ルイーダ「ごめんねぇ、今人いなくて…」(216)

折角なので最初から貼っていきます

勇者「そうですか…」

ルイーダ「とりあえず今、商人だけはいるんだけどどうする?」

勇者「じゃあ、折角なんでその人お願いします」

ルイーダ「分かったわ。商人さーん。勇者さんがお呼びよー」

商人「はーい!」テテテ

商人「どーもどーも!商人です。よろしくお願いしますねぇ」

勇者「あっ、こちらこそ」ペコリ

商人「それじゃあ早速なんですけど、この契約書にサインを…」ピラッ

勇者「契約書?」

商人「はい!雇用登録書です!」

勇者「へー」チラッ



契約書


1.毎月きちんと給料を払うこと

2.契約期間は半年。連続して雇いたい場合は更新期間内に手続きを
  済ませること。手続きがなされていない場合は契約解消とみなします

3.商人に戦闘など無茶な要求はしないこと

4.その他、人権にかかわるような指示は受け付けません
  不当な扱いを受けた場合、商人の方から契約を解消することがあります

商人「以上の内容に納得されたらハンコを…」

勇者「えっと……戦闘はしてくれないの?」

商人「商人ですから♪」

勇者「そうですか。……あの、ルイーダさん」チラッ

ルイーダ「残念だけど商人もその人だけなの」

勇者「……」

商人「どうします?別に私はどっちでも良いんですけど」

勇者「うーん…」

勇者(でも、いきなり一人旅するっていうのもなぁ…)

勇者「ちなみに、毎月給料払うことって書いてますけど
   幾らぐらいなんですか?」

商人「そうですねぇ。本当なら定額制の方が良いんですけど…」チラッ

勇者「う…」

商人「勇者さん、あんまりお金持ってなさそうですしねぇ」

勇者「たはは…」

商人「こういうのはどうでしょうか。勇者さんが私にお金を払う
   期日になったら、そのときパーティーが所持しているお金の
   1割をもらうということで」

勇者「つまり…お金がないときは安くて済むけど、たくさん持ってると
   支払う量が増えると?」

商人「そうそう!そういうことです」

勇者「……」

勇者(魔王を倒す旅なんだから、お金は貯まらないだろうし
   まあいいのかな?)

勇者(ちなみに今持ってるのは…)チラッ

勇者(100gか…)

勇者「うーん……よし!じゃあその条件でいいです」

勇者(やっぱり初めっから一人旅は不安だもんね。別の街で新しく
   仲間になってくれそうな人がいたら解約すれば良いんだし)

商人「毎度ありがとーございまーす♪ではでは、ここにハンコを」

勇者「はい」ポン

勇者「これで良いですか?」

商人「ええ、それでは私は今からあなたの従者です。なんなりと
   御用をお申し付けくださいませー♪」

勇者「あ、うん。こちらこそヨロシク」

商人「それでは早速、どうしましょう?」

勇者「そうだね。とりあえず街で必要なものを揃えたら次の目的地に
   向かいたいんだけど」

商人「目的地はお分かりで?」

勇者「えーっと……たしかここから東に旅の扉があって、そこから
   別の大陸に行けるって王様から聞いたんだけど…」

商人「左様ですか。ではでは大急ぎで旅の支度と参りましょうか!」

勇者「うん」

~~1時間後~~


勇者「……」

商人「ま、こんなトコですかね」

              デデーン!!!

勇者「す、すごい。たった100gでこんな大荷物が出来上がるなんて…」

商人「ま、商人の腕の見せ所といったら値引き交渉ですから♪
   貴重なアイテムを格安で仕入れて来ました♪」

勇者「あ、ありがと。最初は不安だったけど、これならちゃんとした
   旅が出来そうだ」

商人「いえいえ~、じゃそろそろ行きましょうか?」

勇者「そうだね。夜になる前には着きたいし」

そんなわけで街の外


勇者「うぅ…やっぱり街の外は不気味だ…」

商人「ですねー」

勇者「その割には平気そうな顔してるけど?」

商人「そりゃー、仕入れとかする時に出慣れてますからー」

勇者「そうなの!?」

商人「そーですよー!街に店とか構えてる商人は危ないから
   外に出たがらないんですけど、私みたいな店を持ってない
   商人は外で仕入れなきゃ商売にならないですもん」

勇者「仕入れ?街の外で?」

商人「そーですねー」キョロキョロ

商人「あ!ほらあそこ!」

勇者「なに?草?」

商人「これ、薬草と毒消草です」ササッ

勇者「え?」

商人「店の道具屋は自家栽培したり他の店から買い付けたり
   してますけど外にもちゃんと自生してるんですよ♪」

勇者「へ、へー」

商人「ま、商売用に作られたんじゃないんで効果は薄いんですけどね」

商人「それでも薬草は薬草に間違いないですし、毒消草だってちゃんと
   毒の治療が出来ますから、旅するなら街で買うより外で調達しちゃった
   方が断然お得です!」

勇者「たしかに…」

商人「そんなわけで私はいつも…」


???「ピギー!」


商人「!」

勇者「モンスター!?」バッ

スライム「ぴぎっ、ぴぎー!」

勇者「くっ…」チャキ

商人「慌てないでください。大丈夫ですよ」

勇者「いや、でも…」

スライム「ぴぎー!!!」ダンッ!

勇者「あ、危ないっ!」


       バチバチバチバチ!!!


スライム「ぎゃん!?」プシュー

勇者「……え?」

商人「ほらね」

勇者「ど、どうなったの?スライムが商人に体当たりしたと思ったら
   突然火花が…」

商人「その答えは、これです」チャプン

勇者「香水?」

商人「いいえ、聖水です。これを身体にふりかけておくと弱いモンスター
   は聖なる力で近付けないんですよ」

勇者「……」

商人「ちなみに強いモンスターにかけても一応ダメージは与えられる
   んですけど、それはちょっともったいないかもしれないですね」

勇者「……」プルプル

商人「どうしました?」

勇者「す、すごいじゃないか!酒場で契約書見せられた時は
   ぼったくりじゃないかと思ったけど意外に使える!」

商人「は、はあ…」

勇者「これなら安心して旅が出来るよ!ありがとう!」ガシッ

商人「い、いえ、こちらこそ…」

勇者「よーし!じゃあ旅の扉目指してしゅっぱーつ!」

商人「おー!」

~~5時間後~~


勇者「……」

商人「……」

勇者「ここ、どこ?」

商人「さあ…」

勇者「うわぁぁぁぁぁ!?旅をはじめて一日も経ってないのに迷ったぁぁぁぁぁ!?」

商人「勇者さんがいけないんですよ!?街道から外れたら迷いやすいって
   忠告したのにっ!」

勇者「そんなっ!?商人だって「珍しいアイテムあるかもー♪」とか言って
   着いてきたくせに!」

商人「いいえ!勇者さんが「勇者とは未知に挑戦する者なんだ!」とか
   カッコつけてずんずん進むからこうなるんです!」

勇者「全部ぼくの所為だって言うの!?」

商人「違うんですかー?」

勇者「ぐぬぬぬぬぬぬ…」

商人「むむむむむむむむ…」

         ぐー

商人「あ…///」

勇者「ぷっwww怒ったってお腹の音は正直だね」

         ぐー

勇者「あ……」

商人「にひひひひ…勇者さんだってお腹すいてるんじゃないですか!」

勇者「ぬぬぬぬぬ…」

商人「むむむむむ…」

          ぐー     ぐー

勇者「……」

商人「……」

勇者「ねえ」

商人「はい」

勇者「どっちが悪いとか不毛な争いだと思うんだ」

商人「ですね…」

勇者「とりあえずお腹すいたんだけど、何か食べる物持ってる?」

商人「持ってたらとっくの昔に食べてますよ」

勇者「だよねー」

商人「あはははははは…」

勇者「商人なんだったら旅に出る前に水と食料くらい用意しといてよ!」ダン

商人「たった100gで用意なんて出来るワケないじゃないですか!」ダン

勇者「そんなこと言ったら、次の目的地ついたってお金ないんだから
   結局宿にも泊まれないし食事もなにも出来ないじゃないか!」

勇者「その大きな袋につめこんだ荷物ちっとも役に立ってないんだけど
   どういうことなの?」

商人「や、役に立たないとは心外ですね!これでも色々厳選して旅に役立ち
   そうなのだけ揃えてきたのに!」

勇者「爆弾や笛なんてあってもお腹は膨れないんだよ!」

商人「う…」

勇者「というより、そもそもキミの袋に入ってるアイテムって旅に必要
   なさそうものばっかりじゃないか!」

勇者「次の街に着いたら売るからね、それ」

商人「や、やめてくださいよ!せっかく骨董市で安く仕入れたのに!」

勇者「骨董市?」

商人「あ……」

勇者「なるほど。つまりキミは魔王を倒すための軍資金を趣味の骨董に
   費やしてしまったと…」

商人「いや、あの…」

勇者「売る。ぜったい売る!全部売る!」

商人「いやぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇぇ!?」

勇者「キミには給料も払うんだ。旅の軍資金を趣味に使わせる
   わけにはいかない」

商人「そんなぁ…」

勇者「まったく。魔王を倒す旅をなんだと……ん?」

商人「どうしました?」

勇者「あれ、村じゃない?」スッ

商人「えっ、ここらに村が?……って本当だ!良かったー♪」

勇者「とりあえず、今日はあそこで休もう」

商人「さんせー!」

勇者「それから…」ズイッ

商人「あっ!」

勇者「お金と袋はぼくが預かっておくから」

商人「そ、そんなー」シクシクシクシク

勇者「泣いたってダメ!これからの旅は経済的に行かせてもらうよ」

商人「私、商人なのにぃー」シクシクシク

そんなわけで村の中


勇者「じゃ、ぼくこの袋のアイテムお金に換えてくるから
   情報でも集めといてくれる?」

商人「はーい…」シクシクシク

勇者「……」

商人「うっ、うっ…」

勇者「…そんなに泣かないでよ。これじゃどっちが悪いか
   分かんなくなるじゃないか」

商人「だってぇぇぇ」シクシクシク

勇者「…はぁ。じゃ、このアイテムの中から一つだけこれは売られたくない
   って奴選びなよ。それだけは残しとくからさ」

商人「え?」

勇者「けど、一つだけだからね?そうじゃないと今日の宿代だって
   出るかどうか疑問なんだから」

商人「あ、ありがとっ♪」

勇者(やれやれ、ぼくも甘いな…)

