久「全国姉巡り」(441)

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久「全国姉巡りをするわよ、咲」

咲「眠い……全国姉巡り…?」

久「そうよ。簡単に言えば、全国のお姉さんに会いにいくの」

咲「おねえちゃん?」

久「ええそうよ。さ、行きましょう。最初は永水ね」

――――――――――永水女子
久「お邪魔しまーす」

巴「いらっしゃいませ。話は聞いてますから、奥へどうぞ」

久「話が早くて助かるわ。あ、そうそう。これ、手ぶらもなんだからお土産」

巴「わざわざご丁寧にありがとうございます。りんごと塩羊羹ですか」

巴「ありがたくいただます。こちらの部屋におりますので、ゆっくりしていって下さい」

久「どうもー……失礼します」

霞「いらっしゃい。堅い挨拶なんていらないわよ、久しぶり」

久「本当に久しぶりね。今日はどうもありがとう。正直ここで躓いたらどうしようかと思ったわ」

霞「同じ卓を囲んだ仲だもの、これくらい」

久「ありがたいことね……さ、咲。霞お姉さんよ、甘えてきなさい」

咲「霞…おねえちゃん……」

霞「さあいらっしゃいな、咲」ニコ

咲「……」オズオズ

霞「遠慮しなくてもいいのよ」ポンポン

咲「…………」チョコン

霞「いらっしゃい。久しぶりね」ナデナデ

咲「…………霞おねえちゃん」ギュッ

霞「なあに?」

咲「いい匂い…」

咲「柔らかくてあったかくて……気持ちいい…………」

霞「あらあら……」ナデナデ

初美「姉というより母親なのですよー」モグモグ

久「いつの間に」

初美「先ほどからいましたよー。あ、これはるるから」スッ

久「かりんとうね。彼女はどこにいるのかしら?」

初美「じゃんけんで負けたので私の代わりに姫様のお守ですよー」モグモグ

久「あらそう。ところで、それは何を食べているのかしら」

初美「かるかんですよー、大分のでなく鹿児島銘菓の」

久「よかったらそれ、咲に食べさせてやってくれないかしら?彼女、朝ご飯も食べてないのよ」

初美「なるほどー」

初美「咲ちゃん咲ちゃん、これ食べませんかー?おいしいですよー」モグモグ

咲「食べるー」

初美「はい、あーんですよー」

咲「ん……おいしい」ニコ

初美「そうですかーおいしいですかー気に入りましたかー。それは何よりですよー」

霞「ところで初美ちゃん、どうしてかるかんを持っているのかしら…?」

初美「どうしてって、確か巴ちゃんに…お客様にお出しするように……言われたですよー……」ダラダラ

霞「あらあら……」

霞「一か月…いや三か月かしらね……」

初美「うわーん許してくださいですよー!おいしそうでつい食べちゃっただけですよ、反省してるですよー!」

霞「どうしましょうかしら…………あら、どうしたの?」クイクイ

咲「霞おねえちゃん、許してあげて……?」

霞「でも……」

咲「お願い……」

霞「……はあ、分かったわよ。初美ちゃん、今回だけは咲ちゃんの優しさに免じて許してあげます」

初美「ありがとうですよー!咲ちゃんの優しさに薄墨初美感激したですよー!」ダキッ

咲「霞おねえちゃんも初美おねえちゃんも好き。二人とも仲良くして…?」

初美「私はお二人とも大好きですよー」

霞「私もよ。嫌いになんてならないわ」

咲「良かった」ニッコリ

霞「あらあら//」

初美「ですよー//」

―――――
初美「もう帰っちゃうですかー?」

霞「今日はこちらが忙しかったから、また今度来た時にはゆっくりしていらっしゃい」

久「そうするわ。それにしても、こんなにお土産貰っちゃって、なんだか悪いわね」

初美「お芋はたくさんあるから少しくらい大丈夫ですよー」

霞「二人とも少しかがんで……はい、いいわよ」カチッカチッ

咲「何したの?」

霞「切り火といってね、大切な人が無事に旅を終えられるようにっておまじないなのよ」

咲「そうなんだ…」

久「本物の神職にやってもらうとさぞ効果があるでしょうね」

霞「私たちにはこれぐらいしか出来ないから…」

咲「…ねえ霞おねえちゃん、少しかがんで」

霞「?何かしら…これでいいの?」

咲「うん……ありがとう」チュ

霞「……あ、あらあらあらあら///」フリフリ

初美「何赤くなってるですかー……咲ちゃん、さっきのお礼にボゼあげるですよー」

咲「いいの?」

初美「まだまだあるからいいですよー。お揃いですよー離れても繋がってるですよー」

咲「じゃあ…ありがとう」チュ

初美「キスされちゃいましたよー///ほっぺたですけど」クネクネ

久「じゃ、そろそろバスの時間だから行くわよ」

霞「いつでも来ていいのよ…」ギュゥ

咲「うん!またね。霞おねえちゃん、初美おねえちゃん」

霞「ええ、また」

初美「またですよー」

―――――
久「ふう。初めてにしては中々幸先のいいスタートだったわ」

久「焼き芋おいしかった?じゃあ私にもひとつちょうだい」

久「うん、おいしい」

久「さて、次は新道寺ね。福岡の高校で、和達の中学時代の先輩よ」

――――――――――新道寺
久「ここが新道寺ね」

煌「ようこそいらっしゃいました。すばらです」

久「こちらこそ、今日はありがとう。それで早速だけど……咲、花田煌お姉さんよ」

咲「煌おねえちゃん……」

久「そうよ…花田さん、こちらが咲よ、って知っていたわよね」

咲「煌おねえちゃん…」

煌「そう、お姉ちゃんですよ、咲」

咲「煌おねえちゃん…えへへ…」

煌「お姉ちゃん……すばらっ」

久「一人っ子は慣れないでしょうけど、お願いね」

煌「中々お姉ちゃんと呼ばれる機会が無かったのですが『お姉ちゃん』、すばらな響きです」

咲「煌おねえちゃん……お腹減った」クー

煌「おや、お二人とも昼食を食べていないのですか?」

久「私は朝は食べたのだけれど…咲は朝無し、永水でお菓子と途中で焼き芋を少し食べたきりなのよ」

煌「それはすばらくない。近くに行きつけの喫茶店がありますから、そこで昼食にしましょう」

煌「さあ、咲。はぐれるといけませんから、手を繋ぎましょう」スッ

咲「うん!」キュ

煌「妹……すばらっ」

―――――
煌「到着しましたよ…少し混んでいるようですが」

久「へえ、中々洒落た喫茶店ね。気に入ったわ」

煌「それは何よりです。三人、禁煙席でお願いします」

久「何にしようかしら……」

煌「そうですねえ……私は昼食を済ませたので、パンケーキでも」

咲「どれもおいしそう…………オムライスにしようかな、でもお金持ってないし……」

久「それなら心配ないわよ。咲のお父さんから預かってるの」

咲「じゃ、じゃあ!」

久「ええ、いいわよ」

煌「すばらです。しかし咲、公共の場であまり大きな声を出してはいけませんよ」

咲「ごめんなさい…」シュン

煌「気を落とさなくても、次から気をつければいいんですよ」ナデナデ

咲「うん、気をつける」

煌「すばらですっ。ところで竹井さんはお決まりですか?」

久「そうね、朝も食べたし軽くサンドイッチにしておくわ」ピンポーン

煌「おやそうですか。あ、店員さん。オムライスとサンドイッチとパンケーキを一つずつお願いします」

煌「ああそうですね、パンケーキは二人の分が運ばれてからでお願いします」

久「また混んできたわね」

煌「昼下がりですからね。ティータイムに洒落込む方が多いのでしょう…っとおや、あれは」

煌「部長ではないですか。おーい」フリフリ

哩「ん……花田やったか、珍しかね」

煌「そういえばこの店は部長に教えてもらったのに、会うのは初めてでしたね」

哩「そいで、こん方々は?」

久「まあ立ち話もなんだし、隣どうぞ」

哩「どうも、失礼します。あー…確か清澄の部長ばやっとられた…」

久「竹井久よ、よろしく」

哩「新道寺女子の白水哩よ、よろしく」

哩「で、そっちは清澄の大将ば務めた」

煌「咲、私の妹ですよ」

久「花田さんは全国の現地姉の一人で、今回の巡礼を快諾してくれた姉の一人なの」

哩「はあ……」チラ

咲「…」ギュ

煌「大丈夫ですよ、咲。ああ見えて優しい人だから。怒ってないから大丈夫です」

哩「その、無愛想ですまん…よろしく、咲」

咲「哩おねえちゃん…?」

煌「ええ、哩お姉ちゃんですよ」

哩「ちょっ…何ば勝手に……」

咲「哩おねえちゃん」ニコ

哩「……」

咲「哩おねえちゃん」

哩「…………な……なんね、咲」

久(流石ね、咲。あのゆみを一発で陥落させただけはあるわ…)

煌(あの部長を……すばら!)

咲「んーん、なんでもない」

哩「そ……そうか」プイ

煌「お、来たみたいですよ」

咲「おいしそう」

久「本当ね」

咲、久「「いただきます」」

―――――
煌(よほど空腹だったのですね…)

煌「咲、ご飯粒がついていますよ…ほら、とれましたよ」

咲「煌おねえちゃんありがとう」

煌「さあご飯が冷めないうちに食べなさい」

哩「店員さん、ダージリンとミルフィーユ」

煌「おいしいですか?」

咲「うん、おいしい」

煌「ああほら、またケチャップが……はい取れましたよ」

咲「ありがとう煌おねえちゃん」

哩(対局中は鬼んごたる顔つきやっが普段はこんな愛嬌あるとやったか…)

咲「お礼に一口あげる。あーん」

煌「あ、あーん…ん…すばらな味です」

哩「……」ジー

咲「?……あ…はい、あーん」

哩「え?あ、いや私は」

咲「おいしいよ?ほら、あーん」

哩(二人の視線が刺さる…)

