三葉ムツミ「トッキー、勝負だよ!」 (144)

こんばんは
トッキー編スタートです
よろしくお願いします
すみませんが年末で遅筆になると思います

以前書いたものを載せときます↓

天草「津田、目に見えるものが真実とは限らないぞ。」(畑さん編)
天草「津田、目に見えるものが真実とは限らないぞ。」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1413561927/l50)

津田「神様お願いです・・萩村を助けてください」(スズ編)
津田「神様お願いです・・萩村を助けてください」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413900352/)

津田タカトシ「お姉ちゃん、相談があります」(ウオミー編)
津田タカトシ「お姉ちゃん、相談があります」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416927970/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418139775

「ったく...試合始まっちまうじゃねーか!」

広大なスタジアムの中を走りまわる。
チケットだけ渡して席で待ち合わせとかにするんじゃなかったと少し後悔する。
まさかまた迷うなんて...

「ハァハァ...くそっ!」

息が上がり、壁にもたれかかる。
そういえばもう走り込みなんて5年はやってない。


「あいつはもう着いてるな...」

だいたい、入学式の日に出席番号順で座らせるのが悪いんだ。
そのせいで、あいつに声をかけられて...

「...まぁ、悪いことばっかじゃなかったけどな...」

親友と出会った日のことを思い出す。
あれから8年が経ってるっていうのに、昨日のことみたいに思い出す。
まあ、今日の夜久々に会えるだろ。津田コトミに。

...試合を観戦できるかはわからないが。

******************************


コトミ「トッキー、私生徒会室行くから」

時  「ああ、私は部活だから」

コトミ「...一人でたどり着ける?」

時  「バカにすんじゃねーよ!」

コトミ「またまたーそういって昨日もカフェテラスで立ち尽くしてたじゃん」

時  「うるせー!」

コトミは変な奴だ。
私は喋るのが苦手だ。
考えてることを表現するのがめんどくせぇ。
だから言葉が荒っぽくなって、みんな私を避ける。
でもこいつはそこからさらに突っ込んできやがる。
おせっかいな奴だ。


コトミ「というわけで、トッキーを連れてきました!」

時  「どういうわけだよ!私は部活行くんだよ!!」

天草 「コトミよ、時に悪いだろう」

アリア「そうだよーみんなで乱○パーティーするのはまた今度って言ったじゃない」

萩村 「私は一度も言った覚えはありません」

天草 「しかし時よ、相変わらず制服の着方がなっとらん!だいたい...」

津田 「あー会長俺から言っときますから、コトミに任せるとまた何するかわからないんで俺が時さんを送ってきます。」

天草 「む...そうか」

津田 「じゃあ行ってきます」

コトミ「タカ兄ートッキーは強いから送り狼は難しいよー」

津田 「黙れ小娘」


津田 「はぁ...」

時  「...」

津田 「時さんもさ、ちゃんと言えば会長も納得すると思うよ」

時  「...何が?」

津田 「網にひっかけてボタン取れちゃったんでしょ?コトミに聞いたから」

時  「アイツ...」

津田 「まあ、いつもあんな妹と一緒にいてくれて兄としては感謝してるよ」

時  「...別に」


時  「...なんつーか、あんたも大変だな」

津田 「分かってくれるだけですげえ嬉しいよ」

時  「あのメンツの中で私は生きていけない」

津田 「俺も半分くらい生きてないけどね」

津田 「でも正直言うと」

時  「ん?」

津田 「君みたいな(ツッコミの)子に生徒会入ってほしかったんだけどね」

時  「無理...」

津田 「だよねー」


時  「...じゃあここで」

津田 「うん、部活頑張ってね。三葉から期待の星だって聞いてるよ」

時  「そんなんじゃねえよ」

津田 「じゃ」

時  「あ...」
「どうもありがとうございました」

津田 「うん」

津田 (ほんと基本的にいい子なんだよな)

ムツミ「トッキー遅かったねー」

時  「...」

ムツミ「昨日、服忘れて道着で帰ったよね?」

津田 (やっぱりドジッ子)

******

夏。

コトミ「トッキーどうしたの?」

時  「・・・髪留めなくした・・」

コトミ「プールの中に落としちゃったんじゃない?」

時  「・・探したんだけどな・・」

コトミ「じゃあ落し物で届けられてるかもよ?」

時  「・・そうだな」

***

コトミ「すいませーん!あ・タカ兄!」

津田 「ん?どうした?」

コトミ「トッキーが髪留め落としちゃったんだってー届いてない?」

津田 「あー・・コレかな?」

時  「あ・・それです」

津田 「ハハ、よかった。はいどうぞ」

時  「・・すいません・・あ」

ガチャン

津田 「うわっ!!ご・・ゴメン!!」

時  「あ・・イヤ私のせいです。大丈夫です」

津田 「いやゴメン・・弁償するよ」

時  「ホントに大丈夫ですから」

津田 「・・・」

・・・

天草 「どうした?」

津田 「いや、実は時さんの・・・」

天草 「なんと!トッキーを傷物に!!」

津田 「ボリューム、ミュートで!!」


***

一年教室にて

津田 「あ、時さんいますか?」

一年女子生徒「あ・・生徒会副会長・・!時さんですか?」

津田 「ハイ、すいませんが呼んでもらえます?」

一年女子生徒「はっハイ!・・・・時さん!」

***

時  「えと・・何か用っすか?」

津田 「あ、時さん。コレ」

時  「?」

津田 「この前のお詫び。同じの探したんだけどなくて、似たようなの選んだんだけど・・コレでいいかな?」

時  「あ・・・いや・・別に大丈夫だったんですけど・・」

津田 「イヤ、そういう訳にはいかないよ」

時  「・・スイマセン・・・ありがとうございます」

津田 「じゃあ、俺は戻るんで。いつもコトミの相手してくれてありがとねー」

時  「・・お疲れっす」


一年女子「時さん、副会長と知り合いなの?!」

時   「いや・・コトミ経由で知ってるだけだよ」

一年女子「・・って!なんで髪留めプレゼントされたの?!」

時   「いやちげーし。この前プールの時・・」

一年女子「えー?!いいなー!!副会長人気あるんだよー?!私も仲良くなりたいのにー!!」

時   「・・・・めんどくせぇ・・」

その後しばらく時は副会長とどんな仲なのかクラスメート(主に女子)に詰め寄られた。

***
時  「はぁ・・・」

コトミ「トッキーってばいつの間にタカ兄と懇ろに!」

時  「・・・お前までそんなこと言うのかよ」

コトミ「あはは・・タカ兄ってさー昔からあんな感じなんだよねー・・だからいつもフラグ立てまくりなのに本人は気付いてないんだよ」

時  「・・まあ、いい人だよな。コトミの兄貴とは思えないな」

コトミ「えー・・・はッ!!それってやっぱりタカ兄と私は血が繋がってないという伏線・・!!!」

時  「ねーよ」

コトミ「はー・・落ち着くなー」

時  「?」

コトミ「トッキーってさ、タカ兄と同じタイミングでツッコんでくれるんだよねー」

時  (副会長・・苦労してんだな・・)


数日後。放課後。

ムツミ「じゃあ今日の練習は終わりです!礼!!」

柔道部一同「ありがとうございましたー!!」

***

時  「ふぅ・・・」

ムツミ「・・・トッキーお疲れ様」

時  「あ部長。お疲れ様っす」

ムツミ「・・・」

時  「?」

ムツミ「・・あのさトッキー・・トッキーってさ・・その・・タカトシ君と仲良いの?」

時  「はぁー・・部長までそんなこと言うんすか?・・実はこの前・・・・・」

・・・

ムツミ「なんだ、そういう事だったんだ!いやーなんかさー皆がウワサしてるからさー!!」

時  「いや・・副会長にも迷惑っすよ」

ムツミ「うん、そうだよねーあははー!!」

時  (部長も分かりやすい人だよな・・)


時  (しかし、私が悪いのに、貰ったままってのも義理がたたねぇ・・)

時  (・・・コトミの兄貴になんかお礼しないと・・)

・・・

時  「なあコトミ」

コトミ「どしたのトッキー」

時  「実はコトミの兄貴にさ・・・」

***

コトミ「タカ兄ー」

津田 「ん?」

コトミ「今週の土曜日あいてる?」

津田 「空いてるけど、何で?」

コトミ「ちょっと買い物付き合ってほしいんだけど、ダメ?」

津田 「えーそれって荷物持ちって意味だろー?」

コトミ「いーじゃん!可愛い妹の頼みだよー?!」

津田 「んー・・じゃあ今日から土曜まで晩飯お前が作るなら」

コトミ「げ」

津田 「嫌ならやめる」

コトミ「はー・・しょうがないなーこれもトッキーのためだ、その条件、飲もう!」

津田 「?」

土曜日

津田 「コトミー行くんじゃないのか?」

コトミ「うん、行こうか」

津田 「で、どこ行くんだ?」

コトミ「○○のショッピングモールだって」

津田 「・・だって?」

コトミ「あー・・まあいいから早く行こう!」

津田 「??」

****

ショッピングモールにて

コトミ「えーっと・・」

津田 「で・何から買うんだ?」

コトミ「ちょっと待って・・・あ、いた。トッキー!!」

時  「・・・わざわざスイマセン副会長」

津田 「え?・・え?」

時  「・・・コトミ・・お前まさか何も言ってないのか?」

津田 「え・・どういうこと??」

コトミ「・・・というわけで、トッキーは髪留めのお礼にタカ兄とデートしてくれるってことだよー!!」

時  「だからちげーって言ってんだろーが!!・・・髪留め壊したのは私のせいなのに買ってもらっちゃったんでお礼がしたいんですが・・男にモノ買ったことないから副会長に直接選んでもらおうかと思ったんです」

