男「冤罪屋?」 (34)

男「あなたの罪被ります。お問い合せは黒木冤罪事務所まで」

男「あはは。なんだこりゃ随分ふざけたチラシだな…さすがボロアパート」

チラっ

男(他の家のポストには入ってないみたいだな)

男「どんな罪でもねぇ」

黒木「どうもどうも。わたしが黒木冤罪事務所の黒木です」

男「いやね。ちょっとチラシが入ってたもんですから」

黒木「ああ。チラシを見て来られたんですね。まぁお茶でもどうぞ」

男「こりゃどうも」




男「それであのー。このチラシに書いていることなんですが」

黒木「はい(ニッコリ)」

男「どんな罪でも被ってくれるって本当ですか?」

黒木「ええ。もちろん可能ですよ。ただし正確にはうちが被るというより被ってくれる人材をご紹介するという感じですね」

男「はぁ」

黒木「お客様にあった人材を派遣いたします。もちろん!プライバシーの保証は致します」

男「それってあのう」

男「例えば殺人でも?」

黒木「もちろんです」

男「冗談…ではないですよね」

黒木「ええ。もちろんそれは何しろ人の命に関わることですからね!冗談では済まないですよ」

黒木「ちなみに。そのつかぬ事をお聞きしますが」

男「ええ」

黒木「お客様はその、もう行動された方ではないですよね?」

男「行動というのはその?」

黒木「ああ!伝わりにくい言い方をしてしまい申し訳ありません。ただ何分そのむやみやたら口に出していい言葉でもありませんで」

男「はぁ」

黒木「つまり、もう殺人を犯したのかという確認です」

男「そ そんなまさか殺人なんて!や やっていませんよ!」

黒木「ですよね!つかぬ事をお聞きして申し訳ありませんでした」

黒木「うちに来る人はそういう急ぎの方も結構いらっしゃるもので」

男「はぁ」

黒木「そういう方の場合は少しお断りする場合も多いんですよ。やっぱり急ぎでどうにかなる問題ではないですからね。もっともそういう方には別の事務所を紹介させてもらっています」

黒木「でも今回はそういう訳では無さそうですね。計画プランならうちでもお受け出来ます。」

黒木「それでそのお客様には何点かご質問をさせて頂きます」

男「…はい。」

黒木「その今回は殺人の冤罪のご依頼という形でお間違いないですね」

男「ええ、その…そうです」

黒木「やはりまだ決心は付かない感じですか」

男「ええ、その」

黒木「ええ分かります。うちにも多いんですよね。そういう決心の付かない方」

黒木「そういう方の為にいくつかプランも用意させて頂いております」

男「プランですか?」

黒木「そうですね。やはりその殺人は初めてという方がやっぱり多いのでそういう方にはこちらのプランがオススメですね。どうぞ」

男「殺害プランコース?」

黒木「そうですね。こちらで殺害までのプランを考えてそのプランをお客様に実行して頂くというコースです」

男「はぁ」

黒木「やっぱり初めての殺害だと色々トラブルも多いんですよね。予期せぬアクシデントとか」

黒木「そういうトラブルを無くす為!うちのスタッフが親切に殺害プランを組み立てます。」

男「なるほど。それなら初めてでも安心ですね」

黒木「ええ。お客様にもかねがね評判でして。大体の方はこちらのプランを使われますね」

男「なんだか少し勇気が湧いてきました」

黒木「やはりみなさん初めての殺人は緊張されますからね。そう言って頂けるのは私共としましても嬉しいです」

男「でもそうですね。1つお聞きしたいことがありまして」

黒木「ええ。何でしょう?」

男「これはあくまで殺人のプランですよね。それをして頂くことはできないのでしょうか」

黒木「いえ。それは出来ません」

男「そうですか」

黒木「私共はあくまで冤罪屋です。司法の方にも少し絡んでいるので代金さえ頂ければあなたを確実に無罪にすることが出来ます」

黒木「しかし殺人だけは必ずお客様の手で殺って頂かなくてはなりません。いわば!これは契約なのです」

男「はぁ、契約ですか」

黒木「そう!契約です。契約は必ず果たされなければなりません」

黒木「その為の第一歩はお客様の手で果たして頂きます」

男「わ 分かりました」

黒木「では本題に移りましょうか。あなたが殺したい人というのは?」

男「……それは」


一週間後

男「いよいよ今日か」

男「今日で、今日でようやく俺はあの悪魔から開放される」

男「っと。この部屋か。で合鍵をっと」

かちゃ

男「すごい本当に開いた」

男「…中には誰もいないか。事前のリサーチ通りだな」

男「それにしてもすごいな。こんな鍵まで用意するなんて」

男「のんびりしてる暇はないな。お、これか例のクローゼットは」

男「この中に隠れてっと」

男「後5分で17時40分。あいつは絶対帰ってくるはず」

男「だって今日は18時からあのゲームのイベントがある。あいつがそれを逃すはずがない」

男「あいつが悪いんだ。俺をギルドから追い出すよう色々小細工しやがって。俺が、俺が一から作ったのに。それを乗っ取りやがって」

男「俺にとってはあのゲームの世界が全てだったんだ」

男「なのに、なのにもう俺には残ってるものなんて何もない。家族も恋人もいない。生活保護を受けて暮らす俺にはもう何もないんだ!」

がちゃ

男(帰ってきた!)