哩「……あーん//…」

咲「ね?」

哩「ん、まあ…そうな」

煌「部長、私たちの分も来ましたよ」

煌、哩「「いただきます」」

煌「すばらぁ…」

哩「ん…うまか」

咲「ねえねえ私にもちょうだい」

煌「オムライスを食べてからですよ」

咲「もう食べ終わったよ」

煌「すばっ!?……米粒一つ残さず奇麗に完食…すばらです」

咲「あー」

煌「もう、しょうがないですね……ほりゃっ」

咲「んっ……おいしい」

煌「ええ、すばらです」

咲「……」

哩「……」

咲「哩おねえちゃん」

哩「ん…どうしたと?」

咲「それ、おいしい?」

哩「まあ……欲しかと?」

咲「一口だけ、ダメ?」

哩「駄目とか一言も…口開け……ほら」

咲「あー…ん、おいしい…ありがとう」ニコ

久「なんというか、仏頂面が過ぎるのよね」

哩「そげな言われて、自分じゃ分からん……自覚はあったばってんそげん無愛想に見えっと?」

煌「愛想がいいとはあまり……」

久「子供に懐かれる顔ではないわね」

哩「そんな……どうりで親戚の子供に避けらるっと思った……」

咲「哩おねえちゃん、元気出して」

哩「咲……」

咲「哩おねえちゃんのこと好きだよ。本当は優しいってことも皆知ってるから、大丈夫だよ」

哩「咲……ありがとう」ニコ

煌「!今の顔、すばらですっ」

久「そんな顔も出来るんじゃない」

久「でもまだぎこちないわね……この後、時間空いてる?」

哩「特に予定は入れとらんが…そいが?」

久「私達と、いえ咲と一緒に過ごして自然な笑顔に慣れましょう」

哩「い、いや私は……」

咲「哩おねえちゃん一緒にいてくれるの?やったっ」

哩「ふぅ、しょうがなかね。そこまで喜ばれたら」

久「嬉しそうで何よりね」

煌「すばらです」

―――――
咲「似合う?」

哩「さ、流石にこん格好は似合わんっちゃなかか……///」

煌「お揃いで似合っていますよ」


煌「似合ってますか?」

咲「とっても!」

―――――
哩「こう…いやこうか?」

久「こうしてこうして…こうやってこう!」

咲「すごーい」パチパチ

煌「すばらっ!」

――――――――――
久「おじゃまします……疲れたあ」

咲「おじゃましまーす」

哩「おじゃまします…花田ん家ば来んのは初めてやったっけね」

煌「ただいま帰りました。といっても、誰もいませんけど」

咲「お帰りなさい、煌おねえちゃん」

煌「すばら!さあ上がって寛いでて下さい。夕飯の支度をしますので」

哩「花田、私も手伝っちゃる。なんかせんと、世話んなりっ放しは心苦しか」

煌「その心意気、すばらっ。ですが、お客さまですからゆっくりしていてください」

煌「それよりも、咲の相手をお願いします。竹井さんも相当疲れているでしょうから」

哩「ん、分かった」

――――――――――
煌「さあ食事は済みましたがその前に…よろしければ部長、今日は泊まって行きませんか?」

哩「もうこんな時間か。帰り道も暗いし、そうすっかね。親に電話してくるけん」

煌「あとはお風呂ですが…我が家のお風呂は狭いので、銭湯に行こうと思うのですが」

久「いいんじゃないかしら」

咲「皆でお風呂入れる!」

哩「おまたせ。で、何の話しよっと?」

花田「いい機会なので銭湯に行こうかと思いまして」

哩「ほう」

哩「しかし、私は着替え持っとらんから遠慮しとく」

久「私のでよければ貸すわよ?確かサイズが同じぐらいだったと思うけど」

哩「そいは助かる。有り難く貸して頂きます」

久「そんな堅っ苦しい礼なんていらないわよ」

煌「では行きましょう」

―――――
久「洗いっこなんてなんだか懐かしいわ、やったことないのに」

煌「そうですねえ。分かりますよ」

咲「哩おねえちゃんの肌すべすべだー」

哩「こ、こら言わんでよか」


咲「あったまるー」

久「疲れが癒されるわ…」

煌「すばら…」

哩「んっ……っはぁ」


咲「哩おねえちゃんの匂いだー」

哩「私のお気に入りの香水よ」


煌「すばらっ!」クルン

久(形状記憶合金…?)

―――――
煌「それで、渡したいものとは?」

久「まず手土産の高遠饅頭よ、出身らしいから特別に」

煌「これはすばらな物を!ああ懐かしい…練習帰りによく食べていたものです」

久「それとりんご」

煌「これまたすばら!」

久「知り合いの農家に頂いた物で、腐らせるよりはと思って」

久「それと焼き芋ね」

哩「少し多くはなかか?」

久「永水に行ったら貰ったのよ。かるかん食べる?」

哩「いや、よかよ」

煌「これはこれは沢山の物を。ではこちらも返礼の品を…」

久「いいわよそんな。こっちがお礼代わりに持ってきてるんだから」

煌「そういうことでしたらありがたく受け取っておきます。ありがとうございます」

久「こちらこそ何度でもお礼を言いたいぐらいよ」

咲「哩おねえちゃんの膝枕気持ちいい」

哩「そうか……」

―――――
久「眠くなってきちゃった」

哩「こっちはダウンしとる」

咲「スー………スー………スー……」

煌「ではそろそろ布団を敷いて寝ましょう。雑魚寝ですが修学旅行と思えばすばらっ」

久「咲を真ん中に、私が端に寝るからお姉さん二人が両隣についてあげて。それじゃおやすみなさい」

久「スー……スー……スー……スー……」

哩「なんちゅう……」

煌「まあ、色々あって疲れているのですよ…………多分」

哩「ところで花田……いい加減『部長』呼びばやめんね…」

―――――
久「もう一度お礼を言わせて。ありがとう」

煌「そんな。こちらも貴重な体験をしましたし、望んでやったことですから」

哩「私も…楽しかったと思っとる」

煌「そこでですね。親愛の証にうんしゅうみかんと」

哩「通りもんやらのお菓子ば持っていき」

久「…参ったわね、そう言われたら断れないじゃないの」

煌「やられっ放しではいられませんよ……二人とも、お元気で」

久「ええ、お互いに心身の健康に気を付けないと。それじゃあまた会いましょう」

哩「ああ」

咲「ありがとう。煌おねえちゃんも、哩おねえちゃんも」

咲「大好き!」

煌「ええ、私も大好きですよ…咲」

哩「咲、私もよ。私も好いとうよ」

煌「またいつでも遊びに来なさい」

哩「そん時は皆で大歓迎すっとよ」

咲「煌おねえちゃん、哩おねえちゃん、少ししゃがんで」

煌「はい、なんでしょ…おや//」チュッ

哩「こんくらいでよか…む//」チュッ

咲「えへへ//また会おうね」

煌「勿論!」

哩「…ありがとう」ニコッ

―――――
久(哩は想定外だったけど、結果的にはいてくれて良かったのかもしれないわね)

