エレン「この長い髪を切る頃には」2(962)

*続編です。ミカサ「この長い髪を切る頃には」→エレン「この長い髪を切る頃には」の続き。もう1回エレン視点で書いていきます。

*現パロです。現在、エレンの髪がちょっとずつのびています。(ミカサよりちょい長め。小さいしっぽ有り)

*舞台は日本ですがキャラの名前は基本、カタカナのまま進めます。漢字の時もあるけど、細かいことは気にしない。

*実在の人物とかは名前やグループ名等をもじっています。時事ネタも有り。懐かしいネタもちらほら。

*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。

*原作のキャラ性格も結構、崩壊。原作と比べて「誰だてめえ」と思った方はそっと閉じ推奨。

*レスに対するお返事レスは返せない事が多いかも。体力温存の為。無視している訳じゃないんで、OK?

*感想は毎回有難い。でも自分の妄想話を書くのはNG。読んでいる人が混乱するから。本編と混ぜるな危険。

*雑談は雑談スレでお願いします。雑談嫌いな読者の方もいらっしゃるからね。

*現在、ジャン→ミカサ、ジャン(?)→サシャ、オルオ→ペトラ→リヴァイ←ニファ リヴァイ→ハンジ←モブリット ライナー→クリスタ←アルミン←アニ(?)←ベルトルト イアンリコあたりもちらほら。というか、そのつもりで書いています。

*安価時以外のアイデア・オリジナルの設定等の提案は禁止させて頂きます。(エレン「この長い髪を切る頃には」の時にトラブルが発生した為です)

*その代わり、安価出した時は出来る限り(多少無茶振りでも)採用する方針でやっていますので、宜しくお願いします。

*モブキャラも多数出演。オリキャラ苦手な方もご注意。キャラ濃い目。

*そんな訳で、現在設定しているオリキャラをざっとご紹介。


マーガレット(2年生♀)→大道具リーダー。漫画描ける。腐ってる女子。皆のお姉さん的ポジ。

スカーレット(2年生♀)→大道具。立体造形専門。ロボットもいける。たまに腹黒。

ガーネット(2年生♀)→大道具兼衣装。コスプレ好き。ちょっと大人しめのオタク。

アーロン(2年生♂)→役者。元野球部。高校から演劇始める。

エーレン(2年生♂)→役者。元サッカー部。高校から演劇を始める。

カジカジ(1年生♂)→役者。外見はエレンに似ています。明るい男子。愛称は「カジ」。

キーヤン(1年生♂)→役者。ジャンよりイケメン。歌上手い。

マリーナ(1年生♀)→役者。少年の声が出せる。ナレーションうまい。ほんわか系女子。


*原作のモブの名前が判明すれば……途中加入もあるかもです。

*外伝のキュクロとシャルルも出ています。二人は野球部投手とマネージャー。

*先生方の年齢設定が原作より(恐らく)若干高め設定になっています。

*リヴァイ先生(38歳)というおっさん設定に耐えられない方は御免なさい。

*加えてリヴァイ先生の潔癖症が病気レベル扱い(笑)になっているので、御免なさい。

*リヴァイ先生の性癖(?)も大分、斜めってる設定になっています。ご了承下さい。

*エルヴィン先生(43歳)も相当なオタク設定になっています。リヴァイより更に斜め方向に変態です。本当に御免なさい。

*ハンジ先生(36歳)が昔は美人だったよ設定です。ややモテキャラですが、リヴァイに比べれば蟻の触覚程度です。

*リヴァイ先生がモテ過ぎ設定です。気持ち悪いくらいモテキャラです。愛され過ぎて御免なさい。



*ラスト100レスは完成する迄、レス自重お願いします。レス足りないと書き手としてプレッシャー過ぎる。

*そんな訳で、現パロ(エレン視点編)を始めます。OK?





10月5日。文化祭2日目が遂に始まった。

9:00から舞台設営だが、オレ達生徒はそれより少し早めに学校に登校して、各自、クラスの出し物の準備をする。

この日はサシャのお父さんも合流して、コスプレ写真館としての本番の日を迎えた。

ミカサとアニはミスコンと演劇部の舞台があるからその時間は写真館には居られないけど、それ以外の時間で写真館に居てお客さんと一緒に写真を撮る撮影会をする事になる。

一応、予定では午前中は11:00~12:00。

午後は16:00~17:00までを撮影会の時間として設けている。

クラスの出し物の準備が終わった後、ミカサとアニとクリスタとサシャは10:00からのミスコンの準備の為、会場設営の方の打ち合わせに出ている。

うちのクラスからは4人選出されたようだ。舞台傍で綺麗な女子が集まってエルヴィン先生と綿密な打ち合わせをしている。

オレ達男子は部外者なので内情は知れないが、場所取りの為に早めに会場入りして前列を確保している男子も結構多い。

オレも実はその一人で、現在、アルミンと一緒に前の方の席をちゃっかり確保している。

ミカサ「エレン」

と、その時、女子に輪から外れてミカサがこっちに来た。

今は制服姿だが、ミスコンの時は自分の私服に着替えるらしい。

エレン「なんだよ? 何か忘れ物か?」

ミカサ「いえ、あの……エレンは投票の時に、自分の票を出した?」

エレン「あー悪い。結局、出しそびれたんだよな」

ミカサに出て欲しい気持ちと出て欲しくない気持ちが葛藤して、結局出さなかったんだ。

何だかそれを責められている気がして、ちょっと肩をすくめると、

ミカサ「良かった……では、今、出そうと思えば出せる」

エレン「ええ?! 今、ミカサに出せって事か?!」

と、焦っているとミカサはすぐ否定して、

ミカサ「違う。出来ればハンジ先生に1票、今、入れて欲しいの。緊急事態なので」

エレン「? どういう事だ?」

何かトラブルでも起きたのかな?

ミカサ「出場予定だった子が一人、急病で出られなくなった。出来れば20人、きっちりで予選を行いたいから、9票を獲得している女性の中から出られそうな人を選出したいそう。でも、票が足りない人を出す訳にはいかないので、緊急で今、出して欲しい。これはオフレコになるけど」

エレン「あ、ああ…数合わせにオレの票が必要って訳か」

ミカサ「そう。ハンジ先生は9票だったそうなので、エレンの1票があれば出場できる」

エレン「いいのかな? 本人はなんて言っているんだ?」

ミカサ「まだ確認していない。10票揃っていた。という事にするそうなので、エルヴィン先生が「イエス」か「ノー」か早く決断して欲しいそう」

時間も迫っているしな。しょうがねえか。

エレン「分かった。じゃあオレ、どうしたらいい?」

ミカサ「とりあえず、1度、一緒に裏方に来て」

という訳でオレはミカサと一緒に裏方にひょっこり顔を出す。

するとエルヴィン先生が「すまないね」と言っていた。

エルヴィン「名簿と照らし合わせて、投票していない男子の中から選出させて貰ったよ。エレン、今、ここでこっそり書いて貰えるかな?」

エレン「あ、はい」

と、用意されていた紙にささっと記入投票をして、エルヴィン先生に紙を渡した。

そしてエルヴィン先生はハンジ先生に連絡を入れて、数分後、舞台裏にハンジ先生がやってきた。

ハンジ「あー……集計ミスっていたってマジなの? 本当に私に10票入っていたの?」

エルヴィン「うん。ごめんね。こっちのミス。後、人数が1人、急遽足りなくなったから、お願いしたいんだが」

ハンジ「まーじかー! ある意味公開処刑じゃないのこれって」

エルヴィン「リヴァイと同じ事言わない。ハンジ、大丈夫だよ。君は美しい女性だから」

おおっと、さらりとリップサービスでびっくりだ。

でもエルヴィン先生が言うと嫌味には聞こえない。不思議だな。

ハンジ「えーでも、私、私服持って来てないよ? 確かテーマ別の私服の審査があるんだよね?」

エルヴィン「そこはリヴァイに協力して貰って、車でひとっ走り持って来て貰えばいい」

ハンジ「間に合うのかな……ギリギリじゃないの?」

エルヴィン「そこはこっちで調整するから心配要らない。今、必要なのはハンジの「イエス」だけだ」

ハンジ「んもー強引なんだから。分かった。じゃあ出てやろうじゃない。でも、あんまり笑わないでよ?」

と、ハンジ先生は照れている。

エルヴィン「ありがとう。じゃあリヴァイに連絡するから」

と、言ってエルヴィン先生が電話をかけ始めた。

エルヴィン「リヴァイ。私だ。すまない。今、時間あるか? ああ、1組の様子を見に行っていたのか。いやね、ちょっとこっちでトラブルが発生してね。急遽、ハンジにもミスコンに出て貰う事になったから、彼女の私服をいくつか持って来て欲しいんだ。化粧道具も出来れば。分かるよね? 時間は……そうだな。10:20分までなら尺を稼げると思う。それまでに往復できるか? 良かった。リヴァイならそう言うと思ったよ。では、頼むよ。また後で」

と、あっさり交渉は成立したらしい。

エルヴィン「ハンジ。すまないが、今からシャンプーして自分で化粧前の準備をしておけとリヴァイの指示だ。出来るね?」

ハンジ「じ、自分で洗うの? 今から? 乾かすの間に合わないんじゃ……」

エルヴィン「濡れていても大丈夫だよ。シャワー室は使える筈だから。ほら、自分で出来ない訳じゃないんだろ?」

ハンジ「うーん、出来なくはないけど雑だよ。私の洗い方は」

エルヴィン「緊急自体だから構わないよ。ほら、行って」

と、無理やりシャワー室に行かされてハンジ先生は一人でシャワーを浴びに行った。

ミカサ「エレン、ありがとう。ではまた後で」

エレン「おう」

ミカサ「………決選投票は、出来れば私に入れて欲しい」

エレン「あ、当たり前だろ! 心配するなって!」

変な心配するなよな。もう。

オレはミカサの傍を離れてアルミンの隣に戻った。

アルミン「大丈夫だった?」

エレン「おう。急遽、ハンジ先生も出場する事になったぞ」

アルミン「そうなんだ。へーそれは楽しみだね」

と、ざわざわしながら開演を待つ。

一般来場も9:30分から始まるので第一体育館の人の気配がどんどん増えてきた。

おおお。期待感で皆、ワクテカしているのが分かる。男だからな。

女子もちらほら観客の中にいるけど、やっぱり人数的には男子の方が多かった。

そして時間になった。10:00になってエルヴィン先生が舞台に登場した。

こちらも燕尾服だ。エルヴィン先生、体格いいから似合うなあ。

インカムをつけた姿でマイクテストを入れて、エルヴィン先生が舞台中央に躍り出た。

>>3
訂正。
ミカサ「出場予定だった子が一人、急病で出られなくなった。出来れば16人、きっちりで予選を行いたいから、9票を獲得している女性の中から出られそうな人を選出したいそう。でも、票が足りない人を出す訳にはいかないので、緊急で今、出して欲しい。これはオフレコになるけど」

トーナメント形式なので16人です。数字ミスです。

あ、予選じゃなくて本戦やね。間違えた。
まあ、いいか。とにかく、そういう事です。

エルヴィン『男子諸君、男性諸君、そして淑女の皆様方。大変お待たせ致しました』

ざわざわざわ………

エルヴィン『我が校伝統のミスコン、第20回目を迎えるこの記念すべきこの日。天気も味方して快晴となり、美少女達の宴を祝福しているようです』

何だか詩人だな。エルヴィン先生。勿体ぶっているぜ。

エルヴィン『今年も色とりどりの美しさを競い合って貰います。野郎ども! 心の準備は出来ているか?!』


おおおおおおおおお!


会場が一気に轟いた。やべええ! オレもテンション上がってきたぜ!

エルヴィン『ではこれより第20回講文祭ミスコンテストを開催致します! みなさん、拍手をお願いいたします!!』


わああああああ……

パチパチパチ………


エルヴィン『ルールを先に説明させて頂きます。このミスコンはトーナメント形式になっており、抽選で選ばれた女性はテーマに合わせていろんな課題をこなして貰い、一騎打ちをして頂きます。4回勝ち上がれば晴れて優勝となり、景品が贈られる事になります! 会場の皆様は、勝負の際、その都度、メダルを1枚ずつ配布いたします。メダルを一枚、集計籠に入れていただき、天秤が傾いた方が勝者として決定致します!』

おおおおお。単純明快で分かりやすい勝負だな。

エルヴィン『では、まずは第一回戦を行っていきたいと思います。一回戦のテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏と初めての外出デート。その時に着る私服は?』


エルヴィン『初めての外出デートの時にどんな私服を着ていくのか。そのセンスを競い合って頂きます! 外出先の内容は自分で設定してOK! 海でも山でも遊園地でも、自分の想像で私服を選んで頂きます! ではまず、エントリーナンバー1! 1年1組のミカサ・アッカーマン!』

おおおおお?! いきなりミカサが来た! 制服姿のミカサだ。

エルヴィン『対するはエントリーナンバー2! 1年2組マリーナ・イノウエ!』

マリーナもきた! まさかの劇部対決だ!

エルヴィン『二人には3分以内に私服に着替えて貰います。私服の内容は予め自分で決めて貰っているので、それに着替えて貰います。時間が過ぎた場合はポイントが秒数毎に1gのマイナスポイントになるので、時間は厳守するように。では、早速着替えタイムに入って頂くよ! それでは、スタート!!』

持ち時間3分?! 相当な早着替えだな! 間に合うのか?!

ああ、でもその辺も考えて直感で私服を選ばないといけないのか。

着替える時間のかかり過ぎる私服はNGって事なんだな。

そしてあっという間に3分が過ぎて二人の準備が整った。時間はオーバーしなかったようだ。

エルヴィン『では先行はミカサ! 入場!!』

ちゃらららら~♪

それっぽい音楽と共にミカサが舞台に出てきた。

おおおおおお!!!

麦わら帽子(ピンク)と、シンプルな白っぽいフレアスカートのワンピース。サンダル。夏のお嬢さんスタイルキター!!!!

これはアレだ。どう考えても「海」を想定した外出服だな。超可愛い。

エルヴィン『何故、この私服にしたのかな?』

ミカサ『エレ……んん、彼氏と海に行くならこの恰好かと』

エルヴィン『いいねー今年の夏、彼氏と海に行ってきたとか?』

ミカサ『皆、とですけど。海にはいろいろと思い出があります(ポポポ)』

うわああああ恥ずかしいなあ!! あの時の事を思い出しちまうぜ!

エルヴィン『いいねー青春しているねー。続いては後攻! マリーナ登場!』

ロングスカートとフリルのブラウス。全体的にフェミニン系の女の子らしいスタイルだ。

手にはバスケットを持っている。これは恐らく『ピクニック』を想定した外出服だろう。

エルヴィン『何故、この私服にしたのかな?』

マリーナ『やっぱり初デートは自分で作ったお弁当を彼氏に食べて貰いたいので、ピクニックを想定しました』

と、言うと、男子は一気に「おおおお」と感心した。

しまった! 女子力アピールをされちまった!

ミカサも女子力(料理)なら負けてねえのに、これはちょっと不利か?

そしてすぐに集計が始まった。皆、どんどん大籠にメダルを放り入れている。

オレもすぐにミカサ側にメダルを1枚入れた。結果は………

エルヴィン『んん~天秤が微妙だけど、どうやら3グラム差でミカサの勝利のようだね! 1回戦の勝者はミカサ・アッカーマン!』

ミカサ『よし! (ガッツポーズ!)』

僅差で勝った! これは名勝負だったな。

エルヴィン『マリーナも惜しかったね。でも、気を落とさないでね』

マリーナ『はい。勝負は時の運ですもんね』

エルヴィン『では続いては………』

と、少し進んで1回戦、第3組目。

エルヴィン『エントリーナンバー5番! 1年1組クリスタ・レンズ!』

エルヴィン『エントリーナンバー6番! 3年1組ペトラ・ラル!』

選ばれたのは、何とクリスタとペトラ先輩だった。

おおおお! 小柄な女子対決になりそうだな。

3分間の早着替えののち、2人が出てきた。

先攻はクリスタ。クリスタは意外や意外。ジーンズにキャミソールに薄手の上着。スポーティな帽子を被っていた。

エルヴィン『おや? 思っていたより活動的な格好だね。デートの場所は?』

クリスタ『外出デート、という事だったので、外出先にどこでも対応できる格好にしました。あ、スポドリも持参です』

エルヴィン『なるほど。相手に合わせて想定したんだね。相手の色に染まるタイプか』

リヴァイ先生と同じだな。なるほど。

クリスタ『はい。あ、でも、キャミソールはボタンの前開きタイプなので、そこがオシャレのポイントです』

と、言い出したので男子が一斉に生唾を飲み込んだ。

クリスタ、策士だな。あいつ、男の心を掴むのが上手いタイプと見た。

所謂、あざとい感じだな。天然小悪魔系って奴なのかな。

でもオレにはどうもそれが「演技」に見える時があって、ちょっと苦手だ。

あいつ自身、自分の気持ちが見えなくなってねえか心配になるけど。

エルヴィン『なるほど。オシャレのポイントを絞った訳だね。素晴らしい』

エルヴィン『では続いては後攻! ペトラ・ラル!』

ペトラ先輩も下はジーンズだった。ただしこっちは脹脛が半分見えるタイプだ。

上はベアトップの服に上着を重ね着して、髪を少し束ねて上にあげて、項を見せている。

ちょっと大人っぽい感じになっている。普段はおかっぱだから、ギャップがあっていいな。

エルヴィン『ペトラも似たようなスタイルで来たね。想定はどこかな?』

ペトラ『ドライブです。出来ればオシャレなカフェに連れて行って貰いたいのでこのスタイルにしました』

もうそれ、リヴァイ先生とのデートを想定しているようなもんじゃ……いや、まあ、妄想だからいいんだよな。うん。

エルヴィン『なるほど。食事の時にベアトップでいくとは、胸の谷間をチラ見せする気満々だね?』

ペトラ『い、いえ! そ、そういうつもりでは……(赤面)』

エルヴィン『いや、いいんだよ。むしろそれくらいの戦略が出来ないとダメだよ。では集計に参ります!』

という訳で集計に入った。結果は………>>10になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

ペトラ
先輩の意地で勝利
後にハンジ先生と対決でもいいw

エルヴィン『んん~10グラム差でペトラの勝利だね! おめでとう!』

ペトラ『よし!』

エルヴィン『クリスタ、残念だったね。マニュアル通りでは男心は落とせない事もあるよ?』

クリスタ『勉強になりました……(がっくり)』

あ、やっぱり。あいつ、そういう読本を参考にして衣装を決めてきたんだな。

自分の意志が反映されてないんじゃ、男の方もそれに気づくよな。

もしそれに気づかないような男と付き合ったら、多分、幸せになれねえぞ。クリスタ。

1回戦4組目。アニが出てきた。相手の女子は知らない子だった。

アニの圧勝だった。あいつの私服、アーミー風の、ボーイッシュな格好いい衣装だったけど、アニの雰囲気に合っていて凄く良かった。

1回戦5組目。リコ先生と保健医のアンカ先生だった。大人対決だ。

リコ先生は明るめの淡い薄紫色のスーツとタイトスカートだった。普段はジャージ姿が多いから新鮮だな。

この恰好なら飲み屋もOK。コンサートや野外活動もある程度こなせるからそれにしたそうだ。

対するアンカ先生は、黒のワンピース姿だった。結婚式で着るような感じの装いだ。想定は『夜のバー』だそうで、大人の色っぽさがある。

エルヴィン『では、集計に入ります! 大人の色気対決は果たしてどちらに軍配があがるか?!』

という訳で集計に入った。結果は………>>12になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

アンカ先生
分かりやすいお色気に男子高生の票が入ると予想

連取すまん
次は自重する

エルヴィン『20グラムの差でアンカ先生の勝利です! おめでとう!』

パチパチパチ……

エルヴィン『残念だったね。リコ先生。ちょっとスーツのデザインが硬かったのかもしれないね。胸をチラ見せしたらまた結果が違ったかも?』

リコ『?! そ、その発想はなかった……すまん』

エルヴィン『そんな真面目なところがリコ先生のいいところでもあるけどね(ウインク☆)』

リコ『そ、そうか……(困惑顔)』

エルヴィン『うん。私はリコ先生の衣装も嫌いじゃなかった。今度飲みに行こうか』

男子生徒「エルヴィン先生ーナンパしないで先に進めて下さいー!」

エルヴィン『おっとそうだった。ごめんごめん。では続いては1回戦6組目!!』

ニファ先輩とサシャがきた。おおお。ここも好カードがきたな。

ニファ先輩も髪を上にあげて項を見せてきた。暗めの赤色のハイネックのワンピースだ。

対するサシャは……おおおお? 珍しく髪をおろしている。美少女ごっこをした時のサシャだ。

しかもこっちもワンピース姿だ。薄いピンク色の、ちょい肩見せのワンピースだ。

膝丈は……どっちも膝が丁度隠れる程度だ。いいな。上品な感じだ。

これが膝上になると、途端に下品になるから不思議だよな。黄金の比率だぜ。

エルヴィン『ここはワンピース対決になったね。ニファの想定は?』

ニファ『私もドライブです。ただし、目的地は演劇鑑賞とかコンサートですね。能や歌舞伎でもいいですけど』

エルヴィン『おおっと、なかなか渋い趣味をしているようだ。いいねー』

エルヴィン『サシャはどこを想定しているのかな?』

サシャ『はい! 当然、ケーキバイキングです! バイキングの時はお腹が苦しくないワンピースが必須です!』

あちゃーサシャ。完全に趣味丸出しにしやがった。これはまずい。

男はケーキバイキングなんか行かねえぞ。いや、アルミンなら行くかもしれんけど。

サシャ『あ、ケーキじゃなくても、普通のバイキングでも構いませんよ。というか、食事ならどこでもいいです。北海道まで日帰りで行って帰ってきても私、ついていきますからね!』

どんだけ行動派だよ。すげえなサシャは。

エルヴィン『ふふ……こういう素直な子は好感度高いね。では集計に行こうか!』

という訳で集計に入った。結果は………>>14になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

次の衣装も食べ物に絡むのか気になるから
サシャ!

エルヴィン『5グラム差でサシャの勝ちだね。おめでとう!!』

サシャ『あざーっす!!』

エルヴィン『残念だったね。ニファ。僅差だったか』

ニファ『ですね……しょうがないです(がっくり)』

エルヴィン『そう、気を落とさずに。私でよければ今度歌舞伎に連れて行こうか?』

男子生徒「エルヴィン先生、犯罪臭がしますよー!」

どっと笑いが起きて会場が轟いた。

エルヴィン『おっと、危ない危ない。捕まるところだった。では続いては……』

7組目は知らない女子だったので省略する。

そして8組目。遂に1回戦の最後の対決だ。

エルヴィン『エントリーナンバー15! イルゼ先生!』

エルヴィン『エントリーナンバー16! ハンジ先生!』

二度目の先生対決だ。イルゼ先生はチュニックタイプのゆったりとした、でもそれでいて色気のある衣装を着ていた。

下がレギンスだ。足のラインが綺麗だなあ。

髪の毛もちょっとふわっといじっていて、可愛い。

やっぱり女性って衣装やメイクや髪型で大分印象が変わるんだな。

エルヴィン『この感じだと、居酒屋飲みかな?』

イルゼ『はい。居酒屋の飲みって、基本みたいですよね。ハンジ先生に習って勉強しようと思って』

エルヴィン『ハンジのは、あれは自分の趣味だからね。まあでも勉強するのは悪い事じゃないよね』

エルヴィン『………おや? 着替え終わっているのにハンジの方が出てこないね』

と、エルヴィン先生が一回、舞台袖の方に声をかける。

エルヴィン『準備は終わっているんだろ? 早く出て来て』

ハンジ『えええ……本当にこれでいくの?』

エルヴィン『似合っているんだからいいじゃないか。ほら、早く』

ハンジ『とほほ……』

そして出てきた、ハンジ先生の衣装はなんと………




ざわっ………




予想の斜め上を行く完成度に皆、度胆を抜かれた。

ハンジ先生は眼鏡を外して軽い化粧をして口紅だけつけている。

髪の毛は上にアップして、毛先を遊ばせている。

そして、体の線に沿ってキラキラ輝く深緑色のドレス。

そう。社交ダンスをする時のような煌びやかなフィットしたドレスを着て来たのだ。

これ、声がハンジ先生じゃなかったら完全に別人だと勘違いするレベルだ。

海で声かけられた時の比じゃない。もう誰だお前レベルで別人だった。いい意味でな。

エルヴィン『気合入っているね。想定は何処かな?』

ハンジ『うーん、多分、ダンスパーティーとかかな? 創立記念パーティーとか。結婚式とか、セレブな方の誕生日会とか? もうその辺のレベルの衣装だよね。初デートとかに着る服じゃないってあれほど……(ブツブツ)』

エルヴィン『いや、それは相手次第だよ。ハンジ。もしお金持ちのご子息とデートするのでればそれで間違っていない』

ハンジ『ああそうか。いやでもね、これは幾らなんでも気合入り過ぎじゃない?』

エルヴィン『いいんじゃない? たまにはこういうハンジ先生もいいよね?』

男子生徒「いいと思いまーす!」

と、すぐに返事がやってきた。会場は拍手喝采だった。

ハンジ『あ、そう? うーん。でもこれ買ったの、もう8、9年前くらいになるのよね。リヴァイが三十路になった時に買ったから、デザイン古くない? 大丈夫かな?』

おおおお? 会場がどよめいた。まさか、まさかだけど。

男子生徒「買って貰ったんですかー?!」

ハンジ『あーうん。ちょっといろいろあって、ね。押し付けられたの。こっちは「要らないってば!」って何度も突き返したんだけどね。実は私、ダンスの講師の免許を持っているんだ。その資格を取った時に一緒にこれ、貰っちゃったのよ』

エルヴィン『という事は、社交ダンス用の衣装って事で頂いたんだね』

ハンジ『そうそう。だから踊ろうと思えば、今でも踊れるよ♪』

おおおお……それはぜひ見てみたいけど。

エルヴィン『ふふっ…それは是非見てみたいけど、ちょっと時間がないからまた今度にしようか』

ハンジ『そうだね。ま、いつか機会があれば披露してあげるよ』

エルヴィン『という訳で、集計をお願いいたします!』

という訳で集計に入った。結果は………>>17になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

うーん…迷うけどイルゼ
イルゼたんかわいいよ

エルヴィン『ん~これは微妙だね。2グラム差かな? 僅差でイルゼ先生の勝利だね。おめでとう!』

イルゼ『あ、ありがとうございます…(困惑)』

ハンジ『おめでとうー! (拍手)』

エルヴィン『惜しかったね。ハンジ』

ハンジ『いや、むしろ大健闘じゃない? 私、頑張った方じゃない? 十分だよ』

ハンジ『票を入れてくれた子達、ありがとうねー!』

と、ニコニコしながら手を振って舞台から去っていた。

しかしその後、音声のミスなのか、舞台裏の音が漏れて……

ハンジ『リヴァイー! 頭外してーこれ重いんだけどー』

リヴァイ『ああ、ちょっと待ってろ(ゴソゴソ)』

ハンジ『んもう、何でこの衣装持って来ちゃったの。もうちょっと普通ので良かったのに』

リヴァイ『ああ? デート場所の設定は俺に任せるって言っただろうが』

ハンジ『いや、初デートだからね?! 初めてでこれって、ちょっと豪華絢爛過ぎるよね? 皆、びっくりしていたよ? 初デートで社交ダンスってどこのセレブ設定なのよ私は』

リヴァイ『………………すまん。そう言われれば確かにそうなんだが』

リヴァイ『ハンジには、その色の、深い緑色が一番似合うと思ってな。つい、それを咄嗟に選んでしまった』

ハンジ『ん~……まあ、そういう事ならしょうがないけどさ。うん、でもありがとう。協力してくれて』

リヴァイ『ああ……無事に終わったなら良かった。………ハンジ』

ハンジ『何?』

リヴァイ『服を持ってきた俺が言うのも何だか、その服は確か俺が三十路になった年に買った物だったよな』

ハンジ『そうだよ』

リヴァイ『お前、その頃から体型全く変わってないんだな。よく考えたら、凄い事じゃないのか?』

ハンジ『あーそう言われればそうだね。体型変わってないね』

リヴァイ『普通はそのくらいの年齢から少しずつ、身体のバランスが崩れてきてもおかしくはないと思うが』

ハンジ『ん~本当だね。珍しいよね。私、あんまり体重が変動しないんだよね』

ハンジ『やっぱり、ずっと、リヴァイのご飯を食べさせて貰っていたからじゃない?』


ざわざわざわ……?!


会場が一気にざわめいた。まずい。これ以上は、音を拾わない方がいい。

音声さん、まだかよ?! 早く遮断しろよ?!

リヴァイ『…………そうか。だとすれば、飯を作り与え続けた甲斐があったな』

ハンジ『ん~でも、もういいよ。リヴァイ』

リヴァイ『え?』

ハンジ『もう、私、あんたにこれ以上、甘えるの、やめる事にするからさ』


ざわざわざわ……?!


リヴァイ『え…………』

ハンジ『今まで、ありがとうね。本当に感謝している。でも、もう、あんたとはちゃんと線引きしないといけないって、分かったんだ』

リヴァイ『…………』

ハンジ『…………ごめ…(ブツ)』


音声が途中で途切れた。やっと回復したのか。

会場が何が起きたのか分からずずっとざわざわしている。

エルヴィン先生もさすがに冷や汗を掻いていて、この事態をどう収集するべきか途方に暮れているようだ。

エルヴィン『えー……2回戦に向かう前に5分間の休憩を入れたいと思います。皆様、もう暫くお待ち頂きますようお願いいたします』

と言い捨てて慌てて舞台裏に走って行ったエルヴィン先生だった。

会場が、どよめいている。

今のって、どう聞いても、なんか、その…。

アルミン「ハンジ先生の方から別れ話を切り出したような感じだったね」

エレン「あ、アルミンもそう思ったか?」

アルミン「うん………今のはきついね。昨日の今日で、急転直下過ぎるよ」

どうすんだよ。リヴァイ先生。午後から舞台もあるっていうのに。

こんなに精神的にしんどい事を抱えながら舞台に立てるのか?

ざわめきはまだ止まない。皆、このまま待っていていいのかどうか迷っているようだ。

どうしよう。裏方の様子が分かる奴に話を聞きたいけど、首突っ込むのもダメだよな。

あ、裏方から白衣に着替えたハンジ先生が先に出てきた。

その眼鏡の奥は悲しげに沈んでいて、少しだけ涙の跡が見えた。

いかん。観客がもう、ハンジ先生の方に釘づけだ。

ミスコンよりもハンジ先生の様子が気になっている。

オレはすぐさま席を立って、ハンジ先生のもとへ駆け寄って観客の視線から庇うように会場を脱出した。

もし根掘り葉掘り聞いてくる奴が現れたらバリケードになってやらないと。

するとアルミンも後からこっちに追いかけて来て、オレ達2人は逃げるようにハンジ先生をそこから脱出させた。

とりあえず落ち着かせる場所を探さないと。どこがいいかな。

エレン「アルミン、とりあえずどこに連れて行こうか」

アルミン「うーん、あんまり人目につかないところがいいよね。あ、占い館ならどう? あそこは個室あるし。逃げようよ」

エレン「そうだな。一回そこに逃げるか」

マーガレット先輩の2年1組に急いで移動する。占い館の中は人も少なめで、暇そうにしている占い師がいた。

マーガレット先輩本人じゃなかったけど、多分クラスの人だろう。

取り敢えずそこの占いの個室席に座らせて、暫くそこで落ち着かせる事にした。

占い師「………ハンジ先生、どうかされたんですか?」

ハンジ「ううん、何でもないの」

占い師「何でもないって顔じゃないですよ。あ、良かったら悩みに合わせて占いましょうか?」

ハンジ「占い?」

占い師「はい。1回100円ですけど」

ハンジ「私、あんまり占いって信じない方なんだけど……」

占い師「まあまあ、気休め程度で聞いて貰えれば。暇つぶしにやってみて下さいよ」

ハンジ「………分かった」

良かった。とりあえず、ハンジ先生の顔が上がった。

占い師「12星座でいいですかね? 誕生日は……」

ハンジ「……9月5日」

占い師「乙女座ですね。分かりました……(パラパラ)」

マニュアルが一応あるからそれになぞって占いを始める。

オレ達2人はそれを後ろで見守っていた。

占い師「そうですね……乙女座の方が不安になりやすいのは『相手に合わせ過ぎようとして疲れた時』とありますね。ここ最近、相手の要望に応えようとし過ぎて振り回された経験はないですか?」

きっくー! ある。あるぜ。リヴァイ先生絡みでな。

スカート事件だとか、キス(ガムテ越し)事件とか。さっきのミスコンもそれに入るかも。

ハンジ「んー? んー……合わせようという意識はないけど、なんかいつの間にか合わせている事はあるかもしれない」

占い師「では、心当たりは一応あるんですね」

ハンジ「んーあると言えばあるけど……」

占い師「だとしたら、今は我慢しないで全て吐き出して下さい。不安を解消するには『泣きたい時は思い切り泣いて』とあります。自分を大切にする事が、これから先、生きていくのに必要な儀式であると、そう出ていますよ」

ハンジ「!」

その直後、ハンジ先生は硬直して、プルプルと震えだした。

ハンジ「今、泣いてもいいの……?」

占い師「泣かないとダメです。占いにはそう出ていますよ」

ハンジ「じゃあ、今、ここで、泣いてもいい? 泣いても、いいよね?」

占い師「大丈夫です。ハンカチとティッシュは準備万端ですから」

そしてハンジ先生はその直後、本当に崩れたように泣き出した。

大人だから、声は出さない様に殺しているけど、ぽろぽろと溢れているその涙を見ると、

こちらまで貰い泣きしそうになる。

ハンジ「ごめん……ごめん……リヴァイ、本当に……ごめん…………」

ずっと、リヴァイ先生に謝っていた。罪悪感からずっと、涙が止まらないようだ。

ハンジ「私が、ほっぺならいいなんてリヴァイに言わなければ……良かったのよ。私は彼女達のリスクを知っていたのに。舞台の空気に酔って、しまったせいで……あの子達は、私のせいで殺してしまった……」

懺悔の念。後悔の念に囚われてハンジ先生は泣き続けた。

ハンジ「もう、私はリヴァイの傍に居られない。あいつの友達としても、もう………」

大事な物をズタズタにされた恐怖からハンジ先生は怯えていた。

愛の恐怖を。実際に体験して初めて、震えているんだ。

ハンジ「ごめん……リヴァイ………うっ………ううう………」

ハンジ先生は一通り嗚咽を吐き出すと、少し落ち着いてお金を差し出した。

ハンジ「ありがとう。少し泣いてすっきりしたよ。500円玉しかないからこれでいい? お釣りは要らないから」

占い師「え? ああ……ありがとうございます」

ハンジ「エレンもアルミンもありがとう。2人とも、ミスコンに戻っていいよ」

エレン「でも……」

ハンジ「折角、彼女が出ているんだから応援してあげないと。ね?」

ハンジ先生の涙の跡が痛々しかったけど、オレは首を横に振った。

エレン「ダメです。今のハンジ先生を一人にしてはおけないです」

アルミン「エレン…(首振っている)」

エレン「でも、アルミン」

アルミン「一人の方がいい場合もあるよ」

エレン「…………」

ハンジ「もう大丈夫だよ。うん。こういうのは時間が解決してくれるって、分かっているから」

と、ハンジ先生はそう言って席を立った。

するとそれを入れ替わる様に、

モブリット「あ、ハンジ先生。探していました。あの……少しお話ししたい事が」

ハンジ「え? 何?」

モブリット「大事な話なので、2人きりになれるところでお願いしていいですか」

ハンジ「分かった。いいよ。じゃあね、エレン、アルミン」

モブリット先生がハンジ先生についていった。モブリット先生が傍にいるなら大丈夫かな。

気にはなったけど、オレとアルミンはミスコン会場の第一体育館の方に戻った。

もう、場所を取っていた前の席には戻れない。しょうがないから後ろの方で立ち見だ。

一応、ミスコンの方は再開していたようだ。2回戦に入って、ミカサは順調に勝ち上がり、次はペトラ先輩とアニの対決に入っていた。

2回戦のテーマは『ドキ☆ 彼氏の突然の訪問! 慌ててコーディーネートしたその私服は?』という物だった。

2回戦2組目は僅差でアニが勝ち上がり、準決勝1組目はミカサとアニの直接対決が決定した。

2回戦3組目はアンカ先生とサシャが対決して、ここも無難にサシャが勝ち上がった。

2回戦4組目の方はイルゼ先生が勝ち上がった。これで4ベストが出揃った。

エルヴィン『3回戦のテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏との初めての夜デート♪ もしかして……の時に着る私服は?』


という何とも色っぽいお題だった。

ミカサは薄い水色のゆったりめの長袖シャツ、ややタイトなミニスカートで登場した。

ミカサ、足長いからすげえ映える。でも腕は隠すのか。不思議なバランス感覚だな。

手首のところはふわっと絞ってある。髪型はいつものおかっぱだ。

対するアニは黒をベースにしたフリルのシャツにやはりこちらもミニスカートだ。

ただしこっちはチェックの制服風だ。アイドルがよく着ているスカートに近い。

エルヴィン『……という訳で、皆様、集計をお願いいたします!』

という訳で集計に入った。結果は………>>23になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

ミカサ!!

エルヴィン『おおおっと! これは奇跡に近い。1グラム差でミカサの勝利だ! 大接戦だね!』

会場が轟いた。これは名勝負だった!

エルヴィン『紙一重だったね。アニ、惜しかった』

アニ『ここまでこれただけでも十分です。ミカサ、後は優勝するんだよ』

エルヴィン『おおっと、健闘を称えたった握手です。皆さん、拍手を!』

パチパチパチパチ………!

エルヴィン『3回戦2組目にいきます!』

サシャとイルゼ先生の対決だ!

サシャは今度は御団子頭にしてアップにしている。紺色のベースの水玉のシンプルなワンピースだ。

イルゼ先生はハイネックのオレンジがかったワンピースだ。柄はないけど、レースがあって綺麗だ。

エルヴィン『またもやワンピース対決だね。ワンピースが好きみたいだね。サシャ』

サシャ『あ、はい。私服はほとんどワンピースで、たまにロングスカートですかね』

エルヴィン『やっぱりウエストがゆったりしている方が好きなのかな?』

サシャ『それもありますけど、脱ぐのも着るのも楽なんですよ。ファスナーで一気にがっとしゃっとやればすぐ着脱できるので』

おおおお。サシャにしてはいいことを言っている。

エルヴィン『ふふ……なるほど。それはいい装備だね。対するイルゼ先生もワンピースで来たね。オレンジ色が良く似合ているよ』

イルゼ『厳密に言うと、サーモンピンクになるんですけどね。薄いオレンジだと思います』

なるほど。いやでも、どっちも似合っていて、どっちに投票したらいいんだこれ。

ジャン『………………』

あ、良く見たらジャンがオレの前の方の席に居た。あいつ、耳を赤くしてやがる。

やっぱりサシャの事、気になっているんじゃねえのかな。素直じゃねえよな。

エルヴィン『……という訳で、皆様、集計をお願いいたします!』

ここでミカサの決勝戦の相手が決まる。果たしてどちらになるか……。

エルヴィン『おおおっと! またまた奇跡が起きた。1グラム差でサシャの勝利だ! 今年は本当に激戦だ! おめでとう!』

サシャ『ありがとうございまああああす!!!』

サシャが飛び跳ねた。これは若さの勝利かな。

エルヴィン『ついに決勝のメンバーが揃いました。エントリーナンバー1! ミカサ・アッカーマン対エントリーナンバー12! サシャ・ブラウス! 2人の決選投票は3分の休憩後、行いますので皆様、今しばらくお待ちくださいますようお願いします』

という訳で3分間の短い休憩が入る。

ミカサがやっぱり決勝まで残ったか。でも何気にサシャも生き残ってすげえな。

あ、ジャンが頭を抱えだした。ここはもう、誤魔化しきかないからなあ。

エレン「おい、ジャン」

ジャン「うああああ?! 誰かと思ったらエレンかよ?!」

エレン「お前、さっきの投票、サシャに入れたんだろ?」

ジャン「んなわけねえだろ?! イルゼ先生に入れたよ」

マルコ「嘘ばっかり……サシャに入れたでしょ。ジャン」

ジャン「うぐっ……! ま、マルコ、ばらすなよ(眉歪める)」

エレン「サシャ可愛いじゃねえか。何が不満なんだよ」

ジャン「か、可愛くねえよ。ミカサに比べたら月とスッポンだろうが」

アルミン「でもサシャはスッポン食べそうだけどね」

ジャン「うっ……そういう意味じゃねえよ。その、全然タイプが違うだろうが!」

エレン「そりゃそうだけど、それとこれは関係ないだろ? お前、何でそこまで頑なになるんだよ」

ジャン「うー……」

ジャンが頭を抱えている。

ジャン「分からん! そもそも、他の女に目配っている場合じゃねえし!」

アルミン「やっぱりアレ? サシャが美少女ごっこした時にギャップにやられたとか?」

マルコ「ああ、確かにあの時のジャン、面白かったよね。まっさきに動揺していたし」

エレン「ああ、うちに皆で集まった時のアレか。あの美少女サシャバージョンに堕ちたのか」

ジャン「うぐっ……!」

ジャンは本当に面食いだな。いや、オレもある意味そうなんだけど。

ジャン「違う違う違う! 断じてオレは!」

エレン「はいはい。まあ、どっちでもいいけどな。あ、そろそろ決選投票始まるみたいだぞ」

ざわざわざわ……

ドラムロールが始まって照明がクロスし始める。

おおお。盛り上がってきたな。どうなるんだろう。

エルヴィン『お待たせいたしました。決勝戦のテーマを発表いたします。決勝にふさわしいテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏との初めての一泊旅行デート。もう迷わない夜に着る寝間着は?』


寝間着?! 寝間着で勝負って、ちょっと刺激強すぎるだろ?!

誰だよこのテーマ考えた奴。天才過ぎる。御捻り投げ入れてえ。

エルヴィン『ついに迎えた2人の夜。その時に着る服こそが最も気を遣うべき服だと私は考えます。あ、勝負下着姿で出てくる訳じゃないから勘違いしない様に。あくまで寝間着だからね』

どっと笑いが起きた。つまりパジャマ対決って事だよな。うん。

エルヴィン『では、準備が出来たようです。まずは先攻! ミカサ!』

普通のパジャマかな。まあもう、それだけでオレは十分なんだけど。

…………とか思っていたら、オイオイ! まさかの浴衣キタあああああ?!

え? 何で? これって、あ! そっか!

旅館に泊まった時のイメージなのか。あの夏の続きを、もしかしてミカサは……。

そう想像したら、オレの息子はびくっと反応しかけてマジでヤバかった。

くそおおおお………アレ思い出すと今でも恥ずかしい。

エルヴィン『浴衣とは、なかなか渋いね』

ミカサ『旅館に泊まるのであれば、こちらの方がいいと思ったので』

エルヴィン『うんうん。いいねー。着付けもうまいね。自分でやったの?』

ミカサ『はい。出来ます。母に習っているので』

エルヴィン『現代の大和撫子がここに生き残っていたね。これは国で保護しないと』

と、言うと皆「異議ナーシ!」と笑っていた。

対するサシャは、またまたピンク色だった。おおおお? フリルのネグリジェだ!

髪もおろして寝る準備万端って感じだな。こっちもこっちで可愛い。

エルヴィン『こちらはネグリジェか。普段からこれなのかな?』

サシャ『はい! これだとお腹だけ冷やす事が少ないので、この恰好で寝ますね。パジャマだと、しょっちゅうお腹がつっと出て、冷やしちゃうんですよ』

つっと出るは「はみ出す」という意味だ。ちょっと分かりにくいかもしれないが方言だな。

エルヴィン『うむ。健康にもいい寝間着だね。さて、両者が出揃ったところで最終決選投票を行います!』

という訳で集計に入った。結果は………>>29になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

これはミカサだな

エルヴィン『おおっと、5グラム差でミカサの方が重いね! これは浴衣の方に軍配が上がった! という訳で、第20回講文祭ミスコンテストの優勝者は1年1組ミカサ・アッカーマンに決定いたしました! おめでとう!!!』

わあああああ!

BGMが変わって一気に会場が盛り上がった。アシスタントの女性がトロフィーを持ってくる。

それを受け取ってミカサは綺麗にお辞儀をした。うーん。所作も完璧だぜ。

オレ、改めて見るとすげえ幸せな男だなと思った。

だってこんなに可愛い子を彼女にしているんだぜ? 自慢しか出来ねえだろ。

ジャンも拍手をしていた。そういえばこいつ、結局どっちに票を入れたんだろ?

エルヴィン『さて、優勝者であるミカサには記念にくまもんのお米10キロが贈呈されます。美味しいお米だから是非食べてね』

サシャ『お米えええええええ?! (涙目)』

サシャががくっとorzの状態になった。余程景品が欲しかったらしい。

するとミカサはサシャに駆け寄って、

ミカサ『サシャ。一緒に食べよう。お米10キロもあるので、後でおにぎりを作ろう』

サシャ『い、いいんですか?!』

ミカサ『後夜祭までに炊き上げるように準備すれば間に合うと思う。調理部に交渉しよう。炊飯器を借りられるかどうか』

サシャ『女王様ああああああ!!!! (がばちょ!)』

あ、クリスタが女神だから、ミカサは女王様なのか。なるほど。

ミスコンの女王様トロフィーと一緒に記念撮影をする事になった。

ラストはミカサ、サシャ、アニ、イルゼ先生の四人が並んで自由に記念撮影だ。

そして時間が来て、ミスコンはようやくお開きなった。

ミスコンが無事に終わると次はイントロクイズの準備に入った。

ミスコンが終わったメンバーがぞろぞろと舞台裏から出てくる。その中に浴衣姿のミカサがいて、すぐこっちに来た。

ミカサ「エレン!」

エレン「お疲れ。ミカサ」

ミカサ「ハンジ先生は……」

エレン「モブリット先生といっちまったよ。2人で何か話す事があるらしくて、何処かに行った」

ミカサ「そ、そう……(シュン)」

あれ? 予想していた反応と真逆だな。どうしたんだ。

ミカサ「エレン……どうしよう」

エレン「ん?」

ミカサ「勘違いしていたの。私はてっきり、リヴァイ先生の片思いなのだとばかり思っていたけれど、そうじゃなかったのね」

エレン「ミカサ………」

ミカサ「舞台裏で2人のやりとりを直接見たの。その時のハンジ先生の反応を見て、気づいた。ハンジ先生、リヴァイ先生の事を本当は………」

エレン「ああ。まあ、多分そうだろうな」

オレがそう答えるとミカサはもっとシュンとした。

ミカサ「ハンジ先生に悪い事をした。相思相愛なら、例え相手があのクソちび教師でも、ボタンを掛け違えるの程辛いものはない………」

ミカサが以前と打って変わって態度を改めた。どうやら2人の事を応援してくれるみたいだ。

ミカサ「クソちびが、舞台裏の椅子に座ったまま動かないの。叩いたり、殴ったりしたけど反応が全くなくて、動かなくなってしまった。まるで電池の切れたロボットみたい」

エレン「そうか………でも次の準備もあるからずっとそこに座らせている訳にはいかねえよな。迎えに行くぞ」

オレとミカサは一度舞台裏に戻る事にした。アルミンもアニもジャンもマルコも気になって後からついてきてくれた。

そろっと舞台裏を覗いてみると、奥の端の方にあるパイプ椅子に一人座っているリヴァイ先生が居た。

本当だ。ミカサの言う通り、死人みたいな顔している。

その傍でエルヴィン先生がしゃがんで「リヴァイ、立って」と声をかけている。

エルヴィン「次の準備がある。ここにずっと居られると邪魔になるよ」

リヴァイ「あ、ああ……そうだったな」

と、やっと我に返ったのか、目に光が戻った。

そして立ち上がろうとしたけど、うまく立てずにエルヴィン先生にもたれかかってしまった。

リヴァイ「………すまん。足にうまく力が入らない。身体が自分の物じゃない様に重い」

エルヴィン「分かった。肩を貸して貰おう。私とでは身長差が大きすぎるから……アルミン。君に頼んでいいかな」

アルミン「分かりました」

アルミンはリヴァイ先生に肩を貸して取り敢えず外に連れ出したのだった。

リヴァイ先生もとりあえず、人目につかない場所まで移動させないといけないな。

でもリヴァイ先生自身が歩くのが苦痛のようなので、とりあえず第一体育館の外に連れ出す事にした。

途中で女子生徒に大分注目されたけど、今はそれどころじゃない。

遠目にしてこっちに来ないだけ有難いが、ひそひそ声がうっとおしい。

何だかイラッとしたけど、今は自重した。今はリヴァイ先生を優先だ。

エルヴィン先生に頼まれてアニが自動販売機に走る事になった。

ミカサの方が足早いけど、今は浴衣だから転ぶと危ないからな。

その点、ミニスカのアニは本気で走るとガチで早かった。

数分で缶入りの紅茶を数本買って来て、それをリヴァイ先生に持たせたのだった。

紅茶を無理やり喉に押し込んでリヴァイ先生がずるっと座り込んだ。

ヤンキー座りをもっと崩したような座り方だ。天を仰いでいる。眩しそうに。

リヴァイ「………………昨日、謝ったんだがな」

エルヴィン「うん。キスした事だね?」

リヴァイ「ああ。準備が全部終わってから、ハンジを捕まえて、少し話した。でもあいつはずっと「あんたが悪い訳じゃない」って言って、笑っていたんだ。だから、許してくれたんだとばかり、思っていたんだが、手遅れだったんだな」

エルヴィン「……………」

エルヴィン先生もさすがに何も言えず黙り込んでいる。

リヴァイ「俺はハンジに縁切りされたんだよな。友人としても、もう付き合えない。そういう事なんだろうな」

エルヴィン「リヴァイ。それは少し考えすぎだよ」

リヴァイ「だが、そうとしか思えなかった。ハンジに拒絶されることがこんなに、堪えるとは思いもよらなかった」

と、言ってリヴァイ先生は静かに両目を閉じた。

リヴァイ「エルヴィン。前に言った事を覚えているか?」

エルヴィン「前に?」

リヴァイ「ああ。俺が前に、ハンジにはキスもセックスもしたいと思った事は1度もないと言った、アレだ」

エルヴィン「覚えているよ。はっきりと」

リヴァイ「すまん。アレ、よく考えたら記憶違いだった。正確に言えばたった一度だけ、昔、あった。かなり昔だが」

だろうと思った。多分。相当昔の話だろうな。

リヴァイ「俺が三十路になる年の2月頃だったかな。突然あいつが「ダンスの講師の資格が取りたいから、パートナーとしてつきあって!」と無理難題を言い出した。それから10か月程度の時間をかけて、ハンジと社交ダンスの練習をした。その時の事を、覚えているか?」

エルヴィン「ああ。良く覚えているよ。私も練習指導につきあったしね」

リヴァイ「俺はあいつとコツコツ練習を重ねて、12月にT都で行われるダンス大会に出場する事になった。そこで優勝すれば成績が認められて資格も得られるという大会だった。俺達は初出場にして、初優勝を果たして無事にお互い、資格を得る事が出来た」

あ、なるほど。という事は2人とも、社交ダンス出来るんだ。すげえな。

でもハンジ先生は何で社交ダンスやろうと思ったんだろ? ちょっと意外だな。

リヴァイ「俺は資格を得てからハンジに聞いたんだ。そもそも何で社交ダンスをやろうと思たのかと。そしたらあいつ、何て言ったと思うか分かるか?」

エルヴィン「いや……分からないな。見当もつかないね」

リヴァイ「俺の三十路に間に合うように、俺の三十路の誕生日プレゼントに、ダンスの講師の資格を俺にあげたかったそうなんだ。社交ダンスはペアじゃないと大会に出場できないし、つまりあいつなりの、サプライズだったんだよ」

うおおおおおなんだそれ。なんて粋なプレゼントだよ。

資格がプレゼント、だなんて。そんな発想、ハンジ先生にしか出来ねえな。

リヴァイ「それを聞いて俺は『それを早く先に言え!』と怒鳴ってしまったが。でも、嬉しかったんだ。ハンジは『私は家事とか女らしい事は殆ど出来ないし、プレゼントを買ってあげるのも下手だし、でもこれだったら、一生、体育教師のリヴァイの役に立つプレゼントになるかと思って』と言ってくれたんだ。確かに体育教師の俺にとってはこういう資格はないよりはあった方がいい。もしダンスを指導する立場になれば、そういう知識も経験も必要になってくる。でも、あいつは生物教師だ。必要があるのは俺だけで、あいつはただ、それに付き合ってくれただけなんだよ」

ぐはああああ何だもう、そのエピソード!!!

そんないい話があるのに何でつきあってねえんだこの2人?!

と、思いつつも皆で静かに話の続きを待つ。

リヴァイ「ダンス大会が終わったその日の夜は2人でツインのホテルに泊まった。あの時、俺は初めて、ハンジをいい女だと思った。でもあいつはその後『これからもずっと、友達でいようね。あんたは私の最高の親友だから』って言ってきてな。その言葉に対して俺はずっと約束を守ってきただけだったんだよ」

旅行先のツインのホテルに泊まったのに手、出さなかったんだ。

オレの時(夏のアレ)より酷いお預けじゃねえか。もう何か、リヴァイ先生が可哀想過ぎる。

リヴァイ「大会の時に借りたドレスを買い取って、ハンジにあげたのはせめてもの礼のつもりだった。だけどあいつは、ずっと「要らないから!」って跳ね除けていたんだが、俺もそこは折れなかった。あいつのクローゼットの奥の方に無理やり押し込んで、ずっと仕舞わせていたんだ。それを今朝見つけて、全部一気に思い出したよ」

エルヴィン「なるほど。だからあの深緑色のダンス衣装を持ってきたんだね」

リヴァイ「ああ。俺にはもう、アレしか思い浮かばなかった。初めて2人で旅行した時の、思い出の衣装だったからな」

ジャンが凄い顔になっていた。

アレだな。リア充死ねを通り越して呪いそうな顔になっている。

リヴァイ「沈んでいた筈だ。地下深く、自分の気持ちが眠っていたのも、ただ、そう考えない様にしていただけだったんだ。俺は………」

リヴァイ先生はそう言って自分の気持ちを徐々に整理しているようだった。

リヴァイ「俺はハンジの事が好きだったんだ。恐らく、あの日の、三十路になった誕生日のあの日から、ずっと……」

すげえ遠回りな恋愛だなと思った。こんな事って、あるんだな。

だって8年……いや、もう9年近くか。ずっと気持ちを封印していたんだぜ?

その上で一緒に風呂入ったり、料理やら洗濯やら買い物やら。

一緒にいる時間は恋人と大差ないのに、でもキスとセックスだけはして来なかった。

単に我慢していたという話じゃなくて、それすらも感じない様に自分にそうさせていたなんて。

無意識って言うのは、案外馬鹿に出来ねえなとつくづく思った。

リヴァイ「ハンジは俺が三十路を越えてからはしょっちゅう「三十路~おっさんおめー」とか「三十路っていいよね! なんか響きがいいよね?」とか何とか言ってよくからかってきたりしたな。ハンジの中では恐らく三十路がひとつのステータスだったのかもしれんが、特別なものにしたかったんだろう。俺もあいつが三十路を越えた時は同じように「三十路を越えたから早く嫁に行け。結婚しろ」と言い放っていたが、よく考えたらそうやって言い合う事を楽しんでいただけだったんだな……」

エルヴィン「うん。そうだね。君達のそれは、ただの夫婦漫才だったよ」

リヴァイ「ははっ……今頃、気づいちまって、本当に俺は、馬鹿だ」

と、自嘲しているリヴァイ先生が唇を噛んでいた。

リヴァイ「これが恋愛感情って奴なのか。俺は今、初めてそれを感じているのか………」

そう言えば以前、仮面の王女の時に「恋愛感情は良く分からんが」とか何とか言ってたなリヴァイ先生。

分かってなかったんじゃなくて、遠ざけていただけだったんだな。恐らく。

そうだよな。じゃねえと、よく考えたら、ラストシーンに「砂糖が足りない」なんて言わねえよ。

感覚的にそういう感情を全く知らないなら、分かる訳がねえんだ。

リヴァイ「自覚した途端にまさか振られるとは思わなかった。ははっ………はははっ……」

リヴァイ先生がストレスを紛らわす為に笑い始めた。

乾いた笑いだ。力がない。ただ、紛らわす為の笑いだ。

エルヴィン「リヴァイ。まだ振られた訳じゃないだろう」

リヴァイ「振られたようなもんだろう。もう、世話しなくていいと言われたんだからな」

エレン「それは違いますよ、リヴァイ先生」

オレはそこで思わず言ってしまった。

エレン「振られるっていうのは、ちゃんと自分の気持ちを相手に伝えて、相手から「ごめんなさい」と言われる事です。その過程を得てない状態ならまだ「振られた」とは言い切れないですよ」

リヴァイ「何で、そう言いきれる」

エレン「オレの時がそうだったからです。オレも危うく「振られた」と思い込んでしまいそうになったから。なあミカサ?」

ミカサ「う、うん……あの時は、誤解させてごめんなさい」

エレン「だから、リヴァイ先生はまだ、やるべき事をちゃんとやってないんだから、諦める必要はないんですよ」

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生の視線が揺れていた。迷っているのがバレバレだ。

リヴァイ「しかし、ハンジにはもう、モブリット先生とか……」

エレン「だったら尚更急がないと、手遅れになりますよ。リヴァイ先生。モブリット先生とハンジ先生が付き合いだしてもいいんですか?!」

リヴァイ「……………分からない」

と、リヴァイ先生は頭を左右に軽く振った。

リヴァイ「ハンジが決める事に俺は口を出せない。それはただのエゴの押し付けだ。あいつの判断に俺の感情は関係ない……」

ミカサ「だからクソちび教師なのね。最低」

エレン「!?」

何だいきなり。ミカサがキレだしたぞ?!

ミカサ「このヘタレが。やっぱりハンジ先生にはリヴァイ先生には勿体ない」

エレン「ミカサ?!」

アルミン「あーごめん。僕も同意だ」

エレン「アルミンまで、何言ってんだよ!」

アニ「うん。異議なし」

エレン「アニも?!」

ジャン「はーさすがにオレもそれはないと思ったわー」

マルコ「だねえ」

皆が口々にキレだした。最低だのヘタレだの、無茶苦茶言い出している。

エレン「お前ら?! 言い過ぎだろ?! リヴァイ先生は教師なんだぞ?」

エルヴィン「うーん、教師である以前に、まず一人の「男」なんだけどねえ」

と、エルヴィン先生がくすっと笑っている。

エルヴィン「皆がキレるのも分からなくはないよ。ただ、リヴァイはもともとこういう性格だからね。自分の判断や感情を殺して、相手のやりたいように出来るだけやらせる。昔からそうだから、今更どうしようもないんだよ」

ミカサ「でもそれでは、相手が動かない場合は自分から動かないって事ですよね? ずるい」

アルミン「ずるいよねえ。確かに」

アニ「指示待ち人間?」

ジャン「そうかもな。受け身過ぎるんだよ」

マルコ「時と場合によるよねえ」

と、口々に言いたい放題だ。お前ら……。

エレン「あのなあ。一応言っておくけど、この中でカップルなのはオレとミカサだけ何だからな! 恋愛ってもんは、そう定規みてえにまっすぐうまくいくもんじゃねえんだよ!!」

と、一人だけリヴァイ先生を庇ってみる。

ミカサ「ではエレンは何故、私と付き合いたいと思ったの? 好きだと自覚したのはいつ?」

エレン「ええ? オレの場合はアレだよ。夏の海で、その……ミカサがヤキモチっぽい素振りを見せた時、なんかすっげえ浮かれちまって。何で嬉しいんだろ? って自己分析してみたら、やっぱりミカサの事が好きだからとしかと思えなくて……」

ミカサ「本当に? それ以前に私にヤキモチは妬かなかったの?」

エレン「それ以前? あージャンとかミカサの中学時代の金髪の先輩とか? その辺は妬いていたよ。今思うと」

ミカサ「ほらやっぱり。ヤキモチ妬いている。ヤキモチを妬いたらそれはもう、相手を独占したい証拠」

エレン「まあそうだけど、え? 今、その話、何か関係あるのか?」

イマイチ訳分からん。でも皆はニヤニヤしている。

ジャン「つまり、リヴァイ先生はヤキモチ、妬かないんですか? って皆、言いてえんだよ」

エレン「あー………」

そういう事か。回りくどいんだよ皆!

リヴァイ「ヤキモチ……だと?」

ミカサ「ヤキモチも妬かないような男は最低。度が過ぎるとダメだけど」

アニ「うん。同感。やっぱりそこは、女としては少しは妬いて欲しいよね」

リヴァイ「………………」

アルミン「でも、さっきモブリット先生、ハンジ先生と何か大事な話があるって言ってたよね」

エレン「あーなんか深刻そうな顔はしていたよな」

リヴァイ「!」

エルヴィン「2人が何処に行ったか分かるか?」

エレン「いえ、そこまでは。オレ達もすぐこっちに戻ってきたんで」

アルミン「もしかして、モブリット先生の方が先に告白しちゃうんじゃないの? このままだと」

リヴァイ「?!」

リヴァイ先生が胸を抑え始めた。よしよし。あと少しかもしれねえ。

煽ってみるか? でも煽り過ぎたらまたヘタレるかもしれないしな。加減が難しいな。

と、皆が考えていたその時、突然、誰かの携帯が鳴った。

リヴァイ先生のものだった。

リヴァイ「リヴァイだ。………何だって? マーガレットがそう言っているのか? 分かった。すぐそっちに行く」

え? またマーガレット先輩関連で何かあったのか?

リヴァイ「エルヴィン。ミスコンの病欠の辞退者っていうのは、マーガレットで間違いなかったよな」

エルヴィン「ああ。なんか少し体調が悪くて今、保健室で休んでいるそうだが」

え?! それってまずくないか。本番前なのに大道具チーフが倒れていたのかよ。

なんでこう次から次へとトラブルばっかり起きるんだ?

リヴァイ「どんどん熱が上がってきているらしい。でも、裏方に入ると言ってきかないとスカーレットが困惑して電話してきた。ちょっと保健室に様子を見に行ってみる」

と言ってリヴァイ先生が教師の顔に戻って駆け出したのでオレ達も心配になって保健室についていく事にした。

すると保健室のベッドの上で寝ているマーガレット先輩と周りにスカーレット先輩とガーネット先輩がいた。

リヴァイ「具合はどうだ?」

マーガレット「38.3度ってところですけど、大丈夫ですよ。本番までに下げれば…」

スカーレット「下げられる訳ない癖に何言ってるの。今日は休むしかないじゃん」

マーガレット「だああって今日は本番なんだよ? 休める訳ないじゃん! 大道具、今回先輩で入れるの私だけじゃないの」

スカーレット「そうだけど……リヴァイ先生からも言ってやって下さいよ。この子、親子ともども馬鹿なんですよ」

マーガレット「うちの血筋よ。しょうがないじゃん」

と、開き直られてもなあ。

リヴァイ「微妙な熱だな。動けない訳じゃないが、冷静な判断は無理だろ」

マーガレット「そんな事ないですよ。うちの親は肺炎で40度越えても原稿描いてましたからね」

エレン「あの、それはあんまり人としてやっちゃいけない事ですよ?」

マーガレット「まあ、そうだけど。でも40度はいってないから動けるよ。大丈夫だって」

リヴァイ「うーん、俺も似たような事はしょっちゅうやらかすから、なあ」

と、悩んでいる様子だ。えええ? そうなのか?

リヴァイ「ただ、裏方に入る奴は体調管理出来てないと足手まといだ。もし万が一、途中で抜けられたり、倒れたら本当に邪魔になる。それを分かっていて言ってるのか?」

マーガレット「はい。倒れないから大丈夫ですよ。新人3人だけに任せる訳にはいかないし」

カチン……

なんか信用されてないようでちょっとムカついたな。今のは。

リヴァイ「俺が役者に入っていなければ裏方に入るんだがな……エルヴィン。この後、お前予定有ったか?」

エルヴィン「いや、ミスコンが終わった後は特に何も。私が代わりに入ってもいいのか?」

リヴァイ「この場合は仕方ねえだろ。確かにマーガレットの言い分も分かるしな。新人3人だけで裏方をやらせるほど俺も鬼畜じゃない。経験者は絶対一人は必要だ。マーガレット。お前は裏には入っていいが、裏方はするな。裏で待機して何かあったら細かい指示だけをしろ。それでいいな? 寝転がってでも出来る仕事だ」

マーガレット「まーしょうがないですね。それで手を打ちます」

リヴァイ「そうと決まれば本番まで仮眠を取れ。俺もついでに寝て行こうかな」

エレン「リヴァイ先生?!」

リヴァイ「すまんが、俺も少し頭が疲れた。1時間でいい。寝かせてくれ」

と、本当にマーガレット先輩の隣のベッドに潜り込んでグーグー眠ってしまったのだった。

えええええ。マジか。俺はさすがにこういう行動は出来ないな。

本当にいいのかな。モブリット先生とハンジ先生の事を放っておくつもりなのかな。

エルヴィン「しょうがないね。マーガレット。裏方プランを今から頭に叩き込むからプラン表、私に見せてくれ」

マーガレット「分かりました」

と、すっかり気持ちを切り替えたのかエルヴィン先生も忙しい。

エルヴィン「今回、裏方に入るエレン、アルミン、マルコ。君達も一緒に話を聞いてね」

と、何故か保健室で打ち合わせを始める事になってしまった。

一応、大体の引継ぎを終える頃には本当に1時間経ってしまった。

あ、もうすぐお昼休みだ。昼飯食べないと…。

一旦、休憩します。お昼は何食べさせようかな。うーん。

そういやまだ前売り券使ってなかった。使いましょうかね。

ミカサ「エレン。前売り券、まだ使っていないので今日、使ってしまおう」

浴衣から制服に着替えてしまったミカサがそう言った。

エレン「そうだった。忘れていたぜ。じゃあ買いに行くか」

エルヴィン「あ、エレン。ついでに私の分も適当に買って来てこっちに持って来てくれないか。マーガレットと打ち合わせしながら食べるから」

エレン「あ、分かりました。カレーでいいですか?」

エルヴィン「任せるよ。頼んだ」

という訳でオレ達は一旦席を離れて昼飯を買いに行った。

カレーのところにはオルオ先輩がいた。あ、ペトラ先輩もエプロン姿に戻って働いている。

エレン「すんませーん。カレー下さい」

オルオ「はいはい。やっと来たな」

エレン「すみません。昨日はヤキソバ食ってました」

オルオ「いや、別にそれを責めている訳じゃないんだが。使い忘れる奴がたまにいるから、そうじゃなくて良かったと思っただけだ」

エレン「あ、なるほど」

オルオ「大盛りだったな。ちょっと待ってろ。トレーも1枚ずつ用意する」

という訳でオルオ先輩にカレーを貰って、ついでに話をしてみる事にした。

エレン「オルオ先輩はリヴァイ先生とハンジ先生の事、気づいてました?」

オルオ「ああ? んなもん、当たり前だろ。昔からあんなんだったよ」

エレン「そうですか……」

オルオ「リヴァイ先生大丈夫なのか? ミスコンでハンジ先生にふられたって、噂が流れまくってるぞ」

エレン「あ、やっぱりそうですか。まあ、今、仮眠取って寝てますけどね」

オルオ「そうか。寝られるんだったらまだマシか。あ、福神漬け忘れていた。いるか?」

エレン「あ、頂きます」

ミカサ「頂きます」

エレン「あ、エルヴィン先生の分もお願いします。大盛りでいいのかな」

オルオ「そうだな。まあ同じ量でいいだろう」

という訳でトレーを二つ頂く事になった。

オルオ「リヴァイ先生、まだ飯食ってないよな」

エレン「はい……食えるのか心配ですけど」

オルオ「カレーだと冷えると味がまずいからな。うーん。あ、福神漬けだけ持たせるか。これ、リヴァイ先生用な」

と、追加で小皿で福神漬けを持たされた。

エレン「ありがとうございます」

オルオ「いや、俺も何かしてやりたいんだがな。こっちの仕事もあるしな。すまん」

エレン「ペトラ先輩の方は大丈夫ですか?」

と、奥の方で仕事をしているペトラ先輩を気に掛けると、

オルオ「ああ。まあ、表面上は元気だよ。ただ、内心は複雑だろうな」

ペトラ「何? 私の噂話してんの?」

と、ひょいっとこっちの声が聞こえたのか、顔を出してきたペトラ先輩だった。

エレン「あ、すんません。勝手に話して」

ペトラ「別にいいけど……リヴァイ先生、大丈夫?」

エレン「今、仮眠とっているところです。大分、精神的に参ってはいましたけど」

ペトラ「はー……だよねえ。私も正直、舞台裏であの現場見ていたけど、アレはないわーと思ったよ」

エレン「ああ、そっか。ペトラ先輩も見ていたんですよね」

ペトラ「うん。敗者も勝者も舞台裏で待機だったからね。声漏れ起きていたのも酷いけど、アレは舞台装置を使い慣れてない子がやらかしたみたいね。文化祭実行委員の、えっと、背の高い、ベル何とか君が、ミスやったみたいで、後で怒られていたけど」

ベルトルト、お前何やってんだよ…。

ペトラ「ったく……ハンジ先生と別れた噂が流れた直後に、キャッキャ言い出すファンの子達もイライラするわ。あの子ら、人の事を何だと思っているのかしら」

エレン「ペトラ先輩はファンクラブの存在をご存じだったんですか」

ペトラ「ああ。3年の女子で知らない子はいないわよ。でも私は入ってなかった。だって『2人きりで話したりしたらダメ』とか『リヴァイ先生は皆の物』とか何とか訳分からん誓約書を誓わされるんだよ? アホ過ぎるわよ。私、そこまで頭悪くないし」

と、苛立った様子で先輩が答えた。

ペトラ「生物室の事件も後で生物部の子から聞いたわ。私、事件やらかしたあの子とは以前、話した事あったけど、ちょっと情緒不安定な感じだったんだよね。両親に放置されているっていうか、構ってくれる人が誰もいないような家庭環境で育ったみたいでさ。それをリヴァイ先生が定期的に家庭訪問していたから。それでグラッといっちゃったんだろうね。だから、あの子の事は私も責める事は出来ないけど…」

と、同じクラスの女子を同情的な目で見るペトラ先輩はやっぱり優しいんだなと思った。

俺はあんまりそこは共感出来ねえけど。やっぱり同じ女性同士だからかな。

ペトラ「でも、私も正直言って、目の前でリヴァイ先生のキスは、精神的にきつかったわ。アレ、台本か何かあったの?」

エレン「いえ………完全にアドリブです」

ペトラ「そうなんだ……じゃあ余計にしんどいわ。リヴァイ先生、ハンジ先生と付き合ってないってずっと言ってたけど、やっぱり大人の嘘だったんだね」

エレン「うーん。厳密に言うと、嘘ではないんですけどね。リヴァイ先生、あの時のあの瞬間まで、自分の気持ちに自覚なかったみたいで。時間差でそれに気づいて自分でびっくりしてましたよ」

ペトラ「…………リヴァイ先生、どんだけ自分の感情に鈍感なのよ」

と、ずーんと落ち込んでしまうペトラ先輩だった。

ペトラ「じゃあリヴァイ先生、今やっと、恋愛のスタート地点に立ったようなものなのね」

エレン「身も蓋もない言い方になりますが。その通りですね」

ペトラ「準備運動が長すぎる…。でもしょうがないのかな。友人の期間が長すぎたのよね」

オルオ「だろうな。近くに居過ぎて気づかないって奴だったのかもしれん」

と、2人はしみじみ言っている。

ペトラ「どうにかして元気づけてあげたいけど、今は回復を待つしかないかしら」

オルオ「とりあえず仮眠はとってるらしいからまだマシじゃないか? 本当にきつい時は不眠症になるだろ」

ペトラ「だよね。何回眠れない夜を越えたかしら。私も………」

と、恋愛片思い歴が長いペトラ先輩が先輩面を見せるのがちょっと面白かった。

エレン「タフですね。ペトラ先輩」

ペトラ「恋する乙女は強くなるのよ! メンタル強化しないとやってらんないわよ!」

ミカサ「同感です…」

エレン「ミカサ? え? 何? お前も何かあったのか?」

ミカサ「………教えない」

エレン「ミカサー?!」

また例の<●><●>の顔で言ってきたから焦った。

何だよ! 隠さなくたっていいじゃねえか!

オルオ「はは! ま、この後の舞台もあるし、あんまりごちゃごちゃ考えている場合じゃねえけどな。リヴァイ先生が担任したOBとOGの方々がそろそろ会場入りする頃だろうしな」

ペトラ「なんか今回、規模が凄いらしいわね。300人超えそうとか何とか。海外から帰ってくる卒業生もいるとか」

オルオ「ああ。らしいな。リヴァイ先生が舞台出るっていう情報を聞きつけて、卒業生が一堂に集まるらしいぜ」

エレン「え? それマジっすか? さ、300人超えるって……」

オルオ「そりゃリヴァイ先生も教師生活長いんだから、卒業生が遊びにくらい来るだろう」

エレン「え、でも、数が多すぎませんか? そんなになるんですかね?」

ペトラ「一クラス35人くらいでしょ? んで教師生活が27歳からスタートで、今38歳だから11年越えてるし。12年目だっけ? 今年で」

オルオ「単純計算で385人の卒業生がいる計算になるな。そのうちの300人くらいがリヴァイ先生の舞台を見に来るって言ってるんだから、そうなるよな」

エレン「リヴァイ先生、人気あり過ぎですよね?! え? もうそれ、芸能人のレベルじゃないですか!!」

オルオ「んな事言われても事実だからしょうがないだろ。第一体育館のキャパ足りるか心配だな」

ペトラ「そうだよね。保護者だって来る筈だし。超満員御礼になるんじゃないかな」

ミカサ「プレッシャーかけないで下さい(ガクブル)」

あ、やべえ! そういえば大事な事を忘れていたけど、ミカサのあがり症、まだ完全には治ってなかったんだった。

だ、大丈夫かな。入学式を越える人の数が来たらミカサ、パニックになるかもしれん。

ペトラ「ふふふ……でも楽しいわよ? 超満員御礼の中でやる演劇は。なかなか経験できないし」

オルオ「だな。リヴァイ先生目当てで見に来る奴らが多いんだろうが、それでも、満員はいいよな。席が空いてないっていうのは、凄く嬉しいもんだ」

と、先輩達はあまり気にしていない。

あ、そっか。先輩達はミカサのあがり症をそこまで深刻に思ってないんだ。

あーどうしよう。これはまずい前情報を聞いちまったな。

エレン「ミカサ、とりあえず保健室戻るぞ」

ミカサ「う、うん……」

オルオ「ん? ここで食えばいいじゃないか」

エレン「あー実はかくかくしかじか」

と、マーガレット先輩の件を伝えると、

ペトラ「え? それマジで? 嘘……辞退者ってマーガレットの事だったのね。知らなかった」

エレン「はい。今、エルヴィン先生が急遽、引き継ぐことになったんで、昼飯を持っていかないといけないんですよ」

ペトラ「大変ね。何だか今年の文化祭は波乱万丈だわ」

オルオ「確かにな。でも、頑張れよ。ここを乗り切れば、絶対いい経験になるからな」

エレン「はい。頑張ります」

と、ぐっと拳を合わせてオレ達はカレー屋から離れてアルミン達と合流した。

アルミンは別のメニューを購入していた。たこ焼きとミックスジュースだけでいいらしい。

エレン「あ、そういやオレもたこ焼きとミックスジュースあったんだ」

ミカサ「一緒に買って戻ろう」

という訳でそれぞれの買い物を済ませてオレ達は保健室に戻った。

ジャンとマルコも後で戻ってきた。こいつらはお好み焼きを選んだらしい。2人で一緒に食うようだ。

んで、保健室でマーガレット先輩と打ち合わせを終わらせると、マーガレット先輩も横になって眠ってしまった。

リヴァイ先生はまだ起きねえな。もうすぐ13:00になるんだが。

エレン「起こした方がいいよな。劇部は人形劇の次だし……」

エルヴィン「そうだね。着替えの時間も必要だしね。リヴァイ、そろそろ起きろ」

リヴァイ「んー……」

と、軽い睡眠をとったリヴァイ先生がようやく起きた。

リヴァイ「……………」

エルヴィン「まだ、頭が起きてないな。水でも飲むか?」

リヴァイ「頂こう」

エルヴィン「了解」

コップ一杯の水を飲んでリヴァイ先生はようやく少し落ち着いたようだ。

目の感じが元に戻っている。まだ完全回復って訳じゃないだろうけど。

少なくとも、先程よりは大分マシになっていた。

エルヴィン「少しは元気になったかな?」

リヴァイ「大分な。今、時間は?」

エルヴィン「ちょうど13:00だね。あと1時間後だよ。準備に入らないと」

リヴァイ「そうだな。考えるのは舞台が終わってからにしよう」

エルヴィン「ああ。舞台が待っている。やるしかないよ」

という訳で、オレ達はマーガレット先輩だけを保健室に残して、それぞれの準備に取り掛かった。

もしかしたらマーガレット先輩はこのまま起きて来ないかもしれないけど、その時はしょうがない。

エルヴィン先生にある程度、引き継いだし、後はもう残されたオレ達で頑張るしかねえ。

第一体育館に劇部メンバーが全員揃った。舞台裏から人形劇を覗き見る。

どうやら桃園の誓いのところでクライマックスらしい。

三国志は話が相当長いから劇でやるならここまでになるよな。

無事に人形劇も終わったようだ。カジ達が一斉に舞台裏にはけてくる。

カジ「いやー! 緊張した! 人形動かすだけなのに緊張した!」

と、笑いながらこっちに来た。

カジ「連荘きついね! でもまあいっか! 衣装ある?」

アニ「はい。こっちに用意しているんで着替えお願いします」

マリーナ「私のもお願い! ジュリエットの衣装頂戴!」

舞台裏はバタバタだった。片づけと準備を同時進行にやるんだからな。無理ねえ。

準備が終わったミカサの顔色が悪い。やっぱり緊張しているんだな。

オレは後ろからミカサを抱きしめて、後ろから「大丈夫」と言ってやった。

ミカサ「え、エレン……」

エレン「大丈夫だ。今度はオレがミカサを支えてやる。だから安心して行って来い」

ミカサ「………うん」

ジャン「そこ! イチャつくのは後にしろ! 円陣やるぞ!!」

という訳で恒例の円陣だ。舞台幕が上がる前には必ずこれをやる。

全員が輪になって手を揃えた。ジャンの合図で掛け声をするんだが、掛け声の前には必ず部長の気合の挨拶が恒例らしい。

オルオ先輩がやっていた、アレだな。ジャンは一生懸命考えているようだ。

ジャン「あーもう、なんか今年の文化祭はいろいろ波乱万丈だけど、絶対成功させるぞ! 怪我すんなよ! 皆、いくぞー!」

一同「「「「「「おー!!!」」」」」」

さあ、手を押し込んで、ひとつになった後は駆け出すぜ!

