妹「おほぅ…。やはり寒い冬はお兄ちゃんに限る…」 兄「………」(605)

兄「…歩きにくいんだが」テクテク

妹「嘘だね。完っ璧に歩調が合ってるからお兄ちゃんの邪魔になってないよぅ」テクテク

兄「…お前は人目が気にならんのか」テクテク

妹「人目より人肌の方が重要なの。…あふぅ」テクテク

兄「………」テクテク

妹「…あ。人目が気になるのってお兄ちゃんが?」テクテク

兄「…いや俺じゃなくてお前がだな…」テクテク

妹「ならぜぇ~んぜぇん問題なっしん。温い方が重要だよ!ん~」テクテク

兄「あ、そ。…じゃぁさっさと学校行くぞ」テクテクテクテクッ

妹「むむ!スピードを上げたな!だが見よ!この数フレームのズレさえない妹の動きを!」テクテクテクテクッ

兄「………」テクテクテクテクッ

>>1
二人羽織り?

>>2

妹「あ!妹友ー!おーはーよー!」

妹友「あぁ、妹ちゃんおは…………よう…」

妹「ん?どったの?」

妹友「…兄先輩のコートの中央部分から妹ちゃんの顔が飛び出してる…」

妹「……おおぅ。立ち止まったら…歩いた分の熱が溜まって…更に温い…」ウットリ

妹友「…その形容しがたい状態は何なの?」

妹「ああこれ?これはね!お兄ちゃんコートだよ!」

妹友「…お兄ちゃんコート?」

妹「お兄ちゃんが着てるコートをお兄ちゃんごとあたしが着るんだよ!」

妹友「………」

妹「羨ましいの?」

妹友「…羨ましいと言うか…」

妹「…入りたいの?」

妹友「…そうじゃなくて…」

妹「だが絶対に譲らん!例え親友である妹友ちゃんでもだ!…あふぅ」

妹友「………」

妹友「…兄先輩。邪魔じゃないんですか…」

兄「………邪魔だよ」

妹友「ですよね」

兄「…ああ」

妹友「…なら何故…」

兄「…追い出してもすぐに戻ってくるんだよ」

妹「無駄無駄ァ!こんなに温いスポットに入られずにいられるかぁ!」ワッハッハ

兄「…その内追い出す方がめんどくなってしまってな」

妹友「まさか家からここまで…」

兄「………」コクリ

妹友「ぶ、ぶつかったりとかは?」

兄「…一回もなかった」

妹友「一回も!?」

兄「…何度かフェイントをかけてみた」

妹友「フェイントですか?」

兄「早歩き、全力でダッシュ、ブレーキ、直角に曲がる、バックステップ、ムーンウォーク…」

妹友「…まさか」

兄「…全部徒労に終わった」

妹友「…すごい。っていうか今も歩くのを再開したのに平然と合わせてる…」

妹「ファファファ……五感で兄を感じれば訳はないんだよ」

兄「………」

妹友「…すごい。兄先輩もごく普通の気怠い感じで登校する学生にしか見えない…」

――下駄箱――

ピタッ

兄「おわっ…おい急に止まるな」

妹「………」

兄「…おい動け。靴が脱げないだろうが」

妹「…お兄ちゃんが上履きを履いたら」

妹友「…履いたら?」

妹「お兄ちゃんコートが終わってしまう!」

ビスッ

妹「あ痛ーーーー!」

妹友「アホな事を言ってないでほら!教室行くよ妹ちゃん」ガシッ

妹「い、嫌じゃぁぁ…温もりが…ぬくもりがぁ…ヌクモリがぁぁぁ…」ズルズル

兄「…妹友さん」

妹友「あ、はい?なんでしょう?」
ウラー!テヲハナセー!オニチクー!グウチクー!

兄「さっきは一緒に登校してくれてありがとな」

妹友「え、何でまた…」
オ、オニイチャンガオレイヲイッタダト…

兄「別に並んで登校しなくても良かったのにさ」

妹友「まぁ友達ですし」
シンユウッテイエー!ソシテテヲハナスノダー!

兄「いや、周りからの視線の話」

妹友「…その他大勢からの視線なんかどうでもいいですよ」
シセンヲカンジルカラキモチイイ…ッテイタイ!ツネラナイデ!モゲル!

兄「…うん。だからこれからも妹をよろしく頼む」ニコッ

妹友「!…はい。頼まれました。それじゃぁまた後で!」
!?オ、オニイチャンノサワヤカフェイス…レアダゼ…

ズルズル

兄「………俺も行くか」

――兄 教室――

兄「…うす」

友「おはよー。…で、見たぜ聞いたぜ妬いたぜ旦那~」

兄「何がよ」

友「とぼけんなよー。愛しの妹様と…密・着・登・校♪してきたろ?」

兄「ああ」

友「密着どころか合体してたじゃねぇかよー」

兄「してない」

友「で?で?で?どーなのよどーなのよ?ん?」

兄「何がだ?」

友「だぁかぁらぁ、妹ちゃんの抱き心地だよ!だ・き・ご・こ・ち」

兄「抱いてない」

友「抱いてないって言い方エロッ!」

友「まぁそれはそれとして…どう?どうなの?」

兄「…あいつが勝手に俺のコートの中にいるだけだ」

友「そんな訳あるかー!
 『ほら、俺のコートの中なら暖かいぞ』『お、お兄ちゃん…でも恥ずかしいよォ…』
  ってな感じで誘ったんだろ!そうなんだろ!さぁ吐け!一字一句漏らさずこのノートに吐くんだ!」

兄「………」カキカキ

友「ほうほう今回はやけに素直じゃねぇか…ってお前何してんのォォォ!?」

兄「…何?」カキカキ

友「ノートいっぱいにビスケット・オリバを描くなよ!暑苦しいわ!」

兄「じゃぁ涼しい格好ね…分かった」カキカキ

友「わー!わー!脱がすな!オリバの服を脱がすな!こんなガチムチな黒人の絵見られたら確実に変態扱いされる!」

兄「…よし、と」

友「よし。じゃないよ!短時間でよくここまで描けたなおい!だから尚更ふざけんな!」

兄「…お」

タッタッタッ

兄「先生」

担任「お!どうしたの兄君。君から来るなんて珍しいじゃない!」

兄「いや、ちょっと」

担任「あ!ひょっとして相談?ホームルームまでまだ時間あるから先生相談のっちゃうぞー♪」

兄「えっとですね」

担任「あ!恋!?恋バナ!?恋の相談なのね!気になってる人が実は私とかそんなオチ?アハハそりゃないかー」

兄「ないですね」

担任「…冗談でもお世辞でもいいからそこはアリがよかったよ先生は…」

兄「いえ、ちょっと先生に渡すものがありまして」

担任「渡すもの?何かしら」

兄「友から課題を預かってまして」

担任「あー、彼だけ盛大に遅れてたわねー」

兄「ノート、これです」

担任「…何で友くんが直接私に来ないのかしら?」

兄「提出が遅れて会わせる顔がないって…俺に」

担任「…そう。じゃぁ兄くん、友くんに伝言頼めるかしら?」

兄「はい」

担任「…遅れても未完成でも、生徒が一生懸命取り組んだものを先生は拒んだりしないわ」

兄「………」

担任「怒ったりしないから、今度からは遅れても自分で出しに来なさい。…以上!」

兄「…はい。伝えておきます」ニコッ

担任「!……じゃぁ先生これパパっと見てホームルームの時にでも友くんに返すわ。後でね!」

タッタッタッタ

担任(…………)

担任(……年甲斐もなくあの笑顔にキュンと来てしまったわ。…迂闊)

友「突然どうしたよ?いいか俺の怒りは有頂天で」

兄「…いや先生に用事があってな」

友「ほう。まぁ随分話込んでたもんなー」

兄「………」

友「……お前まさか禁断の女教師ルーt」

兄「課題渡してただけだ」

友「なんだつまらん。…ってお前出してなかったっけか?」

兄「おう」

友「?じゃぁ何の課題出したんだよ」

兄「…お前の」

友「……俺?」

兄「さっきのノートそうだろ?」

友「いやそうだけど…。…おー!ありがと旦那ぁ!」

兄「…礼はいいよ」

友「いやさー持ってきたはいいけどさー。盛大に遅れてるしさぁ…」

友「どうやって先生に渡したもんか悩みに悩んでたんだよ」

友「いやー助かった助かった。これで今日は何の気兼ねもなく過ごせるわ」

兄「…あと先生から伝言」

担任『――全略――。』

兄「…って言ってた」

友「……た」

兄「……た?」

友「……担任ちゃんマジカッケー!教師の鏡じゃん!ミラーじゃん!グッと来たわー!」

兄「そうか」

友「…俺、自分で課題渡さなかったこと…謝りに行くわ」

兄「へぇ、いい心掛けだな」

友「それで謝ることによって誠実さを見せていって…その後徐々に距離を埋めていけば…うへへへへ」

兄「…………」

友「ともかくサンキューな兄!おかげで思いもよらなかった道が拓けたぜ!」

兄「…礼には及ばない」

友「感謝の気持ちくらい素直に受け取れって」

兄「………」ペラ

友「…………………」

兄「………」ペラ

友「………あのさぁ」

兄「ん?」ペラ

友「……さっきのラクガキ、勿論消して…渡したんだよな?」

兄「…いいや」ペラ

友「あぁ、ならいいんだ。消してあるんだったら問題な ―― 今いいやって言った?」

兄「…ああ」

友「………消してないの?」

兄「…ああ」

友「消してないのォォォォ!?じゃぁお前何で担任ちゃんにあれを…じゃない!」

友「やばいやばい!早く急いで取り戻して消さないと俺はガチムチの変態になっちゃ」


担任「ほーい生徒諸君ー!席につきなさーい!」

ダダダダッ

友「せ、先生ェェェェ!手違いというかノートがですね、その兄のアレがすごくてですね」

担任「ノート、じっくり見させて貰ったわ」

友「う、あの、その…」

担任「別に先生友くんの趣味嗜好をどうこう言うつもりはないの」

友「で、ですから兄が」

担任「…ただ私に分かる形でノートを出したってことは何か悩みがあるのよね」

友「はい!?全然違」

担任「大丈夫。友くんは友くんのあるがまま…マイノリティでいていいのよ」

友「先生ひどい誤」

担任「そうね…放課後生徒指導室に来てちょうだい。先生じゃ力不足かもしれないけど…話を聞く位はできるわ」

友「話を聞い」

担任「先生は友くんの味方だから…ね?」ニコッ

友「………」

友「…はい」ダバー

トボトボ

兄「…おかえり」

友「……ごふっ」ドサッ

兄「………」

友「…担任ちゃんの笑顔には勝てなかったよ」

兄「…そうか」

友「それに放課後担任ちゃんと二人きりだったら別にいいかなって…へへ…」

兄「…良かったな」

友「…っ良い訳あるかぁぁぁ!あの世で俺に詫び続けろぉ!」ブンッ

スカッ

兄「シッ」ビスッ

友「あふん」パタリ

兄「………」ペラ

――妹 教室 lhr――

妹「…はぁ」

妹友「………」

妹「…はぁー」

妹友「…さっきから溜め息つきすぎだよ」

妹「えー…だってさー…」

妹友「だって?」

妹「授業終わるまでお兄ちゃんに会えないし…」

妹友「…妹ちゃんそればっかりだよね…ホント…」

妹「あ”う”ー…もう一度…兄の…ぬくもりを……」

妹友「……ね、ねぇ」

妹「んあ?何?」グデー

妹友「純粋な好奇心で聞くのだけれども…」

妹「んぁー…別に不純でも聞くよぉ」

妹友「…そ、その…お兄さんのコートの中って…そんなに…温かいの?」

妹「…んひ。知りたい?」ニカッ

妹友「まぁ、うん。ちょっとだけよ。ほんの…ちょっとだけ」

妹「うむ。ならば教えてしんぜよう!」

妹「お兄ちゃんはねー、人より体温が若干高めなの」

妹友「妹ちゃんより高いって…男の人にしては珍しいね」

妹「お兄ちゃんだからね。とーぜんだよ」

妹友「…う、うん。それで?」

妹「そしてその体温は常にお兄ちゃんの肌から放出されているのだ」

妹友「体の深部より末端の方が暖まりやすい…ってことかしら」

妹「ゆ・え・に!コートで熱の逃げ道を断った空間では…」

妹友「…く、空間では?」

妹「お兄ちゃんのぽかぽかエネルギーが溜まり続ける!」

妹友「ぽかぽか…」

妹「カイロでもヒートテックでもない」

妹「ストーブでもエアコンでもない」

妹「それは人が、兄が生み出した天然の暖かさ!」

妹「人工のまがい物では得られぬ極上の温もり!」

妹「それが!それこそが!お兄ちゃんコートなのだ!」ガカァッ

妹友「お兄さん…コート…」

妹「ふふふ…感心するのはまだ早いぞ親友」ビッ

妹友「ま、まだ何かあるというの?」

妹「コートの中にいるという事は即ち!」

妹友「………」ゴクリ

妹「お兄ちゃんの匂い嗅ぎ放題よ!」ビシッ

妹友「!?」ガカァッ

妹「ちょっと首を傾けるだけであら不思議…そこは兄のフレグランス溢れる香りの園…」

妹「兄自身の晴れた日に干した布団のような爽やかな太陽の香りだけではなく」

妹「男らしさを感じるフェロモンの効いた汗の香りに若干の整髪料のアクセントが加わり」

妹「兄に包まれているという実感を芳醇に味わうことができる!」

妹「そう!寒風吹きすさぶ厳冬の登校時間はっ!」グァッ

妹「兄の温もりと兄の香りに包まれた幸せの」
ズゴムッ!
妹「あ痛ーーーーー!?」

先生「人の話を聞かんか妹ぉ!!」

妹「何をするんですか先生!」

先生「お前がlhr中に謎の演説を始めるからだ!」

妹「今の衝撃で脳細胞が破壊されてお兄ちゃんの記憶を失ったらどうするんですか!?」

先生「どうもしないわ!さっさと班を決めろ!いつまで経ってもlhrが終わらんわ!」

妹「…ガルルルル!」


妹友「お兄さんの温もりと…お兄さんの香り…」ドキドキ

――兄 教室 昼休み――

キーンコーンカーンコーン

兄「…っと。後は家帰ってからでもいいか」

兄「飯にしよう」

友「………」

兄「…反応がねぇな。机借りるぞ」

幼馴染「ちょっと!」バンッ

兄「っと。びっくりした。幼馴染じゃないか」

幼馴染「一から十まできっちり説明してもらおうじゃない!」ゴゴゴゴ

兄「…何をだ?」

幼馴染「わっ、私聞いたのよっ!朝妹と合体しながら登校してたって!」

兄「…誰に聞いたんだよ」

幼馴染「こいつがっ」グイッ

友「」ブラーン

幼馴染「朝練の途中に知らせに来たのよっ!」

幼馴染「ど、どういうことなのっ!?合体ってあんた神聖な学び舎を何だと思って…っ!」

兄「合体と言うには語弊がある。つまり――」

――兄説明中――

兄「――と言う訳だ。要は俺のコートの中に妹が割り込んできただけ」

幼馴染「なんだそうだったの…。私てっきり…」

兄「…てっきり?」

幼馴染「なっ、何でもないわよっ!別にっ!ふん!」プイッ

兄「…そうか。じゃぁ飯にするから机移動するの手伝ってくれ」

幼馴染「っ…面倒だけど手伝ってあげなくもないわ」

兄「ありがとう。そっちの机を頼む」

―――

兄「…完了、と」

幼馴染「…ねぇ」

兄「ん?」

幼馴染「あ、あんた今日弁当持ってきてるの?」モジモジ

兄「…じゃなきゃ学食行ってるよ」

幼馴染「…そ、そう。まぁそうよね」

兄「…弁当忘れたのか?」

幼馴染「はぁ!?何でそういう話になるのよ!」

兄「いや忘れたから分けて欲しい、とか?」

幼馴染「そんな卑しい真似を…あれ…?それもありか…って違う違う!ブレるな私!」

幼馴染「きょ、今日うっかりして弁当を作りすぎちゃったのよねー」チラッ

兄「?」

幼馴染「あーどこかに育ち盛りでたくさん食べてくれる男子がいないかなー」チラチラッ

友「何っ!?飯だと!?俺に任せろ!」ドンッ

幼馴染「………」

友「任せな!量さえ食えれば質なんてどうでもあだだだだだだだ」メキョメキョ

幼馴染「あんたにっ!食わせる弁当なんてっ!ないわっ!」ミキッ ミキッ

友「なっ、何で!?つ、作りすぎたって今ぎにゃぁぁぁ」メキョメキョ

ガララッ

妹「失礼しまっす!」

妹友「失礼します」

幼馴染「…チッ」

ピキィィィン

図書委員(!…来たか!)

風紀委員(昼休み。それは兄にべったりな妹がやってくる危険な時間!)

飼育委員(男くんに好意を持ちつつも素直に感情表現できない幼馴染さんに)

美化委員(自分は無関係を装いつつも密かに乙女視線を送る妹友さん…そして…)

放送委員(ブラコォォォォォンッ 説明不要!!兄貴が好きで何が悪いッ!全員周知の妹さんだッ! )

生活委員(浮き沈みはあれども大体互角だった三勢力の凌ぎ合い)

学級委員(しかしいつも通りのドタバタで果たして済むかどうか…)

広報委員(今朝の合体事件で戦局は大きく傾いた。妹さんを除いた各陣が動く公算が大きい)

学級委員(危ういバランスで保ってきた均衡が崩れる可能性大ってところか…)

美術部(幼馴染さんも不憫だな。男の分の弁当を作ってきた日に限ってイベントがかち合うとは)

水泳部(妹友さんも合体事件の目撃者の一人だ。内心穏やかではいられないだろう)

文芸部(この昼休み、妹さんが何かアクションを起こせば…それがトリガーとなり…)

体操部(空前絶後の4つ巴、男を奪い合う戦争が勃発する事は必至)

剣道部(一触即発。更に外野からも打つ手はなし、と)

陸上部(ただ幼馴染は同じ部活仲間として、応援してあげたい気持ちは勿論あるけれど…やっぱり…)


クラス全員(こんな面白そうなことを見られずにいられるかッッッ!!!)

クラス全員(故に見守るッッ!結果がどうなろうとッッ!見守るだけッッ!!)

兄「…うぃ。机合わせておいたぞ」

妹「流石お兄ちゃん!気が利きますなぁ」

妹友「いつもいつも…ホントすみません…」

兄「幼馴染も手伝ってくれたから。お礼言っときな」

妹「先輩ありがとうございましたァ!」

妹友「毎度お手数かけてしまって申し訳ないです」

幼馴染「いやいやいーの別に。別にお礼言われるような事してないわよ」

兄「…そいじゃ飯にしましょうか」

妹「おー!」

妹友「はい」

幼馴染「そうね」

兄「ほんじゃまぁ今日のおかずは…と」カパッ

テクテクテク

妹友「あれ、妹ちゃんどこに…?椅子こっちあるよ」

テクテクテク

マフッ

幼馴染「」
妹友「」

兄「…おい」

妹「今日の~おかずは~何じゃろな~♪」カパッ

兄「…何をしとる」

妹「何ってお弁当の中身を…」

兄「違う。何故、俺の膝の上に乗ったのか、と聞いている」

妹「ああ。それはね…私が妹だからっ!」バァン

ビシッ

妹「あ痛ぁぁぁぁぁ!」

兄「そんな理由が通るか。ほら、どけ」

妹「ちょっと待ってよ!考えてもみてよお兄ちゃん!」

兄「…何を」

妹「ストーブあってもやっぱり寒いものは寒いでしょ?」

兄「…まぁオンボロストーブだ。限界があるな」

妹「で、お兄ちゃんは体温高いでしょ?」

兄「…知らん」

妹「だからとーぜんの帰結だよね」エッヘン

兄「何がだからなんだよ…ほら降りろ」

妹「えー…あたしの何が不満なの…」

兄「単純に食べにくい。後tpoをわきまえろ。ここは学園。更にお前はクラスどころか学年が違う」

妹「んー…妹だからいいじゃん!だって家族なんだよー?」

兄「お前なー…」ハァ

友「ひっひっひ。いやぁ今日はいつにも増して妹ちゃんのゲハァッ!」ドムッ

ズシャァァァ

幼馴染「そ、そうよ…さ、流石にちょっとくっつき過ぎじゃありませんのことよ…」ワナワナ

友「い、今…俺は何故殴られ…た」ガクリ

妹友「そ、そうだよ。妹ちゃん…先輩達が見てるし…ね?」

兄「ほら。皆言ってるぞ」

妹「ぶー…」

兄「大体何で今日に限って乗るんだ。いつもは乗らないだろ」

妹「朝のお兄ちゃんコートで味をしめたと言いますか何と言いますか…」テヒヒ

兄「…とりあえず教室じゃ駄目だ」

妹「はーい…」



ピキィィィン

幼馴染「!」

妹友「!」

クラス全員(!)

友「」

幼馴染(聞き間違いかしら…。いいえ…確かに私は聞いたわ…)

幼馴染(教室『じゃ』駄目だ、と)

幼馴染(言い換えるなら…それは教室『以外』でならいいってことになる…)

幼馴染(…もしも、もしもよ。この兄妹のスキンシップが常態化し)

幼馴染(あまつさえそれが日常的に行われているとするなら…)

幼馴染(…す、するなら…するならぁぁぁぁぁぁ!)ゴォォォ

幼馴染(………)

幼馴染(…確かめる必要があるわ。…膝の上の真実を)

妹友(兄先輩、『じゃ』って何なんですか…『じゃ』って…)

妹友(他の場所でなら受け入れちゃうんですか…)

妹友(………)

妹友(…今朝みたいに妹ちゃんがゴリ押して…)

妹友(面倒臭がりな先輩はあきらめて放置…)

妹友(…それが何年も続いてしまったとしたら……っ!)ゾクッ

妹友(……でもでも言葉のあやってこともありえるよね、うん…)

妹友(…た、確かめなきゃ…!)

学級委員(な…なんてこった…)

文芸部(『妹さんが兄の膝上ちょこん座り』だけで充分すぎるトリガーだというのに…!)

風紀委員(よりによって兄本人が自ら火種を追加しただとっ!?)

体操部(信じられない…つまり兄は教室以外で…そういう…ことなのか…)

広報委員(…いえ、決めつけるのは時期尚早というもの。ただ単に言い誤っただけかもしれない)

剣道部(明鏡止水の心。囚われず、行く末を見定めるのだ)

図書委員(でも…もし、もし兄が言い間違いでも何でもなく…)

陸上部(ただ本当に言葉通りの意味合いで言ったならば…!)

放送委員(妹がリードするッ!この戦いッ!深く考えるまでもなくッッ!確実に妹がッッ!)

兄「…そういうのは家だけにしとけ」

妹「それもそうだね」ニシシ

幼馴染「」パリーン

妹友「」グニャァ…

友「」

クラス全員(oh…)

兄「そいじゃまぁいただきまー…って幼馴染どうした?」

妹「?妹友どったの?」フリフリ

幼馴染「ドウモシテナイワ。サア、オ昼ニシマショウ」ギギギ

妹友「やっぱりそうだったんだ……やっぱりそうだったんだ……」ブツブツ

兄「…なぁ」

幼馴染「ナニカシラ」ギギギ

兄「…さっき弁当作りすぎたって言ってなかったか?」

幼馴染「え…」スゥゥ

パァァァァァ!

幼馴染「いっ、言ったわよっ!作りすぎちゃって超困ってるのよっ!」

クラス全員(幼馴染さんが一気に持ち直したッ!)

兄「じゃぁさ、ここでいる皆で食うのはどう?」

幼馴染「私はその…できればあんたに食べて欲しいかなとか…」ブツブツ

兄「ん?」

幼馴染「な、何でもないわよ!…皆で食べましょう。そう大したものでもないけど…」

妹友「やっぱりそうだったんだ…やっぱりやっぱりそうだったんだ…やっぱり」ブツブツ

妹「お兄ちゃーん。何か妹友の様子がおかしいよぅ」

兄「…ホントか」ガタッ

妹「何か顔が青ざめてるし…」

兄「熱か、あるいは病気か…。妹友さんごめん。ちょっとおでこ借りるね」

ピトッ

妹友「やっぱ…り…………え……え…え?」///

幼馴染「そ、そんなのありなの!?」

妹「ずーるーいー!あたしもあれやってもらいたいー!」ブーブー

兄「…熱はないみたいだ」

妹友「あの…兄先輩…今おでこを……」

兄「…ごめんな。不快だったら謝るよ」

妹友「不快だなんてそんなっ、とっ、とんでもないです!」

兄「吐き気だとか、あるいは体でどこか痛いところとかはない?」

妹友「ななないです!具合悪いわけではないですから!大丈夫です!」

兄「…そう。一応大事取って保健室に行った方がいいと思うけど…」

妹友「大丈夫です。兄先輩がおでこ合わせてくれたんで元気になりました」

兄「………?」

妹友「ちちちちちち違いますっ!!先輩が私を気遣ってくれたから…じゃなくてそのですね」ワタワタ

クラス全員(今度は妹友さんが持ち直した…だと…!?)