久「さて、新幹線で大阪まで時間があるわね。咲、一眠りしていていいわよ」

久「私はその間に姫松と連絡を取っておくから」

久「次は姫松。集合は部室ね」

――――――――――姫松
洋榎「そろそろやな」

恭子「ですね。しかしこんなに買って大丈夫なんですか?」

洋榎「まあ大丈夫やろ」

由子「それより、なんで二人ともここにいるのよー」

絹恵「用事あるから今日は練習休みや、て言われたら自主練しません?」

洋榎「流石うちの妹や。けどな、休む言うた人間と同じ方向に歩き続ける時点で部室で用事やって察してほしかったわ」

漫「そう言われても、実力不足やから練習一日でも休んじゃいられないですよ」

恭子「これは主将が悪いですわ」

由子「大雑把過ぎなのよー」

洋榎「…そこまでにせんと、あんまり言うと他県の監督になって姫松潰しに行くで」

恭子「まあ私ら来年いませんし」

由子「後処理は後輩に任せるのよー」

絹恵「まあまあ先輩方、そこまでにしとかんと、お姉ちゃん本当に出て行きかねないですから」

洋榎「絹は優しいなあ!それに比べて同級生ときたら」

絹恵「お姉ちゃんは確かに雑でガサツで大雑把で投げっ放しで打ちっ放しで」

洋榎「ちょっと市役所行ってくる」

絹恵「お姉ちゃん…」

洋榎「なんや絹、言いたいことでもあるんか」

絹「戸籍謄本と戸籍抄本間違えたらあかんで」

洋榎「妹が一番辛辣や!もうええ絹の姉やめたる!」

久「あら本当?それは助かるわ」ガチャ

咲「お邪魔しまーす…」

洋榎「おー、よう来たな。まあ入り、と言いたいところやけど。邪魔するんなら帰ってやー」

久「それは失礼。じゃあ咲、行きましょう」ガチャ

洋榎「てホンマに帰るんかい!」

久「流石大阪人はツッコミのタイミングも完璧ね」ガチャ

咲「お邪魔しまーす…」

由子「邪魔するなら帰るのよー」

久「ほな、さいなら」バタン

久「いや二回目はおかしいわ」ガチャ

咲「お、お邪魔しま」

洋榎「天丼はもうええねん!」

咲「ひっ!ご、ごめんなさい!」ビクゥ

久「あんまり大声出さないでよ。おびえちゃってるでしょ」ジト

洋榎「あ、すいません…」

由子「恐がらなくてもいいのよー」

恭子「せ、せや。別にだ、誰も怒っとらんで」カタカタ

漫「先輩のほうが恐がってますやん」

洋榎「なんや、まだトラウマ治ってないんか。情けないやっちゃな」

恭子「そ、そんなん言われても…」カタカタ

由子「今日は対局はしないから大丈夫なのよー」

洋榎「それに、見てみい。雰囲気全然ちゃうやろ…ほれ咲、笑ってみせたり」

久「さっきから誰かさんが外まで聞こえる声出してたせいで委縮しちゃってるわよ」

絹「あーこれは洋榎さんがアカンわ」

由子「洋榎さんギルティなのよー」

洋榎「元はと言えばお前らが……まあええわ」

洋榎「あー…咲、その…さっきは済まんかったな。別に咲が嫌いなんでも怒ってもないんや」

洋榎「どうしたらええか……せや、うちの変顔で許してや。ほれ」

咲「プッ…あはは、おねえちゃん面白いね」

洋榎「そ、そうか?照れるな、はは。洋榎おねえちゃんと呼び」

咲「うん、洋榎おねえちゃん!」ペカー

洋榎「というわけで恭子。見たりや、この愛らしい笑顔を」

絹恵「ホンマにかわいいなあ。妹に欲しいぐらいや」

漫「対局中とまるで別人ですね」

漫「それで今更ですけど、なんでここに?」

由子「用事ってこれなのよー」

洋榎「なんや、全国の現地姉とかいうのを巡っとるらしい。それで大阪はうちら三年に白羽の矢が当たったんや」

絹恵「はあ……」ジー

洋榎「なんや、絹もお姉ちゃんやりたいんか?」

絹恵「うん。妹に慕われる姉、演じてみたいわあ。かわいい妹にお姉ちゃんお姉ちゃん言われてみたい」

恭子「な、なんなら代わろか?え、遠慮せんでもええで」ガタッ

洋榎「それは無しや。苦手なんはしゃあないとしてもそないな態度はあかんで」

恭子「う……それはそうですけど…」

洋榎「まあ、それもええわ。今日で克服したらええ」

洋榎「咲、紹介したる。頭が団子の由子姉ちゃんや」

由子「アンパンマンじゃないのよー。せめて『団子乗せた頭』なのよー…よろしくよー」

洋榎「さっきからカタカタ震えとるんが携帯電話や」

恭子「誰がバイブレーション機能や」

洋榎「恭子姉ちゃんや。まあ金属探知機みたくなるけど気にせん方がええで」

恭子「近くでも遠くでも振動の幅変わりませんて」

洋榎「でこれが」

絹恵「絹お姉ちゃんや!」ダキッ

絹恵「かわええなー咲ちゃんはもう私の妹になり名字変えずっと一緒にいような」

洋榎「落ち着けや、嫌われるで」コツン

絹恵「はっ!ご、ゴメンな、つい」バッ

洋榎「最後にこのデコが漫姉ちゃんや」

漫「えっいや…え?なんで?いや私姉になったつもりも立候補もしてないですやん?」

洋榎「ほらもうついでに?年も上やしええやん」

漫「でも…大丈夫なんですか?あんまり多くても困りません?」

咲「おねえちゃんいっぱいだー」

洋榎「大丈夫やな。そんで、二人にメールでお姉ちゃんのルール送っとく。目を通しとくんやで」

―――――
洋榎「そろそろ良い時間や。アレやっとくか」

恭子「そうですね、準備してきます」ガタ

咲「何するの?」

由子「お昼の支度するのよー」

咲「作ってくれるの?」

洋榎「ちゃうで。皆で作るんや」

由子「たこ焼きパーティーよー」

絹恵「それで大量に買い込んどったんやね。でも少し多なかった?」

漫「少しどころかちょっとした屋台開けますよ、あれ」

由子「そこが大雑把なのよー」

―――――
咲「おいしい!」

洋榎「せやろー流石やろー!」

絹恵「昔からうまかったもんなー」

由子「こっちも本気だすのよー」

漫「この触感、味は…餅ですか」

恭子「不満か?油性か?シャーペンがいいんか?」

漫「ちゃいますよ!ちょっと驚いただけで!」

咲「お餅入りもおいしい!」

恭子「そ、そうか?」ドキ

―――――
咲「難しい…」

洋榎「どれ、貸し。こうやってこうクルッとやるんや。ホッホッホッとな」

咲「洋榎おねえちゃんかっこいい!」

洋榎「ホンマか?照れるわ///」

由子「こっちのたこ焼きも食べるのよー」

咲「ん…おいしい!」

由子「もちろんよー」

―――――
洋榎「初めてにしては上出来やな。素質あるで」ナデナデ

咲「やったあ」

絹恵「おいしいなあ」

漫「確かに」

由子「末恐ろしいのよー…」

恭子「ま、まあまあやな…」カタカタ

洋榎「恭子、ちゃんと褒めたらんと、そないな育て方やと子供が将来グレるで」

恭子「う……お、おいしかったで、咲…」カタカタ

咲「本当!?嬉しい!」ギュ

恭子「ひっ!」ビクン

咲「あ…ごめんなさい…あんまり近づかない方がいいよね……」シュン

恭子「あ、いや…………」カタカタ

恭子(対局以外はええ子やっちゅうんが今日分かった…私はこんな子を悲しませて、何をしとるんや…)

恭子(プラマイゼロがなんや!ええ加減立ち直れ!やったる!)

恭子「そ、そんなことないで、咲!」カタカタ

咲「…でも」

恭子「それは私が弱いだけや、咲ちゃんは悪ない…咲ちゃんはええ子やって分かった」

恭子「咲ちゃんは仲良くなろう思て接してくれたのに私が勝手に恐がって避けとったんや。ごめんな…」ナデナデ

咲「うん……」

洋榎「ええ話や…」

絹恵「良かったね咲ちゃん…」

由子「心が洗われるのよー…」

漫「感動したわ…」

―――――
洋榎「ふう…ごちそうさんでした」

絹恵「ごちそうさまでした」

咲「ごちそうさまでした」

恭子「ご…ごちそうさまでした」

由子「ごちそうさまなのよー」

漫「ごちそうさまでした…」

洋榎「腹いっぱいになったか?咲」

咲「うん、もう食べられないよ…」

由子「片づけするのよー」

絹恵「あ、手伝います」

漫「私も手伝います」

洋榎「漫は咲の相手したれ。うちは恭子とジュース買ってくる」

漫「えっ?うわっ!」ドン

咲「漫おねえちゃん。お話しよっ」

―――――
洋榎「ようやったな恭子」

恭子「頑張りました…」ガクガク

洋榎「まだ震えとるようやけど、あとは慣れや」

恭子「はい……咲ちゃん、ええ子ですよね」

洋榎「ああ、せやな……これもどっかのアホいや馬鹿のおかげや」

久「馬鹿は失礼なんじゃない?」

洋榎「事実や……なあ、聞きたいことあるんやけど」

久「何?答えられる事ならなんでもいいわよ」

洋榎「咲の好きな飲み物や。それと…………今いくら持っとる?」

―――――
洋榎「戻ったで」

恭子「ただいま」

咲「おかえりなさい」

洋榎「膝枕かあ、気持ち良さそうやな」

咲「気持ちいいよ」

恭子「仲良うなったみたいで、私も嬉しいわ」

由子「終わったのよ―」

絹恵「ただいまー」

久「皆いるわね。それじゃあお待ちかねのお土産タイムよ。今回は多く捌けるから楽しみだわ」

久「まずは永水印の焼き芋ね。次に福岡は新道寺のうんしゅうみかん。それとお菓子詰め合わせ」

久「そして長野のりんご。それと最後に長野のからすみよ」

恭子「随分とたくさん…」

由子「おいしそうなのよー」

洋榎「いやカラスミてお前…」

漫「永水や新道寺にも行ったんですか」

絹恵「重かったでしょう」

久「まあまあね。皆で食べちゃって。私たちじゃ食べきれないから。ほら洋榎、からすみ開けて」

洋榎「いや開けろてお前これ……箱はなんやお菓子みたいやな」ガサガサ

絹恵「中身もお菓子やったりしてな」

洋榎「そんなわけあれへんやろお」パカ

洋榎「…」

絹恵「…」

洋榎「ホンマにお菓子かい紛らわしいわボケ!…………満足か?」

久「流石ね、展開がわかっていてなお反応するなんて大阪人の鑑よ」

洋榎「騙されへんで……まあ、菓子の礼だけは言っとくわ。ありがとうございます」

久「こちらこそお礼を言わなきゃならない立場なんだから…ありがとう」

洋榎「…菓子食べるか。ほれ皆も開け。絹、林檎剥いたり。咲、こっちに来」

咲「どうしたの?」

洋榎「ちょっと座れ。ここやで」ポンポン

咲「膝に?じゃあ…お邪魔します」ストン

洋榎「ん……懐かしいな」キュ

咲「懐かしいの?」

洋榎「せや。昔はようこうして絹を膝に乗せてやったんや。そしたらすごい喜んでなあ…」

洋榎「まあ絹の奴がうちより大きなってからはしとらんのやけど」

洋榎「まあ、なんや…久々にしたくなったんや。うちのわがまま、聞いてくれるか?」

咲「うん、いいよ」

洋榎「お……咲、口開け」

咲「あー…ん?」

洋榎「えん餅ていうらしいわ。美味いか?」

咲「うん、おいしい」

洋榎「そか」

絹恵「出来ましたー、てあら、懐かしいことしとるね」

洋榎「おお、すまんな絹。まあ昔を偲んで、ちゅうやつや」

絹恵「久しぶりに私も後でやってや」

洋榎「アホ言いな。重おて足が潰れるわ」

絹恵「そんなあ…あ、そんなら私がお姉ちゃんにしたげるわ」

洋榎「あかんな、全くあかん。これは姉が妹にやるからええんや。妹が姉にやったかて何もええことないわ」

絹恵「うぅ……!じゃあ後で咲ちゃんにやればええんやな!」

洋榎「本人次第やけどな」

絹恵「咲ちゃん、私も後でしてええやろか?」

咲「うん、大丈夫だよ」

―――――
洋榎「…」チラ

久「…」コク

久「革命」

由子「のよー!?」

恭子「これを狙って序盤にあんな高い手を…」

洋榎「しっかし、トランプも飽きてきたな」

恭子「お、メール来ました。今家を出たらしいです」

洋榎「こっちも来たわ。もうすぐ出るて」

由子「じゃあそろそろ行くのよー」

―――――
漫「お待たせしました」

絹恵「戻りましたー」

久「悪いわね、荷物運ばせちゃって」

絹恵「いえ、気にせんといてください」

洋榎「ほな行こか」

―――――
絹恵「こっちのがええやろか」

洋榎「いや、こっちやな」

恭子「これなんかどうや」

漫「あ、それいいですね」

由子「次はこれなのよー」

洋榎「完璧や…!」

絹恵「議論に議論を重ねた甲斐があったな」

恭子「これはイケるわ」

漫「こうしてみると達成感ありますわ…」

久「……咲は着せ替え人形じゃないのよ?」

由子「写真撮っておくのよー」

洋榎「撮れたか?よし、古着屋行こか」

絹恵「アウトレットのがええと思うんやけどなー」

恭子「最悪、年末年始のバーゲンセールや」

漫「後はアクセサリーやなんか欲しいところですね」

洋榎「せやな…このネックレスとかどや?」

由子「こっちのペンダントもいいのよー」


絹恵「コーディネート完了…」

恭子「ミッションコンプリート…」

漫「パーフェクト…」

由子「なのよー…」

洋榎「素材がええんやな、可愛いわ…似合とるで」

―――――
漫「うわ暗っ」

恭子「そろそろ晩御飯の時間やしな」

絹恵「お姉ちゃん…そろそろアレやな?」

由子「期待してるのよー」

咲「洋榎おねえちゃん、アレって?」

洋榎「着いてからのお楽しみや。楽しみにしとき」

久「ここが例の…」

絹恵「お姉ちゃんの伝説が見れるんやね…」

恭子「主将…」

由子「感動のあまり泣けてくるのよー」

漫「再び間近で見れる日が来るとは…」

咲「お好み焼き屋、なんだよね…?」

久(まるで解散したバンドの再結成ライブね)

