貴音「人柱」 (24)

 
貴音「…。」

幾千の風が唸りを上げ、針の如くこの身を刺す。
晴れ渡る夜空は水面の様に波打ち大気が揺らめく

満天に煌めく星星の下で、わたくしは…。
 

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今宵、月は漆黒に輝いています。
闇の様に、黒く、黒く。
遂に、この時が来たのですね。

あの月が落ち来る その時が。
 

世界は混乱の渦中。
大衆は気休めの施設に逃げ込み、
一握りの富豪はこの星を発ちました。

終焉を前に、人々の体は透明と化し、胸の奥を曝け出します。

その混沌とした人の世には価値も美徳も存在せず、
わたくしにただ一つ、真実を映し出し 突き付けるのです。

人とは、とても醜いものだと。

しかし、その穢れ行く世界の中でさえ
変わらず美しく輝く命達が、わたくしを包み込みました。

貴音「ふふっ。…ええ。」

その誇りの中で過ごせた日々を、心から幸福に思います。


貴音「…」


貴音「…っ。」



無論、心得ています。
わたくしはこの日の為に生を受け、
使命を果たす為、年を重ねて参りました。

…瞼の裏でわたくしを照る光達に、少々目が眩んだだけの事。

元より、心など。

 
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貴音「…時間の様です。」


今こそ
人柱となるその時
 

虚無の白色と
無限の時間の中で
ただ一人、存在し続ける
ただ一人、永遠に…。


貴音「…。」


貴音「参ります。」
 

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貴音「…っ。」
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覚悟など、生を授かった瞬間から…決まっていた筈なのに…。
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震えが
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どうして…っ…っ
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貴音「っっ…」
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守ると…誓ったのに…っ
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無音
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永遠
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虚無
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孤独
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余りにも…
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こわい・ ・ ・

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貴音「っ…っっ・・・」
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貴音「響ぃ…っ。」

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「たかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

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貴音「!!!???」
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響「一人で行くな!!!貴音!!!」

貴音「響!!??」
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響「がっ!…ぐぎぎぎっ…待て…っ!貴音ぇ…!!」
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貴音「ひ・・・響!!何故ここへ…!!」
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貴音「ひ・・・響!!何故ここへ…!!」
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響「じっ…自分をっ…!なめるな…ッ!!」
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響「貴音の事はっ…何でも…お見通しなんだっ…!!」
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響「勝手にこっそり死ぬ…なんて……許さないっ…!!がぁぁッッ!!!!」
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貴音「な… 何故…っ!! 何をしているのです!!??来てはなりません!!!!」
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響「…っへへへ…来るなと言われたらっ!ぐっ…な、なおさら…!行きたくなったぞ…!!」
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貴音「なりません!!!!戻りなさい!!!貴女は!!響は!!生きて!!!!でなければ…何の為に…っ!!!」
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響「貴音がいない明日を生きる意味なんてないんだ!!!!!」

貴音「家族を!仲間を!時間を!!全てを捨てるつもりですか!!!」

響「お前を失いたくない!!!!!!!」

貴音「!!!」
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響「ぐっ」
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響「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
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貴音「…ひび…き…っ」ポロポロ

響「泣くな…っ!!貴音っ…!!!」

貴音「…っ…」
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貴音「…だ、…駄目です…っ」
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貴音「なりません…なりません…!!!!!」
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――――――
貴音「貴女は生きなさい!!!響!!!こちらに来てはいけません!!!!!」
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貴音「無限の時間を!!わたくしと二人だけで存在する事になるのですよ!!??」
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貴音「年も取れない!!死ねもしない!!永遠に!!!!!何も無い空間で!!!!」
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響「ははは!!そりゃぁ良い゛や!!!」
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貴音「!!!」
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響「へへ…っ…覚悟するさー…貴音ー…!!」
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響「何百年…!!何千何万何億年…ッ…経っても!!バカやって…!!困らせてやるからな!!!!」
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貴音「!!!!」
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ガシッ!

貴音「!!」

響「ハァーー…ハァーー…えへへっ…」
―――――――
―――
響「つーかまーえた…っ」


貴音「ひび…き…っ…」ポロポロ


ギュッ

貴音「あなたは…あなたは…馬鹿です…大馬鹿です…っ」ポロポロ

響「はぁ…はぁ…あははっ。何を、今更。」

貴音「…っ…っ…」



貴音「ありが…とう…っ」

 
 
 

~超次元ひびたか遠藤~

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