津田タカトシ「五十嵐先輩・・・服、脱がせます」 (378)

ゴオオオオオオオオオオ・・・・・

唸るような風が窓を叩く。

目が覚めると私は、簡素なベッドの中で後輩の津田君に抱かれていた。

私も、彼も、つけているのは下着だけ。

彼は私を力強く抱きしめながら、気絶しそうになる私の名前を呼ぶ。

・・・

*******************************


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カエデ「はぁ・・・」

ランコ「恋ですか?」

カエデ「きゃああっ!!」

ランコ「そんな悲鳴を上げなくてもいいじゃないですかー」

カエデ「あなたが突然出てくるから驚いたのよっ!」

ランコ「私はさっきからずっとここにいましたよー?」

カエデ「えっ?」

ランコ「あなたがぼーっとしてたから気づかなかっただけではー?」

カエデ「う・・・」

ランコ「やはり・・・恋」

カエデ「違います!」

ランコ「やはり津田副会長ですか?」

カエデ「話を聞きなさい!!」

カエデ「・・・ちょっと悩んでたのよ」

ランコ「何をですー?」

カエデ「・・・・私の体質」

ランコ「ああ・・男性恐怖症と見せかけて実はむっつりスケベ」

カエデ「後半は違いますから!!」

ランコ「えー・・みんなそう思ってるわよ?」

カエデ「あなたの言う“みんな”はどちら様ですか?」

ランコ「決まってるじゃないですか。桜才(ウチ)の男子生徒全員ですよ」

カエデ「ひっ!!」

ランコ「五十嵐さんアナタ」

カエデ「な・・何?」

ランコ「いっつも視姦されてるの、御存知?」

カエデ「・・ふうっ」バタン

ランコ「アラやりすぎた」

カエデ「う・・・」

ランコ「おはよう」

カエデ「・・・ここは?」

ランコ「保健室。ゴメンナサイ、やりすぎたわ」

カエデ「・・・・うう、情けない・・」

ランコ「?」

カエデ「私のこの体質・・・治したい・・・」

ランコ「・・・そうね」

カエデ「?」

ランコ「さっきやりすぎたから、お詫びに協力しましょうか」

カエデ「え・・・・」

ランコ「なんですかその訝し気な目は」

カエデ「アナタの・・心に聞いてください」

ランコ「大丈夫よー協力といっても、案を出すだけだから」

カエデ「?」

ランコ「あなた、津田副会長には触れるじゃない」

カエデ「え・・まあ。すすんで触ろうとは思わないけど・・」

ランコ「ダメねー解決の糸口はそこにあるかもしれないのに」

カエデ「・・・」

ランコ「私の調べでは、あなたは津田副会長にならハグまではできる!」

カエデ「無理です!!」

ランコ「この写真をごらんなさい」

カエデ「・・これはっ!!」

ランコ「津田副会長の下腹部を触る風紀委員長・・・AVか何かかしらコレ?」
※コミックス10巻107P参照

カエデ「こっ・・これは発声練習でっ!!・・・ていうかなんでこんな写真撮ってるの?あなたあの時居なかったわよね?」

ランコ「えー・・・・まあ何を言いたいかというと、比較的慣れてる津田君ともっと触れ合って、そこから男子に慣れていけばいいのよってことです」

カエデ「う・・・・うーん・・」

ランコ「ハイハイ。それじゃ一緒に生徒会室行きましょー」

カエデ「あっ・・ちょっと!!」

生徒会室。

ランコ「はろー」
カエデ「ど・・そうも」

天草 「ん?畑に五十嵐か。どうしたんだ?」

ランコ「おや?津田氏と萩村さんは?」

アリア「2年生はまだ授業みたいだよー」

ランコ「ふむ、丁度いいわね」

天草 「それより五十嵐、もう体調はいいのか?」

カエデ「あ・・ご心配かけてすみません。もう大丈夫です」

ランコ「そのことなのよー!!」

天草・アリア「?」

ランコ「実はねー・・・・・」

**

天草 「・・なるほど、男性恐怖症を治したいと」

カエデ「・・はい。正直、こんな状態では大学生や社会人になってから色々と問題が出ると思うんです・・・」

天草 「・・だろうな。それで津田を使って男性に慣れるという訳か」

カエデ「・・言いかた悪いですけどそうです」

天草 「そうだな・・・とりあえず津田はMだ。津田を人間椅子にして座ってみるというのはどうだ?」

カエデ「ひいっ!!」

アリア「ちょっとシノちゃん!」

天草 「ん?どうしたアリア?」

アリア「津田君はシノちゃんの椅子だよ?!」

天草 「うむ・・だが同級生が困っているんだ。備品を貸すのも必要だろう?」

ランコ「ふむ・・津田副会長は会長専用椅子(備品)っと」メモメモ

カエデ「なんか・・津田君がとっても可愛そうに思えてきたわ・・」



8
アリア「あ」

天草 「?」

アリア「そういえば、冬にみんなでスキーに行くって話あったじゃない?」

天草 「うむ」

アリア「五十嵐さんも誘うのはどうかな?」

天草 「なるほど、いいなそれ!」

カエデ「えっ?・・だっ・・大丈夫なんですか?」

アリア「大丈夫だよー」

ランコ「私も行きたいわー」

アリア「畑さんも大丈夫だよー」

ランコ「さんきゅー(これで取材できるわ!!)」

カエデ「なんか急な話ね・・」

天草 「日程は○○日だ」

カエデ「えっと・・大丈夫です」

アリア「アノ日とかぶってない?」

カエデ「ええ、それも・・・って何言うんですか!!」

また数字入っちゃった・・すいません

ガラガラ

津田・スズ「お疲れ様です」

天草 「お疲れ」

津田 「あれ?どうしたんですか。畑さんと五十嵐先輩」

カエデ「い・・いえちょっと委員会の仕事でっ!!///」

ランコ「五十嵐さーん、フラグ立てるのはほどほどにねー」

カエデ「うう・・」きゅー

ランコ「アラ、また・・じゃあ我々はこれで。会長、萩村さん、例の件お願いしますねー」

天草 「うむ」
アリア「はーい」

津田 「はあ・・五十嵐先輩は相変わらずだなー・・」


**********

冬休み。

天草 「素晴らしいスキー日和だ!」

アリア「そうだねー」

萩村 「まあ、雪降ってますけどね」

ランコ「レンズも冬仕様だから雪の結晶もバッチリよー!」

カエデ「さ・・寒い」

津田 「いやー今日は人数多いなー」

***

ランコ「とりあえず記念に写真でも撮りませんか?」

天草 「そうだな!」

ランコ「それでは皆さん、思いつく限りのエロいポーズでー」

アリア「よーし!」

萩村・津田「やめろおおおおおおおおお!!!」

カエデ「はぁ・・・」

ランコ「五十嵐さん、これからリフトに乗るわけですが」

カエデ「・・ええ」

ランコ「津田副会長と乗りなさいな」

カエデ「ええっ?!」

ランコ「アナタ・・何のために着いてきたか忘れたの?」

カエデ「それは・・・」

ランコ「天草会長たちにはもう話してあるので」

カエデ「ちょっと!」

ランコ「生徒会の皆さん(会長と七条さんだけだけど)もあなたの体質を治すことに応援してくれてるのよー」

カエデ「うう・・・」


天草 「それじゃあリフト乗るか。萩村行こうか」

萩村 「え?あ・・ハイ」

アリア「畑さーん」

ランコ「はいはーい・・・それじゃ頑張ってねー」

カエデ「・・・」

書き溜めここまでなのでルパン見ながらゆっくり書いていきます


津田 「あ、五十嵐先輩・・えっと・・別々に乗ります?」

カエデ(津田君が私のこと気遣って言ってるのは分かる・・でもこのままじゃ・・)

カエデ「大丈夫。乗りましょう」

津田 「そうですか?それじゃ・・」


ゴウン ゴウン ゴウン ・・・


カエデ(二人乗りリフトは・・割と広いから)

津田 (そんな端っこに乗ったら落ちますよ・・・)


津田 「あの・・」

カエデ「えっ?!」

津田 「五十嵐先輩は、会長に誘われたんですか?」

カエデ「あ・・えと・・そうね」

津田 「なんか・・会長が無理言ったんじゃないですか?」

カエデ「いえ・・そんなことないわ。私も・・久しぶりにスキーしたいと思ったし・・」

津田 「五十嵐先輩って部活コーラスだし、結構文科系なイメージあったんですけど、スポーツもなさるんですね」

カエデ「別に上手くはないです。滑れる程度よ」

津田 「ハハ・・俺も実はそんなに滑るるわけじゃないです」


カエデ「生徒会は、結構皆さんで遊びに行ったりするんですね」

津田 「うーん・・実はここだけの話、会長が大好きなんですよ、イベント」

カエデ「あの天草さんが・・・ふふふ」

津田 「会長って意外と子供っぽいんですよね」

カエデ「・・・」

津田 「・・?どうしたんですか?」

カエデ「生徒会の皆さんは本当に仲がいいですね」

津田 「え・・そうですか?」

カエデ「・・・実はコーラス部も、風紀委員も男子生徒が入ってきて、私が指導しなければいけないんですが・・・私がこんな体質なんでうまく男子生徒たちとコミュニケーション取れてない感じがあるんです」

津田 「でも・・この前みんなでカラオケ行ったときは俺に歌い方教えてくれたじゃないですか」

カエデ「えっ?!・・あの・・あれは・・・」

津田 (なんか悪いこと言ったか俺・・・?)

天草 「ここからの景色はサイコーだな!」

アリア「シノちゃん、なんだか叫びたい気分だよね?!」

天草 「じゃあ行くか!」

アリア・天草「せーのっ!」

萩村 「やめろー!!!」


津田・カエデ「・・・」

萩村 「やっと来た!津田、遅い!」

津田 「あ・・ゴメン」

カエデ「・・・」

ランコ(あの様子はあんまり上手くいかなかったようね)


天草 「さて、みんなどこのコースで滑る?」

アリア「私はどこでも平気」

ランコ「撮影しやすいコースがいいですねー」

萩村 「お任せします」

津田 「俺そんなに上手いわけじゃないんで、上級者コースは勘弁です」

天草 「じゃあこっちのコースで」

***

天草 「あっという間だったな、さてもう一滑りと行くか!」

津田 「会長、パラレル出来るんですね」

天草 「前来た時は君もパラレルで滑ってたじゃないか」

津田 「いやアレは萩村から逃げて」

萩村 「ああん?」

津田 「いえ」

アリア「うふふ」


カエデ「・・・」

ランコ「五十嵐さん」

カエデ「・・え?」

ランコ「やはりうまくいかないですかー?」

カエデ「・・・いえ・・生徒会の皆さんは仲良いなっって思って」

ランコ「・・嫉妬ですか」

カエデ「違います!・・・いえ・・生徒会の皆さんて本当に仲良くて・・私もあんな風に男女分け隔てなく接せるようになりたい・・」

ランコ「・・・ふむ」

ランコ「天草さん」

天草 「ん?」

ランコ「実は・・・」

天草 「ふむ・・」


***


天草 「さあもう一滑り行くぞ!早い者勝ちだ!!」

アリア「おー!」

ランコ「行きますよー萩村さん」
ひょいっ

萩村 「えっ!」

カエデ「あ、ちょっと!」

津田 「あ、先輩たち!!」


***


津田 「あー・・またみんな先行っちゃった」

カエデ「そうね・・」

津田 「リフト乗りますか」

カエデ「・・そうね」


津田 「・・・」

カエデ「・・・」

津田・カエデ(なんか変な雰囲気になって話しかけられない・・)

津田 「あれ?」

カエデ「?」



リフトの下を滑る4人

天草 「先下まで行ってるぞー!」

アリア「下で待ってるよー」

ランコ「いいツーショットですよー」
パシャパシャ

萩村 「・・・ふん」


津田・カエデ「・・・」

津田 「・・畑さん・・よくあんな体勢で滑れるな・・」

カエデ「・・はあ(そういうことね)」

津田 「・・みんな酷いですよねー」

カエデ「・・・そうね」

津田 「?」

**

津田 「さて、もうすぐ着きますね」

カエデ「ええ」

津田 「よいしょ」
しゃーっ

カエデ「・・きゃっ!」

津田 「おっと!」
だきっ

カエデ「・・!」

津田 「ハハハ・・たまに降りるの失敗しちゃいますよねー」

カエデ「きゃ・・きゃあああ」
しゃーーーーーっ!!

津田 「うわっ先輩!そっちコース外ですよ!!」

津田 「先輩待ってください!」

カエデ「嫌―――!」

津田 「うわっ新雪滑りづらい!!」

カエデ「きゃっ!!」


ずざざざざ・・


津田 「大丈夫ですか?」

カエデ「うう・・・」

津田 「コース外に来ちゃってるんで戻りましょう」

カエデ「・・・ごめんなさい」

***

津田 「うーん・・結構降りてきちゃったんで上に行くのはきつそうですね」

カエデ「・・・本当にごめんなさい」

津田 「大丈夫ですよ。で、どうします?」



カエデ「・・必死に降りてきたから今どこにいるか分からない・・」

津田 「あー・・そうですよね。とりあえず俺たち山の反対側に降りてきちゃってると思うんで、下に降りずに横に歩いていけばコース出ると思うんですよ」

カエデ「じゃあそうしましょう・・・本当にごめんなさい」

津田 「大丈夫ですよ・・そうですね、じゃあ今日の帰りの電車でジュースでもおごってください」

カエデ「うん・・そうするわ」

津田 「じゃあとりあえず歩きましょう」

カエデ「はい」


ざっ ざっ ざっ ・・・


津田 「・・結構まっすぐ歩けないですね」

カエデ「・・山の斜面歩いてるからでしょうね」

津田 「・・どこか痛くないですか?」

カエデ「大丈夫。ちょっと寒いけど」

津田 「うーん・・雪結構降ってきましたね・・」

カエデ「そうね・・」

津田 「スキー履いて歩くのって結構きついですね」

カエデ「でもスキー脱ぐと足埋まっちゃうわ・・新雪だし」

津田 「そうですね・・・」

ざっ ざっ ざっ・・


津田 「あれっ?」

カエデ「・・・崖になってるわね」

津田 「うーん・・どうしましょう・・」

カエデ「上に行くのはきつそうね・・」

津田 「上も結構な崖がありますね」

カエデ「少し下りながらコースに戻る方向に滑っていけばいいかしら」

津田 「じゃあそうしますか」

カエデ「・・・」

津田 「・・・」

カエデ「・・・津田君」

津田 「はい」

カエデ「・・ちょっと休んでもいいかしら?」

津田 「はい。大丈夫ですか?」

カエデ「うん・・大丈夫」
ぶるぶる・・

津田 「・・・ちょっと待ってください」

カエデ「?」

津田 「・・・」
ざっ ざっ

**

津田 「できました」

カエデ「・・かまくら?」

津田 「雪洞です。この前みんなでスノーシューに行ったとき出島さんに教えてもらいました。この中に入れば風しのげますよ」

カエデ「・・ありがとう」
(狭い雪洞の中に二人で入ったら・・いや、今はそんなこと言ってる場合じゃないわ)

カエデ「・・だいぶ体力回復しました」

津田 「この先、どうしましょう」

カエデ「雪・・強くなってきましたね」

津田 「時間は・・今15時半ですね」

カエデ「日があるうちに下まで降りないと帰れないわ」

津田 「・・・あの言いたくはないんですが、コレ遭難ですよね」

カエデ「・・・そうね」

津田 「このままじっとしていた方がいいかもしれないですよ」

カエデ「・・・大丈夫かしら」

津田 「俺たちが降りてこないこと、みんな気づいてると思いますよ」

カエデ「・・・」

カエデ「仮に私たちのことを、皆さんが捜索してくれているとして、どんな手段で捜索してるかしら」

津田 「うーん・・スキー場ではよくスノーモービルで走ってる人いますよね」

カエデ「・・この場所は周りに木が多くて見えないんじゃないかしら」

津田 「確かにそうですね。もう少し周りから見えやすいところまで移動しましょうか」

カエデ「ええ」

津田 「じゃあ行きましょう」

***

しゃーっ


津田 「結構木が多いですね・・」

カエデ「そうね・・それに地面がでこぼこしてるから場所によっては気がなくても見通しが悪いわね」

津田 「うーん・・・あっ先輩その先落ちてますよ!!」

カエデ「えっ?!・・・きゃっ!!」

津田 「!」

カエデ「きゃっ!・・・わっ!・・・いやーーー!!」

津田 「先輩っ!!」

津田 「やばいっ!!」
しゃーっ

津田 「先輩!!」

しーん・・・

津田 「くそっ!」

津田 「五十嵐先輩―!!」

・・・

津田 「いない・・・ん?・・・あの木だけ枝に雪が積もってない・・まさか」

ざっ ざっ ざっ

津田 「やっぱり!気にぶつかって落ちてきた雪に埋もれて・・」

カエデ「・・・」

津田 「先輩!五十嵐先輩!!」

カエデ「・・・」

津田 「そうだ・・息は・・・・してる・・気絶してるのか?」

カエデ「・・・」

津田 「とにかく雪から体を引きずり出さないと!!」
ざっ ざっ ざっ ・・・


津田 「先輩!先輩!!」

カエデ「・・・」

津田 「ダメだ・・どうしよう・・どうしよう・・」

津田 「・・ん?」

津田 (あれ・・・?よく見たら今いるところ・・道っぽいな・・・)

津田 (この道沿いに下っていけばコースに出るかも)

津田 「よしっ!・・・よいしょっ!!」←カエデを背負った

津田 「・・行くか」

***

津田 「ヤバい・・日が落ちてきた・・道は続いてるけど、大きな道やコースに出ない・・」

津田 「いや・・とにかくこの道歩いてけばどこかには着くはずだ・・先輩もこのままじゃヤバい・・急ごう」

ざっ ざっ ざっ・・・

津田 「あ!やった!!小屋だ!!」


津田 「すみませーん!!」

しーん・・

津田 「・・・人住んでる小屋じゃないのかな・・」

ガチャ

津田 「空いてる・・すみません、お邪魔します」

ガチャン

津田 「ふう・・ベッドがある・・先輩を寝かせよう・・よいしょ」

津田 「はー・・とりあえずこれで凍えることなないな・・・」

津田 「ここは何の小屋だろう?」

津田 「・・・炭がいっぱいあるな・・なんにせよ人が住んでる感じじゃないな」

カエデ「・・・」

津田 「先輩?」

カエデ「・・・」

津田 「ダメだ・・まだ気絶してる・・・・ん?!」

カエデ「・・・」

津田 「先輩の体・・メチャメチャ冷たい・・!」

そのころの麓のコテージ。

天草 「・・・アリア・・」

アリア「・・・うん」

ランコ「・・ごめんなさい、私のせいです」

萩村 「今はそんなことより、二人の救助方法を考えましょう」

アリア「・・とりあえず今、山岳救助隊に救助お願いしたわ」

天草 「・・うむ・・しかし」

アリア「天候が悪いし、もう日が落ちて今日はもう捜索できないでしょうって・・」

萩村 「・・っ!・・何かできないんですか?!」

天草 「・・幸い、我々は前、出島さんに雪山で遭難した時の対処法を習った・・津田なら今日の夜を越えられるはずだ・・!」

アリア「とにかく明日日が昇ったらすぐに捜索してもらいましょう」

萩村 (・・・・津田・・・津田・・・)
ランコ(・・・ごめんなさい五十嵐さん・・無事でいて・・)



ゴオオオオオオオオオオオオ・・・・

では今日はここまでで

遅くなりました
続きです


津田 「五十嵐先輩っ!!」

カエデ「・・・」ブルブル・・

津田 「ヤバい・・体が震え出した」

津田 「・・・・」



//////////////////////////////
生徒会役員共+コトミ+時+ムツミでスノーシューに行った日の夜。

ムツミ「お風呂気持ちよかったね!」

天草 「なんにせよ急に宿取れてよかったな」

津田 (なんかこういうパターン多いな・・)