商人「うーんとねー……それじゃあ、コレ!」

勇者「爆弾?そんなんでいいの?」

商人「うん!他のは似たようなのありそうだけど、この爆弾だけは
   1個しか置いてなかったし!」

勇者「ふーん。ま、それが良いならそれでも良いけど」

それから2時間後


勇者「ふぅ…」

商人「あっ、お帰りなさーい。どうでした?」

勇者「……」スッ

商人「えっ、7gですか?くれるんですか?」

勇者「あげるワケないでしょ。袋の中のアイテム全部売っても
   これだけにしかならなかったんだよ」

商人「う、うそ!?」

勇者「ほんと」

商人「そんなぁ……100gもしたのに…」シクシクシク

勇者「まあ、そんなワケだから宿も一人分しか取れなかったよ」

商人「え?」

勇者「つまり、ベッドは1つってこと!」

商人「……ありがとう、勇者さん!私の為に野宿するなんて!」

勇者「なんて都合のいい頭なんだ…」

勇者「残念だけど、ぼくは譲るつもりはないからね」

商人「ふっ……良いんですか、私にそんなこと言っても?」

勇者「なにっ?」

商人「私にはこの契約書がある限り最低限の人権は…!」バッ

勇者「あっ…!」

商人「ふふふふふふ…」

勇者「な、なんてことだ…」

商人「それが分かったら大人しく野宿の準備でもしてくるんですねぇ!
   ふふふふふふふふふっ」

勇者「ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ…」

商人「……とまあ、冗談はこれくらいにして行きましょっか、宿」

勇者「え?」

商人「バカですねー。ベッドが1つしかないんだったら二人で一緒に
   寝たらいいじゃないですか」

勇者「え?えぇ?」

商人「それともまさか、女の人と一緒に寝るのが恥ずかしいんですか?
   勇者なのにぃ?」

勇者「そ、そんなことないさ!」

商人「だったらいいじゃないですか、ね?」

勇者「……しょ、商人は平気なの?男と一緒に寝て……」

商人「勇者さん、何かいたずらでもするつもりなんですか?」

勇者「し、しないよっ!」ブンブン

商人「だったら大丈夫ッスよ」ニコッ

勇者「う……」

やど!



勇者「……」ドキドキドキドキドキ

商人「じゃあ私、先にお風呂借りて汗落として来ますね」

勇者「う、うん。どうぞ…」ドキドキドキドキドキ

商人「それじゃお先にぃ」ガラッ

勇者「……」ドキドキドキドキドキ

勇者「お、落ち着け…落ち着くんだ…大丈夫…変に意識することなんてない。
   だって仲間じゃないか。仲間が同じ宿に泊まるのになにも変なこと
   なんてない。これは普通、普通なんだ。それにぼくは勇者だ。これくらい
   で動揺なんかしてどうする。たかが女の人といっしょのベッドで……
   いっしょのベッドで……」

勇者「……………………」

勇者「はっ!?ち、ちがう!違うから!ぼくはエッチじゃないぞ。
   エッチなんかじゃないぞ!ぼくは…」ブツブツブツ




商人「なに独り言呟いてるんです?」

勇者「しょ、商人?早かったね!?」

商人「そうですか?1時間くらい入ってたと思うんですけど…」

商人「そんなことより勇者さんも汗落として来た方が良いですよ。
   明日も旅は続くんですからしっかり休まないと」

勇者「そ、そうだね。そうする」

商人「んじゃ、私は村で集めた情報をノートにまとめて
   大まかな旅の計画立てときますね。今日みたいに
   迷子になるのはもう勘弁ですから」

勇者「うん。よろしく」

商人「はーい♪」

30分後


勇者「ふー、いいお湯だったぁ。お待たせ商人」

商人「zzzzz…」

勇者「商人?」

商人「zzzzz…」

勇者「疲れて寝ちゃったのか。ペン持ったまま寝ちゃってる」

商人「zzzzz…」

勇者(……こうやって寝顔見てると、商人ってかなりの美人だよね)

勇者(今日は迷子になったりいろいろと大変な目にもあったけど、
   商人がいてくれたおかげでけっこう助かったのも事実なんだよな)

勇者(ぼく1人じゃ途中にモンスターに襲われて、この村まで
   たどり着けたかどうかも怪しいし…)

勇者「……ありがと」ボソッ

商人「どう…いたしましてぇー…ムニャムニャ…」

勇者「…………もしかして起きてる?」

商人「むにゃむびゃ…」クカー

勇者「…………えいっ」ツンッ

商人「zzzzzz…」

勇者「寝てる、よね?まったく、無防備だなぁ…」プニプニ

商人「むがっ……!」

勇者「あはは、変な顔ーwww」

商人「うぅぅぅっ!」ガバッ

勇者「う、うわわわわわわっ!?」

勇者「ちょ、ちょっと商人!?ぼくが悪かったよ!もう顔突かないから
   どいてぇー!?」

商人「zzzzzz…」

勇者「うぅ…重い…」

商人「zzzzz…」

勇者(けど、なんか良いにおいするな…)ムクムクムク

勇者「げ……や、やば!」

勇者(お、落ち着け!気持ちを静めて冷静になるんだ!)

商人「zzzzz…」ぎゅー

勇者(だ、だめだぁぁぁぁぁぁぁ!?)ガビーン

勇者(胸が押しつけられて気持ちを鎮めるどころじゃない!)

勇者(で、でももしここで手を出したりなんかしちゃったら…)


  商人「勇者さんって最低ですね。旅の仲間に手を出すエロがっぱだったなんて」

  村人「うわぁー、勇者様ってむっつりだったんだぁ…」

  王様「おお!勇者よ仲間に手を出すとは情けない!」

  母「…………」


勇者(そ、それだけはダメだぁぁぁ!勇者としての威厳がぁぁぁぁ!!!)

商人「うへへへへー…」ぎゅー

勇者「な、なんとか耐えきるしかない…がんばれ、自分!」

よくじつ!