静かに、幕が開いた直後、オレは度胆を抜かれる。

オルオ先輩の言っていた事は嘘じゃなかった。本当に超満員御礼の舞台だったんだ。

遠くの席の方から「リヴァイ先生ー!!! 元気ー?!」とかいろいろ声が聞こえる。

その声を聞いて、リヴァイ先生が舞台袖でびっくりしていた。

あ、親父達がちゃっかり前列に座っている。やべえ。失敗出来ねえな!

リヴァイ「…………あいつら、来ていたのか」

あ、うるっときているみたいだ。ちょっとレアなリヴァイ先生だな。

オレ達の文化祭は、いよいよクライマックスを迎えた。

そしてお馴染みのマリーナのナレーションが始まり、オレ達はその「異空間」に身を投げ出したのだった…。

キリがいいので一旦、ここまで。続きはまたノシ

あ、舞台のエンディングソングはどれがいいか安価取ります。
るろ剣風なので、一応候補としては、

1.HEART OF SWORD -夜明け前-
2.1/3の純情な感情
3.The Fourth Avenue Cafe

あたりかなーと思うんですが、どれが一番人気あるんでしょうかね?
ちなみにエンディング曲中に皆で1~3人ずつ舞台に出て踊ります。





マリーナ(ナレーション)『今から約140年前黒船来航から始まった『幕末』の動乱期』

マリーナ(ナレーション)『渦中であった京都には沢山の維新志士達がいた』

マリーナ(ナレーション)『血刀を以て新時代『明治』を切り開いたその男達の中には、当然、歴史に名を残さぬまま命を散らした者もいる』

マリーナ(ナレーション)『そして生き残った者の中にも、歴史に名を残さず自ら表舞台を去った者もいた』

マリーナ(ナレーション)『闇の世を駆け、修羅さながらに人を斬り 新時代『明治』を切り開いたその男達は、動乱の終結と共に人々の前から姿を消し去り 時の流れと共に『最強』という名の伝説と化していった』

マリーナ(ナレーション)『そして浪漫譚の始まりは 明治十一年へと移りゆくーーー』



そして、BGMが一気に変わる。

必殺シリーズの、あの、音楽だ。人を仕置きする時の、あの音が会場に響く。



神谷(リヴァイ)『ふー………』

疲れた風の男がひと仕事を終えて風呂に入るシーンから物語が始まる。

男は風呂に入る為に、自分の衣服を脱ぎ棄てて、褌姿になる。

さすがにオールヌードという訳にはいかないので、ここは褌姿で風呂に入ると言う設定だ。

リヴァイ先生がいきなり舞台上で脱ぎだしたもんだから、会場が一瞬、ざわめいたけど。

舞台中はおしゃべり厳禁(合いの手は有りだけど)なので、皆、動揺を押し殺しているようだ。

実際、水をかけるわけじゃないけど、かけ湯したり、体を布で洗ったりする仕草はお手の物だった。

すげえうまい。所謂パントマイム的な感じなんだけど、本当に風呂に入って身体を洗っているような錯覚を覚える。

リヴァイ先生自身の風呂好きがよく分かるシーンだ。

そして体を洗った後は、大きな桶の中に入って、湯につかる。

音だけタイミングに合わせて水音を流している。

神谷(リヴァイ)『………(手で湯をすくう仕草)』

なんか色っぽいな。いや、男が男に色っぽいというのも変な話だけど。

手の動かし方がとても綺麗だった。ただ、湯を掬っているだけなのに。

神谷(リヴァイ)『…………あの男、只者ではないな』

神谷(リヴァイ)『今日は仕留め損ねたが、次は必ず………奴を殺す』

月夜に誓う様に呟いて、暗転となった。





そして一気に世界観が変わる。今度は西洋チックな舞台だ。

マリーナ(ナレーション)『昔々、ヴェロナという街にキャピュレット家とモンタギュー家という2つの旧家があり、この両家は代々、お互いを仇だと思っていがみ合っていました』

マリーナ(ナレーション)『キャピュレット家にはジュリエットという一人娘がおり、モンタギュー家にはロミオという一人息子がいましたが、この2人は舞踏会で出会い、お互いが仇の家の出身だと分かっても、思いは変わらず、両家の仲直りを願うロレンス上人に秘密の結婚式をあげてもらい、夫婦となりました』

マリーナ(ナレーション)『しかし2人はとある誤解から、お互いがお互いに死んだと思い込み、自ら命を絶つ事になるのであった………』

めっちゃ端折ってる! ロミオとジュリエットを3行で説明しちまうという荒業だな。

まあここは、ダイジェスト的な感じで説明するだけだから、台詞もないし、いいけどな。

舞台上では内側に明治バージョン、上から前世バージョンで重ね着して、説明が終わったら一気に脱いでしまうという方法を取っている。




月夜のシーン。明治時代。街道で野宿していた2人の男女が目を覚ます。

ジュリエット(マリーナ)『…………また、あの夢だわ』

ロミオ(アルミン)『夢? 僕も同じ夢を見たよ。君が目の前で死んでいて、僕も後追い自殺する夢だ』

ジュリエット(マリーナ)『私もです。貴方が目の前で死んでいて、自ら服毒自殺をする夢でした』

ロミオ(アルミン)『もう何度目になるだろう? 同じ夢ばかり見ている。この夢は、僕達に何か関係あるのだろうか?』

ジュリエット(マリーナ)『分かりません。でも……もしそうであれば、きっと、前世という物が存在するのかもしれない』

ロミオ(アルミン)『では僕達は前世は結ばれずに、この時代に生まれ変わったのかもしれない。この明治という世に……』

ジュリエット(マリーナ)『ロミオ様……』

ロミオ(アルミン)『この世に巡り合えた奇跡を、今度こそ、離さない。ジュリエット。僕と共に、地の果てまでついてきてくれる?』

ジュリエット(マリーナ)『はい。ロミオ様……(うっとり)』

追手1(アーロン)『おっと、そういう訳にはいかねえな、ご両人』

ここで裏方メンバーが追手の悪者役で総出演だ。オレも後ろの方で準備している。

追手1(アーロン)『探しやしたぜ。2人とも。随分遠くまで逃げていたもんですねえ』

ロミオ(アルミン)『くっ!』

追手1(アーロン)『名家の跡取り同士が駆け落ちなんざ、本当に出来ると思っているんですか? さあ、2人とも。おうちに帰りやせんか』

ジュリエット(マリーナ)『嫌です! 私は家を捨てました! もう実家には戻りません!』

ロミオ(アルミン)『僕達の事は死んだことにして、見逃しては貰えないか』

追手1(アーロン)『そいつは出来ない相談ですな。ま、本当に殺して差し上げる事は出来ますが? (ニタリ)』

ロミオ(アルミン)『!』

ここでオレ達、裏方メンバー(エレン、マルコ、エーレン、カジカジ、キーヤン、スカーレット、ガーネット)が一斉にロミオ(アルミン)とジュリエット(マリーナ)を襲おうとするが。

しかし、その時、

三村(ミカサ)『ふああああ………』

と、場の空気を読まない声が茂みから聞こえてくる。

三村(ミカサ)『折角、いい月見酒日和だというのに、無粋な奴らが邪魔してきたでござるな』

よいしょっと、表に出てくるその男。三村だ。

追手1(アーロン)『てめえ! 誰だてめえは!』

三村(ミカサ)『名乗る者の程ではござらんよ。さて、これは一体どういう事なのでござるか?』

追手1(アーロン)『邪魔する気か?』

三村(ミカサ)『邪魔をしているのはそちらでござろう? 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られると良くいうではござらんか』

追手1(アーロン)『邪魔立てするなら容赦はしねえぞ。野郎ども!』

一同『『『『『『は!』』』』』』

と、ここから一斉に三村(ミカサ)に襲い掛かるんだけど、そこを全部一気に倒しちまう殺陣シーンだ。

オレは所謂、やられ役だな。三村(ミカサ)にばっさり切られて倒れたらそれでOKだ。

全員を屠った後、お客さんの拍手喝采が起きた。鮮やかな殺陣に見惚れたようだ。

やっぱりミカサはすげえな。本当、こういうのやらせると様になる。

追手1(アーロン)だけは一人逃げていくけど、それを追いかける事はしない。

三村(ミカサ)『大丈夫でござったか?』

ロミオ(アルミン)『あ、ありがとうございました…』

ジュリエット(マリーナ)『ありがとうございます(ぺこぺこ)』

三村(ミカサ)『大した事ではござらんよ。して、ご両人はいずこへ向かう予定で?』

ロミオ(アルミン)『とりあえず、港まで向かって、国外の何処かに2人で逃げようと思っていました』

三村(ミカサ)『ふむ……では拙者も途中まで送って差し上げようか?』

ロミオ(アルミン)『え…でも、そこまで甘えるのは……』

三村(ミカサ)『遠慮しなくても良いでござるよ。拙者は流浪人。三村万心。暇ならいくらでも持て余しているでござる故、道中を一緒に旅するのは問題ないでござるよ』

ジュリエット(マリーナ)『では、東京の街まで、送って頂けたら……』

三村(ミカサ)『なるほど。東京は拙者の庭みたいな街でござるよ。道も分かる。出来るだけ近道を通って送って差し上げるでござるよ』

ロミオ(アルミン)『あ、ありがとうございます……なんとお礼を差し上げればいいか』

三村(ミカサ)『礼など要らぬでござるよ。では、一緒に行くで……(ぐるるる…)』

お腹の虫が鳴る。

三村(ミカサ)『………何か、食べ物を分けて貰えれば、それでいいでござる』

と、顔を赤くする三村(ミカサ)だった。

おおおお! 今のところ、特にとちったりもせず、うまくいってるじゃねえか!

死体役の状態で舞台を眺めていたけど、良かった。ミカサ、大丈夫そうだな。



そして暗転が入って、舞台は東京へ移る事になる。



明治の東京。そこで街中をすいすい歩いている三村(ミカサ)を、斎藤(ジャン)が見つけて追いかけまわす。

斎藤(ジャン)『こらあああそこおおおお!!!!』

三村(ミカサ)『あ、斎藤殿』

斎藤(ジャン)『あ、斎藤殿。じゃねえよ!! あんた、何回注意したらいう事聞いてくれるんだ?! 廃刀令! 刀を腰に下げて歩いたらダメだって言ってるだろうが!!』

三村(ミカサ)『これは本物の刀ではござらんよ? ほら、刃が逆さまになっているので、人は切れないようになっているでござる』

斎藤(ジャン)『そういう問題じゃねえから!! 新しい国の決まりが出来たんだから、それに従って貰わないと示しがつかねえの! これはメンツの問題なんだよ! ほら、没収!』

三村(ミカサ)『いやん……そう固い事言わず……ね? (ウインク)』

斎藤(ジャン)『うぐっ! (よろめく)』

うわあ! ミカサのウインク、破壊力抜群だな。

やべえ。こっちも余波を食らってドキドキする。

斎藤(ジャン)『だ、ダメなもんはダメだ! そもそも何であんた、わざわざそんなまがい物の刀を腰に下げて……』

三村(ミカサ)『ただの趣味でござる(キリッ)』

斎藤(ジャン)『嘘をつくなああ! 全く、本当、頭痛てえ……』

と、頭を抱えだす斎藤(ジャン)だったが、

斎藤(ジャン)『ただでさえ、最近物騒な事件が多発してるっていうのに、こっちは忙しいんだよ。あんたに構っている場合じゃねえんだよ。本当は』

三村(ミカサ)『何か事件が起きたのでござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。なんか川辺で男女の惨殺死体が浮かんできたらしくてな。そっちの調査の方で今、人が動いていて、オレも捜査中の身なんだよ』

三村(ミカサ)『男女の……死体? (ぴくっ)』

斎藤(ジャン)『ああ。可哀想に。まだ若い2人だったぜ。あれは異国の血が混ざっているのかもしれんが、綺麗な男女だった』

三村(ミカサ)『!』

そして川辺に移動する。野次馬が川辺に集まっている。

この辺の野次馬とかは、裏方メンバーがそれっぽく演じる。オレも出番だ。

ロミオ(アルミン)とジュリエット(マリーナ)が死体役で転がっている。

勿論、顔は青く塗って、死人の色に変えている。

死体の上に御座を被せて、直接は見せないけど、顔だけは観客に見せている。

死体をちゃっかり確認する三村(ミカサ)に斎藤(ジャン)はまた『こら!』と怒る。

斎藤(ジャン)『勝手に触っちゃダメだから! 何やってんだよ!』

三村(ミカサ)『死体が発見されたのはいつ頃でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ? 確か、今日の早朝だったかな。まだ発見されてからそう時間は経ってないが……』

三村(ミカサ)『犯人の目星は?』

斎藤(ジャン)『まだめぼしい情報も何もねえよ。何だよ? あんたの知り合いか?』

三村(ミカサ)『昨日の夜まで一緒に居た。国外に出るというので、港まで送ってあげたでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! ちょちょ……だったらあんたが一番の容疑者じゃねえか! ちょっと、話を詳しく聞かせろ!』

三村(ミカサ)『犯人は拙者ではござらぬ。刀にも血はないでござろう?』

斎藤(ジャン)『そんなもんは拭けばいい話だろ?! よし、ちょっとお前、一緒に来い』

三村(ミカサ)『その前にもう少し死体の状態を確認させて……(ペロ)』

斎藤(ジャン)『だかーら、勝手に触ったらダメだって…!』

と、その時、野次馬の声が聞こえた。

噂の商人(カジカジ)『これはアレだな。仕置き人が動いたなきっと』

噂の商人2(キーヤン)『ああ、きっと間違いねえ。仕置き人の仕業だ』

その声に三村(ミカサ)は反応して商人に声をかける。

三村(ミカサ)『仕置き人? 何の話でござるか?』

噂の商人(カジカジ)『あ、いやあ……ただの噂なんですがね』

噂の商人2(キーヤン)『ここ最近、やたら殺人事件が多いでしょう? その、仕置き人がやったんじゃないかっていう噂が出ているんで』

三村(ミカサ)『噂の出所はどこでござるか?』

噂の商人(カジカジ)『そこまでは知りやせんよ。私らも、風の噂程度に聞いただけなんで』

噂の商人2(キーヤン)『ただ、今、国の制度がいろいろ変っている過渡期でしょう? 不平不満を漏らす奴も多いんですよね。だから、国が裁けない事を代わりにやってくれる、仕置き人っていう仕事人がいるらしいっていう噂があって……』

噂の商人(カジカジ)『ま、所謂「仇討ち代行人」って感じですかね。昔は仇討ちしても咎められなかったけど、新しい制度ではそれがなくなったから、不満を漏らす奴も多いんですよ』

斎藤(ジャン)『なるほどな……分かった。そっちの線で少し調査を進めてみよう。情報提供ありがとうな。これは駄賃だ。とっとけ』

噂の商人(カジカジ)『へへ~ありがとうございやす!』

ちゃりちゃりーん♪

お金を渡して商人達を下がらせる。斎藤(ジャン)の後を追う三村(ミカサ)。

斎藤(ジャン)『あ、あんたは留置所行きだからな。一緒に来て貰うぞ』

三村(ミカサ)『拙者も調査に協力するでござる』

斎藤(ジャン)『はあ? 第一容疑者が何言ってやがる! あとついでにその刀、没収!』

三村(ミカサ)『(ひょい)この事件、何かきな臭いでござるよ。斎藤殿一人では荷が重いかもしれないでござる』

斎藤(ジャン)『そ、そうかもしれないが、だからってあんたに手伝って貰う訳にはいかねえよ。あんた、ただの流浪人だろうが! ここは警察の領分なんだから、勝手に協力するんじゃない!』

三村(ミカサ)『……拙者の事が嫌いなのでござるか? (ウルウル)』

斎藤(ジャン)『うぐ?! (赤面)』

くそ! このミカサの色仕掛け、マジぱねえ。

これ、落ちねえ奴いねえだろ。ジャンの赤面がガチだ。

斎藤(ジャン)『そ、そういう訳じゃねえけど……つか、あんた男のくせに妙に色気があるな。男色なのか?』

三村(ミカサ)『さあ? どうでござろうな? さて、調査を進めるでござるよ。まずはその『仕置き人』とやらに会う方法を考えるでござる』

斎藤(ジャン)『話を逸らしやがって……』

三村(ミカサ)『ん? (小首を傾げる)』

斎藤(ジャン)『だああもう! 分かったよ! 今回だけだからな! 協力させるのは! このことは内密にしろよ?!』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる』

斎藤(ジャン)『仕置き人の存在の裏を取ってくる。本当にそいつが存在するなら、恐らく闇の接触手段がある筈だ。囮捜査が必要になるだろうが……』

三村(ミカサ)『ではその囮役を拙者が請け負うでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! あんた馬鹿か?! それって自分の命を仕置き人に狙わせるって事だぞ?!』

三村(ミカサ)『構わんでござるよ。手がかりが掴めない以上、やってみるしかないでござる』

斎藤(ジャン)『な、なんでそこまで協力的なんだよ。何か理由があるのか?』

三村(ミカサ)『んー』

と、息をついて、複雑そうな顔になり、

三村(ミカサ)『やっと新しい明治の世になったというのに、自由に恋愛も出来ないのかと思うと、腸が煮えくり返るでござるよ』

斎藤(ジャン)『いや、あんた自身が恋愛が出来ないならともかく、他人の恋愛だろ? 何でそこまで感情移入するんだよ』

三村(ミカサ)『まあ、そこはほら、性格の違いって奴でござるよ。とにかく、拙者が囮を引き受ける故、準備が整ったら知らせて欲しいでござる。その間、拙者は独自に調査を進める故』

斎藤(ジャン)『はあ………っておいコラ! どさくさに紛れて逃げるんじゃねええ!!!』

と、叫びながら斎藤(ジャン)が三村(ミカサ)を追いかけるが既に遅しだった。



そんな訳で数日後。茶屋で合流した三村は斎藤と打ち合わせをする。

ちなみに茶屋の給仕役(ウエイトレス)でオレがまた女装する事になった。

2人にお茶を出すだけの簡単な仕事だけどな。

斎藤(ジャン)『裏は取れたよ。仕置き人の名前は「神谷赤司(かみやあかし)」という名前らしい。小柄で痩せた男らしいが、一応、これがその似顔絵になる』

三村(ミカサ)『ふむ。随分と目つきの悪い男でござるな』

斎藤(ジャン)『証言を合わせて作った似顔絵だからな。多少大げさには描いている。実際見て描いた顔じゃねえから、似てねえかもしれねえが』

三村(ミカサ)『いや、十分でござるよ。では今夜、早速決行するでござる』

斎藤(ジャン)『………本当にいいんだな? 命の保証は出来ねえぞ?』

三村(ミカサ)『やけに心配してくれるでござるな。拙者に気がある?』

斎藤(ジャン)『んなわけねえだろおおおお!? 誤解を招くような事を言うんじゃねえよ!!! オレはそっちの趣味はねえから!!!』

三村(ミカサ)『ははっ……なら良いでござる。拙者も安心して囮捜査が出来る』

斎藤(ジャン)『あーもう、しらねえからな。どうなっても……あ』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『そういえばずっと「あんた」とか「お前」とか呼んでいたが、名前を聞いてなかったな。名前、教えてくれないか』

三村(ミカサ)『名乗るほどの者ではないと前にも言ったと思うでござるが』

斎藤(ジャン)『いや、囮捜査をやってくれる人間の名前すら知らないってダメだろ。教えてくれ』

三村(ミカサ)『………三村万心』

斎藤(ジャン)『分かった。三村だな。三村、今夜作戦を決行するから、準備を整えておいてくれ』

三村(ミカサ)『了解したでござる』

斎藤(ジャン)『じゃあ、また後でな。あ、ここの茶代はオレが払っておくから』

三村(ミカサ)『ありがたいでござる』

という訳で、2人が別れると………

三村(ミカサ)『斎藤殿に拙者の名前を知られていなくて良かったでござる』

と呟く三村であった。






月夜。月の明るいその夜にその作戦は行われた。

夜の人気のない道を一人歩く三村。その背後から、例の気配を感じた。

釣りにかかった魚がやってきた。後は釣り上げるだけ。

三村(ミカサ)『何か用でござるか?』

惚けた声で話しかけると、男は月を背景にして答えた。

神谷(リヴァイ)『あんたに恨みはないが、命を頂きに来た。三村万心で間違いないな?』

三村(ミカサ)『確かに拙者が三村でござるが………そちらも神谷殿で間違いないか?』

神谷(リヴァイ)『(ぴくっ)何故、俺の名を知っている?』

三村(ミカサ)『拙者は神谷殿と少し話がしたいでござる。時間を頂けないだろうか』

神谷(リヴァイ)『断る。俺は頼まれた仕事をこなすだけの仕事人。仕置きをする人間だ。余計な事は話したくない』

三村(ミカサ)『頑固で融通のきかない人でござるな。では、力づくで問わせて貰うしかないでござるな』

じりじり………じりじり………

直後、2人の神がかった殺陣の応酬が始まった……!!!


おおおおおおおお………


観客が見入っている。神谷(リヴァイ)と三村(ミカサ)の剣戟の凄まじさに度胆を抜かれているようだ。

すっげええ! 本番が一番、動きにキレがある。さすがだ!!

皆、裏方も一緒に殺陣に見入っていると、三村(ミカサ)が徐々に劣勢になってきた。

三村(ミカサ)『くっ……!』

神谷(リヴァイ)『なかなかやるな……(ニヤリ)』

だんだん動きが速くなっていく。一騎打ちだ。劣勢の中、それでもアクロバティックな動きを混ぜながら避けて、遂に来た!!!

ミカサの壁伝いだ! 体育館の舞台の壁を伝いながら、横移動をするという大アクションだ!

神谷(リヴァイ)『何?!』

三村(ミカサ)『うおおおおおおおおおお!!!!』


ガッキィィイイイイイイイ!


SEが、轟いた。直後、飛びのいて、神谷(リヴァイ)が汗を浮かべて距離を取る。

お互いに息を荒げて、そして三村(ミカサ)の方から口を開いた。

三村(ミカサ)『神谷殿……最近起きた、若い男女が川辺で死体で発見された事件をご存じではないか?』

神谷(リヴァイ)『ああ。その事件なら知っているが……』

三村(ミカサ)『噂では、神谷殿がやったのではないか、という情報を聞いた。何か知っている事はないでござるか?』

神谷(リヴァイ)『何? 俺はその事件については関与していないぞ』

三村(ミカサ)『やはりそうでござったか……(刀を下す)』

息を整えて三村(ミカサ)は言った。

三村(ミカサ)『剣を交えて分かった。神谷殿はあのような卑怯なやり口はしない方でござる』

神谷(リヴァイ)『何故そう言い切る』

三村(ミカサ)『そもそも、こんなに明るい月夜に暗殺を請け負う方がおかしいでござる。闇討ちをするのであれば、新月を狙う。闇の中の方が、仕事をしやすいでござろう?』

神谷(リヴァイ)『ふん……俺は金さえ貰えればいつでも仕事を請け負うだけだが』

三村(ミカサ)『それでも、自分の有利になるように事を運ぶのが普通でござる。神谷殿は犯人ではござらんな』

神谷(リヴァイ)『……………あの事件について追っているのか?』

三村(ミカサ)『(こくり)何か知っている事があれば教えて貰えないでござろうか』

神谷(リヴァイ)『ふん……』

刀を収めて神谷(リヴァイ)が答える。

神谷(リヴァイ)『俺が何故そんな余計な事を話さないといけない。情報を売ると思っているのか?』

三村(ミカサ)『そこを何とかお願いするでござるよ』

神谷(リヴァイ)『無駄だ。俺は仕事をこなすだけだ。貴様の命を取るまでは、この剣を振るうのみ!』

三村(ミカサ)『!』

再び剣戟が起きる。再び凄まじい殺陣が起きるが、そこに斎藤率いる警察官が突入した。

神谷(リヴァイ)『ちっ…!』

慌てて逃げる神谷(リヴァイ)。それを追いかける警官隊。

斎藤が三村に駆け寄って、

斎藤(ジャン)『大丈夫か?』

三村(ミカサ)『大丈夫でござる。しかし困ったでござるな。手がかりが何も掴めなかった』

斎藤(ジャン)『まあ、捜査なんてそんなもんだよ。気落とすな。また別の線から捜査を進めてみようぜ』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる(しょんぼり)』

という訳で、その日の囮捜査は結局は失敗に終わってしまったのだった。




捜査が振り出しに戻って悩む三村と斎藤。

今度は惨殺された男女の実家である、名家を両方、再び訪ねてみる事にした。

一応、斎藤が来る前に他の捜査官もその家に足を運んで調査をしていたが、斎藤と三村も調査書以上の情報は得られなかった。

その両家はお互いの家をけなし合い、不仲で有名な名家だった。

お互いはお互いに2人の事件を忘れたがっていたが、一人だけ、2人の死を悼んでいる者が居た。

ジュリエット側の家に使えていた若い使用人の女だ。

使用人の女(アニ)『そうですか。まだ犯人は見つからないのですか……』

斎藤(ジャン)『すみません。こちらも調査を進めているんですが、なにぶん、手がかりが少なくて……何か気が付いたことはありませんか? どんな些細な事でもいいんですが』

使用人の女(アニ)『そうですね。お2人は小さい頃から仲が良く、お似合いの御2人でしたが、お互いの家長同士が仲が悪くて……人目を忍んでお会いされていました。いつか2人でこの家を出よう。そう決意されて、その「いつか」がおよそ1か月前でした。私もその手助けをしてあげたのですが、何分、ここの使用人なので、脱出の手引き以外の事は何も出来ず……』

斎藤(ジャン)『そうですか……』

使用人の女(アニ)『どうかせめて犯人を見つけてさしあげて下さい。どんなに時間がかかってもいいですので。でないと、あの2人が無念が浮かばれませんわ』

斎藤(ジャン)『分かっています。ご協力ありがとうございました』

そして、2人は屋敷を出ると、

斎藤(ジャン)『………三村?』

三村(ミカサ)『妙ではござらんか?』

斎藤(ジャン)『何が?』

三村(ミカサ)『いや、両家の家長同士が仲が悪いと言っておったでござろう?』

斎藤(ジャン)『ああ、そうだったけど、それが何か?』

三村(ミカサ)『であるならば、何故その屋敷同士がこんなに近くに……ほぼ隣同士に建てられているのか。おかしいとは思わぬか?』

斎藤(ジャン)『ん~前の代の時は仲が悪くなかったとかじゃねえの? 今の代になってから悪くなってきたとか』

三村(ミカサ)『いや、それはないでござる。拙者自身も足で情報を稼いできた故、この両家は代々、少なくとも2代前くらいから仲が悪かったそうだ』

斎藤(ジャン)『ん~? 祖父の時代から仲が悪いのにって事か。確かにそれは変な話だな。普通、どっちかが引っ越すなり、離れてもおかしくねえよな』

三村(ミカサ)『それに、亡くなった若い男女……跡取り同士が「小さい頃」に会っているのも妙でござる。本当に仲が悪ければ、そんな幼少期から会えるものでござろうか?』

斎藤(ジャン)『あー……』

と、妙に納得する斎藤(ジャン)だった。

斎藤(ジャン)『確かに、ちょっと妙ではあるな。ただまあ、それがなんだって言われれば、俺にも良く分からねえが』

三村(ミカサ)『拙者、もう暫くこの両家の周りを調査してみるでござるよ』

斎藤(ジャン『ああ。確かにその必要はあるかもしれないな。やってみよう』

という訳でとりあえず、両家を離れる2人だった。






斎藤(ジャン)と三村(ミカサ)が独自にそれぞれの足で情報を集めていたその時、再びあの男が現れた。

背後から奇襲をかけて三村の命を狙いに来た、神谷であった。

不意打ちを避けられて、神谷は舌打ちする。

三村(ミカサ)『ひ、昼の最中から暗殺とは、仕事熱心にも程があるでござろう!』

神谷(リヴァイ)『俺は契約期間内にきっちり殺らないと気が済まない性質なんだよ……次は殺す』

三村(ミカサ)『ま、待て! 神谷殿! その暗殺の依頼の件でござるが……』

神谷(リヴァイ)『ああ? (機嫌悪い)』

三村(ミカサ)『その、神谷殿と接触をはかるための囮捜査だった故、本当の暗殺依頼ではござらぬ。騙して悪かったとは思うが、契約を破棄して貰えぬだろうか?』

神谷(リヴァイ)『ちっ………何かおかしいと思ったが。やはりそうだったのか。ほらよ。前金はお前に返していいんだな?』

と、律儀に金を返す神谷であった。帰ろうとする神谷を三村は捕まえて、

三村(ミカサ)『神谷殿! この間の問いにもう一度、答えて下さらぬか?』

神谷(リヴァイ)『あんたもしつこい男だな。同業者かもしれない事件の情報を俺が売ると思うのか?』

と、逃げようとする神谷だが、

神谷(リヴァイ)『ただ、まあ、俺もひとつ気になっている事はある』

三村(ミカサ)『なんでござる?』

神谷(リヴァイ)『俺もその男女の死体をチラリと盗み見したが……普通の殺し方ではないのは確かだな』

三村(ミカサ)『それは拙者も思ったでござる。妙な殺し方でござった』

神谷(リヴァイ)『少なくとも俺達仕置き人は『殺す事』を目的として殺す。しかしあの男女の殺され方は……まるで人をおもちゃにして遊んだような殺し方だったな。嬲り殺しだったのかもしれん』

三村(ミカサ)『つまり怨恨の線でござろうか』

神谷(リヴァイ)『どうだろうな? そこまでは俺も分からんが、ただの殺人ではないような気もする。それ以上の事は分からん。後は自分でどうにかしろ』

と言って、三村のもとを離れる神谷であった。






家長1(アーロン)『目障りなハエが2匹いるようですね』

家長2(エーレン)『ええ。困りましたね。我々の家の事をまだ捜査している捜査官がいるようです』

家長1(アーロン)『感づかれる前に処分した方がいいかも知れませんね。あの例の男に依頼しましょうか』

家長2(エーレン)『それがいいかもしれませんね。仕置き人の彼に依頼しましょうか』

家長1(アーロン)『まだこの研究は世に出す訳にはいかんからな。しかしうちの馬鹿息子が、知らぬ間に薬の一部を持って出ていたとは……服毒自殺でもするつもりだったんだろうか』

家長2(エーレン)『うちの娘の方も、似たような事をしていましたよ。薬の一部を持ち出して駆け落ちするとは……やれやれです。おかげで2人を処分するのに大変な手間がかかってしまった』

家長1(アーロン)『まあいい。跡取りはまた子供を産んでもらえば代用は出来る。若い娘を見繕って……』


カラン………


その会話を盗み聞きしてしまった使用人の女(アニ)だった。

お盆を落としてしまって、へたり込んでしまう。

使用人の女(アニ)『あっ……』

家長2(エーレン)『………聞いていたのかね』

使用人の女(アニ)『も、申し訳ありません!! あの、その………』

家長2(エーレン)『聞かれたからには、ここから出す訳にはいかないな』

家長1(アーロン)『私の姿を見られたのもまずいな。ここにいる事はバレてはいけない』

家長2(エーレン)『何……この娘にも実験に参加させればいいのですよ』

家長1(アーロン)『いいのか? 使っても』

家長2(エーレン)『どうぞお好きに。うちの家の者ですから』

家長1(アーロン)『分かった。では、この薬を飲ませてやろう(牛乳用意)』

きた。お色気シーンその2だ!!!

メイドの恰好の使用人の女(アニ)が羽交い絞めされて、牛乳を飲まされるだけなんだが、これがもう、なんていうか、いろんな意味で酷い。

このシーンだけはアニじゃないと色気でないからってエルヴィン先生が説き伏せたんだよな。

これがなければ、オレが使用人の女の役をやっていたと思うんだけど。

オレが牛乳飲まされても、なあ? 色気足りねえだろ?

使用人の女(アニ)『ん……あっ……(ごっくん)』

音がエロ過ぎる!! ありがとうございます!!!

牛乳飲まされて、口の端から白い液体が零れて、力なく倒れそうになる。

もうこのシーン考えたの誰なんだよ。天才過ぎる。

その後、使用人の女(アニ)のアニは地下へ連れて行かれる。

そして暗転。地下には、薬を飲まされて身体を無理やり強化された「超人」達がトレーニングを積んでいた。

所謂殺戮マシーンだ。ただ命令をこなすだけの、人間兵器。

ちなみにその背景の殺戮マシーン役でオレも出ている。顔にマスクしているけど。

裏方の人間がここでも勢ぞろいだ。アニもここで洗脳される設定なんだ。

洗脳処置を施された使用人の女(アニ)は、今度は女忍者のような格好になる。

目の色が違う感じだ。いつも唸っている野生の獣のような状態だ。

家長2(エーレン)『例の仕置き人を使わなくとも、この娘を使って殺させても良いかもしれないですね』

家長1(アーロン)『ああ、そうだな。試しにやらせてみるか』

家長2(エーレン)『よし。では早速、実験をさせてみよう。奴らを殺して貰えるね?』

使用人の女(アニ)『……(こくり)』






新月の夜。その殺意の気配は突然、三村と斎藤の背後から襲い掛かった。

三村(ミカサ)『また神谷殿でござるか?! いい加減、しつこいで……』

斎藤(ジャン)『ん? 誰だ? あの娘は』

闇の中に浮かび上がる殺戮マシーン。彼女は容赦ない体術を繰り出して三村を襲う!!

三村(ミカサ)『?! この娘は………?!』

あの時の優しい使用人の女だと気づいた三村はすぐさま体勢を整えて逃げ出す。

斎藤(ジャン)『思い出した! 女の方の使用人の娘だな?! なんか様子がおかしいぞ?!』

三村(ミカサ)『で、ござるな……! 目を覚ますでござるよ!』


キンキンキン!!!


短刀で接近戦で食らいつくアニと防戦一方のミカサの対決だ。

ここもすげえ殺陣のシーンなんだよな。観客が「おおお」と食い入るように見ている。

使用人の女(アニ)『殺す……殺す……殺す……殺す!!!!』

完全にバーサーカー状態の彼女に三村は苦戦を強いられる。

刀がはじけ飛んで、今度は体術対体術の戦いになってしまった。

三村(ミカサ)『やむおえん!!! (バッ)』

剣を捨てて拳で対応する。おおおお。剣術だけじゃねえぜ! さすがだ!!

ミカサはアニの攻撃を見事に防いで流して攻撃を食らわない様に逃げる。

そして相手の体力を削って、一発、腹に入れて気絶させる作戦だ。

腹に一発入って、気絶させた。そのアニを体に抱き留めて……

三村(ミカサ)『一体何が起きているでござるか……?』

と困惑する三村。しかしその時、

使用人の女(アニ)『殺す! (開眼)』

三村(ミカサ)『?!』

三村が腹を抑えられて苦しみ始めた。強烈過ぎるハグの攻撃だ!

三村(ミカサ)『うが……うぐっ……あああ!?』

その瞬間、自分の剣を抜いて背後から斎藤がアニを背中から切った。

上から下へ。鮮血のSEが入る。

そしてようやく我に返った使用人の女は、

使用人の女(アニ)『た、助けて……』

三村(ミカサ)『しゃべってはならぬ! すぐに手当てを……』

使用人の女(アニ)『薬を、飲まされて、体が、自由に、出来ずに……ご主人様達が…犯人だ……』

断片的にでも言葉を残そうとして、そして途中で命が果てる使用人の女だった。

躯を胸に抱きながら、三村(ミカサ)の瞳に怒りの炎が宿る。

三村(ミカサ)『断片的にしか分からなかったが、これはあの両家の家長が怪しいと見て良いのでござろうか』

斎藤(ジャン)『薬がどうとか言っていたな。まさか、この娘もそのせいで………』

三村(ミカサ)『…………許さぬ』

そして三村はそう言い捨てて使用人の女を斎藤に預けて、単身、屋敷に乗り込もうとする。

斎藤(ジャン)『おい、ちょっと待て。証拠もないのに乗り込むな! 裏付け捜査をしてからじゃねえと突入は……』

三村(ミカサ)『そんな悠長な事を言っていたら、またこの娘のような被害者が出るかもしれぬ!!』

斎藤(ジャン)『いや、まあそうだけど……』

三村(ミカサ)『拙者一人で行ってくる。斎藤殿は、この娘を弔ってやってくれ』

斎藤(ジャン)『え……あ、ちょっと待て三村ああああ?!』

そして三村は、闇の世界に一人で駆け出した。







そして再び屋敷のシーン。ソファのある一室だった。

契約を交わしているのは神谷本人だった。

神谷(リヴァイ)『今度こそ、本物の暗殺依頼だろうな?』

家長1(アーロン)『え? 本物?』

神谷(リヴァイ)『いや、以前、偽の暗殺依頼が舞い込んできたからな。こちらも信用問題がある。契約はきっちりして貰いたい』

家長1(アーロン)『そうですか。それは気の毒でしたね。ええ、今回は間違いない依頼ですよ。この小蠅のような男を始末して頂きたい』

神谷(リヴァイ)『ならいいが……』

家長2(エーレン)『紅茶のおかわりはいかがですか?』

神谷(リヴァイ)『ああ、頂こう』

神谷(リヴァイ)(ごくり)

家長2(エーレン)『………………』

神谷(リヴァイ)『なんだ? さっきから人の顔をジロジロと』

家長2(エーレン)『いえ、暗殺家業を行う方が、まさかこんなにあっさりとした罠に引っかかるとは思わなくて呆れていただけです』

神谷(リヴァイ)『何……? (グラッ)』

家長2(エーレン)『あの娘が失敗したという報告が来ましたからね。早めに次の矢を投入しないといけないと思いまして』

神谷(リヴァイ)『次の矢……だと? (フラフラ)』

家長2(エーレン)『ええ。あといい実験材料にもなりますし。一石二鳥ですよ』

神谷(リヴァイ)『くっ……貴様ら、まさか……!』

バタン……力なく崩れた神谷(リヴァイ)を再び地下へ運び込む。





暗転。三村が単身乗り込もうとするのを必死に止める斎藤の姿。

斎藤(ジャン)『頼むから突入はまだ待ってくれ! あんた一人で突っ込んでもどうしようもねえんだよ!! あの娘の命を無駄にする気か?!』

三村(ミカサ)『うっ……では一体どうすれば……』

斎藤(ジャン)『強引な手段だが、別の容疑で家宅捜査をかける。何でもいい! 無理難題ふっかけて、警官隊を突入させる! やるとすれば、その方法しかねえ!』

三村(ミカサ)『ではその別の容疑とやらを早くでっちあげるでござるよ!!』

斎藤(ジャン)『無茶言うな!! 今すぐには無理だ!! 他の警官たちに連絡するのにも時間がかかる。とにかく今、お前を一人でいかせられるか!!』

三村(ミカサ)『…………(目が据わっている)』

斎藤(ジャン)『分かってくれたか? じゃあここで大人しく待って……』

三村(ミカサ)『ああ。分かった。斎藤殿を信じるでござるよ……』

斎藤(ジャン)『良かった。じゃあオレは仲間を呼んでくるから、あんたはここで待っていてくれよ』

と、約束を交わして斎藤は闇夜を駆けだした。

残された三村は躯を抱えて、茂みの中に一度隠してしまう。

三村(ミカサ)『………すまなかったでござる』

と彼女に対して呟いて、三村は斎藤とは別方向に1人で駆け出したのだった。





数分後、仲間を連れて斎藤がすぐ戻ってきた。しかしそこには三村がいない。

斎藤(ジャン)『あの嘘つき野郎がああああああ!?』

と、頭抱えてそのまま直進して駆け出すのだった。






屋敷の中に単身突入して、使用人の一人を脅して屋敷の奥へ進んだ三村。

そこには家長1(アーロン)が一人、待ち構えていた。

家長1(アーロン)『ああ、この間の方ですか。またお会いしましたね。何か用でございますか?』

三村(ミカサ)『……………屋敷の中をもう1度、見せて貰いたい』

家長1(アーロン)『ん? 前に警察の方が来られた時に全てお見せしましたが?』

三村(ミカサ)『いや、まだ見せて貰っていない場所がある筈でござる。例えば、地下とか』

家長1(アーロン)『………貴方、見たところただの流浪人ですよね? 今日は警察の方とご一緒ではないんですか? でしたら貴方にはそれを見る権利はないと思いますが』

三村(ミカサ)『やましい物を隠しておるのだろう? 例えば、人の力を限界まで無理やり引っ張り上げる薬とか』

家長1(アーロン)『あなたは本当にうるさい小蠅ですね』

と、困ったように対応する家長だった。

家長1(アーロン)『言いがかりにも程がありますよ。何の証拠があって言っているのか分かりませんが、これ以上ここに居座る気ならば、私にも考えがあります』

と言って家長は合図を鳴らした。

そして雑魚キャラ用心棒の登場だ。裏方が一斉にマスクマンの状態で出てくる。

ユニフォームが筋肉マンのノリに近いけど。さっき地下でトレーニングしていた奴らがここで出てきた事にしているんだ。

家長1(アーロン)『我が家の用心棒です。彼らにあなたを始末して貰いますよ。やってしまい!!!』

という訳で、1対多数の殺陣が始まった!

ここはすぐにやられるんじゃなくて、ある程度三村に攻撃しないといけない。

その上で徐々にやられていく。そんな感じの演出になっている。

用心棒だけで倒せると思っていた家長は次第に焦り出す。

やられたオレ達は邪魔にならない位置で屍役だ。

家長1(アーロン)『ぬう……なんていう事だ。これだけの数をあっさり倒すとは。仕方がない。まだアレは完成はしていないが……彼を呼ぶしかない』

合図と共に、隣の部屋から、神谷が現れた。目の据わった神谷だ。

家長1(アーロン)『用心棒代わりに雇いました。彼にあなたを始末して貰いますよ。神谷さん、客人を殺していいです。これは正当防衛ですから許されます』

神谷(リヴァイ)『…………了解した』

そして神谷はゆっくりと、刀を抜いたのだった。

音楽が変わる。これは「アカイ」とかいう麻雀アニメの「神技」とかいうBGMらしい。

エルヴィン先生がそのアニメが好きらしくて、どうしてもここで使いたいと言ってきたんだ。

静かで優雅な殺陣が始まった。三村はそれを受けながらも嵐の前の静けさのように感じる。

そして殺陣が進むうちに、だんだん表情が崩れていく神谷。

三村(ミカサ)『神谷殿……?』

ミカサもだんだん、その寒気を感じて、遂に……

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

また音楽が変わった。ここから急展開になる!

DS版のSAGA3のラスボス「神戦」の音楽を使用させてもらった。

この曲のイントロ大好きなんだよオレ。途中に流れる雄大なメロディも大好きだ!

三村(ミカサ)『神谷殿!?』

急激に強くなる。神谷もバーサーカー状態に突入だ。

苦しみながら剣を落としてしまって、頭を抱えて、素手での戦いに突入だ!

神谷(リヴァイ)『うおおおおおおおおおお?!』

絶叫。そして突撃。突然の変わりように三村も困惑する。

剣で応戦するものの、避けきれず、捕まる。

剣をお互いに落とした上での、肉弾戦に入った。

途中で神谷(リヴァイ)のタワーブリッジが入った。それを体を捻ってミカサが脱出した時、観客から「うあああ?!」と悲鳴のような動揺が広がった。

ここからはガチで凄い。剣での殺陣とはまた違ったアクション要素満載で、目が離せない。

三村(ミカサ)『なんて、強さだ……!』

防戦一方になる間、ミカサは刀を拾いなおして再び自分の間合いを取ろうとするが……

神谷(リヴァイ)の攻撃が勢い余って本当に刀に当たってしまい、刃が折れた。

三村(ミカサ)『えっ………』

三村(ミカサ)が顔面蒼白になった。まずい! これは打ち合わせにはない!

本当ならここから、剣を拾いなおした三村(ミカサ)側が覚醒する予定なのに。

剣がない状態では、覚醒のしょうがない。

呆然とするミカサ。アドリブで乗り切らないといけないけど、頭の中が真っ白になっているようだ。

神谷(リヴァイ)も青ざめている。散々寸止めの練習をしたのに、本番でやらかしてしまった顔だ。

だからオレは観客に聞こえない声で言った。

雑魚(エレン)『戦え……まだ、勝機はある……(小声)』

三村(ミカサ)『!』

雑魚(エレン)『ここに、ある!』

幸い、オレの傍に神谷側の刀が落ちていた。

三村(ミカサ)『で、でも……それだとラストの剣戟が無くなる…(小声)』

雑魚(エレン)『大丈夫だ! 先生を信じろ……いや、オレを信じろ! (小声)』

ミカサは迷っていたようだけど、剣を再び拾いなおした。

本当はラストでまた刀と刀の殺陣に入る予定だったんだけど。

もう仕方がねえ。素手と刀でやりあうしかねえ!

意図を察したリヴァイ先生は小さく頷いた。このままいくらしい。

ぶっつけ本番だ。刀と刀、体術対体術の殺陣は散々練習したけど、刀対体術は練習にない。

もうあとは2人の感性に任せてしまうしかない。完全アドリブの殺陣だ。

音楽が切り替わった。ここからはSAGA2の方の「死闘の果てに」を使う。

ゲーム音楽ばっかりですまん。この辺は完全にオレの趣味だ。

完全アドリブの殺陣だけど、大丈夫だ。2人の息はここ数日間で合わせられるようになっている。

だけどここでだんだん強くなる三村の脳裏に昔の記憶が蘇り始める。

バックスクリーンでその映像が流れる。舞台は暗くなって一時停止だ。

幕末の世を駆ける。火村抜刀斎の隣で、一緒に敵と戦う三村の姿だ。

口パクで会話する2人の映像が流れる。この時のるろ剣の方の火村剣心役はオレがやっている。

頬に十字傷を持つ伝説の男と何か話している。そんなイメージだ。

そしてまた時が動き出す。覚醒した三村は、刀を抜かないまま、鞘を我突のように突き出して、神谷の腹に攻撃を当てた。

本当ならここは逆刃剣で対応する筈だったけど、神谷の剣だと殺しちまうから鞘でやるしかなかった。

そして一瞬だけ正気に戻った神谷が頭を抱えながら起き上る。

神谷(リヴァイ)『くっ……俺は一体、何を……』

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい……(ヨロヨロ)ま、まさか貴様! あの伝説の火村抜刀斎……?!』

三村の強さを目の当たりにしてそう疑い出すが、

三村(ミカサ)『いいや? よく間違われるでござるが人違いでござるよ。拙者はあの方の足元にも及ばない』

と、少し懐かしむようにしながら三村は言う。

三村(ミカサ)『ただもしも、ここに火村殿がいたらきっと、同じことをしたと思うでござる。神妙にお縄に頂戴しろ(じりじり)』

家長1(アーロン)『か、神谷! 時間を稼げ!! 君は仕置き人だろう?! 私を守るんだ!!! 奴を殺せ!!!』

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

殺せ! という言葉に反応して再び神谷が苦しみだした。

しかしその直後、折れた刃を拾って自分で握って、家長1(アーロン)を後ろから羽交い絞めして固定した。

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい?!』

神谷(リヴァイ)『俺ごと、殺せ……!』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『早く! こいつごと、俺を殺せ!!!』

家長1(アーロン)『な、何を……君は金で何でも請け負うんじゃなかったのか?!』

神谷(リヴァイ)『黙れ!! これは俺の誇りの問題だ……今すぐ…俺を……うっ……!』

苦痛に顔を歪め始める神谷に三村は動けない。

それを悟ると、神谷は自ら依頼人ごと、自分の腹を貫いた。

三村(ミカサ)『神谷殿……!!!!!』

神谷(リヴァイ)『ぐふっ……(吐血)』

三村(ミカサ)『しっかりしろ! 今すぐ手当を……』

神谷(リヴァイ)『三村……』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『出来るならもう一度……お前とは、素面の時に、剣を交えて見たかった………(がくり)』

三村(ミカサ)『神谷殿!!!』

その後、突然の警官の突入が始まった。

斎藤(ジャン)がすぐさま三村(ミカサ)に駆け寄り、

斎藤(ジャン)『大丈夫か三村!!!』

三村(ミカサ)『斎藤殿! 神谷殿が……!!!』

斎藤(ジャン)『くっ……遅かったか。すまねえ。もう一人の家長の方は包囲網を敷いてさっき、捉えたよ。あの娘の口の中に残っていた薬の成分が証拠になった。薬事法違反ってやつか? 逮捕状が出せたから、もう心配いらねえ。屋敷の中も警察で押さえられるから余罪も出せるだろう』

三村(ミカサ)『手間をかけさせたでござるな…すまなかったでござる』

斎藤(ジャン)『いや、もうしょうがねえよ。とりあえず、屋敷を出るぞ』

そして暗転。事件のエピローグへ移動する。




墓が二つ。神谷の墓とあの娘の墓を斎藤の金で建てて貰い、その墓の前で2人は話す。

斎藤(ジャン)『あの薬は人間の体というより、頭の意識を限界まで高める薬だったらしい』

三村(ミカサ)『意識を……』

斎藤(ジャン)『いわゆる、火事場の馬鹿力を誰でも意図的に作り出せるようにする。そういう薬の研究を進めていたんだそうだ』

三村(ミカサ)『一体、何故そんな研究を……』

斎藤(ジャン)『次の世の為に必要だと言っていた。いつかくるべき未来の時代の為に必要な研究だと、奴は主張していたよ。外国と戦争する時代が遠くない未来に必ずやってくるから、富国強兵が必要になると。その時の為に、研究していたと自白した』

三村(ミカサ)『外国と、でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。オレにはちょっと俄かには信じられなかったが……どうもこの事件は、ここだけが根っこじゃねえみてえだ。奴以外にも、似たような研究をしている研究者が国中に居るらしい。家長同士が不仲を装っていたのは、協力体制を世間に悟られない為と、もし事が露見した場合はどちらかが逃げて、研究を続けるためのものだったらしい』

三村(ミカサ)『……そうでござったか』

斎藤(ジャン)『胸糞悪いけど、まだこれで終わりじゃねえらしいよ。はあ、何だってこんな面倒臭い事が起きるんだろうな。オレはただ、安定した暮らしがしたくて警察官になっただけだってのに……』

三村(ミカサ)『………まだ、本当の意味では戦いは終わってないのでござるな』

斎藤(ジャン)『ああ?』

三村(ミカサ)『何でもないでござる。お疲れ様でござったな。斎藤殿』

斎藤(ジャン)『ああ。疲れたよ。明日は休みだからゆっくり休みたい……と言いたいところだが』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『あんた、今持っている刀、それ、神谷の持っていた物じゃねえか?』

三村(ミカサ)『ギクギク』

斎藤(ジャン)『人を切れる方の刀だったら、廃刀令に適用するぜ? という訳で没収!!!』

三村(ミカサ)『か、固い事言わないで欲しいでござるよ! これは神谷殿の遺留品!! 預かっているだけでござる!!』

斎藤(ジャン)『ダメに決まってるだろうが! あ、こらあああ!!!』


と、また追いかけっこが始まって、逃げ出す三村。

斎藤を撒いて、舞台に一人残って、天を仰ぐ。


三村(ミカサ)『富国強兵………の時代か』


と、ぽつりと未来を憂う様に呟いて、神谷と娘の死を一人、悼む三村。

三村(ミカサ)は涙を隠す様に俯いて、そして顔をあげて、また新たな旅に出るのであった。











ミカサが舞台からはけて、終わった。

さあ、ここからはエンドロールだ。皆、一気にいくぞ!!!

斎藤(ジャン)が再び舞台に出て、マイクのスタンドの前に立った。

エンディング曲は『HEART OF SWORD -夜明け前-』だ。

ジャンが司会をしながらメンバーを紹介していく。

恒例のイントロが流れた後は、ノリノリで紹介だ!

ジャン『まずは大道具チーフ! エルヴィン先生!!!』

10秒くらいの持ち時間で、音楽に合わせて適当に踊る。エルヴィン先生、格好いいな!

すっげえ様になってる。ダンスも上手いんだ。すげえ!

ジャン『次は、大道具三人衆! エレン! アルミン! マルコ!』

三人一片に舞台に出る。拍手喝采の中、ダンスを踊るって言うのは結構恥ずかしいなコレ!

アルミンもマルコもちょっと照れてるけど、10秒くらい踊ったら、次にバトンタッチだ。

ジャン『ロミオとジュリエット! アルミン! マリーナ!』

アルミンだけ残ってマリーナが追加して、2人でお尻を合わせて踊ってる。かわええ!

ジャン『音響・衣装! ガーネット! マリーナ!』

そして今度はアルミンが抜けてガーネット先輩が入る。

2人でくるくる回ってる。すげえ。バレリーナみたいだ。

ジャン『照明! スカーレット! キーヤン! カジカジ!』

照明メンバーと入れ替わる。スカーレット先輩がキーヤンとカジとのしていた。ひでえ(笑)。

ジャン『噂の商人! キーヤン! カジカジ!』

スカーレット先輩だけはけて、2人で殺陣をする。あ、キーヤンが負けた。

ジャン『両家の家長! アーロン! エーレン!』

悪役二人がやってきた。2人で一緒にブレイクダンスやりだした。すげえな!

ジャン『斎藤雀! オレ! ジャン!』

ちょっと笑いが起きた。ジャンがその場で踊ってみせた。

ジャン『神谷赤司 リヴァイ先生!』

きゃああああああ!!! 女子の悲鳴が体育館の天井を貫く勢いで轟いた。

リヴァイ先生、ちょっと赤くなってる。やっぱり恥ずかしいんだな。ぷぷっ。

ジャン『ラスト! 三村万心! ミカサ!』

ミカサがぴょんぴょん跳ねて出てきた。踊るのか? 踊らないのか?

あ、盆踊り始めた。なんか違うだろそれwww

アニ『ちょっと、一人忘れてない?』

ジャン『あ、やっべ! そうだった! お色気ヒロイン! 使用人の女! アニ!』

アニ『お色気は余計だから! (ゴス!)』

ジャンが殴られた。会場がまた、笑いに包まれる。

ジャン『以上をもちまして、演劇部の公演『侍恋歌ーサムライレンカー』の方を終了させて頂きます。ご来場の皆様、本日は誠に観劇ありがとうございました!!!』

一同『『『ありがとうございました!!!!!!』』』

わーわーわー!

パチパチパチ………!!

拍手喝采だった。良かった。無事に最後まで乗り切った。

一回だけ危ないところがあったけど、乗り切れてよかった。本当に。

ジャン『皆、撤収!!!』

一同『『『撤収!!!』』』

ショッカーみたいなノリで撤収作業を開始する。

会場の外に出て、お客さんを見送りしないといけない。いそげえええ!

ジャン達と衣装はそのままで第一体育館の入り口まで出て、アーチを作る。

すると、すぐリヴァイ先生のところで渋滞が出来て人が出れない状態になってきたので、リヴァイ先生は一番最後の列に立って貰う事になった。

OB「リヴァイ先生! いきなり脱いでびびったっすよ! 腹筋顕在っすね!」

リヴァイ「ああ? アレを決めたのは俺じゃない。エルヴィン先生だ」

OG「だと思ったwwww超ウケたよwwww目の保養になったあwww」

リヴァイ「まあ、それならいいんだが。ほら、早く出ろ! つっかえるだろうが!」

OG「後でまたメールするね~リヴァイ先生ー!」

と、次から次へと卒業生がリヴァイ先生にコメントを残していった。

いや、本当、リヴァイ先生の人気が凄すぎてびびる。でも、リヴァイ先生自身は照れくさそうだった。

OB2「リヴァイ先生! 遂に舞台に出たんですね! あんなに嫌がってたのにどういう風の吹き回しっすか?!」

リヴァイ「嵌められたんだよ。エルヴィン先生に。無理やり出演決定された」

OB3「だと思ったwwwwでも似合ってましたよ先生!」

リヴァイ「ありがとう。でももう2度とせん」

OB4「そんな事言わず、来年も出て下さいよー」

リヴァイ「遠慮しておく。ほら、早く移動しろ! 邪魔になるだろうが!」

OG2「リヴァイ先生ー! 抱いてー!」

リヴァイ「今、汗臭いだから近寄るな! ハグはサービスしてねえぞ!」

OG3「ずるいー私も先生の匂い嗅ぎたいわwwww」

リヴァイ「勝手に嗅ぐんじゃない! 急いで出ろ!」

OG4「また後でメールするね~!」

と、まあひっきりなしに声をかけられる。本当にすげえ。

リヴァイ先生の慕われ方が良く分かる。皆、ニコニコしながらやってくるんだ。

OG5「ねえねえ、リヴァイ先生。まだ結婚してないの? ハンジ先生は?」

リヴァイ「うぐっ……(青ざめ)」

ぎゃあああ! 今、その事は触れないであげてえええ!

と、叫びそうになったオレだけど、あえて黙る事にする。余計な事は言えない。

OG6「おや? その様子だとまだっぽい? まだ結婚してないの? 先生」

リヴァイ「うるさい。ハンジとはそういうのじゃないって何度も……」

OG7「またまた~嘘ばっかり~素直になりなよリヴァイ先生~♪」

OG8「っていうか、うちらもうとっくに結婚していると思ってたんだけど。まだなんだ? うちらの方が先に結婚しちゃったけどwww」

OG9「教え子に先越された気持ちってどんな感じ? ん?」

うわあああ酷いOG達だ。フルボッコ過ぎる。

リヴァイ「ああ、お前ら結婚したのか」

OG9「子供ももういるよ。2人、こっちは1人だけど」

OG8「早く子供持ちなよ先生もー子供って可愛いよ?」

リヴァイ「はー……(遠い目)」

大丈夫かな。リヴァイ先生。なんかいろいろ考え込んでいるみてえだ。

リヴァイ「そりゃ俺も出来るだったら自分の子供が欲しいけどな……」

OG9「おお? じゃあ早く結婚しなきゃ。ハンジ先生、年いくつだったけ?」

リヴァイ「36歳だ」

OG9「じゃあ急がないとヤバいじゃん! さっさとプロポーズしなよおお」

リヴァイ「あーもう、お前ら、その話は後にしろ! 後がつかえる!」

と、また追い出していく。

OB5「リヴァイ先生ー! 相変わらず壁伝い出勤しているんですか?」

リヴァイ「今はさすがにしてねえ。先生達に怒られたからな」

OB5「あ、そうなんだwwwいや、オレ、アレ好きだったんですけどねwwww窓から入ってくるのwww」

リヴァイ「あれは遅刻しそうになった時の裏ワザだ。グラウンドから直接、壁伝って窓から入った方が早いが、やはり危ないからやめろと、他の先生達に怒られたんだよ」

OB6「確かに。危ないけど、3階の教室の窓から外から入ってくるのってリヴァイ先生しか出来ねえっすよねwwww」

なんじゃそりゃ?! そんな事してたのかリヴァイ先生。

エレン「………(じと目)」

リヴァイ「昔の事だ」

と、照れているリヴァイ先生だった。

OB5「一回、ヘリコプター出勤もあったよな? ジャッキーチュンみてえにして学校に来たことあったけど、アレは爆笑したわwwww」

OB6「あったあったwwwwアレも後で怒られたんでしたっけ?」

リヴァイ「怒られたな。いや、確かにヘリコプターで出勤したらいけないというルールはないが、常識を考えろと言われたよ」

えええええ。リヴァイ先生、若い頃いろいろやらかしているんだな。

OB6「でも見ている分には楽しかったっすよwwwアクションスターみたいでwwww」

リヴァイ「そうか。もう忘れてくれ。ほら、早く移動しろ!」

と、またまた追い出していく。

これもう、キリねえんじゃねえか? どんどん人が詰まってきたぞ。

エレン「リヴァイ先生、もう先生だけ抜けませんか? キリないですよ」

リヴァイ「ああ。そうだな。俺は先に上がらせて貰おう。着替えてきていいか?」

エレン「はい。OBOGの方々には申し訳ないけど、これ以上詰まるとまずいです」

リヴァイ「分かった。後の事は頼む。お先に」

という訳でリヴァイ先生が混雑避けの為に先にアーチから離れた。

だけど、途中でやっぱりOBOGに捕まって、人だかりが出来てしまった。

あーあ。ダメだこりゃ。暫くは離して貰えそうにないなアレ。

グリシャ「お疲れさん。エレン」

エレン「あ、父さん!」

ミカサの母「面白かったわよ。すごいわねえ。ミカサ、あんなに頑張っているとこを見れるとは思わなかったわ」

グリシャ「ああ。エレンの女装姿も可愛かったぞ」

エレン「そ、それは言わないでくれ、父さん……」

ちょっと複雑な心境になるからな。母さんそっくりになるし。

グリシャ「私達はこの後、2人でぶらぶらしてくるが、クラスの方を見てもいいのかな?」

エレン「んーコスプレ写真館だから父さん達は楽しめないかもしれないぜ?」

グリシャ「そんな事はないよ。じゃあ後で寄らせて貰うね。エレン、後片付けも頑張って」

エレン「ああ! ありがとうな! 父さんも!」

という訳で親父達も見送ったら、今度はミカサの方がこっちに寄ってきた。

ミカサは入口出てすぐのところに居たんだけど、オレの方が気になって来たみたいだ。

ミカサ「エレン。横に立っていい?」

エレン「おう。いいぞ」

ミカサ「あの時は、ありがとう」

エレン「ん? あの時?」

ミカサ「小道具が折れた時。まさか、あの程度の衝撃で刃が外れるとは思わなかった」

エレン「んーやっぱり本番は気合の入れようが違うから、リヴァイ先生も手加減間違えたんじゃねえのかな」

ミカサ「それもある。でも、私自身も本気で殺陣をやったから、その衝撃に耐えきれなかったのかもしれない」

エレン「かもな」

ミカサ「エレンが咄嗟に指示をしてくれなかったら、きっとまた、私は入学式の二の舞をしていたと思う。本当に、本当にありがとう……」

エレン「いいって。でもこれで少しは舞台恐怖症は克服出来たんじゃねえか?」

ミカサ「うん。パニックになりそうになったら、エレンを思い出す事にする。そうすればもう、私は何も怖くない」

おお。いい感じに克服出来たみてえだな。良かった良かった。

ジャン「そろそろ舞台に戻るぞ! 撤収作業再開だ!!」

一同「「「はい!!!」」」

という訳である程度お客がはけてから舞台に戻って後片付けに戻った。

そしてあっという間に次の演目「英語劇 風と共に去りぬ」の劇が始まった。

オレ、この劇の内容を全く知らないんだよな。昔の映画が元らしいけど、どんな話なんだろ?

ついでだから、見て行こうかな。時間はあるし。

制服に着替えたオレ達はそのまま会場の観客席に残って英語劇を見る事にした。

こっちは独立戦争の時代のアメリカを舞台にした恋愛劇だ。

細かいやりとりは分からないけど、英語はアルミンとミカサが得意だから、分からない時は解説して貰う。

あらすじを説明すると、スカーレットというモテモテ女性がアシュレーという美青年にだけはひっそり恋をしていたんだけど、振られちゃって、腹いせにアシュレーの嫁、メラニーのお兄さんと結婚しちゃうんだよな。

んでその様子をいやらしく傍観して見ていたのが、悪漢(ピカロ)の異名を持つレット・バトラー。

スカーレット・オハラとレット・バトラーの意地っ張りな恋愛模様がメインの恋愛劇だった。

戦争映画でもあるようで、元の映画は3時間くらいあるのかな? 長編大作らしい。

だからこの劇では勿論、やるのは途中までだ。

スカーレット側の南部が戦争に負けて、ボロボロになってスカーレットが実家のタラに帰ってくるけど。

絶望しかない状況で、スカーレットは土を食って誓うんだ。

もう、二度と飢えたりしないーと。

その名演技にオレは自然と涙を流していた。

やべえ! なんか思っていたより格好いい演劇だったな!

これ続きが気になるなあ。後でレンタルして観てみようかな。

ミカサ「素晴らしい劇だった……」

エレン「意外と面白かったよな。これ、相当古い映画が元らしいけど」

ミカサ「うん。名作映画によく名前が列挙されている。でも私も見たのは初めてだった」

エレン「そうかー今度、借りて一緒に続き見てみるか」

ミカサ「う、うん……(照れる)」

そんな訳で時間が過ぎて、

ミカサ「あ、そろそろコスプレ写真館の方に戻らないといけない」

エレン「そうか。午後の写真撮影会の担当だったもんな」

ミカサ「うん。アニと一緒に写る。エレンはどうする?」

エレン「んーどうしようかなー」

と、考えていたその時、

アルミン「でも、この後、吹奏楽部がゲーム音楽やるって書いてあるよ? エレン、聞かなくていいの?」

と、アルミンが言ってきたので心が揺れた。

ミカサ「では、エレンはこのままアルミンと一緒にいるといい。私はアニと教室に戻るので」

エレン「いいのか? 悪いな。何か」

ミカサ「ううん。エレンも楽しめる方がいい。また後で合流しよう」

という訳で1回ミカサとは離れて、オレはそのまま第一体育館に残る事にした。

吹奏楽部の準備が整った。演目は詳しくは書いてない。お楽しみらしい。

音楽のダリス先生が指揮者となって壇上に上がった。

始まった。どの音楽から始まるんだろう。


チャッチャッチャラチャッタ! タ!


いきなりスペシャルマリオきたー!!!!!!

1-1の音楽じゃねえか! うわあ。これ、マリオ好きには堪らねえぜ!



タッタタータッタタララ~♪


やべえ。ゲームしたくなってきた。この音楽を聴いているとついそう思う。

1-1のマリオのゲーム画面を思い出しながら聞いていると、

途中で突然変調して、あ、スターを取った後のマリオの音楽になった!

でも、最後はゲームオーバーになった。酷いwwww

面白いなあ。吹奏楽でもゲーム音楽って出来るんだ。面白い発見だな。

そんな訳で次は、ファンタスティックファンタジーの名曲が来た。

ビッグブリッジの死闘だ! このイントロは熱い!

うわああ速弾きすげえええ! この曲、すげえ大変な曲だぞ?!

リコーダー演奏者もいるんだ。ソロパートの部分が神業だ。

相当練習したんだろうな。わっふ~♪のところが素晴らしい!

その次は、うわ! また熱い曲が来た! 聖剣シリーズの子午線の祀りだああああ!!!

イントロ熱い曲が連荘できた。すげええ!

しかも2と3を繋げて来た。なんだこの圧倒的な演奏力は!

ああもう、興奮し過ぎだオレ。知ってる曲だとついついこうなるよな。

そして今度はセルタの伝説のエポナのテーマだ。

あ、ちょっと落ち着くな。これ聞くとしんみりする。

で、最後はなんと、おおおお! SAGAシリーズのステスロスのテーマとラスボスメドレーだった。

アレンジ加えてあるところもあるけど、すげえ格好いい!!

うわあああもう、何か興奮しか出来ねえ! 残って正解だった!!

あっという間に50分間の演奏が終わって、オレ、もう、お腹いっぱいになっていた。

アルミン「結構いい選曲だったねえ。すごいねえ。子午線の祀りって、相当難しい曲なんじゃないのかな」

エレン「ああ。あの速弾きのところ、神業だったな。ビックブリッジも凄かったけど」

アルミン「うん。いやーこの選曲した人と友達になりたいくらいだね!」

と、オレとアルミンは大満足で吹奏楽部の演奏を聞き終えたのだった。

あ、遂に最後の演目だ。バンド演奏が始まるようだ。

ミカサとアニもこっちに戻って来た。やっぱりラストは皆で観たいよな。

リヴァイ先生もようやく着替えてOBOGの輪から解放されてこっちに来れたようだ。

リヴァイ「ふーやっとあいつらが離してくれた。やれやれ」

エレン「あ、リヴァイ先生もバンド演奏見るんですか?」

リヴァイ「最後くらいは、観たいと思ってな」

という訳で、いよいよラストの演目が始まる。

最初の曲は何だろうな。

ボーカル『女々しくて女々しくて女々しくて~つらいよおおおおおおお!!!!!』

リヴァイ「?!」

あ、女々しくてだ。

ヤバい。この曲、今、1番リヴァイ先生に聞かせちゃいけない曲じゃねえか!!!

でも会場はノリノリだった。掴みの曲としては最高だけど、リヴァイ先生へのダメージがぱねえ!

顔隠して落ち込んでいる。あーあ。運がねえなもう。

そんな感じで、

1.女々しくて シルバーボンバー

2.Let it Go~ありのままで~

3.ラブラドール・レトリバー AKB49

4.奏(かなで) スキマノスイッチ

5.小さな恋の歌 モンゴル880

6.secret base ~君がくれたもの~ ZON

7.サラバ! 愛しき悲しみたちよ モモクロ

8.空と君のあいだに ミユキ・ナカジマ

9.GET WILD  TN NETWORK

といろいろなジャンルがごちゃ混ぜで演奏された。

古いのもさり気に入っているのはきっと、保護者向けの選曲なんだろう。

そんな訳でラストの曲まであっという間だった。

ラストは何がくるんだろう。

ボーカル『えー最後は、この曲を選びました。皆、サビだけなら知っているかもしれません。ミスターチャイルドの曲の中ではマイナーかもしれませんが、聞いて下さい。ミスターチャイルドで『掌(てのひら)』です」

あ、これはアレだ。にこにこ動画でネタMADでも有名になったあの曲だ。

すげえいい曲なんだよな。元ネタ気になって探して聞いたことある。

ボーカル『て~のひらに~きざまれた~いびつな~きょ~くせん~』

ボーカル『なんらかの~い~み~をもって~うまれてきたあかし~』

ボーカル『ぼ~くらなら~もとめあう~~さびしいどうぶつ~』

ボーカル『かたをよせるようにして~あいを~うあっている~』

あ、ちょっと間違えた。緊張しているみたいだ。

歌は正直言えばジャンやキーヤンの方が上手いけど、でも、一生懸命歌ってて、凄く伝わる。

この歌が好きなんだろうな。そういう思いがしんみりと伝わってくるんだ。

ボーカル『だいたはずがつきとばして~』

ボーカル『つつむはずがきりりきざんで~』

ボーカル『なでるつもりがひっかいて! また愛もとめるぅぅ』

ボーカル『わかりあえたふりしたって~』

ボーカル『ぼくらはちがった個体で~』

ボーカル『だけどひとつになりたくて! 暗闇で! もがいて! もがいているぅぅぅ』

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生が隣で聞き入っているのが分かる。

何だろ。共感する部分があるのかな。

観客も音楽に合わせて左右に揺れている。いい感じのラストソングだ。

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

サブボーカル『暮らしていたい場所~』

ボーカル『認め合うことができればさ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『もちろんなげやりじゃなくて~』

サブボーカル『あいしているひと~』

ボーカル『みとめあうことができるから~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

サブボーカル『夢見てること~』

ボーカル『なにを夢見てもいいよ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

サブボーカル『信じてるもの~』

ボーカル『何を信じてもいいよ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『暮らしていたい場所~』

ボーカル『価値観も理念も宗教もさ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『あいしているひと~』

ボーカル『認め合うことができるから~♪』


それで素晴らしい!