兄「まず飯にしよう」

兄「幼馴染がお弁当を多めに作ってくれたから、それを皆で頂こう」

幼馴染「そんなに期待しないでよ。大したもの作ってないし…」モジモジ

兄「それと妹友さん」

妹友「は、はい!」

兄「飯食べ終わったら保健室に行こう」

妹友「い、いえ私は大丈夫ですから」

兄「俺も付き添いで行くからさ」

妹友「……はい」///

妹「ぶー…」

クラス全員(あの状況から全員ケアして空気を元に戻すとは……あの兄…やはり天才か……)

――下駄箱――

妹「待ってたぜベイビー!」ビッ

ススッ

兄「………」ヌギヌギ

妹「お、無視か。無視なのかー!」

兄「…お前、まさか帰りもやるんじゃないだろうな」

妹「やるよ!だって外まだ寒いじゃん!」

兄「………」ハァ

兄「…勝手にしろ」

妹「お許し出たから~…即!合☆体!!」ガバチョ

ビシッ

妹「あ痛ーーーー!」

兄「…勘違いされるような発言は控えろ」

妹「へーい…」

ズボッ モフマフッ

妹「あ”ー癒”されるーー……」

兄「………」

妹友「妹ちゃんお待たせー…って…」

妹「温い…温いぞぉぉぉ…」スリスリ

妹友「………」

妹「…おお妹友ちゃん。用事終わったの?」

妹友「…うん。わりと早めにね」

妹「じゃぁ一緒に帰ろー」

妹友「………」ジーッ

妹「どったの?」

妹友「お兄さんコート…帰りもやるの?」

妹「モチのロン!」

妹友「…そう」

兄「………」

――放課後 帰り道――

兄「………」テクテク

妹友「………」チラッ

妹「あいむしんかー♪」テクテク

兄「………」テクテク

妹友「………」チラチラッ

妹「とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪」テクテク

兄「………」ピタッ

妹「…わっとっと!」ピタッ

妹「止まるなら何か言ってよお兄ちゃん!危うくコートからあたしだけ飛び出るところだよ!」

兄「…これやっぱりやめよう」

妹「なっ、なにゆえに!?」

兄「…妹友さんがさっきから落ち着かなさそうだからだ」

妹「え…妹友ちゃん…そうなの?」

妹友「…………あっ、違っ、違いますよ!別にそういうので見てたのじゃ…」ワタワタ

妹「…ははーん」キュピーン

兄「ほれ。出ろ」

妹「…お兄ちゃん。妹友ちゃんはお兄ちゃんコートに迷惑していた訳ではないのだよ」

妹友「へ」

妹「ズバリ!お兄ちゃんコートが羨ましかっただけなのさっ」バァン

妹友「違っ!違いますっ!」

兄「…そんな訳ないだろ」

妹友「そうです!そんなこと微塵も思ってないです!」

妹「えー…違ったかー…」

兄「…ほら。だから出ろ」

妹「もしそうだったらお兄ちゃんコート貸しても良かったのに…」

兄「貸すって俺は物か」
妹友「いいのっ!?」

兄「えっ」
妹友「あっ」

兄「今妹友さん」
妹友「違っ、今のは何でもないです!」

兄「だよね。まさか妹友さんが」
妹友「つい本音が出ちゃっただけで」

兄「えっ」
妹友「あっ」

兄「………」
妹友「………」///

妹「…やっぱりねぃ」ニシシ

妹「とうっ」ズボッ

妹「じゃぁそういう訳だからお兄ちゃん」ポンポン

兄「…何がそういう訳なんだ」

妹「さぁ」

兄「さぁってお前…」

妹「さぁ!」

兄「いやお前が強行する理由が分からないって」

妹「理由…?いい?あたしのお兄ちゃんコートをとやかく言ってくる輩は!」

妹「お兄ちゃんコートの良さが分からないからうだうだ文句を言うんだよ!」

妹「だから妹友ちゃんに分かってもらえれば…なんと理解者が3人になるんだよ!」

兄「…3人もいないだろ」

妹「あたしでしょー。妹友ちゃんでしょー。あとお兄ちゃん」

兄「勝手に俺を加えるなよ…」

妹「お兄ちゃんコートからお兄ちゃん抜いたらただのコートになっちゃうじゃない」

兄「…こんなアホ極まりない妹に惑わされちゃ駄目だ妹友さん」クルッ

妹友「ん…しょ」ヌギヌギ

兄「………」

妹友「え…あ、コート着たままだとごわごわするかなって…」

兄「………」

妹友「………」

兄「………」

妹友「…っくしゅん!」

妹「! お兄ちゃん!ほら温めてあげないと妹友ちゃん風邪引いちゃうよ!」

兄「だっ、そりゃコートを着ればいい話で…」チラッ

妹友「ぅぅ……」ブルブル

兄「……ハァ」

―――

妹「何でわざわざ公園に入ったの?」

兄「…人目引くだろ」

妹「?それが何なの?」

兄「お前が勝手にコートの中に入るのと意味合いが違うだろうが…」

妹「そうかなー。お兄ちゃんコートはお兄ちゃんコートであってそれ以上でもそれ以下でもないよ」

兄「というか…」

妹友「は、はい?」ブルブル

兄「…本当にやるの?」

妹友「……面と向かって言われるとその…言いにくいですけど…」モジモジ

妹「やりますっ!」

ビシッ

妹「あ痛ぁぁぁぁぁ!」

兄「お前には聞いてない」

妹友「…だ、駄目でしょうか?」

兄「いや…なんというか…」ポリポリ

妹友「はい?」

兄「…一応俺男だよ?いいの?」

妹友「い、いいです。お兄さんなら、その…別に…」

兄「そ、そう…。極力触れないように努力するから不快だったらすぐに」

妹「もー!妹友がいいって言ってるんだからいいじゃん!」

兄「う…む……。じゃぁ…はい、どうぞ」プチッ

妹友「し、失礼します…」オズッ

兄「う……」

妹「………」

妹友「………」///

兄「………」

妹「…お兄ちゃん何やってるの?」

兄「…ん?」

妹「前閉めないとお兄ちゃんコートにならないよ?」

兄「…閉めて大丈夫?」ボソッ

妹友「ひゃうっ!」ビクンッ

兄「わっ!ご、ごめんっ!どこか触っちまったか!?」

妹友「いえっ、お兄さんの声が思いの外近かったのでびっくりしちゃって…」

兄「そっ、そうか…。まぁ近いよな。コートの中にいる訳だし…」

妹友「あの……」オズッ

兄「…ん?」

妹友「ボタン…止めていただいてもいいでしょうか?」

兄「…いいの?」

妹友「は、はい…」

兄「…分かった」

クッ

妹友「んっ……」

兄「………」

クッ

妹友「………ふ」

兄「………」

クッ

妹友「……はぁ…」

兄「………」

兄「…全部…留め終わったけど…」

妹友「………」

兄「…妹友さん?」

妹友「…あ、ごめんなさい。何かぼーっとしちゃって…」

兄「…暑いかな。一つボタン開ける?」

妹友「のぼせたとかじゃなくて…その…」

兄「………」

妹友「あ、安心するっていうか…それでホッとしちゃって…」

兄「…あ、ああ。それなら、いいんだけど」

妹友「あー…本当に…温かい…」モゾリ

兄「!?……そ、それなら、良かった。…ん」

妹友(妹友ちゃんの言った通りだ…)

妹友(本当に温かい…それも熱すぎることもなく、寒すぎることもなく…)

妹友(丁度いい…落ち着ける温度だ…)

妹友(そうか…人肌だから…こんなにぴったりの温かさなのか…)

妹友(お兄さんの規則正しい呼吸音…)

妹友(力強く響いてくる心臓の音…)

妹友(ブレザー越しに伝わってくる胸板の頼もしさ…)

妹友(そしてお兄さんの…お日様みたいな匂い…)

妹友(お兄さんのすべてで私を包んでてくれてるみたいで…)

妹友(ああ…私の居場所はここにあったんだ…きっと…)

妹友(……このまま…時が止まってしまえばいいのに……)

妹友「……うふふ」トロ~ン

兄「!」ビクンッ

妹友「……えへへ」スリスリ

兄「!? !!?」ビクンビクンッ

妹友「……うにゃぁ」ゴロゴロ

兄「!>?!$%#\?」

兄(やべぇっ!緊急事態発生!妹よ!救助求む!)ハンドシグナル

妹(どうしたぁ!愛しのお兄ちゃん!)ハンドシグナル

兄(急に妹友ちゃんの様子がおかしくなった!)

妹(あー、それはお兄ちゃん粒子にアテられたんだねー)

兄(何だソレ!?じゃないっ!早急に連れ出してくれ!)

妹(お兄ちゃんがガシッてソイヤッてやりゃok)

兄(俺が触れるとマズイから頼んでるんだ!頼む!)

妹(仕方ないなー。一つ貸しだよー)ニヒヒ

ズルッ

妹「妹友ーおかえりー」ペチペチ

妹友「あふ…ふぇ…あれ?お兄さんコートはどこに…」フラフラ

グラリ

兄「っと危ない!大丈夫妹友さん?」ガバッ

妹友「…えへへ」ニパー

ズボッ ズリズリ…

兄「わっ!ちょっ!駄目だよ妹友さん!また元の木阿弥に…!」

妹「妹脳天唐竹割りぃっ!」ベシィィィンッ!

妹友「」

兄「………」

妹「…良かったぜ、妹友ちゃんとは」

妹「……さぁ引き続き回収作業をば…」グイグイ

兄「…今お前がトドメめいたもんぶっ放してたが…これ大丈夫なんだよな?」

妹「ファファファ…安心せい峰打ちじゃ」カンラカンラ

兄「妹友さん…すまない。後で埋め合わせを…必ず」ペコリ

妹友「」ズリズリ

―――

妹友「………」

妹友「……んんっ」ムクリ

妹友「えと…私…」ボーッ

兄「あ。起きた?」

妹友「兄…先輩…?」ボーッ

兄「…良かったよ。あいつの言った通りだったな」スッ

スタスタ ガチャッ

兄「妹ー。妹友ちゃん目ぇ覚めたぞー」

マジデカー! イマイクー!

バタンッ…

兄「よいせっ…と。何か飲みたいものとかあるかな?もしあれだったら買ってくるけど」

妹友「あの…よく事態が飲み込めてなくて…。ここは…」

兄「ここは妹友さんの家だよ。失礼かなとは思ったけど…公園からここまで運ばせて貰ったよ」

妹友「……そうなんですか。ありがとうございました…」ヘロリ

兄「あぁまだ横になってた方がいいよ。結構消耗してるみたいだし」

妹友「……ええ。じゃぁそうしますね」モソリ

兄「…うん。もうちょいしたら妹来るから」

妹友「………」

兄「………」

妹友「……えっ!?」

兄「……ん?」

妹友「うわああぁぁぁ!」ガバァッ

兄「どうしたの妹友さん!?やっぱり当たりどころが悪かっ」

妹友「お、思い出したんです!いえそんなことよりもです!」ガシッ

兄「な、何?」

妹友「私を運んだって言いましたよね!?誰がですかっ!?どんな風に!?」

兄「お、俺だけど……あとこんな風に」スッ

妹友「お姫様抱っ……嘘っ、私っ…あうあう…」///

兄「いや、それが触れる面積が一番少なかったからで…」

妹友「それ以前に私兄先輩のコートの中で…っ、なんてハレンチなっ…うぅぅぅ…」///

妹友「――って、先輩ここ私の家って言いましたっ!?」

兄「…ああ、マズイ…記憶の混濁まで…。これはもう本格的に妹をとっちめてやらないと…」

妹友「ちっ、違うんですよ。そうじゃなくてもしそうならここは私の部屋で…」

兄「そう。妹友さんの部屋で妹友さんのベッドだよ。落ち着いて、ね?こういうのって時間が経てば自然と…」ホロリ

妹友「変な心配しなくて大丈夫ですよっ。コートの中の事だってバッチリ覚えて…ってそうじゃないんですっ!」

妹友「大して片付いてない日常感丸出しの自室をお客さんに…それも先輩に見られるなんて私っ…」

兄「…いやぁすごい整理整頓されてるし、俺の部屋なんかに比べたら…」キョロキョロ

妹友「だ、駄目ですーっ!」バッ

兄「わっ、ちょっ、何を―」

妹友「見ちゃ駄目ですっ!これ以上恥を晒す訳にはいかないんですーっ!」

兄「ごっ、ごめん!もう見ないから離れないと…当たっ、当たってる!当たってるから」フニョフニョ

ガチャッ

妹「両手塞がってるから足で開けちゃった♪行儀悪いのは勘弁な!」テヘペロ

妹友「駄目ーっ!」
兄「柔っ、もがーっ!」

―――

兄「…落ち着いた?」

妹友「…ええ。温かい緑茶は素晴らしいですね。心を穏やかにしてくます…」ズズー

兄「あとコレお茶うけに羊羹。スーパーで買った奴だから味は期待しないで」

妹友「わざわざありがとうございます。和菓子の類は大好きなので、嬉しいです先輩」

妹「ほ兄ちゃんほの羊羹デカすひない?」グモグモ

兄「切って食えよ…フォークあるだろ。頬がリスみてぇになってるぞ…」

妹「ふぁーい」ギョクン

妹「熱っ。お兄ちゃんこれふーふーして」

兄「自分でやれ。淹れたのはお前だろうに」

妹「ちぇー…」フーフー

兄「…そうだ。妹、お前妹友さんに言うことあるとか言ってなかったか?」

妹「ん?…おお!そうそう。妹友ちゃんに伝えなきゃいけない事があったんだよ」

妹「今日お兄ちゃんコート、妹友ちゃん体験しちゃったよね?」マグマグ

妹友「…その節は本当に…大変申し訳なく、何とお詫びを申し上げたら良いのか…」フカブカー

兄「そんなのいいって!むしろこっちが得…じゃないや、気にしてないからさ」

妹「違うよ妹友ちゃん。君のせいではないのだよ」ズズー

妹友「…妹ちゃんそれどういう意味?」

妹「妹友ちゃんがコートの中でハッスルしちゃったのはね…」モギュモギュ

ゴクンッ

妹「―っぷは。お兄ちゃんのせいなの」

兄「…俺?」
妹友「お兄さんの?」

妹「そっ。お兄ちゃんがー、妹友をークラクラさせちゃったからーこーなったのー」モグモグ

妹友「…でも、私が勝手にこうアレな感じになって自制心を失ったのだから…。先輩に罪なんて…」

妹「違うんだなー妹友ちゃん」チッチッチッ

妹「妹友ちゃんさ、今お兄ちゃんのこと先輩って呼んでるよね?」

妹友「?いつもそうだと思うけれど…」

妹「ほいじゃぁさ、お兄ちゃんコートが始まる前にお兄ちゃんのこと、何て呼んでた?」ズズー

妹友「それはいつも通り兄せんぱ……あ」ハッ

妹「気付いたみたいだね妹友ちゃん」ニヤリ モグッ

妹友「私先輩のことお兄さん、って呼んでました…」

兄「…自然すぎて気が付かなかったなぁ。あいつより妹友さんの方がよっぽど妹っぽいし」

妹友「そ、そうでしょうか…て、照れますね。でも…それとどんな関係があるの妹ちゃん?」

妹「大有りだよオオアリクイだよ!それは妹友ちゃんが…」グモグモ

ギョクンッ

妹「―ぷはっ、軽度の『アニキ汚染』になったってことだからね」ケプッ

兄「アニキ…」

妹友「…汚染?」

妹「そうだよ。お兄ちゃんの温かさにハマってしまう最大の理由が―」

妹「―お兄ちゃん粒子―通称アニキ粒子による汚染なのだよ」

兄「…あのなー。冗談を言うならtpoを…」

妹「冗談じゃないよ。真剣と書いてマジだよ」ズズー

妹友「…そう言えば私覚えてます。先輩の近くに寄った時から、何か逆らいがたい欲求みたいなものが込みあげてきて…」

兄「えー…妹友ちゃんまでそんなことを…」

…ピコーン!

兄「そうだ、妹。仮に10万ha譲ったとしてもだ。お前がいつもの通り何ともないんじゃ信憑性の欠片もないぞ」

妹「………」

妹「…私はね、それこそもう小さい頃からずっとお兄ちゃんにくっついてたから…末期症状なの」

兄「ま、末期ってお前…」

妹「私が大丈夫なのはね…長年アニキ粒子を浴び続けてきた結果、体の中に対抗がついたってだけ」

妹「だから濃く浴びても正気を保ったまま行動ができるんだよ。…最もただ保てるだけなんだけども」

妹友「…妹ちゃん…。他にはどんな症状があるの…?」

妹「そうだなー。一番大変なのが禁断症状かな。アニキ粒子を長時間浴び続けると…中毒状態になっちゃうんだー」

兄「……じょ、冗談…だよな?」

妹「………」

妹「そうなるともう後はずるずると。定期的にアニキ粒子を浴びないと精神が崩壊しそうになるから…」

妹「補給。中毒。禁断症状。補給の繰り返しだね。その度に汚染が強まるから…後は…まぁ…ね?」

兄「………」

妹友「………」

妹「………」ムッシャムッシャ

兄「なぁ…何でそんな大切な事を言わなかったんだよ…」

妹「ん?だってそもそも私お兄ちゃんにくっつくの好きだしさ」モキュッモキュッ

兄「もっと前に言っておけば対策が…」

妹「私は『好き』でお兄ちゃんと一緒にぬくぬくしてるんだよ?そんな事でお兄ちゃん遠ざけたくないもの」ムッシムッシ

兄「………」

兄「…それで…それでどうなるんだ?」

妹「何が?」ゴクンッ

兄「その…アニキ汚染が進むと…お前はどうなっちまうんだ?」

妹「まず禁断症状を起こさないように…お兄ちゃんから離れられなくなる」ムシッ

兄「…それから?」

妹「汚染が進むと前よりアニキ粒子欠乏度合いが激しくなるから、更に更にお兄ちゃんにべったりするようになる」モッキュモッキュ

兄「…そうか。後は?体だとか…あるいは脳とかに影響は?」

妹「ないよ」ケプッ

兄「…ない?」

妹「うん、ないよ」ズズー

妹友「か、体がボロボロになったりとか…」

妹「ないない。むしろ肌がツヤツヤになるね」ズズー

兄「気が触れてゴー・トゥー・サナトリウムとか、脳が縮小して若年性のマズい病気にかかったりとか…」

妹「体にも精神にもまったくダメージはないですなぁ。むしろ部分部分でメリットが多かったり…んひひ」ズズー

兄「………」

妹友「………」

妹「ぷはーっ!やっぱり茶ぁウマッ!もう一杯ッ!」ッタン

兄「まとめると…」

妹友「アニキ粒子を浴び、アニキ汚染が進むとアニキ粒子なしの体ではいられなくなる」

兄「アニキ粒子を摂取すればアニキ汚染の結果発生した禁断症状は治まり」

妹友「次のアニキ粒子の欠乏まではいつも通りの生活を送ることができる」

兄「そしてアニキ粒子を摂取すると肌がツヤツヤになったり部分部分での何らかのメリットが得られる…」

兄「………」

妹友「………」

妹「んっ、んっ、んっ」ゴクッ ゴクッ


兄・妹友『アニキ汚染て重病でも何でもないじゃんっ!!』ガカァッ

妹「ぷっ、はーっ!…うん、重病なんてあたし一言も言ってないよー」ニシシ

た…対抗…

それより差し支えなければこのss終わった後にでも他作品あったら教えてくれ
書き方のテンポとか凄い好きだから他にあったら読みたいわ

>>103
了解。でも残念なのが1つだけ。
レスありがたや。ペース上がります。

兄「…なんだ…本気でやばい病気かと思って損した…」ヘタリ

妹友「私もびっくりしましたよ…」ヘタリ

妹「…まぁやばくはあるんだけどねぃ」ボソッ

兄「…ともかく…アニキ粒子のくだりはマジなんだな?」

妹「妹何年やってると思ってるのさっ!」フンゾリッ

妹「何だったら湿度やお兄ちゃんの体調によってアニキ粒子の放射量が上下するデータを家から取ってくるよ!」ザッ

兄「…いや、いい。いい。分かった。一番問題なのは…そうか…妹友ちゃんか…」

妹友「…私、ですか?…でも私にとってそんなにデメリットはないような…」

兄「いやデメリットだらけだよ。妹が言うように、もしアニキ粒子が妹友さんに適合して汚染された場合…」

兄「定期的に俺から兄粒子を貰わないといけないんだよ?それはかなりのデメリットでしょ…」

妹友「それはデメリットどころかメリットじゃないですか」

兄「へ?」

妹「んひ」ニヨニヨ

妹友「……あ!」

妹友「そうですねっ!デメリットですねっ!でも気にする程のデメリットじゃないですよ!砂粒程度の小さいデメリットですです!」ワタワタ

兄「むーん…妹、何か名案はないか?」

妹「ファファファ…あるよ!」ビッ

妹「アニキ粒子を長時間浴びてるお兄ちゃんの所持品があればいいのさっ」

兄「んー…多量にアニキ粒子を浴びてるっつーと…」

兄「…ワイシャツ」

妹友「!」ガタッ

兄「…は俺が寒いしな…」

妹友「………」ズーン…

兄「…インナー」

妹友「!」ガタタッ

兄「…肌に直着だしばっちぃから駄目だな」

妹友「…ッ!…ッ!…ッ!」ガタタッ ガタタタッ

妹「じゃぁもうパンツでいいじゃん」

妹友「!!!」ドカァァァァン

兄「何が『じゃぁ』なんだよ…」ビシィッ

妹「っづ!痛ひ…」サスサス

妹友「…………」シーン…

兄「あ、ハンカチとかはどうだ?」

妹「ああ、お兄ちゃんのエキスが染みこんでていいかも」

兄「…そう言われるとこれもばっちぃ気がしてきたから―」

妹友「!」

ババッ

妹友「いえっ!ハンカチがいいですっ!」

兄「…でもトイレ出た後とかに」

ズイッ

妹友「ハンカチがっ!いいんですっ!」ギラギラ

兄「あ、は、ハンカチで…いい…の?」

妹友「ハンカチがっ!いいのですっ!」ランラン

兄「じゃ、じゃぁコレ…」ヒョイ

ガシッ バシュンッ

妹友「ありがとうございます!これ一生大切にしますねっ!」///

兄「お、おう…?」

妹「大体だけど教えておくよー」

妹「コートの中にいた時間、お姫様抱っこされていた時間に」

妹「空気中のアニキ粒子と皮膚吸収されたアニキ粒子の量を概算すると…」

妹「んー…約10時間は持つはず」

兄「意外と長いな…」

妹「まだ汚染初期だしね。それでつらくなったら少しだけお兄ちゃんのハンカチを体に近付けるんだよ?」

妹友「…うん、分かった」ギュー

兄「今近づけちゃマズいんじゃ…」

妹友「大丈夫です。ジップロックに入れてありますからっ」///

兄「そ、そう…」

妹「…くれぐれも、つらくなったら、だよ?直接匂いを嗅ぐとかはngだからねー?」

妹友「…うん、分かった」ギュー

兄「………」

―――

テクテク

兄「…いやしかし…」

妹「んーー?」ヌクヌク

兄「…驚いたよ。色々とな」

妹「あたしに?それともアニキ粒子?」

兄「それもあるし…あ。羊羹食い過ぎだぞお前」

妹「結構イケるねスーパーの」

兄「妹友さんに買ってきたものなのに一本丸ごと食いやがって…」

妹「育ち盛りだからたくさん食べないと出るとこ出ないのです」グリグリ

兄「…やめい。前を向いて歩け」

妹「へーい」

テクテク

兄「………」

妹「…あいむしんかー♪」

兄「………」

妹「あいくっぶれっきだぁん♪」

兄「…ん?」

妹「あいむしゅーたー♪」

兄「…お前それ、ちゃんと歌えたのか」

妹「どらすてぃかべいべー♪……歌えるよぅ?」

兄「へー…」

テクテク

妹「何?…とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪のがお兄ちゃん好き?」

兄「…別に」

妹「ふーん…」

兄「………」

妹「あいむしんかー♪」

兄「………」

妹「とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪」

兄「………」ピクッ

妹「ひひっ。やっぱりねー♪」

兄「……むう」

―――

妹「たっだいまー!」

兄「…はい。おかえり」

妹「牛乳とおっやつー」ヌギッ ダッ

兄「おまっ靴を揃えっ、手を洗ってから!」

妹「一度にニつのことをやれと言われても…」

兄「お前が一度に二つに増やしただけだろ、ほれ揃えろ」

妹「ほーい」

―――

兄「ふぃーコタツコタツっと…」モゾッ

兄「温かい煎茶をいただきつつ読書にふける…」

ズズー

兄「ほぅ…癒されますなー…」

…デッデッデッデ バターン!

妹「おっ兄ちゃーーーん!」

兄「………」

妹「あたしもコタツ入りたいぜ!」

兄「………」

兄「癒される時間終わっちゃったなぁ…」

妹「ほいじゃ、まぁ失礼します、と」モゾモゾッ

兄「…やっぱりそこなのかよ」

妹「お兄ちゃんの膝の上があたしのコタツ指定席だからね」

兄「…断ったら?」

妹「お兄ちゃんがあきらめるまでッ!座るのをッ!やめないッ!」

兄「………」

妹「それに抵抗されるのも、それはそれで悪くないし」///

兄「…はぁ」

妹「お?お?まーさーかーのー?」

兄「…ほれ、座れ」ポンポン

妹「素直なお兄ちゃんだぁぁぁ!」グッ

―――

妹「…んあー」スリスリ

兄「…何だよ」

妹「いやーぬくいなー、と」

兄「…そりゃコタツだからな」

妹「コタツじゃなくてお兄ちゃんがだよ」

兄「……コタツに潜ればもっと温かい思いできるって」

妹「一緒に潜る?」

兄「何で俺まで潜らにゃならんのだ…」

妹「じゃぁいいや」

兄「………」

兄「…なぁ」

妹「んー?」

兄「お前がやたらくっついてくるのってさ…」

妹「うんー」

兄「…やっぱりアニキ粒子が足りないからか?」

妹「…そうだね」

兄「……そう、か」

妹「でもそれはおまけかな」

兄「おまけって…」

妹「あたしはね?」クルッ

妹「時間の許す限りお兄ちゃんにくっついていたいの」

兄「………」

妹「そのついでに吸収できるだけだよ」

兄「…悪いな。俺の体がアニキ粒子なんてのを放出しちまうばっかりに…」

妹「気にしすぎだよー。昼間言った通り体にそんなに悪くないんだし」

兄「ただ長い間気付けなかったのは俺の兄としての怠慢だよ」

妹「お、お兄ちゃん…そこまで…あたしのことを…」ウルウル

兄「……そうだな。何か頼みがあるなら聞くぞ」

妹「どぅおえぇ!?そ、そ、それはマジですか!?」

兄「ああ、せめてもの罪滅ぼしだ」

妹「じゃ、じゃぁ…」モジモジ

妹「お兄ちゃんの残り湯を飲み干し」

兄「却下」

妹「……きいてくれるんじゃ、なかったの?」

兄「何でもとは言ってないぞ」

妹「くぅっ…な、ならもうちょいマイルドに…よしっ」

妹「お兄ちゃんの枕カバーで下着作」

兄「却下」

妹「何で!?さっきはお兄ちゃんの出汁をあたしが摂取するからアウトだったってのは分かるよ!」

妹「でもこれはお兄ちゃんの古くなった枕カバーをリサイクルする、いわゆるエコ精神にのっとった行動だよ!」

兄「…そうか」

妹「そうだよ!それを駄目だなんて考える方が変に嫌らしいっていうか物事をひねた見方でしか」

兄「目的は?」

妹「お兄ちゃんのヨダレとあたしのヨダレの邂逅…」ハッ!

兄「………」

妹「………」

兄「却下」

妹「くそぉ……」

妹「むー…あ!お兄ちゃんと」

兄「却下」

妹「ちょっ!?まだあたし何も言ってないよ!何をするかまで発言してないよ!」

兄「お前の瞳の奥に邪悪に揺らめく緑色の炎を見た。故に却下だ」

妹「な…なんてこった…瞳を見られただけで…だと……」

兄「兄を何年やってると思ってるんだ。なめるんじゃない」

妹「………」

兄「…急に黙るなよ」

妹「…んー、いやさ。あたしの思ってること、目を見てバレちゃったでしょ?」

兄「…まぁな」

妹「あたしとお兄ちゃんとだったら――」

妹「言葉は不要なのかな…ってさ」

兄「…遅かったな」

妹「…え?」

兄「気付くのが…ってことだ」ポフッ

妹「…じゃぁ」

兄「俺はそう思ってるさ。わりと昔からな」

妹「………」

兄「まぁ先に生まれてるから当たり前だけどな」ハハ

妹「…違うよ」

兄「…違うって?」

妹「それはお兄ちゃんだからだよ」ニシシ

兄「?…同じ意味だろ」

妹「全然違うもーん」スリスリ

兄「………」

妹「…頼み事決まったかも」

兄「ほう」

妹「頭撫でて欲しいかな」

兄「………」

妹「どうしたの?」

兄「…いや、普通すぎて面食らった」

妹「普通じゃ駄目なの?じゃあねー」

兄「いや普通でいいよ。…でもそんなのでいいのか?」

妹「それがいいのだ」

兄「…ふーん」スッ

ポフリ

ナデナデ

妹「ぐわー」

兄「っと悪い、髪の毛引っ掛けたか?」

妹「大丈夫。むしろ優しい手つきだよ。髪の毛をすくようにするとスコアが上がるかも」

兄「…へいへい」ナデナデ

妹「ぐわぁぁぁ」

兄「………」ナデナデ

興「こちらに逃げ込め♂」
干「手こずっているようだな、尻を貸そう♂」

―――

妹「あふ…耳の付け根から後頭部にかけて、触るか触らないかのタッチで…あー…そんな感じで…」ゴロゴロ

兄「こうか?」スーッ

妹「あーイイ…イイッス、イイ…イイーーーーーッ!!…のほぅ」ビクビク

兄「…手が疲れた。終わりな」ポンポン

妹「えー。もっともっと」

兄「もうすぐ飯だしな。それに充分やったろ?」

妹「ちぇー…」

兄「ああそうそう。さっき言った俺への頼み事、変なのじゃなけりゃ聞いてやる」

妹「へ?だって今撫でてもらったから…」

兄「これ位頼むほどのことじゃないだろ。暇だったらまたやってやるよ」ポフリ

妹「………」ギュ

兄「…どうした?」

妹「うなぁぁぁぁ!」スリスリスリスリ

兄「ちょっ、終わりだって言っ……熱い熱い熱い!摩擦摩擦!擦り付けるな!」

妹「やめないのだ!たまらんのだー!」スリスリスリスリ

兄「やめっ、くっ…この…やめろと言うにっ!」ヒュッ

ビシッ

妹「あ痛ーーーー!」

―――

ガチャッ バタン

妹友(ふぅ…いいお湯だった)

チカチカ

妹友(…メール?誰からだろう?)

――――――――――――
from:兄先輩
sb:大丈夫?

あの後体調崩さなかった?
一応うちのバカ妹が詳しい
みたいだから、何かあった
ら聞いてみて。
色々迷惑かけて本当にごめ
ん。
――――――――――――

妹友(先輩ったら気にしすぎなんだから…ふふ)

妹友(…まぁ…すごく嬉しいから…いいん、だけど)トクン トクン

プププ ププププププ

妹友(…変なところないよね)

妹友(………)

妹友(うん、ない。…多分)

妹友(…うーーー……)

妹友(そ、送信…ってそうだ今何時だろ!?)キョロキョロ

妹友(あ…ご飯時にかかってるかも…)

妹友(…送るのちょっと後にしようかな…)

妹友(でもそこまで考えるのは自意識過剰かな…うん送っちゃおう)プ

妹友「ふーーーーっ……」バフッ

ム"ーーーーッ!!ム"ーーー!!

妹友「き、来た!」バッ

妹友(嘘嘘すっごい早さで返信返って来たよ。先輩打つの早いなぁ)

妹友(返ってくるまで寝ない予定だったからびっくりしたなー)

妹友(さて内容は何だろう)パカッ

――――――――――――
from:postmaster@△...
sb:mail system error -...