商人「おはよーございまーす、勇者さん」

勇者「お、おはよぅ」ドヨーン

商人「なんか元気ないですね?」

勇者「はは…ちょっと寝不足で…」

商人「大丈夫ですか?」

勇者「な、なんとか」

商人「……まあ大丈夫なら良いですけど今日はどうします?」

勇者「そうだね。今日はなるべく早く休みたいからもう出かけよう。
   早めに出て早めに次の目的地に着きたい」

商人「了解です」

勇者「で、次の目的地なんだけど…」

商人「はい。旅の扉を目指すんですよね?どうやら旅の扉はここから東
   に行った遺跡の奥にあるみたいです」

勇者「おお!ちゃんと情報が整理されてる」

商人「えっへん♪」

商人「でもですね。そこの遺跡に入るためにはなんでも鍵が必要だとか」

勇者「鍵?」

商人「はい。赤い扉があって、進むためには特別な鍵がいるとか」

勇者「鍵、ねぇ…」

商人「どうします?」

勇者「うーん…」

勇者「そうだ!その扉、この爆弾で爆破しちゃうってのは?」キラーン

商人「や、やめてくださいよ!もったいない」

商人「というより、それが勇者の発想ですか?」

勇者「あははははは…」

勇者「と、とにかく鍵の情報はないし、行ってみないと分かんないから
   行くだけいってみよう!」

商人「なんてアバウトな…」

勇者「旅なんてそんなもんだよっ。攻略本なんかないんだから。
   それじゃ出発~!」

商人「あっ、あと勇者さんもう一つだけ」

勇者「なに?」

商人「昨日の夜、私先に寝ちゃってたんですけど何もしてないですよね?」

勇者「出発~~~!!!」

商人「勇者さん!?」

~~3時間後~~


勇者「うぅ…」ボロッ

商人「まさか山越えしなくちゃならないなんて…」ボロッ

勇者「うん。しかも昨日と違ってモンスターに襲われる頻度が
   やたらと高いし…」

商人「それはあれですね。聖水の効果がないからですよ」

勇者「それでか…聖水ってもう持ってないの?」

商人「昨日迷子になって使い切っちゃいましたからねぇ…」

勇者「先行き暗いなぁ」

勇者「でも意外だったよ。契約書には闘わないって書いてあったのに、
   一緒に闘ってくれるなんて」

商人「仕方ないじゃないですか。二人旅なんだから勇者さんがやられ
   ちゃったら私一人でモンスターを相手にしなくちゃならないんですよ?」

勇者「だね」

商人「自慢じゃないですけどこんな山の中腹でモンスターと戦いながら
   一人で下山なんか無理です」

勇者「そっか。でもそんな理由でも一緒に戦ってくれる仲間がいるのは
   ありがたいよ。ありがとう、商人」

商人「えへへ…その代わり、給料上げて下さいね♪」ニコッ

勇者「おいっ」

商人「あと、他に仲間が増えたら私は絶対に闘わないと、
   先にここで宣言しときますっ!」

勇者「大きな声で威張る内容じゃないな…」シクシク

商人「ま、次の街に到着するまでは……ん?」

勇者「どうしたの、商人」

商人「あそこ!人が魔物に襲われています!」

        バシーン ガシーン

勇者「!」

勇者「大変だ!助けなくちゃ!」バッ

商人「待ってください!相手は10匹以上いるんですよ?
   それに私たちの体力だって」

勇者「だからって見捨てるワケにはいかないだろう!」

商人「勇者さん…」

勇者「…………でも、商人の意見も尤もだよ。このまま行ったら
   全滅するだろうね」

商人「だったら!」

勇者「だから、ぼくが囮になる」

商人「え?」

勇者「その間に、キミはあの人を助けてここから離れてくれ」

商人「勇者さんはどうするんです?」

勇者「……どうにかするさ!じゃ、頼んだよ!」バッ

商人「勇者さん!」



勇者「うおおおおおお!!!こっちだ化物ぉぉぉぉぉ!!!」ザンッ

男「!?」

魔物1「ぴぎゃああああああああああああ!?」

魔物2「ぐるるるるるっ!?」

魔物3「ふしゅううううぅぅぅぅぅ…」

男「あ、あなたは…?」


勇者「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ダダダダダ

魔物4「がうがうがうっ!」

魔物3「しゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ

勇者「せいっ!」ガキン


男「つ、強い。なんて強さだ…」

商人「感心してる場合じゃないッスよ!」ガシッ

男「!?き、キミは?」

商人「話は後です!いいからこっちに来てッ!」グイッ

男「うわわわっ…」

………
……



岩陰


男「はあっ、はあっ、はあっ!」

商人「ここまで来れば大丈夫っスね。勇者さんの方は…」コソッ


勇者「うおおおおおおおおお!!!」ガキン ガキン


男「すごい……あれなら全員倒せる!」

商人「……いいえ、あのままじゃ死んじゃいます」

男「そんな!あんなに強いのに?」

商人「見て下さい。さっきから勇者さんあそこから一歩も
   移動してないんです」

男「!」

商人「たぶん、足に攻撃されたのをかわしきれなかったんでしょう」

商人「今は上半身をひねって攻撃をかわしてますけど、下半身が動けない
   のが敵に気付かれたら…」


魔物6「!」

魔物6「があああああっ!」ブンッ

勇者「うああああああああああ!?」グシャッ


男「ばれた!?」

商人「不味い!」

男「ど、どうしたらいい?彼はわたしを助けるために…」バッ

商人「落ち着いてください!あんたが行ったら勇者さんがなんで
   やられてるのか分からなくなるじゃないですか!」

男「しかし…!」

商人「………くっ」


魔物7「がああああああああっ!」ブンッ

魔物8「きしゃああああ!!!」ザシュッ

勇者「あぁぁ…あぁ…ぁ…」ヨロッ


商人「勇者さん!」

勇者(や、やば……これ…死ぬ…)

勇者(父さん…母さん…じいちゃん…ごめん…)

勇者(魔王を必ず倒すって約束したのに……こんなに早くやられるなんて…)


魔物9「ぎゃしゃあああああ!!!」ブンッ


勇者(商人、きのう会ったばかりなのに…迷惑かけて、ごめ…)


商人「勇者さん!」


勇者「!」

勇者「しょ、商人…?」

商人「そのまま倒れ込んで下さいっ!」

勇者「え……」

商人「わあああああああああああああああああ!!!!!」ブンッ!

勇者「あ、あれは…!」


魔物9「!?」クルッ


            カッ!!!


     ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!


魔物9「ぎゃああああああああああああああ!?」プススプスプス

商人「魔物ども!勇者さんから離れなさい!それとも……もう一発
   喰らいたいッスか!?」


魔物7「ぐるるるる…」タジッ

魔物10「ぎるるるるるるん…」ジリジリッ


商人「どうするッスか!?」


魔物4「アオオオオオオオオオン!」バッ ババッ


男「に、逃げた…?」

商人「…………ふう」

商人「は、ハッタリが効いて良かったっす。爆弾あれ1個しか
   なかったからあのまま襲われてたら全滅してた…」ペタン

男「はは…そ、そうだったんだ…」

勇者「がはっ!」バタン

男「!」

商人「勇者さん!」

勇者「がふっ…がふっ!」

男「こ、これはいけない。すぐに医者に見せないと…」

商人「あんた、医者がいる場所知ってるんすか?」

男「それは……」

勇者「うぅ…」

男「……とにかく魔物が去ったとはいえここは危険だ。
  わたしの家にてくれ。ここよりはマシな筈だ」

商人「分かりました。出来るだけ早く案内お願いします」ペコッ

男「ああ、分かってる」

男の家


商人「ここが…」

男「わたしの家だ」

商人「鍵屋さんだったんですね」

男「まあね。鍵を作るための特殊な鉱石を探しに採掘に出かけてたんだが」

商人「運悪く魔物に襲われてしまったと」

男「そういうわけだ」

商人「ところで……」

男「ああ、この辺りにはわたしの家しかないんだ。もちろん医者も…」

商人「……」

男「ちなみに山を降りたところに村があるんだが…」

商人「知ってます。その村から山を越えようと登ってたんですから」

男「じゃあどれくらい掛かるかは分かってるね?」

商人「軽く3時間はかけて登ってきましたからね。勇者さん担いで
   魔物と戦いながらだと早くても半日は掛かる…」

男「その通り。わたしとしても彼をなんとか助けたいんだが……すまない」

商人「……っ!」

男「一応、一人で暮らしてるから応急手当の道具くらいならあるが…」

商人「お願いします」ペコッ

男「分かった…」


勇者「う…」

商人「勇者さん…」


商人「…………」

商人「鍵屋さん。勇者さんをお願いしますね」

男「え?」

商人「私、ちょっと出かけて来ます」

男「出かけるって一体どこに?」

商人「ちょっと村まで」

男「まさか医者を連れて来るつもりか?無理だ。間に合う筈…」

商人「間に合わなくても!」

男「!」

商人「間に合わなくても……なにもやらないよりはマシじゃないですか!」

商人「健康な人間が往復したら、病人担いで山を越えるよりも早い筈です。
   違いますか!?」

男「……」フルフル

男「分かった。私が看てるから行って来なさい」

商人「ありがとうございます!」タタタタタ  バタン


勇者「…うぅ」

男「…………」ギュ

男「……頑張れ。死ぬなっ!」




商人「勇者さん、絶対に死なせたりなんかしないですからね!」

商人「なんたって、まだ私はお給料も貰ってないんですからっ!」

商人「それに私用の爆弾の請求だってしなくちゃいけないんですから
   こんなトコで死なれたら困ります!」

商人「絶対、死なせません!」タタタタタ

10分後


商人「はあ…はあ…はあ…」タタタタタ

商人「さっき鍵屋さんが襲われた近くまでは来れたっすね」

商人「あの魔物達、もういなくなってたらありがたいんだけど…」コソッ


魔物4「……」ウロウロ

魔物5「ぐるるるる……」ウロウロ


商人「げっ…いるし…」

商人(どうしよう……強行突破する?)

商人(勇者さんが3匹くらい片づけてたから、数は減ってる筈だけど)

商人(…………そうだよ。行かないと村までたどり着けないんだから!)

商人「よしっ!」ジャリッ

???「ぎるるるるるるるん…」

商人「えっ!?」クルッ

魔物10「がうっ!!!」ブンッ

商人「うわっ!?」ササッ

商人「ま、まさか後ろにもいたなんて!」


魔物4「!」

魔物5「ぐるるるるる!」


商人「やばっ!向こうにも気付かれた?」

魔物10「がうっ!がうっ!」ブンブン

商人「わっ!?わっ!?」サッ ササッ

商人「ま、まずい。このままじゃ囲まれる!逃げなきゃ!」

商人「ええええぃいっ!」ブンッ

魔物10「がふっ!?」ドカッ

商人「今だっ!!!」ダダダダダ

洞窟。。。


商人「はあっ、はあっ、はあっ…」

商人「ふう…なんとか撒けたかな」

商人「それにしても夢中で走ったから良く分かんないトコに来ちゃったけど、
   ここは一体……」キョロキョロ

商人「変な色の石がたくさん転がってるすねぇ…」

商人「水晶みたいな綺麗な石も生えてるし」

商人「もしかして鍵屋さんが言ってた特殊な鉱石を採掘してた場所
   って、ここのこと?」

商人「確かに特殊っぽくはあるんだけど、こんなので作る鍵って一体…」

商人「うーん…」ヒョイ

            ボヤァァァァァァァ

商人「手に持ったら光り出したし。変な石…」

商人「なんか昔本で読んだ魔力がこもった石みたい…」

商人「……ん?」

商人「そうか!これって魔石の原石なんだ!」

商人「だからさっき手に持ったら、私の魔力と反応して光が…!」

商人「たしか、魔石には治癒の効果を持つ石もあったハズ!」

商人「えーっと、えーっと……」

商人「そうだ!緑色してる奴!」

商人「待っててね、勇者さん!私が必ず見つけ出して、
   治してみせるから!」

そして。。。



商人「ただいま!」バンッ

男「! キミか、随分と早かったな」

商人「まあね♪」

男「でもその分じゃ医者は…」

商人「大丈夫!私には強い味方がいるから!」

男「強い味方?」

商人「うんっ!でも説明は後!勇者さんは?」キョロキョロ

男「彼なら」スッ

勇者「この飯超上手いですね!」ガツガツ

商人「え……?」

勇者「あっ、商人お帰りー」クルッ

商人「…………」

男「実はキミが出かけた後なんとか治せないかと必死になって
  家の中を探していたんだがね。そんなとき、昔父がくれた
  お守りを思い出してさ」

男「そのお守りが実は治癒力を高める魔石だったんだが……
  あの、聞いてる?」

商人「……勇者さん、あなたは何をしていらっしゃるんですか?」ゴゴゴゴゴゴ

勇者「なにって、ご飯をご馳走に…」

商人「ていっ!」ゴチン

勇者「いったぁぁぁ!?何するの?」

商人「バカ!どれだけ心配したと思ってるんすか!もっと真面目な
   登場してくださいよ!」

勇者「真面目に登場って……予想より商人が早く帰ってきたから
   間に合わなかったんだよ!」

商人「バカ!」

勇者「それより、医者を呼びに村まで行ったんじゃなかったの?
   どうしてこんなに早く帰って来れたのさ」

商人「……これ」ムスッ

勇者「え?袋?」

商人「開けてみて下さい」

勇者「?」ガサッ

勇者「! こ、これって魔石?」

商人「そーです!」ムスッ

勇者「もしかして、ぼくを治すために?」

商人「無駄になっちゃいましたけどねー」ムスッ

勇者「……」

勇者(よく見れば、泥だらけで、あちこち小さい傷がたくさん……商人……)

