少女「何でもしますから・・・食べものを・・・」俺「おk」Part2 (155)

前作:
少女「何でもしますから・・・食べものを・・・」俺「おk」
少女「何でもしますから・・・食べものを・・・」俺「おk」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419772299/)


前作の中間エピソードです。基本的に日常ネタですが省略した部分の描写もあります。
引き続き痛い妄想にお付き合いください。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419966756

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俺「あらすじ?」

俺「端的に言うと『デブサイク俺、ワケあり美少女をエサで釣って、自宅で鬼畜監禁調教プレイ』・・・かな。」

俺「純真な少女ちゃんを俺色に染める快感?ってやつ?」

俺「あー説明がめんどいわーそんな時間ないわー」

俺「まぁ、Part1読めば俺がどんな奴かも分かるってモンですわ・・・る」

俺「(そしてこんな駄作でも掲載してくださる奇特なまとめサイトさんがあって俺氏驚愕&大感謝なう)」

エレファント速報 さま
ttp://elephant.2chblog.jp/archives/52112803.html

SS宝庫 さま
ttp://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1915680.html

森きのこ さま
ttp://morikinoko.com/archives/52005695.html

他にもあったらゴメンナサイ!!
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(ある日)

郵便局「いつもありがとうございます。ゆうパックでーす」

俺「あ、□□さん、こちらこそいつもどうも」ハンコポン

郵便局「今日の箱も大きいですねw」

俺「ちょっと買い込んじゃいましたw すいません^^;」

郵便局「いえいえ、通販をどんどんご利用頂く方が、我々は儲かりますから」アハハ

俺「そう言って頂けるとw じゃ、ありがとうございましたー」

郵便局「失礼しますー」


俺「はいもう出てきていいよー」

少女「何が届いたんですか?」

俺「少女ちゃんの服ー」

少女「わーい!」

俺「じゃあ、ちょっとこっち来て?」スタスタ

少女「はい」

俺「ここなんだけど・・・」バタン

少女「はい!」

俺「ここ、少女ちゃん用のスペースね。木製の扉になってるから、肌着とかはこの辺に入れちゃってください。」

少女「ありがとうございます!」


俺「夜中にスーハースーハーとかしないから安心して?」

少女「信用してますから大丈夫ですよ。」ニコッ

俺「おk」

俺「で、こっちが半透明の衣装ボックス。私服とかはこの辺使っちゃってください」

少女「何から何まですみません・・・本当に恩返しも出来ず・・・」

俺「色々考えたんだけど・・・」

少女「はい?」

俺「少女ちゃんとこうやって一緒に暮らせてるだけで、俺の方がすっげー癒されてるのね?
だから、普通にこうしてるだけで恩返し以上のものが成立ってワケよー」

少女「俺さんがそれでいいなら・・・私は助かりますけど・・・」


俺「じゃ、寝室に荷物入れておくから・・・開梱は自分でやってもらおうかな?
ハサミ貸してあげるから、袋から出して、タグとか切っちゃってよ。」ヨイショ

少女「はいっ!」

俺「部屋に鍵かけておくね。のぞいたりしないから、試着とかもどんどんしちゃってね。サイズが合わなければ
返品交換するから、その場合はタグ切らないでね。ほんじゃ、俺はEWI吹いて遊んでるから」スタスタ

少女「ありがとうございますっ!」

(しばらくして)

俺「~~~♪」

少女「俺さーん」

俺「♪~~~♪♪♪」

少女「俺さん?」

俺「♪♪~~~♪~~~~~♪~~~」

少女「あの・・・」ユサユサ

俺「うおっ・・・」ビクッ

俺「あ、ごめんごめん。おお、着替えたんだ!」

少女「どうですか?似合いますか?」

俺「可愛い・・・///」ポッ

少女「ありがとうございます」ニコッ

俺「こんなに可愛くなるんだったら、服もっと追加すればよかったな・・・」

少女「いえいえ、そんな」


俺「ま、この先春服に夏服に・・・まだまだチャンスはあるからその都度買おっか。」

少女「俺さん・・・キャバクラとかで思いっきり貢ぎそうなタイプですね・・・」

俺「俺もそんな気がする・・・から敢えて行かない。上司に誘われかけた事あるけど全力拒否。」キリッ

少女「じゃあ、行った事ないんですか?」

俺「俺みたいのが行っても、『はいはい、キッモ!カネだけ出して消えろ!』くらいにしか思われないと思うよ。
それを敢えて分かった上でお金を使って遊ぶほどは、俺、まだ人間出来てない。まだそこまで割り切れるステージに達してない。
お金は自分が価値を認めた事にしか使いたくない。」

少女「そんな事ないと思うんですけどねぇ。行けば楽しいと思いますけど・・・」

俺「甘い・・・甘いよ少女ちゃん・・・」

少女「?」


俺「昔ね、秋葉原の駅で時間つぶしてたらさ・・・後ろに私服の若い女の子数人が居たのね」

少女「はい」

俺「聞くつもりは無かったんだけど、会話が聞こえてきちゃってさ・・・」

少女「はぁ」

俺「どうやらメイド喫茶の店員さんらしいんだけど・・・『アイツ今日も来たよ』『ほんときしょいよねー』『仕事じゃなかったら
口もききたくないわ』『せめて体臭何とかしろよって感じ』『キャハハハハハ』的な会話を聞いちゃってサ・・・」

少女「あちゃ~」

俺「だから俺、メイド喫茶も行った事ない。本音はちょっと行ってみたいけど、俺みたいのが行くと
いかにもな感じだから絶対行かない。これ男の意地。」


少女「なるほど。じゃあ私がメイドさんのコスプレして俺さんにお茶淹れますよ。私はキモイなん
て思いませんから!俺さんが喜ぶなら・・・何でもやります!」

俺「!?!?!?」ブフッ

少女「どうですか?」ニコニコ

俺「う、嬉しいんだけど、俺の中のちっぽけなプライドが『お願いします』って言うの邪魔してる」ゲホゲホ

少女「プライドってめんどくさいんですねえ」

俺「ま、まぁ、その内お願いしちゃうかも」

少女「いつでもどうぞ」ニコッ

俺「(少女ちゃんはネコミミメイドが至高か・・・いや、ゴスロリもなかなか・・・)」モヤモヤ


(ある日)

俺「少女ちゃーん」

少女「はーい?」

俺「年末年始休暇はカニ祭りしようと思うんだけど、カニはどんなのが好き?」


少女「カニですか・・・?」

俺「少女ちゃんの好きな奴、お取り寄せするからっ!」

少女「うち・・・貧乏だったんで・・・」

俺「えっ」

少女「カニと名のつくものは、ワタリガニのお味噌汁と、カニかまと、カニクリームコロッケぐらいしか食べたことなくて・・・」

俺「えっ」

少女「なので、なんとかガニとかよく分かんないです・・・すいません」

俺「(´;ω;`)ブワッ」

少女「えっ」

俺「おk、フルセットで購入するから。好きなカニさがそ?」グスッ

少女「すいません・・・」ペコリ


(数日後)

ピ-ンポーン

俺「はーい」

クロネコ「ども、クール宅急便ですー」

俺「はーい、今オートロック開けますねー」ピッ ガチャ ウィーン

クロネコ「すぐ行きまーす」タッタッタ

俺「カニ来た!カニ! 少女ちゃんは寝室に隠れてて!いつも通り!」

少女「は、はいっ!」ダッ


ピーンポーン

ガチャ
俺「どもー」

クロネコ「あ、俺さん、いつも有難うございますっ」

俺「この時間帯は大体○○さんが持ってきてくれますよねー。いつも来るのを楽しみにしてまっすw」

クロネコ「自分じゃなくて商品が楽しみなんッスよね?w」

俺「まぁそうなんですけど、俺は心の中で幸せ配達人って呼んでますからwww はいハンコ。」ポンッ

クロネコ「それ面白いっすねwww まいどーーー!!!」

俺「どーもーーー」

俺「ふぅ。」カチャッ

俺「少女ちゃん、もーいいよー」

少女「・・・・・・」

俺「ん?どした?」


少女「俺さん、めっちゃ顔見知りじゃないですか・・・w」

俺「まぁ、ヤマトと佐川とゆうパックの配達担当者は大体知ってるね。」

少女「それ殆ど制覇してますよね?」

俺「西濃運輸だけは、滅多に来ないからわっかんねぇんだよなぁ・・・」

少女「それに・・・幸せ配達人って・・・www」クスクス

俺「いやほら、通販で頼んだ物が届くの、待ち遠しいじゃん?ワクワクじゃん?」

少女「確かに」

俺「届いた物は自分が欲しくて買った物ジャン?美味しい物でも自作パソコンのパーツでも、結局は自分を幸せにしてくれるっしょ?」

少女「!」

俺「じゃあ幸せ配達人で間違ってないじゃん?w」

少女「それ面白いですね!」


俺「まぁ、不幸が届くこともあるんだけどね・・・宅配便じゃなくて郵便だけど・・・」

少女「ま、まさか不幸の手紙ですか!?」

俺「間違ってはいない。」

少女「チェーンメールなら聞いたことありますけど・・・不幸の手紙って・・・未だにそんなのあるんですか・・・?
この手紙を10人に回さないとあなたは不幸になる~みたいな。」

俺「あ、分かりにくかったかな?えーっと」ゴソゴソ

少女「?」

俺「これなんだけど・・・『固定資産税納付通知書』っていう名前なんだけどね。」

少女「は?」


俺「これを受け取ると、なんと俺さん毎年13万円も払わなきゃいけないの。マジ鬼畜。
物件の価値とかで税額が決まってくるから、土地持ちの人はもっと高いよ。」

少女「あー・・・持ち家だと固定資産税が掛かるんですね・・・」

俺「ざっつらいと。まぁ、裏ワザ使ってちょっと安くしてるんだけどね・・・w」

少女「えっ?どんな裏ワザなんですか??」

俺「公共料金とか税金は・・・コンビニ払いが出来ます。基本的に現金だけです。カードは使えません。」

少女「はい」

俺「但し、セブンイレブンでは、nanacoで支払することが出来ます」

少女「はぁ」

俺「某クレジットカードでnanacoにチャージすると、ポイントが1%付きます。カードによっては1.75%付くものもあります」

少女「まじっすか」

俺「俺、カードでnanacoにチャージ、その後固定資産税をコンビニ払い。結果、1%割引。13万円の1%は?」

少女「1300円!」

俺「1300円あれば?」

少女「美味しい物が食べられます!」

俺「ざっつらいと!」


(カニ祭り)