次のあて先へのメッセージ
はエラーのため送信できま
せんでした。

送信先メールアドレスが見
つからないか、送信先...
――――――――――――

妹友(………)ガクリ

妹友(私のバカー!先輩の前のメアドに送っちゃったよー!)プププププ…

妹友(そりゃ最速で返ってくるはずだよね…もう…ハァ…)プププププ…

妹友(……うん。今度こそ、これで良し。送信っ、と)プ

妹友(……にしても…今日は色々あったなー…)

妹友(朝は妹ちゃんのコートに驚かされて…)

妹友(昼休みは兄先輩の家での過ごし方で衝撃を受けて…)

妹友(でもその後おでこで熱はかってくれたり…)

妹友(保健室まで肩を貸してもらいながら移動したり…)

妹友(そして……帰りに……か、帰りに……)

妹友(お兄さんコートの…な、中に…入っちゃったりして!)キュゥゥ

妹友(その後なんやかんやでお姫様抱っこがあっ)

ム"ーーーーッ!!ム"ーーー!!

妹友(来た!今度こそ!)

妹友(………)ゴクリ

パカッ

――――――――――――
from:兄先輩
sb:re:お気になさらずに

力になれる事は何でもする
から、遠慮なく言ってね。
 粒子のこともあるので明
日は一緒に登校した方がい
いかな?
――――――――――――

妹友(………)プルプル

妹友(せ、先輩からの登校のお誘い…!)

妹友(これって何だか…付き合い始めた…カ、カ…)

妹友(カップルのメールのやりとりみたい…!)

妹友「…~~~ッ」///

ゴロゴロ

妹友「~~~ッ!~~~ッ!」///

ゴロゴロ

妹友「…ってそうじゃない私!返信、返信しないと!」

妹友「分かりました、と…待ち合わせ場所は…どう……」プププププ…

妹友「…送信、と」プ

妹友「………」

妹友「……えへへ」ニヘー

ム"

妹友「!」パカッ

――――――――――――
from:兄先輩
sb:re:分かりました

分かった。それじゃ7:30位
に妹友さんの家の前まで迎
えに行くよ。
 おやすみ。また明日ね。
――――――――――――

妹友(…お、おお、お……おやすみメールもいただいてしまった…)

妹友(というか私の家の前までって…それってもう!それってもう~!)クネクネ

妹友(はっ!…そうだ、この一連のメールに保護をかけ、更にバックアップを取っておかないと…)ブツブツ

妹友(…………よしと)プ

バフッ

妹友(………明日が楽しみだなー…えへへ)ニヘー

ム"ーーーーッ!!ム"ーーー!!

妹友「!」

妹友(…何だろう?『おやすみ』って書いてあったからあれで…)パカッ

――――――――――――
from:妹ちゃん
sb:親友が相手なら覇王…

うぃーす起きてるー?聞い
てよ妹友ちゃん!今日ねー
お兄ちゃんに頭を撫でても
らったんだよー!それもわ
りと長め!しかもしかも!
!何かお願いごともしてい
いとかすっごく優しいこと
言ってくれたんだよー!あ
たし超嬉しくて思わずじゃ
れついちゃった♪お兄ちゃ
んの胸板って結構厚くって
さー。たくましい?頼れる
っていうのかなー?わかん
ないなー。まぁ、お兄ちゃ
んだから当然っちゃー...
――――――――――――

妹友(………)イラッ

パクンッ ポイッ

バフッ

妹友「むー……」ゴロゴロ

ゴロリ

妹友(…そう言えば…急に私どうしたんだろう…)

妹友(今まで妹ちゃんが一方的に先輩にイチャイチャしても…)

妹友(感情を抑えきれてたのに…)

妹友(………)

妹友(………お昼の時間)

妹友(家でもイチャイチャしてるのが分かった時…)

妹友(私、分かりやすい位に動揺しちゃってた…)

妹友(もう全然余裕なくて…それで先輩に……)トクン

妹友(…今のメールだってそう)

妹友(妹ちゃんが先輩のろけるのなんて毎度のことなのに……)

妹友(何で私イラついちゃってるんだろう……)

妹友(……!)

妹友(…そうか。そうなんだ)

妹友(…私…焦ってるんだ)

妹友(先輩のコートに無理言って入らせてもらったのも…)

妹友(先輩のハンカチを取るのに必死だったのも…)

妹友(…全部、焦ってるからなんだ)

妹友(…私が、自分が何も行動を起こさなかったら……)

妹友(妹ちゃんに…妹なのに先輩を取られちゃうって…)

妹友(だから…なんだ……)

妹友(……なら)

妹友(…なら行動あるのみ、だよね)

妹友(だ、だって、わ、私は…お、お兄さんが、す、ス…)

妹友(…好きなんだから)プシュー

妹友(…そうよ。自分の気持ちに蓋をするのはもうやめよう)

妹友(私は…お兄さんが…好き。そしてお兄さんにも私を好きになってもらいたい!)

妹友(だから引っ込み思案の昨日までの私とさよならしよう!)ググッ

妹友(………)フシュー

妹友(…力が湧いてくる。勇気が湧いてくる…胸の奥がとても温かい…)

妹友(これも…アニキ粒子の影響なのかな…)

妹友「よし。そうと決まればまず部屋の掃除よ」ムンッ

妹友「今度お兄さんが来た時に、埃一つ落ちてない部屋を見せて好感度アップしなきゃ」

妹友「清潔感は溢れる部屋は何においても……ん?」チラッ

妹友「ここらへん…お兄さんが座ってたところだ……」

妹友「………」

妹友「…片付けは夜やると近所迷惑だから、明日にしよう。うん」

ススッ

妹友「わ……同じ場所に座ってしまった」ニヘ

妹友「…えへへ」トクン

妹友「………」サスッ

妹友「………だ、誰も見てないし…うん、いい、よね?」トクン

妹友「こ、ここらへんにお兄さんの太ももがあったんだよね…」スリ…

妹友「そしてこの辺りに足の裏が…靴下は履いてた気がするな…残念…」スリ…

妹友「そ、そしてここが…お兄さんのお尻が乗っていた場所……!」ゴクリ

妹友「…………」スリスリ…

妹友「こ、これって間接的に…お兄さんのお尻で…顔を踏まれていることに…なるのかな」トクン

妹友「ん……ふ……」スリ…スリ…

妹友「い…けない事だとは…思うけど…そこにお兄さんがいたっていう事実、だけで…!」トクントクン

妹友「私、もう…止 め 」

ドクンッ!!

妹友「…うっ!?」ドクン

妹友「な、何…コレ!?か、体がっ…ぐっ…うぅ!!」ドックン

コン コン

友母『妹友ちゃん?さっきから声が聞こえてるけど、お友達来てるの?』

妹友(まずっ、お母さん!?ひょっとして私声出ちゃってた!?)

妹友「な、何でもない、よ。友達と電話して…ぐぅぅぅっ!」ドックン

コンッ コンッ

友母『妹友ちゃん!大丈夫!?声がすごく苦しそうだけど!』

妹友「だ、大丈夫だよ。っぐぅ…!ちょっとお腹、壊しちゃって…ぇ」ドクンドクン

友母『だからお腹冷やさないようにってあれ程…じゃぁお母さん薬取ってくるから!トイレ入っちゃいなさい!』

妹友「わっ、分かった…くぅっ……ああぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」ズルッ… ズルッ…

―――

バタンッ

妹友(何とか…トイレまで…来れた……)

妹友(急に何だったんだろ……うわぁ…下着がズブ濡れだ…替えないと…)

妹友(………)

妹友(先輩の居た床に頬ずりしてたら…急に…興奮してきて…それから……)

妹友(……まさか…)

妹友(あの場所にアニキ粒子が残留してたってこと?)

妹友(…でも昼間のコートの時はこんな発作みたいなの起こらなかったし…)

ジャー

バタンッ

妹友(…とりあえず危険だからあの区域をマスキングテープで……)

妹友(………?)

妹友(兄先輩が居た場所に…緑色の小さいオーロラ?みたいなものが見える…)

妹友(あれは…何だ)

友母「はいこれ。ぬるま湯とお腹の薬ね。胃か腸か分からないから両方持ってきちゃったわよ」

妹友「あ、ありがとう。…ねぇお母さん」

友母「何?まだトイレ?だったら早く――」

妹友「ち、違うよ!そうじゃなくて…あの…私のベッドの横の床、何か見える?」スッ

友母「床?別に何も見えないけど……あ!あんたまさか!また怖い映画見てそれで…」

妹友「見てない!それにこの年になってそこまで尊厳は捨てないよ!」

友母「そう?それならいいんだけど。もしそうなら洗濯自分でやりなさいよ。お母さんは知りませんからね」

トッ トッ トッ トッ

妹友「だからっ!…もう、人の話聞かないんだからお母さんは…」

妹友「………」

妹友「お母さんには見えずに…私には見える…つまり…」

妹友「私がアニキ粒子を肉眼で見れるようになった…?」

―――

妹友「…見える」

妹友(ドアノブ、湯のみの飲みくち、お兄さんの通学鞄の置いてあった場所。…注意深く見ないと見逃しちゃう程の…小さな光が)

妹友(そして兄先輩が座っていた場所には…小さな緑色のオーロラ?が)

妹友「これがアニキ粒子……」スッ

トクンッ

妹友(…ッ!軽くかざしただけなのに…)トクン

妹友(…これが妹ちゃんの見ていた世界…)トクン

妹友「妹ちゃんがお兄さんをどこにいてもすぐに見つける理由が、やっと分かった」

妹友「いつもこの緑の光を追っていたんだね…」

妹友「…だとすると」

ゴソゴソ

妹友「お兄さんからいただいたハンカチは…」スッ

…コォォォ…ォォ…

妹友「何……これ………」

妹友「ま、眩い緑色の光が…ジップロックを満たしてる…」

妹友「これ…まさか全部が…?」

妹友「………」

妹友「…確か10時間でアニキ粒子の効果が切れるんだよね」

妹友「…ちょっと位早くても…いい…よね?」ゴクリ

ソーッ

妹友「…わぁ…何て優しい光なんだろう…」トクン

妹友「う…触れた先からもう…」トクン

妹友「だ、抱きしめて…みようかな…」トクン

キュ

妹友「……あう」///

妹友「こ、これは強烈な…も、もっと…もっと欲しいっ」トクンッ

ギュー

妹友「んっ………ふっ………あ…ふ」ドクンッ

妹友「…はぁ…はぁ…」クテッ

妹友「…すごい」

妹友「お兄さんの…汗や皮脂を吸収してる分…アニキ粒子が濃いのかな…」

妹友「………」チラッ

妹友「そう言えば…」モヤモヤ

~~~

妹『…くれぐれも、つらくなったら、だよ?直接匂いを嗅ぐとかはngだからねー?』

妹『直接匂いを嗅ぐとかはngだからねー?』

妹『匂いを嗅ぐとかはng…』

妹『匂いを嗅ぐとか』

トカ… トカ… トカ………

~~~

妹友「匂いを…」

妹友「………」ゴクリ

妹友「だ、大丈夫。ちょっとだけなら…ちょっとだけなら大丈夫な、はず」トクン

ズ…

妹友「…ふぅ」

クン…


妹「ッ…ぅあっ!」ドクンッ

妹「ぎ……い”っ…あ…ぐぅぅうぅぅぅぅッ!」ビクンッ

ビクッ

ビクンッ

妹「…はっ!……はっ…!はぁ…はぁ…ぁぅ…」クテッ

妹「…なに…これ……」

妹「イイ……すごくイイ……」

妹「んっ…はぁ……これを……」

妹「これを思いっきり吸ったら…どうなっちゃうの…かな…?」ドックン

>>164 妹→妹友

妹友「マズいかな…流石にマズいよね…はは…」

…コォォォ…ォォ…

妹友「………」

…コォォ…ォォォ…

妹友「………」スッ…

ハァーーーー……

妹友「………」ニヘッ






スゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!








妹友「!」ギクンッ

妹友「がっ…あ”っぎっ…ぐ…ッ………ッ…!」ビクンッ

妹友「ッかっ…はっ…あ”ぐぅぅ………ッ!」ギクンッ

『カァォッ』

妹友「…ッはぁ…ス、スゴい…スゴク…イイッ…よぉ……!」ピクッ

『シュォーンッ』

妹友「ひか、光…ヒカリが一面っ…にっ…ぃいっ!」

…コォォォ…ォォ…

妹友「あぁ………ぁああ……あああぁ……!」ビクン

妹友「ハ、ハンカチから……光が逆流して…くる……」

妹友「ッぐぅううぅぅうぅうぅッ!!」

――――
――


―――

ピンポーン♪

インターホン『はーい』

妹「おはようございますー。妹ですけどー」

インターホン『あら妹ちゃん。妹友ちゃーん!妹ちゃん来てるわよー!』
   『分かってるよ!お母さんは大きい声出さないで』プッ

兄「………」

妹「…ほふぅ」モゾモゾ

兄「インターホン押す時ぐらいコートから出ろよ…」

妹「ことわーるのであーる!」フンッ

兄「…はぁ」

ガチャッ

トッ トッ トッ

妹友「ご、ごめんなさい!時間を指定したのは私なのにすいません!」ペコリ

兄「いやいやほぼ時間通りだよ妹友……さ…ん?」

妹「!」

妹友「はい?お二人ともどうかしましたか?」

兄「いやいやいや、目の下にすごいクマできてるよ!」

妹友「…あ、これですか?昨日読んでた小説が面白くって、つい夜更かしちゃったんです」

兄「…そうなの?昨日のアニキ粒子とかの影響とかじゃ…」

妹友「あぁ、それはもう全然。大丈夫ですよ、少し寝不足なだけですから」

妹「………」

兄「なら…いいんだけれど…」

妹「…とぅ!」

スポッ

兄「…ありゃ。珍しい…。妹が自分から出るなんて…」

妹「たまには親友と並んで登校したい…そんな気分の日があったりなかったりするのです」

兄「…どっちだよ」

妹「まぁそんな訳で妹友ちゃんと女子☆トークするからお兄ちゃんは距離とってとって」グイグイ

兄「自分で移動するっての!まったくもう勝手にくっついたり離れたりと忙しい…」テクテクテクッ

テクテク

妹「………」

妹友「………」

妹「んっふっふ~」ニマニマ

妹友「…………」

妹「 昨 晩 は お 楽 し み で し た ね ?」

妹友「ッ……」///

妹「お兄ちゃんのエキスが染み込んだハンカチ、素敵だったでしょ?」

妹友「……素敵、でした」

妹「ありゃ。素直に認めちゃうんだ?」

妹友「だってそうなるように仕向けたのは妹ちゃんでしょ」

妹「ええー。何の事かなー?あたしは忠告したんだよー。直接匂いは嗅がないようにってさー」ニマニマ

妹友「……う”ーー」

妹「いやーそれにしても妹友ちゃん。たった一晩で随分とまた汚染が進んだね」

妹友「……それって外見から分かるものなの?」

妹「……制服の左胸、内ポケット」

妹友「えっ」ギクッ
                   ア セ ン
妹「お兄ちゃん初心者とは思えない見事な構成だね」

妹友「……褒め、てるの、それ?」

妹「勿論褒めてるよ。アニキ粒子は欲しい……でも皮膚に直接だと刺激が強すぎる」

妹「そこでワイシャツ一枚挟んでの吸収っ。しかも有事の際にすぐ取り出す事も可能っ」

妹「実に見事、アッパレだよっ」

妹友「…………」///

妹友「……ねぇ妹ちゃん」

妹「ほいほい?」

妹友「妹ちゃんの目的は何?」

妹「目的?」

妹友「独り占めしてても良かったのに……何故私にこの道に進ませたの?」

妹「んー……それはまだ詳しくは教えられないけどさ」

妹「もっともっとお兄ちゃんとベタベタしたい為、だよ」

妹友「でもそれならいっそのこと――」

妹「――教えない方がベタベタできた、そう言いたいのかな?」

妹友「……分かってるなら何故」

妹「……んー、そうだねー」クルクル

妹「独り占めでベタベタするより、もっともーーっとベタベタ出来る方法があったら?」

妹友「……そんな方法あるの?」

妹「そんな方法があるもんかね……あるんだなこれが」ニヤァ

妹友「……とりあえず、それについてはいいよ」

妹「えー。これから面白くなるところだったのにー」ブーブー

妹友「あのね、妹ちゃん」

妹「ん?」

妹友「私、先輩のことが、お兄さんのことが――」

妹友「――好き」

妹「おおーっ!」

妹友「妹ちゃんにはアニキ粒子を仲介してもらった恩はあるけれど……」

妹友「これに関してはもう、妹ちゃんに遠慮したり、譲ったりすることはないと思う」

妹友「私はお兄さんが好き、そしてお兄さんにも私を好きになって欲しい」

妹友「そう私は決意し、覚悟を決めたの。だから――」

妹友「私の親友の妹ちゃん、今日、いえたった今からライバル宣言をするよっ!」ビシィ





パチパチ

妹「いやー、すごいすごい!かっくいーなー妹友ちゃん!」

妹友「……言っておくけど私は本気だよ?」

妹「分かってるよー。それも込みであたしは嬉しいのだよー」

妹「最初に言ったでしょ?『理解者』が欲しいって」

妹友「……言ってたけれど……」

妹「だからライバルだろうと何だろうと嬉しいんだよ。同じ世界を共有できる者として、ね?」

妹友「……世界……確かにそうね。私はアニキ粒子に汚染されて初めて世界を認識した……」

妹「そう、妹友ちゃんは分かったはず」

妹 「あたしの世界はお兄ちゃんそのものだってことに」
妹友「わたしの世界はお兄さんの存在なくして成り立たない」

妹「…………」

妹友「…………」

妹「……んっひひ~。まま、何はともあれ」

妹友「……今までよりもっと妹ちゃんとの絆は強まった気がするよ」

妹「理想は違えど共有する者として…」

スッ

妹友「ライバルではあるが親友。互いを高め合う者として…」

スッ

ガシッ

妹友「……ええ」ニコッ

        リ ン ク ス
妹「ようこそ『兄依存者』。歓迎しようっ!盛大にねっ!」ニカッ


普通だったらわけわかめな妄言で済まされるのに兄が変に気にすると思ったらなんだこの展開は…

――――

兄「……うす」

友「おはよー旦那」

兄「…………」

友「…………」

兄「いや、邪魔なんだが」

友「旦那、何か俺に言うことはないのかな?」

兄「……別に何もないが」

友「っほほーう。じゃぁある一人の男の話をしよう」

兄「…………」

友「その男はつつましくも満たされた日常を謳歌していた」

友「無論多少不幸は多いが、それでも人生にこれと言って不満はなかった」

友「ある日男はクラス一のゴリラ女に顔を殴られ、意識を失ってしまった」

兄「…………」

友「ああ何たることだろうか!男には何の非もないと言うのに!」ババッ

友「そして男は目を覚ますと、何故か生徒指導室の中にいたのだ」

友「男の膝の上にはフラジールな関係という読んだ事もない本が置かれ……」

友「対面に座していた正面の教師は、意味深な視線を男に投げかけていた……」

兄「……感動的だな」

友「どこがじゃあっっ!!」

>>183も指摘してるようにスレタイ詐欺っぽくなってるかな……
期待と違うもので色々すまん

友「この男ってのは俺だよ俺!」

兄「知ってた」

友「知ってたならなお悪いわ!おまっ……何してくれちゃってんの!?」

兄「ほら、お前放課後先生と待ち合わせてたじゃないか」

友「そこは合ってる」

兄「だが肝心のお前と来たら気絶しっぱなしで動く気配がない」

友「そこも合ってる」

兄「だから親切心でお前を生徒指導室まで担いで行ったんだ」

友「ありがとう。おかげで約束をすっぽかさないで済んだよ」

兄「そしてお前の膝の上に本を置いたんだ」

友「それはいらなかったんだよっ!」

兄「……?」

友「その『どうして……?』って感じの不思議系美少女みたいな顔やめろ!イラッとくる!」

友「いいか。そもそも何故生徒指導室に呼ばれたのか原因を言ってみろ」

兄「課題を出し忘れたから」

友「違っ……違わないか……?いや、やっぱ違うわ!お前のせいだ!」

兄「……?」

友「だからやめろ!お前がノートにガチムチな黒人を描くから――」

兄「ビスケット・オリバだ」

友「そうそのオリバを――」

兄「ビスケット・オリバだ」
    ア ン チ ェ イ ン
友「だぁっもう!mr.不可拘束ことビスケットオリバをやたら精巧に描いたからだろ!?」


兄「確かにそうかもしれない」

友「かもじゃなくてそうなの!つまり俺はあらぬ誤解を受けた状態で担任ちゃんと会う事になったの!」

兄「良かったじゃないか」

友「良いわけっ……いやまぁ丸っきり全部悪いって訳じゃないか……確かに担任ちゃんと……」ブツブツ

兄「……話は終わったか?」

友「終わってないわタワケ!それに加えてあの本だぞ!何なんだよアレ!?」

兄「フラジールな関係か?bl本の傑作らしい」

友「らしいって何!?伝聞!?てか何でお前がそんなの持ってるんだよ!」

兄「いや俺にその手の趣味はないからな。妹友さん経由で借りたんだよ」

友「俺にはあるみたいな言い方やめろ!」

兄「友が必要だから探している、と説明したらその本を薦められたんだ」

友「息をするように嘘をつくなよ!」

友「おかげでやけに鼻息が荒い担任ちゃんと読んだ事もない本の話を延々とだな……」

兄「友よ、ポジティブに考えるんだ」

友「この未曾有の大災害をどうポジティブに捉えればいいんだよ!」

兄「いいか、まず俺のラクガキなくして先生と二人っきりになるチャンスは生まれなかった」

友「な……に……?」

兄「次にお前が持っていた本によって…あくまに仮にではあるが、共通の話題が生まれたんだよ」

友「バ、バカな……」

兄「そしてその話題は先生とお前だけの秘密だ。この世でたった二人しか知らない秘密だぞ?」

友「担任ちゃんと……俺だけの……秘密……」ゴクリ



ハッ

友「って違う!その秘密の内容が問題だって事を俺は言ってるんだよ!」

兄「……チッ。駄目だったか」

友「大体だな!お前が存在するだけでゴリラ女のテンションが上がったり下がったりするせいで!」

兄「……あ」

友「ゴリラパンチが飛んできたり、ゴリラ唐竹割りで割れたり、ゴリラハンドで色々潰れたり……」

兄「……なぁ」チョンチョン

友「信じられるか。あれで陸上部なんだぜ?あんなトランプ引きちぎれそうな握力しておいて陸上とか……」

兄「…………」チョンチョンチョンチョン

友「きっと一緒に走ってる競技者をあの握力でペシャンコに……って何だよ。男が袖ちょんちょんやっても萌えないんだよクソァ!」

兄「……後ろ」

友「後ろ?後ろってなんだよ」クルッ

ゴォォォォォォ

幼馴染「やぁ。おはよう友くん」ビキビキ

友「」

幼馴染「誰がゴリラだって?」

友「ハッ…!いや幼馴染さんがゴリラみたいだなんて言ってないじゃないですかー。やだなーもー」

幼馴染「へぇ?じゃぁ何て言ってたの?」

友「いや俺は幼馴染の握力がゴリラ並って言いたかっただけで……」

兄「……つまりゴリラだと」

友「そう、やっぱりゴリラだと……って違うわぁ!握力がって言ったじゃん!ね幼馴染さん?」

幼馴染「念仏は唱えたか?」パキポキ

友「違う!ゴリラって言ったのは兄で、俺はゴリラなんて言ってない!あくまでゴリラ並の握力でゴリラではないゴリラだと俺は――」

幼馴染「ゴリラゴリラうっさいわー!!」グオッ


ギャアアァァァァァァァ……

友「」

幼馴染「ふんっ」

兄「…………」

幼馴染「あ!……え、えっと……おはよう」

兄「おはよう、幼馴染。今日朝練なかったんだ?」

幼馴染「うん、まぁそんなとこ。明け方雨降っちゃったから、柔軟やって即解散」

兄「そりゃ早起き損だったなぁ」ハハ

幼馴染「……損ではない、かも」ツンツン

兄「ん?何か言った?」

幼馴染「い、いやいや別に!?何にも言ってないよ別に!」ブンブン

兄「そう?ならいいけど」

幼馴染「…そ、それと」ソワソワ

幼馴染「……きょ、今日、またおかず作りすぎちゃったんだけど……」チラッ

兄「ああ。俺で良ければ食うけど?」

幼馴染「ホ、ホント!?……コホン、そうして貰えると助かるわ」キリッ

兄「幼馴染料理上手いもんな。昼休み期待して待ってるわ」

幼馴染「はぁ!?べ、別に上手くなんかないわよ!あんなのレシピ通り作れば誰だって作れるじゃない!」///

兄「そうか?世の中にはレシピが目の前に合ってもちゃんと作れない奴がゴマンといるんだぞ?」

幼馴染「……知り合いに料理下手な子でもいるの?」

兄「まさにうちの妹がそれだ」

幼馴染「あんたの……妹?あの娘普通に料理できるはずだけど……」

兄「いや、普通に料理できない奴だ」

幼馴染「?……全然想像つかないわ。試しにどんな料理風景なのか教えて」

兄「そうだなー……例えば――」

~~~~

兄「今日料理当番お前だぞ」

妹「えーダルーい…お兄ちゃんの上から動きたくない……」グテー

兄「ワガママ言うな。ほれ、料理せい」

妹「はーい。……そうだな、今日は冷ご飯もあるし、チャーハンにしよう!」

兄「いい判断だ。じゃぁ俺は食器とか配膳やるわ」

妹「まず卵を ―― 取りに行く為にお兄ちゃんにくっつきます」ピトッ

兄「…………」

妹「大体10秒で充電完了です。さて卵を冷蔵庫から取り――冷えた手を温める為にお兄ちゃんにくっつきます」ピトッ

兄「……おい」

妹「10秒チャージ!そして卵を割る ―― 前にケガしないよう祈願を込めてお兄ちゃんにくっつきます」ピトッ

兄「一向に進まないだろこのアホ妹め!」ヒュッ ビシィ!

妹「あ痛ぁぁぁぁぁ!!」

妹「……頭部損傷のダメージをお兄ちゃんにくっつく事によって回復させます」ピトッ

兄「…………」ハァ

~~~~

兄「――とまぁいつもそんな感じでな。まともに料理が最後まで完成した試しがない」

幼馴染「…………」プルプル

兄「いつまで経っても進まないから……結局俺が作ることになる」

幼馴染「た、確かに羨まし……じゃなくてそれは由々しき事態よね」

兄「だよな。当番制とは一体何だったのか……あ」

幼馴染「? どうしたの?」

兄「んー……そういや今日妹が当番だったなぁ、と」

幼馴染「って事はまたあんたが――」

兄「また俺が料理する事になるかな」
幼馴染「妹とベタベタくっつくってことね」

兄「ん?」

幼馴染「ん”んっ……あんたが料理する事になっちゃうのね」キリッ

兄「あ、ああ。そうだな」

兄「だったら帰りにスーパーでも寄って献立でも立てとくかなー」

幼馴染「!」ピコーン!

幼馴染「ね、ねぇ……良かったら……わ、私が作ってあげてもいいんだけど」ツンツン

兄「へ?」

幼馴染「そうすればあんたも楽できるじゃない?昨日も物凄い偶然たまたまあなたの舌に合ったおかずがあったみたいだし……」ツンツン

兄「……気持ちはありがたいけど、いいよ。大体幼馴染は部活あるじゃないか」

幼馴染「あんた一人分の料理作る位大した手間じゃないのっ。私の腕を疑うなら、1時間でフルコース用意してあげてもいいわよ?」

兄「い、いや疑うわけじゃなくて……んー……、そうか……」

幼馴染「…………」ドキドキ

兄「そうだな。それならお言葉に甘えてお願いしようかな?俺も偶には誰かの作ったご飯を食べたいし」

幼馴染「……ホ、ホントッ!?」パァァァァァァ!

兄「あ、ああ?……何で幼馴染が嬉しそうなんだ?」

幼馴染「えへへ……えっ」

兄「………」

幼馴染「………」

幼馴染「……!」ハッ

幼馴染「そうよ!あんた何私を嬉しくさせてんのよ!ふざけんじゃないわっ!」///

兄「え、ええー……?」

兄「……でも、懐かしいな」

幼馴染「何が?」

兄「ほら、昔はうちに来て母さんと一緒に台所に立ってたからさ。なんだか懐かしいなって」

幼馴染「…うちの母さんよりおばさまの方が料理上手だったから」

兄「そういや昔から向上心高かったよなー、幼馴染はさ」

幼馴染「そんなんじゃないわよ。ただあんたが喜んでくれるからってだけで」

兄「……へ?」

幼馴染「あ、ち、違うからっ!勘違いしないでよ!あんたの笑顔なんて私の努力の単なる副産物で別にどうでもいいんだからっ!」///

兄「お、おう」

幼「私はただ立派なお嫁さんになりたいから伯母さんに習ってただけなんだからっ!」///

兄「お嫁さんって」

幼馴染「だ、誰もあんたのお嫁さんなんて言ってないでしょっ!」///

兄「い、言ってない言ってない!」


クラス全員(……ッフー)

クラス全員(……ゴチです)

――兄 教室 昼休み――

妹「たのもー!」

妹友「おじゃまします」

ピキィィィン

図書委員(……やはり来たか)

風紀委員(昼休み。それは兄を中心に繰り広げられるストロベリータイム!)