勇者「ううん、無駄なんかじゃないよ。ありがと」ニコッ

商人「……」プイッ

男「ま、まあなんだ。彼も治ったことだしキミも一緒にご飯どうだい?」

商人「……」

勇者「そうだよ。商人だってお腹すいてるでしょ?ここは一つ鍵屋さん
   のご厚意に甘えてさ」

商人「……ついでにお風呂も頂きたいんですけど」

男「あ、あぁ!キミたちはわたしの命の恩人だ。是非泊まって行ってくれ」

商人「分かりました。じゃあ今日はもう疲れたし、これ以上責めるのは
   勘弁してあげるっす」

男「あはは…」

勇者(今日は…?)ゾクッ

そして夜。。。


勇者「ぼくは床ですか、そうですか」

商人「仕方ないじゃないですか。鍵屋さんは一人暮らしだからお客様用の
   ベッドが一つ余ってただけでも感謝しないと!」

勇者「それはそうだけど…でもぼく怪我人…」

商人「あーあー、聞こえませーん」

勇者「商人、やっぱり怒ってるでしょ」

商人「べっつにー?」

勇者「昨日はベッドが1つなら一緒に寝たら良いって言ってくれたのに…」

商人「悪戯するような子とは一緒に寝たくありません!」

勇者「!」

勇者「いや、あれは、その……」

商人「えっ……まさか本当に悪戯したっすか?」

勇者「し、してない!してないよ!」

商人「本当にぃ~?」ジロッ

勇者「うぅ…」

商人「お姉さんは正直な子が好きですよ?」ニコニコ

勇者「その……ほっぺたプニプニつついてました」グスン

商人「は?」

勇者「ご、ごめんなさい!でもあんまり気持ち良さそうだったから、つい!」

商人「……あのー、それだけ?」

勇者「えっ?」

商人「なんかもっとこう…お風呂上がりのお姉さんから漂う
   色気に惑わされてとか…そういうんじゃなくて?」

勇者「う、うん…」

商人「ああ、そう…」

商人(考えてみれば、まだ12歳になったばかりの子供だもんね。
   当たり前か)

勇者「商人?」

商人「んーん。なんでもない!分かったからおいで」サッ

勇者「いいの?」

商人「うん、もう怒ってないから一緒に寝よっ?」

勇者「うんっ!」パァァァァ

勇者「えへへー♪」ヒョコ

商人「まったく、お子様なんだから」

勇者「こ、子供じゃないよ!」

商人「あれれ~、お姉さんと一緒のベッドに入って喜んでるのは
   どこのどなたかな~?」

勇者「そ、それは商人が一緒に寝ようって…」

商人「私は別に一人で寝ても平気だもーん」

勇者「ぐぬぬぬぬぬ…」

商人「ふふふふふふふっ」

勇者「なんだいなんだいっ!商人だってぼくとそんなに年
   変わらないのに!」

商人「残念だけど、私は17だからあなたより5つもお姉さん
   なんですよねー、これが♪」

勇者「そ、そうだったの?」

商人「なっ、そんなに驚かれるとは……ちなみに幾つぐらいに
   見えたっすか?」

勇者「1コか2コ上…」

商人「…………うそ」

勇者「ほんと」

商人「それは……ちょっと想定外ッス。私そんなに童顔のつもり
   ないんですけど…」グッ

勇者「でも、それくらいだと思ってた」

商人「ガーン!?」

勇者「あははははは…」

商人「ショックっす。アダルティーな大人の女性の魅力が私には
   無いという事ッスか?」シクシクシク

勇者「ところでさ、商人」

商人「何っすか?」シクシクシク

勇者「その~~ッスって語尾。昨日つけてなかったよね。突然どうしたのさ」

商人「!?」

商人「えっ、や、やだなー。私そんなの全然つけてないですよ?」ブンブン

勇者「いや、さっきからずっと使ってるし……もしかして、方言?」

商人「な、なにを言っちゃってるんですか!この私が田舎から出てきた
   なんてそんなバカな…」

勇者「まあ、どっちでも良いんだけどさ」

商人「えっ?」

勇者「ぼくは全然気にしてなんかないよ。ただ、これからずっと
   一緒に旅していくんだから、どうせなら商人が肩肘張らずに
   気楽に行けたらいいのにって、そう思っただけ」

商人「勇者さん…」

勇者「だから、無理に標準語でしゃべってくれなくても」

商人「そ、そういうワケにはいかないです!確かに今日はテンパ
   っちゃって方言っぽい語尾になっちゃいましたけど、これでも
   私は商人ですよ?」

商人「商人はさまざまな土地で活躍するみんなの憧れの職業!」

勇者(そうなの?)