ボーカル『キスしながら唾をはいて~』

ボーカル『なめるつもりがかみついて~』

ボーカル『着せた筈がひきさいて~』

ボーカル『また愛~求める~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

ボーカル『認め合えばそれでいいよ~』

ボーカル『それだけが僕らの前の!』

ボーカル『くらやみを~やさしく~てらしてえええええええ♪』

ボーカル『ひかりを~ふらして~あたえてくれるううううう♪』

あ、何か最後、ボーカルさん赤くなった。間違えたっぽいな。

どこ間違えたのか分からんけど、でもまあ細かい事は気にしない。

会場はすげえ盛り上がって、拍手喝采だった。

リヴァイ先生も拍手していた。いい歌だったなあ。

ミカサ「イイ曲。ラストに相応しい曲だった」

エレン「ああ。確かにな。いい曲だったぜ」

リヴァイ「……ひとつにならなくていい、か」

エレン「ん?」

何か今、言ったのかな。リヴァイ先生。

リヴァイ「いや、何でもない。この後は、グラウンドに移動して最後のキャンプファイヤーだ。保護者の差し入れもある。クラスの片づけが終わったら、皆でつまみながら閉会式やるぞ」

エレン「はーい」

という訳で皆ぞろぞろ退出して、クラスの片づけを終わらせたらグラウンドに集まって、キャンプファイヤーが始まった。

飲み物を紙コップで受け取って、皆で「お疲れ様ー」と口々に言い合っている。

校長先生の挨拶が終わって、あとは自由気ままにしゃべっている。

残ったカレーとかもこの時間に食べてしまうらしい。残したら処分が大変だもんな。

キリ悪いけどここまで。ではまたノシ

リヴァイ「………(もぐもぐ)」

あ、残ったカレーをリヴァイ先生がかきこんでいる。

エレン「お疲れ様でした。リヴァイ先生」

リヴァイ「ああ。昼はオルオが持たせてくれた福神漬けしか食ってなかったからな。さすがに腹が減った」

エレン「そういえばそうでしたね。リヴァイ先生は後夜祭の後はどうされるんですか?」

リヴァイ「あー3年の打ち上げだな。………ハンジの組と合同でやる約束だったがどうなるんだろうな」

と、ちょっと複雑そうな顔をするリヴァイ先生だった。

リヴァイ「もしかしたら気が変わって保護者の方に出るかもしれんな。あいつの事だし」

エレン「そうですか……」

リヴァイ「演劇部の方はどうする? 明日は振り替え休日だし、明日に回してもいいと思うが」

エレン「あージャン次第じゃないですかね。おい! ジャン!」

ジャン「あ? 呼んだか?」

エレン「演劇部の打ち上げどうすんだ?」

ジャン「あーそういや考えてなかったな。でもクラスの方の打ち上げと被ったらダメだよな。ユミルに聞いてくるわ」

と言ってジャンがユミルの方に駆け寄る。オレもついでについていくと、

ユミル(ぐったり)

ベルトルト(ぐったり)

ジャン「おーい、ユミルーって、死んでるじゃねえか!」

エレン「まるで屍のようだ」

ユミル「ああ? 何の用だ(機嫌悪い)」

ジャン「いや、クラスの打ち上げどうすんのかなって」

ユミル「今日はもう無理……明日にしてくれ。このままここで寝たい……(ぐったり)」

ベルトルト「僕も……(ぐったり)」

と、実行委員の2人は死にかけていた。よほどハードな2日間だったらしい。

ユミル「全く……こんなに文化委員が神経遣う委員だと知ってりゃ絶対なってなかった」

ベルトルト「ううーん。中学の時より忙しかった。やっぱり高校になると本格的になるんだね」

ユミル「もう暫く仕事せんぞ! 遊び倒してやる!!」

と、文化委員の2人がブツブツ言っていた。

どうやらクラスの方の打ち上げは明日に回すらしい。

ジャン「だったら演劇部の方の打ち上げは今日やっちまった方がいいかな」

エレン「そうだろうな。んじゃ、皆にメールで連絡してくれ」

ジャン「あいよ」

と、部長職が板についてきたジャンが皆に連絡した。

リヴァイ「おい、お前らもカレー食うのを手伝え」

リヴァイ先生がこっちに来た。2回連続か。まあ仕方がないか。

ジャンと一緒にカレーを食っていたら、ミカサがこっちに逃げて来た。

あれ? アニも一緒に逃げて来た。追いかけられている様子だ。

ミカサ「エレン! 助けて!」

エレン「どうした?!」

アニ「ジャンも助けて!」

ジャン「なんでオレ?!」

女子生徒「ミカサさん! サイン下さい!」

女子生徒2「写真お願いします!!」

女子生徒3「握手もお願いします!!」

男子生徒「アニさん! お願いします! 握手お願いします!!」

男子生徒2「お願いします!」

男子生徒3「罵倒でも構いません!!」

なんかミカサに新規の女子ファンとアニにも変な男子ファンがついちまったようだ。

ジャン「あーそういうのはダメダメ! もう文化祭は終わったんだから」

一同「「「えー!」」」

ジャン「散れ! 散らないとカレーぶっかけるぞ!!」

一同はしゅーんとなって去って行った。

ミカサ「………何故か女子にもモテるようになってしまった」

エレン「だろうな。男装ミカサにもファンがついたみたいだな」

ミカサ「ううう……嬉しいような悲しいような」

エレン「いいじゃねえか。オレの自慢の彼女だよ」

ミカサ(ポッ)

あ、また赤くなった。可愛い。

ミカサって結構、簡単に頬が赤くなるんだよな。ふふっ。

ミカサ「エレン。打ち上げはどこでやるの?」

エレン「さあ? ジャン、どこでやるんだよ」

ジャン「まだ決めてねえ。リヴァイ先生かエルヴィン先生にも来てもらった方が遅くまで遊べるけど、どうする?」

エレン「リヴァイ先生もエルヴィン先生も3年の方の打ち上げあるからそっちが優先だと思うけど、頼めば合同でやってくれるんじゃねえの?」

ジャン「まあ、その方が3年の先輩達とも話せるし、オレ達にとってはそれがいいけど」

ジャン「ちょっと確認してくる」

と、ジャンが移動していった。で、すぐ戻ってきて、

ジャン「カラオケで、部屋を別に取って合同でやればいいって話になった。3年に便乗でいいよな?」

エレン「ああ。いいと思うぜ」

ジャン「んじゃ、後夜祭終わったらすぐそっちに合流って事でいいよな」

と、ジャンがすっかり仕切り役だ。

マルコ「ふふ……部長役が板についてきたみたいだね」

マルコとアルミンもこっちに気づいて寄って来た。

ジャン「ああ?! んなわけねえよ。オレ、リーダータイプじゃねえし」

エレン「リヴァイ先生と同じ事言ってんな」

ジャン「あ? そうか?」

エレン「向いてねえって言ってる奴に限って、向いてる評価を周りから受けるんだから不思議だよな」

アルミン「言えてる。でも大体そんなもんだよね」

と、言うとジャンが物凄く複雑そうな顔をした。

あーこの瞬間の顔、写真に撮って見せてやりてえ。ジャン自身に。

でも、気づいてないんだろうな。ジャン自身も。そういう自分に。

エレン「あ……思い出した」

と、その時、オレはエルヴィン先生に個人的な用事があった事を思い出した。

エレン「ミカサ、悪い。ちょっとエルヴィン先生のところに行ってくる」

ミカサ「ん? 私はついていってはダメ?」

エレン「いや、ついてきてもいいけど。ついてくる?」

ミカサ「うん」

エレン「じゃあ一緒に探すか」

アルミン「エルヴィン先生に用事なの? あっちの方でピクシス先生と話しているよ」

エレン「サンキュ、アルミン」

という訳で、エルヴィン先生のところに移動すると、

エルヴィン「やあエレン。ミカサ。お疲れ様」

エレン「お疲れ様でした。あの、エルヴィン先生、この写真、どう思います?」

と、言ってオレはこの間、無理やり撮ったリヴァイ先生の写真をエルヴィン先生に見せてみた。

ピクシス先生も一緒に覗いて顔を緩ませた。

ピクシス「いい写真じゃの!」

エルヴィン「どれどれ……ぷ! これは傑作だね。いつ撮ったの?」

エレン「文化祭1日目が終わって仕込みが終わった直後、リヴァイ先生と話す機会があったんで、その時に」

エルヴィン「いいねー。こういう顔が崩れたリヴァイは珍しい。画像くれる?」

エレン「あ、はい。それは勿論、いいんですけど。あの、エルヴィン先生から見たら、この画像をもし、ネット上で公開したら、どう思います?」

エルヴィン「ん? それはどういう意味かな?」

オレは頭の中に描いた計画の一部をエルヴィン先生に慎重に話してみる事にした。

エレン「単刀直入に言えば、人気が上がるか、下がるか。エルヴィン先生ならどっちに賭けます?」

エルヴィン「それだったら、上がる方に10万賭けちゃうね。この程度の変顔だったら、アイドルでもやってるよ」

エレン「そうっすかーじゃあ、この写真は失敗ですね」

うーん。残念だ。失敗だ。

エルヴィン「失敗? どういう事かな」

エレン「いやー……余計なお節介かなーとも思ったんですけど」

と、一応、前置きしてから、オレは続けた。

エレン「リヴァイ先生の人気をどうにかして「下げる」方法ってないかなって、ちょっと考えていて」

エルヴィン「ふむ。何故、そんな事を?」

エレン「オレ、リヴァイ先生とこの間話した時に、思ったんですよ」

と、エルヴィン先生にこの間の件をざっと話した上で意見を述べてみた。

エレン「今のリヴァイ先生の異様な人気って、どう考えても「美化し過ぎ」な面が強いというか、ファンの子達は、本当のリヴァイ先生じゃなくて、美化されたリヴァイ先生に対して、脳内で勝手にアイドル化している部分もあるんじゃないかって、思っちまって」

ミカサ「確かに。皆、リヴァイ先生の悪い部分をちゃんと見ていない気がする」

と、ミカサも賛同してくれた。

エレン「だよな。だから、もう少し今の綺麗なイメージから、リヴァイ先生の本当の姿に出来るだけ、近づける事は出来ねえかなって思ったんですよ。そうすれば、今の異様な状況を少しは緩和出来ねえかなって、思ったんですけど」

エルヴィン「うーん。確かにそれは私もその手は考えたんだけどね」

と、エルヴィン先生は頬を掻く。

エルヴィン「ただ、それは諸刃の刃でもあるんだ。リヴァイのプライベート情報を生徒に見せたら、そのせいでファンを止める子もいるかもしれないが、もっと熱狂して、熱が過熱してくる子も出てくる。私なんか、特に、リヴァイのドジで可愛い部分が好きだから、そういう部分に惹かれてしまったら、かえって抜け出せなくなる子も出てくるんじゃないかな」

エレン「あーダメなところも可愛いってやつですか」

エルヴィン「そうそう。その辺は難しいよ。情報で勝手に妄想するのは人間の性(サガ)のような物だからね」

エレン「そうですか。じゃあこの写真は没ですね」

エルヴィン「でも、そういう発想自体は悪くないと思うよ。リヴァイ自身がブログ書くとかしてくれれば、それが一番いいんだろうけど、あいつも教職で忙しいし、現実的には難しいだろうね」

エレン「そうですか……」

難しいな。なんかいい手がねえかな。

エルヴィン「でも、そうやってアイデアを出してくるところは優しいね。エレン」

エレン「え? そうですかね?」

エルヴィン「うん。しかもこうやって他人にちゃんと前もって相談するところも偉いよ。リヴァイはいい生徒に恵まれたな」

エレン「いやー……うーん……」

なんかこそばゆいけど、問題は解決してないから素直には頷けなかった。

ピクシス「ふん……そんな面倒臭い事をせんでも、さっさと結婚宣言をすれば、ファンをやってる子も目が覚めるじゃろうて。あやつが男らしく行動せんのが一番悪いんじゃろうが」

と、酒を飲みながらピクシス先生がブツブツ言う。

エレン「いや、それが出来れば一番いいのは確かなんですが、今のリヴァイ先生にそこまで求めるのは酷じゃないかと」

ピクシス「ふん……八方美人では大事な物を見失うじゃろう。あやつ自身、自分にとって本当に大事な人は誰なのか、いい加減見つめなおす時期なのじゃ」

エレン「まあ、それはそうなんですけどね」

ピクシス先生は機嫌が悪いらしい。これ以上突っつかない方がいいな。

ピクシス「あやつに酒を飲ませて泥酔させた時に必ず口に出てくる女は、誰なのか。早く奴自身に気づいて欲しいんじゃが………」

ん? 何の話だろ? 一体。

エルヴィン「まあまあ、ピクシス先生。その辺で」

ピクシス「ふん! 面白くないの! わしは早くあやつらの子供の顔が見たいんじゃ!」

ダメだこれ。すっかり酒が入ってる。そっとしておこう。

そんな訳でナンダカンダで宴も落ち着いた頃、オレ達は打ち上げのカラオケの方に移動する事になった。

リヴァイ先生達と合流して団体でカラオケの部屋を5部屋押さえる。

そのうちの1部屋を演劇部が貰って、残りの4部屋を3年の1組と2組が使うようだ。

こんだけの人数でカラオケするのは初めてだな。この間より人数が多いもんな。

あ、一応、ハンジ先生の顔もあった。良かった。こっちに来てくれたんだな。

エレン「ハンジ先生!」

ハンジ「やーエレン! 演劇部も合同でやるんだってね? 5部屋確保しておいて正解だったね!」

エレン「手配はハンジ先生がやってくれたんですか?」

ハンジ「うん。そうリヴァイと約束していたからね。え? 何で?」

エレン「いや、ハンジ先生、こっちに来ないかもしれないと思ってたから」

ハンジ「やだなー。くるよー。2組の担任教師なんだから。大丈夫!」

と、相変わらずの明るい笑顔だけど。

大丈夫なのかな。本当に。

そんな訳で、打ち上げカラオケ大会が始まった。

演劇部の方にはオルオ先輩率いる3年生がこっちに合流してくれた。

やっぱり3年生がいてこそだよな。でも、こうやって遊べるのも今のうちなんだよな。

文化祭が終わったら一気に受験体勢になる。特に進学組は。

そう思うと、やっぱりうるっとくるものがあって、今更ながら、オレ、部活入って良かったなと思った。

ペトラ『ちょっと何、泣いてるのエレン?! どーしたの?!』

マイク持ってるペトラ先輩がマイク越しに指摘してきたけど、オレは涙を止められなかった。

エレン「だって……寂しいんですもん……」

ペトラ『ちょちょちょ! 人が歌う前に泣くのやめてよ! こっちも泣きたくなるでしょ?!』

オルオ「そうだぞ。エレン。まだ泣くのは早すぎるぞ」

エレン「すんません……」

ぐず……。なんだろ。舞台が終わって気が抜けたせいかな。

涙腺が止まらねえ。なんだコレ。こんなの、初めて経験するぞ。

ペトラ『もうー! エレンが泣くからこっちも泣きたくなってきたじゃないのおおおお! うわあああん!』

エルド「全くだ。本当に。お前は涙脆い奴だな」

グンタ「困った奴だ」

エレン「すんません……」

ジャン「気持ちは分からんでもないが、確かに泣くのはええだろ」

エレン「ジャンも涙腺潤んでるじゃねえか」

ジャン「これは汗だよ!」

意地っ張りな奴だな。本当に。

ペトラ『あああもう! いいわ! 泣いていいわよ! 私達だって、いろいろこう、我慢してたんだから本当は! 泣きたい時は泣いていいのよおおおお!!!』

いええええい! と、訳の分からんテンションでオレ達は歌って踊って盛り上がった。

ミカサもその様子を見つめながら、ちょっとだけ、潤んでいて、

ミカサ「エレン……」

エレン「んあ? 何だよ(ぐずっ)」

ミカサ「エレンと同じ部活に入って本当に良かった」

エレン「そうか?」

ミカサ「うん。あの時、エレンは自分で決めろと言ったけど。私はエレンと一緒で良かったと思っている」

エレン「そっか……」

と、ぐずぐず言いながらオレはミカサの隣で泣きながらカラオケを楽しんだ。

泣いて笑って騒いで。本当に楽しい打ち上げだった。

そしてあっという間に夜の11時になり、さすがにお開きにしようとリヴァイ先生が言い出した。

リヴァイ「これ以上遅くなると危険だからな。車必要な奴は出してやるぞ」

ハンジ「はいはい。女子は私が送ってあげるからね」

と、先生達が連携を取っている。

表面上は2人とも普通にしているけど、それがかえって痛々しく見えた。

会計を済ませてゾロゾロと皆で外に出る。カラオケ店の外はすっかり夜だった。

リヴァイ「ハンジ、酒入ってないよな?」

ハンジ「んもー疑う気持ちは分かるけど、今回は飲んでないよ? あんたにも飲ませてないでしょ?」

リヴァイ「ならいいが…………あ、すまん」

あ、今、酒気を確認しようとしたな。リヴァイ先生。

それがいつもの事だったんだろう。だからつい、体が先に動いた。そんな感じだった。

顔を近づけて確認しようとして、それがいけない事だと気づいて慌てて遠ざかる。

切ないな。この距離感が。すごく遠く感じる。傍で見ていても。

ハンジ「うん。酒臭くないでしょ? だから大丈夫だよ。リヴァイ」

リヴァイ「………そうか」

ハンジ「あ、あとね。リヴァイに言っておかないといけない事、あったから、ここで言ってもいい?」

リヴァイ「ああ。何だ?」

生徒達はそれぞれグループを作ってわいわいまだ話しているけど。

その輪から少し外れて、ハンジ先生はリヴァイ先生に言ったんだ。

ハンジ「……………文化祭の最中に、モブリット先生に告白されちゃった」

リヴァイ「………そうか。やっぱりな」

ハンジ「あんたはやっぱり気づいていたの? モブリット先生の気持ちを」

リヴァイ「ああ。エルヴィンからモブリット先生の件については聞かされていた」

ハンジ「リヴァイはやっぱり、私にはモブリット先生とくっつく方がいいと思ってる?」

リヴァイ「……………」

うわあああああこれ、運命の分岐点だ! ここ間違えるとダメだ!!!

絶対、絶対、間違えたらダメだ!! リヴァイ先生!!!

ハンジ「返事はまだ、してないんだよね。というか、本音を言えばモブリット先生とはそういう関係にはなりたくないんだ」

リヴァイ「振る気なのか?」

ハンジ「だって、モブリット先生、絶対結婚を視野に入れて付き合いたいって思ってる。真剣な告白だった。だから、ちょっと気が重くてね。彼の事を嫌いな訳じゃないんだけど」

リヴァイ「……………もう、チャンスは来ないかもしれないぞ」

ハンジ「結婚の? うん。そうかもしれない。でも、私にとってはそれは、大した事じゃないんだ。それよりも、同僚との良好な関係の方を優先したいんだけど」

リヴァイ「難しいだろ。それは。どう考えても」

ハンジ「ああ、やっぱり? 私が女だからかな。あーあ」

と、また、辛そうな顔になってハンジ先生が言う。

ハンジ「面倒臭いな。男に生まれていれば、こんな風に悩まなくても済んだのかな。私はただ、仕事を優先して生きていきたいだけなのにな………」

リヴァイ「…………それはお前の本心なのか?」

ハンジ「本心だよ。だって仕事楽しいもん。私、リヴァイ程、全員の生徒を溺愛している訳じゃないけど、それでもこの教職は結構、気に入っているんだ。だって、生物好きな子達と出会えるじゃない」

リヴァイ「ああ、その気持ちは俺にも分かる」

ハンジ「でっしょー? 勿論、クラスの全員が生物好きって訳じゃないけど、一人くらい、たまにいるでしょ? 生物が異様に好きな子。そういう子に出会って、自分の知識を託せる瞬間を知ったあの時から、もうこれ、絶対やめられないって思ったんだ」

なるほど。ハンジ先生にとっての教職っていうのは、自分の知識を生徒に託す事なんだ。

ハンジ「私の話ってさ、長いからさ。よく敬遠されるけど、たまーにいるんだよ。話聞いてくれるオタクっ子が。そういう子達がまるで、昔の自分を見るようで、楽しいんだ。だから、絶対、今の仕事を辞めたくないんだよね」

リヴァイ「モブリット先生は結婚したらやめて欲しいって言っているのか?」

ハンジ「それは分かんない。だけど、『やめなくてもいい』とか『続けて欲しい』とは1度も言ってないから、潜在意識では辞めて家庭に入って欲しいと思っているかもしれない。確証はないけど」

リヴァイ「お前の悪い癖だな。そうやって、人の考えを悟り過ぎるところは」

ハンジ「そうかな? 注意深く観察していれば大抵の事は予想出来るよ。それが外れた事も滅多にない。だから、正直言えば怖いんだ」

リヴァイ「………………」

ハンジ「だから断るつもりでいるんだけど………どうやって断ればいいのか分かんなくてね。参ってる。いつまでも逃げる訳にはいかないし」

リヴァイ先生の眉間の皺が増えていく一方だな。

ハンジ先生、気づいてねえのかな。

もう、「甘えるのやめる」って言ったのに。その発言と矛盾した行動を取っている。

自覚がねえのかな。だとしたら、今、リヴァイ先生、相当苛ついていると思うぞ。

リヴァイ「そんなもん、ただ一言、『付き合えないからごめんなさい。同僚としてしか見れないから』と言えば済むだろうが。俺に愚痴るような事じゃねえだろ」

ハンジ「いや、でも………それじゃあモブリット先生、傷つけちゃ………」

リヴァイ「だからどうして、それを俺に言うんだ!! お前は俺に何を期待しているんだ?!」

ハンジ「!!!」

リヴァイ「うまく言い含める方法ならエルヴィンの方が上手い事を考えられるだろう。言っておくが、俺は口がうまくない。今言った以上のアドバイスなんて俺に出来る訳ねえだろ!!」

ハンジ「!」

リヴァイ「いい加減にしてくれ。俺にだって出来る事と出来ない事がある。出来る事はお前にしてやれるが、それ以上の事はしてやれない。たとえ職場の同僚だとしてもだ」

ハンジ「あっ………ご……」

ハンジ先生が青ざめている。まずい。皆、異変に気づきだした。

リヴァイ先生が一人で帰って行く。車出すって言っていたけど、それすら忘れているようだ。

ハンジ「リヴァイ……ご……」

ハンジ先生が取り残されちまった。皆、ざわざわしている。

ペトラ「ハンジ先生、ちょっといいですか?」

様子を見ていたペトラ先輩がハンジ先生に近寄って、一発、大きく頬をぶった。

一同は突然の、修羅場の勃発に青ざめて見守るしかなかった。

ペトラ「ハンジ先生、今のはいくらなんでもハンジ先生が悪いです。リヴァイ先生がキレるのは当然じゃないですか」

ハンジ「う……うん。確かに、今のは私が悪かった。どう考えても私が悪い」

叩かれた頬を触りながら、ハンジ先生が混乱していた。

ハンジ「私、何を期待していたんだろう。リヴァイになんで、何で………」

グラグラしているのが目に見えて分かる。ハンジ先生、ちょっとまずい状態だな。

精神的に不安定になっているんだ。どうしようもないくらいに。

その原因に早く気付ければいいんだが。どうしたらいいだろう。

ペトラ「私、思うんですけど……線引き出来ていないのはリヴァイ先生じゃなくて、ハンジ先生の方ですよね?」

ハンジ「え………?」

ペトラ「今の会話、どう見てもリヴァイ先生に「甘えている」ようにしか見えなかったですよ? 自覚ないんだとしたら、尚、性質が悪い」

と、言い捨ててペトラ先輩がオルオ先輩の方へ行ってしまった。

その後にニファ先輩が駆け寄って「大丈夫ですか?」と気遣った。

ニファ「少し、落ち着いた方がいいと思います。立てますか? 先生」

ニファ先輩はハンジ先生の方を気遣っているようだ。担任教師だからかな。

いやでも、ニファ先輩もハンジ先生の事を恨んでもおかしくないと思うんだが。

ハンジ「うん、ごめん……ちょっと頭冷やしたいかも」

と言ってヨロヨロと立ち上がったハンジ先生だった。

ハンジ「ごめん。皆。先に帰らせてもらっていいかな?」

男子生徒「いいっすよ。あんまり気落とさないで下さいね。ハンジ先生」

男子生徒「そういう事もありますって」

と、3年生達は割とすんなりこの事態を受け入れているようだ。

やっぱり3年の貫録なのかな。いや、そうだな。多分そうだ。

3年にもなれば恋愛経験値はもっと増えるだろう。

リヴァイ先生とハンジ先生の方が少なすぎるんだよ。きっと。

そんな訳でその日の夜はもやもやした事件を抱えたまま打ち上げがお開きになった。

オレとミカサは何とも言えない顔のまま自宅に帰りつき、

ミカサ「ハンジ先生、大丈夫かしら」

と、案じてしまった。

エレン「確かに心配だけど……もうなるようにしかならねえよな」

果たしてこの三角関係はどう終着するのか。

その時のオレは、何とも言えない心地で予想すら出来ずにいたのだった。

気になるところですが、とりあえず一旦休憩。続きはまたノシ








次の日、クラスの方の打ち上げが行われる事になった。

クラスの方の打ち上げはボーリング大会になった。ユミルが絶対これにするといって独断で決めた。

文化委員の仕事で相当ストレスが溜まっていたらしい。ストライク決める度に大はしゃぎしている。

ユミル「よっしゃああああああ! すかっとするうううううう!!!」

なんかテンションがいつもと違っておかしい。大丈夫かな。あいつ。

と、ついつい心配しながらオレもゲームに参加している。

今回は特に罰ゲームも何もないから安心だ。普通にボーリングを皆で楽しんでいる。

アルミン「ボーリング久々だね~」

エレン「アルミン、ボーリング得意だよな。スピードのろいのに何であっさりストライク取れるんだ?」

アルミン「そこはほら、ボールのコントロールを磨いた訳だよ」

と、ちょっと得意そうだ。

ミカサも華麗にストライクを連発している。

カコーン…カコーン…と小気味よい音がボーリング場内に響いている。

皆、わいわい楽しんでいる最中、一人だけテンションの低い奴がいた。

クリスタだった。

エレン「ん? クリスタ、何か元気ねえな? どうした? 具合悪いんか?」

クリスタ(びくん!)

アルミン「そうなの? クリスタ」

クリスタ「う、うううん! そんなことないよ? 楽しいよ?」

エレン「クリスタもアルミンと同じ技巧派タイプなんだぜ。この間、やった時、思いっきり騙されたよな」

アルミン「え……この間っていつ? エレン」

エレン「あーミカサの夏に水着を見立てに行った時だな。あの時、クリスタも一緒だったんだ。んで、帰りにボーリングしたよな」

アルミン「裏切り者ー(棒読み)」

エレン「しょがねえだろ!! 呼び出されたのはオレとライナーだけだったんだし」

アルミン「いや、途中からでも参加させてくれたっていいじゃないかー(棒読み)」

エレン「あ、そっか。そう言われればそうだな。すまん……」

クリスタ「…………」

あれ? やっぱりクリスタの様子がなんかおかしいな。どうしたんだ?

クリスタ「あ、あのね……」

エレン「ん?」

クリスタ「2人は、ユミルの事、どう思う?」

え? ユミル?

ユミルの方を見ると、ユミルは「よしゃあああああ!」を繰り返してストレス発散し続けていた。

エレン「ああ、性格悪いけど根は悪い奴じゃねえのかな? 口悪いけど」

アルミン「エレン、それはほとんど悪口だよ」

エレン「えー? じゃあ、あ、意外と周りをよく見ているかな。気回せるっていうか。気配りは出来る奴だよな。口悪いけど」

アルミン「君も大概だよ。エレン……」

エレン「アルミンに言われたくはねえなあ。アルミンはどう思う?」

アルミン「んー……大人っぽい色気はあるよね。スーツとか似合いそうだね」

エレン「おま、ユミルにまでエロ目線でいうのか。このエロ師匠が!」

アルミン「え? ダメ? いやだって、ユミルは色気あるよ? まあ、僕はユミルはタイプではないけど」

と、言った直後、クリスタがびくっと激しく反応した。

何だ? なんか本格的におかしいな。顔赤いし。

エレン「……? なんか、気に障ったのか?」

クリスタ「ううん。別に……」

エレン「いや、でも顔、赤いぞ?」

クリスタ「?! (顔隠す)」

アルミン「今、何か僕、変な事、言った?」

クリスタ「ううん。全然……その、私も実は、そう思うんだけど、それって変なのかな」

アルミン「え?」

クリスタ「ユミルが、大道具の恰好で走り回っている姿見て、なんかいつもと違うユミルだなあって思って。格好いいっていうか、色っぽいというか、凄くいいなって思って。でもこれって、変なのかな」

エレン「………別に変じゃないと思うぞ。オレもミカサの男装姿を見て「いいね!」って心の中ではしゃいでいたからさ」

クリスタ「でも、それはエレンが「男」だからでしょ? 私、「女」なのに「女」の人にときめくのって、おかしくない?」

アルミン「…………………」

あ、アルミンが石化した。

ええっと、それって、つまり、その……。

なんか、クリスタ、ちょっと、そっちの毛、あるって事なのか?

エレン「あーすまん。そのトキメキがどの程度なのかオレには客観的には分からんが、ユミルの事が好きなのか?」

クリスタ「それは、友人としては当たり前に好きだけど、この感情がそれを越えているのか、良く分かんない」

ズーン……

アルミンが倒れそうになった。やべええええ!

もう、次から次へと何でこう、恋愛事で面倒事が起きるんだ?!

エレン「んー………」

アルミンを支えながらオレは言った。

エレン「すまん。オレは同性に対してそっちの感情を持った事がないから、さっぱり分からん。だから無責任な事は言えねえけど、同性に対して「可愛い」と思うことくらい、男でもあるぞ?」

クリスタ「そ、そうなの?」

エレン「ああ。アルミンとか、あとそうだな。リヴァイ先生も……かな」

ミカサ「エレン、それは初耳。本当?」

ミカサがいきなりこっちに来た。うああああびっくりした!!!

ミカサ「エレン。ちょっとその件について詳しく聞いていいかしら? 特にリヴァイ先生の方を<●><●>」

エレン「いや、そんなに顔近づけるなって。あくまで例え話……」

ミカサ「例え話だろうが何だろうが、リヴァイ先生を「可愛い」と思った時点でダメ。許さない」

エレン「ミカサのヤキモチは凶器だな! 頼むからちょっと落ち着け!!! 今はクリスタの話だから!!!」

と、どうどうと、何とか宥めながら、

エレン「だから、女同士でも「格好いい」と思うくらい別に変でも何でもねえよ。ミカサも女のファンがついちまったくらいだからな」

ミカサ「うっ……それは確かにあるけど」

クリスタ「そ、そう……」

クリスタが落ち込んでいる。何だろ。求めていた答えが見つからなかったのかな。

クリスタ「でも、もやもやするんだよね。ユミルに触りたい気持ちになったり、その、ヤキモチなのかなって思う事もあるの。独占欲みたいなの、あるのは分かる。勿論、友達同士でもそういうのあるってのは分かってる。でも、これって、その範囲内なのか、分かんないのよね」

エレン「んー……」

これって「それはレズです」なんて言っていいのかな。

もし違ったら、オレ、物凄く無責任な奴になっちまうし。

自分の感情を他人が決めていいもんじゃねえよな。悩んでいるのは分かるけど。

エレン「それはオレが決める事じゃねえよ。クリスタ。自分で決める事だ」

クリスタ「じ、自分で…?」

エレン「ああ。例えそれがどんなに「変」な感情でも、それをどう「定義」するかは、自分で決める事だろ? 人から見たらそう見えても、そうじゃない場合もあるし。逆もあるんじゃねえかな」

クリスタ「逆?」

エレン「所謂、ツンデレな奴とかそうだろ? ツンツンしているけど、本当は好きとか。冷たいようで、本当は声援を送っているとか」

クリスタ「意味がイマイチ分かんないよ。エレン……」

エレン「悪い。オレもあんまり口がうまくねえから、分かりやすくは言えないけど」

人の感情っていうのは、難しく出来ているからな。

一見、そう思えないような行動が実は、愛情からくる行動だったり。

愛情に見えて、実はそうではなかったり。

んー。すまん。だんだん自分でも言いたい事が良く分からなくなってきた。

エレン「………とにかく、ユミルが好きなら、多分、好きなんじゃねえの? それがどんな関係でもいいじゃねえか」

クリスタ「それって、無理に恋愛に定義しなくていいって事?」

エレン「それはクリスタ自身がそう「したい」と思った時に定義すればいい話で、「今」そうする必要はねえだろ?」

クリスタ「そっかあ……」

なんかすっきりしたのかな。クリスタの表情が明るくなった。

クリスタ「エレン、ありがとう。ちょっと頭の中が綺麗になった気がする」

エレン「おう。なら良かったな」

クリスタ「うん。ありがとう。エレンに話して良かった」

と、こっちの問題は一応、あっさり解決したけれど。

クリスタがユミルの傍に移動した後、オレはアルミンの方を見た。

アルミン「………………」

あーあ。今度はアルミンの方がどん底に堕ちてしまった。

むしろこっちを浮上させる方が難易度高いミッションだぜ。

アルミン「まさかの斜めからの刺客だよ。ユミルがクリスタの心を盗んでいたなんて……」

エレン「いや、でもあれは、そういうのじゃないかもしれないけどな」

アルミン「限りなく黒に近いグレーじゃないか! ううううう……(泣き出した)」

エレン「でも気持ちは分からなくはねえよな。ユミルの大道具姿、結構、格好良かったし」

ミカサ「うん。ユミルは格好いい。それは私も同意する」

エレン「アルミンも自分から行動起こさないと、手に入らないんじゃねえの?」

アルミン「クリスタがユミルみたいな格好いい人がタイプなら僕は完全に論外じゃないか……(ズーン)」

エレン「うーん……(困惑)」

困ったな。どうしようかな。こっちの問題は。

アルミンが落ち込み過ぎてオレの太ももの上に顔を伏せている。

と、その時、その様子に気づいたアニがこっちに来て言った。

アニ「何やってるの? アルミン、エレンとイチャイチャして。そっちに目覚めたの?」

アルミン「誤解を招くような事言わないでよ!!! 僕は健全な男の子だよ?! (*起きました)」

アニ「膝枕してもらっている時点でアウトだと思うけどね。いや、私は腐ってないけど、マーガレット先輩がここに居たらテンションあがるなあと思って」

アルミン「そうだった。ちょっと自重しよう。うん。もう大丈夫だよ(キリッ)」

アニ「やれやれ。アルミンも失恋か。失恋レストランを開いた方がいいのかもね」

エレン「ああ。秋は失恋の季節なのかもしれないな」

アルミン「そ、そんな事ないよ。秋だって恋の季節だよ。人が恋しくなる季節じゃないか。冬に向けて」

アニ「ああ、クリスマス?」

アルミン「そうだよ。クリスマスまでに彼女欲しい! って思う男子もいると思うよ」

エレン「そういえば、ミカサ。クリスマスどうする?」

ミカサ「クリスマス?」

クリスマスで思い出した。恋人同士になってから初めての折角のクリスマスだからな。

長期的に計画立てて何かやりたいなあって思ったんだ。

エレン「ほら、占いで「デートした方がいい」みたいな事も言われたしな。クリスマスはちょっと贅沢してみないか?」

ミカサ「贅沢……山登りとか?」

エレン「え? お前の中で山登りは贅沢なデートなのか」

ミカサ「うん。山登りはとても贅沢なデート……(キラキラ)」

エレン「そ、そうか……まあ、いいや。うん。それは今度やるとして、クリスマスは何か記念になるような事をやりたいな」

ミカサ「エレンに任せる(うっとり)」

アルミン「そこ! リア充爆発させないで! 爆ぜろって言いたくなるから! ジャンじゃないけど!」

エレン「悪い。ついついな」

と、ニヤニヤ話してしまう。

アニ「クリスマスか。今年も独り身かな。私も」

ミカサ「え?」

アニ「クリスマスを誰かと一緒にわいわい過ごしたことないんだよね。クリスマスパーティーみたいなの。やったことある?」

ミカサ「家族でひっそりとしたものはやるけど、クリスマスに皆でわいわいはしたことない」

アニ「だよね。今年くらい、やってみたいなあって思うけど……(チラリ)」

うぐ! この意味深な視線はなんだ?!

ミカサ「では、クリスマスは皆でエレンの部屋に集まろう。そしてゲーム大会をやろう」

エレン「ええええええ………」

言うと思った。ミカサ、この間のGWの集まりで味しめがやったな?

エレン「2人で過ごすんじゃないのかよー」

ミカサ「それは、イブの間に済ませて、当日は皆で集まりたい」

エレン「ああまあ、それでもいいけどさー別にー」

アニ(ニヤリ)

アニもたまにミカサを独占したいんかなって思う時あるが、これ確信犯だよなあ。

まあいいか。アニはいい奴だし。アルミンも混ぜて、仲いい奴ら集めてパーティーするのも悪くねえかもな。

……………と、この時はそんな風にぼんやりと考えていたんだけど。

この後、この予定を覆す、とんでもない予定が別に入る事になる。

そのある意味では運命の日と言える日に、オレ達は立ち会う事になるのだが。

まあ、それはもうちょっと先までのお楽しみにしよう。

そんな訳でその日はボーリングで打ち上げをしてその後は各自解散になった。

アルミンはまだちょっとフラフラしていたけど、アニが付き添っていたから多分大丈夫だろ。






そして次の日。10月7日。平穏な日常が戻って来た。

中間考査も近いから真面目に勉強しないといけないけど、実はテストの後には、1年生になってからの初めての「四者面談」が行われる予定だ。

担任教師と進路指導の先生と保護者と本人の四人で進路を相談し合うんだ。

だからオレはテスト後の進路相談に向けての準備も同時に進めないといけないな、と思っていた。

とりあえずとっかかりが欲しいからエルヴィン先生のいる進路指導室にお邪魔しようと思って、その日の昼休み、オレとミカサは2人でお邪魔する事にした。

資料を見たりするのはエルヴィン先生の許可があればいつでも入れるようになっている。

その日はオレとミカサだけが昼休みに来ていたようで、他の生徒はいなかった。

まだ四者面談まで時間があるからかな。でも直前は混雑しそうだし早めに行動した方がいいよなと思って、オレ達は進路指導室に入ったんだ。

しかし、他の生徒はいなかったけど、代わりに別の先客が居た。

リヴァイ「ZZZZZ………」

ソファで寝転がって寝てるー?!

爆睡している。黒ジャージ姿で寝ている。やべえ。起こしたらまずいよな。コレ。

と、思っていたら、あっさり起きた。あちゃー。

リヴァイ「あ? しまった。寝ていたか」

エレン「起こしてすみません……」

リヴァイ「いや、助かった。昼休みだろ? 昼飯食わないといかんからな」

ミカサ「こんなところでサボっていたんですか?」

リヴァイ「自宅じゃあまり寝れなくてな……」

心中、お察しするぜ。リヴァイ先生。

ハンジ先生、上の階に住んでいるんだもんな。そりゃ気になって寝れねえよな。

エレン「あの、食べてますか?」

リヴァイ「ああ。飯はちゃんと食ってるよ。ただ、寝る方がちょっとな」

と、目の下に疲労の跡を残してリヴァイ先生が言った。

リヴァイ「エルヴィンは? あいつはいないのか?」

エレン「後から来ると思いますけど。先に行ってていいと言われて鍵貰って先に部屋に入りました」

リヴァイ「そうか……」

リヴァイ先生が肩を落としている。無理ねえよな。

あの後、きっと謝る事も出来ずにいそうだ。この様子だと仲直りした感じじゃない。

リヴァイ「自分の口の悪さを後悔したのは今回が一番かもしれん……」

と、肩を落とす様は本当に可哀想だった。

エレン「まだ、謝れてないんですか?」

リヴァイ「目も合わせてくれなくなった。完全に距離を取られているよ」

ミカサ「そうですか………」

リヴァイ「なんでこう、俺は天邪鬼なんだろうな。本当は、ハンジが甘えて来た瞬間、嬉しかったのに」

ああ。やっぱりそうなんだ。だよな。そういう人だもんな、リヴァイ先生は。

リヴァイ「モブリット先生と付き合わないという判断をしたハンジに喜んでいる自分がいるのに、それをさっさと実行しないハンジに苛ついた。モブリット先生を気遣うあいつの様子に嫉妬したんだよ。男として、最低じゃねえのか、これって」

ミカサ「いいえ? 全然。それはむしろいい傾向だと思いますが」

リヴァイ「そうなのか?」

ミカサ「はい。大丈夫です。それは正常な感情です」

おお。ミカサが珍しくリヴァイ先生に突っかからない。

やっぱり相思相愛だって気づいてからは態度が変わったな。ミカサ。

ミカサ「でも、そこで「俺に何を期待しているんだ?!」というような言い方をされていたのはマイナスだったと思います。あの時、ハンジ先生はそこまでは求めていなかった。ただ、リヴァイ先生に話を聞いて欲しかっただけなんだと思うので」

リヴァイ「解決策を俺に求めていた訳じゃなかったのか」

ミカサ「女なんてそんなもんです。聞いてくれさえすれば、後は勝手に自分で立ち直ります」

おお、そうなのか。じゃあオレも今度からそうしよう。

リヴァイ「そうか……いや。そう言われればその通りだ。いつもの俺達なら、それに気づいていた筈だ。やっぱりあの時は、お互いに正気じゃなかったんだな」

ミカサ「そうですね。でも人間は冷静でない時は必ずあります。私もそうです」

と、言ってミカサはオレの方を見て言った。

ミカサ「でも、失敗しても、克服する事は出来ます。私がそうだったので」

リヴァイ「……」

ミカサ「その為には誰かの力を借りる事も必要だと思います。リヴァイ先生の場合は、一人で抱え込み過ぎなのでは?」

リヴァイ「………………」

リヴァイ先生が顔を隠して泣きそうになっていた。

リヴァイ「今、優しい言葉をかけないでくれ。泣いてしまいそうになるだろうが」

ミカサ「泣けばいい。どうせ今、ここには私とエレンしかいない」

エレン「いいですよ。泣いても。リヴァイ先生。誰にも言いませんから」

リヴァイ「……………」

しかしリヴァイ先生は泣かなかった。

それどころか、笑ったのだ。微笑みを浮かべたのだ。

リヴァイ「お前らは本当に強いな。でも俺は天邪鬼だからな。泣けと言われたら泣きたくなくなるんだ」

ミカサ「面倒臭い……」

リヴァイ「ほっとけ。しかしこうやって話しているだけでも大分落ち着くな。ありがとう………」

と、リヴァイ先生がほっと空気を弛緩させた直後、



ハンジ「ごめんね。エルヴィン。急に時間とってもらって」

エルヴィン「構わないよ。どうしても相談したい事なんだろ?」



と、進路指導室に噂の人物が入ってきたのだ。

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、反射的にソファにまた寝転がって隠れちまった。

ちなみに今、いるここは、間に仕切りがあって、ハンジ先生達のいるところから直接見えない。

上面図で説明すると、入り口から見て手前に机と椅子があり、その間に本棚があって、そこにソファとテーブルがある。

進路指導を2組以上でやる場合もあるから、話し合うスペースが2つあるわけだ。

オレ達がいたのはつまり、奥の方の席。エルヴィン先生とハンジ先生は手前の席に向かい合って座ったんだ。

お、オレも釣られて心臓がドキドキして来た。

何を相談するのか分からんけど、この距離なら2人の会話は丸聞こえだ。

ハンジ先生、周りを注意する余裕がないのか、エルヴィン先生と一緒に座るなり「どおおおおしよおおおおお」とぐだまいた。

ハンジ「困ったよエルヴィン! 私、またやらかしたよおおおおお!!」

エルヴィン「うん。何をやらかしたの?」

ハンジ「もう全部だよ全部! 何もかも!! モブリット先生には告白されるし、リヴァイのところのペトラに頬ぶたれるし、リヴァイとはまた喧嘩しちゃうし! 忙しすぎるよおおおおお!!!」

と、本当に何もかも曝け出すみたいだ。

エルヴィン「ハンジ。話が断片的過ぎる。ちょっと落ち着こうか」

ハンジ「う、うん……ごめん(赤面)」

あれ? 声のトーンが一気に大人しくなった。

ハンジ「…………あのね」

声が、可愛い。え? 何でいきなり? 変わったんだ?

ハンジ「わ、笑わないで聞いて欲しいんだけど」

エルヴィン「ああ。笑わないよ」

ハンジ「私、物凄い大きな勘違いをしていたのかもしれない……」

エルヴィン「勘違い? どんな?」

ハンジ「その……リヴァイ、との事なんだけど」

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、目を大きく広げて動揺しているぞ。

今、すげえ心臓バクバクなんだろうな。オレもそうなんだけど。

盗み聞きしているのは良くないけど、出るに出れない状況だから仕方ねえよな。

エルヴィン「リヴァイがどうかしたのか?」

ハンジ「ええっと、ちょっと待ってね。今、頑張って分かりやすく説明するから」

エルヴィン「うん」

ハンジ「……………実は、昨日の振り替え休日にモブリット先生と2人で会ったんだ」

リヴァイ「!」

滝汗掻いている。リヴァイ先生、まだ動いちゃダメだ!!

ハンジ「勿論、お付き合いを断ろうと思ってね。申し訳ないけど、私は結婚を視野に入れた付き合いは出来ないし、何よりモブリットとは同僚でいたかった。でも彼はどうしても納得してくれなくて。だから私、思い切って言ったんだよね。自分のダメなところ。全部。出来るだけ、詳細に。そしたら、彼は『それでも真剣に交際したい』と言ってきてね。何もかも、私側の要望の条件を飲んでも、それでもいいから付き合いたいって言い出してきて、正直、驚いたんだ」

エルヴィン「それだけ彼が真剣にハンジを愛している証拠だね」

ハンジ「うん。まさかここまで食い下がられるとは思わなくて……だから、つい、言っちゃったんだ。私、風呂もまともに入らないくらい超がつく程の面倒臭がり屋だよって。リヴァイとの事は勿論、伏せたけど。そしたら、モブリット先生の方から『だったら一緒に試しに風呂に入ってみませんか』って言ってきて……」

その言葉を聞いた瞬間のリヴァイ先生の顔が凄かった。

な、なんていうか、スーパーサイヤ人になりかけ? みたいな?

表情の筋肉は動いてないのに苛立ちだけは伝わってくる。

これは相当、嫉妬しているんだな。まあ、無理もねえけど。

エルヴィン「入ってみたんだ」

ハンジ「うん。まあ、1回だけならいいかなっていうか、その……ごめん。正直、押し切られたような形だったんだけど」

リヴァイ先生、次の瞬間、顔を隠してしまった。

うわあ。認めたくないけど聞いちゃったって感じだな。

でもまあ、しょうがない。過ぎた事だ。続けて聞いていこう。

ハンジ「んで、まあ、その……リヴァイ以外の男の人に初めて、自分の体を洗って貰ったんだよね」

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「正直、その…リヴァイの時のような爽快感のようなものがなくて、さ。だらだら体洗うし。なんていうか、そこじゃない! みたいな。ええと、こういうのなんていうのか分からないんだけど、とにかく、その……なんか違うなって思ってしまってね」

エルヴィン「うん……」

ハンジ「でも折角洗って貰っているのにそんな事、言えないじゃない? だから適当なところで「もういいよ」って言って切り上げさせようと思ったんだけど」

エルヴィン「ふむふむ(ニヤニヤ)」

ハンジ「そしたらさ、その、モブリット先生が、その、だんだん、その気になってきて……私の、股を洗おうとしてきたから、思わず「そこはやめて!!」って、跳ね除けてしまって………」

ぎゃああああ! 当然の展開だろうが! 馬鹿かハンジ先生!!!

酷い話だな。それは男の立場からすれば泣くしかねえよ。

ハンジ「その瞬間、私、思い出したんだよ」

エルヴィン「何を?」

ハンジ「リヴァイと、一緒にダンスの資格を取りに行く為に旅行した時の事を」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が真っ赤になっていた。なんだ? 何を言おうとしているんだろう。

ハンジ「あの頃から既に、私、あいつと良く一緒に風呂入っていたし、体も洗って貰っていたんだけどさ。リヴァイはね、絶対、その、あそこだけは、絶対。何があっても洗おうとしなかったの。だから一回、「なんで?」って聞いてみたんだよね」

リヴァイ先生の赤面度がどんどん酷くなっていく。これは面白い事が聞けそうな予感だ。

ハンジ「そしたらさ、『そこは人間の体で一番デリケートな部分だから力加減がとても難しい。洗ってやれない事もないが、同意がない状態では洗ってやれない』って言ってきてね。『そこだけは、自分でやれ。まあ、洗って欲しいならやってやれなくもないが……』って言って、こう、手首をくいっと動かしてね?」

リヴァイ先生、なんつーエロ発言してんだよ!!!!!

ミカサまで真っ赤になっちまった。これは酷い!!!! 酷過ぎる!!!

ハンジ「勿論、私は『丁重にお断りします!!!!!』って言って、慌てて拒否したけどね。だから、リヴァイは私の身体は洗ってくれていたけど、絶対、その、女性器の部分には触れなかったんだよ」

エルヴィン「それは初耳だったね。私はてっきりそこも込みだとばかり思っていたよ」

ハンジ「あー普通はそう思うかもね。でも、本当。うん。信じて貰えないかもしれないけど、そこだけは外していたんだ。あ、おっぱいも、かな。『自分でやれるだろ?』って。あいつが念入りに洗うのは背中側の方で、自分では洗いにくくて、汚れが溜まりやすい場所だったね。それ以外は、ざっと、する感じ。私が疲れない様に、必要最低限の洗い方しかしなかったのよ」

うはあああ……リヴァイ先生の顔がもう、赤いの通り過ぎて黒くなっているような気がする。

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「んで、今思うと、私がそう答えた直後、あいつ、小さく『ちっ』って、舌打ちしていたんだよね。私の気のせいだったのかもしれないけど、今となっては、確認のしようがないけど。でも、でもね………」

ハンジ先生がそこで大きく息を吸ってから言った。

ハンジ「それ、思い出した瞬間、私、なんかこう、ふわあああって、体が熱くなってきて、リヴァイとの思い出が一気にこう、蘇ってきて、身体に力が入らなくなってきて、震えてきてね。こういうの、もしかして、もしかすると、あの……なんていうか、その、私達って、実は、その………」

エルヴィン「あともう少しだよ。ハンジ、頑張って」

ハンジ「う、うん。あーちょっと、水飲んでいい? 喉カラカラなんだけど」

エルヴィン「紅茶を出してあげよう。ちょっと待ってて」

そして紅茶を入れて再開。ハンジ先生は落ち着いてから続けた。

ハンジ「私ね、こういうのも変な話だけど、セックスでイクっていう経験、まだしたことないんだよね」

いきなり赤裸々な話がきたな!

つか、こんな話聞いてエルヴィン先生もよく平気で居られるな。

ハンジ「セックス自体はその、何度か経験あるけど、エロ漫画とかビデオであるような、ああいう大げさな快楽の経験が一度もなくて。だからどこかで「女として欠陥品」なのかなって思っていて。まあでも、別に生活に困る事でもないし。それに「トキメキ」の謎が解けないうちはやっぱり、そういうの無理なのかなって諦めていたからね」

エルヴィン「そうだったね。では、今は違うのかな?」

ハンジ「うーん………その、私の場合は、もしかしたらその「快楽」そのものをあんまり求めてなかったんじゃないかなって結論になった」

エルヴィン「快楽を求めていない?」

ハンジ「そう。それよりも、「安心」というか「安心感」かな。うん。こう、どっしりとした、布団に包まれるような幸せっていうのかな。ふわっとするような、くすぐったいような。ドキドキじゃなくて、気が付くと、ニヤッとしているような。そういう小さな幸せを積み重ねていけるような。そんなパートナーが欲しかったのかもしれない」

エルヴィン「うん。では、その相手が、リヴァイなのかもしれないと。そう思ったんだね?」

ハンジ「うん………多分、そういう事なんだと思う。だからその、世間から見たら変なのかもしれないけど。私、その、リヴァイとは、男女の仲の範囲でつきあっていたのかもって、今になって思ったの」

エルヴィン「いいや? 全然変じゃないよ。ハンジ。というか、気づくのが遅すぎるよ」

ハンジ「やっぱり?! 私、やっぱり気づくの遅かった?! ああああ…………!」

と、変な声をあげるな。リヴァイ先生の顔色がやっと普通に戻った。

ちょっと落ち着いたようだ。でも、凄く嬉しそうだ。

ハンジ「見つからない筈だよ。私の中の理想って、若い皆がやってるような「ドキドキ」じゃなくて、「ニヤッ」だったんだよ。すっごく小さな幸せだったんだよ! 線香花火くらいの。それを地味に続けるような感じ! 一緒に馬鹿やってくれるような、そういう人を求めていたんだって、やっと分かったんだよ」

エルヴィン「それはつまり、リヴァイの事を、ちゃんと男性として好きだって事だね?」

ハンジ「多分……いや、ごめん。うん。ちゃんと、好き」

と、言った瞬間の声、すげえ可愛かった。

ハンジ「だからその、エッチしてないけど、しているような? 矛盾しているけど。ひとつになってないのに、ひとつになっているような。そういう関係だったのかなって、今になって思ってね。これって、やっぱり変かな?」

エルヴィン「いいや? 変じゃない。というより、エッチの「定義」の認識の方が間違っていると私は思うよ」

ハンジ「定義の方が?」

エルヴィン「そう。キスとセックスをしないと「エッチ」ではないと誰が決めた? 心が通じ合えば、たとえ触れる事すら敵わなくとも、それは恋人同士の愛の営みという事も出来るんだよ」

ハンジ「そっか……じゃあ固定観念に囚われていたのは私の方だったんだね」

と、すっきりしたようにハンジ先生は言った。

ハンジ「実際、すっごい気持ちいいなって、思っていたんだよね。リヴァイとのお風呂。酷い時は、途中で寝ちゃう事もあったよ。だって、あいつ、洗うの上手すぎるんだもん。でも、私が寝ちゃっても、ちゃんと服着せてくれて、その辺の床の上に寝転がしてくれてね。安心して寝る事が出来たんだ」

エルヴィン「つまり、ハンジにとって、リヴァイは安心出来る存在だったんだね」

ハンジ「うん。それに気づいたのは……あの子が体張って私の頬をぶってくれたおかげだよ。あの子には感謝しか出来ないよ」

ペトラ先輩の事だな。これは。

ハンジ「私にね、「リヴァイに甘えているようにしか見えない」って、超どストレートの言葉を注入してくれてね。その言葉の意味を噛みしめた瞬間、なんかこう、だんだん、パズルのピースが集まってくるような。自分の中の「謎」が全部一気に解けていくような。推理小説の解答を全部理解するような。不思議な感覚を味わったよ。あの子も辛かっただろうに。本当に、彼女には申し訳ない事をさせてしまったよ」

エルヴィン「そうか。では、ペトラが体を張ってくれたおかげで、今のハンジの「結論」が出たんだね」

ハンジ「スイッチボタンを押してくれたような感じだね。爆発させたのは、モブリット先生だったけど」

エルヴィン「そうか。そこまで結論が出たならもう、ここから先はリヴァイと本当の男女の意味で付き合っていくつもりなのかな?」

ハンジ「うぐっ……!」

あれ? その直後、ハンジ先生の声が詰まった。

ハンジ「むしろ問題はそこから何だよね……」

エルヴィン「何が問題だ? ハンジはリヴァイの事、好きなんだろう?」

ハンジ「いや、でも、この間、物凄くまた怒らせちゃってね。どうやったら謝れるのか分からなくて……というか、目合わせると、自分の顔が赤くなるの分かるし。まともにあいつ、見れない自分が居て、どうしたらいいのか分かんないんだよね」

ああ。目合さないって、そういう意味だったのか。

良かった。悪い意味じゃなかったんだ。

ハンジ「だからその……今後、どうしていったらいいのか、エルヴィンにアドバイスを」

エルヴィン「それはもう、私がどうこう言える問題じゃないな。愛の進路相談は、2人でやるべき事だから。なあ、リヴァイ?」

うあ!? ここでバラすのか?! 酷い!!!

リヴァイ先生がゆっくり立ち上がった。そしてくるりと、振り返り、

リヴァイ「ああ。じっくり話し合おうか。ハンジ」

と、言い出したのでハンジ先生は直後、「ぎゃあああああ?!」と大絶叫した。

ハンジ「え……嘘……今の、全部、聞いていたの?」

リヴァイ「ああ。全部、聞いた」

ハンジ「酷い!! エルヴィン!!! これ、完全に私を嵌めたね?!」

エルヴィン「人払いをして欲しいなんて一言も言わなかっただろ? 先客はリヴァイ達の方だったしね」

リヴァイ「ああ。ここのソファで寝かせて貰っていたからな」

ハンジ「あーうー(赤面)」

エルヴィン「じゃあ、ここからは、2人だけで大丈夫だね」

リヴァイ「ああ。手間をかけさせたな。エルヴィン」

エルヴィン「このくらい、どうって事ないよ。じゃあ、ごゆっくり♪」

という訳でオレとミカサも進路指導室を追い出されてしまった。

ドアの外でエルヴィン先生が悪い顔をしている。

エレン「な、なに話すんだろう……気になる」

エルヴィン「大丈夫。既に手は打ってある」

エレン「え?」

エルヴィン「ピクシス先生が今、監視室にいるから。進路指導室の様子はRECしている筈だよ」

ひでえええええええ!!!!

でも、超見たい。中の様子見たい。

ソワソワしちまう。どうしよう。実況してくんねえかな。

とか思っていたら、

エルヴィン「教室に移動してご覧? テレビ繋いで今頃、中の様子を中継している筈だよ」

もっと酷い事考えていたこの先生!!!!

ミカサ「エレン、教室に戻ろう」

エレン「お、おう……」

という訳で、オレ達はエルヴィン先生と別れて教室に戻った。

そしたら本当に、教室のテレビに中継が入っていて、リヴァイ先生とハンジ先生のガチ(愛の)進路相談が始まっていた。

そんな訳で愛の進路相談は次回。今日はここまで。
いろいろと酷い回ですんませんでした…orz

あと、ペトラが悪役になった理由、伝わったかな…。
ペトラはイメージダウンどころか、鬼になる覚悟でぶってますので、
許して差し上げて下さい。

悪役は大人にしてほしかった
周りに他の生徒がいる中であれは先生の面目が立たない
誰か大人が(ペトラの気持ちを汲んだ上で)宥めて欲しかったな

>>117
ハンジ先生はそういう面目とかを気にするようなタイプの先生ではないので大丈夫です。
むしろペトラ自身の周りからの評判とかが地に堕ちる事を心配しています。
だから「申し訳なかった」と言っています。

あとついでに言うなら、このシーンはオルオペトラの伏線も入ってます。
もうちょい先になりますが。すみません。

教室に残っている奴らは突然のお昼のテレビ放送に「なんだ?」とざわついている。

弁当食っている奴はもう大分少ないから、まったりムードで教室内で過ごしていたから余計にそうなった。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『……………』

ハンジ『な、なんでニヤニヤしてるのよ~』

リヴァイ『悪い。ニヤニヤが止まらないんだ』

ハンジ『そこのソファで寝ていたんだったら、途中で言ってくれたっていいじゃない!』

リヴァイ『言いそびれたんだよ。エルヴィンとの会話を邪魔しちゃ悪いと思ってな』

ハンジ『嘘ばっかり……盗み聞きしていたくせに』

リヴァイ『ああ。まあ、実はそうなんだが』

ハンジ『もう~リヴァイは本当に意地悪ね! 恥ずかしい~!』

と、顔を隠すハンジ先生だった。

なんだなんだ? 生徒達はまだ、事態を把握出来ずにテレビに注目している。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『…………』

ハンジ『ちょっと! 黙ってないで何かしゃべってよ! 居た堪れないじゃない!』

リヴァイ『ああ……悪い悪い。照れているハンジを見るのは珍しいと思って、つい見入ってしまった』

ハンジ『やめてよ! じっくり見ないで! その……自分でも、どうしたらいいのか分かんないんだから』

リヴァイ『そいつは無理な相談だ。こんなに面白い事はない……ククク……』

2人の間に、甘ったるい空気が流れている。こそばゆいなあ。

ハンジ『あーうーその、えっと、どうしようか』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『その、というか、それ話す前に、私から謝らないといけないね。ごめん……』

リヴァイ『何がだ?』

ハンジ『だから、その………あんたに甘えまくっていたことだよ。ペトラにぶたれて初めて、気づいた。私、物理的な部分だけじゃなくて、精神的な部分まであんたに甘えまくっていたんだって事を……』

リヴァイ『その、ペトラにぶたれたっていうのは、俺と別れた後の事か』

ハンジ『うん……あの子、半泣きで私をぶったんだよ。他の生徒がいる中で。本当に申し訳ない事を、彼女にさせてしまった………』

リヴァイ『そうか………』

ハンジ『だって、あんな事したら、ペトラ自身の周りからの評判が落ちるに決まっているじゃない。こんな私みたいなダメ教師の為に、あの子の手を煩わせたと思うと、大人として、自己嫌悪するよ………」

リヴァイ『過ぎてしまった事は悔やむな。ペトラには俺からも話しておくよ』

ハンジ『うーん……本当にごめんね』

リヴァイ『その事は後で何とかするとして。ハンジ。昼休み時間も限りがあるから、単刀直入に聞く。これからどうしたい?』

ハンジ『え? と、言うと?』

リヴァイ『ハンジはこれから、俺とどうしたいと聞いているんだ。ハンジ自身の今の素直な気持ちを聞かせてくれ』

きたあああああ!!! 盛り上がって来たぜ!

この辺になってくると、教室の奴らも大体察したようで、わくてかし始めた。

ハンジ『ど、どうしたいんだろう……?』

リヴァイ『おい……(イラッ)』

ハンジ『いや、待って! もともと、その辺の話はエルヴィンと話して自己分析してからリヴァイと話すつもりだったのよ! 心の準備もない状態で聞かれても困るよ!!』

リヴァイ『お前は本当に面倒臭い奴だな。そんなもん、俺に直接聞けばいいだろ』

ハンジ『じゃあ、聞いていい? リヴァイは、私と、どうしたいの……?』

リヴァイ『ハンジが話してくれたら答える』

ハンジ『それってずるくない?! 人には聞いておいて、答えないってずるくない?!』

リヴァイ『うるさい。いいから答えろ。ハンジが先だ。レディーファーストってやつだろ』

それ、使い方間違ってますよリヴァイ先生。

いや、分かってて言ってるんだろうけどな。多分。

ハンジ『うー……もう、しょうがないなあ。分かった。じゃあ、話す。話すけど……』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『わ、笑わないで、聞いてね? 一応、前置きしておくけど』

リヴァイ『ああ。分かった』

ハンジ先生はそこで、区切って手で自分の胸を押さえてから言った。

ハンジ『提案したい事があるの』

リヴァイ『ああ。どんな提案だ?』

ハンジ『私達、試しに一緒に、暮らしてみない?』

おおおおおおお?! いきなり同棲の申し出だあああああ!!!

ハンジ先生、やるな! これは教室の中もざわめいてきたぜ!!

リヴァイ『それは「同棲」の提案だと受け取っていいのか?』

ハンジ『そうだね。リヴァイと一緒に暮らしてみたい。そういう感情が、今、私の中に「ある」んだけど』

リヴァイ『……けど?』

ハンジ『なんかこんな事を言っちゃうと、アレなんだけどさ。これって、よくよく考えたら、私、まるでリヴァイの体目当てに一緒に暮らしたいって言ってるようなもんだよね。あんたと一緒に入る風呂が癖になっちゃってさ。もう、他の男じゃダメになっちゃったみたいだし』

なんかそういう言い方すると途端にエロくなるのが不思議だな。

リヴァイ『ああ? (不機嫌)それの何が悪いんだ?』

ハンジ『ええ?』

リヴァイ『だから、それの何が「悪い」んだ? 別に俺はそれでも一向に構わんが』

ハンジ『じゃあ、同棲してくれるの?』

リヴァイ『いや、同棲の話じゃなくて「体目当て」でも別に構わないって言ったんだが』

ハンジ『あんた、どこまでマゾなのよ?! やっぱりサドに見せかけたドМだよね?!』

リヴァイ『そんなもん、どっちでもいい。話を逸らすな。つまり、ハンジから見て俺と同棲したいという感情があって、その理由は俺じゃないとハンジに与えてやれない事なんだろ?』

ハンジ『まあ、そういう事になっちゃいますね』

リヴァイ『なら、話は早い。………断る』

ハンジ『ええええちょっと、持ち上げといて、落とすって?! アレ?! あんた、やっぱりドSだった?!』

リヴァイ『SとかМとかの話は、今はどうでもいい。それより、同棲の件は承諾出来ない』

ハンジ『えええ……断られると軽く凹むんだけど。じゃあ、今まで通りの形態なら付き合ってくれるの?』

リヴァイ『そうじゃない。そういう話じゃない』

ハンジ『ん? つまりどういう事……?』

次の瞬間、一瞬、間があって、リヴァイ先生が唾を1回飲み込んだのが分かった。

皆もなんとなく予感している。これは、きっと、来るぞ。

リヴァイ『そういう話なら………ハンジ。結婚するぞ』

ハンジ『へ………?』

リヴァイ『だから、そういう話なら「同棲」よりも俺は「結婚」の形の方がいいと言っている』

ハンジ『え………えええええええ?!』

リヴァイ『何をそう驚いている。何かまずい事、言ったか?』

ハンジ『いやいやいやちょっと待ってよ?! 何で同棲を提案して断られて「結婚」の話になるの?! 訳が分からないよ?!』

リヴァイ『訳が分からんのはお前の方だろ。ハンジ。どうして「一緒に暮らしたい」っていう感情があるのに、同棲なんてかったるい事を言い出す。同棲する意味なんてあるのか?』

ハンジ『いや、あるでしょ?! こう、段階的なものっていうか、その、物事には順序みたいなものが……』

リヴァイ『それはお互いの事をまだ良く知らない男女の為にあるようなもんだろ。俺達の場合は必要ない』

ハンジ『え? そ、そうなのかな? いや、でも、いくら付き合い長いからって、それとこれとは別なんじゃ……』

リヴァイ『別じゃない。必要性がないならする必要はない。結婚の形の方が収まりついていいし、それに俺にとっても都合がいいんだ』

ハンジ『え? リヴァイの方にメリットあるの?』

リヴァイ『大いにある。だから俺は結婚の方がいい。同棲は、却下だ』

ハンジ『えええええ……ちょっと待ってよ?! それは私の方が承諾出来ないよ!』

リヴァイ『何故だ。何が不満なんだ』

ハンジ『だって、仕事続けたいし……』

リヴァイ『俺は別に辞めろとは言わん。むしろ続けた方がいいと思っているが?』

ハンジ『家庭に入らなくてもいいの?』

リヴァイ『俺が一度でもそういう部分をハンジに求めた事あったか? 今まで全部、俺が代わりにやっていたのに』

ハンジ『そういえばそうでしたね?! でもほら……結婚しちゃったら、リヴァイのファンの子達、泣いちゃうよ? また私、恨まれちゃうし、今度こそ、暗殺され兼ねないよ?』

リヴァイ『その点については、とっておきの秘策がある』

ハンジ『秘策……?』

リヴァイ『結婚を機に、俺の方が教職を辞めればいい。俺が代わりに家庭に入ってやろうじゃないか』

と、リヴァイ先生が爆弾発言したもんだから、他のクラスとか、いろんなところから絶叫が聞こえ出した。

いやあああああ?! とか嘘おおおおお?! とかいろいろ。

ハンジ『は……? あんた、何言ってるの? 正気なの?』

リヴァイ『俺はいたって真面目だが?』

ハンジ『いや、熱でもあるんじゃないの? あんた、教職捨てるって……馬鹿じゃないの?!』

リヴァイ『そうか? 別に自分ではそうは思わんが。むしろワクワクしているぞ。これでようやく専業主婦…いや、主夫か。俺の夢が一個叶う訳だからな』

ハンジ『そんな話は初めて聞いたんですけどおおおおおお?!』

リヴァイ『今、言ったからな。そもそも俺はもともと、なりたくて教職についた訳じゃない。ある意味ではエルヴィンに嵌められてうっかり教員になっちまったようなもんだ。だから、教職に未練がある訳じゃないんだよ』

ハンジ『で、でも……リヴァイを慕う生徒達がどんだけいると思っているの? あんた、生徒を見捨てる気なの?』

リヴァイ『それについては申し訳ないとは思っているが、背に腹は代えられん。ハンジと結婚出来るんだったら、俺は教職を捨てる覚悟はある』

おおおお。なんと男らしい発言なんだ。

その瞬間、ハンジ先生がうるっときちゃって。でも、寸前で堪えて、

ハンジ『だ、ダメに決まってるでしょ! そんなの、余計に生徒達に恨まれちゃう……!』

リヴァイ『ハンジ。何もかもがうまくいく選択なんて、元々無理な話だろうが。何かを捨てなければ、得られるものは何もない』

ハンジ『そうだけど! 私だって一応、教員なんだから! 生徒達に恨まれるのは辛いんだよ?! 今までどんだけ地味で地味で地味な嫌がらせとか嫌味とか言われてきたか!!』

リヴァイ『それは陰でやられてきたんだな。どうしてそれを今まで言わなかった』

ハンジ『あんたに言ったら、余計にこじれるでしょうが! あんたの人気、加熱し過ぎて本当にいろいろヤバかったんだからね!』

と、ハンジ先生が言った直後、リヴァイ先生が立ち上がって、ハンジ先生の席の隣に移動して、正面から抱きしめた。

ヒューヒューの声が教室であがる。向こうには聞こえてないだろうけど。

リヴァイ『今まで我慢させてすまなかった。ハンジ、本当にすまなかった……』

ハンジ『や、やめてよ……優しくしないでよ。涙が出てくるじゃない』

リヴァイ『元々、泣き虫の癖に何言ってるんだ。泣け』

ハンジ『もうーいろいろぐちゃぐちゃなんですけどおおおお?!』

と、ハンジ先生がリヴァイ先生の胸の中でわんわん泣いている。

それを愛おしそうに見つめるリヴァイ先生の姿が、すげえ格好良かった。

ハンジ『えっぐ……えっぐ…やっぱり、ダメだよ。リヴァイ』

リヴァイ『何が』

ハンジ『あんたが教職辞めたら、ダメだよ。そんな事しちゃったら、宝の持ち腐れじゃないの』

リヴァイ『その宝を独占する権利をやるっつっているのに。お前も素直じゃねえな』

ハンジ『だって、そんな事したら、私、多分、リヴァイ観察日記つけちゃうよ? イグアナ観察記録みたいにして、飼っちゃうよ? それでもいいの?』

リヴァイ『ははっ……そいつは面白いな。ハンジらしくていいんじゃないか?』

ハンジ『誘惑しないでよおおおお! 今、本気でそれをやりたい自分と理性との葛藤が始まろうとしてやばいんですけどおおおお?!』

リヴァイ『まあ、その辺はハンジに任せる。そろそろいいか? 結婚、承諾してくれるか?』

ハンジ『待ってよ! まだ承諾してない! 1ミリもOK出してないよ!』

リヴァイ『まだ抵抗するのか。しぶとい奴だな。お前も……』

ハンジ『いや、だって……その、よく考えよう。リヴァイ。冷静になって考えよう』

リヴァイ『何をだ』

ハンジ『この結婚のメリットについてだよ。私にはメリットしかない状態だけど、リヴァイの方のメリットって、何かあるの?』

リヴァイ『あー……』

と、リヴァイ先生は少し考えて、

リヴァイ『俺はひとつだけ、約束して貰えればそれでいい』

ハンジ『約束?』

リヴァイ『ああ。それさえ反故されなければ、俺はハンジと一緒に結婚生活はやっていけると思っているんだが』

ハンジ『それって、何?』

リヴァイ『俺と毎日、一緒に風呂に入って、俺にハンジの体を全部、洗わせる事だ。今度はもう、本当の意味で「全部」だ』

ハンジ『!!!!!!』

その直後、ハンジ先生が目を白黒させて口をパクパクした。

ハンジ『毎日なんて絶対無理いいいいいい!!! いやあああああ!!!!』

リヴァイ『あ、毎日はさすがにふっかけ過ぎか。悪い。定期的、でいい。とにかく今までのサイクルより少し多めに一緒に風呂につきあってくれるなら、俺はそれだけで満足だ』

ハンジ『いや、それも何か、その……やっぱり私の方のメリットじゃない? あんたどんだけ謙虚なのよ』

リヴァイ『そうか?』

ハンジ『うん……その、あの……それだけのメリットで、結婚って、やっぱり変っていうか』

リヴァイ『ふん……じゃあもっと納得する材料を提供すればいいのか?』

ハンジ『出来ればそうして欲しいけど……』

リヴァイ『分かった。後で文句言うなよ』

と、言って、リヴァイ先生が、動いた。

一同「「「「「「?!」」」」」

リヴァイ先生がハンジ先生の唇に、キスした。それもう、電光石火の勢いで。

ハンジ『?!』

うわ……しかも、その、アレだ。ガチで本気の方の、キスだ。

ハンジ『ん……んー……ん……あっ……ん……』

ハンジ先生、ヤヴァイ!! 声、超色っぽい!!!

おっぱじめたあああああ!!! 教育上、よろしくない展開きたあああああ!!!!

ハンジ『はっ……あっ……ああっ………ちょ……あっ……』

うわ……すげえ。見入っちまう。いや、これ、本当、誰か止めなくていいのかよ。

リヴァイ先生、完全に男のスイッチ入ってやがる。いいのかなコレ。

そしたら、天の神様がそれを察したのか、チャイムが鳴った。

昼休み終了の合図だった。

リヴァイ『ああ、次の授業か。今日はここまでしか出来なかったか』

ハンジ(ぼーっ……)

リヴァイ『という訳で、これが俺にとっての結婚する最大のメリットだ。理解出来たか?』

ハンジ(こくり)

リヴァイ『納得したか? だったら、返事を今、くれ』

ハンジ『…………はい』

リヴァイ『結婚、してくれるんだな?』

ハンジ『……はい。結婚します』

リヴァイ『良かった。籍はいつ入れる?』

ハンジ『リヴァイに任せる……(ぼーっ)』

リヴァイ『なら……面倒臭いからもう、俺の誕生日あたりでいいか? 12月25日で』

ハンジ『うん……(ぼーっ)』

リヴァイ『結婚式とか、詳しい事はまた後で決めるぞ。じゃあな。俺は授業の準備に戻る』

ハンジ『うん……いってらっしゃい……(ぼーっ)』

そして、ハンジ先生を置いてリヴァイ先生が先に進路指導室を出て行った。

凄かった。2人の愛の進路相談。一気に結婚まで持っていきやがった。

何だコレ。すげえニヤニヤしてくるんだけど。

ハンジ『……………は! 私は、今、何を………』

あ、ハンジ先生が我に返った。今更だけど。

ハンジ『うわあああああ勢いで結婚承諾しちゃったよおおおおおおどおおしよおおおおおお?!』

ハンジ『しかもあの、リヴァイとだよ?! キスされて、押し倒されて、承諾しちゃったよおおおおお?!』

ハンジ『何コレ?! 何コレ?! 何でこんな事になっちゃったの?! おかしくない? 何かおかしくない?!』

ハンジ『もう、私の馬鹿ああああああ?!』

と、今頃悶絶してゴロゴロして、困惑するハンジ先生が超可愛かった。

という訳でお昼のテレビ放送はそこで打ち切られて、皆、その後にすげえざわめき始めた。

ミカサ「け、結婚するって、今、言った……」

エレン「ああ。言ったな」

ミカサ「しかも、クリスマス。12月25日に籍を入れるって……」

エレン「ああ。その日はリヴァイ先生の誕生日だから丁度いいじゃねえか」

ミカサ「じゃあ、結婚式もその日にするのかしら?」

エレン「かもしれねえな。あ、でもそうなると、クリスマスパーティーどころじゃねえよな。オレ達、リヴァイ先生に世話になったんだし、2人をお祝いしてあげないと」

ミカサ「そ、そうね……そうなる」

エレン「何してやろうかな。やべえ! 次の授業どころじゃねえなコレ!」

教室の中も相当ざわめいていた。女子の一部はがっくり葬式のようになっているし、隣のクラスまでざわめいている。

その直後、もう1回、テレビ放送が来た。

あ、リヴァイ先生が一人で映っている。何だろ。何か挨拶するのかな。

リヴァイ『あー……授業始まる前に、すまん。ちょっとお知らせだ。12月25日、学校の体育館を借りて、俺とハンジの結婚式をあげてくれるっていう話がついたようだから、その日に結婚式の披露宴を行う。来たい奴は来てもいい。だが、生徒は全員、制服で来い。時間は追って知らせる。以上だ』

と、追加情報がきて、教室は更に轟いた。

もうこれ、学校をあげてのお祭り騒ぎじゃねえか?!

アルミン「凄かったねえ。公私混同もいいところだね! でも良かったよ。ちゃんとくっついて」

エレン「だな。今頃、エルヴィン先生とピクシス先生、祝杯あげているんじゃねえかな」

ミカサ「次の授業の準備、出来ない……」

エレン「はは! ちょっと遅れてくるかもな。次の授業はなんだっけ?」

ええっと、今日は10月7日。火曜日だから…。

古典か。キッツ先生か。だったらそろそろ教室にやってくるかな。

あ、やっぱり来た。キッツ先生も微妙な顔している。さっきの騒動、知っているんだろうな。

でも淡々と授業を始めた。そうだよな。授業しない訳にはいかないしな。

そんな訳で、いろいろざわざわしながらオレ達は授業を受けた。

リヴァイ先生とハンジ先生の恋の行方は強引に決着ついたけど、なんか2人らしいゴールの仕方のような気もするから、まあいいか。

オレは古典の授業を受けながら、どんな風に2人を祝ってやろうかなって考えていたのだった。

という訳で、やっとリヴァイ先生とハンジ先生が結婚する事になりました。
一気に書いて疲れたので小休止。また後で続きを書きます。ではノシ








その日の放課後。オレとミカサはもう一度、進路相談室に足を運んだ。

今の時期はテスト前だから部活の方も顔は出さなくてもいい。

テスト一週間前になると、部活動は完全に停止する。隠れてやると罰則がある。

だからその日はのんびりと、もう一度進路相談室に足を踏み入れたんだけど。

またまた先客が居た。リヴァイ先生とハンジ先生が言い争っていたのだ。

ハンジ「ひどいよおお……昼休みの様子が中継で生徒に筒抜けだったなんて、私、知らなかったよおおおお」

リヴァイ「ああ? んなもん、エルヴィンとピクシス先生なら絶対にやるに決まっているだろうが。生徒全員が証人だからな。前言撤回は絶対させねえぞ」

あ、やっぱりリヴァイ先生、中継されている事、気づいてあえてやったんだ。

すげえ信頼関係(ある意味で)だな。ハンジ先生、可哀想だけど。

こっちはすげえ面白かったんで口がにやけてしまう。

ハンジ「うわああああん! 嵌められたよおおお! こんな筈じゃなかったよおおおお!」

リヴァイ「うるさい。いい加減に諦めろ。もう、決まった事だ。それより細かい事をこれから決めていくぞ」

ハンジ「ううう………ぐすんぐすん」

ハンジ先生が真っ赤になって涙目なんだけど、超可愛い。

これ絶対、リヴァイ先生、わざとやっているな。苛めて楽しんでいるようにしか見えない。

エレン「あの、オレ達、四者面談用の資料を閲覧したいんですけど、奥の席、使っていいですか?」

リヴァイ「ああ。構わん。少々うるさいかもしれんが、それでも良いなら」

エレン「いえ。2人は2人で今後の相談、頑張って下さい」

という訳でオレとミカサは大学の資料とかいろいろ眺めながら、リヴァイ先生とハンジ先生の会話を背景に聞くのだった。

ハンジ「うううう………しかももう、結婚式の日取りまで決めちゃって。12月って早すぎない? しかも学校の体育館を借りるって。いつの間に打ち合わせていたの?」

リヴァイ「その辺の事はエルヴィンとピクシス先生が全て前もって根回ししておいてくれたそうだ。準備万端で待っていたそうだぞ」

ハンジ「もう、なんか完全に、ベルトコンベヤーに乗せられた荷物のような気持ちなんだけど」

リヴァイ「いいじゃないか。面倒がなくて」

ハンジ「そうだけどさー。うーん。なんかこう、理不尽な気持ちが拭えない……(がくり)」

リヴァイ「どうしてそこまで嫌がるんだ。やっぱり結婚に抵抗があるのか?」

ハンジ「いや、その……そういう訳じゃないんだけど」

リヴァイ「ん?」

ハンジ「なんかこう、今、地に足がついてない感じでね。心拍数がずっと、フル活動していて。心臓持たないっていうか、壊れそうになっているというか。この状態、いつまで続くのかなって思って……」

リヴァイ「ああ、そんな事か。だったらハンジ、オレの脈拍、測ってみろ」

ハンジ「え? 何で?」

リヴァイ「俺の方が、多分、ハンジより脈拍早いと思うぞ」

ハンジ先生がどうやら脈を測り始めたようだ。

ハンジ「………本当だ。私より、早いかも」

リヴァイ「だろ? だったら、問題ないだろ。俺もこういう事は初めてなんだ。緊張くらいはする」

ハンジ「そうなんだ………」

リヴァイ「浮かれているのは俺の方だと思う。その………強引な手を使って悪かったとは思うが、早くハンジを自分の物にしたくて堪らなかったんだ」

うははははは! すげえ会話だなコレ。いいのかな? 聞いちゃって。

ミカサもちょっと照れている。だよなあ。甘すぎる会話だもんな。

ハンジ「そ、そうだったの?」

リヴァイ「ああ。でないと、またいつ、別の男がハンジにちょっかい出してくるか分からんだろ。今度こそは「俺の女に手出すんじゃねえ!」って、代わりに言ってやりたいって思ったんだ」

ハンジ「え?」

リヴァイ「俺がもし、お前の彼氏だったなら、モブリット先生に告白された時点で、俺が代わりに話をつけにいっても良かった。あの時はそうする権利がなかった訳だから「俺にどうして欲しいんだ」って、つい怒鳴っちまった。すまなかった」

ハンジ「そ、そうだったんだ……」

まるで答え合わせのような会話が続いてハンジ先生の声が潤んでいた。

ハンジ「あんた、そこまで私の事、考えてくれていたんだ。ごめん……全然、気づかなくて」

リヴァイ「いや、俺の方こそ悪かったな。ただの愚痴に本気になって言い返すなんて、らしくなかった」

ハンジ「ううん。あの時、甘えた私も悪いのよ。これって、私の悪いところだよね」

リヴァイ「いいや? 俺はハンジに甘えられるのは嫌いじゃない」

ハンジ「え……?」

リヴァイ「嬉しかったよ。頼ってくれたのは。なのに素直にそれを表に出せなかっただけだ。俺もあんまり自分の感情を表に出すのがうまくない。そのせいで誤解も多々起きる。そんな時、何度、お前に助けられたか分からない。だからハンジが傍に居てくれないと困るんだ」

ハンジ「ええ? あ、もしかして、私、リヴァイの通訳的存在なの?」

リヴァイ「そうとも言うな」

ハンジ「うははは! そりゃ責任重大だね! じゃあもう、しょうがないか!」

と、やっと気持ちが落ち着いたのかハンジ先生が一度、手を叩いた。

ハンジ「それだけ必要とされているなら、肌を脱ぐしかないね! 分かった! 結婚を前向きに考えてみるよ。とりあえず、何から始めたらいいのかな?」

リヴァイ「そうだな。まずは、住居についてどうするか、だな」

ハンジ「あーそっか。今住んでいるところって、基本、独身の教員用だから、結婚した人は大抵出ていくよね。部屋の大きさが1人か2人用ってところだし」

リヴァイ「暫くは俺の方がハンジの部屋に通ってもいいが、ずっとそうする訳にもいかないよな。新居を考えるか?」

ハンジ「いいの? 探すの大変じゃない? 忙しいのに」

リヴァイ「その辺はエルヴィンに丸投げすれば喜んで探してくれるんじゃないのか?」

ハンジ「あは! それもそうだね。じゃあエルヴィンにも協力して貰おうか♪」

リヴァイ「学校からあまり遠くなり過ぎなくて……ハンジの荷物が多いから、収納が多い部屋がいいよな。4LDKくらいのマンションで考えておくか?」

ハンジ「いや、4LDKは大きすぎない? 3LDKでもよくない?」

リヴァイ「3も4も対して変わらんだろう。それにどうせ荷物増える癖に。初めから部屋数の多いところを押さえた方がいいんじゃないのか?」

ハンジ「いや、私の場合、あればあるだけ荷物ぶっこむだけだから。制限があった方がかえって助かるかなーて」

リヴァイ「ほう? だったら容量越えたら遠慮なくガンガン捨てるぞ? いいんだな? 後悔するなよ?」

ハンジ「うぐ! そう言われるとプレッシャーになるけど、4LDKになると家賃跳ね上がるからね。うん、そこで妥協しよう」

リヴァイ「は? 家賃を気にして遠慮する必要はない。金は使うべき時に使わなくてどうするんだ」

ハンジ「いや、だって! 悪いよ!! そこはほら、将来の為にも節約した方が」

リヴァイ「そこは節約するべきところじゃない。それに4LDKの方が後々の為にもいいだろ」

ハンジ「うーん。確かにそうだけどさ。本当にいいの?」

リヴァイ「金の事なら心配するな。大丈夫だ。こう見えても俺はそれなりにため込んでいる」

ハンジ「………いくらほど?」

リヴァイ「…………8000万くらい」

ハンジ「は、8000万?! ちょっと待って! 何をどうやりくりしたら教職だけでそれだけため込めるの?!」

リヴァイ「教員になる前に別の仕事もいろいろやっていたんだよ。土方仕事とか。宅配とか。主に肉体労働だな。若い頃、エルヴィンに無理やり大学行かされた時に、あいつに大学資金を全面的に肩代わりして貰ったから、それを返済する為に働いていたんだ。まあ、あいつはびた一文もこっちの金を受け取っていないんだが」

ハンジ「えええ……それは初耳だよ。あんた、エルヴィンに大学行かされたって、本当にそういう意味だったんだ。エルヴィン、まるであしながおじさんじゃない」

リヴァイ「あいつが勝手にやったんだよ。こっちの承諾も無しに。泥酔している時に、契約書を書かせるわ、大学先まで勝手に決めるわ……本当に、あいつ、何であそこまで俺にしてくれたのか……」

ハンジ「あーあれじゃない? 完全にパトロン感覚だったんじゃない? リヴァイがもし女の子だったらエルヴィンに召し抱えられていたかもしれないね」

リヴァイ「想像させるな……本当にやりそうで怖い(ガクブル)」

おおお。なんか裏話も飛び出して面白いな。

大学の資料見ているけど、リヴァイ先生とハンジ先生の会話が面白すぎて集中出来ねえな。

ハンジ「あははは……エルヴィン、リヴァイの事、大好きだもんね。案外、結婚してない理由ってそこだったのかな」

リヴァイ「おい。目を逸らしていた事を突き付けるな。俺も薄々、そんな気配は感じる事があったんだが、見ないようにしていたんだぞ」

ハンジ「本当に?! 襲われそうになった事あったの?!」

リヴァイ「いや、それはさすがにないが……なんていうか、たまに熱っぽい視線を感じる時はあった。そういう空気特有のな。まあ、俺は当然逃げたけど」

ハンジ「うはwwwww危ないwwwリヴァイ、同性からもモテるのって大変だよねwww」

リヴァイ「笑いごとか! あーもう、今はエルヴィンの事は横に置いておく。何の話をしていたんだったか」

ハンジ「家賃の件だよ。新居の大きさとか。あ、大きさもだけど、駐車場とかの事も考えないと。車2台とめられるところじゃないとダメだよね」

リヴァイ「ああ。まあ、車はそうなるな。うーん………そうなると、マンションよりも一戸建てを借りた方がかえって探しやすいかもしれないな」

ハンジ「あ、じゃあ学校からの距離は妥協する? ちょっと遠くなってもいいから郊外探す?」

リヴァイ「そっちでも別に構わんぞ。通勤に1時間以内なら何とかなるだろ」

ハンジ「おおお。プレッシャーだね。今までは片道5分で行き来出来たのが、1時間になるって思うと……」

リヴァイ「叩き起こしてやるぞ。毎朝な(どや顔)」

ハンジ「いやースパルタ教師きたああああ! ううう。やっぱり近くてマンションの方がいいかもー」

リヴァイ「まあ、両方見比べて決めてもいいだろ。その辺はエルヴィンの方が詳しいんじゃないか」

ハンジ「そうだねー。じゃあこの件は後回しにするとして……」

リヴァイ「ん? どうした。急に赤くなって」

ハンジ「いや、その……一緒に暮らす様になったら、一緒に寝るんだよね?」

リヴァイ「そうだな」

ハンジ「その、私、寝相、めちゃくちゃ悪いの、知っているよね?」

リヴァイ「ああ。そうだな」

ハンジ「リヴァイ、ベッドから落っこちないかなーと思って、痛い痛い痛い! 耳ひっぱらないでええぎゃあああ!」

リヴァイ「余計な心配は無用だ。大きいベッドを買いなおせばいいだろ(手離す)」

ハンジ「え? ベッド買いなおすんだ? ダブルで?」

リヴァイ「キングだ(どや顔)」

ハンジ「どこのラブホテル仕様ですか?! いや、その、そこまですると、お金飛んでいくから、さ」

リヴァイ「何でさっきからそう、ケチケチしているんだ。金なら出すって言っているだろうが!」

ハンジ「だあああってええええ! あ、分かった! 和室で寝よう! 和風の生活も良くない? ね? (てへぺろ)」

リヴァイ「まあ、和室でも構わんが………体位が制限されるな(ボソリ)」

ハンジ「ん? 何か今、言った?」

リヴァイ「いや、何でもない。んんー……そうだな。分かった。寝室は和室でも構わんが、もし不都合が出てきたらベッドの生活に変えてもいいよな?」

ハンジ「多分、大丈夫じゃない? ほら、日本は畳の生活の方がいいって。きっと」

リヴァイ「今までがベッドだったから、すぐには慣れないかもしれないな。まあいいか。それでも」

ハンジ「後は何か決めておく事ってあったっけ?」

リヴァイ「家電とかはそれぞれの物を持ち寄ればいいし、特に新しく買う物はないよな」

ハンジ「あ、でも、私が使っている方はもうほとんどボロボロだし、これを機会に処分したいかも。リヴァイの使っている方に統一しようよ」

リヴァイ「まあ、そうだな。お前の部屋の掃除をすると、掃除道具も摩耗していたからな。そろそろ限界ではあったな」

ハンジ「冷蔵庫も洗濯機もギリギリだったよね。いやーその辺、ケチ臭くてごめんね!」

リヴァイ「お前の金の使い方は殆ど、飼っていた生物の餌代とかだったんだろ。足りない分は自分の金でこっそり補填して賄っていたんだし」

ハンジ「まあねー自分の事よりあの子らの方が可愛いからさーついつい、自分の事は後回しにしちゃうんだよねー」

リヴァイ「もう今度からそんな事はしなくていいからな。ハンジの分は、俺がまとめてやるから」

ハンジ「ありがとう。うん。素直に嬉しいよ」

おおお。なんか甘い空気が漂っている気がする。

リヴァイ「………ハンジ」

ハンジ「(ドキッ)な、なに?」

リヴァイ「お前、本当に、イッた経験、ないのか?」

ハンジ「ちょっとおおおおいきなり何言い出すの?! エレン達、そこにいるのに。その話はやめようよ!!」

リヴァイ「エレン、耳栓しておけ」

エレン「らじゃーです(*嘘)」

ハンジ「思いっきり聞く気満々じゃないの! ちょっと、エレンもニヤニヤしないで!」

エレン「え? 何ですか? 聞こえませーん(*嘘)」

リヴァイ「ほら、聞こえないって言っているんだからいいだろ。その件について、確認したいんだ」

ミカサ(ドキドキ)

ミカサまで真っ赤になっている。

ミカサ、結構エッチだからな。そういう話は耳ダンボしちゃうんだろう。

オレとミカサは耳栓したふりをして話を聞いている。

ハンジ「あーうん。その、はい。すみません……ごめんなさい」

リヴァイ「何を謝る必要がある。それはハンジの責任じゃない」

ハンジ「でも……やっぱり変じゃない? 私、36歳にもなって、そういう経験ないんだよ?」

リヴァイ「それは運がなかっただけだろ。もしくは、過去の男達の責任でもある。こういう話を聞いてもいいのか判断に迷うが……お前、今まで、何人の男と付き合ってきた」

ハンジ「…………それはエッチした人数で計算?」

リヴァイ「ああ。まあ、成り行きでやっちまった数も含めていい」

ハンジ「んー………5、6人ってところかな。多分、そのくらい」

リヴァイ「意外と少なかったな。そんなもんか」

ハンジ「うーん。私、そもそもそこまでエッチに執着なかったからね。ただ、傾向としては年下ばっかりで、年上とつきあった経験はないよ」

リヴァイ「あーなるほど。合点がいった」

ハンジ「え? 何が?」

リヴァイ「お前、まだスローセックスやったことないだろ」

ハンジ「え? 何それ。そんなのあるの?」

リヴァイ「あるんだよ。セックスにもいろいろ種類がある。パートナーが年下ばかりだったのなら、そいつら、余裕がなくてガツガツしたセックスを要求する奴らばっかりだったんじゃないか?」

ハンジ「何で分かるの?! まるで見てきたように言うね!」

リヴァイ「まあ、その辺はなんだ。若い頃はそんなもんだからな。俺も初めはそうだったし、数をこなしてから気づいた事だからな。女には、大まかに分けて2種類のタイプがいるって事を」

ハンジ「何それ? 何か面白そうな話だね。聞かせて(わくわく)」

リヴァイ「分かった。これはあくまで俺の自論になるが……」

と、前置きした上でリヴァイ先生の話が始まった。

リヴァイ「女には身体がすぐに濡れるタイプ、つまり短距離走者のようなタイプと、体が濡れるまでに時間がかかるマラソンランナーのようなタイプと2種類に分かれるんだ」

ハンジ「へー……それって比率的にはどんな感じ?」

と、すっかり生物の先生の顔になってハンジ先生が聞き入っている。

リヴァイ「俺の感覚だと、5割くらいがスローで、3割がクイック……まあ、これは俺が勝手に言っているだけの言葉なんだが、そんな感じだ。残り2割は、どっちもいける万能型の女だな」

ハンジ「えええ? じゃあもしかして、私、セックスのやり方が自分に合ってなかった可能性がある訳?」

リヴァイ「あくまで可能性の話だけどな。あと、初めてセックスした相手とのトラウマを抱えて、それ以後のセックスがうまく出来なくなるケースもある。お前、最初の時はうまくちゃんとやれたのか?」

ハンジ「………………痛いって感覚はなかったよ? ただ、その、アレ? こんなもんなの? みたいな拍子抜け感はあったね」

と、汗を浮かべてハンジ先生が言う。アレ? 何か様子が変だな。

嘘ついている様子ではないけど、それが全部ではないような。違和感があった。

リヴァイ先生はそれに気づいた様子はないけど。

リヴァイ「だとしたら、初めてのセックスでトラウマを抱えた訳じゃないんだな」

ハンジ「うん。初めての人にはとても優しくして貰えたよ。無理、言ったのに、ちゃんとしてくれたんだ」

リヴァイ「ん? 無理言った? まさかお前、自分から誘ったのか……? (イラッ)」

ハンジ「え……あ、いや……あははははは! む、昔の事だからもういいじゃない! ほら、リヴァイだって10代の頃、やりまくっていたんでしょ? 時効だよねえ?」

リヴァイ「………その口ぶりだと、初めては10代の頃にやったんだな」

ハンジ「な、何故分かったし……(遠い目)」

リヴァイ「相手は俺の知っている奴じゃねえよな? <●><●>(*疑惑の目)」

ハンジ「え? え? 何でそういう発想になるの?」

リヴァイ「何故、すぐ否定しない。お前、まさか………まさか………」

該当する人物がいるのか、リヴァイ先生がどんどん機嫌悪くなってきた。

誰だろ? リヴァイ先生には思い当たる人物がいるようだけど。

コンコン♪

エルヴィン「やあご両人。そろそろ新居のお話は煮詰まったかな? 私がいろいろ世話してあげよう(スタンバイ☆)」

と、まるで待ってました! と言わんばかりにエルヴィン先生が進路指導室にやってきた。

エルヴィン「おや? また喧嘩かい? 今度は何をやらかしたのかな?」

険悪な空気を察してそう言うと、

リヴァイ「単刀直入に聞こう。エルヴィン。お前、ハンジと昔、ヤッた事あるか?」

エルヴィン「……………(微汗)」

リヴァイ「答えろ。誤魔化したら容赦しないぞ」

エルヴィン「はー………バレちゃったか」

観念したようにエルヴィン先生は白状した。

エルヴィン「うん。もう20年前になるかな。1度だけしてあげた事、あるよ」

と、とんでもない爆弾発言が飛び出てオレとミカサは2人で「「ええええ」」って顔になった。

どどどどういう事なんだそれって?!

