エレン「この長い髪を切る頃には」2(962)

*続編です。ミカサ「この長い髪を切る頃には」→エレン「この長い髪を切る頃には」の続き。もう1回エレン視点で書いていきます。

*現パロです。現在、エレンの髪がちょっとずつのびています。(ミカサよりちょい長め。小さいしっぽ有り)

*舞台は日本ですがキャラの名前は基本、カタカナのまま進めます。漢字の時もあるけど、細かいことは気にしない。

*実在の人物とかは名前やグループ名等をもじっています。時事ネタも有り。懐かしいネタもちらほら。

*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。

*原作のキャラ性格も結構、崩壊。原作と比べて「誰だてめえ」と思った方はそっと閉じ推奨。

*レスに対するお返事レスは返せない事が多いかも。体力温存の為。無視している訳じゃないんで、OK?

*感想は毎回有難い。でも自分の妄想話を書くのはNG。読んでいる人が混乱するから。本編と混ぜるな危険。

*雑談は雑談スレでお願いします。雑談嫌いな読者の方もいらっしゃるからね。

*現在、ジャン→ミカサ、ジャン(?)→サシャ、オルオ→ペトラ→リヴァイ←ニファ リヴァイ→ハンジ←モブリット ライナー→クリスタ←アルミン←アニ(?)←ベルトルト イアンリコあたりもちらほら。というか、そのつもりで書いています。

*安価時以外のアイデア・オリジナルの設定等の提案は禁止させて頂きます。(エレン「この長い髪を切る頃には」の時にトラブルが発生した為です)

*その代わり、安価出した時は出来る限り(多少無茶振りでも)採用する方針でやっていますので、宜しくお願いします。

*モブキャラも多数出演。オリキャラ苦手な方もご注意。キャラ濃い目。

*そんな訳で、現在設定しているオリキャラをざっとご紹介。


マーガレット(2年生♀)→大道具リーダー。漫画描ける。腐ってる女子。皆のお姉さん的ポジ。

スカーレット(2年生♀)→大道具。立体造形専門。ロボットもいける。たまに腹黒。

ガーネット(2年生♀)→大道具兼衣装。コスプレ好き。ちょっと大人しめのオタク。

アーロン(2年生♂)→役者。元野球部。高校から演劇始める。

エーレン(2年生♂)→役者。元サッカー部。高校から演劇を始める。

カジカジ(1年生♂)→役者。外見はエレンに似ています。明るい男子。愛称は「カジ」。

キーヤン(1年生♂)→役者。ジャンよりイケメン。歌上手い。

マリーナ(1年生♀)→役者。少年の声が出せる。ナレーションうまい。ほんわか系女子。


*原作のモブの名前が判明すれば……途中加入もあるかもです。

*外伝のキュクロとシャルルも出ています。二人は野球部投手とマネージャー。

*先生方の年齢設定が原作より(恐らく)若干高め設定になっています。

*リヴァイ先生(38歳)というおっさん設定に耐えられない方は御免なさい。

*加えてリヴァイ先生の潔癖症が病気レベル扱い(笑)になっているので、御免なさい。

*リヴァイ先生の性癖(?)も大分、斜めってる設定になっています。ご了承下さい。

*エルヴィン先生(43歳)も相当なオタク設定になっています。リヴァイより更に斜め方向に変態です。本当に御免なさい。

*ハンジ先生(36歳)が昔は美人だったよ設定です。ややモテキャラですが、リヴァイに比べれば蟻の触覚程度です。

*リヴァイ先生がモテ過ぎ設定です。気持ち悪いくらいモテキャラです。愛され過ぎて御免なさい。



*ラスト100レスは完成する迄、レス自重お願いします。レス足りないと書き手としてプレッシャー過ぎる。

*そんな訳で、現パロ(エレン視点編)を始めます。OK?





10月5日。文化祭2日目が遂に始まった。

9:00から舞台設営だが、オレ達生徒はそれより少し早めに学校に登校して、各自、クラスの出し物の準備をする。

この日はサシャのお父さんも合流して、コスプレ写真館としての本番の日を迎えた。

ミカサとアニはミスコンと演劇部の舞台があるからその時間は写真館には居られないけど、それ以外の時間で写真館に居てお客さんと一緒に写真を撮る撮影会をする事になる。

一応、予定では午前中は11:00~12:00。

午後は16:00~17:00までを撮影会の時間として設けている。

クラスの出し物の準備が終わった後、ミカサとアニとクリスタとサシャは10:00からのミスコンの準備の為、会場設営の方の打ち合わせに出ている。

うちのクラスからは4人選出されたようだ。舞台傍で綺麗な女子が集まってエルヴィン先生と綿密な打ち合わせをしている。

オレ達男子は部外者なので内情は知れないが、場所取りの為に早めに会場入りして前列を確保している男子も結構多い。

オレも実はその一人で、現在、アルミンと一緒に前の方の席をちゃっかり確保している。

ミカサ「エレン」

と、その時、女子に輪から外れてミカサがこっちに来た。

今は制服姿だが、ミスコンの時は自分の私服に着替えるらしい。

エレン「なんだよ? 何か忘れ物か?」

ミカサ「いえ、あの……エレンは投票の時に、自分の票を出した?」

エレン「あー悪い。結局、出しそびれたんだよな」

ミカサに出て欲しい気持ちと出て欲しくない気持ちが葛藤して、結局出さなかったんだ。

何だかそれを責められている気がして、ちょっと肩をすくめると、

ミカサ「良かった……では、今、出そうと思えば出せる」

エレン「ええ?! 今、ミカサに出せって事か?!」

と、焦っているとミカサはすぐ否定して、

ミカサ「違う。出来ればハンジ先生に1票、今、入れて欲しいの。緊急事態なので」

エレン「? どういう事だ?」

何かトラブルでも起きたのかな?

ミカサ「出場予定だった子が一人、急病で出られなくなった。出来れば20人、きっちりで予選を行いたいから、9票を獲得している女性の中から出られそうな人を選出したいそう。でも、票が足りない人を出す訳にはいかないので、緊急で今、出して欲しい。これはオフレコになるけど」

エレン「あ、ああ…数合わせにオレの票が必要って訳か」

ミカサ「そう。ハンジ先生は9票だったそうなので、エレンの1票があれば出場できる」

エレン「いいのかな? 本人はなんて言っているんだ?」

ミカサ「まだ確認していない。10票揃っていた。という事にするそうなので、エルヴィン先生が「イエス」か「ノー」か早く決断して欲しいそう」

時間も迫っているしな。しょうがねえか。

エレン「分かった。じゃあオレ、どうしたらいい?」

ミカサ「とりあえず、1度、一緒に裏方に来て」

という訳でオレはミカサと一緒に裏方にひょっこり顔を出す。

するとエルヴィン先生が「すまないね」と言っていた。

エルヴィン「名簿と照らし合わせて、投票していない男子の中から選出させて貰ったよ。エレン、今、ここでこっそり書いて貰えるかな?」

エレン「あ、はい」

と、用意されていた紙にささっと記入投票をして、エルヴィン先生に紙を渡した。

そしてエルヴィン先生はハンジ先生に連絡を入れて、数分後、舞台裏にハンジ先生がやってきた。

ハンジ「あー……集計ミスっていたってマジなの? 本当に私に10票入っていたの?」

エルヴィン「うん。ごめんね。こっちのミス。後、人数が1人、急遽足りなくなったから、お願いしたいんだが」

ハンジ「まーじかー! ある意味公開処刑じゃないのこれって」

エルヴィン「リヴァイと同じ事言わない。ハンジ、大丈夫だよ。君は美しい女性だから」

おおっと、さらりとリップサービスでびっくりだ。

でもエルヴィン先生が言うと嫌味には聞こえない。不思議だな。

ハンジ「えーでも、私、私服持って来てないよ? 確かテーマ別の私服の審査があるんだよね?」

エルヴィン「そこはリヴァイに協力して貰って、車でひとっ走り持って来て貰えばいい」

ハンジ「間に合うのかな……ギリギリじゃないの?」

エルヴィン「そこはこっちで調整するから心配要らない。今、必要なのはハンジの「イエス」だけだ」

ハンジ「んもー強引なんだから。分かった。じゃあ出てやろうじゃない。でも、あんまり笑わないでよ?」

と、ハンジ先生は照れている。

エルヴィン「ありがとう。じゃあリヴァイに連絡するから」

と、言ってエルヴィン先生が電話をかけ始めた。

エルヴィン「リヴァイ。私だ。すまない。今、時間あるか? ああ、1組の様子を見に行っていたのか。いやね、ちょっとこっちでトラブルが発生してね。急遽、ハンジにもミスコンに出て貰う事になったから、彼女の私服をいくつか持って来て欲しいんだ。化粧道具も出来れば。分かるよね? 時間は……そうだな。10:20分までなら尺を稼げると思う。それまでに往復できるか? 良かった。リヴァイならそう言うと思ったよ。では、頼むよ。また後で」

と、あっさり交渉は成立したらしい。

エルヴィン「ハンジ。すまないが、今からシャンプーして自分で化粧前の準備をしておけとリヴァイの指示だ。出来るね?」

ハンジ「じ、自分で洗うの? 今から? 乾かすの間に合わないんじゃ……」

エルヴィン「濡れていても大丈夫だよ。シャワー室は使える筈だから。ほら、自分で出来ない訳じゃないんだろ?」

ハンジ「うーん、出来なくはないけど雑だよ。私の洗い方は」

エルヴィン「緊急自体だから構わないよ。ほら、行って」

と、無理やりシャワー室に行かされてハンジ先生は一人でシャワーを浴びに行った。

ミカサ「エレン、ありがとう。ではまた後で」

エレン「おう」

ミカサ「………決選投票は、出来れば私に入れて欲しい」

エレン「あ、当たり前だろ! 心配するなって!」

変な心配するなよな。もう。

オレはミカサの傍を離れてアルミンの隣に戻った。

アルミン「大丈夫だった?」

エレン「おう。急遽、ハンジ先生も出場する事になったぞ」

アルミン「そうなんだ。へーそれは楽しみだね」

と、ざわざわしながら開演を待つ。

一般来場も9:30分から始まるので第一体育館の人の気配がどんどん増えてきた。

おおお。期待感で皆、ワクテカしているのが分かる。男だからな。

女子もちらほら観客の中にいるけど、やっぱり人数的には男子の方が多かった。

そして時間になった。10:00になってエルヴィン先生が舞台に登場した。

こちらも燕尾服だ。エルヴィン先生、体格いいから似合うなあ。

インカムをつけた姿でマイクテストを入れて、エルヴィン先生が舞台中央に躍り出た。

>>3
訂正。
ミカサ「出場予定だった子が一人、急病で出られなくなった。出来れば16人、きっちりで予選を行いたいから、9票を獲得している女性の中から出られそうな人を選出したいそう。でも、票が足りない人を出す訳にはいかないので、緊急で今、出して欲しい。これはオフレコになるけど」

トーナメント形式なので16人です。数字ミスです。

あ、予選じゃなくて本戦やね。間違えた。
まあ、いいか。とにかく、そういう事です。

エルヴィン『男子諸君、男性諸君、そして淑女の皆様方。大変お待たせ致しました』

ざわざわざわ………

エルヴィン『我が校伝統のミスコン、第20回目を迎えるこの記念すべきこの日。天気も味方して快晴となり、美少女達の宴を祝福しているようです』

何だか詩人だな。エルヴィン先生。勿体ぶっているぜ。

エルヴィン『今年も色とりどりの美しさを競い合って貰います。野郎ども! 心の準備は出来ているか?!』


おおおおおおおおお!


会場が一気に轟いた。やべええ! オレもテンション上がってきたぜ!

エルヴィン『ではこれより第20回講文祭ミスコンテストを開催致します! みなさん、拍手をお願いいたします!!』


わああああああ……

パチパチパチ………


エルヴィン『ルールを先に説明させて頂きます。このミスコンはトーナメント形式になっており、抽選で選ばれた女性はテーマに合わせていろんな課題をこなして貰い、一騎打ちをして頂きます。4回勝ち上がれば晴れて優勝となり、景品が贈られる事になります! 会場の皆様は、勝負の際、その都度、メダルを1枚ずつ配布いたします。メダルを一枚、集計籠に入れていただき、天秤が傾いた方が勝者として決定致します!』

おおおおお。単純明快で分かりやすい勝負だな。

エルヴィン『では、まずは第一回戦を行っていきたいと思います。一回戦のテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏と初めての外出デート。その時に着る私服は?』


エルヴィン『初めての外出デートの時にどんな私服を着ていくのか。そのセンスを競い合って頂きます! 外出先の内容は自分で設定してOK! 海でも山でも遊園地でも、自分の想像で私服を選んで頂きます! ではまず、エントリーナンバー1! 1年1組のミカサ・アッカーマン!』

おおおおお?! いきなりミカサが来た! 制服姿のミカサだ。

エルヴィン『対するはエントリーナンバー2! 1年2組マリーナ・イノウエ!』

マリーナもきた! まさかの劇部対決だ!

エルヴィン『二人には3分以内に私服に着替えて貰います。私服の内容は予め自分で決めて貰っているので、それに着替えて貰います。時間が過ぎた場合はポイントが秒数毎に1gのマイナスポイントになるので、時間は厳守するように。では、早速着替えタイムに入って頂くよ! それでは、スタート!!』

持ち時間3分?! 相当な早着替えだな! 間に合うのか?!

ああ、でもその辺も考えて直感で私服を選ばないといけないのか。

着替える時間のかかり過ぎる私服はNGって事なんだな。

そしてあっという間に3分が過ぎて二人の準備が整った。時間はオーバーしなかったようだ。

エルヴィン『では先行はミカサ! 入場!!』

ちゃらららら~♪

それっぽい音楽と共にミカサが舞台に出てきた。

おおおおおお!!!

麦わら帽子(ピンク)と、シンプルな白っぽいフレアスカートのワンピース。サンダル。夏のお嬢さんスタイルキター!!!!

これはアレだ。どう考えても「海」を想定した外出服だな。超可愛い。

エルヴィン『何故、この私服にしたのかな?』

ミカサ『エレ……んん、彼氏と海に行くならこの恰好かと』

エルヴィン『いいねー今年の夏、彼氏と海に行ってきたとか?』

ミカサ『皆、とですけど。海にはいろいろと思い出があります(ポポポ)』

うわああああ恥ずかしいなあ!! あの時の事を思い出しちまうぜ!

エルヴィン『いいねー青春しているねー。続いては後攻! マリーナ登場!』

ロングスカートとフリルのブラウス。全体的にフェミニン系の女の子らしいスタイルだ。

手にはバスケットを持っている。これは恐らく『ピクニック』を想定した外出服だろう。

エルヴィン『何故、この私服にしたのかな?』

マリーナ『やっぱり初デートは自分で作ったお弁当を彼氏に食べて貰いたいので、ピクニックを想定しました』

と、言うと、男子は一気に「おおおお」と感心した。

しまった! 女子力アピールをされちまった!

ミカサも女子力(料理)なら負けてねえのに、これはちょっと不利か?

そしてすぐに集計が始まった。皆、どんどん大籠にメダルを放り入れている。

オレもすぐにミカサ側にメダルを1枚入れた。結果は………

エルヴィン『んん~天秤が微妙だけど、どうやら3グラム差でミカサの勝利のようだね! 1回戦の勝者はミカサ・アッカーマン!』

ミカサ『よし! (ガッツポーズ!)』

僅差で勝った! これは名勝負だったな。

エルヴィン『マリーナも惜しかったね。でも、気を落とさないでね』

マリーナ『はい。勝負は時の運ですもんね』

エルヴィン『では続いては………』

と、少し進んで1回戦、第3組目。

エルヴィン『エントリーナンバー5番! 1年1組クリスタ・レンズ!』

エルヴィン『エントリーナンバー6番! 3年1組ペトラ・ラル!』

選ばれたのは、何とクリスタとペトラ先輩だった。

おおおお! 小柄な女子対決になりそうだな。

3分間の早着替えののち、2人が出てきた。

先攻はクリスタ。クリスタは意外や意外。ジーンズにキャミソールに薄手の上着。スポーティな帽子を被っていた。

エルヴィン『おや? 思っていたより活動的な格好だね。デートの場所は?』

クリスタ『外出デート、という事だったので、外出先にどこでも対応できる格好にしました。あ、スポドリも持参です』

エルヴィン『なるほど。相手に合わせて想定したんだね。相手の色に染まるタイプか』

リヴァイ先生と同じだな。なるほど。

クリスタ『はい。あ、でも、キャミソールはボタンの前開きタイプなので、そこがオシャレのポイントです』

と、言い出したので男子が一斉に生唾を飲み込んだ。

クリスタ、策士だな。あいつ、男の心を掴むのが上手いタイプと見た。

所謂、あざとい感じだな。天然小悪魔系って奴なのかな。

でもオレにはどうもそれが「演技」に見える時があって、ちょっと苦手だ。

あいつ自身、自分の気持ちが見えなくなってねえか心配になるけど。

エルヴィン『なるほど。オシャレのポイントを絞った訳だね。素晴らしい』

エルヴィン『では続いては後攻! ペトラ・ラル!』

ペトラ先輩も下はジーンズだった。ただしこっちは脹脛が半分見えるタイプだ。

上はベアトップの服に上着を重ね着して、髪を少し束ねて上にあげて、項を見せている。

ちょっと大人っぽい感じになっている。普段はおかっぱだから、ギャップがあっていいな。

エルヴィン『ペトラも似たようなスタイルで来たね。想定はどこかな?』

ペトラ『ドライブです。出来ればオシャレなカフェに連れて行って貰いたいのでこのスタイルにしました』

もうそれ、リヴァイ先生とのデートを想定しているようなもんじゃ……いや、まあ、妄想だからいいんだよな。うん。

エルヴィン『なるほど。食事の時にベアトップでいくとは、胸の谷間をチラ見せする気満々だね?』

ペトラ『い、いえ! そ、そういうつもりでは……(赤面)』

エルヴィン『いや、いいんだよ。むしろそれくらいの戦略が出来ないとダメだよ。では集計に参ります!』

という訳で集計に入った。結果は………>>10になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

ペトラ
先輩の意地で勝利
後にハンジ先生と対決でもいいw

エルヴィン『んん~10グラム差でペトラの勝利だね! おめでとう!』

ペトラ『よし!』

エルヴィン『クリスタ、残念だったね。マニュアル通りでは男心は落とせない事もあるよ?』

クリスタ『勉強になりました……(がっくり)』

あ、やっぱり。あいつ、そういう読本を参考にして衣装を決めてきたんだな。

自分の意志が反映されてないんじゃ、男の方もそれに気づくよな。

もしそれに気づかないような男と付き合ったら、多分、幸せになれねえぞ。クリスタ。

1回戦4組目。アニが出てきた。相手の女子は知らない子だった。

アニの圧勝だった。あいつの私服、アーミー風の、ボーイッシュな格好いい衣装だったけど、アニの雰囲気に合っていて凄く良かった。

1回戦5組目。リコ先生と保健医のアンカ先生だった。大人対決だ。

リコ先生は明るめの淡い薄紫色のスーツとタイトスカートだった。普段はジャージ姿が多いから新鮮だな。

この恰好なら飲み屋もOK。コンサートや野外活動もある程度こなせるからそれにしたそうだ。

対するアンカ先生は、黒のワンピース姿だった。結婚式で着るような感じの装いだ。想定は『夜のバー』だそうで、大人の色っぽさがある。

エルヴィン『では、集計に入ります! 大人の色気対決は果たしてどちらに軍配があがるか?!』

という訳で集計に入った。結果は………>>12になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

アンカ先生
分かりやすいお色気に男子高生の票が入ると予想

連取すまん
次は自重する

エルヴィン『20グラムの差でアンカ先生の勝利です! おめでとう!』

パチパチパチ……

エルヴィン『残念だったね。リコ先生。ちょっとスーツのデザインが硬かったのかもしれないね。胸をチラ見せしたらまた結果が違ったかも?』

リコ『?! そ、その発想はなかった……すまん』

エルヴィン『そんな真面目なところがリコ先生のいいところでもあるけどね(ウインク☆)』

リコ『そ、そうか……(困惑顔)』

エルヴィン『うん。私はリコ先生の衣装も嫌いじゃなかった。今度飲みに行こうか』

男子生徒「エルヴィン先生ーナンパしないで先に進めて下さいー!」

エルヴィン『おっとそうだった。ごめんごめん。では続いては1回戦6組目!!』

ニファ先輩とサシャがきた。おおお。ここも好カードがきたな。

ニファ先輩も髪を上にあげて項を見せてきた。暗めの赤色のハイネックのワンピースだ。

対するサシャは……おおおお? 珍しく髪をおろしている。美少女ごっこをした時のサシャだ。

しかもこっちもワンピース姿だ。薄いピンク色の、ちょい肩見せのワンピースだ。

膝丈は……どっちも膝が丁度隠れる程度だ。いいな。上品な感じだ。

これが膝上になると、途端に下品になるから不思議だよな。黄金の比率だぜ。

エルヴィン『ここはワンピース対決になったね。ニファの想定は?』

ニファ『私もドライブです。ただし、目的地は演劇鑑賞とかコンサートですね。能や歌舞伎でもいいですけど』

エルヴィン『おおっと、なかなか渋い趣味をしているようだ。いいねー』

エルヴィン『サシャはどこを想定しているのかな?』

サシャ『はい! 当然、ケーキバイキングです! バイキングの時はお腹が苦しくないワンピースが必須です!』

あちゃーサシャ。完全に趣味丸出しにしやがった。これはまずい。

男はケーキバイキングなんか行かねえぞ。いや、アルミンなら行くかもしれんけど。

サシャ『あ、ケーキじゃなくても、普通のバイキングでも構いませんよ。というか、食事ならどこでもいいです。北海道まで日帰りで行って帰ってきても私、ついていきますからね!』

どんだけ行動派だよ。すげえなサシャは。

エルヴィン『ふふ……こういう素直な子は好感度高いね。では集計に行こうか!』

という訳で集計に入った。結果は………>>14になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

次の衣装も食べ物に絡むのか気になるから
サシャ!

エルヴィン『5グラム差でサシャの勝ちだね。おめでとう!!』

サシャ『あざーっす!!』

エルヴィン『残念だったね。ニファ。僅差だったか』

ニファ『ですね……しょうがないです(がっくり)』

エルヴィン『そう、気を落とさずに。私でよければ今度歌舞伎に連れて行こうか?』

男子生徒「エルヴィン先生、犯罪臭がしますよー!」

どっと笑いが起きて会場が轟いた。

エルヴィン『おっと、危ない危ない。捕まるところだった。では続いては……』

7組目は知らない女子だったので省略する。

そして8組目。遂に1回戦の最後の対決だ。

エルヴィン『エントリーナンバー15! イルゼ先生!』

エルヴィン『エントリーナンバー16! ハンジ先生!』

二度目の先生対決だ。イルゼ先生はチュニックタイプのゆったりとした、でもそれでいて色気のある衣装を着ていた。

下がレギンスだ。足のラインが綺麗だなあ。

髪の毛もちょっとふわっといじっていて、可愛い。

やっぱり女性って衣装やメイクや髪型で大分印象が変わるんだな。

エルヴィン『この感じだと、居酒屋飲みかな?』

イルゼ『はい。居酒屋の飲みって、基本みたいですよね。ハンジ先生に習って勉強しようと思って』

エルヴィン『ハンジのは、あれは自分の趣味だからね。まあでも勉強するのは悪い事じゃないよね』

エルヴィン『………おや? 着替え終わっているのにハンジの方が出てこないね』

と、エルヴィン先生が一回、舞台袖の方に声をかける。

エルヴィン『準備は終わっているんだろ? 早く出て来て』

ハンジ『えええ……本当にこれでいくの?』

エルヴィン『似合っているんだからいいじゃないか。ほら、早く』

ハンジ『とほほ……』

そして出てきた、ハンジ先生の衣装はなんと………




ざわっ………




予想の斜め上を行く完成度に皆、度胆を抜かれた。

ハンジ先生は眼鏡を外して軽い化粧をして口紅だけつけている。

髪の毛は上にアップして、毛先を遊ばせている。

そして、体の線に沿ってキラキラ輝く深緑色のドレス。

そう。社交ダンスをする時のような煌びやかなフィットしたドレスを着て来たのだ。

これ、声がハンジ先生じゃなかったら完全に別人だと勘違いするレベルだ。

海で声かけられた時の比じゃない。もう誰だお前レベルで別人だった。いい意味でな。

エルヴィン『気合入っているね。想定は何処かな?』

ハンジ『うーん、多分、ダンスパーティーとかかな? 創立記念パーティーとか。結婚式とか、セレブな方の誕生日会とか? もうその辺のレベルの衣装だよね。初デートとかに着る服じゃないってあれほど……(ブツブツ)』

エルヴィン『いや、それは相手次第だよ。ハンジ。もしお金持ちのご子息とデートするのでればそれで間違っていない』

ハンジ『ああそうか。いやでもね、これは幾らなんでも気合入り過ぎじゃない?』

エルヴィン『いいんじゃない? たまにはこういうハンジ先生もいいよね?』

男子生徒「いいと思いまーす!」

と、すぐに返事がやってきた。会場は拍手喝采だった。

ハンジ『あ、そう? うーん。でもこれ買ったの、もう8、9年前くらいになるのよね。リヴァイが三十路になった時に買ったから、デザイン古くない? 大丈夫かな?』

おおおお? 会場がどよめいた。まさか、まさかだけど。

男子生徒「買って貰ったんですかー?!」

ハンジ『あーうん。ちょっといろいろあって、ね。押し付けられたの。こっちは「要らないってば!」って何度も突き返したんだけどね。実は私、ダンスの講師の免許を持っているんだ。その資格を取った時に一緒にこれ、貰っちゃったのよ』

エルヴィン『という事は、社交ダンス用の衣装って事で頂いたんだね』

ハンジ『そうそう。だから踊ろうと思えば、今でも踊れるよ♪』

おおおお……それはぜひ見てみたいけど。

エルヴィン『ふふっ…それは是非見てみたいけど、ちょっと時間がないからまた今度にしようか』

ハンジ『そうだね。ま、いつか機会があれば披露してあげるよ』

エルヴィン『という訳で、集計をお願いいたします!』

という訳で集計に入った。結果は………>>17になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

うーん…迷うけどイルゼ
イルゼたんかわいいよ

エルヴィン『ん~これは微妙だね。2グラム差かな? 僅差でイルゼ先生の勝利だね。おめでとう!』

イルゼ『あ、ありがとうございます…(困惑)』

ハンジ『おめでとうー! (拍手)』

エルヴィン『惜しかったね。ハンジ』

ハンジ『いや、むしろ大健闘じゃない? 私、頑張った方じゃない? 十分だよ』

ハンジ『票を入れてくれた子達、ありがとうねー!』

と、ニコニコしながら手を振って舞台から去っていた。

しかしその後、音声のミスなのか、舞台裏の音が漏れて……

ハンジ『リヴァイー! 頭外してーこれ重いんだけどー』

リヴァイ『ああ、ちょっと待ってろ(ゴソゴソ)』

ハンジ『んもう、何でこの衣装持って来ちゃったの。もうちょっと普通ので良かったのに』

リヴァイ『ああ? デート場所の設定は俺に任せるって言っただろうが』

ハンジ『いや、初デートだからね?! 初めてでこれって、ちょっと豪華絢爛過ぎるよね? 皆、びっくりしていたよ? 初デートで社交ダンスってどこのセレブ設定なのよ私は』

リヴァイ『………………すまん。そう言われれば確かにそうなんだが』

リヴァイ『ハンジには、その色の、深い緑色が一番似合うと思ってな。つい、それを咄嗟に選んでしまった』

ハンジ『ん~……まあ、そういう事ならしょうがないけどさ。うん、でもありがとう。協力してくれて』

リヴァイ『ああ……無事に終わったなら良かった。………ハンジ』

ハンジ『何?』

リヴァイ『服を持ってきた俺が言うのも何だか、その服は確か俺が三十路になった年に買った物だったよな』

ハンジ『そうだよ』

リヴァイ『お前、その頃から体型全く変わってないんだな。よく考えたら、凄い事じゃないのか?』

ハンジ『あーそう言われればそうだね。体型変わってないね』

リヴァイ『普通はそのくらいの年齢から少しずつ、身体のバランスが崩れてきてもおかしくはないと思うが』

ハンジ『ん~本当だね。珍しいよね。私、あんまり体重が変動しないんだよね』

ハンジ『やっぱり、ずっと、リヴァイのご飯を食べさせて貰っていたからじゃない?』


ざわざわざわ……?!


会場が一気にざわめいた。まずい。これ以上は、音を拾わない方がいい。

音声さん、まだかよ?! 早く遮断しろよ?!

リヴァイ『…………そうか。だとすれば、飯を作り与え続けた甲斐があったな』

ハンジ『ん~でも、もういいよ。リヴァイ』

リヴァイ『え?』

ハンジ『もう、私、あんたにこれ以上、甘えるの、やめる事にするからさ』


ざわざわざわ……?!


リヴァイ『え…………』

ハンジ『今まで、ありがとうね。本当に感謝している。でも、もう、あんたとはちゃんと線引きしないといけないって、分かったんだ』

リヴァイ『…………』

ハンジ『…………ごめ…(ブツ)』


音声が途中で途切れた。やっと回復したのか。

会場が何が起きたのか分からずずっとざわざわしている。

エルヴィン先生もさすがに冷や汗を掻いていて、この事態をどう収集するべきか途方に暮れているようだ。

エルヴィン『えー……2回戦に向かう前に5分間の休憩を入れたいと思います。皆様、もう暫くお待ち頂きますようお願いいたします』

と言い捨てて慌てて舞台裏に走って行ったエルヴィン先生だった。

会場が、どよめいている。

今のって、どう聞いても、なんか、その…。

アルミン「ハンジ先生の方から別れ話を切り出したような感じだったね」

エレン「あ、アルミンもそう思ったか?」

アルミン「うん………今のはきついね。昨日の今日で、急転直下過ぎるよ」

どうすんだよ。リヴァイ先生。午後から舞台もあるっていうのに。

こんなに精神的にしんどい事を抱えながら舞台に立てるのか?

ざわめきはまだ止まない。皆、このまま待っていていいのかどうか迷っているようだ。

どうしよう。裏方の様子が分かる奴に話を聞きたいけど、首突っ込むのもダメだよな。

あ、裏方から白衣に着替えたハンジ先生が先に出てきた。

その眼鏡の奥は悲しげに沈んでいて、少しだけ涙の跡が見えた。

いかん。観客がもう、ハンジ先生の方に釘づけだ。

ミスコンよりもハンジ先生の様子が気になっている。

オレはすぐさま席を立って、ハンジ先生のもとへ駆け寄って観客の視線から庇うように会場を脱出した。

もし根掘り葉掘り聞いてくる奴が現れたらバリケードになってやらないと。

するとアルミンも後からこっちに追いかけて来て、オレ達2人は逃げるようにハンジ先生をそこから脱出させた。

とりあえず落ち着かせる場所を探さないと。どこがいいかな。

エレン「アルミン、とりあえずどこに連れて行こうか」

アルミン「うーん、あんまり人目につかないところがいいよね。あ、占い館ならどう? あそこは個室あるし。逃げようよ」

エレン「そうだな。一回そこに逃げるか」

マーガレット先輩の2年1組に急いで移動する。占い館の中は人も少なめで、暇そうにしている占い師がいた。

マーガレット先輩本人じゃなかったけど、多分クラスの人だろう。

取り敢えずそこの占いの個室席に座らせて、暫くそこで落ち着かせる事にした。

占い師「………ハンジ先生、どうかされたんですか?」

ハンジ「ううん、何でもないの」

占い師「何でもないって顔じゃないですよ。あ、良かったら悩みに合わせて占いましょうか?」

ハンジ「占い?」

占い師「はい。1回100円ですけど」

ハンジ「私、あんまり占いって信じない方なんだけど……」

占い師「まあまあ、気休め程度で聞いて貰えれば。暇つぶしにやってみて下さいよ」

ハンジ「………分かった」

良かった。とりあえず、ハンジ先生の顔が上がった。

占い師「12星座でいいですかね? 誕生日は……」

ハンジ「……9月5日」

占い師「乙女座ですね。分かりました……(パラパラ)」

マニュアルが一応あるからそれになぞって占いを始める。

オレ達2人はそれを後ろで見守っていた。

占い師「そうですね……乙女座の方が不安になりやすいのは『相手に合わせ過ぎようとして疲れた時』とありますね。ここ最近、相手の要望に応えようとし過ぎて振り回された経験はないですか?」

きっくー! ある。あるぜ。リヴァイ先生絡みでな。

スカート事件だとか、キス(ガムテ越し)事件とか。さっきのミスコンもそれに入るかも。

ハンジ「んー? んー……合わせようという意識はないけど、なんかいつの間にか合わせている事はあるかもしれない」

占い師「では、心当たりは一応あるんですね」

ハンジ「んーあると言えばあるけど……」

占い師「だとしたら、今は我慢しないで全て吐き出して下さい。不安を解消するには『泣きたい時は思い切り泣いて』とあります。自分を大切にする事が、これから先、生きていくのに必要な儀式であると、そう出ていますよ」

ハンジ「!」

その直後、ハンジ先生は硬直して、プルプルと震えだした。

ハンジ「今、泣いてもいいの……?」

占い師「泣かないとダメです。占いにはそう出ていますよ」

ハンジ「じゃあ、今、ここで、泣いてもいい? 泣いても、いいよね?」

占い師「大丈夫です。ハンカチとティッシュは準備万端ですから」

そしてハンジ先生はその直後、本当に崩れたように泣き出した。

大人だから、声は出さない様に殺しているけど、ぽろぽろと溢れているその涙を見ると、

こちらまで貰い泣きしそうになる。

ハンジ「ごめん……ごめん……リヴァイ、本当に……ごめん…………」

ずっと、リヴァイ先生に謝っていた。罪悪感からずっと、涙が止まらないようだ。

ハンジ「私が、ほっぺならいいなんてリヴァイに言わなければ……良かったのよ。私は彼女達のリスクを知っていたのに。舞台の空気に酔って、しまったせいで……あの子達は、私のせいで殺してしまった……」

懺悔の念。後悔の念に囚われてハンジ先生は泣き続けた。

ハンジ「もう、私はリヴァイの傍に居られない。あいつの友達としても、もう………」

大事な物をズタズタにされた恐怖からハンジ先生は怯えていた。

愛の恐怖を。実際に体験して初めて、震えているんだ。

ハンジ「ごめん……リヴァイ………うっ………ううう………」

ハンジ先生は一通り嗚咽を吐き出すと、少し落ち着いてお金を差し出した。

ハンジ「ありがとう。少し泣いてすっきりしたよ。500円玉しかないからこれでいい? お釣りは要らないから」

占い師「え? ああ……ありがとうございます」

ハンジ「エレンもアルミンもありがとう。2人とも、ミスコンに戻っていいよ」

エレン「でも……」

ハンジ「折角、彼女が出ているんだから応援してあげないと。ね?」

ハンジ先生の涙の跡が痛々しかったけど、オレは首を横に振った。

エレン「ダメです。今のハンジ先生を一人にしてはおけないです」

アルミン「エレン…(首振っている)」

エレン「でも、アルミン」

アルミン「一人の方がいい場合もあるよ」

エレン「…………」

ハンジ「もう大丈夫だよ。うん。こういうのは時間が解決してくれるって、分かっているから」

と、ハンジ先生はそう言って席を立った。

するとそれを入れ替わる様に、

モブリット「あ、ハンジ先生。探していました。あの……少しお話ししたい事が」

ハンジ「え? 何?」

モブリット「大事な話なので、2人きりになれるところでお願いしていいですか」

ハンジ「分かった。いいよ。じゃあね、エレン、アルミン」

モブリット先生がハンジ先生についていった。モブリット先生が傍にいるなら大丈夫かな。

気にはなったけど、オレとアルミンはミスコン会場の第一体育館の方に戻った。

もう、場所を取っていた前の席には戻れない。しょうがないから後ろの方で立ち見だ。

一応、ミスコンの方は再開していたようだ。2回戦に入って、ミカサは順調に勝ち上がり、次はペトラ先輩とアニの対決に入っていた。

2回戦のテーマは『ドキ☆ 彼氏の突然の訪問! 慌ててコーディーネートしたその私服は?』という物だった。

2回戦2組目は僅差でアニが勝ち上がり、準決勝1組目はミカサとアニの直接対決が決定した。

2回戦3組目はアンカ先生とサシャが対決して、ここも無難にサシャが勝ち上がった。

2回戦4組目の方はイルゼ先生が勝ち上がった。これで4ベストが出揃った。

エルヴィン『3回戦のテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏との初めての夜デート♪ もしかして……の時に着る私服は?』


という何とも色っぽいお題だった。

ミカサは薄い水色のゆったりめの長袖シャツ、ややタイトなミニスカートで登場した。

ミカサ、足長いからすげえ映える。でも腕は隠すのか。不思議なバランス感覚だな。

手首のところはふわっと絞ってある。髪型はいつものおかっぱだ。

対するアニは黒をベースにしたフリルのシャツにやはりこちらもミニスカートだ。

ただしこっちはチェックの制服風だ。アイドルがよく着ているスカートに近い。

エルヴィン『……という訳で、皆様、集計をお願いいたします!』

という訳で集計に入った。結果は………>>23になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

ミカサ!!

エルヴィン『おおおっと! これは奇跡に近い。1グラム差でミカサの勝利だ! 大接戦だね!』

会場が轟いた。これは名勝負だった!

エルヴィン『紙一重だったね。アニ、惜しかった』

アニ『ここまでこれただけでも十分です。ミカサ、後は優勝するんだよ』

エルヴィン『おおっと、健闘を称えたった握手です。皆さん、拍手を!』

パチパチパチパチ………!

エルヴィン『3回戦2組目にいきます!』

サシャとイルゼ先生の対決だ!

サシャは今度は御団子頭にしてアップにしている。紺色のベースの水玉のシンプルなワンピースだ。

イルゼ先生はハイネックのオレンジがかったワンピースだ。柄はないけど、レースがあって綺麗だ。

エルヴィン『またもやワンピース対決だね。ワンピースが好きみたいだね。サシャ』

サシャ『あ、はい。私服はほとんどワンピースで、たまにロングスカートですかね』

エルヴィン『やっぱりウエストがゆったりしている方が好きなのかな?』

サシャ『それもありますけど、脱ぐのも着るのも楽なんですよ。ファスナーで一気にがっとしゃっとやればすぐ着脱できるので』

おおおお。サシャにしてはいいことを言っている。

エルヴィン『ふふ……なるほど。それはいい装備だね。対するイルゼ先生もワンピースで来たね。オレンジ色が良く似合ているよ』

イルゼ『厳密に言うと、サーモンピンクになるんですけどね。薄いオレンジだと思います』

なるほど。いやでも、どっちも似合っていて、どっちに投票したらいいんだこれ。

ジャン『………………』

あ、良く見たらジャンがオレの前の方の席に居た。あいつ、耳を赤くしてやがる。

やっぱりサシャの事、気になっているんじゃねえのかな。素直じゃねえよな。

エルヴィン『……という訳で、皆様、集計をお願いいたします!』

ここでミカサの決勝戦の相手が決まる。果たしてどちらになるか……。

エルヴィン『おおおっと! またまた奇跡が起きた。1グラム差でサシャの勝利だ! 今年は本当に激戦だ! おめでとう!』

サシャ『ありがとうございまああああす!!!』

サシャが飛び跳ねた。これは若さの勝利かな。

エルヴィン『ついに決勝のメンバーが揃いました。エントリーナンバー1! ミカサ・アッカーマン対エントリーナンバー12! サシャ・ブラウス! 2人の決選投票は3分の休憩後、行いますので皆様、今しばらくお待ちくださいますようお願いします』

という訳で3分間の短い休憩が入る。

ミカサがやっぱり決勝まで残ったか。でも何気にサシャも生き残ってすげえな。

あ、ジャンが頭を抱えだした。ここはもう、誤魔化しきかないからなあ。

エレン「おい、ジャン」

ジャン「うああああ?! 誰かと思ったらエレンかよ?!」

エレン「お前、さっきの投票、サシャに入れたんだろ?」

ジャン「んなわけねえだろ?! イルゼ先生に入れたよ」

マルコ「嘘ばっかり……サシャに入れたでしょ。ジャン」

ジャン「うぐっ……! ま、マルコ、ばらすなよ(眉歪める)」

エレン「サシャ可愛いじゃねえか。何が不満なんだよ」

ジャン「か、可愛くねえよ。ミカサに比べたら月とスッポンだろうが」

アルミン「でもサシャはスッポン食べそうだけどね」

ジャン「うっ……そういう意味じゃねえよ。その、全然タイプが違うだろうが!」

エレン「そりゃそうだけど、それとこれは関係ないだろ? お前、何でそこまで頑なになるんだよ」

ジャン「うー……」

ジャンが頭を抱えている。

ジャン「分からん! そもそも、他の女に目配っている場合じゃねえし!」

アルミン「やっぱりアレ? サシャが美少女ごっこした時にギャップにやられたとか?」

マルコ「ああ、確かにあの時のジャン、面白かったよね。まっさきに動揺していたし」

エレン「ああ、うちに皆で集まった時のアレか。あの美少女サシャバージョンに堕ちたのか」

ジャン「うぐっ……!」

ジャンは本当に面食いだな。いや、オレもある意味そうなんだけど。

ジャン「違う違う違う! 断じてオレは!」

エレン「はいはい。まあ、どっちでもいいけどな。あ、そろそろ決選投票始まるみたいだぞ」

ざわざわざわ……

ドラムロールが始まって照明がクロスし始める。

おおお。盛り上がってきたな。どうなるんだろう。

エルヴィン『お待たせいたしました。決勝戦のテーマを発表いたします。決勝にふさわしいテーマはこちら!』

ジャジャン♪


『彼氏との初めての一泊旅行デート。もう迷わない夜に着る寝間着は?』


寝間着?! 寝間着で勝負って、ちょっと刺激強すぎるだろ?!

誰だよこのテーマ考えた奴。天才過ぎる。御捻り投げ入れてえ。

エルヴィン『ついに迎えた2人の夜。その時に着る服こそが最も気を遣うべき服だと私は考えます。あ、勝負下着姿で出てくる訳じゃないから勘違いしない様に。あくまで寝間着だからね』

どっと笑いが起きた。つまりパジャマ対決って事だよな。うん。

エルヴィン『では、準備が出来たようです。まずは先攻! ミカサ!』

普通のパジャマかな。まあもう、それだけでオレは十分なんだけど。

…………とか思っていたら、オイオイ! まさかの浴衣キタあああああ?!

え? 何で? これって、あ! そっか!

旅館に泊まった時のイメージなのか。あの夏の続きを、もしかしてミカサは……。

そう想像したら、オレの息子はびくっと反応しかけてマジでヤバかった。

くそおおおお………アレ思い出すと今でも恥ずかしい。

エルヴィン『浴衣とは、なかなか渋いね』

ミカサ『旅館に泊まるのであれば、こちらの方がいいと思ったので』

エルヴィン『うんうん。いいねー。着付けもうまいね。自分でやったの?』

ミカサ『はい。出来ます。母に習っているので』

エルヴィン『現代の大和撫子がここに生き残っていたね。これは国で保護しないと』

と、言うと皆「異議ナーシ!」と笑っていた。

対するサシャは、またまたピンク色だった。おおおお? フリルのネグリジェだ!

髪もおろして寝る準備万端って感じだな。こっちもこっちで可愛い。

エルヴィン『こちらはネグリジェか。普段からこれなのかな?』

サシャ『はい! これだとお腹だけ冷やす事が少ないので、この恰好で寝ますね。パジャマだと、しょっちゅうお腹がつっと出て、冷やしちゃうんですよ』

つっと出るは「はみ出す」という意味だ。ちょっと分かりにくいかもしれないが方言だな。

エルヴィン『うむ。健康にもいい寝間着だね。さて、両者が出揃ったところで最終決選投票を行います!』

という訳で集計に入った。結果は………>>29になった。

(*どっちが勝つか。安価とった方に委ねます。勝者を指定して下さい)

これはミカサだな

エルヴィン『おおっと、5グラム差でミカサの方が重いね! これは浴衣の方に軍配が上がった! という訳で、第20回講文祭ミスコンテストの優勝者は1年1組ミカサ・アッカーマンに決定いたしました! おめでとう!!!』

わあああああ!

BGMが変わって一気に会場が盛り上がった。アシスタントの女性がトロフィーを持ってくる。

それを受け取ってミカサは綺麗にお辞儀をした。うーん。所作も完璧だぜ。

オレ、改めて見るとすげえ幸せな男だなと思った。

だってこんなに可愛い子を彼女にしているんだぜ? 自慢しか出来ねえだろ。

ジャンも拍手をしていた。そういえばこいつ、結局どっちに票を入れたんだろ?

エルヴィン『さて、優勝者であるミカサには記念にくまもんのお米10キロが贈呈されます。美味しいお米だから是非食べてね』

サシャ『お米えええええええ?! (涙目)』

サシャががくっとorzの状態になった。余程景品が欲しかったらしい。

するとミカサはサシャに駆け寄って、

ミカサ『サシャ。一緒に食べよう。お米10キロもあるので、後でおにぎりを作ろう』

サシャ『い、いいんですか?!』

ミカサ『後夜祭までに炊き上げるように準備すれば間に合うと思う。調理部に交渉しよう。炊飯器を借りられるかどうか』

サシャ『女王様ああああああ!!!! (がばちょ!)』

あ、クリスタが女神だから、ミカサは女王様なのか。なるほど。

ミスコンの女王様トロフィーと一緒に記念撮影をする事になった。

ラストはミカサ、サシャ、アニ、イルゼ先生の四人が並んで自由に記念撮影だ。

そして時間が来て、ミスコンはようやくお開きなった。

ミスコンが無事に終わると次はイントロクイズの準備に入った。

ミスコンが終わったメンバーがぞろぞろと舞台裏から出てくる。その中に浴衣姿のミカサがいて、すぐこっちに来た。

ミカサ「エレン!」

エレン「お疲れ。ミカサ」

ミカサ「ハンジ先生は……」

エレン「モブリット先生といっちまったよ。2人で何か話す事があるらしくて、何処かに行った」

ミカサ「そ、そう……(シュン)」

あれ? 予想していた反応と真逆だな。どうしたんだ。

ミカサ「エレン……どうしよう」

エレン「ん?」

ミカサ「勘違いしていたの。私はてっきり、リヴァイ先生の片思いなのだとばかり思っていたけれど、そうじゃなかったのね」

エレン「ミカサ………」

ミカサ「舞台裏で2人のやりとりを直接見たの。その時のハンジ先生の反応を見て、気づいた。ハンジ先生、リヴァイ先生の事を本当は………」

エレン「ああ。まあ、多分そうだろうな」

オレがそう答えるとミカサはもっとシュンとした。

ミカサ「ハンジ先生に悪い事をした。相思相愛なら、例え相手があのクソちび教師でも、ボタンを掛け違えるの程辛いものはない………」

ミカサが以前と打って変わって態度を改めた。どうやら2人の事を応援してくれるみたいだ。

ミカサ「クソちびが、舞台裏の椅子に座ったまま動かないの。叩いたり、殴ったりしたけど反応が全くなくて、動かなくなってしまった。まるで電池の切れたロボットみたい」

エレン「そうか………でも次の準備もあるからずっとそこに座らせている訳にはいかねえよな。迎えに行くぞ」

オレとミカサは一度舞台裏に戻る事にした。アルミンもアニもジャンもマルコも気になって後からついてきてくれた。

そろっと舞台裏を覗いてみると、奥の端の方にあるパイプ椅子に一人座っているリヴァイ先生が居た。

本当だ。ミカサの言う通り、死人みたいな顔している。

その傍でエルヴィン先生がしゃがんで「リヴァイ、立って」と声をかけている。

エルヴィン「次の準備がある。ここにずっと居られると邪魔になるよ」

リヴァイ「あ、ああ……そうだったな」

と、やっと我に返ったのか、目に光が戻った。

そして立ち上がろうとしたけど、うまく立てずにエルヴィン先生にもたれかかってしまった。

リヴァイ「………すまん。足にうまく力が入らない。身体が自分の物じゃない様に重い」

エルヴィン「分かった。肩を貸して貰おう。私とでは身長差が大きすぎるから……アルミン。君に頼んでいいかな」

アルミン「分かりました」

アルミンはリヴァイ先生に肩を貸して取り敢えず外に連れ出したのだった。

リヴァイ先生もとりあえず、人目につかない場所まで移動させないといけないな。

でもリヴァイ先生自身が歩くのが苦痛のようなので、とりあえず第一体育館の外に連れ出す事にした。

途中で女子生徒に大分注目されたけど、今はそれどころじゃない。

遠目にしてこっちに来ないだけ有難いが、ひそひそ声がうっとおしい。

何だかイラッとしたけど、今は自重した。今はリヴァイ先生を優先だ。

エルヴィン先生に頼まれてアニが自動販売機に走る事になった。

ミカサの方が足早いけど、今は浴衣だから転ぶと危ないからな。

その点、ミニスカのアニは本気で走るとガチで早かった。

数分で缶入りの紅茶を数本買って来て、それをリヴァイ先生に持たせたのだった。

紅茶を無理やり喉に押し込んでリヴァイ先生がずるっと座り込んだ。

ヤンキー座りをもっと崩したような座り方だ。天を仰いでいる。眩しそうに。

リヴァイ「………………昨日、謝ったんだがな」

エルヴィン「うん。キスした事だね?」

リヴァイ「ああ。準備が全部終わってから、ハンジを捕まえて、少し話した。でもあいつはずっと「あんたが悪い訳じゃない」って言って、笑っていたんだ。だから、許してくれたんだとばかり、思っていたんだが、手遅れだったんだな」

エルヴィン「……………」

エルヴィン先生もさすがに何も言えず黙り込んでいる。

リヴァイ「俺はハンジに縁切りされたんだよな。友人としても、もう付き合えない。そういう事なんだろうな」

エルヴィン「リヴァイ。それは少し考えすぎだよ」

リヴァイ「だが、そうとしか思えなかった。ハンジに拒絶されることがこんなに、堪えるとは思いもよらなかった」

と、言ってリヴァイ先生は静かに両目を閉じた。

リヴァイ「エルヴィン。前に言った事を覚えているか?」

エルヴィン「前に?」

リヴァイ「ああ。俺が前に、ハンジにはキスもセックスもしたいと思った事は1度もないと言った、アレだ」

エルヴィン「覚えているよ。はっきりと」

リヴァイ「すまん。アレ、よく考えたら記憶違いだった。正確に言えばたった一度だけ、昔、あった。かなり昔だが」

だろうと思った。多分。相当昔の話だろうな。

リヴァイ「俺が三十路になる年の2月頃だったかな。突然あいつが「ダンスの講師の資格が取りたいから、パートナーとしてつきあって!」と無理難題を言い出した。それから10か月程度の時間をかけて、ハンジと社交ダンスの練習をした。その時の事を、覚えているか?」

エルヴィン「ああ。良く覚えているよ。私も練習指導につきあったしね」

リヴァイ「俺はあいつとコツコツ練習を重ねて、12月にT都で行われるダンス大会に出場する事になった。そこで優勝すれば成績が認められて資格も得られるという大会だった。俺達は初出場にして、初優勝を果たして無事にお互い、資格を得る事が出来た」

あ、なるほど。という事は2人とも、社交ダンス出来るんだ。すげえな。

でもハンジ先生は何で社交ダンスやろうと思ったんだろ? ちょっと意外だな。

リヴァイ「俺は資格を得てからハンジに聞いたんだ。そもそも何で社交ダンスをやろうと思たのかと。そしたらあいつ、何て言ったと思うか分かるか?」

エルヴィン「いや……分からないな。見当もつかないね」

リヴァイ「俺の三十路に間に合うように、俺の三十路の誕生日プレゼントに、ダンスの講師の資格を俺にあげたかったそうなんだ。社交ダンスはペアじゃないと大会に出場できないし、つまりあいつなりの、サプライズだったんだよ」

うおおおおおなんだそれ。なんて粋なプレゼントだよ。

資格がプレゼント、だなんて。そんな発想、ハンジ先生にしか出来ねえな。

リヴァイ「それを聞いて俺は『それを早く先に言え!』と怒鳴ってしまったが。でも、嬉しかったんだ。ハンジは『私は家事とか女らしい事は殆ど出来ないし、プレゼントを買ってあげるのも下手だし、でもこれだったら、一生、体育教師のリヴァイの役に立つプレゼントになるかと思って』と言ってくれたんだ。確かに体育教師の俺にとってはこういう資格はないよりはあった方がいい。もしダンスを指導する立場になれば、そういう知識も経験も必要になってくる。でも、あいつは生物教師だ。必要があるのは俺だけで、あいつはただ、それに付き合ってくれただけなんだよ」

ぐはああああ何だもう、そのエピソード!!!

そんないい話があるのに何でつきあってねえんだこの2人?!

と、思いつつも皆で静かに話の続きを待つ。

リヴァイ「ダンス大会が終わったその日の夜は2人でツインのホテルに泊まった。あの時、俺は初めて、ハンジをいい女だと思った。でもあいつはその後『これからもずっと、友達でいようね。あんたは私の最高の親友だから』って言ってきてな。その言葉に対して俺はずっと約束を守ってきただけだったんだよ」

旅行先のツインのホテルに泊まったのに手、出さなかったんだ。

オレの時(夏のアレ)より酷いお預けじゃねえか。もう何か、リヴァイ先生が可哀想過ぎる。

リヴァイ「大会の時に借りたドレスを買い取って、ハンジにあげたのはせめてもの礼のつもりだった。だけどあいつは、ずっと「要らないから!」って跳ね除けていたんだが、俺もそこは折れなかった。あいつのクローゼットの奥の方に無理やり押し込んで、ずっと仕舞わせていたんだ。それを今朝見つけて、全部一気に思い出したよ」

エルヴィン「なるほど。だからあの深緑色のダンス衣装を持ってきたんだね」

リヴァイ「ああ。俺にはもう、アレしか思い浮かばなかった。初めて2人で旅行した時の、思い出の衣装だったからな」

ジャンが凄い顔になっていた。

アレだな。リア充死ねを通り越して呪いそうな顔になっている。

リヴァイ「沈んでいた筈だ。地下深く、自分の気持ちが眠っていたのも、ただ、そう考えない様にしていただけだったんだ。俺は………」

リヴァイ先生はそう言って自分の気持ちを徐々に整理しているようだった。

リヴァイ「俺はハンジの事が好きだったんだ。恐らく、あの日の、三十路になった誕生日のあの日から、ずっと……」

すげえ遠回りな恋愛だなと思った。こんな事って、あるんだな。

だって8年……いや、もう9年近くか。ずっと気持ちを封印していたんだぜ?

その上で一緒に風呂入ったり、料理やら洗濯やら買い物やら。

一緒にいる時間は恋人と大差ないのに、でもキスとセックスだけはして来なかった。

単に我慢していたという話じゃなくて、それすらも感じない様に自分にそうさせていたなんて。

無意識って言うのは、案外馬鹿に出来ねえなとつくづく思った。

リヴァイ「ハンジは俺が三十路を越えてからはしょっちゅう「三十路~おっさんおめー」とか「三十路っていいよね! なんか響きがいいよね?」とか何とか言ってよくからかってきたりしたな。ハンジの中では恐らく三十路がひとつのステータスだったのかもしれんが、特別なものにしたかったんだろう。俺もあいつが三十路を越えた時は同じように「三十路を越えたから早く嫁に行け。結婚しろ」と言い放っていたが、よく考えたらそうやって言い合う事を楽しんでいただけだったんだな……」

エルヴィン「うん。そうだね。君達のそれは、ただの夫婦漫才だったよ」

リヴァイ「ははっ……今頃、気づいちまって、本当に俺は、馬鹿だ」

と、自嘲しているリヴァイ先生が唇を噛んでいた。

リヴァイ「これが恋愛感情って奴なのか。俺は今、初めてそれを感じているのか………」

そう言えば以前、仮面の王女の時に「恋愛感情は良く分からんが」とか何とか言ってたなリヴァイ先生。

分かってなかったんじゃなくて、遠ざけていただけだったんだな。恐らく。

そうだよな。じゃねえと、よく考えたら、ラストシーンに「砂糖が足りない」なんて言わねえよ。

感覚的にそういう感情を全く知らないなら、分かる訳がねえんだ。

リヴァイ「自覚した途端にまさか振られるとは思わなかった。ははっ………はははっ……」

リヴァイ先生がストレスを紛らわす為に笑い始めた。

乾いた笑いだ。力がない。ただ、紛らわす為の笑いだ。

エルヴィン「リヴァイ。まだ振られた訳じゃないだろう」

リヴァイ「振られたようなもんだろう。もう、世話しなくていいと言われたんだからな」

エレン「それは違いますよ、リヴァイ先生」

オレはそこで思わず言ってしまった。

エレン「振られるっていうのは、ちゃんと自分の気持ちを相手に伝えて、相手から「ごめんなさい」と言われる事です。その過程を得てない状態ならまだ「振られた」とは言い切れないですよ」

リヴァイ「何で、そう言いきれる」

エレン「オレの時がそうだったからです。オレも危うく「振られた」と思い込んでしまいそうになったから。なあミカサ?」

ミカサ「う、うん……あの時は、誤解させてごめんなさい」

エレン「だから、リヴァイ先生はまだ、やるべき事をちゃんとやってないんだから、諦める必要はないんですよ」

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生の視線が揺れていた。迷っているのがバレバレだ。

リヴァイ「しかし、ハンジにはもう、モブリット先生とか……」

エレン「だったら尚更急がないと、手遅れになりますよ。リヴァイ先生。モブリット先生とハンジ先生が付き合いだしてもいいんですか?!」

リヴァイ「……………分からない」

と、リヴァイ先生は頭を左右に軽く振った。

リヴァイ「ハンジが決める事に俺は口を出せない。それはただのエゴの押し付けだ。あいつの判断に俺の感情は関係ない……」

ミカサ「だからクソちび教師なのね。最低」

エレン「!?」

何だいきなり。ミカサがキレだしたぞ?!

ミカサ「このヘタレが。やっぱりハンジ先生にはリヴァイ先生には勿体ない」

エレン「ミカサ?!」

アルミン「あーごめん。僕も同意だ」

エレン「アルミンまで、何言ってんだよ!」

アニ「うん。異議なし」

エレン「アニも?!」

ジャン「はーさすがにオレもそれはないと思ったわー」

マルコ「だねえ」

皆が口々にキレだした。最低だのヘタレだの、無茶苦茶言い出している。

エレン「お前ら?! 言い過ぎだろ?! リヴァイ先生は教師なんだぞ?」

エルヴィン「うーん、教師である以前に、まず一人の「男」なんだけどねえ」

と、エルヴィン先生がくすっと笑っている。

エルヴィン「皆がキレるのも分からなくはないよ。ただ、リヴァイはもともとこういう性格だからね。自分の判断や感情を殺して、相手のやりたいように出来るだけやらせる。昔からそうだから、今更どうしようもないんだよ」

ミカサ「でもそれでは、相手が動かない場合は自分から動かないって事ですよね? ずるい」

アルミン「ずるいよねえ。確かに」

アニ「指示待ち人間?」

ジャン「そうかもな。受け身過ぎるんだよ」

マルコ「時と場合によるよねえ」

と、口々に言いたい放題だ。お前ら……。

エレン「あのなあ。一応言っておくけど、この中でカップルなのはオレとミカサだけ何だからな! 恋愛ってもんは、そう定規みてえにまっすぐうまくいくもんじゃねえんだよ!!」

と、一人だけリヴァイ先生を庇ってみる。

ミカサ「ではエレンは何故、私と付き合いたいと思ったの? 好きだと自覚したのはいつ?」

エレン「ええ? オレの場合はアレだよ。夏の海で、その……ミカサがヤキモチっぽい素振りを見せた時、なんかすっげえ浮かれちまって。何で嬉しいんだろ? って自己分析してみたら、やっぱりミカサの事が好きだからとしかと思えなくて……」

ミカサ「本当に? それ以前に私にヤキモチは妬かなかったの?」

エレン「それ以前? あージャンとかミカサの中学時代の金髪の先輩とか? その辺は妬いていたよ。今思うと」

ミカサ「ほらやっぱり。ヤキモチ妬いている。ヤキモチを妬いたらそれはもう、相手を独占したい証拠」

エレン「まあそうだけど、え? 今、その話、何か関係あるのか?」

イマイチ訳分からん。でも皆はニヤニヤしている。

ジャン「つまり、リヴァイ先生はヤキモチ、妬かないんですか? って皆、言いてえんだよ」

エレン「あー………」

そういう事か。回りくどいんだよ皆!

リヴァイ「ヤキモチ……だと?」

ミカサ「ヤキモチも妬かないような男は最低。度が過ぎるとダメだけど」

アニ「うん。同感。やっぱりそこは、女としては少しは妬いて欲しいよね」

リヴァイ「………………」

アルミン「でも、さっきモブリット先生、ハンジ先生と何か大事な話があるって言ってたよね」

エレン「あーなんか深刻そうな顔はしていたよな」

リヴァイ「!」

エルヴィン「2人が何処に行ったか分かるか?」

エレン「いえ、そこまでは。オレ達もすぐこっちに戻ってきたんで」

アルミン「もしかして、モブリット先生の方が先に告白しちゃうんじゃないの? このままだと」

リヴァイ「?!」

リヴァイ先生が胸を抑え始めた。よしよし。あと少しかもしれねえ。

煽ってみるか? でも煽り過ぎたらまたヘタレるかもしれないしな。加減が難しいな。

と、皆が考えていたその時、突然、誰かの携帯が鳴った。

リヴァイ先生のものだった。

リヴァイ「リヴァイだ。………何だって? マーガレットがそう言っているのか? 分かった。すぐそっちに行く」

え? またマーガレット先輩関連で何かあったのか?

リヴァイ「エルヴィン。ミスコンの病欠の辞退者っていうのは、マーガレットで間違いなかったよな」

エルヴィン「ああ。なんか少し体調が悪くて今、保健室で休んでいるそうだが」

え?! それってまずくないか。本番前なのに大道具チーフが倒れていたのかよ。

なんでこう次から次へとトラブルばっかり起きるんだ?

リヴァイ「どんどん熱が上がってきているらしい。でも、裏方に入ると言ってきかないとスカーレットが困惑して電話してきた。ちょっと保健室に様子を見に行ってみる」

と言ってリヴァイ先生が教師の顔に戻って駆け出したのでオレ達も心配になって保健室についていく事にした。

すると保健室のベッドの上で寝ているマーガレット先輩と周りにスカーレット先輩とガーネット先輩がいた。

リヴァイ「具合はどうだ?」

マーガレット「38.3度ってところですけど、大丈夫ですよ。本番までに下げれば…」

スカーレット「下げられる訳ない癖に何言ってるの。今日は休むしかないじゃん」

マーガレット「だああって今日は本番なんだよ? 休める訳ないじゃん! 大道具、今回先輩で入れるの私だけじゃないの」

スカーレット「そうだけど……リヴァイ先生からも言ってやって下さいよ。この子、親子ともども馬鹿なんですよ」

マーガレット「うちの血筋よ。しょうがないじゃん」

と、開き直られてもなあ。

リヴァイ「微妙な熱だな。動けない訳じゃないが、冷静な判断は無理だろ」

マーガレット「そんな事ないですよ。うちの親は肺炎で40度越えても原稿描いてましたからね」

エレン「あの、それはあんまり人としてやっちゃいけない事ですよ?」

マーガレット「まあ、そうだけど。でも40度はいってないから動けるよ。大丈夫だって」

リヴァイ「うーん、俺も似たような事はしょっちゅうやらかすから、なあ」

と、悩んでいる様子だ。えええ? そうなのか?

リヴァイ「ただ、裏方に入る奴は体調管理出来てないと足手まといだ。もし万が一、途中で抜けられたり、倒れたら本当に邪魔になる。それを分かっていて言ってるのか?」

マーガレット「はい。倒れないから大丈夫ですよ。新人3人だけに任せる訳にはいかないし」

カチン……

なんか信用されてないようでちょっとムカついたな。今のは。

リヴァイ「俺が役者に入っていなければ裏方に入るんだがな……エルヴィン。この後、お前予定有ったか?」

エルヴィン「いや、ミスコンが終わった後は特に何も。私が代わりに入ってもいいのか?」

リヴァイ「この場合は仕方ねえだろ。確かにマーガレットの言い分も分かるしな。新人3人だけで裏方をやらせるほど俺も鬼畜じゃない。経験者は絶対一人は必要だ。マーガレット。お前は裏には入っていいが、裏方はするな。裏で待機して何かあったら細かい指示だけをしろ。それでいいな? 寝転がってでも出来る仕事だ」

マーガレット「まーしょうがないですね。それで手を打ちます」

リヴァイ「そうと決まれば本番まで仮眠を取れ。俺もついでに寝て行こうかな」

エレン「リヴァイ先生?!」

リヴァイ「すまんが、俺も少し頭が疲れた。1時間でいい。寝かせてくれ」

と、本当にマーガレット先輩の隣のベッドに潜り込んでグーグー眠ってしまったのだった。

えええええ。マジか。俺はさすがにこういう行動は出来ないな。

本当にいいのかな。モブリット先生とハンジ先生の事を放っておくつもりなのかな。

エルヴィン「しょうがないね。マーガレット。裏方プランを今から頭に叩き込むからプラン表、私に見せてくれ」

マーガレット「分かりました」

と、すっかり気持ちを切り替えたのかエルヴィン先生も忙しい。

エルヴィン「今回、裏方に入るエレン、アルミン、マルコ。君達も一緒に話を聞いてね」

と、何故か保健室で打ち合わせを始める事になってしまった。

一応、大体の引継ぎを終える頃には本当に1時間経ってしまった。

あ、もうすぐお昼休みだ。昼飯食べないと…。

一旦、休憩します。お昼は何食べさせようかな。うーん。

そういやまだ前売り券使ってなかった。使いましょうかね。

ミカサ「エレン。前売り券、まだ使っていないので今日、使ってしまおう」

浴衣から制服に着替えてしまったミカサがそう言った。

エレン「そうだった。忘れていたぜ。じゃあ買いに行くか」

エルヴィン「あ、エレン。ついでに私の分も適当に買って来てこっちに持って来てくれないか。マーガレットと打ち合わせしながら食べるから」

エレン「あ、分かりました。カレーでいいですか?」

エルヴィン「任せるよ。頼んだ」

という訳でオレ達は一旦席を離れて昼飯を買いに行った。

カレーのところにはオルオ先輩がいた。あ、ペトラ先輩もエプロン姿に戻って働いている。

エレン「すんませーん。カレー下さい」

オルオ「はいはい。やっと来たな」

エレン「すみません。昨日はヤキソバ食ってました」

オルオ「いや、別にそれを責めている訳じゃないんだが。使い忘れる奴がたまにいるから、そうじゃなくて良かったと思っただけだ」

エレン「あ、なるほど」

オルオ「大盛りだったな。ちょっと待ってろ。トレーも1枚ずつ用意する」

という訳でオルオ先輩にカレーを貰って、ついでに話をしてみる事にした。

エレン「オルオ先輩はリヴァイ先生とハンジ先生の事、気づいてました?」

オルオ「ああ? んなもん、当たり前だろ。昔からあんなんだったよ」

エレン「そうですか……」

オルオ「リヴァイ先生大丈夫なのか? ミスコンでハンジ先生にふられたって、噂が流れまくってるぞ」

エレン「あ、やっぱりそうですか。まあ、今、仮眠取って寝てますけどね」

オルオ「そうか。寝られるんだったらまだマシか。あ、福神漬け忘れていた。いるか?」

エレン「あ、頂きます」

ミカサ「頂きます」

エレン「あ、エルヴィン先生の分もお願いします。大盛りでいいのかな」

オルオ「そうだな。まあ同じ量でいいだろう」

という訳でトレーを二つ頂く事になった。

オルオ「リヴァイ先生、まだ飯食ってないよな」

エレン「はい……食えるのか心配ですけど」

オルオ「カレーだと冷えると味がまずいからな。うーん。あ、福神漬けだけ持たせるか。これ、リヴァイ先生用な」

と、追加で小皿で福神漬けを持たされた。

エレン「ありがとうございます」

オルオ「いや、俺も何かしてやりたいんだがな。こっちの仕事もあるしな。すまん」

エレン「ペトラ先輩の方は大丈夫ですか?」

と、奥の方で仕事をしているペトラ先輩を気に掛けると、

オルオ「ああ。まあ、表面上は元気だよ。ただ、内心は複雑だろうな」

ペトラ「何? 私の噂話してんの?」

と、ひょいっとこっちの声が聞こえたのか、顔を出してきたペトラ先輩だった。

エレン「あ、すんません。勝手に話して」

ペトラ「別にいいけど……リヴァイ先生、大丈夫?」

エレン「今、仮眠とっているところです。大分、精神的に参ってはいましたけど」

ペトラ「はー……だよねえ。私も正直、舞台裏であの現場見ていたけど、アレはないわーと思ったよ」

エレン「ああ、そっか。ペトラ先輩も見ていたんですよね」

ペトラ「うん。敗者も勝者も舞台裏で待機だったからね。声漏れ起きていたのも酷いけど、アレは舞台装置を使い慣れてない子がやらかしたみたいね。文化祭実行委員の、えっと、背の高い、ベル何とか君が、ミスやったみたいで、後で怒られていたけど」

ベルトルト、お前何やってんだよ…。

ペトラ「ったく……ハンジ先生と別れた噂が流れた直後に、キャッキャ言い出すファンの子達もイライラするわ。あの子ら、人の事を何だと思っているのかしら」

エレン「ペトラ先輩はファンクラブの存在をご存じだったんですか」

ペトラ「ああ。3年の女子で知らない子はいないわよ。でも私は入ってなかった。だって『2人きりで話したりしたらダメ』とか『リヴァイ先生は皆の物』とか何とか訳分からん誓約書を誓わされるんだよ? アホ過ぎるわよ。私、そこまで頭悪くないし」

と、苛立った様子で先輩が答えた。

ペトラ「生物室の事件も後で生物部の子から聞いたわ。私、事件やらかしたあの子とは以前、話した事あったけど、ちょっと情緒不安定な感じだったんだよね。両親に放置されているっていうか、構ってくれる人が誰もいないような家庭環境で育ったみたいでさ。それをリヴァイ先生が定期的に家庭訪問していたから。それでグラッといっちゃったんだろうね。だから、あの子の事は私も責める事は出来ないけど…」

と、同じクラスの女子を同情的な目で見るペトラ先輩はやっぱり優しいんだなと思った。

俺はあんまりそこは共感出来ねえけど。やっぱり同じ女性同士だからかな。

ペトラ「でも、私も正直言って、目の前でリヴァイ先生のキスは、精神的にきつかったわ。アレ、台本か何かあったの?」

エレン「いえ………完全にアドリブです」

ペトラ「そうなんだ……じゃあ余計にしんどいわ。リヴァイ先生、ハンジ先生と付き合ってないってずっと言ってたけど、やっぱり大人の嘘だったんだね」

エレン「うーん。厳密に言うと、嘘ではないんですけどね。リヴァイ先生、あの時のあの瞬間まで、自分の気持ちに自覚なかったみたいで。時間差でそれに気づいて自分でびっくりしてましたよ」

ペトラ「…………リヴァイ先生、どんだけ自分の感情に鈍感なのよ」

と、ずーんと落ち込んでしまうペトラ先輩だった。

ペトラ「じゃあリヴァイ先生、今やっと、恋愛のスタート地点に立ったようなものなのね」

エレン「身も蓋もない言い方になりますが。その通りですね」

ペトラ「準備運動が長すぎる…。でもしょうがないのかな。友人の期間が長すぎたのよね」

オルオ「だろうな。近くに居過ぎて気づかないって奴だったのかもしれん」

と、2人はしみじみ言っている。

ペトラ「どうにかして元気づけてあげたいけど、今は回復を待つしかないかしら」

オルオ「とりあえず仮眠はとってるらしいからまだマシじゃないか? 本当にきつい時は不眠症になるだろ」

ペトラ「だよね。何回眠れない夜を越えたかしら。私も………」

と、恋愛片思い歴が長いペトラ先輩が先輩面を見せるのがちょっと面白かった。

エレン「タフですね。ペトラ先輩」

ペトラ「恋する乙女は強くなるのよ! メンタル強化しないとやってらんないわよ!」

ミカサ「同感です…」

エレン「ミカサ? え? 何? お前も何かあったのか?」

ミカサ「………教えない」

エレン「ミカサー?!」

また例の<●><●>の顔で言ってきたから焦った。

何だよ! 隠さなくたっていいじゃねえか!

オルオ「はは! ま、この後の舞台もあるし、あんまりごちゃごちゃ考えている場合じゃねえけどな。リヴァイ先生が担任したOBとOGの方々がそろそろ会場入りする頃だろうしな」

ペトラ「なんか今回、規模が凄いらしいわね。300人超えそうとか何とか。海外から帰ってくる卒業生もいるとか」

オルオ「ああ。らしいな。リヴァイ先生が舞台出るっていう情報を聞きつけて、卒業生が一堂に集まるらしいぜ」

エレン「え? それマジっすか? さ、300人超えるって……」

オルオ「そりゃリヴァイ先生も教師生活長いんだから、卒業生が遊びにくらい来るだろう」

エレン「え、でも、数が多すぎませんか? そんなになるんですかね?」

ペトラ「一クラス35人くらいでしょ? んで教師生活が27歳からスタートで、今38歳だから11年越えてるし。12年目だっけ? 今年で」

オルオ「単純計算で385人の卒業生がいる計算になるな。そのうちの300人くらいがリヴァイ先生の舞台を見に来るって言ってるんだから、そうなるよな」

エレン「リヴァイ先生、人気あり過ぎですよね?! え? もうそれ、芸能人のレベルじゃないですか!!」

オルオ「んな事言われても事実だからしょうがないだろ。第一体育館のキャパ足りるか心配だな」

ペトラ「そうだよね。保護者だって来る筈だし。超満員御礼になるんじゃないかな」

ミカサ「プレッシャーかけないで下さい(ガクブル)」

あ、やべえ! そういえば大事な事を忘れていたけど、ミカサのあがり症、まだ完全には治ってなかったんだった。

だ、大丈夫かな。入学式を越える人の数が来たらミカサ、パニックになるかもしれん。

ペトラ「ふふふ……でも楽しいわよ? 超満員御礼の中でやる演劇は。なかなか経験できないし」

オルオ「だな。リヴァイ先生目当てで見に来る奴らが多いんだろうが、それでも、満員はいいよな。席が空いてないっていうのは、凄く嬉しいもんだ」

と、先輩達はあまり気にしていない。

あ、そっか。先輩達はミカサのあがり症をそこまで深刻に思ってないんだ。

あーどうしよう。これはまずい前情報を聞いちまったな。

エレン「ミカサ、とりあえず保健室戻るぞ」

ミカサ「う、うん……」

オルオ「ん? ここで食えばいいじゃないか」

エレン「あー実はかくかくしかじか」

と、マーガレット先輩の件を伝えると、

ペトラ「え? それマジで? 嘘……辞退者ってマーガレットの事だったのね。知らなかった」

エレン「はい。今、エルヴィン先生が急遽、引き継ぐことになったんで、昼飯を持っていかないといけないんですよ」

ペトラ「大変ね。何だか今年の文化祭は波乱万丈だわ」

オルオ「確かにな。でも、頑張れよ。ここを乗り切れば、絶対いい経験になるからな」

エレン「はい。頑張ります」

と、ぐっと拳を合わせてオレ達はカレー屋から離れてアルミン達と合流した。

アルミンは別のメニューを購入していた。たこ焼きとミックスジュースだけでいいらしい。

エレン「あ、そういやオレもたこ焼きとミックスジュースあったんだ」

ミカサ「一緒に買って戻ろう」

という訳でそれぞれの買い物を済ませてオレ達は保健室に戻った。

ジャンとマルコも後で戻ってきた。こいつらはお好み焼きを選んだらしい。2人で一緒に食うようだ。

んで、保健室でマーガレット先輩と打ち合わせを終わらせると、マーガレット先輩も横になって眠ってしまった。

リヴァイ先生はまだ起きねえな。もうすぐ13:00になるんだが。

エレン「起こした方がいいよな。劇部は人形劇の次だし……」

エルヴィン「そうだね。着替えの時間も必要だしね。リヴァイ、そろそろ起きろ」

リヴァイ「んー……」

と、軽い睡眠をとったリヴァイ先生がようやく起きた。

リヴァイ「……………」

エルヴィン「まだ、頭が起きてないな。水でも飲むか?」

リヴァイ「頂こう」

エルヴィン「了解」

コップ一杯の水を飲んでリヴァイ先生はようやく少し落ち着いたようだ。

目の感じが元に戻っている。まだ完全回復って訳じゃないだろうけど。

少なくとも、先程よりは大分マシになっていた。

エルヴィン「少しは元気になったかな?」

リヴァイ「大分な。今、時間は?」

エルヴィン「ちょうど13:00だね。あと1時間後だよ。準備に入らないと」

リヴァイ「そうだな。考えるのは舞台が終わってからにしよう」

エルヴィン「ああ。舞台が待っている。やるしかないよ」

という訳で、オレ達はマーガレット先輩だけを保健室に残して、それぞれの準備に取り掛かった。

もしかしたらマーガレット先輩はこのまま起きて来ないかもしれないけど、その時はしょうがない。

エルヴィン先生にある程度、引き継いだし、後はもう残されたオレ達で頑張るしかねえ。

第一体育館に劇部メンバーが全員揃った。舞台裏から人形劇を覗き見る。

どうやら桃園の誓いのところでクライマックスらしい。

三国志は話が相当長いから劇でやるならここまでになるよな。

無事に人形劇も終わったようだ。カジ達が一斉に舞台裏にはけてくる。

カジ「いやー! 緊張した! 人形動かすだけなのに緊張した!」

と、笑いながらこっちに来た。

カジ「連荘きついね! でもまあいっか! 衣装ある?」

アニ「はい。こっちに用意しているんで着替えお願いします」

マリーナ「私のもお願い! ジュリエットの衣装頂戴!」

舞台裏はバタバタだった。片づけと準備を同時進行にやるんだからな。無理ねえ。

準備が終わったミカサの顔色が悪い。やっぱり緊張しているんだな。

オレは後ろからミカサを抱きしめて、後ろから「大丈夫」と言ってやった。

ミカサ「え、エレン……」

エレン「大丈夫だ。今度はオレがミカサを支えてやる。だから安心して行って来い」

ミカサ「………うん」

ジャン「そこ! イチャつくのは後にしろ! 円陣やるぞ!!」

という訳で恒例の円陣だ。舞台幕が上がる前には必ずこれをやる。

全員が輪になって手を揃えた。ジャンの合図で掛け声をするんだが、掛け声の前には必ず部長の気合の挨拶が恒例らしい。

オルオ先輩がやっていた、アレだな。ジャンは一生懸命考えているようだ。

ジャン「あーもう、なんか今年の文化祭はいろいろ波乱万丈だけど、絶対成功させるぞ! 怪我すんなよ! 皆、いくぞー!」

一同「「「「「「おー!!!」」」」」」

さあ、手を押し込んで、ひとつになった後は駆け出すぜ!

静かに、幕が開いた直後、オレは度胆を抜かれる。

オルオ先輩の言っていた事は嘘じゃなかった。本当に超満員御礼の舞台だったんだ。

遠くの席の方から「リヴァイ先生ー!!! 元気ー?!」とかいろいろ声が聞こえる。

その声を聞いて、リヴァイ先生が舞台袖でびっくりしていた。

あ、親父達がちゃっかり前列に座っている。やべえ。失敗出来ねえな!

リヴァイ「…………あいつら、来ていたのか」

あ、うるっときているみたいだ。ちょっとレアなリヴァイ先生だな。

オレ達の文化祭は、いよいよクライマックスを迎えた。

そしてお馴染みのマリーナのナレーションが始まり、オレ達はその「異空間」に身を投げ出したのだった…。

キリがいいので一旦、ここまで。続きはまたノシ

あ、舞台のエンディングソングはどれがいいか安価取ります。
るろ剣風なので、一応候補としては、

1.HEART OF SWORD -夜明け前-
2.1/3の純情な感情
3.The Fourth Avenue Cafe

あたりかなーと思うんですが、どれが一番人気あるんでしょうかね?
ちなみにエンディング曲中に皆で1~3人ずつ舞台に出て踊ります。





マリーナ(ナレーション)『今から約140年前黒船来航から始まった『幕末』の動乱期』

マリーナ(ナレーション)『渦中であった京都には沢山の維新志士達がいた』

マリーナ(ナレーション)『血刀を以て新時代『明治』を切り開いたその男達の中には、当然、歴史に名を残さぬまま命を散らした者もいる』

マリーナ(ナレーション)『そして生き残った者の中にも、歴史に名を残さず自ら表舞台を去った者もいた』

マリーナ(ナレーション)『闇の世を駆け、修羅さながらに人を斬り 新時代『明治』を切り開いたその男達は、動乱の終結と共に人々の前から姿を消し去り 時の流れと共に『最強』という名の伝説と化していった』

マリーナ(ナレーション)『そして浪漫譚の始まりは 明治十一年へと移りゆくーーー』



そして、BGMが一気に変わる。

必殺シリーズの、あの、音楽だ。人を仕置きする時の、あの音が会場に響く。



神谷(リヴァイ)『ふー………』

疲れた風の男がひと仕事を終えて風呂に入るシーンから物語が始まる。

男は風呂に入る為に、自分の衣服を脱ぎ棄てて、褌姿になる。

さすがにオールヌードという訳にはいかないので、ここは褌姿で風呂に入ると言う設定だ。

リヴァイ先生がいきなり舞台上で脱ぎだしたもんだから、会場が一瞬、ざわめいたけど。

舞台中はおしゃべり厳禁(合いの手は有りだけど)なので、皆、動揺を押し殺しているようだ。

実際、水をかけるわけじゃないけど、かけ湯したり、体を布で洗ったりする仕草はお手の物だった。

すげえうまい。所謂パントマイム的な感じなんだけど、本当に風呂に入って身体を洗っているような錯覚を覚える。

リヴァイ先生自身の風呂好きがよく分かるシーンだ。

そして体を洗った後は、大きな桶の中に入って、湯につかる。

音だけタイミングに合わせて水音を流している。

神谷(リヴァイ)『………(手で湯をすくう仕草)』

なんか色っぽいな。いや、男が男に色っぽいというのも変な話だけど。

手の動かし方がとても綺麗だった。ただ、湯を掬っているだけなのに。

神谷(リヴァイ)『…………あの男、只者ではないな』

神谷(リヴァイ)『今日は仕留め損ねたが、次は必ず………奴を殺す』

月夜に誓う様に呟いて、暗転となった。





そして一気に世界観が変わる。今度は西洋チックな舞台だ。

マリーナ(ナレーション)『昔々、ヴェロナという街にキャピュレット家とモンタギュー家という2つの旧家があり、この両家は代々、お互いを仇だと思っていがみ合っていました』

マリーナ(ナレーション)『キャピュレット家にはジュリエットという一人娘がおり、モンタギュー家にはロミオという一人息子がいましたが、この2人は舞踏会で出会い、お互いが仇の家の出身だと分かっても、思いは変わらず、両家の仲直りを願うロレンス上人に秘密の結婚式をあげてもらい、夫婦となりました』

マリーナ(ナレーション)『しかし2人はとある誤解から、お互いがお互いに死んだと思い込み、自ら命を絶つ事になるのであった………』

めっちゃ端折ってる! ロミオとジュリエットを3行で説明しちまうという荒業だな。

まあここは、ダイジェスト的な感じで説明するだけだから、台詞もないし、いいけどな。

舞台上では内側に明治バージョン、上から前世バージョンで重ね着して、説明が終わったら一気に脱いでしまうという方法を取っている。




月夜のシーン。明治時代。街道で野宿していた2人の男女が目を覚ます。

ジュリエット(マリーナ)『…………また、あの夢だわ』

ロミオ(アルミン)『夢? 僕も同じ夢を見たよ。君が目の前で死んでいて、僕も後追い自殺する夢だ』

ジュリエット(マリーナ)『私もです。貴方が目の前で死んでいて、自ら服毒自殺をする夢でした』

ロミオ(アルミン)『もう何度目になるだろう? 同じ夢ばかり見ている。この夢は、僕達に何か関係あるのだろうか?』

ジュリエット(マリーナ)『分かりません。でも……もしそうであれば、きっと、前世という物が存在するのかもしれない』

ロミオ(アルミン)『では僕達は前世は結ばれずに、この時代に生まれ変わったのかもしれない。この明治という世に……』

ジュリエット(マリーナ)『ロミオ様……』

ロミオ(アルミン)『この世に巡り合えた奇跡を、今度こそ、離さない。ジュリエット。僕と共に、地の果てまでついてきてくれる?』

ジュリエット(マリーナ)『はい。ロミオ様……(うっとり)』

追手1(アーロン)『おっと、そういう訳にはいかねえな、ご両人』

ここで裏方メンバーが追手の悪者役で総出演だ。オレも後ろの方で準備している。

追手1(アーロン)『探しやしたぜ。2人とも。随分遠くまで逃げていたもんですねえ』

ロミオ(アルミン)『くっ!』

追手1(アーロン)『名家の跡取り同士が駆け落ちなんざ、本当に出来ると思っているんですか? さあ、2人とも。おうちに帰りやせんか』

ジュリエット(マリーナ)『嫌です! 私は家を捨てました! もう実家には戻りません!』

ロミオ(アルミン)『僕達の事は死んだことにして、見逃しては貰えないか』

追手1(アーロン)『そいつは出来ない相談ですな。ま、本当に殺して差し上げる事は出来ますが? (ニタリ)』

ロミオ(アルミン)『!』

ここでオレ達、裏方メンバー(エレン、マルコ、エーレン、カジカジ、キーヤン、スカーレット、ガーネット)が一斉にロミオ(アルミン)とジュリエット(マリーナ)を襲おうとするが。

しかし、その時、

三村(ミカサ)『ふああああ………』

と、場の空気を読まない声が茂みから聞こえてくる。

三村(ミカサ)『折角、いい月見酒日和だというのに、無粋な奴らが邪魔してきたでござるな』

よいしょっと、表に出てくるその男。三村だ。

追手1(アーロン)『てめえ! 誰だてめえは!』

三村(ミカサ)『名乗る者の程ではござらんよ。さて、これは一体どういう事なのでござるか?』

追手1(アーロン)『邪魔する気か?』

三村(ミカサ)『邪魔をしているのはそちらでござろう? 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られると良くいうではござらんか』

追手1(アーロン)『邪魔立てするなら容赦はしねえぞ。野郎ども!』

一同『『『『『『は!』』』』』』

と、ここから一斉に三村(ミカサ)に襲い掛かるんだけど、そこを全部一気に倒しちまう殺陣シーンだ。

オレは所謂、やられ役だな。三村(ミカサ)にばっさり切られて倒れたらそれでOKだ。

全員を屠った後、お客さんの拍手喝采が起きた。鮮やかな殺陣に見惚れたようだ。

やっぱりミカサはすげえな。本当、こういうのやらせると様になる。

追手1(アーロン)だけは一人逃げていくけど、それを追いかける事はしない。

三村(ミカサ)『大丈夫でござったか?』

ロミオ(アルミン)『あ、ありがとうございました…』

ジュリエット(マリーナ)『ありがとうございます(ぺこぺこ)』

三村(ミカサ)『大した事ではござらんよ。して、ご両人はいずこへ向かう予定で?』

ロミオ(アルミン)『とりあえず、港まで向かって、国外の何処かに2人で逃げようと思っていました』

三村(ミカサ)『ふむ……では拙者も途中まで送って差し上げようか?』

ロミオ(アルミン)『え…でも、そこまで甘えるのは……』

三村(ミカサ)『遠慮しなくても良いでござるよ。拙者は流浪人。三村万心。暇ならいくらでも持て余しているでござる故、道中を一緒に旅するのは問題ないでござるよ』

ジュリエット(マリーナ)『では、東京の街まで、送って頂けたら……』

三村(ミカサ)『なるほど。東京は拙者の庭みたいな街でござるよ。道も分かる。出来るだけ近道を通って送って差し上げるでござるよ』

ロミオ(アルミン)『あ、ありがとうございます……なんとお礼を差し上げればいいか』

三村(ミカサ)『礼など要らぬでござるよ。では、一緒に行くで……(ぐるるる…)』

お腹の虫が鳴る。

三村(ミカサ)『………何か、食べ物を分けて貰えれば、それでいいでござる』

と、顔を赤くする三村(ミカサ)だった。

おおおお! 今のところ、特にとちったりもせず、うまくいってるじゃねえか!

死体役の状態で舞台を眺めていたけど、良かった。ミカサ、大丈夫そうだな。



そして暗転が入って、舞台は東京へ移る事になる。



明治の東京。そこで街中をすいすい歩いている三村(ミカサ)を、斎藤(ジャン)が見つけて追いかけまわす。

斎藤(ジャン)『こらあああそこおおおお!!!!』

三村(ミカサ)『あ、斎藤殿』

斎藤(ジャン)『あ、斎藤殿。じゃねえよ!! あんた、何回注意したらいう事聞いてくれるんだ?! 廃刀令! 刀を腰に下げて歩いたらダメだって言ってるだろうが!!』

三村(ミカサ)『これは本物の刀ではござらんよ? ほら、刃が逆さまになっているので、人は切れないようになっているでござる』

斎藤(ジャン)『そういう問題じゃねえから!! 新しい国の決まりが出来たんだから、それに従って貰わないと示しがつかねえの! これはメンツの問題なんだよ! ほら、没収!』

三村(ミカサ)『いやん……そう固い事言わず……ね? (ウインク)』

斎藤(ジャン)『うぐっ! (よろめく)』

うわあ! ミカサのウインク、破壊力抜群だな。

やべえ。こっちも余波を食らってドキドキする。

斎藤(ジャン)『だ、ダメなもんはダメだ! そもそも何であんた、わざわざそんなまがい物の刀を腰に下げて……』

三村(ミカサ)『ただの趣味でござる(キリッ)』

斎藤(ジャン)『嘘をつくなああ! 全く、本当、頭痛てえ……』

と、頭を抱えだす斎藤(ジャン)だったが、

斎藤(ジャン)『ただでさえ、最近物騒な事件が多発してるっていうのに、こっちは忙しいんだよ。あんたに構っている場合じゃねえんだよ。本当は』

三村(ミカサ)『何か事件が起きたのでござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。なんか川辺で男女の惨殺死体が浮かんできたらしくてな。そっちの調査の方で今、人が動いていて、オレも捜査中の身なんだよ』

三村(ミカサ)『男女の……死体? (ぴくっ)』

斎藤(ジャン)『ああ。可哀想に。まだ若い2人だったぜ。あれは異国の血が混ざっているのかもしれんが、綺麗な男女だった』

三村(ミカサ)『!』

そして川辺に移動する。野次馬が川辺に集まっている。

この辺の野次馬とかは、裏方メンバーがそれっぽく演じる。オレも出番だ。

ロミオ(アルミン)とジュリエット(マリーナ)が死体役で転がっている。

勿論、顔は青く塗って、死人の色に変えている。

死体の上に御座を被せて、直接は見せないけど、顔だけは観客に見せている。

死体をちゃっかり確認する三村(ミカサ)に斎藤(ジャン)はまた『こら!』と怒る。

斎藤(ジャン)『勝手に触っちゃダメだから! 何やってんだよ!』

三村(ミカサ)『死体が発見されたのはいつ頃でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ? 確か、今日の早朝だったかな。まだ発見されてからそう時間は経ってないが……』

三村(ミカサ)『犯人の目星は?』

斎藤(ジャン)『まだめぼしい情報も何もねえよ。何だよ? あんたの知り合いか?』

三村(ミカサ)『昨日の夜まで一緒に居た。国外に出るというので、港まで送ってあげたでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! ちょちょ……だったらあんたが一番の容疑者じゃねえか! ちょっと、話を詳しく聞かせろ!』

三村(ミカサ)『犯人は拙者ではござらぬ。刀にも血はないでござろう?』

斎藤(ジャン)『そんなもんは拭けばいい話だろ?! よし、ちょっとお前、一緒に来い』

三村(ミカサ)『その前にもう少し死体の状態を確認させて……(ペロ)』

斎藤(ジャン)『だかーら、勝手に触ったらダメだって…!』

と、その時、野次馬の声が聞こえた。

噂の商人(カジカジ)『これはアレだな。仕置き人が動いたなきっと』

噂の商人2(キーヤン)『ああ、きっと間違いねえ。仕置き人の仕業だ』

その声に三村(ミカサ)は反応して商人に声をかける。

三村(ミカサ)『仕置き人? 何の話でござるか?』

噂の商人(カジカジ)『あ、いやあ……ただの噂なんですがね』

噂の商人2(キーヤン)『ここ最近、やたら殺人事件が多いでしょう? その、仕置き人がやったんじゃないかっていう噂が出ているんで』

三村(ミカサ)『噂の出所はどこでござるか?』

噂の商人(カジカジ)『そこまでは知りやせんよ。私らも、風の噂程度に聞いただけなんで』

噂の商人2(キーヤン)『ただ、今、国の制度がいろいろ変っている過渡期でしょう? 不平不満を漏らす奴も多いんですよね。だから、国が裁けない事を代わりにやってくれる、仕置き人っていう仕事人がいるらしいっていう噂があって……』

噂の商人(カジカジ)『ま、所謂「仇討ち代行人」って感じですかね。昔は仇討ちしても咎められなかったけど、新しい制度ではそれがなくなったから、不満を漏らす奴も多いんですよ』

斎藤(ジャン)『なるほどな……分かった。そっちの線で少し調査を進めてみよう。情報提供ありがとうな。これは駄賃だ。とっとけ』

噂の商人(カジカジ)『へへ~ありがとうございやす!』

ちゃりちゃりーん♪

お金を渡して商人達を下がらせる。斎藤(ジャン)の後を追う三村(ミカサ)。

斎藤(ジャン)『あ、あんたは留置所行きだからな。一緒に来て貰うぞ』

三村(ミカサ)『拙者も調査に協力するでござる』

斎藤(ジャン)『はあ? 第一容疑者が何言ってやがる! あとついでにその刀、没収!』

三村(ミカサ)『(ひょい)この事件、何かきな臭いでござるよ。斎藤殿一人では荷が重いかもしれないでござる』

斎藤(ジャン)『そ、そうかもしれないが、だからってあんたに手伝って貰う訳にはいかねえよ。あんた、ただの流浪人だろうが! ここは警察の領分なんだから、勝手に協力するんじゃない!』

三村(ミカサ)『……拙者の事が嫌いなのでござるか? (ウルウル)』

斎藤(ジャン)『うぐ?! (赤面)』

くそ! このミカサの色仕掛け、マジぱねえ。

これ、落ちねえ奴いねえだろ。ジャンの赤面がガチだ。

斎藤(ジャン)『そ、そういう訳じゃねえけど……つか、あんた男のくせに妙に色気があるな。男色なのか?』

三村(ミカサ)『さあ? どうでござろうな? さて、調査を進めるでござるよ。まずはその『仕置き人』とやらに会う方法を考えるでござる』

斎藤(ジャン)『話を逸らしやがって……』

三村(ミカサ)『ん? (小首を傾げる)』

斎藤(ジャン)『だああもう! 分かったよ! 今回だけだからな! 協力させるのは! このことは内密にしろよ?!』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる』

斎藤(ジャン)『仕置き人の存在の裏を取ってくる。本当にそいつが存在するなら、恐らく闇の接触手段がある筈だ。囮捜査が必要になるだろうが……』

三村(ミカサ)『ではその囮役を拙者が請け負うでござるよ』

斎藤(ジャン)『はあ?! あんた馬鹿か?! それって自分の命を仕置き人に狙わせるって事だぞ?!』

三村(ミカサ)『構わんでござるよ。手がかりが掴めない以上、やってみるしかないでござる』

斎藤(ジャン)『な、なんでそこまで協力的なんだよ。何か理由があるのか?』

三村(ミカサ)『んー』

と、息をついて、複雑そうな顔になり、

三村(ミカサ)『やっと新しい明治の世になったというのに、自由に恋愛も出来ないのかと思うと、腸が煮えくり返るでござるよ』

斎藤(ジャン)『いや、あんた自身が恋愛が出来ないならともかく、他人の恋愛だろ? 何でそこまで感情移入するんだよ』

三村(ミカサ)『まあ、そこはほら、性格の違いって奴でござるよ。とにかく、拙者が囮を引き受ける故、準備が整ったら知らせて欲しいでござる。その間、拙者は独自に調査を進める故』

斎藤(ジャン)『はあ………っておいコラ! どさくさに紛れて逃げるんじゃねええ!!!』

と、叫びながら斎藤(ジャン)が三村(ミカサ)を追いかけるが既に遅しだった。



そんな訳で数日後。茶屋で合流した三村は斎藤と打ち合わせをする。

ちなみに茶屋の給仕役(ウエイトレス)でオレがまた女装する事になった。

2人にお茶を出すだけの簡単な仕事だけどな。

斎藤(ジャン)『裏は取れたよ。仕置き人の名前は「神谷赤司(かみやあかし)」という名前らしい。小柄で痩せた男らしいが、一応、これがその似顔絵になる』

三村(ミカサ)『ふむ。随分と目つきの悪い男でござるな』

斎藤(ジャン)『証言を合わせて作った似顔絵だからな。多少大げさには描いている。実際見て描いた顔じゃねえから、似てねえかもしれねえが』

三村(ミカサ)『いや、十分でござるよ。では今夜、早速決行するでござる』

斎藤(ジャン)『………本当にいいんだな? 命の保証は出来ねえぞ?』

三村(ミカサ)『やけに心配してくれるでござるな。拙者に気がある?』

斎藤(ジャン)『んなわけねえだろおおおお!? 誤解を招くような事を言うんじゃねえよ!!! オレはそっちの趣味はねえから!!!』

三村(ミカサ)『ははっ……なら良いでござる。拙者も安心して囮捜査が出来る』

斎藤(ジャン)『あーもう、しらねえからな。どうなっても……あ』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『そういえばずっと「あんた」とか「お前」とか呼んでいたが、名前を聞いてなかったな。名前、教えてくれないか』

三村(ミカサ)『名乗るほどの者ではないと前にも言ったと思うでござるが』

斎藤(ジャン)『いや、囮捜査をやってくれる人間の名前すら知らないってダメだろ。教えてくれ』

三村(ミカサ)『………三村万心』

斎藤(ジャン)『分かった。三村だな。三村、今夜作戦を決行するから、準備を整えておいてくれ』

三村(ミカサ)『了解したでござる』

斎藤(ジャン)『じゃあ、また後でな。あ、ここの茶代はオレが払っておくから』

三村(ミカサ)『ありがたいでござる』

という訳で、2人が別れると………

三村(ミカサ)『斎藤殿に拙者の名前を知られていなくて良かったでござる』

と呟く三村であった。






月夜。月の明るいその夜にその作戦は行われた。

夜の人気のない道を一人歩く三村。その背後から、例の気配を感じた。

釣りにかかった魚がやってきた。後は釣り上げるだけ。

三村(ミカサ)『何か用でござるか?』

惚けた声で話しかけると、男は月を背景にして答えた。

神谷(リヴァイ)『あんたに恨みはないが、命を頂きに来た。三村万心で間違いないな?』

三村(ミカサ)『確かに拙者が三村でござるが………そちらも神谷殿で間違いないか?』

神谷(リヴァイ)『(ぴくっ)何故、俺の名を知っている?』

三村(ミカサ)『拙者は神谷殿と少し話がしたいでござる。時間を頂けないだろうか』

神谷(リヴァイ)『断る。俺は頼まれた仕事をこなすだけの仕事人。仕置きをする人間だ。余計な事は話したくない』

三村(ミカサ)『頑固で融通のきかない人でござるな。では、力づくで問わせて貰うしかないでござるな』

じりじり………じりじり………

直後、2人の神がかった殺陣の応酬が始まった……!!!


おおおおおおおお………


観客が見入っている。神谷(リヴァイ)と三村(ミカサ)の剣戟の凄まじさに度胆を抜かれているようだ。

すっげええ! 本番が一番、動きにキレがある。さすがだ!!

皆、裏方も一緒に殺陣に見入っていると、三村(ミカサ)が徐々に劣勢になってきた。

三村(ミカサ)『くっ……!』

神谷(リヴァイ)『なかなかやるな……(ニヤリ)』

だんだん動きが速くなっていく。一騎打ちだ。劣勢の中、それでもアクロバティックな動きを混ぜながら避けて、遂に来た!!!

ミカサの壁伝いだ! 体育館の舞台の壁を伝いながら、横移動をするという大アクションだ!

神谷(リヴァイ)『何?!』

三村(ミカサ)『うおおおおおおおおおお!!!!』


ガッキィィイイイイイイイ!


SEが、轟いた。直後、飛びのいて、神谷(リヴァイ)が汗を浮かべて距離を取る。

お互いに息を荒げて、そして三村(ミカサ)の方から口を開いた。

三村(ミカサ)『神谷殿……最近起きた、若い男女が川辺で死体で発見された事件をご存じではないか?』

神谷(リヴァイ)『ああ。その事件なら知っているが……』

三村(ミカサ)『噂では、神谷殿がやったのではないか、という情報を聞いた。何か知っている事はないでござるか?』

神谷(リヴァイ)『何? 俺はその事件については関与していないぞ』

三村(ミカサ)『やはりそうでござったか……(刀を下す)』

息を整えて三村(ミカサ)は言った。

三村(ミカサ)『剣を交えて分かった。神谷殿はあのような卑怯なやり口はしない方でござる』

神谷(リヴァイ)『何故そう言い切る』

三村(ミカサ)『そもそも、こんなに明るい月夜に暗殺を請け負う方がおかしいでござる。闇討ちをするのであれば、新月を狙う。闇の中の方が、仕事をしやすいでござろう?』

神谷(リヴァイ)『ふん……俺は金さえ貰えればいつでも仕事を請け負うだけだが』

三村(ミカサ)『それでも、自分の有利になるように事を運ぶのが普通でござる。神谷殿は犯人ではござらんな』

神谷(リヴァイ)『……………あの事件について追っているのか?』

三村(ミカサ)『(こくり)何か知っている事があれば教えて貰えないでござろうか』

神谷(リヴァイ)『ふん……』

刀を収めて神谷(リヴァイ)が答える。

神谷(リヴァイ)『俺が何故そんな余計な事を話さないといけない。情報を売ると思っているのか?』

三村(ミカサ)『そこを何とかお願いするでござるよ』

神谷(リヴァイ)『無駄だ。俺は仕事をこなすだけだ。貴様の命を取るまでは、この剣を振るうのみ!』

三村(ミカサ)『!』

再び剣戟が起きる。再び凄まじい殺陣が起きるが、そこに斎藤率いる警察官が突入した。

神谷(リヴァイ)『ちっ…!』

慌てて逃げる神谷(リヴァイ)。それを追いかける警官隊。

斎藤が三村に駆け寄って、

斎藤(ジャン)『大丈夫か?』

三村(ミカサ)『大丈夫でござる。しかし困ったでござるな。手がかりが何も掴めなかった』

斎藤(ジャン)『まあ、捜査なんてそんなもんだよ。気落とすな。また別の線から捜査を進めてみようぜ』

三村(ミカサ)『かたじけないでござる(しょんぼり)』

という訳で、その日の囮捜査は結局は失敗に終わってしまったのだった。




捜査が振り出しに戻って悩む三村と斎藤。

今度は惨殺された男女の実家である、名家を両方、再び訪ねてみる事にした。

一応、斎藤が来る前に他の捜査官もその家に足を運んで調査をしていたが、斎藤と三村も調査書以上の情報は得られなかった。

その両家はお互いの家をけなし合い、不仲で有名な名家だった。

お互いはお互いに2人の事件を忘れたがっていたが、一人だけ、2人の死を悼んでいる者が居た。

ジュリエット側の家に使えていた若い使用人の女だ。

使用人の女(アニ)『そうですか。まだ犯人は見つからないのですか……』

斎藤(ジャン)『すみません。こちらも調査を進めているんですが、なにぶん、手がかりが少なくて……何か気が付いたことはありませんか? どんな些細な事でもいいんですが』

使用人の女(アニ)『そうですね。お2人は小さい頃から仲が良く、お似合いの御2人でしたが、お互いの家長同士が仲が悪くて……人目を忍んでお会いされていました。いつか2人でこの家を出よう。そう決意されて、その「いつか」がおよそ1か月前でした。私もその手助けをしてあげたのですが、何分、ここの使用人なので、脱出の手引き以外の事は何も出来ず……』

斎藤(ジャン)『そうですか……』

使用人の女(アニ)『どうかせめて犯人を見つけてさしあげて下さい。どんなに時間がかかってもいいですので。でないと、あの2人が無念が浮かばれませんわ』

斎藤(ジャン)『分かっています。ご協力ありがとうございました』

そして、2人は屋敷を出ると、

斎藤(ジャン)『………三村?』

三村(ミカサ)『妙ではござらんか?』

斎藤(ジャン)『何が?』

三村(ミカサ)『いや、両家の家長同士が仲が悪いと言っておったでござろう?』

斎藤(ジャン)『ああ、そうだったけど、それが何か?』

三村(ミカサ)『であるならば、何故その屋敷同士がこんなに近くに……ほぼ隣同士に建てられているのか。おかしいとは思わぬか?』

斎藤(ジャン)『ん~前の代の時は仲が悪くなかったとかじゃねえの? 今の代になってから悪くなってきたとか』

三村(ミカサ)『いや、それはないでござる。拙者自身も足で情報を稼いできた故、この両家は代々、少なくとも2代前くらいから仲が悪かったそうだ』

斎藤(ジャン)『ん~? 祖父の時代から仲が悪いのにって事か。確かにそれは変な話だな。普通、どっちかが引っ越すなり、離れてもおかしくねえよな』

三村(ミカサ)『それに、亡くなった若い男女……跡取り同士が「小さい頃」に会っているのも妙でござる。本当に仲が悪ければ、そんな幼少期から会えるものでござろうか?』

斎藤(ジャン)『あー……』

と、妙に納得する斎藤(ジャン)だった。

斎藤(ジャン)『確かに、ちょっと妙ではあるな。ただまあ、それがなんだって言われれば、俺にも良く分からねえが』

三村(ミカサ)『拙者、もう暫くこの両家の周りを調査してみるでござるよ』

斎藤(ジャン『ああ。確かにその必要はあるかもしれないな。やってみよう』

という訳でとりあえず、両家を離れる2人だった。






斎藤(ジャン)と三村(ミカサ)が独自にそれぞれの足で情報を集めていたその時、再びあの男が現れた。

背後から奇襲をかけて三村の命を狙いに来た、神谷であった。

不意打ちを避けられて、神谷は舌打ちする。

三村(ミカサ)『ひ、昼の最中から暗殺とは、仕事熱心にも程があるでござろう!』

神谷(リヴァイ)『俺は契約期間内にきっちり殺らないと気が済まない性質なんだよ……次は殺す』

三村(ミカサ)『ま、待て! 神谷殿! その暗殺の依頼の件でござるが……』

神谷(リヴァイ)『ああ? (機嫌悪い)』

三村(ミカサ)『その、神谷殿と接触をはかるための囮捜査だった故、本当の暗殺依頼ではござらぬ。騙して悪かったとは思うが、契約を破棄して貰えぬだろうか?』

神谷(リヴァイ)『ちっ………何かおかしいと思ったが。やはりそうだったのか。ほらよ。前金はお前に返していいんだな?』

と、律儀に金を返す神谷であった。帰ろうとする神谷を三村は捕まえて、

三村(ミカサ)『神谷殿! この間の問いにもう一度、答えて下さらぬか?』

神谷(リヴァイ)『あんたもしつこい男だな。同業者かもしれない事件の情報を俺が売ると思うのか?』

と、逃げようとする神谷だが、

神谷(リヴァイ)『ただ、まあ、俺もひとつ気になっている事はある』

三村(ミカサ)『なんでござる?』

神谷(リヴァイ)『俺もその男女の死体をチラリと盗み見したが……普通の殺し方ではないのは確かだな』

三村(ミカサ)『それは拙者も思ったでござる。妙な殺し方でござった』

神谷(リヴァイ)『少なくとも俺達仕置き人は『殺す事』を目的として殺す。しかしあの男女の殺され方は……まるで人をおもちゃにして遊んだような殺し方だったな。嬲り殺しだったのかもしれん』

三村(ミカサ)『つまり怨恨の線でござろうか』

神谷(リヴァイ)『どうだろうな? そこまでは俺も分からんが、ただの殺人ではないような気もする。それ以上の事は分からん。後は自分でどうにかしろ』

と言って、三村のもとを離れる神谷であった。






家長1(アーロン)『目障りなハエが2匹いるようですね』

家長2(エーレン)『ええ。困りましたね。我々の家の事をまだ捜査している捜査官がいるようです』

家長1(アーロン)『感づかれる前に処分した方がいいかも知れませんね。あの例の男に依頼しましょうか』

家長2(エーレン)『それがいいかもしれませんね。仕置き人の彼に依頼しましょうか』

家長1(アーロン)『まだこの研究は世に出す訳にはいかんからな。しかしうちの馬鹿息子が、知らぬ間に薬の一部を持って出ていたとは……服毒自殺でもするつもりだったんだろうか』

家長2(エーレン)『うちの娘の方も、似たような事をしていましたよ。薬の一部を持ち出して駆け落ちするとは……やれやれです。おかげで2人を処分するのに大変な手間がかかってしまった』

家長1(アーロン)『まあいい。跡取りはまた子供を産んでもらえば代用は出来る。若い娘を見繕って……』


カラン………


その会話を盗み聞きしてしまった使用人の女(アニ)だった。

お盆を落としてしまって、へたり込んでしまう。

使用人の女(アニ)『あっ……』

家長2(エーレン)『………聞いていたのかね』

使用人の女(アニ)『も、申し訳ありません!! あの、その………』

家長2(エーレン)『聞かれたからには、ここから出す訳にはいかないな』

家長1(アーロン)『私の姿を見られたのもまずいな。ここにいる事はバレてはいけない』

家長2(エーレン)『何……この娘にも実験に参加させればいいのですよ』

家長1(アーロン)『いいのか? 使っても』

家長2(エーレン)『どうぞお好きに。うちの家の者ですから』

家長1(アーロン)『分かった。では、この薬を飲ませてやろう(牛乳用意)』

きた。お色気シーンその2だ!!!

メイドの恰好の使用人の女(アニ)が羽交い絞めされて、牛乳を飲まされるだけなんだが、これがもう、なんていうか、いろんな意味で酷い。

このシーンだけはアニじゃないと色気でないからってエルヴィン先生が説き伏せたんだよな。

これがなければ、オレが使用人の女の役をやっていたと思うんだけど。

オレが牛乳飲まされても、なあ? 色気足りねえだろ?

使用人の女(アニ)『ん……あっ……(ごっくん)』

音がエロ過ぎる!! ありがとうございます!!!