津田 「いや・・そんなに気を遣わなくていいのに・・壊したままだと俺が気分悪いから買っただけだしさ」

時  「・・・いや・・マジでスイマセン。こんな面倒なことになって・・」

津田 「いやいや・・・てゆーかコトミ!」

コトミ「ん?」

津田 「時さんの迷惑考えろよ!わざわざ俺に嘘までついて!!」

コトミ「だってそうしなきゃタカ兄“悪いから”って言って来ないでしょー?」

津田 「・・・まあそうかもしれないけど」

コトミ「かわいい後輩の好意は素直に受け取るものだよ?」

津田 「はぁ・・ホントスイマセン時さん、じゃあちゃっちゃと選びますから」

時  「いや・・こちらこそすいませんです」

コトミ「よし、じゃあ私は帰るね。泊まりになるなら連絡してねー」

時・津田「「ねーよ!!」」

津田 「てかお前帰るの?」

コトミ「うん、せっかくのデート邪魔するほど野暮じゃないよ!」

時  「ちげーって言ってんだろ!!」

コトミ「ふふ・・トッキー照れなくていいよー・・じゃっ!!」

・・・

時  「・・・」
津田 「・・・」


津田 「えーっと・・行こうか?」

時  「・・うす・・ほんとスイマセン」

今日は寝ます
おやすみなさい

先に言っておきますが、たぶん役員共のキャラじゃない人を出します

役員共のキャラじゃない人って、別の氏家作品キャラなのか、まったく別作者のキャラなのか、それともオリキャラとかいろいろあるけど、どうなんだろう。
あと過去作品全部色変わっていてワロタ

>>21
たぶんぜんぜん別作品ですね
内容は、自分が書いてて飽きちゃうので毎回意識的に変えてます
今回もたぶんそうなります

ではすこし投稿します


津田 「じゃあここで選ぶよ、なんか色々あるし」

時  「はい、決まったら言ってください」

津田 「うん、予算は?」

時  「いや・・大丈夫っす」

津田 「でも一万円のものとか持ってきたら困るでしょ?」

時  「・・・」

津田 「じゃあ俺が買った髪留めくらいのものにするね」

時  「・・はい。すいません」


***

津田 「・・よし。このパスケースにしようかな」

津田 「・・・あれ?」

津田 「時さんいないな・・」

津田 「・・電話するか・・・って時さんの番号知らないし」

***

時  「・・・ヤバい・・やっちまった・・・」

時  「副会長の電話番号分からん・・・」


コトミ「ん?」

ヴー・・・ヴー・・・

コトミ「タカ兄から電話?」

・・・ヴー・・・ヴー・・・

コトミ「今度はトッキーから電話・・」

・・ヴー・・・ヴー・・

コトミ「またタカ兄」

・・・・ヴー・・・ヴー・・

コトミ「またトッキー・・・」

コトミ「・・・」


コトミ「気が合う二人だなー☆」

 ちゅどーん!!

コトミ「あー・・また死んじゃった・・この面苦手だなー・・・こんてにゅーっと!」

ヴー・・・ヴー・・ヴー・・・ヴー・・ヴー・・・ヴー・・・・・・


津田 「はぁ・・・しゃーない、地道に探すか・・」

***

時  「くそっ・・なんで出ねーんだ・・」

***

津田 「とりあえず・・さっき最後に見た店の入り口に戻ろう」

津田 「ん・・トイレがある・・もしかしたらあの後トイレ行ったのか・・」

津田 「で・・出てきてドジっ子の時さんは、間違えて反対側に出る」

津田 「すると目の前には服屋と雑貨屋・・こういう系の服屋に時さんは行かない」

津田 「雑貨屋に入ってここじゃないと気づく」

津田 「でさらに反対側に」

・・・

津田 「あ・・発見」

津田 「時さん」

時  「!」

津田 「はは・・見つけた」

時  「・・・・すいません」

津田 「とりあえずもう昼だしなんか食べない?」

時  「・・ハイ」

ファーストフードに入りました。

 もぐもぐ
津田 「・・・」

 もぐもぐ
時  「・・・なんです?」

津田 「時さんって・・・ドジっ子だよね」

時  「ぶはっ!!・・げほっ・・げほっ・・」

津田 「ご・・ゴメン冗談」

時  「・・・・・方向音痴なんです」

津田 「うん・・・まあいいんだけどさ」

時  「・・今日は完全に私が悪いです・・スイマセン」

津田 「いや、そうじゃなくてさ」

時  「?」

津田 「時さんってさ、人と話すの苦手?」

時  「え」

津田 「コトミから時さんのこと色々と聞くし、よく会長とかに注意されてるでしょ?」

時  「・・・」

津田 「分からない事とか、自分の事情とかあったら、ちゃんと言った方がいいよ。確かにちょっと面倒だけどさ」

時  「・・・・・そうっすね」

津田 「困ったときは助けを求めれば、意外と皆ちゃんと力になってくれるものだよ。だから思ってることは言った方がいいって」

時  「・・・はい・・・やっぱり副会長はコトミの兄貴ですね」

津田 「え?」

時  「コトミにも似たようなこと言われたことあります」

津田 「はは・・」

時  「ふふ・・でもさすがに副会長のが説得力ありますね」

津田 「でしょ・・ははは」

時  「・・ふふふっ」

津田 「・・・・こんなこと言われると嫌かもしれないケド」

時  「?」

津田 「時さんって、本来はすごくいい子なのに口下手だから損してることたくさんあると思うよ」

時  「な・・何言ってるんすか・・」

津田 「いや、たぶん俺もコトミもそれが何となくわかるから、ついおせっかい言っちゃうんだよ」

時  「・・・そうっすか・・」

津田 「さて、そろそろ行こうか」

時  「あ・・ハイ」

津田 「ここおごってもらっちゃったから、髪留めの件はこれでチャラということで」

時  「ハイ」

津田 「あ・・それと携帯番号教えといてくれると助かります」

時  「うす」


また数日後。

時  「・・・コトミいるかと思って生徒会室行ったらまた部室行く道が分からなくなった・・・」

時  「・・・」

時  「はぁ・・生徒会室戻って聞くか・・・」

時  「でも、副会長もコトミもいなかったから聞きづれぇな・・・」

時  「・・・ん?」


津田の声『ダメです』

時  「ん・・新聞部から副会長の声がする・・」



畑  『えー・・せっかくつかんだスクープなのにぃー』

津田 『ダメです。事実無根ですから』

畑  『そんなにムキになるなんてやっぱり時さんのこと気になってんのー?』

時  「?!」

津田 『違いますよ。よく考えてください、俺とか生徒会のメンバーいじるんなら構いませんが、一年生でそういう耐性のない子をいじるのはダメだって言ってるんです』

畑  『アラ耐性無いの?私はてっきり津田氏と同じタイプかと』

津田 『いや確かにツッコミですけど』

畑  『でしょー?』

津田 『・・時さんは俺らよりずっと純粋な子ですよ。会長とか畑さんのエロボケに対する反応見ればわかるでしょ』

畑  『うーん』

津田 『コトミつながりで時さんのことはある程度知ってるんですが、彼女は本来はツッコミドジっ子じゃないですよ』

畑  『ほう』

津田 『自分の思ってることを言葉で表現するのが苦手なだけです。俺だって生徒会入って全校生徒の前で喋ったりする機会無かったら彼女と同じでしたよ』

畑  『そうかしらー』

津田 『なんか無理やり部活入らされた経緯も俺と似てますし・・』

畑  『アラ、じゃあ時さんもMかしら』

津田 『そーいう話してんじゃねぇ』

津田 『・・とにかく畑さんが盗撮した写真はデートとかでなく、さっき説明した通りです。捏造して面白おかしく書けば一般生徒は楽しんで読むかもしれませんが、書かれた時さんは嫌な思いをしますよ』