エルヴィン「今から20年前。私はまだ23歳だった。教職になりたての22歳の時、初めて受け持ったクラスの子が、ハンジだったんだよ」

ハンジ「私、実は講談高校出身なんだよね。エルヴィンとはその頃からの付き合いなんだ」

ええええええ?! それも初耳だぞ!?

エルヴィン「うん。で、翌年の、ハンジが16歳になった時だったかな。クラスの女子にいろいろ馬鹿にされて、やけくそになっていてね。「処女捨てたいから協力してお願いエルヴィン!!!」ってだだこねて。私も正直、困ったなあと思ったんだけど。教員としてはやってはイケナイ事だし。でも、どうもハンジは何か、特別な理由があるような気がしてね。ごめん。あの頃は私も若かったし、協力してあげたんだよ」

リヴァイ「……………」

エルヴィン「その頃からハンジはずっと「青春とは何ぞや」みたいな事を言っていてね。クラスの女子に「初恋もまだなの?」とか「処女ださい」みたいな事を言われてキレてしまったようでね。泣きながら訴えて来て。悔しいって。だから、ついつい、私もそんなハンジが可愛く見えて、………すみません。手出しました」

アウトだろ。いや、もう完全にアウトだろ。

20年前の事だから時効になるのかな。若気の至りで済ませていい問題じゃねえ気がするけど。

リヴァイ先生、頭抱えている。そりゃそうだよな。

リヴァイ「エルヴィン、よくまあ、事が発覚しなかったな。お前、教師生命、なくなるところだっただろ」

エルヴィン「その頃は今ほど、いろいろうるさい時代じゃなかったからね。勿論、バレたら懲戒免職だけど。でもその頃私も、自分の職業について揺れていた時期でね。親が教員だったから、そのまま習う様に教員に一応、なってみたけれど、実際やってみたら「うーん?」っていう違和感があって。だからバレたらバレた時でいいやって、思ったんだ。若いって怖いねえ」

リヴァイ「まあ、そういう気持ちは分からんでもないが。いや、でも……ハンジ、なんでよりによってエルヴィンを選んだ」

気分はすっかりorzだよな。リヴァイ先生。

ハンジ「んーエルヴィンなら、いいか♪ って思っちゃって。ごめん。あの頃の私、アホだったからさ。勢いだけは凄くて、好奇心が止まらないアホの子だったからさ。本当、ごめん」

と、ハンジ先生が手を合わせて謝り続けている。

リヴァイ先生、複雑な心境だろうなあ。

ハンジ「でもその時、エルヴィンが言ってくれたんだ。今回のセックスが気持ちいいものではなかったのなら、そこに「トキメキ」がないからだよって」

リヴァイ「え?」

ハンジ「だから、『ハンジがハンジらしく生きられる人にいつか出会えれば、必ず本当の、気持ちいいセックスは出来るから。今日の事は、誰にも言わないで秘密にしておこうね』って」

なるほど。ハンジ先生の「トキメキ」を追う旅はそこから始まったのか。

ハンジ「エルヴィンの言葉を信じて20年経って、やっと言っている意味が分かった気がするよ。時間かかり過ぎてごめんねーあははは……」

と、頭を掻いているハンジ先生だった。

エルヴィン「いやいや。それでも運命の人に出会えたのだから結果オーライじゃないか。そうだろう? リヴァイ」

リヴァイ「……………はあ。もう、俺には何も言えん」

と、すっかりしょげてしまったリヴァイ先生だった。

リヴァイ「エルヴィン、お前、ハンジの事、可愛いって言ったよな。だったら、俺に遠慮しているとか、ねえよな?」

エルヴィン「ん? どうしてそう思う?」

リヴァイ「いや、俺よりも先にハンジと出会っていたのも初耳だったし、お前、何でずっと独身を貫いているんだ?」

エルヴィン「え? 聞きたいの? 聞かない方がいいと思うよ?」

リヴァイ「もうこの際だから全部教えてくれ。驚かねえから」

エルヴィン「分かった。その言葉、絶対撤回しちゃダメだよ?」

と、意地悪い顔になってエルヴィン先生が言った。

エルヴィン「確かにハンジの事は可愛いと思っているよ。大人として成熟した後のハンジに再会してからも、ずっとそう思っていた。でも、ハンジよりも可愛い子を後から見つけちゃったからね」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「お前だよ。リヴァイ。私はハンジよりも、リヴァイの方に心惹かれた。君がもし女の子だったら、拉致監禁してでも嫁にしたいと思うくらいには一目惚れだったんだよ」

うぎゃあああああ?! とんでもない発言がきたああああ?!

さらりと怖い事言っているぞ。ヤバイヤバイ。エルヴィン先生、ガチでヤバい先生だった!!

リヴァイ「あー……(ガラガラ声)」

エルヴィン「というより、もしリヴァイがそっちでもOKな人種だったら、私は正気では居られなかっただろうね。いやはや、道を危うく踏み外すところだったよ」

ハンジ「あーだから、エルヴィンはリヴァイに甘いんだね。納得したよ」

リヴァイ「いや、納得しないでくれ。ハンジ。ちょっと頭が痛くなってきた……(げっそり)」

リヴァイ先生がフラフラしていた。無理ねえな。これは。

リヴァイ「つまり、エルヴィンは「バイ」なのか?」

エルヴィン「そういう事になっちゃうのかな? うん。知らない方が良かったでしょ?」

リヴァイ「そうだな。今、俺は自分の選択を物凄く後悔している……(げっそり)」

エルヴィン「だから言ったのに。でも、私の新しい本命は別にあるよ」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「早く2人の「娘」を産んでくれ。特にリヴァイに似た娘だと尚良い。その子を私の嫁として貰えないかな?」

リヴァイ「は……? (石化)」

ハンジ「えええ……そんな博打みたいな事、言わないでよー。性別だけは完全に「運」の世界じゃない」

エルヴィン「いやいや。私は博打に強い方だよ。大丈夫。君たちの間には「娘」が産まれると思っているから」

ハンジ「気が早すぎるよエルヴィンー……あれ? リヴァイ? 何か動かなくなったね?」

リヴァイ「………は! しまった。一瞬、気失っていた」

ハンジ「あはは! 器用だね!」

リヴァイ「笑いごとか!!!!! そうか。だからか。だから今までずっと、俺とハンジをくっつけるように仕向けていたのか」

エルヴィン「イエス。だから本当はもう少し早くくっついて欲しかったんだけどね。年齢的な問題もあるから」

リヴァイ「というより、完全な犯罪じゃねえかああ!!!!!」

あ、リヴァイ先生が絶叫した。

珍しい。ここまで大絶叫するリヴァイ先生、初めて見たかも。

リヴァイ「年の差いくつだと思ってやがる。今、お前の年、43歳だろ? 16年後で計算しても、59歳だろ? もうそれは孫と祖父の関係に近いんだぞ?! 正気の沙汰じゃねえだろ!」

エルヴィン「んー……でも、しょうがないんじゃない? 法律的にはセーフだろ?」

リヴァイ「倫理的な面から見たら完全にアウトだろうが!!!!」

エルヴィン「そんな事を言われても……せめてあと5年早く君達が結婚を決意してくれていればねえ?」

リヴァイ「いや、それでも十分犯罪臭がする。お前、ロリコンの気もあるのか」

エルヴィン「教え子に手出せた時点で、自分が鬼畜だって事は自覚しているよ(笑)」

リヴァイ「………もう嫌だ。この世界は残酷だ……(顔覆っている)」

ハンジ「まあまあ、リヴァイ。もうなるようにしかならないよ。諦めよう。ね?」

リヴァイ「お前らどっちも大嫌いだ!!!」

と、リヴァイ先生が拗ねだしてしまった。気持ち分かるわ……。

エルヴィン「困ったね。リヴァイが拗ねてしまった。どうしよう? ハンジ」

ハンジ「んー……リヴァイが拗ねた時は、とりあえず紅茶出すしかないんじゃない?」

エルヴィン「それもそうだね。紅茶でも飲ませて落ち着かせよう。入れてくるね」

と、言ってエルヴィン先生が紅茶を入れに行った。

リヴァイ先生がぐったりしていて、可哀想だった。

あまりにも衝撃的な情報が立て続けに入ってきて脳内で処理しきれていない状態だな。

リヴァイ「なんかもう、何もかもが嫌になった。もう、俺はやっぱり独身でいた方が良かったのか…?」

ハンジ「ええ? 今更それは言いっこなしだよ。リヴァイ。もう決めた事でしょ? 前言撤回はしないって、自分で言ったんじゃないの」

リヴァイ「それはそうだが……まさかここでこんな大どんでん返しが待っているとは思ってもみなかったんだ。子供、早めに作ろうと思っていたのに……(ブツブツ)」

ハンジ「あ、そうだったの? うーん。でも今すぐじゃなくても良くない? エルヴィンの件、納得出来ないうちは作らない方がいいと思うよ? エルヴィンの性格は知っているでしょ? 娘産まれちゃったら、本気で嫁にしようと画策してくると思うよ?」

リヴァイ「絶対、あいつには娘は渡さん……(ゴゴゴ)」

ハンジ「うーん。どっちに似ても嫁にしそうだから、難しいよね。多分、私に似ても嫁として貰いたいと思っているだろうし」

リヴァイ「息子が産まれたとしても危険だぞ。どう考えても。あいつとは縁切りした方がいいんじゃねえか?」

ハンジ「そんな不義理は出来ないよ! 私、エルヴィンにどんだけ世話になったか分からないよ! リヴァイだってそうじゃない!」

リヴァイ「それとこれとは別問題だ。あの野郎……本気で一度、締めた方がいい気がしてきたぞ(ゴゴゴ)」

エルヴィン「まあまあリヴァイ。紅茶でも飲んで落ち着いて」

と、紅茶を差し出してエルヴィン先生が差し出す。

とりあえず、それは頂くようだが……

俺はこの時、嫌な予感しかしなかった。なんていうか、リヴァイ先生が「神谷」に見えてしまって。

案の定、リヴァイ先生はフラフラしちゃって、眠ってしまった。

盛られたな。爆睡している。

もう、笑ってはいけないアレの中で最大の笑いだった。

今回ばかりは「アウト」だった。ミカサも「アウト」だったみたいで、笑い出した。

ミカサ「絶対、くると思った……盛られるって、思ったのに」

エレン「予想できたのに、出来たのに! ダメだった……!」

と、オレ達が声を殺して笑っていたその時、ハンジ先生がしみじみと言った。

ハンジ「あー寝かせちゃったんだ。まあ、それが一番いい手かもね」

エルヴィン「だろう? 今回、いろいろあり過ぎたからね。寝るのが一番のストレス解消法だよ。リヴァイに一番今、必要な事だ」

ハンジ「うん。そうだね。とりあえず、リヴァイは私が抱えて連れ帰るから。後の事は宜しくね。エルヴィン」

エルヴィン「了解した。じゃあね。ハンジ」

と、いう訳でやっと騒動が終わって、オレとミカサはやっと大学資料に目を戻した。

エルヴィン「おやおや。エレン。勉強熱心だね。ミカサも。今度の四者面談に向けての予習かな?」

エレン「あ、はい。今、何もとっかかりがない状態なんで、とりあえず、資料だけでも目通しておこうかと」

エルヴィン「ふむ。今はまだ、何も見えてない状態なのかな?」

と、エルヴィン先生が進路指導の先生の顔になってこっちに来てくれた。

向かい合って座って、話し合う。

エレン「そうなんですよね。エルド先輩には「語学系」とかどうだ? と言われた事もあるんですけど。オレ、そういうの向いているんですかね?」

エルヴィン「語学系ね。確かに語学が強いといろんな仕事が出来るけど、私が見る限り、エレンはもう少し違う職種でもいいと思っているよ」

エレン「え? エルヴィン先生から見たら、オレに向いている職業、分かるんですか?」

エルヴィン「あくまで私の「主観」になるけど……エレンの場合は「人の命を助ける仕事」に関する物がいいんじゃないかと思っているよ」

エレン「え? 医者とかですか? オレの親父は確かに医者ですけど、頭足りないから無理ですよ」

エルヴィン「そうか。なるほど……通りで。いや、血筋って奴か。確かに学力が伴えば、医者という選択肢もあっただろうね。でも私は、それよりももっと「危険」が伴う仕事でもいけると思うよ」

エレン「危険……ですか」

ピンと来ない。どんな仕事だろ?

エルヴィン「例えばそうだね。『消防士』とか『レスキュー隊』とか、あとは『自衛隊員』とかかな。君の緊急時の咄嗟の判断能力は、リヴァイからも少し話を聞いているし、舞台での本番の適応力。そして、マーガレットの家の事もマーガレット本人から聞いたよ。お母さん、助けてあげたんだってね?」

エレン「あ、まあ……成り行きというか、ついつい」

エルヴィン「うん。そういう緊急時の咄嗟の判断能力は君の「武器」になるんじゃないかな。加えて君は人の「命」に対してとても敏感に感じ取って、それを助けようとする気質がある。自分を犠牲にしてでも、人の命を助けたいと思った事とかないかな?」

ドキッ。昔の事を言われているようで、焦った。

あの、9歳の時の事件だ。でもエルヴィン先生、その事を知らない筈だよな。

エレン「……ない訳ではないです」

エルヴィン「だとしたら、それに「体力」さえ伴えば、割とその辺の職業が向いているように思えるよ。あくまで私の主観だけどね。参考になったかな?」

エレン「はい。とても。分かりました。その話を、親父にもしてみます」

エルヴィン「うん。四者面談、楽しみにしているよ」

と、言ってエルヴィン先生が先に退出していった。

ミカサ「凄い。さすがエルヴィン先生。すらすらと、導いてくれた。しまった。私も聞いておけば……」

エレン「まあ、それは今度の四者面談で話聞けるからいいんじゃねえか?」

ミカサ「そうね。そうする」

と、言って適当なところで切り上げて、オレ達は進路指導室を出る事にした。

そして職員室に鍵を返して、教室に戻ると、アルミンとアニが待っていてくれた。

こっちは中間テストに向けて勉強中だった。さすがだな。

アルミン「あ、終わった? じゃあそろそろ帰ろうか」

アニ「帰ろう」

エレン「おう。帰ろうぜ♪」

という訳で、いつもの日常に戻って、オレ達は帰る事にした。

中間テストの後は四者面談がある。その後は、きっと結婚式が待っている。

文化祭は終わったけど、オレの高校生活はまだまだ慌ただしい毎日が続きそうだった。

エルヴィンのファンの方、本当に申し訳ありませんでした(土下座)
エルヴィンが相当の斜め方向の変態になってしまって、書いていて楽しかったですが、
ドン引きされそうで怖いです。本当にごめんなさい。

とりあえず、ここまで。続きはまた今度で。ノシ

もうすぐ誓約書についてのはなしでてくるかな?
もう本当ミカサ抱きしめてペロペロしたい。ちょっとくらいならいいよね

エルヴィンファンだけど面白く読んでたよ
あの人は常に斜め上を行くから…
平和な世界では何があっても不思議じゃない…かも
それより8000万もあるならマンションでも家でも買えばいいのにー
億ションもローン査定クリアするだろうし
あ、教職は転勤族だから賃貸のが良いのかな?

>>140
転勤族なのは公立です。私立だとクビにならない限りは、
結構長く在籍する事は可能らしいです。実際、何十年もいる先生いたので。

あとリヴァイの方が子供の養育費とかも考えている(筈)なので、
賃貸優先で話していますが、安い中古物件とかあればそっちでも良いとか思ってます。
ただリヴァイの性格だと、新築を現金一括でドーン!
とか払いそうなイメージもあります。豪快なイメージ。ローンとか面倒臭がりそうな。
ハンジさんはそんなリヴァイを見てアプアプする感じです。

ま、エルヴィンのプランと相談しながらきっと決める事でしょうw

>>139
ミカサをペロペロする前に、リヴァイ先生の特別授業を挟む予定です。
保健体育も彼の担当だから。もう少しお待ち下さい(笑)。

リヴァイ先生、行動はともかく、ちゃんとハンジ先生に好きだと言葉で伝えてたっけ?
つか、単なるエロ親父に見えてきた(笑)

>>143
鋭い(笑)まだちゃんと好きって言ってないですよー。
あと元々相当なエロ親父ですのでそれで合ってます。










その日の夜、オレは親父とリビングで少し話をする事にした。

四者面談についてと、今日、エルヴィン先生と話した事を親父にも話してみたのだ。

すると、親父は「ううーん」とちょっとだけ顔を顰めて、

グリシャ「そうか……進路指導の先生がそんな事を……」

エレン「ああ。まあ、職業の種類はあくまで「例え」として出してくれたんだけど、オレは「人の命を助ける仕事」に関する仕事に向いているかもしれないって。頭が良かったら、医者の適性もあるみたいな事も言われたんだ」

グリシャ「それは親としては嬉しい言葉だけど、そうか……消防士やレスキュー隊、自衛隊員ねえ……」

エレン「親父はどう思う? オレ、そういうの向いてそうだと思う?」

グリシャ「私としては、語学留学をさせる方が余程心臓にいいんだけどねえ」

と、困った顔をしていた。

グリシャ「命の危険のある仕事について欲しくない気持ちはあるよ。もしも自分より早くエレンが死んでしまったら、親としてこんなに悲しい事はない」

エレン「死ぬこと前提で話さないでくれよ。そう簡単にはくたばらねえって」

グリシャ「エレン。人は簡単に死ぬよ」

エレン「!」

グリシャ「私は常に人の「死」を見てきたからね。死ぬ時は、呆気なく死ぬ。それが人間なんだ」

エレン「…………」

グリシャ「ただ、生き方は自分で決める物だ。父さんがどんなに反対したって、エレン自身がどうしてもその道に進みたいと言うなら止める事は出来ない。親としては見守るしかないね」

エレン「……そっか」

グリシャ「でも、選択肢のひとつとして考えておくことはいいことだと思うよ。時間はまだある。じっくり考えなさい」

エレン「分かった。ありがとう。父さん」

と、言って今日のところはそこまでにして進路相談を終えた。

オレとしては、エルド先輩に進路を勧められた時の感触より、エルヴィン先生の話の方がしっくりくる感覚があったので、どちらかと言えばそっちの方に興味が沸いてきている。

ただ、一つだけ懸念しているのは、エルヴィン先生が付け加えた言葉。

そう、「体力」の問題だった。

オレの体力は多分、並み程度だ。ミカサとかリヴァイ先生に比べれば大分劣るだろう。

そういった激務の職業に耐えられるかと言えば、正直今のままでは自信がなかった。

エレン「体、もうちょっと本格的に鍛えようかな」

どういう道を進むにしろ、体を鍛えておくのは男として必要な事な気がした。

だから、オレは思い切ってミカサに相談する事にしたんだ。

ミカサは自分の部屋で筋トレをしていた。毎日の日課だ。

筋トレが終わってから風呂に入るんだが、その前に、オレはミカサに声をかけた。

ミカサ「? どうしたの? エレン」

エレン「ミカサ。オレ、ミカサのトレーニングに付き合ってもいいか?」

ミカサ「え? ランニングは一緒にやっているのに? それ以外もやるの?」

エレン「ああ。もうちょっと、本格的に体を絞りたいんだ。協力してくれねえか?」

ミカサ「うん」

という訳で、オレもミカサの部屋で腹筋や腕立て等をしながら、進路の話をしてみる事にした。

エレン「ミカサは何か、めぼしい進路、見つかったか?」

ミカサ「いいえ……全然……さっぱり」

エレン「そっか。ミカサは成績もいいし体力もあるし、大抵の仕事をこなせそうだけどな」

ミカサ「でも……自分のやれる事と「やりたい事」は別だと思う」

エレン「ああ、それもそうか。やりたい事、何かないのか?」

ミカサ「…………………」

あれ? 長い沈黙だな。

ミカサ「ひとつだけ、ある」

エレン「お? なんだよ」

ミカサ「いつか、子供が欲しい」

エレン(ぶふー!)

思わず吹いて、腕立てをやめて潰れてしまった。

エレン「お、おまえなあ……」

ミカサ「だ、だって……それくらいしか思いつかない。正直言えば、お嫁さんになれればそれでいいとさえ思っている」

エレン「そ、そうか。じゃあオレ、責任重大だな」

ミカサ「え……」

エレン「だって、ちゃんとした職業につかないと、ダメだろ? 子供育てられないだろ?」

ミカサ「………」

エレン「ん?」

ミカサ「それって、プロポーズとして受け取って、いいの?」

エレン「!」

あ、やっべ! オレ、先走り過ぎた!!!!!

エレン「あ、その、ミカサの旦那になるとすれば、その必要があるだろって話で、ええと、ごめん。ちょっとフライング過ぎた」

ミカサ「ううん。嬉しい……」

ほやっと笑ってくれた。うわあああん。可愛い。

もうこの状態、何回繰り返せばいいんだ。いい加減、手出したい。

でも、まだ親父に例の誓約書の件、確認してねえんだよな。

エレン「ミカサ。あの、例の誓約書の件、どうする?」

ミカサ「出来れば確認したいけれど。その前に、エレンとも確認したい」

エレン「ああ、多分、思っているのは同じ事だよな」

ミカサ「うん。あの誓約書の「穴」について」

エレン「誓約書の内容は「オレ」の方からの接触はダメで「ミカサ」からの接触については特に明記がなかった」

ミカサ「うん。多分、私はそこに何か「別の意味」が隠されているような気がする」

エレン「うーん。本当にそういう「エッチ」な事をさせたくないなら、確かに「両方」を規制するよなあ」

親父はどういうつもりであの誓約書を作ったんだろう?

エレン「親父に今、確認してみるか? 早い方がいいよな?」

ミカサ「うっ……でも、もうひとつの可能性もある」

エレン「え? もうひとつの可能性?」

ミカサ「ただの明記ミス。こちらから指摘して「あ、忘れていた。ごめんごめん。じゃあミカサからもダメにしよう」とおじさんに言われてしまったら、穴がなくなってしまう」

ズーン……

さすがミカサだ。よくぞそこに気づいた。

あっぶねー! 危うくその手にひっかかるところだった!

ここは慎重に行動を起こさないと。うん。誰かに相談するべきだな。

エレン「だ、誰に相談するべきかなコレ」

ミカサ「エルヴィン先生だと思う。エルヴィン先生ならきっと、客観的にこの誓約書の意図を読み取れるような気がする」

エレン「ああ、かもしれないな。こういう知略でエルヴィン先生に勝てる人はそうはいねえ」

親父も相当の曲者だけど、エルヴィン先生だって負けやしねえ。

エレン「よし。そうと決まれば、今度エルヴィン先生に時間つくって貰って相談してみようぜ」

ミカサ「うん。そうしよう。是非そうしよう」

と、その時、タイマーが鳴った。

ミカサ「お風呂の時間になったので入ってくる」

エレン「おう。いってらっしゃい」

と、規則正しく生活するミカサを見送って、オレはその場にごろんと横になった。

ミカサの部屋、ミカサの匂いがしていい気分になれるんだよな。

エレン「……………」

いかんいかん。邪な事を考えるところだった。自分の部屋に戻ろう。

そんな感じで、とりあえずの方針を固めて、その日の夜は終えたのだった。





次の日、オレ達は早速エルヴィン先生を捕まえて放課後、ちょっと時間をとってもらって進路指導室で話す事にした。

例の誓約書のコピーを見せてみる。すると、エルヴィン先生は「これは…」とちょっと驚いた顔を見せた。

エルヴィン「ふむ。では今日は2人の「愛の」進路相談という事で、私が話を受けていいんだね? (ニヤリ)」

エルヴィン先生が昨日より嬉しい顔で答えてくれた。

本当に人の恋愛事、大好き過ぎるよな。この先生。

エルヴィン「そうだね。ちょっと待って。ピクシス先生も同席させていいかな?」

エレン「え? ああ、まあいいですけど」

ミカサ「あ、そう言えば賭け事の精算、まだしていなかった(汗)」

エレン「あー……じゃあついでに全部話すか。説明するのにも必要だしな」

ミカサ「いいの?」

エレン「しょうがねえだろ。いいよ。こっちにも味方欲しいしな」

連絡を受けてから5分もしないうちにピクシス先生が進路指導室にやってきた。

くるの超はええ。本当、機動力有り過ぎる。

ピクシス「悩める生徒の為に参上したぞ。して、状況は?」

エルヴィン「まずはこちらの誓約書をご覧ください。ピクシス先生」

と、誓約書のコピーを見せると、同じように驚いていた。

ピクシス「ほほう。なるほど。これは……」

エルヴィン「まずは2人が付き合うまでの経緯と、今の状況を詳しく説明してくれるかな?」

エレン「あ、はい……」

という訳でオレとミカサは一緒に今までの経緯を大体説明する事にした。

まる、今年の3月に親父が再婚した事。その関係で連れ子同士も一緒に同じ家に暮らす事になった事。

一緒に暮らしていくうちにだんだん、オレの方からミカサに惹かれて、夏に自分から告白して、お互いの気持ちを確認した事。

でも、その際にうっかり親父にその事が即座にバレて、誓約書を交わす事になった。

その流れを大体把握して貰ったのち、エルヴィン先生達は「なるほどね」と笑ったのだった。

エルヴィン「エレンのお父さんはなかなかの策士だね。これは、いやはや」

ピクシス「ふふふ……いいのう。愛の試練というやつじゃのう」

と、ニタニタし始めたのだった。

エレン「愛の試練……ですか」

ピクシス「じゃのう。して、律儀にこれを守っておるのか? お主?」

エレン「うぐっ……その、微妙に破っている事もありますが、でも、本格的な手はまだ、出してないです」

ピクシス「ほうほう。しかしそろそろ、辛かろう。我慢にも限界があるというもんじゃ」

エレン「おっしゃる通りで……」

エルヴィン「エレンとミカサはつまりこの誓約書の「穴」についてどう捉えたらいいのか、迷っているんだね?」

ミカサ「はい。わざとなのか、それともただの明記ミスなのか。判断がつかなくて」

エルヴィン「エレンのお父さんはお医者様なんだろう? 明記ミスは、まずないね。そんな初歩的なミスはあり得ない」

エレン「だとしたら、やっぱり裏の意図が?」

エルヴィン「うん。まあ、恐らく、こうかな? という意味は分かるけど、それは私が指摘していい問題なのか、ちょっと判断がつかないね。もしかしたら、自分達で気づいて欲しいのかもしれないし」

エレン「オレ達自身で、ですか」

エルヴィン「そうそう。お父さんからの「謎かけ」みたいなものだね。それを自分達で解く事が出来れば、もう少し先に進ませてあげてもいいかなって思っているかもしれない」

エレン「ううーん……」

頭悪いオレにとっては、こういうの苦手なんだよなあ。

エルヴィン「どうする? カンニングしたいなら教えてもいいけど。ただ、もしそれが間違っていた場合の補償はしないよ」

エレン「あ、それもそうか」

そうだよな。エルヴィン先生の「答え」が必ずしも当たっているとは限らない。

ここはオレ達自身で答えを見つけるしかないのかもしれない。

エレン「分かりました。それが分かっただけでも十分です。相談にのってくれてありがとうございました」

ミカサ「ありがとうございました」

ピクシス「ふふ……まあ、どうしようもない時はここの部屋を使えばよかろう。なあ、エルヴィン」

エルヴィン「ここのソファ、倒せば簡易ベッドになるからね。必要になったらいつでも言ってね」

エレン「あ、ありがとうございます……(照れる)」

本当、この人達、教員としてダメ過ぎる先生だろ。いや、有難いけど。

ミカサ「ち、近いうちに借りるかも……」

エレン「ミカサ! 馬鹿! 言うなって!」

そんな事言ったら、絶対RECされちゃうぞ!

ほら案の定、先生2人、ニタニタ笑っているし。全く…。

エルヴィン「また困ったことがあったらいつでもおいで。愛の進路相談の方が楽しいしね」

ピクシス「じゃの。人の恋路の行方ほど、酒の摘まみに適したものはないからの!」

ノリが良すぎる…。

という訳で、とりあえず気持ちが落ち着いたので進路指導室を退席する事にしたのだった。









そして、教室に戻る途中、オレ達は売店の前あたりで騒ぎを見かけた。

なんだ? 女子の団体が異様に集まっているな。リヴァイ先生でもいるのかな。

そう思って、視線を巡らせると……

エレン「!」

囲まれていたのはペトラ先輩だった。一人だけで、女子の集団に囲まれている。

何か異様な空気だった。何か起きたんだろうか?

心配になったオレとミカサは顔を合せて、そっと様子を覗き込んだ。

すると、何やら言い争う声が聞こえてきたのだ。

ペトラ「絶対、嫌。何で署名なんかしないといけないのよ」

3年女子1「あんたのせいで、リヴァイ先生がやめるって言い出したんでしょうが! せめて署名運動くらい、協力しなさいよ!!!」

ペトラ「はあ? 何言いがかりつけてんのよ。リヴァイ先生が教職やめるのは私のせいじゃないでしょ」

3年女子2「あんたのせいのようなもんじゃない! あの時、ペトラがハンジ先生をぶったりしなければ、あのまま2人はこじれて別れていたかもしんないじゃん! あんた、リヴァイ先生のこと、好きなんじゃなかったの?! なんで矛盾した行動したのよ!!」

ペトラ「……………」

ペトラ先輩は答えない。っていうか、なんなんだこの空気。

女子って怖い。集団で一人を追い詰めるって、やっていい事じゃねえだろ。

3年女子2「放っておけば良かったじゃん! その方が都合いいじゃない! なんであんな真似したのよ! リヴァイ先生の方が教師やめるなんて、私達、思ってもみなかったのに……」

3年女子3「ペトラのせいだ……リヴァイ先生、やめて欲しくないよ……」

3年女子4「私達に謝りなさいよ! 勝手な事したのはあんたでしょ!!」

おいおい。なんか話がおかしな方向に転がってるぞ。まずくないか。これ。

ミカサも戸惑っている。どうしたらいいだろう。これ。

ペトラ「絶対、謝らない。私は確かに、悪い事をしたとは思ってるけど。謝るとすればハンジ先生よ。あんた達に謝る義理はないわ」

3年女子2「なんですって……」

ペトラ「ハンジ先生を辱めた事は本当に悪かったと思ってる。でも、あの時はアレしか方法が思い浮かばなかった。賭けだったの。あの一発で、目を覚まさせる事が出来なければ、きっと今頃……」

3年女子2「一体何の話をしているのよ。賭けとか。意味分かんないわよ!!」

3年女子3「あんたのせいでどんだけの女子が落ち込んでいると思っているのよ! 泣かせているのはあんたのせいよ!」

ペトラ「泣きたいのはこっちの方よ!!!!!」

と、その時、全身全霊を込めてペトラ先輩が言い返した。

ペトラ「そりゃ私だって、本当はリヴァイ先生に教職をやめて欲しくないわよ!! でも、それは先生自身が決めた事で、生徒の私らが口出す事じゃない。先生自身が悩んで決めた結論なんだから、私達はそれを受け入れるしかないでしょ。自分勝手なエゴばっかり押し付けて、少しはリヴァイ先生の気持ちを考えなさいよ!!!!」

3年女子2「じ、自分勝手って……自分勝手なのはペトラの方でしょうが!!」

ペトラ「ええそうね! 私も自分勝手だわ! そんな事は重々承知しているわよ!! でもね、私は1年の頃、オルオと一緒に大道具で裏方をやっていた。その時、照明の事故が起きて、危うく2人とも死にかけたのよ。それをリヴァイ先生は身を犠牲にして助けてくれたの。命がけだよ?! 間一髪、スライディングして、2人を抱えて、助けてくれたの。私はあの時から、リヴァイ先生に一生、味方するって決めたの!!! あんたらの薄っぺらいファン心理なんかとか比べられるもんじゃないのよ!!!」

3年女子2「う、薄っぺらい……ですって……(ゴゴゴ)」

ペトラ「ええ、薄っぺらいわ!! この期に及んで、何でリヴァイ先生が教師を辞めるのか、その意味も理解出来ないようなあんたたちには決して分からないでしょうけどね!!!」

3年女子2「言わせておけば……! (手を構える)」

まずい! 本格的にまずい事になって来た!!

誰か止めないと。暴力事件になる!!!

と、そう思った直後……


ガシッ!!!


女子の間に立った、女子が居た。

ニファ先輩だった。

3年女子2「に、ニファ……」

ニファ「もう、やめようよ。ペトラをぶっても、意味ないでしょ」

3年女子2「で、でも……(涙目)」

ニファ「私は、ペトラの気持ちも分かるし、皆の気持ちも分かるの。だから、ちょっと聞いて欲しいんだけど」

と、言ってニファ先輩がペトラ先輩を庇った。

ニファ「あのね。ミスコンの時、ハンジ先生とリヴァイ先生がこじれた後、リヴァイ先生、どんな状態になったか、知ってる?」

3年女子2「え…?」

ニファ「実際、それを見たのはミスコンに選ばれた女子だけだから、皆には分からないだろうけど、リヴァイ先生、完全に呆然自失だったの」

と、言ってニファ先輩が辛そうに目を落とした。

ニファ「真っ先に、私とペトラが駆け寄ったわ。でも、ペトラの声も私の声も、全く聞こえていない状態だった。ミスコンの女王に選ばれたあの綺麗な女の子、ミカサさんもいろいろ声をかけていたけど、ダメだった。エルヴィン先生が声をかけて、ようやく我に返ったみたいだったけど、あの時のリヴァイ先生、本当に死人のような顔をしていたんだよ」

3年女子2「……………」

ニファ「私もペトラも、あの状態のリヴァイ先生を見て悟ったの。リヴァイ先生、本当にハンジ先生の事、好きなんだって。多分、相当根深いところに、ハンジ先生の存在が「いる」んだって。多分、リヴァイ先生にとっては、なくてはならない存在だって。無くしたら、生きていけないくらいに大事な人なんだよ。ハンジ先生は」

3年女子2「…………」

ニファ「リヴァイ先生、好きになっちゃう子が多いのもしょうがないよ。でも、リヴァイ先生はあくまで「先生」だからね。アイドルじゃないんだし。生徒の私達がどんなに叫んでも、その愛が本当の意味で届く事はないよ。ロリコンじゃないみたいだし、リヴァイ先生がハンジ先生を選んだ以上、そこから先の事は、リヴァイ先生の自由だと思うよ」

3年女子2「で、でも……」

ニファ「署名運動自体を反対する訳じゃないよ? その活動をすればリヴァイ先生も気が変わるかもしれない。でも、何でリヴァイ先生が自分から「辞める」って言い出したのか。その意味は、やっぱり冷静に考えた方がいいと思うよ」

3年女子2「…………」

ニファ「ペトラも、ちょっと言い過ぎ。薄っぺらいとか、勝手に言っちゃダメだよ。人の想いは、他人に測られるものじゃないんだから」

ペトラ「………ごめん」

3年女子2「…………」

ニファ「いろんな事がいっぺんに起き過ぎて頭、疲れているのは分かるけどね。受験勉強の疲れもあるんでしょ? 皆も、ちょっと一回、落ち着こうか。署名運動も、一回休止した方がいいと思うよ?」

3年女子2「そうだね。ニファの言う通りだわ。ごめん……」

ニファ「ほら、あんまりここにたむろっていると、他の人に迷惑だから。解散しよ? ね?」

と、言って、皆ゾロゾロ何処かに行ってしまった。

ニファ先輩とペトラ先輩だけがそこに残って、2人はまだ話を続けるようだ。

ペトラ「ニファ、ごめん……本当に、ありがとう」

ニファ「いいよ。あの時のリヴァイ先生の顔、知っているの、3年だと私とペトラだけだもんね」

ペトラ「うん……」

ニファ「リヴァイ先生に、二度とあの時のような顔、させたくなかったんだよね? だから、賭けに出たんだよね?」

ペトラ「うん………」

ニファ「ペトラは賭けに勝った。だから、もう、これ以上、意地張らなくていいと思うよ」

ペトラ「うん……うん……」

その直後、ペトラ先輩はニファ先輩の目の前でわんわん泣きじゃくった。

辛かったんだろうな。相当。今までずっと、意地張っていたんだ。

そうだよな。片思い歴、長いんだよ。ペトラ先輩。

高校生活のほとんどを、リヴァイ先生を想って過ごしてきたんだから。

ペトラ先輩のした事は決して褒められるような事じゃない。

きっと、あの光景を見て、ペトラ先輩にドン引きした人も多いと思う。

でも、それでも、自分の事を殴り棄てて、ペトラ先輩は賭けに出たんだ。

リヴァイ先生の幸せを願って。

ペトラ「ニファ、ありがとう…本当に、ありがとう……ごめん。本当に、ごめん……」

ニファ「……私も、一緒に泣いてもいい?」

ペトラ「うん…泣こう! もう、いいよね?」

ニファ先輩も一緒に泣いている。わんわん泣いている訳じゃないけど。

それは一筋の、小さな涙だった。

と、その時、一番ここに来て欲しくない人物がこっちにやってきてしまった。

リヴァイ先生だ。

リヴァイ「何か、騒ぎが起きていると聞いてこっちに来たんだが……もう収まったのか?」

ペトラ「!」

ニファ「!」

リヴァイ「どうしたんだ? 2人とも。何かあったのか?」

ペトラ「い、いえ……何でもないです。ね? ニファ?」

ニファ「ええ。ちょっと、2人で内緒話をしていただけですよ」

リヴァイ「? 内緒話で泣くほどの事があるのか?」

リヴァイ先生!! 今は深く突っ込まないであげてくれ!!!

リヴァイ「ああ、そうだ。ペトラ。今、時間あるか?」

ペトラ「あ、はい。大丈夫です」

リヴァイ「少し、話をしてもいいか?」

ペトラ「2人きりで、ですか?」

リヴァイ「その方がいいとは思うが、時間がないならここでもいい」

ペトラ「………ここで聞きます」

リヴァイ「分かった。…………すまなかったな」

ペトラ「………ハンジ先生の件ですよね」

リヴァイ「ああ。ペトラにぶたれた事を、ハンジが気に病んでいた。ペトラにぶたれたおかげでようやく、全ての「謎」が解けたと。その為のスイッチボタンを押してくれたのは、ペトラだったと。そう言っていたんだ」

ペトラ「そうですか……」

リヴァイ「俺もあの時はすまなかった。生徒を放置して先に帰るなんて、やっていい事じゃなかった」

ペトラ「仕方がないですよ。あの時は」

リヴァイ「いや……すぐカッカして行動を起こすのは俺の悪い癖だ。冷静な自分で居られないのは大人に成りきれていない証拠だ。中途半端な大人ですまない」

ペトラ先輩は首を左右に振っていた。愛おしそうに笑っている。

リヴァイ「リヴァイ先生が短気なところもあるのは、皆知っているから大丈夫ですよ」

リヴァイ「……面目ねえな。本当に」

と、リヴァイ先生が苦笑する。そして、

ペトラ「あの、リヴァイ先生」

リヴァイ「ん?」

ペトラ「教職を辞められるのはいつ頃になられるんですか? 2学期までになるんですかね?」

リヴァイ「いや、その事について何だが……」

と、リヴァイ先生が更に顔を歪めている。

リヴァイ「その……すまん。辞めると言ったのに、なかなか学校側が受理をしてくれない事態になっていてな。校長先生に「ふざけんなこの野郎。代わりの教員、いねえのに何、寝ぼけた事言ってるんだ? 絶対受理しません(黒笑)」と、言い切られてしまって、どうにもこうにも動けない状態になっている」

と、うっかり裏話を聞いてしまって、オレ達は驚いた。

ペトラ「え? 学校側が受理しないって、そんな事、あるんですか?」

リヴァイ「いや、俺も今回のケースは初めての事だから、良く分からんが、俺は3学期までは続けて、3月末で辞めるつもりで交渉したんだが「辞める時は1年から半年前の間で前もって打診するのが常識だろうが!」と怒られてしまった。教員になる前に働いてきた職場ではそんな事は一度もなかったから、どうしたもんかと頭を痛めている」

へえええそうなんだ! 初めて知ったぜ!

仕事って、いきなり辞めるとか出来ないんだ。へーへー。

勉強になったぜ! 覚えておこうっと。

ペトラ「では、続けられるんですか……?」

リヴァイ「うーん……それも難しい問題なんだ。例の、その……ペトラは知っているのか? 俺のファンクラブについては」

ペトラ「はい」

リヴァイ「その件や、ハンジに対する風当たりの問題が解決しない事には、俺が教師を続ける意味がないんだ。八方塞がりとはこの事だな」

と、リヴァイ先生が本気で悩んでいた。

リヴァイ「せめてあと1年続けて、来年辞めるか……だな。そうすればさすがに生徒達も諦めてくれるだろう」

ペトラ「じゃあ、まだ猶予期間はある訳ですね。卒業式は一緒に過ごせるんですね」

リヴァイ「ああ。まあ、ペトラ達の代はきっちり見送るつもりではいたよ。そこは安心していい」

そう、言い切った瞬間、ペトラ先輩がまた泣き出してしまった。

リヴァイ「お、おい……どうした? ペトラ?」

ペトラ「良かった……卒業式、一緒に出られるんですね? 本当に良かった…」

リヴァイ「あ、当たり前だろ。俺の性格、知ってるだろ。キリの悪いところで辞めるのは性に合わないんだよ」

ペトラ「はい……!」

と、泣き笑いでペトラ先輩が答えたのがとても印象的だった。

良かった。ペトラ先輩、少し落ち着いたみたいだ。

ミカサ「あの………」

と、その時、傍観者に徹していたミカサが声をかけた。

リヴァイ「ああ、ミカサもいたのか」

ミカサ「こっそり居ました。その、どうしても辞めないといけないんですか? リヴァイ先生」

リヴァイ「辞めた方が、解決すると思ったんだが」

ミカサ「いえ……その……私の経験上、それはかえってまずいのでは、と思ったんですが」

リヴァイ「え? それはどういう意味だ?」

ミカサ「…………女の執念を舐めてはいけません」

と、ミカサがまるでホラー映画のような顔つきになって言った。

ミカサ「確かにリヴァイ先生が教師を辞めてしまえば、表面上はハンジ先生の嫌がらせは少なくなるかもしれません。しかし、リヴァイ先生の見えない部分で、必ず精神攻撃はこっそりしてきます」

リヴァイ「何……?」

ミカサ「結婚したら、尚更酷い陰湿な精神攻撃をしてくる可能性もあります。私は、リヴァイ先生自身が目を光らせて、生徒達を見張っている方がまだマシだと思うんですが」

リヴァイ「な、そ、そういうものなのか?」

ミカサ「(こくり)………女って、怖いんですよ? ククク………」

やめてえええ! 夏の怪談みたいに話すのはやめてくれえええ!!!

本気でガクブルしながらそれを聞いていたら、

リヴァイ「そ、そうか……そういう可能性もあったのか。すまん。俺もちょっと浅はかだったな」

ミカサ「よおおおく考えた上で、決断された方が良いかと。ククク……」

だから、ミカサ! 脅し過ぎる!!

でも、その言葉はリヴァイ先生に響いたみたいで「分かった」と答えてくれた。

リヴァイ「貴重な意見をありがとう。エルヴィンにも話してもう少し、煮詰めてから今後の事を考えてみる」

ミカサ「その方が宜しいかと……(ニヤリ)」

リヴァイ「ああ。そうする。じゃあな」

と、言ってリヴァイ先生は職員室に帰って行った。

ペトラ「み、ミカサ……ありがとう」

ミカサ「いえいえ。私は女性の味方なので。リヴァイ先生が辞める方が個人的には嬉しいですが、ハンジ先生が可哀想な目に遭うのは、ちょっと」

ペトラ「うん。そうだよね。女って、怖いもんね」

ニファ「うん。怖い怖い」

女同士で「怖い」言い合う姿って、奇妙だな。

自覚しているからこそって事なのかな。不思議だな。

そんなこんなで、ひと騒動は何とか収まったけど、正直、心臓に悪かった。

女のああいうの、生で見たの初めての経験だったからな。

教室に戻りながらオレはミカサに言った。

エレン「とりあえず、良かったよな。リヴァイ先生の件、保留になりそうだな」

ミカサ「うん。一番いいのは、リヴァイ先生が必要以上に女子生徒に優しくしない事だと思うけど」

エレン「自覚ねえんだろ? 難しくねえか? それは」

ミカサ「これからは、自覚するべき。嫁を一番優先するべき」

と、ミカサは「むふーっ」と言い切っている。

ミカサ「もしくは、もっとリヴァイ先生のダメで悪い部分も生徒に見せるべき。皆、美化し過ぎているので、イメージダウンをさせるべき」

エレン「あーそれはオレも思ったんだけど、エルヴィン先生が「諸刃の刃」って言ってたしなあ」

ミカサ「でも、それはエルヴィン先生の判断であって、リヴァイ先生自身の判断ではないので、リヴァイ先生にその件を話してみても良いのでは?」

エレン「…………」

そっか。それもそうだよな。

肝心な事を忘れていたぜ。ちょっとオレも慎重になり過ぎていたかな。

エレン「そうだな。ミカサの言う通りかもしれねえ」

と、オレは納得して、今度その機会があればリヴァイ先生に話してみようと思った。

そう思いながら、2人で教室に戻るのだった。

リヴァイ先生が辞めるに辞められない状況に。
社会人の常識、足りてないリヴァイ先生ですみません。
(でも実際、職種によってはすぐには辞められないんですよ)

という訳で、波乱の修羅場編はお終い。
続きはまた。ノシ









10月9日。この日は雨だったので体育は中止になり保健体育の方の授業になった。

男子は当然、リヴァイ先生の授業だったんだが、リヴァイ先生の授業は割とサクサク進んで、予定よりも早く終わってしまい、10分くらい時間が余ってしまった。

リヴァイ「あー…時間が余ってしまったな。早めに切り上げるか」

と、リヴァイ先生の場合は先の方の授業をやる、という事は殆どない。

時間が余った場合は残りの時間をオレ達生徒にくれるんだ。そして自分は寝る。

だからこの日もそうなるだろうと思っていたのに。

アルミン「あの、リヴァイ先生」

リヴァイ「何だ。何か分からない部分があったのか? 珍しいな」

アルミンが疑問を挙手して問う事は滅多にない。授業中の「確認」の質問は良くやるけど。

それだけ理解力が速いからだ。でもその時のアルミンはニヤニヤしていて、

アルミン「教科書には載っていない、授業、やって貰えませんかね?」

とか言い出したから、皆、一斉に「ヒューヒュー」言い出した。

リヴァイ「あー……つまりアレだ。そういう下世話な話が聞きたいのか?」

アルミン「はい。その通りです。お願いします(頭下げる)」

アルミンの勇者っぷりに男子から拍手喝采が起きた。

リヴァイ「何が聞きたい。言っておくが、俺も教えられる部分は限られるぞ」

アルミン「教えて貰える部分だけで十分です。是非」

リヴァイ「しょうがねえ奴らだな。全く……」

と、苦笑するリヴァイ先生だった。

リヴァイ「この年齢の男子が考える事なんざ、ひとつしかねえが………何から聞きたい?」

アルミン「リヴァイ先生自身の武勇伝を是非」

リヴァイ「………どれくらい、ヤッたかって事か?」

アルミン「加えて、そのテクニックの伝授も是非」

リヴァイ「んー……」

と、リヴァイ先生は少し考えてから言った。

リヴァイ「人数だけで言えばもう、覚えてねえな。ただ、10代の頃はかなりの数をこなした。20代の頃は仕事が忙しくなってしまってその数は減ったが、それでも月1くらいでは必ずやっていたかな」

おおおおお……

どよめいた。すげえ。リヴァイ武勇伝だ。

アルミン「彼女とつきあった数も相当ですか?」

リヴァイ「うーん……俺の場合、彼女と呼んでいいのか微妙なラインの女もひっきりなしに誘いかけてきたからな」

と、全人類の男が嫉妬する台詞を言い放ったので、男子が全員動揺した。

ジャン「くっ……なんて羨ましい!」

ジャンの目が赤くなった。しょうがねえだろ。リヴァイ先生モテるんだし。

リヴァイ「ただまあ、半年以上続いた数だけで言ったら、片手に数えるほどしかいない。他の女は、俺の体目当てで誘ってきただけだったのかもしれん」

アルミン「やっぱり、体が凄いとモテますか?」

リヴァイ「そういうもんじゃねえのか? 身体は鍛えないと女にはモテないだろ」

おおおおおお……

やっぱりそこでもどよめいた。いや、いちいち反応し過ぎだとは思うけど。

ジャン「はい! モテる秘訣を教えて下さい!!」

リヴァイ「は? 無茶言うな。俺もモテようと思ってこうなった訳じゃねえよ」

ジャン「で、でも……なんかコツみたいなのはないんですか?」

リヴァイ「コツって言われてもな……」

リヴァイ先生の場合はモテようとしてモテている訳じゃねえからすげよな。

いつの間にか女性が寄ってくるんだ。吸い寄せるフェロモンが出ているのかもしれない。

リヴァイ「…………コツかどうかは分からんが、女が喜ぶ事はしてやった方がいいと思うぞ」

ジャン「と、いうと?」

リヴァイ「一番効果的なのは、頭、ポンポンか。後は、手を握ってやったり。それくらいでいいんじゃないか?」

ジャン「は、ハードル高いっすね……(ズーン)」

リヴァイ「いや、そのくらいの事も出来ねえならモテたいとか言うな。基本じゃねえか」

ライナー「つまり、基本が大事であると」

リヴァイ「何でもそうだろ? 基本をおざなりにしては何も出来ん」

そういえばミカサも頭ポンポンとかすりすり好きだよな。

犬みたいにしてやると途端に大人しくなるし。

リヴァイ「あとはまあ、荷物を代わりに持って行ってやったり。体の変化に気づいてやったりか。調子が悪そうだったら無理はさせないし、機嫌がいい時は調子を合わせてやるといい。それから……」

おや? なんかだんだん饒舌になって来たな。

アルミンがメモ取り出した。勉強熱心だな、おい。

リヴァイ「髪型とかも気にかけてやった方が喜ぶな。機嫌が悪い時はなんか甘い物を食わせろ。腹いっぱいにさせたらとりあえず落ち着くからな。それから……」

どんどん項目が増えていく。あれ? 意外とリヴァイ先生って、その辺のテクニック、意識してやっているのか?

リヴァイ「理不尽な事を言い出す時は流されろ。抵抗してもどうにもならん。ただ、あんまり我儘を言い過ぎる女は付き合うな。疲れるからな。後々しんどいぞ。適度な我儘は可愛いが、度が過ぎると可愛くねえ。それと……」

熱心だな。なんかリヴァイ先生の女性遍歴が垣間見えてきた気がする。

リヴァイ「相手の趣味にある程度、合わせてやった方がいいか。ケーキバイキングは基本らしい。絶対1度は連れて行きたいが、なかなか言い出せないデート先らしいぞ。ついていくのに勇気がいるかもしれないが、そういう「試練」とも思えるデート場所にも付き合ってやった方がいいな」

おおおお。そうなのか。

女の好みのデート先に合わせるか。オレの場合は山登り決定だな。

リヴァイ「昔、そういう意味でわざと「子供向け少女アニメ」の映画館デートに連れて行かれた事もあったな。内容がさっぱり分からんまま観終わったが、相手の女は「本当に一緒に観てくれるとは思わなかったwww」と爆笑していたが、その後はずっと機嫌が良かった。たまにそういう理不尽な要求をしてくる女もいるが、まあ、そこはつきあってやれ」

面倒見が良すぎる。すげえ。俺には真似出来ねえな。

リヴァイ「あと、女は基本的に冷え性の奴が多いから、外でのデートの時は、上着をこっちでもう1枚くらい用意してデートした方がいいぞ。冬とか、くそ寒い時期にミニスカートはいてハイヒールはいてくる女もいる。たまに「アホなのか?」と思う薄着の女もいたが、風邪ひかせたら可哀想だからな。コートをもう1枚くらい持って行った方がいい。……あ、学生には車がないから難しいか。大学に入ってから注意しろ」

と、先の事まで心配してくれるリヴァイ先生だった。

リヴァイ「ただ、女にも千差万別で、この方法を使えば必ず相手が喜ぶとも限らない。その辺りは「勘」の世界になってくるから、とりあえず会話して、相手の性格を掴む事をまず重要視した方がいいと思うぞ」

アルミン「まずはデータを収集して、分析するんですね」

リヴァイ「その通りだ。別に女に限った話じゃねえけどな。お前らの事も、俺はそれなりに観察して分析して、出来る限りうまく教えられるように心掛けてはいる」

おおお。夏合宿の野球と料理の事を思い出すぜ。

リヴァイ「正直言えば手間のかかる手法だが、俺自身、考え抜いた末の方法だ。うまくいく場合もあるし、失敗する事もある。ただ、どちらにせよ、その時に得た経験は次に活かせる。それを繰り返していけば限りなく、正解に近い「悔いのない選択」が出来るんじゃねえかと思っているが」

アルミン「なるほど。そうやって、ハンジ先生の事も、選んだわけですね」

リヴァイ(ぶふーっ!)

いきなり話題を転換したものだから、リヴァイ先生がうっかり吹いた。

ヒューヒューの嵐だった。さすがにちょっと照れている。

リヴァイ「アルミン……お前なあ……」

アルミン「いやあ、本命はそっちが聞きたくて。釣りました」

リヴァイ「ああ、そうだったのか。いや、その……なんだ。改めて問われると照れるな」

と、リヴァイ先生がガチで照れていた。ぷぷー!

ニヤニヤが止まらねえぜ。暫くはこのネタで遊べるな!

リヴァイ「まあ、そうだな。ハンジの事は、その………なんだ」

急に歯切れが悪くなった。すげえ。落差がすげえ。

リヴァイ「その………何から話せばいいんだ。分からん」

アルミン「ハンジ先生のどこが好きなんですか?」

リヴァイ「どこって…………その………」

おおおお。貴重な反応だぜ! 面白い!

リヴァイ「……………俺が出来ない事や、持ってない部分を持っているところ、かな」

アルミン「というと?」

リヴァイ「俺は口が悪い方だからな。昔はよくトラブルを起こす……今でもたまにやらかすが、とにかく問題の多い教師としてよく保護者に怒られたんだよ。そういう時に、ハンジが間に立ってくれることが多くてな。あいつがいなかったら、教師生活はこんなに長くは続けようとは思わなかったと思うんだ」

と、リヴァイ先生はしみじみ言う。

リヴァイ「あとは、事務処理や手続きなどの処理能力の速さは職員の中でもベスト3に入る。女性の中ではトップだろうな。仕事早いんだよ。あいつ。家事仕事はてんでダメだけど。学校の仕事は俺の倍以上、早く出来るんだ」

アルミン「へーそうなんですね」

リヴァイ「ああ。後はそうだな。その……しょっちゅう笑顔でいるところもだな」

エレン「笑顔?」

ちょっと意外だった。へー。

リヴァイ「ああ。あいつ、喜怒哀楽が激しいからな。基本的に笑っている事が多い。ムードメイカー的存在なんだ。ハンジがいると、職員室が明るくなる。そういう部分も、多分、好きなんだと思うが」

と、心底、恥ずかしそうに答えている様子がすげえ面白かった。

誰かこっそりスマホで録音してねえかな。今の言葉、ハンジ先生にこっそり聞かせてやりてえよ。

リヴァイ「後はその…………まあ、触り心地がいいところも、好きだな。ついつい、触ってしまいたくなってしまって、その…」

おおっと、これ以上言わせたらいろんな意味でヤバいんじゃないか?

リヴァイ「………もうやめるぞ。この辺でいいよな? もう10分経ったよな?」

アルミン「まだあと5分ありますよ?」

リヴァイ「もう後は自習にしておけ! 俺は寝る!」

と、言って顔を伏せて逃げるリヴァイ先生に皆「えー」の声をあげた。

アルミン「まだまだ聞きたい事、沢山あったのにね」

ジャン「だな。エロい話も聞いてみたかったのに」

リヴァイ「……………」

マルコ「ははっ……まあそこは、ね。聞かせられない部分なんじゃない? ハンジ先生との、そういう話は」

リヴァイ(びくん)

あ、なんか反応したぞ? リヴァイ先生。

アルミン「だろうね。あれだけ劇的にくっついたんだし。きっと毎日、やってるんだろうね。いいなあ」

リヴァイ「…………やってる訳、ねえだろ」

アルミン「え?」

リヴァイ「教職舐めるなよ? 忙しさ、半端ねえんだぞ。特にこの時期の、筆記学科の担当教員の忙しさを。生徒の問題作りの為に睡眠時間削って活動しているんだぞ。そんな最中、手なんか出せるか!」

と、理不尽に怒っている。

ジャン「え……じゃあ、結婚の約束はしたけど、してないんですか?」

リヴァイ「ああ。だからあんまり煽るな。こっちもいろいろストレス溜まっている最中なんだよ」

ああああその気持ち、すげええ分かる。

こう、我慢せざる負えない状況で、煽られると、ムラムラ止めるのきついよなあ。

お預け期間中って事なんだろうな。可哀想に。

リヴァイ「まあいい。ストレスついでに、セックスの話もついでにしてやろう。そういう下世話な話も聞きたいんだろ?」

一同「「「イエス!!」」」

リヴァイ「やれやれ。何から聞きたい? 女をイカせるテクニックでも話せばいいのか?」

アルミン「是非」

リヴァイ「ふん……100人女がいれば、全員やり方が違うとしか言えないからな。ただ、傾向を導き出して対策を練る事は出来なくはない」

おおお。なんか急に授業っぽくなった。

黒板使って説明してくれるんだ。すげえ。

リヴァイ「俺の勧める方法の一つが、『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』だな」

アルミン「1時間もですか?」

リヴァイ「も、じゃない。最低1時間だ。いけるんだったら、2時間でも3時間でもいい。服の上からゆっくり触ってやれ。いきなり脱がすなよ。そっちの方がウケがいい」

ジャン「すげえ耐久レースじゃないですか」

リヴァイ「何言ってる。この程度は準備運動にもならん。途中で嫌がるような女の場合は別だが、この方法は10人中7人はまず嫌がらないぞ」

アルミン「は、7割は嫌がらないって事ですか?」

リヴァイ「あくまで俺の主観だがな。せっかちな女は別にして、大体の女は「ムード」を重視する。これは女の体の緊張を解す効果もあるが、血液の流れを良くする効果もあるし、女を「半覚醒」状態に持っていくのに一番効果的な方法だと俺は思っている」

アルミン「半覚醒……うたた寝状態って事ですか」

リヴァイ「そうだ。まずそこにもっていかない事には先に進めない。眠りそうで眠らない状態まで持っていって、初めて仕掛ける準備が整う。やり過ぎて爆睡する女もたまにいるが、その時は寝かせてやれ。そっちの方がいい」

アルミン「ええええ……それ、お預けじゃないですか」

リヴァイ「1回や2回は失敗しろ。何事も経験だ。勿論、このやり方を嫌がる女もいるからな。その違いは、濡れやすさで判断するしかない」

ジャン「濡れやすさ……(ごくり)」

一気に生々しい話になって来た。皆、真剣に聞いているな。

リヴァイ「ちょっと触っただけですぐ濡れる女と、そうじゃない女がいるって話だ。その辺の違いを区別するには経験が必要だ。感覚的な物だから口じゃうまく説明出来ない。だからとりあえず、ゆっくり仕掛けてみて最初は様子を見る事を勧める」

おおおおお。何か凄く為になったな。

リヴァイ「焦るなよ。焦ったら負けだと思え。若いうちはガンガンやりたくなる気持ちは俺も分かるが、女の体は男が思っている以上に傷つきやすい。やり過ぎて、病院に通う羽目になった女子生徒も多数知っている。勿論、中絶も含めてだ。やりたいだけなら、せめて年上の経験の豊富な女を選べ。同年代でやる場合は、特に経験値ねえんだから、女の方に出来るだけ合わせてやれよ」

アルミン「は、はい……」

リヴァイ「……とまあ、こんな話はテストには絶対出ないから覚える必要もねえけどな。後、絶対外には漏らすなよ。特に他の先生達には内緒だ。また俺が怒られてしまう」

ぷぷっと笑いが起きた。リヴァイ先生、結構他の先生から怒られているんだな。

リヴァイ「他に聞きたい事はあるか? なければもう授業をお仕舞にするが」

アルミン「最後にひとつだけ」

リヴァイ「何だ」

アルミン「その………リヴァイ先生って、結構ムッツリだったんですか?」

リヴァイ「ああ? 別に隠していたつもりはないが、俺の本性はただのエロ親父だぞ。38歳にもなるおっさん捕まえて何言ってやがる」

アルミン「いえ……なんかかえってほっとしました。女子の間では、神格化されているし、そういうリヴァイ先生の部分を今まで知らなかったので」

リヴァイ「女子の前で猥談はさすがにやらねえが、そういうのが好きな女子には多少リップサービスしてやる事もあるぞ? 少女漫画のヒーローじゃあるまいし。あんまり美化され過ぎるのも困るんだが」

と、本当に困った顔をしていたリヴァイ先生だった。

そしてチャイムが鳴った。授業終了の合図とともに教室を出ていくリヴァイ先生を見送って、オレはアルミンに言った。

エレン「アルミン、お前は本当に勇者だな……」

アルミン「いや、まあ、僕もまさかここまで本格的に答えてくれるとは思ってなかったけどね。為にはなったよね」

エレン「ああ。為になり過ぎる程なったぜ。授業より真剣に聞いちまった」

アルミン「授業の内容忘れてしまいそうな勢いだったよ。またリヴァイ先生の特別授業、やってくれないかな。すっごい聞きたい……」

エレン「その気持ち分かるぜ。リヴァイ先生の過去も含めていろいろ聞きてえよな」

と、いろいろアルミンと一緒に話したら女子が教室に戻って来た。

今、女子の顔を見るのがちょっと照れくさい。

さっきの生々しい話の直後だから特にそう思ってしまう、オレとアルミンだった。

アニ「ねえ、黒板の文字、何?」

アルミン「え?」

アニ「何で『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』なんて書いてあるの?」

うあああああ?! リヴァイ先生、黒板消し忘れてる!!

いつものリヴァイ先生なら絶対やらないミスだ! やっぱり調子おかしいんだ!!

アニ「一体、何の授業していたのさ。……不潔」

アルミン「ご、誤解だよ!! その、そういうのじゃないから!」

アニ「じゃあどういうの? 何をお勉強していたの? ん?」

アルミン「ええっと、エレン! ほら、アレだよね?」

エレン「おう! アレだよ! その! アレ!」

アレって何だよ?! 無茶ブリすんなよ!!!

アニ「へーアレで通じる程、隠したい授業だったんだあ」

アルミン「いや、その……」

アニ「ふーん……やっぱり、いやらしい男だねえ。あんた達は。ククク……」

アニ、ノリノリで弄ってるだけなのかな。顔は笑ってるぞ。

そしてアニは黒板の文字をさっさと消してしまったのだった。

リヴァイ先生の特別授業編でした。
とりあえず、ここまで。一旦区切ります。続きはまたノシ

エロ親父キターー!!
アルミンはホントいい性格してるなw
特別授業は1年男子にか
ハンジ先生に手取り足取りかと思ってドキドキしたわ(笑)

>>170
エレン視点だとリヴァイ×ハンジのエロシーンの様子を実際に見せるのは難しいですね。
番外編で読みたい方がいれば、リヴァイかハンジの視点でエロシーン書いてもいいんですが。
需要有るのかな?

まあ、保健体育の特別授業でハンジ先生無理やり連れて来てモデルにするという手も……。
ハンジに殴られるので没ですね。すみません(笑)。






そんなこんなであっという間に中間テストが終わり、四者面談の期間に突入した。

第一回目の進路相談になるわけだが、放課後、1人ずつ時間をとって教室で話し合う事になる。

オレは18日(土)の放課後になった。10分程度話し合うので、そう長い時間話す訳じゃないけど、濃厚な時間を過ごす事になる。

順番は名前順だ。だからアニとアルミンの方が先に相談を受ける事になる。

同じ日に進路相談を受ける予定だったので、オレとアルミンとアニは放課後、廊下で待っていた。今日は7人やる予定なので、クリスタ、コニー、サシャも進路相談のメンバーで放課後、残っている。

オレは廊下で椅子に座って待っていたんだけど、アルミンが相談を終えるなり、物凄く落ち込んだ顔で教室から出て来たのでびっくりした。

どうしたんだ? すっかりしょげているぞ?

アルミン「はー……」

その場でしゃがみこんで自己嫌悪に陥っている。何かあったんかな?

