照「咲が泊まりにくる」淡「毎日サキと話してるよっ」 (375)


咲-Saki-より。

照→咲←淡





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全国大会決勝を前にお姉ちゃんと仲直りすることができて、お姉ちゃんのチームメイトさんとも知り合いになれた…。

冬休みになったらこっちに遊びにおいでって言ってもらえて、長野に帰る前には連絡先を交換したりもできた。みんないい人たちで、同い年の淡ちゃんとも仲良くなれて…。

正直信じられないよ。 こんなに幸せなことがあっていいのかな……。



12月下旬・東京
咲「ここまでは来たことあるから分かるけど、お姉ちゃんと待ち合わせの駅へは……こ、こっちかな…? 」キョロオド

照「咲っ!」

咲「!!」ビクッ

照「どこいくの、こっちだよ。」

咲「お、お姉ちゃんっ!?」

照「やっぱり迎えにきてよかった。」

咲「え…??ど、どうしてここに?」タタッ

照「咲は初めてのところだときっと迷子になるから。迷うとしたらこの駅かなって。」

咲「あ、あはは…。」

咲「…でもお姉ちゃんすごいよ!私のこと全部お見通しなんだね…!何だか嬉しいな。」ニコッ

照「…!」フイッ

照(その笑顔は…。)カアッ

咲「?」

咲「お姉ちゃん…?」


菫「まあ、そう指摘したのは私なんだけどな。」ヒョコ

咲「わっ!ひ、弘世さん…!」ビクッ

菫「久しぶり、咲ちゃん。」

咲「ど、どうして弘世さんがここに…?」

菫「咲ちゃんが迷う前に迎えに行かなきゃと思ってね。でも照だけ向かわせたらどうせ迷…」

照「菫がどうしても来たいって。あと、咲の荷物いっぱいだろうと思って連れてきた。」

咲「え…、そ…そうなの…?」

菫「おい、ちょっ…」

照「そうなの。」ズイ

菫「」

咲「う、うん…。あの、弘世さんわざわざ来てくださってありがとうございます。」ペッコリン

菫「い、いや、いいんだ。」

照「咲、荷物ちょうだい。」

咲「あ、私そんなにたくさんは持ってきてないの。だから平気だよ。」

照「でも道中ずっと手にしてたんだから、少しでも身軽になると楽。かして。」ヒョイ

咲「あ…!ご、ごめんね…。」

照「そっちの手さげは?」

咲「こっちは貴重品しか入ってないから全然重くないよ。」

菫「…よし、それじゃあそろそろ行くか。」

咲「あ、はい!」


菫「…あ、すまん。その前に電車を調べるからちょっと待っててくれ。」

照「私、今乗ってきた電車くらいは分かる。」

菫「あれは最短ルートだから乗り換えが多かったろ。それじゃ大変だ。」

咲「え…?……あ…!わわ、すみませんっ。」アセッ

照「咲が気にすることない。菫、手早くね。」

菫「お前…。」

咲「ご、ごめんなさい。お手間かけちゃって…。」

菫「いや、咲ちゃんは本当に気にすることないんだ。ごめんね、もう少しで分かるから。」

咲「あっ、いえ、私は全然…!」

照「…あ。咲、何か手提げの中が点滅してるみたい。」

咲「へ?……あ、これだ。」ゴソ

照「ああ、それがお父さんに頼んで買ってもらったケータイ?」

咲「うん!この前お姉ちゃんたちから教えてもらった連絡先は、みんなケータイだったから…私もその方が便利かなって。」

照「うん、私もそのおかげで咲と気軽に連絡がとれた。」

咲「そうだよねっ。メールはまだよく分からなくて、使えてないんだけど…電話とかマナーモードとかは覚えたんだ。」カチッ


咲「あっ、着信が入ってた。」

照(着信…?)

咲「淡ちゃん…電話くれてたんだっ…。」

照「淡?」

咲「うん!連絡先を交換してからね、よく電話くれるのっ。」

照「そうなんだ。」

菫「へえ…!あの淡が…。」

咲「今日お姉ちゃんの所に行くって話してたから、 きっとそれでかけてきてくれたんだなー…!」

照「そう、なんだ。」

菫「お、帰りの電車分かったよ。大丈夫かな?」

咲「はい!」

咲(あとで淡ちゃんに折り返そう…。)ゴソ

菫「向こうの路線だ。」


咲「わあ…、ここがお姉ちゃんたちの地元…!」

照「長野とあんまり変わらない田舎だけど。」

菫「ああ、東京のイメージとはかけ離れてるな。」

咲「でも、自然がいっぱいあって、のどかで落ち着くよ。いいところだねっ!」

照「咲にそう言ってもらえて嬉しい。私もここが好き。」

菫「夜になるとすぐ真っ暗になって、星がたくさん 見れるんだ。」

咲「そうなんですかっ?」

菫「ああ。今は冬だから空気が透き通って、より鮮明に見えるだろうな。」

咲「うわあ…!東京の星空も見たいなあ…!」

照「家のベランダや窓から星がよく見える。確か、お風呂場の窓からも見れたと思う。」

咲「本当っ?」

照「雲がない日に一緒に見よう。」

咲「うん!うんっ!楽しみだよー…!」ソワソワ

照(か、可愛い…。)

菫(この子本当に照の妹なのか?天真爛漫というか、なんというか…。)

照「と、とにかく家に帰ろう。夜ご飯の買い出しもしないといけない。」

咲「うん!」


照「というわけだから、バイバイ。」

菫「…そうくると思ったよ。」

照「さすがに、もうここからは帰れる。菫は忙しいんだから早く帰った方がいい。」

咲「えっ、弘世さん今日忙しかったの…?」

照「菫が同期からも後輩からも慕われてて引っ張りだこなのはいつものこと。」

菫「お前なあ……。」

咲「慕われてるのは分かるなあ…!今日だって電車調べてくれて、迷わずにここまで来れましたし…。 」

菫「いや、それは全然大したことじゃないからいいんだ…。」

咲「あの、本当にありがとうございました。あと、その…、 遅くなっちゃったんですけど…お姉ちゃんと仲良くしてくださってありがとうございます!」ペッコリン

菫(うわ!いい子過ぎる!)

菫「わ、私の方こそ照にはよくしてもらって…」

照「菫は少し天然で抜けてるところがあるけど、そこがいいところ。」

菫「…前言撤回する。」

菫「こほん。…ま、まあ咲ちゃん、今日はゆっくり休むことだ。」

咲「は、はいっ。」

菫「私はそろそろ失礼するよ。2人とも気をつけてな。」

咲「ありがとうございます。弘世さんも気をつけて…!」

照「バイバイー。」

菫(やれやれ…。)


照「…さ、帰ろうか。咲。」

咲「うん!」

テクテク…

照(やっと咲と2人きりになれた…!…けど…ど、どうしよう。何を話そう。話したいことはいっぱいあったのに…。)ドキドキ

照「……。」テクテク

咲「……。」テクテク

照(何か聞いた方がいいよね…。お昼ご飯は何食べた?とか、最近何の本読んでるの?とか。…あ、冬休みだから通知表どうだった?とか…?)

照「……。」テクテク

咲「……。」テクテク

照(まずい。このままだと一言も話さずに家に着いちゃう…。)

照「……さ、咲、その…」

咲「お姉ちゃん。」

照「!な、何?」ビクッ

咲「あ、ごめん。被っちゃったね…、えへへ。」

照「ううん、別にいい。何を言おうとしたの?」

咲「あのね…、その…、お願い…なんだけど……。」

照「お願い?」

咲「う、うん。迷惑じゃなければ…。」

照「さ、咲のお願いなら何でもきくよ?」


咲「本当…?あのね…、もしよかったら…お家まで…、て、手をつないでほしいな…って…。」モジ…

照(なっ…!)

咲「ダメ…かな…?」

照「……。」

照(そ、その上目遣い……!!)カアッ

咲「ご、ごめんっ…!やっぱりめいわ…」

照「平気。つ、つなごうか。」

咲「えっ…い、いいの?」

照「…。」コク

咲「わ…!そ、それじゃあ失礼して…。」

キュッ…

照「!!」ビクッ

咲「や、やっぱりこの年じゃちょっと恥ずかしいかな…。」テレ

照(さ、咲の手が……!小さいときは平気だったのに…!)ドキドキ

咲「お姉ちゃんの手、あったかいね。」

照「さ、咲の手は少し冷たい…。」

咲「うーん、末端冷え性なのかな…?冬は足先から冷えるし…。」

照(咲の手…柔らかくて、すべすべ…。)ドキドキ

咲「えへへ、お姉ちゃんの手で暖をとっちゃお…!」ギュッ

照(て、手の感触がより一層強く……!)プルプル

咲「…こうして手をつないで歩くのって、何年ぶりかなあ…?」

照「さ、咲…。」

咲「夢見てるみたい…!」ニコッ

照「…。」カアッ…

照(手の感覚が分からなくなりそう…。)


テクテク…

照「…あ、つ、着いたよ。」

咲「何かあっという間だったよー。」

ガチャッ

照「さ…入って…。」

咲「うん!お邪魔します。」パッ

照(…咲の手の感触が残ってる…。)

咲「お姉ちゃんの匂いだー。」

照「え…!?く、くさい…?」オロ

咲「全然!とってもいい匂いだよ。なんだか安心する…。」

照「そ、そう。ならよかった…。」ホッ…

照(一気に感触忘れちゃった…。)


照「…あ、そこの客間に荷物置いて。」

咲「ここの部屋?」

照「そう。お母さんが、ひとまずそこが咲の部屋だよって。」トサッ

咲「結構広いけど、使っちゃっていいのかなあ…。 」

照「普段全く使ってないから問題ない。」

照「おいで、咲。少し休憩しよう。」

咲「あ、うん!」

~~~~~~~~~~~~~~~~

淡「おそーいっ!!サキったら何やってんだろー!?」

淡「連絡がこんなに遅いなんて今までないよ!」

淡「この私をこんなに待たせるなんてサキは悪い子だ。」

淡「もう1回電話しよっ。」

~~~~~~~~~~~~~~~~

照「お茶いれるけど、紅茶でもいい?」

咲「うんっ。ありがとう、お姉ちゃん。」

照「気にしないでいいよ。そこに座って待ってて。 」

咲「はーいっ。」


ブーブーブー…!

照・咲「!」ビクッ

咲「わわ!びっくりした…!」ゴソ

咲「あ…!淡ちゃんから電話だ。」

照「…!」

咲「お姉ちゃん、ごめんね。ちょっと電話出るね。 」

照「あ、うん。」

ピッ

咲「あっ、もしも…」

淡「サーキーッ!!!」

咲「ひゃわっ…!」ビクッ

淡「今まで何してたのっ!?」

咲「え…、その…お姉ちゃんのお家に向かってて…。 」

淡「私何回も電話したのに遅い!」

照(淡の声、こっちまで筒抜け…。)

咲「ご、ごめんね…?着信は知ってたんだけど、落ち着いたら電話しようと思ってて…。」オロ

淡「待ちくたびれたよー!…けど、まーいいや!サキッ、今日会える?」

咲「えっ?」

照(なっ!)


淡「会えるっ?」

咲「…う、うーん…、…今日は多分会えないかも…。ごめん……。」

照(…。)ホッ…

淡「えーっ?私、今日やっとサキに会えると思って楽しみにしてたのに…!」

咲「ご、ごめんね…。さっきお姉ちゃんのお家に着いて、このあとは夜ご飯の買い物に行く予定なの…。そしたらもう遅くなっちゃうと思うから、今日は……。 」

照(…。)ドキドキ

淡「うー……、わかった…。今日は諦める。」ムス

咲「あ、淡ちゃん…ごめんね…?」

淡「サキの声が聞けたから、それでよしとするよ…。その代わり、明日は予定空けといてよねっ!」

咲「明日?う、うん、わかった。」

淡「またあとで電話するからっ。じゃあね!」

咲「あ、うん。ばいばいー。」

照(……。)


ピッ

咲「あ、お姉ちゃんごめんね…。今電話終わったよ。」

照「…こっちもちょうどお茶とお菓子の用意ができた。」

咲「チョコクッキーだ…!美味しそう!」

照「どうぞ召し上がれ。」

咲「えへへ、ありがとう。いただきます…!」

サクッ、モグモグ…

咲「あ、これ…甘すぎなくて食べやすいね!美味しい…!」

照「私は少し物足りないけど、咲が気に入ってくれたならよかった。」

咲「お姉ちゃんは甘党さんなんだよー。」

照(聞くなら多分…今。)

照「…咲、今の電話って…」

咲「あっ、そうだった!あのね、淡ちゃんからだったんだけど…、明日会おうってことになって。」

照「…さ…咲、明日…」

咲「決まったあとに聞くのも変なんだけど…、明日出かけてきてもいいかな…?」

照(うっ…。)

咲「あ、あの…お姉ちゃんが泊まりにおいで、って誘ってくれたのに勝手に予定入れちゃって…ごめんね…。」シュン…

照「…!い、いや、私のことは気にしなくていい。 明日だけなんだろうし、何言っても聞かない淡の頑固さは知ってる。」

咲「あ、あはは…。」

照「同い年の友だちが増えるのはいいこと…。」

咲「…うん、それは私も嬉しいなって思ってるの。淡ちゃん、最初は距離があって、仲良くなるのは難しいかも…って思ってたから、なおさら嬉しいよ…!」ニコッ

照「」

照(引き止められなかった…。私のいくじなし…。)

今日はここまでです

同志が集まってくれたら嬉しいなー!なんて


【MEMO】 13まで済み

>>9
ガタッ

久「どうしたの?」

和「咲さんが私を呼んでいるような気がして…」


咲「…あ。夜ご飯あるから、あんまり食べない方がいいよね。」

照「へ?」

咲「このクッキー。」

照「あ、ああ、うん。そうだね。」

咲「お茶もお菓子もとっても美味しかったよ…!ありがとうっ。」

照「喜んでくれて何より。」

咲「このあとって買い物に行くんだよね…?」

照「そう。咲の食べたいものを買いに行く。」

咲「えー、何だか悪いな…。」

照「久しぶりに会えたんだから、甘えるべきだよ。」

照「単身赴任でいないから、お母さんにぶつける分も私が受け止める。」

咲「う、うーん…。」

照「何が食べたい?」

咲「えと…それじゃあ…、シチューが食べたい、かな…。」

照「分かった。」

咲「あっ、あとね…。」

照「ん?」

咲「お姉ちゃんの食べたいもの…も一緒に食べたい…!」


照「えっ…!?」

照「な、何を言ってるの。今日は咲の食べたいものを…」

咲「だって…、私のだけじゃやだもん…。」フイッ

咲「お姉ちゃんのも、一緒がいい…。」

照「!!」

照(わわわ…!甘えていいとは言ったけど…、これは反則すぎ…。こっちが…もたなくなる……!)ブルブル

照(いっそ……このまま………。)

照(…だ、だめ…!!姉妹だから、お姉ちゃんだから…!冷静にならなきゃ…。)

咲「お姉ちゃん…。」

照「…わ、分かった。一緒に食べよう。」

咲「本当っ?」パアッ

咲「お姉ちゃんは何食べたいのっ?」

照「え?えーと…、………た…たらこスパゲッティ、とか…?」

咲「あっ、いいね!私最近、全然食べてないよ。」

照「じゃ、じゃあシチューとそれで…。早速買いに行こうか。」

咲「うん!」


咲「ただいまー!」

照「…といっても誰もいない。」

咲「そういうときは、お姉ちゃんが代わりに『おかえり』って言ってよー。」

照「え…!」

照「……え、えーと…、それじゃあ私の『ただいま』は…?」

咲「私が『おかえり』って言うよっ。」

照(…。)カアッ…

照「ほ、ほら。そんなことより夜ご飯の準備するよ…!」

咲「はーい。」

咲「たらこのスパゲッティはそんなに時間かからないから、まずはシチューだね。」

照「うん。」

照「役割分担して手早くつくろう。」

咲「もしかしてお姉ちゃん…、もうお腹空いてる?」

照「…。」

咲「ふふっ。私お野菜切るね!」

コトコト…

咲「うん、できた…かなっ…。」

照「こっちもそろそろできあがるよ。」

咲「それじゃあシチュー盛りつけちゃうねっ。」


照・咲「いただきますっ。」

照「…。」パク、モグモグ

咲「………シチュー、どうかな?」ドキドキ

照「すごく美味しい。咲に味付けしてもらって正解だった。」

咲「よかったあ…。」ホッ

咲「…。」ハムッ、モグモグ

照「…。」ドキドキ

咲「たらこスパゲッティ美味しい…!麺のかたさも丁度いいよっ!」

照「よかった…。」ホッ

咲「…。」ニコニコ、ングング

照「取り分けるからサラダも食べて。」

咲「うん!」

照(幸せ…。)


咲「はあ…。お腹いっぱいだよー。」

照「私も…。」

咲「シチュー、ちょっと作りすぎたかなって思ったけど全部食べちゃったね。」

照「咲の腕前がいいから。」

咲「えっ、も…もう…お姉ちゃんたら…。シチューは2人でつくったものだからっ…。」

照(照れてる…。可愛い。)

咲「…はじめてしたけど、一緒につくって食べるって楽しいね!」

咲「でも…今日きていきなり、お姉ちゃんと買い物して、料理作って、同じものを食べるなんて私、贅沢しすぎたかもっ…!」

照「…な、何言って…!…あっ、わ、私ちょっとお風呂の準備してくるから…。」パッ

咲「…えっ、本当だ。もう結構いい時間だね。」

パタパタ…

咲「…それじゃあ私は…お皿片しちゃおうかな。」



照(……思わず咲のもとから逃げてきちゃった…。)テクテク

照(でもあれ以上、無邪気な咲を前にするのは無理…。)

照(仲直りしたときは、自分がこんな風にまでなるとは思わなかったのに。我慢できると思ったんだけどな…。)


照「咲ー、あと10分くらいでお風呂入れるよ。」

咲「あ、お姉ちゃんありがとうっ。
」ザー、カチャカチャ

照「あっ。」

照「食器洗いなら私がするから…!」タタッ

咲「ううん、平気。お姉ちゃんはお風呂の準備してくれたし…!」

照「咲はお客さまなんだから、働かなくていい。」

咲「…『お客さま』って何か他人みたいで、いや…。」

照「あ、ち…違う、そういう意味じゃ…!」

咲「家族だから、役割分担…しよ?」ニコッ

照「…う、うん…。」

咲「ふふっ、ありがとう。」

照「じゃあ食器拭きと、しまうのは私がする。」

咲「あっ、いいの…?実は、お皿のしまう場所、全部は分からなそうだったんだ…。」

照「役割分担。」キリッ

咲「あはは。」


カチャ…カチャ…、パタン

照「終わった。」

咲「2人だから早かったね。」

照「あ、そろそろお風呂に入れる時間。」

咲「それならまずお姉ちゃんから。」

照「何言ってるの?咲から入るんだよ。」

咲「いや、だってお姉ちゃんが準備してくれたし…。」

照「それはさっきも聞いた。咲に早く疲れを癒してほしいから、今度は私の言うこときいて。」

咲「…う…うん。何かごめんね…、気を遣わせちゃって…。」

照「家族なんだから当然。」

咲「…ありがとう。それじゃ、お言葉に甘えるね…。」

照「うん。バスタオルとかは置いてある。私はここにいるから、何かあったら気軽に呼んで。」

咲「うんっ。」

照「…あっ。部屋着とかパジャマとかって持ってきてる?」

咲「うん、持ってきたよー。」

照「分かった。」



咲「ふぅ……いいお湯…。」チャプ…

咲(お姉ちゃんとたくさん話せたし、ご飯も一緒に食べれて…、幸せだよ…。)

咲「本当に…よかったな…。」


~~~~~~~~~~~~~~~~

淡「明日は、せっかくだから普段サキが行かないところがいいよね。」

淡(テーマパークもいいけど、サキってば人ごみ苦手そうだしなあ…。それなら落ち着いたカフェとかゲーセンとか行って、バランスとった方がいいかな。)ウーン

淡「うん、そうしよ!それなら色々変更もきくし。」

~~~~~~~~~~~~~~~~

ピピピッ…

咲「…!」ビクッ

……ピッ

咲「あ、もしもしっ…」

淡「サキッ!」

咲「淡ちゃん?」

淡「明日なんだけど、朝10時に迎えにいくから!」

咲「あ、うん、10時だね。…えっ?む、迎えにくるの!?」

淡「うん。テルの家は知ってるから、準備して待ってて。」

咲「そんな…悪いよ。どこかで待ち合わせとか…。」

淡「そんなの無理に決まってるじゃん。サキはテル以上に方向音痴でしょー?」

咲「あう…。」シュン

淡「大人しく待ってること!いい?」

咲「う、うん…。ごめんね。」


咲「…あの…明日ってどういう予定なのかな?」

淡「んー?電車乗ってー、買い物したりご飯食べたり。…あ、サキは行きたいところある?」

咲「えっと…、特には……あ、大きい本屋さんに行きたいかな。」

淡「おっけー!都心に出るつもりだから問題ないよ。」

咲「あ、ほんと…?ありがとう。」

淡「ところでサキは今何してたの?」

咲「んーと、お風呂上がったから髪を乾かして、一息ついてたところだよ。」

淡「テルもいるんだよね?」

咲「お姉ちゃん?今はお風呂入ってるよ。…何か用事あった?」

淡「あ、そうなんだ。ううん、聞いただけ。」

淡「サキは今日どこで寝るの?」

咲「客間だよー。あのねっ、私がお風呂入ってる間に、お姉ちゃんがお布団敷いててくれてたの…!」

淡「ふーん…。寝るの、テルとは一緒じゃないんだ?」

咲「え?うん。お姉ちゃんは自分の部屋があるし。」

淡「そ…。」ホッ…

咲「…でも…」

淡「え?」

咲「…私はちょっと…一緒に寝たかったなって気持ちもあるの。えへへ…。」

淡「……サキはもっと、姉離れしないとダメだよ。」

咲「うーん、そうかなあ…。」

淡「そうだよっ。」

淡「それに、他にも身近にサキのこと考えてる人がいるよ…!」

咲「え?そ、そうなの…?」

淡「そうなのっ!だからサキはもっと周りを見るべき!」

咲「う、うん…。分かった…。」


ガチャッ

照「咲?何してるの?」

咲「あ、お姉ちゃん。今ね、淡ちゃんと電話を…」

淡「テルー?」

照「…そう…。夜遅いから、もうそろそろ切り上げた方がいいよ。」

咲「あ、うんっ。」

咲「もしもし、淡ちゃん…?ごめんね、時間が遅くなってきちゃったから……。」

淡「…ん。分かったよ。それじゃあサキ、明日ね!」

咲「うん、また明日っ。」

ピッ

照「…淡とは明日何時から遊ぶの?」

咲「10時からだよー。」

照「あ…、結構早いんだね…。」

咲「あっ、そうなんだ…?ふふっ、寝坊しないようにしなくちゃ。」

照「…どこで待ち合わせ?」

咲「それがね、淡ちゃん、ここまで迎えにきてくれるの。」

照「えっ?」

咲「私も、それは悪いよって言ったんだけど…。そうじゃないと私は迷子になるでしょ、って気を遣ってくれて。そのままお願いすることにしたの。」

照「…そう。」


照「それじゃあ明日は、10時に淡がここにくるんだね?」

咲「うんっ。」

照(午前中から…。この様子だと1日中、咲を離さなそう。淡がこんなに入れ込むとは思わなかった…。)

照(咲がこっちにいる間、2人きりでゆっくり過ごしたかったのに…。)

照「淡とは結構…仲がいいんだね。」

咲「うん…!自分でも、こんなに仲良くなれたことにびっくりしてるんだ。」

照「そっか…。」

咲「麻雀の話だけじゃなくて、学校のこととか…趣味とか…普段の何気ないこととか、色々お話できるの。打ち方も性格も、全然違うのに不思議だよねっ。」

照(淡と、たくさん話してるんだ…。きっと私以上に…。)

咲「…あっ、いけない。もうこんな時間になっちゃった。」

照「え?ああ、ほんとだ。」

咲「私そろそろ寝るねっ。おやすみなさい。」

照「…うん。おやすみ…。」


照「はあ…。」

照(眠れない…。)



私…どうしちゃったんだろう…。
妹が後輩と遊ぶなんてこと、姉としては嬉しく思うべきなのに……。

淡のことは後輩として好きだし、チームメイトとしても信頼してる。人間的にも魅力的だと思う。

でも、もしかして淡は咲のこと……、なんて思うと…………。

もし、ただ仲のいい友だちっていうなら…、私は見守ってあげなきゃ…。淡は上級生しかいないチームでほとんど過ごしてきたから、咲の存在が嬉しかったんだ、っていうそれだけのことかもしれないし…。

少し距離が近い友だちなんて、珍しくないよね…。

……………でも……。



照「……だめだ。水でも飲もう。」ムク

ペタペタ…

照「……ふう…。」ゴクッ

照(咲は…寝てるよね…。)

照(……。)

照(…ちゃ…ちゃんと眠れてるか、様子を見るだけなら…。)ドキドキ


ペタ…ペタ…

照(……。)ソッ…

咲「…すぅ…すぅ…」

照(よかった…寝てる。…あ、毛布が…。)

ソッ…パサッ……

咲「…ん…」

照「!」ビクッ

咲「……すぅ…」

照(…。)ホッ

照(…………咲…。)

咲「……ふふ…」

照(…あ…笑ってる……可愛い…。)

咲「…んっ…」コロッ

咲「……お…ねえ…ちゃん………」

照(…!……え…、私の夢…見てるのっ…?)ドキドキ

咲「…ん……いっ…しょに……」

照(……!)