萩村 「昼間は晴れてたのにすごい吹雪ね。山の天気が変わりやすいっていうのは本当ね」

出島 「ふむ・・ではせっかくなので皆さんに雪山で遭難した時の対処法をお教えしましょう」

津田 「出島さんって本当に知識の幅広いですね」

出島 「いえいえ、プレイの幅はもっと広いですよ」

津田 「褒めるんじゃなかったー」



出島 「雪山で遭難した場合、最も怖いのは低体温症です」

アリア「体温が下がりすぎるってこと?」

出島 「ハイ、簡単に言えばそうです」

アリア「私、冷え性だから時々体が冷たくなっちゃうことあるけど・・?」

出島 「いえ、“低体温症”というのは、体が自分で発熱する力が、体から自然に熱が失われる量よりも落ちた状態が続き、体の中の温度が危険なくらい低くなった状態をいいます」

コトミ「・・ちんぷんかんぷん」

出島 「まあ、日本で普通に生活していて低体温症になることは滅多にありません」

アリア「よかったー」

出島 「体温が奪われる要因として、最も大きいのは風です。吹雪にさらされ続けると体感気温はどんどん落ちていきます」

津田 「ああ、気温そんなに低くなくても風があると寒いですよね」

出島 「なので、まずは雪洞を作り風をしのぎます」

津田 「雪洞?」

出島 「まあ、いうなればカマクラです。カマクラって、風をしのげますし、熱が内部にこもるので意外と暖かいんですよ」

天草 (今度雪降ったら作ってみよう)

出島 「遭難してから発見されるまでは一晩以上かかることもありますから、周りに風をしのげる建物がない場合は必ずこの雪洞を作りましょう」

天草 「確かにそう都合よくコテージなどないからな。普通は」

コトミ「あの、出島さん」

出島 「はい?」

コトミ「よく言うじゃないですかー雪山で遭難したら裸で温め合った方がいいって!アレ本当ですか?」

出島 「そうですね、半分本当です」

コトミ「?」

出島 「低体温症になった時にまずしなければいけないことは、体を温めることです」

津田 「まあそうでしょうね」

出島 「しかし遭難した時など、そんなに都合よく医療施設があることも少ないですから、そういう時は裸で温めるのは効果的です」

コトミ「ふむふむ」

出島 「また、来ていた衣服が濡れていたり凍っている場合などは、脱がせて乾いた服を着せなければいけません。そういったものがない場合はやはり濡れた服を脱がせたうえで体で温めてあげるのがいいでしょう」

萩村 「確か、たき火とかで急激に温めるのは駄目なんですよね?」

出島 「ええ、低体温症の状態というのは、生理的な保温機構が正常に作用していないことが多いので、ひと肌くらいの温度でゆっくり温めるのがいいですね」

津田 「なるほど」


出島 「ちなみに低体温症ははじめは体中の震えが出ます。そしてだんだん意識があいまいになってきて、時に錯乱状態になります。そして最終的には意識を失います。意識を失うほどになってしまうと非常に危険な状態であるといえますね。気を付けなければいけないのは、これらの変化は非常にゆっくり起こるので、自分で気づかないことが多いということです」

天草 「そうか、それは怖いな」

コトミ「私も冬の朝は体が震えますねー」

出島 「そうですか、それは危険ですね。津田さん、冬の朝はコトミさんを裸で温めてあげてください」

コトミ「Wow!」

津田 「どこからそういう結論に至った?」

萩村 (私も朝震えれば、とか一瞬でも思った自分が情けない・・//)



//////////////////////////////



津田 「・・・これは、あの時出島さんが言ってた低体温症の初期症状だよな・・」

津田 「・・・・迷ってる場合じゃない!」

津田 「五十嵐先輩・・・服、脱がせます」



カエデ「・・・」ブルブルブル・・
ぬがせっ

津田 「下着は・・いいよね」

津田 「・・・」

津田 「俺も脱がなくちゃ・・」
ぬぎっ

カエデ「・・・」ブルブルブル・・

津田 「幸い乾いた毛布がある・・これをかけながら・・」

津田 「すいません五十嵐先輩・・失礼します」

ばさっ


津田 「・・・・」

津田 (先輩の体・・なんて冷たいんだ・・)

津田 (吹雪の中、俺が長時間負ぶってたせいだ・・)

津田 (先輩・・・起きてください!)

真っ暗な闇の中にいる夢だった。
真っ暗で何も見えない。
体の感覚が麻痺していて、自分が自分を感じられない。
そしてすごく寒い。
夢の中なのに、さらに夢の中に落ちていくような感じだった。
このまま何も考えなければ、ゆっくり落ちていく。
だんだん自分も闇の一部になっていく・・。

『・・が・・せ・い』



『五十嵐先輩!』

私のずっと上の方から方から、誰かが私を呼んでいる。
闇の中に少しだけ光が見える。
光の中にいるのは・・・

『・・・津田君?』

私の体が少しだけ浮力を取り戻した。
闇の中で少しだけ私の体が浮く。
闇が薄くなっていく。



津田 「五十嵐先輩!!」

カエデ「・・・・つだ・・くん?」

津田 「先輩!よかった・・大丈夫ですか?分かりますか!?」

カエデ「ん・・・」

カエデ(体に力が入らないわ・・・)

カエデ(津田君の声がするけど・・・真っ暗でよくわからないし・・)

カエデ(でもなんだか体が温かいわ・・・)

津田 「五十嵐先輩!」

カエデ「・・・」

カエデ「・・・」

カエデ「・・・・・・・!!」

目が慣れてきて気づいた。
津田君は上半身しか見えないけど裸。
裸の津田君が私に覆いかぶさっている・・!!

カエデ「・・・・!」

津田 「大丈夫ですか先輩?!手足に力入りますか?!!」

カエデ「・・・え?」

手足に力?

カエデ(あ・・・少しだけ指が動かせるけど・・なんだか麻痺してる感じがするわ・・)

津田 「五十嵐先輩!」

カエデ「すこし・・なら・・動くわ・・・・なんで・・裸で・・?」

津田 「よかった・・・先輩体温下がりすぎてたんです。今俺が温めてますから!」

カエデ「うう・・・(気絶しそう)」


津田 「本当にすいません・・でもこうするしかないんです!後でいくらでも謝りますから、今は我慢してください!」

カエデ「・・・・(津田君)」

津田 「体の感覚ありますか?」

カエデ「からだ・・・?」

カエデ「・・・・・・・きゃっ!!」

・・・その時初めて私は、私が裸であることに気付いた。
逃げ出したいけど、体が動かない。

カエデ「ぁ・・・イヤ・・うう」

津田 「先輩!」

カエデ「なんで・・私も・・裸なの・・?

津田 「すみません、俺が脱がせました。先輩の体温上げるにはこうするしかないんです!」

カエデ「・・・・うう」

津田 「本当にすいません・・でも放っておいたら先輩が・・」

カエデ「・・・・・・うん・・・」

津田 「先輩・・」

カエデ「・・・津田君の体がふれてる・・・お腹とかはかんかくがあるけど・・手足の感覚はほとんどないわ・・・」

ぎゅっ

カエデ「?!」

津田 「・・・」

津田君が私の手を包み込むように握っている。
足も、津田君の両足で挟むような状態になっている。
つまり、全身が津田君に包まれているような状態になっている。

カエデ「・・・・つだくん」

津田 「はい」

カエデ「・・・ありがとう」

津田 「・・・」

****

カエデ「・・・津田君」

津田 「はい」

カエデ「手足の感覚・・少し戻ってきたわ」

津田 「本当ですか?!」

カエデ「・・・ほら」
ぎゅっ
・・・私の手を握る津田君の手を、少し握り返した。

津田 「よかった・・・足も大丈夫ですか?」

カエデ「うん、動くわ」

津田 「・・・ホントによかった・・」

カエデ「・・・ここはどこなの?」


津田 「分かりません・・先輩が雪の中で気絶しちゃったから、先輩を負ぶって彷徨っていたら見つけた小屋なんですが・・・」

カエデ「・・・ごめんなさい・・全部・・・私のせいね」

津田 「そんなことないです!最初に俺が間違った提案しなければ・・」

カエデ「・・・ごめんね」

津田 「・・・」

カエデ「あ・・・」

津田 「?」

カエデ「えと・・・津田君は寒くないのかしら?」

津田 「え?」

カエデ「その・・・裸でしょ?」

津田 「えっと・・実を言うと先輩の体温でそこまで寒くないです」

カエデ「・・・」

津田 「えっと・・・そろそろ服着ますか?濡れてたから干しておいたので・・」

カエデ「・・・私も・・このままのが温かいから・・・その・・・」

津田 「え・・・」

カエデ「あ・・いえ・・・えっと・・い・・・今何時かしら?」

津田 「・・・12時くらいですね」

カエデ「そう・・もうそんな時間なのね・・」

津田 「大丈夫です。きっと明日には救助が来ます」

カエデ「うん・・・」

津田 「この小屋なら風は入ってこないですし、結構寒いですがこれ以上冷えることないから安全です」

カエデ「そうね・・・外はすごい風ね・・」

津田 「はい」

カエデ「・・・」

津田 「・・・」


ぐぅぅぅ

カエデ「!・・・・ご・・ごめんなさい///」

津田 「いっ・・いや!・・・おなかすきました?」



カエデ「だっ・・大丈夫よ!」

津田 「チョコレートとアメなら持ってますよ」

カエデ「う・・」ぐぅぅぅ

カエデ「///」


津田 「えっと・・出しますね」

カエデ「うん・・・ゴメンナサイ///」


ばさっ

カエデ「・・・っ」

津田君がベッドから出てリュックを探っている。
津田君が居なくなったベッドが、すごく寒く感じた。

津田 「とりあえずチョコでいいですか?」

カエデ「・・うん」

津田 「はい、口開けてください」

カエデ「えっ・・だ・・大丈夫よ、自分で・・」
そう言いかけたが、私の体はまだ完全には言うことを聞いてくれなかった

津田 「先輩はできるだけベッドの中にいて体を温めていてください」

カエデ「・・・うん」

カエデ「ん・・」もぐ

カエデ「・・・っ」
かなりおなかがすいていたせいか、唾液腺が痛い。

津田 「大丈夫ですか?」

カエデ「大丈夫よ・・・ありがとう」

津田 「もう少し食べられそうですか?」

カエデ「・・・・津田君はいいの?」

津田 「俺も食べます。でもまず先輩が食べてください。本当は温かいものがいいと思うんですが、とりあえずカロリーとらないと、体温調節機能が正常に働かないと思うので」

カエデ「・・・詳しいのね」

津田 「実は少し前、出島さんに教えてもらったんです。ホント偶然ですが」

カエデ「そうだったの」

津田 「はい。教わっておいて本当に良かったです」

カエデ「・・・ありがとう」

津田 「いえ・・・」


**

津田 「・・・」

カエデ「今日はきっともう救助は来ないわよね」

津田 「たぶんそうだと思います」

カエデ「なら今日は寝た方がいいわね」

津田 「そうですね」

カエデ「・・・」

津田 「・・・」

カエデ「津田君・・布団入らないと今度はアナタの体温が下がるわよ」

津田 「はい・・・すいません、失礼します」
もぞもぞ

カエデ「・・・」

津田君の肌が私の肌に触れた。
温かい・・・。

カエデ「・・・助けてもらっておいてこんなこと言うのはアレだけど」

津田 「はい」

カエデ「今はこうしないと二人とも危険だから・・こうしてるんですからね?」

津田 「はい、わかってます」

カエデ「・・・」
ぎゅっ

・・・そう、仕方がないから、こうしてるんだから。


今日はここまで!
おやすみなさい

こんばんは
少しだけ更新しますねー

ゴオオオオオオオオオ・・・


津田 「ぐー・・・ぐー・・・」

カエデ「・・・」


カエデ「・・・・津田君」

津田 「ぐー・・・ぐー・・・」

カエデ(寝てる・・・わね)


津田君の体がこちらを向いている。
津田君の左腕は私の頭の上に。
津田君の右腕は私の左肩を通過して私の背中を温めている。
私はやっと十分に動かせるようになった手足を小さくまとめて津田君に抱かれている。
津田君の息遣いを直に感じる。

これは、しょうがない事だから。
津田君は、意識を失って凍えた私を救うためにこうしてくれたのよ。
津田君がそうしてくれなければ、私は死んでいたかもしれない。
だから私は津田君に感謝しなければいけない。
津田君だって本当は嫌なはず。
だって裸なのよ?
好きでもない人と、裸で抱き合うなんて・・!

・・・好きな人?
私、好きな人ができたことあったかしら?
小学生の頃、なんとなく不潔で下品な男子たちを見てそれ以来避けるようになった。
気付いたら、触られたり話すのも嫌になっていた。
ううん・・そうじゃないわ。
嫌なんじゃなくて怖いんだ。
私は勝手に自分の中で、男性を遠い存在にしちゃったから。
今更それに触れるのが怖いんだわ。

津田君は?
津田君は・・不潔でも下品でもないわ。
目を覚ました時見た津田君の目は、私を助けるために必死だったように感じたわ。
今も津田君は、私が寒くないように私を抱きしめている。


あれ・・・?

私、

津田君に、

触ってる。

ていうか、

裸で

抱き合ってる??

怖くないし

嫌じゃないわ??

・・・克服できたのかしら??


なんだ、私いつの間にか克服できてたのね。
そうよ、あり得ないもの、この状況。
後輩の男の子と裸で抱き合うなんて。
以前の私だったら、即気絶だわ。
あーよかった。
生徒会の皆さんとスキーに来てよかったわ。
遭難して死にかけたけど、結果オーライじゃない。
これで私も・・・・
えっと・・・・
そうそう、後輩の男子の指導とか出来るわ!
畑さんとか津田君には感謝しなきゃ。
まあちゃんと帰れたらだけど。

うん。

そう。

克服できたの。

だからこれは感謝してるって気持ちよ。

そうに決まってるわ。


******



津田 「ん・・・」

カエデ「・・・」

津田 「あ・・・お・・おはようございます先輩」

カエデ「うん・・おはよう、津田君」

津田 「あ・・体調はどうですか?」

カエデ「うん、平気よ。ありがとう」

津田 「・・よかったです」

カエデ「津田君のおかげよ・・本当にありがとう」

津田 「いえ、俺はそんな・・・」

カエデ「津田君、私・・」

津田 「先輩・・・う・・はっくしょん!」

カエデ「ちょっ・・ちょっと津田君風邪ひいたんじゃないの?!」

津田 「いえ・・大丈夫ですよ」

カエデ「もう・・・!」
ぎゅっ

津田 「先輩・・?」

カエデ「こうすれば・・・少しは暖かいわよね?」

津田 「あの・・俺・・先輩は」

カエデ「私はもう大丈夫・・津田君が暖めてくれたから」

津田 「・・・」

カエデ「・・こうすれば暖かいのは・・津田君が教えてくれたから」

津田 「・・・ありがとうございます」

カエデ「・・・うん」
ぎゅううう

津田 (先輩の細い腕が・・俺の背中に・・)
津田 (よかった・・暖かい・・もう先輩良くなったんだな)
津田 (先輩・・きっと嫌なんだろうけど・・俺のためにこんな事・・)
津田 (あ)

カエデ「・・・」

カエデ(私・・何してるんだろう・・・)
カエデ(いやこれは津田君のため!)
カエデ(津田君が私のために風邪なんか引いたら寝覚め悪いじゃない!)
カエデ(それに、こうすればこうする程、私が男性恐怖症を克服したってことになるのよ!)
カエデ(私たちどっちにとっても良いことじゃない!)
ぎゅううう

津田 「・・・う」

津田 (先輩・・)
津田 (そんなに力いっぱい抱きしめられたら・・)
津田 (目の前にある先輩の胸にぶつかります!!)
津田 (ていうか昨日は必死で気づかなかったけど、先輩って結構胸あるんだな・・)

津田 (やばい・・沈まれ!)

カエデ「つ・・津田君・・大丈夫?寒くない?」
ぎゅうう

津田 「うぐぐ・・せんぱい・・」

カエデ「え?」

津田 「く・・くるし」

カエデ「きゃっ!!ご・・ごめんなさい!!」

津田 「だ・・大丈夫です・・はぁ・・はぁ・・」

カエデ「ご・・ごめん・・つい力が」

津田 「いえ・・元気取り戻したみたいでホントよかったです」

カエデ「・・・うん」
きゅっ

津田 「?!」

カエデ「本当にありがとう津田君・・・まだ寒いから、もう少しこうしてましょう?」

津田 「・・はい」


*****************

天草 「・・夜が明けたな」

アリア「うん・・・今出動の準備してるって」

天草 「そうか・・・」

萩村 「・・・・私は準備できてます」

アリア「スズちゃん、気持ちは分かるけど大丈夫?目の下にクマができてるよ」

萩村 「・・大丈夫です」

ランコ「ちゃんと寝て休息をとるのも大事ですよー」

萩村 「・・・(そう言う畑さんだって徹夜してたじゃないですか)」


救助隊員「準備ができました。これから捜索を開始します」

アリア「うん。どの辺から捜索するの?」

捜索隊員「この地図を見てください。頂上を挟んで、今いる場所の反対側の斜面の中腹になん箇所か崖があります。万が一を考えてこのあたりから捜索していきます」

アリア「これは建物の記号?」

捜索隊員「これは今は使われていない炭焼き小屋です。かなり麓に近い位置ですので、昨日の吹雪の中ここまでたどり着いている可能性は低いと思いますが」

アリア「・・・」

捜索隊員「我々はヘリで空から捜索します。発見しましたらすぐに連絡をしますので」

天草 「私たちも乗せてください!」

捜索隊員「いえ、ヘリにはお乗せできません」

天草 「な・・なぜですか?!」

捜索隊員「定員もありますし、一般人の方を乗せるわけにはいきませんので・・」

アリア「・・・シノちゃん、私たちは別ルートを探そう」

天草 「うう・・」

アリア「大丈夫、ウチ(七条家)からも捜索隊出してもらうことになってるからそっちについていこう」

天草 「分かった」

***

捜索隊員(七条家)「では我々は麓側から探しましょう」

アリア「この炭焼き小屋っていうところから探していかない?」

捜索隊員(七条家)「承知しました」


*****


萩村 「あの小屋ですか?」

アリア「たぶんそうだねー」

天草 「麓の道からそんなに離れていないから歩きで行けそうだな」

ランコ「カメラのスコープで覗いてみましょう」

ランコ「・・・・ん?人影があるような気がしますね」

天草 「何っ?!急ぐぞ!!」

今日はここまでにしまーす

おやすみなさい

つづきでーす


天草 「津田っ!!」
アリア「五十嵐さん!」

ガチャ


津田 「うわっ!!」
カエデ「み・・皆さん」

萩村 「つ・・・・・津田・・五十嵐先輩も・・・よかった・・・」

ランコ「五十嵐さんッ!!」

カエデ「・・・畑さん」

ランコ「ゴメンナサイ私のせいで・・!」

カエデ「大丈夫、畑さんのせいじゃないわ」

天草 「二人とも無事でよかった・・・!!とりあえず早くロッジに戻ろう!」

アリア「捜索隊の人たちにも連絡するねー」

・・・


津田・カエデ(あ・・・・危なかったああああああ!!!!)
ドキドキドキドキドキドキ・・・・・



【30分程前】

カエデ「・・・・・///」

津田 (やばいやばい・・昨日は全然考えてなかったのに・・・今俺完全に意識しちゃってる・・・沈まれ・・沈まれー!!)