畑  『・・・』

津田 『それで時さんがクラスになじめなくなったらどうするんですか』

畑  『・・まあ確かに今回は津田副会長の言うと通りかもね』

津田 『・・・はい』

畑  『今回の記事はは没にしましょう』

津田 『ありがとうございます』


時  「・・・・」

***

時  「・・・うす」

ムツミ「お疲れトッキー!もう準備運動始まるよ!着替えて着替えて!!」

時  「・・・ハイ」

**

チリ 「・・・トッキー大丈夫?今日なんか心ここに非ずだけど」

時  「だ・・大丈夫っす!もう一回お願いします!」

チリ 「おっけー!・・て言うかたぶんトッキーのがアタシより強いからしんどいけどね・・階級も一個上だし・・」

ムツミ「・・・」

**

ムツミ「トッキー」

時  「・・はっ・・ハイ!」

ムツミ「・・やっぱりボーっとしてるね。危ないからトッキーは今日は乱取りは終わり」

時  「・・・スイマセン」

ムツミ「走り込みしてくる?」

時  「そうします」

ムツミ「校内でいいよ(迷うから)」

時  「うっす」

タッタッタッタ・・
時  「・・・・」

タッタッタッタ・・
時  「・・・・」

タッタッタッタ・・
時  「・・・副会長は・・」

タッタッタッタ・・
時  「・・・さすが副会長だな・・」

タッタッタッタ・・
時  「・・・ちっ・・」

タッタッタッタ・・
時  「私としたことが・・・今は集中だ・・大会だって近いのに・・」

タッタッタッタ・・
時  「・・・・・・・・」

タッタッタッタ・・

今日はここまでです

すみませんが明日は更新できないかもです
おやすみなさい

レスがついてるかもしれないので過去作品のスレもチェックしよう
しないならHTML化依頼を出そう

>>45
承知しました

意外と早く仕事終わりました
では、続き行きます

***

ムツミ「タカトシ君」

津田 「ん・何?三葉」

ムツミ「実はちょっとお願いがあってさ・・・」

津田 「ん?」


・・・

津田 「会長」

天草 「ん、どうした、津田」

津田 「相談したいことがあるんですが」

天草 「なんだ?」

津田 「実は三葉から柔道部のサポート的なことを頼まれまして・・・」

天草 「うん?」

津田 「なんでも秋の大会が近いそうなんですが、いまだマネージャーのいないが居ないため色々と手が足りないみたいで・・」

天草 「ほう」

津田 「大会までの間、時間があるときまたマネージャーみたいな形で手伝おうと思うんですが」

天草 「津田がか?」

津田 「生徒会の仕事もちゃんとやるんで・・・やってもいいですか?」

天草 「・・・何を言うんだ津田は」

津田 「あー・・やっぱだめですかね・・?」

天草 「そうじゃない。生徒が困っていたら手助けをするのは生徒会の仕事だ」

津田 「!・・・それじゃあ」

天草 「生徒会みんなで手伝おうじゃないか!」

津田 「ありがとうございます!」

***

ムツミ「じゃあ休憩ー!!」

アリア「みんなお疲れー」

スズ 「ちゃんと水分摂取してください。お水です」

ムツミ「会長、本当にありがとうございます!」

天草 「いいんだ。前にマネージャーやった時も楽しかったしな。大会ではいい成績を残してくれ!」

ムツミ「はい!」

津田 「タオルここ置いとくよー」

ムツミ「あ、ありがとう!タカトシ君!」

津田 「うん。しかし間近で見るとやっぱりすごいね。単純に力だけじゃないってのが何となくわかるよ」

ムツミ「うん!柔道は力だけじゃないから面白いんだよ!」

***

時  「ふう・・・」

津田 「時さん」

時  「あ・・どうも」

津田 「水飲んだ方がいいよ。すごい汗だし。はい、タオル」

時  「あ・・・ハイ・・ありがとうございます」

津田 「うん」



ムツミ「タカトシ君」

津田 「ん?」

ムツミ「最近トッキー調子悪そうなんだよね」

津田 「え?そうなの?俺には普通によく動いてるように見えたけど・・」

ムツミ「うーん・・なんて言うか、ちょっとぼーっとしているって言うか・・」

津田 「うーん」

ムツミ「トッキーってコトミちゃんと仲良かったよね?コトミちゃんなんか言ってなかった?」

津田 「え、えーっと・・・」

・・・

コトミ『柔道ってさーやっぱり体柔らかくなるのかなー?』
津田 『まあそうなんじゃない?』
コトミ『じゃあトッキーはある意味では毎日夜の花嫁修業をしてるのかー!』

・・・

津田 「何も言ってませんでした」

ムツミ「うーん・・・なんか集中できてない気がするんだけどなー・・・」

津田 「・・・三葉は部員思いだね」

ムツミ「うん!みんな大切な仲間だからね!!」

津田 「うん」

ムツミ「それにトッキーは特に期待の新人だから!」

津田 「やっぱり時さんて強いんだ?」

ムツミ「入部して早々、個人戦優勝なんて普通はできないよー」

津田 「確かにそうだ」

ムツミ「あ・・じゃあそろそろ練習再開するね」

津田 「うん。時さんのことはコトミ経由で聞いてみるよ」

ムツミ「ありがとう!」


******

その夜

コトミ「タカ兄ー」

津田 「んー?」

コトミ「今度さまたトッキーの家に遊びに行こうと思うんだけど」

津田 「・・・」

コトミ「ん?」

津田 「・・いつもお前が行ってばっかりで迷惑じゃないのか?」

コトミ「そーかなー?」

津田 「たまにはウチに呼べば?」

コトミ「あっそれもいいね・・・・ってまさかタカ兄、本気でトッキーを狙ってんの?!」

津田 「いや、そういう訳じゃないから安心しろ」

コトミ「まさかトッキーをお姉ちゃんと呼ぶ日が来るとは!」

津田 「話を聞かんかい!!」

・・・

コトミ「じゃあ今週の土曜トッキー来るから」

津田 「うん」

コトミ「・・・でもホントになんでトッキー呼ぶなんて言ったの?」

津田 「・・いや実はさ、三葉が言うには最近時さん練習集中できてないらしいんだよ。で、なんか悩みでもあるのかなーって思ってさ」

コトミ「ふーん・・確かに言われてみればぼーっとしてるかも」

津田 「やっぱりそうか?」

コトミ「この前も空のお弁当箱持ってきてたし」

津田 「・・それは素なんじゃないかな?」

土曜日

コトミ「約束10時だったんだけど来ないなー」

津田 「・・・ああ」

コトミ「?」

Pi pi pi ・・・trrrr
津田 「もしもし」

時  『あ・・えっと・・・』

津田 「何が見えます?」

時  『え?』

津田 「いま、目の前に何が見えます?」

時  『えっと・・・成城●井が』

津田 「うん、じゃあ迎えに行くからそこにいてください」

時  『・・・・・ハイ』

ガチャ


津田 「コトミ」

コトミ「ん?」

津田 「時さん迷ってるみたいだから迎えに行ってくる」

コトミ「トッキーのことよく理解してるね」

・・・

津田 「時さん」

時  「・・・スイマセン・・津田センパイ」

津田 「この辺道ゴチャゴチャしてるからねー・・じゃあ行こうか」

時  「・・ハイ」

津田 「時さん」

時  「は・・はい」

津田 「コトミは時さん家にお邪魔した時、迷惑かけてない?」

時  「いや・・全然そんなことないです」

津田 「そう?ならよかった」

時  「あ、でもアイツは勝手に人のアルバムとか覗きます」

津田 「はぁー・・・きつく言っときます」

時  「コトミはやっぱり家でもそんな感じですか?」

津田 「・・・あいつは俺がいない時に俺の部屋に勝手に入ります」

時  「あー・・」

津田 「でエロ本がないか日夜探してるみたい」

時  「・・・ふふ」

津田 「でもって見つからないからって、逆に俺の部屋に自分のエロ本を置いていきます」

時  「はははっ・・・ひでぇ笑」

津田 「でしょー?」

時  「津田センパイも大変ですね学校でも家でもそんなんで・・ホント尊敬しますよ」

津田 「ははは・・もう慣れてしまったよ」

津田 (なんだ・・時さんそんなに悩みとかある感じじゃないな・・三葉の思い過ごしかな?)

ガチャ
津田 「ただいまー」
時  「・・おじゃまします」

コトミ「おートッキー!また人生という名の道に迷ったの?」

時  「お前と一緒にするな」

***

コトミ「じゃー私たち部屋でゲームするから!」

時  「すいませんコトミの部屋行きます」

津田 「うん」

***

コトミ「喰らえッ!!」

時  「ふっ・・甘いな。それっ!」

コトミ「うわっあぶなっ!」

時  「ちっ・・外したか」

コトミ「油断したね、トッキー」

時  「なにッ!」
ちゅどーん!

