【艦これ】じいと姫と北方旅 (194)

深海棲艦


それは突然現れ、我々の生活や命を脅かすものたちである

今でも深海棲艦との戦争は続いており、我々の生活は日々脅かされている

「……おーい、大丈夫かー…?」

そんな時代の中、私は海を見つめていた

正確には海に浮かぶあるものを

「……どうしたもんか」

そこには白い肌…つまり、深海棲艦らしき者がうつ伏せで浮かんでいた

雲一つ無いよく晴れた日の出来事であった


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418287147

※注意

このSSは艦これSSだと思う
初(長編)SS
全編にわたってオリキャラが出る
一応閲覧注意
史実とか詳しく知らない人が書いてるから突っ込まないでくれたらうれしい


軍を辞めて幾星霜、あてもない旅を続けて数年経つ

「さて、今日も釣りに行くか」

自ら食いつないでいくために今日も食料を探しに行く

私が唯一得意であった釣りは、それに適していた

「昨日は大物が釣れなかったが、今日こそは」

波止場に向かい、糸を垂らす

そして獲物がかかるのを待つ

この待っている間の時間、これが釣りの醍醐味だと思う

何を考えるでもなく、竿にも一定の注意を払う

この感覚が私は好きであった

「む、来たか」

晴れた日にはよく釣れるのだ

曇りや雨だとどうにもうまくいかない

「せーの、せい!」

掛け声と共に釣り上げる

釣った魚が軽く痙攣した

大きさはまあまあと言ったところか

後2、3は欲しいが、幸先のいい始まりだ

ざざーんと落ち着いた波の音を聞きながら再び糸を垂らす

しかし、その後待ちの体制に入った私の視界に見慣れないものが写った

「白い浮翌遊物…?海鳥…にしては大きすぎるか」

どんどんこちらに流されてきている

そしてついにそれが人の形をしていることまで認識する

その時点で私はある程度の予想が出来た

「白い肌、白い髪…」

そう、あれは深海棲艦であると

さらに、人型ということはかなり強力な個体であろうと

「逃げるか…?いやだが、流される深海棲艦など見たこと無いぞ…」

物珍しさからその場に立ち尽くし、白い浮翌遊体を眺める

そして、それが波止場のすぐそこに来て、


ゴスッ


となかなかいい音を出しながら頭をぶつけ、それでも動かない

「……どうしたもんか」

逃げればいいのに、私は何故だかその白い浮翌遊体に同情していた

それにはその深海棲艦が非常に幼い容姿をしていたことや、私の旅の目標にも関係していただろう

「仕方ない…か」

衣服を脱ぎ、救出用の道具を用意し、私は海に飛び込んだ

助けてしまった

我々の敵であるはずの深海棲艦を

助けだした深海棲艦は外傷もなく、呼吸も落ち着いている

私は取り合えず、この深海棲艦が目を覚ます前に逃げ出すべきか迷っていた

「今ここで逃げ出したら自分の命は助かる…が、コイツを放っておくと絶対面倒なことになる。かといって目を覚ましたあと私に何が出来る。やはり逃げるべきか。しかし、こんなものを放置して逃げるなど目覚めが悪すぎる…。いや、だが…」

堂々巡りの思考をしていたためなかなか行動に移せなかった

そんなことをしていたからだろう

私は深海棲艦が身じろぎしたのを見てしまった

深海棲艦はそのままゆっくりと体を起こし、目を開ける

伸びをしたあと辺りを見回し、こちらを見た

真っ赤な目と私の目が合わさった

「………………」

「………………」

お互い完全に無言

ここだけ時間が止まってしまったかのように、まばたき以外何もできない

そのまま三分ほどたち、ようやく私は言葉を絞り出した

「……おはよう」

「……おは、よう?」

その深海棲艦は私の言葉を復唱しただけで、再び黙り込んでしまった

言葉を発したことにより少し冷静になった私は、その深海棲艦がこちらを襲ってこないか細心の注意を払いつつ質問をした

「お前さんは、何者だ?」

「………?」

わからないと言う風に首をかしげる

「お前さんは、私を襲うか?」

「………」

ふるふると頭を横にふり、またこちらを見つめてきた

「どこから来たかは分かるか?」

「………」

再び首をかしげた

「むぅ…」

取り敢えず襲っては来ないだろうと思い、少し緊張を解く

しかし困った

このままでは話が進まない

私は頭を抱えた

どうすればいいんだ、と

そして吹っ切れた

もう知らん、逃げる、と

急にこのような事態になったら、相手が誰であれ面倒なことになる前に逃げたくなるであろう

一度助けてやっただけでもよくやった方だ

全ての荷物を持ち、全力ダッシュで逃げた

人生で一番早いのではないかという速度で走った

ある程度走り、草木に囲まれた場所に着いたので一先ず足を止めた

ここまで来れば大丈夫だろう

そう思い後ろを振り返った

すぐ後ろにあの深海棲艦がいた

「……………」

再び無言でこちらを見つめてくる深海棲艦

私は絶え絶えの呼吸の中叫んだ

「何故連いて来る!」

「深海棲艦って陸上でも運動能力高いのか!」

「…………」

……今コイツちょっと得意気な顔したなこの野郎

しばらく息を整えた後、私はある重大な質問を投げ掛けた

「お前、もしかして私に連いて行きたいのか…?」

その質問に深海棲艦は

「………!」

大きく首を縦にふった

私は諦めの境地でもうひとつ尋ねた

「お前、名前はなんだ?」


















「ほっぽ…う…せい…き」























これがこの先少しだけ続く、私とこの深海棲艦との少し変わった旅である

「北方」

「………?」

「お前さんの呼び名だ。呼び方が分からなければ不便だろう?」

「…………」

北方は頷いた

無害なことはわかった為、取り敢えず釣りを再開することにした

おまけに今日から北方にも食事を与えなければならない

「……………」

釣糸を垂らし、いつもの感覚に落ちる

「……………」

北方は糸の垂れている海面付近をじっと見ている

あまりジロジロ見られると集中できないのだが、仕方あるまい

「………よし、来た!」

わずかな振動を察知し、釣り上げる

少し小振りだが、北方に与える大きさとしては上等だろう

ほっぽちゃんか
期待

釣った魚を箱に入れ、再び糸を垂らす

その時北方が私の袖を引っ張った

「なんだ、集中できないからやめてくれ…」

「……それ、やりたい」

「お前、普通に話せるのか…」

黙り込んでいることが多かったもんだからてっきり話すことが相当苦手か、ほぼできないものかと思っていた

「釣りをしたいとな。別に構わんが、出来るのか?」

「…………?」

首をかしげやがった

「はぁ、全く…。ほら、こっちに来てみな」

とことこと寄ってくる北方

この姿を見てると、本当にコイツがあの深海棲艦だなんて忘れてしまいそうになる

「まずエサを付ける。次に針を海に投げ入れてひたすら待つ」

やってみろ、と促した

エサはその辺で採った虫だが、まさか虫を嫌がるか?

と思ったら、北方は虫入りの箱に手を突っ込み、鷲掴みした

「待て待て、そんなに要らん。一匹で十分だ」

「…………」

北方はしばらく自分の手と私の事を見た後、ゆっくりと虫を取り出した

「そうだ。それをこの針に付けるんだ」

北方は拙い手付きではあるが、エサを取り付け、針を海面へ投げ入れた

















竿ごと









私は海へ本日二度目の飛び込みをした

「何をしている!?投げるのは竿じゃなくて針だ!」

濡れた体を拭きながら叫ぶ

「…………?」

北方は違うの?とでも言いた気な目で首をかしげた

私はあまりに無垢な瞳に何も言えなくなってしまった

「はぁ…次こそはちゃんとやってみてくれ…」

「…………」

コクリ、と首を振り、北方は再びエサを取り付け、今度こそ糸を海面へ垂らすことに成功した

「よし、そのまま竿を放すなよ?引いてるタイミングは私が教えるから感覚はその時覚えてくれ」

北方はこちらを見ずに頷き、じっと海面を見ていた

十分もしない頃か、糸を垂らした辺りに水紋が広がったのを私は見逃さなかった

「北方よ、僅かな振動を感じるだろう。じきに食らい付いてくるから、その瞬間になったら一気に上に引き上げるんだ」

北方は真剣な表情をしながら最適なタイミングを図っていた

そして、ザバッと大きく釣り上げる




釣れた獲物は今日一番の大物だった

その後も北方は次々と大物を釣り上げ、十分な数を手に入れたところでやめさせた

北方の顔は非常に満足気であり、実際片付けの際に楽しかったか?と尋ねると、

「…………!」

コクコクと首を何度も縦に振った

心なしか、北方の体がキラキラしている気がした

さて、釣りが終わった頃には大分日が落ち、水平線に太陽が沈みかけていた

「完全に暗くなる前に飯とするか」

私はあらかじめ集めておいた木の枝などに火を起こし、鱗や内蔵を取り除いた魚を火にかけた

北方は相変わらず私のやることをじっと見ている

焼ける間、することもないので北方と話をした

「なぁ、深海棲艦だってのに私を襲わないのはどうしてなんだ?」

「………襲わなきゃ……ダメ?」

「いやいや!そんなことはないぞ!?」

「しかしな、深海棲艦が港や船を襲ったと言う事件は数えきれないほど起きていてな。お前さんみたいなのは全く未知の存在なんだよ」
そもそも言葉を話す深海棲艦自体ほとんど報告がない

そして、言葉を話す深海棲艦は総じて強力な力を持つと言う

それに名前を聞いた時、コイツは「せいき」、と言った

つまり、鬼や姫型の深海棲艦だということだ

そんなのがどうして私なんかと一緒にいるのか、さらには海で浮かんでいたのか、さっぱり分からない

「やっぱり目を覚ます前に逃げるべきだった…」

「……元気、出して?」

「……ああ、ありがとうよ…」

情けないことに慰められた

北方はそのまま魚を指刺し言った

「じい、そろそろ焼ける」

「ん、あぁそうだな…って、じい?」

北方は今度は私を指差して、

「じい」

と言った

『じい』ってまさか、私のことか

確かに既に50を越える年齢とはいえ、爺さん扱いされるとは…しかも深海棲艦に

「なぁ北方。私は爺ではなく、お兄さんとかでいいんだぞ?」

「………?じいはじい…だよ?」

「………もう何でもいいわ…」

焼けた魚を手に取る

「いただきます」

「……いただ、きます」

北方が復唱した

はぐはぐと魚を平らげていく北方

まるで小動物のようで、私は自分の分を食べるでもなく眺めていた

視線に気がついたのか、北方は

「……じい、食べないの?」

と聞いてきた

「…食べるよ」

魚は少し焦げていて苦かった

今日はここまで
これから完結までしばらくよろしくお願いします

おつ、投稿スレに投下してた人かな
期待してます

【選挙に参加してもらうための拡散文章 】

 今度の選挙は大事な選挙です、必ず投票所に行って
 有名・無名な党名に関係なく、その人の今までの行動や思想を調べて
 良いと思う人に投票しましょう! 自分の地区に誰も良い人がいなくても
 その中から順位をつけて、こいつらよりは、マシ・・・な人に投票しましょう!

無投票がなぜいけないのかは、組織票に負けてしまうからです。

 150人分の票の地区があって、悪い人が50人分の票を用意できるとしましょう
 普通なら ●50: ○100で、悪い人の勝ちにはなりません、しかし
 
 ●50(組織票) : ○40 : △60(無投票)だと、悪い人が勝つのです。

 さらに立候補者が多くいる地区だと、○40の票はさらに小さくなってしまいます・・・

☆投票に行く人が増えるほど、組織票を弱体化できます。☆

  他の候補者が、組織票よりたった1票多く取るだけで、悪い人は落選するのです。
 あなたがその決め手の一票を持っている。選挙に行きましょう! 