飼育委員(が。後輩コンビは知らない……何も知らないのだ……)

美化委員(今朝方、兄と幼馴染さんの間で交わされた約束を)

生活委員(そう。幼馴染さんが……手料理を兄に振る舞うという約束を!)

学級委員(これで幼馴染さんは兄争奪戦に大きなアドバンテージを得た!)

放送委員(この展開に対して二人がどう対抗するのかッッ!我々は一時たりとも目を離す訳にはいかないのですッッ!)

クラス全員(面白くなって来たぜ……)

兄「――よいしょっと。こんなもんかな」

妹友「ありがとうございます兄先輩」

妹「お腹ペコペコだよー。早く食べようよー」

テコテコ

妹「お弁当~♪お弁当~♪」

ピトッ

(さも当然の如く兄に密着。……ブレないな。流石妹さんと言わざる得ない)

(この先制パンチに対して幼馴染さんはどう対応するのか……?)チラッ

幼馴染「ふふん」ファサァ

(不敵に微笑んでいるッ!今朝の約束を取り付けた今ッ!私に怖いものなどないッ!それがどうしたと言わんばかりの様相だァッ!)

(……しかし、これは圧倒的に不利だぞ妹友さん)

(妹さんのように本能の赴くまま行動できるタイプでもなく……かと言って幼馴染さんのようなリードもない)

妹友「……」ニコッ



(……わ、笑った……?)ザワ…ザワ…

…スッ

兄「え」

妹「…おお」

幼「なっ…!?」


(な、何だとォォォォォォォ!?)


妹友「あれ?どうかしました先輩?」

兄「……あ、ああ。いや別に…」ハハ…

妹「んっひひ~♪いただきまーす」

(あっ、あんな兄の至近距離に妹友さんがっ……座った……!?)

(あの奥手の妹友さんが…自ら……それも寄り添うようにして……ッ!)

(その距離目測でおよそ10センチ!?。いや……イスを座り直すと見せかけて更に寄って…5センチ!?)

(パーソナルスペースにおける密接距離。ごく親しい人間のみに許された空間に、赤面する事もなく……だと)

(身長差を利用しての常に上目遣いのテクニック。よくぞあそこまでの靭やかさを……!)

(……いや、それより兄のあの反応だ。最初こそ驚いた様子だったが、今は何事もなく昼食を食べ始めている)

(妹友さんの突飛な行動を瞬時に飲み込んだと見るか。……あるいは)

(我々の預かり知らぬ内に、あの二人に大きな進展があったと見るべきか)

(幼馴染さんは……)チラッ

幼馴染「」

(だ、駄目だ……。完全に目が死んでいる……)

(自身が優位だと確信した直後のカウンターだ……無理もない)

幼馴染「…………」コトッ

幼馴染「…………」モクモク

幼馴染「…………」

幼馴染「…………」ブワッ

(な、涙……)

(泣いていい……幼馴染さん……今、あなたは泣いてもいいんだ……)ブワッ

――――

ガタッ

兄「さてと、帰りますかね」

兄「あ、幼馴染は……と」キョロキョロ

兄「あれ?いない?」

兄「えーと……あ、副部長さん!」

陸上部「兄くん?私に何か用?」

兄「あのさ、幼馴染の奴見なかった?」

陸上部「あ、あー……もう部活行っちゃったと思うけど……」

兄「……そうか。分かった、ありがとね」

タッタッタッタッ


陸上部「……頑張れ、幼馴染」

――――

妹「おっ兄ちゃ~~ん!にダイレクトへぶぁ」

兄「たんま」

妹「むーむーーむー!」バタバタ

兄「今日はちょっと用事が出来てさ、一緒に帰れないんだ」

妹友「……そうですか。それは残念です」シュン

妹「ぷはっ!お兄ちゃんは何時頃帰ってくるの?」

兄「帰ってくるのは遅くならないかな。幼馴染が料理を作ってくれるみたいだから、それでね」

妹「」ピクッ

妹友「」ピクッ

兄「だから今日妹当番だけど、準備しなくてもいいからな」

妹「……んー、分かったー。妹友ちゃんとイチャイチャしてる事にするー」

妹友「私は妹ちゃんが暴走しないように見張ってますから、留守の間はご心配なく」

兄「おう、そんじゃ後よろしくな」

妹「…………」

妹友「…………」

妹「いやー、いよいよだねー」

妹友「……ねぇ、妹ちゃんって独占欲とか、ないの?」

妹「お兄ちゃんをあたし専用にしたいなー、とか?」

妹友「……うん。私は正直、幼馴染先輩とお兄さんが一緒に食卓を囲む様子を想像しただけで……」メラメラ

妹「そうだなぁ、あたしは……っへへー、ないしょー♪」

妹友「な、内緒?」

妹「まぁそれより、あたしはちょっと手緩いなぁと思うわけで」

妹友「手緩いって、何が?」

妹「……にっしっし」ニカッ

妹友「???」

――――

オツカレッシタァッ!

オツカレッシタァッ!

ガヤガヤ

幼馴染「さてと……片付けますか」

陸上部「私がやっとくからいいよ」

幼馴染「……次期部長が雑用なんかやらなくてもいいわよ」

陸上部「いーのいーの細かい事は気にしないの。ほら幼馴染は帰りに」

幼馴染「帰りに?」

陸上部「…ッんじゃなくて早く帰りたいのかなーなんて、あはは……」

幼馴染「……今日は特にないからいいわよ」

陸上部「え?」

幼馴染「……ほら、手伝うならそっち持って」

陸上部「……っかしいな……。約束取り消す訳ないし……一体……」ブツブツ

幼馴染「聞いてる?」

陸上部「あ、ああごめんごめん!持ちます持ちます!」

陸上部「――お」チラッ

幼馴染「じゃぁせーので持ち上げるから――」

陸上部「わ、私急に用事思い出しちゃったかも!」

幼馴染「はぁ!?今更何言ってるの!?」

陸上部「じゃっ!」バビュンッ

マタアシタネー!…………



幼馴染「きゅ、急に何だったのあの娘は……」


兄「よっ」

幼馴染「」ビクンッ

幼馴染「……何でここに」

兄「部活終わるまで図書室で暇潰してたんだ。……そうだな、それ片付けたら一緒に買い物行こうぜ」

幼馴染「う……」

幼馴染「お、終わってないの見れば分かるでしょ。……だから今日は、無理よ」

兄「こっち持てばいいのか」

幼馴染「……あんた何を」

兄「二人で協力すれば早く終わるだろ?」

幼馴染「…………」

兄「俺晩飯楽しみだったから弁当控えめに食べてたんだ。な?早く終わらせよう」

幼馴染「………ッ」キュ

兄「……これはこう畳むのかな」

スッ

幼馴染「……それはこうよ。相変わらず不器用なんだから」

兄「不器用でもいないよりマシだろ」

幼馴染「ふふ、どうだか。いない方が効率良く終わったりするかもよ?」

兄「…………」

幼馴染「シャトルは重ねて――」

兄「やっと笑ったな」

幼馴染「ふぇっ!?」///

兄「昼頃から何か苦しそうな表情してたからさ、心配してたんだ」

幼馴染「わ、私を……見てたの……?」トクン

兄「おう。何か悩みがあったとしても、俺は男だからさ」

幼馴染「兄が私のことを……」トクン

兄「悩みを共有したくても出来ないかもしれないじゃん?」

幼馴染「心配…う……はぁ……」///

兄「だからせめて笑わせるか、いつも通りでいた方がいいかな、とか色々考えてたんだけどさ」

兄「結局いつも通りが一番だったな」

幼馴染「…………」ポー

兄「……幼馴染?」

幼馴染「ふぁ!?大丈夫だよ!今私超元気いっぱいだから!」ブンブン

兄「……ならいいか」ニカッ

幼馴染「ッ……」///

――――

兄「――ぃよしっ!」

ドサッ

幼馴染「これで全部ね。ご苦労様」

兄「どういたしましてっと、帰る――前に飲み物が欲しいな。埃っぽくて喉がイガイガする……」ン"ンッ

幼馴染「はちみつレモンで良ければ、そこの鞄のスクイズボトル入ってるわ」

兄「さんくす。うーん……いい香りだぁ。多少運動したし、さぞかし五体に染み渡りそうだ」キュポッ

幼馴染「天然素材ばっかりだから体にもいいし、吸収力はピ……カ……イ……チ…………」

兄「ほいじゃいただき――

幼馴染「ふんッッッ!!!」ギリィ

バビュンッ ガシィッ ズサーーーッ!!

兄「――ってアレ?はちみつレモンは?」キョロ

幼馴染「はちみつレモンは……絶対に渡さんッッ!!」///

兄「どういう急激な心変わりなんだよ!?つか本当に乾きがヤバいんだ、ちょっぴりだけでも――」

幼馴染「駄目だぁッッ!」///

兄「――よし分かった。そっちその気ならこっちも全身全霊を持って奪い返すまで!」

兄「乾きに植えている俺は見境を無くすぞぉ!覚悟しろ幼馴染っ!」ダッ

幼馴染「このスクイズボトルだけは駄目だ……駄目なんだ……ッ!」

幼馴染「死守してみせる!あんたの魔の手から、必ず!」

シュッ

ババッ

イヤァァァァァ!

ダッ

グワァァァァ!


「…………」コソコソ

「…………」キョロキョロ

「……よっ」グッ

ゴ……ゴゴ………ズッ……ゴゴ…

ガ…ガコン… カキッ

「……よし、と」チャリッ

――――

兄「流石に……陸上部だな……体育倉庫内を、縦横無尽に……駆け巡るとは……」ゼェ…ハァ…

幼馴染「あんただって……帰宅部の癖に……何て瞬発力なのよ……うちにくれば、レギュラーだって取れるかもしれないのに……」ゼェ…ハァ…

ッハー…

兄「つ、疲れたな」

幼馴染「そ、そうね」

兄「……余計に喉が乾いてきたよ」

幼馴染「バカね。……はい」スッ

兄「……何それ?」

幼馴染「予備のボトル」

兄「え、だったら最初からそれを――」

幼馴染「だってあんたが間髪入れずこっちのボトルを狙ってくるから――」

兄・幼馴染「…………」

兄・幼馴染「…………」

兄・幼馴染『プッ』

兄・幼馴染『あっはっはっは!』

――――

兄「あー可笑しい。俺たち一体何やってたんだか」

幼馴染「私のセリフ取らないでよ。何の収穫にもならない運動だったわ」

兄「笑えたから良かっただろ?」

幼馴染「……ふふ、そうね。笑えたのは確かよ」

兄「ん”ーーっ!……さぁってとぉ、今度こそ帰りますか」ット

幼馴染「時間大分経っちゃったから……タイムセールに間に合えばいいけど」

兄「今から行って丁度じゃない?お店の人結構そこらへんルーズだから」テクテク

幼馴染「開始前に準備してないと、欲しい食材が手に入らないから……」

兄「……おーガチだね。こりゃ益々もって飯が楽しみだな」

幼馴染「ベストは尽くすけど、期待しすぎても――」

ガコンッ

幼馴染「――え?」

兄「どうした?」

ガコッ ガコガコッ

幼馴染「そ、そんな……嘘……」

ガコンッ

兄「……まさか」

幼馴染「倉庫の入り口が……開かないの……」

兄「……貸して」

幼馴染「……うん」

ガコガコガコガコッ! ガタンッ!

兄「んー……これは完全に外から施錠されてるな」ガコン

幼馴染「え……それじゃあんたと私、閉じ込められちゃった、ってこと……?」

兄「……そうなるな」


幼馴染「…………」

兄「…………」

…ヒュォォォォォォ ガタッ ガトト……

幼馴染「どうしよう……。運動部系うちが最後だから……」

兄「……声を上げても誰も気付かない、か」

幼馴染「情けないけど、学校に電話して開けて貰うしかないわね」

兄「そうだな。この際仕方ない」

幼馴染「…………」

兄「…………」

幼馴染「……早く電話しなさいよ」

兄「……あ、俺?幼馴染ケータイ持ってないの?」

幼馴染「私はバッグに入れてロッカーの中よ。一応貴重品だし」

兄「なるほど。電話番号は……生徒手帳に載ってるか。えーと……」

ペタペタ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「……そうか、片付けする前に鞄に突っ込んで……」

キョロキョロ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「…………」ポリポリ

幼馴染「……ま、まさか……」

兄「……鞄、外だ」

幼馴染「嘘でしょっ!?」

――――

兄「そっちの窓どうだった?」

幼馴染「駄目、こっちもはめ殺しだったわ」

兄「となると……最初話合った通りか」

幼馴染「学園の守衛さんか、私の両親か、妹さんが気付くまで待つしかないわね……」

兄「……そうだな」

ズリズリ

幼馴染「……何やってるの?」

兄「どうせ待つんだったらコンクリよか、マットの上の方がいいだろ?」

幼馴染「備品を勝手に動かすのは……この際そんな事も言ってられないわね」

兄「そうそう。後で戻しとけばいいって」

ポンポン

兄「ほい出来たっと。……ふー」ボフッ

幼馴染「…………」

兄「どうした?幼馴染も座れよ、ホラ」ポンポン

幼馴染「え、ええ……座るわよ、そりゃ……」ポフッ

兄「……何でそんな離れてるんだ?」

幼馴染「……部活終わった後で、私多分汗臭いと思うから」

兄「あー……そうか。うん、分かった」

幼馴染「…………」

兄「…………」

幼馴染「…………」ブルッ

兄「……ん?」

幼馴染「な、何?」

兄「……幼馴染、実は寒いだろ」

幼馴染「……別に寒くなんか……くしゅっ!」

兄「…………」

幼馴染「…………」ズズ

兄「……そんな短パン履いてりゃ、寒くて当然だ」

幼馴染「仕方ないでしょ。……長いと走ってる間は邪魔で仕方ないんだから」

兄「……よっと」ヌギヌギ

幼馴染「……何してるの?」

兄「上着脱いでるんだよ。ほれ」

幼馴染「さっき言ったでしょ。今着たら臭いが移っちゃうわよ」プイ

兄「…………」テクテク

幼馴染「い、いいわよ!上着なんかなくたって――」

兄「着ろ」

幼馴染「ッ!」

兄「臭いがどうとかより、女の子の体冷やす方が大問題だろうが」

幼馴染「あ……う……」

兄「着るのが嫌だったら、とりあえず羽織っておけ、な?」

幼馴染「…………」コクリ

兄「……よし」

スッ ファサ

幼馴染「あ……」ホワッ

兄「これで大分違うだろ?」

幼馴染「…………あの」ツンツン

兄「……うん?」

幼馴染「あ、ありがと、ね」///

兄「……どういたしまして」

幼馴染(……あんなに真剣な兄の顔を見たの、久し振りだな)

幼馴染(……上着を着たら、私多分やけるのが止まらなくなっちゃうから……)

幼馴染(何が何でも兄の上着を拒否したかったんだけど……)

幼馴染(あの顔で説得されたら絶対に断れないわ……)

ニ ニ…

幼馴染(……っくー……く、口が歪む……口角上がっちゃう……)

幼馴染(頑張れ私!そう、ここで深く深呼吸してー……)

スゥゥゥゥゥ ハァァァァァァ

幼馴染(…………)

幼馴染(……ひょっとして今いっぱい兄の匂いを吸い込んじゃった!?)

…ニヘェ

幼馴染(無理無理無理無理!こんなの絶対無理!絶対にやけちゃうよー!)

幼馴染(あたし今どんな顔してるの!?閉じ込められてるのににやけ顔とか完全に変態に見えちゃうじゃない!)

幼馴染(……でも密室で、体育倉庫で、男女二人きりって、兄も意識してるのかな……)トロ~ン

幼馴染(時間もたっぷりあるし……マットもあるし……私がいて……兄がいる……)ホニャァ…

幼馴染(これって、もしかして……大チャンスなんじゃない?)ニヘェ…

幼馴染(……ちっ、違う違う違う!私何てハレンチな事考えてるの!?)ブンブン

幼馴染(落ち着け……上着の香りを嗅いで落ち着くのよ私……)スゥゥゥ

ハァァァァ

幼馴染(……いい香りね。顔はにやけ面になってしまうのはこの際仕方がないわ)

幼馴染(兄に顔さえ見られなければ大丈夫。顔の向きを合わせないように会話してやり過ごしましょう)

幼馴染(要は最後にマットの上でくんずほぐれつになればいい。これで最後まで上手くイくはず!)グッ

……ガトッ……ガトガトッ……

兄「……風強いなぁ」

幼馴染「そ、そうね」ジリッ

兄「雨降ったら色々面倒だよなぁ……」

幼馴染「そ、そうね」ジリッ

兄「置き傘も折り畳み傘もないしなぁ……」

幼馴染「そ、そうね」ジリッ

兄「……ん?」クルッ

幼馴染「…………」ピタッ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「……あのさ」

幼馴染「……何かしら」

兄「……近くないか」

幼馴染「な、何が?」

兄「……幼馴染が」

幼馴染「気のせいよ。あんた自意識過剰なんじゃない?」

兄「……そうか?」

幼馴染「そうよ。それで傘がどうしたのよ」

兄「……傘持ってないから降ったらどうしようって話」

幼馴染「雨降るなんて予報聞いてないわよ?」

兄「でもほら、窓の外見ると結構雲行き怪しいし――」

幼馴染「!」シュバッ

兄「――この風だと」クルッ

幼馴染「…………」ピタァ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「……近い」

幼馴染「…な、何が?」

兄「俺と幼馴染の距離が」


幼馴染「え……」

兄「…………」

幼馴染「…………」///

兄「何故顔を赤らめ……あ、違う!撤回する!色々間違えた!」

幼馴染「ちょ、何勝手に撤回してるのよ!」

兄「俺は物理的な距離の話をしていたんだ。心の距離的なアレを言ったんじゃないんだ」

幼馴染「心の距離だって別にいいでしょ!わ、私達の付き合い結構長いんだし……」ツンツン

兄「……いや今のは恥ずかしい。……かなり凹む」

幼馴染「私のグッと来た台詞で凹むとか――あっ」

兄「……え?」

幼馴染「……~~~~~~ッ!」カァァァ

兄「それってどういう――」

幼馴染「破ァッ!」キュドッ

ドゴァ!

兄「ぐはッ!!」

ボスンッ

兄「痛ぅ……ノーモーションからのタックルとかお前何を……」

幼馴染「ふー……ふー……」///

兄「……お、幼馴染?」

幼馴染(兄が下。私が上)

幼馴染(私の手は兄の胸板に。私の足は兄の下腹部に)

幼馴染(兄の視線は私の方へ。私の視線は兄の方へ)

幼馴染(兄の顔。戸惑っている。何に?)

幼馴染(私に戸惑っている)

幼馴染(私を見ているから戸惑っている)

幼馴染(私の行動が理解できないから、私をじっと見ている)

幼馴染(……素晴らしいわ)

幼馴染(何て素晴らしいのかしら)

幼馴染(兄が目を逸らすことなく、私だけをじっと見ているなんて)

幼馴染(素晴らしいわ。タックルして本当に良かった)

幼馴染(この兄の戸惑った顔。……素敵だわ)

幼馴染(勿論戸惑ってなくても……素敵だわ)

幼馴染(目、鼻、口、耳、まつ毛、眉毛、うぶ毛、剃り残し…みぃんな素敵だわ)

幼馴染(こんなにも素敵なのに、何故私はタックルしなかったのだろう)

幼馴染(何故マウントポジションを取らなかったのだろう)

幼馴染(してはいけなかったはずだ)

幼馴染(それは何故?)

幼馴染(思い出せない。何か小さなことだったような気がする)

幼馴染(きっと素敵じゃないから思い出せない)

幼馴染(確かに素敵ではなかった気がする)

幼馴染(じゃぁ素敵な事をしよう。素敵で素敵な事をしよう)

幼馴染(兄は素敵でやることも素敵。だから素敵で素敵な事をしよう)

幼馴染(素敵で素敵な事は素晴らしい)

スッ

兄「わっ……幼馴染っ!お前何を!」

幼馴染(まずは何から……)ピトッ

幼馴染(聞こえる。心臓の音が)

幼馴染(香ってくる。兄の香りが)

幼馴染(視えてくる。兄そのものが)

幼馴染(伝わってくる。兄の肌の感触が)

幼馴染(……あれ?……一つ足りない?何が足りない?)

幼馴染(……そうだ。……味。味だ。兄の味が足りない)

幼馴染(それならすぐに兄の味見をしないと。早く素敵にならないと)

幼馴染(兄を味見。どこから。やっぱり口。口にしよう)

ガシッ

兄「さ、さっきから様子がおかしいぞ幼馴染っ!」

幼馴染(何故口か。口と口でお互いに味見する。素敵になる。だからだ)

幼馴染(一つになる。口と口は一つになれる。更に素敵になる。だからだ)

ググッ

兄「…………あ!待った!幼馴染!心当たりがあるんだっ!」

幼馴染(一つになる。これは始まり。一つになる。それは口だけじゃない)

幼馴染(知っている。私が兄を喰らう。兄が私を喰らう。それも一つになる。素晴らしい)

……ガトトッ!……ガトガトッ!……

兄「聞いてくれ!俺の体にはアニキ粒子って危険な……いやまぁ危険ではないんだが――」

幼馴染(朝も昼も夜も。一つになる。お互いを喰って一つになる。素晴らしい)

幼馴染(ずっとずっとこうなることを私は望んでいた。……素晴らしい)

グイッ

兄「――とにかくそれを過度に摂取すると色々マズいことになるから……幼馴染っ!顔が近っ」

幼馴染(兄の口腔。兄の舌。兄の歯。兄の歯茎。美味しそう。素敵だ)

幼馴染(……いただきます)


スーッ…

兄「ストーーップ!!アニキ粒子に支配されるんじゃない!!目を覚ませ幼馴染!!」

幼馴染「……っはぁ……ぁー……」タラー

兄「よ、ヨダレ拭けよ!違う!支配されるな!支配するんだ幼馴染!」

幼馴染「ぁー……?」

兄「そ、そうだ!その調子だぞ!アニキ粒子を恐れるな!」

幼馴染「…………」ニヘェ

兄「……え」

幼馴染「……んぅー……」タラー

兄「駄目だ!全然分かってない!戻って来てない!どうすりゃいいんだ!何か!何か方法がっ!」

~~~~

妹『妹脳天唐竹割りぃっ!』ベシィィィンッ!

~~~~

兄「……それしか……方法はないか……」

幼馴染「……んー?」タラー

兄「幼馴染、本意じゃないが……しばし眠ってくれ。……すまんっ!」

ヒュッ


―ガッ

兄「なっ!?防がれ――」

グググ……

兄「――ぐっ、その細腕のどこにこんな力が……!」

ギチッ

兄「……腕が動かない」

幼馴染「……ぇへぇ……」ニパァ

兄「……これは、マズい……」

ポツッ……ポツッ……

……ザァァァァァァ――

幼馴染「……んー」スッ

兄「ッ!」

幼馴染「……あのねぇ兄くん」ナデ

兄「……あ、兄くん?というか会話できるのかっ!聞け幼――」

幼馴染「……痛いのもいいよ。むしろすきかも」

兄「……すまん、何の話をしてるかまったく分からな――」

幼馴染「……でも今は兄くんのお口を食べさせてほしいなぁ」

兄「く、口って幼馴染まさ――」

幼馴染「きっと素敵だよ。ううん、絶対に素敵だよ」

兄「待っ――」


幼馴染「んっ」
兄「――んむっ」

……ガタッ!……ガタガタッ!……

幼馴染「ん、ちゅ……ちゅる……れぅ……」クチュ

兄「ん~っ!ん~~っ!」

幼馴染「……んっ、ん……ちゅぷっ……ん」チュルッ

兄「んくっ……!んんんっ……!」

幼馴染「ちゅむっ、ぴちゅっ、んむぅ……」チュー

兄「ん、ふーー……ふーー……」

幼馴染「――んはっ」チパッ
兄「――っぷは」

幼馴染「はーー……はー……ぁはぁ……」
兄「っはぁ……はぁ……」

幼馴染「はぁ……兄くんのお口美味しいよぅ……」

兄「はぁ……待て……待って、くれ……色々、と……」

幼馴染「でも兄くんにも、私のお口、食べて欲しいな……」

ググッ

兄「……おぃ、まじかよ、夢なら覚め――」



――ドクンッ

幼馴染「ッ!」ビクンッ

兄「――うわっ」

――ドクンッ

幼馴染「あ、ぎっ」ビグンッ

兄「……お、おい幼馴染?」

――ドックンッ

幼馴染「がっ、あ”ッ……ぎッいあぁああぁぁぁッ!!」ギクンッ

兄「ど、どうした!?大丈夫か――って絶対大丈夫じゃないよな!」

幼馴染「かふっ……ぅぐ……」

兄「しっかりしろ!これもアニキ粒子の影響なのか!?だとしたら俺のせいで、こんな……」

幼馴染「みっ……みっ…い”っ」フルフル

兄「み……み?水か!?さっきのボトルはどこに――」

――ガタッ!……ガタタッ!……

幼馴染「み……ど、り……」

――ガタンッ!……バンッ!バンッ!……

兄「え、何?」

幼馴染「みっ、みど……りいろ……」

――バァンッ!……バンッ!バシンッ!

兄「くそっ!窓がうるさくて――」

幼馴染「すて、きな……すてき、な……みどり、いろ……」

――ガァン!ガンガンッ!バンッ!
――ドンッ!ドガッ!バゴンッ!
――ガコォンッ!メギッ!ビキッ!

兄「うるせぇな!!こっちは今緊急事態で――」クルッ


バッ……シャァァァァァン!