カエデ「・・・津田君」

津田 「はいっ!!(・・・バレた?!)」

カエデ「・・寒くない?」

津田 「え・・・あ、ハイ」

カエデ「風、吹いてないわね」

津田 「あ・・ハイ。そうですね」

カエデ「もう少し気温が上がったら外の様子見ましょう」

津田 「・・はい」

カエデ「津田君は体調悪かったら寝てていいわよ」

津田 「いえ・・ホント大丈夫なんで」

カエデ「私のせいで津田君が風邪をひかせるわけにいかないわ」

津田 「・・・」

カエデ「・・・」


カエデ「・・・津田君」

津田 「はい?」

カエデ「私・・・津田君に謝らないといけないわ」

津田 「いえ・・遭難は先輩のせいじゃないですよ」

カエデ「・・・それもあるけど」

津田 「え?」

カエデ「私・・・津田君と初めて会った時から・・・すごくアナタに失礼だったわ・・」

津田 「い・・いや・・」

カエデ「私・・男性恐怖症でしょう?」

津田 「それは、しょうがないですよ」

カエデ「うん、自分にもそう言い聞かせてたけど、それって逃げてただけだったわ」

津田 「・・・」

カエデ「津田君がこんな私とも普通に接してくれて、私、男性恐怖症少しずつ治ってる気がするの」

津田 「・・・・先輩」

カエデ「・・こんなに面倒くさい奴と普通に接してくれてありがとう・・・今まで失礼な態度とってごめんなさい」

津田 「そんな・・大丈夫ですから・・先輩は先輩のペースでいてください」

カエデ「ふふふ・・さすが生徒会副会長ね」

津田 「そ・・そうですか?」

カエデ「男子が・・・みんな津田君みたいに紳士ならいいのに」

津田 「え・・そんな俺・・そんなことないですよ」
※ 現在、津田の下半身は紳士的ではありません

津田 「それに、たぶん会長とか、萩村とか、生徒会の皆がちゃんとしてるんで、俺までそんな風に見えるだけですよ」

・・・ズキッ

カエデ(?!・・・何今の・・・)

カエデ「と・・・とにかく!津田君のおかげで私は少しだけ男性恐怖症が治りました!いまなら・・・こうしたって、嫌な感じしないもの」
ぎゅっ

津田 「あ・・・」

津田 (五十嵐先輩が・・俺の手を握ってる・・)

津田 (冷静に考えて・・俺・・今先輩とベッドの中で裸で抱き合って手をつないでるんだよな・・・・)

津田 (あ)

カエデ「・・・・・っ」

津田 「・・・・・」

カエデ・津田(目が合った・・・目・・逸らせない・・・)


カエデ「・・・・・っ///」

津田 「・・・・//」

はっ・・

はっ・・



見つめ合ったまま、時間が過ぎる。

1分・・
2分・・

どちらのとも分からない息遣いが、簡素な毛布の中で響く。

二人とも目を逸らせない。

目を逸らせば、お互いのカラダを見てしまう。

お互いが温め合ったカラダを。

カエデは、握ったタカトシの暖かい掌から、男を感じていた。

タカトシは、カエデの解かれた髪と少し紅潮した頬から、女を感じていた。

ドクン・・

ドクン・・


カエデ「・・・つ・・だく」

タカ 「・・せん・・ぱ」


バラバラバラバラ・・・・・


津田 「・・・ん?」

バラバラバラバラバラバラ・・・・

津田 「これって・・・ヘリの音じゃないですか?」

カエデ「っ・・!そ・・そうかもしれないわねっ」

津田 「救助隊が来てくれるかもしれない・・・先輩・・服着て準備しましょう」

カエデ「そっ・・そうね!」


カエデ「・・・・・っ」

ドックン・・
ドックン・・
ドックン・・



・・・・

そして二人は無事救助された。

*******************

帰りの車(出島さんの運転)の中。

天草 「五十嵐・・本当にすまなかった。私が悪ふざけをしたせいで・・!!」

カエデ「いえ、遭難したのは私がコースアウトしたからなんです。皆さんは悪くありません」

ランコ「天草会長、五十嵐さんもこう言っていますし」

萩村 「いや、イタズラ提案したのは畑さんでしたよね?」

カエデ「もう、やっぱり!」

ランコ「オホホホー・・・・・・・今回は本当にごめんちゃい」

カエデ「・・・無事戻れたからもういいわよ」

アリア「津田君も頑張ったねー」

津田 「いえ・・・そんな」

カエデ「つ・・津田君は気絶した私を負ぶって必死に小屋を探してくれました。今回私たちが助かったのは津田君のおかげです」

津田 「いえ、それを言うなら出島さんのおかげです。雪洞を作ったり体力を消費しない行動を習ったおかげで助かることができたんですよ」

出島 「そうですか・・・それは良かったです。ではお礼に童貞を頂いてもよろしいでしょうか?」

津田 「よろしいわけありません!!」

津田 「ふう・・・少し寝てもいいですか?」

天草 「ああ、津田もお疲れ様だな」

津田 「・・・・・・」

アリア「?」

カエデ「・・・津田君?」

津田 「・・・・・・」

すっ
カエデ「津田君!熱あるじゃない!!」

萩村 「え?!大丈夫なの津田?!!」

津田 「うーん・・・大丈夫・・・」

すっ
萩村 「・・本当だわ・・七条先輩、薬とかありませんか?」

出島 「座席後ろのポケットに冷えピタがあります」

天草 「よし、とりあえずそれを使おう!」

アリア「じゃあ最初に津田君の家に寄ろうかー」




ランコ(・・・今、五十嵐さんナチュラルに津田氏のおデコに触ったわねー・・・)

とりあえずここまでで風呂行きます
戻ってきてエネルギー残ってたら続き行きます

エネルギーありました

続きです

**********

タカトシルーム。

天草 「それじゃあ起こしたら悪いから私たちはこれで帰る」

アリア「起きたらよろしくって伝えてねー」

萩村 「ちゃんと栄養とれって言っておいてね」

コトミ「はーい!みなさんわざわざタカ兄のお見舞いありがとうございましたー!!」


津田 「ぐーっ・・・・ぐーっ・・・」

***


ピンポーン

コトミ「ん?誰だろう?」

コトミ「はーい!!」


カエデ「ご・・ごめんください」

ガチャ

コトミ「はいはーい!あれ?五十嵐先輩?」

カエデ「あ・・津田君の妹のコトミちゃん」

コトミ「??」

カエデ「えっと・・・その・・津田君のお見舞いに来たんだけど・・」

コトミ「ええっ??!!」


カエデ「もうっ!そんなに驚かなくてもいいじゃない!」

コトミ「まさかあのカエデ先輩が・・タカ兄のフラグ乱立は止まりませんな・・・!!」

カエデ「だーかーらー!!」

・・・

コトミ「はぁなるほど・・・それでお見舞いに」

カエデ「そうよ!まったくもう・・・しょ・・正直気が進まないけど社交辞令としてお見舞いに来るのは当然のことです」

コトミ「そういえばついさっきまで、生徒会の皆さんが来てましたけどカエデ先輩も一緒に来ればよかったのに」

カエデ「え?そうだったの?・・・まあいいわ。とりあえず津田君に一目会ったら帰ります」

コトミ「それが・・・」

カエデ「?」

コトミ「タカ兄・・あれから目を覚まさないんです・・・高熱もずっと続いてて・・・」

カエデ「えっ?!!津田君が?!すぐに病院に行かなきゃダメよ!!救急車を呼ばないと・・・!!」

コトミ「あ・・・えっと・・・軽いジョークだったんですが・・・」

カエデ「?!!?」

コトミ「カエデ先輩・・反応がスズ先輩と同じですねー・・」

カエデ「・・・・と・・とりあえず一目会ったら帰ります」

コトミ「あ・でも眠ってますよ。これはホントで。さっきもタカ兄眠ってたんで、会長たちはすぐに帰っちゃったんですよ」

カエデ「そ・・そう」

コトミ「・・・」

カエデ「・・・」

コトミ「えと・・一応部屋行きます?」

カエデ「・・・ええ・・一応・・」


・・・
コトミ「じゃあ私、リビングにいるのでー」

ガチャン

カエデ「・・・」

津田 「・・・」

カエデ「・・・つだくん」

津田 「・・・あ・・先輩」

カエデ「わっ!・・・起きてたの?!」

津田 「えっと・・・下でコトミがうるさかったんでさっき目が覚めました」

カエデ「・・・」

津田 「お見舞い来てくれたんですね・・ありがとうございます」

カエデ「・・・・やっぱり無理させてたのね、私」

津田 「そんなことないですよ」

カエデ「ごめんね」

津田 「・・・でも、俺が風邪ひいたぐらいで二人ともちゃんと帰ってこれたんですからむしろ良かったです」

カエデ「ふふふ・・そうね。ありがとう」

津田 「いえ・・・」

カエデ「・・・」

津田 「・・・」


カエデ「あっ・・・お見舞いにフルーツ持ってきたから。後で妹さんにむいてもらって」

津田 「ありがとうございます」

カエデ「・・・」

津田 「・・・」

津田 「あっ!す・・座ってください」

カエデ「え・・あ・ありがとう」

津田 「・・・」

カエデ「・・・」


カエデ「あ・・ね・熱は、まだあるの?」

津田 「いや、測ってないから分からないですが、たぶんもうないです」

カエデ「あ・・うん、それはよかったわ」


津田 「・・・」

カエデ「・・・」


津田 「えっと・・」
もぞもぞ

カエデ「どうしたの?」

津田 「いえ、ちょっと水飲もうかと」

カエデ「机の上のペットボトル?」

津田 「あ・ハイ」

カエデ「津田君は寝てて。私がとるから」

津田 「あ、いやそれくらい俺自分で」

カエデ「あっ」

津田 「あ・・・」

・・・ペットボトルをつかんだ私の手を、津田君の掌が包み込んだ。

ドキドキドキドキドキドキドキドキ
カエデ「あ・・・あ・・・」

津田 「あっ・・・あ・すいません」
さっ

カエデ「あ・・・つ・・つ・・」

津田 「え?」

カエデ「ダメ・・じゃない・・・手・・まだ熱いわよ・・・熱・・・あるんじゃない?」
・・・やっと言葉を絞り出した。

津田 「そ・・そうですか?」

カエデ「う・・うん」

津田 「いや・・むしろ手冷えてて冷たいかと思うんですが」

カエデ「??!!」

カエデ「じゃっ・・・じゃあ!」
・・・一個、言葉の選択を誤ると、私の装っていた冷静さは簡単に瓦解して、思いもよらない大胆さが顔を出した。

カエデ「こうしてれば・・・!」

津田 「せんぱい・・・」

カエデ「あったかいでしょ・・・?」
・・・掛け布団の中で、私は津田君の手を握っていた。

津田 「あ・・・その・・ありがとうございます・・あったかいです」

カエデ「・・・うん//」
・・・熱かったのは私の手の方だった。


津田・カエデ「・・・・・・」


1分くらいだったのか、10分くらいだったのか、あるいは10時間ぐらいだったのか。
津田君のひんやりした手の温度が私に伝わってきて、そしてゆっくりと私たちの手の温度は一緒になった。


津田・カエデ「・・・・・・」


もう手の温度はあたたかい。
でも私たちは見つめあったまま、次にいけない。
何をしていいかわからない。
何を言っていいかわからない。
私は、津田君は、握った手の中でお互いの存在だけを感じ続けた。

コンコン!

コトミ「カエデ先輩?」

津田・カエデ「!!」
さっ!!


ガチャ
コトミ「大丈夫ですー?・・・あれタカ兄起きてたんだ」

津田 「あ・・コトミ。さっきお前の声で起きた・・・どうしたんだそのリンゴ?」

コトミ「カエデ先輩のお見舞いだよ?食べるかなーって思って」

津田 「あ、うんちょうど喉乾いてたから」

コトミ「はい」

シャク・・
津田 「うん・・先輩、御馳走様です」

カエデ「あ・・うん、いいのよ。じゃあ私はそろそろ帰ります。お大事に。」

津田 「あ・・ハイ。わざわざありがとうございました」


***

カエデ「・・・」

カエデ「・・・」

カエデ「ーーーっ!!!///」
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・・・


ランコ「や」

カエデ「きゃああっ!!」

ランコ「なんで津田副会長の家の前で悶えてるんですか?」

カエデ「もだっ・・!!そんなんじゃありませんっ!!もう帰るとこですから」
スタスタ

ランコ「あ、待ってーヒマだからウチでお茶でもしない?」
スタスタ


・・・
畑家にて。

カエデ「はぁ・・・なんでアナタは津田副会長の家の陰に隠れてたんですか?」

ランコ「いえ、生徒会の皆さんが津田氏の家にお見舞いに行ったので、これはひと騒動あるかと思い」

カエデ「なんでお見舞いでひと騒動あるのよ」

ランコ「いえ、4Pとか」

カエデ「破廉恥なこと言わないでください!」

ランコ「まあ・・4Pは期待していませんよ。津田氏、鈍感なので」

カエデ「・・・」

ランコ「津田氏は本当鈍感よねー」

カエデ「・・・そうなの?私にはよくわからないけど」

ランコ「ええ、そりゃ見れば分かるでしょー」

カエデ「・・・」

ランコ「天草会長や萩村さん・・・完全に津田氏のこと好きでしょ」

カエデ「・・・・そう、かしら」

ランコ「ええ、でも津田氏は気づいてないでしょうね。鈍感だから」

カエデ「・・・もしそうなら、天草さんや萩村さんがかわいそうね」

ランコ「・・・そうねー」

カエデ「・・・」

ランコ「・・・」


ランコ「ところで、五十嵐さん」

カエデ「な・・なに?」

ランコ「男性恐怖症、少しは克服できたの?」

カエデ「あ・・えっと・・・まあ少しは」

ランコ「ほー」

カエデ「なによ!」

ランコ「まあカタチはどうであれ、男性と一晩一緒だったわけですからねー!」

カエデ「ひ・・人聞きの悪い言い方はやめてください!」

ランコ「津田氏の体には触れましたか?ハグは??」

カエデ「だから!!」

ランコ「・・・まあ良かったじゃないですか」

カエデ「え?」

ランコ「津田氏のおかげでアナタの体質改善という目標はとりあえず果たせたんだから」

カエデ「・・・まあそうね」

ランコ「ええとね」

カエデ「?」

ランコ「ワタシこういうの慣れてないからなんて言っていいかわからないのよねー」

カエデ「え?」

ランコ「ゴメンナサイね・・私のせいでとんだ目に遭わせてしまって」

カエデ「・・・畑さん」

カエデ「畑さん・・」

ランコ「?」

カエデ「遭難したのは本当に私のせいだから、それに関してあなたが気にすることはないわ」

ランコ「・・ええ」

カエデ「あなたの言った通り、津田君のおかげで男性不信も少し治りました。だから結果オーライよ」

ランコ「それは良かったです」

***

カエデ「それにしても畑さんのお宅にお邪魔するのは初めてね」

ランコ「そういえばそうですねー」

カエデ「意外と女性らしいインテリアなのね」

ランコ「津田氏の家はどうでしたー?」

カエデ「えっ?」

ランコ「津田氏の家、というか部屋に入ったのも今日が初めてでは?」

カエデ「ま・・まあそうだけど」

ランコ「やっぱりイカ臭かったですかー?」

カエデ「何を言ってるの!!」

ランコ「ふむ・・・」

カエデ「?」

ランコ「五十嵐さん、アナタ本当に少し治ったわねー」

カエデ「え??」

ランコ「前なら気絶してもおかしくない状況でしたよー?」

カエデ「・・・ま・まあ、いちいち気絶してたらしょうがないですからね」

ランコ「五十嵐カエデは津田タカトシを知って、少し大人になった・・・か」

カエデ「含みのある言い方はやめてください!!」


ランコ「・・・でも、ぶっちゃどうですか?」

カエデ「・・・なにが?」

ランコ「津田氏ですよ」

カエデ「つ・・津田君がどうかしたの?」

ランコ「津田氏のこと、ちょっと好きになりました?」

カエデ「?!」

カエデ「何をわけのわからないこと言ってるの?!それに・・そういうのは津田君にも迷惑でしょう」

ランコ「津田氏が迷惑でなければいいんですか?」

カエデ「なっ・・・」

ランコ「・・・?」

カエデ「そんなワケ・・・あるわけないじゃない」

ランコ「五十嵐さん」

カエデ「な・・なんですか?」

ランコ「顔真っ赤ですよ」

カエデ「嘘っ?!」

ランコ「はい」
つ鏡

カエデ「・・・これは・・少しこの部屋が暑いからです!」

ランコ「そうですか?それじゃ暖房を切りましょう」
ピッ

カエデ「・・・・」

ランコ「まあ男性恐怖症のアナタがいきなり男性を好きになるってことは無いですかねー」

カエデ「そ・・そうよ」


ランコ「・・・では、これはあなたに話してもいいですかねー」

カエデ「?」

ランコ「私たちもそのうち卒業じゃないですか」

カエデ「ええ」

ランコ「桜才(ウチ)の校則には学内恋愛禁止というのがあるのはもちろん御存知よねー」

カエデ「ええ、もちろんです」

ランコ「ということは、卒業したら恋愛はOKということよねー?」

カエデ「まあ・・そこまで校則で縛れるものでもないですし」

ランコ「さっきも言った通り、天草会長、津田氏のこと好きじゃないですか」

カエデ「え・・そ・・そうなんですか」

ランコ「ええ、間違いないわー」

カエデ「そう・・ですか」

ランコ「それでね、天草さんもアノ性格だし、きっと自分で告白なんて出来ないでしょーから、卒業と同時に彼女が津田氏と付き合えるように応援してあげようかと思って」

カエデ「え・・・?」

ランコ「校則的に問題ないか、一応風紀委員長のアナタの意見を聞いておきたくてねー」

カエデ「・・・」

カエデ「校則では・・問題ないと思います」

ランコ「そうよねーよかったわ」

カエデ「・・なんで、そんなことをしようと思ってるの?あなたも卒業だから記事にはできないじゃない」

ランコ「いえ、生徒会にはだいぶお世話になりましたし、かなり新聞部のお手伝いもしていただいたので。なんだかんだで天草さんには感謝してるんですよー」

カエデ「・・そう」

ランコ「ええ」

カエデ「・・・」

ランコ「でも、五十嵐さんはどう思います?」

カエデ「何が?」

ランコ「あの二人ですよ。お似合いだと思いませんか?」

カエデ「・・そうね」

ランコ「見ていてイライラしたものねー。天草さん大しゅきオーラ溢れているっていうのに津田氏は気づかないで」

カエデ「ええ」

ランコ「でもさすがに天草さんに告白でもされれば、あの鈍感男も気づくと思うんですよー」

カエデ「・・」

ランコ「二人が仲良く手をつないで歩いてる姿、お似合いだと思いません?」

・・・そうね。そうだったわ。
天草さんと、津田君。
お似合いじゃない。
畑さんの言う通りよ。
うん、私だって知ってたわ。
天草さんが津田君のこと好きなの。

天草さんは、本当に何でもできる人。
勉強だってずっと一番。
津田君は・・・
津田君は、最初は頼りなくて、他の男子と同じだと思ってた。
だけど今は立派な生徒会役員になったわ。
来年はきっと立派に生徒会長を務めるでしょう。
その姿を、私が見ることはないけど。

津田君を、そんなに立派にしたのは天草さん。
天草さんは本当にすごいわ。
それに比べて私は何なの?
風紀委員長なのに、後輩の男子生徒の指導ちゃんとできてる?
男性恐怖症だなんだっていって、ろくに会話もしてないじゃない。