 白紙票で出すと、売国奴が後から不正に書いてしまうかもしれないので注意 

おつ
旅SSは期待できる

深海側のがメインを張るのはいいけど…エタらないでね?
深海メインのSSは結構エタってるから…

投稿スレのアレを覚えている方がいたとは…
エタは…実はこの話は9割方書き溜めが終わっている時点でスレを立てたので、よほど大幅に矛盾した設定を見つけない限り恐らく大丈夫です…多分(朧並感)
では本日分行きます

────────────────────────



「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま、でした」

平らげた魚を片付け、寝る準備をする

海に飛び込んで磯臭いが、風呂は次に町に着いたときまでお預けだ

時刻は21:00と言ったところか

「む、そういえば…」

私はあることに気が付く

そう、就寝道具は一人用しかないのだ

深海棲艦なんぞのために、自分の安眠を奪われたくはない…のだが、

「…………」

北方が期待に満ちた目で就寝道具を見ていたため、

「ほら、これにくるまって寝るんだ」

と譲ってしまった

幸いにもテントは二人分くらいのスペースはあるし、季節も秋に入りかけで気温は丁度良い

暫く天井を眺めていると、すぐに寝息が聞こえてきた

北方をみると、足を曲げ体を丸めるような寝相で、見ている分には人間の子どもとなにも変わらないように見える

それにしても、明日からコイツを連れてどのように行動したものか…

そもそも何処へ行くと言うのか、明日決めねばならない

馬鹿正直に何もせずに歩いていたら直ぐに通報されてしまうだろう

何か対策も考えねば…

いや、本来ならそれが当たり前で、私がコイツを鎮守府なり憲兵なりに突き出すと言うものだ

しかし、北方は人間を襲わないと言った

私は、深海棲艦である北方に興味を抱いているのかもしれない

ただただ目的も見失いかけるほどの虚無の中、旅をしてきた私を変えてくれるかもしれないという期待と共に

深海棲艦と分かり合えるかもしれないというあの日の淡い希望を見ながら

私は懐からあるものを取り出した

それは私にとって、この旅をしている理由のようなものだった

しばしそれを見つめ、また仕舞う

まぁ、難しいことは明日考えればよかろう

そう考え、私は眠りに落ちた

────────────────────────



朝、最初に感じたのは腕にある生暖かさだった

妙な感覚に違和感を覚えながらも腕を見る

北方が腕に抱きついていた

「!…………」

一瞬大声を出しそうになったが、直ぐに飲み込む

いつの間に近づかれたのか…

しかし、このままでいるわけにもいかない

「おい、北方、北方」

体を揺すり、目覚めを促す

幸い北方は直ぐに目を覚ました

「……ん…」

「よお、おはよう」

「おはよう…じい…」

目を擦りながら話すその様は非常に愛らしい

深海棲艦でなければだが

「さて、今日からまた旅に出るわけだが行き先を決めていなくてな。お前さんが行きたい場所に行こうと思う」

取り敢えずの行き先を聞いてみる

もしコイツが行きたい場所に行ければ、そこで別れることができるかもしれないからだ

「………あっち」

北方は北の方を指した

「北か…しかし、そこに行く理由でもあるのか?」

「………呼んでるの」

「何がだ?」

「…………?」

首をかしげた

呼んでる…一体何のことだ

まぁ、深海棲艦の思考なんざ考えても仕方ない

そんなことより行き先も決まったし、これから北方と安全に行動するためあるものを渡さなければならない

「北方よ、これからはお前さんはこれを着てくれ」

私は黒い雨合羽を北方に手渡した

少し大きめではあるが、全身をすっぽり隠すのには丁度良い

頭巾も深く被れば目の赤さを誤魔化せるだろう

雨合羽を着込んだ北方は、なかなか様になっていた

本人もまんざらでもなさそうだ

「さて、ここから北方向に一番近い町は…ふむ。そう離れてはいないな」

地図を見て目的地への足掛かりを見つける

北方は子どもの姿をしているが、昨日の様に運動能力は私より高いだろうから疲労などは問題ないだろう

「では、行くとしよう」

「…しゅっぱーつ」

────────────────────────




すぐそばではないが、日が暮れる前には町に辿り着いた

北方も疲れているわけではなさそうだ

「じい、今日はここに泊まる…の?」

夕飯前にと与えた握り飯を食べながら北方が尋ねてきた

「そうだな。宿を決めなくては」

とはいうものの、普通の宿では北方の正体が割れる危険性がある

「どうしたもんか…」

「どうしたもんかー」

能天気に腕を組んだ私の体勢を真似る北方

夕方の仕事帰りと出店の喧騒に包まれながら考えていた時だった

「…あれ?おーい、まさかお前!横須賀じゃないか!?」

「む?」

私の名を呼び、声をかけてきたのは長身の男

「久しぶりだなオイ!」

「はて………」

だが私はその男に見覚えがない

「誰だっけ…」

「ひでえなお前」

がっくりと首を落とす男

「呉だよ!呉!現役時代によく演習しただろう!?」

「うーむ…」

名前を元に過去を探る

そして一つの記憶に辿り着いた

「あーあのヘタレか」

「ヘタレってなんだよ!確かにあの頃は足がすくんでいたけど……」

「いつも艦隊指揮がぐちゃくちゃで私の圧勝だったな」

そうだった

この男は私が昔、軍に所属していた時の知り合いだ

私が軍を辞めたとき以来会っていなかったのだが…

「どうしてこの町にいる?お前の所属はもっと別の鎮守府だったはず」

「まぁ、色々あってな…取り合えずそこの店に入ろうぜ!」

「なにやら事情がありそうだな…」

「じい、この人だぁれ?」

「ん?その子はなんだ?」

「!」

北方はいつの間にか私の背中に隠れていた

正直すっかり忘れていた

しかし不味いことになったな…

北方をここに置いていくわけにはいかないし、かといって事情を話すわけにも行くまい

どう誤魔化したものか…と考えていると、

「小さくて可愛いなぁ、どれどれ顔を見せてくれよ!」

と言って、何の躊躇いもなく北方の頭巾を外した

一瞬だけ北方の白髪、紅い目が露になる

「………は?」

時間が止まった

私はバッとすぐに頭巾を被せ直した

幸い通行人には見られなかったようだ

が、コイツには…うむ

「オイ、それってまさか…しんか…オブッ」

口は滑らせる前に塞ぐしかあるまい

私は生まれてきてから一番いいだろうと思う笑顔で言った



「言ったら殺す」



呉は涙を流しながら首を何度も縦に振った

今日はここまで
次の更新でようやく艦娘が一人だけ出てきます


呉提督は人が良さそうだなぁ

乙乙

呉はいわゆる便利キャラですね。便利すぎる構成になってますが
では本日分行きます

何かを察した呉によって連れてこられた場所は、町の外れにある小さな居酒屋だった

「ここなら、人目を気にする必要はないぞ」

「ありがたい」

「いい匂い…する…」

呉が木製の扉に手をかけ開けると、暖かい橙色の光の満ちる落ち着いた内装が広がっていた

しばらくすると、奥から出てきた一人の女性が挨拶をしてきた

「いらっしゃいませ…あら、呉様でしたか」

「よう鳳翔、空いてるか?」

「はい、ご案内致します」

「じい、お腹空いた」

「先ほど握り飯を食ったばかりだろうに…全く」

「うふふ、ご注文が決まりましたら申し付け下さいね」

鳳翔と名乗る女性が微笑む

ただの女将にしては何か深いものを感じる

ひとまずカウンターの席に着くと、呉が話しかけてきた

「ああ横須賀、鳳翔にならその子の姿を見せても大丈夫だ」

「………本当か?」

「あいつは俺の知り合いでね。戦争初期は活躍していたんだが、今は引退して店を開いてるんだ」

なるほど元艦娘であったか

戦争初期の艦ならば私が知り得ぬのも仕方ないかもしれん

一応、呉の知り合いなら信用できるであろう

この男は昔から情に厚く嘘はつかなかったしな

「北方、頭巾を取ってもいいぞ」

「わかった…頭がぼさぼさ…」

北方の美しさすら感じる白髪が露になる

頭巾の癖毛さえなければ見とれていたかもしれない

鳳翔殿は少し驚きながらも落ち着いる

「…驚きました。まさかその子は深海棲艦なのでしょうか?」

「さっきは口を塞がれたが、今度は事情を聞いてもいいか?」

ここまで来ては、説明するしかあるまい

「……私もこいつとは出会ったばかりで、詳しいことは知らん」

「詳しいことは分からないって…そんなのをよく連れ回そうと思ったな…」

「北方…といいましたか。見たことのない深海棲艦ですね」

「こいつは北方棲姫という。一つだけ確かなのは、北方は人を襲わず、艦娘にも現状無反応だということだ」

呉は喉に魚の骨がつまったかのような顔をしている

鳳翔殿が顎に手を当てながら言った

「確かに引退した身とはいえ、私に敵意を向けていませんね」

「全く訳のわからない奴だな…」

「ああ…だがこんなやつを海軍や憲兵に突き出すのは何となく憚られてな…興味深さで一緒に旅をしている」

「お前は昔から変なことするなぁ…現役の時も深海棲艦相手に最前線で指揮をしたりな」

「あれは無線なんかよりも前線で指揮した方が正確に命令できる合理的な手段だ」

「いや、流れ弾とかあるじゃん」

「百聞は一見にしかずと言うだろう……む?なんだ北方よ」

「じい、ご飯…早く…」

三人で話していると、北方が催促をしてきた

アピールのつもりか、自らの腹をさすりながら私の袖を引っ張ってくる

お前について話しているのに緊張感のないことだ

「ああ、ごめんなさい。今何かお出ししますね。お刺身でよろしいでしょうか?」

「うん、それで頼むよ。お前もそれでいいか?」

「私は構わんが…北方、お前さんはどうだ?」

「たぶん…大丈夫?」

「本当に大丈夫なのか…?横須賀、どうなんだよ」

「私が知るわけないだろう…」

「まぁいいや、じゃあ鳳翔頼むよ」

「かしこまりました」

呉が注文すると鳳翔殿は店の奥へ下がっていった

呉が注文すると鳳翔殿は店の奥へ下がっていった

「確かに、深海棲艦とは思えない緊張感のなさだな…」

「だろう?」

「お前も爺とか呼ばれて随分なつかれてるじゃん。なぁ爺さん」

「その呼び方はやめろ……私はそんなに老けて見えるだろうか…」

呉と苦笑いしながら言い合う

懐かしい気分に浸るが、他に聞きたいこともある

「さて、こちらから話せることは話した。次は呉、お前の事情を聞かせてくれ」

「俺のか…横須賀は近々大規模作戦が行使されるのは知っているか?」

「知らん、退役してからはずっと旅をしていたからな。世の中の事情には疎いのだ」

「世間…知らず?」

「お前は黙っていなさい」

茶々を入れてくる北方を制する

こいつ意外と語彙あるんじゃないか…?