俺「さて、お勉強のお時間です!」

少女「おねがいします!」

俺「まずはカニの種類をレクチャーします。」

少女「おねがいします!」

俺「これが、タラバガニです。カニの王様と言われています。」

少女「トゲトゲですね」

俺「これが、アブラガニです。」

少女「えっ・・・同じカニに見えますけど??」

俺「はっはっは、甘い!甘いな少女ちゃん!サッカリンよりも甘いわ!!」ゲハハ


少女「サッカリンって何ですか?」

俺「それは今度教えるね。で、違いなんだけど・・・ここ・・・カニの甲羅の中央を見て?何か気付かない?」

少女「・・・・・・?」

俺「正解を教えます。タラバガニは、この部分の背中のトゲが6本生えてます。アブラガニは4本です。」

少女「ああ~!ホントだ!」

俺「味はタラバガニの方が上と言われており、タラバの方が高いです。悪徳業者は
アブラガニをタラバガニと偽る事があるので注意しましょう。」

少女「覚えておきます。私が買う事は無いと思いますけど。」

俺「ちなみに、過去、初めて使うネットショップでタラバを注文した所、アブラガニが送られて来た事がありました。
温厚な俺さんもブチキレて業者に電凸した事があります。なお、交渉の結果、半額返金させました」ニヤリ

少女「俺さんの食に賭ける情熱は・・・ぱねぇですね」


俺「では食べくらベてみましょう~! 殻むいてあげるね」

少女「ありがとうございます!」

俺「あ、自分でむいた方がいい?『あんたみたいなデブヲタの触った食べ物口に入れるなんて御免よ!』とか無い?」アセアセ

少女「いや、いつも言ってますけどそんな事思うような娘じゃないですから」

俺「少女ちゃんマジ天使・・・一番おいしいとこむいてあげるね」グスン

少女「もはや儀式になってますね、自虐。」


俺「さぁどうぞ、こちらがタラバガニの足、こちらがアブラガニの足でーす」

少女「じゃあ、アブラガニから・・・いっただっきまーす!」カプリ

少女「んーーー!おいっしーーーーー!」

俺「(ニッコリ)」

少女「次はタラバガニ・・・」ガブリ」

少女「んー!こっちもおいしー!」ニコニコ

俺「初体験の味はどうよ~?どうなのよ~?」ニヤニヤ

少女「んー、正直、私にはアブラガニの方が美味しかったです。」

俺「えっ」

少女「貧乏舌なんですかねえ・・・まぁ、私らしいというか・・・。」

俺「ううん。少女ちゃんの舌は正確だよ?俺さんビックリだよ?」

少女「えっ」


俺「ごめん、嘘ついた。最初に食べたのがタラバで、次がアブラ。ちょっとイジワルしようと思っ
て逆に出してみたんだけど・・・すごいね・・・いきなり食べ分けちゃうんだ・・・」

少女「俺さん性格悪いです!」プンプン

俺「ちなみに俺さん、もう一つ嘘ついてました」

少女「今度はなんですか?」

俺「先ほど、タラバガニをカニの王様と申し上げましたが・・・」

少女「はぁ」

俺「正確にはタラバガニとアブラガニはヤドカリの仲間でした。」

少女「えっ」

俺「カニの王様のはずなのに別種族とか面白くね?www」

少女「美味しければなんでもいいですっ!」

俺「おk、もう2本くらい脚をむくね。タラバもアブラも一つしかない命を頂いてるので、美味しく味わってあげましょう~」

少女「はーい!」


俺「タラバとアブラはいったん下げて・・・次は『ズワイガニ』です!」

少女「わー」

俺「基本的にはズワイガニなんだけど、取れた産地によって『松葉ガニ』とか『越前ガニ』とかブランドが
色々あるので困惑しないようにー。あと、カニクリームコロッケによく入ってるのは『紅ズワイガニ』という別物でーす。
ズワイは浅めの海、紅ズワイは深い海に棲んでまーす」

少女「はーい」

俺「じゃ、脚の肉からどうぞ」ペキッ・・・チョキチョキ・・・スルッ

少女「いただきまーす」パクッ

少女「んーーー!あまーーーーい!!」

俺「(ニコニコ)」

少女「タラバよりも繊細な味で甘いですね。すごーい」ニコニコ

俺「少女ちゃんには食べさせ甲斐があるなぁ」ニコニコ

少女「美味しいです」パクパク


俺「ついでだからカニのばらし方おしえまーす」

少女「はーい」

俺「俺のやりかたは・・・まず脚を全部外します・・・」ペキペキ

俺「次はここ。カニのふんどしを外します」パキッ

少女「ふんどしwww」

俺「甲羅と本体の間に指を入れて・・・甲羅をはがしまーす」ペキペキペキッ

少女「おお~」

俺「ここが『ガニ』の部分で、魚のエラみたいなもんです。ここの白い三角形の部分は胃です。
この辺は食べられないんで取っちゃいましょう」ポイポイポイッ

少女「なるほど」


俺「そして、この灰色のような、黄土色のような部分がカニみそです。カニの生息地域や食べている物などの要素によって色が変わります。」

少女「ちょっとグロいですねー」

俺「法律により、カニみそは年齢が28歳を超えた人じゃないと食べられません。若い人が食べると病気になる危険な部分です。
注意してお箸やスプーンでよけて、このお皿に移しましょう」スッ トントントンッ

少女「そうなんですねー」

俺「・・・・・・」

少女「・・・・・・」ニコッ

俺「うわぁぁぁぁん!!」

少女「えっ」

俺「ごめんよ少女ちゃん・・・俺さんまたウソつきましたーーー!」

少女「でしょうねえ」

俺「もう少女ちゃんの純真な瞳で見つめられたら耐えられないよ・・・はい・・・お箸でつまんで味見してごらん」


少女「俺さん・・・ひょっとして・・・」

俺「ん?」

少女「かにみそメッチャ好きなんじゃぁ・・・?」

俺「・・・わかる?(´・ω・`)」

少女「あの、別に遠慮してるわけじゃないんですけど、見た目がグロいんで、カニみそはいらないです」

俺「えっほんと? 。゚+.(*`・∀・´*)゚+.゚」パァァァ

少女「はい!」ニコニコ

俺「じゃ、じゃあ、その分脚の肉いっぱい食べてね!俺さん頑張っちゃうから!」ペキッ・・・チョキチョキ・・・スルッ ペキッ チョキチョキ

少女「はい!」


俺「最後は・・・これです」

少女「毛むくじゃらなんて、たぶんこれが『毛ガニ』ってやつですね?」

俺「ご名答~!バラし方は基本的に同じです。脚は食べるところが少ないですが、
ほじくって食べるのもオツなものです。」ペキペキ チョキチョキ

少女「美味しそうですね」

俺「解体すると、まっずいまっずいカニみそが出てくるので、別のお皿に
大事に取り分けます。これは最優先事項です。」

少女「もうつっこみませんよ?」


俺「そして美味しい美味しい肩の肉をとって・・・こうやってハサミを入れて・・・」チョキチョキ

少女「(フムフム)」

俺「はい、下処理したので、ちょっとお行儀悪いですが手を使って肩の肉を押し出してみてください」

少女「こうですか・・・?」ズルッ

俺「そこをすかさずかぶりつく!」

少女「はむっ!」

少女「ん~おいし~~~!」モグモグ

俺「殻が少し付いちゃうから気を付けて食べてね」

少女「はーい!」


俺「さて・・・」

少女「はい」

俺「これでメジャーどこなカニはだいたい制覇したけど、どうだった?」

少女「私はズワイが一番でしたね。甘くて繊細で・・・タラバもアブラも毛ガニもそれぞれ美味しいですけど、
ズワイが味とボリュームのバランスが一番良いですね!」

俺「それは良かった」ニコニコ

少女「本当に有難うございます。居候なのにすいません」

俺「少女ちゃんの笑顔を見るためなら、カニみそ以外なら何でもあげます!」キリッ

少女「わーい♪」

俺「まだ食べられる?」

少女「どんとこーいです」

俺「じゃあ、次は残しておいたタラバとアブラで『焼きガニ』しまーす。
脚をかるく火であぶるだけで・・・そこには・・・新たなカニの世界が」ニヤリ

少女「わーいわーい」

(食後)

少女「もう・・・食べられない・・・です」ゲップ

俺「俺も・・・」ゲップ

少女「大量の殻が出ましたね・・・」

俺「仕方ないさ・・・」

少女「蟹の殻って可燃ごみでいいんですか?」ガサッ

俺「スタァァァーーーップ!!」

少女「えっ」

俺「今、年末じゃん? ごみの収集が年明けまでしばらく来ないのよ」

少女「はぁ」


俺「うちのマンション、24時間ゴミ出しできるけど・・・さすがに年末年始の生ごみ系は遠慮しないと、ごみ置き場が臭くなっちゃうよ」

少女「なるほど」

俺「というわけで、カニの殻はスーパーの袋か何かに入れて、冷凍庫で冷凍しまーす」

少女「まじですか」

俺「そうすると臭わないから、新年一発目のゴミ捨てでこのまま捨てればみんなハッピーでーす」

少女「おおー」

俺「たまにうっかり袋を開封して、ガッカリするので注意!」

少女「はいっ!」

(ある日の夕方)

課長「俺君俺君」

俺「はい!」

課長「ごめん、急に仕事入った。納期が明日の15時。ボリュームもかなりある。だから残ぎょ・・・」

俺「・・・・・・あーすいません、今ちょっとワケアリでして」ボソッ

課長「えっ」

俺「うち・・・お腹大きいのが居まして・・・」ボソボソ

課長「えっ・・・そうだったの?知らなかったよ。」ボソボソ

俺「なもんで、早めに帰ってやりたいんです・・・家事とかもありますし・・・すいませんが・・・」ボソボソ

課長「・・・そうか、じゃあ同僚2君にでも頼むよ。」ボソボソ

俺「あざっす」ボソッ


キーンコーンカーンコーン
俺「すいません、お先です!」ササッ

課長「はいお疲れー」


課長「ねぇねぇ」チョイチョイ

同僚3「はい?」

課長「俺君、結婚してたんだね。指輪しない派なの?奥さん妊娠してたんだね。知らなかったよ。」

同僚3「あぁ・・・いえ、結婚はしてないですよ、俺さん。」

課長「じゃあわけあり?内縁の妻?」

同僚3「あー・・・うーん・・・言っていいのかなぁ・・・」

課長「そんなに複雑な事情なの?」

同僚3「あのですね・・・・・・」

課長「うん」


同僚3「『お腹が大きいのが居る』ってのは間違いじゃないんですが・・・」

課長「うん」

同僚3「あれ、俺さん自身の事ですよ。太っててウエスト1m超えてますから」

課長「は!? じゃあ、『家事しないと』って?」

同僚3「なんか、今日はステーキ肉のお取り寄せが届くらしくて、それを焼いて食べる事・・・ではないかと
思われます。『今宵は肉じゃ肉じゃ』ってずっとつぶやいてました。」

課長「ふざけんなぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

同僚3「俺さんのお取り寄せが届く日は、諦めた方がいいと思いますよ。歴代の課長は1回はやられてますし・・・。
ちなみに前の課長・・・現オホーツク支部の係長は、3回騙されてましたけど・・・」