照(…わ……だ、だ…め……可愛すぎて……おかしく…なりそう……!)ブルッ

照(……咲………咲っ…。)ドキドキ

咲「……すぅ…」

照(さきっ……!)ドキドキ


照(…!)ハッ

照(私、今なにを…しようと……。)

照(だめ…!)ブンブン

照「…。」

照「…部屋…もどろ…。」

咲「………すぅ…」

照「咲…おやすみ…。」

今日はここまでです


【MEMO】 27まで




咲「………ん……」

咲(……朝…?)

ムク…

咲「………。」ボー…

咲(…あれ……ここって………)

咲「…あ、そうだ…。お姉ちゃんのところ…来てたんだ…。」



何だかお姉ちゃんの夢を見た気がする…。昨日いっぱいお話したり、ずっと一緒にいたからかな?

もしそうなら、夢の中まで一緒にいられてラッキーだなあ…!…でもお姉ちゃんに言ったら、きっと呆れられちゃうよね。

淡ちゃんの言う通り…私、もっとお姉ちゃん離れした方がいいのかな…?



咲「あれ…?そういえば今日って、確か…!」パッ

咲(…今は8時過ぎ。よかった…。)ホッ

咲(着替えて、お布団は片づけたし…。…あ、お姉ちゃんはもう起きてるのかな?)


カチャッ、ペタペタ

咲(台所は…)ソッ

照「…あ、咲。起きたの?」

咲「お姉ちゃん…!えっと、おはようっ。」

照「おはよう。」ニコ

咲「…えっ、ご飯つくってくれてたの?」

照「うん。少し早く起きれたから。」カチャカチャ

咲「ご、ごめん…!私寝てて…。」アセ

照「ううん。咲は昨日疲れてたんだから、ゆっくり休んだ方がいい。もうすぐ食べれるから待ってて。」

咲「あっ、うん、もう充分休まったよ!今からでも手伝わせてっ。」

照「ありがとう。でも、大丈夫だよ。」

咲「…お姉ちゃんの…、役に立ちたいの…。何か、できることないかなあ…?」モジ…

照(…!)ドキッ

照(……うう…平常心…平常心……。)

照「そ、それじゃ…、そこのボウルの野菜…盛りつけてもらっていい…?」

咲「…!」パアッ

咲「うんっ!」

照(あんな言い方…。咲の素直すぎるところは本当に困る…。)ハア…


咲「あ、シャケと玉子焼きだっ。美味しそう!」

照「どれも簡単にできるから。」

咲「手軽で美味しくて、バランスもいいなんて最高だね。」ニコニコ

照「咲は優しいね。」

咲「休みの日なのに、朝からご飯をつくってくれてたお姉ちゃんの方がずっと優しいよっ。」

照「たまたまだよ。…さ、朝ご飯にしよう。」

咲「うんっ。」

照・咲「いただきます。」

咲「…。」ハム

咲「…この玉子焼き…、中にチーズが入ってるっ…。」

照「うん、入れたの。」モグ

咲「サラダの野菜の数も多いし…、小鉢にはお肉料理まで…。」

照「…?」

咲「お姉ちゃんっ…全然お手軽なんかじゃないよこれ…!どれもすごく美味しいし…、ひと手間もふた手間もかけてるでしょ…!」

照「そんなことない。ある程度のものは、大体がすぐ使えるようにして冷凍してたものだし…。」

咲「それでも…。」

照「それに、ひと手間くらいならお手軽料理のうち。いいから咲はいっぱい食べて。」

咲「う…ん。」

咲(お姉ちゃん…私のためにこうやって用意してくれたのかなあ…。普段はきっとここまでしないよね……?負担、かけちゃったかな…。)


咲「あ、シャケと玉子焼きだっ。美味しそう!」

照「どれも簡単にできるから。」

咲「手軽で美味しくて、バランスもいいなんて最高だね。」ニコニコ

照「咲は優しいね。」

咲「休みの日なのに、朝からご飯をつくってくれてたお姉ちゃんの方がずっと優しいよっ。」

照「たまたまだよ。…さ、朝ご飯にしよう。」

咲「うんっ。」

照・咲「いただきます。」

咲「…。」ハム

咲「…この玉子焼き…、中にチーズが入ってるっ…。」

照「うん、入れたの。」モグ

咲「サラダの野菜の数も多いし…、小鉢にはお肉料理まで…。」

照「…?」

咲「お姉ちゃんっ…全然お手軽なんかじゃないよこれ…!どれもすごく美味しいし…、ひと手間もふた手間もかけてるでしょ…!」

照「そんなことない。ある程度のものは、大体がすぐ使えるようにして冷凍してたものだし…。」

咲「それでも…。」

照「それに、ひと手間くらいならお手軽料理のうち。いいから咲はいっぱい食べて。」

咲「う…ん。」

咲(お姉ちゃん…私のためにこうやって用意してくれたのかなあ…。普段はきっとここまでしないよね……?負担、かけちゃったかな…。)


咲「ごちそうさまでしたっ。」

照「お粗末さまでした。」

咲「ううんっ、すっごく美味しかったよ。えへへ、つい食べ過ぎちゃって、お腹苦しい。」テレ

照「本当、綺麗に食べたね。」

咲「お箸が止まらなくて…。」

照「ありがとう。…お腹、休めた方がいいね。温かいお茶でも飲む?」

咲「うんっ。」

照「ちょっと待ってて。」

カチャ…カチャ…

咲「あっ、片づけは私がするよっ!」

照「お腹いっぱいのときに動くのはよくない。座ってて。」

咲「だ、大丈夫だよっ。…あ、じゃ…じゃあ、お皿洗いとかは私がするから、そのまま流しに置くだけにしてっ…。」

照「気にしなくていいのに…。」

咲「今度はお姉ちゃんが休んでっ。ね?」

照「……分かったよ、咲。ありがとうね…。」ニコッ

咲「うん。」ホッ…

照「お茶いれるから…、それ飲んで一息ついてからお願いね。」コポコポ

照「はい、どうぞ。」

咲「ありがとう、お姉ちゃん。」


咲「はあ…、お茶も美味しかったー。体がポカポカしてるよ。」

照「朝は冷えやすいから、温かいものが体に一番。」

咲「うんっ。」

咲「それじゃあ私、お皿洗うね。」ガタッ

照「手伝うよ。」ガタ

咲「ううん。私だけで大丈夫っ。」

照「1人じゃ大変だから。」

咲「平気平気っ。お姉ちゃんはゆっくりしててよ。」

照「2人でやった方が早いし…。」

咲「だーめー。座ってて。」

照「でも…」

咲「うぅ…お姉ちゃん…、私のお願い…きいてくれない…?」

照(…っ!!?)

照「わ、分かった!休むからっ!」ワタッ

咲「えへへ…ありがとう…。」コシ…

照(そ、そんな泣きそうな顔するなんて…。)ドキドキ…

咲(少しでもお姉ちゃんに休んでもらおうっ…。)


照「…あ、咲。」ハッ

咲「え?なに?」

照「昨日は言うの忘れてたけど、お皿洗うときはエプロンをした方がいい。あそこにかけてあるから使って。」

咲「あ、そっか。忘れてたよ。」

サッ…パサ…

咲「これでよしと…。お姉ちゃん、ありがとう。」

照「」

照(………咲の…エプロン姿…。)カア…

咲「水がはねても大丈夫だねっ。」ザー、カチャカチャ

照(…まずい…。こんなに破壊力があるとは思わなかった。…咲の細い体が際立って……無防備な後ろ姿とか、…抱き締めたくなる……!)ドキドキ

照(だめだめっ…。平常心でいるって決めたのに、朝からこんなことじゃいけない…。)

咲「~♪」カチャカチャ

照(昨日も今までのも、全部のことが咲にとっては自然体だから敵わない…。)ハア…



カチッ…カチッ…

咲(まだ10時まで20分近くある…。余裕もって準備が終わってよかった。)

照「咲?」ヒョコ

咲「あ、ここにいるよ。」

照「用意できたの?」

咲「うん。…っていっても、荷物はほとんどないんだけど…。」

照「お金とか…大丈夫?」

咲「それは平気っ。お姉ちゃんのところに行くってことで、お父さんが多めにおこづかいくれたの。」

照「そう…。何かあったら、なんでも言ってね。」

咲「ありがとう、お姉ちゃん。」ニコッ

ピンポーン!

今日はここまでです

>>51はボケてた、ごめん


【MEMO】 33まで

乙です
投下開始から読ませて頂いてるけど、家事をする照とか珍しいタイプですね

自己満で書いてるけど、レス貰えるとやっぱり嬉しいな
これまでくださった人ありがとございます

>>57
ですよね… 笑
違う可能性のポンコツてるてるを出してみたかったという…、願望…
抵抗ある方は、咲は褒め上手な子って感じでおなしゃす


咲「あっ。淡ちゃんかな?」

照「待ってて。出てくる。」

テクテク、ガチャッ

照「はい。」

淡「おっはよう、テルー。」

照「淡…おはよう。」

淡「今日、サキと遊ぶ約束してるんだ。迎えにきたの。」

照「うん、聞いてるよ。ちょっと待ってて…。」

淡「うん。」

テクテク…

照(……。)

咲「あ、お姉ちゃん。来た人って淡ちゃん?」パッ

淡「サーキッ!迎えにきたよ。」

咲「淡ちゃんっ。」タタ…

照(あっ…。)

咲「おはよう。早かったね。」ニコ

淡「そう?まあ、昨日おあずけくらってたからね。」

咲「あはは…ご、ごめんね?」

淡「すぐ行ける?」

咲「うん。荷物はこれだけだから。」

淡「じゃあ、行こうか。」

咲「うん。お姉ちゃん、行ってきます。」

照「あ、うん…。気をつけてね。」

咲「はーいっ。」

ガチャン…

照(……咲…、…行っちゃった…。)シュン


テクテク

咲(いい天気…。晴れてくれてよかったなあ。)

淡「…。」ジー…

咲「…ん…?淡ちゃん、どうかした?」

淡「サキ、前に会ったときより可愛くなってる。」

咲「ええっ?」

淡「化粧とか、してないよね?髪型も変えてないし…」

咲「なっ、急に何言い出すのっ。」ワタ

淡「なにって…。思ったことをそのまま言っただけだよ。」

咲「そんなこと言われたら恥ずかしくなるよ…。」カア…

咲「というより、淡ちゃんの方がずっと綺麗で可愛いよ。思わず嫉妬しちゃうくらい。」

淡「ふえっ!?」ドキッ

淡(サ、サキ…今なにを…!嫉妬?私にっ?)

咲「……あ、駅が見えたっ。」

淡「あっ、う、うん。」ドキドキ


淡「サキ、スイカとかある?」

咲「改札でピッてするカードだよね…?ごめん、持ってないの。切符買うよ。」

淡「じゃあはい、これ。」

咲「えっ?淡ちゃん、買ってくれてたの?」

淡「まあね。」

咲「わわ、ごめんねっ。ありがとう。」

咲「今払うからっ…。」ゴソゴソ

淡「いいよ。私が誘ったんだから。」

咲「だめ。……あ、ぴったりあるよっ。はい。」

淡「いらないってば。電車賃くらい気にしないで。」

咲「いくら淡ちゃんでも、そういうのはよくないよ。私も淡ちゃんとお出かけしたかったし…。ね?受け取ってね。」ギュ…

淡「あー…もう…。」

咲「淡ちゃん。」

淡「んー?」

咲「私の切符のことまで考えててくれてありがとう。」ニコッ

淡「っ…!」

淡「べ、べつにっ。…ほら、電車くるから行くよ。」フイ

咲「うんっ。」


ガタンゴトン…

淡「切符見たから行き先は分かったと思うけど…。」

咲「うん。…聞いたことはあるけど、どういうところなの…?」

淡「昨日、都心に出るって言ったんだけどさー、行き帰りの時間かかって面倒だから、ある程度近場にしたの。」

咲「そうなんだ。」

淡「でも、食べるところもオシャレなお店も、もちろん本屋もいっぱいあるから。東京観光としても、なかなかいいと思うし。」

咲「楽しみだなー。」ワクワク

淡「そういや朝ご飯は食べたの?」

咲「うん。お姉ちゃんがつくってくれてて、いっぱい食べちゃった。」

淡「へえ。」

咲「淡ちゃんは?」

淡「軽く食べたよ。」

咲「え…?それじゃあ今、お腹空いてる?」

淡「あ、いや私、朝はいつも少食だからさ。今もまだ空いてないよ。」

咲「そうなんだ。それならいいんだけど…、もし遊びに行くこと考えて、ご飯の量控えてくれてたなら…私、悪いこと言っちゃったって思って。…えへへ。」ポリ…

淡「」

淡(…鈍いのか鋭いのか分かんないよ、ほーんと…。)


ガタン、プシュー

咲「わ…、いっぱい乗ってきたね。」

淡「大体みんな行き先は一緒なんだろうねー。」ハア

淡(今日こんなに混むとは思わなかったな。サキは電車も人ごみも慣れてないから守ってあげなきゃ。)

淡「サキ、もっとこっち…」

ギュギュッ…!

咲「きゃっ…す、すごい人…。」

淡(!!)

グイッ

咲「わっ…!」

淡「…。」

咲「あ…、淡ちゃんっ…ありがとう。」ホッ…

淡(今、知らないやつがサキにあたった…。)イラ

淡(…サキは誰にも触れさせたくない。私が壁になれば、ひとりだってサキにはこれ以上近寄れないんだから!)

淡「ちょっとキツいと思うけど、もう少し我慢して。」ボソッ

咲「大丈夫だよ。淡ちゃんがすぐ目の前にいてくれてるし。それと…」

淡「ん?」

咲「こんなに近づいたの、はじめてだからかな…?暖かくて、いい匂いがして…、淡ちゃんに抱き締められてるみたい。」ポソッ

淡(なっ!?)ドキッ

淡「こっ、こんなところで何言ってんのっ!」カアッ

咲「あ…へ、変だったかな…?ごめんね。」テレ…

淡(…ヤバイヤバイヤバイ…!そんな不意打ちくらったらブレーキきかなくなるじゃん…!)ドキドキ

淡(こっちはサキの匂いだけでも我慢できなくなりそうなのを…何とか耐えてんのにっ、サキのバカー!)


咲「はあ…すごい人だったね。」

淡「疲れた?」

咲「え?ううん。びっくりしたけど、疲れてはないよ。」

淡「…そ。」ホッ

咲「駅前、お店がいっぱいあって何があるか混乱しそう…。」

淡「麻雀の役とか、大会ごとの小っさいルール覚えるよりずっとラクだよ。あ、サキ、あそこで飲み物買おっ。」

咲「あっ、うん。」

カランカラン…

淡「メニューください。」

咲「わ、すごい種類。分からないものばっかりだよ。」

淡「コーヒーベースのがおいしいけど、サキ飲めるっけ?」

咲「ん…ちょっと苦手かな…。」

淡「じゃー、これは?たかみ先輩おすすめの。」

咲「抹茶?…ラテって、ミルクを入れたものだっけ?」

淡「うん、たしかそう。甘くておいしいよ。」

咲「じゃあ、私はそれにしようかな。」

咲「淡ちゃんは何にするの?」

淡「そりゃー私は高校100年生だからね!サキみたいにお子様なのは頼まないよ!」

淡「これっ!」ビシッ

咲「わ、可愛い…。上のクリームにチョコとかお砂糖がかかってイラストになってるんだね。これは…クマさん?」


カランカラン…

淡「早速飲もうよ。」

咲「あ、歩きながら飲むの?」

淡「そうだよ?だからテイクアウトにしたんだもん。」

咲「えっ…と、どこかに座って…飲めないかな…?」

淡「飲みづらい?」

咲「あ…その、慣れてないっていうのもあるんだけど…。それよりも、はじめてのお店で淡ちゃんと買ったものだから、ゆっくり味わいたくて。」

淡「………。」

淡(…サキって、なんでこう…私が予想してるこたえの何巡も先を出すかな!)クラ

咲「予定とか、くるっちゃう…?」

淡「…へっ!?いやっ、そんなことないよ?へーき!向こうにベンチがあるから、そこ行こ。…あ、ちゃんと屋内だから。」フイッ

咲「あ、ありがとう。」

咲(淡ちゃんに迷惑かけちゃったかも…。)シュン…


テクテク…、ポスッ

咲「いただきます。」

淡「いただきー。」

咲「………ん、…これすごく濃くて甘いね。」

淡「まあ、こういうところのはねー。特にホットだし。」

咲「美味しい…。」コク…コク…

淡「……。」

淡(夢中で飲んでる…。横顔、可愛い。)ドキドキ

咲「…ん?私の顔に何かついてる?」クルッ

淡「えっ!?いっいや、そんなんじゃなくて…!」ワタッ

咲「?」キョト

淡「サ、サキじゃなくて、その抹茶ラテ見てたの!ちょ…ちょっとくらい飲ませてよっ。」

咲「あっ!そういうことだったんだね!ごめん、私一人占めしちゃってて。」

淡「ま、まったくもー。サキはまだまだだなあ。」

咲「はいっ、どうぞ。」スッ

淡「あ、ありがと…。」


淡(サ…サキがたった今まで飲んでたもの…!これ私飲んだら…か、間接キスだよね…!?…あれ…?…そういやこうゆうことするのって、はじめてじゃ…。)ドキドキ

咲「…ねえ、淡ちゃんのってコーヒー強い?」

淡「えっ…!?……い、いや…つよくない、よ…?」ビク

咲「そうなんだ。それなら…私も、少し飲んでみていい?」

淡「うえっ?わ、私のをっ…?」

咲「うん。…あっ、だめなら全然いいんだけど…!」

淡「い、いいよっ。ほら。」パッ

咲「わ、ありがとう。…いただきます。」クピ

淡(…!)ドキッ

咲「……あ、思ったより飲みやすくて…美味しい。」

淡(サ…、サキが私の飲んだやつ、飲んでる…。)ドキドキ

咲「抹茶ラテの後だから、これのほろ苦い味が丁度よく感じるよー。」

咲「はい、淡ちゃん。ありがとう。」スッ

淡「あ、うん…。」

淡(…ど、どうしよう…。これ飲んでも、サキと……。)ドキッ

咲「淡ちゃんは、それ飲んだ…?」

淡「わっ!…う…うん、飲んだよ!けっこー甘かったかなっ。」パッ

咲「あ、飲んでたんだっ。ごめん、気づかなかったよ。…私は好きだけど、淡ちゃんには甘すぎたよね。」

淡(の、飲めなかった…。)ガク

淡(もー、なんなのっ、こんなはずじゃなかったのに!私は100年生なんだからっ…。リードして、サキを私に夢中にさせるんだもんっ!)