エレン「どうしたんだ? アルミン」

アルミン「あー……ごめん。後で話す。エレン、次だから。教室に入りなよ」

エレン「あ、ああ……」

何か言われたんかな。怖いな。

そして親父と一緒に教室に入ると、教室にはキース先生、エルヴィン先生が待っていた。

キース「どうぞ。お席に」

グリシャ「お世話になります(ぺこり)」

一礼して、向かい合って話し合う事になった。まず何から話すんだろう。

キース「まずはエレン君の学校内の成績と活動内容について説明させて頂きます」

キース先生の評価はまあまあ良かった。学業も中の上。部活動も積極的に参加しているしクラスでの友人との仲も良好。たまに一部の生徒と喧嘩をする事もあるが、それを除けば概ね問題ないという判断だった。

グリシャ「また喧嘩しているのか? 中学生じゃないんだぞ?」

エレン「うっ……向こうがたまにふっかけてくるんだよ」

キース「まあ、子供のじゃれあいみたいなものですよ。隣の席の男子生徒とはよく口論をしているようですが、問題になる程ではありません」

グリシャ「ならいいですが……」

ううう。まさかそんなところまで親父に報告されるとは思わなかったぜ。

キース「進路については、今のところどう考えておられますか?」

グリシャ「出来るだけ息子の希望に沿う形にはしたいと思っています。学費などの面は問題ありませんので、海外も含めて視野に入れています」

キース「それは頼もしい言葉ですね。エレン、良かったな」

エレン「はい……」

確かに頼もしい親父だとは思う。

キース「大学進学を考えられるのであれば、この辺の文系の大学などがお勧めですが…」

と、一応、オレの成績に合わせたお勧めの大学をいくつか教えてくれた。

キース「ただ、既に職種を考えておられるなら、それに合わせた大学を早めに選ばれた方がいいでしょう。何か、具体的に希望する職種などはありますか?」

エレン「あの、エルヴィン先生に勧められた職種でいくつか気になった物があるんですけど…」

と、一応エルヴィン先生の名前を出して、エルヴィン先生に目で合図すると「うん」と頷かれた。

エルヴィン「いいよ。言ってごらん」

エレン「はい。その……体力の面でまだ不安はあるんですが、それさえ克服出来れば『消防士』や『レスキュー隊』『自衛隊員』等の特殊な仕事が向いているかもしれないという話だったので、その辺を視野に入れてみたいと思うんですが」

キース「意外な進路だな。その手の仕事は過酷だぞ。精神的にも肉体的にもかなりハードな職種になるが……警察官等ではダメなのか?」

エレン「えっと、エルヴィン先生は『人の命を助ける仕事』でかつ、多少危険を伴う物でも大丈夫なのでは、という話だったので……」

キース「ふむ……」

と、キース先生は考え込んだ。

キース「人の命を助ける仕事で言えば、一番は「医者」だと思うが、お父さんの跡を継ぎたいという気持ちはないのか?」

エレン「頭足りないから無理ですよ。オレの成績じゃ医者なんて無理です……」

キース「いや、初めから諦める必要はないぞ。私は今のエレン程度の成績から、後半、急激に伸びて医者になった生徒を何人か知っている」

エレン「え……? 本当ですか? それは」

キース「ああ。勉学は、一度伸び始めるとぐんぐん伸びるぞ。何より君の場合は、お父さんという強い味方がいる。医者も十分、進路のひとつとして考えていいと思うぞ」

エレン「医者ですか……」

意外な答えだった。無理だと思っていたのに、背中を押されるなんて思わなかった。

エルヴィン「私も、エレンには医者の適性もあると思っている。むしろ危険度の度合いで言えば、医者の方が過酷かもしれないね。その辺は、お父さんの方がよくご存じだとは思いますが」

グリシャ「ええ。正直言えば、医者なんて、死に急ぎ野郎がなる職種だと思っていますよ」

エレン「お、親父……」

グリシャ「自分がいつ、病にかかるか分からない場所に常にいる訳だからね。精神的にも肉体的にも過酷だよ。でも、私はこの仕事を誇りに思っている」

と、親父がとても男らしい顔つきになった。

グリシャ「選択肢はそのあたりになりそうですかね。どの職種を選ぶにしろ、大学進学はまず間違いない感じですね」

キース「そうですね。特に医学系でいかれるのであれば、早めに大学を絞った方がいいかもしれませんが、その辺は後半の成績次第になるでしょう」

グリシャ「分かりました。ありがとうございます」

エルヴィン「まだ時間はありますので、次回の四者面談の時に詳しい話を進めていきましょう。では今日はこの辺で」

グリシャ「はい。今日は本当にありがとうございました(ぺこり)」

と、簡単な進路相談になったけど、ここでオレに新しい選択肢が増えてしまった。

まさか『医者』も視野に入れて話す事になるなんて思ってもみなかった。

そして教室を出て、落ち込んでいるアルミンに声をかけた。さっきの事が気になったからな。

親父は忙しいから「先に帰らせてもらうね」と言って帰って行ったけど。

エレン「アルミン。もう終わったぞ。さっきの話、聞かせてくれ」

アルミン「ううう……あのね。実は……」

と、アルミンは項垂れてしまって、

アルミン「エルヴィン先生にずばっとはっきり、「アルミンは医者には向いていない」って言われちゃったんだ」

と驚く回答がきたのだ。

エレン「えええ? 何でだ? 成績いいのにダメなのか?」

アルミン「成績は十分すぎる程、足りているけど問題はそこじゃないんだって」

と、ますます落ちこんでいった。

アルミン「マーガレット先輩の家でアシスタントした時の事、覚えている?」

エレン「ああ。覚えているぞ」

アルミン「その時の事、エルヴィン先生もマーガレット先輩本人から話を聞いたらしくてね。その時の、エレンの様子を聞いたって言ってて。その時エレンの行動の方が、医者として適正がある証拠なんだって。あの時、僕は何も行動を起こさなかったし、加えて先に帰ったでしょ? それは自分が可愛い証拠じゃないのかって。人の事より自分を優先する性格の人間が、医者としてやっていくのは難しいんじゃないかって言われたんだ」

エレン「ええええ……でも、それはアルミンの「立場」ってものがあるだろ。オレは別にちょっとくらい休んだって問題ないし、特待生と普通の生徒を同じように考える方がおかしくないか?」

アルミン「僕もそう思ったんだけど、そういう問題じゃないらしいんだ。エルヴィン先生曰く、僕が医者を希望する理由そのものが間違っているって。おじいちゃんの件、話してみたんだけど。それは僕自身が気に病む必要性はない事なんだって」

エレン「んん? ちょっと意味分かんねえんだけど。もうちょっと詳しく言ってくれよ」

アルミン「うーん……あのね。僕はおじいちゃんが「僕」の為にガンの治療を受けずに死んじゃったって「思い込んでいる」可能性があるって言われてね」

と、アルミンは目を閉じながら言った。

アルミン「エルヴィン先生曰く、それは違うんじゃないかって。おじいちゃんは「僕」の為じゃなくて「自分」の為にあえてガンの治療を受けずに死んだのかもしれないって。そう言ったんだ」

エレン「自分の為に……」

アルミン「ガンの治療はね。お金もかかるけど、それ以上に「苦痛」を伴うんだって。だから、ガンになってもあえて治療を受けずにそのまま死ぬ事を選ぶガン患者だっているんだって話だよ。つまり「死」に対する選択を、苦痛の中で延命するより、自然に任せて「安らか」に死ぬ事を選んだんじゃないかって。勿論、本当の意味で安らかに死ねた訳じゃないんだろうけど。でも、どっちの道を選ぶにしろ、苦痛を伴うのであれば、その期間が「短い」方をおじいちゃんはあえて選んだのかもしれないよって、そう言ってくれたんだ」

すげえ。エルヴィン先生。たったそれだけの情報でそこまで読み取る事が出来るのか。

エルヴィン先生の観察力と洞察力の凄さを改めて感じてしまった。

アルミン「だから、僕はおじいちゃんの死に対して気に病む必要はない。むしろそのせいで、僕自身の人生の選択の「足枷」になっているのなら、それはおじいちゃんの望む事ではないんじゃないかって、あくまでエルヴィン先生の主観の話だけど、そう言ったんだよ」

エレン「そうだったのか……」

アルミン「あくまでそれはエルヴィン先生の話だし、本当は違うかもしれないよ。でも、今となっては真実は分からないんだ。おじいちゃんがどういうつもりで死んでいったかなんて、もう聞けないし。僕はおじいちゃんの異変に気付けなかった自分に対する、贖罪のつもりで医者になろうとしていただけだったのかもしれない……」

エレン「ううーん……」

それの何が問題なのかイマイチ分からねえけど。

でもエルヴィン先生は「向いてない」ってはっきり言ったって事は、やっぱりそうなんだろうな。

エレン「だったら、他に何が向いているって言われたんだ?」

アルミン「僕の場合は『弁護士』の方がまだ適性があると言われたよ。僕、ほら、ずる賢いところあるじゃない? あと口も悪いし。自分が可愛いし。姑息で陰湿だし。悪い事ばっかり考えるし」

エレン「おいおい、それはいい過ぎだぞ。自分で自分を追い詰め過ぎるなよ」

アルミン「うん。でも、事実だからしょうがないよ。でもそういう「自分を守ろうとする」感情っていうのは、誰にでもあって、弁護士の場合はそれの究極の職業とも言われたんだ」

エレン「自分を守る……」

アルミン「そう。そういう感情が分かる人間でないと、人の弁護も出来ないとエルヴィン先生は言っていたよ。確かに僕は口だけは自信があるから、そっちの方が向いているのかもしれないけど……」

と言って、アルミンはやっと両目を静かに開けた。

アルミン「正直言えば、凹んだよ。まさかこんな風に自分の希望を真っ向から否定されるとは思わなかったし。キース先生は「言い過ぎなのでは?」と言っていたけど。エルヴィン先生、全然平気な顔をしていたよ。「これでもオブラートに包んで話していますよ」だって。エルヴィン先生、普段と全く変わらない表情だったのが、逆にちょっと怖かったよ」

エレン「そうなんだ」

アルミン「うん。エルヴィン先生って、その辺の感情の「機微」みたいなのを余り気にしない性格なのかもしれないけど。なんていうのかな……マッドな印象を受けたよ。相手がどれだけ傷つこうが自分には関係ない。みたいな。だからこそ、人の適性を客観的に見つめる事が出来るのかもしれない」

そういう風に分析できるアルミンの方がすげえよ。

普通だったら「エルヴィン先生むかつくー!」で終わるんじゃねえか?

アルミン「そういう訳だから、ちょっと、今、頭の中、ふらふらしていてね。うん。進路についてはもう少し時間をおいてから改めて考えてみるよ」

エレン「おう。そうした方がいいな。エルヴィン先生が反対したって、本当に医者になりたかったら、医者になればいいじゃねえか。オレ、アルミンの方が医者になった方がいいとずっと思っていたんだし」

アルミン「僕はエレンの方が医者になった方がいいと思うけどね。適正あるって言われたんでしょ?」

エレン「頭が足りればの話だよ。オレ自身は『消防士』『レスキュー隊』『自衛隊員』のうちのどれかでもいいかなって思ってるしな」

アルミン「その辺も適正あるって言われたんだ。すごいね。幅が広いや」

エレン「んー『人の命を助ける仕事』についた方がいいみたいな事を言われたんだよ。多少危険でも、やっていけるんじゃないかって。まあ、オレ、自分の母親を目の前で亡くしているからな。やっぱり、人が死ぬところはもう見たくねえんだよ」

アルミン「そっか……」

エレン「でもぼんやりでも道が見えて来て良かったと思うぜ。後は時間をかけて絞っていくだけだ。勉強もして、体力もつけねえとな」

と言ってオレは立ち上がった。

エレン「そういえばアニはなんて言われたんだろうな? ちょっと聞いてみるか?」

アルミン「うん。聞いてみようか」

アニもアニで「うーん」と悩んでいる様子だった。

エレン「よお! アニはどうだった?」

アニ「うーん……」

エレン「悩んでいるみてえだな。職種、決まらなかったのか?」

アニ「いや、そういう訳じゃないんだけど、ちょっと意外な進路を勧められたからさ」

アルミン「アニは何が向いているって言われたの?」

アニ「看護師」

アルミン「看護師?! ヤバい! 似合いすぎるよ!!」

エレン「ああ。似合うぜ! 注射器持ってるアニ、似合いすぎるぞ!!」

アニ「変な意味で想像しないでよ。そういうコスプレ的な意味じゃないんだから」

アルミン「ああ、ごめんごめん。でも何で?」

アニ「うーん。まず、体力が人よりある事と、意外とその「優しい」気質を持っている事。人の事を割とよく観察している事。必要以上に人と関わらないようにしている事。集団行動より、1人での行動に耐えられる事。所謂、自分の判断で動くって事だね。他には……安定した収入、かな」

アルミン「へーなるほど。それだけ言われれば確かに合ってる気がするよ」

アニ「でも私、看護師なんて考えた事もなかったから、びっくりしてね。ぼんやりと洋服関係の仕事でもしようかなって思っていたくらいだから、斜めからの提案で面喰っているんだ」

エレン「オレも似たようなもんだぞ。頭足りれば医者いけるって言われたんだし」

アニ「ああ、そうなんだ。じゃあもしかしたらいつか、一緒に働く事になるかもね」

アルミン「羨ましいな~エレン~」

エレン「え? いや、そりゃあそうなったら楽しいかもしれんが、まだ分からんだろうが」

アニ「アルミンはなんて言われたの?」

アルミン「僕の場合は適正で言えば『弁護士』あたりかなって。ただ、医者にもまだ未練があるから、もうちょっと考えてみる」

アニ「そうなんだ。アルミンの場合はどっちでもいけそうだね」

アルミン「うーん。どうなるか分かんないけどね。あくまでエルヴィン先生の判断だし」

アニ「でもエルヴィン先生ってそういうの、凄く客観的に人を見るから、結構当たってる気がするよ」

エレン「まあな。そういう意味じゃ進路指導の先生としては合ってるよな」

アニ「うん。そう思うよ」

ガララ……

あ、クリスタが出て来た。あんまり顔色良くねえな。

クリスタ「ううーん………」

エレン「どうだった?」

クリスタ「あのね。私、自分の進路を真っ向から否定されちゃった……」

アルミン「クリスタも? 何て言ったの?」

クリスタ「看護系かな。そういう人を助ける仕事をしてみたいと思っていたんだけど、向いていないって」

エレン「アニと逆なのか。何でだ?」

クリスタ「その………イイ人だって思われたくてやるんだったら、やめた方がいいって」

エレン「イイ人? ん? イマイチ意味が分からんな」

アルミン「見栄の為にやるんだったらやめろって話?」

クリスタ「うーん。私自身はそうは思ってないんだけどね。ただ、ちょっと私は『人に対する過剰なサービス精神』のようなものがあるって言われてね。やるんだったら『芸能関係』の方が向いているかもしれないって言われちゃった」

アルミン「芸能?! それって、女優とかアイドルとかモデルとか?」

クリスタ「まあ、そうなるのかな? 確かにモデルは1度だけやった事あるけど、私、演劇部に所属している訳でもないし、いいのかなあ?」

アルミン「全然問題ないよ!!! なんなら今からでも演劇部に移籍したら……」

クリスタ「いや、それは無理だよ。私、野球部マネージャーを本格的にやり始めているし。今は弓道部よりそっちの方がメインになっているんだ」

アルミン「そうなんだ……(シュン)」

クリスタ「確かにミスコンの時も、いろいろ考えすぎて失敗しちゃったしね。男子にウケる事ばっかり考えて、自分の意志がなくなっていたのは本当だし。でも、エルヴィン先生はその考え方を否定はしなかったの。むしろ、そういう『サービス精神』を利用した職業を目指した方がいいかもしれないって言われてしまって……加えて私は『マニュアルがないと不安になるんだろう?』と言われたし、女優も視野に入れていいって言われたんだよね」

エレン「へーそうなんだ。そういうもんなのか」

意外な進路だな。クリスタは「女優」に向いているのかもしれないのか。

エレン「劇部の様子、見学してみるか? 別に部活動はしなくてもいいからさ。空気に触れるだけでも大分違うんじゃないか?」

クリスタ「うーん。そうだね。それも有りかもしれない。今度、見学してみるよ。皆の練習風景を見せてね」

アルミン「大歓迎だよ!!!」

あ、今度はコニーが出て来たぞ。あいつ、なんて言われたんだろ。

コニー「あああああ……くそおおおおお」

コニーも何か言われたっぽいな。

コニー「野球選手一本じゃダメなのかよーうーん」

エレン「コニーも進路を否定されたのか」

コニー「否定じゃねえけどさー。野球一本に絞ってプロ野球選手になりたいって言ったら「怪我したらのたれ死ぬけどいいの?」ってずばっと言われた」

エレン「まあ、怪我したらプロ続けるの難しくはなるよな。それで引退する選手だっているんだし」

コニー「そおだけどさあああ。それ言い出したら、プロの道、いけなくねえ? 保証なんて何もない世界だけど、でもそれでも好きだから野球するんじゃねえか。他の道なんて考えた事もねえよおお」

と、コニーが頭を悩ませている。

コニー「オレ馬鹿だからさ。野球以外の事、ほとんど何もしてねえんだよ。勉強だってギリギリだし。自慢出来るのは体力ある事くらいだぞ?」

エレン「いいじゃねえか。体力ねえと出来ねえ仕事は沢山あるぞ」

コニー「そおかあ? 例えば何だよ」

エレン「オレが勧められた『消防士』とか『レスキュー隊』とか『自衛隊員』だよ。この辺は体力の方が必須だからな。コニーもいけるんじゃねえの?」

コニー「ああ、そういう意味かーいや、でもなああ。野球選手になりたいんだよ。オレは!」

アルミン「じゃあエルヴィン先生は野球選手以外だったら、何が良さそうって言ったの?」

コニー「ううーん。野球以外だったら『保育士』とか? 男だけど。オレ、下に妹と弟いるからさ。子供の面倒を見るのは得意なんだよ。子供と遊ぶのは好きだしな。後は『宅配業者』とかだな。単純な肉体労働系もいけそうだって言われた。引っ越し屋とかだと、頭使うから向いてないみたいだけど。そんな感じだな」

アニ「保育士、いいんじゃないの? 私、合ってると思うけど」

コニー「ええええ? そうかあ? いや、でもなあ。うーん」

と、コニーも頭を悩ませている。

コニー「野球選手以外の道はまだ見たくねえっていうか、夢はまだ持っていたいというか。来年の甲子園出場が、オレの将来を決めると言うか。せめてベスト8までは残りたいというか……」

エレン「まあそんなに思いつめるなよ。野球選手でいきたいなら、今はその夢を追いかけていればいいじゃねえか」

コニー「だよな! よし、そうしよう! エルヴィン先生には悪いけど、今はまだ諦めねえぞ!」

と、いう訳で次はサシャが出て来たぞ。

サシャ「むふー」

サシャは機嫌が良かった。希望が通ったのかな?

サシャ「エルヴィン先生はいい先生ですね! とてもいい話を聞けました!」

エレン「サシャはなんて言われたんだ?」

サシャ「ええっと、ですね。私の場合はあまり学業に力を入れる必要はないと言われました。それよりも、今持っている「スキル」をこのまま高めてそれを利用した仕事に就いた方がいいとも言われました。私、いろいろバイト経験があるので、社会に出る時にそれが有利になるし、父の仕事なども手伝っているので、経験は十分だと言われました。なので、今やっているフォトショ関係の仕事、漫画家さんのアシスタント等ですね。そういった「芸術」関係の仕事が向いているかもしれないと言われました」

アルミン「意外だね。インドア関係でいいんだ」

サシャ「そうですね。肉体労働も嫌いではないんですが。私の場合、マイペースにやれる仕事の方がいいみたいです。人と深く関わってする仕事より、個人の能力を生かした方がいいだろうって言われました」

エレン「そういうもんなのか。良かったなサシャ」

サシャ「はい! 学業に力入れなくていいって言われた事で、父がびっくりしていましたが、何となく察してくれました! これで「勉強しろ!」と必要以上に言われなくて済みます。むふふふ」

先生としてそれ言っちゃうのってどうなんだと思わなくもないが、サシャの場合は確かに違う能力を伸ばした方がいいのかもしれないな。

そんな訳で初日の四者面談は1時間過ぎた程度で全員分が終わった。

他のメンバーはまた後日だな。ミカサは最後の方になる筈だ。

今日の結果をミカサに話しながら家に帰ると、ミカサは「すごい」と驚いていた。

ミカサ「エルヴィン先生はやはり凄い。人の事を良く見ている」

エレン「やっぱり先生になるだけあるな。皆、いろいろ悩んでいたけど、アニとかは思ってもみなかった方向を提示されたんだぜ? オレもある意味そうだけど。それって、やっぱりエルヴィン先生じゃねえと出来ねえよな」

ミカサ「うん。私はなんて言われるんだろう。ドキドキする」

エレン「ミカサの場合はいろいろ選択肢を提示してくれるかもしれないな。頑張れ」

ミカサ「うん。頑張る」

と、ミカサがちょっと赤くなった。可愛い。

…………。えええい! 家の前(玄関前)だけど、まあいいや!



チュ……


ミカサ「!」

エレン「悪い。今、したくなった」

ミカサ「んもう……(照れてる)」

エレン「だって、ミカサが可愛いのが悪い……」


ゾク……


あれ? なんか急に寒気が……


グリシャ「エレン? ルールは破っちゃダメだよ?」

エレン「?!」

後ろを振り向いたら、何故か親父とおばさんが並んでこっちを見上げていた。

え? え? 親父、先に帰っていたんじゃなかったのかよ?!

ミカサの母「今日は帰りを迎えに来て貰ったの~学校帰りにね。そのまま買い物もしてきたのよ」

グリシャ「ああ。今、帰って来たところだ。偶然だね。車の音、聞こえなかったのかな?」

エレン「うぐぐぐぐ」

すいません。見過ごしていました。それだけミカサの方に集中していたんで。

グリシャ「晩飯のおかず、1個減らすよ。今日だけは多めに見るけど、次はないよ」

エレン「は、はい……(シュン)」

という訳で、やっぱり親父に怒られたりしながらその日は終わったのだった。










10月20日。四者面談2日目。

ジャンが面談を受けた後、物凄く唸っていた。

エレン「大丈夫か? お前もなんかエルヴィン先生に進路否定されたのか?」

ジャン「いや、否定はされていないんだが……」

ジャンは廊下の椅子に座って腕を組んで悩んでいた。

ジャン「公務員を希望するのは構わないけど、一口に公務員と言っても幅が広すぎるからもう少し絞った方がいいって言われた」

エレン「そうなのか。公務員ってそんなにいろいろあるんだ」

ジャン「あーなんか、土木、水産、地域観光、あとなんだっけ。所謂、部署が物凄く幅広いから、勤務先次第では自分が全くやった事のないジャンルの仕事とかバンバン回される可能性も高いから、そういうのに耐えられる? って聞かれてな。オレはすぐに「出来ます」って言い返せなかったから、目指すんだったら、警察とかの方がまだいいかもしれないって言われたな」

エレン「ははは! 斎藤役で警察官やった甲斐があったな。縁があるんじゃねえの?」

ジャン「うーん。斎藤役をやってる時、物凄くしっくりきたからな。案外、合ってるのかもしれないが……」

と、ジャンがぐだぐだ言っている。

ジャン「でも警察官も結構激務って聞くよな。出来れば土日は休める仕事の方がいいけどな」

エレン「んーでも、ジャンの場合は一番は「安定した収入」なんだろ? それだったら、警察官でも良くねえか?」

ジャン「うーん。まあ、悪くはないんだろうけどな。ただ警察に入るなら、格闘……柔道か剣道か空手か。習った方がいいとも言われたな。実践で使うだろうし」

エレン「習えばいいじゃねえか。そういうのは大学入ってからでも習えるだろ」

ジャン「そうだな。一応、大学には入ってみようかとは思う。キャリア組目指す訳じゃないけど、演劇部の事をしながら習い事はちょっと無理だしな」

エレン「ジャンの場合は公務員無理だったら、大手の企業とか、中小企業のサラリーマンでも別にいいんだろ?」

ジャン「まあ、出来れば潰れない会社に入りたいけどな。どうしようもない時はそうなるだろうな」

という訳で、2日目の四者面談はそんな感じで終わった。

10月21日。四者面談3日目。

ハンナも唸っていた。どうやら進路を否定されたようだ。

ハンナ「ううーん。お嫁さんになりたいとか言ったら「離婚されたらどうするの?」って返されてしまった」

ああ、所謂永久就職希望か。女の子らしいな。

オレは別にそれでも構わないと思うけど。ハンナって彼氏いたっけな?

10月22日。四者面談4日目。

ヒッチが浮かれていた。サシャみたいにいい事でも言われたかな。

ヒッチ「水商売でいいです♪ って言ったら、親泣いたけど、エルヴィン先生は「いいんじゃない?」って言ってくれて助かったわー。止められるかと思ったけど、案外いい先生だね!」

マジか。それでいいのかヒッチ。夜の花道いくのかあいつ。

ヒッチ「まあ、親がどうしてもダメっていう場合は「花魁」目指すけどね。そっちにも興味あるんだ~♪」

もうあいつの天職な気がしてきた。まあ、いいか。

ベルトルトが赤面していた。何だろ? 変な反応だな。

ベルトルト「まさか僕が『秘書』とか『マネージャー』とか向いていると言われるとは思わなかったな……」

おお、そうなのか。あ、でもそれっぽい感じはするな。

ライナー「いいんじゃないか? ユミルとコンビ組んだ時もサポート役がうまかったと、ユミル自身が言っていたぞ」

ベルトルト「そ、そうなのかな」

ライナー「ああ。たまにドジだが、悪くない。ってユミルが言っていた。お前は影に徹する仕事がいいのかもしれんぞ」

なるほど。目立つのが苦手なベルトルトらしいな。

10月23日四者面談5日目。

マルコが唸っていた。エルヴィン先生、とことん唸らせるなあ。

マルコ「まさか『心理カウンセラー』とか『精神科医』とか『スポーツ監督』とかその辺を勧められるとは思わなかったなあ」

ジャン「えらくジャンルが離れているな。なんか共通するところあるのか? それは」

マルコ「ああ、えっとね。僕は所謂、「相談役」に向いているって事らしいよ。女房役っていうのかな。まあ、捕手やっていたし、元々そういう気質なんだろうけど、表にガンガン出るタイプじゃないけど、陰で他人に知恵を授けたり、後押ししたり、後は采配したり? そんな感じの事が得意みたいだから、それを活かせる仕事はどうだ? って言われたね」

ジャン「悪くねえんじゃねえか? オレもよくマルコには相談ごとするしな。アドバイスは的確だし」

マルコ「うーん。でも、僕は建築関係の仕事をしようかなって思っていたんだよね」

ジャン「だったら、建築関係のアドバイザーとかはどうだ? くっつけちまえば」

マルコ「! そんな業種、あるのかな?」

ジャン「設計の段階で相談していろいろ決めるだろ。住宅の設計士にでもなれば?」

マルコ「ジャン! 頭いいね! それいいかもしれない!」

と、マルコも進路の先が見えたようだ。

マルロ「………政治家か」

ヒッチ「?! えらくでかい夢を言い出したね。え? それを勧められたの?」

マルロ「政治に関する仕事、がいいかもしれないと言われた。一番いいのは政治家だろうが、しかし公務員を目指していたんだが、まさかそっちを勧められるとは思わなかった」

ヒッチ「超ウケるwwwwwいいんじゃない? 夢はでっかくいこうよwwww」

マルロ「笑われてもな……いや、本当にどうするべきだ。これは」

マルロ、大きい男だな。頑張れ。

ミーナ「うううん。普通のOL希望だったのに、飲食店を勧められてしまった。個人で経営する方がいいかもって。組織に属するよりそっちの方がいいかもって言われた」

ハンナ「そうなんだ。でも、いいんじゃない? カフェ経営とか。似合いそうだよ」

ミーナ「確かにコーヒーとか紅茶は好きだし、甘い物も大好きだけどーOLも捨てがたいのよね」

ハンナ「職場恋愛とか?」

ミーナ「う……バレたか」

こっちの2人は結婚の方を重要視しているようだな。

そしていよいよミカサだ。何言われたんだろうな。

ミカサ「……………」

あれ? 浮かない顔だな。ダメだしされたのかな。

ミカサ「ううーん」

エレン「何言われたんだ?」

ミカサ「旦那になる男と同じ職業がいいかもしれないって言われた」

エレン「ええええ? なんだそれ?」

ミカサ「えっと、私の場合、職種に拘る性格ではないので、愛する人と一緒に生活出来さえすればいいから、本当に何でもいいそう。で、あれば、結婚相手と似たような職業、もしくはいっそ同じ仕事に就いていいんじゃないかって言われた」

エレン「えええええ……それって、オレ次第って事か?」

ミカサ「そうなってしまう。エレン、ごめんなさい」

エレン「いや、いいけどさ。いいのか、本当にそれで」

ミカサ「部活動を決めた時もそうだったので、概ね問題ないかと」

エレン「あ、そう言えばそうだったな。いや、でも、1個くらい適性の職業なかったのかよ」

ミカサ「あえて言うなら『農家の嫁』と言われてしまった。農業が向いているそう」

エレン「そうか。農業か……」

ミカサは確かに作物育てるの好きだもんな。

ミカサ「エレンは今のところ『医者』か『消防士』か『レスキュー隊』か『自衛隊員』くらいを見ているのよね」

エレン「ああ、医者はまあ、成績次第だけどな。多分、相当頑張らないと難しいとは思うけど」

ミカサ「私は本当に、自分のやりたい事が特に「ない」状態なので、エレンと同じ仕事を選択してはダメだろうか?」

エレン「うーん……本当にそれでいいのかなー」

責任重大だな。オレ、ミカサの人生も抱える事になるのか。

いや、でも、そうだよな。ずっと一緒に生きていくつもりなら、それくらい抱えなくてどうする。

エレン「本当に、それで後悔しないな? ミカサ」

ミカサ「うん。後悔しない」

エレン「分かった。だったらオレも覚悟を決める。出来るだけ早いうちに進路を絞るから。それまで待っててくれ」

ミカサ「うん」

ミカサが小さく微笑んだ。嬉しいのか。こんな程度の事で。

なんか幸せだった。ミカサの反応が。こんな事でも。

手、繋ぎたくなった。急に。

だから、手をすっと、握ったら、ミカサがびっくりした。

ミカサ「エレン?」

エレン「いや、なんとなく。手、触りたくなった」

ミカサ「うん……」

ユミル「廊下で急にイチャイチャするのやめてくんねえ?」

エレン「うわああびっくりした! ユミルか。もう終わったのか?」

ユミル「あーまあ、一応な」

ミカサ「ユミルはなんて言われたの?」

ユミル「あーうー」

何だ。歯切れが悪いな。

ユミル「エルヴィン先生、あの人馬鹿なんじゃねえかなって思うんだけど」

エレン「え? 何言われたんだよ」

ユミル「………女社長になったらどうだって言われた」

ミカサ「お、大きい……!」

ユミル「でかすぎるだろ!!! どう考えても! 現実的じゃねえし。アホだろ。あの先生」

エレン「いやいや、案外そうでもないかもしれないぜ? ユミル、社長になったらいいじゃねえか」

ユミル「だから、「何の」社長だよ!! 社長って一口に言っても、いろんな企業があるだろうが! 私は「それ」を聞きたかったのに「それは何でもいいと思うよ。ピンときた物を取り組めば」とか何とか。分かりにくくてしょうがねえ!」

と、頭を抱えていた。

ユミル「私はそんなでかい夢なんてねえんだよ! とりあえず、生きていけさえすればそれでいい! その為なら、多少犯罪ギリギリの事でもやってやんよ!!! アウトでもバレなきゃいいと思ってる! とにかく金を稼ぎたい!! その手段を聞きたかったのに、あの先生はもうおおおお!」

うーん。これだけ意欲的なら「社長」に相応しいと思うんだが気のせいか?

ミカサ「では、ユミルが好きな事をすればいいのでは?」

ユミル「好きな事?」

ミカサ「そう。ユミル自身が興味を持つ事をすればいい。何か、ないだろうか?」

ユミル「私が興味あるのはクリスタに関する事が殆どだからな……」

ミカサ「では、クリスタを綺麗にする為に化粧品の会社を立ち上げるとかはどうだろう?」

ユミル「………あーそういう事ね。なるほど。それだったら、悪くないかもな」

と、ちょっと落ち着いたようだ。

ユミル「女性に関する会社とかいいかもしれないな。ありがとう。ミカサ。ちょっと取っ掛かりが見えたよ」

と、手を振って去って行った。

ユミル、本気で会社立ち上げる気かな。いやでも、案外やり手だから本当になっちまうかもしれない。

最後はライナーだった。ライナーもまた唸っていたな。

ライナー「いろいろ多すぎて困ったな。適正が有り過ぎるそうだ」

エレン「有り過ぎるって、どれくらい?」

ライナー「まず体力のいる仕事だと『警備員』『警察官』『自衛隊員』『スポーツ選手』『消防士』等だな。ただ『教師』『塾の講師』等の子供と関わる仕事も大丈夫らしい。後は『農業』『漁業』等の体力勝負で地域に根づく仕事も大丈夫らしいが……これだけあると、何を選べばいいのか分からなくなってしまった」

才能が有り過ぎるのも問題だな。

ライナー、オールラウンダータイプだからかえって選ぶのが困るんだよな。

ライナー「じっくり考えるしかないか。選択肢の幅が多い方が悩む事になるが仕方がない」

と言ってライナーも去って行った。

そんな感じで第一回目の進路相談はそれぞれいろんな思いを抱え、無事に終わったのだった。

そして翌週の月曜日。10月27日の体育の日。

その日は天気も良好で、外でテニスの授業をやっていた。

一応、硬式テニスだ。テニヌを思い出しちまうけど。笑ってはいけない。

その日は皆、リヴァイ先生の様子がおかしい事に気づいた。

妙に肌艶が良かった。というか、機嫌が良すぎて気持ち悪い。

常に口元が上がっているし、なんていうか、たまに思い出し笑いをしている。

エレン「……………」

あー。なんとなく、皆も気づいている。

昨日は第4日曜日だった。確か体操部の活動も月1でお休みの日だ。

中間テストも進路相談も終わったし、ちょっと一息お休みが取れたんだろう。

多分、アレは、やったな。ハンジ先生と。

エレン「あの、リヴァイ先生。今日はご機嫌ですね」

一応、カマをかけてみると、

リヴァイ「ああ。そうだな。すまん。ついつい。にやけてしまってな」

エレン「イイ事でもあったんですか?」

リヴァイ「最高の夜だったよ。昨日は久々に、楽しめた」

と、言い切ったので確信した。やったんだな。遂にやったんだな!

エレン「あー………それはおめでとうございます」

思わず言っちまった。なんか、つい。

リヴァイ「ありがとう。………ふふっ」

やっぱりリヴァイ先生、浮かれている。超浮かれている。

リヴァイ「ハンジがあんなに可愛い女だとは知らなかったな。もっと早く手を出しておけば良かった」

惚気きた!! 授業中だって事、完全に忘れているぜ! リヴァイ先生!!!

エレン「なんか今までと随分変わりましたね。リヴァイ先生」

リヴァイ「自分でもそう思っている。こんな風に浮かれる自分は初めての経験だ」

エレン「ちなみに、どんな感じで迎えたんですか?」

参考までに聞いておこう。ミカサとの、予習の為に!

リヴァイ「スイートホテル、一泊だけ宿泊してきた。エルヴィンとピクシス先生からの宿泊券のプレゼントを貰ったからな。早速使わせて貰ったよ。そういう豪華な場所で夜を過ごすのは初めてだったらしく、慌てふためくハンジの顔は面白くてな。ついつい、いろいろ苛めてしまったよ」

ドSだ! 今、はっきりとドSの顔をした!

大人の夜だな。すげえ。オレには真似出来ないけど。

リヴァイ「あいつの反応がいちいち新鮮だった。こっちがいろいろ教えてやったらその都度「こんなの知らないよ!」とか「ちょっと待って!」の連続でな。いやはや、追い詰めるのが楽しくてしょうがなかった」

エロ! なんかもう、調教しているようにしか聞こえない。

皆、こっそり会話聞いているみたいで、ぶふっ! と吹いていた。

エレン「まるで調教しているようにしか聞こえないんですが」

リヴァイ「調教? いや、そんな生易しい言葉じゃ足りないな。これからゆっくり10年分のツケを支払わせる。あいつの過去の男達を全て忘れさせてやるくらいに、俺のやり方を仕込むつもりでいる」

うわあああ。ちょっと怖いくらいリヴァイ先生、変態発言しているぞ。

鳥肌が立ってしまった。ここまで凄いといっそ潔いけどな。

とまあ、リヴァイ先生はすげえ浮かれていたけど。

10月29日。生物の授業の時のハンジ先生はリヴァイ先生のような感じではなく……

ハンジ(ぼーっ)

エレン「ハンジ先生?」

ハンジ「はいはい?! 何かな?」

エレン「教科書逆さまに持ってますよ?」

ハンジ「うわああああ!? ごめんねええ?! ぼーっとしてた!」

と、調子が狂っているようだ。

授業はちゃんとやってくれるけど、ちょっとした「間」が出来ると「ぼーっ」としてしまうようで、困っている。

そしてたまに赤くなって、息をついて、思い出しては顔を隠して忙しい。

授業が終わった後、オレはハンジ先生に声をかけた。

エレン「だ、大丈夫ですか?」

ハンジ「うん。今のところは大丈夫。大丈夫だけど……」

エレン「けど?」

ハンジ「いつまでこの状態が続くのかなあ? もう、地に足がつかないような「ふわふわ」な感じがあの日以来、ずっと続いているんだよね。ねえ、これが「トキメキ」ってやつなのだとしたら、君達、よほど心臓が強いんだね……」

エレン「まあ、そうですね。でもオレ達も、そんなもんですよ? ハンジ先生」

ミカサ「確かに。しょっちゅう、ふわふわします……ので」

ハンジ「そうなんだー凄いねえ。君たちの方が若いのに。こういうの、先に経験していたんだね。予想以上に、とんでもない経験だよー」

と、うるうるするハンジ先生だった。

ハンジ「リヴァイとの初エッチ、6時間もかけられるとは思わなかったよー。今まで経験したものが全部、馬鹿みたいに思えるよー」

エレン「ろ、6時間って?!」

長げえええ! え、そんなに時間かかるもんなのか?! 1~2時間くらいのイメージだったんだけど

ハンジ「うん。全部でそれくらい。勿論、途中で休憩込みだけど。いろいろ凄かったんだよ……」

ミカサ「本当、エロ親父……やっぱり変態教師だったか」

まあ、ミカサは最初からそう言っていたな。当たっていたんだな。アレ。

ハンジ先生は顔を隠して俯いてしまった。

ハンジ「恥ずかしいよーいつまでこんな状態続くのかなー怖いよー」

と、その時、昼休みになってリヴァイ先生が生物室に来た。

リヴァイ「ハンジ。一緒に昼飯食うぞ」

ハンジ「はいいいいいい! (ドキーン☆)」

リヴァイ「何、そんなにおっかなびっくりしてやがる。そんなに俺が怖いのか? (ニヤリ)」

ハンジ「滅相もございません! いや、本当、大丈夫だから! その……ああああああ!?」

無理やり引っ張られて生物室の外に連れて行かれた。

どうやら2人は一緒にお昼を食べるらしいが…。

まさかとは思うけど、リヴァイ先生、昼休みとかも学校でやったりしてねえよな?

一瞬、そう思ったけど。あえて突っ込むことは止めておいた。……当たっていたら怖いからだ。

そんな感じで、10月は文化祭やら中間テストやら、進路相談やらでバタバタして終わっていった。

11月になると少し生活も落ち着いてきたので、そろそろミカサに打診してみる。

エレン「ミカサ」

ミカサ「何?」

エレン「そろそろ、オレ達、初デート、しないか?」

ミカサ「する!」

即答するミカサにオレは微笑んだ。ま、オレ達はオレ達のペースでいかないとな。

そんな風に思いながら、お互いにニヤッと笑ったのだった。

という訳で、リヴァイ×ハンジは無事にゴールしました。
今日はここまでにします。次回はエレンとミカサの山登りデートだ!

リヴァハン長かったからそろそろエレミカがみたい

>>192
お待たせしてすみません。デート編でがっつりいきますよ(笑)









11月2日。日曜日。その日は晴天だった。

気候も真夏のような暑さはなく、だんだん涼しくなってくるこの季節。

紅葉も色づいてきて、山登りには最適な季節になった。

オレとミカサは初めてのデートに「山登り」を選択した。

女の趣味にある程度合わせた方がいいという、リヴァイ先生の特別授業を参考にする事にしたのだ。

山登りをするのは初めての経験、という訳でもないが、相当久しぶりだった。

確か、小学五年生の頃、「少年自然の家」とかいうイベントがあって、皆で山登りした以来じゃねえかな。

なので山登りに必要な物とかはミカサと一緒に話し合って装備を大体決めた。

今回登る山は初心者向きのもので、駅から1時間半くらいで着く近場の山を選んだ。

朝の6時には家を出発して、8時頃にその山のスタート地点に着くと、そこには結構、いろんな人達が集まっていた。

エレン「おおおお……やっぱり行楽シーズンなだけあって、結構、人がいるな」

若いカップルだけでなく、熟年の夫婦や家族連れなどもいた。

皆、似たような格好でわいわい言いながら山に登ろうとしている。

今日は山登りが目的なので、オレの服装もそれに合わせた長袖長ズボン。あと帽子をかぶっている。

勿論、ミカサも似たような格好だ。白い長そでのTシャツにジーンズ姿だけど、ミカサは足なげえから、すげえ似合っている。

ミカサ「まずは参拝コースを歩いてみよう。エレン」

エレン「おう!」

神宮参道を歩くのんびり参拝コース。というものがあって、今回はまずそれをなぞってみる事にした。

銅鳥居をスタートして、神宮奉幣殿までの石段の参道をのんびり歩いて登るコースとあったので、初心者には向いているだろう。

参道の周辺には沢山の坊舎跡や名所が見られるとも案内にあったので、楽しみだ。

歩いてすぐ、財蔵坊と呼ばれる民俗文化財を見る事が出来た。内部を見れるのは土日だけとあったが、時間が午前10時からとあったので、中を見る事は出来なかったが、山伏が生活した当時のままの姿を残しているその建物を見て、ミカサは「おおお」と感嘆の声をあげていた。

ミカサ「すごい。古い建物がそのまま残っている」

エレン「歴史を感じるよなー」

と、まるで修学旅行に来た時のようなノリで感心しながら歩いていく。

次は庭園を見た。旧亀石坊庭園と呼ばれるそこを見たり、山道の歴史館みたいなところも有ったけど、博物館関連はやっぱりまだ開いてなかった。来るのが早すぎたみたいだ。

そして最後は神宮奉幣殿にたどり着いた。この山の中心的な建物で、朱塗りの柱が目を引く大きな建物だった。

国の指定重要文化財なんだそうだ。結構、格好いい。

やっぱりこういうところに来たからには拝まないとな。

御賽銭入れて、手を合わせてみる。何を報告するかな。

んー。進路を早めに決めたいので、どの職業が一番いいか教えて下さい!

………なんてな。まあ、他力本願な願掛けをしてみる。

いや、本気で言ってる訳じゃねえよ? こう、ヒントくれ! くらいのノリだ。

ミカサ「よし! エレン、ここから本番」

エレン「だな」

次はここから山頂まで登っていくコースだ。時間にして大体、75~90分くらい歩くコースになるらしい。

神宮奉幣殿から中岳に向けて出発する。下宮を通過して、杉木立の中、石段を登っていく。

エレン「ほ! ほ! ほ!」

ミカサ「エレン、飛ばし過ぎると後で疲れる」

エレン「わり! テンション上がってきたからさ!」

と、石段をぴょんぴょん飛びながら先を行く。空気がうめえな。自然の中はやっぱりいいな!

そして20分くらい登ると、一の岳展望台が見えた。ここで小休止出来るみたいだ。

エレン「どうする? 一回休憩するか?」

ミカサ「うん。ちょっと水を飲もう」

という訳で小休止。慌てる必要はないからな。ゆっくり行くぜ。

ミカサ「ふう……(お茶飲んでいる)」

リラックスモードのミカサが超可愛い。こう、ほっとするよな。

ミカサ「な、なに…? (ドキッ)」

エレン「いや、可愛いなーと思って見てた」

ミカサ「んもう……(照れる)」

あーもう、いいな! こういうの! デート最高!!

展望台からの景色も最高だった。晴れて良かったぜ。

自然の中にいると、気持ちも落ち着いてくる。こう、すかっとする感じだ。

展望台にはオレ達以外の人も小休止しているので、あまり露骨なイチャイチャは出来ないが、山頂についたらミカサと少しくらい、エッチな事もしていいよな? ダメかな?

とか思いながら景色を眺めていたら、ミカサもこっちを見て、

ミカサ「エレン、そろそろ行こう」

エレン「おう!」

5分くらい休憩して再開。杉木立の中をまたずんずん登っていく。

あ、途中でベンチもあった。やっぱり休憩所は適度に備えられているようだ。

でもオレ達はベンチはスルーして(というか先客がいたので)先に進んだ。

鎖を使って登る箇所があった。ミカサを先に行かせて、お尻を持ち上げてやる。

ミカサ「ひゃん! んもう、エレン……!」

エレン「いや、落ちない様にと思ってな」

ミカサ「いきなり触られるとびっくりする……」

エレン「悪い悪い(ニタニタ)」

ミカサ「んもう……(赤面)」

とまあ、そういう事もやりながら、先に進む。

中津宮を通過した。大体目安通りに登れているかな。45分くらいでここまで来た。

今度は下りの道だ。こけないように注意しながら先を行く。

再び石段の道が開けてきた。よいしょ。どんどん登っていくぞ。

産霊(ムスビ)神社に到着した。ここまでで75分。大体予定通りだ。

水場があったので、そこで水も頂く事にした。冷たい水が超気持ちいい!

先を行くと、上宮が見えてきたぞ! あともうちょっとだ!

上宮中岳山頂に着いた。ここまでで90分くらいだ。

山頂の広場に着いた。やったー! 予定通り着いたぞー!

ミカサ「着いた……」

エレン「おう! 着いたな! 到着だ!」

ミカサ「結構、意外と人がいる」

エレン「みたいだな。この山、結構人気あるんじゃねえの?」

ミカサ「かもしれない。初心者向きの山登りに案内されているだけはある」

エレン「記念写真撮ろうぜ! ほら、ミカサ! よってよって!」

と、言ってオレ達は広場で(ガラケーだけど)記念撮影した。

エレン「今、何時だ?11:00くらいか。9:30分くらいから出発したからそんなもんか」

ミカサ「少し早いけど、お昼にする?」

エレン「そうだな! 昼飯食おうぜ♪」

お楽しみの昼飯時間だ! やっほーい!

ミカサ「おにぎりとか、卵焼きとか、ハンバーグとか、お煮しめとか」

エレン「基本の弁当きたー! ありがとうな! ミカサ!」

ミカサ「では、手を拭いて……(おしぼり持参)」

エレン「(吹き拭き)いっただきまーす!」

ミカサ「頂きます」

もぐもぐもぐもぐ。うめええええ! 超うめええええ!

なんだこれ?! いつもにも増して飯が超うめええええ!

やっぱり自然の中で食ってるせいかな。空気もうまいし、運動した後だし。

余計にそう感じて、ミカサも頷いている。

ミカサ「ね? 贅沢なデートになった」

エレン「ああ! ミカサの言ってる意味が分かったぜ! こりゃ贅沢だな!」

飯がうまく食えるっていうのは、最高だよな! 本当に!

持参した水とかお茶も適度に飲みながら、オレは腹いっぱい飯をかきこんじまった。

エレン「美味かった! 超美味かった! これは本当に、いいデートだな!」

ミカサ「うん。私もお弁当を作った甲斐があった」

エレン「ありがとうな。いつも、本当にありがてえよ。ミカサ」

ミカサ「うん……どういたしまして」

うるうるしているミカサが超可愛い。

ああもう、周りに人いなければ、ここで押し倒してキスしてハグして一気にやっちまうぞ! 外だけど!!

でも自重する。例の誓約書の件、まだ解決していないからな。

エレン「そうだ。ミカサ、例の誓約書の件なんだけどさ」

ミカサ「うん」

エレン「エルヴィン先生曰く「親父の謎かけ」って言っていたけど、どう思う?」

ミカサ「んー……」

エレン「オレ、そういうのあんまり得意じゃねえからさ。ミカサの考えを先に聞きたいんだ」

ミカサ「文章を、そのままあえて、捉えるとすれば、だけど」

と、前置きをして言った。

ミカサ「エレンからの接触はダメで、私からの接触がOKだと仮定すれば、もしかしたら、やっていい事を制限しているのかもしれない」

エレン「やっていい事を制限?」

ミカサ「うーん。例えば、エレンのアレを、私の口でその……するのまではOKとか?」

ぶふううううううう!

危うくお茶零しかけた。ミカサ! オブラートに包み切れてねえぞ!

真っ赤になってオレは答えた。

エレン「いや、まあ、確かにそれは文面上は違反じゃねえけどさ。そんな事されたら、オレ、理性吹っ飛ぶぞ? 無理だぞ? 一気に最後までやっちまうぞ?」

ミカサ「やっぱり無理?」

エレン「多分、無理だと思うぜ。いや、ミカサがどうしてもやりたいって言うなら、我慢してやらなくもねえけど」

ミカサ「じゃあしよう(キリッ)」

エレン「即答かよ! え? 何、ミカサ、抵抗ねえの? そういうの?」

ミカサ「むしろしたくて堪らない(キリッ)」

エレン「そうなのか……いや、意外だったな。なんかそういうのって、あんまり女の方からしたがらねえイメージがあったからさ」

ミカサ「そうなの?」

エレン「んーそういうエロ本ばっか見てきたせいかな。嫌々やらされている奴とかの方が多いもんな」

まあ、その嫌そうな顔がかえってそそるという事情もあるんだろうけどな。

ミカサ「エロ本? (ぴくっ)エレン、エロ本を所持しているの?」

エレン「うぐっ……!」

しまった! 墓穴掘った!! 言うんじゃなかった!

ミカサ「エレン、どんなエロ本を見ているの? どういうのが趣味なの? (ゴゴゴ)」

エレン「お、怒るなよ!! アルミンから貰った奴とかだよ!! 中古本だから! アルミンが置く場所困るからって、引き取っただけだけだから!」

ミカサ「本当に? 本当にそうなの? <●><●>」

いかん! また例の目つきになってオレに迫ってくる! 話逸らさないと。

ええっと、リヴァイ先生の特別授業だと『機嫌悪い時は甘いもの』食わせろだったな。

あ、チロルチョコが確かあった筈! よし、ミカサの口に押し込もう!

ぐい!

咄嗟にポケットのチロルチョコを取り出して封をあけてミカサの口の中に押し込んだ。

ミカサ「!」

エレン「イライラしたらダメだろ? チョコでも食って機嫌なおせ」

ミカサ(もぐもぐ)

あ、ちょっと顔色が良くなった。すげえ! さすがリヴァイ先生だ!

特別授業を前もって聞いていて正解だったぜ!

ミカサ(ごっくん)

ミカサ「…………誤魔化されたような気がする」

エレン「あんまり気にするな! とにかく、その……オレとしては、そりゃあやって貰えたら嬉しい限りだけど、そこまでで自重出来るかが、自信はねえかな」

ミカサ「そう……(シュン)」

エレン「なんていうか、こういうのって「ここまで」って決めてやろうとしても、そこまでで済まない気がするんだよ。そういうスイッチが入ってしまうと、オレ、どんどん調子に乗っちまうからさ」

ミカサ「それは私も同じかもしれない」

エレン「だろ? だから、多分、それは違うような気もするんだ。答えが微妙に違うような……」

ミカサ「では、誓約書を交わした「理由」から推理してみよう」

と、ミカサが言い出した。

ミカサ「おじさんは恐らく「私とエレンの間にうっかり子供を作らせない為」にこの誓約書を誓わせたと思う」

エレン「そうだな。そこを一番、親父は心配していたからな」

ミカサ「でも、今の避妊具は性能がいいと言われているので、よほどのドジをしない限りは、ちゃんと使いさえすれば妊娠はしないと思う」

エレン「だよなあ。不良品を使わない限りは多分、大丈夫だと思うんだけどなあ」

ミカサ「私もそう思う。それこそ、何万分の1の確率の話だけで、こんな誓約書を作らないと思う」

エレン「つまり、妊娠の問題だけじゃねえって事なのかな」

ミカサ「恐らくそうだと思う。そもそも妊娠させない為なら、枷は私にも及ぶ筈」

エレン「そうだよなあ。意味ないんだよな。オレだけだと」

あー分からん。親父は一体、何が言いたいんだろう?

ミカサ「エレンからの接触はダメで、私からの接触はOKだと考えるとすれば、それはまるで私の方が主導権を握るような話のように思える」

エレン「あ、まあ……そうなるな。ん? 主導権……」

主導権。なんか、その言葉を聞いた瞬間、ちょっと思い出した。

リヴァイ先生の特別授業だ。

リヴァイ『焦るなよ。焦ったら負けだと思え。若いうちはガンガンやりたくなる気持ちは俺も分かるが、女の体は男が思っている以上に傷つきやすい。やり過ぎて、病院に通う羽目になった女子生徒も多数知っている。勿論、中絶も含めてだ。やりたいだけなら、せめて年上の経験の豊富な女を選べ。同年代でやる場合は、特に経験値ねえんだから、女の方に出来るだけ合わせてやれよ』

これって、つまり。まさか。そういう意味だったのか?

ミカサ「エレン……? どうしたの?」

エレン「あ、いや……もしかして、だけどさ」

オレの中で仮説が組立て上がっていく。間違っているかもしれないけど、今はこれしか思い浮かばない。

エレン「親父、もしかして、セックスの主導権をミカサに握らせたかったんじゃねえのかな」

ミカサ「え……?」

エレン「今、ミカサが言った通りの意味かもしれねえ。多分、きっとそうなんじゃねえかな」

思い出せ。何故親父があれだけキレたのかを。

あの時の状況を。墓の前での出来事を。

エレン「親父はもしかして、オレの方が強引に、ミカサにキスするところばっかり見ているから、ミカサの方の気持ちを心配しているのかもしれねえ」

ミカサ「え? え? どういう事?」

エレン「つまり、ミカサがオレに「流されて」付き合っているんじゃねえかって、心配しているんだよ。きっと」

ミカサ「ええええええ!? (ガーン)」

ミカサが凄い顔になった。凄くショックを受けているようだ。

ミカサ「そ、そんな事ないのに。私は、エレンが大好きなのに……(涙目)」

エレン「いや、でも、誤解している可能性は十分にあるぞ。親父、オレの方からキスするところばっかり見ているような気がするし、オレの方から告白したって言ったし、ミカサの気持ちがどの程度なのか、測っていたんじゃねえかな」

ミカサ「だとすれば、つまりセックスのサイクルを決める決定権を私に委ねている…と?」

エレン「かもしれない。いや、本当にそうなのかは、まだ分かんねえけど。でも、そう考えれば誓約書の意味が通じる気がするんだ」

オレの方から接触してはいけない。

でも、ミカサからならの接触はOKだと仮定すれば。

その意味は、それ以外にあり得ない気がする。

ミカサ「では、もしかしたら、「危険日」を避けてやれば、セックスをしてもいいっていう意味なのかしら」

エレン「え?」

ミカサ「そう考えれば辻褄が合う気がする。もしもエレンに主導権を渡せば、私はそういう時でも、求められたらきっと、うっかり応えてしまう。でも、エレンの側からは女の生理のサイクルは分からない。そこをコントロール出来るのは、女の私しかいない」

エレン「つまり、妊娠しづらい時期であれば、所謂「安全日」って呼ばれる期間であれば……」

ミカサ「や、やってもいい……?」

お互いに、その答えにたどり着いて、手を握り合った。

エレン「多分、それだ!!! 親父はそれに気づかせる為に、謎かけみたいな事をしたのか!!」

ミカサ「エレン、家に帰ったらおじさんと答え合わせしよう!」

エレン「ああ、そうだな! あーなるほどな! 何か分かった気がするぜ!!」

回りくどい方法で縛った理由も分かった気がする。

つまり、オレの方が我慢している状態で、ミカサの方が我慢出来なくなった時に、その意味が伝わる様に。

ようやくオレ達の「枷」が1個外れるように、誓約書をかわさせたんだ。きっと。

エレン「くっそおおおお親父めええええ!」

なんかこう、踊らされたような気持ちもなくもないが。親父らしいやり口だと思った。

親父には一生敵わない気がする。こういうところ、本当すげえよ。

ミカサ「では私は明日から基礎体温計で基礎体温を測らないといけない」

エレン「ん? なんだそれ」

ミカサ「そういう道具がある。女のリズムを測る道具。ちょっと面倒臭いけれど、それがあれば、妊娠しやすい時期としづらい時期を大体把握する事が出来る」

エレン「そうなのか」

ミカサ「ただ、データを採る為には一月から二月程度の情報が必要なので、すぐには結果が出ない。生理のリズムだけで計算する事も出来なくはないけど、正確な情報が知りたいのであれば、やはり基礎体温は調べるべき」

エレン「おう。なんかその辺はミカサに任せるぞ」

ミカサ「うん。任せて欲しい。早ければ、12月以降にはリズムが掴めると思う」

エレン「じゃあ、来年になれば、オレ達、出来るのかもしれないのか」

ミカサ「かもしれない。勿論、おじさんに確認した上での話だけど」

よしゃああああああ! これで一歩前進だ!!!!

暗闇が晴れてきたような気がした。ああもう、早くうちに帰って親父に直接確認してえええ!!

ミカサ「でも、今日は確かおじさん、お仕事……」

エレン「あ、そうだった。なんか出張行ってるって言ってたな」

親父は医者だから、医学関係の発表会とか研究会とかの出張で全国あちこち出かける時もある。

今日と明日は家にいないんだ。だからすぐには確認出来ない。

電話で言うのもアレだしな。仕事邪魔する訳にはいかないし。待つか。

エレン「あーもう、うずうずするけどしょうがねえか」

ミカサ「うん。しょうがない」

エレン「まあでも、こういうの、わくわくして待っている時間っていうのも大事だよな」

きっと。階段を登っていくように。一個ずつ。

問題をクリアしていく事が、きっと大事なんだと思うんだ。

ミカサ「うん。焦る必要はない。私はずっと、エレンの隣にいる」

エレン「………」

やべえ。うるっとくるだろうが! そんな事言われたら!

あーもう。これから先、どうしようかな。

エッチの件はまあ、1歩前進したとはいえ、まだ進路の事、決めてねえし。

ミカサはオレと同じ道を行くと言っている。

だったら、オレ自身がミカサにどうなって欲しいのか。考えないと。

消防士は……もし万が一、ミカサが火傷したら嫌だから没だな。

自衛隊員は……似合いそうだな。隊服。でも確か、自衛隊員って全国を回るんだよな。

勤務先次第では遠距離恋愛になっちまう可能性もあるよな。それはちょっときついかもしれない。

レスキュー隊……悪くはねえと思う。そういうの、オレ、向いてるらしいし。

最後に医者。

エレン「……………」

イメージした瞬間、びびっときてしまった。

白衣を着て、聴診器持って、診察するミカサを想像して、正直、きた。

萌えてしまった。レスキュー隊も悪くはねえんだけど。

女医っていう響きに、オレの心は躍ってしまって、その……。

馬鹿だと思うけど、正直言って、アホだとは思うけど。

進路の中で一番、ミカサになって欲しい職業は「女医」だった。

エレン「……………」

こういう決め方って、本当は良くねえかもしれない。

だけど、男って、案外単純に出来ている生物で。

エレン「ミカサ、あのさ……」

ミカサ「何?」

エレン「オレ、もしかしたら、無理かもしれないけどさ……」

無謀かもしれない。やめとけって止める理性の声も聞こえるけど。

オレの本能は「女医」を選んだ。ああ貶すがいい。むしろ本望だ。

女医の姿になったミカサを、オレは見てみたい。

だから。

エレン「医者の道、チャレンジしてみてえかも……」

ミカサ「医者? おじさんの跡を継ぐの?」

エレン「出来るんだったらな。ミカサも、一緒に医者の道、進んでみるか?」

ミカサ「エレンがその道を進むのであれば、私は何処でもついていく」

微笑んだ、ミカサの顔がとても綺麗で。

オレも一緒に微笑んだ。

エレン「正直、無理かもしれないけどな。でも、オレ、やるだけ、やってみるよ」

ミカサ「うん。一緒に頑張ろう。エレン」

と、言ってオレ達はじっと見つめ合った。

熱っぽい視線を交わして、唇が近づく。その刹那……

ハンナ「すごくきれいな場所だねー来てみて良かったね。フランツ」

フランツ「ああ。綺麗だね……ハンナ」

見知った声が聞こえてびっくりした。そっちの方を振り向くと、

うおおおお何だ?! フランツとハンナも山登りデートしに来たのか。

え? でも、フランツって野球部じゃねえ? いいのかサボって。練習大丈夫なのか?

ハンナ「うん。たまには気分転換した方がいいよ。思いつめると良くないって」

フランツ「ありがとう……ハンナ」

ハンナ「いいよ。で、話したい事って、何?」

フランツ「………」

何だ。顔が赤いぞ。まさか……

フランツ「あの……ハンナ。単刀直入に、言うけど」

ハンナ「うん」

フランツ「つきあって、くれないかな。僕と」

ハンナ「え?」

フランツ「だから、その……おつきあいして下さい!」

ハンナ「いいの? でも、野球部、大変だって…」

フランツ「ハンナの応援があれば頑張れる気がするんだ。だから……」

ハンナ「本当に、私でイイの?」

フランツ「ハンナじゃないと、ダメなんだ!」

ハンナ「フランツ! (がばっ!)」

おおおっと?! 山の山頂で告白かよ! 何で遭遇しちまったオレ?!

ミカサ「おおお……ここはデートスポットでもあると書いてあっただけはある」

エレン「そうなのか?」

ミカサ「うん……でもまさかこんなところで2人に遭遇するとは思わなかった」

エレン「オレもだよ。いつの間にあいつら、そういう事になっていたんだ?」

ミカサ「委員会、ではないだろうか。2人は同じ委員に所属していた気がする」

エレン「そうだったっけ? まあ、接点があるならそうなったのも頷けるか」

2人はくっついたばかりで人目も憚らずイチャイチャし始めた。

おおおおおい。ちゅっちゅすんなー。周り見ろー。

人の事は言えないけど。アレだ。人がおっぱじめると、何かアレだな。

自分の事は棚に上げたくなるのが不思議だよな。

まあいいや。あっちの馬鹿夫婦は放置しよう。今は自分の事を優先だ。

エレン「そろそろ、下るか? 天気、夕方から崩れるかもって予報で言ってたし。長居はしない方がいいだろ」

ミカサ「うん。そろそろ下ろう」

という訳で、フランツとハンナには声をあえてかけず、オレ達は先に山を下る事にした。

同じ道を下るだけだから道に迷う事はなかったけど、急に雲の様子が怪しくなってきた。

エレン「やべ……予報より早く雨、きそうだな」

ミカサ「少し急ぐ?」

エレン「だな」

という訳で、ちょっと早歩きで下っていると、


ザーザーザー


あともうちょっとってところで雨が降り出してしまった。

エレン「あーもう、運がない」

ミカサ「エレン。展望台で雨宿りしよう」

エレン「そうだなー」

軽く濡れた服をタオルで拭いて雨宿りする。

人の気配はなかった。恐らく、他の人は山頂か別の場所で雨宿りをしているんだろう。

エレン「…………」

雨で少し体が濡れたせいか少し寒そうだ。

ミカサが一回だけ小さなくしゃみをした。

エレン「大丈夫か?」

ミカサ「大丈夫。ちょっと寒いけど」

エレン「………」

ごくり。生唾を飲み込んだ。

人が来たらまずいけど。でも、ミカサの手が少し冷たかったから。

だから。

オレはミカサを自分の方に引き寄せて、服の上から、ミカサの体にそっと触れた。

ミカサ「え、エレン……(びくん)」

エレン「寒くないか? 少し、体冷えてるぞ」

ミカサ「これくらい平気……(ぽやーん)」

ミカサがうっとりしているのが分かる。

雨は、通り雨なのかどうか分からないけど、まだ降り続けている。

小雨になるまではここで休憩するしかない。

その時、オレはまた、リヴァイ先生の特別授業を思い出した。


『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』


それを思い出した瞬間、オレの中で、せき止めていた何かが外れた音がした。

雨が止むまででいい。ミカサの体を温めてあげる為に。

自分に言い訳しながら、これは、そういう意味じゃないって、言い聞かせながら。

自分に嘘をつきながら、オレはゆっくりと、ミカサの体に触れた。

ミカサ「エレン? その……」

エレン「寒くねえように、触るだけだ。大丈夫」

ミカサ「うん……」

嘘だけどな。でも、その嘘にミカサも気づいている。

服の上から、触るだけだ。ゆっくりと、ただ、それだけ。

エレン「擦るだけだ。こうすれば、寒くねえだろ」

ミカサ「う、うん……あっ……」

ビクン……

跳ねる身体が感じている事を表す。ミカサ、やっぱり相当敏感なんだな。

腰の周りと、脇腹の辺りを中心に手を動かして、優しく撫でるだけなのに。

太ももとかも、服の上から触ってみる。少しだけ湿っているのは、通り雨に濡れたからだ。

だけど、その湿り気が余計に興奮を呼んで、オレは、太ももの内側にも指を入れた。

ミカサ「あ……ああ……」

2人の荷物はとっくに床に置いている。

触るだけなのに。ミカサの顔がどんどん、赤くなっていく。染まっていく。

ヤバい。楽しい。すげえ楽しい。

でも我慢だ。服の上から触るだけだ。それ以上の事は、しない。

本番は1時間以上もこれ、やるんだよな。すげえ耐久レースな気がするけど。

辛いけど、それをやりたくなる気持ちも分かる。触るだけで十分、ミカサ、感じてくれているんだ。

ミカサ「ああっ……エレン……ん……」

両目を閉じてくたっと力が抜けていくミカサにオレはキスをしてしまった。

あれ? ちょっと待って。ええっと。

いかん。キスはするつもりなかったのに。あれ? 体が勝手に。

ミカサ「ん……は……はああっ……」

まずい。ミカサの感じ方がどんどん、本格的になってきている気がする。

舌を絡ませると、唾液が零れた。人の気配は、まだない。

雨の音を聞きながら、オレ達は展望台の中で、静かな行為に耽っていった。

誰も来ない。雨降ってるせいかな。でも、人が来ても良さそうなのに。

来るかもしれない。見られるかもしれない。その予感があるのに。

ゾクゾクした。その背徳感が余計に、背中から、押してくる気がして。

いかん。ダメだ。これ以上、触ったら。

でも、ミカサの汗の匂いとか。運動したての、匂いが鼻腔をくすぐって、捉えて離さない。

ミカサから発するフェロモンみたいなものにまとわりついて、オレはどんどん、自分の手を動かしていった。

ミカサ「あああっ……ん……」

声、出さない様に必死にかみ殺しているのが、かえってそそる。

手をミカサの背中の方に回して、オレは尻の方にも手をのばした。

服はまだ脱がせてないんだけどな。服の上からでも、感じ過ぎだろ。ミカサ。

ミカサの両腕がオレの背中に回ってきた。ぐっと、離さないと言わんばかりに。

固定されてしまった。オレも抜け出せない。唇が、ミカサの鎖骨に当たる。

汗が溜まっていたから吸い上げた。ちゅるっと、舌を使って舐めてみる。

塩味が少しだけした。でも、美味しいって思っちまう。

脇腹とか、擦っていたら、ブラジャーらしき感触が分かった。

外したい。ホックどこだ。服の上からでも外せないかな。

あった。これだな。あ、なんかもう、大分、緩んでいる。これは、いけるか?

ふわっと。した感じがあった。あ、今、拍子でうっかり外れたみたいだ。

ミカサが大きく息を吸い込んだ。胸の感触がより鮮明に分かった。

白いTシャツだから、下着が透けて見える。エロい。もう、ダメだ。

手をシャツの中に入れる。胸に直接触れてみる。ミカサは全然抵抗しない。

以前、「抵抗しちゃったら怪我させるかもしれない」とか言っていたのが嘘のようだ。

あれは杞憂だったんだな。今のミカサは、オレに全てを委ねている。

胸の突起を探した。あった。そこに微かに触れると、ミカサの体が大きく跳ねた。

ミカサ「あああっ……」

両足が、もじもじし始めたのが分かった。でも、足は閉じたままだ。

まだ開けなくていい。オレは完全にミカサに覆い被さって、両目を閉じた。

雨音は、まだ止まない。人の気配も来ない。誰も止めに来ない。

ドキドキする。誰かにバレるかもしれねえってのに。オレは。

中指の腹の部分で、胸の突起に、そっと触れてみたんだ。

ミカサ「はああ……ああっ」

ミカサの声がだんだん大きくなってきた。これ以上、喘がせるとまずい。

だからつい、またキスをして、声を出させないようにして、胸を触った。

何だよこれ。まずいって。こんなの、楽し過ぎるだろ。

痙攣しているのが分かる。ビクビク震えている。もっと、もっと触りたい。

胸の突起を抓ってみた。軽く、だけど。

すると、ミカサがもっと力が抜けたのが分かった。

ふにゃふにゃになっていくのが分かる。

ミカサ「え、エレン……あっ……ダメ……なんか、くる……」

エレン「え?」

ミカサ「それ以上、したら、私……ああ……あああああっ!!!」

一度、大きくバウンドしたのが分かった。え? まさか、まさか?!

ミカサがぐったりして気を失った。え? 本当に? 今の刺激で、イったのか?!

早くねえか? え? 予想していたより早い展開で、オレは困惑した。

でも一応確認して見たくて、ミカサの下着をちょいと確認させて貰う。

エレン「!」

すげえ、濡れていた。なんていうか、指にまとわりつくくらいに。糸がひいてやばい。

えっと、これって、もしかして、アレなのか。

ミカサは、リヴァイ先生の言っていた2種類のタイプの女の「クイック」側の女だっていう事で間違いないのかな。

つまり、普通の女より濡れやすい体質って事でいいのかな。

いや、そうだよな。きっとそうだ。多分、そうだ。

これだけの短い時間でイク感覚を味わったんだから、きっとそうだよな。

ミカサが起きない。気を失って、動けないでいる。

オレの息子も準備万端過ぎて困り果てているけど。

雨はまだ止まない。今、ここに避妊具がある訳じゃないし、これ以上は今日は勿論、無理だけど。

しょうがねえ。眠ってるミカサをオカズに全部一気に出してしまおう。

エレン「っていうか、オレ、ダメだろ」

親父に確認してから手出すつもりだったのに、結局、約束、破っちまったな…。

いや、まあ、今日の事は黙っていればバレないとは思うけど。

自己嫌悪に陥る。いかん。早いところ、親父に確認しないと、取り返しのつかない事をやらかしそうな気がする。

自分の息子の方の処理を済ませると、ようやく雨音が止んできた。

人の気配が復活してきた。危なかった。ミカサが速くイッたおかげで助かったけど。

もっと盛り上がっていたら登山客にモロバレしていたところだった。

ミカサ「は…!」

短い時間、気を失っていたミカサが目を覚ました。

ミカサ「わ、私は何を……(赤面)」

エレン「ごめん、ミカサ……」

ミカサ「エレン……」

エレン「こんなに一杯触るつもりはなかったんだけど、やってるうちに、加減が効かなくなってきて、つい」

ミカサ「ううん。大丈夫…それは大丈夫だけど……(赤面)」

ミカサはもじもじしながら言った。

ミカサ「下着、濡れてしまったので、着替えていいだろうか。着替えは持って来ているので」

エレン「あ、あああ……もちろんだ」

オレはミカサを見ないようにして、外の奴らに見せない様に大きなタオルを壁にしてやった。

そして下着を取り換えたミカサは言った。

ミカサ「どんどん酷くなっている……」

エレン「え?」

ミカサ「私、濡れるのが早いみたいで、すぐこうなるの。ごめんなさい……」

エレン「あ、いや…別に謝る事じゃねえよ。っていうか、立てるか?」

ミカサ「ふ、ふらふらする……」

エレン「少し休んでいくか。ごめんな。ついつい」

ミカサ「大丈夫。大丈夫……(赤面)」

と、言ってミカサは少し俯いて、

ミカサ「今日の事は、おじさんには内緒にしよう」

エレン「そうだな。内緒にしねえといけねえな」

罪悪感はあるけど。でも、やっちまったもんは仕方がねえか。

ミカサ「出来るだけ早いうちに誓約書の件を確認しよう。でないと、私もいろいろ辛い……」

と、ちょっとだけ涙ぐむミカサに、オレはよしよしと頭を撫でてやった。

そんな訳で、オレ達の初デートはその、うっかり、一歩進んでしまったけど。

オレ達にとって、そろそろ限界が近づいているのもひしひしと感じてしまった。

もう、いい加減に一つになりたいと、体が訴えているんだ。

親父が心配するのも分かるけど。でも、だからといってこのままでイイ訳がない。

そんな複雑な思いを抱えながら、オレ達はゆっくりと下山した。

苦い思いを抱えながらだけど、でも。

オレとミカサはお互いに手をしっかり握り合い、その手を離す事は決してなかったのだった。

リヴァイ×ハンジとは全く逆の状態に陥っているエレン×ミカサでした。

エレンが遂に約束破り始めちゃったよ。バレたらやばいよ!?
というところで続きます。ではまたノシ






ミカサが白衣を着ていた。ちょっと大人っぽい。

ミカサ『はい、エレン君。調子はどうですかー?』

おおお。なんか凄く子供目線で話しかけて来た。ん?

つーか、オレ、子供の姿になっている?! え? 小さくなってるぞ?!

あ、これ、夢か! 身体は子供、頭脳は大人のアレの状態になっているようだ。

エレン『はーい! 元気です!』

ミカサ『うん。じゃあ、お口開けてね』

おおおお。なんかこういうの、久々だな。あーん。

腹とか触診されてこそばゆかった。ミカサ、小児科の女医になっているのか。

いいなあ。いいなあ。似合ってる。すげえ可愛い。

デレデレしていたら、今度は別のオレが出て来た。

エレン2『ミカサ先生ー! 抱っこー!』

ミカサ『えええ?』

エレン3『オレもオレもー!』

ミカサ『んもうーわんぱくねえ』

と、言って、オレと同じ顔した小さなオレが集団にミカサ先生にタックルかまして押し倒した。

皆、好き勝手にミカサの上に乗って、キャッキャ言って遊んでいる。

あーもう。オレ、ちょっと自重しろよ。気持ち分かるけどさ。

ミカサ『あん! もう、そこは、触っちゃダメよ。あん!』

と、時々甘い声をあげてくねくねしている。

ああああ! もう一人の小さいオレ達がおっぱい揉みまくってるぞ! けしからん!

エレン2『えへへ~おっぱいもみもみ~』

エレン3『おっぱい、大きいね~ミカサ先生!』

ミカサ『こら! もう、そんなに触っちゃダメだって言ってるでしょ? あん……ああっ』

おいおい。ちょっと待て。何か、え?

こらあああ! 子供の悪戯の度合いを越えて来てるぞ!

もう一人のオレ達がどんどん増えて来て、ミカサの上に乗りかかって好き勝手に触り始めているんだ。

エレン『おい、やめろよ! ミカサ……先生、嫌がってるだろうが!』

エレン2『嫌がってないよ。気持ちいいよね? ミカサ先生』

ミカサ『い、嫌がってるのになあ…もう…(赤面)』

いや、嫌がっているように見えないのは分かるけど。こっちも照れるけど。

待て待て待て。こら、白衣脱がすな! もう一人のオレ達!!

エレン3『おっぱい吸っていい?』

エレン4『おっぱいすいたーい!』

エレン5『オレ、太もも枕にするー!』

好き勝手にやり過ぎだああああ!

あ、でも、ミカサは全然抵抗してねえ。むしろ赤くなって照れる一方だ。

ミカサ『やん……もう……ああっ……こら、んん……あああん』

服脱がされて、乳首吸われても抵抗しねえ。なんだこの夢。本当にけしからん。

小さなオレ達に両方のおっぱい吸われても、太もも枕にされても全然嫌がってねえ。

むしろどんどん、喘いで気持ち良くなっているミカサに、オレも、その、見入ってしまって。

エレン6『なんか、変なおもちゃ見つけたー(ブーン)』

エレン『?!』

それは大人のおもちゃだああああああ!!!

ダメだダメだ!! それだけはダメだああ!

エレン6『これ、どうやって使うんかな? えい! (ぐいっ)』

と、言って振動している大人のおもちゃをミカサの股につきつけて、遊び出す小さなオレ。

ミカサ『いやああああん……ダメっ……それは、ダメ……あああっ!』

子供の無邪気な悪戯で済むレベルじゃねえから!!!!

オレはおもちゃを奪ってやろうとしたんだけど、抵抗されちまった。

エレン6『なんだよーこれ、オレのだからな! 勝手にとるなよ!!』

エレン『馬鹿! そんなおもちゃで遊ぶな!』

エレン6『そんなのオレの勝手だろー?! お前、これ使いたいならちゃんとそう言えよー!』

エレン『そういうんじゃねえし!!!』

エレン2『あ、パンツ濡れてる。おもらししているみたいだー』

エレン3『脱がせてやろうぜー』

うわあああああ!! ちょっと、お前ら、暴走すんなあああ!

どっちを止めればいいか分からなくなり、混乱していると、

エレン6『よいしょ(ブーン)』

小さなオレがおもちゃを股に直接当てて振動させ始めたもんだから、ミカサがどんどん、喘いじまって。

ミカサ『やあ…だめ……そこは、らめえええええええ!!!!』





エレン「うあああああああああああああああああ?!」






目が覚めて絶叫した。朝、だった。

エレン「はあはあはあ……」

夢で良かった。つか、何なんだ今の夢は。

いやらしい夢の中でも、特にエロかった。いやもう、本当に。

エレン「いい夢なのか悪い夢なのか判断つかねえ」

小児科女医のミカサは可愛かったけどな。でも、アレはエロ過ぎた。

ミカサは小児科だけはいかないように説得しよう。エロガキにまとわりつかれたら、あいつ、本当に抵抗出来ない気がする。

とりあえず顔洗おう。今日は午後から演劇部の部活動の予定が入ってるしな。

時間は……ああ、もう午前11時か。結構寝倒していたんだな。

昼飯食って、準備して学校に行くと、いつものメンバーが大体音楽室に揃っていた。

あれ? でも、珍しくペトラ先輩が音楽室に来ている。

なんかすげえ落ち込んでいるな。体育座りで隅っこにいるけど。

エレン「ペトラ先輩、どうしたんですか?」

ペトラ「!」

ジャン「馬鹿! そっとしとけ!!」

エレン「え?」

ペトラ「うああああああ! (*壁を額にエンドレス殴打)」

エレン「?!」

なんだ?! 急に暴れ出したぞ?!

壊れたおもちゃみたいな動きしているな。

アルミン「あーあ。折角、一回収まったのに。今、ノゲノラのステフ状態なのに」

エレン「は? なんだそれ」

アルミン「ええっとね。詳しい事情は、エルド先輩から聞いて」

と、視線を動かすと、ちゃかりエルド先輩も遊びに来ていた。

エルド「や! 久しぶり。すまんね。最近、こっち来れなくて」

エレン「いや、もう受験生なんだから仕方ないですけど。ペトラ先輩どうしちゃったんですか?」

エルド「あー……新しい恋の兆しに混乱している真っ最中……とでも言えばいいかな」

エレン「誰かに告白でもされたんですか?」

エルド「そんな生易しいものじゃないよ。………オルオとうっかりベロチューやっちゃったんだって」

エレン「え?」

ミカサ「え?」

さすがのミカサも一緒に驚いてしまった。

エレン「何がどうなってそうなったんですか? え? キスしちゃったんですか?」

エルド「ああ、まあ……事故チューに近いんだろうけどな。なんか、雰囲気に流されちゃったんだって」

ミカサ「雰囲気に流された程度で、ベロチューは普通しないのでは?」

エルド「まあ、そうなんだけどな。そこはほら、ペトラは「事故チュー」に処理したいみたいだからそう言ってみただけだ」

エレン「えええ……」

一体、何がどうなっているんだ?

ペトラ先輩はある程度、額を壁にぶつけた後、また体育座りをして落ち込んだ。

ペトラ「違うの。オルオとキスしたのは、そういうつもりじゃなくて、その……あいつが急に優しくしてきたもんだから、つい、その、なんか嬉しかっただけで、そういうつもりは全くなくて、っていうか、何であの時、私、抵抗しなかったの? オルオを受け入れちゃったの? オルオの事は嫌いじゃないけど、リヴァイ先生の件が終わった直後にこれって、おかしくない? 私、尻軽過ぎない? っていうか、私の想いってそんなに簡単に変わるようなものだったの? 私、ずっとずっとリヴァイ先生の事が好きだったのに、何でオルオとキスしちゃったの? うわああああああああ?!」

ダメだアレ。なんかもう、完全に壊れているぞ。

ブツブツブツブツ言い続けて自分の感情を吐き出しているけど。

ちょっと怖いくらいにおかしな状態になっている。

あれは今、下手に触らない方が良さそうだな。

エレン「ええっと、とりあえず、大体のあらすじを教えて貰えませんかね?」

エルド「あー。ペトラがハンジ先生、ぶった時の事は覚えているよね?」

エレン「まあ、現場見てましたしね」

エルド「んで、その後も、ちょっと1組の女子の間でゴタゴタがあったみたいでね。ペトラ、クラスで完全に孤立しちゃったみたいなんだよ。まあ、元々ペトラはちょっと浮いているところあるんだけどな。ますますそれが酷くなっちゃって。一人ぼっちで意地張っているところに、オルオが「お前がどれだけ周りに嫌われようが、オレはずっとお前の味方だからな」って言ったらしくてね。それにちょっと、絆されちゃったみたいで。オルオが、宥めていたら、ペトラ、ちょっと泣いちゃったみたいで。それで、グラッと。お互いに、その……ってやつ」

エレン「へーいい話じゃないですか。それの何が悪いんですかね?」

エルド「いや、本人的にはそこまでお互いの距離が近づくなんて思っていなかったみたいでね。ただ、体が自然にそう動いちゃった感じだから、お互いに混乱の真っ最中って感じだ。オルオの方はグンタが宥めているよ」

ミカサ「なるほど…」

そうなのか。でも、かえって良かったんじゃねえか?