商人「方言なんか使ったりしないんです!」フンス

勇者「はあ…まあ、商人がソッチの方が良いんならぼくは口出し
   しないけど」

勇者「でも、使いたくなったらいつでも使ってくれて構わないから!」ニコッ

商人「だからぁ~!」



別部屋


<ワー ギャー


男「にぎやかだな。あれだけ元気ならもう大丈夫だろう」

男「……それにしても、あの子供の強さ!」

男「勇者、か。彼ならもしかして……!」

よくじつ。。。



勇者「おはよーございます」

商人「おはようございます」

男「ああ、おはよう。昨夜はよく眠れたかい?」

勇者「ええ、もうぐっすり」

男「それは良かった」

男「ところで怪我はもう良いみたいだけど、どうする?キミたちは
  わたしの命の恩人なんだ。一晩と言わず何日滞在してくれても」

勇者「ありがたいお言葉ですが、ぼくらは先を急ぐので」

男「そうか…」

男「なら、是非これを持って行ってくれないか?」キラン

商人「それって、鍵?」

男「ああ。けど只の鍵じゃない。『魔法の鍵』だ」

勇者「魔法の鍵?」

男「そうだ……。この世界には扉に特殊な術をかけていることがある」

男「例えば聖地。例えば宝物庫。例えば魔物達の住処。
  そして、伝説の品が封印されている場所にある扉なんかには
  大抵、魔力によって鍵がかけられている」

男「本来、その手の術を解くには術をかけた本人か解呪と呼ばれる
  特殊な魔法を訓練した魔道士だけだが…」

勇者「もしかして、この鍵があれば」

男「そうだ。その鍵があれば、そういった特殊な術がかけられている
  扉であっても、誰でも簡単に開ける事が出来る」

商人「す、すごっ!?」

勇者「良いんですか?そんな凄い品をぼく達が貰っちゃっても」

男「構わない。キミ達はわたしの恩人だ。それになにより、勇者にこそ
  その鍵はふさわしい」

勇者「!」

男「魔王を倒す旅なんだろう?だったらきっとその鍵は役に立つと思う」

勇者「鍵屋さん…」

男「受け取ってくれるね?」

勇者「はいっ!ありがとうございます!」

男「良かった」

勇者「それじゃ、お世話になりました。ぼくたちも頑張って
   旅を続けるので鍵屋さんもどうかお元気で!」

男「吉報を待ってるよ」

勇者「はいっ!行こう、商人」タタタタ

商人「あっ、待って下さいよ勇者さん!」

男「…………」ジイッ

商人「? まだなにか?」

男「……商人さん、だったよね」

商人「えっ?あ、あぁ、はい」

男「キミがなぜ商人の職についてるのかは知らないけど、あの洞窟から
  魔石の原石を見つけ出したということは、キミは本当は魔法使いの
  家系なんだろう?」

商人「そ、そんなわけないですよー。私は商人ですって!」

男「なら、これから先はわたしの独り言だ。聞き流してくれて構わない」

商人「……」

男「彼がもし、また命を落としかねないような状況にならないためにも
  魔法の訓練をお勧めするよ」

商人「……」

男「助けてもらった自分が言うのもなんだが、彼はまた命を落としかねない
  状況に陥ると思う。彼は根っからの勇者だ。誰かを助けるために躊躇
  したりしない」

男「そんなとき、たよりになる魔法使いがいればきっと…!」

商人「…………何も知らない癖に」ギロッ

男「!?」ビクッ

商人「……話は、それだけ?」

男「あ、あぁ…」

商人「じゃあ、私たち先を急いでるので…」

男「……そ、そうだな。呼びとめてすまなかった」

商人「じゃ」

男「…………」

勇者「鍵屋さんとなに喋ってたの?」

商人「なんでもないですよ♪」

勇者「本当?」

商人「ええ♪私があんまり綺麗だからちょっとグラっときた
   みたいですけど…」

勇者「えっ!?」

商人「心配しないでください!旅があるから丁寧にお断りしてきました♪
   私は勇者さんとずーっと一緒ですよ♪」

勇者「そ、そう…」

商人「それより遺跡まで競争しません?鍵屋さんの話だとけっこう
   近くみたいですし」

勇者「よーし!負けないぞぉ!」

商人「私だって!」


そう言いながら二人は走り出す。

この先、自分たちにどんな運命が待ち受けているのか
二人はこのときまだ知らない。知る由もない。

ここから続きです

遺跡前にて


勇者「はあ、はあ、はあ……と、到着~」ペタン

商人「はぁ、はぁ…」グテー

勇者「どうやらぼくの勝ちだったみたいだね」

商人「うぅ、まさか病み上がりの勇者さんに負けるとは…」

勇者「これでも小さい頃から勇者として鍛えられてきたもん♪
    かけっこなら負けないよ!」

商人「今でも十分小さいですけどねー♪」

勇者「むぅ…」

商人「まあ、そんなことよりこの遺跡なんですけど…」


         ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


勇者「うん。すごく物々しい雰囲気だね」

商人「なんだかいかにも魔物の巣って感じですけど、どうします?」

勇者「それでも、行くしかないよ。行かなきゃ他の大陸に渡れない」

商人「ですね…」

勇者「じゃあ行こう!今なら魔法の鍵もあるし、商人が村で聞いた
    赤い扉ってのも開けられるはずだ」

商人「分かりました!でも勇者さん!」

勇者「なに?」

商人「意気込んでるところ申し訳ないんですけど、赤い扉って
   あれの事ですよね?」ビッ

勇者「う、うん。たぶん…」

商人「その隣なんですが…」

勇者「ああ、うん。壁に大きな穴が開いてるね…」

商人「あれって爆弾使った後ですよねぇ…」

勇者「だろうねぇ…」

商人「……」

勇者「……」

商人「扉が開かなかったからって壁を爆弾で壊してるっ!?」

勇者「じゃー、もう鍵なんて意味ないじゃん!?」

商人「鍵屋さんすみません!あなたの鍵は役立たずです!」

勇者「ごめんなさいっ!悪いのはぼくらじゃないんですっ!?」

商人「はあ、はあ、はあ…」

勇者「はあ、はあ、はあ…」

商人「で、どうします?穴から入りますか?それとも扉の方から…」

勇者「一応、扉から入ろうよ。たぶんそっちのが正規ルートだと思うし…」

商人「……ですね」

勇者「それにしても、あんなに格好いい別れ方した鍵屋さん
    から貰ったアイテムの初お披露目が、こんな残念感
    ただようものになるなんて…」

商人「世の中、こんなもんっすよ…」

勇者「それじゃあ気を取り直して…いざっ、魔法の鍵ぃ!」ジャキーン

商人「わー」パチパチパチパチ

勇者「えっと、こうかな?」ガシン

商人「なにも反応しませんけど…?」

勇者「おっかしいなぁ…」


              カッ!!!


勇者「!」

商人「!?」


                ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


勇者「うわぁ、扉がひとりでに開いた…」

商人「かっちょいい…」

勇者「ん?」

商人「どうかしました、勇者さん?」

勇者「あそこにあるの宝箱かな?」ビッ

商人「おー!本当だ!宝箱です。どうやら爆弾で中に入った連中は
    気付かずに置いてったみたいですねぇ」

勇者「何が入ってるんだろ?」タタタタ

商人「宝石だったりしてぇ♪」タタタタタタ

勇者「どれどれ♪」パカッ

商人「るんるん♪……る……ん?」

勇者「なにこれ…?」ピラッ

商人「紙ですね。ただの」

勇者「でも何か文字が書いてるけど、これ。ぼくは読めないけど
    商人は読める?」

商人「いえ、私もさっぱり」

勇者「ふーん」

勇者「でも宝箱に入ってたって事はアイテムなんだよね?」

商人「…なんですかねぇ?」

勇者「うーん…」

勇者「まあ、一応何かの役に立つかもしれないし持って行こうか」ゴソゴソ

商人「役に立てばいいんですけどねぇ」


勇者は人の形をしたお札を手に入れた!
見たことのない文字が書かれているがいったい何に使うのだろうか?

勇者「さてと、それじゃあ他には何もないみたいだしそろそろ進もうか」

商人「強い魔物に遭いませんよーにっ!」

勇者「あはは。大丈夫、ぼくがついてるっ!」

商人「それってもしかして愛の告白ですかぁ?」

勇者「ち、違うよ!なんでそうなるのさ!」

商人「うふふふふふふ。そうですねぇ。勇者さんにはまだまだ
    早いですもんねぇ」

勇者「なっ…からかわないでよっ」

商人「えへへへへへー♪」

勇者「もうっ!」


こうして、二人は遺跡の内部に足を踏み入れた!
果たして二人は無事に遺跡を抜けられるのだろうか?

~~30分後~~


勇者「……」

商人「……」

勇者「……」

商人「勇者さん…」

勇者「…なに?」

商人「遺跡、抜けちゃいましたね…」

勇者「そうだね…」

商人「……壁、爆破されまくってましたね…」

勇者「…うん。おかげで一本道で迷わずにすんだね」

商人「……魔物も、一匹も出会いませんでしたね」

勇者「…そうだね。もぬけの殻だったね」

商人「勇者さん」

勇者「なに?」

商人「もしかして、昨日鍵屋さんを襲ってた魔物って、ここの遺跡の
    魔物だったんじゃあ…」

勇者「うん。ぼくも今まさにそう思ってたところだよ…」

商人「つまり、本来なら鍵を手に入れた人だけが遺跡の封印を
   解いて中に入れるのに…」

勇者「どっかの誰かが爆弾で無理矢理侵入したから遺跡にいた
   魔物もみんな外に出てしまったと、こういうワケだね」

商人「…ねえ、勇者さん。私こんな方法でダンジョン攻略する人を
   偶然ですが一人だけ知ってるんですよ」

勇者「奇遇だね。ぼくもだ」

商人「せーので一緒に言いますか?」

勇者「そうだね。……せーのっ!」

勇・商「「もう一人の勇者候補っ!」」

勇者「……やっぱり?」

商人「ていうか、あの人以外考えられないですっ」

勇者「……だよね」

商人「あの人、自分が伝説の勇者の子孫だって言い張って
   ムチャクチャな冒険してますからねぇ」

勇者「そういえば、ついこの間
    『この大陸での冒険は終わった。次は新大陸だっ!』
    って意気込んでぼくに言いにきたもんなぁ」

商人「そうだったんですか…。あぁ、それでルイーダの酒場に登録
   してた人ごっそり連れて行ったんですねぇ」

勇者「え?」

商人「ああ。実は勇者さんが酒場に来る何日か前に、あの人が
   突然現れて『勇者の頼みは断れないっ!』とか言って登録
   してた人30人くらいを強引に連れて行っちゃったんですよ」

勇者「そ、そうなの?そんな事できるの?」

商人「一応、王さまからの紹介状持ってましたからルイーダさんも渋々」

勇者「へえ…」

商人「でも私はあの人と一緒に旅に出たくなかったんで、例の
   契約書を作成して」

勇者「お金払えないならって、断ったんだ?」

商人「はい」

勇者「なるほどなぁ。けど、そんなに一緒に行きたくなかったの?」

商人「そりゃそうですよぉ!あの人口先だけで、ダンジョン攻略したって
   いっても近所のホラ穴探検したり、森でスライム狩ったりしてる
   だけなんですから!」

勇者「詳しいね。もしかして一緒に行ったことあるの?」

商人「う……。ま、まあ1回だけ…」

勇者「ふーん…」

商人「そんなことより!この先どうします?」

勇者「どうって?」

商人「私たちよりも先にあの人が新大陸に渡ったって事は、
   昨日のモンスターみたいに私たちが尻ぬぐいする
   ハメになっちゃいますよ?」

勇者「まあ、そうだろうね」

商人「しかもあの人のことだから、面倒事がネズミ算式に
   増えてるのは間違いないです」

勇者「う…」

商人「今ならまだ引き返せますよ?」

勇者「……」

商人「……」ジィッ

勇者「……ねえ、商人」

商人「はい」

勇者「ぼくさ、本当は勇者になんかなりたくなかったんだ」

商人「えっ?」

勇者「普通の街の子供として生まれて、普通に大きくなって、
   普通に結婚して、そして普通に死んでいく」

勇者「そんな人生がよかったんだ」

商人「……」

勇者「でも、生まれてすぐに行われた勇者の適正検査に、ぼくは
    受かっちゃった」

勇者「世界中の人の希望『勇者』の適性検査に」

商人「……」

勇者「そして、物心ついた頃からぼくは勇者として育てられた。
    魔王を倒すためにね」

勇者「でも、でもさ……本当は勇者になんかなりたくなかったんだよ」

勇者「他のみんなと一緒に遊びたかったし、学びたかった」

勇者「それになにより……父さんや母さんと一緒にいたかった」

商人「勇者さん…」

勇者「勇者として育てられる以上、そういった甘えは許されないのは
   分かってる」

勇者「一刻も早く魔王を倒せるようになるため、親元から離れて
   城で剣術や勉強を学ぶのは当然だ」

勇者「けど、頭で分かっていてもやっぱり勇者になんか
    なりたくなかったんだよ」

勇者「なんでぼくなんだろうって、いつも思ってた」

商人「……」

勇者「でも、そんなぼくがついに旅に出ることになったんだ。
   酒場で商人と契約してさ」

商人「……ええ。そうですね」

勇者「そして、まだ旅に出て間もないけど人を助けた。
   そのとき思ったんだ」

商人「……なんて?」

勇者「この世界には、勇者を必要としている人がいるんだってこと」

商人「!」

勇者「今までは、別に勇者なんて必要ないんじゃないかって
   思ってたんだ」

勇者「魔王なんて、勇者じゃない人が倒したって構わない
   じゃないかって」

勇者「今でもそれはそう思ってる。別に勇者じゃなくても魔王を
   倒してもいいって」

勇者「でもさ、それでもやっぱり必要なんだよ勇者は」

商人「勇者さん…」

勇者「『勇者』っていう称号はやっぱり必要なんだ。この世界には
    勇者が来るのを待っている、勇者の助けを必要としている
    人たちが沢山いる」

勇者「そう思ったら、なんだか「やらなくちゃ」って思うんだ」

勇者「逃げちゃダメだって」

勇者「……だって、ぼくは『勇者』なんだからさ」

商人「…うん」

勇者「だからぼくは引き返さないよ」

勇者「もう一人の勇者候補が原因で困ってる人がいるんだったら、
   その人たちを助けるのも勇者の役目だよ」

勇者「だから、さ…」

商人「分かりました。勇者さんがそう言うなら私はどこまでも
   お供しますよ」

勇者「ありがとっ、商人!」

商人「いえいえ♪」

商人(でも勇者さん。確かに勇者さんは凄い力を持っていますけど、
    力があるからって、その力を誰かのために使わないといけない
    なんて決まりは無いんですよ?)