牛乳飲まされて、口の端から白い液体が零れて、力なく倒れそうになる。

もうこのシーン考えたの誰なんだよ。天才過ぎる。

その後、使用人の女(アニ)のアニは地下へ連れて行かれる。

そして暗転。地下には、薬を飲まされて身体を無理やり強化された「超人」達がトレーニングを積んでいた。

所謂殺戮マシーンだ。ただ命令をこなすだけの、人間兵器。

ちなみにその背景の殺戮マシーン役でオレも出ている。顔にマスクしているけど。

裏方の人間がここでも勢ぞろいだ。アニもここで洗脳される設定なんだ。

洗脳処置を施された使用人の女(アニ)は、今度は女忍者のような格好になる。

目の色が違う感じだ。いつも唸っている野生の獣のような状態だ。

家長2(エーレン)『例の仕置き人を使わなくとも、この娘を使って殺させても良いかもしれないですね』

家長1(アーロン)『ああ、そうだな。試しにやらせてみるか』

家長2(エーレン)『よし。では早速、実験をさせてみよう。奴らを殺して貰えるね?』

使用人の女(アニ)『……(こくり)』






新月の夜。その殺意の気配は突然、三村と斎藤の背後から襲い掛かった。

三村(ミカサ)『また神谷殿でござるか?! いい加減、しつこいで……』

斎藤(ジャン)『ん? 誰だ? あの娘は』

闇の中に浮かび上がる殺戮マシーン。彼女は容赦ない体術を繰り出して三村を襲う!!

三村(ミカサ)『?! この娘は………?!』

あの時の優しい使用人の女だと気づいた三村はすぐさま体勢を整えて逃げ出す。

斎藤(ジャン)『思い出した! 女の方の使用人の娘だな?! なんか様子がおかしいぞ?!』

三村(ミカサ)『で、ござるな……! 目を覚ますでござるよ!』


キンキンキン!!!


短刀で接近戦で食らいつくアニと防戦一方のミカサの対決だ。

ここもすげえ殺陣のシーンなんだよな。観客が「おおお」と食い入るように見ている。

使用人の女(アニ)『殺す……殺す……殺す……殺す!!!!』

完全にバーサーカー状態の彼女に三村は苦戦を強いられる。

刀がはじけ飛んで、今度は体術対体術の戦いになってしまった。

三村(ミカサ)『やむおえん!!! (バッ)』

剣を捨てて拳で対応する。おおおお。剣術だけじゃねえぜ! さすがだ!!

ミカサはアニの攻撃を見事に防いで流して攻撃を食らわない様に逃げる。

そして相手の体力を削って、一発、腹に入れて気絶させる作戦だ。

腹に一発入って、気絶させた。そのアニを体に抱き留めて……

三村(ミカサ)『一体何が起きているでござるか……?』

と困惑する三村。しかしその時、

使用人の女(アニ)『殺す! (開眼)』

三村(ミカサ)『?!』

三村が腹を抑えられて苦しみ始めた。強烈過ぎるハグの攻撃だ!

三村(ミカサ)『うが……うぐっ……あああ!?』

その瞬間、自分の剣を抜いて背後から斎藤がアニを背中から切った。

上から下へ。鮮血のSEが入る。

そしてようやく我に返った使用人の女は、

使用人の女(アニ)『た、助けて……』

三村(ミカサ)『しゃべってはならぬ! すぐに手当てを……』

使用人の女(アニ)『薬を、飲まされて、体が、自由に、出来ずに……ご主人様達が…犯人だ……』

断片的にでも言葉を残そうとして、そして途中で命が果てる使用人の女だった。

躯を胸に抱きながら、三村(ミカサ)の瞳に怒りの炎が宿る。

三村(ミカサ)『断片的にしか分からなかったが、これはあの両家の家長が怪しいと見て良いのでござろうか』

斎藤(ジャン)『薬がどうとか言っていたな。まさか、この娘もそのせいで………』

三村(ミカサ)『…………許さぬ』

そして三村はそう言い捨てて使用人の女を斎藤に預けて、単身、屋敷に乗り込もうとする。

斎藤(ジャン)『おい、ちょっと待て。証拠もないのに乗り込むな! 裏付け捜査をしてからじゃねえと突入は……』

三村(ミカサ)『そんな悠長な事を言っていたら、またこの娘のような被害者が出るかもしれぬ!!』

斎藤(ジャン)『いや、まあそうだけど……』

三村(ミカサ)『拙者一人で行ってくる。斎藤殿は、この娘を弔ってやってくれ』

斎藤(ジャン)『え……あ、ちょっと待て三村ああああ?!』

そして三村は、闇の世界に一人で駆け出した。







そして再び屋敷のシーン。ソファのある一室だった。

契約を交わしているのは神谷本人だった。

神谷(リヴァイ)『今度こそ、本物の暗殺依頼だろうな?』

家長1(アーロン)『え? 本物?』

神谷(リヴァイ)『いや、以前、偽の暗殺依頼が舞い込んできたからな。こちらも信用問題がある。契約はきっちりして貰いたい』

家長1(アーロン)『そうですか。それは気の毒でしたね。ええ、今回は間違いない依頼ですよ。この小蠅のような男を始末して頂きたい』

神谷(リヴァイ)『ならいいが……』

家長2(エーレン)『紅茶のおかわりはいかがですか?』

神谷(リヴァイ)『ああ、頂こう』

神谷(リヴァイ)(ごくり)

家長2(エーレン)『………………』

神谷(リヴァイ)『なんだ? さっきから人の顔をジロジロと』

家長2(エーレン)『いえ、暗殺家業を行う方が、まさかこんなにあっさりとした罠に引っかかるとは思わなくて呆れていただけです』

神谷(リヴァイ)『何……? (グラッ)』

家長2(エーレン)『あの娘が失敗したという報告が来ましたからね。早めに次の矢を投入しないといけないと思いまして』

神谷(リヴァイ)『次の矢……だと? (フラフラ)』

家長2(エーレン)『ええ。あといい実験材料にもなりますし。一石二鳥ですよ』

神谷(リヴァイ)『くっ……貴様ら、まさか……!』

バタン……力なく崩れた神谷(リヴァイ)を再び地下へ運び込む。





暗転。三村が単身乗り込もうとするのを必死に止める斎藤の姿。

斎藤(ジャン)『頼むから突入はまだ待ってくれ! あんた一人で突っ込んでもどうしようもねえんだよ!! あの娘の命を無駄にする気か?!』

三村(ミカサ)『うっ……では一体どうすれば……』

斎藤(ジャン)『強引な手段だが、別の容疑で家宅捜査をかける。何でもいい! 無理難題ふっかけて、警官隊を突入させる! やるとすれば、その方法しかねえ!』

三村(ミカサ)『ではその別の容疑とやらを早くでっちあげるでござるよ!!』

斎藤(ジャン)『無茶言うな!! 今すぐには無理だ!! 他の警官たちに連絡するのにも時間がかかる。とにかく今、お前を一人でいかせられるか!!』

三村(ミカサ)『…………(目が据わっている)』

斎藤(ジャン)『分かってくれたか? じゃあここで大人しく待って……』

三村(ミカサ)『ああ。分かった。斎藤殿を信じるでござるよ……』

斎藤(ジャン)『良かった。じゃあオレは仲間を呼んでくるから、あんたはここで待っていてくれよ』

と、約束を交わして斎藤は闇夜を駆けだした。

残された三村は躯を抱えて、茂みの中に一度隠してしまう。

三村(ミカサ)『………すまなかったでござる』

と彼女に対して呟いて、三村は斎藤とは別方向に1人で駆け出したのだった。





数分後、仲間を連れて斎藤がすぐ戻ってきた。しかしそこには三村がいない。

斎藤(ジャン)『あの嘘つき野郎がああああああ!?』

と、頭抱えてそのまま直進して駆け出すのだった。






屋敷の中に単身突入して、使用人の一人を脅して屋敷の奥へ進んだ三村。

そこには家長1(アーロン)が一人、待ち構えていた。

家長1(アーロン)『ああ、この間の方ですか。またお会いしましたね。何か用でございますか?』

三村(ミカサ)『……………屋敷の中をもう1度、見せて貰いたい』

家長1(アーロン)『ん? 前に警察の方が来られた時に全てお見せしましたが?』

三村(ミカサ)『いや、まだ見せて貰っていない場所がある筈でござる。例えば、地下とか』

家長1(アーロン)『………貴方、見たところただの流浪人ですよね? 今日は警察の方とご一緒ではないんですか? でしたら貴方にはそれを見る権利はないと思いますが』

三村(ミカサ)『やましい物を隠しておるのだろう? 例えば、人の力を限界まで無理やり引っ張り上げる薬とか』

家長1(アーロン)『あなたは本当にうるさい小蠅ですね』

と、困ったように対応する家長だった。

家長1(アーロン)『言いがかりにも程がありますよ。何の証拠があって言っているのか分かりませんが、これ以上ここに居座る気ならば、私にも考えがあります』

と言って家長は合図を鳴らした。

そして雑魚キャラ用心棒の登場だ。裏方が一斉にマスクマンの状態で出てくる。

ユニフォームが筋肉マンのノリに近いけど。さっき地下でトレーニングしていた奴らがここで出てきた事にしているんだ。

家長1(アーロン)『我が家の用心棒です。彼らにあなたを始末して貰いますよ。やってしまい!!!』

という訳で、1対多数の殺陣が始まった!

ここはすぐにやられるんじゃなくて、ある程度三村に攻撃しないといけない。

その上で徐々にやられていく。そんな感じの演出になっている。

用心棒だけで倒せると思っていた家長は次第に焦り出す。

やられたオレ達は邪魔にならない位置で屍役だ。

家長1(アーロン)『ぬう……なんていう事だ。これだけの数をあっさり倒すとは。仕方がない。まだアレは完成はしていないが……彼を呼ぶしかない』

合図と共に、隣の部屋から、神谷が現れた。目の据わった神谷だ。

家長1(アーロン)『用心棒代わりに雇いました。彼にあなたを始末して貰いますよ。神谷さん、客人を殺していいです。これは正当防衛ですから許されます』

神谷(リヴァイ)『…………了解した』

そして神谷はゆっくりと、刀を抜いたのだった。

音楽が変わる。これは「アカイ」とかいう麻雀アニメの「神技」とかいうBGMらしい。

エルヴィン先生がそのアニメが好きらしくて、どうしてもここで使いたいと言ってきたんだ。

静かで優雅な殺陣が始まった。三村はそれを受けながらも嵐の前の静けさのように感じる。

そして殺陣が進むうちに、だんだん表情が崩れていく神谷。

三村(ミカサ)『神谷殿……?』

ミカサもだんだん、その寒気を感じて、遂に……

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

また音楽が変わった。ここから急展開になる!

DS版のSAGA3のラスボス「神戦」の音楽を使用させてもらった。

この曲のイントロ大好きなんだよオレ。途中に流れる雄大なメロディも大好きだ!

三村(ミカサ)『神谷殿!?』

急激に強くなる。神谷もバーサーカー状態に突入だ。

苦しみながら剣を落としてしまって、頭を抱えて、素手での戦いに突入だ!

神谷(リヴァイ)『うおおおおおおおおおお?!』

絶叫。そして突撃。突然の変わりように三村も困惑する。

剣で応戦するものの、避けきれず、捕まる。

剣をお互いに落とした上での、肉弾戦に入った。

途中で神谷(リヴァイ)のタワーブリッジが入った。それを体を捻ってミカサが脱出した時、観客から「うあああ?!」と悲鳴のような動揺が広がった。

ここからはガチで凄い。剣での殺陣とはまた違ったアクション要素満載で、目が離せない。

三村(ミカサ)『なんて、強さだ……!』

防戦一方になる間、ミカサは刀を拾いなおして再び自分の間合いを取ろうとするが……

神谷(リヴァイ)の攻撃が勢い余って本当に刀に当たってしまい、刃が折れた。

三村(ミカサ)『えっ………』

三村(ミカサ)が顔面蒼白になった。まずい! これは打ち合わせにはない!

本当ならここから、剣を拾いなおした三村(ミカサ)側が覚醒する予定なのに。

剣がない状態では、覚醒のしょうがない。

呆然とするミカサ。アドリブで乗り切らないといけないけど、頭の中が真っ白になっているようだ。

神谷(リヴァイ)も青ざめている。散々寸止めの練習をしたのに、本番でやらかしてしまった顔だ。

だからオレは観客に聞こえない声で言った。

雑魚(エレン)『戦え……まだ、勝機はある……(小声)』

三村(ミカサ)『!』

雑魚(エレン)『ここに、ある!』

幸い、オレの傍に神谷側の刀が落ちていた。

三村(ミカサ)『で、でも……それだとラストの剣戟が無くなる…(小声)』

雑魚(エレン)『大丈夫だ! 先生を信じろ……いや、オレを信じろ! (小声)』

ミカサは迷っていたようだけど、剣を再び拾いなおした。

本当はラストでまた刀と刀の殺陣に入る予定だったんだけど。

もう仕方がねえ。素手と刀でやりあうしかねえ!

意図を察したリヴァイ先生は小さく頷いた。このままいくらしい。

ぶっつけ本番だ。刀と刀、体術対体術の殺陣は散々練習したけど、刀対体術は練習にない。

もうあとは2人の感性に任せてしまうしかない。完全アドリブの殺陣だ。

音楽が切り替わった。ここからはSAGA2の方の「死闘の果てに」を使う。

ゲーム音楽ばっかりですまん。この辺は完全にオレの趣味だ。

完全アドリブの殺陣だけど、大丈夫だ。2人の息はここ数日間で合わせられるようになっている。

だけどここでだんだん強くなる三村の脳裏に昔の記憶が蘇り始める。

バックスクリーンでその映像が流れる。舞台は暗くなって一時停止だ。

幕末の世を駆ける。火村抜刀斎の隣で、一緒に敵と戦う三村の姿だ。

口パクで会話する2人の映像が流れる。この時のるろ剣の方の火村剣心役はオレがやっている。

頬に十字傷を持つ伝説の男と何か話している。そんなイメージだ。

そしてまた時が動き出す。覚醒した三村は、刀を抜かないまま、鞘を我突のように突き出して、神谷の腹に攻撃を当てた。

本当ならここは逆刃剣で対応する筈だったけど、神谷の剣だと殺しちまうから鞘でやるしかなかった。

そして一瞬だけ正気に戻った神谷が頭を抱えながら起き上る。

神谷(リヴァイ)『くっ……俺は一体、何を……』

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい……(ヨロヨロ)ま、まさか貴様! あの伝説の火村抜刀斎……?!』

三村の強さを目の当たりにしてそう疑い出すが、

三村(ミカサ)『いいや? よく間違われるでござるが人違いでござるよ。拙者はあの方の足元にも及ばない』

と、少し懐かしむようにしながら三村は言う。

三村(ミカサ)『ただもしも、ここに火村殿がいたらきっと、同じことをしたと思うでござる。神妙にお縄に頂戴しろ(じりじり)』

家長1(アーロン)『か、神谷! 時間を稼げ!! 君は仕置き人だろう?! 私を守るんだ!!! 奴を殺せ!!!』

神谷(リヴァイ)『うっ……!』

殺せ! という言葉に反応して再び神谷が苦しみだした。

しかしその直後、折れた刃を拾って自分で握って、家長1(アーロン)を後ろから羽交い絞めして固定した。

家長1(アーロン)『ひ、ひいいい?!』

神谷(リヴァイ)『俺ごと、殺せ……!』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『早く! こいつごと、俺を殺せ!!!』

家長1(アーロン)『な、何を……君は金で何でも請け負うんじゃなかったのか?!』

神谷(リヴァイ)『黙れ!! これは俺の誇りの問題だ……今すぐ…俺を……うっ……!』

苦痛に顔を歪め始める神谷に三村は動けない。

それを悟ると、神谷は自ら依頼人ごと、自分の腹を貫いた。

三村(ミカサ)『神谷殿……!!!!!』

神谷(リヴァイ)『ぐふっ……(吐血)』

三村(ミカサ)『しっかりしろ! 今すぐ手当を……』

神谷(リヴァイ)『三村……』

三村(ミカサ)『!』

神谷(リヴァイ)『出来るならもう一度……お前とは、素面の時に、剣を交えて見たかった………(がくり)』

三村(ミカサ)『神谷殿!!!』

その後、突然の警官の突入が始まった。

斎藤(ジャン)がすぐさま三村(ミカサ)に駆け寄り、

斎藤(ジャン)『大丈夫か三村!!!』

三村(ミカサ)『斎藤殿! 神谷殿が……!!!』

斎藤(ジャン)『くっ……遅かったか。すまねえ。もう一人の家長の方は包囲網を敷いてさっき、捉えたよ。あの娘の口の中に残っていた薬の成分が証拠になった。薬事法違反ってやつか? 逮捕状が出せたから、もう心配いらねえ。屋敷の中も警察で押さえられるから余罪も出せるだろう』

三村(ミカサ)『手間をかけさせたでござるな…すまなかったでござる』

斎藤(ジャン)『いや、もうしょうがねえよ。とりあえず、屋敷を出るぞ』

そして暗転。事件のエピローグへ移動する。




墓が二つ。神谷の墓とあの娘の墓を斎藤の金で建てて貰い、その墓の前で2人は話す。

斎藤(ジャン)『あの薬は人間の体というより、頭の意識を限界まで高める薬だったらしい』

三村(ミカサ)『意識を……』

斎藤(ジャン)『いわゆる、火事場の馬鹿力を誰でも意図的に作り出せるようにする。そういう薬の研究を進めていたんだそうだ』

三村(ミカサ)『一体、何故そんな研究を……』

斎藤(ジャン)『次の世の為に必要だと言っていた。いつかくるべき未来の時代の為に必要な研究だと、奴は主張していたよ。外国と戦争する時代が遠くない未来に必ずやってくるから、富国強兵が必要になると。その時の為に、研究していたと自白した』

三村(ミカサ)『外国と、でござるか?』

斎藤(ジャン)『ああ。オレにはちょっと俄かには信じられなかったが……どうもこの事件は、ここだけが根っこじゃねえみてえだ。奴以外にも、似たような研究をしている研究者が国中に居るらしい。家長同士が不仲を装っていたのは、協力体制を世間に悟られない為と、もし事が露見した場合はどちらかが逃げて、研究を続けるためのものだったらしい』

三村(ミカサ)『……そうでござったか』

斎藤(ジャン)『胸糞悪いけど、まだこれで終わりじゃねえらしいよ。はあ、何だってこんな面倒臭い事が起きるんだろうな。オレはただ、安定した暮らしがしたくて警察官になっただけだってのに……』

三村(ミカサ)『………まだ、本当の意味では戦いは終わってないのでござるな』

斎藤(ジャン)『ああ?』

三村(ミカサ)『何でもないでござる。お疲れ様でござったな。斎藤殿』

斎藤(ジャン)『ああ。疲れたよ。明日は休みだからゆっくり休みたい……と言いたいところだが』

三村(ミカサ)『ん?』

斎藤(ジャン)『あんた、今持っている刀、それ、神谷の持っていた物じゃねえか?』

三村(ミカサ)『ギクギク』

斎藤(ジャン)『人を切れる方の刀だったら、廃刀令に適用するぜ? という訳で没収!!!』

三村(ミカサ)『か、固い事言わないで欲しいでござるよ! これは神谷殿の遺留品!! 預かっているだけでござる!!』

斎藤(ジャン)『ダメに決まってるだろうが! あ、こらあああ!!!』


と、また追いかけっこが始まって、逃げ出す三村。

斎藤を撒いて、舞台に一人残って、天を仰ぐ。


三村(ミカサ)『富国強兵………の時代か』


と、ぽつりと未来を憂う様に呟いて、神谷と娘の死を一人、悼む三村。

三村(ミカサ)は涙を隠す様に俯いて、そして顔をあげて、また新たな旅に出るのであった。











ミカサが舞台からはけて、終わった。

さあ、ここからはエンドロールだ。皆、一気にいくぞ!!!

斎藤(ジャン)が再び舞台に出て、マイクのスタンドの前に立った。

エンディング曲は『HEART OF SWORD -夜明け前-』だ。

ジャンが司会をしながらメンバーを紹介していく。

恒例のイントロが流れた後は、ノリノリで紹介だ!

ジャン『まずは大道具チーフ! エルヴィン先生!!!』

10秒くらいの持ち時間で、音楽に合わせて適当に踊る。エルヴィン先生、格好いいな!

すっげえ様になってる。ダンスも上手いんだ。すげえ!

ジャン『次は、大道具三人衆! エレン! アルミン! マルコ!』

三人一片に舞台に出る。拍手喝采の中、ダンスを踊るって言うのは結構恥ずかしいなコレ!

アルミンもマルコもちょっと照れてるけど、10秒くらい踊ったら、次にバトンタッチだ。

ジャン『ロミオとジュリエット! アルミン! マリーナ!』

アルミンだけ残ってマリーナが追加して、2人でお尻を合わせて踊ってる。かわええ!

ジャン『音響・衣装! ガーネット! マリーナ!』

そして今度はアルミンが抜けてガーネット先輩が入る。

2人でくるくる回ってる。すげえ。バレリーナみたいだ。

ジャン『照明! スカーレット! キーヤン! カジカジ!』

照明メンバーと入れ替わる。スカーレット先輩がキーヤンとカジとのしていた。ひでえ(笑)。

ジャン『噂の商人! キーヤン! カジカジ!』

スカーレット先輩だけはけて、2人で殺陣をする。あ、キーヤンが負けた。

ジャン『両家の家長! アーロン! エーレン!』

悪役二人がやってきた。2人で一緒にブレイクダンスやりだした。すげえな!

ジャン『斎藤雀! オレ! ジャン!』

ちょっと笑いが起きた。ジャンがその場で踊ってみせた。

ジャン『神谷赤司 リヴァイ先生!』

きゃああああああ!!! 女子の悲鳴が体育館の天井を貫く勢いで轟いた。

リヴァイ先生、ちょっと赤くなってる。やっぱり恥ずかしいんだな。ぷぷっ。

ジャン『ラスト! 三村万心! ミカサ!』

ミカサがぴょんぴょん跳ねて出てきた。踊るのか? 踊らないのか?

あ、盆踊り始めた。なんか違うだろそれwww

アニ『ちょっと、一人忘れてない?』

ジャン『あ、やっべ! そうだった! お色気ヒロイン! 使用人の女! アニ!』

アニ『お色気は余計だから! (ゴス!)』

ジャンが殴られた。会場がまた、笑いに包まれる。

ジャン『以上をもちまして、演劇部の公演『侍恋歌ーサムライレンカー』の方を終了させて頂きます。ご来場の皆様、本日は誠に観劇ありがとうございました!!!』

一同『『『ありがとうございました!!!!!!』』』

わーわーわー!

パチパチパチ………!!

拍手喝采だった。良かった。無事に最後まで乗り切った。

一回だけ危ないところがあったけど、乗り切れてよかった。本当に。

ジャン『皆、撤収!!!』

一同『『『撤収!!!』』』

ショッカーみたいなノリで撤収作業を開始する。

会場の外に出て、お客さんを見送りしないといけない。いそげえええ!

ジャン達と衣装はそのままで第一体育館の入り口まで出て、アーチを作る。

すると、すぐリヴァイ先生のところで渋滞が出来て人が出れない状態になってきたので、リヴァイ先生は一番最後の列に立って貰う事になった。

OB「リヴァイ先生! いきなり脱いでびびったっすよ! 腹筋顕在っすね!」

リヴァイ「ああ? アレを決めたのは俺じゃない。エルヴィン先生だ」

OG「だと思ったwwww超ウケたよwwww目の保養になったあwww」

リヴァイ「まあ、それならいいんだが。ほら、早く出ろ! つっかえるだろうが!」

OG「後でまたメールするね~リヴァイ先生ー!」

と、次から次へと卒業生がリヴァイ先生にコメントを残していった。

いや、本当、リヴァイ先生の人気が凄すぎてびびる。でも、リヴァイ先生自身は照れくさそうだった。

OB2「リヴァイ先生! 遂に舞台に出たんですね! あんなに嫌がってたのにどういう風の吹き回しっすか?!」

リヴァイ「嵌められたんだよ。エルヴィン先生に。無理やり出演決定された」

OB3「だと思ったwwwwでも似合ってましたよ先生!」

リヴァイ「ありがとう。でももう2度とせん」

OB4「そんな事言わず、来年も出て下さいよー」

リヴァイ「遠慮しておく。ほら、早く移動しろ! 邪魔になるだろうが!」

OG2「リヴァイ先生ー! 抱いてー!」

リヴァイ「今、汗臭いだから近寄るな! ハグはサービスしてねえぞ!」

OG3「ずるいー私も先生の匂い嗅ぎたいわwwww」

リヴァイ「勝手に嗅ぐんじゃない! 急いで出ろ!」

OG4「また後でメールするね~!」

と、まあひっきりなしに声をかけられる。本当にすげえ。

リヴァイ先生の慕われ方が良く分かる。皆、ニコニコしながらやってくるんだ。

OG5「ねえねえ、リヴァイ先生。まだ結婚してないの? ハンジ先生は?」

リヴァイ「うぐっ……(青ざめ)」

ぎゃあああ! 今、その事は触れないであげてえええ!

と、叫びそうになったオレだけど、あえて黙る事にする。余計な事は言えない。

OG6「おや? その様子だとまだっぽい? まだ結婚してないの? 先生」

リヴァイ「うるさい。ハンジとはそういうのじゃないって何度も……」

OG7「またまた~嘘ばっかり~素直になりなよリヴァイ先生~♪」

OG8「っていうか、うちらもうとっくに結婚していると思ってたんだけど。まだなんだ? うちらの方が先に結婚しちゃったけどwww」

OG9「教え子に先越された気持ちってどんな感じ? ん?」

うわあああ酷いOG達だ。フルボッコ過ぎる。

リヴァイ「ああ、お前ら結婚したのか」

OG9「子供ももういるよ。2人、こっちは1人だけど」

OG8「早く子供持ちなよ先生もー子供って可愛いよ?」

リヴァイ「はー……(遠い目)」

大丈夫かな。リヴァイ先生。なんかいろいろ考え込んでいるみてえだ。

リヴァイ「そりゃ俺も出来るだったら自分の子供が欲しいけどな……」

OG9「おお? じゃあ早く結婚しなきゃ。ハンジ先生、年いくつだったけ?」

リヴァイ「36歳だ」

OG9「じゃあ急がないとヤバいじゃん! さっさとプロポーズしなよおお」

リヴァイ「あーもう、お前ら、その話は後にしろ! 後がつかえる!」

と、また追い出していく。

OB5「リヴァイ先生ー! 相変わらず壁伝い出勤しているんですか?」

リヴァイ「今はさすがにしてねえ。先生達に怒られたからな」

OB5「あ、そうなんだwwwいや、オレ、アレ好きだったんですけどねwwww窓から入ってくるのwww」

リヴァイ「あれは遅刻しそうになった時の裏ワザだ。グラウンドから直接、壁伝って窓から入った方が早いが、やはり危ないからやめろと、他の先生達に怒られたんだよ」

OB6「確かに。危ないけど、3階の教室の窓から外から入ってくるのってリヴァイ先生しか出来ねえっすよねwwww」

なんじゃそりゃ?! そんな事してたのかリヴァイ先生。

エレン「………(じと目)」

リヴァイ「昔の事だ」

と、照れているリヴァイ先生だった。

OB5「一回、ヘリコプター出勤もあったよな? ジャッキーチュンみてえにして学校に来たことあったけど、アレは爆笑したわwwww」

OB6「あったあったwwwwアレも後で怒られたんでしたっけ?」

リヴァイ「怒られたな。いや、確かにヘリコプターで出勤したらいけないというルールはないが、常識を考えろと言われたよ」

えええええ。リヴァイ先生、若い頃いろいろやらかしているんだな。

OB6「でも見ている分には楽しかったっすよwwwアクションスターみたいでwwww」

リヴァイ「そうか。もう忘れてくれ。ほら、早く移動しろ!」

と、またまた追い出していく。

これもう、キリねえんじゃねえか? どんどん人が詰まってきたぞ。

エレン「リヴァイ先生、もう先生だけ抜けませんか? キリないですよ」

リヴァイ「ああ。そうだな。俺は先に上がらせて貰おう。着替えてきていいか?」

エレン「はい。OBOGの方々には申し訳ないけど、これ以上詰まるとまずいです」

リヴァイ「分かった。後の事は頼む。お先に」

という訳でリヴァイ先生が混雑避けの為に先にアーチから離れた。

だけど、途中でやっぱりOBOGに捕まって、人だかりが出来てしまった。

あーあ。ダメだこりゃ。暫くは離して貰えそうにないなアレ。

グリシャ「お疲れさん。エレン」

エレン「あ、父さん!」

ミカサの母「面白かったわよ。すごいわねえ。ミカサ、あんなに頑張っているとこを見れるとは思わなかったわ」

グリシャ「ああ。エレンの女装姿も可愛かったぞ」

エレン「そ、それは言わないでくれ、父さん……」

ちょっと複雑な心境になるからな。母さんそっくりになるし。

グリシャ「私達はこの後、2人でぶらぶらしてくるが、クラスの方を見てもいいのかな?」

エレン「んーコスプレ写真館だから父さん達は楽しめないかもしれないぜ?」

グリシャ「そんな事はないよ。じゃあ後で寄らせて貰うね。エレン、後片付けも頑張って」

エレン「ああ! ありがとうな! 父さんも!」

という訳で親父達も見送ったら、今度はミカサの方がこっちに寄ってきた。

ミカサは入口出てすぐのところに居たんだけど、オレの方が気になって来たみたいだ。

ミカサ「エレン。横に立っていい?」

エレン「おう。いいぞ」

ミカサ「あの時は、ありがとう」

エレン「ん? あの時?」

ミカサ「小道具が折れた時。まさか、あの程度の衝撃で刃が外れるとは思わなかった」

エレン「んーやっぱり本番は気合の入れようが違うから、リヴァイ先生も手加減間違えたんじゃねえのかな」

ミカサ「それもある。でも、私自身も本気で殺陣をやったから、その衝撃に耐えきれなかったのかもしれない」

エレン「かもな」

ミカサ「エレンが咄嗟に指示をしてくれなかったら、きっとまた、私は入学式の二の舞をしていたと思う。本当に、本当にありがとう……」

エレン「いいって。でもこれで少しは舞台恐怖症は克服出来たんじゃねえか?」

ミカサ「うん。パニックになりそうになったら、エレンを思い出す事にする。そうすればもう、私は何も怖くない」

おお。いい感じに克服出来たみてえだな。良かった良かった。

ジャン「そろそろ舞台に戻るぞ! 撤収作業再開だ!!」

一同「「「はい!!!」」」

という訳である程度お客がはけてから舞台に戻って後片付けに戻った。

そしてあっという間に次の演目「英語劇 風と共に去りぬ」の劇が始まった。

オレ、この劇の内容を全く知らないんだよな。昔の映画が元らしいけど、どんな話なんだろ?

ついでだから、見て行こうかな。時間はあるし。

制服に着替えたオレ達はそのまま会場の観客席に残って英語劇を見る事にした。

こっちは独立戦争の時代のアメリカを舞台にした恋愛劇だ。

細かいやりとりは分からないけど、英語はアルミンとミカサが得意だから、分からない時は解説して貰う。

あらすじを説明すると、スカーレットというモテモテ女性がアシュレーという美青年にだけはひっそり恋をしていたんだけど、振られちゃって、腹いせにアシュレーの嫁、メラニーのお兄さんと結婚しちゃうんだよな。

んでその様子をいやらしく傍観して見ていたのが、悪漢(ピカロ)の異名を持つレット・バトラー。

スカーレット・オハラとレット・バトラーの意地っ張りな恋愛模様がメインの恋愛劇だった。

戦争映画でもあるようで、元の映画は3時間くらいあるのかな? 長編大作らしい。

だからこの劇では勿論、やるのは途中までだ。

スカーレット側の南部が戦争に負けて、ボロボロになってスカーレットが実家のタラに帰ってくるけど。

絶望しかない状況で、スカーレットは土を食って誓うんだ。

もう、二度と飢えたりしないーと。

その名演技にオレは自然と涙を流していた。

やべえ! なんか思っていたより格好いい演劇だったな!

これ続きが気になるなあ。後でレンタルして観てみようかな。

ミカサ「素晴らしい劇だった……」

エレン「意外と面白かったよな。これ、相当古い映画が元らしいけど」

ミカサ「うん。名作映画によく名前が列挙されている。でも私も見たのは初めてだった」

エレン「そうかー今度、借りて一緒に続き見てみるか」

ミカサ「う、うん……(照れる)」

そんな訳で時間が過ぎて、

ミカサ「あ、そろそろコスプレ写真館の方に戻らないといけない」

エレン「そうか。午後の写真撮影会の担当だったもんな」

ミカサ「うん。アニと一緒に写る。エレンはどうする?」

エレン「んーどうしようかなー」

と、考えていたその時、

アルミン「でも、この後、吹奏楽部がゲーム音楽やるって書いてあるよ? エレン、聞かなくていいの?」

と、アルミンが言ってきたので心が揺れた。

ミカサ「では、エレンはこのままアルミンと一緒にいるといい。私はアニと教室に戻るので」

エレン「いいのか? 悪いな。何か」

ミカサ「ううん。エレンも楽しめる方がいい。また後で合流しよう」

という訳で1回ミカサとは離れて、オレはそのまま第一体育館に残る事にした。

吹奏楽部の準備が整った。演目は詳しくは書いてない。お楽しみらしい。

音楽のダリス先生が指揮者となって壇上に上がった。

始まった。どの音楽から始まるんだろう。


チャッチャッチャラチャッタ! タ!


いきなりスペシャルマリオきたー!!!!!!

1-1の音楽じゃねえか! うわあ。これ、マリオ好きには堪らねえぜ!



タッタタータッタタララ~♪


やべえ。ゲームしたくなってきた。この音楽を聴いているとついそう思う。

1-1のマリオのゲーム画面を思い出しながら聞いていると、

途中で突然変調して、あ、スターを取った後のマリオの音楽になった!

でも、最後はゲームオーバーになった。酷いwwww

面白いなあ。吹奏楽でもゲーム音楽って出来るんだ。面白い発見だな。

そんな訳で次は、ファンタスティックファンタジーの名曲が来た。

ビッグブリッジの死闘だ! このイントロは熱い!

うわああ速弾きすげえええ! この曲、すげえ大変な曲だぞ?!

リコーダー演奏者もいるんだ。ソロパートの部分が神業だ。

相当練習したんだろうな。わっふ~♪のところが素晴らしい!

その次は、うわ! また熱い曲が来た! 聖剣シリーズの子午線の祀りだああああ!!!

イントロ熱い曲が連荘できた。すげええ!

しかも2と3を繋げて来た。なんだこの圧倒的な演奏力は!

ああもう、興奮し過ぎだオレ。知ってる曲だとついついこうなるよな。

そして今度はセルタの伝説のエポナのテーマだ。

あ、ちょっと落ち着くな。これ聞くとしんみりする。

で、最後はなんと、おおおお! SAGAシリーズのステスロスのテーマとラスボスメドレーだった。

アレンジ加えてあるところもあるけど、すげえ格好いい!!

うわあああもう、何か興奮しか出来ねえ! 残って正解だった!!

あっという間に50分間の演奏が終わって、オレ、もう、お腹いっぱいになっていた。

アルミン「結構いい選曲だったねえ。すごいねえ。子午線の祀りって、相当難しい曲なんじゃないのかな」

エレン「ああ。あの速弾きのところ、神業だったな。ビックブリッジも凄かったけど」

アルミン「うん。いやーこの選曲した人と友達になりたいくらいだね!」

と、オレとアルミンは大満足で吹奏楽部の演奏を聞き終えたのだった。

あ、遂に最後の演目だ。バンド演奏が始まるようだ。

ミカサとアニもこっちに戻って来た。やっぱりラストは皆で観たいよな。

リヴァイ先生もようやく着替えてOBOGの輪から解放されてこっちに来れたようだ。

リヴァイ「ふーやっとあいつらが離してくれた。やれやれ」

エレン「あ、リヴァイ先生もバンド演奏見るんですか?」

リヴァイ「最後くらいは、観たいと思ってな」

という訳で、いよいよラストの演目が始まる。

最初の曲は何だろうな。

ボーカル『女々しくて女々しくて女々しくて~つらいよおおおおおおお!!!!!』

リヴァイ「?!」

あ、女々しくてだ。

ヤバい。この曲、今、1番リヴァイ先生に聞かせちゃいけない曲じゃねえか!!!

でも会場はノリノリだった。掴みの曲としては最高だけど、リヴァイ先生へのダメージがぱねえ!

顔隠して落ち込んでいる。あーあ。運がねえなもう。

そんな感じで、

1.女々しくて シルバーボンバー

2.Let it Go~ありのままで~

3.ラブラドール・レトリバー AKB49

4.奏(かなで) スキマノスイッチ

5.小さな恋の歌 モンゴル880

6.secret base ~君がくれたもの~ ZON

7.サラバ! 愛しき悲しみたちよ モモクロ

8.空と君のあいだに ミユキ・ナカジマ

9.GET WILD  TN NETWORK

といろいろなジャンルがごちゃ混ぜで演奏された。

古いのもさり気に入っているのはきっと、保護者向けの選曲なんだろう。

そんな訳でラストの曲まであっという間だった。

ラストは何がくるんだろう。

ボーカル『えー最後は、この曲を選びました。皆、サビだけなら知っているかもしれません。ミスターチャイルドの曲の中ではマイナーかもしれませんが、聞いて下さい。ミスターチャイルドで『掌(てのひら)』です」

あ、これはアレだ。にこにこ動画でネタMADでも有名になったあの曲だ。

すげえいい曲なんだよな。元ネタ気になって探して聞いたことある。

ボーカル『て~のひらに~きざまれた~いびつな~きょ~くせん~』

ボーカル『なんらかの~い~み~をもって~うまれてきたあかし~』

ボーカル『ぼ~くらなら~もとめあう~~さびしいどうぶつ~』

ボーカル『かたをよせるようにして~あいを~うあっている~』

あ、ちょっと間違えた。緊張しているみたいだ。

歌は正直言えばジャンやキーヤンの方が上手いけど、でも、一生懸命歌ってて、凄く伝わる。

この歌が好きなんだろうな。そういう思いがしんみりと伝わってくるんだ。

ボーカル『だいたはずがつきとばして~』

ボーカル『つつむはずがきりりきざんで~』

ボーカル『なでるつもりがひっかいて! また愛もとめるぅぅ』

ボーカル『わかりあえたふりしたって~』

ボーカル『ぼくらはちがった個体で~』

ボーカル『だけどひとつになりたくて! 暗闇で! もがいて! もがいているぅぅぅ』

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生が隣で聞き入っているのが分かる。

何だろ。共感する部分があるのかな。

観客も音楽に合わせて左右に揺れている。いい感じのラストソングだ。

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

サブボーカル『暮らしていたい場所~』

ボーカル『認め合うことができればさ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『もちろんなげやりじゃなくて~』

サブボーカル『あいしているひと~』

ボーカル『みとめあうことができるから~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

サブボーカル『夢見てること~』

ボーカル『なにを夢見てもいいよ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

サブボーカル『信じてるもの~』

ボーカル『何を信じてもいいよ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『暮らしていたい場所~』

ボーカル『価値観も理念も宗教もさ~』

サブボーカル『それぞれが~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ!!』

サブボーカル『あいしているひと~』

ボーカル『認め合うことができるから~♪』


それで素晴らしい!


ボーカル『キスしながら唾をはいて~』

ボーカル『なめるつもりがかみついて~』

ボーカル『着せた筈がひきさいて~』

ボーカル『また愛~求める~』

ボーカル『ひとつにならなくていいよ~』

ボーカル『認め合えばそれでいいよ~』

ボーカル『それだけが僕らの前の!』

ボーカル『くらやみを~やさしく~てらしてえええええええ♪』

ボーカル『ひかりを~ふらして~あたえてくれるううううう♪』

あ、何か最後、ボーカルさん赤くなった。間違えたっぽいな。

どこ間違えたのか分からんけど、でもまあ細かい事は気にしない。

会場はすげえ盛り上がって、拍手喝采だった。

リヴァイ先生も拍手していた。いい歌だったなあ。

ミカサ「イイ曲。ラストに相応しい曲だった」

エレン「ああ。確かにな。いい曲だったぜ」

リヴァイ「……ひとつにならなくていい、か」

エレン「ん?」

何か今、言ったのかな。リヴァイ先生。

リヴァイ「いや、何でもない。この後は、グラウンドに移動して最後のキャンプファイヤーだ。保護者の差し入れもある。クラスの片づけが終わったら、皆でつまみながら閉会式やるぞ」

エレン「はーい」

という訳で皆ぞろぞろ退出して、クラスの片づけを終わらせたらグラウンドに集まって、キャンプファイヤーが始まった。

飲み物を紙コップで受け取って、皆で「お疲れ様ー」と口々に言い合っている。

校長先生の挨拶が終わって、あとは自由気ままにしゃべっている。

残ったカレーとかもこの時間に食べてしまうらしい。残したら処分が大変だもんな。

キリ悪いけどここまで。ではまたノシ

リヴァイ「………(もぐもぐ)」

あ、残ったカレーをリヴァイ先生がかきこんでいる。

エレン「お疲れ様でした。リヴァイ先生」

リヴァイ「ああ。昼はオルオが持たせてくれた福神漬けしか食ってなかったからな。さすがに腹が減った」

エレン「そういえばそうでしたね。リヴァイ先生は後夜祭の後はどうされるんですか?」

リヴァイ「あー3年の打ち上げだな。………ハンジの組と合同でやる約束だったがどうなるんだろうな」

と、ちょっと複雑そうな顔をするリヴァイ先生だった。

リヴァイ「もしかしたら気が変わって保護者の方に出るかもしれんな。あいつの事だし」

エレン「そうですか……」

リヴァイ「演劇部の方はどうする? 明日は振り替え休日だし、明日に回してもいいと思うが」

エレン「あージャン次第じゃないですかね。おい! ジャン!」

ジャン「あ? 呼んだか?」

エレン「演劇部の打ち上げどうすんだ?」

ジャン「あーそういや考えてなかったな。でもクラスの方の打ち上げと被ったらダメだよな。ユミルに聞いてくるわ」

と言ってジャンがユミルの方に駆け寄る。オレもついでについていくと、

ユミル(ぐったり)

ベルトルト(ぐったり)

ジャン「おーい、ユミルーって、死んでるじゃねえか!」

エレン「まるで屍のようだ」

ユミル「ああ? 何の用だ(機嫌悪い)」

ジャン「いや、クラスの打ち上げどうすんのかなって」

ユミル「今日はもう無理……明日にしてくれ。このままここで寝たい……(ぐったり)」

ベルトルト「僕も……(ぐったり)」

と、実行委員の2人は死にかけていた。よほどハードな2日間だったらしい。

ユミル「全く……こんなに文化委員が神経遣う委員だと知ってりゃ絶対なってなかった」

ベルトルト「ううーん。中学の時より忙しかった。やっぱり高校になると本格的になるんだね」

ユミル「もう暫く仕事せんぞ! 遊び倒してやる!!」

と、文化委員の2人がブツブツ言っていた。

どうやらクラスの方の打ち上げは明日に回すらしい。

ジャン「だったら演劇部の方の打ち上げは今日やっちまった方がいいかな」

エレン「そうだろうな。んじゃ、皆にメールで連絡してくれ」

ジャン「あいよ」

と、部長職が板についてきたジャンが皆に連絡した。

リヴァイ「おい、お前らもカレー食うのを手伝え」

リヴァイ先生がこっちに来た。2回連続か。まあ仕方がないか。

ジャンと一緒にカレーを食っていたら、ミカサがこっちに逃げて来た。

あれ? アニも一緒に逃げて来た。追いかけられている様子だ。

ミカサ「エレン! 助けて!」

エレン「どうした?!」

アニ「ジャンも助けて!」

ジャン「なんでオレ?!」

女子生徒「ミカサさん! サイン下さい!」

女子生徒2「写真お願いします!!」

女子生徒3「握手もお願いします!!」

男子生徒「アニさん! お願いします! 握手お願いします!!」

男子生徒2「お願いします!」

男子生徒3「罵倒でも構いません!!」

なんかミカサに新規の女子ファンとアニにも変な男子ファンがついちまったようだ。

ジャン「あーそういうのはダメダメ! もう文化祭は終わったんだから」

一同「「「えー!」」」

ジャン「散れ! 散らないとカレーぶっかけるぞ!!」

一同はしゅーんとなって去って行った。

ミカサ「………何故か女子にもモテるようになってしまった」

エレン「だろうな。男装ミカサにもファンがついたみたいだな」

ミカサ「ううう……嬉しいような悲しいような」

エレン「いいじゃねえか。オレの自慢の彼女だよ」

ミカサ(ポッ)

あ、また赤くなった。可愛い。

ミカサって結構、簡単に頬が赤くなるんだよな。ふふっ。

ミカサ「エレン。打ち上げはどこでやるの?」

エレン「さあ? ジャン、どこでやるんだよ」

ジャン「まだ決めてねえ。リヴァイ先生かエルヴィン先生にも来てもらった方が遅くまで遊べるけど、どうする?」

エレン「リヴァイ先生もエルヴィン先生も3年の方の打ち上げあるからそっちが優先だと思うけど、頼めば合同でやってくれるんじゃねえの?」

ジャン「まあ、その方が3年の先輩達とも話せるし、オレ達にとってはそれがいいけど」

ジャン「ちょっと確認してくる」

と、ジャンが移動していった。で、すぐ戻ってきて、

ジャン「カラオケで、部屋を別に取って合同でやればいいって話になった。3年に便乗でいいよな?」

エレン「ああ。いいと思うぜ」

ジャン「んじゃ、後夜祭終わったらすぐそっちに合流って事でいいよな」

と、ジャンがすっかり仕切り役だ。

マルコ「ふふ……部長役が板についてきたみたいだね」

マルコとアルミンもこっちに気づいて寄って来た。

ジャン「ああ?! んなわけねえよ。オレ、リーダータイプじゃねえし」

エレン「リヴァイ先生と同じ事言ってんな」

ジャン「あ? そうか?」

エレン「向いてねえって言ってる奴に限って、向いてる評価を周りから受けるんだから不思議だよな」

アルミン「言えてる。でも大体そんなもんだよね」

と、言うとジャンが物凄く複雑そうな顔をした。

あーこの瞬間の顔、写真に撮って見せてやりてえ。ジャン自身に。

でも、気づいてないんだろうな。ジャン自身も。そういう自分に。

エレン「あ……思い出した」

と、その時、オレはエルヴィン先生に個人的な用事があった事を思い出した。

エレン「ミカサ、悪い。ちょっとエルヴィン先生のところに行ってくる」

ミカサ「ん? 私はついていってはダメ?」

エレン「いや、ついてきてもいいけど。ついてくる?」

ミカサ「うん」

エレン「じゃあ一緒に探すか」

アルミン「エルヴィン先生に用事なの? あっちの方でピクシス先生と話しているよ」

エレン「サンキュ、アルミン」

という訳で、エルヴィン先生のところに移動すると、

エルヴィン「やあエレン。ミカサ。お疲れ様」

エレン「お疲れ様でした。あの、エルヴィン先生、この写真、どう思います?」

と、言ってオレはこの間、無理やり撮ったリヴァイ先生の写真をエルヴィン先生に見せてみた。

ピクシス先生も一緒に覗いて顔を緩ませた。

ピクシス「いい写真じゃの!」

エルヴィン「どれどれ……ぷ! これは傑作だね。いつ撮ったの?」

エレン「文化祭1日目が終わって仕込みが終わった直後、リヴァイ先生と話す機会があったんで、その時に」

エルヴィン「いいねー。こういう顔が崩れたリヴァイは珍しい。画像くれる?」

エレン「あ、はい。それは勿論、いいんですけど。あの、エルヴィン先生から見たら、この画像をもし、ネット上で公開したら、どう思います?」

エルヴィン「ん? それはどういう意味かな?」

オレは頭の中に描いた計画の一部をエルヴィン先生に慎重に話してみる事にした。

エレン「単刀直入に言えば、人気が上がるか、下がるか。エルヴィン先生ならどっちに賭けます?」

エルヴィン「それだったら、上がる方に10万賭けちゃうね。この程度の変顔だったら、アイドルでもやってるよ」

エレン「そうっすかーじゃあ、この写真は失敗ですね」

うーん。残念だ。失敗だ。

エルヴィン「失敗? どういう事かな」

エレン「いやー……余計なお節介かなーとも思ったんですけど」

と、一応、前置きしてから、オレは続けた。

エレン「リヴァイ先生の人気をどうにかして「下げる」方法ってないかなって、ちょっと考えていて」

エルヴィン「ふむ。何故、そんな事を?」

エレン「オレ、リヴァイ先生とこの間話した時に、思ったんですよ」

と、エルヴィン先生にこの間の件をざっと話した上で意見を述べてみた。

エレン「今のリヴァイ先生の異様な人気って、どう考えても「美化し過ぎ」な面が強いというか、ファンの子達は、本当のリヴァイ先生じゃなくて、美化されたリヴァイ先生に対して、脳内で勝手にアイドル化している部分もあるんじゃないかって、思っちまって」

ミカサ「確かに。皆、リヴァイ先生の悪い部分をちゃんと見ていない気がする」

と、ミカサも賛同してくれた。

エレン「だよな。だから、もう少し今の綺麗なイメージから、リヴァイ先生の本当の姿に出来るだけ、近づける事は出来ねえかなって思ったんですよ。そうすれば、今の異様な状況を少しは緩和出来ねえかなって、思ったんですけど」

エルヴィン「うーん。確かにそれは私もその手は考えたんだけどね」

と、エルヴィン先生は頬を掻く。

エルヴィン「ただ、それは諸刃の刃でもあるんだ。リヴァイのプライベート情報を生徒に見せたら、そのせいでファンを止める子もいるかもしれないが、もっと熱狂して、熱が過熱してくる子も出てくる。私なんか、特に、リヴァイのドジで可愛い部分が好きだから、そういう部分に惹かれてしまったら、かえって抜け出せなくなる子も出てくるんじゃないかな」

エレン「あーダメなところも可愛いってやつですか」

エルヴィン「そうそう。その辺は難しいよ。情報で勝手に妄想するのは人間の性(サガ)のような物だからね」

エレン「そうですか。じゃあこの写真は没ですね」

エルヴィン「でも、そういう発想自体は悪くないと思うよ。リヴァイ自身がブログ書くとかしてくれれば、それが一番いいんだろうけど、あいつも教職で忙しいし、現実的には難しいだろうね」

エレン「そうですか……」

難しいな。なんかいい手がねえかな。

エルヴィン「でも、そうやってアイデアを出してくるところは優しいね。エレン」

エレン「え? そうですかね?」

エルヴィン「うん。しかもこうやって他人にちゃんと前もって相談するところも偉いよ。リヴァイはいい生徒に恵まれたな」

エレン「いやー……うーん……」

なんかこそばゆいけど、問題は解決してないから素直には頷けなかった。

ピクシス「ふん……そんな面倒臭い事をせんでも、さっさと結婚宣言をすれば、ファンをやってる子も目が覚めるじゃろうて。あやつが男らしく行動せんのが一番悪いんじゃろうが」

と、酒を飲みながらピクシス先生がブツブツ言う。

エレン「いや、それが出来れば一番いいのは確かなんですが、今のリヴァイ先生にそこまで求めるのは酷じゃないかと」

ピクシス「ふん……八方美人では大事な物を見失うじゃろう。あやつ自身、自分にとって本当に大事な人は誰なのか、いい加減見つめなおす時期なのじゃ」

エレン「まあ、それはそうなんですけどね」

ピクシス先生は機嫌が悪いらしい。これ以上突っつかない方がいいな。

ピクシス「あやつに酒を飲ませて泥酔させた時に必ず口に出てくる女は、誰なのか。早く奴自身に気づいて欲しいんじゃが………」

ん? 何の話だろ? 一体。

エルヴィン「まあまあ、ピクシス先生。その辺で」

ピクシス「ふん! 面白くないの! わしは早くあやつらの子供の顔が見たいんじゃ!」

ダメだこれ。すっかり酒が入ってる。そっとしておこう。

そんな訳でナンダカンダで宴も落ち着いた頃、オレ達は打ち上げのカラオケの方に移動する事になった。

リヴァイ先生達と合流して団体でカラオケの部屋を5部屋押さえる。

そのうちの1部屋を演劇部が貰って、残りの4部屋を3年の1組と2組が使うようだ。

こんだけの人数でカラオケするのは初めてだな。この間より人数が多いもんな。

あ、一応、ハンジ先生の顔もあった。良かった。こっちに来てくれたんだな。

エレン「ハンジ先生!」

ハンジ「やーエレン! 演劇部も合同でやるんだってね? 5部屋確保しておいて正解だったね!」

エレン「手配はハンジ先生がやってくれたんですか?」

ハンジ「うん。そうリヴァイと約束していたからね。え? 何で?」

エレン「いや、ハンジ先生、こっちに来ないかもしれないと思ってたから」

ハンジ「やだなー。くるよー。2組の担任教師なんだから。大丈夫!」

と、相変わらずの明るい笑顔だけど。

大丈夫なのかな。本当に。

そんな訳で、打ち上げカラオケ大会が始まった。

演劇部の方にはオルオ先輩率いる3年生がこっちに合流してくれた。

やっぱり3年生がいてこそだよな。でも、こうやって遊べるのも今のうちなんだよな。

文化祭が終わったら一気に受験体勢になる。特に進学組は。

そう思うと、やっぱりうるっとくるものがあって、今更ながら、オレ、部活入って良かったなと思った。

ペトラ『ちょっと何、泣いてるのエレン?! どーしたの?!』

マイク持ってるペトラ先輩がマイク越しに指摘してきたけど、オレは涙を止められなかった。

エレン「だって……寂しいんですもん……」

ペトラ『ちょちょちょ! 人が歌う前に泣くのやめてよ! こっちも泣きたくなるでしょ?!』

オルオ「そうだぞ。エレン。まだ泣くのは早すぎるぞ」

エレン「すんません……」

ぐず……。なんだろ。舞台が終わって気が抜けたせいかな。

涙腺が止まらねえ。なんだコレ。こんなの、初めて経験するぞ。

ペトラ『もうー! エレンが泣くからこっちも泣きたくなってきたじゃないのおおおお! うわあああん!』

エルド「全くだ。本当に。お前は涙脆い奴だな」

グンタ「困った奴だ」

エレン「すんません……」

ジャン「気持ちは分からんでもないが、確かに泣くのはええだろ」

エレン「ジャンも涙腺潤んでるじゃねえか」

ジャン「これは汗だよ!」

意地っ張りな奴だな。本当に。

ペトラ『あああもう! いいわ! 泣いていいわよ! 私達だって、いろいろこう、我慢してたんだから本当は! 泣きたい時は泣いていいのよおおおお!!!』

いええええい! と、訳の分からんテンションでオレ達は歌って踊って盛り上がった。

ミカサもその様子を見つめながら、ちょっとだけ、潤んでいて、

ミカサ「エレン……」

エレン「んあ? 何だよ(ぐずっ)」

ミカサ「エレンと同じ部活に入って本当に良かった」

エレン「そうか?」

ミカサ「うん。あの時、エレンは自分で決めろと言ったけど。私はエレンと一緒で良かったと思っている」

エレン「そっか……」

と、ぐずぐず言いながらオレはミカサの隣で泣きながらカラオケを楽しんだ。

泣いて笑って騒いで。本当に楽しい打ち上げだった。

そしてあっという間に夜の11時になり、さすがにお開きにしようとリヴァイ先生が言い出した。

リヴァイ「これ以上遅くなると危険だからな。車必要な奴は出してやるぞ」

ハンジ「はいはい。女子は私が送ってあげるからね」

と、先生達が連携を取っている。

表面上は2人とも普通にしているけど、それがかえって痛々しく見えた。

会計を済ませてゾロゾロと皆で外に出る。カラオケ店の外はすっかり夜だった。

リヴァイ「ハンジ、酒入ってないよな?」

ハンジ「んもー疑う気持ちは分かるけど、今回は飲んでないよ? あんたにも飲ませてないでしょ?」

リヴァイ「ならいいが…………あ、すまん」

あ、今、酒気を確認しようとしたな。リヴァイ先生。

それがいつもの事だったんだろう。だからつい、体が先に動いた。そんな感じだった。

顔を近づけて確認しようとして、それがいけない事だと気づいて慌てて遠ざかる。

切ないな。この距離感が。すごく遠く感じる。傍で見ていても。

ハンジ「うん。酒臭くないでしょ? だから大丈夫だよ。リヴァイ」

リヴァイ「………そうか」

ハンジ「あ、あとね。リヴァイに言っておかないといけない事、あったから、ここで言ってもいい?」

リヴァイ「ああ。何だ?」

生徒達はそれぞれグループを作ってわいわいまだ話しているけど。

その輪から少し外れて、ハンジ先生はリヴァイ先生に言ったんだ。

ハンジ「……………文化祭の最中に、モブリット先生に告白されちゃった」

リヴァイ「………そうか。やっぱりな」

ハンジ「あんたはやっぱり気づいていたの? モブリット先生の気持ちを」

リヴァイ「ああ。エルヴィンからモブリット先生の件については聞かされていた」

ハンジ「リヴァイはやっぱり、私にはモブリット先生とくっつく方がいいと思ってる?」

リヴァイ「……………」

うわあああああこれ、運命の分岐点だ! ここ間違えるとダメだ!!!

絶対、絶対、間違えたらダメだ!! リヴァイ先生!!!

ハンジ「返事はまだ、してないんだよね。というか、本音を言えばモブリット先生とはそういう関係にはなりたくないんだ」

リヴァイ「振る気なのか?」

ハンジ「だって、モブリット先生、絶対結婚を視野に入れて付き合いたいって思ってる。真剣な告白だった。だから、ちょっと気が重くてね。彼の事を嫌いな訳じゃないんだけど」

リヴァイ「……………もう、チャンスは来ないかもしれないぞ」

ハンジ「結婚の? うん。そうかもしれない。でも、私にとってはそれは、大した事じゃないんだ。それよりも、同僚との良好な関係の方を優先したいんだけど」

リヴァイ「難しいだろ。それは。どう考えても」

ハンジ「ああ、やっぱり? 私が女だからかな。あーあ」

と、また、辛そうな顔になってハンジ先生が言う。

ハンジ「面倒臭いな。男に生まれていれば、こんな風に悩まなくても済んだのかな。私はただ、仕事を優先して生きていきたいだけなのにな………」

リヴァイ「…………それはお前の本心なのか?」

ハンジ「本心だよ。だって仕事楽しいもん。私、リヴァイ程、全員の生徒を溺愛している訳じゃないけど、それでもこの教職は結構、気に入っているんだ。だって、生物好きな子達と出会えるじゃない」

リヴァイ「ああ、その気持ちは俺にも分かる」

ハンジ「でっしょー? 勿論、クラスの全員が生物好きって訳じゃないけど、一人くらい、たまにいるでしょ? 生物が異様に好きな子。そういう子に出会って、自分の知識を託せる瞬間を知ったあの時から、もうこれ、絶対やめられないって思ったんだ」

なるほど。ハンジ先生にとっての教職っていうのは、自分の知識を生徒に託す事なんだ。

ハンジ「私の話ってさ、長いからさ。よく敬遠されるけど、たまーにいるんだよ。話聞いてくれるオタクっ子が。そういう子達がまるで、昔の自分を見るようで、楽しいんだ。だから、絶対、今の仕事を辞めたくないんだよね」

リヴァイ「モブリット先生は結婚したらやめて欲しいって言っているのか?」

ハンジ「それは分かんない。だけど、『やめなくてもいい』とか『続けて欲しい』とは1度も言ってないから、潜在意識では辞めて家庭に入って欲しいと思っているかもしれない。確証はないけど」

リヴァイ「お前の悪い癖だな。そうやって、人の考えを悟り過ぎるところは」

ハンジ「そうかな? 注意深く観察していれば大抵の事は予想出来るよ。それが外れた事も滅多にない。だから、正直言えば怖いんだ」

リヴァイ「………………」

ハンジ「だから断るつもりでいるんだけど………どうやって断ればいいのか分かんなくてね。参ってる。いつまでも逃げる訳にはいかないし」

リヴァイ先生の眉間の皺が増えていく一方だな。

ハンジ先生、気づいてねえのかな。

もう、「甘えるのやめる」って言ったのに。その発言と矛盾した行動を取っている。

自覚がねえのかな。だとしたら、今、リヴァイ先生、相当苛ついていると思うぞ。

リヴァイ「そんなもん、ただ一言、『付き合えないからごめんなさい。同僚としてしか見れないから』と言えば済むだろうが。俺に愚痴るような事じゃねえだろ」

ハンジ「いや、でも………それじゃあモブリット先生、傷つけちゃ………」

リヴァイ「だからどうして、それを俺に言うんだ!! お前は俺に何を期待しているんだ?!」

ハンジ「!!!」

リヴァイ「うまく言い含める方法ならエルヴィンの方が上手い事を考えられるだろう。言っておくが、俺は口がうまくない。今言った以上のアドバイスなんて俺に出来る訳ねえだろ!!」

ハンジ「!」

リヴァイ「いい加減にしてくれ。俺にだって出来る事と出来ない事がある。出来る事はお前にしてやれるが、それ以上の事はしてやれない。たとえ職場の同僚だとしてもだ」

ハンジ「あっ………ご……」

ハンジ先生が青ざめている。まずい。皆、異変に気づきだした。

リヴァイ先生が一人で帰って行く。車出すって言っていたけど、それすら忘れているようだ。

ハンジ「リヴァイ……ご……」

ハンジ先生が取り残されちまった。皆、ざわざわしている。

ペトラ「ハンジ先生、ちょっといいですか?」

様子を見ていたペトラ先輩がハンジ先生に近寄って、一発、大きく頬をぶった。

一同は突然の、修羅場の勃発に青ざめて見守るしかなかった。

ペトラ「ハンジ先生、今のはいくらなんでもハンジ先生が悪いです。リヴァイ先生がキレるのは当然じゃないですか」

ハンジ「う……うん。確かに、今のは私が悪かった。どう考えても私が悪い」

叩かれた頬を触りながら、ハンジ先生が混乱していた。

ハンジ「私、何を期待していたんだろう。リヴァイになんで、何で………」

グラグラしているのが目に見えて分かる。ハンジ先生、ちょっとまずい状態だな。

精神的に不安定になっているんだ。どうしようもないくらいに。

その原因に早く気付ければいいんだが。どうしたらいいだろう。

ペトラ「私、思うんですけど……線引き出来ていないのはリヴァイ先生じゃなくて、ハンジ先生の方ですよね?」

ハンジ「え………?」

ペトラ「今の会話、どう見てもリヴァイ先生に「甘えている」ようにしか見えなかったですよ? 自覚ないんだとしたら、尚、性質が悪い」

と、言い捨ててペトラ先輩がオルオ先輩の方へ行ってしまった。

その後にニファ先輩が駆け寄って「大丈夫ですか?」と気遣った。

ニファ「少し、落ち着いた方がいいと思います。立てますか? 先生」

ニファ先輩はハンジ先生の方を気遣っているようだ。担任教師だからかな。

いやでも、ニファ先輩もハンジ先生の事を恨んでもおかしくないと思うんだが。

ハンジ「うん、ごめん……ちょっと頭冷やしたいかも」

と言ってヨロヨロと立ち上がったハンジ先生だった。

ハンジ「ごめん。皆。先に帰らせてもらっていいかな?」

男子生徒「いいっすよ。あんまり気落とさないで下さいね。ハンジ先生」

男子生徒「そういう事もありますって」

と、3年生達は割とすんなりこの事態を受け入れているようだ。

やっぱり3年の貫録なのかな。いや、そうだな。多分そうだ。

3年にもなれば恋愛経験値はもっと増えるだろう。

リヴァイ先生とハンジ先生の方が少なすぎるんだよ。きっと。

そんな訳でその日の夜はもやもやした事件を抱えたまま打ち上げがお開きになった。

オレとミカサは何とも言えない顔のまま自宅に帰りつき、

ミカサ「ハンジ先生、大丈夫かしら」

と、案じてしまった。

エレン「確かに心配だけど……もうなるようにしかならねえよな」

果たしてこの三角関係はどう終着するのか。

その時のオレは、何とも言えない心地で予想すら出来ずにいたのだった。

気になるところですが、とりあえず一旦休憩。続きはまたノシ








次の日、クラスの方の打ち上げが行われる事になった。

クラスの方の打ち上げはボーリング大会になった。ユミルが絶対これにするといって独断で決めた。

文化委員の仕事で相当ストレスが溜まっていたらしい。ストライク決める度に大はしゃぎしている。

ユミル「よっしゃああああああ! すかっとするうううううう!!!」

なんかテンションがいつもと違っておかしい。大丈夫かな。あいつ。

と、ついつい心配しながらオレもゲームに参加している。

今回は特に罰ゲームも何もないから安心だ。普通にボーリングを皆で楽しんでいる。

アルミン「ボーリング久々だね~」

エレン「アルミン、ボーリング得意だよな。スピードのろいのに何であっさりストライク取れるんだ?」

アルミン「そこはほら、ボールのコントロールを磨いた訳だよ」

と、ちょっと得意そうだ。

ミカサも華麗にストライクを連発している。

カコーン…カコーン…と小気味よい音がボーリング場内に響いている。

皆、わいわい楽しんでいる最中、一人だけテンションの低い奴がいた。

クリスタだった。

エレン「ん? クリスタ、何か元気ねえな? どうした? 具合悪いんか?」

クリスタ(びくん!)

アルミン「そうなの? クリスタ」

クリスタ「う、うううん! そんなことないよ? 楽しいよ?」

エレン「クリスタもアルミンと同じ技巧派タイプなんだぜ。この間、やった時、思いっきり騙されたよな」

アルミン「え……この間っていつ? エレン」

エレン「あーミカサの夏に水着を見立てに行った時だな。あの時、クリスタも一緒だったんだ。んで、帰りにボーリングしたよな」

アルミン「裏切り者ー(棒読み)」

エレン「しょがねえだろ!! 呼び出されたのはオレとライナーだけだったんだし」

アルミン「いや、途中からでも参加させてくれたっていいじゃないかー(棒読み)」

エレン「あ、そっか。そう言われればそうだな。すまん……」

クリスタ「…………」

あれ? やっぱりクリスタの様子がなんかおかしいな。どうしたんだ?

クリスタ「あ、あのね……」

エレン「ん?」

クリスタ「2人は、ユミルの事、どう思う?」

え? ユミル?

ユミルの方を見ると、ユミルは「よしゃあああああ!」を繰り返してストレス発散し続けていた。

エレン「ああ、性格悪いけど根は悪い奴じゃねえのかな? 口悪いけど」

アルミン「エレン、それはほとんど悪口だよ」

エレン「えー? じゃあ、あ、意外と周りをよく見ているかな。気回せるっていうか。気配りは出来る奴だよな。口悪いけど」

アルミン「君も大概だよ。エレン……」

エレン「アルミンに言われたくはねえなあ。アルミンはどう思う?」

アルミン「んー……大人っぽい色気はあるよね。スーツとか似合いそうだね」

エレン「おま、ユミルにまでエロ目線でいうのか。このエロ師匠が!」

アルミン「え? ダメ? いやだって、ユミルは色気あるよ? まあ、僕はユミルはタイプではないけど」

と、言った直後、クリスタがびくっと激しく反応した。

何だ? なんか本格的におかしいな。顔赤いし。

エレン「……? なんか、気に障ったのか?」

クリスタ「ううん。別に……」

エレン「いや、でも顔、赤いぞ?」

クリスタ「?! (顔隠す)」

アルミン「今、何か僕、変な事、言った?」

クリスタ「ううん。全然……その、私も実は、そう思うんだけど、それって変なのかな」

アルミン「え?」

クリスタ「ユミルが、大道具の恰好で走り回っている姿見て、なんかいつもと違うユミルだなあって思って。格好いいっていうか、色っぽいというか、凄くいいなって思って。でもこれって、変なのかな」

エレン「………別に変じゃないと思うぞ。オレもミカサの男装姿を見て「いいね!」って心の中ではしゃいでいたからさ」

クリスタ「でも、それはエレンが「男」だからでしょ? 私、「女」なのに「女」の人にときめくのって、おかしくない?」

アルミン「…………………」

あ、アルミンが石化した。

ええっと、それって、つまり、その……。

なんか、クリスタ、ちょっと、そっちの毛、あるって事なのか?

エレン「あーすまん。そのトキメキがどの程度なのかオレには客観的には分からんが、ユミルの事が好きなのか?」

クリスタ「それは、友人としては当たり前に好きだけど、この感情がそれを越えているのか、良く分かんない」

ズーン……

アルミンが倒れそうになった。やべええええ!

もう、次から次へと何でこう、恋愛事で面倒事が起きるんだ?!

エレン「んー………」

アルミンを支えながらオレは言った。

エレン「すまん。オレは同性に対してそっちの感情を持った事がないから、さっぱり分からん。だから無責任な事は言えねえけど、同性に対して「可愛い」と思うことくらい、男でもあるぞ?」

クリスタ「そ、そうなの?」

エレン「ああ。アルミンとか、あとそうだな。リヴァイ先生も……かな」

ミカサ「エレン、それは初耳。本当?」

ミカサがいきなりこっちに来た。うああああびっくりした!!!

ミカサ「エレン。ちょっとその件について詳しく聞いていいかしら? 特にリヴァイ先生の方を<●><●>」

エレン「いや、そんなに顔近づけるなって。あくまで例え話……」

ミカサ「例え話だろうが何だろうが、リヴァイ先生を「可愛い」と思った時点でダメ。許さない」

エレン「ミカサのヤキモチは凶器だな! 頼むからちょっと落ち着け!!! 今はクリスタの話だから!!!」

と、どうどうと、何とか宥めながら、

エレン「だから、女同士でも「格好いい」と思うくらい別に変でも何でもねえよ。ミカサも女のファンがついちまったくらいだからな」

ミカサ「うっ……それは確かにあるけど」

クリスタ「そ、そう……」

クリスタが落ち込んでいる。何だろ。求めていた答えが見つからなかったのかな。

クリスタ「でも、もやもやするんだよね。ユミルに触りたい気持ちになったり、その、ヤキモチなのかなって思う事もあるの。独占欲みたいなの、あるのは分かる。勿論、友達同士でもそういうのあるってのは分かってる。でも、これって、その範囲内なのか、分かんないのよね」

エレン「んー……」

これって「それはレズです」なんて言っていいのかな。

もし違ったら、オレ、物凄く無責任な奴になっちまうし。

自分の感情を他人が決めていいもんじゃねえよな。悩んでいるのは分かるけど。

エレン「それはオレが決める事じゃねえよ。クリスタ。自分で決める事だ」

クリスタ「じ、自分で…?」

エレン「ああ。例えそれがどんなに「変」な感情でも、それをどう「定義」するかは、自分で決める事だろ? 人から見たらそう見えても、そうじゃない場合もあるし。逆もあるんじゃねえかな」

クリスタ「逆?」

エレン「所謂、ツンデレな奴とかそうだろ? ツンツンしているけど、本当は好きとか。冷たいようで、本当は声援を送っているとか」

クリスタ「意味がイマイチ分かんないよ。エレン……」

エレン「悪い。オレもあんまり口がうまくねえから、分かりやすくは言えないけど」

人の感情っていうのは、難しく出来ているからな。

一見、そう思えないような行動が実は、愛情からくる行動だったり。

愛情に見えて、実はそうではなかったり。

んー。すまん。だんだん自分でも言いたい事が良く分からなくなってきた。

エレン「………とにかく、ユミルが好きなら、多分、好きなんじゃねえの? それがどんな関係でもいいじゃねえか」

クリスタ「それって、無理に恋愛に定義しなくていいって事?」

エレン「それはクリスタ自身がそう「したい」と思った時に定義すればいい話で、「今」そうする必要はねえだろ?」

クリスタ「そっかあ……」

なんかすっきりしたのかな。クリスタの表情が明るくなった。

クリスタ「エレン、ありがとう。ちょっと頭の中が綺麗になった気がする」

エレン「おう。なら良かったな」

クリスタ「うん。ありがとう。エレンに話して良かった」

と、こっちの問題は一応、あっさり解決したけれど。

クリスタがユミルの傍に移動した後、オレはアルミンの方を見た。

アルミン「………………」

あーあ。今度はアルミンの方がどん底に堕ちてしまった。

むしろこっちを浮上させる方が難易度高いミッションだぜ。

アルミン「まさかの斜めからの刺客だよ。ユミルがクリスタの心を盗んでいたなんて……」

エレン「いや、でもあれは、そういうのじゃないかもしれないけどな」

アルミン「限りなく黒に近いグレーじゃないか! ううううう……(泣き出した)」

エレン「でも気持ちは分からなくはねえよな。ユミルの大道具姿、結構、格好良かったし」

ミカサ「うん。ユミルは格好いい。それは私も同意する」

エレン「アルミンも自分から行動起こさないと、手に入らないんじゃねえの?」

アルミン「クリスタがユミルみたいな格好いい人がタイプなら僕は完全に論外じゃないか……(ズーン)」

エレン「うーん……(困惑)」

困ったな。どうしようかな。こっちの問題は。

アルミンが落ち込み過ぎてオレの太ももの上に顔を伏せている。

と、その時、その様子に気づいたアニがこっちに来て言った。

アニ「何やってるの? アルミン、エレンとイチャイチャして。そっちに目覚めたの?」

アルミン「誤解を招くような事言わないでよ!!! 僕は健全な男の子だよ?! (*起きました)」

アニ「膝枕してもらっている時点でアウトだと思うけどね。いや、私は腐ってないけど、マーガレット先輩がここに居たらテンションあがるなあと思って」

アルミン「そうだった。ちょっと自重しよう。うん。もう大丈夫だよ(キリッ)」

アニ「やれやれ。アルミンも失恋か。失恋レストランを開いた方がいいのかもね」

エレン「ああ。秋は失恋の季節なのかもしれないな」

アルミン「そ、そんな事ないよ。秋だって恋の季節だよ。人が恋しくなる季節じゃないか。冬に向けて」

アニ「ああ、クリスマス?」

アルミン「そうだよ。クリスマスまでに彼女欲しい! って思う男子もいると思うよ」

エレン「そういえば、ミカサ。クリスマスどうする?」

ミカサ「クリスマス?」

クリスマスで思い出した。恋人同士になってから初めての折角のクリスマスだからな。

長期的に計画立てて何かやりたいなあって思ったんだ。

エレン「ほら、占いで「デートした方がいい」みたいな事も言われたしな。クリスマスはちょっと贅沢してみないか?」

ミカサ「贅沢……山登りとか?」

エレン「え? お前の中で山登りは贅沢なデートなのか」

ミカサ「うん。山登りはとても贅沢なデート……(キラキラ)」

エレン「そ、そうか……まあ、いいや。うん。それは今度やるとして、クリスマスは何か記念になるような事をやりたいな」

ミカサ「エレンに任せる(うっとり)」

アルミン「そこ! リア充爆発させないで! 爆ぜろって言いたくなるから! ジャンじゃないけど!」

エレン「悪い。ついついな」

と、ニヤニヤ話してしまう。

アニ「クリスマスか。今年も独り身かな。私も」

ミカサ「え?」

アニ「クリスマスを誰かと一緒にわいわい過ごしたことないんだよね。クリスマスパーティーみたいなの。やったことある?」

ミカサ「家族でひっそりとしたものはやるけど、クリスマスに皆でわいわいはしたことない」

アニ「だよね。今年くらい、やってみたいなあって思うけど……(チラリ)」

うぐ! この意味深な視線はなんだ?!

ミカサ「では、クリスマスは皆でエレンの部屋に集まろう。そしてゲーム大会をやろう」

エレン「ええええええ………」

言うと思った。ミカサ、この間のGWの集まりで味しめがやったな?

エレン「2人で過ごすんじゃないのかよー」

ミカサ「それは、イブの間に済ませて、当日は皆で集まりたい」

エレン「ああまあ、それでもいいけどさー別にー」

アニ(ニヤリ)

アニもたまにミカサを独占したいんかなって思う時あるが、これ確信犯だよなあ。

まあいいか。アニはいい奴だし。アルミンも混ぜて、仲いい奴ら集めてパーティーするのも悪くねえかもな。

……………と、この時はそんな風にぼんやりと考えていたんだけど。

この後、この予定を覆す、とんでもない予定が別に入る事になる。

そのある意味では運命の日と言える日に、オレ達は立ち会う事になるのだが。

まあ、それはもうちょっと先までのお楽しみにしよう。

そんな訳でその日はボーリングで打ち上げをしてその後は各自解散になった。

アルミンはまだちょっとフラフラしていたけど、アニが付き添っていたから多分大丈夫だろ。






そして次の日。10月7日。平穏な日常が戻って来た。

中間考査も近いから真面目に勉強しないといけないけど、実はテストの後には、1年生になってからの初めての「四者面談」が行われる予定だ。

担任教師と進路指導の先生と保護者と本人の四人で進路を相談し合うんだ。

だからオレはテスト後の進路相談に向けての準備も同時に進めないといけないな、と思っていた。

とりあえずとっかかりが欲しいからエルヴィン先生のいる進路指導室にお邪魔しようと思って、その日の昼休み、オレとミカサは2人でお邪魔する事にした。

資料を見たりするのはエルヴィン先生の許可があればいつでも入れるようになっている。

その日はオレとミカサだけが昼休みに来ていたようで、他の生徒はいなかった。

まだ四者面談まで時間があるからかな。でも直前は混雑しそうだし早めに行動した方がいいよなと思って、オレ達は進路指導室に入ったんだ。

しかし、他の生徒はいなかったけど、代わりに別の先客が居た。

リヴァイ「ZZZZZ………」

ソファで寝転がって寝てるー?!

爆睡している。黒ジャージ姿で寝ている。やべえ。起こしたらまずいよな。コレ。

と、思っていたら、あっさり起きた。あちゃー。

リヴァイ「あ? しまった。寝ていたか」

エレン「起こしてすみません……」

リヴァイ「いや、助かった。昼休みだろ? 昼飯食わないといかんからな」

ミカサ「こんなところでサボっていたんですか?」

リヴァイ「自宅じゃあまり寝れなくてな……」

心中、お察しするぜ。リヴァイ先生。

ハンジ先生、上の階に住んでいるんだもんな。そりゃ気になって寝れねえよな。

エレン「あの、食べてますか?」

リヴァイ「ああ。飯はちゃんと食ってるよ。ただ、寝る方がちょっとな」

と、目の下に疲労の跡を残してリヴァイ先生が言った。

リヴァイ「エルヴィンは? あいつはいないのか?」

エレン「後から来ると思いますけど。先に行ってていいと言われて鍵貰って先に部屋に入りました」

リヴァイ「そうか……」

リヴァイ先生が肩を落としている。無理ねえよな。

あの後、きっと謝る事も出来ずにいそうだ。この様子だと仲直りした感じじゃない。

リヴァイ「自分の口の悪さを後悔したのは今回が一番かもしれん……」

と、肩を落とす様は本当に可哀想だった。

エレン「まだ、謝れてないんですか?」

リヴァイ「目も合わせてくれなくなった。完全に距離を取られているよ」

ミカサ「そうですか………」

リヴァイ「なんでこう、俺は天邪鬼なんだろうな。本当は、ハンジが甘えて来た瞬間、嬉しかったのに」

ああ。やっぱりそうなんだ。だよな。そういう人だもんな、リヴァイ先生は。

リヴァイ「モブリット先生と付き合わないという判断をしたハンジに喜んでいる自分がいるのに、それをさっさと実行しないハンジに苛ついた。モブリット先生を気遣うあいつの様子に嫉妬したんだよ。男として、最低じゃねえのか、これって」

ミカサ「いいえ? 全然。それはむしろいい傾向だと思いますが」

リヴァイ「そうなのか?」

ミカサ「はい。大丈夫です。それは正常な感情です」

おお。ミカサが珍しくリヴァイ先生に突っかからない。

やっぱり相思相愛だって気づいてからは態度が変わったな。ミカサ。

ミカサ「でも、そこで「俺に何を期待しているんだ?!」というような言い方をされていたのはマイナスだったと思います。あの時、ハンジ先生はそこまでは求めていなかった。ただ、リヴァイ先生に話を聞いて欲しかっただけなんだと思うので」

リヴァイ「解決策を俺に求めていた訳じゃなかったのか」

ミカサ「女なんてそんなもんです。聞いてくれさえすれば、後は勝手に自分で立ち直ります」

おお、そうなのか。じゃあオレも今度からそうしよう。

リヴァイ「そうか……いや。そう言われればその通りだ。いつもの俺達なら、それに気づいていた筈だ。やっぱりあの時は、お互いに正気じゃなかったんだな」

ミカサ「そうですね。でも人間は冷静でない時は必ずあります。私もそうです」

と、言ってミカサはオレの方を見て言った。

ミカサ「でも、失敗しても、克服する事は出来ます。私がそうだったので」

リヴァイ「……」

ミカサ「その為には誰かの力を借りる事も必要だと思います。リヴァイ先生の場合は、一人で抱え込み過ぎなのでは?」

リヴァイ「………………」

リヴァイ先生が顔を隠して泣きそうになっていた。

リヴァイ「今、優しい言葉をかけないでくれ。泣いてしまいそうになるだろうが」

ミカサ「泣けばいい。どうせ今、ここには私とエレンしかいない」

エレン「いいですよ。泣いても。リヴァイ先生。誰にも言いませんから」

リヴァイ「……………」

しかしリヴァイ先生は泣かなかった。

それどころか、笑ったのだ。微笑みを浮かべたのだ。

リヴァイ「お前らは本当に強いな。でも俺は天邪鬼だからな。泣けと言われたら泣きたくなくなるんだ」

ミカサ「面倒臭い……」

リヴァイ「ほっとけ。しかしこうやって話しているだけでも大分落ち着くな。ありがとう………」

と、リヴァイ先生がほっと空気を弛緩させた直後、



ハンジ「ごめんね。エルヴィン。急に時間とってもらって」

エルヴィン「構わないよ。どうしても相談したい事なんだろ?」



と、進路指導室に噂の人物が入ってきたのだ。

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、反射的にソファにまた寝転がって隠れちまった。

ちなみに今、いるここは、間に仕切りがあって、ハンジ先生達のいるところから直接見えない。

上面図で説明すると、入り口から見て手前に机と椅子があり、その間に本棚があって、そこにソファとテーブルがある。

進路指導を2組以上でやる場合もあるから、話し合うスペースが2つあるわけだ。

オレ達がいたのはつまり、奥の方の席。エルヴィン先生とハンジ先生は手前の席に向かい合って座ったんだ。

お、オレも釣られて心臓がドキドキして来た。

何を相談するのか分からんけど、この距離なら2人の会話は丸聞こえだ。

ハンジ先生、周りを注意する余裕がないのか、エルヴィン先生と一緒に座るなり「どおおおおしよおおおおお」とぐだまいた。

ハンジ「困ったよエルヴィン! 私、またやらかしたよおおおおお!!」

エルヴィン「うん。何をやらかしたの?」

ハンジ「もう全部だよ全部! 何もかも!! モブリット先生には告白されるし、リヴァイのところのペトラに頬ぶたれるし、リヴァイとはまた喧嘩しちゃうし! 忙しすぎるよおおおおお!!!」

と、本当に何もかも曝け出すみたいだ。

エルヴィン「ハンジ。話が断片的過ぎる。ちょっと落ち着こうか」

ハンジ「う、うん……ごめん(赤面)」

あれ? 声のトーンが一気に大人しくなった。

ハンジ「…………あのね」

声が、可愛い。え? 何でいきなり? 変わったんだ?

ハンジ「わ、笑わないで聞いて欲しいんだけど」

エルヴィン「ああ。笑わないよ」

ハンジ「私、物凄い大きな勘違いをしていたのかもしれない……」

エルヴィン「勘違い? どんな?」

ハンジ「その……リヴァイ、との事なんだけど」

リヴァイ「!」

リヴァイ先生、目を大きく広げて動揺しているぞ。

今、すげえ心臓バクバクなんだろうな。オレもそうなんだけど。

盗み聞きしているのは良くないけど、出るに出れない状況だから仕方ねえよな。

エルヴィン「リヴァイがどうかしたのか?」

ハンジ「ええっと、ちょっと待ってね。今、頑張って分かりやすく説明するから」

エルヴィン「うん」

ハンジ「……………実は、昨日の振り替え休日にモブリット先生と2人で会ったんだ」

リヴァイ「!」

滝汗掻いている。リヴァイ先生、まだ動いちゃダメだ!!

ハンジ「勿論、お付き合いを断ろうと思ってね。申し訳ないけど、私は結婚を視野に入れた付き合いは出来ないし、何よりモブリットとは同僚でいたかった。でも彼はどうしても納得してくれなくて。だから私、思い切って言ったんだよね。自分のダメなところ。全部。出来るだけ、詳細に。そしたら、彼は『それでも真剣に交際したい』と言ってきてね。何もかも、私側の要望の条件を飲んでも、それでもいいから付き合いたいって言い出してきて、正直、驚いたんだ」

エルヴィン「それだけ彼が真剣にハンジを愛している証拠だね」

ハンジ「うん。まさかここまで食い下がられるとは思わなくて……だから、つい、言っちゃったんだ。私、風呂もまともに入らないくらい超がつく程の面倒臭がり屋だよって。リヴァイとの事は勿論、伏せたけど。そしたら、モブリット先生の方から『だったら一緒に試しに風呂に入ってみませんか』って言ってきて……」

その言葉を聞いた瞬間のリヴァイ先生の顔が凄かった。

な、なんていうか、スーパーサイヤ人になりかけ? みたいな?

表情の筋肉は動いてないのに苛立ちだけは伝わってくる。

これは相当、嫉妬しているんだな。まあ、無理もねえけど。

エルヴィン「入ってみたんだ」

ハンジ「うん。まあ、1回だけならいいかなっていうか、その……ごめん。正直、押し切られたような形だったんだけど」

リヴァイ先生、次の瞬間、顔を隠してしまった。

うわあ。認めたくないけど聞いちゃったって感じだな。

でもまあ、しょうがない。過ぎた事だ。続けて聞いていこう。

ハンジ「んで、まあ、その……リヴァイ以外の男の人に初めて、自分の体を洗って貰ったんだよね」

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「正直、その…リヴァイの時のような爽快感のようなものがなくて、さ。だらだら体洗うし。なんていうか、そこじゃない! みたいな。ええと、こういうのなんていうのか分からないんだけど、とにかく、その……なんか違うなって思ってしまってね」

エルヴィン「うん……」

ハンジ「でも折角洗って貰っているのにそんな事、言えないじゃない? だから適当なところで「もういいよ」って言って切り上げさせようと思ったんだけど」

エルヴィン「ふむふむ(ニヤニヤ)」

ハンジ「そしたらさ、その、モブリット先生が、その、だんだん、その気になってきて……私の、股を洗おうとしてきたから、思わず「そこはやめて!!」って、跳ね除けてしまって………」

ぎゃああああ! 当然の展開だろうが! 馬鹿かハンジ先生!!!

酷い話だな。それは男の立場からすれば泣くしかねえよ。

ハンジ「その瞬間、私、思い出したんだよ」

エルヴィン「何を?」

ハンジ「リヴァイと、一緒にダンスの資格を取りに行く為に旅行した時の事を」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が真っ赤になっていた。なんだ? 何を言おうとしているんだろう。

ハンジ「あの頃から既に、私、あいつと良く一緒に風呂入っていたし、体も洗って貰っていたんだけどさ。リヴァイはね、絶対、その、あそこだけは、絶対。何があっても洗おうとしなかったの。だから一回、「なんで?」って聞いてみたんだよね」

リヴァイ先生の赤面度がどんどん酷くなっていく。これは面白い事が聞けそうな予感だ。

ハンジ「そしたらさ、『そこは人間の体で一番デリケートな部分だから力加減がとても難しい。洗ってやれない事もないが、同意がない状態では洗ってやれない』って言ってきてね。『そこだけは、自分でやれ。まあ、洗って欲しいならやってやれなくもないが……』って言って、こう、手首をくいっと動かしてね?」

リヴァイ先生、なんつーエロ発言してんだよ!!!!!

ミカサまで真っ赤になっちまった。これは酷い!!!! 酷過ぎる!!!

ハンジ「勿論、私は『丁重にお断りします!!!!!』って言って、慌てて拒否したけどね。だから、リヴァイは私の身体は洗ってくれていたけど、絶対、その、女性器の部分には触れなかったんだよ」

エルヴィン「それは初耳だったね。私はてっきりそこも込みだとばかり思っていたよ」

ハンジ「あー普通はそう思うかもね。でも、本当。うん。信じて貰えないかもしれないけど、そこだけは外していたんだ。あ、おっぱいも、かな。『自分でやれるだろ?』って。あいつが念入りに洗うのは背中側の方で、自分では洗いにくくて、汚れが溜まりやすい場所だったね。それ以外は、ざっと、する感じ。私が疲れない様に、必要最低限の洗い方しかしなかったのよ」

うはあああ……リヴァイ先生の顔がもう、赤いの通り過ぎて黒くなっているような気がする。

エルヴィン「ふむ……」

ハンジ「んで、今思うと、私がそう答えた直後、あいつ、小さく『ちっ』って、舌打ちしていたんだよね。私の気のせいだったのかもしれないけど、今となっては、確認のしようがないけど。でも、でもね………」

ハンジ先生がそこで大きく息を吸ってから言った。

ハンジ「それ、思い出した瞬間、私、なんかこう、ふわあああって、体が熱くなってきて、リヴァイとの思い出が一気にこう、蘇ってきて、身体に力が入らなくなってきて、震えてきてね。こういうの、もしかして、もしかすると、あの……なんていうか、その、私達って、実は、その………」

エルヴィン「あともう少しだよ。ハンジ、頑張って」

ハンジ「う、うん。あーちょっと、水飲んでいい? 喉カラカラなんだけど」

エルヴィン「紅茶を出してあげよう。ちょっと待ってて」

そして紅茶を入れて再開。ハンジ先生は落ち着いてから続けた。

ハンジ「私ね、こういうのも変な話だけど、セックスでイクっていう経験、まだしたことないんだよね」

いきなり赤裸々な話がきたな!

つか、こんな話聞いてエルヴィン先生もよく平気で居られるな。

ハンジ「セックス自体はその、何度か経験あるけど、エロ漫画とかビデオであるような、ああいう大げさな快楽の経験が一度もなくて。だからどこかで「女として欠陥品」なのかなって思っていて。まあでも、別に生活に困る事でもないし。それに「トキメキ」の謎が解けないうちはやっぱり、そういうの無理なのかなって諦めていたからね」

エルヴィン「そうだったね。では、今は違うのかな?」

ハンジ「うーん………その、私の場合は、もしかしたらその「快楽」そのものをあんまり求めてなかったんじゃないかなって結論になった」

エルヴィン「快楽を求めていない?」

ハンジ「そう。それよりも、「安心」というか「安心感」かな。うん。こう、どっしりとした、布団に包まれるような幸せっていうのかな。ふわっとするような、くすぐったいような。ドキドキじゃなくて、気が付くと、ニヤッとしているような。そういう小さな幸せを積み重ねていけるような。そんなパートナーが欲しかったのかもしれない」

エルヴィン「うん。では、その相手が、リヴァイなのかもしれないと。そう思ったんだね?」

ハンジ「うん………多分、そういう事なんだと思う。だからその、世間から見たら変なのかもしれないけど。私、その、リヴァイとは、男女の仲の範囲でつきあっていたのかもって、今になって思ったの」

エルヴィン「いいや? 全然変じゃないよ。ハンジ。というか、気づくのが遅すぎるよ」

ハンジ「やっぱり?! 私、やっぱり気づくの遅かった?! ああああ…………!」

と、変な声をあげるな。リヴァイ先生の顔色がやっと普通に戻った。

ちょっと落ち着いたようだ。でも、凄く嬉しそうだ。

ハンジ「見つからない筈だよ。私の中の理想って、若い皆がやってるような「ドキドキ」じゃなくて、「ニヤッ」だったんだよ。すっごく小さな幸せだったんだよ! 線香花火くらいの。それを地味に続けるような感じ! 一緒に馬鹿やってくれるような、そういう人を求めていたんだって、やっと分かったんだよ」

エルヴィン「それはつまり、リヴァイの事を、ちゃんと男性として好きだって事だね?」

ハンジ「多分……いや、ごめん。うん。ちゃんと、好き」

と、言った瞬間の声、すげえ可愛かった。

ハンジ「だからその、エッチしてないけど、しているような? 矛盾しているけど。ひとつになってないのに、ひとつになっているような。そういう関係だったのかなって、今になって思ってね。これって、やっぱり変かな?」

エルヴィン「いいや? 変じゃない。というより、エッチの「定義」の認識の方が間違っていると私は思うよ」

ハンジ「定義の方が?」

エルヴィン「そう。キスとセックスをしないと「エッチ」ではないと誰が決めた? 心が通じ合えば、たとえ触れる事すら敵わなくとも、それは恋人同士の愛の営みという事も出来るんだよ」

ハンジ「そっか……じゃあ固定観念に囚われていたのは私の方だったんだね」

と、すっきりしたようにハンジ先生は言った。

ハンジ「実際、すっごい気持ちいいなって、思っていたんだよね。リヴァイとのお風呂。酷い時は、途中で寝ちゃう事もあったよ。だって、あいつ、洗うの上手すぎるんだもん。でも、私が寝ちゃっても、ちゃんと服着せてくれて、その辺の床の上に寝転がしてくれてね。安心して寝る事が出来たんだ」

エルヴィン「つまり、ハンジにとって、リヴァイは安心出来る存在だったんだね」

ハンジ「うん。それに気づいたのは……あの子が体張って私の頬をぶってくれたおかげだよ。あの子には感謝しか出来ないよ」

ペトラ先輩の事だな。これは。

ハンジ「私にね、「リヴァイに甘えているようにしか見えない」って、超どストレートの言葉を注入してくれてね。その言葉の意味を噛みしめた瞬間、なんかこう、だんだん、パズルのピースが集まってくるような。自分の中の「謎」が全部一気に解けていくような。推理小説の解答を全部理解するような。不思議な感覚を味わったよ。あの子も辛かっただろうに。本当に、彼女には申し訳ない事をさせてしまったよ」

エルヴィン「そうか。では、ペトラが体を張ってくれたおかげで、今のハンジの「結論」が出たんだね」

ハンジ「スイッチボタンを押してくれたような感じだね。爆発させたのは、モブリット先生だったけど」

エルヴィン「そうか。そこまで結論が出たならもう、ここから先はリヴァイと本当の男女の意味で付き合っていくつもりなのかな?」

ハンジ「うぐっ……!」

あれ? その直後、ハンジ先生の声が詰まった。

ハンジ「むしろ問題はそこから何だよね……」

エルヴィン「何が問題だ? ハンジはリヴァイの事、好きなんだろう?」

ハンジ「いや、でも、この間、物凄くまた怒らせちゃってね。どうやったら謝れるのか分からなくて……というか、目合わせると、自分の顔が赤くなるの分かるし。まともにあいつ、見れない自分が居て、どうしたらいいのか分かんないんだよね」

ああ。目合さないって、そういう意味だったのか。

良かった。悪い意味じゃなかったんだ。

ハンジ「だからその……今後、どうしていったらいいのか、エルヴィンにアドバイスを」

エルヴィン「それはもう、私がどうこう言える問題じゃないな。愛の進路相談は、2人でやるべき事だから。なあ、リヴァイ?」

うあ!? ここでバラすのか?! 酷い!!!

リヴァイ先生がゆっくり立ち上がった。そしてくるりと、振り返り、

リヴァイ「ああ。じっくり話し合おうか。ハンジ」

と、言い出したのでハンジ先生は直後、「ぎゃあああああ?!」と大絶叫した。

ハンジ「え……嘘……今の、全部、聞いていたの?」

リヴァイ「ああ。全部、聞いた」

ハンジ「酷い!! エルヴィン!!! これ、完全に私を嵌めたね?!」

エルヴィン「人払いをして欲しいなんて一言も言わなかっただろ? 先客はリヴァイ達の方だったしね」

リヴァイ「ああ。ここのソファで寝かせて貰っていたからな」

ハンジ「あーうー(赤面)」

エルヴィン「じゃあ、ここからは、2人だけで大丈夫だね」

リヴァイ「ああ。手間をかけさせたな。エルヴィン」

エルヴィン「このくらい、どうって事ないよ。じゃあ、ごゆっくり♪」

という訳でオレとミカサも進路指導室を追い出されてしまった。

ドアの外でエルヴィン先生が悪い顔をしている。

エレン「な、なに話すんだろう……気になる」

エルヴィン「大丈夫。既に手は打ってある」

エレン「え?」

エルヴィン「ピクシス先生が今、監視室にいるから。進路指導室の様子はRECしている筈だよ」

ひでえええええええ!!!!

でも、超見たい。中の様子見たい。

ソワソワしちまう。どうしよう。実況してくんねえかな。

とか思っていたら、

エルヴィン「教室に移動してご覧? テレビ繋いで今頃、中の様子を中継している筈だよ」

もっと酷い事考えていたこの先生!!!!

ミカサ「エレン、教室に戻ろう」

エレン「お、おう……」

という訳で、オレ達はエルヴィン先生と別れて教室に戻った。

そしたら本当に、教室のテレビに中継が入っていて、リヴァイ先生とハンジ先生のガチ(愛の)進路相談が始まっていた。

そんな訳で愛の進路相談は次回。今日はここまで。
いろいろと酷い回ですんませんでした…orz

あと、ペトラが悪役になった理由、伝わったかな…。
ペトラはイメージダウンどころか、鬼になる覚悟でぶってますので、
許して差し上げて下さい。

悪役は大人にしてほしかった
周りに他の生徒がいる中であれは先生の面目が立たない
誰か大人が(ペトラの気持ちを汲んだ上で)宥めて欲しかったな

>>117
ハンジ先生はそういう面目とかを気にするようなタイプの先生ではないので大丈夫です。
むしろペトラ自身の周りからの評判とかが地に堕ちる事を心配しています。
だから「申し訳なかった」と言っています。

あとついでに言うなら、このシーンはオルオペトラの伏線も入ってます。
もうちょい先になりますが。すみません。

教室に残っている奴らは突然のお昼のテレビ放送に「なんだ?」とざわついている。

弁当食っている奴はもう大分少ないから、まったりムードで教室内で過ごしていたから余計にそうなった。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『……………』

ハンジ『な、なんでニヤニヤしてるのよ~』

リヴァイ『悪い。ニヤニヤが止まらないんだ』

ハンジ『そこのソファで寝ていたんだったら、途中で言ってくれたっていいじゃない!』

リヴァイ『言いそびれたんだよ。エルヴィンとの会話を邪魔しちゃ悪いと思ってな』

ハンジ『嘘ばっかり……盗み聞きしていたくせに』

リヴァイ『ああ。まあ、実はそうなんだが』

ハンジ『もう~リヴァイは本当に意地悪ね! 恥ずかしい~!』

と、顔を隠すハンジ先生だった。

なんだなんだ? 生徒達はまだ、事態を把握出来ずにテレビに注目している。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『…………』

ハンジ『ちょっと! 黙ってないで何かしゃべってよ! 居た堪れないじゃない!』

リヴァイ『ああ……悪い悪い。照れているハンジを見るのは珍しいと思って、つい見入ってしまった』

ハンジ『やめてよ! じっくり見ないで! その……自分でも、どうしたらいいのか分かんないんだから』

リヴァイ『そいつは無理な相談だ。こんなに面白い事はない……ククク……』

2人の間に、甘ったるい空気が流れている。こそばゆいなあ。

ハンジ『あーうーその、えっと、どうしようか』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『その、というか、それ話す前に、私から謝らないといけないね。ごめん……』

リヴァイ『何がだ?』

ハンジ『だから、その………あんたに甘えまくっていたことだよ。ペトラにぶたれて初めて、気づいた。私、物理的な部分だけじゃなくて、精神的な部分まであんたに甘えまくっていたんだって事を……』

リヴァイ『その、ペトラにぶたれたっていうのは、俺と別れた後の事か』

ハンジ『うん……あの子、半泣きで私をぶったんだよ。他の生徒がいる中で。本当に申し訳ない事を、彼女にさせてしまった………』

リヴァイ『そうか………』

ハンジ『だって、あんな事したら、ペトラ自身の周りからの評判が落ちるに決まっているじゃない。こんな私みたいなダメ教師の為に、あの子の手を煩わせたと思うと、大人として、自己嫌悪するよ………」

リヴァイ『過ぎてしまった事は悔やむな。ペトラには俺からも話しておくよ』

ハンジ『うーん……本当にごめんね』

リヴァイ『その事は後で何とかするとして。ハンジ。昼休み時間も限りがあるから、単刀直入に聞く。これからどうしたい?』

ハンジ『え? と、言うと?』

リヴァイ『ハンジはこれから、俺とどうしたいと聞いているんだ。ハンジ自身の今の素直な気持ちを聞かせてくれ』

きたあああああ!!! 盛り上がって来たぜ!

この辺になってくると、教室の奴らも大体察したようで、わくてかし始めた。

ハンジ『ど、どうしたいんだろう……?』

リヴァイ『おい……(イラッ)』

ハンジ『いや、待って! もともと、その辺の話はエルヴィンと話して自己分析してからリヴァイと話すつもりだったのよ! 心の準備もない状態で聞かれても困るよ!!』

リヴァイ『お前は本当に面倒臭い奴だな。そんなもん、俺に直接聞けばいいだろ』

ハンジ『じゃあ、聞いていい? リヴァイは、私と、どうしたいの……?』

リヴァイ『ハンジが話してくれたら答える』

ハンジ『それってずるくない?! 人には聞いておいて、答えないってずるくない?!』

リヴァイ『うるさい。いいから答えろ。ハンジが先だ。レディーファーストってやつだろ』

それ、使い方間違ってますよリヴァイ先生。

いや、分かってて言ってるんだろうけどな。多分。

ハンジ『うー……もう、しょうがないなあ。分かった。じゃあ、話す。話すけど……』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『わ、笑わないで、聞いてね? 一応、前置きしておくけど』

リヴァイ『ああ。分かった』

ハンジ先生はそこで、区切って手で自分の胸を押さえてから言った。

ハンジ『提案したい事があるの』

リヴァイ『ああ。どんな提案だ?』

ハンジ『私達、試しに一緒に、暮らしてみない?』

おおおおおおお?! いきなり同棲の申し出だあああああ!!!

ハンジ先生、やるな! これは教室の中もざわめいてきたぜ!!

リヴァイ『それは「同棲」の提案だと受け取っていいのか?』

ハンジ『そうだね。リヴァイと一緒に暮らしてみたい。そういう感情が、今、私の中に「ある」んだけど』

リヴァイ『……けど?』

ハンジ『なんかこんな事を言っちゃうと、アレなんだけどさ。これって、よくよく考えたら、私、まるでリヴァイの体目当てに一緒に暮らしたいって言ってるようなもんだよね。あんたと一緒に入る風呂が癖になっちゃってさ。もう、他の男じゃダメになっちゃったみたいだし』

なんかそういう言い方すると途端にエロくなるのが不思議だな。

リヴァイ『ああ? (不機嫌)それの何が悪いんだ?』

ハンジ『ええ?』

リヴァイ『だから、それの何が「悪い」んだ? 別に俺はそれでも一向に構わんが』

ハンジ『じゃあ、同棲してくれるの?』

リヴァイ『いや、同棲の話じゃなくて「体目当て」でも別に構わないって言ったんだが』

ハンジ『あんた、どこまでマゾなのよ?! やっぱりサドに見せかけたドМだよね?!』

リヴァイ『そんなもん、どっちでもいい。話を逸らすな。つまり、ハンジから見て俺と同棲したいという感情があって、その理由は俺じゃないとハンジに与えてやれない事なんだろ?』

ハンジ『まあ、そういう事になっちゃいますね』

リヴァイ『なら、話は早い。………断る』

ハンジ『ええええちょっと、持ち上げといて、落とすって?! アレ?! あんた、やっぱりドSだった?!』

リヴァイ『SとかМとかの話は、今はどうでもいい。それより、同棲の件は承諾出来ない』

ハンジ『えええ……断られると軽く凹むんだけど。じゃあ、今まで通りの形態なら付き合ってくれるの?』

リヴァイ『そうじゃない。そういう話じゃない』

ハンジ『ん? つまりどういう事……?』

次の瞬間、一瞬、間があって、リヴァイ先生が唾を1回飲み込んだのが分かった。

皆もなんとなく予感している。これは、きっと、来るぞ。

リヴァイ『そういう話なら………ハンジ。結婚するぞ』

ハンジ『へ………?』

リヴァイ『だから、そういう話なら「同棲」よりも俺は「結婚」の形の方がいいと言っている』

ハンジ『え………えええええええ?!』

リヴァイ『何をそう驚いている。何かまずい事、言ったか?』

ハンジ『いやいやいやちょっと待ってよ?! 何で同棲を提案して断られて「結婚」の話になるの?! 訳が分からないよ?!』

リヴァイ『訳が分からんのはお前の方だろ。ハンジ。どうして「一緒に暮らしたい」っていう感情があるのに、同棲なんてかったるい事を言い出す。同棲する意味なんてあるのか?』

ハンジ『いや、あるでしょ?! こう、段階的なものっていうか、その、物事には順序みたいなものが……』

リヴァイ『それはお互いの事をまだ良く知らない男女の為にあるようなもんだろ。俺達の場合は必要ない』

ハンジ『え? そ、そうなのかな? いや、でも、いくら付き合い長いからって、それとこれとは別なんじゃ……』

リヴァイ『別じゃない。必要性がないならする必要はない。結婚の形の方が収まりついていいし、それに俺にとっても都合がいいんだ』

ハンジ『え? リヴァイの方にメリットあるの?』

リヴァイ『大いにある。だから俺は結婚の方がいい。同棲は、却下だ』

ハンジ『えええええ……ちょっと待ってよ?! それは私の方が承諾出来ないよ!』

リヴァイ『何故だ。何が不満なんだ』

ハンジ『だって、仕事続けたいし……』

リヴァイ『俺は別に辞めろとは言わん。むしろ続けた方がいいと思っているが?』

ハンジ『家庭に入らなくてもいいの?』

リヴァイ『俺が一度でもそういう部分をハンジに求めた事あったか? 今まで全部、俺が代わりにやっていたのに』

ハンジ『そういえばそうでしたね?! でもほら……結婚しちゃったら、リヴァイのファンの子達、泣いちゃうよ? また私、恨まれちゃうし、今度こそ、暗殺され兼ねないよ?』

リヴァイ『その点については、とっておきの秘策がある』

ハンジ『秘策……?』

リヴァイ『結婚を機に、俺の方が教職を辞めればいい。俺が代わりに家庭に入ってやろうじゃないか』

と、リヴァイ先生が爆弾発言したもんだから、他のクラスとか、いろんなところから絶叫が聞こえ出した。

いやあああああ?! とか嘘おおおおお?! とかいろいろ。

ハンジ『は……? あんた、何言ってるの? 正気なの?』

リヴァイ『俺はいたって真面目だが?』

ハンジ『いや、熱でもあるんじゃないの? あんた、教職捨てるって……馬鹿じゃないの?!』

リヴァイ『そうか? 別に自分ではそうは思わんが。むしろワクワクしているぞ。これでようやく専業主婦…いや、主夫か。俺の夢が一個叶う訳だからな』

ハンジ『そんな話は初めて聞いたんですけどおおおおおお?!』

リヴァイ『今、言ったからな。そもそも俺はもともと、なりたくて教職についた訳じゃない。ある意味ではエルヴィンに嵌められてうっかり教員になっちまったようなもんだ。だから、教職に未練がある訳じゃないんだよ』

ハンジ『で、でも……リヴァイを慕う生徒達がどんだけいると思っているの? あんた、生徒を見捨てる気なの?』

リヴァイ『それについては申し訳ないとは思っているが、背に腹は代えられん。ハンジと結婚出来るんだったら、俺は教職を捨てる覚悟はある』

おおおお。なんと男らしい発言なんだ。

その瞬間、ハンジ先生がうるっときちゃって。でも、寸前で堪えて、

ハンジ『だ、ダメに決まってるでしょ! そんなの、余計に生徒達に恨まれちゃう……!』

リヴァイ『ハンジ。何もかもがうまくいく選択なんて、元々無理な話だろうが。何かを捨てなければ、得られるものは何もない』

ハンジ『そうだけど! 私だって一応、教員なんだから! 生徒達に恨まれるのは辛いんだよ?! 今までどんだけ地味で地味で地味な嫌がらせとか嫌味とか言われてきたか!!』

リヴァイ『それは陰でやられてきたんだな。どうしてそれを今まで言わなかった』

ハンジ『あんたに言ったら、余計にこじれるでしょうが! あんたの人気、加熱し過ぎて本当にいろいろヤバかったんだからね!』

と、ハンジ先生が言った直後、リヴァイ先生が立ち上がって、ハンジ先生の席の隣に移動して、正面から抱きしめた。

ヒューヒューの声が教室であがる。向こうには聞こえてないだろうけど。

リヴァイ『今まで我慢させてすまなかった。ハンジ、本当にすまなかった……』

ハンジ『や、やめてよ……優しくしないでよ。涙が出てくるじゃない』

リヴァイ『元々、泣き虫の癖に何言ってるんだ。泣け』

ハンジ『もうーいろいろぐちゃぐちゃなんですけどおおおお?!』

と、ハンジ先生がリヴァイ先生の胸の中でわんわん泣いている。

それを愛おしそうに見つめるリヴァイ先生の姿が、すげえ格好良かった。

ハンジ『えっぐ……えっぐ…やっぱり、ダメだよ。リヴァイ』

リヴァイ『何が』

ハンジ『あんたが教職辞めたら、ダメだよ。そんな事しちゃったら、宝の持ち腐れじゃないの』

リヴァイ『その宝を独占する権利をやるっつっているのに。お前も素直じゃねえな』

ハンジ『だって、そんな事したら、私、多分、リヴァイ観察日記つけちゃうよ? イグアナ観察記録みたいにして、飼っちゃうよ? それでもいいの?』

リヴァイ『ははっ……そいつは面白いな。ハンジらしくていいんじゃないか?』

ハンジ『誘惑しないでよおおおお! 今、本気でそれをやりたい自分と理性との葛藤が始まろうとしてやばいんですけどおおおお?!』

リヴァイ『まあ、その辺はハンジに任せる。そろそろいいか? 結婚、承諾してくれるか?』

ハンジ『待ってよ! まだ承諾してない! 1ミリもOK出してないよ!』

リヴァイ『まだ抵抗するのか。しぶとい奴だな。お前も……』

ハンジ『いや、だって……その、よく考えよう。リヴァイ。冷静になって考えよう』

リヴァイ『何をだ』

ハンジ『この結婚のメリットについてだよ。私にはメリットしかない状態だけど、リヴァイの方のメリットって、何かあるの?』

リヴァイ『あー……』

と、リヴァイ先生は少し考えて、

リヴァイ『俺はひとつだけ、約束して貰えればそれでいい』

ハンジ『約束?』

リヴァイ『ああ。それさえ反故されなければ、俺はハンジと一緒に結婚生活はやっていけると思っているんだが』

ハンジ『それって、何?』

リヴァイ『俺と毎日、一緒に風呂に入って、俺にハンジの体を全部、洗わせる事だ。今度はもう、本当の意味で「全部」だ』

ハンジ『!!!!!!』

その直後、ハンジ先生が目を白黒させて口をパクパクした。

ハンジ『毎日なんて絶対無理いいいいいい!!! いやあああああ!!!!』

リヴァイ『あ、毎日はさすがにふっかけ過ぎか。悪い。定期的、でいい。とにかく今までのサイクルより少し多めに一緒に風呂につきあってくれるなら、俺はそれだけで満足だ』

ハンジ『いや、それも何か、その……やっぱり私の方のメリットじゃない? あんたどんだけ謙虚なのよ』

リヴァイ『そうか?』

ハンジ『うん……その、あの……それだけのメリットで、結婚って、やっぱり変っていうか』

リヴァイ『ふん……じゃあもっと納得する材料を提供すればいいのか?』

ハンジ『出来ればそうして欲しいけど……』

リヴァイ『分かった。後で文句言うなよ』

と、言って、リヴァイ先生が、動いた。

一同「「「「「「?!」」」」」

リヴァイ先生がハンジ先生の唇に、キスした。それもう、電光石火の勢いで。

ハンジ『?!』

うわ……しかも、その、アレだ。ガチで本気の方の、キスだ。

ハンジ『ん……んー……ん……あっ……ん……』

ハンジ先生、ヤヴァイ!! 声、超色っぽい!!!

