貴音「あなた様と共に」 (18)
たまに・・・声が聞こえてくるのです
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貴音、ラーメンを食べに行こうか
貴音の髪はなんで白いんだ?
じいやって・・・誰だよ・・・
貴音!すごいぞ!トップアイドルまであと少しだ!
それはいつまでも耳から離れない愛しい鎖
早いものですね・・あなた様・・・
私はこんなにも年老いてしまったのですよ?
しわの増えたわたくしでも・・・
あなた様はまた笑って私を抱きしめてくださいますか?
首都に出てきたわたくしは右も左もわからぬ小娘でした
そんな私に手を差し伸べてくださったのはあなた様
きっぷの買い方がわからぬわたくしに声をかけてくださいました
そして貴方様が私にあいどるという道を指し示してくれた・・・
二人の初めての営業が終わったのち
あなた様はわたくしに約束をくださいました
必ずとっぷあいどるにすると
そしてわたくしはそんなあなたに誓いました
必ずとっぷぷろでゅーさーになっていただきます・・・と・・・
そんな縁で始まった
あなた様との二人三脚は苦難の多き道でしたね
しかし、壁を二人で乗り越えれば乗り越えるほど
わたくしはあなた様のことをよく知ることが出来ました
わたくしとは反対に、恥じらいなく自分をさらけ出すあなた様はまるで子供のよう
かっぷらぁめんはあなた様はうどんがお好きで
いつもわたくしと静かな論争を繰り広げましたね・・・
そんなところが子どもなのですよ?
でも
そんなあなた様だから、わたくしは惹かれたのかもしれません・・・
美希や春香のような愛情表現ではなく
あなた様の三歩後ろをついていく
そんなわたくしの愛情表現に気づかぬまま
あなた様はこの世を去ってしまった
まことにいけずです
多くのアイドルを支えるあなた様は忙しいお人でした
昔のように二人で営業・・・というのもいつの間にか無くなってしまった
さみしくないといえばうそになりますが
それでもわたくしがなすべきことは何も変わりませんでした
どんなに辛くとも、どんなに苦しくとも
決して逃げ出さないこと
あなた様は無理をするなといつもおっしゃいますが
困ったように笑うあなた様の顔を見ると
疲れなどわたくしは感じませんでした
わたくしはあなた様の笑顔が見たかったのです
日に日に強まる皆の愛情表現にあなた様は鼻の下を伸ばしておられました
わたくしは知っているのですよ?
年端もいかぬ娘の胸をちらちらと見ていたのを
そんなあなた様を見て、わたくしは嫉妬してしまいました
そんな光景から逃げるように事務所を出るわたくしをあなた様はすぐに追ってきました
すぐにわかりました
あのような大声で叫ばれては恥ずかしいではないですか
今でも夢に見ます・・・
何故あんなことをしたのかと
あなた様に向かって舌を出してからかおうとしたわたくしは気づかなかった
横から迫る自動車に・・・
脳裏に焼け付いて離れませぬ
私を押しのけて、車の前に出てしまったあなた様の顔を・・・
わたくしが最後に見たあなた様の顔は血で赤く染まっていました
そこから先の事は、あまり覚えていません
話に聞くと
酷く取り乱しており、事故現場ですでに息絶えたあなた様に縋り付き泣き叫んでいたとか
あなた様の遺影を前にして私はやっと自覚できたのです
もう、この世にあなた様がいないという事実に
皆が悲しみに暮れる中、わたくしだけが仕事に励みました
心無い雑誌はわたくしのことをひどく書きましたが
わたくしは微塵も気にいたしません
約束ですものね?
あなた様を、必ず頂点に
あなた様の育てた、この四条貴音が頂点に立てば
あなた様も頂点です
誓った言葉を無下にして泣くほど
弱い女ではありません
しかしもうあなた様の元へ参ってもよろしいはずです・・・
契りも守り、あなた様もわたくしも頂点へ登り詰めました・・・
お土産ももちました・・・
うどんとらぁめんを二つずつ・・・
こうすれば争いは起きませぬ・・・
あぁ・・・眠い・・・
目もかすんできました・・・
あなた様・・・
貴音は誓いを守りましたよ?
あなた様を・・・とっぷぷろでゅーさーに・・・
今度はわたくしをあなた様の手で・・・とっぷあいどるに・・・
でも・・・その前に・・・
再び会うときはわたくしを抱きしめてください・・・
これきりのわがままです・・・
「もしかして・・・そこにおられますか?あなた様?」
貴音・・・
「ふふ・・・少々・・・・気が早いのでは?」
そんなことはないよ
「このまま・・・連れていってください・・・・」
あぁ・・・
「とても・・・ここち・・・・・・が・・・・・・・・」
長い間おつかれさま・・・貴音・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
本当に・・・・ありがとう・・・・
「よーし!お仕事終了!」
「貴音、ラーメンを食べに行こうか。」
「はい、あなた様。・・・フフッ・・・」
「ん?どうしたんだ?」
「いえ・・・・」
「変な奴だな?まぁいいや、行こうか。」
「はい、あなた様。」
「貴音はどこまでもあなた様についてゆきます。」
幾多の困難に出会おうと・・・
必ず越え
幾年離れ離れになろうとも・・・
必ず見つけ
どこまでもあなた様についていきます・・・
貴音は・・・永久に・・・・
あなた様と共に・・・
おしまい
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