「はは、ますます面白い子だな」

「北方のことは今はどうでもよい。それより、その作戦について教えてくれ」

「ああ…作戦名はAL/MI作戦。連合艦隊を用いた大規模作戦になる」

「ほぅ、ではその作戦の人員補充のためにこの地に呼ばれたということか」

「その通りだ。俺はAL海域担当だから、北を目指すことになる」

「北……か」

その地には私と北方も目指す場所だ

ちらりと北方を見る

醤油刺しや割り箸を手にとって遊んでいる

そのような作戦が発令される中、今からこいつを連れて北へ行くのは危険ではないだろうか…

「私たちも北を目指しているんだが、北は今どんな情勢なのだ?」

「横須賀もか?やめとけやめとけ。今はまだ落ち着いているけど、あと一月くらいで作戦実行だから段々と軍が規制を張っていくだろうし」

「ううむ…北方よ、やはり北へ行くのはよさないか?」

「やだ…」

「だが、お前の安全を考えるとな」

「やだ……やだやだ」

「俺からも言うよ。君が見つかったら確実に殺される。世間は甘くないんだよ」

「ダメ……呼んでるんだもん…」

もうこいつ放って逃げたい

でもまた追い付かれそうだしなぁ…

しかし昨日も言っていた、呼んでいる、とは本当に何のことなんだか…

少なくともコイツがこれほど強く否定するくらいにはこだわりのあることなのであろうが…

そんなことを考えていた折、鳳翔殿が料理を手に戻ってきた

「お待たせしました」

「へぇ、こりゃ見事な鯛の刺身だな鳳翔」

「ええ、漁師の方が数年に一度の大漁とかで、安く仕入れることが出来たんです」

「じい、食べてもいい?」

「ああ…たんと食べなさい」

北方は器用に箸を使って刺身を食べ始めた

「おいしい…!」

「あら、ありがとうね」

「その子、箸も使えるのか。もう殆ど人間と変わらないんじゃないか?」

次々と口に放り込む北方

人型深海棲艦の存在は世間にも広まっているが、その生態は殆ど分かっていないのだ

「話の続きだ横須賀。やっぱり俺は、北へ目指すのはやめた方がいいと思う」

「…………」

北方に対する義理などないし、見捨ててももちろん構わないのだが…

「私はそれでも行くことにする。宛も無い旅だ、何か刺激も欲しい」

「どうしてそこまでそいつにこだわる?やはり軍を辞めるきっかけになったあの…」

「その話は止めてくれ」

「……じい?」

呉を些か強い口調で制したせいか、北方が食べる手を止める

だがこの話は、話題にしたくはない

「…悪かった。そこまで言うなら止めはしないよ。だけど、覚悟はしておけよ」

「ふん、死ぬ覚悟など軍に入ったときから今まで捨てたことなど無い」

どうせこの身も大分ガタが来ている

いまさら怖がることなどなにもない

「ふふ、話が纏まったみたいですね。では、お早めにお召し上がりくださいな」

「ああ、頂こう…って北方!私の分まで食べるんじゃない!」

「うまうま」

「まだ追加で注文もできるので、焦らずにゆっくり食べてくださいね」

そうして揚げ物、つまみなどを注文して腹が膨れてきた頃…

呉は私がすっかり忘れていたことを聞いてきた

「ところで横須賀、お前今日何処に泊まるんだ?」

………そういえば宿を決めていなかった

「その様子じゃ考えてなかったみたいだな」

「うるさい、と言いたいところだが本当に困った」

北方を連れたままではやはり野宿するしかないだろうか…

せめて一風呂浴びたいところだ

「それなら、私のお店にそのまま泊まっていきますか?お風呂もありますし」

鳳翔殿が魅力的な提案をしてきた

「ふむ、とてもありがたい提案だが本当によろしいのか?」

「ええ、たまに私も仕込みが長引いたときなどにここで寝泊まりしているので、そこの部屋をお貸しいたしましょう」

「では世話になろうか」

「ありがとう…ございます」

「ふふ、どういたしまして」

北方が礼を言う

しかし、コイツ出会ってから大分話し方が普通になってきたな

出会いたての頃は言葉すらあまり発しなかったというのに

「決まったみたいだな。じゃあ今日は解散とすっか」

「ごちそうさま…でした」

「はい、お粗末様でした。北方ちゃんはちゃんと言えて偉いわね」

「ん…」

鳳翔が北方の頭を撫でている

北方も気持ち良さそうに目を細めていた

「呉、今日は何かと世話になったな。色々話してスッキリしたわ」

「いいってことよ。珍しいもんも見れたしな」

そう言って呉が北方を見る

だが北方は私の背に隠れてしまった

「はぁ、人見知りか…鳳翔にはなついてるのは母性か何かかな…」

肩を落とす呉だった

そういえば、とあることに気がついた

「なあ呉、お前、秘書艦はどうしたのだ。普通は連れているはずだが」

そう聞くと呉はビクリと震え、ぎこちなくこちらを見てくる

「秘書艦?アハハ、ナニソレ、俺知ラナイ」

まるでからくりのような口調になっていた

…何か苦労していることがあるのだろう

そっとしておくのも友としての気遣いだ

今日はここまで
次回「ほっぽ、お風呂に入る」エロはないよ!てかシリアス方面になっちゃうよ!

おつ

おつ

乙乙

本日分行きます
改めて読み返すと話が急ピッチすぎるなぁ…でもこれ以上は盛れないダメ書き手なわけで

かくして夜の食事会は幕を閉じた

呉はとてつもなく嫌そうに、というよりは何かを恐れるように鎮守府へ帰っていった

鳳翔殿は片付けをした後風呂を炊き、店の鍵を渡して去っていった

店に泊まる私たちは寝床の準備をして風呂に入ろうとした……

が、そこで問題が発生した

「北方、お前風呂は一人で入れるのか?」

「?風呂ってなに」

この状態であったため、仕方なく北方と共に風呂へ入ることとなった

幸い、幼子の体に興奮するような趣味は持ち合わせていない

「ほれ、服を全て脱ぐんだ」

「うんしょ、うんしょ」

「その首輪みたいなのは取れないのか」

そのような会話をしつつ入浴

「北方、この石鹸を使い泡立てて体を洗うのだ」

「わかったー」

「髪は自分で洗えるか?」

「やって?じい」

「むぅ…」

仕方あるまい

人間と変わらぬ姿をしていても、その文化には疎いはずだからな…

「熱い湯は大丈夫なのか?」

「多分?」

「多分て…自分の体だろうに…」

石鹸を泡立て、北方の髪を洗う

髪は艶やかな手触りであり、痛みもない様子であった

「ん…じい、くすぐったい」

「我慢せんか」

「んきゅ、目に入って…痛い…」

「塞いでおけと言ったであろう…」

髪を洗い終えた後に体も洗ってやった

もはや私が全てやっている

こうして北方を洗い終えた後、漸く自分の体を洗っている時北方からある提案された

「じい、背中…やりにくいなら私がやろっか…?」

こいつに背中を無防備にして大丈夫かとも思った

が、その目には本心からの親切が読み取れたため飲み込むことにした

「頼めるか」

「うん」

「いいか、あまり力強く擦るなよ?お前の力で擦られたら背中が平になっちまう」

北方は手加減した力強さで擦り始めた

ちょうどよい心地で思わず溜め息が出る

「じい、どうだった?」

「悪くない…いや、良かった。ありがとうな」

「ん…」

礼をいい頭を撫でる

やはり気持ち良さそうに目を細める辺り、見た目通りの子供か

「さて湯に浸かるか」

「はーい」

幸い湯船はある程度の大きさがあり、私と北方が一緒に入っても問題なさそうだ

湯船に浸かると最近の疲れが溶け出したかのような感覚に陥る

北方は身を縮めながら浸かっている

「さっきも思った…けど、じいの体……傷いっぱい」

北方がそう言った

体の傷は軍にいたころ、訓練で付いたものが殆どだ

「特に、この背中の傷が…凄く痛そう」

「……今では跡だけで問題ない」

「違うの、傷じゃ…なくてじいのもっと別の…よくわからないけど」

「………」

湯船にタオルを浸す

「なぁ北方、こんな昔話があってな」

「?」

「ある馬鹿な男がいた。その男は人間と化け物の戦いを見て、『戦争は自分が止める!』と意気込んで軍に入り指揮官となった」

タオルに空気を取り込み、風船状にする

北方は私をじっと見つめている

「そいつはそんな生活の中、部下である女に惚れてな…ついには将来を誓い合うまでになった」

「大事な…人?」

「ああ…だが、男の指揮のミスでその女は死んでしまった…男は軍を辞め、人知れず何処かへ行ったらしい…」

空気の入ったタオルを握りつぶす

中に入っていた空気がボコッと音をたてて逃げていった

「その人は、辛かったの…?」

「辛いと言うか、よく分からなくなった。女の死に際の作戦にの時、男もそばにいてな…女を庇ったが、駄目だった」

「いや、寧ろ庇ってしまったがゆえに指揮官が動けなくなり、結果部隊が壊滅してしまったのだ…」







『ウチが死んでも、諦めたらあかんで…人間を、敵を、理解できるのは同じ苦しみを知ったキミだけなんやから。憎むんやない、助けるんや』








「これが女の死に際の言葉だ。憎まずと言われても、復讐したくなる気持ちに駆られどうすればよいのか分からなくなった」

「……私みたいに、じいが私と一緒に……いてくれるようなことじゃ…ないかな」

北方がこちらを見たまま言う

深海棲艦と共に助け合い、理解し合うことが出来るというのか?

