私は間違ったことをしたとは思ってませんよ!? 兄上達が未来の魔王を匿っているのがいけないのですから!!」

大魔法使い「……っ!?」

大剣士「何を言っている? でたらめはよせ、もうお前のバカ話を聞くものなどいないんだぞ」

第二王子「……え?」

大魔法使い「――あ、そ、そうだった……たてこんでたからつい……いやわざと考えないようにしてたんだ……」

大盗賊「大魔法使い? 顔色が優れませんけど大丈夫ですか?」

震える大魔法使いとそれに気づく大盗賊。

150

--死の砂漠--

第二王子「え……あ、もしかして……ご存知無かったんですか兄上……? あの大勇者は」

大魔法使い(! 過去読みの書で読んだことをばらすつもりか!)

第二王子「魔王を倒した勇者は――」

大魔法使い「やめろ!!」

大魔法使いが駆け寄ろうとするが、

第二王子「次の魔王になってしまうんですよ」

一瞬早く言われてしまう。

大剣士、大賢者、大盗賊「「「!!??」」」

大魔法使い「ば、ばか王子!」

ドカッ!

第二王子「ぎゃふ!!」

大魔法使い「あんたは次から次へと余計なことを! 歯をくいし」

がしっ

大剣士が大魔法使いの腕を掴む。

大剣士「……そうかお前は知っていたんだな」

151

--死の砂漠--

大魔法使い「っ!」

大剣士「知っていたんだな、各地の魔王の過去を読んでいたのだから。……やつらがどのような経緯をもって魔王になったのか……」

大魔法使い「っ」

ぱしっ

大魔法使いはつかまれた腕を振り払う。

大剣士「……なぜ今まで隠していた」

大魔法使い「い、言えるわけないでしょ!? あんなっ!……あれだけ人々の平和のために戦い続けているあいつが……魔王になっちゃうかもしれないなんてこと」

大盗賊「大魔法使い……」

第二王子「な、なんだ知らなかったのなら何も問題はないじゃないですか兄上! 魔王になる前に共に大勇者を倒して凱旋しましょう! 父上たちの件は私が上手く説明します! これで汚名をはら」

大剣士「第二王子、黙れ」

第二王子「ひゅっ!?」

大剣士に凄まれて第二王子は息が止まる。

大剣士「……」

大賢者(だが……これはやっかいなことになった……)

大盗賊(私達はどうすればいいのか……)

152

--死の砂漠--

どごおおおおおおおおおん!!

その時砂漠の聖域の入り口が爆発する。

大剣士「!」

もくもくもく

大勇者「げほっごほっ……あー、遅くなっちまった、悪いな」

大勇者が現れた。

大魔法使い「……っ」

大勇者「ん? どうしたみんな。なんか暗いぞ?」

大剣士「……お互い様だ。お前も随分とテンションが低いじゃないか」

大勇者「そりゃぁ、な」

第二王子「ひ、ひっ!?」

大勇者を見て後ずさる第二王子。

153

--死の砂漠--

ひゅおおおぉぉ

大勇者「なるほどね、凍結か。これなら確かに死者を出さずにすむな」

辺りを見回した大勇者がそう呟く。

大剣士「ウェイトレスに止めを刺したんだな」

大勇者「あぁ……ちゃんとしたさ。半端はしない」

大剣士「そうか。ご苦労だった」



そして大剣士は

大勇者「!?」

がぎいいいいいいいいん!!

大剣で大勇者に斬りかかる。

大魔法使い「!! ちょっ、大剣士!!」

大盗賊「!」

大勇者「お、おい危ねぇぞ」

大剣士「……お前が次の魔王なのか?」

大勇者「!?」

154

--死の砂漠--

ひゅおおおおぉぉおお……

大賢者「大剣士……」

大勇者「……なるほど、全部ばれちまったのか。なら、どうする?」

大盗賊「いっ!?」

大剣士「……」

大勇者「……」

しばし見詰め合う大勇者と大剣士。

すっ

大剣士「……なぜ今まで相談しなかった」

大剣士は大剣をひく。

大剣士「なぜそんなことをお前も大魔法使いも黙っていたのだ! 馬鹿者共が!! 俺達は仲間じゃあなかったのか!?」

ばきっ!!

大剣士の拳が大勇者の顔面を打つ。

155

--死の砂漠--

第二王子「なぜ拳で!? 兄上! すぱっと斬っちゃってくださいよ!!」

ひゅおおぉぉおお

大勇者「……すまん。ことがことだけに中々言い出せなかった」

大魔法使い「……私も。ごめん」

大剣士「くそっ!」

ざんっ!

大剣士は砂漠に大剣を突き立てる。

大剣士「もっと早くそのことを知っていれば何か対処法があったかもしれないだろ! くそっ!!」

うろうろと歩き回った後もう一度大勇者を殴る大剣士。

ばきっ!!

大勇者「ごふっ!!」

156

--死の砂漠--

大賢者「大剣士やめておけ、お前の拳は人を殴るようには出来ていない」

大剣士「……」

大剣士の拳から血が吹き出している。

大剣士「……っ」

大盗賊「……でもどうするんです大勇者。今のところあまり変化があるようには見えませんが、あなた自身は何かを感じてます?」

大勇者「いや今のところは大丈夫だな。左のほっぺが痛いだけだ」

すっく

大勇者が立ち上がる。

             「本当にそうかな?」

大勇者「」

その時少年の声が聞こえた。

157

--死の砂漠--

???「魔王になることを知りながら最愛の女を手にかけた……それで絶望を感じないはずが無いじゃないか」

大勇者「だ、誰だ……?」

大剣士「ぬ?」

大勇者は辺りを見回した。
すると靄のようにうっすらと見える少年が近くで立っていた。

大魔法使い「だ、大勇者? 大丈夫……?」

???「誰よりも人々の平和を祈りながら戦い続けた君が、今度は人々を傷つける側の存在になる。それだけでも相当な苦痛だろうに」

大勇者「!」

その幻覚のようなものは大勇者に囁き続ける。

???「あそこは特別な場所だから僕も覗き見することが出来なかったんだけど、どうやらあれを持ち帰らなかったみたいだね? なぜだい? あれは君を助けるために彼女が命を代価にして作り上げものなのに」

大勇者「」

どごおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

大勇者はそれがいる場所に拳を叩きこむ。

???「無駄だよ。僕に実体は無い。今はね」

158

--死の砂漠--

大魔法使い「ちょっとどうしたのよ大勇者!」

大賢者「まさか……これがそうだというのか?」

大剣士「っ」

大剣士は大剣を握る。その手はがたがたと震えている。

???「もう僕の存在を認識してしまった時点で後戻りは出来ないよ。君は魔王になる運命なんだ」

大勇者「っ!!」

ドォンドォオオオン!!

大勇者の精神がいとも容易く揺さぶられてしまう。それは人の心を支配している。

第二王子「ひっひいいい!!!! ま、魔王が! 魔王だ!! たすけてくれーーーーー!!」

大盗賊「……どやら覚悟しなくちゃいけないみたいですね……」

すっ

大盗賊がナイフを取り出した。

???「何、魔王にだって存在意義がある。君もいずれ気づくはずさ、思ったより悪いもんじゃないよ」

大勇者「何……?」

???「いいねその眼。君は優秀な魔王になれそうだ。千年間も魔王としての責務を放棄した出来損ないのあの子と違って」

大勇者「」

159

--死の砂漠--

大勇者が我を忘れて右拳に魔力をこめる。

ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

大賢者「!! あいつあれをここで放つつもりか!? 凍結させている兵が見えていないのか!?」

ダッ!

一番近くにいた大剣士が走りだす。

大勇者「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

ダダダッ!

大剣士「この、バカやろうおおおおおおおおおお!!」

どがっっ!!

大剣士が再び大勇者の顔面を殴った。

大勇者「!?」

どざざー!!

大魔法使い「あ、あ……」

オロオロと落ち着かない大魔法使い。その目元には涙が。

大勇者「い、いてて……大剣士」

ぐいっ!

大剣士「飲み込まれるんじゃねぇ!! 気をしっかり持て!! お前は大勇者だ!! 勇者なんだ!!」

160

--死の砂漠--

大勇者「――」

大剣士「まだ終わったわけじゃない! 魔王になると決まったわけじゃない!」

大剣士は大勇者の顔を近づける。。

大剣士「俺達は諦めないぞ!! なんとかして魔王化を止める手段を見つけてやる!! 絶対に、お前を魔王になんてさせやしないっ!!」

大勇者「……大剣士」

???「……熱い男だね。だが理想が強過ぎて空回り。これから現実を知ってどんな風に変わっていくのか……楽しみだね」

それの声が少しだけ小さくなっていく。姿もほとんど透明になった。

大勇者「……」

それに比例して少しずつ大勇者の思考が元に戻っていく。

大勇者「……あぁ、俺だって諦めるつもりはねぇ!」

ざっ!

大勇者は立ち上がる。

大勇者「あいつにも託されたんだ。この世界の平和を。人類の未来を」

恐らく次で終わるかと思います。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

あけましておめでとうございます。

遅れてしまってごめんなさい。年末は忙しくてこれなかったです。少し増量しておいたのでなにとぞ……

それでは最後、投下します。

161

--隠しダンジョン地下七十階--

ぴちょーん

大勇者が去った後、天使は静かに指輪を眺めていた。


大勇者「墓には備えものが必要だ。ここはあまりに寂しすぎる」


天使「……」

そう言って大勇者は天使に指輪を預けたのだった。

しゅる

天使は赤姫の姿に変身する。

赤姫「……男ってバカばかりね」

162

--死の砂漠--

大勇者「……」

大剣士「……」

二人は暫くの間対峙していたが、

第二王子「何を言っているんです兄上! さっきの奇行を見たでしょ!? そいつはすでに魔王なのです、運命は変えられない!」

第二王子の叫び。

大魔法使い「ちょっ、ほんとこいつは……!」

大剣士「第二王子」

第二王子「な、なんですか兄上……」

大剣士「こいつはまだ魔王ではない」

第二王子「いや、ですから」

大剣士「魔王になる前に殺すのではなく、俺は、魔王になるのを食い止めるべきだと考えている」

第二王子「甘いですよ兄上……兄上は魔王になるかもしれない人物を放っておくって言うのですか!? そんなもの人のためになりませんよ!? 猛獣を野放しにしているようなものだ!」

大剣士「これは決定だ。不服があるのか?」

大剣士が睨むと第二王子はわなわなと震え始める。

大魔法使い「……」

163

--死の砂漠--

大魔法使い「えい」

ぴっ

第二王子「あいたっ!? な、何をするか無礼者!」

ぱたむ

大魔法使いは抜いた髪の毛を過去読みの書に挟む。

第二王子「!? それは!」

ぺら

大魔法使い「……ふーん、なるほどね。私らが魔王の支配下に入って王国に手引きをしたと、ご丁寧に演説までしてる。あんたはそうやって国民を煽ってからここに来たと……」

大賢者「なんと……!」

第二王子「……そ、そいつの過去を見て判断した結果だ」

第二王子は狼狽している。

大剣士「……」

164

--死の砂漠--

大魔法使い「はぁ、どうする大剣士。簡単にはいかないわよこれ」

大盗賊「問題が山済みですねほんと」

ざっ

大剣士「……第二王子」

第二王子「な、なんですか兄上……もしや考え直してくださいましたか?」

大剣士「くどい。決定だと言ったはずだ。お前は俺の決定には従えないのか? どうしてもこいつを殺さなくては気がすまないのか?」

大勇者「……」

第二王子「あ、当たり前ですよ! 我が王家の繁栄のためにそいつは絶対に殺しておくべきです!! 人類最大の宿敵なんだ!! それが民の平和を考えるならです!!」

大剣士「」

ズバッ!!

大勇者「!?」

大魔法使い「なっ!?」

大剣士「……」

大剣士の大剣が第二王子を両断する。

第二王子「あ、あに、うえ」

どちゃり

165

--死の砂漠--

ぶしゅーーーーーーーーーー!!

大賢者「大剣士! 何を……!」

大剣士「……この者は王座と王冠に取り付かれた人間だ。いつか人類の障害となる」

ぶんっ、スチャッ

大剣士は血を払いホルダーに大剣を収める。

ふるっ

その手は静かに震えていた。

大盗賊「何も殺さなくても……」

大剣士「大魔法使い、この氷を溶かせ。兵を連れて帰るぞ」

大魔法使い「……いいのかい?」

大剣士「あぁ……これで全て解決する」

大賢者「大剣士……」

大勇者「お前……」

ズキン!

大勇者「っ!!」

その時大勇者の頭部に激痛が走る。

166

--死の砂漠--

???「中々面白い男だ。彼も相当の傑物だね。君がこの時代に産まれてこなければ、きっと彼が勇者だったろう」

またあの声が聞こえてくる。

???「ふふ。ごらんよ彼を。全てを守るために全てを失い始めた……これは見物だ」

大勇者は返り血を浴びた大剣士の横顔を見た。

ズキン、ズキン

大勇者「ッ!」

???「――そうそう、一つ忠告しておくよ大勇者。これから君は今以上に人のことで苦悩することになる。人に対する憎悪や絶望が、君を魔王に変えてしまうだろう」

大勇者「なに……?」

???「人の醜悪な心に触れないことだ。少しでも人間でいたいのならね」

大勇者「……」

その靄は笑っているような気がした。

167

--死の砂漠--

大剣士「――我々はあの日、王都に入り込んだ魔王を後一歩の所まで追い詰めた。だが卑怯にも魔王は逃げたのだ。このまま逃がしては次にいつこんなチャンスが来るかわからない。なので我々は王都の後始末より魔王に止めを刺すことを優先した。それがこいつに付け込まれる結果になった。許せ」

大剣士は首だけになった第二王子の顔を指差す。第二王子の顔は魔法によって醜悪な顔に変えられている。

王国騎士団長「……そうでしたか。魔王を手引きし、我々を騙していたのは第二王子……いや、この魔族だったのですね」

王国騎士「なんと……」

ざわざわ

王国騎士団長「……」

大剣士「どうした? 信じられないか?」

王国騎士団長「――いえ、信じます。大剣士様のことは幼少期より存じております。誰よりも正義を信じ、家族や民を愛した貴方があんな非道な行いをするはずが無い……よく考えれば当たり前なことでした。なぜあの時私は貴方を疑ってしまったのか……!」

大賢者(第二王子も王家の人間。不完全ではあるが、王の言の影響だろうな)

王国騎士団長「しかしなぜ我々を殺してくださらなかったのか……! 魔族の言葉に騙され、主たる王家に剣を向けてしまった……我々にもはや生きる価値などない!」

騎士団長は涙を流す。

大剣士「こんなことで死のうとするな、騙されたお前たちに非は無い。これからも俺達や民の代わりに剣となってくれ」

王国騎士「うっ……大剣士様」

騎士達は涙を流す。

大魔法使い(これが王の言……結構簡単に丸く収まりそうじゃん……外堀は)

大盗賊(そのために払った犠牲……大剣士は大丈夫なのでしょうか)

168

--死の砂漠--

大剣士「それではこれより王国に帰還する!!」

オオーー!!

大勇者「……」

ザッ、ザッ

大魔法使い「ちょっと大勇者、大丈夫? 顔色が悪いわよ?」

大勇者「あぁ、大丈夫だ。ちょっとあいつとの戦いがこたえたのかもしれない……」

大魔法使い「……そうよね。それもあるんだもんね」

大盗賊(普通に考えたら最愛の人を自分の手にかけたんだ。それが原因で発狂したっておかしくない……)

ズキンズキン

大勇者(頭がいてぇ……くそ)

???「後ろの男が君を狙っているよ」

大勇者(……何?)

169

--死の砂漠--

大勇者は靄に言われて後ろを確認した。

赤髪の騎士「……」

凄まじい形相の男がこちらを見ていた。しかし大勇者の視線に気づくと顔をそらす。

???「彼は第二王子の近衛だったのさ。使えていた主が自分が凍っている間に殺された。今の彼は何を信じるんだろうか?」

ズキン!

大勇者「ぐぅ!」

大勇者は体勢を崩した。

大魔法使い「わ、ちょ!」

赤髪の騎士「! う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ダダダダダ!!

それをチャンスと見たのか、赤髪の騎士が大勇者に飛び掛った。

ガギィイン!!

王国騎士団長「愚か者め!」

間に割って入り剣で受ける騎士団長。

王国騎士団長「この者を捕らえろ!! 王族にあだなした逆賊だ!!」

170

--死の砂漠--

ズキンズキン!!

大勇者(なんだ……これは……)

???「ふふ、ふふふふ……」

ざわざわ……

王国騎士団長「大丈夫ですか!? 攻撃は防いだと思いましたが」

大魔法使い「大丈夫、大勇者は魔王との戦いで大怪我を負ってるのよ。だから今のとは関係無いわ」

王国騎士団長「大怪我……それでしたらいい治療系魔法の使い手がこの中にいます。今呼んで参ります」

大盗賊「いえ結構ですよ。少々難度の高い魔法攻撃を受けたようでしてね。大賢者でもてこずるレベルなんです。こんな場所でうかつに触るわけにもいかなくて」

王国騎士団長「! なるほど。そもそも大賢者が治せない傷を我々でどうにかできるはずが無いですね。承知しました」

ぐっ

大盗賊は騎士団長に見えないように親指を立てる。

大魔法使い(……中々いい機転ね)

171

--死の砂漠--

夜。

ぱちぱち

大剣士「さすがに半日で死の砂漠を越えるのは無理だったか」

大賢者「焦ることは無い。ここはまがりなりにも最悪の土地だ。用心して安全に進むべきなのだ」

大勇者「……」

大剣士「……大丈夫か?」

大勇者「あ、あぁ……こんなのへっちャらだぜ」

大魔法使い「……どんな感じなの? 隠し事はやめて」

大賢者「人払いはしてある。ここには我らしかいない」

大勇者「……そうだな。お前らに隠し事をしてもいかん」

ふぅー、と大勇者は息を吐く。

大勇者「なんか変な靄みたいなのが現れた。それでずッと囁いてくるんだ」

大盗賊(幻覚?)

大魔法使い(ヤクチュー?)

大勇者「人の負の感情が……流れ込んでくるんだ」

172

--死の砂漠--

ツー

大魔法使い「って、あんた頭から血がでてるわよ!」

大勇者「え」

大魔法使いが慌てて布を大勇者の頭部にあてがう。



大魔法使い「……何か硬いものが」

大魔法使いは布越しにそれを軽くなぞった。骨のように硬い何か……。

すっ

布を取って確認してみると

大魔法使い「!!」

まだ小さな角の先端が肉を突き破っていた。

173

--死の砂漠--

ヒュウゥウウウ

大魔法使い「……」

ざく

大盗賊「夜の砂漠は冷えますよ?」

大魔法使い「寒いのには慣れてるわ。私氷属性だし」

大盗賊「やれやれ」

大盗賊は持ってきていたマントをそっと大魔法使いにかける。

大魔法使い「……多分……普通の手段じゃ魔王化を止められないと思う」

大盗賊「……」

大魔法使い「このままじゃ……あいつが魔王になっちゃうよ……」

涙声になる大魔法使い。

大盗賊「……世界はまだ広いですよ」

大魔法使い「へ?」

大盗賊「この広い世界のどこかに、大勇者の魔王化を止める手段がありますよ」

大魔法使い「……」

大盗賊「探しに行きましょう。諦めるにはまだ早い」

174

--死の砂漠--

早朝。

チュンチュン

大盗賊「準備は出来ましたか?」

小声で話す大盗賊と頷く大魔法使い。

大勇者「……」

そして大勇者は大魔法使いに手を引かれて立っている。

大盗賊「これから透明化魔法を使います。なるべく魔力反応を出さないように。ではいきます」

大盗賊が魔法を唱えようと手をかざす。

大剣士「どこへ行くつもりだお前ら」

大盗賊「! だ、大剣士……」

あちゃー、と頭を抱える大魔法使い。

大賢者「この周辺一体はすでに俺の陣地だ。お前達が何をしようとしているのかなんてすぐにわかるぞ」

ざり

大剣士と大賢者が前と後ろから現れた。

175

--死の砂漠--

大盗賊(あっちのテントでぐっすり寝てたのを確認したんですけどね……大賢者の身代わり魔法でしたか)

大魔法使い「……大勇者の魔王化を止める方法を探しにいくのよ」

大剣士「お前達だけでか? なぜそのことを俺らに相談しない……」

大盗賊「……言えば貴方達も来るというはずだ。貴方達には国でやることがある」

大賢者「馬鹿な、そんなことは百も承知だ。大剣士は国のことも大勇者のことも両方救う気でいる。片方しか出来ない男ではない!」

大剣士「……」

大勇者「……」

大剣士は大勇者を見ている。

大魔法使い「――あんたら、大勇者の気持ちも考えなよ」

大賢者「なんだと? どういうことだ」

大魔法使い「ッ、この堅物ども……言わ」
大盗賊「これだけの時間を共にしたのに、みなまで言わねばわからねぇのか!!」

突如大盗賊が激昂する。

176

--死の砂漠--

大魔法使い「」

大賢者「ぬ……」

大魔法使い「……うわ、久々に見た大盗賊が怒る所」

大盗賊「ふー……!」

ゴゴゴゴゴゴ……

元砂漠の風の首領、黒風の狼と言われた男が怒気を放つ。

大賢者「ぐ……」

それに押されてしまう大賢者。

大剣士「――あぁ、それくらいわかっている」

それとは対照的に冷静な大剣士。

大剣士「だが水臭いだろう? これだけの時間を共にしたというのに」

大盗賊「ッ!……」

大剣士「頼れ俺たちを。そんなに俺達は頼りないのか?」

大勇者「……うん」








大剣士、大賢者、大魔法使い、大盗賊「「「は!?」」」

思いがけない台詞に一同がフリーズする。

大勇者「……なーんてウッソー」

大剣士、大賢者、大魔法使い、大盗賊「「「は!?」」」

177

--死の砂漠--

大剣士「き、貴様こんな時になにをふざけて」

大勇者「わ利ィ和りぃ。でmoみんナがぴリピりしテるのハ見た区なくてヨー」

ツー

大剣士「!」

大勇者の額を一筋の血が流れる。

大魔法使い(! こんないざこざでさえ負担がかかっちゃうの……?)

大剣士「っ! バカが! なら国に帰らなくてもいい! 俺がその旅についていけばいいだけの話だ!」

大賢者「ちょっ!? 大剣士それでは国が」

大剣士「お前に全て任せる! それで問題なしだ!」

大勇者「……おいオイ、そりャダメダロ」

大剣士「ダメじゃない!」

大盗賊「ふー……」

なんか真面目に怒ってるのが恥ずかしくなって少しずつ怒りが収まりつつある大盗賊。

大盗賊(……ち、俺も結構きてたんだな……鍛錬がたりん)

178

--死の砂漠--

大剣士「とにかく俺はついていく! これは決定だ!」

大賢者「お、落ち着け大剣士! というか静かにしないと兵達が!」

あたふたあたふた

大魔法使い「……くす」(はーあ。悩んで損した。やっぱり……仲間に気を使うのは私達らしくないわね)

大魔法使いの心を支配していた不安はいつの間にか吹き飛んでいた。

大賢者「く、そろそろ戻らないと身代わり魔法が解ける時間だ……どうするんだ大剣士!」

大剣士「だから俺は行くからお前だけ戻れ!」

大魔法使い「はいはい」

ぱんぱん

大魔法使い「……アンタは国に帰んな。お父上の後を継ぐんだろ?」

からかうように大魔法使いは言う。

大剣士「!! ふ、ふざけるな!! あいつがこんな状態なのに俺らだけ故郷に帰れるか!!」

大盗賊「……俺達があいつに付いている。お前はお前のできることをしろ」

まだテンションが戻りきらない大盗賊。

大賢者「……大剣士」

大勇者「ほーれ、行ッチまえョ!! オマエらなnカいなクタッて俺は困りゃシナいんダカらよっ」

179

--死の砂漠--

大剣士「……大勇者……」

大勇者「――50年だ」

大剣士「……何?」

大勇者「50年猶予をくれ」

大勇者の顔つきがさっきまでとはうって変わり真面目になる。

大勇者「今日から俺は50年、魔王にならずに耐えてみせる。その間にお前らは俺が魔王にならずに済む方法を探してくれ」

大剣士、大賢者「!!」

大剣士は絶句する。

大剣士(馬鹿な……今でさえ影響を受けてフラフラなんだぞ? まだ一日も経ってないというのに……それを50年だと?)

大賢者(無茶苦茶だ……絶対に無理だ……だがこの男は宣言したことを必ず守る男だ……)

大魔法使い「……私達も外側から探すわ。魔王化を止める方法を」

180

--死の砂漠--

大勇者「それに今の俺にとって人ごみは危険すぎる。人がたくさん居るところにいけば、大量の悪意が流れ込んできてすぐにでも魔王になっちまうかもしれない」

大剣士「……」

大勇者「だから行かせてくれ。そしてお前達はあの国に残ってくれ。それは逃げでもなんでもないぞ」

大剣士「……」

ざり

大勇者は大剣士に向かって歩いていく。

大勇者「……それと、魔王化を阻止出来なかった時のために、どうすればこの連鎖が終わるのか……その方法も見つけといてくれ」

大魔法使い「!」

大勇者「いつも頼みごとばっかで悪いなぁ。頼んだぞ相棒」

大勇者は拳を突き出した。

大剣士「……あぁ、わかったよ……! やってやる……例え何を犠牲にしてでもこの連鎖を断ち切ってやる。そしてお前がもうどうしようもなくなっちまったなら、この剣でお前に終わりをやる……だからそれまで……運命に飲まれるんじゃないぞ」

ゴツ

181

--死の砂漠--

ひゅおおおぉおおお

大賢者「……行ったか」

大剣士「くそ! 脳筋の分際でごちゃごちゃ考えやがって! まともに思考を練ることが出来ないくせにあいつめ!」

大剣士はまだぶつくさ言っている。

大剣士「……約束を違えるなよ。俺達も諦めないからな」

大賢者「……」



--死の砂漠--

ヒュゥウウウゥ

大勇者「……っていうか今更だけどさ、お前らも大剣士たちと行けば良かったのに。俺についてくることなんて無かったんだぞ?」

大魔法使い「ばっかねぇ。あんた一人でまともに生活出来るわけないでしょ? 炊事洗濯なーんも出来ない男なんだから」

大盗賊「それに誰かと会話してないと衰えるの早いらしいですよ、脳。これ以上そこが筋肉になっては困りますからね」

大勇者「……なんかひどいな」

大魔法使い、大盗賊「「あっはっはっ」」

すねる大勇者を笑う二人。

大魔法使い「――最後まで一緒にいるわ。だって、私はあいつにあんたを任されたんだから」

大勇者「……ん? なんだって?」

大魔法使い「な、なんでもないわよ!!」

ザッ……

一人大勇者は後ろを振り返る。

大勇者「……あいつにも耐えられたんだ。俺もなんとかして耐えてみせる」

ザッ



それ以降、大勇者達は消息不明になる。

182

--王国--

五年後。

かつかつかつかつ

大賢者「……全く、どこもかしこも反乱を起こしおって! 一体大剣士が王で何が不満なのだ!」

大賢者は大きなドアの前にまで来ると、襟をただし、丁寧にノックする。

コンコン

大剣士改め王様「入れ。静かにな」

大賢者「はっ」

ぎぃ

第三王子「はっ、はっ、はっ……あ、兄上……」

王様「あぁ、私はここにいるぞ」

ベッドで力なく横たわる第三王子と、その手を握る王様。

第三王子「すみません、どうやら私はここまでのようです……はっ、はっ……兄上が作る理想の王国のお手伝いができなくて、ごほっ! ざ、残念です……」

王様「何を言うのか。お前はまだ死んではならない。私と共にこの王国の行く末を……」

第三王子「はっ、はっ……見てみたかったです……兄上の国を……」

最後にニコリと笑って第三王子は事切れる。

大賢者「……」

王様「……」

183

--王国--

かつ、かつ、かつ、かつ

王様「反乱軍の方はどうだ?」

大賢者「東と西と北の地方がそれぞれ独立を望んでいる。それに便乗して亜人どもも動き出した。ふん、馬鹿な話だ。じきに騎士団に制圧されるだろうに」

王様「どうかな、わからんぞ。それに案外競争というのも悪くないかもしれん」

大賢者「な、正気か?」

王様「……冗談だ。気にするな」

すっ

研究員「やれやれ王様も人が悪いですねー。弟君が亡くなられたばかりだというのにもう政治のお話ですかー? それともこれも予定通りなのでしょうかー?」

大賢者「! 貴様、口が過ぎるぞ!」

王様「よい。それより研究員、研究の方は進んでいるのだろうな」

研究員「んー……それがあいにくさっぱりでして……さすがの私も無からの研究は厳しいと言いますかー。あ、そうそうー、そのことで王様にお願いがあって来ましたー。世界各地の遺跡を自分の足で調査したいのですが、許可降りませんかねー?」

大賢者「お前のような奴を野放しにすることなど出来るはずがない! 派遣する兵をこちらで選んで調査に向かわせる。それで我慢しろ!」

研究員「えー?」

王様「よい。好きにやれ」

大賢者「なにっ!?」

研究員「さすが王様ー話がわかりますねー。ではそのようにー」

すたたっ

大賢者「く……本当にいいのか? 奴を外に放てばたくさんの人が不幸になるぞ?」

王様「仕方が無い。俺の見立てでは時間はかなり押している。やれることはやらねば」

大賢者「……」

184

--王国--

かつ、かつ、かつ

王様「大賢者よ」

大賢者「は」

王様「……あいつらの情報は無いのか?」

大賢者「! 伝えるのを忘れていた……。今朝連絡があったんだが、どうも一ヶ月前の東の戦で、大勇者らしき姿を見た兵がいたそうだ」

王様「!……あいつめ……まだ性懲りも無く争いの場に……」

大賢者「怨嗟乱れ舞う戦場……奴にとって最も辛い場所だろうに、それでも奴は戦わずにはいられないんだろうな……」

王様「人同士の戦いを止めるために、か」




--東の戦場--

どおぉおおん!! どがぁああああん!!

王国兵士「くそ! よくも我が友をおおおおおお!!」

東の兵士「村を焼くなど、人のすることかぁああああ!!」

がぎいいいいいいいいいいいいいいん!!

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

火と血が飛び散る壮絶な戦場に一人の男が参戦する。

ばしばしっ!!

王国兵士、東の兵士「「!?」」

二人の憎しみが篭った呪いの剣をそれぞれの手で受け止める。

大勇者「……ヴヴヴ」

王国兵士「! 悪鬼か!」

東の兵士「戦場の鬼! しょうこりもなく兵士の魂を奪いに来たか!!」

大勇者の眼は血走り、爪は黒く変色し、髪の毛は野獣のように伸び、頭部からは短い角が生えていた。

185

--東の戦場--

オオオオオオ……

大盗賊「やれやれ……今回はちときつかったですね、ててっ」

血が滲む脇腹を抑えている大盗賊。

大魔法使い「大盗賊! ちょっと肩貸して!!」

大盗賊「!」

ボロボロになった大勇者を引きずるようにして現れる大魔法使い。

大勇者「ゼー、ゼー、ゼー……」

大盗賊「くっ」

がしっ

大盗賊は大勇者の肩に手を回して支える。

大勇者「ワ、わりィな……イツモいつも」

大盗賊「それは言わない約束ですよ」

大魔法使い「……」

186

--東の戦場--

眼がうつろな大勇者を見てこみ上げる大魔法使い。

大魔法使い「……もうやめようよ大勇者……こんなことしたって意味無いのに……それどころかどんどん大勇者が傷ついていく……!」

大勇者の頭部から流れる血を拭う。

大勇者「……でもヨ、人間同士ノタタカイなんて、見たクねぇンダ……」

大盗賊「……」

大勇者「アイツの頑張りモ、俺達がヤッテきたことも、全部ムダになッちマウ……」

くすくすくす

靄が笑う。

???「なんて人間はおかしな生き物なんだろうか……他にも選択肢があっただろうに、苦悩の果てに、あえて辛い未来を選ぶ者達がいる……」

大勇者「……」

靄はすでに黒い渦のような存在感にまで進化している。

???「まるでピエロだよ。君も、そして彼も」

大勇者「……」

187

--王国--

更に八年後。

ギィ……

大賢者「王よ」

王様「……」

王様は大賢者以外と会う時は抜け殻のようになっていることが多くなった。

大賢者「少しは自分の体をいたわれ。お前は十二分によくやっている。だがこのままではお前が先に潰れるぞ……」

王様「俺がよくやっている、だと?」

がっ!!

王様はいきなり立ち上がって大賢者の胸倉を掴む。

王様「ならなぜ争いが無くならない!! なぜ魔王化を止める方法が見つからない!!」

大賢者「どれだけやってもすぐに結果が出ないものだってある!! だが確実に成果はあげているのだ、現にお前が本格的に戦争の指揮をするようになってから、敵味方の死者数は激減したのだぞ! そこまで……思いつめるな」

王様はげっそりとやせ細っていた。

王様「……はは……全てを投げ打ってこの様だ……十数年も費やしてこの様だ。奴は今でも戦い続けているというのに……あの日の約束を守りながらな」

大賢者「……」

188

--王国--

数日後。

妃「お初にお目にかかります王様。わたくしは妃と申します」

王様「貴女は確か……時の一族の……これはどういうことだ大賢者」

大賢者「気分転換がお前には必要だ」

王様「なんだと……?」

大賢者「人は一人では生きていけない。そしてどうやら私一人ではお前を支えきれないようだ」

王様「大賢者……?」

大賢者「つまりお見合いをします」

王様「……はい?」

大賢者「婚活です」

王様「はい?」

189

--王国--

更に三年後。

王様「……」

大賢者「……いやはやあんなに小さかった大剣士がこんなに立派になって……うぅ」

王様「お前……なんだかんだ無礼だな。っていうか父親か!」

正装に身を包んだ王様を見て大賢者が泣く。

王様「……くそ、酔ってあんなことを言わねばよかった……」

妃「あら、プロポーズを後悔されているのですか?」

そこにウェディングドレス姿の妃が現れる。

大賢者「む」

王様「あ、あの日は酔いが回りすぎたのだ……俺らしくもない」

大賢者「やっと戦争が終結したのだからな。まだ各地にいざこざはあれど、長年の夢の一つを達成したのだ。酔うほど飲んで何が悪い」

王様「そ、そのせいでこんなことになってしまったんだぞ……」

妃「こんなこととは失礼ですね。……私はそのおかげで至上の幸福を感じました。貴方は違うのですか?」

じっと大勇者を見つめる妃。

王様「う……いや、その」

大賢者「お前今年で32なんだぞ? いい加減身を固めろ。世継ぎを作れ」

190

--小部屋--

大盗賊「おいしそーな魚が釣れましたよー。大漁ーです!」

ぴちぴち

大魔法使い「あんがと、台所にあげといて」

洗濯物を干している大魔法使い。

ぱんぱん

大盗賊「了解しました。昼食が楽しみですよ」

ぎぃぎぃ

大勇者「……」

ロッキングチェアに揺れる大勇者は空をぼーっと眺めている。

大魔法使い「……」

大盗賊「……」

ぎぃぎぃ

191

--王国--

更に八年後。

妃「……王様」

王様「……なんだ」

ベッドで向き合って正座している二人。

妃「もしやもしやと薄々感じてはいましたが、まさかさすがにそんなことは無いだろうとずぅぅぅぅぅぅぅっと、思っていたことがあるのですがよろしいですか?」

王様「だからなんだ。申せ」

妃「王様、子供ってどうやって出来るのか知ってますか?」

王様「無論だ。愛を育んでいればコウノトリさんが運んできてくれるのだ」

妃「ガッデム!!」

192

--王国--

更に二年後。

?「おぎゃぁー! おぎゃぁー! おぎゃぁー!」

王様「おぉ……おぉ……」

妃「貴方……女の子です。可愛らしい私達の娘……」

王様「おぉ……!!」

王様は妃の抱く赤子にそっと触れる。

王様「っ……ぅ……」

すると王様の頬を暖かいものが流れた。

王様「……よくやった……妃」

震える声。

妃「はい。男の子で無いので後を継がせることは出来ませんが……」

王様「構わぬ……よくやった」

王様は壊れ物を触るように、震えながらやさしく赤子に触れる。

王様「……宝だ……」

大賢者「……」

部屋の外で静かに涙を流す大賢者。

193

--王国--

?「あぶー」

王様「超まじくそかわ」

大賢者「キャラが!?」

妃「あらまぁ」

ずっと赤子を抱っこしている王様。

大賢者「……まさに目に入れても痛くない、って感じだな。喜ばしいが正直ショックだぞ」

王様「む、目に入れても……そういえばまだ試してなかったな。よし、我が瞳に来るがいい」

大賢者「やめろ!! それは無理だ!!」

?「あぶー」

王様「違うそっちはフランクだぞー」

194

--王国--

数日後。

王様(研究員の研究の成果も徐々に上がってきている……後はお前を救うだけだ。待っていろ、大勇者)

こつん

研究員「こんばんは王様ー。少しお話したいことがありましてー」

王様「どうしたこんな時間に。申せ」

研究員「やー誠に申しづらいんですがねー? 実はですねー……」

研究員は一つ咳払いしてからそう続けた。

研究員「ご息女から勇者因子が検出されました」

195

--王国--

ざぁああああーー

王様「……」

外は大雨で部屋が真っ暗になっているのに、明かりもつけず、力なく椅子にもたれかかっている。

王様「……浮かれ過ぎていたな」

ぽたっ

握り締めた拳から血が滴り落ちる。

王様「私だけ幸せを得ていた罰か……」

ぴしゃーん! ゴロゴロゴロ!!

ギィ

大賢者「王よ、いるのか?」

王様「……あぁ」

大賢者「明かりもつけずにどうしたのだ? 一体何をして」

ぼっ

大賢者があかりをともすと、

王様「……」

暗闇に覚悟を決めた王様の顔が浮かび上がる。

196

--王国--

研究員「決心はついたのですねー?」

王様「……あぁ」

王様は、数日間寝てないかのような疲れた表情だ。

研究員「では、私のプランを説明させていただきますー」

バタン!

そこに妃が入ってくる。

王様「妃……」

妃「王様、あの子を……どうするおつもりですか?」

王様「……」

王様の表情は険しい。

王様「……最悪な環境で飼う。勇者としての本分を発揮できるように、決して殺さずにだ」

妃「!!……ひどい、貴方様はあの子の父親でありましょう!?」

王様「――勘違いをするな。人の子である前に、私は人の王なのだ。全て人類の未来にささげると誓った。そのためには人としての幸せなど捨てる」

妃「」

妃は表情を変えないまま、ぼろぼろと涙を零す。

妃「……」

王様「……」

妃「……わかりました。それでは私も捨てていただきたく思います」

197

--渓谷--

強盗「へっへっへっ。こいつ中々もってやがるぜ」

強盗2「馬鹿なやつだ。抵抗しなけりゃ死ぬことは無かったのによ」

げしっ

強盗2は死体となった親子を蹴る。

強盗「嘘つけよ。どうせお前は殺すだろ抵抗しなくても」

強盗2「へっへっ、そいつはどうかな?」

強盗、強盗2「「はっ、はっ、はっ」」

ざっ……

強盗「! くそ見られたぞ! 誰だてめぇ!」

大勇者「……」

両腕に包帯を巻き、虚ろな表情をしている大勇者が立っていた。

大勇者「な、ぜ……こんなコトが、でキル」

大勇者は親子の死体を見て涙を流す。

198

--渓谷--

強盗(なんだこいつ浮浪者か?……なんにせよこいつらの知り合いってわけじゃなさそうだ)

強盗2「おいおいおっさんよぉ。おっさんには関係無いんだから関わらないでくれやぁ」

大勇者「……」

ざっ、ざっ……

大勇者は無言で歩き出す。

強盗2「ちょっ……やるってーのかい?」

ざっ、ざっ

大勇者は跪いて親子の瞼を閉じさせた。

強盗2「おうこら、無視してんじゃねーぞ!!」

ひゅっ!