兄「はぁっ!?ま、窓がッ」

――ビュォォォォォォ

兄「くっ……!」

――シュトッ

兄「!?……誰だッ!」

パキン

兄「……それ以上こっちへ来るな」

パキッ

兄「誰だか知らないが幼馴染には指いっ……ぽ……ん、って――」


――パキンッ


兄「妹友さんッ!?」

妹友「…………」ポタッ ポタッ

兄「どうしてここが……?助けに、来てくれたの?」

妹友「…………」ポタッ ポタッ

兄「だ、だったら窓を壊さなくても……っじゃない!」

妹友「…………」ポタッ

兄「幼馴染の様子が変なんだ!マズい、というよりヤバい状態で――」

妹友「……さん……ス……し…ま……」ブツブツ

兄「――え?」

妹友「……お兄さん、幼馴染先輩と、キス、してましたよ、ね?」

兄「あっ、いや、したというか……されたと言うか……み、見てたの?」

妹友「キス。してましたよ、ね?」

兄「急に幼馴染の様子がおかしくなって……それで、無理矢理に……」

妹友「……ずるい」プルプル

兄「えっ……と?」

妹友「ずるいです」ズイッ

兄「ずるい……ってその……」タジッ

妹友「私も、お兄さんにキス、したいです」

兄「……ちょっと、妹友さん、目が怖――」

妹友「ていうか、します」ガシッ

兄「――え」

妹友「幼馴染先輩より、激しく、長く、します」ググッ

兄「またかっ、妹友さんも様子がっ――く、首が動かないっ!?」

妹友「さっきのキスなんて……全部上書きしちゃう位に……」

兄「何だってこんな馬鹿力がっ、あっ――」


妹「――はいそこまで~」

トスッ

妹友「うっ」グラ…

妹「ほいキャッチと」

兄「妹!?」

妹「てこずっているようだから手を貸したぜ」ビッ

兄「……まず、礼を言う。助かった。色々どうにかなりそうだったからな」

妹「お兄ちゃんの通常の3倍の頭ナデナデで手を打とうではないか」

兄「……いくらでもやってやるよ」

妹「ぃやった!言ってみるもんだねー」

兄「ただし、いくつか質問に答えてからだ」

妹「あばよッ!」ダッ

ガキンッ ガコガコガコ

妹「しまったぁ!開かない!そりゃそうか!」

ポンッ

妹「……う”」

兄「……話を……聞こうか?」

妹「……あい」

――――

兄「…………」

妹「…………」

妹友「…………」

幼馴染「…………」

兄「……まず、体育倉庫に俺と幼馴染を閉じ込めたのがお前なんだな?」

妹「はい」

兄「次に途方に暮れる俺たちを……その窓から見ていた、と」

妹「yes」

兄「……妹友さんも一緒に」

妹友「は……い……」
妹「ja」

兄「最後に妹友さんが……窓を突き破って、現在に至る、と」

妹友「…………」
妹「да」

兄「そして幼馴染の、その……暴走は……」

幼馴染「ぁぅ……」///

兄「やはりアニキ粒子が原因なんだな?」

妹「その通りであります」

兄「……妹友さんも?」

妹友「はぅ……」///

妹「やや違いますが、概ねその通りであります」

兄「妹、お前アニキ粒子について……いやアニキ汚染についてまだ話してない事があるんじゃないか?」

妹「んー……前に話した通りだと思うけど」

兄「その時は幼馴染もいなかったし、もう一度、できるだけ詳しく説明してくれ」

妹「ご用命とあらば」

妹「まず大前提としてお兄ちゃんからはアニキ粒子が常に放出されているの」

妹「アニキ粒子はお兄ちゃんを構成する全てに含まれているけれど、濃度に差があって……」

妹「傾向として血液に近づくほど濃度が濃くなるんだよ」

兄「血液……。つまり汗や唾液は……」

妹「超濃い。カルピスで言うと1:1でくらいの濃さ」

兄「……濃いな」

妹「あとその場に残留し続ける性質があるね」

兄「妹友ちゃんのハンカチがそれを応用したものだな」

妹「だね。そしてアニキ粒子をある一定量摂取すると――」

兄「――アニキ汚染」

妹「そう。定期的にアニキ粒子を摂取せずにはいられなくなる」

兄「……幼馴染の暴走は?」

妹「一度に摂取しすぎ!例えば妹友ちゃんだったら、まだあそこまでひどくはならなかったと思うな」

兄「……どういう意味だ?」
妹友「!」

妹「何故なら妹友ちゃんまもむごっふ」モガモガ

妹友「わ、私の事はいいから話を続けて!」

妹「っぷは!まぁ段階を追って耐性をつけたなら大丈夫だったのに。って話だよお兄ちゃん」

兄「……ふぅん?」

妹「あ、それとメリットの話か」

兄「そういえば具体的にどんなメリットがあるか聞いてなかったな」

妹「その1。女性ホルモンが活性化します。程良く」

兄「……男の俺にはあまりによく分からんがいい事なのか?」

妹「お肌ツヤツヤになるし……あ、そうだ、バストアップ効果もあるぐええええ」ガクガク

妹友「そっ、それ本当なの妹ちゃん!?」ユッサユッサ

妹「ゲホッゲホッ!ほ、ほんとだよ。実際あたしは顕著に効果が出てるでしょ?」フヨン

兄「……確かにな」チラッ

妹友「…………」

妹「…ゃん♪」

兄「……ん”んっ!続けて、どうぞ」

妹「その2。リミッターが解除される!」

兄「……何のリミッター?」

妹「色々。一番分かりやすい例だと筋肉とか反射神経」

兄「……納得したよ。……幼馴染はまだしも、妹友さんの腕さえ振りほどけなかったから……」

妹「勿論精神にも干渉するよー」

兄「……どんな風に?一つ間違えば大惨事になるんじゃないかそれ」

妹「脳内麻薬の生成を促したりしてくれるから、とにかくポジティブに!とにかく素直に!なるって感じだね」

兄「……ってことはさっきの妹友さんの行動は……」

妹友「……はい……」///

兄「……う、うん。とりえず置いておこう」

妹友「!?」ガーン

兄「まだあるのか?」

妹「あるよあるよー!その3。あるレベルの汚染に到達すると、アニキ粒子が肉眼で確認できるようになる!」

兄「……妹友さん、それはマジですか?」

妹友「……その通りです。今も見えてますし……」

妹「お兄ちゃん本体だけに関わらず、お兄ちゃんが触れたもの、踏んだもの――」

妹「――そういった残留アニキ粒子でもバッチリ見えるようになる」

兄「……俺がいつどこにいても、妹が俺を発見できる理由がようやっと分かったよ」

妹「日によって変わるけど、大体みどり色かな?薄いけど主張強そうな色?」

兄「俺には見えないから何とも……」

妹「メリットはそんくらいだなー。後はちょっとした注意で」

兄「……ふむん?」

妹「急激にアニキ粒子を摂取しないこと!」

妹「ろくに耐性を磨いてないのに摂取したら発作起こして、身体中の穴という穴がゆるっゆるになるので注意!」

妹「その結果衣服やエリアが大惨事になってもあたしは知らないよ!」

兄「……その一番最後の急激に~のくだり。最初に説明すべきことだよな?」

妹「そりゃ、聞かれなかったから」

兄「そうだな。お前だったらそう言うと思ってた」ビキビキ

ビシィッ

妹「あ痛ぁぁぁぁぁぁ!」

兄「――さて、これで大体ここで起こった事件の全容が分かった」

兄「勿論まだ色々と詰めないと、まるで分からない事が多すぎる――」チラッ

妹「う”」
妹友「ぁぅ」
幼馴染「ひっ」

兄「――が、このままここにいたら確実に風邪を引いてしまうので、ひとまず解散」

妹「集合場所はどうするお兄ちゃん?」

兄「任せる。それより早く家に帰って、濡れた服を脱いで風呂だ」

妹「了解~。いのちだいじに、だね」

兄「窓の後片付けは俺がやっておくから。また後で」

妹・妹友・幼馴染「「はい!」」

――兄 自宅

ビュォォォォ

バタンッ

兄「……凄ぇ嵐になったな……むぅ、これ下着までいってるか」ポタッ ポタッ

兄「っとっと。……靴の中までグショグショだな」ヌギヌギ

兄「とりあえず新聞紙突っ込んで、立てかけとこう」ガサッ

ポタ ポタ

兄「――よっと。じゃぁさっさと風呂に……行く前に」


兄「――ただいま」


兄「うん。これでよし。さぁ風呂へ――」

妹「お兄ちゃーーん!おっかえりーーん!」
妹友「お、おかえりなさい兄先輩」
幼馴染「お、おかえり、あな……あんた」

兄「」

兄「……おい妹、こりゃどういうこった」

妹「家に帰って風呂入った」

兄「そうじゃない。どうして3人まとまって、うちで頭ホコホコさせてるのかって聞いてるんだ」

妹友「お先にお風呂いただいてしまって申し訳ないです」

幼馴染「わ、私は反対したのよ!一家の長男を差し置いて一番風呂を浴びるのはどうなの、って……」

妹「でもお兄ちゃん待ってたら風邪引いちゃうから仕方なく……」

兄「違う!一番風呂とかそういう問題じゃない!」

妹「……ほらぁ、お兄ちゃんの残り汁をいただこうとする我らの魂胆、モロバレでしょ?」ヒソヒソ

妹友「……風邪覚悟で待ってても無駄だったんだ。流石妹ちゃん」ヒソヒソ

幼馴染「手強いわね。一番風呂作戦はあえなく轟沈か……」ヒソヒソ

兄「何の話をしてるんだお前らは……」

妹友「なっ、何でもないですよー?」ヘロリ

幼馴染「い、いいお風呂だったわ」ヘロリ

妹「お兄ちゃんの出汁超うめぇって話まみむめもが」モガモガ

妹友・幼馴染「ちょっ、口を閉じろ!」

兄「俺、一旦解散って言ったよな。それが何でうちに全員集合してるんだよ」

妹「日時指定がなかったから。風呂からの集合を最短にしてみた」

兄「時間遅いから後日ってなんとなく分かれよ……」

妹「言葉にしないと……伝わらない事もあるんだよ☆」パチッ

兄「……じゃぁ言葉以外で伝えてやろう」グリグリ

妹「ひにゃぁぁ!ぐりぐりはやめっ痛い痛い痛い痛い」ジタバタ

妹友「うわぁぁ……前から思ってたけど、やっぱり妹ちゃんて煽り全一だよ……」

幼馴染「……あれ……いいわね……」ゴクリ

妹友「……へっ?」

幼馴染「オホン。身から出た錆ね」

兄「どうだ。伝わったか」

妹「もう二度とあんなウィンクはしないよ」

兄「分かればよろしい」

妹「数ヵ月後、そこには元気にウィンクを飛ばすあたしの姿ぎにゃぁぁぁ」ジタバタ

兄「 死 ぬ が よ い 」グリグリ

――――

妹「」

兄「……風呂云々はまぁ良いにしても、妹友さんと幼馴染はどうするんだ?」

妹友「……というと?」

兄「外さっきより酷い事になって……まぁ俺の濡れ方見れば分かるだろ」グッショリ

幼馴染「確かにエロ……酷いわね」

兄「だから今風呂入ったとしても、家に帰ってまた風呂に入るハメになるって話に――」

妹友「え」
幼馴染「え」

兄「え」

妹友「どなたか帰るんですか?」チラッ

幼馴染「まぁ帰りたかったら帰ればいいんじゃない?」チラッ

兄「……待て。嫌な予感がする。まさか……」

妹「そのまさかですよお兄ちゃん」

妹友「妹ちゃんいつ起き上がったの……」

幼馴染「いつ見ても驚嘆に値する早さね」

妹「今日はあたし達三人揃ってお泊り、もといパジャマパーティなのだよ」

兄「ま、待て!そりゃマズいだろ!」

妹「何がマズいのかなぁ?2人は『あたし』の家にお泊りに来ただけだよー」

兄「しかしだな……未成年の学生の男女が同じ屋根の下ってのはどうも……」

妹「それにお兄ちゃん、この嵐の中を2人に帰させる気?」

兄「ぬ……」

妹「そっちの方がよっぽど非紳士的でマズい気がするとあたしは思うなー」

兄「むぅぅ……」

妹友「兄先輩……」ウルウル

兄「う”っ!」

幼馴染「お願い……」ウルウル

兄「いやお前は家隣だから帰れよ」

幼馴染「……チッ」

兄「大体、うちはいいにしても妹友さんと幼馴染の両親に外泊の許可は取ったのかよ」

妹友「取りました」

兄「早っ!いや、その前にうちに俺がいるってちゃんと向こうは知ってるのか!?」

妹友「知ってますよ。私が泊まるって言ったら、父と母が『やったぜベイビー』って言ってました」

兄「……そうなの。……で、幼馴染は?」

幼馴染「父母共に『……長かったな』って言いながら私の肩を叩いて涙を浮かべてたわよ」

兄「……許可なのかどうかさっぱり分からないけど、まぁいいや」

妹「まぁこのメンバーの内誰も口外しなければ、誰も分かるはずないからねー」

兄「……分かった、分かったよ。お泊り許可、パジャマ許可出しますよー」

妹友「……よがっだ、よがっだよ”ぉ!」グシッ
幼馴染「イヤッホォォォォォ!!」グッ
妹「お兄ちゃんマジちょろいーん♪」テヘッ

ダッ

兄「……………」ピタァ
妹「ごめんなさい」

兄「……………」ニコォ

――グワァァァァァァァ!!!

妹「」

兄「――さて、泊まるなら服が足りないだろう。妹、出してやれ」

妹友「あ、その気遣いでしたら無用ですよ兄先輩」

兄「?……というと?」

妹友「自前でお泊りセット持ってきましたから、大丈夫です」

兄「……それは一旦家に帰って、お泊りセットを担いでうちまで来た、ということかな?」

妹友「その通りですけど……何か問題が?」

兄「あー……ついでだから聞こう幼馴染よ。服装と――」

幼馴染「案ずることはないぞ。服ならばこの家に来る度に、タンスに自前の服を増やしていたからな」

兄「……今、見た事のないキャリーバッグと、ボストンバッグが玄関に置いてあった理由を……理解したよ」

バンッ!

兄「っていうかお前達全員最初から泊まる気満々じゃないか!」

兄「止むに止まれずなんて状態の人、実は1人もいないじゃん!」

兄「普通に家に帰れた人いるじゃん!何故そのまま風呂入らない!?」

兄「一旦家帰ってバッグ手に入れてビショビショのままここに突入してくるなんて……どういう執念なの!?」

妹友「……へ?兄先輩何か言いました?」
幼馴染「……ん?あんた今何か言った?」

兄「……聞いてないし……タイミンっ…へぇ、へ、ヘェックシュ!!」ブルリ

兄「いかん、このままでは確実に風邪を引く。……さっさと風呂に入ってしまおう」ズズー

兄「……ほんじゃ風呂入ってくるからー」

妹「ハーイ」
妹友「コッチハ泊マル準備ヲ進メテオキマスネー」
幼馴染「晩御飯ノ準備ハ私ニ任セテクダサイ」

―ブルルッ

兄「……寒気が。急ごう」

兄「洗濯機に濡れたもん突っ込んでスイッチオン、と」

ガチャッ

兄「手桶からの湯で慣らして――」ザバザバ

兄「湯舟に……ア”ッア”ア~~~~」ザブーン

カポーン……

兄「…………」

ピチョン…

兄「……しかしまぁ……」

兄「クラスメイトと後輩が家にいるのに……風呂に入ってるってのは……」ザブ

兄「……妙な気分だな……」

パタパタパタ コンコン

妹「お兄ちゃーん?」

兄「……んー?」ブクブク

妹「タオル使いきっちゃったから、持ってきたよー」

兄「おお。悪いな。置いといてくれー」

妹「ほいさー」

ガララッ

兄「ぷふー……」

ピチョン…

――――

パタパタパタ コンコン

妹友「あのー、兄先輩?」

兄「……んっ!?。は、はい?」

妹友「洗濯物が畳み終わりましたので、ジャージお持ちしました」

兄「……うちの洗濯物を?わざわざそんな事しなくても……」

妹友「いえ、幼馴染先輩が料理している間、手が空いたものですから」

兄「……ありがとう。そこに置いて貰えるかな。脱衣カゴの上のところに」

妹友「はい。失礼します」

ガララッ

兄「……ふー……」

ピチョン…

――――

パタパタパタ コンコン

幼馴染「いい?入るわよ」

兄「……駄目に決まってるだろ」

幼馴染「まだお風呂場でしょ?声が反響してるし」

兄「その前に幼馴染、料理はどうしたんだ?」

幼馴染「もう配膳まで終わったわよ。だから呼びに来たの」

兄「お、おおそうか。ありがとな」

幼馴染「あとさっきの洗濯物、あんたのトランクス入れ忘れたから持ってきたの」

兄「……それを最初に言えよ。ていうかトランクスを持つことに抵抗を持て」

幼馴染「洗ってあるなら問題ないでしょ?じゃぁ置いておくから」

ガララッ

兄「……ったく。……ふぃーー……」

ピチョン…

――――

兄「……そろそろ出るかねぇ」

ザパーッ

兄「……熱、顔だけ汗流そ」

シャーーー……

兄「……ッ」ゾクッ

キュッ

兄「…………」

兄「……何だ今の悪寒は」

兄「…………」

ピチョン…

兄「静か過ぎる……。居間から漏れ聞こえるtvの音さえ聞こえてこない」

兄「……不気味な静寂だ」

兄「……そもそもあいつらが会話もなしに、テーブルでただ黙して俺を待つか?」

兄「……想像してみても異様な光景だ」

兄「……誰かに襲われて喋れない状況……?」

兄「いや、違う。その前に俺は何か見落としている気がする」

兄「何か、決定的な何かを……。思い出せ……」

…コォォ…ォォォ…

~~~~
妹『ほいさー』
ガララッ
~~~~
妹友『はい。失礼します』
ガララッ
~~~~
幼馴染『洗ってあるなら問題ないでしょ?じゃぁ置いておくから』
ガララッ
~~~~

兄「!」ペポーン

兄「そうだ!『足音』だ!」

兄「扉を閉めた後に聞こえなくてはならないはずの――」

兄「『遠ざかる足音』を俺はまだ聞いていない!」

ガタタッ

兄「つまりこの脱衣所へやってきたメンバーはまだ中にいるってことだっ!」バァン!

ガタンッ!

兄「という訳でさっさとそこから出て行けぇっ!」

ガタガタ

洗濯機『ファファファ。見破られたのであれば仕方あるまい』ガタガタ

乾燥機『でもここまで来て私たち退くつもりなんてありませんよ』ガコガコ

脱衣籠『見破ったとしても、あんたが依然不利な事には変わりないんだから』ユサユサ

兄「ど……どういうことだ!?」

スタッ

妹「お風呂場の出入り口はたった一つ」

妹友「この脱衣所に通じる扉以外にはありません」

幼馴染「そしてあんたの持ち物は……体を洗う小タオル一本のみ」

兄「……そういうことか」

妹「気づいたみたいだねお兄ちゃん」ニヤァ

妹「そう!確かに我々のアンブッシュは失敗に終わった!」

妹「何も知らない無防備なお兄ちゃんの裸体を、ひっそりと眺める事は出来ないのは非常に残念ではある!」

妹「――が!お兄ちゃんがここで着替えなければいけないという事実に変更はないのだ!」

妹友「兄先輩の腕が2本である以上、トランクスを履く瞬間は必ずタオルを体から離す必要があります」

幼馴染「加えてトランクスの置かれた位置は脱衣カゴの上。扉よりやや離れた位置にあるわ」

妹「妥協して後ろ向きに履こうとしても、扉から離れた瞬間に3人で取り囲み――」

妹「退路を絶ちつつ、お兄ちゃんの正面を必ず捉える!」

兄「……卑劣な……」

兄「…………」

幼馴染「……『このまま籠城しよう』とか不毛な事考えてるんじゃないでしょうね?」

兄「不毛な事やってるのはどっちだよ……」

妹友「不毛は不毛でも私たちにとって価値のある不毛さなんです」

妹「不毛なことを大してやりもせず不毛を語ろうなんて片腹痛いよ」

幼馴染「不毛は不毛で不安になるものよ。不毛の苦労を知ってるのは不毛の人だけなんだから」

兄「不毛不毛うるさい!てかハゲでもないのに不毛を語るな!」

幼馴染「?……私頭の毛の話なんてしてな……あっ」

兄「……え?」

妹「……ほう」

妹友「……えっ」

幼馴染「……不毛な話はやめましょう」

兄「お、おう」

幼馴染「ど、どちらにせよ!あんたには籠城する時間すらないの!」///

兄「だっ、それは幼馴染の決める事じゃないだろ!むしろ籠城しかない!」

幼馴染「いいえ、さっさと出て貰うわ。……忘れたの?」

兄「……忘れ……?何の話だ?」

幼馴染「私が『料理』、したのよ」

兄「……あ」

幼馴染「配膳も終わってるって……私、言ったわよね」

兄「……ああ!」

幼馴染「あんたまさか……人様に調理させといて冷めるまで食べない気なの?」

兄「……ぐっ!」

幼馴染「あんたが風呂を出る時間に合わせて作った……出来立ての晩御飯を!」

妹友「兄先輩はそんな非道な事しませんよねー♪」

妹「そうそう、あたしの自慢のお兄ちゃんなんだからさぁ♪」

兄「……くっ、何て奴らだ……」

兄「大体冷める理由は俺じゃないのに……」

妹「違うよお兄ちゃん。放置して冷ましているのは紛れもなくお兄ちゃんなんだよ?」

兄「はぁ!?どんな暴論だよ!」

妹「……あたし達はね、お兄ちゃんの着替えを邪魔するなんて一言も言ってないんだよ」



兄「……な、に……?」

妹「あたし達はただここに『いる』だけ。お兄ちゃんはただ普通に、いつも通り着替えればいいだけなんだよ」

妹友「そうです。出てきてすぐ着替えれば、幼馴染さんの温かい料理がいただけるんですよ?」

幼馴染「あんたに直接何かしようって訳じゃないんだから。何も心配はいらないわ」

兄「……ッ」ゾクッ

妹「さぁ」

妹友「さぁ」

幼馴染「さぁ」

「「「さぁっっ!!」」」

兄「……万事休す、か……」

兄「…………」

兄「……出来ればこの手は使いたくなかったが……」ゴゴゴゴゴ

妹「まさかの破れかぶれお兄ちゃん!?」

妹友「記憶を無くさない程度に鈍器で殴打とかされちゃうんでしょうか!?」

幼馴染「暴力をふるうんだったら私が3人分引き受け……っていうか全部私に叩きこみなさい!」ハァハァ

兄「……俺を何だと思っているんだよ」

兄「……これは提案というより『取引』だ」

妹「……ほっほーん。あたし達と交渉しようって言うのね」

幼馴染「でもあんたの手元には交渉する材料がないように見えるけど?」

兄「……『ここ』にはないさ」

兄「君らの目の前の脱衣カゴには、俺がさっきまで来ていた衣類が入っている」

妹友「!」ギランッ


兄「……その『俺の洗濯物を手洗いする権利』と取引しよう」ゴゴゴゴゴ

妹「!」ドドドドド
妹友「!」ドドドドド
幼馴染「!」ドドドドド

妹友「乗っ――」

妹「待って妹友ちゃん。こちら側に対する要求を聞いてないよ」

幼馴染「そ、そうね。蓋を開けてみればこちらに不利な条件だったら元も子もないわ」

兄「……俺の要求は『脱衣所を出て、食卓の席に着くこと』こと。それだけだ」

妹友「……そ、それだったら」ニヘ

幼馴染「……み、魅力的な話よね」ニヘ

妹「……確かに魅力的な提案だねお兄ちゃん。……でも2人共冷静に考えて」

妹「お兄ちゃんの洗濯物を手洗いする権利と――」

妹「お兄ちゃんのお兄ちゃんを肉眼で見れる今の状況、果たしてどちらがお得なのか?」

妹共・幼馴染「!」

兄「……妹よ。俺の提示する権利に更に注釈をつけよう」

妹「悪あがきは醜いだけだよお兄ちゃん!あたし達はお兄ちゃんのお兄ちゃんが最優先なんだよ!」

兄「……まぁ聞いてくれ」

兄「一つ目は『手洗いが終わったかどうかの確認は俺はしない』」

兄「二つ目『またその洗濯物を俺に渡す期限を無期限とする』」

妹友(これってつまり洗わずに手元に置いても構わないってことで……)

幼馴染(さらにに無期限ってことは実質洗濯物は私の私有物になるってこと!?)

妹(あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん )


兄「……ただしこの権利は『一人』のみに与えるとする」ゴゴゴゴゴ

妹・妹友・幼馴染「!」ドドドドド

兄「さぁ、どうかな?応じてくれるだろうか?」

妹友「アニキ粒子の結束で固まっている我々に分断を迫るとは……」

幼馴染「でも安易に踊らされては駄目よ。まだ交渉は続いているんだから。ね、妹さん?」

シーン…

幼馴染「いないっ!?くそっ!一方的に出遅れた!」ダダッ

妹友「あ!先輩!後から行っても既に妹ちゃん座ってて、手遅れになるんじゃ!?」

幼馴染「座ってるのを吹き飛ばして私が座り直せばいいでしょ!」

妹友「なるほどそんな方法が。では先輩失礼します」ドギャッ

幼馴染「ゲハァッ!何をするんだこの小娘ぇ!」

妹友「ここで先輩を消せば妹ちゃんを吹き飛ばすだけで、その一人になれるからです」タタッ

幼馴染「……だったらあんたらまとめて吹き飛ばして私が座るしかないわ!うおおおおお!」ダダッ


……

ガチャ

キョロキョロ

シュバッ バッ ババッ

兄「着替え完了、と」

――――

兄「おーい飯……ってまだやってたのか」

ピリピリ…

妹「…………」

妹友「…………」

幼馴染「…………」

妹(動いた瞬間2人に同時に襲われてピーピーボボボするのは確実)

妹友(だから誰かが動くまで動かずに機を伺っているのですが……)

幼馴染(まったく動く気配がない膠着状態。既にそれぞれの制空圏が触れているというのに……)

(((……ただしもう限界が近い。次何らかの切っ掛けがあれば間違いなく動く!!)))

兄「そうだ。俺も無事着替えられたしさっきの権利、全員でもいいぞ」


妹「ご飯を早く食べようよー。さっきからいい匂いでお腹が限界だよー。限界だから味見しちゃうねー」

妹友「あ、兄先輩、ご飯盛りますよ。どれ位盛ります?カサッとですか?大盛りですか?貴族盛りですか?」

幼馴染「おかずは私が取り分けてあげる。料理はまず目で食べるものなんだから、綺麗な盛り付けじゃないと台無しになるもの」

――――

兄「ごちそうさまでした」
妹「ごっつぁんでした」
妹友「ごちそうさまでした」

幼馴染「お粗末様でした」

兄「いやー満腹満腹。うまかったなー」

幼馴染「そ、そう?ま、まぁ人並み程度のご飯だったと思うけど?」///

兄「いや本気だよ。小鉢一つ取ってもすごい出来だった」

幼馴染「そ、そうかしら?お、お世辞言ったって何も出ないけれど?」///

兄「俺の好物もたくさんあったし、大満足でした。ありがと幼馴染」

幼馴染「……ぅん」///

妹友「…………」ギリッ

幼馴染「ちょっと……外の風当たりに行ってくるわね」

兄「どうぞー」

ガチャッ バタン

『ぃよっしゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!』ビリビリ

――――

妹「さて食後じゃ皆の衆」

兄「……何かするのか?」

妹「何かじゃないでしょお兄ちゃん。洗濯物の分配だよ」

兄「……ああ、あれね」

妹友「インナーウェア系は争奪戦になりますね」

幼馴染「私分配はドラフト制がいいと思うんだけど」

兄「……まぁ皆落ち着けよ」

兄「今回の洗濯物はお前達に任せる予定はない」

妹「は!?」
妹友「えぇー!?」
幼馴染「はぃぃ!?」

兄「だから、分配なんて決めてなくたっていいんだ」

妹「ちょっ、約束が違うでしょお兄ちゃん!」

妹友「そうですよ!私たちにはあの洗濯物を手洗いする権利が――」

兄「『あの洗濯物』?何の事かな?俺が取引した権利は『俺の洗濯物を手洗いする権利』であって―」

兄「『あの洗濯物を手洗いする権利』ではない」バァン

幼馴染「くっ……言われてみればそうね……」

幼馴染「じゃぁ明日以降の洗濯物のドラフトを――」

兄「それもしなくていいぞ」

幼馴染「なんでよ!じゃないとあんたの洗濯物をいつ手洗いす……れ…ば……」ハッ

兄「気づいたようだな幼馴染」

妹友「え……どういう事なんですか幼馴染先輩っ!」

妹「……あたし達はお兄ちゃんにまんまとハメられたってことだよ……」

妹「!」ハッ

妹「あたしはお兄ちゃんにハメられたってことだよ!」

妹友「何故言い直したの妹ちゃん……」

兄「勿論、約束は守る。権利を与えたからな」

兄「与えたが……!今回その『時』の指定まではしていない!」

妹友「……ッ!」ザワ…ザワ…

兄「そのことをどうかお前達も思い出して欲しい」

兄「つまり……俺がその気になれば――」

兄「手洗いの機会は……10年20年後ということも可能だろう……」

兄「……ということ……!」ニヤァ


妹友「」ピー
幼馴染「」ピー
妹「」ボボボボボ!