池面「ふー疲れた疲れた。やべー間に合わないかと思ったわ」

男(なんだあいつ!すげー池面じゃないか。こんなに池面なのに!なんでも持ってそうなのに俺から全てを奪ったのか)

池面「しっかしあいつがいなくなってから初めてのイベントかー。くっそだりぃ。あいつポイント稼ぐのだけはギルド1だったのになーwっw」

池面「ま、いいかwwとりあえずあいつの残した資産使えばなんとかなるっしょwww」

男(!あれはギルドで共有していた武器!しかも俺がドロップして寄付したやつじゃないか!)

池面「ふー。そろそろ装備チェックするか」

男「そ、それに触るなあああああああああああ!」

池面「!な!!なんフゴォ」

男(背後から1突き。そして口を布で塞ぎつつ何度も刺す!)

池面「フゥゥ!ムゴォォォォ」

男(絶対に声だけは漏らさない事!黒木プランの通りだ!」

池面「ムウウウウ!ガクッ!」

男(相手が倒れても力が抜けるまでは絶対離さないこと)

男「…………」

男「逝ったか」

男「プルルルル」

男「黒木先生。男です。ええ終わりました。時間ぴったしですね。では予定通り」

黒木「どうも男さんこんばんは。終わったみたいですsね」

男「ええ。おかげ様で。黒木先生のプラン通りですよ」

黒木「ええ。うちのスタッフも優秀ですからね!絶対に実可能なプランしか提供しません」

男「ええ完璧でした。ところでそちらの方は?」

黒木「ああ!ご紹介が遅れました!こちら男さんの冤罪担当の佐々木さんです!」

佐々木「佐々木です…。どうも」

男「ああ。あなたが例の」

黒木「ええ直前まで探してようやく3日前に条件に合う方が見つかりましてね」

男「ああこんな血なまぐさいところで本当に申し訳ない。男です」

佐々木「どうも」

黒木「申し訳ないですが、お互いにプライベートの詮索は無しでお願いします」

男「ええ。お互い訳ありということで」

黒木「ただ佐々木さんには男さんの依頼料の80%が支払わされます」

男「そんなにですか!」

黒木「ええ!これから数十年は刑務所の中で過ごして頂くことになりますしね。うちの取り分なんて微々たるもんですよ」

男「そんなもんですか」

黒木「そんなもんです」

少し席を外します

男「それでこの現場はどうすればいいんですか?」

黒木「それは全てうちのスタッフが片付けます。もちろん必要な証拠類だけは残してね」

黒木「とりあえずそのビニールに入った合羽を頂けますか?」

男「ええ。よろしくお願いします」

黒木「これはこちらで処分しておきますね」

黒木「では肝心の代金のお支払い方法ですが」

男「ええ」

黒木「本当にあの方法でよろしいのですね」

男「ええよろしくお願いします」

黒木「では」

バァン!

男「ガクッ」

黒木「男さんには死んで頂きます」

佐々木「………」

黒木「私だ。依頼人をすぐに運びだせ。手術の用意を忘れるな!」

男(ああ。生活保護受給者の俺にあんな大金払えるわけないじゃないか)

男(結局臓器で支払うしかないとか。まぁありがちだよな)

男(あああ。とても眠い)

男(おやすみ)

男「はっ!」

男「ここは…うっ眩しい?ん!?ななんだここは」

男「天国?いやそんな馬鹿なこんな意識がはっきりしてるわけない」

男「見たところどこかの病室みたいだが」

男「ん?やけに声が耳に響くな。うーむ」

男「おっとこれは。手紙か」

黒木 

背景 男さんへ

お久しぶりです。

あれから1ヶ月が経ち依頼が完了したため報告書として提出致します。

佐々木さんは無事犯人として逮捕され現在裁判中です。

このままいけば有罪の懲役刑が確定するでしょう。

それで代金の支払いの件ですが、大変申し訳ありませんがこちらの見立て不足で男さんの臓器だけでは依頼料には達しないことが分かりました。

一応臓器として腎臓、肺、睾丸(竿と玉2つセット)をそれぞれ1つずつ頂戴しました。

それで残りの不足分はやはり体で返して頂くことに致しました(契約時も体でお支払いするということだったので)

つきましては誠に勝手ながら性転換の手術をさせて頂きました。

後はそのまま娼婦として働きつつ借金の返済をなさって下さい!

追伸 ちなみにそこタイです。

女「……まじかよ」

~完~

終わりです。
ここまで読んで下さりありがとうございました!

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