淡「サキッ、そろそろ行くよっ。」

咲「あ、うん。…どこ行くの?」

淡「サキはもっとオシャレした方がいいから、アクセとか見に行こ!」

咲「えっ!?い、いいよ私は…。」アセ

淡「だーめ。行くったら行くの。」

咲「ふええ…。」

~~~~~~~~~~~~~~~~

ガチャン…!

照「あっ。」

照「コップが…。」

照(…咲は今何してるんだろう。淡と、どんなこと話して…。)

ビーッ!ビーッ!

照「!」ビクッ

照「…あっ、洗濯機の蓋閉めるの忘れてた…!」タタッ

モコモコ…

照「…えっ!!な、なにこれすごい泡…!?」

照(わわ…!洗剤の量、間違えたんだ…!)アセアセ

~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまでです


【MEMO】 43まで


淡「うーん、これはダサい。これもダメ。これはムリ。」

咲「……。」

淡「これは、なんか違うなあ…。」

咲「あ、淡ちゃん…あの…。」

淡「あっ。あっちのコーナーの方がサキっぽいかも!」パッ

咲(…このお店でもう3件目だよー…。)

淡「サキッ!ちょっとこっち来てっ。」

咲「う、うん。」

咲(お店入るたびに一生懸命選んでるけど…淡ちゃんどんなのを探してるのかなあ…?)

淡「うーん…、違うな。」

淡(ネックレス、イヤリング、ヘアアクセ…色々あるけどサキに似合うものがないなー。主張しすぎず、地味すぎずってなかなかないもんだね。)ハア

咲(……。)キョロ…

淡(サキは青系もピンク系も似合いそうだけど、なーんかどれも媚売ってる感じでしっくりこないってゆうか…。)

淡(自然体のサキに合うようなのがあればいいんだけど…。……あれ?サキ?)キョロッ

淡「サキッ?どこ!?」

咲「あ、淡ちゃん。こっちにいるよ。」ヒョコ

淡(…よかった。)ホッ…


淡「急にいなくならないでよ。迷子になったかと思った。」

咲「あ…ごめんね。こっちに可愛いのがあったから…。」

淡「ここ、北欧系コーナー?」

咲「うん。北欧系っていうのはよく分からないんだけど、これとかおしゃれだなって見てたの。」

淡「へー。」チラッ

淡(あっ、これ…。)

咲「細い糸に、それぞれ飾りが何個か付いてるだけのシンプルなものなんだけど、何だかずっと見れて。」

淡「この花のやつ…」ボソッ

咲「あ、うん…!これ、お花の模様もちゃんとあるの。小さいのに一生懸命咲いてる感じがして、一番気になっちゃった…。」

淡(サキにぴったりのブレス…。私が思ってたのとは違うけど、それ以上に似合う…!)

淡「…これにしなよ!」

咲「え?…んー…。私、アクセサリーとか似合わないから…。」

淡「いやいや、これ絶対似合うって!花のなんて、サキのためにあるようなもんじゃんっ。」

咲「いや…そんなこと…」

淡「サキも気に入ってるんでしょ?なら買おうよっ。」

咲「え…?…う、うん。…そうだね、買っちゃおうかな。」

淡「わっ、やった!」

咲「…ふふ、何か淡ちゃんの方が嬉しそう。」ニコ

淡「えっ、いや…。べつに…。」フイ

咲「それじゃあ、お会計してくるね。」


咲「……あっ。」

淡「え?どうしたの?」

咲「淡ちゃん…!これ見てっ!」パッ

淡「…あっ、星形のやつだ…。」

咲「これ…淡ちゃんにぴったりだよ…!」キラキラ

淡「え、それって…。」

淡(サキと同じ種類のものが持てる…?)ドキ

咲「おそろいのブレスレットってことで、よかったら淡ちゃんも買わない…?」テレ

淡(…!)キュン

淡「う、うん。買う…!」

咲「ほんと?わーいっ!」

咲「…あれ?このブレスレット…、輸入品につき現品限りって書いてある……!」

淡「えっ…。」

咲「すごいね!もしかしたら日本で、おそろいでこれを持ってるのは、私たちだけかも知れないよ…!」パアッ

咲「淡ちゃんと私だけの絆みたいで嬉しいなっ…。」

淡(サ、サキ…!)

淡「わ、私とサキの仲はこんな細いブレスなんかじゃ表せないって!サキったら本の読みすぎっ。」

淡「ほら、さっさと買うよ…!」タタ…

咲「もー…淡ちゃん、夢がないよー。」トボトボ

淡(……。)ドキドキ




咲「うふふ、おそろいなんて嬉しいなあ…!」ニコニコ

淡「サキったら、まだ言ってる。」

咲「だって、すごく可愛くて、現品限りで、お花と星形のがそれぞれあるなんて運命的だよ…!」

淡「あー、はいはい。けどそりゃ、ツイてるに決まってるよ。」

咲「何で?」キョトン

淡「私がいるからっ。」

咲「…。」

淡「試合でも負け知らずの私からすれば、アクセの1つや2つ、なんのそのだね。」フンス

咲「はあ…。淡ちゃんには敵わないよ…。」

淡「…あれ?けっこー時間過ぎてたんだ。」

咲「あ、ほんとだ。」

淡「お昼食べる?」

咲「そうだね、お腹すいちゃった。」

淡「お店自体は何でもあるんだけど、何か希望とかある?」

咲「うーん、特にはないんだけど…。強いて言うなら…、朝は和食だったからそれ以外の方が…。」

淡「おっけー。なら、中華とかどう?」

咲「あっ、いいねっ。食べたい!」

淡「よし、決まり!」


咲「…あっ、待って。淡ちゃんは?」

淡「え?私がなに?」

咲「朝ご飯に食べたものとか…、お昼に食べたいものとか。」

淡「ああ。それならへーき、私も中華がいいしさ。」

咲「本当?私に付き合わせちゃってない…?」

淡「そんなことないって。大体、中華は?って言ったの私だよ?」

咲「あ…、そっか。」

淡「サキの方が気を遣いすぎっ。気にしないでいいから。」

咲「う、うん。ごめん…。」

淡(まー、そんなサキだから夢中になるんだけどね…。)



テクテク…

淡「ここだよ。入ろっ。」

カラン…

咲「わ…、店内おしゃれ…。」

淡「2人です。…あ、できたら窓側でー。」

咲「…。」ドキドキ

淡「すぐ通せるって。行くよ、サキ。」

咲「あ、うんっ。」


ポスッ

咲「…すごく綺麗なお店だね…!」

淡「うん。手ごろな値段なのに、ゆったり落ち着いた店内でさ、穴場なんだ。」

咲「あんなにお店がいっぱいある路地の中からここを見つけるなんて、淡ちゃんはすごいなあ…。」ハア…

淡「いや、知り合いとかネットの口コミからだよ。」

咲「うーん、私にはムリそう…。」

淡「たしかに。ネットは苦手だし、店までたどり着かないサキには難しいかもね。」ニヤ

咲「淡ちゃん、ひどい…!」

淡「あはは、冗談だって。」

咲「むう…。」

淡「もー、機嫌なおしてよ。悪かったってば。」

咲「それじゃあ、淡ちゃんが頼むもの一口ちょうだい。」ムー

淡「え?」

咲「それで許してあげるっ。」

淡「う、うん…いいよ?」

咲「やったー。それじゃあメニュー決めようっ。」

淡「…うん。」

淡(サキ、無邪気すぎでしょ…。)カア




淡「料理全部来たね、食べようか。」

咲「うん、どれも美味しそうだねっ。」

咲「いただきますっ。」

淡「いただきまーすっ。」

咲「………。」ハム、モクモク…

淡「…サキが頼んだのはチンジャオロースだっけ?…どう?」

咲「…うん!すごく美味しいっ。」

淡「おー、それはよかったよ。」

咲「お肉がすごく柔らかくてね、竹の子とか具材もいっぱい入ってるのっ。」

淡「うん。私も料理来たとき、それってこんなに豪華な感じだったっけ?って思った。」パクッ

咲「淡ちゃん。」

淡「ん?」モグモグ

咲「その麻婆豆腐、一口ちょうだいっ。」

淡「…あっ、ああ…、そうだったね。」

淡(……!)ピンッ

淡(これって、すっごいチャンスだよっ!さっきはミスったけど、ここで挽回するんだから…!)


咲「…ちょっと辛そうかなあ…。」

淡「はいっ!サキ、あーん…。」スッ

咲「ふえっ!?」

淡「一口食べたいんでしょ?」

咲「なっ、あ…淡ちゃんっ…!じ、自分で食べるからっ。」

淡「この方がてっとり早いじゃん。」

咲「で、でも…。」

淡「ほら、冷めちゃうよ?いらないの?」ニコニコ

咲「…は、恥ずかしいよお…。」カア

淡「早くっ。腕が疲れちゃう。」

咲「うう…。」ドキドキ

パクッ

咲「……。」モグモグ…

淡(真っ赤になって食べてるっ…。)ドキドキ

淡「…どう?美味しい?辛かった…?」

咲「……。」

淡「サキ…?」

淡(やば、怒らせちゃった…?)

咲「…どきどきしすぎて、味…、分からなかった。」プイ

淡「」

淡(…サ、サキ…可愛すぎ………。)グッタリ


咲「悔しいから、私からもしちゃうね。…はい。」スッ

淡「えっ!」

咲「ふふ、お返しっ。」

淡「わ、私はいいってば!」アセ

咲「だめだよ、淡ちゃんだけズルいもん。口開けて…?」

淡(ウソウソ…!サキがこんなことするなんて…!)ドキドキ

咲「はい、あーん…」

淡「あ…あーん……」カア

淡(幸せすぎて死にそうかも…。)



咲「美味しかったー…!」

淡「ショーロンポー、スープすごかったね。」

咲「うんっ、火傷しそうなくらい熱々だったけど、あっという間に食べちゃった。」

淡「ここにしてよかったよ。」

咲「…ここのお店、お姉ちゃんにも教えてあげたいな…!」

淡「テル…?」

咲「うん、きっと喜ぶよっ。」

淡「…サキはいつもテルのこと考えてるの?」

咲「え?うーん、どうだろ…。でも、嬉しいことがあったときは、お姉ちゃんに話したいなって思うかなっ。」ニコ

淡(……。…私は、サキだけに…。)


~~~~~~~~~~~~~~~~

照「はあ…、ようやく終わった。」



泡だらけになった洗濯機と脱衣所を掃除して、洋服は洗濯し直して…、リビングに戻ったらコップ割ってたこと思い出したから片づけて……。

気づけばもう14時半すぎ…。



照(お腹すいた…。何か食べよう。)

照(冷蔵庫に何か…)ゴソゴソ

ピンポーン!

照(!)ビクッ

照(まさか…!)

ダダダッ…!

照(咲っ!?)ガチャッ!

菫「うわっ!?」ビクッ

菫「びっくりしたー…!お前っ、何だその早さ!」

照「」

~~~~~~~~~~~~~~~~

淡「ね、このあとはゲーセン行こっ!」

咲「ゲームセンター?う、うん、いいけど…。」

淡(サキは私だけを見ればいいっ。いっぱい楽しんで、私以外のことなんて考えられないようにするんだから…!)

今日はここまでです


【MEMO】 53まで


ピコピコ…

咲「…わ、…わっ…!」ワタ

淡「あはは!サキは弱いなー。」

咲「…あー、負けちゃった。」

淡「貸して。次は私やる!」

咲「うん。」

淡「サキがこのハンドルを握ることはもうないよっ。」

ピコピコッ

咲「すごい…、淡ちゃん強いね…!」

淡「まだまだっ。あと3面で、ボスが出てくるから。」

咲「そ、そこまで知ってるんだ…。」



淡「はー!いい仕事したっ!」

咲「すごかったよ、淡ちゃん!最後の方は、他のお客さんたちが見に来て人だかりになってたもん!」

淡「新記録出せそうだったから、ちょっとBGMがオーバーなのになっちゃったせいだね。」

咲「でも最後まで勝ってたよっ。淡ちゃん、ゲームも得意なんだね!」

淡「腐ってたときは暇つぶしにちょいちょい通ってただけ。あんなの慣れだよ。」

咲「そうなんだ…。」

淡「あ、UFOキャッチャー見ようよっ。」


咲「…わあ、可愛いのがいっぱいある!」

淡「何かいいやつある?」

咲「うーん。…あっ、これとか…。」

淡「これって…ゆる系ってより、ゆるダル系…?ヨダレ出ててシュールだね。」

咲「でも目が丸くて、可愛いよ?」

淡「よーしっ、ならこの私がハントしてあげよう!」

咲「えっ?い、いいよ。難しそうだし…。」

淡「いいから、いいから。」チャリン

咲「あっ。」

淡「この位置なら楽勝だよ!」ウィーン

咲「淡ちゃん…。」

クイッ

淡「…ん。もう1回でいけるね。」

咲「じゃ、じゃあ次は私が出すから…!」チャリン

淡「あっ!もー、そんなことしなくていいのに…!」

咲「淡ちゃん、頑張ってっ。」ニコ

淡「…サキに応援されたら絶対取れるよ。見てて。」ウィーン

クイッ、…ポトッ!

淡「やった!」

咲「わあっ!淡ちゃんすごい…!すごいよっ!」

淡「えへへ。…はい、どーぞっ。」


咲「えっ、いいの…?淡ちゃんが取ったのに…。」

淡「サキのために取ったんだから当然だよっ。」

咲「あ、ありがとう…!」パア

淡「どーいたしまして!」

咲「うわあ…嬉しい…!大事にするね!」ニコッ

淡「景品1つで大げさだな。」

咲「淡ちゃんが取ってくれたのだもん…!あっ、そうだ。記念に、この子…あわわちゃんって名前にしようかな!」ニコニコ

淡「」ドキッ

淡「な、なにそれ…。」

咲「え?変かな?」

淡「い、いやべつに…変とかじゃないけど…。」

淡(高価なものでもないし、ゲーセンで取ったただのぬいぐるみにこんな喜んで…。しかも記念に私っぽい名前つけるとか…!サキのすること全部、私からしたらありえないよ…。)ドキドキ

咲「ふふ、淡ちゃんからもらった、あわわちゃん。…うん、ぴったりだねっ!」

淡(うわ、やばいっ。)キュン

淡「…あっ、そっそうだ!サキ、本屋行きたいんじゃなかったっけ?」

淡(サキのペースにハマっちゃうとリードできなくなるよ…!)

咲「あっ、うん!」

淡「近くにあるから、行こうか。」

咲「わあ、ありがとうっ。」


~~~~~~~~~~~~~~~~

菫「悪いな、おやつご馳走になって。」

照「私からしたらこれはお昼ご飯。」モグモグ

菫「そうなのか。…うん、うまいなこのホットケーキ。」

照「ところで、菫はどうしてうちに?」

菫「あっ、そうだ。忘れてた。」ゴソ

照「?」モグモグ

菫「…ほら。」ヒョイ

照「あ…、私の本…。」

菫「昨日咲ちゃんに会う前に読んでたやつだ。お前咲ちゃん見つけたら、本を置いて走っていったろ?」

照「すっかり忘れてた。」

菫「あと一応今日の昼前に、届けに行くぞって連絡をしたんだが…。」

照「え?ケータイに?」

菫「そうだ。」

照「全然気づかなかった…。」

菫「まあ、いいんだけどな。…ところで、咲ちゃんは?」キョロ…

照「…っ。」ピク


菫「いないみたいだが、出掛けてるのか?」

照「…淡とね。」

菫「ああ、そうなのか。そういえば昨日、淡とよく連絡取ってるって言ってたもんな。」

照「…うん。昨日の夜も電話してた…。」

菫「ふーん。やっぱり同い年同士、話しやすいのかな。」

照「…!」

菫「しかし照。お前、ケータイの連絡が私じゃなくて、もし咲ちゃんからだったらどうするんだ?身近に置いておいた方がいいぞ。」

照「咲からの連絡なら家のどこにいても絶対気づくっ。」

菫「」

菫(ちゃ、着信音が違うんだろうか…?)