そんなことは……

「………そろそろのぼせてしまう。出ようか」

風呂から上がる

くらくらするのはのぼせたせいかそれとも…

「じい」

「なんだ?」

脱衣所への扉に手をかけると、北方に呼び止められ、言われた

「私は今…楽しいよ」

「………そうか」

疲れがとれ清潔な体を手に入れた代わりに、曇天の空のような気持ちを新たに手にし風呂を後にした

────────────────────────




深夜、北方を寝付けた後何となく寝付けずにいた

懐からあるもの…艦載機を取り出す

これはあいつ…龍驤の形見だ

旅をしているのは何故かを考えるとき、いつもこれを眺めていた

自由に旅をしていると時折自分が何をしているのかを見失いかけるからだ

私は…北方に対する態度が段々と変わっているのを感じていた

深海棲艦は、実は話し合いが出来るのではないかなどという考えまで浮かぶ

今はまだわからない

だが、この北方との旅の終わりに何か答えが見つかりそうな気がするのだ

隣で寝ている北方を見る

こいつと同じ種族と戦っているとはとても思えない

まぁ今は、この旅を楽しむとしよう…

そう思い、寝ようとしたとき……外から足音がした

まさか、泥棒の類いか

鳳翔殿にここを任されている以上見過ごすわけにはいかない

北方を起こさないように部屋を出て、足音を探る

そうして庭に出ると、髪の長い女が佇んでいた

姿は暗闇に紛れ、他の特徴は掴めない

「誰だ。泥棒なら去れ。今なら見逃す」

相手の動きに注視しながら言う

すると女は笑いだした

何のつもりだと警戒を強くすると、女がこう言った

「北方棲姫ハ無事ミタイデスネ…」

「貴様、北方を知っているのか」

女は愉快そうに目を細めるばかり

「何とか答えろ!」

強い口調で聞き出そうとする

すると女は店の中…北方が寝ているあたりを指刺し言った

「クレグレモ、ソノ子カラ目ヲ離サナイヨウニ…連レテ来テクダサイネ…」

そう言うと女は最初からいなかったかのように闇に溶けて消えてしまった

「待て、どういう意味だ!北方と何の関係がある!」

叫ぶが、返事は帰っては来ない

「…一体なんだというのだ…何が始まろうとしている」

何もわからない

しばし、夜の闇に包まれながら佇んだ

────────────────────





朝、腕の生暖かい感触で目を覚ます

もしやと目を向けると、やはり北方が抱きついている

まさか私の腕が落ち着くと言うのか

「ほれ、起きろ北方」

「う…ん…?」

「朝だ。今日は長いこと歩くから、早めに出るぞ」

「はーい…」

寝ぼけ眼の北方と共に身支度を整える

北方の服は風呂の時以外着た切りだというのに、いつの間にか汚れが落ち臭いもない

体の一部なのか、艦娘の装甲のようなもので自動修復でもしているのか

「ふわぁ…」

「よし、では鳳翔殿に鍵を渡した後に北へ行こうか」

「んー…」

目をこしこしと擦り眠そうであった

ふらふらと歩いているが、間違っても頭巾は外さないで貰いたい

私自身も昨日のこともあり、よく眠れなかったのではあるが…

鳳翔殿の家に着いた

北方も歩いている内に目が覚めたようだ

家の戸を叩く

「鳳翔殿、横須賀だ。鍵を返しに来た」

「あら、おはようございます」

「おはよう。早朝から済まぬな」

「いえ、お構い無く。北方ちゃんもおはよう」

「おはよう…ございます」

和服を着た鳳翔殿が出てきて挨拶を交わす

北方にも気を配れる辺り、やはりこの方はただ者ではない

「一晩だが、泊めていただき感謝する」

「ありがとう、ございます」

「どういたしまして…何かお困りはしませんでした?」

「む…」

夜に見た女を思い出す

明らかに普通ではないが、話して心配をかけぬ方がいいだろう

あれはおそらく鳳翔殿の家ではなく我々を見ているはずだ

「いや、特には…」

「ならよかったです」

「お風呂…気持ちよかった」

「あらあら、満足してもらえて嬉しいわ」

さて、あまり立ち話で長居するのもなんだ

そろそろ行こうとしよう

「では我々は出発するので、これにて」

「気を付けてくださいね」

「ああ、重ねて感謝する」

と、出発しようとしたところ…

「おーい!」

「む?なんだ」

来たのは呉だった

何故か昨日よりやつれている

「ぜぇ…ぜぇ…間に合ったか…」

「あら、呉様。こんな朝からどうされたのですか?」

「なんだ、見送りにでも来てくれたのか?」

「まぁそれもあるんだが…いい情報を仕入れてな」

「いい情報だと?」

「なにかなー」

「ああいや、いい情報、とは限らないかな…」

「ええい面倒な、早く要点を話してくれ」

呉をせかす

あまり長居していては早起きした意味がなくなる

「昨日も言ったが、北に馬鹿正直に行くのはやっぱり危険すぎると思ったんだ。だから代わりの道筋を教えてやる」

「代わりの道だと?」

「その道を使えば軍の監視をほぼ抜けれるはずだ」

「へーすごい」

北方が平坦な声で感嘆する

確かにそんな道があるのならば願ったりだ

だが呉の口振りからすると…

「危険な道なのだな?」

「ああ、整備の進んでいない海岸沿いの洞窟だ。あそこは北の町付近に繋がっている」

「呉様、あそこは確か…」

「そうだ鳳翔、あそこは深海棲艦が出ると言う報告が少なからず上がっている」

「何度撃退してもすぐに新しく沸くもんだからその内放置されてな…だからこそ穴場なんだ」

深海棲艦…確かに危険だ

だがどちらにせよ誰かに見つかってもいけないのだ

そう思えば、まだ対応が楽な深海棲艦の方がいいだろう

「…北方、どうする?」

「じいが行く方に…ついてく」

「そうか…よし!呉よ、案内を頼む」

「分かった…と言いたいところだが、俺はすぐに鎮守府に帰らなければいけないんだ」

「役立たずー」

「ひでぇや北方ちゃん…」

呉が項垂れる

まぁこいつのことだ、おそらくは…

「地図でも用意しているのだろう?」

「おー、よく分かったな。ほら、持ってってくれ」

呉から一枚の紙を手渡された

手書きの地図のようだが、洞窟までの道だけではなく抜けた先の道まで描いてある辺り中々便利だ

「洞窟内は一本道だから迷うことはないだろう。それに普通の道より近道にもなるはずだ」

「わかった」

地図をしまい、今度こそ出発する

「それでは呉、鳳翔殿、また会うことがある日まで」

「本当に気を付けてくれよ…何かあったら連絡してくれて構わない」

「行ってらっしゃいませ。北方ちゃんも気を付けてね?」

「ありがと、ほーしょーさん」

二人に手を振りながら次の目的地まで歩き出したのだった

────────────────────────




「横須賀の奴、行っちまったな…」

「やはり心配ですか?」

「当たり前だよ。あいつは付き合いのある提督でも数少ない同期の生き残りだ」

「………かれこれ深海棲艦との戦いが始まって30年程経ちます。何時になったら終わりを迎えるのでしょう」

「さてね…だが、あの北方棲姫みたいなのもいるんだな」

「はい、まだまだ私たちも知らないことだらけです」

「ところで呉様、鎮守府に戻らなくてよろしいのですか?」

「いや、すぐ行くよ。横須賀が動きやすいようにしてやりたいし」

「それに、早く行かないと昨日みたいに鎮守府に帰ったらアイツにまた搾られるし…」

「ふふ、仲良くやっているようで何よりです」

「他人事だと思って…やれやれ」

「んじゃ、行く…」

「提督ー!何故また榛名を置いて行ってしまったのですか!」

「うげぇ榛名!?なんでここが…」

「呉提督の考えていることならこの榛名、何でもお見通しです!」

「んなバカな…」

「さぁ提督、鎮守府に戻って溜まった執務をこなしますよ!ついでに榛名との夜戦の準備も!」

「ちょ、引っ張るなって!てか夜戦なら昨日も…」

「また何処かへ逃げられたらたまりませんから…絶対に離しません!夜戦に関しては榛名はまだまだ満足していませんし」

「や、やめろ!最近ただでさえ歳で増えてきた白髪がさらに…ほ、鳳翔!助けてくれ!」

「ええと…ならこれをお持ちください」

「なにこれ…精力剤じゃん!」

「頑張ってくださいね、呉様」

「ありがとうございます鳳翔さん!榛名、全力で参ります!」

「二日続けてはキツすぎ…あ”あ”あ”あ”!!!」

「はい、榛名は大丈夫です!」

「さて私もお店の仕込みをしなくっちゃ」

「横須賀様…御武運を」





────────────────────────






「……ん?」

「どうしたの?」

「うーむ…いや、なんでもない」

どこからか呉の叫び声が聞こえてきた気がしたが…まぁ気のせいだろう

本日はここまで
次回、「洞窟探検と初戦闘」
なお戦闘シーンは超短い模様

この榛名は大丈夫な榛名ですね




「ここか…」
「おおー」
呉の地図を頼りに例の洞窟へと辿り着いた
周りの道は寂れており、人通りなど全くない
海沿いにあった為、洞窟の中からも少なからず海水の気配と匂いがする
さらに中は正午で日が照っているというのに暗く、洞窟内がそれなりに広く長いことを表していた
「さぁ、中へ入るとしよう」
「れっつごー」
……なんだか北方の言語能力が日に日に増している気がしてならない
もはや言葉を発するときに溜めを作ることも少なくなっている
進化しているのだろうか、それとも地上に、人間に適応しているのか
まぁ今は考えても仕方あるまい

間違えて書き込みボタン押してしまった
修正版出します

────────────────────────




「ここか…」

「おおー」

呉の地図を頼りに例の洞窟へと辿り着いた

周りの道は寂れており、人通りなど全くない

海沿いにあった為、洞窟の中からも少なからず海水の気配と匂いがする

さらに中は正午で日が照っているというのに暗く、洞窟内がそれなりに広く長いことを表していた

「さぁ、中へ入るとしよう」

「れっつごー」

……なんだか北方の言語能力が日に日に増している気がしてならない

もはや言葉を発するときに溜めを作ることも少なくなっている

進化しているのだろうか、それとも地上に、人間に適応しているのか

まぁ今は考えても仕方あるまい

────────────────────────




それにしても洞窟内は暗い

ライトを灯してはいるが足元を確認できるくらいで先は見通せない

おまけに足元は海水が溜まっており、注意して歩かなければ足を滑らせてしまうだろう

北方の方を見る

「んしょ、んしょ」

太股の辺りまで水に浸かっており、とても歩きにくそうだ

仕方あるまい

「北方よ、私の背に乗るがいい」

「いいの?」

「そのままでは歩きにくかろう」

「じいが…大変じゃない?」

「お前一人くらい荷物にもならんよ」

「じゃあそうする」

中腰になり北方を背中へと導く

背中によじ登った北方の足を抱え、再び歩き出す

北方は見た目通り…年頃の子どもの重さであった

体が密着したため、北方の体温を感じる

深海棲艦はやはり人間と変わらないところが多い

そういえばずっと気になっていたのだが…

「お前は戦闘とかは出来るのか?」

「戦闘?うん、できるよ」

「どんな風に戦うのだ」

「んー……よいしょ」

気の抜けた声と共に、北方の手元には主砲と思わしきもの、宙には見たことのない物体が現れた

主砲は深海棲艦特有の禍々しい生きているかのような迫力がある

宙に浮いている物体は丸い形状で白いものと黒いものが混在しており、所々ひび割れている

何故か猫のような耳も生えている

それらが北方を背負っている関係上私の首元にあるのだから冷や汗が出た

「ほ、北方、これは私を襲わないだろうな…なんだか自立飛行しているようだが…」

「大丈夫…だよ。少し意思があるけど…動かすのはほとんど私だから」

「そ、そうか…」

「かわいい?」

「む、むぅ…か、可愛いのではないか?」

「そっかー」

「それで、これでどう戦う……!!」

「どうしたの、じい?」

「シっ…静かにするんだ」

北方と会話を繰り広げていると、洞窟の奥に開けた場所があるのが確認できた

だが問題なのはそこではない

そこらに4体ほどの深海棲艦と思わしき個体を確認したのだ

目が光っている故ほぼ間違いないだろう

即座にライトの光を消す

見るに、エリートの駆逐が2つ、ノーマルの軽巡が1つ、エリートの人型の何かが1つ、確認できる

深海棲艦は目や体の一部が光るため確認しやすい

こちらにはまだ気がついていないようだ

「さて、出るとは言われたもののどう対応したものか。あまり派手なことはできぬし…」

石ころを投げて気を逸らした隙に突破するか…?

などと対策を考えつつどのタイミングで飛び出すか図っていると、北方がポツリとこう言った


「ちょうどよかった」


「なにがだ北方」

「じい、私の戦いを…見てみたかったんでしょう?」

「お前…まさか!?」

「ちょっとアレで見せてあげるね」

「待て!危険だ…んが」

北方が私の頭を思い切り踏み蹴り、敵に突っ込んでいく

バチャバチャと音をたてながら近付いたため、早速敵の軽巡…あれはホ級か…それに見つかっていた


だが遅い


密かに先行していた北方が出した、あの丸い浮遊物が爆撃を開始したのだ

衝撃に揺れる洞窟内

あえなくホ級は爆散し、被害はイ級と思わしき駆逐2隻にも与えていた

漸く臨戦態勢に入った敵だがやはり遅い

次の瞬間イ級2隻は北方の砲撃により撃沈し、最後に残ったエリートのリ級と思われる個体に対峙した

リ級は何を言っているのかわからない叫び声をあげながら北方に砲撃した…しかし

「よわい…」

北方はそれを軽く避け、リ級に撃ち返した

リ級の撃った弾が壁に当たり、再び洞窟内が大きく揺れる

北方の砲撃が直撃し、跡形もなく崩れ落ちるリ級

この間10秒も経っていないだろう

パッパと服を払い、満足気な顔をして北方は私の元に帰ってきた

「どうだった?」

無邪気にそんなことを聞いてくる北方

だが私は気が気でなかった

なぜなら…

「馬鹿者が!洞窟が崩壊したらどうするつもりだ!」

北方の頭をはたく

「うぐぅ…痛い」

「全く…幸い岩壁が少し崩れるくらいで済んだから良かったものを…生き埋めになったら元も子もなくなるのだぞ!」

「……ごめんなさい」

しゅんと俯いてしまった

どうにもこういうのには弱い

「はぁ…一応礼を言おう。私一人ではあの数の深海棲艦は対処できなかったはずだ」

「えへん、どういたしまして」

すぐに立ち直りこちらを見てくる北方

「調子に乗りおって…しかし、あの浮遊物は艦載機の様なものだったのか」

「うん、凄いでしょ」

「確かにな…従来の深海棲艦の使っていた艦載機よりさらに強力なようだ」

「だって…新型だもん」

こいつ今何と言った?

新型だと…?