課長「ちょっとひどくない?配慮してあげたのに」

同僚3「ちなみに、前の課長はブチ切れて俺さんを超攻めたてましたが・・・」

課長「・・・一応聞こうか。どうなったの?」


同僚3「俺さんの主張は、『ウソは一つもついてないです』の一点張りで、何を言ってもそれが回答でした」

課長「・・・もうヤダこんな職場」グスン

同僚3「ちなみに、先ほど課長のおっしゃった『配慮してやった』という点ですが・・・」

課長「うん」

同僚3「『それ以前に仕事の振り方の配慮が出来ていないですよね。夕方に翌日納期の案件振られたの何回目でしたっけ?
こちらも都合があるので、そう毎回はムリですよ。そういう調整をするのが管理職の仕事ではないのでしょうか?
課長は我々課員をムチャな納期から守って下さらないんですか?部下が可愛くないんですか?』

・・・というセリフで、その場で聞いていた平社員も頷き始め、課長vs平社員一同の構図になりかけて、
慌てて撤収しました。下手をすると労働組合をその場で結成しそうな勢いで俺さんが演説し始めて・・・」


課長「あー頭痛いからもう考えるのやめた。・・・・・・おーい、同僚2くーん。ちょっとお仕事」チョイチョイ

同僚2「あ、はい」

同僚3「・・・失礼します」スッ

(翌日)

同僚3「俺さん・・・俺さん・・・」チョイチョイ

俺「あ、同僚3さん。おつかれさまです」スタスタ

同僚3「おつかれさまです。で・・・」

俺「はい?」

同僚3「お肉、美味しかったですか?」

俺「えっ・・・そりゃもう! 神戸牛の一つ、三田牛のA5ランク肉をお取り寄せして塩胡椒して強火で表面をサッと焼いて・・・
その後アルミホイルでくるんで『テキサスチート』やって、肉汁が落ち着いた所でミディアムレアの状態で・・・もうこの世の天国っすね」

同僚3「じ、人生楽しんでますね」

俺「食べるくらいしか楽しみないんで」キリッ

同僚3「で・・・」

俺「はい」


同僚3「ごめんなさい、昨日帰った理由・・・課長に聞かれたのでバラしちゃいました」

俺「まぁ聞かれたら仕方ないですよね。別に大丈夫っす」

同僚3「本当にごめんなさいね。」

俺「いえいえ、同僚3さん美人さんなんでっ!美人のいう事は正義っ!なんちゃってwww」

同僚3「そうやって、いっつもからかうんですから」クスクス

俺「あはは~」

同僚3「というわけで、しばらく大人しくした方がいいのと、同じ手はあの課長にはもう通用しませんから。」

俺「ありがとうございます。美人さんに優しくして頂けて光栄です。何でそんなに親切なんですか?俺もう感激っす!」

同僚3「え?・・・どうしてでしょうね?」フフ

俺「じゃあ仕事に戻ります。これで成果出さないと責められちゃいますから」アハハ

同僚3「フフ・・・まぁ頑張ってください(この鈍感男!!)」イラッ


(別の日、探偵事務所にて)

俺「こんにちはー」

受付「いらっしゃいませ」

俺「予約してた『俺』ですけど」

受付「『俺』様ですね。ご案内いたします」

俺「ありがとうございまーす」


探偵「はじめまして。『探偵』と申します」

俺「お世話になります。『俺』と申します。よろしくお願いします。」


探偵「本日は素行調査のご依頼という事で宜しかったでしょうか?」

俺「はい、私の『恩人』にあたる女性が居るのですが、その方に最近彼氏が出来、結婚話が出ているそうなのです」

探偵「なるほど」

俺「ただ、どうも相手がいい噂を聞かない人間で・・・もし噂通りなら恩人の女性が不幸になると思い、
勝手ながら俺が動いて、こうしてご相談に上がりました」

探偵「いえいえ、よくある話ですし、そのために我々が存在していますから。」

俺「恋は盲目とはよく言った物で、周囲が忠告しても聞く耳ナシでして、客観的な証拠があればいいなと。
もしくは、噂はあくまで噂で、人物問題なしという事であれば、我々も安心して祝福できるわけです」

探偵「かしこまりました。お役にたてるよう全力で当たらせて頂きます。料金のご説明をさせて頂いて宜しいでしょうか?
まず、日当が・・・調査費が・・・経費が・・・」

俺「・・・なるほど、わかりました」


探偵「とりあえず50万円を着手金として頂き、過不足が生じたら都度精算になりますが宜しいでしょうか?」

俺「あ、そうですか。じゃあ、とりあえず・・・」ゴソゴソ

俺「とりあえず100万持ってきたので、お預けします。」

探偵「・・・ありがとうございます」

俺「慎重に事を進めたいので、ご担当にエース級の方を割り当てて頂けると助かります。その分、指名料等上乗せして頂いて構いません。
必要なら追加で出せますので、まずはこれで出来る範囲でやっていただければと思います。」

探偵「かしこまりました!・・・よほど大切な方なんでしょうね、その恩人の方は」

俺「はい、その方のお陰で今、充実した人生を頂いてますので・・・。あ、その方に対して別に恋愛感情とかは無いので、
恋路を邪魔したいとかいう話ではないです。純粋に、結婚相手としてふさわしいか、裏で手をまわして確認したいだけです。」

探偵「なるほど。その点もかしこまりました。」


(後日)
俺「こんにちはー」

受付「『俺』様で宜しかったでしょうか?」

俺「はい。一度来社しただけで覚えてくださるなんて流石ですね」

受付「いえいえ。これが仕事ですから。それではご案内いたします」


探偵「あぁ俺さん、先ほどは電話でどうも」

俺「いえいえ、調査に進展があったそうで・・・」

探偵「こちら、調査報告書になります。調査にあたった探偵2も同席させて宜しいでしょうか?」

俺「ぜひお願いします」


探偵2「・・・端的に申し上げると、噂通り、いや、それ以上の人間です。あれはヤバいですよ。」

俺「噂通りでしたか・・・」

探偵2「まず、本名が『朴光男』という在日三世で、生活保護を受給しています。教えて頂いた日本名は、彼が使っている通名の一つです。」

俺「今、ネットで話題になってるアレですか・・・」

探偵2「アレですね。組には所属していないのですが、暴力団組織が行っているシノギの下請け的な仕事もやっているようです」

俺「要はチンピラですね」

探偵2「過去には詐欺まがいの事件や、暴行やら恐喝やらで逮捕歴もありますが、いずれも起訴猶予で終わっています。」

俺「あちゃー・・・」

探偵2「私ね、元刑事なんで犯罪者は色々見てきましたが、あれは一番タチの悪いパターンですよ。」

俺「とおっしゃいますと?」


探偵2「例えば、暴行事件や傷害事件で刑務所送りになる人間は、
自分の感情をコントロールできない直情型の人間が多いんです。
このタイプは自制がきかないから、ちょっと追い込めば自滅します。」

俺「ですが・・・彼の場合・・・」

探偵2「そうなんです。彼の場合は最悪でも起訴猶予で終わるレベルで、ギリギリのラインで上手くやってしまうんです。
自分がクズだと認識した上で、開き直って確信犯的に犯罪ギリギリの行為をしたり、他人を冷酷に利用したりする・・・
一番タチの悪いタイプですね。要は『良心』ってものが完全に欠落しているクズ・・・だが、バカではない。」

俺「困ったなぁ・・・あそうだ。生活保護って暴力団関係者には出ませんよね。その線で役所にタレこんで、
不正受給を告発して追い込んだらどうですかね?」


探偵2「んー・・・。あまり効果が無いとおもいますよ。収入が減った分はあなたの恩人さんから搾取するなり、
別のグレーな行為をするなりして補填するだけの事と思います。失うものが無いんですよ、ああいう人間は。
ある意味無敵ですね。不正受給も、お金を返したら刑務所までは行かないでしょう。逮捕はされても
起訴猶予か執行猶予ですね、個人的なカンでは。中途半端な攻撃は猛獣を起こして本気にさせるだけです。」

俺「やはり、『ババ抜き』してターゲットを変えてもらうしかないですかね・・・」

探偵2「それが一番早いですね。調査結果を見せて恩人さんの目が覚めればいいんですが・・・」

探偵「私は不倫調査とか男女の仲に関する案件を多く手掛けているんですが・・・、
本当に恋は盲目ってやつでして、よほどの事が無い限りは目が覚めませんね・・・。」

俺「そんな気はしてました」


探偵「例えば不倫している女性で、相手の奥さんから慰謝料請求の裁判おこされ何百万と取られても、
まだ目が覚めない人が居るくらいです。不倫相手との愛を成就するための困難の一つよ!
・・・なんて、自分を悲劇のヒロインにして心を守ってしまうんですな。

この場合、不倫相手に捨てられてようやく目が覚めるか、更に燃えあがってストーカーになるかです。」


俺「他人から見るととんだお花畑ですけどねぇ。本人にとってはそれが全てなんでしょうね。」

探偵「そういう事です」

俺「『別れさせ屋』みたいなものは使えませんか? 要は、もっといい男をあてがえば恩人の女性の目も覚めるのではないかと思うのですが。」

探偵2「あぁ・・・それはですね・・・」

探偵「私からご説明しますと、今回のケースではリスクが高すぎるので、その手段はウチでは斡旋できません。
あなたの恩人の女性に近づいた男は、何をされてしまうか分からないので。」

俺「まじっすか」


探偵「相手が直情型の人間であれば、ボクサー崩れのような男をけしかけてケンカに持ち込み、致命傷を負わないようにしつつ、
敢えてボコボコにされて傷害罪を成立させ、数年間刑務所送り・・・なんて事も出来るんですが・・・」

探偵2「彼の場合はそこまではやらないでしょうね。とはいえ、別れさせ屋の男性にこなせる相手でもない。」

俺「・・・ボクサー崩れの別れさせ屋いませんか?www」

探偵「ははは・・・居たら我々も重宝するんですがね」

俺「うーむ・・・」

探偵2「あとは、彼が韓国籍であることを利用して、何らかの方法で強制送還に持ち込めるといいのですが・・・現状では、厳しいですね」


俺「『現状』では厳しいですが、『2015年7月8日以降』であればどうですか・・・?」ニヤリ


探偵2「おっ」

探偵「?」

探偵2「『X-Day』の事、ご存知でしたか」

俺「どちらかというと『Z-Day』ですかね?」

探偵2「ははは、おっしゃる通りです」

俺「勝算はありそうですか?」

探偵2「元刑事として申し上げますが、関係各所との調整等でご協力する事は可能です。」

俺「・・・・・・」スッ

探偵2「・・・これは?」

俺「依頼の継続料です。探偵2さんの指名料も込みです。」


探偵2「・・・よほど大切な恩人なんですね。自分や親族の事でもないのにここまでされる方は珍しいですよ。」

俺「大恩がありますから。ただ、私が動いている事はくれぐれも内密にお願いします。
本人に気付かれず、何事も無かったかのようにスマートに解決するのが私の希望です。」

探偵2「・・・重々承知致しました。」

俺「また時期が近付いてきたらご相談に上がります。素行調査はいったん終了とし、
折りを見て調整を始めて頂けると助かります。」

探偵2「かしこまりました」


俺「あ、そうだ。この先数か月待っている間に、結婚とかされると困るんですが・・・」

探偵2「・・・それは無いでしょう。あくまで女の間を渡り歩いて貢がせ搾取するタイプの男です。結婚話は単なる駆け引き・・・エサですよ。」

俺「安心しました。」

探偵2「進展がありましたらご連絡致します。俺さんも何かありましたらお気軽にご連絡ください」

俺「頼りにしてます。では」スック


(ある日)