久「ここが例の…」

絹恵「お姉ちゃんの伝説が見れるんやね…」

恭子「主将…」

由子「感動のあまり泣けてくるのよー」

漫「再び間近で見れる日が来るとは…」

咲「お好み焼き屋、なんだよね…?」

久(まるで解散したバンドの再結成ライブね)

>>121ミス


―――――
絹恵「ふう…おいしかった」

恭子「相変わらずでしたね」

漫「流石です」

由子「腕は衰えてなかったのよー」

洋榎「二人はどうやった?」

久「正直…半信半疑だったさっきまでの私を過去に戻って殴りたい気分よ」

咲「おいしかった!洋榎おねえちゃんすごい!」

洋榎「そら良かったわ」

―――――
恭子「じゃあ私らはぼちぼち帰らんと」

漫「怒られてまいますね」

由子「お別れなのよー」

洋榎「そか。まあ後はうちに任しとき」

絹恵「私もおるよ、お姉ちゃん」

久「明日は早くから空港だから、ここでお別れね」

咲「まだ一緒にいたいよ…」

漫「わがまま言うたらあかんよ、咲ちゃん」

恭子「どんなものともいつかは別れんといかん。哀しいことやけど、受け入れんとあかんの」

由子「心配しなくても、また会えるのよー」

咲「…うん、そうだね。そうですね……三人とも、ちょっと耳を貸して?」

漫「?」

由子「どうしたのよー」

恭子「何や?」

咲「うん、あのね……」

咲「…ありがとう」

漫「へっ?」チュッ

由子「ふぇぇ」チュッ

恭子「…///」チュッ

咲「これぐらいしか出来なくて、ごめんなさい」

絹恵「ええやん最高やん、ほっぺたキスやなんて」

洋榎「ほな行こうや。あんま遅いとおかん心配して警察さんに駆け込むで」

漫「はっ!いかんいかんトリップしかけた…お返しや!」チュ

由子「楽しかったのよー。また会いに来るのよー」ナデナデ

恭子「咲ちゃん…」

恭子「はは…いつの間にか震えがなくなるほど仲良くなってたな。少し前まで考えられんかった」

恭子「また会おうな、また会って遊んで…もっと仲良くなるんや」ギュッ

咲「…はいっ!」

―――――
洋榎「お?鍵掛かっとる」

絹恵「暗いし」

洋榎「帰ったでー」

絹恵「ただいまー」

久「お邪魔します」

咲「お邪魔します」

洋榎「ん、なんやまだ帰っとらんかったか」

絹恵「ん…はいもしもし……えっそうなん?はいはい、分かった……うん、お母さんもな」

洋榎「なんやって?」

絹恵「急用で泊まり込みになったて」

洋榎「ホンマか。外食で良かったわ」

絹恵「お風呂沸かしてくるからお姉ちゃん部屋案内しとってね」

洋榎「合点」

―――――
絹恵「そろそろ沸いたんやないかな」

洋榎「せやなあ、入るか。行くで、咲」

絹恵「行こうか咲ちゃん」

洋榎「は?ちょい待てや。うちの風呂そんな余裕無いやろ。お姉ちゃんに譲れや妹」

絹恵「お?なんやその喧嘩腰は。姉こそ妹に譲れや。うちは譲らんで」

洋榎「ほお?言うやないか。まあ?そろそろ格の違い見せつけたらな思うとったところや丁度ええ」

絹恵「よく言うわ。今のところ互角いや互格やないか。負けた後で駄々捏ねんようにな、お・ね・え・ちゃ・ん」

洋榎「…」

絹恵「…」

洋榎、絹恵「「最初はグー!じゃんけんポン!」」

―――――
久「で、あんな回りくどい芝居を打ったのは何の目的があったの?」

洋榎「ああでもせんと、家に入ったらサシで話す機会はもうないやろ……」

洋榎「放っとくと、どうせ皆で入るやら言いだす。そうなったら咲について聞きたいことを聞けん」

洋榎「せやから、二人で入る様に仕向ける必要があったんや。咲の前では聞かれんからな」

久「もしあなたがじゃんけんに勝ってたらどうしたの?」

洋榎「そん時は絹が聞いとった」

久「妹さん知ってたの?」

洋榎「最初にメールした時に書いとった」

久「意外と細かいことも出来るのね」

洋榎「伊達で姫松の中堅張っとったわけやあらへん……まあそれはええ…………本題や」

洋榎「なあ、ホンマに行く気か?」

久「…本当は行きたくないわよ。でも、行かないとダメよ」

洋榎「まあ……そうやろうな。このままはやっぱあかんよな」

洋榎「うちとしてはそう悪い気分でもなかったんやけど…………あかんよなあ」

久「……そうね。やっぱり駄目よ」

洋榎「よなあ…………なあ、もいっこあるんやけど」

久「何?」

洋榎「その……な、咲の趣味とか好きな食べ物とか聞きたいんや」

洋榎「い、いやちゃうで!そんなそういうんやない!その、あれや!姉心をくすぐられたんや!」

久「別に聞いてないわよ…」

―――――
洋榎「そろそろ寝よか」

久「明日も早いし…この子も船漕いでるしね」

絹恵「それなら寝床を決めようか、お姉ちゃん」

洋榎「いやさっき一緒に風呂入ったんやから寝る時はうちでええやろ」

絹恵「むぅ……まあええか。お姉ちゃん、任せたで」

洋榎「勿論や……咲、起きいな。寝床はこっちやで」

咲「ん………おんぶして……」

洋榎「……も、もおおしょうがないやっちゃなあ。今回だけやで?どっこいしょういち、っと」

久「重くない?」

洋榎「羽のように軽いわ。軽すぎて空飛んでまうで」

洋榎「ああでもほれ、しがみついとかんと落ちるで……そや、しっかりとな」

咲「んふふ…………ありがとー……」

絹恵「……」ドンッドンッ

久「まあ抑えて抑えて。しかし姉心をくすぐられるなんて言ってたけどあれ、寧ろ…」

絹恵「孫を可愛がる祖父母ですね」

―――――
洋榎「こんくらい軽いと運ぶんも楽やな」

洋榎「とうちゃーく、っと。咲、もう放してええで」

咲「んん……」

洋榎「よしよし…ええ子や……」

咲「ありがとー……優しいおねえちゃん………だいす…き……」

洋榎「…………ごめんなあ…うち本当はそない優しくないんや……」

洋榎「小さい頃思い出して……あの頃の絹に重ねて…思い出に浸っとった」

洋榎「絹とは今も仲はええ…ただ、あの頃より…なんていうか離れてる気がして……」

洋榎「絹がうちのこと、いつかお姉ちゃんて呼んでくれんくなる気がして……」

洋榎「お姉ちゃんらしいことして、いつまでもお姉ちゃんて呼んでくれる様に………………」

洋榎「…妹離れ出来ん姉の現実逃避……やったんかもなあ。結局、咲の面倒見たんも…」

洋榎「なんてことない、ただ絹の代用品にしとっただけやないか…………」

洋榎「最低や…………ホンマ、ごめんなあ……」

咲「大丈…夫だよ……全部大…丈…夫……おねえちゃん………」

洋榎「咲は優しいなあ………………うち、ホンマにお姉ちゃんやれとるやろうか?」

洋榎「こんなお姉ちゃんで……大丈夫やろうか……?」

咲「大丈ぶだよ……ひろえ……おねえちゃん………す……きだ……よ………スー………スー…」

洋榎「ありがとう……咲…」ナデナデ

―――――
久「お世話になり通しで申し訳ないわ。ぶどうやらけし餅やらみたらし餅やら、いいの?」

絹恵「ええですよ、私も咲ちゃん可愛がれたんで」

咲「絹おねえちゃんまた遊ぼうね」

絹恵「勿論や」チュッ

咲「えへへ…じゃあお返し」チュ

洋榎「咲、あのな…」

咲「何も言わなくていいよ」

洋榎「……あーもう可愛いなあ咲は!愛らしい妹や!」ダキッ

洋榎「また遊びに来や。いつでも来たらええ…困った時はいつでも呼んだら駆けつけるで」

洋榎「うちかて咲の姉なんやからな」ナデナデ

咲「うん、ありがとう洋榎おねえちゃん」

洋榎「そ、それでな……その…うちには……してくれんのんか?」モジモジ

咲「そんなわけないよ」

咲「…ありがとう…本当に」チュ

洋榎「…あーこれアカンわー。惚れてまいそうやわ、ホンマ」

絹恵「なんやえらい積極的。昨日なんかあったん?」

洋榎「秘密や。ならな、お二人さん。元気でな」

絹恵「もう……お気を付けて」

久「ええ、お互いにね」

咲「それじゃまた今度ね」

―――――
久「さて次は、岩手は宮守女子ね」

久「それにしても、飛行機を手配してくれた龍門淵には感謝しないと。金銭面でもかなり助かってるし…」

久「愛されてるわね……咲」


久「うん……予想はしていたけど、そうね…予想を超えてくるわね、岩手」

久「空港に降り立ちえっちらおっちら歩き電車に乗り換えガタゴト揺られ…変わらない景色にうつらうつらと舟を漕ぎ…」

久「無人の改札という人間の良心に頼り切った素晴らしい信頼関係には感動すら覚えたわ」

久「遠野物語からそろそろ百年になるかしら…少しずつ発展しながらも当時の面影を残し未だにその雰囲気を引きずる風情の町」

久「といったところかしらね。さて、確かこの辺り……あったあった」

――――――――――宮守
久「お邪魔します」

咲「お邪魔します」

塞「いらっしゃい、二人とも」

久「彼女は奥?」

塞「ダルいってボーッとしてる」

塞「久しぶり、咲ちゃん。私のことは塞とか適当に呼んでね」

咲「塞おねえちゃん」

久「もう一人いるわよ」

塞「連れてきたよ」

白望「ん…いらっしゃい……」

久「相変わらずねえ」

白望「ダルい……」

咲「ダルいの?」

塞「口癖というか行きざまみたいなものだから、気にしなくていいよ」

久「そうね。あとシロって呼んだら喜ぶわよ」

咲「シロおねえちゃん?」

白望「……」プイ

塞「ね?」

咲「シロおねえちゃん!」ギュ

久「ところでご両親はいつ頃帰宅されるのかしら」

塞「昨日旅行に行ったよ。電話貰った後シロが私も含めて家に泊めるって言ったら『邪魔だろうから』って言って」

久「それは申し訳ないことをしたわ」

塞「いや、あれは前から計画してたがシロが心配、そこに面倒見れる人が来るから丁度いい、ってのが真相と見た」

久「ご両親は仲がいいのね」

久「さて、お土産の時間よ。あげると増えるお土産のおかげで鞄一つ使う破目になってるから多めに渡すわ」

久「農作物方面まずりんご。次に芋。蜜柑にブドウときて最後に茄子」

塞「水ナスかあ。どうしたの?」

久「確か、空港で待ってたら隣のおばちゃんに話しかけられて…そこから気付いたら持ってたのよ」

塞「ははは、それは災難だったね」

久「きんつばとかるかんと福岡銘菓詰め合わせとけし餅とみたらし餅と飴ちゃん多数で一応終わり」

塞「飴ちゃん?ああ、ポケットに…でもこれ貰っちゃっていいの?」

久「残念なことにもう一セットあるのよ。永水の分が多かったのもあるし、貰ってくれないと困るわ」

塞「じゃあ遠慮なく。あ、折角だから晩御飯は水ナスで何か作ろうかな」

咲「みかん食べる?」

白望「ん…食べる…」

咲「はい、口開けて」

白望「あー……ん」パク

咲「おいしいね」

白望「ん…」

咲「はい」

白望「ん…おいしい……」

―――――
咲「なんだか眠くなってきちゃた…」

塞「シロを布団代わりにすると気持ち良く寝られるよ」

咲「いい…?」

白望「……」

咲「シロおねえちゃん…」

白望「…………ご自由に……」

咲「ありがとー……気持ちいい…」

塞「掛け布団持ってこようかね」

―――――
塞「シロー、ってそういえば咲ちゃん乗せてたんだった」

白望「残念だけど動けないから……」

塞「態度と言動くらい一致させようか」

久「何か手伝うことがあるなら、私が代わりにやろうか?」

塞「ああお願い。実は料理の味見を頼みたいんだけど」

久「そんなことでいいの?」

白望「…………」

―――――
白望「咲……起きて…」ユサユサ

咲「んん……シロおねえちゃん…おはよう……」

白望「ご飯だから……」

塞「さ、食べるよ」


咲「おいしい!」

塞「そう?ありがと」

久「同じ女性として料理上手は羨ましいわね」

白望「……」

―――――
塞「お風呂の順番どうする?」

咲「塞おねえちゃん一緒に入ろっ」

塞「お、入る?入ろうかー」

久「先にどうぞ」

塞「本当?じゃあ先に入っちゃおうか咲ちゃん」

咲「うん」

―――――
塞「お湯流すよー」

咲「はーい」シャー

塞「はいおしまい」

咲「ありがとー。今度は塞おねえちゃんの背中流すね」

塞「ありがと」

咲「はあー気持ちいいね」ザザー

塞「そうだねー。あ、ちゃんと肩まで浸かってないと風邪引いちゃうよ」

咲「うん……」ジッ

塞「何どうしたの?」

咲「塞おねえちゃん…奇麗」

塞「そ、そうかな」

咲「そうだよ」

塞「咲ちゃんだって可愛いじゃない」

咲「そんなことないよ」

塞「いやいや、咲ちゃんが奇麗だって言う私が保証するよ、咲ちゃんは可愛いって」ニコ

咲「えへへ…」

塞「そろそろ出よっか」

―――――
久「……」ペラ

白望「……」

久「……」ペラ

白望「お茶いる…?」

久「お願い」


白望「はい…」コト

久「ありがとう」ズズ

久「みかんいる?」

白望「うん…」

久「はい、剥けたわよ」

白望「どうも…」パク


塞「ただいまー」

咲「あ、みかん食べてる」

白望「いる…?」

咲「いるー」

白望「はい…」

咲「あーん…甘い」モグモグ

―――――
久「風が出てきたわねえ」

塞「この辺りは山間の上雪も降りやすいから、もしかしたら明日は外出出来ないかもね」

久「冗談じゃないわ」

塞「いやあ本当にねえ」

白望「…そろそろ寝る……」

塞「随分早くない?」

白望「…咲がお眠だから……」

久「じゃあ、そうね…」

塞「シロ、咲ちゃんを部屋まで連れて行ってあげてよ。こっちは明日のこととか聞いておくから」

白望「分かった…」

白望「…………」

白望(起こすのダルい…抱えていこ…)

白望「……軽っ…」

塞「よろしくね」

―――――
白望「さて……」

白望(まあ…床でもいいかぁ…)

咲「うーん……」ギュゥ

白望「……」クイ クイ

咲「スー……スー……スー…」ギュゥ

白望「……はぁ」

白望「…ダル……くもないか…な……」

白望「…寝るか……」

―――――
塞「二人とも、朝だよー」

白望「…おはようございます……」

咲「ん……おはようございます…」


白望、咲「「いただきます…」」

塞「シンクロしてるね…」

久「これはどっちがどっちに感染したのかしら」


白望、咲「「ごちそうさまでした」」

塞「お風呂沸かしたから、目ざましに二人で入ってきなよ」

白望「分かった…」

咲「うん…」

―――――
白望「あー…」ザパー

咲「ふう、さっぱりしたあ」フルフル

咲「シロおねえちゃん、頭洗ったげようか?」

白望「あー…お願い……」


咲「かゆいところは?」

白望「ない…」

咲「お湯かけるから目を瞑ってね」

白望「うん…」ザー


咲「体は?」

白望「お願い…」

咲「任せて」

咲「羨ましいなあ」

白望「…?」

咲「だって肌も白いし触り心地がいいんだもん」

白望「いや…………」

咲「スタイルもいいし…顔も」

白望「……はぁ」

白望「交代」

白望「咲は…」ワシャワシャ

咲「うん?」

白望「自分のことが好き?」ザー

咲「あんまり…」

白望「私は咲のこと…好きだよ」

白望「見た目も…好みの部類かな」

咲「あ…ありがとう///」

白望「だから自信持って」

白望「それに…咲といると落ち着く」

白望「他人がいるとあんまり落ち着かないけど」

白望(周りの視線とかで……)