深海棲艦もやはり技術が進化しているのか

いやそれよりも…

「何故お前がそんなものを持っているのだ」

「さあ?知らない」

「お前が急に流れ着いたことと関係があるのではないか?」

「ん…どうだろ…全然憶えてないんだもん」

だめだ、話にならない

ならばもう一つ

「さっきの奴等、一応お前と同じ深海棲艦であろう?潰し合ってよかったのか?」

「別に…関係ない。そもそも味方とかない」

「どういうことだ?深海棲艦は陣形を組むほど連携が出来ているではないか。それなのに味方ではないと?」

「ああいうのはもっと…上の存在に指揮されてるだけ。単体や野良じゃ関係ない」

「お前も姫級ならば指揮できるのではないか?」

「無理…だと思う。指揮するには…ある程度波長や攻撃対象を合わせる必要があるから」

「そういう記憶はあるのだな。艦載機の入手場所や自分自身の記憶は怪しいというのに」

「本能的なものだから…いつの間にか出来るようになってる」

「ふぅむ…」

非常に興味深い話を聞くことができた

深海棲艦の統率や生態の一面、連中独自の技術など軍に発表したらそれだけで出世できそうな情報だ

まぁ私は既に辞めた身故、関係ないが

「じい、先に進も?」

「む?ああ、そうだな」

北方に催促される

同時に北方は私に寄り添ってきた

「ん」

「なんだ?」

「背中、乗せて?」

「ああ…ほれ」

北方が背中によじ登ってきた

ぎゅうっと首に手を回され、北方の微妙な体温が伝わってくる

「……くく…」

「どうしたの?」

「いや、少し昔を思い出してな…」

アイツもこうしてよく出撃帰りに背中に乗せていったものだ

胸が薄く、運びやすいとよくからかったものだ

あの日も、あいつが死んだ日も…冷たくなっていく体を感じながら…

「…………」

龍驤…私は今、どんな風に見えるだろうか

死んだものに意味もなく思いを馳せながら洞窟を進んでいった

今日はここまで
次回「洞窟を抜けた先は…」
やっぱり展開早すぎる気がしてならない。長編にはならなさそうかな…


この雰囲気好きだわ

初(長編)ってことは短編は書いてたの?何書いてたか教えて

>>102

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NEWソートの奴は私用のメモ書きと練習帳みたいなもので、他人が読むことをあまり想定しておらずSSとは言い難いので読まない方がいいです


では投下します

─────────────────────────



洞窟内を歩いて数時間経った頃か、先から光が漏れているのが見えた

「北方、出口だ」

「んー……?」

北方はいつの間にか背中で寝ていた

少しゆすって目覚めを促す

「ほれ、もうすぐ外に出るぞ」

「………ぐう……」

だが返事をしただけでまたすぐに寝てしまったようだ

「仕方ないやつめ」

さて、呉の言った通りこの道は近道でもあったようだ

こんなにも早く出口に着くとは予想外だったが

久方ぶりの明るい光に足取りも早くなる

しかし、出口付近である異常に気がついた










鳳翔殿の店で泊まった晩に見た、あの髪の長い女が出口の前に立っていたのだ




警戒を強くする

「また貴様か…何用だ。一体何を企んでいる」

女の姿は逆光の影響ではっきりと確認できない

女は薄ら笑いを口に張り付けながら言う

「フフフ……ココマデ来マシタカ…ヤハリ正解ダッタ…」

「正解?どういう意味だ」

「準備ハ出来タ…後ハソノ子次第……時ハモウ…差シ迫ッテイル」

「質問に答えろ!北方と何か関係があるのか!?」

「フフフ……直グニ分カリマスヨ…」

そう言うと女はあの夜のように忽然と姿を消した

「ちっ…また逃げたか…!」

「んん…じいうるさい」

叫んだせいか、北方が眼を覚ました

よく考えればこいつが起きていればあの女のことがわかったかもしれない

過ぎたことだが少し後悔した

「北方、髪の長い女の記憶はあるか?」

「んー…?全然」

一応聞いたが無駄だったようだ

あの女…二度も私たちの前に現れるとは、最早偶然ではあるまい

この洞窟を通ることを知っていたようであるし、どこかで監視されている可能性もある

分からないことだらけだ

「じい、なんか寒い」

北方が唐突に言った

言われてみれば、なんだか肌寒い

「そういばそうだな…」

「っくちゅん」

「…私の首に向かってくしゃみをするのはやめろ」

唾液がべっとりとついてしまった…

「あー…ごめんなさい」

「…もうよい」

とりあえず洞窟から出るとしよう

外が明るい内に町にも着いておきたい

首を拭きながら出口へ向かうのであった

─────────────────────────



「わぁ…」

「なんと…」







洞窟を抜けた先には白銀の世界が広がっていた







わたしの足首が隠れる程度には積もっているし、強くはないが雪も降っている

なるほど寒いわけだ

「じい、きれいだね」

「そうだな…寒いのは勘弁だが」

「うん、寒い」

「ふむ、確か鞄に…あった」

北方を一度背中から下ろし、鞄からマフラーと手袋、肩掛けを取り出す

「ほれ、これをつけるといい」

「ありがと…」

北方に白い手袋を渡す

ミトンのような構造をしている上に、私の手に合った大きさなため北方には少し大きいが、

「あったかあったか」

本人が気に入っているのでよしとしよう

それにしても、手袋は替えのものを含めて二つあるが、マフラーは一つしかない

仕方あるまい

「北方、お前がこれをつけな」

「なにこれ?」

「マフラーと言ってな、首に巻いて寒さを凌ぐものだ」

「でも…じいが寒くなっちゃうよ?」

「私は構わん。そんな柔な体はしとらん」

「んー…こうすればいいよ」

北方はわたしの背中によじ登り、マフラーを私の首と自分の首両方に巻いた

長さが足りていないが、無いよりはマシだ

「お前は優しいな…」

「そうかな?」

「じゃあ最後にこの肩掛けを被るといい」

「うん…大分あったかくなったね」

「そうだな……では行こうか」

少し奇妙な見た目ではあるが、体は温かい

肩掛けが落ちないように気を配りながら積もった雪に足跡を付け歩き始めた

洞窟から歩いて一時間程度、町が見えた

北の町特有の急斜面の屋根・床の高い玄関が見渡せる

時刻は夕方17:00を回ったくらいか

まだ明るい内に町へ着けてよかった

こんな雪の中、夜中に宿を探すのは一苦労だ

人通りもかなり少ない

「さて、何処に泊まるとしようか」

「じい、お腹空いた」

「そうだなぁ…昼は食べなかったしな」

呉の地図を見る

町の大体の見取り図まで書いてあるため、これを頼りに動けばいいだろう

「じい、裏に何か書いてある」

「む…なんだこれは」

北方に言われた通り裏面を見ると、何かが書いてあった

「なになに…」




『北方ちゃんがいたら、その町の宿探しに困るだろうと思っていいところを紹介しとくよ。先に店主には事情を含めて連絡しとくからそこへ行ってくれ。店主は鳳翔と同じ元艦娘だが、信頼してくれていい。風邪引くなよ? 呉』




「あいつめ…今度また礼を言わねばならんな」

「呉って実はすごい?」

「そうだな…私の大事な友だ」

「私もじいの友?」

「そうだなぁ…友と言うよ手のかかる孫だな」

「ひどい…」

「はっはっ、例えさ例え。さぁ、呉の紹介した宿へ行こう」

「はーい」

軽い冗談を交わしながら雪で人気の少ない通りを歩き始めた

─────────────────────────




「どうやらこの宿のようだな」

町の少しはずれた場所にその宿は建っていた

「ほーしょーさんのお店と雰囲気が似てるね」

「言われてみれば…」

二階建ての少し小さめの宿のようだが、窓からは橙の温かい光が漏れている

木造であるのも同じだ

「よし、入ってみよう。北方、背中から降りてくれ」

「うん」

マフラーをほどき、ぴょんと背中から北方が飛び降りた

頭巾に積もった雪がバサリと落ちる

さっきまであった体温による暖かさが消え、体が震えた

扉に手をかけ開けると、やはり鳳翔殿の店で見たような内装が広がっていた

店には他の客は見当たらない

カウンターの奥で蒼い和服を着た女性をみつけたため、声をかけた

「済まぬが、一晩泊めていただけぬか?」

「すみません今日は貸しきりなんです…って…もしかして、横須賀様でございますか!?」

「あ、ああ…そうだ。呉と言うものから連絡が来ていないか?」

「はい、呉様からお聞きしております。お待ちしておりました」

和服の女性は礼をし、自己紹介をした


「龍鳳と申します。横須賀様…いえ、提督、私の事を覚えていますか?」


言われてみれば何処かで見たような顔立ちである

唸りながら記憶を捻り出しているところに、龍鳳が大きなヒントをくれた


「て・い・と・く。提督?この感じ、記憶にありませんか?」


「あ…ああ!まさか大鯨か!」

「??」

話についていけない北方が棒立ちしていたが、私は驚きでそれどころではなかった

本日分終了
次回「じいの覚悟」
前半が終わりました。次回から超展開へと入ります



いろいろとつながりそうな伏線が……

────────────────────────





「はい、龍鳳特製のスープです。まずは暖まってください」

「ありがとな、大げ…龍鳳」

「呼びにくかったら大鯨でも構いませんよ?」

「いや、名前は大事だ。ちゃんと呼ばねばなるまい」

「そういうところ、全然変わってませんね…」

「…おいしい」

「北方ちゃん…でしたか?お代わりもあるので好きなだけどうぞ。他のお料理もあちらにありますから」

「いっぱい食べるのー」

パタパタと料理を取りに行く北方

北方の頭巾は既にとってある

呉が事前に説明してくれたお陰で円滑に事が進んだ

それでも龍鳳は驚いていたが、まぁ無理もない

さて、龍鳳には聞きたいことがいくつかある

「龍鳳、お前いつの間に軍を辞めてこんなところに?」

「提督が抜けて少し経った頃です…他の皆も軍に残った方は少ないです」

「そうか…あと龍鳳、提督と呼ぶのはやめてくれ…私はもうそんな立場ではない」

「わかりました。ていと…横須賀様がいなくなってから代理の提督さんが着任されたのですが、皆さんの戦果が著しく落ちていって…そのまま一人、また一人と解体希望が出されていきました」