おっぱじめたあああああ!!! 教育上、よろしくない展開きたあああああ!!!!

ハンジ『はっ……あっ……ああっ………ちょ……あっ……』

うわ……すげえ。見入っちまう。いや、これ、本当、誰か止めなくていいのかよ。

リヴァイ先生、完全に男のスイッチ入ってやがる。いいのかなコレ。

そしたら、天の神様がそれを察したのか、チャイムが鳴った。

昼休み終了の合図だった。

リヴァイ『ああ、次の授業か。今日はここまでしか出来なかったか』

ハンジ(ぼーっ……)

リヴァイ『という訳で、これが俺にとっての結婚する最大のメリットだ。理解出来たか?』

ハンジ(こくり)

リヴァイ『納得したか? だったら、返事を今、くれ』

ハンジ『…………はい』

リヴァイ『結婚、してくれるんだな?』

ハンジ『……はい。結婚します』

リヴァイ『良かった。籍はいつ入れる?』

ハンジ『リヴァイに任せる……(ぼーっ)』

リヴァイ『なら……面倒臭いからもう、俺の誕生日あたりでいいか? 12月25日で』

ハンジ『うん……(ぼーっ)』

リヴァイ『結婚式とか、詳しい事はまた後で決めるぞ。じゃあな。俺は授業の準備に戻る』

ハンジ『うん……いってらっしゃい……(ぼーっ)』

そして、ハンジ先生を置いてリヴァイ先生が先に進路指導室を出て行った。

凄かった。2人の愛の進路相談。一気に結婚まで持っていきやがった。

何だコレ。すげえニヤニヤしてくるんだけど。

ハンジ『……………は! 私は、今、何を………』

あ、ハンジ先生が我に返った。今更だけど。

ハンジ『うわあああああ勢いで結婚承諾しちゃったよおおおおおおどおおしよおおおおおお?!』

ハンジ『しかもあの、リヴァイとだよ?! キスされて、押し倒されて、承諾しちゃったよおおおおお?!』

ハンジ『何コレ?! 何コレ?! 何でこんな事になっちゃったの?! おかしくない? 何かおかしくない?!』

ハンジ『もう、私の馬鹿ああああああ?!』

と、今頃悶絶してゴロゴロして、困惑するハンジ先生が超可愛かった。

という訳でお昼のテレビ放送はそこで打ち切られて、皆、その後にすげえざわめき始めた。

ミカサ「け、結婚するって、今、言った……」

エレン「ああ。言ったな」

ミカサ「しかも、クリスマス。12月25日に籍を入れるって……」

エレン「ああ。その日はリヴァイ先生の誕生日だから丁度いいじゃねえか」

ミカサ「じゃあ、結婚式もその日にするのかしら?」

エレン「かもしれねえな。あ、でもそうなると、クリスマスパーティーどころじゃねえよな。オレ達、リヴァイ先生に世話になったんだし、2人をお祝いしてあげないと」

ミカサ「そ、そうね……そうなる」

エレン「何してやろうかな。やべえ! 次の授業どころじゃねえなコレ!」

教室の中も相当ざわめいていた。女子の一部はがっくり葬式のようになっているし、隣のクラスまでざわめいている。

その直後、もう1回、テレビ放送が来た。

あ、リヴァイ先生が一人で映っている。何だろ。何か挨拶するのかな。

リヴァイ『あー……授業始まる前に、すまん。ちょっとお知らせだ。12月25日、学校の体育館を借りて、俺とハンジの結婚式をあげてくれるっていう話がついたようだから、その日に結婚式の披露宴を行う。来たい奴は来てもいい。だが、生徒は全員、制服で来い。時間は追って知らせる。以上だ』

と、追加情報がきて、教室は更に轟いた。

もうこれ、学校をあげてのお祭り騒ぎじゃねえか?!

アルミン「凄かったねえ。公私混同もいいところだね! でも良かったよ。ちゃんとくっついて」

エレン「だな。今頃、エルヴィン先生とピクシス先生、祝杯あげているんじゃねえかな」

ミカサ「次の授業の準備、出来ない……」

エレン「はは! ちょっと遅れてくるかもな。次の授業はなんだっけ?」

ええっと、今日は10月7日。火曜日だから…。

古典か。キッツ先生か。だったらそろそろ教室にやってくるかな。

あ、やっぱり来た。キッツ先生も微妙な顔している。さっきの騒動、知っているんだろうな。

でも淡々と授業を始めた。そうだよな。授業しない訳にはいかないしな。

そんな訳で、いろいろざわざわしながらオレ達は授業を受けた。

リヴァイ先生とハンジ先生の恋の行方は強引に決着ついたけど、なんか2人らしいゴールの仕方のような気もするから、まあいいか。

オレは古典の授業を受けながら、どんな風に2人を祝ってやろうかなって考えていたのだった。

という訳で、やっとリヴァイ先生とハンジ先生が結婚する事になりました。
一気に書いて疲れたので小休止。また後で続きを書きます。ではノシ








その日の放課後。オレとミカサはもう一度、進路相談室に足を運んだ。

今の時期はテスト前だから部活の方も顔は出さなくてもいい。

テスト一週間前になると、部活動は完全に停止する。隠れてやると罰則がある。

だからその日はのんびりと、もう一度進路相談室に足を踏み入れたんだけど。

またまた先客が居た。リヴァイ先生とハンジ先生が言い争っていたのだ。

ハンジ「ひどいよおお……昼休みの様子が中継で生徒に筒抜けだったなんて、私、知らなかったよおおおお」

リヴァイ「ああ? んなもん、エルヴィンとピクシス先生なら絶対にやるに決まっているだろうが。生徒全員が証人だからな。前言撤回は絶対させねえぞ」

あ、やっぱりリヴァイ先生、中継されている事、気づいてあえてやったんだ。

すげえ信頼関係(ある意味で)だな。ハンジ先生、可哀想だけど。

こっちはすげえ面白かったんで口がにやけてしまう。

ハンジ「うわああああん! 嵌められたよおおお! こんな筈じゃなかったよおおおお!」

リヴァイ「うるさい。いい加減に諦めろ。もう、決まった事だ。それより細かい事をこれから決めていくぞ」

ハンジ「ううう………ぐすんぐすん」

ハンジ先生が真っ赤になって涙目なんだけど、超可愛い。

これ絶対、リヴァイ先生、わざとやっているな。苛めて楽しんでいるようにしか見えない。

エレン「あの、オレ達、四者面談用の資料を閲覧したいんですけど、奥の席、使っていいですか?」

リヴァイ「ああ。構わん。少々うるさいかもしれんが、それでも良いなら」

エレン「いえ。2人は2人で今後の相談、頑張って下さい」

という訳でオレとミカサは大学の資料とかいろいろ眺めながら、リヴァイ先生とハンジ先生の会話を背景に聞くのだった。

ハンジ「うううう………しかももう、結婚式の日取りまで決めちゃって。12月って早すぎない? しかも学校の体育館を借りるって。いつの間に打ち合わせていたの?」

リヴァイ「その辺の事はエルヴィンとピクシス先生が全て前もって根回ししておいてくれたそうだ。準備万端で待っていたそうだぞ」

ハンジ「もう、なんか完全に、ベルトコンベヤーに乗せられた荷物のような気持ちなんだけど」

リヴァイ「いいじゃないか。面倒がなくて」

ハンジ「そうだけどさー。うーん。なんかこう、理不尽な気持ちが拭えない……(がくり)」

リヴァイ「どうしてそこまで嫌がるんだ。やっぱり結婚に抵抗があるのか?」

ハンジ「いや、その……そういう訳じゃないんだけど」

リヴァイ「ん?」

ハンジ「なんかこう、今、地に足がついてない感じでね。心拍数がずっと、フル活動していて。心臓持たないっていうか、壊れそうになっているというか。この状態、いつまで続くのかなって思って……」

リヴァイ「ああ、そんな事か。だったらハンジ、オレの脈拍、測ってみろ」

ハンジ「え? 何で?」

リヴァイ「俺の方が、多分、ハンジより脈拍早いと思うぞ」

ハンジ先生がどうやら脈を測り始めたようだ。

ハンジ「………本当だ。私より、早いかも」

リヴァイ「だろ? だったら、問題ないだろ。俺もこういう事は初めてなんだ。緊張くらいはする」

ハンジ「そうなんだ………」

リヴァイ「浮かれているのは俺の方だと思う。その………強引な手を使って悪かったとは思うが、早くハンジを自分の物にしたくて堪らなかったんだ」

うははははは! すげえ会話だなコレ。いいのかな? 聞いちゃって。

ミカサもちょっと照れている。だよなあ。甘すぎる会話だもんな。

ハンジ「そ、そうだったの?」

リヴァイ「ああ。でないと、またいつ、別の男がハンジにちょっかい出してくるか分からんだろ。今度こそは「俺の女に手出すんじゃねえ!」って、代わりに言ってやりたいって思ったんだ」

ハンジ「え?」

リヴァイ「俺がもし、お前の彼氏だったなら、モブリット先生に告白された時点で、俺が代わりに話をつけにいっても良かった。あの時はそうする権利がなかった訳だから「俺にどうして欲しいんだ」って、つい怒鳴っちまった。すまなかった」

ハンジ「そ、そうだったんだ……」

まるで答え合わせのような会話が続いてハンジ先生の声が潤んでいた。

ハンジ「あんた、そこまで私の事、考えてくれていたんだ。ごめん……全然、気づかなくて」

リヴァイ「いや、俺の方こそ悪かったな。ただの愚痴に本気になって言い返すなんて、らしくなかった」

ハンジ「ううん。あの時、甘えた私も悪いのよ。これって、私の悪いところだよね」

リヴァイ「いいや? 俺はハンジに甘えられるのは嫌いじゃない」

ハンジ「え……?」

リヴァイ「嬉しかったよ。頼ってくれたのは。なのに素直にそれを表に出せなかっただけだ。俺もあんまり自分の感情を表に出すのがうまくない。そのせいで誤解も多々起きる。そんな時、何度、お前に助けられたか分からない。だからハンジが傍に居てくれないと困るんだ」

ハンジ「ええ? あ、もしかして、私、リヴァイの通訳的存在なの?」

リヴァイ「そうとも言うな」

ハンジ「うははは! そりゃ責任重大だね! じゃあもう、しょうがないか!」

と、やっと気持ちが落ち着いたのかハンジ先生が一度、手を叩いた。

ハンジ「それだけ必要とされているなら、肌を脱ぐしかないね! 分かった! 結婚を前向きに考えてみるよ。とりあえず、何から始めたらいいのかな?」

リヴァイ「そうだな。まずは、住居についてどうするか、だな」

ハンジ「あーそっか。今住んでいるところって、基本、独身の教員用だから、結婚した人は大抵出ていくよね。部屋の大きさが1人か2人用ってところだし」

リヴァイ「暫くは俺の方がハンジの部屋に通ってもいいが、ずっとそうする訳にもいかないよな。新居を考えるか?」

ハンジ「いいの? 探すの大変じゃない? 忙しいのに」

リヴァイ「その辺はエルヴィンに丸投げすれば喜んで探してくれるんじゃないのか?」

ハンジ「あは! それもそうだね。じゃあエルヴィンにも協力して貰おうか♪」

リヴァイ「学校からあまり遠くなり過ぎなくて……ハンジの荷物が多いから、収納が多い部屋がいいよな。4LDKくらいのマンションで考えておくか?」

ハンジ「いや、4LDKは大きすぎない? 3LDKでもよくない?」

リヴァイ「3も4も対して変わらんだろう。それにどうせ荷物増える癖に。初めから部屋数の多いところを押さえた方がいいんじゃないのか?」

ハンジ「いや、私の場合、あればあるだけ荷物ぶっこむだけだから。制限があった方がかえって助かるかなーて」

リヴァイ「ほう? だったら容量越えたら遠慮なくガンガン捨てるぞ? いいんだな? 後悔するなよ?」

ハンジ「うぐ! そう言われるとプレッシャーになるけど、4LDKになると家賃跳ね上がるからね。うん、そこで妥協しよう」

リヴァイ「は? 家賃を気にして遠慮する必要はない。金は使うべき時に使わなくてどうするんだ」

ハンジ「いや、だって! 悪いよ!! そこはほら、将来の為にも節約した方が」

リヴァイ「そこは節約するべきところじゃない。それに4LDKの方が後々の為にもいいだろ」

ハンジ「うーん。確かにそうだけどさ。本当にいいの?」

リヴァイ「金の事なら心配するな。大丈夫だ。こう見えても俺はそれなりにため込んでいる」

ハンジ「………いくらほど?」

リヴァイ「…………8000万くらい」

ハンジ「は、8000万?! ちょっと待って! 何をどうやりくりしたら教職だけでそれだけため込めるの?!」

リヴァイ「教員になる前に別の仕事もいろいろやっていたんだよ。土方仕事とか。宅配とか。主に肉体労働だな。若い頃、エルヴィンに無理やり大学行かされた時に、あいつに大学資金を全面的に肩代わりして貰ったから、それを返済する為に働いていたんだ。まあ、あいつはびた一文もこっちの金を受け取っていないんだが」

ハンジ「えええ……それは初耳だよ。あんた、エルヴィンに大学行かされたって、本当にそういう意味だったんだ。エルヴィン、まるであしながおじさんじゃない」

リヴァイ「あいつが勝手にやったんだよ。こっちの承諾も無しに。泥酔している時に、契約書を書かせるわ、大学先まで勝手に決めるわ……本当に、あいつ、何であそこまで俺にしてくれたのか……」

ハンジ「あーあれじゃない? 完全にパトロン感覚だったんじゃない? リヴァイがもし女の子だったらエルヴィンに召し抱えられていたかもしれないね」

リヴァイ「想像させるな……本当にやりそうで怖い(ガクブル)」

おおお。なんか裏話も飛び出して面白いな。

大学の資料見ているけど、リヴァイ先生とハンジ先生の会話が面白すぎて集中出来ねえな。

ハンジ「あははは……エルヴィン、リヴァイの事、大好きだもんね。案外、結婚してない理由ってそこだったのかな」

リヴァイ「おい。目を逸らしていた事を突き付けるな。俺も薄々、そんな気配は感じる事があったんだが、見ないようにしていたんだぞ」

ハンジ「本当に?! 襲われそうになった事あったの?!」

リヴァイ「いや、それはさすがにないが……なんていうか、たまに熱っぽい視線を感じる時はあった。そういう空気特有のな。まあ、俺は当然逃げたけど」

ハンジ「うはwwwww危ないwwwリヴァイ、同性からもモテるのって大変だよねwww」

リヴァイ「笑いごとか! あーもう、今はエルヴィンの事は横に置いておく。何の話をしていたんだったか」

ハンジ「家賃の件だよ。新居の大きさとか。あ、大きさもだけど、駐車場とかの事も考えないと。車2台とめられるところじゃないとダメだよね」

リヴァイ「ああ。まあ、車はそうなるな。うーん………そうなると、マンションよりも一戸建てを借りた方がかえって探しやすいかもしれないな」

ハンジ「あ、じゃあ学校からの距離は妥協する? ちょっと遠くなってもいいから郊外探す?」

リヴァイ「そっちでも別に構わんぞ。通勤に1時間以内なら何とかなるだろ」

ハンジ「おおお。プレッシャーだね。今までは片道5分で行き来出来たのが、1時間になるって思うと……」

リヴァイ「叩き起こしてやるぞ。毎朝な(どや顔)」

ハンジ「いやースパルタ教師きたああああ! ううう。やっぱり近くてマンションの方がいいかもー」

リヴァイ「まあ、両方見比べて決めてもいいだろ。その辺はエルヴィンの方が詳しいんじゃないか」

ハンジ「そうだねー。じゃあこの件は後回しにするとして……」

リヴァイ「ん? どうした。急に赤くなって」

ハンジ「いや、その……一緒に暮らす様になったら、一緒に寝るんだよね?」

リヴァイ「そうだな」

ハンジ「その、私、寝相、めちゃくちゃ悪いの、知っているよね?」

リヴァイ「ああ。そうだな」

ハンジ「リヴァイ、ベッドから落っこちないかなーと思って、痛い痛い痛い! 耳ひっぱらないでええぎゃあああ!」

リヴァイ「余計な心配は無用だ。大きいベッドを買いなおせばいいだろ(手離す)」

ハンジ「え? ベッド買いなおすんだ? ダブルで?」

リヴァイ「キングだ(どや顔)」

ハンジ「どこのラブホテル仕様ですか?! いや、その、そこまですると、お金飛んでいくから、さ」

リヴァイ「何でさっきからそう、ケチケチしているんだ。金なら出すって言っているだろうが!」

ハンジ「だあああってええええ! あ、分かった! 和室で寝よう! 和風の生活も良くない? ね? (てへぺろ)」

リヴァイ「まあ、和室でも構わんが………体位が制限されるな(ボソリ)」

ハンジ「ん? 何か今、言った?」

リヴァイ「いや、何でもない。んんー……そうだな。分かった。寝室は和室でも構わんが、もし不都合が出てきたらベッドの生活に変えてもいいよな?」

ハンジ「多分、大丈夫じゃない? ほら、日本は畳の生活の方がいいって。きっと」

リヴァイ「今までがベッドだったから、すぐには慣れないかもしれないな。まあいいか。それでも」

ハンジ「後は何か決めておく事ってあったっけ?」

リヴァイ「家電とかはそれぞれの物を持ち寄ればいいし、特に新しく買う物はないよな」

ハンジ「あ、でも、私が使っている方はもうほとんどボロボロだし、これを機会に処分したいかも。リヴァイの使っている方に統一しようよ」

リヴァイ「まあ、そうだな。お前の部屋の掃除をすると、掃除道具も摩耗していたからな。そろそろ限界ではあったな」

ハンジ「冷蔵庫も洗濯機もギリギリだったよね。いやーその辺、ケチ臭くてごめんね!」

リヴァイ「お前の金の使い方は殆ど、飼っていた生物の餌代とかだったんだろ。足りない分は自分の金でこっそり補填して賄っていたんだし」

ハンジ「まあねー自分の事よりあの子らの方が可愛いからさーついつい、自分の事は後回しにしちゃうんだよねー」

リヴァイ「もう今度からそんな事はしなくていいからな。ハンジの分は、俺がまとめてやるから」

ハンジ「ありがとう。うん。素直に嬉しいよ」

おおお。なんか甘い空気が漂っている気がする。

リヴァイ「………ハンジ」

ハンジ「(ドキッ)な、なに?」

リヴァイ「お前、本当に、イッた経験、ないのか?」

ハンジ「ちょっとおおおおいきなり何言い出すの?! エレン達、そこにいるのに。その話はやめようよ!!」

リヴァイ「エレン、耳栓しておけ」

エレン「らじゃーです(*嘘)」

ハンジ「思いっきり聞く気満々じゃないの! ちょっと、エレンもニヤニヤしないで!」

エレン「え? 何ですか? 聞こえませーん(*嘘)」

リヴァイ「ほら、聞こえないって言っているんだからいいだろ。その件について、確認したいんだ」

ミカサ(ドキドキ)

ミカサまで真っ赤になっている。

ミカサ、結構エッチだからな。そういう話は耳ダンボしちゃうんだろう。

オレとミカサは耳栓したふりをして話を聞いている。

ハンジ「あーうん。その、はい。すみません……ごめんなさい」

リヴァイ「何を謝る必要がある。それはハンジの責任じゃない」

ハンジ「でも……やっぱり変じゃない? 私、36歳にもなって、そういう経験ないんだよ?」

リヴァイ「それは運がなかっただけだろ。もしくは、過去の男達の責任でもある。こういう話を聞いてもいいのか判断に迷うが……お前、今まで、何人の男と付き合ってきた」

ハンジ「…………それはエッチした人数で計算?」

リヴァイ「ああ。まあ、成り行きでやっちまった数も含めていい」

ハンジ「んー………5、6人ってところかな。多分、そのくらい」

リヴァイ「意外と少なかったな。そんなもんか」

ハンジ「うーん。私、そもそもそこまでエッチに執着なかったからね。ただ、傾向としては年下ばっかりで、年上とつきあった経験はないよ」

リヴァイ「あーなるほど。合点がいった」

ハンジ「え? 何が?」

リヴァイ「お前、まだスローセックスやったことないだろ」

ハンジ「え? 何それ。そんなのあるの?」

リヴァイ「あるんだよ。セックスにもいろいろ種類がある。パートナーが年下ばかりだったのなら、そいつら、余裕がなくてガツガツしたセックスを要求する奴らばっかりだったんじゃないか?」

ハンジ「何で分かるの?! まるで見てきたように言うね!」

リヴァイ「まあ、その辺はなんだ。若い頃はそんなもんだからな。俺も初めはそうだったし、数をこなしてから気づいた事だからな。女には、大まかに分けて2種類のタイプがいるって事を」

ハンジ「何それ? 何か面白そうな話だね。聞かせて(わくわく)」

リヴァイ「分かった。これはあくまで俺の自論になるが……」

と、前置きした上でリヴァイ先生の話が始まった。

リヴァイ「女には身体がすぐに濡れるタイプ、つまり短距離走者のようなタイプと、体が濡れるまでに時間がかかるマラソンランナーのようなタイプと2種類に分かれるんだ」

ハンジ「へー……それって比率的にはどんな感じ?」

と、すっかり生物の先生の顔になってハンジ先生が聞き入っている。

リヴァイ「俺の感覚だと、5割くらいがスローで、3割がクイック……まあ、これは俺が勝手に言っているだけの言葉なんだが、そんな感じだ。残り2割は、どっちもいける万能型の女だな」

ハンジ「えええ? じゃあもしかして、私、セックスのやり方が自分に合ってなかった可能性がある訳?」

リヴァイ「あくまで可能性の話だけどな。あと、初めてセックスした相手とのトラウマを抱えて、それ以後のセックスがうまく出来なくなるケースもある。お前、最初の時はうまくちゃんとやれたのか?」

ハンジ「………………痛いって感覚はなかったよ? ただ、その、アレ? こんなもんなの? みたいな拍子抜け感はあったね」

と、汗を浮かべてハンジ先生が言う。アレ? 何か様子が変だな。

嘘ついている様子ではないけど、それが全部ではないような。違和感があった。

リヴァイ先生はそれに気づいた様子はないけど。

リヴァイ「だとしたら、初めてのセックスでトラウマを抱えた訳じゃないんだな」

ハンジ「うん。初めての人にはとても優しくして貰えたよ。無理、言ったのに、ちゃんとしてくれたんだ」

リヴァイ「ん? 無理言った? まさかお前、自分から誘ったのか……? (イラッ)」

ハンジ「え……あ、いや……あははははは! む、昔の事だからもういいじゃない! ほら、リヴァイだって10代の頃、やりまくっていたんでしょ? 時効だよねえ?」

リヴァイ「………その口ぶりだと、初めては10代の頃にやったんだな」

ハンジ「な、何故分かったし……(遠い目)」

リヴァイ「相手は俺の知っている奴じゃねえよな? <●><●>(*疑惑の目)」

ハンジ「え? え? 何でそういう発想になるの?」

リヴァイ「何故、すぐ否定しない。お前、まさか………まさか………」

該当する人物がいるのか、リヴァイ先生がどんどん機嫌悪くなってきた。

誰だろ? リヴァイ先生には思い当たる人物がいるようだけど。

コンコン♪

エルヴィン「やあご両人。そろそろ新居のお話は煮詰まったかな? 私がいろいろ世話してあげよう(スタンバイ☆)」

と、まるで待ってました! と言わんばかりにエルヴィン先生が進路指導室にやってきた。

エルヴィン「おや? また喧嘩かい? 今度は何をやらかしたのかな?」

険悪な空気を察してそう言うと、

リヴァイ「単刀直入に聞こう。エルヴィン。お前、ハンジと昔、ヤッた事あるか?」

エルヴィン「……………(微汗)」

リヴァイ「答えろ。誤魔化したら容赦しないぞ」

エルヴィン「はー………バレちゃったか」

観念したようにエルヴィン先生は白状した。

エルヴィン「うん。もう20年前になるかな。1度だけしてあげた事、あるよ」

と、とんでもない爆弾発言が飛び出てオレとミカサは2人で「「ええええ」」って顔になった。

どどどどういう事なんだそれって?!

エルヴィン「今から20年前。私はまだ23歳だった。教職になりたての22歳の時、初めて受け持ったクラスの子が、ハンジだったんだよ」

ハンジ「私、実は講談高校出身なんだよね。エルヴィンとはその頃からの付き合いなんだ」

ええええええ?! それも初耳だぞ!?

エルヴィン「うん。で、翌年の、ハンジが16歳になった時だったかな。クラスの女子にいろいろ馬鹿にされて、やけくそになっていてね。「処女捨てたいから協力してお願いエルヴィン!!!」ってだだこねて。私も正直、困ったなあと思ったんだけど。教員としてはやってはイケナイ事だし。でも、どうもハンジは何か、特別な理由があるような気がしてね。ごめん。あの頃は私も若かったし、協力してあげたんだよ」

リヴァイ「……………」

エルヴィン「その頃からハンジはずっと「青春とは何ぞや」みたいな事を言っていてね。クラスの女子に「初恋もまだなの?」とか「処女ださい」みたいな事を言われてキレてしまったようでね。泣きながら訴えて来て。悔しいって。だから、ついつい、私もそんなハンジが可愛く見えて、………すみません。手出しました」

アウトだろ。いや、もう完全にアウトだろ。

20年前の事だから時効になるのかな。若気の至りで済ませていい問題じゃねえ気がするけど。

リヴァイ先生、頭抱えている。そりゃそうだよな。

リヴァイ「エルヴィン、よくまあ、事が発覚しなかったな。お前、教師生命、なくなるところだっただろ」

エルヴィン「その頃は今ほど、いろいろうるさい時代じゃなかったからね。勿論、バレたら懲戒免職だけど。でもその頃私も、自分の職業について揺れていた時期でね。親が教員だったから、そのまま習う様に教員に一応、なってみたけれど、実際やってみたら「うーん?」っていう違和感があって。だからバレたらバレた時でいいやって、思ったんだ。若いって怖いねえ」

リヴァイ「まあ、そういう気持ちは分からんでもないが。いや、でも……ハンジ、なんでよりによってエルヴィンを選んだ」

気分はすっかりorzだよな。リヴァイ先生。

ハンジ「んーエルヴィンなら、いいか♪ って思っちゃって。ごめん。あの頃の私、アホだったからさ。勢いだけは凄くて、好奇心が止まらないアホの子だったからさ。本当、ごめん」

と、ハンジ先生が手を合わせて謝り続けている。

リヴァイ先生、複雑な心境だろうなあ。

ハンジ「でもその時、エルヴィンが言ってくれたんだ。今回のセックスが気持ちいいものではなかったのなら、そこに「トキメキ」がないからだよって」

リヴァイ「え?」

ハンジ「だから、『ハンジがハンジらしく生きられる人にいつか出会えれば、必ず本当の、気持ちいいセックスは出来るから。今日の事は、誰にも言わないで秘密にしておこうね』って」

なるほど。ハンジ先生の「トキメキ」を追う旅はそこから始まったのか。

ハンジ「エルヴィンの言葉を信じて20年経って、やっと言っている意味が分かった気がするよ。時間かかり過ぎてごめんねーあははは……」

と、頭を掻いているハンジ先生だった。

エルヴィン「いやいや。それでも運命の人に出会えたのだから結果オーライじゃないか。そうだろう? リヴァイ」

リヴァイ「……………はあ。もう、俺には何も言えん」

と、すっかりしょげてしまったリヴァイ先生だった。

リヴァイ「エルヴィン、お前、ハンジの事、可愛いって言ったよな。だったら、俺に遠慮しているとか、ねえよな?」

エルヴィン「ん? どうしてそう思う?」

リヴァイ「いや、俺よりも先にハンジと出会っていたのも初耳だったし、お前、何でずっと独身を貫いているんだ?」

エルヴィン「え? 聞きたいの? 聞かない方がいいと思うよ?」

リヴァイ「もうこの際だから全部教えてくれ。驚かねえから」

エルヴィン「分かった。その言葉、絶対撤回しちゃダメだよ?」

と、意地悪い顔になってエルヴィン先生が言った。

エルヴィン「確かにハンジの事は可愛いと思っているよ。大人として成熟した後のハンジに再会してからも、ずっとそう思っていた。でも、ハンジよりも可愛い子を後から見つけちゃったからね」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「お前だよ。リヴァイ。私はハンジよりも、リヴァイの方に心惹かれた。君がもし女の子だったら、拉致監禁してでも嫁にしたいと思うくらいには一目惚れだったんだよ」

うぎゃあああああ?! とんでもない発言がきたああああ?!

さらりと怖い事言っているぞ。ヤバイヤバイ。エルヴィン先生、ガチでヤバい先生だった!!

リヴァイ「あー……(ガラガラ声)」

エルヴィン「というより、もしリヴァイがそっちでもOKな人種だったら、私は正気では居られなかっただろうね。いやはや、道を危うく踏み外すところだったよ」

ハンジ「あーだから、エルヴィンはリヴァイに甘いんだね。納得したよ」

リヴァイ「いや、納得しないでくれ。ハンジ。ちょっと頭が痛くなってきた……(げっそり)」

リヴァイ先生がフラフラしていた。無理ねえな。これは。

リヴァイ「つまり、エルヴィンは「バイ」なのか?」

エルヴィン「そういう事になっちゃうのかな? うん。知らない方が良かったでしょ?」

リヴァイ「そうだな。今、俺は自分の選択を物凄く後悔している……(げっそり)」

エルヴィン「だから言ったのに。でも、私の新しい本命は別にあるよ」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「早く2人の「娘」を産んでくれ。特にリヴァイに似た娘だと尚良い。その子を私の嫁として貰えないかな?」

リヴァイ「は……? (石化)」

ハンジ「えええ……そんな博打みたいな事、言わないでよー。性別だけは完全に「運」の世界じゃない」

エルヴィン「いやいや。私は博打に強い方だよ。大丈夫。君たちの間には「娘」が産まれると思っているから」

ハンジ「気が早すぎるよエルヴィンー……あれ? リヴァイ? 何か動かなくなったね?」

リヴァイ「………は! しまった。一瞬、気失っていた」

ハンジ「あはは! 器用だね!」

リヴァイ「笑いごとか!!!!! そうか。だからか。だから今までずっと、俺とハンジをくっつけるように仕向けていたのか」

エルヴィン「イエス。だから本当はもう少し早くくっついて欲しかったんだけどね。年齢的な問題もあるから」

リヴァイ「というより、完全な犯罪じゃねえかああ!!!!!」

あ、リヴァイ先生が絶叫した。

珍しい。ここまで大絶叫するリヴァイ先生、初めて見たかも。

リヴァイ「年の差いくつだと思ってやがる。今、お前の年、43歳だろ? 16年後で計算しても、59歳だろ? もうそれは孫と祖父の関係に近いんだぞ?! 正気の沙汰じゃねえだろ!」

エルヴィン「んー……でも、しょうがないんじゃない? 法律的にはセーフだろ?」

リヴァイ「倫理的な面から見たら完全にアウトだろうが!!!!」

エルヴィン「そんな事を言われても……せめてあと5年早く君達が結婚を決意してくれていればねえ?」

リヴァイ「いや、それでも十分犯罪臭がする。お前、ロリコンの気もあるのか」

エルヴィン「教え子に手出せた時点で、自分が鬼畜だって事は自覚しているよ(笑)」

リヴァイ「………もう嫌だ。この世界は残酷だ……(顔覆っている)」

ハンジ「まあまあ、リヴァイ。もうなるようにしかならないよ。諦めよう。ね?」

リヴァイ「お前らどっちも大嫌いだ!!!」

と、リヴァイ先生が拗ねだしてしまった。気持ち分かるわ……。

エルヴィン「困ったね。リヴァイが拗ねてしまった。どうしよう? ハンジ」

ハンジ「んー……リヴァイが拗ねた時は、とりあえず紅茶出すしかないんじゃない?」

エルヴィン「それもそうだね。紅茶でも飲ませて落ち着かせよう。入れてくるね」

と、言ってエルヴィン先生が紅茶を入れに行った。

リヴァイ先生がぐったりしていて、可哀想だった。

あまりにも衝撃的な情報が立て続けに入ってきて脳内で処理しきれていない状態だな。

リヴァイ「なんかもう、何もかもが嫌になった。もう、俺はやっぱり独身でいた方が良かったのか…?」

ハンジ「ええ? 今更それは言いっこなしだよ。リヴァイ。もう決めた事でしょ? 前言撤回はしないって、自分で言ったんじゃないの」

リヴァイ「それはそうだが……まさかここでこんな大どんでん返しが待っているとは思ってもみなかったんだ。子供、早めに作ろうと思っていたのに……(ブツブツ)」

ハンジ「あ、そうだったの? うーん。でも今すぐじゃなくても良くない? エルヴィンの件、納得出来ないうちは作らない方がいいと思うよ? エルヴィンの性格は知っているでしょ? 娘産まれちゃったら、本気で嫁にしようと画策してくると思うよ?」

リヴァイ「絶対、あいつには娘は渡さん……(ゴゴゴ)」

ハンジ「うーん。どっちに似ても嫁にしそうだから、難しいよね。多分、私に似ても嫁として貰いたいと思っているだろうし」

リヴァイ「息子が産まれたとしても危険だぞ。どう考えても。あいつとは縁切りした方がいいんじゃねえか?」

ハンジ「そんな不義理は出来ないよ! 私、エルヴィンにどんだけ世話になったか分からないよ! リヴァイだってそうじゃない!」

リヴァイ「それとこれとは別問題だ。あの野郎……本気で一度、締めた方がいい気がしてきたぞ(ゴゴゴ)」

エルヴィン「まあまあリヴァイ。紅茶でも飲んで落ち着いて」

と、紅茶を差し出してエルヴィン先生が差し出す。

とりあえず、それは頂くようだが……

俺はこの時、嫌な予感しかしなかった。なんていうか、リヴァイ先生が「神谷」に見えてしまって。

案の定、リヴァイ先生はフラフラしちゃって、眠ってしまった。

盛られたな。爆睡している。

もう、笑ってはいけないアレの中で最大の笑いだった。

今回ばかりは「アウト」だった。ミカサも「アウト」だったみたいで、笑い出した。

ミカサ「絶対、くると思った……盛られるって、思ったのに」

エレン「予想できたのに、出来たのに! ダメだった……!」

と、オレ達が声を殺して笑っていたその時、ハンジ先生がしみじみと言った。

ハンジ「あー寝かせちゃったんだ。まあ、それが一番いい手かもね」

エルヴィン「だろう? 今回、いろいろあり過ぎたからね。寝るのが一番のストレス解消法だよ。リヴァイに一番今、必要な事だ」

ハンジ「うん。そうだね。とりあえず、リヴァイは私が抱えて連れ帰るから。後の事は宜しくね。エルヴィン」

エルヴィン「了解した。じゃあね。ハンジ」

と、いう訳でやっと騒動が終わって、オレとミカサはやっと大学資料に目を戻した。

エルヴィン「おやおや。エレン。勉強熱心だね。ミカサも。今度の四者面談に向けての予習かな?」

エレン「あ、はい。今、何もとっかかりがない状態なんで、とりあえず、資料だけでも目通しておこうかと」

エルヴィン「ふむ。今はまだ、何も見えてない状態なのかな?」

と、エルヴィン先生が進路指導の先生の顔になってこっちに来てくれた。

向かい合って座って、話し合う。

エレン「そうなんですよね。エルド先輩には「語学系」とかどうだ? と言われた事もあるんですけど。オレ、そういうの向いているんですかね?」

エルヴィン「語学系ね。確かに語学が強いといろんな仕事が出来るけど、私が見る限り、エレンはもう少し違う職種でもいいと思っているよ」

エレン「え? エルヴィン先生から見たら、オレに向いている職業、分かるんですか?」

エルヴィン「あくまで私の「主観」になるけど……エレンの場合は「人の命を助ける仕事」に関する物がいいんじゃないかと思っているよ」

エレン「え? 医者とかですか? オレの親父は確かに医者ですけど、頭足りないから無理ですよ」

エルヴィン「そうか。なるほど……通りで。いや、血筋って奴か。確かに学力が伴えば、医者という選択肢もあっただろうね。でも私は、それよりももっと「危険」が伴う仕事でもいけると思うよ」

エレン「危険……ですか」

ピンと来ない。どんな仕事だろ?

エルヴィン「例えばそうだね。『消防士』とか『レスキュー隊』とか、あとは『自衛隊員』とかかな。君の緊急時の咄嗟の判断能力は、リヴァイからも少し話を聞いているし、舞台での本番の適応力。そして、マーガレットの家の事もマーガレット本人から聞いたよ。お母さん、助けてあげたんだってね?」

エレン「あ、まあ……成り行きというか、ついつい」

エルヴィン「うん。そういう緊急時の咄嗟の判断能力は君の「武器」になるんじゃないかな。加えて君は人の「命」に対してとても敏感に感じ取って、それを助けようとする気質がある。自分を犠牲にしてでも、人の命を助けたいと思った事とかないかな?」

ドキッ。昔の事を言われているようで、焦った。

あの、9歳の時の事件だ。でもエルヴィン先生、その事を知らない筈だよな。

エレン「……ない訳ではないです」

エルヴィン「だとしたら、それに「体力」さえ伴えば、割とその辺の職業が向いているように思えるよ。あくまで私の主観だけどね。参考になったかな?」

エレン「はい。とても。分かりました。その話を、親父にもしてみます」

エルヴィン「うん。四者面談、楽しみにしているよ」

と、言ってエルヴィン先生が先に退出していった。

ミカサ「凄い。さすがエルヴィン先生。すらすらと、導いてくれた。しまった。私も聞いておけば……」

エレン「まあ、それは今度の四者面談で話聞けるからいいんじゃねえか?」

ミカサ「そうね。そうする」

と、言って適当なところで切り上げて、オレ達は進路指導室を出る事にした。

そして職員室に鍵を返して、教室に戻ると、アルミンとアニが待っていてくれた。

こっちは中間テストに向けて勉強中だった。さすがだな。

アルミン「あ、終わった? じゃあそろそろ帰ろうか」

アニ「帰ろう」

エレン「おう。帰ろうぜ♪」

という訳で、いつもの日常に戻って、オレ達は帰る事にした。

中間テストの後は四者面談がある。その後は、きっと結婚式が待っている。

文化祭は終わったけど、オレの高校生活はまだまだ慌ただしい毎日が続きそうだった。

エルヴィンのファンの方、本当に申し訳ありませんでした(土下座)
エルヴィンが相当の斜め方向の変態になってしまって、書いていて楽しかったですが、
ドン引きされそうで怖いです。本当にごめんなさい。

とりあえず、ここまで。続きはまた今度で。ノシ

もうすぐ誓約書についてのはなしでてくるかな?
もう本当ミカサ抱きしめてペロペロしたい。ちょっとくらいならいいよね

エルヴィンファンだけど面白く読んでたよ
あの人は常に斜め上を行くから…
平和な世界では何があっても不思議じゃない…かも
それより8000万もあるならマンションでも家でも買えばいいのにー
億ションもローン査定クリアするだろうし
あ、教職は転勤族だから賃貸のが良いのかな?

>>140
転勤族なのは公立です。私立だとクビにならない限りは、
結構長く在籍する事は可能らしいです。実際、何十年もいる先生いたので。

あとリヴァイの方が子供の養育費とかも考えている(筈)なので、
賃貸優先で話していますが、安い中古物件とかあればそっちでも良いとか思ってます。
ただリヴァイの性格だと、新築を現金一括でドーン!
とか払いそうなイメージもあります。豪快なイメージ。ローンとか面倒臭がりそうな。
ハンジさんはそんなリヴァイを見てアプアプする感じです。

ま、エルヴィンのプランと相談しながらきっと決める事でしょうw

>>139
ミカサをペロペロする前に、リヴァイ先生の特別授業を挟む予定です。
保健体育も彼の担当だから。もう少しお待ち下さい(笑)。

リヴァイ先生、行動はともかく、ちゃんとハンジ先生に好きだと言葉で伝えてたっけ?
つか、単なるエロ親父に見えてきた(笑)

>>143
鋭い(笑)まだちゃんと好きって言ってないですよー。
あと元々相当なエロ親父ですのでそれで合ってます。










その日の夜、オレは親父とリビングで少し話をする事にした。

四者面談についてと、今日、エルヴィン先生と話した事を親父にも話してみたのだ。

すると、親父は「ううーん」とちょっとだけ顔を顰めて、

グリシャ「そうか……進路指導の先生がそんな事を……」

エレン「ああ。まあ、職業の種類はあくまで「例え」として出してくれたんだけど、オレは「人の命を助ける仕事」に関する仕事に向いているかもしれないって。頭が良かったら、医者の適性もあるみたいな事も言われたんだ」

グリシャ「それは親としては嬉しい言葉だけど、そうか……消防士やレスキュー隊、自衛隊員ねえ……」

エレン「親父はどう思う? オレ、そういうの向いてそうだと思う?」

グリシャ「私としては、語学留学をさせる方が余程心臓にいいんだけどねえ」

と、困った顔をしていた。

グリシャ「命の危険のある仕事について欲しくない気持ちはあるよ。もしも自分より早くエレンが死んでしまったら、親としてこんなに悲しい事はない」

エレン「死ぬこと前提で話さないでくれよ。そう簡単にはくたばらねえって」

グリシャ「エレン。人は簡単に死ぬよ」

エレン「!」

グリシャ「私は常に人の「死」を見てきたからね。死ぬ時は、呆気なく死ぬ。それが人間なんだ」

エレン「…………」

グリシャ「ただ、生き方は自分で決める物だ。父さんがどんなに反対したって、エレン自身がどうしてもその道に進みたいと言うなら止める事は出来ない。親としては見守るしかないね」

エレン「……そっか」

グリシャ「でも、選択肢のひとつとして考えておくことはいいことだと思うよ。時間はまだある。じっくり考えなさい」

エレン「分かった。ありがとう。父さん」

と、言って今日のところはそこまでにして進路相談を終えた。

オレとしては、エルド先輩に進路を勧められた時の感触より、エルヴィン先生の話の方がしっくりくる感覚があったので、どちらかと言えばそっちの方に興味が沸いてきている。

ただ、一つだけ懸念しているのは、エルヴィン先生が付け加えた言葉。

そう、「体力」の問題だった。

オレの体力は多分、並み程度だ。ミカサとかリヴァイ先生に比べれば大分劣るだろう。

そういった激務の職業に耐えられるかと言えば、正直今のままでは自信がなかった。

エレン「体、もうちょっと本格的に鍛えようかな」

どういう道を進むにしろ、体を鍛えておくのは男として必要な事な気がした。

だから、オレは思い切ってミカサに相談する事にしたんだ。

ミカサは自分の部屋で筋トレをしていた。毎日の日課だ。

筋トレが終わってから風呂に入るんだが、その前に、オレはミカサに声をかけた。

ミカサ「? どうしたの? エレン」

エレン「ミカサ。オレ、ミカサのトレーニングに付き合ってもいいか?」

ミカサ「え? ランニングは一緒にやっているのに? それ以外もやるの?」

エレン「ああ。もうちょっと、本格的に体を絞りたいんだ。協力してくれねえか?」

ミカサ「うん」

という訳で、オレもミカサの部屋で腹筋や腕立て等をしながら、進路の話をしてみる事にした。

エレン「ミカサは何か、めぼしい進路、見つかったか?」

ミカサ「いいえ……全然……さっぱり」

エレン「そっか。ミカサは成績もいいし体力もあるし、大抵の仕事をこなせそうだけどな」

ミカサ「でも……自分のやれる事と「やりたい事」は別だと思う」

エレン「ああ、それもそうか。やりたい事、何かないのか?」

ミカサ「…………………」

あれ? 長い沈黙だな。

ミカサ「ひとつだけ、ある」

エレン「お? なんだよ」

ミカサ「いつか、子供が欲しい」

エレン(ぶふー!)

思わず吹いて、腕立てをやめて潰れてしまった。

エレン「お、おまえなあ……」

ミカサ「だ、だって……それくらいしか思いつかない。正直言えば、お嫁さんになれればそれでいいとさえ思っている」

エレン「そ、そうか。じゃあオレ、責任重大だな」

ミカサ「え……」

エレン「だって、ちゃんとした職業につかないと、ダメだろ? 子供育てられないだろ?」

ミカサ「………」

エレン「ん?」

ミカサ「それって、プロポーズとして受け取って、いいの?」

エレン「!」

あ、やっべ! オレ、先走り過ぎた!!!!!

エレン「あ、その、ミカサの旦那になるとすれば、その必要があるだろって話で、ええと、ごめん。ちょっとフライング過ぎた」

ミカサ「ううん。嬉しい……」

ほやっと笑ってくれた。うわあああん。可愛い。

もうこの状態、何回繰り返せばいいんだ。いい加減、手出したい。

でも、まだ親父に例の誓約書の件、確認してねえんだよな。

エレン「ミカサ。あの、例の誓約書の件、どうする?」

ミカサ「出来れば確認したいけれど。その前に、エレンとも確認したい」

エレン「ああ、多分、思っているのは同じ事だよな」

ミカサ「うん。あの誓約書の「穴」について」

エレン「誓約書の内容は「オレ」の方からの接触はダメで「ミカサ」からの接触については特に明記がなかった」

ミカサ「うん。多分、私はそこに何か「別の意味」が隠されているような気がする」

エレン「うーん。本当にそういう「エッチ」な事をさせたくないなら、確かに「両方」を規制するよなあ」

親父はどういうつもりであの誓約書を作ったんだろう?

エレン「親父に今、確認してみるか? 早い方がいいよな?」

ミカサ「うっ……でも、もうひとつの可能性もある」

エレン「え? もうひとつの可能性?」

ミカサ「ただの明記ミス。こちらから指摘して「あ、忘れていた。ごめんごめん。じゃあミカサからもダメにしよう」とおじさんに言われてしまったら、穴がなくなってしまう」

ズーン……

さすがミカサだ。よくぞそこに気づいた。

あっぶねー! 危うくその手にひっかかるところだった!

ここは慎重に行動を起こさないと。うん。誰かに相談するべきだな。

エレン「だ、誰に相談するべきかなコレ」

ミカサ「エルヴィン先生だと思う。エルヴィン先生ならきっと、客観的にこの誓約書の意図を読み取れるような気がする」

エレン「ああ、かもしれないな。こういう知略でエルヴィン先生に勝てる人はそうはいねえ」

親父も相当の曲者だけど、エルヴィン先生だって負けやしねえ。

エレン「よし。そうと決まれば、今度エルヴィン先生に時間つくって貰って相談してみようぜ」

ミカサ「うん。そうしよう。是非そうしよう」

と、その時、タイマーが鳴った。

ミカサ「お風呂の時間になったので入ってくる」

エレン「おう。いってらっしゃい」

と、規則正しく生活するミカサを見送って、オレはその場にごろんと横になった。

ミカサの部屋、ミカサの匂いがしていい気分になれるんだよな。

エレン「……………」

いかんいかん。邪な事を考えるところだった。自分の部屋に戻ろう。

そんな感じで、とりあえずの方針を固めて、その日の夜は終えたのだった。





次の日、オレ達は早速エルヴィン先生を捕まえて放課後、ちょっと時間をとってもらって進路指導室で話す事にした。

例の誓約書のコピーを見せてみる。すると、エルヴィン先生は「これは…」とちょっと驚いた顔を見せた。

エルヴィン「ふむ。では今日は2人の「愛の」進路相談という事で、私が話を受けていいんだね? (ニヤリ)」

エルヴィン先生が昨日より嬉しい顔で答えてくれた。

本当に人の恋愛事、大好き過ぎるよな。この先生。

エルヴィン「そうだね。ちょっと待って。ピクシス先生も同席させていいかな?」

エレン「え? ああ、まあいいですけど」

ミカサ「あ、そう言えば賭け事の精算、まだしていなかった(汗)」

エレン「あー……じゃあついでに全部話すか。説明するのにも必要だしな」

ミカサ「いいの?」

エレン「しょうがねえだろ。いいよ。こっちにも味方欲しいしな」

連絡を受けてから5分もしないうちにピクシス先生が進路指導室にやってきた。

くるの超はええ。本当、機動力有り過ぎる。

ピクシス「悩める生徒の為に参上したぞ。して、状況は?」

エルヴィン「まずはこちらの誓約書をご覧ください。ピクシス先生」

と、誓約書のコピーを見せると、同じように驚いていた。

ピクシス「ほほう。なるほど。これは……」

エルヴィン「まずは2人が付き合うまでの経緯と、今の状況を詳しく説明してくれるかな?」

エレン「あ、はい……」

という訳でオレとミカサは一緒に今までの経緯を大体説明する事にした。

まる、今年の3月に親父が再婚した事。その関係で連れ子同士も一緒に同じ家に暮らす事になった事。

一緒に暮らしていくうちにだんだん、オレの方からミカサに惹かれて、夏に自分から告白して、お互いの気持ちを確認した事。

でも、その際にうっかり親父にその事が即座にバレて、誓約書を交わす事になった。

その流れを大体把握して貰ったのち、エルヴィン先生達は「なるほどね」と笑ったのだった。

エルヴィン「エレンのお父さんはなかなかの策士だね。これは、いやはや」

ピクシス「ふふふ……いいのう。愛の試練というやつじゃのう」

と、ニタニタし始めたのだった。

エレン「愛の試練……ですか」

ピクシス「じゃのう。して、律儀にこれを守っておるのか? お主?」

エレン「うぐっ……その、微妙に破っている事もありますが、でも、本格的な手はまだ、出してないです」

ピクシス「ほうほう。しかしそろそろ、辛かろう。我慢にも限界があるというもんじゃ」

エレン「おっしゃる通りで……」

エルヴィン「エレンとミカサはつまりこの誓約書の「穴」についてどう捉えたらいいのか、迷っているんだね?」

ミカサ「はい。わざとなのか、それともただの明記ミスなのか。判断がつかなくて」

エルヴィン「エレンのお父さんはお医者様なんだろう? 明記ミスは、まずないね。そんな初歩的なミスはあり得ない」

エレン「だとしたら、やっぱり裏の意図が?」

エルヴィン「うん。まあ、恐らく、こうかな? という意味は分かるけど、それは私が指摘していい問題なのか、ちょっと判断がつかないね。もしかしたら、自分達で気づいて欲しいのかもしれないし」

エレン「オレ達自身で、ですか」

エルヴィン「そうそう。お父さんからの「謎かけ」みたいなものだね。それを自分達で解く事が出来れば、もう少し先に進ませてあげてもいいかなって思っているかもしれない」

エレン「ううーん……」

頭悪いオレにとっては、こういうの苦手なんだよなあ。

エルヴィン「どうする? カンニングしたいなら教えてもいいけど。ただ、もしそれが間違っていた場合の補償はしないよ」

エレン「あ、それもそうか」

そうだよな。エルヴィン先生の「答え」が必ずしも当たっているとは限らない。

ここはオレ達自身で答えを見つけるしかないのかもしれない。

エレン「分かりました。それが分かっただけでも十分です。相談にのってくれてありがとうございました」

ミカサ「ありがとうございました」

ピクシス「ふふ……まあ、どうしようもない時はここの部屋を使えばよかろう。なあ、エルヴィン」

エルヴィン「ここのソファ、倒せば簡易ベッドになるからね。必要になったらいつでも言ってね」

エレン「あ、ありがとうございます……(照れる)」

本当、この人達、教員としてダメ過ぎる先生だろ。いや、有難いけど。

ミカサ「ち、近いうちに借りるかも……」

エレン「ミカサ! 馬鹿! 言うなって!」

そんな事言ったら、絶対RECされちゃうぞ!

ほら案の定、先生2人、ニタニタ笑っているし。全く…。

エルヴィン「また困ったことがあったらいつでもおいで。愛の進路相談の方が楽しいしね」

ピクシス「じゃの。人の恋路の行方ほど、酒の摘まみに適したものはないからの!」

ノリが良すぎる…。

という訳で、とりあえず気持ちが落ち着いたので進路指導室を退席する事にしたのだった。









そして、教室に戻る途中、オレ達は売店の前あたりで騒ぎを見かけた。

なんだ? 女子の団体が異様に集まっているな。リヴァイ先生でもいるのかな。

そう思って、視線を巡らせると……

エレン「!」

囲まれていたのはペトラ先輩だった。一人だけで、女子の集団に囲まれている。

何か異様な空気だった。何か起きたんだろうか?

心配になったオレとミカサは顔を合せて、そっと様子を覗き込んだ。

すると、何やら言い争う声が聞こえてきたのだ。

ペトラ「絶対、嫌。何で署名なんかしないといけないのよ」

3年女子1「あんたのせいで、リヴァイ先生がやめるって言い出したんでしょうが! せめて署名運動くらい、協力しなさいよ!!!」

ペトラ「はあ? 何言いがかりつけてんのよ。リヴァイ先生が教職やめるのは私のせいじゃないでしょ」

3年女子2「あんたのせいのようなもんじゃない! あの時、ペトラがハンジ先生をぶったりしなければ、あのまま2人はこじれて別れていたかもしんないじゃん! あんた、リヴァイ先生のこと、好きなんじゃなかったの?! なんで矛盾した行動したのよ!!」

ペトラ「……………」

ペトラ先輩は答えない。っていうか、なんなんだこの空気。

女子って怖い。集団で一人を追い詰めるって、やっていい事じゃねえだろ。

3年女子2「放っておけば良かったじゃん! その方が都合いいじゃない! なんであんな真似したのよ! リヴァイ先生の方が教師やめるなんて、私達、思ってもみなかったのに……」

3年女子3「ペトラのせいだ……リヴァイ先生、やめて欲しくないよ……」

3年女子4「私達に謝りなさいよ! 勝手な事したのはあんたでしょ!!」

おいおい。なんか話がおかしな方向に転がってるぞ。まずくないか。これ。

ミカサも戸惑っている。どうしたらいいだろう。これ。

ペトラ「絶対、謝らない。私は確かに、悪い事をしたとは思ってるけど。謝るとすればハンジ先生よ。あんた達に謝る義理はないわ」

3年女子2「なんですって……」

ペトラ「ハンジ先生を辱めた事は本当に悪かったと思ってる。でも、あの時はアレしか方法が思い浮かばなかった。賭けだったの。あの一発で、目を覚まさせる事が出来なければ、きっと今頃……」

3年女子2「一体何の話をしているのよ。賭けとか。意味分かんないわよ!!」

3年女子3「あんたのせいでどんだけの女子が落ち込んでいると思っているのよ! 泣かせているのはあんたのせいよ!」

ペトラ「泣きたいのはこっちの方よ!!!!!」

と、その時、全身全霊を込めてペトラ先輩が言い返した。

ペトラ「そりゃ私だって、本当はリヴァイ先生に教職をやめて欲しくないわよ!! でも、それは先生自身が決めた事で、生徒の私らが口出す事じゃない。先生自身が悩んで決めた結論なんだから、私達はそれを受け入れるしかないでしょ。自分勝手なエゴばっかり押し付けて、少しはリヴァイ先生の気持ちを考えなさいよ!!!!」

3年女子2「じ、自分勝手って……自分勝手なのはペトラの方でしょうが!!」

ペトラ「ええそうね! 私も自分勝手だわ! そんな事は重々承知しているわよ!! でもね、私は1年の頃、オルオと一緒に大道具で裏方をやっていた。その時、照明の事故が起きて、危うく2人とも死にかけたのよ。それをリヴァイ先生は身を犠牲にして助けてくれたの。命がけだよ?! 間一髪、スライディングして、2人を抱えて、助けてくれたの。私はあの時から、リヴァイ先生に一生、味方するって決めたの!!! あんたらの薄っぺらいファン心理なんかとか比べられるもんじゃないのよ!!!」

3年女子2「う、薄っぺらい……ですって……(ゴゴゴ)」

ペトラ「ええ、薄っぺらいわ!! この期に及んで、何でリヴァイ先生が教師を辞めるのか、その意味も理解出来ないようなあんたたちには決して分からないでしょうけどね!!!」

3年女子2「言わせておけば……! (手を構える)」

まずい! 本格的にまずい事になって来た!!

誰か止めないと。暴力事件になる!!!

と、そう思った直後……


ガシッ!!!


女子の間に立った、女子が居た。

ニファ先輩だった。

3年女子2「に、ニファ……」

ニファ「もう、やめようよ。ペトラをぶっても、意味ないでしょ」

3年女子2「で、でも……(涙目)」

ニファ「私は、ペトラの気持ちも分かるし、皆の気持ちも分かるの。だから、ちょっと聞いて欲しいんだけど」

と、言ってニファ先輩がペトラ先輩を庇った。

ニファ「あのね。ミスコンの時、ハンジ先生とリヴァイ先生がこじれた後、リヴァイ先生、どんな状態になったか、知ってる?」

3年女子2「え…?」

ニファ「実際、それを見たのはミスコンに選ばれた女子だけだから、皆には分からないだろうけど、リヴァイ先生、完全に呆然自失だったの」

と、言ってニファ先輩が辛そうに目を落とした。

ニファ「真っ先に、私とペトラが駆け寄ったわ。でも、ペトラの声も私の声も、全く聞こえていない状態だった。ミスコンの女王に選ばれたあの綺麗な女の子、ミカサさんもいろいろ声をかけていたけど、ダメだった。エルヴィン先生が声をかけて、ようやく我に返ったみたいだったけど、あの時のリヴァイ先生、本当に死人のような顔をしていたんだよ」

3年女子2「……………」

ニファ「私もペトラも、あの状態のリヴァイ先生を見て悟ったの。リヴァイ先生、本当にハンジ先生の事、好きなんだって。多分、相当根深いところに、ハンジ先生の存在が「いる」んだって。多分、リヴァイ先生にとっては、なくてはならない存在だって。無くしたら、生きていけないくらいに大事な人なんだよ。ハンジ先生は」

3年女子2「…………」

ニファ「リヴァイ先生、好きになっちゃう子が多いのもしょうがないよ。でも、リヴァイ先生はあくまで「先生」だからね。アイドルじゃないんだし。生徒の私達がどんなに叫んでも、その愛が本当の意味で届く事はないよ。ロリコンじゃないみたいだし、リヴァイ先生がハンジ先生を選んだ以上、そこから先の事は、リヴァイ先生の自由だと思うよ」

3年女子2「で、でも……」

ニファ「署名運動自体を反対する訳じゃないよ? その活動をすればリヴァイ先生も気が変わるかもしれない。でも、何でリヴァイ先生が自分から「辞める」って言い出したのか。その意味は、やっぱり冷静に考えた方がいいと思うよ」

3年女子2「…………」

ニファ「ペトラも、ちょっと言い過ぎ。薄っぺらいとか、勝手に言っちゃダメだよ。人の想いは、他人に測られるものじゃないんだから」

ペトラ「………ごめん」

3年女子2「…………」

ニファ「いろんな事がいっぺんに起き過ぎて頭、疲れているのは分かるけどね。受験勉強の疲れもあるんでしょ? 皆も、ちょっと一回、落ち着こうか。署名運動も、一回休止した方がいいと思うよ?」

3年女子2「そうだね。ニファの言う通りだわ。ごめん……」

ニファ「ほら、あんまりここにたむろっていると、他の人に迷惑だから。解散しよ? ね?」

と、言って、皆ゾロゾロ何処かに行ってしまった。

ニファ先輩とペトラ先輩だけがそこに残って、2人はまだ話を続けるようだ。

ペトラ「ニファ、ごめん……本当に、ありがとう」

ニファ「いいよ。あの時のリヴァイ先生の顔、知っているの、3年だと私とペトラだけだもんね」

ペトラ「うん……」

ニファ「リヴァイ先生に、二度とあの時のような顔、させたくなかったんだよね? だから、賭けに出たんだよね?」

ペトラ「うん………」

ニファ「ペトラは賭けに勝った。だから、もう、これ以上、意地張らなくていいと思うよ」

ペトラ「うん……うん……」

その直後、ペトラ先輩はニファ先輩の目の前でわんわん泣きじゃくった。

辛かったんだろうな。相当。今までずっと、意地張っていたんだ。

そうだよな。片思い歴、長いんだよ。ペトラ先輩。

高校生活のほとんどを、リヴァイ先生を想って過ごしてきたんだから。

ペトラ先輩のした事は決して褒められるような事じゃない。

きっと、あの光景を見て、ペトラ先輩にドン引きした人も多いと思う。

でも、それでも、自分の事を殴り棄てて、ペトラ先輩は賭けに出たんだ。

リヴァイ先生の幸せを願って。

ペトラ「ニファ、ありがとう…本当に、ありがとう……ごめん。本当に、ごめん……」

ニファ「……私も、一緒に泣いてもいい?」

ペトラ「うん…泣こう! もう、いいよね?」

ニファ先輩も一緒に泣いている。わんわん泣いている訳じゃないけど。

それは一筋の、小さな涙だった。

と、その時、一番ここに来て欲しくない人物がこっちにやってきてしまった。

リヴァイ先生だ。

リヴァイ「何か、騒ぎが起きていると聞いてこっちに来たんだが……もう収まったのか?」

ペトラ「!」

ニファ「!」

リヴァイ「どうしたんだ? 2人とも。何かあったのか?」

ペトラ「い、いえ……何でもないです。ね? ニファ?」

ニファ「ええ。ちょっと、2人で内緒話をしていただけですよ」

リヴァイ「? 内緒話で泣くほどの事があるのか?」

リヴァイ先生!! 今は深く突っ込まないであげてくれ!!!

リヴァイ「ああ、そうだ。ペトラ。今、時間あるか?」

ペトラ「あ、はい。大丈夫です」

リヴァイ「少し、話をしてもいいか?」

ペトラ「2人きりで、ですか?」

リヴァイ「その方がいいとは思うが、時間がないならここでもいい」

ペトラ「………ここで聞きます」

リヴァイ「分かった。…………すまなかったな」

ペトラ「………ハンジ先生の件ですよね」

リヴァイ「ああ。ペトラにぶたれた事を、ハンジが気に病んでいた。ペトラにぶたれたおかげでようやく、全ての「謎」が解けたと。その為のスイッチボタンを押してくれたのは、ペトラだったと。そう言っていたんだ」

ペトラ「そうですか……」

リヴァイ「俺もあの時はすまなかった。生徒を放置して先に帰るなんて、やっていい事じゃなかった」

ペトラ「仕方がないですよ。あの時は」

リヴァイ「いや……すぐカッカして行動を起こすのは俺の悪い癖だ。冷静な自分で居られないのは大人に成りきれていない証拠だ。中途半端な大人ですまない」

ペトラ先輩は首を左右に振っていた。愛おしそうに笑っている。

リヴァイ「リヴァイ先生が短気なところもあるのは、皆知っているから大丈夫ですよ」

リヴァイ「……面目ねえな。本当に」

と、リヴァイ先生が苦笑する。そして、

ペトラ「あの、リヴァイ先生」

リヴァイ「ん?」

ペトラ「教職を辞められるのはいつ頃になられるんですか? 2学期までになるんですかね?」

リヴァイ「いや、その事について何だが……」

と、リヴァイ先生が更に顔を歪めている。

リヴァイ「その……すまん。辞めると言ったのに、なかなか学校側が受理をしてくれない事態になっていてな。校長先生に「ふざけんなこの野郎。代わりの教員、いねえのに何、寝ぼけた事言ってるんだ? 絶対受理しません(黒笑)」と、言い切られてしまって、どうにもこうにも動けない状態になっている」

と、うっかり裏話を聞いてしまって、オレ達は驚いた。

ペトラ「え? 学校側が受理しないって、そんな事、あるんですか?」

リヴァイ「いや、俺も今回のケースは初めての事だから、良く分からんが、俺は3学期までは続けて、3月末で辞めるつもりで交渉したんだが「辞める時は1年から半年前の間で前もって打診するのが常識だろうが!」と怒られてしまった。教員になる前に働いてきた職場ではそんな事は一度もなかったから、どうしたもんかと頭を痛めている」

へえええそうなんだ! 初めて知ったぜ!

仕事って、いきなり辞めるとか出来ないんだ。へーへー。

勉強になったぜ! 覚えておこうっと。

ペトラ「では、続けられるんですか……?」

リヴァイ「うーん……それも難しい問題なんだ。例の、その……ペトラは知っているのか? 俺のファンクラブについては」

ペトラ「はい」

リヴァイ「その件や、ハンジに対する風当たりの問題が解決しない事には、俺が教師を続ける意味がないんだ。八方塞がりとはこの事だな」

と、リヴァイ先生が本気で悩んでいた。

リヴァイ「せめてあと1年続けて、来年辞めるか……だな。そうすればさすがに生徒達も諦めてくれるだろう」

ペトラ「じゃあ、まだ猶予期間はある訳ですね。卒業式は一緒に過ごせるんですね」

リヴァイ「ああ。まあ、ペトラ達の代はきっちり見送るつもりではいたよ。そこは安心していい」

そう、言い切った瞬間、ペトラ先輩がまた泣き出してしまった。

リヴァイ「お、おい……どうした? ペトラ?」

ペトラ「良かった……卒業式、一緒に出られるんですね? 本当に良かった…」

リヴァイ「あ、当たり前だろ。俺の性格、知ってるだろ。キリの悪いところで辞めるのは性に合わないんだよ」

ペトラ「はい……!」

と、泣き笑いでペトラ先輩が答えたのがとても印象的だった。

良かった。ペトラ先輩、少し落ち着いたみたいだ。

ミカサ「あの………」

と、その時、傍観者に徹していたミカサが声をかけた。

リヴァイ「ああ、ミカサもいたのか」

ミカサ「こっそり居ました。その、どうしても辞めないといけないんですか? リヴァイ先生」

リヴァイ「辞めた方が、解決すると思ったんだが」

ミカサ「いえ……その……私の経験上、それはかえってまずいのでは、と思ったんですが」

リヴァイ「え? それはどういう意味だ?」

ミカサ「…………女の執念を舐めてはいけません」

と、ミカサがまるでホラー映画のような顔つきになって言った。

ミカサ「確かにリヴァイ先生が教師を辞めてしまえば、表面上はハンジ先生の嫌がらせは少なくなるかもしれません。しかし、リヴァイ先生の見えない部分で、必ず精神攻撃はこっそりしてきます」

リヴァイ「何……?」

ミカサ「結婚したら、尚更酷い陰湿な精神攻撃をしてくる可能性もあります。私は、リヴァイ先生自身が目を光らせて、生徒達を見張っている方がまだマシだと思うんですが」

リヴァイ「な、そ、そういうものなのか?」

ミカサ「(こくり)………女って、怖いんですよ? ククク………」

やめてえええ! 夏の怪談みたいに話すのはやめてくれえええ!!!

本気でガクブルしながらそれを聞いていたら、

リヴァイ「そ、そうか……そういう可能性もあったのか。すまん。俺もちょっと浅はかだったな」

ミカサ「よおおおく考えた上で、決断された方が良いかと。ククク……」

だから、ミカサ! 脅し過ぎる!!

でも、その言葉はリヴァイ先生に響いたみたいで「分かった」と答えてくれた。

リヴァイ「貴重な意見をありがとう。エルヴィンにも話してもう少し、煮詰めてから今後の事を考えてみる」

ミカサ「その方が宜しいかと……(ニヤリ)」

リヴァイ「ああ。そうする。じゃあな」

と、言ってリヴァイ先生は職員室に帰って行った。

ペトラ「み、ミカサ……ありがとう」

ミカサ「いえいえ。私は女性の味方なので。リヴァイ先生が辞める方が個人的には嬉しいですが、ハンジ先生が可哀想な目に遭うのは、ちょっと」

ペトラ「うん。そうだよね。女って、怖いもんね」

ニファ「うん。怖い怖い」

女同士で「怖い」言い合う姿って、奇妙だな。

自覚しているからこそって事なのかな。不思議だな。

そんなこんなで、ひと騒動は何とか収まったけど、正直、心臓に悪かった。

女のああいうの、生で見たの初めての経験だったからな。

教室に戻りながらオレはミカサに言った。

エレン「とりあえず、良かったよな。リヴァイ先生の件、保留になりそうだな」

ミカサ「うん。一番いいのは、リヴァイ先生が必要以上に女子生徒に優しくしない事だと思うけど」

エレン「自覚ねえんだろ? 難しくねえか? それは」

ミカサ「これからは、自覚するべき。嫁を一番優先するべき」

と、ミカサは「むふーっ」と言い切っている。

ミカサ「もしくは、もっとリヴァイ先生のダメで悪い部分も生徒に見せるべき。皆、美化し過ぎているので、イメージダウンをさせるべき」

エレン「あーそれはオレも思ったんだけど、エルヴィン先生が「諸刃の刃」って言ってたしなあ」

ミカサ「でも、それはエルヴィン先生の判断であって、リヴァイ先生自身の判断ではないので、リヴァイ先生にその件を話してみても良いのでは?」

エレン「…………」

そっか。それもそうだよな。

肝心な事を忘れていたぜ。ちょっとオレも慎重になり過ぎていたかな。

エレン「そうだな。ミカサの言う通りかもしれねえ」

と、オレは納得して、今度その機会があればリヴァイ先生に話してみようと思った。

そう思いながら、2人で教室に戻るのだった。

リヴァイ先生が辞めるに辞められない状況に。
社会人の常識、足りてないリヴァイ先生ですみません。
(でも実際、職種によってはすぐには辞められないんですよ)

という訳で、波乱の修羅場編はお終い。
続きはまた。ノシ









10月9日。この日は雨だったので体育は中止になり保健体育の方の授業になった。

男子は当然、リヴァイ先生の授業だったんだが、リヴァイ先生の授業は割とサクサク進んで、予定よりも早く終わってしまい、10分くらい時間が余ってしまった。

リヴァイ「あー…時間が余ってしまったな。早めに切り上げるか」

と、リヴァイ先生の場合は先の方の授業をやる、という事は殆どない。

時間が余った場合は残りの時間をオレ達生徒にくれるんだ。そして自分は寝る。

だからこの日もそうなるだろうと思っていたのに。

アルミン「あの、リヴァイ先生」

リヴァイ「何だ。何か分からない部分があったのか? 珍しいな」

アルミンが疑問を挙手して問う事は滅多にない。授業中の「確認」の質問は良くやるけど。

それだけ理解力が速いからだ。でもその時のアルミンはニヤニヤしていて、

アルミン「教科書には載っていない、授業、やって貰えませんかね?」

とか言い出したから、皆、一斉に「ヒューヒュー」言い出した。

リヴァイ「あー……つまりアレだ。そういう下世話な話が聞きたいのか?」

アルミン「はい。その通りです。お願いします(頭下げる)」

アルミンの勇者っぷりに男子から拍手喝采が起きた。

リヴァイ「何が聞きたい。言っておくが、俺も教えられる部分は限られるぞ」

アルミン「教えて貰える部分だけで十分です。是非」

リヴァイ「しょうがねえ奴らだな。全く……」

と、苦笑するリヴァイ先生だった。

リヴァイ「この年齢の男子が考える事なんざ、ひとつしかねえが………何から聞きたい?」

アルミン「リヴァイ先生自身の武勇伝を是非」

リヴァイ「………どれくらい、ヤッたかって事か?」

アルミン「加えて、そのテクニックの伝授も是非」

リヴァイ「んー……」

と、リヴァイ先生は少し考えてから言った。

リヴァイ「人数だけで言えばもう、覚えてねえな。ただ、10代の頃はかなりの数をこなした。20代の頃は仕事が忙しくなってしまってその数は減ったが、それでも月1くらいでは必ずやっていたかな」

おおおおお……

どよめいた。すげえ。リヴァイ武勇伝だ。

アルミン「彼女とつきあった数も相当ですか?」

リヴァイ「うーん……俺の場合、彼女と呼んでいいのか微妙なラインの女もひっきりなしに誘いかけてきたからな」

と、全人類の男が嫉妬する台詞を言い放ったので、男子が全員動揺した。

ジャン「くっ……なんて羨ましい!」

ジャンの目が赤くなった。しょうがねえだろ。リヴァイ先生モテるんだし。

リヴァイ「ただまあ、半年以上続いた数だけで言ったら、片手に数えるほどしかいない。他の女は、俺の体目当てで誘ってきただけだったのかもしれん」

アルミン「やっぱり、体が凄いとモテますか?」

リヴァイ「そういうもんじゃねえのか? 身体は鍛えないと女にはモテないだろ」

おおおおおお……

やっぱりそこでもどよめいた。いや、いちいち反応し過ぎだとは思うけど。

ジャン「はい! モテる秘訣を教えて下さい!!」

リヴァイ「は? 無茶言うな。俺もモテようと思ってこうなった訳じゃねえよ」

ジャン「で、でも……なんかコツみたいなのはないんですか?」

リヴァイ「コツって言われてもな……」

リヴァイ先生の場合はモテようとしてモテている訳じゃねえからすげよな。

いつの間にか女性が寄ってくるんだ。吸い寄せるフェロモンが出ているのかもしれない。

リヴァイ「…………コツかどうかは分からんが、女が喜ぶ事はしてやった方がいいと思うぞ」

ジャン「と、いうと?」

リヴァイ「一番効果的なのは、頭、ポンポンか。後は、手を握ってやったり。それくらいでいいんじゃないか?」

ジャン「は、ハードル高いっすね……(ズーン)」

リヴァイ「いや、そのくらいの事も出来ねえならモテたいとか言うな。基本じゃねえか」

ライナー「つまり、基本が大事であると」

リヴァイ「何でもそうだろ? 基本をおざなりにしては何も出来ん」

そういえばミカサも頭ポンポンとかすりすり好きだよな。

犬みたいにしてやると途端に大人しくなるし。

リヴァイ「あとはまあ、荷物を代わりに持って行ってやったり。体の変化に気づいてやったりか。調子が悪そうだったら無理はさせないし、機嫌がいい時は調子を合わせてやるといい。それから……」

おや? なんかだんだん饒舌になって来たな。

アルミンがメモ取り出した。勉強熱心だな、おい。

リヴァイ「髪型とかも気にかけてやった方が喜ぶな。機嫌が悪い時はなんか甘い物を食わせろ。腹いっぱいにさせたらとりあえず落ち着くからな。それから……」

どんどん項目が増えていく。あれ? 意外とリヴァイ先生って、その辺のテクニック、意識してやっているのか?

リヴァイ「理不尽な事を言い出す時は流されろ。抵抗してもどうにもならん。ただ、あんまり我儘を言い過ぎる女は付き合うな。疲れるからな。後々しんどいぞ。適度な我儘は可愛いが、度が過ぎると可愛くねえ。それと……」

熱心だな。なんかリヴァイ先生の女性遍歴が垣間見えてきた気がする。

リヴァイ「相手の趣味にある程度、合わせてやった方がいいか。ケーキバイキングは基本らしい。絶対1度は連れて行きたいが、なかなか言い出せないデート先らしいぞ。ついていくのに勇気がいるかもしれないが、そういう「試練」とも思えるデート場所にも付き合ってやった方がいいな」

おおおお。そうなのか。

女の好みのデート先に合わせるか。オレの場合は山登り決定だな。

リヴァイ「昔、そういう意味でわざと「子供向け少女アニメ」の映画館デートに連れて行かれた事もあったな。内容がさっぱり分からんまま観終わったが、相手の女は「本当に一緒に観てくれるとは思わなかったwww」と爆笑していたが、その後はずっと機嫌が良かった。たまにそういう理不尽な要求をしてくる女もいるが、まあ、そこはつきあってやれ」

面倒見が良すぎる。すげえ。俺には真似出来ねえな。

リヴァイ「あと、女は基本的に冷え性の奴が多いから、外でのデートの時は、上着をこっちでもう1枚くらい用意してデートした方がいいぞ。冬とか、くそ寒い時期にミニスカートはいてハイヒールはいてくる女もいる。たまに「アホなのか?」と思う薄着の女もいたが、風邪ひかせたら可哀想だからな。コートをもう1枚くらい持って行った方がいい。……あ、学生には車がないから難しいか。大学に入ってから注意しろ」

と、先の事まで心配してくれるリヴァイ先生だった。

リヴァイ「ただ、女にも千差万別で、この方法を使えば必ず相手が喜ぶとも限らない。その辺りは「勘」の世界になってくるから、とりあえず会話して、相手の性格を掴む事をまず重要視した方がいいと思うぞ」

アルミン「まずはデータを収集して、分析するんですね」

リヴァイ「その通りだ。別に女に限った話じゃねえけどな。お前らの事も、俺はそれなりに観察して分析して、出来る限りうまく教えられるように心掛けてはいる」

おおお。夏合宿の野球と料理の事を思い出すぜ。

リヴァイ「正直言えば手間のかかる手法だが、俺自身、考え抜いた末の方法だ。うまくいく場合もあるし、失敗する事もある。ただ、どちらにせよ、その時に得た経験は次に活かせる。それを繰り返していけば限りなく、正解に近い「悔いのない選択」が出来るんじゃねえかと思っているが」

アルミン「なるほど。そうやって、ハンジ先生の事も、選んだわけですね」

リヴァイ(ぶふーっ!)

いきなり話題を転換したものだから、リヴァイ先生がうっかり吹いた。

ヒューヒューの嵐だった。さすがにちょっと照れている。

リヴァイ「アルミン……お前なあ……」

アルミン「いやあ、本命はそっちが聞きたくて。釣りました」

リヴァイ「ああ、そうだったのか。いや、その……なんだ。改めて問われると照れるな」

と、リヴァイ先生がガチで照れていた。ぷぷー!

ニヤニヤが止まらねえぜ。暫くはこのネタで遊べるな!

リヴァイ「まあ、そうだな。ハンジの事は、その………なんだ」

急に歯切れが悪くなった。すげえ。落差がすげえ。

リヴァイ「その………何から話せばいいんだ。分からん」

アルミン「ハンジ先生のどこが好きなんですか?」

リヴァイ「どこって…………その………」

おおおお。貴重な反応だぜ! 面白い!

リヴァイ「……………俺が出来ない事や、持ってない部分を持っているところ、かな」

アルミン「というと?」

リヴァイ「俺は口が悪い方だからな。昔はよくトラブルを起こす……今でもたまにやらかすが、とにかく問題の多い教師としてよく保護者に怒られたんだよ。そういう時に、ハンジが間に立ってくれることが多くてな。あいつがいなかったら、教師生活はこんなに長くは続けようとは思わなかったと思うんだ」

と、リヴァイ先生はしみじみ言う。

リヴァイ「あとは、事務処理や手続きなどの処理能力の速さは職員の中でもベスト3に入る。女性の中ではトップだろうな。仕事早いんだよ。あいつ。家事仕事はてんでダメだけど。学校の仕事は俺の倍以上、早く出来るんだ」

アルミン「へーそうなんですね」

リヴァイ「ああ。後はそうだな。その……しょっちゅう笑顔でいるところもだな」

エレン「笑顔?」

ちょっと意外だった。へー。

リヴァイ「ああ。あいつ、喜怒哀楽が激しいからな。基本的に笑っている事が多い。ムードメイカー的存在なんだ。ハンジがいると、職員室が明るくなる。そういう部分も、多分、好きなんだと思うが」

と、心底、恥ずかしそうに答えている様子がすげえ面白かった。

誰かこっそりスマホで録音してねえかな。今の言葉、ハンジ先生にこっそり聞かせてやりてえよ。

リヴァイ「後はその…………まあ、触り心地がいいところも、好きだな。ついつい、触ってしまいたくなってしまって、その…」

おおっと、これ以上言わせたらいろんな意味でヤバいんじゃないか?

リヴァイ「………もうやめるぞ。この辺でいいよな? もう10分経ったよな?」

アルミン「まだあと5分ありますよ?」

リヴァイ「もう後は自習にしておけ! 俺は寝る!」

と、言って顔を伏せて逃げるリヴァイ先生に皆「えー」の声をあげた。

アルミン「まだまだ聞きたい事、沢山あったのにね」

ジャン「だな。エロい話も聞いてみたかったのに」

リヴァイ「……………」

マルコ「ははっ……まあそこは、ね。聞かせられない部分なんじゃない? ハンジ先生との、そういう話は」

リヴァイ(びくん)

あ、なんか反応したぞ? リヴァイ先生。

アルミン「だろうね。あれだけ劇的にくっついたんだし。きっと毎日、やってるんだろうね。いいなあ」

リヴァイ「…………やってる訳、ねえだろ」

アルミン「え?」

リヴァイ「教職舐めるなよ? 忙しさ、半端ねえんだぞ。特にこの時期の、筆記学科の担当教員の忙しさを。生徒の問題作りの為に睡眠時間削って活動しているんだぞ。そんな最中、手なんか出せるか!」

と、理不尽に怒っている。

ジャン「え……じゃあ、結婚の約束はしたけど、してないんですか?」

リヴァイ「ああ。だからあんまり煽るな。こっちもいろいろストレス溜まっている最中なんだよ」

ああああその気持ち、すげええ分かる。

こう、我慢せざる負えない状況で、煽られると、ムラムラ止めるのきついよなあ。

お預け期間中って事なんだろうな。可哀想に。

リヴァイ「まあいい。ストレスついでに、セックスの話もついでにしてやろう。そういう下世話な話も聞きたいんだろ?」

一同「「「イエス!!」」」

リヴァイ「やれやれ。何から聞きたい? 女をイカせるテクニックでも話せばいいのか?」

アルミン「是非」

リヴァイ「ふん……100人女がいれば、全員やり方が違うとしか言えないからな。ただ、傾向を導き出して対策を練る事は出来なくはない」

おおお。なんか急に授業っぽくなった。

黒板使って説明してくれるんだ。すげえ。

リヴァイ「俺の勧める方法の一つが、『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』だな」

アルミン「1時間もですか?」

リヴァイ「も、じゃない。最低1時間だ。いけるんだったら、2時間でも3時間でもいい。服の上からゆっくり触ってやれ。いきなり脱がすなよ。そっちの方がウケがいい」

ジャン「すげえ耐久レースじゃないですか」

リヴァイ「何言ってる。この程度は準備運動にもならん。途中で嫌がるような女の場合は別だが、この方法は10人中7人はまず嫌がらないぞ」

アルミン「は、7割は嫌がらないって事ですか?」

リヴァイ「あくまで俺の主観だがな。せっかちな女は別にして、大体の女は「ムード」を重視する。これは女の体の緊張を解す効果もあるが、血液の流れを良くする効果もあるし、女を「半覚醒」状態に持っていくのに一番効果的な方法だと俺は思っている」

アルミン「半覚醒……うたた寝状態って事ですか」

リヴァイ「そうだ。まずそこにもっていかない事には先に進めない。眠りそうで眠らない状態まで持っていって、初めて仕掛ける準備が整う。やり過ぎて爆睡する女もたまにいるが、その時は寝かせてやれ。そっちの方がいい」

アルミン「ええええ……それ、お預けじゃないですか」

リヴァイ「1回や2回は失敗しろ。何事も経験だ。勿論、このやり方を嫌がる女もいるからな。その違いは、濡れやすさで判断するしかない」

ジャン「濡れやすさ……(ごくり)」

一気に生々しい話になって来た。皆、真剣に聞いているな。

リヴァイ「ちょっと触っただけですぐ濡れる女と、そうじゃない女がいるって話だ。その辺の違いを区別するには経験が必要だ。感覚的な物だから口じゃうまく説明出来ない。だからとりあえず、ゆっくり仕掛けてみて最初は様子を見る事を勧める」

おおおおお。何か凄く為になったな。

リヴァイ「焦るなよ。焦ったら負けだと思え。若いうちはガンガンやりたくなる気持ちは俺も分かるが、女の体は男が思っている以上に傷つきやすい。やり過ぎて、病院に通う羽目になった女子生徒も多数知っている。勿論、中絶も含めてだ。やりたいだけなら、せめて年上の経験の豊富な女を選べ。同年代でやる場合は、特に経験値ねえんだから、女の方に出来るだけ合わせてやれよ」

アルミン「は、はい……」

リヴァイ「……とまあ、こんな話はテストには絶対出ないから覚える必要もねえけどな。後、絶対外には漏らすなよ。特に他の先生達には内緒だ。また俺が怒られてしまう」

ぷぷっと笑いが起きた。リヴァイ先生、結構他の先生から怒られているんだな。

リヴァイ「他に聞きたい事はあるか? なければもう授業をお仕舞にするが」

アルミン「最後にひとつだけ」

リヴァイ「何だ」

アルミン「その………リヴァイ先生って、結構ムッツリだったんですか?」

リヴァイ「ああ? 別に隠していたつもりはないが、俺の本性はただのエロ親父だぞ。38歳にもなるおっさん捕まえて何言ってやがる」

アルミン「いえ……なんかかえってほっとしました。女子の間では、神格化されているし、そういうリヴァイ先生の部分を今まで知らなかったので」

リヴァイ「女子の前で猥談はさすがにやらねえが、そういうのが好きな女子には多少リップサービスしてやる事もあるぞ? 少女漫画のヒーローじゃあるまいし。あんまり美化され過ぎるのも困るんだが」

と、本当に困った顔をしていたリヴァイ先生だった。

そしてチャイムが鳴った。授業終了の合図とともに教室を出ていくリヴァイ先生を見送って、オレはアルミンに言った。

エレン「アルミン、お前は本当に勇者だな……」

アルミン「いや、まあ、僕もまさかここまで本格的に答えてくれるとは思ってなかったけどね。為にはなったよね」

エレン「ああ。為になり過ぎる程なったぜ。授業より真剣に聞いちまった」

アルミン「授業の内容忘れてしまいそうな勢いだったよ。またリヴァイ先生の特別授業、やってくれないかな。すっごい聞きたい……」

エレン「その気持ち分かるぜ。リヴァイ先生の過去も含めていろいろ聞きてえよな」

と、いろいろアルミンと一緒に話したら女子が教室に戻って来た。

今、女子の顔を見るのがちょっと照れくさい。

さっきの生々しい話の直後だから特にそう思ってしまう、オレとアルミンだった。

アニ「ねえ、黒板の文字、何?」

アルミン「え?」

アニ「何で『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』なんて書いてあるの?」

うあああああ?! リヴァイ先生、黒板消し忘れてる!!

いつものリヴァイ先生なら絶対やらないミスだ! やっぱり調子おかしいんだ!!

アニ「一体、何の授業していたのさ。……不潔」

アルミン「ご、誤解だよ!! その、そういうのじゃないから!」

アニ「じゃあどういうの? 何をお勉強していたの? ん?」

アルミン「ええっと、エレン! ほら、アレだよね?」

エレン「おう! アレだよ! その! アレ!」

アレって何だよ?! 無茶ブリすんなよ!!!

アニ「へーアレで通じる程、隠したい授業だったんだあ」

アルミン「いや、その……」

アニ「ふーん……やっぱり、いやらしい男だねえ。あんた達は。ククク……」

アニ、ノリノリで弄ってるだけなのかな。顔は笑ってるぞ。

そしてアニは黒板の文字をさっさと消してしまったのだった。

リヴァイ先生の特別授業編でした。
とりあえず、ここまで。一旦区切ります。続きはまたノシ

エロ親父キターー!!
アルミンはホントいい性格してるなw
特別授業は1年男子にか
ハンジ先生に手取り足取りかと思ってドキドキしたわ(笑)

>>170
エレン視点だとリヴァイ×ハンジのエロシーンの様子を実際に見せるのは難しいですね。
番外編で読みたい方がいれば、リヴァイかハンジの視点でエロシーン書いてもいいんですが。
需要有るのかな?

まあ、保健体育の特別授業でハンジ先生無理やり連れて来てモデルにするという手も……。
ハンジに殴られるので没ですね。すみません(笑)。






そんなこんなであっという間に中間テストが終わり、四者面談の期間に突入した。

第一回目の進路相談になるわけだが、放課後、1人ずつ時間をとって教室で話し合う事になる。

オレは18日(土)の放課後になった。10分程度話し合うので、そう長い時間話す訳じゃないけど、濃厚な時間を過ごす事になる。

順番は名前順だ。だからアニとアルミンの方が先に相談を受ける事になる。

同じ日に進路相談を受ける予定だったので、オレとアルミンとアニは放課後、廊下で待っていた。今日は7人やる予定なので、クリスタ、コニー、サシャも進路相談のメンバーで放課後、残っている。

オレは廊下で椅子に座って待っていたんだけど、アルミンが相談を終えるなり、物凄く落ち込んだ顔で教室から出て来たのでびっくりした。

どうしたんだ? すっかりしょげているぞ?

アルミン「はー……」

その場でしゃがみこんで自己嫌悪に陥っている。何かあったんかな?

エレン「どうしたんだ? アルミン」

アルミン「あー……ごめん。後で話す。エレン、次だから。教室に入りなよ」

エレン「あ、ああ……」

何か言われたんかな。怖いな。

そして親父と一緒に教室に入ると、教室にはキース先生、エルヴィン先生が待っていた。

キース「どうぞ。お席に」

グリシャ「お世話になります(ぺこり)」

一礼して、向かい合って話し合う事になった。まず何から話すんだろう。

キース「まずはエレン君の学校内の成績と活動内容について説明させて頂きます」

キース先生の評価はまあまあ良かった。学業も中の上。部活動も積極的に参加しているしクラスでの友人との仲も良好。たまに一部の生徒と喧嘩をする事もあるが、それを除けば概ね問題ないという判断だった。

グリシャ「また喧嘩しているのか? 中学生じゃないんだぞ?」

エレン「うっ……向こうがたまにふっかけてくるんだよ」

キース「まあ、子供のじゃれあいみたいなものですよ。隣の席の男子生徒とはよく口論をしているようですが、問題になる程ではありません」

グリシャ「ならいいですが……」

ううう。まさかそんなところまで親父に報告されるとは思わなかったぜ。

キース「進路については、今のところどう考えておられますか?」

グリシャ「出来るだけ息子の希望に沿う形にはしたいと思っています。学費などの面は問題ありませんので、海外も含めて視野に入れています」

キース「それは頼もしい言葉ですね。エレン、良かったな」

エレン「はい……」

確かに頼もしい親父だとは思う。

キース「大学進学を考えられるのであれば、この辺の文系の大学などがお勧めですが…」

と、一応、オレの成績に合わせたお勧めの大学をいくつか教えてくれた。

キース「ただ、既に職種を考えておられるなら、それに合わせた大学を早めに選ばれた方がいいでしょう。何か、具体的に希望する職種などはありますか?」

エレン「あの、エルヴィン先生に勧められた職種でいくつか気になった物があるんですけど…」

と、一応エルヴィン先生の名前を出して、エルヴィン先生に目で合図すると「うん」と頷かれた。

エルヴィン「いいよ。言ってごらん」

エレン「はい。その……体力の面でまだ不安はあるんですが、それさえ克服出来れば『消防士』や『レスキュー隊』『自衛隊員』等の特殊な仕事が向いているかもしれないという話だったので、その辺を視野に入れてみたいと思うんですが」

キース「意外な進路だな。その手の仕事は過酷だぞ。精神的にも肉体的にもかなりハードな職種になるが……警察官等ではダメなのか?」

エレン「えっと、エルヴィン先生は『人の命を助ける仕事』でかつ、多少危険を伴う物でも大丈夫なのでは、という話だったので……」

キース「ふむ……」

と、キース先生は考え込んだ。

キース「人の命を助ける仕事で言えば、一番は「医者」だと思うが、お父さんの跡を継ぎたいという気持ちはないのか?」

エレン「頭足りないから無理ですよ。オレの成績じゃ医者なんて無理です……」

キース「いや、初めから諦める必要はないぞ。私は今のエレン程度の成績から、後半、急激に伸びて医者になった生徒を何人か知っている」

エレン「え……? 本当ですか? それは」

キース「ああ。勉学は、一度伸び始めるとぐんぐん伸びるぞ。何より君の場合は、お父さんという強い味方がいる。医者も十分、進路のひとつとして考えていいと思うぞ」

エレン「医者ですか……」

意外な答えだった。無理だと思っていたのに、背中を押されるなんて思わなかった。

エルヴィン「私も、エレンには医者の適性もあると思っている。むしろ危険度の度合いで言えば、医者の方が過酷かもしれないね。その辺は、お父さんの方がよくご存じだとは思いますが」

グリシャ「ええ。正直言えば、医者なんて、死に急ぎ野郎がなる職種だと思っていますよ」

エレン「お、親父……」

グリシャ「自分がいつ、病にかかるか分からない場所に常にいる訳だからね。精神的にも肉体的にも過酷だよ。でも、私はこの仕事を誇りに思っている」

と、親父がとても男らしい顔つきになった。

グリシャ「選択肢はそのあたりになりそうですかね。どの職種を選ぶにしろ、大学進学はまず間違いない感じですね」

キース「そうですね。特に医学系でいかれるのであれば、早めに大学を絞った方がいいかもしれませんが、その辺は後半の成績次第になるでしょう」

グリシャ「分かりました。ありがとうございます」

エルヴィン「まだ時間はありますので、次回の四者面談の時に詳しい話を進めていきましょう。では今日はこの辺で」

グリシャ「はい。今日は本当にありがとうございました(ぺこり)」

と、簡単な進路相談になったけど、ここでオレに新しい選択肢が増えてしまった。

まさか『医者』も視野に入れて話す事になるなんて思ってもみなかった。

そして教室を出て、落ち込んでいるアルミンに声をかけた。さっきの事が気になったからな。

親父は忙しいから「先に帰らせてもらうね」と言って帰って行ったけど。

エレン「アルミン。もう終わったぞ。さっきの話、聞かせてくれ」

アルミン「ううう……あのね。実は……」

と、アルミンは項垂れてしまって、

アルミン「エルヴィン先生にずばっとはっきり、「アルミンは医者には向いていない」って言われちゃったんだ」

と驚く回答がきたのだ。

エレン「えええ? 何でだ? 成績いいのにダメなのか?」

アルミン「成績は十分すぎる程、足りているけど問題はそこじゃないんだって」

と、ますます落ちこんでいった。

アルミン「マーガレット先輩の家でアシスタントした時の事、覚えている?」

エレン「ああ。覚えているぞ」

アルミン「その時の事、エルヴィン先生もマーガレット先輩本人から話を聞いたらしくてね。その時の、エレンの様子を聞いたって言ってて。その時エレンの行動の方が、医者として適正がある証拠なんだって。あの時、僕は何も行動を起こさなかったし、加えて先に帰ったでしょ? それは自分が可愛い証拠じゃないのかって。人の事より自分を優先する性格の人間が、医者としてやっていくのは難しいんじゃないかって言われたんだ」

エレン「ええええ……でも、それはアルミンの「立場」ってものがあるだろ。オレは別にちょっとくらい休んだって問題ないし、特待生と普通の生徒を同じように考える方がおかしくないか?」

アルミン「僕もそう思ったんだけど、そういう問題じゃないらしいんだ。エルヴィン先生曰く、僕が医者を希望する理由そのものが間違っているって。おじいちゃんの件、話してみたんだけど。それは僕自身が気に病む必要性はない事なんだって」

エレン「んん? ちょっと意味分かんねえんだけど。もうちょっと詳しく言ってくれよ」

アルミン「うーん……あのね。僕はおじいちゃんが「僕」の為にガンの治療を受けずに死んじゃったって「思い込んでいる」可能性があるって言われてね」

と、アルミンは目を閉じながら言った。

アルミン「エルヴィン先生曰く、それは違うんじゃないかって。おじいちゃんは「僕」の為じゃなくて「自分」の為にあえてガンの治療を受けずに死んだのかもしれないって。そう言ったんだ」

エレン「自分の為に……」

アルミン「ガンの治療はね。お金もかかるけど、それ以上に「苦痛」を伴うんだって。だから、ガンになってもあえて治療を受けずにそのまま死ぬ事を選ぶガン患者だっているんだって話だよ。つまり「死」に対する選択を、苦痛の中で延命するより、自然に任せて「安らか」に死ぬ事を選んだんじゃないかって。勿論、本当の意味で安らかに死ねた訳じゃないんだろうけど。でも、どっちの道を選ぶにしろ、苦痛を伴うのであれば、その期間が「短い」方をおじいちゃんはあえて選んだのかもしれないよって、そう言ってくれたんだ」

すげえ。エルヴィン先生。たったそれだけの情報でそこまで読み取る事が出来るのか。

エルヴィン先生の観察力と洞察力の凄さを改めて感じてしまった。

アルミン「だから、僕はおじいちゃんの死に対して気に病む必要はない。むしろそのせいで、僕自身の人生の選択の「足枷」になっているのなら、それはおじいちゃんの望む事ではないんじゃないかって、あくまでエルヴィン先生の主観の話だけど、そう言ったんだよ」

エレン「そうだったのか……」

アルミン「あくまでそれはエルヴィン先生の話だし、本当は違うかもしれないよ。でも、今となっては真実は分からないんだ。おじいちゃんがどういうつもりで死んでいったかなんて、もう聞けないし。僕はおじいちゃんの異変に気付けなかった自分に対する、贖罪のつもりで医者になろうとしていただけだったのかもしれない……」

エレン「ううーん……」

それの何が問題なのかイマイチ分からねえけど。

でもエルヴィン先生は「向いてない」ってはっきり言ったって事は、やっぱりそうなんだろうな。

エレン「だったら、他に何が向いているって言われたんだ?」

アルミン「僕の場合は『弁護士』の方がまだ適性があると言われたよ。僕、ほら、ずる賢いところあるじゃない? あと口も悪いし。自分が可愛いし。姑息で陰湿だし。悪い事ばっかり考えるし」

エレン「おいおい、それはいい過ぎだぞ。自分で自分を追い詰め過ぎるなよ」

アルミン「うん。でも、事実だからしょうがないよ。でもそういう「自分を守ろうとする」感情っていうのは、誰にでもあって、弁護士の場合はそれの究極の職業とも言われたんだ」

エレン「自分を守る……」

アルミン「そう。そういう感情が分かる人間でないと、人の弁護も出来ないとエルヴィン先生は言っていたよ。確かに僕は口だけは自信があるから、そっちの方が向いているのかもしれないけど……」

と言って、アルミンはやっと両目を静かに開けた。

アルミン「正直言えば、凹んだよ。まさかこんな風に自分の希望を真っ向から否定されるとは思わなかったし。キース先生は「言い過ぎなのでは?」と言っていたけど。エルヴィン先生、全然平気な顔をしていたよ。「これでもオブラートに包んで話していますよ」だって。エルヴィン先生、普段と全く変わらない表情だったのが、逆にちょっと怖かったよ」

エレン「そうなんだ」

アルミン「うん。エルヴィン先生って、その辺の感情の「機微」みたいなのを余り気にしない性格なのかもしれないけど。なんていうのかな……マッドな印象を受けたよ。相手がどれだけ傷つこうが自分には関係ない。みたいな。だからこそ、人の適性を客観的に見つめる事が出来るのかもしれない」

そういう風に分析できるアルミンの方がすげえよ。

普通だったら「エルヴィン先生むかつくー!」で終わるんじゃねえか?

アルミン「そういう訳だから、ちょっと、今、頭の中、ふらふらしていてね。うん。進路についてはもう少し時間をおいてから改めて考えてみるよ」

エレン「おう。そうした方がいいな。エルヴィン先生が反対したって、本当に医者になりたかったら、医者になればいいじゃねえか。オレ、アルミンの方が医者になった方がいいとずっと思っていたんだし」

アルミン「僕はエレンの方が医者になった方がいいと思うけどね。適正あるって言われたんでしょ?」

エレン「頭が足りればの話だよ。オレ自身は『消防士』『レスキュー隊』『自衛隊員』のうちのどれかでもいいかなって思ってるしな」

アルミン「その辺も適正あるって言われたんだ。すごいね。幅が広いや」

エレン「んー『人の命を助ける仕事』についた方がいいみたいな事を言われたんだよ。多少危険でも、やっていけるんじゃないかって。まあ、オレ、自分の母親を目の前で亡くしているからな。やっぱり、人が死ぬところはもう見たくねえんだよ」

アルミン「そっか……」

エレン「でもぼんやりでも道が見えて来て良かったと思うぜ。後は時間をかけて絞っていくだけだ。勉強もして、体力もつけねえとな」

と言ってオレは立ち上がった。

エレン「そういえばアニはなんて言われたんだろうな? ちょっと聞いてみるか?」

アルミン「うん。聞いてみようか」

アニもアニで「うーん」と悩んでいる様子だった。

エレン「よお! アニはどうだった?」

アニ「うーん……」

エレン「悩んでいるみてえだな。職種、決まらなかったのか?」

アニ「いや、そういう訳じゃないんだけど、ちょっと意外な進路を勧められたからさ」

アルミン「アニは何が向いているって言われたの?」

アニ「看護師」

アルミン「看護師?! ヤバい! 似合いすぎるよ!!」

エレン「ああ。似合うぜ! 注射器持ってるアニ、似合いすぎるぞ!!」

アニ「変な意味で想像しないでよ。そういうコスプレ的な意味じゃないんだから」

アルミン「ああ、ごめんごめん。でも何で?」

アニ「うーん。まず、体力が人よりある事と、意外とその「優しい」気質を持っている事。人の事を割とよく観察している事。必要以上に人と関わらないようにしている事。集団行動より、1人での行動に耐えられる事。所謂、自分の判断で動くって事だね。他には……安定した収入、かな」

アルミン「へーなるほど。それだけ言われれば確かに合ってる気がするよ」

アニ「でも私、看護師なんて考えた事もなかったから、びっくりしてね。ぼんやりと洋服関係の仕事でもしようかなって思っていたくらいだから、斜めからの提案で面喰っているんだ」

エレン「オレも似たようなもんだぞ。頭足りれば医者いけるって言われたんだし」

アニ「ああ、そうなんだ。じゃあもしかしたらいつか、一緒に働く事になるかもね」

アルミン「羨ましいな~エレン~」

エレン「え? いや、そりゃあそうなったら楽しいかもしれんが、まだ分からんだろうが」

アニ「アルミンはなんて言われたの?」

アルミン「僕の場合は適正で言えば『弁護士』あたりかなって。ただ、医者にもまだ未練があるから、もうちょっと考えてみる」

アニ「そうなんだ。アルミンの場合はどっちでもいけそうだね」

アルミン「うーん。どうなるか分かんないけどね。あくまでエルヴィン先生の判断だし」

アニ「でもエルヴィン先生ってそういうの、凄く客観的に人を見るから、結構当たってる気がするよ」

エレン「まあな。そういう意味じゃ進路指導の先生としては合ってるよな」

アニ「うん。そう思うよ」

ガララ……

あ、クリスタが出て来た。あんまり顔色良くねえな。

クリスタ「ううーん………」

エレン「どうだった?」

クリスタ「あのね。私、自分の進路を真っ向から否定されちゃった……」

アルミン「クリスタも? 何て言ったの?」

クリスタ「看護系かな。そういう人を助ける仕事をしてみたいと思っていたんだけど、向いていないって」

エレン「アニと逆なのか。何でだ?」

クリスタ「その………イイ人だって思われたくてやるんだったら、やめた方がいいって」

エレン「イイ人? ん? イマイチ意味が分からんな」

アルミン「見栄の為にやるんだったらやめろって話?」

クリスタ「うーん。私自身はそうは思ってないんだけどね。ただ、ちょっと私は『人に対する過剰なサービス精神』のようなものがあるって言われてね。やるんだったら『芸能関係』の方が向いているかもしれないって言われちゃった」

アルミン「芸能?! それって、女優とかアイドルとかモデルとか?」

クリスタ「まあ、そうなるのかな? 確かにモデルは1度だけやった事あるけど、私、演劇部に所属している訳でもないし、いいのかなあ?」

アルミン「全然問題ないよ!!! なんなら今からでも演劇部に移籍したら……」

クリスタ「いや、それは無理だよ。私、野球部マネージャーを本格的にやり始めているし。今は弓道部よりそっちの方がメインになっているんだ」

アルミン「そうなんだ……(シュン)」

クリスタ「確かにミスコンの時も、いろいろ考えすぎて失敗しちゃったしね。男子にウケる事ばっかり考えて、自分の意志がなくなっていたのは本当だし。でも、エルヴィン先生はその考え方を否定はしなかったの。むしろ、そういう『サービス精神』を利用した職業を目指した方がいいかもしれないって言われてしまって……加えて私は『マニュアルがないと不安になるんだろう?』と言われたし、女優も視野に入れていいって言われたんだよね」

エレン「へーそうなんだ。そういうもんなのか」

意外な進路だな。クリスタは「女優」に向いているのかもしれないのか。

エレン「劇部の様子、見学してみるか? 別に部活動はしなくてもいいからさ。空気に触れるだけでも大分違うんじゃないか?」

クリスタ「うーん。そうだね。それも有りかもしれない。今度、見学してみるよ。皆の練習風景を見せてね」

アルミン「大歓迎だよ!!!」

あ、今度はコニーが出て来たぞ。あいつ、なんて言われたんだろ。

コニー「あああああ……くそおおおおお」

コニーも何か言われたっぽいな。

コニー「野球選手一本じゃダメなのかよーうーん」

エレン「コニーも進路を否定されたのか」

コニー「否定じゃねえけどさー。野球一本に絞ってプロ野球選手になりたいって言ったら「怪我したらのたれ死ぬけどいいの?」ってずばっと言われた」

エレン「まあ、怪我したらプロ続けるの難しくはなるよな。それで引退する選手だっているんだし」

コニー「そおだけどさあああ。それ言い出したら、プロの道、いけなくねえ? 保証なんて何もない世界だけど、でもそれでも好きだから野球するんじゃねえか。他の道なんて考えた事もねえよおお」

と、コニーが頭を悩ませている。

コニー「オレ馬鹿だからさ。野球以外の事、ほとんど何もしてねえんだよ。勉強だってギリギリだし。自慢出来るのは体力ある事くらいだぞ?」

エレン「いいじゃねえか。体力ねえと出来ねえ仕事は沢山あるぞ」

コニー「そおかあ? 例えば何だよ」

エレン「オレが勧められた『消防士』とか『レスキュー隊』とか『自衛隊員』だよ。この辺は体力の方が必須だからな。コニーもいけるんじゃねえの?」

コニー「ああ、そういう意味かーいや、でもなああ。野球選手になりたいんだよ。オレは!」

アルミン「じゃあエルヴィン先生は野球選手以外だったら、何が良さそうって言ったの?」

コニー「ううーん。野球以外だったら『保育士』とか? 男だけど。オレ、下に妹と弟いるからさ。子供の面倒を見るのは得意なんだよ。子供と遊ぶのは好きだしな。後は『宅配業者』とかだな。単純な肉体労働系もいけそうだって言われた。引っ越し屋とかだと、頭使うから向いてないみたいだけど。そんな感じだな」

アニ「保育士、いいんじゃないの? 私、合ってると思うけど」

コニー「ええええ? そうかあ? いや、でもなあ。うーん」

と、コニーも頭を悩ませている。

コニー「野球選手以外の道はまだ見たくねえっていうか、夢はまだ持っていたいというか。来年の甲子園出場が、オレの将来を決めると言うか。せめてベスト8までは残りたいというか……」

エレン「まあそんなに思いつめるなよ。野球選手でいきたいなら、今はその夢を追いかけていればいいじゃねえか」

コニー「だよな! よし、そうしよう! エルヴィン先生には悪いけど、今はまだ諦めねえぞ!」

と、いう訳で次はサシャが出て来たぞ。

サシャ「むふー」

サシャは機嫌が良かった。希望が通ったのかな?

サシャ「エルヴィン先生はいい先生ですね! とてもいい話を聞けました!」

エレン「サシャはなんて言われたんだ?」

サシャ「ええっと、ですね。私の場合はあまり学業に力を入れる必要はないと言われました。それよりも、今持っている「スキル」をこのまま高めてそれを利用した仕事に就いた方がいいとも言われました。私、いろいろバイト経験があるので、社会に出る時にそれが有利になるし、父の仕事なども手伝っているので、経験は十分だと言われました。なので、今やっているフォトショ関係の仕事、漫画家さんのアシスタント等ですね。そういった「芸術」関係の仕事が向いているかもしれないと言われました」

アルミン「意外だね。インドア関係でいいんだ」

サシャ「そうですね。肉体労働も嫌いではないんですが。私の場合、マイペースにやれる仕事の方がいいみたいです。人と深く関わってする仕事より、個人の能力を生かした方がいいだろうって言われました」

エレン「そういうもんなのか。良かったなサシャ」

サシャ「はい! 学業に力入れなくていいって言われた事で、父がびっくりしていましたが、何となく察してくれました! これで「勉強しろ!」と必要以上に言われなくて済みます。むふふふ」

先生としてそれ言っちゃうのってどうなんだと思わなくもないが、サシャの場合は確かに違う能力を伸ばした方がいいのかもしれないな。

そんな訳で初日の四者面談は1時間過ぎた程度で全員分が終わった。

他のメンバーはまた後日だな。ミカサは最後の方になる筈だ。

今日の結果をミカサに話しながら家に帰ると、ミカサは「すごい」と驚いていた。

ミカサ「エルヴィン先生はやはり凄い。人の事を良く見ている」

エレン「やっぱり先生になるだけあるな。皆、いろいろ悩んでいたけど、アニとかは思ってもみなかった方向を提示されたんだぜ? オレもある意味そうだけど。それって、やっぱりエルヴィン先生じゃねえと出来ねえよな」

ミカサ「うん。私はなんて言われるんだろう。ドキドキする」

エレン「ミカサの場合はいろいろ選択肢を提示してくれるかもしれないな。頑張れ」

ミカサ「うん。頑張る」

と、ミカサがちょっと赤くなった。可愛い。

…………。えええい! 家の前(玄関前)だけど、まあいいや!



チュ……


ミカサ「!」

エレン「悪い。今、したくなった」

ミカサ「んもう……(照れてる)」

エレン「だって、ミカサが可愛いのが悪い……」


ゾク……


あれ? なんか急に寒気が……


グリシャ「エレン? ルールは破っちゃダメだよ?」

エレン「?!」

後ろを振り向いたら、何故か親父とおばさんが並んでこっちを見上げていた。

え? え? 親父、先に帰っていたんじゃなかったのかよ?!

ミカサの母「今日は帰りを迎えに来て貰ったの~学校帰りにね。そのまま買い物もしてきたのよ」

グリシャ「ああ。今、帰って来たところだ。偶然だね。車の音、聞こえなかったのかな?」

エレン「うぐぐぐぐ」

すいません。見過ごしていました。それだけミカサの方に集中していたんで。

グリシャ「晩飯のおかず、1個減らすよ。今日だけは多めに見るけど、次はないよ」

エレン「は、はい……(シュン)」

という訳で、やっぱり親父に怒られたりしながらその日は終わったのだった。










10月20日。四者面談2日目。

ジャンが面談を受けた後、物凄く唸っていた。

エレン「大丈夫か? お前もなんかエルヴィン先生に進路否定されたのか?」

ジャン「いや、否定はされていないんだが……」

ジャンは廊下の椅子に座って腕を組んで悩んでいた。

ジャン「公務員を希望するのは構わないけど、一口に公務員と言っても幅が広すぎるからもう少し絞った方がいいって言われた」

エレン「そうなのか。公務員ってそんなにいろいろあるんだ」

ジャン「あーなんか、土木、水産、地域観光、あとなんだっけ。所謂、部署が物凄く幅広いから、勤務先次第では自分が全くやった事のないジャンルの仕事とかバンバン回される可能性も高いから、そういうのに耐えられる? って聞かれてな。オレはすぐに「出来ます」って言い返せなかったから、目指すんだったら、警察とかの方がまだいいかもしれないって言われたな」

エレン「ははは! 斎藤役で警察官やった甲斐があったな。縁があるんじゃねえの?」

ジャン「うーん。斎藤役をやってる時、物凄くしっくりきたからな。案外、合ってるのかもしれないが……」

と、ジャンがぐだぐだ言っている。

ジャン「でも警察官も結構激務って聞くよな。出来れば土日は休める仕事の方がいいけどな」

エレン「んーでも、ジャンの場合は一番は「安定した収入」なんだろ? それだったら、警察官でも良くねえか?」

ジャン「うーん。まあ、悪くはないんだろうけどな。ただ警察に入るなら、格闘……柔道か剣道か空手か。習った方がいいとも言われたな。実践で使うだろうし」

エレン「習えばいいじゃねえか。そういうのは大学入ってからでも習えるだろ」

ジャン「そうだな。一応、大学には入ってみようかとは思う。キャリア組目指す訳じゃないけど、演劇部の事をしながら習い事はちょっと無理だしな」

エレン「ジャンの場合は公務員無理だったら、大手の企業とか、中小企業のサラリーマンでも別にいいんだろ?」

ジャン「まあ、出来れば潰れない会社に入りたいけどな。どうしようもない時はそうなるだろうな」

という訳で、2日目の四者面談はそんな感じで終わった。

10月21日。四者面談3日目。

ハンナも唸っていた。どうやら進路を否定されたようだ。

ハンナ「ううーん。お嫁さんになりたいとか言ったら「離婚されたらどうするの?」って返されてしまった」

ああ、所謂永久就職希望か。女の子らしいな。

オレは別にそれでも構わないと思うけど。ハンナって彼氏いたっけな?