商人(あなたは偶々力を持って生まれただけでそんな責任…)


           ガタガタガタッ!

勇者「!」

商人「誰です!?」

       ガタガタガタガタガタッ!   ガタガタガタ!


勇者「……」

商人「……」

        ガタガタガタガタ! ガタガタガタガタッ!

勇者「えーと…」

商人「宝、箱?」

           ガタガタガタ!   ガタガタガタ!

勇者「ど、どうする?」

商人「いやー、ああいう良く分かんないのとは関わり合いには
   ならない方が…」

     ガタガタガタ!ガタガタ!ガタガタガタガタ!

商人「……」

勇者「なんか、必死にアピールしてるみたいだけど…」

商人「む、無視ですよ無視!そんなことより折角新しい大陸に
    来たんですから早く街を探しに行きましょうよ!」

               ガタガタガタガタ!

勇者「……」

商人「……」

                 ガタガタガタ!

勇者「ねえ、商人…」

商人「はあ、仕方ないッスねぇ…」

そんなこんなで。



遊び人「やーやーやー!箱から飛び出てジャジャジャジャーン♪」

遊び人「道行く男はわたしの虜!絶世のスーパー美女、遊び人ちゃんでーっす♪」キラン

商人「……」グググイッ

遊び人「うわー!押さないで!閉めないでっ!?また閉じ込めないで~~~っ!?」

勇者「あはははは…」

商人「あんたねー。宝箱から出してあげてその第一声はないでしょ」

遊び人「にゃ、にゃはははははは。お、怒らないでよぅ。こういうのは
     掴みが肝心なんだから」

商人「おもいっきり滑ってるけど?」

遊び人「うそっ!?」

商人「ほんと」

遊び人「ガーンッ!?」

勇者「ま、まあまあ。それよりどうして宝箱の中なんかに?」

遊び人「うぅ。実はこれにはふかーいワケがありまして!」

商人「どうせ碌な理由じゃないと思うけど」

遊び人「実は……」


   ~~以下、回想~~


遊び人「ぷはー!今日もお酒おいしー♪」

戦士「おいおい、また昼間っから酒かよ」

遊び人「いいじゃーん♪このパーティー30人規模なんだし
     戦闘の順番なんてわたしにまわって来る事なんてないしさー♪」

戦士「そりゃそうだけどよ」

遊び人「ならわたしは遊び人らしく!究極の遊びを開発するのらー♪」ゴクゴクゴク

戦士「ダメだこいつ…」

魔法使い「ねぇ、戦士ー。ちょっとコッチ来てー!」

戦士「おーう!分かったぁ!……じゃ、俺行くけど飲み過ぎて
    潰れんなよ?」

遊び人「だーいじょうぶだって♪」

戦士「……」ドスドスドス

遊び人「にゃははははー♪……ん?」

遊び人「おやぁ、アソコにあるのは宝箱!」

遊び人「……」キョロキョロ

遊び人「誰も見てないよねー?」

遊び人「にゃははははー♪」トタタタタタ

遊び人「お酒とか入ってたりしてー?」パカッ

遊び人「……って、なにも入ってないしー!チョームカつくんですけどぉ?」ゲシゲシッ

遊び人「……っと、ヒック」クラッ

遊び人「え?……わ、わ、わ!?」

遊び人「きゃ~~~!?」ドテーン カチッ

遊び人「カチッ?」

遊び人「ま、まさか!」

        ガタガタガタガタ! ガタガタガタガタ!

遊び人「ひーん!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


遊び人「という事がありまして…」

勇者「つまり、空箱蹴った拍子にこけて閉じ込められたと…」

遊び人「そーなんですよぅ!可哀想でしょうわたし!?」

商人「何言ってるんだか。自業自得じゃない」

遊び人「む!そう言うけどねぇ?宝箱に閉じ込められたら怖いんだよ?
     心細いんだよっ!?泣きたくなるんだよぉっ!?」

商人「だから自業自得でしょー?酔っ払ってバランス崩すあんたが悪い」

遊び人「むー!そりゃ商人ちゃんみたいなお子ちゃま体型には分かんない
    かも知れないけどねぇ?」

遊び人「わたしみたいな大人の色気がエビバディプッチンのセクシーダイナマイツ
    には他にも色々と辛かったんだからっ!」

商人「なっ、誰がお子ちゃまよ!誰が!?」

遊び人「そんなの言わなくても分かってるくせにー♪」

商人「むむむむむむ…」

遊び人「ねー、勇者ちゃんもおっぱいおっきい方が好きでしょー?」

勇者「え、ぼ、ぼく?」

遊び人「そうだよ」

商人「…………」ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者(うっ。む、無言の圧力…!)