オルオ先輩、ペトラ先輩の事、好きみたいだったし、こっちもくっついちまえばいいのに。

でも、ペトラ先輩はそれを受け入れられないようで、

ペトラ「っていうか、初めてだったのよ?! 何で初キスをオルオにあげちゃったの私?! もういっそ、途中で舌を噛み切ってやれば良かった! あいつの舌、中に入って来たし! あの時、噛んでやれば良かったのに、何でそれをしなかったの?! っていうか、何で意外と気持ちいいとか思ったの?! あいつ、そういうの手慣れてたの?! 女たらしだったの?! あいつ、彼女とかいたっけ?! そんな話、聞いたことないんですけど?! もしそうだとしたら、私は何人目なわけ?! あああああああ?!」

うわああ。ペトラ先輩、ダメ過ぎる。

ペトラ先輩って元々、カッカすると口悪いから、言っちゃいけないところまでつい漏らしちゃうタイプだけどさ。

心がダダ漏れ過ぎて可哀想だ。どうにかならんのかな。アレ。

ミカサ「…………何故か既視感を覚える」

エレン「え?」

ミカサ「まるで、リヴァイ先生とハンジ先生のよう」

エレン「ああ、そうかもな」

ミカサ(こくり)

キスしても、すぐには認められないんだろう。何かと理由をつけて暫くはお互いに認めなさそうだ。

オレ達は短距離ランナーカップルだけど、オルオ先輩達はまさしく、リヴァイ先生達に近いカップルのような気がする。

第二の長距離ランナーカップルが誕生するのかな。くくくっ。

エルド「ペトラ。その辺にしておけよ。皆、困ってるぞ」

ペトラ「は! そうね。ごめんなさい……」

やっと我に返ったのか、ペトラ先輩が顔色を戻した。

ペトラ「ええっと、今日は皆に、お願いがあって来たのよ」

アルミン「お願いですか?」

ペトラ「そう。リヴァイ先生の結婚式についてなんだけど。もともと、その時期って、演劇部では「冬公演」という形で自主公演を行っていたのね。でも、今年はリヴァイ先生の結婚式と日程が重なるから、いっそ結婚式で劇をやって貰えたらなって、思ったのよ」

マーガレット「まーその方がいいですよね。体育館でやるなら、ホール押さえる金も浮きますしね」

ペトラ「うん。私達3年も、手伝えることがあれば出来るだけ手伝うわ。準備期間は短いけど、文化祭のような大掛かりな劇じゃなくていいから、公演を行ってほしいのよ」

と、あくまで「お願い」という姿勢でペトラ先輩が言った。

ジャン「結婚式で演劇ですか。珍しいですけど、オレ達らしくていいかもしれないですね」

アルミン「準備期間は、文化祭の時よりかえって余裕あるかもね。今回はクラスの出し物の負担がないわけだし」

ペトラ「あ、それもそうね。確かに冬公演の方が、ゆっくり準備出来るか。でも、あまり尺を取る劇じゃない方がいいと思うけどね。何か、こういうのやってみたいっていうのないかしら?」

エレン「ん~」

結婚式に相応しい劇、かあ。

なんかこう、皆で楽しめるようなのがいいよな。きっと。

ミカサ「恋愛物をまた、やる、とか?」

エレン「あ、やるんだったら、ラブコメの方がいいんじゃないか? コメディ要素を入れようぜ」

ミカサ「なるほど。その方が新鮮でいいかもしれない」

アルミン「ラブコメかあ……」

アニ「ん? アルミン、何かアイデアがあるの?」

アルミン「いや、そういうジャンルなら、僕、割と好きだから、脚本やってもいいかなって」

アニ「いいの?」

アルミン「前回は準備期間があまりに短かったからね。いきなりやる自信はなかったけど、今回は準備する時間もあるし、頑張れば何とかなるかな。エルヴィン先生に台本の書き方を習いながらやれば、だけど」

アニ「いいと思うよ。というより、台本書ける子も育っていかないと、エルヴィン先生ばっかりに負担かける訳にはいかないよ」

アルミン「それもそうだね。うん。ちょっとずつだけど、僕も頑張ってみるよ」

という訳で、オレ達は次の「冬公演(リヴァイ先生の結婚式)」に向けての新しいスタートを切った。

ペトラ先輩は、まだ「うあああああ?!」と時々唐突に叫んでは凹んでいたけれど。

ま、そのうち時間が解決するだろ。自然となるようになる。

そう思いながら、オレとミカサは一緒に苦笑を浮かべていたのだった。

そんな訳でオルオ×ペトラも発進しました。カップル誕生(?)かな。
とりあえずここまで。続きはまたノシ










11月4日。火曜日。火曜日の1限目は世界史のエルヴィン先生なので、アルミンが授業後、台本について相談していた。

すると、エルヴィン先生は「いいアイデアだねー」とニコニコしていた。

エルヴィン「だったらいっそ、リヴァイとハンジの物語を劇にしちゃおうか」

アルミン「え? いいんですか?」

エルヴィン「あの2人の馴れ初めそのものが既に「ラブコメ」だからね。本人達は恥ずかしがるだろうけど、自分達を一度、客観的に見て、どれだけアホな事やっていたのか自覚させた方がいいと思うよ?」

エルヴィン先生、超悪い顔している。過去最高の悪い顔だ。

アルミン「では、エルヴィン先生の知っているエピソードを基に話を考えていけばいいですね」

エルヴィン「取材なら私だけでなく、他の先生達の話も聞いていいと思うよ。きっと皆、喜んで協力してくれると思うな」

アルミン「分かりました。ではその方針で固めてみたいと思います」

という訳でアルミンもエルヴィン先生と同じくらい悪い顔になった。

でも、台本の内容がもしリヴァイ先生にバレたらどうするんだろ?

エレン「練習風景、見せないようにしねえとリヴァイ先生にバレるかもな」

アルミン「あーそうだね。出来るだけこそこそ練習やろうか」

エレン「あと、問題はリヴァイ先生役を誰がやるか、だな……」

アルミン「ハンジ先生は、エレンがやったら? 身長近いし、髪も今なら長いから丁度いいし、エレンなら出来そうじゃない?」

エレン「ああ、まあ、やってもいいけどさ。女役って言っても、ハンジ先生は中性的だからやり易いだろうしな」

たまに男みたいな仕草しているしな。ハンジ先生自身が。

アルミン「んー身長で言うと僕かアニになっちゃうけど、アニは元々、舞台に出るのが苦手だし……でも僕はちょっとリヴァイ先生とはイメージ違うし」

エレン「んーま、後で決めるか。その辺は。台本出来てから煮詰めようぜ」

アルミン「そうだね。そうしようか」

という訳で、大体の方針が固まったのでとりあえず安心だな。

そして次の授業は日本史だった。ナイル先生の授業だった。

アルミンは早速、授業後に取材を開始していた。ナイル先生は「ふん」と笑っていた。

ナイル「ああ……あの2人は最初からいろいろとアレだったな」

アルミン「アレとは?」

ナイル「ある意味伝説の教師達だよ。入学式に滑り込みセーフでヘリコプターを使って登校してくるわ、窓から教室に入ってくるわ……常識という物がないのかってくらい、破天荒なことばかりやらかしていたよ」

エレン「あ、窓から教室に入っていたってのは本当だったんですね」

OBの人達が笑っていたアレだ。

ナイル「ああ。いくら身体能力があるからって、スタントマンじゃないんだから。流石にやめろと私が怒鳴ってやったよ。遅刻しそうになったのは、ハンジ先生の髪を朝から無理やり洗っていたからだ、と言い訳していたが……あの頃からリヴァイ先生自身、ちょっとアレだったな」

と、遠い目をするナイル先生だった。

ナイル「確かにハンジ先生は最初からその、ちょっと臭い先生ではあったし、社会人として、清潔にしていないのを我慢出来ない気持ちも分からんでもないが……リヴァイ先生がそれを改善させる理由なんてどこにもないんだがな。普通は放っておく問題だ」

放っておけなかったからこそ、愛情があった証拠なんだろうな。

ナイル「ま、話せるのはそれくらいだな。他のエピソードは他の先生達から聞きなさい」

アルミン「はい。ありがとうございました」

という訳で1個目のエピソードをGETしたのだった。

次は数学のディータ・ネス先生だ。実はディータ先生はもう一人いらっしゃるので、数学の先生の方は皆、「ネス」先生呼びだったりする。

ネス「ああ。リヴァイ先生とハンジ先生の馴れ初めね。再現劇やっちゃうのか」

アルミン「まあそうですね。その方が面白いかと思って」

ネス「ふふふ……だったら、あのエピソードは外せないな」

アルミン「とっておきの話があるんですか?」

ネス「あるぞ。臨海学校のエピソードだけど。学校主催の、生徒達は2年次に毎年行っている物なんだけど。その時の引率だったリヴァイ先生とハンジ先生がね、もうそりゃあ凄かった」

と、懐かしむようにネス先生は言った。

ネス「生徒の一人が、海で溺れていたんだ。それを真っ先にハンジ先生が助けに行った。でも、助けに行ったハンジ先生の方も、流されて溺れてしまったんだ。リヴァイ先生がミサイル並みの速さで追いかけて、生徒とハンジ先生を両方、助けたんだよ」

アルミン「へー。スーパーマンみたいですね」

ネス「2人いっぺんに助けるくらいだからな。でも、その後も凄かったぞ。ハンジ先生、呼吸していなかったし、リヴァイ先生、迷わず人工呼吸をやって蘇生させたんだよ」

アルミン「ヒューヒュー♪」

エレン「生徒の方は助かったんですか?」

ネス「勿論。生徒の方は別の先生が蘇生して、すぐに助けられたけど。その時、リヴァイ先生、迷わずハンジ先生の方を先に人工呼吸し始めたからな。本当は、生徒を先にするべきところなのに。あの時ばかりはハンジ先生を優先したんだよ」

アルミン「まあ、それは当然ですよね。その時は他の引率の先生、いたんでしょう?」

ネス「まあな。でも、あの時のリヴァイ先生、すっごい必死だった。もうあの頃からきっと、ハンジ先生の事、好きだったんだろうな」

アルミン「なるほど……いいエピソードが聞けました。ありがとうございます」

ネス「もういいのかな? ま、一人1個ずつ聞いていけば、結構集まると思うぞ」

という訳で、次は昼休みを挟んで古典のキッツ先生だ。

キッツ「ふん……あの馬鹿夫婦の事なんぞ、話す事はない。見たままを演じればいいだろう」

アルミン「そこを何とかお願いします。出来るだけ古いエピソードが欲しいので」

キッツ「古いエピソード………では、あいつらがまだ着任して間もない頃の話が聞きたいのか?」

アルミン「出来れば是非」

キッツ「ふん……教師になりたての頃のあやつらは、本当にいろいろとふざけておったぞ。学校で生徒達と夏休みにこっそり花火をしおってな。ぼや騒ぎを起こして大目玉食らっていた事もある。ハンジ先生は『化学実験の補習です!』と嘘ばっかり言っておったが、さすがに事が露見した時は2人とも、始末書を書かされていたよ」

えええええ。花火事件の主犯格ってリヴァイ先生とハンジ先生だったのかよ!!

キッツ「クビにならなかっただけでも有難い話だというのに。それでもあの2人は反省の色がなかったな。『自分達が学生の頃はOKだったのに…』とかなんとかブツクサ言っていたが。常識を知らなすぎる2人だったな」

と、嫌そうな表情でキッツ先生もまたエピソードを残してくれた。

エレン「リヴァイ先生が元ヤンだったっていうのは、本当みたいだな」

アルミン「あーなんか、その辺の悪い事はセーフみたいな感じだね」

リヴァイ先生のその辺の線引きが面白いな。18禁はダメだけど、花火はOKなのか。

そして音楽の授業のダリス先生にも話を聞いてみた。キッツ先生と似たような苦い反応だった。

ダリス「そうだな。あの2人は着任した年からずっと、じゃれあっているような関係だった」

アルミン「具体的には?」

ダリス「リヴァイ先生は、今は体操部の顧問をやっておられるが、最初の頃は柔道部の顧問をやっていたんだ。その時、技を見せる時に、ハンジ先生を連れて来て、生徒に寝技の講習なども行っていたよ」

アルミン「という事は、リヴァイ先生は柔道の師範の免許も持っておられるんですか」

ダリス「柔道だけではない。剣道も空手も有段者だ。大学時代にその手の格闘系の資格を全部取りつくしたと言っていたので、着任した当時はそっちの指導に明け暮れていたよ。ハンジ自身も、空手の有段者の筈だから、身体能力はあるが、毎回モデルにしていたのは、今思うとわざととしか思えないな」

アルミン「ですよねー(棒読み)」

ダリス「リヴァイ先生も不器用な先生だからな。理由がないと、ハンジ先生に触れなかったんだろう。ま、同じ男としてその気持ちは分からなくもないが」

アルミン「なるほど。貴重なお話、ありがとうございました」

と、いう訳で今日のところはこんなもんかな。

だんだん面白いエピソードが集まってきてニヤニヤしてきた。

でも、これだけ濃密なエピソードだと、リヴァイ先生役をやる奴と、オレの絡み、相当多くなるよな。

アルミン「んーいっそさ、リヴァイ先生役はミカサにやってもらった方がよくないかな」

エレン「え?」

アルミン「だって、結構アクロバティックなシーンと、濃厚なラブシーン、やる事になりそうだよ? ミカサ以外、無理じゃないかな」

エレン「あー」

まあ、人工呼吸とか、そういうシーンもやるならそうなるか。

エレン「打診、してみるか。今のミカサなら、舞台も大分慣れたみたいだし。やってくれるかもな」

という訳で、その件をミカサにも話してみると、

ミカサ「え、エレンとキスシーン、やるの…? (ドキドキ)」

エレン「人工呼吸のシーンとか入れるみたいだぞ。やるとすれば、オレ達でやるしかないような気もするんだが」

ミカサ「了解した。あのクソちびを演じて見せよう(キリッ)」

あ、意外とやる気満々だった。ちょっと意外だな。

エレン「いいのか? ミカサはリヴァイ先生、嫌いなのに」

ミカサ「嫌いだからこそ、演じてやる。リヴァイ先生をとことん恥ずかしがらせられると思うと……ククク……」

嫌がらせするつもりなのか。ああ、なるほどな。

エレン「分かった。じゃあ、その方向で皆とも話していこうか。今回は、メインのキャスティングオーディションは無しでも良さそうだな」

アルミン「うん。皆、賛同してくれると思うよ。むしろ君達以外では出来ないと思うし」

という訳で徐々に方針が固まって来た。

そして演劇部のメンバーもアルミンの提案に同意して貰えたのでこれで心配はいらない。

後はエピソードをどんどん集めていけばいいな。

11月5日。水曜日。1限目は数学でネス先生だったけど、もう聞いたので、次は2限目の公民のゲルガー先生に話を聞いた。

ゲルガー「あー2人のエピソードか。うーん。いろいろあり過ぎて何から話せばいいんだろうな?」

アルミン「とりあえず、1個思いつくものがあれば是非」

ゲルガー「だったら、酒飲み比べ大会の時の話がいいかもしれない」

アルミン「酒飲み比べ大会?」

ゲルガー「まあ、職員同士で飲み会をやる時もあるんだが、その時、誰が一番飲めるか競い合った事もあるんだ。ちなみにその時の優勝者はエルヴィン先生。準優勝はピクシス先生だったけど。3位はハンジ先生だったんだ」

アルミン「その辺のメンバーはお酒強そうなイメージですもんね」

ゲルガー「エルヴィン先生、すごいザルだからな。俺も飲める方ではあるんだが、エルヴィン先生には勝てないよ。で、其の時、俺、初めて泥酔したリヴァイ先生を見たんだけど……」

そう言えば、泥酔させると面白いみたいな事言ってたな。エルヴィン先生。

ゲルガー「なんかもう、リヴァイ先生、20杯が限界値だったみたいでな。それを越えた途端、豹変して、ハンジ先生に濃厚に絡むようになってしまってな。こう、くっついて離れなくなっちまって。子供かってくらいに。これはまずいって事になって、慌ててハンジ先生が蹴り入れて気絶させていたけど。エルヴィン先生曰く、『泥酔すると本性が出るよwww』って事らしいから、多分、そういう事だったんだろうな」

なるほど。エルヴィン先生がニタニタしていた理由ってそういう事だったのか。

もしかしたら、賭けをしていた時に言っていた「根拠」っていうのはコレの事だったのかもしれない。

つまりエルヴィン先生は昔から知っていたんだ。

リヴァイ先生の潜在意識の中に「ハンジ先生」が深く眠って居た事を。

だから、100万賭けても平気な顔していたんだな。納得したぜ。

ゲルガー「ま、其の時の大会は4位がリヴァイ先生で5位が俺だったんだが。上位3人の容量は桁違いだったな。酒強すぎて羨ましいくらいだよ」

アルミン「なるほど。いいお話が聞けました。ありがとうございます」

ゲルガー「いやいや。この程度の事なら大したことねえよ」

と、ゲルガー先生も苦笑をしていたのだった。

3限目は地学だ。モブリット先生の担当だけど。

さすがにモブリット先生に問いただすのは酷なので、スルーしようとも思ったんだけど。

なんていうか、キノコが生えているのかってくらい、ずっとじめじめしていたから、つい、声をかけちまった。

エレン「あの……モブリット先生、大丈夫ですか?」

モブリット「あははは……大丈夫だよ。うん。全然、大丈夫だから(げっそり)」

エレン「ご飯、食べてますか? とりあえず、寝てますか?」

モブリット「うん。3日に1回はちゃんとご飯食べているから大丈夫……」

うわあ。それは大丈夫な状態ではないな。

エレン「…………」

そっとしておくしかないのかな。まあ、目の前で好きな人が結婚宣言したら、憔悴してもしょうがねえか。

エレン「あの、モブリット先生」

モブリット「なんだい? (げっそり)」

エレン「その、モブリット先生から見て、ハンジ先生って、どこが魅力的だったんですかね」

モブリット「んー」

ふと疑問に思ったから聞いてみたんだけど、モブリット先生は意外とあっさり答えてくれた。

モブリット「優しいところ、に尽きるかな。ハンジ先生にどれだけ助けられたか分からないよ」

と、言っていた。

モブリット「教師として着任して間もない頃、仕事を捌けなくてアプアプしていた時とかに、ハンジ先生は必ず『大丈夫ー? 手伝おうかー?』とか、『飲み物いるー?』とか『元気出してね! ファイト!』って言ってムードを作ってくれたと言うか。職員の中では皆のムードメイカー的存在だったんだ」

あ、リヴァイ先生と同じ事言ってる。

やっぱり、そういう部分って、惹かれるものなのか。

モブリット「実際、どうしようもない時に何度か仕事を手伝ってくれた事もあったしね。女性なのに男性より仕事を捌くの早いんだ。その上、明るくて、可愛くて、笑っていて。年上だって事を忘れそうになるくらい、チャーミングな女性だと思ったよ。たまにドジやるところも可愛かった。ああああああ…(ズーン)」

しまった。いろいろ思い出して落ち込ませてしまったようだ。

エレン「すんません。思い出させて」

モブリット「いや、いいよ。時間が解決してくれるのを待つしかないね。こればっかりは……」

という訳で、モブリット先生は背中を丸めながら教室を出て行った。

4限目は生物だ。ハンジ先生、今日は何か凄く綺麗だな。

格好はいつもの白衣だけど。髪型がちょっと違う?

こう、くるんとねじって頭を盛っている。着物を着る時の髪型に近い。

アニ「今日も髪型違いますね。ハンジ先生」

ハンジ「ん? ああ……なんか、最近、リヴァイがヘアメイクにはまっちゃってねー。私の髪で遊ぶようになっちゃったんだー。毎日、いろいろやってくれるよ。これもその試作品だね」

と、照れ臭そうだった。

そして自分の顔を指さして、ハンジ先生はちょっと自慢げに言った。

ハンジ「実はこのメイクもあいつに全て任せちゃってるんだ。もう完全に『全自動リヴァイ』って感じ? いやーあいつと付き合う事がこんなに楽チンだとは思わなかったね。今までもいろいろ頼っていたけれど、今はもう、あいつ無しじゃ生きていけないくらい、楽な生活を送らせて貰っているよ。もう、本当にどうしようwww」

むしろそれが狙いなのでは? とも思ったけど、まあいいや。

ハンジ先生も実は惚気たいんだろう。顔にそう描いてある。

そんな感じで幸せ新婚気分のハンジ先生の授業が終わると、午後の5時限目は英語の授業になった。

修業が終わってからアルミンがキース先生にも取材していた。

キース先生もまた、苦笑を浮かべている。

キース「あー再現劇をやるのか。ふん……今更な気もするがな」

アルミン「昔からずっとあんな調子だったから、ですか?」

キース「それもあるが、職員の中ではあの2人の掛け合い夫婦漫才は有名だったからな。もう見慣れたというか、今更再現劇を見ても「懐かしいな」としか思わないと思うぞ」

アルミン「いや、そこを再現して、2人を冷やかすのが目的なので」

キース「ふん……まあ、それならいいが。そうだな。ハンジとリヴァイの職員の席は隣同士だから、朝や放課後の職員会議で居眠りするハンジにいつも、リヴァイが足を踏んだり、脇腹つついたりして起こしていたりしていたな」

ぷぷぷ。ありそうな話だな。

キース「それでも起きない時は、髪の毛引っ張ったり、耳引っ張ったり。だんだん過激になって、一回間違えて胸をつついてしまって、ハンジが「んにゃああ?!」と奇声をあげた事もあったな。あの時のリヴァイの顔は傑作だった。胸をつつくつもりはなかったらしいが、脇腹狙ったらしいが、逸れて間違えて触ってしまったそうだ。職員室は一瞬でざわめいたよ」

リヴァイ先生、それ、わざとやってないよな?

事故に見せかけたイチャイチャのように思えなくもない。

キース「勿論、すぐさま『すまない』と謝っていたけどな。あの時のリヴァイの困惑顔は今思い出しても笑えるな」

とまあ、キース先生は「ククク」と笑っていた。

そして6限目は美術。ピクシス先生にも話を聞いてみる事にした。

ピクシス「エルヴィン先生から話は既に聞いている。再現劇をやるんじゃろう?」

アルミン「はい。今、取材をしている最中です」

ピクシス「話したい事は山ほどあるがのう。どのエピソードを暴露しようかのう…(ニタニタ)」

と、手をわきわきしてうずうずするピクシス先生だった。

アルミン「あの、ゲルガー先生から聞いたんですけど、リヴァイ先生って泥酔すると本性が出るって、聞いたんですけど」

ピクシス「そうじゃの。20杯を越えると、豹変するぞ。あやつは」

アルミン「その辺のエピソードをもう少しお聞きしたいんですが」

ピクシス「よいぞ。リヴァイは泥酔すると、必ず「ある女」について話してばかりおった」

アルミン「ある女……ハンジ先生ではないんですか?」

ピクシス「まあ、最後まで聞け。その女とは、教育実習生時代に会っていた同期の教習生でな。自分がトラブルを起こした時に、間に入って助けて貰ったそうなんじゃが、其の時に名前や連絡先を聞きそびれて、実習期間を終えてしまったそうなんじゃ」

ああ、そういえばモブリット先生とハンジ先生とリヴァイ先生の3人が揃って学生食堂に居た時にその話はしていたな。

ピクシス「いつか礼を言わねば……そう思い続けているうちに、その女に密かな恋心を持つ自分に気づいたそうでな。ずっと「もう1度会いたい」とぼやいておったんじゃ。………つまり、その「助けて貰った教習生」というのが、ハンジであったんじゃが、あやつ、それにずーっと気づいておらんでのう」

エレン「ああ、最近になってやっと気づいたみたいですよ。ハンジ先生と確認し合ってましたし」

ピクシス「ほほう? いつの間に。それは良かった。そういう訳じゃから、リヴァイの潜在意識の中にはずっと、その若い頃のハンジの姿が眠っておったのじゃ。あやつが何故、ハンジを捕まえて髪や体を洗おうとしていたのか、これで分かるじゃろ?」

エレン「つまり、綺麗にした姿のハンジ先生を、無意識に求めていたと?」

ピクシス「その通りじゃ。そもそも、再会した時に気づいても良さそうなもんじゃけど、あやつは馬鹿だからの。ずっとそれに気づかず、若い時のハンジに惹かれた自分からずっと逃げておったんじゃよ」

アルミン「なるほどー。もう、その時点で本当は恋に堕ちていた訳ですね」

ピクシス「酒を飲ませたら、そう白状したからの。本人は泥酔した時の記憶は毎回無いそうだが……」

と言ってニタニタしている。

ピクシス「リヴァイとハンジの教習時代の頃に会っていたわしから言わせれば、リヴァイはアホとしか言えん。そもそも、その助けて貰った時点で連絡先くらい交換しておかんのが悪いんじゃ。あやつ、自分から行くのが本当に、下手過ぎる」

エレン「え? それって、もしかして……」

ピクシス「ああ。教習時代、あやつらはこの講談高校に教育実習生として来たんじゃよ。わしはハンジの方の担当教官じゃったが……リヴァイは当時の自分の担当教官をぶん殴ったからの。あの時はわしもいろいろ大変じゃった」

と、過去を懐かしむようにそう語る。

ピクシス「殴られた方の教官は、さすがに自主退職していったがの。しかしあの時、ハンジは言っておった。「何で男のあいつが、セクハラにあそこまでキレるんだろう?」と疑問に思ったらしくてな。それからじゃ。ハンジの方からリヴァイによく話しかけておったんじゃが、リヴァイは不器用な男でな。最初は会話もうまくいかず、困惑するばかりじゃったよ。それでも実習期間が終わる頃にはやっと少し仲良くなったようでな。わしはそれを見てほっとしておったんじゃが……あやつら、本当に馬鹿じゃのう」

と、クククと笑っている。

ピクシス「リヴァイが23歳、ハンジが20歳の時じゃったな。教習時代に出会った2人が、4年後、まさか同じ職場で一緒に働き出すとは、これはもう、運命としか言えんじゃろ」

エレン「そうですね。もう、神様の采配にしか見えないです」

アルミン「あれ? ちょっと待って下さい。2人は同期なんですよね。という事は、リヴァイ先生って大学卒業してからすぐ、教員になった訳じゃないんですよね」

ピクシス「そうじゃの。年表にすると、こんな感じになる」

と、言ってピクシス先生はわざわざ2人の歴史を紙に書いてくれた。


    リヴァイ      ハンジ

17歳 高校中退    14歳 中学2年生

18歳         15歳 中学卒業&講談高校入学(担当エルヴィン)

19歳 大検受ける   16歳

20歳 大学入学    17歳

21歳 柔剣道資格取得 18歳 高校卒業&大学入学

22歳         19歳

23歳 教育実習受ける 20歳 教育実習受ける

24歳 大学卒業&就職 21歳

25歳 (土方仕事等) 22歳 大学卒業&大学院入学

26歳         23歳

27歳 教職スタート  24歳 大学院卒業&教職スタート

ピクシス「これを見ると良く分かると思うんじゃが、リヴァイとハンジはかなりの神ががり的な縁で出会ったのじゃよ。普通は3年という歳の差のズレがあれば、同じ時期に教育実習を受けること自体が難しい。それを、リヴァイは高校中退や大検等で奇跡的にズレを起こし、ハンジと同時期に教育実習を受ける事になってしまった」

エレン「確かに。これを見ると、まるでリヴァイ先生がハンジ先生に合わせたかのようですね」

アルミン「本当だ。ハンジ先生に寄せていってるみたいに見えるよ」

ピクシス「じゃろう? まあ、ここにもうひとつの神がかった縁も加えて初めて2人の運命が動き出す訳じゃが」

エレン「あ、エルヴィン先生の事ですね?」

ピクシス「そうじゃな。このリヴァイの19歳の時、エルヴィンはリヴァイと出会い、奴を召し抱える覚悟で説得したんじゃ。大学に行かせる事を」

エレン「あーやっぱり、エルヴィン先生、割とガチでそう思っていたんですかね」

ピクシス「まあ、そうじゃな。あやつは冗談では動かない奴だし。本気でリヴァイに惚れ込んでしまってな。「あいつが女だったらな…」が口癖じゃったな。しかしまあ、たとえ同性だろうがそれだけ惚れ込める相手に出会えた事は、幸せな事じゃ。リヴァイはエルヴィンの人生を大きく変えたんじゃよ。あやつ自身も、教職を続けるべきか否か悩んでおったからな。若い頃は」

アルミン「そうだったんですか……」

ピクシス「ああ。リヴァイとの出会いがなければとっくに教職をやめて、博打打ちにでもなっていただろうとエルヴィンは昔、良く言っておった。リヴァイを教職に引きずり込んだのは、エルヴィンじゃが……エルヴィン自身、リヴァイに大きく救われたのだと思うぞ」

エレン「へー」

なんか凄いなあ。人に歴史ありって感じだぜ。

ピクシス「なのに、そこから先がグダグダでのう……折角運命が動き出すと思ってこっちはワクワクして待っておったのに、あやつら、ちーっとも先に進まんのじゃ! 1度だけ、リヴァイが30歳の年の12月に2人で旅行に行ってきた時は「遂にキター!」とぬか喜びしたもんじゃ。2人で旅行に行って、全く手出さんとか、本当にピー(自主規制)ついてんのか? と当時は思ったもんじゃよ」

アルミン「あはははは……」

エレン「まあまあ、結果オーライですよ」

ピクシス「まあ、其の時の2人の旅行のエピソードがひっそりと「種」を植え付けていたとは、わしも知らなかったからの。遅咲きの恋にはなったが、無事に花が咲いてほっとしておるよ」

と、満足げに話し終えてピクシス先生は言った。

ピクシス「少し長話をしてしまったようじゃの。あまりいっぱいエピソードを話しても、劇の中で再現するのは難しかろう。使える部分だけ拾って、あやつらを悶絶させる劇を公演してやってくれ。わしは楽しみにしておるぞ」

アルミン「はい。沢山話して頂けてありがとうございました」

という訳でピクシス先生のエピソードが一番内容が濃くて面白かった。

今日のところはここまでかな。だんだんいろいろエピソードが集まって来たな。

アルミン「うーん。尺が短い方がいいって話だったけど、これだけボリュームあると削る方が難しいよね」

エレン「だな。でも、その辺はエルヴィン先生と話し合いながら決めたらいいんじゃねえか?」

アルミン「そうだね。うん。あともうちょい頑張ってみるよ」

という訳で、その日の取材はそこまでで終わったのだった。

という訳で、
リヴァイ×ハンジをミカサ×エレンで演じるという冬公演になります。
エロシーンも少しやっちゃうかも? ぷぷぷ(笑)

ちょっと疲れたのでこの辺で。続きはまたノシ

11月6日。木曜日。1限目の世界史のエルヴィン先生が授業後に「調子はどう?」とアルミンに聞いてきた。

アルミン「はい。順調にエピソードが集まっています。ピクシス先生の話が一番濃いお話でしたけど」

エルヴィン「だろうね。ピクシス先生は私と同じくらい2人の事を気に病んでいたからね。早く2人の子供が見たくて今からうずうずしている筈だよ」

アルミン「子供……で思い出しましたが、あの、個人的に聞いてもいいですか?」

エルヴィン「ん? 何を?」

アルミン「エルヴィン先生自身が、リヴァイ先生が19歳の時に出会った時のエピソードです。リヴァイ先生に惚れ込んだ理由が気になってしまって」

エルヴィン「え? 話していいの? 引かない? 大丈夫? 私、本当にバイの人間なんだけど」

アルミン「あ、はい。それは既に知っているので大丈夫です。これはあくまで取材ですので」

エルヴィン「分かった。そういう事なら、進路指導室で話そうか。ちょっと長い話になるからね。放課後、いいかな」

アルミン「分かりました。では放課後で」

という訳でエルヴィン先生の話は一旦保留にして、次は、3限目の現国のイアン先生に話を聞いてみた。

イアン「ふむ。リヴァイ先生とハンジ先生のエピソードか。私は他の先生方に比べたら、ここに赴任してからまだ年月が浅い方だから、そう詳しく2人の事を知っている訳ではないが、前に一度、居酒屋で偶然、2人と遭遇した事があるぞ」

アルミン「へーそうなんですか。2人で飲んでいたんですか?」

イアン「みたいだな。ハンジ先生の方がかなりテンション高く酔っぱらっていてな。リヴァイ先生の方が車を出していた様子だったから、リヴァイ先生は飲んでいなかったようだが、最後はおぶって連れ帰っていたようだよ。其の時のリヴァイ先生、凄く困った顔をしていたけれど、何だか照れ臭そうだったね」

アルミン「へー何かいい事あったんですかね」

イアン「んーどうだろ? 確かあの日は9月頃だったかな。ハンジ先生、9月生まれだから、もしかしたらささやかな誕生日会でも2人でやっていたのかもしれないね」

アルミン「あ、なるほど。ハンジ先生の誕生日お祝いを2人でしていたのかもですね」

イアン「正確な日付までは覚えていなくてね。すまないね。メモしておけば良かったけど」

アルミン「いえ、十分です。恐らくそれで合っていると思いますので」

イアン「ふふ…再現劇、楽しみにしているよ」

そしてその日の6限目は再び保健体育の授業が行われた。

時間がまた、10分くらい余ってリヴァイ先生が「やれやれ」という顔になる。

リヴァイ「その期待する目つき、やめろ。第二回目の特別授業、やって欲しいのか?」

アルミン「是非お願いします! (頭擦りつけ)」

リヴァイ「全く……お前らも本当に下世話な話が好きだな」

アルミン「思春期なので(キリッ)」

リヴァイ「まあ、気持ちは分からんでもないがな。さて、今回は何の話が聞きたいんだ?」

アルミン「次は、服の上から肌を触った後の事を是非」

リヴァイ「服を脱がす時の作法か。分かった。では、そのやり方もいくつか教えてやろう」

とまた、黒板を使って説明し始めた。

リヴァイ「これはあくまで俺の自論になるが………『服は中途半端に脱がした方が面白い』だな」

アルミン「中途半端……半脱ぎの方が好みって事ですか?」

リヴァイ「基本はそうだが、それだけじゃない。脱いだ服を使えば、相手の動きを少しだけ制限する事が出来る」

ジャン「動きを制限……(ごくり)」

リヴァイ「完全に固定する訳じゃないが、女が「動きづらい」と思わせるような脱がした方をした上で、直接肌に触れていくと、相手は大抵、困った顔をする。抵抗したいけど、服を破るような激しい抵抗は出来ないし、かといって、完全に固定されている訳ではないから、自由もある。この真綿で包む様な感じが、割と好評だったのでな。俺の場合は「バンザイ」をさせた状態で、服はそれ以上脱がさないで、責める」

脱いだ服を利用するなんて、思ってもみなかった。へええええ。

リヴァイ「ズボンとかだと、尚更それがやり易いな。足首辺りを半固定した状態で触ってやると、相手は「早く全部脱がせて欲しい」という感情と「このままでいたい」感情の板挟みになるようでな。大抵、困った顔になる。暫くはその状態で焦らして遊んで、飽きた頃にやっと全裸にしてやる感じだな」

おおおお……皆、何故か小さく拍手をした。

リヴァイ「ただ、何度も言うが「せっかちな女」にこれをやると、逆にキレられるから注意しろよ。全員がこの方法を好む訳じゃない。俺が話しているのはあくまで「スロータイプ」の女に対する対処方だからな」

エレン「では、せっかちタイプの場合は、どんな感じになるんですか?」

ミカサの場合はどう考えても「せっかち」な気がするので一応聞いてみる。

リヴァイ「あー……せっかちな女、俺は勝手に「クイック」タイプと呼んでいるが、そういう女の場合は、むしろ裸からスタートした方がいいかもな」

エレン「裸から……」

リヴァイ「風呂でも先に一緒に入って、それこそ風呂場でやってもいいし、服を着ないままベッドインしてもいい。とにかく濡れるのが早い女もいるから、そういう女の場合は遠慮しなくていい。男のペースでガンガンいった方がかえって喜ばれるぞ」

エレン「へー……」

リヴァイ「ただ、クイックタイプは女でありながら、身体が男性的であるとも言える。だから結構、本番で頑張らないと満足出来ずに消化不良起こす場合もあるから、頑張れよ」

エレン「は、はあ……」

何故か応援されてしまった。ん? ジャンがこっち見てる。

ジャン「てめええ……まさかとは思うが……」

エレン「え? あ、いや、今のはあくまで参考までに聞いただけだぞ?!」

しまった。今の聞き方だとミカサが「クイック」だとばらしたようなもんか。まずい。

ジャンの目がまた真っ赤に染まり始めている。しまったな。

リヴァイ「ただ最初の頃は男側が「十分に濡れた」と勘違いする場合が殆どだから、クイックタイプのセックスは最初は絶対、お勧めしないぞ。そのやり方に付き合わされて、女性器に擦過傷を負う女も多い。所謂、擦り過ぎだな。ヒリヒリするようなやり方は後々、女側に負担をかけるから、「十分に濡れた」と判断する方法を、もう少し詳しく説明する」

と、リヴァイ先生はもう一つ、言葉を書いた。



『指が3本が簡単に入る状態になるまでは挿入は絶対するな』


リヴァイ「中指、薬指、人差し指を合わせたくらいの大きさを軽く試して入れてみて、痛がるうちは絶対、奥まで入れるな。それはまだ、準備が整っていない証拠だからな。濡れているからもう大丈夫だろうと勘違いして、一気にいく馬鹿がいるが、それは女の方が我慢しているだけだからな。以前、女に直接、愚痴られて俺も初めて知ったんだが、7割の女は、挿入時の「痛み」を我慢した状態でセックスに大抵、臨んでいるそうだ」

アルミン「それって、スロータイプの数字と合致しますね」

リヴァイ「よく気づいたな。つまり、やり方が合ってない状態であっても、女側がそれを言い出せず、痛いと思いながらも「演技」で気持ちいいふりをしてくれている場合もあるんだよ。男を傷つけない為の優しさだな。でもそれを鵜呑みにして、合ってないやり方を続ける男も多い。俺がこの事を知ったのは、俺自身がもともと、男だけど、スロー寄りのセックスが好みだった為だ。クイックタイプのセックスばかりやっていた女とやった時に「こんなの初めて!」と驚かれてな。詳しく話を聞いてみたら、そういう事だったと聞いて俺も初めは驚いたもんだ」

エレン「へー。リヴァイ先生、スローの方が好きなんですか」

リヴァイ「まあな。10代の頃はクイックが殆どだったが、20代に入ってからはスローの方の面白さに目覚めたんでな。時間はかかるが、達成感の大きさで言ったら、スローの方が断然いい」

何か思い出したのかな。今、一瞬、すげえエロい顔になったぞ。

リヴァイ「インスタントのカップ麺と、手打ち麺くらいの味の差があると言っていい。腹減っている時なら、早く食える方を優先するかもしれんが、そこはぐっと我慢して、一度、手打ち麺を食ってみろ。もうカップ麺は食えなくなるぞ。手打ち麺の深い味わいに病みつきになる」

エレン「へー」

リヴァイ「スローの方は、イク感覚を重視するセックスではないから、最終的に繋がる事を目的とはしていない。やれない時はやらなくてもいい。それくらいの楽な気持ちで臨むんだ。でも、そうやってまったりと進めた先に、女の方が徐々に、心身ともに全てを預けてくれる瞬間が必ず、くる」

心身ともに、全てを預ける瞬間、か。

リヴァイ「その瞬間の女の美しさは、言葉じゃ表現うまく出来ないな。いきなりスローでやれと言っても、10代の頃は難しいだろうから、無理には言わないが、少なくとも、セックスをする際は女側がいろいろ我慢している場合もあるという事は、男としては知っておいた方がいいぞ」

と、言いながら今度はちゃんと黒板の文字を消している。そろそろ時間だ。チャイムが鳴った。

リヴァイ「という訳で、今回の特別授業もテストには全く出ないから覚える必要性はないぞ。適当に聞き流しておけ。以上だ」

という訳で第二回目の特別授業が終わって、リヴァイ先生が教室を出ていくと、アルミンは「凄いねえ」と驚いた。

アルミン「なんか、びっくりする事ばかり聞かされたね。女の人が「演技」しているとか何とか」

エレン「ああ。演技されたら嫌だよな。嘘はついて欲しくねえけど」

その辺は男の手腕にかかっているんだろうな。俺も頑張らねえと。

そんな風に思いながら、放課後を迎え、次はエルヴィン先生の話を聞く事になった。

オレとアルミンが先に鍵を貰って進路相談室で待っていると、後からエルヴィン先生がやってきた。

お馴染みの紅茶を出してくれた。紅茶を頂きながら、エルヴィン先生の昔話を聞いてみる。

アルミン「まず、お聞きしたいのは、「何処で」リヴァイ先生と初めて遭遇したのか、です」

エルヴィン「ああ。あれは忘れもしない。リヴァイが19歳になった日の12月25日。リヴァイがゴミ捨て場に捨てられていた「子猫」を腕の中に抱いて、自分自身もゴミ捨て場に蹲っていた時の事だ……」

と、遠い記憶を呼び覚ましながらエルヴィン先生は言った。

エルヴィン「その時のリヴァイは、何だかやつれていてね。目に光がなかった。ただ、子猫を抱いて、まるで母親のように子猫を撫でていたけれど。それは子猫の為にやっているというより、自分を慰める為に撫でているように見えたよ。私はこんなクリスマスの当日に、何故こんなところで蹲っている少年がいるのか、気になってね。夜だったけど。こっちから話しかけてしまったんだよ。『一体、何をしているんだい? こんなところで。補導されるよ?』って聞いてみたら、あいつ『俺はもう19歳だ。来年になったら20歳になる。もう子供じゃねえんだよ』と言い返してきてびっくりしたよ。とてもそんな年齢に見えなかったからね。中学生くらいにしか見えなかったんだ。当時のリヴァイは」

ああ、今も十分若いもんな。30歳でも通りそうな外見しているもんな。

その頃からそんな感じだったんだろうな。きっと。

エルヴィン「何か事情があるんだろうか、とも思ったが、一応、『保護者の方はいないのか?』と聞いてみたんだ。そしたらリヴァイは『初めからいねえよ。俺はいつも一人だった』と、言ってね。恐らく孤児だったのかな。リヴァイには血の繋がりのある人間がいないようだった。だからか、少し他人に対して壁があるようにも見えたけど。私は一応、当時、教職に身を置いていたし、このまま見過ごすのも悪いかなとも思って、どうしようかなって暫く考えていたんだが……」

そしてその直後、エルヴィン先生は笑った。

エルヴィン「あいつ、その後に『この子猫、あんたが飼ってやってくれないか? 俺はこいつを助けてやれない』と言ってきてね。私は犬猫を飼う趣味はなかったから、困ってね。『それは無理だよ』ってすぐ答えたら、『そうか……』と言って残念そうに俯いてね。そして『俺にまともに就職する能力があれば、こいつを養ってやれるんだがな……』と、自分に対する憤りを漏らしてね。その瞬間、私は今まで経験したことのない『何か』が降りて来たのを感じたんだ」

エルヴィン先生が少し興奮しているのが分かった。頬が少しだけ赤く染まっている。

エルヴィン「私はリヴァイに聞いたんだ。『就職していないのか?』って。そしたら『高校中退したような奴は、どこもまともに雇ってくれない。運よく採用されても、トラブル起こしてすぐクビになる。所持金も、残りわずかだ。あと一か月、これだけで生き延びられたら奇跡だな』と言って出した金は1000円札1枚だけだった」

アルミン「そんな極貧状態に追い込まれていたんですか…」

エルヴィン「世の中は厳しいよ。確かに高校を中退したような奴に対しては、風当りが厳しい。そんなもんだよ。世の中は」

エレン「…………」

エルヴィン「その当時のリヴァイは言ったよ。『こうなったらもう、生きる為にヤクザにでもなるか』ってね。私は慌てて止めたよ。『ヤクザなんて、やめておけ』って。そしたらあいつ、『だったら、他にどうすればいいんだ? あんた、他に生きる方法を知っているのか?』ってね。私は即答出来ない自分に気づいたよ。確かにヤクザなんてなるもんじゃないけど、だけど、それ以外の進路を提示して、彼が人間らしく生きられる方法を思いつかなかった。教職についているというのに、答えが何も思い浮かばない自分に気づいてね。自分に愕然としてしまったんだよ」

アルミン「いや、それはエルヴィン先生だけじゃないですよ。きっと、他の人だってそんな事を急に訊かれても、即答なんて出来ないですよ」

エルヴィン「アルミン。ありがとう。確かにその通りだと思うよ。でも当時の私は、その事がショックでね。所謂、綺麗事の中で生きていた自分に気づいて、凄くそんな自分が嫌に思えたんだ」

と言って、エルヴィン先生は続けた。

エルヴィン「でもその後すぐにリヴァイは『すまん。あんたに聞くような事じゃなかったな』と言って立ち去ろうとしてね。私はその瞬間、リヴァイが本当に死地に赴く軍人のように思えて、思わず奴の手を握ってその足取りを止めてしまったんだ」

エレン「………」

エルヴィン「リヴァイは怪訝な顔をしていたよ。『子猫、引き取ってくれるのか?』って言ったけど、私は『いや、引き取るのは君自身だ』と何故か、即答してしまってね。リヴァイは『は?』って顔をしていたけど。もう、私も勢いで言ってしまったんだ。『子猫ごと、君を引き取ろう。うちに来い』って言って、殆ど無理やり、奴を家に連れ帰った。リヴァイはパニック状態に陥っていたよ。訳も分からず、拉致られたようなものだからね。でも私もその時、何故か『天啓』のような物が降りて来たのを感じてね。いや、正直、大人としてやってはいけない事なんだろうけど、とりあえず、子猫はうちのマンションで飼う事にしたし、リヴァイには無理やり飯を食わせた。あいつも腹は減っていたから、渋々食ってくれたけど。そこからだな。私は何とかリヴァイを口説き落として、教員用の自分のマンションでの同居生活をさせる事にしたんだ」

うおおおい。本当にこの先生、リヴァイ先生、拉致っていたんか!

「監禁」はしてねえけど。「拉致」はやっていたのか。いろいろ危ない先生だな。

エルヴィン「当時のリヴァイは大分、混乱していたよ。何でいきなり連れて来られたのか分からずにいたからね。だから最初は『俺は言っておくけど、男に抱かれる趣味はねえからな? 手出したら、殺すぞ』と言ってきてね。思わず、ドキッとした自分もいたけど、その当時はまだそこまで自分の気持ちに気づいていなくてね。一応『そういうのじゃないよ』とは言ったけど。最初は信じて貰えなかったね」

そりゃそうだな。オレでも同じ事思うな。

エルヴィン「私はとにかく、彼に合うと思われる適性を探したかった。だからまずは何かを彼にやらせてみる必要性があった。そして彼の事を調べていくうちに、彼は私が講談高校に着任する前年に講談高校を中退している事が分かった。すれ違っていたんだよ。その事を凄く憤る自分もいたけれど、でも、ゴミ捨て場でリヴァイを拾えた自分の幸運にも感謝した。私はとにかく掴んだチャンスを活かしたくて、まずは私の趣味のひとつであった、演劇に携わらせてみたんだ」

エレン「それがリヴァイ先生の初めての「裏方」だったんですね」

エルヴィン「そうだよ。当時の私は裏方のリヴァイを注意深く観察したよ。彼は体力もあったし、呑み込みも早かった。頭も悪くない。協調性は少し欠けるけど、でも、不器用だけど真面目で誠実だった。地味な作業も苦にならないようだし、根気強さも持っている。これだけの有能な人材なのに、何故トラブルばかり起こしてクビになるのか。最初は分からなかったけど、後でそれが分かったよ。リヴァイは「魅力的過ぎる」からだって」

エレン「え?」

エルヴィン「所謂、痴情の縺れによる人間関係の方のトラブルが起きるんだよ。好かれ過ぎて、劇団員の女性メンバーがどんどんリヴァイに堕ちていった。リヴァイの方から手を出している訳じゃないのに。なんだろうね? そういうフェロモンでも出ているのかな。とにかく、リヴァイはいろいろ面倒事に巻き込まれる気質があるようで、その度に、男と喧嘩したり、チーフとも口論したり。その時のリヴァイは一か月程度で『もう辞める!』と根をあげちゃったけど。でも、それで大体の原因は分かったから、後はそれを改善すれば何とかなると思ったんだが……」

エルヴィン先生が紅茶を飲んで一息ついた。

エルヴィン「よく考えたらそんなの、改善の仕様がないって気が付いたよ。だって『人に好かれ過ぎる』なんて、どうやって改善するんだ? って思ってね。リヴァイの場合は特別、イケメンって顔じゃないのに、そんな状態になるって事は、やっぱりそれはもう、あいつの「気質」がそうさせているとしか思えなかった。だから、私も当時は頭を悩ませたよ。いっそアイドルでもやらせた方がいいのかなって思ったけど。そんなのをやらせたら、ストーカー被害に遭うのは目に見えていたし、危ないからやらせられないよね」

エレン「まーその通りですよねー」

教師になってもその吸引力は健在だ。芸能人だったらもっと酷い事になっていただろうな。

エルヴィン「うん。だから当時の私は本当に頭を悩ませた。リヴァイ自身もいつまでこの生活が続くんだろう? って顔をしていてね。怪訝な表情のまま私と一緒に生活していたから、早いところ、彼の適性を探してやりたかった。そんな時だ。彼が演劇ホールの中にいた、迷子の子供を肩車して、親を一緒に探してやってる風景に出くわしてね。見ず知らずの子供の為に肩車までしてやって、一緒に探してやっていた。その時は、幸いすぐ親御さんが見つかったけど。その時、私は聞いたんだ。『何故、そんな面倒な事をした? 迷子センターにさっさと連れて行けばいいだろう?』って。そしたら、あいつ、なんて言ったと思う?」

エレン「想像がつかないです」

エルヴィン「私もそうだった。そしたら『肩車すれば、見つけられるかなって思った。親も探している筈だし。迷子になった地点からあまり動かない方が、見つかる確率はかえって高いんだよ。こういう時はちょっとじっとして、様子を見る方がいい。それでも見つからない時は、さすがに迷子センターに預けるけどな。まあ、俺もよく迷子にはなるし、子供の気持ちも分かるから一緒にいてやった方がいいかなって思ったんだよ。余計なお世話かもしれんが』って、照れくさそうに言っていたんだよ」

アルミン「へー」

なるほどな。子供が好きって言うのは、そこで分かったのか。

エルヴィン「その時のリヴァイを見て私は二度目の『天啓』を受けたような心地になってね。リヴァイはきっと、そういう仕事が向いていると、当時の私は思い込んでしまってね。もう、これはやらせるしかない。ってなってしまって。リヴァイを酒に酔わせて、契約書書かせて、大検受けさせて、無理やり大学に行かせる事にしたんだよ」

この辺の強引なところは本当、怖いよなあ。エルヴィン先生。

思い込んだら一途なのかな。リヴァイ先生、パニック状態だったろうなあ。

エルヴィン「リヴァイは『ふざけるな!!! よりにもよって何故、教職になんかつかないといけないんだ!!!』って最初は抵抗していたけどね。でも私も引かなかった。リヴァイにはきっと、教師という職業が向いていると思った。私なんかより、他人の気持ちを慮る気質があるし、何より人に好かれる気質を持っている。体力もあるし、真面目な性格だ。体育教師であればきっとやれると思った。だから無理やりとある体育大学に行かせる事にしてね。その資金は全て私が出す事にしたんだよ」

アルミン「もうリヴァイ先生自身もベルトコンベヤーに乗せられちゃったんですね」

エルヴィン「まあね。リヴァイの事だから、一度契約書を書かせてしまえば、それを反故にはしないだろうと思った。渋々だけど、大検を受けて一発合格して、大学の寮に住まわせて、その後は離れて暮らしたけど。1~2年程度かな。大学に入る前まではリヴァイとは一緒に生活していたんだよ」

エレン「でも、大学卒業してから、すぐには教師にならなかったんですね」

エルヴィン「ああ。大学を卒業したら、以前よりは働ける窓口も増えたようだから、初めは土方仕事や宅配、あとトラックの運転手とかかな? たまに劇団のアルバイトもしていたようだよ。裏方のね。いろんな職業を掛け持ちして、大学資金に利子までつけて、金を返そうとしてきたけど、私は受け取らなかった。それよりも『さっさと諦めて教師になってよ』と口説いてね。私はリヴァイと一緒に仕事をしたくて堪らなかった。その頃かな。ようやくこの気持ちが、ちょっと人より異常だって気づいて、自分でも困ったんだけど」

気づくの遅いなー。エルヴィン先生もあんまり人の事言えねえぞ。

エルヴィン「でも、リヴァイはそっちの気は全くないし、むしろ気持ち悪がっているのを知っていたから、さすがにそれを自分から言い出す勇気はなくてね。ちょっと切ない気持ちにもなったけれど、リヴァイもようやく重い腰を上げて『分かった。そこまで言うなら教師を試しにやってみるが、無理だと思ったらいつでも辞めてやるからな』と言って、ようやく私と同じ講談高校に着任したんだ。それが偶然、ハンジの着任した年と重なってね。まあ、その後の事は、もう既に知っているだろうけど。2人があんな感じになっちゃった訳で。私は「早いところくっつかないかな」と思っていて。息子でも娘でもいいから、貰えないかなって、虎視眈々と企んでいた訳だよ」

すげえ人生設計だよな。エルヴィン先生、いろいろすげえ。

アルミン「じゃあもし万が一、リヴァイ先生がエルヴィン先生の気持ちに気づいて、それに応えちゃっていたら、こっちの二人がくっついていた可能性もあった訳ですね」

エルヴィン「リヴァイが男もいける口だったら、の話だよ。もしもの可能性を追っても仕方がない」

エレン「でも、エルヴィン先生、一度も告白していないんですよね? もし告白していたら、リヴァイ先生の気持ちが動いていた可能性あったかもしれないですよね」

エルヴィン「うーん。殴られるのがオチじゃない? 縁切りされる方が怖いよ。そんな事をされたら、私は生きていく意味を無くしてしまう」

と、さらりと言うあたり、エルヴィン先生も問題ある先生だなあと思った。

エルヴィン先生、冷たいようで情熱家な部分もあるんだ。

一途なんだよな。それでいて、目的の為には自分の気持ちも簡単に犠牲に出来るんだ。

エレン「そうですか……でも、リヴァイ先生は『専業主夫』になるのが夢のひとつだって言っていたから、パートナーになる人間って、仕事を持っている方の方が良かった訳ですよね」

エルヴィン「ははは……あれは冗談じゃない? リヴァイなりの」

エレン「んーまあ、そうかもしれませんが。でも、その、エルヴィン先生が進路指導室に来る前に、その、リヴァイ先生自身が『目を逸らしていた事を突き付けるな。俺も薄々、そんな気配は感じる事があったんだが、見ないようにしていたんだぞ』って、言っていたんで、なんとなく、気づいてはいたようでしたよ?」

と、オレが言ってやった瞬間、エルヴィン先生の顔が固まってしまった。

アルミン「え? リヴァイ先生、そんな事を言ってたの?」

エレン「ああ。ミカサと進路指導室に行った時、リヴァイ先生とハンジ先生が今後について話し合っていた時だな。放課後、2人がいろいろ話しているところ、オレ達、聞いちまって。その時に…」

エルヴィン「え……じゃあ、リヴァイ、薄々、私が例の告白をする前から、気づいていたって事?」

エレン「だと思いますよ? きっと。あの感じだと、ずっと前から薄々気づいていて、あえて目を逸らしていただけだったんじゃ……」

エルヴィン「………………そうか」

エルヴィン先生が両目を瞑ってしまった。堪えるように。

エルヴィン「ずっと隠していたつもりだったが、薄々気づいていたのか。リヴァイの奴は……」

エレン「いや、無理でしょう。どう考えても。エルヴィン先生の行動自体が、それを気づかせるに十分な事をやってますからね」

エルヴィン「うううーん。ねえ、もしかして、だけど。押したら、押し倒せた可能性、あったのかな? 私は」

エレン「うううーん。どうなんでしょうかね。それこそ、本人に聞かないと分からないですけど。ただ、何もしなかったのは、ちょっと勿体なかったような気もします」

アルミン「エレン、応援しちゃうの?!」

エレン「いや、そうじゃねえけど! でも、エルヴィン先生もなんか可哀想だなってつい、思っちまってな」

ここにも隠れた恋があった訳だろ? いや、同性同士だけど。

オレはそっちの趣味は分からんが、だからと言って、恋心そのものは否定したくねえ。

なんていうか、エルヴィン先生もエルヴィン先生で問題だらけだろ?!

いや、オレももし、リヴァイ先生と同じ立場だったら、「ごめんなさい」しかしねえけど!

エルヴィン先生、頭を抱えちゃって、

エルヴィン「うーん……やっぱり、1回くらい拝み倒してやらせて貰った方が良かったのかな」

と、ちょっとだけ赤面して誤魔化す様に舌を出した。

エルヴィン「いや、でも私も決めたんだ。私はあの2人を見守るってね。2人の幸せを壊してまで自分のエゴを通せないよ。そもそも、そういう道を選ぶわけにはいかないし。仕方がない事だ。リヴァイが幸せになれる方を、私は選んだんだよ」

と、言った後、驚く声が、聞こえた。

リヴァイ「お前、馬鹿じゃねえのか」

エルヴィン「!!!!」

ハンジ「ごめーん、ちょっと出るに出れなくなってね。てへ♪」

エルヴィン「!!!!?????」

奥のソファから人影が出て来た。ソファに隠れていたようだ。

2回目かよ!!! え? でも、オレ達が入った時は鍵、かかってたんだけどな。

リヴァイ「合鍵。進路指導室、鍵は2つあるだろ? ちょっとハンジとここでこっそりイチャイチャさせて貰っていたんだが、まさかお前らが後から入ってくるとは思わなくてな」

ハンジ「エルヴィン~この間のお返しだよ~私を騙したお返しだよ~うふふふ~♪」

エルヴィン「…………やられた」

エルヴィン先生が顔を覆っている。珍しい。エルヴィン先生が出し抜かれるなんて。

リヴァイ「やれやれ。何を考えているのか良く分からん奴だと思っていたが……まさかそこまで考えていたとは」

エルヴィン「………………」

エルヴィン先生が珍しく動揺しているのが分かる。顔が少し赤い。

やべえ。なんでこう、オレ、こういう場面に遭遇してばっかりいるんだろ?

まあ面白いからいいけどな。うん。

リヴァイ「エルヴィンがそこまで俺の事を考えて行動していたとは思っていなかった。予想以上に驚いたぞ」

エルヴィン「…………リヴァイには言うつもりなかったんだがな」

リヴァイ「仕方がないだろ。もう聞いちまったんだ。ただまあ、エルヴィンのしてくれた事は、今でも感謝しているし、それに対する『借り』もまだ俺は返していないからな」

エルヴィン「………うん」

エルヴィン先生、リヴァイ先生の方を見れないでいるようだ。

これ、やっぱり本気だったんだな。おどけて誤魔化していただけだったんだ。

リヴァイ「さすがに一発やらせてくれっていう頼みはきけないが、そこまで言うなら、仕方がねえな。エルヴィンの望みをひとつくらいは叶えてやらんといかんよな」

エルヴィン「え?」

リヴァイ「娘が生まれる保証はないが、善処はしてやろう。ただし、娘が嫌がった場合は許さんぞ。実力でちゃんと、落として見せろよ。ロリコンの名にかけて」

エルヴィン「え? 本当に、いいのか?」

リヴァイ「あくまで『産まれたら』の話だがな。先の事は分からん」

エルヴィン「じゃあ、本当に…?」

リヴァイ「くどい。俺が約束を破った事、あったか?」

その瞬間、エルヴィン先生が本当に嬉しそうに、顔をあげた。

エルヴィン「ははは……待ち望んだ甲斐があった。本当に。ありがとう。リヴァイ」

リヴァイ「ふん……(照れる)」

ハンジ「あーもう、リヴァイ可愛いー! 顔赤いよ?」

リヴァイ「うるさい。いちいち指摘するんじゃない。俺もどうしたらいいか分からん」

ハンジ「照れちゃって♪ でも危なかったねー。私、もしかしたらエルヴィンにリヴァイを先に取られていた可能性、あったって事だよね?」

エルヴィン「いや、それはない……」

ハンジ「いやいやいや、分かんないよ? 人生なんて、転がった先にどうなるかなんて! だってリヴァイのこの反応、みてよ! 満更でもない顔してるじゃないの!」

リヴァイ「ハンジ! お前は俺の嫁になるんだろうが! ふざけた事を言うんじゃねえ!」

ハンジ「いや、それは分かってるけどさ! でも、なんか私もいろいろ切ないんだよ? エルヴィンにはすっごくお世話になったしさ。エルヴィンにもちゃんと幸せになって欲しいもの!」

リヴァイ「それは俺も同じだが……だからと言って、俺がその……応える訳にはいかんだろうが」

ハンジ「あーうん。でもなんか、エルヴィンならしょうがないかなーって思う自分もいるんだよねー」

リヴァイ「おい、冗談でもそんな事を言うな。エルヴィンが本気にしたらどうする気だ」

ハンジ「いっそ、新居に3人で暮らしちゃう? そしたら良くない? ダメかな?」

リヴァイ「アホか!!! エルヴィンが居た堪れないだろうが!!」

エルヴィン「いや、私は、その……2人さえ良ければ、同居も構わないとは思っているが」

リヴァイ「!!!」

ハンジ「じゃあいいじゃん! 一緒に住んじゃおうよ。んで、子育ても手伝って貰えばいいじゃない」

リヴァイ(頭痛くなってきた……)

あ、今、言葉に出してないけど「頭痛」している顔だな。

ハンジ「どうしてもだめかな? 私、エルヴィンとも一緒に住んでもいいと思ってるよ。だって、エルヴィンはもう、リヴァイの「父親代わり」みたいなもんじゃない。私にとっても、その感覚に近いんだよ?」

リヴァイ「いや、確かにやってもらった事は「父親」みたいな事だが、エルヴィン自身がその……俺にそういう気持ちがあるなら、それは父親とは呼ばないだろうが」

ハンジ「そうだけどさー。うーん。リヴァイは本当に、そういう同性愛ってダメな人なの?」

リヴァイ「……………………今までのアプローチしてきた同性愛の奴らは、体目当ての奴らばかりだったからな。エルヴィンのような真剣な想いを聞くのは、俺だって初めてなんだよ」

と、リヴァイ先生自身、少し混乱しているようだった。

リヴァイ「と、いうより、エルヴィンに始まった事じゃないが、どうしてこう、俺は皆に愛されているんだか良く分からん。ペトラも、ニファも、オルオもそうだ。俺はそんなに大した事はやってないんだが、真剣な想いを受ける度に、どうしていいのか分からなくなるんだぞ」

あ、その3名の気持ちも薄々気づいていたんだ。リヴァイ先生。

リヴァイ「そういう意味じゃ、俺を嫌ってくれるミカサの方が余程、プレッシャーがない。あいつは遠慮なくこっちをぶった切ってくれるから、一緒に居て本当に楽だった。たまに癒される事すらあったぞ。もっとお前ら、俺を嫌ってもいいんだぞ!?」

意味不明な事を言い出した。リヴァイ先生、大丈夫か?!

ハンジ「そんな事言われてもー。リヴァイがモテキャラなのがいけないんじゃないの」

リヴァイ「俺は顔だって普通だ。むしろ不細工な方かもしれんと思っている。イケメンキャラならともかく、なんでこんな事態になるのか毎回訳が分からん!」

ハンジ「中身がイケメンキャラやってるからでしょうが。あんたのたらしスキルって、相当なものだよー?」

リヴァイ「人をホストみたいな呼び方するな。俺は水商売の男じゃねえよ」

ハンジ「いや、そっちでやっていく才能もきっとあるよ? リヴァイは」

リヴァイ「俺は教師にならなかったら、美容師になりたかったんだが………なんかいつの間にか教師にうっかりなっちまったけど」

ハンジ「あ、だから髪洗うの上手いんだねー。ヘアメイクもその名残り?」

リヴァイ「髪を切るのも好きだが。悪いか」

ハンジ「いやいや、別にいいよ? リヴァイらしくて」

リヴァイ「とにかく、そういう事だから。俺は、その……そんな風に好かれる価値なんて、自分にはないと思っている。だから、どうしたらいいのか……」

エレン「あの、リヴァイ先生。ちょっとこれ、見て貰えませんか?」

さすがにちょっとイラッとしてきたので、オレは以前撮って見せた写メを本人に見せた。

あの面白い顔だ。反応がすげえ楽しい奴。

すると、リヴァイ先生自身もうっかり「ぶは!」と吹いてしまって、

リヴァイ「酷い顔してやがるな……こんな顔していたのか。あの時は」

エレン「ええ。酷い顔でした」

リヴァイ「そうか……こんな顔されたら、確かに写真撮りたくなる気持ちも分からんでもないが」

エレン「ですよね? 分かって貰えました?」

リヴァイ「ああ。そうだな。これも、俺の一部なんだな。むしろこっちの間抜けな俺の方が真実に近いような気がするぞ」

エレン「だったら、これを公表してみませんか?」

エルヴィン「! エレン、その件は……」

エレン「エルヴィン先生、気持ちは分かりますが、最終的な判断を下すのはリヴァイ先生自身です」

エルヴィン「……」

エレン「リヴァイ先生は、常々言ってますよね。『俺はそんなに綺麗じゃない』とか、今も『好かれる価値はない』とか、たまにイラッとするくらい自虐的になるんで、いっそ、もう、全部出しちゃいましょうよ」

リヴァイ「全部、出す…?」

エレン「ええ。その上で、皆が慕ってくれるならもうそれは、真実の「愛」だとは思いませんか?」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が考え込んでいる。意味が通じたかな。

リヴァイ「それは、ファンクラブの件も含めてって事だよな?」

エレン「そうです。もちろん、そのせいで逆にリヴァイ先生のファンが増える可能性もありますが、少なくとも、限りなく真実に近い「リヴァイ先生」を出した上で寄ってくる場合は、先生の危惧する「美化され過ぎた自分」が愛されている訳ではないと思うんですけど。ダメですかね?」

リヴァイ「…………いや」

リヴァイ先生はすぐに納得した様だ。

リヴァイ「その手があったな。何も隠す必要性なんて何もない。むしろジャンジャン出していい」

エルヴィン「リヴァイ、でも、それは……危険だよ」

リヴァイ「何故だ。今のこの「気持ち悪い認識」の方が余程変な状態だぞ。皆、俺を何だと思ってやがるんだ」

エルヴィン「でも、リヴァイ……」

リヴァイ「俺はただの元ヤンの体育教師だ。もうすぐ39歳にもなるおっさん捕まえて、皆、メルヘンチックな幻想を抱くな。愛される側のプレッシャーも少しは考えろ」

エルヴィン「う、ううう……(ぐうの音も出ない)」

リヴァイ「エレン、良くやった。あの時は『何勝手に撮ってやがる』と思ったが、ちゃんと理由があったんだな」

エレン「まー衝動的に撮りたくなったのは事実ですけどね。利用出来るかどうかは、リヴァイ先生次第でしたけど」

リヴァイ「分かった。ファンクラブの件も含めて、少し案を煮詰めよう。エルヴィン。その件も含めて、今後の事を少し話したい。この後の時間をくれ」

エルヴィン「はー……(頭抱えている)」

やっちまったって顔しているけど。オレは知らない。決めたのはリヴァイ先生自身だしな。

エルヴィン「どーなっても知らないよ? 私は一応、1度止めたからね?」

リヴァイ「ファンが増えようが減ろうが構わん。とにかくアレだ。皆、俺に対してキャッキャし過ぎるんじゃねえって話だ。そういう意味じゃ、ハンジくらいだぞ。そういう欲目がないのは」

ハンジ「まあねー。こいつ、本当時々、殺したろかってくらいムカつくしねー」

リヴァイ「お互い様だろうが! お前もちょっと知恵を貸せ!」

ハンジ「はいはーい」

という訳でオレとアルミンは進路指導室を追い出された。

後は野となれ山となれって感じだな。

アルミン「えーっと、大体、揃ってきたかなー」

と、ずっとメモに集中していたアルミンがノートを閉じた。

エレン「書けそうか?」

アルミン「うん。大丈夫だと思うよ。後は……出来れば高校時代のリヴァイ先生の情報がもう少し欲しいかな」

エレン「あーそんな古い情報、他に誰か……」

1人、いた。ハンネスさんだ。

エレン「ハンネスさんにも取材するか。確か、元ヤン時代のリヴァイ先生を一番知ってる筈だぜ」

アルミン「そうなんだ。よし、次はそっちに行ってみよー」

と言いながら、移動するオレ達だった。

という訳で、かなーりエルリ入っちゃってすみません。
最初に表記するべきか迷ったんですが、ネタバレっぽくなるのも嫌だし、
と思い、あえてカプ表記の中には予め入れませんでした。

ふざけているように見えて、
ちゃんとエルヴィン先生、リヴァイ先生の事、好きだったんですよ。って事で。

ハンネスさんを探して、職員室近くの廊下を2人で歩いていたら、偶然、ハンネスさんに出会った。

良かった。丁度良かったぜ。ちょっと声かけてみよう。

エレン「ハンネスさーん!」

ハンネス「おう、エレンとアルミンか。部活はどうした?」

エレン「今、台本の制作中で取材して回っているところなんだよ」

アルミン「クリスマスの冬公演に向けて、再現劇をやろうと思っているんで、ハンネスさんの知ってる事も聞きたいと思って」

ハンネス「俺の知ってる事? 何を話せばいいんだ?」

エレン「リヴァイ先生の元ヤン時代の話。補導していたんだろ? その時の事を出来るだけ詳細に」

ハンネス「あーなるほど。そこから追っていくわけか」

と、ハンネスさんは腕を組んで懐かしそうに答えてくれた。

ハンネス「リヴァイ先生は、よく1対多数の喧嘩に巻き込まれる事が多かったな。俺達警官が現場にたどり着く頃にはもう、殆ど勝負はついていてな。俺と目を合わせるなり、しょっちゅう逃げていた。こっちもおかげで足腰は随分と鍛えられたもんだよ」

エレン「へー。一匹狼って感じだったんですかね」

ハンネス「んーどうなんだろうな? ただ何度かリヴァイ先生が『リヴァイ総長』って呼ばれている場面に出くわした事もあったから、恐らくグループの頭を張っていたんじゃねえかなとは思うぜ。本人は『その呼び方、止めろ』って良く言っていたが、下の子達と思われる奴らに慕われている様子を見かけた事は何度かあった」

エレン「リヴァイ総長って……」

なんかそれっぽい気がする。ヤンキーの頭やっていたのかな。

ハンネス「まあ詳しいところは正確には分からんが、とにかくリヴァイ先生は強かったぞ。一度、大人相手に喧嘩している場面もあったな。相手はヤクザだったんだが、全く怯むことなく1人で戦っていた。ただ、ヤクザ相手に歯向かったせいで、発砲事件に発展してしまってな。一時は騒然となったが、頬を削っただけの擦り傷だけで済んだ。あの強運は、正直ぞっとしたが、本人は平気な顔をしていたよ。普通は拳銃を向けられたら、俺だってビビるって言うのに」

ひえええええ。ヤクザ相手に何やってるんだリヴァイ先生!

ハンネス「その後は何故か、ヤクザの方が穏やかになってリヴァイ先生をスカウトし始めたよ。本人は混乱していたが、何か抜き打ちテストのような物をやらされていたらしい。それが終わった直後、すぐ俺達警官隊が突入したから、事なきを得たが、リヴァイ先生、ヤクザから名刺を貰って困惑していたな」

あぶねー。リヴァイ先生、ヤクザからスカウトかかっていたんだ。

エルヴィン先生が拾わなかったら、本当にヤクザの道に進んでいたかもしれねえぞ。

ハンネス「でもリヴァイはその名刺を俺に渡してきてな。『やる。警察が持ってる方がいいだろ』って、変に生真面目な奴だった。そういう訳で、リヴァイ先生はよく騒ぎを起こしてはいたが、根は真面目な奴なんだろうなって印象だった。酒やタバコはやっていたようだが、薬とかには手を出さないタイプの、ちょっとアウトローな少年って印象だったよ」

エレン「へー」

アルミン「当時の恰好とか分かりませんか? 髪型とか」

ハンネス「ああ、確か当時は金髪だったな。髪型は同じ刈り上げだったけど。ピアスもしていたし、割とオシャレに気を遣う感じの少年だった。衣服はいつも綺麗にしていたし、皺のある服を着ていた事がない。ズボンをずりおろすようなヤンキー特有の恰好のアレじゃなかった。服装だけはヤンキーの恰好じゃないっていう、ちょっと変なヤンキーだったよ」

エレン「写真、残ってないですかね」

ハンネス「んーもう、24、25年くらい前の話だからな。さすがに写真は………あ、いやまてよ」

と、ハンネスさんは思い出したようで、

ハンネス「あるかもしれん。ちょっと待ってろ。職員室の卒業アルバム、見てみるよ」

と言って職員室に置いてある、歴代の生徒の卒業アルバムを探して貰った。

ハンネス「やっぱり。講談高校に途中までは通っていたから、卒業名簿にはないだろうけど、それ以外の、集合写真にこっそり載っている」

エレン「どれだどれだ」

ハンネス「これだ。この、ちょっと目つき悪くて、ヤンキー座りしている小さな少年がリヴァイ先生だよ」

アルミン「あんまり顔、変わってないwwwwwえええええ本当、リヴァイ先生、顔、変わってないねwwww」

と、アルミンが大爆笑していた。オレも必死に笑いを堪える。

アルミン「そっかー高校時代は金髪だったんですね。なるほどなるほど(メモメモ)」

ハンネス「参考になったか?」

アルミン「はい! とても。いい感じに情報がまとまってきた」

ハンネス「それは良かった。再現劇、楽しみにしているぞ」

という訳でリヴァイ先生の高校時代の情報も入った。後は何が必要かな。

アルミン「んー後はハンジ先生の方の高校時代、あとは大学時代もざっと知りたいかな。教職に転向した理由って、詳しくは聞けなかったしね」

エレン「え、でも、ST……いや、ダメだ。そこに触れていいのかな?」

アルミン「んーでも、そこ端折っていいのかどうかは、知ってからじゃないと判断出来ないよ。ハンジ先生本人に聞いてみる?」

エレン「でもそれやると、バレるんじゃねえか? ハンジ先生経由でリヴァイ先生に再現劇を知られたら、止められるだろ」

アルミン「んーだとすれば、後は誰が詳しそうかな」

エレン「この学校に居て、在籍が長いのは、ピクシス先生、ダリス先生、あとキース先生、もかな。その辺にもう1回、話を聞いてみるか?」

アルミン「そうだね。キース先生からいってみようか」

という訳で、キース先生を探してみる。

キース先生は柔道部の顧問の先生なので柔道場のある第三体育館の隣の柔道場に居た。

キース「ん? どうした。何か用事か?」

エレン「少し、お時間頂けますか?」

キース「構わんぞ。………15分休憩を入れる! 水分補給しろ!」

柔道部員「「「はい!」」」

キース「ふむ。再現劇でまだ、聞きたいエピソードがあったか?」

アルミン「はい。今度はハンジ先生の高校時代のエピソードなどを」

キース「ふむ。ハンジの高校生時代か。だったら、ミスコンの話がいいだろう」

とキース先生は微笑みながら言った。

キース「エルヴィン先生が企画して始めた第一回目のミスコンの女王は、実はハンジ先生なんだぞ」

エレン「え……」

アルミン「えええええ? それ、本当ですか?!」

キース「疑うなら証拠を見せてやろう。職員室に一緒に来い」

と、言ってまたまた職員室に戻る事になる。卒業アルバム2回目だ。

今度は少し年代の違う卒業アルバムを見せて貰った。

そこには、今より若いハンジ先生の姿が………って、ええええええ?!

これ?! これが、ハンジ先生なのか?! 本当に?!