10月22日。四者面談4日目。

ヒッチが浮かれていた。サシャみたいにいい事でも言われたかな。

ヒッチ「水商売でいいです♪ って言ったら、親泣いたけど、エルヴィン先生は「いいんじゃない?」って言ってくれて助かったわー。止められるかと思ったけど、案外いい先生だね!」

マジか。それでいいのかヒッチ。夜の花道いくのかあいつ。

ヒッチ「まあ、親がどうしてもダメっていう場合は「花魁」目指すけどね。そっちにも興味あるんだ~♪」

もうあいつの天職な気がしてきた。まあ、いいか。

ベルトルトが赤面していた。何だろ? 変な反応だな。

ベルトルト「まさか僕が『秘書』とか『マネージャー』とか向いていると言われるとは思わなかったな……」

おお、そうなのか。あ、でもそれっぽい感じはするな。

ライナー「いいんじゃないか? ユミルとコンビ組んだ時もサポート役がうまかったと、ユミル自身が言っていたぞ」

ベルトルト「そ、そうなのかな」

ライナー「ああ。たまにドジだが、悪くない。ってユミルが言っていた。お前は影に徹する仕事がいいのかもしれんぞ」

なるほど。目立つのが苦手なベルトルトらしいな。

10月23日四者面談5日目。

マルコが唸っていた。エルヴィン先生、とことん唸らせるなあ。

マルコ「まさか『心理カウンセラー』とか『精神科医』とか『スポーツ監督』とかその辺を勧められるとは思わなかったなあ」

ジャン「えらくジャンルが離れているな。なんか共通するところあるのか? それは」

マルコ「ああ、えっとね。僕は所謂、「相談役」に向いているって事らしいよ。女房役っていうのかな。まあ、捕手やっていたし、元々そういう気質なんだろうけど、表にガンガン出るタイプじゃないけど、陰で他人に知恵を授けたり、後押ししたり、後は采配したり? そんな感じの事が得意みたいだから、それを活かせる仕事はどうだ? って言われたね」

ジャン「悪くねえんじゃねえか? オレもよくマルコには相談ごとするしな。アドバイスは的確だし」

マルコ「うーん。でも、僕は建築関係の仕事をしようかなって思っていたんだよね」

ジャン「だったら、建築関係のアドバイザーとかはどうだ? くっつけちまえば」

マルコ「! そんな業種、あるのかな?」

ジャン「設計の段階で相談していろいろ決めるだろ。住宅の設計士にでもなれば?」

マルコ「ジャン! 頭いいね! それいいかもしれない!」

と、マルコも進路の先が見えたようだ。

マルロ「………政治家か」

ヒッチ「?! えらくでかい夢を言い出したね。え? それを勧められたの?」

マルロ「政治に関する仕事、がいいかもしれないと言われた。一番いいのは政治家だろうが、しかし公務員を目指していたんだが、まさかそっちを勧められるとは思わなかった」

ヒッチ「超ウケるwwwwwいいんじゃない? 夢はでっかくいこうよwwww」

マルロ「笑われてもな……いや、本当にどうするべきだ。これは」

マルロ、大きい男だな。頑張れ。

ミーナ「うううん。普通のOL希望だったのに、飲食店を勧められてしまった。個人で経営する方がいいかもって。組織に属するよりそっちの方がいいかもって言われた」

ハンナ「そうなんだ。でも、いいんじゃない? カフェ経営とか。似合いそうだよ」

ミーナ「確かにコーヒーとか紅茶は好きだし、甘い物も大好きだけどーOLも捨てがたいのよね」

ハンナ「職場恋愛とか?」

ミーナ「う……バレたか」

こっちの2人は結婚の方を重要視しているようだな。

そしていよいよミカサだ。何言われたんだろうな。

ミカサ「……………」

あれ? 浮かない顔だな。ダメだしされたのかな。

ミカサ「ううーん」

エレン「何言われたんだ?」

ミカサ「旦那になる男と同じ職業がいいかもしれないって言われた」

エレン「ええええ? なんだそれ?」

ミカサ「えっと、私の場合、職種に拘る性格ではないので、愛する人と一緒に生活出来さえすればいいから、本当に何でもいいそう。で、あれば、結婚相手と似たような職業、もしくはいっそ同じ仕事に就いていいんじゃないかって言われた」

エレン「えええええ……それって、オレ次第って事か?」

ミカサ「そうなってしまう。エレン、ごめんなさい」

エレン「いや、いいけどさ。いいのか、本当にそれで」

ミカサ「部活動を決めた時もそうだったので、概ね問題ないかと」

エレン「あ、そう言えばそうだったな。いや、でも、1個くらい適性の職業なかったのかよ」

ミカサ「あえて言うなら『農家の嫁』と言われてしまった。農業が向いているそう」

エレン「そうか。農業か……」

ミカサは確かに作物育てるの好きだもんな。

ミカサ「エレンは今のところ『医者』か『消防士』か『レスキュー隊』か『自衛隊員』くらいを見ているのよね」

エレン「ああ、医者はまあ、成績次第だけどな。多分、相当頑張らないと難しいとは思うけど」

ミカサ「私は本当に、自分のやりたい事が特に「ない」状態なので、エレンと同じ仕事を選択してはダメだろうか?」

エレン「うーん……本当にそれでいいのかなー」

責任重大だな。オレ、ミカサの人生も抱える事になるのか。

いや、でも、そうだよな。ずっと一緒に生きていくつもりなら、それくらい抱えなくてどうする。

エレン「本当に、それで後悔しないな? ミカサ」

ミカサ「うん。後悔しない」

エレン「分かった。だったらオレも覚悟を決める。出来るだけ早いうちに進路を絞るから。それまで待っててくれ」

ミカサ「うん」

ミカサが小さく微笑んだ。嬉しいのか。こんな程度の事で。

なんか幸せだった。ミカサの反応が。こんな事でも。

手、繋ぎたくなった。急に。

だから、手をすっと、握ったら、ミカサがびっくりした。

ミカサ「エレン?」

エレン「いや、なんとなく。手、触りたくなった」

ミカサ「うん……」

ユミル「廊下で急にイチャイチャするのやめてくんねえ?」

エレン「うわああびっくりした! ユミルか。もう終わったのか?」

ユミル「あーまあ、一応な」

ミカサ「ユミルはなんて言われたの?」

ユミル「あーうー」

何だ。歯切れが悪いな。

ユミル「エルヴィン先生、あの人馬鹿なんじゃねえかなって思うんだけど」

エレン「え? 何言われたんだよ」

ユミル「………女社長になったらどうだって言われた」

ミカサ「お、大きい……!」

ユミル「でかすぎるだろ!!! どう考えても! 現実的じゃねえし。アホだろ。あの先生」

エレン「いやいや、案外そうでもないかもしれないぜ? ユミル、社長になったらいいじゃねえか」

ユミル「だから、「何の」社長だよ!! 社長って一口に言っても、いろんな企業があるだろうが! 私は「それ」を聞きたかったのに「それは何でもいいと思うよ。ピンときた物を取り組めば」とか何とか。分かりにくくてしょうがねえ!」

と、頭を抱えていた。

ユミル「私はそんなでかい夢なんてねえんだよ! とりあえず、生きていけさえすればそれでいい! その為なら、多少犯罪ギリギリの事でもやってやんよ!!! アウトでもバレなきゃいいと思ってる! とにかく金を稼ぎたい!! その手段を聞きたかったのに、あの先生はもうおおおお!」

うーん。これだけ意欲的なら「社長」に相応しいと思うんだが気のせいか?

ミカサ「では、ユミルが好きな事をすればいいのでは?」

ユミル「好きな事?」

ミカサ「そう。ユミル自身が興味を持つ事をすればいい。何か、ないだろうか?」

ユミル「私が興味あるのはクリスタに関する事が殆どだからな……」

ミカサ「では、クリスタを綺麗にする為に化粧品の会社を立ち上げるとかはどうだろう?」

ユミル「………あーそういう事ね。なるほど。それだったら、悪くないかもな」

と、ちょっと落ち着いたようだ。

ユミル「女性に関する会社とかいいかもしれないな。ありがとう。ミカサ。ちょっと取っ掛かりが見えたよ」

と、手を振って去って行った。

ユミル、本気で会社立ち上げる気かな。いやでも、案外やり手だから本当になっちまうかもしれない。

最後はライナーだった。ライナーもまた唸っていたな。

ライナー「いろいろ多すぎて困ったな。適正が有り過ぎるそうだ」

エレン「有り過ぎるって、どれくらい?」

ライナー「まず体力のいる仕事だと『警備員』『警察官』『自衛隊員』『スポーツ選手』『消防士』等だな。ただ『教師』『塾の講師』等の子供と関わる仕事も大丈夫らしい。後は『農業』『漁業』等の体力勝負で地域に根づく仕事も大丈夫らしいが……これだけあると、何を選べばいいのか分からなくなってしまった」

才能が有り過ぎるのも問題だな。

ライナー、オールラウンダータイプだからかえって選ぶのが困るんだよな。

ライナー「じっくり考えるしかないか。選択肢の幅が多い方が悩む事になるが仕方がない」

と言ってライナーも去って行った。

そんな感じで第一回目の進路相談はそれぞれいろんな思いを抱え、無事に終わったのだった。

そして翌週の月曜日。10月27日の体育の日。

その日は天気も良好で、外でテニスの授業をやっていた。

一応、硬式テニスだ。テニヌを思い出しちまうけど。笑ってはいけない。

その日は皆、リヴァイ先生の様子がおかしい事に気づいた。

妙に肌艶が良かった。というか、機嫌が良すぎて気持ち悪い。

常に口元が上がっているし、なんていうか、たまに思い出し笑いをしている。

エレン「……………」

あー。なんとなく、皆も気づいている。

昨日は第4日曜日だった。確か体操部の活動も月1でお休みの日だ。

中間テストも進路相談も終わったし、ちょっと一息お休みが取れたんだろう。

多分、アレは、やったな。ハンジ先生と。

エレン「あの、リヴァイ先生。今日はご機嫌ですね」

一応、カマをかけてみると、

リヴァイ「ああ。そうだな。すまん。ついつい。にやけてしまってな」

エレン「イイ事でもあったんですか?」

リヴァイ「最高の夜だったよ。昨日は久々に、楽しめた」

と、言い切ったので確信した。やったんだな。遂にやったんだな!

エレン「あー………それはおめでとうございます」

思わず言っちまった。なんか、つい。

リヴァイ「ありがとう。………ふふっ」

やっぱりリヴァイ先生、浮かれている。超浮かれている。

リヴァイ「ハンジがあんなに可愛い女だとは知らなかったな。もっと早く手を出しておけば良かった」

惚気きた!! 授業中だって事、完全に忘れているぜ! リヴァイ先生!!!

エレン「なんか今までと随分変わりましたね。リヴァイ先生」

リヴァイ「自分でもそう思っている。こんな風に浮かれる自分は初めての経験だ」

エレン「ちなみに、どんな感じで迎えたんですか?」

参考までに聞いておこう。ミカサとの、予習の為に!

リヴァイ「スイートホテル、一泊だけ宿泊してきた。エルヴィンとピクシス先生からの宿泊券のプレゼントを貰ったからな。早速使わせて貰ったよ。そういう豪華な場所で夜を過ごすのは初めてだったらしく、慌てふためくハンジの顔は面白くてな。ついつい、いろいろ苛めてしまったよ」

ドSだ! 今、はっきりとドSの顔をした!

大人の夜だな。すげえ。オレには真似出来ないけど。

リヴァイ「あいつの反応がいちいち新鮮だった。こっちがいろいろ教えてやったらその都度「こんなの知らないよ!」とか「ちょっと待って!」の連続でな。いやはや、追い詰めるのが楽しくてしょうがなかった」

エロ! なんかもう、調教しているようにしか聞こえない。

皆、こっそり会話聞いているみたいで、ぶふっ! と吹いていた。

エレン「まるで調教しているようにしか聞こえないんですが」

リヴァイ「調教? いや、そんな生易しい言葉じゃ足りないな。これからゆっくり10年分のツケを支払わせる。あいつの過去の男達を全て忘れさせてやるくらいに、俺のやり方を仕込むつもりでいる」

うわあああ。ちょっと怖いくらいリヴァイ先生、変態発言しているぞ。

鳥肌が立ってしまった。ここまで凄いといっそ潔いけどな。

とまあ、リヴァイ先生はすげえ浮かれていたけど。

10月29日。生物の授業の時のハンジ先生はリヴァイ先生のような感じではなく……

ハンジ(ぼーっ)

エレン「ハンジ先生?」

ハンジ「はいはい?! 何かな?」

エレン「教科書逆さまに持ってますよ?」

ハンジ「うわああああ!? ごめんねええ?! ぼーっとしてた!」

と、調子が狂っているようだ。

授業はちゃんとやってくれるけど、ちょっとした「間」が出来ると「ぼーっ」としてしまうようで、困っている。

そしてたまに赤くなって、息をついて、思い出しては顔を隠して忙しい。

授業が終わった後、オレはハンジ先生に声をかけた。

エレン「だ、大丈夫ですか?」

ハンジ「うん。今のところは大丈夫。大丈夫だけど……」

エレン「けど?」

ハンジ「いつまでこの状態が続くのかなあ? もう、地に足がつかないような「ふわふわ」な感じがあの日以来、ずっと続いているんだよね。ねえ、これが「トキメキ」ってやつなのだとしたら、君達、よほど心臓が強いんだね……」

エレン「まあ、そうですね。でもオレ達も、そんなもんですよ? ハンジ先生」

ミカサ「確かに。しょっちゅう、ふわふわします……ので」

ハンジ「そうなんだー凄いねえ。君たちの方が若いのに。こういうの、先に経験していたんだね。予想以上に、とんでもない経験だよー」

と、うるうるするハンジ先生だった。

ハンジ「リヴァイとの初エッチ、6時間もかけられるとは思わなかったよー。今まで経験したものが全部、馬鹿みたいに思えるよー」

エレン「ろ、6時間って?!」

長げえええ! え、そんなに時間かかるもんなのか?! 1~2時間くらいのイメージだったんだけど

ハンジ「うん。全部でそれくらい。勿論、途中で休憩込みだけど。いろいろ凄かったんだよ……」

ミカサ「本当、エロ親父……やっぱり変態教師だったか」

まあ、ミカサは最初からそう言っていたな。当たっていたんだな。アレ。

ハンジ先生は顔を隠して俯いてしまった。

ハンジ「恥ずかしいよーいつまでこんな状態続くのかなー怖いよー」

と、その時、昼休みになってリヴァイ先生が生物室に来た。

リヴァイ「ハンジ。一緒に昼飯食うぞ」

ハンジ「はいいいいいい! (ドキーン☆)」

リヴァイ「何、そんなにおっかなびっくりしてやがる。そんなに俺が怖いのか? (ニヤリ)」

ハンジ「滅相もございません! いや、本当、大丈夫だから! その……ああああああ!?」

無理やり引っ張られて生物室の外に連れて行かれた。

どうやら2人は一緒にお昼を食べるらしいが…。

まさかとは思うけど、リヴァイ先生、昼休みとかも学校でやったりしてねえよな?

一瞬、そう思ったけど。あえて突っ込むことは止めておいた。……当たっていたら怖いからだ。

そんな感じで、10月は文化祭やら中間テストやら、進路相談やらでバタバタして終わっていった。

11月になると少し生活も落ち着いてきたので、そろそろミカサに打診してみる。

エレン「ミカサ」

ミカサ「何?」

エレン「そろそろ、オレ達、初デート、しないか?」

ミカサ「する!」

即答するミカサにオレは微笑んだ。ま、オレ達はオレ達のペースでいかないとな。

そんな風に思いながら、お互いにニヤッと笑ったのだった。

という訳で、リヴァイ×ハンジは無事にゴールしました。
今日はここまでにします。次回はエレンとミカサの山登りデートだ!

リヴァハン長かったからそろそろエレミカがみたい

>>192
お待たせしてすみません。デート編でがっつりいきますよ(笑)









11月2日。日曜日。その日は晴天だった。

気候も真夏のような暑さはなく、だんだん涼しくなってくるこの季節。

紅葉も色づいてきて、山登りには最適な季節になった。

オレとミカサは初めてのデートに「山登り」を選択した。

女の趣味にある程度合わせた方がいいという、リヴァイ先生の特別授業を参考にする事にしたのだ。

山登りをするのは初めての経験、という訳でもないが、相当久しぶりだった。

確か、小学五年生の頃、「少年自然の家」とかいうイベントがあって、皆で山登りした以来じゃねえかな。

なので山登りに必要な物とかはミカサと一緒に話し合って装備を大体決めた。

今回登る山は初心者向きのもので、駅から1時間半くらいで着く近場の山を選んだ。

朝の6時には家を出発して、8時頃にその山のスタート地点に着くと、そこには結構、いろんな人達が集まっていた。

エレン「おおおお……やっぱり行楽シーズンなだけあって、結構、人がいるな」

若いカップルだけでなく、熟年の夫婦や家族連れなどもいた。

皆、似たような格好でわいわい言いながら山に登ろうとしている。

今日は山登りが目的なので、オレの服装もそれに合わせた長袖長ズボン。あと帽子をかぶっている。

勿論、ミカサも似たような格好だ。白い長そでのTシャツにジーンズ姿だけど、ミカサは足なげえから、すげえ似合っている。

ミカサ「まずは参拝コースを歩いてみよう。エレン」

エレン「おう!」

神宮参道を歩くのんびり参拝コース。というものがあって、今回はまずそれをなぞってみる事にした。

銅鳥居をスタートして、神宮奉幣殿までの石段の参道をのんびり歩いて登るコースとあったので、初心者には向いているだろう。

参道の周辺には沢山の坊舎跡や名所が見られるとも案内にあったので、楽しみだ。

歩いてすぐ、財蔵坊と呼ばれる民俗文化財を見る事が出来た。内部を見れるのは土日だけとあったが、時間が午前10時からとあったので、中を見る事は出来なかったが、山伏が生活した当時のままの姿を残しているその建物を見て、ミカサは「おおお」と感嘆の声をあげていた。

ミカサ「すごい。古い建物がそのまま残っている」

エレン「歴史を感じるよなー」

と、まるで修学旅行に来た時のようなノリで感心しながら歩いていく。

次は庭園を見た。旧亀石坊庭園と呼ばれるそこを見たり、山道の歴史館みたいなところも有ったけど、博物館関連はやっぱりまだ開いてなかった。来るのが早すぎたみたいだ。

そして最後は神宮奉幣殿にたどり着いた。この山の中心的な建物で、朱塗りの柱が目を引く大きな建物だった。

国の指定重要文化財なんだそうだ。結構、格好いい。

やっぱりこういうところに来たからには拝まないとな。

御賽銭入れて、手を合わせてみる。何を報告するかな。

んー。進路を早めに決めたいので、どの職業が一番いいか教えて下さい!

………なんてな。まあ、他力本願な願掛けをしてみる。

いや、本気で言ってる訳じゃねえよ? こう、ヒントくれ! くらいのノリだ。

ミカサ「よし! エレン、ここから本番」

エレン「だな」

次はここから山頂まで登っていくコースだ。時間にして大体、75~90分くらい歩くコースになるらしい。

神宮奉幣殿から中岳に向けて出発する。下宮を通過して、杉木立の中、石段を登っていく。

エレン「ほ! ほ! ほ!」

ミカサ「エレン、飛ばし過ぎると後で疲れる」

エレン「わり! テンション上がってきたからさ!」

と、石段をぴょんぴょん飛びながら先を行く。空気がうめえな。自然の中はやっぱりいいな!

そして20分くらい登ると、一の岳展望台が見えた。ここで小休止出来るみたいだ。

エレン「どうする? 一回休憩するか?」

ミカサ「うん。ちょっと水を飲もう」

という訳で小休止。慌てる必要はないからな。ゆっくり行くぜ。

ミカサ「ふう……(お茶飲んでいる)」

リラックスモードのミカサが超可愛い。こう、ほっとするよな。

ミカサ「な、なに…? (ドキッ)」

エレン「いや、可愛いなーと思って見てた」

ミカサ「んもう……(照れる)」

あーもう、いいな! こういうの! デート最高!!

展望台からの景色も最高だった。晴れて良かったぜ。

自然の中にいると、気持ちも落ち着いてくる。こう、すかっとする感じだ。

展望台にはオレ達以外の人も小休止しているので、あまり露骨なイチャイチャは出来ないが、山頂についたらミカサと少しくらい、エッチな事もしていいよな? ダメかな?

とか思いながら景色を眺めていたら、ミカサもこっちを見て、

ミカサ「エレン、そろそろ行こう」

エレン「おう!」

5分くらい休憩して再開。杉木立の中をまたずんずん登っていく。

あ、途中でベンチもあった。やっぱり休憩所は適度に備えられているようだ。

でもオレ達はベンチはスルーして(というか先客がいたので)先に進んだ。

鎖を使って登る箇所があった。ミカサを先に行かせて、お尻を持ち上げてやる。

ミカサ「ひゃん! んもう、エレン……!」

エレン「いや、落ちない様にと思ってな」

ミカサ「いきなり触られるとびっくりする……」

エレン「悪い悪い(ニタニタ)」

ミカサ「んもう……(赤面)」

とまあ、そういう事もやりながら、先に進む。

中津宮を通過した。大体目安通りに登れているかな。45分くらいでここまで来た。

今度は下りの道だ。こけないように注意しながら先を行く。

再び石段の道が開けてきた。よいしょ。どんどん登っていくぞ。

産霊(ムスビ)神社に到着した。ここまでで75分。大体予定通りだ。

水場があったので、そこで水も頂く事にした。冷たい水が超気持ちいい!

先を行くと、上宮が見えてきたぞ! あともうちょっとだ!

上宮中岳山頂に着いた。ここまでで90分くらいだ。

山頂の広場に着いた。やったー! 予定通り着いたぞー!

ミカサ「着いた……」

エレン「おう! 着いたな! 到着だ!」

ミカサ「結構、意外と人がいる」

エレン「みたいだな。この山、結構人気あるんじゃねえの?」

ミカサ「かもしれない。初心者向きの山登りに案内されているだけはある」

エレン「記念写真撮ろうぜ! ほら、ミカサ! よってよって!」

と、言ってオレ達は広場で(ガラケーだけど)記念撮影した。

エレン「今、何時だ?11:00くらいか。9:30分くらいから出発したからそんなもんか」

ミカサ「少し早いけど、お昼にする?」

エレン「そうだな! 昼飯食おうぜ♪」

お楽しみの昼飯時間だ! やっほーい!

ミカサ「おにぎりとか、卵焼きとか、ハンバーグとか、お煮しめとか」

エレン「基本の弁当きたー! ありがとうな! ミカサ!」

ミカサ「では、手を拭いて……(おしぼり持参)」

エレン「(吹き拭き)いっただきまーす!」

ミカサ「頂きます」

もぐもぐもぐもぐ。うめええええ! 超うめええええ!

なんだこれ?! いつもにも増して飯が超うめええええ!

やっぱり自然の中で食ってるせいかな。空気もうまいし、運動した後だし。

余計にそう感じて、ミカサも頷いている。

ミカサ「ね? 贅沢なデートになった」

エレン「ああ! ミカサの言ってる意味が分かったぜ! こりゃ贅沢だな!」

飯がうまく食えるっていうのは、最高だよな! 本当に!

持参した水とかお茶も適度に飲みながら、オレは腹いっぱい飯をかきこんじまった。

エレン「美味かった! 超美味かった! これは本当に、いいデートだな!」

ミカサ「うん。私もお弁当を作った甲斐があった」

エレン「ありがとうな。いつも、本当にありがてえよ。ミカサ」

ミカサ「うん……どういたしまして」

うるうるしているミカサが超可愛い。

ああもう、周りに人いなければ、ここで押し倒してキスしてハグして一気にやっちまうぞ! 外だけど!!

でも自重する。例の誓約書の件、まだ解決していないからな。

エレン「そうだ。ミカサ、例の誓約書の件なんだけどさ」

ミカサ「うん」

エレン「エルヴィン先生曰く「親父の謎かけ」って言っていたけど、どう思う?」

ミカサ「んー……」

エレン「オレ、そういうのあんまり得意じゃねえからさ。ミカサの考えを先に聞きたいんだ」

ミカサ「文章を、そのままあえて、捉えるとすれば、だけど」

と、前置きをして言った。

ミカサ「エレンからの接触はダメで、私からの接触がOKだと仮定すれば、もしかしたら、やっていい事を制限しているのかもしれない」

エレン「やっていい事を制限?」

ミカサ「うーん。例えば、エレンのアレを、私の口でその……するのまではOKとか?」

ぶふううううううう!

危うくお茶零しかけた。ミカサ! オブラートに包み切れてねえぞ!

真っ赤になってオレは答えた。

エレン「いや、まあ、確かにそれは文面上は違反じゃねえけどさ。そんな事されたら、オレ、理性吹っ飛ぶぞ? 無理だぞ? 一気に最後までやっちまうぞ?」

ミカサ「やっぱり無理?」

エレン「多分、無理だと思うぜ。いや、ミカサがどうしてもやりたいって言うなら、我慢してやらなくもねえけど」

ミカサ「じゃあしよう(キリッ)」

エレン「即答かよ! え? 何、ミカサ、抵抗ねえの? そういうの?」

ミカサ「むしろしたくて堪らない(キリッ)」

エレン「そうなのか……いや、意外だったな。なんかそういうのって、あんまり女の方からしたがらねえイメージがあったからさ」

ミカサ「そうなの?」

エレン「んーそういうエロ本ばっか見てきたせいかな。嫌々やらされている奴とかの方が多いもんな」

まあ、その嫌そうな顔がかえってそそるという事情もあるんだろうけどな。

ミカサ「エロ本? (ぴくっ)エレン、エロ本を所持しているの?」

エレン「うぐっ……!」

しまった! 墓穴掘った!! 言うんじゃなかった!

ミカサ「エレン、どんなエロ本を見ているの? どういうのが趣味なの? (ゴゴゴ)」

エレン「お、怒るなよ!! アルミンから貰った奴とかだよ!! 中古本だから! アルミンが置く場所困るからって、引き取っただけだけだから!」

ミカサ「本当に? 本当にそうなの? <●><●>」

いかん! また例の目つきになってオレに迫ってくる! 話逸らさないと。

ええっと、リヴァイ先生の特別授業だと『機嫌悪い時は甘いもの』食わせろだったな。

あ、チロルチョコが確かあった筈! よし、ミカサの口に押し込もう!

ぐい!

咄嗟にポケットのチロルチョコを取り出して封をあけてミカサの口の中に押し込んだ。

ミカサ「!」

エレン「イライラしたらダメだろ? チョコでも食って機嫌なおせ」

ミカサ(もぐもぐ)

あ、ちょっと顔色が良くなった。すげえ! さすがリヴァイ先生だ!

特別授業を前もって聞いていて正解だったぜ!

ミカサ(ごっくん)

ミカサ「…………誤魔化されたような気がする」

エレン「あんまり気にするな! とにかく、その……オレとしては、そりゃあやって貰えたら嬉しい限りだけど、そこまでで自重出来るかが、自信はねえかな」

ミカサ「そう……(シュン)」

エレン「なんていうか、こういうのって「ここまで」って決めてやろうとしても、そこまでで済まない気がするんだよ。そういうスイッチが入ってしまうと、オレ、どんどん調子に乗っちまうからさ」

ミカサ「それは私も同じかもしれない」

エレン「だろ? だから、多分、それは違うような気もするんだ。答えが微妙に違うような……」

ミカサ「では、誓約書を交わした「理由」から推理してみよう」

と、ミカサが言い出した。

ミカサ「おじさんは恐らく「私とエレンの間にうっかり子供を作らせない為」にこの誓約書を誓わせたと思う」

エレン「そうだな。そこを一番、親父は心配していたからな」

ミカサ「でも、今の避妊具は性能がいいと言われているので、よほどのドジをしない限りは、ちゃんと使いさえすれば妊娠はしないと思う」

エレン「だよなあ。不良品を使わない限りは多分、大丈夫だと思うんだけどなあ」

ミカサ「私もそう思う。それこそ、何万分の1の確率の話だけで、こんな誓約書を作らないと思う」

エレン「つまり、妊娠の問題だけじゃねえって事なのかな」

ミカサ「恐らくそうだと思う。そもそも妊娠させない為なら、枷は私にも及ぶ筈」

エレン「そうだよなあ。意味ないんだよな。オレだけだと」

あー分からん。親父は一体、何が言いたいんだろう?

ミカサ「エレンからの接触はダメで、私からの接触はOKだと考えるとすれば、それはまるで私の方が主導権を握るような話のように思える」

エレン「あ、まあ……そうなるな。ん? 主導権……」

主導権。なんか、その言葉を聞いた瞬間、ちょっと思い出した。

リヴァイ先生の特別授業だ。

リヴァイ『焦るなよ。焦ったら負けだと思え。若いうちはガンガンやりたくなる気持ちは俺も分かるが、女の体は男が思っている以上に傷つきやすい。やり過ぎて、病院に通う羽目になった女子生徒も多数知っている。勿論、中絶も含めてだ。やりたいだけなら、せめて年上の経験の豊富な女を選べ。同年代でやる場合は、特に経験値ねえんだから、女の方に出来るだけ合わせてやれよ』

これって、つまり。まさか。そういう意味だったのか?

ミカサ「エレン……? どうしたの?」

エレン「あ、いや……もしかして、だけどさ」

オレの中で仮説が組立て上がっていく。間違っているかもしれないけど、今はこれしか思い浮かばない。

エレン「親父、もしかして、セックスの主導権をミカサに握らせたかったんじゃねえのかな」

ミカサ「え……?」

エレン「今、ミカサが言った通りの意味かもしれねえ。多分、きっとそうなんじゃねえかな」

思い出せ。何故親父があれだけキレたのかを。

あの時の状況を。墓の前での出来事を。

エレン「親父はもしかして、オレの方が強引に、ミカサにキスするところばっかり見ているから、ミカサの方の気持ちを心配しているのかもしれねえ」

ミカサ「え? え? どういう事?」

エレン「つまり、ミカサがオレに「流されて」付き合っているんじゃねえかって、心配しているんだよ。きっと」

ミカサ「ええええええ!? (ガーン)」

ミカサが凄い顔になった。凄くショックを受けているようだ。

ミカサ「そ、そんな事ないのに。私は、エレンが大好きなのに……(涙目)」

エレン「いや、でも、誤解している可能性は十分にあるぞ。親父、オレの方からキスするところばっかり見ているような気がするし、オレの方から告白したって言ったし、ミカサの気持ちがどの程度なのか、測っていたんじゃねえかな」

ミカサ「だとすれば、つまりセックスのサイクルを決める決定権を私に委ねている…と?」

エレン「かもしれない。いや、本当にそうなのかは、まだ分かんねえけど。でも、そう考えれば誓約書の意味が通じる気がするんだ」

オレの方から接触してはいけない。

でも、ミカサからならの接触はOKだと仮定すれば。

その意味は、それ以外にあり得ない気がする。

ミカサ「では、もしかしたら、「危険日」を避けてやれば、セックスをしてもいいっていう意味なのかしら」

エレン「え?」

ミカサ「そう考えれば辻褄が合う気がする。もしもエレンに主導権を渡せば、私はそういう時でも、求められたらきっと、うっかり応えてしまう。でも、エレンの側からは女の生理のサイクルは分からない。そこをコントロール出来るのは、女の私しかいない」

エレン「つまり、妊娠しづらい時期であれば、所謂「安全日」って呼ばれる期間であれば……」

ミカサ「や、やってもいい……?」

お互いに、その答えにたどり着いて、手を握り合った。

エレン「多分、それだ!!! 親父はそれに気づかせる為に、謎かけみたいな事をしたのか!!」

ミカサ「エレン、家に帰ったらおじさんと答え合わせしよう!」

エレン「ああ、そうだな! あーなるほどな! 何か分かった気がするぜ!!」

回りくどい方法で縛った理由も分かった気がする。

つまり、オレの方が我慢している状態で、ミカサの方が我慢出来なくなった時に、その意味が伝わる様に。

ようやくオレ達の「枷」が1個外れるように、誓約書をかわさせたんだ。きっと。

エレン「くっそおおおお親父めええええ!」

なんかこう、踊らされたような気持ちもなくもないが。親父らしいやり口だと思った。

親父には一生敵わない気がする。こういうところ、本当すげえよ。

ミカサ「では私は明日から基礎体温計で基礎体温を測らないといけない」

エレン「ん? なんだそれ」

ミカサ「そういう道具がある。女のリズムを測る道具。ちょっと面倒臭いけれど、それがあれば、妊娠しやすい時期としづらい時期を大体把握する事が出来る」

エレン「そうなのか」

ミカサ「ただ、データを採る為には一月から二月程度の情報が必要なので、すぐには結果が出ない。生理のリズムだけで計算する事も出来なくはないけど、正確な情報が知りたいのであれば、やはり基礎体温は調べるべき」

エレン「おう。なんかその辺はミカサに任せるぞ」

ミカサ「うん。任せて欲しい。早ければ、12月以降にはリズムが掴めると思う」

エレン「じゃあ、来年になれば、オレ達、出来るのかもしれないのか」

ミカサ「かもしれない。勿論、おじさんに確認した上での話だけど」

よしゃああああああ! これで一歩前進だ!!!!

暗闇が晴れてきたような気がした。ああもう、早くうちに帰って親父に直接確認してえええ!!

ミカサ「でも、今日は確かおじさん、お仕事……」

エレン「あ、そうだった。なんか出張行ってるって言ってたな」

親父は医者だから、医学関係の発表会とか研究会とかの出張で全国あちこち出かける時もある。

今日と明日は家にいないんだ。だからすぐには確認出来ない。

電話で言うのもアレだしな。仕事邪魔する訳にはいかないし。待つか。

エレン「あーもう、うずうずするけどしょうがねえか」

ミカサ「うん。しょうがない」

エレン「まあでも、こういうの、わくわくして待っている時間っていうのも大事だよな」

きっと。階段を登っていくように。一個ずつ。

問題をクリアしていく事が、きっと大事なんだと思うんだ。

ミカサ「うん。焦る必要はない。私はずっと、エレンの隣にいる」

エレン「………」

やべえ。うるっとくるだろうが! そんな事言われたら!

あーもう。これから先、どうしようかな。

エッチの件はまあ、1歩前進したとはいえ、まだ進路の事、決めてねえし。

ミカサはオレと同じ道を行くと言っている。

だったら、オレ自身がミカサにどうなって欲しいのか。考えないと。

消防士は……もし万が一、ミカサが火傷したら嫌だから没だな。

自衛隊員は……似合いそうだな。隊服。でも確か、自衛隊員って全国を回るんだよな。

勤務先次第では遠距離恋愛になっちまう可能性もあるよな。それはちょっときついかもしれない。

レスキュー隊……悪くはねえと思う。そういうの、オレ、向いてるらしいし。

最後に医者。

エレン「……………」

イメージした瞬間、びびっときてしまった。

白衣を着て、聴診器持って、診察するミカサを想像して、正直、きた。

萌えてしまった。レスキュー隊も悪くはねえんだけど。

女医っていう響きに、オレの心は躍ってしまって、その……。

馬鹿だと思うけど、正直言って、アホだとは思うけど。

進路の中で一番、ミカサになって欲しい職業は「女医」だった。

エレン「……………」

こういう決め方って、本当は良くねえかもしれない。

だけど、男って、案外単純に出来ている生物で。

エレン「ミカサ、あのさ……」

ミカサ「何?」

エレン「オレ、もしかしたら、無理かもしれないけどさ……」

無謀かもしれない。やめとけって止める理性の声も聞こえるけど。

オレの本能は「女医」を選んだ。ああ貶すがいい。むしろ本望だ。

女医の姿になったミカサを、オレは見てみたい。

だから。

エレン「医者の道、チャレンジしてみてえかも……」

ミカサ「医者? おじさんの跡を継ぐの?」

エレン「出来るんだったらな。ミカサも、一緒に医者の道、進んでみるか?」

ミカサ「エレンがその道を進むのであれば、私は何処でもついていく」

微笑んだ、ミカサの顔がとても綺麗で。

オレも一緒に微笑んだ。

エレン「正直、無理かもしれないけどな。でも、オレ、やるだけ、やってみるよ」

ミカサ「うん。一緒に頑張ろう。エレン」

と、言ってオレ達はじっと見つめ合った。

熱っぽい視線を交わして、唇が近づく。その刹那……

ハンナ「すごくきれいな場所だねー来てみて良かったね。フランツ」

フランツ「ああ。綺麗だね……ハンナ」

見知った声が聞こえてびっくりした。そっちの方を振り向くと、

うおおおお何だ?! フランツとハンナも山登りデートしに来たのか。

え? でも、フランツって野球部じゃねえ? いいのかサボって。練習大丈夫なのか?

ハンナ「うん。たまには気分転換した方がいいよ。思いつめると良くないって」

フランツ「ありがとう……ハンナ」

ハンナ「いいよ。で、話したい事って、何?」

フランツ「………」

何だ。顔が赤いぞ。まさか……

フランツ「あの……ハンナ。単刀直入に、言うけど」

ハンナ「うん」

フランツ「つきあって、くれないかな。僕と」

ハンナ「え?」

フランツ「だから、その……おつきあいして下さい!」

ハンナ「いいの? でも、野球部、大変だって…」

フランツ「ハンナの応援があれば頑張れる気がするんだ。だから……」

ハンナ「本当に、私でイイの?」

フランツ「ハンナじゃないと、ダメなんだ!」

ハンナ「フランツ! (がばっ!)」

おおおっと?! 山の山頂で告白かよ! 何で遭遇しちまったオレ?!

ミカサ「おおお……ここはデートスポットでもあると書いてあっただけはある」

エレン「そうなのか?」

ミカサ「うん……でもまさかこんなところで2人に遭遇するとは思わなかった」

エレン「オレもだよ。いつの間にあいつら、そういう事になっていたんだ?」

ミカサ「委員会、ではないだろうか。2人は同じ委員に所属していた気がする」

エレン「そうだったっけ? まあ、接点があるならそうなったのも頷けるか」

2人はくっついたばかりで人目も憚らずイチャイチャし始めた。

おおおおおい。ちゅっちゅすんなー。周り見ろー。

人の事は言えないけど。アレだ。人がおっぱじめると、何かアレだな。

自分の事は棚に上げたくなるのが不思議だよな。

まあいいや。あっちの馬鹿夫婦は放置しよう。今は自分の事を優先だ。

エレン「そろそろ、下るか? 天気、夕方から崩れるかもって予報で言ってたし。長居はしない方がいいだろ」

ミカサ「うん。そろそろ下ろう」

という訳で、フランツとハンナには声をあえてかけず、オレ達は先に山を下る事にした。

同じ道を下るだけだから道に迷う事はなかったけど、急に雲の様子が怪しくなってきた。

エレン「やべ……予報より早く雨、きそうだな」

ミカサ「少し急ぐ?」

エレン「だな」

という訳で、ちょっと早歩きで下っていると、


ザーザーザー


あともうちょっとってところで雨が降り出してしまった。

エレン「あーもう、運がない」

ミカサ「エレン。展望台で雨宿りしよう」

エレン「そうだなー」

軽く濡れた服をタオルで拭いて雨宿りする。

人の気配はなかった。恐らく、他の人は山頂か別の場所で雨宿りをしているんだろう。

エレン「…………」

雨で少し体が濡れたせいか少し寒そうだ。

ミカサが一回だけ小さなくしゃみをした。

エレン「大丈夫か?」

ミカサ「大丈夫。ちょっと寒いけど」

エレン「………」

ごくり。生唾を飲み込んだ。

人が来たらまずいけど。でも、ミカサの手が少し冷たかったから。

だから。

オレはミカサを自分の方に引き寄せて、服の上から、ミカサの体にそっと触れた。

ミカサ「え、エレン……(びくん)」

エレン「寒くないか? 少し、体冷えてるぞ」

ミカサ「これくらい平気……(ぽやーん)」

ミカサがうっとりしているのが分かる。

雨は、通り雨なのかどうか分からないけど、まだ降り続けている。

小雨になるまではここで休憩するしかない。

その時、オレはまた、リヴァイ先生の特別授業を思い出した。


『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』


それを思い出した瞬間、オレの中で、せき止めていた何かが外れた音がした。

雨が止むまででいい。ミカサの体を温めてあげる為に。

自分に言い訳しながら、これは、そういう意味じゃないって、言い聞かせながら。

自分に嘘をつきながら、オレはゆっくりと、ミカサの体に触れた。

ミカサ「エレン? その……」

エレン「寒くねえように、触るだけだ。大丈夫」

ミカサ「うん……」

嘘だけどな。でも、その嘘にミカサも気づいている。

服の上から、触るだけだ。ゆっくりと、ただ、それだけ。

エレン「擦るだけだ。こうすれば、寒くねえだろ」

ミカサ「う、うん……あっ……」

ビクン……

跳ねる身体が感じている事を表す。ミカサ、やっぱり相当敏感なんだな。

腰の周りと、脇腹の辺りを中心に手を動かして、優しく撫でるだけなのに。

太ももとかも、服の上から触ってみる。少しだけ湿っているのは、通り雨に濡れたからだ。

だけど、その湿り気が余計に興奮を呼んで、オレは、太ももの内側にも指を入れた。

ミカサ「あ……ああ……」

2人の荷物はとっくに床に置いている。

触るだけなのに。ミカサの顔がどんどん、赤くなっていく。染まっていく。

ヤバい。楽しい。すげえ楽しい。

でも我慢だ。服の上から触るだけだ。それ以上の事は、しない。

本番は1時間以上もこれ、やるんだよな。すげえ耐久レースな気がするけど。

辛いけど、それをやりたくなる気持ちも分かる。触るだけで十分、ミカサ、感じてくれているんだ。

ミカサ「ああっ……エレン……ん……」

両目を閉じてくたっと力が抜けていくミカサにオレはキスをしてしまった。

あれ? ちょっと待って。ええっと。

いかん。キスはするつもりなかったのに。あれ? 体が勝手に。

ミカサ「ん……は……はああっ……」

まずい。ミカサの感じ方がどんどん、本格的になってきている気がする。

舌を絡ませると、唾液が零れた。人の気配は、まだない。

雨の音を聞きながら、オレ達は展望台の中で、静かな行為に耽っていった。

誰も来ない。雨降ってるせいかな。でも、人が来ても良さそうなのに。

来るかもしれない。見られるかもしれない。その予感があるのに。

ゾクゾクした。その背徳感が余計に、背中から、押してくる気がして。

いかん。ダメだ。これ以上、触ったら。

でも、ミカサの汗の匂いとか。運動したての、匂いが鼻腔をくすぐって、捉えて離さない。

ミカサから発するフェロモンみたいなものにまとわりついて、オレはどんどん、自分の手を動かしていった。

ミカサ「あああっ……ん……」

声、出さない様に必死にかみ殺しているのが、かえってそそる。

手をミカサの背中の方に回して、オレは尻の方にも手をのばした。

服はまだ脱がせてないんだけどな。服の上からでも、感じ過ぎだろ。ミカサ。

ミカサの両腕がオレの背中に回ってきた。ぐっと、離さないと言わんばかりに。

固定されてしまった。オレも抜け出せない。唇が、ミカサの鎖骨に当たる。

汗が溜まっていたから吸い上げた。ちゅるっと、舌を使って舐めてみる。

塩味が少しだけした。でも、美味しいって思っちまう。

脇腹とか、擦っていたら、ブラジャーらしき感触が分かった。

外したい。ホックどこだ。服の上からでも外せないかな。

あった。これだな。あ、なんかもう、大分、緩んでいる。これは、いけるか?

ふわっと。した感じがあった。あ、今、拍子でうっかり外れたみたいだ。

ミカサが大きく息を吸い込んだ。胸の感触がより鮮明に分かった。

白いTシャツだから、下着が透けて見える。エロい。もう、ダメだ。

手をシャツの中に入れる。胸に直接触れてみる。ミカサは全然抵抗しない。

以前、「抵抗しちゃったら怪我させるかもしれない」とか言っていたのが嘘のようだ。

あれは杞憂だったんだな。今のミカサは、オレに全てを委ねている。

胸の突起を探した。あった。そこに微かに触れると、ミカサの体が大きく跳ねた。

ミカサ「あああっ……」

両足が、もじもじし始めたのが分かった。でも、足は閉じたままだ。

まだ開けなくていい。オレは完全にミカサに覆い被さって、両目を閉じた。

雨音は、まだ止まない。人の気配も来ない。誰も止めに来ない。

ドキドキする。誰かにバレるかもしれねえってのに。オレは。

中指の腹の部分で、胸の突起に、そっと触れてみたんだ。

ミカサ「はああ……ああっ」

ミカサの声がだんだん大きくなってきた。これ以上、喘がせるとまずい。

だからつい、またキスをして、声を出させないようにして、胸を触った。

何だよこれ。まずいって。こんなの、楽し過ぎるだろ。

痙攣しているのが分かる。ビクビク震えている。もっと、もっと触りたい。

胸の突起を抓ってみた。軽く、だけど。

すると、ミカサがもっと力が抜けたのが分かった。

ふにゃふにゃになっていくのが分かる。

ミカサ「え、エレン……あっ……ダメ……なんか、くる……」

エレン「え?」

ミカサ「それ以上、したら、私……ああ……あああああっ!!!」

一度、大きくバウンドしたのが分かった。え? まさか、まさか?!

ミカサがぐったりして気を失った。え? 本当に? 今の刺激で、イったのか?!

早くねえか? え? 予想していたより早い展開で、オレは困惑した。

でも一応確認して見たくて、ミカサの下着をちょいと確認させて貰う。

エレン「!」

すげえ、濡れていた。なんていうか、指にまとわりつくくらいに。糸がひいてやばい。

えっと、これって、もしかして、アレなのか。

ミカサは、リヴァイ先生の言っていた2種類のタイプの女の「クイック」側の女だっていう事で間違いないのかな。

つまり、普通の女より濡れやすい体質って事でいいのかな。

いや、そうだよな。きっとそうだ。多分、そうだ。

これだけの短い時間でイク感覚を味わったんだから、きっとそうだよな。

ミカサが起きない。気を失って、動けないでいる。

オレの息子も準備万端過ぎて困り果てているけど。

雨はまだ止まない。今、ここに避妊具がある訳じゃないし、これ以上は今日は勿論、無理だけど。

しょうがねえ。眠ってるミカサをオカズに全部一気に出してしまおう。

エレン「っていうか、オレ、ダメだろ」

親父に確認してから手出すつもりだったのに、結局、約束、破っちまったな…。

いや、まあ、今日の事は黙っていればバレないとは思うけど。

自己嫌悪に陥る。いかん。早いところ、親父に確認しないと、取り返しのつかない事をやらかしそうな気がする。

自分の息子の方の処理を済ませると、ようやく雨音が止んできた。

人の気配が復活してきた。危なかった。ミカサが速くイッたおかげで助かったけど。

もっと盛り上がっていたら登山客にモロバレしていたところだった。

ミカサ「は…!」

短い時間、気を失っていたミカサが目を覚ました。

ミカサ「わ、私は何を……(赤面)」

エレン「ごめん、ミカサ……」

ミカサ「エレン……」

エレン「こんなに一杯触るつもりはなかったんだけど、やってるうちに、加減が効かなくなってきて、つい」

ミカサ「ううん。大丈夫…それは大丈夫だけど……(赤面)」

ミカサはもじもじしながら言った。

ミカサ「下着、濡れてしまったので、着替えていいだろうか。着替えは持って来ているので」

エレン「あ、あああ……もちろんだ」

オレはミカサを見ないようにして、外の奴らに見せない様に大きなタオルを壁にしてやった。

そして下着を取り換えたミカサは言った。

ミカサ「どんどん酷くなっている……」

エレン「え?」

ミカサ「私、濡れるのが早いみたいで、すぐこうなるの。ごめんなさい……」

エレン「あ、いや…別に謝る事じゃねえよ。っていうか、立てるか?」

ミカサ「ふ、ふらふらする……」

エレン「少し休んでいくか。ごめんな。ついつい」

ミカサ「大丈夫。大丈夫……(赤面)」

と、言ってミカサは少し俯いて、

ミカサ「今日の事は、おじさんには内緒にしよう」

エレン「そうだな。内緒にしねえといけねえな」

罪悪感はあるけど。でも、やっちまったもんは仕方がねえか。

ミカサ「出来るだけ早いうちに誓約書の件を確認しよう。でないと、私もいろいろ辛い……」

と、ちょっとだけ涙ぐむミカサに、オレはよしよしと頭を撫でてやった。

そんな訳で、オレ達の初デートはその、うっかり、一歩進んでしまったけど。

オレ達にとって、そろそろ限界が近づいているのもひしひしと感じてしまった。

もう、いい加減に一つになりたいと、体が訴えているんだ。

親父が心配するのも分かるけど。でも、だからといってこのままでイイ訳がない。

そんな複雑な思いを抱えながら、オレ達はゆっくりと下山した。

苦い思いを抱えながらだけど、でも。

オレとミカサはお互いに手をしっかり握り合い、その手を離す事は決してなかったのだった。

リヴァイ×ハンジとは全く逆の状態に陥っているエレン×ミカサでした。

エレンが遂に約束破り始めちゃったよ。バレたらやばいよ!?
というところで続きます。ではまたノシ






ミカサが白衣を着ていた。ちょっと大人っぽい。

ミカサ『はい、エレン君。調子はどうですかー?』

おおお。なんか凄く子供目線で話しかけて来た。ん?

つーか、オレ、子供の姿になっている?! え? 小さくなってるぞ?!

あ、これ、夢か! 身体は子供、頭脳は大人のアレの状態になっているようだ。

エレン『はーい! 元気です!』

ミカサ『うん。じゃあ、お口開けてね』

おおおお。なんかこういうの、久々だな。あーん。

腹とか触診されてこそばゆかった。ミカサ、小児科の女医になっているのか。

いいなあ。いいなあ。似合ってる。すげえ可愛い。

デレデレしていたら、今度は別のオレが出て来た。

エレン2『ミカサ先生ー! 抱っこー!』

ミカサ『えええ?』

エレン3『オレもオレもー!』

ミカサ『んもうーわんぱくねえ』

と、言って、オレと同じ顔した小さなオレが集団にミカサ先生にタックルかまして押し倒した。

皆、好き勝手にミカサの上に乗って、キャッキャ言って遊んでいる。

あーもう。オレ、ちょっと自重しろよ。気持ち分かるけどさ。

ミカサ『あん! もう、そこは、触っちゃダメよ。あん!』

と、時々甘い声をあげてくねくねしている。

ああああ! もう一人の小さいオレ達がおっぱい揉みまくってるぞ! けしからん!

エレン2『えへへ~おっぱいもみもみ~』

エレン3『おっぱい、大きいね~ミカサ先生!』

ミカサ『こら! もう、そんなに触っちゃダメだって言ってるでしょ? あん……ああっ』

おいおい。ちょっと待て。何か、え?

こらあああ! 子供の悪戯の度合いを越えて来てるぞ!

もう一人のオレ達がどんどん増えて来て、ミカサの上に乗りかかって好き勝手に触り始めているんだ。

エレン『おい、やめろよ! ミカサ……先生、嫌がってるだろうが!』

エレン2『嫌がってないよ。気持ちいいよね? ミカサ先生』

ミカサ『い、嫌がってるのになあ…もう…(赤面)』

いや、嫌がっているように見えないのは分かるけど。こっちも照れるけど。

待て待て待て。こら、白衣脱がすな! もう一人のオレ達!!

エレン3『おっぱい吸っていい?』

エレン4『おっぱいすいたーい!』

エレン5『オレ、太もも枕にするー!』

好き勝手にやり過ぎだああああ!

あ、でも、ミカサは全然抵抗してねえ。むしろ赤くなって照れる一方だ。

ミカサ『やん……もう……ああっ……こら、んん……あああん』

服脱がされて、乳首吸われても抵抗しねえ。なんだこの夢。本当にけしからん。

小さなオレ達に両方のおっぱい吸われても、太もも枕にされても全然嫌がってねえ。

むしろどんどん、喘いで気持ち良くなっているミカサに、オレも、その、見入ってしまって。

エレン6『なんか、変なおもちゃ見つけたー(ブーン)』

エレン『?!』

それは大人のおもちゃだああああああ!!!

ダメだダメだ!! それだけはダメだああ!

エレン6『これ、どうやって使うんかな? えい! (ぐいっ)』

と、言って振動している大人のおもちゃをミカサの股につきつけて、遊び出す小さなオレ。

ミカサ『いやああああん……ダメっ……それは、ダメ……あああっ!』

子供の無邪気な悪戯で済むレベルじゃねえから!!!!

オレはおもちゃを奪ってやろうとしたんだけど、抵抗されちまった。

エレン6『なんだよーこれ、オレのだからな! 勝手にとるなよ!!』

エレン『馬鹿! そんなおもちゃで遊ぶな!』

エレン6『そんなのオレの勝手だろー?! お前、これ使いたいならちゃんとそう言えよー!』

エレン『そういうんじゃねえし!!!』

エレン2『あ、パンツ濡れてる。おもらししているみたいだー』

エレン3『脱がせてやろうぜー』

うわあああああ!! ちょっと、お前ら、暴走すんなあああ!

どっちを止めればいいか分からなくなり、混乱していると、

エレン6『よいしょ(ブーン)』

小さなオレがおもちゃを股に直接当てて振動させ始めたもんだから、ミカサがどんどん、喘いじまって。

ミカサ『やあ…だめ……そこは、らめえええええええ!!!!』





エレン「うあああああああああああああああああ?!」






目が覚めて絶叫した。朝、だった。

エレン「はあはあはあ……」

夢で良かった。つか、何なんだ今の夢は。

いやらしい夢の中でも、特にエロかった。いやもう、本当に。

エレン「いい夢なのか悪い夢なのか判断つかねえ」

小児科女医のミカサは可愛かったけどな。でも、アレはエロ過ぎた。

ミカサは小児科だけはいかないように説得しよう。エロガキにまとわりつかれたら、あいつ、本当に抵抗出来ない気がする。

とりあえず顔洗おう。今日は午後から演劇部の部活動の予定が入ってるしな。

時間は……ああ、もう午前11時か。結構寝倒していたんだな。

昼飯食って、準備して学校に行くと、いつものメンバーが大体音楽室に揃っていた。

あれ? でも、珍しくペトラ先輩が音楽室に来ている。

なんかすげえ落ち込んでいるな。体育座りで隅っこにいるけど。

エレン「ペトラ先輩、どうしたんですか?」

ペトラ「!」

ジャン「馬鹿! そっとしとけ!!」

エレン「え?」

ペトラ「うああああああ! (*壁を額にエンドレス殴打)」

エレン「?!」

なんだ?! 急に暴れ出したぞ?!

壊れたおもちゃみたいな動きしているな。

アルミン「あーあ。折角、一回収まったのに。今、ノゲノラのステフ状態なのに」

エレン「は? なんだそれ」

アルミン「ええっとね。詳しい事情は、エルド先輩から聞いて」

と、視線を動かすと、ちゃかりエルド先輩も遊びに来ていた。

エルド「や! 久しぶり。すまんね。最近、こっち来れなくて」

エレン「いや、もう受験生なんだから仕方ないですけど。ペトラ先輩どうしちゃったんですか?」

エルド「あー……新しい恋の兆しに混乱している真っ最中……とでも言えばいいかな」

エレン「誰かに告白でもされたんですか?」

エルド「そんな生易しいものじゃないよ。………オルオとうっかりベロチューやっちゃったんだって」

エレン「え?」

ミカサ「え?」

さすがのミカサも一緒に驚いてしまった。

エレン「何がどうなってそうなったんですか? え? キスしちゃったんですか?」

エルド「ああ、まあ……事故チューに近いんだろうけどな。なんか、雰囲気に流されちゃったんだって」

ミカサ「雰囲気に流された程度で、ベロチューは普通しないのでは?」

エルド「まあ、そうなんだけどな。そこはほら、ペトラは「事故チュー」に処理したいみたいだからそう言ってみただけだ」

エレン「えええ……」

一体、何がどうなっているんだ?

ペトラ先輩はある程度、額を壁にぶつけた後、また体育座りをして落ち込んだ。

ペトラ「違うの。オルオとキスしたのは、そういうつもりじゃなくて、その……あいつが急に優しくしてきたもんだから、つい、その、なんか嬉しかっただけで、そういうつもりは全くなくて、っていうか、何であの時、私、抵抗しなかったの? オルオを受け入れちゃったの? オルオの事は嫌いじゃないけど、リヴァイ先生の件が終わった直後にこれって、おかしくない? 私、尻軽過ぎない? っていうか、私の想いってそんなに簡単に変わるようなものだったの? 私、ずっとずっとリヴァイ先生の事が好きだったのに、何でオルオとキスしちゃったの? うわああああああああ?!」

ダメだアレ。なんかもう、完全に壊れているぞ。

ブツブツブツブツ言い続けて自分の感情を吐き出しているけど。

ちょっと怖いくらいにおかしな状態になっている。

あれは今、下手に触らない方が良さそうだな。

エレン「ええっと、とりあえず、大体のあらすじを教えて貰えませんかね?」

エルド「あー。ペトラがハンジ先生、ぶった時の事は覚えているよね?」

エレン「まあ、現場見てましたしね」

エルド「んで、その後も、ちょっと1組の女子の間でゴタゴタがあったみたいでね。ペトラ、クラスで完全に孤立しちゃったみたいなんだよ。まあ、元々ペトラはちょっと浮いているところあるんだけどな。ますますそれが酷くなっちゃって。一人ぼっちで意地張っているところに、オルオが「お前がどれだけ周りに嫌われようが、オレはずっとお前の味方だからな」って言ったらしくてね。それにちょっと、絆されちゃったみたいで。オルオが、宥めていたら、ペトラ、ちょっと泣いちゃったみたいで。それで、グラッと。お互いに、その……ってやつ」

エレン「へーいい話じゃないですか。それの何が悪いんですかね?」

エルド「いや、本人的にはそこまでお互いの距離が近づくなんて思っていなかったみたいでね。ただ、体が自然にそう動いちゃった感じだから、お互いに混乱の真っ最中って感じだ。オルオの方はグンタが宥めているよ」

ミカサ「なるほど…」

そうなのか。でも、かえって良かったんじゃねえか?

オルオ先輩、ペトラ先輩の事、好きみたいだったし、こっちもくっついちまえばいいのに。

でも、ペトラ先輩はそれを受け入れられないようで、

ペトラ「っていうか、初めてだったのよ?! 何で初キスをオルオにあげちゃったの私?! もういっそ、途中で舌を噛み切ってやれば良かった! あいつの舌、中に入って来たし! あの時、噛んでやれば良かったのに、何でそれをしなかったの?! っていうか、何で意外と気持ちいいとか思ったの?! あいつ、そういうの手慣れてたの?! 女たらしだったの?! あいつ、彼女とかいたっけ?! そんな話、聞いたことないんですけど?! もしそうだとしたら、私は何人目なわけ?! あああああああ?!」

うわああ。ペトラ先輩、ダメ過ぎる。

ペトラ先輩って元々、カッカすると口悪いから、言っちゃいけないところまでつい漏らしちゃうタイプだけどさ。

心がダダ漏れ過ぎて可哀想だ。どうにかならんのかな。アレ。

ミカサ「…………何故か既視感を覚える」

エレン「え?」

ミカサ「まるで、リヴァイ先生とハンジ先生のよう」

エレン「ああ、そうかもな」

ミカサ(こくり)

キスしても、すぐには認められないんだろう。何かと理由をつけて暫くはお互いに認めなさそうだ。

オレ達は短距離ランナーカップルだけど、オルオ先輩達はまさしく、リヴァイ先生達に近いカップルのような気がする。

第二の長距離ランナーカップルが誕生するのかな。くくくっ。

エルド「ペトラ。その辺にしておけよ。皆、困ってるぞ」

ペトラ「は! そうね。ごめんなさい……」

やっと我に返ったのか、ペトラ先輩が顔色を戻した。

ペトラ「ええっと、今日は皆に、お願いがあって来たのよ」

アルミン「お願いですか?」

ペトラ「そう。リヴァイ先生の結婚式についてなんだけど。もともと、その時期って、演劇部では「冬公演」という形で自主公演を行っていたのね。でも、今年はリヴァイ先生の結婚式と日程が重なるから、いっそ結婚式で劇をやって貰えたらなって、思ったのよ」

マーガレット「まーその方がいいですよね。体育館でやるなら、ホール押さえる金も浮きますしね」

ペトラ「うん。私達3年も、手伝えることがあれば出来るだけ手伝うわ。準備期間は短いけど、文化祭のような大掛かりな劇じゃなくていいから、公演を行ってほしいのよ」

と、あくまで「お願い」という姿勢でペトラ先輩が言った。

ジャン「結婚式で演劇ですか。珍しいですけど、オレ達らしくていいかもしれないですね」

アルミン「準備期間は、文化祭の時よりかえって余裕あるかもね。今回はクラスの出し物の負担がないわけだし」

ペトラ「あ、それもそうね。確かに冬公演の方が、ゆっくり準備出来るか。でも、あまり尺を取る劇じゃない方がいいと思うけどね。何か、こういうのやってみたいっていうのないかしら?」

エレン「ん~」

結婚式に相応しい劇、かあ。

なんかこう、皆で楽しめるようなのがいいよな。きっと。

ミカサ「恋愛物をまた、やる、とか?」

エレン「あ、やるんだったら、ラブコメの方がいいんじゃないか? コメディ要素を入れようぜ」

ミカサ「なるほど。その方が新鮮でいいかもしれない」

アルミン「ラブコメかあ……」

アニ「ん? アルミン、何かアイデアがあるの?」

アルミン「いや、そういうジャンルなら、僕、割と好きだから、脚本やってもいいかなって」

アニ「いいの?」

アルミン「前回は準備期間があまりに短かったからね。いきなりやる自信はなかったけど、今回は準備する時間もあるし、頑張れば何とかなるかな。エルヴィン先生に台本の書き方を習いながらやれば、だけど」

アニ「いいと思うよ。というより、台本書ける子も育っていかないと、エルヴィン先生ばっかりに負担かける訳にはいかないよ」

アルミン「それもそうだね。うん。ちょっとずつだけど、僕も頑張ってみるよ」

という訳で、オレ達は次の「冬公演(リヴァイ先生の結婚式)」に向けての新しいスタートを切った。

ペトラ先輩は、まだ「うあああああ?!」と時々唐突に叫んでは凹んでいたけれど。

ま、そのうち時間が解決するだろ。自然となるようになる。

そう思いながら、オレとミカサは一緒に苦笑を浮かべていたのだった。

そんな訳でオルオ×ペトラも発進しました。カップル誕生(?)かな。
とりあえずここまで。続きはまたノシ










11月4日。火曜日。火曜日の1限目は世界史のエルヴィン先生なので、アルミンが授業後、台本について相談していた。

すると、エルヴィン先生は「いいアイデアだねー」とニコニコしていた。

エルヴィン「だったらいっそ、リヴァイとハンジの物語を劇にしちゃおうか」

アルミン「え? いいんですか?」

エルヴィン「あの2人の馴れ初めそのものが既に「ラブコメ」だからね。本人達は恥ずかしがるだろうけど、自分達を一度、客観的に見て、どれだけアホな事やっていたのか自覚させた方がいいと思うよ?」

エルヴィン先生、超悪い顔している。過去最高の悪い顔だ。

アルミン「では、エルヴィン先生の知っているエピソードを基に話を考えていけばいいですね」

エルヴィン「取材なら私だけでなく、他の先生達の話も聞いていいと思うよ。きっと皆、喜んで協力してくれると思うな」

アルミン「分かりました。ではその方針で固めてみたいと思います」

という訳でアルミンもエルヴィン先生と同じくらい悪い顔になった。

でも、台本の内容がもしリヴァイ先生にバレたらどうするんだろ?

エレン「練習風景、見せないようにしねえとリヴァイ先生にバレるかもな」

アルミン「あーそうだね。出来るだけこそこそ練習やろうか」

エレン「あと、問題はリヴァイ先生役を誰がやるか、だな……」

アルミン「ハンジ先生は、エレンがやったら? 身長近いし、髪も今なら長いから丁度いいし、エレンなら出来そうじゃない?」

エレン「ああ、まあ、やってもいいけどさ。女役って言っても、ハンジ先生は中性的だからやり易いだろうしな」

たまに男みたいな仕草しているしな。ハンジ先生自身が。

アルミン「んー身長で言うと僕かアニになっちゃうけど、アニは元々、舞台に出るのが苦手だし……でも僕はちょっとリヴァイ先生とはイメージ違うし」

エレン「んーま、後で決めるか。その辺は。台本出来てから煮詰めようぜ」

アルミン「そうだね。そうしようか」

という訳で、大体の方針が固まったのでとりあえず安心だな。

そして次の授業は日本史だった。ナイル先生の授業だった。

アルミンは早速、授業後に取材を開始していた。ナイル先生は「ふん」と笑っていた。

ナイル「ああ……あの2人は最初からいろいろとアレだったな」

アルミン「アレとは?」

ナイル「ある意味伝説の教師達だよ。入学式に滑り込みセーフでヘリコプターを使って登校してくるわ、窓から教室に入ってくるわ……常識という物がないのかってくらい、破天荒なことばかりやらかしていたよ」

エレン「あ、窓から教室に入っていたってのは本当だったんですね」

OBの人達が笑っていたアレだ。

ナイル「ああ。いくら身体能力があるからって、スタントマンじゃないんだから。流石にやめろと私が怒鳴ってやったよ。遅刻しそうになったのは、ハンジ先生の髪を朝から無理やり洗っていたからだ、と言い訳していたが……あの頃からリヴァイ先生自身、ちょっとアレだったな」

と、遠い目をするナイル先生だった。

ナイル「確かにハンジ先生は最初からその、ちょっと臭い先生ではあったし、社会人として、清潔にしていないのを我慢出来ない気持ちも分からんでもないが……リヴァイ先生がそれを改善させる理由なんてどこにもないんだがな。普通は放っておく問題だ」

放っておけなかったからこそ、愛情があった証拠なんだろうな。

ナイル「ま、話せるのはそれくらいだな。他のエピソードは他の先生達から聞きなさい」

アルミン「はい。ありがとうございました」

という訳で1個目のエピソードをGETしたのだった。

次は数学のディータ・ネス先生だ。実はディータ先生はもう一人いらっしゃるので、数学の先生の方は皆、「ネス」先生呼びだったりする。

ネス「ああ。リヴァイ先生とハンジ先生の馴れ初めね。再現劇やっちゃうのか」

アルミン「まあそうですね。その方が面白いかと思って」

ネス「ふふふ……だったら、あのエピソードは外せないな」

アルミン「とっておきの話があるんですか?」

ネス「あるぞ。臨海学校のエピソードだけど。学校主催の、生徒達は2年次に毎年行っている物なんだけど。その時の引率だったリヴァイ先生とハンジ先生がね、もうそりゃあ凄かった」

と、懐かしむようにネス先生は言った。

ネス「生徒の一人が、海で溺れていたんだ。それを真っ先にハンジ先生が助けに行った。でも、助けに行ったハンジ先生の方も、流されて溺れてしまったんだ。リヴァイ先生がミサイル並みの速さで追いかけて、生徒とハンジ先生を両方、助けたんだよ」

アルミン「へー。スーパーマンみたいですね」

ネス「2人いっぺんに助けるくらいだからな。でも、その後も凄かったぞ。ハンジ先生、呼吸していなかったし、リヴァイ先生、迷わず人工呼吸をやって蘇生させたんだよ」

アルミン「ヒューヒュー♪」

エレン「生徒の方は助かったんですか?」

ネス「勿論。生徒の方は別の先生が蘇生して、すぐに助けられたけど。その時、リヴァイ先生、迷わずハンジ先生の方を先に人工呼吸し始めたからな。本当は、生徒を先にするべきところなのに。あの時ばかりはハンジ先生を優先したんだよ」

アルミン「まあ、それは当然ですよね。その時は他の引率の先生、いたんでしょう?」

ネス「まあな。でも、あの時のリヴァイ先生、すっごい必死だった。もうあの頃からきっと、ハンジ先生の事、好きだったんだろうな」

アルミン「なるほど……いいエピソードが聞けました。ありがとうございます」

ネス「もういいのかな? ま、一人1個ずつ聞いていけば、結構集まると思うぞ」

という訳で、次は昼休みを挟んで古典のキッツ先生だ。

キッツ「ふん……あの馬鹿夫婦の事なんぞ、話す事はない。見たままを演じればいいだろう」

アルミン「そこを何とかお願いします。出来るだけ古いエピソードが欲しいので」

キッツ「古いエピソード………では、あいつらがまだ着任して間もない頃の話が聞きたいのか?」

アルミン「出来れば是非」

キッツ「ふん……教師になりたての頃のあやつらは、本当にいろいろとふざけておったぞ。学校で生徒達と夏休みにこっそり花火をしおってな。ぼや騒ぎを起こして大目玉食らっていた事もある。ハンジ先生は『化学実験の補習です!』と嘘ばっかり言っておったが、さすがに事が露見した時は2人とも、始末書を書かされていたよ」

えええええ。花火事件の主犯格ってリヴァイ先生とハンジ先生だったのかよ!!

キッツ「クビにならなかっただけでも有難い話だというのに。それでもあの2人は反省の色がなかったな。『自分達が学生の頃はOKだったのに…』とかなんとかブツクサ言っていたが。常識を知らなすぎる2人だったな」

と、嫌そうな表情でキッツ先生もまたエピソードを残してくれた。

エレン「リヴァイ先生が元ヤンだったっていうのは、本当みたいだな」

アルミン「あーなんか、その辺の悪い事はセーフみたいな感じだね」

リヴァイ先生のその辺の線引きが面白いな。18禁はダメだけど、花火はOKなのか。

そして音楽の授業のダリス先生にも話を聞いてみた。キッツ先生と似たような苦い反応だった。

ダリス「そうだな。あの2人は着任した年からずっと、じゃれあっているような関係だった」

アルミン「具体的には?」

ダリス「リヴァイ先生は、今は体操部の顧問をやっておられるが、最初の頃は柔道部の顧問をやっていたんだ。その時、技を見せる時に、ハンジ先生を連れて来て、生徒に寝技の講習なども行っていたよ」

アルミン「という事は、リヴァイ先生は柔道の師範の免許も持っておられるんですか」

ダリス「柔道だけではない。剣道も空手も有段者だ。大学時代にその手の格闘系の資格を全部取りつくしたと言っていたので、着任した当時はそっちの指導に明け暮れていたよ。ハンジ自身も、空手の有段者の筈だから、身体能力はあるが、毎回モデルにしていたのは、今思うとわざととしか思えないな」

アルミン「ですよねー(棒読み)」

ダリス「リヴァイ先生も不器用な先生だからな。理由がないと、ハンジ先生に触れなかったんだろう。ま、同じ男としてその気持ちは分からなくもないが」

アルミン「なるほど。貴重なお話、ありがとうございました」

と、いう訳で今日のところはこんなもんかな。

だんだん面白いエピソードが集まってきてニヤニヤしてきた。

でも、これだけ濃密なエピソードだと、リヴァイ先生役をやる奴と、オレの絡み、相当多くなるよな。

アルミン「んーいっそさ、リヴァイ先生役はミカサにやってもらった方がよくないかな」

エレン「え?」

アルミン「だって、結構アクロバティックなシーンと、濃厚なラブシーン、やる事になりそうだよ? ミカサ以外、無理じゃないかな」

エレン「あー」

まあ、人工呼吸とか、そういうシーンもやるならそうなるか。

エレン「打診、してみるか。今のミカサなら、舞台も大分慣れたみたいだし。やってくれるかもな」

という訳で、その件をミカサにも話してみると、

ミカサ「え、エレンとキスシーン、やるの…? (ドキドキ)」

エレン「人工呼吸のシーンとか入れるみたいだぞ。やるとすれば、オレ達でやるしかないような気もするんだが」

ミカサ「了解した。あのクソちびを演じて見せよう(キリッ)」

あ、意外とやる気満々だった。ちょっと意外だな。

エレン「いいのか? ミカサはリヴァイ先生、嫌いなのに」

ミカサ「嫌いだからこそ、演じてやる。リヴァイ先生をとことん恥ずかしがらせられると思うと……ククク……」

嫌がらせするつもりなのか。ああ、なるほどな。

エレン「分かった。じゃあ、その方向で皆とも話していこうか。今回は、メインのキャスティングオーディションは無しでも良さそうだな」

アルミン「うん。皆、賛同してくれると思うよ。むしろ君達以外では出来ないと思うし」

という訳で徐々に方針が固まって来た。

そして演劇部のメンバーもアルミンの提案に同意して貰えたのでこれで心配はいらない。

後はエピソードをどんどん集めていけばいいな。

11月5日。水曜日。1限目は数学でネス先生だったけど、もう聞いたので、次は2限目の公民のゲルガー先生に話を聞いた。

ゲルガー「あー2人のエピソードか。うーん。いろいろあり過ぎて何から話せばいいんだろうな?」

アルミン「とりあえず、1個思いつくものがあれば是非」

ゲルガー「だったら、酒飲み比べ大会の時の話がいいかもしれない」

アルミン「酒飲み比べ大会?」

ゲルガー「まあ、職員同士で飲み会をやる時もあるんだが、その時、誰が一番飲めるか競い合った事もあるんだ。ちなみにその時の優勝者はエルヴィン先生。準優勝はピクシス先生だったけど。3位はハンジ先生だったんだ」

アルミン「その辺のメンバーはお酒強そうなイメージですもんね」

ゲルガー「エルヴィン先生、すごいザルだからな。俺も飲める方ではあるんだが、エルヴィン先生には勝てないよ。で、其の時、俺、初めて泥酔したリヴァイ先生を見たんだけど……」

そう言えば、泥酔させると面白いみたいな事言ってたな。エルヴィン先生。

ゲルガー「なんかもう、リヴァイ先生、20杯が限界値だったみたいでな。それを越えた途端、豹変して、ハンジ先生に濃厚に絡むようになってしまってな。こう、くっついて離れなくなっちまって。子供かってくらいに。これはまずいって事になって、慌ててハンジ先生が蹴り入れて気絶させていたけど。エルヴィン先生曰く、『泥酔すると本性が出るよwww』って事らしいから、多分、そういう事だったんだろうな」

なるほど。エルヴィン先生がニタニタしていた理由ってそういう事だったのか。

もしかしたら、賭けをしていた時に言っていた「根拠」っていうのはコレの事だったのかもしれない。

つまりエルヴィン先生は昔から知っていたんだ。

リヴァイ先生の潜在意識の中に「ハンジ先生」が深く眠って居た事を。

だから、100万賭けても平気な顔していたんだな。納得したぜ。

ゲルガー「ま、其の時の大会は4位がリヴァイ先生で5位が俺だったんだが。上位3人の容量は桁違いだったな。酒強すぎて羨ましいくらいだよ」

アルミン「なるほど。いいお話が聞けました。ありがとうございます」

ゲルガー「いやいや。この程度の事なら大したことねえよ」

と、ゲルガー先生も苦笑をしていたのだった。

3限目は地学だ。モブリット先生の担当だけど。

さすがにモブリット先生に問いただすのは酷なので、スルーしようとも思ったんだけど。

なんていうか、キノコが生えているのかってくらい、ずっとじめじめしていたから、つい、声をかけちまった。

エレン「あの……モブリット先生、大丈夫ですか?」

モブリット「あははは……大丈夫だよ。うん。全然、大丈夫だから(げっそり)」

エレン「ご飯、食べてますか? とりあえず、寝てますか?」

モブリット「うん。3日に1回はちゃんとご飯食べているから大丈夫……」

うわあ。それは大丈夫な状態ではないな。

エレン「…………」

そっとしておくしかないのかな。まあ、目の前で好きな人が結婚宣言したら、憔悴してもしょうがねえか。

エレン「あの、モブリット先生」

モブリット「なんだい? (げっそり)」

エレン「その、モブリット先生から見て、ハンジ先生って、どこが魅力的だったんですかね」

モブリット「んー」

ふと疑問に思ったから聞いてみたんだけど、モブリット先生は意外とあっさり答えてくれた。

モブリット「優しいところ、に尽きるかな。ハンジ先生にどれだけ助けられたか分からないよ」

と、言っていた。

モブリット「教師として着任して間もない頃、仕事を捌けなくてアプアプしていた時とかに、ハンジ先生は必ず『大丈夫ー? 手伝おうかー?』とか、『飲み物いるー?』とか『元気出してね! ファイト!』って言ってムードを作ってくれたと言うか。職員の中では皆のムードメイカー的存在だったんだ」

あ、リヴァイ先生と同じ事言ってる。

やっぱり、そういう部分って、惹かれるものなのか。

モブリット「実際、どうしようもない時に何度か仕事を手伝ってくれた事もあったしね。女性なのに男性より仕事を捌くの早いんだ。その上、明るくて、可愛くて、笑っていて。年上だって事を忘れそうになるくらい、チャーミングな女性だと思ったよ。たまにドジやるところも可愛かった。ああああああ…(ズーン)」

しまった。いろいろ思い出して落ち込ませてしまったようだ。

エレン「すんません。思い出させて」

モブリット「いや、いいよ。時間が解決してくれるのを待つしかないね。こればっかりは……」

という訳で、モブリット先生は背中を丸めながら教室を出て行った。

4限目は生物だ。ハンジ先生、今日は何か凄く綺麗だな。

格好はいつもの白衣だけど。髪型がちょっと違う?

こう、くるんとねじって頭を盛っている。着物を着る時の髪型に近い。

アニ「今日も髪型違いますね。ハンジ先生」

ハンジ「ん? ああ……なんか、最近、リヴァイがヘアメイクにはまっちゃってねー。私の髪で遊ぶようになっちゃったんだー。毎日、いろいろやってくれるよ。これもその試作品だね」

と、照れ臭そうだった。

そして自分の顔を指さして、ハンジ先生はちょっと自慢げに言った。

ハンジ「実はこのメイクもあいつに全て任せちゃってるんだ。もう完全に『全自動リヴァイ』って感じ? いやーあいつと付き合う事がこんなに楽チンだとは思わなかったね。今までもいろいろ頼っていたけれど、今はもう、あいつ無しじゃ生きていけないくらい、楽な生活を送らせて貰っているよ。もう、本当にどうしようwww」

むしろそれが狙いなのでは? とも思ったけど、まあいいや。

ハンジ先生も実は惚気たいんだろう。顔にそう描いてある。

そんな感じで幸せ新婚気分のハンジ先生の授業が終わると、午後の5時限目は英語の授業になった。

修業が終わってからアルミンがキース先生にも取材していた。

キース先生もまた、苦笑を浮かべている。

キース「あー再現劇をやるのか。ふん……今更な気もするがな」

アルミン「昔からずっとあんな調子だったから、ですか?」

キース「それもあるが、職員の中ではあの2人の掛け合い夫婦漫才は有名だったからな。もう見慣れたというか、今更再現劇を見ても「懐かしいな」としか思わないと思うぞ」

アルミン「いや、そこを再現して、2人を冷やかすのが目的なので」

キース「ふん……まあ、それならいいが。そうだな。ハンジとリヴァイの職員の席は隣同士だから、朝や放課後の職員会議で居眠りするハンジにいつも、リヴァイが足を踏んだり、脇腹つついたりして起こしていたりしていたな」

ぷぷぷ。ありそうな話だな。

キース「それでも起きない時は、髪の毛引っ張ったり、耳引っ張ったり。だんだん過激になって、一回間違えて胸をつついてしまって、ハンジが「んにゃああ?!」と奇声をあげた事もあったな。あの時のリヴァイの顔は傑作だった。胸をつつくつもりはなかったらしいが、脇腹狙ったらしいが、逸れて間違えて触ってしまったそうだ。職員室は一瞬でざわめいたよ」

リヴァイ先生、それ、わざとやってないよな?

事故に見せかけたイチャイチャのように思えなくもない。

キース「勿論、すぐさま『すまない』と謝っていたけどな。あの時のリヴァイの困惑顔は今思い出しても笑えるな」

とまあ、キース先生は「ククク」と笑っていた。

そして6限目は美術。ピクシス先生にも話を聞いてみる事にした。

ピクシス「エルヴィン先生から話は既に聞いている。再現劇をやるんじゃろう?」

アルミン「はい。今、取材をしている最中です」

ピクシス「話したい事は山ほどあるがのう。どのエピソードを暴露しようかのう…(ニタニタ)」

と、手をわきわきしてうずうずするピクシス先生だった。

アルミン「あの、ゲルガー先生から聞いたんですけど、リヴァイ先生って泥酔すると本性が出るって、聞いたんですけど」

ピクシス「そうじゃの。20杯を越えると、豹変するぞ。あやつは」

アルミン「その辺のエピソードをもう少しお聞きしたいんですが」

ピクシス「よいぞ。リヴァイは泥酔すると、必ず「ある女」について話してばかりおった」

アルミン「ある女……ハンジ先生ではないんですか?」

ピクシス「まあ、最後まで聞け。その女とは、教育実習生時代に会っていた同期の教習生でな。自分がトラブルを起こした時に、間に入って助けて貰ったそうなんじゃが、其の時に名前や連絡先を聞きそびれて、実習期間を終えてしまったそうなんじゃ」

ああ、そういえばモブリット先生とハンジ先生とリヴァイ先生の3人が揃って学生食堂に居た時にその話はしていたな。

ピクシス「いつか礼を言わねば……そう思い続けているうちに、その女に密かな恋心を持つ自分に気づいたそうでな。ずっと「もう1度会いたい」とぼやいておったんじゃ。………つまり、その「助けて貰った教習生」というのが、ハンジであったんじゃが、あやつ、それにずーっと気づいておらんでのう」

エレン「ああ、最近になってやっと気づいたみたいですよ。ハンジ先生と確認し合ってましたし」

ピクシス「ほほう? いつの間に。それは良かった。そういう訳じゃから、リヴァイの潜在意識の中にはずっと、その若い頃のハンジの姿が眠っておったのじゃ。あやつが何故、ハンジを捕まえて髪や体を洗おうとしていたのか、これで分かるじゃろ?」

エレン「つまり、綺麗にした姿のハンジ先生を、無意識に求めていたと?」

ピクシス「その通りじゃ。そもそも、再会した時に気づいても良さそうなもんじゃけど、あやつは馬鹿だからの。ずっとそれに気づかず、若い時のハンジに惹かれた自分からずっと逃げておったんじゃよ」

アルミン「なるほどー。もう、その時点で本当は恋に堕ちていた訳ですね」

ピクシス「酒を飲ませたら、そう白状したからの。本人は泥酔した時の記憶は毎回無いそうだが……」

と言ってニタニタしている。

ピクシス「リヴァイとハンジの教習時代の頃に会っていたわしから言わせれば、リヴァイはアホとしか言えん。そもそも、その助けて貰った時点で連絡先くらい交換しておかんのが悪いんじゃ。あやつ、自分から行くのが本当に、下手過ぎる」

エレン「え? それって、もしかして……」

ピクシス「ああ。教習時代、あやつらはこの講談高校に教育実習生として来たんじゃよ。わしはハンジの方の担当教官じゃったが……リヴァイは当時の自分の担当教官をぶん殴ったからの。あの時はわしもいろいろ大変じゃった」

と、過去を懐かしむようにそう語る。

ピクシス「殴られた方の教官は、さすがに自主退職していったがの。しかしあの時、ハンジは言っておった。「何で男のあいつが、セクハラにあそこまでキレるんだろう?」と疑問に思ったらしくてな。それからじゃ。ハンジの方からリヴァイによく話しかけておったんじゃが、リヴァイは不器用な男でな。最初は会話もうまくいかず、困惑するばかりじゃったよ。それでも実習期間が終わる頃にはやっと少し仲良くなったようでな。わしはそれを見てほっとしておったんじゃが……あやつら、本当に馬鹿じゃのう」

と、クククと笑っている。

ピクシス「リヴァイが23歳、ハンジが20歳の時じゃったな。教習時代に出会った2人が、4年後、まさか同じ職場で一緒に働き出すとは、これはもう、運命としか言えんじゃろ」

エレン「そうですね。もう、神様の采配にしか見えないです」

アルミン「あれ? ちょっと待って下さい。2人は同期なんですよね。という事は、リヴァイ先生って大学卒業してからすぐ、教員になった訳じゃないんですよね」

ピクシス「そうじゃの。年表にすると、こんな感じになる」

と、言ってピクシス先生はわざわざ2人の歴史を紙に書いてくれた。


    リヴァイ      ハンジ

17歳 高校中退    14歳 中学2年生

18歳         15歳 中学卒業&講談高校入学(担当エルヴィン)

19歳 大検受ける   16歳

20歳 大学入学    17歳

21歳 柔剣道資格取得 18歳 高校卒業&大学入学

22歳         19歳

23歳 教育実習受ける 20歳 教育実習受ける

24歳 大学卒業&就職 21歳

25歳 (土方仕事等) 22歳 大学卒業&大学院入学

26歳         23歳

27歳 教職スタート  24歳 大学院卒業&教職スタート

ピクシス「これを見ると良く分かると思うんじゃが、リヴァイとハンジはかなりの神ががり的な縁で出会ったのじゃよ。普通は3年という歳の差のズレがあれば、同じ時期に教育実習を受けること自体が難しい。それを、リヴァイは高校中退や大検等で奇跡的にズレを起こし、ハンジと同時期に教育実習を受ける事になってしまった」

エレン「確かに。これを見ると、まるでリヴァイ先生がハンジ先生に合わせたかのようですね」

アルミン「本当だ。ハンジ先生に寄せていってるみたいに見えるよ」

ピクシス「じゃろう? まあ、ここにもうひとつの神がかった縁も加えて初めて2人の運命が動き出す訳じゃが」

エレン「あ、エルヴィン先生の事ですね?」

ピクシス「そうじゃな。このリヴァイの19歳の時、エルヴィンはリヴァイと出会い、奴を召し抱える覚悟で説得したんじゃ。大学に行かせる事を」

エレン「あーやっぱり、エルヴィン先生、割とガチでそう思っていたんですかね」

ピクシス「まあ、そうじゃな。あやつは冗談では動かない奴だし。本気でリヴァイに惚れ込んでしまってな。「あいつが女だったらな…」が口癖じゃったな。しかしまあ、たとえ同性だろうがそれだけ惚れ込める相手に出会えた事は、幸せな事じゃ。リヴァイはエルヴィンの人生を大きく変えたんじゃよ。あやつ自身も、教職を続けるべきか否か悩んでおったからな。若い頃は」

アルミン「そうだったんですか……」

ピクシス「ああ。リヴァイとの出会いがなければとっくに教職をやめて、博打打ちにでもなっていただろうとエルヴィンは昔、良く言っておった。リヴァイを教職に引きずり込んだのは、エルヴィンじゃが……エルヴィン自身、リヴァイに大きく救われたのだと思うぞ」

エレン「へー」

なんか凄いなあ。人に歴史ありって感じだぜ。

ピクシス「なのに、そこから先がグダグダでのう……折角運命が動き出すと思ってこっちはワクワクして待っておったのに、あやつら、ちーっとも先に進まんのじゃ! 1度だけ、リヴァイが30歳の年の12月に2人で旅行に行ってきた時は「遂にキター!」とぬか喜びしたもんじゃ。2人で旅行に行って、全く手出さんとか、本当にピー(自主規制)ついてんのか? と当時は思ったもんじゃよ」

アルミン「あはははは……」

エレン「まあまあ、結果オーライですよ」

ピクシス「まあ、其の時の2人の旅行のエピソードがひっそりと「種」を植え付けていたとは、わしも知らなかったからの。遅咲きの恋にはなったが、無事に花が咲いてほっとしておるよ」

と、満足げに話し終えてピクシス先生は言った。

ピクシス「少し長話をしてしまったようじゃの。あまりいっぱいエピソードを話しても、劇の中で再現するのは難しかろう。使える部分だけ拾って、あやつらを悶絶させる劇を公演してやってくれ。わしは楽しみにしておるぞ」

アルミン「はい。沢山話して頂けてありがとうございました」

という訳でピクシス先生のエピソードが一番内容が濃くて面白かった。

今日のところはここまでかな。だんだんいろいろエピソードが集まって来たな。

アルミン「うーん。尺が短い方がいいって話だったけど、これだけボリュームあると削る方が難しいよね」

エレン「だな。でも、その辺はエルヴィン先生と話し合いながら決めたらいいんじゃねえか?」

アルミン「そうだね。うん。あともうちょい頑張ってみるよ」

という訳で、その日の取材はそこまでで終わったのだった。

という訳で、
リヴァイ×ハンジをミカサ×エレンで演じるという冬公演になります。
エロシーンも少しやっちゃうかも? ぷぷぷ(笑)

ちょっと疲れたのでこの辺で。続きはまたノシ

11月6日。木曜日。1限目の世界史のエルヴィン先生が授業後に「調子はどう?」とアルミンに聞いてきた。

アルミン「はい。順調にエピソードが集まっています。ピクシス先生の話が一番濃いお話でしたけど」

エルヴィン「だろうね。ピクシス先生は私と同じくらい2人の事を気に病んでいたからね。早く2人の子供が見たくて今からうずうずしている筈だよ」

アルミン「子供……で思い出しましたが、あの、個人的に聞いてもいいですか?」

エルヴィン「ん? 何を?」

アルミン「エルヴィン先生自身が、リヴァイ先生が19歳の時に出会った時のエピソードです。リヴァイ先生に惚れ込んだ理由が気になってしまって」

エルヴィン「え? 話していいの? 引かない? 大丈夫? 私、本当にバイの人間なんだけど」

アルミン「あ、はい。それは既に知っているので大丈夫です。これはあくまで取材ですので」

エルヴィン「分かった。そういう事なら、進路指導室で話そうか。ちょっと長い話になるからね。放課後、いいかな」

アルミン「分かりました。では放課後で」

という訳でエルヴィン先生の話は一旦保留にして、次は、3限目の現国のイアン先生に話を聞いてみた。

イアン「ふむ。リヴァイ先生とハンジ先生のエピソードか。私は他の先生方に比べたら、ここに赴任してからまだ年月が浅い方だから、そう詳しく2人の事を知っている訳ではないが、前に一度、居酒屋で偶然、2人と遭遇した事があるぞ」

アルミン「へーそうなんですか。2人で飲んでいたんですか?」

イアン「みたいだな。ハンジ先生の方がかなりテンション高く酔っぱらっていてな。リヴァイ先生の方が車を出していた様子だったから、リヴァイ先生は飲んでいなかったようだが、最後はおぶって連れ帰っていたようだよ。其の時のリヴァイ先生、凄く困った顔をしていたけれど、何だか照れ臭そうだったね」

アルミン「へー何かいい事あったんですかね」

イアン「んーどうだろ? 確かあの日は9月頃だったかな。ハンジ先生、9月生まれだから、もしかしたらささやかな誕生日会でも2人でやっていたのかもしれないね」

アルミン「あ、なるほど。ハンジ先生の誕生日お祝いを2人でしていたのかもですね」

イアン「正確な日付までは覚えていなくてね。すまないね。メモしておけば良かったけど」

アルミン「いえ、十分です。恐らくそれで合っていると思いますので」

イアン「ふふ…再現劇、楽しみにしているよ」

そしてその日の6限目は再び保健体育の授業が行われた。

時間がまた、10分くらい余ってリヴァイ先生が「やれやれ」という顔になる。

リヴァイ「その期待する目つき、やめろ。第二回目の特別授業、やって欲しいのか?」

アルミン「是非お願いします! (頭擦りつけ)」

リヴァイ「全く……お前らも本当に下世話な話が好きだな」

アルミン「思春期なので(キリッ)」

リヴァイ「まあ、気持ちは分からんでもないがな。さて、今回は何の話が聞きたいんだ?」

アルミン「次は、服の上から肌を触った後の事を是非」

リヴァイ「服を脱がす時の作法か。分かった。では、そのやり方もいくつか教えてやろう」

とまた、黒板を使って説明し始めた。

リヴァイ「これはあくまで俺の自論になるが………『服は中途半端に脱がした方が面白い』だな」

アルミン「中途半端……半脱ぎの方が好みって事ですか?」

リヴァイ「基本はそうだが、それだけじゃない。脱いだ服を使えば、相手の動きを少しだけ制限する事が出来る」

ジャン「動きを制限……(ごくり)」

リヴァイ「完全に固定する訳じゃないが、女が「動きづらい」と思わせるような脱がした方をした上で、直接肌に触れていくと、相手は大抵、困った顔をする。抵抗したいけど、服を破るような激しい抵抗は出来ないし、かといって、完全に固定されている訳ではないから、自由もある。この真綿で包む様な感じが、割と好評だったのでな。俺の場合は「バンザイ」をさせた状態で、服はそれ以上脱がさないで、責める」

脱いだ服を利用するなんて、思ってもみなかった。へええええ。

リヴァイ「ズボンとかだと、尚更それがやり易いな。足首辺りを半固定した状態で触ってやると、相手は「早く全部脱がせて欲しい」という感情と「このままでいたい」感情の板挟みになるようでな。大抵、困った顔になる。暫くはその状態で焦らして遊んで、飽きた頃にやっと全裸にしてやる感じだな」

おおおお……皆、何故か小さく拍手をした。

リヴァイ「ただ、何度も言うが「せっかちな女」にこれをやると、逆にキレられるから注意しろよ。全員がこの方法を好む訳じゃない。俺が話しているのはあくまで「スロータイプ」の女に対する対処方だからな」

エレン「では、せっかちタイプの場合は、どんな感じになるんですか?」

ミカサの場合はどう考えても「せっかち」な気がするので一応聞いてみる。

リヴァイ「あー……せっかちな女、俺は勝手に「クイック」タイプと呼んでいるが、そういう女の場合は、むしろ裸からスタートした方がいいかもな」

エレン「裸から……」

リヴァイ「風呂でも先に一緒に入って、それこそ風呂場でやってもいいし、服を着ないままベッドインしてもいい。とにかく濡れるのが早い女もいるから、そういう女の場合は遠慮しなくていい。男のペースでガンガンいった方がかえって喜ばれるぞ」

エレン「へー……」

リヴァイ「ただ、クイックタイプは女でありながら、身体が男性的であるとも言える。だから結構、本番で頑張らないと満足出来ずに消化不良起こす場合もあるから、頑張れよ」

エレン「は、はあ……」

何故か応援されてしまった。ん? ジャンがこっち見てる。

ジャン「てめええ……まさかとは思うが……」

エレン「え? あ、いや、今のはあくまで参考までに聞いただけだぞ?!」

しまった。今の聞き方だとミカサが「クイック」だとばらしたようなもんか。まずい。

ジャンの目がまた真っ赤に染まり始めている。しまったな。

リヴァイ「ただ最初の頃は男側が「十分に濡れた」と勘違いする場合が殆どだから、クイックタイプのセックスは最初は絶対、お勧めしないぞ。そのやり方に付き合わされて、女性器に擦過傷を負う女も多い。所謂、擦り過ぎだな。ヒリヒリするようなやり方は後々、女側に負担をかけるから、「十分に濡れた」と判断する方法を、もう少し詳しく説明する」

と、リヴァイ先生はもう一つ、言葉を書いた。



『指が3本が簡単に入る状態になるまでは挿入は絶対するな』


リヴァイ「中指、薬指、人差し指を合わせたくらいの大きさを軽く試して入れてみて、痛がるうちは絶対、奥まで入れるな。それはまだ、準備が整っていない証拠だからな。濡れているからもう大丈夫だろうと勘違いして、一気にいく馬鹿がいるが、それは女の方が我慢しているだけだからな。以前、女に直接、愚痴られて俺も初めて知ったんだが、7割の女は、挿入時の「痛み」を我慢した状態でセックスに大抵、臨んでいるそうだ」

アルミン「それって、スロータイプの数字と合致しますね」

リヴァイ「よく気づいたな。つまり、やり方が合ってない状態であっても、女側がそれを言い出せず、痛いと思いながらも「演技」で気持ちいいふりをしてくれている場合もあるんだよ。男を傷つけない為の優しさだな。でもそれを鵜呑みにして、合ってないやり方を続ける男も多い。俺がこの事を知ったのは、俺自身がもともと、男だけど、スロー寄りのセックスが好みだった為だ。クイックタイプのセックスばかりやっていた女とやった時に「こんなの初めて!」と驚かれてな。詳しく話を聞いてみたら、そういう事だったと聞いて俺も初めは驚いたもんだ」

エレン「へー。リヴァイ先生、スローの方が好きなんですか」

リヴァイ「まあな。10代の頃はクイックが殆どだったが、20代に入ってからはスローの方の面白さに目覚めたんでな。時間はかかるが、達成感の大きさで言ったら、スローの方が断然いい」

何か思い出したのかな。今、一瞬、すげえエロい顔になったぞ。

リヴァイ「インスタントのカップ麺と、手打ち麺くらいの味の差があると言っていい。腹減っている時なら、早く食える方を優先するかもしれんが、そこはぐっと我慢して、一度、手打ち麺を食ってみろ。もうカップ麺は食えなくなるぞ。手打ち麺の深い味わいに病みつきになる」

エレン「へー」

リヴァイ「スローの方は、イク感覚を重視するセックスではないから、最終的に繋がる事を目的とはしていない。やれない時はやらなくてもいい。それくらいの楽な気持ちで臨むんだ。でも、そうやってまったりと進めた先に、女の方が徐々に、心身ともに全てを預けてくれる瞬間が必ず、くる」

心身ともに、全てを預ける瞬間、か。

リヴァイ「その瞬間の女の美しさは、言葉じゃ表現うまく出来ないな。いきなりスローでやれと言っても、10代の頃は難しいだろうから、無理には言わないが、少なくとも、セックスをする際は女側がいろいろ我慢している場合もあるという事は、男としては知っておいた方がいいぞ」

と、言いながら今度はちゃんと黒板の文字を消している。そろそろ時間だ。チャイムが鳴った。

リヴァイ「という訳で、今回の特別授業もテストには全く出ないから覚える必要性はないぞ。適当に聞き流しておけ。以上だ」

という訳で第二回目の特別授業が終わって、リヴァイ先生が教室を出ていくと、アルミンは「凄いねえ」と驚いた。

アルミン「なんか、びっくりする事ばかり聞かされたね。女の人が「演技」しているとか何とか」

エレン「ああ。演技されたら嫌だよな。嘘はついて欲しくねえけど」

その辺は男の手腕にかかっているんだろうな。俺も頑張らねえと。

そんな風に思いながら、放課後を迎え、次はエルヴィン先生の話を聞く事になった。

オレとアルミンが先に鍵を貰って進路相談室で待っていると、後からエルヴィン先生がやってきた。

お馴染みの紅茶を出してくれた。紅茶を頂きながら、エルヴィン先生の昔話を聞いてみる。

アルミン「まず、お聞きしたいのは、「何処で」リヴァイ先生と初めて遭遇したのか、です」

エルヴィン「ああ。あれは忘れもしない。リヴァイが19歳になった日の12月25日。リヴァイがゴミ捨て場に捨てられていた「子猫」を腕の中に抱いて、自分自身もゴミ捨て場に蹲っていた時の事だ……」

と、遠い記憶を呼び覚ましながらエルヴィン先生は言った。

エルヴィン「その時のリヴァイは、何だかやつれていてね。目に光がなかった。ただ、子猫を抱いて、まるで母親のように子猫を撫でていたけれど。それは子猫の為にやっているというより、自分を慰める為に撫でているように見えたよ。私はこんなクリスマスの当日に、何故こんなところで蹲っている少年がいるのか、気になってね。夜だったけど。こっちから話しかけてしまったんだよ。『一体、何をしているんだい? こんなところで。補導されるよ?』って聞いてみたら、あいつ『俺はもう19歳だ。来年になったら20歳になる。もう子供じゃねえんだよ』と言い返してきてびっくりしたよ。とてもそんな年齢に見えなかったからね。中学生くらいにしか見えなかったんだ。当時のリヴァイは」

ああ、今も十分若いもんな。30歳でも通りそうな外見しているもんな。

その頃からそんな感じだったんだろうな。きっと。

エルヴィン「何か事情があるんだろうか、とも思ったが、一応、『保護者の方はいないのか?』と聞いてみたんだ。そしたらリヴァイは『初めからいねえよ。俺はいつも一人だった』と、言ってね。恐らく孤児だったのかな。リヴァイには血の繋がりのある人間がいないようだった。だからか、少し他人に対して壁があるようにも見えたけど。私は一応、当時、教職に身を置いていたし、このまま見過ごすのも悪いかなとも思って、どうしようかなって暫く考えていたんだが……」

そしてその直後、エルヴィン先生は笑った。

エルヴィン「あいつ、その後に『この子猫、あんたが飼ってやってくれないか? 俺はこいつを助けてやれない』と言ってきてね。私は犬猫を飼う趣味はなかったから、困ってね。『それは無理だよ』ってすぐ答えたら、『そうか……』と言って残念そうに俯いてね。そして『俺にまともに就職する能力があれば、こいつを養ってやれるんだがな……』と、自分に対する憤りを漏らしてね。その瞬間、私は今まで経験したことのない『何か』が降りて来たのを感じたんだ」

エルヴィン先生が少し興奮しているのが分かった。頬が少しだけ赤く染まっている。

エルヴィン「私はリヴァイに聞いたんだ。『就職していないのか?』って。そしたら『高校中退したような奴は、どこもまともに雇ってくれない。運よく採用されても、トラブル起こしてすぐクビになる。所持金も、残りわずかだ。あと一か月、これだけで生き延びられたら奇跡だな』と言って出した金は1000円札1枚だけだった」

アルミン「そんな極貧状態に追い込まれていたんですか…」

エルヴィン「世の中は厳しいよ。確かに高校を中退したような奴に対しては、風当りが厳しい。そんなもんだよ。世の中は」

エレン「…………」

エルヴィン「その当時のリヴァイは言ったよ。『こうなったらもう、生きる為にヤクザにでもなるか』ってね。私は慌てて止めたよ。『ヤクザなんて、やめておけ』って。そしたらあいつ、『だったら、他にどうすればいいんだ? あんた、他に生きる方法を知っているのか?』ってね。私は即答出来ない自分に気づいたよ。確かにヤクザなんてなるもんじゃないけど、だけど、それ以外の進路を提示して、彼が人間らしく生きられる方法を思いつかなかった。教職についているというのに、答えが何も思い浮かばない自分に気づいてね。自分に愕然としてしまったんだよ」

アルミン「いや、それはエルヴィン先生だけじゃないですよ。きっと、他の人だってそんな事を急に訊かれても、即答なんて出来ないですよ」

エルヴィン「アルミン。ありがとう。確かにその通りだと思うよ。でも当時の私は、その事がショックでね。所謂、綺麗事の中で生きていた自分に気づいて、凄くそんな自分が嫌に思えたんだ」

と言って、エルヴィン先生は続けた。

エルヴィン「でもその後すぐにリヴァイは『すまん。あんたに聞くような事じゃなかったな』と言って立ち去ろうとしてね。私はその瞬間、リヴァイが本当に死地に赴く軍人のように思えて、思わず奴の手を握ってその足取りを止めてしまったんだ」

エレン「………」

エルヴィン「リヴァイは怪訝な顔をしていたよ。『子猫、引き取ってくれるのか?』って言ったけど、私は『いや、引き取るのは君自身だ』と何故か、即答してしまってね。リヴァイは『は?』って顔をしていたけど。もう、私も勢いで言ってしまったんだ。『子猫ごと、君を引き取ろう。うちに来い』って言って、殆ど無理やり、奴を家に連れ帰った。リヴァイはパニック状態に陥っていたよ。訳も分からず、拉致られたようなものだからね。でも私もその時、何故か『天啓』のような物が降りて来たのを感じてね。いや、正直、大人としてやってはいけない事なんだろうけど、とりあえず、子猫はうちのマンションで飼う事にしたし、リヴァイには無理やり飯を食わせた。あいつも腹は減っていたから、渋々食ってくれたけど。そこからだな。私は何とかリヴァイを口説き落として、教員用の自分のマンションでの同居生活をさせる事にしたんだ」

うおおおい。本当にこの先生、リヴァイ先生、拉致っていたんか!

「監禁」はしてねえけど。「拉致」はやっていたのか。いろいろ危ない先生だな。

エルヴィン「当時のリヴァイは大分、混乱していたよ。何でいきなり連れて来られたのか分からずにいたからね。だから最初は『俺は言っておくけど、男に抱かれる趣味はねえからな? 手出したら、殺すぞ』と言ってきてね。思わず、ドキッとした自分もいたけど、その当時はまだそこまで自分の気持ちに気づいていなくてね。一応『そういうのじゃないよ』とは言ったけど。最初は信じて貰えなかったね」

そりゃそうだな。オレでも同じ事思うな。

エルヴィン「私はとにかく、彼に合うと思われる適性を探したかった。だからまずは何かを彼にやらせてみる必要性があった。そして彼の事を調べていくうちに、彼は私が講談高校に着任する前年に講談高校を中退している事が分かった。すれ違っていたんだよ。その事を凄く憤る自分もいたけれど、でも、ゴミ捨て場でリヴァイを拾えた自分の幸運にも感謝した。私はとにかく掴んだチャンスを活かしたくて、まずは私の趣味のひとつであった、演劇に携わらせてみたんだ」

エレン「それがリヴァイ先生の初めての「裏方」だったんですね」

エルヴィン「そうだよ。当時の私は裏方のリヴァイを注意深く観察したよ。彼は体力もあったし、呑み込みも早かった。頭も悪くない。協調性は少し欠けるけど、でも、不器用だけど真面目で誠実だった。地味な作業も苦にならないようだし、根気強さも持っている。これだけの有能な人材なのに、何故トラブルばかり起こしてクビになるのか。最初は分からなかったけど、後でそれが分かったよ。リヴァイは「魅力的過ぎる」からだって」

エレン「え?」

エルヴィン「所謂、痴情の縺れによる人間関係の方のトラブルが起きるんだよ。好かれ過ぎて、劇団員の女性メンバーがどんどんリヴァイに堕ちていった。リヴァイの方から手を出している訳じゃないのに。なんだろうね? そういうフェロモンでも出ているのかな。とにかく、リヴァイはいろいろ面倒事に巻き込まれる気質があるようで、その度に、男と喧嘩したり、チーフとも口論したり。その時のリヴァイは一か月程度で『もう辞める!』と根をあげちゃったけど。でも、それで大体の原因は分かったから、後はそれを改善すれば何とかなると思ったんだが……」

エルヴィン先生が紅茶を飲んで一息ついた。

エルヴィン「よく考えたらそんなの、改善の仕様がないって気が付いたよ。だって『人に好かれ過ぎる』なんて、どうやって改善するんだ? って思ってね。リヴァイの場合は特別、イケメンって顔じゃないのに、そんな状態になるって事は、やっぱりそれはもう、あいつの「気質」がそうさせているとしか思えなかった。だから、私も当時は頭を悩ませたよ。いっそアイドルでもやらせた方がいいのかなって思ったけど。そんなのをやらせたら、ストーカー被害に遭うのは目に見えていたし、危ないからやらせられないよね」

エレン「まーその通りですよねー」

教師になってもその吸引力は健在だ。芸能人だったらもっと酷い事になっていただろうな。

エルヴィン「うん。だから当時の私は本当に頭を悩ませた。リヴァイ自身もいつまでこの生活が続くんだろう? って顔をしていてね。怪訝な表情のまま私と一緒に生活していたから、早いところ、彼の適性を探してやりたかった。そんな時だ。彼が演劇ホールの中にいた、迷子の子供を肩車して、親を一緒に探してやってる風景に出くわしてね。見ず知らずの子供の為に肩車までしてやって、一緒に探してやっていた。その時は、幸いすぐ親御さんが見つかったけど。その時、私は聞いたんだ。『何故、そんな面倒な事をした? 迷子センターにさっさと連れて行けばいいだろう?』って。そしたら、あいつ、なんて言ったと思う?」

エレン「想像がつかないです」

エルヴィン「私もそうだった。そしたら『肩車すれば、見つけられるかなって思った。親も探している筈だし。迷子になった地点からあまり動かない方が、見つかる確率はかえって高いんだよ。こういう時はちょっとじっとして、様子を見る方がいい。それでも見つからない時は、さすがに迷子センターに預けるけどな。まあ、俺もよく迷子にはなるし、子供の気持ちも分かるから一緒にいてやった方がいいかなって思ったんだよ。余計なお世話かもしれんが』って、照れくさそうに言っていたんだよ」

アルミン「へー」

なるほどな。子供が好きって言うのは、そこで分かったのか。

エルヴィン「その時のリヴァイを見て私は二度目の『天啓』を受けたような心地になってね。リヴァイはきっと、そういう仕事が向いていると、当時の私は思い込んでしまってね。もう、これはやらせるしかない。ってなってしまって。リヴァイを酒に酔わせて、契約書書かせて、大検受けさせて、無理やり大学に行かせる事にしたんだよ」

この辺の強引なところは本当、怖いよなあ。エルヴィン先生。

思い込んだら一途なのかな。リヴァイ先生、パニック状態だったろうなあ。

エルヴィン「リヴァイは『ふざけるな!!! よりにもよって何故、教職になんかつかないといけないんだ!!!』って最初は抵抗していたけどね。でも私も引かなかった。リヴァイにはきっと、教師という職業が向いていると思った。私なんかより、他人の気持ちを慮る気質があるし、何より人に好かれる気質を持っている。体力もあるし、真面目な性格だ。体育教師であればきっとやれると思った。だから無理やりとある体育大学に行かせる事にしてね。その資金は全て私が出す事にしたんだよ」

アルミン「もうリヴァイ先生自身もベルトコンベヤーに乗せられちゃったんですね」

エルヴィン「まあね。リヴァイの事だから、一度契約書を書かせてしまえば、それを反故にはしないだろうと思った。渋々だけど、大検を受けて一発合格して、大学の寮に住まわせて、その後は離れて暮らしたけど。1~2年程度かな。大学に入る前まではリヴァイとは一緒に生活していたんだよ」

エレン「でも、大学卒業してから、すぐには教師にならなかったんですね」

エルヴィン「ああ。大学を卒業したら、以前よりは働ける窓口も増えたようだから、初めは土方仕事や宅配、あとトラックの運転手とかかな? たまに劇団のアルバイトもしていたようだよ。裏方のね。いろんな職業を掛け持ちして、大学資金に利子までつけて、金を返そうとしてきたけど、私は受け取らなかった。それよりも『さっさと諦めて教師になってよ』と口説いてね。私はリヴァイと一緒に仕事をしたくて堪らなかった。その頃かな。ようやくこの気持ちが、ちょっと人より異常だって気づいて、自分でも困ったんだけど」

気づくの遅いなー。エルヴィン先生もあんまり人の事言えねえぞ。

エルヴィン「でも、リヴァイはそっちの気は全くないし、むしろ気持ち悪がっているのを知っていたから、さすがにそれを自分から言い出す勇気はなくてね。ちょっと切ない気持ちにもなったけれど、リヴァイもようやく重い腰を上げて『分かった。そこまで言うなら教師を試しにやってみるが、無理だと思ったらいつでも辞めてやるからな』と言って、ようやく私と同じ講談高校に着任したんだ。それが偶然、ハンジの着任した年と重なってね。まあ、その後の事は、もう既に知っているだろうけど。2人があんな感じになっちゃった訳で。私は「早いところくっつかないかな」と思っていて。息子でも娘でもいいから、貰えないかなって、虎視眈々と企んでいた訳だよ」

すげえ人生設計だよな。エルヴィン先生、いろいろすげえ。

アルミン「じゃあもし万が一、リヴァイ先生がエルヴィン先生の気持ちに気づいて、それに応えちゃっていたら、こっちの二人がくっついていた可能性もあった訳ですね」

エルヴィン「リヴァイが男もいける口だったら、の話だよ。もしもの可能性を追っても仕方がない」

エレン「でも、エルヴィン先生、一度も告白していないんですよね? もし告白していたら、リヴァイ先生の気持ちが動いていた可能性あったかもしれないですよね」

エルヴィン「うーん。殴られるのがオチじゃない? 縁切りされる方が怖いよ。そんな事をされたら、私は生きていく意味を無くしてしまう」

と、さらりと言うあたり、エルヴィン先生も問題ある先生だなあと思った。

エルヴィン先生、冷たいようで情熱家な部分もあるんだ。

一途なんだよな。それでいて、目的の為には自分の気持ちも簡単に犠牲に出来るんだ。

エレン「そうですか……でも、リヴァイ先生は『専業主夫』になるのが夢のひとつだって言っていたから、パートナーになる人間って、仕事を持っている方の方が良かった訳ですよね」

エルヴィン「ははは……あれは冗談じゃない? リヴァイなりの」

エレン「んーまあ、そうかもしれませんが。でも、その、エルヴィン先生が進路指導室に来る前に、その、リヴァイ先生自身が『目を逸らしていた事を突き付けるな。俺も薄々、そんな気配は感じる事があったんだが、見ないようにしていたんだぞ』って、言っていたんで、なんとなく、気づいてはいたようでしたよ?」

と、オレが言ってやった瞬間、エルヴィン先生の顔が固まってしまった。

アルミン「え? リヴァイ先生、そんな事を言ってたの?」

エレン「ああ。ミカサと進路指導室に行った時、リヴァイ先生とハンジ先生が今後について話し合っていた時だな。放課後、2人がいろいろ話しているところ、オレ達、聞いちまって。その時に…」

エルヴィン「え……じゃあ、リヴァイ、薄々、私が例の告白をする前から、気づいていたって事?」

エレン「だと思いますよ? きっと。あの感じだと、ずっと前から薄々気づいていて、あえて目を逸らしていただけだったんじゃ……」

エルヴィン「………………そうか」

エルヴィン先生が両目を瞑ってしまった。堪えるように。

エルヴィン「ずっと隠していたつもりだったが、薄々気づいていたのか。リヴァイの奴は……」

エレン「いや、無理でしょう。どう考えても。エルヴィン先生の行動自体が、それを気づかせるに十分な事をやってますからね」

エルヴィン「うううーん。ねえ、もしかして、だけど。押したら、押し倒せた可能性、あったのかな? 私は」

エレン「うううーん。どうなんでしょうかね。それこそ、本人に聞かないと分からないですけど。ただ、何もしなかったのは、ちょっと勿体なかったような気もします」

アルミン「エレン、応援しちゃうの?!」

エレン「いや、そうじゃねえけど! でも、エルヴィン先生もなんか可哀想だなってつい、思っちまってな」

ここにも隠れた恋があった訳だろ? いや、同性同士だけど。

オレはそっちの趣味は分からんが、だからと言って、恋心そのものは否定したくねえ。

なんていうか、エルヴィン先生もエルヴィン先生で問題だらけだろ?!