そんな私が、天草さんに敵うはずないじゃない。

そんなこと分かってる。

だから、こんな気持ちに意味はないの。

私の思い違いなの。

なのに何で

なんで

なんで

なんで


ポタッ・・・

ポタッ・・・

カエデ「うっ・・・うっ・・・・・」


ランコ「・・・」
ぎゅっ

カエデ「?!」

ランコ「ゴメンナサイ。またやりすぎたわ」

カエデ「・・・もう・・いいから・・なんでも・・・ないですから」

ランコ「さっきのは全部ウソよー」

カエデ「・・・・・でも・・もういいの」

ランコ「私はアナタを応援してるのよ」

カエデ「でも・・無理だから・・私じゃ・・・・無理だから」

ランコ「好きなんでしょ?」

カエデ「・・・」

ランコ「・・・」

カエデ「・・・・」こくっ

ランコ「まだ遅くないわよ」

カエデ「・・・」

ランコ「・・・ね?」

カエデ「私じゃ・・・天草さんには敵わない・・・わ」

ランコ「大丈夫よ、津田君、天草さんの気持ちに気付いてないから」

カエデ「・・・」

ランコ「でも、さっきも言ったけど私たちもそのうち卒業だから、それまでには何とかしなきゃ」

カエデ「・・・わたしに」

ランコ「・・・?」

カエデ「私に・・・何ができるのかしら・・・」

ランコ「言わなきゃ」

カエデ「・・・・」

ランコ「詳しくは分からないけど、アナタ、今回の件で津田氏と仲良くなったんでしょー?」

カエデ「・・・たぶん」

ランコ「それをとっかかりにして、なんとかデートにでも誘いなさいな」

カエデ「・・・無理よ・・そんなの・・したことないもの」

ランコ「無理でもやるの。今やらなきゃ、一生後悔するわよー」

カエデ「・・・・」

ランコ「その程度の気持ちなの?」

カエデ「・・・・」

ランコ「津田君のこと考えなさいな」

カエデ「?」

ランコ「一緒にいたいでしょ?」

カエデ「・・・・・・・・//」

ランコ「じゃなきゃわざわざ、生徒会の皆さんが帰ったのを見計らってお見舞いに行ったりしないわよねー?」

カエデ「うっ・・・」

ランコ「さっき津田家の陰に隠れて呼び鈴押すタイミング見計らってた時の気持ちを思い出して!!」

カエデ「・・・全部見てたのね」

ランコ「ジャーナリズムを舐めないでちょうだい」

カエデ「はぁ・・・わかった・・・わかりました。やります。やればいいんでしょ?」

ランコ「ハイ、決定ー」

カエデ「もう・・・またあなたにうまく乗せられたわ」

ランコ「メディアに踊らされる風紀委員長もステキですよー」

カエデ「はぁ・・・・・・・・・ありがとう、畑さん」

ランコ「いえ」

では、今日はここまでにします

おやすみなさい

では、つづきです


******

ある日の生徒会。


コンコン

天草 「どうぞ」

カエデ「失礼します」
ガラガラ

天草 「五十嵐か。どうした?」

カエデ「風紀委員からの要望を提出しに来ました」

天草 「ああ、お疲れ様」

**

カエデ「こちらがうちの委員会からの意見をまとめた書類です」

津田 「はい、お預かりします」

アリア「早いねー。風紀委員が一番最初だよー」

カエデ「いえ、こうしたことは風紀委員では普段から意見を出し合っていますので」

萩村 「さすがですね」

カエデ「しかし・・ウチからの要望もかなりの量ですが、全委員会からの要望を短い全校集会の時間内で議題として取り上げることが可能なんですか?」

天草 「いや、今回の『各委員会からの要望を全校集会で議論する』というのは試験的な試みなんだ。五十嵐の言う通り、おそらくそこまでの時間はない。だから生徒会が一度すべての意見を集めて、その中から特に重要と思われるものを選抜することになると思う」

カエデ「なるほど」

カエデ「では、私はこれで」

天草 「あ、内容を急いでチェックするから少し待っててくれないか?内容について聞いておきたいことがあるかもしれない」

カエデ「いいですよ。今日はうちの委員会はもう終了しましたし」

萩村 「じゃあこちらにどうぞ」
つ椅子

カエデ「ありがとうございます」

津田 「あ、お茶入れますね」

カエデ「あ・・お構いなく」

***

アリア「あれ?」

天草 「ん?何か気になるところあるか?アリア」

アリア「これ、内容としては問題ないけど五十嵐さんぽくないねー」

天草 「どれどれ・・・」

『共学化し1年が経ったが、特に3年生の女子において異性がいることを意識していない言動(例えば、服装や会話の内容)をしていることがある。最高学年として後輩に指導する立場であることを踏まえ、意識の向上を図るべきである』

萩村 「・・・確かに、どちらかといえば男子目線の提案ですね」

天草 「うむ・・しかし大切なことだな」

アリア「うん!私たちは常に津田君を意識した言動を心がけてるよ!」

津田 「心がけてソレか!あ、心がけたからソレか!!」




カエデ「実はこの案は、男子委員から出たものです」

津田 「へえ・・・」

カエデ「・・なんですか?津田副会長」

津田 「いえ・・なんと言うか、前は五十嵐先輩って男性苦手だったじゃないですか」

カエデ「ええ・・・だから克服できるように努力しています。それに、正しい意見に男女の別はありません」

天草 「うむ、その通りだな」

萩村 「おお・・!」

アリア「えー?!五十嵐さんの男性恐怖症ってスペックは高い萌えポイントだったのになー」

カエデ「この提案には、あなたのそういう発言も含まれているんですよ?」

アリア「えー」

カエデ「もう・・」

アリア「でも五十嵐さん、本当に男性恐怖症治ってきたよねー」

カエデ「そ・・そうでしょうか?」

アリア「うんー。前は津田君がお茶を渡すだけで震えてたよー」

カエデ「・・・まあ、そういうこともありましたね」

アリア「今は津田君にボディタッチぐらいできるんじゃない?」

カエデ「え・・・」

アリア「津田君、五十嵐さんの手、握ってみて?」

萩村・天草「!!」

津田 「いや・・いきなりそれはちょっと・・・」

アリア「うーん・・やっぱそれは無理かー」

カエデ「・・・いえ・・・できます!!ほらっ!!」
ぎゅっ!!

津田 「うわ・・大丈夫ですか?」

カエデ「だだだだ大丈夫よ!///」

萩村・天草(イライラ)

アリア「すごいわ!じゃあ次はそのまま【ピーーー】!!」

萩村・天草「やめろおおおお!!」

**

津田 「はぁ・・すみません五十嵐先輩」

カエデ「だ・・大丈夫・・大丈夫・・」

アリア「まだまだだなー五十嵐さんも」

津田 「・・・五十嵐先輩、この案、必ず通しますから」

カエデ「・・ええ、頑張ってください。津田副会長」

アリア「えー」


カエデ「では、私はこれで帰ります」

天草 「ああ、お疲れ様」

津田 「お疲れ様です」

ガラガラ

***

天草 「では、私もそろそろ帰ろうかな」

アリア「私もー」

萩村 「私も帰ります。津田は?」

津田 「あ・・おれもう少し。今日の提案PCに入れとくよ」

萩村 「え?手伝おうか?」

津田 「大丈夫。いつも萩村にやらせてて悪いし」

萩村 「そ・・そう?じゃあ先帰るわよ」

津田 「うん、お疲れ様でした」

ガラガラ


****

津田 「ふう・・終わった。そろそろ帰るかな」

ピリリリリリリリリ!!

津田 「ん?」

ピリリリリリリリリ

津田 「電話?俺のの音じゃないな」

ピリリリリリリリリ

津田 「あれ?椅子の上に・・・五十嵐先輩が座ってた椅子だから・・先輩落としたのかな?」

ピリリリリリリリリ

津田 「出ない方がいいよな・・・かといってこのままここに置いておくのもなぁ・・・」
ひょいっ

津田 「ん?」

ピリリリリリリリリ

『自宅』

津田 (あ・これ忘れたの気付いて自分でかけてるのかも)

Pi

津田 「あの・・もしもし?」

カエデ『あ、津田君?』

津田 「ハイそうです。先輩、携帯忘れてますよね?」

カエデ『うん。よかったわ、まだ生徒会の皆さんがいて』

津田 「はい。まあ俺だけですけど」

カエデ『あ・・そうなの』

津田 「ハイ・・・で、どうします?このケータイ」

カエデ『えっと・・・』

津田 「持っていきます?」

カエデ『え・・私は助かるけど・・・いいの?』

津田 「大丈夫ですよ。どこまで行けばいいです?」

カエデ『えっと・・・S駅まで来てもらってもいいかしら』

津田 「承知です。じゃあ着いたら電話・・・はダメか・・・えっと・・」

カエデ『これから駅に行って改札にいます』

津田 「分かりました」


***

S駅改札。

津田 「えっと・・・あれ?居ない・・」

カエデ「津田君」

津田 「ん・・あ!先輩」

カエデ「ごめんね。わざわざありがとう」

津田 「・・・・一瞬誰だか分からなかったです」

カエデ「え?・・・ああ、髪下ろしてるから?」

津田 「ハイ」

カエデ「家帰って解いたんだけど、もう一度セットするの面倒で・・・ていうか津田君はこの前のスキーの夜見たでしょう?」

津田 「いや、まあそうなんですが」

カエデ「・・・・///」
・・・あの夜のことを思い出してしまった。

津田 「?」


津田 「じゃあ俺はこれで」

カエデ「あ」

津田 「?」

カエデ「えっと・・・この後・・・その・・時間あるかしら?」

津田 「え?まあ大丈夫ですけど・・どうしたんですか?」

カエデ「ちょっと・・話したいことがあるの」

津田 「??」

カエデ「だから・・その・・ちょっと家に来ませんか?」

津田 「え・・・先輩が大丈夫なら・・いいですけど」

カエデ「・・・じゃ・・じゃあ行きましょう」

津田 「は・・はい」

カエデ「・・・」
ドキドキドキドキ・・・

畑さんの言葉を思いだした。

『言わなきゃ』


カエデハウス。

津田 「・・お邪魔します」

カエデ「どうぞ」

・・・バタン



カエデ「座っていてください、今お茶を入れます」

津田 「あ、すいません」

カエデ「・・・」

津田 「・・・」

***


カエデ「どうぞ」

津田 「あ・・どうもありがとうございます」
ずず・・

カエデ「・・・」

津田 「・・えと・・話って何ですか?」

カエデ「・・・・まず」

津田 「はい」

カエデ「津田君には、本当に感謝しています」

津田 「え?・・・ああスキーのことですか?」

カエデ「はい、そうです」

津田 「いえ・・アレはどっちが悪かったとかじゃないですよ」

カエデ「・・・私は、津田君のおかげで命拾いをしました」

津田 「・・・」

カエデ「本当にありがとう」

津田 「・・はい」

カエデ「近く、必ずお礼をします」

津田 「いいですよ、本当!」

カエデ「ダメ。私の気持ちも考えて?」

津田 「あ・・う・・ハイ」

カエデ「・・・//」

津田 「?」

カエデ「・・・それと」

津田 「ハイ」

カエデ「命を助けてもらったのにすごく失礼なお願いをしますが・・・」

津田 「?」

カエデ「あの・・・夜のことは・・・二人だけの秘密にしてください」

津田 「・・・え?・・・あ・・はい・・もちろんです」

カエデ「・・・ありがとう」

津田 「そうですよね。俺だって他の人にどう説明していいかわからないですし」

カエデ「・・・うん」

***

津田 「・・・紅茶、御馳走様でした」

カエデ「うん」

津田 「俺、そろそろ帰ります」

カエデ「あ・・えっと・・うん」

津田 「じゃあ・・・今日頂いた案は絶対通しますから」

カエデ「え?・・・ああ委員会の話ね」

津田 「ハイ」

カエデ「うん・・じゃあ気を付けて」

津田 「はい、それじゃあまた学校で」

カエデ「・・・」


『それじゃあまた学校で』

津田君の言葉が頭に響いた。

明日、会うのは学校。

明後日、会うのも学校。

津田君が私の家に来ることはもうないかもしれない。

津田君を家に呼ぶ口実はもう思いつかない。

言わなきゃ。

言わなきゃ。

・・・

・・・




カエデ「津田君!」

津田 「はい?」

カエデ「津田君は・・・・再来週の日曜日空いてる?」

津田 「え?」

カエデ「・・・」

津田 「えっと・・・14日ですよね?ハイ。特に予定はないです」

カエデ「もしよければ・・・私とどこかに行きませんか?」

津田 「え・・・あの・・//」

カエデ「あ・・えっと・・お礼!さっき言ったお礼がしたいから」

津田 「あ・・ハイ。大丈夫です」

カエデ「じゃ・・・じゃあ詳しいことは後日連絡します」

津田 「了解です・・・それじゃあ俺はこれで」

カエデ「うん、おやすみなさい」

津田 「お邪魔しました」

バタン


カエデ「・・・・」

どさっ
カエデ「はぁ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

私は津田君の足音が充分遠ざかったのを確認すると、玄関にもたれかかった。
今の私にはコレが限界だった。
駅まで送っていくべきだったのかもしれないけど、もうあと1分も津田君を見ていられなかった。
鏡を見なくてもわかる。
私の顔は、真っ赤になっている。

ガタン・・ゴトン・・・

津田 「・・・・」

電車アナウンス『次は、M駅―』

津田 「・・・・」

津田は、ついさっきの私服で髪を解いた五十嵐のことを考えていた。
三つ編みのクセが残って、少しウエーブのかかったロングヘア。
先輩が歩くと、ウエーブがふわふわと動く。
風が先輩の髪の香りを運ぶ。
あの香りは、あの夜と同じだった。

・・・

その髪が、あの夜は自分の手の中にあった。
そう思うと、津田の脳裏に焼き付いた、映像がよみがえった。
夜が明けたとき、先輩が抱きしめてくれたこと。
二人で手を繋いだまま、見つめ合ったこと。
そして風邪のお見舞いに来てくれた日のことも。


津田 「うーん・・・」

津田には自分の気持ちが、よくわからなかった。

津田 「『二人だけの秘密』か・・・」

津田 (俺はてっきり『あの夜のことはお互い忘れましょう』って言うんだと思ったんだけどな・・・)

ここまでにします
おやすみなさい

ちょっとだけ更新します


2週間後の金曜日。

津田 「うーん・・・明後日どうするんだろう・・あの後連絡ないなー・・・」

萩村 「津田ー。どうしたのよ、ぼーっとして」

津田 「いやー、別に」

萩村 「シャキッとしなさいよ」

津田 「はーい」

萩村 「ところでさ・・・明後日って予定ある?」

津田 「え?明後日?」

萩村 「・・うん」

津田 「あー・・・明後日は家の用事があるからちょっと無理かも」

萩村 「そっか・・」シュン

津田 「?」

津田 (五十嵐先輩とのことは色々言えないことあるから、とっさに嘘ついちゃったな・・)

***

津田 「じゃあ俺先帰りますね」

天草 「あ・・津田よ」

津田 「はい?」

天草 「その・・明後日は何か予定入ってるか?」

津田 「え?・・・・いや、ちょうど用事がありまして。何か生徒会の活動ですか?」

天草 「あ・・いや!そういう訳じゃない!いや・・いいんだ。月曜にしよう」

津田 「??・・・わかりました」

天草 「はぁ・・」

津田 「???」


****

ピロリロリン

津田 「ん?メール?・・・・三葉からだ」

『タカトシ君、明後日だけど、昼間は家にいる?』

津田 「・・・・」

津田 「明後日は、一日家にいませんよ・・・・っと」


津田 「なんでみんな一斉に明後日の予定聞いてくるんだ??」


ピロリロリン

津田 「またか?・・・あ・五十嵐先輩だ」

『明後日の件ですが、津田君の予定は空いていますか?』

津田 「はい、大丈夫ですよ・・・と」

・・・ピロリロリン

『じゃあ、朝10時にY駅の西口改札で待っていてもらえますか?』

津田 「承知です」



津田 「ふう・・よかった、五十嵐先輩忘れてなくて」

津田 「・・・にしても五十嵐先輩と二人でどこか行くってなんか緊張するな・・・」


////////////////////


カエデ「・・・・・・///」

カエデ「・・・誘った」

カエデ「誘ったわ」

カエデ「もう後戻りできないわ」

カエデ「・・・・」

カエデ「うううう・・・!!///」
ゴロゴロゴロ(ベッドの上で転げまわるカエデ)


2月14日、朝。

ガタン ゴトン ・・

津田 「はー・・・30分も前についてしまうな・・」

アナウンス『次はY駅です』

津田 「コーヒーでも飲んで時間つぶすかなー・・・あでもこんな時間に店とか開いてるかな・・?」


・・・

津田 「はー・・・ん?」

カエデ「・・・」

津田 「五十嵐先輩だよな・・・もう来てたのか」

カエデ「・・・」

津田 「・・先輩」

カエデ「きゃっ・・・・津田君」

津田 「早いですね・・・確か10時待ち合わせでしたよね?」

カエデ「あ・・えっと・・早く目が覚めちゃって」

津田 「ははは・・俺もです。ちょっと早すぎましたね」

カエデ「・・・うん」


**********




【3時間ほど前】

カエデ「・・・・ふう」

カエデ「・・・シャワーを浴びてしまった・・」

カエデ「・・・・」

カエデ母「カエデ、朝ご飯どうするの?」

カエデ「あ・・今日はいらないわ・・・その・・外で友達と早い昼食をとるから」

カエデ母「そう?何時に帰ってくるんだっけ?」

カエデ「ええと・・・夕飯には間に合うと思うから・・連絡するわ」

・・・

カエデ「・・・はぁ・・」

カエデ「・・・未だかつてこんなに着ていく服を選ぶの迷ったことはないわ・・・」

カエデ「・・・スカートのが・・・ダメよ・・こんなの破廉恥だわ・・・でもデートだから・・・ロングでもいいからスカートのが・・・うう・・・」

・・・

カエデ「・・・お化粧した方がいいのかしら」

カエデ「でも・・・いつもしてないのに突然したらまるで意識してるみたい・・・」

カエデ「・・・」

カエデ「・・・目の周りだけ・・・・あと・・乾燥するから薄くリップも・・・」

・・・

カエデ「髪は・・・いつものままでいいわよね・・・」

『一瞬誰だかわからなかったです』

カエデ「・・・髪下ろしてこう・・・」

・・・

カエデ「約束の時間まであと2時間・・・」

カエデ「・・・」

カエデ「・・・・・///」

カエデ(ダメ・・・!じっとしてられない・・・!!)