勇者「い、いや、ぼくは別にどちらでも……」

遊び人「えー?おっきい方が好きじゃないのー?」

勇者「う、うん…」

遊び人「惜しいなー。おっきいのが好きならパフパフしてあげようと
    思ったのにー」

商人「!?」

勇者「ぱ、ぱふぱふ!?」

遊び人「うん、そうだよー♪」

遊び人「おっぱいとおっぱいの間におカオを挟んでー…」

遊び人「ぱふぱふ」

勇者「ぱふぱふ!」

遊び人「ねっ、勇者ちゃんはおっきいのが好きだよねー?」

勇者「う、うん…///」

遊び人「ほーら、やっぱり♪」

遊び人「それじゃあ正直に答えた勇者ちゃんは特別にー♪」

勇者「……」ドキドキ

遊び人「あ……」

勇者「え?」

商人「ゆ・う・し・ゃ・さん~~~?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「ひいっ!?」

商人「そんなにおっきいおっぱいが好きなんでちゅかぁ~~~?」

勇者「い、いや。さっきのは、その……」

商人「問答無用っ!」ズガガガガガガガ

勇者「わっ、わっ。ちょっと待って!?死んじゃうって!」

商人「死んで悔い改めて下さいっ!」

勇者「め、目がマジだ。あ、遊びにーん!遊び人も何か言ってやって…」

遊び人「あーあ……。わたし知ーらない。知ーらないっと」コソッ

勇者「そ、そんなぁ~!?」

商人「待ちなさいっ!勇者さん!」

勇者「ひーんっ!?」タタタタタタ


逃げる勇者。追う商人。隠れる遊び人。
3人の明日はどこへ行くのか、行ってしまうのか。


続く。

ロマリア。。。


勇者「やっと着いたぁ…」ボロッ

遊び人「大丈夫?勇者ちゃん」

勇者「な、なんとか…」

商人「自業自得です。自業自得」

勇者「あはは…」

遊び人「それよりさー早く宿行こーよ!もうすっかり暗くなっちゃたし
     わたしお腹すいたー!」

勇者「そういえばぼくもお腹ぺこぺこ…朝からなんにも食べて
    ないもんなぁ」

遊び人「でしょでしょ?そーと決まったら早速宿へレッツゴー♪」

商人「ところが、そうは問屋がおろさないんですよねぇ。これが」

勇者「だね」

遊び人「えぇー、まだおっぱいの話引っ張るの?商人ちゃん
     コンプレックス強すぎぃ~」

商人「違います!だいたい私そんなにぺったんこじゃありませんから!」

遊び人「またまた御冗談を♪」

商人「あのねぇ…」

勇者「じつはさ。ぼくたちお金持ってなくて…」

遊び人「へ?」

商人「一昨日の宿代で全部使っちゃってないんですよね、これが」

遊び人「そ、そんな。ウソでしょ勇者ちゃん?」

勇者「残念ながら…」

遊び人「えぇ~?なんで?どうして?勇者ともあろうお方が
     一文なしなんてありえなくない?」

勇者「それは…」チラッ

商人「~~~~♪」ピーヒャラー

遊び人「!」

遊び人「商人ちゃん、まさか……」

商人「~~~~~♪」

勇者「あはははは…。うん、まあそういうワケで…」

遊び人「はぁぁぁぁ。宝箱から出られてやっと暖かいベッドでぐっすり
     寝られると思ったのにぃ…」シクシクシク

勇者「なんかゴメンね?」

商人「別に良いんですよ勇者さん。遊び人なんかに気を
    使わなくっても!宝箱から出られなくなったのは
    自分の責任なんですから」

遊び人「うぅぅ。それはそのとーりだけど、お金使い切った商人ちゃん
     には言われたくないかも」

商人「う…」

遊び人「だいたい商人のくせにお金使い荒いってどーなの?
     商人として致命的だと思うんですけどー」

商人「むむむむむ…」

勇者「ま、まあまあ。ないものは仕方ないし商人を責めたって
    宿代が出るワケでもないしさ」

商人「勇者さん…」

遊び人「それはそうだけどさー」

勇者「とりあえず今晩どう過ごすか決めようよ。野宿するか、
    それとも今からでもお金が稼げそうな案があるなら
    それでお金稼いで宿に泊まるか」

商人「お金稼げそうなって案って言われてもですねぇ。そんな案
    ポンポン出るなら誰もお金に困るようなことにはならないワケで…」

勇者「やっぱり?じゃあ仕方ないけど今日は野宿…」

遊び人「はいはいは~~~い♪」ピョンピョン

勇者「どうしたの遊び人?」

遊び人「わたしお金稼げる方法思いついちゃいました~♪」

勇者「ホント?」

商人「もう日も落ちて暗くなってるの分かってるの?こんな時間じゃ
    お金稼ぐなんて無理ですよ」

遊び人「ふふーん♪ところがどっこい!今の時間帯にうってつけの
     稼ぎ方なのだよワトソン君!」

商人「誰がワトソン君よ、誰が」

遊び人「名付けて~~~~!夜の街で金持ってそうな男を探して
     貢いで貰っちゃおう作戦!!!」

勇者「?」

商人「あ、あなたねぇ…」

遊び人「どーよ!こんなに大きな城下町ならきっとお金持ってる
     スケベな男がいると思うのよねー♪」

商人「ていっ!」バカン

遊び人「あだっ!?いったぁぁぁぁ!?なにすんの商人ちゃん?」


グイッ


商人「あなたねぇ!勇者さんがまだ12歳なの分かってんの?」ヒソヒソ

遊び人「そんなの知ってるよー。ここに来るとき自己紹介してたじゃん」ヒソヒソ

商人「だったらもう少し考えて発言してよ!子供がいるのにそんな案
    実行できるワケないでしょ!」ヒソヒソ

遊び人「えー。でも勇者ちゃんは勇者なんだしぃ」ヒソヒソ

商人「たとえ勇者でも中身は子供なの!教育に悪いでしょ」ヒソヒソ

遊び人「ぶーぶー」ヒソヒソ

勇者「あのー、2人とも…?」

バッ

商人「勇者さん。どうやらさっきの遊び人の案ではあまり稼げそう
    にないのでここはやっぱり野宿しましょう」

勇者「え、そうなの?」

遊び人「にゃははー。ごめんねぇ。いい案だと思ったんだけど
     商人ちゃんの色気が足りなくて…」

商人「……」グシャッ

遊び人「にぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?あ、足っ!足ぃぃぃ!!!」

商人「……なにか?」ニコッ

遊び人「い、いえ……。なんでもありませんでしたです、はい…」

商人「分かればいいんです」ニコッ

遊び人「ひいぃぃぃぃ…」

街の外にて。。。


パチパチパチ


商人「勇者さん、これもう焼けたみたいですよ?」ヒョイ

勇者「あっ、ありがとう」

商人「いえいえ♪」

遊び人「がつがつがつ!」

商人「……」

勇者「……」

商人「ちょっとあなた、もう少し落ち着いて食べなさいよ」

遊び人「そうは言っても!ずっと閉じ込められっ放しだったから
     お腹すいてお腹すいて!」

商人「はぁ…」

勇者「あははは…」

勇者「でも商人がいてくれて良かったぁ」

商人「え?」

勇者「野宿しようって言いだしたもののさ。ぼく、野宿なんて
   したことなかったからどうすればいいのか不安だったんだ」

遊び人「むしゃむしゃむしゃ!」

勇者「でも、ちゃんと食べ物確保したり、寝れそうな場所を探したり、
    火をおこしたりさ。商人は手際よくやってくれて」

商人「あ…」

勇者「ありがとう商人。キミがいてくれて凄く助かるよ」

商人「わ、私は別にそんな…。しょ、商人ですからこういうのは
    慣れてるんですよ」

遊び人「……」

商人「それに、パーティーを組んだ時の商人の仕事といえば、
    こういった裏方がメインですからそう改まって感謝されると…えへへ♪」

勇者「えっ、商人の仕事ってそうだったの?」

商人「あれ、もしかして知らなかったんですか?」

勇者「うん。ルイーダの酒場に登録されてるからてっきり戦闘
   するのがメインだとばかり…」

商人「ああ、なるほど。だから最初に契約書見せた時
   『戦闘してくれないの?』なんて質問したんですねぇ」

勇者「う…」

商人「どうやら勇者さんは職業ごとの役割をイマイチ理解
    してなかったみたいですね」

商人「よろしい!じゃあ折角だからお姉さんが解説してあげましょう♪」

勇者「う、うん」

商人「まずは勇者さんが想像していた一緒に戦ってくれる職業から。
   つまり戦闘で活躍する職業ですね」

商人「これは戦士、武闘家、魔法使い、僧侶の4人です」

商人「戦士と武闘家は文字通り、最前列で勇者さんと一緒に
    戦ってくれる仲間です」

勇者「うん」

商人「そして魔法使いは魔法で敵を倒したり、味方をサポートする
   役目を担っています」

勇者「なるほど」

商人「で、最後に僧侶さんは一見戦闘とは無縁そうな職業ですが、
    聖なる力で味方の傷を癒したり結界を張ったりとなかなか
    多方面に活躍するんですよ」

勇者「へぇ~」

商人「そして、ですね。戦闘はそれほど得意じゃないけど、
   個性的な特技で旅をサポートするのが他のメンバー
   なんですよ」

勇者「個性的な特技?」

商人「はい♪」

商人「例えば盗賊!」

商人「盗賊と聞くとあんまり良いイメージを持たないかも
   しれませんが、ルイーダの酒場に登録されてる盗賊は
   そこら辺の野党とかとは一味違います!」

勇者「?」

商人「盗賊といっても彼らはどっちかというと、スパイの
   訓練を受けたエリート工作員みたいなものだと言えば
   分かりやすいですかね」

勇者「スパイ?」

商人「そうです。今の時代、確かに魔王や魔物は脅威ですが、
   怖いのはそれらだけじゃありません。自国に敵対する国も
   脅威の一つです」

商人「そんな敵対する国から城や街の構造といった情報を集めたり、
   研究室に忍び込んでどんな研究をしているか探ったりと、なかなか
   危険な仕事をこなすのが彼らです」

勇者「そ、そうなんだ…」

商人「だから戦いは得意じゃなくても結構役に立つ機会が多い
   みたいですよ」

勇者「ふむふむ」

商人「で、私たち商人ですが…」

勇者「うん」

商人「一言で表すならパーティーの裏方です」

商人「旅をする上で必要なアイテムの補給や補充。店での取引全般。
   船の手配に馬車の運転係。野宿するときの場所探しに街の外
   での食べ物、水の確保。それから壊れたアイテムの修理なんかも
   簡単なものであれば出来たりします♪」

勇者「へ、へ~…」

商人「まあ、戦闘は盗賊以上に苦手なんですけどね♪」

勇者「そうだったんだ」

商人「だから勇者さん!お願いだから無茶だけはしないでくださいよ?」

商人「もし勇者さんが戦えなくなったりしたら、私たちそこで全滅
   なんですからね!?」

勇者「う…」

勇者(これってもしかして、昨日のことまだ怒ってるのかな?)

商人「分かりましたか?」

勇者「はい…」

商人「よろしい♪」

勇者「ところで商人」

商人「なんです?」

勇者「遊び人はどんな特技があるの?」

商人「遊び人、ですか?」

勇者「うん。だって盗賊や商人にも特技や役割があるんだからさ。
   ルイーダの酒場に登録されてるからには遊び人にも何か…」

商人「うーん。残念ながら遊び人が仕事してるのは聞いたことが…」

遊び人「む!それはちょっと聞き捨てならないなぁ商人ちゃん!」ガバッ

商人「あぁ、やっと食べ終わったのね…」

遊び人「いーい、勇者ちゃん!遊び人はねぇ。お金を稼ぐのが仕事なんだよ!」

勇者「えっ?遊び人なのに?」

遊び人「ふっふっふ!じつはそーなのだぁ!」

遊び人「いくら商人や盗賊を連れて絶って、旅を続けてく内にお金は
     なくなるでしょ?」

勇者「それはまあ、そうだね」

遊び人「で、旅先でお金がなくて困った~っ!て時にこそ遊び人
     の出番ですよ!えぇ出番ですとも!」フンス

遊び人「私たち遊び人は旅においてのお金の稼ぎ方というのを
     熟知しちゃってるからねぇ♪」

遊び人「大道芸やサーカスなんかで稼いじゃうんだよ♪エッヘン♪
     旅をするのにお金がなくなったときや急に入用になった時は
     ちゃーんとわたし達役に立ってるんだから!」