時  「くそっ・・負けた」

コトミ「ふふっ・・二次元の世界で私に勝とうなんざ100年早いわ・・・!」

時  「じゃあ現実世界で懲らしめてやろうか?」

コトミ「・・・」

時  「・・ん?」

コトミ「・・・トッキー」

時  「ん?」

コトミ「なんかテンション高いね」

時  「・・・・そうか?」

コトミ「うん。何かいい事あった?」

時  「いや・・別に」

コトミ「ふーん・・・」

時  「・・なんだよ」

コトミ「トッキーってさ」

時  「ん?」

コトミ「髪留めそれしか持ってなかったっけ?」

時  「え?いやそんなことなけど?」

コトミ「最近そればっかつけてるよね」

時  「いや・・・たまたまだろ」

コトミ「ふーん」

時  「・・・」

コンコン

時 びくっ

コトミ「なにー?」

津田 「昼飯できたぞー」

コトミ「さんきゅー今行くねー」

コトミ「行こうか、トッキー」

時  「・・ああ」

***

津田 「お口に合うかどうか」

コトミ「うーん、もうちょっと肉多めがいいかな」

津田 「お前は黙って食え」

コトミ「ひどーい」

時  「おいしいです・・スイマセン作ってもらっちゃって」

津田 「別に気にしないで。親居ない時は交代で作るはずなのに、なぜかやたらと俺のが作る機会多いから」

コトミ「えー偶然だよー」

時  「コトミ・・お前ホント裏表ないな・・悪い意味で」

コトミ「それは褒め言葉?」

津田 「んなわけあるか!」

時  「ところで津田センパイ」

津田 「ん?」

時  「なんで最近生徒会の人は柔道部のマネージャーみたいなことしてるんですか?」

津田 「あれ?三葉から聞いてない?大会まで手伝ってくれって頼まれたんだよ」

時  「・・それって生徒会に依頼があったとか?」

津田 「いや、最初は俺個人に依頼が来たんだけど、会長に相談したらみんなでやろうってことになってね」

時  「・・・信頼されてるんですね」

津田 「いや、実は以前時さんが入部する前にも同じ様なことがあってね。もう慣れっこだよ」

時  「・・そういうもんですか・・大変ですね生徒会は」

津田 「いやー・・実をいうとそんなことよりもツッコミの方が大変かな」

時  「分かります」

コトミ「なんの話?」

津田 「4分の1くらいはお前の話」

コトミ「にしてもさ、トッキーって最近よく喋るようになったよね」

時  「な・・なに言ってんだ」

コトミ「いやホントに。だってクラスでも結構人気者じゃん」

津田 「え?そうなの?」

時  「別に・・そんなことないっす・・」

コトミ「柔道の大会で優勝してから人気だよねー(主に女子に)」

時  「・・・」

津田 「そっか。よかった」ニッコリ

時  「・・・・・・//」

コトミ「・・・」

津田 「実はさ、三葉にちょっと聞かれたんだよ」

時  「え?」

津田 「最近、時さん調子悪いって」

時  「・・・」

津田 「なんかクラスとかで嫌なことでもあったのかと思った・・ほら、時さん勘違いされやすいし」

時  「・・・いや、大丈夫っす」

津田 「うん」

時  「・・前にセンパイに・・アドバイスされたようにしてるつもりです・・」

津田 「・・・そっか」

コトミ「え?・・え?・・なんの話?」

時  「あ、そういえば今日は午後から練習するから、そろそろ帰るよ」

コトミ「え?そうなの?」

時  「ああ、いってなかったっけ?」

コトミ「あー・・聞いたような・・」

時  「じゃあそういう訳で・・洗い物だけしてきます」

津田 「あ・いいよそんなこと」

時  「いや、悪いっす」

津田 「あーコトミも見習ってくれたらなー」

コトミ「えー」

***

時  「じゃあお邪魔しました」
ガチャリ

・・・

コトミ「・・・タカ兄」

津田 「ん?」

コトミ「トッキー・・ちゃんと帰れるかな・・?」

津田 「あー・・・まあ迷ったら電話来るよ」

コトミ「そうかなあ・・」

津田 「電話するように言ったから」

コトミ「ふーん・・・」

コトミ「あ、それとさ」

津田 「?」

コトミ「トッキーの悩み何となくわかったよ」

津田 「え?!無いって言ってなかった?」

コトミ「・・タカ兄もまだまだだね」

津田 「え・・・ホントになんかあるんならお前が相談とか乗ってやれよ?」

コトミ「うーん・・私じゃあ無理かなー」

津田 「え・・?」

コトミ「とりあえず私は傍観しているよ。“観測者”としてね」

津田 「帰ってこい」

Pi pi pi pi pi・・・
コトミ「・・・」

津田 「何してんだ?」

コトミ「いやちょっとトッキーに応援メールを」

津田 「?」

コトミ「よし、送信!」
Pi!


ヴーン・・・ヴーン・・

津田・コトミ「・・・・」

津田 「俺・・学校まで行って届けてくる・・・」

コトミ「うん・・それがいいかもね・・・」

柔道場。

時  「あ・・お疲れ様です部長」

三葉 「お疲れートッキー!」

時  「・・・まだ誰も来てないんすね」

三葉 「うん。そーみたい」

時  「・・・」

三葉 「・・・」

三葉 「ねえ、トッキー」

時  「ハイ」

三葉 「ちょっと私と練習試合してみようか?」

時  「・・・ハイ」

三葉 「じゃあ着替えて準備運動してー」

時  「うす」


***

三葉 「じゃあ5分1本勝負ね」

時  「ハイ」

三葉 「本気できてね」

時  「ハイ!」

三葉 「はじめっ!」

がしっ!!


・・・

ばしーん!

時  「ぐっ!!」

三葉 「はぁ・・はぁ・・今のは一本かな?」

時  「はぁっ・・はぁっ・・そうっすね・・負けました」

三葉 「はぁ・・はぁ・・」

時  「ふー・・・」

三葉 「やっぱり強いねトッキーは」

時  「・・部長のがよっぽど強いっす」

三葉 「・・うん、心ここに非ずのトッキーには負けないかな」

時  「・・・そう見えますか?」

三葉 「うん・・・トッキーさ・・」

コンコン
津田 『失礼します』

三葉・時「!」

津田 「あ・時さん」

時  「えっ・・私?」

津田 「これ、忘れ物」

時  「えっ・・!あ・・スイマセンっ・・・//」

津田 「うんよかった。ここに居て」

三葉 「・・・」


津田 「あれ三葉、今日は二人で練習なの?」

ムツミ「ううん、違うよ!15時からの練習だったんだけどトッキーが早く来たから一緒にやってたんだ!」

津田 「そっか。がんばれよ。二人とも、応援してるから」

三葉 「うん!」

時  「・・うす」

津田 「じゃあ俺はこれで」

三葉 「いつもありがとー!」

津田 「うん」
ガラガラー

時  「・・・」

ムツミ「・・・相変わらずだなートッキーは!」

時  「す・・スイマセン」

ムツミ「私も人の事言えないケドね!」

時  「そうっすか?」

ムツミ「同じだよ、トッキーと私は」

時  「え?」

ムツミ「同じ悩み持ってるよ」

時  「・・・・そうっすか」

ムツミ「・・大会近いからさ、今は一緒に頑張ろう」

時  「・・・うす」

ムツミ「また二人で優勝しよう!」

時  「・・・うす!」

ムツミ「がんばるよ!」

時  「ハイ!!」


すぐ後に、他の部員たちも来て練習が始まった。
部長のおかげで私は集中力を取り戻した。
・・・そして大会当日の日が来た。

48kg級優勝、私立桜才学園、三葉!

52kg級優勝、私立桜才学園、時!

生徒会役員共「おおおー!!」


ムツミ「やったねトッキー!」

時  「・・部長のおかげっす」

ムツミ「・・今日この後時間ある?」

時  「え?」

ムツミ「少しだけ二人で話さない?」

時  「・・・ハイ」


天草 「やったな!三葉、時!!!」

ムツミ「ハイ!皆さんのおかげで勝つことができました!!」

時  「・・応援ありがとうございました」

夕方。桜才学園柔道場。


ガラガラ・・

時  「・・・お疲れ様です」

ムツミ「うん、お疲れトッキー」

時  「ハイ」

ムツミ「お互い優勝できてよかったね!」

時  「はい・・部長のおかげです」

ムツミ「・・・トッキーさ・・変わったよね」

時  「・・・そうっすか?」

ムツミ「うん。自分からみんなと話すようになった」

時  「・・・」

ムツミ「すごくいいよ。今のトッキー!」

時  「・・ありがとうございます」

ムツミ「まだ先の話になるけどね、次の部長はトッキーだからね」

時  「気が・・早すぎます」

ムツミ「・・うん、そうだね」

時  「・・・です」

ムツミ「・・だからその前にね、私に勝てるようになってね」


時  「・・・それは難しいです」

ムツミ「・・・入部の時みたいに、柔道だけじゃなくてもいいよ」

時  「・・え?」

ムツミ「打撃も、関節技もOKだよ」

時  「え?・・・え?」

ムツミ「私もなんでも使う。柔道だけじゃなく」

時  「・・・部長」

ムツミ「・・・たぶんね」

時  「・・・」

ムツミ「・・私たちは決着をつけなきゃいけないんだと思う」

時  「・・・」

ムツミ「・・・私たち、ライバルだよね?」

時  「・・・・・ハイ・・・・・たぶんそうっす」

ムツミ「・・お互いの全力を尽くして戦おう」

時  「・・・・・・・ハイ」

ムツミ「1か月後、ココで」

時  「・・・ハイ」

ムツミ「・・・トッキー、勝負だよ!!」

というわけで本日は終わりです
おやすみなさい

さて、いきますよ


***

タッタッタッタ・・・
時  「・・・」

タッタッタッタ・・・
時  「・・・」

タッタッタッタ・・・
時  (私は・・・なんで走ってるんだ・・?)