いや、オレももし、リヴァイ先生と同じ立場だったら、「ごめんなさい」しかしねえけど!

エルヴィン先生、頭を抱えちゃって、

エルヴィン「うーん……やっぱり、1回くらい拝み倒してやらせて貰った方が良かったのかな」

と、ちょっとだけ赤面して誤魔化す様に舌を出した。

エルヴィン「いや、でも私も決めたんだ。私はあの2人を見守るってね。2人の幸せを壊してまで自分のエゴを通せないよ。そもそも、そういう道を選ぶわけにはいかないし。仕方がない事だ。リヴァイが幸せになれる方を、私は選んだんだよ」

と、言った後、驚く声が、聞こえた。

リヴァイ「お前、馬鹿じゃねえのか」

エルヴィン「!!!!」

ハンジ「ごめーん、ちょっと出るに出れなくなってね。てへ♪」

エルヴィン「!!!!?????」

奥のソファから人影が出て来た。ソファに隠れていたようだ。

2回目かよ!!! え? でも、オレ達が入った時は鍵、かかってたんだけどな。

リヴァイ「合鍵。進路指導室、鍵は2つあるだろ? ちょっとハンジとここでこっそりイチャイチャさせて貰っていたんだが、まさかお前らが後から入ってくるとは思わなくてな」

ハンジ「エルヴィン~この間のお返しだよ~私を騙したお返しだよ~うふふふ~♪」

エルヴィン「…………やられた」

エルヴィン先生が顔を覆っている。珍しい。エルヴィン先生が出し抜かれるなんて。

リヴァイ「やれやれ。何を考えているのか良く分からん奴だと思っていたが……まさかそこまで考えていたとは」

エルヴィン「………………」

エルヴィン先生が珍しく動揺しているのが分かる。顔が少し赤い。

やべえ。なんでこう、オレ、こういう場面に遭遇してばっかりいるんだろ?

まあ面白いからいいけどな。うん。

リヴァイ「エルヴィンがそこまで俺の事を考えて行動していたとは思っていなかった。予想以上に驚いたぞ」

エルヴィン「…………リヴァイには言うつもりなかったんだがな」

リヴァイ「仕方がないだろ。もう聞いちまったんだ。ただまあ、エルヴィンのしてくれた事は、今でも感謝しているし、それに対する『借り』もまだ俺は返していないからな」

エルヴィン「………うん」

エルヴィン先生、リヴァイ先生の方を見れないでいるようだ。

これ、やっぱり本気だったんだな。おどけて誤魔化していただけだったんだ。

リヴァイ「さすがに一発やらせてくれっていう頼みはきけないが、そこまで言うなら、仕方がねえな。エルヴィンの望みをひとつくらいは叶えてやらんといかんよな」

エルヴィン「え?」

リヴァイ「娘が生まれる保証はないが、善処はしてやろう。ただし、娘が嫌がった場合は許さんぞ。実力でちゃんと、落として見せろよ。ロリコンの名にかけて」

エルヴィン「え? 本当に、いいのか?」

リヴァイ「あくまで『産まれたら』の話だがな。先の事は分からん」

エルヴィン「じゃあ、本当に…?」

リヴァイ「くどい。俺が約束を破った事、あったか?」

その瞬間、エルヴィン先生が本当に嬉しそうに、顔をあげた。

エルヴィン「ははは……待ち望んだ甲斐があった。本当に。ありがとう。リヴァイ」

リヴァイ「ふん……(照れる)」

ハンジ「あーもう、リヴァイ可愛いー! 顔赤いよ?」

リヴァイ「うるさい。いちいち指摘するんじゃない。俺もどうしたらいいか分からん」

ハンジ「照れちゃって♪ でも危なかったねー。私、もしかしたらエルヴィンにリヴァイを先に取られていた可能性、あったって事だよね?」

エルヴィン「いや、それはない……」

ハンジ「いやいやいや、分かんないよ? 人生なんて、転がった先にどうなるかなんて! だってリヴァイのこの反応、みてよ! 満更でもない顔してるじゃないの!」

リヴァイ「ハンジ! お前は俺の嫁になるんだろうが! ふざけた事を言うんじゃねえ!」

ハンジ「いや、それは分かってるけどさ! でも、なんか私もいろいろ切ないんだよ? エルヴィンにはすっごくお世話になったしさ。エルヴィンにもちゃんと幸せになって欲しいもの!」

リヴァイ「それは俺も同じだが……だからと言って、俺がその……応える訳にはいかんだろうが」

ハンジ「あーうん。でもなんか、エルヴィンならしょうがないかなーって思う自分もいるんだよねー」

リヴァイ「おい、冗談でもそんな事を言うな。エルヴィンが本気にしたらどうする気だ」

ハンジ「いっそ、新居に3人で暮らしちゃう? そしたら良くない? ダメかな?」

リヴァイ「アホか!!! エルヴィンが居た堪れないだろうが!!」

エルヴィン「いや、私は、その……2人さえ良ければ、同居も構わないとは思っているが」

リヴァイ「!!!」

ハンジ「じゃあいいじゃん! 一緒に住んじゃおうよ。んで、子育ても手伝って貰えばいいじゃない」

リヴァイ(頭痛くなってきた……)

あ、今、言葉に出してないけど「頭痛」している顔だな。

ハンジ「どうしてもだめかな? 私、エルヴィンとも一緒に住んでもいいと思ってるよ。だって、エルヴィンはもう、リヴァイの「父親代わり」みたいなもんじゃない。私にとっても、その感覚に近いんだよ?」

リヴァイ「いや、確かにやってもらった事は「父親」みたいな事だが、エルヴィン自身がその……俺にそういう気持ちがあるなら、それは父親とは呼ばないだろうが」

ハンジ「そうだけどさー。うーん。リヴァイは本当に、そういう同性愛ってダメな人なの?」

リヴァイ「……………………今までのアプローチしてきた同性愛の奴らは、体目当ての奴らばかりだったからな。エルヴィンのような真剣な想いを聞くのは、俺だって初めてなんだよ」

と、リヴァイ先生自身、少し混乱しているようだった。

リヴァイ「と、いうより、エルヴィンに始まった事じゃないが、どうしてこう、俺は皆に愛されているんだか良く分からん。ペトラも、ニファも、オルオもそうだ。俺はそんなに大した事はやってないんだが、真剣な想いを受ける度に、どうしていいのか分からなくなるんだぞ」

あ、その3名の気持ちも薄々気づいていたんだ。リヴァイ先生。

リヴァイ「そういう意味じゃ、俺を嫌ってくれるミカサの方が余程、プレッシャーがない。あいつは遠慮なくこっちをぶった切ってくれるから、一緒に居て本当に楽だった。たまに癒される事すらあったぞ。もっとお前ら、俺を嫌ってもいいんだぞ!?」

意味不明な事を言い出した。リヴァイ先生、大丈夫か?!

ハンジ「そんな事言われてもー。リヴァイがモテキャラなのがいけないんじゃないの」

リヴァイ「俺は顔だって普通だ。むしろ不細工な方かもしれんと思っている。イケメンキャラならともかく、なんでこんな事態になるのか毎回訳が分からん!」

ハンジ「中身がイケメンキャラやってるからでしょうが。あんたのたらしスキルって、相当なものだよー?」

リヴァイ「人をホストみたいな呼び方するな。俺は水商売の男じゃねえよ」

ハンジ「いや、そっちでやっていく才能もきっとあるよ? リヴァイは」

リヴァイ「俺は教師にならなかったら、美容師になりたかったんだが………なんかいつの間にか教師にうっかりなっちまったけど」

ハンジ「あ、だから髪洗うの上手いんだねー。ヘアメイクもその名残り?」

リヴァイ「髪を切るのも好きだが。悪いか」

ハンジ「いやいや、別にいいよ? リヴァイらしくて」

リヴァイ「とにかく、そういう事だから。俺は、その……そんな風に好かれる価値なんて、自分にはないと思っている。だから、どうしたらいいのか……」

エレン「あの、リヴァイ先生。ちょっとこれ、見て貰えませんか?」

さすがにちょっとイラッとしてきたので、オレは以前撮って見せた写メを本人に見せた。

あの面白い顔だ。反応がすげえ楽しい奴。

すると、リヴァイ先生自身もうっかり「ぶは!」と吹いてしまって、

リヴァイ「酷い顔してやがるな……こんな顔していたのか。あの時は」

エレン「ええ。酷い顔でした」

リヴァイ「そうか……こんな顔されたら、確かに写真撮りたくなる気持ちも分からんでもないが」

エレン「ですよね? 分かって貰えました?」

リヴァイ「ああ。そうだな。これも、俺の一部なんだな。むしろこっちの間抜けな俺の方が真実に近いような気がするぞ」

エレン「だったら、これを公表してみませんか?」

エルヴィン「! エレン、その件は……」

エレン「エルヴィン先生、気持ちは分かりますが、最終的な判断を下すのはリヴァイ先生自身です」

エルヴィン「……」

エレン「リヴァイ先生は、常々言ってますよね。『俺はそんなに綺麗じゃない』とか、今も『好かれる価値はない』とか、たまにイラッとするくらい自虐的になるんで、いっそ、もう、全部出しちゃいましょうよ」

リヴァイ「全部、出す…?」

エレン「ええ。その上で、皆が慕ってくれるならもうそれは、真実の「愛」だとは思いませんか?」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が考え込んでいる。意味が通じたかな。

リヴァイ「それは、ファンクラブの件も含めてって事だよな?」

エレン「そうです。もちろん、そのせいで逆にリヴァイ先生のファンが増える可能性もありますが、少なくとも、限りなく真実に近い「リヴァイ先生」を出した上で寄ってくる場合は、先生の危惧する「美化され過ぎた自分」が愛されている訳ではないと思うんですけど。ダメですかね?」

リヴァイ「…………いや」

リヴァイ先生はすぐに納得した様だ。

リヴァイ「その手があったな。何も隠す必要性なんて何もない。むしろジャンジャン出していい」

エルヴィン「リヴァイ、でも、それは……危険だよ」

リヴァイ「何故だ。今のこの「気持ち悪い認識」の方が余程変な状態だぞ。皆、俺を何だと思ってやがるんだ」

エルヴィン「でも、リヴァイ……」

リヴァイ「俺はただの元ヤンの体育教師だ。もうすぐ39歳にもなるおっさん捕まえて、皆、メルヘンチックな幻想を抱くな。愛される側のプレッシャーも少しは考えろ」

エルヴィン「う、ううう……(ぐうの音も出ない)」

リヴァイ「エレン、良くやった。あの時は『何勝手に撮ってやがる』と思ったが、ちゃんと理由があったんだな」

エレン「まー衝動的に撮りたくなったのは事実ですけどね。利用出来るかどうかは、リヴァイ先生次第でしたけど」

リヴァイ「分かった。ファンクラブの件も含めて、少し案を煮詰めよう。エルヴィン。その件も含めて、今後の事を少し話したい。この後の時間をくれ」

エルヴィン「はー……(頭抱えている)」

やっちまったって顔しているけど。オレは知らない。決めたのはリヴァイ先生自身だしな。

エルヴィン「どーなっても知らないよ? 私は一応、1度止めたからね?」

リヴァイ「ファンが増えようが減ろうが構わん。とにかくアレだ。皆、俺に対してキャッキャし過ぎるんじゃねえって話だ。そういう意味じゃ、ハンジくらいだぞ。そういう欲目がないのは」

ハンジ「まあねー。こいつ、本当時々、殺したろかってくらいムカつくしねー」

リヴァイ「お互い様だろうが! お前もちょっと知恵を貸せ!」

ハンジ「はいはーい」

という訳でオレとアルミンは進路指導室を追い出された。

後は野となれ山となれって感じだな。

アルミン「えーっと、大体、揃ってきたかなー」

と、ずっとメモに集中していたアルミンがノートを閉じた。

エレン「書けそうか?」

アルミン「うん。大丈夫だと思うよ。後は……出来れば高校時代のリヴァイ先生の情報がもう少し欲しいかな」

エレン「あーそんな古い情報、他に誰か……」

1人、いた。ハンネスさんだ。

エレン「ハンネスさんにも取材するか。確か、元ヤン時代のリヴァイ先生を一番知ってる筈だぜ」

アルミン「そうなんだ。よし、次はそっちに行ってみよー」

と言いながら、移動するオレ達だった。

という訳で、かなーりエルリ入っちゃってすみません。
最初に表記するべきか迷ったんですが、ネタバレっぽくなるのも嫌だし、
と思い、あえてカプ表記の中には予め入れませんでした。

ふざけているように見えて、
ちゃんとエルヴィン先生、リヴァイ先生の事、好きだったんですよ。って事で。

ハンネスさんを探して、職員室近くの廊下を2人で歩いていたら、偶然、ハンネスさんに出会った。

良かった。丁度良かったぜ。ちょっと声かけてみよう。

エレン「ハンネスさーん!」

ハンネス「おう、エレンとアルミンか。部活はどうした?」

エレン「今、台本の制作中で取材して回っているところなんだよ」

アルミン「クリスマスの冬公演に向けて、再現劇をやろうと思っているんで、ハンネスさんの知ってる事も聞きたいと思って」

ハンネス「俺の知ってる事? 何を話せばいいんだ?」

エレン「リヴァイ先生の元ヤン時代の話。補導していたんだろ? その時の事を出来るだけ詳細に」

ハンネス「あーなるほど。そこから追っていくわけか」

と、ハンネスさんは腕を組んで懐かしそうに答えてくれた。

ハンネス「リヴァイ先生は、よく1対多数の喧嘩に巻き込まれる事が多かったな。俺達警官が現場にたどり着く頃にはもう、殆ど勝負はついていてな。俺と目を合わせるなり、しょっちゅう逃げていた。こっちもおかげで足腰は随分と鍛えられたもんだよ」

エレン「へー。一匹狼って感じだったんですかね」

ハンネス「んーどうなんだろうな? ただ何度かリヴァイ先生が『リヴァイ総長』って呼ばれている場面に出くわした事もあったから、恐らくグループの頭を張っていたんじゃねえかなとは思うぜ。本人は『その呼び方、止めろ』って良く言っていたが、下の子達と思われる奴らに慕われている様子を見かけた事は何度かあった」

エレン「リヴァイ総長って……」

なんかそれっぽい気がする。ヤンキーの頭やっていたのかな。

ハンネス「まあ詳しいところは正確には分からんが、とにかくリヴァイ先生は強かったぞ。一度、大人相手に喧嘩している場面もあったな。相手はヤクザだったんだが、全く怯むことなく1人で戦っていた。ただ、ヤクザ相手に歯向かったせいで、発砲事件に発展してしまってな。一時は騒然となったが、頬を削っただけの擦り傷だけで済んだ。あの強運は、正直ぞっとしたが、本人は平気な顔をしていたよ。普通は拳銃を向けられたら、俺だってビビるって言うのに」

ひえええええ。ヤクザ相手に何やってるんだリヴァイ先生!

ハンネス「その後は何故か、ヤクザの方が穏やかになってリヴァイ先生をスカウトし始めたよ。本人は混乱していたが、何か抜き打ちテストのような物をやらされていたらしい。それが終わった直後、すぐ俺達警官隊が突入したから、事なきを得たが、リヴァイ先生、ヤクザから名刺を貰って困惑していたな」

あぶねー。リヴァイ先生、ヤクザからスカウトかかっていたんだ。

エルヴィン先生が拾わなかったら、本当にヤクザの道に進んでいたかもしれねえぞ。

ハンネス「でもリヴァイはその名刺を俺に渡してきてな。『やる。警察が持ってる方がいいだろ』って、変に生真面目な奴だった。そういう訳で、リヴァイ先生はよく騒ぎを起こしてはいたが、根は真面目な奴なんだろうなって印象だった。酒やタバコはやっていたようだが、薬とかには手を出さないタイプの、ちょっとアウトローな少年って印象だったよ」

エレン「へー」

アルミン「当時の恰好とか分かりませんか? 髪型とか」

ハンネス「ああ、確か当時は金髪だったな。髪型は同じ刈り上げだったけど。ピアスもしていたし、割とオシャレに気を遣う感じの少年だった。衣服はいつも綺麗にしていたし、皺のある服を着ていた事がない。ズボンをずりおろすようなヤンキー特有の恰好のアレじゃなかった。服装だけはヤンキーの恰好じゃないっていう、ちょっと変なヤンキーだったよ」

エレン「写真、残ってないですかね」

ハンネス「んーもう、24、25年くらい前の話だからな。さすがに写真は………あ、いやまてよ」

と、ハンネスさんは思い出したようで、

ハンネス「あるかもしれん。ちょっと待ってろ。職員室の卒業アルバム、見てみるよ」

と言って職員室に置いてある、歴代の生徒の卒業アルバムを探して貰った。

ハンネス「やっぱり。講談高校に途中までは通っていたから、卒業名簿にはないだろうけど、それ以外の、集合写真にこっそり載っている」

エレン「どれだどれだ」

ハンネス「これだ。この、ちょっと目つき悪くて、ヤンキー座りしている小さな少年がリヴァイ先生だよ」

アルミン「あんまり顔、変わってないwwwwwえええええ本当、リヴァイ先生、顔、変わってないねwwww」

と、アルミンが大爆笑していた。オレも必死に笑いを堪える。

アルミン「そっかー高校時代は金髪だったんですね。なるほどなるほど(メモメモ)」

ハンネス「参考になったか?」

アルミン「はい! とても。いい感じに情報がまとまってきた」

ハンネス「それは良かった。再現劇、楽しみにしているぞ」

という訳でリヴァイ先生の高校時代の情報も入った。後は何が必要かな。

アルミン「んー後はハンジ先生の方の高校時代、あとは大学時代もざっと知りたいかな。教職に転向した理由って、詳しくは聞けなかったしね」

エレン「え、でも、ST……いや、ダメだ。そこに触れていいのかな?」

アルミン「んーでも、そこ端折っていいのかどうかは、知ってからじゃないと判断出来ないよ。ハンジ先生本人に聞いてみる?」

エレン「でもそれやると、バレるんじゃねえか? ハンジ先生経由でリヴァイ先生に再現劇を知られたら、止められるだろ」

アルミン「んーだとすれば、後は誰が詳しそうかな」

エレン「この学校に居て、在籍が長いのは、ピクシス先生、ダリス先生、あとキース先生、もかな。その辺にもう1回、話を聞いてみるか?」

アルミン「そうだね。キース先生からいってみようか」

という訳で、キース先生を探してみる。

キース先生は柔道部の顧問の先生なので柔道場のある第三体育館の隣の柔道場に居た。

キース「ん? どうした。何か用事か?」

エレン「少し、お時間頂けますか?」

キース「構わんぞ。………15分休憩を入れる! 水分補給しろ!」

柔道部員「「「はい!」」」

キース「ふむ。再現劇でまだ、聞きたいエピソードがあったか?」

アルミン「はい。今度はハンジ先生の高校時代のエピソードなどを」

キース「ふむ。ハンジの高校生時代か。だったら、ミスコンの話がいいだろう」

とキース先生は微笑みながら言った。

キース「エルヴィン先生が企画して始めた第一回目のミスコンの女王は、実はハンジ先生なんだぞ」

エレン「え……」

アルミン「えええええ? それ、本当ですか?!」

キース「疑うなら証拠を見せてやろう。職員室に一緒に来い」

と、言ってまたまた職員室に戻る事になる。卒業アルバム2回目だ。

今度は少し年代の違う卒業アルバムを見せて貰った。

そこには、今より若いハンジ先生の姿が………って、ええええええ?!

これ?! これが、ハンジ先生なのか?! 本当に?!

ミカサとはちょっとタイプが違うけど、滅茶苦茶美人だった。

なんていうか、ハリウッド系の女優さんみたいな、華やかさがある。

うわああ。これは、なんていうか、エルヴィン先生、若い頃のハンジ先生に手出した理由、分かった気がするぞ。

これだけ美人だったら、確かに「可愛い」って思ってうっかり手出してもおかしくない。

高校生ハンジ先生は、当時としては多分、大人っぽい雰囲気で、でも笑顔で写っていた。

キース「恐らく、エルヴィンの奴もハンジがいたから、ミスコン開催しようと言い出したのかもしれんが。当時のハンジは、結構、モテていたようだったぞ」

エレン「そうだったんですか……」

キース「ああ。ただ、告白されても『なんか違う』とか『この人も違う』とか言って、ザクザク振っている様子でもあったから、女子の嫉妬の羨望を受けていたようでな。たまに『女子が怖い』とも言っていた。それからかな。少しずつ、格好が男性的になってきてね。ボーイッシュな雰囲気も取り入れるようになっていった。大学に進学してからは、また女子力を取り戻そうとしていたようだったが、大学院の途中あたりで、だんだんおかしくなっていってな。昔の面影が無くなっていってしまったんだよ」

アルミン「その当時の事を覚えていらっしゃいますか?」

キース「ああ。まあ、ハンジは高校を卒業してからもしょっちゅう、エルヴィンに会いに来ていたからね。何か困った事があるとすぐ『エルヴィン助けてー!』が口癖だった。私もエルヴィン経由で話を聞く事もあったが、ハンジはどうも、大学の研究チームに入るか否かの段階で、担当教授にセクハラとパワハラを受けたらしくてね。そこで反発して問題を起こしてしまって、大学院に残る事は出来たけど、研究の方に携わる道は閉ざされてしまったと嘆いていたよ」

アルミン「つまり、その事件が、ハンジ先生を「変えて」しまった訳ですね」

キース「そういう事になるのかな。エルヴィンは『そんな碌でもないところ、残る必要ないよ。教員免許、嗜み程度に持ってるんでしょ? 使うなら、枠開けておくからうちの高校においで』ってハンジを誘ってね。ハンジも『もう、それでいいや!』ってとりあえず、うちに来ることになったんだよ」

エレン「なるほど………」

何かだんだん、全体図が綺麗に見えて来た。

ジグゾーパズルのピースがひとつずつ、はまっていくような感触がある。

ハンジ先生も昔はいろいろあったんだな。大変だったんだ。

キース「そういう訳で、ハンジは教職の道に進んでみた訳だが、その当時から既に「臭いハンジ」が出来上がっていてな。入学式では、先生達の間では「何だあの先生」とざわめいていたよ。リヴァイは逆にびしっと、男性にしては綺麗過ぎるくらい、高いスーツを着て来て、女性職員がざわめいていたが。そんな2人は一か月後に、あっさり大ゲンカした。リヴァイが耐え切れなかったんだよ。ハンジの「汚さ」に。一月持たなくてな。自分の部屋の風呂に連れ込んで、無理やり髪を洗わせて、ハンジの体を洗ったそうだ。そこからだな。あいつらが、ラブコメ街道を駆けだしたのは」

ラブコメ街道って。まあ、その表現で合っているけどな。

キース「最初はもう、ハンジも凄い抵抗だったな。学校で顔を合せる度にリヴァイから逃げていたし。リヴァイはハンジを追いかけるし。トムとジュリーかと思ったぞ。しょっちゅう追いかけっこしていたからな。ただ、それも半年も過ぎると、やっと落ち着いて、ハンジが『月一サイクルならいいか』と妥協したらしいが。リヴァイは『本当は毎日、やってやりたいが?』とけしかけていたな。その頃になると職員の間でも2人の関係性をなんとなく察するようになったな。だんだん慣れて来て『ああ、またあの馬鹿夫婦か』と思う様になってしまったよ」

と言って遠い目をするキース先生だった。

キース「ただ、当時は本当にまだお互いに付き合っていなかったようだし、リヴァイも着任当時は彼女もいたようだった。しかしだんだん仕事が忙しくなるに連れ、彼女の方の予定に合わせにくくなってしまったようで、自然消滅する事が増えたと、私に一度だけぼやいていた事もあった。教職がこんなに忙しい物だとは思っていなかったようでな。『掛け持ちで肉体労働していた時の方がよほど楽だった』とも言っていた。それでも、リヴァイは真面目だったから、苦手な書類仕事もコツコツこなして、徐々に仕事をこなしていったよ。たまにハンジがそれを手伝っていたりもしたが。ハンジは書類仕事に関しては、さすが研究者を目指していただけあって、とてつもなく早くてね。男性教員が感嘆するほどのスピードで難なくテスト問題も作り上げるし、授業の方は、多少話が長いという欠点はあるが、生徒のウケも悪くなかったから、ハンジもだんだん教職に愛着が沸いてきたようで、少しずつ、2人の距離が近くなっているな、と思っていたんだ」

と、言ってキース先生は一度お茶を注いで飲みながら言った。

オレ達は職員室のソファに向かい合って続きを聞いている。

キース「そしてリヴァイ先生が30歳になる年の12月。2人が旅行に行ってくるという話を聞いてな。ピクシス先生とエルヴィン先生は「よし!」と応援していたが、2人が帰って来てから、「あれ?」とわしは思った。近づいていたものが、少しまた距離が出来たような感じだった。特にリヴァイの方の様子が、少し妙に思えた。『ハンジ先生と実は付き合っているんでしょ?』と生徒にからかわれても以前は『さあな』とか適当に答えていたのに、その旅行を境に『こいつとはそんなんじゃない』ってはっきり否定するようになったからな。わしは旅行先で「何かあったな」とは思っていたが、今思うと、誘って拒否られでもしたんだろうな。そういう雰囲気だった気がする」

キース先生も結構、いろいろ洞察力すげえええ。

さすが教師だな。観察力、ぱねえ。少ない情報でよく分かってるぜ。

キース「わしが話せるのはこれくらいかな。少々が長くなってしまってすまない。エピソードは足りるかな?」

アルミン「十分です。足りない部分が完成しました。ありがとうございます」

キース「ふん……ま、せいぜいあの2人をからかって遊んでやろう。わしもいろいろ、げんなりする事が多かったからな」

と、キース先生まで悪い顔をするようになってしまった。

そんな感じで大体、大筋の情報をまとめると、オレ達は演劇部の方に顔を出した。

そしてオレは先に音楽室に来ていたミカサに言ってやった。

リヴァイ先生が言っていたことを。

エレン「ミカサ、やっぱりリヴァイ先生の事、今でも嫌いか?」

ミカサ「うん。嫌い(即答)」

エレン「でも、嫌えば嫌うほど、リヴァイ先生、ミカサに『癒される』らしいから、程ほどにしてくんね?」

ミカサ「ふわっつ?! (青ざめ)」

エレン「なんか、リヴァイ先生、変に天邪鬼なところもあるみたいでさ。ミカサといると『気が楽』なんだそうだ。だから、嫌えば嫌うだけ、リヴァイ先生が和んじまうから、気をつけてくれよ」

ミカサ(ガクブルガクブル)

あ、ミカサが混乱して震えている。はてなマーク飛びまくっているな。

ミカサ「い、意味が分からない。嫌えば嫌うほど、癒される? 馬鹿なの? 頭がおかしいの? きっとそうね」

エレン「あ、いや、まあ、その辺は確かに頭おかしいのかもしれんけど。その、リヴァイ先生、人に好かれ過ぎて、それがプレッシャーに感じる時があるみたいでさ。だから、嫌な部分もちゃんを見てくれる人間と一緒にいる方が、気が楽なんじゃねえかって話だよ」

ミカサ「嫌な部分……」

エレン「その気持ちは、分からなくもねえけどな。オレもたまに、ミカサの愛がプレッシャーになる時もあるし」

ミカサ「ガーン……(青ざめ)」

エレン「いや、それが悪いって話じゃねえぞ? 勘違いするなよ? プレッシャーは「あった方がいい」とオレは思ってるし」

ミカサ「そうなの? (涙目)」

エレン「プレッシャーがあるからこそ、格好悪いところ、見せられないって思うだろ。全くないのも男としては問題なんだよ。だから、いいんだ」

ミカサ「そう……(シュン)」

エレン「しょげるなよー。ミカサは逆に、そう思うことねえのか?」

ミカサ「エレンに愛されるプレッシャー? って事?」

エレン「そうそう。そういう感じ。ねえの?」

ミカサ「うーん………あると言えばあるけれど」

と、微妙な顔をするミカサだった。

ミカサ「私の場合はそれが「嬉しい」ので、頑張れる。私はエレンがいれば何でも出来ると思っているので」

エレン「そ、そうなのか」

ミカサ「うん。だから問題ない(どや顔)」

キリッとどや顔を決めるミカサが可愛かった。そうか。そういうものなのか。

やっぱりこういうのって、人それぞれ、感じ方が違うのかな。きっと。

ジャン「リヴァイ先生、こっちこねえよな。来ないうちに、準備をこそこそ進めるぞ」

アニ「そうだね。予定が分かればそれがいいけど、来たり来なかったりだから、怖いよね」

アルミン「暫くは大丈夫じゃないかな。なんか忙しそうだったし」

マルコ「それならいいけど。アルミン、大体、話は固まって来た?」

アルミン「うん。大体まとまってきたよ。とりあえず、必要な物から先にピックアップしていくね」

と言ってアルミンは皆に指示を出した。

アルミン「必要なのは、リヴァイ先生側の衣装。講談高校の男子生徒の制服と、金髪のカツラ。あと黒ジャージ。リヴァイ先生の着ている服に似たスーツとスカーフ。水泳用の衣装。これは上から服をはおってもいいと思う。その辺かな」

と言って、メモを頼りに黒板を使って説明した。

アルミン「ハンジ先生側は白衣と眼鏡。あとは……女子大生っぽい衣装と、講談高校の女子の制服だね。制服は新しく作る必要はないから楽だね。女子大生っぽい衣装の選択は、アニに任せてもいい?」

アニ「了解」

アルミン「後は……背景セットどうしようかな。何か、ヘリコプターで登場するシーンも必要になりそうだけど」

マーガレット「ヘリコプター……宙づりのワイヤーアクション入れるしかないかもね」

アルミン「あと、3階の窓の外から入ってくるとか。結構、アクション満載になりそうだけど。ミカサ、大丈夫かな」

ミカサ「問題ない(キリッ)」

スカーレット「その辺は、それっぽい演出とカメラワークを使えばいいから。ほら、ドリフのコントみたいにすればいいよ」

アーロン「実際には3階じゃないけど、って奴だな。分かる分かる」

エーレン「あーそういうコント、昔、再放送で観た気がするよ」

アルミン「あと、リヴァイ先生の元ヤン時代を表現するから、殺陣も必要になるね。またエキストラ役で、やられ役の練習する人、必要になるけど」

ジャン「それはもう、前回の侍恋歌で慣れたから問題ねえだろ」

アニ「そうだね。ミカサも格闘シーンは慣れているしね」

ミカサ「うん。大丈夫」

アルミン「ミカサの方は概ね問題ないかな。あるとすれば、エレンがやるハンジ先生の方だね」

エレン「ん?」

アルミン「セクハラシーン、大丈夫?」

エレン「うぐっ……」

そうだった。それがあるんだった。

ミカサ「え? セクハラシーン? 何それ(ゴゴゴ)」

アルミン「後で詳しく話すよ。エレン、今回の劇は、かなーりエレン側がエロいことされるけど、いい? 覚悟決めてくれる?」

エレン「んー」

まあ、もう、頑張るしかねえよな。

エレン「正直、男としては複雑だが、まあ、やってやるさ。しょうがねえよ」

ミカサ「ううう。エレンがセクハラされるの? 私以外の人に? (涙目)」

エレン「しょうがねえだろ。でもその分、ミカサとの人工呼吸のシーンあるから、我慢しろ」

ジャン「じ、人工呼吸だとおおおおおお?!」

アニ「ジャン、うるさい」

ジャン「いや、だってなんだそのエピソード!? そんなの聞いてねえぞ?!」

アルミン「しょうがないじゃん。リヴァイ先生、昔、ハンジ先生を人工呼吸で助けた事あるって他の先生から聞いてきたんだし」

ジャン「マジかよ……OH……(頭抱える)」

アルミン「他にもいろいろ、ツッコミどころ満載のラブコメになりそうだけど。まあ、出来るだけ面白おかしく、台本書き上げるから。頑張ろうか、みんな」

一同「「「「おー!」」」」

という訳で、オレ達はまた、新しい舞台に向けてのスタートを切った。

ジャンはまだ落ち込んでいたけど、恨むならリヴァイ先生を恨んでくれ。

オレとミカサは再現するだけだ。2人の愛の物語をな。

ミカサ「ううう……」

エレン「ミカサ、アルミンの台本が出来るまで、涙は無しだ」

ミカサ「そうね。泣いてはいけない。頑張る(キリッ)」

エレン「よしよし」

と、宥めながらオレ達は準備を開始した。

文化祭の時よりは焦らなくていいのがいいな。じっくり取り組める。

エロシーンは少しだけ不安もあったけど、まあ、なんとかするしかねえな。

そんな風に思いながら、オレはクリスマスまでの日を楽しみにしていたのだった。

今日はここまでです。長くなりそうです。すみません。ではまたノシ









11月7日。金曜日。最近、忙しかった親父がやっと、その日の夜、少し時間を作ってくれたので早速、オレとミカサはリビングで家族会議を行う事にした。

この会議の主導権はミカサに任せた。ミカサから切り出さないと恐らく親父を説得できないと思ったからだ。

グリシャ「うん。誓約書について、確認したい事があるって?」

ミカサ「はい…」

グリシャ「具体的には? どの部分が気になるのかな?」

ミカサ「誓約書の内容そのものが、変だと思って……」

グリシャ「ふむ」

ミカサ「接触する側、つまり『エレン』からの接触は禁止しているのに『私』の方からの接触を禁止しているのは、何故ですか?」

グリシャ「ああ、記載ミスしていたようだね。御免御免。じゃあ、付け加えて禁止事項を増やそうか」

ミカサ「嫌です。私は、その誓約には同意出来ない……ので」

グリシャ「ふむ?」

ミカサ「この誓約書は『未成年のうちに子供を作らないように予防する為』にかわしたものだと思っています。でも、その場合『あるルール』を守りさえすれば、その事態は防ぐことが出来ると思います」

グリシャ「うん。何か案があるのかな?」

ミカサ「はい。一つは私の生理の周期をきちんと把握する事。もう一つは、その上で妊娠しやすい時期にはセックスを行わない事。勿論、行う際は避妊具も使う事。これを守りさえすれば、私はエレンと、そういう関係になっても構わないと思っています」

グリシャ「…………ミカサの方にも覚悟があるというんだね」

ミカサ「はい。決して私は、エレンに流されて付き合っている訳ではない……ので」

グリシャ「………そうか」

親父は少しだけ笑っていた。安心してくれたようだ。

グリシャ「ミカサがそう思っているのなら、安心だ。でも、決して軽はずみな行動はしちゃダメだよ?」

ミカサ「はい」

グリシャ「では、誓約書に新しい項目を付け加えてもいいかな?」

と、いう訳でオレ達は新しい文面を付け加える事になった。



ミカサ側が許可した場合は、性交渉をしても良いがその際は必ず、避妊具を使用し、妊娠を避ける事。

加えて、危険日と思われる日は必ず避ける事。ミカサは生理周期を必ず把握する事。



グリシャ「これでいいかな? 約束を守れるか?」

ミカサ「はい。約束します」

グリシャ「なら良かった。ほっとしたよ。謎かけを、解いてくれて」

ミカサの母「うふふふ……本当はもっと早く教えてあげたかったんだけどね。自分達で気づくまではダメだって、口止めされていたのよ。ごめんね。ミカサ」

ミカサ「ううん。いいの。大丈夫」

エレン「親父、ありがとう」

グリシャ「うん。君達2人の様子を見ていれば、今のところ順調にきているのは分かっていたからね。そろそろかな、とは思っていたけれど」

エレン「そっか……」

>>267
訂正
ミカサ「接触する側、つまり『エレン』からの接触は禁止しているのに『私』の方からの接触を禁止していないのは、何故ですか?」

文章間違えた。禁止していない、です。

グリシャ「何故、こういう形で誓約書を書かせたか、その理由をもう少し詳しく説明してあげよう」

と、言って親父が話を続けた。

グリシャ「10代の頃は男側の性欲が強すぎて、女側がそれに合わせて応えて、望まない妊娠をさせられたり、擦過傷を負ったり、精神的に傷ついて病んでしまうケースもある。こういう行為は、やはり「女」側のリスクの方が大きい。ミカサは優しい子だから、エレンの我儘にうっかり付き合ってしまっている可能性も捨てきれなかった。だから、ミカサの方から望まない場合は、そういう行為をさせちゃいけないと思ったんだよ」

ミカサ「大丈夫です。むしろ、私の方が、その……あの……(赤面)」

ミカサの母「あらあら。やる気満々ねえ、ミカサ(ニヤニヤ)」

エレン(赤面)

確かにミカサはこっちがびっくりするくらい積極的な時、あるよな。

グリシャ「うん。ミカサもちゃんと、エレンを好きでいてくれているようだ。安心したよ。でも、あんまり事を急いじゃダメだよ? ミカサが誘惑し過ぎたら、エレンの理性なんてあっという間に吹っ飛んじゃうからね」

ミカサ「エレンが誘惑してくる時は、どうすれば?」

グリシャ「え?」

エレン「ゆ、誘惑なんてしてねえよ! 馬鹿!」

ミカサ「熱っぽい視線で見つめられると、つい……」

グリシャ「エレン、視姦も禁止事項に入れようか?」

エレン「無茶苦茶言うなよ!! 親父!」

グリシャ「まあ、それは冗談だが。うん。2人の関係が良好であるなら安心だ。このまま順調に交際を続けていきなさい」

エレン「お、おう……」

なんか恥ずかしい。応援してくれるようになったから、こっちも有難いけど。

グリシャ「避妊具なら、父さんが持ってるから必要な分は先に後で渡しておくよ。もし万が一、アレルギー反応が出たらいいなさい。たまに肌に合わなくて肌荒れや痒みを起こす子もいるからね」

エレン「え? そういう事もあんの?」

グリシャ「安物のコンドームだと、たまにあるよ。肌に合わなくて湿疹が出たり。そういうのは、別にコンドームに限った事じゃないけどね」

へえええええ。マジか。そういう物なのか。

………っていうか、自分で買わなくていいのかな? こういうのって。

エレン「あの、親父…」

グリシャ「ん?」

エレン「そういうのって、自分で買わなくていいのかな」

グリシャ「ああ……まあ、自分で買ってきてもいいよ。別に。買いにいける勇気があるならね(ニヤリ)」

エレン「うぐっ…!」

そっか。レジで恥ずかしい思いをする事になるのか。だったら親父に甘えた方がいいのかな。

グリシャ「ああ、もしかして、サイズの問題も気にしているのか? その辺はよほどのサイズ差がない限りは大丈夫だと思うけど?」

エレン「親父!!! それ以上、言わないでくれ!! ミカサ、真っ赤になってるだろうが!!」

親父も親父でエロ親父だな本当にもう!!

グリシャ「御免御免。これ以上は、男だけの時に話そうか。エレン。じゃ、今日の会議はこの辺でお終いにしよう」

という訳で、2人の関係は一歩、前進した訳だから、とりあえず、ほっとした。

けどまあ、むしろここからが本当のスタートだよな。

まだ、ミカサの生理周期を把握した訳じゃないし、いつ、どこで最初にそれをするべきかも、後で考えないと。

ミカサ「…………(まだ顔赤い)」

エレン「ミカサ、その、なんだ」

ミカサ「ん?」

エレン「その、準備が出来たら、その、あの……」

ミカサ「うん。もう少し待って欲しい」

エレン「ああ、待つけどさ。その………最初は、どこでやりたい?」

ミカサ「何処で? エレンの部屋じゃないの?」

エレン「オレの部屋でいいのか?」

ミカサ「もしくは、私の部屋。別にラブホテルでやる必要性はない」

エレン「うううーーーーーん……そっかあ」

でも、リヴァイ先生達はスイートルームにわざわざ泊まってやったんだよなあ。

さすがにスイートは無理だけど。最初くらいはこう、何か、記念になるような場所じゃなくていいのかな。

学生だから、無理は出来ないけど。でも、その。

思い浮かんでいるのは、あの夏に泊まった旅館の事。

出来るんだったら、もう1度あの旅館に泊まって、あの日の続きをしてみたい。

そう、思う自分もいるんだが……。

ミカサ「?」

まあいいや。ミカサがそれでいいって言ってるから、ミカサに合わせよう。

こういうのって、女の希望を優先した方がいいよな。きっと。

デート先だってそう、リヴァイ先生が言っていた訳だし。

セックスで女に負担をかける以上、それくらいの事は譲歩してやんねえとな。

ミカサ「何か問題があるの?」

エレン「いや、問題はねえよ。うん。ミカサの希望を優先するか」

ミカサ「え? エレンは別の場所がいいの? ラブホテルの方がいいの?」

エレン「いや、そういうんじゃねえよ。うん。大丈夫」

ミカサ「エレンが他に希望する場所があるなら、そっちを優先して欲しい」

エレン「えええええ……」

ミカサ「そ、外とかでも、別に全然、平気なので……(ポポポ)」

うおおおおおい! そんな事言うなよ!! その、元気になっちまうだろうが!!

エレン「馬鹿!! そんなんじゃねえから! もう、寝るぞ! オレは先に寝る!」

ああもう恥ずかしい。階段を先に上がって自分の部屋に逃げた。

ミカサ「エレンーおやすみのキスは……(シュン)」

ふすまの外から抗議の声が聞こえたので、慌ててふすまを開ける。

エレン「そうだった。悪い。じゃあ、おやすみ………」


チュッ……


ミカサ「………今日は舌を入れないの?」

エレン「ミカサ、積極的なのは有難いが、もうちょっと自重しろ。親父も言っただろ? 軽はずみな事はするなって」

ミカサ「ぷー」

エレン「膨れるなよ。最近、もう、発情し過ぎだぞ! オレ達!」

ミカサ「思春期なので仕方がない(キリッ)」

エレン「まあそうだけどさー。とにかく、今日はここまでだ。おやすみ」

ミカサ「おやすみなさい……(シュン)」

ふーやれやれ。ミカサが可愛いのはいいんだけど。

ミカサの誘惑テクニックがどんどん、スキルアップしているからこっちも困る。

寝る前には抜いて、処理を済ませてから寝る。

今は夢の中でしかミカサとエッチな事が出来ないけど。

いつか来る、近いうちにやってくるその、えへへな日を夢見て、オレは無理やり両目を閉じて寝るのだった。






11月8日。土曜日。

その日の放課後、リヴァイ先生が演劇部の部活動の方に顔を出してきたので、皆慌てて、練習風景を隠した。

そして「ダミー」の演劇をする。偽の台本を利用して騙す作戦だ。ちなみにエルヴィン先生の指示である。

しかしその日のリヴァイ先生は、練習を止めて皆を集めてから言った。

リヴァイ「すまん。今度の第四日曜日、暇な奴、いるか?」

エレン「第四日曜日って言ったら、体操部のお休みの日ですよね」

リヴァイ「そうだ。11月23日だな。その日にその……引っ越し先の掃除をしに行くから、手空いている奴がいれば手伝って欲しい。勿論、後でバイト代は出すから」

ジャン「いや、バイト代なんて要らないですよ。リヴァイ先生には世話になってるし、普通に手伝いに行きますよ」

エレン「だよな。そのくらい、別にいいですよ」

リヴァイ「そ、そうか? じゃあ、昼飯くらいはこっちで用意するか」

エレン「新居は決まったんですか?」

リヴァイ「ああ。ハンジがどうしても『ここがいい!!! ここにしよう!!!』と興奮して決めた物件があってな。もうそこにする事にした」

エレン「へー場所はどの辺ですか?」

リヴァイ「職員用のマンションから歩いて5分もない場所に、古い貸家があってな。昭和チックな平屋の家ではあったんだが、間取りがその……栄螺(サザエ)さんの家と似ているから、そこにする事にした」

エレン「ええええ?! 似たような家が実際にあったんですか?」

リヴァイ「ああ。俺も驚いたけどな。確認したら、かなり酷似していた。違うのは、栄螺さんと鱒男(ますお)さんの部屋がないだけで、そこは駐車場のスペースになっているくらいか。それ以外は本当に同じだった。ただ、建築したのが相当前のようでな。一応、リフォームはしてあったようだが、それでも掃除を一通りしてからでないと引っ越しは出来ない感じだったから、休みの日に一気にやってしまおうと思ってな」

エレン「へええええ」

そうなのか。そういう偶然ってあるんだなあ。

リヴァイ「6帖の畳の部屋が1つ、8帖の畳の部屋が3つ。台所も6帖くらいだったかな。広縁は長くて、走れるくらいある。便所が和式なのが難点くらいか。日当たりもいいし、庭も少しあったから、物件としては上等だと思う。平屋だからペットも飼えるし、猫でも飼おうかと思っている」

ジャン「猫、好きなんですか?」

リヴァイ「犬も好きだな。まあ、ハンジは爬虫類系の方が好きなんだが。あいつ、蛇でも平気で触るし、多少猛獣でも平気で触ろうとするからな」

ジャン「す、凄いですね。猛獣って、虎とかですか?」

リヴァイ「ああ。そうだな。動物園に行くとテンション上がり過ぎてやばくなる。ただ、さすがに虎を飼うのは難しいからな。猫で妥協させよう」

と、リヴァイ先生が「ふん」と笑っていた。

リヴァイ「その日は休みだから、来れる奴だけ来てもらえると助かる。無理はいわない。ただ、来てくれるのであれば、寿司でも頼んで振る舞ってやろう」

アニ「……寿司奢ってくれるんですか? (ガタッ)」

リヴァイ「ああ。出前取ればいい。来れるか?」

アニ「行きましょう(キリッ)」

あ、アニが寿司で食いついた。いいんだそれで。

アルミン「うん。寿司食べられるなら行こうかな。僕も」

ジャン「報酬としては上等ですよ」

マルコ「うん。お寿司は食べたいね」

マーガレット「本当にいいんですか? かえって掃除業者に頼んだ方が安上がりなんじゃ」

リヴァイ「業者に頼んでもいいが、やはり自分の住む家くらいは自分で掃除したいんだよ。お前らには庭掃除の方を頼みたい。草むしりとかな。部屋の中は自分でやるから大丈夫だ」

ミカサ「………お寿司か」

あ、ミカサが迷っているな。これは。

エレン「ミカサ、行かないのか?」

ミカサ「エレンは行くの?」

エレン「ああ、行くぜ。草むしりして寿司食えるなら、お釣りがくるぜ?」

ミカサ「うううう……」

迷っているな。リヴァイ先生の手助けなんかしたくないけど、寿司は食べたいんだろうな。

エレン「無理には言わないけどな。でも、アニも来るんだよな?」

アニ「絶対行く(キリッ)」

エレン「アニも来るんだから、ミカサも来いよ」

ミカサ「……分かった。アニも行くなら行く」

アニ「腹いっぱい、ご馳走になろうよ。ミカサ。金を吐き出させよう」

ミカサ「そうね。そうしよう(キラーン☆)」

アニ「……サシャも誘ってみる?」

ミカサ「! それはいいかもしれない(ニヤニヤ)」

おーい! 部外者連れて来ていいんか?

アニ「リヴァイ先生、友達も連れて来ていいですか?」

リヴァイ「ん? 暇な奴がいるのか?」

アニ「寿司が食べられるなら、絶対来てくれる子が一人います」

リヴァイ「そうか。別に構わんぞ。連れてきても」

あっちゃー! OK出したな。しらねーぞー。

ジャン「サシャ、連れてきたらやばくないか?」

アニ「しっ! ジャン、黙って」

ミカサ「黙って」

ジャン「………(オレもしらねー)」

あージャンもオレと同じ事思ったようだな。

そんな訳で、サシャにその事をメールですぐ伝えたら、1分もしないうちに返事がきたらしい。

『何時からですか? 軍手は持参ですか? 丸1日予定空けますので、絶対行きます!!!』

という気合の入った返事が来たそうで、サシャも参加が決定した。

エレン「実際に引っ越しするのはいつ頃にされるんですか?」

リヴァイ「んー……12月に入ったら次は期末テストの準備に追われるから、11月中には何とか終わらせたいとは思っている。ただ引っ越しって言っても、場所がすぐ近くだからそんなに苦労はしないだろう。ハンジの荷物をまとめるのが少し大変なくらいか。俺自身の私物はそう多くはないし、家電は自分のをそのまま使うが、本とか服とかは、これを機会にある程度、処分するつもりでいる」

エレン「え? 服を捨てちゃうんですか」

リヴァイ「ハンジの私服はもう、大分摩耗しているからな。古着としても売れないし、雑巾に回せるような物はとっておくが、それ以外は処分するつもりでいる。ハンジは服が破れてもそのまま着続ける程、節約家だったからな。さすがにそろそろ新しい服を用意してやらんといかん」

エレン「へー。自分の好みで服を一新しちゃうんですね(ニヤニヤ)」

リヴァイ「あ、ああ……まあそうなるな。何だ? 何か変か?」

エレン「いえいえ。別にいいんじゃないんですか? ハンジ先生、嫌がってないですし」

アニ「ただ、普通ではないですよね。私はそういうのは、苦手かな」

アルミン「まあね。自分の服くらいは自分で決めたいよね」

マーガレット「そうですね。普通ではない、ですね」

スカーレット「普通だったら『キモイ』って思われますよね」

リヴァイ「え……? (顔面蒼白)」

おや? 自覚なかったんか。すげえ顔しているぞ。リヴァイ先生。

リヴァイ「き、キモイのか……?」

アニ「あー髪型もメイクも私服のコーディーネートも全部、やってるんですよね? それって、ハンジ先生だから受け入れているんであって、他の女だったらきっと、途中でキレると思いますよ」

スカーレット「言えてる。私は絶対、無理だ。そこまで独占欲強いのは引く」

アニ「服装までなら、まだ妥協出来ても、他のも全部って言うのは、ね。さすがに息苦しいと感じますよ」

マーガレット「確かに……ハンジ先生が究極の面倒臭がり屋だったから良かったものの、普通、それが分かったら、女は逃げるかもしれないですね」

リヴァイ「え……そ、そういうもんか(ガーン)」

うわあ。女性陣がフルボッコしているぞ。可哀想に。

ミカサ「…………私は、まあ、エレンなら別にいいけど。クソちびに決められたら、殴り返すかも」

エレン「おいおい」

ミカサは大丈夫なのか。へー。

まあ、オレもそこまで強いこだわりはねえから、オレが決めるって事はしなくてもいいけどな。

ミカサが迷っている時くらいかな。そういう時は、自分の趣味を出すけど。

リヴァイ「…………(*凹んでいる)」

エレン「でもまあ、良かったじゃないですか。ハンジ先生は喜んでいましたよ。授業中、惚気るくらいだし」

リヴァイ「え?」

エレン「すっごく、嬉しそうでした。『全自動リヴァイ』とか何とか言ってたし。気に入っているようでしたから、問題はないですよ」

リヴァイ「ハンジが、喜んでいたのか?」

エレン「ええ、そうですよ? え? 知らなかったんですか?」

リヴァイ「ああ。あいつ、別に喜んでいる風じゃなかった。『んもーしょうがないなー』って感じで、いつも渋々だったからな。まあ、俺はそれでもハンジに好き勝手やっていた訳だが」

その直後、リヴァイ先生、顔を真っ赤に染めたんだ。

リヴァイ「そうか。あいつ、実は喜んでいたのか。そうか……そうか」

あーもう! 新婚さんはこれだから!!!

ジャンが物凄い冷めた目で見ている。気持ちは分からんでもない。

リヴァイ「だったら、遠慮しなくてもいいか。次はあいつの………」

いかん。だからと言ってエスカレートしていいってもんでもない。

エレン「あーリヴァイ先生、その辺でストップかけましょう。何でもやり過ぎるとダメですよ」

リヴァイ「うっ……それもそうだな。すまん。俺もつい、調子に乗った」

と、言って自重するリヴァイ先生だった。

そんな訳で、その日はリヴァイ先生の惚気も聞きながら、部活が終わった。

部活動をしながら、勉強も頑張る。以前より真剣に聞いて、予習復習も欠かさずやるようにしたら、だんだん勉強が楽しくなって気がする。

今度の期末テストで順位を上げたいから。部活だけじゃなく、勉強にも力を入れる事にした。

そのせいで、ゲームする時間があんまり取れないのが残念だけど仕方がない。

この間買った、SAGA3もちょっとしか進めてない。ま、RPGだから1年くらいかけてのんびりやってもいいけどな。

ミカサ「エレン、今日も勉強している……」

エレン「あ? 何だ? 何か用事か?」

夜、勉強していたら、ミカサが部屋に入って来た。

ミカサ「いえ、最近、あまりゲームをしていないようだったので、つい気になって」

エレン「進路、真剣に考えるなら、あんまり遊びほうける訳にもいかねえよ。全くやってない訳じゃないけど。自分の成績、せめてマルコと同じくらいまで引き上げないと、入れる医学部がないと思うんだ」

ミカサ「そう……」

エレン「オレの場合、やっぱり数学がネックなんだよな。医学系は理系だけど。理系の苦手意識を克服しねえとどうにもならん。こいつをどうにかしない事には、先に進む事も出来ねえよ」

ミカサ「そう……」

エレン「ん? 何だ? 何か、元気ねえな。ミカサ」

ミカサ「いえ、その……あの」

エレン「ん?」

ミカサ「頑張るのはいいけれど、あまり根を詰めないで欲しい。エレンの体が一番大事なので」

エレン「ああ、その点は大丈夫だ。ちゃんと無理しない程度にやってる」

ミカサ「そう……」

エレン「ん? どうしたんだよ。さっきから。何か変だぞ」

ミカサ「いえ、その……」

そしてミカサは、言ったんだ。

ミカサ「さ、寂しいって、つい……」

エレン「え?」

ミカサ「目標に向けて頑張る姿を見て、『頑張れ』と思う反面、『寂しい』って気持ちも出てしまって……」

あ、やっべえええええ!!!

そう言えば占いにも「彼女にかまってやらないと」みたいな事、言ってたな。

放置し過ぎたらダメって事だな。よし。だったら。

エレン「なら、数学教えてくれ。ミカサも一緒に勉強するぞ」

ミカサ「いいの?」

エレン「やっぱり一人で勉強するのは限界あるからな。頼むよ」

ミカサ「うん!」

あ、元気になった。よしよし。

オレも気をつけねえとな。ミカサの為に頑張るけど、そのせいでミカサを悲しませちゃいけねえし。

そんな訳で11月は部活と勉強をうまく両立した月になり、いい感じに勉強も進んだ。

期末テストでどれくらい順位上がるか分かんねえけど。少なくとも下がる事は無さそうな気がする。

そして迎えた11月23日。あっという間に当日が訪れた。

お掃除リヴァイは次回に回します。今日はここまでです。ではまたノシ

朝の7時にリヴァイ先生のいる職員マンションの前に全員集合して、ゾロゾロ歩いて新居に移動する事になった。

メンバーは、オレとアルミン、ジャン、マルコ、ミカサ、アニ、マーガレット、スカーレット、アーロン、エーレン先輩達、加えて3年の四人全員だった。

ガーネット先輩は衣装の方でまだ仕事が残っているので今回はお休みだ。カジ達もちょっと用事があるらしくて来られないという事だった。

ニファ先輩も来ていた。体操部のメンバーも数人、来られる人だけ来ているようだ。

ハンジ「皆、ありがとうね! 人手があると助かるよ!!」

エルヴィン先生もピクシス先生も来ていた。凄い人数だな。団体様って感じだ。

皆でわいわい移動して、新居を訪ねる。

玄関がすげえ広かった! 横に開くタイプの玄関を開けると、何だか懐かしい匂いがした。

畳の匂いかな。田舎の匂いって感じだ。

サシャ「ん? ちょっとカビ臭いですね(くんくん)」

リヴァイ「ああ。古い建物だからな。多少はカビもあるだろう」

サシャ「私達は、草むしりをすればいいんでしたよね?」

リヴァイ「ああ。庭の方に案内するよ。こっちだ」

玄関を一旦出て、庭の方に移動すると、そこには……

おおおおおお。これは確かに人数がいるな。草ボーボーだ。

荒れた庭を目の前にしてサシャは「ううーん。手ごわそうですね」と呟いた。

リヴァイ「だろ? 放置していた物件だったからな。草がかなり生えている。人海戦術でどんどん草を毟ってくれ。根から掘らないとまたすぐ生えてくるから、スコップはこっちで用意している。皆、これを使ってある程度、土を掘っていいから草を撤去してくれ」

という指示だったので、大中小のスコップをそれぞれ借りて早速、皆で草むしりをする事になった。

なんかやる事は学校の清掃活動みたいなもんだな。

小学校、中学校時代、校内の草毟りはよくやらされたもんだぜ。

リヴァイ先生は口と頭を布巾でおさえて、早速中の掃除に入るようだ。

ハンジ先生は庭でダンゴムシを見つけてちょっと興奮している。いいのか? 手伝わなくて。

リヴァイ「ハンジ! 遊んでいるんじゃない! お前も中の掃除を手伝え!」

ハンジ「あ、はいはい! めんご!」

と、我に返って中に入るハンジ先生を複雑そうな顔で見つめるペトラ先輩だった。

やっぱり目の前で見ると辛いんだろうな。でも、それでもお手伝いに来るんだから、すげえよな。

ペトラ先輩はニファ先輩と一緒に草毟りを始めた。オルオ先輩とは少し距離を置いているようだ。

目が合う度に、気まずそうに逸らしている。お互いに。まだ仲直りしてねえのかな。

サシャ「うおおおおお?! 土を掘っていたら、じゃがいも出てきましたよ?! 堀り忘れでしょうか?!」

ジャン「馬鹿! いつのじゃがいもか分からんのに! 捨てろ!」

サシャ「食えるかもしれないじゃないですか!」

ジャン「腹に当たったらどーすんだ?! 馬鹿! 芋女!!」

と、向こうは向こうで仲良さそうだ。ナンダカンダでジャン、サシャの世話する事多いよな。

アニ「ふん! ふん! (むしりむしり)」

アルミン「アニ、超ペース早いね。飛ばすと後で疲れるよ?」

アニ「大丈夫。こういうのは結構、得意だから」

寿司パワーでやる気に満ちているアニが可愛らしい。あいつ、現金なところあるんだな。

マルコ「あ、蚊に食われたかも……腕が痒い……」

ミカサ「虫よけスプレー、あるけど使う?」

マルコ「いいの? じゃあお願いしようかな」

あ、そう言えばオレもスプレーかけるの忘れていたな。

エレン「ミカサ、オレも頼む」

ミカサ「了解(プシュー)」

こういうところ、ミカサらしいよな。やっぱり園芸が趣味なだけある。

腰の高さくらいまである雑草などを撤去していったから、結構大変だったけど、皆でやれば割とサクサク進んだので、思っていたよりは時間をかけずに大体の作業を終えられた。

草が無くなると、庭の広さが一層良く分かった。いい物件だな。

午前中で庭の作業を終えて、12時になると出前がやってきた。本当に寿司の出前、頼んでくれたんだな。

ハンジ「休憩しようかー皆、1回作業やめて、うちにおいでー」

というハンジ先生の合図で皆、「やったー」と言ってうちの中にお邪魔した。

まだ飯台とかはないけど。畳の上に直接、寿司を広げて皆で頂く事にした。

うめええええ。肉体労働した後の飯は、本当にうめええええ!

サシャが掃除機みたいな勢いで寿司食ってる。まずい。あいつに取られる前に食わないと!

リヴァイ「思っていたより足りないようだな。追加でピザも頼むか」

サシャ「ピザあああああ?! (涎)」

リヴァイ「5枚くらいでイイか?」

サシャ「何枚でもOKです!」

という訳で寿司だけじゃなくて、ピザまで追加注文してくれた。本当、サービスいいよな。

エレン「金、大丈夫ですか? サシャ、大食いですよ?」

リヴァイ「ああ。心配するな。足りない時はエルヴィンに借りる」

エルヴィン「おっと、あてにされたようだ」

クスクス笑っているけど嬉しそうなエルヴィン先生だった。

リヴァイ「さて。部屋の中の掃除も大体済んだし、後は何をするか」

ハンジ「午後から荷物、ぼちぼち入れちゃう?」

リヴァイ「あーそうだな。やれる事は、今日のうちにやってしまうか。ハンジの本とか私服は先にこっちに移動させてもいいよな」

ハンジ「うん。いいよー。あ、でも、本棚の位置まだ決めてないや。そっち先に決めていい?」

リヴァイ「ああ、分かった。家具類の配置、先に決めるか」

と、言いながら図面を元に計画を立てる2人だった。

ハンジ「リヴァイは自分の部屋を何処にする?」

リヴァイ「別に何処でもいい。ハンジはどこを使うんだ?」

ハンジ「私の場合、書斎と夫婦部屋は分けて使いたいんだよね。鰹(かつお)君の部屋に本と机をまとめてしまってもいい?」

リヴァイ「日当たりは1番悪い部屋だが、いいのか?」

ハンジ「うん。本が焼けない方がいいかな。それに北側の光が入るから大丈夫だよ」

リヴァイ「分かった。ではそこをハンジの書斎部屋にするか。オレの部屋は…その隣の部屋でいいか」

ハンジ「居間を使うの? でもそこは押入れがないよ」

リヴァイ「あ、それもそうか。ではその南側でいいか」

ハンジ「じゃあその隣がリヴァイの書斎だね」

リヴァイ「いや、俺の場合は書斎部屋は必要ない。夫婦部屋で事足りるだろ」

ハンジ「あ、そうなの? んじゃ書斎は私の分だけでいいんだ」

リヴァイ「むしろ俺の場合は台所の方が自分の部屋みたいになるだろうな」

ハンジ「だったら、床の間のある方を夫婦部屋にした方がいいんじゃない? 台所からの動線考えるとそっちが近いよ?」

リヴァイ「しかしそうなると、ハンジが仕事中の時、遠く離れ過ぎているような…」

ハンジ「同じ家の中だから、歩けばすぐ会えるでしょ!」

リヴァイ「そうか。すまん……」

リヴァイ先生、寂しがり屋なのかよ!

リヴァイ「………やっぱり、居間にベッドを置かないか? その方がハンジの書斎に近いし、台所からも近いだろ」

ハンジ「えええ。折角の畳なのにベッド置くのー? 絨毯敷いて、その上に置くの?」

リヴァイ「別に出来なくはないだろ」

ハンジ「…………やけにベッドを推すね? 何か企んでない?」

リヴァイ「んんー……別に何も企んじゃいないが」

ハンジ「何か怪しいなあ。こっち見て言ってよー」

怪しい。確かに怪しい。

エルヴィン「ベッドの方がいろいろ都合がいいだけだよ。男の都合って奴だよ」

と、その時、エルヴィン先生が余計な事を言ったから、リヴァイ先生が睨んだ。

リヴァイ「エルヴィン! しっ!」

ハンジ「えええ? そうなの? んもうーしょうがないなあ。でもご飯食べる時、居間を使わないの? 台所で食べるの?」

リヴァイ「これだけのスペースがあれば、わざわざ居間で食べる必要はない。台所にテーブル置いてそこで食べても大丈夫だろ」

ハンジ「そうかなー? 狭くない? ギリギリな気がするけど」

リヴァイ「気になるなら、床の間のある方を居間の代わりにすればいい。動線的には問題ない」

ハンジ「んーじゃ、ちょっと変則的になるけどそうしよっか。客間は誰かが泊まりに来た時の為に空けておこうか」

エルヴィン「一番日当たりのいい場所なのに。そっちを空けちゃうんだ」

リヴァイ「エルヴィンが泊まりに来た時にそこで寝ればいいだろ」

エルヴィン「リヴァイ……(じーん)」

リヴァイ「喜ぶんじゃない。同居の件は承諾出来ないが、まあ、たまに泊まりに来るくらいなら、別に構わん」

エルヴィン「うん。ありがとう。嬉しいよ」

ピクシス「大体、方針は固まったようじゃの」

ハンジ「はい。後はぼちぼち私物を先に入れていく感じですねー」

と、ハンジ先生がスケジュール帖に何やらメモをしていた。

ハンジ「……よく考えたらベッド、リヴァイのと私のシングルを隣同士くっつけたら問題ないんじゃない? 新しく買う必要なくない?」

リヴァイ「いや、真ん中が凹むだろ。それは気持ち悪いから嫌だ」

ハンジ「そう? じゃあくっつけて改造しちゃえば? 私、大工仕事するよ?」

リヴァイ「お前はどうしてそう、ケチケチするんだ。買いなおす必要があるなら金を出すとあれ程……」

ハンジ「だって、その……リヴァイにばっかり、お金出させるのも、ねえ?」

リヴァイ「むしろ出させて欲しいんだが?」

ハンジ「やだよー。私も一応、働いているから金はあるけど。貯金は2000万くらいしかないんだよね」

リヴァイ「充分だろ。それだけあれば。2人合わせたら1億いくじゃないか」

ハンジ「そうだけどさ。私、出来ればそういう事に金を使いたくないんだよね。節約できるところは節約したい派なのよ」

リヴァイ「はー……(ため息)」

ピクシス「良い嫁じゃないか。浪費家の嫁よりいいと思うがの」

リヴァイ「いや、しかし……」

ピクシス「まあ、遠慮する女だからこそ、してやりたい気持ちは男としては分かるがの。引くべきところは引くのが夫婦生活のコツじゃよ?」

と、したり顔をするピクシス先生だった。

リヴァイ「………ベッドの高さが合わない場合はどう改造するんだ?」

ハンジ「んーDIYのお店の人に相談すれば何とかなるんじゃない? 心配しなくても大丈夫だよきっと」

リヴァイ「仕方がないな。分かった。ただ、店の人が『改造は無理だ』と判断した場合は、ベッドを買いなおすからな。それでいいな?」

ハンジ「了解しました! (ビシッ)」

リヴァイ「後は、和室の上に敷く絨毯を新調する必要性が出てきたな。買いに行くか」

ハンジ「待って。誰か要らない絨毯、持ってないかな? 貰えるなら貰っちゃおうよ」

リヴァイ「おいおい、そこまで人に甘えるのは……」

ニファ「ああ、ありますよ。使っていない絨毯なら」

と、其の時、ニファ先輩が口を出した。

ニファ「もし良ければ差し上げます。使っていいですよ」

リヴァイ「いいのか?」

ニファ「はい。絨毯って、捨てるのは重いし、使わなくなると、ついつい収納の肥やしになるんですよね」

その気持ち分かる。オレも捨てるの面倒臭くて押入れに仕舞っていたからな。

買い替えた時とか、前使っていた絨毯、捨てるのは面倒だしな。

ニファ「私の場合、模様替えで色変えたくて買いなおしただけなので、物は悪くない筈ですよ」

リヴァイ「そうか。すまないな」

ニファ「いえいえ。利用出来る場所がある方がいいですよ」

という訳で、またもや新調する機会を失うリヴァイ先生だった。

嬉しいけど複雑そうな顔だな。

リヴァイ「後はぼちぼちハンジの私服から入れていくか。あ、でも収納場所がクローゼットはないから、タンスが必要になるな」

ハンジ「あ、そっかー。教員用の方はクローゼット備え付けだったから楽だったけど。和風の家ってタンスが必要なんだよね」

リヴァイ「クローゼットの方がいいならそれごと買ってもいいけどな。どっちでもいい。新調するか」

ハンジ「待って! タンスも誰か持ってない? 貰える物は貰おうよ!」

リヴァイ「いや、さすがにタンスくらいは新調していいだろ。それを持っている奴なんて……」

アルミン「…………祖父が使っていたタンスなら一応、ありますけど」

リヴァイ「?!」

アルミン「祖父が夏に亡くなったので。祖父の荷物はある程度、整理したので今はタンスを使っていません。遺品が無理なら差し上げられませんが、再利用して頂けるなら差し上げても構いませんよ」

ハンジ「いいの? 御爺ちゃんの遺品なのに、貰っていいの?」

アルミン「んー……実は僕自身も、近いうちに引っ越すかもしれないんですよね。今は独り身になってしまったので、近いうちにもう少し安い物件に引っ越そうと考えていていたんで、荷物を減らそうかなって思っていたから丁度いいですよ」

ハンジ「ありがとう! 大事に使わせて貰うね!!」

と、タンスも話がついてしまって、ちょっぴり残念な顔をするリヴァイ先生だった。

リヴァイ「………飯台くらいは新しく買ってもいいよな?」

ハンジ「ええ? そんなの、DIYコーナーで木を買ってくれば安く作れるじゃないの。作るよ? 私が」

リヴァイ「いや、仕事忙しい癖に無理するんじゃない。ベッドも改造する癖に、これ以上自分の首を絞めてどうする」

ハンジ「んじゃ、飯台も誰かに貰おうよ。誰か持ってない?」

リヴァイ「おいおい、さすがに飯台は……」

マルコ「ああ、そのくらいならこっちで作りますよ」

リヴァイ「?!」

マーガレット「大道具組に任せて下さい。その程度の物だったら1日あれば作れます」

スカーレット「うん。材料さえあれば、いけるよね」

ハンジ「というか、演劇部に材料探せばあるんじゃないの?」

マーガレット「ありそうだよね。ちょっと探してみようか」

という訳で、飯台も新調出来ずに落ち込むリヴァイ先生だった。

皆、察してやれよ。リヴァイ先生、新調したくて堪らないのに。

むしろ分かっててわざと意地悪しているのかな。皆、ひでえな。

リヴァイ「あー……本棚、増やしても構わんぞ? もうひとつくらいなら置けるだろ」

ハンジ「ええ? それは有難いけど、それだったら、私が今使っている食器棚っぽいアレを本棚に変更するよ。リヴァイの食器棚にお皿を統合させちゃえば、本棚2つ目作れるから要らないよー」

リヴァイ「………エアコン、新しいのを買ってもいいよな?」

ハンジ「エアコンもそれぞれ1個ずつ持っているでしょうが。夫婦部屋と書斎だけで良くない? とりあえずは」

リヴァイ「居間にも必要だろうが。客間にだって、エアコンつけた方が……」

ハンジ「エアコン4台も設置するの?! 電気代とんでもない事になるよ?!」

エルヴィン「客間はさすがにエアコン要らないんじゃない? 今からの時期なら電気ストーブでもあれば十分だよ」

ハンジ「電気ストーブなら、うちにも1台あるよ。居間だって、それで十分だよ」

リヴァイ「…………カーテンは」

ハンジ「それも既に持ってる。長さだって足りているよ。サイズ同じだから大丈夫だったし」

リヴァイ「………ブルーレイとかは要らないのか?」

ハンジ「まだレコーダーの方が生きているから移行しなくてもいいよ。パソコンだってあるし、今はネットでも観れる時代だよ?」

リヴァイ「………新しいテレビとか」

ハンジ「テレビならあるよ。別に買い替えなくていいよ」

リヴァイ「………照明器具は? 和風の照明器具、必要じゃないか?」

ハンジ「あー照明かあ」

やっと、必要な物を見つけて嬉しそうにするリヴァイ先生だったけど、

ハンジ「ん~じゃあ、それは買いに行こうか。さすがに照明器具を予備に持ってる子はいないだろうし」

やっとリヴァイ先生がガッツポーズした。

余程、買い物に行きたかったらしいな。ちょっと可愛い。

………と、思ったのもつかの間、

ピクシス「照明器具ならわしがお祝いに買ってやっても良いぞ?」

リヴァイ「?!」

ピクシス「新婚祝いじゃ。それくらいならわしが出してやろうじゃないか」

ハンジ「いいのー? やったー!」

リヴァイ「ええええ……(げんなり)」

ピクシス「その代わり、早く子供の顔を見せるんじゃぞ? (ニヤニヤ)」

ハンジ「うっ……頑張ってるけど、あんまり期待はしないでね」

おや? 「まだ早い」とかじゃないんだ。へー。子作りもう始めているのかな。

リヴァイ「くっ………出番がない」

ハンジ「いいじゃないの。甘えようよ。有難い事じゃないの」

リヴァイ「それはそうだが……」

ハンジ「リヴァイは自分の事にお金使いなよ。あんた、趣味が少なすぎて本当、自分に関しては掃除と料理に関する事くらいしか使わないじゃないの。これを機会に、調理器具とか増やしたら?」

リヴァイ「………俺自身の為に買っていいのか?」

ハンジ「いいんじゃない? 包丁とか、新調したら?」

リヴァイ「ふむ……」

と、やっと金の使い道を考え始めたリヴァイ先生は納得した様だ。

リヴァイ「そうだな。ハンジの事に気を取られ過ぎて自分の事を忘れていた。調理器具を増やしていいのであれば、いくつか買いたいと思っていた物もある」

ハンジ「じゃあそれを買おう。それでいいじゃない。リヴァイの新作料理楽しみだなー」

リヴァイ「分かった。ではそれを今度、買いに行くぞ」

エルヴィン「ふむ……では私からの贈り物も、そういった調理器具関連がいいだろうか?」

リヴァイ「え?」

エルヴィン「ピクシス先生ばかりずるいよ。私にも何か贈り物をさせてくれ」

リヴァイ「いや、しかし……」

ハンジ「あはは! 本当、お金出す機会がないね! でもいいじゃない。甘えようよ」

リヴァイ「………欲しいと思っていたのは、寸胴鍋だ。専門店にいかないとなかなか見つからない特大サイズだが。いいのか?」

エルヴィン「構わないよ。それを買ってあげよう」

リヴァイ「はー……」

何だかもう、皆、わくわくし過ぎだろ。リヴァイ先生、嬉しそうだけど困惑しているぞ。

リヴァイ「こういう時の為に金をためていた筈なのに。意外と何とかなるもんだな」

ハンジ「でも子供増えたら一気に使いそうじゃない? 子供にはお金かかるでしょ?」

リヴァイ「いや、それも何だかいろいろ貰って何とかなりそうな気がしてきたぞ。ピクシス先生、くれそうだし」

ピクシス「わしの孫の使っていた物なら譲る事が出来るぞ? (ニヤニヤ)」

リヴァイ「ああ、やっぱりそうですか……」

ピクシス「まあ、そうやって人は人に伝えていくもんじゃ。気にするな。譲る方も助かるんじゃよ」

リヴァイ「なら、いいんですが」

ピクシス「それよりも、1番大事な物はもう見に行ったのか?」

リヴァイ「ん? 大事な物……」

ピクシス「結婚式に使う『指輪』じゃよ」

リヴァイ「!」

ハンジ「あ! すっかり忘れていたね! どうしよっか」

リヴァイ「そうか。そこに1番金をかけるべきだという事を俺もすっかり忘れていた。ハンジ、この後、買いに行くぞ」

ハンジ「ええええ……荷物、運び入れるんじゃなかったの?」

リヴァイ「指輪が優先だろうが! 9月の誕生石は何だったか」

ハンジ「さあ? 私、そう言うの詳しくないから分かんない」

リヴァイ「スマホで調べろ。知ってる奴は教えてくれ」

と、其の時、すぐさまミカサが発言した。

ミカサ「……確か、サファイアだったと思いますが」

リヴァイ「助かる。サファイアの指輪をオーダーメイドしに行くぞ!」

ハンジ「えええええ?! ちょちょちょ、オーダーメイドって! 普通のでいいよー。ほら、銀色の無地の。地味な奴。結婚指輪ってそういうのじゃないの?」

ピクシス「その辺は特に決まりはないが、2人で決める事じゃな。わしは小さなダイヤモンドを装飾した指輪を贈ったぞ。ただ、普段つける指輪はあまり華美でない物が普通ではあるが」

リヴァイ「つまり、2種類用意しても構わないって事か」

ピクシス「その通りじゃな。普通は『婚約指輪』を贈ってその後に『結婚指輪』を贈るのが通例じゃけど、今は結婚指輪だけの者も多いぞ」

リヴァイ「じゃあ、婚約指輪が先だな。そっちを派手にして、結婚指輪は地味目の物を選べばいいよな」

ハンジ「ええええちょっと待ってよ。リヴァイ。浮かれ過ぎ! 2個も買う必要ないよ! 結婚指輪だけでいいって!」

リヴァイ「しかし、今のこの時期は『婚約期間』に入るんじゃないのか?」

ハンジ「そうだけどさー。ええええ……本当に買っちゃうのー?」

今度はハンジ先生が困惑し始めた。

何でだろ。さすがにそこは貰っておいた方がいいと思うのに。

リヴァイ「何か不都合があるのか?」

ハンジ「いや、そうじゃないけど。そうじゃないけど………(ぷー)」

リヴァイ「不満があるなら、言え」

ハンジ「不満じゃないけどー」

リヴァイ「だったらなんだ」

ハンジ「いや、そのね? その……こそばゆくて」

リヴァイ「は?」

ハンジ「だーから、その、むずむずするんだよ! こういうのは! ふわふわ通り越して、舞い上がっちゃう自分が恥ずかしいんだよおお」

リヴァイ「ははっ……」

リヴァイ先生が安心したように笑った。

リヴァイ「なんだ。そんな事か。だったら問題ないな」

ハンジ「問題はないけどさーその、やっぱり、結婚指輪だけでいいって。サファイアなんて、必要ないよ」

リヴァイ「分かった。だったら結婚指輪の方に金をかけよう。それでいいな?」

ハンジ「うん………(照れる)」

皆、ニヤニヤして話を聞いているけど、一人だけ、複雑そうにしている人がいた。

ペトラ先輩だな。やっぱりこういう会話を聞くのはきついんだろうな。

でも今日、お手伝いに来たって事は覚悟の上で来ている筈だ。

耳を塞ぐわけにもいかないし、ペトラ先輩もいつまでも引きずる訳にはいかないだろう。

ジャン「いくらくらいの物を買うんですかね? こういう時は」

と、其の時、さり気に耳ダンボしていたジャンが質問した。

ピクシス「ピンキリじゃよ。それは2人の愛が決める事じゃ。ただ、相場は10万くらいから100万くらいまでじゃろうな。金持ちであればもっと高い物でも普通に贈ったりするぞ」

ジャン「最低10万ですか……」

ピクシス「まあ、1万からでもいいとは思うが、安いよりは高い方が喜ばれるじゃろ。ここは男を見せるところじゃて」

ジャン「分かりました。今から貯めます」

ピクシス「いい心がけじゃな」

と、ピクシス先生がニヤニヤしている。オレも貯金しよ。

そんな訳で皆、おしゃべりしながら昼飯を食って、そこで解散となった。

午後からは本当に指輪を見に行くらしい。結婚式までに間に合わせるそうだ。

そして別れ際、ペトラ先輩が残って、ハンジ先生に話しかけていた。

他の生徒は先に玄関を出て、そのタイミングを見計らって、頭を下げたのだ。

ペトラ「ハンジ先生、すみません」

ハンジ「ん? 何?」

ペトラ「あの時は、本当にすみませんでした……」

ハンジ「?! え?! 何で謝るの?! むしろ悪いのは私の方だよ?!」

ペトラ「でも、皆が見ている前で、あんな事したのは……」

ハンジ「?! ああ、いや、むしろペトラの方がきつかったでしょ? 私は大丈夫だよ? だから頭を下げないで。ね?」

ペトラ「でも………」

ハンジ「私、ぶたれて当然の事をしたんだよ? だからいいんだって! むしろ感謝しているくらいなんだから、謝っちゃダメだよ!」

その瞬間、ペトラ先輩はやっぱり涙ぐんでしまった。

ペトラ「本当に、すみませんでしたあ……」

ハンジ「うわああん! 泣かないでよー! 私も泣いちゃうよー!」

と、一緒にポロポロ泣いてしまう2人だった。

ペトラ「でも、でも……あんな事、して、ハンジ先生、辱めたようなもんだし……」

ハンジ「え? ええ? そんな事ないよ? むしろ辱める事で言ったら、私、何度リヴァイにぶん殴られたか! 生徒の前で!」

リヴァイ「それはハンジが悪いんだろうが」

ペトラ「でも、やっぱり、生徒が先生、に暴力、なんて……」

リヴァイ「俺も過去に教師を殴った事あるけどな。何度も」

ペトラ「え、えええええ?! (びっくり)」

リヴァイ「まあ、勿論、やり過ぎて停学くらったり、最後は退学勧告くらって中退させられたけどな。そういう話じゃないんだから、気にするな。ペトラ」

ペトラ「え、でも………」

リヴァイ「人間なんだ。そういう事もある。冷たさの中にある「愛」は、ちゃんと伝わっている。だからいいんだ」

ペトラ「リヴァイ先生………(うるっ)」

いい言葉だな。リヴァイ先生の言う「冷たさの中にある愛」っていう言葉。

そうだよな。甘やかすだけが「愛」じゃねえもんな。

一見、酷いように見えても、そこにちゃんと「理由」があって、人は動く事もある。

俺の親父だってそうだな。ミカサの為に、あの誓約書、考えて書かせた訳だしな。

ペトラ「でも、なんていうか、私、その、偉そうに、言ってしまったし、その……」

ハンジ「ペトラ。それでいいんだよ」

ペトラ「え?」

ハンジ「あのね。聞いて欲しい。教師という仕事はね、教師が生徒に教える事だけが仕事じゃないの」

と、其の時、ハンジ先生が真剣な表情になって言った。

ハンジ「教師もまた、生徒に教わるの。いろんな経験を通して、成長していくんだよ。そういう「姿勢」を持てないような教師は教師になんてなれないよ。だから、教えてくれてありがとう。ペトラのおかげで、私はひとつ「学ぶ」事が出来たんだよ?」

ペトラ「ハンジ先生……」

ハンジ「ペトラも教職希望しているんでしょ? リヴァイから聞いているよ。いつか一緒に、お仕事しようね? 待ってるからね」

ペトラ「はい……!」

何だか感動の場面だった。ペトラ先輩がやっと落ち着いたみたいで、オルオ先輩が話しかけていた。

オルオ「終わったか?」

ペトラ「うん。ハンジ先生、あんたの言う通り、気にしてなかったよ」

オルオ「だろ? ハンジ先生の事だから、そうだと思っていたよ。体面を気にするような教師なら、元々、リヴァイ先生が選んでいる筈がねえ」

ペトラ「本当だよね。完敗過ぎるよ。いっそ、そういうの、気にする先生だったなら、良かったのに」

オルオ「普通じゃねえんだよ。リヴァイ先生も、ハンジ先生も、な。でも、だからと言って、それを真似する必要はねえぞ」

ペトラ「うん。私達は私達の道を頑張らないとね」

と、お互いに言い合っている。こっちの2人も一件落着したのかな。

最後に残ったオレとミカサは、リヴァイ先生達と少し話す事にした。

リヴァイ「ん? 何か忘れ物か?」

エレン「いえ……その、ちょっと気になった事があって」

ミカサ「下世話な話を聞いてもいいですか?」

ハンジ「え? エッチな話?」

ミカサ「いえ、そちらではなく、ここのお家賃とか……」

エレン「すんません。気になっちゃって」

お互いにバツ悪そうに聞いてしまう。だって気になるんだもん。

オレ達もいつか、家出るかもしれないし。相場は聞いた方がいいだろ?

リヴァイ「ああ、家賃か。確か6万5000円くらいだったかな」

エレン「それって安い方なんですかね」

リヴァイ「この地区だったらかなり安い方だぞ。ただ、安い理由は、建物が古いだけじゃないんだよな」

ハンジ「うふふふふ……出るかも? みたいな噂話、聞いちゃったんだよね」

エレン「え?」

出る? 何が?

ハンジ「だーから、もしかしたら、『幽霊』っぽいものが出るかもー? みたいな?」

リヴァイ「そのせいで、借り手がなかなかつかなくて余っていた物件だったらしいんだが、俺は別にそういうの気にしないし、ハンジに至っては「むしろ見てみたい」と言い出してな。だったらいいかと思ってここに決めた」

エレン「えええええ……呪われたらどうするんですか」

リヴァイ「その時は霊媒師でも呼んでお祓いしてもらうさ。まあ、死者に会えるというならば、俺はかえって会ってみたい気持ちの方が強いんだが」

エレン「こ、怖くないんですか?」

リヴァイ「全然。むしろ生きている人間の方が何倍も怖いだろ。もし会えるなら、会ってみたい奴もいるしな」

ミカサ「それって、誰か知人とか亡くされているんですか?」

リヴァイ「高校時代のダチとかな。若い頃に無茶やって、死んじまった馬鹿もいる。他にも、卒業生の中にも運悪く早く亡くなった奴もいる。生きていれば、いろいろあるんだよ」

と、少しだけ切なそうに目を細めるリヴァイ先生だった。

ミカサ「その気持ち、分からなくはないです」

リヴァイ「ん? お前も誰か知人を亡くしているのか」

ミカサ「父親を、幼い頃に」

エレン「俺も母親を、亡くしているので、気持ちは分かります」

リヴァイ「そうか」

ハンジ「霊感があれば、見れたりするのかな。リヴァイ、霊感ない?」

リヴァイ「さあな。少なくともそういう経験はまだ1度もないが。そういうのは見ようと思って見れるものじゃねえだろうからな」

ハンジ「そうだよねー。しょうがないよねー運に任せるしかないかー」

と、しみじみ言い合って、オレ達は新居を出て行った。

まさか幽霊屋敷の噂のある場所に新居を構えていたとは思ってもみなかったけど。

エレン「ミカサは幽霊の存在、信じるか?」

ミカサ「うん。いるとは思う。見えなくても、きっとどこかに」

エレン「そうか……」

ミカサ「父の姿を見る事が出来るなら、会ってみたい気持ちもある。でも、それは許されない事のような気がするので我慢する」

エレン「そうだな。オレもそんな気がするよ」

と、そんな風に話しながら、オレとミカサは最後に玄関を出て行ったのだった。

ここまでにします。
まさかの幽霊屋敷の新居ですが、
リヴァイの事だから幽霊見ても動じないで普通にしゃべっていそうです。

では続きはまたノシ

皆、期待していてワロタw
でも再現劇よりもっと厄介な問題がまだ残ってますよん。ふふ。






11月24日。月曜日。その日は勤労感謝の日の振り替え休日だった。

その日は学校も休みで、部活も午後からの予定だったので、午前中は暇だった。

アルミンは午前中に早速、リヴァイ先生にタンスを運び入れる事にしたらしい。

リヴァイ先生が軽トラをレンタルして、アルミンの家に行って自分達で運び入れる予定だそうだ。

しかしその日の午前中は、ミカサの様子が変だった。やけに顔が赤い。

熱でもあるんかな? そう思って近づいたら何故か「近づかないで」と拒否られてショックだった。

エレン「なっ……熱、測ろうとしただけだろ!」

ミカサ「違うの。そういう事ではないので」

エレン「え? 何が違うんだよ」

ミカサ「エレン、私は今、危ない状態なので」

エレン「え? え?」

ミカサ「排卵日が、恐らく終わったので、ムラムラするので、近づかないで欲しい」

エレン「!」

ミカサ「エレンと付き合うようになってから、生理の不順が治ったおかげで、予測がしやすくなった。計測上、明日までは危ない日になるので、その………(ハアハア)」

エレン「分かった! 分かった!」

オレは慌ててミカサと距離をとった。そっか。もうそういうのが分かったのか。

というか、そういうモードに入ったミカサの雰囲気って、いつもにも増して艶っぽくなるんだな。

>>308
訂正
アルミンは午前中に早速、リヴァイ先生の家にタンスを運び入れる事にしたらしい。

「の家」が抜けていました。

ミカサ「エレン、ごめんなさい。以前、コミケに行った時も、計測上、どうやら危険日の期間だったみたい」

エレン「え? そうだったのか?」

ミカサ「うん。クラスの出し物を決めた時も、その期間だったみたい。通りであの時、自分でも妙にテンションが高いと思った……」

エレン「そうなのか」

やる気満々だったな。そう言えば。アルミンに便乗して。

ミカサ「その……私の生理は28日周期でドンピシャで来るようになったから、生理開始から13~17日の間が特に危険な時期になるそうなので、その5日間だけは、エレンも気をつけておいて欲しい。私自身も、気をつけるけど、その……自分でも熱っぽさを堪えるのがとても難しい」

エレン「分かった。気をつける………」

うーん。なんか目がうるうるしているな。いつもにも増して。

いかん。あんまり見ると、こっちも釣られてしまう。

人間のサイクルってよく出来ているんだな。そういう「発情モード」になると、いつもより綺麗に見えるように出来ているのか。

生殺し、バージョンアップだよなあ。これって…。

ミカサ「今日はこの状態で部活に出る訳にもいかないので、ちょっと運動して熱を発散してくる……」

エレン「え? 走ってくるのか?」

ミカサ「うん。ランニングでもして発散してくる。というか、もう、ムズムズして自分でも困る」

エレン「………………」

其の時のオレは、発情したミカサに、自分も少し当てられて。

理性の声は「いかん」と止めていたのに、本能の方が勝手に、口を動かした。

エレン「そんな事するより、自慰したらいいじゃねえか」

ミカサ「え?」

エレン「!」

しまった。オレ、何言ってるんだ。

エレン「いや、何でもない。すまん」

ミカサ「自慰? 何の事?」

エレン「………所謂、オナニー行為だよ。女でも、ムラムラ鎮めたいなら、抜いた方がいいんじゃねえの?」

って、オレ、馬鹿か。何、変な事、勧めているんだよ。

でも、ミカサはその提案に驚いたようで、

ミカサ「その発想はなかった」

エレン「え?」

ミカサ「体がムズムズする時は身体を動かしていた。女の子も、そういう事、していいとは思わなかった」

エレン「え? 別にしちゃいけないって事はないだろ」

ミカサ「………なんとなく、してはイケナイ行為のような気がしていたので」

おおお。なんという純粋無垢。いや、そんなミカサにそれを勧めるオレがゲスいんだろうけど。

ミカサ「体を動かしても、それでも足りなくて、体が濡れてどうしようもない時もあった。なので、以前、エレンに「どうしたらいいの?」と聞いてしまった」

エレン「ああ、アレってそういう意味だったのか」

ミカサ「(こくり)誰か、相手がいればもっと発散出来たと思うけど。一人だとやはり身体を動かすのに限界がある。エレンが相手だと、本末転倒になりそうな気がしていたし……」

そりゃそうだな。オレもそう思うわ。

エレン「そっか……もっと早く、オレも勧めたら良かったな」

ミカサ「では、その、オナニーとやらを自分でやってみる」

エレン「……………」

ミカサ「でも、具体的にはどうしたらいいのだろうか? マニュアルはある?」

エレン「いや、そんなのは、独自に編み出すもんだけど……」

其の時、オレの頭の中で悪魔の囁きが聞こえた。

本能の、声が、オレを勝手に動かしてしまったんだ。

エレン「…………電話越しに指示してやろうか?」

ミカサ「え?」

エレン「オレ、自分の部屋にいるからさ。携帯で、電話越しに指示してやるからさ。その通りにやってみれば?」

ミカサ「いいの?」

エレン「初めてだから不安なんだろ? 手助け出来るならしてやるよ」

ミカサ「では、お願いしたい。私は自分の部屋でやってみるので」

エレン「おう」

これは違反ではない。決して違反行為ではない。

天使の方のオレもOK出しやがった。こんな機転を咄嗟に出す自分が怖いけど。

オレの口元はにやけていた。所謂、テレフォンエッチって奴を、初めてやってみる事にしたんだ。

休みの日の午前中から何やヤッてんだよ。というツッコミは却下だ。

これはあくまでミカサの熱を発散する為に必要な事で、悪い事ではない。

そう、自分に言い聞かせて準備を整える。ミカサと携帯で声だけで繋がった。

ミカサ『エレン、まず何からしたらいい?』

エレン「んーと、まずはティッシュの箱をすぐ傍に用意しろ」

ミカサ『OK。用意した』

エレン「その後は、そうだな……布団、もう片付けたか?」

ミカサ『うん』

エレン「出来れば布団の上でリラックスした状態で、仰向けになった方がいいな」

ミカサ『分かった。では、1回、布団を出す(よいしょ)』

エレン「…………準備出来たか?」

ミカサ『出来た。仰向けに寝ればいいのね? (ごろん)』

エレン「そうだ。んで、まずは服の上から、自分の右手で左胸を触ってみろ」

ミカサ『うん………』

エレン「オレに触られた時の事、思い出せ。あの時の感覚を思い出してみろ」

ミカサ『うん……っ……ああっ』

一気に声が艶っぽくなった。おおお。やべえ。これはクル。

こっちも片手でスタンバイ中だ。いつでも出せるようにしている。

エレン「ブラジャーは出来れば外してくれ。全部脱ぐ必要はないけど。右手で直接、左胸を触れる状態にしろ」

ミカサ『うん……出来た』

エレン「準備出来たか? 次は乳首を右手で摘まんで、人差し指で軽く引っかけ」

ミカサ『うん……うん………』

エレン「感じるか? オレに触られているっていう、妄想も重ねるんだ。コリコリしてくるだろ?」

ミカサ『ああっ……ちょっと、固くなってきたみたい。ああん』

エレン「よし。固くなってきたら、もう少し強く挟んでちょっと右に回したり、左に回したり、乳首を回転させるんだ」

ミカサ『ああああ……エレン、これ、気持ちいい……!』

エレン「だろ? 気持ちいいなら、どんどん弄っていい。遠慮するな。好きなだけ弄れ」

ミカサ『ああああ……はああ……ん……んー……』

やべええええええ。これ、楽し過ぎる!!!

変態だと蔑まれてもいい。今、この瞬間、至福のひと時だ。

ミカサ『やあ……あの時の事、思い出しちゃう……! あああん!』

エレン「思い出せ。オレも思い出すから。あの時、その後はどうして欲しかった?」

ミカサ『ズボン、脱がせて欲しかった……濡れたあそこにも、エレンの手で触れて欲しかった』

エレン「そうか。んじゃ、次はそっちに手を伸ばすぞ。ズボンのチャック、緩めろ。まずはパンツの上から、優しく撫でてみるんだ」

ミカサ『布の上から擦るの?』

エレン「そうだ。こっちは中指の腹で、優しく撫でる感じだな」

ミカサ『あああ………こ、こんな感じ?』

エレン「ああ。気持ちいいだろ? 湿って来たか? パンツ、濡れて来たか?」

ミカサ『うん、だんだん……濡れて来た』

エレン「よし。次は、ガラケーを耳で挟んで、下と乳首を当時に弄るんだ。出来るか?」

ミカサ『ちょっと待って……ん……何とか、出来た』

エレン「準備は出来たな? 左胸は左手で。右手はあそこを弄るんだ。同時にだ。いけるな?」

ミカサ『うん……うん……こう、かしら? ああっ……』

エレン「気持ちいいか? ミカサ……」

ミカサ『うん、気持ちいい。エレン、気持ちいい……あああっ……はああ……!』

吐息がすげえ。携帯電話越しなのに。すげえ耳に響いてくる。

これが発情期バージョンのミカサの威力か。目の前にしたらコンドームつけ忘れそうで怖いな。

エレン「パンツ、ぐちょぐちょになってきたか?」

ミカサ『なってきた……』

エレン「よし、なら直接触ってみるぞ。中指で、自分の気持ちいい場所を探してゆっくり弄ってみろ」

ミカサ『うん……はああああ……あああっ……んー……ん……』

自慰行為に耽っているミカサの声、すげえ色っぽい。

出来るだけ声は殺しているけど。それがかえって、そそる。

家の中だからな。あんまり大声で嬌声をあげる訳にもいかない。

親父は仕事に出ているし、おばさんもパートで今、いないけど。

隣近所に聞かれたらまずいから、これ以上はまずいって分かってる。

だからこその、携帯越しの声だ。

ミカサ『ああ……ああ……また、ふわふわしてきた……』

エレン「そろそろじゃねえの? 体が浮くような感覚、きたか?」

ミカサ『た、多分……あの時のような、前兆が来ている』

エレン「だったら、一旦、休憩しろ。一気にイクと勿体ない」

ミカサ『えええ………』

エレン「我慢しろ。イク手前で一旦、休憩した方が、もっと気持ち良くなれるぞ」

ミカサ『分かった……休憩する……』

ハアハア言ってるミカサがすげえ、可愛い。

あーダメだ。オレの方もだんだん限界が近づいてきたぞ。

途中ですが、すんません。お預けで。
ちょっと休憩します。

正直キモイ

>>320
正直、そう思いながら書いている。
毎回思う。エレンファン、サーセンと。

ミカサ『はあ……はあ……はあ……はあん……』

最後の吐息がすげえ色っぽかった。なんだ今の『はあん』って。

ああもう、だんだんこっちも辛くなってきた。

ミカサが自分の部屋で自慰行為していると思うと、すげえクル。

どっちが先にイクかな。いや、オレが先にイク訳にはいかねえか。

指示しないといけねえしな。ミカサを先にイカせてやらねえと。

エレン「そろそろ、いいか?」

ミカサ『うん………』

エレン「自分の指、中に入れられるか? 中の方、緩んできたか?」

ミカサ『大分、緩い……あ、入った』


ドックン……!


不意に言われた『入った』の台詞にオレも興奮が一際高まった。

ミカサ『エレン?』

エレン「いや、何でもない。入ったなら、入れたり出したり、気持ちいいところを擦りながら出し入れしてみてくれよ。………オレのだと、妄想して」

酷い指示だと我ながら思うが、そう言った直後、

ミカサ『あああ……エレンのはこんなに細くないのでは?』

エレン「ぶふっ……」

ミカサ『体位のモデルをした時の、布越しに当たったエレンの、アレ……結構、太かった……』

エレン「や、やめろ。何か査定されているみたいで恥ずかしいだろ!」

ミカサ『エレンだって、私を査定する癖に』

エレン「いやまあ、そうだけど。とにかく妄想すればいいんだよ。妄想を重ねて気持ち良くなるのがオナニーなんだから!」

ミカサ『ああん!』

いかんいかんいかん。どんどんミカサがエッチになっていく。

いや、オレのせいなんだけど。オレもどんどん、変態になっていく。

自分でもキモいと思っている。でも楽しい。滅茶苦茶、楽しいんだ。これ。

ミカサ『指じゃ、足りないっ……もっと、奥まで、何かで、貫かれてみたいっ……!』


ドックン……!


ミカサ『エレン……やっぱりこれでは、かえって酷くなるような……ああっ……性欲が、止まらない……!』


ドックン……!


ミカサ『辛い……身体が、火照って、ぬるぬるして、ダメ……自分が自分じゃないみたい……』


ドクドクドクドク………!


ミカサ『エレンと、エッチ、したい……のに………』


ブッチン…………


携帯でのテレフォンエッチで止めるつもりだったのに。

その音が聞こえた瞬間、オレは自然と立ち上がって、ミカサの部屋に足を運んでいた。

ミカサの涙声のせいでもう、完全にオレはブチ切れていた。

ふすまを開けると、そこは桃源郷だった。

ミカサが乱れて仰向けになっていて待っていた。その光景を目に焼き付けると、それに覆い被さる様に、オレは………

ミカサの唇にキスした。午前中から何やってるんだという理性の声は遠すぎて聞こえていない。

乱れたミカサにキスの嵐を。手はもう、暴走してミカサの濡れたあそこに指を突っ込んだ。

服は完全に剥ぎ取った。破れないように気を遣う余裕はなく、もしかしたら、ビリッといったかもしれない。

とにかく、一気に全裸にしてやった。ミカサの中に指を入れてみる。

1本、OK。2本、OK。3本目は、少し痛がったけど。多分、大丈夫かな。

オレ自身の息子は準備万端だ。ゴムは親父に持たされた新品がいつもポケットに1個忍ばせている。

一気に封を開けようと、そう決意したその時………


ピンポーン…………


玄関のチャイムが鳴って、オレとミカサは同時に顔面蒼白になった。

エレン「え、まさか……親父か?」

忘れ物かな。でも鍵は持って出ている筈だから、チャイムなんて押さない筈だが。

ミカサ「はあ……はあ……エレン」

エレン「ああ、分かってる」

現実に一気に引き戻されてオレは気を鎮めた。

急いでズボンを着なおして、自分の服を整えると、玄関に向かった。

来客はただの宅配便だった。何だよ。親父宛の通販かよ…。

ハンコ押して物を受け取ると、オレはそれを親父の部屋に置いて、一気に脱力した。

あー。時間もそろそろ、昼飯食って部活いかないといけない時間だな。

とほほ…。しょうがねえ。今日はここまでしか出来ないか。

オレはミカサの部屋に戻って「タイムリミットだ」と言った。

エレン「悪い。なんかかえって暴走させたみたいだな」

ミカサ「ううん……」

エレン「明日までそんな感じなんだよな。多分」

ミカサ「うん……まだ、ムズムズするけど。後は自分でする……」

エレン「今日は部活休んでもいいと思うぞ。というか、そんな状態のミカサを他の奴らにあんまり見せたくねえかも……」

ミカサ「お休みしても、いいの?」

エレン「そんな状態のミカサと劇の練習したら、その、オレもヤバい気がする」

オレも自分で抜いてから学校に行こう。その方がいいな。

ミカサ「分かった。今日はそうさせて貰う。皆には、調子が悪いと言っておいて欲しい」

エレン「分かった。じゃあ、オレも準備するから」

という訳で便所に逃げ込んでいつもの処理を済ませてから、オレは自分の身支度を整えた。

でも危なかった。宅配便が来なかったら、あのまま部活の事を忘れて、きっとミカサとエッチしていただろうな。オレは。

エレン「……………」

怖い、と思った。ミカサの事もだけど。自分自身が。

オレってこんなにルーズな奴だったっけな。自分で自分にびっくりしちまう。

いや、ミカサが可愛いのが悪い。あいつが色気強いのが悪い。

と、責任転嫁しながら、オレはその日、午後から部活に出かけた。

家に残ったミカサは、恐らく残りは自分で自分の処理をするだろう。

それを聞けないのは残念だけど。それはもう、妄想の中で想像するだけに留めておいた。

そして部活に顔を出すと、アニに「珍しいね」と言われてしまった。

アニ「ミカサ、調子悪いんだ。何かあったの?」

エレン「いや……大丈夫だ。大して悪い訳じゃないけど、用心の為に休ませて来たんだよ。オレが」

アニ「ああ、あんたの過保護のせいか。分かった。それなら仕方がないね」

良かった。オレが過保護だという事になった。これなら疑われずに済むだろう。

アニ「………やり過ぎて足腰立たなくさせたとか、じゃないよね?」

エレン「ぶふううううううう?!」

何でその発想になる?! いや、当たらずとも遠からずだけどな!!!

ジャンがこっち見てる。まずい。すげえ険悪な表情だ。

ジャン「てめええええええ」

エレン「やってないから!!! そういうんじゃねえから!!!」

アニ「そう。ならいいけど。ミカサとやらしー事するのはいいけど、ある程度は自重してよ。あんたたち、今回の劇のダブル主役なんだから」

エレン「え? あ、そっか。今回は、2人が主役になるのか」

マルコ「そうだね。脚本はリヴァイ先生寄りの台本になりそうだけど、ハンジ先生のパートも結構あるからね。ダブル主演と言っても過言じゃない劇になりそうだよ」

エレン「そういえばアルミン、まだこっちに来てないのか? 遅くないか?」

と、思ったその時、アルミンが音楽室にやってきた。

そしてその後ろには、何故か機嫌の悪いリヴァイ先生と、顔の赤いハンジ先生が……。

アレ? これって、まさか。

アルミン「皆、ごめん………やっちゃった」

マーガレット「え? やっちゃったって、まさか!」

リヴァイ「おい。今度の冬公演の演劇、今までダミーの練習をしていたそうだな?」

ギクリ。あちゃー。バレたのか! まずいぞこれは!

リヴァイ「俺とハンジの物語を勝手に公演しようとしていたらしいな? 仮台本、読ませて貰ったぞ」

ひえええええええ。怒ってる。超怒ってる! どうすんだコレ!

リヴァイ「どうせアレだろ。発案はエルヴィンなんだろ」

アルミン「おっしゃる通りで……」

リヴァイ「全く。あいつの場合はサプライズというより毎回ドッキリだからな。未然に防げて幸いだった」

ジャン「あの、でも……もう、練習は始めていますし、その、途中で劇の内容を変えるというのも……」

リヴァイ「ああ。それは分かっている。ただいくら何でも本人達の許可なく、プライベートな部分を劇で皆の前で発表するのはどうかと思うから、一応、内容はチェックさせてくれ。特に俺の事より、ハンジの過去はナイーブな部分もある。俺も今日、台本を読んで初めて知ったんだが」

ハンジ「あははは……ごめんねー。今まで黙っていて」

リヴァイ「それは別に構わないが、とにかく、アルミンの台本を一部、修正を加えさせてくれ。アルミンの台本には想像で補完した部分もあったから、そこは事実を混ぜて修正を加えていい。それと、ハンジの大学時代の話は、1部カットして貰いたい」

エレン「あーやっぱりその方がいいですか。セクハラシーンとか、まずいですもんね」

リヴァイ「いや、そこは本人的には『もう昔の事だからいいよー』って事らしいが、伏せて欲しいのは研究内容の方だ。守秘義務があるから、それに関わっていた事は公には出来ないんだそうだ」

ハンジ「ごめんね。例の某細胞に関する事はデリケートな問題だから。いろいろ突っ込まれたらまずいから。そこはあんまり詳しく描写しないで欲しいのよ」

エレン「ああ、そっちですか」

何だ。ハンジ先生にとってはセクハラとパワハラは過去の事なのか。

リヴァイ「しかし、ハンジ……」

ハンジ「ん?」

リヴァイ「どうしてお前は、先にその事を言わなかったんだ。その……わざと汚い女を演じていたなんて、これじゃ俺がまるでただの馬鹿な変態にしか思えないじゃないか」

実際、そうだと思う。と言ったらげんこつ食らうので言わないけどな。

ハンジ「んー厳密に言えばわざとではないんだけどね。割と本気で汚女だったよ。私は。ただ、それがだんだんエスカレートしていっただけって話だから。実際、リヴァイがちょっと綺麗にしてくれると、その後は変なナンパに絡まれたりした事もあったから。リヴァイと一緒に風呂入る日は、出来るだけあんたと一緒に部屋に籠っていたでしょ?」

リヴァイ「…………だから俺が『折角綺麗にしてやったのに、出かけないのか?』って勧めても部屋から出たがらなかったのか」

ハンジ「まあね。今はさすがにそういうのも減ったけど。20代の頃はまだ、ね。私も一応、女子力あった時代ですから」

リヴァイ「はー……(*凹んでいる)」

ハンジ「いいじゃない。もう過去の事だし。リヴァイのおかげでその必要性、なくなったし。最強の虫よけスプレー、つけてくれてありがとうね」

と、言ってハンジ先生が左手の薬指を見せてくれた。

あー! 金色の指輪だ! もう結婚指輪はめているのか!

リヴァイ先生の方も左手の薬指に銀色の指輪がはまっている。

そうか。籍は先だけど、指輪は先にはめる事にしたのか。

ハンジ「さすがにリヴァイという最強の男を乗り越えてまで手出すような馬鹿はいないでしょ?」

リヴァイ「そうだといいがな」

ハンジ「落ち込まないでよー。私、この指輪、気に入っているんだよ? 太陽をイメージしたデザインだって言われて、あんたが『ハンジみたいだな』って言ったの、嬉しかったし」

うはあ。砂吐きそうな甘さだな。

あ、ジャンが吐血したような顔でぐったりしている。

リヴァイ「その後、ハンジは『だったらリヴァイはお月様だね』って言ったから、俺がこっちの指輪になったが。普通は男女、逆にはめるらしいぞ」

ハンジ「いいじゃーん。実質、リヴァイが私の嫁みたいなものでしょ?」

リヴァイ「昼間は、そうだな。夜は逆転させて貰うが」

ぶふうううう!!!??? さり気に何言ってるんだ?! リヴァイ先生!!!