白望「そういう雰囲気も含めて咲だから…私は咲に咲を好きになってほしい、かな」

咲「少し…頑張ってみる…」

白望「ん…………」

白望「それと……咲は痩せすぎ…………」

咲「あはは……」

―――――
塞「おかえり」

久「長風呂だったわね、って」

塞「随分と仲良くなったみたいで」

咲「うん!」

白望「……まあ…………」

―――――
久「あっちの駅までで良かったのに」

塞「まあ向こうにいても特にやることないし、受験勉強の息抜きにね」

塞「そうそう、お土産はかばんの中にちゃんと入れてるから」

久「え?」

塞「返品は受け付けていませんのであしからず」

咲「ありがとうございました、塞おねえちゃん、シロおねえちゃん」

塞「これぐらい。じゃあ、元気でね。次はいつ会えるか分からないけど」

咲「うん、元気でね」チュッ

塞「あ、あはは///」

咲「シロおねえちゃんも、ありがとう。頑張ってみるね」

白望「うん……頑張って…」

咲「お礼に」チュ

白望「……」

咲「二人とも、本当にありがとうございましたっ!」

塞「うん、またね」

白望「じゃあ……またね」

―――――
久「ふう…お土産の件を除けば概ね成功と言ったところね」

久「…次、目的地は東京、とくれば勿論白糸台」

久「何事もなく終わってくれたらいいけど……」

久「まあ、なんにしても行かないことにはね」

久「時間もあるし、考えないようにしましょう」

コーヒーブレイクという名の晩食に行ってきます

――――――――――白糸台
菫「あとどれくらいだ?」

尭深「まだもう少しは」

菫「む、そうか」

尭深「さっきからソワソワと落ち着きがないですけど、大丈夫ですか?」

菫「そ、そうかな、大丈夫だ。いや実は妹も弟もいなくて、どう接したものやら分からなくてな、緊張している」

尭深「普通にしていればいいんじゃないですか」

菫「あ、ああ。そうだ、お茶をくれないか」

尭深「はい」

菫「遅くはないか?」

尭深「予定時刻はまだですよ」

菫「むう…」

菫「流石に遅いだろう」

尭深「そうですね。時間は過ぎてます。二分ほど」

菫「事故に遭って無ければいいが…ちょっと表に出てこよう」

尭深「お茶の準備してきます」

久「お邪魔します」ガラ

菫「おお、来たな。遅かったじゃないか」

久「ごめんなさい、色々あったの」

久「ところで、他の部員は?」

菫「なんとか理由を付けて休んでもらった。いたら邪魔になるかもしれないだろう」

久「助かるわ」

菫「ちなみにあいつは数日前から姿が見えないな。それで、み…咲はどこにいるんだ?」

久「それがね……咲、覗いてないで入ってきなさい。大丈夫よ、大丈夫だから」

咲「…………」ササッ

久「おっと…こういうことなのよ。どうも他に比べてかなり警戒してるみたいで、何が原因かしらねえ」

菫「…すまない」

久「そんな、貴女のことを責めてるわけじゃないの。そういう風に取られたんなら謝るわ。ごめんなさい」

菫「いや、いいんだ。それより咲、顔を見せてくれないか」

久「咲、私の後ろに隠れてても何もならないわよ。菫お姉さんに顔を見せなさい」

咲「……」ジー

菫「咲…」スッ

咲「!」ササッ

菫「!?」ビクッ

久「あー…あれね、基本顔が恐いのね。真顔っていうか、無愛想っていうか…無言だし」

菫「いや、今のは頭を撫でようと…」

久「ほら、真顔で手を上げられたら手を上げられるのかと思ってビクッてなっちゃうじゃない」

菫「…そうか…そんなに恐いか……尭深、相手をしてやってくれ…私は少し席を外す」ガラ

久「あちゃー少し言いすぎたかー…まあいいわ、どうせすぐ帰ってくるでしょう」

尭深「お茶どうぞ…」

久「ありがとう。咲、尭深お姉さんはどう?見た目と中身が一致してるタイプよ」

咲「……」ジー

尭深「お茶…飲む?」

咲「……尭深おねえちゃん?」

尭深「どうしたの?」

咲「尭深おねえちゃん…お茶ちょうだい」

尭深「はい、どうぞ」

咲「ありがとう」

尭深「うん…」

菫「ただいま…」ガララ

久「五分と少し。まあまあね」

菫「何基準のまあまあだ…久、これを見てくれ。これでなんとかなるか?」

久「んーそうねえ……もう一歩進んだ何かが欲しいわね」

菫「やはりか…まあいい。とりあえずこれでいってみよう」

久「期待してるわよ」

菫「いやそこは応援…なんでもない」

菫「な、なあ咲…ちゃん。こっちを見てくれ」

久「テテテテテテーテ テテーテ テテーテ」

尭深「ブフッ…ゴホッ…ゴホッ…」

久「デデーン 尭深、アウトー」

咲「…」

菫「鼻眼鏡とひげでは駄目か…いや予想通り」

菫「ならばこれでどうだっ」

久「おかめ納豆」

咲「…怖い」ギュ

尭深「よしよし」ナデナデ

久「流石におたふく面で迫るのはどうかと思ったのよね」

菫「じゃあ先に言ってくれよ…無駄に怖がらせてしまったじゃないか…」

久「ファーストコンタクトの時点で…いえごめんなさい、流石に」

菫「はあ……」

久「あ、そうそう、お土産大量に持ってきたのよ。全部あげるわ」

菫「その鞄の中身全部か?重かっただろう。どれどれ…果物まであるのか」

菫「多くはお菓子の詰め合わせだが…なんだ、チーズケーキは早く食べないと悪くなるじゃないか」

久「チーズケーキ?…ああ、多分宮守の分ね。するともう一つは…ブルーベリーか」

菫「しかしいいのか?」

久「いいのよ。重いから置いて行った方が楽でいいわ」

菫「しかし友人や部員に渡さないといけないだろ。期限の近いものは貰うが、少しは持って帰ってやれ」

久「まあ…そうね。少しくらい重さを感じてもいいかもしれないわね」

菫「物理的な重さだけじゃないからな、お土産というものは……!おい、これを見てみろ」

久「ん?何何……なるほど、やってみる価値はあるわね。これならいけるかも」

菫「咲……」

咲「……」

尭深「……」

菫「♪たーまにぃはー 喧嘩ーに 負ーけてこぉいぃー」

久「東雲堂のにわかせんぺい」

尭深「ブフォッ!ゲホッ…ゴフッ…ゴホッ…」

菫(これでどうだ…?)