タッタッタッタ・・・
時  (いや・・・不安なんだ・・・体を動かしてないと・・・)

タッタッタッタ・・・
時  (勝てるのか・・・いや、勝つ可能性はあるのか・・・?)

タッタッタッタ・・・
時  (部長は天才的センスを持っている・・・)

タッタッタッタ・・・
時  (気を抜けば・・・出足払いで一瞬で砂だ・・・)

タッタッタッタ・・・
時  (・・・でも勝ちたい・・)

タッタッタッタ・・・
時  (勝つためには・・・何をすればいいんだ・・・)


時  「はぁっ・・・はぁっ・・・」

時  「夜の公園か・・・」

時  「・・・・はっ!」

スッ・・・バシュ・・・ザッ・・・

時  「・・・はぁ・・・はぁ・・・空手の型も・・久しぶりだな・・」

・・・初めて部長と戦った日のことを思い出す。
私の正拳が空を打った。
気づいたら部長は私の手を巻き込んで極められていた。
部長の一撃は重い・・・それでいて動きはシャープだ。

時  (何をすればいいんだ・・何を・・・)

汗を拭きながらその場に立ち尽くした。

時  「ん?」

ベンチに人影がある。
・・・老人が座っている・・・いや座ったまま寝ている。
まだ暑いと言っても、もう秋だ。
このまま放っておいたら風邪をひいてしまうな・・

時  「・・・おい、爺ちゃん」

老人 「ん・・・おぅ・・」

時  「もう夜だぞ・・風邪ひくから帰った方がいい」

老人 「ああ・・・嬢ちゃんアリガトな」

時  「・・・」

小奇麗な和服に茶色い縁の大きな眼鏡。
よく見ると品のいい爺さんだった。

老人 「・・・最近、退屈での。ボーっとしとったら寝てたわい」

時  「・・そうかい」

老人 「さて・・帰るとするかの・・時に嬢ちゃん」

時  「?」

老人 「柔道かい?体が硬いぜぇ」

時  「なっ?!」

起きてたのか?!
いや・・それ以前に、空手の型やってたんだぞ私は・・・

老人 「重心がな・・柔道になっとる」

時  「?!」

老人 「しかも空手と柔道、どっちも硬い動きでやってるモンだから隙だらけじゃの」

時  「あ・・アンタは?!」

老人 「ワシもちょっとだけやっとるんじゃよ、武術♡」

時  「・・・あの」

老人 「ん?」

時  「私に・・教えてください!」

老人 「・・おなごは強くならんでエエ」

時  「強くなりたいんです!!強くなって・・勝ちたいんです!!」

老人 「ふゥム・・・」

老人 「マ・・先に言っちまったはワシだし・・・明日ここに来い」

・・・そう言って老人は私に地図を渡した。

・・・・・たどり着く自身ねェ・・・


次の日

時  「案の定迷った・・・」

時  「はぁ・・仕方ねぇ・・・誰かに聞こう・・・ん?」

ちょうど目の前に警官が数人いた。
先頭には背広を着た大柄な男性がいる。
この人も警察か?

とにかく私は彼らに地図を見せて道を尋ねた。

警官 「ん・・君も先生の生徒さんか。私たちもちょうど行くところだ。一緒に行こうか」

時  「?は、ハイ」

・・・先生?
じゃあやっぱり昨日の爺さんは何かの武術の先生なのか?
しかも警官に教えるって・・・ただモノじゃねーな・・・

警官 「さ、着いたよ」

背広 「お邪魔しまァーす!」

ガラガラ

老人 「オッ園田君、御無沙汰じゃったな」

背広 「ははっ今日は勉強させてもらいますよ。部下もつれてきました」

警官達「よろしくお願いします!!」

時  「あ・・あの」

老人 「おーッ!来たか来たか。これは丁度エエわい」

背広(園田)「先生・・こちらの少女は?」

老人 「ハッハ!ワシの孫娘じゃッ」

園田 「なんと!」

老人 「・・冗談じゃよ。アンタらと同じ生徒じゃ」

園田 「なァーんだ・・ハハ」

老人 「で、嬢ちゃんや」

時  「は・・はい」

老人 「名前を聞くの忘れてたの」

時  「あっ・・時っす!」

老人 「ふむ・・ワシは渋川っちゅーもんじゃ。柔術を教え取る」


その後私は道場内で園田と言われていた大柄な男や屈強な警官たちが、
渋川という小柄な老人に簡単に投げ飛ばされる様子を目の当たりにした。

そして警官たちの稽古は終わったようで、彼らは帰って行った。

渋川 「さて、嬢ちゃん」

時  「はっ・・はい!」

渋川 「どうじゃったかの?ワシの柔術は」

時  「・・・言葉になりません・・・すごく滑らかで・・踊ってるみたいでした」

渋川 「カカッ!そーじゃろ!!」

時  「・・・」

渋川 「で、お前さんに足りないものは分かったか?」

時  「その・・柔軟さですか?」

渋川 「フム・・」

そういうと渋川先生は金魚鉢を持ってきた。

渋川 「ワシもな、柔道の出じゃ。だから柔道の弱点ちゅーもんは理解っとる」

時  「・・・はい」

渋川 「この金魚の動きをよーく見てみィ」

時  「えっ?」

渋川 「・・金魚が向きを変えるとき尾びれがどう翻る?」

時  「・・・」

渋川 「よく見るんじゃ・・そして動きを真似てみィ」

時  「・・・はい」

渋川 「今日の稽古はここまでじゃな」

時  「えっ?!」

**********

ムツミ「・・・トッキーは強くなった」

ムツミ「初めて戦ったときからは比べ物にならないくらい」

ムツミ「・・・」

ムツミ「トッキーの強さは・・」

ムツミ「・・・手の速さにある」

ムツミ「空手特有の直線的で重く伸びる手」

ムツミ「掴まったら私だって逃げるのは難しいかもしれない」

ムツミ「・・・でも」


ムツミ(・・・・勝たなきゃ!!)

・・・時との戦いをシミュレートしながら、ムツミの足はかなりの距離を歩いていた。
時と同じように、ムツミもまた脅威を感じていた。
気を抜けば勝てない。
それはどちらも同じだった。
しかも今回は、決着をつける戦い。
自分で言い出したことながら、重いプレッシャーを感じていた。

気付くと辺りは暗くなっていた。
都心の繁華街まで歩いてきてしまったムツミ。
そろそろ帰ろう。
・・・そう思った矢先であった。

ヤンキー1「ねー君高校生?」

ムツミ 「私?」

ヤンキー2「そうそう、俺らと遊ぼうよー」

気が付くと3人のヤンキーに囲まれていた。

ムツミ 「いや・・私もう帰るんで」

ヤンキー3「そんなこと言わないでさぁー」

ムツミ 「・・・」

ムツミの頭は冷静であった。
ああ、柔道ってこんな時に役立つなぁ・・
腕をつかんで来たら、そのまま引き込んで投げちゃおう
抱き着いてきそうになってら大外かなぁ・・

そんなことを考えながらムツミは重心を少し落とした。
その時だった。


??  「やめなよ」

ムツミ 「?!」

青年  「その子、帰るって言ってるんだから、無理に引き留めるのは良くない」

ヤンキー1「はぁー?コイツ何言っちゃってんの?」

ヤンキー2「コイツ、やっちまおうぜ!」

そういって一人のヤンキーが拳を振り上げようとしたとき・・・
既に、青年の拳がヤンキーの目の前1㎝のところで止まっていた

ヤンキー2「ひィッ!!」

ヤンキー3「てめッ!!」
そういって蹴りを入れようとした瞬間。
青年の体はヤンキー2をすり抜けて、ヤンキー3の上がった足を左手で持ち上げていた。

ヤンキー3「うわッ!!」

青年  「当てる気は無い・・・でも君らは街にいる資格は無い・・・帰りなよ」

ヤンキー達「くッ・・・くそッ」

・・・

青年  「・・・大丈夫だった?」

ムツミ 「・・・・」

青年  「あっ・・・ゴメン・・びっくりしたよね?」

青年の顔がさっきまでの鋭い眼光を失い、どこか子供っぽい光を湛えていた。

ムツミ 「あっ・・・あのっ!」

青年  「なに?」

ムツミ 「つっ・・・強いですね」

青年  「・・・」

ムツミ 「あれ?」

青年  「いや・・いきなりそう言われたの初めてで・・ちょっとびっくりしたかな」

ムツミ 「・・・あっ!助けてくれてありがとうございます!!」

青年  「うん・・無事でよかった」

・・・青年はどこかタカトシ君に似ている気がした。

青年  「じゃあ僕は行くよ。もう今日は帰った方がいい」

ムツミ 「待ってください!」

青年  「ん?」

ムツミ 「あのっ!・・格闘技、やってるんですか?」

青年  「・・うん・・・まあ・・一応プロの格闘家・・になるのかな?」

ムツミ 「!!」

時との戦いに思い悩んでいたムツミにとっては、目の前に答えが現れた気がした。
考えるより前に、言葉が出ていた。

ムツミ 「私に、格闘技を教えてください!!」

青年 「えっ?!・・・えっと・・本気?」

ムツミ「本気です!私・・高校の柔道部で主将をやってます!でも最近・・もっと強くならなくちゃいけなくて・・・さっきのお兄さんの動きを見て、私もできるようになりたいと思いました!」