照「咲は今なにしてるんだろう…。」

菫「淡と遊んでるんだろ?…気になるなら電話してみればいいじゃないか。」

照「遊びに行ってる妹にわざわざ電話するほど大事な用があれば別だけど…、何してるか聞くだけって姉としてどうなの…?」

菫「ま、まあ…普通はしないわな。」

照「……やっぱり。」シュン

菫「でも気になるんだろ?…心配で、っていうなら別に変ではないんじゃないか?」

照「…ほんと?私から咲に電話しても大丈夫?」

菫「咲ちゃんは、さほど気にしないと思うけどな…。」

照「じゃあ今すぐする。」サッ

菫「お前…ケータイ、ポケットに入れてたんじゃないか…。」ガク

~~~~~~~~~~~~~~~~


ピピピッ…

咲「わわ…!」ビクッ

淡「電話…?」

咲「わ、私みたい。」ゴソ

咲「…あ、お姉ちゃんだっ。」

淡「えっ。」

咲「ごめんね、ちょっと出るね?」

淡「うん…。」

淡(テルがなんで…。)

…ピッ

咲「もしもし、お姉ちゃん?」

照「あっ、さ、咲っ。」

咲「どうしたの?何かあった?」

照「あ、いや…その、今何してるのかなって思って……。」ドキドキ

咲「あ、そうなんだっ。今はね、淡ちゃんと本屋さんに向かってるの。」

照「そ、そう…。」


咲「さっきまではアクセサリー屋さんとかゲームセンターに行ってたんだけど…。あ、そうそう、お昼は中華料理を食べたよっ。淡ちゃんが教えてくれたお店で、すっごく美味しかったの!」

淡(……。)

照「そうなんだ…よかったね…。」

咲「今度お姉ちゃんも一緒に行こうね!お店の中も綺麗なんだっ。」

照「う、うん。楽しみにしてるね。」

咲「お姉ちゃんはお昼、なに食べたの?」

照「わ、私は菫とホットケーキを…」

咲「え…?弘世さん、来てるの?」

照「う、うん。私が忘れた本を届けに来てくれたから、そのついでに…。」

咲「そうなんだ。弘世さんによろしく伝えてほしいな。」

照「ん…、分かった。」

淡「サキッ、信号変わったよ。」

咲「あ、うんっ。」

咲「…ごめんねお姉ちゃん、信号変わったから切るね?」

照「あ、う…うん。咲、気をつけてね…。」

咲「うん、ありがとうっ。それじゃあ…。」

ピッ


咲「…。」ゴソ

淡「…テル、なんだって?」

咲「あ、うん、今なにしてるの?って電話くれたの。あと、弘世さんが来てて、一緒にお昼食べたんだって。」ニコ

淡「ふーん。」

咲「そういえば…さっきの中華屋さんの話をしたらね、お姉ちゃんも楽しみだって言ってくれたの。きっと気に入るよねっ。」

淡「そうかもね。」

淡(テルのことばっかり言ってる。)ムス

咲「うふふ、お姉ちゃんが電話くれるなんて思わなかったなあ…。」ニコニコ

淡(……それなら…。)

淡「サキ!」

咲「ん?」

淡「人がこう多いと、はぐれるかも知んないから、手…つなごっ。」

咲「えっ。…う、うん…。」

淡「はい。」

ギュ…


咲「…!」ドキ

淡(勢いで言ったけど私…サ、サキと手…つないでる…。)カア

淡「こ、これで…はぐれないでしょっ。」

咲「淡ちゃんの手って、…柔らかいんだね。」

淡「えっ?」

咲「昨日のお姉ちゃんの手も柔らかかったけど、淡ちゃんのも、とっても柔らかくて気持ちいい。羨ましいな…!」

淡「なっ…!!」ドキッ

淡(な、なに言って…!サ、サキの方がずっと…!)

咲「肌も白いし、ほんと綺麗…。」ジッ

淡「…っ!?」カアー

パッ

咲「あっ…。」

淡「も、もう人ごみは過ぎたからっ!」

咲「う、うん…。」

淡(テルとの電話とか昨日のこととか、もうどうでもよくなっちゃったよ…。)ハア


淡「ここがこの辺りだと一番大きいかなー。」

咲「すごい広いね…!」キラキラ

淡「何かお目当ての本でもある?」

咲「うーん…、読みたいなって本はあるんだけど…。こんなに大きいお店なら、少し回ってみて…ここで出会う本を探すのもいいかもしれないねっ。」

淡「ふーん。つまり、ブラブラする感じ?」

咲「ふふ、そうだね。」

咲「淡ちゃんは何か見る?」

淡「んー、サキと一緒に回るよ。」

咲「いいの?」

淡「うん。あ、マンガのとこって行く?」

咲「え?あ、うん。一通り見てみようかなって思ってるよ。」

淡「じゃあ、そこになったら私も一緒に見るからっ。」

咲「うんっ。」

淡(いくら店内でも、こんな広い本屋…サキと離れるわけにはいかないよ。)

淡(まー、狭くても離れるつもりないけど。)




淡「結構時間かけて回ったけど、買ったのはその1冊っ?」

咲「うん。えへへ、付き合わせちゃってごめんね…。」

淡「いや、そんなことはいいんだけど…。」

淡「せっかくこういうとこ来たし、大量に買うつもりなのかと思ってた。」

咲「荷物重くなっちゃうし…。それに一度にいくつも買ってもね…、読むのは1冊ずつだから。」

淡「欲張らないんだねー。」

咲「そ、そうなのかな…?」

淡「…少し薄暗くなってきたね。」

咲「今は、あっ…もう16時半過ぎなんだ…。全然時間の感覚がなかったよ。」

淡「サキは他に行きたいとこある?」

咲「あ、ううん。特にはないかな…。」

淡「それじゃ最後に1つ寄ろう。」

咲「うんっ。」

淡「少し歩くけど…、途中から裏路地入るから人は多くないよ。」

咲「私は大丈夫だよ。ありがとうね。」ニコ

淡「サ、サキの心配して言ったわけじゃないし…!」フイッ

咲「そっか、えへへ…。」


咲「…ここ?」

淡「うん、ふつーのカフェ。」

チリン…

咲「…雑貨屋さんみたい。」キョロ

淡「半分正解。ここ雑貨屋兼、カフェだから。」

咲「おしゃれで、でもすごく落ち着くね。」

淡「駅前とか表通りとか騒がしかったから、なおさらね。…あ、奥の席空いてるよ。ここ座ろ。」

咲「うん。」

ポスッ

淡「ここで少し休んでから帰ろう。サキ、なに頼む?」

咲「えっと…、ホットレモンにしようかな。」

淡「あ、いいね。…私はモカにしよ。」



咲「…うん、美味しいっ。」

淡「サキはほんと、幸せそーに食べるし、幸せそーに飲むよね。」

咲「え、それってどういう意味…?」

淡「そのままの意味っ。」

咲「…うー、何か釈然としないなあ。」

淡(………可愛いよ、サキ。)ニコ…


咲「今日はたくさんはじめての所に行って、いろんなものを見て、美味しいものも食べれて…。」

淡「んー。」ゴク

咲「全部淡ちゃんのおかげだよ…!本当にありがとうっ。」

淡「いや…。…まー、楽しんでくれたみたいでよかったよ。」

咲「……。」

淡「…ん?なに?」

咲「これ、言おうかどうか考えてたんだけど…。」

淡「なにそれ、気になるじゃん。言ってよ。」

咲「うん。淡ちゃんって、…すごく優しいよね。」

淡「へ…。」ポカン

咲「朝の切符からしてもそうだけど…、いろんな所で淡ちゃん、私のことを気遣ってくれたよね。」

淡「べ、べつにそんなこと…」

咲「アクセサリーもご飯屋さんも…ゲームセンターでも、私のことを考えてくれた…っていうか…。少しでも私が離れちゃったら、すぐ駆けつけてくれたりもしたし…。」

淡(サキ…。)

咲「ご、ごめんね。自意識過剰なだけかもしれないから、言うの考えてたんだけど…。」テレ

淡(……私は…。)

咲「…えへへ、自分で言ってて恥ずかしくなっちゃった。」

淡「今日はサキの東京観光も兼ねてたからっ。いい思い出作りたかったの!」

咲「そっか!うんっ、すごく楽しかったよっ。」

今日はここまでです


【MEMO】 66まで




咲「あ、もう外は真っ暗だねー。」

淡「うん。この時期は、今の時間だとそうだろーね。」

咲「ちょっと風が吹いてるみたい。寒そうだね。」

淡「ホットレモン飲んで体暖まったでしょ?」

咲「今はあったかいけど…、外の寒さには勝てないよ。」

淡「あはは、そっか。」

咲「そうだよー。」

淡(………。)

淡「…ねえ、話変わるんだけどさ…。」

咲「うん、なあに?」

淡「…さっき、私のこと優しいって言ったよね。」

咲「うんっ。」

淡「今日の私見て、そう思ったの?」

咲「え?うーん……」

淡「…。」


咲「…電話で話してても、優しいなっていうのは思ってたけど…。」

咲「でも今日、久々に会えたおかげで…より一層淡ちゃんの気持ちを感じることができたのかな…って。」

淡「………。」トクン

咲「や、やっぱり恥ずかしいね…!うまく言えないや…。」テレ

淡(……私…。)



……私、ほんとにサキのこと……。


インターハイで思いつめたみたいに真剣に戦ってたり、でも普段は全然頼りなかったり…。

私だったらきっと、何とも思わないようなことでも、笑ったりすねたりする…そんなサキが…。



咲「…淡ちゃん?」

淡「…え?」

咲「どうしたの…?私のこと、じっと見て…。」

淡「あっ…いや、その…!」アセ




サキはテルが好きなの…?
私のこと、どう思ってるんだろう…。

私がはっきり言ったら、…サキは応えてくれるのかな……。



咲「…?」キョト

淡(……。)

淡「…サキに、見とれてた。」

咲「えっ…!?」

淡「……。」

咲「あ、淡ちゃん…?やだな、冗談ばっかり…」

淡「ほんとだよっ。サキのことだけ、見てた。」

咲「えー…私なんか見たって、しかたないのに…。」

淡「サキは可愛いもん。」

咲「かっ可愛くなんかないよ!」

淡「ううん、一番可愛い。」

咲「淡ちゃんの方がずっと可愛いよっ!」

淡「…ありがと、ね。」カア


淡「…じゃあさ、サキは…私のことどう思ってるの?」

咲「淡ちゃんのこと?…可愛いってこと以外で?」

淡「…うん。」

咲「……。」ウーン…

咲「…明るくて、いつも人を楽しくさせてくれて、でもすごく頼もしくて、…私とは比べものにならないくらい魅力的な女の子、って感じかな。」

淡「そ…う。」

咲「私はたまにしか会えないけど、淡ちゃんと普段遊んでるお友だちはすごく幸せだなって思うのっ。羨ましいな…。」

淡「え?なんで…?」

咲「だって、いつも淡ちゃんは今日みたいな感じなんでしょ?リードしてくれるし、気を配ってくれるし…」

淡「私…、普段そんなことしないよ?」

咲「だからみんな淡ちゃんのこと大好きに…、……えっ?」

淡「私あんまり友だち付き合いとかしないし、自分からお店回る…とかやらないし…。」

咲「そ、そうなのっ?」

淡「どっちかっていうと…、相手に付き合う方かも。」

咲「きょ、今日すごくテキパキしてたから、慣れてるんだと思ってたよ…。」

淡「うん…、サキがいるからリードしてみた。」テレ

咲「……!あ、ありがとうっ…!私、全然気づかなくて…」


淡「私のこと、見直した?」

咲「う、うん!」コクッ

淡「うん…、サキにそう言ってもらえるならいいかな…。」ボソ

咲「…見直したというか……」

淡「ん…?」

咲「淡ちゃん…、私のために普段してないようなことをしてくれたんだよね…。…ごめんね。」シュン

淡「えっ!何でサキが謝るのっ?」

咲「うん…、なんか…悪かったなって…。」

淡「えっ、え?サキは何にも悪くないじゃん!」

咲「…淡ちゃん、ありがとう。」ニコッ

淡「えっ?…あ、……う、うん…。」

淡(…な、なに?なんで、サキがそんなこと気にするの?私が好きでやったことで、サキだからやったことなのに…。)

咲「あ、淡ちゃん。そろそろ遅くなるし、帰らない…?」

淡「…。」

淡(喜んでくれて、私のことを意識してくれるかなって思ったのに……。何でうまくいかないの……?)

咲「淡ちゃん…?」

淡「…そう、だね。帰ろっか。」




淡(帰りの電車でも、いつもと同じように他愛ない話をしたけど…。私は結構、生返事になっちゃってたな…。サキが気づいてたかは分からないけど。)

淡「……。」

咲「淡ちゃん。」

淡「…え?」

咲「淡ちゃんのお家ってどっち?」

淡「私の家…?えっと、向こうの方だけど。」

咲「そうなの?それじゃあ…この駅からだと、お姉ちゃんの家とは方向が違うね。」

淡「ん…?まー、そうだね。」

咲「それじゃ、ここでお別れに…」

淡「…あ、へーきだよ。サキを送っていくから。」

咲「えっ、悪いよ。昨日と今日で歩いてるから道は分かるし…。淡ちゃんが帰るのが遅くなっちゃうよ。」

淡「気にしなくていいって。部活のときはもっと帰りは遅いしさ。」

咲「でも、夜おそくに女の子が1人で歩くのは危ないよっ。」

淡「ここの土地に不馴れなサキを1人で帰らせる方が危ないから。そんなことしたらテルに怒られそうだし。」

咲「そ、そんなことないと思うけど…。」

淡「いいからいいから。駅前でグズってても時間のムダだよ。ほら、いこいこっ!」タタッ

咲「あ、淡ちゃんっ…。」




淡「それじゃあね、サキ。」

咲「う、うん…。あの、ごめんね…結局お家まで来てもらっちゃって……。」

淡「私が勝手に送っただけだから、気にしないでよ。」

咲「……淡ちゃん、帰り道…本当に気をつけてね…?」

淡「地元だし、へーきだって。」

咲「淡ちゃんは可愛いから…!」

淡(……。)トクン

淡「……。」

淡「…襲われちゃうかも…?」

咲「えっ…!?」

淡「サキにだったら全然いーんだけどな。」

咲「あ、あわい…ちゃん…!?」

淡「なんてね、ジョーダンッ。…今日は楽しかったよ、ありがとね!」

咲「あ…う、うんっ。私も…すっごく楽しかったよ!」

ゴソゴソ

咲「このブレスレットとぬいぐるみ…大切にするねっ!」ニコ

淡(…っ。)ドキ

淡「わ、私もこのブレス大事にするよ。」

咲「今日は淡ちゃんといっぱい思い出つくれて、嬉しかった…!」

淡「…私もだよ。…それじゃ、サキ…またねっ。」

咲「うん、ばいばいっ。」


咲(淡ちゃん、見えなくなっちゃった。…お家、入ろ。)

ガチャッ

咲「あれ?空いてる…。」

パッ

照「咲っ、おかえり…!」

咲「あ、お姉ちゃん。だだいまっ!」

照「楽しかった?」

咲「うんっ!淡ちゃんがいろんな所に連れていってくれてね…!」

照「そう、よかったね。」ニコ

照「夜ご飯は食べた?」

咲「ううん。」

照「なら今からつくるね。少し待ってて。」

咲「あ、ごめんっ。それなら帰る時間…電話すればよかったね…。」アセ

照「別に平気。私もそろそろ夜ご飯つくろうと思ってたから、丁度よかったよ。」

咲「私手伝うよっ。」

照「咲はお風呂入りなよ。少し沸かせばすぐに入れるから。」

咲「えっ、いいよ。夜ご飯食べてから入る。」

照「つくってる間に入っておいた方が楽だし、外から帰ってきて体、冷えてるよ。」

咲「うーん…でも…」

照「いっぱい遊んで、疲れもあるだろうからまずはリラックスすること。ね?」

咲「…わ、分かったよ。ごめんね、お姉ちゃんばっかりご飯の準備させちゃって…。」シュン

照「そんなこと気にしないでいいから。」




ガチャッ

照「あ、咲。お風呂気持ちよかった?」

咲「うん!体、暖まったよ。」

照「それはよかった。」

咲「…わ、今日はカレーだっ。」

照「もう食べられるから、席についてて。」

咲「はーい。」

照「…はい、これが咲。」コト

咲「美味しそう…。」

照「…お待たせ。それじゃ、食べよう。」コト

照・咲「いただきます。」

咲「…。」ハム、モグモグ

照「…。」ドキドキ

咲「美味しいっ!」

照「そう。」ホッ

咲「やっぱりお姉ちゃんは料理上手だね…!」ハムッ

照「ありがとう…。」




咲「それでね、淡ちゃんとおそろいでブレスレットを買ったのっ。それが現品限りだったんだよ、運命的だよね!」

照「へえ、すごいね。」

咲「そのあとはお昼食べて…、ゲームセンター行って…。あ、そうそうっ、淡ちゃんゲームが上手で、新記録が出せそうだったの!終わるときには周りに人が集まってて、みんな注目してたよ。」

照「そうなんだ。」

咲「そこでやったUFOキャッチャーで、ぬいぐるみを取ってくれたんだっ。たった2回で取れてたの!淡ちゃん本当にすごいよっ。」キラキラ

照「淡といっぱい遊んだんだね。」

咲「うん!本屋さんでは私にずっと付き合ってくれたの。それで、最後は雑貨屋さんみたいなカフェでゆっくりして、帰ってきたんだ。」

照「…淡とはまた会うの?」

咲「え?うーん、約束はしてないから…分からないな。」

照「そう。」

咲「お姉ちゃん、カレーとっても美味しかったよ!お皿、洗っちゃうねっ。」

照「あ、いいよ。私がやるから…。」

咲「そのくらいは私がやるよ。」

咲「あのね、洗い終わって一息ついたら、お姉ちゃんにさっき話したブレスレットとぬいぐるみを見せたいのっ。パパッと終わらせちゃうから、待っててもらってもいい…?」

照「あ…う、うん。」

咲「エプロン借りるねっ。」

照(…半日、離れてただけ…。淡と色んなところに行って、楽しんできたのは…すごくいいことだと思うのに…。)

今日はここまでです


【MEMO】 76まで


カチャカチャ…

咲「後片づけ終わり…!」

照「…あ。ありがとうね、咲。」

咲「ううんっ。それじゃ、お姉ちゃんちょっと待っててね。」

照「うん。」

タタ…

照(淡との思い出を聞かせてくれたり、見せてくれるのは、咲がそれだけ楽しかったってことだよね…。やっぱり同い年の友だちが一番仲良くなれるのかな…。)

タタッ

咲「みてみて、これだよっ。」

照「…わ…可愛いね。」

照(落ち着いてるけどおしゃれなブレスレット…。ぬいぐるみもキャラクター物で可愛い。)

咲「これはね、私のはお花なんだけど、淡ちゃんのは星形なのっ。お互いにぴったりのものが偶然あってね、どれも1つずつしかなかったの!」

照「2人だけの…ものなんだね。」

咲「うんっ!…あ、それからこのぬいぐるみは淡ちゃんが取ってくれたから、あわわちゃんって名前付けたんだ。えへへ。」

照「あ、あわわちゃん…。」

咲「どっちも宝物だよ…!大切にするんだっ。」

照「……そう。」


咲「お姉ちゃんは今日、弘世さんとお昼食べたあとは何をしたの?」

照「本、読んでた。」

咲「え?弘世さんは…?」

照「菫は帰ったよ?」

咲「じゃあお姉ちゃん、そのあと1人で家にいたの?」

照「うん。」

咲「わ、私てっきり弘世さんとおしゃべりしたり、どこか出かけたりするんだと思ってたよ…。」

照「咲がいつ帰ってくるのか分からないのに、出かけたりしないよ。」

咲「…あ…」

咲「…ご、ごめんね!次からはちゃんと時間決めるから…。」

照「あっ、ちが…」

照(咲を責めるつもりなんてなかったのに…。)

咲「お姉ちゃん…怒ってる……?」

照「…!」

照「お、怒ってなんかないっ…。」フイッ

照(だめ…、もうなんかぐちゃぐちゃになってる…。少し頭、冷やさなきゃ…。)

照「わ、私…部屋に戻る。」ガタ

咲「えっ?な、なんで…?」

照「ちょっと…。」パッ

咲「ま、待って、お姉ちゃん!」

ギュッ…


照(っ!!?)

照「さっ、さき!?」

咲「お姉ちゃん…ごめんなさいっ…!」ギュ

照(さ、咲が私に抱きついて…!)ドキドキ

照(っ…!)

照(そういえば今日はいっぱい掃除したから、汗かいてる…!ま、まずいっ…!)

照「さ、咲っ…近い。は…離れて…。」グイッ

咲「え?な、なんで?」

照「…。」ドキドキ

咲「お姉ちゃんに近づいちゃ…だめ?」

照「…!」

照「い、いや、咲がいけないんじゃなくてっ、私が困るだけで…。」アセッ

咲「こ、困るの…?」

咲「…きょ…今日、帰りが少し遅くなっちゃって、連絡もしてなかったのは本当にごめんねっ。次から気をつけるから…!」

照「ち、違う。そうじゃなくて…。」

咲「お姉ちゃんに……嫌われたくないよお…。」ウル…

照(…!!)

照「ご、ごめん!そうじゃなくてっ…」アセッ


照「…わ…私、今日お昼すぎまでは部屋を掃除してたから…、あ…汗くさい…と思う。」カア

咲「へ…?」

照「うう…。」

咲「ううんっ、お姉ちゃん汗くさくなんかないよ?」

照「あんまり近づかれたら多分、するから…。」

咲「え?でも今だって、全然分からなかったし…。」

照「分かった…。ごめんね、でもお風呂入るまでは、あんまり私の近くに来ないでほしい。」ドキドキ

咲「むー…。」

照(はあ……咲にこんなこと言うことになるなんて…。でも、一瞬だったけど…咲が抱きついてくれた…。)カア…

咲「あの、お姉ちゃん…?」

照「…!…な、なに?」ビク

咲「私のこと…、怒ってない?」

照「……。」ニコ

照「怒ってないよ。」

咲「よかった…!」

照「そんなことで、怒らないよ。」

咲「そっか…。えへへ、……えいっ。」


ギュッ…

照「なっ!さ、さきっ!?」

咲「お姉ちゃんのにおい、いっぱい嗅ぐんだっ。」

照「だ、だめって言ったでしょ…!」アセアセ

照(汗のにおいがっ……。…そ、それに今は気持ちの整理がついてないから、こんなことされたら…!)

咲「……嫌われちゃったかと思ったら、すごく不安になったの…。」

照(え…?)

咲「なんでだろう…。お姉ちゃんにくっついてると安心するよ…。」

照「さ、咲……。」

照(……そんなに、私のことを想ってくれてるの…?)

照(……今なら、咲を………)ドキドキ

パッ

照「え…。」

咲「ごめんね、私ったら…。また、お姉ちゃんを困らせちゃった…!」

照「あ、いや…。」

咲「やっぱり淡ちゃんが言った通り、お姉ちゃん離れしないとだめだなあ…私。」テレ

照「そ、そんなことっ」

照(しなくていい…!)


咲「あ…そうだ、お姉ちゃんお風呂入る?私、温めてくるよっ。」

照「あ…。」

咲「そんなに時間はかからないと思うよ。…あっ!お姉ちゃんがにおうとか、そういう意味じゃないからねっ?」アセッ

照「…う、うん…。入ろうかな。」

咲「分かった。それじゃあ、温めてくるねっ。」

タタタ…

照(……。)

照「はあ…。」

照(うまく、いかないな…。)



菫『同い年同士、話しやすいのかな』


菫の言う通り……、咲は今日すごく楽しかったみたい。

きっと、私には話さないようなことも…、私にはしないようなことも…、淡にはしたのかもしれない…。
淡もいい子だから、2人が仲良くなってくれて嬉しい。

…そのはずなのに。

淡とおそろいのもの、淡からもらったもの…。
今日行ったところ…したこと…、淡の様子…。

その話を聞くだけで、咲がどれだけ淡のことを見てたのか、よく分かる…。
淡のことを話す咲の表情はとても明るくて…。

すごく、自分の中の何かが締めつけられる。
咲が、淡のことを嬉しそうに話してるのを見ていたくない。淡との思い出のものも、気持ちがなんだか暗くなる…。

冷静になりたくて、とっさにした私のしぐさが咲を不安にさせた。
自分にしても、咲に対しても…、こんなはずじゃなかったのに…。



ガチャッ

照「…咲?」

照(いない…。部屋かな?)

テクテク…、カチャッ…

照「咲…?」ヒョコ

咲「あ、お姉ちゃん。お湯、丁度よかった?」

照「うん、気持ちよく入れたよ。ありがとう。」

咲「えへへ、どういたしましてっ。」

照「お布団敷いてたの?」

咲「うんっ、昨日はお姉ちゃんにさせちゃったから…。」

照「気にしなくていいのに。」

咲「えへへ、でも嬉しかったよ。」

咲「…あれ?お布団ふかふか…!お姉ちゃん、ひょっとして干してくれた?」

照「あ、うん。いい天気だったから…。」

咲「わ、ありがとう…!」

照「咲はそろそろ寝る?」

咲「あ、えっと…少し本を読んでから寝ようかな。」

照「そう。私は部屋にいるから何かあったら呼んでね。」

咲「うんっ。」

照「それじゃ、咲…おやすみ。」

咲「おやすみなさいっ。」


ペラ………ペラ………

咲「……。」



今日はすごく楽しかったな…。
私じゃ、きっと行けないようなところに行けて…、美味しいものを飲んだり食べたりもできた。

淡ちゃんの、色んな面も見れたような気がする…。
おしゃれで、ゲームセンターに通ってたことがあったり、いつでも気遣ってくれたり、普段はあんまりお友だちと遊ばないこととか……。

私だから、今日みたいにしてくれた…って言ってたっけ…。


やっぱり淡ちゃんにムリ…させちゃったのかな……。



パタ…

咲「今日はもう寝よう…。」

咲(……あっ…。)ゴソ

咲(あわわちゃんと一緒に寝ようっ。)



お姉ちゃんにも迷惑かけちゃったし、もっと…しっかりしなきゃ。

私になにかできることってないかな…。2人に喜んでもらえるようなこと……。

……あ、そうだ。明日……


今日はここまでです


【MEMO】 84まで


照「えっ?スーパーに?」

咲「うんっ。ちょっと買い物に行ってくるね。」

照「ちょ、ちょっと待って。1人で行くの?」

咲「うん、そうだよ?」

照(そ、そんなこと…!)

照「迷子になるかもしれない。私も行く。」

咲「だ、大丈夫だよっ。1回行ってるし、そんなに遠くないから…。」

照「支度するから待ってて。」

咲「少しだけ買いに行くだけだよ。すぐ帰ってくるつもりだからっ。」

照「外は危ない。」

咲「平気だってば…!」

照「…私がついていったら…迷惑?」

咲「…そ、そんなことないけど…。」

照「そう。」

照「……はい、準備できたよ。行こうか。」

咲(うう…、内緒にしたかったんだけどな…。)

照(咲を1人で出かけさせたりなんてできない。迷子もそうだけど、誰が咲に目をつけるか分からないから…。)


ガヤガヤ…

照「スーパー着いたけど…なに買うの?」

咲「チョコとか、薄力粉とかかな。」

照「…お菓子、つくるの?」

咲「うんっ。キッチン借りても平気?」

照「う、うん…それはいいんだけど。」

照(お菓子は家にたくさんあるのに…、わざわざつくるの…?それって、もしかして……)

咲「えーと…、あとはベーキングパウダーと…バターと。」

照「…あっ、咲。バターは家にあるよ。」

咲「ほんと?それなら、もらっちゃおうかな。」

照「あとはなにを買うの?」

咲「卵とココアパウダー、それと普通のチョコクッキーを…。」

照「うん、ココアパウダー以外は全部家にある。自由に使っていいよ。」

咲「そ、そんな…悪いよ。」

照「頻繁に使うものじゃないし、残り少ないわけでもないから。」

咲「それじゃあ、あと卵だけ買っていこうかな。余っても困らないよね。」

照「あ、…うん。」


照「それじゃあ帰ろうか。」

咲「うんっ。」

照「荷物、持つよ。」

咲「重くないから平気だよ。それに、自分で買ったものだから。」

照「そう…。」

「ちょっとすいませーん!」

咲「…!」ビクッ

「今ここで買い物を終えられた感じですかっ?」

咲「は、はい…。」オド

「若い女性を対象にアンケート取ってるんですけど、ご協力よろしいですかね?」

咲「えっ…と…」

咲(……こ、こわいよお…。)ブル…

「いや、可愛らしい方なんで、ぜひお願いしたいんですよっ。なんなら、一緒にお茶飲みながらとか…」

グイ

照「結構です。」

咲(お、お姉ちゃんっ…。)

「あっ、お連れの方いらしたんですね。それなら2人一緒でも…」

照「……。」ギロッ

「ヒッ……!!?」

照「…おいで、帰ろう。」クルッ


咲「あっ、う…うん。」タタッ

咲(お姉ちゃん今…なにしたんだろ…?)

照(やっぱり一緒に来てよかった。咲を見てたあの目…、思い出すと虫酸が走る。)イラ

咲「お、お姉ちゃん…。」

照「…え?…あ、なに?」パッ

咲「その、断ってくれてありがとうっ…。私、固まっちゃって…。」

照「咲のことは私が守るから、安心して。」

咲(お姉ちゃん…やっぱり優しい…。)ニコ…



咲「お姉ちゃん、バターと…ごめん、お砂糖もらってもいい?」

照「う、うん。」

照(帰ってきて、早速つくりはじめたけど……やっぱり誰かのために…?)

咲(頑張ろう…!)

咲(…えーと、チョコとバターを溶かしたら…卵を入れて…。)カチャカチャ…

照「咲…何か手伝おうか?」

咲「ううん、いいの。お姉ちゃんはゆっくり本を読んでてっ。」

照「そ、そう…。」

照(手伝わせてくれなかった…。やっぱりそれは淡のための……?)

咲(薄力粉とベーキングパウダー、あとココアを混ぜて…。)


ピピッ、ピピッ

咲「あ、焼けたっ…。」

咲(…冷蔵庫で冷まして、切ったら完成だ…!)

咲(あ、ラッピングの用意しておこう。)

タタ…

照「……。」

照(淡のためにつくってるんだ…。昨日は、会う約束はしてないって言ってたのに…。)

照(…咲、どんなのつくってるんだろう…。)

テク…テク…

照「冷蔵庫かな…?」

照(少し見るだけなら…いいよね。)ソッ

タタッ

咲「あっ!お姉ちゃんっ!」

照「……!」ビクッ

咲「…冷蔵庫のもの、なにか取る…?」オド

咲(あわわっ…、今…開けられたらまずいよ…!)

照「いや…えっと…なにかないかな、って…。」オド

咲「あ…、なら私が取るからっ…。」アセ

照「えっ?う…うん。」

咲「お姉ちゃんはリビングで座ってて…?」




照(さっきの様子…。あれは私にお菓子を見せたくなかったってこと、だよね…。)

照(咲がこんなに一生懸命つくってるのは……)

照「……はあ…。」

咲「…お姉ちゃん?」ヒョコ

照「っ!さ、咲…!」ビクッ

咲「今ちょっといい?」

照「う、うん、いいよ。なに…?」

咲「あのね…、お姉ちゃんはもう気づいちゃってると思うんだけど…これね……」

照(…!や、やっぱり淡にお菓子をっ…)

ガサッ

咲「はいっ、お姉ちゃんへ!」ニコッ

照(…………。)

照「……え?」ポカン

咲「あんなにバレバレにつくってたから、改まって渡すのもなんか変かもしれないけど…。」テレ

照(え…?)

照「こ、これ…私にっ…?」

咲「うんっ!まだちょっと温かいけど、食べられるくらいには冷めたと思うんだ。」

照(……!)


咲「さっき冷蔵庫開けようとしてたから、早めに包んじゃった。お腹空いてないと…きっと美味しく感じないかもしれないから…。」

照「そ、そんなことないっ。咲がつくってくれたんだから、いつ食べても絶対に美味しいよ。」

咲「ううん、本当に大したものじゃないから…。」

照「さ、早速開けてもいい?」ドキドキ

咲「…うんっ。」

照(綺麗にラッピングしてくれてる…。目の前にいた私に渡すために…わざわざ…。)

ガサ

照「わ…、美味しそうっ…。」

咲「ブラウニー…、お姉ちゃん大丈夫だったかな…?」

照「大好きだよ。」

照(食べるの、もったいない…。でも咲が見てるから…)ドキドキ

照「…いただきますっ。」

パクッ

照「……。」モグモグ

咲「……。」ドキドキ

咲(い、一応味見はしたけど…、お姉ちゃんの口に合うかなあ……?)

照「…美味しい……!」

咲「…ほんとうっ?」パアッ

照「うん…、これ…本当に美味しいよ。ちゃんと甘いのに、しつこくない…。」

咲「……!」

咲「よかったあ…。」ホッ


照(これを…私のために…。)カア…

咲「あのね…」

咲「このブラウニー、お姉ちゃんと淡ちゃんにつくったんだっ。」

照「え…?」

咲「2人にはいっぱい迷惑とかかけちゃってるし、いっぱい…感謝してて。…なにか私にできることないかなって思って、つくってみたの。」テレ

照「淡、にも…?」

照(そうなんだ…やっぱり、つくってたんだ…。)

咲「明日淡ちゃんに会えたら、渡そうと思うんだ。喜んでくれたらいいなっ。」

照(……このままだと、今以上に仲よくなって……咲は淡のことを…?)

照(そんなことっ………)グッ

咲「お姉ちゃん、私ちょっと淡ちゃんに電話かけてくるねっ。」

照(…あっ……。)



パタパタ…

咲(たしかケータイは、昨日のかばんに入れてたはず…。)

咲(…あった。)ゴソ

咲「淡ちゃんのアドレスはたしか……あ、これだ。」

ピ、ピ、ピ…プルル…

咲(淡ちゃん、出るかな…?)