咲「……フフッ面白いね」ニコ

菫「っし!」グッ

久「やったわね…おめでとう」

尭深「おめでとうございます」

菫「ありがとう…ありがとう……はっ!ゴホンゴホン。さて、咲。私のことは是非菫お姉ちゃんと」

咲「菫おねえちゃん?」

菫「おお……そ、そうだ。お菓子でも食べるか?」

咲「菫おねえちゃん…さっきはごめんなさい」

菫「いや、いいんだ。私も以前から無愛想だとか強面だとか極道の娘だとか言われて自覚はしていた」

菫「それよりも、なんだ。これから仲を深めていけば問題無い」

咲「うん…そうだね」

―――――
尭深「ちょっとお手洗いに」

咲「あ、私も」


久「さっきから思ってたんだけど」

菫「なんだ?」

久「どうして咲に入れ込むの?傍目からは異常とさえ思えるわよ」

菫「…インターハイの時、咲がうちの控室に来たんだ。照に必死に話しかけようとして…無視されてたよ」

菫「見ていていたたまれなかった」

久「同情したのね」

菫「そうかな…そうなのかもな、自分じゃそうは思って無かったが。その時からなんとなく気になってな」

菫「それで、ほんのひと時でも彼女の姉になって…というのが今回の誘いに乗った理由の一つだ」

久「なるほどね」

菫「出来る事なら仲直りしてもらいたいが」

久「…それは無理よ。出来る筈がない。不可能ね」

菫「そこまで否定しなくても」

久「そういえば菫には詳しく教えてなかったけど。否定出来るのよ。何故なら」

尭深「ただいま戻りました」

咲「ただいま」

久「そういうわけだから、今晩の宿泊はよろしく」

菫「いや待て親もいるから決定したわけじゃ」

咲「菫おねえちゃんの家に泊まるの?」

菫「そうだ。全力でもてなそう」

久「勝った」ニヤ

―――――
尭深「お茶淹れ直してきます」

菫「そういえば確か棚の上にボードゲームがあったような」

久「ボードゲームなんて、とても麻雀部の部室とは思えないわね」

照「……ただいま………………」ガラ

久「ッ!?」バッ

菫「照!お前今まで何を」

咲「お、姉ちゃ、ん…………?」

照「咲……?咲……幻覚じゃない…本物の咲……咲……咲…………咲!」スタスタ

咲「お姉ちゃん…そんな……いや……ごめんなさい……ごめんなさい……」ガラララ ガタッ

菫「おいどうした咲、窓に手を掛けたりして落ちたらどうするんだ!咲!」

咲「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………いや……いやっ!」ダッ

久「咲ぃっ!!」

菫「飛び降りた!?ここを何階だと思って、ッ!!」バッ

照「咲……咲!!咲ッ!!!」ダダッ

―――――
菫「奇跡的に無傷…どころか怪我があったら逆に教えてほしい、なんて聞かれたよ」

菫「一応尭深についてもらって様子を見るというのがいいだろう」

久「無傷……そうか、あの時……今度永水にお礼に行かないと…………それより」

久「よくも抜け抜けと顔を出せたものね、宮永照…!」ギロ

照「……」
久「なんとか言いなさいよッ!」グイ

菫「静かにしろ、病院内だぞ…それに、照にこのことを伝えなかった私にも責任はある」

照「…こんなはずじゃ、なかったんだ」

久「はあ?自分でこの状況を作っておいて、何を言っているの?理解出来ないのだけれど」

照「……仲直りをしようと……謝ろうと思って……」

久「仲直り?謝る?ごめん、ちょっと待って。え?何?何なの?ドッキリ?それとも喧嘩売ってる?」

照「……本心」

久「仏の顔も三度まで、っていうから、仏じゃないけど三度までは耐えるわ。耐えたくないけど」

久「でももうふざけないで。もうギリギリなの。次変なこと言ったら口より手が出るわ」

菫「穏やかじゃないな。それに話も見えてこない。さっき言っていたことと関係があるのか?」

久「ええ、そのことも含めて教えてあげるわ…」

久「まず、咲のインハイ時の行動と結果は知っていたわね。その後、直接が駄目ならと思って手紙を書いたのよ」

久「かなり熟考して、文字通り寝食を惜しんで書き上げたわ。仲直りしたいって言いながらね」

久「手紙を出してからはずっと不安でね、いつも寝不足で目に隈が見え無い日は無かった」

久「一か月過ぎてからはだんだんと痩せていった。それでも待ち続けた」

久「二か月が過ぎた。痩せこけて見ていられなかった私はプライベートの世話までしていくようになった」

久「そんなある日、手紙が届いた。宛名は宮永照。嫌な予感がしたから夜に手紙のことを告げた」

久「その時は食欲が出て、通常の半分くらいは食べたわね」

久「翌日学校から帰って手紙を見せた。わずかな希望を持って手紙を読み進めて、最終的に咲は倒れた」

久「過換気症候群、精神的なストレスで過呼吸になって失神したのね。倒れる直前はごめんなさいと繰り返してた」

久「病室で目が覚めた咲の第一声は『おねえちゃん?』軽い記憶喪失と幼児退行状態にもなっているらしいわ」

久「その日から私は咲のお姉ちゃんになった。ただ私だけじゃ限界があるから県内他校の友人に話して協力してもらった」

菫「そしてそれも限界が来たから今回の話を持ちかけた、か」

久「更に言えば、姉に対する抵抗を少しずつ無くして元に戻そうとする目的もあったわ。半ばまでは成功していたのよ」

久「コイツが出てくるまではねえ…!」

久「なんにせよ、今回の話は全てこの女が原因。正直、殺したいぐらいよ」

久「でも手を出さない。何故なら、それでも、そんなのでも咲の大事な家族だからよ」

菫「しかし、彼女をそこまで追い詰めた手紙か…」

久「見る?コピーだけど、持ってきてるわ。まあおすすめはしない、傍から見てもどうかと思う内容だもの」

久「ついでだから貴女も見ておくといいわよ。別のコピーあるから」

久「いやあ、出るとこ出ようと思ってコピーしてたのが早速役に立ってよかったわ」

菫「…………これは酷いな。流石に……部外者の立場から見ても気分が悪い」

久「拒否に始まり過去の糾弾、人格攻撃、仲直りするメリットや意味まで盛り沢山聞いて、最後に明確な拒否で締める」

久「筆圧いっぱい、心もいっぱい込めて書き殴った手書きの文字がいい味出してるわ。もしかして薬キメてた?」

久「よくここまで情感たっぷりに書けるものね。将来文豪として活躍できるかもよ」

久「三大奇書からドグラ・マグラ引きずりおろして君臨するとか。ちなみに私は貴女の本見つけたら片端から焚書するわ」

照「私は……本当にこんな文章を…………咲……ごめんなさい……」ブルブル

久「本当に貴女が、『宮永照が』書いたのよ。信じられない?でも本当。事実なのよねえ」

菫「お、おい何もそこまで」

久「言うわよ?せめて咲の受けた苦痛の万分の一でも与えないと気が収まらないもの」

久「むしろ物理的な手段に出ないだけまだ理性で抑えられてる方よ」

久「さあ、そろそろさっきの発言の真意を話してもらおうかしら。口汚く罵ってあげる」

尭深「あの、咲ちゃんが目を覚ましました。どうやら記憶なども元に戻っているようです」

久「本当なの!?」

尭深「はい」

久「そう…ありがとう」

菫「良かった…済まないな、役を押し付けてしまって」

尭深「いえ…宮永先輩、咲ちゃんが会いたいと」

照「本当に…?」

尭深「はい」

久「心配ね…私たちも入っていいかしら?」

尭深「出来たら二人にもいてほしい、と。諸々のことも中でお願いします」

―――――
久「咲!」バン

咲「どうも…ありがとうございました、色々と」

久「死んだらどうするの!もう、心配したんだから…二度とあんな真似しないで…お願いだから…」ギュゥゥ

咲「ごめんなさい…本当に」ナデナデ

菫「咲…大丈夫なのか?」

咲「菫さん…大丈夫ですよ、まだフラフラしますけど」

咲「尭深さんも、ありがとうございました」

尭深「うん」

照「咲……」

咲「お姉ちゃん…久しぶり」

照「咲…」

咲「ようやくお姉ちゃんと話せるよ…嬉しいな」

照「咲……ごめん……ごめんなさい……」

咲「それって何に対して?」

照「…全部…無視しててごめんなさい。あんな手紙を出してごめんなさい…こんなに追い詰めてしまって、ごめんなさい」

咲「うん…いいよ。そもそもの原因は私にもあるし……でも意外」

照「手紙を書いた時は……異常だったんだ。自分で読んで分かった」

照「あの時期は…酷く鬱屈とした気分で…無性に怒りがこみ上げていたんだ。そこに咲の手紙を見つけて…」

久「手紙を放置し続けていたのは?」

照「その時は、咲の事が…正直、嫌いだと思ってた。捨ててしまわなかったのが不思議だったけど…」

照「今思うと…わずかに残った良心のおかげだったのかもしれない」

照「手紙を読んで…カッとなったんだ。自分がこんな状態なのに、なんでこんな…って」

照「手紙の内容も書いた時の私自身もよく覚えてないし、今は思い出したくもない」

照「冷静になったのは投函した後のこと。その時は取り返しのつかないことをした、という漠然とした不安だけだった」

照「その内、咲が倒れて入院したとの知らせを聞いた。尭深から」

尭深「たまたま私が電話を取ったので」

照「それで…考え直してみたんだ。本当に仲直りしたくないのか…知らせを聞いて動揺していたのもあったから」

照「それで、もう一度やり直したいと思った…けど、今更顔を見せられたものかと思って…」

照「手紙を書くことにした。謝罪の言葉と、正直に思いを書いて、そしてここからまた関係を築いていきたいと」

照「時間はかかったけど、学校も休んで書き上げた。それを持って長野に行ってきたんだ」

菫「それで最近見なかったわけか」

照「うん…会えなかった。それで、向こうで散々に言われて…泣いて後悔しながら帰ってきた」