「私はメンバーの中ではかなり後まで残っていたのですが、戦力が足りなくなってしまったので軽空母に改造されたのです」

「そうだったのか…他の皆は元気にしているのか?」

「はい、私のように自営している方もいれば、企業に就職された方、軍にまだ残っている方、結婚されて主婦になられた方までいます」

「はは…みんな自分の道を見つけているようで何よりだ」

龍鳳のスープを飲む

体は暖かくなるのを感じる

もうひとつの質問をした

「呉の奴とはどこで知り合ったんだ?」

「呉様とは鳳翔さん伝で知り合いました。私がここを経営しているのも鳳翔さんの助言があったからなんです」

「鳳翔殿が…そうか」

彼女は本当に凄い方だな…

戦争も普通の生活も体験して、どちらにも精通している

感嘆していると龍鳳が身を乗り出してきた

「さあ、今度は私が質問する番です」

「……なんだ」

「どうして私達にろくに相談もせずにいなくなってしまったのですか?」

ずっと聞かれないように逃げ続けてきた質問

だが龍鳳には…元私の部下として知る権利がある

私は重い気分ながらもポツポツと話した

「……あの戦い…龍驤を失った戦いの後、私はあいつが言い残した言葉の意味について考えた」

「龍驤さん…」

「深海棲艦と分かり合え、などと言われてしまってな…どうすればよいか分からなくなったんだ」

「そんなことがあったのですね…」

「どちらにせよ、私はもう戦意というものが根こそぎなくなってしまった。そして龍驤の言葉を理解するために、狭苦しい軍を抜け各地を見て回ろうとしたのだ」

「確かに横須賀様とほとんど同じ理由…戦意喪失で軍を去った者も多いですし、仕方ないのかもしれません」

「私が情けないだろう…?着任したての頃はあれだけ張り切っていたというのにな…」

溜め息を吐きながら言う

愚痴を吐き出すというのは何とも情けない

そして龍鳳はムスっとした顔で言った

「はい、情けないです」

「ハッキリ言うなぁ…」

あまりに包み隠さずに言われた言葉に思わず笑いが出る

龍鳳は続けて言う

「でも、だからこそ私達に相談してもらいたかったです。一人じゃなく、皆で抱えれば潰されずに支えられたかも知れなかったのですから」

「……済まない」

「謝らないでください。横須賀様自分の選択に後悔はされていないのでしょう?」

「………」

「それに、あの深海棲艦…北方ちゃん。あの子が横須賀様が出した一つの答えじゃないですか」

「答え?」

大皿から直接料理を食べている北方の方を見る

美味しそうに自分の世界に浸っているようで、夢中になって食べている

「あの子をここまで無事に連れてきた…見棄てることも、何処かに突き出すことも出来たのにそれをしなかった…横須賀様は龍驤さんの言ったことを体現しています」

「…………」

確かに、元はただの旅の刺激が欲しかっただけだ

だが一緒に過ごす内に、もしかしたら深海棲艦とも分かり合えるのではないかという考えも湧いてきていた

あれは…北方棲姫は、私の旅の終着点なのかもしれない

「?じいも食べたいの?」

北方が視線に気付き、こちらに寄ってくる

私は北方の頭を撫でた

「うみゅ…」

気持ち良さそうに目を瞑る北方

北方といると心が暖かくなっていくような感じがした

「さあ!湿っぽい話はこれくらいにして、いっぱい食べましょう!」

龍鳳が料理をよそいに席を外した

龍鳳との会話で、私は一つの答えを出せた

北方が私にとっての答えならば…

私は北方を見て、決心した

「……北方、お前に渡したいものがある」

私は懐から古びた小さな艦載機を取りだし、北方に手渡した

「なに?これ」

「ゼロという艦娘が使う艦載機だ。お守りみたいなものでもある。私には扱えんし、お前にやる」

私はずっとこれに、龍驤の影にすがり付いてきた

答えが出なかったからだ

どうすればよいかわからなかったからだ

だが、今は違う

深海棲艦とは分かり合うことが出来る

奴等にも意思や魂があり、人間と同じように生きることが出来る

北方と共に過ごした日々…それが私の旅の答えだ

北方がゼロを抱える

「へー…なんだがしっくり来る」

「そりゃあよかった。大事にしてくれよ?」

「わかった」

大事そうに艦載機を抱える北方だった

「お待たせしました。私の自慢のフーカデンビーフ、味わってくださいね?」

料理を手に龍鳳が戻ってきた

「たべるたべる!」

「私も昼を食べていないことだし、いただこうか」

こうして料理がなくなるまで静かだが楽しい食事をしたのだった

────────────────────────






風呂も入り、寝ようとしたところ、部屋にいるはずの北方がいなかった

厠にでも行ったか…と考えていると、龍鳳がこう言った

「先程北方ちゃんが一人で外出ていっちゃいましたけど、よかったんですか?」

「なんだと!?あいつ、雨合羽を着ていないじゃないか!」

そんな状態で見つかれば即通報される

私は急いで服を着て外へ駆け出した

外は吹雪いており辺りを見回すのが難しいくらいだった

「くそっ何処に行きおった…」

自分が迷わないように、目印となるものを把握しながら歩く

すると、そばに北方の紅い瞳の光が見えた

すぐに駆け寄る

「北方!なぜ一人で勝手に外に出た!さぁ帰るぞ!」

「……………」

北方は返事をしなかった

引っ張るが、びくともしない

「何をしている!見つかる前に…」

「呼んでるの……」

北方が一人でにポツリと漏らす

「行かなきゃ……」

呼んでいる

旅の初めからずっと北方はそう言っていた

まさか、その呼んでいるものに引き寄せられているのか

……北方が帰ろうとしないのならば仕方がない

北方には宿から持ってきたコートを着せ、フードを被せた

こうすれば見つかっても大丈夫だろう

「さぁ北方、何処かへ行くならついて行くぞ」

「……………」

北方は何も言わず歩き出した

その手に先ほど渡した艦載機を抱きしめながら

今日の分終了です
次回、「北方暴走」
展開がトントン描写なのは多分二時間映画的な感じにしたかったからかもしれない。旅要素と噛み合わなさすぎィ!
もうすぐ書き溜めしてないゾーンに入るので毎日更新はできないかもです

ほのぼのとシリアスの配分がすごくいい

────────────────────────






北方は町から外れた陸続きの離れ小島に来て漸く止まった

吹雪は大分おさまっている

「…………」

相変わらず北方は何も言わない

ここに何かあるのだろうかと辺りを見回すと















あの女がいた















今度はハッキリと姿が確認できる

頭から生える二本の黒い角

黒く長い髪と同じく黒いネグリジェ

首に描かれた謎の模様

そして闇夜でも目立つ紅い目



「戦艦棲姫か…!」



「コンバンワ…三度目ネ…」

「その話し方、特徴からある程度の予想はしていたが…まさか貴様とはな…!」

「フフフ…マァソウ焦ラナイデ…?」

「ふざけるな…何度も付きまといおって…なにが目的だ」

戦艦棲姫を真っ直ぐ睨む

「ソウネ…モウ話シテモイイワ…デモソノ前二…」




次の瞬間、私の体に感じたこともないような衝撃が襲った




軽く数メートル吹き飛ばされ、勢いを殺すために地面を転がりながら止まる

「ぐ…がぁ…ごっ…ほ……」

吐血する

内臓が傷付いたのかもしれない

だがそんなことより今は…

「フフフ…大丈夫…死ナナイヨウニ手加減シマシタカラ…今死ナレテモ困リマスシネ…」

息をするだけで精一杯だ

話す余裕もない

北方はこんな状況でも人形のように動かない

戦艦棲姫は北方のフードを引きちぎった

美しい白髪が露になる

「サテ…何処カラ話シマショウ…マズハ北方棲姫ガ貴方ト会ッタトコロデショウカ…」

戦艦棲姫は悠々と話し出す

「アノ子ガ貴方ト会ウヨウニ仕向ケタノハ私……」

「ソシテ北方棲姫ニハ、最初カラ私ノ元ヘ来ルヨウニ作ッタ…」

「作った…だと…!ごふっ……ぐぅ…」

血が止まらない

意識を落とさないように気を保つのに精一杯だ

「正確ニハ、生マレタバカリノ北方棲姫ヲ洗脳シタノ…ソシテ自分ガ何者ナノカノ記憶ヲ違和感ガナイ程度二消シ、貴方ノ元ヘ流レツカセタ」

「洗脳、だと…」

声を絞り出す

戦艦棲姫は構わず続ける

「今北方棲姫ガ動カナイノモ、私ガソウ命令シテイルカラヨ…マァ、簡単ナ命令シカデキナイシ、抗ウコトモ出来ルケド……産マレタバカリノ北方棲姫ニハ無理ネ…」

「貴方ノコトハ前カラ知ッテイタワ……深海棲艦ニ対シ、普通トハ違ウ感情ヲ持ツモノ…」

「ダカラコソ北方棲姫ヲ託シタ…必ズ彼女ト絆ヲ作リ、共二イルヨウニナルト見込ンデネ…」

「後ハココニ来ルヨウニ北方棲姫ヲ『呼ブ』ダケ……貴方達ヲ監視シナガラネ…」

監視……私たちの前に現れたのは確認のためか

では私たちが途中で力尽きたらどうするつもりだったのか

その考えに至ったがすぐに答えが出た

「まさか…北方が新型艦載機を持っていたのは…」

「ソウ、防衛手段ヨ……一応テスト運用トイウ目的モアッタケドネ…」

なんたることだ…

そこまで計算されていたのか…!

「コウシテマンマト貴方達ハ二人デコノ地マデヤッテ来タ……」

「貴方ガ予想以上二優秀ダッタカラ、コチラモ簡単二事ヲ進メルコトガデキタワ……」

だとすると、北方が北に向かうようにしていたのはこいつだったのか…

私はそれに気が付かずまんまとここに北方と共に連れてこられたと

だが解せない

「こんなところに来させて、何の意味がある…私はただの人間だ…!」

北方だけを呼ぶならまだわかる

だが私まで連れてきたのは何故だ?

そもそも何故こんな回りくどいことをしている?

戦艦棲姫は笑いながら言った

「貴方ト絆ヲ結バセルノガ大切ト言ッタジャナイ…」

「ソシテ、ココカラガ本番ナノヨ……サテ、ソロソロカシラ…?」

「なにを…」




海の方から声が聞こえてきた



「はぁ、こんな寒い中警備任務なんて参っちゃうわ」

「早く帰りたいねー」


この辺りの鎮守府の艦娘だろうか、こちらにやって来る影が見える

「哨戒任務中の…艦娘か…」

偶然か…?助かったのか…?

いや、違う…!

「サァ…準備ハ整ッタ…起キナサイ、北方棲姫……!」

「………んー?」

北方が動き出した

洗脳とやらが解かれ、正気に戻ったらしい

戦艦棲姫が楽しくて仕方がないという風に口を歪ませている

「シバラク見物サセテモラウワ…」

そう言うと共に、戦艦棲姫は闇へと溶けた

北方はしばらく辺りを不思議そうに見回し、私に気が付いた

「じい…?」

こちらに駆け寄ってくる

頭を隠せていないことにも気がついていない

が、体がまともに動かせなく、今では出血で意識も朦朧としていたため指摘もできなかった



そして私は戦艦棲姫の狙いに気が付いた

「あら?な、何でこんなところに深海棲艦が!?」

「あの姿…まさか姫級!」

見知らぬ艦娘は北方を見つけた

すぐに臨戦状態に入り、こちらに砲を向ける艦娘達

「くっ…一般人を襲ってる…すぐに引き離すわ!」

「私は本部に連絡します!」

北方と私はすぐ側にいる

艦娘達からしたら、私が北方に襲われたように見えるだろう

そして北方はつい先程目覚め、私が誰に傷つけられたかを把握していない様子だ

「そこの深海棲艦!その人の側から離れなさい!」


この構図はまるで、私があの艦娘に撃たれたようではないか…!

北方は艦娘達の方を向くと、想像も出来ないような憎しみのこもった声を出した

「お前達が、じいを傷付けたの…?」

北方の取り巻く雰囲気が変わった

重苦しい力の奔流を感じる

「はぁ!?何を言ってるの?」

「許さナい…許サナイ…!」

「艦娘……!沈メ沈メェ!」

北方の周りにあの丸い艦載機と砲が現れた

艦載機の数が尋常ではない

洞窟の時は5機ほどだったが、今は恐らく100機以上ある

「北方……どうしたというの……だ」

「消エテ!」

艦載機が一斉に艦娘を襲う

『アハハハハ!予想通り、北方棲姫ハ暴走シタワ!』

どこからか戦艦棲姫の声が響いてきた

『私達姫ヤ鬼ハ意思ガアルカラ、艦娘へ憎シミノチカラヲ出スノガ結構難シイノ…元トナル艦娘ガイナイ北方棲姫ハ尚更ネ…』

『ナラバ誰カト絆ヲ作ラセ、強ク想ワセタ後壊セバイイ……人間ハ感情ノ起伏ガ激シイカラ絶好ノターゲットニナル…』

『後ハ貴方ヲ使ッテ暴走サセルダケ…一度暴走シタラモウ元ニハ戻レナイ』

北方は全身から紅黒い光を発していた

その目には最早意思などなく、目の前の相手をただただ憎み、打ち倒すだけになっている

「ァ…アアアアアアア!!」

二人の艦娘は回避するだけで精一杯のようだ

「止め…ろ…北方!!」

力を振り絞り叫ぶが、聞く耳を持たない

「沈ンデ!!」

歯を剥き出しにしながら艦載機を操り、手元の砲で撃ち続ける

『無駄ヨ…モウ戻レナイト言ッタデショウ?貴方ノ声モ、姿モ届カナイ』

「そ……んな」

『後ハドウニデモナル…感謝スルワ…貴方デナケレバココマデノ憎シミハ出セナカッタ…憎シミガ深ケレバ深イホド私達ハ強クナル……』

『ソレデハ、コレデ失礼……北方棲姫ノ洗脳モ完全ニ消シテオクワ…暴走シタ今、モウ意味モナイデショウシ…』

『サヨウナラ……愚カナ夢追イ人サン……地獄デマタ会イマショウ……』

戦艦棲姫の気配が消えた

何処かへ逃げたか

北方は相変わらず艦娘に攻撃を続けている

どうすればよいのだ…!