少女「ふと思ったんですけど」

俺「はいよ」

少女「なんで俺さんって人間不信気味なんですか?」

俺「あー・・・」

少女「過去に何かあったんですか?俺さんの話も聞きたいなーって」

俺「んーーー・・・」

少女「・・・・・・」

俺「まず、俺の心が汚い。正直、他人に対してロクな事考えてない。」

少女「はぁ」

俺「なので、他人も俺に対して似たような事を本心では思ってんだろうなーとか思っちゃう」

少女「あぁ、俺さんの自虐は、俺さんが他人に対して考えうる事を自分に当てはめてたんですね。
だとしたら結構えげつない事考えてますねーwww」アハハ


俺「まぁね。手放しで信用できる、心を許せる人間なんて少女ちゃんくらいしか居ないモン。あ、家の親はもう死んじゃったし。」

少女「ありがとうございます・・・なのかな?? わかんないですけど」

俺「まぁ、自分の心の汚さに飲み込まれて、自分が勝手に負けたって感じかな。俺デブサイクだから
容姿にはまったく自信ないし。少女ちゃん以外の人と一緒に居るの、正直苦痛。」

少女「まぁ確かに、お話ししてみないと俺さんの魅力は分からないですね」

俺「嬉しい事をおっしゃるw それに・・・」

少女「それに・・・?」

俺「人間の思ってる純粋な本心とかが一番ストレートに出るのが、ネットの匿名掲示板だと思うのよ。2ちゃんとかさ。」

少女「あんまり見たことないですが、そうなんですね?」

俺「いろんな奴が居て面白いんだけどさぁ、見てると知らなきゃいい事も知っちゃうね。」

少女「例えば?」


俺「まず居るのは、『とにかく人を見下したい・誰かの順位が下がれば自分の順位が上がる・
自分より下を作れば安心できる』って思考のやつ」

少女「・・・それ虚しくないですか? ネット上でそんなことしても意味ないでしょうに。」

俺「じゃあ身近なたとえ。小中学校時代、女子の間でなかった? 可愛い子が積極的に連れてる友達・・・
というか取り巻きは、だいたいその子よりも可愛くないの。でも口では自分より可愛いって言っちゃう。」

少女「すいません、私もあんまり友達居なかったんです。」

俺「それはね、少女ちゃんが美少女で可愛いから、自分より格下扱いの友達にされなかっただけだよ。たぶん。」

少女「えっ・・・怖いなぁ・・・まじか・・・そうだったのか・・・」

俺「まっ、現実社会では出しにくいし見えにくくなってるけど、人が本質的に持つ、偽らざる本音だよね。
派遣社員を無駄に見下して安心してる正社員とかも居るからね。長い人生で見たら、なーんの意味もない行為だけどさ。
まぁ、こういうのがネットでは簡単に出るね。現実社会よりもブレーキが無いから。」


少女「ネットって怖いんですね」

俺「うん、少女ちゃんは2ちゃんなんか見ない方がいいよ。それに、『貧ずれば鈍ずる』って言うじゃん?
あれ、金銭的なものだけじゃなくて、精神的な物にも通じると思うんだよね。」

少女「なるほど・・・それは分かる気がします。俺さんに出会う前の私と、今の私では考え方や見える範囲の広さが全然違うと思います。」

俺「でしょでしょ? 俺なんかは小銭は持ってるから、それなりに人生まったり生きられてるんだけど、
世の中そんな人ばかりじゃないからさ。心に余裕のある人が少ない。」

少女「といいますと?」

俺「例えば仕事なんかでも、自分の適職が見つけられなくて、誰でもできる・代わりが幾らでも居る仕事を
安くで嫌々やってる人が多い。圧倒的にね。残念ながら、そうじゃなきゃ世の中回らない仕組みになってる。」

少女「よくわかります」

俺「俺に言わせれば、俺だって代わりのきく人材の一人だけど、それだったら俺にしか出せない特色を何かしら出せば、
まぁどこかで重宝してくれたり認めてくれる人は居ると思ってるワケですよ。認めてくれる人見つけるまでが大変かもだけどw」

少女「はぁ・・・」


俺「コンビニのバイトだって、嫌々やるのと、笑顔で接客するのでは全然違うんだし、疲れてても笑顔出せるバイトの人は
それだけで偉いし価値があるから、誰かしら認めてくれる人は居ると思うわけよ。そういう工夫を投げちゃってる・
どうせ自分なんてって捨てちゃってる人の多い事多い事。そういうのは自ら不幸になってるね。俺に言わせれば。」

少女「深いなぁ・・・」

俺「でもね、難しい所は、経営者の欲しい人材って、『最低の賃金で最高のパフォーマンスを出す人間』なのね?意味わかる?」

少女「要は安くで死ぬほど働けって事ですね」

俺「そう。働く人の頑張りを悪用する経営者も多いわけ。だから、そんな会社にやる気のある人や
自分なりに頑張ろうとする人が入ると、体を壊すまでていよく利用されちゃう。だから、やられっぱなしはダメ。
都合よく使われだしたらとっとと辞めて、自分が居なくなることを報復に出来るとグッド。」

少女「ほうほう」


俺「逆に言うと、まずは、自分が居なくなることが報復になるくらい働かないとだめ。
それで都合よく使ってくる相手かどうか見極めて、ダメなら経験積んだらさっさと辞める。
これが俺の考えるベストバランス。それなりに大事にしてくれるなら尽くす価値のある相手。俺はそう思う。」

少女「・・・まぁ、みんながみんなは出来なさそうですね」

俺「余裕が無い人の話をしたけど、逆に、人生充実してる人や心に余裕のある人もいっぱいいるけど、
そういう人はリア充気味だから、ちょっと方向性が違っちゃって、それはそれで俺とは話が合わない。」

少女「なるほど」

俺「よくF1レースに例えられるんだけど、F1でトップスピードで走ってる人と、乗用車のトップスピードで走ってる人・・・
この人たちが同じレース場で走っても、ほんの一瞬しか同じ場所に居ないのよ。人にはそれぞれ生きるペースがあるわけ。」

少女「ふむふむ」

俺「で、俺と同じペースの人間なんて見た事ないから、人と考え方が合わない事が多くて、理解するのがお互いにメンドくさい。
だから俺は友達要らない。俺のペースで生きるのが俺にとって価値のある事。おk?」


少女「おkです!よく分かりました。 ちなみに、他にはどんな人が居るんですか?」

俺「そうだなぁ・・・後は、純粋に『井の中の蛙』かな。自分のちっぽけな世界しか知らなくて、
それよりも大きな世界や大きな目線の話が出ちゃうと、正しく解釈出来なくて変な反応になる。
これもさっきのF1か乗用車かって話と近いね」

少女「ふむふむ」

俺「単に『井の中の蛙』のままで終わってしまう人は、やっぱりそれなりの一生よ。
逆に、『井の中の蛙、大海を知る』所まで行ける人は伸びる余地がある。そこで成長する。新たな事を学ぶから。」

少女「へぇ~」

俺「あと・・・人間ね、自分より下の・・・自分より器や能力の小さい人間の事は手に取るように分かるのよ。」

少女「そういえばクズ男の思考みっちり分析してましたね」


俺「でも、自分より器や能力の大きい人の事は、なかなか正しく解釈できないね。俺も日々勉強って感じ。
俺より上なんていっぱいいる。上見ても下見てもいっぱいいるから、自分より少し上を見るのがオススメ。
そうするとジワジワ自分も上がる。」

少女「そういうもんですか?」


俺「だから、年功序列で出世した人が自分よりも優秀な部下を持たされると、使い方や評価を誤って大事故になる事があるw」

少女「あー・・・俺さんの上司さんは大変そうですねぇ・・・w」

俺「昔、どうしてもソリの合わない課長が居てさ・・・仕事はちゃんとしつつ、俺的に納得の行かない事は
適当に受け流したり、たまにおちょくって遊んでたのよwww」

少女「悪魔ですね」

俺「でね、権力持ってる人は、『オレ様は権力があるんだぞ』って示したくなっちゃうのね。
評価ガツンと下げられて、給料にも影響した。」

少女「普通の人なら、そこですいませんでしたって謝る所ですね」


俺「俺は逆。(心の)風邪引いたっつって、仕事全部投げ出して2週間休んだったw」

少女「えっ」

俺「その間に転職エージェント何社かに顔を出して、俺の能力で行けそうな会社見繕ったら、別に腐るほどあったの。
給料も殆どのケースで上がるし、だから、クビになってもいいし、会社が必要と思ってくれたらそれはそれでイイヤ・・・って、
状況に身を任せてみた。貯金あるから2~3年無職とか、フリーのエンジニアになっても食って行けるし。」

少女「はぁ」

俺「結果、会社は俺の方選んでくれたのね。じゃあ頑張りますわ・・・って事で、
(心の)風邪が治ったから、出社して引き続き仕事頑張ったの。」

少女「・・・課長さんはどうなったんですか?」

俺「係長に格下げ。指導力不足。統率能力不足。南無。」

少女「あちゃー」

俺「でもってオホーツク支社に転勤w UターンIターン以外で行きたがる人が居ないから、
会社的にはある意味理由が出来て待ってました状態wwwww」

少女「・・・・・・係長さんがかわいそうになってきました」


俺「嫌なら転職するなり、俺じゃなくてかちょ・・・係長側を会社に選んでもらえるだけの仕事すりゃいいんだもん。
コツコツ努力して自分の武器を磨かないから、他人に生殺与奪を握られる。それだけの事。
平和に見えるけど、なんだかんだ言って日本もかなりの競争社会よ。」

少女「・・・・・・なるほど」

俺「とはいえ、ここに早い段階で気付けるかは運不運が大きい。」

少女「親・・・ですか?」

俺「そう。親が、子供が小さい内にこういう事を教えるかどうかで、結果は大幅に変わってくるのね。
中には自分で気付いちゃう子もいるけど、確率は年末ジャンボの一等よりも低いと思うね。宝くじみたいなもんよ。」

少女「私は・・・俺さんから今日初めて聞きました」

俺「でしょ?w 俺は子供のころから親に叩き込まれたから、同級生が遊んでるの尻目に努力した。
小中学校にも居たでしょ?『勉強きら~い』ってフラフラして、出来る限り努力を避けて。
で、成長して人生の選択の岐路に立たされたら、消去法で多少マシな選択肢を選んでいくだけの人。
そんな人、他人にいいように使われるの当たり前じゃない。」

少女「・・・ちなみに、そういう人たちの事はどう思ってるんですか?軽蔑してますか?」


俺「別に。みんながみんな努力したら、俺も今の何倍も努力しなきゃいけなくなるからさ。
勝手に落ちてくれる人が多ければ多いほど、俺は少ない努力で済むから・・・感謝?かなぁ。」