咲「お姉ちゃん…」

照「そして今日久しぶりに部室に顔を出しに行ったら…」

照「ごめんなさい……これ、読んでくれるかな……?」

照「なんなら破り捨ててくれても構わない……」

咲「そんなことするわけ、ないよ……」

尭深「お二人とも…」

菫「そうだな。ほら行くぞ」

久「ええ…」

―――――
菫「納得いかないか?」

久「そりゃ……」

菫「咲も自分に原因があると言っていたし、照も反省してる」

菫「二人とも自分を客観的に見て非を認めあった。過去の諍いを全て水に流そうとしている」

菫「その先に本当の関係があるからだ。二人は真の『和解』をしようとしてるんだよ」

菫「それでも納得できないなら、照を殴ってやればいい。私も若干怒ってるしな」

菫「まったく、あんな可愛い妹を…」

久「…さっきから思ってたのだけど。あなたって」

尭深「かなり過保護ですよね」

久「シスコンでもいいわ。可愛がりすぎていつか妹が家を飛び出すタイプね」

菫「なんだと!?聞き捨てならん。ただ一人っ子で姉妹の距離感が掴めないだけだ。それにさっきも言ったが」

久「常軌を逸してるわ。『救急車呼ぶより早い』いや遅いでしょ。テンパるにしても背負って行こうとするとかでなく他にあったでしょ」

菫「ぐぬぬ…」

尭深「というか…妹に対するそれというよりは…親とか恋人夫婦間のそれですよね」

久「ああ、確かに。もしかして…もしかするんじゃない?」

菫「なっ!い、いやそれはないだろう………………多分」

咲「あの…皆入ってくれますか?ちょっとあれなんで」

久「ごめんなさい、うるさかったわね」

菫「う、動いて大丈夫なのか?まだ動かない方が」

咲「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

久「ほら過保護」

菫「うっ…」

―――――
菫「それにしても、記憶が戻ったりしたのはどうしてだろうな」

久「姉を見た衝撃によるショック療法的なアレか飛び降り自殺を図った時の地面に叩きつけられた衝撃で」

尭深「そ、そこまででもう…泣きそうですよ」

照「………ごめんなさい…」

咲「ええっとそれはですね…多分、お姉ちゃんの声が聞こえたからだと思います」

照、久、菫、尭深「「「「私の?」」」」

咲「……照お姉ちゃんで」

照「よし…」

咲「気絶する前にお姉ちゃんの叫び声が聞こえて、『ああ、心配してくれてるのか』と思ったら」

菫「成程な。ところで、無傷なのは不思議だな。そういえば永水がどうのと言っていたが」

久「永水で帰り際に切り火してもらったのよ。多分そのおかげだと思ってね」

咲「地面に叩きつけられる直前、ガラスが割れるような音がして、気付いたら横たわってました」

菫「不思議なこともあるものだな……ところで、その……あー…なんだ」

咲「?…ああ、記憶なら残ってますよ。鮮明に…いやもう恥ずかしいぐらいくっきりと…」

菫「そ、そうなのか…」

咲「ご迷惑をおかけしました」

菫「そんなことはないぞ!良い体験をしたと思ってる。またいつでも…ハッ…今のは忘れてくれ…なくても…いやわす…やはり…」

咲「ふふ…その時はまたお願いしますね、菫おねえちゃん」

―――――
久「しかしぎこちないわねえ」

咲「あはは…まあおいおい慣れていけばいいんですよ。今で充分幸せなんで、これ以上はまだ、ね?」

照「う、うん…いつか自然に振る舞えるようになる、と思うから…」

淡「テルー!」

誠子「大丈夫ですか!」

淡「あれ大丈夫そう?あ、サキじゃんすごく痩せてるけどどうしたの?新手のダイエット方法?」

淡「『即身仏ダイエットでホネかわスリムなボディを手に入れよう!』みたいな?やめた方がいいと思うよ。サキはもっと」

誠子「大星、ちょっと静かにしような?えーと、宮永先輩が自殺に失敗し病院に搬送されたと聞いたんですけど」

菫「ああ、それな。微妙に色々間違ってる」

誠子「はい?」

淡「どういうことなの?テルー」

照「うん、説明するから。でもその前に、紹介する」

照「この子は宮永咲といって、私の」

――――――――――
尭深「お茶入りました」

久「さ、わらしべ長者的に増えてきたお土産の品々を食べましょう」

淡「サキは昨日、結局テルの家に泊ったんだよね?」

咲「う、うん。それがどうしたの?」

淡「何かあった?」

咲「いや、何もなかったけど」

淡「つまんなーい。何かこう…無いの?」

菫「こら淡、あんまり困らせるんじゃない」

咲「あ、菫おねえちゃん」

菫「!?」

淡「!?」

咲「あっ……ごめんなさい、つい」

菫「いやだから、いいと言っているだろう」

淡「菫おねーちゃん」

菫「頭でもイカレたか?」

淡「ひどいっ!」

誠子「なあなあ、咲…」

咲「あ…はい、なんですか?」

誠子「ちょっと誠子お姉ちゃんって呼んでみてくれないか?」

咲「誠子おねえちゃん?」

菫「おい亦野…」

誠子「はい…なんでしょうか……」

尭深「咲ちゃん、お茶いる?」

咲「お願いします…尭深さんも、お菓子食べましょうよ」

尭深「でも両手塞がってるから…」

咲「あーん」

菫「!?」

淡「!?」

誠子「!?」

尭深「あ、あーん///…おいしい」

咲「でしょう」

菫「シベリア…」

誠子「アウシュビッツ…」

淡「小走…」

菫、誠子「「それは違う」」

―――――
久「混ざらなくていいの?」

照「まだあそこまでは……話がある」

久「何?」

照「改めて、ごめんなさい……それと、ありがとうございました」

久「…もういいわよ。結局大団円で終われるのだから」

久「私も、酷いこと言っちゃったわ…ごめんなさい」

咲「二人とも、ここにいたんだ。何の話してたの?」

久「咲がかわいいっていう話よ」

照「そう、咲の魅力について話し合ってた」

咲「そ、そんな…///」

久「それで、咲はどうしたの?」

咲「えっと、帰る時間を聞こうと思って」

久「ああ、それなら…」

―――――
咲「お世話になりました」

久「ありがとう」

菫「いや、こちらも楽しかったよ」

尭深「お元気で…またね、咲ちゃん」

淡「また今度ね、サキ」

誠子「いつでも歓迎しますよ…咲、元気でな」

菫「それで、お土産だがな」

久「いらないわよ、別に。これくらいで丁度いい重さだから増えると困るわ」

菫「まあ、そう言うな。自走タイプだから持ち運びは楽だぞ」

菫「ほら、自立歩行型不可食土産、宮永照だ」

照「どうも…久しぶりに父さんに会いに…それと皆に会って謝らないと」

咲「しょうがないなあ……私も一緒に謝ってあげるよ、お姉ちゃん」

久「やれやれ、面倒なお土産ね。まあ、最後にふさわしくはあるけど」

久「ありがたく頂いていくわね、それじゃあ」

咲「あ、ちょっとその前に」

咲「菫さんと尭深さん、こっちについて来てくれませんか?」

菫「ああ、いいぞ」

尭深「いいけど…どうしたの?」

咲「えっと、二人だけにしないのもなんだけど…皆が見てると恥ずかしいので」

咲「尭深おねえちゃんありがとう」チュッ

咲「ありがとう、菫おねえちゃん」チュ

咲「ありがとうございました…おねえちゃんたち」

――――――――――清澄
ゆみ「そろそろらしいな」

美穂子「大丈夫でしょうか」

優希「お姉さんは心配性だじぇ」

和「部長を信じましょう」

まこ「そうじゃな」

透華「まったく、龍門淵家のヘリを使えばすぐですのに……」

一「まあまあ、きっと何か考えがあるんだよ」

衣「咲…」

久「……ただいま…………」スッ

ゆみ「ああ、お帰り。それで、どうだった…?」

久「咲……入っていいわよ」

咲「はい……ただいま帰りました……」スッ

ゆみ「……」

美穂子「……」

優希「咲ちゃん……」

和「咲さん……」

まこ「……」

透華「ま、前よりは前進しましたわ……」

一「う、うん……」

衣「咲…」

久「……ただいま…………」スッ

ゆみ「ああ、お帰り。それで、どうだった…?」

久「咲……入っていいわよ」

咲「はい……ただいま帰りました……」スッ

ゆみ「……」

美穂子「……」

優希「咲ちゃん……」

和「咲さん……」

まこ「……」

透華「ま、前よりは前進しましたわ……」

一「う、うん……」

衣「咲…」

咲「ただいま帰りました……」

咲「みんなの妹、宮永咲ですっ!えへ☆」

ゆみ「」

美穂子「」

優希「」

和「」

まこ「」

透華「」

一「」

衣「」

久「ドッキリ大成功―!」パン

咲「遺影!いやイエイ!」ビシバシグッグッ

ゆみ「…これはどう見る?」ヒソヒソ

美穂子「…元に戻った、でいいんじゃないですか?」ヒソヒソ

優希「…逆方向に壊れてる気がするじぇ」ヒソヒソ

久「いやー見事に騙されてお通夜状態になってる顔、ゾクゾクしたわ!」

和「…多分ドッキリでいいのでは」ヒソヒソ

まこ「…そうじゃな」ヒソヒソ

透華「…シャレじゃ済まされませんわよ」ヒソヒソ

久「ショート・コント」

咲「幼児退行」

一「…不謹慎ネタでガンガン攻めてきてるね」ヒソヒソ

衣「…咲…」

久「冗談はこのくらいで…辛気臭いムードって苦手でね、つい」

久「ただいま、無事なんとかなったわよ」

咲「ご迷惑をおかけしました」

咲「ごめんなさい……それと、ありがとうございます!」

咲「それと、もう一つ発表があります」

久「入ってきていいわよ」

照「……どうも…」

咲「それでは紹介します。私の姉の」

終わり

いや本当に終わりですよ

ところで、ミスしたしさるさんも二回あったのでおわびをしようと思ったのですが







大人組見たくはないですか?