「まずい…!このままじゃ全滅する…一旦撤退!そこの民間人、捕まって!!」

たまらないと判断したのか、一方の艦娘が素早く私に近付き抱えて逃げ出した

北方はもう一方の艦娘と戦っている

「は……離せ…」

「ちょっと、暴れないで!」

私は精一杯もがいた

あの北方を見捨てて逃げるなどできない

今私が側にいてやらなくてどうする

しかし私の意思とは裏腹に体は動かず意識も落ちかけだ

「離脱します!殿は任せるわ!」

「了解!」

私を抱えた方の艦娘が全速力で島から脱出した

私は最後に霞んだ視界の中、北方が私の渡した艦載機を抱き締めながらこちらを砲撃しようとしている姿だった

私は北方に向かって手を伸ばし………







意識を失った







今日はここまでです
書き溜めが完全に消えたので次回更新は未定です。多分1週間以内だと思いますが
ではまた…

乙乙
これはほっぽちゃん激おこ仕方ないな……

嗚呼ー良いねぇ!



























目を開けたとき、白い天井が広がっていた

頭がぼぅっとする

「おお…!起きたか横須賀!」

声がした

そちらの方を見ると、長身の憎たらしい顔をした男が立っていた

私はそいつに見覚えがある

「………呉か?」

「数日ぶりだが、まだボケてはいないようだな」

「どうしてここに…っつ…」

全身に痛みが走る

同時に思い出す

紅い気に飲まれ暴走し、暴れまわる北方を

血のように紅く染まった涙を流しながら叫ぶ彼女を

私は興奮を隠せない声で長門に聞いた

「今、いつなのだ…私はどのくらいの間寝ていたのだ!」

「おいおい…傷が開くぞ」

「いいから答えてくれ!……ぐっ…」

体が痛い

だが今はそんなことはどうでもよい

私は半ば呉を睨みながら回答を催促した

「はぁ…横須賀がこの病室に来たのは二日前。傷だらけの艦娘が運んできたそうだ」

二日前だと…

私はそんなに長い間眠っていたのか…

「それでは北方は、北方はどうなったのだ!」

「落ち着いてくれ。今から順番に話す」

呉は地面に置いてあった鞄から何らかの資料と、果物が入った袋を取り出した

「さて、どこから話すか…」

呉はベッドのそばにあった椅子を引くとそこに腰かけた

「まずはよく生きてたな、横須賀。お前はここに来たとき出血多量で死にかけだった」

戦艦棲姫に撃たれた後、血が体から無くなり、血液が砂に染み込んでいく感覚を思いだし身震いする

「だが出血の割りに外傷は少なくてな…内蔵がいくつか傷ついていたくらいだった」

自らの体をそっとまさぐる

たしかに痛みはあるが傷らしいものはなかった

戦艦棲姫は私を暫くの間死なない程度に傷付けるため、そんなに精密な射撃をしていたのか

「だが絶対安静を言い渡されてる。少なくともあと二週間はベッドで寝ていて欲しい」

「ふざけるな…そんな時間はない…!早く…北方がどうなったか教えてくれ!」

「だから落ち着けって」

「むぐっ!」

呉が袋から取り出した林檎を私の口に突っ込んだ

呉の呆れたような表情を見て少し冷静さを取り戻した

「北方ちゃんだが…現在この北の町のさらに北の方…AL海域方面にいる」

「AL海域……」

北方がまだ無事で一安心した

既に撃沈されていたかも知れなかったと思うとぞっとする

「さて、北方ちゃんは確かに今はまだ無事だ…だが、二日後に北方ちゃんの撃破作戦が決行される」

安心した体から血の気が再び引いた

「なんだと…!いくらなんでも早すぎる!」

通常、姫級の討伐ならば一、ニ週間は事前準備をする

私が二日寝ていたとしても、まだ時間はあるはずだ

「前会ったときに言っただろう…元からAL海域では深海棲艦の陽動作戦が行われる予定だった」

「つまり、想定外の敵が現れたとはいえ、準備そのものは出来ているんだよ」

呉はさらに追い討ちをかけるように事実を突き付ける

「……そして俺がここにいるのは、北方ちゃんの撃破作戦のメンバーに組み込まれたから。今お前の所にいるのは龍鳳から知らせがあったからにすぎない」

「お前……!」

体の痛みを無視して呉に掴みかかる

「北方を見殺しにしろというのか!それどこれか、お前は私から北方を奪うのか!」

「……………」

呉はなにも言わない

認めたくない事実から逃げるように呉に当たった

「やめてくれ…頼む…頼むから…」

手から力が抜け、ベットに落ちる

「はぁ…」

呉がため息をついた

そして真っすぐこちらを向いて言った

「誰が北方ちゃんを見捨てるなんて言ったよ?」

「は……?」

「さっき言ったように、出撃の準備はほぼ整ってる。それは俺だってそうだ」

呉は私の前に手を伸ばし、力強く拳を作った

「そしてこれを利用する。軍が動き出す前に北方ちゃんと接触し、彼女を救い出すんだ」

私は呉の言ったことが理解できなかった

二転三転する事に頭が一杯になっているのだ

「おいおい、もっと喜んでくれよ…命令無視してまでお前に協力するって言ってんのに」

私は声を絞り出す

「いいの…か?」

呉はくしゃりと笑いながら答えた

「当たり前だろ!俺達は大事な友人同士だ!」

「………っ……済まない、ありがとう……」

私は俯きながら感謝の言葉を述べた


希望はまだ潰えてはいないようだ

本日分はここまで
まだ書き溜めが十分ではないのでまた期間を置きます
どうしても戦闘シーンが書けないの…

乙乙
気長に待ってます

どうも、>>1です
ガラケーからスマホに変えたら、ガラケーの契約切れて書き溜めメールが送れなくなり、結果書き直しとなったのでもうちょい期間をもらいます…構想はできてるんですが
忙しさも相まって今月中に投下できればなーって感じですが、よろしくです
もう一方のスレは誰も期待してないはずなんで告知しなくていっか()

なにそれ?あたらしいケータイっぽい!

もう遅いかもだけどケータイメールをmicroSDカードに保存してに保存してスマホに直接入れらんないかな

────────────────────────







「早速作戦会議に入る......前に、そもそもどうして北方ちゃんがあんな状態になったか教えてくれ」

呉にそう聞かれ、私はあの夜のことを詳細に話した

北方が私と会い、共に北へ行くことは仕組まれていたということ

黒幕は戦艦棲姫で、目的は私を使い北方をより強い深海棲艦へ変貌させるためだったということ

その過程で私は戦艦棲姫に撃たれ、それを見た北方が暴走してしまったということ

「そうか...そんなことがあったのか...」

呉が静かに首を降った

「そんなことを聞かされたら、ますます協力したくなっちまうな」

呉は手元の資料をパラパラとめくり始めた

私も起きたことを話したお陰で大分気持ちの整理がつき、冷静になった

もし呉が居なかった、私は何をしたらいいかわからず途方に暮れていただろう

「さて、今回は隠密作戦になる。敵にも、軍にも見つかるのは不味いから派手には動けないんだ」

「では少数衛生で出撃し、北方を沈静化するということだな」

「うん、そうなるな。ちなみに艦娘は既にこちらで選抜してある」

......この口振り、私が立ち直ることを予見していたな?

嬉しく思う反面、呉なんぞに手玉に取られたと感じ悔しくもある

「ん?どうした横須賀?渋柿食ったような顔して...まだ傷が痛むのか?」

「何でもないわ。で、その選抜した艦とやらは、どんな戦力なのだ」

「戦艦2、正規空母2、重雷装巡洋艦1、重巡洋艦1の6隻だ」

なるほど、数は少ないが艦種や戦力は申し分ない

「しかし、そんなに戦力を出してよかったのか?駆逐艦を使って水雷船隊を組んだ方が目立たないと思うのだが」

そう指摘すると、呉は痛いところを突かれたという風に顔を歪めた

「うち、駆逐艦は遠征にしか使わないから練度がな......」

「ああ...」

そういえばコイツ、チマチマしたことより、大型の高火力艦を愛用していた

そのツケが今回ってくるとはな...

「ま、まぁ戦力は十分だ!後は補給についだが...時間も少ない上あまり消費するとバレるから、一発勝負になる」

「チャンスは一度のみか...」

ミスは許されない

体に緊張が走り、胃が締め付けられる感じがする

だが、やるしかないのだ

「作戦決行は明日の05:00。何か異存はあるか?」

「いや、無いな。というよりそうするしか最早ないのだろう?」

「ははっ...よく分かってくれてるようで何よりだ」

呉が乾いた笑いを出す

コイツもやはり、緊張などの感情が渦巻いているのだろう

「さてと...」

呉が立ち上がり伸びをする

「じゃあ今日の夜、02:00に迎えを寄越すからその時間には準備を終わらせておいてくれ」

「あいわかっった」

「ちなみに迎えはお前のよく知る人物だ。楽しみにしとくといいぞ」

「...?」

私の知り合い......誰であろうか

私がその様に思案している間に、呉は身支度を済ませたようだ

「ギリギリまで休んで、少しでも傷を癒しておくんだな...作戦が始まったらもう戻れない」

持ち込んでいた果物を籠に入れると、呉は扉に向かって歩き出した

そして扉に手をかけたところで止まり、背を向けながら私に語りかけた

「ああ、言い忘れてた...」

「なんだ?」

「北方ちゃんはお前を抱えて逃げる艦娘を狙っていたらしいが、撃つ直前で見当違いの場所に軌道を逸らしたんだそうだ」

「艦載機も動きを止めて頭を抱えて叫んだと思ったら、AL海域に向かって行った...とお前を運んできた艦娘が言っていた」

北方が、あの暴走状態でなお攻撃をやめた...

ということは...

「北方ちゃんはまだ完全に理性を失っていないかもしれない。少なくともお前を認識する程度には、な」

呉が私の心を読んだかのように続けた

「......分かった...教えてくれて、感謝する」

「どういたしまして。それじゃあな」

呉は肩を竦めて去って行った

スライド式の扉が、とすっと閉まる

現在時刻は......大体11:00か

言われた通り、少しでも寝て体を休めておくことにしよう

私は薬と太陽の匂いが染みたベッドに潜り込み、そのまま眠りに落ちた

────────────────────────







夢を見ている









そう判断出来たのは、私が海の上に立っていたからだ

辺りは大海原で、島などは見当たらない

少し移動してみたが景色も変わらない

どうしたものかと考えていると、向こうから赤い服を着た女性がやって来た

「ひっさびさやなぁ、キミ」

ツインテール、独特な姿……私が忘れたくとも忘れられない存在

「そうだな......思えば夢でさえ不思議と会わなかった。一度もな」

目の前の女性......私の愛した龍驤に返した

こんなタイミングでこのような夢を見るとは、何の悪戯なのか

龍驤は馬鹿にした口調で言ってきた

「当たり前や、キミはウチからずっと逃げてたんやから。そら会えるわけないわ」

「逃げていた......か、確かにそうだ。私はお前の影にすがり付くだけで、自分からは何もしようとはしなかった」

「せやせや。ほんっま情けないわ。こんなんにウチは惚れたんかと思うと、ウチ自身まで情けなく思ってしまうわ」

「言ってくれるじゃないか......否定はしないがな」

「せやけど、今は違う」

大袈裟な身振り手振りで私をからかっていた龍驤が動きを止め、こちらを真っ直ぐ見つめてきた

その目は何処までも優しく、夢の中だというのに懐かしさが押さえきれなかった

「キミはあの深海棲艦と会って大きく変わった。今は男前の顔してるわ」

「北方か......あの子にお前の残したゼロを渡してしまったよ」

「ええんや。あんなもん持ってても意味ないわ......あっ、可愛いウチを思い出して興奮しとったんか?」

「口の減らない奴め」



共に笑い合う



何時までもこの時間が続けばいいのに



たとえ私が産み出した都合のいい幻想でも




だが......