強盗2がナイフを振りかざしたその時、

どがぁあああん!!

強盗2が吹っ飛んだ。

大勇者「俺は……一体何ノため二……」

199

--渓谷--

どぎゃぁ!

岩に叩きつけられて血を吹く強盗2。

強盗「ひ、ひいいい!?」

ゆらっ

大勇者が静かに立ち上がる。

強盗「ま、待ってくれ! 謝る……近くの町で自首する! な! だから頼む許してくれ!!」

ざりっ

大勇者「俺は……」

ざっ、ざっ

強盗「ひっ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

大勇者「アイツハナンノタメニタタカッテキタンダアァアァアァアァアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaa!!」

200

--王国--

数日後。

大賢者「本当にこれでいいのか? 王よ」

王様「あぁ……これしか無いのだ」

王様は赤子が産まれた時に絵描きに描かせた絵を眺めている。

王様「……研究員の言うことも一理あるのだ。誰からも愛を受けずに育てられたのなら……もし愛を知らなければ絶望することもないのではないか?……もしその通りだとするのなら、あいつは魔王にならずにすむかもしれん」

大賢者「……」

王様「あれからどれだけ調べても魔王化を止める手段を見つけることは出来なかった……だからこれも推測に過ぎぬ。だが……試す価値はある」

大賢者「……妃を同行させるのだろう? 愛から完全に切り離せては無いぞ?」

王様「あれには母親と名乗らせないよう約束させた。あくまで他人のように接しよ、と」

大賢者「……お前も非情になりきれない男だな」

王様「……」

201

--王国--

コンコン

研究員「私ですー研究員ですー。ご報告に参りましたー」

王様「入れ」

ガチャ、ギィ

大賢者「! なんだそれは……なぜそんなものがここにいる」

ぺちぺちぺちぺち……

研究員が連れてきたのは、白ワニ。

王様「……」

白ワニ「……」

研究員「やだなー大賢者様ー。このお方はですねー」

研究員はにこりと笑って言う。

研究員「お妃様でございますよー」

大賢者「!!?? な、なんだとぉおお!!??」

王様「」

白ワニ「……」

白ワニは王様を見て静かに涙を流していた。

研究員「いえねー、王様はどうしてもお妃様をご同行させたいというではありませんかー。でもそれだと計画に支障が出ると考えたんですよー。そしてこれから行く場所はあまりに過酷。お妃様の肉体では耐えられないと判断しましたのでねー? 計画のためと、お妃様の健康のために尽力させていただきましたー」

ガッ!!

大賢者は研究員に掴みかかった。

研究員「えぶっ」

大賢者「貴様ぁっ!! お前は人を何だと思っているのか!! これが、人のすることか!?」

202

--王国--

研究員「? なぜお叱りを受けているのかわかりませんねー……これがみんなが助かる方法だと考えてやったことなのですか」

ダンッ!

大賢者「やっていいことと悪いことがある!! 貴様は人道を踏み外したのだ!!」

研究者「存じておりますー」

大賢者「! なっ……」

研究員「ですが人類の未来のためですー。それ以上に優先するものは無いと私は常々考えて行動しているのですー」

大賢者「き、さま!」

王様「大賢者、やめろ」

大賢者「!? なんだと!? お前……」

王様「研究員……………………よくやった」

研究員「ははー」

すとっ

大賢者は研究員から手を離した。

つか、つか、つか

王は白ワニの所にまで歩いていき、しゃがみ込む。

203

--王国--

王様「……妃、なのだな?」

白ワニ「……」

こくん

王様「そうか……すまなかったな。……今まで世話になった。あいつを頼んだぞ」

……こくん

王様「では研究員、後は頼んだぞ」

研究員「はっ、おまかせをー。さ、お妃様ー、足元に気をつけて行きますよー?」

白ワニ「……」

白ワニは最後に振り返って王の姿を見ると、研究員の後をついて行った。

ぺちぺちぺち……

王様「……」

大賢者「……あれ、だけか」

王様「……」

大賢者「あれだけしかかけてやる言葉が無かったのか……?」

王様「……」

204

--王国--

ぽたっ、ぽたぽたっ

王の両手から血のしずくが落ちる。

ぽたたたっ

大賢者「お、王……」

王様「……親を失い、兄弟を失い、友を失い、妻を失い、そして……娘も失うことになる……ならば俺に残されているものは……人類の未来のみだ」

大賢者「……」

悲しみの色濃い魔力を溢れさせる王。

王様「――俺は、それのみを求め、ただそれのために命を捧げよう。これが我が天命だ」

血の涙を流す王。

205

--王国--

三年後。

ドサッ!!

??「ぐふっ!」

王様「こいつがか……まだ子供ではないか」

縛られて王様の前に投げ出されたのは幼い暗殺者。

大賢者「あぁ。だがこいつが魔導大老を殺害したのだ。前もって騎士団長達と相談していなければ俺達もやられていただろう」

??「……」

王様「雇い主は?」

大賢者「吐かぬ。この歳で見上げたものだ」

かつ、かつ、かつ

王様は少女に近づいていく。

大賢者「! やめろ王、近づくな! 一応チェックはしたがこいつは何をしてくるかわかれん!」

王様「構わぬ」

206

--王国--

大賢者(近距離の蘇生不能攻撃には対応できないんだぞ……)

王様「……」

??「殺せ」

王様「いや……それには惜しい才能だ」

ぐっ

王様は少女の頬に触れる。

??「……触れちゃったね」

少女はにやりと笑う。

??「もう貴方は私の確定範囲。ぱっと思いつく限りで32通りの殺し方を実行できるよ」

大賢者「!」

王様「そうか、凄いな」

??「……え」

王様「死ぬのは怖くなど無い。むしろ生きるほうが辛いくらいだ」

??「は……王様がそんなわけ……」

王様「だが生を捨てられぬ使命があるのだ……まだ死ぬことが出来ない」

みしっ

王様の魔力が音を立てる。

??(な、に……この人)

王様「なぁ少女よ。世界の秘密を知りたくは無いか?」

207

--洞穴--

そして二十年後……。

大魔法使い「よいしょっと……」

ぎし、ぎし、ぎし

大盗賊「おぉ、戻ったか。いつもより遅いから心配しましたよ」

大魔法使い「なぁに、ちょいと途中で休んでいただけさ」

大勇者「    」

大魔法使い「……帰ったよ。さぁ、今から料理を作るからね」

洞穴の中にはすっかり歳を取り、老い衰えた三人がいた。

208

--洞穴--

彼らはこの五十年間、世界中の争いを止めるために戦い続けた。楽しいことも喜べることも一切無く。身を切り、心を斬り、ただ平和のために戦った。

大魔法使い「……」

トントントントン

憎しみの渦である戦場に出向けば大勇者は激痛にのた打ち回ることになる。それでも大勇者は戦場に向かい続けた。まるで呪いのように。

大盗賊「もうすぐで食事です。また寒くなってきましたからね。暖かいものでも食べて元気をつけましょう」

大勇者「……」

大勇者の髪や爪は切っても切っても伸び続け、膨大な量になってしまっていた。

209

--洞穴--

大魔法使い「ほらできたよ。暖かいシチュー」

大勇者の前に置き、スプーンを持たせてやる。

大魔法使い「大丈夫? 自分で食べれるかい?」

大勇者「……」

かくかくと動く大勇者はスプーンでシチューを掬おうとするのだが、

ぽたぽたぽたっ

口まで運ぶことが出来ない。

大魔法使い「……寒くてかじかんじゃったね? 私がやってあげるよ。ほらスプーンを貸して」

大勇者はそれでも自分ですくおうとするのだが、

ぽたぽたっ

大盗賊「……」

210

--洞穴--

何回も何十回も何百回も何千回も後悔した。

もし自分があんな約束をしなければウェイトレスを苦しめることは無かった。
そうすれば大剣士の家族も死なずにすんだのだ。

大剣士の家族が生きてさえいれば、きっと大勇者はウェイトレスと戦わなかっただろう。勇者という使命だけでは、大勇者はウェイトレスに拳を向けられない。
それほどまでに大勇者はウェイトレスを愛していた。

大勇者「……」

それらが積み重なった末路がこれだ。
指輪の装着はウェイトレスの遺言ではあったけど、自分だけ助かるのはどうしても許せなかった。

大魔法使い「……」

ぽたっ

大魔法使いの眼から涙が溢れる。

大魔法使い「大勇者……」

そっと大勇者の手を握る大魔法使い。

大魔法使い「あんたは……頑張ったよ……今まで、こんなになってまで頑張ったんだよ」

大盗賊「……えぇ」

大勇者「……」

大勇者は虚ろな眼で大魔法使いを見る。

大魔法使い「……」

大魔法使いは横目で大盗賊を確認する。大盗賊は静かに頷いた。

大魔法使い「もう――我慢しなくていいんだよ?」

211

--洞穴--

大勇者「」

大勇者の震えがぴたりと止まる。

大盗賊「大勇者。もう、五十年経ったんですよ。あれから」

大勇者「」

大盗賊は大勇者の小さくなった肩を抱く。

大魔法使い「……私達ももう真っ黒さ。骨の髄までね。だからどこまでだって付いていくよ大勇者」

大盗賊「えぇ。むしろそっち側のほうが案外楽しいかもしれませんよ」

二人はニコリと笑った。

大勇者「」

驚いたように眼を見開く大勇者。

212

--洞穴--

???「まさか、だよ。魔王の入り口でとどまり続けるなんて。しかもあんな負の感情渦巻く戦場に居続けたくせに……大した精神力だ。人外の域だ」

すっかり人の姿になった靄が喋る。

???「途中からあまりに頑張りを見せ付けられたものだから何も言えなくなっていたよ。でも、これが最後の忠告だよ」

大勇者「」

???「魔王になれ。楽になるんだ。もう、限界のはずだろう? 魂のきしむ音が聞こえるだろう?」

靄のその言葉は大勇者を心のそこから気遣っての言葉だと、大勇者は感じ取った。

大勇者「                           あ」

ぽろりと大勇者の瞳から黒い水が落ちる。

ぽろ、ぽろぽろぽろ……

それは周囲を汚染し、闇色に染め上げていく。

大勇者「あ   あ   あ    あ     あああ  あ   あああ」

どろどろり

大魔法使い「コレが……そうなんだね?」

大盗賊「大勇者。一人で抱え込み過ぎですよ。私達にも持たせてください。貴方が背負ったもの」

ずぶ

二人は自らそれに触れていく。

大勇者「あ  あ   ああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

213

--王国--

かち、かち、かち、かち……

王様と大賢者は二人で時計を見ている。

大賢者「……王よ」

王様「あぁ。時間だ」

ずっ

王様は立ち上がり窓に近づいていく。

王様「魔王化を止める手立てはついぞ見つからなかった……だからこそ……もうこれでしか奴を救うことはできん」

??改め受付「ついに来たんですね。歴史を終わらせる時が」

王様「あぁ。このシナリオを必ず止めてみせる。犠牲になった全ての者のためにも!!」

214

--王国--








勇者「というわけで魔王を倒しに行こうと思います」

王様「おお。頼んだぞ、勇者よ」

勇者「では」

ザッ

王様「あ、そうだ、ちょっとまって」

勇者「?」

王様「お供を今別室で待機させているんだ」

勇者「しかし……お言葉ですが王様、私一人でも大丈夫かと思いますが」

王様「いやいや、お供はいるよ。仲間というのはいいもんなんだ……本当にな。旅をしてみればわかる」

勇者「そうなん……ですか」

王様「あぁ。それと」

ズラァッ

王様は立てかけていた大剣を勇者に渡す。

勇者「……これは?」

王様「昔……私が使っていたものだ」

勇者「王様が?」

王様「あぁ。どうかこれであいつに……いや」

勇者「?」

王様「これなら魔王も倒せるだろう。そしてそなたの身も護ってくれるはずだ」

勇者「?……はい、ではありがたく頂戴いたします」

215

--王国--

ぎぃ、ばたん

王様「……」

大賢者「行ったな。見送らなくていいのか?」

王様「必要あるまい」

どさり

王様は王座にこしかける。そして窓を見た。そこには疲れきった顔の男が映っていた。

王様「……大勇者よ。最後の約束を今、俺に変わり娘が果たしにいくぞ……あと少しだけ耐えてくれ」

大賢者「……」



--魔王城--

しゅぅうううぅうう……

洞穴から吹き出した黒い靄は周囲一帯を覆い尽くし、禍々しい城へとその姿を変えた。

大勇者改め魔王「……」

そしてその城の玉座に座るのは魔の王。

しゅうぅうう……

大魔法使い改めサキュバス「……これが新しい体……力が漲る……」

大盗賊改めワーウルフ「えぇ……老いたあの体が嘘のようだ……」

ザッ!

サキュバスとワーウルフは魔王の前で膝をつく。

サキュバス、ワーウルフ「「魔王様、ご命令を」」

魔王「……あぁ」




番外編、俺、勇者だけど魔王に求婚しにいく
        完






そして、勇者募集してたから王様に会いに行ったに続く……。

というわけで番外編終了になります。お疲れ様でした。

この話は最初から考えていただけにいつ出そうか悩んでいたんですが、ただでさえ何年も引きずりまわしているのにこれ以上番外編とか外伝をはさんでる時間はない! ってことでお蔵入りにしようとずっと思ってました。なんで書き出したのかわかりません。結局一週間じゃ終わらなかったし……。そしてタイトルはこれだけどやっぱり大剣士が主人公のような気がしますね……。色々反省点ばかりです。

次回からはちゃんとハイちゃん達の話になりますので、どうか最後までよろしくお願いいたします。



それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

またまた遅くなりました。

過去作との描写の差異は今の文章と昔の文章をそのまま混同させると違和感が出るかと思って調整いたしました。


王国は大勇者の時代は巨大な国家でした。大勇者は当時で言う東の地方の出身です。その後東の地方は国として独立したので、大勇者は東の王国出身という風に言われるようになりました。
特に考えずに書いてましたが、言われて見るとわかりづらいし、もしかするとそのことについて変なこと書いてたりしちゃうのかな……。


それでは投下していきます。

前回までのあらすじ!

ツインテ奪還のために集結したハイ達は、オークション前日に保管庫に忍び込む。そこで夜限定ではあるが五柱レベルの戦闘力を持つ夜の番人と戦闘、そしたらフォーテちゃんが出てきました。

461

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ズズズズズズズ……

アッシュ(ち、聞いていたのと流れが違うじゃねぇか……いやでも多少の誤差があれ、フォーテが来たのは事実だ……)

レン(あのハイって娘。フォーテを前にして恐怖では無く驚きとにゃ?……まさか本当にこの子は未来から来たのかにゃ……?)

ポニテ(あっちゃーフォーテちゃんとこんな所でエンカウントとかお姉さん困っちゃったなー)

ユー「……」

ハイ「やっぱり流れが完全に変わっちゃってるよぉ……困った……」

フォーテ「……」

五人を見比べているフォーテ。

フォーテ(お姉ちゃんと一緒にいた三人は僕と会ったのにあまり動揺してない……残りの二人も普通そう……)

462

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「なんか」

ハイ「あ」

フォーテ「面白く無ーいー」

ズズズズズズズズズズズ!!!!

フォーテの呪いが強まった。

オオオオオオオオオオオオ

ぐじゅ、じゅぞぞぞぞ

名状しがたい奇妙な物体がそこかしこから出現し、闇は濃さを増していく。

ギチギチギチ……

アッシュ(……おい、これ詰んだんじゃないか?)

レン(お迎えついでに全力で殺しに来るとか……なんでにゃ)

ポニテ(まいった……腹くくるしかないね)

ザッ!

フォーテ「っ」

全力の殺意を放つフォーテに対し、アッシュ達三人も応戦の構えを取った。

フォーテ「嘘……僕のことが怖くないの?」

463

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「怖いさ」

レン「超怖いにゃ」

ポニテ「パンツびしょびしょだよ!」

各々が答える。

アッシュ「――だが、ここで死ぬわけにはいかない」

レン「そう、たった一つのシンプルな答えってやつにゃ」

ポニテ「だから相手が誰であろうとも、私達は絶対に諦め無い」

ザンッ!

ハイ(……凄い、こんな魔力の持ち主相手に恐れながらも立ち向かっている……そうだ、この人達はそうなんだ、いつだって)

ぱんっ

ハイは自分の頬を叩く。

ハイ「……私も動揺してる場合じゃないですね」

464

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ハイ(でも、はっきり言ってアッシュ先輩達じゃどうあがいても勝てませんよねフォーテさんに……。私が加勢したって全く意味無いレベルですし……私に出来ること……この窮地を脱する何か……)

ユー「……」

ユーは悩むハイに身振り手振りで何かを伝える。

しゅばばっばば

ハイ「え? 未来で何を見てきたのかって? そりゃあ……」

アッシュ(あいつ! フォーテを目の前にしておしゃべりしてやがる!)

レン(バカなのか凄いのかもうわけわからんにゃ!)

ポニテ(凄いな新人さん……)

ハイ「……あ……あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

フォーテ「っ」

突然の大声にびっくりするフォーテ。

ハイ「ちょっと私行って来ます!」

ダッ!

465

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「あ、おい!!」

ズズズ

フォーテ「わけわかんないお姉ちゃんだねー。僕から逃げられると思ってるのかなっ?」

ビャッ!!

ハイ「!?」

走り出したハイに迫る大量の死者の腕。

アッシュ「ちぃ!」

シュンッ、ズババッ!!

ハイ「」

それらがハイに触れる前に、間に入って全てを切り刻むアッシュ。

ボトボトボト!

ポニテ「! 今まで私の隣にいたのに……アッシュ君速くなったね!」

レン「……そうみたいにゃね」

ハイ「アッシュ、先輩」

アッシュ「早く行けハイ! 何かに気づいたんだろう!? ならここは俺らに任せて行け!」

フォーテ「……」

466

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ハイ「すいません、すぐ戻りますからーー!!」

ダダダダダダ……

フォーテ「……」

アッシュ(……? えらいあっさり見逃してくれたな?)

フォーテ「……わっかんないなー」

ズズッズズズッズズズズズズ!!

フォーテの魔力の影響が強まって、その場にいるもの全員の五感が狂っていく。

アッシュ(うぐっ!? 目が回る)

ポニテ(何この異臭!)

レン(重力がっ、地面がわからないにゃ!)

フォーテ「お兄ちゃん達程度で僕を足止めできるわけ無いじゃない」

ドカカカカカッ!!

アッシュ「!?」

戸惑うアッシュ達の手足を闇の槍が突き刺さる。

アッシュ(見えもしなかった!)

レン(感じることさえ!!)

フォーテ「お兄ちゃん達はぁー、フォーテが邪魔だと思ったらー、それだけで消えなきゃいけないレベルの存在なんだよぉ?」

フォーテの邪悪な笑み。

ポニテ「――さぁ、それはどうかなー?」

フォーテ「」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

フォーテを炎の渦が襲う。

467

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ゴオオオオオオオオオオ……パチ、パチ……

フォーテ「……」

ポニテ「ありゃ、やっぱりレベル4程度じゃ魔力障壁突破は無理かー。あははー」

アッシュ(あいつ、体を一瞬魔力に変えて槍の束縛を解いたのか……?……そっちも怠けていたわけじゃなさそうだな)

ぱきんっ

レン「あー、痛かったにゃ。頭部だったらあれだけで闘い終わってたにゃ」

ゴーレム「もっ」

気づけばレンの周りから槍が無くなり、代わりにゴーレムが二体立っていた。

しゅぅう……

槍にやられた傷口も完全に塞がっている。

フォーテ「……」

ズズズ……

フォーテ「おかしいな……なんでお兄ちゃん達は絶望しないのー? 僕に勝てないことくらいわかってるよねー?」

アッシュ「……あぁ、それくらいわかっているさ。だが絶望するほどじゃあないな」

ドズン!!

アッシュ「!!」

アッシュの心臓に闇の槍が突きたてられる。

フォーテ「そう。これでも?」

468

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「がっ、はっ……」

ぽたっ、ぽたぽた……

フォーテ「……」

アッシュ「……あぁ、これでもさ」

フォーテ「っ」

アッシュ「絶望するのは死んだ後でも遅くは無い」

アッシュは血を吐きながらにやりと笑う。

ユー「……」

フォーテ「……本当にわけわかんないや。お兄ちゃん達の今の状況は、手足をもがれて殺虫剤に浸けられてる虫と変わらないってのにさ」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

フォーテ「なんで……そろいもそろってそんな目をしてるの?」

フォーテは、

フォーテ「むかつく」

ズッ!!!!!

凶悪な力を解放した。

469

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ズッ
ズッズ

ズズズズズズズズ!!

アッシュ(!! なんだこれは!!)




あ9-pw8-4gjkはおろgかえ
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あれdがえrがろg-8いじ-ゃおれいwj
ごあんrどgなおrfdg
あ-お-れ8ぎうあ9れwjごふぁlkj-でぎおうあhんdlkgfks--jhんkvjんしlf--じゃぃすdhgかdfjvmがいれう

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dg

-


ズズズズズ

1、あッシュが首ヲネジ切られて死亡。蘇生不可。
2、ポニ手が内蔵を引きずりダされテ死亡。蘇生不可。
3、れンガ脳をカき回されて死亡。蘇生不可。
4、パーてィ全滅。蘇生不可。
5、人類全滅。やリ直し不可。



フォーテ「なら飛び切りの絶望を味あわせてあげるね。どうあがいても絶望ってやつを……」





※今回は自動で選択肢を選ばせてもらいます。

470

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ダダダダダダ!

ハイ「はっ、はっ、はっ!!」

ハイは暗闇の中を駆けている。

ハイ「思い出せ思い出せ、ツインテ先輩がいる場所の情報を思い出せ思い出せ」

ハイは走りながら頭を叩いている。

ハイ「く、実際に経験したことと一度読んだことじゃ記憶に差があり過ぎる……そのせいでさっきも」

ハイはその時ふとしたことに気づく。

ハイ「……そういえば」




月の光が差し込んでいるのを見つけたぱっちはその牢屋の中へ。

?「……」

そこに入っていたのはペンダントをつけたツインテールの少女。

ぱっち『うわびっくりした!? 気配がなんもなかったっぱ。って……これはまた綺麗な奴隷さんっぱね~』

ぱっちは逃げることも忘れ、月明かりに照らされた美しい顔に引き寄せられた。



ハイ「……月、明かり?」

ハイが見渡すこの場所は暗闇。月が差し込むなんてことはない。

ハイ「……もしかして場所間違えた?」

471

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ハイ「え、えぇ!? どこだっけ!? ツインテ先輩いるのどこだっけ? 一旦状況整理しよう。えっと、うちのカバ上司がお金に困ってコレクションのツインテ先輩を売るとかで、でも本当は売りたくなくて最後に……あ……ツインテ先輩あの人の屋敷だ……」

とんでもないことに気づいてしまったハイ。

ハイ「え、えー!? どうしよう!? 最下層から出口なんてあるの!? でも今上にいったらフォーテさんいるし……くっ!!」

奴隷「――おいおい、なんだなんださっきからうるせーなおめーは。見張りじゃねぇのか?」

ハイ「え?」

牢屋に入れられていた奴隷が声をかけてきた。

奴隷「お、なんだまぁまぁ可愛いじゃねぇの。へへ、そこで何してるかしらねぇけどよ、こっちこいよ。遊ぼうぜ」

ハイ「……」

ツカツカツカツカ

ハイは言われるがまま近づいていく。

奴隷「へへ、素直じゃねぇか。よしよし可愛がって……」

ハイ「攻撃」

ぺち

ハイのでこぴん。

奴隷「あたっ、な、何するんでぇ」

ハイ「条件達成、レベルアップ」

ばしゅっ

奴隷「……え?」

ハイ「レベル2、騎士……こうなりゃ、仕方ないよね」

472

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ズガッ!!

奴隷「!?」

そして今度は壁にヘッドバッド。

パラッ

ハイ「いっ……たぁ……」

奴隷「お、お前なにしてんだ!?」

ハイ「すぅー……」

がんっ!! がんっ!! がんっ!!!!

奴隷「お、おいー!! そんな本気でお前! 頭割れちまうぞ!?」

ぶしゅっ!!

ハイ「わ、割ろうと、してるんですっ!!」

どがっ!!

ぶしゅー!!

奴隷「あ、あわわ……」

ぼたっ、ぼたぼたぼたっ

ハイ「じょ、じょうへん……た、たっせい……れべるあっぷ」

バシューン!!

ハイの体が魔力に包まれ衣装が変わる。

ハイ「レベルッ3ー! 銃士!!」

奴隷「なんなんだこいつ……」

473

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ドクドクドク

レベルアップに伴ってハイの頭部のダメージは多少回復するも、まだ血は出続けている。

ジャコッ!!

ハイ「……月の位置はあっちだった。それで月明かりが差し込むってことは多分こっち……いや、あの時間が今と一緒かはわからない……」

ハイは壁に銃を向けてぶつぶつと呟いている。

ハイ「うぅ……あの屋敷どっちにあったのかな……くー、早くしないといけないのに!」

奴隷「お、おい大丈夫か……? あんなに血が出てて」

心配そうに見ている奴隷。

ハイ「他に参考になる文章はー! えーっと!」

奴隷「屋敷ってあれか? でっかい成金の屋敷のことか? その屋敷の方向を知りたいのか?」

ハイ「うるさいですよ! 今考えてるんだから話かけないでください!!」

奴隷「ひぃっ!?」

どすん

奴隷は驚いてしりもちをついてしまう。

ハイ「全く時間無いって言うのにぃ!……え、でっかい屋敷?……それだと思います! 知ってるんですか!? 知ってるんですか!?」

がしゃん!!

ハイは鉄格子に飛びついた。

奴隷「ひぃい!! 怖いよぉ!!」

474

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ハイ「いいから質問に答えてください! 知ってるんですか!?」

奴隷「お、俺も元々そこにいたんだよ。カバの旦那の所に……でも今回売りに出されて……そんで」

ハイ「カバ! そうですカバ!! そのカバの屋敷はどっちですか!?」

すっ

奴隷は指差した。

奴隷「そこの端の所に地下通路がある。それがその屋敷に繋がってるんだ。旦那はよくここのオークション利用してるからな、特別に事前に品物を見るために作らせたとかで……。あ、でも今は鍵が」

ハイ「あっりがっとうございーますっ!!」

ババババババババババ!!

ハイは銃を乱射し、道を塞ぐもの全てを破壊する。

ドガアアアアアアン!!

ハイ「ツインテ先輩! 待っててください!!」

475

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ゴゴゴゴゴゴゴ

アッシュ「……一体……どういうことだ?」

ポニテ「こんなことが、ありうるの?」

レン「……信じられないにゃ。誰か嘘だと言って欲しいにゃ」

ゴゴゴゴゴゴゴ

フォーテ「はぁ、はぁ、はぁ……」

ユー「……」

フォーテ「今度は全力だよっ!! ルート!!」

ズズズッ!!


1、アッシュ、ポニテ、レン、ユーが爆発して死亡。
2、アッシュ、ポニテ、レン、ユーが感電して死亡。
3、アッシュ、ポニテ、レン、ユーが溺死して死亡。


ユー「……!」

バッ!!

それに呼応してユーが手をかざす。すると

ぴしっ、ぴしぴし


1、アッ ュ、  テ、レ 、ユ が   て 亡。
2、ア シ   ニテ、 ン、 ーが感 して死 。
3、 ッシ 、 ニ 、レ 、 ー   して  。


フォーテ「う、嘘だ……」

ぱきぃーん!!


1、フォーテが転んでなぜかユーに抱きつく。その際お互いの顔は相手の股間の前に来てしまう。
2、フォーテが転んでなぜかフォーテのパンツは脱がされてしまう。中に手が入ることも。
3、よくわからないけどなぜかフォーテの服の中に手が入ってしまいおっぱいを揉む。乳首はつまむし吸う。


フォーテ「また書き換えられたー!?」

476

--暗黒森林、保管庫、下フロア--


2、フォーテが転んでなぜかフォーテのパンツは脱がされてしまう。中に手が入ることも。


フォーテ「じょ、冗談じゃないよ! そんな運命覆してやる!!」

ズズズズズ!!

フォーテは死者の腕を総動員させてユーを殺そうとするのだが、

がしがしがし!

死者の腕が絡まってしまい、強引に進もうとした死者の腕が闇を引っ張る。

ずる

その拍子でフォーテの背後に設置していた闇から本体が出現。本体はフォーテにぶつかって、

ドンッ

フォーテ「あ、あ、あわわ」

前に投げ出されるフォーテ。

ユー「……」

そしてその先には真顔で両腕を広げているユー。

フォーテ「や、やだーーー!!」

ドシーン

アッシュ「……」

ぺろん

フォーテ「あ、やだー! 本当に脱がしたー!!」

ポニテ「……」

むにゅ

フォーテ「ひっ!? お、お尻触るなー!!」

レン「……」

フォーテ「う、うえぇえええええん!! この体はお姉ちゃんのものなのにー!! 汚されたーーうわああああああああん!!」



※フォーテちゃんは男の娘ですので。

477

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ゴゴゴゴゴ

アッシュ「なんだこのラブコメ展開は……あのフォーテがこうも簡単にパンツを脱がされるとは」

真顔で汗を垂らしているアッシュ。ついでにレンのゴーレムの治療を受けている。

ポニテ「……あのルートってやつ凄まじいね。運命を操る力なのかな」

ポニテは震えながら見ている。

レン「詳しいことはわからないけれど、ルートの書き換え合戦……これは多分とんでもないことにゃ」

全身の毛が逆立っているレン。

ユー「……」

フォーテ「そ、そんな……」

すっかりもみくちゃにされて右肩が露出しているフォーテ。

フォーテ「トリガーからもらったこの力が効かないだなんて」

ユー「!」

478

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

ダダダダダ!

ハイ(思いっきり音を立てちゃったからね、速攻で見つけなきゃ!)

ダダダダダ!!

走り回るハイ。だがそこはあっさりと見つかった。

ハイ「! 月明かり……!」

がしゃん!

鉄格子越しに牢屋を見る。すると。

?「……」

ハイ「あ……つ、ツインテ、先輩……」

月明かりに照らされた、美しいツインテールの男の娘がそこにいた。

479

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

ハイ「ツインテさん! 助けにきました!!」

?改めツインテ「……」

しかしツインテはぴくりとも反応しなかった。

ハイ「! そうか、今は心を閉ざしてる完全ガード状態だったんですよね……」

   屋敷兵「おい地下から大きな音がしたぞ!!」

その時上の階から慌しい物音が。

ハイ「! 気づかれ……るよねそりゃ。早くしないとここにも来ちゃう!」(何を言えばツインテ先輩は心を開いてくれる!? 思い出さなきゃ思い出さなきゃ!!)

ダダダダダ!!

ハイ「あ、あのですね! 私は未来から来た貴方の仲間なんです。信じられないかもしれないですけど、でも本当のことで、えっと……えっと!!」

ツインテ「……」

ツインテは人形のように宙を見ている。

ハイ(あわわわ! やっぱり私頭使うのなれてないーー!)

バンッ!!

屋敷兵「! そこのお前!! 何している!!」

ハイ「あ――お、起きてください! ゼロさん!!」

ツインテ「」

ぴくっ

480

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

屋敷兵「お前……この地下通路から無理やり忍び込んだのか!? ふざけやがって!」

ハイ「ツインテゼロさん! お願いです私と一緒に来てください! 大変なんです! 早くしないと先輩達がみんなフォーテさんにやられちゃう!!」

ツインテ「」

屋敷兵「こぉのっ!!」

ゴッ!

ハイ「ぎゃっ!!」

どたんっ!

屋敷兵は棍棒でハイの後頭部を打ち付けた。鉄格子でバウンドしたハイはそのまま床に倒れこむ。

ハイ「いっ……たぁ……」

どくどくどく

屋敷兵「けっ、どこの手のものかしっかり拷問した後で聞き出してやる……! ほら立て!」

ばしゅっ

屋敷兵「……ん?」

ツインテ「――君が誰だか僕には記憶が無いけれど」

すっ

ゆっくりと立ち上がったツインテの髪型はショートになっていた。

ツインテ「僕のことを君は知っているみたいだ。誰一人として知らないはずの本当の僕のことまで」

屋敷兵「お、お前、喋れて……」

ハイ「ゼロ、さん……」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりましたぁああぁああ

奴隷王は実は凄い重要なキャラだったのですが……そのうちどこかで語ります。

それでは投下していきます。

481

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

屋敷兵「これは驚きだ……旦那がこれを知ったらさぞ嘆くだろうな。しかしなんでまた今になって喋りだしたんだ?」

ツインテ「ごめん。黙っててくれないか」

ぱきぃん

屋敷兵「」

ツインテが手をかざすと屋敷兵はそのまま床に崩れ落ちた。

どさり

ハイ「え……何をしたんですか?」

ツインテ「しばらくの間寝ていてもらうだけさ。さぁ」

びきっ、がららん

ツインテが一歩足を踏み出すと、鉄格子が独りでに細かく切断されて散らばった。

ツインテ「話してもらうよ。全部」

482

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「げぶっ!」

びしゃっ

アッシュ「! あのフォーテが吐血……? 俺にはよくわからないが、そこまで追い込んでいるのか?」

レン「あのユーって人間、ただものじゃないにゃ」

フォーテ(ぐ……力を使いすぎちゃった……これ以上ルートは使えない……)

フォーテは自分の体をめちゃくちゃに弄り回したユーを睨む。

フォーテ(一体、何者……?)

ズズズズズ

再び闇が波のように押し寄せる。

フォーテ「――お兄ちゃん、勝った気でいるならまだ早いよ。僕はたとえ手足をもがれたって諦めない」

オオオオオオオオオオ

フォーテ「僕とお姉ちゃんの間に入ってくるやつは……皆殺しなんだああああああああああああああああああああ!!」

死者の腕がユーを襲う。

483

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

べキッ!

フォーテ「……え?」

それは攻撃を繰り出したフォーテにも想像しなかった結果。

バキッ! ドカッ!!

ユー「……!!」

ユーはレイピアで防御しようとしているのだが、その動きは遅く、一方的に嬲られていた。

フォーテ「なんで――。そうか、そうなんだ? その力はルートにしか使えないの!?」

ドギャッ!!

明らかに先ほどより動きが鈍っているユー。

フォーテ「それとも回数制限があるのかな?? きゃはは! なーんだ! どっちにしろ、悩むことなんて無かったんだ!!」

ズズズズズズズズズ!!

フォーテ「ルートなんか使わなくたって、僕の呪いで十分だったんだっ!!」

無数の闇の槍がユーに狙いをつけた。

484

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「しんじゃえっ! 邪魔者っ!!」

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュガギギイン!!

フォーテ「……弱っちぃお兄ちゃん達は後でゆっくり殺してあげるよぉ。フォーテはね? 今はその変なお兄ちゃんから殺したいの。だから邪魔しないで欲しいなぁ」

フォーテの前に立ちはだかるアッシュ、ポニテ、レン。

アッシュ「悪いな、いちいちお前の予定に合わせてはいられない」(やっべー! 目の前にするとやっぱこえーーー!!)

ポニテ「こんな魅力的なおねーさんをスルーとか、いけない子だよフォーテちゃん」(パンツはいて無くてよかった……)

レン「くっさ」

ユー「……」

フォーテは自分の前に立っている三人の背中を眺めている。

フォーテ「……フォーテ、そういうの嫌いだよっ。弱いくせに庇いあうってやつ」

ズズズズン!!

ポニテ(あ、あれ?)

アッシュ(! こいつパワーダウンしたと思ったんだが……)

レン(更に膨れ上がるのかにゃ……)

485

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「フォーテね?……虫けらに邪魔されるの嫌いなのっ……潰れちゃえぇえええ!!」

ズオオオオオオ!!

ねじれ曲がった巨大な死者の腕がアッシュ達に迫る。

アッシュ「はぁあああああああ!!」

ポニテ「あああああああああ!!」

ドギイイイイイイイイイイイイイン!!

その攻撃を二人がかりで受け止めることに成功する。

ぎしっ、ぎしいいいいいいいい!!

フォーテ「! 止めた……? 脆弱で矮小なお兄ちゃん達が僕の攻撃を……?」

レン「――人は成長する生き物なのにゃ」

フォーテの死角に移動していたレンは、弓を構えていた。
フォーテがそちらに向くより早く、

レン「効果二重付与、貫通切断!」

ドシュッ!!

矢がフォーテに命中する。

486

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ブシュッ、ズバッ、ドチャッ!!

フォーテ「」

矢がフォーテの肉体を切り刻み貫通する。

どばちゃっ

レン(当たった……にゃ)

ポニテ(うお……最初に会った時のことを思い返せば、これは出来すぎだね)

アッシュ(俺達も成長した……が、それだけではこうはなるまい。やはりそれだけフォーテも消耗させられていたんだな)

フォーテ「あ……あ……」

胴体を両断させられたフォーテは自らの血で作った水溜りで泳ぐ。

ばちゃっ、ばちゃっ

フォーテ「い、痛い……痛いよぉ……」

ポニテ「……今思うと人に撃つような技じゃないよね」

レン「つい……」

487

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「よくも」

ドロッ

フォーテの至る穴から血が流れ出す。

ざぁ……

アッシュ「! ヤバイ!」

その血は瞬く間に建物全体を覆っていく。

ざぁあ……

ポニテ「……参ったな。ちょっとはいい感じだと思ったんだけど……やっぱり倒せる気がしないや」

とぷん……くすくすくすくすくすくすくすくすくす

周囲から薄気味の悪い笑い声が聞こえてくる。

保管庫の奴隷「あー、あー、あー」

がしゃんがしゃんがしゃん

真っ赤に染まった奴隷達が鉄格子を掴んで歌を歌い始める。

レン「……底が知れないにゃ。やっぱりフォーテは世界観が違う感じにゃ」

488

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ずるっ……

内臓を引きずりながらフォーテが這う。

フォーテ「ねぇ……お兄ちゃん達はどうやって殺して欲しい? えへへ……」

真っ黒な眼窩から赤い血をたれ流して笑うフォーテ。

フォーテ「なんでも言ってっ。僕ならなんでも再現できるんだよよ? えへへ、あはは、いひひ」

アッシュ「……ポニテ後ろだ」

フォーテ「!」

ヒュッ!

後ろから迫っていた触手を紙一重で交わすポニテ。

ポニテ「うお、あぶなー……アレ食らったら多分一発だったかも」

フォーテ「……」

アッシュ「悪いなフォーテ。俺らの間にあるのは力の差だけだ。もう、飲まれたりはしない」

フォーテ「……」

489

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

オオオオオオ……

フォーテ「……意味がわからないなぁ……僕には絶対に勝てないし、お兄ちゃん達は絶対に死ぬんだよ? それなのに何その余裕……なんで怖がらないの?」

アッシュ「絶対に勝てない、までは同意する。お前は強過ぎる、俺達でどうにかなる相手じゃあない。だが絶対に死ぬとは限らないぜ」

フォーテ「……はい?」

アッシュ「俺らには信じられる仲間がいる。そいつら次第じゃあ、あるいはなんとかなるかもしれないな」

びしっ

突如闇の空間に亀裂が走る。

びしっ、びしびしっ

そこからかすかな光が差し込んだ。

フォーテ「?……僕の制圧した空間が外から解除されている? こんなことが出来るのは……」

びしびしびしっ!!