――――――――――EX大人組
咲「ココどこ…」

咏「お、あれ清澄の大将ちゃんじゃん」

えり「本当ですね。辺りを見回して…迷子でしょうか」

咏「そうみたいだねぃ。ちょっくら面倒見てやるか…名前なんていったっけ?」

えり「宮永咲です…覚えてないんですか?」

咏「あーそういえばそんなだった……おーい咲ちゃーん!」

咲「だ、誰…?」

咏「通りすがりのプロ雀士だぜぃ」

えり「宮永咲さん、でしたよね」

咲「は、はい…」

咏「警察じゃあるまいし、そんな聞き方することないっしょ…咲ちゃんさ、もしかして迷子?」

咲「はい…」

咏「ビンゴ。さて、どうしよっか」

えり「考えてなかったんですか…まあ、無難に連れの方を探すか交番に連れて行くのがいいんじゃないでしょうか」

咏「んー交番は流石にどうかなあ……じゃあ連れを探そうか」

えり「お連れの方の名前、なんていうんですか?」

咲「た、竹井…久」

咏「おし、ちょっと探してくるからここでおとなしくし…ん?」グイ

咲「行かないで…おねえちゃん…」ウルウル

咏「うっは!おねえちゃんとか参っちゃうねぃ…それじゃ、一緒に探すか」

咲「うん!名前、なんていうの?」

咏「三尋木咏。咏おねえちゃんでいーよ」

えり「針生えりです…三尋木プロ」ボソ

咏「うん…事情は気にしない方向で」ボソ

えり「見つかりませんね」

咏「助っ人でも呼ぶかねぃ…役に立つ方の」

えり「そんな言い方しなくても」

良子「ハローです三尋木プロ、針生アナ」

はやり「奇遇だね、二人とも」

咏「噂をすればなんとやら、かねぃ」

えり「丁度いいところに。お願いがあるのですが」

―――――
えり「見つかりませんね」

咏「そろそろ、かねぃ」

えり「はい、もしもし…そうですか。では集合場所に。はい」

咏「やっぱり駄目だった?」

えり「一度合流して計画を立てるそうです」

咏「オーケー。じゃあ行こうかねぃ、咲」

咲「うん」

良子「そちらも駄目でしたか」

えり「困りましたね」

はやり「やっぱりこっちのリボンの方がかわいいんじゃないかな」

咏「いやいやこの髪留めも中々」

えり「お二人は何を」

はやり、咏「「コーディネート対決」」

良子「ウィナーへの賞品は?」

はやり「勝った方が次に探す時に咲ちゃんを連れていける」

良子「ルーザーは?」

咏「昼ご飯咲の分おごり」

良子「ご褒美じゃないですか」

えり「この人たちは…はぁ……」

咲「えりおねえちゃん頭痛いの?」

えり「は…いえそういうわけでは」

咲「大丈夫?えりおねえちゃん」

えり「え、ええ、まあ…心配してくれてありがとうございます」ナデナデ

咲「うん」

久「見つけた!咲、いままでどこにいた…の……え?」

久「ありがとうございました」

咏「いいよいいよかしこまらなくっても」

はやり「こっちも時間つぶしにはなったしね」

良子「ノープロブレム」

えり「なぜ人をおもちゃのようにいじっていた方々がそんなに偉そうに」

久「何かお礼をさせて下さい」

咏「だってよ?どうしよっかー」

良子「これはもうアレですね」

はやり「アレしかないね」

えり「はぁ…」

久「?」

―――――
久「あの…申し訳ないけど、お金の持ち合わせはそんなにありませんよ」

咏「いやいや別にたかろうとかしてないって、知らんけど」

良子「この文脈でそれは言わない方が」

はやり「ただ一緒にお食事するだけだよ」

咲「皆でお食事!」

えり「あの、嫌なら断っても構いませんよ?」

久「そうですね…時間もあるし、そういうことなら遠慮なくご相伴にあずからせて頂きます」

咏「なら…」

良子「オーケー」

はやり「はやりが勝つよ」

「「「最初はグー!じゃんけんポン!」」」

咏「チッ」

良子「クッ」

はやり「やったー!」

咏「しょおおがねーなああああー」

良子「次です次」

咏「よしやるかねぃ」

はやり「え、それってはやりは…」

咏「ダメ」

良子「当然です」

久「あの…何を」

えり「咲さんで遊ぶ順番じゃないでしょうか」

良子「イエス!」

咏「……いいもんね!最初におねえちゃんって呼ばれたから悔しくも何ともないね!」

咏「はあ…袖つまみながら『行かないで…おねえちゃん…』この体験ある?無いよねぃ」

えり「この人たちは放っておいて行きましょう」

はやり「さあ行こうか咲ちゃん。危ないから手をつなごうねー」

―――――
はやり「羨ましい…いいなあ」

咏「歳が近いせいか、本物の姉妹に見えるねぃ」

良子「あーん」

咲「あー…ん!」

良子「おいしい?」

咲「おいしい!」

咲「えりおねえちゃんのそれ、おいしそう…」

えり「食べてみますか?」

咲「うん。あーん」

咏「!?」

えり「はい」

はやり「!?」

咲「おいしいね」ニコ

咏「!さ、咲これもおいしいから味見してみ」

はやり「こっちも!こっちも!」

良子「ふむ、中々いけますね」

咏「お前じゃねーよ!」

はやり「良子ちゃんに食べられたー!」

咲「おねえちゃんたちも、どうぞ」

咏「……いいか、一口だけだかんな?」

良子「……オフコース」

はやり「……最小限に、味わえる量で」

咲「えりおねえちゃんも、はい、あーん」

えり「あ、あーん///お、おいしいです///」

咏「ファラリス…」

はやり「ギロチン…」

良子「アイアンメイデン…」

えり「!?」

―――――
久「残念ですけど、そろそろ時間になるので」

えり「長く引きとめてしまって、すいません」

久「いえ、こちらも助かりました」

はやり「もうお別れかあ、残念」

良子「またね」

咲「うん、またね」

咏「久ちゃん久ちゃん」

久「はい、なんでしょう?」

咏「これ、四人分のアドレスと番号」

久「……ああ、はい分かりました、ありがとうございます」

久(伝手ゲット)

久「さ、行くわよ」

咲「はやりおねえちゃんありがと」チュッ
はやり「・・・///」

咲「良子おねえちゃんも」チュッ

良子「お返し」チュッ

咲「ふふっ」

咲「えりおねえちゃんもありがとう」チュッ

えり「またいつか会いましょう」
ナデナデ

咲「うん」

咏「・・・・・・」

咲「咏おねえちゃん、ありがとう・・・・・・」チュッ

咏「おおっ・・・・・・おお!」

咲「皆・・・ありがとうございました・・・大好きっ」

これで大人組終了です

ちゃちゃのん編どうしよっかなー

その前に質問なんかあれば

えーとシベリアとかのは解説していただいたし

大人組は咲の異変について気付いていましたが事情は聞かない
そのかわり最後に渡したアドレスか電話に片が付いたら話せよ、って意味です

阿知賀編のキャラがほとんど掴めなかったため出演させられなかったのが申し訳なく、残念です

――――――――――おまけ アイドル
いちご「ひもじい……空腹なんて考慮しとらんよ」キュー

咲「お腹空いてるの?」

いちご「そうなんじゃ…ちゃちゃのん地方のロケから食べとらんのじゃ…」

咲「お菓子だけど、あげる」

いちご「ありがとう……おいしいのう」

いちご「なんかお礼せんと…そうだ、ちゃちゃのんの新曲CDサイン入りでどうじゃろ」

咲「おねえちゃんアイドル?すごいんだー」

いちご「ちゃちゃのんの知名度もまだまだじゃったか…まあよかろ、あげるき、大事にするんよ」ナデナデ

咲「うん、おねえちゃんありがとう」

いちご「お姉ちゃんか…ええのう」

いちご「ちゃちゃの…いちごお姉ちゃんじゃ」

咲「いちごおねえちゃん」ニコッ

いちご「いちごお姉ちゃん…素敵な響きじゃ…早々に新曲の案も浮かぶ気がするのう」

久(まさか普通列車でアイドルを見るとは…)

―――――
久「降りるわよ、咲」

咲「あっうん、じゃあね、いちごおねえちゃん」フリフリ

いちご「ばいばいじゃ」フリフリ

いちご「咲か……おお、浮かんだ!帰ったら早速譜面に起こさんと!楽しみじゃのう…」

――――――――――

これにて全て終了となります。お疲れ様でした

部長のことも久おねえちゃんて呼んでるの?

>>424
最初は呼んでいたが最終的に呼ぶ必要がなくなるくらい親密になった、という感じです大体

他にも何かあればなんでも

>>431
先生、咲と病弱な怜お姉ちゃんが読みたいです・・・

>>434
難しいですね
もう少し具体的な要望があればかけるかもですけど

菫おねえちゃんのフラグが立ってたんで
妹のつもりで接していたはずが部長の言葉がチラ付き
咲への恋愛感情に気付いてしまうのが読みたいです

>>436
いやあ続編とかパラレル的なそういうの書けそうにないんで

急募!当SSの続編またはルート分岐書ける人求ム!てところです今のところ

何もないようなので寝ます。長丁場にお付き合いいただきありがとうございました
次回はシロ咲で書くかもしれません
お疲れ様でした

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