青年 「・・・えっと、まず僕がやってるのはいわゆる総合格闘技だよ。それでもいいなら、お世話になってるジムを紹介してあげるくらいできるけど・・・柔道なら柔道の先生に習った方がいいと思うよ」

ムツミ「・・・実は・・・勝たなくちゃいけない相手がいるんです・・・柔道でじゃなく、格闘技で!相手は空手も使います・・私はちゃんとやったのは柔道だけだから・・・」

青年 「・・・・それは、私闘?」

ムツミ「え?」

青年 「戦う相手は、友達とか?」

ムツミ「・・・ハイ・・友達で、ライバルです!」

青年 「・・・・・とりあえず、明日ジムにおいで。僕も行く。夕方なら大丈夫かな?」

ムツミ「!!!ハイ!!ありがとうございます!!」

青年 「うん・・君の名前は?」

ムツミ「三葉ムツミです!」

青年 「僕の名前は、ユウ。・・・神代ユウ」

次の日
神代 「あ、こんにちは」

ムツミ「あっ・・あのっ・・ここでいいんですよね?・・よろしくお願いします」

神代 「うん、そっか、ジムなんて見たことないよね・・とりあえずこっちで話そうか」

ムツミ「ハイ!」

金髪の青年「おー神代ー高校生に手出すとはいい度胸じゃねーか!かみさんに言いつけるぞー?」

神代 「イヤ違うから!」

金髪 「へっへっ・・・・・で、その子が?」

神代 「・・・うん」

金髪 「まあ頑張れよ」

神代 「ありがとう、ショーゴ君」

ムツミ「?」

***

神代 「昨日も言ったけど、ここは僕がお世話になってるジムだよ。さっき話しかけてきた人は僕の友達。彼もプロの格闘家だよ」

ムツミ「は・・はい!」

神代 「でさ・・・」

ムツミ「?」

神代 「聞いておきたいことがあるんだ」

ムツミ「はい?」

神代 「これから、僕や、もしかしたら他の人が君に格闘技を教えるかもしれない」

ムツミ「ハイ!」

神代 「そうやって手に入れた力を、君は正しく使うことができる?」

ムツミ「・・・え?」

ムツミ「・・・正しく?」

神代 「うん・・例えば君、昨日僕が来なかったら、ヤンキーとやりあってたでしょ?」

ムツミ「えっ・・それは・・」

神代 「もちろん護身術として使うのは正しいと思うよ。でも必要以上に相手を気づ付けないって約束できる?」

ムツミ「・・・約束します!」

神代 「うん・・もう一つ。君はここでトレーニングした後、友達と戦うって言ったよね?」

ムツミ「・・・ハイ」

神代 「友達と・・・本気で戦うって言うのは、きっといい結果を残さない。最悪の場合、どちらも傷つき、結果友を失うことになるかもしれない・・・君はそれでいいの?」

ムツミ「・・・・・・大切な仲間だからこそ・・決着をつけなきゃいけないんです」

神代 「・・・そっか」

ムツミ「・・・はい」

神代 「・・・分かった君を信じる。どのみち君は友達と戦うんだね。だったら君が間違った道を選ばないように、僕がサポートする」

ムツミ「・・・!はいっ・・ありがとうござます!!」

神代 「・・じゃあ明日から本格的な練習をしよう。今日は帰っていいよ。あと、僕がいなくても、僕の名前言えば入れてもらえるから」

ムツミ「はいっ!!」

***

ショーゴ「神代、聞こえたぜ」

神代  「うん・・・まるで昔の僕たちだよね」

ショーゴ「ふん・・・あの時は負けたけど、リングの上じゃ負けないからな!」

神代  「うん、お互いベストを尽くそう」

ショーゴ「・・・神代」

神代  「・・うん」

ショーゴ「いや・・・なんでもねぇ・・・俺らももうこっち側だな」

神代  「・・・そうだね」

というわけで今日は終わりです

いやいや完全にそっち路線じゃないので
ゲストぐらいの感覚です

では続きです

ムツミ「じゃあ今日の練習はここまで!」

部員 「はい!ありがとうございましたー!」

・・・

ムツミ「・・・」

中里 「・・・ムツミ」

ムツミ「・・えっ?!なっ・・なにどうしたの?」

中里 「最近、ムツミ、ボーっとしてること多いよね・・大丈夫?」

ムツミ「だいじょーぶ!いつも通りだよ!!」

中里 「・・・津田君のこと?」

ムツミ「なっ・・なに言ってんのチリは?!タカトシ君は関係ないよ!!」

中里 「(分かりやすい奴)・・・まあ何かあったら相談乗るよ」

ムツミ「うん・・ありがと、チリ」

中里 「うん」

ムツミ「でも・・ホントに大丈夫。・・・自分との戦いだから、コレは」

中里 「?」

中里 「ねえ」

津田 「ん?どうしたの?」

中里 「いや・・・最近ウチの部長となんかあった??」

津田 「え?三葉と?・・別に何もないけど・・・どうしたの?」

中里 「いや・・なんつーかちょっと様子がおかしいんだよね」

津田 「え?・・・大丈夫なの?」

中里 「いや、分かんないよ。だから聞いてるの」

津田 「えっ待って、なんでそもそも俺が関係あるの?」

中里 「あー・・・(この鈍感男が)」

津田 「?」

中里 「部長と仲良いでしょ?」

津田 「ん?まあ」

中里 「・・・はぁ」

津田 「??」

中里 「とにかくさ、何かあったら優しくしてやってよ。部長、ああ見えてメンタル弱いとこあるから」

津田 「え?・・う、うん」


***

時  「・・・」

時  (何やってるんだ、私は・・・)

時  (最近、練習が終わるとここに来ちまう・・)

時  (コトミの家・・・)

時  (・・・ふっ)

時  (そうじゃないな・・・津田センパイの家だ)

時  (・・もう自分に嘘はつけないな・・すっかり家までの道覚えちまった)

時  (・・・まだ電気がついてる・・)

時  (・・・)

時  「津田センパイ・・・私、負けません」

****

生徒会室

天草 「そろそろ文化祭だな」

津田 「そうですね」

天草 「今年も我々は裏方にまわって皆のサポート役になるだろう。当日にぶっ倒れないように体調管理を万全にな」

アリア「うん。前日の自家発電はほどほどにねっ」

津田 「俺を見るのはやめてください」

スズ 「でも去年はアンタ当日すごい眠そうだったじゃない。あんまし無理しちゃダメよ」

津田 「ははは・・気を付けます」

アリア「スズちゃんは津田君をよく見てるのねー・・うふふ」

スズ 「なっ・・!同じ生徒会役員として体調管理をしっかりとしてるかの確認ですよ!」

天草 「むぅー」


 ピロリロリン
津田 「ん?・・メールか?」

津田 「?!」

天草 「ん、どうした津田?欲求不満18歳JKからメールか?」

津田 「いやそれアンタでしょーが」


****


土曜日
津田 「あ、時さん」

時  「・・津田センパイ、すみません休みの日に呼び出して」

津田 「今日はどうしたの?」

時  「いえ・・その・・」

津田 「?」

時  「はっ・・話がしたくて・・」

津田 「話?」

時  「・・・はい」

津田 「とりあえずどっかお店入る?」

時  「・・はい」

時  「・・・」

津田 「・・・」

時  「・・・センパイ」

津田 「うん」

時  「この間、ショッピングモール行った後」

津田 「ん?」

時  「センパイが新聞部の人に話しつけてくれたこと知ってます」

津田 「え・・ああー」

時  「・・偶然立ち聞きました」

津田 「ハハ・・あの人も会長に負けずハードなボケかますからねー」

時  「・・センパイ」

津田 「はい?」

時  「・・ありがとうございます」

津田 「・・うん」

津田 「・・でも時さんが、皆に馴染めてよかったよ」

時  「・・そうっすか?」

津田 「うん、コトミから聞いてるよ」

時  「・・センパイのおかげです」

津田 「いや、俺は何もしてないよ!」

時  「・・じゃあ、先輩とコトミのおかげです」

津田 「ハハ・・うん」

時  「センパイは・・・なんで私の事なんて気にかけてくれたんすか・・?」

津田 「え・・いや別に・・・うーん・・・たぶん時さんが普通の子だからかな?」

時  「私・・・普通っすか?」

津田 「うん、ウチの学校では」

時  「あー・・・そうっすね笑」

津田 「それに、何か俺に似てるし」

時  「?」

津田 「ツッコミだし・・それに結構流されやすいでしょ?」

時  「う・・・まあ」

津田 「だから何か他人のような気がしなくてさ」

時  「・・・・」

津田 「・・・迷惑かなとも思ったけど」

時  「そんなことないっす!!」

津田 「そう?ならよかった」

時  「・・・・//」

津田 「あ」

時  「?」

津田 「その髪留め」

時  「あっ・・//」

津田 「よかった。俺髪留めとか買ったことないからそれで良かったか心配してたんだけど、付けてるってことは問題なかったって事かな?」

時  「・・・・・はい」

津田 「うん、よかった」

時  「・・・・・はい//」

時  「・・・」

津田 「・・・」

時  「センパイ」

津田 「ん?」

時  「・・・私・・近いうち・・部長と戦います」

津田 「?部長って・・三葉?」

時  「・・はい」

津田 「それって練習試合ってこと?」

時  「いえ・・・その・・決着をつけなきゃいけないんです」

津田 「???どういうこと??」

時  「えっと・・・その・・私が次期部長になるために、部長を倒さないといけないんです」

津田 「えー・・そんなスポコンドラマみたいな・・・・まぁでも三つ葉らしいかなー」

時  「それに・・・」

津田 「ん?」

時  「・・・いえ」

津田 「とにかくケガしないようにね」

時  「がんばります」

津田 (あー中里が言ってた原因はこれかなー・・・さすがの三葉も時さん相手だと緊張するんだなー)