ハンジ「え? あーうん。まあ、その辺は、ね? 確かにその通りですけどね」

リヴァイ「何だ? 何か不満があるのか?」

ハンジ「いやいや、不満なんて何もないよ?」

リヴァイ「だったら何で、距離を置く? ん?」

ハンジ「やだなーふふふ……その、昼間はダメだよ? 逆転しないからね?」

リヴァイ「ちっ……」

何で舌打ちしているんだよ。リヴァイ先生。

この先生、以前より自分のエロ親父度、ガンガン前に出す様になったな。

いや、元々エロ親父だったんだろうけどな。ファンの女子達はきっとこんなリヴァイ先生は知らないんだろうな。

リヴァイ「話が脱線したな。とにかくそういう訳だから、これからは出来るだけ、こっちの練習にも顔を出す。俺の役はミカサがやると聞いたが、今日はミカサの気配がないが?」

エレン「あ、今日はちょっと休ませています。調子悪いんで」

リヴァイ「ふむ……一応、声をかけてやろうとかと思ったが、まあいいか。俺の役をする以上、アクション満載になりそうな感じだったから、今回も怪我だけには十分気を付けろとエレンが代わりに言ってやってくれ」

エレン「はい。分かりました」

やっぱりこういうさり気ない気遣いはリヴァイ先生らしいな。

途中までですが今日はここまでです。
宅配便のせいで邪魔入ってすみません。グリシャさんの買い物のせいです。

リヴァイ「ああそれと、ガーネット。今、時間あるか?」

ガーネット「なんでしょう?」

リヴァイ「結婚式の時にちょっとしたサプライズを頼みたいんだが、俺の体のサイズを測って貰えないか?」

ガーネット「ん? オーダーしますか?」

リヴァイ「ああ。とある服を、頼みたいんだが……」

ごにょごにょ。急に内緒話を始めたリヴァイ先生にガーネット先輩が爆笑していた。

ガーネット「本気ですか?! いいんですか?!」

リヴァイ「ああ。普段、エルヴィンにはいつもドッキリを仕掛けられるから今回くらいはこっちも仕掛ける。あいつを絶対、驚かせてやりたいんだが」

ガーネット「それ、エルヴィン先生だけじゃなく、生徒も教師も全員、びっくりしますよ? いいんですね? 後悔しませんね?」

リヴァイ「頼む。ハンジの分も頼めるか?」

ガーネット「お任せ下さい。気合入れて作ります(キリッ)」

エレン「結婚式の衣装ですか?」

リヴァイ「ああ。折角だからガーネットの家に頼もうかと思ってな」

ハンジ「ごめんねー。生徒を利用しちゃって」

ガーネット「いえいえ。うちもいい宣伝になるので一石二鳥です」

と、ガーネット先輩の眼鏡が光った。何だ? どんな衣装にするつもりなんだろ?

リヴァイ「後は、そうだな。披露宴の時に何を振る舞うか、迷っている。何か食いたい物あるか? 俺が全部作って振る舞おうと思っているんだが」

エレン「え? 新郎が料理までやっちゃうんですか?」

リヴァイ「よそに頼んでもいいんだが、折角だから自分でやろうと思っている。ケーキはさすがに外注しようと思うが、振る舞う料理は俺がやる」

エレン「じゃあ、御刺身とかも自分でやるんですか?」

リヴァイ「魚捌くのは得意だからな。いいぞ。刺身も出してやる」

すげえええ。ある意味贅沢な結婚式になりそうだな!

アニ「チラシ寿司とか……巻き寿司とかもいいですね」

リヴァイ「了解。お前、寿司関係好きだな」

アニ「はい。まあ、そうですね。後は伊勢海老とかも」

リヴァイ「海老か。めでたい席には定番だな」

アニ「鯛も是非(キリッ)」

リヴァイ「分かった。その辺りの和風の料理をメインに考えておこう」

道場三四郎みたいだな! 料理の鉄人みたいだぜ!

エレン「お品書き、やって下さい! リヴァイ先生!」

リヴァイ「ああ? まあ、料理の鉄人を真似てもいいが」

と、ニヤニヤしているリヴァイ先生だった。

リヴァイ「後はそうだな……結婚式自体は、結婚式場で午前中に軽く済ませて、そのまま午後は披露宴の形を取ろうと思っている。劇部の中で式場の方に来たい生徒はいるか?」

エレン「え? 結婚式と披露宴、別にやるんですか?」

リヴァイ「結婚式の方は招待制だな。会場のキャパの関係で、さすがに全員の生徒は式の方には連れて来られない。披露宴の方には主にOBOGを集めるつもりでいるから、現役のお前たちは来たいなら来てもいいぞ」

おおおおおどうする? 甘えてもいいのかな。

エレン「それは是非、行きたいですけど……いいんですかね」

リヴァイ「構わんぞ。特に、エレン。ミカサ。お前たち2人には特に来て貰いたい。俺達は、お前らのおかげで結婚まで漕ぎついたようなもんだからな」

エレン「え? そうでしたっけ? オレ、何かやりましたっけ?」

リヴァイ「………覚えていないのか?」

エレン「はあ……まあ。なんかいろいろ遭遇しちゃったのは覚えていますけど。でも、特別何か「した」覚えはないですが」

リヴァイ「そうか。なら、思い出させてやる」

と、言ってリヴァイ先生は懐かしむように笑った。

リヴァイ「俺とハンジがいつものようにシャワー室で会話した時の事、覚えているか?」

エレン「え? ああ! アレですか。覚えてますよ。リヴァイ先生、裸だったのに、普通にハンジ先生とシャワー室で会話してましたよね。お互いに裸見ても平気で会話していたから、オレが「つきあっているんですか?」ってうっかりツッコミ入れたアレですよね?」

リヴァイ「そうだ。今思うと、アレが全ての始まりだった」

エレン「え……」

リヴァイ「あの時の、エレンの素朴なツッコミがなければ、俺達は今も、ぐるぐる同じところを走り回ってずっと平行線を辿っていただろう。俺達の関係を変化させてくれたのは、エレン。お前のおかげだ。本当に、ありがとう」

エレン「ええええ?! アレがきっかけだったんですか?! いや、でもアレは、オレじゃなくても、多分、ジャンが見ていたとしてもツッコミ入れていましたよ?!」

ジャン「あ? それはどういう意味だ。エレン」

エレン「後で詳しく話す。いや、だから、オレだからって話じゃなくて、きっと皆、ツッコミたくて堪らなかったと思うんですが……」

オレがそういうと、今度はハンジ先生が笑った。

ハンジ「ああ、だろうねー。でも、実際その言葉が『届いた』のはエレンが初めてだったんじゃないかな? それまでは、どんなに周りから冷やかされても、リヴァイはそれを認めようとはしなかったからね」

エレン「そうだったんですか?」

ハンジ「うん。私が以前、『友人でいよう』なんて言っちゃったせいで、リヴァイの気持ちを封印させてしまっていたからね。今思うと、本当に酷い事したと思ってるけど……」

リヴァイ「まあそのツケは今、払って貰っているからいいとして、だ。つまり、エレンの言葉が俺の中で『響いた』のが全ての切欠だったんだ」

エレン「そうだったんですか」

リヴァイ「ああ。今思うと、『付き合っているんですかー?』とか『夫婦みたいですねww』とかそういう類の冷やかしは受けても、エレンのように具体的に『恋人同士くらいに親密じゃないとやらない』という指摘をしてきた奴は初めてだったんだ。それを冷静に考えてみた時に初めて俺の中で『あれ?』っていう違和感が出てきてな。そこからだ。エルヴィンですら、思っていたけど指摘まではしてこなかったのだから、よほどおかしな関係だったんだと、我ながら笑いたくなったよ」

と、リヴァイ先生が苦笑を浮かべていた。

リヴァイ「それ以外にも、エレンにもミカサにも沢山、世話になった。いつかお前たちが何か困った事が起きた時は、力になってやりたいと思っている。だから、式に2人とも出てくれないか?」

エレン「分かりました。ミカサは渋るかもしれませんが、説得します」

リヴァイ「頼んだぞ。何なら、ミカサが欲しがるような物を用意して釣ってやるから」

エレン「はい。お願いします」

という訳で、皆もそわそわしているけど、式に出ようかどうか迷っているようだ。

アルミン「うーん。でも、いいんですかね? 僕らが式に出席したら、リヴァイ先生のファンの子達から嫉妬されませんかね?」

アニ「あーあるかも。怖いよね。何か嫌がらせされそう」

リヴァイ「何なら式の方は、オフレコにしてもいいけどな。判断は任せるが」

ジャン「いや、それはもう、いいんじゃねえか? いちいちファンの子達のご機嫌伺うのも変な話だろ」

マーガレット「そうですね。私達はリヴァイ先生との繋がりも強いし。体操部の子達も来られる子は来るんですよね」

ハンジ「そうなるね。勿論、希望制にはなるけど」

マルコ「だったらいいんじゃないかな。折角招待してくれるなら甘えようよ。皆で」

カジカジ「いいと思います!」

マリーナ「うん! 皆でお祝いしよう!」

キーヤン「賛成だな」

ジャン「3年の先輩達も勿論、いいんですよね」

リヴァイ「勿論だ。あいつらには絶対、来て欲しいと思っている。あ………」

と、其の時、リヴァイ先生が少し困った顔をした。

リヴァイ「いや、…………ペトラはどうしたらいいんだろうな」

ハンジ「……………」

リヴァイ「呼んでもいいんだろうか。あいつは……」

ハンジ「そこはリヴァイに任せるよ。私が口出せる問題じゃないからね。でも、ニファは来るって言ってたよ」

リヴァイ「そうか」

リヴァイ先生が複雑そうな顔をしていた。

そうか。ペトラ先輩はどうするんだろうな。

披露宴は我慢出来ても、実際、式の方を見たら泣いてしまうかもしれない。

リヴァイ「分かった。少し時間を置いて考える。さて、今日はこの後の練習風景を見学させて貰うからな」

ハンジ「私は体操部の方に戻るね。んじゃ、皆頑張ってね~」

と、言って先にハンジ先生が帰って行った。

そんな訳で結局はリヴァイ先生へ見せる舞台がバレてしまった訳だが、まあ、もうしょうがねえか。

本人監修の元で行う劇になったからかえって良かったかもしれないな。

そして練習の途中、小休止していた時、アニがオレに話しかけて来た。

アニ「エレン、ちょっといいかい?」

エレン「ん? どうした?」

アニ「いや……あんた、いつまでジャンに遠慮してるの?」

エレン「へ?」

何の話だ? いきなり。

アニ「いや、さっきの会話も気になったんだけど。あんた、もう少し強気でいても別に問題ないんだよ? ジャンに変に遠慮しなくても。何で気遣っているのかなって思って……」

エレン「え? え? だから何の話だよ」

アニ「………私が『やり過ぎて足腰立たなくさせたとか、じゃないよね?』ってからかった時、ジャン、怒ったじゃない? それに対して『やってねえから!!!』って言ってたでしょ?」

エレン「あーそれの事か」

やっと思い当たって、オレも頭を掻いた。

エレン「まーアレだ。アレは条件反射で答えただけだ。深い意味はねえよ」

アニ「じゃあ、本当にやってないんだ」

エレン「まだ最後まではやってない。その……オレもいろいろ問題抱えているせいで、頭悩ませている最中なんだよ」

と、アニにどこまで話していいものか悩んでしまう。

エレン「そもそも、最初にくっつく段階で、オレ、ジャンを裏切ったようなものだからな」

アニ「ああ、先に告白したってやつ?」

エレン「そうだ。オレ、ジャンの気持ちを事前に知っていたからな。オレも後からミカサを好きになって、告白するんだったら、せめてジャンに一言『オレもミカサ好きになったから先に告白するわ!』って軽く宣言してから告白すれば良かったな、って今でもちょっと後悔している」

アニ「ええ? 別にそれは、関係なくない?」

エレン「まあ、そうかもしれんが。でも、やっぱり卑怯な事しちまったかなっていう思いは拭いきれてはいねえんだよ」

アニ「うーん。私はジャンみたいにいつまでもイジイジしているのは嫌いだけどね。しかもあいつ、最近、サシャの事も気になっている様子じゃない? 乗り換えるなら、さっさと乗り換えろよカスが! ってつい……」

エレン「アニ、それは本人の前では言うんじゃねえぞ?」

アニもオレと同じくらい口悪いな。まあいいけどさ。

アニ「あ、うん。ごめんごめん。カスは言い過ぎた。『優柔不断が!』だね」

エレン「あんまり変わらん気もするが、ジャンが恋愛事で優柔不断なのは今に始まった事じゃねえだろ。あいつ、ヘタレだしな」

アニ「たまに見ているとイライラするけどね」

エレン「そうかもしれんが、そこはまあ、ジャンの個性の一部だろ」

アニ「あんた、本当に大人よねえ。意外とジャンの事を認めているんだ?」

エレン「え? ああ……まあ、腹立つ事も多いけど、根は悪い奴じゃねえからな。ジャンは」

ジャンは今も部長職をこなして頑張っている。根は真面目な奴だしな。

エレン「ただ、その辺の事ってどこまで独占していいのか分からねえっていうのもあるんだよ」

アニ「どういう意味?」

エレン「今は、オレとミカサは付き合っているけどさ。分かんねえだろ? 未来がどうなるかなんて」

一寸先は闇ってよく言うだろ?

エレン「このまま順調に交際が進めば、そりゃ結婚も視野に入れる。家庭だって子供だって欲しい。でも、人生ってどこでどう変化するかなんて、分からんだろうが」

人の死も含めて。人生は、何が起こるか分からない。

エレン「だから、その……『ミカサはオレのだから』って言いたい気持ちもある反面、それを言っていいのか迷う時もあるんだよ。いや、オレも十分ヘタレではあるんだが、その……ジャンに対しては、オレも複雑な気持ちなんだよな」

アニ「まるでそれじゃ、もしもミカサがジャンに対して揺れたら、追いかけないって言ってるようにも聞こえるけど?」

エレン「そこまでは言ってねえよ。その時は『行くな』って引き留める。絶対に。でも、なんていうかな。初めのやり方を間違えたせいで、オレもその、なんだろうな? もやもやするんだよ。それでもジャンには『もうミカサの事は諦めてくれ』ってオレから言っていいのか? この場合」

アニ「むしろ早く言って。もういい加減、ジャンがウザい(黒笑顔)」

エレン「ええええ………」

アニがアルミンと匹敵する黒笑顔になった。

アニ「いや、女の立場からすれば、の話なんだけどね。ごめん。私は女だから。つい、ミカサの贔屓をしてしまうんだよ」

エレン「そ、そういうもんか」

アニ「ミカサも喜ぶと思うよ。その方がいいって」

エレン「でもなあ、ミカサは、ジャンとの「友人」としての関係は切りたくねえんじゃねえかな」

アニ「下心ある時点で、その関係は破綻しているじゃないの。ミカサももう、いい加減、薄々気づいているんだし」

エレン「…………見ないようにしているだけって話か?」

アニ「そうだと思う。たまにため息ついているしね」

エレン「そっかあ……」

アルミン「1番いいのは、ジャンが別の子とくっつく事だよねー」

と、しれっとオレの横にきて会話に加わるアルミンだった。

エレン「アルミン、聞いていたのかよ」

アルミン「こそこそ2人が話しているから気になってこっちに来ちゃった。ごめんね☆」

アニ「いや、いいよ。アルミンともその件に関しては前から話していたんだよね」

アルミン「うん。さっきのジャンの発言、『お前がそれ言うか?』ってちょっと思ったもんね」

アニ「そうそう。『いや、それはもう、いいんじゃねえか? いちいちファンの子達のご機嫌伺うのも変な話だろ』って、言った時、ちょっとイラッとしたね」

エレン「え? 何で?」

アニ「だって、さっきのエレンとジャンの会話がまさにそうじゃない」

エレン「あー」

そう言われればそうなるのかな。

オレがジャンの機嫌を伺っているのが変な話って意味だよな。ここでは。

アニ「自分の事は完全に棚上げ状態だからね。もういい加減、どうにかして欲しい」

アルミン「サシャとジャン、どうにかしてくっつけられないかなーと、アニとも話していたんだよね」

エレン「つっても、サシャは演劇部員じゃねえし、接点は同じクラスって事くらいだろ?」

アニ「それと、漫画家のアシスタントの関係かな。今もたまに収集かかって、アシさんやってるらしいよ。2人とも」

エレン「あ、そうなのか。それはすげえな」

なんかもう、そっちの道に進んでもいいんじゃねえか? 2人とも。

アルミン「うん。だからねー何とか2人もカップルに仕立て上げたいんだよね。リヴァイ先生とハンジ先生をくっつけたエレンの手腕を借りたいんだけど」

エレン「オレ、殆ど何もしてねえぞ?! 無茶言うなよ!」

アニ「いやいや。10年近くくっつかなかったカップルをくっつけた功績は大きいよ?」

アルミン「僕もそう思う。エレンなら、きっと出来ると思うよ」

エレン「えええええ」

なんか無茶ぶりされているような気がするが。

オレにどうしろと言うんだよ…。

エレン「そんな事、オレなんかより、もっと適任の人がいるだろ」

アルミン「え? 誰?」

エレン「エルヴィン先生とかかな? 進路指導の傍ら、生徒の「愛の」進路指導もしてくれるぜ? 頼めば」

アニ「え? 何それ。初耳なんだけど」

エレン「知らなかったのか? エルヴィン先生、すっげえゲスい性格しているからな。生徒の恋愛事でも平気で首突っ込んでくれるぞ」

アルミン「それはいい事聞いたね。アニ、いっちょやっちゃう?」

アニ「やろう。ジャン×サシャ大作戦、決行しよう」

マルコ「何か楽しそうな事、話している?」

と、其の時、マルコまでこっちに来た。

アルミン「詳しい事は後でメールするよ。ジャンがこっちを怪しみだした」

マルコ「了解。じゃあまた後で」

おいおい。リヴァイ先生とハンジ先生の次はジャンとサシャかよ。

皆、ゲスいなー。まあ、その方が助かると言えば俺は助かるんだが。

ジャン「おい! 休憩そろそろ終わるぞ!」

エレン「了解」

やれやれ。ジャン。お前にもときめきの導火線、仕掛けられるフラグが立ったぞ。

どーなっても、オレは知らね。

と、無責任に考えながら練習を再開するのであった。

リヴァイ×ハンジの次はジャン×サシャフラグ立ちました。
こっちもときめきの導火線仕掛ける気満々です。皆、ゲスい。

という訳で今回はここまで。続きはまた次回ノシ

ガーネット先輩に頼んだ衣装…
エルヴィンへのサプライズならリヴァイのウエディングドレスwだろうが、本人絶対やらないだろうからな
ここは新居にちなんで着流しと割烹着で波平&フネさんと予想してみる(笑)

>>347
ふふふふ………まあ当日までのお楽しみです。











火曜日の1限目は世界史だ。アルミンはまたエルヴィン先生に授業後、相談していた。

エルヴィン「あらら……バレちゃったか。それは勿体ない事をしたね」

アルミン「すみません。リヴァイ先生にうちに来て貰った時に、タンス運ぶ前に、僕の机の上を見られちゃって。僕も隠しておけば良かったんですけど。メモ書きを見られてしまって……」

エルヴィン「まあそういう事もあるよ。むしろそれはそれで好都合だよ」

アルミン「え? どういう意味ですか?」

エルヴィン「舞台は囮って事さ。本命のサプライズは別にある(ニヤリ)」

アルミン「え? 舞台だけじゃないんですか?」

エルヴィン「結婚式にはね、普通『スピーチ』っていう演目をやるんだよ。私はむしろ、そっちでリヴァイを泣かせようと思っている」

アルミン「ああ、なるほど。リヴァイ先生への『お祝い』のスピーチですね」

エルヴィン「そうそう。舞台の事に気を取られているなら好都合だ。不意打ちの感動スピーチで泣かせてやろうと思っている」

エルヴィン先生の方もサプライズを用意しているらしい。

こりゃサプライズ合戦になりそうな気配満々だな。

エルヴィン「で、舞台の件が本人にバレたのはいいとして、今日はそれだけかな?」

アルミン「いえ、実は……」

と、其の時、急に声を落としてアルミンが言った。

アルミン「エレンから聞きました。『愛の』進路相談、やっているんですよね?」

エルヴィン「うん。むしろそっちの方が本業にしたいくらいだけど」

それはダメだろ。

エルヴィン「誰か悩める生徒がいるのかな?」

アルミン「詳しい事は放課後、いいですか?」

エルヴィン「いいよ。ピクシス先生も呼ぶけど、いいかな?」

アルミン「人手が多い方が助かります。では、また放課後……」

エルヴィン「うん。先に進路指導室で待っててね。鍵は職員室に来れば借りれるから」

アルミン「分かりました」

という訳で、本当にアルミンはジャン×サシャ大作戦を決行する気でいるらしい。

そしてその日の放課後、オレとミカサとアルミンとアニとマルコは進路指導室に先に足を運ぶ事にした。

ジャンには「?」という顔をされたが、アルミンが「全員、進路の件でちょっと話があるから」という事で誤魔化した。

そして待つこと数分。エルヴィン先生とピクシス先生が進路相談室にやってきた。

エルヴィン「おや。意外と人数が多い。誰から相談するのかな?」

アルミン「いえ、今日は僕達ではなく、別の2人の事について話したいんですが」

という事でアルミンが代表して事情を説明する事にした。

そして一通り話を聞き終えると、ピクシス先生が悪い顔をし始めた。

ピクシス「それはなかなか……面白い事になっておるのう」

エルヴィン「んーつまり、今、ジャンはどっちつかずな状態でフラフラしている訳だね?」

アニ「そうです。見ていてイラッとします(キリッ)」

マルコ「僕も親友として見ていて、たまに頭を張り倒したくなる時もありますね」

温和なマルコが言うくらいだ。相当だな。

エルヴィン「ふむ。ミカサはどの辺でジャンの気持ちに気づいていたのかな?」

ミカサ「ええっと……怪しいなと思う時は何度もあったのですが」

と、前置きしてからミカサは言った。

ミカサ「1番変だと思ったのは、夏合宿をした時ですね。野球の練習に混ぜて貰った時、あの時のジャンの熱っぽい視線にはさすがに違和感を覚えて……後日、周りの人に確認したら『今頃気づいたの?!』と言われました」

ああ、野球の話をした時のアレだな。ミカサがいるから演劇部にいると宣言したようなもんだしな。

さすがにアレは気づくよな。オレも途中で止めて正解だった。

ミカサ「それ以降、私もどうしたらいいのか分からなくて。曖昧なまま今の関係を続けているので、どうしたら良いのかと」

エルヴィン「うん。その件に関しては放置でいいと思うよ。別にジャンの方から襲い掛かってくるとかいう話ではないんだよね?」

ミカサ「はい。表面上はあくまで「友人」として接してくれます」

エルヴィン「だったら見て見ぬふりをするのも、女の腕の見せ所だよ。放置でいい」

アニ「でも、ウザくないですか?」

エルヴィン「ウザいと思うなら、距離を置いてもいい。だけどミカサの性格を考えればそれは出来ないんだろ?」

ミカサ「……はい」

エルヴィン「曖昧なままでいいんだよ。何も全てに白黒をつける必要はない。灰色の関係だってあっていい。ミカサの方から何かしたら、ミカサが悪者になっちゃうでしょ?」

アニ「ああ、そうか。そういう考え方もあるんですね」

エルヴィン「うん。女の子なんだから、多少ずるくても構わないよ。弄ぶくらいで丁度いいから。ミカサの特権だと思えばいい」

ドS発言きたな。ジャンはドМだからいいのかもしれんが。

エルヴィン「こういう時は、確かにもう一人の女の子、サシャとジャンが付き合う方が都合がいいのは確かだが、それはあくまで、ミカサからみた場合だよね」

ミカサ「そう、ですね」

エルヴィン「いいのかな? キープ君、手放しても本当にいいんだね?」

キープ君って! なんだその言い方! ひでえな。

ミカサ「キープ君?」

エルヴィン「そういう、2番目の男の事を『キープ君』と呼んだりするよ。いい女は、常にそういう男を隠して持っているものだよ」

ミカサ「ええええ………(げんなり)」

ミカサが露骨にげんなりした。なんか可哀想だな。

ミカサ「それって、私が周りから「そう思われていた」って事ですか?」

エルヴィン「まあ、そうみる人はそう見るだろうね。でも別にいいと思うよ。ミスコンの女王に選ばれるくらいの女の子なんだから、男が1人や2人や3人いたって」

ミカサ「1人で十分です(キリッ)」

エルヴィン「ミカサはそういう性格だろうけどね。でも、実際いるからね。そういう女の子も。だから一応、確認しただけだよ。気に障ったならごめんね」

ミカサ「いえ……それならいいんですが」

エルヴィン先生、本当、いろいろぶっ飛んだ先生だよなあ。

エルヴィン「ミカサの方にその気がないなら大丈夫かな。後で惜しくなっても後悔しないね?」

ミカサ「それはあり得ないと思います。むしろ祝福したいと思っているので」

エルヴィン「分からないよ? 実際、そうなってみたら、勿体なかったかなって後悔する場合もあるからね。後で寂しくなっても知らないよ?」

やけに念押しするな。エルヴィン先生。

まさか、ミカサの方にそういう「気配」があると読んでいるのかな。

ミカサ「大丈夫です。私はジャンを祝福したいので」

エルヴィン「分かった。そこまで言うなら、私も協力しよう。ジャンとサシャの2人にも「ときめきの導火線」を仕掛けようじゃないか」

アルミン「ときめきの導火線……なんか聞いたことある」

アニ「私もある。そういう「歌」なかったけ?」

エルヴィン「今の子達は知らないかー世代が違うとしょうがないよね」

と言って、エルヴィン先生がスマホで音楽を流してくれた。

女性? 男性? 中性的な声が流れた。昔のアニメのEDソングらしい。

エルヴィン「いい曲でしょ? 私が恋の罠を仕掛ける時に使うコードネームに使わせて貰っているんだ。「ときめきの導火線」ってね。着火準備が整うまでに少し時間はかかると思うけど、私とピクシス先生で大まかな作戦を考えるよ」

アルミン「よろしくお願いします。もういい加減、僕もイライラしてきたんで」

アニ「本当、お願いします(ぺこり)」

周りにそこまでイライラさせていたのか。何か、かえって気遣わせてしまったな。

申し訳ないような気持ちでいっぱいだ。頭を掻いていると、エルヴィン先生が言った。

エルヴィン「にしても、ちょっと気になったけど。エレン、いいかな?」

エレン「あ、はい」

エルヴィン「君はジャンを出し抜いた件について、まだ罪悪感を残しているんだね」

エレン「まーそうですね。勢いっていうか、オレ、考え無しに告白しちまったようなもんだから」

エルヴィン「うん。でも私は、もうそれは気に病む必要のない事だと思うよ」

エレン「………そうですかね」

エルヴィン先生は紅茶を飲みながら頷いた。

エルヴィン「そもそも、ジャンの方が君の気持ちに早い段階で気づいていた筈だからね」

エレン「え?」

エルヴィン「無意識に抑え込んでいるエレンの気持ちに、恐らく……そのGWに一緒に遊んだ時点で確信した筈だ。男なら、その時点ですぐにミカサに対してのアプローチを仕掛けるべきだよ。いつ、エレンが覚醒するか分かったもんじゃないんだから。私なら、絶対その隙に逆に出し抜いたと思うけどね」

エレン「そうですか……」

エルヴィン「うん。ジャンの方にも何回か、仕掛ける機会はあった筈だし、それをスルーして怖気づいた結果がコレなんだろ? だとしたら、ジャンが文句を言う筋合いはないね。必要以上に、ジャンに対して気を遣う必要はないよ」

エレン「うーん……」

アニと似たような事、言われちまったな。

エレン「つまり『オレのだから』って宣言してもいいって事ですかね」

エルヴィン「君達の事はもうとっくの昔に有名になっているよ。校内でも。知らないの? リヴァイのファンの子達の嫌がらせとかの防護壁になっていた件とか」

エレン「え? 何ですかそれ」

初耳だ。なんか嫌な予感がする。

エルヴィン「ミカサ、リヴァイと一緒にずっと殺陣の練習していたりしたでしょ? もしアレがリヴァイとミカサの2人で行われていたら、今頃ミカサも嫌がらせの対象になっていた筈だ。エレンが傍に常についていたから、皆が「ああ、あの子は違うんだ」と認識して、ミカサは嫉妬の対象から外されていたんだよ。だからエレン、君はミカサを知らない間に守っていたと言えるんだよ」

エレン「えええええ」

マジか。そうだったんだ。全く気付かなかったぜ。

エルヴィン「体操部の子達から聞いたよ。朝から結構、イチャイチャしていたんだってね? リヴァイが赤面するくらいに」

エレン「うわああああ! まさか、見られていたんですかね?!」

エルヴィン「朝の7時きっかりにくる子ばかりじゃないよ? 少し早めに来た子達は、中に入りづらくてちょっと居た堪れない気持ちだったって言ってたなあ」

エレン「すんませんでしたああああああ!」

あの時の事が蘇って思わず頭を下げるオレだった。

エルヴィン「まあ、若いんだから当然だよね。運動したてのミカサにクンクンしたくなるのは男として当然だ。健全な男子だよ」

ミカサ(真っ赤)

ミカサまで赤くなった。ああもう、本当にいろいろ御免なさい。

エルヴィン「そう言う訳だから、あんまりジャンがしつこいようなら、エレンの方から話をつけてもいいと思うよ。まあ、私の個人的な意見になるから、どうするかはエレンに任せるけど」

エレン「そうですね。オレも機会を出来れば設けて、1度あいつと話してみます」

今のままじゃいけないような気もするしな。ちゃんと腹割って話し合いたい。

オレはジャンの事は、嫌いな部分もあるし、好きな部分もある。

親友とは呼べないけど、少なくとも、友人の一人にしてやってもいいくらいは思っている。

………あいつにそれ言ったら「ざけんな」と言われそうだが。

ピクシス「ふむ………わしはエレンの気持ちも分からんでもないがの」

エレン「え?」

ピクシス「出来る事なら正々堂々と宣言してから告白するべきだった。そう思う事は間違ってはおらんと思うぞ? むしろ男気があって良いでないか」

エレン「そ、そうですか?」

ピクシス「ただ人間じゃからの。予定通りに事が運ばない事も多々ある。元々は、エレン自身もミカサにそんなに早く気持ちを伝えるつもりはなかったんじゃろ?」

エレン「そうですね。そもそも、家族としてやっていくべきだと最初は思っていた訳なんで」

ピクシス「だとすれば、それはもう自然の「流れ」のようなものじゃ。美しいと思った瞬間に、言葉が溢れ出た。人間じゃからそういう事もあって当然じゃ。わしなんか、美女に出会った瞬間に口説き落とそうとして怒られた事も多々あるぞ」

手が早い。ピクシス先生ならやりそうだな。

ピクシス「じゃから、むしろ何故、ジャンの方が先に行動を起こさなかったのかがわしからみたら『疑問』に思うの。そこをちゃんと確認した上で腹を割って話せば、案外何とかなるのではないか?」

エルヴィン「私もそう思います。まあ、私の読みが当たっていれば、ジャンは「ミカサ」の方の気持ちも早い段階で気づいていたんじゃないかと思いますが」

ミカサ「え…?」

意外な意見だった。どういう意味だ?

エルヴィン「男っていう生き物は、自分の方に気持ちの向いていない女に、なかなか自分から告白する勇気の持てない臆病な生き物だっていう事だよ」

エレン「え? そ、そういうもんですかね? オレの場合は、そうじゃなかったですけど」

ピクシス「いや、そうとも限らん。エレン、お主は潜在意識の中の何処かで「イケる」と判断したから、告白出来たのかもしれんぞ」

エレン「んー……」

そうなんだろうか? あの時のオレはそこまで考えていたんだろうか?

いや、深い事は何も考えていなかった気がする。

ただミカサが「綺麗」で、腹の奥から、自然と言葉が出て来た感じだった。

後の事、あんまり考えずに先走った感じだったんだけどな。

ピクシス「まあその辺は、ミカサとも答え合わせをしないと分からん。告白された時点では、ミカサはエレンの事をどう思っておったんじゃ?」

ミカサが真っ赤になっている。あれ? どうしたんだ?

ミカサ「今思うと、私がエレンを好きになったのは、恐らく、6月の時点です」

エレン「え………」

6月?! オレより早くねえか?

ミカサ「梅雨の時期、私がついつい、ゲームにはまって家事仕事をサボってしまったのに、エレンは笑って許してくれて。むしろ、家の中で寛いで欲しいと言ってくれた。あの時、ふわっとする感情が出て来て。エレンの前なら、多少の失敗はしてもいいんだって思ったら、すごく、その、安心して。エレンに包まれているような感覚を覚えて。温かいって感じてしまって、その……多分、そこからです」

ええええ? あの逆転のゲームがオレ達を結んだって事かそれって?!

いや、確かにあの時のミカサ、可愛かったけどな! 異様に!

そうか。そんなに早い段階からミカサ、オレの事、好いてくれていたのか。

ミカサ「ただ、それに気づいたのは、夏の海の件があってからで、加えて、サシャの美少女っぷりに嫉妬している自分とか、いろいろ重なって……なので、今思うと、告白された時点では、私の中では「OK」以外の選択肢はなかったです」

そうだったんだ。いや、それを聞けて嬉しいな。

エレン「オレとしては、いつも完璧なミカサがドジやってくれた方が可愛いから好きなんだけどなー」

ミカサ「ううう……あんまり期待しないで欲しい」

と、変な会話をしていたらエルヴィン先生が「やっぱりね」と言った。

エルヴィン「という事は、むしろミカサの方がエレンの言葉を「引き出した」と言えるのかもしれないね」

ピクシス「じゃの。つまりジャンも気づいておったんじゃよ。エレンだけでなく、ミカサの方の気持ちにな」

エルヴィン「だから告白出来なかった。玉砕覚悟で突っ込む覚悟がなかった。つまりそういう事なんだろね」

アルミン「うーん。でもだったら尚更、今になってもチクチク嫉妬するのは筋違いだよねえ?」

アニ「言えてる。もういい加減諦めなよって思うけど」

マルコ「僕もサシャの件が出て来なかったらここまでイラッとはしなかったと思うけどね。片思いで思い続けるのは自由だけど。フラフラするのは、ちょっとなあって思うよ」

エルヴィン「その肝心のサシャの件だけど。彼女は今、本当にフリーなのかな?」

アニ「だと思いますけど」

エルヴィン「親しい男友達とかいないの? ミスコンの準優勝するくらいの可愛い子なんだから、1人くらいいない?」

エレン「あー一応、いますけど。コニーは彼女いますからね」

アルミン「一緒に馬鹿やってるだけの、男友達って感じですけど」

エルヴィン「へえ……」

その瞬間、エルヴィン先生が悪い顔になった。すっごく。

エルヴィン「まさかとは思うけど、リヴァイとハンジの2号ペアって可能性はない?」

エレン「え?! そっちの可能性、考えますか?!」

エルヴィン「わかんないよー? 友人関係程、怪しいものはないからね。コニーの方に「今」は彼女がいるところも、リヴァイとそっくりな状況じゃないか」

ああそっか。リヴァイ先生、ハンジ先生と付き合う前に結構、彼女いたんだよな。

え、でも、付き合った期間は短い筈だし。そのまま当てはめるのは違うような気がする。

エレン「でも、中学時代からの彼女だって言っていたんで、長いんじゃないんですかね」

アルミン「中学卒業時から付き合い始めたなら……もう7か月目だよね」

アニ「じゃない? コニーはサシャの事、そんな風には思ってないんじゃ……」

エルヴィン「7か月なら、まだ分からないよ。リヴァイにも、そのくらい付き合った彼女がいなかった訳じゃない」

エレン「え……そうなんですか?」

エルヴィン「ハンジの前にも「恋」をした経験がない訳じゃないよ。…………先に死んでしまったそうだけど」

?! 衝撃の事実をさらりと言われてしまった。

エルヴィン「むしろ10代の頃のその経験があったからこそ、何処か恋愛に対して「臆病」だったのかもしれないね。大事な人を亡くしてしまったから、今でも『死者に会えるなら会ってみたい』と呟いている事もあるよ」

あ、だから幽霊が「怖くない」のか。なんか納得した。

エルヴィン「なるほど。今、サシャの選択肢には「ジャン」と「コニー」という2人の男性がいる訳だね」

アニ「いや、コニーは違うんじゃ……」

エルヴィン「それは決めるのは私達じゃないよ。自分の勝手な都合でサシャの選択肢を狭めてはいけない」

まあ、それはその通りだが。

エルヴィン「分かった。まずはサシャ自身の「潜在意識」がどちらに傾いているのか調査しないといけないね。話はそこからだ」

と、方針を固めてしまったようだ。

ピクシス「そうじゃな。場合によってはジャンとサシャは結ばれぬかもしれんが、其の時は其の時じゃ」

アルミン「えええ……それはちょっと……」

エルヴィン「ダメだよ。あくまで私達は「相談」を受けるだけだ。実際にどうなるかは、本人次第だ。私達も何でも屋をやってる訳じゃないからね」

アルミン「………はい」

まあ、ここはエルヴィン先生が正論だな。

オレもなんかちょっと安心した。そういう事なら、オレだって応援するぞ。

ジャンとサシャを無理やりくっつけるんじゃなくて、あくまでサシャの気持ちを後押しする方向なら協力するのに迷いはない。

サシャ自身は今、どう思っているんだろうな。あいつの事だから「分かりません」って即答しそうだけど。

そんな訳で、怪しい「愛の」進路相談は終わって部活に戻る事にした。

すると、そこに何故か話題のサシャが部室に来ていて、ジャンと話していた。

ジャン「だーから、その「レイヤー」っていうのはどういう意味なのかもうちょっと分かりやすく説明しろよ!」

サシャ「ええと、透明なミルフィーユみたいなもんですよ? それがないと、フォトショが使えません」

ジャン「ダメだ。サシャの説明の仕方がわけわかめ過ぎる…」

と、頭を悩ませていた。

アルミン「ああ、フォトショの使い方を説明していたんだ」

サシャ「はい! ジャンの方から『俺もフォトショ使えるようになりたい』と言い出したんで。出来る限り分かりやすく説明しようと思ったんですが」

アルミン「ジャン、レイヤーっていうのはね、透明な『紙』を重ねていくようなものだよ」

ジャン「紙……あああ! そういう事か! ミルフィーユとかいうからケーキ連想したじゃねえか!!」

サシャ「だから、重ねるイメージを伝えたかったんですが」

ジャン「紙でいいじゃねえか! なんでそこで『ミルフィーユ』を選択するんだよ!!」

と、こっちはこっちでいいコンビな気がする。

そんな様子をミカサが可笑しそうに笑ってみている。

この様子だと、エルヴィン先生の言うような心配は要ら無さそうだな。

ジャンとサシャがお馬鹿な会話をしていますが、今回はここまで。
続きはまたノシ

サシャ「私にとっては食べ物の方が頭の中で処理しやすいので(キリッ)」

アルミン「その辺はイメージの問題だからね。まあ、普通は『透明な紙』として認識するかな。でもどうして? ジャンは作画のアシスタントじゃないの?」

ジャン「いやー……その、なんかどんどん仕事を任されるようになっちまってな。先生が『フォトショ使えるようになったら時給上げる』って言い出しているし、だったら覚えようかなって思って」

アルミン「もういっそ、そっちの道でやっていったら? ジャン、才能あるじゃないか」

ジャン「いやいやいや! あくまで小遣い稼ぎだからな! 趣味と実益を兼ねた、いいバイトだと思っている。サシャもアシスタントのおかげで深夜のバイト全部辞めたからな」

サシャ「はい! おかげで今は財布がホクホクです! たまにマーガレット先輩のご自宅から学校に通わせて貰っているくらいですからね!」

ジャン「同じ深夜に働くなら、アシスタントの方が断然いいからな。ま、そういう意味じゃオレも安心したんだけど……」

おや? やっぱりジャンの奴、サシャの事、気にかけているな。

手のかかる妹みたいな感覚か? サシャを見る目が以前より柔らかい気がする。

サシャ「私の場合、フォトショの作業と飯スタントの両方の賃金貰っていますからね! ジャンよりお金貰っているんですよ! 2倍働いているので! むふー!」

ジャン「オレの場合はサシャより入る時間が短いっていうのもあるけどな」

マーガレット「いやーでも、頼りになる後輩がいてこっちは助かっているよ! おかげでうちの母、つやつやしているからね! 肌が!」

サシャ「栄養管理は任せて下さい! 食べ物の事なら詳しいですから!」

マーガレット「いつでも嫁に行けるよね! サシャを嫁に欲しいけどね!」

サシャ「女同士なのが残念ですね! むふー」

男だったら嫁に行くのか。サシャよ。

ジャン「……………」

ジャンが頭を掻いている。やっぱりサシャの事、意識し始めているよな。コレ。

サシャもサシャで、料理美味いんだよな。食いしん坊なだけあって。

ジャン「皆が戻って来たから、そろそろ練習始めるか。サシャはこの後、どうするんだ?」

サシャ「今日は暇なので、ここに居てもいいですよ? 皆の様子を見学してもいいですか?」

アニ「勿論いいよ。あ、お菓子でも食べな(餌付け)」

サシャ「ありがとうございます! (しゅぱー!)」

手が早いな。まあ、お菓子でも食べながら見学しておけばいいか。

しかし練習を重ねていたその時、アルミンがふと、言い出した。

アルミン「ううーん」

エレン「どうした。アルミン。唸って」

アルミン「いやね。リヴァイ先生ってさ。学生時代にかなりモテたって話だったんだけど」

エレン「あーそういやそう言ってたな」

アルミン「だったらさ。女子の人数、アニとマリーナとマーガレット先輩だけでいいのかなって思って。もう少し人数、増やした方がいいんじゃないかな」

エレン「スカーレット先輩もガーネット先輩も出て貰うか?」

アルミン「いや、そういう次元じゃなくてね。エキストラ役でいいからさ。綺麗どころの女子、もう少し出て貰えないかな」

ジャン「つまり人数が全然、足りないって事か?」

アルミン「そうなるね。なんか取り巻きが20人くらい常にいたらしくて、リヴァイ先生、早く学校に来ると騒ぎになるから毎日、遅刻ギリギリに登校していたらしいよ」

ジャン「…………羨ましいこった」

と、半眼でつい答えるジャンだった。

リヴァイ先生のモテ方ってもう芸能人のレベルだもんなあ。

アルミン「なんかリヴァイ先生曰く、入学したての頃は全くそんな事はなかったのに、徐々に徐々に人数が増えていって、自分でも『何でだ?』と首を傾げていたそうだよ。ハンジ先生曰く『リヴァイは遅行性の毒と同じだから』とか言っていたから、取り巻きの女子をどんどん増やしていく場面が欲しいんだよね」

ジャン「だったら仕方がねえか。募集かけてみるか?」

アルミン「いや、一般公募は止めた方がいい。トラブルの元になるからね。僕としては、サシャとかクリスタとか、ミーナとか。うちのクラスの中から出てくれそうな子達を何人か引き入れたいんだ。ペトラ先輩も出来れば出て欲しいけど」

エレン「ペトラ先輩は大丈夫じゃねえか? ニファ先輩も頼めばやってくれそうだしな」

アルミン「そうだね。交渉してみようか。一応、その辺は身内だけで募集かけよう。サシャ、エキストラ、やってみない?」

サシャ「はい? エキストラですか? 何をすればいいんですか?」

アルミン「ミカサにくっついて『格好いい!』とか言えばいいよ」

サシャ「お安い御用です! 了解しました! (ビシッ)」

そんな感じで細かいところも煮詰める事になった。

そしてミカサのリヴァイ先生のスーツの方のコスプレ衣装が大体完成したそうだ。試着してみる。

スカーフをつけた男装のミカサが、すげえ格好いい。似合っている。

オレは白衣に伊達眼鏡だ。化粧は今回は殆ど要らないので、楽だな。

ミカサ「エレン、雰囲気が似ている…」

エレン「ん? そうか?」

ミカサ「エレンは喜怒哀楽が激しい方なので、ハンジ先生で良かったかも。私では、ハンジ先生を演じる自信はなかった」

エレン「あーまあ、適材適所ってやつだな。ミカサの動き、リヴァイ先生に似ているもんなあ」

そう言ってやるとミカサがガクブルし始めた。

ミカサ「自分でも薄々気づいていたのに。やめて(涙目)」

エレン「あ、悪い。すまん……」

というか、動きだけじゃないんだけどな。たまに何処となく『似てる』と思う事は多々ある。

顔はミカサの方が『美人』だけど。綺麗好きだったり。料理が出来たり。

感覚的には『兄妹』みたいな近さか? 親戚とかじゃねえんだろうけど。

そんな訳で衣装合わせをしたり、台本を元に練習をしたりしてこの日はあっさり終わった。

濃厚なラブシーンの練習はまだもうちょっと先の話になりそうだ。

ミカサがその日をわくわくして待っているのが凄く良く分かる。

家に帰ってからも人工呼吸のシーンとかについて熱心に語っていた。

勿論、人工呼吸については親父にも話を聞いて、家で実際、簡単なレクチャーを受けたけどな。

知っていて損はないそうだ。かえっていい経験になったぜ。

そんな訳でオレはその日の夜、珍しく自分の方からジャンに電話した。

事前に言わないといけないと思ったからだ。あいつを呼び出して、しっかり話し合いたい。

出来れば1対1で。ぶん殴られても構わない覚悟で電話をかけたら、

ジャン『ああ、オレだけど。珍しいな。エレンか』

エレン「オレだ。今、時間あるか?」

ジャン『あーちょっと待ってくれ』

と、言って何やらごにょごにょしていた。

ジャン『今、ちょっとマーガレット先輩の家に寄っているんだ。明日じゃダメか?』

エレン「ああ。別に急ぎの用事じゃねえ。ジャンに話したい事がある。お前の方の都合に合わせるよ」

ジャン『分かった。だったら明日でいいか? 明日の昼休みとか』

エレン「了解。じゃあまた明日」

という訳で、明日の都合をつけて貰って電話を切った。

翌日。11月26日。昼休み。

昼飯を食ってからオレはジャンを呼び出した。

あんまり人に聞かれたくねえ話だから、何処で話すべきか迷う。

ジャン「話って、何だ?」

エレン「んー……教室じゃ話しにくいから、外行くぞ」

オレはジャンを第一体育館の外辺りに呼び出した。

体育館の周りには誰もいなかった。静かな昼休みだった。

ジャン「で? 話ってなんだ?」

エレン「………」

どう切り出したらいいんだろうな。こういう繊細な話は。

エレン「………聞いてもいいか?」

ジャン「何を」

エレン「お前、ミスコンの最終決選、どっちに結局入れたんだ?」

ジャン「ぶふうううううう?!」

いきなり吹いた。この聞き方が一番いいかなと思ったんだがダメだったか。

ジャン「何で今頃その話だよ。何でお前に教える必要が……」

エレン「あれ? 『ミカサだよ!!』って即答じゃねえんだ?」

ジャン(ギクギク)

おおっと? 反応がおかしいぞ? これは釣れたか?

エレン「正直に言え。お前、今、サシャとミカサの間で揺れているだろ」

ジャン「うぐ………!?」

エレン「なんか、変だよな。以前はミカサの事ばっかり見ていたくせに、最近はそうでもねえだろ? サシャの方も気になっているんじゃねえのか?」

ジャン「…………」

エレン「アニに、言われたんだよ。オレがこの間、ジャンに対して『やってないから!!』って言っていたのが、気遣い過ぎだって。オレはそういうつもりなかったけど、あの時のお前、どういうつもりでオレに絡んできたんだ?」

ジャン「………………」

ジャンの沈黙が重かった。話づらいのは分かるからここは待ってみる。

ジャン「単純に嫉妬するだろ。童貞を先に卒業されたら、誰だって」

エレン「それって、つまり相手が「ミカサ」だから嫉妬した訳じゃねえって事だよな」

ジャン「………さあな。好きに受け取れ。オレもそこまで他人に強制はしねえよ。ムカついたんなら謝ってもいいが。お前も少しは自重しろよ。見ているこっちはイチャコラ見るの辛いんだぞ」

と、ジャンはこっちを見ないまま言った。

エレン「ああ、その件については謝る事しか出来ねえな」

ジャン「反省はしても改善はしねえって奴か」

エレン「そうなるな。そもそも人前でイチャコラするのはオレよりミカサの方が先に仕掛けてくる事の方が多いからな」

コミケ会場で誘惑仕掛けられた時はマジでびびったしな。

ジャン「それも分かってる! くそ……本当、羨ましくてムカつく」

エレン「そう思うならお前もさっさと彼女作ればいいじゃねえか」

ジャン「あー………」

ジャンが頭を抱えだした。

ジャン「オレはお前みたいに死に急ぎ野郎にはなれねえよ……」

エレン「……………」

ジャン「本当、お前、すげえよ。自分から告白出来たんだろ? そんなの、想像しただけで心臓壊れそうになるだろうが。それが出来たお前が、正直、羨ましくて堪らねえよ」

手が震えていた。ジャンにとっては、それくらい勇気の要る事らしい。

ジャン「臆病者だって、ヘタレだって言われるだろうがな。自分から行動を起こすっていうのは、すげえ勇気が必要だろうが。オレにはとても………」

エレン「勇気、ねえ……」

オレにとってはちょっと感覚が違った。あの時は勇気なんて必要なかったからな。

エレン「そういうんじゃねえけどな」

ジャン「は?」

エレン「いや、オレは勇気を出して告白した訳じゃねえよ」

ジャン「はああ?」

エレン「自然と、溢れ出た感じだ。水が零れる様な。こう、抑えきれない感じで、さ」

と、アクションを交えて説明してみた。

エレン「うっかり、言っちまった感じだったんだよ。月の綺麗な夜だった。その月明かりの中に照らされた、ミカサがすげええ綺麗でさ。今、思い出してもゾクゾクするぞ。あの時の、ミカサの姿を思い出すと」

ジャン「…………」

エレン「そもそも、オレも自覚したからと言って告白するつもりなんてなかった。最初は隠しておくつもりだったんだ。でも、あの時のミカサに吸い寄せられるような感覚……磁石に引っ張られるような感じだったな。なんか、もう一人のオレが『いけ!』って命令出した感じでさ。つい、『好きだ』って言ってしまったんだよ」

ジャン「その感覚はオレには全く分からねえ」

エレン「かもしれねえな。オレの場合はそうだったって話なだけだ。きっと、オレは短気な性格しているから、堪え性がなかったのかもしれん」

ジャン「そうだとしても、やっぱりすげえよ。エレン……お前は………」

エレン「ん?」

ジャン「お前は、オレの出来ない事をやってのけた。だから、嫉妬するのは筋違いだってのも本当は分かっている。でも、止められないんだ。つい、嫉妬しちまう気持ちっていうのは……」

エレン「…………そうか」

ジャン「自分でもウゼエって思っているよ。こんな未練たらたらな男、アニとかすげえ睨んでくるしな。マルコも最近呆れているみたいだし。アルミンもたまに苦い笑みを浮かべるし。先輩達にも『そろそろ次の恋を探したら?』とか言われるしな。でも、どうやったら諦めがつくのか、自分でも分からねえんだよ」

エレン「……………」

ジャン「サシャに対する気持ちも、自分でも良く分からねえ。逃げているだけなのかなとも思うしな。自分の気持ちが届かないのを自覚したから、サシャで埋め合わせようとしている自分がいるような気がして。それって、ただ弱いだけじゃねえのかな」

エレン「でも、美少女サシャにドキッとしたのは本当だろ? 真っ先に動揺していたじゃねえか」

覚えているぞ。すげえ勢いでガタガタしていたのは。

ジャン「ああ。まさかあそこまで酷いギャップを持っているとは夢にも思わなかった。あいつ、普段全く化粧しねえしな。よく考えたら、化粧しないであれだけ可愛いなら、相当の美少女だよな」

エレン「まあそうだろうな。ミカサは毎日、薄化粧しているしな」

ジャン「そうだったのか?」

エレン「あれ? 気づいてなかったのか? ムダ毛処理とかも超完璧だぞ。隙がねえよ?」

ミカサは派手な化粧はしないが、所謂「ナチュラルメイク」というベースメイク。つまりすっぴんに限りなく近いメイクは毎日ちゃんとやっている。

オレに言われせれば「すっぴん」と何処がどう違うのかイマイチ分からないが、日焼け防止の為にやっているらしい。

ジャン「そうか。だったらオレはミカサを勝手に「すっぴん美人」だと思っていた訳か」

エレン「まあ、大して差がある訳じゃねえけどな。ミカサはその辺、すげえ女らしいぞ。ちょっと完璧すぎるんじゃねえかなってこっちが心配になるくらいだけどな」

ジャン「すげえ理想的じゃねえか。ちくしょう……(涙目)」

エレン「お前、女らしい女が好きなのか? でも、サシャだってそういう部分はあるだろ」

ジャン「そりゃ、料理も出来るし、明るいし、たまにアホだが、決して嫌いじゃねえよ」

と、ジャンがまだぶつぶつ続ける。

ジャン「でもな……やっぱりオレの中ではミカサが「上」なんだよ。理想が絵から飛び出て来たのかってくらい一目惚れだった。集英高校を受験した時、同じ教室で試験を受けた髪の長い女、アレ、今思うとミカサだったんだよな。オレも集英落ちたけど。ミカサも受験だけは一応、受けていたんだよな」

エレン「お前、集英の受験の時にミカサに会っていたのか」

ジャン「恐らくな。すれ違っただけだったけど。今思うと、アレは絶対、ミカサだった。髪長かったけど。入学式で同じ顔を見た時、髪切っていたけど、すぐ分かった。あの子だって。なんでこっちに来たのか、ずっと不思議だったけど。内申点の方で落とされていたと後から知って合点がいった。だからもう、勝手に運命の出会いのような気がしていたんだ」

エレン「そうか」

謎がまた1個解けた。あの時のジャンがやたら後方を凝視していたのはミカサをガン見していたんだな。

ジャン「ミカサの傍にお前がいるのにすぐ気づいて『なんだ、彼氏持ちか。そりゃそうか』って思ったけど。すぐには諦め切れなくて。でも後でエレン自身が『家族だ』って言って、まだ2人がそういう関係じゃねえって知って浮かれて。だったらじっくり距離を詰めようと思っていたら、だんだんミカサの方の目の色が変わって来たのにすぐ気づいた。6月頃だったかな。正確には覚えてねえが。オレは何も出来ずにいた。今思うと、GWでお前と話した後、すぐに行動を起こすべきだったんだ。出来なかったのは、オレがヘタレなだけで、誰のせいでもねえんだよ」

エルヴィン先生も同じ事を言っていたな。

確かに、GWの時点ではまだ、ジャンにもチャンスがあったんだと思う。

少なくとも、自分の気持ちを伝えるチャンスはいくらでも、あった筈だ。

その結果、振られる事になったかもしれないが、それでも、やはりジャンは動くべきだったのかもしれない。

何もしないでいたツケがジャン自身を苦しめているのか。

ジャン「そもそも2人も好きな女がいる自分って、どうなんだ? とも思うんだよ。正直言って自己嫌悪しかねえぞ」

エレン「あー浮気者っていう意味か」

ジャン「そうだよ!! しかもどっちも手に入らないだろうしな!」

エレン「ミカサはともかく、サシャは手を伸ばせば届くかもしれねえだろ?」

ジャン「どうだかな。サシャの奴、コニーと仲いいだろ」

エレン「あいつらは、ただの友達だろ?」

ジャン「そんなの信用できるかよ!!! もうオレは騙されねえぞ!! リヴァイ先生の件といい、オルオ先輩と言い、エレン、お前と言い、皆最初は誤魔化すもんだろうが!!!」

そう言えばそうでした。サーセン。

ジャン「もう、いいんだよ。オレは。好きな女と一緒になれずに一生独身でいろって事だろ(ブツブツ)」

エレン「自虐的過ぎるぞ! リヴァイ先生みたいになるなよ!!」

ジャン「ああ? リヴァイ先生? あの先生も自虐的なのか?」

エレン「落ち込むとそうなるな。いや、それは誰でもそうなんだろうけど。今、この時点で何もかも諦めるんじゃねえよ!!」

オレはジャンに喝を入れてやりたかった。下手くそな喝だろうけど。

エレン「お前、夢があるんだろ?! 早く独立して家庭持ちたいっていう、すげえ立派な夢があるじゃねえか! オレ感心したんだぞ?! こんなに早い年齢のうちに夢があるお前に!! 羨ましいとすら思ったんだぞ!!」

ジャン「そうか?」

エレン「ああ! だったらそう簡単に夢を諦めるんじゃねえよ! お前の場合『彼女』がどうしても必要になる。嫁にしたいと思う女がいるなら、まだ諦める必要ねえよ!」

アレ? 何でオレ、こんなにジャンの事を応援しているんだ?

ジャン「どの口がそれを言うか……(ギリギリ)」

エレン「ひはいひはい! 口ひっぱるは! (ひっぱるな!)」

ジャン「(手離す)はー。オレはお前が羨ましいよ。実直で、真っ直ぐだもんな。いつだって、そうだ」

エレン「……………」

ジャン「理想だと思うぜ。お前のような男は。でも、オレはエレンのようには生きられない。そういう性格じゃねえからな」

と、自分に諦めたようにそう呟くジャンだった。

ジャン「ミカサがエレンに惚れたのも分かるよ。お前、常にミカサの事を気にかけているもんな。ミカサもそれは同じだけど。2人の間に、割って入れるなんてもう、今更思ってはいねえよ」

エレン「………」

ジャン「きっかけが欲しいだけなのかもしれねえな。ミカサに振られるのが1番いいのかもしれないが。それをされたら、少なくとも暫くは学校に来られない自信しかねえし。サシャの事も、正直『今』はどうしたいと思っているのか自分でも良く分からねえし。オレ自身も最近、ずっともやもやを抱えたままなんだよ」

エレン「…………そうか」

もやもやするのは辛いよな。その気持ちはオレにも良く分かる。

ジャン「時間が解決するのを待つしかねえのかな。オレは、本当、どうしたいんだろうな? お前みたいに、そういうのがすぐ自分で「分かる」性格だったら良かったんだが。心の中はずっと『曇り空』で、雨も晴れもない状態でどんよりしているんだよ」

エレン「ううーん」

困ったな。何も解決策が思い浮かばねえ。

思い浮かばないなら、何も出来ねえよな。しょうがねえよ。

エレン「じゃあ、仕方ねえか」

ジャン「え?」

エレン「ミカサも好き。サシャも好き。そのまんま、受け入れちまえよ」

ジャン「は?」

エレン「だってそうするしかねえだろ。それ以外、何が出来るって言うんだ?」

ジャン「待て待て。エレン。お前、オレに『ミカサの事を諦めろ』って言いに来たんじゃねえのか?」

エレン「オレも最初はそのつもりで話そうと思っていたんだが、気が変わった」

ジャン「はあ?」

エレン「だって、よく考えたらおかしくねえか? 人の心は他人に強制されるもんじゃねえだろ」

ミカサが好きになる気持ちそのものを他人のオレが止める事なんて出来ねえ。

しょうがねえよ。ミカサはそれだけ魅力的な女なんだから。

それを1番知っているのはオレだけど。

エレン「オレがジャンに『ミカサの事を諦めてくれ』って言っても、はいそうですかって受け入れられねえだろ? だったらそれはもう、言うだけ無駄だし。それこそ、自然と消える時を待つか。ずっと抱えて生きていくか。そこはもう、ジャンが決めるべき事でオレが口を出せる問題じゃねえ」

ジャン「…………」

エレン「サシャの事だってそうだな。サシャも可愛いっていうのは、オレも同じ男として分かるし。まあ、ミカサの方が可愛いけど。サシャがコニーとくっつくかどうかは知らんが、少なくとも『今』の時点ではサシャはフリーの筈だろ? だったらジャンが何もしないでいるのは勿体ないような気もするな」

ジャン「エレン、お前………本物の馬鹿だろ?」

エレン「よく言われるが、それでも構わん。少なくともミカサの事を好いているのはジャン、お前だけじゃねえからな」

リヴァイ先生もジャンとは違う意味でミカサを気に入っているし、それ以外の奴らだって、ミカサを密かに思っている奴もいるだろう。

でも、オレは負けない。ミカサの中で「トップ」で居続ける。その自信はある。

だからあんまりごちゃごちゃ考えてオタオタするより、どんと構えた方がいい気がしたんだ。

エレン「ミカサの心が誰かに奪われるかもしれない『危機感』は常に持っていた方がいいんだよ。奪うなら、奪って見せてみろ。それくらいの余裕がねえと、男として格好悪いだろ」

ジャン「………ッ」

その瞬間、ジャンが俯いて歯を食いしばった。

ジャン「お前のそういうところ、本当にムカつくんだが……」

エレン「ああ? それがどうした」

ジャン「ちくしょう……格が違い過ぎる。なんでそんなに、先にいっちまうんだよ……お前は」

悔しそうに俯いている。そんな事言われてもオレにもどうしようもねえ。

オレ、あんまりごちゃごちゃ考えるのが元々、苦手なんだよ。

シンプルに考えた方がいい。それがオレの生き方だからな。

ジャン「それはつまり、オレがどっちの道を選ぼうが、お前自身は、干渉しないって事だよな」

エレン「妨害はするぞ。ミカサをみすみすジャンに渡すような馬鹿じゃねえよ」

ジャン「ははっ……そうかよ!」

其の時、ジャンはやっと顔をあげて笑って見せた。意地の悪い顔だった。

ジャン「その言葉、後悔すんなよ。分かった。オレはオレの思うままに、進んでみる。どう転ぶかは、自分でもさっぱり分かんねえけどな」

エレン「それでいいんじゃねえの。ま、ミカサは絶対渡さねえけどな」

とりあえずジャンの中の気持ちの整理がついたようだ。オレも腹を割って話せて少しほっとした。

こういうのは、自然の中に身を任せるのが1番だとオレは思う。

ジャンの嫉妬はうぜえええとも思うが、元々こいつ、こういう奴だしな。もうしょうがねえ。

ジャン「礼は言わねえからな! 絶対、後悔するなよ!!」

エレン「要らねえよ!」

という訳でなんとなくだけど解決(?)したような気もして、それぞれ教室に戻る事にした。

教室に戻るとミカサが心配そうにこっちに来た。

ミカサ「ジャン、大丈夫だった?」

エレン「あーうん。もう大丈夫じゃねえのかな。多分」

ミカサ「そう……諦めてくれたのね(ほっ)」

エレン「いや、それはないみたいだけど」

ミカサ「へ?」

エレン「なんかもう、開き直ったみてえだ。どっちも好きなんだってさ。『今』は」

ミカサ「……………そう(青い顔)」

エレン「ん?」

ミカサ「今、私の中でジャンの好感度のような物がマイナス1万くらい下がったかも」

エレン「えええええええ?!」

ミカサ「優柔不断な男は、ちょっと。エレンのように、スパッと決める男の方が好き」

しまった。なんかかえってオレが酷い事をしてしまったような気がする。

ミカサ「ジャンとは少し距離を置く事にする。最初からそうすれば良かった」

エレン「んんー……」

どうすっかなー。こじれちまったなー。あちゃー。まあいいか。もう、これも自然の流れだな。

ジャンには悪いけど。オレもミカサを独占したいんだ。まるで孔明の罠みたいな真似しちまったけど、許せ。ジャン。

そう心の中で思いながら、教室でマルコや他の男子と話すジャンを見つめるのだった。

意図せず公明の罠を発動したエレンでしたwwww
ミカサの中でジャンの株が大暴落したのでもうあかんですww

という訳でここまで。次回はまたノシ








11月30日。日曜日。着々と舞台の準備が進んでいたその頃。

ちょっとお休みを貰ってオレとミカサは親父と共にちょっと高級な洋服店に足を運ぶことになった。

リヴァイ先生の結婚式に招待された件を親父にも伝えたら「これを機会にスーツを買ってあげよう」と言い出したんだ。

ミカサも結婚式用に新しいドレスかワンピースを購入するらしい。

おおおお。桁がすげえ。こんなの買って貰っていいのかな。ドキドキする。

ミカサも値札を見てぶったまげていた。こんなの買っていいの? って顔をしている。

グリシャ「予算はどっちも10万以内くらいでいいかな?」

エレン「いやいやいや、親父! 金出し過ぎだから!!!」

ミカサ「私も、そこまで高い服を買ったら汚した時がショック死します」

グリシャ「あ、そう? じゃあ1万円くらいのでいいの?」

エレン「それでも十分高いだろ……」

グリシャ「スーツとかはいいものになると10万くらい普通にするけどね。ワンピースも」

ミカサの母「そうねえ。1万は流石に安いんじゃないかしら。2~3万の辺りでみてみましょう」

へー。1万が安いって。そういうものなのか。すげえなあ。

親父が金持ちだから良かったけど。もし貧乏だったらシンデレラじゃねえけど「着ていく服がねえ!」っていう状態に陥ったかもしれねえな。

グリシャ「これなんかいいんじゃない? 少し緑色も入っているけど。限りなく黒だ」

ミカサの母「シンプルでいいわね~似合っているわ~」

まっ黒という程ではない、深い緑色のスーツを当ててくれた。

うおおおお。でもこれも5万くらいするぞ。いいのかな。こんなの買って貰って。

グリシャ「灰色がかった方もいいね。真黒だと、葬式に着ていくスーツみたいになるし、結婚式なら少しオシャレなデザインでもいいと思うよ」

ミカサの母「は~どれにするか迷うわね~」

と両親の方がかえってテンション上がっている。恥ずかしいぜ。

ミカサ「OH………これも4万越える」

ミカサも値札を見ては下げてオロオロしているようだ。

グリシャ「ネクタイもついでに新調しようか。1本持っていればこれから先も使えるしね」

エレン「いいのか? 親父」

グリシャ「こういうのは機会がある時に全部一気に買ってしまうのがいいんだよ。エレンは何色がいい?」

エレン「ええっと、赤……とか?」

グリシャ「ネクタイを赤色にするなら、原色の強いものより暗めの色合いの方がいいかもしれない。コレとかどう?」

エレン「ああ……色が濃いな」

グリシャ「ネクタイを先に決めたなら、この色に合わせてスーツも決めて行こうか」

と、着々とコーディーネートされていくオレだった。

オレの方はダークレッドのシンプルなデザインのネクタイと、少し灰色がかったダークブラックというシンプルな組み合わせになった。

こんなんでいいのかな? 結婚式に出るのなんて、子供の頃親父に連れられていった以来で分かんねえ。

靴とかも一緒に合わせて買ってくれるようだ。至れり尽くせりで有難い。

ミカサ「エレンが赤色でいくのなら、私も似たような色でいきたい」

ミカサの母「あらそう? じゃあ同じようなダークレッドを探しましょうか」

おばさんも超はりきっている。

ミカサの母「これとか可愛いんじゃない? 背中出しちゃうけど。ミカサは背中綺麗だし」

エレン「ダメです!!! 背中冷えちゃう衣装はダメです!!!」

ミカサの母「あらそう? じゃあこっちの胸の大きく開いている方は?」

エレン「そっちもダメです! 色気有り過ぎます!!!」

ミカサの母「もー我儘ねえ。過保護過ぎるとダメよ~?」

と言いながらもニヤニヤ服を選ぶおばさんだった。

ミカサの母「肩出しても上から羽織るものを着れば大丈夫よ~冬の結婚式でもちゃんと暖房は完備されている筈よ?」

エレン「それは分かっているんですが、出来れば色気は控えめにお願いします」

ミカサに変な虫はつけさせたくねえ。シンプルなのでも十分なんだよ。

ミカサの母「肩出しがダメなら衣装も大分制限されちゃうわね~どうする? ミカサ」

ミカサ「エレンに任せる」

ミカサの母「本当にいいの? ヤキモチ妬きの男でいいの?」

ミカサ「うん。ヤキモチは嬉しい」

ほやっと笑ってくれた。あああああああやばい! 何かオレの方が興奮してきた!

リヴァイ先生じゃねえけど、興奮する! ミカサの服はオレが選ぼう!

エレン「これ可愛い! 肩出してねえけど、シンプルなワンピースだな」

ミカサ「どれ?」

エレン「二の腕は半分隠れて、胸もそんなに開いてない。胸の下の方で絞っているけど、スカートの長さも丁度いい!」

ミカサの母「あら。本当にシンプルなワンピースね。いいの? ちょっとだけ胸を強調するワンピースだけど」

ミカサ「うん。大丈夫。私はペチャパイではないので(キリッ)」

ミカサの母「うふふ。いい心がけだわ。ではそれにしましょうか。色は同じダークレッドでいいのよね」

ミカサ「うん」

ミカサの母「じゃあ、それに合わせて靴とかも買いましょう」

ミカサは黒のシンプルな靴を購入した。少しだけ底が上がっている。

鞄とかも一緒に購入したようだ。もう何万飛んでいったのか考えると怖え。

エレン「親父、ありがとう」

グリシャ「いやいや。いい機会だったよ。いずれはエレンにもスーツが必要かなと思っていたしね。結婚式に招待されるなんて、エレンの交友関係が一気に広がった証拠じゃないか」

エレン「そう言えばそうだな。オレ、リヴァイ先生にいろいろ世話になったよ」

グリシャ「本当なら私の方からも挨拶したいくらいだよ。会場までは私が車で送ってあげよう。一応、顔だけ見せてもいいかな? 出来ればご挨拶したいよ」

エレン「ああ。多分、大丈夫だと思うぜ。それくらいなら」

という訳で、その日は結婚式に向けての衣装を全て揃えた。

他の皆はどうするんだろうな? どんな衣装を着てくるんだろう?

気になったけど、それは当日までのお楽しみにした方がいいかもしれない。

ミカサは購入したワンピースを見て「ふふふ」と笑っている。

ミカサ「エレンと御揃いの色……」

エレン「おう。ダークレッドにしたけど、大丈夫だったか?」

ミカサ「ん? 何故そう思うの?」

エレン「いや、ミカサってあんまり『赤』系統の色が好きじゃねえのかなって思っていたからさ」

そうオレが言った直後、ミカサの顔が少しだけ強張った。

エレン「ん?」

ミカサ「ううん。何でもない」

エレン「え? いや、今のは何でもない感じじゃないよな?」

ミカサ「…………この赤色なら、大丈夫」

ん? どういう意味だ?

ミカサ「海老色、葡萄色、蘇芳、茜色に近い色なら大丈夫。真紅のような、明るめ赤色が苦手なだけ」

エレン「え? 何で……」

そう言えば思い出した。オレ、昔見た事あるぞ。この状態のミカサを。

いつだったっけ。ぼんやりしているけど。

ミカサ「……理由は言えない。ごめんなさい。でも、大した理由じゃない」

エレン「そ、そっか……」

オレ、真紅とかの明るい赤色の服、結構昔着ていたよな。

男の痴漢が出るとか何とかの噂のせいで赤系統の私服は外で着ないようにしたけど。

エレン「!」

急に思い出した。あの時の、ミカサも何か様子が変だった。研修旅行でのアレだ。

あの時、オレが気にかけた時、反応が変だった。


エレン『オレは思った事を言っただけだ。赤色とかのがマシだ』


思い出した。あの時、ミカサ、急に吐き気が来たよな。

もしかして『赤色』って言葉に反応をしただけだったのか?

赤色に何かトラウマがあるのかな。触れていいのか、分かんねえけど。

エレン「ミカサ」

ミカサ「な、なに?」

エレン「もしかして、なんか、『赤色』にトラウマあるとか?」

気になったからつい、聞いちまった。すると………

ミカサ「…………」

あ、ダメだ。本当に言えないみてえだな。

エレン「悪い。なんとなくそう思っただけだ。言えないなら、無理しなくていい」

ミカサ「…………ごめんなさい」

エレン「いや、いいんだ。こっちも気になっただけだし」

と、重い空気になっちまった。

ミカサ「…………いつか話す」

エレン「ん?」

ミカサ「今はまだ、早い気がするので。いつか、必ず」

エレン「そっか……」

ミカサはそう言った。そういう事なら、それを信じよう。

そう思いながら、オレはミカサに対して頷くのだった。







ミカサがジャンに対して少しばかり距離を置くようになったから、ジャンの様子が物凄くおかしくなった。

その異変に気づいてアニとアルミンとマルコは事情をオレに聞いてきたので、とりあえずかいつまんでジャンと話した内容を大体話すと、アルミンには苦笑いされ、マルコにも笑われ、アニに至っては、アヘ顔に近いくらいの大爆笑をされてしまった。

アニ「腹、痛い……! 何、それ。ジャン、馬鹿じゃないの? アホなの? 死ぬの?」

エレン「ええええ……アニ、笑い過ぎだろ」

アニ「だって、だって……(壁バシバシ!)」

放課後。ジャンがまだこっちに来ていない時間帯を狙って話した。

今日は12月1日。委員会活動がある日だ。

オレ達は委員会の活動が終わってから音楽室に来たが、生活委員のジャンは毎回、時間がかかるから今日はこっちに来れないだろう。

ミカサ「アニ、あんまり笑い過ぎると過呼吸になる」

アニ「御免御免。まさか私もそんな展開になるとは思わなくてね」

と、目尻の涙を拭いながらアニが言った。

アニ「いや、まさか、エレンが『ありのままを受け入れろ』って言って、それをそのまんま本当に鵜呑みにしちゃうなんて、ただの馬鹿だよね」

アルミン「というか、エレン、それわざと? ただの孔明の罠にしか思えないんだけど」

エレン「わ、わざとじゃねえよ! 何かつい、そう口走っちまって、ついつい」

ミカサ「これでジャンは優柔不断過ぎると言う事が分かった。私の中で好感度マイナス1万」

アニ「いや、もう、10万くらい下げていいよ。100万でもいいけど」

エレン「いや、なんかすまん。オレ、やっぱり悪い事しちまったかな」

今頃になって罪悪感が出て来たぜ。

アニ「いいや? 別に。まあ「オレの女に手出すな」じゃなくて「手出せるもんなら出してみな。ふふん」って事でしょ? どっちにしろ、もう宣言したんだから、エレンは堂々としていればいいんだよ。もうこれでジャンに変に気遣う必要ないからね」

エレン「あーまあ、そうなるか」

アニ「私としては「手出すな」の方が1番男らしくて好きだけど。まあ、その辺はエレンの判断だしね。それ以上は言わないよ」

アルミン「あーでも、ミカサは複雑じゃない? エレンに「手出すな」って言われたかったんじゃない?」

ミカサ「んー……」

ミカサが考え込んでいる。

ミカサ「でも、エレンは元々、そういう人だと分かっているので。問題ない」

アルミン「まあ、それは僕も理解出来るけど。本当にいいの?」

ミカサ「ありのままの自分を受け入れる事、それ自体は大事だと思うので」

エレン「……………」

ミカサ「ただ、もしも、エレン自身がジャンと同じ状態になった場合は、私もちょっといろいろ考えるかも……?」

エレン「え?」

ミカサ「フラフラする男は嫌い。スパッと決めて欲しい。もし2番目の女が出て来た時は、私も容赦はしないと思う……ので<●><●>」

<●><●>の目キター!!! この目だけは苦手なんだよな! オレ!!!

エレン「絶対ないから!!! 2番目とか、作る予定全くねえから!!!」

ミカサ「本当に? 信じていいのね? <●><●>」

エレン「絶対ねえから! 一生、浮気はしねえから!!!」

アニ「でも、エレンは『ありのままで』生きるタイプなんだよねえ? それって、怪しいんじゃなーい?」

エレン「アニまで何でオレを責める?! オレ、そんなに悪い事言ったのか?!」

アニ「いいや~? 別に~? ククク……」

なんかオレの好感度まで下がってねえか? 気のせいか?

マルコ「でもそのせいで、ジャンのモチベーションだだ下がりだし、大丈夫かな」

アルミン「あーそうだね。あんまりつっつくと、演劇部を辞めるって言い出すかもしれないね」

アニ「まあ、そうかもしれないけど。でもこの問題って、ずっと棚上げする訳にもいかなかったでしょ?」

エレン「それはそうだな。見て見ないふりは出来ねえし。もし、ジャンが辞めるって言い出したら、それは止められない気もするけど………」

アルミン「え? そこは引き留めた方がいいんじゃない? 『恋愛事のトラブルで部長職辞める様な馬鹿が公務員なんてなれると思ってるの?』と言ってあげた方がいいよ」

エレン「アルミン、お前、オレよりたまにゲスくねえか?」

アルミン「愛の鞭だよー。だって事実そうじゃない? ジャン自身の将来を考えたら、ここで中途半端に辞めたらマイナスにしかならないよ。ジャンの為だよ」

エレン「なんか、ジャンが可哀想な奴に思えてきたな」

マルコ「………というか、エレンってちょっと不思議な奴だよね」

エレン「え?」

と、ちょっとだけ話題が転換した。

エレン「オレが不思議? なんで?」

マルコ「いや、ちょっと人と感覚が違うなあと思ってね」

エレン「……まあ、たまに『変人』とか何とか言われる事もあるけどな」

中学時代とか、かなり浮いていたもんな。

マルコ「いや、そういう意味じゃなくて。ミカサの件もそうだけど。僕の中ではアニの言う様に「オレの女に手出すな」って真っ先に言うような荒々しいイメージだったんだけど。実際は、そうじゃなかった訳だよね。加えて恋敵にであるジャンに対して気遣っている面もある。何でそこまで相手に対してしてやれるのかなって思ってね」

エレン「あー。つまり、関係が破綻してもおかしくねえって事か」

マルコ「うん。その通りだよ。なのに意外と部活動は普通に2人で活動しているし。クラスでもたまに喧嘩はしているけどジャンに対して、縁を切るとかはしないじゃない? だから凄いなあって思ってね」

エレン「あー………」

そっか。普通だったらコレ、オレの方から縁切りしてもおかしくない事態なのか。

そりゃそうか。オレの彼女の事、まだ諦めてねえ感じで嫉妬してくるんだもんな。

エレン「何でだろうな? 自分でも良く分からん。ただ、ミカサの事を好きな人間に悪い人間はいねえって、勝手に思っているだけかもしれん」

ミカサ「え?」

エレン「事実、そうだろ? それだけミカサは魅力あるんだし。あんまりジタバタしても格好悪い気がするし。悪い。これは男の変なただの『見栄』なのかもしれんが」

と、オレもうまく自分の気持ちを言い表せなかった。

エレン「そういう『嫌な自分』ってさ。あんまりミカサに見せたくねえんだよな。ヤキモチは妬くけど。でも、余裕なくなると冷静な判断って出来なくなるだろ? オレ、すぐカッカする性格だし。意識してそうしていないと、ただの馬鹿になる気がするし。んー……わり! なんか自分でも何言いたいのか分からなくなった」

頭の中がこんがらがってきたので止める事にする。

アルミン「はは! エレンってそういうところ、あるよねー。昔からそうだよ」

エレン「え? そうか?」

アルミン「うん。普段はカッカする事が多いけど。いざって時はすっごく『冷静』になるんだよね。緊急事態になればなるほど。すっごい度胸のいる判断でも、迷わず突き進むタイプだよ。今回の件も、もしエレンが「オレの女に手出すな」って言ったら、ジャンの事だからかえって煽られて燃え上がっていた可能性の方が高かっただろうから、間違ってはいなかったのかもね」

マルコ「ああ、北風と太陽みたいな?」

アルミン「そうそう。一見正しくない判断に見えて、結果的にはそっちの方が正しかった事ってあるじゃない? エレンはまさにそれ。その結果は、酷いように見えても、実は最小限の被害で留めたり。なんていうか『生きようとする』エネルギーがとてつもなくある感じ? 孔明の罠って言ったのは、まさにそういう感じに思えたからだよ」

エレン「それ、褒めすぎじゃねえか? アニの言う様に「オレの女に手出すな」って言った方が正しい判断だったかもしれねえじゃねえか」

アルミン「いや、分からないよ? この後どうなるかは。僕自身は、これが切欠でジャンの中で『何か』が動き出すような予感もあるんだ」

ミカサ「動き出す? それはつまり、ジャン自身の「本当の気持ち」が見えてくると言う事?」

アニ「ああ、そうだね。確かに。この後でどうジャンが行動を起こすかで、ジャン自身、自分の気持ちに気づくんじゃないかな」

エレン「そうだといいけどな………」

この判断が吉と出るか凶と出るか分からねえ。

今は、何とも言えない。オレ自身、正直迷った挙句の判断だったし。

ただ、なんとなく「こっち」のような気がした。もうそこは「直感」の世界だった。

そんな感じでくっちゃべっていたら、興味津々にマーガレット先輩達もこっちに来てニヤニヤしてきた。

マーガレット「なんか面白そうな話題をしているみたいだねー」

スカーレット「ジャン、遂に諦めたの? どうなの?」

ガーネット「ミカサ、遂にはっきり言っちゃったの?」

ミカサ「ええっと、告白された訳でないんですが、今、ジャンがフラフラしているようなので、好感度がダダ下がりになりました」

マーガレット「あははは! 馬鹿だねー! サシャとミカサの間でフラフラしているだっけ? そろそろサシャの方に切り替えればいいのにね。あの子、いい子だよ。私が保証する」

ミカサ「私としても、サシャとくっついてくれた方が安心するんですが」

スカーレット「だよねえ。優柔不断な男って女から見たら『死ね!』って思うよねえ」

スカーレット先輩、顔が黒い。この人も相当アレだな。

マーガレット「まあまあ。押さえて。ジャンも頭の中混乱しているみたいだし? いっそ開き直った方が楽かもね。でたとこ勝負でいいんじゃない?」

エレン「あれ? マーガレット先輩はそういう考えなんですか?」

マーガレット「ええ? だって選べない『時期』なんて誰でもあるんじゃない? 私もカップリングでどれを中心にするか、すっごい迷う事あるし。ツキツキ×タケタケか。バルドル×ロキロキか。それが問題だ。みたいな?」

何でカップリングで説明するんだ。あ、腐っているからか。

マーガレット「あとハデスおじたん×アホロンか、アホロン×ハデスおじたんか。こっちも迷う場合もあるからね。難しいよね。選ぶっていうのは」

エレン「ええっと、それってつまりマーガレット先輩にとっては「フラフラ」する事はあんまり嫌悪感はないと?」

マーガレット「え? 人間ってそんなもんじゃない? 男女のそれも似たようなもんでしょ」

意外だ。女性でもそういう考え方の人もいるのか。

マーガレット「あとはハーレム至上主義の人とか? そういう人もいるよね。所謂総受け中心とか。まあ、私の中ではリヴァイ先生とか美味しいかなとか思っていますが」

スカーレット「生物(なまもの)はあかんよ。マーガレット。バレたら殺されるからね」

エレン「生物? (なまもの)」

ガーネット「実際の人物で妄想しちゃうパターン。ここでいうと、ジャン×エレンとか、エレン×アルミンとか?」

エレン「やめて下さいよ!!! 一瞬、鳥肌出てきましたよ!!!」

あぶねー趣味だな! 本当に!!

マーガレット「御免御免。生物はさすがに自重するけど。まあ、男と女も似たようなもんでしょ。正直言ってしまえば、リヴァイ先生とか、アレだけモテるんだから、浮気の1つや2つ、してもバレないと思うし。ハンジ先生が今までなかなか踏ん切りつかなかったのも、その辺が関係していると思うけどなあ」

エレン「え? つまりどういう意味ですか?」

マーガレット「だってアレだけの「モテ男」の隣にいるのって凄いプレッシャーだと思うよ? 自分が傷つく覚悟がないと、隣には居られないし。事実、嫌がらせ事件もあったんでしょ? 生物室の。例えどんなにリヴァイ先生がハンジ先生を守ろうとしても、ハンジ先生自身に「覚悟」がないと一緒には居られないと思うよ」

ミカサ「……………」

ミカサが複雑そうな顔をしているな。

マーガレット「そういう意味じゃ、エレンとミカサの場合は『エレン』の方に覚悟が必要になるかもね。ミカサ、かなりモテるでしょ? いろいろ大変なんじゃない? ジャンの事は、まだ氷山の一角だろうし。これから先の方が心配がいろいろ出てくると思うな」

エレン「まあ、そうだとは思います」

やっぱり先輩なだけあって、物の見方がちょっと違うな。

マーガレット「うん。まあ大変だろうけど。そこはエレンの男の腕の見せ所だよね。あんまりジタバタしないで、ドンと構えておけばいいんだよ。「オレの女に手出すなよ」とか言ったら戦争になるからね。「はあ? ミカサがオレに惚れているんだよ」くらいの余裕見せてイライラさせてもいいんじゃない? そしたら男どもは泣くしかないからさ」

エレン「ええええ? マーガレット先輩、案外その辺、大らかなんですね」

アニ「ちょっと意外…「オレの女に手出すな」って言わない方がいいんですか?」

マーガレット「うーん。ほら、人間って「ダメって言われるとしたくなる」っていう心理あるじゃない? 浮気や不倫が蔓延するのもそのせいでしょ? 北風と太陽ってよくいうじゃない。だから私はエレンはそこまで慌てる必要ないし、むしろそこで慌ててエレンとミカサとの関係が悪化したら、それこそ周りの思う壺でしょ? だから周りの事は横に置いて、2人はマイペースにイチャイチャしていればいいんじゃないのかな」

へー。そういう意見もあるのか。びっくりしたぜ。

オレ、自分の考えが「間違っている」かなと思いつつ、選んじまったからな。

マーガレット「うちの両親、離婚しているからさ。修羅場とか見慣れているんだよね。うちの母もかなりぶっ飛んだ人だし? 恋愛観って人それぞれだしさ。どれが「正しい」っていうのはないけど。あんまり悲観する事はないと思うよ」

ミカサ「そうですか」

マーガレット「うん。あ、でも、ミカサ自身がやっぱり「オレの女だから」って言われたいっていうなら、別だけどね?」

と、ウインクしてくれる。

あ、そうか。それは言えるかも。

エレン「ああ、ミカサはオレの女だから。確かにそうですね」

ミカサ「!」

ミカサが急に真っ赤になってこっちを叩いた。え? 今のダメだったか?

ミカサ「不意打ち、卑怯~! もー!」

あれ? ダメだったのか? 今のは。

アニ「ああ、つまり『手出すな』は言わないで『オレのだから』まで言えば効果的だと」

マーガレット「まあ、その通りだね。その方がいいと思うよ。人間って不思議なもんで、『手出すな』と言われると余計に燃えて手だしてくるビッチやたらしの男もいるからね。その辺は難しい問題だよ」

エレン「勉強になりました……」

オレの判断はとりあえずは間違っていなかったみたいだな。

いや、間違っているのかもしれないけど。マーガレット先輩の意見はかなり参考になった気がする。

スカーレット「まあ、確かにいるよね。人のだと、余計に燃えて手出そうとする奴は」

ガーネット「言えてる。しかも、手に入れたらポイ捨てとか? 相手が好きなんじゃなくて、恋愛の「過程」だけ楽しむタイプとか」

マーガレット「今のジャンも、ミカサに「彼氏」がいるから余計に意地になっている可能性もあるんだよね。人のが羨ましく見えるってやつ。もともと、嫉妬深いところもあるでしょ? 彼は。あと、ただの「偶像化」している場合もあるし」

ミカサ「偶像化?」

マーガレット「アイドルを好きになる様な感覚で、ミカサの事を好きなのかもしれないって事。似ているけど、恋愛とそれは別物だと私は思うんだよね」

と、ちょっと大人な表情を見せる先輩達だった。

マーガレット「今のジャンは、ミカサの「いい部分」しかまだ見えてなくて、自分の中で勝手に「偶像化」している可能性もあるよ。案外、ミカサの裏の顔を知ってしまったら、あっさり冷める可能性もあるんじゃないかな」

エレン「あー……」

一目惚れだって言ってたしな。確かに。その可能性はなくはないか。

ミカサ「そうなんでしょうか?」

マーガレット「いや、私も分かんないけどね。あくまで『推察』だから。ただ、そういう意味じゃ、今のジャンはミカサより『サシャ』と一緒に居る時間の方が長い気がするのよ。部活ではミカサと一緒にいるけど。アシスタントの方の仕事もそれなりに増えて来たし。あと、たまに一緒に寝泊まりさせているし」

エレン「え? そうなんですか?」

マーガレット「あれ? 知らなかったの? ははーん。まだ誰にも言ってないところを見ると、これはかなり怪しいねえ」

スカーレット「朝から一緒に登校とかしてなかった? 時間ずらしてわざと登校していたのかな」

アルミン「一緒に登校しているところは見た事ないですね」

マルコ「だったら、サシャを先に行かせて自分は後から、とかじゃない? ジャンならやりそうだよ」

なんだ。意外とサシャと順調にいっているんじゃねえのか? これって。

心配して損したな。もう、ジャンの奴、オレが思っていた以上に、サシャ寄りに気持ちが傾いているんじゃねえのかな。

スカーレット「あーでも、サシャって子、あんまり恋愛とか興味無さそうだよね」

ガーネット「うーん。なんか『感覚』でいつも動いているよね。エレンより野性的な感じだね」

マーガレット「そうだね。それがネックなのよね。あの子、凄く可愛いけど。初恋とかした事ある? って聞いたら『ないです!』とはっきり答えていたし」

まあ、それっぽいよな。確かに。

サシャは「食べ物」と「金」の事を中心に生きているようなもんだしな。

マーガレット「いっそ、2人の相性占いもやっちゃう? 勝手に」

アルミン「是非やりましょう」

マーガレット「誕生日、誰か分かる?」

アニ「サシャは確か、7月26日だったと思います」

マルコ「ジャンは4月7日ですね」

マーガレット「OK! ええっと、ちょっと待ってね。占いの本で検索するから」

と、鞄の中から分厚い本を取り出したマーガレット先輩だった。

エレンの考え方には賛否両論あるかもですが、
このシリーズのエレンは「ありのままで」生きるタイプとして書いています。
原作の「自由」への渇望というか、彼は元々縛られるのが苦手なイメージなので、
他人にもあまりそれを「強要」しないタイプとして書いています。
イラッとする方もいるかもしれませんが、そこはどうかご容赦下さい。

では続きはまたノシ

マーガレット先輩GJ

ミカサの男装見たいいぃぃぃ!!
ドレス姿は勿論可愛いだろうけどな!

>>389
舞台ではリヴァイっぽい正装姿になります。
あと緑のブレザーも着ます。エレンの制服と交換です。

マーガレット「相性度数は5。パーセントだと80%以上ってあるね。同じ火属性同士か。激しいカップルになりそうだね!」

エレン「火属性。オレと同じなのか」

マーガレット「だね。ジャンとエレンは同じお羊座で、サシャはしし座ガールだね。なんか納得したかも」

エレン「それって、オレとジャンが本質的には似た者同士って意味ですよね?」

マーガレット「YES! あ、御免御免! 悪い意味じゃないよ? 共通する部分はいくつかあるなって思っていたから。………面食いとか」

エレン「うぐ!?」

ミカサ「エレンは確かに面食いかも」

エレン「違う違う!! オレ、ちゃんと中身を見ているぞ!」

ミカサ「本当に~?」

アニ「本当に~?」

エレン「なんでアニもハモるんだよ!! いや、顔で惚れたとかじゃねえからな! ちゃんと中身込みで好きだからな!」

何か脂汗掻いてきた。占いってこえええ。

マーガレット「まあいいか。サシャの方を見てみよう。『強いプライドと情熱と大きな愛に溢れています』『自分を想ってくれる人には包み込むような愛を与えます』『積極的で明るく前向きで、面倒見のいいお人好し』『寂しがり屋な面も』『派手に見えますが、恋に対しては真剣そのもの。意志が強く一度決めた事はやり通します』とあるね」

エレン「なんか大体当たってますね」

マーガレット「確かに。あの子いつも明るいもんね。あ、でもまずい」

エレン「ん? どうしたんですか?」

マーガレット「『優しい男性よりやや無骨で堂々とした男性に魅力を感じます。彼氏は間違っても気弱な点や女々しいところは見せず、爽やかで強い男のイメージを演出しましょう』ってある。これはまずい」

エレン「OH………」

スタート地点でダメ過ぎるじゃねえか。

マーガレット「あーでも、サシャの方は今年、恋愛運がいい感じにきているみたい。『シングルの人にはチャンス到来』とか書いてある」

エレン「そうなんですか」

マーガレット「うん。『いろんな人との交流が増える時期です。自分の感性で楽しいと感じる事にチャレンジした方がいいでしょう』ってあるから、これってアシスタントの件を言っているかもしれないね」

ミカサ「なるほど」

エレン「かもしれねえな」

マーガレット「火属性同士だと両方とも情熱家だから極端になる傾向があるね。でも『明るくて前向きな家庭を築けます』ってあるから、ジャンから見ればサシャは嫁にするのに悪くない相手だと思うな」

エレン「ああ、サシャは家庭に入ってもうまくやっていけそうな感じではありますね」

マーガレット「あの子の料理にかける情熱は半端ないからね。「料理人にならないの?」って以前聞いたら『基本的に自分で作った物は自分で食べたいので、振る舞う事は2の次なので難しいです』とか言ってたから勿体ないような気もするけどね」

そっか。あいつは『自分』の為に料理するタイプだからリヴァイ先生とはちょっと違うんだな。

マーガレット「総合的に見ても2人の相性は悪くない感じだね。こっちの2人がくっついた方がいいかもね」

アルミン「うーん。でもエルヴィン先生は『コニー』の存在も仄めかしてきたしなあ」

マーガレット「コニー? 誰?」

アルミン「サシャの男友達です。サシャから見たら恐らく一番近い異性はコニーになると思います」

スカーレット「何?! それは不穏な気配だね。リヴァイ先生とハンジ先生みたいな感じなの?」

エレン「うーん。男友達なのは間違いないですけど。コニー、彼女いるからなあ」

スカーレット「いや、彼女いるからって油断は出来ないよ。そっか。サシャはもう一人の彼氏候補がいるんだ」

ミカサ「まだ、そう決めつけるのは早いとは思いますが」

マーガレット「ええっと、それってもしかして、野球部の子? 何かうちのクラスで騒いでいた子いたよね」

ガーネット「ああ、野球部の期待の新人みたいな感じだったね」

マーガレット「うん。そっか……野球部の子か。じゃあ運動神経いいんだね」

エレン「将来は野球選手になる! って言いきってますけどね」

マーガレット「夢を持っている子は魅力的に見えちゃうよね。今のところ、コニーの方が優勢なのかしら」

アルミン「そこはサシャの『潜在意識』を調べてみない事には分からない、みたいな事をエルヴィン先生が言ってましたよ」

マーガレット「そりゃそうか。少なくとも『今』の時点では自覚あるのってジャンだけだもんね」

エレン「まあ、フラフラしてはいますけどね」

マーガレット「もういっそ、ジャンとサシャを体育館の倉庫にでも1晩閉じ込めちゃう? そしたら案外、くっついちゃうんじゃないかな」

エレン「鬼畜なトラップ仕掛けるのやめて下さいよ。両方とも可哀想じゃないですか……」

ミカサ「………エレン、どっちの味方なの?」

エレン「え? オレ? オレはどっちの味方もしねえけど。ただ、自分の意志に反してあんまり周りからやんや言われるのは苦手だし。ある程度は放置してやった方がかえっていいんじゃねえのか?」

アルミン「ああ、リヴァイ先生の時もエレン、基本的には自分からは野次馬しなかったよね」

エレン「正直、『いいのかなー?』と思いながら首突っ込んでいたけどな。あの時はオレも相当流された気もするが」

その結果がいい方向に転がったから良かったものの、悪い方にいっていたら目も当てられないだろ。

オレ、そこまで他人に対して責任負えねえぞ。

マーガレット「まあさすがに倉庫トラップはやらないけどwでも、なんかこう、ハプニングというか、切欠みたいなものは2人にあげたいよね」

スカーレット「それは分かる。ちょっとつついてやりたい感じ?」

マーガレット「うん。ちょんちょんって感じでさ。かるーく、こう、えい! って感じで」

アルミン「その件に関してならエルヴィン先生が作戦を考えてくれるそうなので大丈夫ですよ」

マーガレット「マジかwwwwそれは超楽しみにしてるわwwww」

スカーレット「ゲスい教師だね。大好きだわ」

エルヴィン先生、変なところで好感度上げているな。

そんな感じでわいわいくっちゃべていたら、マリーナ達が来た。

マリーナ「放送部の子達と話してきたよ。今日の放課後、今からなら少し録音室貸してくれるって。音撮り先にやろうか」

エレン「あー今日いいのか」

マリーナ「うん。先に出来ることはやっちゃおう。リヴァイ先生とハンジ先生の入浴シーン、音だけでやるんでしょ」

入浴シーンは『見せられないよ!』の看板を掲げて音だけで再現する予定だ。

ミカサ「ついにきた(わくわく)」

エレン「んじゃ行ってくるわ。いくぞ」

という訳でオレとミカサとアルミンの3人は音撮りの為に録音室に移動した。

例の、30歳の旅行の夜とか、最初の入浴シーンとか。その辺を音だけで表現する。

しかし、実際は本当にミカサがオレの体を「洗う」仕草をしながら演じる。

あ……ちょっと、ミカサ。本気でその、オレの体洗ってくるなよ。勃っちまうだろ。

エレン「あ……ちょっと、ミカサ、それはやりすぎ……ああ」

アルミン「はい、カーット!! ミカサ、このシーンはまだそこまでやらなくていいよ。初めての入浴シーンだから。性的な接触は一切なし!」

ミカサ「ごめんなさい(シュン)」

いや、いいんだけどな。オレからすると万々歳なんだけど。

そんな感じで何とかリテイクを食らいながらも何とか録音を済ませてその日の活動は終わった。

順調に来ているかな。この調子でいけばきっといい舞台に仕上がるだろう。

ちょっと休憩します。続きはまたノシ

そして部活終了後、帰り際、たまたま玄関でジャンと会った。

ジャンは「あ……」という顔をしていたが、ミカサは目すら合わせない。

完全スルーだ。ジャンは「さよなら」の挨拶すら出来ずにいる。

その哀愁っぷりはまさに濡れ雑巾だ。

ミカサの体から「近寄るな」オーラが漂っていて、ジャンも何も言えずに帰宅していった。

ここで無理やり声かけてくるような度胸はないらしい。

可哀想な気もするが、いずれはこうなっていただろう。だからオレもミカサの行動に対しては何も言わなかった。

アルミン「……………酷い状態だねえ」

ジャンとマルコが先に帰った後、アルミンがぽつりと言った。

アニ「自業自得じゃない? フラフラしているのが悪いし」

アルミン「まあねえ。開き直った辺りが馬鹿としか言えないけど」

ミカサ「むしろ私の事はさっさと諦めてサシャに切り替えた方がまだ、良かった」

エレン「そうなのか」

ミカサ「なんか、馬鹿にされているような心地になる。ジャンは私の何を見て好いてくれているのか未だに良く分からない上に、他の女にも目移りしている。ジャンの事は悪い人ではないとは思うけど。女に対する価値観は許容出来ない」

エレン「なるほど」

ミカサは「浮気者」に対しては厳しい意見のようだ。

ミカサ「自分でもなんでこんなにイライラするんだろう? 今のジャンを見ているのは正直、辛い。彼の目を見たくない」

…………ん?

あれ? 今、ミカサの顔、なんか。

いや、気のせいじゃねえ。やっぱり、あの顔だ。

ミカサ「ジャンの事は暫くスルーしたい。あんまり深くは考えたくないので」

エレン「あ、ああ……そうだな」

オレはミカサと手を繋いだ。ぎゅっと、離さないように。力を込めて。

ミカサ「? エレン…?」

エレン「帰るぞ。一緒に」

リヴァイ先生を嫌悪していた時の顔に似ていた。ちょっとまずいな、と思ったけど。

気づかせないようにしたかった。ミカサは「嫌悪」にも1度囚われるとそこからなかなか抜け出せなくなる性質だ。

自分の中の「熱」を無理やり押さえつけて、オレは平気な振りをした。

家に帰ったら、ちょっとミカサと2人の時間を作ろう。

そう思いながらぎゅっと手を繋いで、オレ達は家までの道のりを帰ったのだった。






その日の夜。ミカサが風呂からあがって、オレも風呂に入り終わってから、ミカサの部屋に入った。ミカサと少し話したい事があったからだ。

ミカサは寝間着で布団の上で正座していた。何故か緊張して待っていてくれたようだ。

エレン「ん? どうした。足崩してもいいんだぞ?」

ミカサ「う、うん……(そわそわ)」

そわそわしているな。何だ? 何かあるのかな。

エレン「ミカサ、少し話をしてもいいか?」

ミカサ「どうぞ」

オレは今回の事で思った事をミカサにも伝えてみる事にした。

エレン「……………ミカサ。オレの事、好きか?」

ミカサ「うん。好き(超即答)」

エレン「でもオレ、こんな奴だぞ? イライラしたり、ムカついたりしねえのか?」

ミカサ「?」

あ、なんか意味分かってないっぽいな。どう伝えたらいいんだろ?

エレン「あーだから『オレの女に手出すな』って、咄嗟に言えなかったような男だけど、いいのかって話」

ミカサ「その件に関してはもう解決しているので問題ない(キリッ)」

エレン「そ、そうか?」

ミカサ「マーガレット先輩も言っていた。その言葉は言わば『諸刃の刃』のようなものだと私は解釈した。エルヴィン先生じゃないけれど、何でも白黒つければいいものではないと思う。灰色も、時には必要」

エレン「そうか………」

ミカサ「それにエレンがジャンに気を遣っている理由は、何も出し抜いた件だけが原因ではないと私は解釈している」

エレン「え?」

ミカサ「エレンはもう、ジャンの事を『友人』として自然と認めているのだと思う。だからこそ、あまり邪険に出来なかったのでは?」

エレン「あー………」

ミカサから見てもそう思うのか。オレも薄々気づいてはいたんだが。

認めたくねえなあ。でも、そうとしか考えられないんだよな。

あー面倒臭い。ジャンの奴がもっと悪い奴だったら良かったんだがな。

そしたら徹底的に嫌って、ミカサとの事も「お前には関係ねえだろ!!!」って言えたのに。

ミカサ「むしろ私は、出し抜いた件で罪悪感を持っているエレンが好き」

エレン「え?」

ミカサ「もしそこで開き直る様な男だったら、ちょっと好感度は下がっていたと思う」

エレン「ああ、ゲス過ぎるっていう意味でか?」

ミカサ「そう。友情は友情で大事だと思うので」

エレン「ううーん」

そう言われると心境が余計に複雑になるな。

ミカサ「こんな例え話がある。エレン、聞いてくれる?」

エレン「ん?」

ミカサ「私の中学時代の頃の話。とあるモテる女子生徒が、ある男子と付き合っていた」

エレン「ふむ」

ミカサ「ある男子の方。仮にA君とする。彼にはB君という友人がいた」

エレン「ふむふむ」

ミカサ「そのB君はCさん。モテる女子生徒を仮にCさんにする。彼女の事を密かに思っていたけれど、友人としてそれは言えなかった」

エレン「三角関係だな」

ミカサ「そう。でもある時、A君とCさんがとある事を切っ掛けに喧嘩になって、別れるか別れないかの話になった。B君は、それを友人としての立場で最初は見守っていた」

エレン「ふむふむ」

ミカサ「Cさんは、B君に相談した。そのうちにだんだん、B君はA君からCさんを奪ってやろうという下心が芽生え始めて、結果的に本当に奪ってしまった」

エレン「あー」

ミカサ「CさんはB君と付き合うようになった。でも、付き合っている最中に、Cさんはとある事が切欠でB君に対する気持ちが一気に下がってしまって、自分からB君との付き合いをやめる事にした」

エレン「え? 折角相談にのってくれたB君、ふっちまったのか?」

ミカサ「そう。その理由は何だと思う?」

エレン「えええ? さっぱり分からねえよ」

ミカサ「…………B君が、勝ち誇ったから」

エレン「え?」

ミカサ「B君がCさんと付き合うようになってから、まるで『奪った』事を男の勲章のように、自慢して勝ち誇ったから。Cさんは、そんなB君の態度に興ざめしてしまったそう。だからすぐに別れる事にしたそう」

エレン「えええええ……女って、そういうところでも「冷める」のか」

ミカサ「そう。A君とB君はもともと友人同士だった筈。奪った事に対して全く罪悪感のない男って、どうなの? と彼女は首を傾げてしまったの」

エレン「つまり、女から見たら、そういう部分も大事にして欲しいって事か」

ミカサ「そういう事になる。だからエレンがジャンに対して多少の罪悪感を持つのは当然。ピクシス先生も「間違ってはいない」と言っていた」

エレン「へーそういうもんなのか」

オレはじゃあ、結果的には「間違っていなかった」のか。意外だけど。

ミカサ「………ちなみにこの時、A君とCさんの喧嘩の原因になってしまったのは、私。A君が私に対して色目を使っているという誤解が発生して、喧嘩になったそう。私はその事を後で知って愕然とした。勿論、A君は私とはそういう関係ではなく、ただのクラスメイトで委員会がたまたま一緒だっただけ。でも、女の誤解は1度発生するとこじれてなかなか元には戻らない。今思うと、可哀想な事をしてしまった気がする……」

エレン「いや、それミカサ全く悪くねえぞ!! ただのとばっちりじゃねえか!」

ミカサ「そうだとは思うけれど。つまり、そういう事もあると言う事。だから私は、出来る事ならエレンとジャンの友情を壊したくはない」

エレン「ううーん」

そもそも、ジャンとの友情ってオレの中でどの程度のものなのか測りかねているんだが。

アルミンは、最強の親友だと思っているけどな。唯一無二の、かけがえのない存在だ。

でも、ジャンとのそれは、その……こういうケースは初めての経験だからどう「カテゴリ」していいのか良く分からん。

ミカサ「エレンは元々、あまり自分の感情を誤魔化さないで「自然」に生きる事を信条にしている。ので、ジャンに対して言ってしまった事は、仕方がないと理解している。でも、それを受け入れるか入れないか。それはジャン自身の問題。エレンがいくらそう言ったからと言って、それをそのまま受け入れる必要はない。本当に私が好きなら「私」を選ぶ筈だし、サシャが好きなら「サシャ」を選ぶ筈。だから、エレンの責任というより、元々ジャン自身が「誰かに自分の考えを後押しして欲しかっただけ」だと解釈した」

エレン「あーなるほどな」

そう言われれば、あの時のジャン、嬉しそうだったな。

ミカサ「女にはそういう時がある。男の人もそういう事もあると思う。ジャンは元々、単純に優柔不断なだけだと思う。だからイラッとした」

エレン「まーな。告白できずにウジウジしているような奴だしな」

ミカサ「告白出来ないのは、やはりまだ「本当の好き」ではないのではないかと思う」

エレン「ん?」

ミカサ「本当に好きであれば、体が自然と動く。私も、そういう感覚は分かるので」

エレン「………そっか」

なんかちょっと安心した。ミカサにも「その感覚」は分かるらしい。

ミカサ「マーガレット先輩の言う様に、ジャンは私を『偶像化』しているだけなのかもしれない。アイドルを追いかける感覚で好きであるのなら、それはそろそろ卒業して欲しいと思う」

エレン「あーどうなんだろうな。その辺はオレ、アイドル追っかけた経験ねえからピンと来ねえんだけど」

ミカサ「私もそうだけど。でも、リヴァイ先生を追いかけている子達はまさにそれじゃないかと思う。あんな変態クソちび教師のどこがいいのか」

なんか悪口がどんどん増えているな。『変態』が上についたぞ。

エレン「まあ、教師としてのリヴァイ先生はある意味『理想』の教師ではあるからな」

ミカサ「確かに、教師としてのリヴァイ先生は優秀なのかもしれない。だけど、乱暴で強引で、おまけに変態なので、それを知らないファンの子達が憐れに思える」

エレン「あーもし知られたら、ファンが増えるか減るか、興味はあるけどな」

特に『変態』の部分が知られたら、ドン引きする女子も出てくるだろうな。

エレン「でもその辺は、いずれ出していくかもしれないな。リヴァイ先生自身、大分開き直っていたみたいだし」

ミカサ「そう………早く出して嫌われるといいのに(ニヤリ)」

エレン「いや、まあ、その辺はリヴァイ先生、むしろファンの数を減らしたいみたいだけどな」

ミカサ「そう? じゃあ増えたらいい(ニヤリ)」

何があってもリヴァイ先生を苦しめたいらしいな。ミカサよ。

まあいいや。リヴァイ先生の事は横に置いておく。今日はその件で話したい訳じゃねえし。

エレン「じゃあミカサはオレに対して今のところ、不満はねえと思ってていいんかな」

ミカサ「うーん?」

エレン「定期的に、こういう事はちゃんと確認し合わないと、すれ違ったら嫌だろ? オレも出来るだけ腹割って話すし。ミカサも抱え込まないで出来るだけ話してくれないか」

ミカサ「いいの?」

エレン「そのつど、やっていかないとダメだろ。先延ばしにして、気が付いたらお互いに気持ちが冷めていたなんて事になったら嫌だしな」

ミカサ「うーん……」

ミカサが考え込んでいる。やっぱり不満はあるよな。きっと。

そういうのは「引き出して」やらないといけないよな。ちゃんと向き合わないと。

ミカサ「不満、なのか自分でも分からないけれど」

エレン「なんだ?」

ミカサ「エレンは少し、謙虚過ぎるような気がする」

エレン「え?」

ミカサ「もっと、子供のようにダダこねて、私を欲しがってくれてもいい。あんまり大人になり過ぎないで欲しい」

エレン「ええええ………?」

どういう意味だ。それは。

ミカサ「エレンがその……感情を爆発させている時の、顔、凄く好き、なので」

エレン「!!!!」

あ、いや。それはその。

いかん。リヴァイ先生との事を勝手に誤解して嫉妬した自分を思い出す。

あの時は本当にヤバかった。いろんな意味で。

あの時の感覚は本当に、忘れたい。自分でも怖えんだよ。

その、そういう「感情」になったら、ミカサを乱暴に抱いちまいそうな気がする。

ミカサが嫌がる事も平気でやってしまいそうな自分がいて、怖いんだ。

だからこそ、あんまりジタバタしないように心掛けているし、見苦しい自分は見せたくねえのに。

ミカサはむしろ、そういう「凶暴なオレ」を見たがっているのか?

エレン「いやいやいや、それは出来ない相談だ。そんなしょっちゅう、オレも、その、子供にはならんぞ」

ミカサ「そうなの?」

エレン「大人であるべきだろうが。オレも高校生になったんだし。いつまでもガキのまんまじゃダメだろ?」

ミカサ「……………我儘言ってもいいのに」

エレン「いーや。その辺はセーブしていかねえと。自重の心は忘れたらいかん」

ミカサ「ん? 何故自重? なんの話?」

エレン「え?」

ミカサ「私は『感情を爆発させて欲しい』だけで別にエッチな話をしている訳ではないのだけど」

エレン「!!!!」

しまった。嵌められた!!!

ミカサ「エレン、今の会話のどこに『エッチ』な要素があったの? 教えて?」

エレン「あ、待て待て! なんか近いぞ? ミカサ!」

ミカサ「ふふふ……エレンは今、どうして『エッチ』な連想をしたのかしら? (つつつ…)」

服の上からチチクルなあああ!!!

ああ……いかん。ミカサの手を止めないと。まずい。まずい。

ミカサ「あん……」

エレン「ミカサ。どんどん誘惑スキルを上げているところ悪いが、今日はやってもいい日なのか?」

ミカサ「危険日は過ぎている。予定では生理5日前なので限りなく安全日ではある」

エレン「あ、じゃあ多少のイチャコラは大丈夫なのか」

今、時間何時だ? あーでも12時過ぎたか。長話し過ぎたな。

あーどうする? もうちょっとイチャイチャするか?

もしかして、最初ミカサがそわそわしていたのは、期待していたせいだったのか?

あーそうと知っていれば先にイチャイチャしたんだがな! しまったな!

