組織は壊滅したーー

と聞くとハッピーエンドのように聞こえるだろう。

ところがそうではないのが現実だ。

確かに組織は壊滅し、多くの構成員が逮捕された。

中には逮捕されるのを良しとせず、自害した者も少なくなかった。

ジンもその一人だ。

しかし、最も大きな犠牲はこちら側の多くの死者だ。

スパイとして組織に潜り込み、殉職した
CIA局員と公安警察

組織の絡んだ事件を捜査したために殺害された若い刑事

人質として利用されることを避けるために自ら命を絶った女子高校生探偵

亡くした恋人の妹を庇い、ジンの凶弾に倒れたFBI捜査官

そして
「蘭…」
誰にでも優しくて、意地っ張りで、無鉄砲な正義感の強い女。
告白の返事を聞く前に目の前で事切れた。
結局何も守れなかったのだ。

コンコン

米花総合病院のとある病室をノックする。
返事はないが、鍵はかかっていない。
静かに扉を開け、病室に足を踏み入れる。

「なんだ灰原、起きてたんじゃねえか」
そこで目にしたのは病室の窓から外の景色を眺めている灰原哀。
しかし、心はここにあらずといった面持ちだ。
「ごめんなさいね、工藤君。ちょっと考え事してたわ」