勇者「そうだったんだ。すごいんだね」

遊び人「えへへ~。もっと褒めてもっと褒めて♪」

勇者「あれっ?でもだったらさっき街で大道芸とかでお金稼いだら
   宿に泊まれたんじゃ…」

遊び人「あー、それはムリ」

勇者「どうして?」

遊び人「だって大道芸やサーカスでお金稼ぐのって男の遊び人
     だもん。わたしは女だから出来ないの。にゃははははは♪」

勇者「……」

商人「ああ、そう…」

遊び人「む!その目、わたしが役に立たない女だなって思ってるでしょ?」

商人「当り前でしょ」

遊び人「ふふーん♪でもねえわたし達女の遊び人だってお金
     ぐらい稼げちゃうんだから♪」

商人「どうやって?」

遊び人「それはもちろん!このお色気ムンムンの
     セクシィナイスボディを使って夜の街でお金
     持ってそうな男たちを…」

商人「ていっ!」ドカァッ

遊び人「いった~~~!?何すんのよぉ!?」

商人「あなたねぇ。勇者さんはまだ子供だって言ったでしょ!」ヒソヒソ

遊び人「あ…」

勇者「?」

商人「そういった関係の話はng!分かった?」ヒソヒソ

遊び人「で、でもそれじゃわたしの長所が…」ヒソヒソ

商人「また宝箱に閉じ込められたい?」

遊び人「それは……やだ」

商人「じゃあ黙ってなさい♪」

遊び人「くっ…」

勇者「あのー、二人とも?」

商人「あっ、もう終わりましたから大丈夫ですよー?」ニコニコ

遊び人「ぶーぶー。どーせわたしは役立たずですよーだ!」

勇者「?」

商人「やれやれ」

勇者「ところで話は変わるんだけどさ、遊び人」

遊び人「はい?」

勇者「遊び人はこれからどうするつもりなの?」

遊び人「どうするって……そりゃあ、あっちのパーティーと合流
     する予定だけど」

勇者「うん。そうだよね、やっぱり」

遊び人「それがどうかしたの?」

勇者「いや、合流できるのかなぁって…」

商人「! あぁ、確かに…」

遊び人「???」

商人「分かってない顔してるわねぇ」

遊び人「うん?」

勇者「遊び人が仲間とはぐれたのってどのくらい前?」

遊び人「えっと、2日は経ってると思うけど…」

遊び人「あ!」

商人「気付いた?」

勇者「さっきの街、ぼくたちグルッと回ったけどさ。冒険者は
   いなかったでしょ?」

商人「30人規模のパーティーなんだから、あの街を起点にまだ
   この周辺にいるなら、1人くらいは見かけますももんね」

遊び人「……」

勇者「うん。つまり彼らはもうこの近辺から離れてしまった
    んだと思う」

勇者「そして、あれだけ大きな街があるとなると、次の目的地は
   大分遠くまで足を運ばなきゃないはずなんだ」

商人「確かに、あのサイズはいろんな街や村が合併して出来た
    サイズっぽかったですもんねぇ」

勇者「でしょ?アリアハンも隣村に行くには1日近くかかったし」

商人「下手するともっとかかるかも…」

勇者「うん。しかもさ、向こうは30人規模だ。こっちとは
    進軍スピードが違う」

遊び人「……」

勇者「ぼくらは魔物との戦闘にかなり時間を取られるし、敵に
   出会わない為にも回り道する事も多い」

勇者「そうなると向こうとの差はさらに広がる」

遊び人「……」

勇者「だから聞いとこうと思ったんだ。追いつける保証はないけど
   どうするって?」

商人「ここならまだ、アリアハンに帰れない事もないですからねぇ」

勇者「うん。帰ろうと思えば帰れるんだ。護衛でも雇ったら」

勇者「お金のことなら、向こうについたら王様がなんとか
    してくれるとも思うし」

商人「たしかに」

遊び人「わたしは……」

勇者「……」

遊び人「もし、わたしも旅の仲間に加えて欲しいと言ったら
     加えてくれる、かな?」

勇者「もちろんいいよ」

勇者「でも、帰れない旅になるかもしれなけど、いいの?」

遊び人「……うん」

勇者「向こうのパーティーに追いつける保証もない。もしかしたら
   ぼくたちと魔王の城まで行く羽目になるかもしれない」

勇者「それでも……いいの?」

遊び人「……宝箱」

勇者「え?」

遊び人「宝箱の中で勇者ちゃんが旅する理由わたし聞いたんだ」

勇者「……」

遊び人「わたしは勇者ちゃんみたいに凄い力持ってないけど、
     全然役立たずだけど。でも、こんなわたしにもやる気
     出させる勇者ちゃんはやっぱり勇者だよ」

遊び人「勇者ちゃんと一緒なら、わたしどこまでも一緒に行っても
     良いかなって思える」

遊び人「こんな理由じゃ、だめかな?」

勇者「……ううん。分かった」

勇者「よしっ!じゃあ、ぼくたちは今日から仲間だ。よろしく遊び人」

遊び人「にゃはは~こちらこそ♪」ガシッ

商人「……」

勇者「ほら、商人も!」グイッ

商人「ちょっと勇者さん。本気で遊び人仲間に入れるんですか?」

勇者「えっ、ダメだった?」

遊び人「うぅぅ…商人ちゃん…」グスッ

商人「だ、ダメってワケじゃないけど…」

勇者「大丈夫だよ。旅は道ずれ世は情けって言うし。きっと
    どうにかなるさ♪」

商人「勇者さんがそう言うなら、まあ…」

遊び人「えへへ~、よろしくね商人ちゃん♪」ガシッ

商人「うん…」



このとき、一抹の不安が商人の頭をよぎった。

それは、遊び人を仲間に引き入れたくないという理由からではなく、
遊び人を仲間にしたという事実から、もう1人の勇者候補との接点
が、否応なしに結ばれてしまったという事に起因する。


商人「……」


これが、後の大事件に発展するターニングポイントだったという
事に勇者らが気付くのは、相当後になってからのことである。



続く

翌日。。。


チュンチュンチュン


勇者「ふあぁぁぁぁ…」ムクッ

勇者「ううぅん。朝かぁ…」

遊び人「zzzzzzzzzzz…」クカー

勇者「……」キョロキョロ

勇者「あれっ、商人?」

勇者(ドコ行ったんだろう…)

勇者「……!」ブルッ!

勇者「うぅぅ。とりあえずおしっこしてから探しに行こう」


ガサガサ


勇者「えーっと、ここら辺の茂みでいいかな?」ポロン

勇者「野宿だとトイレの場所も大変だよなぁ…」チョロチョロ

商人「!?」チョロチョロ

勇者「ふぅ…」チョロチョロ

勇者「そういえば商人や遊び人はトイレどうしたのかな?
    やっぱりそこら辺の茂みで…」チョロチョロ

商人「……」チョロチョロ

勇者「なーんて♪そんなワケ…」チョロチョロ

商人「……」コソコソ

勇者「あ……!」

商人「……っ!」ビクッ

勇者「あ、あの…その……お、おはよう商人」

商人「お、おはようございます…」ヒクッ

勇者「ゆ、昨夜はよく眠れた?」

商人「おかげ様で…」

勇者「そ、それは良かった…」

商人「……き」

勇者「あ、あのさっ…ぼく…なにも見てな」

商人「きゃああああああああああああああああああああああ
   ああああああああああああああああああああああああ
   ああああああああああああああああああああああああ
   ああああああああああああああああああああああああ!?」


               ドカッ!!!!

勇者「ぶふっ!?」

商人「きゃああああああああ!?きゃああああああああああああ!?」ドカッ!バキッ!

勇者「ちょっ…」

商人「きゃあああああああああああああああああああああああああ
    ああああああああああああああああああああああああっ!?」ズガガガガガガガガ!!!

勇者「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

1時間後。。。



勇者「うぅぅぅ…」ボロッ

商人「ふんっ!」プンプン

遊び人「……ねぇ勇者ちゃん。朝っぱらからなんでそんなにダメージ
     受けてんの?モンスターとでも戦った?」

勇者「うぅ、実は…」

商人「勇者さん?」ニコニコニコ

勇者「な、なんでもないです…」シュン

遊び人「???」

商人「さて、そんなことより今日の目的ですが…」

遊び人「そんなことだってさ、勇者ちゃん」

勇者「ひーん…」シクシクシク

商人「はいはい、そこ!くっちゃべってないで話を進めますよ!」

勇者「はーい…」

商人「まず私たちには決定的に足りないものがあります。
    今日はその確保に向かおうと思いますがどうでしょう?」

遊び人「足りないもの?」

勇者「えっと……そんなのあったっけ?」

商人「お金です!お金!」

勇者「あっ…!」

商人「今朝まではお金がなければ野宿すればいいやと思って
    いましたが、どうやら私の考えが甘かったみたいです」

商人「今後野宿しなくてもいいように宿代確保に全力を挙げて
    取り組みましょう!えぇそうしましょう!」

遊び人「商人ちゃん何かあったの?目がマジ過ぎて怖いんですけど…」

商人「何もなかったわよ!!!」クアッ

遊び人「そ、そう…」ビクッ

遊び人(絶対なんかあったわね…)

商人「で、どうやってお金を集めるかなんですけど、なにか
    良い案がある人ー?」ニコニコ


シーン…


商人「うん。やっぱりないみたいですねー♪」ニコニコ

遊び人「てか、この話の流れって昨日のまんまじゃ…」

商人「はい。遊び人は黙っててねー♪」ニコニコ

遊び人「なっ!?」

商人「では話をもどします。これから私たちはロマリアに戻って
   商人連盟から依頼を受けてお金を稼ごうと思います」

遊び人「!」

商人「反論ある人はいますか?」

遊び人「うーん。大丈夫、それ…?」

商人「心配ないって!それに何よりお金がないと困るでしょ?」

遊び人「それはそうだけど…」

勇者「あの、商人連盟って…?」

遊び人「ありゃ。勇者ちゃんは知らなかった?商人連盟ってのは
     各街ごとにある商人達が設けている連盟のことだよ」

商人「簡単にいえば、自分たち一人じゃ解決できそうにない仕事や
    依頼を持ち寄ってみんなで解決する為の場所なんです」

勇者「へー…」

遊び人「でも商人連盟の仕事ってさぁ…」

商人「言いたい事は分かるけど、お金稼ぐにはあそこが
    一番手っ取り早いって!」

遊び人「うーん…」

勇者「なに?そんなにきつい仕事なの?」

遊び人「いや、きつくはないよねぇ…?」

商人「うん♪それだけは断言できる」

遊び人「でもねぇ…」

商人「言いたい事があるならはっきり言いなさいよ」

遊び人「……いいや、やっぱやめとく」

商人「そう♪」

勇者「???」

商人「じゃ、そゆことで今日はお金を稼ぐぞー!」

遊び人「おー…」

勇者「ねぇ、遊び人。さっきのって…」

遊び人「ま、行ってみれば分かるよ勇者ちゃん」

遊び人「お金はやっぱり旅してく上でも必要だしっ、その点なら
     商人連盟が一番と言えば一番だしねっ」

勇者「そう…」



こうして、一行は再びロマリアを目指す。

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