アッシュ「……」

アッシュ達は薄目でその光の向こうを見る。

アッシュ「……久しぶりだな」

びしっ……ばりぃぃぃぃぃぃぃん!!

暗闇を吹き飛ばして現れたのは、

ツインテ「……」

490

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

すたっ

ツインテ「……」

フォーテ「お、お姉ちゃん!?」

ツインテ「フォーテ、ちゃん」

元のツインテールに戻っているツインテは、ゆっくりとフォーテに近づいていく。

ぱしゃ、ぱしゃ

ツインテ「もう……こんなことはやめよう? フォーテちゃん」

フォーテ「お姉ちゃん……で、でもねっ、このお兄ちゃん達がっ」

がばっ

ツインテはフォーテを抱きしめる。

フォーテ「……お姉ちゃん」

しゅる……

フォーテの肉体が再生していく。

ツインテ「……」

491

--過去、暗黒森林、屋敷、地下牢--

ツインテ「――なるほど、そういうことなのか」

ハイ「な、納得していただけました?」

ツインテ「信じがたい話だけど、それしか辻褄が合わないからね。納得するに足りる情報ばかりだったし」

ハイ「はぁ。こんなにあっさり信じてもらえたのは初めてかもしれません。盗賊さんはなんかカウントしたくない」

ツインテ「しかしだとするとこれはチャンスかな」

ハイ「え?」

ツインテ「フォーテがここに来ているんだろう?」

ハイ「はい……って、こんな話してる場合じゃないです! 早く皆さんを助けにいかないと!!」

ツインテ「そのことなんだけど、話を聞くに君とそのユーって人がいればフォーテを倒せそうなんだよね」

ハイ「……はい?」

ツインテ「知ってのとおり僕の目的はフォーテの抹殺だ。でも僕一人ではまだきついと分析してたから、近づいて少しずつ精神を狂わせていく算段だったんだ。でも君達がいるのならこの場で抹殺できそうだ」

ハイ「フォーテさんを……殺す、ってことですか?」

492

--過去、暗黒森林、屋敷、地下牢--

ハイ「で、でもツインテさんはフォーテさんのことを大事な妹だとおっしゃってましたよ!? それなのに殺すだなんて……」

ツインテ「訂正するよ。正確には弟だ。あと君が言ってるツインテって言うのはおどおどしたボクのことだよね? あれのことは気にしなくていいよ。あれはそういうように設定した人格に過ぎないんだから」

ハイ「!そ……そんな言い方って」

ツインテ「知ってると思うけど主人格は元々僕なんだ。他のは役割を演じてるだけに、にに、に、に」

ハイ「? ツインテさん? どうしました? なんだか表情が引きつってるような……」

バツンッ!!

その時ツインテの右側だけヘアスタイルが変わった。

ツインテ「――そ、そんなことは、さ、させま、せん!!」

ツインテ(ゼロ)「馬鹿な……僕が表に出ている時に割り込んできた……?」

ぎぎっぎぎっ

ハイ「な、何がどうなってます!? 顔凄いことになってますよ!!」

493

--過去、暗黒森林、屋敷、地下牢--

ツインテ(ゼロ)「これは……脳内会議を発動する必要がありそうだね」

ふっ

意識が飛び、ハイに向かって倒れるツインテ。

がしっ

ハイ「わっ、大丈夫ですかツインテさん!?」



--過去、ツインテの中--

ツインテ「う……ここは」

ツインテ(ストレート)「はぁ……久々に起きれたと思ったら脳内会議かよ、くそっ」

ツインテ(サイド)「ねー。たまには外の空気を吸ってみたいー」

ツインテ(ウェーブ)「……」

ツインテが気づくとそこは一度見たことのある光景が広がっていた。

ツインテ「! そうです! もう一人のボクがフォーテちゃんを消そうとしていて!……あれ? いませんね? そういえばあの人は一体……」

ツインテ(ストレート)「? 何の話だ? っていうか誰が開いたんだこの会議」

ツインテ(ゼロ)「僕だよ」

ツインテ(ストレート)「! 俺達以外の声!? 誰だ!? どこにいやがる!!」

ツインテ(ゼロ)「僕はここさ。この空間そのものが僕だ」

494

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ストレート)「……なんだと……?」

ツインテ(サイド)「ありえない。もしそれが本当なら……私達とは次元が違うレベルの存在じゃない」

ツインテ(ウェーブ)「私達の産みの親……」

ぼそりと呟くウェーブ。

ツインテ(ストレート)「……そもそも俺達はお前自体ろくに知らねぇんだよな……」

ストレートはウェーブを睨む。

ツインテ(サイド)「……なるほどー、私達の分岐元ってわけね。それで? その主人格様が私達に何の用なのかな?」

ツインテ(ストレート)「なっ、てめっ、何勝手に納得して話進めてんだ! 万回殺すぞ!!」

ツインテ(サイド)「納得しないと話が先に進まないじゃん。それに多分本当のことだし」

ツインテ(ストレート)「だからなんでそれがわかるんだよ!」

ツインテ「……魂が……そう言ってる」

ツインテが呟いた。

ツインテ「なんとなくわかります。彼こそが主人格なんだって」

495

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「理解が早くて助かるね。さすがは僕たち。……本当なら何も知らせずに各々の役割を果たしてもらうつもりだったんだけど」

ツインテ(ストレート)「……役割だぁ?」

ツインテ(ゼロ)「攻撃のストレート、情報のサイド、防御のウェーブ、治癒のツインテ。それが君達の役割。僕たちは一人で五役、一人のパーティなんだよ」

ゼロは笑う。

ツインテ(ゼロ)「――フォーテを抹殺するためのね」

ツインテ(ストレート)(サイド)「「!?」」

ツインテ(ゼロ)「その時が来た。どうか力を貸して欲しい。フォーテ抹殺の時が来た」

ツインテ(ストレート)「い、いきなり過ぎるし説明も足りねぇ!……一体何を言ってんだかさっぱりだぜ!」(……でも)

ツインテ(サイド)「右に同じー。大体あの子は歪んでいても弟なのよ? そんなこと出来るわけないじゃない」(……なぜか心の奥底で彼の言葉に従おうとしている)

ツインテ(ウェーブ)「……」

ツインテ「……」

496

--過去、ツインテの中--

ツインテ「ボクはいやです――」

ツインテはきっぱりと断った。

ツインテ「ボクはフォーテちゃんを殺したくなんてありません。たとえボク達がそのために生み出されたのだとしても、ボクは嫌です」

ツインテ(ストレート)「お前……」

ツインテ(サイド)「……ねぇ、一つ質問いいかな?」

ツインテ(ゼロ)「構わないよ。どうぞ」

ツインテ(サイド)「フォーテを抹殺するのが目的っていうのは……わかった。それを私達に隠してた理由も勝手に自己解決したよ。――でもそれならなんで今更私達に教えるわけ? 今まで内緒にしてきたんだし、貴方なら無自覚のまま操ることが出来たんじゃないの?」

ツインテ(ゼロ)「……」

ツインテ(サイド)「――予想外のことが起きたのね?」

ツインテ(ゼロ)「……あぁ」

その一言を聞いたストレート、サイド、ウェーブはツインテに目をやる。

497

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「……っと、言葉よりもこっちの方が君達を納得させられるかな。今、君達に僕の知る情報の全てを送ったよ。最初からこれをすればよかった。僕も焦っているのかもしれない」

その情報に目を通すツインテ一同。

ツインテ(ストレート)「……ち」

ツインテ(サイド)(……私達が作られた存在だっていうのはやっぱりむかつく……でもこれを見たら、納得しないわけにもいかないわ。一番平和的に世界を護る方法を、必死に考えたうえで行動に移したっていうのが痛いほどわかるから)

ツインテ「嫌です」

ツインテ(ウェーブ)「……」

ツインテ(ストレート)「お、おいちゃんと読んだか? 男女」

ツインテ「何を見せられてもボクの意見は変わりません。どんな理由があってもフォーテちゃんを殺す理由にはなりません」

ツインテは一切怯えることなく、つかえることなく、しっかりと背筋を伸ばして言い切った。

ツインテ(ゼロ)「……」

ツインテ「フォーテちゃんは絶対に殺させません」

ツインテゼロはかつてのツインテを思い返す。一人じゃ何も出来なかった頃のツインテを。

ツインテ(ゼロ)(戦力を高めるためにと、旅に出したのは失敗だったのか……)

498

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「……君のいいたいことはわかった。でもね、そもそも君達に権利は無いんだ。僕は今君達に協力を願っているけれど、もし僕の意見に賛同できないのなら君らを作りかえるだけなんだよ。精神操作はおてのものだからね」

ツインテ(ストレート)「!? てめぇ!」

ツインテ(サイド)(話をこうもっていきますかー! 今なら主人格に何が出来るかわかっちゃってる……これじゃあ従うしか……無いじゃない)

ツインテ「……」

ツインテ(ゼロ)(……そもそもツインテは他の人格と事情が違った。フォーテに取り入るために作り上げた存在……だからこう成長するのも仕方が無いことなのかもしれないが……だがこれ以上暴走する前に、不安要素は消さなくてはならない)

ゼロは返答いかんによってはツインテの再構成を決意する。

ツインテ「―もっと、いい方法があると思いませんか?」

ツインテ(ゼロ)「……なんだって?」

ツインテ「殺さなくてもいい方法です」

ツインテ(ゼロ)「……フォーテはトリガーのヨリシロだ。破壊しなければ意味が無いよ。他の方法などありえない」

ツインテ「そうでしょうか? トリガーさんがヨリシロに選ぶほどの存在なんですよフォーテちゃんは」

ツインテは……笑う。

ツインテ「敵として殺しちゃうより、味方にしちゃう方が素敵じゃないですか?」

499

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「あ、あああ、あああああああああああああああああああああああお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!!」

フォーテはツインテに抱きついて体全体で愛情を表現する。

フォーテ「会いたかった! 本当に会いたかったよぉ!!」

ツインテ「うん……ボクもだよフォーテちゃん」

フォーテ「嬉しい嬉しい嬉しいよぉお!! ごめんねお姉ちゃん今まで助けにきてあげられなくてぇえ!! 本当にごめんねぇっ!!」

ツインテ「いいの、それよりフォーテちゃん。時間が無いから率直に言うけど、お願いしたいことがあるの」

フォーテ「ん? 何? フォーテに何かお願いだって? フォーテ聞くよ! フォーテお姉ちゃんの言うことならなんだって聞くよ!!」

ツインテ「本当? じゃあ……フォーテちゃん前に言ってたでしょ? ボクが勇者になって、フォーテちゃんは魔王になって、ずっと殺しあおうってやつ」

フォーテ「うん言った!! 素敵だよねお姉ちゃんっ! 勇者と魔王の関係って永遠なんだってさぁ!! 永遠に殺しあい憎みあう、それは何よりも深い関係なんだって!! 早くお姉ちゃんとそういう関係になりたいなぁああっ!!」

目を輝かせて言うフォーテ。

ツインテ「フォーテちゃん。ボクは嫌だ」

フォーテ「……え?」

ツインテ「ボクはフォーテちゃんとそんな関係になりたくない」

フォーテ「え……………………どうして?」

フォーテの黒目から光が消える。

500

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ツインテ「どうしても何も、そんなのおかしいよ。だって殺しあうんだよ? そんなのちっともいいと思えない」

ズズズズズ

フォーテ「お姉ちゃんは……フォーテと深い関係になるのが嫌、なの? 永遠の関係になりたくないの……?」

ツインテ「ボクはフォーテちゃんと普通の兄弟でいたいよ。一緒にお洋服を買いに行ったり、ケーキを作って食べたり、お昼寝したり……。ボクはそういう方がずっと楽しいと思う」

フォーテ「そういうほうが楽しいの?……で、でも……」

フォーテは困ったような顔をする。

ツインテ「……そう。ボクの言うことわかってくれないんだね」

フォーテ「!? ち、違うよそんなんじゃ」

ツインテ「はぁ、残念だな。これじゃあボク、フォーテちゃんのこと、嫌いになっちゃうかも……」

フォーテ「                                                         

                                                              

               !?                                             

                                                              

                            」

ツインテ「だってボクは好きな人と殺し合いなんてできないもん。なのにフォーテちゃんがどうしてもしたいっていうなら……フォーテちゃんのこと嫌いになるしか……」

フォーテ「や、ヤダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! 嫌いになっちゃ、ヤダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

ツインテ「え、でも……」

フォーテ「ごめんなさいごめんなさいお姉ちゃんごめんなさいお願いだからごめんなさいフォーテのこと嫌いにならないでぇえええごめんなさあああああいっ!!」

ツインテに抱きついて号泣するフォーテ。

ツインテ「……じゃあもう魔王になるとか言わない?」

フォーテ「言わない言わない絶対に言わないからっ!!」

ツインテ「そう……よかった」

ツインテは優しくフォーテの頭をなでる。



ポニテ「……な、なにこれ」

アッシュ(なんか暫くみない間に話の持ってきた肩が上手くなってるような可愛いケッコンしたい)

フォーテが仲間になった。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました!!


はい、フォーテパーティは花師、風水師、狐娘、占星術師であってます!



描写不足、説明不足ですみません。
フォーテの説得は、
①初めて自分の力が効かない相手が現れたことによる動揺
②自分より遥かに格下のはずのアッシュ達の不可解な振る舞いによる混乱
③そして極めつけは最愛の人による嫌いになっちゃうよ宣言
この三つの精神揺さぶりイベントが重なったことでフォーテちゃんの説得が可能になりました。

①②が無い状態でツインテが嫌いになっちゃうよ宣言をしても
フォーテ「え? 何言ってるのお姉ちゃんありえないよお姉ちゃんがそんなこと言うはずがないだってお姉ちゃんは僕のことを一番大切に思ってくれてるんだから、あ、そっかお姉ちゃん悪いやつらに操られちゃってるんだねじゃあそいつら皆殺しにしてお姉ちゃんを救わなきゃっ!」
ってなっちゃいます。

ツインテもツインテで、ツインテ主人格によるフォーテ抹殺計画を知らなければ、ここまで危険な行動(フォーテに嫌い発言)に出ることは無かったでしょう。

というこじつけ。


それでは投下していきます。

501

--ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「……ありえない」

ツインテ(ストレート)「な、だから言ったろ? あいつならなんとかなるって」

ツインテ(サイド)「フォーテのことを相容れない異物としてか見てなかった貴方には想像も出来かったでしょ? こんな解決策があったなんてさー」

ストレートとサイドテールのツインテがにやにやと笑っている。

ツインテ(ゼロ)(それが出来るなら苦労しない。出来るはずが無かったから今まで……いや)

ゼロはツインテの目を通してフォーテの泣き顔を見る。

ツインテ(ゼロ)「……これを見させられては、何も言う資格は無い、か」

502

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「お姉ちゃんー、もっと頭なでてよー。ぐすん」

ツインテ「はいはい。フォーテちゃんは甘えん坊さんだね」

フォーテ「えへへへー」

ツインテ「……でもフォーテちゃん、魔王のこともそうですが、もう悪いことはやっちゃ駄目ですからね?」

フォーテ「ふぉ、フォーテ悪いことなんてしてない……よ」

ツインテ「……」

フォーテ「あぁあああごめんなさいごめんなさい真顔になるのやめてお姉ちゃんそりゃ美の女神も真っ青なくらい美しい造型してるお姉ちゃんだから真顔でもとっても綺麗だけどフォーテの心に刺さるのっ!! もう悪いことしないからずっといい子にしてるからそんな目で見ないでーーーー!!」

ツインテに思い切り甘えているフォーテ。そしてその二人を静かに眺めているハイ達。

アッシュ「……まじで? まじであのフォーテが敵じゃなくなったのか……?」

ポニテ「無敵最強フォーテちゃんが……仲間に、なったの?」

レン「もう中身バシャーっとかされなくても大丈夫なのかにゃ?」

アッシュ達三人は信じきれず、フォーテが何かアクションをする度にびくついていた。

503

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ハイ「しかし……まさかあのフォーテさんを仲間にすることが出来たなんて……」

ユー「……」

驚きを隠せないハイと後ろで頷いてるユー。

ツインテ「そうだ、フォーテちゃん。さっきアッシュ君達にいけないことしてましたよね?」

フォーテ「ふにゅっ!?」

ツインテ「いけないことしたら謝らないと駄目なんですよね?」

フォーテ「で、でもあれはあのお兄ちゃん達が……」

ツインテ「フォーテちゃん……?」

ツインテがフォーテの頬を優しくなでる。

ツインテ「……いけないことをしたら謝る。それがいい子の条件ですよね……?」

まるでフォーテのような世界を呪う雰囲気を出してみせるツインテ。

フォーテ「目が笑ってないお姉ちゃんも素敵っ!!」

504

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

とて、とてとて……

フォーテはツインテから離れるとアッシュ達の方にゆっくりと近づいていく。

アッシュ「!!」

アッシュ達は再び臨戦態勢に移るのだが、

フォーテ「お……」

ポニテ「お?」

もじもじ

フォーテ「お、お兄ちゃん達……痛めつけちゃってごめんなさい……」

と、フォーテが謝った。

アッシュ「」

そして驚きのあまり固まるアッシュ。

レン「き……気にしてない、にゃ」

ハイ「なんですかその返答」

オオオオオオ

その後ろで死者の腕と握手しているユー。

505

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「ゆ、許して、くれる?」

もじもじしながら涙目で上目遣いなフォーテ。

ポニテ「ゆ……許すよーーーー! 許すに決まってるじゃない! むしろ何も無かったよ! ただじゃれあって遊んでただけだもんねお姉ちゃん達ーーーー!!」

ぶしゃーーー!

大量の鼻血を吹き出しながらフォーテを抱きしめようとするポニテ。だが今までの経験が体に染み付いていて、拒絶反応から前に進めずぴくぴくと震えている。

ポニテ(動けよ! 今動かなきゃなんにもならないんだ!)

フォーテ「えへ! お姉ちゃーん! お兄ちゃん達許してくれるってー!」

たたたた、ばふっ!

フォーテはツインテに駆け寄って飛びついた。

ツインテ「もう、アッシュさん達だから許してくれたことですが、本当ならしっかり償わなくちゃいけないことなんですよ? 今までやってきたこと……一緒に償っていこうね?」

フォーテ「うん、フォーテ、お姉ちゃんと一緒ならなんでもするーっ!」

きゃっきゃっ

レン「……いやはや恐ろしい変わりっぷりにゃ……シスコン具合は前と変わらないけど……」

ポニテ「はー、可愛いよぉフォーテちゃん……。もうフォーテちゃんの姿見るなり恐怖のあまり失禁しなくていいんだよね? これからは嬉ションの方でいいんだよね?」

ハイ「どっちにしろ漏らすんですか!?」

アッシュ「正直に言うと俺、後ろも漏らしちゃってんだよね」

オオオオオオ

死者の腕と名刺交換しているユー。

506

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ツインテ「っと、そうでした。何より皆さんの傷を治さないと」

ツインテは周囲の地獄絵図をなんとかするべく奥義を展開する。

しゅいーーん

アッシュ(……暖かい……ツインテの魔力はなんて心地よいんだ……)

ポニテ(衝撃的展開の連続でスルーしてたけど……ツインテちゃん久しぶりだね……ほんとよかった……)

レン(昔と変わらず美しいにゃ……ってか全く変わってないのはどゆことにゃ)

夜の番人「きもちいー……」

アッシュ、ポニテ、レン「「「!?」」」

さりげなくみんなと一緒に蘇生された夜の番人。

507

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

夜の番人「ん……?」

アッシュ「お、おいツインテ! こいつは蘇生しなくていいんだ! めんどくさいことになるぞ!」

ツインテ「え……駄目ですよアッシュ君。好き嫌いしちゃ」

レン「好き嫌いとかそういう問題じゃないのにゃ! こいつ五柱クラスの戦闘力ある敵なのにゃ! だから蘇生はよくな」

ズンッ!!

夜の番人「な、なんだかよく覚えてないけど、おまえら……侵入者でしね?」

夜の番人が戦闘態勢に入る。

アッシュ(あかん)

夜の番人「ぼくちんの仕事場に勝手に入ってきて、全く悪い子達でしねぇ……こりゃあお仕置きが必要でし」

夜の番人は気味の悪い笑みを浮かべるとともに、強力な魔力を発する。

ゴゴゴゴゴ……!!

アッシュ「ち、またやるしかねぇか……」

しゅぴぃん

アッシュはナイフを取り出して構える。

ツインテ「ちょっ、待ってください! ボク達は争うつもりはないんです! ここもすぐでていきますから!」

夜の番人「問答 無用」

ダンッ!!

夜の番人が飛び掛った。

508

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ごしゃっ!!





夜の番人「あ……あえ?」

飛びかかろうとした夜の番人は、どこからとも無く現れた死者の腕に殴られて、

どがぁああああん!!

壁に叩きつけられた。

アッシュ「っ!」

オオオオオオオオオオ……

目の前にばかり集中していたアッシュ達の背後から、静かに闇が忍び寄る。

フォーテ「おじちゃん……ツインテお姉ちゃんのせっかくの温情を無駄にしちゃうの……?」

ポニテ「!!」

フォーテは目を見開いて、じっと夜の番人を見つめている。

オオオオオオオオオオ

夜の番人「にゃ、にゃにがおこったでし……? ぼくちんが、い、一撃へ……ありへにゃい!」

脳を強く揺さぶられた夜の番人は立ち上がることすら出来ない。

フォーテ「お姉ちゃんの言うことを無視する人はぁ……万死に値するよね?」

509

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ぎゅりぎゅりぎゅり、ドシュドシュドシュ!!

死者の腕が捩れて槍のように変形し、夜の番人を襲った。

ヒュオン!!

夜の番人「ひ、ひいい!?」

ツインテ「フォーテちゃん! そこまでですよ!」

ビタタッ!!

夜の番人「」

無数の槍は、夜の番人のわずか数センチ先で停止する。

夜の番人「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

ツインテ「フォーテちゃん?」

フォーテ「ふぉ、フォーテ悪い子じゃないよ? あのおじちゃんがお姉ちゃんに悪いことしようとしたから……その……」

ツインテが話しかけると途端におろおろしてしまうフォーテ。

オオオオオオオオ

死者の腕も汗をたらしながら怒らないであげたげてよぉ、とツインテをなだめる。

ツインテ「――それはわかってます。でもやり過ぎは駄目なんです。あの人だって職務を全うしようとしただけに過ぎないんですから」

フォーテ「しゅん」

510

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「え、てか五柱レベルでもワンパンなの? よく俺ら耐えられたな……」

フォーテ「五柱? 何それ美味しいの?」

レン「普通にその台詞を聞くとは思わなかったにゃ」

すっ

ツインテ「立てますか?」

ツインテはいつのまにか夜の番人に近づいて手を差し伸べている。

アッシュ「なっ! おい!」

ハイ「ツインテ先輩!? さすがに危ないですって!」

フォーテ「なんかあったら今度は……」

ゴゴゴゴゴゴ

ポニテ「ほ、ほらツインテちゃん! フォーテちゃんが凄い顔で見てるから!!」

じょじょじょー

511

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ツインテ「弟が失礼をしました。今治療しますね。水属性回復魔法レベル4」

ぽわぁあ

夜の番人「! ぼ、ぼくちんに回復魔法を、かけてくれるんでしか……?」

ツインテ「もちろんです。この程度で償いきれるとは思いませんが……でもせめて」

暖かい光が夜の番人の体を包む。

夜の番人「……敵に回復魔法をかけるだなんて……」

がばっ!!

アッシュ「! てめぇ!! 変なまねするんじゃねぇ!!」

夜の番人は、

夜の番人「……うっ、うぅ……ぼ、ぼくちんこんなに優しくしてもらったの……初めてでし!!」

ツインテの手を両手で握りしめ泣き始めた。

アッシュ「……あ?」

夜の番人「ぼくちんこんな顔だから子供の頃からずっと人の嫌がる仕事ばっかさせられてきたんでし! だれもぼくちんに優しい言葉をかけてくれる人なんていなかった……それなのに……嬉しいでし! ぼくちんこんなに嬉しいの初めてなんでし!!」

夜の番人は号泣している。

ポニテ「あの人ちんこちんこ言ってなかった?」

512

--暗黒森林、宿--

ホーホー

ツインテ「い、いいんでしょうかあっさり帰してもらっちゃいましたけど……」

ポニテ「いいんじゃない? ツインテちゃんも奪還できたしフォーテちゃんも仲間入りだし、いいこと尽くめだよー!」

ポニテはツインテの膝の上に座っているフォーテの頭をなでたいと思っているのだが、中々なでられない。

レン「まー、競売品のツインテとポニテを奪われたあげく、保管庫までぼろぼろにしちゃったのにゃ。あの人責任とらされそうにゃね」

レンは久しぶりにツインテにくっついて甘えたいのだが、フォーテがツインテの膝の上に乗っているので中々実行に移せない。

アッシュ「あぁ。しかし思った以上の成果だ。……何か忘れてるような気もするがな」

アッシュは久しぶりのツインテが眩しくて見えない。

ハイ「この流れは……いけそうですよね! ね、ユーさん!」



ユーは無言でサムズアップ。

ハイ「……しかしなんか忘れてるような……」



--暗黒森林、保管庫--

夜の番人「……」

侍「……」

夜の番人「この死体はこっちで処理しちゃっていいんでしかね」

513

--暗黒森林、宿--

アッシュ「――で、これからどうするんだ」

ハイ「はい?」

アッシュ「はいじゃない。ツインテを奪還することには成功した。ならこの後はどうするんだと聞いている。バッドエンドを覆すつもりで過去に飛んだのだろう?」

ハイ「……そうでした。まだ終わりじゃないんです。むしろここからが本番……」

ぎゅっ

ハイは自分の服を握り締める。

ハイ(歴史が少しずつ変わって来てる……もちろん私の手で変えるつもりだったんだけど……自分の知らない流れになるのはやっぱり怖い)

レン「ま、ここまで来たら協力するにゃ。ツインテを助けられたのはハイのおかげにゃし」

ポニテ「でも未来から来たなんてかっこいーよねー。いっぱい仲良くしよーねーハイちゃん」

ハイ「は、はい……!」

ハイは顔を上げる。

ハイ「……」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、そしてユーとフォーテ……長い間離れ離れになっていた仲間が、自分のパーティ(+α)がここにある。

ハイ(……がんばろう。今度はあんな結末にならないように!)

514

--暗黒森林、宿--



~ハイの説明タイム~



ツインテ「……」

レン「ふぅ……二回目の説明ともなると大分理解できるようになったにゃ」

アッシュ「俺は三回目になる」

ポニテ「……そのトリガーってのが全ての元凶だったんだねぇー……まさかお父さんとお母さんも関係してたなんて……」

フォーテ「うん、ハイお姉ちゃんの言ってることは結構当たってると思うよ。魔王陣営に関する情報もハイお姉ちゃんの言う通りだもん」

ツインテ「ボクは元よりハイさんのことを疑ってはいませんよ」

ぱー

天使のような笑顔のツインテ。

レン「一個いいかにゃ?」

ハイ「あ、はい。何か気づいたことがありましたか?」

レン「気づいたというかなんというか、その終盤のレンの見せ場である魔王の力を封じる指輪の作成のことにゃ」

ハイ「はい」

レン「それ……今から取り掛かったほうがいいにゃよね?」

ハイ「あ、はい、そうですね。早い方が助かるかと!」

レン「その指輪のサンプルとかって今あるにゃ?」

ハイ「さん、ぷる……?」

515

--暗黒森林、宿--

レン「そう、サンプルにゃ。さすがのレンも無から作り上げるのは厳しいにゃ。魔王の情報少ないし」

ハイ「えっと……勇者さんとキバさんが持っているかと……」

レン「その二人が今どこにいるかわかるにゃ?」

ハイ「ちょ、ちょっと待ってください……体験した記憶と読んだ記憶、両方探ってみますから」

レン「よろしく頼むにゃ。それがどうやらキーになりそうみたいにゃし」

ツインテ「あの」

おずおずとツインテが手をあげる。

ツインテ「勇者さんの居場所はわからないですけど、キバさんならあったことあるし、ボク探せるかもしれません」

ハイ「え!」

ツインテ「あ、もちろんボク一人では無理なんですけど、今はフォーテちゃんがいるので」

フォーテ「何!? フォーテお手伝い!? いいよっ! なんでもやるよお姉ちゃんっ!」

アッシュ「……なるほどサイドテールの力か」

レン「情報収集……それをフォーテの力で強化するのかにゃ?」

ポニテ「……なんかフォーテちゃんが絡めばなんでも出来ちゃいそうな気がしてくるなー」

516

--暗黒森林、外--

ぼしゅっ

ツインテ(サイド)「うわ、ほんと範囲やばっ! この星の半分くらいのことなら手に取るようにわかるー! あ、早速キバさんみっーけ」

上空に打ち出した特大のリングから情報を引き出しているツインテは驚きの声をあげる。

アッシュ「星の半分……さすがに規格外過ぎるな」

レン「ツインテ、その情報レンに送れたりしないかにゃ?」

ツインテ(サイド)「レンちゃん舐めて貰っては困るねー。情報転送はお手のものだよ、ほいほいっと」

ばしゅっ

レン「!? がっ!……ちょ……もうちょっと情報量考えて欲しかったにゃ」

ぽたたっ

鼻血をたらすレン。

レン「……なるほど、この魔力反応にゃね」

きぃん

ポニテ「お、久々の錬金ツール」

ばしゅっ!

レン「……出来たにゃ。キバ探知レーダーにゃ!」

ぴこーんぴこーん

517

--暗黒森林、外--

レン「この点滅してるのがキバの現在位置にゃ。これで誰でもキバを探しにいけるにゃ」

アッシュ「ほう、中々凄いものを作ったな。パクリだけど」

ポニテ「ほんとほんとー。デザインももろドラゴンレーダーじゃん」

レン「う、うるさいにゃ! 先人のいいところはどんどん取り入れてくのがレンのスタイルなのにゃ!」

ハイ「さすがレン先輩です! じゃあ一刻も早くキバさんに会いに行きましょう! 時間はそれほどありませんから!」

レン「うん、それにゃんだけど、レンは二手にわかれた方がいいと思うのにゃ」

ハイ「え?」

レン「聞けばこれから亜人保護団体が一悶着起こすらしいじゃにゃいか。その混乱が無ければ対魔王戦ももっと上手くいくと思うのにゃ。それに奴らがやろうとしてる超巨大魔法陣。それをそっくりそのままいただくつもりなのにゃ」

ハイ「いただくって……どういうことですか……?」

レン「その魔法陣の術式を改造するのにゃ。魔王の力を抑えるリングと同じ術式に」

ハイ「!!」

レン「そうすればもうちょい強力なものが出来るのにゃ。だからハイ達には亜人保護団体の説得に行ってもらいたいにゃ」

518

--暗黒森林、外--

ハイ「なるほど……確かにそれが出来たら、前よりもずっと勝率があがりそうな気がします!」

アッシュ「決まりだな。長距離移動するならスピードが重要だ。俺はキバ捜索チームの方に入ろう」

レン「少しでも早く指輪を研究したいからレンも捜索チームにゃ」

ポニテ「あー……じゃあ私もそっちに入ろうかな。戦力不足してるし」

アッシュ、レン「「どういうこと!?」」

ツインテ「ではボクはハイさんに付いて行ってもいいですか?」

バランスを考えて発言するツインテ。

ハイ「はい、よろしくお願いします!」

フォーテ「僕はツインテお姉ちゃんと一緒にいられるならどこにでもいくよー!」

ユー「……」

俺もこっちとばかりにハイを指差す。

アッシュ「ふむ、説得チームはハイとツインテとフォーテとユー。捜索チームは俺とポニテとレン。上手い具合に分かれたな」

レン「じゃあ……さっそく出発するにゃ。もはやこの闘いは一分一秒を争うものになってるにゃ」

ポニテ「え!? 今すぐ!?……ポニテちゃん、ちょっと食事休憩とかしたいなー、なんて……」

レン「そんな時間は無いにゃ。道中で道草でも食べろにゃ」

ポニテ「ひどい!! 食べたら食べたで怒るくせに!!」

519

--暗黒森林、外--

ツインテ「さっきの話ですと……代表さんはこの競売に来ていらっしゃるんですよね?」

ハイ「そう、ですね。だから私達はまた、闇に潜んでひっそり会いに行くことになるんでしょうかね」

フォーテ「わーい! 潜入捜査楽しそうー!」

ユー「……」

泥棒のようなほっかむりをつけているユー。

アッシュ「……」

すっ

アッシュは無言で拳を突き出した。

ポニテ「!……」



ハイ「……あぁ」

すすす

それを見た仲間たちは同様に拳を突き出す。

アッシュ「――出来るだけ早く戻ってくる。それまでにそっちは説得しておけ。ヘマするんじゃないぞ?」

ツインテ「はい、精一杯頑張ります」

アッシュ「あ、いやツインテに言ったわけじゃなくてね!?」

ハイ「では……皆さんよろしくお願いします。またここでお会いしましょう!!」

アッシュの声をさえぎってハイが笑いながら宣言する。

ツインテ「はい!」アッシュ「おう!」ポニテ「うん!」レン「にゃ!」ユー「……」フォーテ「おー」

ごつっ

520

--暗黒森林、代表別荘--

ひゅおぉぉおおおぉぉ……

もぬけのからと化した屋敷でたたずむハイ達。

ハイ「……どう思いますこれ」

ツインテ「えっと……何かトラブルがあって、急いで撤収した、って感じでしょうか」

ユー「……」

ユーは虫眼鏡で痕跡を探している。

フォーテ「勘のいい人みたいだねー。何かに気づいて逃げ出しちゃったんだー」

ハイ「……確かに代表君はそういう感覚優れてましたけど……」

ツインテ「……急ぎましょう。まだ遠くには行っていないはずです。夜が明ける前に追いつかないと!」

ハイ「……はい!」






……パカラッ

一週間でこれを全部読むとは……読むのが速い方が多いみたいですね。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅れました。
それでは投下していきます!

521

--暗黒森林、外--

ぱから……

ハイ「ん……? この足音は……」

ぱからっ

ユニコーン「ひひん」

ハイ「あ、ユニちゃんですか。縄ほどいてきちゃったんですか? いけない子ですねぇ」

ツインテ「ハイさんの馬、というかユニコーン、ですか? 可愛いですね」

ツインテは近寄ってきたユニコーンの頭をなでる。

ユニコーン「ひひひん」

フォーテ「ふぉ、フォーテのほうが可愛いよっ!」

ぷくー!

ハイ「丁度今ユニちゃんを迎えに行こうと思ってた所でした。さすがユニちゃん、主の心を察するとは、です」

ユニコーン「……」

522

--暗黒森林、外--

ぱからぱから

ツインテ「あ、あのハイさん……」

ハイ「なんですかツインテ先輩?」

ツインテ「えと、ユニコーンは初めてなので、その……乗ってみては駄目でしょうか?」

ハイ「いいですよ! きっとユニちゃんも喜びますよきっと。美少女大好きだし!……私は違いますけど」

そう言ってハイはツインテに手を伸ばす。

ツインテ「あ、じゃあお願いします」

にこりと笑うツインテはハイの手を握る。

ストッ

ユニコーン「!?」

その時ユニコーンに電流走る。

ユニコーン「ッ!」

慌てて振り返り、自分の背に乗る者の顔を見るユニコーン。

ハイ「? どうしましたユニちゃん?」

ユニコーン「ひ、ひひん……?」

ユニコーンは自分の背にたまたまの感触を感じていた。ユニコーンの野郎とビッチ発見レーダーに間違いは無い。

ツインテ「うわぁ、高いです。動物に乗るのって、こんなに素敵なことなんですねっ!」

ユニコーン「……??」

本能は男が背に乗っていると判断しているのだが、ユニコーンの瞳に映るのは可愛い女の子のみ。ユニコーンは錯乱していた。

523

--暗黒森林、外--

夜の番人「うんせ、ほいせ」

ハイ「あ、先ほどの夜の番人さん」

夜の番人「あぁツインテ様方! 先ほどはどうもでし!」

夜の番人は人並みの大きさの袋を担いで歩いていた。

ハイ「こんな時間に何をされてるんですか?」

夜の番人「やー、保管庫があんなことになっちまったんでその後片付けでし。そんでこれはその時にでた死体でし。今から埋めに行くんでし」

ハイ「う……なんだか耳が痛いですねぇ。後片付けやらせちゃってごめんなさい。本当なら私達も手伝わなきゃいけないんですが」

ツインテ「え、死者が出てしまったんですか? 全員治したと思ったのに……。あの、ボクに蘇生やらせていただけませんか?」

夜の番人「!! それは願ったりかなったりでし! むしろこちらからお願いしたいでし!」

ドサッ

そう言って夜の番人は死体を下ろし、袋から取り出した。

ごろん

侍「……」

ツインテ「……あ」

ハイ「忘れて、ましたね……」

524

--暗黒森林、外--

ホーホー

侍「ぷくー」

ハイ「ご、ごめんなさい侍さん! ばたばたしてたのですっかり忘れてました! 後いい大人がぷくーやっても可愛くないです」

ツインテ「ごめんなさい侍さん……」

侍「……まー拙者も? 常識人な大人でござるし? たしょーのことじゃあ怒らないでござるが? さすがに今回のことは? ちょっといただけないんじゃないかっていう?」

ぷりぷりしてる侍。

フォーテ「おじちゃん、おこなの?」

侍「……おこじゃないです。はい」

ツインテの腰に抱きついているのがフォーテだということに気づいて一瞬で血の気が引く侍。

侍「……あの、これ……どういうことなんでしょうか。説明が欲しいです」

ハイ「あぁ、肝心な時にずっと死んでた侍さんは知らないですよね? 実はなんやかんやあって、あのフォーテさんが仲間になったんですよ!」

さりげなくひどいハイ。

侍「! なんと! それはまことでござるか!!」

ツインテ「はいそうなんです。だからもうフォーテちゃんと戦わなくてもよくなったんです。ねー?」

フォーテ「えへー」

にこやかなツインテの笑顔に釣られてにこにこするフォーテ。

侍「これはこれは……姉妹ど」

ぬるっ

よからぬ想像をした侍の頬を死者の指がなでた。

525

--暗黒森林、外--

ハイ「やぁ、でもよかったです侍さんがいてくれて! もう少し人手があればなー、って思ってた所だったんですよ!」

侍「む? ヒトデ? もちろん拙者でよければ力を貸すでござるよ」

ハイ「ありがとうございます。実はやらなきゃいけないことがもう一個あったんです。時系列的に少し後のことなので、この件が終わってから対処しても間に合うと思うんですが……歴史がどこまで前と同じように進むのかわかりませんからね……」

侍「む……なるほど。して、拙者に任せたいこととは?」

ハイ「はい、実はこの後、各地の妖精郷が襲われることになります」

ツインテ、侍「「!?」」

ハイ「精霊様を殺害して十代目勇者さんの能力をパワーダウンさせるのが目的みたいです。……他にも目的があるのかもしれませんが、そこまでは私も……」

侍「ぬぅ、それは一大事でござるな……しかし困ったことがあるでござるよ。拙者はおろか、妖精郷への入り口を知る者は人間界にはあまりいないでござるよ?」

ハイ「です。でもそれは妖精さんに案内してもらうので大丈夫です」

侍「へ?」

ハイ「ここの競売品として、ぴっちさんとぱっちさんがいるはずですから、ぴっちさんたちに案内をお願いしてください」

526

--暗黒森林、外--

侍「なるほど……確かに妖精についていけば妖精郷にたどり着くでござろうが……果たして妖精がこんな話を信じてくれるのかどうか」

フォーテ「だいじょーぶ、フォーテが呪いをかけちゃえば簡単だからーっ!」

びくっ

フォーテが言葉を発するだけで、条件反射で冷や汗をかいてしまう侍。

ツインテ「駄目ですよそんなこと。ぴっちさん達はいい妖精さん達なんですから。ちゃんとボクが説明します」

フォーテ「むーっ……」

ツインテのお腹に顔をうずめて左右に動かすフォーテ。

ハイ「でも、そんな時間も無いんですよね。私達はすぐ追わなくちゃならないですので」

ツインテ「あ……」

ハイ「ですから侍さん、そちらは侍さんに任せてもいいですか?」

侍「……やれやれ、随分と投げやりでござるな。それとも信用のたまものなんでござろうか」

よっこいしょ、と侍は立ち上がる。

侍「――麗しの女子達にお願いされたら、断るわけにはいかないでござるよ」

いい顔の侍。

フォーテ「駄目だったら僕がお仕置きするねっ!」

侍「ッ!?」

情け無い顔の侍。

527

--暗黒森林、外--

ユニコーン「ひひーん」

ハイ「ツインテ先輩、代表君はこっちの方角でいいんですよね?」

ツインテ「はい。サイドさんが調べましたから間違い無いかと」

ハイ「了解です。侍さん、そっちはよろしくお願いしますね」

侍「心得た」

フォーテ「ねーえー、ツインテお姉ちゃーん。こっちに乗らないのー? これはこれで乗り心地いいんだよー?」

オオオオオ

フォーテは死者の腕の上であぐらをかいている。

ツインテ「ごめんね、ちょっとユニさんに乗ってみたくて」

ユー「……」

コキッ

ユーは準備運動を済ませ、首を鳴らす。

ハイ「では行きますよ! はいやユニちゃん!」

ばしっ!