カエデ「・・早いけどもう行こう・・遅れるよりいいわよね」


・・・そして1時間前に待ち合わせ場所についてしまったカエデであった

**********

津田 「じゃあ行きましょうか・・・ってどこに行くか分からないですけど」

カエデ「あ・・・えっと・・・ついてきて」

津田 「え?」

そう言うと、私は足早に駅の改札を抜け、駅ビルのコンコースを歩く。
休日の、繁華街の駅だけあって、朝早くから人混みがすごかった。
人の流れに逆らって、歩く私。
津田君は、私の後ろからちょっと焦った顔でついてくる。
横に並んで歩きたい。
でも横に並んで歩いたら、津田君は私の顔をのぞき込める距離にいてしまう。
私も顔を上げたら、津田君の顔をのぞき込んでしまう。
滅多にしないお化粧を見られるのが恥ずかしい。
真っ赤な顔をして津田君の顔をのぞき込んでしまうだろう私が恥ずかしい。
だからこの距離がちょうどいい。

津田 「先輩、ちょっと待ってくださいよ」

カエデ「あ・・うんゴメン」

津田君に言われてちょっとだけペースダウン。
少し周りを見れば、落ち着くかもしれない。
2月14日の繁華街は、カップルであふれていた。
みんな手を繋いで、幸せそう。
速足で歩く私と、それに着いてくる津田君。
たぶん私たちは、この町では異質な存在だった。

(手繋ぐぐらい・・・何でもないんだから)

そう思ったけど、スキーの時みたく、大胆にはなれなかった。


今日はここまでにします
おやすみなさい

はい、では続きです

津田 「ん?」

カエデ「・・ちょっと待ってて」

津田 「?・・ハイ」

コンコースに並ぶ店の中に、某有名高級チョコレート店があった。
カエデはその店で何かを注文した。

津田 「・・・?」

店員 「お待たせしました」

カエデ「どうもありがとう」

津田 「へー・・ここってドリンクも売ってるんですね」

カエデ「ええ。結構おいしいのよ」

津田 「あ、俺も買おうかな」

カエデ「あっ・・津田君は、買っちゃっダメ」

津田 「え?」

カエデ「ダメ」

津田 「はぁ・・・(正直ちょっと喉乾いてるんだけどな)」

カエデ「・・・じゃあ行きましょう」

津田 「え?・・え??」


津田 「ちょ・・先輩どこ行くんですか?」

カエデは今来た道を戻りだした。

カエデ「電車に乗ります」

津田 「???」

カエデはスタスタと歩いていく。
今日、二人が朝乗ってきた電車ではなく地下のホームに着いた。

カエデ「乗りましょう」

津田 「は・・はあ」

電車は、美しい街並みのベイエリアに向かって走り出した。


ゴトン・・ ゴトン・・

津田 「えと・・どこまで行くんですか?」

カエデ「終点まで行きます」

津田 「はあ・・」



カエデ「・・・津田君」

津田 「はい?」

カエデ「・・はい」

津田 「え?」

カエデ「これ、どうぞ」

津田 「・・えっと・・さっきのチョコレートドリンク?」

カエデ「・・約束したでしょう?」

津田 「え?・・・何でしたっけ?」

カエデ「雪の中で、約束したわよね?忘れた?」


・・・

津田 『大丈夫ですよ・・そうですね、じゃあ今日の帰りの電車でジュースでもおごってください』

カエデ『うん・・そうするわ』

・・・


津田 「ああ・・!そういえば!!」

カエデ「チョコレートは平気?」

津田 「はい。実はちょっと喉乾いてたんで」
ごくごく

カエデ「・・・//」

津田 「おいしいです!ありがとうございます」

カエデ「うん・・・約束だからね」にこっ

津田 「・・・」

・・・あーあ・・・ダメね・・私・・
結局勇気出せないで、こんな形でチョコ渡しちゃった・・・
・・電車の中のバレンタインの広告が皮肉だわ・・・


津田 「あ・先輩は飲まなくてよかったんですか?」

カエデ「あっ私はいいわよ」

津田 「そうですか?」

カエデ(ああー・・・一口ちょうだいとか言えばよかったかしら・・・はぁ・・)

津田 「あ・・それで、これからどこに行くんです?」

カエデ「えっと・・ちょっといいところでランチなんてどう?・・おごるわよ?」

津田 「え?・・・これおごってもらっちゃったのに悪いですよ」

カエデ「ドリンクは迷ったお詫び。ランチは助かったお礼です」

津田 「うーん・・・ありがとうございます」

カエデ「うん、よろしい」


アナウンス『次は、終点です』


***

津田 「こっちですか?」

カエデ「ええ。坂道だけどこの先にレストランがあるの」

津田 「へー・・」

カエデ「でもさすがにまだちょっと早かったわね・・」

津田 「じゃあちょっとお店とか見ていきましょうよ」

カエデ「え?・・・うん」

**

津田 「ブティックとか多いですねー」

カエデ「そうね」

津田 「先輩はこの辺よく知ってるんですか?」

カエデ「よく、ではないけど子供の頃、家族で来てたりしたわ」

津田 「そうなんですか」


カエデ「それに、この先に古い教会があるんだけど、コーラス部の発表会できたことがあるの」

津田 「そういうところで発表会あるんですね」

カエデ「うん、だから結構緊張しちゃうのよ」

津田 「そうなんですか?桜才でやってた時は堂々と歌ってるように見えましたよ?」

カエデ「学校と歴史ある教会は違うもの」

津田 「そうですね」

***

カエデ「・・・11時ね」

津田 「ん?どうしたんです?」

カエデ「えっと・・レストラン11時からやってるはずなのよ」

津田 「あ、じゃあ行きますか?」

カエデ「時間早いけど、津田君はおなかすいてる?」

津田 「・・・実は朝ご飯を食べていません」

カエデ「・・・ふふっ」

津田 「えっ?!何か・・?!」

カエデ「・・実は私もなの」

津田 「ハハハ・・じゃあ遠慮いりませんね。お腹すいてます」

カエデ「私も。行きましょう」

津田 「はーい!」


***

津田 「えっと・・・何かおすすめはあるんでしょうか?」

カエデ「・・・参考までに、私は子供の頃からいつもハンバーグでした」

津田 「今日もですか?」

カエデ「ええ」

津田 「他のおすすめは?」

カエデ「ビーフシチューが有名みたいよ」

津田 「うーん・・じゃあビーフシチューにします」

カエデ「あら、そう?」

津田 「別のにすればシェア出来ますよね?」

カエデ「・・・うん」

***

津田 「いただきます」
カエデ「いただきます」

・・

カエデ「・・津田君てちゃんとテーブルマナー知ってるのね」

津田 「ハハハ・・意外です?」

カエデ「いやっそういう訳では・・・私は子供の頃、ナイフとフォークの使い方分からなくて苦戦したので」

津田 「・・・実は会長とか七条先輩とかに鍛えられました」

カエデ「え・・」

津田 「いやー・・生徒会の皆、礼儀作法も完璧なので・・・特に会長にはよく注意されます」

カエデ「・・・・」

津田 「?・・・どうしました?」

カエデ「いえ・・・」

津田 「??」

カエデ「・・・ちょっとだけグチ聞いてくれる?」

津田 「・・ええ、いいですよ」

カエデ「いえ・・天草さんは・・・すごいですよね」

津田 「え?」

カエデ「津田君の言う通り、礼儀作法も完璧だし、勉強もずっと1位じゃない」

津田 「先輩だっていつも5位以内じゃないですか」

カエデ「え・・・なんで知ってるの?」

津田 「毎回張り出されるじゃないですか」

カエデ「そ・・・そうだけど・・よく見てるわね」

津田 「だって、いつも上位ですから目立ちますよ・・・それに風紀委員長で有名人ですからね、先輩は」

カエデ「・・・・天草さんや七条さんほどじゃないわ」

津田 「先輩」

カエデ「え?」

津田 「先輩には先輩にしかない長所があると思いますよ」

カエデ「え・・・そう・・かしら?」

津田 「はい。えっと・・・俺がこんなこと言うの失礼かもしれないですけど・・・」

カエデ「・・・」

津田 「先輩はいつも一所懸命じゃないですか」

カエデ「・・・津田君」

津田 「最初会ったときは、俺と目合わせてくれなかったじゃないですか」

カエデ「あ・・う・・ごめんなさい」

津田 「いえ!そういう意味じゃなく」


津田 「だけど先輩は、その・・男性恐怖症っていうんですか?・・それを治そうと必死に頑張ってるじゃないですか」

カエデ「え・・・うん」

津田 「最初から全部出来るより、苦手な所を頑張って克服してく人の方が、素敵に見えますよ」

カエデ「・・・・!」

津田 「・・・ってごめんなさい。ちょっと生意気なこと言いました」

カエデ「・・・そんなことないわ・・・嬉しい」

津田 「あ・・・ハイ//」

カエデ「私・・・風紀委員長だし・・いつも頑張ってちゃんとしてるつもりだから・・」

津田 「・・」

カエデ「そんな風に言ってくれる人・・居ないわ」

津田 「ハイ」

カエデ「私だってね・・・たまには弱音吐きたいの」

津田 「・・ハイ」

カエデ「だからねスキーの夜は・・・津田君に甘えて・・実はちょっと楽だったの」

津田 「・・・」

カエデ「こっ・・・これからも・・・時々・・津田君には少しだけ甘えてもいいかしら?」

津田 「あ・・・は・はい//」

カエデ「もう津田君にはばれちゃってるから」

津田 「・・・俺でよければ」


***

カエデ「ふう・・」

津田 「・・・あれ?」

カエデ「どうしたの??」

津田 「先輩・・・マッシュルーム嫌いです?」

カエデ「う」

津田 「先輩の弱点をまた一つ見つけました」

カエデ(天草さんと七条さんにはばれてるけど・・・)

津田 「先輩」

カエデ「・・はい?」

津田 「何かを克服しようとする先輩、素敵ですよ」

カエデ「?!」

津田 「・・・」にこっ

カエデ「うう・・・実はキノコ全般苦手なのよ・・」

津田 「先輩も嫌いなたべものとかあるんですね」

カエデ「私だって人間よ」

津田 「まあ、会長も市場先輩も萩村も、嫌いなものありますからね」

カエデ「・・・・」

津田 「意地悪いってごめんなさい。俺、食べますね」
ぷす(フォークをさす音)

『苦手な所を頑張って克服してく人の方が、素敵に見えますよ』

カエデ「待って!食べるわ!!」
ぱく!

もぐもぐ・・ごっくん!

カエデ「た・・食べたわよ!」

津田 「あ・・・はい」

カエデ「・・・?」

津田 「なんか・・・いえ・・なんでもないです」

カエデ「え?・・・・あ・・・うん///」

・・・まるで『あーん』してもらったみたいになっちゃった

とりあえず、ここまでです!

こんばんわ

スイマセン市場先輩は無いですねー
眠い状態で書くとミスしまくりです
一応差し替えます

それでは続きです

津田 「先輩も嫌いなたべものとかあるんですね」

カエデ「私だって人間よ」

津田 「まあ、会長も七条先輩も萩村も、嫌いなものありますからね」

カエデ「・・・・」

津田 「意地悪いってごめんなさい。俺、食べますね」
ぷす(フォークをさす音)

『苦手な所を頑張って克服してく人の方が、素敵に見えますよ』

カエデ「待って!食べるわ!!」
ぱく!

もぐもぐ・・ごっくん!

カエデ「た・・食べたわよ!」

津田 「あ・・・はい」

カエデ「・・・?」

津田 「なんか・・・いえ・・なんでもないです」

カエデ「え?・・・・あ・・・うん///」

・・・まるで『あーん』してもらったみたいになっちゃった

カエデ「・・・こほん」

津田 「あ・・えっと・・・ごちそうさまです」

カエデ「ご・・ごちそうさま」

***

津田 「本当にごちそうさまでした」

カエデ「いえ、これはお礼ですので」

津田 「・・・はい」



津田 「先輩」

カエデ「はい?」

津田 「えっと、この後どうするんですか?」

カエデ(しまった・・考えてなかったわ)

津田 「なにか予定ありますか?」

カエデ「え・・・ない・・けど?」

津田 「じゃあもうちょっとだけ付き合ってもらえませんか?」

カエデ「うん・・いいわよ」

・・・・・ドキドキ

津田 「先輩、もしよかったらさっき言ってた教会案内してください」

カエデ「え?そんなとこ行きたいの?」

津田 「はい・・・あ、一般の人入れなかったりします?」

カエデ「いえ、そんなことはないと思うわ」

津田 「じゃあちょっと見てみたいです」

カエデ「・・・じゃあ行きましょうか」

***

カエデ「えっと・・ここって見学とか出来ます?」

管理人「はい、大丈夫ですよ」

カエデ「ありがとうございます」


カエデ「大丈夫ですって」

津田 「はい、ありがとうございます」


津田 「先輩、先輩はどこで歌ったんですか?」

カエデ「え?・・・えっと、この先のホールで・・」

津田 「こっちですか?」

カエデ「ええ」

・・・

津田 「・・・・あの」

カエデ「?」

津田 「またこのホールで発表会とかやるんですか?」

カエデ「うーん・・・たぶん高校の間はもうないわ」

津田 「そうですか」

カエデ「でも、大学入って、合唱続けてたら、あるかもしれないわね」

津田 「・・・じゃあその時、見に来てもいいですか?」

カエデ「え・・・?」

津田 「頑張ってる先輩見たいです・・・なんて・・」

カエデ「・・・・機会が、あったらね」

津田 「ありがとうございます」

カエデ「・・・///」


***

津田 「先輩、海沿いの公園行ってみません?」

カエデ「え?いいけど何かあるの?」

津田 「えっと、大道芸のショーがあるみたいです」

カエデ「へー・・・よく知ってるわね」

津田 「今、ケータイで調べました」

カエデ「ふふふっ・・いいわよ、行きましょう」

津田 「はい」

**

津田 「公園、結構広いですね」

カエデ「そうね」

津田 「ショー、公園の反対側の端っこみたいですね・・スイマセン」

カエデ「いいじゃない、海見ながらゆっくり歩きましょう」

津田 「はい」

カエデ「日曜日だから、結構人多いわね」

津田 「はい、そうですね。船とか港の景色いいから、写真撮ったり絵を描いたりしてる人もいますね」

カエデ「そうね」

津田 「・・・うわー・・あの人描いてる絵、すごくうまいですよ」

カエデ「津田君、あんまりのぞき込んだら失礼よ」

津田 「あっすいません」

カエデ「ふふふ・・もう」

**

津田 「あ、すごいですよ、大きな船」

カエデ「あ、あの船は乗れるわよ」

津田 「え?そうなんですか?」

カエデ「確かこのあたりの港とかつないでる水上バスだったはずよ」

津田 「へえ・・ちょっと乗ってみたいですね。先輩は乗ったことあるんですか?」

カエデ「私もないけど」

津田 「そうですか・・・今日は時間ないし・・今度来たら乗りましょうね」

カエデ(・・・今度、か)

ランコ「アラ、いいですねー。その時は記念写真をお撮りしますよー」

津田 「うわっ!!」
カエデ「きゃっ!!」

ランコ「今日の初デートの記念写真も撮っておきますかねー・・・それっ」
パシャリ

カエデ「は・・畑さん!!」

ランコ「何か?」

津田 「『何か?』じゃありません・・なんでいるんですか?」

ランコ「え?美しい港の風景を撮りに」

津田 「嘘だッ!!」

カエデ「畑さん・・これは、あなたが考えてるようなものじゃないですから」

ランコ「え?私はてっきり遭難した時助けてくれたお礼に津田氏とデート・・かと思ったんですが」

カエデ「ぐっ・・」

津田 「あのー・・なんていうか、とりあえずさっきの写真を悪用するのはやめてもらえませんか?五十嵐先輩も迷惑だと思いますし」

ランコ「悪用なんてしませんよー。これポラロイドカメラなので・・・ハイどうぞ」

カエデ「え・・ありがとう」

ランコ「せっかくなんで、もう一枚ちゃんとしたの撮りませんか?」

カエデ「え・・えと・・」

津田 「記事とかにしないでもらえます?」

ランコ「えーそれは五十嵐さん次第ねー」

カエデ「えっ?!」

ランコ「五十嵐さん、ちょっとこちらに」
ぐい
カエデ「え?ちょっと!!」


ランコ「・・言えました?」
カエデ「・・・」

ランコ「言ってないのねー」
カエデ「だって・・!」

ランコ「津田氏、たぶん嫌がってないわよ」
カエデ「でも・・」

ランコ「『デート』を否定しなかったわよ?」
カエデ「・・・///」

ランコ「そんな風に顔赤くするなら、手ぐらいつなぎなさいな」
カエデ「無理無理無理!」

ランコ「・・私の調べではバレンタインの今日、津田氏を誘った女性はアナタ以外に3人以上は居ましたよー」
カエデ「えっ?」

ランコ「その中でアナタを選んだっていう意味を、よく考えてみましょうねー」
カエデ「・・・///」

ランコ(まあ・・単に津田氏がバレンタインのこと忘れてたっていうのが真実でしょうけど)

ランコ「とにかくこの後、手を繋いでデートを続行でー」
カエデ「・・・」

ランコ「返事は?」
カエデ「う・・・がんばるわよ」

ランコ「そして最後に告白」
カエデ「今日は・・無理よ」

ランコ「前も言ったけど、私たちに残されてる時間はそんなにないのよー」
カエデ「そうだけど・・」

ランコ「ここでアナタが引いたら、確実に天草さんが掻っ攫っていくでしょうねー」
カエデ「・・・」

ランコ「私はこれでも応援してるのよー」
カエデ「・・畑さん」

ランコ「さあ、写真撮るわよー」
カエデ「・・・」


津田 「えっと・・二人とも、何話してるんです?」

ランコ「ハイハイ、とりあえず写真撮るわよー」

津田 「え?どういうこと??」

ランコ「さっき撮ったのは五十嵐さんの分で、これから撮るのはアナタの分よ」

津田 「はぁ」

ランコ「ハイ、もっと二人寄って!」

カエデ「あ・・えっと・・こう?」

津田 「あ・・すいません先輩」

ランコ(ていうか五十嵐さんがこれだけ津田氏の近くにいるって時点でついこの間までとはえらい違いなんだけどねー)

ランコ「はいいくわよー」

パシャリ


ランコ「ショー見るんじゃないの?」

津田 「あ、そうだった」

ランコ「日が沈んでもやってるみたいだから大丈夫よー」

津田 「はあ・・ありがとうございます」

カエデ「えっと・・とりあえずありがとうございました」

ランコ「いえいえー」

**

津田 「なんか・・畑さん何だったんですかね?」

カエデ「さ・・さあ?」

津田 「あ、一枚目の写真見せてください」

カエデ「あ、うん。どうぞ」

津田 「二枚目のやつ見ます?」

カエデ「ええ」

津田 「うわ、俺すごい顔してる」

カエデ「私もよ・・はぁ」

津田 「でも、どちらもブレ無いし、背景にはしっかり船とか港が写ってる・・さすがだな畑さん」

カエデ「そうね」

一枚目の写真は、驚いた顔の二人が写っていた。
二枚目の写真には、硬い笑顔で寄り添う二人が写っていた。
写真に写った、ほんの数センチ離れた二人の距離が、今の二人の関係を物語っているようだった。

津田 「あ、人だかりできてる」

カエデ「あそこでやってるみたいね」

津田 「行きましょう」

カエデ「ええ」

**

津田 「おおー!!」

カエデ「すごいわね」

津田 「火が付いたボールでジャグリングしてて・・熱くないんですかね?」

カエデ「熱いでしょう」

津田 「ですよねー」

**

大道芸人「ありがとー!!」

津田 「いやー凄かったですねー」

カエデ「ええ、こういったものは中々見られないものね」

津田 「ええ」

カエデ「あ・・10分後に次の人がやるみたいね」

津田 「えと、結構暗くなってきましたね。次も見ます?」

カエデ(私は・・・もう少しこうしていたい)

津田 「時間大丈夫なら、次も見ません?」

カエデ「・・うん!」

津田 「あーじゃあちょっとここで待っててもらえます?」

カエデ「え?いいけど」

津田 「すぐ戻ります!」

カエデ「・・・」

**

津田 「先輩」

カエデ「え?」

津田 「ストロベリーとココア、どっちがいいですか?」

カエデ「え?え??」

津田 「チュロスです。食べません?」

カエデ「あ・・ありがとう。えっと、ココアがいいです」

津田 「はい」

もぐっ
カエデ「・・・おいしい。ありがとう津田君」

津田 「次はパントマイムですね」

カエデ「そうね」

津田・カエデ「・・・・」

津田 「なんか無言になっちゃいますね」

カエデ「ふふ・・そうね」

***

カエデ「・・・」ぶるっ

カエデ(寒くなってきたわね)

津田 「先輩、寒いんですか?」

カエデ「うん・・手袋持ってこなかったから」

津田 「嫌じゃなければ俺の手袋使いませんか?」

カエデ「い、嫌じゃないけど。津田君も寒いでしょ?」

津田 「俺が右、先輩が左に手袋します」

カエデ「え?うん」

津田 「で」

ぎゅ
カエデ「あ」

津田 「それで・・俺のポケットに入れれば・・二人とも寒くないです」

カエデ「・・///」

津田 「い・・嫌ならやめます」

カエデ「・・嫌じゃないわ・・ありがとう//」

津田 「ハイ」

これはあの時と一緒
寒さから守ってくれてるだけ

でも

それだけじゃないって思いたい

***

津田 「面白かったですね」

カエデ「そうね」

津田 「もう真っ暗ですね」

カエデ「・・うん」

時間は午後7時をまわっていた。

カエデ「・・・」

津田 「ちょっとだけ、歩きません?」

カエデ「え?」

津田 「いや、港の明かり、綺麗だなって思って」

カエデ「うん」

津田 「あ!もしかして寒いですか?だったらもう帰ります?」

カエデ「あーだ・大丈夫。寒くはないわ」

・・・あなたが温めてくれてるから。

津田 「俺、ずっと内陸に住んでるから、こういう景色新鮮なんですよねー」

カエデ「え・ええ。私もそうよ」

カエデ(これは・・チャンスよ!)
カエデ(言わなきゃ)
カエデ(言わなきゃ!!)