tearai destroyed

兄「……卑劣な手を使う相手なら…こちらも卑劣な手を使わざるを得ない」

妹友「うぅ……話が……違いますよ……」ガクリ

幼馴染「私の靴下が、トランクスが、消えていく……これは面倒なことになったわ……」サァァ…

妹「…………」

兄「これに懲りたらもう二度と――」

妹「皆、落ち込む必要ないよ!」

兄「……何?」

妹「ポジティブに捉えれば今回の件は『アリ』、だよ」

妹友「ポジティブ、に?」

妹「そう、お兄ちゃんは言ったよね。『10年20年後』って」

幼馴染「それが何なのよ。悲しいだけじゃない」

妹「違うよ。お兄ちゃんの発言は『10年20年後以降に洗濯物を洗う権利をあげる』ということ。即ち――」

妹「『洗濯物を渡さない限りお前達とずっと一緒にいる』というメッセージだったんだよ!」

妹友・幼馴染「!!」ハッ

兄「ハッ、じゃないだろ!」

幼馴染「確かにそれなら手洗いの権利を蹴ってもお釣りが来るぐらいだわ」

妹友「遠回しな好意表現だったんですねー。流石妹ちゃんです」

妹「でっしょー。あたしってば天才?」

兄「反省しろよ!その嫌なポジティブさやめろ!」

妹「お兄ちゃんのお兄ちゃんを見せてくれたらすぐにやめる」

兄「見せない。断固として見せない」

妹「だったら遠回しのプロポーズとして受け取っておく」

兄「はぁ!?」

妹友「サッカチーム作れる位がいいですね」

兄「妹友さん何が!?」

幼馴染「一緒のお墓に入りたいわね」

兄「どこまで飛躍したんだ幼馴染は……」

妹「さぁ、会議を始めよう諸君」

兄「膨らましておいてぶん投げんなよ……」

妹「ぶん投げるも何も適当なタイミングだと思うけど」

兄「テキトーなタイミングだと思うんだが……」

妹「テキトーでなく適当だよ。食後、全員風呂も入ってリビングでくつろぎタイム、各々クッションを抱えてごろり」

兄「……言われてみれば確かに。多分お前が言ってるから気に食わないだけだな」

妹「うはぁお兄ちゃん辛辣。でも嫌いじゃないよ」パチッ

兄「…………」

妹「じゃぁ最初の議題は……『お兄ちゃん逆レイプ事件』!」

兄・幼馴染「「ブフォッ!!」」

妹友「…………」ギリッ

兄「……いや、話さなきゃならないのはよく分かってるんだが……」

幼馴染「……で、できればもうちょっとマイルドな表現にして欲しいかな、と……」

妹「えー……じゃぁ『急性アニキ粒子中毒による強姦未遂事件』とか?」

兄「ひどくなってるだろ!強姦とかレイプとかから離れろ!」

――――

妹「議題『ドキッ!幼馴染と2人だけの体育倉庫でイケ☆ない接触~初めてはカビ臭いマットの上で~』について」

兄「…………」

幼馴染「…………」///

妹「そもそもあたしが2人を閉じ込めた理由は至って単純」

妹「幼馴染さんにお兄ちゃんの良さを知ってもらい、アニキ粒子の理解者になってもらうこと」

兄「……その為に俺と幼馴染を閉じ込めたんだな」

妹「その通り。そして何かあったらすぐに飛び出せるように窓から様子を伺ってました」

兄「……その割にはホントのギリギリまで一切登場しなかっただろ」

妹「いや、予想外の事態が色々と起きちゃって……」テヒヒ

兄「まぁ嵐とかあったしなぁ……」

妹「いや、お兄ちゃんと幼馴染先輩がいい感じになったあたりから妹友ちゃんが暴れ出してね」

妹友「…………」///

妹「気付かれちゃうからやめてー!って言ってるのに窓バンバン叩いたり」

兄「……妙にうるさかったの風じゃなかったのか……」

妹「あと幼馴染さんにお兄ちゃんが襲われてる時にね――」

妹「あたしが異様に興奮しちゃってさ」

兄「」

妹「何か途中から見守るどころか最後まで見る感じにシフトしちゃってた」

兄「……聞かなかった事にしよう」

妹「で、夢中になってたら妹友ちゃん拘束するの忘れちゃって」

兄「拘束ってお前……」

妹「気付いたら妹友ちゃんが、持ってきた傘の骨をブチブチ千切りながら『ズルイ…ズルイ…』とか呟いてて」

兄「……聞かなかった事にしよう」

妹「柄だけになった傘で窓ガラスをドンガドンガ叩いてヒビ入れて突っ込んでいったの」

兄「……誰か分かるまでは軽くホラーだったぞ」

妹「で、助けようと思ったら何やらお兄ちゃんが二回戦目に入ろうとしてたので」

兄「一戦も交えてないのに適当な事言うな……」

妹「ドキドキしながらギリギリまで網膜に焼き付けてた」

兄「…………」パキポキ

――――

妹「」

兄「……ホントに学ばないなこいつは」


幼馴染「……あの、さ」ツンツン

兄「……ん?」

妹「その前にお兄ちゃんに知らせておくことがひとつ」

兄「……ん」パキポキ

妹「……マジな話だから聞いて」

兄「…………」

妹「アニキ粒子には素直にさせる効果はあっても、惚れさせてしまうような…一種のフェロモンのような効果はない」

妹「だから――」

幼馴染「そこから先は私が言うわ妹さん」

妹「……そうですね。先輩が直接言うべきでした。すみません」

幼馴染「……ううん。まぁおかげで色々と気持ちの整理とかついたし」

幼馴染「……えっとね、まぁ……んー」

幼馴染「……ムードもヘッタクレもないし、あんたの家だし、二人きりどころか観客までいるけど」

幼馴染「まぁある意味それも私らしいのか、うん」

幼馴染「似つかわないタイミングと場所だけど……あんたに伝えたいことがあるわ」


幼馴染「私、幼馴染は、あんたが……いや、兄が……好きよ」


兄「…………」

幼馴染「そう、幼稚園の時からずっと好きよ」

幼馴染「あんたは忘れちゃったかもしれないけど……私は今でも覚えてる」

幼馴染「それこそつい昨日のことのように思い出せるわ」

幼馴染「……あんたと交わした『将来結婚しよう』って約束を」

兄「…………」

幼馴染「バカみたいでしょ?……いいえ、多分バカなのよ私」

幼馴染「バカだから……それ以来私の人生の目標はあんたのお嫁さんになる事に固定されたわ」

幼馴染「……あんたの気持ちなんて確かめないまま、ね」

幼馴染「で、今日まで来ちゃった」

幼馴染「あげくアニキ粒子で暴走して、私の初めてはもう滅茶苦茶な内に終わっちゃうし」

幼馴染「……でもまぁ、感謝もしてるわ」

幼馴染「こんなことが起こらなければ、私いつまで先延ばしにしてたか分からないし」

幼馴染「……もう一度言うわ」

幼馴染「私はあんたが、好き。大好きよ」

幼馴染「あんたとは今までうまくやってきたつもり……一応ね」

幼馴染「もちろん、これからも私はあんたとうまくやっていきたい」

幼馴染「……出来るだけ側で、隣で、一緒に」

兄「…………」

幼馴染「小さい時の約束抱えて迫ってくる、正直重たい女だけど……」

幼馴染「……そのっ」

幼馴染「あんたさえ良ければ、付き合って欲しいの。私と」

兄「幼馴染……」

幼馴染「…………」

兄「幼馴染、俺は――」

スッ

妹友「待って、ください」

兄「……妹友さん?」

妹友「少しだけでいいですから……幼馴染先輩、私にも……時間をください」

幼馴染「……ええ」

兄「…………」

妹友「兄先輩。私も……いえ、私は――」

妹友「兄先輩が、お兄さんのことが……そっ、そのっ……」


妹友「すっ、好きですっ!あ、会った時からずっと好きでしたっ!」


妹友「はぅ……ついに、ついに言っちゃったよ……」///

兄「妹友さん……」

幼馴染「…………」

妹友「正直、幼馴染さんや妹ちゃんに比べると足りないです」

妹友「兄先輩と一緒にいれた時間が、圧倒的に足りないです」

妹友「でも、確かに時間では勝てないかもしれないけれど……」

キッ

妹友「兄先輩のことを好きだって気持ちは、絶対に、負けません」


妹友「私が初めて兄先輩に会った時のこと。今でもはっきり覚えてます」

妹友「当時の私には力が全然なかったから……友達になったばっかりの妹ちゃんの暴走を止めることができませんでした」

妹友「破壊されていく備品をただ見つめる事しか出来ず、ただ無為に立っていた時に――」

妹友「先輩は現れました……空から。そして妹ちゃんに向かってダイブ、一撃で妹ちゃんを沈黙させると……辺りの片付けを始めました」

妹友「しばらく我を忘れていると、兄先輩がこっちへ来ました。『妹のおかげで迷惑をかけた。どこかケガはないか?』」

妹友「この異常な空間で兄先輩を意識した時……私は心奪われました」

妹友「兄先輩の、私を気遣うその表情に。その姿に」

兄「…………」

妹友「それから妹ちゃんから色んな話を聞きました。優しくて、強くて、面倒見が良くて、素敵なお兄さんだって」

妹友「徐々に徐々に会話に加われるようにして……少しづつ、大切に兄先輩と距離をつめてきたつもりです」

妹友「正直、兄先輩が私のことどう思ってるかとか……」

妹友「そもそもちゃんと一人の女性として意識して貰えてるかすら……今の私には分かりません」

妹友「でもっ……でもっ!」

妹友「成功するから告白する、成功しないから告白しない」

妹友「――そういった事はしないと心に決めています」

妹友「……私は、兄先輩が、お兄さんが……心の底から大好きです」

妹友「もし、お兄さんが良ければ……こんな私でも良ければっ!」

妹友「わっ、私とお付き合いして下さい!」バッ

兄「い、妹友さん……俺は――」


妹「待ってお兄ちゃん」

兄「…………」

妹「その『お前もかよ……』って言う感じの蔑んだ視線!興奮する!」

妹「――のは後にして……お兄ちゃん、あたしも伝えたいことがあるの」

妹友「……うん」

幼馴染「……どうぞ」

妹「この流れで大体予想はついてるでしょお兄ちゃん」

兄「……つかない」

妹「ま~たまた~。分かってる癖にぃ~」ウリウリ

兄「……分からな――」

妹「愛してるんだ、お兄ちゃんを」


兄「ッ……」ゾクッ

妹友「!」ゾワッ
幼馴染「!」ゾワッ

兄「……と、唐突だなお前は」

妹「そうかな。ううん、違うよ。あたしはいつも思ってる……口に出さないだけで」

兄「……俺も――」

妹「そういう意味じゃないよ」

兄「ッ!?」

妹「お兄ちゃん語尾に『家族として』ってつけるつもりだったでしょ?」

兄「う……」

妹「バレバレだよ。お兄ちゃんは話題を逸らそうとする時、左手の甲をほんの少し相手側に傾ける癖がある」

兄「え……」

妹「焦っている時は腰を中心に上半身をわずかに反らせる、とかね」

兄「な……」

妹「おりょ。本題とズレてきちゃったね。お兄ちゃんの癖談議はまぁさておき……」

妹「あたしは一人の女性として、お兄ちゃんを愛してる」

兄「…………」

妹「兄妹なのに?否、兄妹だからこそ……あたしはお兄ちゃんを強く愛してるの」

妹「妹として兄を愛し、女として兄を愛する。更に愛おしくなるのは当然だよね」

妹「あたしはね?別に有象無象の取るに足らないような……そんな連中に何を言われようが知ったこっちゃないんだ」

妹「あたしの愛は、あたしだけが知っていればいいんだもの」

妹「それにね、お兄ちゃんが誰とくっついたって構わない」

妹「お兄ちゃんが愛する対象が、あたしでなくたってもちろん構わない。だってそれはお兄ちゃんの自由でしょ?」


妹「ただ――」

妹「あたしから、お兄ちゃんを愛することを取り上げないのであれば……あたしはそれでいいの」

妹「……これであたしの伝えたいことは終わり」

妹「今まで色々ぼかして来たけど……これが本心」

兄「…………」

妹「あと、そうだね……お兄ちゃんの温もりが欲しくて、いつもあたしは側にいるけど……」

妹「本当はお兄ちゃんと暖かくなる以上のことをしたいという気持ちも、ある」

妹「……蛇の交尾みたいに一日中お兄ちゃんと繋がってみたいとも、思う」

兄「……それは」

妹「……でも、それはまったく別の話だからね。本当にお兄ちゃん『さえ』良ければ、だし」

妹「もしお兄ちゃんがやめろ、って言ったら全てやめるしね」

クルクル…

妹「それに、そう――」

妹「お兄ちゃんの幸せが成り立つのが第一で、あたしの幸せは二の次」

妹「お兄ちゃんの幸せの邪魔になるのであれば……あたしは自らの存在すら消したっていい」

妹「あたしは、本気で……そう思ってるよ」テヒヒ

兄「…………」

兄「……その、なんだ」

兄「立て続けに幼馴染と妹友さんの2人に」

妹「ええー!?あたしはー!?……ってまぁいいけどさ」

兄「…………」スッ

ポフッ

妹「……うにゃっ!?」

ナデリ

兄「立て続けに『3人』から……あれだ」

兄「その、あぁ、えーと……こ、告白、されて、しまったわけ、なんだが……」

妹「照れるお兄ちゃんマジ天使!これでご飯三杯はイケる!」

兄「…………」

スッ…

妹「しまったー!ナデナデが離れていってしまったー!」

妹友(でも妹ちゃん……気持ちは分かるよ……)

幼馴染(激しく同意せざるを得ないわね……)

兄「……正直なところ、何で俺を、という思いもある」

兄「多分俺の中にどこか惹かれる要素があった、のだろう、恐らく」

兄「そして皆の真剣さを見て、それを考えるのも野暮だろう、とも思ったよ」

兄「その、うん……3人の告白、感動……したんだ」

兄「幼馴染や、妹友や、妹が……魂ごとぶつかってくるかのような……うまく言葉で現せないけど……」

兄「……とにかくスンゴイ真剣で驚いたし、ビックリしたし、嬉しかったし……」

兄「人に……想われるって本当に、素敵な事なんだなって、思ったよ」

妹「…………」

妹友「…………」

幼馴染「…………」

兄「…………」

妹友「……それで……」

幼馴染「……返事は……?」

妹「……ふみゅふみゅ?」

スッ

兄「……ありがとう」

ペコリ

妹友(その『ありがとう』は誰に!?私なの?幼馴染先輩なの?それとも妹ちゃんなの?)

幼馴染(『ありがとう』……って誰によ!早く、早く言わないと心臓がっ!心臓がっ!)

妹(……あいむしんかー♪とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪)



兄「……その、気持ちだけを」



妹友「……え」

幼馴染「……へ」

妹「……ふみゅ」

兄「……すまない」


妹友「えっ……と……」

幼馴染「ま、待って、それってつまり、つまるところその……」

妹友「私たち……フラれちゃったって……こと……ですよ……ね?」

兄「…………」

妹友「…………」

幼馴染「…………」

妹「…………」


幼馴染「ッ」ブワッ

妹友「!?……せっ、幼馴染先輩っ、涙がっ……ってアレ?わ、私も……うっ……く」ウリュッ

妹「…………」

幼馴染「くっ、ひっ……ぐっ……ちっ、違うの!これはなっ、涙じゃなくて汗よ汗っ!」グスッ

ゴシゴシ

幼馴染「くぅっ……!暑いったらないわねまったく!」

妹友「せっ、先輩……」

幼馴染「……ッはぁっ」

グシッ

幼馴染「……妹さんの言う通り、誰を好きになろうがあんたの自由」

兄「…………」

幼馴染「私はあんたを勝手に好きになって、勝手にフラれただけ」

幼馴染「……でも」

幼馴染「……だったらっ!」

ズイッ

幼馴染「私たち3人をフるって言うならっ!」

幼馴染「その、あっ、あんたのっ、すっ、好きだって言う人をっ……!」

幼馴染「すっ、うっ……好ぎな人ぐらい”っ……ひぐっ……」

ポタッ…

幼馴染「教えっ、なざい”よっ……」

ポタッ…

幼馴染「ごめ”ん”っ……やっばり……無理っ、涙っ、我慢っ、出来っ……ひぅっ」

妹友「せん……ぱい……」

幼馴染「だっでずぎなんだもん”っ!ないだっで……!じがだな”いでしょっ……!」

ポタッ…

妹友「……兄先輩」

兄「…………」

妹友「……私からもお願いします」

妹友「先輩に想われてる幸運な方を……出来れば……知り、たい、です」

兄「…………」

妹「…………」

兄「……聞いたら」


幼馴染「…………」グスッ

兄「聞いたら多分、驚くと思うし……」

妹友「…………」スンッ

兄「……それに、聞いたこと自体を後悔するかもしれない」

幼馴染「……相手が誰だろうと、後悔しないわよ」

妹友「はい。私もちょっと考えてはみたんですけど、思い当たる方がいなくて……」

兄「……知りたい?……本当に?」

幼馴染「……ええ」

兄「念を押して、もう一度聞くよ。……知りたいの?本当の本当に?」

妹友「ぜ、是非」

兄「…………」

兄「……お」

幼馴染「…………」ゴクリ

妹友「…………」ゴクリ







兄「――幼馴染」

幼馴染「」

妹友「」

幼馴染「――ッハァァァァァッ!?」

妹友「」

幼馴染「でっ、でもさっき気持ちだけってどうでもいいわ!ぃやったァァァ――」

兄「――と妹友さん」

幼馴染「」

妹友「」

妹友「……ふあっ!?」

幼馴染「」

妹友「い、意味が、その、でも嬉し――」

兄「――それと……妹」ポリポリ

妹友「」

幼馴染「」



妹「……ニョホッ」

妹「~♪」

妹友「」

幼馴染「」

兄「……だからっ」

兄「だから言ったのにっ!聞いたら絶対後悔するって!」

兄「俺は、君たちが思ってるような聖人君子じゃないんだよ!」

兄「二心どころか三心抱いちゃうようなクズなんだよ!」

兄「気付いたら好きな人が二つに増え、三つに増えて、どうしようもなくなってたんだよ!」

ザッ!

兄「ごめんなさいっ!」ドゲザ

妹友「」

幼馴染「」

兄「……それで、付き合えないって言ったんだ」

兄「こんなに真剣に告白してくれる女の子が、俺みたいなゴミと付き合っちゃいけないって……」

幼馴染「まっ、待って……ちょっと待っててね……ふー……」

兄「…………」


グイッ

幼馴染「選べやぁ!選択しろ!捨てろ!yes or no!何かを手に入れるなら何かを切るのは常識でしょうがぁ!」

兄「む、無理っ、皆それぞれ愛おしくて、差なんて……ぐええええ」ギュー

幼馴染「へ……愛おしい……ってバカ」///

兄「ゲホゲホ、いや本気で俺は――」

幼馴染「じゃ、なぁぁぁぁい!やっぱりふざけるなぁ!」ガッ

兄「くっ、苦しっ、い、息がっ、がふっ……!」ギュー

妹友「お、幼馴染先輩!兄先輩の顔が信号機みたいになってますからっ!危ないですからっ!」

幼馴染「チッ!」ポイッ

ズシャァ

兄「……ッゲッホゲッホ!!」

妹友「ねぇ兄先輩、なら何でさっきは一度断ったんですか?」

兄「……俺みたいなゲスな男より、世の中にはもっといい男がいるだろう?」

妹友「…………」

兄「だったら俺なんかじゃなくて、そっちのいい男と一緒になって幸せに――」

グキッ

兄「あがっ!い、痛っ!ひ、人差し指が!?」

妹友「……次は中指ですよ、先輩」ニコニコ

兄「え?……え?」

妹友「乙女の純情を踏みにじった挙句、私の幸せの定義まで勝手に決められて自己完結……」

妹友「これはギルティ、有罪ですよね?」グキッ

兄「ぐあぁっ!」

妹友「先輩だから告白したんです。『いい男』だったから告白したわけじゃないです」

妹友「それを『自分がクズ』だからと言って、私の幸せまで決めつけないでください、よ!」グキッ

兄「があっ!」

妹友「それに幼馴染先輩の言う通りですよ。誰か一人に答えを返せたなら……」

妹友「三人の内一人は確実に幸せになれるじゃないですか。それを全員断るなん、て!」グキッ

兄「がっ!……あっ!」

妹友「それじゃぁ誰も幸せにならないじゃないですか!勝ち負けも白黒つかないんじゃ――」

妹友「私たちこの後、皆……宙ぶらりんで、生活していくしかないじゃないですか!」グキィッ

兄「ぐぎっ……!っぁ……はァ」

フワッ……

兄「っはぁ……っえ?」

ギュゥ

妹友「お願いですから……決めてくださいよ……でないと私、私たち、前に進めないじゃないですかぁ……」グシュッ

兄「妹友さん……」


妹「~♪」

妹「さぁさぁお兄ちゃん」

兄「妹……」

妹「お二人の仰る通り、今は決断の時だよー」

兄「…………」

妹「ライフカードは3枚!幼馴染さんに妹友ちゃん、そしてわ・た・し♪」

兄「う……」

クルクル

妹「一体お兄ちゃんは何を望んでいるのかな?」

妹「幼い時に交わした甘い約束を成就させることを望むのかな?」

妹「運命的な出会いをしたかわゆーい後輩と結ばれることを望むのかな?」

妹「許されざる愛の道を突き進むことを望むのかな?」

妹「お兄ちゃんなら……どれも叶えることができる」

妹「どれも手の届く範囲にある!」

妹「そう!今まさにこの瞬間!未来を握っているのはお兄ちゃんに他ならない!」

妹「どうするお兄ちゃん?どうするのかなお兄ちゃん?何を選び、何を捨て、何を得るのかな~?」

兄「俺は……」

妹「迷ってるねお兄ちゃん」

兄「……ッ」

妹「迷ったら……望みだよ」

兄「……え?」

妹「望みに進むのが、気持ちのいい人生なんだってさ」

兄「……望……み……」

妹「そう、お兄ちゃんの望むものは何?」

兄「…………」

妹「本当はもう分かっているんじゃないのかな?」

兄「…………」

妹「だから保留してきたんじゃないのかな?」

兄「…………」

妹「『すべて』っていう選択肢を」

妹友「!」
幼馴染「!」

妹友「妹ちゃん、それは……!」

妹「だって考えてもみてよ妹友ちゃん!」

妹「お兄ちゃんが納得して、あたし達が納得すれば――」

妹「もれなく全員愛してもらえる上に愛し合えちゃうんだよ!」

妹「誰も不幸にならないし、お兄ちゃんも彼女が三人いて幸せ!」

妹「あたし達も俗に言うwin winの関係になれるってわけだよ!」

妹友「で、でも……」

妹「何が駄目なのかな?法律?世間体?常識?あるいはそれ全て?」

妹友「……え」

妹「お互いの愛を確かめる方法なら、いくらでもあるし――」

妹「第一、当の本人さえ良ければ何でもいいと思わない?」

妹友「…………」

…コォォォ…ォォ…

兄「俺は……」

妹・妹友・幼馴染「!!」

兄「俺は……!」

…コオォォォ…ォォ…ォォォ……


妹友「あぅ……」トクンッ

幼馴染「なにコレ……体が熱く……」トクンッ

妹「空気中のアニキ粒子濃度が増加してるんだよ」

妹「基準値を100とするなら、今はおおよそ2000」

妹友「に、20倍も!?」

幼馴染「そ、それ私たち大変な事になっちゃうんじゃ……」

妹「今の二人なら全然平気だよ。直接摂取はこの比じゃないし。それに――」

妹「まだまだ増えるよ。ほら、見て」

妹友「!」

幼馴染「緑色の……でも、あの時と比較にならない程の……!」

兄「もう迷わない」

…コオォォオォ…ォォ…ォオォォ……

妹「4000」

兄「もう逃げない」

妹「6000」

兄「もう泣かせはしない」

妹「8000」

兄「決めた。俺は決めたんだ。いや、本当はとっくの昔に決まっていたんだ」

兄「俺はッ!」

兄「妹友さんッ!」

兄「幼馴染ッ!」

兄「妹ッ!」

兄「みぃ~~んな俺の嫁にするッッ!」バシュゥー…


妹「……10000」ニヤァ

コオォォオオォォオオォォオオ…

兄「…………」

妹「…………」

妹友「」

幼馴染「」

兄「……だから、付き合ってくれないか幼馴染」スッ

幼馴染「あ……はい……っじゃないわぁこのアホー!」

兄「駄目か……それは残念だ」シュン

幼馴染「だ、駄目ではないけど問題点はそこじゃない!これってつまりアレでしょあの――」

妹「ハーレム」

幼馴染「要はハーレムでしょ!?私はただ恋人っぽくキャッキャウフフしたいだけなのよ!」

兄「しよう」

幼馴染「は?」

兄「キャッキャウフフしよう。それが恋人の、なおかつ幼馴染の願いとあらば」

幼馴染「言ったのは私だけど真顔でキャッキャウフフとかやめて!」

兄「俺は目が覚めたんだ」

兄「人生は挑戦と失敗の連続だ」

兄「そして失敗から学び、改善を加えて挑戦する。そんな当たり前の事に今更気づいたんだ」

幼馴染「……それとどういう関係が――」

兄「ならばハーレムも挑戦しなければ、俺の考える俺による俺の為の理想郷、即ち俺の嫁生活にはたどり着けない」

兄「目標がそこにある以上、俺は何十、何万、何億でも挑戦し、克服する必要がある!」ゴォッ!

幼馴染「うっ……!」

兄「幼馴染、お前が好きなんだ。……幼稚園の約束だって俺は忘れたことはない。ほら、これを見ろ」

幼馴染「それは……お守り?」

兄「この中に宝箱の場所を示した地図が入っている。掘り返せば出てくるはずだ。俺たちの――」

幼馴染「クレヨンで書いた婚姻届け、か。……驚いた、忘れてなかったんだ」

兄「……ああ。だから今度二人で掘りに行こう。約束を叶える為に」スッ

幼馴染「う」///

兄「約束する。必ず幼馴染を幸せにする。信じてくれ、俺を」スッ

幼馴染「…………」

幼馴染「……はぁ」

幼馴染「妹友さん、ごめんね」

妹友「……え」

幼馴染「私、わりかしチョロい奴だったみたい」ポリ

妹友「先輩……」


スッ

幼馴染「……私を失望させないでよね。未来の旦那様」

兄「もちろん。幼馴染がもうやめてと叫んでも愛することをやめないからな」

幼馴染「なっ……!」///

兄「……付け加えるなら物理的にも、精神的も、ね」

幼馴染「ぅぅ……」///

兄「でもまずは……これ位から?」スッ

ナデナデ

幼馴染「ぁ……ふ……」クテー…

兄「妹友さん」スッ

妹友「あ……や……」

兄「?」

妹友「い、嫌です……」

兄「…………」

妹友「聞きたくないです。聞きたいけど……でも聞きたくないです」

兄「妹友さん……」

妹友「お兄さんが今告白してくれたら、きっと私、断れません」

兄「…………」

妹友「思ってたのと違うけど、でも……両思いだったからそれで私、満足しちゃうと思います」

妹友「……違うんです」

妹友「お兄さんが嫌な訳じゃないです。私が、私の中身が醜いから、嫌なんです」

兄「醜いってそんな……」

妹友「……私、お兄さんが思ってくれるほど、いい子なんかじゃないです」

妹友「嫉妬深くて卑しい人間なんですよ」

妹友「お兄さんが妹ちゃんとくっついてる時も」

妹友「お兄さんが幼馴染先輩と……くっついてる時も」

妹友「二人が、悔しくて憎らしくて仕方がなかった……」

妹友「……私だけを見て欲しい。私だけを構って欲しい」

妹友「そういう独占欲が私、抑えられないんです」

妹友「だからもし、お兄さんが目指す理想に、私を加えたら……」

妹友「いつか、隣にいる二人が疎ましくなる時が来るかもしれない」

妹友「何かの弾みがついてしまったら私、自分が何をするか分からない」

妹友「親友と尊敬できる先輩だけど、お兄さんが関わったら本当に分からない」

妹友「今は良くても、お兄さんの事だから私……きっと――」

スッ

妹友「――え?」

兄「……涙」

妹友「あ……私いつの間に――」

「ん」
「んっ」

兄「……ふぅ」

妹友「」

兄「ふふ」

ポフリ

ナデナデ

妹友「は……」

ナデナデ

妹友「あ……あぁ……」

ナデナデ

妹友「あぁぁぁーーーーーー!!あぁぁぁぁーーーーーー!」///

兄「どうしたの?」

妹友「おにっ、おに兄先ぱっ、さっ、いっ、今っ今ぁっ!」///

兄「んー?」

ナデナデ

妹友「キキキキキ、キスっ!キスを!わ、私と今っ!」///

兄「……うん。しちゃった」

妹友「ぁぅ……そんな……私……あの……」///

兄「どう?」

妹友「ど、どうって……何かまだふわふわと……味とかも……味ッ!?味とか何を私は!?」ワタワタ

兄「違う違う、キスじゃなくて」

妹友「……へ?」

兄「まだモヤモヤする?」

妹友「……あ」

兄「……そうか。思いつきだったけど、うん。良かった」ナデナデ

妹友「ぁぅ……」クテー

兄「……俺の理想が理想だから、説教じみた事言えないけど」ナデナデ

妹友「え……?」クテー

兄「大なり小なり、皆モヤモヤは抱えてるよ」ナデナデ

兄「……でもそれって付き合い方次第じゃないかな」

妹友「付き合い方……次第?」

兄「例えば今みたいな……キスで吹き飛ばしたりとか?」ナデナデ

妹友「キっ、あっ、ぅぅ……」

兄「不安になったらくっついたり、話したり……色々すればいいと思う」

妹友「い、色々……!?」

兄「簡単に言うと……道を違えそうになったらうやむやにしようって提案してる」

妹友「……お兄さん、最初から道を違えてますよね?」

兄「……そこには目をつぶって欲しい」

妹友「……テキトーですね、お兄さん」

兄「テキトーだね、自覚してるよ」

妹友「……でもそれが適当かもしれません」

兄「うん?」

妹友「いえ、何でもないです」

兄「そう。それじゃぁ改めまして、と」スッ

妹友「あ……なでなでが……」

兄「妹友さん。俺と、どうか付き合って欲しい」

妹友「……ずるいですよお兄さん」

兄「……ずるくても構わない」

妹友「……知りませんからね。私、嫉妬深いんですから」

兄「大丈夫だよ。……ホラ、あっち」

妹友「……あっち?」

クルッ


幼馴染「ッ……ッ……!」ワラァァァ…


妹友「……人の髪って……逆立つんですね……」

兄「……ああ。俺も初めて見たけど」

兄「――だから後で色々して、なだめる予定」

妹友「……色々」

兄「そ、色々」ポフリ

妹友「…………」///

妹友「…………」

妹友「……そうでした」

妹友「『成功するから告白する、成功しないから告白しない――そういった事はしないと心に決めている』」

妹友「そう言ったのは、私でしたね……」

妹友「その決意から考えれば……私は何と恵まれた……」

妹友「……お兄さん」

兄「……はい」

妹友「お受けします。心から、喜んで」

兄「……ありがとう。こんな俺の――」

ピトッ
兄「ん?」

妹友「駄目です。それ以上言わないで下さい」

妹友「ここまで来たなら、もう開き直ってください」

妹友「……自分を卑下する段階なんか、とっくのとうの昔に通り過ぎてるんですからね?」

兄「……分かった」ナデリ

妹友「んはぅ……」クテー

兄「……さて」スッ

妹友「あ……」

幼馴染「む……」

――クルクル

妹「~♪」

兄「妹」

妹「……お?」

ピタッ

兄「…………」

妹「…………」

妹友・幼馴染「…………」ゴクリ




妹「」フラッ

――ドタァァァァン!!