少女「感謝・・・ですか」

俺「それに、兵隊が居なければ組織は動かないから、みんながみんな自由なのもムリだと思うし。
だから、2ちゃんとか、ネット掲示板で俺がカキコしたレスに噛み付かれても、別になーんとも思わない。
そういう書き込みをする気持ちや背景が容易に想像できるから、軽蔑する気にも叩き返す気にもなれない。
『お、おう。お前も大変だな。頑張れよ』って感じ。」

少女「貧ずれば鈍ずる・・・金銭的だけじゃなくて、精神的にも・・・そういう事ですか・・・」

俺「っちゅーわけで、真っ白なキャンバスが広がってて、かつ素直な少女ちゃんとは
こうやって暮らせるけど、そうじゃない人とは、もはや話が合わない。あんだーすたん?」

少女「はいっ!」


俺「・・・まぁ、俺は俺の価値観を勝手にしゃべってるだけだからさ」

少女「はい?」

俺「少女ちゃんなりに、同意できることとか同意できない事とか、自分の意見も考えてみてよ。
100%絶対正しい大人なんて居ないから。あ、少女ちゃんも一応ハタチの大人の女性だっけwごめんごめんwww」

少女「そうですよ? 設定忘れたら俺さん捕まりますよ~?」ニヤニヤ

俺・少女「あはははははははははっ」ケラケラ

俺「ちなみに、少女ちゃんの小中学校時代の学校の先生・・・どうだった?」

少女「え?どうって・・・別に普通でしたけど・・・。まぁ少なくとも、複雑な家庭環境の助けにはなりませんでしたね。」

俺「俺は小1にして衝撃的な体験したよ・・・」

少女「一体何が!?」

俺「小1で算数のテストがあったのね。で、3-7って問題が出たのね?」

少女「はぁ」


俺「当然、-4って答えるじゃん」

少女「あれ?小学生でマイナスって習いますっけ??」

俺「マイナスの概念は中学に入ってからだけど、知ってたらそれはそれでいいじゃん?」

少女「確かに。」

俺「で、教師の採点は×。点引かれた」

少女「えっ」

俺「小学生にこの問題は解けないから、正解は『とけない』って書くんだってさ」

少女「そんな問題、出す方がおかしくないですか?」

俺「そう思う。そう思って小1のガキなりに抗議したけど、授業中に説明したから話を聞いてない君が悪いで押し切られた。俺氏ブチキレ」

少女「ちょっと柔軟性のない先生ですね」


俺「まぁ、こういう教育を『まぁそういうものなのかな』って素直に受け入れる人間が、大人になって
そのまま奴隷になるわけ。公立の小中学校なんて、俺に言わせれば奴隷養成機関よ。日本を率いるリーダーは
国立や私立の小中を出て、有名高校・有名大学に進学した人間が担うから、お前らはコマになれ
歯車になれって話じゃないかと、公立の小中学校を卒業した俺個人は思ってる。地域差とかも大いにあるだろうけどね。」

少女「そんな事考えたこともありませんでした」

俺「俺は逆に、小1にして、大人の言う事なんて100%正しいわけではないと知ったから、逆の意味で感謝してるけどw」

少女「なるほど・・・テストはその一回だけだったんですか?」

俺「ううん。懲りずにその後も1~2回、マイナスの答えになる計算出たけど、俺は堂々とマイナスなんとかで回答してやったね。
相変わらず×付けられたけど。『クソ教師め、お前の方が×じゃー』って思ってたwww」

少女「小1でそれが出来るのは・・・ぱねぇですね」


俺「その点は親に感謝かな。ブチ切れて帰宅して親に文句言ったら、テストに黙って○付けて
100点にしてくれたから、あ、それでいいや・・・あの教師に認めてもらわなくても別にいいや・・・
価値のない人間に認められてもそれは何の価値もない・・・って子供心に気付いた。」

少女「ご両親に恵まれたようでなによりです」

俺「どうも」

少女「ただ・・・」

俺「はい」

少女「俺さんの上司になる方は、やっぱりかわいそうですね」

俺「俺もそう思う」

少女・俺「あははははははははははははは」


(一方その頃)

課長「胃が痛い・・・」ゲッソリ

課長「おかーさん? 胃薬持ってきてー」

課長妻「はーい」


(ある日)

俺「そういえば少女ちゃん、日中ヒマでしょ?」

少女「言いつけどおり、部屋の電気は落としてますからね・・・テレビとかパソコンはイヤホン使って見てますけど。
あと、掃除機とかも平日の日中はかけられませんね」

俺「なにかしたい事ない? 映画とかアニメとか、課金して見てもらって構わないよ?」

少女「もし俺さんが良ければ・・・」

俺「ん?」

少女「私も『いーうぃ』やってみたいです」

俺「おぉ・・・マジか・・・」

少女「間接チューでいいですから~」ニヤニヤ

俺「ブフッ・・・」ゲホゲホ

少女「だめですか?」


俺「間接チューはダメだけど、EWIは使ってもらっていいよ」

少女「えっ・・・俺さんなら喜んじゃうと思ったんですけど・・・私と間接チューするの嫌なんですか・・・?」シュン

俺「のーのーのー!違う違う! 本来であれば間接チューどころか、直接ちゅっちゅしたい所なんだけど・・・」

少女「またまた無理しちゃってぇ」ニヤニヤ

俺「俺ね、虫歯あるの。治療中なう。」

少女「は?」

俺「虫歯って、口の中の雑菌・・・主にミュータンス菌とかその手の雑菌が作っちゃうんだけど、
口に付けるものを共有すると、将来的にうつっちゃう可能性があるのね」

少女「そうなんですか?」

俺「子供でひどい虫歯がある子は、親が口移して食べ物与えた可能性が高いらしいよ。
少女ちゃんに子供が出来ても基本やっちゃだめ。ちゃんと離乳食を仕入れること。」

少女「知りませんでした・・・私は虫歯かかった事ないですけど・・・」


俺「万が一虫歯になっても、治療できる環境だったら、俺さん喜んで少女ちゃんとちゅっちゅしちゃうんだけどさー。
今はいつ外に出られるか分からないから、リスクは少しでも避けたいのね」

少女「俺さんって本当に『石橋を叩いて他人に渡らせる』くらい慎重ですねー。よく、私なんか家に上げてくれましたね?」

俺「運命です」キリッ

少女「運命ですか」

俺「後ね、俺仕事がシステムエンジニアなの」

少女「なんかプログラム作るイメージですけど・・・」

俺「そのプログラムをどう作るか?お客さんはどんなシステムが欲しいのか?どんなシステムを作ったら
仕事に使えるのか?ってのは、コミュニケーション力とシミュレーション力・・・言うなれば妄想力が必要なの」

少女「よく分からないです」

俺「お客さんは仕事のプロだけど、システムには素人なのね?ここまではおk?」

少女「はい」


俺「なので、お客さんが求める要件を聞いて、お客さんの仕事の流れを理解して、
どういう場面でシステムが使われるのか、徹底的に考えないとダメなの。」

少女「なるほど」

俺「なので、寝る前とか通勤電車の中とかで、ありとあらゆるシミュレーションをして、必要な機能絞り込んだり、
お客さんが言葉に出さない隠れた要件とか見つけてるのね。それが仕事をスムースにして、使えるシステムを作るコツなの。」

少女「さすが『デキる男』ですね」

俺「だから、少女ちゃんの事についても、俺なりに徹底的に考えてるのね。で、虫歯が治療できないとか
前言った通り、重い病気になるとヤバいってのも、結構早い段階で気付いてるわけ。
だからリスク軽減のため、間接チューはNG。俺さんマジ残念。」

少女「すっごく頼もしいです」

俺「で、実はマウスピースの予備持ってるから・・・」カチャカチャ

少女「えっ」

俺「都度、これに付け替えてくれるなら、どんどん遊んでもらって構わないよ?」ニッコリ


少女「おお~! あ、でも、うっかり取り替え忘れそうで怖いですね・・・」

俺「少女ちゃんの方には赤いシール貼っておいた。ミスが起こりにくいシステムを組む・・・
人間の特性に配慮する・・・システムエンジニア界では基本中の基本。
『ユーザビリティ』とか『フールプルーフ』とか言います。あんだーすたん?」ニヤリ

少女「はいっ!」

少女「・・・って、そもそも何で予備なんて持ってるんですか?」

俺「あぁ、ゴム製品だし口付けるものだからいずれ汚れるかなーと思って、昔Amazonでポチった。
こんな形で使うと思わなかったけどw」

少女「本当に俺さん色々考えて先回りするんですね・・・」

俺「ったりめーよ!」

少女「そうだ。そういう事であれば、私が外出できるようになったら、私とちゅっちゅできますね♪」ニコッ

俺「ブフッ!!」ゲホゲホ


俺「き、気に入ったら少女ちゃん専用のEWI買ってあげるから。」

少女「まじっすか・・・高くないですか?」

俺「本格的な奴が7万円。パソコンに繋ぐ簡易版が3万円。お好きな方をどうぞ。」

少女「わあお」

俺「安くは無いけど、少女ちゃんになら貢いじゃう。おk?」

少女「・・・・・・」チュッ

俺「えっ///」

少女「ほっぺたなら、私、虫歯にならないですよね?」ニッコリ

俺「・・・じゃ、じゃあ、ドレミファソラシドから教えるね。こうやって構えて・・・
楽器に息を吹き込んで・・・ドの音から・・・はいっ」

少女「はいっ」ニコニコ


(別の日)
俺「残念なお知らせが・・・」

少女「はい」

俺「俺さん1泊2日で出張になっちゃいましたー やだーーー 少女ちゃんと離れたくないーーー!!」

少女「あちゃー」

俺「とはいえ、大事なクライアントとの打ち合わせなので、流石に断れません。というか、
天災エンジニアの俺が話を聞いて設計するのが最も効率的なので、全力で俺がやるべきお仕事です。」

少女「はい」

俺「どうしよっか・・・はぁ・・・」ガックリ

少女「日中みたいに、電気付けないようにして一晩しのぎますか?」

俺「それが一番安全だけど、さすがにきつくない?」

少女「うーん」


俺「一応、出張の前後で、通販したものが届かないのは確認したから、夜間帯であれば電気付けてもらっていいけど・・・
最悪、インターフォンは無視していいよ。お風呂とかトイレに入ってれば部屋に居ても出られない事はあるから、
不審には思われないだろうし。」

少女「まぁ、料理とかもばっちり教えてもらいましたし、私は平気ですけど。
元々、お母さんが夜は居ないし朝はぐったり寝ている家だったんで慣れてます」

俺「ホント? それだったらいいんだけど・・・」

少女「ちなみにお一人ですか?」

俺「えーと、同僚3って人と一緒かな。」

少女「女の人ですか!? やだ~やらし~~」ニヤニヤ

俺「これがまた超美人なのw 背は小っちゃいんだけど、オレ好みの黒髪で眉毛のキリッとした美人さんよ~
まぁ、ご存じのとおり俺はデブサイク野郎なんで、全く相手にされてないけどwww」