ユニコーン「ひひーん!」

だからっだからっだからっ!!




だだからっ

528

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!

夜の森を駆けるハイ達。

ツインテ「わー……すっごい速いです! んっ!……振動が……ちょっと痛いですけど」

股をもじもじさせるツインテ。

ハイ「これでもユニちゃんは振動が無い方なんですよ? そういうことも考えて走れる優秀な子なんです」

ユニコーン「ひひーん!」

だからっだからっだだからっ!

ハイ「……」

ハイは何かを察して左後方を振り返った。

ユー「?」

ユーはどうかしたのかとハイに問う。

ハイ「……いえ……少し気になったもので。勘違い、かな?」

529

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!

フォーテ「うー! いいなぁハイお姉ちゃん、ツインテお姉ちゃんにぎゅっとしてもらって……羨ましい……羨まし過ぎて……僕……」

オオオオオオ

死者の腕が脈動する。

ぴくっ

フォーテ「」

何かを感じ取ったフォーテが左後方を確認する。遅れてユーも視線を向けた。

フォーテ「……」

ユー「……」

だからっだからっだだからっ!

ハイ「っ! やっぱり!!」

バッ!!

ハイはパチンコを取り出して狙いをつけた。

ツインテ「え? どうかしたんですか? ハイさん」

ハイ「何者かはわかりませんが、私達を追ってきてる人がいます!」

ツインテ「!?」

530

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!
だだからっだだからっだだからっ!

ハイ「……ユニちゃんの足音に巧妙に隠してる……もっと早く気づけていたらこんな場所で戦うことにはならなかったのに」

ひょい

ツインテ「あ、あれ?」

死者の腕がツインテを抱き上げた。

フォーテ「ツインテお姉ちゃんは僕が護るよ。そっちの方が安心だし安全だよね?」

ハイ「はい、お願いします!」

ユー「……」

だだからっだだからっだだからっ!!

敵はスピードを上げ、木々の向こうでハイ達と並走している。

???「くすくすくす」

暗闇の中にいる敵が笑う。

531

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!
だだからっだだからっだだからっ!

ハイ「……」

ツインテ「は、ハイさん……」

ハイ「……っ!」

びしゅっ!

ハイは暗闇に向かって小石を放つ。

びしっ!

ハイ「」

攻撃は成功した。しかしほぼ同時に自分の肩に小石が当たった。

ハイ「じょ、条件達成、レベルアップ! レベル2、騎士!!」

532

--草原--

ぼふっ!

変身を終えると同時に木々を抜けた。

ばささっ!

ハイ「っ!」

ばっ!!

並走していた者が初めて姿を現した。

???「くすくすくす」

二角を持った六本足の黒いバイコーン。そしてそれに跨る紫色の兜と甲冑を纏った騎士。

だだからっ!

それは方向を急に変えるとハイに向かって突進する。

ハイ「っ! ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっだからっ!

ハイもそれに向かっていく。そしてお互いランスを繰り出した。

ボッ
ボッ

ガシイイイイイイイイイイイイン!!

お互いのランスは両方とも相手の脇腹をかすめ、金属と金属がこすれあって火花が散った。

???「くすくすくす」

すれ違う瞬間、ハイの耳元で笑う敵。

533

--草原--

グッ

ユー「……!」

フォーテ「やめたほうがいーよお兄ちゃん。お兄ちゃんもさっき力を使いすぎたはずでしょー?」

ユー「……」

加勢しようとしたユーを止めるフォーテ。

フォーテ「……あれだけ力を使ったんだもん、今は結構厳しいんでしょ? だからここは見に徹しようよー。アレがなんなのか見極めておきたいし。だからお姉ちゃんも加勢したいとかいっちゃ駄目だからねっ」

ツインテ「うぅ……で、でもハイさんが……」

ガキン! ガキキン!! ガガアアアン!!

ハイ「あああああああああああ!!」
???「あはははははははははは!!」

ランスを突き合う二人。どちらも決定打を繰り出せずにいる。

フォーテ「多分遅れはとらないと思うよ」

ハイ(っ! 仕方ない……私には次のレベルアップがあるし、ツインテ先輩という回復役もいる! ここは肉を切らせて骨を絶つ!)

534

--草原--

ハイ「行って! ユニちゃん!!」

だんっ!!

ハイの叫びと同時にユニコーンが全力で走り出す。

???「……くす」

だだんっ!!

紫の騎士も同様に走り出す。

ハイ「はああああああああああああああああああああ!!」

???「くすくす」

ズガシャアアアアアアア!!

ハイ「――がはっ!!」

ハイのランスは敵の、敵のランスはハイの胸部をそれぞれ貫通した。

???「げっほっ……」

535

--草原--

ばしゃしゃっ!!

お互いランスから手を離し、自分の胸に刺さったランスを引き抜く。

ズボッ!!

ハイ(い、痛過ぎる……でもこれで……敵を、倒した)

だからっ

ハイ「じょ、条件達成、レベルアップ」
???「条件達成、レベルアップ」

ハイ「!?」

ハイと同じような台詞がもう一つ。

ハイ(そんな……)「れ、レベル3、銃士!!」

???「レベル3、ガンナー」

バシュッ!!

ハイと敵は同タイミングで変身を終えた。

ハイ「う……そ」

しゅうぅうう……

バイコーンに乗る敵の姿が甲冑から布面積の少ないカウガールの衣装へと変わる。兜も無くなり、素顔が表に出る。

ツインテ「! そんな……」

???「くすくす。なぁに? そんなにショックだったぁ?」

ハイ「嘘……わ……私?」

敵は、ハイと瓜二つの顔立ちだった。

536

--草原--

ジャコッ

???改めビィ「くすくすくす」

ハイ「はっ!」

ガガガガガガガガガガッ!!

一瞬遅れて銃を構えるハイ。

キンキンビチッ!

撃ちもらした銃弾がハイの腕をかすめていく。

ハイ「っ!!」

ガガガガガガガガガガガン!!

ハイ「っ! ユニちゃん! 左前方の林の中に入って!!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっ!!

ビィ「あれぇー? 逃げちゃうのかなぁー?……逃がさないけど?」

だだからっだだからっ!!

チュンチュンチュイン!!

537

--草原--

ガガガガガッ……

加速するハイ達を追うツインテ達。

ツインテ「……あれが話に聞いた別ルート存在……それもハイさんの……」

フォーテ(おかしいな。僕あんなのがいるなんて聞いてないよ? しかもなんでトリガーは、残り少ない力を使ってまであんなのの別ルート体を呼び寄せたのかなー?)

ユー「……」



--林--

ガガガガガガガ!!

真っ暗闇の中で打ち合う二人。見えるものは発砲の光のみ。

どくんどくんどくん!

ハイ(なんで……なんで私の別ルートが……? ありえないでしょ、私は普通の一般人なのに、特別な力も無いのに……どうせ別ルートからひっぱってくるならツインテ先輩とかもっといい人がいるはずなのに!)

ガガガガガガガッ!! ビチチッ!!

銃弾が頬をかすめる。

ハイ(っつ! 動揺してる場合じゃない……今はなんとしても、私を止めなくちゃ!!)

ハイは覚悟を決める。

ハイ「たとえ、相打ちになってでも!!」

フォーテ「――その必要は無いよ、ハイお姉ちゃんっ」

ハイ、ビィ「「!?」」

ズズッ

突如暗闇の中から現れたフォーテ。

ズドズブブブブブブッ!!

ビィ「」

そしてありとあらゆる方向から死者の腕が繰り出され、一瞬にしてビィの体は引き裂かれた。

ブチブチブチィッ!!

フォーテ「観察は終わりっ。結局考えても意図はわからなかったからー、とりあえず殺しちゃうねっ!」

538

--林--

ビィ「ごふっ!!」

四肢を捻じ切られ、はらわたを引きずり出され、瞬く間に無残な姿になったビィ。

ビィ「げほっごほっ!……くす」

だが、ビィは笑うのをやめない。

フォーテ「」

そしてフォーテだけがその違和感に気づく。

フォーテ「――何この体……」

ビィの体内にあったものは

どどくんどどくん

――五つの心臓。

フォーテ「」

フォーテは、理解出来ないそれから感じる何かに恐怖を抱いた。

フォーテ「う、うわあああああああああああああ!!」

ボッ!!

フォーテが膨大な魔力をこめて繰り出す呪いの一撃。

ビィ「――最終条件達成」

それが届く一瞬前に

ビィ「レベルアップ、レベル4、アークエネミー」

と、ビィが呟いた。

539

--林--

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

フォーテ「あああああああああああああああ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアン!! ドギャギャギャアアアアアアアアアアン!!

魔法の威力換算でレベル6相当の攻撃を乱発するフォーテ。木々は全て吹き飛び、辺りは荒地と化していく。

ハイ「ちょっ! フォーテさん! やりすぎ!! オーバーキル過ぎだから!!」

ズンッ

フォーテ「――あ」

暴走するフォーテの体を杭が貫いた。

ハイ「!? ふぉ、」

フォーテ「あ……う、嘘だ……」

ビィ「あー、危なかったー」

ギャリリリリリリリリリリリリリリリイイイイイイイイイイ!!

そしてその杭がドリル回転。辺り一帯に飛び散るフォーテの肉片。

ビチャチャチャッ!!

ハイ「フォーテさん!!」

フォーテ「あ、ありえ、ない……僕は、魔王だって、倒せる、は、ず……」

ビィ「そーだねー。フォーテちゃんは確かに最強だよねー。でもぉー? フォーテちゃんでも完全な魔王は倒せないよね? よそから引っ張ってきただけのまがい物の魔王と違ってー、私は勇者因子を持たない者からのダメージはうーケーつーけーなーいーのーでーすーーーーー」

540

--林--

ガシガシガシガシガシガシ!!

死者の腕がフォーテからビィを引き離そうと掴むのだが、

ぱんっ

ビィが払っただけで消滅していく。

ビィ「残念ッ★」

グシャッ!!

ビィは、フォーテの頭部を握りつぶした。

ハイ「あ……あ……」

ガシャッ

紫色と濃い赤色が混ざった鎧。それを纏うビィからは、確かに魔王の圧力を感じていた。

ハイ(これが私の、別ルート……)

ビィ「さて、と」

ビィは血塗れたパイルバンカーをハイへと向ける。

ビィ「死んでもらうよ、私ぃ」

最後の新キャラ、Bハイ、略してビィちゃん登場?です。もうこれ以上新キャラを出さないと思うので許してください。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。
昨日は体調が優れなくてこれませんでした。申し訳ないです。
それではむせる続きを投下していきます。

541

--林--

ハイ「私を……殺す?」

ビィ「そ、私を殺す★」

びちゃ、びちゃ、びちゃ

ビィは血溜まりをスキップしてハイに近づいていく。

ハイ(私を殺す……そりゃトリガーが別ルートからわざわざ引っ張ってきた存在なんですから、盗賊王さんのように何かしら戦う理由があるんでしょうけど……)

ビィ「ふふ」

ハイ(でも、私がここまで変貌するルートなんて存在するんでしょうか……)

ビィ「じゃあ『次』が待ってるから手早く済ませちゃうね」

シュッ

ビィはハイにパイルバンカーを押し付けた。



フォーテ『それで勝ったつもりっ?』

ハイ「!」

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

血溜まりが波打って、無数の死者の腕がビィに掴みかかった。

ビィ「――んーん。思ってないよ、フォーテちゃんはしぶといもんね」

シュババッ!!

フォーテ「!?」

ズガッ!!

その全ての攻撃を粉砕し、闇に潜むフォーテの頭部を引きずり出し、パイルバンカーを突き立てた。

542

--林--

フォーテ「こ、攻撃が、読まれて……」(ぐ、なんか、体が、だるい。おもう、ように、うごかない)

ビィ「チミドロミキサー★」

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリーーーー!!

フォーテ「――ッ――ッッ!!」

ハイ「ありえ、ません」

チュルルルルルゥン……ズポッ

ビィ「あらららー、随分見通しよくなっちゃったねー、フォーテちゃんー。フォーテちゃん越しに地面が見えるー。あははっ★」

ハイ「……私がフォーテさんを完封しちゃうなんて、ありえない……!」

シャッ、シャッ、シャッ、ザッ!!

ユー「……!」

タタタッ!

ツインテ「!? フォーテちゃん!!」

そこに遅れてユー達がやってきた。

ビィ「おやおやおやー?」

ユー「!」

シャキィン!!

ユーは一瞬で状況を理解すると、レイピアを抜いてビィに向かっていく。

543

--林--

ザザザザザッ!!

ビィ「あらーユーさんじゃないですかー、お久しぶりー。っと……今の姿だとユーさん相手じゃ超不利だねぇ」

ビィは自分の姿を確認して笑う。

ユー「!」

ボボボボボッ!!

ユーは無防備なビィに向かってレイピアのラッシュを叩きこむ。

ビィ「じゃーレベルダウン、レベル3」

ブンッ

ハイ(!! あえてレベルダウンすることで勇者因子から逃れるつもり!?)

ずぼぼっ!

攻撃が到達するよりも早く地面がめくりあがり、そこから何かが飛び出してユーのレイピアを受け止めた。

ガギギギギギギィイイイイン!!

ビィ「――ネクロマンサー」

ハイ(ネクロ、マンサー……? 私と微妙にレベルの職業が、違う……!)

ビィ「くすくすくす。ありがとうー下僕共ー★」

ザッ!!

ハイ「!」

気づけば無数の亡者がハイ達を取り囲んでいた。

544

--林--

オオオオオオオオオオオオオ……

ハイ「……! こんなに沢山の死者が!?」

ツインテ「フォーテちゃん! 今回復魔法をかけるからね!」

ユー「!」

ズギャギャギャギャギャギャギャーーー!!

亡者「おあああああぁああ」

迫る亡者を次々に吹き飛ばしていくユー。しかし少しずつビィから距離を離されていく。

ビィ「あっはっ★ 凄い凄いさすがユーさんだぁ……。この程度の亡者の群れなんてなんともないよねぇ……じゃあ」

ドスッ

ビィは自分の胸を指で貫いた。

ハイ「!」

ごぽっ、びちゃちゃっ

ビィ「最終条件達成、レベル4、アークエネミー」

ボッ!!

ハイ「なっ!?」

ビィは再びレベル4へと変身する。

ビィ「……倒すなら魔王にならなきゃね」



ユー「!!」

ビィが掌を向けた瞬間、ユーは防御の構えを取る。

ユー「対単体六属性攻撃魔法、レベル5」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

545

--荒地--

ハイ「ユーさーーーーーーーーーーん!!」

しゅううう……

ハイ「……そんな……」

しゅぅううううう……

ビィ「あっは★ かったーーーーい。複合魔法の、それも六属性のレベル5直撃で生きてるとか、いくら防御型とはいえちょっと化物すぎませーん?」

ユー「ッ……ッ」

ぶしゅっ、ぶしっ!

ガクガクと震えるユー。レイピアも鎧も破壊され、もはや立っているのがやっとだった。

ハイ(よかった生きてた!……でもおかしい……これはおかしすぎる……!)

カチャッ

ハイ「はああああああああああ!!」

ユーからビィを引き離すために、ハイは銃を連射する。

ガガガガガガガガ!! チュインチュイーン!!

ビィ「ん、そんなの意味無いのに私ったらおばかさん」

ハイ(誰も通らないような辺鄙な場所なのに、こんなに大量に死体が埋まってるもの……? それもまだ埋められて新しい死体が……!)

ビィ「うっとおしいよ、氷属性攻撃魔法レベル4」

ピキャアアアアアアアン!!

ハイ「くっ……!」

バッ!!

ハイは回避しようとするのだが

ビシッ

左足をもっていかれる。

546

--荒地--

バキバキバキーーン!!

ハイ「ぐっ……あ!」(動きも、おかし過ぎるんだ……! 私は、たとえ魔王になったとしてもここまで戦えない……だっていうのにこれは……まるで……)

ビィ「全てを見通してきたような感じだなって、思ってるでしょ?」

ハイ「」

ビィ「くすくす。自分だけだと思った?……くすくす」

ハイ「――」

ビィは矛先を再びハイの方向へ。

びちゃ、びちゃ、ざく、ざく

ビィ「フォーテちゃんの動きもユーさんの動きもツインテ先輩の動きも、私の動きも……なぁーんでも知ってるよん★ 持たざる凡人は、こうでもしなきゃ勝てないものだからねぇ」

ハイ(――この人が歩んできたルートは)

ビィ「じゃあ、バイバイねー」

バッッ!

フォーテ「やらせないよっ」

ツインテ「やらせません!!」

復活したフォーテとツインテがビィの背後から襲い掛かる。

ビィ「――うん、知ってる」

547

--荒地--

フォーテ「くらっ、ちゃえーーーーーーーーーーー!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

フォーテの規格外の一撃でさえ、魔王化しているビィには届かない。

ツインテ「!」

フォーテ「やっぱり……本物、だ」

ずるるるる!!

続いてフォーテは闇を広げて死者の腕を大量展開する。

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

ビィ「今度は数で押せばなんとかなるって? いやいやそんなわけないでしょう? まさか本気で効くと思ってるのかな?」

フォーテ「……いや」

ガシガシガシガシ!!

ハイ「っえ!?」

死者の腕はハイ達を抱えると一目散に逃げ出した。

シャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

フォーテ「……超むかつくけど、今回は逃げるっ」

548

--荒地--

ダバダバダバダバ!!

ハイ「!! あのフォーテさんが、逃げる!?」

ツインテ「フォーテちゃん……」

フォーテ「し、仕方ないでしょっ! 今は僕だって本調子じゃないし、それにツインテお姉ちゃんを傷つけさせるわけにはいかないのっ! そのためならっ、僕はなんだってやるっ!!」

ビィ「ぽかーん」

ビィは去っていくフォーテ達をただ眺めていた。

ビィ「ふぉ、フォーテちゃんが私なんかから、にっ、逃げるなんて……」

くねくね

ビィは大げさに体を捩らせて――言った。

ビィ「知ってた★」

ニィ……

夜の番人「ぎしゅるるるるる!!」

ツインテ「!? あの人は」

ハイ達の進行方向で待ち構えているのは、夜の番人。

ハイ「夜の番人さん!? なんでこんな所に……」

フォーテ「……あれ死体だ。あのお姉ちゃんに操られてるよっ!」

夜の番人「しゅぎゃああああああああああ!!」

バッ!!

フォーテ「邪魔だよっ!」

どぎゃっ!!

フォーテは躊躇無く夜の番人の頭を破壊する。

549

--荒地--

ダバダバダバダバ!!

ツインテ「ちょっ、フォーテちゃん!? 絶対回復領域!」

ぱしゅん!

ツインテは夜の番人の横を通り過ぎたタイミングで回復と蘇生を同時にかける。

ツインテ「ううぅ……そんなぽんぽん人を殺しちゃいけませんよぉ。悔い改めなきゃだめなのにぃ」

フォーテ「……」

ダバダバダバダバ!!

ハイ「それより追ってきてません、ね……? 不自然です。まさか逃げ切れたんでしょうか?」

フォーテ「……に」

ユー「……!」

みんなの意識が後方にいっている中、ユーのみが気づく。

フォーテ「……」

フォーテが全く動かなくなっていることに。



じゃり

ビィ「くすくす。ぽんぽん頭ふっ飛ばしちゃうのも、私知ってるんだ~~」



ぱっ

ハイ「! 闇が消えて!?」

ドサドサドサドサー!!

ハイ「ぎゃんっ!!」

闇が引き、死者の腕が消滅したことでハイ達は地面に投げ出されてしまう。

550

--荒地--

ツインテ「あたたたっ……ふぉ、フォーテちゃん大丈夫!?」

フォーテ(あ り え な い  た い か ん す ぴ ー ど が お そ す ぎ る  こ れ じ ゃ ま る で  あ の と き ぼ く が や っ た の と お な じ だ)

じゃり……

ビィ「くすくすくす。でっばっふ~~」

ハイ「!?」

いつのまにか近づいて来ていたビィ。

フォーテ「こ……の」

ビィ「わぁお。これだけやってもまだ動いちゃう? さすがだねー」

ビィはフォーテに人差し指を向けると、その先端が光る。

ビィ「ではではダメ押し。デバフっ、デバフっ、デバフー★」

ぎょんぎょんぎょんっ!!

フォーテ「  」

フォーテは、微動だにしなくなった。

ビィ「くすくす。デバフ特化魔王とか新しいよね」

ユー「……!」

ぐぐっ

ユーは先ほどのダメージが響いて立ち上がれない。

ビィ「――始まりの勇者様と魔王を超えた化物。くすくすくす。愉快だわぁ痛快だわぁジャイアントキリングだわぁ。その二人を相手にして勝っちゃうのが、『ただの人間』だっていうんだから」

551

--荒地--

ビィ「くすくすくす」

ツインテ「っ!」

たたっ!

ツインテは妨害魔法を解除しようとフォーテに近づく。

ハイ(! 解除の時間を稼がなきゃ!)「り、理解できません……! 『レベル』は、そう簡単にレベルアップ出来るものじゃないんです!」

ビィ「……はい?」

ハイは突然大声を出してビィの意識を自分に向けさせる。

ハイ「『レベル』はリスクが大きいだけ強くなれる職業……だからただの人間でも強くなれるんです……なのに、なのにあなたの条件はあまりに軽過ぎる」

ビィ「……そんなことないよ、レベルアップ条件は私と貴女は一緒」

ハイ「――え? い、いや、でも、レベル4は一人じゃ絶対になることが出来ないはずじゃ」

ビィ「察しが悪いねー。それともわざと現実から目を背けてるのかな?」

ぐちゅ、ぎちちち

ビィは……自分の胸を開いて見せた。

ぶしゅっ! ぐちゅちゅっ!

ビィ「――ほら、いるよ? みんなはここに」

どくん!

ビィが見せたのは五つの心臓。

ハイ「!?」

ビィ「これが私のパーティ★」

552

--荒地--

ハイ「そ、それはまさか……!! そんな……そんな方法で一人パーティを!!」

ビィ「こんな方法思いつかなかったでしょー? くすくす。レベルの弱点も頑張れば克服できちゃうんだねー★」

ハイ(かんがえ、つく? そういうことじゃない!! 自分の仲間なのに、大切な人たちなのに……なんで、なんでそんなことを)

ぐに

ビィ「この少し大きいのがアッシュ先輩でー、この色が薄めの可愛いのがツインテ先輩のでー」

ハイ「――どうして貴女はそんなことが出来るんですかっっ!!!!」

ビィ「」

ツインテ「……ハイさん」

ユー「……」

ビィ「くすくすくす……素敵な表情するね……まだ本当の絶望を知らない時の私の顔だぁ。懐かしいなぁ……くすくすくすくす、くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」

ハイ「あな、たは……」

ジャリ

フォーテ「やっぱり、それ、ツインテお姉ちゃんのだったんだ……」

ハイ「フォーテさん……」

デバフを解除されたフォーテがビィを睨んでいる。

フォーテ「許せない……どのルートのツインテお姉ちゃんだとしても、それはツインテお姉ちゃんなんだ……ツインテお姉ちゃんを傷つけるやつは、僕が絶対に許さない!!!!!!!!」

ぼっ!!

溢れる膨大な魔力。

ビィ「――何度も回復&復活でさすがにうんざりかな。このルートは、ここでおしまいにしておきましょうか」

ぼっ

フォーテ「」

だが、魔王であるビィの魔力がそれを上回った。

ビィ「サヨナラ」

553

--荒地--

ひゅっ、ドギャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ビィ「!」

ハイ「……あ」

ビィの魔力弾がハイ達に届く前に、蒼い閃光が間に割って入った。

???「……ぢっ!!」

ばしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

そしてそれは魔力弾を空中に弾き飛ばす。

どがあああああああああああああああああああああああああああああん!!

空中で大爆発を起こす魔力弾。そして、弾いたその人物は焦げ付いたマントを投げ捨てた。

ふぁさっ

ハイ「あなたは……十代目さん……」

???改め十代目「……」

554

--荒地--

ビィ「……十代目さん……?……そんなことって、あるの?」

ほとんど表情を変えなかったビィだが、ハイの眼には微かな動揺が見て取れた。

十代目「――初めて見るが……どうやらお前は魔王のようだな」

ビィ(勇者因子が反応したのかな?)「やだなー、間違えてますよ勇者様。私はただのかよわい一般人です★」

ちゃき

十代目「……倒させてもらう」

だっ、ザンッ!!

ビィ「ッ」

一瞬で近寄った十代目は防御するビィの左腕を切り裂いた。

ぶしゅっ!! ぽたたたっ

ビィ「……聞く耳、持ちませんか。やれやれ強引ですねー」

ハイ(傷を与えられた……い、いやそれもそうか……だって十代目さんは、まごうことなき勇者なんだからっ!!)

十代目「……」

ビィ「……やー……面食らっちゃったなー。まさか十代目さんがここで出てくるルートがあったなんてねー。れろっ」

傷口をいやらしく舐めるビィ。

555

--荒地--

ビィ「参ったなぁ……フォーテちゃんにユーさんに十代目さん。この面子をいっぺんに相手どるのはさすがに辛過ぎだよねぇ……」

鎧使い「――は? それだけじゃないんだけど?」

ざざざんっ!!

戦士「……うすっ!」

僧侶「きゃははっ!!」

シノビ「…シノビン…推参」

ハイ「皆さん……!」

いつの間にかハイ達の隣に十代目勇者パーティが勢ぞろいしていた。

ビィ「はぁ」

ビィはわざとらしく困ったポーズ。

ビィ「……しょーがない、今日は引きますかー。あーあ、今回は長丁場になりそうだーあ」

くるっ

ビィ「ちゃお★」

ビィはひらひらと手を振ると後ろを向いて歩いていく。

鎧使い「あ、まて!……十代目どうする? 追うか?」

十代目「……」

十代目はビィを追うことは無く、ビィの気配が無くなるまで臨戦態勢を解かなかった。

ツー

十代目「……」

十代目は一筋の血を額から流した。

556

--荒地--

ツインテ「たす……かったんですか?」

へなへなと座り込むツインテ。

フォーテ「むすー」

やられっぱなしのためむくれるフォーテ。

ハイ「……あっ、そうか時間切れだったんだ!!……頭が回らなくて気づかなかったけど、もう彼女は戦えなかったんだ!」

ツインテ「時間切れ? どういうことですか?」

ハイ「……人は何にでも成れます。勇者にだろうと魔王にだろうと……それが人の可能性の力。それがレベル。でもレベルには時間制限があるんですよ」



--草原--

だだからっだだからっだだからっ
ばしゅーっ

禍々しい鎧が消滅し、ビィは元の下着のような格好に戻る。

ビィ「ふぅー……やれやれ、これだけやってもまだ見てないパターンがあるんだねぇ……これは先が長いということなのかしらん……」

バイコーン「ぶひるんっ!!」

ビィ「くすくす。大丈夫よ、諦めたりはしないわバイちゃん。私は――必ずエンディングを迎えてみせるんだから」

557

--荒地--

ホーホー

ハイ「……でも本当に助かりました。ありがとうございます十代目さん方。九死に一生でしたよ」

十代目「いや……気にしなくていい。人助けは勇者の勤めなのだから。それよりもここで何があったのか詳しく教えてくれないか? 私達は最近まで前線で戦っていてこっちの情報に疎いんだ」

ハイ(そう、でした。今の時期だと十代目さんは魔王軍との最前線で……ん、北の王国の滅亡が無くなったからこの人たちの動きも変わったんですね?)

がくっ

鎧使い「ちょっと! 大丈夫なの? ほらしっかりなさい。し、心配してるわけじゃないんだからねっ!」

鎧使いは気が抜けて崩れ落ちたハイを支える。

ハイ「す、すいません、安心したら気が抜けちゃったみたいで……」

フォーテ「ハイお姉ちゃん、疲れてるとは思うけど説明するのはハイお姉ちゃんの役目だよ? ハイお姉ちゃんが僕らの指針で、僕らの中じゃ一番持ってる情報が多いんだから」

ハイ「ん。はい、そうですね。ろくに戦ってもいないんですし、せめて説明くらいしなきゃです」

十代目「……?」

ハイ(十代目さん達を説得するには材料が少なすぎる気がするけど、でも話してみなくちゃ始まらない。少なくとも今の私にはそれしかやれないんだから)

558

--荒地--

ホーホー

ハイ「――と、いうことなんですけれど……」

十代目「……」

鎧使い「う、胡散臭過ぎる……(実は北の王国に寄った時に北の王様に話を聞いてるんだけど……さすがに未来から来たってのは聞いてない……)ねぇ十代目、この話」

十代目「わかった、信じよう」

鎧使い「……嘘ー。普通に信じちゃうんだー。……お人よしすぎるだなんて、思ってないんだからねっ!?」

十代目「お人よしとかそういうことじゃなくて。私は彼女の話が信じるに足ると思っただけなんだ」

鎧使い「どーこーがーよー?」

十代目「理由はいくつかあるが、あえて言う必要もないだろう」

鎧使い「……納得しがたいからその説明を求めているのに」

十代目「……」(なんにせよ、彼女らが魔王に狙われていたのは事実。それだけ重要な人間だということ……)

559

--荒地--

十代目「で、これから君達はどうするつもりだ?」

ハイ「あ、はい。私達は……あ! そういえば代表君を追ってたんだった!!」

ツインテ「! 忘れてました! 用事の途中で裏ボスみたいな人とエンカウントしたせいです……」

フォーテ「ふぁーあ。むにゃむにゃ」

ユー「……」

回復魔法をかけて欲しいのだが全身に大ダメージを受けているためジェスチャーできずにもがいているユー。

十代目「代表? 亜人保護団体の代表のことか」

ハイ「はい、そうです。すみません、このお礼はまた今度させてください。私達は急がなくちゃいけないので……ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!」

ツインテ「ほらフォーテちゃん起きて。もう出発するよ?」

フォーテ「えー? フォーテ眠いよぉ」

ツインテ「ごめんね、でもフォーテちゃんの力が無いと私達移動できなくて」

560

--荒地--

十代目「それならこういうのはどうだ? ピューイ」

十代目が指笛を鳴らすと

ばさっばさっ!!

大きなロック鳥が現れた。

十代目「風のピューイだ。こいつに乗っていこう」

ハイ「あ、ピューイってオノマトペじゃなかったんですね」

ピューイ「ヒューイ」

十代目「さぁ、急ぐのだろう? 乗りなさい」

そう言って一番最初に乗り込む十代目。

ハイ「……ん?」

十代目「では鎧使い。しばらくの間パーティのリーダー役を任せるぞ」

鎧使い「……んん!? なんだって!?」

十代目「私はしばらくハイ達の手伝いをすることにする。鎧使い達は先ほどの話にでていた、精霊郷の襲撃に備えてくれ」

鎧使い「ちょっ、ちょちょちょ! どういうことどういうこと!! 勝手に何決めてんの!?」

ばさっ、ばさっ、ばさっ

ハイ達を乗せたロック鳥が夜の空へと吸い込まれていく。

鎧使い「……え、ろくに説明もしないで本当に行っちゃうんだ!?」



十代目が仲間になった。

<勇者と魔王について>
本来なら一人ずつしか存在しない彼らが本編ではわんさか出てくるので、もうよくわからんことになってると思いますので補足説明を入れさせて貰います。

勇者
・勇者は魔王、魔族キラー持ちです。
・更に全属性の魔力を扱うことができます。
・絶望や憎悪に染まると魔王になります。

魔王
・魔王は勇者以外からの干渉を無効にします。
・更に全属性の魔力を扱うことができます。



この勇者と魔王は世界のシステム上の存在であり、絶対に一人ずつしか存在出来ないようになっています。ゆえに人造勇者が何人出てこようが魔王キラーは持てませんし、疑似魔王も同様に勇者以外からの干渉を無効にするバリアも持てません。真似できるのは基本的なステータスまでです。

別ルートから引っ張ってきた魔王達でさえ、このルートにいる正規の魔王以外はバリアを持てないことになり、正規の魔王の資格を奪われます。ちなみに現段階の魔王の資格を持っていたのは魔王勇者です。



そしてレベルの存在。
レベルは人の可能性です。人は何にでもなれるというコンセプトで成り立っていて、その可能性は世界のシステムさえ破壊してしまうものです。なので一時的にではありますが、正規の勇者や魔王と同じような存在になることが出来ます。





それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは! なんだか毎週風邪気味になっているなそんなばかな……皆様も体にはお気をつけてください。



えっ、ユーさんが喋るわけ……あ……

すいません、544の

ユー「対単体六属性攻撃魔法、レベル5」



ビィ「対単体六属性攻撃魔法、レベル5」

のうち間違いです。毎度のことですがすみません。




それでは投下していきます。

561

--???--

カツン、カツン、カツン

ビィ「たっだーいまぁー。はーぁ。疲れたわー……」

桃鳥「あらビィさん、おかえりなさいですって私思っちゃいます」

ぱたぱたと飛びながらビィを出迎える桃鳥。

ビィ「ただいまですー。桃鳥さん相変わらずメンドクサイ語尾ですねー」

ガション、ガション

銀蜘蛛「アリャ? ビィチャンジャン。オカエリーー。ドッカイッテタンデショ? ナンカオミヤゲナイノー?」

ビィ「本当なら首の一つや二つ持って帰る予定だったんですけどねぇー、中々うまくいかないものなのですね」

ぺんぺん、と銀蜘蛛の装甲を叩く。

トリガー「お帰り、ビィちゃん」

ビィ「……ただいま、トリガーさん」

562

--空--

びゅおおぉおおおお!!

ツインテ「思ったり寒くないといいますか、あまり風が無いんですね、こんなに早く飛んでいるのに」

ハイ「多分、軽い魔力障壁が張ってあるんだと思います。今の私じゃどんなものなのか探れないのでよくわかりませんが」

ツインテ「あっ……ボクったら考えなしでしたね。もっとしっかりしないといけないのに」

そう言って恥ずかしそうに笑うツインテ。ただそれだけで周囲にいる人間の精神障壁を破壊するのだ。

ハイ(ほんと可愛い人……これはアッシュ先輩じゃなくてもころっとやられちゃいますね……かなわないなぁ)

フォーテ「( ˘ω˘)スヤァ」

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」

ヒュオォオオ

十代目「ん……ピューイ、もう少し左にそれろ、この先乱気流がある」

ピューイ「ゴシャッセー」

ツインテ「……さっきから気になってたんですけど、十代目さんはどうしてあのようなことが事前にわかるのでしょうか」

ハイ「あぁ、十代目さんは猫亜人三大希少種の一つ、『蒼天』だと聞きました。そして蒼天は自然と会話することが出来るのだとか。だからきっと今回もその能力で風に聞いたんじゃないでしょうか」

563

--空--

ツインテ「へー、なるほど。そんな素敵な力があるなんて、やっぱり凄い方なんですね。でもハイさんも凄いです。博識なんですね」

ハイ「いえ、私は凄く無いですよ。私はやり直してるから知っているのであって博識なわけでは……ん?」

ツインテ「? どうかしました?」

ハイ「いえ、何でもありません。ただ……」


   十代目「いや……気にしなくていい。人助けは勇者の勤め。それよりもここで何があったのか詳しく教えてくれないか? 私達は最近まで前線で戦っていてこっちの情報に疎いんだ」


ハイ「……蒼天の能力で自然に聞けば、そんな情報いつでも手に入れられたはず……勇者ともあろうお人が情報収集を怠ったなんてことは無いでしょうし……」

ハイは少し不安げに小声で呟いて、十代目の背中を見つめた。

十代目「――君の口から直接聞きたくてね」

ハイ「!? あ、あれ、聞こえて……ました……?」

十代目「私は耳がよくてね」

そう言って十代目は振り返った。流し目がイケメン。

ハイ「う……なんかすいません……でも直接、とは?」

十代目「君がどのように喋るのか。どこまで本気で喋るのか。何か後ろめたいことがあれば嘘を交えるはず……そんな感じで君を見定めさせてもらった。何せ未来から来た少女というのは、私も初めてだったものでね」

564

--空--

ビュオオオオオオ

十代目「結果的に私は君を信じることにした。君の真っ直ぐな瞳や言葉に、嘘や偽りは混ざっていなかった」

ハイ「話すだけで、わかっちゃうものなんですか?」

十代目「あぁ。私の耳は嘘に敏感なんだ」

ぴこぴこ

ハイ「はぁ……でも、信じてもらえてありがたいです。これからのことを考えれば、仲間は多いほうがいいですから」

ツインテ「ふふ、そうですね。出来ることなら全ての方と仲間になりたいです。戦いあう関係は好きじゃないですから」

ハイ「……ですね」

十代目「ん、見えてきたぞ」

十代目は地平線に浮かぶ建物を指差す。

十代目「亜人保護団体本部だ」

565

--亜人保護団体本部--

がたごとがたごと

馬車で移動している代表達。

代表「やれやれ、僕が勝手に出てきちゃったことに運営がそろそろ気づく頃かな?」

護衛姉「です」

護衛妹「ます」

熊亜人「ぐま」

代表「はー。だよねぇ。怒ってないといいんだけどなぁみんな。大体、僕がいるからって競売がうまくいくってわけじゃないんだからさ、毎回出席を強制してくるのはどうかと思うよねぇ?」

熊亜人「……貴方には力があるのぐま。貴方の顔がそこにあるだけで、金持ち達は安心するのですぐまよ」

代表「んー……信用問題か」

……ばさっ

代表「ん?」

代表達は空を見上げる。

ピューイ「ピューーーーイ!!」

熊亜人「ロック鳥……ぐま?」

566

--亜人保護団体本部--

がたごと……ざり

代表「ありゃりゃ。もしかして……僕が感じた悪寒はあれが原因かな?」

馬車から降りながら代表は空のロック鳥を凝視する。

ザッ

護衛姉妹が抜刀の構えを取り代表を下がらせる。

護衛姉「代表様は早く塀の中へ」

護衛妹「殿は私達にお任せを」

代表「そうだね、僕が戦場にいても役立たずのへっぽこだ。急がせてもらうよ」

熊亜人「ぐま!」

熊亜人が代表の真後ろにぴたりとつき、ガードしながら城門へと向かっていく。

護衛姉妹「「……」」

護衛姉妹もピューイから視線を外さずに後退していく。

ハイ「! あ! いました! あの馬車から降りた人! あの人です!」

567

--亜人保護団体本部--

ダダダダダダダダダ!!