~~~~~~~~~~~~~~~~

~~♪

淡(…!!)

パッ

淡「サキッ…」ドキッ

淡(サキが電話くれるなんて…!)

ピッ

~~~~~~~~~~~~~~~~

淡「もしもしっ…」

咲「淡ちゃん?あの…私だけど…」

淡「うん、サキッ。どうしたの?」

咲「あのね、明日ってなにか用事、ある…?」

淡(えっ…?)

淡「…ううん!特にないよ。」

咲「あ、ほんと?ええと…、急で悪いんだけど…明日少し会えたらなって。」

淡「あ、うんっ、おっけー。いつでもいいよっ。」ドキドキ

咲「それじゃあ…、15時ごろとか平気?」

淡「う、うんっ。」

咲「駅に待ち合わせでもいいかな?」

淡「わ、分かった…!」




ピッ…

咲「…。」ホッ…

咲(…明日、淡ちゃんと約束できてよかった。)

テクテク、ガチャ

咲「あ、お姉ちゃん。電話、終わったよ。」

照「うん…。」

咲「あ、お茶飲む?それだけだと甘かったよね。」

照「一緒に飲もう。」

咲「うんっ。今いれるね。」

……コポコポ…

咲「お待たせっ。」スッ

照「ありがとう。…隣、座りなよ。」

咲「うん。」ポス

咲(……あれ?ブラウニー、半分以上残ってる…。)

照「あのね、咲が来たら一緒に食べようと思って。」

咲「…あっ、いいよっ。これはお姉ちゃんにつくったものだし、私は味見したから…。」

咲(お姉ちゃん、私のために待っててくれたんだ…。)

照「でも、咲の分はないんでしょ?」

咲「え?う…うん。」


照「一緒に食べた方がもっと美味しくなる。」

咲「でも、お姉ちゃんの分だからっ…。」

照「それじゃあ咲に1つあげる。」

咲「へっ?」

照「美味しいから、もっとちゃんと食べた方がいい。」

咲「……うう…それじゃあ…、いただいちゃうね…?」

照「うん。」

咲「……。」モグモグ

照(………。)

咲「……?…お姉ちゃん、私のことじっと見てどうしたの?」

照「……えっ…!いやっ…何でも、ない…。」アセ

咲「そう?……ふふ、なんだか昨日の淡ちゃんみたい。」

照(……え?)

咲「…うん、我ながらなかなかの出来かなっ。お姉ちゃん、もう1個だけ食べていい?」

照(……。)

咲「この小さいの、もらっても…」

パッ

照「咲、口…あけて。」


咲「え?」

照「食べさせてあげるから…。」

咲「えっ!?…い、いいよっ!」アセッ

咲「私、自分でっ……んむ…」ハムッ

咲(…!!お、お姉ちゃんに食べさせてもらって……!)

ペロ…

照・咲(……っ!!)

照(さ、咲のが………!)

パッ

咲「ごっごめん…!指っ…ちょっと舐めちゃった…!」アセアセッ

照「…へ、へいき。」ドキドキ…

照(………もっと、咲と触れたい……。)

咲(は、恥ずかしいよお……。)

咲(…昨日の淡ちゃんのも恥ずかしかったけど…あのときはスプーンだったから、まだ……)

照「…咲、…」

咲「…!」ビク

咲「な、なあにっ?」

照「く、口元にチョコ…ついてるよ…。」スッ…

咲「えっ!?…ひゃぅ………」ブル…

照(咲の舌……、咲の声……、咲の…唇………)ドキドキ

フニ……

咲(…!!)

照「…と…とれた。」フイ

咲「……う、う…ん。」


照(すごく…柔らかかった…、咲の…。)ドキドキ

照(舌の感触も、まだ指に残ってる……。)

咲(お…お姉ちゃんに唇…触られちゃった…)

咲(うう……恥ずかしくてなにも考えられないよ…。)カア…

咲「………。」ドキドキ

照「……ご、ごめんね。ちょっと強引だったかも…。」

咲「えっ?…う、うん…大丈夫っ…。ちょっと、びっくりしただけだから…。」アセアセ

照「そ…そう。」

照(…でも、このくらい積極的にならないと咲はきっと…)

咲「…お、お姉ちゃんっ、ブラウニーもっと食べて…?」

照「…あ、うん。」パク

照(せっかく咲が美味しくつくってくれたのに…、もうほとんど味が分からない…。)モグモグ

咲「わ、私…お茶のおかわりいれてくるねっ。」サッ

照「…あ…」

パタパタ…

照(咲…動揺してる。…それが、ちょっと嬉しく思うなんて…。私本当に余裕ないな…。)ハア…

照(……もっと、咲に触りたい。もっと、意識して…ほしい……なんて。)


咲(はうー…落ち着こう…。このままだときっと、変に思われちゃう。)ドキドキ

咲(お姉ちゃんは親切でしてくれたことなんだからっ。普通にっ…普通にしなきゃ…!)

コポコポ…、パタパタ

咲「…はいお姉ちゃんっ、お茶はいったよ。」

今日はここまでです


【MEMO】 97まで




咲「ふう…。」

ポフッ

咲(多分普通にできた、よね…。)



夜ご飯食べたり、お風呂上がりのときとか、たまに緊張しちゃったけど…。
お姉ちゃんは特に気にしてないみたいだったから、…きっと大丈夫。

このまま寝て…明日になれば、この緊張感もなくなりそうな気がするから…。



ゴロッ

咲(…あれ?)

咲(今、窓から星が見えたような…?)ムクッ

ペタペタ

咲「わ……」

咲(きれいな星空…。)

咲「そういえば…夜になると星がよく見えるって、お姉ちゃんと弘世さんが言ってたっけ。」

カチャッ

照「咲…?」ヒョコ

咲「あっ、お姉ちゃん。」


照「…あ、星を見てるの?」

咲「うんっ。お姉ちゃんたちが言ってた通り、本当にきれいだね。」

照(…これは…チャンスかも…。)

照「咲。」

咲「ん?」

照「……星なら2階の私の部屋からの方が、よく見える…。」

咲「そうなの?」

照「うん。…よかったら、おいでよ。」

咲「え…?」ドキッ

咲(ど、どうしよう…。そういえば…お姉ちゃんの部屋にはもうずっと、入ったことなかったよ…。行きたいけど…、今日はちょっと気まずいような……。)

咲「…ご、ごめんお姉ちゃん、今日は…」

照「こんなに雲ひとつない夜空は、次いつ見られるか分からないかも…。」

咲「え…!ほんとに?」

照「う、うん。だから…今日見にきた方が無難。」

咲「ええと……」

咲(ま、迷うよお…。でも、こんなにきれいに見れるのは今日だけ、かもしれないなら…。)

照(咲がこっちにきて3日目なのに、まだ部屋にも入ってないのは…私が受け身過ぎたから…)

照(咲のことで我慢するのは…、やめよう。)

咲「…そ、それじゃあ…おじゃましようかな。」

咲(星を見るだけだもん…。変に緊張することなんてないよ、大丈夫っ。)


テクテク…、カチャッ

照「どうぞお入りください。」

咲「う、うん。失礼しますっ。」

照(やっと、咲が部屋にきてくれた…。)ドキドキ

咲「……わあ…!」

照「え?な、なに…?」

咲「なんだか、とってもお姉ちゃんらしい部屋だねっ。」

照「…え、そ…それってどういう…?」

咲「うーん、余計なものがないシンプルな…っていうか…。あ、でも本はやっぱりたくさんあるなあ。」キョロ

照「そ、そう…。」

照(よかった…。部屋の印象はいいみたい。)ホッ…

照「ほ…ほら、窓から星がよく見えるから…。」

シャッ…

咲「あっ、そうだった!すっかり忘れてたよ。」

照「で、電気…消した方がよく見えるから…、消すよ…?」

咲「あ、うんっ。わかった。」

パチッ

咲「………!」

咲(遮るものがなくて、星空がよく見える…。こんなに、たくさんの星が……)



咲「…きれい。」

照「……そうだね。」

咲「……………。」

照「…………咲…?」チラ

照(……!)ドキッ

咲「……………。」

照(咲の横顔……月明かりに照らされてっ…)

照「きれい…。」

咲「え?」

照「あ…!」

照「いやっ、そのっ……ほ、星……」アセ

咲「うんっ。本当に綺麗だよね。」

照「……と、つ……月っ、が………きれい…。」ドキドキ

咲「そうだねっ。満月じゃないけど、月明かりでお姉ちゃんの顔もよく見えるよ。」ニコ

照「………うん。」

照(咲も本の虫だから、ひょっとしたら気づくかもって思ったけど……。)

照(やっぱり咲はそんなこと、考えないよね…。)ハア…

咲「……。」


咲「…今日ね…」

照「っ…!あ…うん。」ビク

咲「お姉ちゃんに対して、ちょっと緊張しちゃってたんだ。気がついてたか…分からないけど。」

照(…!)

照「あ、そう…なんだ?」

照(咲が今日、私を意識してくれてたのは知ってる。私の方が動揺してたかもしれないけど…。)

咲「うん…。あっ、嫌いとかそういう意味じゃないよ?…そうじゃなくて…」

照「…う、うん。」

咲「私、お姉ちゃんのこと…大好きなんだ、って。」

照(……!!)

照「えっ……」

咲「…今日私を守ってくれたり、お菓子を美味しいって食べてくれたり、今もこうやって星を見せてくれたり…。」

咲「こんなに優しくしてくれるお姉ちゃんのことが、大好きなの…。」

照(……そ、それって……)

照(…両想いって………思っていいの…?)

照「………。」ドキドキ

咲「ご、こめんね。もう少しお姉ちゃん離れしないといけないのに…。」

照「そっ、そんなこと…しなくていいよ。」

咲「うーん、…でもお姉ちゃんに依存しちゃうことになっちゃうから。」

照「わ、私はべつに…それでも……。」


咲「…ふふ、でもね、離れることは難しいなって思ったの。お姉ちゃん、優しすぎるよ。」テレ

照「…そ、それは……」

照(咲だから…。…私は、咲だけに。)

照「さ、咲……私も………」ドキドキ

咲「弘世さんや、麻雀部の後輩さんたちから慕われてるのがよく分かるなあ…。」

照「……え?」

咲「あ、そうそうっ。この前電話で淡ちゃんが言ってたんだけど、学校にお姉ちゃんのファンクラブみたいなのがあるんだって…!」

照「…え…?いや、あの……」

咲「麻雀部の内外問わず、お姉ちゃんのことが好きって子が結構いるらしいの。」

咲「優しくてかっこいいもん。私だけじゃなくて、他の人だって好きになっちゃうよねっ。」ニコ

照「ち、ちがう。学校では特に優しくなんて…」アセ

咲「そうなの?」クス…

咲「………ふう…」

照「……?」

咲「…思ってたことを言えて、なんだかすっきりしたかも。」

咲(うんっ…。お姉ちゃんのことが大好きって、はっきり言えてなかったから…あんなに緊張しちゃってたんだな…。)

咲「やっぱりモヤモヤしたままはよくないね。」

照(……だめ…このままじゃ…)


照(…言わなきゃっ。)グッ

照「…さ、咲っ…」

咲「なあに?」

照「私も…、咲のこと…好きだよ。」ドキドキ

咲「ほんと…?」パア

照「う、うん。…すごく…。」

咲「えへへ、嬉しいな。ありがとうっ…。」ニコッ

照「……っ。」キュン…

照(咲を…抱きしめたい……。それで…、もっとちゃんと、私の気持ちを……!)

ジリ…

咲「…あっ。」

照(…!)パッ

咲「結構おそくなっちゃったかな?」

照「…な、なにが…?」ドキドキ

咲「お姉ちゃん、寝るところだったよね。ごめんね、長居しちゃって。」

照「いや、そんなこと…」

咲「私もう部屋に戻るね。星、見れてよかったよ!」

照「あっ、咲っ…」

咲「お姉ちゃん、おやすみなさいっ。」


カチャッ…

照「……うん…おやすみ…。」



照(…伝えられなかった……。)

……シャッ…



一瞬…、両想いになれたって思ったのに。


咲の言ってる「大好き」は、きっと違うものだ…。

今日、やっと距離が縮まって…意識してくれて…、咲の気持ちを聞けたのに。
やっぱり、姉に対しての感情だよね…。

私がおかしいんだっていうのは分かってる……。
今日みたいに、困らせることになることも……。

それでも…、我慢できなかった。


でもそれ以前に……、咲がこっちを振り向いて、私を求めてくれてるって分かるまで…あと一歩の勇気が、出ない……。

もう…どうしたらいいんだろう………。


今日はここまでです


【MEMO】 105まで




咲「~♪」

照(……今日は朝からずっと機嫌がいいみたい…。)

咲「お姉ちゃん、床ふくモップみたいなのってどこだっけ?」

照「あ、えっと…廊下の収納のとこに…。」

咲「わかった、ありがとうっ。」

パタパタ…

照(朝ご飯もお昼ご飯もつくってくれたし、洗濯とかもしてくれた…。もしかして、昨日の夜のことで…?)

パタパタ、スー…

照(あ…。)

照「咲、掃除なら私がやる。」

咲「いいの、お姉ちゃんはゆっくり休んでよ。」

照(……。)

照「…今日、なんかごきげんだね。」

咲「そう?」

照「うん。さっき鼻歌うたってたし…。」

咲「えっ!そうだっけ?わ、恥ずかしいな…。」カア

照(無意識だったんだ。こっちにきてから何回かしてたけど、黙っておこう…。)

照「ふふっ。」


咲「あっ、お姉ちゃん笑ってる…!ひどいっ。」

照「ふふ…いや、これは…」クス

咲「むー、私のこと可笑しいって思ってるんだ?」

照「違うよ、そんなこと思ってない。」

照(…可愛いってだけで。)

咲「……。」プー

照(…あ、不機嫌になった。………まずい、それすらももう…。)

照(でも、このままじゃいけない…。)

タタ

照「…ご、ごめんね。機嫌、なおして?」

咲「……。」プイッ

照(…!えっ…、怒ってる…?)ドキッ

照「…咲?」ヒョコ

ガバッ

照(……!!)

照「なっ!!さっ、さきっ!?」カアッ

咲「えへへ、機嫌なおったよっ。」

ギュッ

照(わわ…!さ、咲がこんなに密着して…!!)ドキドキ

咲「一昨日は少しだけだったもん…。お姉ちゃんにちゃんと抱きつきたかったんだー。」ゴロゴロ…


照(……っ!)

照(…か、かわいすぎ……)

照(…わ、私も…咲の背中に手を回しても……!)

ソッ…

咲「…あれ?」

照(…!)ビクッ

咲「………。」

照「…ど…どうしたの?」

咲「…お姉ちゃん、甘いにおいがする。」スン

照「…え?」

咲「いま一瞬フワッて。…どこからだろう?」

照「わ、私からしたの…?」

咲「うん。…首元?」

ソッ…、スンスン

照(……!?)

照(咲の顔が…すぐ近くに…!わわっ!におい、嗅がれてるっ……!)ドキドキ

咲「……ううん、ちがう。もっと下かな…?」

スッ…、スンスン…

照(………抱きつかれながら、におい嗅がれるって…どういう状況っ……。だめっ……、これ以上こんなことされたらっ…!)トクン…トクン…

照(理性が、保てない…っ)トクンッ


咲「あ、ここだ。」スン

照「…………へ?」

咲「カーディガンのポケットからにおいがするよ。何が入ってるの?」

パッ…

照(……。)

照「……なんだろ…。」

ゴソ…

照「…あ。」

咲「あー、お姉ちゃんっ。お菓子は入れないって言ってたのに…!」

照「……ご、ごめんっ。」アセ

照(忘れてた…。)

咲「誰も盗っていったりしないんだから、お菓子はその都度ケースから取ってよお…!」

照「う、うん…。」

咲「たしか前に…チョコが溶けて、包装からこぼれちゃったことがあったんでしょ?」

照「うん…。」

咲「そのときの服、お気に入りだったのにシミができて、落ちなかったって言ってたよね?」

照「うん…。」

咲「『もうそんなのは嫌だから今後は注意する』って。『咲も気をつけてね』って言ってたのに…。」

照「ご、ごめん…。無意識に入れてたみたい…。」シュン


咲「はあ…」

咲「まあ…、完全に溶ける前に気づいてよかったよ。」

照(…!)ガーン…

照(さ、咲に…呆れられちゃった…?)

咲「それ、溶けかけてるから早めに食べた方がいいよ?」

テクテク、スー…

照(………。)

照( ど、どうしよう…。せっかく…いい雰囲気になれてたのに。)ハア

テクテク

照(あっ…。)

咲(…なにか飲もうかな。)

照(…聞かなきゃっ…。)

照「さ、咲。」

咲「ん?なあに?」

照「あ、その……お、怒ってる…?」

咲「…え?なにを?」

照「…お菓子、入れたこと…。」

咲「えっ?」

照「………。」ドキドキ


咲(さっき私が言ったこと、気にしてたんだ…。)

咲「……ふふっ。」

照「……!」

咲「お姉ちゃん、本当にかわいいねっ。」ニコ

照「え…、えっ?」

咲「怒ってなんてないよ?ごめんね、私…言いすぎちゃったかも。」

照(…よかった。怒ってなかった……)ホッ

照(…え?それより今…私のことっ……!)

咲「ジュース、お姉ちゃんも飲む?」

照「…あっ、うん…。」

照(…か、かわいいって、言った…?)

照(私の何を見てそんなこと…。で、でも咲がそう言ってくれるなんてっ……。)ドキドキ

トクトク…

咲「お姉ちゃん、さっきのお菓子食べた?」

照「……!」ビク

咲「はい、これお姉ちゃんの。」スッ

照「あ、ありがとう。…えっと、まだ食べてない。」

咲「あ、ほんと?それなら一緒に食べたいな。お茶うけに…って、ジュースだけど。…えへへ。」

照「あっ、うんっ。食べよう。」ホッ

照(咲の無邪気さが……。身構えた自分が何か…情けない。)


ゴソゴソ

照「ケースにあったお菓子。咲はこっちを食べて。」

咲「え?お姉ちゃんが持ってたのは…?」

照「私が食べる。」

咲「…それ、1個くれる?」

照「こっちに同じのがあるよ。ここから取って…。」

咲「んー…、お姉ちゃんが持ってたものが食べたい、かな。」

照「え…?」

咲「だって、お姉ちゃんのポケットに入ってたものは、そこのだけだもんっ…。せっかくあるなら、そっちがいいよー。」

照(……っ!)ドキッ

照(…油断すると、咲はすぐそういうことっ……。)

照「…さ、さっき怒ったのに…。」

咲「あれはっ……お姉ちゃんが気にしてたから注意しただけで…怒ってなんてないよっ?」アセ

照「で、でも、呆れてた…。」

咲「えっ!呆れたりもしてないよっ?お姉ちゃんらしいなって思っただけで…!むしろっ…」

咲「………。」カア…

照「え?」

照(急に黙っちゃった…?な、なんで?)

照「…な、なに?」ドキドキ

咲「………む、むしろっ、…手がかかる、ちっちゃい子って感じで……かわいいな、って思って………!」

照(…っ!?)ドキッ


照(さ、咲っ、そんなこと思ってたの…?)

咲「ううー…ご、ごめんね。私、お姉ちゃんに対してこんなこと…。」

照(そ、そんな風に思ってくれてたんだ……。)カア…

照「べ、別に気にしなくていい…。」

咲「さっき私に、怒ってるか聞いたときも不安げで…本当に小さな女の子って感じだったんだよ。私、また抱きしめたくなっちゃったもん。」クス

照「…そう、だったんだ…。」

照(どうしよう。…何か、すごく嬉しい……。咲が私のこと、そんな風にまで思ってっ……。)ドキドキ

咲「これ、もらうね?」

照「…う、うん。どうぞ。」

咲「…ふふ。ちょっと崩れてるけど、ちゃんと美味しそうっ。」ガサ

ハム

咲「……ん、甘い…。」モグモグ

照「………。」パク…、モグモグ

照(……どうしても咲の顔に目がいっちゃう。…咲の口………今とっても、甘そう………。)

照「……はあ…」

咲「…え?お姉ちゃん、どうかした?」

照「っ!な、なんでもないっ。」アセッ

咲「そう?」ハム、モグモグ

照(びっくりした……。今…無意識に、ため息出てたんだ…。)ドキドキ




ゴソゴソ

照「…もう行くの?」

咲「うん。待ち合わせが15時からだから、そろそろ出ないと…。」

照「そう…。」

照(…咲が行っちゃう…。)

咲「えーと…」

咲(忘れものは多分、ないよね。)

照「待ち合わせ場所…駅だっけ?」

咲「うんっ。」

照「何かあったら危ないから、ついていくよ…?」

咲「えっ?ううん、大丈夫だよ。道は覚えたからっ。」

照「でも…」

咲「あ、お姉ちゃん…私が迷子になるって思ってるんでしょ?」ムー

照「えっ、いや…その…」

照(それもあるけど……)

咲「もう、お姉ちゃんったら心配症だよ。」

咲「はじめて行くわけじゃないから、へいき…」

ピンポーン!


照・咲「…!」ビクッ

咲「だれかな…?」

照「…出てくる。」

照(まさかとは思うけど…。)

ガチャ

照「はい。」

淡「やっほー、テル。サキいる?」

照(……!)

照「…う、うん。いるよ…。」

テクテク…

照(……どうして家に…?)

咲「あ、お姉ちゃん。誰だったの?」

照「…淡、だったよ。」

咲「えっ!ほ、ほんとに?」

タタッ

咲「…あ、淡ちゃんっ?」

淡「サキッ!」

咲「ど、どうしてここに…?駅で、15時の待ち合わせだよね?」アセ

淡「んー…、迎えにきちゃった!」

今日はここまでです


【MEMO】 115まで


咲「そんなっ…悪いのに…。」

淡「いいんだって。」

淡「それに、早く家出ちゃったし、サキが駅に着けなかったら大変だしさ。」