ミカサとはちょっとタイプが違うけど、滅茶苦茶美人だった。

なんていうか、ハリウッド系の女優さんみたいな、華やかさがある。

うわああ。これは、なんていうか、エルヴィン先生、若い頃のハンジ先生に手出した理由、分かった気がするぞ。

これだけ美人だったら、確かに「可愛い」って思ってうっかり手出してもおかしくない。

高校生ハンジ先生は、当時としては多分、大人っぽい雰囲気で、でも笑顔で写っていた。

キース「恐らく、エルヴィンの奴もハンジがいたから、ミスコン開催しようと言い出したのかもしれんが。当時のハンジは、結構、モテていたようだったぞ」

エレン「そうだったんですか……」

キース「ああ。ただ、告白されても『なんか違う』とか『この人も違う』とか言って、ザクザク振っている様子でもあったから、女子の嫉妬の羨望を受けていたようでな。たまに『女子が怖い』とも言っていた。それからかな。少しずつ、格好が男性的になってきてね。ボーイッシュな雰囲気も取り入れるようになっていった。大学に進学してからは、また女子力を取り戻そうとしていたようだったが、大学院の途中あたりで、だんだんおかしくなっていってな。昔の面影が無くなっていってしまったんだよ」

アルミン「その当時の事を覚えていらっしゃいますか?」

キース「ああ。まあ、ハンジは高校を卒業してからもしょっちゅう、エルヴィンに会いに来ていたからね。何か困った事があるとすぐ『エルヴィン助けてー!』が口癖だった。私もエルヴィン経由で話を聞く事もあったが、ハンジはどうも、大学の研究チームに入るか否かの段階で、担当教授にセクハラとパワハラを受けたらしくてね。そこで反発して問題を起こしてしまって、大学院に残る事は出来たけど、研究の方に携わる道は閉ざされてしまったと嘆いていたよ」

アルミン「つまり、その事件が、ハンジ先生を「変えて」しまった訳ですね」

キース「そういう事になるのかな。エルヴィンは『そんな碌でもないところ、残る必要ないよ。教員免許、嗜み程度に持ってるんでしょ? 使うなら、枠開けておくからうちの高校においで』ってハンジを誘ってね。ハンジも『もう、それでいいや!』ってとりあえず、うちに来ることになったんだよ」

エレン「なるほど………」

何かだんだん、全体図が綺麗に見えて来た。

ジグゾーパズルのピースがひとつずつ、はまっていくような感触がある。

ハンジ先生も昔はいろいろあったんだな。大変だったんだ。

キース「そういう訳で、ハンジは教職の道に進んでみた訳だが、その当時から既に「臭いハンジ」が出来上がっていてな。入学式では、先生達の間では「何だあの先生」とざわめいていたよ。リヴァイは逆にびしっと、男性にしては綺麗過ぎるくらい、高いスーツを着て来て、女性職員がざわめいていたが。そんな2人は一か月後に、あっさり大ゲンカした。リヴァイが耐え切れなかったんだよ。ハンジの「汚さ」に。一月持たなくてな。自分の部屋の風呂に連れ込んで、無理やり髪を洗わせて、ハンジの体を洗ったそうだ。そこからだな。あいつらが、ラブコメ街道を駆けだしたのは」

ラブコメ街道って。まあ、その表現で合っているけどな。

キース「最初はもう、ハンジも凄い抵抗だったな。学校で顔を合せる度にリヴァイから逃げていたし。リヴァイはハンジを追いかけるし。トムとジュリーかと思ったぞ。しょっちゅう追いかけっこしていたからな。ただ、それも半年も過ぎると、やっと落ち着いて、ハンジが『月一サイクルならいいか』と妥協したらしいが。リヴァイは『本当は毎日、やってやりたいが?』とけしかけていたな。その頃になると職員の間でも2人の関係性をなんとなく察するようになったな。だんだん慣れて来て『ああ、またあの馬鹿夫婦か』と思う様になってしまったよ」

と言って遠い目をするキース先生だった。

キース「ただ、当時は本当にまだお互いに付き合っていなかったようだし、リヴァイも着任当時は彼女もいたようだった。しかしだんだん仕事が忙しくなるに連れ、彼女の方の予定に合わせにくくなってしまったようで、自然消滅する事が増えたと、私に一度だけぼやいていた事もあった。教職がこんなに忙しい物だとは思っていなかったようでな。『掛け持ちで肉体労働していた時の方がよほど楽だった』とも言っていた。それでも、リヴァイは真面目だったから、苦手な書類仕事もコツコツこなして、徐々に仕事をこなしていったよ。たまにハンジがそれを手伝っていたりもしたが。ハンジは書類仕事に関しては、さすが研究者を目指していただけあって、とてつもなく早くてね。男性教員が感嘆するほどのスピードで難なくテスト問題も作り上げるし、授業の方は、多少話が長いという欠点はあるが、生徒のウケも悪くなかったから、ハンジもだんだん教職に愛着が沸いてきたようで、少しずつ、2人の距離が近くなっているな、と思っていたんだ」

と、言ってキース先生は一度お茶を注いで飲みながら言った。

オレ達は職員室のソファに向かい合って続きを聞いている。

キース「そしてリヴァイ先生が30歳になる年の12月。2人が旅行に行ってくるという話を聞いてな。ピクシス先生とエルヴィン先生は「よし!」と応援していたが、2人が帰って来てから、「あれ?」とわしは思った。近づいていたものが、少しまた距離が出来たような感じだった。特にリヴァイの方の様子が、少し妙に思えた。『ハンジ先生と実は付き合っているんでしょ?』と生徒にからかわれても以前は『さあな』とか適当に答えていたのに、その旅行を境に『こいつとはそんなんじゃない』ってはっきり否定するようになったからな。わしは旅行先で「何かあったな」とは思っていたが、今思うと、誘って拒否られでもしたんだろうな。そういう雰囲気だった気がする」

キース先生も結構、いろいろ洞察力すげえええ。

さすが教師だな。観察力、ぱねえ。少ない情報でよく分かってるぜ。

キース「わしが話せるのはこれくらいかな。少々が長くなってしまってすまない。エピソードは足りるかな?」

アルミン「十分です。足りない部分が完成しました。ありがとうございます」

キース「ふん……ま、せいぜいあの2人をからかって遊んでやろう。わしもいろいろ、げんなりする事が多かったからな」

と、キース先生まで悪い顔をするようになってしまった。

そんな感じで大体、大筋の情報をまとめると、オレ達は演劇部の方に顔を出した。

そしてオレは先に音楽室に来ていたミカサに言ってやった。

リヴァイ先生が言っていたことを。

エレン「ミカサ、やっぱりリヴァイ先生の事、今でも嫌いか?」

ミカサ「うん。嫌い(即答)」

エレン「でも、嫌えば嫌うほど、リヴァイ先生、ミカサに『癒される』らしいから、程ほどにしてくんね?」

ミカサ「ふわっつ?! (青ざめ)」

エレン「なんか、リヴァイ先生、変に天邪鬼なところもあるみたいでさ。ミカサといると『気が楽』なんだそうだ。だから、嫌えば嫌うだけ、リヴァイ先生が和んじまうから、気をつけてくれよ」

ミカサ(ガクブルガクブル)

あ、ミカサが混乱して震えている。はてなマーク飛びまくっているな。

ミカサ「い、意味が分からない。嫌えば嫌うほど、癒される? 馬鹿なの? 頭がおかしいの? きっとそうね」

エレン「あ、いや、まあ、その辺は確かに頭おかしいのかもしれんけど。その、リヴァイ先生、人に好かれ過ぎて、それがプレッシャーに感じる時があるみたいでさ。だから、嫌な部分もちゃんを見てくれる人間と一緒にいる方が、気が楽なんじゃねえかって話だよ」

ミカサ「嫌な部分……」

エレン「その気持ちは、分からなくもねえけどな。オレもたまに、ミカサの愛がプレッシャーになる時もあるし」

ミカサ「ガーン……(青ざめ)」

エレン「いや、それが悪いって話じゃねえぞ? 勘違いするなよ? プレッシャーは「あった方がいい」とオレは思ってるし」

ミカサ「そうなの? (涙目)」

エレン「プレッシャーがあるからこそ、格好悪いところ、見せられないって思うだろ。全くないのも男としては問題なんだよ。だから、いいんだ」

ミカサ「そう……(シュン)」

エレン「しょげるなよー。ミカサは逆に、そう思うことねえのか?」

ミカサ「エレンに愛されるプレッシャー? って事?」

エレン「そうそう。そういう感じ。ねえの?」

ミカサ「うーん………あると言えばあるけれど」

と、微妙な顔をするミカサだった。

ミカサ「私の場合はそれが「嬉しい」ので、頑張れる。私はエレンがいれば何でも出来ると思っているので」

エレン「そ、そうなのか」

ミカサ「うん。だから問題ない(どや顔)」

キリッとどや顔を決めるミカサが可愛かった。そうか。そういうものなのか。

やっぱりこういうのって、人それぞれ、感じ方が違うのかな。きっと。

ジャン「リヴァイ先生、こっちこねえよな。来ないうちに、準備をこそこそ進めるぞ」

アニ「そうだね。予定が分かればそれがいいけど、来たり来なかったりだから、怖いよね」

アルミン「暫くは大丈夫じゃないかな。なんか忙しそうだったし」

マルコ「それならいいけど。アルミン、大体、話は固まって来た?」

アルミン「うん。大体まとまってきたよ。とりあえず、必要な物から先にピックアップしていくね」

と言ってアルミンは皆に指示を出した。

アルミン「必要なのは、リヴァイ先生側の衣装。講談高校の男子生徒の制服と、金髪のカツラ。あと黒ジャージ。リヴァイ先生の着ている服に似たスーツとスカーフ。水泳用の衣装。これは上から服をはおってもいいと思う。その辺かな」

と言って、メモを頼りに黒板を使って説明した。

アルミン「ハンジ先生側は白衣と眼鏡。あとは……女子大生っぽい衣装と、講談高校の女子の制服だね。制服は新しく作る必要はないから楽だね。女子大生っぽい衣装の選択は、アニに任せてもいい?」

アニ「了解」

アルミン「後は……背景セットどうしようかな。何か、ヘリコプターで登場するシーンも必要になりそうだけど」

マーガレット「ヘリコプター……宙づりのワイヤーアクション入れるしかないかもね」

アルミン「あと、3階の窓の外から入ってくるとか。結構、アクション満載になりそうだけど。ミカサ、大丈夫かな」

ミカサ「問題ない(キリッ)」

スカーレット「その辺は、それっぽい演出とカメラワークを使えばいいから。ほら、ドリフのコントみたいにすればいいよ」

アーロン「実際には3階じゃないけど、って奴だな。分かる分かる」

エーレン「あーそういうコント、昔、再放送で観た気がするよ」

アルミン「あと、リヴァイ先生の元ヤン時代を表現するから、殺陣も必要になるね。またエキストラ役で、やられ役の練習する人、必要になるけど」

ジャン「それはもう、前回の侍恋歌で慣れたから問題ねえだろ」

アニ「そうだね。ミカサも格闘シーンは慣れているしね」

ミカサ「うん。大丈夫」

アルミン「ミカサの方は概ね問題ないかな。あるとすれば、エレンがやるハンジ先生の方だね」

エレン「ん?」

アルミン「セクハラシーン、大丈夫?」

エレン「うぐっ……」

そうだった。それがあるんだった。

ミカサ「え? セクハラシーン? 何それ(ゴゴゴ)」

アルミン「後で詳しく話すよ。エレン、今回の劇は、かなーりエレン側がエロいことされるけど、いい? 覚悟決めてくれる?」

エレン「んー」

まあ、もう、頑張るしかねえよな。

エレン「正直、男としては複雑だが、まあ、やってやるさ。しょうがねえよ」

ミカサ「ううう。エレンがセクハラされるの? 私以外の人に? (涙目)」

エレン「しょうがねえだろ。でもその分、ミカサとの人工呼吸のシーンあるから、我慢しろ」

ジャン「じ、人工呼吸だとおおおおおお?!」

アニ「ジャン、うるさい」

ジャン「いや、だってなんだそのエピソード!? そんなの聞いてねえぞ?!」

アルミン「しょうがないじゃん。リヴァイ先生、昔、ハンジ先生を人工呼吸で助けた事あるって他の先生から聞いてきたんだし」

ジャン「マジかよ……OH……(頭抱える)」

アルミン「他にもいろいろ、ツッコミどころ満載のラブコメになりそうだけど。まあ、出来るだけ面白おかしく、台本書き上げるから。頑張ろうか、みんな」

一同「「「「おー!」」」」

という訳で、オレ達はまた、新しい舞台に向けてのスタートを切った。

ジャンはまだ落ち込んでいたけど、恨むならリヴァイ先生を恨んでくれ。

オレとミカサは再現するだけだ。2人の愛の物語をな。

ミカサ「ううう……」

エレン「ミカサ、アルミンの台本が出来るまで、涙は無しだ」

ミカサ「そうね。泣いてはいけない。頑張る(キリッ)」

エレン「よしよし」

と、宥めながらオレ達は準備を開始した。

文化祭の時よりは焦らなくていいのがいいな。じっくり取り組める。

エロシーンは少しだけ不安もあったけど、まあ、なんとかするしかねえな。

そんな風に思いながら、オレはクリスマスまでの日を楽しみにしていたのだった。

今日はここまでです。長くなりそうです。すみません。ではまたノシ









11月7日。金曜日。最近、忙しかった親父がやっと、その日の夜、少し時間を作ってくれたので早速、オレとミカサはリビングで家族会議を行う事にした。

この会議の主導権はミカサに任せた。ミカサから切り出さないと恐らく親父を説得できないと思ったからだ。

グリシャ「うん。誓約書について、確認したい事があるって?」

ミカサ「はい…」

グリシャ「具体的には? どの部分が気になるのかな?」

ミカサ「誓約書の内容そのものが、変だと思って……」

グリシャ「ふむ」

ミカサ「接触する側、つまり『エレン』からの接触は禁止しているのに『私』の方からの接触を禁止しているのは、何故ですか?」

グリシャ「ああ、記載ミスしていたようだね。御免御免。じゃあ、付け加えて禁止事項を増やそうか」

ミカサ「嫌です。私は、その誓約には同意出来ない……ので」

グリシャ「ふむ?」

ミカサ「この誓約書は『未成年のうちに子供を作らないように予防する為』にかわしたものだと思っています。でも、その場合『あるルール』を守りさえすれば、その事態は防ぐことが出来ると思います」

グリシャ「うん。何か案があるのかな?」

ミカサ「はい。一つは私の生理の周期をきちんと把握する事。もう一つは、その上で妊娠しやすい時期にはセックスを行わない事。勿論、行う際は避妊具も使う事。これを守りさえすれば、私はエレンと、そういう関係になっても構わないと思っています」

グリシャ「…………ミカサの方にも覚悟があるというんだね」

ミカサ「はい。決して私は、エレンに流されて付き合っている訳ではない……ので」

グリシャ「………そうか」

親父は少しだけ笑っていた。安心してくれたようだ。

グリシャ「ミカサがそう思っているのなら、安心だ。でも、決して軽はずみな行動はしちゃダメだよ?」

ミカサ「はい」

グリシャ「では、誓約書に新しい項目を付け加えてもいいかな?」

と、いう訳でオレ達は新しい文面を付け加える事になった。



ミカサ側が許可した場合は、性交渉をしても良いがその際は必ず、避妊具を使用し、妊娠を避ける事。

加えて、危険日と思われる日は必ず避ける事。ミカサは生理周期を必ず把握する事。



グリシャ「これでいいかな? 約束を守れるか?」

ミカサ「はい。約束します」

グリシャ「なら良かった。ほっとしたよ。謎かけを、解いてくれて」

ミカサの母「うふふふ……本当はもっと早く教えてあげたかったんだけどね。自分達で気づくまではダメだって、口止めされていたのよ。ごめんね。ミカサ」

ミカサ「ううん。いいの。大丈夫」

エレン「親父、ありがとう」

グリシャ「うん。君達2人の様子を見ていれば、今のところ順調にきているのは分かっていたからね。そろそろかな、とは思っていたけれど」

エレン「そっか……」

>>267
訂正
ミカサ「接触する側、つまり『エレン』からの接触は禁止しているのに『私』の方からの接触を禁止していないのは、何故ですか?」

文章間違えた。禁止していない、です。

グリシャ「何故、こういう形で誓約書を書かせたか、その理由をもう少し詳しく説明してあげよう」

と、言って親父が話を続けた。

グリシャ「10代の頃は男側の性欲が強すぎて、女側がそれに合わせて応えて、望まない妊娠をさせられたり、擦過傷を負ったり、精神的に傷ついて病んでしまうケースもある。こういう行為は、やはり「女」側のリスクの方が大きい。ミカサは優しい子だから、エレンの我儘にうっかり付き合ってしまっている可能性も捨てきれなかった。だから、ミカサの方から望まない場合は、そういう行為をさせちゃいけないと思ったんだよ」

ミカサ「大丈夫です。むしろ、私の方が、その……あの……(赤面)」

ミカサの母「あらあら。やる気満々ねえ、ミカサ(ニヤニヤ)」

エレン(赤面)

確かにミカサはこっちがびっくりするくらい積極的な時、あるよな。

グリシャ「うん。ミカサもちゃんと、エレンを好きでいてくれているようだ。安心したよ。でも、あんまり事を急いじゃダメだよ? ミカサが誘惑し過ぎたら、エレンの理性なんてあっという間に吹っ飛んじゃうからね」

ミカサ「エレンが誘惑してくる時は、どうすれば?」

グリシャ「え?」

エレン「ゆ、誘惑なんてしてねえよ! 馬鹿!」

ミカサ「熱っぽい視線で見つめられると、つい……」

グリシャ「エレン、視姦も禁止事項に入れようか?」

エレン「無茶苦茶言うなよ!! 親父!」

グリシャ「まあ、それは冗談だが。うん。2人の関係が良好であるなら安心だ。このまま順調に交際を続けていきなさい」

エレン「お、おう……」

なんか恥ずかしい。応援してくれるようになったから、こっちも有難いけど。

グリシャ「避妊具なら、父さんが持ってるから必要な分は先に後で渡しておくよ。もし万が一、アレルギー反応が出たらいいなさい。たまに肌に合わなくて肌荒れや痒みを起こす子もいるからね」

エレン「え? そういう事もあんの?」

グリシャ「安物のコンドームだと、たまにあるよ。肌に合わなくて湿疹が出たり。そういうのは、別にコンドームに限った事じゃないけどね」

へえええええ。マジか。そういう物なのか。

………っていうか、自分で買わなくていいのかな? こういうのって。

エレン「あの、親父…」

グリシャ「ん?」

エレン「そういうのって、自分で買わなくていいのかな」

グリシャ「ああ……まあ、自分で買ってきてもいいよ。別に。買いにいける勇気があるならね(ニヤリ)」

エレン「うぐっ…!」

そっか。レジで恥ずかしい思いをする事になるのか。だったら親父に甘えた方がいいのかな。

グリシャ「ああ、もしかして、サイズの問題も気にしているのか? その辺はよほどのサイズ差がない限りは大丈夫だと思うけど?」

エレン「親父!!! それ以上、言わないでくれ!! ミカサ、真っ赤になってるだろうが!!」

親父も親父でエロ親父だな本当にもう!!

グリシャ「御免御免。これ以上は、男だけの時に話そうか。エレン。じゃ、今日の会議はこの辺でお終いにしよう」

という訳で、2人の関係は一歩、前進した訳だから、とりあえず、ほっとした。

けどまあ、むしろここからが本当のスタートだよな。

まだ、ミカサの生理周期を把握した訳じゃないし、いつ、どこで最初にそれをするべきかも、後で考えないと。

ミカサ「…………(まだ顔赤い)」

エレン「ミカサ、その、なんだ」

ミカサ「ん?」

エレン「その、準備が出来たら、その、あの……」

ミカサ「うん。もう少し待って欲しい」

エレン「ああ、待つけどさ。その………最初は、どこでやりたい?」

ミカサ「何処で? エレンの部屋じゃないの?」

エレン「オレの部屋でいいのか?」

ミカサ「もしくは、私の部屋。別にラブホテルでやる必要性はない」

エレン「うううーーーーーん……そっかあ」

でも、リヴァイ先生達はスイートルームにわざわざ泊まってやったんだよなあ。

さすがにスイートは無理だけど。最初くらいはこう、何か、記念になるような場所じゃなくていいのかな。

学生だから、無理は出来ないけど。でも、その。

思い浮かんでいるのは、あの夏に泊まった旅館の事。

出来るんだったら、もう1度あの旅館に泊まって、あの日の続きをしてみたい。

そう、思う自分もいるんだが……。

ミカサ「?」

まあいいや。ミカサがそれでいいって言ってるから、ミカサに合わせよう。

こういうのって、女の希望を優先した方がいいよな。きっと。

デート先だってそう、リヴァイ先生が言っていた訳だし。

セックスで女に負担をかける以上、それくらいの事は譲歩してやんねえとな。

ミカサ「何か問題があるの?」

エレン「いや、問題はねえよ。うん。ミカサの希望を優先するか」

ミカサ「え? エレンは別の場所がいいの? ラブホテルの方がいいの?」

エレン「いや、そういうんじゃねえよ。うん。大丈夫」

ミカサ「エレンが他に希望する場所があるなら、そっちを優先して欲しい」

エレン「えええええ……」

ミカサ「そ、外とかでも、別に全然、平気なので……(ポポポ)」

うおおおおおい! そんな事言うなよ!! その、元気になっちまうだろうが!!

エレン「馬鹿!! そんなんじゃねえから! もう、寝るぞ! オレは先に寝る!」

ああもう恥ずかしい。階段を先に上がって自分の部屋に逃げた。

ミカサ「エレンーおやすみのキスは……(シュン)」

ふすまの外から抗議の声が聞こえたので、慌ててふすまを開ける。

エレン「そうだった。悪い。じゃあ、おやすみ………」


チュッ……


ミカサ「………今日は舌を入れないの?」

エレン「ミカサ、積極的なのは有難いが、もうちょっと自重しろ。親父も言っただろ? 軽はずみな事はするなって」

ミカサ「ぷー」

エレン「膨れるなよ。最近、もう、発情し過ぎだぞ! オレ達!」

ミカサ「思春期なので仕方がない(キリッ)」

エレン「まあそうだけどさー。とにかく、今日はここまでだ。おやすみ」

ミカサ「おやすみなさい……(シュン)」

ふーやれやれ。ミカサが可愛いのはいいんだけど。

ミカサの誘惑テクニックがどんどん、スキルアップしているからこっちも困る。

寝る前には抜いて、処理を済ませてから寝る。

今は夢の中でしかミカサとエッチな事が出来ないけど。

いつか来る、近いうちにやってくるその、えへへな日を夢見て、オレは無理やり両目を閉じて寝るのだった。






11月8日。土曜日。

その日の放課後、リヴァイ先生が演劇部の部活動の方に顔を出してきたので、皆慌てて、練習風景を隠した。

そして「ダミー」の演劇をする。偽の台本を利用して騙す作戦だ。ちなみにエルヴィン先生の指示である。

しかしその日のリヴァイ先生は、練習を止めて皆を集めてから言った。

リヴァイ「すまん。今度の第四日曜日、暇な奴、いるか?」

エレン「第四日曜日って言ったら、体操部のお休みの日ですよね」

リヴァイ「そうだ。11月23日だな。その日にその……引っ越し先の掃除をしに行くから、手空いている奴がいれば手伝って欲しい。勿論、後でバイト代は出すから」

ジャン「いや、バイト代なんて要らないですよ。リヴァイ先生には世話になってるし、普通に手伝いに行きますよ」

エレン「だよな。そのくらい、別にいいですよ」

リヴァイ「そ、そうか? じゃあ、昼飯くらいはこっちで用意するか」

エレン「新居は決まったんですか?」

リヴァイ「ああ。ハンジがどうしても『ここがいい!!! ここにしよう!!!』と興奮して決めた物件があってな。もうそこにする事にした」

エレン「へー場所はどの辺ですか?」

リヴァイ「職員用のマンションから歩いて5分もない場所に、古い貸家があってな。昭和チックな平屋の家ではあったんだが、間取りがその……栄螺(サザエ)さんの家と似ているから、そこにする事にした」

エレン「ええええ?! 似たような家が実際にあったんですか?」

リヴァイ「ああ。俺も驚いたけどな。確認したら、かなり酷似していた。違うのは、栄螺さんと鱒男(ますお)さんの部屋がないだけで、そこは駐車場のスペースになっているくらいか。それ以外は本当に同じだった。ただ、建築したのが相当前のようでな。一応、リフォームはしてあったようだが、それでも掃除を一通りしてからでないと引っ越しは出来ない感じだったから、休みの日に一気にやってしまおうと思ってな」

エレン「へええええ」

そうなのか。そういう偶然ってあるんだなあ。

リヴァイ「6帖の畳の部屋が1つ、8帖の畳の部屋が3つ。台所も6帖くらいだったかな。広縁は長くて、走れるくらいある。便所が和式なのが難点くらいか。日当たりもいいし、庭も少しあったから、物件としては上等だと思う。平屋だからペットも飼えるし、猫でも飼おうかと思っている」

ジャン「猫、好きなんですか?」

リヴァイ「犬も好きだな。まあ、ハンジは爬虫類系の方が好きなんだが。あいつ、蛇でも平気で触るし、多少猛獣でも平気で触ろうとするからな」

ジャン「す、凄いですね。猛獣って、虎とかですか?」

リヴァイ「ああ。そうだな。動物園に行くとテンション上がり過ぎてやばくなる。ただ、さすがに虎を飼うのは難しいからな。猫で妥協させよう」

と、リヴァイ先生が「ふん」と笑っていた。

リヴァイ「その日は休みだから、来れる奴だけ来てもらえると助かる。無理はいわない。ただ、来てくれるのであれば、寿司でも頼んで振る舞ってやろう」

アニ「……寿司奢ってくれるんですか? (ガタッ)」

リヴァイ「ああ。出前取ればいい。来れるか?」

アニ「行きましょう(キリッ)」

あ、アニが寿司で食いついた。いいんだそれで。

アルミン「うん。寿司食べられるなら行こうかな。僕も」

ジャン「報酬としては上等ですよ」

マルコ「うん。お寿司は食べたいね」

マーガレット「本当にいいんですか? かえって掃除業者に頼んだ方が安上がりなんじゃ」

リヴァイ「業者に頼んでもいいが、やはり自分の住む家くらいは自分で掃除したいんだよ。お前らには庭掃除の方を頼みたい。草むしりとかな。部屋の中は自分でやるから大丈夫だ」

ミカサ「………お寿司か」

あ、ミカサが迷っているな。これは。

エレン「ミカサ、行かないのか?」

ミカサ「エレンは行くの?」

エレン「ああ、行くぜ。草むしりして寿司食えるなら、お釣りがくるぜ?」

ミカサ「うううう……」

迷っているな。リヴァイ先生の手助けなんかしたくないけど、寿司は食べたいんだろうな。

エレン「無理には言わないけどな。でも、アニも来るんだよな?」

アニ「絶対行く(キリッ)」

エレン「アニも来るんだから、ミカサも来いよ」

ミカサ「……分かった。アニも行くなら行く」

アニ「腹いっぱい、ご馳走になろうよ。ミカサ。金を吐き出させよう」

ミカサ「そうね。そうしよう(キラーン☆)」

アニ「……サシャも誘ってみる?」

ミカサ「! それはいいかもしれない(ニヤニヤ)」

おーい! 部外者連れて来ていいんか?

アニ「リヴァイ先生、友達も連れて来ていいですか?」

リヴァイ「ん? 暇な奴がいるのか?」

アニ「寿司が食べられるなら、絶対来てくれる子が一人います」

リヴァイ「そうか。別に構わんぞ。連れてきても」

あっちゃー! OK出したな。しらねーぞー。

ジャン「サシャ、連れてきたらやばくないか?」

アニ「しっ! ジャン、黙って」

ミカサ「黙って」

ジャン「………(オレもしらねー)」

あージャンもオレと同じ事思ったようだな。

そんな訳で、サシャにその事をメールですぐ伝えたら、1分もしないうちに返事がきたらしい。

『何時からですか? 軍手は持参ですか? 丸1日予定空けますので、絶対行きます!!!』

という気合の入った返事が来たそうで、サシャも参加が決定した。

エレン「実際に引っ越しするのはいつ頃にされるんですか?」

リヴァイ「んー……12月に入ったら次は期末テストの準備に追われるから、11月中には何とか終わらせたいとは思っている。ただ引っ越しって言っても、場所がすぐ近くだからそんなに苦労はしないだろう。ハンジの荷物をまとめるのが少し大変なくらいか。俺自身の私物はそう多くはないし、家電は自分のをそのまま使うが、本とか服とかは、これを機会にある程度、処分するつもりでいる」

エレン「え? 服を捨てちゃうんですか」

リヴァイ「ハンジの私服はもう、大分摩耗しているからな。古着としても売れないし、雑巾に回せるような物はとっておくが、それ以外は処分するつもりでいる。ハンジは服が破れてもそのまま着続ける程、節約家だったからな。さすがにそろそろ新しい服を用意してやらんといかん」

エレン「へー。自分の好みで服を一新しちゃうんですね(ニヤニヤ)」

リヴァイ「あ、ああ……まあそうなるな。何だ? 何か変か?」

エレン「いえいえ。別にいいんじゃないんですか? ハンジ先生、嫌がってないですし」

アニ「ただ、普通ではないですよね。私はそういうのは、苦手かな」

アルミン「まあね。自分の服くらいは自分で決めたいよね」

マーガレット「そうですね。普通ではない、ですね」

スカーレット「普通だったら『キモイ』って思われますよね」

リヴァイ「え……? (顔面蒼白)」

おや? 自覚なかったんか。すげえ顔しているぞ。リヴァイ先生。

リヴァイ「き、キモイのか……?」

アニ「あー髪型もメイクも私服のコーディーネートも全部、やってるんですよね? それって、ハンジ先生だから受け入れているんであって、他の女だったらきっと、途中でキレると思いますよ」

スカーレット「言えてる。私は絶対、無理だ。そこまで独占欲強いのは引く」

アニ「服装までなら、まだ妥協出来ても、他のも全部って言うのは、ね。さすがに息苦しいと感じますよ」

マーガレット「確かに……ハンジ先生が究極の面倒臭がり屋だったから良かったものの、普通、それが分かったら、女は逃げるかもしれないですね」

リヴァイ「え……そ、そういうもんか(ガーン)」

うわあ。女性陣がフルボッコしているぞ。可哀想に。

ミカサ「…………私は、まあ、エレンなら別にいいけど。クソちびに決められたら、殴り返すかも」

エレン「おいおい」

ミカサは大丈夫なのか。へー。

まあ、オレもそこまで強いこだわりはねえから、オレが決めるって事はしなくてもいいけどな。

ミカサが迷っている時くらいかな。そういう時は、自分の趣味を出すけど。

リヴァイ「…………(*凹んでいる)」

エレン「でもまあ、良かったじゃないですか。ハンジ先生は喜んでいましたよ。授業中、惚気るくらいだし」

リヴァイ「え?」

エレン「すっごく、嬉しそうでした。『全自動リヴァイ』とか何とか言ってたし。気に入っているようでしたから、問題はないですよ」

リヴァイ「ハンジが、喜んでいたのか?」

エレン「ええ、そうですよ? え? 知らなかったんですか?」

リヴァイ「ああ。あいつ、別に喜んでいる風じゃなかった。『んもーしょうがないなー』って感じで、いつも渋々だったからな。まあ、俺はそれでもハンジに好き勝手やっていた訳だが」

その直後、リヴァイ先生、顔を真っ赤に染めたんだ。

リヴァイ「そうか。あいつ、実は喜んでいたのか。そうか……そうか」

あーもう! 新婚さんはこれだから!!!

ジャンが物凄い冷めた目で見ている。気持ちは分からんでもない。

リヴァイ「だったら、遠慮しなくてもいいか。次はあいつの………」

いかん。だからと言ってエスカレートしていいってもんでもない。

エレン「あーリヴァイ先生、その辺でストップかけましょう。何でもやり過ぎるとダメですよ」

リヴァイ「うっ……それもそうだな。すまん。俺もつい、調子に乗った」

と、言って自重するリヴァイ先生だった。

そんな訳で、その日はリヴァイ先生の惚気も聞きながら、部活が終わった。

部活動をしながら、勉強も頑張る。以前より真剣に聞いて、予習復習も欠かさずやるようにしたら、だんだん勉強が楽しくなって気がする。

今度の期末テストで順位を上げたいから。部活だけじゃなく、勉強にも力を入れる事にした。

そのせいで、ゲームする時間があんまり取れないのが残念だけど仕方がない。

この間買った、SAGA3もちょっとしか進めてない。ま、RPGだから1年くらいかけてのんびりやってもいいけどな。

ミカサ「エレン、今日も勉強している……」

エレン「あ? 何だ? 何か用事か?」

夜、勉強していたら、ミカサが部屋に入って来た。

ミカサ「いえ、最近、あまりゲームをしていないようだったので、つい気になって」

エレン「進路、真剣に考えるなら、あんまり遊びほうける訳にもいかねえよ。全くやってない訳じゃないけど。自分の成績、せめてマルコと同じくらいまで引き上げないと、入れる医学部がないと思うんだ」

ミカサ「そう……」

エレン「オレの場合、やっぱり数学がネックなんだよな。医学系は理系だけど。理系の苦手意識を克服しねえとどうにもならん。こいつをどうにかしない事には、先に進む事も出来ねえよ」

ミカサ「そう……」

エレン「ん? 何だ? 何か、元気ねえな。ミカサ」

ミカサ「いえ、その……あの」

エレン「ん?」

ミカサ「頑張るのはいいけれど、あまり根を詰めないで欲しい。エレンの体が一番大事なので」

エレン「ああ、その点は大丈夫だ。ちゃんと無理しない程度にやってる」

ミカサ「そう……」

エレン「ん? どうしたんだよ。さっきから。何か変だぞ」

ミカサ「いえ、その……」

そしてミカサは、言ったんだ。

ミカサ「さ、寂しいって、つい……」

エレン「え?」

ミカサ「目標に向けて頑張る姿を見て、『頑張れ』と思う反面、『寂しい』って気持ちも出てしまって……」

あ、やっべえええええ!!!

そう言えば占いにも「彼女にかまってやらないと」みたいな事、言ってたな。

放置し過ぎたらダメって事だな。よし。だったら。

エレン「なら、数学教えてくれ。ミカサも一緒に勉強するぞ」

ミカサ「いいの?」

エレン「やっぱり一人で勉強するのは限界あるからな。頼むよ」

ミカサ「うん!」

あ、元気になった。よしよし。

オレも気をつけねえとな。ミカサの為に頑張るけど、そのせいでミカサを悲しませちゃいけねえし。

そんな訳で11月は部活と勉強をうまく両立した月になり、いい感じに勉強も進んだ。

期末テストでどれくらい順位上がるか分かんねえけど。少なくとも下がる事は無さそうな気がする。

そして迎えた11月23日。あっという間に当日が訪れた。

お掃除リヴァイは次回に回します。今日はここまでです。ではまたノシ

朝の7時にリヴァイ先生のいる職員マンションの前に全員集合して、ゾロゾロ歩いて新居に移動する事になった。

メンバーは、オレとアルミン、ジャン、マルコ、ミカサ、アニ、マーガレット、スカーレット、アーロン、エーレン先輩達、加えて3年の四人全員だった。

ガーネット先輩は衣装の方でまだ仕事が残っているので今回はお休みだ。カジ達もちょっと用事があるらしくて来られないという事だった。

ニファ先輩も来ていた。体操部のメンバーも数人、来られる人だけ来ているようだ。

ハンジ「皆、ありがとうね! 人手があると助かるよ!!」

エルヴィン先生もピクシス先生も来ていた。凄い人数だな。団体様って感じだ。

皆でわいわい移動して、新居を訪ねる。

玄関がすげえ広かった! 横に開くタイプの玄関を開けると、何だか懐かしい匂いがした。

畳の匂いかな。田舎の匂いって感じだ。

サシャ「ん? ちょっとカビ臭いですね(くんくん)」

リヴァイ「ああ。古い建物だからな。多少はカビもあるだろう」

サシャ「私達は、草むしりをすればいいんでしたよね?」

リヴァイ「ああ。庭の方に案内するよ。こっちだ」

玄関を一旦出て、庭の方に移動すると、そこには……

おおおおおお。これは確かに人数がいるな。草ボーボーだ。

荒れた庭を目の前にしてサシャは「ううーん。手ごわそうですね」と呟いた。

リヴァイ「だろ? 放置していた物件だったからな。草がかなり生えている。人海戦術でどんどん草を毟ってくれ。根から掘らないとまたすぐ生えてくるから、スコップはこっちで用意している。皆、これを使ってある程度、土を掘っていいから草を撤去してくれ」

という指示だったので、大中小のスコップをそれぞれ借りて早速、皆で草むしりをする事になった。

なんかやる事は学校の清掃活動みたいなもんだな。

小学校、中学校時代、校内の草毟りはよくやらされたもんだぜ。

リヴァイ先生は口と頭を布巾でおさえて、早速中の掃除に入るようだ。

ハンジ先生は庭でダンゴムシを見つけてちょっと興奮している。いいのか? 手伝わなくて。

リヴァイ「ハンジ! 遊んでいるんじゃない! お前も中の掃除を手伝え!」

ハンジ「あ、はいはい! めんご!」

と、我に返って中に入るハンジ先生を複雑そうな顔で見つめるペトラ先輩だった。

やっぱり目の前で見ると辛いんだろうな。でも、それでもお手伝いに来るんだから、すげえよな。

ペトラ先輩はニファ先輩と一緒に草毟りを始めた。オルオ先輩とは少し距離を置いているようだ。

目が合う度に、気まずそうに逸らしている。お互いに。まだ仲直りしてねえのかな。

サシャ「うおおおおお?! 土を掘っていたら、じゃがいも出てきましたよ?! 堀り忘れでしょうか?!」

ジャン「馬鹿! いつのじゃがいもか分からんのに! 捨てろ!」

サシャ「食えるかもしれないじゃないですか!」

ジャン「腹に当たったらどーすんだ?! 馬鹿! 芋女!!」

と、向こうは向こうで仲良さそうだ。ナンダカンダでジャン、サシャの世話する事多いよな。

アニ「ふん! ふん! (むしりむしり)」

アルミン「アニ、超ペース早いね。飛ばすと後で疲れるよ?」

アニ「大丈夫。こういうのは結構、得意だから」

寿司パワーでやる気に満ちているアニが可愛らしい。あいつ、現金なところあるんだな。

マルコ「あ、蚊に食われたかも……腕が痒い……」

ミカサ「虫よけスプレー、あるけど使う?」

マルコ「いいの? じゃあお願いしようかな」

あ、そう言えばオレもスプレーかけるの忘れていたな。

エレン「ミカサ、オレも頼む」

ミカサ「了解(プシュー)」

こういうところ、ミカサらしいよな。やっぱり園芸が趣味なだけある。

腰の高さくらいまである雑草などを撤去していったから、結構大変だったけど、皆でやれば割とサクサク進んだので、思っていたよりは時間をかけずに大体の作業を終えられた。

草が無くなると、庭の広さが一層良く分かった。いい物件だな。

午前中で庭の作業を終えて、12時になると出前がやってきた。本当に寿司の出前、頼んでくれたんだな。

ハンジ「休憩しようかー皆、1回作業やめて、うちにおいでー」

というハンジ先生の合図で皆、「やったー」と言ってうちの中にお邪魔した。

まだ飯台とかはないけど。畳の上に直接、寿司を広げて皆で頂く事にした。

うめええええ。肉体労働した後の飯は、本当にうめええええ!

サシャが掃除機みたいな勢いで寿司食ってる。まずい。あいつに取られる前に食わないと!

リヴァイ「思っていたより足りないようだな。追加でピザも頼むか」

サシャ「ピザあああああ?! (涎)」

リヴァイ「5枚くらいでイイか?」

サシャ「何枚でもOKです!」

という訳で寿司だけじゃなくて、ピザまで追加注文してくれた。本当、サービスいいよな。

エレン「金、大丈夫ですか? サシャ、大食いですよ?」

リヴァイ「ああ。心配するな。足りない時はエルヴィンに借りる」

エルヴィン「おっと、あてにされたようだ」

クスクス笑っているけど嬉しそうなエルヴィン先生だった。

リヴァイ「さて。部屋の中の掃除も大体済んだし、後は何をするか」

ハンジ「午後から荷物、ぼちぼち入れちゃう?」

リヴァイ「あーそうだな。やれる事は、今日のうちにやってしまうか。ハンジの本とか私服は先にこっちに移動させてもいいよな」

ハンジ「うん。いいよー。あ、でも、本棚の位置まだ決めてないや。そっち先に決めていい?」

リヴァイ「ああ、分かった。家具類の配置、先に決めるか」

と、言いながら図面を元に計画を立てる2人だった。

ハンジ「リヴァイは自分の部屋を何処にする?」

リヴァイ「別に何処でもいい。ハンジはどこを使うんだ?」

ハンジ「私の場合、書斎と夫婦部屋は分けて使いたいんだよね。鰹(かつお)君の部屋に本と机をまとめてしまってもいい?」

リヴァイ「日当たりは1番悪い部屋だが、いいのか?」

ハンジ「うん。本が焼けない方がいいかな。それに北側の光が入るから大丈夫だよ」

リヴァイ「分かった。ではそこをハンジの書斎部屋にするか。オレの部屋は…その隣の部屋でいいか」

ハンジ「居間を使うの? でもそこは押入れがないよ」

リヴァイ「あ、それもそうか。ではその南側でいいか」

ハンジ「じゃあその隣がリヴァイの書斎だね」

リヴァイ「いや、俺の場合は書斎部屋は必要ない。夫婦部屋で事足りるだろ」

ハンジ「あ、そうなの? んじゃ書斎は私の分だけでいいんだ」

リヴァイ「むしろ俺の場合は台所の方が自分の部屋みたいになるだろうな」

ハンジ「だったら、床の間のある方を夫婦部屋にした方がいいんじゃない? 台所からの動線考えるとそっちが近いよ?」

リヴァイ「しかしそうなると、ハンジが仕事中の時、遠く離れ過ぎているような…」

ハンジ「同じ家の中だから、歩けばすぐ会えるでしょ!」

リヴァイ「そうか。すまん……」

リヴァイ先生、寂しがり屋なのかよ!

リヴァイ「………やっぱり、居間にベッドを置かないか? その方がハンジの書斎に近いし、台所からも近いだろ」

ハンジ「えええ。折角の畳なのにベッド置くのー? 絨毯敷いて、その上に置くの?」

リヴァイ「別に出来なくはないだろ」

ハンジ「…………やけにベッドを推すね? 何か企んでない?」

リヴァイ「んんー……別に何も企んじゃいないが」

ハンジ「何か怪しいなあ。こっち見て言ってよー」

怪しい。確かに怪しい。

エルヴィン「ベッドの方がいろいろ都合がいいだけだよ。男の都合って奴だよ」

と、その時、エルヴィン先生が余計な事を言ったから、リヴァイ先生が睨んだ。

リヴァイ「エルヴィン! しっ!」

ハンジ「えええ? そうなの? んもうーしょうがないなあ。でもご飯食べる時、居間を使わないの? 台所で食べるの?」

リヴァイ「これだけのスペースがあれば、わざわざ居間で食べる必要はない。台所にテーブル置いてそこで食べても大丈夫だろ」

ハンジ「そうかなー? 狭くない? ギリギリな気がするけど」

リヴァイ「気になるなら、床の間のある方を居間の代わりにすればいい。動線的には問題ない」

ハンジ「んーじゃ、ちょっと変則的になるけどそうしよっか。客間は誰かが泊まりに来た時の為に空けておこうか」

エルヴィン「一番日当たりのいい場所なのに。そっちを空けちゃうんだ」

リヴァイ「エルヴィンが泊まりに来た時にそこで寝ればいいだろ」

エルヴィン「リヴァイ……(じーん)」

リヴァイ「喜ぶんじゃない。同居の件は承諾出来ないが、まあ、たまに泊まりに来るくらいなら、別に構わん」

エルヴィン「うん。ありがとう。嬉しいよ」

ピクシス「大体、方針は固まったようじゃの」

ハンジ「はい。後はぼちぼち私物を先に入れていく感じですねー」

と、ハンジ先生がスケジュール帖に何やらメモをしていた。

ハンジ「……よく考えたらベッド、リヴァイのと私のシングルを隣同士くっつけたら問題ないんじゃない? 新しく買う必要なくない?」

リヴァイ「いや、真ん中が凹むだろ。それは気持ち悪いから嫌だ」

ハンジ「そう? じゃあくっつけて改造しちゃえば? 私、大工仕事するよ?」

リヴァイ「お前はどうしてそう、ケチケチするんだ。買いなおす必要があるなら金を出すとあれ程……」

ハンジ「だって、その……リヴァイにばっかり、お金出させるのも、ねえ?」

リヴァイ「むしろ出させて欲しいんだが?」

ハンジ「やだよー。私も一応、働いているから金はあるけど。貯金は2000万くらいしかないんだよね」

リヴァイ「充分だろ。それだけあれば。2人合わせたら1億いくじゃないか」

ハンジ「そうだけどさ。私、出来ればそういう事に金を使いたくないんだよね。節約できるところは節約したい派なのよ」

リヴァイ「はー……(ため息)」

ピクシス「良い嫁じゃないか。浪費家の嫁よりいいと思うがの」

リヴァイ「いや、しかし……」

ピクシス「まあ、遠慮する女だからこそ、してやりたい気持ちは男としては分かるがの。引くべきところは引くのが夫婦生活のコツじゃよ?」

と、したり顔をするピクシス先生だった。

リヴァイ「………ベッドの高さが合わない場合はどう改造するんだ?」

ハンジ「んーDIYのお店の人に相談すれば何とかなるんじゃない? 心配しなくても大丈夫だよきっと」

リヴァイ「仕方がないな。分かった。ただ、店の人が『改造は無理だ』と判断した場合は、ベッドを買いなおすからな。それでいいな?」

ハンジ「了解しました! (ビシッ)」

リヴァイ「後は、和室の上に敷く絨毯を新調する必要性が出てきたな。買いに行くか」

ハンジ「待って。誰か要らない絨毯、持ってないかな? 貰えるなら貰っちゃおうよ」

リヴァイ「おいおい、そこまで人に甘えるのは……」

ニファ「ああ、ありますよ。使っていない絨毯なら」

と、其の時、ニファ先輩が口を出した。

ニファ「もし良ければ差し上げます。使っていいですよ」

リヴァイ「いいのか?」

ニファ「はい。絨毯って、捨てるのは重いし、使わなくなると、ついつい収納の肥やしになるんですよね」

その気持ち分かる。オレも捨てるの面倒臭くて押入れに仕舞っていたからな。

買い替えた時とか、前使っていた絨毯、捨てるのは面倒だしな。

ニファ「私の場合、模様替えで色変えたくて買いなおしただけなので、物は悪くない筈ですよ」

リヴァイ「そうか。すまないな」

ニファ「いえいえ。利用出来る場所がある方がいいですよ」

という訳で、またもや新調する機会を失うリヴァイ先生だった。

嬉しいけど複雑そうな顔だな。

リヴァイ「後はぼちぼちハンジの私服から入れていくか。あ、でも収納場所がクローゼットはないから、タンスが必要になるな」

ハンジ「あ、そっかー。教員用の方はクローゼット備え付けだったから楽だったけど。和風の家ってタンスが必要なんだよね」

リヴァイ「クローゼットの方がいいならそれごと買ってもいいけどな。どっちでもいい。新調するか」

ハンジ「待って! タンスも誰か持ってない? 貰える物は貰おうよ!」

リヴァイ「いや、さすがにタンスくらいは新調していいだろ。それを持っている奴なんて……」

アルミン「…………祖父が使っていたタンスなら一応、ありますけど」

リヴァイ「?!」

アルミン「祖父が夏に亡くなったので。祖父の荷物はある程度、整理したので今はタンスを使っていません。遺品が無理なら差し上げられませんが、再利用して頂けるなら差し上げても構いませんよ」

ハンジ「いいの? 御爺ちゃんの遺品なのに、貰っていいの?」

アルミン「んー……実は僕自身も、近いうちに引っ越すかもしれないんですよね。今は独り身になってしまったので、近いうちにもう少し安い物件に引っ越そうと考えていていたんで、荷物を減らそうかなって思っていたから丁度いいですよ」

ハンジ「ありがとう! 大事に使わせて貰うね!!」

と、タンスも話がついてしまって、ちょっぴり残念な顔をするリヴァイ先生だった。

リヴァイ「………飯台くらいは新しく買ってもいいよな?」

ハンジ「ええ? そんなの、DIYコーナーで木を買ってくれば安く作れるじゃないの。作るよ? 私が」

リヴァイ「いや、仕事忙しい癖に無理するんじゃない。ベッドも改造する癖に、これ以上自分の首を絞めてどうする」

ハンジ「んじゃ、飯台も誰かに貰おうよ。誰か持ってない?」

リヴァイ「おいおい、さすがに飯台は……」

マルコ「ああ、そのくらいならこっちで作りますよ」

リヴァイ「?!」

マーガレット「大道具組に任せて下さい。その程度の物だったら1日あれば作れます」

スカーレット「うん。材料さえあれば、いけるよね」

ハンジ「というか、演劇部に材料探せばあるんじゃないの?」

マーガレット「ありそうだよね。ちょっと探してみようか」

という訳で、飯台も新調出来ずに落ち込むリヴァイ先生だった。

皆、察してやれよ。リヴァイ先生、新調したくて堪らないのに。

むしろ分かっててわざと意地悪しているのかな。皆、ひでえな。

リヴァイ「あー……本棚、増やしても構わんぞ? もうひとつくらいなら置けるだろ」

ハンジ「ええ? それは有難いけど、それだったら、私が今使っている食器棚っぽいアレを本棚に変更するよ。リヴァイの食器棚にお皿を統合させちゃえば、本棚2つ目作れるから要らないよー」

リヴァイ「………エアコン、新しいのを買ってもいいよな?」

ハンジ「エアコンもそれぞれ1個ずつ持っているでしょうが。夫婦部屋と書斎だけで良くない? とりあえずは」

リヴァイ「居間にも必要だろうが。客間にだって、エアコンつけた方が……」

ハンジ「エアコン4台も設置するの?! 電気代とんでもない事になるよ?!」

エルヴィン「客間はさすがにエアコン要らないんじゃない? 今からの時期なら電気ストーブでもあれば十分だよ」

ハンジ「電気ストーブなら、うちにも1台あるよ。居間だって、それで十分だよ」

リヴァイ「…………カーテンは」

ハンジ「それも既に持ってる。長さだって足りているよ。サイズ同じだから大丈夫だったし」

リヴァイ「………ブルーレイとかは要らないのか?」

ハンジ「まだレコーダーの方が生きているから移行しなくてもいいよ。パソコンだってあるし、今はネットでも観れる時代だよ?」

リヴァイ「………新しいテレビとか」

ハンジ「テレビならあるよ。別に買い替えなくていいよ」

リヴァイ「………照明器具は? 和風の照明器具、必要じゃないか?」

ハンジ「あー照明かあ」

やっと、必要な物を見つけて嬉しそうにするリヴァイ先生だったけど、

ハンジ「ん~じゃあ、それは買いに行こうか。さすがに照明器具を予備に持ってる子はいないだろうし」

やっとリヴァイ先生がガッツポーズした。

余程、買い物に行きたかったらしいな。ちょっと可愛い。

………と、思ったのもつかの間、

ピクシス「照明器具ならわしがお祝いに買ってやっても良いぞ?」

リヴァイ「?!」

ピクシス「新婚祝いじゃ。それくらいならわしが出してやろうじゃないか」

ハンジ「いいのー? やったー!」

リヴァイ「ええええ……(げんなり)」

ピクシス「その代わり、早く子供の顔を見せるんじゃぞ? (ニヤニヤ)」

ハンジ「うっ……頑張ってるけど、あんまり期待はしないでね」

おや? 「まだ早い」とかじゃないんだ。へー。子作りもう始めているのかな。

リヴァイ「くっ………出番がない」

ハンジ「いいじゃないの。甘えようよ。有難い事じゃないの」

リヴァイ「それはそうだが……」

ハンジ「リヴァイは自分の事にお金使いなよ。あんた、趣味が少なすぎて本当、自分に関しては掃除と料理に関する事くらいしか使わないじゃないの。これを機会に、調理器具とか増やしたら?」

リヴァイ「………俺自身の為に買っていいのか?」

ハンジ「いいんじゃない? 包丁とか、新調したら?」

リヴァイ「ふむ……」

と、やっと金の使い道を考え始めたリヴァイ先生は納得した様だ。

リヴァイ「そうだな。ハンジの事に気を取られ過ぎて自分の事を忘れていた。調理器具を増やしていいのであれば、いくつか買いたいと思っていた物もある」

ハンジ「じゃあそれを買おう。それでいいじゃない。リヴァイの新作料理楽しみだなー」

リヴァイ「分かった。ではそれを今度、買いに行くぞ」

エルヴィン「ふむ……では私からの贈り物も、そういった調理器具関連がいいだろうか?」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「ピクシス先生ばかりずるいよ。私にも何か贈り物をさせてくれ」

リヴァイ「いや、しかし……」

ハンジ「あはは! 本当、お金出す機会がないね! でもいいじゃない。甘えようよ」

リヴァイ「………欲しいと思っていたのは、寸胴鍋だ。専門店にいかないとなかなか見つからない特大サイズだが。いいのか?」

エルヴィン「構わないよ。それを買ってあげよう」

リヴァイ「はー……」

何だかもう、皆、わくわくし過ぎだろ。リヴァイ先生、嬉しそうだけど困惑しているぞ。

リヴァイ「こういう時の為に金をためていた筈なのに。意外と何とかなるもんだな」

ハンジ「でも子供増えたら一気に使いそうじゃない? 子供にはお金かかるでしょ?」

リヴァイ「いや、それも何だかいろいろ貰って何とかなりそうな気がしてきたぞ。ピクシス先生、くれそうだし」

ピクシス「わしの孫の使っていた物なら譲る事が出来るぞ? (ニヤニヤ)」

リヴァイ「ああ、やっぱりそうですか……」

ピクシス「まあ、そうやって人は人に伝えていくもんじゃ。気にするな。譲る方も助かるんじゃよ」

リヴァイ「なら、いいんですが」

ピクシス「それよりも、1番大事な物はもう見に行ったのか?」

リヴァイ「ん? 大事な物……」

ピクシス「結婚式に使う『指輪』じゃよ」

リヴァイ「!」

ハンジ「あ! すっかり忘れていたね! どうしよっか」

リヴァイ「そうか。そこに1番金をかけるべきだという事を俺もすっかり忘れていた。ハンジ、この後、買いに行くぞ」

ハンジ「ええええ……荷物、運び入れるんじゃなかったの?」

リヴァイ「指輪が優先だろうが! 9月の誕生石は何だったか」

ハンジ「さあ? 私、そう言うの詳しくないから分かんない」

リヴァイ「スマホで調べろ。知ってる奴は教えてくれ」

と、其の時、すぐさまミカサが発言した。

ミカサ「……確か、サファイアだったと思いますが」

リヴァイ「助かる。サファイアの指輪をオーダーメイドしに行くぞ!」

ハンジ「えええええ?! ちょちょちょ、オーダーメイドって! 普通のでいいよー。ほら、銀色の無地の。地味な奴。結婚指輪ってそういうのじゃないの?」

ピクシス「その辺は特に決まりはないが、2人で決める事じゃな。わしは小さなダイヤモンドを装飾した指輪を贈ったぞ。ただ、普段つける指輪はあまり華美でない物が普通ではあるが」

リヴァイ「つまり、2種類用意しても構わないって事か」

ピクシス「その通りじゃな。普通は『婚約指輪』を贈ってその後に『結婚指輪』を贈るのが通例じゃけど、今は結婚指輪だけの者も多いぞ」

リヴァイ「じゃあ、婚約指輪が先だな。そっちを派手にして、結婚指輪は地味目の物を選べばいいよな」

ハンジ「ええええちょっと待ってよ。リヴァイ。浮かれ過ぎ! 2個も買う必要ないよ! 結婚指輪だけでいいって!」

リヴァイ「しかし、今のこの時期は『婚約期間』に入るんじゃないのか?」

ハンジ「そうだけどさー。ええええ……本当に買っちゃうのー?」

今度はハンジ先生が困惑し始めた。

何でだろ。さすがにそこは貰っておいた方がいいと思うのに。

リヴァイ「何か不都合があるのか?」

ハンジ「いや、そうじゃないけど。そうじゃないけど………(ぷー)」

リヴァイ「不満があるなら、言え」

ハンジ「不満じゃないけどー」

リヴァイ「だったらなんだ」

ハンジ「いや、そのね? その……こそばゆくて」

リヴァイ「は?」

ハンジ「だーから、その、むずむずするんだよ! こういうのは! ふわふわ通り越して、舞い上がっちゃう自分が恥ずかしいんだよおお」

リヴァイ「ははっ……」

リヴァイ先生が安心したように笑った。

リヴァイ「なんだ。そんな事か。だったら問題ないな」

ハンジ「問題はないけどさーその、やっぱり、結婚指輪だけでいいって。サファイアなんて、必要ないよ」

リヴァイ「分かった。だったら結婚指輪の方に金をかけよう。それでいいな?」

ハンジ「うん………(照れる)」

皆、ニヤニヤして話を聞いているけど、一人だけ、複雑そうにしている人がいた。

ペトラ先輩だな。やっぱりこういう会話を聞くのはきついんだろうな。

でも今日、お手伝いに来たって事は覚悟の上で来ている筈だ。

耳を塞ぐわけにもいかないし、ペトラ先輩もいつまでも引きずる訳にはいかないだろう。

ジャン「いくらくらいの物を買うんですかね? こういう時は」

と、其の時、さり気に耳ダンボしていたジャンが質問した。

ピクシス「ピンキリじゃよ。それは2人の愛が決める事じゃ。ただ、相場は10万くらいから100万くらいまでじゃろうな。金持ちであればもっと高い物でも普通に贈ったりするぞ」

ジャン「最低10万ですか……」

ピクシス「まあ、1万からでもいいとは思うが、安いよりは高い方が喜ばれるじゃろ。ここは男を見せるところじゃて」

ジャン「分かりました。今から貯めます」

ピクシス「いい心がけじゃな」

と、ピクシス先生がニヤニヤしている。オレも貯金しよ。

そんな訳で皆、おしゃべりしながら昼飯を食って、そこで解散となった。

午後からは本当に指輪を見に行くらしい。結婚式までに間に合わせるそうだ。

そして別れ際、ペトラ先輩が残って、ハンジ先生に話しかけていた。

他の生徒は先に玄関を出て、そのタイミングを見計らって、頭を下げたのだ。

ペトラ「ハンジ先生、すみません」

ハンジ「ん? 何?」

ペトラ「あの時は、本当にすみませんでした……」

ハンジ「?! え?! 何で謝るの?! むしろ悪いのは私の方だよ?!」

ペトラ「でも、皆が見ている前で、あんな事したのは……」

ハンジ「?! ああ、いや、むしろペトラの方がきつかったでしょ? 私は大丈夫だよ? だから頭を下げないで。ね?」

ペトラ「でも………」

ハンジ「私、ぶたれて当然の事をしたんだよ? だからいいんだって! むしろ感謝しているくらいなんだから、謝っちゃダメだよ!」

その瞬間、ペトラ先輩はやっぱり涙ぐんでしまった。

ペトラ「本当に、すみませんでしたあ……」

ハンジ「うわああん! 泣かないでよー! 私も泣いちゃうよー!」

と、一緒にポロポロ泣いてしまう2人だった。

ペトラ「でも、でも……あんな事、して、ハンジ先生、辱めたようなもんだし……」

ハンジ「え? ええ? そんな事ないよ? むしろ辱める事で言ったら、私、何度リヴァイにぶん殴られたか! 生徒の前で!」

リヴァイ「それはハンジが悪いんだろうが」

ペトラ「でも、やっぱり、生徒が先生、に暴力、なんて……」

リヴァイ「俺も過去に教師を殴った事あるけどな。何度も」

ペトラ「え、えええええ?! (びっくり)」

リヴァイ「まあ、勿論、やり過ぎて停学くらったり、最後は退学勧告くらって中退させられたけどな。そういう話じゃないんだから、気にするな。ペトラ」

ペトラ「え、でも………」

リヴァイ「人間なんだ。そういう事もある。冷たさの中にある「愛」は、ちゃんと伝わっている。だからいいんだ」

ペトラ「リヴァイ先生………(うるっ)」

いい言葉だな。リヴァイ先生の言う「冷たさの中にある愛」っていう言葉。

そうだよな。甘やかすだけが「愛」じゃねえもんな。

一見、酷いように見えても、そこにちゃんと「理由」があって、人は動く事もある。

俺の親父だってそうだな。ミカサの為に、あの誓約書、考えて書かせた訳だしな。

ペトラ「でも、なんていうか、私、その、偉そうに、言ってしまったし、その……」

ハンジ「ペトラ。それでいいんだよ」

ペトラ「え?」

ハンジ「あのね。聞いて欲しい。教師という仕事はね、教師が生徒に教える事だけが仕事じゃないの」

と、其の時、ハンジ先生が真剣な表情になって言った。

ハンジ「教師もまた、生徒に教わるの。いろんな経験を通して、成長していくんだよ。そういう「姿勢」を持てないような教師は教師になんてなれないよ。だから、教えてくれてありがとう。ペトラのおかげで、私はひとつ「学ぶ」事が出来たんだよ?」

ペトラ「ハンジ先生……」

ハンジ「ペトラも教職希望しているんでしょ? リヴァイから聞いているよ。いつか一緒に、お仕事しようね? 待ってるからね」

ペトラ「はい……!」

何だか感動の場面だった。ペトラ先輩がやっと落ち着いたみたいで、オルオ先輩が話しかけていた。

オルオ「終わったか?」

ペトラ「うん。ハンジ先生、あんたの言う通り、気にしてなかったよ」

オルオ「だろ? ハンジ先生の事だから、そうだと思っていたよ。体面を気にするような教師なら、元々、リヴァイ先生が選んでいる筈がねえ」

ペトラ「本当だよね。完敗過ぎるよ。いっそ、そういうの、気にする先生だったなら、良かったのに」

オルオ「普通じゃねえんだよ。リヴァイ先生も、ハンジ先生も、な。でも、だからと言って、それを真似する必要はねえぞ」

ペトラ「うん。私達は私達の道を頑張らないとね」

と、お互いに言い合っている。こっちの2人も一件落着したのかな。

最後に残ったオレとミカサは、リヴァイ先生達と少し話す事にした。

リヴァイ「ん? 何か忘れ物か?」

エレン「いえ……その、ちょっと気になった事があって」

ミカサ「下世話な話を聞いてもいいですか?」

ハンジ「え? エッチな話?」

ミカサ「いえ、そちらではなく、ここのお家賃とか……」

エレン「すんません。気になっちゃって」

お互いにバツ悪そうに聞いてしまう。だって気になるんだもん。

オレ達もいつか、家出るかもしれないし。相場は聞いた方がいいだろ?

リヴァイ「ああ、家賃か。確か6万5000円くらいだったかな」

エレン「それって安い方なんですかね」

リヴァイ「この地区だったらかなり安い方だぞ。ただ、安い理由は、建物が古いだけじゃないんだよな」

ハンジ「うふふふふ……出るかも? みたいな噂話、聞いちゃったんだよね」

エレン「え?」

出る? 何が?

ハンジ「だーから、もしかしたら、『幽霊』っぽいものが出るかもー? みたいな?」

リヴァイ「そのせいで、借り手がなかなかつかなくて余っていた物件だったらしいんだが、俺は別にそういうの気にしないし、ハンジに至っては「むしろ見てみたい」と言い出してな。だったらいいかと思ってここに決めた」

エレン「えええええ……呪われたらどうするんですか」

リヴァイ「その時は霊媒師でも呼んでお祓いしてもらうさ。まあ、死者に会えるというならば、俺はかえって会ってみたい気持ちの方が強いんだが」

エレン「こ、怖くないんですか?」

リヴァイ「全然。むしろ生きている人間の方が何倍も怖いだろ。もし会えるなら、会ってみたい奴もいるしな」

ミカサ「それって、誰か知人とか亡くされているんですか?」

リヴァイ「高校時代のダチとかな。若い頃に無茶やって、死んじまった馬鹿もいる。他にも、卒業生の中にも運悪く早く亡くなった奴もいる。生きていれば、いろいろあるんだよ」

と、少しだけ切なそうに目を細めるリヴァイ先生だった。

ミカサ「その気持ち、分からなくはないです」

リヴァイ「ん? お前も誰か知人を亡くしているのか」

ミカサ「父親を、幼い頃に」

エレン「俺も母親を、亡くしているので、気持ちは分かります」

リヴァイ「そうか」

ハンジ「霊感があれば、見れたりするのかな。リヴァイ、霊感ない?」

リヴァイ「さあな。少なくともそういう経験はまだ1度もないが。そういうのは見ようと思って見れるものじゃねえだろうからな」

ハンジ「そうだよねー。しょうがないよねー運に任せるしかないかー」

と、しみじみ言い合って、オレ達は新居を出て行った。

まさか幽霊屋敷の噂のある場所に新居を構えていたとは思ってもみなかったけど。

エレン「ミカサは幽霊の存在、信じるか?」

ミカサ「うん。いるとは思う。見えなくても、きっとどこかに」

エレン「そうか……」

ミカサ「父の姿を見る事が出来るなら、会ってみたい気持ちもある。でも、それは許されない事のような気がするので我慢する」

エレン「そうだな。オレもそんな気がするよ」

と、そんな風に話しながら、オレとミカサは最後に玄関を出て行ったのだった。

ここまでにします。
まさかの幽霊屋敷の新居ですが、
リヴァイの事だから幽霊見ても動じないで普通にしゃべっていそうです。

では続きはまたノシ

皆、期待していてワロタw
でも再現劇よりもっと厄介な問題がまだ残ってますよん。ふふ。






11月24日。月曜日。その日は勤労感謝の日の振り替え休日だった。

その日は学校も休みで、部活も午後からの予定だったので、午前中は暇だった。

アルミンは午前中に早速、リヴァイ先生にタンスを運び入れる事にしたらしい。

リヴァイ先生が軽トラをレンタルして、アルミンの家に行って自分達で運び入れる予定だそうだ。

しかしその日の午前中は、ミカサの様子が変だった。やけに顔が赤い。

熱でもあるんかな? そう思って近づいたら何故か「近づかないで」と拒否られてショックだった。

エレン「なっ……熱、測ろうとしただけだろ!」

ミカサ「違うの。そういう事ではないので」

エレン「え? 何が違うんだよ」

ミカサ「エレン、私は今、危ない状態なので」

エレン「え? え?」

ミカサ「排卵日が、恐らく終わったので、ムラムラするので、近づかないで欲しい」

エレン「!」

ミカサ「エレンと付き合うようになってから、生理の不順が治ったおかげで、予測がしやすくなった。計測上、明日までは危ない日になるので、その………(ハアハア)」

エレン「分かった! 分かった!」

オレは慌ててミカサと距離をとった。そっか。もうそういうのが分かったのか。

というか、そういうモードに入ったミカサの雰囲気って、いつもにも増して艶っぽくなるんだな。

>>308
訂正
アルミンは午前中に早速、リヴァイ先生の家にタンスを運び入れる事にしたらしい。

「の家」が抜けていました。

ミカサ「エレン、ごめんなさい。以前、コミケに行った時も、計測上、どうやら危険日の期間だったみたい」

エレン「え? そうだったのか?」

ミカサ「うん。クラスの出し物を決めた時も、その期間だったみたい。通りであの時、自分でも妙にテンションが高いと思った……」

エレン「そうなのか」

やる気満々だったな。そう言えば。アルミンに便乗して。

ミカサ「その……私の生理は28日周期でドンピシャで来るようになったから、生理開始から13~17日の間が特に危険な時期になるそうなので、その5日間だけは、エレンも気をつけておいて欲しい。私自身も、気をつけるけど、その……自分でも熱っぽさを堪えるのがとても難しい」

エレン「分かった。気をつける………」

うーん。なんか目がうるうるしているな。いつもにも増して。

いかん。あんまり見ると、こっちも釣られてしまう。

人間のサイクルってよく出来ているんだな。そういう「発情モード」になると、いつもより綺麗に見えるように出来ているのか。

生殺し、バージョンアップだよなあ。これって…。

ミカサ「今日はこの状態で部活に出る訳にもいかないので、ちょっと運動して熱を発散してくる……」

エレン「え? 走ってくるのか?」

ミカサ「うん。ランニングでもして発散してくる。というか、もう、ムズムズして自分でも困る」

エレン「………………」

其の時のオレは、発情したミカサに、自分も少し当てられて。

理性の声は「いかん」と止めていたのに、本能の方が勝手に、口を動かした。

エレン「そんな事するより、自慰したらいいじゃねえか」

ミカサ「え?」

エレン「!」

しまった。オレ、何言ってるんだ。

エレン「いや、何でもない。すまん」

ミカサ「自慰? 何の事?」

エレン「………所謂、オナニー行為だよ。女でも、ムラムラ鎮めたいなら、抜いた方がいいんじゃねえの?」

って、オレ、馬鹿か。何、変な事、勧めているんだよ。

でも、ミカサはその提案に驚いたようで、

ミカサ「その発想はなかった」

エレン「え?」

ミカサ「体がムズムズする時は身体を動かしていた。女の子も、そういう事、していいとは思わなかった」

エレン「え? 別にしちゃいけないって事はないだろ」

ミカサ「………なんとなく、してはイケナイ行為のような気がしていたので」

おおお。なんという純粋無垢。いや、そんなミカサにそれを勧めるオレがゲスいんだろうけど。

ミカサ「体を動かしても、それでも足りなくて、体が濡れてどうしようもない時もあった。なので、以前、エレンに「どうしたらいいの?」と聞いてしまった」

エレン「ああ、アレってそういう意味だったのか」

ミカサ「(こくり)誰か、相手がいればもっと発散出来たと思うけど。一人だとやはり身体を動かすのに限界がある。エレンが相手だと、本末転倒になりそうな気がしていたし……」

そりゃそうだな。オレもそう思うわ。

エレン「そっか……もっと早く、オレも勧めたら良かったな」

ミカサ「では、その、オナニーとやらを自分でやってみる」

エレン「……………」

ミカサ「でも、具体的にはどうしたらいいのだろうか? マニュアルはある?」

エレン「いや、そんなのは、独自に編み出すもんだけど……」

其の時、オレの頭の中で悪魔の囁きが聞こえた。

本能の、声が、オレを勝手に動かしてしまったんだ。

エレン「…………電話越しに指示してやろうか?」

ミカサ「え?」

エレン「オレ、自分の部屋にいるからさ。携帯で、電話越しに指示してやるからさ。その通りにやってみれば?」

ミカサ「いいの?」

エレン「初めてだから不安なんだろ? 手助け出来るならしてやるよ」

ミカサ「では、お願いしたい。私は自分の部屋でやってみるので」

エレン「おう」

これは違反ではない。決して違反行為ではない。

天使の方のオレもOK出しやがった。こんな機転を咄嗟に出す自分が怖いけど。

オレの口元はにやけていた。所謂、テレフォンエッチって奴を、初めてやってみる事にしたんだ。

休みの日の午前中から何やヤッてんだよ。というツッコミは却下だ。

これはあくまでミカサの熱を発散する為に必要な事で、悪い事ではない。

そう、自分に言い聞かせて準備を整える。ミカサと携帯で声だけで繋がった。

ミカサ『エレン、まず何からしたらいい?』

エレン「んーと、まずはティッシュの箱をすぐ傍に用意しろ」

ミカサ『OK。用意した』

エレン「その後は、そうだな……布団、もう片付けたか?」

ミカサ『うん』

エレン「出来れば布団の上でリラックスした状態で、仰向けになった方がいいな」

ミカサ『分かった。では、1回、布団を出す(よいしょ)』

エレン「…………準備出来たか?」

ミカサ『出来た。仰向けに寝ればいいのね? (ごろん)』

エレン「そうだ。んで、まずは服の上から、自分の右手で左胸を触ってみろ」

ミカサ『うん………』

エレン「オレに触られた時の事、思い出せ。あの時の感覚を思い出してみろ」

ミカサ『うん……っ……ああっ』

一気に声が艶っぽくなった。おおお。やべえ。これはクル。

こっちも片手でスタンバイ中だ。いつでも出せるようにしている。

エレン「ブラジャーは出来れば外してくれ。全部脱ぐ必要はないけど。右手で直接、左胸を触れる状態にしろ」

ミカサ『うん……出来た』

エレン「準備出来たか? 次は乳首を右手で摘まんで、人差し指で軽く引っかけ」

ミカサ『うん……うん………』

エレン「感じるか? オレに触られているっていう、妄想も重ねるんだ。コリコリしてくるだろ?」

ミカサ『ああっ……ちょっと、固くなってきたみたい。ああん』

エレン「よし。固くなってきたら、もう少し強く挟んでちょっと右に回したり、左に回したり、乳首を回転させるんだ」

ミカサ『ああああ……エレン、これ、気持ちいい……!』

エレン「だろ? 気持ちいいなら、どんどん弄っていい。遠慮するな。好きなだけ弄れ」

ミカサ『ああああ……はああ……ん……んー……』

やべええええええ。これ、楽し過ぎる!!!

変態だと蔑まれてもいい。今、この瞬間、至福のひと時だ。

ミカサ『やあ……あの時の事、思い出しちゃう……! あああん!』

エレン「思い出せ。オレも思い出すから。あの時、その後はどうして欲しかった?」

ミカサ『ズボン、脱がせて欲しかった……濡れたあそこにも、エレンの手で触れて欲しかった』

エレン「そうか。んじゃ、次はそっちに手を伸ばすぞ。ズボンのチャック、緩めろ。まずはパンツの上から、優しく撫でてみるんだ」

ミカサ『布の上から擦るの?』

エレン「そうだ。こっちは中指の腹で、優しく撫でる感じだな」

ミカサ『あああ………こ、こんな感じ?』

エレン「ああ。気持ちいいだろ? 湿って来たか? パンツ、濡れて来たか?」

ミカサ『うん、だんだん……濡れて来た』

エレン「よし。次は、ガラケーを耳で挟んで、下と乳首を当時に弄るんだ。出来るか?」

ミカサ『ちょっと待って……ん……何とか、出来た』

エレン「準備は出来たな? 左胸は左手で。右手はあそこを弄るんだ。同時にだ。いけるな?」

ミカサ『うん……うん……こう、かしら? ああっ……』

エレン「気持ちいいか? ミカサ……」

ミカサ『うん、気持ちいい。エレン、気持ちいい……あああっ……はああ……!』

吐息がすげえ。携帯電話越しなのに。すげえ耳に響いてくる。

これが発情期バージョンのミカサの威力か。目の前にしたらコンドームつけ忘れそうで怖いな。

エレン「パンツ、ぐちょぐちょになってきたか?」

ミカサ『なってきた……』

エレン「よし、なら直接触ってみるぞ。中指で、自分の気持ちいい場所を探してゆっくり弄ってみろ」

ミカサ『うん……はああああ……あああっ……んー……ん……』

自慰行為に耽っているミカサの声、すげえ色っぽい。

出来るだけ声は殺しているけど。それがかえって、そそる。

家の中だからな。あんまり大声で嬌声をあげる訳にもいかない。

親父は仕事に出ているし、おばさんもパートで今、いないけど。

隣近所に聞かれたらまずいから、これ以上はまずいって分かってる。

だからこその、携帯越しの声だ。

ミカサ『ああ……ああ……また、ふわふわしてきた……』

エレン「そろそろじゃねえの? 体が浮くような感覚、きたか?」

ミカサ『た、多分……あの時のような、前兆が来ている』

エレン「だったら、一旦、休憩しろ。一気にイクと勿体ない」

ミカサ『えええ………』

エレン「我慢しろ。イク手前で一旦、休憩した方が、もっと気持ち良くなれるぞ」

ミカサ『分かった……休憩する……』

ハアハア言ってるミカサがすげえ、可愛い。

あーダメだ。オレの方もだんだん限界が近づいてきたぞ。

途中ですが、すんません。お預けで。
ちょっと休憩します。

正直キモイ

>>320
正直、そう思いながら書いている。
毎回思う。エレンファン、サーセンと。

ミカサ『はあ……はあ……はあ……はあん……』

最後の吐息がすげえ色っぽかった。なんだ今の『はあん』って。

ああもう、だんだんこっちも辛くなってきた。

ミカサが自分の部屋で自慰行為していると思うと、すげえクル。

どっちが先にイクかな。いや、オレが先にイク訳にはいかねえか。

指示しないといけねえしな。ミカサを先にイカせてやらねえと。

エレン「そろそろ、いいか?」

ミカサ『うん………』

エレン「自分の指、中に入れられるか? 中の方、緩んできたか?」

ミカサ『大分、緩い……あ、入った』


ドックン……!


不意に言われた『入った』の台詞にオレも興奮が一際高まった。

ミカサ『エレン?』

エレン「いや、何でもない。入ったなら、入れたり出したり、気持ちいいところを擦りながら出し入れしてみてくれよ。………オレのだと、妄想して」

酷い指示だと我ながら思うが、そう言った直後、

ミカサ『あああ……エレンのはこんなに細くないのでは?』

エレン「ぶふっ……」

ミカサ『体位のモデルをした時の、布越しに当たったエレンの、アレ……結構、太かった……』

エレン「や、やめろ。何か査定されているみたいで恥ずかしいだろ!」

ミカサ『エレンだって、私を査定する癖に』

エレン「いやまあ、そうだけど。とにかく妄想すればいいんだよ。妄想を重ねて気持ち良くなるのがオナニーなんだから!」

ミカサ『ああん!』

いかんいかんいかん。どんどんミカサがエッチになっていく。

いや、オレのせいなんだけど。オレもどんどん、変態になっていく。

自分でもキモいと思っている。でも楽しい。滅茶苦茶、楽しいんだ。これ。

ミカサ『指じゃ、足りないっ……もっと、奥まで、何かで、貫かれてみたいっ……!』


ドックン……!


ミカサ『エレン……やっぱりこれでは、かえって酷くなるような……ああっ……性欲が、止まらない……!』


ドックン……!


ミカサ『辛い……身体が、火照って、ぬるぬるして、ダメ……自分が自分じゃないみたい……』


ドクドクドクドク………!


ミカサ『エレンと、エッチ、したい……のに………』


ブッチン…………


携帯でのテレフォンエッチで止めるつもりだったのに。

その音が聞こえた瞬間、オレは自然と立ち上がって、ミカサの部屋に足を運んでいた。

ミカサの涙声のせいでもう、完全にオレはブチ切れていた。

ふすまを開けると、そこは桃源郷だった。

ミカサが乱れて仰向けになっていて待っていた。その光景を目に焼き付けると、それに覆い被さる様に、オレは………

ミカサの唇にキスした。午前中から何やってるんだという理性の声は遠すぎて聞こえていない。

乱れたミカサにキスの嵐を。手はもう、暴走してミカサの濡れたあそこに指を突っ込んだ。

服は完全に剥ぎ取った。破れないように気を遣う余裕はなく、もしかしたら、ビリッといったかもしれない。

とにかく、一気に全裸にしてやった。ミカサの中に指を入れてみる。

1本、OK。2本、OK。3本目は、少し痛がったけど。多分、大丈夫かな。

オレ自身の息子は準備万端だ。ゴムは親父に持たされた新品がいつもポケットに1個忍ばせている。

一気に封を開けようと、そう決意したその時………


ピンポーン…………


玄関のチャイムが鳴って、オレとミカサは同時に顔面蒼白になった。

エレン「え、まさか……親父か?」

忘れ物かな。でも鍵は持って出ている筈だから、チャイムなんて押さない筈だが。

ミカサ「はあ……はあ……エレン」

エレン「ああ、分かってる」

現実に一気に引き戻されてオレは気を鎮めた。

急いでズボンを着なおして、自分の服を整えると、玄関に向かった。

来客はただの宅配便だった。何だよ。親父宛の通販かよ…。

ハンコ押して物を受け取ると、オレはそれを親父の部屋に置いて、一気に脱力した。

あー。時間もそろそろ、昼飯食って部活いかないといけない時間だな。

とほほ…。しょうがねえ。今日はここまでしか出来ないか。

オレはミカサの部屋に戻って「タイムリミットだ」と言った。

エレン「悪い。なんかかえって暴走させたみたいだな」

ミカサ「ううん……」

エレン「明日までそんな感じなんだよな。多分」

ミカサ「うん……まだ、ムズムズするけど。後は自分でする……」

エレン「今日は部活休んでもいいと思うぞ。というか、そんな状態のミカサを他の奴らにあんまり見せたくねえかも……」

ミカサ「お休みしても、いいの?」

エレン「そんな状態のミカサと劇の練習したら、その、オレもヤバい気がする」

オレも自分で抜いてから学校に行こう。その方がいいな。

ミカサ「分かった。今日はそうさせて貰う。皆には、調子が悪いと言っておいて欲しい」

エレン「分かった。じゃあ、オレも準備するから」

という訳で便所に逃げ込んでいつもの処理を済ませてから、オレは自分の身支度を整えた。

でも危なかった。宅配便が来なかったら、あのまま部活の事を忘れて、きっとミカサとエッチしていただろうな。オレは。

エレン「……………」

怖い、と思った。ミカサの事もだけど。自分自身が。

オレってこんなにルーズな奴だったっけな。自分で自分にびっくりしちまう。

いや、ミカサが可愛いのが悪い。あいつが色気強いのが悪い。

と、責任転嫁しながら、オレはその日、午後から部活に出かけた。

家に残ったミカサは、恐らく残りは自分で自分の処理をするだろう。

それを聞けないのは残念だけど。それはもう、妄想の中で想像するだけに留めておいた。

そして部活に顔を出すと、アニに「珍しいね」と言われてしまった。

アニ「ミカサ、調子悪いんだ。何かあったの?」

エレン「いや……大丈夫だ。大して悪い訳じゃないけど、用心の為に休ませて来たんだよ。オレが」

アニ「ああ、あんたの過保護のせいか。分かった。それなら仕方がないね」

良かった。オレが過保護だという事になった。これなら疑われずに済むだろう。

アニ「………やり過ぎて足腰立たなくさせたとか、じゃないよね?」

エレン「ぶふううううううう?!」

何でその発想になる?! いや、当たらずとも遠からずだけどな!!!

ジャンがこっち見てる。まずい。すげえ険悪な表情だ。

ジャン「てめええええええ」

エレン「やってないから!!! そういうんじゃねえから!!!」

アニ「そう。ならいいけど。ミカサとやらしー事するのはいいけど、ある程度は自重してよ。あんたたち、今回の劇のダブル主役なんだから」

エレン「え? あ、そっか。今回は、2人が主役になるのか」

マルコ「そうだね。脚本はリヴァイ先生寄りの台本になりそうだけど、ハンジ先生のパートも結構あるからね。ダブル主演と言っても過言じゃない劇になりそうだよ」

エレン「そういえばアルミン、まだこっちに来てないのか? 遅くないか?」

と、思ったその時、アルミンが音楽室にやってきた。

そしてその後ろには、何故か機嫌の悪いリヴァイ先生と、顔の赤いハンジ先生が……。

アレ? これって、まさか。

アルミン「皆、ごめん………やっちゃった」

マーガレット「え? やっちゃったって、まさか!」

リヴァイ「おい。今度の冬公演の演劇、今までダミーの練習をしていたそうだな?」

ギクリ。あちゃー。バレたのか! まずいぞこれは!