時  「センパイ」

津田 「ん?」

時  「試合が終わって・・私が勝ったら・・・センパイに言いたいことがあります」

津田 「え俺に?」

時  「・・・・・はい//」

津田 「ん・・うーん・・よく分かんないケド」

時  「・・はい」

津田 「とにかく、ケガしないように頑張ってね」

時  「はいっ!」


*******

そして約束から1か月が過ぎた。
それぞれ見つけた師のもと修業をした三葉と時は、それぞれの思いを胸に誰もいない柔道場に向かった。

ではここまでにしまーす

今必死に次を考えてるんですが、コトミって難しいですね・・・

トッキー編が終わったら五十嵐さん編オナシャス!
何でもしますから

さて、最後まで一気に行きます。

>>114次はコトミで、その次会長なので、その次でもいいですか?

ガラガラ

時  「・・・失礼します」

ムツミ「・・・トッキー」

時  「部長・・・と中里先輩?」

ムツミ「・・私が呼んだんだ。チリには立会人になってもらおうと思って」

中里 「・・・私は反対だからな。こんな試合」

時  「・・・」

中里 「話し合えばいいじゃないか・・・」

ムツミ「チリ・・ごめんね。でも、私とトッキーはこうするしかないの。こうしないとお互い納得できないの」

時  「・・・そうっす」

中里 「二人ともバカだよ・・・危なくなったら止める。いいな?」

ムツミ「うん、ありがとう。チリ」

時  「恩にきます・・先輩」

カチャ
時は、髪留めをはずしてゴムで止めなおした。

ムツミ「・・準備はいいみたいだね、トッキー」

時  「・・はい」

ムツミ「じゃあチリ、お願い」

中里 「・・・時間は無制限。・・・はじめっ!」


ムツミ「・・・」

時  「・・・」

二人とも動かない。
お互いが、お互いの構えを見て感じていた。
“何かある”と。

ムツミは柔道特有の構えとは異なり、体を半身にし、右手は顔の前に、左手は距離を測るように前に伸びている。
拳は開いているものの、構えはまるでボクシングだ。

時はというと、以前入部の時のような半身ではなく、両足は肩幅程度に揃えて立ち、手は開いたままだらりと下に伸び、構えの姿勢ではない。
つまり、自然に立っている状態だった。

そのまま30秒ほどが過ぎた。
先に動き出したのは時の方だった。
時は自然体のまま、ムツミに向かって歩き出したのだ。

ムツミ「・・・ゴクリ」

今までとは違う時の雰囲気に、ムツミは緊張を隠し切れなかった。
ジムでのスパーではこんな人はいなかった・・
こんなに自然体で、それなのに隙が全くない人は。

二人の攻撃可能範囲が触れる直前、時の右手がムツミに伸びた。

ムツミ「っ!!」

ムツミは左手でその手を払うと、上体を後ろに倒し素早い右のローを放った。

時  「くっ・・!」

間一髪で時は体を左に切り、これを躱す。

ムツミ「??!」

ローが外れたのは分かった。
しかしその瞬間、時が視界から消えた。

グルンッ!
ムツミの体が宙を舞う。
ローをよけた時は、その足を掴みローの威力を利用してムツミを投げたのだ。

ムツミ「はッツ!!」

天才的な格闘センスを持つムツミは、空中で回転する自分自身をさらに加速させ、その勢いを後ろ回し蹴りとして時に叩き込んだ。

 ガッ!
時  「っ!!」
染みついた空手が、時の体を素早くガードさせた。

ザッツ!!

素早く離れて距離を取る二人。
この1か月で成長した二人は、お互いの成長もまた同時に認識した。

時・ムツミ(・・・・強い)


ムツミ「トッキー、楽しいね!!」

時  「・・はい、部長」

二人とも笑っていた。

身に着けた技術を思う存分発揮できるから?
恋のライバルを倒すチャンスだから?
そうではない。

ムツミは高校に入り、好きな格闘技をするため、柔道部を作った。
素晴らしい仲間に恵まれた。
才能ある後輩を見つけスカウトした。
その後輩が自分と互角になるまで成長して、やがて自分の後を継ぐ。

時は今までろくに友達もできなかった。
もちろん部活なんてやってなかった。
でも先輩に半ば無理やりながら誘われて入部した。
そして今は、皆に認められ、部長が自分の思いを受け止めてくれている。

人生で最も輝く高校生の時期。
二人は今、青春の間只中にいた。


二人は何度もぶつかって離れ、お互いの力を確かめ合った。
二人の速度はもう目に追えないほどになっていた。

中里 『・・・そんな互角の状況がずっと続いていました。ですが勝負は突然傾いたのです』

立会人を務め二人の戦いをはじめから見守っていた中里チリ(17)は新聞部の取材にこう切り出した。

中里 『ムツミが左のミドルをフェイントで見せました。トッキーはそれに反応して右足を少し上げた。次の瞬間本命の右ストレートがトッキーを襲ったんです』

中里 『・・・ですがトッキーはそれも読んでいた。上げた右足をそのまま前に踏み込んで体を右に切ったんです。それによってムツミの右ストレートは外れました』

中里 『・・・ものすごく自然な動きでした。トッキーの左手がムツミの脇腹を触っていました・・ええ、拳ではなく開いた手のひらでです。次の瞬間、ムツミが3メートルくらい後ろに吹き飛びました』

中里 『よく言うじゃないですか、体が“く”の字になったって。まさにそれですよ。初めて見ましたよあんなの・・・すごい音でした。アバラ折れたんじゃないかなって思いましたよ』

中里 『・・・えっ?そこで試合中止にしなかったかって?』

中里 『ハハ・・しませんでしたよ。だってムツミは後ろ向きに吹っ飛んだって言うのにそのまま受け身とって立ってたんですから・・・しかも笑って』

ムツミ「ぐっ・・・やるね、トッキー」

時  「・・・大丈夫ですか?」

ムツミ「あははっ・・私をなめないでよ!」

時  「・・・」


ムツミ(油断した・・トッキーは昔やってたって言う空手の突きしかないと思ってた・・)

ムツミ(さっきからの動き・・古武術か拳法みたいな動き・・・)

ムツミ(触った状態から体重移動だけであんなに重い打撃うってくるとは・・)

ムツミ(・・・至近距離は危険か)


時  (・・・危なかった)

時  (左のミドルがフェイントなのは読めなかった・・)

時  (偶然右足がいいところに着地できて命拾いしたな・・)


ムツミ「トッキー・・行くよ!!」

時  「はい!」


レスリングを彷彿とさせる前かがみの姿勢でムツミは一気に間合いを縮めた。
時はここにきて始めて構えた。
左手を頭の前に、右手を丹田に。
ムツミが何をしてくるか分からない時は、とっさに天地上下の構えをとった。

ムツミ「はあああ!」

時  「くっ!」

恐ろしく低いところからムツミのジャブが飛んできた。
時は間一髪でそれを避ける。
次の瞬間、ムツミの上体が大きく遠ざかる。

時  「?!」

ムツミの左足が時を捉えるため大きく前に出される。
本命は前蹴りであった。

ムツミ「くっ・・!」
脇腹に走る痛み。
先程の時の寸勁がムツミの前蹴りの速度を鈍らせた。

時  (今しかないっ!!)
大きく左足を踏み込んだ。
ムツミは前蹴りが空を切るのと同時に時の気配を右に感じた。

時  「ハァッ!」
時の右掌がムツミの顎を捉えた。

ムツミ「しまっ!!」
気付いたとき、ムツミの体は大きく後ろに傾き畳に吸い込まれた。

時  (決まった・・・入り身投げ)


ムツミ(あれ・・・私・・なにしてるんだっけ・・)

ムツミ(・・光が・・見える・・コレは・・柔道場の・・)

ムツミ「はッ!!」

時  「なっ!!」

ムツミは立ち上がった。
辛うじて受け身をとったとはいえ、脳は揺られ景色はぐにゃぐにゃだった。
ムツミの視線の焦点が定まっていないことは、時にもわかった。

時  「部長・・・もう・・」

ムツミ「っ・・」

ムツミ「ハアァァァッッッツ!!」

時  「・・・」

呼吸法により気合を入れるムツミ。
時は感じた。
また来る。
だが、次で決まる。
なにをしてくるか分からない。
だが、しっかり受け止めよう。


脳震盪を起こしてるとは思えない素早く正確な足取りで、ムツミは時の目の前にたどり着いた。
時はあまりの速さに一瞬油断が生じた。
顔と顔がぶつかりそうな、お互いの息遣いが分かるほどの至近距離。
時は一瞬、心臓が止まったかと思った。
そして気づいた。

この距離は・・柔道だ。
いつもの練習の距離だ。
部長が初めて私に組み方を教えてくれた距離だ。
・・・部長・・。

ムツミの左手が、時の道着の袖を捉えた。
そしてそのまま力強く引かれる。

時  (ああ、やっぱりだ・・・部長・・・あなたは、立派な柔道部主将です!!)