咲「あー、淡ちゃんもそんなこと…!」

淡「え?なになに?」

咲「はあ、もういいよ…。ちょっと待っててね、荷物持ってくるから。」

パタパタ

咲「お姉ちゃん、行ってくるね。」

照「…うん。気をつけて、ね…。」

咲「はーい。」

照「…その、何時くらいに帰ってくる?」

咲「あっ、そうだね。うーん…そんなに遅くはならないと思うけど、…夕方すぎかなあ?」

照「分かった…。」

パタパタ

咲「淡ちゃん、おまたせっ。」

淡「うんっ。」

咲「行ってきまーす。」

ガチャ

照(…咲…。)


テクテク…

咲(…あ、行き先どうしよう…?待ち合わせだったから駅にしたけど、淡ちゃんこっちまで来てくれたし…。)

淡「ねえ、サキ。」

咲「…あっ、うん、なあに?」

淡「駅で、なんか用があるの?」

咲(……!)

咲「あ、あのねっ…私もそれ言おうと思ってたんだけど…」

咲「駅に用事があったんじゃなくて…、ちょっと渡したいものがあって……。」

淡「え?あっ、そうだったんだ…!」

咲(…これ以上は、まだ……。)ドキドキ

淡(わ、渡したいものって…?てっきりお喋りしたいとか、そんな感じかと思ってた。)ドキドキ

淡(それなら、なおさらっ…!)

咲「え、駅まで行かなくても…途中で喫茶店とかあったら、そこで…」

淡「ねえ、私の家おいでよっ。」

咲「え…?」

淡「ここからなら、駅行くのとそんなに距離変わんないしさ。」

咲「えっ!?で、でも…」


咲(…わ、私…お友だちの家に行くなんて、ほとんどしたことないよ…。)ドキドキ

淡「行くのやだ?」

咲「…あっ、ううん…!そうじゃないのっ。…ただ、急だし…悪いかなって。」

淡「それだけ?なら全然へーきだよ。」

咲「え…と、その…」

淡「じゃあ決まり!いこっ。」タタッ

咲「あ、淡ちゃん……!」

咲(…私、本当に行っちゃってもいいのかな…?)



テクテク、ピタッ

淡「ここだよ。」

咲「…えっ。」

咲(………。)

ガチャン

淡「さ、入って。」

咲「…あの、淡ちゃん……。」

淡「ん?」

咲「…こ、ここ…ほんとに淡ちゃんの…?」

淡「え?そーだよ?」

咲「………。」

咲(ど…どうしよう。…偉い人が住んでるようなお家なんだけど……!)


淡「門の前で固まられても困るよー?」

咲「あっ…、ご、ごめんね。」

咲「し、失礼します…。」

テクテク…、ガチャッ

淡「ほら、サキも入りなよっ。」

咲(近くで見ると、より一層豪華だよお……。ここに、私が上がるなんて…そんなこと…。)ドキドキ

咲「……ご、ごめん。私…やっぱり帰るよ。」

淡「えっ!?な、なんで!?」

咲「あ、あの、緊張しちゃって…。」モジ…

咲「わ、私、実は…こうやってお友だちのお家に上がったことがあんまりないの…。淡ちゃんのお家、すごく大きいし……私がお邪魔できるようなところじゃ…ないよ。」

淡「そんなこと気にすることないって!」

咲「で…でも、ちゃんとしたお菓子折とかも持ってきてないし…!」

淡「いらない、いらない!サキは私の友だちなんだから、遠慮なく入ってよっ。」

咲「あ…で、でも…」

淡「このまま玄関前で帰られたら寂しすぎるって。」

咲「あう…。」

咲(…そ、そうだよね…、淡ちゃんがせっかく誘ってくれたんだもん…。こんなに緊張してちゃ、だめ…。)

咲「…それじゃあ、…お邪魔します…。」

淡「うんっ。いらっしゃい、サキ!」

淡(……『友だち』、か…。ほんとは、それ以上の関係で、来てほしいんだけどね…。)


テクテク

咲(わわっ…、お家の中も広い……!)

淡「私の部屋、2階だから。」

咲「う、うん。」

咲「あっ、淡ちゃん。私、お家の人に…ごあいさつを…。」

淡「あー、必要ないよ。」

咲「え?なんで…?」

淡「今いないから。」

咲「えっ、…あの、お仕事…?」

淡「うん、両親ともね。たまに帰ってくるけど、ほとんどここにはいないの。」

咲「……そ、そうなんだ。」

咲(それじゃあ普段…淡ちゃんは、ひとりでここに……?)

カチャッ

淡「はい、どーぞっ。」

咲「えっと…、お邪魔…します。」

淡「それ2回目だよ?」

咲「だ、だって…!やっぱり、緊張しちゃって…。」

淡「あはは、そっか。まあ、てきとーに座っててよ。」


淡「なんか飲み物持ってくる。」

咲「あっ、いいよ!私、すぐ帰るからっ…。」アセ

淡「すぐだから待っててよ。ね?」

咲「あう…ご、ごめんね。」

淡「いーから、いーから。」

カチャ、テクテク…

咲「…うぅ……。」ペタン

咲(…やっぱり…緊張するよ…。しかも広くて、キレイだし…。淡ちゃんはこういうの…慣れてるみたいだったけど、普通はそんな感じなのかなあ。)


淡(サキが家に来てくれた…!ちょっと強引に誘ってみたかいがあったよっ。)ドキドキ

淡(ずっとこの日がくるのを待ってたんだから…!絶対ムダになんてしないっ。)



テクテク…、カチャ

淡「おまたせ…って、あれ?なんでそんな入り口のとこに座ってるの?」

咲「…!あ、淡ちゃんっ、遅いよお…!」

淡「え?そんなに遅かった?」

咲「私ドキドキしながら待ってたんだもん…!心もとなかったよー…。」

淡「ご、ごめん。マンガとか読んでてよかったのに。」

咲「そんなことできるわけないでしょっ…。」

淡「そ、そっか。」

淡(こんなに切羽つまってるなんて。ただ私だけを、待っててくれてたんだ…。)


咲「淡ちゃんのお家なんだから、勝手なことはできないよ。」

淡「もー、気にしないでいいのに。」

淡「…ほら、ジュースとお菓子持ってきたっ。サキ、もっとこっちに座りなよ。」

咲「…あ、ありがとう。」

ポス…

淡(サキが、ほんとに私の部屋にいる…。)カア

咲「………。」

咲「……あれ…?…なんか、今はそんなに緊張しないや。」

淡「え?」

咲「さっき淡ちゃんを待ってたときね、すごく不安になったの…。このまま戻ってこなかったらどうしよう…とかまで考えちゃった…。」

淡「な、なに言ってんの。ここ私の家だよ?」

咲「う、うん…そうだよね、そうなんだけど…。淡ちゃんが戻ってきたとき、すごくホッとしたんだ。」

咲「なんかそれで落ち着いたみたいで、こんなに豪華なお家でも…今はそれほど緊張してないの。えへへ。」ニコ

淡(な、な…、サキってば可愛すぎるんだけど…。)ドキドキ

咲「淡ちゃんのお部屋って、おしゃれでかわいいねっ。」キョロ

淡「そ、そう?」

咲「うんっ、やっぱりその人らしいっていうか…。お姉ちゃんのお部屋も、読書好きっていう感じだったし…。」

淡「え?テルの部屋、入ったの…?」

咲「うん。昨日寝る前に星を見てたら、お姉ちゃんが部屋に入れてくれたの。そこからの方がよく見れて、キレイだったんだ…!」

淡「そう、なんだ。」


咲「…あっ、そうだ。淡ちゃんっ。」

淡「ん?」

ゴソゴソ

咲「はい、これっ。」

淡「え…、これって!」

咲「お菓子、作ったんだ。もしよかったら食べてもらいたいなって……。」

淡「い、いいのっ?」

咲「うんっ。」

淡(サキが渡したいものって、これだったんだ…!手づくりをもらえるなんて……ウソみたいっ。)ドキドキ

淡「さ、早速食べていい?」

咲「もちろんだよ。」

ガサ

淡「ブラウニーだっ…。」

咲「あ…、苦手…だったりする?」

淡「全然っ。大好きだよっ!」

咲(よかった…。)ホッ

淡(これをサキが…。こんなサプライズがあるなんて、思ってなかった…!)

淡「…い、いただきますっ。」

パクッ

淡「………。」モグモグ


淡「…!」

咲(………。)ドキドキ

淡「…っ。」

咲「…………あ、淡ちゃん…?」

咲(えっ…、く…口に合わなかったのかな……?)

咲「だ、大丈夫…?」ソッ

ガシッ

淡「…サキッ!」

咲「きゃっ」

淡「すっっごくおいしいよ、これ!ほんとに手づくり?」

咲「えっ?……う、うん。」

淡「売り物なんてメじゃないくらいおいしい!」

咲「えっ…そ、そんなことっ…」

淡「私、こんなおいしいのはじめて食べた…。」

咲「大げさだよ……。」テレ…

淡「ううん、ほんとに!」グッ

咲「………あ、ありがとう…。」

咲「…………あの、淡ちゃん…」

淡「ん?」

咲「そろそろ…離してもらえると……」カア


淡「…あっ!」

バッ

淡「ご、ごめんっ!」カア

咲「…う、ううん。気にしないで…。」

淡(わわっ!思わずサキの腕つかんで、引き寄せてた…!)

淡「……。」ドキドキ

咲「…ふふ、でも気に入ってもらえてよかったよ。」

淡「ほ、ほんとにおいしかったから…!」

咲「うーん、普通につくったつもりなんだけどなあ…?こんなに喜んでもらえるなんて、思わなかったよ。」

淡「サキは天才なんだねっ。」

咲「う…うーん…。」

咲(淡ちゃんは普段、あんまりお菓子食べないのかな…?)

淡「………。」パクッ、モグモグ

咲「……。」

咲(すごく美味しそうに食べてて……な、なんか照れちゃうよ。なにか気を紛らわさなきゃ…。)カア

咲「…あ…淡ちゃん、持ってきてくれたお菓子…もらってもいい?」

淡「ん?ああ、じゃんじゃん食べてっ。」

咲「ありがとう。それじゃ…いただくね?」

スッ

咲(……あれ?これって…)

咲「専門店のお菓子…?」

淡「うん。たぶんそう。」モグモグ

咲(…え?こっちのは、高級なお店のだよね…?あ、あっちのも……!?)

今日はここまでです


【MEMO】 125まで


淡「どうかした?」

咲「あ、淡ちゃんっ。こんないいもの、もらえないよ…!」アセ

淡「えっ、なんで?」

咲「…それ以前に、こっちの方が何倍もおいしいのに……私、淡ちゃんに失礼なものあげちゃった…!」

淡「ちょ、ちょっと、サキッ。なに言ってんのっ?」

咲「ご、ごめんね…。」シュン

淡「まってまって!なんかすごく誤解してるよっ。」アセッ

淡「このお菓子は親とかが持ってきて、食べきれないくらいあるし…。それに私は、咲のブラウニーの方が本当においしかったのっ。」

咲「うう…でも……」

淡「むしろ私の方が、こういうのしか出せなくて気まずいんだから…。」

咲「ええっ!そ、そんなことないって。」

淡(味気ない、こんなものより…サキのお菓子の方がおいしいのは当然だよっ!)

淡「だってサキのつくってくれたブラウニーは、世界のどこにも売ってないもん!」

咲「……!」

咲(淡ちゃん…。)ドキ

淡「だからサキは気にしないで、どんどん食べてよ。」

咲「…う、うん……ありがとう…。」

咲「……。」…ハム、モグモグ

咲(…すっごく、美味しいけどなあ……。これよりも、私のものの方が美味しいだなんて……。)ドキドキ

淡「…はあーっ、おいしかった!」

咲「えっ!」


咲「もう食べたの?」

淡「うんっ。」

咲「は、はやいね…。」

淡「おいしくて、止まんなかったよ。」

咲(…。)カア…

淡「……。」ガサガサ

咲「……なにしてるの?」

淡「記念にとっとくの、このラッピングっ。」

咲「ええっ!?」

咲「そっ、そんなことしなくても…!」

淡「だって、サキからはじめてもらったプレゼントだもん。」ニコ

咲「……淡ちゃんっ…。」ドキ

咲(…そんなに、喜んでくれてたんだ……。)

咲(で、でも…中身も包みも、本当に大したものじゃないのに……。)

咲「…よ、よかったら、またつくってくるからっ…。」

淡「えっ?ほんと!?」パア

咲「う、うんっ。…だからそれ、とっとくのは止めにして…」

淡「うわわっ、嬉しーっ!またサキのお菓子、食べれるんだ…!」

咲「あ…でも全然、大したものじゃ…。」

淡「楽しみにしてる!……あ、じゃあこれは第1回目のってことで、額縁にでも入れ…」ルン

咲「やっ、やめてえっ!」ガタタッ




咲「……あっ、もうこんな時間…。」

淡「…ほんとだ。」

淡(サキといる時間は、どうしてこんなに早いんだろう…。)

咲「すっかり話し込んじゃったね。」

淡「うん。」

咲「楽しかった。」

淡「うん…。」

咲「………。」

淡「………。」

咲「…そろそろ帰ろうかなっ。」ガサ…

淡「…あっ……」

淡(サキが、行っちゃうっ。そんなの…やだ…!)

咲「それじゃあ、淡ちゃん…」

淡「ね、ねえっ!夕食食べていかない?」アセ

咲「え?」

淡「サキの食べたいもの、なんでも用意するからさ…!一緒に食べようよっ。」

咲「い、いや…それはっ…!」

淡「…っていうか、なんなら今日泊まっていきなよ!サキが私ん家にくることなんて普段ないじゃん!この機会にさっ…。」

咲「ええっ!?そ…そんなの悪いよっ!私もう帰…………あっ…。」

咲(淡ちゃん…私が帰ったら今日も、ひとりになっちゃうんだ…。たったひとりで、毎日ご飯食べてるのに……。)


淡「ねっ、そうしなよ…!」ドキドキ

咲「………う、うん。…それじゃあやっぱり、お言葉に甘えちゃうおうかな。」ニコッ

淡「えっ、ほ…ほんとっ?」パア

咲「ちょっと、お姉ちゃんに電話するね。」

淡「あっ、うん…。」

ゴソゴソ

咲(お姉ちゃんには申し訳ないな……。でも、私が淡ちゃんのお家に来る機会なんてほとんどないと思うから…今日だけ……。)


プルル……ピッ

照「咲っ?」

咲「あっ、お姉ちゃん?」

照「うん。どうしたの?」

咲「あの…お姉ちゃん、夜ご飯ってもう準備とか…してる…?」

淡「………。」ドキドキ

照「え…?ううん、まだだけど…。」

咲「あ、ほんと?よかったー…。」ホッ

照「咲…?」

咲「あっ、ごめんね。あの…急で申し訳ないんだけど…、今日…淡ちゃんのお家に泊まらせてもらおうかと思ってるの…。」

照「えっ…!?」


咲「…い、いいかなあ…?」

照「…え、えっと……、今日は帰らないで…淡の家に、行って……泊まるの…?」

咲「あ、ううんっ。えっと…駅には行ってなくて、そのまま淡ちゃんのお家にお邪魔したんだ。それで…、夜ご飯一緒に食べて、泊まっていきなよって言ってくれて。」

照「…そ、そう…なんだ…。」

咲「うんっ。」

照「………。」

咲「……えっと…」

照「………咲は泊まりたいの?」

咲「え?…う、うん!」

照「………。」

咲「……お姉ちゃん…?」

照「………それなら、泊まっておいで…。」

咲「ほんとっ?…あっ、お姉ちゃんは大丈夫…?」

照「ふふ、私は平気だよ。誰かさんみたいに、子どもじゃないからね。」

咲「えー、それって私のこと?」ム-

照「…淡と、お家の人に迷惑かけないようにね。」

咲「うんっ。…あ、でも今日、お家の人はいなくて淡ちゃんだけなんだ。」

照「えっ?」

咲「あっ、でももちろん、迷惑かけないように気をつけるよっ。」

照「…そ、そう……。」

咲「それじゃあお姉ちゃん、明日帰るからねっ。」

照「…うん、分かった…。」


ピッ

淡「…テル、いいって?」

咲「うんっ。」

淡「そうなんだ…。」

咲「えっと、今日はお世話になります。」

淡「あっ、いや、こちらこそ…。」

咲「えへへ、家族以外のお家にお泊まりするの、はじめてだよ。」

淡「…ごめん、今さらだけどさ…迷惑だった?」

咲「えっ?」

淡「……。」

咲「…えっと、迷惑なんかじゃないよ?というか…私の方が急に泊まらせてもらっちゃって、悪いくらい…。」

淡「そ、そんなことないよっ。」

淡(私が強引に誘ったんだもん…。)

咲「淡ちゃんと長く一緒にいられて、嬉しいなっ。」ニコ

淡「……っ!」ドキッ

咲(少し、緊張するけど…。こういう機会のはじめてが、淡ちゃんでよかったかも。)

淡(…親切から言ってくれた、ってことくらいわかってる。でも私はやっぱりサキと、もっと一緒にいたい。)

淡(そのときサキを困らせることになっても、後悔なんてしたくないから、我慢なんかしない…!)




淡「まだ少し早いけど、夕食なににするか決めようよっ。」

咲「そうだね。うーん、どうしようか…?」

カタカタッ

淡「種類は、ひと通りそろってるよ。はい、これっ。」パッ

咲「これ…なあに?」

淡「私が普段食べてるデリバリーの店。特注で頼めるところもあるから、けっこう品数は多いと思うっ。」

咲「えっ!淡ちゃんいつも外食なの?」

淡「外食、ってことになるの?よくわかんないけど、ネットとか電話で取り寄せてる。」

咲「じ、自分でつくったりは…?」

淡「え、しないよ?」

咲「………。」

咲(…お、お金持ちだから、なのかな…?でも…毎日つくりものって……。)

淡「和食とかなら、ここがおいしいよっ。」カチッ

咲「…う、うん………えっ!」

咲(た…高い…。ひょっとして、他のお店もこんな感じ…?)

淡「サキが好きそうなのはどれだろ…」カチ、カチ

咲「あ、淡ちゃん…。」

淡「なーに?」カチ、カチ…

咲「あの、私今日…そんなにお金持ってきてなくて……。」

淡「いらないよ?」キョトン


淡「サキは好きなのを、好きなだけ食べてっ。」

咲「だっ、だめだよ!」アセ

咲「そ…それより淡ちゃんっ、本当に毎日…お店のご飯なの?」

淡「うん。」

咲「そっ、そんなの…体悪くしちゃうよっ。」

淡「えっ?いやでも一応、バランスが考えられてるのを頼んでるつもりだよ?」

咲「で…でもできるだけ、目の前でつくった…できたてのものを食べた方が…。」

淡「あー…でも私、料理とかできないし。」

咲「……。」

咲(このままだと淡ちゃん…、体壊しちゃうかも…。)

淡「注文した方が、早いしラクだしおいしいから…」

咲「だ…だめっ!毎日外食なんて不健康だよ…!なんだったら、今日は私が夜ご飯つくるからっ。」

淡「え…!?」

咲「あっ…!」

咲(つい口から……!…こんな図々しいこと言っちゃうなんて。あ、謝らなきゃっ…)アセッ

淡「…ほんとに?」

咲「…え?」

淡「サキがここで、つくってくれるのっ?」パア

咲「…え…?あ、その…」

咲(あれ…、淡ちゃん嫌がって…ない…?)


咲「えっと……め、迷惑じゃなければ……。」ドキドキ

淡「サキの手料理が食べられるなんて、夢みたい!ほんとにいいのっ?」

咲「そ、そこまでのことじゃないよっ。」

淡(ウソウソ…こんなことって…!)ドキドキ

咲(淡ちゃんが優しくてよかったよお…。)ホッ



ガチャ

淡「はいっ、ここがキッチン。」

咲「わ…広いね…!」

淡「あるものは全部好きに使ってね。」

咲「え、いいの…?」

淡「もちろんっ。」

咲「…それじゃあ、あの…冷蔵庫…見せてもらってもいいかな……?」

淡「うん、いいよ?大したものは入ってないけど。」

咲「えっと、夜ご飯に使っても大丈夫なものを教えてもらえたらなって。」

淡「んー、なにがあったかな…」

パカッ

淡「あ…。」

咲「…ふえっ?」

淡「…あは…は、軽食と調味料しか…入ってないや…。」ヒク…


咲「あ、淡ちゃん…。」

咲(これは…遠慮してちゃだめかも………!)

淡(ヤバイ、サキに引かれてるっ…?こ、こんなに無いなんて思わなかった…!)

淡「ちっ、ちがうのっ…これは…」アセッ

咲「…あの…キッチンの戸棚とか引き出し、見てもいい?」

淡「あっ…、う、うん。」

パカッ…、パカッ…、スッ…

咲「………。」

淡(無言で見てってる…。)ドキドキ

…パタン

咲「…ふう。」

淡「サキ…?」

咲「ん?」

淡「その、引いてる…?」

咲「へっ?な、なんで?」

淡「いや、だって…私の家なんにもなくて…。」シュン

咲「ううんっ、引いたりなんてしてないよ?…それに、淡ちゃんのお家はいっぱいあって……」

淡「えっ?なにがっ?」

咲「ふふっ、淡ちゃんのお母さんなのかな?調味料がたくさん揃ってたの。」


淡「あー…、たしかに帰ってくる度になんかしら買ってるみたいだけど…。」

咲「これだけ充実してたら、材料さえあればどんな料理もできちゃうよっ。お母さんすごいね!」ニコッ

淡「で、でもほとんど封開けてないし、よく期限切らして捨ててるけどね。」テレ

咲「あ…あはは…。」

咲「と…とにかく、夜ご飯の材料を買いにいこう。」

淡「うんっ。」

咲「…あ、その前にメニュー決めなきゃ。」

咲「淡ちゃん、なに食べたい?」

淡「サキがつくってくれるものならなんでも!」

咲「う…うーん、嬉しいけど…それだと困っちゃうよ。」

淡「それじゃあ…、アレルギーとかはないよ。」

咲「あ、ほんと?…嫌いなものは?」

淡「んー、サキのものならなんでも食べられると思う。」

咲「あはは、ほんとにいいの?えっと、和洋中ならどれが…?」

淡「サキが得意なものっ。」

咲「もー、淡ちゃんたら…。それなら私が全部決めちゃうよ?」

淡「いいよー。」

淡(…私が一番食べたいのは料理じゃないし…ね。)