バサッ! バサッ!!

代表(中々攻撃してこないね? となると僕の命が狙いってわけじゃなさそうだね。生け捕り? それとも他の何かをご所望?)

ハイ「待ってくださーーーーーーい! 代表くーーーーーーーーーーーん!!」

護衛姉「代表」

護衛妹「君?」

大声で代表を呼ぶハイ。それにつられて熊亜人の脇の横から顔をだして確認する。

代表「……やけになれなれしく呼んでくれるね……あれは僕のクラスメイトか何かかな?」

ハイ「お話があるんですーーーー! 私達は怪しいものじゃありませーーーん!!」

代表「……いや知らない顔だ。怪しさMAXじゃないか……」

門番A「代表様、お早く!!」

がごぉん……

城門が開きその中に入っていく代表達。

ハイ「あぁ……行っちゃいました」

ツインテ「代表君、って、お知り合いなんですか?」

ハイ「はい。未来でちょっと」

568

--亜人保護団体本部--

バサッ、バサッ……すたっ

ピューイはハイ達を地上に下ろすと十代目に顔をこすり付けた。

ピューイ「ごろろろろ」

十代目「助かった、ありがとう。ここはもうすぐ戦場になる。お前は早く離れるんだ」

ピューイ「ピューイ」

バサッ、バサッ!

ツインテ「あ、ありがとうございました! 乗り心地とてもよかったです!」

ピューイに手を振るツインテ。

ユニコーン「ひひーん」

尻尾を振るユニコーン。

ハイ「え? 今さりげなく戦場って? え?」

フォーテ「むにゃむにゃ。お姉ちゃんおしっこー」

ツインテ「え?……どうしよう、こんな所にトイレなんて……あの塀の中ならあるだろうけど……」

がごぉん

ツインテは閉められていく門を見て暫く考える。

ツインテ「……うん、貸してもらえるよう、ボク頼んでみます」

569

--亜人保護団体本部--

ざっ、ざっ

十代目「おい、前に出るな、危ないぞ」

ツインテ「え?」

十代目「奴らはもう戦闘態勢になっている」

じゃかかっ

門番達は城門の上から銃を構えていた。

ハイ「! ちょっ! 私達戦いに来たんじゃないんです! ただお話をしに」

門番A「嘘をつけ!! 巨大なロック鳥に乗って代表様を付けねらっていたくせに!! 一体何が望みだ!?」

ハイ「いや、だからただお話をするというのが望みであって……」

門番B「しらを切りやがって……!!」

じゃかかっ!!

門番達はハイ達に狙いをつけ始める。

ハイ「ど、どうしよう……あの人たち全然話になりません」

十代目「この状況ではな。彼らは敵が多いし過敏になってるんだろう」

ツインテ「あのすいません、ボクの弟がトイレを我慢してまして、良ければ貸していただきたいのですが」

ハイ「ツインテ先輩空気読んで!!」

570

--亜人保護団体本部--

門番A「黙れ!! 去れ!! 去らないと言うのなら……」

バンッ! チュゥン!

ツインテ「いたっ!」

門番が放った銃弾はツインテの右腕をかすめた。

ぽたっ

ツインテの右腕から血が滴り落ちる。

門番A「次は頭に当てるぞ!! これは脅しではない!!」

十代目「……やはり話し合いでは解決しないか」

十代目が剣を抜こうと柄に手を伸ばしたその時、

フォーテ「ね ぇ 、 な に や っ て る の ? ? ? ?」

門番A「!!??」

目を見開いたフォーテが、真横から門番の顔を覗き込んでいた。

571

--亜人保護団体本部--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……

門番B「な、なんだこいつ! 一体いつの間に!!」

フォーテ「今お姉ちゃんを傷つけたよね? よね? よねぇえ!? お姉ちゃんを、傷つける者はぁ……」

ズズズズズズズズズ!!

フォーテを中心にして闇が急速に広がっていく。

フォーテ「――皆殺しなんだよっ」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

門番A「ひ、ひいいいいいいいい!!」

門番B「あひゃあわああああああ!!」

ガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

堅牢な城壁が暴れ狂う死者の腕によっていとも容易く破壊されていく。

ドガァアアンン!!

ツインテ「! フォーテちゃん駄目っ!!」

フォーテ「許さない、絶対に許さないからっ!!!!」

おぞましい魔力を纏ったフォーテは我を忘れて攻撃し続ける。

ハイ「っていうか門開いちゃったし」

572

--亜人保護団体本部、主塔--

ドガァアン、ドガガガアアアン!!

賢帝「んっもぉう!! 一体これは何事よぉ! 最っ悪な目覚めぇ……」

ギィ

寝巻き姿の賢帝が自室のドアを開けて教団員達にどなりつける。

教団員「け、賢帝様! それが、何者かがここに攻め込んできたとのことでして!」

賢帝「なぁんですってぇ……? そんなバカなことをする奴はどこのどいつよ。ありえないわっ!」

どがぁん!!

賢帝は壁に穴をあけて、破壊音のする方を凝視した。

賢帝「んー……?」


フォーテ「呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる」


ぶつぶつと呟きながら大量の死者の腕を繰り出して暴れまわっているフォーテの姿が見えた。

賢帝「……あの子私より強くねー?」

573

--亜人保護団体本部--

ドガァアアン!! ドガガァアアン!!

フォーテ「あ は は は は は は は は は!!」

ツインテ「ふぉ、フォーテちゃん!! ボクの言うことを聞いてっ!!」

ハイ「駄目です……こうなったフォーテさんを止められる人なんてこの世にいるんでしょうか……」

十代目「……」

ダンッ!!

十代目は跳躍し、フォーテに接近する。

しゅばばっ!!

フォーテに接近するもの全てが敵とみなされて、死者の腕が十代目を襲うのだが、

ずばばっ!!

十代目「っ」

それを全て空中で切り伏せる。

574

--亜人保護団体本部--

十代目「やれやれ、手間のかかるお子様だな」

ぼう

十代目の左手に青い炎が灯る。

十代目「火属性浄化魔法、レベル4」

ぼぉおおおおおぉぉおう!!

ハイ「えっ!?」

ごおおおおおおおお!!

炎に包まれるフォーテ。

フォーテ「……あれ?」

それはフォーテの身を焦がしたかと思いきや、全くの無傷。

ツインテ「あれは浄化の炎……バッドステータスを無効化する火属性の魔法……凄い、モンスターの使役に、剣術。それに治療行為まで……色んなことが出来るんですね十代目さん……!」

ハイ「激昂や混乱状態を治したってことですか……いやでもあのフォーテさんの精神を立て直すっていうのは簡単じゃないですよね。そもそも私達じゃ近づくことすら……あ、でもユーさんなら近づけますかね?」

後ろを振り返ったハイ。しかしそこには誰もいなかった。

ハイ「……あれ? そういえば……いつから見てなかったっけ……」



--空--

ばっさ、ばっさ

ピューイ「ピューイ」

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」

575

--亜人保護団体本部--

しゅぅううう……

ツインテ「こらっ! むやみやたらに暴れちゃだめですよフォーテちゃん! この程度の傷なんて、どうってことないんですから!」

フォーテ「うぅ……そんなこといったってぇ……フォーテ悪くないもん……悪いのはお姉ちゃんの言うことを無視して攻撃してきたあいつらだもんっ!!」

ぐしゅぐしゅと鼻をすすりながらフォーテは頬を膨らませる。

ハイ「フォーテさんを怒っちゃ可愛そうですよツインテ先輩。今回はフォーテさん悪くないです。話を聞いてくれないあの人たちがいけないんです」

ツインテ「は、ハイさんまでそんなことを……」

フォーテ「わぁい! フォーテ、ツインテお姉ちゃんの次くらいにハイお姉ちゃん好きっ!」

だきっ!

フォーテはハイに抱きついて顔をうずめた。

ハイ「!?……凄い……あのフォーテさんに私、なつかれてる」

ハイはおっかなびっくりでフォーテの頭をなでてみる。

フォーテ「そういえば気になってたけど、なんでフォーテ『さん』なの? フォーテちゃんて呼んでいーよ、ハイお姉ちゃんっ」

ハイ「あ……なんかラスボス級相手に恐れ多くて……いえ、では改めて……フォーテちゃん?」

フォーテ「えへへ。なぁーに?」

ハイ「なにこれ可愛い」

フォーテ「ハイお姉ちゃんなんか安心する匂いがする。お婆ちゃん家みたいな匂い」

ハイ「ッッ!?」

576

--亜人保護団体本部--

ガシャァアン!

ハイ「!」

髭長司祭「ふんっ、やってくれるじゃねぇのよお前さん方」

細目司祭「我らに爪を立てたこと、後悔させてあげましょうか」

金歯司祭「ふははは! 久しぶりにこの槍に血を吸わせてやれるわ」

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「狼藉者どもめぇ……」

ザンッ!!

五人の大男が破壊された瓦礫を跳ね除けて現れた。

ハイ「!! あの人たち……読んだことがある……確か侍さん達の連携に負けたけど結構強い人たちだ」

ツインテ「う……どうにか戦わずに済む方法は無いのでしょうか……私達はお話とトイレをお借りしたいだけなのに」

フォーテ「お姉ちゃんっ! 僕がぶっとばしてきちゃおっか!?」

両手をばんじゃいしながらぴょんぴょん跳ねているフォーテ。なんか太ももとか足元の地面が濡れてる気がする。

十代目「話が出来そうな相手じゃあないな。ちょっと片付けてくる」

ざっ、ざっ、ざっ

十代目は一人で歩いていった。

ハイ「なんだろうこの人たちの緊張感の無さ」

577

--亜人保護団体本部--

ザッ、ザッ、ザッ……

十代目「……」

髭長司祭「貴様……一人でのこのこと向かってくるとは、見かけによらず度胸あるのぉ」

細目司祭「大方謝罪でもしに来たのでしょう。ですがもう遅い。この蛮行の責任を取るには貴方達の死でしか償えませんよっ!!」

十代目「俺がお前達に望むのは」

右大司教「ふしゅる?」

十代目「ただ歯を食いしばっててくれればいい」

左大司教「え?」

ドゴッ!!

髭長司祭「!?」

ガッ!!

細目司祭「ぽっ!?」

ズガッ!!

金歯司祭「ばっ!?」

ベキッ!!

右大司教「ふしっ!!」

ズンッ!!

左大司教「お、おごごっ……ごふっ……」

どさどさどささっ!

十代目「……舌は噛まずにすんだみたいだな」

578

--亜人保護団体本部--

教団兵「お、おい……大司教様達が、ただのグーパンでのされたぞ!?」

団体兵「し、信じられねぇ……夢だろ、でなきゃ嘘だ……」

ざわざわ……

動揺が兵たちに広がっていく。

上位教団兵「……ひ、怯むな!! 相手はたった四人だぞ!? 数で押さえ込めばどうにかなる!! で、であえー! であえーーーーー!!」

わ……わーーーー!!

恐怖を叫びでごまかして、一斉に走り出す兵たち。

わーーーー!!

ハイ「!! ちょっ! いっぱい来ちゃったんですけど!!」

慌ててレベルアップしようとするハイ。

ツインテ「うぅ……やっぱり戦わなくちゃいけないんですね……」

悲しそうな顔をしているツインテと、

フォーテ「うんしょっ! じゃあ朝の体操がてら、ちょこーっと遊んじゃうかなーっ!」

にこにこしているフォーテ。

579

--亜人保護団体本部--

どがぁあああぁああああんんん!!

兵達「「「うわあああああああああああああああ!!」」」

十代目「……」

団体兵「あ、あいつ剣の一振りで数十人吹っ飛ばしたぞ!? 化物だ!!」

教団兵「あれ……よくみたらあいつみたことあるような……どこで見たっけ……!? って、勇者じゃねぇか!?」



どがあああああああああああああん!!

兵達「「「うわあああああああああああああああ!!」」」

フォーテ「きゃはっ! いっきとーせーーーんっ、無敵可愛いフォーテちゃんっ!!」

教団兵「悪魔かこのロリ!?」

団体兵「可愛いけど強すぎるぞこのロリ!!」



ぽわぁあああぁああああぁあ

ツインテ「傷ついた人はボクが治しますからボクの傍に来てくださいね」

兵達「「「はぁああああああああああんん」」」

団体兵「天使だ……いや女神様だぁ……!!」

教団兵「俺……あの宗教やめてこのお方についてくことにする……オカマとかまじ誰得だし」



ハイ「……今思ったけどこのパーティ強過ぎる」

580

--亜人保護団体本部--

ダンッ!!

賢帝「だぁれがオカマだってぇ……?」

教団兵「ひっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

瓦礫の山の上に立っている者は、賢帝――。

ハイ「!! 五柱の賢帝……!!」

賢帝「貴方達ぃ……随分好き勝手やってくれるじゃなぁい? 悪い子ねぇん……」

十代目「……まさか本当に五柱まで関わっていたとはな」

フォーテ「ねーねー。だれあれー? ゆーめーな人ー?」

ツインテ「凄い、腕が八本もあります! お料理とかするのに便利そうです!」

ハイ(誰か私と同じ価値観持ちはいないんですかっ)

賢帝「はぁ、まったく……私のお城をこんなにしちゃって……あんたたちの目的がなんなのか知らないけどぉ……これはやりすぎじゃない?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

賢帝は全ての腕を天に向けるポーズを取った。

ハイ「く!……また五柱レベルと戦うことになっちゃうなんて……今日はついてないです!」

賢帝は一度目を閉じ、そして勢いよく開いた。

カッ!!



賢帝「――降参するわ。命だけは助けてちょうだい」

教団兵「……え」

ハイ「……冷静に考えたらそうなりますよね」

ぴょんっ

フォーテ「ねーねー、気持ち悪いおじちゃん! おじちゃん有名なの? 強い? フォーテとちょっと遊んでみる?」

オオオオオオオオオオ

死者の腕が闇からはみ出して賢帝の頬をなでる。

賢帝「ちょ、ちょっ! 私は降参するっていってるのよ! やめてちょうだい! その禍々しいの近づけないでちょうだい!!」

フォーテ「じゃあ僕からでいい?」

賢帝「聞いてちょうだい!?」



--巣--

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」



そういえば十代目さんの一人称を勝手な都合で変えさせていただきました。深い意味はあるようでないです。お許しください。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました。それでは投下していきます。

581

--亜人保護団体本部--

ぺちぺち

賢帝「だからぁー。ちょっと聞いてるの代表ちゃんー。聞こえてるんでしょー? 返事しなさいよー。いい? もう何もかも無意味だって言ってるのよぉ。だからあなたたちも降参して出てきて頂戴ー」

主塔に向かって訴える賢帝。その頬をぺちぺちと死者の手が触れる。

フォーテ「ぜんぜんでてこないねーっ。もしかしておじちゃん、説得できるとか言ってたの嘘だったのっ? 嘘……だったの……?」

スゥ……

フォーテの瞳から光が消えていく。

賢帝「!? ちょまっ……こるぁああ代表でてこいやあぁあああ!! もう1秒間で772回も死にたくないんじゃぼけぇえええええええ!!」

ハイ「何したの」



--亜人保護団体本部、主塔--

えぇぇぇぇぇ……

代表「まずいことになったね……なんだかわからないうちにほぼ壊滅状態じゃないか」

窓からその様子を見ている代表。

熊亜人「どうしますぐま?」

代表「……仕方ないね。計画を前倒しにする。残った人員を飛行船に集めておくれ」

582

--亜人保護団体本部--

ギィ……ザッ!!

護衛姉「……」

護衛妹「……」

賢帝「やぁっと出てきたわね、んもぉ……でもあなたたち、降参するような顔つきじゃないわね……」

護衛姉「当たり前だ。私達は代表様の刀……」

チャキッ

護衛妹「我が身可愛さで降参するような思考は持っていない……」

しゅぴぃん!!

護衛姉妹「「無法者共め……私達が死ぬまで相手をしてやる。かかってくるがいい」」

護衛姉妹が抜刀して刀を交差する。

護衛姉妹「「死など、恐れはしない!」」

フォーテ「へー」

フォーテは新しいおもちゃを見つけたように笑った。

583

--亜人保護団体本部--

護衛姉「うわぁあん! うわぁあん!」

フォーテ「ね、ね! どっちの腕もいでいい?? どっちからがいい?? こっちのお姉ちゃんに決めさせてあげるっ!!」

護衛妹「やめてよぉー! こんなひどいのやめたげてよぉー!!」

死者の腕に束縛されてる護衛姉の前で絶望の表情の護衛妹。

ツインテ「こらフォーテちゃん! 命を粗末にしちゃいけないって言ったでしょっ!?」

フォーテ「!? ち、違うよお姉ちゃん僕命を粗末になんて、してないよ……こ、殺したりしないもん? ただこの手足をちぎって花占いしようとしてただけで……ほらツインテお姉ちゃんも占い好きでしょっ!? 一緒にやろ!?」

ツインテ「ボク花占いなんてしたことないです!」

賢帝「……ねぇ、なんなのあの子。どうやったらあんな化物産まれるのよ……」

ハイ「あはは……」

584

--亜人保護団体本部--

護衛姉「ぐすっ、ひくっ……」

護衛妹「よかった……よかったよお姉ちゃあぁあん」

開放されて泣きながら抱き合う二人。

賢帝「死など、恐れはしない!(キリッ)。って言ってたくせに、だらしないわねぇ」

護衛姉「だってだってぇ!!」

護衛妹「びえええーーー!!」

賢帝「あぁはいはいわかったわかったよ。……正直規格外過ぎて精神の安定から崩壊しちゃうのよね。わかるわよ、私もそうだったし」

泣きつかれた賢帝はうっとおしそうに払う。

護衛姉(……でも)

護衛妹(代表様の居場所だけは絶対に隠し通す……!)

フォーテ「で、代表って人どこにいるの?」

護衛姉「は、はい!! 主塔の秘密の地下通路から隠し倉庫に向かってます!」

護衛妹「わかりにくいだろうから私達が案内します! だから血管に溶けた鉄を流し込むのだけはやめてください!!」

ツインテ「……そんなことしてたの?」

フォーテ「げ、幻覚見せただけだよっ!? 実際は……ちょ、チョコだったからっ!」

585

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

コツコツコツコツコツ

ズゥン……! ぱらぱらっ

代表「……熊亜人君」

熊亜人「はいぐま」

代表「あの二人で止められると思うかい?」

熊亜人「……無理だと、思うぐま」

代表「……だよねぇ。僕もそう思ってたんだよね。どうしようか?」

ズゥン!!

熊亜人「代表様」

代表「ん?」

熊亜人「先に行ってほしいぐま」

コツ……

代表「……君がいないと計画が全部おじゃんなのはわかってるよね?」

熊亜人「わかってるぐま。かたをつけたらすぐに追いかけますぐま」

代表「……ここで使うんだね」

熊亜人「……」

代表「……わかった、よろしく頼んだよ」

586

--亜人保護団体本部、秘密の地下通路--

コツコツコツコツコツ

……ゴゥン、ゴゥン

ツインテ「? 何か音がしますね? 何の音なんでしょう」

護衛姉(良かった、出発されたんですね代表様)

護衛妹(でも今からでもこの人たちなら追いつける……なら)

十代目「やられたな。時間稼ぎか」

護衛姉妹「「!?」」

ハイ「え?」

十代目「スムーズに道を選んでいるように見せていたが、かなりジグザグに移動していたからな」

ハイ「でも、ほとんど一本道でしたよね?」

十代目「見える道はな。正解の道はどこかに隠し扉でもあったんだろう」

護衛姉妹「「!!」」

フォーテ「それ、本当……?」

護衛姉妹「「ごめんなさい!!!!!!!!」」

587

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

ギィ……

ハイ「あ」

熊亜人「待っていたぐまよ」

どささっ

護衛姉「す、すいません……」

護衛妹「この程度しか時間を稼げず……」

隠し倉庫に着くなり倒れこむ護衛姉妹。

熊亜人「いや、よくやったぐま」

賢帝(本当よね……。心を折られたはずなのに、それでもちゃんと時間稼ぎをし続けたわこの子達)

熊亜人「後は……」

スッ

熊亜人は王冠の形をした魔王の骨を取り出した。

護衛姉「……」

護衛妹「……」

熊亜人「俺に任せるぐま」

588

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

魔王の骨は制御不能の力。それを使って戦うということは……

護衛姉(私達にはもう、巻き添えにならないようにこの場を離れる力は残っていません)

護衛妹(ならせめて、邪魔にならないように。)

護衛姉妹は何も言わず目を閉じた。

十代目「ん、あのアイテム……まさか」

ハイ「あ、あれ魔王の骨ですよ! 気をつけてください!」

熊亜人、護衛姉、護衛妹「「「!?」」」

ツインテ「魔王の骨……伝説のアイテムの一つの……」

フォーテ「あー、本当だー。それっぽい力感じるー」

十代目(……あれから滲み出す力を見れば大体の見当はつく。だが一目で判断するとは……未来帰りは一味違うな)

589

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

熊亜人(何もかもばれているようぐま……でも我々も今まで目標のために積み上げてきたんだぐま……簡単に諦めるわけには、いかない!!)

ガッ!

熊亜人は王冠を被る。

熊亜人「ぐっ、ぐあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ばりばりばりばりぃいいい!!

賢帝「!? な、なによこの力……こんな力があったなんて私聞いてないわよ!? きもちわるいっ!」

ズズズズズ……

真っ黒い靄が熊亜人の体を覆っていく。

ハイ「擬似魔王化です、気をつけてください皆さん!!」

十代目「……魔王の力か……ならば手を抜いている余裕は無いな。最初から全力で行かせてもらう」

ぎぃん!!

賢帝「!?」

十代目が剣に魔力を纏わせる。

ぶわっ!!

ハイ「きゃっ!?」

その力で吹き飛ばされそうになるハイ達。

590

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

賢帝「ひっ!?」(あのフォーテって子も化物だけど、このイケメンちゃんも!)

十代目「奥義――勇者バスター」

ヴォン、ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaアアアアアアアア!!

熊亜人「ナッ」

極太の銀色の光の帯が熊亜人を薙ぎ払った。

ドガガドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ(これ、ウェンディゴさんにぶっ放したやつか……実際に目の当たりにするとおっそろしい威力です……)

前方にあったもの全てを吹き飛ばす十代目の強烈な一撃……。

ぱらぱら……

護衛姉「あ、あ……」

護衛妹「う、そ……」

しゅぅうう……かららん

熊亜人「……」

ヤムチャポーズで床に倒れている熊亜人。

591

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

護衛姉「私達の、切り札が……一撃……」

護衛妹「私達の、人生の全てが……あっさり……」

護衛姉妹はぽろぽろと涙を零している。

ハイ(擬似とはいえ、擬似魔王も魔王。普通に勇者の特効効いちゃうんだよね……あんなに侍さん達が苦戦した相手だっていうのに……)

たっ

フォーテ「僕も撃つー! おうぎー、暗黒滅殺呪壊砲ー」

ちゅどどっばっかどぎゃめぎゃずどばこーーーん!

護衛姉、妹「!?」

熊亜人「ぐまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

ハイ「なんで決着ついてたのに撃ったの!? そしてフォーテちゃんの奥義初お披露目!?」

592

--飛行船--

ごぅんごぅんごぅん

代表「……」

……どぉぉおぉおぉん

巨大な爆発の後衝撃で揺れる飛行船。

ぎしぎしぎしぎしぎぎぎいい!!

代表「……っ!……おいおい、大丈夫なんだろうね熊亜人君……」

代表は操縦室の窓から外を見る。

ユー「……」

代表「……」

そこには全裸のユーが張り付いていた。

593

--亜人保護団体本部、近辺--

しゅぅううう……

ハイ「あ、ユーさん」

ユー「……」

よっ、と手をあげるユー。

ハイ「追いついてきてたんですね。……もしかしてこれ、落としたのユーさんだったりします?」

ユーはこくりと頷く。

代表「……」

墜落した飛行船を見てがっくりとうな垂れている代表。

ハイ「なんだろう……。なんだか今回は全面的に代表君に同情しちゃう」

594

--亜人保護団体本部、近辺--

しゅぅうう……

代表「……で、君たちは一体何が目的なのかな? 何でも言ってくれ。もう僕たちに抵抗する力は無い。はぁ……」

さすがの代表もショックを隠しきれず、顔を手で押さえたまま顔をあげられない。

ハイ「えっと……代表君と、お話しがしたかっただけなんですけどね」

にっこりすまいるハイちゃん。

代表「……は、はぁ!?」

ハイ「それだけだったのに気づけば亜人保護団体と変な巨大宗教、いっぺんに壊滅させちゃいました。あはは、チートって怖いですね!」

目は死んでるハイ。

賢帝「ひ、人が汗水たらして必死に積み上げてきたものをなんだと思ってるのかしら……恐ろしい子!!」

ハイ「私だってそう思いますよ。私をこの人たちと同じように考えるのはやめてください。――では毎度おなじみの説明タイムに突入します」

595

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「……」

ハイ「――と、いうわけなんですけど」(何度も説明してきたからさすがに慣れてきましたね)

代表「時間旅行……ありえるのかな。信じられないねぇ……」

代表はそう言って眉間を押さえる。

代表「でも……あまりに出来過ぎてる感はある。君みたいな普通っぽそうな子がこれだけの傑物を率いているのもおかしな話だし」

ハイ「あはは……」

ハイは笑うしかない。

ハイ「で、どうでしょう? 信じてもらえますか?」

代表「――正直なところを言うと、僕に選択肢があるように思えないな。育て上げた組織を完璧にぶっ壊されてこの状況だからね。完全にぶちのめした後で俺の言うこと聞けや、ってのと何も変わらないでしょこれ」

代表は煙のあがる本部を眺めている。

ハイ(……そりゃそうだね!)

代表「信じる信じないなんてそもそも関係あるのかな? 僕たちは言わば捕虜だ。僕たちのことは勝った君らが好きに使うがいいさ」

ハイ「……そういうのを望んでるわけじゃ無いんですよ代表君」

596

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「……そういうのではない? ならどうしろって? 数分前に会ったばかりの君の言うことを心から納得して、自分の意思で力を貸せって、そう言うのかい?」

ハイ「出来れば、それにこしたことは無いですけど……そこまでは望んでるわけじゃないですけど」

代表(……この子は他の面子と違ってあくまで普通だ。僕の独裁者の言でいくらでもペースを掴むことが出来そうだ……時間はかかるだろうけど、この子をうまく操れればまた立て直せるかもしれない。まだ逆転の目は)

ハイ「でも友達を捕虜とか、そんな風に扱いたくないんですよ」

代表「――は――?」

思わぬフレーズにあっけにとられる代表。

代表(あ、あー……そういえば言ってたな、未来で僕と友人関係だったって……いやいやでもそれは未来の僕との話だろ? 今の僕には全く関係無いことじゃないか。君と一緒に過ごした記憶は僕には皆無。僕の中では君は初めて会った赤の他人なんだ)

ハイ「……」

代表(……それでも……一方通行でも友達として思ってたい、ってこと……?)

代表の脳裏に竜子が過ぎる。

597

--亜人保護団体本部、近辺--

わーわー!!

代表「!」

話をしている代表達の後ろで人だかりが出来ていた。その中心にいるのはツインテ。

ツインテ「怪我をしている人は他にもいませんかー!? ボクでよければ治療させてくださいー!」

団体構成員「女神だ……こんな、罪深い私達にまで……このような慈悲を……!」

団体魔法使い「心が、洗われるようだ……」

人々は泣きながらツインテを拝んでいる。

代表「おいおいなんて顔だよ……まるで憑き物が取れたようじゃないか……」

ぱぁあああぁああ

回復魔法を発動するツインテの姿は、まるで光り輝く女神のよう。

ハイ「……止めようの無い復讐の連鎖。それを止めたかったんですよね、代表君は」

代表「!」

598

--亜人保護団体本部、近辺--

わー、わー

ハイ「家族を亜人に殺されて悲しみに囚われた可哀想な人達……そんな彼らを代表君は見捨てることが出来なかった」

代表「……いきなりなんの話やら」

ハイ「……でも復讐は復讐を呼ぶ。誰かが連鎖を断ち切らなくちゃいけない」

十代目「……」

ハイ「代表君が考えてる方法が正しいのか……それはわからない。でも、私は否定します。死をもって決着とするのは、私好きじゃない」

わーわー!

団体構成員「ツインテ様ぁ!!」

フォーテ「お姉ちゃんに触ったら殺すからねっ!?」

わーきゃー!

代表「……」

ハイ「ツインテ先輩の回復魔法には浄化の力が宿っているんだと思います。人々の心から負の感情を取り除いて、無限のやさしさで包み込む……きっと、悲しみも憎しみも和らぐんじゃないでしょうか」

代表「……」

ハイ「……それで問題の解決になるわけじゃないけど……でも全員を殺してしまうより、いいと思わない?」

代表「……」

599

--亜人保護団体本部、近辺--

ハイ「代表君の力はそんな悲しいことに使うものじゃないと思うよ。もっと他に素敵な……だから……その……」

代表「……」

ハイ(う……駄目だ。やっぱり私、誰かを説得とか無理だ……)

代表「……」

代表はただじっとその光景を眺めていた。

代表「……どうやら、僕を必要としなくなったようだね」

ハイ「……え?」

代表は背伸びをする。

代表「んー……。何も無くなっちゃったな」

代表は困ったように頭をかいた。

ハイ「えっと、代表君……」

代表「……僕は無能だ。部下がいなけりゃご飯さえ作れやしない。戦闘なんてからっきしさ。剣も振ったこと無い……それでも僕に、何かやれることがあるのかい?」

ハイ「!……はい、あります」

ハイは笑う。

代表「……そうかい。じゃあ人類の危機だというし、やれるだけのことはさせてもらうよ」

ハイ「……はい!」

代表「拒否権もなさそうだしね」

600

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「――で、これからのプランは具体的にあるのかな?」

ハイ「はい。これからレンさんと会ってもらって超魔法陣の書き換え作業をしたいと思ってます」

代表「魔法陣のことまでご存知か……いやはや参ったね。ん、書き換える……? それは……あぁ、いいや。どうせ僕が聞いてもわからないだろうし。僕は指図する人間であって魔法陣に関してはよくわからない。そういうのは担当してた人に聞くのが一番だ」

ハイ「担当してたのって」

代表「あの群れの中のどなたかさ」

わーきゃー!

ツインテを拝む人の群れを指差した。

ハイ「あー……」

代表「で? 他にやることは?」

ハイ「あ、はい。後は竜子ちゃんにも仲間になってもらう、くらいかな?」

代表「……なるほど。彼女らを説得しにいくだけならそんなに人員はいらないだろうね。チート級が何人もいるし」




--竜骸の渓谷--

ひゅおおおぉぉおお

竜子「へぶしゅっ!!……ぐすっ……なんだろう。なんか凄く嫌な予感がする」

もう遅れるのがデフォになってる……最後が近いというのに、気合を入れなおさないと!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すみません盛大に遅れました!!

それでは投下していきます!

601

--亜人保護団体本部、近辺--

わいわいがやがや

ハイ「――では話もまとまったことですし、さっそくですが私達は竜骸の渓谷に出発したいと思います。皆さん準備をお願いしますね」

代表「やれやれ……じゃあ急いで準備しますかね、よっこらせ」

ツインテ「あの……」

ハイ「?」

すたすた

ツインテ「ハイさん。少しお話があるんですけれど……」

ハイ「はい? どうかしましたかツインテさん?」

ツインテ「すいません、自分から付いていくと言ったのにあれなんですけど……一旦パーティから離脱させていただきたいんです」

ハイ「へ? ど、どうかしたんですか?」

ツインテ「実は、フォーテちゃんのことが心配なんです」

ハイ「フォーテ、ちゃん?」

遠くからフォーテを見つめる二人。

602

--亜人保護団体本部、近辺--

ツインテ「フォーテちゃん、随分無理してるんだと思います。それを表に出さないようにしてるだけで……」

ハイ「あ」

その時ハイは思い出した。


 --薄暗い洞穴--

 フォーテ「がはっ!!ぎ、がががあああああ!!」

 蝙蝠が飛び交う洞窟の中でフォーテは血を吐きもがき苦しんでいた。

 ???「何度見ても可哀そうコン……効果が効果だけに代償が大きいコン」

 ??「狐娘、薬草を取ってきてください。あれが終わったら飲ませてあげるんですから」

 ???改め狐娘「お、わかったコン」

 ????「わしらも何かすることあるアル?花師」

 ??改め花師「えっと、そうですね。風水師と占星術師は水を汲んで来てください」

 ????改め風水師「わかったあるー」

 ?????改め占星術師「わかったのよ」

 フォーテ「えへ、えへへ……お姉ちゃんに歯、もらっちゃった……えへへ!!げぼっ!!」

 花師(……呪術……恐ろしい力ですね。今回の代価は2週間の断食と3日間の激痛……普通なら肉体もそうですが、まず精神が持たないで

しょうに)

 フォーテ「あぁああお姉ちゃんんんんんっっ!!」



ハイ(そうだ……フォーテちゃんにはあの強大な力の代償があったんだ……!)

603

--亜人保護団体本部、近辺--

ハイ(でも、おかしいです……私たちとの戦闘とビィとの戦闘、そしてここでの戦闘……つまり短時間で三連戦したことになるわけで)

ツインテ「ボクの、せいだと思うんです」

ハイの思考を読み取ったかのように呟くツインテ。

ハイ(!……そうか……ツインテ先輩を守るために……無理したんだ)

それでも普段通りに振舞うフォーテ。よく見ると死者の腕にもたれかかっていることが多かった。

ハイ「……すいませんでしたツインテ先輩。フォーテちゃんのことに全然気づいてあげられなかった……」

ツインテ「そんな……ハイさんが気にすることなんてありませんよ」

ハイ「いえ……わかりました、ツインテ先輩はフォーテちゃんとしばらくここで休んでいてください。それまでに私はやれることをやってきます」

ユー「……」

ユーが後ろでサムズアップ。

ハイ「いつの間にいたんですかユーさん」

604

--亜人保護団体本部、近辺--

ざり

代表「やぁお待たせした。ここも最後だと思うと持って行くものが多くなってしまってね」

ハイ「もー、遅いでしょ代表君。もしかして逃げ出したんじゃないかと思ったくらいです」

代表「僕だけ逃げても行くところがないさ。で、渓谷に行くのはこのメンバーかい?」

代表はハイ、ユー、十代目の顔を順に見ていく。

代表「4人か。パーティにもう一枠空いているけどそれはいいのかい?」

ハイ「いえ、もう一人連れて行きたい人がいます。頼りになる仲間は多いほうがいいですから」

代表「ほう。それは誰かな?」

ハイ「十代目さん」

十代目「了解した」

すたすたすた
ずるずる

賢帝「……はいはい行けばいいんでしょ行けばぁ。んもぉ、こうなりゃどこにだって行ってあげるわよぉ!」

十代目に首根っこを捕まれて引きずられてきたのは賢帝。

ハイ「回復役が抜けちゃったのでその補充です。賢者の帝、ツインテ先輩の穴を埋めるのにこれ以上の人はいないでしょう」

代表「……なるほどね」

十代目「私も回復できる」←声が小さくて聞こえない。

605

--亜人保護団体本部、近辺--

ざっ、ざっ、ざっ……

フォーテ「……お姉ちゃん」

ツインテ「ん? なぁに?」

フォーテ「本当に……付いていかなくていいの?」

ツインテ「うん。久しぶりに動いたから少し疲れちゃいました。ボクはここでゆっくりアッシュ君たちを待とうと思います」

フォーテ「……」

ツインテ「フォーテちゃんも休もう? よく頑張ったね」

ツインテが優しくフォーテの頭をなでる。

フォーテ「お姉ちゃん……ごぷっ」

ぼたたっ!

フォーテの口から大量の血があふれ出す。

ツインテ「……奥義、絶対回復領域」

ぱぁあああ

フォーテ「げほっごほっ!!……あ……暖かい……がはっ!!」

ツインテ(っ! せめて、痛みを和らげてあげることしか……!)

ずるる

ツインテ「?」

そのときフォーテの影が揺らめいて、そこから四人の人間が現れた。

どさどさどささっ

花師「……む? ここは……」

606

--???--

ビィ「……」

かちゃり

ビィは一人テラスで紅茶を飲んでいる。

ウェイトレス「おっす! ビィ、だっけ? ここ邪魔するよー」

ビィ「えぇ、構いませんよウェイトレスさん」

ぎっ

ウェイトレスは向かいの椅子に座った。

ウェイトレス「へー。やっぱ私のことも知ってるんだねー。あ、これ私が焼いたクッキーなんだけどどう? 美味しいよ?」

ビィ「すいません。食べたいのはやまやまなんですけど、今お腹一杯なんですよぉ」

ウェイトレス「そーなの? それでもクッキーくらいなら大したことないでしょーよ? ほらほら」

ビィ「ダイエット中ですのでー」

茶肌「……」

脳筋「……」

その二人のやり取りを影に隠れて観察している二人。

607

--???--

ウェイトレス「ぶー……じゃあ仕方ない、全部私一人で食べちゃおーっと」

ビィ「どうぞどうぞ★」

にこやかに笑うビィは紅茶をすする。

ウェイトレス「……うーん」

そんなビィを見てウェイトレスは頭をひねった。

ウェイトレス「ビィは切り札になる存在だ、ってトリガーが言ってたけど……ぱっと見、弱そう」

脳筋(おい、さすがに暴言だろ!)

ウェイトレス「千年くらい生きてきた私の、もの凄い洞察力をもってしてもわからない。頭がきれる、ってわけでも無さそうだし」

茶肌(キャットファイト!? キャットファイトやるの!?)

ビィ「あはは★ 相変わらずストレートですねウェイトレスさんは。久々ですその質問も」

ウェイトレス(久々……?)