少女「ホントですか~」ニヤニヤ

俺「大丈夫、俺は少女ちゃんひとすじだから」キリッ

少女「うふふ」ニコニコ


俺「でもね、同僚3さんってめっちゃいい人なの。今回の出張も、課長に内緒で密約を結んでてさ・・・」

少女「一体どんな?」

俺「設計の仕事を俺が二人分超頑張る代わりに、夜に取引先がセットした宴席に出なくていいって。
俺は風邪引いて寝込んだ事にして、同僚3さんだけで出てくれるって・・・
まじエンジェル。俺、全く頭上がらない。」

少女「(・・・嫌ってたらそんな事まではしてくれないよなぁ、普通。 めっちゃ俺さんの理解者な気がするけどなぁ)」

俺「そして翌日の打ち合わせで疑われないよう、小道具のマスクを仕込んで持っていくオレ策士www」

少女「さすがです」

俺「というわけで、来週の火曜日から水曜日の夜までは家を空けます。守りは任せた!」

少女「おまかせくださいっ!」


(俺さん出張の夜)

少女「ふぅ・・・」チャプン

少女「極楽じゃ極楽じゃ~~~」ホッコリ

少女「(月明かりだけの薄暗いお風呂もステキかも・・・)」

少女「(俺さんはああ言ってたけど・・・念のため明かりをつけないようにしよう・・・。
お風呂に窓があるから、ひょんなことでバレるリスクを避けないと・・・)」

少女「(ふふ・・・だんだん俺さんの考え方に似てきた気がする)」チャプ

少女「・・・・・・」

少女「(俺さんと出会って・・・もうずいぶん経ったなぁ・・・)」チャプッ

少女「(色々あったなぁ・・・)」

少女「(最初はお風呂の沸かし方も分からなくて・・・)」


~少女ちゃんの回想~

俺「あ、少女ちゃん、悪いんだけどお風呂沸かしといてー」

少女「あの・・・その・・・」

俺「ん?」

少女「やり方を教えて頂けると・・・」

俺「えっ」

少女「えっ」

俺「・・・? まぁ、教えるから一緒にやってみようか」スタスタ

少女「はい!」スタスタ

俺「お風呂です」

少女「お風呂ですね」

俺「栓が抜かれた状態です」

少女「ですね」


俺「このリモコンの『自動』ボタンを押します」

少女「ぽちっとな」ピッ

ゴポポポポ・・・
俺「給水管に溜まった古い水が出てくるのでちょっと待ちます」

少女「はい」

俺「流れ終わったら栓をします」カチャッ

少女「はい」

俺「フタを閉めて、後は沸くのを待ちます」スッ

少女「えっ」

俺「えっ」

少女「お湯の量とか見張んなくていいんですか?あふれませんか??」

俺「えっ」

少女「えっ」


俺「これ、フルオートの給湯器。勝手に適度な湯量で沸かしてくれる。だから自動ボタン。おk?」

少女「えっ」

俺「・・・ちなみに実家ではどんなお風呂だったの?」

少女「えーと、銀色の・・・ステンレス製の底が深いけど狭いやつで・・・穴が2つ空いてて・・・浴槽の隣に風呂釜があって」

俺「あ~」

少女「お風呂を沸かす時は、水を張ってから追い炊きして沸かして・・・」

俺「あぁ、それバランス釜じゃないかな。むか~し住んでた団地で使ったことあるわー超なつかしいわー」

少女「あの・・・俺さんちのお風呂、湯船にお湯を入れる蛇口も無くて疑問に思ってたんですけど・・・」

俺「えっ」

少女「えっ」


俺「お湯足すときどうしてたの? 俺の後だとお湯がっつり減ってたでしょ?」

少女「シャワーでお湯だして、それを湯船に注いでました」

俺「お、おぅ・・・気付かなくてごめんよぅ・・・」

少女「?」

俺「これリモコンです」

少女「はい」

俺「このボタン押すとお湯追加、このボタン押すと水追加。一押し20リットル。おk?」

少女「へぇ~~~!!」

俺「うん、新鮮で好きよ、そういう反応」

少女「またひとつ賢くなってしまった・・・」

俺「良かったね」ニコニコ


~再びお風呂~

少女「(フフ・・・知ってしまえはどうという事は無いけど・・・知らないって怖いな・・・)」クスッ

少女「(日中はあまり派手に動けないのがちょっとツラいけど・・・)」

少女「(それでも俺さんとの生活・・・楽しいな)」

少女「(実家に居た時がウソみたい・・・。)」

少女「(しかし、そんな私にも悩みが一つ・・・)」

少女「(そう、俺さんとの食事が美味しすぎて・・・ちょっと太った気がする)」ムニッ

少女「(こっそり体重を測ったら、この家に来た時より3.5kgも増えていた。これはマジでヤバイ。)」ブルブル


少女「(あんまり運動できないから・・・せめてお風呂で汗かかないと・・・)」アセアセ

少女「(贅沢な悩み・・・といえば贅沢・・・というか単なる贅沢のせい・・・なんだけど)」

少女「(でも・・・美味しい物の魅力には・・・悔しいけど逆らえないっ! くやしいっ
俺さんってなんであんなに美味しい物ばっかり知ってるのっ!!)」ジタバタジタバタ

少女「(俺さんも・・・痩せたら結構イケると思うんだけどなぁ・・・一緒にダイエットとかしたら一挙両得なのになぁ・・・)」

少女「(ヤダ、何考えてるんだろ・・・私・・・)」ブクブクブクブク

少女「(俺さん・・・・・・やっぱり居ないと寂しいよ・・・)」シュン


(一方その頃俺さんは)

俺「ひゃっはー!大阪名物串カツのお持ち帰りキタコレ!!」

俺「本場のたこ焼きもうまー」ホクホク

俺「あと、阪神デパートのいか焼き・・・これだけは外せないね~」パクパク

俺「宴席の犠牲?となってくれた、同僚3女神様に敬礼ッ!」ビシッ

俺「ちなみに少女ちゃんには冷凍いか焼きを購入して発送済み・・・うはwww
帰ってからもテラ楽しみwwwww 宴席なんか出てたらデパート閉まっちゃうwwwww」

俺「そして!出張の楽しみと言えば!!」

俺「少女ちゃんが来てから、なかなか見られなかったえちぃビデオが見放題!!」

俺「ステレオイヤホンをちゃんと持ってくる俺様、用意周到もしくは音漏れに警戒するチキンwwwww」

俺「これはこれで・・・し・あ・わ・せ♪」

俺「少女ちゃんに会えないのはさみしい。超寂しい」

俺「だが、ここでしか出来ない事があるっ」キリッ

俺「いざ往かん、欲望のイノセントワールドっ」


(ある日の探偵事務所)

俺「こんにちはー。俺ですが部屋どこですか?」

受付「いらっしゃいませ、打ち合わせ室2番にお入りください」

俺「どもー」スタスタ

ガチャッ
俺「こんにちは、ご無沙汰してます」

探偵2「いらっしゃいませ」

俺「お電話いただきましてありがとうございます。いや~暑いですね~デブには辛い季節ですね~」ダラダラ

探偵2「いえいえ、ははは。麦茶冷えてますよ」

俺「助かります。で、進展があったとの事ですが?」フキフキ ゴクゴク

探偵2「はい、必ずや、ご期待に添えると思います。」


俺「お聞かせいただいても宜しいですか?」ゴクゴク

探偵2「はい・・・」


探偵2「・・・という感じです。」

俺「・・・なるほど・・・二面作戦ですか」ニヤリ

探偵2「ええまぁ。保険は掛けるに越したことはないですね。」

俺「どうやってねじこんだんですか?w」

探偵2「それはまぁ、企業秘密ってやつでして」ニコニコ

俺「すいません、つまらない事を言いました。」

探偵2「いえ。まぁ言える事としては、『タスクの優先度』をちょっと調整しただけです。
・・・それだけの事ですよ。」

俺「・・・なるほど。大体通じました。」ニヤリ

探偵2「察しのいい依頼主様は助かりますよ」ニコニコ


俺「・・・通報の際、注意することは?」

探偵2「いえ、こちらの調査資料を基に、ありのまま通報頂ければ大丈夫です。」

俺「・・・なるほど。成果の確認はどうすればいいですか?折を見て素行調査をご依頼すれば良いですか?」

探偵2「ウチはそれでも良いですが・・・おそらく、作戦が成功したら入管の担当者から連絡が
来るとおもいます。『報奨金支払いの件』で。これは普通の事で、特別待遇でもなんでもありません。
ただし、連絡ミスが無いよう重々気配りをしてくれてるとは思いますよ」ニヤリ

俺「そうですか・・・。助かります」ペコリ

探偵2「仕事ですから。まぁ、腹を割ってお話しますと・・・私も現役時代、『Z』に泣かされてる人たちを
散々見てきましたから・・・。元刑事とはいえ、正義感ってのはまだちょっぴり残ってましてね」ハハハ


俺「そういって頂けると助かります。・・・そうだ、探偵2さんはお酒飲みます?」

探偵2「大好物です」

俺「私、脂肪肝がひどくて医者からお酒止められてるんですが、ビール券が大量に余ってまして・・・
廃品処理にご協力頂けませんか?」スッ

探偵2「そういう事であればありがたく頂戴しますよ」ニコニコ

俺「・・・以上ですかね」

探偵2「・・・ご武運をお祈りしてますよ」

俺「・・・この手で『恩返し』出来るなんて嬉しいです。ありがとうございます。」

探偵2「・・・また何かありましたらお声掛けください。」

俺「本当は、何でもない日常が一番幸せなんですけどね」

探偵2「『ロード』ですか?」ニヤリ

俺「ははは・・・バレましたか。じゃぁこれで」ペコリ

探偵2「・・・ご用命頂きまして有難うございました」フカブカ


(ある日)
prrrrr
俺「はい」

俺「あぁ、お世話になっております。俺です。」

俺「『通報報奨金』の件?あぁ、そうでしたか。そういう事なんですね。」

俺「あ、いえ、俺はいち日本国民としての義務を果たしただけですので・・・はい、辞退したいです」

俺「いえいえ、入管の皆様こそ、おつかれさまでございました。はい、国民の平和と
安全を守る最前線で戦っておられる皆さんですから。ご尊敬申し上げております。」

俺「はい。何もできませんが、せめて心の底からの感謝の気持ちを示させてください。
本当に・・・有難うございました」ペコリ

俺「いえいえ、失礼いたします。また何かありましたら協力させて頂きます。それでは・・・」ピッ

俺「・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・・よし。」


俺「(・・・・・・後は少女ちゃん次第だよ。)」

俺「(俺はやることはやった。後は状況に任せよう・・・)」

俺「(この8か月・・・夢のような生活だった・・・)」

俺「(夢はいつまでも続かない・・・いつか、現実はやってくる。)」

俺「・・・・・・まだ8か月。」

ミ-ンミンミンミー

俺「・・・・・・もう、8か月だもんな」スック

俺「・・・・・・」スタスタ


俺「少女ちゃん♪」

少女「はいっ!何ですか、俺さん?」

俺「突然だけど・・・」

少女「はい?」

俺「クズ男が居なくなりましたー! はい、はくしゅー」パチパチパチ

少女「えっ・・・えーーーーーーっ!?!?!?」

俺「というわけで、お母さんに連絡取ってみてください。」

少女「えっ・・・えっ・・・えっ・・・?」

俺「お膳立てはしたから、この先は少女ちゃんに任せるよ。」

少女「そ、そんな突然・・・」

俺「聞いて? 俺の願いは、少女ちゃんに心から幸せになってほしい。本当にそれだけなの。」

少女「あ、ありがとうございます・・・」


俺「だから、お母さんの所に戻るもよし、許可が出たら今まで通りここに住み続けたり、
何だったら俺と結婚するもよし、少女ちゃんがベストだと思う選択肢を選んでほしいの。」