今日はここまでです


【MEMO】 136まで




ウィーン

咲(お米はあったから、おかずのものを買えばいいよね。なるべくバランスのいいものを…。)

コロコロ

淡「サキッ、買い物カート持ってきた!」

咲「わ、ありがとう。」

淡「なに買うのー?」

咲「えっと、お魚とお野菜と…。」

淡「魚に野菜ね!」

咲「嫌いなものがあったら言ってね。」

淡「サキのだからへーきっ。」

咲「そういうものなの…?…あ、果物とか甘いものとかで食べたいのある?」

淡「デザートで?」

咲「うん。」

淡「それはもちろん…、……!」ハッ

淡「な、なんでもないっ!」アセ

咲「えっ?な、なに?」

淡(こ、こんなところで今ふつーに、「サキ」って言うところだったよ…!)ドキドキ

咲(食べたいもの、あるんじゃないのかなあ…?)




ガサッ

咲「淡ちゃんの方が重くない…?」

淡「そんなことないよ。さっ、帰ろ!」

咲「うん。」

「あれっ?キミ、たしかこの前の…!」

咲「……え?」

淡「…!」

「あー、やっぱりそうだ!僕のこと覚えてます?ホラ、ついこの前向こうのスーパーでアンケート頼んだ…」

咲「…あっ。」

咲(わわ、あのときのこわい人だ…。)

「覚えててくれました?嬉しいなあ!こっちでも買い物してるんですねー。今日こそは、ご協力いただけます?」ズイッ

咲「あ、あの私っ…」ビク

咲(今日はちゃんと自分で断らなきゃ…!)

グイッ

咲「あっ…。」

咲(淡ちゃん…!?)

淡「……。」ギロッ!

「ヒ……!!!」

淡「二度と近寄んないで。」

「すっすいません!べべ別の人当たりますっ!!」


テクテク

咲「あ、淡ちゃん…断ってくれてありがとうっ。」

淡「いーよべつに。」

咲「…で、でも……あんなふうに言っちゃうのは…。」

咲(な、なんかすごく怯えてたよ…。…でも、私が淡ちゃんに言える立場じゃないんだけど……。)シュン

淡「……。」…ハア

淡「…ん、そーだね。気をつけるよ。」

咲「ご、ごめんね…。」

淡(なんでサキに対してだと、こんなに素直になれるんだろう…。)

咲「自分で断らなきゃって思ってるのに、この前はお姉ちゃんが断ってくれて……、今日は淡ちゃんにお世話かけちゃった…。」

淡「それほどのことじゃないよ。」

淡(まーあれじゃ、テルも同じように追い払っただろうね。)

咲「淡ちゃんや、お姉ちゃんみたいになりたいなあ…。」

淡「サキが?あはは、そんなの意味ないって。」

咲「えー…?…だって、自分の意見もちゃんと言えないなんて…、周りの人が困っちゃうよ。」

淡「そこまでひどいわけじゃないでしょ。サキは今のままでいいのっ。」

咲「うー…私ももっとはっきり断れたらなあ…。」

淡「サキが言えない代わりに、私が全部言ってあげるから問題ないよ。ほら、上の空で歩いてるとコケるよ?」

咲「う…うん。」




咲「さて…」

淡「………。」

淡(サキのエプロン姿…やばいんだけど…。可愛いすぎでしょ…!)ドキドキ

咲(まずはお米をといで、少しお水に浸して……あ、お湯沸かさなきゃ。)

淡(このまま見てたら、夕食どころじゃなくなりそう…。…いや、それはだめっ、せっかくのサキの手料理なんだから…!)

淡「サ、サキッ!私もなんか手伝う!」

咲「うん、ありがとうっ。それじゃあ…買ってきたお野菜を全部出して、軽く水洗いしてもらってもいい?」

淡「おっけー!」

淡(ちゃんとやらなきゃ…!えっと、ダイコンとニンジン…ゴボウに…)ガサガサ

ザー…

咲(次は、ぶりを…)

淡「サキ、この魚はー?」

咲「あ、ちょうど今使おうと思ってたんだ。ありがとう。」

咲(塩をふって少し置いとこう。)パッパッ

淡「次はっ?」

咲「えっと、その野菜を切ってほしいんだけど…、淡ちゃん包丁って大丈夫…?」

淡「あ、バカにしてる?」ムー


咲「う、ううん!そういうのじゃなくてっ…、刃物だから…。」アセ

淡「へーきだよっ。大得意だしさ!」

咲「それじゃあ大根の皮をむいて、半月……ううん、厚めの…いちょう切りにしてもらえたら…。」

淡「……んん?」

咲「…あ、えっと…、輪切りにして…」

淡「輪切りねっ。」ザクッ

咲「あっ、淡ちゃん!切るときは左手を丸くして添えた方が…!」ハラハラ



咲「ふう…。」

咲「できたねっ。」

淡「すごい…!」

咲(ぶり大根、きんぴらごぼう、海藻サラダに黒豆煮と浅漬け…、これなら栄養価は大丈夫そうかな…。)

淡「すっごく和食って感じ…!」キラキラ

咲「サラダは違うけど、大体そうだね。」

淡「お腹ペコペコー!さっそく食べようよ!」

咲「うん。今お味噌汁つけるね。」

淡「あ、手伝うよっ。」




コトッ

咲「それじゃあ食べようか。」

淡「うわわ……夢…みたい…。」

咲「淡ちゃんの口に合うといいんだけど…。」

淡「絶対おいしいに決まってるよ!いただきまーす!」

咲「いただきますっ。」

淡(サキがつくってくれたご飯を…こうやって一緒に食べれるなんて……!)

淡(今日はずっと幸せすぎて、信じられないよ…。)

パクッ

淡「………。」モグモグ

咲「…ど、どうかな?」ドキドキ

淡「……!」

淡「なにこれ……ほんとに、すっごくおいしい…!」ブル…

咲「わ…!本当っ?」パア

淡「こんなにおいしいご飯…食べたことないよ…!」

咲「ま、またっ…そんなこと言って…。」カア


パクパク、モグモグ…

淡「……キンピラもおいしい!……みそ汁も、すごいおいしいんだけど…!」

咲「あ、淡ちゃん…、そんなに急いで食べたらよくないよ。」

淡「だって…!とまらないんだもんっ。」モグモグ

咲「う、嬉しいけど……ちゃんと噛んで食べてね?」テレ

淡「うん!」パクパク

咲(淡ちゃん、こういう和食が大丈夫でよかった…。)

淡「…サキは本当に完璧!」ニコニコ

咲「え?料理のこと?」ハム、モグモグ

淡「んー、まあそれもあるけど…」モグモグ

咲「でも、これは私が全部つくったんじゃないよ?淡ちゃんいっぱい手伝ってくれたし…。この黒豆は、もう煮てあるのを温めて盛りつけただけだし…。」

淡「えーと、この…ブリ大根?と、キンピラとかの味つけは全部サキでしょ?味はちゃんとついてるのに、優しい感じ!」

咲「…あ、でもそれは淡ちゃんのお母さんの調味料があったから…。」

淡「どんなにいいのがそろってても、腕がないとこうはならないよ。」

咲「そ、そこまでのものじゃ…」

淡「ていうかそんなにゆっくりしてたら、私全部取っちゃうよ?サキももっと食べなよー。」パクパク

咲「あ、うん。」…ハムッ




淡「はあーっ。」

淡「ほんと、さっきのご飯おいしかったあ…!」」

咲「淡ちゃん、いっぱい食べてたね。」

淡「うん!いつもは料理残すんだけど、今日は満腹にならないくらいどんどん食べれちゃった!」

淡「サキは最高のお嫁さんになるね!」

淡(私の、だけどっ。)

咲「えっ!そ、そんな…。」カア

淡「いきすぎってくらい思いやりがあって、麻雀は群を抜いてるし、料理も上手いとか、完っ璧だよ!」

咲「ええっ!?わ、私全然そんなことないって!」アセ

淡「もちろん、それだけの魅力なわけないんだけどさ。でもとにかく、サキはもっと自分のことを自覚すべきだね。」

淡「…でもって、人からどう見られてるかも自覚すべき。」ズイ

咲「う…うーん…。」タジ…

咲(む、難しいよお…。)

淡「あっ、そうだ!先に言っておくけど、ベッドは私と一緒ね!」

咲「え…?」

咲「えええーっ!?」

今日はここまでです


【MEMO】 144まで




淡「さてっ。食休みして、お風呂入ったし、あとは寝るだけ!サキ、一緒に寝よっ!」

咲「まっ待って、淡ちゃん!その…、ほ…ほんとにいいの…?」アセ

咲(これ、淡ちゃんが普段寝てるベッドだよ、ね…?)ドキドキ

淡「まだ言ってるの?別々に寝る方が変でしょっ。友だちなんだし、泊まりにきたならふつーこうするよ!」

咲「そ、そうなの?」

咲(はうう…き、緊張する…。パジャマも淡ちゃんの借りちゃったし、なんか…申し訳ないな…。)モジ

淡「ゆ、湯冷めするよっ?ほら、早くおいでって。」

咲(淡ちゃん、すごく優しいよ…。…ここは、甘えちゃおう……!)

咲「…うん。…それじゃあ…失礼します。」ソロ…

淡「う、うん!」

淡(う、うわ……!やった…!ついに…一緒のベッドに…!)ドキドキ

…ポフ

淡「っ!」

淡(サ、サキの顔がこんな近く…!!)カアッ

咲「えへへ……。な、なんか照れちゃうね…。」テレ

淡「せっ、狭くないっ?」

咲「うん、大丈夫だよ。」


咲「…あ。もう寝るよね?電気消さなきゃ…」ムク

淡「あっ、へーき!リモコンここにあるからっ。」

咲「え、そうなの?あはは、すごいね。」モゾ…

咲(あれ……?)ピク

咲「淡ちゃんのにおいだ…。」ポソッ

淡「え…?」

咲「あっ、あのね、今気づいたんだけど…このベッド、すごく淡ちゃんの香りがするの。とってもいいにおいで…。」

淡「…えっ…そ、そんなにする…?」カア

咲「うんっ。このパジャマ借りたときも、何となく淡ちゃんのにおいがしたんだけど、ベッドはもっとするよっ。」

淡「そ、そうなんだ…。私…全然わからないや。」カア

咲「洗剤とか、スキンケアのものじゃないにおいだよ。…ふふ、なんか嬉しくなっちゃうなあ。」モゾモゾ…

カチャ

咲「あ…。」

淡「ん?……あっ!」

淡「それ…!」

咲「はずすの忘れてたよー。今気づいてよかった。」ムク

淡(この前のブレス…!)


淡「今日、してたのっ…?」

咲「うんっ。…あれ?もしかして気づかなかった?」

淡「……う…ん。」

咲「ご飯作るときと、お風呂のときははずしてたんだけど、それ以外はつけてたよ。…あ、でも長袖だと見えないよね。」

淡「つけてきて…くれてたんだ…。」

咲「だって、淡ちゃんとの絆の証だもんっ。」ニコッ

淡(っつ!)ドキッ

淡(こ、こんなことされたら…もう…!)ドキドキ

咲「あれ…?はずれない…。」ゴソゴソ

淡「…は、はずさなくていいじゃん。」ムク

咲「え、でも万が一…寝てるあいだに壊したりしちゃったら嫌だし…」

グイッ、ドサッ…

咲「きゃっ…」

淡「…このまま、つけてなよ。」

咲「あ、淡ちゃん…?どうして上に乗って…」

淡「…はあ…。」ドキドキ

咲「……?」キョト

淡「サキ、可愛すぎ…。」


咲「っ!か、可愛くなんかないよっ!可愛いのは淡ちゃんで…!」アセ

淡「ねえ、私が今日…どれだけ頭狂いそうだったか、わかる?」

咲「えっ…?それってどういう…」

淡「やっぱり、サキは気づいてないよね…。」

咲「……?」

淡「今日ずっと見てた。」

咲「え…?」

淡「どのサキもすごい可愛いかったよ…。エプロンつけてたときも…、私の服を着たお風呂上がりのときも…。」

淡「いつ……襲っちゃおうか、って思うくらい。」

咲「えっ…!?あ、淡ちゃんっ…?」

淡「私が…そういう目で見てる…って、わからなかった?」

咲「な、なに言ってるのっ…。」カアッ

淡「今日だけじゃないよ。一昨日の出かけたときも、ずっとそうだった。」

咲「そんなっ、冗談…!」

淡「ジョーダンなんかじゃないよ!」グッ

サラッ

咲「…あ…」

咲(淡ちゃんの髪が…。)

咲(すごくいいにおい。…もうほとんど抱きしめられてるみたいなのに、…ドキドキしすぎておかしくなりそうだよっ……。)ブルッ…


淡「……私のこと、嫌い?」

咲「え…!?ううんっ、嫌いなわけないよ!」

淡「そう…。じゃあ、好き?」

咲「うんっ、好きだよ。」

淡「………テルのことは、好き?」

咲「お、お姉ちゃん…?好きだけど…。」

淡「…そう。…あのさ、私も…サキのことが好き。」

咲「あ、ほんと…?」パア

淡「まー、それは当然なんだけど。…でも…」

スッ…、サラッ

咲「…!」ピクン

淡「髪、サラサラ…」

咲「あ…淡ちゃんっ?」アセッ

淡(首すじ…)ハア

ツツ…

咲「ひゃうっ…!?」ビクッ

淡「スベスベだね…」

咲(こ、これってなんかエッチ……!)ドキ

咲「淡ちゃんっ…だめっ…。」グッ

淡「私の好き…は、もっとこうゆうことがしたい……好き、なの。」


咲「えっ!?」

咲(そ、それって…)

淡「サキを、私だけのものにしたいのっ…。サキもっ、私を好きになって!」

咲「……っ!!」ドキッ

咲(あ、淡ちゃん…、私のこと…そんなふうに思ってくれてたのっ…?)

トクンッ…!

咲(…や、やだ…どうしよう…!なんかすごく体が熱くて…、苦しい……。)カアッ…

淡「サキは私と、こうゆうことするの…やだ?」

咲「……あ、あのっ、私っ…」ドキドキ

淡「私は今すぐにでも…、したい…!」

咲「…!」ドキッ

咲(だ、だめだよ…!いきなり、そんなこと…!)

淡「……サキ…」スッ

咲「だっ、だめっ!」フイッ

淡「…なんで?」

咲(ふわっ!あ…淡ちゃんの息が耳に…!)ブルッ

淡「サキの口、柔らかそう…。」

咲「……!」カア…

咲(や、だめ…、なんかっ…おかしな気持ちになっちゃいそう……!)ドキドキ


淡「私とは、できない…?」

淡(これ以上拒絶されたら私、無理やり…しちゃうかも……。ほんとは、そんなことしたくないけど…、でもっ、このままなにもしないで終わるとか、ムリ…!)トクンッ

咲「………。」ドキドキ

咲(ちゃ、ちゃんと…私の気持ちを言わなきゃ…!)

淡「…サキ、このままだと…私……」スッ

咲「ま、待って!淡ちゃん…きいて…!」

淡「…ん…なあに…?」ドキドキ

咲「わ、私も淡ちゃんのことが好きだよ…!すごく、大好き…!」

淡「うん。」

咲「で、でも…気持ちの整理がついてないの…。恥ずかしくて、な…なんだかこわくて…、このままだと私、淡ちゃんを傷つけちゃうかもっ。」ウルッ

淡「っ!?」

淡「えっ?えっ!?サキッ、なに言って…!」アセ

淡(私を、傷つけるっ…?)

咲「…私、淡ちゃんのこと大好きなのにっ…。どうしてだろう…、そう…思ったの。今はまだ、こわくて…。」

淡「……。」

咲「こんな気持ちのまま、淡ちゃんと…その……そういうこと…したくないよ…。私、淡ちゃんに好きって言われる資格…ない。」グス…

淡「…サキ…。」

淡(私は自分の欲のことしか、考えてなかったのに……!)


咲「ごめんねっ…。淡ちゃんはこんなに、想ってくれてるのに…。」

淡「そんなこと、ないよ…。今だって、涙ぐんでるサキを見て、私…ドキドキしてるだけだしさ。」

咲「ふええっ?」アセッ

淡「…ねえ、サキが…今、私とできない理由は…そのことだけ…?」

咲「え…?う、うん…そうだけど…。」コス…

淡「それ以外にはないの?その…ほんとは一番好きな人がいるとか…。」

咲「えっ!?い、いないよっ!私、本当にそういうこと、よくわからなくて…。」シュン…

淡(テルへの気持ちも、よくわかってないってことなのかな…。)

淡「………。……ふう…。」

淡「わかった。今日は諦める。」 ムク…

咲「あ、淡ちゃん…。」ホッ

淡(サキがこんなにも欲しい。…でも、こんなに難しいなんて…。単に…私を受け入れるか、拒むかで考えてたのに、それじゃ全然太刀打ちできないよ…!)

淡(私、こんなに不器用だったかなあ…?)ハア

咲(………。)

モゾモゾ

淡「ごめんね、サキ。電気…消すね。」

咲「あっ、うん。」

カチ、フッ…


淡「おやすみ、サキ。」

咲「…あ、淡ちゃん。」

淡「ん?」

咲「あの…、1つ…お願いがあって……」モジ…

淡「え…?な、なに…?」

咲「その…淡ちゃんを、抱きしめてもいい…?」

淡「ええっ!?」

咲「あっ!いやっ、あのっ…だめだったら、全然っ!」アセ

淡「だ、だめじゃない…!けど…、えっ…サキこそ、い…嫌じゃないの…?」

咲「嫌なんて思わないよ…!さっきのは、緊張して…できないけど……。」カア

淡「わ、わかった…!い…いいよ!」モゾ…

咲「そ、それじゃあ……えいっ。」

ギュッ…

淡(ふわわわ…!!サ、サキに抱きしめられてる!)ドキドキ…

咲「……淡ちゃん、あったかい。いいにおいもするし…。」

淡「サッ、サキの方がずっとあったかいし、いいにおいだって!」

咲「え…?でも今日は、淡ちゃんのお家の石鹸とシャンプーを使わせてもらったから…、私のにおいはしないんじゃないかなあ?」

淡「するよっ。サキの体のにおい。」

咲「なっ!あ、淡ちゃんっ!」アセッ


淡「えへへ。」

咲「もう…恥ずかしいよ…。」カア

淡「…ていうか、こんな生殺し状態じゃ、今日は寝れなそう…。」ハア…

咲「ふえっ?」

淡「これ…いいよとは言ったけどさ…。ねえ、私がサキとしたいのがどんなことか、ほんとにわかってる?」

咲「う、うん…。」カア…

淡「サキの胸の前で抱きしめられてて……私…今、自分と超戦ってるんだよ?」

咲「ご、こめんねっ!あの…じ、実は……」

淡「…?」

ナデナデ…

淡「…えっ?」

咲「リラックスできたらいいなって思って…、こうしたかったの。」テレ…

淡「サ、サキッ…?」アセ

淡(わ、わっ…頭、なでられてるっ……!)カアッ

咲「………。」

淡「いっ、いきなりなんでっ…」

咲「…いつも、こんな大きいお家に1人で…ここで寝てるんだよね…。」ポツリ

淡「え…?」

淡「うん…、そうだけど…。」


咲「……。」

淡「サキ…?」

咲「…普段寂しいのに…、今日私がせっかく一緒にいるのに…、あんなこと言っちゃって……。淡ちゃんを突き放しちゃったのかも、って思って…」

咲「そうじゃないよって…伝えるにはどうしたらいいか考えてたら、昔私に…お母さんやお姉ちゃんがこうしてくれて、安心したのを思い出したの…。」

淡「……。」

淡(私の気持ちまで思って、心配してくれてたの…?)

咲「…あはは、ごめんね…。落ち着きたかったのは、私の方みたい…。結局また、淡ちゃんを困らせちゃった…。」

スッ、ギュッ…

咲「…!」

淡「ううん…。ありがと…。」ギュッ

咲「…淡ちゃん…。」

淡「もっとなでて…。」

咲「…うん。」ナデ…

淡「ほんとだ…、すごく安心する……。」

咲「寝れそう…?」

淡「うん…。」

淡(サキにはもう勝てないよ…、こんなちっぽけな…私なんて……。)スリ

咲(淡ちゃん…可愛い…。)ナデナデ…

淡「気持ち…いい……な…」…スウ…

今日はここまでです


【MEMO】 155まで




チュン…、チュン…

咲「……んん……」

ナデ…、ナデ…

咲(…なんだろう……なんだか気持ちいい…)

咲「………ん…」パチ…

咲「……あわい…ちゃん…?」ボー

淡「おはよう、サキ。」ニコ

咲「…あ、…おはよう…」

淡「よく寝れた?」

咲「ん……うん。」コス…

淡「ならよかった。」ナデ…

咲(あ……)

咲「…なでてるの…?」

淡「うん。昨日のお礼。」ニコッ

咲「あっ…。」カア…

咲(そ…そうだ…昨日、淡ちゃんの頭なでて…そのまま私、寝ちゃったんだ…。)


淡「サキの寝顔たっぷり見れて、最高の朝だよ。」

咲「えっ…!?」

淡「あは、どうしたの?顔、真っ赤。」

咲「へ、変な顔…してなかった?」

淡「大丈夫だって。サキの顔は全部可愛いからっ。」

咲「そ、そんなの全然大丈夫じゃないよっ。」フイッ

淡「もー、サキったら。気にしすぎだってば。」

咲「……うう…。」ドキドキ

咲(ど、どうしたんだろう…。寝顔のことだけじゃなくて……淡ちゃんと話してると…なんだかドキドキする…。)モゾモゾ

咲(あっ…そうだ昨日、淡ちゃんに好きって言われて…!)カア…

淡「あっ!だーめっ。」ガバッ

咲「わわっ!」ビク

淡「二度寝禁止っ!もう10時すぎだよ?起きようっ。」

咲「あ…う、うん。」ドキドキ…

咲(淡ちゃんの顔…まともに見れないよお…。)




淡「おいしーっ!」モグモグ

咲「……。」モグモグ

淡「朝からサキのご飯食べれるなんて幸せ…!」

パクパクッ

淡「朝はいつも少食なんだけどなあ、私っ。」モグモグ

咲「……。」モグ…

淡「…ん?さっきから一言もしゃべってないけど、どうしたのサキ?」

咲「…えっ?」ビクッ

咲「そ、そう…?」

淡「うん。」

咲(黙っちゃってたんだ、私…。すっかり考え込んじゃってたよ…!)アセ

咲「ご、ごめん。何の話だっけ…?」

淡「いや、べつに何の話ってわけじゃないけど…。」

咲「あっ、そうなんだ。」ホッ

淡「………。」

淡「何、考えてたの?」

咲「えっ!な、なにって…!」ワタッ

淡「なんか別のこと考えてたでしょ?」

淡(まさか、……テルのこと?)グッ…


咲「べ、別のこと?」