兄・妹友・幼馴染「妹ォォォォォォッ!?」

妹「うぷ……ッえっ……気持ち悪……」

兄「突然倒れるな!せめて予備動作を見せろ!受け止める隙さえなかったぞこの野郎!」

妹「ッお……いくら回っても酔わないから……限界を、目指してたんだよ……」

兄「視界の外でずっと回ってのかよお前は……」

妹「あたし気づいたよ……酔うのは停止した瞬間だって……ぉウッ」

兄「んとにお前は……」

妹「好き」

兄「っは!?」

妹「その困った顔が、好きだよ」

兄「……呆れてるんだよ。いちいち心配かけさすなって」

妹「心配してくれるから、あたしは無茶するんだよ」

兄「…………」

妹「もちろん今の冷たい視線も好き」

兄「……結局なんだかんだで全部好きだとかそういうのだろ」

妹「うん!」

兄「……聞いてくれ妹」

妹「聞くよ」

兄「…………」

妹「…………」シャキッ

兄「……のっけから最悪だが、俺はシスコンだ」

妹「dope!」

兄「かなり前からそうだった」

妹「crazy!」

兄「そして今日。複数の女性と交際するぞという、最高に不道徳な誓いを立てた」

妹「blast!」

兄「今まさに三人目の女性に交際を申し込もうとしている」

妹「alright!」

兄「それは妹、お前なんだ」

妹「sweet!」

兄「どうか俺と、付き合って欲しい」

妹「show time!」

兄「…………」

兄「stylish!」

妹「!」

妹「smokin'!」

兄「smokin'style!!」

妹「smokin'sick――」

ビスッ

妹「あだっ」

兄「……こら」

妹「痛ちち…」

兄「茶化すな」

妹「乗った癖にひどいよ……」

兄「……で、返事は?」

妹「……ん、と……」モジッ

妹「あの、さ」

兄「ん?」

妹「お兄ちゃんの事大好きだしラブラブ愛してるし超愛しいけど」

兄「お、おう」

妹「……その、何ていうか、困る」

兄「……困るって何が?」

妹「……あたしの一方通行な愛は、あたしの日常」

兄「…………」

妹「お兄ちゃんからの告白、プレイ、調教エトセトラの妄想も、あたしの日常」

兄「…………」

妹「あたしがあたし自身を裏切って、お兄ちゃんの自由を犯して襲ってしまうのも、あたしのどこかの日常の延長線」


兄「…………」

妹「……でも、その、真正面から、リアルに、告白されるのは――」

妹「あたしの想定してない非日常、なの」

兄「…………」

妹「だから、今の告白に対応しきれてなくて……耐え切れなくて……」

妹「……茶化しちゃった」

兄「妹……」

妹「……ごめんなさい」

兄「……回ってたのもそうだろ?」

妹「……うん」

兄「……斜めに構えてないと駄目なんだろ?」

妹「………うん」

兄「……真正面から受けたら、自分がバラバラになりそうで、怖いんだろ?」

妹「………う、ん」

兄「……いつもふざけてれば、本当の痛みに会っても、受け流せるからだろ?」

妹「………う”ん”っ」ポロ…

兄「……相手の中を先に覗けば、自分の中を覗かれなくて済むからだろ?」

妹「………う”ん”っ……う”ん”っ!」ポロポロ

兄「……知ってるよ」

妹「……えっ」ポロ…

兄「全部ぜ~んぶ知ってる」

妹「……ぜ、ぜんぶ?」クスン

兄「知ってるさ」

妹「……な、何で?」クスン

兄「そりゃぁ――」


兄「お兄ちゃんだからだ」

妹「――――」

ポフリ

ナデナデ

兄「そういう繊細なとこも含めて、妹が好きなんだ」

妹「…………」

兄「もう一人で悩まなくても良い」ナデ

兄「これからはパートナーがいる」ナデリ

妹「……お兄ちゃん」クスン

兄「そう。それにな――」

兄「幸せになったって大丈夫。幸せになるのは怖くないから」

妹「……本当に?」グスッ

兄「ああ。心配ならお兄ちゃんが手を繋ごう」

兄「怖かったら一緒に寝よう」

兄「お兄ちゃんがいるから、大丈夫」ナデリ

妹「……お兄ちゃん」ダキッ

兄「はーい、お兄ちゃんはここにいますよ」

妹「……お”兄っ、ぢゃん……!」ヴ


兄「……泣いてもいいんだよ、妹」ナデリ


妹「――――ッ!―――――――ッ!」

――――

兄「……落ち着いたか?」

妹「……うん、まだ鼻がツンツンするけど……」スン

兄「ティッシュまだいるか?」

妹「…………」

妹「結局、あたし心の内、隠せてなかったんだね」

兄「……俺の事を言い当てた妹が何を言うかね」

妹「……へへ。そうだね。うん、そうだった」

兄「お兄ちゃんだからな」
妹「妹だから」

兄「そう、つまりそういうこった」

妹「うん、そういうことだね」

妹「…………」

妹「……ねぇお兄ちゃん」

兄「ん?」

妹「さっきの、返事の続き……」

兄「……ああ」

スッ

妹「ふーー……」

妹「……よしっ」



妹「……嬉しいです。あたしもお兄ちゃんが、兄が大好きだから。だから――」


妹「お嫁さんにしてくださいっ」///



―ギュッ

兄「……ありがとう」

妹「……やっぱり……やっぱり暖かいや……ふふ」ギュー

あと少しだけ続きます
投下は夜

sage忘れごめんなさい…

――――

妹友「幼馴染先輩っ!交代です交代!もう3分経ちましたよ!」

幼馴染「撫でられ始めてから3分だからまだ後30秒あ……はふぅ」トロ~ン

妹友「私の時は引き剥がしたのに……それはなしですよ」

幼馴染「更に更に、私の意識がない時は撫でられてるという体験が観測できないからプラス30秒……ぅなぁ」クテー

妹友「何ですかそれ!?今日び小学生だってそんな言い訳は――」

兄「まぁまぁ妹友さん」ナデナデ

妹友「しな……い……で、す……ぅなぁぁ」クテー

兄「どっちにしろもう結構な時間だから、今日は終わり、な?」

妹「えー……いいじゃん別に。このまま夜が明けるまで延々となでなでタイムで」

兄「ワガママ言うなよ。明日も学校あるんだし」

妹「じゃぁ民主主義にのっとって決めよう。なでなでタイムに賛成の人っ!はいっ!」バッ

妹友「はいっ!」バッ

幼馴染「賛成よ」バッ

妹「はい決定」
兄「汚い!こんな横暴な民主主義あってたまるか!」

兄「……あんまり言う事聞かないようならなでなでやめちゃおうかなぁ」チラッ

妹「なでなでタイムを朝まで延長が許されるのは小学生までだよね」
妹友「私最初からなでなでタイムを延長するのはどうかと思ってたんです……」
幼馴染「まったくけしからん話よね。なでる人の腕の心配を少しでもした事あるのかしら」

兄「…………」

妹「さぁ良い子の皆は寝る時間だー!来客用の布団を引っ張りだす者は我に続けー!」

妹友・幼馴染「おー!」

兄「はぁ……まぁいいか。あ、敷布団とか重いのは俺が運ぶから」

妹「駄目」
妹友「駄目です」
幼馴染「何考えてるの」

兄「な、何でだよ」

妹「だってそれじゃぁ――」

妹「重い布団を持って足がもつれてお兄ちゃんと密着するイベントが……」
妹友「重い布団を持った私を『重いだろ?俺がやるよ』と声をかけてくれる可能性が……」
幼馴染「重い布団を二人で持って後から初めての共同作業として私の中で神格化する作業が……」

兄「……布団は全部俺がやろう」

――――

兄「よし、と。で、どこに敷く?リビングか?」

妹「お兄ちゃんの部屋」

兄「あ?」

妹友「お兄さんの部屋がいいです」

兄「……俺の部屋じゃ四人も入りきらないぞ」

幼馴染「そう、なら布団は不要ね」

兄「どういう……」

妹「そりゃお兄ちゃんの布団のみでokっていう――」

兄「何としてでも敷こう」

――――

兄「……予想はしていたが」

ミッチリ

兄「……やっぱり狭くないか?」

妹「お兄ちゃん、これはあたし達なりの譲歩なんだよ」

妹友「もし狭いと言うならやはりお兄さんの布団一つに全員で――」

兄「それは駄目!」

幼馴染「私はそれでも一向に構わないわよ」

兄「だから駄目……って妹友さん何してるんだ!」

妹友「コ、コンタクト落としちゃって……」ゴソゴソ

兄「つけてもないもの落とすはずないよな!ましてや本棚とか!」

妹「えっちぃ本なら机の一番下の引き出しをはずした部分の下だよ」

兄「探してたのそれかよ……っていうかお前が何で知ってるんだよ……」

妹「ひねりが足りないよお兄ちゃん」

幼馴染「妹モノ、後輩モノ……幼馴染モノはどこ……あった!ど、奴隷志願とか私得」///
兄「だぁぁぁれぃぃぃ!」

――――

兄「電気消すぞ」

妹「はーい」

妹友「おやすみなさいです」

幼馴染「おやすみ」

カチ カチン

兄「ほいおやすみ」

妹「…………」

妹友「…………」

幼馴染「…………」


モゾ…

兄「はいストップ」カチン

妹「げ」ピタッ

兄「絶対誰かやると思って……ってお前ら……」

妹友・幼馴染「…………」///

兄「普通に寝よう、な?」

妹「若い男女が一つ屋根の下、かつ同じ部屋で寝ているとなれば……ね?」

兄「ね?じゃない」

妹友「むしろお兄さんから来てしかるべきですよ」

兄「……なんていうかだな」

兄「もうちょっと、段階を踏んで……距離をつめようっていうか……」ポリポリ

妹「うひひ、照れてるお兄ちゃんマジ天――」

ビスッ
妹「死ッ」

兄「ゆっくり、じっくりと関係を育てていきたいんだ」

妹友「お兄さん……」

幼馴染「……分かったわ。……ところで、その」

兄「ん?」

幼馴染「今度妹さんにやってる痛そうなデコピンを私にも……」

兄「…………」

――――

兄「…………」ムニャ

幼馴染(異性が三人もいるっていうのによく眠れるわねコイツは……)

妹友(お兄さんが側にいるだけで……私は眠るどころか興奮する一方なのに……)

妹(逆にお兄ちゃんの器の大きさを示してるってことでもあるけど……)

モゾ…

妹(さて、我々はあそこまで強固に普通に寝ることを強固に約束させられてしまった以上、お兄ちゃんに手は出せない)

妹友(いくら結ばれたと言っても一緒にお泊りなんてチャンス、そうそう巡ってくるものではありません)

幼馴染(でも、あくまで兄自身に手を出せないだけであって……この状況を満喫する方法は存在するわ!)

モゾリ…

(朝まで……ヤるッ!ヤり尽くすッ!悔いのないように……徹底的にッッ!)


(お兄ちゃんと寝る部屋が一緒なんていつ以来だろう……って考えただけでもうこんなに……)

(先輩の匂い、姿、床、部屋、天井、床、匂い、姿、アニキ粒子、緑、緑、緑、緑……)

(やば……同じ部屋で寝てるのに私こんな……はしたないけど……コレすごいクる……!)

モゾモゾ…

――――

チュンチュン…

兄「……で、だ」


妹「ゲッホゲッホ……!ゴホッ……ゥエ”ーーーーッホッ」///

妹友「ケホッ……」///

幼馴染「ックシュン……ズズーッ」///

兄「……何で風邪ひいてるんだよ三人共……」


妹「ゴッホッ……!バカではない証が欲しくて……」

妹友「ケホンッ……ちょっと冷えちゃったみたいで……」

幼馴染「ェックショィッ!風邪を引くのに理由も何もックシュンッ!」

兄「……布団蹴っ飛ばして腹出して寝てりゃぁ誰でも風邪引くだろ」

兄「まったく何のために昨日ゴリ押して風呂に入ったんだか……」

妹・妹友・幼馴染「…………」///

兄「とりあえず残りご飯でお粥作っておいたから」

妹「ゲッホ!かたじけない……」

妹友「……これはある意味正解だったかもですケホンッ」

幼馴染「あーんで食べさせてくれれば……いえここは口移しがハプシュッ!」

兄「……とりあえず寝てなさい。で、マシになったら医者に行きなさい」

妹「あ”い”……」

兄「休みの連絡は自分で頼むよ」

妹友「はい……」

兄「ポカリスエットここに置いとくからな」

幼馴染「それも口移しで……」

兄「じゃぁ俺は学校行くから」

妹「いってきます……」

兄「お前はいってらっしゃいだ!戻れ!」

妹友「おかえりなさい……」

兄「い っ て き ま す !」

――――

テクテク

兄(……ったく)

兄(……………)

兄(……そうか)

兄(……バタバタしててアレだったが……)

兄(……昨日、俺は……)

兄(…………)

兄(…………)ポリポリ

兄(……いいのかね、こんなの……)

兄「…………」テクテク

兄「…………」テクテク

兄「…………」テクテク

兄「…………」テクテク

兄「…………」テクテク


兄「……はぁ」

兄「…………」

兄「……何で風邪引くかなぁ……」

――――

兄「……うす」

友「おはようございます、死ねっ!」ブォ

兄「わっ!?」

ピタッ

友「……と言いたいところだが、まぁ勘弁してやろう」

兄「……何を勘弁されなきゃならんのだ」

友「聞けばぁ?どうやらぁ?お前はぁ?今朝はぁ?」

友「ソ・ロ・登・校」

友「だったらしいじゃぁん♪」

兄「…………」

友「あんな可愛い妹ちゃんと一緒に登校するだけで断罪レベルなのにお前と来たら……」

友「しおらしい妹友ちゃんが一緒だったり、あの中身はアレだが幼馴染が一緒だったりとまぁ至れり尽くせり」

友「そんな普段のお前だったらだ。世間一般の非モテ層を俺が代表してぶん殴ってやるところだが――」

友「今日のお前はソロ。ソロ登校。ソロ登校ざまぁなので殴らない。寛大な俺に感謝するんだな」

兄「……大体朝っぱらから殴られるような真似を俺はしてないと思うんだが……」

友「アホ抜かせ。昨日一日の大半を保健室で過ごすハメになったのはお前のせいだろうが」

兄「……自業自得だろ」

友「アレだぞ。目が覚めたら知らない天井とか洒落にならんからな」

兄「……お前そういうの好きだろ」

友「当事者は勘弁に決まってるだろ!念のために『今日は何年の何月何日ですか?』って聞いたら救急車呼ばれそうになったし……」

兄「へぇ」

友「へぇ。で済ませるな!あのゴリ……おっと」キョロキョロ

兄「どうした?」

友「……幼馴染はどこにいる?」

兄「……心配しなくても今日は休みだ。……風邪でな」

友「ホッ……ならいいが。……ん?」

兄「……なんだよ」

友「何で休みの理由お前が知ってるんだ?」

兄「……あれだ。メール」

友「ほーん……まぁいないならいいや。今日一日、俺は平和に過ごせるってもんよ」

兄「……あとだな」

友「んー?」

兄「あいつのこと……幼馴染のこと、あんまり悪く言わんでやってくれ」

友「ふむ」

兄「……根は、いい奴だから」

友「ほう……」

兄「…………」

友「ほーかほーか。なるほどねぃ」ニヤニヤ

兄「……なんだよ」

友「別に?何も?」ニヤニヤ


(これは……ほう……そうなるか……)

(兄は幼馴染と、か。王道で決着というところだな。個人的には後輩推しだったんだが……)

(……昼休みにコピー機全開で号外刷らなきゃ。支持者が多いインセスト派はご愁傷様だねこりゃ)

――――

妹「ゴッホ……美味しいねぇ……」

妹友「鮭と梅と昆布まで用意されてるとは……ケホッ」

幼馴染「朝のあんな短時間でよくこれだけ作れックシュンッ!」

パクッ

妹・妹友・幼馴染「うまー……」

妹「しかし大誤算だったねぇ……」

妹友「折り悪く全員風邪引いちゃうなんて……まぁ誰か一人引いてなかったらそれはそれで困りますけど」

幼馴染「折角全員結ばれたんだから……四人一緒に登校したかったわ……」

妹「……そう言えばもう一つ誤算があったよ」

妹友「……他に何かあったかな?」

妹「いや、あたし個人の話なんだけどさ」

妹「……昨日、お兄ちゃんがあたしに告白した時のことだよ」

妹友「ああ!」

幼馴染「……悔しいけど、あの時の兄はカッコ良かったわね」

妹「…………」

妹友「……それが妹ちゃん、どうしたの?」

妹「本当はね……本心、最後まで見せるつもりなかったんだ」

妹「最後まで自分の心には蓋をして……それでやりきる」

妹「そう、決めてたんだけどね……」

妹「お兄ちゃんがあたしのこと、全部分かってたみたいでさ」

妹「最後は……大声あげて泣いちゃった」

妹友「……でも本当に心と心が通じ合ったから良かったじゃない」

幼馴染「……それにそれのどこが誤算だっていうの?」

妹「んー……?」

妹「そりゃぁ最後まで本音を割らずに、計画を遂行できなかったってこと」

妹「――それが誤算だって言ったの」

妹友「……計、画?」

妹「そう、計画。でも偶然とはいえ、見事に三人同時に学校へ病欠で行けなくなったから」

妹「――何も問題はないんだけどね」

幼馴染「どういうことなの?……計画って……妹さんは何をしようとしているの?」

妹「あれー?あたし前言わなかったっけ?」

妹「ねぇ妹友ちゃん?」

妹友「!そういえば……」

妹「『独り占めでベタベタするより、もっともーーっとベタベタ出来る方法があったら』って言ったんですよ、あたしは」

妹「でも偶然とはいえ条件は満たされたから……後は待つだけ。待つだけでいいんですよ」

妹「待てば……そう!この地上のどんな場所でもお兄ちゃんとイチャイチャできる世界がやってくる!」

妹友「……どんな……場所でも……」

幼馴染「……愛し……合える……」


妹「さぁカウントダウンを始めましょう」バッ

妹「お兄ちゃんとひたすらイチャイチャするために!」ババッ

妹「アニキ粒子のその果てに!お兄ちゃんの楽園は堕りてくるのだ!」バァン

――――

兄「……む……」フラッ

兄「くぅ……」クラッ

友「どうしたアミーゴ。やけに顔色悪いじゃねぇか」

兄「ぬ……顔色悪く……見える、か?」ヨロッ

友「ああ、どっからどう見ても絶不調だぜ」

兄「……やっぱり、か」

友「妹さんも風邪だったんだろ?だったらお前も風邪引いてるんじゃない?」

兄「……かも、な」フラッ

友「……ヤバそうだな。体育パスっとくか?」

兄「そ……う…す、る……うっ!」グラァ…

友「おいバカ危っ――」

ドタァァァン…
友「――っと、な、何とか頭はセーフ!!」

兄「…………」フゥフゥ

友「……ヤバいな。とりあえず保健室へ運んだ後担任ちゃんに連絡かな……」

――――

ガララッ!

友「あっ!先生ちょっと友達が……って担任ちゃんか」

担任「友くんは担任をちゃん付け呼ばわりしない!……それはともかく、兄くん大丈夫なの?」

友「いや、それが結構ヤバそうな感じで……。その上保健の先生席外してるみたいで……」

担任「……そう、それは困ったわね。……それで友くんが看てたの?」

友「ええ。ついでに体育もサボれるので」

担任「…………」

友「友情故に付き添ってます!」

兄「うぅ……」ハァ…ハァ…

担任「兄くん苦しそうね……」

担任「とりあえずここは私が引き受けるから、友くんは授業に出なさい」

友「ええー……」

担任「…………」

友「ッシター!」ガララッ

――――

妹友「妹ちゃん、カウントダウンって……」

幼馴染「アイツに何か起こるってこと……?」

妹「……二人にはまだ全てを明かしてなかったね。勿論、お兄ちゃんにもだけど」

妹「実はね……アニキ粒子が影響するのは私たちだけじゃないんだよ」

妹友「え……?」

妹「アニキ粒子を発生させている……お兄ちゃん自身にも強く影響するんだ」

幼馴染「ど、どういうこと?」

妹「あたしとお兄ちゃんは共存関係にあったってことですよ先輩」

クルクル

妹「お兄ちゃんはアニキ粒子を持て余すと自家中毒を起こしてしまう」

妹「そのアニキ粒子を強く吸収する人体に受け渡す事で自家中毒を回避し――」

妹「あたしは禁断症状を回避する」

妹「あたしが四六時中くっついている理由は――」

妹「自分の為でもあり、お兄ちゃんの為でもあったんです」

――――

兄「く……」ツー

担任「すごい汗……吹いてあげないと」スッ

兄「…………」フゥ…フゥ…

コオォォオオォォオオォォオオ…

担任「…………」

担任「……いつもの凛々しい表情もいいけれど……」

担任「儚げな兄くんも結構……」

担任「…………」

担任「!」ハッ

担任「わ、私ったら何て事を……」

担任「教え子が苦しんでるっていうのに……教師失格だわ……」

兄「あ……」フルフル

担任「あ、兄くん?気がついた?」

――――

妹友「妹ちゃん、自家中毒って……」

妹「あたし達にはメリットしかもたらさなくても、お兄ちゃんにとっては完全に害だよ」

幼馴染「な、何で!?身体能力や精神能力がプラスになるなら――」

妹「――何故なら『強力に』作用しすぎるから」

妹友「!」ハッ

妹「過ぎたるは何とやら……」

妹「無尽蔵に体内で生産されるアニキ粒子は、お兄ちゃんの肉体と精神のフレームを……ついには大きくはみ出す事になってしまうから」

妹「その結果は――」

ダンッ!