リヴァイ「俺とハンジの物語を勝手に公演しようとしていたらしいな? 仮台本、読ませて貰ったぞ」

ひえええええええ。怒ってる。超怒ってる! どうすんだコレ!

リヴァイ「どうせアレだろ。発案はエルヴィンなんだろ」

アルミン「おっしゃる通りで……」

リヴァイ「全く。あいつの場合はサプライズというより毎回ドッキリだからな。未然に防げて幸いだった」

ジャン「あの、でも……もう、練習は始めていますし、その、途中で劇の内容を変えるというのも……」

リヴァイ「ああ。それは分かっている。ただいくら何でも本人達の許可なく、プライベートな部分を劇で皆の前で発表するのはどうかと思うから、一応、内容はチェックさせてくれ。特に俺の事より、ハンジの過去はナイーブな部分もある。俺も今日、台本を読んで初めて知ったんだが」

ハンジ「あははは……ごめんねー。今まで黙っていて」

リヴァイ「それは別に構わないが、とにかく、アルミンの台本を一部、修正を加えさせてくれ。アルミンの台本には想像で補完した部分もあったから、そこは事実を混ぜて修正を加えていい。それと、ハンジの大学時代の話は、1部カットして貰いたい」

エレン「あーやっぱりその方がいいですか。セクハラシーンとか、まずいですもんね」

リヴァイ「いや、そこは本人的には『もう昔の事だからいいよー』って事らしいが、伏せて欲しいのは研究内容の方だ。守秘義務があるから、それに関わっていた事は公には出来ないんだそうだ」

ハンジ「ごめんね。例の某細胞に関する事はデリケートな問題だから。いろいろ突っ込まれたらまずいから。そこはあんまり詳しく描写しないで欲しいのよ」

エレン「ああ、そっちですか」

何だ。ハンジ先生にとってはセクハラとパワハラは過去の事なのか。

リヴァイ「しかし、ハンジ……」

ハンジ「ん?」

リヴァイ「どうしてお前は、先にその事を言わなかったんだ。その……わざと汚い女を演じていたなんて、これじゃ俺がまるでただの馬鹿な変態にしか思えないじゃないか」

実際、そうだと思う。と言ったらげんこつ食らうので言わないけどな。

ハンジ「んー厳密に言えばわざとではないんだけどね。割と本気で汚女だったよ。私は。ただ、それがだんだんエスカレートしていっただけって話だから。実際、リヴァイがちょっと綺麗にしてくれると、その後は変なナンパに絡まれたりした事もあったから。リヴァイと一緒に風呂入る日は、出来るだけあんたと一緒に部屋に籠っていたでしょ?」

リヴァイ「…………だから俺が『折角綺麗にしてやったのに、出かけないのか?』って勧めても部屋から出たがらなかったのか」

ハンジ「まあね。今はさすがにそういうのも減ったけど。20代の頃はまだ、ね。私も一応、女子力あった時代ですから」

リヴァイ「はー……(*凹んでいる)」

ハンジ「いいじゃない。もう過去の事だし。リヴァイのおかげでその必要性、なくなったし。最強の虫よけスプレー、つけてくれてありがとうね」

と、言ってハンジ先生が左手の薬指を見せてくれた。

あー! 金色の指輪だ! もう結婚指輪はめているのか!

リヴァイ先生の方も左手の薬指に銀色の指輪がはまっている。

そうか。籍は先だけど、指輪は先にはめる事にしたのか。

ハンジ「さすがにリヴァイという最強の男を乗り越えてまで手出すような馬鹿はいないでしょ?」

リヴァイ「そうだといいがな」

ハンジ「落ち込まないでよー。私、この指輪、気に入っているんだよ? 太陽をイメージしたデザインだって言われて、あんたが『ハンジみたいだな』って言ったの、嬉しかったし」

うはあ。砂吐きそうな甘さだな。

あ、ジャンが吐血したような顔でぐったりしている。

リヴァイ「その後、ハンジは『だったらリヴァイはお月様だね』って言ったから、俺がこっちの指輪になったが。普通は男女、逆にはめるらしいぞ」

ハンジ「いいじゃーん。実質、リヴァイが私の嫁みたいなものでしょ?」

リヴァイ「昼間は、そうだな。夜は逆転させて貰うが」

ぶふうううう!!!??? さり気に何言ってるんだ?! リヴァイ先生!!!

ハンジ「え? あーうん。まあ、その辺は、ね? 確かにその通りですけどね」

リヴァイ「何だ? 何か不満があるのか?」

ハンジ「いやいや、不満なんて何もないよ?」

リヴァイ「だったら何で、距離を置く? ん?」

ハンジ「やだなーふふふ……その、昼間はダメだよ? 逆転しないからね?」

リヴァイ「ちっ……」

何で舌打ちしているんだよ。リヴァイ先生。

この先生、以前より自分のエロ親父度、ガンガン前に出す様になったな。

いや、元々エロ親父だったんだろうけどな。ファンの女子達はきっとこんなリヴァイ先生は知らないんだろうな。

リヴァイ「話が脱線したな。とにかくそういう訳だから、これからは出来るだけ、こっちの練習にも顔を出す。俺の役はミカサがやると聞いたが、今日はミカサの気配がないが?」

エレン「あ、今日はちょっと休ませています。調子悪いんで」

リヴァイ「ふむ……一応、声をかけてやろうとかと思ったが、まあいいか。俺の役をする以上、アクション満載になりそうな感じだったから、今回も怪我だけには十分気を付けろとエレンが代わりに言ってやってくれ」

エレン「はい。分かりました」

やっぱりこういうさり気ない気遣いはリヴァイ先生らしいな。

途中までですが今日はここまでです。
宅配便のせいで邪魔入ってすみません。グリシャさんの買い物のせいです。

リヴァイ「ああそれと、ガーネット。今、時間あるか?」

ガーネット「なんでしょう?」

リヴァイ「結婚式の時にちょっとしたサプライズを頼みたいんだが、俺の体のサイズを測って貰えないか?」

ガーネット「ん? オーダーしますか?」

リヴァイ「ああ。とある服を、頼みたいんだが……」

ごにょごにょ。急に内緒話を始めたリヴァイ先生にガーネット先輩が爆笑していた。

ガーネット「本気ですか?! いいんですか?!」

リヴァイ「ああ。普段、エルヴィンにはいつもドッキリを仕掛けられるから今回くらいはこっちも仕掛ける。あいつを絶対、驚かせてやりたいんだが」

ガーネット「それ、エルヴィン先生だけじゃなく、生徒も教師も全員、びっくりしますよ? いいんですね? 後悔しませんね?」

リヴァイ「頼む。ハンジの分も頼めるか?」

ガーネット「お任せ下さい。気合入れて作ります(キリッ)」

エレン「結婚式の衣装ですか?」

リヴァイ「ああ。折角だからガーネットの家に頼もうかと思ってな」

ハンジ「ごめんねー。生徒を利用しちゃって」

ガーネット「いえいえ。うちもいい宣伝になるので一石二鳥です」

と、ガーネット先輩の眼鏡が光った。何だ? どんな衣装にするつもりなんだろ?

リヴァイ「後は、そうだな。披露宴の時に何を振る舞うか、迷っている。何か食いたい物あるか? 俺が全部作って振る舞おうと思っているんだが」

エレン「え? 新郎が料理までやっちゃうんですか?」

リヴァイ「よそに頼んでもいいんだが、折角だから自分でやろうと思っている。ケーキはさすがに外注しようと思うが、振る舞う料理は俺がやる」

エレン「じゃあ、御刺身とかも自分でやるんですか?」

リヴァイ「魚捌くのは得意だからな。いいぞ。刺身も出してやる」

すげえええ。ある意味贅沢な結婚式になりそうだな!

アニ「チラシ寿司とか……巻き寿司とかもいいですね」

リヴァイ「了解。お前、寿司関係好きだな」

アニ「はい。まあ、そうですね。後は伊勢海老とかも」

リヴァイ「海老か。めでたい席には定番だな」

アニ「鯛も是非(キリッ)」

リヴァイ「分かった。その辺りの和風の料理をメインに考えておこう」

道場三四郎みたいだな! 料理の鉄人みたいだぜ!

エレン「お品書き、やって下さい! リヴァイ先生!」

リヴァイ「ああ? まあ、料理の鉄人を真似てもいいが」

と、ニヤニヤしているリヴァイ先生だった。

リヴァイ「後はそうだな……結婚式自体は、結婚式場で午前中に軽く済ませて、そのまま午後は披露宴の形を取ろうと思っている。劇部の中で式場の方に来たい生徒はいるか?」

エレン「え? 結婚式と披露宴、別にやるんですか?」

リヴァイ「結婚式の方は招待制だな。会場のキャパの関係で、さすがに全員の生徒は式の方には連れて来られない。披露宴の方には主にOBOGを集めるつもりでいるから、現役のお前たちは来たいなら来てもいいぞ」

おおおおおどうする? 甘えてもいいのかな。

エレン「それは是非、行きたいですけど……いいんですかね」

リヴァイ「構わんぞ。特に、エレン。ミカサ。お前たち2人には特に来て貰いたい。俺達は、お前らのおかげで結婚まで漕ぎついたようなもんだからな」

エレン「え? そうでしたっけ? オレ、何かやりましたっけ?」

リヴァイ「………覚えていないのか?」

エレン「はあ……まあ。なんかいろいろ遭遇しちゃったのは覚えていますけど。でも、特別何か「した」覚えはないですが」

リヴァイ「そうか。なら、思い出させてやる」

と、言ってリヴァイ先生は懐かしむように笑った。

リヴァイ「俺とハンジがいつものようにシャワー室で会話した時の事、覚えているか?」

エレン「え? ああ! アレですか。覚えてますよ。リヴァイ先生、裸だったのに、普通にハンジ先生とシャワー室で会話してましたよね。お互いに裸見ても平気で会話していたから、オレが「つきあっているんですか?」ってうっかりツッコミ入れたアレですよね?」

リヴァイ「そうだ。今思うと、アレが全ての始まりだった」

エレン「え……」

リヴァイ「あの時の、エレンの素朴なツッコミがなければ、俺達は今も、ぐるぐる同じところを走り回ってずっと平行線を辿っていただろう。俺達の関係を変化させてくれたのは、エレン。お前のおかげだ。本当に、ありがとう」

エレン「ええええ?! アレがきっかけだったんですか?! いや、でもアレは、オレじゃなくても、多分、ジャンが見ていたとしてもツッコミ入れていましたよ?!」

ジャン「あ? それはどういう意味だ。エレン」

エレン「後で詳しく話す。いや、だから、オレだからって話じゃなくて、きっと皆、ツッコミたくて堪らなかったと思うんですが……」

オレがそういうと、今度はハンジ先生が笑った。

ハンジ「ああ、だろうねー。でも、実際その言葉が『届いた』のはエレンが初めてだったんじゃないかな? それまでは、どんなに周りから冷やかされても、リヴァイはそれを認めようとはしなかったからね」

エレン「そうだったんですか?」

ハンジ「うん。私が以前、『友人でいよう』なんて言っちゃったせいで、リヴァイの気持ちを封印させてしまっていたからね。今思うと、本当に酷い事したと思ってるけど……」

リヴァイ「まあそのツケは今、払って貰っているからいいとして、だ。つまり、エレンの言葉が俺の中で『響いた』のが全ての切欠だったんだ」

エレン「そうだったんですか」

リヴァイ「ああ。今思うと、『付き合っているんですかー?』とか『夫婦みたいですねww』とかそういう類の冷やかしは受けても、エレンのように具体的に『恋人同士くらいに親密じゃないとやらない』という指摘をしてきた奴は初めてだったんだ。それを冷静に考えてみた時に初めて俺の中で『あれ?』っていう違和感が出てきてな。そこからだ。エルヴィンですら、思っていたけど指摘まではしてこなかったのだから、よほどおかしな関係だったんだと、我ながら笑いたくなったよ」

と、リヴァイ先生が苦笑を浮かべていた。

リヴァイ「それ以外にも、エレンにもミカサにも沢山、世話になった。いつかお前たちが何か困った事が起きた時は、力になってやりたいと思っている。だから、式に2人とも出てくれないか?」

エレン「分かりました。ミカサは渋るかもしれませんが、説得します」

リヴァイ「頼んだぞ。何なら、ミカサが欲しがるような物を用意して釣ってやるから」

エレン「はい。お願いします」

という訳で、皆もそわそわしているけど、式に出ようかどうか迷っているようだ。

アルミン「うーん。でも、いいんですかね? 僕らが式に出席したら、リヴァイ先生のファンの子達から嫉妬されませんかね?」

アニ「あーあるかも。怖いよね。何か嫌がらせされそう」

リヴァイ「何なら式の方は、オフレコにしてもいいけどな。判断は任せるが」

ジャン「いや、それはもう、いいんじゃねえか? いちいちファンの子達のご機嫌伺うのも変な話だろ」

マーガレット「そうですね。私達はリヴァイ先生との繋がりも強いし。体操部の子達も来られる子は来るんですよね」

ハンジ「そうなるね。勿論、希望制にはなるけど」

マルコ「だったらいいんじゃないかな。折角招待してくれるなら甘えようよ。皆で」

カジカジ「いいと思います!」

マリーナ「うん! 皆でお祝いしよう!」

キーヤン「賛成だな」

ジャン「3年の先輩達も勿論、いいんですよね」

リヴァイ「勿論だ。あいつらには絶対、来て欲しいと思っている。あ………」

と、其の時、リヴァイ先生が少し困った顔をした。

リヴァイ「いや、…………ペトラはどうしたらいいんだろうな」

ハンジ「……………」

リヴァイ「呼んでもいいんだろうか。あいつは……」

ハンジ「そこはリヴァイに任せるよ。私が口出せる問題じゃないからね。でも、ニファは来るって言ってたよ」

リヴァイ「そうか」

リヴァイ先生が複雑そうな顔をしていた。

そうか。ペトラ先輩はどうするんだろうな。

披露宴は我慢出来ても、実際、式の方を見たら泣いてしまうかもしれない。

リヴァイ「分かった。少し時間を置いて考える。さて、今日はこの後の練習風景を見学させて貰うからな」

ハンジ「私は体操部の方に戻るね。んじゃ、皆頑張ってね~」

と、言って先にハンジ先生が帰って行った。

そんな訳で結局はリヴァイ先生へ見せる舞台がバレてしまった訳だが、まあ、もうしょうがねえか。

本人監修の元で行う劇になったからかえって良かったかもしれないな。

そして練習の途中、小休止していた時、アニがオレに話しかけて来た。

アニ「エレン、ちょっといいかい?」

エレン「ん? どうした?」

アニ「いや……あんた、いつまでジャンに遠慮してるの?」

エレン「へ?」

何の話だ? いきなり。

アニ「いや、さっきの会話も気になったんだけど。あんた、もう少し強気でいても別に問題ないんだよ? ジャンに変に遠慮しなくても。何で気遣っているのかなって思って……」

エレン「え? え? だから何の話だよ」

アニ「………私が『やり過ぎて足腰立たなくさせたとか、じゃないよね?』ってからかった時、ジャン、怒ったじゃない? それに対して『やってねえから!!!』って言ってたでしょ?」

エレン「あーそれの事か」

やっと思い当たって、オレも頭を掻いた。

エレン「まーアレだ。アレは条件反射で答えただけだ。深い意味はねえよ」

アニ「じゃあ、本当にやってないんだ」

エレン「まだ最後まではやってない。その……オレもいろいろ問題抱えているせいで、頭悩ませている最中なんだよ」

と、アニにどこまで話していいものか悩んでしまう。

エレン「そもそも、最初にくっつく段階で、オレ、ジャンを裏切ったようなものだからな」

アニ「ああ、先に告白したってやつ?」

エレン「そうだ。オレ、ジャンの気持ちを事前に知っていたからな。オレも後からミカサを好きになって、告白するんだったら、せめてジャンに一言『オレもミカサ好きになったから先に告白するわ!』って軽く宣言してから告白すれば良かったな、って今でもちょっと後悔している」

アニ「ええ? 別にそれは、関係なくない?」

エレン「まあ、そうかもしれんが。でも、やっぱり卑怯な事しちまったかなっていう思いは拭いきれてはいねえんだよ」

アニ「うーん。私はジャンみたいにいつまでもイジイジしているのは嫌いだけどね。しかもあいつ、最近、サシャの事も気になっている様子じゃない? 乗り換えるなら、さっさと乗り換えろよカスが! ってつい……」

エレン「アニ、それは本人の前では言うんじゃねえぞ?」

アニもオレと同じくらい口悪いな。まあいいけどさ。

アニ「あ、うん。ごめんごめん。カスは言い過ぎた。『優柔不断が!』だね」

エレン「あんまり変わらん気もするが、ジャンが恋愛事で優柔不断なのは今に始まった事じゃねえだろ。あいつ、ヘタレだしな」

アニ「たまに見ているとイライラするけどね」

エレン「そうかもしれんが、そこはまあ、ジャンの個性の一部だろ」

アニ「あんた、本当に大人よねえ。意外とジャンの事を認めているんだ?」

エレン「え? ああ……まあ、腹立つ事も多いけど、根は悪い奴じゃねえからな。ジャンは」

ジャンは今も部長職をこなして頑張っている。根は真面目な奴だしな。

エレン「ただ、その辺の事ってどこまで独占していいのか分からねえっていうのもあるんだよ」

アニ「どういう意味?」

エレン「今は、オレとミカサは付き合っているけどさ。分かんねえだろ? 未来がどうなるかなんて」

一寸先は闇ってよく言うだろ?

エレン「このまま順調に交際が進めば、そりゃ結婚も視野に入れる。家庭だって子供だって欲しい。でも、人生ってどこでどう変化するかなんて、分からんだろうが」

人の死も含めて。人生は、何が起こるか分からない。

エレン「だから、その……『ミカサはオレのだから』って言いたい気持ちもある反面、それを言っていいのか迷う時もあるんだよ。いや、オレも十分ヘタレではあるんだが、その……ジャンに対しては、オレも複雑な気持ちなんだよな」

アニ「まるでそれじゃ、もしもミカサがジャンに対して揺れたら、追いかけないって言ってるようにも聞こえるけど?」

エレン「そこまでは言ってねえよ。その時は『行くな』って引き留める。絶対に。でも、なんていうかな。初めのやり方を間違えたせいで、オレもその、なんだろうな? もやもやするんだよ。それでもジャンには『もうミカサの事は諦めてくれ』ってオレから言っていいのか? この場合」

アニ「むしろ早く言って。もういい加減、ジャンがウザい(黒笑顔)」

エレン「ええええ………」

アニがアルミンと匹敵する黒笑顔になった。

アニ「いや、女の立場からすれば、の話なんだけどね。ごめん。私は女だから。つい、ミカサの贔屓をしてしまうんだよ」

エレン「そ、そういうもんか」

アニ「ミカサも喜ぶと思うよ。その方がいいって」

エレン「でもなあ、ミカサは、ジャンとの「友人」としての関係は切りたくねえんじゃねえかな」

アニ「下心ある時点で、その関係は破綻しているじゃないの。ミカサももう、いい加減、薄々気づいているんだし」

エレン「…………見ないようにしているだけって話か?」

アニ「そうだと思う。たまにため息ついているしね」

エレン「そっかあ……」

アルミン「1番いいのは、ジャンが別の子とくっつく事だよねー」

と、しれっとオレの横にきて会話に加わるアルミンだった。

エレン「アルミン、聞いていたのかよ」

アルミン「こそこそ2人が話しているから気になってこっちに来ちゃった。ごめんね☆」

アニ「いや、いいよ。アルミンともその件に関しては前から話していたんだよね」

アルミン「うん。さっきのジャンの発言、『お前がそれ言うか?』ってちょっと思ったもんね」

アニ「そうそう。『いや、それはもう、いいんじゃねえか? いちいちファンの子達のご機嫌伺うのも変な話だろ』って、言った時、ちょっとイラッとしたね」

エレン「え? 何で?」

アニ「だって、さっきのエレンとジャンの会話がまさにそうじゃない」

エレン「あー」

そう言われればそうなるのかな。

オレがジャンの機嫌を伺っているのが変な話って意味だよな。ここでは。

アニ「自分の事は完全に棚上げ状態だからね。もういい加減、どうにかして欲しい」

アルミン「サシャとジャン、どうにかしてくっつけられないかなーと、アニとも話していたんだよね」

エレン「つっても、サシャは演劇部員じゃねえし、接点は同じクラスって事くらいだろ?」

アニ「それと、漫画家のアシスタントの関係かな。今もたまに収集かかって、アシさんやってるらしいよ。2人とも」

エレン「あ、そうなのか。それはすげえな」

なんかもう、そっちの道に進んでもいいんじゃねえか? 2人とも。

アルミン「うん。だからねー何とか2人もカップルに仕立て上げたいんだよね。リヴァイ先生とハンジ先生をくっつけたエレンの手腕を借りたいんだけど」

エレン「オレ、殆ど何もしてねえぞ?! 無茶言うなよ!」

アニ「いやいや。10年近くくっつかなかったカップルをくっつけた功績は大きいよ?」

アルミン「僕もそう思う。エレンなら、きっと出来ると思うよ」

エレン「えええええ」

なんか無茶ぶりされているような気がするが。

オレにどうしろと言うんだよ…。

エレン「そんな事、オレなんかより、もっと適任の人がいるだろ」

アルミン「え? 誰?」

エレン「エルヴィン先生とかかな? 進路指導の傍ら、生徒の「愛の」進路指導もしてくれるぜ? 頼めば」

アニ「え? 何それ。初耳なんだけど」

エレン「知らなかったのか? エルヴィン先生、すっげえゲスい性格しているからな。生徒の恋愛事でも平気で首突っ込んでくれるぞ」

アルミン「それはいい事聞いたね。アニ、いっちょやっちゃう?」

アニ「やろう。ジャン×サシャ大作戦、決行しよう」

マルコ「何か楽しそうな事、話している?」

と、其の時、マルコまでこっちに来た。

アルミン「詳しい事は後でメールするよ。ジャンがこっちを怪しみだした」

マルコ「了解。じゃあまた後で」

おいおい。リヴァイ先生とハンジ先生の次はジャンとサシャかよ。

皆、ゲスいなー。まあ、その方が助かると言えば俺は助かるんだが。

ジャン「おい! 休憩そろそろ終わるぞ!」

エレン「了解」

やれやれ。ジャン。お前にもときめきの導火線、仕掛けられるフラグが立ったぞ。

どーなっても、オレは知らね。

と、無責任に考えながら練習を再開するのであった。

リヴァイ×ハンジの次はジャン×サシャフラグ立ちました。
こっちもときめきの導火線仕掛ける気満々です。皆、ゲスい。

という訳で今回はここまで。続きはまた次回ノシ

ガーネット先輩に頼んだ衣装…
エルヴィンへのサプライズならリヴァイのウエディングドレスwだろうが、本人絶対やらないだろうからな
ここは新居にちなんで着流しと割烹着で波平&フネさんと予想してみる(笑)

>>347
ふふふふ………まあ当日までのお楽しみです。











火曜日の1限目は世界史だ。アルミンはまたエルヴィン先生に授業後、相談していた。

エルヴィン「あらら……バレちゃったか。それは勿体ない事をしたね」

アルミン「すみません。リヴァイ先生にうちに来て貰った時に、タンス運ぶ前に、僕の机の上を見られちゃって。僕も隠しておけば良かったんですけど。メモ書きを見られてしまって……」

エルヴィン「まあそういう事もあるよ。むしろそれはそれで好都合だよ」

アルミン「え? どういう意味ですか?」

エルヴィン「舞台は囮って事さ。本命のサプライズは別にある(ニヤリ)」

アルミン「え? 舞台だけじゃないんですか?」

エルヴィン「結婚式にはね、普通『スピーチ』っていう演目をやるんだよ。私はむしろ、そっちでリヴァイを泣かせようと思っている」

アルミン「ああ、なるほど。リヴァイ先生への『お祝い』のスピーチですね」

エルヴィン「そうそう。舞台の事に気を取られているなら好都合だ。不意打ちの感動スピーチで泣かせてやろうと思っている」

エルヴィン先生の方もサプライズを用意しているらしい。

こりゃサプライズ合戦になりそうな気配満々だな。

エルヴィン「で、舞台の件が本人にバレたのはいいとして、今日はそれだけかな?」

アルミン「いえ、実は……」

と、其の時、急に声を落としてアルミンが言った。

アルミン「エレンから聞きました。『愛の』進路相談、やっているんですよね?」

エルヴィン「うん。むしろそっちの方が本業にしたいくらいだけど」

それはダメだろ。

エルヴィン「誰か悩める生徒がいるのかな?」

アルミン「詳しい事は放課後、いいですか?」

エルヴィン「いいよ。ピクシス先生も呼ぶけど、いいかな?」

アルミン「人手が多い方が助かります。では、また放課後……」

エルヴィン「うん。先に進路指導室で待っててね。鍵は職員室に来れば借りれるから」

アルミン「分かりました」

という訳で、本当にアルミンはジャン×サシャ大作戦を決行する気でいるらしい。

そしてその日の放課後、オレとミカサとアルミンとアニとマルコは進路指導室に先に足を運ぶ事にした。

ジャンには「?」という顔をされたが、アルミンが「全員、進路の件でちょっと話があるから」という事で誤魔化した。

そして待つこと数分。エルヴィン先生とピクシス先生が進路相談室にやってきた。

エルヴィン「おや。意外と人数が多い。誰から相談するのかな?」

アルミン「いえ、今日は僕達ではなく、別の2人の事について話したいんですが」

という事でアルミンが代表して事情を説明する事にした。

そして一通り話を聞き終えると、ピクシス先生が悪い顔をし始めた。

ピクシス「それはなかなか……面白い事になっておるのう」

エルヴィン「んーつまり、今、ジャンはどっちつかずな状態でフラフラしている訳だね?」

アニ「そうです。見ていてイラッとします(キリッ)」

マルコ「僕も親友として見ていて、たまに頭を張り倒したくなる時もありますね」

温和なマルコが言うくらいだ。相当だな。

エルヴィン「ふむ。ミカサはどの辺でジャンの気持ちに気づいていたのかな?」

ミカサ「ええっと……怪しいなと思う時は何度もあったのですが」

と、前置きしてからミカサは言った。

ミカサ「1番変だと思ったのは、夏合宿をした時ですね。野球の練習に混ぜて貰った時、あの時のジャンの熱っぽい視線にはさすがに違和感を覚えて……後日、周りの人に確認したら『今頃気づいたの?!』と言われました」

ああ、野球の話をした時のアレだな。ミカサがいるから演劇部にいると宣言したようなもんだしな。

さすがにアレは気づくよな。オレも途中で止めて正解だった。

ミカサ「それ以降、私もどうしたらいいのか分からなくて。曖昧なまま今の関係を続けているので、どうしたら良いのかと」

エルヴィン「うん。その件に関しては放置でいいと思うよ。別にジャンの方から襲い掛かってくるとかいう話ではないんだよね?」

ミカサ「はい。表面上はあくまで「友人」として接してくれます」

エルヴィン「だったら見て見ぬふりをするのも、女の腕の見せ所だよ。放置でいい」

アニ「でも、ウザくないですか?」

エルヴィン「ウザいと思うなら、距離を置いてもいい。だけどミカサの性格を考えればそれは出来ないんだろ?」

ミカサ「……はい」

エルヴィン「曖昧なままでいいんだよ。何も全てに白黒をつける必要はない。灰色の関係だってあっていい。ミカサの方から何かしたら、ミカサが悪者になっちゃうでしょ?」

アニ「ああ、そうか。そういう考え方もあるんですね」

エルヴィン「うん。女の子なんだから、多少ずるくても構わないよ。弄ぶくらいで丁度いいから。ミカサの特権だと思えばいい」

ドS発言きたな。ジャンはドМだからいいのかもしれんが。

エルヴィン「こういう時は、確かにもう一人の女の子、サシャとジャンが付き合う方が都合がいいのは確かだが、それはあくまで、ミカサからみた場合だよね」

ミカサ「そう、ですね」

エルヴィン「いいのかな? キープ君、手放しても本当にいいんだね?」

キープ君って! なんだその言い方! ひでえな。

ミカサ「キープ君?」

エルヴィン「そういう、2番目の男の事を『キープ君』と呼んだりするよ。いい女は、常にそういう男を隠して持っているものだよ」

ミカサ「ええええ………(げんなり)」

ミカサが露骨にげんなりした。なんか可哀想だな。

ミカサ「それって、私が周りから「そう思われていた」って事ですか?」

エルヴィン「まあ、そうみる人はそう見るだろうね。でも別にいいと思うよ。ミスコンの女王に選ばれるくらいの女の子なんだから、男が1人や2人や3人いたって」

ミカサ「1人で十分です(キリッ)」

エルヴィン「ミカサはそういう性格だろうけどね。でも、実際いるからね。そういう女の子も。だから一応、確認しただけだよ。気に障ったならごめんね」

ミカサ「いえ……それならいいんですが」

エルヴィン先生、本当、いろいろぶっ飛んだ先生だよなあ。

エルヴィン「ミカサの方にその気がないなら大丈夫かな。後で惜しくなっても後悔しないね?」

ミカサ「それはあり得ないと思います。むしろ祝福したいと思っているので」

エルヴィン「分からないよ? 実際、そうなってみたら、勿体なかったかなって後悔する場合もあるからね。後で寂しくなっても知らないよ?」

やけに念押しするな。エルヴィン先生。

まさか、ミカサの方にそういう「気配」があると読んでいるのかな。

ミカサ「大丈夫です。私はジャンを祝福したいので」

エルヴィン「分かった。そこまで言うなら、私も協力しよう。ジャンとサシャの2人にも「ときめきの導火線」を仕掛けようじゃないか」

アルミン「ときめきの導火線……なんか聞いたことある」

アニ「私もある。そういう「歌」なかったけ?」

エルヴィン「今の子達は知らないかー世代が違うとしょうがないよね」

と言って、エルヴィン先生がスマホで音楽を流してくれた。

女性? 男性? 中性的な声が流れた。昔のアニメのEDソングらしい。

エルヴィン「いい曲でしょ? 私が恋の罠を仕掛ける時に使うコードネームに使わせて貰っているんだ。「ときめきの導火線」ってね。着火準備が整うまでに少し時間はかかると思うけど、私とピクシス先生で大まかな作戦を考えるよ」

アルミン「よろしくお願いします。もういい加減、僕もイライラしてきたんで」

アニ「本当、お願いします(ぺこり)」

周りにそこまでイライラさせていたのか。何か、かえって気遣わせてしまったな。

申し訳ないような気持ちでいっぱいだ。頭を掻いていると、エルヴィン先生が言った。

エルヴィン「にしても、ちょっと気になったけど。エレン、いいかな?」

エレン「あ、はい」

エルヴィン「君はジャンを出し抜いた件について、まだ罪悪感を残しているんだね」

エレン「まーそうですね。勢いっていうか、オレ、考え無しに告白しちまったようなもんだから」

エルヴィン「うん。でも私は、もうそれは気に病む必要のない事だと思うよ」

エレン「………そうですかね」

エルヴィン先生は紅茶を飲みながら頷いた。

エルヴィン「そもそも、ジャンの方が君の気持ちに早い段階で気づいていた筈だからね」

エレン「え?」

エルヴィン「無意識に抑え込んでいるエレンの気持ちに、恐らく……そのGWに一緒に遊んだ時点で確信した筈だ。男なら、その時点ですぐにミカサに対してのアプローチを仕掛けるべきだよ。いつ、エレンが覚醒するか分かったもんじゃないんだから。私なら、絶対その隙に逆に出し抜いたと思うけどね」

エレン「そうですか……」

エルヴィン「うん。ジャンの方にも何回か、仕掛ける機会はあった筈だし、それをスルーして怖気づいた結果がコレなんだろ? だとしたら、ジャンが文句を言う筋合いはないね。必要以上に、ジャンに対して気を遣う必要はないよ」

エレン「うーん……」

アニと似たような事、言われちまったな。

エレン「つまり『オレのだから』って宣言してもいいって事ですかね」

エルヴィン「君達の事はもうとっくの昔に有名になっているよ。校内でも。知らないの? リヴァイのファンの子達の嫌がらせとかの防護壁になっていた件とか」

エレン「え? 何ですかそれ」

初耳だ。なんか嫌な予感がする。

エルヴィン「ミカサ、リヴァイと一緒にずっと殺陣の練習していたりしたでしょ? もしアレがリヴァイとミカサの2人で行われていたら、今頃ミカサも嫌がらせの対象になっていた筈だ。エレンが傍に常についていたから、皆が「ああ、あの子は違うんだ」と認識して、ミカサは嫉妬の対象から外されていたんだよ。だからエレン、君はミカサを知らない間に守っていたと言えるんだよ」

エレン「えええええ」

マジか。そうだったんだ。全く気付かなかったぜ。

エルヴィン「体操部の子達から聞いたよ。朝から結構、イチャイチャしていたんだってね? リヴァイが赤面するくらいに」

エレン「うわああああ! まさか、見られていたんですかね?!」

エルヴィン「朝の7時きっかりにくる子ばかりじゃないよ? 少し早めに来た子達は、中に入りづらくてちょっと居た堪れない気持ちだったって言ってたなあ」

エレン「すんませんでしたああああああ!」

あの時の事が蘇って思わず頭を下げるオレだった。

エルヴィン「まあ、若いんだから当然だよね。運動したてのミカサにクンクンしたくなるのは男として当然だ。健全な男子だよ」

ミカサ(真っ赤)

ミカサまで赤くなった。ああもう、本当にいろいろ御免なさい。

エルヴィン「そう言う訳だから、あんまりジャンがしつこいようなら、エレンの方から話をつけてもいいと思うよ。まあ、私の個人的な意見になるから、どうするかはエレンに任せるけど」

エレン「そうですね。オレも機会を出来れば設けて、1度あいつと話してみます」

今のままじゃいけないような気もするしな。ちゃんと腹割って話し合いたい。

オレはジャンの事は、嫌いな部分もあるし、好きな部分もある。

親友とは呼べないけど、少なくとも、友人の一人にしてやってもいいくらいは思っている。

………あいつにそれ言ったら「ざけんな」と言われそうだが。

ピクシス「ふむ………わしはエレンの気持ちも分からんでもないがの」

エレン「え?」

ピクシス「出来る事なら正々堂々と宣言してから告白するべきだった。そう思う事は間違ってはおらんと思うぞ? むしろ男気があって良いでないか」

エレン「そ、そうですか?」

ピクシス「ただ人間じゃからの。予定通りに事が運ばない事も多々ある。元々は、エレン自身もミカサにそんなに早く気持ちを伝えるつもりはなかったんじゃろ?」

エレン「そうですね。そもそも、家族としてやっていくべきだと最初は思っていた訳なんで」

ピクシス「だとすれば、それはもう自然の「流れ」のようなものじゃ。美しいと思った瞬間に、言葉が溢れ出た。人間じゃからそういう事もあって当然じゃ。わしなんか、美女に出会った瞬間に口説き落とそうとして怒られた事も多々あるぞ」

手が早い。ピクシス先生ならやりそうだな。

ピクシス「じゃから、むしろ何故、ジャンの方が先に行動を起こさなかったのかがわしからみたら『疑問』に思うの。そこをちゃんと確認した上で腹を割って話せば、案外何とかなるのではないか?」

エルヴィン「私もそう思います。まあ、私の読みが当たっていれば、ジャンは「ミカサ」の方の気持ちも早い段階で気づいていたんじゃないかと思いますが」

ミカサ「え…?」

意外な意見だった。どういう意味だ?

エルヴィン「男っていう生き物は、自分の方に気持ちの向いていない女に、なかなか自分から告白する勇気の持てない臆病な生き物だっていう事だよ」

エレン「え? そ、そういうもんですかね? オレの場合は、そうじゃなかったですけど」

ピクシス「いや、そうとも限らん。エレン、お主は潜在意識の中の何処かで「イケる」と判断したから、告白出来たのかもしれんぞ」

エレン「んー……」

そうなんだろうか? あの時のオレはそこまで考えていたんだろうか?

いや、深い事は何も考えていなかった気がする。

ただミカサが「綺麗」で、腹の奥から、自然と言葉が出て来た感じだった。

後の事、あんまり考えずに先走った感じだったんだけどな。

ピクシス「まあその辺は、ミカサとも答え合わせをしないと分からん。告白された時点では、ミカサはエレンの事をどう思っておったんじゃ?」

ミカサが真っ赤になっている。あれ? どうしたんだ?

ミカサ「今思うと、私がエレンを好きになったのは、恐らく、6月の時点です」

エレン「え………」

6月?! オレより早くねえか?

ミカサ「梅雨の時期、私がついつい、ゲームにはまって家事仕事をサボってしまったのに、エレンは笑って許してくれて。むしろ、家の中で寛いで欲しいと言ってくれた。あの時、ふわっとする感情が出て来て。エレンの前なら、多少の失敗はしてもいいんだって思ったら、すごく、その、安心して。エレンに包まれているような感覚を覚えて。温かいって感じてしまって、その……多分、そこからです」

ええええ? あの逆転のゲームがオレ達を結んだって事かそれって?!

いや、確かにあの時のミカサ、可愛かったけどな! 異様に!

そうか。そんなに早い段階からミカサ、オレの事、好いてくれていたのか。

ミカサ「ただ、それに気づいたのは、夏の海の件があってからで、加えて、サシャの美少女っぷりに嫉妬している自分とか、いろいろ重なって……なので、今思うと、告白された時点では、私の中では「OK」以外の選択肢はなかったです」

そうだったんだ。いや、それを聞けて嬉しいな。

エレン「オレとしては、いつも完璧なミカサがドジやってくれた方が可愛いから好きなんだけどなー」

ミカサ「ううう……あんまり期待しないで欲しい」

と、変な会話をしていたらエルヴィン先生が「やっぱりね」と言った。

エルヴィン「という事は、むしろミカサの方がエレンの言葉を「引き出した」と言えるのかもしれないね」

ピクシス「じゃの。つまりジャンも気づいておったんじゃよ。エレンだけでなく、ミカサの方の気持ちにな」

エルヴィン「だから告白出来なかった。玉砕覚悟で突っ込む覚悟がなかった。つまりそういう事なんだろね」

アルミン「うーん。でもだったら尚更、今になってもチクチク嫉妬するのは筋違いだよねえ?」

アニ「言えてる。もういい加減諦めなよって思うけど」

マルコ「僕もサシャの件が出て来なかったらここまでイラッとはしなかったと思うけどね。片思いで思い続けるのは自由だけど。フラフラするのは、ちょっとなあって思うよ」

エルヴィン「その肝心のサシャの件だけど。彼女は今、本当にフリーなのかな?」

アニ「だと思いますけど」

エルヴィン「親しい男友達とかいないの? ミスコンの準優勝するくらいの可愛い子なんだから、1人くらいいない?」

エレン「あー一応、いますけど。コニーは彼女いますからね」

アルミン「一緒に馬鹿やってるだけの、男友達って感じですけど」

エルヴィン「へえ……」

その瞬間、エルヴィン先生が悪い顔になった。すっごく。

エルヴィン「まさかとは思うけど、リヴァイとハンジの2号ペアって可能性はない?」

エレン「え?! そっちの可能性、考えますか?!」

エルヴィン「わかんないよー? 友人関係程、怪しいものはないからね。コニーの方に「今」は彼女がいるところも、リヴァイとそっくりな状況じゃないか」

ああそっか。リヴァイ先生、ハンジ先生と付き合う前に結構、彼女いたんだよな。

え、でも、付き合った期間は短い筈だし。そのまま当てはめるのは違うような気がする。

エレン「でも、中学時代からの彼女だって言っていたんで、長いんじゃないんですかね」

アルミン「中学卒業時から付き合い始めたなら……もう7か月目だよね」

アニ「じゃない? コニーはサシャの事、そんな風には思ってないんじゃ……」

エルヴィン「7か月なら、まだ分からないよ。リヴァイにも、そのくらい付き合った彼女がいなかった訳じゃない」

エレン「え……そうなんですか?」

エルヴィン「ハンジの前にも「恋」をした経験がない訳じゃないよ。…………先に死んでしまったそうだけど」

?! 衝撃の事実をさらりと言われてしまった。

エルヴィン「むしろ10代の頃のその経験があったからこそ、何処か恋愛に対して「臆病」だったのかもしれないね。大事な人を亡くしてしまったから、今でも『死者に会えるなら会ってみたい』と呟いている事もあるよ」

あ、だから幽霊が「怖くない」のか。なんか納得した。

エルヴィン「なるほど。今、サシャの選択肢には「ジャン」と「コニー」という2人の男性がいる訳だね」

アニ「いや、コニーは違うんじゃ……」

エルヴィン「それは決めるのは私達じゃないよ。自分の勝手な都合でサシャの選択肢を狭めてはいけない」

まあ、それはその通りだが。

エルヴィン「分かった。まずはサシャ自身の「潜在意識」がどちらに傾いているのか調査しないといけないね。話はそこからだ」

と、方針を固めてしまったようだ。

ピクシス「そうじゃな。場合によってはジャンとサシャは結ばれぬかもしれんが、其の時は其の時じゃ」

アルミン「えええ……それはちょっと……」

エルヴィン「ダメだよ。あくまで私達は「相談」を受けるだけだ。実際にどうなるかは、本人次第だ。私達も何でも屋をやってる訳じゃないからね」

アルミン「………はい」

まあ、ここはエルヴィン先生が正論だな。

オレもなんかちょっと安心した。そういう事なら、オレだって応援するぞ。

ジャンとサシャを無理やりくっつけるんじゃなくて、あくまでサシャの気持ちを後押しする方向なら協力するのに迷いはない。

サシャ自身は今、どう思っているんだろうな。あいつの事だから「分かりません」って即答しそうだけど。

そんな訳で、怪しい「愛の」進路相談は終わって部活に戻る事にした。

すると、そこに何故か話題のサシャが部室に来ていて、ジャンと話していた。

ジャン「だーから、その「レイヤー」っていうのはどういう意味なのかもうちょっと分かりやすく説明しろよ!」

サシャ「ええと、透明なミルフィーユみたいなもんですよ? それがないと、フォトショが使えません」

ジャン「ダメだ。サシャの説明の仕方がわけわかめ過ぎる…」

と、頭を悩ませていた。

アルミン「ああ、フォトショの使い方を説明していたんだ」

サシャ「はい! ジャンの方から『俺もフォトショ使えるようになりたい』と言い出したんで。出来る限り分かりやすく説明しようと思ったんですが」

アルミン「ジャン、レイヤーっていうのはね、透明な『紙』を重ねていくようなものだよ」

ジャン「紙……あああ! そういう事か! ミルフィーユとかいうからケーキ連想したじゃねえか!!」

サシャ「だから、重ねるイメージを伝えたかったんですが」

ジャン「紙でいいじゃねえか! なんでそこで『ミルフィーユ』を選択するんだよ!!」

と、こっちはこっちでいいコンビな気がする。

そんな様子をミカサが可笑しそうに笑ってみている。

この様子だと、エルヴィン先生の言うような心配は要ら無さそうだな。

ジャンとサシャがお馬鹿な会話をしていますが、今回はここまで。
続きはまたノシ

サシャ「私にとっては食べ物の方が頭の中で処理しやすいので(キリッ)」

アルミン「その辺はイメージの問題だからね。まあ、普通は『透明な紙』として認識するかな。でもどうして? ジャンは作画のアシスタントじゃないの?」

ジャン「いやー……その、なんかどんどん仕事を任されるようになっちまってな。先生が『フォトショ使えるようになったら時給上げる』って言い出しているし、だったら覚えようかなって思って」

アルミン「もういっそ、そっちの道でやっていったら? ジャン、才能あるじゃないか」

ジャン「いやいやいや! あくまで小遣い稼ぎだからな! 趣味と実益を兼ねた、いいバイトだと思っている。サシャもアシスタントのおかげで深夜のバイト全部辞めたからな」

サシャ「はい! おかげで今は財布がホクホクです! たまにマーガレット先輩のご自宅から学校に通わせて貰っているくらいですからね!」

ジャン「同じ深夜に働くなら、アシスタントの方が断然いいからな。ま、そういう意味じゃオレも安心したんだけど……」

おや? やっぱりジャンの奴、サシャの事、気にかけているな。

手のかかる妹みたいな感覚か? サシャを見る目が以前より柔らかい気がする。

サシャ「私の場合、フォトショの作業と飯スタントの両方の賃金貰っていますからね! ジャンよりお金貰っているんですよ! 2倍働いているので! むふー!」

ジャン「オレの場合はサシャより入る時間が短いっていうのもあるけどな」

マーガレット「いやーでも、頼りになる後輩がいてこっちは助かっているよ! おかげでうちの母、つやつやしているからね! 肌が!」

サシャ「栄養管理は任せて下さい! 食べ物の事なら詳しいですから!」

マーガレット「いつでも嫁に行けるよね! サシャを嫁に欲しいけどね!」

サシャ「女同士なのが残念ですね! むふー」

男だったら嫁に行くのか。サシャよ。

ジャン「……………」

ジャンが頭を掻いている。やっぱりサシャの事、意識し始めているよな。コレ。

サシャもサシャで、料理美味いんだよな。食いしん坊なだけあって。

ジャン「皆が戻って来たから、そろそろ練習始めるか。サシャはこの後、どうするんだ?」

サシャ「今日は暇なので、ここに居てもいいですよ? 皆の様子を見学してもいいですか?」

アニ「勿論いいよ。あ、お菓子でも食べな(餌付け)」

サシャ「ありがとうございます! (しゅぱー!)」

手が早いな。まあ、お菓子でも食べながら見学しておけばいいか。

しかし練習を重ねていたその時、アルミンがふと、言い出した。

アルミン「ううーん」

エレン「どうした。アルミン。唸って」

アルミン「いやね。リヴァイ先生ってさ。学生時代にかなりモテたって話だったんだけど」

エレン「あーそういやそう言ってたな」

アルミン「だったらさ。女子の人数、アニとマリーナとマーガレット先輩だけでいいのかなって思って。もう少し人数、増やした方がいいんじゃないかな」

エレン「スカーレット先輩もガーネット先輩も出て貰うか?」

アルミン「いや、そういう次元じゃなくてね。エキストラ役でいいからさ。綺麗どころの女子、もう少し出て貰えないかな」

ジャン「つまり人数が全然、足りないって事か?」

アルミン「そうなるね。なんか取り巻きが20人くらい常にいたらしくて、リヴァイ先生、早く学校に来ると騒ぎになるから毎日、遅刻ギリギリに登校していたらしいよ」

ジャン「…………羨ましいこった」

と、半眼でつい答えるジャンだった。

リヴァイ先生のモテ方ってもう芸能人のレベルだもんなあ。

アルミン「なんかリヴァイ先生曰く、入学したての頃は全くそんな事はなかったのに、徐々に徐々に人数が増えていって、自分でも『何でだ?』と首を傾げていたそうだよ。ハンジ先生曰く『リヴァイは遅行性の毒と同じだから』とか言っていたから、取り巻きの女子をどんどん増やしていく場面が欲しいんだよね」

ジャン「だったら仕方がねえか。募集かけてみるか?」

アルミン「いや、一般公募は止めた方がいい。トラブルの元になるからね。僕としては、サシャとかクリスタとか、ミーナとか。うちのクラスの中から出てくれそうな子達を何人か引き入れたいんだ。ペトラ先輩も出来れば出て欲しいけど」

エレン「ペトラ先輩は大丈夫じゃねえか? ニファ先輩も頼めばやってくれそうだしな」

アルミン「そうだね。交渉してみようか。一応、その辺は身内だけで募集かけよう。サシャ、エキストラ、やってみない?」

サシャ「はい? エキストラですか? 何をすればいいんですか?」

アルミン「ミカサにくっついて『格好いい!』とか言えばいいよ」

サシャ「お安い御用です! 了解しました! (ビシッ)」

そんな感じで細かいところも煮詰める事になった。

そしてミカサのリヴァイ先生のスーツの方のコスプレ衣装が大体完成したそうだ。試着してみる。

スカーフをつけた男装のミカサが、すげえ格好いい。似合っている。

オレは白衣に伊達眼鏡だ。化粧は今回は殆ど要らないので、楽だな。

ミカサ「エレン、雰囲気が似ている…」

エレン「ん? そうか?」

ミカサ「エレンは喜怒哀楽が激しい方なので、ハンジ先生で良かったかも。私では、ハンジ先生を演じる自信はなかった」

エレン「あーまあ、適材適所ってやつだな。ミカサの動き、リヴァイ先生に似ているもんなあ」

そう言ってやるとミカサがガクブルし始めた。

ミカサ「自分でも薄々気づいていたのに。やめて(涙目)」

エレン「あ、悪い。すまん……」

というか、動きだけじゃないんだけどな。たまに何処となく『似てる』と思う事は多々ある。

顔はミカサの方が『美人』だけど。綺麗好きだったり。料理が出来たり。

感覚的には『兄妹』みたいな近さか? 親戚とかじゃねえんだろうけど。

そんな訳で衣装合わせをしたり、台本を元に練習をしたりしてこの日はあっさり終わった。

濃厚なラブシーンの練習はまだもうちょっと先の話になりそうだ。

ミカサがその日をわくわくして待っているのが凄く良く分かる。

家に帰ってからも人工呼吸のシーンとかについて熱心に語っていた。

勿論、人工呼吸については親父にも話を聞いて、家で実際、簡単なレクチャーを受けたけどな。

知っていて損はないそうだ。かえっていい経験になったぜ。

そんな訳でオレはその日の夜、珍しく自分の方からジャンに電話した。

事前に言わないといけないと思ったからだ。あいつを呼び出して、しっかり話し合いたい。

出来れば1対1で。ぶん殴られても構わない覚悟で電話をかけたら、

ジャン『ああ、オレだけど。珍しいな。エレンか』

エレン「オレだ。今、時間あるか?」

ジャン『あーちょっと待ってくれ』

と、言って何やらごにょごにょしていた。

ジャン『今、ちょっとマーガレット先輩の家に寄っているんだ。明日じゃダメか?』

エレン「ああ。別に急ぎの用事じゃねえ。ジャンに話したい事がある。お前の方の都合に合わせるよ」

ジャン『分かった。だったら明日でいいか? 明日の昼休みとか』

エレン「了解。じゃあまた明日」

という訳で、明日の都合をつけて貰って電話を切った。

翌日。11月26日。昼休み。

昼飯を食ってからオレはジャンを呼び出した。

あんまり人に聞かれたくねえ話だから、何処で話すべきか迷う。

ジャン「話って、何だ?」

エレン「んー……教室じゃ話しにくいから、外行くぞ」

オレはジャンを第一体育館の外辺りに呼び出した。

体育館の周りには誰もいなかった。静かな昼休みだった。

ジャン「で? 話ってなんだ?」

エレン「………」

どう切り出したらいいんだろうな。こういう繊細な話は。

エレン「………聞いてもいいか?」

ジャン「何を」

エレン「お前、ミスコンの最終決選、どっちに結局入れたんだ?」

ジャン「ぶふうううううう?!」

いきなり吹いた。この聞き方が一番いいかなと思ったんだがダメだったか。

ジャン「何で今頃その話だよ。何でお前に教える必要が……」

エレン「あれ? 『ミカサだよ!!』って即答じゃねえんだ?」

ジャン(ギクギク)

おおっと? 反応がおかしいぞ? これは釣れたか?

エレン「正直に言え。お前、今、サシャとミカサの間で揺れているだろ」

ジャン「うぐ………!?」

エレン「なんか、変だよな。以前はミカサの事ばっかり見ていたくせに、最近はそうでもねえだろ? サシャの方も気になっているんじゃねえのか?」

ジャン「…………」

エレン「アニに、言われたんだよ。オレがこの間、ジャンに対して『やってないから!!』って言っていたのが、気遣い過ぎだって。オレはそういうつもりなかったけど、あの時のお前、どういうつもりでオレに絡んできたんだ?」

ジャン「………………」

ジャンの沈黙が重かった。話づらいのは分かるからここは待ってみる。

ジャン「単純に嫉妬するだろ。童貞を先に卒業されたら、誰だって」

エレン「それって、つまり相手が「ミカサ」だから嫉妬した訳じゃねえって事だよな」

ジャン「………さあな。好きに受け取れ。オレもそこまで他人に強制はしねえよ。ムカついたんなら謝ってもいいが。お前も少しは自重しろよ。見ているこっちはイチャコラ見るの辛いんだぞ」

と、ジャンはこっちを見ないまま言った。

エレン「ああ、その件については謝る事しか出来ねえな」

ジャン「反省はしても改善はしねえって奴か」

エレン「そうなるな。そもそも人前でイチャコラするのはオレよりミカサの方が先に仕掛けてくる事の方が多いからな」

コミケ会場で誘惑仕掛けられた時はマジでびびったしな。

ジャン「それも分かってる! くそ……本当、羨ましくてムカつく」

エレン「そう思うならお前もさっさと彼女作ればいいじゃねえか」

ジャン「あー………」

ジャンが頭を抱えだした。

ジャン「オレはお前みたいに死に急ぎ野郎にはなれねえよ……」

エレン「……………」

ジャン「本当、お前、すげえよ。自分から告白出来たんだろ? そんなの、想像しただけで心臓壊れそうになるだろうが。それが出来たお前が、正直、羨ましくて堪らねえよ」

手が震えていた。ジャンにとっては、それくらい勇気の要る事らしい。

ジャン「臆病者だって、ヘタレだって言われるだろうがな。自分から行動を起こすっていうのは、すげえ勇気が必要だろうが。オレにはとても………」

エレン「勇気、ねえ……」

オレにとってはちょっと感覚が違った。あの時は勇気なんて必要なかったからな。

エレン「そういうんじゃねえけどな」

ジャン「は?」

エレン「いや、オレは勇気を出して告白した訳じゃねえよ」

ジャン「はああ?」

エレン「自然と、溢れ出た感じだ。水が零れる様な。こう、抑えきれない感じで、さ」

と、アクションを交えて説明してみた。

エレン「うっかり、言っちまった感じだったんだよ。月の綺麗な夜だった。その月明かりの中に照らされた、ミカサがすげええ綺麗でさ。今、思い出してもゾクゾクするぞ。あの時の、ミカサの姿を思い出すと」

ジャン「…………」

エレン「そもそも、オレも自覚したからと言って告白するつもりなんてなかった。最初は隠しておくつもりだったんだ。でも、あの時のミカサに吸い寄せられるような感覚……磁石に引っ張られるような感じだったな。なんか、もう一人のオレが『いけ!』って命令出した感じでさ。つい、『好きだ』って言ってしまったんだよ」

ジャン「その感覚はオレには全く分からねえ」

エレン「かもしれねえな。オレの場合はそうだったって話なだけだ。きっと、オレは短気な性格しているから、堪え性がなかったのかもしれん」

ジャン「そうだとしても、やっぱりすげえよ。エレン……お前は………」

エレン「ん?」

ジャン「お前は、オレの出来ない事をやってのけた。だから、嫉妬するのは筋違いだってのも本当は分かっている。でも、止められないんだ。つい、嫉妬しちまう気持ちっていうのは……」

エレン「…………そうか」

ジャン「自分でもウゼエって思っているよ。こんな未練たらたらな男、アニとかすげえ睨んでくるしな。マルコも最近呆れているみたいだし。アルミンもたまに苦い笑みを浮かべるし。先輩達にも『そろそろ次の恋を探したら?』とか言われるしな。でも、どうやったら諦めがつくのか、自分でも分からねえんだよ」

エレン「……………」

ジャン「サシャに対する気持ちも、自分でも良く分からねえ。逃げているだけなのかなとも思うしな。自分の気持ちが届かないのを自覚したから、サシャで埋め合わせようとしている自分がいるような気がして。それって、ただ弱いだけじゃねえのかな」

エレン「でも、美少女サシャにドキッとしたのは本当だろ? 真っ先に動揺していたじゃねえか」

覚えているぞ。すげえ勢いでガタガタしていたのは。

ジャン「ああ。まさかあそこまで酷いギャップを持っているとは夢にも思わなかった。あいつ、普段全く化粧しねえしな。よく考えたら、化粧しないであれだけ可愛いなら、相当の美少女だよな」

エレン「まあそうだろうな。ミカサは毎日、薄化粧しているしな」

ジャン「そうだったのか?」

エレン「あれ? 気づいてなかったのか? ムダ毛処理とかも超完璧だぞ。隙がねえよ?」

ミカサは派手な化粧はしないが、所謂「ナチュラルメイク」というベースメイク。つまりすっぴんに限りなく近いメイクは毎日ちゃんとやっている。

オレに言われせれば「すっぴん」と何処がどう違うのかイマイチ分からないが、日焼け防止の為にやっているらしい。

ジャン「そうか。だったらオレはミカサを勝手に「すっぴん美人」だと思っていた訳か」

エレン「まあ、大して差がある訳じゃねえけどな。ミカサはその辺、すげえ女らしいぞ。ちょっと完璧すぎるんじゃねえかなってこっちが心配になるくらいだけどな」

ジャン「すげえ理想的じゃねえか。ちくしょう……(涙目)」

エレン「お前、女らしい女が好きなのか? でも、サシャだってそういう部分はあるだろ」

ジャン「そりゃ、料理も出来るし、明るいし、たまにアホだが、決して嫌いじゃねえよ」

と、ジャンがまだぶつぶつ続ける。

ジャン「でもな……やっぱりオレの中ではミカサが「上」なんだよ。理想が絵から飛び出て来たのかってくらい一目惚れだった。集英高校を受験した時、同じ教室で試験を受けた髪の長い女、アレ、今思うとミカサだったんだよな。オレも集英落ちたけど。ミカサも受験だけは一応、受けていたんだよな」

エレン「お前、集英の受験の時にミカサに会っていたのか」

ジャン「恐らくな。すれ違っただけだったけど。今思うと、アレは絶対、ミカサだった。髪長かったけど。入学式で同じ顔を見た時、髪切っていたけど、すぐ分かった。あの子だって。なんでこっちに来たのか、ずっと不思議だったけど。内申点の方で落とされていたと後から知って合点がいった。だからもう、勝手に運命の出会いのような気がしていたんだ」

エレン「そうか」

謎がまた1個解けた。あの時のジャンがやたら後方を凝視していたのはミカサをガン見していたんだな。

ジャン「ミカサの傍にお前がいるのにすぐ気づいて『なんだ、彼氏持ちか。そりゃそうか』って思ったけど。すぐには諦め切れなくて。でも後でエレン自身が『家族だ』って言って、まだ2人がそういう関係じゃねえって知って浮かれて。だったらじっくり距離を詰めようと思っていたら、だんだんミカサの方の目の色が変わって来たのにすぐ気づいた。6月頃だったかな。正確には覚えてねえが。オレは何も出来ずにいた。今思うと、GWでお前と話した後、すぐに行動を起こすべきだったんだ。出来なかったのは、オレがヘタレなだけで、誰のせいでもねえんだよ」

エルヴィン先生も同じ事を言っていたな。

確かに、GWの時点ではまだ、ジャンにもチャンスがあったんだと思う。

少なくとも、自分の気持ちを伝えるチャンスはいくらでも、あった筈だ。

その結果、振られる事になったかもしれないが、それでも、やはりジャンは動くべきだったのかもしれない。

何もしないでいたツケがジャン自身を苦しめているのか。

ジャン「そもそも2人も好きな女がいる自分って、どうなんだ? とも思うんだよ。正直言って自己嫌悪しかねえぞ」

エレン「あー浮気者っていう意味か」

ジャン「そうだよ!! しかもどっちも手に入らないだろうしな!」

エレン「ミカサはともかく、サシャは手を伸ばせば届くかもしれねえだろ?」

ジャン「どうだかな。サシャの奴、コニーと仲いいだろ」

エレン「あいつらは、ただの友達だろ?」

ジャン「そんなの信用できるかよ!!! もうオレは騙されねえぞ!! リヴァイ先生の件といい、オルオ先輩と言い、エレン、お前と言い、皆最初は誤魔化すもんだろうが!!!」

そう言えばそうでした。サーセン。

ジャン「もう、いいんだよ。オレは。好きな女と一緒になれずに一生独身でいろって事だろ(ブツブツ)」

エレン「自虐的過ぎるぞ! リヴァイ先生みたいになるなよ!!」

ジャン「ああ? リヴァイ先生? あの先生も自虐的なのか?」

エレン「落ち込むとそうなるな。いや、それは誰でもそうなんだろうけど。今、この時点で何もかも諦めるんじゃねえよ!!」

オレはジャンに喝を入れてやりたかった。下手くそな喝だろうけど。

エレン「お前、夢があるんだろ?! 早く独立して家庭持ちたいっていう、すげえ立派な夢があるじゃねえか! オレ感心したんだぞ?! こんなに早い年齢のうちに夢があるお前に!! 羨ましいとすら思ったんだぞ!!」

ジャン「そうか?」

エレン「ああ! だったらそう簡単に夢を諦めるんじゃねえよ! お前の場合『彼女』がどうしても必要になる。嫁にしたいと思う女がいるなら、まだ諦める必要ねえよ!」

アレ? 何でオレ、こんなにジャンの事を応援しているんだ?

ジャン「どの口がそれを言うか……(ギリギリ)」

エレン「ひはいひはい! 口ひっぱるは! (ひっぱるな!)」

ジャン「(手離す)はー。オレはお前が羨ましいよ。実直で、真っ直ぐだもんな。いつだって、そうだ」

エレン「……………」

ジャン「理想だと思うぜ。お前のような男は。でも、オレはエレンのようには生きられない。そういう性格じゃねえからな」

と、自分に諦めたようにそう呟くジャンだった。

ジャン「ミカサがエレンに惚れたのも分かるよ。お前、常にミカサの事を気にかけているもんな。ミカサもそれは同じだけど。2人の間に、割って入れるなんてもう、今更思ってはいねえよ」

エレン「………」

ジャン「きっかけが欲しいだけなのかもしれねえな。ミカサに振られるのが1番いいのかもしれないが。それをされたら、少なくとも暫くは学校に来られない自信しかねえし。サシャの事も、正直『今』はどうしたいと思っているのか自分でも良く分からねえし。オレ自身も最近、ずっともやもやを抱えたままなんだよ」

エレン「…………そうか」

もやもやするのは辛いよな。その気持ちはオレにも良く分かる。

ジャン「時間が解決するのを待つしかねえのかな。オレは、本当、どうしたいんだろうな? お前みたいに、そういうのがすぐ自分で「分かる」性格だったら良かったんだが。心の中はずっと『曇り空』で、雨も晴れもない状態でどんよりしているんだよ」

エレン「ううーん」

困ったな。何も解決策が思い浮かばねえ。

思い浮かばないなら、何も出来ねえよな。しょうがねえよ。

エレン「じゃあ、仕方ねえか」

ジャン「え?」

エレン「ミカサも好き。サシャも好き。そのまんま、受け入れちまえよ」

ジャン「は?」

エレン「だってそうするしかねえだろ。それ以外、何が出来るって言うんだ?」

ジャン「待て待て。エレン。お前、オレに『ミカサの事を諦めろ』って言いに来たんじゃねえのか?」

エレン「オレも最初はそのつもりで話そうと思っていたんだが、気が変わった」

ジャン「はあ?」

エレン「だって、よく考えたらおかしくねえか? 人の心は他人に強制されるもんじゃねえだろ」

ミカサが好きになる気持ちそのものを他人のオレが止める事なんて出来ねえ。

しょうがねえよ。ミカサはそれだけ魅力的な女なんだから。

それを1番知っているのはオレだけど。

エレン「オレがジャンに『ミカサの事を諦めてくれ』って言っても、はいそうですかって受け入れられねえだろ? だったらそれはもう、言うだけ無駄だし。それこそ、自然と消える時を待つか。ずっと抱えて生きていくか。そこはもう、ジャンが決めるべき事でオレが口を出せる問題じゃねえ」

ジャン「…………」

エレン「サシャの事だってそうだな。サシャも可愛いっていうのは、オレも同じ男として分かるし。まあ、ミカサの方が可愛いけど。サシャがコニーとくっつくかどうかは知らんが、少なくとも『今』の時点ではサシャはフリーの筈だろ? だったらジャンが何もしないでいるのは勿体ないような気もするな」

ジャン「エレン、お前………本物の馬鹿だろ?」

エレン「よく言われるが、それでも構わん。少なくともミカサの事を好いているのはジャン、お前だけじゃねえからな」

リヴァイ先生もジャンとは違う意味でミカサを気に入っているし、それ以外の奴らだって、ミカサを密かに思っている奴もいるだろう。

でも、オレは負けない。ミカサの中で「トップ」で居続ける。その自信はある。

だからあんまりごちゃごちゃ考えてオタオタするより、どんと構えた方がいい気がしたんだ。

エレン「ミカサの心が誰かに奪われるかもしれない『危機感』は常に持っていた方がいいんだよ。奪うなら、奪って見せてみろ。それくらいの余裕がねえと、男として格好悪いだろ」

ジャン「………ッ」

その瞬間、ジャンが俯いて歯を食いしばった。

ジャン「お前のそういうところ、本当にムカつくんだが……」

エレン「ああ? それがどうした」

ジャン「ちくしょう……格が違い過ぎる。なんでそんなに、先にいっちまうんだよ……お前は」

悔しそうに俯いている。そんな事言われてもオレにもどうしようもねえ。

オレ、あんまりごちゃごちゃ考えるのが元々、苦手なんだよ。

シンプルに考えた方がいい。それがオレの生き方だからな。

ジャン「それはつまり、オレがどっちの道を選ぼうが、お前自身は、干渉しないって事だよな」

エレン「妨害はするぞ。ミカサをみすみすジャンに渡すような馬鹿じゃねえよ」

ジャン「ははっ……そうかよ!」

其の時、ジャンはやっと顔をあげて笑って見せた。意地の悪い顔だった。

ジャン「その言葉、後悔すんなよ。分かった。オレはオレの思うままに、進んでみる。どう転ぶかは、自分でもさっぱり分かんねえけどな」

エレン「それでいいんじゃねえの。ま、ミカサは絶対渡さねえけどな」

とりあえずジャンの中の気持ちの整理がついたようだ。オレも腹を割って話せて少しほっとした。

こういうのは、自然の中に身を任せるのが1番だとオレは思う。

ジャンの嫉妬はうぜえええとも思うが、元々こいつ、こういう奴だしな。もうしょうがねえ。

ジャン「礼は言わねえからな! 絶対、後悔するなよ!!」

エレン「要らねえよ!」

という訳でなんとなくだけど解決(?)したような気もして、それぞれ教室に戻る事にした。

教室に戻るとミカサが心配そうにこっちに来た。

ミカサ「ジャン、大丈夫だった?」

エレン「あーうん。もう大丈夫じゃねえのかな。多分」

ミカサ「そう……諦めてくれたのね(ほっ)」

エレン「いや、それはないみたいだけど」

ミカサ「へ?」

エレン「なんかもう、開き直ったみてえだ。どっちも好きなんだってさ。『今』は」

ミカサ「……………そう(青い顔)」

エレン「ん?」

ミカサ「今、私の中でジャンの好感度のような物がマイナス1万くらい下がったかも」

エレン「えええええええ?!」

ミカサ「優柔不断な男は、ちょっと。エレンのように、スパッと決める男の方が好き」

しまった。なんかかえってオレが酷い事をしてしまったような気がする。

ミカサ「ジャンとは少し距離を置く事にする。最初からそうすれば良かった」

エレン「んんー……」

どうすっかなー。こじれちまったなー。あちゃー。まあいいか。もう、これも自然の流れだな。

ジャンには悪いけど。オレもミカサを独占したいんだ。まるで孔明の罠みたいな真似しちまったけど、許せ。ジャン。

そう心の中で思いながら、教室でマルコや他の男子と話すジャンを見つめるのだった。

意図せず公明の罠を発動したエレンでしたwwww
ミカサの中でジャンの株が大暴落したのでもうあかんですww

という訳でここまで。次回はまたノシ








11月30日。日曜日。着々と舞台の準備が進んでいたその頃。

ちょっとお休みを貰ってオレとミカサは親父と共にちょっと高級な洋服店に足を運ぶことになった。

リヴァイ先生の結婚式に招待された件を親父にも伝えたら「これを機会にスーツを買ってあげよう」と言い出したんだ。

ミカサも結婚式用に新しいドレスかワンピースを購入するらしい。

おおおお。桁がすげえ。こんなの買って貰っていいのかな。ドキドキする。

ミカサも値札を見てぶったまげていた。こんなの買っていいの? って顔をしている。

グリシャ「予算はどっちも10万以内くらいでいいかな?」

エレン「いやいやいや、親父! 金出し過ぎだから!!!」

ミカサ「私も、そこまで高い服を買ったら汚した時がショック死します」

グリシャ「あ、そう? じゃあ1万円くらいのでいいの?」

エレン「それでも十分高いだろ……」

グリシャ「スーツとかはいいものになると10万くらい普通にするけどね。ワンピースも」

ミカサの母「そうねえ。1万は流石に安いんじゃないかしら。2~3万の辺りでみてみましょう」

へー。1万が安いって。そういうものなのか。すげえなあ。

親父が金持ちだから良かったけど。もし貧乏だったらシンデレラじゃねえけど「着ていく服がねえ!」っていう状態に陥ったかもしれねえな。

グリシャ「これなんかいいんじゃない? 少し緑色も入っているけど。限りなく黒だ」

ミカサの母「シンプルでいいわね~似合っているわ~」

まっ黒という程ではない、深い緑色のスーツを当ててくれた。

うおおおお。でもこれも5万くらいするぞ。いいのかな。こんなの買って貰って。

グリシャ「灰色がかった方もいいね。真黒だと、葬式に着ていくスーツみたいになるし、結婚式なら少しオシャレなデザインでもいいと思うよ」

ミカサの母「は~どれにするか迷うわね~」

と両親の方がかえってテンション上がっている。恥ずかしいぜ。

ミカサ「OH………これも4万越える」

ミカサも値札を見ては下げてオロオロしているようだ。

グリシャ「ネクタイもついでに新調しようか。1本持っていればこれから先も使えるしね」

エレン「いいのか? 親父」

グリシャ「こういうのは機会がある時に全部一気に買ってしまうのがいいんだよ。エレンは何色がいい?」

エレン「ええっと、赤……とか?」

グリシャ「ネクタイを赤色にするなら、原色の強いものより暗めの色合いの方がいいかもしれない。コレとかどう?」

エレン「ああ……色が濃いな」

グリシャ「ネクタイを先に決めたなら、この色に合わせてスーツも決めて行こうか」

と、着々とコーディーネートされていくオレだった。

オレの方はダークレッドのシンプルなデザインのネクタイと、少し灰色がかったダークブラックというシンプルな組み合わせになった。

こんなんでいいのかな? 結婚式に出るのなんて、子供の頃親父に連れられていった以来で分かんねえ。

靴とかも一緒に合わせて買ってくれるようだ。至れり尽くせりで有難い。

ミカサ「エレンが赤色でいくのなら、私も似たような色でいきたい」

ミカサの母「あらそう? じゃあ同じようなダークレッドを探しましょうか」

おばさんも超はりきっている。

ミカサの母「これとか可愛いんじゃない? 背中出しちゃうけど。ミカサは背中綺麗だし」

エレン「ダメです!!! 背中冷えちゃう衣装はダメです!!!」

ミカサの母「あらそう? じゃあこっちの胸の大きく開いている方は?」

エレン「そっちもダメです! 色気有り過ぎます!!!」

ミカサの母「もー我儘ねえ。過保護過ぎるとダメよ~?」

と言いながらもニヤニヤ服を選ぶおばさんだった。

ミカサの母「肩出しても上から羽織るものを着れば大丈夫よ~冬の結婚式でもちゃんと暖房は完備されている筈よ?」

エレン「それは分かっているんですが、出来れば色気は控えめにお願いします」

ミカサに変な虫はつけさせたくねえ。シンプルなのでも十分なんだよ。

ミカサの母「肩出しがダメなら衣装も大分制限されちゃうわね~どうする? ミカサ」

ミカサ「エレンに任せる」

ミカサの母「本当にいいの? ヤキモチ妬きの男でいいの?」

ミカサ「うん。ヤキモチは嬉しい」

ほやっと笑ってくれた。あああああああやばい! 何かオレの方が興奮してきた!

リヴァイ先生じゃねえけど、興奮する! ミカサの服はオレが選ぼう!

エレン「これ可愛い! 肩出してねえけど、シンプルなワンピースだな」

ミカサ「どれ?」

エレン「二の腕は半分隠れて、胸もそんなに開いてない。胸の下の方で絞っているけど、スカートの長さも丁度いい!」

ミカサの母「あら。本当にシンプルなワンピースね。いいの? ちょっとだけ胸を強調するワンピースだけど」

ミカサ「うん。大丈夫。私はペチャパイではないので(キリッ)」

ミカサの母「うふふ。いい心がけだわ。ではそれにしましょうか。色は同じダークレッドでいいのよね」

ミカサ「うん」

ミカサの母「じゃあ、それに合わせて靴とかも買いましょう」

ミカサは黒のシンプルな靴を購入した。少しだけ底が上がっている。

鞄とかも一緒に購入したようだ。もう何万飛んでいったのか考えると怖え。

エレン「親父、ありがとう」

グリシャ「いやいや。いい機会だったよ。いずれはエレンにもスーツが必要かなと思っていたしね。結婚式に招待されるなんて、エレンの交友関係が一気に広がった証拠じゃないか」

エレン「そう言えばそうだな。オレ、リヴァイ先生にいろいろ世話になったよ」

グリシャ「本当なら私の方からも挨拶したいくらいだよ。会場までは私が車で送ってあげよう。一応、顔だけ見せてもいいかな? 出来ればご挨拶したいよ」

エレン「ああ。多分、大丈夫だと思うぜ。それくらいなら」

という訳で、その日は結婚式に向けての衣装を全て揃えた。

他の皆はどうするんだろうな? どんな衣装を着てくるんだろう?

気になったけど、それは当日までのお楽しみにした方がいいかもしれない。

ミカサは購入したワンピースを見て「ふふふ」と笑っている。

ミカサ「エレンと御揃いの色……」

エレン「おう。ダークレッドにしたけど、大丈夫だったか?」

ミカサ「ん? 何故そう思うの?」

エレン「いや、ミカサってあんまり『赤』系統の色が好きじゃねえのかなって思っていたからさ」

そうオレが言った直後、ミカサの顔が少しだけ強張った。

エレン「ん?」

ミカサ「ううん。何でもない」

エレン「え? いや、今のは何でもない感じじゃないよな?」

ミカサ「…………この赤色なら、大丈夫」

ん? どういう意味だ?

ミカサ「海老色、葡萄色、蘇芳、茜色に近い色なら大丈夫。真紅のような、明るめ赤色が苦手なだけ」

エレン「え? 何で……」

そう言えば思い出した。オレ、昔見た事あるぞ。この状態のミカサを。

いつだったっけ。ぼんやりしているけど。

ミカサ「……理由は言えない。ごめんなさい。でも、大した理由じゃない」

エレン「そ、そっか……」

オレ、真紅とかの明るい赤色の服、結構昔着ていたよな。

男の痴漢が出るとか何とかの噂のせいで赤系統の私服は外で着ないようにしたけど。

エレン「!」

急に思い出した。あの時の、ミカサも何か様子が変だった。研修旅行でのアレだ。

あの時、オレが気にかけた時、反応が変だった。


エレン『オレは思った事を言っただけだ。赤色とかのがマシだ』


思い出した。あの時、ミカサ、急に吐き気が来たよな。

もしかして『赤色』って言葉に反応をしただけだったのか?

赤色に何かトラウマがあるのかな。触れていいのか、分かんねえけど。

エレン「ミカサ」

ミカサ「な、なに?」

エレン「もしかして、なんか、『赤色』にトラウマあるとか?」

気になったからつい、聞いちまった。すると………

ミカサ「…………」

あ、ダメだ。本当に言えないみてえだな。

エレン「悪い。なんとなくそう思っただけだ。言えないなら、無理しなくていい」

ミカサ「…………ごめんなさい」

エレン「いや、いいんだ。こっちも気になっただけだし」

と、重い空気になっちまった。

ミカサ「…………いつか話す」

エレン「ん?」

ミカサ「今はまだ、早い気がするので。いつか、必ず」

エレン「そっか……」

ミカサはそう言った。そういう事なら、それを信じよう。

そう思いながら、オレはミカサに対して頷くのだった。







ミカサがジャンに対して少しばかり距離を置くようになったから、ジャンの様子が物凄くおかしくなった。

その異変に気づいてアニとアルミンとマルコは事情をオレに聞いてきたので、とりあえずかいつまんでジャンと話した内容を大体話すと、アルミンには苦笑いされ、マルコにも笑われ、アニに至っては、アヘ顔に近いくらいの大爆笑をされてしまった。

アニ「腹、痛い……! 何、それ。ジャン、馬鹿じゃないの? アホなの? 死ぬの?」

エレン「ええええ……アニ、笑い過ぎだろ」

アニ「だって、だって……(壁バシバシ!)」

放課後。ジャンがまだこっちに来ていない時間帯を狙って話した。

今日は12月1日。委員会活動がある日だ。

オレ達は委員会の活動が終わってから音楽室に来たが、生活委員のジャンは毎回、時間がかかるから今日はこっちに来れないだろう。

ミカサ「アニ、あんまり笑い過ぎると過呼吸になる」

アニ「御免御免。まさか私もそんな展開になるとは思わなくてね」

と、目尻の涙を拭いながらアニが言った。

アニ「いや、まさか、エレンが『ありのままを受け入れろ』って言って、それをそのまんま本当に鵜呑みにしちゃうなんて、ただの馬鹿だよね」

アルミン「というか、エレン、それわざと? ただの孔明の罠にしか思えないんだけど」

エレン「わ、わざとじゃねえよ! 何かつい、そう口走っちまって、ついつい」

ミカサ「これでジャンは優柔不断過ぎると言う事が分かった。私の中で好感度マイナス1万」

アニ「いや、もう、10万くらい下げていいよ。100万でもいいけど」

エレン「いや、なんかすまん。オレ、やっぱり悪い事しちまったかな」

今頃になって罪悪感が出て来たぜ。

アニ「いいや? 別に。まあ「オレの女に手出すな」じゃなくて「手出せるもんなら出してみな。ふふん」って事でしょ? どっちにしろ、もう宣言したんだから、エレンは堂々としていればいいんだよ。もうこれでジャンに変に気遣う必要ないからね」

エレン「あーまあ、そうなるか」

アニ「私としては「手出すな」の方が1番男らしくて好きだけど。まあ、その辺はエレンの判断だしね。それ以上は言わないよ」

アルミン「あーでも、ミカサは複雑じゃない? エレンに「手出すな」って言われたかったんじゃない