少女「・・・・・・」

俺「実家に戻るんなら、これからの生活立て直しの為に100万か200万プレゼントするから。
学費にでもしてよ。高校も再入学するなり、通信制のサポート校通うなり、大検取るなり、選択肢は沢山あるから。」

少女「はい・・・でも、突然言われても・・・」

俺「今晩じっくり考えて、明日にでも電話してご覧。携帯電話貸してあげるから。」

少女「はい・・・・・・」

俺「今なら、彼氏が居なくなってお母さん弱ってると思うから、少女ちゃんに有利な形で事を進められると思うよ。」

少女「・・・・・・」

俺「俺としては・・・少女ちゃんとずっと一緒に・・・・・・いや、なんでもない。忘れて。」

少女「あの・・・俺さん・・・」

俺「何だい?」


少女「今までどうやって暮らしてた事にすれば・・・いいですか?」

俺「そうだなぁ・・・。ハタチの元女子大生と名乗って、住み込みで家政婦のバイトしてた・・・
とか言えばいいんじゃない? 主人がボケかけてて身元調査とか甘かったとかなんとか言っちゃえば?」

少女「・・・あながち間違ってはいないですね」

俺「えっ・・・俺ボケかけてる? マジで!?」

少女「そっちじゃないですっ!」

俺「良かった~」ホッ

少女「・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・ま、じっくり考えて。俺はデパ地下で美味しいもの仕入れてくるから。
今晩は祝杯上げようぜ!」

少女「・・・はい!」

俺「じゃ、行ってきまーす♪」

少女「行ってらっしゃい、俺さん!」


少女「・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・・・・・・。」


(対決)

prrrrrrr・・・prrrrrr・・・

少女「・・・もしもし」

少女「・・・うん、私。」

少女「は? 出ていけって言われたから出て行っただけじゃん。何か問題でも?」

少女「今更母親づら? やめてよ。あなたは私より彼氏を選んだじゃない。」

少女「え?・・・うん、住み込みの家政婦のバイト見つけたからそこで働いてる。」

少女「・・・帰ってこい? 嫌。私、あの男が居る限り絶対家には戻らないから。」

少女「・・・は? 警察が来て突然逮捕された? 面会も出来ない?」

少女「・・・この期に及んで面会なんてするんだ?・・・ばっかじゃないの!!!」


少女「・・・目ぇ覚ましてよ。逆に言えば、逮捕されるような男を私に近づけたって事じゃないんですか?
一応血のつながった母親として、何か思う事は無いんですか? 私、相談しましたよね、
あの男に何度も襲われそうになったって。あなたは助けてくれませんでしたけど。」

少女「・・・・・・・・・」

少女「・・・はい。私の希望は一つ。正式に絶縁してください。」

少女「・・・・・・はい。そう。そういう事です。もう娘と思わないでほしいです。」

少女「・・・・・・分かりました。今から行きます。」ピッ


俺「・・・・・・」

少女「・・・・・・」

俺「・・・よく頑張った」

少女「・・・はい」

俺「・・・お母さんと直接対決・・・するんだね」

少女「・・・はい」

俺「一人で行けるかい・・・?」

少女「・・・はい!」

俺「・・・よし!」

少女「あの・・・」

俺「・・・ん?」


少女「どうなるか分からないですけど・・・もし上手く行ったら・・・私、この家に・・・俺さんの所に戻ってきていいですか?」

俺「勿論。待ってる。少女ちゃんの帰りを。」

少女「はい」

俺「仮にだめでも・・・心がハタチになったら・・・戻っておいで。あと、たったの3年半だ。」

少女「・・・はい!」

俺「じゃこれ・・・交通費とか渡しておく。」スッ

少女「ありがとうございます。」

俺「今使ってもらった携帯・・・プリペイドだけど・・・そこそこの額を
チャージしておいたから。持って行って? 番号はこれね。」スッ

少女「すみません」


俺「あと、念のためこの封筒もカバンの底に入れておいて。」

少女「・・・なんですか、これ?」

俺「お守り。」

少女「ずいぶんおっきいお守りですね・・・」

俺「200万入ってる。少女ちゃんに預けとく。」

少女「えっ・・・そんな・・・」

俺「この後の展開がどうなるか分からんから。念のため・・・ね。」

少女「受け取れません!」

俺「受け取らなくていいよ。俺は預けただけだから。」

少女「?」

俺「もし戻ってこれたら返してよ。」ニコッ

少女「!」


少女「俺さん?」

俺「ん?」

少女「・・・行ってきます!」ニコッ

俺「いってらっしゃい、少女ちゃん」ニコッ


(少女実家)
ピンポーン

ガチャ
母「・・・お、おかえりなさい」

少女「・・・お邪魔します」

母「!」

少女「・・・・・・」

母「・・・元気そうね。ちょっと太った?」

少女「・・・美味しい物ばっかり食べてたから。」

母「・・・そう・・・良かった。」

少女「・・・・・・」

母「・・・・・・」

少女「・・・・・・」

母「・・・・・・・・・ごめんなさい」


少女「・・・・・・何が?」

母「・・・・・・お母さんの目が曇ってました。あいつは彼氏にすべき男ではありませんでした。」

少女「・・・あとは?」

母「・・・あなたに酷い事を言ってしまいました。本当に出ていくなんて思わなかった。ごめんなさい。」

少女「・・・あとは?」

母「・・・あなたが助けを求めてきたのに、助けなくてごめんなさい。」

少女「・・・・・・・・・」

母「・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・私、一度死にかけた」

母「えっ」


少女「家出した後・・・住み込みのバイトが見つかるまでの間・・・食べるものも無くて、寒くて・・・本当にギリギリだった・・・」

母「そう・・・だったの・・・」グスッ

少女「・・・・・・・・・」

母「・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・・・・」

母「・・・・・・どうしたら、許してくれるの?」

少女「・・・・・・・・・」

母「・・・・・・・・・」

少女「・・・・・・ここに・・・ここにサインと捺印して。」

母「・・・婚姻届!?」

少女「私、好きな人が居るの。結婚したいんだけど、未成年は保護者の許可が要るの。」

母「・・・そ、そんな急に! あなたまだ15歳なのよ!?結婚出来るわけないじゃない!」


少女「何言ってるの? 私の誕生日は2月よ。とっくに16歳ですけど?
一応血のつながった母親なのに、そんな事も分からないの?」

母「あっ・・・違うの・・・そうじゃなくて・・・ずいぶん会ってなかったから・・・・・・。
その・・・・・・」

少女「・・・・・・私の好きな人は、私が困ってる時に本当に親身に助けてくれた素敵な男性なの。
私が本当に困った時に助けてくれなかった肉親よりも、頼りになる人なの。
これ以上私の幸せの邪魔するなら、一生許さない。
たとえあなたが死んでも、葬式すら出たくない。」

母「・・・・・・・・・・・・」

少女「親として愛情が残っているなら、私の幸せの邪魔をしないでください。お願いします。サインしてください。」

母「せ、せめてどんな人か会わせて貰えないの・・・!? こ、小娘を騙す、しょうもない男
かもしれないじゃない!おかしいわよ、16歳で親に紹介もせず結婚なんて!」


少女「クズ男に易々と引っかかるあなたが見て、一体何が分かるんですか?」

母「うっ・・・・・・ううっ・・・」

少女「私の人生は、私が、決めます。いつまでも子供じゃないの。」

母「うっ・・・ううううううううっっっ・・・・・・!」

母「うっ・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい!!」ウウッ

少女「ぐす・・・ひっく・・・・・・いいから。サインしたら一旦私の事は忘れて。しばらくは会いたくない。
サインしてくれないなら今日これっきり、一生会わない。どっちがいいの?」キッ

母「・・・分かった。サインする。幸せに・・・なってね」

少女「・・・ありがとう・・・・・・ございます」


少女「・・・・・・今までお世話になりました。大変な思いをして・・・育ててくれて有難うございました。
これからは・・・ぐすっ・・・ひっく・・・・・・お母さんも幸せになってください」グスッ

母「少女ちゃん・・・」


少女「・・・・・・これ」

母「・・・なぁに?」

少女「・・・私の携帯番号。どうしても連絡を取りたい事があったら電話して。
つまんない事で掛けて来たら解約して番号変える。」

母「・・・分かった」

少女「私の行方とかを追いかけるのはやめて。婚約者の人にも迷惑かけたくない。
仮にどこかの街で出会っても、他人よ。」

母「・・・分かった」

少女「じゃあ・・・これで・・・。」

母「・・・元気でね」

少女「・・・お、お母さんも。私に気兼ねなく幸せになってください。今までお世話になりました。」ペコリ

母「・・・・・・うん」


少女「・・・では」クルッ スタスタ

母「・・・・・・・・・」

母「(ご飯の炊き方も知らない、頼りない子だったのに・・・)」

母「(・・・いつのまにか、しっかりした背中になって)」

母「(そして、自分の足でちゃんと人生を歩んでる。)」

母「(・・・・・・どなたかは知りませんが・・・ありがとう)」

母「(そして・・・少女ちゃんを・・・よろしく・・・お願いします)」

ギィー・・・バタン


(夕方)