エレン「………………ちょっとだけ、触っていいか?」

ミカサ「うん」

エレン「こっち来い」

ミカサを引き寄せてミカサを後ろから抱っこするような形で2人で座る。

エレン「……………」

ミカサ「……………」

エレン「本音を言えば、さ」

ミカサ「ん?」

エレン「オレも本当は、初めは言いたかったんだよ。ジャンには『オレの女に手出すな』ってさ」

それ以外にも、いろいろ。ジャンに対して牽制したい気持ちは最初からあった。

エレン「でもな。なんだろ……良く分からん『第六感』みたいなものがそれを止めたんだよな。良く分からねえけど。こう、闇の中に、2つの光の道筋があるように感じてさ」

ミカサ「うん」

エレン「たまに、あるんだ。そういう『分岐点』のような物を感じる事が。オレの中で、それを選ぶ時はもう、完全に『勘』の世界でさ」

ミカサ「うん……うん」

エレン「アルミン曰く、『一見間違っているように見えて正しい道を選んでいる』らしいんだけど。オレは常に『やっぱり違ったかな』と思いながら、それでも進んでいるんだ」

その結果『やっぱり間違えたか!?』と思う事も多々ある。

でも、オレはそこに立ち止まるよりとりあえず『進む』事を選んでしまう事が多い気がする。

エレン「そのせいで、もしかしたらこれから先もミカサにも苦労かけること、あるかもしれねえけど。ごめんな」

ミカサ「うん。分かっている。大丈夫。私はエレンを信じてついていくだけ」

エレン「ありがとう。ミカサ………」

今日は多少無茶してもいい日らしいが、時間が時間だ。

あんまり遅くまで起きている訳にもいかない。だから、キスをして、ミカサの項に『キスマーク』だけ残しておいた。

ミカサ「?」

エレン「オレの女に手、出すなって言わない代わりにさ」

ミカサ「うん」

エレン「ミカサの『項』に定期的に『キスマーク』をつけてもいいか? というか、今つけちまったんだけど」

ミカサ「そうなの? どのへん?」

エレン「この辺。自分じゃ見えない位置だけど」

ミカサの項に触れながらオレは言った。

エレン「これが『オレの』っていう印だから。言外にそれで周りに伝えていいよな?」

ミカサ「そうね。確かに、その方が分かり易くていい」

エレン「恥ずかしくねえか?」

ミカサ「全然。むしろ自慢する(どや顔)」

ミカサと笑いあった。なんかこう、すげえ嬉しい。

そんな感じでオレ達はその日の夜、短いけど充実した時間を過ごした。

今日はただイチャイチャするだけに終えたけど。焦る必要はないよな。

自然と。いつかその日が来る事を待つ。今はまだ、もうちょっと早い気がする。

舞台が終わった頃に、ゆっくり出来る時間があれば、その時に。しよう。

そう思いながらその日の夜はオレは自分の部屋に戻り、眠りについたのだった。








12月6日。土曜日。ミカサが無事に生理が始まったらしい。

ミカサは定期的に自分の生理のリズムをオレに報告してくれるようになった。

オレを安心させたいからだそうだ。オレも把握できる方がいろいろ便利なので忘れないようにメモをする。

女って男と違って、月のリズムによって体調や気分の変化の落差が激しいから大変らしい。

ちなみに生理が始まってから排卵日に向かっては気分が高揚して、それが過ぎるとだんだん、下がっていくそうだ。

ミカサも以前はそのリズムに悩まされて大変だったそうだが、オレと付き合う様になってからはその「嫌悪感」が大分薄れてきたらしい。

いい恋愛をすると、体の調子も良くなるそうだ。つまりオレはミカサの身体ごと管理していかないといけない訳で。

責任重大だなと思う反面、オレのおかげでミカサが機嫌がいいと嬉しくもなる。

でもジャンと目が合うとスルーする。ジャンは未だにまともに声をかけられずに落ち込むばかりだった。

部活中は一応、劇の練習があるから会話をする事もあるけど、ミカサは完全に棒読みの対応だった。

ミカサは一旦、壁を作ると鉄壁の防護壁を作るようだ。その辺が物凄くはっきりした性格なので、オレも怒らせないようにしないといけないと肝に銘じる事にした。

<●><●>の目になった時とか、ガチで怖いからな。いや、本当に。冗談抜きで。

ジャンはそろそろ根をあげそうな気配だった。部活の休憩時間、マルコの前でぶつぶつ言っていた。

ジャン「まさかミカサがこんなに怒るとは思わなかった……」

マルコ「いや、それを想像出来ないジャンが馬鹿だよね? 普通は2人も好きな子いる男を許容出来ないと思うよ」

ジャン「そうかもしれないが、いくらなんでも長すぎないか? オレ、ずっとこのままミカサに相手にされないのか?」

マルコ「うーん。エレンの意見を受け入れたジャンの自業自得だと思うよ。エレンに後押しされたからと言って、それに乗っちゃったジャンの方が悪いよ」

ジャン「それは分かっている。分かっているんだが……(ズーン)」

メンタルベコベコだな。血の気がねえし。

ジャン「オレ、ミカサに今まで大分、優しくされていたんだな。何か今までの有難みを今頃になって噛みしめちまうよ」

マルコ「元もとミカサは優しい子だよ。だからこそ、怒らせると怖いけど」

ジャン「そうだけど……そうだけどさあ……(半泣き)」

あー。ジャンがブルブル震えているな。

今、あいつ、初めてミカサの「悪いところ」を目の当たりにしてビビっているんだな。きっと。

ミカサは怖えよ。怒らせるとな。美人だから余計に恐ろしく感じる。

ジャン「あああもう、あの時のエレンの口車に乗ったオレの馬鹿……」

おいおい。人のせいにするのかよ。

まあ、気持ちは分からんでもないが。オレもジャンの立場ならオレを責めるけどな。

でもオレもちょっと長すぎるような気もしている。ミカサにとって、ジャンはそれだけ存在が大きかったんだろうか?

どうでもいい奴なら、ある程度、怒っても、その後は自然と時間と共にその怒りが収まるような気もするんだが。

だから気にかかった。そして一抹の嫌な予感もあった。

このままずっと、ジャンに対する「嫌悪感」を持たせ続けていいのか。迷う。

オレはだから、ジャンに自分から話しかけた。

エレン「ジャン、もう諦めてサシャの方に行ったらどうだ? ミカサもそっちの方がまだマシだって言ってたぞ」

ジャン「お前、言ってる事、滅茶苦茶だぞ!? オレを惑わしてくるんじゃねえよ!!!」

エレン「だってさ………ミカサ、頑固だぞ? アレはもう、完全にピー(自主規制)を見る様な目だぞ」

ジャン「空飛ぶ黒い天敵の名前を出すなよ!!! オレはそこまで汚い人間なのか?!」

エレン「うーん。女って、浮気者に対してはすげえ厳しい目を持つって事だな。オレ、男だから知らなかったんだよ。わり!(両手合わせる)」

ジャン「今頃謝られてもどうにもならねえだろうが!!!」

マルコ「んー? それもどうかと思うよ? エレン。ミカサがもし『浮気者』だったら、エレン自身は許せるのかい?」

エレン「……………………」

うううううううーん。

急に脂汗が出てきた。そうか。そう考えてみると、ミカサの反応は当然なのか。

エレン「確かにミカサが浮気したら嫌だな。でも、された時はオレに甲斐性ってやつがねえって証拠でもあるから。まずは自分の反省が先だな」

マルコ「キレない自信があるの? そんな風に冷静になれるかなあ? 実際は」

エレン「いや、キレるとは思うぜ。でも、物事って相手ばかり悪者にしても解決しねえだろ。ミカサのような真っ直ぐな女が浮気するなら、そこにはよほどの「理由」があるだろ。そこを見ないでただキレても、なあ」

マルコ「うーん。なんかエレンって、無理に自分を『大人』に見せようとしていない?」

エレン「え?」

意外な指摘だった。ちょっときょとんとしてしまう。

マルコ「僕がもしも女の立場なら、そこは『キレて』欲しいかな。なんていうか、根っこの部分をもっと見せて欲しいと言うか……がっつり本音で繋がりたいというか。『浮気したら殺す』くらいの熱は欲しいと思うけどな」

結構マルコ、危ない事を言うんだな。温和な印象なのに。恋愛事は情熱的なのかな。

マルコ「アニが『オレの女に手出すな』って言うのが1番好きって言っていたのはそういう事じゃないのかな。いや、実際そうなのかは本人に確認しないと分からないけど」

アニ「呼んだ?」

マルコ「ああ、アニ。丁度良かった。あのね。今、浮気について話していたけど」

アニ「ああ、浮気したら『殺す』けど何か?」

マルコ「ほらね。これくらいの『熱』を持っていてもおかしくないんだよ。エレンにはそういうの、ないの?」

エレン「…………………」

ある。というか、リヴァイ先生との事を勝手に勘違いした時に、すげえ思った。

でも、その時の自分が怖くて。一瞬、本当に、我を忘れそうになって。

思い出すのが怖い。

本能の更に奥に『獣』のような唸り声が遠くに聞こえた気がする。

あいつを解放する前にすぐに扉を閉めたような感じで、あの時は抑え込んだけど。

ミカサを目茶目茶にしちまいそうな気がして。寸前で堪えたけど。

そうか。オレ、自分の中の「あいつ」を無意識に避けていたのか。

だから、ジャンの事も正面から見ていなかっただけなのかもしれない。

オレは、ただ、臆病だっただけなのか。はは……。

エレン「………ははっ」

マルコ「?」

エレン「マルコの言う通りだな。確かに、本音は『殺したい』だよ。浮気相手を八つ裂きにしてぐちょぐちょにして、火だるまにしてやりたいくらいにキレるかもしれねえな」

マルコ「………………」

エレン「悪い。なんか、オレ、そういう『自分』を無理やり、無意識に抑え込んでいたのかもしれねえ。ミカサを傷つけたくねえからさ」

暴走しそうになる自分の気配を感じて怖くなった。

自分が『怖い』んだ。オレは。きっと。恐らく。

マルコ「そうなんだ」

エレン「ああ。オレ、ミカサの事、すげえ好きだからさ。ジャン……手出すつもりあるなら、本気で殺すからな。覚悟があるなら、かかってこいよ」

それだけを言い放ってオレはジャンの傍から離れた。

今、あいつがどんな顔をしているか、分からねえけど。

というか、きっと、マルコもアニもジャンもきっと、こんなオレに対して『ドン引き』しているに違いないけど。

ジャン「………………休憩終了だな」

ジャンは立ち上がった。合図を出して練習再開。気持ちを切り替える。

その後はジャンもウダウダ言わず、綺麗な顔つきになっていた。

ジャンがもうミカサに怯えなくなった。そんな毅然としたジャンの様子にミカサも少し戸惑っている。

ミカサは休憩中、アルミンと話していたのでオレとジャンの会話は聞いていない。

だから「どうしたのかしら?」と首を傾げていた。

雰囲気がガラリと変わったジャンに対してミカサもきょとんとしている。

オレはさっきのジャンとの会話を話すべきか迷ったが………

とりあえず、今の時点では言わない事にした。

だって「オレの女に手出すな」って言わなかった癖に、気が変わって「手出したら殺す」宣言しちまったからな。

自分でもわけわけめだ。何でこうなったんだろ?

正直、落ち込む。気分の上下が激しい自分に凹む。

ミカサ「エレン? 何かあったの?」

落ち込んでいるオレにミカサが気遣ってくれる。

エレン「あー後でな」

今は部活中だ。集中しよう。集中。

この日は人工呼吸のシーンも含めて、ミカサといろいろ際どいシーンも演じた。

でも途中でアルミンにダメだし食らってしまった。

アルミン「こらーエレン! 君は今『女役』だよ?! 男の顔しちゃダメだよ!!」

エレン「うっ………」

アルミン「ミカサも女らしくならないで! 男女逆転劇なんだから、そこんとこ、注意!」

ミカサ「う、うん………」

まずいな。なんかさっきの件があったせいで、オレの中の頭が『男』寄りになってる。

エレン「悪い。アルミン、さっき休憩いれたばっかりだけど、便所行って来ていいか?」

アルミン「ああ……OK。気持ち切り替えて来てね」

という訳でオレだけ便所に行かせて貰える事になった。

便所の個室に籠って取り敢えず落ち着こう。心臓の音を鎮めたかった。

ドクドク………ドクドク…………ドクドク………

少し時間がかかったけど、普通の音に戻した。

マルコの指摘がこんなに奥深くまで『響いて』くるとは思わなかった。

リヴァイ先生もそうだったのかな。オレの何気ない『ツッコミ』が、リヴァイ先生の未来を変えた。

今、オレの中にもそれに似た何かが動き出したような、そんな気配があった。


オレ、本当は、ミカサに手出すような奴ら、全員、殺したかったのか。


そう思った瞬間、頭を殴りたい気持ちになって、寸前で堪えた。

涙が出てきた。これじゃあ、幼い時のオレと何も変わってねえじゃねえか。

衝動的にしか動けない。ガキなオレ。

それが嫌で、必死に大人になりたがる、オレ。

そんな自分を、マルコはいとも簡単に見抜いた。いや、見抜いたというより「違和感」を覚えただけだろうけど。

何も変わってねえ気がした。あの頃の、自分と。

いや、むしろ酷くなっているのかな。逃げていただけだったんだし。

便所の中で、暫く声を殺して泣いた。

今のオレはさすがにアルミンにも見せられない。勿論、ミカサにも。

自己嫌悪の波が酷い。久々に来たな。こういうの。

最近はこういうの全然、やってなかったけど。こういう時は1人になるしかねえ。

いつ以来かな。もう覚えてねえけど。昔はよくこうやって、1人で泣いていた。

誰にも見られない場所で。マイナスの感情はここでしか吐き出せねえ。

便所に捨てるしかねえ。でねえと、オレは自分で何をしでかすか分からねえからだ。

すると、男子便所に人の気配が来た。

誰だろ。アルミンかな。

そう思っていたら……………



ミカサ「エレン? お腹痛いの?」



優しい声が響いた。今、一番会いたくない人が来ちまった。

エレン「ああ。悪い。急に下痢がきた。なんか調子悪いかも」

ミカサ「それはいけない。薬を貰いに行かないと……」

エレン「大丈夫だ。出してしまえばすっきりするからさ。もうちょっと便所籠るから。アルミンにそう言っておいてくれよ」

ミカサ「そう………」

演技、うまく出来ているかな。声が震える。

頼むから、騙されてくれ。ミカサ。オレ、大根役者だけど。

ミカサ「……………正露丸、要らないの?」

エレン「薬は出来るだけ頼らない方がいい。本当にヤバい時の為にとっておかないと。薬に慣れ過ぎると免疫力が落ちるって親父が言ってた。こういう時は出すだけ出したら、後は水分とって暫く安静にするのが1番なんだよ」

自分でも饒舌になっていた。誤魔化しているの、バレたくねえから。

でも、それがかえって怪しいと思ったのかな。ミカサが去る気配がねえ。

ミカサ「…………何か、あったの?」

やっぱり、ピンときちまったか。ミカサは聡明な女だからな。

馬鹿な女なら、きっと気づかないんだろうけど。

エレン「何でもねえよ」

ミカサ「嘘。エレンもジャンも、何かおかしい」

エレン「……………」

どうすっかな。ここでどう切り抜けたらいいんだろ。

心臓の音がまた、激しくなり始めた。

頭の中がだんだん真白になっていく…………

ミカサ「ジャンの雰囲気が、急に変わった。以前のジャンに戻った。というか、熱っぽい視線がなくなった。エレン、ジャンに何か言ったの?」

エレン「…………それはミカサには言えない」

ミカサ「何故? もしかして、ジャンと何かあったの?」

エレン「それも言えない。悪い。ミカサ、とりあえず今は音楽室に戻ってくれないか」

ミカサ「え? え? どうして? 私………」

エレン「いいから戻れって言ってるだろ!!!!!」



しまった。オレ、何言ってるんだ。



ミカサ「…………分かった」

ミカサの顔が見れないのが余計にぞっとした。オレ、今、何やった。

ミカサが便所から離れていく気配がある。足音が、遠ざかって行った。

心臓がバクバクしていた。

体中から、血の気が引く感じだ。

オレ、本当に馬鹿だ。心配してくれる彼女に怒鳴りつけて。最低の野郎だ。

なのに、まだ、顔を作れない。皆の前で普通で居られる「顔」に戻せない。

こんなぐちゃぐちゃな自分、久々だ。どうしたらいいんだ。一体、どうしたら………。



コツコツコツ………



また、別の誰かが来た。ミカサの足音のリズムじゃない。

コンコン♪ ノックの音だ。

リヴァイ「おい。早くしろ。こっちもクソがしたいんだが」

エレン「!!!!」

まさかのリヴァイ先生だった。嘘だろ。何でこんな時に限って。

リヴァイ「………? おかしいな。誰もいないのか?」

もう1度ノック音が響いた。どうしよう。どうしよう。どうしよう?!

リヴァイ「? 鍵がかかっているのに、誰もいねえのか? 壊れているのか?」

勘違いしてくれ。そうだよ。ここの便所は壊れているんだと思い込んでくれ。

ガチャガチャガチャ。

ガチャガチャガチャ。

ガチャガチャガチャ。

うわああああ。こええええよおおおおお!!!!

リヴァイ「………失礼」

ひょい。リヴァイ先生が体を乗り出して、上から便所の個室の中を覗いてきた。

見られてしまった。ぐちゃぐちゃな自分を。見られたくなかった人物に。

リヴァイ「…………………」

リヴァイ先生と目が合った。何も言えない時間が過ぎる。

リヴァイ「…………とりあえず、オレのクソを先にさせてくれないか?」

リヴァイ先生が冷静にそう言い出したのでオレは個室を譲ることにした。

こんな時でもちゃんと便所に入って生理現象をこなすリヴァイ先生が心底羨ましいと思った。

手をちゃんと洗って、リヴァイ先生がこっちを見た。

ハンカチで手を拭いながら、オレを真っ直ぐに見つめてくる。

オレは俯くしかなかった。自分からは説明出来なかった。

リヴァイ「………………エレンが望むなら」

エレン(びくっ)

リヴァイ「話を聞いてやるくらいの事は出来るぞ。それがオレの仕事でもある」

エレン「………………」

リヴァイ「勿論、余計なお世話なら断っていいが。何か、事情がありそうだな?」

オレは頷いた。1度だけ。

リヴァイ「どうする? 今、部活中なんだろ? この後、俺はそっちに顔を出そうと思っていたが。今日は中止にしてもいい」

エレン「………………いいんですか?」

こんな重い話を人に話してもいいんだろうか。

すげえ怖い。でも、今、オレ自身も、どうしたらいいのか分からなかった。

リヴァイ「1人で便所に籠って結論を出すか。俺にぶちまけて結論を出すか。エレンの好きにしろ。俺はどちらでも構わない」

選択肢をくれた。リヴァイ先生の優しさがこの時ばかりは身に染みた。

オレは迷わず、選んだ。もう1度、強く頷いて。

涙は自然に引いていた。急に冷静になっていく自分がいた。

エレン「お願いします。時間は出来るだけ取らせませんので」

リヴァイ「分かった」

そしてオレはその日、初めて他人に「あの日の事」を話す決意をしたのだった。

急展開の重苦しい状況ですが今回はここまで。
暫くは超シリアス展開になりそうです。胃が重い展開ですみません…。
ではまた次回ノシ

エレンは凶暴な所があってこそエレンだよな。
そこを必死に抑えようとするけど、ところどころででてきちゃうみたいな、

>>418
そんな感じですね。まさにその通りです。








リヴァイ先生はオレを進路指導室に連れて行こうとしていたが、オレはそれを拒否した。

もし万が一、RECをされたら嫌だからだ。だからリヴァイ先生は事の重さを実感したのか、屋上の鍵を持ってオレをそこに連れて行った。

屋上は一般開放されていない。鍵を借りないと出入りは出来ないようになっている。

幸い外は晴れていた。風が気持ちいい。少々寒いけど。

夕方の黄昏時だった。グラウンドには部活をしている生徒が多数いて、吹奏楽部の音も遠くに聞こえた。

野球部の練習風景もここから見えた。皆、頑張っているようだ。

時刻は5:00くらいだった。土曜日だから、部活をやっている人間は午後も当然学校にいる。

リヴァイ「ここなら絶対、誰にも聞かれる事はないだろう。ここでいいか?」

エレン「はい……ありがとうございます」

リヴァイ「コーヒーでも買ってくれば良かったか」

エレン「いえ、そこまではいいです」

リヴァイ「そうか。…………泣いていた理由を聞いてもいいか?」

エレン「…………はい」

オレは自分の過去をどこから話せばいいか迷った。

こんな話、聞かされる方はたまったもんじゃねえだろうけど。

それでもこの時のオレはリヴァイ先生に頼りたかったんだと思う。

エレン「……………オレ、実は小さい頃に母親を亡くしているんですが」

リヴァイ「……………」

エレン「オレが9歳の時でした。ひき逃げ事件に巻き込まれて。オレを庇って。母親を亡くしました」

リヴァイ「……………」

エレン「当時のオレは、其の時の車のナンバーと車の色だけは目に焼き付けていました。そしてその数日後……何の因果か分からないんですが、目の前に、其の時と同じ車と、恐らく車の持ち主と思われるひき逃げ犯と偶然、遭遇したんです」

9歳の時の記憶を徐々に引っ張り出す。今、思い出しても手が震える。

エレン「奴らは、何やら騒ぎを起こしていました。どうやらとある家族を拉致しようとしていたようで……その時に、抵抗した両親を殺そうとして、幼い女の子だけでも拉致しようとしていました。その女の子は、両親の決死の抵抗の末、逃げ出すチャンスを掴みました。オレはその現場を目撃していて、その子を助けました。一緒に逃げたんです。でも、其の時に、オレの中の『怒り』が消えなくて。その子の両親を殺した怒りと、自分の母親を理不尽に殺された怒りが混ざり合って、そいつらに復讐しようと、打って出たんです」

リヴァイ「つまり、そいつらを殺したのか。どうやって……」

エレン「車を、盗みました。奴らが乗ってきていた車を逆に奪ってやって。あの子を助手席に乗せて。見様見真似で車を動かして、奴らを全員、ひき殺しました」

リヴァイ「よく、操作出来たな」

エレン「親父の運転する様子はよく見ていたんで。幸い、オートマ車だったし。マニュアル車だったら無理だった思いますが。雪の降っている真冬でした。目撃者は誰もいなかったとは思いますが。オレは、其の時に、人を殺しました」

リヴァイ「警察にはなんと説明したんだ」

エレン「分からないふりを貫きました。勿論、詳しく調べられたらオレが殺した事は露見したとは思いますが。その殺した相手グループも、不法入国者で、かつ犯罪歴のある男達だったみたいで。警察も行方を追っていたグループだったそうです。その辺の詳しい事情はオレもそれ以上は分からなかったんですが。幸い、其の時にオレが罪に問われる事はありませんでした」

リヴァイ「………そうか」

もしその相手が日本国民だったら、結果は違ったかもしれない。

オレは今頃、少年院か何処か。少なくともまともな生活はおくれなかったかもしれない。

エレン「年が幼すぎたせいもあったと思います。まさか警察も9歳の子供が車を運転して人をひき殺したなんて信じられなかったのかもしれない。しかもその時、オレはオレだけじゃなく、その当時助けた女の子にも、その犯罪に加担させました」

リヴァイ「つまり、2人でやったのか」

エレン「はい。犯人グループを全滅させたと思い込んだ直後、オレがもう1人の男に捕まって。助手席に残っていた女の子に、運転席に移動してオレごと、ひき殺す様に指示しました。あの子は怯えていたけど。やらないと、今度は自分が殺されるという危機を感じてやってくれました。オレはその時、本当に死んでもいいと思った。でも、幸い、オレは助かって。オレとその子は生還したんです」

あの子は今も元気で生きているんだろうか。それだけが気がかりだった。

エレン「あの子の名前すら聞いていないので、あの女の子が今、どうしているかは分からないんですが。オレはオレ自身の復習の為に、あの子を巻き込んだ挙句、人を殺した基地外です。母親の仇をとりたかったのもあるけど。何よりあの子の両親を殺そうとした事が許せなかった。幸い、母親の方は応急手当てが間に合って、緊急手術のおかげで一命はとりとめたそうですが。それでも、あの子の父親は亡くなってしまったそうです」

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生は絶句していたけれど、オレは構わず続けた。

エレン「今思うと、すげえ事、やっちまっているんですよ。オレ。人、殺したんですよ。9歳の時に。車を使って。自分だけじゃなくて。知らない他人も巻き込んで。どう考えても、冷静に考えても自分が『異常』にしか思えない。殺したいと思ったら、オレ、本当に人、殺せる人間なんですよ」

その「感情」に囚われる事が怖かった。だから、逃げていたんだ。ずっと。

エレン「今、ミカサとお付き合いさせて貰っているんですけど。彼女、凄く綺麗だから。オレとミカサの事を知っても尚、諦めきれずに嫉妬する男もいます。そいつが、本当にうぜえって時々思うし。嫉妬する自分がいる。オレ、ミカサがリヴァイ先生の事を嫌悪しているのすら、嫉妬したんです。それくらい、ミカサに対して独占欲があるんですよ」

リヴァイ「……………」

リヴァイ先生は静かに聞いてくれていた。それが今は本当に有難かった。

エレン「もし、そいつがオレの目を盗んでミカサに手出して来たら、本気で殺したいと思うくらい、オレ、本当は嫉妬していたんです。でも、それを認めるのが怖くて……無意識に目を背けていた。その事にひょんな事から気づいてしまって。自分で自分に愕然としました。オレにとっては『殺意』は冗談なんかじゃないんです。これって、どう考えても、頭おかしいですよね」

そこまで一気に吐き出して、オレは息を吸った。

おかしいと。そう言われる覚悟を決めて待っていたら………。

リヴァイ「……すまん。どの辺がおかしいんだ?」

エレン「え?」

リヴァイ「いや、自分の女に手出してくるような、薄汚い男を『殺したい』と思う事のどこが『おかしい』のか分からない」

エレン「……………え?」

リヴァイ「勿論、それを本当にやったら警察に捕まるが。『そう思う』事は、オレは共感するぞ」

エレン「え? でも……」

リヴァイ「そもそも、その「嫉妬してくる男」は実際に、ミカサに手出してきたのか?」

エレン「いえ、そうじゃないんですけど。いちいち突っかかってきます」

リヴァイ「実際に、ミカサに手は「まだ」出してないが、隙あらば狙っているんだな?」

エレン「………完全には諦めていないように見えます」

リヴァイ「だったら、『手、出したら殺すぞ』くらい脅してもいいんじゃないか? オレだったらそうするけどな」

エレン「へ……?」

何故か肯定されてしまった。嘘だろ。

エレン「え……でも」

リヴァイ「それくらいミカサの事が好きなんだろ? エルヴィンだったらきっとこう言うな。『殺すのよりもっと怖い事、してあげようか?』とか。ハンジだったら多分『監禁して拷問してあげようかw』くらいやるかもな」

エレン「え、ええええええ?!」

なんか全員、頭おかしい発言してきた気がするけど、いいのかそれって?!

リヴァイ「いや、分からんけどな。俺の勝手な想像だが。ただ、自分の物に手を出してこようとする奴らなんかに遠慮する必要はねえな。例えそれがどんな相手であってもだ」

エレン「自分の友人、であってもですか?」

リヴァイ「友人なら尚更だな。『手、出したら友人やめる』くらい普通だろ? 一夫多妻やその逆の国なら違うかもしれんが、ここは日本だ。一夫一婦制だ。そんな気を遣い合う必要は微塵もねえ」

エレン「え、でも………」

リヴァイ「その場合、相手の方に選択権がある訳だろ。友人を取るか、自分の欲望を取るか。どっちつかずのまま、ずっと付き合いきれるのか? オレなら無理だな。どっちかにして貰わないと。友人関係を続けたいなら恋人の事は諦めて貰って、恋人を諦めきれないなら、友人関係は破綻だな。どっちも欲しいなんて、それは虫の良すぎる話だろ」

エレン「………………」

そう、かもしれない。

リヴァイ「エルヴィンの場合がその典型だろ。あいつは、俺の事を……同性ではあるが、好いてくれていたが、ハンジとの繋がりも切りたくなかった。自分が身を引く事で、俺とハンジの縁を取り持ってくれた。その件に関しては本当に感謝しているし、出来る限りの恩返しをあいつにはしてやりたいと思っている。あいつは選んだんだよ。きっとそこに行きつくまでに迷いはあったと思うが……それでも、中途半端な事は一切やらなかった。俺はあいつを凄いと思っているぞ。もし万が一、あいつが本気で俺を『獲りに』来ていたら、俺自身、正直、今頃どうなっていたか………」

エレン「えええええ……それって、絆されていた可能性あるって事ですか?!」

意外だった。その、リヴァイ先生、そっちの趣味の人じゃないのに!

リヴァイ「あくまで可能性のひとつだ。俺は男に抱かれる趣味はねえが。それでも、エルヴィンが『本気』を出していたならどうなっていたかは分からん。俺も自分自身、押しに弱い部分があるところは自覚しているしな」

エレン「…………」

今度はオレが絶句する番だった。

リヴァイ「そういう意味では、俺とハンジとエルヴィンも通常とは違う三角関係だったんだと、今なら思える。エルヴィンの方がもし『ハンジ』を選んでいたら、俺はきっとエルヴィンと戦う事になったと思うが。その場合は、俺はエルヴィンとの友人関係は続けられなかっただろう。そういう意味では、俺はエルヴィンの真似は決して出来ないと思ったよ」

エレン「そう、ですね……」

リヴァイ「この場合はもう、エレンがどうこうではなく、その「嫉妬してくる男」がどちらを選ぶかじゃないのか? エレンとの友人関係か、ミカサへの恋慕か。どちらかだ。選べないっていう選択肢は無しだ。いつまでも目を逸らしていい問題じゃない」

エレン「選ばせていいんですか」

リヴァイ「その方がすっきりするだろ。勿論、相手にも時間を与えてやる必要はあるが。何か月も考える様な事じゃない。エレンはミカサと本格的に付き合い始めたのは、9月以降だろ?」

エレン「正確に言えば8月13日からです」

リヴァイ「今は……12月6日か。そろそろ答えを出してもいい時期なんじゃないか? その友人に問いただしてもいいと思うぞ。これから先、どうするのかを」

エレン「…………そうですね」

そうだよな。目、逸らしていい問題じゃねえな。これは。

リヴァイ「エレンが過去に罪を犯していた事には正直言えば驚いたが……その背景を聞けばそれも当然のように思えるな。現代の日本では『仇討ち』は許されていないが、明治より前の時代。つまり江戸時代にはそれは許されていた事なんだぞ」

エレン「!」

リヴァイ「こう言っちゃ教育者としては失格なのかもしれんが、『罪』という物は、時代と共に変わる。戦争をしていた頃の日本は『殺人』をする事こそ、武人の誉とされた。敵国の人間を殺せないような軟な軍人こそが『罪』だった時代もある。そういう観点から見れば、俺はエレンのした事は『許されない事ではない』と感じるが」

エレン「でも、オレは……本当に、人を殺して………」

リヴァイ「殺さなければ、今頃、お前もその女の子も、死んでいた可能性が高いだろ。『生きたい』と思うのは、人としての当然の渇望だ。それは決して『罪』じゃない。やらなければ自分が死ぬ状況だったのなら、俺も迷わず相手を殺すぞ」

エレン「先生も、人を殺せるんですか」

リヴァイ「やると思う。というより、すまない。こんなことを一生徒に話していいか分からんが………俺も人を殺してしまった事はある」

エレン「え……?!」

リヴァイ「若い頃の、馬鹿な勝負のせいで起こした事故だった。俺は殺すつもりはなかったが……バイクでの勝負を挑まれて、相手の方が、その……運転をミスって、カーブで転倒した。即死だったよ。一応、表面上はただの『事故死』として処理されたが。あの時、俺があの勝負を引き受けなければ相手は死ななかっただろう。今も悔やんでも、悔やみ切れない」

エレン「でもそれは、リヴァイ先生のせいじゃないんじゃ……」

リヴァイ「それだけじゃないんだ。他にも、喧嘩をふっかけられて、打ち所が悪くて本当に死なせてしまった奴もいる。るろ剣の剣心ではないが、逆刃刀のように相手を死なせない技術を持っていれば良かったんだが。その頃の俺はうまく『手加減』が出来なかったから、場合によっては本当に死なせてしまった事もある。一応、襲われたのは俺の方だから、『正当防衛』は認められたが。それでも相手を殺したのは変わりない」

エレン「そう、だったんですか………」

なんかすげえ、びっくりした。リヴァイ先生、どこまで『最強』なんだよ。

リヴァイ「勿論、この事は他の生徒には伏せておいてくれ。人を殺したことのある人間が教職やっているなんて世間にバレたら一発でクビだ。教職員の中でもごく一部の人間しか知らん。エルヴィンと、ピクシス先生と、ハンジだけだな。知っているのは」

エレン「その三方はリヴァイ先生にとって凄く近しい人達なんですね」

リヴァイ「まあな。ピクシス先生もナンダカンダで世話になる事は多いが。1番はエルヴィンだな。あいつの場合はハンジの事も世話しているから。あいつがいなかったら、俺は今頃こうしてエレンと話す機会すらなかっただろうな」

と、何処か遠い場所を見つめながらリヴァイ先生は言った。

リヴァイ「エレンのした事は世間から見たら後ろ指さされる事だとは思うが、それは世間にバレたらの話だ。秘密を抱えて生きていけばいい。ミカサにも話したくないなら話さなくてもいいだろう。ただ、俺はその時助けた「女の子」はきっと、今頃、エレンに対して『感謝』していると思うぞ」

エレン「そうでしょうか」

リヴァイ「命を賭けて自分を助けてくれた少年に感謝しない女が何処にいる。それこそ、ずっと覚えていてくれているかもしれない。もし運よく再会する機会があれば、自分を『嫁』にしてくれと言い出しかねないかもしれないぞ」

エレン「そ、それは大げさ過ぎませんか」

リヴァイ「いいや? 決して大げさじゃない。俺自身、そういう経験があるからだ。昔、ある女に言われた事がある。『俺を命を賭けて助けて貰った恩は一生忘れねえ。出来ればすぐにでも嫁にしてくれ』とな。そいつはまだ幼かったからこっちも『初潮が来てから出直せ』と言ってやったが」

ひでえ返しだな。リヴァイ先生。

………っていうか、あれ? 今、『俺』って言わなかったか?

エレン「今の言葉に違和感があるのは気のせいですかね?」

リヴァイ「ん?」

エレン「だって今、一人称が『俺』って言いましたよね?」

リヴァイ「ああ。そいつは女の癖に自分を『俺』と呼ぶ変わった女でな。名前は『イザベル・マグノリア』と言った。…………俺の初めての女だよ」

?! 今、衝撃の事実を知った。

ええええ?! ちょっと、えええええ?!

リヴァイ「もし生きていれば今頃、35歳。ハンジより歳は1つ程下だったが。俺とは4つ程離れた女だった。俺が14歳の時、あいつはまだ10歳で。お互いにまだガキだったけど。翌年のあいつの誕生日に『誕生日プレゼントにリヴァイが欲しい』とだだこねられて。どうしようもなく、我儘を言われてな。一応『初潮はきたのか?』と確認した上で『きた!』って返事だったから。俺もしょうがなく付き合ってやった」

15歳で初体験。ええええ。しかも相手が11歳。いや、まあ、いいのか? お互いに合意の上だし。

リヴァイ「ただそいつは………頭がアホだった。算数もろくに出来ないような女だった。ハンジとは正反対だけど。そいつの夢は『美容師』になることだった。腕さえ良ければ金が稼げる仕事だからと言ってな。でも、その年の12月。あいつは俺より先に亡くなってしまった」

エレン「え……11歳の若さで亡くなったんですか」

リヴァイ「そうだ。……………変質者の男に誘拐されて殺された」

エレン「!」

リヴァイ「俺は腸が煮えくり返ったよ。そしてあの時、もっとあいつの傍に居てやれば良かったと、今でも後悔している。あの時、あの日、もっとあいつに気にかけてやっていれば。事件に巻き込まれる事はなかったかもしれない。誘拐されたのは、俺と別れたすぐ後の事だったらしいからな」

なんていう重い事件だ。リヴァイ先生がやたら「送迎」してくれる理由ってまさか。

エレン「リヴァイ先生が良く『送迎』してくれるのって、もしかして」

リヴァイ「その通りだ。俺はもう、あの時のような後悔をしたくない。生徒をつい、甘やかしてしまうのもそのせいだ。危険の多い世の中だ。朝が早過ぎたり、帰りが遅くなる場合は危険に巻き込まれる可能性が一気に高くなる。車で送ってやる事でそれを未然に防げるなら安い」

エレン「……………」

リヴァイ「イザベルは、俺の髪の毛でよく遊んでいてな。髪の毛の色を変える、所謂「髪染め」の練習台に俺の髪を使っていた。金色が好きだった。だから10代の頃は金が続く限りは出来るだけ金髪にしてやった。あいつが、いなくなってからも」

うわあああ。金髪にそんな意味があったなんて。やべえ。泣けてきた。

リヴァイ「オルオ達の代の1個上にもイザベルっていう演劇部のOGがいるが、そいつはイザベルの遠縁の血筋だそうだ。顔が何処となく似ていたから、最初はびっくりしたけどな。ただ一人称が『私』だったから、別人だとすぐ分かったが」

エレン「へええええ……」

あ、そっか。そう言えばOGにも「イザベル」って名前の女の先輩いたっけな。

リヴァイ「話が大分脱線したな。つまり、今頃、その女の子もお前の行動に感謝している筈だ。だからもしもその子と再会する機会があれば、其の時は胸を張れ。お前は、その子にも命を救われたんだろ?」

エレン「…………でも」

リヴァイ「殺意を抱えるのは、人間ならあり得る事だ。俺だって、ある。それを実行に移してはいけないのは確かに『社会のルール』だが、ルールがそこに存在する事と、頭がおかしいかどうかの基準は別物だ。お前は世間から見たら基地外かもしれんが、それがどうしたっていうんだ。お前が基地外なら、俺は『異常者』だろうな。教師の癖に、こんな事言っている時点で頭がおかしいとしか思われない」

エレン「……………」

リヴァイ「それを重々承知の上であえて言おう。お前の選択は『間違っていなかった』とな。何故なら今、ここにエレンが『生きている』からだ。お前の親父さんは、お前の選択に仰天はしても、それでも無事に生きていた事に感謝しかしなかったと思うぞ。俺がもし、親の立場ならそう思うだろうな」

エレン「でも、親父にはこっぴどく叱られました。命を投げ捨てるなと」

リヴァイ「そりゃそうだろうな。でも、お前は生きて生還した。一人の女の子を救って。いや、母親も救ったなら2人か。その時、お前は自分の命を懸けたからこそ、その2人は救われた。その事実はどうあっても消えない」

エレン「受け入れても、いいんですかね。オレは……オレ自身の過去を」

リヴァイ「ああ。構わん。もう過去の事だからな。今現在の事じゃない。その時にした事はもう、どうあっても覆せない。問題はこれから先、どうするかだろ」

エレン「でも、油断すると、本気で殺しに行くかもしれない。オレ、あいつを殺すかもしれない……」

リヴァイ「其の時に、命がけで止めてくれるような友人はいないのか?」

エレン「!」

リヴァイ「もし、本当にエレンが『間違えそうになった時』に、お前を止めてくれる人はいないのかと聞いている」

其の時、思い浮かんだのは、アルミンだった。

リヴァイ「………その様子だと、思い浮かんだ『別の友人』がいるな?」

エレン「はい」

リヴァイ「だったら、そいつに『託して』おくのもいい手だろう。何も一人で抱え込む必要はない。そう言っていたのは、お前の彼女だろうが」

エレン「………はい」

ミカサ。本当にそうだな。オレ、格好つけすぎていたのかもしれない。

全部、話そう。いつか、機会を見て。話せる時が来たら。その時に。

リヴァイ「…………もう大丈夫そうだな」

エレン「はい。今日は本当に、ありがとうございました」

オレは深々と礼をした。頭を上げたら、リヴァイ先生は小さく笑っていた。

リヴァイ「これで少しは、借りを返せただろうか」

エレン「え?」

リヴァイ「俺もハンジの件ではエレンに世話になりっぱなしだったからな。これで少しは、其の時の事を返せたかと思ってな」

エレン「十分です。むしろお釣りがくるくらいですよ」

リヴァイ「そうか。だったら今度はまた、こちらから甘えるとしよう」

と、調子のいい笑みを浮かべている。

エレン「いつでもいいですよ。オレ、大分恋愛に耐性がついてきましたからね」

リヴァイ「その様子だと、もうヤッたのか?」

エレン「それはまだですけど……」

リヴァイ「ほほう? 意外と慎重派だな。今度、体位のテクニックの参考本を貸してやろう」

エレン「ええええ?! いいんですか?!」

棚からぼた餅キタああああああ!!!

リヴァイ「最初はいろいろ苦労するかもしれんからな。まあ、参考程度に目を通した方がいいだろう」

エレン「あの、特別授業はやらないんですか?」

リヴァイ「やってもいいが、もしバレたらハンジに殺されそうな気がするので、第3回目は出来ればやりたくはないんだが……」

エレン「そこを何とか! お願いします!!」

リヴァイ「やれやれ。次で最後にするか。バレないように箝口令、しいておけよ」

エレン「あざーっす!!!」

という訳でオレとリヴァイ先生は相談を終えてから音楽室に戻った。

涙の跡も隠さないままで。すると、皆が一斉にオレを心配してくれた。

アルミン「エレン!!! お腹、大丈夫だった?」

エレン「え? ああ……出しちまえば問題ねえよ」

アルミン「ミカサから聞いたよ。急性の下痢だって。なんか変なものを食べたの? 売店とかで」

エレン「あー牛乳でもあたったのかな? 最近、飲み過ぎたのかもな」

アルミン「あー飲み過ぎるとダメていうよね。僕も気をつけよー」

と、和やかなムードで皆に「下痢大丈夫かー?」と心配されたのだった。

そして、ミカサが最後にこっちに近寄って様子を伺う。

ミカサ「…………と、いう事にしておいたので」

エレン「サンキュ。さすが気の利くオレの彼女だ」

ミカサ「本当の事、まだ言えない?」

エレン「後でな。今は部活だから。時間みつけて話すから。必ず」

ミカサ「…………うん」

ミカサも少し安心した様だ。これでこっちも安心だ。

そして皆で練習を再開。リヴァイ先生もチェックしている。

リヴァイ「あー俺ってそんなにいつも眉間に皺寄っているのか?」

ミカサ「大体こんな感じですが(キリッ)」

リヴァイ「そうか……」

アルミン「結構、ミカサの物真似は似ていますよ。かなり正確にトレース出来ていると思いますが」

リヴァイ「いや、まあそうなんだろうな。何か自分を客観的に見るのって変な感触だなと改めて思っただけだ」

ミカサ「背丈は違いますけど。そこは脳内で修正してください」

リヴァイ「うぐっ……(青ざめ)」

ミカサのリヴァイ先生いびりも健在だ。可哀想だけどもう、前ほど気にはならない。

そして休憩時間、ジャンがこっちにやってきた。

ジャン「………大丈夫か?」

エレン「ああ。便所の後、ちょっとリヴァイ先生と話した。大分すっきりしたよ」

ジャン「そうか……」

エレン「悪かったな。さっきは。空気悪くして」

ジャン「いや……オレもさっきのエレンを見て、目が覚めたよ。オレ、結構最低な事をしていたんだなって」

エレン「……………」

ジャン「オレには出来ねえな。いくら何でも、浮気相手を本気で「殺す」なんて。お前、あの時、結構マジで言っただろ」

エレン「ああ。マジだけど。何か?」

ジャン「オレはそこまでミカサを愛せる自信はねえ。自分が殺人者になってまで、ミカサの傍にいようとは思わねえよ」

と言ってジャンが天井を仰いだ。

ジャン「…………完敗だ。冗談でも口には出せねえ時点で、オレのミカサへの愛情はエレンより『薄い』んだって思った。もうやめるよ。必要以上にお前らに嫉妬するのは」

エレン「それはミカサから手を引くと受け取っていいのか」

ジャン「ああ。そう捉えて貰って構わん。オレももう一人の相手の事を真剣に考えてみるよ」

とジャンの方も方針が固まったようだ。それなら良かった。

エレン「それはミカサへの恋慕より、オレとの友情を取るって事だよな」

ジャン「はあ? (青ざめ)」

エレン「だってそうだろ? そう受け取っていいんだよな? (ニヤニヤ)」

ジャン「か……勘違いするんじゃねえよ!!! 誰が、お前との友情を取るか!!! オレはあくまで、ミカサを彼女にするのを諦めるだけで、ミカサの味方でいる事は変わりねえんだからな! 何か困った事あったらすぐ駆けつけるし!?」

エレン「その必要はねえよ。オレがミカサの傍に居ればその必要はねえ」

ジャン「か、かもしれんが……そんなの分からんだろうが! ほら、手伸ばして荷物取って欲しいとか?!」

エレン「その時はオレがミカサの上に乗って取ればいい」

ジャン「逆だろ普通それは?!」

エレン「オレの方が体重軽いからな。なあミカサ」

ミカサ「呼んだ?」

ジャン「うぐ……じゃあオレ、本当に出番無しか……」

ミカサ「何の話?」

エレン「ジャンはもう、ミカサの事を諦めて、もう一人の相手との事を真剣に考えてみるって話」

ジャン「?! エレン、いきなりバラすなよ!!!!」

ミカサ「それ本当?! ジャン!! (ぱあああ)」

ジャン「え、まあ……うん。すまん。気持ちが固まった」

ミカサ「それは良い事! だったら私もそれを応援する!」

ジャン「ええええ(青ざめ)」

ミカサ「陰ながらだけど。ジャンとサシャがくっついたら、手料理を振る舞ってお祝いしてもいい!」

ジャン(ミカサの手料理食えるのか)

エレン「ジャン、今、邪な事考えたな? (ジロリ)」

ジャン「いやいやいや!? 考えてねえよ? ぜんぜーん考えてねえよ?!」

エレン「ほー。本当か? 今、『ミカサの手料理食えるのか』って思った癖に」

ジャン「何故バレたし」

エレン「お前もオレと同じで『顔』に出やすいんだよ。心の中がな!」

ジャン「うぐ……!」

ミカサ「え? では、嘘なの? ジャン、嘘をついたの?」

ジャン「嘘じゃねえよ! その、ミカサの事を諦めるのは本当だ。その……サシャの事をこれから考えてみるのも、本当だし」

ミカサ「本当? 嘘ついたら、私、許さないけど<●><●>じーっ」

キタああああああ! ミカサのビックアイズ!

<●><●>に見つめられるとこっちは何も出来ねええええ!

ジャン「絶対嘘じゃない!! 本当!! もうサシャ一本に絞るから!!! 今まで、本当にごめん。不快な思いをさせて……」

ミカサ「なら良かった。(ニコッ)」

ジャン(うううう……)

エレン「ジャン、嘘ついたらコニーのケツバットの相手100本な」

ジャン「多すぎるだろうが!!」

ミカサ「1000本でもいいと思う(キリッ)」

ジャン「あれ?! 意外とミカサってドSなのか?!」

ミカサ「何を今更……ククク……(黒笑顔)」

アニ「本当、今頃気づいたの? (黒笑顔)」

もう一人のドS女王様キター! とか言ったら怒られるから言わない。

2人が女王様やってくれるなら、ちょっとくらいなら鞭で打たれてもいいけどな。

……あれ? オレ、ちょっとМっ気あるんかな? ん?

ジャン「OH……何か意外な側面を知ったぜ」

エレン「普段は優しいからな。怒らせると怖いぞ。アルミンもそうだしな」

アルミン「ん? 呼んだ?」

エレン「いや、優しい人間ほど、怒らせると怖えなって話」

アルミン「そうかもね。反動がくるんじゃない? ジャン、知らなかったの?」

ジャン「ああ。そうかもしれないな。いや、そこはそこで可愛いけど………」

ミカサ「コニーに電話してみようか」

アニ「そうしよう(スマホ構える)」

ジャン「すんませんでしたああああ!!!(速攻土下座)」

と、ジャンが折れて音楽室は爆笑した。

リヴァイ先生も大体察して苦笑いだ。これで一応の決着はついたかな。

これから先、ジャンがサシャとどうなるかは分からんが。まあ、それはそれで。

其の時になってから考えればいい。そう思いながら、オレは腕を組んで笑っていたのだった。

結果的にジャンはミカサへの恋慕よりエレンとの友情(?)を取りました。
という訳で、ジャン→サシャルート確定です。お待たせしてすまんね!

リヴァイ先生とエレンの会話のところ、重いけどすんません。
でもアレがないと、どうしても書けない部分が出て来たのであえて出しました。

それではまた続きは次回ノシ

エレンとミカサの過去の答え合わせもドキドキだな

>>432
答え合わせのシーンはもうちょい先になります。
ドキドキしてお待ち下さい。






部活が終わってからその日の夜のうちにオレは自分の部屋にミカサを招き入れて、今日の事をかいつまんで話した。

勿論、オレの幼い時の過去の件はまだちょっと横に置いて、まずはマルコに突っ込まれた事と、そのおかげで本当の自分の気持ちに気づいた事を先に話した。

そしてジャンには「手出したら殺すぞ」と脅した事。その結果、ジャンの方も引き下がる覚悟が出来た事。今後はサシャの件について真剣に考えてみるという結論が出た事。

それを一通り話してしまうと、ミカサが急にボロボロ泣き出してしまい、オレがオロオロする羽目になった。

エレン「何で泣く?!」

ミカサ「だって……嬉しい………」

エレン「え?」

ミカサ「エレンが、そこまで私を想っていたなんて、思わなかった。嬉しい……」

そ、そういうもんなのか。ドン引きしてねえな。むしろ歓迎されてしまった。

ミカサ「エレンの本当の気持ちが聞けて良かった。私、ずっと分からなかったの」

エレン「え?」

ミカサ「エレンが何となく感情を『抑えて』いるのは伝わっていたけど。それがどこまでの物かは分からなかった。エレンはジタバタする自分を嫌だと思うかもしれないけど。私は、エレンの泥臭い部分も含めて好きなの」

や、やばい。なんか今、胸の中に矢がトスッと刺さったような感覚が来た。

ミカサに恋の矢を射ぬかれたような感覚だ。身体が熱くなってくる。

ミカサ「エレンがリヴァイ先生の件を嫉妬した時もそうだった。あの時、私の体に電流が奔る様な感覚があって……体が一瞬で濡れてしまった。許されるならあのまま、あの場所で、エレンと繋がりたいとさえ思った」

え……………そ、そうだったのか。

オレもそう思っていたけど。何だよ。ミカサの方も結構、その気になっていたのか。

いや、でもダメだろ。体育館でやったらいかんいかん。

あの時は抑えて『正解』だった。じゃねえとリヴァイ先生にエッチをガン見されるところだったぞ。

ミカサ「だから本当は………たまにはヤキモチ妬いてくれるのも悪くないと思ったけれど。でも、アレ以来、あの時のような激しさを表に出来るだけ出さないようにしているエレンに対して少し寂しさを覚えていたの。だから、その……」

やばい。もう息子がビンビンに反応してきた。

オレ、その場で我慢出来なくてミカサをそのまま布団の上に押し倒してしまった。

エレン「………………ごめんな」

耳元で謝った。出来るだけ優しく声で。

ミカサ「ううん。いいの。私は初デートの時も、嬉しかった。電話でのエッチも嬉しかった。エレンがたまに見せる、エッチな顔と声をもっと見せて欲しい」

エレン「オレ、そんなにエッチな顔していたか?」

自覚ないんだが。

ミカサ「うん。急に雰囲気がガラリと変わる瞬間が、ある。その時のエレン、物凄くセクシーになる」

セクシー言われた!? マジか!?

ミカサ「普段の優しい大人っぽいエレンも好きだけど。子供っぽくなる瞬間も、好き。だからお願い。もっと、エレンを私に良く見せて……」

オレはもう、我慢出来なかった。ミカサにキスをして、キスをして、キスをした。

髪の毛とか乱暴に掴んで、胸や尻も服の上から乱暴に触った。

本当は優しくしてやりたかったけど。リヴァイ先生の言うようなスローを試すべきなんだろうけど。

今のオレにそれは無理だった。ミカサの匂いとか、汗が誘惑して、頭を焼いていく。

ミカサ「ん………ああっ」

あ、でも今日は確か生理初日だった筈だ。だからあそこには触れない。

やれるとすれば体を散々触るだけだ。一つには繋がれないんだった。

それでもいいか。オレはミカサの乳首を服の上から散々弄って、みた。

ミカサ「あっ……! んぐ!」

まずい。家の中だからあまり大きい声はまずい。

オレはとりあえずタオルを噛ませた。これで声を殺して貰うしかない。

ミカサ「ん…………」

声が大分小さくなった。でもミカサが凄く辛そうだ。

前ボタンを外して下着をめくった。夜だからブラジャーはしていない。

胸がすぐに出迎えた。豊満な2つの乳房がオレの目の前にある。

躊躇いなく、口に含んだ。まずはミカサの左胸の乳首を。

ミカサ「………! ……!」

声が出ない状態で喘いでいるのがエロ過ぎた。

声聞きたいけど。これはこれでいいかもしれない。

ああ。触りたい。ミカサのあそこに触ってみたい。

でも、今触ったら手に『血』がついりまうし、衛生的に良くねえよな。多分。

………と、其の時、オレの中の悪魔が囁いた。

悪魔エレン『ビニール手袋、使って触れば?』

というとんでもないアイデアをぶっこんできて、オレの中で混乱が起きた。

天使エレン『いや、生理の時は無理だろ。触っていいものじゃねえだろ?』

悪魔エレン『ビニール使えばバイキンは入らないんじゃねえの? 台所になかったか? 調理用に使い捨てのビニール手袋』

天使エレン『いや、あるけどさ。わざわざ一回、下に降りるのか?』

悪魔エレン『それは仕方ないだろ。いいじゃねえか。ミカサをイカせてやれば』

天使エレン『えええ……』

悪魔エレン『胸だけでもイケるかもしれんが。本当はあそこを触りたいだろ?』

天使エレン『生理じゃないならな』

悪魔エレン『いや、血も見てみたいんじゃないか? 指で触ってみたくねえの?』

天使エレン『引くだろ。それ………』

悪魔エレン『ミカサに聞いてみろよ。我儘聞いてくれるかもしれんぞ?』

仕方がない。一応、聞いてみるか。

エレン「ミカサ」

ミカサ「?」

エレン「今日は生理初日だったよな」

ミカサ(こくり)

エレン「だったら、下は触らない方がいいか? 触っちゃダメだよな」

多分、頷くよな。そう思っていたのに。

ミカサ(フルフル)

エレン「え?」

ミカサ(こくり)

エレン「い、いいのか?」

ミカサ(こくこく)

エレン「でも、血、つくし、衛生的には良くないんじゃ」

ミカサ(↓を指さしている。手の甲をトントン叩く)

エレン「調理用のビニール手袋、使っていいのか?」

ミカサ(こくり)

ミカサの許可が出ちまった。嘘だろ。そんな事まで許容してくれるのかよ。

エレン「だ、大丈夫なのか? 本当に」

ミカサ(こくこく)

エレン「………分かった。じゃあちょっと取ってくる」

こっそり台所の道具を持って来て、ビニールを装着した。

変態プレイですんません。というか、今日は眠いのでここまで。
次回またノシ

ビニール手袋越しだけどパンツの中に手を突っ込んでミカサのそこにそっと触れてみる。

でも思ったほど血液がついてこなかった。奥の方まで指を入れてみたら、やっと少しだけ赤い色がついた。

うお……こんな感じなのか。匂い嗅いでいいかな。

エレン「嗅いでみていいか?」

ミカサ「…………」

エレン「あ、ダメならやめておくから」

ミカサは一瞬、目を逸らし、迷ったようだが、小さく頷いた。

うおおおおお今の恥じらいなんだ?! くそ……エロい。くそエロい。

ビニール手袋で掬ったその微かな『赤色』にオレは鼻を近づけた。

うーん。匂いは思った程しないな。微かにツンとした匂いがあるだけだ。

舐めるのは………さすがに止めておこう。そこまでいくとリヴァイ先生より変態な気がする。

既にどっこいという説は棚に上げて、オレはミカサへの愛撫を再開した。

ぐちゅぐちゅ………ぐちゅぐちゅ…

ミカサの反応がいい。さっきからビクンビクンと体が跳ねて、感じている。

そんなに「ここ」が気持ちいいのかな。ぬるぬるして滑りがいいけど。

ミカサ「ん………!」

もうやべえ! パンツ降ろしていいよな?

ズボンとパンツを降ろしてみた。おおお。ミカサのあそこをガン見する。

ひくついていた。脈動がエロ過ぎてますます興奮する。

タオルを1枚、部屋の中から持って来てミカサの尻の下に敷いた。

続けてあそこを弄っていたら、血液と混ざったような感じで透明な液体も流れ出た。

生理のそれは、怪我をした時に流れる様なサラサラとした血液ではないようだ。

結構粘っこい感じで、色も濃い。ブルーベリーの色に近いかもしれない。

量は大した事ないけど。今日は初日だからかな。2日目だったらもっと一杯見れたかもしれない。

ミカサが時々『2日目が1番ブルー』と言っているので多分、そういう事なんだと思うが。

でも生理の時は繋がれないんだよな。確か生理中はもう厳密に言えば『危険日』の期間に突入するらしいから。

勿論、%からみれば大した確率じゃないんだろうけど。

だからその時のオレは、悪魔が更に暴走して………

悪魔エレン『尻の穴も触ったらどうだ?』

天使エレン『?! お前、何言っちゃってるんだ?! アホか?!』

悪魔エレン『アホなのはお前だろ。今日はそっちが使えないんだから、代わりに尻の穴使えばいいじゃねえか』

天使エレン『このド変態が!! まだちゃんとした奴もやってないのにいきなりそっちいく馬鹿がいるか!!!』

悪魔エレン『出来なくはないだろ? ほら、ミカサの反応を見ながらやってみればいいじゃねえか』


ミカサを喘がせたいんだろ……?


オレの中の理性がどんどん怪しくなっていくのが分かった。

オレはぬめりを利用して、後ろの方にも手を伸ばした。

ミカサ「んん……?!」

ミカサが困惑したのが分かった。まさかそっちに触れられるとは思わなかったんだろうな。

ミカサ「んんー……ん……ん……ん……」

そろそろと、入り口のあたりだけ触ってみたら、アレ? 意外と嫌がらない。

エレン「ミカサ………こっちの穴にも指入れていいか?」

ミカサ「……………」

あ、迷っている。でも目が凄く熱っぽい。

一度静かに目を閉じて、強い頷きが返ってきた。マジか!!!

もうミカサ、どんだけ許容してくれるんだよ。こっちが怖いくらいだ。

でも、頷かれた瞬間、オレのやる気も弾けた。指を第一関節の辺りまで押し込んでみる。

ミカサ「んんんー………ん………ん…………」

うお……ミカサの体の反応が一気に変わった。顔の赤みも増えて色気倍増だ。

もうちょっとだけ奥まで突っ込んでみるか。あんまり性急にはしちゃいけないけど。

後ろの穴も責めながらオレはミカサの乳首も同時に口で責めてみた。

するとミカサがもっと暴れるようになってしまって、それを押さえつけるのが大変だった。

ミカサ「んんんー!………ん!………ん!…………」

あ、1回強いバウンドがきた。オレの下で足掻いていたけど、くたっと力が抜けて目を閉じてしまった。

スースースー………

動かない。これは寝落ちたかな。

エレン「ミカサー?」

ダメだ。反応がねえ。完全に堕ちたな。

エレン「………………」

っていうか。

終わってから我に返った。

エレン「オレって、相当のド変態じゃねえか?」

我に返ってから脂汗が出てきた。

生理中の女の血液見たり嗅いだり挙句、尻の方にも指突っ込んだり。

まだ、最後までヤッてないんだぞ。なのにもうこんなところまで来てしまった。

ああああもう、やっぱり自分が恐ろしい! 調子に乗る自分が1番こえええええ!!!

と思いつつも自分の息子は正直なので、今のうちに処理する事にした。

今日はもうここまででいいや。明日は日曜日で休みだけど。午後から部活あるしな。

ミカサはこのままここで寝かせよう。一緒に寝よう。

オレは自分の処理を済ませた後、ミカサの衣服の乱れを元に戻した。

で、ミカサを抱き枕にして寝る。あー香りがいい。汗の匂い最高。

あんまり嗅ぐとまたムラムラするから自重するけど。

ミカサの体温に包まれながら、オレは心地よい眠りに誘われた。

そして両目を静かに閉じて、そのまま一気に眠りについたのだった…。










12月7日。日曜日。午後の部活の時に3年の先輩達が来ていた。

アルミンがペトラ先輩にエキストラの件を話していて、なんと3年の男子も『女装』して女役をやってやると言い出してくれて爆笑した。

アルミン「いいんですか?! 本当に」

オルオ「ああ? 人数がいた方がより臨場感が出るだろ。野太い声が多少混ざっても別にいいだろ」

ペトラ「まあそこはコメディっぽくなるけど、いいんじゃない?」

エルド「出来るだけ黄色い声を出せるように頑張るさ」

という訳でエキストラの件は順調に集まっているようだった。

ニファ先輩も今日はこっちに来ていた。そしてオレの方に話しかけて来て、

ニファ「エレン君。夏の時のお礼、まだしてなかったよね。これ、良かったら貰って」

と、ニファ先輩に手渡されたのはのとあるホテルのバイキングのチケットだった。

ニファ「男の子だし、何が好きか分からなかったけど」

エレン「うおおおおいいんですか?!」

ニファ「彼女と一緒にデートしてきたら?」

エレン「うわーありがとうございますー」

と、そのチケットを受け取ろうとしたら、音楽室に居たサシャが目ざとくこっちを見た。

サシャ「あ、そこのホテルのバイキング、超美味いですよね!! 私も行った事ありますよ!」

エレン「そうなのか」

サシャ「味は保証します! というか、私も行きたいくらいです。ぐへへへ……(涎)」

エレン「これ、最大で4人までいけるんですね」

ニファ「家族で行く事を想定した招待券だから。ペアのと迷ったけど。どうせなら人数多い方がいいかと思って」

エレン「そうですね。確かにー……」

其の時、ピンときたので、オレは思い切って誘ってみる事にした。

エレン「ミカサ。バイキングにサシャも誘っていいか?」

ミカサ「ん?」

エレン「最大で4人までいけるそうだ。サシャと、あとジャンも」

ミカサ「うん。いいと思う(キリッ)」

エレン「じゃあ、誘ってみるか」

という訳でオレがバイキングの件をジャンに誘ってみると、

ジャン「え? 4人でバイキングに行くのか?」

エレン「何だよ。ダメなのか?」

ジャン「いや、ダメじゃないが、いいのか?」

エレン「何、遠慮しているんだよ。サシャも行くんだぞ」

ジャン「いやーまあ、気遣いは有難いが、お前らの邪魔にならないのか?」

エレン「ミカサはいいって言ってたから大丈夫じゃねえか?」

ジャン「そうか……」

ん? なんか思っていたより食いつかないな。どうしたんだろ。

エレン「何か都合が悪いのか?」

ジャン「いや、そうじゃねえけど」

エレン「じゃあ何だよ」

ジャン「……………まさか、お前らがそこまで協力してくれるとは思ってもみなかった」

エレン「たまたまだよ。ニファ先輩からチケット貰ったんだ。だから有効活用しねえとなと思ってな。お前らが行かないならアルミンとアニ誘うけど」

ジャン「いや、行く。行かせて貰う。いつ行くんだ?」

エレン「今日の部活終わってからでいいんじゃねえか? バイキングだし」

ジャン「ディナーだな。分かった。楽しみにしておく」

と、ちょっとだけ機嫌が良くなってジャンが了承した。

その様子をアルミンとアニとマルコがニヤニヤして見ている。

アルミン「いいねー。丁度良かったね。ヘタレなジャンにはいきなり2人きりとか無理そうだし」

エレン「悪いな。いつもだったらアルミンを誘うんだけど」

アルミン「いいって! 僕達の事は気にしないで! …………尾行はしたいけど」

アニ「うん。こっそりついていっていい?」

マルコ「僕らは自腹で食べに行けばいいしね」

ミカサ「一緒に来るの? では皆で行けば……」

アニ「いや! 私達は遠くで見守るだけにするよ。その方が面白いし」

アルミン「だよね。いいよね? マルコ」

マルコ「そういうのは大好きだから」

おおお。なんかそんな感じで話がまとまってしまった。

ホテルの場所をアルミン達にも教えておいて、今日の部活の後、夜出かける事になった。

一応、一度家に帰ってから着替えてからまた集合する段取りになり、オレとミカサは私服に着替えて駅の前でジャンとサシャを待った。

ジャンは気合の入った格好、という訳ではなく、普通の格好だった。

ミカサとの勉強会をした時のスーツではない。カジュアルな感じのジャケットとズボン姿だった。

サシャはバイキングの時は勝負ワンピースだと言っていたので、ミスコンの時の衣装を本当に着ていた。上着には茶色の長いコートを着ている。

オレはウニクロで買ったダウンジャケットにズボンだ。もう12月だし。夜は外だとそれなりに寒くなる。

ミカサもオレと似たような格好だった。今日はグループデートみたいな感じだからそこまで衣装に気合を入れていない。

ジャン「………サシャ、寒くねえのか?」

サシャ「大丈夫ですよ。上からコート着ていますし」

ジャン「いや、でも結構、ぴらぴらした格好してんなと思ってな」

サシャ「バイキングですからね。こっちも気合入れてかからないと(じゅるり)」

という訳で気合十分のサシャを引き連れて駅から移動してホテルのバイキングへ突入だ。

時刻は夜の7:00。夜9時までがディナーバイキングの制限時間だった。

サシャ「2時間以内にいかに効率よく良い獲物を狩るかがポイントですよ(ブツブツ)」

サシャの目がやべえええ。授業の3倍真剣な目になってやがる。

ミカサは生理2日目だから今日はテンションがちょい低めだ。でも『大丈夫』と言っていたから、無理させない程度につき合わせよう。

そんな訳でホテルの中に入ると、結構家族連れのお客さんが多かった。

勿論、カップルもいる。女性の方がやや多い感じだが、男性もそれなりに居た。

おおお。どれも美味そうだな。どれから行こうかな。

ジャンは野菜から行っていた。こいつ、その辺のMYルールは崩さない性質らしい。

ミカサも控えめに野菜を取って肉とかも取っていた。

オレも勿論、野菜を取って、後はカレーとか、麺類とか。そんな感じにした。

たらこスパゲティが美味そうだったからだ。あとたこ焼きとかもあったんでそれも貰う。

サシャの取り方はオレ達と全然違った。全ての料理を少しずつ皿にのせている。

日本料理の小鉢みたいなのも利用しながらとにかく少量を全種類確保していた。

ジャン「えらい一杯取って来たな。しかも少しずつかよ」

サシャ「まずは味見です。全種類行きます。その中で美味しかった料理をリピートするんですよ」

エレン「へー。そんな食べ方もあるのか」

サシャ「料理には必ず当たりと外れがありますからね。あと絶対やってはいけないのは『最初に腹にたまるものを大量に取る』ことです。炭水化物は絶対厳禁なので、エレンのようにカレーと麺類は先に食べません」

エレン「マジか! そこまで計算に入れるのかよ!」

サシャ「はい。おにぎりとかもダメですね。勿論、一口程度なら構いませんが。あくまでそれは腹の要求を一旦、落ち着かせる為にやる行為です。一気に行ってはいけません」

サシャのバイキング理論がガチですげえ。歴戦の戦士みたいだな。

サシャ「あと、食べ放題だからと言って汚く皿に盛るのは厳禁です。皿は替えてもいいので、美しく盛り付けてから食べた方が断然、美味しさに差が出ます。見た目も大事なんですよ」

と、言っている。確かにサシャの盛り付け方はオレ達のより綺麗だった。

ジャンも綺麗な方ではあるんだが。サシャのこだわりはもう、料理人のそれだった。

サシャ「理想は野菜→肉→炭水化物ではあるんですが、気分によっては肉→野菜→炭水化物でも構いません。その辺は臨機応変に対処します。肉を先に確保しないと、他のお客さんに先に取られてしまう事も多々ありますからね。あと、この手のホテルはバイキング開始から30分くらいしたら、追加メニューが絶対くるので、そこも見逃したらいけません。新メニューはいつの間にか出している事があるので、そこもポイントですよ」

と、サシャのバイキングにかける情熱はまだまだ続く。

ジャンがもう呆れ返っている。嫌な感じではないんだが。コメントしづらいようだ。

サシャ「では、そろそろ頂きます!」

と、手を合わせて皆で頂きます。うん。うめえ!

ミカサ「美味しい……スープが美味しい」

エレン「そうか? 一口くれ」

ミカサ「ん」

と、ミカサの取ったコンソメスープを頂いてみる。

エレン「本当だ。うめえな! なんかファミレスとかの味が全然違う」

ミカサ「これは再現してみたい味。レシピが欲しいくらい」

サシャ「ですよね! ここのホテルの料理、毎回レベル高いんですよ!」

と、ニコニコしながら食べている。……え?

エレン「おい、サシャ! もう小皿全部制覇したんか?!」

開始10分も経たないうちに全部の味見を完了させたようだ。

サシャ「タイムイズマネーですから! 2ラウンド目行ってきます! (しゅぱー!)」

はえええええ! 行動的にも程があるだろ!!

そんなサシャの様子をジャンは複雑そうな顔をして見ている。

ジャン「オレ、あいつの何処が好きなんだろ……」

いかん。ジャンの気持ちが揺らいでやがる。女の本性を見て引いてやがる。

エレン「まあ、その、サシャはいつも元気だからな! そこがいいところだろ!」

ジャン「それはそうだが。まあ、いいけどな。予想はしていたし」

エレン「だろ?! サシャがバイキング好きなのは、個性みたいなもんだろ」

ジャン「だけど、エンゲル係数高そうだよな。あいつの旦那になる奴は、そっちの経費で泣くんじゃねえか?」

ジャンの先心配が始まった。そこを気にしちゃダメだろ!

ミカサ「サシャはサシャできっと稼ぐ。問題ない」

ジャン「まあそうなんだろうけど。しかしあれだけ食っても太らないってある意味すげえよな。あいつの体の構造、どうなっているんだか」

ミカサ「新陳代謝が激しい人はそうなるらしいという説を聞いた事がある。背中にそういう『細胞』があって、そこでエネルギーを消費しているそう」

エレン「へー。背中にあるのか」

ミカサ「昔、テレビでそんな事を言っているのを見た事がある。あくまで『仮説』だけど」

エレン「いや、あるのかもしれねえぞ。サシャにもその『細胞』が。じゃねえとあれだけの量を食ってもあの体型は維持出来ねえよ」

ジャン「まあ、そうだろうな。恐らく」

と、ジャンは落ち着いてコーヒーを飲んでいたが………

ジャン「ミカサ、お前体調大丈夫なのか?」

ミカサ「ん? 大丈夫」

ジャン「いや、なんかあんまり食が進んでないような気がするんだが」

ミカサ「そうだろうか?」

今日は生理2日目だしな。ミカサは本調子ではない。

エレン「悪い。ジャン、オレ達は先に抜けるかもしれんけど、いいか?」

ジャン「え……何で」

エレン「まあ、その、察してくれ。女にはそういう時もあるんだよ」

ジャン「え……じゃあまさか、無理して来てくれたのか?」

ミカサ「無理ではない。ただいつもよりはテンションが低いだけ」

ジャン「だったら何も、今日でなくでも良かったのに……」

と、ジャンが心配そうにミカサを見ている。

ジャン「気持ちは嬉しいけどさ。ミカサを無理させんなよ。エレン……」

ミカサ「無理ではない。それに私もバイキングは嫌いではないので」

エレン「招待券の期限の関係もあるんだよ。あと舞台直前は忙しいだろ。行くんだったら今日がいいかなと思ったんだよ」

期末テストも後に控えているしな。思い立ったら吉日ってよく言うだろ?

ミカサ「ジャン。これは別に病気ではないので。必要以上に気遣う必要はない」

と、ミカサも言っている。

ミカサ「それに本当に無理だったら、私の代わりにアルミンが来てくれたと思う」

ジャン「そのアルミンだが……向こうの奥の席にいるよな?」

ギクッ……

全員、変装してくるって言ってたのに。もうバレたか。

ジャン「あの女装した女、絶対アルミンだよな。マルコもアニもいるし。こっちチラチラ見ているし。あいつらも~」

と、ちょっと困惑しているジャンだった。

エレン「み、皆、気になっているんだよ。ジャンの恋の行方をな!」

ジャン「自分が野次馬するのはいいが、される側は微妙だな」

ミカサ「それは分かるけど」

ジャン「はー……皆が見ているなら今日は何も出来ねえな。気持ちは有難いが。今日は普通にサシャと飯食って送って帰るわ」

エレン「あ、やっぱり?」

ジャン「当たり前だろ。何で見せなきゃなんねえんだよ。まあ、進展があったら報告はしてやってもいいが。とりあえず今は現状維持するしかねえだろ」

と、相変わらずの慎重派の意見だった。

これがこいつのいいところでもあり、悪いところでもあるんだけどな。

そんな訳でサシャが1番ノリノリで飯を食って、オレ達はのんびりバイキングを楽しんだ。

ミカサの体調を気遣いながらその日のバイキングは結局、9時まで残る事になった。

時間ギリギリまで楽しんで、サシャは「ミッション完了!」と叫んでいた。

サシャ「最高でした……今日は本当に誘って下さってありがとうございます!」

エレン「いや、こっちも誘った甲斐があったからいいぜ」

サシャ「もしまた、機会があれば、4人で是非。今度はバイキングでなくても、ただの遊びでも構いませんので」

エレン「おう。もちろんいいぞ」

その瞬間、ジャンの顔がちょっとだけ赤くなった。

『4人で』とサシャの方から言い出したのが意外だったみたいだ。

サシャはジャンが送っていくらしい。手を振って別れた。

オレとミカサはジャンとサシャと別れてから、歩きながら少し話す。

エレン「大丈夫だったか?」

ミカサ「うん。平気」

エレン「無理させちまったか?」

ミカサ「多少フラフラするのは毎月のことなので慣れている。そんなものなので」

エレン「そうなのか。女って大変なんだな」

ミカサ「それにこれでも以前よりは楽になった方。エレンのおかげ」

エレン「そ、そっか……」

そう言われるとこそばゆいな。

ミカサ「ジャンとの関係が破綻しなくて良かった。こうやってたまに一緒に4人で居られれば、それが1番理想的だと思う」

エレン「そうか」

ミカサ「うん。本当にほっとした。ジャンの気持ちは有難いけど。応えられない想いをずっと向けられるのは正直、しんどいと思う事もあった。ジャンの事は、嫌いではないので」

ミカサは根っこの部分がやはり優しいんだな。

だからこそ、嫌うと極端に壁を作っちまうんだろう。その反動が大きいんだ。

オレはミカサと手を握って一緒に帰った。今日はさすがにミカサの体調の事があるから手出さない。

そういう日もある。そういう日々を重ねながら、オレ達は1歩ずつ進んでいけたらいい。

そう思いながらオレはミカサと一緒に微笑んでいたのだった。

今回はここまで。続きはまたノシ

さっそくバイキングチケット使ったのか
クリスマスダブルデートするのかと思った

>>453
クリスマスは冬公演の準備でバタバタするのでお出かけは無理でした。
ジャンもまだ、今はサシャとの距離を慎重に考えている段階ですので。

最初から生理プレイ&尻とかレベルたけえ!
さすがエレンさん、俺たちにできないことを…くそ…うらやましい…

>>455
エレンというより、恐らくミカサがレベル高いんだと思われます。







12月15、16、17日は期末テストだ。22日が終業式になり、その後は冬休みに入る。

今回は早い段階からコツコツ勉強を進めていたので中間よりも感触が良かった。

20日には結果が出て、その日にオレは自分の成績表に目を広げる事になる。

エレン「え……クラス順位が7位?! めっちゃ上がってる!」

クラスは35人なので、その中で7位というのはいい方だ。

中間テストの時は15位だったので、一気に8ランクアップだ。

エレン「おおお……数学はあんまり変わってないけど他ので点数良かったのか」

嬉しいな。成果が出るのは。勉強した甲斐があったぜ。

総合成績は350人中70位。100番前後から一気に2桁まで上がった。

アルミン「おお。エレン、成績上がったんだ。良かったね!」

エレン「おお……自分でもびっくりだ。こんなに一気に上がるとは思わなかった」

ミカサ「うーん。私は少し下がってしまった」

エレン「どれくらい?」

ミカサ「クラス順位は2位。総合も同じ。アルミンに負けた」

アルミン「いえーい♪ 初の単独首席だよ。ちょっと嬉しいね」

そういえば今まで「同点」だったんだよな。ミカサとアルミン。

今回初めて差がついたのか。ミカサ、悔しそうだな。

ミカサ「計算は合っていたのに。書き間違えている。自分のドジっぷりに凹む」

エレン「あ……そうなのか?」

ミカサ「たまにやらかす。計算や考え方は合っていて、それを解答欄に写し書く時に間違える」

エレン「勿体ねー」

ミカサってたまにドジっ子なんだよな。まあ、そこが可愛いんだけど。

アルミン「ふふふ……集中力が切れると最後そうなるよね。マルコは何位だったー?」

マルコ「クラス順位は3位。総合で5位だね。まあまあかな」

エレン「おおお。さすが特待生組はレベルが違うな」

マルコ「エレン、成績上がったんだって? 勉強の本腰入れたのかな?」

エレン「まあ、以前よりはな。ゲームする時間を減らしたし、ミカサにも教えて貰ってる」

ジャン「く……」

ジャンがこっち見て嫉妬している。ん? どうしたんだ?」

ジャン「エレンに負けるとは……くそおおお」

エレン「何位だよ」

ジャン「8位だった。総合では80位だ。今回は結構、頑張ったんだがな」

エレン「100位以内に入れたなら上等じゃねえか? 悪くはねえだろ」

ジャン「てめえに負けるのが嫌なんだよ!」

ライバル心を持たれてしまったようだ。まあ、オレもジャンには負けたくねえけど。

アニ「ふーん。成績上がったんだ。エレン」

エレン「まあな。アニはどうだった?」

アニ「私はクラス順位6位。エレンに勝ったよ。総合は60位だね」

エレン「じゃあ次はアニを目標にしねえとな。絶対勝ってやる」

アニ「ふーん。負けたら、タキシード仮面の格好してバラ投げてくれるなら勝負を受けてもいいよ」

エレン「何だその変な罰ゲームは?! 変態じゃねえか?!」

アニ「今、セーラームーンのリメイク版を観ていてね。ついつい」

エレン「くー……なんか急に勝てる気がしなくなってきた」

勝負はしねえ方がいいかな。この場合は。変態仮面はちょっと遠慮したい。

ミカサ「タキシード仮面様………(ドキドキ)」

エレン「え? 何だ? ミカサ、そういうの好きなのか?」

ミカサ「嫌いではない……(ドキドキ)」

女の子のベタがきた。いや、いいんだけどさ。それはそれでも。

アニ「じゃあ決まりだね。3学期の期末テストまでにエレンが勝てなかったらタキシード仮面様決定で」

エレン「くっ……! わ、分かったよ。3学期入ってからすぐの1発目の実力テストと、中間はないから、期末の2回で勝負だな?」

アニ「そうそう。2回のテストまでに私の順位を越えなかったらタキシード仮面様決定だね。衣装はバッチリ用意しておくから」

という変な約束をかわしてしまった。勉強サボれねえええ!

ミカサ「ふ……複雑……(ドキドキ)」

ミカサが顔を赤らめている。そんなにタキシード仮面様が好きなのか?

アニ「ライナーはどうだった?」

ライナー「うむ。クラスでは4位だった。総合は20位だな。まあまあだ」

アニ「じゃあ今回は1位アルミン、2位ミカサ、3位マルコ、4位ライナー、5位は誰だろ?」

ライナー「ベルトルトだぞ。あいつも何気に頭いいからな」

アニ「そうだったっけ。じゃあ、5位ベルトルト、6位に私、7位にエレン。8位にジャンがきて、9位は誰だろ?」

ユミル「私だ。9位だったよ。皆結構、頑張っているみたいだな」

アニ「ああ、ユミルか。10位は誰かな」

マルロ「俺だけど。くそ……今回は少し下がってしまったな」

と、珍しくマルロも会話に参加してきた。

ヒッチ「私も順位下がっちゃった。11位だし。マルロのすぐ下だったね」

意外だ。ヒッチ、頭悪くねえのか。

ヒッチ「エレンに抜かれちゃうとは思わなかったね。本気出してみたんだ」

エレン「ああ、まあな。ちょっとだけな」

ヒッチ「ん~私も次はもうちょっと頑張ろうかな~」

アニ「あんたの場合、水商売にいくんだったら別に学業要らないんじゃないの?」

ヒッチ「それひど~い。言っておくけど、水商売程「頭」使う職業はないよ? あらゆる雑学に通じて男の話題に合わせないといけないんだし~勿論、「分からないふり」も適宜するけどさ。本当の「アホ」には水商売は務まらないよ?」

と、ニヤニヤ笑っている。

ヒッチ「頭いいだけの女はモテないけど。むしろ男に勉強教えて貰った方が捗るしね」

マルロ「ヒッチの場合、才能の無駄使いってやつに聞こえるがな」

ヒッチ「そう~? ふふふ」

と、本人はまったく気にしていないようだ。

サシャ「危なかったです! 赤点スレスレでした! 夏の二の舞になるところでした!」

サシャが青ざめている。一応、赤点は免れたようだ。

ジャン「ああ? 直前の詰め込み指導で乗り切ったか?」

サシャ「ジャンの山張りのおかげで助かりました! ギリギリでしたけど。ジャンのおかげです!」

ジャン「2回も言わんでいい。まあ、免れたなら良かったな」

サシャ「はい! 3学期も是非山張りをお願いします!」

コニー「ジャン、オレにも次からお願いしてえんだけど」

ジャン「ああ?! コニーは赤点くらったのか?」

コニー「数学と英語と現国食らった……オレ、本当、現国が1番苦手なんだよなあ」

ジャン「現国は文章問題はもうどうにもならんから、せめて漢字とか読みで点数稼ぐしかねえだろ」

コニー「そこが1番苦手なんだよなー(ズーン)」

と、すっかり落ち込んでいる。

誰にでも苦手はあるよな。そこは仕方ねえけど。

今回の期末テストと、3学期の実力テストの成績を合わせて、今度は2回目の進路指導が行われる。

そして3学期の期末テストを終えた後は、2年次に上がる時にクラス替えが行われる。

其の時に、大学進学希望組とそれ以外に振り分けてクラスを編成するらしいので、クラスによっては勉強の進め方が変わってくるそうだ。

つまり、1組に近い程大学のレベルが上がっていって、後半になるほど、就職や推薦希望の方に重きを置くクラスになるそうだ。

ペトラ先輩とオルオ先輩は国公立大希望だから1組だった訳だ。

マーガレット先輩もああ見えて、1組所属だから大学進学組の筈だ。

真ん中の4組のアーロン、エーレン先輩達はどちらでもいけるように考えているみたいで、落ちたら就職も考えているそうだ。

もしかしたらサシャとコニーとは、2年次にはクラスが別れてしまう可能性がある。というか、多分、別れる事になるだろうな。

それを考えたら、ジャンもあんまり悠長にしてはいられない気がする。

同じクラスの間にサシャにアプローチしておかないと、2年次になったらきっと離れる事になるだろう。

講談高校は体育に力を入れている学校ではあるが、進学したい生徒の為にも対応出来るように出来ている。

つまり勉強が出来る一部の生徒と、体力馬鹿の生徒が一緒に学べる学校でもあるんだ。

2年になったらそれぞれの進路に合わせてクラス替えをする。

恐らくサシャとコニーは10組の方に移動する事になるだろうな。ヒッチもそうなるかもしれんけど。

オレの場合は成績次第だけど。せめて1組の中に入れるようにしたい。下の方でもいいから。

アルミンとミカサとマルコは1組確定のようなもんだから。

エルド先輩の場合は自身の成績は首席クラスだけど、大学の希望が「海外」だから、レベル的には国公立大より少し下げるらしい。

というか、下げて入らないと、海外の大学の場合は「入ってからの方が地獄」の場合が多いそうなので、上げ過ぎるのも問題らしい。

つまり、この時期になってくると皆だんだん、未来を考え始まる訳だ。

嫌でも時は過ぎていく。オレの場合はまだまだ成績上げないといけないけど。

とりあえず順位は上がったから親父にもそう報告しよう。

そして土曜日の放課後は午後からまた部活動だ。今日はミカサがオレのサーフパンツをはいて上着を着ている。

なんか自分の水着を彼女に着せるのも変な感触だ。興奮する。

そしてオレの方はミカサの水着を着る。変態だって言わないでくれ。役柄の為だ。

夏に買ったアレだ。下は短パンスタイルだから男でも一応はける。

ただ、胸のところに綿つめようとしたら、アルミンが「ハンジ先生は貧乳だから詰め物入れない方がいい」と判断したので、直接胸の上に着ている。本人が知ったら怒るかもしれんけど。

そんな訳で、衣装を合わせた上での練習をする。

制服もチェンジだ。オレがミカサの制服を着て、ミカサがオレの緑のブレザーを着る。

お互いに衣装を交換するというのは変な心地だな。

というか、男ブレザー姿のミカサ、超可愛い。

男装似合うよな。男装の女キャラはギャルゲーの鉄板とか何とか言ってる奴がどこかにいた気もするが、気持ちは分からんでもない。

この日はクリスタとミーナもエキストラ役で演劇部に顔を出してくれた。

ユミルもついでにエキストラをやってくれるらしい。ミカサとの絡みだけだから了承してくれたそうだ。

3人とも、ミカサにお姫様抱っこをされてびっくりしている。

ユミル「まさか女子にお姫様抱っこされる時が来るとはな」

ミカサ「ユミルは軽いので大丈夫」

ユミル「いや、63㎏あるからな? 私は」

ミカサ「エレンと変わらないので羨ましい」

とか何とかいいながら、交互にお姫様抱っこの練習だ。

ミカサもひょいひょい抱えて楽しそうだ。

今のところ、順調に来ている。今回の劇は時間に制限もないので尺のプレッシャーもない。

だから予定では1時間半くらいで考えているそうだ。

ペトラ先輩は短い方がいいと言っていたが、実際に脚本を書いてみたら、結構長い劇になってしまったんだ。

その辺はリヴァイ先生も了承しているので大丈夫だ。披露宴の出し物だしな。

本番まで中4日。今日を含めたらあと3回くらいしか練習出来ない。

リハーサルはもう「練習」には数えない。リハーサルはリハーサルだからだ。

台詞も大体頭に入っているし、ミカサとの息も合っている。

今日はエルヴィン先生がこっちに来ていた。凄く機嫌がいい様子だ。

エルヴィン「イイ感じに仕上がってきたようだね。問題は無さそうかな?」

アルミン「そうですね。舞台のセットもほぼ完成しましたし、小道具も衣装も揃っているし、調子もいい感じに仕上がっています」

エルヴィン「うん。それは良かった。ところで…………例の件だけど」

と、エルヴィン先生が声を落とす。

エルヴィン「今日はあの子は来ていないのかな?」

アルミン「あ、そうですね。今日は来ていないです。バイトかな?」

ミカサ「今はカフェとアシスタントのバイトだけしているそうなので、今日は午後からカフェのアルバイトに行っているそうです」

エルヴィン「そうか。彼女は忙しいみたいだね。うーん。どうしようかな。調査を進めたいと思っていたが、なかなか仕掛ける「機会」に恵まれないようだ」

アルミン「そうですね。ちなみにエルヴィン先生は『ジャン』と『コニー』のどちらが優勢だと思っているんですか?」

エルヴィン「それは相性の話? それとも個人的見解?」

アルミン「個人的見解の方ですね」

エルヴィン「ふむ。自分の見解で言うなら……コニーの方かもしれないね」

アルミン「ああ……そうなんですか」

アルミンがちょっと残念そうだ。

エルヴィン「2人は友人の期間が長いそうだよね。リヴァイとハンジのように何かの切欠で男女の関係に急展開する可能性は十分あると思っているよ」

アルミン「そうですか」

エルヴィン「ただ、だからと言ってジャンの方にチャンスがない訳ではない。今のところ先に自分の気持ちを『自覚』しているというアドバンテージがある。ただミカサの時のようにのんびり構えていたら、恐らく2回目の失敗を繰り返すだろうね」

アルミン「ですよね……」

エルヴィン「タイムリミットは3学期迄だろうね。2年次に進級したら、ジャンとサシャは恐らくクラス替えで離れてしまう可能性が高いだろう。進路の点から考えれば、ジャンは1~3組、サシャは7~10組の間くらいに配置されるだろうからね。サシャとコニーは2年次も同じクラスになる可能性が高い。もしそこまで時が経っても、ジャンが何も行動を起こせないようだったら、きっと今回も何も出来ずに終わるだろうね」

と、エルヴィン先生が予測する。

そっか。じゃあもう猶予期間は約3か月ってところなのか。

あんまりうかうかしていられねえな。すぐにでもアプローチした方がいいんじゃねえか?

いや、でも急ぎ過ぎて振られたら今度こそ、あいつは立ち直れ無さそうだしなあ。

難しい問題だよな。こればっかりは本人のタイミングで行くしかねえし。

エルヴィン「恋人が出来易い3大イベントのうち、2つはもう過ぎてしまったからね。残り1つに賭けるしかないかもしれない」

アルミン「3大イベント?」

エルヴィン「体育祭、文化祭、修学旅行だよ。修学旅行は1年の3学期の1月に京都~長野スキー旅行の予定だよ。今年は5泊6日かな。そこで何も起こせないなら、ジャンとサシャのルートは難しいんじゃないかな」

アルミン「ああ、確かにそうかもしれないですね」

エルヴィン「うん。2年の夏に臨海学校も一応あるけど。昔、海の事故が起きたから、以前より期間が短くなっちゃったんだよね。リヴァイが幸い生徒を助けたから良かったけど。1泊2日になったから。以前は3泊4日でのんびり海で泳げたから、カップルがわいわい発生していたんだけどねえ」

と、凄く残念そうに言うエルヴィン先生だった。

そっか。2年になったら臨海学校あるのか。でも1泊でも十分楽しみだけどな。

エルヴィン「1年生の時が1番、カップルが出来易い時期なんだけどね。出会いはあるし、新しいイベントも沢山あるし。受験のプレッシャーもないし。この時期を有意義に過ごした人間が勝ち組だとも言えると思うよ」

アルミン「OH……そこまで言い切りますか」

エルヴィン「大人になってから分かるよ。高校時代の3年間の有難味をね。私ももっと、青春しておけば良かったと今頃になって悔やむ時もあるよ」

と、ぐっと軽く拳を作って見せるエルヴィン先生だった。

その頃に嫌な思い出でもあったんだろうか?

そんな訳でその日は順調にエルヴィン先生の監督の元、練習を終えた。

そして終業式。22日にリヴァイ先生から正式な発表が壇上で行われたのだった。

リヴァイ『えー以前話した通りだが、12月25日に俺とハンジの結婚披露宴をこの第一体育館で行いたいと思う。時間は昼の12時スタート開始予定だ。来客の人数は正確には把握出来ない式になるから、立食形式に近い形で食事を振る舞おうと思う。生徒にはソフトドリンクだ。酒は振る舞わないから勝手に飲むんじゃないぞ』

と、一応飲酒の注意を入れるところがリヴァイ先生らしかった。

リヴァイ『卒業生も多数、来てくれる予定だ。現役の生徒は制服で来るように。くれぐれも洒落た格好で来るなよ。こっちが間違えて酒を渡したら悪くなるのは先生の方だからな』

あ、そっか。その為に生徒は『制服』指定なんだな。

卒業生は酒飲む筈だからな。先生達もそうだけど。

リヴァイ『それと……以前、結婚を機に俺の方が教職を「辞める」と発表したが……』

ざわ……その件についても話すらしい。空気がざわついた。

リヴァイ『その件については謝罪したいと思う。勢いで『辞める』と発表してしまって、一部の生徒達を不安にさせてしまったようだ。その後、先生達の間でも話し合って、結果的には辞職の件は取り下げる事にした』

その瞬間、女子の声が特に揺れた。泣いている女子すらいる。

リヴァイ『ただし、あくまでそれは「今回」はそうしただけの話だ。もし、今後、何か問題が発生するようであれば、今度こそ、俺は教師を辞める。くれぐれも、軽率な行動を取るんじゃないぞ。特にハンジ先生に対して何かしやがった時は………誰であっても容赦しねえからな』

おおおおおお宣戦布告だ! リヴァイ先生、一瞬目がマジで鋭くなった。

ゾクッとした。これはいい抑止力になるかもしれない。

女子生徒がピタッと鎮まった。今のはきっと「効いた」に違いない。

リヴァイ『……………それと、何かいつの間にか俺の『ファンクラブ』が出来ていたそうだが』

ざわ……

その事も言っちゃうのか! マジか! 何かざわめきがすげえ。

いいのかな。皆の前で言って。隠しておいた事なのに。

でもリヴァイ先生は言った。全校生徒の前で堂々と。

リヴァイ『本日をもって、非公式から公式に格上げしてやる。先生自身が定期的にファンクラブに関わっていくからそのつもりでいるように。以上だ』

というリヴァイ先生からの『お知らせ』が終わって皆、すげえざわめいていた。

特に3年の方のざわめきがすげえ。泣いている女子がぐちゃぐちゃになっていた。

教室に戻ってからも女子が騒いでいた。うちのクラスにも数名ファンクラブに加入している女子はいるようだ。

キース先生が戻ってきた。キース先生もまた壇上に上がって今回の件について話してくれた。

キース「あーリヴァイ先生からのお知らせについて補足説明をしておく」

という前置きをしてから続けた。

キース「一部の生徒の間では既に知っているようだが、リヴァイ先生の『非公式ファンクラブ』の存在が発覚した。その熱が過熱し過ぎて、一部の問題も起きたようだから、本日をもって「公式」の物として扱わせて貰う事になった。これはリヴァイ先生自身の判断である為、私達他の教職員もそれを閲覧する権利を持つ事になった。ネット上のコミュニケーションになるが、くれぐれも、節度のある活動を行う様にという事だ。何か質問はあるか?」

エレン「あの……(挙手)」

キース「エレン・イエーガー。何だ?」

エレン「その、リヴァイ先生自身が関わると言う事は、先生自身がファンクラブを管理するんですか?」

キース「ファンクラブが運営していた「会員制サイト」の方を定期的に閲覧する事と、自身もブログか何かで自身の情報を発信すると言われていた。不定期にはなるだろうが、出来るだけ関わっていく方針にするそうだ。サイトの管理に関しては、今まで通りでいいと言っていたぞ」

エレン「サイトをリヴァイ先生が「管理」する訳ではなく「閲覧・監督」する訳ですね」

キース「そういう事になる。わしもまさかここまで「規模」が大きい状態に発展しているとは思わなかったがな。いやはや。リヴァイ先生の人気ぶりは凄まじいものがある」

と、苦笑いを浮かべるしかないキース先生だった。

キース「あの男は先生なんかより、アイドルでもやった方が良かったかもしれんな」

ですよねー。でもそうなるとリヴァイ先生、もっとヤバい事になるからな。

キース「冬休み明けには実力テストも控えている。3学期にも進路相談を行う予定だから、まだ進路に迷いがある者は休みの間に自分自身とよく相談して方針を固めておくように。2年次に上がったら、進路に合わせてクラス替えを行うからな。進学組と就職・推薦組に大まかに分けたクラスになる。保護者とも良く相談しておいてくれ。では、今日はここまで。以上、解散!」

という訳で終業式があっさり終わるとオレ達は部活へ向かった。

リヴァイ先生が音楽室の前に来ていた。多数の女子生徒に囲まれている。

3年女子「良かったああああ! 先生、辞めないでくれて本当に良かったああああ!」

という声に囲まれて頭をポンポン撫でている。

リヴァイ「すまなかったな。軽率な発表をしてしまって」

と、一人一人に謝っているようだ。

あ、ペトラ先輩と言い争った先輩もリヴァイ先生と話している。

そしてよしよしと慰めて、おおおお。何かハグまでサービスしている。

そんな事するから、面倒臭い事になるんだけどなあ。

ミカサがこめかみピクピクさせている。サービス過剰だと言わんばかりに。

ミカサ「………………」

無言が怖い。無言程怖い物はねえな。

ミカサ「音楽室に入れない。さっさと解散して欲しい」

本音が漏れた。確かにその通りだな。

リヴァイ先生が適当なところで女子を解散させた。

そしてこっちと目が合うと、

ミカサ「変態生徒たらしクソちび教師はどいて下さい」

何か悪口がもっと増えた。どんだけ重ねれば気が済むんだ。ミカサよ。

リヴァイ「ああ、すまん」

と、リヴァイ先生も別に気にしないで通路から外れる。

そして音楽室に入ったオレ達一同は先程の「お知らせ」についてリヴァイ先生と話した。

エレン「しかし思い切りましたね。リヴァイ先生」

リヴァイ「ああ。もういっそ、受け入れてしまおうと思ってな。特に3年の女子とは残り少ない時間でしか会えない。残りの3か月、出来る限りの事はしてやろうと思う」

ジャン「いやでも、さすがにハグはやり過ぎなんじゃ」

リヴァイ「ああ。かもしれないが。ハンジ曰く『適当に発散させた方がかえっていい』と言われてな。ハグまでなら許可が出た。キスはダメだが」

ミカサ「当然です。私だったらハグは完全に「アウト」ですが」

リヴァイ「俺もそう言ったんだがな。ハンジは『芸能人もファンとハグする事はあるから』だそうだ。してやっていいと、ハンジが言った」

アニ「いや、そこは女がそう言っても実際にはしてはダメですよ。ハンジ先生、無理しているだけなんじゃ」

リヴァイ「そうだろうな。俺もそう思っている。ただ、そこはもう、ハンジも覚悟を決めたと言っていた。俺の傍にいる以上、多少の面倒事は大目に見ると。浮気したら殺すとは言われたが、ファンとの関わりについてはもう、俺にある程度任せるそうだ」

エレン「そうなんですね」

ハンジ先生もそこに行きつくまでには葛藤があっただろうな。

オレとアルミンはハンジ先生の「涙」を知っているから余計にそう思った。

もう眠いのでここまで。次回またノシ

ジャン→サシャがスリリングになってきたな
コニーの彼女が名無しなのは何故かと思ってたんだ
アニの毒舌もっと聞きたいw

ところでハンジ先生はマリッジブルーとかなかったんかね

>>471
お仕事やめる形で結婚するのであればマリッジブルーあったと思いますが、
仕事は続けられるのでその辺は大丈夫のようです。
環境の変化は殆どありません。リヴァイのおかげで生活が逆に楽になりましたし。

リヴァイ「まあ、今だけだと思うけどな。一過性の物であるなら、多少の目は瞑る。あいつらも卒業して大学に進学するなり、就職するなりすれば、新しい男とも出会うし、俺の事はただの「いい思い出」になるだけだろう。その間の短い「夢」であるなら、協力してやってもいいと思う様になったんだ」

と、何処か遠い場所を見つめるようにしてリヴァイ先生は言った。

リヴァイ「ただあんまり少女漫画のヒーローのような扱いは俺自身、こそばゆいという面もあるから、エレンの言った通り、俺自身の『ダメな部分』も出来るだけ出していく事にする。その結果、ファンが減ってファンクラブが運営出来なくなっても構わんし、逆に増えてしまった時はそれも仕方がないと思うようにした。近々、ブログのような物を立ち上げて様子を見ようと思う」

エレン「あの変顔とか、カラオケの裸祭りとか、画像もUPするんですか?」

リヴァイ「そういう事になるだろうな。ただメインは俺自身の『料理レシピ』でも載せようと思っている」

アニ「料理ブログを書くんですか?」

リヴァイ「俺自身の事を知りたいと言うなら『俺の料理』を見て貰うのが一番早いと思うんだ。話のネタ的にも、それくらいしか続けられる物がない。変顔とかは、あくまでネタに困った時に出す感じにする」

それくらいなら健全かもしれない。むしろ女子的には助かるかもしれないな。

アルミン「それは新規のファンが増えちゃうかもしれませんね。料理の方のファンとか」

リヴァイ「そっちのファンがついてくれることは大歓迎だがな。料理人としての俺が認められるなら素直に嬉しい」

と、リヴァイ先生は言っている。

アルミン「僕としては、リヴァイ先生自身の下世話な話を書いた方がファンを減らせると思いますけどね」

リヴァイ「ぶふっ……!」

アニ「下世話な話?」

リヴァイ「アルミン、それ以上言ったら3回目はやってやらんぞ」

アルミン「あ、じゃあ黙ります(キリッ)」

アニ「ねえねえ? 何の話? ん? (黒笑顔)」

アルミン「何でもないよ。男同士の話だから言えない(きっぱり☆)」

アニ「ああ、もしかして『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』の件?」

リヴァイ「?!」

アルミン「アニ、もうその件は忘れようか(黒笑顔☆)」

アニ「え? 無理無理。絶対忘れない(黒笑顔☆)」

アルミン「そんな事言わないでよー。もしその件が噂になったら、リヴァイ先生、今度こそ本当に教職辞めちゃうかもよ? (黒笑顔☆☆)」

アニ「私は別にそれでも構わないよ。………変態教師なんでしょ? (黒笑顔☆☆)」

リヴァイ「待て。何故その件をアニが知っているんだ」

エレン「最初の授業の時、黒板消し忘れて出て行ったせいです」

リヴァイ「そうだったか……(滝汗)いや、すまん。俺も油断していたな」

ミカサ「なんの話?」

アニ「リヴァイ先生、男子にこっそり『特別授業』をやったって話」

ミカサ「……………教科書には載っていない部分をやったって事?」

アニ「恐らく。リヴァイ先生自身の体験談も交えながら男子に『エロ講座』でも開いたんでしょ」

アニの洞察力に男子一同はちょっと居た堪れなくなった。

すんませんでしたああああと土下座する準備は一応、整えておく。

ミカサ「やっぱり変態教師<●><●>じーっ」

アニ「変態教師だからね<●><●>じーっ」

ダブルビッグアイズキタあああああ!!! ガクブルガクブル。

えっと、全員で正座しようかな。あ、リヴァイ先生が先に正座した。

男子は全員、その場で正座した。とりあえず「すんませんでした」の準備は整える。

リヴァイ「すまん。その件は内密にしてくれないか」

アニ「どうしようか?」

ミカサ「どうしようか?」

アニとミカサが絶好調で弄ってくる。楽しそうだなオイ。

リヴァイ「頼む。他の教職員にバレるのは百歩譲っても、ハンジにバレた時が恐ろしい。婚約破棄されたら俺は立ち直れない」

ミカサ「婚約破棄? そんな可能性のある事まで指導したの? 変態……」

リヴァイ「どうしたらいい? 俺がどうすれば黙っていてくれる?」

ミカサ「んー」

エレン「オレからも頼む。ミカサ、リヴァイ先生を責めないでやってくれ」

ジャン「ああ。俺達男子が調子に乗ったせいだからな。連帯責任だ」

アルミン「ごめん。主犯は僕だし」

マルコ「いや、アルミンを称えた僕達も同罪だ」

と、言ってオレ達はアニとミカサに頭を下げて拝み倒した。

ミカサ「アニ、どうする? 何か条件をつけた方がいいかもしれない」

アニ「そうだね。だったらやっぱり『ハグ』の件を取り下げてくれません?」

ミカサ「それがいいと思う。『ハグ』は今日限定で。明日以降はやらない」

アニ「今日は発表されたばかりだから、皆舞い上がっているし、仕方がないけど。ハグを毎回『してもらえる』って思われるようになったら嫌だもんね」

リヴァイ「分かった。明日以降、ハグはしない。それでいいか?」

ミカサ「もし見つけたら、ハンジ先生に速攻チクリます<●><●>じーっ」

アニ「婚約破棄されるかもしれない程の授業、どんなものか興味はありますけどね<●><●>じーっ」

怖いよおおおお!!! ガクブルガクブル。

リヴァイ「分かった。約束しよう。というより今日もこれ以上、やらないようにファンの子から出来るだけ逃げるようにする」

ミカサ「いい心がけ。それがいい(ニヤリ)」

リヴァイ「今日はこの後は演劇部の方に1日いよう。その方がいいな」

アニ「まあそうですね。そろそろ仕上げの段階ですし」

リヴァイ「昼飯を取ってくる。昼飯もこっちで食っていいか?」

エレン「構いませんよ。一緒に飯食べましょう」

という訳で、お昼は皆で弁当を食った。少し遅れて他のメンバーも合流して午後から部活動を始める。

その休憩時間、リヴァイ先生がそっとオレに「とある物」を渡してきた。

リヴァイ「やれやれ。まさか事が露見するとは思わなかったが約束の『物』だ。第3回目の授業はほとぼりが冷めた頃に行うからこれ見て予習でもしておけ」

エレン「あざす!!!! (シャッ)」

ミカサにバレないように鞄に入れた。ふふふ。帰ってから予習しよ。

そんな訳でその日は1日、ミカサとアニの<●><●>の目を食らいながらドキドキしながら練習をしたのだった。







12月24日。クリスマスイブ。その日は街中はざわめいているだろうが、オレ達は体育館の中で忙しかった。

明日の準備に追われていたからだ。仕込みが1日使えるって言うのは、凄く助かる事なんだと言う事を初めて知った。

リヴァイ先生が『時間が短すぎる』と常々言っていた理由が分かった気がする。時間に余裕があると、本当にいろんな角度から『危険』を排除出来るんだと言う事を初めて知った。

その日は体育館の舞台の仕込みに加えて、明日の『料理』の方も準備に入っていた。

文化祭の時のように調理場を臨時で設定して、そこで実際に料理をしながら振る舞う予定らしい。

基本的には『立食形式』のスタイルではあるが、子供連れの方の事も考えて席も少しは設ける。

そっちの方の設置もオレ達は全員で手伝いながら、明日の仕込みを全て何とか完了させた。

エレン「いよいよ明日っすねー」

リヴァイ「ああ。そうだな……」

とりあえず、終わったので先生と話してみた。

時刻は夕方の6:00頃だった。野球部やバスケ部はまだ活動しているみたいだけど。

他の運動部の気配はない。だから体育館の中も静かであった。

リヴァイ「すまなかったな」

エレン「え?」

リヴァイ「クリスマスイブなんて、恋人同士の為にあるもんだろうが。1日時間を使って貰って、すまない」

エレン「いやいやいや! 全然大丈夫っすよ!」

リヴァイ「いや、ミカサの方は不満かもしれないぞ。なあ、ミカサ」

ミカサ「何故呼ぶ? (イラッ)」

エレン「いや、クリスマスイブの時間を取らせてすまないって、先生が」

ミカサ「ああ……そういう事ですか。別に構いませんが」

リヴァイ「そうか?」

ミカサ「私はエレンと同居しているので。夜はゆっくり過ごせますし(ニヤリ)」

リヴァイ「ああ、そうか。親同士が再婚しているんだったな」

エレン「あ、はい。ご存じでしたか」

リヴァイ「キース先生経由で聞いた。あまり大っぴらには出来ない件だとは聞いていたが」

エレン「ですよね。俺の親父も最初は『寮』に入れるべきか悩んだそうですが」

リヴァイ「普通の感覚の親御さんならそうするだろうな。生殺しじゃないか?」

エレン「そうですね。でも、オレは大丈夫ですよ」

今のところは問題なくやっていけている。

エレン「ミカサとは離れたくないですし。今のままの生活を続けていきます」

リヴァイ「…………まだ、ヤッてはいないんだったよな」

エレン「え、まあ……(照れる)」

ミカサ「いずれは、するかもしれませんが」

エレン「馬鹿! それはまだ先の話だろ!」

ミカサ「タイミングがあえば、いつか(キリッ)」

リヴァイ「そうか…………」

ん? リヴァイ先生の様子が何か変だな。

エレン「どうしました?」

リヴァイ「いや、何でもない。今、言うべき事じゃないだろうからな」

エレン「それ、何でもないとは言いませんよ?」

リヴァイ「んー………」

と、頭を掻いている。

リヴァイ「今のまま、で居られるならいいんだがな」

エレン「え?」

リヴァイ「まあ、その話は今する事じゃないな。後日話す」

エレン「ええ?! 気になる言い方しないで下さいよ!」

リヴァイ「今、話しても意味が通じないと思うんだが」

ミカサ「それでも、気になる言い方は止めて下さい」

リヴァイ「そうか。では、一応話しておくか。今、意味が分からんでも怒るなよ」

と、前置きしてくれる。

リヴァイ「経験した後と前では、世界が変わって見えるぞ」

エレン「え?」

リヴァイ「特にエレンの方が心配だな。もしヤッた後に悩む事が出てきたら相談を受け付ける。俺でもいいし、エルヴィンもきっと相談に乗ってくれるだろう。ため込まないで、吐き出せよ」

エレン「は、はあ……」

何だろ。何かあるんかな。ヤッた後、世界が変わるって。

どういう意味かさっぱり分からなかったけど。一応、気にとめておく事にした。

リヴァイ「ミカサの方も、だな。もし悩むことが出てきたら遠慮なく……ミカサの場合はハンジの方が聞いてくれるだろうな。相談しろ。絶対に、1人で考え込むんじゃないぞ」

ミカサ「わ、分かりました」

ミカサもきょとんとしている。今は実感が沸かないようだ。オレと同じように。

そんな感じでちょっと意味深な忠告を受けてお互いに「?」となりながら、オレ達は準備を終えて家に帰る事になった。

あ、ヒッチが珍しく学校に残っている。なんかもめている?

玄関の前で知らない男と話し合っているようだ。あ、しかも……


パン!


げええ?! 修羅場だ。ヒッチが殴られた! ひでえ男だな!

ミカサがその現場を見てキレた。ヒッチを庇いにいっている。

ミカサ「何をするんですか!!!」

ヒッチ「ミカサ?」

3年男子「誰、あんた」

ミカサ「彼女のクラスメイトです。女を叩くなんて、卑怯。許せない」

3年男子「関係ない奴がでしゃばってくんじゃねーよ! 殴られてえのか!!!」

オレも思わず間に割って入った。そしてそいつの拳を腕で防御する。

3年男子「!」

エレン「騒ぎ、起こすならこっちも考えがありますよ。学校の先生達、まだ残っている人もいるんですから」

リヴァイ先生ならまだ職員室にいる筈だ。今頃帰り支度をしているだろうけど。

そしたら男は舌打ちをして離れて行った。大事にならなくて良かった。

アニ「なんの騒ぎ?」

アルミン「何かあったの?」

ちょっと遅れて玄関に来たアニとアルミンが心配そうにこっちに来た。

マルコ「何か、破裂音みたいなのがしたけど……」

ジャン「何かあったのか?」

マルコもジャンも今の現場を見ていない。ちょっと来るのが遅かったからだ。

ヒッチ「ああ、御免御免。ちょっと修羅場っちゃってね~」

とヒッチは笑っている。

アニ「また、男を振ったの?」

と、アニが言う。「また」というところがアレだけど。

ヒッチ「うん。まあ、クリスマスイブに振っちゃったせいかな~『ふざけんな!!!』ってぶたれちゃった」

ミカサ「そんなの関係ない。女をぶつ男なんて最低。振って当然」

とミカサの方が怒っている。ヒッチは冷静だけど。

ヒッチ「う~ん? 別に最低じゃないけどね。あいつはいいところもあったよ?」

アニ「じゃあ何で振ったの」

ヒッチ「ええっと、体の相性かな。何かそっちがどうしても『合わない』って思っちゃってね。悪い奴じゃなかったけど。なんていうか『しんどい』かなって思って」

アニ「ああ……そういう事か」

と、アニも妙に納得したようだった。

アニ「あんた、その辺シビアだもんね。下手くそ嫌いでしょ」

ヒッチ「うーん。ハードル上げ過ぎなのかな~? そっちで「つまんない」って思うと途端に冷めちゃう性質なんだよね~自分でも悪い癖だと思うんだけどさ~」

とあっけらかんとしているのがこっちとしても驚きだ。

ヒッチ「やり方が単調だったんだよね。こっちは同じメニューばっかり食べさせられているよう感覚っていうの? だんだん「ノルマ」をこなしていくだけの関係に感じて来たから『マンネリ化してきたから別れたい』って言ったらキレられたんだ」

ジャン「なんていうビッチ……(滝汗)」

マルコ「凄いね。そういう理由で別れたいって思うんだ」

ヒッチ「ええ? ダメかな? こういうの」

アニ「別にダメじゃないけど。それをストレートに言うあんたもどうかと思うよ」

ミカサ「私はそんな事、1度も思った事がない…」

!? ミカサ、それをここで言うな馬鹿!