幼馴染「だったらッ!」

幼馴染「こんなところで悠長にお粥すすってる場合じゃないでしょうッ!」

ヨロッ…

妹「……どこへ行く気ですか先輩?」

幼馴染「決まってるでしょ!アイツのところに行くのよ!今ならまだ間に合うかもしれない!」

――――

兄「だ……誰……?」

担任「兄くん、私よ。分かる?」

兄「……せ、先生……俺……」

担任「教室で倒れてここに運ばれてきたの。もうすぐで保健の先生が――」

兄「先生……」フルフル

担任「どうしたの?お水が欲しい?」

兄「手を……手を握って貰えませんか……」

担任「……手を?」

兄「さ、寒いんです……手が……」

担任「わ、分かったわ……」

キュッ

担任「……どうかしら?」

兄「温かい……温もりを……感じます……」ギュッ

担任「そ、そう……?それなら、良かったけれど……」///

――――

妹「その必要はありませんよ、先輩」

妹友「妹ちゃん……?」

妹「少なくともそれは……『一昨日まで』の話だからです」

妹「この数日間で状況は大きく変わりました」

妹「あたし達三人を含めた人間関係のみならず、お兄ちゃん自身にも変化を与えたからです」

幼馴染「…………」ゴクリ

妹「先輩、妹友ちゃん……長かった。本当に長かったよ……」

妹友「…………」

幼馴染「…………」

妹「アニキ粒子がお兄ちゃんを蝕む未知の物質だと知ってから幾星霜」

妹「お兄ちゃんを生かせる方法を探して三千里」

妹「そしてようやく発見した、兄を救済する方法」


妹「それが……『アニキ抵抗』」

妹友・幼馴染「アニキ……抵抗……?」

――――

コオォォオオォォオオォォオオ…

兄「寒い……」ギュ

担任「まだ、寒い?」

兄「寒いです……腕が……胸が……寒いんです……」

コオォォオオォォオオォォオオ…

担任「…………」

担任「……そうね」

担任「そしたら私の体で温めた方が効率的よね」

兄「寒い……寒いよ……」

担任「待っててね、兄くん。今服を脱いで一緒に布団に入ってあげるから」

シュルッ…

パサッ…

兄「温もりが……欲しい……」

――――

妹「年齢を重ねるごとにアニキ粒子の出力も強化される」

妹「同様に上昇していくのがアニキ抵抗。……でも出力が上回ってしまうせいで抵抗が力を発揮しきれない」

妹「……でも抵抗を飛躍的に上昇させる方法があった」

妹「それがあたしと――」

スッ
妹友「わ、私?」
スッ
幼馴染「…と私」

妹「あたし自身は言うまでもなく、二人は極めて短期間でアニキ粒子による汚染、中毒症状になった」

妹「短期間とは言え、その汚染レベルは最高クラスと言って差し支えないレベル」

妹「そしてあたし達の体内には、高濃度のアニキ粒子に対する強い抗体がどっさりある」

幼馴染「そうか!アニキ抵抗に、あたし達の体内の抗体を加える事によって活性化させれば!」

妹「まさにその通りです先輩。そして覚えているでしょうか?」

幼馴染「……何を?」

妹「お兄ちゃんは実に三人分の抗体を口移しで受け取っているんですよ?」

妹友・幼馴染「!」///

――――

兄「…………」

兄「……んー……?」ショボショボ

兄「保健、室……か?」

兄「…………」

兄「……さっきまで誰か隣にいたような気がしてたんだけど……」

兄「……気のせいか。とりあえず教室に――」

フニョン

兄「…………」

バッ

担任「むにゃ……」ムチッ フルン

ババッ

兄「……担任ちゃんが素っ裸で隣で寝ている」

兄「…………」

兄「うん、これは夢だ。寝よう」

――――

妹「抵抗によってアニキ粒子がコントロールできるようになれば……」

妹「お兄ちゃんが自家中毒で苦しむことも、もうないんです」

妹友「そうだったんだ……」

幼馴染「良かったわ……」

妹「……まぁ最初からうまくコントロールできかどうかは別の話なんですけど」ニヤァ

――――

モゾッ

担任「兄くぅーん……えへへぇ……んちゅーーーっ」

兄「ぉぅおわぅっ!?」

担任「えへぇ……鎖骨にキスマークつけちゃえ~……んちゅーーっ!」チパッ

兄「待って先生!夢じゃないのコレ!?」

担任「確かに先生はぁ~~夢見心地だったけどねぇ~~兄くんの指だけで……ぃやん」モジモジ

兄「やべぇ、こいつはやべぇ。何をしたんだ意識のない俺……」

コオォォオオォォオオォォオオ…

担任「あぁ……くぅんっ♪……また欲しくなって来ちゃった……今度は指じゃなくて……ね?」ズイッ

兄「またアニキ粒子か!クッソこんな時に……静まれー!静まれー荒ぶるアニキ粒子よー!」

シィィィ……ン

兄「……あ、あれ……?マジで止まった?」

兄「良かった!先生っ――」

担任「…………」ズーーーン

兄「……あ、あの……」

担任「私……自分の生徒と……不純異性交遊……」

担任「最悪……よりによってこんな形で好意を伝えちゃうなんて……」

兄「先生……それって……」

担任「うぅ……兄くんの事密かにいいかなとか思ってました……おばさんだけど」

担任「でも教師だから一線は越えられないけど、一緒に学園生活できるからいいなとか思ってましたぁ……おばさんなのに」

担任「そんなプラトニックな関係で良かったのに……私は何てことを……うぅ……」グス

コオォォオオォォオオォォオオ…

兄「先生は綺麗ですよ。おばさんなんかじゃないです。もっと自信を持ってください」

担任「そうね。恋をするのに年齢は関係ないもんね。だからチューしようチュー!」ズイッ

兄「うわぁ!またか!静まれー。静まるのだアニキ粒子よ……」シィィィ……ン


担任「……今時チューとか……ないわ……」ズーーーン

兄「……参ったな。こう一々アニキ粒子が活性化すると――」

兄「!」

兄「……そうか。試してみる価値はあるかもしれないな」

――――

妹「お兄ちゃんの事だからね。もう既ににっちもさっちもいかない状態になっているはず」

妹友「先輩って全身フラグですもんね……」

幼馴染「加えて鈍さもなまくらってレベルじゃないし……」

妹「自家中毒を引鉄に、女の子とやんごとなきイベントかなんかに巻き込まれている頃合いだよ」

妹友「……内容いかんによっては……」ゴァッ

幼馴染「……そうね。私達より先んじるような事があれば……」ゴァッ

妹「危機的状況はお兄ちゃんの抵抗の発動を促す。そしてお兄ちゃんは知覚する、自分に備わった新たな力を」

妹「女性関係には妙に誠実なお兄ちゃんはこう思うんじゃないかな?」

――――


兄「出来るなら……アニキ粒子を抑えてみよう」

――――

妹「――とか?」

妹友「……で、でも妹ちゃん。それって全部推定というか……」

幼馴染「こうなって欲しい願望を並べただけのような気もするけど……」

妹「そうかなー?あたし頭あんまり良くないし、それ以外でも人に誇れる事なんかないけど――」


妹「――お兄ちゃんにかけては、誰にも負けないよ?」ゴゴゴゴ

妹友「」

幼馴染「」

妹「お兄ちゃんの研究は誰よりも長く、濃く、深くやってきたんだから」

妹「きっとお兄ちゃんは学校でそう動くはずだよ」

妹友「……あれが凄みって奴でしょうか……」ツー

幼馴染「……すぐに言葉が出なかったわね……」ツー


妹「あたし達による充分な減衰がされないままお兄ちゃんの内に溜め込まれた多量のアニキ粒子」

――――

兄「……一時的に抑えられるなら、長時間抑える事も可能なはずなんだ」

――――

妹「体内に留めるようにコントロールするお兄ちゃん」

――――

兄「静まれ……静まるんだ……粒子を内へ……内へ……」

――――

妹「行き場を失ったアニキ粒子はより密に、より濃く溜めこまれる」

――――

兄「お……いい感じだ。もわもわが出てない感じする。これなら……」

――――

妹「蒸気のように閉じ込められたアニキ粒子は膨張しながら解放の時を待ち、ついには――」

――――

兄「先生、ちょっと試させてもらってもいいですか?」

担任「た、試すって何を?」

兄「今、俺の近くにいて何ともないですか?」

担任「え……?」

兄「何か体のどこかに異変だとか、そういうの感じられますか?」

担任「兄くん、結構すごい事聞いてくるのね……」///

兄「?」

担任「と、特に無いわ。無い事にしとかないとマズいし……あはは」

兄「……とりあえず、この距離は大丈夫と……」

兄「あとそれから」

担任「ま、まだ何かあるの兄くん!?」

兄「いえ、先生が嫌だったら別にやらないんですけども……その……」

担任「…………」ゴクリ

兄「おでこ、触らせて貰えますか?」

担任「おでこ?」

兄「はい、おでこなんですけど……」

担任「おでこなら平気よ」ホッ

兄「本当、何から何まですいません……。すぐ終わるんで」

スッ

担任「…………」

兄「…………」

担任「兄くん、その、顔、近くない、かな?」///

兄「いえ、これからもっと近づくんでまだまだですけど」

担任「もっ!?近づくって!?あぼ、あぼ!?」///

兄「すぐ終わるんで、あっ、じっとしててくださいね」

担任「こ、これって、まさか、もしや、セっ、接ぷ」///

ピトッ

兄「…………」

担任「ひゃぅ……」キュゥッ

兄「…………」

担任「……ん……んん」キュー

兄「……よし」

担任「……おでこ……ぴとーって……」エヘェ

兄「先生、どうでした?」

担任「はふぁ!え、な、何がかな?今昔物語かな?」

兄「いえ、今おでこを先生のおでこに当ててみたんです」

担任「……はぁ……!……はぁぅ……」///

兄「その時、どんな感じがしました?」

担任「最初はキスかと思ったけど、実は違くて……お、おでことおでこを合わせてるだけで……」///

担任「でもその方がかえって……キ、キスよりももっと親密でドキドキしたというか……」///

担任「実は愛読してる少女マンガに同じシーンがあったの急に思い出して、それがシンクロして……」///

担任「しかも相手があの……あの兄くんだし、やって欲しかったなぁって妄想とかもしてたし……もう嬉しすぎていっぱいいっぱいで……」///

兄「……いえ、あの端的に言うとですね」

担任「……はい?」ポヤァン

兄「俺を襲いたいとか本能が爆発するような感じにはなったりしてます?」

担任「……何て言ってるのかよく分からないけど、そういう即物的な欲求はないし、満たされてる、と、思う。です」///

兄「やった!何かよく分からんがアニキ粒子を制御できるようになった!」

担任「アニ……今何て?」

兄「……あ、そのですね。うまく言えないんですけど……」

担任「?」

兄「この状況だと先生の将来にもかなり影響あると思われるので……」

担任「…………」


担任「将来ッ!?」///

兄「ええ。こうなったのは俺の責任ですから。ちゃんと説明――」

担任「だ、駄目よ駄目よ!教師と生徒がそんなっ、って私が言えた事じゃないけど!一緒のベッドにいる時点で何の説得力もないけど!」

兄「いえ多分必要に――」

担任「必要って……う、嬉しいけど、いや嬉しいとかじゃなくて……せめて兄くんが大学入るまではその……」

兄「大学?先生、俺が言いたいのはですね――」

ドクンッ…


兄「……あれ?」

担任「……でもでも私が養う手も……?兄くんが主夫……仕事から帰ってきた私におかえりって言ってくれる高校生の婿……」ブツブツ

ヒィィンッ――


兄「……これはヤバいかもしれない」

担任「……確かにヤバいかもしれない」

――――

妹「――bomb!」

――――

                               ヽ`
                              ´
                               ´.

                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;

  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
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              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
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――――

妹友「今のは……」

幼馴染「学校の方角……!」

妹「おおー、こんなところまで届くなんて……さっすがお兄ちゃんだね」

妹友「この心の底からあたたかくなる感じは……」

幼馴染「間違いなくアニキ粒子。でも……」

―コォォォ…ォォ…

妹友「! 幼馴染先輩っ。ま、窓の外が!」

幼馴染「み、緑……空一面に緑のモヤが……!」

妹「んー、広がり具合から察するに……約半径10kmくらいかな?風に乗ればもっと範囲は大きくなるかも」

妹友「妹ちゃん、一体お兄さんの身に何が起こったの!?」

妹「お兄ちゃんがアニキ粒子を爆散させたの。恐らくあたしが予想した通りにね」

幼馴染「ばっ、爆発!?アイツは無事なのッ!?」

妹「大丈夫だよ先輩。あくまでアニキ粒子が広範囲に拡散しただけだから」

妹「お兄ちゃん自身も、周囲の人間も建造物も何ら破壊してないよ」

幼馴染「よかった……」

妹友「よくないですよ先輩!アニキ粒子が拡散したって事はこの町のほとんどの人が……!」

幼馴染「アニキ汚染されちゃったってことじゃない!全然よくない!」

妹「いえ、これでよかったんですよ」

幼馴染「無差別にライバルを増やすことがいいわけ――」

妹「先輩。アニキ粒子はフェロモンや惚れ薬じゃないんです」

妹「あくまでちょっとだけ、ほんのちょっとだけ素直になるだけの効果なんです。だから無差別にライバルを増やすわけじゃないですよ」

幼馴染「……素直に」

妹「そうです。……まぁ以前からお兄ちゃんに好意を抱いていたのなら、その限りではないですけど」

妹友「じゃぁやっぱり――」

妹「でもそれは好ましい事ですよ」

妹「あたし達が近くにいることで、告白をあきらめていた子がいるとするなら……尚更」

幼馴染「…………」

妹「あたし達はお兄ちゃんと気持ちをお互いに伝えあい、お兄ちゃんの彼女になり……」

妹「同時に『彼氏彼女』の関係になったというセーフティを手に入れた」

妹「……このセーフティが厄介です」

妹「関係を構築した事で、安全の上にあぐらをかき」

妹「女としての価値をぐずぐずと下げていく……」

妹「最後には思いを伝える前にあった初心をも腐らせてしまう」

妹「……ところが汚染によってある程度の数のライバルが出現すればどうか?」

妹「あたし達が自己を磨き、良き雌である事を忘れた時、そのポジションを狙うライバルがいたら?」

妹「常に自身を鍛え続けなければ、お兄ちゃんにとって魅力的に思える雌でなければ、取って代わられる可能性が出てくる」

妹友・幼馴染「…………」

妹「……何も妹友ちゃんや幼馴染先輩がそうだと言っているのではないんです」

妹「人は競争の場から遠ざかれば遠ざかる程……濁り、腐ってしまうから」

妹「そう考えるなら、今の状況はあたし達にとってそう悪い状況ではない」

妹友「……お兄さんと一番近い位置に身を置きつつ、自己を昇華させることをやめず、かつ油断はしなければ――」

幼馴染「兄にとって飽きない雌でいられる。……それなら勿論ライバルが差し込む隙間もない」

妹「それと抗体のストック」

妹「あたし達三人がもし同時にいなくなったとしても……」

妹「抗体を与える人間が必ずいるという状況をこれで作れた」

妹「お兄ちゃんはこれで守られる」

妹「アニキ粒子に殺されることもなく、平穏に生きていける」

妹友「妹ちゃん……」

幼馴染「そこまで考えて……」

妹「何しろお兄ちゃんのためだからね」


妹「でも何と言っても一番良いのは、どこでもイチャイチャできるってこと!」

妹「汚染された地域では、素直に振る舞うことが最も自然な行動になったからぁ……」

妹友「商店街を腕を組んで歩いても……!」

幼馴染「待ち合わせ場所でキスをおねだりしても……!」

妹「すべては素直で、尊重されるべき行為になったんだからおーるおっけぃ!」

妹友「素敵……」

幼馴染「素敵だわ……」

♪thinker
http://www.youtube.com/watch?v=jzcj-gc2nac


――――

こうしてaaa(assault anikiparticle armor)によって飛散にしたアニキ粒子は、広範囲に渡って小地域を汚染した

その後様々な紆余曲折を経て、兄率いる彼女たちが兄委員会を立ち上げ、とアニキ粒子の存在とその対処方法を記した冊子を発行

程なく町のすべての人が粒子の存在を知ることになり、様々な混乱を引き起こした

兄委員会は粒子には様々なメリットがあることを、繰り返し多種多様な機関に説き、懸命な活動を続けた結果――

アニキ粒子は無害でメリットがある物質として認知、公表の流れとなった

公表からしばらくした後、学園を含む都市自体を『アニキ粒子特区』として制定

特に学生には『顕著な効果』が示された為、日本を担う次世代リーダーの教育を担う学園都市構想計画も開始

すべてが急ピッチで行われ、必要な議決はすべて満場一致で終わるという奇怪な、前代未聞の都市開発となった

この後たった一人の兄により、

数多の乙女が萌え殺されることになる

非リア充種の天敵とも呼ばれた彼は、

史上最も多くの妻を娶った個人でもあ痛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

兄「嘘をつくな嘘を」

妹「嘘じゃないよ!」

兄「半分は嘘だろうが。特に後半とか後半とか後半とか」

妹「えぇーー……これは確定した未来だと思うけどなぁー」

――aaaから3ヶ月後 学園 屋上

妹「大体人の日記を盗み見するとかお兄ちゃんもデリカシーないよね」

兄「読み上げながら書いてれば盗み見もクソも……って日記なのかそれ……」

妹「見たい?」

兄「……いや、見たいっていうかだな」

妹「見たいなら対価が欲しいなぁ」チラッ

兄「日記ってのは起こった事を――」

妹「…………」ジーッ

兄「……まぁ、いいや」ナデナデ

妹「あ……くぅ……」クテー

兄「……耳の後ろ弱いよな、お前」

妹「うん……あっ……すっごい下腹部にくるよぉ……」プルプル

兄「……左手も追加」ツツーッ

妹「グワーーーーッ!!」ビクビク

妹友「あ!ちょっ!お兄さんッ!」

妹友「左手は私の相手をしてもらわないと困ります!」

兄「……悪い、つい夢中になった」

妹友「夢中って……」

兄「ん?」

妹友「…………」

兄「……妹友は怒ってる顔も可愛いなぁ」

妹友「かっ……お世辞言っても駄目です。私今怒って――」

チュッ

妹友「ふあぁ!?」

兄「お世辞じゃないよ」ナデリ

妹友「で、でこちゅーとか卑怯すぎですよお兄さん……もう……」///

兄「じゃぁ今度は妹友を両手で――」

グラリ

兄「――っとっと」

幼馴染「むがもごっ!もがぁ!」モゴモゴ

兄「ごめん幼馴染、何て?」

幼馴染「もごごごむごっ!」モゴモゴ

兄「……全然分からないから、一旦これはずすぞ」カポッ

幼馴染「ッハァ……体重かける方向変えるならちゃんと言ってよ!」

兄「ごめん、配慮してなかった」

幼馴染「そこは『口答えするなこの椅子めッ!』って言ってはたくところでしょ!」

兄「……ごめん、そこも配慮してなかった」

幼馴染「まったくもう情けないご主人様ね」

ナデナデ

幼馴染「……何、これ」

兄「お詫びのなでなで」

幼馴染「だ、駄目よ。私、従う、立場、だから……こんなの……」フルフル

兄「じゃぁ……よしよしいい子だねぇ」

幼馴染「! くぅ……ん……わふぅん……」スリスリ

担任「…………」ジーッ

兄「……ん?」

担任「わっ」バッ

兄「…………」

担任「…………」///

兄「……先生」

担任「な、何でしょう」

兄「遠慮はしなくていいって言ったじゃないですか」

担任「え、遠慮なんてしてないよ?近くにいるだけで幸せだし私……」

兄「…………」

担任「ほ、本当だよ?ほら、年上の嫉妬って醜いし身の程知らずっていうか……」

兄「…………」

担任「あの、ねぇ?その……アハハ……」

兄「…………」

担任「……ごめんなさい、本当は兄くんとイチャイチャしたいですぅ」ウルウル

兄「……やっぱり」

兄「俺の大切な人なんですから、変な遠慮は捨ててくださいね」

担任「そう言われても、それがなかなか難しくて……」

兄「んー……そうだ。先生が俺にやって欲しいこととかあります?」

担任「やって欲しい……こと?」

兄「ええ、思いつくままで構わないんで」

担任「……あの」

兄「はい?」

担任「……笑わない?」

兄「ええ、勿論」

担任「……手を、ね」

兄「……はい」

担任「手を、兄くんと、繋ぎたい、です」///

兄「……俺と」

担任「……は、はい」///

担任(……うわー私言っちゃったよー断られるよー恥ずかしくて死ねるよー……)

キュッ

担任「あっ」

兄「こんな感じかな?」

担任「あ……ぅ……」

兄「それとも……こう?」スッ

担任「こっ、恋人つなぎ……!」

兄「……やりすぎ?」

担任「う、嬉しいけど……」

兄「けど?」

担任「その、兄くんの腕が私の胸に……その、ちょっと触れるのが……」

兄「……実は狙ってたり」

担任「…………」

兄「……あれ?そこは先生怒っても――」

担任「……兄くんは胸大きい人って……好き?」

兄「……えっと?」

担任「私の胸無駄にお肉ついてて……」

妹友「…………」ワラァ…

幼馴染「…………」ワラァ…

担任「太ってるように見えるっていうか、実際お腹まわりがちょっと、ううんかなりその……」

担任「だから、同年代のスレンダーな体型にはとても敵わないから……」

兄「先生」

担任「は、はい?」

兄「胸の大きい、小さいは関係ないです」

担任「え……」

兄「それが誰の胸かが重要なんです」

妹友・幼馴染「!」

担任「…………」

兄「そして先生の胸なら大きかろうが小さかろうが、好きです」

担任「兄……くん……」


友「」

友「兄クラァッ!」

兄「お、友」

友「屋上呼びつけといてイチャイチャ見せつけるなんざぁどういう了見だクラァッ!」

兄「すまん。見せつけるつもりは――」

友「そりゃ兄がどこでどう乳繰り合おうが勝手ですがねェ!年齢=彼女いない歴の俺にちったぁ配慮しやがれやァ!」

妹「うひー……友先輩気が立ってますなぁ……」

…カクン

友「気が立たない方がオカシイんだよ実際……ていうか全部オカシイんだよ大体……」

友「アニキ粒子がどーのこーので『こいつついに厨二病にイカれたか』とか思ったらマジな話だしさぁ……」

友「兄に対して連日の熱烈なラブコールや告白攻勢が始まるし……」

友「リア充許すまじ!の精神でクラスの同志を集おうと思ったら誰一人呼応しないし……」

友「それどころか声を揃えて『だが それがいい!!』とか傾く始末……」

友「もう世界がお前に味方してるとしか思えない。っていうかアニキ粒子ってなんなんだよ!」

友「何食えばそんなん出るんだよ。教えてくれよ。そして早く用を済ませて俺をここから去らせてくれよ」

妹「説明しよう!」

友「説明するの!?てかさっきの教えてくれよはどっちかって言うと単なる羨望からの文句が8割で――」

妹「アニキ粒子は未知の物質だよ友先輩」

友「説明できないことを説明しただけかよ!」

妹「それにお兄ちゃんがひたすらモテるのは、アニキ粒子とは無関係なところに理由があるから」

友「そこんところ、詳しくお願いします」

妹「んー……何て言うのが適当かな……あたし達とお兄ちゃんの間には引力が存在するんだよ」

友「引力?」

妹「そう。『兄』と『妹』はお互いに惹かれ合う、みたいな」

友「そのりくつはおかしい」

妹「で、普通の人は1人くらいなのにお兄ちゃんはそれが数千単位みたいな感じ」

友「なん……だと……」

妹「だからきっと友先輩もこの世のどこかで惹かれている妹に出会えるはず」

友「……何故妹限定なのか……」

妹「義理の妹が突然できたりとか」
友「妹で一向に構わんッッ!」

友「……あれ?でもそれって変だよな」

妹「何が?」

友「だって担任ちゃん年上じゃん」

担任「…………」ズーン

妹友「友先輩ひどい……」

幼馴染「……年齢に触れるなんてさいってー」

友「え……だって……妹って……」

妹「多分先生に妹要素があったんだよ」

兄「妹要素?」

妹「当てずっぽうだけどね?例えば先生は幼い頃に憧れていたお兄ちゃん的な人がいて」

担任「!」ドキッ

妹「思いを切り出せぬ内にその人が別の人とくっついたりして」

担任「」ギクッ

妹「憧れのお兄ちゃんの理想を追いかける内に時は経って」

担任「」ズーン

妹「気付けば自分の理想像を年齢が追い越しちゃって」

担任「」パクパク

妹「お兄ちゃんだけど年下がイイみたいな矛盾したストライクゾーンになっちゃ――」

担任「もうやめてェ!」バッ

ポフッ

担任「え……?」

兄「年齢も俺は何も気にしないですよ先生」ナデナデ

担任「兄く……あふぅ……」

友「…………」

兄「っとすまん。用事が先だったな」

兄「まぁ用事と言っても俺は先生に頼まれて、友を呼んだんだ」

友「……先生が、俺に?」

担任「あ……コホン。そうなんです。私教室にどうしても寄れなかったから兄くんに頼んで、それで……」

友「……ここからの一発逆転担任ちゃん俺の嫁は……無理だな、でも」ブツブツ

担任「どうしても友くんにしか頼めないことなの」

友「俺にしか、ですか?」

担任「実はね、うちの学校に新しく転校生が来るの」

友「…………」

兄「……お?珍しいな。『転校生キター!!』って騒がないのか?」

友「まだ男か女かも決まっておらず、女だったら美少女なのかドブスなのかさえ決まっていないのだ」

友「しかも美少女だったとしてもお前がいる限り目の前で絶望するだけだからな……」

友「俺は冷静なんだ。知ってるんだ。世の無常を。儚さを」

担任「私の親戚の子なんだけど」

友「先生、写真持ってます?写メでもいいですから」

兄「…………」

兄「おお」

妹「ほう」

妹友「キレイ……」

幼馴染「へぇこれは……」

友「か、か、か」

担任「かかか?」

友「可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!超カワイイじゃないですか先生!」

担任「うん、そうね。先生も可愛いと思うわ」

友「で、この子が何か?」

担任「ちょっと特殊な事情があってね。前の学校と馴染めなくてこっちに転校してきたの」

友「はぁ……」

担任「でもね、きっと友くんなら大丈夫って思って……」

担任「その子には友くんの事色々話しておいたんだ」

担任「……断りもなく言うのはどうかな、とも思ったんだけど……不安そうだったからね」

友「そ、それで……その子の反応は?」ゴクリ

担任「すごく喜んでたよ。『早く会えないかなー』って心待ちにしてたし」

友「…………」

兄「……これはひょっとして……なぁ友!」

友「…………」ダバー

兄「おわっ!」

友「俺の人生にはないと思ってたモテ期が……ついに……ついに……!」ダバー

担任「どうかな?」

友「あ、え、どうとは?」

担任「ここまでやっておいて聞くのも何だけど、あの子のサポートをお願いしてもいいかしら?」

友「そりゃぁもっちろんですよ!俺に、いえ私めにお任せください!がっつりサポートさせていただきますよぉ!」

担任「……よかった。その分なら任せても先生安心だわ」

担任「友くん、実はその子今日学校に来てるの。校内見学って名目でね」

友「ま、マジですか!?」

担任「今からだったらまだ校内にいるはずだから……会ってみる?」

友「それはもう是非!……うおー緊張してきた……フリスクフリスク……」

――――

友「髪、よし。歯、よし。服装、よし。フリスク、よし。顔……はどうしようもないからパス」

兄「……こんなに真剣な友を初めて見た」

ガチャッ

友「……おおおおお落ち着け、まままままだだだ慌慌慌」

兄「ドアノブが回っただけだろ!落ち着け!」

キィィィ…


「……ここ、で合ってるよね……」

兄「……おお」

妹友「……わぁ」

幼馴染「……へぇ」

妹「……ん?」

「あ!お姉ちゃん!やっぱり合ってた!」キラキラ


友「」ズッキュゥゥゥゥン

――――

担任「紹介するわ私のいとこで、明後日うちのクラスに転校してくる――」

「あー!!友くん!?君が友くんだよね!?」

友「は、はひ。私が友です」

「ずっと会えるの楽しみにしてたんだよー!お姉ちゃんに同じクラスだよって言われた時かなんかもー僕嬉しくてさー」

友「そ、そんなに?」///

「本当だよ!僕ね……事情が事情なものだから、転校しても何も変わらないって思ってたんだよ」

「でもお姉ちゃんが『私のクラスにはあなたを理解してくれる人がいる』って教えてくれたから……」

「だから、本当に楽しみで楽しみで……わぁ、友くんは写真で見るよりカワイイなぁ……益々好みかも♪」

友「こ、こここ、好みっ!?」///

「友くんは僕どうかな?」

友「……どどどどうって?」

「友くんから見て僕はどうなのかなって」

友「いやそりゃもう!激マブで超カワイイッスよ!言うことなしッスよ!」

「本当~!?嬉しいッ!」

ダキツキッ

友「」

友(抱きつかれている。ショートボブの僕っ子に抱きつかれている)

友(二人は初対面だが、相性バッチリ。手をつなぐとかのライトな感じな奴を全部すっとばして抱擁)

友(抱擁。お互いを抱きしめ合うこと。それがまさかこんなに気持ちいいことだったとは抱擁マジ抱擁)

友(相手の体温を感じる。相手の香りも感じる。相手の心臓の音も聞こえる。自分の心臓の音も相手に聞こえているだろう)

友(ああそうなのだ。きっとそうなのだ。今までの人生がモテなかったのは――)

友(このたった一回の出会いの為だったのだ。間違いないこの抱きしめた瞬間のフィーリングが――)

友(二人は永遠なんだと。二人の出会いは運命なんだと。言っている。叫んでいるんだよこの野郎)

友(春と言えど若干汗ばむ季節、首筋や脇、鎖骨付近に漂う8x4のかほり。グッドスメル)

友(華奢な、強く力を入れれば折れてしまいそうな位細い筋肉と骨。守ってあげたい)

友(小動物を思わせる身長とその瞳。……厳粛に守ってあげてぇわぁ!)

友(そして極めつけはコレ。さっきから俺の大腿部に触れている硬い熱源が――)



友(――硬くて……熱い?)

友「た、たんま。一旦ストップ」

「あ、ごめんね。急に抱きついちゃったりして」

友「えっと――」

担任「ホラ、あなた自己紹介すらまだしてないでしょ」

「いっけない。本当だお姉ちゃん。……それじゃぁ、改めまして、と」

男の娘「僕、『男の娘』って言います。明後日から同じクラスに入るのでよろしくね!」

兄「兄だ、よろしく」
妹友「よろしく先輩」
幼馴染「分からない事があったら何でも聞いてね」
妹「…………」

男の娘「それと特殊な事情って言うのはね」

担任「……言っちゃってもいいの?」

男の娘「ううん、ここにいる人達は皆良さそうな人達だし……それにもっと特殊な人達が目の前にいるしね♪」

兄・妹・妹友・幼馴染・担任「~♪」ピープー

友「そ、その男の娘ちゃんの特殊な事情っていうのは……?」

男の娘「えっとね、実は僕、男の子なんだよね♪」

友「」

兄「ええーーっ!?」
妹友「ほ、ホントですかー!?」
幼馴染「胸勝ったとか勝ち誇ってた私死んでしまえぇぇぇ!」
妹「やっぱりねぃ」

担任「……それがあったから、友くんに任せたのよ」

友「……俺……に……」グルグル

モワモワ

~~~~

『ノートいっぱいにビスケット・オリバを描くなよ!暑苦しいわ!』

『大丈夫。友くんは友くんのあるがまま…マイノリティでいていいのよ』

『男の膝の上にはフラジールな関係という読んだ事もない本が置かれ……』

『おかげでやけに鼻息が荒い担任ちゃんと読んだ事もない本の話を延々とだな……』

~~~~

友「あは……はは……確かに……そうなるか………あはは……」ケタケタ

担任「お互いの第一印象も良かったみたいだし、うまくやっていけそうね」

友「ヤるのかヤられるのかいまいち把握できないっす……ねぇ」ケタケタ

スッ…

男の娘「……やっぱり気持ち悪い、よね」

友「い、いや……」

男の娘「ううん、無理しなくてもいいよ。転校せざるを得なくなったのも、それが理由だし」

男の娘「だから、そうだな。たまにでいいから……話相手になってくれるかな?」

男の娘「僕と二人きりが嫌だったらお姉ちゃん達も呼んで、とか……」

男の娘「……それでも、駄目、かな……」ウルウル


友「……わ…い」

男の娘「……え?」

友「……かわいい」

男の娘「きゅ、急に言われると照れ――」

友「可愛いカワイイかわいい可愛いカワイイカワイイヤッターーーーー!!!」

友「もう関係ない!もう性別なんて関係ないわぁ!つまらん常識は投げ捨てるもの!」

友「男の娘はカワイイ!初めて見た瞬間にズキュンと来た!一目惚れだ!何にも問題なし!カワイイなら即ち正義なんだよォ!」

男の娘「……と、友くん……!」///

――――

兄「~♪」

ナデナデ

妹「グワーーーーッ!」クテー

妹友「ふにゃぁぁ~……」クテー

幼馴染「くぅぅ…ん、わふっ、わふ……くぅぅぅん……」クテー

担任「んぁ……んくっ……ぁはぁ」クテー

――――

妹「あ”ー気持ち良かったうにゃぁぁ……」ダラー

妹友「4人同時になでなで出来るとは思ってなかったです……へにゅぅ」ダラー

幼馴染「また腕を上げたみたいね。今度は神がくれた0.5秒間を有効活用したいとか言ってたわよ」ダラー

担任「あのなでなでに更に上があるの……。か、体がついていけない……でも幸せ……」ダラー

妹「やはり温かい春はお兄ちゃんに限る……」グテー

妹友「この前妹ちゃん冬に限るって言ってたのに……」グテー

妹「夏も秋もお兄ちゃんに限る……」グテー

担任「限るって意味を妹さんが理解してるのか怪しいな……」グテー

幼馴染「大体秋は分かるけど、夏は暑くて仕方ないでしょ……」グテー

妹「……暑くて動くのがおっくうな汗まみれのお兄ちゃんに好きなだけ抱きついたり」

妹「クーラーをガンガンかけて、お兄ちゃんで温まる究極の贅沢とかあるよ」

「…………」


ムラッ

「…………」バッ

ダダダダッ

兄「なっ、ちょ、どうした!眼が怖――」

ババババッ

ピトー… x4 スリスリ… x4

兄「…………」

担任「……結論としては」

妹友「好きな人と一緒なんですから」

幼馴染「季節なんて問わずに」

妹「くっついてたら幸せに決まってるよねー」

「「「「おほぅ……。やはり一年中、お兄ちゃんに限る……」」」」

兄「…………」


兄「……俺も一年中、可愛い妹達に限る」ナデナデ

妹「おほぅ……」///
妹友「あうあう……」///
幼馴染「わふん……」///
担任「はうっ……」///


コオォォオオォォオオォォオオ…



♪4 the answer
http://www.youtube.com/watch?v=ysgrh2la1ua

おわり


重量過多。長くて申し訳ない。
読んでくれた人と支援くれた人に平穏のあらんことを。

>>103
まだここ見てるか分からんが一応

不良女「俺は男の家へ行く!誰が何と言おうとなぁ!」
不良女「俺は男の家へ行く!誰が何と言おうとなぁ!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1336663569.html)

後はまだ進行中

男「女体化…」友「うん?」
勇者「結界魔法『カクゲー』」
幼馴染「お前は……コブラッ!?」男「……そう大声で呼ばれると照れるねぇ」


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月19日 (火) 19:15:59   ID: qxOt6aQ6

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