ビィ「……」

ビィは一瞬だけ考えるようにして、

ビィ「そうですね。じゃあちょっとゲームでもしてみませんか? それで大体のことは納得してくれると思いますよ」

608

--???--

ウェイトレス「ゲーム?」

ビィ「はい。お察しの通り、私には皆さんのような突出した武力も知力も無いです。それでも切り札として成立する……ということを納得してもらうために」(確かめたいこともあるしね)

ウェイトレス「ほー。面白いじゃない。で? 一体何のゲームでビィの価値を証明してくれるのさ」

ビィ「どんなことでも言い当てて見せます★」

ウェイトレス「……ん?」

ビィ「なんでもいいですよ。今夜の夕食はなんなのか、貴方の魔王の骨はどんなものなのか、柱に隠れている脳筋さんの下着の色はなんなのか。どんなことでも言い当てます」

脳筋「びくっ」

ウェイトレス「……本当になんでもいいの?」

ビィ「えぇ、なーんでも構わないです」

ウェイトレス「ふむふむ。じゃーあー」

ウェイトレスはビィが飲んで空になった紅茶のカップを手に取った。

ウェイトレス「これを今から床に落としてみようと思います。それでいくつに割れるでしょーか」

609

--???--

脳筋(あいつ……精神看破でも索敵でも絶対にわからないことを聞いてきやがった……)

茶肌(今現在の情報ではわからないこと。そんなもの、わかるなら、予言)

ウェイトレス「あ、もちろん答えるのは私が落とす前ね? 落とし方とかも一切教えません。さー、いーくつだ」

ビィ「全部で11に割れます。細かくなり過ぎると数えるのが大変だろうから、2mm以下になったものはカウントしないということで」

脳筋、茶肌「「即答!?」」

ウェイトレス「……ほぉう! いいだろう。じゃあ、やってみよっかね!!」

ぶぉん!!

ウェイトレスは、振りかぶった。

ウェイトレス「おおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああああああ!!」

脳筋「それは落とすとは言わない!! 叩きつけるやんけーーー!!」

茶肌「卑怯!!」

ぱりぃぃぃん!!

610

--???--

ウェイトレス「く、くく……くっくっくっ……粉々だぜ。粉砕だぜ。こいつぁーどう見ても11分割なんて代物じゃないぜ!」

ビィ「じゃあ数えて見て下さい」

そう言ってビィはもう一つのカップに紅茶を注ぎ始める。

ウェイトレス「うん? 負け惜しみかな? こんなの数えなくたってわかるでしょ? こなっごななんだよーん?」

ビィ「粉々ですね。でも2mm以下のはカウントしないって言いました」

ウェイトレス「……」

ウェイトレスは足元に散らばったカップの破片を見る。

ビィ「それ以下の小ささになると分子の数とか言い出したことがありますからねウェイトレスさんは。だから2mm以下は無しにしたんですよ」

ウェイトレス「いや、でもさすがにこの量で……」

スッ

ビィ「定規です。使っちゃってください」

ウェイトレス「……」

611

--???--

ウェイトレス「……11個だった」

ビィ「そうでしたか」(……やっぱり今回も想定範囲の世界か……残念)

すっ

ビィは何事も無かったかのように紅茶を飲む。

ウェイトレス「ど、どうしてわかったのさ……私は数字を聞いてからも対応を変えられたんだ。なのに……」

ビィ「それは……全部知っちゃってるからですよ。全部のパターンを」

ウェイトレス「……へぇ……千年程度の経験値じゃわからないわけだ……」

ビィ「あは★ 凡人ですから。それくらいしないと皆さんと渡り合えないんですよねぇ」

ニィ

ビィは笑う。その何気ない笑顔にウェイトレスは恐怖を感じた。

612

--竜骸の渓谷--

しゅうぅううう……

ハイ「――というわけで力を貸して欲しいんです竜子ちゃん。この世界のために一緒に戦いましょう!」

竜子「なるほどなー……って、いきなりテリトリーに入ってきて全員ぶっ倒して長々と説明しておいて一緒に戦おうとかざけんなぁああああああああああ!」

火竜亜人「ぐすん」

賢帝「ほらほら、治してあげるからこっちにいらっしゃいな」

風竜亜人「だ、騙されませんよ!? あれだけ凶悪な攻撃をしておいて!! 死ぬかと思いましたよ!!」

賢帝「何よぉ、聞く耳持たずでいきなり攻撃してきたのは貴方達の方じゃないのよぉ。それにちゃんと手加減してるわ。言いがかりはよして頂戴」

風竜亜人(最初に侵入してきたのはそっちでしょうに……そして絶対手加減してなかった……)

ハイ「相手を話し合いの席につかせるには武力を行使しなきゃ駄目だってことを学びました」

目が笑ってないハイだった。

613

--竜骸の渓谷--

竜子「とにかくだ。未来から来たとか意味わかんねぇし、私とお前が未来で親友だったとかわけわかんねぇし、そんなたわごとを信じてやる気はねぇ!!」

ハイ「あれ、全然話が好転するように思えませんね……どっかで間違っちゃったのかな」

竜子「いいからお前らこっから出て行け。そんで二度と入ってくんな。……私らは人間と馴れ合うつもりはねぇ!! 出て行かないって言うんなら、今度は死ぬまで抗ってやるからな!!」

十代目「……完敗したくせに」

竜子「るせぇえ!!」

代表「はぁ、全く駄目だね君は。そんな喋り方で信じてくれるのは、よっぽど察しがいい人間か疑うことを知らない無垢な人間だけさ。ただのバカにも通用しない。最初から説得は僕に任せてくれたらよかったのに」

竜子「! てめぇ代表……」

ぎり

竜子は拳を握り締めた。

代表「はいはい久しぶりだね竜子ちゃん。少し僕とお話をしようか」

その様子を後ろから観察している十代目。

十代目(……恐ろしい手腕だった。この男が戦闘を指示しなければ、ここまで楽には終われ無かったはず……必要以上に苦しみを与えず、敵味方双方に死者を出さない。戦闘が泥沼になる前に見事にスパッと終わらせた……)

賢帝(竜亜人がわんさかいるところに突っ込むって聞いた時はさすがの私もおしまいだと思ったわぁ……普通なら勇者がいたって厳しいもの……それをたったの四人で数十人の竜亜人を制圧させてみちゃうんだもの……さすがは私が手を組みたいと思った唯一の男ぉん)

ハイ「……わかりました、代表君にお任せします」

614

--竜骸の渓谷--

竜子「お前と話すことは何も無い……帰れ」

代表「そう邪険にしないでくれよ。僕たちは十年来の友達だろ?」

竜子「――私に人間の友達などいない」

ハイ「え? 私達三人は友達ですよ? むしろそれを飛び越しての親友です。本当に困ってることがあるなら遠慮しないで言い合えるほどの!」

代表「話がこじれるからどっか行っててくれないかな!」

しゅん、と落ち込んだハイはとぼとぼと歩いていく。

代表「……話の腰を折るのがうまい子だ」

竜子「……話は終わりだ」

すっ

竜子は立ち上がった代表を睨みつけた。

竜子「こっちからは二度と関わらない。だからお前らもこれ以上関わらないと約束しろ」

代表「……」

睨む竜子の瞳をじっと見つめている代表。

代表「――竜子ちゃん、君のお父さんの死の真相について知りたくは無いかい?」

615

--竜骸の渓谷--

竜子「」

フリーズする竜子。

竜子「……でまかせだろ」

代表「スキル、約束」

ぶぅん

代表は魔力で手錠を作り上げて自分につけた。

ガチャっ

代表「約束だ。僕は嘘をつかない」

竜子「なっ!? お前なんで自分に!?」

代表「これで嘘をつけば僕は死ぬ。とういことは、僕が生きているのなら嘘はついてないということになるよね?」

竜子「……っ」

代表「改めて言おう。僕は君のお父さんの死の真相について知ってる。知りたくは無いかな?」

竜子「……」

代表の手錠はぴくりとも動かなかった。

616

--竜骸の渓谷、はずれ--

ざく、ざく

ハイ「はぁ……役立たずの烙印を押されてしまいました。駄目ですねこんなのじゃ」

はぁ、とハイは一人ため息をついた。

かぽかぽかぽ

ユニコーン「ひひん」

ハイ「ユニちゃん、心配しに来てくれたんですか?」

ユニコーン「ぶひるん」

ハイ「……優しいですね」

ユー「……」

ハイ「あ、ユーさんもいたんですね。ってかその格好、寒くないんでしょうか」

ビシッ!! とサムズアップするユー。

617

--竜骸の渓谷、はずれ--

ハイ「え? 私は十分役に立ってる。だから元気をだせ、って?」

こくこくと頷くユー。

ハイ「あ、いや……実は私のテンションがあまりあがらないように見えちゃうのは、そのことが原因じゃあ無いんです」

ユー「?」

ハイ「……もう一人の私のことを考えていたんです」

ユー「……」

ハイ「何度考えてみても、あの私は……色々とありえないんです……」

ユニコーン「ひひん……」

ハイ「そりゃ私は自分のことを知り尽くしてるわけじゃないですよ。私は凡人でなんの取りえもないし、全然魅力なんてないです。そんな自分に興味を持つことなんて出来ませんから、実際自分のことなんて他人のこと以上にわかりません」

ハイは話続ける。

ハイ「でもだからこそ異常なんです。あの別ルートの私は……影が薄くない!」

ユー「……」

思わぬ発言を聞いて真顔のまま固まってしまうユー。

618

--竜骸の渓谷--

竜子「……」

代表「――と言うのが僕が団体構成員達を使って集めた情報の全てなわけだ」

竜子「……」

竜子は目線を泳がしている。信じていいものか迷っているのだが、代表の手錠を見る度に代表の言葉を否定できなくなっていく。

竜子「……お前の情報が合っている保証は……ッ、いや……辻褄は合うな……」

代表「……僕が今までの人生の大半をかけて手に入れた情報だからね。僕も色々検証してみたけど、多分これが真実だ」

竜子「じゃあ……あれは最初から仕組まれてたってのか……クソッ!!――話はわかった。だが今更お前らと手を組むことはできねぇ。私は人間どもから迫害を受けたのは事実だし、私が……先生を殺したのも事実だ」

代表「わかってる。お互いやな過去を背負ってるんだ。綺麗さっぱり水に流せなんて言うつもりは無い」

竜子「……それがわかってるなら」

代表「だから――全部背負って前に進んでみないか」

スッ

代表は右手を差し出した。

代表「……一緒に」

619

--竜骸の渓谷--

代表「間違えたまま人生が終わっちゃうのは嫌じゃないかい? 煮え切らないのは君が最も嫌いなことじゃないかな?」

竜子「……」

代表「裏から操られたままってのも気に食わないでしょ? 一泡ふかしてやろうとは思わない? そして何よりこの世界が無くなっちゃうのは君にとっても都合が悪いものだ」

竜子「ッ……」

代表「今は……仲間になれなくてもいい。いきなりは無理だなんてことはわかってる。でも利害関係が一致してる今、同盟にはなれるだろ?」

代表は右腕を伸ばす。

竜子「う……」

代表「友達を前提に同盟からはじめましょう。手始めに世界を救うのだ」

代表の手をしばらくの間見つめている竜子。

竜子「――あのハイって言うやつの言うことを全部信じることが前提の話だぞ? お前は、本当に信じたのか?」

代表「……僕のことを心の底から頼れる友達、って感じで接してくるんだ。僕からしたら初めて会った人なのにね」

はぁとため息を付く代表。

代表「でも僕は……僕を本気で友達だと思っている人の言うことは、信じたいと思ってしまった」

竜子「……」

620

--竜骸の渓谷、はずれ--

ひゅおおおお

ハイ「戦闘能力を見てもそうです。いくら弱っていたとはいえ、私なんかがフォーテさんやユーさんを相手どって、余裕綽々に勝っちゃうなんてこと、ありえないんです。どんな戦法を思いついたとしても、普通なら押さえ込まれちゃうんです。でももしそんなことがありえるとするのなら……」

ひゅおおぉお

ハイ「……数百、数千、数万回にも及ぶ試行錯誤と実体験……影薄い系主人公と言われる私の影が、あまりの密度に濃くなってしまうほどの人生の積み重ね……そういうのが必要なんだと私は思うんです」

ユーは真面目な顔でハイの話を聞いている。

ハイ「ビィは恐らく、バッドエンドになってしまった私なんです。私と同じように未来からやり直しに戻ってきたのに、運命に抗えず再度失敗してしまった……」

ひゅおぉぉおおおおおおおおおおおおお

ハイ「そしてどういうわけだか……永遠にバッドエンドを繰り返すことになってしまったんでしょう」

1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/02/23(火) 15:57:52.69 ID:uIY6QQw0


--自宅--

俺「母ちゃん、勇者募集の張り紙があったからちょっと城いってくるわwwww」


お、おやおや……?
まさかこんなに長くやってしまうとは……


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは! またしても……

お祝いのお言葉ありがとうございました! 
ここまで続けてこれたのは皆様のおかげでございます。皆様のコメントにどれだけやる気をいただいたか……。そして皆さん随分昔から見てくださってるようで、色々年齢にも幅があるんでしょうか。


え、大学受験!? そんな大事な時期に……わざわざすいません。志望校合格をお祈りしています!!



それでは投下していきます!


621

--黄金王国--

てっててって
がらがら

姫「! あ、いた参謀長!」

参謀長「……なんです姫? 私は今忙しいんですが」

膨大な資料に目を通している参謀長の後ろでぴょんぴょん跳ねている姫。

姫「大変なんだよ! みんな忙しいっていって姫ちゃんを全く構ってくれないの!! これは異常事態だよ!! 非情事態だよ!!」

参謀長「そりゃ私がみんなにやるべきことを指示しましたからね。時間が無いこの状況下、姫様になんて鎌ってられませんよ」

姫「なんてって言った!?……ま、まぁいいや。だからね? 賢い姫ちゃんは一番暇そうな参謀長と遊んでやろうと思ってここに参上しました!」

参謀長「一番忙しいです私。さよなら」

姫「さよならって言った!? うー……参謀長ー、あそぼうーよー。姫は寂しいと死んじゃうらしいよー? ねー、ねーえー」

参謀長「すいませんが本当に無理です」

参謀長は姫の方を見ようともせず、悪そうな顔で笑っている。

姫「ふえ? 何か面白いことでもあったの?」

参謀長「はい。とても面白いことを思いつきました……」

622

--東の王国、近辺--

ハイ「見えてきましたね、次なる目的地の東の王国が」

十代目「……しかし思い切ったな。中々の決断力だ、ハイ」

ユニコーン「ひひん」

ユー「……」

代表「いやー、改めて見ると……いくらなんでも無謀じゃないかい……?」

竜子「……くそ。なんで私がこんなことに……」

賢帝「本当よぉん。私はいつまで使われ続けるのかしらねぇん」

ハイの後ろをぶつくさ言いながらも付いてくる五人。

ハイ(なんだかちょっと三蔵法師にでもなった気分ですね)「仕方ないじゃないですか、今は時間と人員がいくらあっても足りない状況なんですから。削れるところは削らないとです」

代表「……で、それで」

魔剣使い「……」

ドォン!!

ハイ達を待ち受けていたのは、魔剣使いを筆頭にした数百人の兵士達。

代表「削ったのが東の王国攻略の人員ですか……」

竜子「おかしいだろ……jk」

623

--東の王国、近辺--

魔剣使い「止まってください」

ぴたっ

魔剣使いがハイ達に喋りかける。

魔剣使い「――貴方方は我が国に一体何のようがあって来られたのでしょうか? その目的をお聞かせ願いたい」

十代目(……大軍で来たのならいざしらず)

賢帝(こんな少人数の私らを迎え撃つようにして待ち構えてるだなんてやっぱり……)

代表(こっちの情報を知ってるみたいだね。知った上でこの行動……ってことは)

ハイ「はい」

ざっ

ハイは一歩前へ出る。

ハイ「申し訳ないんですけど、この国をぶっ壊しに来ました」

満面の笑顔のハイだった。

魔剣使い「……!」

竜子「あー……それ言っちまうのか」

代表(この子もなんだかんだ壊れてる気がする)

624

--東の王国、近辺--

ざわざわ

ハイの宣言を聞いた兵士達が動揺し、ざわついている。

東の兵「あの話は本当だったのか……」

東の重兵「まさか十代目様まで加担していようとは!」

ざわざわ!!

魔剣使い「……例え今のが冗談だったとしても……この状況下でそんなことを口にされてしまっては、我々としては無視できませんよ?」

ハイ「すいません、冗談じゃなくて、本気の本気なんです」

竜子「……ち」

代表「仕方ない、ね」

ザンッ!!

後ろの竜子達が戦闘態勢に入る。

625

--東の王国、近辺--

魔剣使い「――そう、ですか。なら」

スッ

魔剣使いが右腕を上げると、それを見た兵達が各々の武器を構えた。

魔剣使い「――倒させていただく」

東の兵隊長「ってーーー!!」

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュ!!

兵達は一斉に弓を引き、矢を放った。

ハイ「賢帝さん」

賢帝「はいはい。もうなんでもやったげるわよぉーう。火属性範囲防御魔法、レベル3」

ボッ!!

賢帝は、ハイ達全員を覆う、巨大なドーム状の炎の膜を作り出した。

ドジュジュジュジュジュッ!!

東の兵隊長「!! 矢が焼きつくされている……これが五柱の力なのか!」

ハイ「では皆さん、先ほど説明したプランで行動開始です!」

十代目、賢帝、代表、竜子「「「おう!」」」

おー、と腕をあげるユー。

626

--竜骸の渓谷、過去--

ハイ「――という感じでして、もし何周分もの経験がビィにあるとするなら、私の次の行動だって簡単に予測できちゃうと思うんです。あの襲撃の時みたいに……」

自分の考えを語るハイにみんなは真剣な顔で耳を傾けている。

ハイ「こうなってくると、私が未来からもって来た情報がどこまで役に立つのかわからない状況になってしまいました……いえ、むしろそれが足を引っ張る可能性すらある……。だから私は、ビィの予測を裏切るような行動を取り続けなくてはいけないと思います。ここからは、先の読み合い合戦になるでしょう」

竜子「……」

ハイ「だから、今は少しでも戦力が欲しい。貴女の力が必要なんです。どうか、竜子ちゃんの力を私達に貸していただけませんか?」

ハイは深々と頭を下げた。

竜子「……くそ……断る……なんて言える状況じゃないじゃねぇか……。いいか? こう見えて私だってな」

竜子が仲間になった。

ハイ「! やったー! 竜子ちゃんが仲間になりましたよー!」

竜子「!? ちょいまて!? 私はまだ仲間になるだなんて一言も言ってないぞ!? 今のなんだ!?」

627

--竜骸の渓谷、過去--

竜子「――だー! もういいよ! 仲間でもへちまでもなんでもなってやるよ!! バカッ!」

ハイ「へちまはどうでもいいですけど、やりました! 改めてよろしくおねがいしますね、竜子ちゃん」

竜子「ふん。で? 敵さんの予測を裏切るって、具体的にはどうするんだよ?」

ハイ「えっとですね。普段の私なら絶対に考え付かないだろうし、絶対にやらないだろうことをしようと思うんです」

十代目「というと?」

ハイ「はい。東の王国を滅ぼそうと思うんです」

ユー「……」

十代目「……」

賢帝「……」

代表「……」

竜子「どういうこと……」

628

--東の王国、近辺--

東の兵隊長「魔法使い部隊! 放て!!」

ひゅるるるるる、どぉがぁああああん!! どがががぁああん!!

ハイ「ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーーーん!!」

だからっだからっだからっだからっ!!

ハイはユニコーンに跨って戦場を駆ける。

ビッ!!

ハイ「ッ!」

一本の矢がハイの腕をかすめて飛んでいく。

ハイ「条件達成、レベル2、盾兵!!」

ぼしゅうん!!

ハイは一瞬で鎧と大盾を装着するとそのまま駆けていく。

629

--東の王国、近辺--

魔剣使い「……」

ガイン! ガキガキィン!

矢や魔法を弾きながら突進するハイとユニコーン。

だからっだからっだからっだからっだからっ!!

魔剣使い「そのまま突っ込んでくるつもりですか……魔剣!」

ヴぃん!!

魔剣使いの握る魔剣が怪しく光ったと思うと次の瞬間、

ぱっ

ハイ「!」

その姿が消える。

ハイ(うわ、本当に見えないし何にも探知出来ない!)

シュッ

魔剣使い(殺しはしません。貴方方には聞きたいことがある。でも、後悔はしてもらいますよ)

魔剣使いは跳躍し、ハイへと切りかかった。

がきぃいいん!!

その見えない魔剣使いの斬撃を、駆け寄った十代目が弾く。

魔剣使い(!? この人)

十代目「お前の位置は、自然が教えてくれる」

630

--東の王国、近辺--

とすっ

土『おう十代目ー。やっこさんこっちに着地したぜー』

さささっ

風『今ここを通ったわ十代目。気をつけて、今度は本気で斬りかかってくるみたい』

魔剣使い(先ほどがまぐれなのか、これで見極める!)

ガギィイイイイイイイイイイン!

魔剣使い(防がれた! やっぱり完全にばれて)

シュッ!!

魔剣使い「ぐっ!?」

ビッ!!

十代目は剣を弾くだけで無く、追撃で魔剣使いの首を狙おうとした。

魔剣使い(あと少し……体をそらすのが遅かったら……)

魔剣使いは左手で自分の首を触る。

魔剣使い「……」

ヴぃん

魔剣使いは魔剣の効果を止めて姿を現した。

631

--東の王国、近辺--

だからっだからっだからっだからっ!!

ハイ「はあああああああああああああああああああ!!」

東の兵隊長「陣形を乱すな! たかが一人だ!! 止めるぞ!!」

兵達「「「おおおっ!!」」」

賢帝「邪魔はさせないってーのっ!! 火属性範囲攻撃魔法、レベル4!!」

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

東の駆兵「うわっ!! 熱い!!」

ユー「……」

ズバズバズバズバババッ!!

東の髭兵「ぐっ!? この半裸の剣士めちゃくちゃ強いぞ!! おおおおおおおおおおお!!」

ガァアン!!

東の髭兵の大斧がユーを斬りつけた。が、

ミシッ

東の髭兵「!? 左の甲で防いだだと!? なんて硬さだ!!」

ズバッ!!

そしてユーの返しの一撃で髭を剃られてしまう。

東の髭兵「マンマ……ミーア……」

632

--東の王国、近辺--

どごおおん! どごおおおおん!!

ハイ「ユニちゃん! あそこです! あそこ駆け上がってください!……え? 無理? 高過ぎる? そこをなんとかがんばってくださいよ、私とユニちゃんの仲じゃないですか!」

ユニコーン「ぶひるんっ!!」

首を大きく左右に振るうユニコーン。

竜子「なら私に任せな」

ザンッ!!

驚異的なジャンプ力で追いついてきた竜子は掌に氷の魔力を発生させる。

竜子「氷属性範囲攻撃魔法、レベル2!!」

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

東の老兵「ぎゃああああああ!!」

カッチーーーーン!!

竜子が放った魔法は城壁を越えるように作られた氷の道となる。

ハイ「さすがです竜子ちゃん! やっぱり頼りになりますね!」

竜子「……ふんっ」

嬉しかったのか、竜子は氷の道に細工をして、階段のような段差を作ってやる。

633

--東の王国、近辺--

ガギィン! ギギィン!!

十代目(中々の太刀筋だ。よほどいい師匠がいるんだろう。だが)

ズバッ!!

魔剣使い「ぎっ!?」

十代目の剣が魔剣使いの腹部をなぞった。

ぶしゅっ、ぽたっ!

魔剣使い「いたたっ……よかったそこまで深くはないですね」

十代目「この程度なら私の敵じゃない。大人しく倒れてもらおうか」

魔剣使い「……ふ」

ぴく

その時十代目は異変に気づく。

十代目(……今奴の動きが一瞬早くなったように感じられたが……気のせいか?)

634

--東の王国、近辺--

魔剣使い「はあああああああああ!!」

ギギギギギギン!! ズギィン!!

十代目「これで、終わりだ!!」

ズカッ

十代目の剣は宙を斬り、

十代目「何!?」

ズバッ!!

代わりに魔剣使いの剣が十代目の脇腹を斬りつけた。

十代目「がっ!?」

魔剣使い「もういっ、ちょう!!」

ズバババッ!!

十代目「ッ!!」

635

--東の王国、近辺--

ひゅるるる、どおおん!!

賢帝「ちょっと十代目ちゃんっ!? 大丈夫なの!?」

ぼたたたっ

十代目「……あぁ……」

魔剣使い(焦ったせいか浅かったか……この人の的確な防御のせいっていうのもあるんだろうけど……まだまだ未熟だ)

十代目は千切れかけた左腕を舐めた。

十代目「スキル、ぺろぺろ」

じゅっ

魔剣使い(応急処置か。手を使わずに出来るのはいいですね。毒とかつけられてたらおしまいですけど)

十代目「……」

土『おいどうしたんだ十代目。なぜ奴への攻撃を外したんだ?』

風『そうよ。あの子、普通の動きしかしてないわよ?』

十代目「なるほど……」

十代目は目を瞑った。

十代目(サブリミナルか)

636

--東の王国、近辺--

魔剣使い(目を瞑った……ばれたかな?)

魔剣使いは小刻みに魔剣の能力を付けたり切ったりを繰り返していた。それによって人では理解出来ないほどの速さで、姿が消えたり現していることになる。

十代目(知らない間に脳を狂わされていたか)

視覚に頼る者のアンチ、それが魔剣使いだった。

魔剣使い(目を瞑られたら仕方ない……)

十代目「……」

ギギギギィン!!

魔剣使い(この人は見えなくても僕の位置を正確に把握してくる……。ならば、剣技と気迫で上回るのみ!!)

ギギィン!!

魔剣使い「はああああああああああああああああああああああ!!」

ギギンッ!! ギン

十代目の剣が魔剣使いの剣の軌道を最小限の力で逸らし、

スパッ

魔剣使いの剣を持つ右手首を刎ねた。

637

--東の王国、近辺--

魔剣使い「」

パシッ

しかし魔剣使いは一切動揺せず空中の魔剣を左手で掴み、

ドスッ!!

十代目の首元に突き刺した。

十代目「!! ぐっ!!」

魔剣使い「っ、甘いですね、それで勝ったつもりですか!!」

ズブッ、ズググググッ!!

慌てて魔剣の刃を掴む十代目。だが少しずつその刀身が十代目の体の中に埋没していく。

ブシュッ! ブシュシュッ!!

十代目「がっっ!!」

魔剣使い「あの聖騎士様を倒したと聞いていたのにっ、この程度なのですか……っ? それとも」

ブシュッ

魔剣使い「――私如きでは、本気を出していただけないのですか?」

魔剣使いの表情が曇る。

638

--東の王国、近辺--

ズボッ

魔剣使いは、剣を引き抜いた。

ぽたぽたぽた……

十代目「げほっ、ごほっ!!」

ぼたたたっ! ぼたっ!

魔剣使い「……残念です。十代目さん」

魔剣使いは斬られた自分の右手首を拾う。

十代目「……いや、私は本気だった……と言っても、信じてもらえないだろうか」

魔剣使い「……そうですね」

魔剣使いは薬を取り出して右手首の断面に塗ると、それを右腕にくっつけた。

ぬちゃっ

魔剣使い「っ……」

ぐぐ……

早くも指が動き始める。

639

--東の王国、近辺--

ぽたぽた

十代目「……君の気迫は凄まじかった。国を守るために全てを投げ打ったあの覚悟……見事だった。それが確かに私を超えたから、ああなったんだ」

魔剣使い「……そうだと、いいのですがね」

チャキッ

魔剣使いはまだ震える右手で魔剣を握る。

魔剣使い「……しっ!」

ガキイイイイン!!

魔剣使いが斬り込み、十代目がそれを受ける。

魔剣使い「貴方方の目的は、なんですか!?」

ギィン!

魔剣使い「ただ無意味にこんなことをする方では無いと、存じています! 何か、意味があるのでしょう!?」

ギギィン!!

十代目「それは……この国を、救うためだ」

640

--東の王国、近辺--

ひゅるるるる、どぉおん!! どかぁあんん!!

魔剣使い「この国を、救う……?」

十代目「あぁ……この国は、魔王側と癒着している現状を知っているか?」

魔剣使い「!……魔王、ですって……?」

十代目「わからなくも無い話だ。この国の王は、絶対に勝てないと考える相手に立ち向かうことをせず、その手下に成り下がることで多くの人々の命を救おうとしたのだ……王という立場ならば、それは妙案かもしれない」

十代目は剣を構えた。

十代目「だが今世界は大きく変わろうとしている。人類全てが協力して魔王を倒そうと動き出しているんだ……恐らくこれがラストチャンス。足並みを崩されては困る」

魔剣使い「……」

魔剣使いは思い出していた。東の王の側近達のことを。彼らは亜人と言い張っていたが、それは……

十代目「そして……東の王国が共に手をとる仲間となるのであれば、絶対に勝てない相手にも勝てるかもしれないんだ。……この国のためにも、人類のためにも……この国を一度破壊し、愚かな幻想から救わなくてはならない」

魔剣使い「……」

スッ

魔剣使い「……私が守ろうとするものと、貴方の言葉……どちらが正しいのか、次の一振りにかけましょう」

ザッ!

魔剣使いは構える。

十代目「……よかろう」

スッ

十代目も構えた。

ひゅるるるるる……

十代目「……」

魔剣使い「……」

どど
ズバッ!!

おおおおおおおおんんん!!

魔法の着弾を合図に斬りこんだ二人。

ぽたっ……

十代目「……」

魔剣使い「……東の王国を……頼みました」

ぶしゅっ!!

十代目「承知した」

魔剣使いは血を流して地面に倒れた。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すいいません遅れました!

はい魔剣使いの師匠は剣豪です!


十代目は首元刺されても大丈夫ではないですけど、即死にはならない程度に軽減しています。


ようこそ現行スレへ!

それでは投下していきます!!

641

--東の王国、近辺--

十代目「はっ、はっ、はっ……」

ぼたぼたぼたっ

十代目は傷口に手を当てて回復魔法をかける。

すぅーっ

十代目「手ごわかった。若いのにいい剣士だな」

どご、どぉおおん!!

賢帝「ちょっとぉ、十代目ちゃん!? たった一人にかまけてないで私をっ、手伝いなさいよぉ!! さすがの私もこの人数はきっついのよぉ!!」

どががぁああん!!

言いながらレベル4魔法を捌く賢帝。

十代目「ああわかった、今そっちに……?」

ぴたっ

十代目(……)

642

--東の王国、近辺--

バッ!

十代目は遥か後方に視線を向ける。

十代目(……なぜ俺は、こんな大事な闘いで供給要請をせずに戦った……? 騎士道でも振りかざしたつもりか……?)

ヴン!

十代目は索敵範囲を広げる。

十代目(一キロ……二キロ……三キロ以内にもいない……?)



--草原--

ひゅうううううぅ

腹黒「ん……やれやれ気づかれましたか。噂どおり中々勘が鋭いようですね」

十代目がいる場所から二十キロ離れた場所で、椅子に座って優雅にコーヒーを飲んでいる腹黒。

腹黒「そのまま大人しく(ゴミ同士削りあってくれればよかったのによぉ)」

643

--東の王国、近辺--

十代目(いた……!! くっ、それほどまで遠くにいるとは……!)

ダッ!!

十代目は駆け出した。

ダダダダダダだ!!

十代目(精神干渉の魔法……それも超々遠距離から誰にも気づかれることなく……こいつは間違いない、魔王の一角、腹黒!!)



--草原--

腹黒「ふふふ、来ますよね? 来ちゃいますよねぇ貴方方勇者は。そりゃそうだ。魔王を野放しになんてとんでもない」



--東の王国、近辺--

ぼぉん!!

十代目「!?」

十代目が踏んだ地面が爆発し、十代目を吹き飛ばした。

十代目「ぐっ!? これは、罠魔法、か!?」

644

--草原--

腹黒「爆発系罠魔法、地雷。これが中々いい出来なんですよ。四代目魔王を倒した時のことを思い出しますねぇ」



--東の王国、近辺--

ドォンドォンドドドオォオン!!

十代目「がはっ!?」

土『おい十代目! こっちは危険だ! 遠回りで行け!』

十代目「……駄目だ、安全な道を選べば奴のところにはたどり着けない。そう仕組まれているはずだ」

ドォン!!

土『……! ならせめて直撃は避けろよ!』

十代目「踏まなくとも範囲に入っただけで爆発するようになっている……同じことだ」

ピョロロロロロ……

十代目「……?」

十代目の上空を巨大な鳥のモンスターが飛んでいる。そしてそれは無数の何かを落としていった。

どさ、どさどささ!!

十代目「!?」

近隣の少年「いたた……あれ? ここどこ?」

近隣の少女「うああああ! 足いたい、いたいよぉお!!」

十代目「子供……?」

645

--草原--

腹黒「カーニバル」

ぱちんっ

腹黒が指を鳴らした。



--東の王国、近辺--

近隣の少年「猫のお兄ちゃん、ここどこ?」

近隣の少女「うああああん! うあああああん!!」

十代目(こんな危険な場所に子供達を……己魔王め!!)「捕まれ! 話をしている暇は無い、ここから離れるぞ!!」

十代目が少年達に手を伸ばしたその瞬間。

ぼこっ

十代目「」

近隣の少年「あ、あれ?」

少年の体が膨れ上がり、そして

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

646

--東の王国、城壁--

だからっ、だからっ、だからっ!!

ハイ「ユニちゃん急いで! 皆さんが時間を稼いでくれているうちに!」

ユニコーン「ひひーーん!!」

だかっっ!!

ユニコーンは跳躍し、東の王国の城壁を飛び越えた。

ハイ「見えた! 東の王国の城!!」

符術師「っとー、ここまでだぜお姉ちゃん達。不法入国はいけないねぇ!」

ハイ、竜子「「!!」」

城壁の内側に張り付いていた符術師が、真下から弓で狙いをつけていた。

ハイ「符術師さん!?」

符術師(!)

ドシュッ!!

竜子「私が弾く!」

ドガッ!!

竜子の拳が符術師の矢を叩き折った。

符術師「残念、それ爆発するぜ?」

竜子「な」

ドゴオオオオオオオオオオン!!

647

--東の王国、城壁--

ユニコーン「ぶひひぃいーーーん!」

ぼふっ!

爆煙の中から錐揉み状態で飛び出したユニコーン。

符術師(あれ? ユニコーンだけ? 他の死体は?)

ビスビスッ!

符術師「ぎっ!?」

符術師の太ももを銃弾が貫通する。

ハイ「条件達成、レベル3、銃士!」

符術師「こんな、飛び道具が! くそ煙で視界を塞いじまったのがあだに!」

パキパキパキ!!

符術師「!!」

いてつく風が煙を吹き飛ばし、中から竜子達が現れた。

竜子「今のは、ちっとだけ効いたよ。だからこれは、お返しだ!」

符術師「ぐっ!! ほぼ無傷じゃねーか!」

バキキーーーーーン!!

648

--東の王国--

符術師「」

かきーん

竜子の攻撃を受けて氷像になってしまった符術師。

ハイ「ほらユニちゃん、気絶してないで起きてください! また走ってもらうんですから! 時間無いんですよ!?」

ぺちぺち

ユニコーン「ひ、ひひん……」

竜子「……意外とお前、どエスだよね」

すたすたすた

代表「おや、まだこんな所にいたのか。いや、丁度良かったというべきか」

ハイ「本当に歩いてきた……」

竜子「あの戦場を一人で無傷で歩いてくるとか……どうやったんだこいつ」

代表「まぁいいじゃないか。さて行こうか。こっからは簡単じゃないからね」

ハイ「今までも簡単じゃないですけどね」

649

--東の王国、城--

通信師「――さらりと城壁の中に入られてしまいました。しかも魔剣士と符術師がやられたようです」

東の王「ふむ……芳しく無いな」

通信師「……でもなぜ彼らがこの王国に襲撃をかけたのでしょうか。本当にこの国の財宝を狙ってのことなんでしょうか。私はいまいち納得がいきません」

東の王「……」

ギィ、コツコツ……

ある館の主「なにやらお困りのご様子ですな。我々が手を貸しましょうか? 東の王様」

ドアを開けて白髪の老人が現れる。

通信師「何者ですか。作戦司令部に部外者が入ることは許されませんよ」

東の王「よい。あの者は私の知り合いだ。……下がれ通信師」

通信師「っ!? 私に、下がれと言ったのですか……? 私がいなくては今戦っている兵達に命令を伝達できなくなりますが……」

東の王「構わぬ。しばらくこの者と二人だけで話をしたいのだ。下がってくれ通信師」

通信師「……東の王様……あなたは……」

ある館の主「ほっほっ。よいではありませんか東の王様。いい機会です。全部話してしまいましょうよ」

東の王「黙れ……」

650

--東の王国、城--

ある館の主「ほっほっほっ……」

老人が笑うと、

みぢっ

その口は耳まで裂けた。

通信師「!? お前人間ではないな!?」

ズグッ!!

構えようとした通信師だったが、それより一瞬早く老人の長い爪が腹部を貫通する。

通信師「がはっ!?」

ある館の主「遊びはもう終わりなのですよ。ほっほっほっ」

ぎちぎちと姿がピエロのように変貌していく老人。

東の王「貴様ッ、我が国の民に手を出すなと言ったはずだ!!」

ある館の主改めピエロ「ほっほっほっ、いーいじゃぁありませんかぁ? 秘密なんて抱えておくもんじゃありませんよ、ぱぱっとさらけだしてしまいましょうよ」

ぼたぼたぼたっ

通信師「ま、まぞ、く……! 東の王様……貴方は、なんてものと手を組んで……!」

651

--東の王国、城--

ごり

ピエロは通信師の頭部を踏みつける。

通信師「うっ!」

ピエロ「取引相手に向かってなんてもの、とは……口の利き方がなっていないお嬢さんだ……これは躾が必要ですかな?」

びきっ!

通信師「ぐっ!?」

東の王「手を出すなと言っている」

ヴン

東の王は紋章が刻まれた右腕をピエロに向けた。

ピエロ「……おやおや……長年のビジネスパートナーに対して随分じゃあありませんか。ほっほっ……こんなのはほんのジョークですよぉ。そんな怒らないで」

スッ

ピエロは通信師の頭から足をどける。

ピエロ「しかし……あまり強気にでてもらっては困りますねぇ東の王様? 忘れてしまいましたか? 貴方の大事な国民と、第二王子の命は我々次第だということを」

東の王「……!」

通信師(第二……王子?)

652

--東の王国、城壁--

どがああああああああああああああん!!

東の最上級兵「く、くそおおお!! 城壁をぶち破られた!! 誰かそいつをとめてくれええーー!!」

ユー「……」

ダダダダダダ!!

迫る兵士達をちぎっては投げちぎっては投げのユー。

シュンッ!

ユー「!」

そこに三人の兵士が現れ、ユーに襲い掛かる。

三強予備兵剣士「はぁあああ!!」

ザギイイイイイイイイイイン!!

三強予備兵槍兵「ちぇいやあああああああああ!!」

ガギイイイイイイイイイイン!!

三強予備兵魔法使い「火属性攻撃魔法レベル3!」

ボオオオオオオオオオオオオオオン!!

東の最上級兵「!! 予備兵ズ!!」

653

--東の王国、城壁--

しゅううううううううう……

三強予備兵剣士「……僕達の同時攻撃を簡単に捌くなんて……さすがは腕に自信アリみたいですね。これは骨が折れそうだ」

ちゃきっ

三強予備兵槍兵「――私が死ぬ気で動きを止めるわ。その隙に超火力でお願い」

三強予備兵魔法使い「了解であります」

ユー「……」

ジリジリ……

ユー「……」

ぴくっ

三強予備兵槍兵「はああああああああああ!!」

ボッ!!