カエデ「あの!」

津田 「はい?」

カエデ「つ・・津田君はっ!」

津田 「?」

カエデ「津田君は桜才で付き合ってる彼女とかいるのかしらっ?!」

津田 「へ?」

カエデ「いるの?」

津田 「いや・・そういう人は居ないですけど」

カエデ「・・うん」ドキドキ

津田 「なんでそんな事聞くんです?」

カエデ「・・・」

カエデ「そ・・それは」

カエデ「こっ・・今度・・・生徒総会で風紀の乱れについて喋るんだけど、身近な人にそういうのがないか確認しておきたくてっ!!」

津田 「・・・あー、そう言うことですか。いやそれ前に会長にも聞かれたんですよ。同じ理由で。大丈夫ですよ、そういう人は居ませんから」

カエデ「そ・・そう。よかったわ」


カエデ(終わったわ・・・もう無理)


津田 「そういう先輩こそ、付き合ってる人とかいないんですか?」

カエデ「へ?」

津田 「いるんですか?」

カエデ「い・居るわけないじゃない!」

津田 「ずっと?」

カエデ「当り前よ。桜才は学内恋愛が禁止されています」

津田 「そうでしたね。風紀委員長の五十嵐先輩が校則違反なんてありえませんもね」

カエデ「そうよ」


津田 「でも例えば、付き合っていたとしても、学内では節度をわきまえてっていうのは校則違反じゃないですよね?」

カエデ「うーん・・まあそういうことになるんじゃないかしら?現に桜才にもカップルいるようですし」

津田 「そうですよね」

カエデ「ええ」

津田 「・・・」

カエデ「・・・」

津田 「先輩」

カエデ「え?」

津田 「好きです」

カエデ「・・・・へ?」

津田 「俺と付き合ってくれませんか?」

カエデ「うそ・・じょ・・冗談よね?」

津田 「冗談じゃありません。真剣です。俺・・今すごい緊張してるんで・・うまく言えませんけど、真剣に先輩のこと、好きです」

カエデ「な・・なんで私が・・?」

津田 「今日、言いました。頑張って、一生懸命な先輩が好きです。最初会ったときは避けられてて・・正直難しい人だなって思ってたんですけど、先輩が優しくて真面目で、いつも頑張ってるってこと分かって、好きになりました」

カエデ「津田君・・・わ・私」

津田 「俺じゃダメですか?」

カエデ「私・・・!」


*******************

天草 「今日は年に一度の生徒総会だ!」

アリア「年に一度のイベントってワクワクするねー」

萩村 「そうですね」

天草 「いやしかし、年に一度しかヤれないってなると切なくないか?」

津田 「そういうイベントじゃねえ」

**

天草 「それでは次に風紀委員からお願いします」

カエデ「ハイ。風紀委員からです。ここ最近風紀の乱れが目立ちます。調べによるとこの学園には現在18組のカップルがおり、時折学内で風紀を乱すような行為が見られるとの報告があります。校則にあるように、わが校は学内恋愛禁止であり、たとえカップルであっても、学内では節度をわきまえた付き合いをしなければいけません。次に服装ですがーーー」

**

天草 「カップル数なんてよく調べたな五十嵐」

カエデ「ええ、ある筋からの情報などで・・」

アリア「それにしても五十嵐さんにしてはソフトな表現だったねー」

カエデ「何がですか?」

アリア「だってカップルであっても学内では節度をわきまえてーってことは、外ではイチャイチャ[ピー]しろってことだよね?」

萩村 「いや、そんな暗喩はありませんよ」

カエデ「はぁ・・別に、カップルを作ることを推奨してるわけじゃありません。ただ、そういうのは個人の自由ですから。とりあえず校則は守りましょうってことです」

天草 「そうだな!」

萩村 (うん、そうよね)

カエデ「・・特に津田副会長」

津田 「え?俺ですか?」

カエデ「アナタは生徒会では女性に囲まれていますから、風紀を乱さない行動を心掛けてくださいね」

津田 「ははは・・ハイ。肝に銘じてます」

アリア「そっかー。津田君にとって生徒会はハーレムだもんね」

天草 「何?!やはり津田はそういう風に私たちを見てたのか?」

萩村 「・・・」じとー

津田 「ちょっ・・誤解を招く表現やめて!」

カエデ「風紀が乱れてるわっ!!」

***

天草 「ふー・・生徒総会無事に終わったな」

津田 「そうですねーずっと喋りっぱなしで喉ガラガラです」

天草 「みんな準備とか、ご苦労様だったな」

津田 「いえいえ」

萩村 「そんなことないです」

アリア「楽しかったよー」

天草 「イベントも終わったことだし、今日はみんなでどこか遊び行かないか?」

津田 「あ、スイマセン。俺今日家の用事があるんで」

天草 「む・・そうか。じゃあ明日にしようか」

津田 「明日は大丈夫です」
萩村 「私も大丈夫です」
アリア「私も空いてるよー」

天草 「じゃあ決まりだな!・・それじゃあ今日のところは解散だ」

津田 「お疲れ様でしたー」


***

ピンポーン

『はい』

津田 「あ・えっと、津田です」

『あ・・今開けるね』

津田 「はい」


ガチャ

カエデ「こんにちは」

津田 「お邪魔します」

カエデ「うん」


ガチャン

ここまでにします
おやすみなさい

えー、続きです

カエデ「えっと・・コーヒーは、お砂糖無しでいいんだよね?」

タカ 「はい」

カエデ「はい、どうぞ」

タカ 「ありがとうございます」

**

タカ 「あ、そういえば、明日は生徒会の皆で遊びに行きます」

カエデ「そうなんだ」

タカ 「一応、報告です」

カエデ「うん。でも別にそれくらい、気にしないよ?」

タカ 「でも、俺以外は全員女性なので。逆の立場だったらちょっと嫌ですから」

カエデ「・・ありがとう」


二人の時間が流れる。
バレンタインの夜から、私たちは恋人になった。
あの夜から数日後、私たちは二人で話し合った。
これからの二人のことを。

私たちが出した結論は、『誰にも言わない』だった。
理由として、もちろん私たちの立場もある。
風紀委員長と生徒会副会長が付き合ってるなんて、とんだスキャンダルだから。
それに、誰か一人に言ってしまったら、きっとすぐに皆にばれてしまう。
桜才は皆仲良しだから。
少なくとも桜才は学内恋愛禁止。
だから私たちは、学校では今まで通り、風紀委員長と生徒会副会長。
私たちが恋人でいられるのは、二人っきりの時だけ。
そういうルールにした。


タカ 「・・でも、畑さんが俺たちのこと内緒にしてくれてるっていうのが正直信じられませんよ」

カエデ「うん。でもね、畑さんは最初から私のこと応援してくれてたの」


ただし、畑さんだけは私たちの関係を知っている。
知ったうえで、それを秘密にして応援してくれる。


カエデ「畑さんは情報操作して、逆に私たちのこと、ばれない様に働きかけてくれてるみたい」

タカ 「まあ、そうみたいですね。相変わらず会長との仲を聞かれますよ。新聞部に」

カエデ「・・・たっ・・タカトシ君」

タカ 「はい」

カエデ「好きよ」

タカ 「俺も好きです。大好きです」

カエデ「ふふ・・こんなこと言えるの今だけだから。いっぱい言うの//」

タカ 「ちょっと・・はずかしいです//」

カエデ「私だって・・・恥ずかしいわよ//」


だから必然的に、私たちが恋人でいられるのは、私の家に私しかいないときか、タカトシ君の家にタカトシ君しかいないときだけ。
でも、タカトシ君の家にはコトミちゃんがいることが多いし、突然生徒会の誰かが訪ねてくることがある。
だから結果的に、私たちは私の家でこっそり会うことになった。


タカ 「先輩」

カエデ「うん」

タカ 「えっと・・先輩の持ってる本とか読みたいです」

カエデ「・・・っ・・うん。いいよ」


奥手な二人の合言葉。
タカトシ君が“部屋に行きたい”って言った。


ガチャ・・バタン

ぎゅっ・・

カエデ・タカ「・・・///」


ドアが閉まると同時に、タカトシ君は私を抱きしめてくれる。
もう・・本が読みたいんじゃなかったの?


タカ 「せんぱい・・」

カエデ「たかとしくん・・」


5分くらいの抱擁の後、私たちはお互いを見つめ合う。
あの吹雪の中、見つめ合った時の気持ちは、間違いじゃなかったんだって確認する。


カエデ「あ・・髪ほどくね」

タカ 「う・うん」


ぱさっ


タカ 「家では、いつも髪ほどいてるんですか?」

カエデ「・・・部屋では・・敬語やめようよ」

タカ 「あ・・うん」

タカ 「家では、いつも髪ほどいてるの?」


カエデ「いつもじゃないけどね」

タカ 「えっと・・・ほどいてた方が・・・・可愛いよ」

カエデ「/////」


・・・タカトシ君といると、前とは違う意味で、失神しそうになる。


カエデ「学校でも・・三つ編みやめようかな・・」

タカ 「あ、それはやめて」

カエデ「え?なんで?」

タカ 「だって・・髪ほどいてる時の先輩は俺だけのものにしたいから」

カエデ「!!///」


・・・ほら、また。


カエデ「ほ・・本、読みたいんじゃなかったの?」

タカ 「あ、うん」


お互い、見え透いた演技で本を読み始める。

タカ 「ねえ先輩」

カエデ「うん」

タカ 「この本借りてっていい?」

カエデ「ダメ」

タカ 「え?なんで?」

カエデ「コトミちゃんに、『この本どうしたの?』って聞かれてとっさに誤魔化せる?」

タカ 「あー・・そうでした」

カエデ「それに・・・読みたくなったら来ればいいじゃない///」

タカ 「・・うん///」


カエデ「よいしょ」


私のベッドに座って本を読むタカ君。
私もタカトシ君の隣に座って本を広げた。

当然、内容なんて頭に入ってこない。

タカ 「・・・・//」

カエデ「・・・//」


なによ・・今日はずいぶん粘るじゃない。


カエデ(これで、どうだ)

すっ


タカトシ君の肩に頭を乗せた。

私はもう、本読んでないよ?


タカ 「・・・///」
すっ

タカトシ君の手が、私の手に重なる。

タカ・カエデ「・・・//////」


ぎゅっ!

私はタカトシ君の手を握り返して、空いているもう片方の手でタカトシ君の体に抱き付いた。

あーあ・・今日も私からいっちゃった。

ベッドの上で抱きしめ合う私たち。
二人とも一言もしゃべらない。
二人の鼓動と呼吸だけが聞こえる。

タカトシ君の手が、私の髪をとかして、そのまま頭をなでてくれる。
私は嬉しくて、タカトシ君の胸に顔をうずめる。


タカ 「先輩」

カエデ「今は・・その呼び方イヤ」

タカ 「か・・カエデさん」

カエデ「本当は“さん”もいらない・・」

タカ 「え・・えっと・・今はまだ“さん”づけで」

カエデ「・・・しょうがないなぁ」


人間、変われば変わるものね。
こんなセリフ、半年前の私が聞いたら、それこそ失神ものよ。

タカトシ君がいたから、私は変われた。
あの日、スキーで遭難したから、私は私の気持ちに気付いた。

そして、あの吹雪の夜があったから、私はこんなお願いをしてしまう。


カエデ「タカトシ君・・あれ・・したい///」

タカ 「・・・うん///」

本当にすみませんが、眠いので今日はここまでで
おやすみなさい

こんばんは
つづきでーす

しゅる

タカトシ君がネクタイを外す。

そして私の部屋着に手をかける。


カエデ「・・電気///」

タカ 「あ・・うん///」


かちっ



ぷちっ  ぷちっ

タカトシ君がワイシャツのボタンをはずしている


タカトシ君がTシャツを脱ぐタイミングで、私も部屋着の上を脱ぐ。
真っ暗でまだお互いが見えないとはいえ、自分から脱ぐのは恥ずかしいし、はしたないと思う。
でも私は、タカトシ君のカラダと隔ててる壁を出来るだけ早く取り除きたくて、邪魔な布を脱ぎ捨てる。

私は、上はブラ一枚。
タカトシ君も上半身は裸だ。
お互いが肌を露わにしているのが分かる。


タカ 「・・カエデさん」

タカトシ君の暖かい手が、私の背中を抱きしめた。



そのまましばらく、お互いのカラダの暖かさを交換し合う。

こうやってカラダを重ねるたびに思う。
私はあの吹雪の夜から、彼の暖かさの虜になってしまったんだと。


カエデ「タカトシ君、あったかい」

タカ 「カエデさん・・・」
ぐいっ

タカトシ君の吐息が、私の耳の後ろをくすぐった。

タカ 「カエデさんの・・においがする」

カエデ「!!やっ///」

タカ 「俺、カエデさんの髪のにおい、すごく好きだよ」

カエデ「やっ!///・・・さっき暖房が暑くてちょっと汗かいちゃったから・・汗くさいよ・・・///」

タカ 「カエデさんの汗のにおいも、好きだよ」
はむっ

カエデ「あああっ!!」

タカトシ君が耳を噛んだだけで、私の体に電流が走った。


なんてはしたないんだろう。
なんて破廉恥なんだろう。
でも、なんて幸せなんだろう。

私たちが、遭難した時を除いて最初に体をかさねたのは、バレンタイン日からちょうど2週間たった日だった。
たまたま家族が居ない日曜日、私は彼を家に呼んだ。


********************

カエデ「タカトシ君」

タカ 「あ・・ハイ」

カエデ「・・・」
ぎゅっ

タカ 「・・先輩」
ぎゅっ

学校で“恋人”でいられない分、私たちは久しぶりの抱擁をゆっくり味わった。

カエデ「タカトシ君」

タカ 「はい」

カエデ「なんだか不思議ね」

タカ 「・・そうですね」

カエデ「・・あの夜のこと、覚えてる?」

タカ 「あの夜?」

カエデ「私たちが遭難した日」

タカ 「あ・・ハイ、もちろん覚えてます」

カエデ「びっくりしたんだから・・目が覚めたら、アナタが裸で」

タカ 「ご・・ごめんなさい」

カエデ「ううん。・・・全然嫌じゃなかったの」

タカ 「え?」

カエデ「私、あの時はまだあなたのこと今ほど信用してなかったし、それにまだ重度の男性恐怖症だったでしょ?・・・でも嫌じゃなかったの」

タカ 「・・・」

カエデ「たぶんあなたが、必死に私のこと助けてくれようとしてるのが伝わってきたから・・・いやらしい気持ちとかじゃなく」

タカ 「だって・・誰だってそうしますよ。あんな状態の先輩見たら」

カエデ「でもタカトシ君は、(あの生徒会の中で)いつも紳士的だったし、あんなに失礼だった私にも優しかったじゃない」

タカ 「・・・今だから言いますけど・・最初からちょっと・・・可愛いなって思ってました。ちょっとだけですが」

カエデ「嬉しいわ・・今なら、素直に嬉しいって言える」

カエデ「それとね・・すごくあったかかったの」

タカ 「え?」

カエデ「あなたが体で温めてくれて」

タカ 「・・・先輩を助けることができて本当に良かったです」

カエデ「・・・」
ぴと

タカ 「せんぱ・・」

カエデ「タカトシ君、背が高いよね」

タカ 「あ・・ごめんなさい」

カエデ「ほっぺたとほっぺたをくっつけてもそこまで暖かくないわね」

タカ 「そ・・・そうですね」

カエデ「・・・・たかとしくん」

タカ 「はい」

カエデ「お腹とお腹だったら・・・あったかいかな?」

タカ 「た・・たぶん」


ぐいっ

ベットに横たわり、お互いのお腹だけを露出して、そのお腹をくっ付け合ってる光景はちょっと異様だったかもしれない。
でも私には大きな意味があった。
私が、私の気持ちに気付いた日のことを思い出せるから。


カエデ「やっぱり・・あったかいね」

タカ 「はい・・」

カエデ「・・・」
すっ

タカ 「あ」


私は、タカトシ君の背中に手を滑り込ませた。
タカトシ君の体を直に感じる。


タカ 「先輩の手、少しひんやりして気持ちいいです」

カエデ「・・いいよ」

タカ 「え?」

カエデ「タカトシ君もおんなじことしていいよ」

タカ 「・・・ハイ」
すっ


タカトシ君が私のシャツをまくり上げたのが先か、私がタカトシ君のシャツをまくり上げたのが先かは分からなかった。
気づいたら、お互いがあの吹雪の夜と同じように下着だけで抱き合っていた。

カエデ「・・・っ」
津田 「・・・」


二人とも何も言えない。

前の時は違った。
お互いの気持ちを知らなかった。
だから手探りで近づいた。

でも今は違う。
二人は恋人同士。
もう心は一つ。

この先に進むのも簡単。
どちらかが許可すれば、もう一人は拒否なんかしない。
それが痛いくらいわかる。

だから何も言えない。

時間が過ぎていく。



津田 「先輩」

カエデ「っ・・・うん」

津田 「・・これからはいつでも・・先輩が寒かったら俺が温めます。だからいつでも言ってください」
なでなで

カエデ「・・・っ!」

私の頭をなでる彼の手が、私を包み込んで、すごく安心できた。
このままで十分。
十分幸せ。


・・・その時はそう思った。

タカ 「・・先輩が」

カエデ「?」

タカ 「先輩がしたくなったら、いつでも言ってください」

カエデ「・・・うん///」


カエデ「あ・・あのねタカトシ君」

タカ 「ハイ」

カエデ「この先に進みたくないわけじゃないの。あなたなら、私、大丈夫」

タカ 「ハイ」

カエデ「でも今は・・もう少しこのままで・・」

タカ 「ハイ」

カエデ「あっ・・///」

タカトシ君と、もう一度目が合った。

カエデ「いっ・・今はおデコに・・」

タカ 「・・・うん」

ちゅっ


**********

それから私たちは、私の家で会うたびに、下着姿で体をかさねた。
キスも、ほっぺか、おデコだけ。

そんな関係が少し進んだのはそれから間もなくだった。


カエデ「タカトシ君・・あったかい」

タカ 「ハイ」

ぎゅう


ふと、目があった。
それ自体はいつものことだった。
でも次の瞬間、私は彼の唇に私の唇をかさねていた。

カエデ・タカ「・・・///」


その間、タカトシ君はずっと私の頭をなでてくれていた。


タカ 「・・・っは」

唇を離す。


カエデ「・・ん//」

でもまた次の瞬間、唇をかさねる。

そんなやり取りが何回も、何十回も続いた。

幸せ幸せ幸せ幸せ・・・

その言葉が私の心を埋め尽くして、麻痺していった。

その日のうちに私たちは18年分のキスをした。
私はタカトシ君の舌の味を知った。

同時に私は、一旦スイッチが入ったら、自分で自分を止めることができないだろうことを知った。


カエデ「・・ス、しちゃった」

タカ 「・・ハイ」

カエデ「・・・タカトシ君」

タカ 「ハイ」

カエデ「お願いがあります」

タカ 「なんですか?」

カエデ「もし私が・・・この先に進もうとしたら、止めてください」

タカ 「え?」

カエデ「私、自分で自分を抑える自信がありません」

タカ 「・・せんぱい」

カエデ「この先はダメ・・まだ、ダメ」

タカ 「・・うん」

カエデ「・・でもあなたに抱きしめられて、一旦スイッチが入ったらたぶん理性がききません」

タカ 「・・・」

カエデ「あなたのことが・・・・それくらい好きです」

タカ 「先輩・・・ありがとうございます」

カエデ「お願いします」

タカ 「俺も先輩のことが、誰よりも大切です。先輩の言った事、守ります」


・・・そしてさらに時間が経って、今日。


********************


ここまでにします
おやすみなさい

では、つづきです

カエデ「あっ・・・あっ・・・!」

私は小刻みに震えた。
タカトシ君が今しがた言った言葉が頭に反射する。

『カエデさんの汗においも好きだよ』

はしたない。
なんて、はしたないの!

