女「ノスタルジックな世界に生きる」(29)


女「……………」

教師「…………であるからしてー…」

女「………………」

男「………………」

教師「ここ、重要な部分だぞー……」


……キーン…コーン…カーン…

女「……っ」

男「…~ぅ」

教師「では、今日はここまで」


女「…………………」

放課後

女「……」

男「……帰らないの?」

女「もう少ししたら帰るわ」

男「そうなんだ」

女「あなたは、どうして残っているのかしら?」

男「僕は、君を見ていたんだ」

女「ふふっ。あまり品が良いとは思えないわね」

男「不愉快にしてしまったかい?」

女「いいえ。素直な人と話すのは楽しいことだわ」

男「そう、だったらよかった」


女「あなた、趣味はなにかあるのかしら?」

男「趣味?音楽を聴くのが好きかな。あと、アニメ見たりとか」

女「あら、素敵じゃない」

男「それは、音楽が?それとも、アニメが?」

女「趣味があることによ」

男「?」

女「私、これといった趣味を持ったことがないの」

男「そう、なんだ」

女「変わってるでしょ?」

男「好きなものとかは無いの?」

女「アレクサ・ミード」

男「アレクサ・ミード?」


女「」


女「素敵な女性よ。彼女ってまるで魔法使いみたいなの」

男「そうなんだ。手品師か何か?」

女「いいえ、彼女は絵描きなの」

男「画家?」

女「画家っていうのは、難しいかもしれないわね」

男「絵を書いているなら、画家じゃないのかい?」

女「そうよね。でも、彼女ってばキャンバスに物を書かないし」

男「?」


女「アレクサ・ミードはね、実在する物に直接絵を描く表現者なのよ」

男「そうなんだ」

女「ええ、興味が湧いたなら一度調べてみることをおすすめするわ」

男「そうだね、そうしてみるよ」

女「さてと。そろそろ日も暮れるわね」

男「もうこんな時間?楽しい時間はあっという間って本当なんだ」

女「あなたにとって、今のひとときが楽しいものであったのなら、私は嬉しいわ」

男「女さんは楽しくなかったの?」

女「あら?どうしてそう思うのかしら?」

男「だって、そんな風な言い回しをしたから」

女「ふふっ。好きなことについて話してるのがつまらないはず無いでしょう?」


女「それじゃあ男くん。さようなら」

男「女さんも!き、気をつけて!」

女「ふふっ」

女「……………」

教師「…………であるからしてー…」

女「………………」

男「………………」

教師「ここ、重要な部分だぞー……」


……キーン…コーン…カーン…

女「……っ」

男「…~ぅ」

教師「では、今日はここまで」


女「…………………」


男「おはよう女さん!僕ね、昨日アレクサ・ミードについて調べたんだけど」

女「………………」

男「お、おんな、さん?」

女「次の授業は移動教室よ。ボサッとしてると邪魔なんだけど」

男「ご、ごめんなさい」

女「それから…………私、あの女の作品大嫌いなの」


放課後


女「………………………」

男「……………………………………………………………………………」

女「…………夕陽が綺麗ね」

男「……………………っ」

女「街が燃えてるみたい…」

男「………………ぁ」

女「あなた、どうしてそんなところでずっといるの?」

男「えと…その……」

女「学校はとうの前に終わってるわよ?」

男「なんていうか……………」


男「昨日、仲良くなれたと思ったけど……」

女「…………」

男「僕の思い違いみたいだったようだね!さよなら!」

女「……あら、もう帰るの?」

男「へ?」

女「もう少しで夕陽が沈む。そしたら、火が消えたみたいに暗い街になるのだろうけれど、それをみないで帰るなんて、もったいなくないかしら?」

男「それは、そうかもしれないけど」

女「私、あなたに帰ることを促すようなこと、したかしら?」

男「それは……」

女「思い違いよ、ただの勘違い」

男「じゃ、じゃあ、もう少しここにいるよ」


女「……………」

男「うわぁ、本当に綺麗だ」

女「夕陽を見ると、どうして悲しくなるのかしら」

男「悲しいの?」

女「ええ。胸の奥で小さな私が泣き止まないの」

男「人は泣くことが出来るから笑うことが出来るんだ」

女「あら?素敵なの言葉ね」

男「誰かの受け売りだよ。きっと、1980年代後半の歌手か何かさ」


女「そういう言葉。とても好きよ」


男「そうなんだ」

女「意外だったかしら?」

男「うん。少しだけね」

男「もう、夕陽が沈みきっちゃうね」

女「今日の夕陽も、綺麗だったわね」

男「そうだね。夕陽はいつでも綺麗だ」

女「そうよね。夕陽はいつでも綺麗」

男「と、ところで」

女「なにかしら?」

男「日も落ちたことだし、その、随分と街は暗いじゃないか」

女「そういえばそうね」

男「もしよかったらで良いんだけど、その、なんていうか………」

女「声に出さないと、相手には伝わらないわよ」

男「ど!どこか、家の近くまで送ろうか!?」

女「そこで、家まで。って言えないあたりが貴方らしいわね

女「……………」

教師「…………であるからしてー…」

女「………………」

男「………………」

教師「ここ、重要な部分だぞー……」


……キーン…コーン…カーン…

女「……っ」

男「…~ぅ」

教師「では、今日はここまで」


女「…………………ふっ」

放課後

女「……………………」

女「…………」

女「…………っ」


「…………………………」


女「……………………………はぁ」

女「………………」


「…………………………」

女「………………ふん…」


女「………………」

女「……さよなら。…………ん」


女「………………………また…明日……」


女「…………………はぁ」

女「……………」

教師「…………であるからしてー…」

女「………………」

男「………………」

教師「ここ、重要な部分だぞー……」


……キーン…コーン…カーン…

女「……っ」

男「…~ぅ」

教師「では、今日はここまで」


女「…………………」


女「君はおかしなことを言うね」

女「何をいきなり謝ってるのか、わかるように説明してくれないかな」

女「…そう。それはとてもめんどうくさいね」

女「いや、別に君のことを嫌いにはならないよ。そんな情けない顔するもんじゃないさ」

女「まあ、確かにほんの少しばかり残念な気持ちだったのは確かだけどね」

女「そういうのって、別に個人の自由を尊重すべきことだし」

女「そもそも、それほど親しい仲でもないんだから、そう気に病むことではないと思うんだ」

女「だから、そんな情けない顔をこっちに向けないでくれないか」


女「不可侵領域」

女「そんな大それた物じゃないけど。まあ、そういう認識でいいよ」

女「一人きりで教室に残っているのには、少なからず訳があるのさ」

女「その訳を君に話すつもりはないし、話したところで何かが変わるわけでもないからここでは省かせて貰うけど」

女「いつもと違うことが起こってあれば、興味を持つのは至極当然だろう?」

女「だから君とコンタクトを取った」

女「ただ、それだけの話さ」

女「そういうわけだからさ」

女「また明日だ」


男「……うん」

男「……………」

教師「…………であるからしてー…」

女「………………」

男「………………」

教師「ここ、重要な部分だぞー……」


……キーン…コーン…カーン…

女「……っ」

男「…」

教師「では、今日はここまで」


男「…………………」

男「女さん、悪いんだけど、少しばかりノートを貸してくれないかい?」

女「あら、別によくってよ」

男「ありがとう。助かるよ」

女「それにしても、珍しいわね。真面目なあなたが、そんなことをするなんて」

男「ちょっと考え事をしていたんだ」

女「ふぅん。授業に集中しないでうつつを抜かすなんて、良いことじゃないわよ」

男「そうだね。全くその通りだよ」

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