「忘れたらあかんで、ウチは何時でもキミ...:...横須賀のことを見てるんやから」

「ああ......」



私が今成すべきこと



私がいるべき場所は、ここではない


「情けないところ、見せんといてな?」

「当然だ......!」



北方を想う



作った握り拳に決意を込めて



「ほな行き!あの子が待っとるわ、はよ迎えに行ったり!」

そう言うと、龍驤は無数の式神となって消えていった

その式神は、私を包み込んでくる

そして私はその中で暖かさを感じながら、急速に眠くなっていった


ああ、この時間も終わりか......



そう思いながら、ゆっくりと意識を手放した



最後に龍驤が浮かべた顔、とびきりの笑顔を心に刻みながら


────────────────────────







真っ暗な部屋で目が覚める


時計を見ると、短針が1、長針が6を指していた

半日以上寝ていたらしい

意識はハッキリしていても、体はボロボロなのだろう

だが行かなければならない

夢の中と同じように握り拳を作り思った




待っていろ北方......救い出してやる......!



今回はここまでです。まるで展開が進んでいない…
またちまちまガラケーの文章を復元しながらやるので、次の更新までお待ちください
ガラケー文章の復元はSD使ってもファイル変換とかが凄く面倒くさそうなので、スマホのタイピング慣れついでに手動でやっていきます
ではまた


熱くなってきたね

乙、頑張って

────────────────────────





02:00、ちょうどその時間に病室の窓が叩かれた

窓はすでに空いているため中に入ってくるように促す

「ども、お久しぶりです!青葉です!一言お願いします!」

「お前は……!」

迎えに来たのは淡い桃色の髪を後ろで結わえた少女、青葉だった

彼女は私の元部下であった

そうか、呉の言っていた私の知り合いとは青葉のことであったか……

「いやぁ、司令官に再び会える日が来るなんて長生きするものですねぇ」

「龍鳳が言っていた軍に残った艦娘はお前のことだったのか」

「他にも長門さんや足柄さんとかいますけどね。どうにも戦いしか合わないって」

確かにその二人は武人気質だったり戦闘馬鹿だったりしたな……特に足柄

「そいつらは今回来るのか?」

「いえ、ら彼女たちは今回来ません」

むぅ、少し残念だ

まぁ私がそのような事を言える立場ではないのだが

「それで、どうしてお前だけ来たんだ?」

「青葉は今、特定の鎮守府に籍を置いていないんです。いわば友軍ですね」

「ああ、まさか取材のためか」

「はい、今は色んな鎮守府のお話を聞いたりと一種の旅みたいなことをしてますね」

ほう、いろんな鎮守府を回ってを旅とな……ん?

……それはもしや

「おい、それっていわば監視役やスパイみたいなものだろう」

「そうとも言いますね!」

昔から隠密な行動と情報収集に長けてはいたが、まさか仕事にしてしまうとはな……

「でもこの役割だと青葉はかなり自由に動けるんです。要請がない限りは何処にいてもいいですし」

「ほぉ……まぁ、元気そうで何よりだ」

ここ数日でも知り合いによく会う

世の中は案外狭いものだ

さて、聞きたいことは聞けたからそろそろ本題に入ろう

「青葉、そろそろ連れて行ってくれ。話は移動しながらでもできるであろう」

「おっとそうでした。青葉としたことが喜びでうっかりしていました!」

頭に拳をコツンと当てて何やら主張してくる

それが様になっているものだから尚更ムカッと来る

「ええい、早くせんか。あまり騒がしくては見回りの者が来てしまうぞ」

「あはは、分かりました。ではご案内するのでしっかりつかまっていてくださいね」

そういうと青葉は私の身体を抱き上げ、窓から飛び降りた

風を巻き上げながら落下し、地面に静かに着地する

一応私の病室は四階にある個室なのだが、艦娘の身体能力の前には無いに等しいもののようだ

「よいしょっと。じゃあ行きましょうか」

「待て、何故私を抱えたままなんだ。降ろせ」

「えーだって司令官怪我してるじゃないですか」

「かまわん。これからもっと動くのだから慣れておきたいしな」

「ぶー……わかりました」

そういうと青葉は漸く私を降ろした

地面に立つと少しふらつく

感覚的には時間はそんなに経っていないのだが、傷も相まって体がついてこない

そうやって体の揺れを踏ん張っていると、

「……やっぱり運びましょうか?」

と再度聞いてきたため、

「いらん。さっさと案内してくれ」

と言い返した

正直意地でやっているところもあるのだがな……

「はいはい……此方ですよ」

青葉は呆れながら北を示した

「うむ、では行こうか」

私達は薄暗い闇を纏いながら集合場所まで急ぐのだった

────────────────────────






交通機関も今は止まってしまい使えないため、結局ずっと歩いて行った

そして二時間ほど歩いたか、集合場所であろう港へたどり着いた

「来たか」

既に待っていた呉が声をかけてくる

「ああ……待たせたな」

「少し遅かったのは自分で歩いてきたからか?無茶しやがって」

「今からもっと無茶な事をするというのに何を言っているんだ」

「それもそうか」

呉と軽口をたたいていると、後ろに奴の配下の者であろう艦娘達が立っているのに気が付いた

「呉よ、あれが作戦メンバーか」

「そうだ。戦艦が榛名、金剛。正規空母が赤城、加賀。重雷装巡洋艦が大井。そしてそこにいる青葉。以上6隻だ」

今回はここまで。棒スレで更新宣言したからにはやらねばいけない
艦隊メンバーを仰々しく紹介してるけど青葉以外特に活躍とかする予定ないです。都合のいい使い方で済まない……
またちまちま復元していきますねー。それでは

あとここを放って新しく違う短編書いてたんで、暇だったらどうぞ
【艦これ】加賀「はぁ……」
【艦これ】加賀「はぁ……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421758935/)
【艦これ】女と髪と命と
【艦これ】女と髪と命と - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422355538/)

2つともおぬしだったか
特に前者はこっちと雰囲気違いすぎてわからんかったわ


来てましたか

多分今週中に更新します。放置してごめんなさい
また短編書いてたんでこちらでも読んでもらえればうれしいです

【艦これ】提督「寒いなぁ......」
【艦これ】提督「寒いなぁ......」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422988520/)

【艦これ】提督「バレンタインって何だぁ……?」
【艦これ】提督「バレンタインって何だぁ……?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423762175/)

【艦これ】ヤンデレの鳳翔に死ぬほど愛されてバレンタインも過ごせない提督
【艦これ】ヤンデレの鳳翔に死ぬほど愛されてバレンタインも過ごせない提督 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423948190/)

【艦これ】兵器の書いた日記帳
【艦これ】兵器の書いた日記帳 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424465615/)

ヤンデレ鳳翔あなたさまでしたか
読ませて頂きました

ごめんやっぱ今日無理です。夜やるつもりが仕事入って徹夜できなくなってしまった
明日は絶対、ぜーったいやります

呉が名前を呼ぶと、一人一人挨拶をしてくれた

「呉提督の秘書艦、榛名です。今作戦の間だけではありますがよろしくお願いします」

「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース!榛名の姉でもありマース!」

「ふぅん……貴方が呉提督の言う……航空母艦、一航戦の加賀です。うちの提督の知り合いならそれなりに期待しているわ」

「同じく一航戦の赤城です。加賀と共に全力でサポート致します」

「チッ、なんで私がこんなこと……重雷装艦、大井です。雷撃と夜戦なら任せて頂戴」

「青葉です!司令官とは久々ですが必ず活躍して見せます!」

司令官呼びはやめて欲しいと言いたかったが、今からは確かにそういう働きをすることになるため飲み込んだ

……しかし、なかなかに個性的な面子だ

まぁ艦娘は個性の弱い者の方が少ないのだが

一通り自己紹介が終わると呉が指示を出した

「よし、では早速北方棲姫のいる島へ向かおう。詳しい作戦は移動しながら話す。まぁ、作戦というにはお粗末なものだけどな」

「……?」

どういう考えなのだろうか

「まず俺と呉はそれぞれ別の移動用母艦に乗る。そして護衛してもらいながら全員で一塊になって島の付近まで近づこう」

私と呉は停泊していた小型の船に乗り込んだ

この船は指揮官が前線で指揮を出すときに使われるものだ

妖精の技術で自動運転、攻撃回避、艦娘と敵の位置の情報収集などをしてくれる

船の操縦室に入ると呉から通信が入った

「聞こえるか?」

「ああ、では出発と行こうか」

「よし……」

船が動き出した

ボタン一つで何から何まで動き出すこの技術は本当に一体何なのか

確かな技術ではあるがそれに頼り切るのも少し恐れがあるものだ

「さて横須賀、そろそろ本作戦の概要を説明する」

出発してから10分程度経った後再び呉から通信が入った

「まず北方ちゃん。あの子は水上ではなくずっと島の上……つまり陸上にいる」

「ではやはり北方は陸上型深海棲艦というわけか」

「その可能性は高いだろうな」

だから北方はあんなにも陸上運動能力が高かったのか

陸上型深海棲艦は確認されている中でもたった3種しかいない

飛行場姫、港湾棲姫、離島棲姫だ

北方はこの3種に並ぶものだったということだ

呉が続ける

「榛名、金剛、青葉には三式弾を持たせてある。決め手はこれになるだろう」

「ふむ……正規空母が制空をとり、雷巡で取り巻きをつぶし、三式弾で畳み掛けると言ったところか」

「そうなるな、普通だったらだが……」

呉の声色が渋くなる

これは何かあるな……

「実は北方ちゃんの周り…陸上周辺の沖には取り巻きはほぼいないと言っていい。強いて言うなら浮遊要塞くらいだ」

「どういうことだ?」

「わからん」

陸上型深海棲艦だから普通の深海棲艦はサポートに入ることはできないということだろうか

だが人型深海棲艦ならば短時間ではあるが陸上での行動も可能であったはず

「だがその代わりなのかは知らんが……そろそろ見える頃合いか?加賀、どうだ?」

「ええ、ここからならギリギリ敵の索敵にかからずに確認できると思うわ」

「よし……横須賀、スコープで島周辺をよく見てみろ」

「うむ……?」

言われた通り島の方を見てみる

するとそこにはできれば見たくもなかった光景が広がっていた

「なんだあの数の深海棲艦は……!!」

「まぁ、そういうわけだ」

島の周囲には海がどす黒くなるほどの深海棲艦が集まっていた

その数、優に100は超えるだろう

呉も恐れを通して呆れ気味だ

「まるで北方ちゃんがかき集めたみたいだよなぁ」

その言葉を聞いて思い出す

確か北方が洞窟の戦いの時に言っていた



────────────────────────

指揮するには…ある程度波長や攻撃対象を合わせる必要があるから

────────────────────────




「……あの深海棲艦は北方の波長によって引き寄せられた者たちで間違いないだろう」

「え?本当にそうなのか?」

「ああ、前に北方が言っていたんだ。深海棲艦は上位存在の波長に引き寄せられ、その波長に沿った行動をすると」

「へぇ……」

「……恐らくあの深海棲艦の群れ、そして北方の周囲に深海棲艦がいないのは自分に近づくなという意思だろう」

「そうか……あの群れが周辺の港へ進行してこないのも北方ちゃんの意思なのかもな」

自分の殻に篭ってやり過ごすつもりなのか北方よ

ならば、今からその殻を破ってお前に会いに行こう……!

「うーん、しかしそれなら俺の考えた作戦が結構役立ちそうだな」

「そうだ、作戦はどういうものなのだ?やはり別働隊にするのか?」

呉は少し鼻で笑った後こう言った

「別働隊なのはまぁ合ってる」

「ではどのように配分するのだ?」

「それはな……」

たっぷりと溜めを作った後こう宣言した

「お前と青葉は二人だけで北方ちゃんに挑んでもらいたい」

「なんだと……?」

今回はここまで
戦闘シーンの書き溜めがまだできていないんです。こう戦うっていう構想はあるんですけど
戦闘終了からエンディングまでの書き溜めはあるんでここさえ乗り切れば一気にいけます、多分
また出来るだけ早く更新しに来ます。感想レスや乙はとても励みになっています。ありがとうございます
ではまた

おつおつ
戦闘描写って意外と難しいのよね

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