ずるい。
ずるいよ。
知ってるんでしょ?
私がこんなになってるの。

知ってて、そんなはしたないこと言って、私を狂わせようとしてるんでしょ?

私、知ってるよ。
タカトシ君だって我慢してること。
ずっとあたってるもの。
これに私が触ったら、タカトシ君だっておかしくなっちゃうんでしょ?


カエデ「はーっ・・・はーっ・・・」

タカ 「だ・・大丈夫?」

カエデ「たかとしくん」

タカ 「え?」

カエデ「もっと・・行こう?」



タカ 「そ・・それって」

カエデ「一緒になろう?」

タカ 「だ・・ダメだよ」

カエデ「私は大丈夫・・・タカトシ君が欲しい」

タカ 「・・ダメ」

カエデ「ガマンできないの」

タカ 「・・我慢しなきゃダメです」

カエデ「タカトシ君が私をこんな気持ちにさせたんだよ?」

タカ 「・・ゴメン」
ちゅ

カエデ「あっ//」


私、なんてはしたないこと言ってるんだろう。
タカトシ君を見る私の目は、きっとオンナの目になってる。
でも我慢できない。
だってタカトシ君にキスされただけで、溢れてくるんだもの。

タカ 「カエデさん」

カエデ「はぁっ・・・うん」

タカ 「カエデさんのしてほしいこと、なんでもしてあげます。でもそれはダメです」

カエデ「・・いじわる」

タカ 「・・うん」
ぎゅうう


タカトシ君が私を強く抱きしめる。
私たちはもう、つけているのは下着だけだから、お互いの肌の感触が強く伝わる。
あの日と同じように。
でも肌をかさねる意味は、あの日とは違う。


カエデ「たかとしくん」


私はタカトシ君の足に、私の足を絡める。


タカ 「・・っ・・」

カエデ「さっきからずっと・・あたってるんだよ?」

タカ 「ごめん・・俺だってガマンしてるから」

カエデ「ほんとに何でもしてくれる?」

タカ 「うん」

カエデ「じゃあ・・・脱がせて?」

タカ 「・・え?」


下着しか着ていない私たち。
この先脱げるのは下着だけ。


タカ 「・・でも、そしたら・・」

カエデ「ダメなの?」

タカ 「・・・」


タカ 「・・ブラ、外すよ?」


私の背中を抱いていたタカトシ君の手が、私の背中の中央を触った。

タカ 「え・・と・・」

ホックの外し方が分からないみたい。
嬉しい。

かち

タカ 「・・あれ?」

カエデ「もう一個、金具あるよ」

タカ 「あ・・うん」


かち


するっ・・

胸が、タカトシ君にじかに触れた。
あの夜もなかった感触。


タカ 「・・・・////」

カエデ「さわって・・いいよ」

タカ 「ダメです・・我慢できなくなるから」

カエデ「ガマンしなくていいのに」

タカ 「ダメです」

カエデ「・・・じゃあ・・下も脱がせて」

タカ 「え・・・それは・・」

カエデ「なんでもしてくれるんでしょ?」

タカ 「う・・うん」


さっきから私の口からは、私の欲望をストレートに吐き出している。
私、もうさっきから全然ガマンできてない。
私、自分に嘘つけない。

私、タカトシ君とセックスがしたい。

タカトシ君のあったかい指が、私の腰を触る。
タカトシ君の指が、私が纏った最後の布を剥いでいく。

カエデ「・・・ぁ」

ひんやりとする。
それくらい、溢れてる。

私は、大好きなタカトシ君に、裸にされた。


タカ 「ぁ・・・///」

カエデ「たかとしくん・・・///」

タカ 「は・・はい」

カエデ「下着・・触った?」

タカ 「え?!・・あ・・ゴメン」

カエデ「いいの・・わたし、そんなになってるの」

タカ 「・・・///」

カエデ「今日だけじゃないの。タカトシ君とこうするとき、いつもそうなってるの」

タカ 「お・・俺も・・そうです。いつも、こうなってます」

カエデ「さわっていい?」

タカ 「だ・・ダメです」

カエデ「やだ」
ぎゅむ

タカ 「ぁあっ・・!」

タカトシ君はすばやく腰を引いた。
タカトシ君の感触が手に残っている。


タカ 「はっ・・はっ・・・」

カエデ「たかとしくん・・」

タカ 「は・・はい」

カエデ「私のも、さわって」


自分の言葉に、歯止めがきかない。


タカ 「さっ・・触るだけだよ」

カエデ「うん」

タカ 「・・・さわるよ」


ぴと

カエデ「――――――っ!!!」

指先が、ちょっとだけ触れた。
それだけなのに、私のカラダは跳ねた。

タカ 「だ・・大丈夫?」

カエデ「ふーっ・・ふーっ・・・だいじょうぶ・・・もっと」

タカ 「うん」


ぴちゃっ

カエデ「ふぁぁぁああああ!!」


自分でも聞いたことがない声が出た。
もうダメ。
もう止まらない。

カエデ「たかとしくん!・・たかとしくんっ!!」

タカ 「・・カエデさん」


ずっ!

ほんの1㎝くらいだと思う。
タカトシ君の指が侵入した。

カエデ「――――っ!!!!」




恥ずかしくて、タカトシ君には言えない。
私はタカトシ君に最初にここで抱きしめてもらった日から、ずっと一人でしている。
ベッドに入るたびに思い出してしまうから。
ここでタカトシ君に抱きしめられたんだって。
声を押し殺して、一人ではしたないことをしている。

でも今まで、こんなに気持ちよかったことは無い。
体中が気持ちいいって感覚でいっぱいになる。
ぱちぱち星が飛んで、景色が光り輝く。

カラダをじっとしていられない。
タカトシ君の指が少し動くだけで、私のカラダが大きく動く。


タカ 「気持ちいい?」


私は正常な声を出せずに、首を大きく縦に振った。


あむ

カエデ「ああああっ!!」

私の胸を、タカトシ君が吸ってる。
それを認識するより早く、大きな声が出た。

タカ 「早くするね」

カエデ「えっ・・?」

そう言うと、タカトシ君の指の動きが早くなった。


カエデ「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

自分でもどうかしてるって思うぐらい、頭を大きく振っている。
そうしてないと、気持ち良すぎておかしくなっちゃいそう。


タカ 「カエデ・・愛してるよ。これからもずっと」

カエデ「!!!!――――――――ぁぁぁっっっ!!!」

すごく大きな声で、私は哭いた。

ぎゅうううう
タカ 「え・・?ぁぁっっつ!!」

いく瞬間、体がどこか飛んでいきそうな気がして、とっさに掴んでしまった


***

体中がピリピリと痺れている。

朦朧とする意識の中で、タカトシ君のカラダも大きく震えたのを覚えてる。

私の右手が掴んでる、タカトシ君のものが、布越しからでもわかるくらい濡れている。


カエデ「・・・タカトシ君」

タカ 「カ・・カエデさん・・あっ・・」

カエデ「あ・・ごっ・・ゴメン!」

私は、右手を離した。


カエデ「・・・ブレーキかけてくれてありがとう」

タカ 「いえ・・俺も危なかったです」

カエデ「私・・すごくはしたなかったね」

タカ 「そんなことないです」

カエデ「・・・・・・嫌いにならないで」

タカ 「そんな事、あり得ません」

タカ 「俺も・・その・・出しちゃって・・その・・」

カエデ「あ・・ごめんなさい。とっさに掴んじゃって・・//」

タカ 「いえ・・//」

カエデ「・・パンツ洗ってあげるね」

タカ 「いや、いいです。自分で」

カエデ「・・じゃあ拭いてあげるね。タオル持ってくるわ」

タカ 「え・・あ・・」


ごそごそ

カエデ「脱がすね」

タカ 「ちょ!」

ぬがせっ

タカ 「う・・///」

ふきふき・・

タカトシ君のもの、出来るだけ見ないようにしてあげた。
でも拭いてると、また少し大きくなってるのが分かった。

カエデ「はい」

タカ 「あ・・ありがとう///」

カエデ「タカトシ君だって・・・私の見たでしょ?//」

タカ 「あ・・あの・・・風呂場で洗ってきます!」

***

**********

3月某日。生徒会室。


津田・萩村「先輩たち、卒業おめでとうございます!」

天草・アリア「ありがとう!!」


天草 「ついにこの部屋ともお別れだな・・津田、後は頼んだぞ!」

津田 「はい。頑張ります。でも、お別れなんて言わないでください。時々遊びに来てください」

天草 「うん・・・ありがとう、津田」

アリア「あれ?シノちゃん、ドアの外に誰かいるよ?」

萩村 「本当ですね・・・開けましょう」

ガラガラ

ランコ「くぱぁ」

天草 「畑か・・新聞部の方はいいのか?」

津田 「ツッコミ忘れてるぞー」

ランコ「いえね、最後にこの部屋に仕掛けた盗聴器を回収しようと思いましてねー」

津田 「マジで?!仕掛けてたの?!!」

ランコ「冗談です。新聞部の次の部長を連れてあいさつに来ました」

萩村 「おお意外と真面目だった」

**

コンコン

アリア「はーい」

カエデ「失礼します」

天草 「ん?五十嵐か」

カエデ「ハイ・・ってなんで畑さんまで」

ランコ「新聞部次期部長のご挨拶よー」

カエデ「あら、私も同じ要件です」

次期風紀委員長「よろしくお願いします」

津田 「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

カエデ「おそらく他の委員会も生徒会にあいさつに来ますね。長居してはご迷惑かと思いますのでこれで失礼します」

萩村 「はい。お疲れ様でした」

ランコ「私は後輩に、インタビューの仕方(誘導尋問)を教えるのでもう少しここに」

津田 「えー」

カエデ「では詳しいことは、後日連絡がいくと思いますので、その時はよろしくお願いします」

津田・萩村「はい」

カエデ「それでは、萩村さん、タカトシ君、お元気で」

津田 「はい」
萩村 「は・・い?」

カエデ「行きましょう」
次期風紀委員長「はーい」

ガラガラ


萩村 「・・・」

天草 「・・・」

アリア「・・・」

津田 「?どうしたんです?みんな黙って」

アリア「いま・・」

萩村 「・・ええ」

天草 「おい津田」

津田 「はい?」

天草 「五十嵐は・・お前のこと“タカトシ君”って呼んでたっけか」

津田 「・・・・・・・」

萩村 「津田、ゆっくり話しましょうか」

津田 「いや・・・言い間違えってあるだろ」

アリア「津田君も気づかなかったよねー・・呼ばれ慣れてるのかな?」

津田 「いや・・そういう訳じゃ」


ランコ(・・あちゃー)

津田 (畑さん・・助けて)

ランコ(うーん・・・・無理!)

津田 (NO)

ランコ「今から起こることをよく見てて記事になさいな」

次期新聞部部長「ええ!修羅場ですね!」

津田 「ちょ・・みんな落ち着こうよ・・ね?」

萩村 「私は落ち着いているわよ。今までに無いくらい」

天草 「あはははは・・私も落ち着いてるぞー」

アリア「あらあら・・うふふふー」

津田 「」


***


カエデ「~♪」

次期風紀委員長「先輩、なんだかゴキゲンですね」

カエデ「え?!・・そ・・そうかしら?」

次期風紀委員長「ええ、とってもゴキゲンに見えます」

カエデ「い、いえ、卒業式終わって開放感からかしらね」

カエデ(き・・気を付けなきゃ。私ってすぐ顔に出るから・・)

次期風紀委員長「ところで先輩」

カエデ「な・・何かしら?」

次期風紀委員長「さっきの生徒会長さん、先輩の彼氏ですか?」

カエデ「えっ?!」

おわり

これにてカエデ編終了です。
長々とお付き合いありがとうございました。


以前書いたもの↓
天草「津田、目に見えるものが真実とは限らないぞ。」(畑さん編)
天草「津田、目に見えるものが真実とは限らないぞ。」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1413561927/l50)

津田「神様お願いです・・萩村を助けてください」(スズ編)
津田「神様お願いです・・萩村を助けてください」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413900352/)

津田タカトシ「お姉ちゃん、相談があります」(ウオミー編)
津田タカトシ「お姉ちゃん、相談があります」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416927970/)

三葉ムツミ「トッキー、勝負だよ!」(トッキー編)
三葉ムツミ「トッキー、勝負だよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418139775/)

時「連休ヒマか?」 津田コトミ「いや、戦争で散った戦友(とも)の墓参りに・・」(コトミ編)
時「連休ヒマか?」 津田コトミ「いや、戦争で散った戦友(とも)の墓参りに・・」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418658314/)

津田タカトシ「畑さんできましたよ、今月分のエッセイ」(シノ編)
津田タカトシ「畑さんできましたよ、今月分のエッセイ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421249590/)


とりあえず役員共ssはこれでいったん終わりにしようかと思います。

11巻が出て、何か思いついたらまた書くかもです。
あとやってないのは、アリアとムツミくらいでしょうか・・



では、もうちょっとだけ

【エピローグ】



ゴオオオオオオオオオオ・・・・・

唸るような風が窓を叩く。

目が覚めると私は、暖かいベッドの中で高校の後輩だった津田君に抱かれていた。

私も、彼も、生まれたままの姿。

彼は、私が目を覚ましたことに気付くと、微笑んで私の名前を呼んだ。

私には高校生の時から一つ年下の彼氏がいる。

私が高校を卒業する年のバレンタインデーに彼は私に告白してくれた。

私が卒業した後、彼は色々とあったみたい。

彼は3年生の時生徒会長やったし、結構人気者だったから。


でも時間が経って、私たちの関係はみんなに認めてもらえた。

今では、私たちは外で手を繋いで歩ける。


彼の大学入試が無事終わった3月、私たちは2人でスキーに来た。

しゃーっ

カエデ「タカトシ君、やっぱり上手ね」

タカ 「そうかな?」

カエデ「だって、どんどん先に言っちゃうんだもん」

タカ 「あ・ゴメン」

カエデ「ううん、時々止まって待ってくれるから悪いなぁって思ったの」

タカ 「そんな事ないよ・・どっか行っちゃわないか心配なだけ」

カエデ「もう!・・・もう遭難しないわよっ!」

タカ 「うん、リフト降りるのも上手になったしね」

カエデ「いじわる!」

タカ 「もう一回上行こうか?」

カエデ「うん」

タカ 「・・あれ?」

リフト係員「あ、お客様。山頂の方は天候が悪くなってきてますので、あと10分くらいでこのリフト止まりますよ」

タカ 「・・だって。どうする?」

カエデ「うん、やめましょう。無理していいことないもの」

タカ 「そうだね」

カエデ「それに結構寒くなってきちゃったから」

タカ 「うん。温泉入ろう」

カエデ「うん!」

このスキー場は温泉に近い。
ここを選んだ理由はホテルに温泉があるからっていうのが大きい。

タカトシ君って意外とおじさんくさいんだから。

温泉ホテルチェックイン。


タカ 「ねえ」

カエデ「どうしたの?」

タカ 「えっと・・・ここ(部屋)歩いてくる途中にさ、温泉あったよね」

カエデ「うん、そうね」

タカ 「えっと・・家族風呂っていうのあったよね」

カエデ「タカトシ君・・・一緒に入りたいの?」

タカ 「あー・・あー・・・入りたいです」

カエデ「ふふ・・・いじわるしてゴメンね。私も気づいてた。私も一緒に入りたい」

タカ 「・・・うん//」

カエデ「・・・//」

あなたがそんなに恥ずかしそうにしないでよ。
わたしのが、ずっと恥ずかしいんだから・・・。

手早く服を脱ぐタカトシ君。

私はそんなタカトシ君に背を向けて服を脱ぐ。

不思議なもので、私たちはまだ・・したことない。

したことないのに、お互いの裸は知っている。

二人で裸で抱き合うのは、私たちの儀式みたいなものだから。

**

ちゃぽん・・

背中に水面の揺れを感じる。

恥ずかしいから先に浴槽に入った私は、タカトシ君に背中を向けている。

室内とはいえ、冬の浴室は寒い。

寒さから、白い湯気が立ち込め、お互いの姿をあいまいにしていることが恥ずかしさを少しだけ紛らわしてくれる。

タカ 「そっち、いっていい?」

カエデ「ん・・待って」

タカ 「え?」

カエデ「私がそっち行く」

タカトシ君の隣に移動する私。

タカ 「・・・」
カエデ「・・・」

・・どうしよう。ちょっと緊張する。


タカ 「あ・の・・、外、結構吹雪いてるみたいだね」

カエデ「あ・・うん、そうね。早めに切り上げて正解だったわね」

タカ 「うん」

カエデ「・・・」
タカ 「・・・」


カエデ「かっ・・考えてみれば・・初めてね」

タカ 「え?」

カエデ「一緒にお風呂入るの」

タカ 「あ、うん」

タカ 「い・・嫌だった?」

カエデ「そんなことないわ」

タカ 「うん」

ちゃぷ

カエデ「っ・・!」

タカトシ君の右手が、私の右肩を抱いてくれた。

カエデ「・・・///」

私は左にいるタカトシ君の肩に、甘えるようにもたれかかる。


タカ・カエデ「・・・///」


お互い無言のまま、時間が流れる。


もっとタカトシ君に近づきたい。
もっと一緒になりたい。

私の心臓が少し早くなる。


タカ 「えっと・・嫌だったらやめるから」

カエデ「え?」

ちゃぷ

タカ 「・・・///」

カエデ「あっ」


タカトシ君が私を後ろから抱きしめた。

私はタカトシ君の足の間に挟まれている。


カエデ「・・・・・・・嫌じゃないわ///」

タカ 「うん///」


言葉だけじゃなく、本心だってことを示すために、私は体重をタカトシ君に預ける。

ぎゅ・・

タカトシ君の手が、私のお腹の前で交差した。

タカトシ君の吐息が、私の首筋にかかる。


タカ 「好き・・だよ」

カエデ「あっ・・うん//」


幸せって、こういうことを言うんだと思う。

タカトシ君の体温を背中で感じながら、私は足を少し折りたたむ。


タカ 「・・・//」

ちゅ

カエデ「っ!//」

首筋に不意打ちのキス。

頭がぼーっとする。

すっ・・

タカトシ君の手が、少しだけ上に移動した。

私は、受け入れる。

今更、受け入れないという理由がないから。


カエデ「ふっ・・ん・・///」

タカトシ君の手が、私の胸を優しく包んだ。

そしてだんだん、指先が私に触れるようになる。


カエデ「・・・・っ///」

私は必死に声を押し殺す。

だって、お風呂場って声響くから。


タカ 「・・・・///」


タカトシ君の指が止まる。

そしてもう一度強く、私を後ろから抱きしめてくれる。


タカ 「・・・・」

タカトシ君が少しためらってるのが分かる。



カエデ「た・・タカトシ君」

タカ 「・・うん」

カエデ「・・いいよ」

タカ 「・・・」

カエデ「タカトシ君が・・したい事していいよ//」

タカ 「か・・カエデさん//」

カエデ「はっ・・・あ・・///」

声が我慢できない。

タカトシ君の指先が私の胸を刺激する。


カエデ「ふっ・・・ん・・///」

タカ 「・・・//」

タカトシ君の右手が、胸から離れた。

来る。

声、我慢できるかしら・・


カエデ「ああっ!!」

タカトシ君の指が、私の中に入ってくる。

タカトシ君は何も言わない。

ばれてるんだろうか。

さっき足をたたんだ時から、溢れてたこと。

タカトシ君の左手が私をかき回す。

私は、我慢できずに声を上げる。

タカトシ君のものが、私のおしりに当たってるのが分かる。


カエデ「ああっ・・たかとしくん・・」

タカ 「い・・痛くない?」

カエデ「だいじょうぶ・・痛くない//」

タカ 「・・気持ちいい?」

カエデ「うん、きもちいい//」


カエデ「あっ」

タカ 「え?」

カエデ「・・だめっ///」

タカ 「ん・・//」

カエデ「ああ・・ああああっ!!」

びくっ・・びくっ・・!!