間合いを計り、魔力を乗せて突く予備兵。

バギィイイン!!

その槍を右手のレイピアの一撃で粉砕するユー。

三強予備兵槍兵「!?」

ズバッ!!

そして左手のレイピアで予備兵を切り裂いた。

三強予備兵槍兵「ぎゃはっ!?」

654

--東の王国、城壁--

三強予備兵剣士「! よくも!!」

ガガガガガガァアン!!

一気に間合いを詰めてきた剣士の乱れ切り。だがその全てを華麗に捌いてしまうユー。

ズバッ!!

三強予備兵剣士「ッ! ぐ」

ズバババッ!!

三強予備兵剣士「---ッ!」

槍兵に続いて剣士も切り裂いた。

ドシャッ!

三強予備兵魔法使い「そ、そんなであります……あの二人がほんの数秒で……」

ユー「……」

ぴっ

ユーはレイピアについた血を払い、魔法使いに視線を向ける。

三強予備兵魔法使い「……ぐっ!! 二人の仇! とらせてもらうであります!!」

??「やめとけ」

655

--東の王国、城壁--

ざんっ

そこに隻腕の剣士が現れた。

三強予備兵魔法使い「け、剣豪様……」

??改め剣豪「そいつはお前達の手に負える相手じゃねぇよ。最初の斬りあいでわかっただろうが」

三強予備兵魔法使い「う……ッ」

ざっ、ざっ

剣豪「後は俺に任せな」

すらぁ

剣豪は鞘から刀を引き抜いた。

剣豪「せっかくの仕事がパァになったところでよ、退屈してたんだ。お前で退屈を紛らすことができればいいんだがなぁ」

ユー「……」

ズッ!

ユーはしっかりと構えを取った。

656

--東の王国、城壁--

剣豪「行くぜ……」

ダッ!

ユー「」

神速の踏み込みと斬撃。その刀はユーの首を狙って動いた。

ガギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

剣豪「ほう、簡単に防ぐもんだなぁ。中々見所あるじゃねぇか」

ユー「……!」

ユーは二本のレイピアで剣豪の攻撃を防いだ。が、

ガクガクガクガク

その両腕は衝撃に震えている。

チギィン!! ギンギンギギギギィン!!

剣豪「ははははっ!!」

剣豪の乱れ切りを受けるユーだったが足がもつれて後ろに飛んだ。

ダンッ!

剣豪「逃がさん」

ヒュッ、ズバッ!!

風の刃がユーの左腕を斬り付けた。

657

--東の王国、城壁--

どくどくどく……

ユー「……」

めきっ!

ユーは筋肉に力をこめて出血を止める。

剣豪「……いいね……実にいいぞ。小細工無しの真っ向勝負を楽しめそうだ……。俺は、お前みたいな敵を望んでいたああああああああ!」

ダッ!!

ユー「!」

ダッ!!

剣豪が走り出すとユーも同じように駆ける。

ダダダダダダ!!

剣豪「はあああああああああ!!」

ガギィイイイイイイイイン!! ギイイン! ギイギイイイイイン!!

ユー「!」

ギィン!!

剣豪「ぬっ!?」

ユーの一撃が剣豪の刀を弾く。

658

--東の王国、城壁--

剣豪(わからねぇなぁ……こいつは受けの剣が上手い。なのになんだってレイピアなんて使ってんだ。もっと適したもんがありそうだが)

ボボッ!!

剣豪「っとぉ!」

ユーの突きを紙一重で交わす剣豪。

剣豪「甘いぜ攻撃がみえみえだ! 狙いが素直すぎるんだよ!」

ユー「――!!」

ギィン! ギンギィン!!

剣豪「おらおらおらおらああああああああ!!」

ユーの防御をすり抜けた剣豪。そして剣豪が必殺の構えを取った。

ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!

剣豪「!?」

ユー「!?」

ぱらぱら……

三強予備兵魔法使い「な、なんでありますか!?」

城の最上階が突如爆発し、斬り合っていた二人は動きを止める。

剣豪「なんだ……いきなりどうしやがった?」

ユー「……?」

659

--東の王国、城壁--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ピエロ「……」


剣豪「ち、あのてっぺんにいるのは……魔族じゃねぇか……! どういうことだ! お前らが手引きしたのか?」

睨まれたユーは首を左右に振る。

剣豪「……嘘じゃねぇみたいだ……いや、そもそも堂々と外から来たんなら俺でもわかる。つーことは」

剣豪は剥き出しになった王の間に立っている魔族と東の王を睨む。

剣豪「……考えたくねぇな。でもそういうことなんだな、東の王」

ざっ、ざっ、ざっ

剣豪はユーに背を向けて城へ向かっていく。

三強予備兵魔法使い「け、剣豪様……!? どうされるのですか!?……我々はどうすればいいのでありますか!?」

剣豪「兵士を出来るだけかき集めて来い。この際侵入者は無視でいい、あっちの方が重要だ。俺らはあの魔族の対処にあたる」

660

--東の王国--

だからっ、だからっ、だからっ!

ハイ「! 見てくださいあれ!」

城の天辺を指差すハイ。

代表「……驚いた。本当に魔族がいるよ……。しかしなんで堂々と姿を現したのかね?」

竜子「ふん、知ったことか。これは私らにとって都合がいい。みんなの見ている前でぶちのめす。それだけだ」

ユニコーンの背にはハイと竜子が乗っている。背に乗ることが出来ない代表はユニコーンの腹にしがみついていた。

だからっ、だからっ、だからっ!

ハイ(あれは……私の知っている情報の中にはいなかった魔族……どんな戦闘方法をとってくるのかわからない……)

ハイは一筋の汗を垂らす。

ハイ(でも、負けられない!)

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!
たまには月曜日のうちに……


三部での戦いとなるとハイちゃんにやられていますね。
それでは投下していきます!

661

--???、過去--

ビィ「正直腹黒さんは魔王化のせいで弱体化しちゃってますよねー★」

腹黒「……」

目を閉じて紅茶を飲んでいる腹黒に話しかけるビィ。

ビィ「一度、腹黒さんが存命している段階で、魔王の力を封印したことがあるんですよ。北の王国襲撃を無視して。でも今にして思えばそれが一番ひどい結果になりました」

トリガー「一番ひどい結果っていうのはどんなのかな?」

ビィ「はい、魔王の皆さんを勇者にしてから三日後に人類が全滅しました。勇者化した腹黒さんの極悪細菌魔法で」

ウェイトレス「……細菌て」

壁に背を預けて話を聞いているウェイトレス。

トリガー「なんだか……情緒も何も無いね。核とかもあれだけどさ」

じーっと腹黒を見るトリガーとウェイトレス。

腹黒「なんですか……今の私には関係の無い話でしょう?」

662

--???、過去--

ビィ「もう本っ当に最悪でしたね。薬も回復魔法も効かないし、何を媒介にして感染させてるのかもわからなかったですし。治療しようとしたものからばったばったと倒れていく恐るべき感染スピード……完全に打つ手無しでしたねー」

腹黒「……で、一体何が言いたいんですか貴女は?」

ビィ「いえね、いくら魔王化で思考が狂わされているとはいえ、もうちょっと人間だった時と同じような戦い方をしてもらいたいなぁ、って思うわけですよ。戦法が単純になり過ぎです。なんでいきなり前線に出ちゃったりしてるんですか」

腹黒(いつの話だよ、俺出てねぇし……)

トリガー「確かに一理ある。彼ほど魔王化がマイナスに働いたもの者はいないかもしれないね。彼は卑劣だけど、卑劣であるがゆえに隙が無かった。目的のために一切手段を選ばないド畜生だけれど、終わってみれば最小限の犠牲で多大な成果を勝ち取ってきていた。魔王を無傷で倒した勇者は長い歴史の中で彼だけだ」

腹黒(喧嘩売ってんのかな……)

ウェイトレス「あぁ、わかるかも。絶対性格わるいよねーあいつ」

腹黒「(#^ω^)ピキピキ」

663

--???、過去--

ビィ(そろそろかな?)「はーあぁ。あの見事なアウトレンジ殺法は味方になると見れないんですかねぇ。敵の時だけ強くて味方になると微妙、みたいなパターンなんでしょうか。まぁ、いくら凄い人でも魔王化しちゃったらろくにものを考えられないバカになっちゃうんでしょうけどー」

ウェイトレス「あれ? それ私らもバカにされてない?」

がたんっ!

腹黒は勢いよく立ち上がった。

腹黒「……いいでしょうビィさん。そこまで言うのなら見せてやりましょう……。私の知性が衰えていないということを!」

ビィ(やーん。かんたーん★)



--東の王国、近辺--

どがぁああん!!

十代目「がはっ!!」

人間爆弾と地雷により一方的に嬲られている十代目。

十代目(どういう、ことだ……最短距離で進んでいるというのに奴との距離が縮まらない……!)

664

--草原--

腹黒「ふん、それみたことですか。私が本気を出せばこんなものですよ。トリガーが恐れていた勇者でさえも……ふっ。土属性地形変更魔法レベル4、雷属性妨害魔法レベル4」

ごごご、ぴぃーーーん

腹黒は器用にも、両手で何種類もの魔法を同時に操っていた。



--東の王国、近辺--

ゴゴゴゴゴ

十代目「! 地形を動かされているのか!? たどり着けないのはこのせい……ぐ、耳鳴りも強烈になってきた。眩暈がする……」



--草原--

腹黒「土属性重力制御魔法レベル4、水属性拘束魔法レベル4、臭属性攻撃魔法レベル4、風属性速度低下魔法レベル4、毒、麻痺、眠り、混乱、激昂、衰弱etcetc……」

強力な魔法を雨霰と打ち込む腹黒。

665

--東の王国、近辺--

ドゴォン、ドドゴオオオンン!!

賢帝「モブの癖に中々やるじゃないのよあんたたちぃ……持って帰りたいぐらいだわ……」

賢帝は若い兵士達を見て舌なめずり。

賢帝「って、十代目ちゃぁあん! あんた一体何をやってるのよ! 早く手伝ってって言ってるでしょぉうう!?」

振り返る賢帝。

十代目「」

賢帝「!? じゅ、十代目ちゃん!?」

十代目は賢帝の真後ろに倒れていた。

賢帝「ボロボロじゃないのよ! 一体誰に!」

十代目「……賢帝……? そうか……私はこんな所まで戻されていたのか」

666

--草原--

腹黒「無事合流できたみたいですね、いい位置です。セッティング完了」

ギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

凶悪な魔力が腹黒の両手に集まっていく。

腹黒「では、フィナーレといきましょうか。六属性複合攻撃魔法」

キーーーーン

六色の玉を中心として力の渦が発生し、周囲の色が反転していく。

腹黒「レベル4」

ドギャッ!



--東の王国、近辺--

ゆらっ

東の剣長「ぬ、なんだ今の光は」

……ゴゴゴゴゴゴ……

遥か遠くから接近する何かが地面を揺らしている。

賢帝「!……ちょっと、しゃれにならないわよこれ……!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



--草原--

腹黒「東の王国ごと消え去りなさい」

667

--東の王国、近辺--

賢帝「火属性防御魔法レベル3、身体強化魔法レベル4!!」

ギィン!!

東の剣長「ば、ばかな……こんな魔法が、あんなに巨大な!!」

迫る黒い太陽に怯える兵士達。

賢帝「あんた達、力を貸しなさい! このままだと東の王国もただじゃすまないわよ!……いや、綺麗さっぱり無くなっちゃうわ!」

東の槍長「!……だ、だれが敵の言うことなど真に受けるか! どうせあれもお前らが仕組んだことだろう!?」

賢帝「んなわけないでしょう!? だいたい今は敵とか味方とかどうでもいいでしょ!? 見てわかんないの? このままじゃ死ぬわよ私達!!」

賢帝の魔力と気迫が兵士達を圧倒する。

東の弓長「し、しかし我々が集まったところであれは……あまりに強大すぎる……」

賢帝「ちりも積もればなんとやらよぉ! ほら、来るわよ!! 諦めることよりやれることを考えなさいッッ!!」

ドッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

賢帝「」

ガラガラガラ!!

衝突時の衝撃波で後方にある城壁が半壊する。

賢帝(いったぁ……受け止めただけで腕二本やられたわ……ふふ、笑っちゃうわもう)

668

--東の王国、近辺--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

強力な魔力の干渉で重力は狂い、全ての色がめちゃくちゃに書き換えられていく。

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

賢帝「ふっ、うぅう!!」

ズズズズズズズ!!

少しずつ後退していく賢帝。

賢帝(これは、本当にきついわ……私の奥義の何倍の火力だっての)

ブシュッ!!

賢帝の足が地面に埋まり、太ももが弾けた。

東の剣長「っ……」

それを見ていた兵士達は頷き合い、そして

ガシィッ!!

賢帝「!」

東の剣長「――我らにも、手伝わせてくだされ!」

東の槍長「う、うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

賢帝「……遅いのよバカぁっ!! 後でチューしてやるんだから」

669

--東の王国、近辺--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

東の剣長「ぬ、おおおおおお!!」

賢帝(……とは言ったものの、やっぱり数がいればなんとかなるってもんでも無さそう……万事、きゅう、す)

ザザザザザザザザッ!

ユー「!」

その時後方から走ってくるユーの姿が。

シャリシャリン!

ユーは走りながらレイピアを構えると、

ユー「奥義、勇者ラッシュ」

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

奥義を放った。幾千の光の筋が、賢帝の防御魔法ごと六色魔法を吹き飛ばす。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

670

--東の王国、近辺--

ユー「……」

しゅぅうう……

賢帝「ゆ、ユーちゃん……貴方も大概凄いのね……げほっ」

ユー「……」

ガクッ

しかし奥義を撃った反動からか、地面に膝をつく。



--草原--

腹黒「む? 私の魔法攻撃を防ぎましたか……弾き返せるほどの実力者がいたようには思えませんでしたが……まぁいいでしょう」

腹黒は顔色一つ変えずに先ほどと同じようなポーズを取る。

腹黒「二発目を撃てば」

キイイイイイイイイイイイイイイイン!!

671

--東の王国、近辺--

賢帝、ユー「「!?」」

東の剣長「ば、かな……また先ほどと同規模の魔力が……」

へた

兵士達は地面に座り込んでしまう。

賢帝「じょ、冗談じゃないわよ!!」(腕は全部おしゃかだってのに! 魔力ももう残り少ないのよ!?)



賢帝「? な、何よ十代目ちゃん」

地面に付していた十代目は賢帝の足を掴んでいる。

十代目「私を回復させてくれ……奴は私達勇者でしか倒せない……」

賢帝「……簡単に言ってくれるわねぇ。私もあまり魔力残って無いのよ? こんな場所で魔力すっからかんになったら、ここの兵士達に何されちゃうかわからないわ」

そう言って笑う賢帝は十代目に回復魔法をかけた。

東の剣長「……今はそういうことをしている場合じゃないってことくらい我々にもわかりますよ。おい、手伝ってやれ」

東の魔長「はい」

ぽあああ

東の魔長が十代目に回復魔法を重ねがけする。

十代目「……ぐ」

東の剣長「命がけで東の王国を守ってくれたんだ。貴方達が悪い人なわけがない……でも話を後で聞かせてください」

賢帝「……いいわよベッドの中でね……」

672

--草原--

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

腹黒「六属性複合攻撃魔法、レベル……ん?」

ドオオオオオオオオオオオン!!

魔法を放とうとした瞬間に、腹黒は後ろから攻撃を受ける。

腹黒「……誰です?(俺様の索敵を掻い潜ってきやがっただと……?)」

ひゅおぉおおおおおぉぉ……

風にマフラーをなびかせている二人組みが立っていた。

???「どうやらあの話は本当だったようだな……」

??「ふん、わいは最初から疑ってなんか無かったけどなぁ」

そこに立っていたのはカブトと影月。

腹黒「……まがい物さん達ですか」

???改めカブト「ここで退場してもらうぞ。魔王」

??改め影月「こいつと組むのは嫌なんやけど、まぁそんなことも言ってられへんわな」

ドドドドドゴオオオン!!

カブトと影月のキックが腹黒を吹き飛ばした。

673

--草原--

ドゴオオオオオオン!!

腹黒「ふん、その程度の攻撃、ほぼノーダメージですよ?」

影月は服についた埃を払う余裕を見せる。

カブト「……ほぼノーダメージ? ということは攻撃は入るんだな?」

腹黒「!」

影月「ほっほー、これまた情報通りやな。こいつは正規の魔王じゃないから無敵設定は搭載されてへん!!」

腹黒「……」

ドゴオオオオン!!

影月のパンチを魔法障壁で受け止める腹黒。

影月「……ち」(だからなんだってんだ何が言いてぇんだ、あぁん? 攻撃が通るなら勝てるってか?? 二人がかりなら倒せるってか?? この俺様をよぉ!!)

バリバリバリバリバリバリィ!!

影月「うわ無詠唱でこんな雷だしよったでこいつ! なんや、魔法使い君のことを思い出してまうわ」

ひゅっ

カブト「ふっ」

ドギャッ!!

真後ろに現れたカブトの一撃が魔法障壁を貫いた。

腹黒「ぐっ!?」

674

--草原--

腹黒(こいつ、これか、突然消えて現れた……これを使って俺の索敵範囲外から入ってきやがったのか!)

影月「余所見しとると危ないでっせ?」

ドガガガガガガガガガガ!!

腹黒「がっ!」

影月のラッシュが腹黒に叩き込まれる。

影月「おらおらおらおらおらおらぁ!!」

腹黒「げっ、ぐっぶ!」

影月「血反吐吐いてもらうでぇ! 魔王さんよぉ!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

影月の強烈なアッパーが腹黒の体を宙に浮かす。

カブト「ダブル」

影月「人造勇者キック」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

675

--草原--

腹黒「」

ひゅるるる、どしゃっ!

血を撒き散らし、地面にたたきつけられた腹黒。

腹黒「げはっ!」

ぼたぼた……

影月「ふん、魔王化のせいでステータスは軒並みパワーアップしとるが、それだけやな。わいら二人がかりはちと大げさだったかもしれん」

カブト「……」

ザッ、ザッ、ザッ

腹黒「……」

カブト「……」

腹黒「……確かにあのいけすかねぇ小娘の言う通りかもしれねぇな……」

腹黒は甲で血を拭う。

影月「なんやこいつ。口調が変わりよったで。ド突きまわされて自分のキャラわからんくなったんか?」

カブト「……」

腹黒「確かに俺の思考は鈍っている……この程度のことに気づくまでにこれほどまでに時間を……ははっ、ははははは……!」

腹黒はげらげらと笑っている。

影月「ぶっ壊れたか……?」

676

--草原--

カブト「……! 影月」

影月「なんやなんやカブトさん。いや、みなまでいわんでもわかっとる。もう哀れで仕方ないから終わりにしてやれっていうんやろ? わいも丁度そう考えて」

カブト「逃げるぞ!!」

影月「へ?」

ユン

カブトが手を伸ばした瞬間、

腹黒「――時属性魔法」

影月の後ろに腹黒が現れた。

影月「!?」

振り返って迎撃しようとする影月だったが、

腹黒「コレは元々俺が作った属性じゃないか」

ボンッ!

影月の頭部が吹き飛んだ。

677

--草原--

カブト「影月……!」

腹黒「栄枯盛衰……いつまでも全盛期のままでいられないのはわかっちゃいたが……」

ピッ

腹黒はカブトに自分の血を飛ばした。

カブト「KAGEROU!!」

ブゥン!!

カブトは時を止めて腹黒から離れようとする。

ザザザッ!

腹黒「こんな気持ちを味合わなくちゃいけないくらいなら、凡夫でよかったぜ」

カブト「!?」

停止した時の中を腹黒が追ってくる。

カブト(こいつ!!)

腹黒「水属性範囲攻撃魔法レベル4」

バッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

カブト「!」

ザバーーーン!!

濁流の如き一撃に飲み込まれてしまうカブト。

678

--草原--

ボゴン

カブト「がぼごぼっ!」

腹黒「スキル、生体爆弾」

カブト「!?」

ボッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

腹黒「その水の中には既に俺の血を混ぜておいた」

ぼどぼどぼどぼど!

カブトの体がばらばらになって地面に落ちる。

腹黒「時は動き出す」

679

--草原--

びちゃっ……

腹黒「……べっ。殴られたのなんて久々ですね。あいつ、以来だ」

血を吐きながら腹黒は死体になった二人を眺めている。

腹黒「この程度の奴らに……くそ、とんだ失態だ……」

ざっ

そしてそこに、

ざんっ!!

十代目「やっと、会えたな、魔王」

ユー「……」

十代目とユーが現れた。

腹黒「……はぁ……次から次へとめんどくさいですねぇ」

腹黒は苛立ちながら十代目達を睨む。

腹黒「この二人は私に接近するための囮だった、ってわけですか?」

十代目「……さぁな」

ジャリン

十代目は剣で斬り付けた。

680

--草原--

ギギギギギギギ!!

しかし十代目の剣は腹黒の魔法障壁を破れない。

腹黒「お前達程度の罠にかかっていたっていうのか? ありえるのか? そんなことが?」

フォンッ

ユー「ッ!」

ズバシャーー!!

腹黒「!?」

ユーの一撃が腹黒の体をいとも容易く斬り裂いた。

腹黒「!? この、力は!! ぐううう……まさかお前も、勇者の力を!?」

ズバズバッ!!

ユーの力ない斬撃が腹黒を刻んでいく。

腹黒「ばっ、ばかなっ!! 勇者が二人、二人も! 二人も勇者の接近を許してしまったのか!?」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

すさまじく遅くなりました!

腹黒が生体爆弾にこだわる理由は戦術でもありますが、彼が人間だった頃に最も後悔した技だったという背景があります。深く心に刻まれたその想いは、魔王化でこんな形で露出してしまったり。

それでは投下していきます。

681

--東の王国--

ゴゴゴゴゴ……

ハイ「凄まじい衝撃でしたね、先ほどの攻撃……」

代表「全くね。誰かがどうにかしてくれたからよかったけど……あれは死を覚悟したよ」

竜子「あれにはさすがに私もびくったな」

ピエロ「……」

ちーん

ぼっこぼこにされて倒れているピエロ。

ハイ「っていうか竜子ちゃんやっぱり強いです。魔族を単騎で倒しちゃいますか」

竜子「くく、竜亜人なめんな?」

ピエロ「見せ場すら作れないとは……ぐす」

通信師(援軍ですか?……っていうわりにはどこかで見たような顔がちらりほらり……)

682

--東の王国--

竜子「……」(しかしこいつ)

竜子は代表を見る。

竜子(今の闘いで私はこいつの指図を受けていたわけじゃねぇ。でもいつもより良く動けた気がする……もしかしてこいつは後ろにいるだけで仲間を強化できんのか?)

ダダダダッ!

剣豪「む?」

そこに兵士を引き連れた剣豪が現れる。

剣豪「む……」

一切の加減無くぼこぼこにされたピエロとハイ達を確認すると、口を開いた。

剣豪「……あれ? もう終わっちゃってる?」

竜子「うん」

683

--東の王国--

剣豪「ちっ、せっかく来たのにこれかよ。じゃあ後は……」

東の王「……」

剣豪は東の王に向き直る。

剣豪「お前とお話タイムだ」

ざっ、ざっ

ハイ(……竜子ちゃんとピエロの戦いは接戦じゃあ無かった。でも、全く介入できないレベルの戦闘だったわけでもなかったのに)

代表(なのに手出しをしてこなかったね王様は)

ざっ

東の王「……」

剣豪「――こいつは、お前の仲間なのか? 東の王よ」

剣豪は刀の切っ先でピエロを指した。

東の王「……」

684

--東の王国--

ピエロ「ひ、ひひ! 言って差し上げなさいな東の王様ぁ! 貴方は息子と民を守るために国を売ったのだとぉ!」

ぷすっ

ピエロ「あひっ!?」

ピエロの鼻を刺す剣豪。

剣豪「民はわかるが息子……? あぁ……大事故起こして行方不明になった第二王子か……」(人質っつーことか)

東の王「……ピエロを倒したところで無駄なことだ。どうせ世界は奴らに支配されている。ここにもすぐにやつらが押し寄せてくるだろう」

ピエロ「そ、その通り! 貴方方も我々のしもべになりなさいな。さすれば魔王様の庇護の下、繁栄を約束しましょうぞ!」

竜子「こいつ結構しぶといな」

がんっ!!

ピエロ「おごふっ!? ちょっ、ま、待ちなさい! 第二王子の命がどうなってもいいのですかな!?」

ぴたっ

竜子の拳が止まる。

竜子「……まぁ……知らない奴だし」

どごぉっ!!

ピエロ「ぴえっ!?」

代表「おいおいおいおい無茶するもんじゃないよー」

685

--東の王国--

代表(こっちもそろそろ動くか)

ぱちぱち

代表は目配せで通信師に合図する。

通信師(……しばらくぶりに会ったと思ったら……スキル、テレパシー)

ぱしぃーん

通信師(お久しぶりです代表。貴方の悪名はかねがね……)

代表(あはは。お久しぶりだね通信師、元気してた?)

通信師(で、なんです? 何か用事があるのでしょう?)

代表(うん。君の能力で第二王子の探査を頼みたいんだよね)

通信師(バカにしないでください。貴方達がここに飛び込んできた時からすでにやってます)

代表(ほう、さすが黄金世代の通信師だ。でもいくらなんでも東の王国全土を索敵することはできないと思うんだけど。妨害魔法もあるだろうしね。通信師は第二王子が監禁されてそうな場所の目星がついているのかな?)

通信師(……)

686

--東の王国--

代表(そうだ、情報は妨害してる? 今このピエロがぼこられてる光景を外に漏らしたくないなぁ。多分この魔族にも仲間がいるだろうからさ)

通信師(当たり前じゃないですか……とっくのとうにジャミング済みですよ。ここの情報は一切漏れてません!)

代表(一切?)

通信師(一切!)

代表(音波も?)

通信師(音波もです!)

代表(ふむ。素晴らしい手際だね。間違いなくこのピエロは仲間に信号を送ったりしてるはず。いつでもどこでも第二王子に何か出来なきゃ人質の意味が無いからね。その通信手段をすぐに絶ったのはいいことだよ)

通信師(ふん、上から目線ですね。私は今東の三強という立場なんですよ? 侮らないで欲しいものです)

代表(ごめんごめん。でも完全シャットダウンはまずいかもね。こいつから全く信号が送られなくなった場合でも第二王子を殺す計画になってるかもしれないから)

通信師(……)

代表(ピエロは何らかの信号送ってると思うから、その波長をコピーして君がなりすまして発信しちゃおうか。もちろんこいつにジャミングはかけたままでね。それで反応があれば逆探知できるよね)

通信師(……わ、わかってましたよ)

687

--東の王国--

通信師(く……魔族のテレパシーの波長をコピーしろとか、簡単に言ってくれちゃって……こんなの初めてやるっつーの! でも見てなさい。どんなに難しくてもやってみせるんだから!)

代表(あ、そうそう)

通信師(何よ!? 今必死に波長を分析してるんだから話しかけないで!)

代表(ならテレパシー解除したらいいのに……。まぁ、これは勘に過ぎないから適当に聞いて欲しいんだけどさ、ハイちゃんからの話を聞く限りじゃあ、洋館の地下とか怪しいと思うんだ、そこらへんは調べたりしたかな?)

通信師(勘!? 貴方ねぇ……………………いた)

代表(お、いたか。よしよし、じゃあ近くの兵士達にテレパシー送って助け出してもらって)

通信師「もー!! なんかむかつくアンタ!!」

剣豪「びくっ!?」

688

--東の王国--

剣豪「やれやれお前もわからんやつだな。なんでこいつらにひれ伏した? 人間を信じなかった? 息子を人質に取られたとか、それだけで魔王側につく男じゃないだろう?」

東の王「……ふ、俺を知ったような口だな。俺がいつから魔王側についていたのか気づかなかったわりに」

剣豪「知るか。俺は身内は疑わねぇ」

東の王「」

東の王は固まる。

剣豪「まぁ、もはやお前が何を思ってそっち側に行っちまったのかはどうでもいいや。重要なのはこれからだ……一つ賭けをしようぜ、東の王」

東の王「……何?」

剣豪「簡単な賭けだ。先ほどから随分でけぇ力が戦ってるみたいだ。人間側と魔王側の闘いだろうよ」

ハイ(! 気づいてましたか)

剣豪「俺は人間側が勝つ方に賭ける。お前はもちろん魔王側に賭ける」

東の王「……賭けるものは何だ」

剣豪「俺が負けたらお前と同じように魔王側についてやる。どんな汚い仕事でもやってやるよ。だが俺が勝てばお前はこいつらと縁を切れ」

689

--東の王国--

東の王「……俺がその賭けを受ける必要はあるのか?」

剣豪「そりゃあるだろう。この場の戦力差見てわからねぇのか? 今この場においては人間側が優勢なんだぜ? 受けるしかねぇだろ」

東の王「……ふ、そうか」

東の王は半壊した玉座に座る。

東の王「いいだろう。受けよう」

ピエロ「!? ちょ、ちょっと東の王様ぁ? 正気ですか? 我らの同盟を賭けに使うだなんて、随分自分勝手じゃないですか。第二王子がむごっ!?」

ピエロの口に竜子ががれきを突っ込んだ。

竜子「お前うるさい。タフなのはわかったからちょい黙ってろ」

ピエロ「むごー!?」

ハイ(ひどいな竜子ちゃん)

代表(ほんとそう)

690

--東の王国--

ハイ「でも剣豪さん、よくわかりましたね。魔王側と戦ってる人がいるってこと」

剣豪(俺の名前をさらりと?)「簡単だろ。さっき馬鹿でかい魔力砲がこの国に向かってぶっぱなされた。あんな魔力を扱えるのは魔王側のやつしかいねぇ……そんでそれがこの国に届かなかったってことは、防いだやつがいるって話だ」

剣豪はがれきの上に腰を下ろした。

剣豪「まぁうちのやつらじゃあねぇわな。うちのも中々実力ついてきたがぁ、あれには対抗できる気がしねぇ……もしかしてお前らの仲間がやったのか?」

ハイ「はい。多分そうだと思います」

剣豪「……お前ら何しにここに来たんだよ。討ち入りにしちゃぁよくわかんねぇぞ」

ハイ「そうですね。では……はぁ、さすがにもうめんどくさいですね。何度も何度もあれを説明するのは……代表君、もう事情はわかってると思うので、貴方に説明任せちゃっていいですか?」

代表「ん? 僕がするのかい?」(ナイスパスハイちゃん。まぁ独裁者の言は聞かないだろうけど、話術でなんとかやってみるよ)

ジジッ

通信師(波長のコピー完了……兵士達も配置についたみたいです。第二王子奪還作戦開始!)

691

--草原--

十代目「はぁ、はぁ、はぁ……」

ぼたっ、ぼたぼたぼた

ユー「……」

腹黒「く、そ……これだけ斬られまくったのに、返り血一つ浴びてないっていうのか……?」

腹黒は血まみれで膝をついている。

十代目「お前の能力は聞いているからな」(しかしアウトレンジは長距離魔法でなぶり殺し、近づけば血を撒いて爆殺……厄介この上ないな)

ぼたっ、ぼたぼた

十代目(だからこそ、ここで始末しておきたい!)

ユー「……!」

ユーは残る魔力を右手のレイピアに込める。

十代目「ああああああああああ!!」

十代目も剣に魔力を纏わせた。

692

--草原--

腹黒「お、お前らなんぞに……この私が負けるものかああああああああああああああ!!」

ぎゅいいいいいん!!

腹黒も対抗して魔力を溜めようとするのだが、

十代目「奥義! 勇者バスター(弱)!!」

ユー「!」

ボッ!!

二人の放つ攻撃の方が僅かに速い。

ドギャッ!!

腹黒「!? ご、ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

ギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

十代目(づっ! 残りの魔力量では押し切れんか、く、やむをえん!)「魔力供給要請!」

ドンッ!!

十代目は更に大地から魔力を吸い上げた。

びしびしっ!!

十代目の体にひびが入っていく。

693

--草原--

十代目「お、おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ユー「!!!!」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

腹黒「そ、そそそ、そ」

びしっ

ユー達の攻撃が、腹黒の耐久値を完全に上回った。

腹黒「そんなばかなああああああああああああああああああああ!!」

どがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

腹黒の体はぼろぼろと崩れていき、完全に消滅した。

ぼふっ!!

十代目「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

ユー「……っ」

どさり

全てを出し尽くした十代目達も地面に倒れこんでしまう。

694

--草原--

しゅううううう

十代目「はーっ、はーっ……かなり無理をしてしまったが……これで、勝ちだな」

ユー「……」



ごろりっ

十代目は仰向けになって空を見上げた。すると、

ぴかっ

十代目「……ん?」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

十代目「ガッ!?」

空から六属性攻撃魔法が降り注いだ。

十代目「!!!! ぐ……」



--草原の果て--

ばちばち……

腹黒「やー……危ない危ない。油断していたら、もしかしたら負けていたかもしれませんね」

十代目達から離れること約五キロ地点、立っていたのは、腹黒。

腹黒「念のために、自分を分けておいて正解でしたね」

695

--草原の果て--

腹黒「しかし半分のリソースとはいえ、まさか突破されてしまうとは。あの小娘が言っていたように少々思考が鈍っているのかもしれませんね」

腹黒はまた巨大な魔力を練り上げる。

腹黒「しかし鈍っても私です。万が一に備えて分身を作っておいたこの私。抜かりなど無いのですよ!」

どごおおおおおおおおおおおおおおん!!

腹黒「っ!?」

その腹黒を魔力砲撃が襲った。

腹黒「ど、どこからです? 今の私を攻撃できるものなど!!」



--魔法王国、上空--

魔導長「第一射着弾なの。誤差修正、次は、全力全開なの!!」

普段使っているのよりも大きな杖を持ち、いくつもの魔法陣を展開している魔導長が狙いを定めていた。

696

--魔法王国、過去--

魔導長「――それは本当なの? 黄金王国の参謀長さん」

参謀長「はい。にわかには信じられないでしょうけど」

魔導長「……少し前に可愛い教え子から似たような内容の手紙をもらったの……最初はついに頭がいっちゃったのかとおもったけど……」

魔導長は参謀長の顔を観察する。

魔導長「貴方はつまらない嘘はつかないしなの」

参謀長「理解して貰えるのならありがたい。ではこれを」

そういって参謀長は布に包まれた大きな杖を渡した。

魔導長「杖?……これは、魔杖……」

参謀長「えぇ。研究員が貴女用に改造したスペシャルな杖です。これを貴女にさしあげます」

魔導長「……こんなものを渡して何が目的なの?」

参謀長「数日後に東の王国でいざこざが起きます。そこできっと魔王側が誰かを送り込んでくると思います。そいつを貴女に倒して欲しいのです」

697

--魔法王国、過去--

魔導長「! 魔王側!?」

参謀長「えぇ。魔王側が誰を送り込んでくるかは確定してませんが、まぁこいつかこいつかこいつでしょうね。それぞれの対策手段をこの紙に書いておきましたので、魔杖のスコープで敵がどいつなのか確認したらこの紙通りに対応していください。ま、十中八九こいつでしょうけど」

そう言って見せたのは腹黒の特徴が書かれた紙。



--草原の果て--

ばしっ! ばしししっ!!

腹黒「!? これは結界か!? 魔法を封じる結界を魔力球にして撃ち込んだのか……?! く、誰だこんな手の込んだまねを!!」



--魔法王国、過去--

魔導長「……でも、もしその話が本当だとしたら、私の魔法でも撃ちぬけるか心配なの」

参謀長「大丈夫ですよ。その杖は無属性の攻撃力を二倍にする特性に改造されてます。それに私のこの護符を使えばなんなくいけるはずですよ」



--魔法王国、上空--

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

魔導長が圧縮している魔力球の数は七つ。

698

--草原の果て--

腹黒「くそっ!! ふざけやがって! この俺をなめるなぁあ!!」

びしししししっ!!

腹黒はなんとか結界を破壊しようとするのだが、中々壊すことができない。



--魔法王国、過去--

参謀長「この腹黒を視認してもすぐに攻撃しちゃだめです。こいつは保険をかけて分身をどこかに隠しているでしょうから」

魔導長「分身?」

参謀長「えぇ、私でも保険をかけますから当然でしょう。まぁ、私にはそこまでの能力が無いのでマネ出来ませんが、もし伝説の魔法使いである彼だったならば。30個ぐらいの分身を作り出しておくんじゃないでしょうかね。そして戦場に送るのは20個程度、後は戦場に出さずに様子見って所ですか」

魔導長「……」

参謀長「でも今の彼なら一体分身を作ったら満足しちゃうんじゃないでしょうかねぇ。老いるのも嫌ですが、化物になるのも考えものです」



--魔法王国、上空--

ばぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ!!

七つの魔力球が互いに干渉し合い、強烈なスパークが発生する。

魔導長「レベル5魔法を連発するようなら……二分割で間違いないなの!」

699

--魔法王国、上空--

ぎゅごごごごごごごごごごごごごごごごご!!



--草原の果て--

腹黒「はっ!? く、くそ、狙ってやがる……くそ! くそくそくそ!! 一体誰がこんなまねをおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



--魔法王国、上空--

魔導長「あんたの子孫なの」

バヂッ

魔導長「――奥義、神星光破壊砲」


ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

700

--東の王国--

じじっ

通信師「! 東の王様、第二王子は無事助け出しました」

ピエロ「ふぇ!? ふ、ふふぉふぁ!!」

東の王「……」

……ズズゥン……

そして地響きが城にまで到達する。

剣豪「……東の王」

東の王「あぁ……」

剣豪「賭けは、俺の勝ちみたいだぜ」

東の王「……あぁ」

東の王は困ったように、

東の王「そのようだな」

笑った。

   影月「血反吐吐いてもらうでぇ! 魔王さんよぉ!!」

ハイ「事前に腹黒さんの情報知ってたわりに随分軽率ですね!」

影月「……」




次回より最終決戦へと入れそうです。

入れそうなんですが、またしてもここで一ヶ月ほどネット環境から切り離されることになってしまいました。更新はかなりきつくなりそうです。エイプリルフールもこれないでしょうし、もう最悪です……。

これが最後の休止になると思います。帰ってきたら一気に最後まで書き上げたいと思います。なのでどうか最後までよろしくお願いしたいと思います。
それでは。

大変お待たせいたしました。またしてもこんなに間が空いてしまって本当に申し訳ないです。 

それでは皆様どうぞパンツをお脱ぎください。投下を開始します。

701

--東の王国--

むくり

ユー「……」

ぽりぽりと頭をかきながら起き上がるユー。

ユー「……」

辺りを見回すが、ユーはなぜ自分がこんな所にいるのかわからない。

ガタン

ベッドから降りようとして転んでしまうユー。

がちゃっ

ハイ「あ、ユーさん! 目が覚めたんですか!?」

ユー「……?」

扉を開けて入ってきたハイは、近づいてユーに肩を貸す。

ハイ「良かった。一ヶ月も目を覚まさなかったもので心配しましたよ」

ユー「……!?」

702

--東の王国--

むしゃりむしゃりばくばくむしゃむしゃ!!