時は左手を引かれる力に抗わなかった。
引かれる力にさらに自分の推進力を加えて大きく前に出た。

ムツミ「?!」

柔道のセオリーにはない動き。
一年半柔道に明け暮れ、体に柔道が染みついたムツミにはまさに暖簾に腕押しであった。
時はそのままムツミの後ろに回り込み、小さく息を吸った。
尊敬する部長に、最後の一撃を与えるために。

ムツミは混濁する意識の中、確かに感じた。
背中に静かな殺気を。

脳震盪を起こした状態で人は動くことができるのか?
普通は無理である。
しかし、ある特殊な状況に置いてそれは起こり得る。
格闘などをしている状態で、体が極限の集中状態にある所謂“ゾーン”に入った時だ。
一流のアスリートなら誰もが体験したことがあるというこの状況だが、実は僕(筆者)も体験したことがある。
路上でナイフを持った輩を相手に戦わなくてはならなかった時だ。
逃げ場はなく、相手は二人だった。
たぶん僕は恐怖と緊張から、極限の集中状態になったのだろう。
ナイフを持つ手の動きが普段よりも遅く見え、結果それを避けて、回避することに成功した。
こういった集中状態に入ると、人間は最も普段から慣れている動きをする。
僕の場合も、最も長くやっていたキック(キックボクシング)の動きをしていたように思う。
ムツミも同様、最も慣れた柔道の動きをした。
結果としてそれは間違った選択だった。
柔道というルールに守られた競技を路上で使うには、その弱点をしっかり認識しなければならない。
“柔術”というルールのない、いわば何でもありのものを相手にする場合は、ルールがあることが逆に弱点になってしまうのだ。
逆に言えば、ムツミはたった一年半で体に柔道が染みつき、無意識でも柔道で戦うほどに成長していたと言える。






※すべてテキトーです

ほんの一瞬だったが、ムツミは覚悟を決めた。
やられる。
そう思った。

しかし、時が最後の一撃を決める前に、運命は違った答えを用意した。

ガラガラ
津田 「すいませn・・・・え?!」

時  「?!!」

中里 「わっ・・!」

津田 「え・・何この状況?!」



ムツミ「今ッ!!」
タカトシが作った一瞬の隙。
ムツミは振り返りざまに渾身の右ストレートを放った。
しかしその一撃は、弱り切ったムツミの体を振り回し、結果拳は狙い通りに飛んで行かなかった。

シュビッツ!

時  「?!!」

時  「う・・・くっ・・」
・・・ドサ

ムツミにとって幸運だったのは、振り返るムツミに時が反応し、体を半身にしたことだった。
さらに重心の定まらないムツミのストレートは時に読むことができず、結果時の顎をかすめた。
顎を打ち抜かれ、脳震盪を起こした時はそのまま畳に崩れ落ち、意識を失った。

ムツミも、もうすでに立つことはできず、そのまま時の上に覆いかぶさるように倒れた。

中里 「ムツミっ!!」

津田 「ちょっ!!二人とも・・え?・・え?!」

中里 「私はムツミを運ぶから、アンタはトッキーを!!」

津田 「お・・おう・・?」

・・・

ムツミ「・・・・」

中里 「・・眼覚めたか?」

ムツミ「・・・ここは?」

中里 「保健室」

ムツミ「・・・そっか・・」

中里 「・・・全く・・ホントにバカだよ・・アンタたちは」

ムツミ「・・・ゴメン・・トッキーは無事?」

中里 「ああ、大丈夫。アッチはむしろ脳震盪だけだから。アンタは全身に打撲。骨は折れてないみたいだけど」

ムツミ「・・・・うん・・チリ・・心配かけてごめん」

中里 「もう・・二度とごめんだよ」

ムツミ「うん・・・・」

ムツミ「チリ」

中里 「ん?」

ムツミ「私・・負けたね」

中里 「え?勝っただろ?」

ムツミ「・・トッキーは三回も私を倒せるチャンスがあった」

中里 「・・でも最終的に勝ったのはムツミだろ」

ムツミ「試合はね・・・勝負は負けたなー」

中里 「・・・・いいの?それで」

ムツミ「・・・・うん・・・」

中里 「・・・ムツミ」

ムツミ「チリ」

中里 「ん?」

ムツミ「うっ・・・うっ・・・」

中里 「・・・よしよし」

ムツミ「うわーーーーん!!」

中里 「・・ムツミにはさ、もっといい人現れるよ」

ムツミ「うっ・・うっ・・ありがとう・・チリ」

中里 「うん」

時  「・・・っ」ぱち

ムツミ「・・・トッキー」

時  「・・・部長」

ムツミ「体、痛いとこない?」

時  「大丈夫っす・・・私ま」

ムツミ「トッキーの勝ちだね」

時  「え?」

ムツミ「トッキーは本気で打ってれば、寸勁の一撃でアバラ折られてたし、タカトシ君が来なければ、間違いなく私は倒されてた」

時  「でもっ・・!」

ムツミ「勝負はトッキーの勝ち。でも試合は私の勝ち。」

時  「・・・部長」

ムツミ「主将の座はまだまだ譲れないな!!」

時  「・・・」

ムツミ「・・・コレ、忘れ物だよ。大切な髪留めでしょ?」

時  「・・・はい」

ムツミ「私も人の事言えないケド、トッキーも大概だから、アドバイスするね」

時  「え?」

ムツミ「タカトシ君は、すごーく鈍感だから自分から言わないとダメだよ?」

時  「え・・・あの・・その・・・・//」

ムツミ「じゃあ、お大事にね!!」

時  「・・・・部長、ありがとうございました!」

ムツミ「うん!」
ガチャ

時  「・・・・」
時  「・・・・・//」

時  「・・・くそっ」

ガチャ
津田 「時さん大丈夫?」

時  「うわっ!!」

津田 「えっ?!なんかまずかった?!!」

時  「い・・いや大丈夫っす・・・」

津田 「・・・そう?ならよかった」

時  「・・・」

津田 「はー・・もうびっくりしたよ・・でも二人とも無事でよかった」

時  「・・・せんぱい」

津田 「三葉も無茶するよなー」

時  「・・・あのっ!!」

津田 「えっ?!」

時  「・・・・・・来週の文化祭、私と一緒に見て回りませんかっ!!!///」

******************************

タカトシ「見つけた」

トッキー「あ」

タカトシ「よかった、試合に間に合いそうだね」

トッキー「ご・・ゴメンナサイ」

タカトシ「はは・・じゃあ行こうか」

トッキー「・・ハイ」

ぎゅっ
トッキー「・・・ちょっ///」

タカトシ「またはぐれられたら敵わないから、今度は手繋ぐよ?」

トッキー「・・・はい///」

***

タカトシ「ここだね」

トッキー「すごく見やすい席ですね」

タカトシ「うん、なんたって招待席だから」

トッキー「そうですね」

トッキー「タカトシさん、そういえばコトミは結局試合観戦は無理なんですか?」

タカトシ「アイツ、追試あったみたいで、夜録画を見るってさ」

トッキー「ハハッ・・・コトミらしい」

タカトシ「うん・・・あ、試合始まる!」


実況  「・・さあ始まりました、60年ぶりの東京オリンピック!最初の金をもたらしてくれるかもしれない決勝戦です!」


  「ああっと危ない!!相手選手かなり研究していますね」


  「ええ、予選では出足払いで一瞬で決められた選手も数多くいましたからね。まさに瞬殺の女王の異名の通りでした」


  「ああああ!!ここで決まるか?!・・決まるか?!」


  「決まったーー!!!大外刈ーーー!!!文句のつけようのない一本だあああーーー!!やはり東京五輪最初の金をもたらしたのは女王三葉だあああ!!!!」

これにてトッキー編終了です。

次はコトミ編でお会いできると嬉しいです。

スレタイは
『時「連休ヒマか?」 津田コトミ「いや、戦争で散った戦友(とも)の墓参りに・・」』
の予定です

おやすみなさい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月26日 (金) 00:30:35   ID: vDX-4sTp

ええわー,まじええわー

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