カエデ「はあーっ・・・はあーっ・・・」

カラダが麻痺してる。

お湯の中で、うまくバランスが取れない。

私は振り返って、タカトシ君と向き合い、抱き付いた。

タカ 「あ・・き・気持ちよかった?」

カエデ「・・・//」こくこく

タカ 「・・よかった//」


ぎゅううう

恥ずかしさと、気持ちよさ、幸せな気持ちから、私はタカトシ君に強く抱き付く。

抱き付いて、キスをする。

少し落ち着いて、見つめあう。

カエデ「・・・//」
タカ 「・・・//」

浴槽の中だからかもしれないけど、お互いの頬はいつもより赤い。



カエデ「・・あ」


気付いてしまった。

タカトシ君のが、私のお腹に当たっていた。

向かい合って抱き合ってる私たち。

ついさっきタカトシ君の指にかき回された私の部分も、タカトシ君の方を向いている。

お互いが少し体を動かせば、触れてしまう。


ちゃぽ・・

タカトシ君が、少し動いた。

タカトシ君のものが、わたしのものに触れた。


タカ 「・・・///」

カエデ「・・・///」


私がもう少し足を開けば、それは、そういう意味だ。

タカトシ君の表情が切ない。

私は・・・いつだっていい。

でも

カエデ「・・・ダメ」

タカ 「・・・ん」

カエデ「ここ・・・お風呂だから・・」

タカ 「・・・うん」

カエデ「それに私もう、のぼせそう」

タカ 「うん・・・俺も」


ざばっ

タカ 「俺、先出てるね」

カエデ「・・うん」


一回でもしちゃったら、たぶんこの時間差はなくなるんだろう。

少し恥ずかしくて、お互いがお互いを意識している。


カエデ「私も出るわ」

ざばっ

今日はここまで

おやすみなさい

では、最後まで一気に

***

タカ 「ふう・・腹いっぱいだー」

カエデ「もう、タカトシ君食べ過ぎよ」

タカ 「なんかバイキングって、いつも以上に食べちゃうんだよね」

カエデ「確かにそうね」


ガチャ

タカ 「ふー・・」
どさ

カエデ「すぐ横になっちゃだめよ」

タカ 「はーい」

カエデ「ふふ・・」

・・

タカ 「俺、もう一回風呂行ってこようかな。大浴場の方。カエデさんは?」

カエデ「あ・・私は今はいいわ。ちょっと休みたいし」

タカ 「そう?じゃあ行ってきます」

カエデ「うん。ゆっくりしてきていいからね」

ガチャ

・・・
タカトシ君が歩いていく足音を確認する。


カエデ「・・・//」

私は、服を脱ぎ、部屋についているバスルームのドアを開ける。


カエデ(変なとこないわよね・・・//)

体を確認する。

ムダ毛は・・なし。
でも念のためもう一回。

お腹も・・出てないわよね?
夕ご飯、ちゃんとセーブしたし。

石鹸で念入りに洗う。

シャワーで丁寧に流す。

体をふく。

ドライヤーで髪を乾かす。

新品の下着を履く。
この日のために買ったもの。
白で、下品じゃない程度に可愛いもの。

お気に入りのパジャマ。

たぶんこのままじゃ寒いから、上からもう一枚羽織る。

紅茶を飲むため、お湯を沸かす。

ベッドに腰掛けながら、テレビをつける。


**

ガチャ

タカ 「ただいま」

カエデ「お帰りなさい」

タカ 「大浴場もよかったよ」

カエデ「うん、明日の朝入ろうかな」

タカ 「ん?テレビ見てるの?」

カエデ「うん。映画やるみたいだから」

タカ 「いいね。一緒に見よう」

カエデ「うん」


私はベッドに腰掛けて、タカトシ君はベッドにゴロゴロしながらテレビを見る。

それぞれのベッドにいるのが、少しもどかしい。


タカ 「なんか喉乾いたな・・」

カエデ「紅茶、入ってるから」

タカ 「あ、ありがとう」

カエデ「うん」


タカトシ君がベッドから起き上がって机の上の紅茶を飲む。

飲み終わったタカトシ君は私の隣に座る。

もどかしかったのは、彼も同じだったみたい。

タカ 「・・・」

カエデ「・・はい」

タカ 「・・うん」


タカトシ君が私の膝を枕にする。


タカ・カエデ「・・・」

テレビの中の、ハリウッド俳優の声だけが部屋に響く。


タカ 「・・もうパジャマ着たんだ」

カエデ「うん・・だってもうこれ見たら11時でしょ?」

タカ 「そうだね」


タカ 「あ・・俺もパジャマ着とこうかな」

カエデ「うん」

ごそごそ

タカトシ君は、いつものパジャマ。

時間は10時48分。

悪は無事倒された。

テレビには11時を前にして、時間合わせの短い番組が流れる。

私たちは別にそれを見てるわけじゃないけど、なんとなくテレビの方を見ている。

ごろん

タカトシ君が寝返り?をうって、体を私の方に向けた。

膝枕したままだったから、私のお腹の下あたりに顔をうずめている。

少し恥ずかしい。

ぎゅ

タカトシ君の腕が、私の腰を抱いた。


カエデ「・・・//」なでなで

タカトシ君の頭をなでる私。

テレビの音は、11時をまわってニュースが始まっている。

別に今は見る気はない。

でもテレビを消す勇気がない。

テレビを消したら、それは、合図になってしまいそうで。


タカ 「・・消す?」

カエデ「えっ?」

タカ 「テレビ」

カエデ「ん」


タカトシ君が、私のお腹に顔をうずめたまま言った。
アナタに言われたら・・消すしかないじゃない。


ぱちっ

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・


二人ともしゃべらない時間。

私は、私の心臓の音がうるさく感じた。

タカ 「・・・よいしょ」

カエデ「え?」


タカトシ君が不意に起き上った。

目の前に、タカトシ君の顔。

タカトシ君の顔が近づいてくる。

・・・ちゅ


カエデ「///」

不意打ち過ぎて、何も言えない。


しゅる

タカトシ君の腕が背中に回る。

そしてタカトシ君の体重が私にかかる。


ぼふ

私はタカトシ君に、優しくベッドに押し倒された。

タカ 「・・・//」

ちゅ

もう一度キス。

カエデ「・・たかとしくん//」

タカ 「もう、横になろう?」

カエデ「うん//」

タカトシ君の腕が私の枕になる。

カエデ「あ・・電気」

タカ 「消す?」

カエデ「・・あの吹雪の夜は、真っ暗だったわ」

タカ 「そうだね」

かちっ


今度は私は、タカトシ君に頭をうずめる。

好き

大好き

体が近い距離にいれば、強い気持ちなら伝わる気がする。

タカトシ君も私を少し強く抱き寄せて、おデコにキスをしてくれる。

タカ 「・・そのパジャマ、可愛いね」

カエデ「っ・・・ありがとう///」

うん・・あなたが前、そう言ってくれたから、今日選んだの。

カエデ「タカトシ君のパジャマも、前泊まりに行った時と同じだね」

タカ 「え?そうだっけ?」

カエデ「そうよ。そういうの、私ちゃんと覚えてるんだから」

タカ 「・・うん//」

前、一回だけタカトシ君の家に泊まりに行ったことがある。
案の定、コトミちゃんがいるからってことで、その時は少し離れて寝た。
いつもの、“儀式”もなし。

でも、それとは別に、彼が私の家に来るときは、いつもあの“儀式”をする。

裸で温めあう。

だから、こうやってカラダを密着させているのに、二人とも服を着ているなんてなんか違和感さえ感じる。

でも今日は、言い出せない。
踏み出せない。

だって今日はもう止めるものもない。
始まってしまったら、もう行くところまで行ってしまいそうな気がするから。

踏み出すきっかけがつかめない。

ゴオオオオオオオオオ・・・・

窓の外で強い風の音が響いている。

タカ 「・・・あの夜みたいだね」

カエデ「・・うん」

タカ 「今日は、寒くない?」

カエデ「寒くないわ」

タカ 「うん、よかった」

カエデ「・・でもね」

タカ 「え?」

カエデ「・・・温めてほしいの」


私はずいぶん大胆になったなって思う。
でも勿論それは、タカトシ君だけに。

タカトシ君の指が私のパジャマのボタンをはずす。

私の指がタカトシ君のパジャマのボタンをはずす。


タカトシ君の手が私のズボンを下ろす。

私の手がタカトシ君のズボンを下ろす。


タカトシ君は、私を抱きしめながら、私のブラのホックをはずす。


熱い。

タカトシ君の体が熱い。

私の体が熱い。

抱き合うと、もっと熱い。


ドクン・・

ドクン・・

ドクン・・

二人の心臓の音が響く。

鼻と鼻が当たった。

真っ暗で、まだよく見えないけど、私たちは奪い合うようにキスをする。

キスをしながら、タカトシ君の手が私の腰の布を下ろしていくのが分かる。

私は全然抵抗しない。

それどころか、足をまげて脱がせやすいようにする。

なんて破廉恥なことしてるのかしら。

でも全然嫌じゃないの。

タカトシ君にすべてをゆだねているから。

遭難したあの日と同じ。

私のために、タカトシ君が必死になっている。

今考えるとあの日、もう私は彼が好きだったのかもしれない。

遭難したのは、私がそれに気づくきっかけに過ぎなかったのかもしれない。


気付いたら、私も、彼も、何も着けていない。

本当のハダカのままで、温めあっていた。

カエデ「・・たかとしくん」

タカ 「・・うん」

カエデ「聞いて」

タカ 「はい」

カエデ「・・大学合格おめでとう」

タカ 「あ・・ありがとうございます」

カエデ「もうすぐ、あなたも卒業です」

タカ 「はい」

カエデ「だから、私たち、もう二人とも大人です」

タカ 「・・はい」

カエデ「だから、もう自分のことは自分で決めていいと思います」

タカ 「・・うん」

カエデ「一年間、あなたにしたお願い、撤回します」

タカ 「・・・カエデ・・さん」

カエデ「・・あなたが・・したい事、してください」

タカ 「あ・・」

カエデ「わたしも・・あなたがしたいと思ってること・・したいから//」

タカ 「・・カエデ」

タカトシ君が何回も私にキスをしてくれた。

キスをしがら、少しずつ私の上に覆いかぶさる。

何度も頭をなでてくれる。

何度も好きって言ってくれる。

タカトシ君にとって、私がどれだけ大切な存在なのかが、すごく伝わってくる。

同じ。

私も同じ。

私もタカトシ君がすごく大切。

闇の中、うっすらと見えるタカトシ君の顔が、すごく愛おしい。

タカトシ君の手が、私の太ももに触った。

私は、緊張しながら、精一杯力を抜くよう努力する。


タカトシ君のが、私のに触れた。

タカ 「カエデ、大丈夫?いくよ?」

カエデ「・・・うん・・いいよ」

ずっ・・

カエデ「んっ・・//」

タカ 「く・・っ//」


ずずっ・・・・・ずるっ

カエデ「―――――っ!!」

タカ 「っ!!」


@@@@@@@@@@


カエデ「っはぁっ・・・はぁっ・・・どう・・・なってるの?」

タカ 「はいってる・・よ」

カエデ「・・・うれしい」

タカ 「・・・うん」

カエデ「・・好き」

タカ 「うん・・俺も大好き」

カエデ「・・・いいよ?」

タカ 「え?」

カエデ「あなたが・・いいように動いて」

タカ 「・・痛くないの?」

カエデ「ちょっとだけ・・でも大丈夫」

タカ 「ほんと?」

カエデ「うん、あのね・・正直痛いっていうよりも・・広がってるって感じなの・・・だからたぶん大丈夫」

タカ 「・・うん」

規則的なリズムで、シーツのすれる音がする。

タカトシ君が優しく動く。

本当は結構痛い。

でも優しく動いてくれるから大丈夫。

私はタカトシ君に必死にしがみつく。

爪を立ててるかもしれない。

でも必死すぎて、よくわからない。


すっ・・

カエデ「?」

タカトシ君が、いったん腰を引き抜いた。

何だろう。

なにかゴソゴソしてる。

あ・・・

そうか。

つけてなかったもんね。

ダメじゃない、元風紀委員長。

タカ 「カエデ」

カエデ「うん」

タカ 「いい?」

カエデ「うん」


タカトシ君が再び私に侵入する。


タカ 「カエデ」

カエデ「タカトシ君」

お互いの名前を呼ぶたび、彼の動きが少し激しくなる。

タカ 「カエデっ・・・カエデっ・・!!」

カエデ「タカトシっ・・タカトシっ・・!!」


痛い。
気持ちいい。
幸せ。

タカ 「カエデっ!カエデっ!!」

カエデ「タカトシっっ・・!」


ぐっっっ・・!

カエデ「っっっ・・・あああああああああああっ!!」

タカトシ君の体が、私に深く突き刺さる。
一番奥のところを強く押されて、私の中の何かがはじけた。
前、指でしてくれた時とは違う感じ。
でも同じくらい強い快楽。

私は動物みたいな声を上げて体を痙攣させてしまった。

タカトシ君の体も、小刻みに震えているのが分かる。

そのままの体勢で、10分以上動けずにいた。

タカトシ君が先に動いて、まだ動けないでいる私を腕枕し、抱きしめる。

二人とも呼吸が整ってきて、やっとお互いがまともに会話できるようになる。

もう完全に、闇に目が慣れている。

タカ 「・・・」
カエデ「・・・」

タカ 「ふふっ」
カエデ「ふふふ」

なぜか、二人とも少し笑ってしまう。

タカ 「カエデ」
カエデ「うん」

タカ 「大切にするよ、ずっと」
カエデ「うん・・私も」

ちゅっ

もう一度だけキスをした。


タカ 「・・すごく疲れた」
カエデ「私も・・すごく眠い」

タカ 「カエデ」
カエデ「ん」

・・・

*****

ゴオオオオオオオオオ・・・

夜が明けても、相変わらず天気は悪いみたいだった。

カエデ「今日は、もうスキーは無理ね」

タカ 「うん。まあ今日はゆっくり帰ろう」

カエデ「そうね。新幹線乗る前にお土産とか見ましょう」

タカ 「賛成。とりあえず朝食の前に温泉行く」

カエデ「あ・私も」

タカ 「うん」


**

カエデ「ホント、大浴場も結構いいわね・・」

ちゃぷ

カエデ「・・っつ!」

・・・しみた。

カエデ「・・・・バカ//」

カエデ「お待たせしました」

タカ 「ずいぶん長かったね」

カエデ「うん・・ちょっとね//」

タカ 「?」

カエデ「朝ご飯食べましょう」

タカ 「うん」


***

タカ 「ふー・・食ったー」

カエデ「もう、またそんなに食べて」

タカ 「だって・・・なんか体力消耗したからかお腹すいて」

カエデ「だっ・・黙りなさい//」

タカ 「カエデだって、結構食べてたと思うけど」

カエデ「・・・・バカ//」

タカ 「俺は準備オッケー」

カエデ「私も。行きましょう」

タカ 「うん」

**

タカ 「チェックアウトしてくるね」

カエデ「うん」


タカ 「チェックアウトお願いします」

カウンター「ハイ・・津田様ですね・・・あ」

タカ 「?」

カウンター「お会計は終了しております」

タカ 「え?」

タカ (あ・・カエデが先に払ったのかな?今回は俺が払うって言ったのに・・)

カウンター「お客様は駅に向かわれますか?」

タカ 「え?あ、ハイ」

カウンター「でしたら、駅まで車でお送りします。この雪ですので」

タカ 「あ・助かります」

カエデ「どうしたの?」

タカ 「んー駅まで送ってくれるって」

カエデ「あ、そうなんだ」

タカ 「うん、行こう。外に車待ってるみたいだし」

カエデ「うんっ//」

二人は手を絡めて歩き出す。

タカ 「あ、カエデそういえば」

カエデ「なに?」

タカ 「ホテルの料金、先払ってでしょ?俺が払うって言ったのに」

カエデ「え?私、払ってないよ?」

タカ 「あれ?どういうことだ??」


ガチャ

出島 「津田様、駅までお送りします。ご乗車ください。」

タカ・カエデ「」

タカ 「え・・出島・・さん?」
カエデ「アナタ確か七条さんの・・・」

出島 「ロータリーをいつまでも占拠していてはほかの車に迷惑です。ささ、お早く」

ガチャ・・ブロロロロロ・・・

タカ・カエデ「・・・」

アリア「おはようー」

タカ・カエデ「・・・」

天草 「おはよう」

タカ・カエデ「・・・」

アリア「昨日の夜ねーウチ(七条家)の系列のホテルに二人が泊まってる情報が入ってねー」
天草 「私もアリアに呼ばれ、今に至る、という訳だ」

タカ 「あの・・・あ・・ホテル代ってもしかして」

アリア「うん、うちのサービスだよー」

タカ 「え?・・あ・ありがとうございます」
カエデ「あ・・ありがとうございます」

アリア「いえいえーいいんだよー。その分これから聞くから」

タカ 「・・・え?」

アリア「じゃあ、昨日の夜のこと話して?」

カエデ「・・・なっ?!//」

天草 「記録によると、二人は昨日、家族風呂に入ったそうだな」

タカ 「う・・」
カエデ「・・・///」

アリア「家族風呂一緒に入る仲ってことは、」

タカ 「ちょ・・!ちょっと待ってください!!俺たちのことは先輩たちだって認めてくれたじゃないですか!」

天草 「うん、そうだが?」

アリア「私たちよりも先に大人になった二人に聞きたいだけだよー」

カエデ「聞きたいって・・何をですか?」

天草 「プレイ」

タカ 「ぶっ!!」
カエデ「ひっ!!」

天草 「混浴プレイはどうだった?やはり後背位か?」

タカ 「風呂場ではやってませんから!!」

アリア「“風呂場では”かー♡」

タカ 「げ」
カエデ「///」

天草 「さあ」
アリア「さあ」
出島 「さあ」


タカ 「か・・・勘弁してくれー!!」

カエデ「//////」

終わり

という訳でエピローグも終了です。
本当に長々と見ていただき、ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年02月02日 (月) 00:44:43   ID: I_eQEHlX

毎日更新はまだかまだかと見に来てます!
タカトシとカエデの小説は少ないので本当にありがたいです!
これからも応援するのでがんばってください!

2 :  SS好きの774さん   2015年02月05日 (木) 01:46:51   ID: fAKU6yWr

お疲れ様です!!
またいつか新しいカエデの小説が見たいです!
これからも頑張ってください!

3 :  SS好きの774さん   2015年02月08日 (日) 18:43:08   ID: WWoZuLU4

最高!
カエデちゃん可愛すぎィ!

4 :  SS好きの774さん   2015年02月09日 (月) 06:18:21   ID: p4Chv7sK

最高だー!
カエデちゃんマジで嫁にしてぇ!

5 :  SS好きの774さん   2015年03月18日 (水) 01:24:17   ID: nnPKmbSt

ムツミ√は?

6 :  SS好きの774さん   2015年12月23日 (水) 01:44:09   ID: CaMAkKRK

アリア√とムツミ√を期待しています!

7 :  SS好きの774さん   2018年03月12日 (月) 01:13:30   ID: pkkGhpJ1

すごくよかったです!こんなssがあったなんて…もっと早く気付くべきだった

8 :  SS好きの774さん   2022年02月03日 (木) 01:36:26   ID: S:DzWdKH

ホントにいつ見てもさぁいこぉだねぇ!!!
今後さらに期待!!!

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