淡「2人で一緒にご飯食べてるのに上の空とか…、関係ないこと考えてたとしか思えないよっ。」

淡(私が目の前にいるのに…!)

咲「ち、ちがうよっ?確かに考え事はしてたけど…」

淡「ちがくないじゃん!サキはやっぱ私なんか興味ないんだっ!」ガタッ

淡(昨日の夜は一緒にはなれなかったけど、すごく幸せで…サキと近づけたって思ったのに!)

咲「まって!ちがうのっ、考えてたのは…淡ちゃんのことで…!」

淡「……えっ?」

咲「あ…」カア…

咲(…あうう…、できることなら言いたくなかったよ…!は、恥ずかしいっ…。)

淡「…わたし?」ポカン

淡「すぐ前にいる私のこと考えて、黙っちゃってたの…?」

咲「……。」…コク…

淡「」

淡(…え、うそ。まさか、私を意識してる…?)ドキ

咲「…だ、だって!朝からずっとドキドキするんだもん!考えちゃうよっ。」アセッ

淡「…!」

バッ!

淡「もう、ムリ。サキ…、キスさせて…!」

咲「なっ!?だっ、だめ!!」カアア


淡「なんでっ?サキだって意識してくれてるんでしょ?」

咲「そ、そうだけど…!」

淡「なら、いいじゃん!これ以上、私自分を抑えられない…!」グッ

咲「あっ…」

咲(キ、キスって本当の恋人同士がするものだよね…?わ、私は……)

淡「サキ…!」

咲「わ、分からないの…!」

グッ

淡「……え?」

咲「気持ちの整理が…できてないの…。流れでこういうことをするのは、やっぱりだめ…!」

淡「………!」

淡(サキって、もしかして………!)

咲「…ご、ごめんね。もう自分でもよく分からなくて…。」シュン

淡「………。」

淡「そっか、…わかった。私の方こそごめん。」

咲「あ、淡ちゃんが謝ることなんてないのっ…。私が、多分おかしなこと言ってるだけで…。」

淡「………。」

淡(ううん、違う…そうじゃない。…サキは、今まで恋愛したことないんだ…!だから今こんなにワケわかんなくなってて……!)

トクンッ!

淡(私…ますますサキが好きになっちゃった。)




淡「えー!もう帰るの!?」

咲「うん、大分長居しちゃったし…。」

淡「まだ、いいでしょ!もう少しいなよ!あっ、ていうかもう1泊する?」

咲「し、しないよ!」

淡「えー、なんで?」

咲「服とかこれ以上借りるのは悪いし、お姉ちゃんも心配するから…!」

淡「へーきだって。もっといなよっ。」

咲「きょ、今日はもう帰るよ。また今度、お邪魔してもいい…?」

淡「むー、サキは頑固だね。」

咲「ご、ごめんね?」

淡「家にはいつでもおいでよ。アポなしで全然いいからさ。」

咲「ありがとう、淡ちゃん。」ニコ

淡「……。」カア

淡(サキの笑顔はもう何度も見てるのに…。)

咲「それじゃあ、お邪魔しました。」ゴソ

淡「あ、送ってくよ!」

咲「い、いいよ…!」

淡「迷子になりたいの?」

咲「……う。」

咲(確かに少し道が不安かも…。でも、淡ちゃんとこれ以上一緒にいたら心臓がもたないよ…!)

ゴソゴソ

淡「はい、準備おっけー。」

咲「あうう…。」シュン




咲「ごめんね…、結局お家まで送ってもらっちゃって…。」

淡「そんなのべつにいーから。」

咲「私…淡ちゃんに迷惑かけてばっかりで…。」

淡「……じゃあ、キスかハグして?」

咲「…ええっ!?」

淡「どっちかしてくれたら、私すっごく嬉しいんだけどな?」

咲(こ、ここで…この状態で…!?)カアッ

淡「んー?サキ?」

咲「あっ、あの…そのっ…」アセアセッ

淡「………。」

淡(…超取り乱してる…。なにこれ、可愛い…)

咲「わ、わたしっ、頭のなかぐちゃぐちゃで…!」


淡「ぷっ!」

咲「…へ?」

淡「あははは!サキ動揺しすぎでしょっ!」

咲「だ、だって…!」

淡「…ふふ、そんなに私のこと意識してるの?」

咲「……!」カアッ

淡「…でもその気持ちは分からない、か…。」

咲「え…?」

淡「いいよ、サキ。気持ちの整理がついたら教えてねっ。」

咲「あの…」

咲(今淡ちゃんが言ったことの意味って…?)

淡「じゃあ、私帰るね!サキも家入りなよっ。」

咲「う、うん…。」

淡「ばいばい、またねっ!」

咲「うん、またね。」




咲(……淡ちゃんといるとずっとドキドキしてたけど、今もまだしてる…。どうしてこんなに胸が熱いんだろう。)ドキドキ

咲「…あ、見えなくなった…。お家…入ろ。」

咲(今日ゆっくり考えよう…。)

ガチャ

咲「お姉ちゃん、ただいま…」

照「おかえり。」

咲「わっ!」ビクッ

咲「お、お姉ちゃんっ?な、なんで玄関にいるの?」

照「咲たちの声がしてたから、もう来るかなって。」

咲「え、声…聞こえてた…?」

照「…。」コク

咲「……。」カア

咲(う、うわ…全然考えてなかったよ…。さっきの会話、ご近所にも筒抜けかも…!)

咲「そ、そっか…。次からは気をつけるよ…。」

照「……。」

咲「あ…、あと帰りが遅くなってごめんね。」

咲(お部屋に荷物置いて…。…淡ちゃんが無事にお家着いたか、あとで電話しようかな。)

テクテク、カチャ

咲「ケータイ持って、と。」

咲(のど渇いたな。台所に行って何か飲み物を…。)


ガチャ

照「あ…咲、何か飲む?」

咲「あっ、うん。ちょうど飲もうと思ってたんだ。」

照「紅茶でもいい?」

咲「うんっ。」

コポコポ

照「はい。」スッ

咲「ありがとう、お姉ちゃん。」

照「……。」

咲「……。」コクッ…

照「…淡のところに泊まって、どうだった…?」

咲「えっ…?」ビクッ

咲「ど、どうって…?」

照「あっ、いや、楽しかったのかな…とか。」

咲「あっ、うん!た、楽しかったよ!淡ちゃんとたくさんおしゃべりしたり、一緒にご飯つくったりしたんだっ。」アセ

照「そうなんだ…。」

咲(きゅ、急に聞かれたからびっくりしたよ…。)ドキドキ




咲(あ…、そろそろいい時間かな…。)

咲「お姉ちゃん…ちょっと私、淡ちゃんに電話するね。」

照「え…?」

照(さっき別れたばっかりなのに…な、なんで電話?)

咲(もうお家に着いてるよね。)

ピピピ…

咲(出るかなあ?)

ピッ!

淡「サキッ?」

咲「わっ…!」

咲「び、びっくりした…。あ、淡ちゃん早いね。」

淡「サキからの電話だもん!それより、なに?どうしたの?」

咲「あ、大した用じゃないんだけど、…えっと…お家にちゃんと帰れたのかなって…」

淡「え?」

咲「もう大分薄暗くなってたし…」

淡「サキ…」

咲「今って、お家…?」

淡「うんっ、サキと違って迷子にはならないよ!」

咲「あっ!ひどいよ、淡ちゃんっ。」ムー

淡「あはは、うそうそ。怒らないでって。」

咲「もう…。」

淡「ありがとね、心配してくれて。」

咲「ううん。私の方こそ昨日と今日は…その、どうもありがとう。」

淡「どーいたしましてっ!」


照「………。」




ポス

咲「ふう…。」

咲(お布団も敷いたし、あとは寝るだけ。やっと落ち着けた気がするよ…。)

咲「ちゃんと、気持ちを整理しよう。」


咲(……………。)

咲「……はあ、だめだ。考えようと思うと余計に整理つかないや…。」

咲(本を読みながらなら、冷静になれるかな…。)


ペラ………ペラ………

咲(…淡ちゃんは私に「好き」って言ってくれた…。)

咲(淡ちゃんはすごく優しくて、暖かくて、とっても可愛くて。こんな私なんかじゃ手が届かないくらい、眩しい女の子で…。淡ちゃんのことはもちろん大好きで…)


淡『私の好き…は、もっとこうゆうことがしたい……好き、なの。』

淡『サキを、私だけのものにしたいのっ…。サキもっ、私を好きになって!』


咲「っ!!」カアア!

ドキ…ドキ…!

咲(え…な、なに…?)

咲(何だか胸が熱くて、痛いっ…。淡ちゃんの顔が頭から離れないよ……!)ギュッ…


カチャッ

照「…咲、少しいい?」

咲「…!!」ビクッ!

咲「お、お姉ちゃん…!う…うん、いいよっ。」パタンッ

咲(び、びっくりした…!)ドキドキ…

テクテク、ポス

照「…それ、この前淡と出かけたときに買った本?」

咲「う、うん…。持ってきた本は読み終わっちゃって。」

照「……本なら、私の部屋にたくさんあるから…いつでも好きなの読みなよ。」

咲「え?…いいの?」

照「」コク

咲「わあ…!あ、ありがとう、お姉ちゃん!」ニコッ

照「…っ。」カア

照「…多分、咲の好きなジャンルも持ってたと思うから。」

咲「えへへ、楽しみだな。これが読み終わったらお邪魔させてもらうね!」

咲「……あれ?そういえばお姉ちゃん、私に何か用があったんじゃ…?」

照「………。」

照(聞きたい。ううん、聞かなきゃ…。咲と…淡のことを……。)


咲「…?」

照「…昨日は淡と、どんなことしたの…?」

咲「えっっ!?」ドキッ!

咲(ど、どんなことって…!?)

照「楽しかった、って言ってたから…。淡の家で何したのかなって。」

咲「え…、あの、その…!」アセアセ

照「………。」

照(やっぱり、淡の家に泊まってから咲の様子がおかしい…。考えたくはないけど、まさか……。)

咲(ど、どうしよう…!な、何て言えばいいんだろうっ…。)

照「私には、言えない…?」

咲「えっ、ううん!そういうわけじゃないよ…!」

咲(…お姉ちゃんになら、そのまま全部話しても……いい、のかな…?)

照「………。」

咲(…話しても、いい…よね。)

咲「……あ、あのね、お姉ちゃん……」


今日はここまでです


【MEMO】 169まで

思ってたより空いちゃいまして申し訳なかったです
待っててくれた方、ありがとうございます




照「……………そう。」

咲「う、うん。」カア…

照(咲が…、淡から告白されて………)

咲「だ、だから今は何だかドキドキしちゃって…。それでさっき、自分の気持ちを整理してたの。」テレ…

照「咲は…」

咲「ん?」

照「どうしたいのか…って答えはもう出そうなの?」

咲「う、うーん…。」

咲「…それがよく分からなくて…。」

照「え…?」

咲「淡ちゃんのことは好きなの。」

照「………。」

咲「…でも、恋人みたいな好きって気持ちがどういうものか…よく分からなくて。返事、まだちゃんとしてないんだ…。」シュン

照(………。)

照「…返事、いつするの?」

咲「気持ちの整理がついたらでいいよって淡ちゃん言ってくれたから、私次第かな…。」

照「そう…。」


照「…そ、それで咲は単純にどう思ったの…?」

咲「淡ちゃんに言われて?…うーん、そうだなあ…」

咲「びっくりしたのと……嬉しかった、かな。」カア

照(嬉かった……。)

咲「淡ちゃんがまさかそう思っててくれてたなんて、って思ったし…。とにかく信じられなかった。」

照「咲は全然気づいてなかったんだね…。」

咲「う、うん…。優しくて可愛くて、頼もしくて…。男の子だって女の子だってみんな憧れちゃうような子が…私なんか眼中にあるわけないし。」

照(学校での淡とはかけ離れてるイメージだけど……。)

照「…でも、淡は咲が好きなんでしょ…?」

咲「…う、うん……そうみたい。」カア

照「咲が、整理がつかないのは…自分とは釣り合わないって思ってるから?」

咲「……それもあるかな…、あとは…」

咲「…淡ちゃんが言ってくれた好き、に応えられるのか不安…なのかも…。」

照「……そっか。」

照(そこまで考えてても、答えはまだ出てないんだ…。)

咲「でも、淡ちゃんのことを思うと何だかドキドキするの。こんなのはじめてだよ…。」カア

咲「これが本当の好きって気持ちなのかな…?」



咲「…お姉ちゃんに話したら少し冷静になれたかも。聞いてくれてありがとう。」ニコ

照「………。」

照(……咲は…)



咲は、恋愛感情を持ったことがないんだね…。

淡に対しても…誰に対しても…、好きって気持ちはそれ以上でも以下でもない。それは多分、私に対しても…。


それが変わろうとしてるの…?

咲が、誰かに対してだけの好きになろうとしてる…?


私以外の人で………



(ドクンッ…!)



咲「えへへ。私もまだ少し混乱してる…っていうか、ちゃんと考えられてなくて…。」

照「……仕方ないよ、はじめてのことなんだし…。」

咲「そっか…、そうだよね。」ホッ

照(…咲。)




私のペースで、もっと咲と距離を縮められたら…って思いながら…

姉妹っていう…どうすることもできない関係にも悩んできた

でも、咲を諦めることなんてできなくて…



堂々巡りでこのまま悩んでたら、咲はきっと淡のもとに行っちゃう

そんなのっ、絶対に嫌だ……!



…それじゃあいっそ、私の気持ちを伝えたら…?

そんなことしたら、咲を苦しめることになるのは目に見えてる…

嫌だ…したくない…





でも、それでも


……やっぱり、私は咲を……!





照「………ね、ねえ…、咲……」

照「…気持ちがまだ落ち着いてない中で…悪いんだけど……お姉ちゃんの話、聞いてくれる…?」


咲「お姉ちゃんの話?うんっ、もちろんだよ!」

照「…あのね、咲が今、淡のことで頭がいっぱいになってるのはよく分かるよ…。」

照「そんな中だから、余計に混乱するかもしれない。」

咲「え?」

照「……こんなことになるなら、もっと早く言っておくべきだった…。」

咲「な、なに…?」

咲(お姉ちゃん辛そう…。すごく、悩んでたことがあったのかな…。)

照「………。」

咲「わ、私にできることがあれば遠慮なく言って…?お姉ちゃんのためなら、何でも…!」

照「………何でも…?」

咲「うんっ!何でもするよ!」

照「…そう。ありがとう。」

咲「ううん。…それで、お姉ちゃんの話って…?」

照「…うん、簡潔に言うと…私の好きな人について。」


咲「えっ…!?」

咲(お姉ちゃんの…好きな人っ…?)ボーゼン

照「その、年下なんだけど………って、咲?」

咲「…お、お姉ちゃんに、好きな人……!?」

照「うん。…何か、変?」

咲「うっ、ううん!変じゃないよ!ただ…びっくりしたというか、予想外で…。」アセアセ

照「そう?」

咲「お姉ちゃん…恋愛とかそういうの全然興味なさそうな感じしてたから…。」

照「そうなんだ。自分じゃよく分からないから…。」

咲「あっ、いや、単に私がそう思ってただけで…。あ、ご…ごめんお姉ちゃん、話の腰を折っちゃったね。」

照「ううん、平気。それで、相手は年下なんだけど、私に対して同じように思ってはいないみたいで…」

咲「と、年下さん…!?えっ、えっ?お、お姉ちゃんの片想い…ってこと?」

照「うん。」

咲「……!!」

咲(次から次へと予想外過ぎて、理解が追い付かないよお…!!)

今日はここまでです


【MEMO】 175まで

待っててくれた方ありがとうございます

お久しぶりですみません。深夜あたりに投下予定です。
そろそろ区切りをつけようと思っています。


照「…咲、その…大丈夫?」

咲「う、うん…大丈、夫…。」

咲(お姉ちゃんに好きな人がいるなんて全然気づかなかったよ…。)

照「そ、そう…?」

咲「そっ、それよりお姉ちゃん!だれなのっ?好きな人って…!」

照「えっ!…それは、…その……」ドキドキ

咲「…。」ウンウン

照「………あの…」ドキドキ

咲「……。」ウンウン!

照「………ちょ、ちょっと今は言えない…。」フイッ

咲「ええー!?」

咲「な、なんでっ?」

照「今は…ちょっと…。」

咲「そんなあ…!」ショボン


照(ま、まさかいきなりそんなストレートなことを聞かれるなんて思わなかった…。だって…)

照「…私の相手とか、気になるの?」

咲「気になるよっ!」

咲「お姉ちゃんが好きになるくらいだから、きっとすごく優秀な人だよね…!綺麗なんだろうし、素敵な人なんだろうな。」キラキラ

照「………。」

咲「……あれ?ち、違うの…?」

照「いや…、私はそう思うけど……本人は全否定するだろうから…。」

咲「謙虚な人なんだ。いい人だねっ。」ニコ

照「うん…。」

照(全部自分のことを指してるなんて…、思わないよね。) …クスッ

咲「…ん?なんで笑ってるの?」

照「なんでもないよ。」ニコ

咲「そう…?」

咲「…それじゃあさ、だれなのかはもう聞かないから、なんで好きになったのか教えてよ。」

照「…うん、いいよ。ただ…」

照「好きになった理由は数え切れないくらいあるから…、それでもいいなら。」

咲(…お姉ちゃん、本当にその人のことが好きなんだ…。)

咲「うん…!ぜひ聞かせてほしいな。」

照「そう…、覚悟してね。」

咲「え?う……うん。」

咲(もちろん全部聞きたいけど…、一体どのくらいなんだろう…?)

今日はここまでです


【MEMO】 177まで

少ないですが、この後はなるべく短いスパンで投下していく予定ですので、どうぞお付き合い下さい。

お久しぶりです
有言実行できず、申し訳ありません

ようやく帰ってこれましたので、日曜日辺りに投下しようと思います
無責任なこと言わないでマイペースにやっていきます

よかったらどうぞお付き合いください


照「見た目も性格も、形容できないくらい魅力的。」

咲「そうなんだ…!すごく美形で、すごく優しい人ってこと?」

照「うん…。でも、それじゃ言い表せない。」

照「自分のことより人のことを優先して考えたり、そのせいで自分の足元がお留守になったり、そんな中でも内心では自分の思いを一途に持ってたりする……そんな人。見てて、放っとけないの。」

咲「………。」

咲(すごい……。お姉ちゃん、その人のことをそこまで見つめてるんだ…。その人のことが、好き…だから。)

照「でも、多分こんなに惹かれたのはそこだけじゃない。」

咲「え…?」

照「性格や考え方も勿論あるけど、他にもある。…例えば、仕草。」

咲「しぐさ…?」


照「普段の何気ない仕草。歩いてるときとか、不意に振り返ったときとか。私に話し掛けるときの目とか。」

咲「え?えと…目、っていうのは…?」

照「少し上目遣いになるの。多分本人は気づいてないみたいだから、あれは表情というより無意識の仕草なんだと思う。」

咲「へえーっ。すごい、そこまで分かるんだね!」

照「もちろん表情もあるよ。すぐ赤くなって戸惑うところとか、のんびりしてて全く緊張感のないようなときとか。…でも結構表情豊かっていうのは、一部の人しか知らないかもしれない。」

咲「人見知りさん?」

照「そうだね。内気で、お世辞にも社交的ではないと思う。大人しく本を読んでるのが、普段の外での姿。」

咲「そうなんだっ。お姉ちゃんと一緒で読書家さんなんだね。私、何だか親近感湧いちゃうなあ…!」キラキラ

照「……そう、だね。」フフ

照「咲に結構似てる、かも。」

咲「えっ?そうなの?」キョト

照「っ!」ビクッ

照(その仕草が……!)

照(……不意打ちでくるから、あんまり咲の方を見ないようにしてたのに。)ドキドキ


咲「えー、尚更どんな人か気になっちゃうよ。もっと具体的にその人のこと、教えて…?」グッ

照「!!」

照(腕を掴まれて…!そんな顔されたら……!)ドクン!

照(ごまかして今話してることが全部、無意味になるのに…!

触れたい…。触って、押し倒して、咲を私の…私だけのものにしたい…!)ドキドキドキ


照(もう、押さえきれない……)



スッ

照「……こう…やって…」

サラッ…

咲「ひゃっ!?」ピクッ

照「髪の中に手を入れて梳かしてあげると、可愛い反応をするの。」

咲「お、お姉ちゃん…!?」

照「そのままこうやって…」

スス……フニッ

咲「ひやぁんっ!」ビクンッ!


照「…どうしたの、咲?」

咲「や、やめてお姉ちゃん!わたしっ…」

照「ただ、耳を触ってるだけ。こうやると、私の好きな人も恥ずかしがるから。」フニ…フニ…

咲「わ、分かったから…!もうやめてっ……んっ!」

照「もっと具体的にって言ったのは咲。」

咲「そうは、言った…けど…!んんっ」ピクンッ

照「そういえば、耳の後ろと前を挟むように揉むと気持ちいいんだっけ?」

クニ、クニ…

咲「ひゃ、だ…!それっ、んぅ!だめっ!」

照「あ…だめなんだ。じゃあ、首筋に近い部分を指先でなぞるのは…?」ツツ…ツ…

咲「ひああっ、!?」

照「こっちがいいの?じゃあ、もう少しゆっくりやってあげるね。」ツ…ツ…ツ…

咲「おっおねぇちゃんっ…!ひゃめっ、て…!ぞくぞくして…んぅ…!ちからが、はいらないのぉ…」ブルッ

照(…咲が、私の指でこんなに……)ハアハア…

今回はここまでです


【MEMO】 181まで

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