prrrrrrrr
俺「はい俺です!」

少女「俺さん!私です!」

俺「少女ちゃん!」

少女「あの・・・」

俺「どうした?上手く行ったのかい?」

少女「あの、私・・・帰れなくて・・・」

俺「えっ・・・だめ・・・だったの・・・・・・そっか・・・そうだよね・・・そうだよね・・・」グスッ

少女「えっ・・・ち、違うんです!」

俺「やっぱり、見ず知らずの人の家で住み込みとか同棲とか許可してもらえないよね。
うん、そうだと思った。常識的にそうだよね・・・ははは・・・」

少女「違うんです!」

俺「えっ?」


少女「あの・・・俺さんの家の近くまで来てるんですけど・・・」

俺「マジで! じゃあ帰っておいでよ!」

少女「あの・・・場所が・・・分からなくて・・・」

俺「へっ!?」

少女「今朝出ていく時は色々考え事してて・・・何となく駅の方に向かっちゃって・・・
そもそも初めて会った時は寒さで死にかかってて・・・」

俺「あー・・・」

少女「よくよく考えてみたら、8か月も引きこもってたので・・・何ならマンションの
部屋番号もよく分からないです。部屋の中はよ~く知ってますけど」

俺「あー・・・盲点だったわ・・」

少女「私も盲点でした・・・」

俺「今どの辺?周囲に何が見える?」

少女「えっと・・・イトーヨーカドーの近くまでは来ました。近くにローソンとカレー屋があります」

俺「おk、迎えに行くから待ってて。すぐ行く。」

俺「はぁっ・・・はぁっ・・・」ドスドスドスドスッ

少女「俺さん・・・俺さん・・・!」

俺「はぁっ・・・はぁっ・・・ふぅ・・・」ゼイゼイ

少女「俺さん・・・大丈夫ですか・・・?」

俺「おかえり」ハァッハァッ

少女「えっ」

俺「おかえり、少女ちゃん!」ニコッ

少女「・・・ただいま、俺さん!」ニコッ


少女「そうだ・・・これ見て下さい」

俺「ん?」

少女「・・・じゃーん!」ファサッ


俺「えっ・・・婚姻届? あっ!お母さんのサイン入り!」

少女「書き損じに備えて、念のため3枚くらい書かせましたwww」

俺「さすが!俺仕込みの、『石橋を叩いて他人に渡らせる』ぐらいの用意周到さですな・・・w」

少女「へっへー!」ニコニコ

俺「でも・・・本当に俺でいいの?」

少女「俺さんが・・・俺さんがいいんです。」

俺「少女ちゃん・・・」

少女「俺さんが幸せになる事であれば・・・私・・・何でもしますから・・・俺さんの愛をくださいっ!」

俺「おk!喜んで!!」

少女「俺さんっ!」ダキッ

俺「少女ちゃんっ!」ダキッ

少女「・・・・・・」ギュ-ッ

俺「・・・・・・」ギューッ

少女「・・・・・・」


俺「あっ」

少女「・・・どうしました?」

俺「大事な事忘れてた・・・」

少女「ん?」

俺「婚姻届って、証人の署名捺印が要るんだわ・・・しかも二人分。どうしよう、
俺の親は既に他界してるし・・・あー、友達いないとこういう時に困るのかーそっかー」

少女「盲点でしたね」

俺「盲点というか想定外でした・・・俺が結婚出来るなんて・・・」

少女「人生って分からないもんですね」

俺「お互いにね」ニコッ

少女「ふふっ・・・」ニコッ


俺「あっ、あれは・・・良い事思いついた! おーい、○○さーん!」

クロネコ「あ、俺さん、こんばんわ~」ガラガラガラッ

俺「すいません、ちょっとお願いがあってー」

クロネコ「集荷ですか?後でお伺いしますよ?」

俺「実は・・・俺、この子と結婚するんです!」

少女「どうも」ペコリ

クロネコ「えっ・・・あっ、どうも・・・って俺さん、犯罪するような人じゃなかったのに・・・残念っす・・・」

俺「ちげーよ!」

クロネコ「冗談ですw いや、おめでたいですね、ものすごい美人さんじゃないですか」

俺「あの、何も聞かずにここの証人欄に署名捺印してもらえませんか?
大変すみませんが、本籍地と生年月日もお願い出来ると・・・」

クロネコ「えっ・・・オレでいいんですか?」


俺「是非お願いします。幸せ配達人じゃないですかw」

クロネコ「そう言ってくれるのは俺さんぐらいのもんですけどねw」

俺「それにほら、サインとかハンコをいつも人に書かせてるんだから、たまにはサインする方の立場になってもいいじゃないですかw」

クロネコ「俺さんは独創的ですねー。ま、喜んで書かせてもらいますよ。ハンコもあるし。」サラサラサラッ ギュッ

俺「あざっす!」

クロネコ「まぁ、不在表書くのにバンバンサインしてますけどねw 平日は宅配ボックス活用させてもらってますwww」ハハハ

俺「そういえばそうでしたw」アハハ

クロネコ「じゃ、お幸せにー」ガラガラガラッ

俺「どーもー!」



俺「・・・言ってみるもんだねw」

少女「・・・俺さんの顔の広さは、ぱねぇですね」

俺「・・・ちなみに向こうから青い台車押して走って来る人・・・見える?」

少女「ひょっとして・・・佐川ですか・・・?」

俺「佐川の××さんッス。」

少女「佐川の××さんッスか」

俺「まぁダメ元で聞いてみようか?w」

少女「はいっ!」


(夜)

少女「何とか書き終えましたね」

俺「緊張したわ~! あ、そうだ?いつ出しに行く?」

少女「来週・・・」

俺「ん?」

少女「死んだお父さんの命日なんです。」

俺「・・・お父さんにも祝福してもらわないとね。そこにしよっか!」

少女「はい!」

俺「24時間受け付けてるから、朝イチで行こうか?」

少女「はい!」


俺「受理されたら・・・数日待ってから戸籍謄本と住民票取って・・・
そうだ、会社に扶養手当と健康保険証の申請しないと・・・。年金とかどうなるのかな?
二十歳未満の妻はどういう扱いになるのかな?あー、ググらないと分かんないわー」

少女「色々あるんですね」

俺「一緒に乗り越えて行こうね」

少女「俺さんとなら余裕ッス」

俺「余裕ッスか」

少女「結婚式・・・します?」

俺「俺の理想は・・・どこか落ち着いた所で、二人きりで式をして・・・あ、そうだ。
少女ちゃんのウェディングドレス姿の写真は絶対撮りたい!プロのカメラマンさんにイッパイ撮ってもらお?
タイミングを見て、お母さんにも送ってあげよ?」

少女「いいですねそれ!」

俺「ほんと!? じゃあどっか探してみるよ」

少女「まだ暑いんで涼しい所がいいですね」

俺「パッと浮かぶの軽井沢くらいしかないなー。」


少女「それでいいんじゃないですか?」

俺「あ、そう?」

少女「俺さん、あまり形にはこだわらないし、型にもはまらず、本質を大事にする方だと思うんですけど」

俺「モチのロンよ」

少女「場所とか式場が大事なんじゃなくて、俺さんと二人で結婚式をする事に意味があると思うんです」

俺「嬉しい事言ってくれるじゃないっ。俺の事よく分かってるねぇ」

少女「8か月も同棲してたら、なんかうつっちゃいましたw」

俺「俺色に染まっちゃった?w」

少女「だいぶくすんだ色ですけどね、それ」クスッ

俺「そだねw」

少女「でも、私だけの色・・・普通の女の子には見えないし、手にも入らない色です」ニコッ

俺「少女ちゃん・・・」


(しばらくして)

俺「おじゃましまーす」

総務のおばちゃん「あら、俺君じゃない。どうしたの?この間はパソコン直してくれてありがとねー」

俺「あーいえいえ、デキる男なんで楽勝っす。で・・・こっそりご相談なんですけど・・・」ボソッ

総務のおばちゃん「はいはい、何さ?」

俺「結婚しましたw」ボソッ

総務のおばちゃん「えっ」

俺「マジですw」ボソッ

総務のおばちゃん「(ちょ、ちょっと急じゃない。大丈夫?ダマされてない?)」ボソッ

俺「(大丈夫ですよw)」ボソッ


総務のおばちゃん「(私、給与振込の処理してるから俺君の給料知ってるけど・・・
金目当ての女に引っかかってない? 俺君純真そうだから、悪い女にダマされないかって
内心心配してたのよ? 本当に大丈夫なの?)」ボソッ

俺「(大丈夫です。最高の人見つけましたからw)」ボソッ

総務のおばちゃん「・・・ならいいんだけど。じゃあ手続きの書類が・・・
これと・・・これと・・・これと・・・あー、これもか」ガサガサガサッ

俺「一つお願いが・・・」

総務のおばちゃん「はいよ?」

俺「社内には出来る限りナイショにしたいんですけど・・・」ボソッ

総務のおばちゃん「んー、でも、直属の上司にはご報告した方がいいんじゃない・・・?」ボソッ

俺「あー・・・色々やらかしてますからねぇ・・・」ボソッ

総務のおばちゃん「『お腹大きい人が家に居る』んでしょ?w 知ってるんだから! 今後本当にそうなった時に信じて貰えないよ?」ニヤリ

俺「ブフッ」ゲホゲホ


俺「まぁその、結婚式も身内だけでやりますし、人の冠婚葬祭になるべく関わらないように
してるんで、こちらもそっとしておいていただきたい感じです・・・」ボソッ

総務のおばちゃん「・・・わかった。ウチの総務部長・お宅の部長と課長・・・
社内ではこの3人・・・これぐらいでどう?俺君のニュアンスも伝えておくから。」ボソッ

俺「あざっす」

総務のおばちゃん「とにもかくにもおめでとう。奥さん幸せにしてあげなさい」ボソッ

俺「あざっす!」

総務のおばちゃん「でも・・・」

俺「はい?」

総務のおばちゃん「アンタ、健康診断毎年引っかかってるんだから・・・ダイエットなさいよ?
肝硬変とか糖尿病とかで若くして死んだら、奥さん不幸でしょ?死ななくても奥さんに介護させる?そんなのイヤよね?」ボソッ

俺「・・・・・・そっすね!」

総務のおばちゃん「わかればいいのよ。じゃ、お幸せに。」ボソッ

俺「あざっす!!」


(軽井沢の教会)

リーンゴーン

神父「新郎こと『俺』さんは、『少女』さんを妻とし、病める時も健やかなる時も一生愛し続けることを誓いますか?」

俺「はい!!」

神父「新婦こと『少女』さんは、『俺』さんを夫とし、病める時も健やかなる時も一生愛し続けることを誓いますか?」

少女「はい!」

神父「それでは、指輪の交換と誓いのキスをどうぞ」

俺「・・・夢みたいだよ。本当にありがとう、少女ちゃん。君の幸せの為なら、俺、何でもするよ。」スッ

少女「・・・私こそ、俺さんのためなら何でもします」スッ

俺・少女「(チュッ)」


神父「おお神よ!いまここに新たな夫婦が誕生しました!」

俺「愛してるよ、少女ちゃん・・・いや、嫁ちゃん」ニコッ

嫁「私もです。俺さん!」ニコッ

俺「ごめんね・・・俺友達作らないようにしてるから・・・結婚式に誰も呼べなくて・・・」

嫁「いいんです。よくよく考えてみたら私も友達居ないし、むしろこっちの方が気楽ですよね。いろんな意味で!」

俺「お、分かってきたじゃない」

嫁「俺さんの嫁ですから♪」

俺・嫁「あはははははははっ!」



---完---


勢いで「空白の8か月」「お母さんとの対峙」エピソードを妄想してみました。
Part1含め、批評や感想をいただいた皆様、励みになりました。

なおPart1と同じく、この物語は100%妄想から生まれたフィクションです!
実在の国や法律や人物とは一切関係ございません!!
作者がデブサイクなのは本当です!!!


・・・それではまた、どこかで!

おつ!面白かった!続編期待!

>>140-142
自演(・A・)イクナイ

なお、懲りずにPart3(後日談)も検討中の模様

少女「何でもしますから・・・食べものを・・・」俺「おk」Part3 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420218829/)

調子に乗って、Part3スレを立ててしまいました・・・
このスレは、HTML化依頼済みなので、移動をお願いします。
短期間に幾つもスレたてて、すみませんです。

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