ハイ「凄い食べっぷりですね……。まぁ一ヶ月何も食べて無かったんだから当然ですか」

しゃりしゃり

ハイは剥いたりんごをお皿に載せる。

ハイ「……お体の方は大丈夫ですか? やはり色々と無理をされてるみたいですね」

ユー「……」

ハイ「知り合ってからずっと私のサポートをしてくれてましたし、魔王クラスとの連戦に度重なるルートの使用……無理がこない方がおかしいというものです……」

ユー「……」



ユーは気にするなとばかりにサムズアップ。

ハイ「そうもいきませんけど……はい」

ハイは困ったように笑うしかない。

それよりこの一ヶ月間に起きたことを教えて欲しいとユーはジェスチャーでハイに伝えた。

703

--東の王国--

ハイ「さてどこから話すべきでしょうか……あ、そうですね、ではユーさん達が戦っていた腹黒さんについてからにしましょう」

ユー「!」

その時ユーは思い出した。十代目と共に腹黒と戦闘したのだが、最終的に策にはまり敗北してしまったことを。

ハイ「ま、私達がこうして生きていることからわかるように、勝ったのは私達です。腹黒さんは援軍の皆さんが倒してくれました。ユーさんと十代目さんが追い込んでくれたおかげですね」

援軍? とユーが聞きたげな顔をする。

ハイ「はい、実は盗賊さん達が色々裏でやってくれていたんです。私達が代表君や竜子ちゃん達を説得してる間に、人造勇者さんや魔法王国の人たちと話をつけてくださっていたんです。それで私達の助けになるようにと援軍が来てくれたわけです」

ふむふむと頷くユー。

ハイ「……っと、ユーさんが一番気になっているのは魔王達の動向ですよね?」

こくりと頷くユー。

ハイ「実は……おかしいことにあれから魔王達は一切動いていないんです」

ユー「!」

ハイ「ユーさんは倒れてしまうし、絶好の機会だったはずなんですが……逆に不気味で仕方ないんです」

ユー「……」

ハイ「私が知っている前回とはもう完全に違う流れになっています。この流れがもし、ビィによる人類の必敗パターンなのだとしたら……」

ユー「……」

ハイ「あ、あは……そんな暗くなるようなことばかり話していても仕方ないですね。行きましょう。他の人たちにもユーさんの顔を見せてあげなくちゃ」

704

--東の王国--

がちゃり

ユー「!」

盗賊「おー! 起きてきたかユーくん。久しぶり! 覚えてるかな?」

勇者「! 彼が始まりの勇者……」

赤姫「……」

ツインテ「あ、ユーさん。体の方は大丈夫なんですか?」

ぱたぱたと近寄ってきて上目遣いで心配そうな顔のツインテ。

フォーテ「気遣うお姉ちゃんの慈愛の深さには女神もびっくりだよね!!」

ポニテ「むしゃむしゃ」

アッシュ「……揃ったか。てか食いながらやるなポニテ」

部屋の中にはくつろいで人狼をやっている盗賊達がいた。

ユー「くつろぎ過ぎやろ」

ハイ「喋った!?」

705

--東の王国--

盗賊「やー、でもこれで本格的に計画を練ることが出来るね。ユー君は我らの戦いに必要不可欠な存在だから」

勇者「別に今までだってちゃんと練ってたけど……って、あーっ! 私また殺されてる! ひどい! なんでいつも私からなの!?」

狼に殺されて半泣き状態の勇者。

盗賊「狼からしたら美味しそうに見えたんだろうなぁきっと。じゅるり」

赤姫(盗賊吊るそうぜ)

ツインテ・こくり

アッシュ・こくり

ポニテ・こくり

ユー「……」

ハイ「あはは……すいませんユーさん、この一ヶ月間あまりに平和だったもので……」

赤姫「じゃあ盗賊チェック」

ぺらり

赤姫「! 狂人かよ!」

706

--東の王国--

ぎぃ、がちゃ

レン「はー、やーっと終わったにゃー。ハイー、ご飯お願いにゃー、もうお腹がぺこちゃんにゃ……あれ? もう起き上がって大丈夫なのかにゃ? ユー」

そこにくたびれたレンが現れる。

ハイ「先ほど目を覚まされたんですよ。今ご飯作りますね」

ツインテ「あ、ボクも手伝います」

ツインテは立ち上がって台所へと向かう。

アッシュ「……今回はここまでだな。ノーゲームということで……ツインテはなんだったんだ?」

ぺらり

アッシュ「! ツインテが狼かよ!」

ポニテ「可愛らしい顔して中身は狼……恐ろしい娘ッ!」

707

--東の王国--

トントントントン

アッシュ「そういえば入ってくるなり終わったとか言ってたな? 例の作業が終わったのか?」

レン「そうにゃよ。マントルに書いた魔法陣。今日で全て書き換え終わったにゃ。ってか今朝出かけるときに今日で終わるだろうって話をしたはずにゃ」

勇者「よくやったわ。予想より随分時間はかかったけれど、これでやっと修行に移れる」

レン「か、完成させるだけならいつでもできたのにゃ。ただ時間に余裕があったからいいもんにしようとじっくり時間をかけたせいでこうなったのにゃ。で、修行ってなんにゃ?」

勇者「えぇ、貴方達のために作っておいた修行の場所、修練の塔に入ってもらうわ」

盗賊「あ、あー……そういえばそんなの作ってたなぁ」

赤姫(完全に忘れてたなこいつ)

ポニテ「修練の塔? それなんなのママー」

勇者「文字通り修行の場所よ。入ればわかるわ」

レン「あー……レンの作業が終わるまで待ってたってことはレンも入ることになるんにゃね。ご飯食べてからでもいいにゃ?」

708

--東の王国--

レン「むしゃむしゃ。ツインテとハイの料理はとってもおいしーにゃぁ」

ツインテ「ありがとうレンちゃん。まだたくさんあるからおかわりしてね」

フォーテ「フォーテも! フォーテもお姉ちゃんの料理食べるのっ!」

ツインテ「フォーテちゃんはさっきみんなと一緒に食べたでしょ? そんなに食べてたら夕飯食べれなくなっちゃうよ」

アッシュ(その理屈だとこの時間に食ってるレンはどうなるんだろうってことがどうでもいいくらいエプロン姿のツインテ可愛いな)

ポニテ「むしゃむしゃ」

そして当たり前のように食ってる歩にて。

ハイ「ではちょっといいですか? 少しミーティングがしたいです」

勇者「その話はここにいるメンバーだけでいいの? 東の王とかは?」

ハイ「この話は今ここにいるメンバーだけで大丈夫です。もう軍師さん達や一部にはお伝えしたこと話ですから」

アッシュ「ふむ。聞こう、話せ」

ツインテのエプロン姿をちらっちら見ているアッシュ。

フォーテ「」

それをおちょなんさんばりの凄まじい形相で睨んでるフォーテ。

709

--東の王国--

ハイ「はい。話は、なぜこんなにも長い期間魔王側が攻めてこないのかってことについてです。一ヶ月前の戦いでトリガーは腹黒さんを送り込んできました。とんでもなく強い相手だったようですが、それでもユーさん達の活躍により腹黒さんを倒すことに成功しました。とはいえ一時的にこちらの勇者二人が行動不能に陥りました。本来ならその隙に次々と魔王を送り込んで来てもいいはずですよね?……でもしてこなかった」

アッシュ「簡単だ。捨て駒だったんだろう、奴は」

ハイ「はい。私や軍師さん達もその意見でした。魔王を一体使ってまで、私達がどう対応するのか見定めたかったんだと思います」

ポニテ「魔王が捨て駒とか……豪勢な使い方するねー」

ハイ「前回(アイ募三部)の戦いではトリガーは魔王を捨て駒にするような行動をとりませんでした。と考えると腹黒さんを送り込んできたのは別ルートの私、ビィってことになると思います。ビィは、何度も繰り返して戦い抜いた実績があるようです。そのループの中で、最も対応に困ったのが腹黒さんなんだと思います」

盗賊「対応に困る……それは……人間的にってことかい?」

ぱかん!

勇者に殴られる盗賊。

ハイ「……戦闘でです。で、それに我々がどう対応したか……それさえわかれば、今後こちらの動きが最後まで読めてしまうのかもしれないんです」

ツインテ「!!」

アッシュ「……数え切れないほど繰り返した戦いの記憶か……。確かにそれでこちらの行動が全て読めるようになるんなら安い対価だ」

ポニテ「なんで全部の魔王で突っ込んでこないのかって思ったけど、なるほどね。下手に全魔王で突っ込むより断然勝率高いもんね」

ハイ「はい。ぶっちゃけ全部で来られても最後私ら勝ちましたしね勇者さんの機転で」

勇者「///」

てれてれしてる勇者。

盗賊「ループ前の勇者だからお前ではないんだぞ貧ちゃん?」

710

--東の王国--

レン「腹黒の件はわかったにゃ。で、こんなに長い間何も仕掛けてこないことについては、何か感づいたことでもあるのかにゃ?」

ハイ「それなんですが……私達が腹黒さんに犠牲無く勝ったからだと思います」

勇者「確かに私達側に死者は一人も出なかったわ。もちろん奇跡的にだけど」

※この場合の死者というのは蘇生不能にまで陥ることを言っています。

ツインテ「奇跡でもなんでも完全勝利してしまった。だから警戒してるってことですか? 魔王側が?」

ハイ「そこまでは……わからないです。でも、この期間は何か意味があるんだと思うんです。でないと対魔王魔法陣の完成やその他もろもろの私達の準備を黙って見ているわけがない」

勇者「その通りだと思うわ。ビィか、あるいはトリガーのなんらかの思惑なんでしょう」

ポニテ「でも……もしこっちの動きが全部わかっちゃってるんだったら……私達がこれからやることも全部通用しないんじゃ……?」

ハイ「かもしれません……実は一ヶ月くらい前からそのことを軍師さんと参謀長さんと代表君に話したんです。そしてこちらも相手の裏をかくべく、これからのことを三人にシミュレーションしてもらってるんです」

フォーテ「しみゅれーしょん?」

ハイ「はい。トリガー陣営がこれから行うであろう手を片っ端から、詰め将棋のように」

711

--東の王国、地下--

参謀長「だぁからぁ! 銀蜘蛛がここに来た場合はその防御力と質量兵器を使って攻めてくるわけだからぁ!」

代表「いやいやそもそもおかしいでしょう。聞いた通りの情報ならここは銀蜘蛛じゃなくてヤミを使った方がいいわけです。あれは死なないんですから」

軍師「ぐごー……」

参謀長、代表「「寝るな!!」」

すぱぁん!!

竜子「おら飯もってきてやったぞ。うわくさっ! すっぱこの部屋!!」



--東の王国--

勇者「シミュレーション……膨大な時間がかかってるわね。そしていまだに討論してるみたいだし……使い道あるのかしら」

ハイ「時間によって考えることも推移してますから……なので何が言いたいかって言うと、私達はこれから敵の裏をかき続けなくちゃいけないってことです。まぁ、裏をかこうと思っていること事態が敵の思惑通りなのかもしれませんが……」

盗賊「ふむ……しっかり考えた作戦だろうとなかろうと、どちらにせよ敵に全部ばれてるかもしんないなら、なんも考えないで戦ったほうが時間はぶけていいよね」

赤姫(なんでこいつは最後まで抗おうとしてる人の努力がわからないのか)

712

--東の王国--

勇者「言いたいことはわかった。ならなおのこと急がなくちゃね」

そういって勇者は立ち上がる。

勇者「ポニテ、ツインテ、アッシュ、レン、そしてハイ。これから貴方達には修練の塔に入ってもらう」

ハイ「さっき言ってた修練の塔、ですか。そこでこれから修行を?」

勇者「えぇ。ま、ぶっちゃければ精神と時の部屋みたいなそんな感じの塔よ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((ぶっちゃけ過ぎている!)))

勇者「裏をかくにせよ何にせよ、まずはそこでのパワーアップは必要だわ。でないと完全勝利は無理なのよ」

ハイ(勇者さんがそこまで言うなんて……一体どんな精神と時の部屋なんだ)

盗賊(俺そんな凄いもの作るの手伝った記憶無いんだけど……)

フォーテ「っていうかフォーテの名前がそこに無いんだけど!? フォーテもお姉ちゃんと一緒にパワーアップしたいしたい!!」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((それ以上強くなってどうすんの!)))

713

--東の王国、廊下--

すたすたすたすた

鬼姫「お、みんなでどこ行くっスかー? ピクニックスか?」

何かのモンスターの手足をむしゃむしゃしながら歩いている鬼姫とすれ違う。

アッシュ「違う、これから修行に行くんだ」

ポニテ「てかピクニックって」

鬼姫「えー!? 修行いいなー! あたしも修行行きたいっスー。アッシュ君と一緒に修行したいっスよー」

アッシュの腕に自分の腕を絡める鬼姫。

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン(((あんたもう最強クラスじゃん!)))

ハイ(あ、アッシュ先輩に近い……)

聖騎士「ぶるぅぁああああ……修行ぉだとぉぉ……? この我もぉ、まぁぜぇるがぁあいいいいいいいいいいい!!!!」

窓に張り付いてぶるぅあぁああ言ってる聖騎士。

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((ツッコミが間に合わない!)))

714

--東の王国、外--

勇者「修行バカばっかいるからとにかくここを離れるわよ。ぴゅーーい」

ばさっばさっ!

グリフォン「サーイエッサー! お久しぶりであります教官殿!!」

ばさー!

空からグリフォンが舞い降りる。

ポニテ「おっひさー!」

勇者「ではこの子達を失われた王国まで届けてくるわ。その間の留守しっかり頼むわよ、盗賊」

盗賊「あぁ、任せとけ。ここにはユー君とか五柱とかフォーテちゃんとか凄いのいっぱいいるからな! 彼らならきっと大丈夫だ!」

勇者「人任せにするなよ」

完全に他人事な盗賊だった。

勇者「……じゃあ、行って来るから」

盗賊「おう、心配すんな。しっかりやってこい」

ばさっ、ばさっ、ばさっ!!

フォーテ「うえぇええええ!! お姉ちゃんが行っちゃうよおおおおおおおおおお!!」

地面が漆黒の闇へと変わり、盗賊が少しずつ地面に埋まっていく。

715

--空--

ばさっばさっ!

ハイ(しかし修練の塔、か……確か前の時に一度だけ名前を聞いたような気がするけど、どんな場所かわからないからな……でも勇者さんがここまで自信満々に言うくらいなんだからきっと凄いところなんだよね? そんな場所で先輩達が修行を積んだら魔王側もただじゃすまないと思うんだけど……妨害は無いみたい……もしかして、何度繰り返してもこの修練の塔のイベントは発生しなかったのかな?)

ハイはグリフォンの背中で考えている。

ハイ(……ありえるかも。特別なイベントとイベントが偶然合わさることで発生するようなイベントだったとしたら。例え何度繰り返しても取りこぼしちゃうイベントとか……)

びゅごおおおおお!!

勇者「風属性移動速度上昇魔法レベル4」

アッシュ「やるな。さすが先代勇者……移動速度上昇魔法レベル4!」

グリフォンに魔法をかけあってどんどん飛行スピードを速めている二人。

ギュン!!

グリフォン「ぎゃふぁっ! か、風で息ができないで、あります!」

ポニテ「羽ばたくの止めろよ」

レン「っていうか今までアッシュがかけてた移動速度上昇魔法って、もしかして毒属性なのかにゃ? 毒のスピードアップってどういうことなのかにゃ?」

ハイ「ど、ドーピングもほら、一種の毒みたいなところあるじゃないですか。だから多分……それかと」

※アッシュの補助魔法は無属性でやってます。

716

--失われた王国、入り口--

ばさっばさっ

占師「ほっほっ。やってきたねぇみんな。待っておったよ」

失われた王国に着くと出てきたのは占師。

ポニテ「おばあちゃん、やっほー!」

占師「はいはいやっほー」

ぱんぱんぱん

ポニテ、占師「「いぇーい!」」

と手を合わせる二人。

トサッ

占師「おーおー、勇者ちゃんもやっほー」

勇者「いきなりだけどお婆ちゃん、時間が無いの。さっそく修練の塔を使わせて頂戴」

占師「ほっほっ、わかってるよ。さぁみんなついてきなさい」

……ざり

ハイ「?」

その時ハイは何かの物音を感じて背後を見た。

ハイ(気のせい……かな?)

717

--失われた王国、修練の塔入り口--

占師「ほっほっ。ついたついた」

ひゅおおおおおお

ツインテ「これが……修練の塔……」

アッシュ「なんだかデザインが……」

ポニテ「芸術が爆発しそう……」

レン「ぱくりにゃ」

ふよふよふよ

ぴっち『お、ツインテ様達だっぴ。やっと来たのかっぴ』

ツインテ「あっ、ぴっちちゃん! お久しぶりです!」

ぱっち『ぱっちもいるっぱ。お久しぶりっぱツインテ様』

ふよふよふよ


レン「修練の塔の周りに妖精がいっぱい飛んでるにゃ。これも修行に必要なのかにゃ?」

占師「うむ。時間に関することをするには妖精の力を借りるのが一番だからねぇ」

718

--失われた王国、修練の塔入り口--

ポニテ「時間に関する……? わー、なんだか本格的にそれっぽい! 部屋の中の一年が外の一日相当になりそう!!」

ハイ(……あれ?……妖精は確か時間を遅める方、だったよね? つまりそれはどちらかというと部屋の中の一日が外の一年になる浦島方式だったような)

占師「気づいたかね運命の子よ」

占師はそっとハイの肩に手を置いた。

占師「だがきっとハイちゃんが考えていることとも違うよ。これは時間を早めたり遅くしたりするもんじゃないんだ。時間旅行の一種なのさ」

ハイ「時間、旅行……?」

占師「そうさ。そこでみんなは確実に強くなる。あの人らの修行を受ければ、ね。さ、時間がもったいないよ。入った入った」

占師は入り口を指差す。

占師「行ってらっしゃいみんな。そしてそこで、誰が5人目の勇者なのか、答えを出しておいで」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「」」」

占師「修行が終わる頃にはきっと、答えがでてるはずだから」

719

--失われた王国、修練の塔入り口--

ツインテ(勇……者)

アッシュ(……俺としたことがすっかり忘れていた)

ポニテ(私達そういや、誰が勇者になるか勝負しながら旅してたんだったっけ……)

三人はお互いの顔を見つめあった。

ハイ(! 世界を救うには五人の勇者が必要……確かそんな話をしていましたね)

ハイは勇者の顔を見る。

ハイ(勇者の力を持つのは、勇者さん、十代目さん、ユーさん、そして僭越ながら私……つまり後一人足りない……)

ハイはツインテ達を見る。

ハイ(後一人がここにいる……そうか、確かに修練の塔は必要なはずだ……最後の一人を見つけるために……勇者が五人集まらないとバッドエンドを覆せないって、そう言ってましたもんね)

アッシュ「……ふん、今更だな。俺は……この中の誰が勇者であろうと構わん」

首を鳴らしながらアッシュが入っていく。

ツインテ「……そうですね。でも……修行怖くないといいんですが……」

おどおどと入っていくツインテ。

ポニテ「……五年ぶりくらいの最初の設定思い出した気がするよー、なっつかしー……まぁいいや! 行って来るね! ママ! お婆ちゃん!」

手を振りながら入っていくポニテ。

720

--失われた王国、修練の塔入り口--

レン「なるほど、そういうことなのにゃ……こうなりゃなんとしてもレンの力でツインテを勇者にしないとにゃ」

   ぴしっ

ハイ「」

どんっ

レン「ぶっ! 何立ち止まってるのにゃハイ。さっさと塔の中に入って欲しいのにゃ」

勇者「? どうしたのハイ。後は貴女達だけよ?」

その時になって、ようやくハイは気づいた。

ハイ「し、しまった……これ、だったんだ」

勇者「?」

バッ!

ハイは後ろを振り返る。

ハイ「!」

すると失われた王国の入り口辺りに一匹のガーゴイルがいるのを見つけた。

ガーゴイル「……にや」

ハイ「勇者さん!! 急いで東の王国へ戻りましょう!!」

勇者「!? ちょ、何を言ってるのハイちゃん! 貴女はここで修行をつけるのが先」

ハイ「ビィは、ずっとこの時を待ってたんですよ!! ビィはループの中で修練の塔に入ったことがあるんです!!」

勇者「……え?」

ハイ「ビィは勇者候補の三人がいなくなるのを待っていたんです!!」



--東の王国、近隣--

ダーク牧師「情報来ました。どうやら修練の塔とやらに三人が入ったようです」

ビィ「オッケーでーす。あそこは一度入ったら簡単にはでてこれないですからねぇ。ではでは~……」

ビィの後ろには

銀蜘蛛「」

桃鳥「」

茶肌「」

ヤミ「」

蝿男「」

ウェイトレス「」

脳筋「」

ザンッ!!!!

魔王が勢ぞろい。

ビィ「ラストバトル~始めちゃいましょうか★」

エイプリルフール企画は野球で最終決戦するルートのお話を描こうと思ってたりもしていたんですがねぇ……。

復活してそうそうごめんなさい。来週の月曜はこれるかわかりません。ただGW中に複数回来る予定ですのでなにとぞ……。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

大変遅くなってしまいました……約束も守れずにすみません。いつか少しずつペースをあげたいと思うのですが、とりあえずならさないと……。


エイプリルフールに書く予定だった野球のネタのメンバーだけでもここに書いておこうと思います。



 勇者側スタメン
一番ショート   アッシュ
二番セカンド   賭博師 
三番ピッチャー  ポニテ
四番センター   テンテン
五番キャッチャー 変化師
六番レフト    鷲男
七番サード    射王
八番ファースト  侍
九番ライト    勇者

 控え
カブト
レン
ツインテ(マネジ兼任)
盗賊(監督兼任)
ハイ
ユー
マッスルひげ
がちむち
屈強な男

コーチ 軍師、参謀長



 魔王側スタメン
一番ピッチャー  銀蜘蛛
二番キャッチャー 桃鳥
三番ファースト  茶肌
四番セカンド   腹黒
五番サード    ヤミ
六番ショート   蝿男
七番レフト    ウェイトレス
八番センター   脳筋
九番ライト    魔王勇者

 控え
トリガーが申請し忘れたため無し

監督 トリガー


って感じです。それでは投下していきます。

721

--東の王国--

ドォン!! ドゴオォオン!! パラパラ……

参謀長「……どうやら来たようですね」

軍師「そのようだぜぃ」

代表「ふ……勇者さん達が出かけて手薄になったこのタイミングでの襲撃……」

三人はくいっと眼鏡をあげる。

参謀長、軍師、代表「「「予想通り!!!!」」」

バンッ!!

隈を作った三人は一斉に立ち上がり、作戦会議室から外に出た。

軍師「プラン55発動だぜぇい!!」

722

--東の王国、A--

ドォオン!! ドドドオンン!!

ダーク牧師「ふははは! どうです?……三強などとうに凌駕したこの最強の力!!」

ガーゴイル1「ぐぎゃああああーーー!!」

ガーゴイル2「ぎゃぐがあああああ!!」

モンスターを指揮するダーク牧師と、それに対峙する完全装備の兵士達。

東兵士「魔族やモンスター共をここで食い止めろ!! 人々に指一本でも触れさせるなーーー!!」

南兵士「おうとも!! 我らの武芸見せてやる!!」

わー!! わー!!

ダーク亜人王「多国籍軍ですか……人種の差を乗り越え手を取り合う……美しい光景だ。だが」

ずんっ!! ドガーーーーン!!

北兵士「がわーっ!?」

ダーク亜人王が四股を踏むとそれだけで数十人の兵士達が吹き飛んだ。

ダーク亜人王「――もう遅い。今更遅い! お前達には死しか残されていないのだ!!」

723

--東の王国、A--

??「そいつはどうかな!」

ザシャアァア!!

ダーク亜人王「! 貴方は……」

ダーク亜人王の硬い肌を槍がなでた。

槍兵「ちっ、傷一つつかねぇかよ。本気でやったんだがなぁ……」

虎男「亜人王……様」

ざんっ!

西兵士「!! 三強方が来て下さった!! 皆、ここが踏ん張り時だぞーー!!!」

おおおーーー!!

影月「……やれやれぇ、これまた骨の折れそうな相手やっちゃな。わいの人生いっつもこんなんやで」

ぽろん

吟遊詩人「皆も皆で大変なはず。文句ばかりじゃいけないですよ~」

影月「まぁ……そうやな」

ダーク牧師「……魔族化した私達を、たったこれだけの人数で止められるとおもっているのですか? はっ! 笑わせてくれる。メインディッシュの前に、遊ばせてもらうとしますかぁ!」

724

--東の王国、B--

オオオオオオオオオオオオオ……

ケンタウロス「……うーん、ちょーっと……分が悪い、かな……」

ダーク鬼亜人「……」

ダーク先生「確かにコレは……厳しいね」

B地点で三体の亜人を待ち構えていたのは、

フォーテ「あはははっ! きたきたーっ、三人もきたー! これなら僕の準備運動にもってこいだねっ!……せめて僕の体温まるまでは壊れないでねっ……?」

邪悪な笑みを浮かべるフォーテ。

ケンタウロス「退却を提案するわ」

ダーク鬼亜人、ダーク先生「「異議なし!」」

725

--失われた王国、修練の塔入り口--

ひゅおおおおお……

勇者「……ポニテ達三人がいなくなるのを、待っていた……」

勇者はハイの言葉を口に出して繰り返した後、

バッ!

勇者「雷属性攻撃魔法、レベル3!」

バシィィィィィー!!

ガーゴイル「!」

背後の物陰に隠れているガーゴイルに向けて魔法を放った。

ばりばりばりばりばりーーー!!

ガーゴイル「ぐ、ぐぎゃああああああああああああああ!!」

どすん、ぷすぷすしゅぅーー……

勇者「……確かにあの三人は私達の切り札となる存在だけど……でもトリガーがそこまであの子達を警戒するものかしら。いなくなるのを待たずに攻めてくるんじゃ……」

ハイ「前回もトリガーはツインテ先輩達のことを警戒していました。なにせ、あの魔王になった勇者さんを直接送り込んできたんですから」

勇者「!……ハイちゃん、なぜそれを今言うの?」

ハイ「え?」

勇者「その情報をなぜ今まで黙っていたの? ハイちゃんらしくもない……」

ハイ「……あ」

726

--失われた王国、修練の塔入り口--

ハイ「あ、あれ? 確かに、なんで? 私……」

勇者「!……そういうことか。グリフォン!」

ばさばさー!

グリフォン「イエス! マム!!」

勇者(……私達全員の思考が少しずつ狂わされてる……腹黒の捨石作戦には他にも狙いがあったということか……あいつが死んだ時に思考撹乱系の魔法が発動するようにしかけられていたんだ……)

バッ!!

勇者はグリフォンに飛び乗った。

勇者(大体私達が本拠地として計画していたのはこの失われた王国だったのに……なんで、東の王国なんかにしてしまったんだろう……!!)

ハイ「ゆ、勇者さん」

レン「なにやらピンチっぽいにゃね」

勇者(どうする……ハイちゃん達を連れて行くべきか否か。出来ることならハイちゃん達にもパワーアップして欲しい。けど)

ハイ「勇者さん、私達も連れてってください!」

レン「!」

ハイ「とても嫌な予感がします……今私達が行かなきゃ全てが終わってしまうような……」

勇者「ハイちゃん……」

ハイ「パワーアップも何もかも世界が残っていてこそです! 滅ぼされた後に修行を終えたって何も残りません!」

勇者「!」

ハイ「それに……ビィを倒せるのは、多分私だけです」

勇者「……」

ハイの真っ直ぐな瞳を見た勇者は迷わなかった。

勇者「……わかった。乗って」

勇者はハイ達に手を伸ばす。

ハイ「はい!」

727

--東の王国、A--

ダーク亜人王「ぬうううううううううううううあっ!!」

ドオオオオオオオオオオン!!

ダーク亜人王の掌底打ちを交わした槍兵、しかしその攻撃は後ろの城壁へと命中し、

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

槍兵「! おいおい嘘だろ……?」

虎男「!! 城壁が破壊された……がお」

影月「……やー、めちゃくちゃ硬いわいでも、あれはさすがに受けたくないでぇ……」

ひゅんひゅん!! ききん!!

雨のように降り注ぐ矢の援護射撃、だがダーク亜人王に傷一つつけることもできない。

吟遊詩人「歌で威力は強化しているんだが……きついね」

728

--東の王国、近隣--

どおおん! どごごおおおん!!

モンスターと人間達の戦争を遠くから見物している魔王達。

桃鳥「たーまやー。うふふ。中々楽しい見世物だな、って、私思っちゃいます」

銀蜘蛛「イーヨネーーー、ハヤクボクモマザリタイヨオォー」

脳筋「はっはっはっ。あの中には強い奴がいるんだろうなぁ」

ゴオオオオオオオオ!!

その時脳筋の眼に飛び込んできたのは東の王国の上空で竜騎士達を先導し、モンスターを撃退している聖騎士の姿。

脳筋「……いたなぁ、とびっきり強いのが」

ヤミ「……」

ウェイトレス「? どうかしたの? ヤミ君」

何かを考えるようにしているヤミに話しかけるウェイトレス。

ヤミ「……数万体のモンスターと数十人の魔族からなる我らが軍団が相手だと言うのに、人間共は戦力を出し渋っている気がしてな」

ウェイトレス「ほう……」

ウェイトレスは目を細めて東の王国を見る。

ウェイトレス「確かに。ギリギリおし止めておける程度の戦力しか出されてないかも。私達が直ぐ傍に控えてるからそれに備えてるのかな?」

ヤミ「ふっ……」

ヤミは笑う。

ヤミ「それは浅はかにもほどがある」

ウェイトレス「ばっかだねぇ……そんなんじゃすぐ終わっちゃうのに」

729

--東の王国、A--

どがががががぁああん!!

槍兵「ちぃ! おい、大丈夫か虎男!」

虎男「ぐ……問題ないがお……」

槍兵「問題ないわけあるかよ! もろに受けちまって!」

ダーク牧師「仲間の心配とは余裕ですねぇ!!」

槍兵「!」

ガーゴイル「ぎゅるるるあああああああああああ!!」

サッ!!

槍兵は繰り出されたガーゴイルの攻撃をすんでのところで避けた。

ダーク牧師(……妙ですね……なぜかあちらさん、攻撃らしい攻撃をしてこない……?)

どがぁああん!!

ダーク亜人王(何か他に狙いがあるのか?)「むんっ!!」

ドガガガガガガアアアアアアアアアアン!!

影月「ぐほっ!? つ、つーーー!! 堪忍してぇや! ごっついったいわー!」

730

--東の王国、B--

フォーテ「え? おじちゃんがあの災厄の鬼亜人なの? なーんだ。この程度だったのかぁ。がっかりー!」

ダーク鬼亜人「……」

フォーテは闇から生やした死者の腕で魔族達を捕らえていた。

ケンタウロス「……魔族が三体がかりだというのに……本物の化物か……」

オオオオオオオオオオオオオオオ

フォーテ「結局準備体操にもならなかったなぁ。ふぁああぁあ」

フォーテは退屈そうにあくびをする。

ダーク先生(? 止めを刺さないのか?)

フォーテ「むにゃむにゃ……これ以上遊んじゃったら死んじゃうし、早く始めてくれないかなー」

フォーテは頬を膨らませた。

731

--東の王国、C--

ぴぃいいん……

参謀長率いる沢山の兵士達が、青色に光る魔法陣を囲んでいる。

参謀長「――では、準備はよろしいですか?」

通信師「はい。いつでもいけます」

魔導長「こっちも大丈夫なの」

兵士達も皆頷く。

参謀長「……了解です。それでは、『魔族化解除魔法、発動!!』」

ヴン!!



--東の王国、A--

ズンッ……!!

ダーク亜人王「」

ダーク牧師「……な、んだ……この感覚は……?」

……しゅうう

槍兵「いててっ……ふぅ……やっと始まったみたいだな」

732

--東の王国、B--

ぎぎぎ……

ケンタウロス「!! あ、頭ん中がかき回される!!」

ダーク先生「だ、だだだ、だが……ふ、不思議な感覚です……」

しゅうぅうう……

フォーテ(おわー。邪気が消えていく……魔族を味方に引きずり込んじゃうなんて、面白いことを考え付く人がいたもんだよねーっ)



--東の王国、C--

ばちっ、ばちちっ

参謀長「ふう……」

魔導長「手ごたえはあったけど、様子はどうなの?」

通信師「今調べています。少々お待ちを……」

通信師は耳に手を当てて探っている。

733

--東の王国、A--

ダーク亜人王「ぐ、うぐ……!!」

ずんっ、ずずんっ!!

亜人王は頭を抱えながら暴れていた。

虎男「亜人王様!! どうかお気を確かにがお!! 貴方はとてもお強い方がお!! 魔王の呪縛など簡単に振り払ってしまえるがお!!」

たたっ

亜人王に駆け寄る虎男。

しゅうううぅううう

ダーク亜人王「ぐ!……この……ふざ、けたまね、をおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

虎男「!!」

亜人王は咆哮し、腕を振り上げた。

ぶおん!!

槍兵「あぶねえ避けろ!!」

影月「あかん! まにあわへん!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!








虎男「……はっ……はっ……」

しゅぅうう……

ダーク亜人王「ふー、ふー……よくも……よくも魔王どもめ!」

亜人王の拳は地面をたたき砕いていた。

槍兵「……ち。なんだよ、驚かしやがって」

ダーク亜人王改め、亜人王「……すまなかった虎男……魔王どもに利用された不甲斐ない私を許しておくれ」

虎男「あ、亜人王様!!」



--東の王国、C--

通信師「……成功です! 魔族化した皆さんは解放されました!!」

734

--東の王国、C--

わーわー!!

疾風「ふー……とりあえずひと段落やんな」

魔導長「……」

魔導長は椅子にこしかける参謀長をじっと見つめていた。

魔導長(魔族に変えられてしまったのなら、戻してしまえばいいだなんて……いくら準備期間があったからっておいそれと出来ることじゃないの)

魔導長は水の入ったコップを手に歩み寄っていく。

魔導長「はい。どうぞなの」

参謀長「あぁ、どうも。やれやれ、歳を取ると魔力の捻出も中々骨が折れます」

魔導長から渡された水を飲む参謀長。

魔導長「またまたー。全然若い外見してるなの。お父さん」

参謀長「いやいや、これでも相当歳をくって……え?」

735

--東の王国、A--

しゅうう……

ダーク牧師改め牧師「く……こんな形で利用されるなんて……屈辱です」

魔族達はすっかり正気に戻っているようだった。

槍兵「いや、しかしこりゃすげぇな……あの魔族が丸々俺らの仲間になっちまうなんて……」

槍兵は強力な力を発している魔族達を見て言った。

吟遊詩人「仲間になるというよりは、元の心を取り戻した、というべきかな~」

亜人王「……奴らの呪縛から解き放ってくれて礼を言う。姿こそ元には戻らないが、贅沢は言っていられない」

虎男「亜人王様……!」

ドスンドスン!

オルトロス「ぐああああああああああああああ!!」

そこに兵士数名を咥えたオルトロスが現れた。

槍兵「! っと、どうにかなったのは魔族だけでモンスターはそのままだ! 気を抜くなよお前ら!」

亜人王「私に任せろっっ!!」

どがあああああああああん!!

オルトロス「げひゅん!?」

亜人王の一撃で絶命し、崩れ落ちるオルトロス。

ずずずうーーーん。

槍兵「う、お……ワンパンかい……」

亜人王「これからは、共に戦おうぞ、人の子らよ!!」

736

--東の王国、近隣--

ずずーーん、どかーーーん

ウェイトレス「……」

桃鳥「ありゃ……魔族が奪われちゃいました……完全に形勢逆転しちゃってます」

蝿男「ひ、ひひ! お、面白いことを考え付く奴が、い、いるなぁあ」

ビィ「くすくす」

それを見てなおにやにやしているビィ。

ウェイトレス「……ビィ、あんた最初からこれわかってたの?」

ビィ「はい。わかってました★ ぜーんぶっ」

ウェイトレス「……だったら何か対抗策を打ったり出来たんじゃないの? せっかく作った魔族が全部あっち側に戻っちゃったのは少し痛いんじゃない?」

ビィ「そんなことないですよ。魔王である皆さんさえいれば何の問題も無いのです。全て私のプラン通りですよ」

桃鳥「! うおー、凄いですー。これすらもプラン通りだったのですかー! さすがと言わざるを得ません」

ビィ「えぇ、全ては……磐石なバッドエンドのために」

ウェイトレス「……」

737

--東の王国、B--

どかーん! どかかーーーん!!

ケンタウロス「よくも今までこきつかってくれたねぇ魔王共!!」

バルルルルル!!

ゴブリン「ぎゃーーーーー!!」

モンスター達を一掃していく元魔族達。

鎧兵士「うーむ……圧巻だ」

弓兵士「楽ちんだ」

どかーんどかかーん!!

フォーテ「こらこら気を抜いちゃだめーっだよ? おじちゃん達ー。本当の戦いはこれからなんだからさっ」

弓兵士「お、おうすまんフォーテちゃん。確かに油断しておった。肝に銘じるよ」

フォーテ「……」

フォーテは頬杖をつきながらビィ達がいる方向を見ていた。

フォーテ(さーて、もうすぐかな? うふふ……楽しみだなぁ)

フォーテの下で闇が蠢いている。

738

--修練の塔、一階--

ぴちょーん

ツインテ「う、うぅん……」

ポニテ「あ、ツインテちゃん起きた? おはよー!」

ツインテ「ポニテさんおはようございます……ここは」

ポニテ「忘れちゃった? 修練の塔だよ?」

ツインテ「! そ、そうでしたすみません、ボク頭が回ってなくて……あれ? なんでボク気を失って……」

アッシュ「時間の流れとやらに飲まれたんだろう。俺らも差はあれど気を失っていた」

ツインテ「アッシュ君……」

ツインテはきょろきょろと辺りを見回した。

ツインテ(……不思議な場所)

ツインテ達がいる一本の道以外は、全てジャングルのような原始的な場所だった。

アッシュ「……しかし来んな」

ツインテ「え?」

アッシュ「レンやハイだ。俺達がここに着てから随分と時間が経っている。なのにまだきやしない」

ポニテ「……外で何か不足の事態が起きたのかもね」

アッシュ「……だな」

739

--修練の塔、一階--

ツインテ「不測の事態、って……?」

アッシュ「わからん。だが、悠長に構えていていいはずがない。時間は有限だ。あいつらを置いて進むか待つか。選ばなくてはな」

ポニテ「私は……進んだ方がいいと思う。何かトラブルが起きてるんなら、さっさと強くなってとっとと帰還するのが一番だよ。出口は無いみたいなんだし」

アッシュ「珍しく意見が合うな。俺も同感だ。ただでさえここは時間の流れが掴めん。ぼーっとしてると何もかも手遅れになる可能性がある」

アッシュとポニテはツインテの顔を見る。

ツインテ「……ですね。ボクもそう思います。もしかしたら仲間と合流できないのも修行の一環なのかもしれませんしね」

アッシュ、ポニテ「「……それは考えていなかった」」

なるほどと頷くアッシュとポニテ。

アッシュ「……しかしこの三人パーティか。懐かしいな」

ポニテ「ふふっ、だね。私達の原点だよね」

ツインテ「……はい」

ツインテは立ち上がってアッシュ達の傍へ歩いていく。

ツインテ「……でも懐かしんでばかりもいられません。行きましょう。アッシュ君、ポニテさん」

アッシュ「おう」

ポニテ「うん」

ざっ!