ヒッチ「ええ? マジで? それ超羨ましいんだけど! エレン、あんた意外とやるね!」

エレン「変な目で見るなよ! おい、お前ら、半眼になるな!!!!」

超恥ずかしい!!! つい顔を隠してしまった。

ミカサ「ご、ごめんなさい……(赤面)」

ヒッチ「いいなあ~上手な男の方が断然いいって! そっちでマンネリ化してきたら、他の男の方がいいのかな~ってつい思っちゃうしね」

アニ「それはあんたくらいのもんだから」

ヒッチ「そう? でもそっちの相性って結構、大事だよ? 両想いでもそっちで合わなくて別れるケースも一杯知ってるし」

マジか。それはオレも気をつけねえとな。

ヒッチ「ねえねえ。エレンってどんなテクニック使っているの? ミカサ、今度こっそり教えてくれない?」

ミカサ「うううう……(赤面)」

エレン「ミカサ!!! 絶対言っちゃダメだからな!!!!」

バレた日にはオレも変態の烙印を押されてしまう!!!

野外プレイとか生理プレイとか尻とかいろいろ!!!!

ヒッチ「ふふふ~その様子だと、相当の変態みたいだね~エレン~♪ 私、嫌いじゃないよ? そういうの」

ミカサ「ヒッチ、エレンに手出したら殺す<●><●>」

おっと、ミカサが急にヤンデレ化した。

ヒッチ「おっと、ヤンデレさんだったか。ごめんごめん。本気にしないで。冗談だから。でも正直、羨ましいよ。私、エレンとミカサみたいに、そういう「充実感」を味わった事、あんまりないからさ」

アニ「そうなんだ」

ヒッチ「男とっかえひっかえしている私が悪いのも分かっているんだけどね。でも多分、どっかにいるとは思うんだよね。1人くらいは。私と「身体が合う」男がさ」

と、ヒッチもヒッチでまだ流浪の旅をしているようだ。

ジャン「そこまで身体の相性が大事なのかよ」

と、ジャンが目を細めて言っている。

ヒッチ「うん。私の場合は絶対条件になるね。『身体の相性』が合わない男とは絶対、続かない。最長で1年だったかな。飽きっぽいのもあるけど、何ていうのかなー? 『価値観』みたいな物なのかな? これって。私の場合、多少の変態プレイもOKなんだけど。むしろ無理なのは「同じスタイル」をずっと続ける方だね」

エレン「そんなにいろんなやり方があるのか?」

ヒッチ「人によって全然違うよ。私は割と何でもイケる方ではあると思うけど。だからついつい、年上とばっかり付き合うけど。年下でも上手な人がいればそっちに行きたいんだよね」

と、いろいろ問題発言している。

ヒッチ「そういう意味ではリヴァイ先生、経験豊富そうでいいよね~1回だけでもいいからやらせてくれないかな~」

男みたいな発言しているな。アニがさすがに「それはやめな」と止めている。

ヒッチ「ごめんごめん。人の旦那を獲ったらさすがにまずいか。殺されちゃうもんね。明日はフリーになっちゃったし、私も結婚式の披露宴に顔出しちゃおうかな♪」

アニ「酒は飲んじゃダメだよ」

ヒッチ「それも分かってるって。現役は制服必須でしょ? むしろOBの中からいい男がいたらナンパしようかな~」

と、懲りない発言をかましている。こいつは本当に女としてはアレ過ぎるな。

そんな訳でちょっと驚く出来事が起きたわけだが、一同はため息をつくばかりだった。

アニ「ヒッチは本当に、頭アホな子だよね」

ミカサ「悪い子ではないと思うけど……さすがにちょっと」

アニ「いや、悪い女だからね。あんまり甘やかしたらダメだよ」

アルミン「にしても、価値観って人それぞれだとは言うけど、あそこまで極論かます女の子は初めて見たなあ」

アニ「ヒッチの場合はその最先端とも言えるから、あんまり参考にしちゃダメだよ」

マルコ「そう思いたい。『エッチがマンネリ化してきたから別れたい』って言われたら、男としてのプライドはズタズタだよ……」

ジャン「言えてるな。オレも立ち直れる気しねえな」

エレン「………………」

オレは何も言えなかった。そういう意味では、ミカサは今のところ満足してくれているらしいが。

リヴァイ先生から借りた本をたっぷり予習しておこう。そう心に決めて拳を握るのだった。







クリスマスイブは家族で簡単なご馳走を食べた。

ミカサがケーキを作っておいてくれたので、それを食べながら夜をまったりと過ごした後は自分の部屋の中でイチャイチャする。

明日があるからあんまりハードな事は出来ない。明日に差し障ったらダメだから。

でも、やっぱりミカサとのキスは楽しくて。ついつい長いキスをしてしまう。

ミカサ「ん……エレン…」

其の時、ミカサの体が動いて、部屋の端に置いていた鞄がその拍子に倒れてしまった。

チャック、開けっ放しだったのが災いして、中身が少し零れてしまった。

ミカサ「ん……? <●><●>?!」

エレン「ん? <○><○>?!」

しまった!!!! リヴァイ先生から借りていた本が、見えた!

如何わしいタイトルのそれを目ざとく見つけてミカサが「これ何?」と怒り出した。

エレン「えっと、その……」

エロ本ではない。エロ本ではないが、エッチを勉強するための本だから罪悪感が半端なかった。

ミカサ「エレン、これは一体、何? 何故女の裸体と男の裸体が……」

エレン「……………すんませんでした」

もう下手な言い訳はしない方がいいと思って謝るが勝ち戦法にした。

エレン「リヴァイ先生から借りました。エッチの為の参考書です」

ミカサ「エロ本とは違うの?」

エレン「ちょっと違うな。いや、内容はエロいんだけど。『体位』について詳しく描かれている本だよ」

ミカサ「体位……エッチをする時の体の繋ぎ方が描かれているの?」

エレン「そうだな」

ミカサ「私にも見せて! (パラ…)」

エレン「!」

おおおおお。なんだこの羞恥プレイ。

ミカサが凄い真剣な眼で体位の本を見つめている。

ミカサ「『うしろやぐら』『つり橋』『寄り添い』『撞木ぞり』『獅子舞』『菊一文字』『こたつがかり』『テコがかり』『石清水』…」

エレン「朗読しなくていいから!!! 馬鹿!!! 真剣に見るな!」

ミカサ「こんなにいっぱいやり方があるなんて知らなかった。凄い。ヒッチが『人によって全然違うよ』と言った意味が分かった気がする」

と、凄い勢いで脳内にインプットしているようだ。ミカサ勉強熱心過ぎるだろ。

ミカサ「! 『恋引き恋慕』は首を繋ぐの? なんてスリル……」

エレン「それ以上見ちゃダメ! ミカサにはまだ早い!」

と、本を奪い返す。

エレン「先にオレに勉強させてくれ。ミカサはそこまでがっつかなくてもいいからさ」

ミカサ「でも………」

エレン「何でも準備する時間が必要だろ? オレにもその、試してみたい事は沢山あるけど。ミカサに無理させない体位から試していきたいと思っているからさ」

ミカサ(ぷー)

頬膨らまして拗ねてしまった。

ミカサ「また、ソレ? 無理とか何とか言われても困る」

エレン「え?」

ミカサ「多少の無理は別に構わない。それよりやってみたい物を素直に言って欲しい」

エレン「えええ? そ、そういうもんか?」

ミカサ「うん。私だって、興味があるので」

おおお。なんかすげえな。それって。

エレン「えええ……じゃあ『椋鳥』とか?」

所謂69の事だな。これは1度はやってみたい男の子の夢の1つだ。

ミカサ「他には?」

エレン「『立ち松葉』もいいな。いや、かなり乱暴な体位にはなるけど」

ミカサ「他には他には?」

エレン「『百閉』も男の夢だな。是非とも上に乗って貰いたい! ………って、これ以上言わせるな馬鹿!!」

騎乗位も妄想しちまった。いかん。今日はあんまりハッスル出来ねえのに!

ミカサ(ニヤニヤ)

エレン「あのなあ。ニヤニヤすんなよ」

ミカサ「無理。エレンが照れるのが凄く嬉しい」

エレン「ああもう。オレだっていろいろ考えているんだぞ!」

ミカサ「うん。嬉しい」

エレン「………あんまり誘惑すると、今ここでやっちまうぞ?」

ミカサ「それでもいいけど?」

エレン「ダメだ! 明日は舞台だから。体力温存が優先だ」

ミカサ「エレンのそういうところ、好きだけど。でもたまにイケズに思う」

エレン「ええ?」

ミカサ「うん。でも今日はしない。明日があるので。今日はこの辺でお仕舞にしよう」

エレン「……………」

くそおおおお! オレの方がやる気残ったままじゃねえか!

勃ってきたコレ、どうしてくれんだよおおおおお!

ミカサ「と、言ったらかえってしたくなるのが人間。不思議」

エレン「ミカサ……」

ミカサ「エレン、ちょっとだけフライング。エレンのソレ、手で触ってもいい?」

エレン「!」

遂に手でやって貰える時がきたのか。

震える胸を押さえてオレは頷いた。出して貰えるなら甘えたい。

ミカサ「今日はそれだけ、しよう」

オレはその言葉に頷いてミカサを自分の方に引き寄せたのだった。

という訳で今回はここまで。
なんかあんまりエロ描写すると、荒らしっぽい人がキレるみたいなので、
今後は全面カットでも別に構わないんですが、どっちがいいですかね?

エロ全然OK派が多いのか、エロはやめて派が多いのか。
エロ頼むの声が多ければ今まで通りエロ描写書きます。反対されたらフェードアウトでいきます。

という訳で次回またノシ

エロ推奨派が多くてワロタ。皆さん、ありがとサンクス。
エロ派が多いようなので今まで通りにやっていきます。

荒らしっぽい方、これが現実なので受け入れて下さい。すんません。
受け入れるの無理なら、ここのスレはスルーでお願いします。

ズボンをずり下してオレの物を前に出す。

やる気十分のそれを目に入れてミカサがちょっとだけ「ぽっ」となった。

目を逸らさないでガン見している。あんまり直視されると恥ずかしいんだが。

エレン「正座待機しなくていいから、気楽にしてくれ」

ミカサ「は! そうだった」

ミカサが足を崩した。そしてそろそろと触れる。

エレン「うっ……」

ちょっと撫でられただけでこっちもビクンと反応した。

ミカサ「どう、触ったらいいの?」

エレン「こんな感じかな」

オレはミカサの手の上から自分の手を重ねた。そして一緒に上下に動かす。

ミカサ「あああっ……どんどん固くなっていく」

エレン「まあな」

ミカサ「すごい。温かい。こんなに太いものをいずれは入れるのね」

エレン「あんまり『太い』を強調するな。オレのは標準クラスだと思うからな」

ミカサ「そうなの?!」

エレン「研修旅行とかで他の男子のとか見たりしたからな。オレは「普通」だった。でかい奴になるともっとでかいぞ」

ミカサ「………あんまり大きすぎるのも問題だと思う」

エレン「ならいいが。ほら、もうちょっと頑張ってくれ」

ミカサ「うん………」

ゆっくり。ゆっくり上下にしごいていくと、先の方が濡れてきた。

先走った透明な物を見てミカサが喉を鳴らした。

それを手にとって中指と親指で「ねちょ」っと感触を確認されてこっちも慌てる。

エレン「馬鹿! 遊ぶな!」

ミカサ「ご、ごめんなさい(シュン)」

エレン「さ、先の方触っても大丈夫なのか?」

ミカサ「うん。抵抗感はない」

エレン「なら、先の方も少し触ってみるか?」

ミカサ「うん…」

ミカサに先端を弄られた瞬間、オレもビクン! と背中をのけ反らせてしまった。

エレン「あああっ!」

やべえ! 何だコレ。自分でするのとまた違った気持ち良さがある。

自分でする時は、その辺の「快楽」をうまく自分でコントロールするけど。

人にして貰う時ってその辺が調整できないから、なんていうか、自分を抑えるのが難しい。

ミカサにタオル噛ませたオレが言うのも何だが。これは声堪えるのしんどいな。

ミカサ「エレン、気持ちいい?」

エレン「ああ。気持ちいいぞ」

ミカサ「どの辺を触って欲しいのか言って」

エレン「この裏側とかも気持ちいいぞ…」

はあはあ。だんだんトリップしてきた。いかん。早過ぎる気がするけど。

でも、ミカサに「して」貰えるだけでも十分有難いんだ。

あそこの筋とか、袋の裏側とか。太ももの内側もついでに撫でて貰って、やばい。横になりたくなってきた。

だんだん腰に力が入らなくなってきて目が半眼になってしまう。

ずるっと、布団の上に身を投げ出すと、なんと、ミカサが、それを自分の頬に摺り寄せた。

エレン「!?」

ミカサ「エレンの………可愛い(すりすり)」

頬すりプレイとか上級者過ぎんだろ!!!!

え? え? 何でそんなに積極的なんだミカサ?! ちょ……待て。

口に含む気か?! そんな事されたら、オレ、ああああ………!!!

唾液を落としてきやがった。いつの間にそんな上級者テクニックを!?

ああ。まずい。パクッと口に含みやがった。ゴムつけてねえのに。直接いきやがった。

ああああああ……何だこれ。夢じゃねえよな? 今、本当に、ミカサの「口」の中にオレのが入っているんだよな?

温かい。本当に温かい。包まれているのが分かる。舌の熱が、唾液のぬめりが、オレの体の力をどんどん奪っていく。

エレン「ん……あ…ああ」

この間と逆だ。今のオレは完全に『受け身』になっていて、女の気持ちを理解している。

そうか。普段はこんな気持ちでミカサ、オレの愛撫を受けていたんだな。

悪くない。流される自分も。

あ、ミカサが1度離れてタオル持ってきた。噛ませる気らしい。

逆の立場だな。仕方がない。声漏らす訳にはいかねえもんな。

エレン「ふぐっ………」

ミカサがオレの上に乗ってきた。騎乗位の形に近い。

そしてそのまま前屈。一気に口に含んでご奉仕してくれるという特典付きだ。

もうやばい。このアングルだけで相当エロい。

クリスマスイブに何やっているんだ。いや、イブだからいいのか?

神様御免なさい。何故かそんな心地でオレがミカサの口でのプレイを味わった。

エレン「ん………ん………うーっ……ん」

胸が上下する。オレ、こんなに抵抗出来ないエロは初めて経験する。

あ……まずい。もう出る。ミカサの口の中に出しちまう……!

ミカサを叩いた。合図を送ったのに、逆に吸い込む力を強くしやがって。

ミカサ「ん………(ちゅー)?!」

直後、ミカサがゲホゲホした。気道に白濁が入りかけたようだ。

エレン「?! 大丈夫かミカサ!!!!」

青ざめた。すぐさま背中を叩いて吐き出させた。暫く「ヒューヒュー」言っていたけど。

落ち着いてから「失敗した」とミカサが言い出した。

ミカサ「飲めると思ったのに。ちっ……」

何で舌打ちなんだよ。顔が怖いぞ。

ミカサ「思っていたより量が多くて飲み切れなかった。次こそは……」

エレン「いやいきなり口で直接とかレベル高すぎるだろ。無理すんなよ」

ミカサ「でも、マーガレット先輩から以前見せて貰った同人誌には似たようなシーンがあった」

エレン「同人誌参考にしたのかよ!!! 先輩達もいきなり高等テク教えるなよ……」

段階が吹っ飛び過ぎているような気がするんだが。

ミカサ「やはり動画の方がいいのかしら? そういう映像を1度見てみたいけど」

エレン「だ……ダメだ。女の子なんだからそこまでしなくていいから!!」

ミカサ「そう? でも……楽しかった(くすり)」

ゾクッとした。なんか今、ミカサの顔が『攻め』の顔に切り替わった。

ミカサ「こういうのが『男』の感覚なのだと理解出来た。明日の公演では、リヴァイ先生に成りきってエレンを責めてあげる」

エレン「OH……」

まずい。明日はエレン×ミカサじゃなくて、完全にミカサ×エレンになりそうだな。

いや、女の立場になって快楽を享受するのも悪くはねえんだけど。

自分が女みたいな「声」を出しそうになって自分でもびっくりした。

ミカサ「明日は頑張ろう。エレン(ニヤリ)」

何だか貞操の危機を感じながら、オレは曖昧に「お、おう…」を答えるしかなかった。

という訳で舞台上ではミカサ×エレンです。ミカエレ苦手な人は御免なさい。
基本はエレミカですが、まあこういう時もあると言う事で。

明日はお盆なのでお休みします。みなさん、いいお盆をノシ








12月25日。午前9時。

オレとミカサは親父に車で送って貰ってその結婚式の会場へ到着した。

学校からそう遠く離れていない場所に結婚式場があった。その中の教会のスペースで今回は式を行うそうだ。

そこに到着すると、先にアニやアルミン達が会場入りしていた。

アルミンが蝶ネクタイしている。アニは薄い緑色のドレスを着ていた。すげえ大人っぽい。

ジャンもスーツだ。マルコも灰色のスーツを着ていた。

3年の先輩達も既に会場入りしていた。ペトラ先輩、すげえ可愛い桃色のワンピースを着ている。

ドレスアップして皆、集まっていた。オレも背広で来て正解だったぜ。

先生達も多数いらっしゃる。リヴァイ先生は何処にいるかな。

親父が挨拶したいと言っていたから探していたら、前髪を全部あげた白タキシード姿のリヴァイ先生を見つけた。

緊張した面持ちだった。こっちと目が合うと、空気を察してこっちに来てくれた。

リヴァイ「エレン、ミカサ。そちらの方は」

グリシャ「エレンの父です。本日はお招きして頂いて本当にありがとうございます」

ミカサの母「ミカサの母です」

と、会釈をしあう大人同士だった。

リヴァイ「いえ、こちらこそ本日は本当にありがとうございます。エレンとミカサには、こちらも迷惑をかけてしまったので」

グリシャ「いえいえ。うちの愚息が役に立ったのであれば十分です」

リヴァイ「この後、お時間は」

グリシャ「すみません。仕事の方がありますので」

リヴァイ「そうですか……」

グリシャ「私達はここで失礼させて頂きます。エレン、ミカサ。また後でな」

と言うと会場を後にした。

結婚式は教会式でやるそうだ。

皆そわそわして席に着いて待機中だ。開始予定時刻は9:30からの筈だけど。

リヴァイ先生の横にピクシス先生が立っている。その反対側にはイルゼ先生が立っていた。

エレン「ん? イルゼ先生、助手でもやるのかな?」

そんな素振りだった。待機中の気配だった。

アルミン「ああ、メイドオブオナーって言って、花嫁の介添え役みたいなものだよ。リヴァイ先生の方のベストマンにはピクシス先生がついているみたいだね」

エレン「へー」

そんなのがあるのか。知らなかったぜ。

オルガンの演奏が始まった。おおお。なんか荘厳な雰囲気だ。

新婦が入場してきた。ああああ! あの白いエンパイアドレスは『仮面の王女』との時のレナ王女の花嫁衣装だ!

でも、いいのかな。ペトラ先輩、今、どんな顔しているんだろ。

ちょっと心配になってペトラ先輩の座っている席を見てみたら、先輩は晴れやかな顔をしていた。

それを見て安心した。そっか。ペトラ先輩、もう完全に吹っ切れたんだな。きっと。

演劇の為に作ったドレスがここで使われるとは思わなかったが、凄く似合っていた。

髪型も丁寧に作られていた。きっとリヴァイ先生が自分でやったに違いない。

ハンジ先生を連れて来たのはエルヴィン先生だった。父親役をやっているようだ。

もしかして、ハンジ先生にはもう親父さんがいらっしゃらないのかな。代役に入っているようだ。

ピクシス先生が牧師に指輪を渡していた。ハンジ先生は手袋やブーケをイルゼ先生に渡していた。

リヴァイ先生が牧師から指輪を受け取った。あれ? 銀色の方だ。

新婦のハンジ先生が金色の指輪を持っている。アレ? でも逆じゃねえのかな。

まあいいか。細かい事は気にしない。

指輪をお互いにはめ合って、その後に結婚証明書へ署名をした。

キャンドルを渡された2人は祭壇中央にあるキャンドルに火をつけた。

そして牧師様の有難いお話を少しばかり聞いて、お互いに「誓います」を言い合う。

リヴァイ先生がハンジ先生のベールを上げた。

……………おや? 何か固まっているぞ? どうしたんだ?

ハンジ「リヴァイ? 何やってるの? ほら、早く」

リヴァイ「ああ……すまん」

どうやら見惚れていたようだ。失笑が漏れてしまう。

そして、リヴァイ先生は少しだけ笑って、言ったんだ。

リヴァイ「ハンジ……」

ハンジ「ん?」

リヴァイ「好きだ。愛している」

ハンジ「!?」

リヴァイ「俺と結婚してくれて、ありがとう」


チュッ………


おおおおおおおお! 告白と一緒に誓いのキスやっちまった!

ハンジ「ちょっとおおおお?! 今の、打ち合わせになかったでしょおおおお?!」

リヴァイ「すまん。つい」

ハンジ「不意打ち卑怯ー! もー!」

と言いながら顔を赤くするハンジ先生がとても綺麗だった。

どの辺が打ち合わせになかったのかな。あ、もしかして「好きだ。愛している」のところかな。

リヴァイ「…………言った事、無かっただろ?」

ハンジ「そうだけど! そうだけど! あーもううううう」

と、顔を隠して嫌々するハンジ先生だった。

ハンジ「ここでそれがくるなんて思ってなかったのよ。まさか、だって……」

リヴァイ「今まで1度も言ってなかったよな」

ハンジ「あの日の夜ですら言わなかったじゃない。だから、言うつもりないのかなって、思って……」

あの日の夜? ああ、初夜の事かな。

ハンジ「もう、こんなの、やだ。私、どうしたらいいの? 恥ずかしい………」

と、顔を隠してベールを元に戻そうとするハンジ先生にリヴァイ先生は「おい」と言って止めた。

リヴァイ「ベールを戻すじゃない。文句は後でいくらでも聞いてやる。退場するぞ」

牧師の結婚報告の宣言が終了して、2人が祭壇を降りて皆の拍手を受けながら退場だ。

リヴァイ先生の指には「金色」の指輪。ハンジ先生には「銀色」の指輪が光っていた。

そっか。式の時は正式な色にして、普段は交換して使うのかもしれない。

手の大きさがほぼ同じだから出来る技なのかな。握り合っている感じから見て、大きさは大差ないように見えた。

会場の外に出て、中庭に出た。ここでブーケトスをやるようだ。

ハンジ先生が後ろを向いた。えいっとブーケを放り投げて、届いた先には………

ああ、残念。ミカサは獲得ならずだった。取ったのはペトラ先輩だった。

ペトラ「へ……? (赤面)」

ハンジ「次はペトラの番だね。頑張ってね」

ペトラ「は、はい……」

おおお? ペトラ先輩が超赤くなっている。相手はオルオ先輩だといいけどな。

ミカサ「ううう……取りたかった」

エレン「ペトラ先輩のを、今度は取ればいいじゃねえか」

ミカサ「そうね。次こそは(キリッ)」

そして最後は記念撮影だった。新郎新婦を中央に寄せて、皆で集合写真を撮った。

綺麗な花嫁と幸せそうな新郎を囲んでの撮影だ。中庭で数枚、写真を撮ると、皆その場で新郎と新婦としばし雑談をした。

エレン「おめでとうございます。リヴァイ先生」

リヴァイ「ああ、ありがとう」

エレン「でもまさか『仮面の王女』の時の衣装をそのまま使うとは思ってなかったです。リヴァイ先生の事だからドレスもオーダーメイドにするのかと思っていました」

リヴァイ「ああ。俺はそれでも良かったんだが、ハンジが『もう1度あの衣装を着てみたい』と自分から言い出した。ペトラとガーネットの許可も貰ったし、使わせて貰う事になったんだ。あの衣装ごと、俺の家に「嫁入り」するのを条件に」

エレン「え? という事は、リヴァイ先生の家に持って帰るんですか?」

リヴァイ「ペトラの条件だからな。『衣装も一緒に嫁に入るのであれば』という条件付きだった」

エレン「ペトラ先輩、凄いですね」

そうか。もうそこまで吹っ切れているなら心配は要らないな。

ペトラ先輩達がハンジ先生と写真を撮っている風景を見ながらオレも笑ったのだった。

リヴァイ「さて。適当に写真を撮ったら、次は学校に戻るぞ。むしろここからが本番だ」

エレン「そうですね。オレ達も学校に戻ってすぐ準備に入ります」

リヴァイ「ああ。帰りは生徒全員、バスで学校に移動出来るように予約しているから心配するな」

エレン「さすがリヴァイ先生、手際がいいですね!」

リヴァイ「そのくらい当然だ。向こうに着いたら忙しくなるぞ。じゃあまた後で」

という訳で、ある程度雑談した後は、結婚式場を全員で出て10:30分には学校に戻った。

本当にサクサクと進んだ結婚式だった。でも凄くいい式だったと思えた。

学校に戻ったらすぐさま制服に着替えた。劇の方は昼食を食べてからになるから、最初は制服でいい。

第一体育館には既に大勢の人が準備に追われていた。

料理の方は大体出来上がっているようだ。知らない人達が壁際に立って話したり、打ち合わせをしているようだ。

見た感じ卒業生かな。この日の為にスタッフの役割を担っているようだ。

あ、イザベル先輩とファーラン先輩もスタッフの恰好をしている。所謂『白シャツに黒ベストとネクタイ』の恰好をしたギャルソンスタイルだ。

残り1時間半。オレ達は舞台裏に入って最終チェックを行った。

場見忘れがないかどうかとか、照明器具はちゃんと天井に釣り下がっているかどうか。とか。

音楽は揃っているか。小道具、衣装の忘れはないか。

台本も一応、読み直す。もしド忘れしたらアドリブで行くけど。

そんな感じで舞台裏で忙しく動いていたら、あっという間に時間が過ぎた。

エレン「もう12時かよ! 早いな!」

ミカサ「エレン、一旦、会場に戻ろう」

エレン「おう!」

慌ただしく舞台を降りて会場の方に戻る。

今回の披露宴は体育館の入り口から向かって『右横』側にリヴァイ先生とハンジ先生の席が作られている。

演劇の舞台の方とは別に、雛壇を作ってそっちで披露する形になった。

そうすれば、リヴァイ先生達自身も劇の歓談に集中出来るし、来客の方々は先生達と観劇、両方を楽しめると思ったからだ。

司会はピクシス先生がやるようだ。やる気もりもりで燕尾服を着ている。

エルヴィン先生はスーツだった。茶色の高そうな上下のスーツ姿だった。

続々と来客の人数が増えてきた。受付はイアン先生とリコ先生が担当してくれているらしい。

ハンネスさんの姿もあった。スーツ姿で決まってるぜ!

エレン「ハンネスさんも来たんだ!」

ハンネス「おう! 当然だろ? こんなビッグイベント逃す手はねえ。酒も飲めるしな」

エレン「あんまり飲み過ぎるなよ!」

と、会場でちょっとだけしゃべって、いよいよ披露宴が始まった。

ピアノ演奏はダリス先生だ。この曲は……ミスチャルの『掌』だ!

拍手が起きた。体育館の入り口からやってきたのは………

ぶふうううううううう?!

オレは思わず吹いた。え? え? 何でリヴァイ先生、女装してんだ?!

しかも、和風の花嫁だ!

ミカサ「まさかの『白無垢』スタイル」

エレン「白無垢?」

ミカサ「神前結婚式の時に着る花嫁衣裳。でも何故リヴァイ先生の方が???」

ハンジ先生は当然、男装だ。あ、指輪も良く見たら色を交換している。

銀色の指輪をはめたリヴァイ先生をエスコートするように金色の指輪をはめたハンジ先生が男役を務めている。

当然、黒袴姿だ。ハンジ先生、男装も似合うなあ。

あ………エルヴィン先生が倒れそうになっていた。ピクシス先生が「どうどう」と支えている。

皆、拍手と爆笑をしながら2人を見守って道を作った。

雛壇に座ると、リヴァイ先生がマイクを通して皆に挨拶をした。

リヴァイ『あー白無垢を着るのは初めての経験だが、結構重いんだな。これ』

皆、失笑している。笑いを堪え切れない。

リヴァイ『今日の午前中、教会で式をあげてそのまま籍も入れてきた。本日をもって、リヴァイ・アッカーマンはハンジ・ゾエと入籍しましたので、ここにご報告させて頂きます』

ミカサ「アッカーマン?!」

ミカサが声を荒げた。

ミカサ「何故私と同じ名字? これはただの偶然???」

エレン「あーそういう事もあるんじゃねえの? オレの『イェーガー』もたまにあるぞ。割とある名字だからな」

ミカサ(ガクブルガクブル)

あーあ。震えちまった。可哀想だけどしょうがないな。こればっかりは。

パチパチ拍手が続く中「何で女装したんですかー?」の声が当然あがった。

リヴァイ『ああ。昼間は俺がハンジの嫁だからだ。文句あるか?』

ハンジ『いえーい♪ いい嫁を貰っちゃったよん』

と、また笑いの渦が巻き起こる。

リヴァイ『そういう訳だから、ここから先は司会のピクシス先生にバトンタッチだ』

ピクシス『ふむ……』

と、マイクを受け取ってピクシス先生が皆の前で今日の披露宴について説明を始めた。

ピクシス『本日はリヴァイ先生とハンジ先生の結婚披露宴にご足労頂き、誠にありがとうございます。卒業生の皆様、またリヴァイの友人・知人の皆様、ハンジの友人・知人の皆様。沢山の方々にご挨拶する場をここに設けさせて頂きました』

ピクシス先生が真剣な表情だ。いつもの先生と雰囲気がちょっと違う。

ピクシス『本日は沢山の料理や酒もご用意しております。遠慮なさらず、どうか全ての皿を食らい尽くす勢いでお召し上がり下さい」

と、また笑いが起きた。「全部食っていけ!」という事らしい。

ピクシス『ところで、リヴァイ先生』

リヴァイ『何だ?』

ピクシス『昼間は嫁、という事は、夜は夫になるのじゃな?』

リヴァイ『当然だ。夜は俺が亭主関白だ。異論は認めない』

と、宣言した瞬間「ヒューヒュー」の声が上がる。

しょっぱなからエロ冗談かよ。ハンジ先生赤くなってるぞ。

ピクシス『ふむ。では、折角だから「夜」の2人も見せて貰おうかの。良いかな?』

リヴァイ『お見せしましょう。ハンジ』

ハンジ『アイアイサー!』

と、その場で2人は立ち上がり、衣装を勢いよくその場で解き始めた。

カーテンが閉まって体育館の中も薄暗くなった。照明も落として「夜」の演出が入る。

生着替えだ! エルヴィン先生、リヴァイ先生が白無垢を脱ぎ始めたから遂に倒れたぞ! 大丈夫か?!

あ、エルヴィン先生の横にキース先生が居て支えている。だよな。

そして衣装を解いたら、中には何と……

リヴァイ先生は浴衣を着ていた。そしてハンジ先生は割烹着姿だった。

お互いに上からカツラを被る。これはもしかして……

やっぱり波兵さんと船さんだあああああ!!!

テーマソングも一緒に流れて会場は大爆笑の渦に巻き込まれた。

アニ「腹痛い……!」

アルミン「僕も…!」

アニとアルミンは笑い過ぎてしんどそうだった。オレも辛いんだが?!

波兵さんのカツラをかぶったリヴァイ先生が『という訳で』と言い出して、

リヴァイ『夜は俺が夫になる。ハンジとはそういう関係になった。これから皆さんには魚を捌いて刺身を振る舞いますので、どうぞ食べていかれて下さい』

と言ってリヴァイ先生は紐を使って浴衣を結ぶと準備に取り掛かったのだった。

おおお。魚を本当にその場で捌いてくれるらしい。3枚おろしを生で見る。

出来上がった刺身を盛り付けるのはハンジ先生だった。それをスタッフがテーブルまで運んで、皆好きに頂いていた。

お品書きが披露された。雛壇の背景にスタッフが巻物を広げていく。

これからリヴァイ先生が作る予定の料理を発表してくれた。

予め用意していた料理もいくつかあるけど。出来たても頂けるらしい。嬉しいなあ。

リヴァイ先生の『料理の鉄人』が始まった。生のライブクッキングに皆「おおおお」と感激している。

立食形式だから、この時間も好きに食べていいんだけど。皆、そっちに気を取られていて見入っていた。

リヴァイ『待っている間、他の先に料理を食べてもいい。腹減ってないか?』

ああそうか。だから別の料理も準備してあるんだよな。

でもリヴァイ先生の出来立ての方が美味そうだなあ。

という感情に囚われて、なかなか皆動かない。先に食っているのはヒッチとサシャとかかな。

あ、子供も先に食べているようだ。待てないよな。子供だし。

リヴァイ『……出来たぞ。鰤大根だ。冬と言えば鰤だしな。どうぞ、召し上がってくれ』

うおおおおお和風の料理キタあああ王道だああああ!!!

他にも茶碗蒸しとか、巻き寿司とか、蟹とかいろいろ出てきた。

すげえ。リヴァイ先生、どんだけ金かけて準備したんだろ。材料だけで大分かかったんじゃねえのコレ?!

ミカサ「悔しいけど美味い」

と、悔しそうに食べているミカサだった。ミカサが認めるくらいだからな。美味い筈だ。

そんな訳で一通りの料理が全て完成して振る舞い終わると、リヴァイ先生は浴衣の袖を押さえていた紐を解いた。

ピクシス『ではこれより新郎新婦のお色直しに入らせて頂きます。皆様、暫くお時間を頂きます』

そして手を繋いで体育館を退場していったリヴァイ先生とハンジ先生だった。

ざわざわ…

皆、それぞれ昼飯を摘まみながら先生達を待つ。

雛壇の横にはグランドピアノが設置されている。ダリス先生がピクシス先生と何やら確認し合っていた。

ピクシス『お待たせ致しました。2人の準備が整ったようです。皆様、どうか舞台の方にご注目下さい』

そしてダリス先生のピアノ伴奏が始まった。

曲は何と『ムーンライト伝説』だった!

ダラン♪ たらたららら~♪

の独特のイントロと共に体育館の入り口からリヴァイ先生とハンジ先生が入場してきた。

ぶふうううう?! 何か恰好がアレだ。コスプレしている!!

アニ「エンディミオン……ちっちゃいエンディミオンだ」

ミカサ「セレニティの方が大きい……」

ええっと、オレ、セーラームーンについては詳しくは知らないんだが、それに出てくるキャラって事でいいのかな。

アルミン「まさか美少女騎士セーラームーンをぶっこんでくるとは……」

アルミンには分かるらしい。あ、エルヴィン先生が悶絶して顔を押さえている。

萌え過ぎて困っている状態のようだ。エルヴィン先生、セーラームーン好きなのかな?

2人は手を繋いで人をかき分け、雛壇ではなく、舞台の方へ登って行った。

そしてピアノ伴奏に合わせて舞台上で社交ダンスを皆の前で踊って見せた。

おおおおお?! リヴァイ先生が一瞬、ハンジ先生を持ち上げたぞ?!

すげえアクロバティックな動きだな! 着地した後はハンジ先生がドレスの裾を持ち上げながら綺麗にくるくる回っている。

綺麗だ。社交ダンス踊れるっていうのは本当だったんだな。

ハンジ先生、回転し過ぎだろ?! それを難なくリードするリヴァイ先生も凄いけど。

時間にして3分もないくらいの短いダンスだったけど、すげえ見ごたえあった。

それが終わると皆で拍手喝采した。拍手に見守れながら一緒に舞台の袖に逃げて行く。

その後、また曲が変わった。バラード曲が流れ始めた。

ダリス先生、ピアノ演奏、超上手い。さすが音楽の先生なだけある。

その曲が流れ始めた直後、エルヴィン先生が呟いたのが聞こえた。

エルヴィン「え……まさか『YOU ARE MY REASON TO BE ~愛は瞳の中に~』もやるのか!?」

何の曲か分かるのか。という事は、古い曲なのかな。

その曲のイントロが流れ始めると、2人がまた別の衣装に着替えて出てきた。

リヴァイ先生は赤い袖なしのTシャツ。青いジーンズ。ハンジ先生は白いすらっとしたロングドレスだった。

リヴァイ先生が英語の歌詞を歌いだした。2人で歌うのかな? デュエットを歌うようだ。

ハンジ『何も言わず抱~きしめた~』

リヴァイ『uu~』

ハンジ『あなたの優しさを~』

リヴァイ『wow~』

ハンジ『忘れる日は~ないの~♪』

リヴァイ&ハンジ『『YOU ARE MY REASON TO BE~♪』』

エルヴィン先生が何か泣き出したぞ?! え? 何でだ?!

マーガレット「まさか☆矢ネタぶっこんでくるとは……」

エレン「☆矢? これ、☆矢の歌なんですか?」

オレはこの曲を知らない。☆矢にこんなバラード曲あったっけ?

マーガレット「真紅の少年伝説のテーマソングだよ。劇場版の曲だから有名ではないけど……いやあああ萌え死ぬううううう」

と、マーガレット先輩がじたじたしている。

殆ど英語の歌だから、意味が半分しか分からないけど。

ミカサは涙を流して聞いている。そんなにいい曲なのかな。

エレン「ミカサ、サビのところって『あなたは私の生きる理由なのです』って意味でいいのかな?」

ミカサ「大体そんな感じ」

エレン「へ~いいラブソングだな」

結婚した2人に相応しい曲だな。今度、歌詞カードをちゃんと見てみようかな。

バラードが終わると2人はまたお辞儀をした。拍手喝采に包まれてまた舞台袖に逃げる。

なんか暫くはこんな感じで続きそうだな。次は何のネタをぶっこんでくるんだろ?

少しの間が空いて、次はまた別のコスプレの恰好で出てきた。

ピアノ伴奏と共に2人のカラオケが続く。この曲は何だろ?

リヴァイ先生が金髪で、ハンジ先生が三つ編みのカツラをしている。黒いローブ姿だ。

マーガレット「魔法陣ぐるぐる?! もしかして『Wind Climbing ~風にあそばれて~』歌うの?!」

ダメだ。その辺はオレ、全然分からない。

☆矢は有名だし、セーラームーンもセーラー服の美少女が戦うアニメって事は分かるけど。

この曲は分からない。でも、皆ニコニコして聞いている。

合いの手を入れながらもう完全にリヴァイ&ハンジライブだ。

ハンジ『誕生日をむかえる度に~何を祝うのかずっとナゾだった~♪』

ハンジ『見えなくなってしまったものは~二度かえらないと知ったとき~♪』

ハンジ『年を経ることに後悔と~一日が過ぎて~いく恐怖を感じ~た~♪』

リヴァイ&ハンジ『『どうにもならない今日だけど~平坦な道じゃきっとつまらない~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『きみと生きてく明日だから~這い上がるくらいで丁度いい~♪』』

ヒューヒュー! 皆の歓声が沸いた。すげえ。息ぴったりだ。

リヴァイ『脇道を独り歩く~そんな自分にみとれてみたり~♪』

リヴァイ『歩き疲れたあの人~冷たい言葉を平気で放つ~♪』

リヴァイ『調子づいていた~小さな自分~風に遊ばれて~やっとここに立っていた~♪』

リヴァイ&ハンジ『『どうにもならない今日だけど~平坦な道じゃきっとつまらない~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『きみと生きてく明日だから~這い上がるくらいで丁度いい~♪』』


ハンジ『転んでできた~傷のいたみに~みあう何かを~求めたなら~幻~♪』


リヴァイ&ハンジ『『どうにもならない今日はせめて~笑い話にかえられますように~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『きみと生きてく明日だから~這い上がるくらいで丁度いい~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『どうにもならない今日だけど~平坦な道じゃきっとつまらない~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『きみと生きてく明日だから~這い上がるくらいで丁度いい~♪』』

エルヴィン先生が号泣していた。そんなにいいのか。

ヒューヒューの声が止まない。もう2人共ノリノリだな。超楽しい!

次は何が来るんだろ。しばしの間が空いて、次は………

マーガレット「乱馬1/2きたああああああ!!!!」

あ、この曲は分かる。バスの中でガーネット先輩が歌っていた曲だ。

確か『じゃじゃ馬にさせないで』だったかな。エルヴィン先生がもう、泣き笑いだ。

ハンジ先生が中華風の服に黒い三つ編みのカツラを被ってマイク持っている。

ハンジ『奴ハ破奴八破イーシャンテン♪ はしゃぐ恋は池の鯉♪』

ハンジ『奴ハ破奴八破イーシャンテン♪ 胸の鯛は抱かれタイ♪』

後ろで女子生徒っぽい女装したリヴァイ先生が何かそれっぽく踊っている?

あれ? これ、ヒロインとヒーロー、逆に演じているっぽい?

マーガレット「何でリヴァイ先生があかねちゃんなのwwwww」

やっぱりそうみたいだ。リヴァイ先生、さっきから「ツン」とした表情で歩いたり、ハンジ先生の背中を叩いたりしている。

んで、途中で空手の「型」を披露している。すげえ綺麗だ。

あ、スタッフが瓦持ってきた。一発で割って回収していく。

途中でパンダの着ぐるみをきた奴が出てきたり、中国娘っぽい女の子も出てきた。

剣道着を着た男とか、お好み焼きを持ってる女の子も出て来てリヴァイ先生と絡んで退散していく。

ハンジ『なぜもっと静かに「好きだよ」って言えないの?』

ハンジ『張り合うと私もじゃじゃ馬になっちゃう!』

あ、髪の色が変わった。赤色の三つ編みに変わって女の子になったみたいだ。

ハンジ『ベルも鳴らさずに~そよ風のように~胸のワンルーム住み着いた君なの~♪』

ハンジ『迷惑よ。だけど~♪』

リヴァイ『今夜だけいいわ~♪』

ハンジ『明日までいいわ~♪』

全員集合!

皆で一斉に背景で空手の「型」を踊りながら2番に突入していく。

ハンジ『迫力で口説かれ~星の街~逃げ出した♪』

ハンジ『夢見てたデートが~マラソンになっちゃう!』

また髪の色が元に戻った。黒い三つ編みだ。

ハンジ『痒いメルヘンも~乙女には媚薬♪』

ハンジ『君の優しさに~包まれてみたいの~♪』

ハンジ『冗談よ。だけど~♪』

リヴァイ『ハートは透けちゃう~♪』

ハンジ『いつかは透けちゃう~♪』

その後は背景全員で歌を引き継いで、リヴァイ先生とハンジ先生は2人で空手の「型」披露した。

うおおおおお?! そしてそのまますげえ綺麗な「殺陣」に移行した。

そして最後はハンジ先生が舞台袖に逃げてそれをリヴァイ先生が追いかけたり、今度は逆になってまた出てきたり。

そんな感じでわいわい騒いで歌が終わって曲も終わった。すげえ楽しかった。

背景のスタッフさんは卒業生みたいだから、打ち合わせしていたんだろうな。息ぴったりだった。

エルヴィン「まさかリヴァイのあかねちゃんのコスプレが見れる日が来るなんて……(うっ…)」

エルヴィン先生が泣き過ぎだ。

マーガレット「分かりますその気持ち! 萌え過ぎて生きるのが辛いですよね!」

スカーレット「似合いすぎて吹いたwwww」

ガーネット「しかもショートカットの方のあかねちゃんだったしwww」

マーガレット「いや、あんた予め、ネタ知ってた筈でしょwww」

ガーネット「分かってても見ると笑えるんだよwww」

と、その手の話題が分かる3人娘は盛り上がっているようだ。

アニも笑いを堪えている。腹筋を鍛えられているようだ。

ミカサはそこまで食いついていなかったが、顔は綻んでいた。

ミカサ「見ていて楽しかった」

エレン「だよな」

まだ続くのかな? まだネタ仕込んでいるのかな?

イントロが流れた直後、エルヴィン先生が倒れた。大丈夫か?!

またキース先生が支えている。この曲は知らないな。

あ、またリヴァイ先生が女装している。今度はセーラー服だ。

ハンジ先生も同じセーラー服姿で、ポニーテール姿に変身だ。可愛い。

リヴァイ&ハンジ『『長い渡り廊下で~あの人と~』』

リヴァイ&ハンジ『『すれ違う度~心臓が止まる~』』

リヴァイ&ハンジ『『まるでNENEのように~俯いて~』』

リヴァイ&ハンジ『『後姿を~そっと見送った~♪』』

マーガレット「鬼面組来たああああああ?!」

エレン「鬼面組????」

マーガレット「伝説のギャグラブコメアニメだよ!!! ジャンプー黄金世代作品の1つだよ!!!」

エレン「いや、分かりません。オレ、その世代じゃないんで」

先輩達が腹抱えて笑ってる。なんかもう、ツボにはまり過ぎているようだ。

この「お色直し」って完全に「エルヴィン先生」を狙い打っているよな。

エルヴィン先生の反応がすげえもん。もうずっと笑ったり泣いたり顔を隠したりしている。

あ、途中で後ろにバンドマンが追加だ。楽器は持っているけど、でもエアバンドっぽい。

オルオ先輩が真ん中に入って、エルド先輩、グンタ先輩、ファーラン先輩、ペトラ先輩が学ラン姿でエアバンドしている。

ネタが分かる世代の人は吹いているけど。分かんない世代は「?」と思いつつ笑って見ている。

でも、リヴァイ先生の女装は面白いからいいや。だって「ピンク」のショートヘアのカツラ被っているんだぜ?

もう笑うしかないだろ?

アニがもう、堪え切れなくて涙出していた。

アルミンもダメだったみたいだ。ジャンもまともに舞台を見れないし、マルコもしんどそうだ。

リヴァイ&ハンジ『『LOVE ME うしろ指~ HOLD ME さされ組~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『あいつはだめな奴とレッテル貼られたって~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『LOVE ME うしろ指~ HOLD ME さされ組~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『世界で私だけは~あの人を好きでいたい!』』

リヴァイ&ハンジ『『うしろ指~』』

オルオ一同『『『『『うしろ指~』』』』』

リヴァイ&ハンジ『『さされ組~♪』』

オルオ一同『『『『『さされ組~♪』』』』』

2番も行くようだ。なんかもうだんだんリヴァイ先生の女装に慣れてきたぞwwww

リヴァイ&ハンジ『『夕陽沈む校庭~あの人は~』』

リヴァイ&ハンジ『『愛にはぐれた~仔犬抱いていた~』』

リヴァイ&ハンジ『『誰も! 知らないの~』』

リヴァイ&ハンジ『『自分を! 騙せない~だけど~』』

リヴァイ&ハンジ『『だけど~そんな~生き方が~』』

リヴァイ&ハンジ『『何かに~こぼれて~いくわ~』』

ララ………

リヴァイ&ハンジ『『LOVE ME うしろ指~ KISS ME さされ組~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『型にははまれないと~いびつと言われたって~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『LOVE ME うしろ指~ KISS ME さされ組~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『何かに意地になってる~あの人を好きでいたい!』』

リヴァイ&ハンジ『『うしろ指~』』

オルオ一同『『『『『うしろ指~』』』』』

リヴァイ&ハンジ『『さされ組~♪』』

オルオ一同『『『『『さされ組~♪』』』』』

あれ? 何だろ。気のせいか?

この曲を聞くと、まるで流浪の時代のリヴァイ先生が思い浮かんで来る。

もしかして、リヴァイ先生、それを狙ってこの曲を選んだのかな?

………っていうか、まさか。エルヴィン先生から見たらリヴァイ先生がこう見えていたとか、ないよな?

有りそうだけど!!! いや、一瞬、思っただけだけど!!!

もう皆笑い過ぎてお腹が痛い状態だった。まだ続けるのかな?

あ、まだいくみたいだ。

また両方女装だ。リヴァイ先生が眼鏡っ子で、ハンジ先生はピンクのロングヘアだ。

エルヴィン先生が顔を覆ってしまった。もう萌え過ぎて生きるのが辛いらしい。

ハンジ『潔く! カッコ良く! 生きて行こうおおおおおおお』

おおおおおすげえええハンジ先生、本気の歌声だ。ぱねええええ!

透き通るような美声だった。今までの歌い方と全然違う!

ハンジ『たとえ2人離ればなれになってもおおおおお』

リヴァイ&ハンジ『『Take my revolution!』』

ハンジ『光さすガーデン! 手を取り合って! 誓い合ったなぐさめあったもう恋は! 二度としないよって!』

ハンジ『そんな強い結束はカタチを変え~今じゃこんなにたくましい私たちのLife style,everyday…everytime!』

声量がすげええ。ハンジ先生、本気で歌うとこんなに上手かったんだ。

前回のカラオケの時はあんまり歌っている素振りなかったから知らなかったぜ。

ハンジ『頬を~寄せ合って~う~つる写真の笑顔に! 少しの寂しさ……詰め込んで~』

ハンジ『潔く! カッコ良く! 明日からは! 誰もが振り向く女になる!』

ハンジ『たとえ2人離れ離れになっても~心は~ずっと一緒に……』

おおおおお。強弱のつけ方もいい。盛り上がるところと下がるところのメリハリが上手い。

すっごい感情をこめて成りきって歌っている感じだ。

ハンジ『夢を見て…涙して…傷ついても~現実はがむしゃらに来るし!』

ハンジ『自分の居場所存在価値は失くせない~自分を守る為に~』

間奏パートでリヴァイ先生と一緒に手を握り合ってくるくる回った。

そしてリヴァイ先生を抱き留めてのけ反らせて、腹の中から何かを出すような仕草をして、剣を取り出した。手品か?!

その瞬間、会場は「おおおお」となった。アニメの再現なのかな?

エルヴィン先生が鼻血を出していた。そんなにココ興奮するところか?!

キース先生にティッシュ貰って鼻血止めていたけど。

ハンジ『I'll go my way 戻れない~それぞれの道を選ぶ時が来る前に~』

ハンジ『こんなにも~こんなにも大切な思い出……解き放つよ…………』

すごくしんみりした歌い方だった。ここはそういうシーンらしい。

リヴァイ&ハンジ『『Take my revolution 生きて行こう! 現実はがむしゃらに来るし!』』

リヴァイ&ハンジ『『自分の居場所存在価値を見つけたい~今日までの自分を~』』

リヴァイ&ハンジ『『潔く! 脱ぎ捨てる! 裸になる! 自由を舞う薔薇の! ように!』』

リヴァイ&ハンジ『『たとえ2人離れ離れになっても~私は世界を変える~♪』』

おおおおお。なんかすげえ格好いい曲だったな。

ラストは2人で合わせて歌ってくれた。もう何曲歌い続けているんだよ。すげえな。

まだいくのかな。もうお腹いっぱいなんだけど。

まだいくみたいだ。ネタどんだけぶっこむつもりなんだよ!

あ、この曲は、文化祭でもバンド演奏した曲だ。

うわああああ?! リヴァイ先生、100トンと書いた巨大なハンマーを持って女装して出てきた。

男役がハンジ先生かよ!!! いや、ハンマー持ってるのは凄く似合ってるけどな!!!

しかも歌うのリヴァイ先生っぽいぞ。ハンジ先生は後ろで踊るようだ。

ハンマーは肩に乗せた状態でマイクスタンドの前で歌い始めた。

リヴァイ『アスファルトタイヤ切りつけながら~暗闇走り抜ける~♪』

リヴァイ『チープなスリルに身を任せても~明日に怯えていたよ~♪』

リヴァイ『I'ts your pain or my pain or somebody's pain』

リヴァイ『誰かの為に生きられるなら~』

リヴァイ『I'ts your dream or my dream or somebody's dream』

リヴァイ『何も怖くない~』

リヴァイ&ハンジ『『Get wild and tough!』』

リヴァイ『ひとりでは解けない愛のパズルを抱いて~』

リヴァイ&ハンジ『『Get wild and tough!』』

リヴァイ『この街で~優しさに甘えていたくはない~』

リヴァイ&ハンジ『『Get chance and luck!』』

リヴァイ『君だけが~守れるものがどこかにあるさ~』

リヴァイ&ハンジ『『Get chance and luck!』』

リヴァイ『ひとりでも傷ついた夢を取り戻すよ~』

エルヴィン先生が「あのハンマーで潰されたい」と呟いた。ドМか!

あのハンマー、作り物だよな? 実際は重くねえんだよな? 多分。

重くても抱えられそうな気がするのがリヴァイ先生の怖いところだけど。

そんな訳で、この曲は割と有名だからか、皆で手拍子して盛り上がった。

はー今ので何曲目だ? ミカサに聞いてみよう。

エレン「ミカサ、今ので何曲目だっけ?」

ミカサ「セーラームーン、☆矢、ぐるぐる、乱馬、鬼面組、ウテナ、シティーハンターズ、7つ目のようね」

エレン「あ、よく見たら演目のリストの中にこっそり書いてあるな。あそこ……」

いつの間に出てきたんだろ。スタッフが舞台横にメモを残している。

ホワイトボードに終わった物を順次タイトルを記入していた。気づかなかった。

ミカサ「うん。私も今、アレを読み上げただけ」

エレン「そっか。よく気づいたな」

さすがミカサだぜ。よく気が付いた。

次でラストです。何かやって欲しいのある?
もしアレが↓にどうぞ。先着1名様のみ受け付けします。
リヴァイ→○○ ハンジ→○○
という形で役を指名して歌も一緒に指定して下さい。

では今回はここまで。ノシ

歌い終わった後、また拍手だ。もう皆、笑って笑って笑い過ぎて泣いている。

リヴァイ先生とハンジ先生が袖に逃げて、また衣装をチェンジした。

リヴァイ先生は茶髪のボブカットの女の子になっていた。ハンジ先生は中学生のような夏の学生服だった。

リヴァイ『次でラストだ。いくぞハンジ!』

ハンジ『YES!!!』

ダブルマイクスタンドで曲が始まった。

曲は『No Buts!』という曲だった。あ、これはなんとなく聞いたことあるかも?

独特なイントロから始まって、2人でオリジナルのダンスをしながら歌い始める。

ハンジ『指で弾く~コイン見つめ~た~表ならGO~裏はSTAY~まず答えを聞かせて~』

ハンジ『どうか教えて~くれませんか? 天使は見定め~る~笑顔のまま~♪』

すげえええハンジ先生、歌うめええええ!

リヴァイ&ハンジ『『迷えええええ! その手を引く者などいない~神が下すその答えは不幸だった~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『そおおおおお! それこそ神からの贈り物~』』

リヴァイ『乗り越えたら見えてくるさ~だから今すぐ~』

リヴァイ『Look for it by oneself, no buts about it.』

ハンジ『NO BUTS!』

あ、間奏の間にリヴァイ先生が変なポーズ取ってる。

手の中に「5円チョコ」らしきものが見える。あああああ! 指で弾いた!!

うわ……ちょっと! ここまで届いたぞ! ミカサがうっかり手に取ってしまった。

そんな感じで客に向かって『超電磁砲食らいたい奴、手あげろ』とリヴァイ先生が言い出したので、生徒達は手をあげる。

ミカサ「食べていいのかしら?」

エレン「チョコレートだから大丈夫じゃねえか?」

一応、5円チョコはラップに包んであった。包装を剥がしてミカサが食べてみる。

ミカサ「あら、美味しい」

ハンジ『並べられた~カードめくった~』

ハンジ『微笑んでる~そのジョーカー~結末を語らない~』

ハンジ『これは天国行きのチケット? 道化師は聞かぬフリでおどけた~』

リヴァイ&ハンジ『『叫べええええええ! 今行くこの道しかないと~♪』

リヴァイ&ハンジ『『頼りない胸~その心を殴りつけて~』』

リヴァイ&ハンジ『『ああ~不幸に気づかされた幸せ~』』

リヴァイ『乗り越えなきゃ見えてこない~だから今すぐ~』

ハンジ『NO BUTS!』

リヴァイ先生の声が一気に低くなった。

リヴァイ『Get it over oneself, no buts about it.』

リヴァイ『Look for it by oneself, no buts about it.』

リヴァイ『When getting it over, you understand it.』

リヴァイ『Look for it by oneself, no buts about it.』

リヴァイ&ハンジ『『迷ええええええ! その手を引く者などいない~』』

リヴァイ&ハンジ『『神が下すその答えはその不幸だった~♪』』

リヴァイ&ハンジ『『そおおおおお! いつだって神は背でうたう~』』

リヴァイ&ハンジ『『乗り越えたら~見えてくるさ~だから今すぐ~』

リヴァイ『Look for it by oneself, no buts about it.』

ハンジ『NO BUTS!』

そんな訳でリヴァイ先生とハンジ先生の「お色直し」が終わった。

いつの間にか照明も明るくなっていた。あ、リヴァイ先生が女装する時は照明を明るくして、ハンジ先生が女装する時は照明をやや落としていたんだな。

すげえ。そんなところまで気配って演出していたんだ。面白い事考えるなあ。

舞台から飛び降りて、余ったチョコレート(5円チョコ)をリヴァイ先生が適当に生徒達やOBOGに配っていた。

そして雛壇に戻ってそのままの恰好で席について、マイクで一言。

リヴァイ『あー疲れた。もうカツラ取っていいよな?』

と、茶髪のカツラを外していつもの髪型に戻るリヴァイ先生とハンジ先生だった。

でもそれだと、ただの女装の男と男装の女にしか見えない。

ハンジ『いやー歌ったね! 久々にアニソンメドレー歌ったよ!』

リヴァイ『ああ。俺も元ネタを知らない歌とかあったけどな』

ハンジ『私もだよ! でもタイトルだけは知っていたから。そこから調べて曲を選ばせて貰ったんだよ。皆、どうだった~?』

「面白かったでーす!」の声が起きて皆くすくす笑っていた。

そしてそこでピクシス先生が一礼した。

ピクシス『お疲れ様じゃな。して、2人ともその恰好のまま披露宴を続けるのか? ハンジはいいとして、リヴァイの方はただの変態じゃぞ?』

リヴァイ『確かに。スピーチの準備に入るまでに「本当のお色直し」をしてきます』

ハンジ『だね! 皆、ごめんね! 次は真面目なお色直しをしてくるから!』

と言ってまた2人が体育館を退場していった。

そしてざわざわが続いて、ジャンが「そろそろだな」と言った。

ジャン「スピーチに入る前に舞台袖の方に全員、こっそり移動するぞ」

エレン「了解」

スピーチで皆が気を取られている間に演劇部は舞台に入る。

舞台の裏で衣装に着替えないといけないからだ。

緊張してきたな。今の面白おかしい「お色直し」の後に劇やると思うとプレッシャーだけど。

全員、舞台裏の方に移動すると、ペトラ先輩達と会った。

衣装チェンジの最中だった。ピースサインで制服姿に戻っている。

ペトラ「どうだった? 私達の鬼面組!」

マーガレット「最高でしたwww振り付けも完璧でしたwww」

オルオ「俺がリーダーの一堂零役なのがちょっとアレだったが…」

ペトラ「あんた以外に誰がやれるのよ! ぴったりじゃない」

オルオ「お前の中の俺の認識って一体……(汗)」

と、こっちも夫婦漫才やっているけど、あんまり時間の余裕はないので止めさせる。

エレン「すんません、着替えるんで急がせて下さい」

ペトラ「おっと、ごめんごめん! スピーチの後だもんね。了解!」

そしてまた体育館の方の照明が薄暗くなった。

舞台裏からこっそり入り口と雛壇を覗き見ると……

そしてまた体育館の方の照明が薄暗くなった。

舞台裏からこっそり入り口と雛壇を覗き見ると……

エレン「あ! あれ、文化祭の英語劇の時の」

ミカサ「スカーレットの衣装のようね」

胸がややはだけ見えている豪奢な衣装だった。

19世紀南部の上流階級の女性が着ていたと思われる古いデザインのドレスだけど、ハンジ先生が着るとまるでその時代の人間のように着こなして見えた。

すげえ似合ってる! リヴァイ先生はつけ髭つきだ。レット・バトラーのコスプレだった。

ピクシス『………真面目なお色直しをするんじゃなかったのか?』

リヴァイ『さっきのに比べれば「真面目」な方だろ? ハンジのドレスも』

ハンジ『うう……コルセットがきついから長時間は無理です』

リヴァイ『堪えろ。後で俺が外してやるから』

公開エロ発言、かましまくってるなあ。ハンジ先生、顔赤いぞ。

ヒューヒューと言われながら、遂にスピーチが始まった。

校長先生、教頭先生、ダリス先生、ピクシス先生、キース先生、とどんどんお祝いの言葉を述べていく。

そしてエルヴィン先生の番になった。あれ? でも、なんか放心しているみたいだ。

ピクシス『エルヴィン先生? 大丈夫か? 顔がまだ赤いようじゃの。酒に酔い過ぎたか?』

エルヴィン『……そうですね。少し酔い過ぎたようだ』

嘘ばっかりだ。エルヴィン先生はザルだった筈だからな。

酔っているのはさっきの舞台の熱気に、だろう。

エルヴィン先生、スピーチで泣かせるとか言っていたけどこの様子だと無理そうだな。

今、頭の中が真白なのかもしれない。マイク持っているけど。言葉がなかなか出ないようだ。

リヴァイ『エルヴィン、ハンジを卒倒させたくないなら急いでくれ。あと3分しか持たないぞ。こいつは』

ハンジ『OH……3分は大げさだけど、確かにこの恰好、あと10分くらいが限界かな』

エルヴィン『そうだな。うん……』

気持ちを何とか整えてマイクを持ち直したエルヴィン先生だった。

エルヴィン『リヴァイ、ハンジ。結婚、おめでとう』

と、声を何とか絞り出すエルヴィン先生だった。

エルヴィン『リヴァイと私が初めて出会ったのは、君が19歳になった時の今日の日だったな』

リヴァイ『そうだな。あれからもう、20年も経ったのか』

エルヴィン『あの時の君は、今と変わらない身長だったね』

リヴァイ『身長の成長は中学生の時に止まった。言わせるなよ』

皆クスクス笑っていた。身長ネタで弄って緊張を緩和しているようにも見える。

エルヴィン『うん。リヴァイはもう10代の頃には既に「自分」が完成していたんだろうね。見た目は中学生くらいにしか見えなかったのに。中身は今の原型がほぼ出来上がっていたように思うよ』

リヴァイ『買いかぶり過ぎだ。あの頃の俺は今より酷いガキだったぞ』

エルヴィン『そうか? でもあの頃のリヴァイは私から見たら、私なんかよりよほど「大人」に見えたよ』

何だか声が優しい感じだった。凄く優しい。

エルヴィン『ハンジと出会ったのは、高校生の時だったね。私が初めて受け持ったクラスの生徒の中にハンジがいた。あの頃のハンジは、女優さんのように綺麗で大人っぽい容姿をしていたね』

ハンジ『やーそこまで言われると背中痒くなるからやめてー』

と、ハンジ先生も照れている。

エルヴィン『お世辞ではないよ。それを信じさせる為にミスコンを開いたんじゃないか。今も覚えているよ。第1回目のミスコンの女王に輝いた若い時のハンジの姿を』

リヴァイ『………………タイムマシンを誰か作ってくれ』

皆、吹いていた。リヴァイ先生が両手で顔を覆って懇願しているからだ。

ハンジ『無茶言わないでよ! というか、来ないでよ! さすがに高校生の時の私の姿はリヴァイに見せたくないよお』

リヴァイ『嫌だ。絶対見たい。今度アルバム見せろ』

ハンジ『いやー! アルバム処分しなきゃあああ』

リヴァイ『おい、誰かハンジの同級生で高校時代の写真持ってる奴は俺によこせ』

ハンジ『いやああ! 女子大生時代より恥ずかしいよおおお!』

皆クスクス笑っていた。スピーチが進まねえ。

エルヴィン『今度ゆっくり時間のある時に昔話でもしようじゃないか。リヴァイ、ハンジ。私は君達がまだお互いが知らないであろう、とっておきのエピソードをいっぱい隠し持っているからね』

リヴァイ『俺の話はするな』

ハンジ『私のもやめてえええ!』

エルヴィン『はははっ……まあそれはいずれという事で。今日は本当におめでとう。2人が幸せである事が、何よりの私にとっての幸福だよ』

と、しんみり言って涙ぐむエルヴィン先生だった。

エルヴィン『こんな幸せな日を迎えられるとは思わなかったね。人生で1番の、最高の時だよ』

リヴァイ『何を言ってやがる。次はお前の番だろ。エルヴィン』

エルヴィン『え?』

リヴァイ『あー………この件は話さない方がいいか。すまん』

ピクシス『おや? エルヴィン先生にもお相手がいるのかな?』

ざわざわ……皆がヒューヒュー言い出した。

エルヴィン『いやいや、いませんよ』

ピクシス『しかし、今の会話、怪しいのお。わしに隠すとは、為にならんぞ? ん?』

矢面に立たされたエルヴィン先生が汗掻いている。

エルヴィン『ううーん。隠していたつもりはないんですが』

ピクシス『では、おるのじゃな?』

エルヴィン『……いるというより、まだこの世に存在していないと言うべきか』

リヴァイ『いいのか?』

エルヴィン『別に構わないよ。むしろ牽制出来るからかえって好都合』

ええええ?! 言っちゃうのか?! 今、ここで!

エルヴィン『2人の間に娘が産まれたら私の嫁にしたいと思っている。2人の許可は承諾済だ』

と、言った瞬間、会場が「ええええええ?!」とざわめいた。

「犯罪だー!」とか「年齢差やべええ!」とか「そこに痺れる憧れるうううう!」とかいろいろ。

大騒ぎで会場が轟いてさすがのピクシス先生も驚いていた。

ピクシス『そうか……今まで独身を貫いておったのはそれが狙いじゃったのか』

エルヴィン『光源氏も悪くないですよね?』

ピクシス『むしろ男の夢の1つじゃのう。いやはや。さすがエルヴィン。わしの見込んだ男であったの!』

と、何故か2人の間で握手会が始まってしまった。

他の先生達は頭抱えている。キース先生は苦笑いだけど。若い女性の先生達はさすがにドン引きしているようだ。

でも男性のウケは良かった。酔っているせいか、ゲラゲラ笑っている人が多数いる。

この話、今は本気だとは受け取られてないのかもしれない。

これがガチだと分かったらきっと、皆、青ざめて本気でドン引きするだろうな。

エルヴィン『そんな訳で、私は少々アレな人間ではあるんだが。それでもこの縁に恵まれて私は幸せだよ。これからも末永くよろしく頼むよ。リヴァイ、ハンジ』

リヴァイ『やれやれ……』

エルヴィン『ふふふ…あんまり長く話すとハンジが疲れちゃうからこの辺でお仕舞にするよ』

ハンジ『ごめんねー』

エルヴィン『最後に一言。2人とも、愛しているよ』

投げキッスかよ! あ、ハンジ先生がキャッチして受け取った。

リヴァイ『おい、ハンジ……』

ハンジ『はい、どうぞ』

リヴァイ『俺にも渡すのかよ』

ハンジ『2人で受け取るしかないでしょ?』

やっぱり頭を抱えている。リヴァイ先生、複雑そうな顔だった。

そんな感じでエルヴィン先生のスピーチは終わった。結局「泣かせる」演出はしなかったのかな。

と、思った直後、

ハンジ『うっ……うーん……』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『いや、何でもないよ。うん……』

ハンジ先生、顔色悪いな。そろそろ限界なのかもしれないな。

こういう豪奢なドレスアップするのって、慣れるまでに時間かかる。

オレも「仮面の王女」の時に徐々に慣らしていったからあの胸の苦しさは分かるんだ。

でも予定ではまだスピーチする筈だけど。他の先生達の出番が待っているし。

リヴァイ『………ちょっと失礼』

ピクシス先生にリヴァイ先生が話しかけていた。何やら予定を調整しているようだ。

ピクシス『大変申し訳ありませんが、ここで1度スピーチの方を中断、休憩させて頂きます』

と、言ってリヴァイ先生がハンジ先生を連れて体育館を1度出て行った。

やっぱりそうみたいだな。体を押さえつけるコルセットの必要なドレスは慣れてない人は長くは着れない。

リヴァイ先生、本当に脱がせる事を前提にあの衣装に着替える事を決めていたんだろう。

そして数分後、今度は別の衣装で2人が戻ってきた。

あ、結局最後はいつもの仕事着に戻っちゃった。リヴァイ先生は黒ジャージで、ハンジ先生が白衣姿だ。

ハンジ『やーごめんね! ウルトラマンみたいになっちゃったね!』

リヴァイ『結局はこの恰好が1番落ち着くな。もう散々ドレスアップはしたからいいだろ?』

と、2人は割り切っているようだ。

招待客も「ゆっくりして下さーい」と言っている。

そうだな。散々、いろんな衣装を見たからかえってこっちが落ち着くな。

そして他の先生達も続々とスピーチをしていく。中には泣き出してしまう先生もいて、ハンジ先生も貰い泣きしていた。

先生達のスピーチが全部終わった後、生徒代表としてイザベル先輩がスピーチをするようだ。

イザベル『リヴァイ先生、ハンジ先生、ご結婚、おめでとうございます』

と言った後、一礼をして続けた。

イザベル『リヴァイ先生は、私達生徒達にとっては凄く、優しくて怖くて、でもやっぱり優しい先生です。こんなにいい先生なのに何でさっさと結婚しないんだろ? と女子の間では噂になったり、卒業してからアプローチかけて玉砕した子も大勢いましたが、結局ハンジ先生の事がずっと好きだったんだなあと、今の2人を見てつくづくそう思いました』

と、言うとハンジ先生がちょっとだけ赤くなった。

イザベル『かくいう私もリヴァイ先生好きだった口です! というか、ここにいる女子の8割が1度はチョコをValentineに渡した事あるよねー?』

「YES!!!」の合いの手が返ってきた。そうなのか。

イザベル『リヴァイ先生「これだけあればチョコレートフォンジュが出来るな」と言って全部一気に溶かして逆に生徒に振る舞って、男子も一緒に結局皆で食べちゃったのもいい思い出です! リヴァイ先生、本当にあの時はありがとうございましたー!』

と、言われてリヴァイ先生も照れ臭そうにしていた。

ハンジ『あー確かに。毎年、有難いよ。酒の摘まみに丁度いいし』

リヴァイ『後から先生達も呼んで結局皆で食べたよな』

と、言っている。恒例行事みたいな感じらしい。

イザベル『リヴァイ先生、本当に細かいところに良く気付く先生で、女子の髪型から体調まで心配してくれて。男子は進路の相談を受けたり、それ以外のくだらない悩み相談も放課後に時間割いて聞いてくれたり。単に馬鹿騒ぎに付き合ってくれたり。喧嘩に巻き込まれたら、体張って止めてくれたり。溺れそうになった生徒を命がけで助けてくれたり。演劇部の方でも、何度危ない目に遭っても助けてくれました。きっとここにいる生徒は、1度は必ずリヴァイ先生に「助けて」貰った事があると思います。その助け方が本当に、神がかっているというか「そんなのされたら惚れてまうやろおおおお!」って言いたくなるような事ばかりで。こんなに罪作りな先生を私は今まで知りませんでした』

よいしょされ過ぎてリヴァイ先生、困っているな。

ハンジ先生が意地悪い顔でリヴァイ先生を横で突いている。

イザベル『だから、この場を借りて私達一同、リヴァイ先生に気持ちを伝えたいので、よろしいでしょうか?』

リヴァイ『え?』

イザベル『皆、せーのでいくよ!』

せーの!

生徒一同『『『リヴァイ先生、ハンジ先生、ご結婚、おめでとうございまーす!!』』』

と、まさかの招待客一同全員で挨拶をするとは思わなかった。

その数、が半端ねえ。300人越えた人間が一斉に合わせて言ったもんだからさすがのリヴァイ先生も驚いていた。

拍手喝采。ぴゅーぴゅー! の指笛とか。そんな温かい空気にリヴァイ先生が何か、動揺しているようだ。

リヴァイ『な……こんなのは、聞いてないぞ。や、やめろ……』

と、手を振って何故か恥ずかしがっている。

イザベル『やめませーん! リヴァイ先生大好きー!』

OG「大好きー!」

OB「好きだあああああ!」

皆、調子に乗って煽っている。リヴァイ先生、アレ? 何か顔を急に隠し出したぞ。

ハンジ『あら? 泣いちゃった?』

リヴァイ『泣いてない! 泣いている訳ねえだろ!』

ハンジ『あんた天邪鬼だもんねえ。嬉しいと泣いちゃうもんねえ』

そう言えば泣きたい時に笑う人だった。という事は、嬉しいと泣いちゃうのか。

こりゃ面白い。なるほど。エルヴィン先生が言った「泣かせる演出」ってこれの事だったみたいだな。

リヴァイ『もうその辺でやめろ! 次もあるんだからな!』

イザベル『待って下さい! 今から卒業生と生徒全員で「歌」を歌いますので!』

え? 何だそれ。それは話に聞いてないぞ。

ペトラ「私達は舞台裏にいるから小さな声でいいわよ」

ああ、そっか。客席側の人達が全員で歌うんだな。

イザベル『ダリス先生、準備OKですか?』

ダリス『OKだ』

イザベル『では、皆、知っている定番ソングを歌いましょう!』

ピアノ伴奏で生歌だ。これは誰でも1度は聞いたことがある。

『乾杯』だ。少しスローバラード寄りのテンポで皆で歌っている。

生徒一同「「「かたい~絆に~想いを~よせて~」」」

生徒一同「「「語りつくせぬ~青春の日々~」」」

生徒一同「「「時には傷つき~時には喜び~」」」

生徒一同「「「肩を叩きあった~あの日~」」」

やばい……待機中のオレ達までうるっときた。泣いちゃダメなのに。

化粧落ちてしまうのに。涙、貰い泣きしそうだ。

生徒一同「「「あれから~どれくらい~経ったのだろう~」」」

生徒一同「「「沈む夕日をいくつ数えただろう~」」」

生徒一同「「「ふるさとの~友は~今でも先生の~」」」

生徒一同「「「心の中にいますか~」」」

リヴァイ先生、ダメだ。堪え切れなくて泣いている。

それをハンジ先生が自分の胸で隠して宥めている。

普通男女逆だろっていうツッコミはここでは無しにしてくれ。

これはダメだ。リヴァイ先生、不意打ち過ぎて心構えもなかった訳だし。

男だけど、泣いていいと思う。悲しい時は泣いちゃダメだけど。

嬉しい時は、堪える必要ねえよ。

生徒一同「「「乾杯! 今~先生は人生の~大きな大きな~舞台に立ち~」」」

生徒一同「「「はるか長い道のりを~歩き始めた~先生に幸せ~あれ!」」」

あ、君=先生に替え歌したのか。くそ! 替え歌考えたの誰だよ!!

生徒一同「「「いつもの恰好の~2人の姿を~」」」

生徒一同「「「ずっと見守って~きたのはこの日の為~」」」

生徒一同「「「大きな喜びと~少しの寂しさを~」」」

生徒一同「「「涙の言葉で歌いたい~」」」

替え歌が本格的になった。あ、よく見たら歌詞カード、生徒皆持ってる。

受付で貰ったのかな。きっとそうだな。カードに印刷した物を読みながら歌ってる。

生徒一同「「「明日の光を~体にあびて~」」」

生徒一同「「「振り返らず~そのまま行けば良い~」」」

生徒一同「「「風に吹かれても~雨に打たれても~」」」

生徒一同「「「信じた「選択」に背を向けるな~」」」

ハンジ先生も貰い泣きしている。ちょっとだけ、だけど。

不思議だな。こういう時は、ハンジ先生の方が冷静で居られるんだな。

リヴァイ先生、直視出来なくて困っているだけだ。

生徒一同「「「乾杯! 今~先生は人生の~」」」

生徒一同「「「大きな~大きな舞台に立ち~」」」

生徒一同「「「はるか長い道のりを歩き始めた~2人に幸せ~あれ~」」」

生徒一同「「「乾杯! 今~先生は人生の~」」」

生徒一同「「「大きな~大きな舞台に立ち~」」」

生徒一同「「「はるか長い道のりを歩き始めた~2人に幸せ~あれ~」」」

生徒一同「「「2人に幸せあれ~」」」

生徒一同「「「2人に幸せあれ~」」」

歌が終わった。直後、ピクシス先生が意地悪そうにリヴァイ先生にマイクを向けた。

ピクシス『いかがじゃったかな?』

リヴァイ『…………お前ら』

リヴァイ先生、途端に機嫌が悪い声を出した。

リヴァイ『ふざけんなよ。こんな不意打ち、本当、聞いてねえぞ!!!!』

ピクシス『サプライズとはそんなもんじゃろ? 感想はいかがじゃ?』

リヴァイ『…………悪くねえな』

と、言ってプイッと顔を逸らしてしまうのはもうリヴァイ先生の性分にしか見えず、会場は「ヒューヒュー!」の盛り上がりが最高潮になった。

うわああああコレの後に劇するのかよ!!!! 物凄いプレッシャーだな!

今更だけどすげえ緊張してきた。ハードル上がり過ぎてやばい。

リヴァイ『皆、ありがとう。でも、少しやり過ぎだ。2度こういう真似はするな』

其の時、生徒の一人が「先生もですよー」と言い返していた。

リヴァイ『ああ? 何の事か分からんな』

とすっ呆けて答えるリヴァイ先生にハンジ先生も苦笑している。

ハンジ『もー照れちゃって。過去最高に照れちゃって』

リヴァイ『うるさい。俺はこういう空気が1番苦手なんだ。その……どう反応したらいいのか困るんだよ』

ハンジ『気持ちは分かるけどね。うん、よしよし』

と、背中をポンポンハンジ先生に叩かれて宥められるリヴァイ先生だった。

ピクシス『………では、これをもちましてスピーチの方は終了させて頂きます。5分ほどの休憩を挟んで、次は舞台の方で「演劇」の催しを致します。演劇部員とその他協力者による、リヴァイ先生とハンジ先生の物語、「再現劇」を行いますので、皆様、舞台の方にどうかご注目下さい』

遂に来た! 心臓バクバクだけど、やるしかねえ!

ピクシス『演目は「愛ある選択」です。では、どうぞ!』

開始ベルが鳴り響いて幕が上がった。いよいよ、オレ達の出番だぜ!

エキストラも含めて皆、緊張していたけど、覚悟を決めて舞台に立ち向かったのだった!

今日はここまでです。リヴァイ先生、不意打ち食らって泣きました。
悲しい時には泣けなくて、嬉しいと逆に泣いちゃうリヴァイ先生。
面倒臭くてすみませんwww

ではまた。次回ノシ





毎度お馴染みのマリーナのナレーションから劇が始まる。

マリーナ『その少年は10代の頃、背が低く、華奢な体であった事から、女に間違われる事も多々あった』

舞台中央に幼少期のリヴァイ先生に扮したアニがいる。

背中を向けて、下を向いて、色気たっぷりの男装だ。

マリーナ『電車の中で痴漢に遭ったり、変な男に声をかけられそうになったり……』

ここでの痴漢役をジャンとマルコが引き受けた。アニに吹っ飛ばされて退場する。

その吹っ飛ばされ方が見事で、観客から笑いが起きる。

マリーナ『そんな自分に嫌気がさして、自らの体を鍛えあげ、彼は強くなった……』

そしてここでミカサとアニがチェンジする。

男装ミカサの登場だ。ここは黒学ラン姿で登場する。

この時点ではまだ金髪ではない。金髪になるのはもう少し後の事だ。

マリーナ『身体を苛め抜いて、無敵の肉体を作り上げた彼は、それ以後、数々の女子生徒の心をさらう「イケメンヤンキー」へ覚醒する』

イケメンヤンキーって何だよって話だけど、事実そうだから仕方がない。

マリーナ『中学生になった彼はその優しい気質から、数々の女子生徒を助けた。時に悩みを聞き、時に命を懸けて助け、たとえ傷を負っても、女のせいにする事は決してなく、徐々にそのファン層を広げていく事になる』

ここでサシャとかクリスタとかユミルとか、エキストラの女子生徒をお姫様抱っこして抱えたり、悩みを聞いてあげたりする風景を演じる。

マリーナ『中学入学当初は全くいなかった彼を慕う女子の数が、彼が中学3年生になる頃には20人程の追っかけが出来る程の規模となる』

と、ここで女子のエキストラに追いかけられる風景を演じる。

その中に、女装したオルオ先輩とかも混じって野太い声でキャーキャー言ったので会場が爆笑に沸いた。

マリーナ『しかし女子生徒の心をかっさらってばかりいる、彼を逆恨みする男達が現れた……』

ここで男子のエキストラがミカサを囲むように総登場だ!

マリーナ『のちに伝説として語られる「リヴァイ伝説」はこうして幕を開けたのである……』

照明が一気に明るくなった。

場所はとある埠頭。4月の風の強い日だったそうだ。

中学3年生になったばかりの当時のリヴァイ先生を男子達が逆恨みするシーンからこの劇は始まる。

ヤンキーの恰好に扮した大勢のエキストラを含めて、ヤンキー役の役者が、リヴァイ(ミカサ)を問い詰めている。

リヴァイ(ミカサ)『話があると聞いて来てやったが……何だこの人数は。えらく数が多いな』

男子1(アーロン)『リヴァイに女を獲られた男達の同盟軍だよ』

男子2(エーレン)『お前、どれだけ人の女を盗めば気が済むんだよ!』

リヴァイ(ミカサ)『何の話だ。全く身に覚えがないが』

男子3(ジャン)『しらばっくれるんじゃねえぞ! デートキャンセルされた日に、お前と俺の女がデートしていたのを俺のダチがばっちり目撃したんだぞ!!!』

リヴァイ(ミカサ)『いつの話だ』

男子3(ジャン)『先週の日曜日だ。デパートのセールに一緒に出掛けたとか……』

リヴァイ(ミカサ)『それは誤解だな。俺は荷物持ちをしたに過ぎない。ただの手伝いだ』

男子4(マルコ)『それだけじゃない。ラブホテルに入っていくところも目撃したぞ! 他の女とだけどな!』

リヴァイ(ミカサ)『それもいつの話だ』

男子4(マルコ)『先々週の日曜日だ』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、確かにラボホテルには一緒に入ったが、別にヤッてはいない。歩き疲れたから休みたいと言ったから、休憩出来る場所が近くにそこしかなかったからそこで妥協しただけだ』

男子3(ジャン)『んな言い訳信じられるかああああ!!!!』

リヴァイ(ミカサ)『そんな事を言われてもな……』

困った顔でリヴァイ(ミカサ)は頭を掻いている。

リヴァイ(ミカサ)『何か誤解をしていないか? 俺は寄ってくる女に手を出した事はない。誘われたら一緒に出掛けたり、遊んだりする事はあっても、そういう意味で手を出した事は1度もないぞ』

男子1(アーロン)『だがここにいる殆どの男の女や、片思いの女は全員、お前の事が好きだと言っていたぞ』

リヴァイ(ミカサ)『何だって?』

男子2(エーレン)『つまり、お前が1人で殆どの女の「心」をかっさらっているんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『………………』

リヴァイ(ミカサ)は口を閉じて何も言えないでいる。

男子3(ジャン)『お前に恨みを持つ男がこれだけ居るって事は、お前がどれだけ罪づくりな野郎なのか分かるだろ』

リヴァイ(ミカサ)『逆恨みだな。俺にどうしろっていうんだ』

男子4(マルコ)『とりあえず1発ずつ殴らせて貰おうか』

リヴァイ(ミカサ)『………………断る』

男子1(アーロン)『ああ?!』

リヴァイ(ミカサ)『お前らの憂さ晴らしに付き合ってやる義理はねえな。そんなに自分の女が大事なら、俺なんかに構っている場合じゃねえだろ。人を逆恨みする暇があるなら、優しい言葉のひとつでもかけてやったらどうだ?』

男子1(アーロン)『てめえが横からかっさらうから悪いんだろうが!!!!』

リヴァイ(ミカサ)『だから、さらった覚えはないと言っている。俺は頼まれたら加勢はしてやる性質だから、それを勘違いした女はいるかもしれんが。お前らが想像しているような下世話な関係になった女は1人もいねえよ』

男子1(アーロン)『って事は、何か? てめえは童貞だって言うつもりなのか?』

リヴァイ(ミカサ)『それが何か?』

途端、ゲスな笑いが伝染していく。

男子1(アーロン)『嘘もそこまでいくと立派なもんだな? あああ?!』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

男子1(アーロン)『俺の女は「リヴァイと寝た」とはっきり言ったぞ! だから俺と別れたいとまで言い出しやがった!!! てめえ、人の女寝取った癖に、よくもまあ抜け抜けと白をきれるなあ?』

リヴァイ(ミカサ)『その女の方が嘘をついているんじゃないのか?』

男子1(アーロン)『俺の女は嘘をつくようなタイプじゃねえよ。それに俺の女以外にも、これだけの被害者が出てんだ。覚悟、決めて貰うぞ』

じりじり………周りを大勢に取り囲まれて流石に焦り出すリヴァイ(ミカサ)だ。

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ………信じて貰えそうにねえな』

そしてそこから、1対多勢による格闘戦が始まった!!!

うおおおおお!!! すげえええええ!!!

2人ずつ襲い掛かっても全部華麗に避けて飛び蹴りや回し蹴りや、掌底、まるでジャッキー・チュンのような大規模な殺陣だ。

過去最高の人数を相手にしてもミカサは華麗に舞う。

この動きを再現出来るのはやっぱりミカサしかいねえ!!!

その見事な殺陣の動きに会場は沸いた。リヴァイ先生も『ほう』と感心しているようだ。

照明がだんだん落ちていく。確かこの時の格闘戦は半日がかりだったそうだ。

やっとの事で全員をのして汗を拭う。

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……家に帰ったら、風呂入るか』

と、ベタベタの自分を毛嫌いしながら、夕陽に照らされて1人で帰って行くリヴァイ(ミカサ)だった。




そして場転。数日後。

今度はヤクザに喧嘩を吹っ掛けられて、困るリヴァイ(ミカサ)のシーンだ。

ヤクザ1(キーヤン)『ああ? どこに目ついたんだ?!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。ぶつかってしまってすまん』

ヤクザ2(カジカジ)『弁償しろよ。このスーツ、高いんだぜ? 100万もするスーツだからな!』

リヴァイ(ミカサ)『100万もするスーツには見えないが。せいぜい1万くらいだろ?』

ヤクザ1(キーヤン)『ガキには分からねえんだろうな。スーツの価値なんざ。いいからちょっと、事務所に来いよ』

リヴァイ(ミカサ)『断る。俺は家に帰る途中だ』

ヤクザ1(キーヤン)『ああ?! だったら保護者に弁償させてやろうか? ああ?!』

リヴァイ(ミカサ)『………………100万も大金なんざ出せるか。クソが』

ヤクザ2(カジカジ)『ああ?!』

リヴァイ(ミカサ)『そっちが大人だからと思って大人しくしていれば図に乗りやがって。手加減しねえぞこの野郎!!!!』

そしてそこから再び、格闘戦だ。こっちの殺陣はさっきのより迫力重視だ。

ヤクザもそこそこの手練れであるところを見せる。雑魚を一蹴する殺陣とは違う。

本気の喧嘩を見かけて慌てて警察官が間に入ろうとする。

ハンネスさん達の役をオレとアルミンで演じる事になった。

警察官1(エレン)『! おい、お前たち何をしている!』

警察官2(アルミン)『やめたまえ!』

しかし止める間もなくヤクザ1(キーヤン)が拳銃を取り出して発砲する。

リヴァイ(ミカサ)の頬に赤い線が入る。ここはミカサがうまいこと、一瞬の隙に客席に見えないようにメイクを入れる。

リヴァイ(ミカサ)『てめえらああああ……!!!!』

女ヤクザ(アニ)『待ちな』

逆上しかけたリヴァイ(ミカサ)とヤクザ達の間に女ヤクザが現れる。幹部のようだ。

リヴァイ(ミカサ)『誰だあんた』

女ヤクザ(アニ)『すまないね。あんたの噂を聞きつけて少し試させて貰った。100人近い不良を相手に全員、素手でのした化け物がいるって。あんたの事で間違いないようだね』

リヴァイ(ミカサ)『確かにそれは俺の事だが……』

女ヤクザ(アニ)『私はこういう者だ。あんたのような腕っぷしのある人間を若いうちから探してスカウトするのが私の役目だ。もし気が向いたら、事務所まで来てくれない?』

と言って名刺を渡してニヤッと笑う。

女ヤクザ(アニ)『いい目をしているね。嫌いじゃないよ。あんたみたいな気の強い少年は。うちの組に入ってくれたらすぐにでも幹部候補にのし上げてもいい』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

女ヤクザ(アニ)『卒業して、行く当てがなくなったらいつでもおいで。なんなら、私があんたに女を教えてあげてもいいよ』

と、リヴァイ(ミカサ)の手を握って手の甲に軽いキスをして女ヤクザ(アニ)は去って行った。

リヴァイ(ミカサ)はキスされた手の甲を掻きながら、名刺をオレ達に渡す。

リヴァイ(ミカサ)『俺が持っていてもな……やる。警察が持ってる方がいいだろ』

警察官1(エレン)『あ、ああ……』

リヴァイ(ミカサ)『全く訳が分からん。拳銃つきつけられて命狙われたのに事務所来いとか。頭狂っているのか?』

と、ブツクサ言いながらリヴァイ(ミカサ)は家に1人で帰って行った。

警察官2(アルミン)『せ、先輩……あの少年は一体……』

警察官1(エレン)『ああ。根は悪い奴じゃねえんだが、少々気が荒くて喧嘩が馬鹿強い少年だよ。ヤンキーの恰好はしてねえが、ここいらでリヴァイ少年の事を知らない不良はいねえだろうな』

警察官2(アルミン)『今、100人近い不良を1人でのしたって……』

警察官1(エレン)『リヴァイならやりかねんな。尤も、挑まれて渋々ぶっとばしたって感じかもしれんが』

と言いながらオレ達はリヴァイ(ミカサ)を案じる。

警察官1(エレン)『やれやれ……彼は不器用な少年のようだ。可哀想に』

といいつつ、オレ達は舞台からはけていくのだった。








そして更に場転。1人の少女が逃げている。

イザベル(カジカジ)『はあはあ……』

女装したカジが逃げている。イザベル役に抜擢されたんだ。

アホの子演じさせたら1番しっくりきたからな。男だけどイザベルはカジでいく事になった。

男1(ジャン)『てめえええ! 待ちやがれ!!!』

男2(マルコ)『逃げるなこらああ!』

イザベル(カジカジ)『いやだあああああ!!!』

男1(ジャン)『てめえ金をどこに隠しやがった!!!』

イザベル(カジカジ)『ううううううう』

そしてイザベルを凹るSEが入り、そこにリヴァイ(ミカサ)が通りかかる。

リヴァイ(ミカサ)『!』

真っ青になって慌てて割り込む。

リヴァイ(ミカサ)『おい! てめえら何してやがる!!!』

男1(ジャン)『どけ!!! お前には関係ねえだろ!!!』

リヴァイ(ミカサ)『知るか!』

そしてエキストラの男も含めて全員、一気にのしてイザベル(カジカジ)を連れて逃げ出した。

リヴァイ(ミカサ)『おい。こんな深夜に何で1人でほっつき歩いていた。家は何処だ』

イザベル(カジカジ)『うぐ……うぐ……(涙)』

リヴァイ(ミカサ)『とりあえず、帰るぞ。奴らに見つからないうちに……』

イザベル(カジカジ)『ありがとう……』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

イザベル(カジカジ)『俺を命を賭けて助けて貰った恩は一生忘れねえ。出来ればすぐにでも嫁にしてくれ』

リヴァイ(ミカサ)『……年、いくつだ』

イザベル(カジカジ)『10歳だ!』

リヴァイ(ミカサ)『ふざけるな。初潮が来てから出直せ。俺は「女」にもなってない奴を抱く趣味はねえ』

イザベル(カジカジ)『分かった! じゃあ「しょちょう」ってやつが来たら、嫁にしてくれ! ……しょちょうって何だっけ?』

ズコーッ!

さすがのリヴァイ(ミカサ)も前のめりにこける。

会場はクスクスとした笑いが広がった。

リヴァイ(ミカサ)『そこからか……そこから説明する必要があるのか』

イザベル(カジカジ)『?』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。説明してやるから……』

そして『現在説明中』の看板を持ったアルミンが通り過ぎると、会場は爆笑が起きた。

リヴァイ(ミカサ)とイザベル(カジカジ)は音のないパントマイム中である。

そして時が動き出して、

イザベル(カジカジ)『んー分かった! とりあえず、そういうのが「きたら」いいんだな?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。それが来ないと、嫁には出来ねえんだよ』

イザベル(カジカジ)『じゃあ、きたらその時は嫁にしてくれよ! 俺の名前は「イザベル」っていうんだ。宜しくな!』

リヴァイ(ミカサ)『……リヴァイだ。お前の家まで送ってやろう。家は何処だ』

イザベル(カジカジ)『×××っていう、施設だ。俺、母ちゃん、小さい頃に死んじゃって。父親もよく分かんないから、引き取ってくれる人がいなかったから、そこに預けられているんだ』

リヴァイ(ミカサ)『こんな時間まで出歩いているのが知れたら怒られるだろ』

イザベル(カジカジ)『こっそり抜け出してきたから大丈夫だ! こっそり戻ればバレねえよ』

リヴァイ(ミカサ)『俺とおんなじ思考回路してんじゃねえよ。まあ、責められないが』

イザベル(カジカジ)『?』

リヴァイ(ミカサ)『まあいい。俺も似たような境遇だしな。こっそり戻れるように手助けしてやるよ』

そして2人は手を取り合って、施設に戻っていくのだった。





そして約一か月後…。

リヴァイ(ミカサ)『おい、イザベル』

イザベル(カジカジ)『あ! 兄貴だ! 会いに来てくれたのか!』

リヴァイ(ミカサ)『暇だったしな。元気にしていたか?』

イザベル(カジカジ)『俺はいつでも元気だぜ!』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。だったらいいが。ところで、少しいいか?』

イザベル(カジカジ)『出かけるのか? ちょっと待ってくれ』

そして2人で近くの公園に移動する。

リヴァイ(ミカサ)『イザベル。お前、何であの日の夜、凹られていたんだ?』

イザベル(カジカジ)『う………』

リヴァイ(ミカサ)『あれだけの剣幕で凹ってきていたから、相手にもそれなりに理由があった筈だ。何かあったのか?』

イザベル(カジカジ)『うううう』

リヴァイ(ミカサ)『人に話せないような後ろめたい事をしたのか?』

イザベル(カジカジ)『ううう………(キョロキョロ)』

リヴァイ(ミカサ)『悪い事は言わん。後ろ指さされるような事はするな。お前の将来の為だぞ』

イザベル(カジカジ)『後ろ指? さされる? 俺、刺されるのか?!』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。人に恨まれると、殺されるかもしれねえぞ』

イザベル(カジカジ)『うう……分かった。じゃあ話す』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、話せ』

イザベル(カジカジ)『俺、実は施設を出たら「美容師」になりたいんだ!』

リヴァイ(ミカサ)『美容師?』

イザベル(カジカジ)『そう。髪の毛を弄ったり、切ったりする人の事だな! そういう「技術」があればお金稼げる仕事なんだって! 俺、手先は結構器用な方だから、きっとなれると思うんだ!』

リヴァイ(ミカサ)『ほほう』

イザベル(カジカジ)『でも、美容師になる為には「学校」に行かないといけないって、人に聞いてみたらどうやら……お金が沢山いるみたいだし、今のうちにちょっとずつ貯めようと思ったけど、お小遣いだけじゃ到底足りないって気づいて。だから、つい……』

リヴァイ(ミカサ)『まさか金盗んだのか。いくらだ』

イザベル(カジカジ)『こんくらい(札束の厚みを手で表現する)』

リヴァイ(ミカサ)『それ、札束1つ分くらいだよな。100万盗んだのか?』

イザベル(カジカジ)『良く分かんねえ。でも、白い紙で紙束を包んであったから』

リヴァイ(ミカサ)『それ、札束1つ分じゃねえか。なるほど。それは凹られて当然だな……』

イザベル(カジカジ)『でも、美容師になって金稼げるようになったら返すつもりだった! 借りるだけのつもりだったんだ!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ダメだろ。それは「やっちゃいけない事」だぞ。イザベル』

イザベル(カジカジ)『ううう……』

リヴァイ(ミカサ)『盗んだ金は返せ。その上で謝りに行け。美容学校なら、別の方法で行く方法も有る』

イザベル(カジカジ)『本当か?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。いい子にしていれば金を「借りる」事は出来る。将来、返す事を約束した上でなら、ちゃんと学校に行く事は出来る筈だ』

イザベル(カジカジ)『そうなのか? でも、俺、頭悪いし、お金貸してくれるのかなあ』

リヴァイ(ミカサ)『むしろ盗んだ事が皆にバレたら美容学校には行けなくなるぞ』

イザベル(カジカジ)『そ、そうなのか?!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。悪い子は学校に行けないんだぞ。だから金は返してやれ。いいな』

イザベル(カジカジ)『うん! 兄貴がそういうなら信じる!』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ』






マリーナ『こうして、イザベルは自らの犯した過ちを悔い改め、金を返すと同時に謝罪しに行き、何とか事を表沙汰にはしないで貰えた』

マリーナ『そしてこの時の出会いを切っ掛けにして、リヴァイ少年は自らの髪の色を「金色」に染める』

マリーナ『金色はイザベルの愛した「色」だったからだ。まるで「日の光」のような金色が好きだったとイザベルは語っていた』

マリーナ『中学3年の5月を過ぎた頃、髪の色を金色に染めた事により、リヴァイ少年の元には多くの不良達が集まりだす』

マリーナ『ピアスもして見た目も少し不良寄りになっていったが、服装だけは何故かルール違反せず綺麗な学ランのままでいた』

マリーナ『喧嘩を吹っ掛けられる日々は相変わらず続いたが、リヴァイ少年の心には、イザベルという小さな「陽だまり」が出来ていた』

マリーナ『そして時は過ぎ、運命の12月26日。その事件は起きる………』








リヴァイ(ミカサ)『………体は大丈夫か?』

イザベル(カジカジ)『平気だ。……ちょっと、変な感じはあるけど』

リヴァイ(ミカサ)『無理させたようだしな。痛くなかったか?』

イザベル(カジカジ)『そりゃちょっとは痛かったけど。でも、これで俺、リヴァイの「嫁」になったんだろ? だったらいい』

リヴァイ(ミカサ)『厳密に言うとちょっと違うんだが、まあ大体合ってる』

イザベル(カジカジ)『ん? どう違うんだ?』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、それは追々話す。とりあえず、今日は家まで送ってやるから』

イザベル(カジカジ)『やーいいよ』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何で』

イザベル(カジカジ)『他の皆にバレたら恥ずかしいから1人で帰る!』

リヴァイ(ミカサ)『別にバレやしないだろう。黙っていれば』

イザベル(カジカジ)『いや、絶対バレる! そんな予感がするんだ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか? 俺は別にバレたってかまいやしないが。お前を女にしてやったのは俺だって』

イザベル(カジカジ)『ぎゃああ! 絶対、皆にからかわれるから嫌だ!』

リヴァイ(ミカサ)『ククク……まあ、そこまで心配するなら仕方がねえな。気をつけて帰るんだぞ』

イザベル(カジカジ)『おう! またな! 兄貴!』






暗転。





リヴァイ(ミカサ)『…………え?』

施設の大人(アルミン)『ですから、彼女は26日の夜、亡くなったんです』

リヴァイ(ミカサ)『は? 本当ですか』

施設の大人(アルミン)『はい。警察の方が見つけた時はもう……うううう』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

施設の大人(アルミン)『葬式の方ももう、1月1日に済ませたわ。発見が遅れたせいで、彼女は……』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

施設の大人(アルミン)『たまに夜、抜け出すようなお転婆な子ではあったけど。だから、夜は出歩くなとあれだけ言ったのに……』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

施設の大人(アルミン)『焼香、あげていって下さる?』

リヴァイ(ミカサ)『はい………』





マリーナ『彼女はリヴァイ少年と結ばれた直後、事件に巻き込まれて同日の夜に亡くなった』

マリーナ『11歳という若さでこの世を去ってしまったのだった………』







女子1(クリスタ)『リヴァイ? どうしたの? 最近、元気ないね』

リヴァイ(ミカサ)『あ、ああ………』

女子1(クリスタ)『何かあったの? 私で良ければ相談にのるよ』

リヴァイ(ミカサ)『……………俺の髪の色、似あっているか?』

女子1(クリスタ)『うん! 超似合ってるよ! 私、金髪好きだよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………なら、そろそろ染め直すか。てっぺん、黒が出てきているしな』

女子1(クリスタ)『その方がいいかも! プリン頭だと格好悪いしね!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ………』




リヴァイ(ミカサ)『…………』

女子2(ユミル)『なあ、そろそろいいだろ? リヴァイ』

リヴァイ(ミカサ)『何が?』

女子2(ユミル)『あたし、あんたに惚れてるんだ。抱いてくれねえのか?』

リヴァイ(ミカサ)『抱く……? セックスして欲しいのか?』

女子2(ユミル)『単刀直入に言えばそうだけど。………ダメ?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。構わない。その前に、風呂に入れさせろ』




女子3(サシャ)『元気ないですねー?』

リヴァイ(ミカサ)『………そうか?』

女子3(サシャ)『こういう時は、美味しい物を食べるべきです! 焼肉食べましょう!』

リヴァイ(ミカサ)『肉でいいのか? 寿司でも構わんぞ』

女子3(サシャ)『えへへへ~両方食べましょう~』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。何処ででもついていってやる』




女子4(アニ)『あんた、進路どうするんだい?』

リヴァイ(ミカサ)『決めてない。高校には行かないかもしれないな』

女子4(アニ)『何で? 高校行かないでどうするつもり?』

リヴァイ(ミカサ)『さあな。行くあてがねえし、流浪の旅でもするか』

女子4(アニ)『……だったら私も連れて行ってよ』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

女子4(アニ)『あんた1人で行かせないよ。私もついていく』

リヴァイ(ミカサ)『お前の人生まで背負えねえよ。ついてくるな』

女子4(アニ)『嫌だね。今のあんたは、放ってはおけない。……何か辛い事があったんだろ』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。確かに辛いと言えば、辛いんだが………』

女子4(アニ)『だったら泣いてもいいんだよ。私しか、いないし、ここで泣きなよ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

しかしそこで、彼は笑う。

リヴァイ(ミカサ)『泣いたら、あいつが戻ってくるならいくらでも泣くさ』

女子4(アニ)『…………』

リヴァイ(ミカサ)『もう時は巻き戻せない。俺の「選択」は過りだった。それが全てだ』

女子4(アニ)『リヴァイ……』

リヴァイ(ミカサ)『今は何を選べばいいのか分からねえ。俺自身の人生さえも』

女子4(アニ)『そう……』

リヴァイ(ミカサ)『高校に進学する事で、俺の人生は変わるんだろうか。何の為に、そこへ行けばいい』

女子4(アニ)『………高校に行かないなら、世間の風当りは強いよ』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。それでもそこへ行く「理由」がない以上、俺にとっては高校に進学する意味はない』

女子4(アニ)『…………』

リヴァイ(ミカサ)『お前は自由に生きろ。俺に縛られて生きるんじゃない。俺はもう、誰の人生も抱え込めない』





暗転。





担任教諭(マーガレット)『本当に、進学しない気なの? リヴァイ君』

リヴァイ(ミカサ)『行きたいと思える学校がないんで』

担任教諭(マーガレット)『あなたは確かに素行の悪い部分はあるけど出席日数はきちんととっているし、授業も真面目に出ているし成績だって悪くない。あなたが起こした過去の騒動の殆どは、貴方が巻き込まれたパターンだとも聞いているわ。だから、入学させてくれる高校はある筈よ。こことかどう? 講談高校なら割と自由のある学校だし学費だって私学にしては安い方よ?』

リヴァイ(ミカサ)『高校進学する金はないんですが』

担任教諭(マーガレット)『特待生の方で入る手もあるわ。あなたの成績ならきっと行ける筈よ』

リヴァイ(ミカサ)『…………奨学金で行く形になる訳ですか』

担任教諭(マーガレット)『高校くらいは出た方がいいわよ。社会はそんなに甘くないわ』

リヴァイ(ミカサ)『………はあ』

担任教諭(マーガレット)『誰もが目的を持って高校に進学する訳じゃないのよ。とりあえず、行っておく生徒の方が多いと思うわ。特に高校は。細かい進路は大学に入ってからでも遅くはない……』

リヴァイ(ミカサ)『高校を出たら、美容師になれますかね』

担任教諭(マーガレット)『なれるわよ! あ、美容学校の方がいいなら、そっちを勧めてあげるけど』

リヴァイ(ミカサ)『出来ればそっちで考えたいんですが』

担任教諭(マーガレット)『分かったわ。だったら次の進路相談の時までに調べておくわね!』





担任教諭(マーガレット)『………ごめんなさい。リヴァイ君』

リヴァイ(ミカサ)『ダメだったんですか?』

担任教諭(マーガレット)『どうも美容学校って、結構お金がかかるようね。奨学金のサポートのある学校は県内になかったわ。県外にはいくつかあるみたいだけど』

リヴァイ(ミカサ)『つまり、金のない奴は美容師にはなれないと』

担任教諭(マーガレット)『入学金だけで20万から……100万を越えるところも珍しくないみたいね。高校を卒業してからの方が奨学金を受けやすいみたいだし。ここは高校を卒業してから、美容学校に行くのも手じゃないかしら?』

リヴァイ(ミカサ)『高校を出た方が選択肢の幅が広がると考えていいんですか』

担任教諭(マーガレット)『そりゃそうよ! 高校は出るべきよ! 社会に出る上では必須科目のようなものよ!』

リヴァイ(ミカサ)『分かりました』

リヴァイ(ミカサ)『受かるかどうかは分かりませんが、とりあえず、受けてみます。奨学金で行く形になるとは思いますが』

担任教諭(マーガレット)『分かったわ! こっちもそのつもりで準備を進めるわね!』








リヴァイ(ミカサ)『気が変わった』

女子4(アニ)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『とりあえず講談高校を受けてみる。そこに落ちたら進学は諦める』

女子4(アニ)『そう……良かった。じゃあ私もそこを受けるよ』

リヴァイ(ミカサ)『集英の方にいかないのか?』

女子4(アニ)『集英は金かかるからね。名門校だけど。頭良くても金のない奴らは講談に行く方が多いし』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……』

女子4(アニ)『高校でもよろしくね。リヴァイ。楽しみにしているよ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』




リヴァイ(ミカサ)『イザベル……』

リヴァイ(ミカサ)『今はお前の夢を、追ってもいいか?』

リヴァイ(ミカサ)『そこにたどり着けるかは分からねえが……』

リヴァイ(ミカサ)『今はそれ以外に、道が見えねえんだ』

リヴァイ(ミカサ)『………すまない』




そして高校入学した後の、講談高校の制服に変わる。

リヴァイ(ミカサ)は入学当初から目立つ存在だった。

成績はいい上に喧嘩も強い。おまけに女にモテるので、男達の嫉妬の対象になった。

極力喧嘩を避ける毎日だったが、それでも絡まれる時は絡まれる。

学校内で放課後、絡まれて教員が止めに入る。

男性教諭(ジャン)『こらー! また喧嘩かー?』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……』

男性教諭(ジャン)『校内で暴れるな! 特にリヴァイ、お前は特待生だろうが! 自重しろ!』

リヴァイ(ミカサ)『吹っ掛けて来たのは向こうだ。こっちは濡れ衣だってのに』

男性教諭(ジャン)『あー女獲ったとかか? 噂は聞いているぞ。お前、相当のプレイボーイだってな』

リヴァイ(ミカサ)『向こうが「抱いてくれ」っていうから付き合ってやっただけだ。それの何が悪いんだ』

男性教諭(ジャン)『お前は全人類の男を敵に回すような発言をするんじゃない! 先生、泣いちゃうぞ! モテないからな!』

リヴァイ(ミカサ)『………すんません』

男性教諭(ジャン)『謝られると余計に辛いからやめてくれ! ほら、お前、何か部活とかしないのか? 青春した方がいいぞ』

リヴァイ(ミカサ)『金に余裕がある訳じゃないんで。成績落としたらここには居られなくなるし』

男性教諭(ジャン)『そうか。だったら、ボランティア部とかどうだ?』

リヴァイ(ミカサ)『先生、人の話、聞いてました?』

男性教諭(ジャン)『ああ、聞いていたぞ。金のかからん部を勧めてみただけだが?』

リヴァイ(ミカサ)『そんな部活、ある訳ねえだろ』

男性教諭(ジャン)『いや、あるぞ? 掃除したり、施設をまわって子供の相手をする部活だ』

リヴァイ(ミカサ)『掃除? 子供の相手?』

男性教諭(ジャン)『金は全くかからんから1度来てみてくれ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

リヴァイ(ミカサ)『掃除するのか』

リヴァイ(ミカサ)『1回だけ、行ってやるか』






そして老人ホームに尋ねる事になるリヴァイ(ミカサ)だった。

男性教諭(ジャン)『今日はお年寄りの話し相手になるだけの活動だ』

リヴァイ(ミカサ)『は? 掃除するんじゃないんですか』

男性教諭(ジャン)『それはまた今度やる。今日は先にこっちの予定が入っていたからな』

リヴァイ(ミカサ)『騙された……』

男性教諭(ジャン)『まあ、いいじゃねえか。ほら、皆お待ちかねだぞ』

おばあちゃん1(エレン)『あら、若い子が来たわー』

おばあちゃん2(アルミン)『若い子はいいわ~』

リヴァイ(ミカサ)『はあ………』

そして適当に長い話を聞かされてぐったりするリヴァイ(ミカサ)だった。

ここは適当に毎回アドリブだ。台本には白紙だから練習中も適当に寸劇していた。

リヴァイ(ミカサ)『…………』

男性教諭(ジャン)『おまえ、すごいな。年齢関係なしに女を落とせるんだな』

リヴァイ(ミカサ)『自分でもびっくりした。あんなに懐かれるとは……』

男性教諭(ジャン)『いい事じゃねえか。うん。リヴァイにはそういう「気質」があるのかもしれねえな』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

男性教諭(ジャン)『それを「いい方向」に活かせればいいんだけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』



そしてまた別の日。

男性教諭(ジャン)『リヴァイは掃除がうまいなあ』

リヴァイ(ミカサ)『他の奴らが下手過ぎるだけだ』

男性教諭(ジャン)『いやー女の子だったらなあ。嫁に欲しいくらいだなあ』

リヴァイ(ミカサ)『男に抱かれる趣味はねえからな。先生、手出したら殺しますよ』

男性教諭(ジャン)『いや、先生もそっちの趣味はねえからな! そこは安心しろ!』

リヴァイ(ミカサ)『ふん……(掃除終了)』

男性教諭(ジャン)『しかし不思議な奴だな、リヴァイは』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

男性教諭(ジャン)『いや、それだけモテモテだと人生ウハウハだろうに。どこか冷めているというか……特定の女の子を絞り切れないのは分かるが、なんていうか、それだけモテているのにいつも寂しそうだな』

リヴァイ(ミカサ)『………だろうな。確かに寂しいですよ』

男性教諭(ジャン)『否定しないのか。何かあったのか?』

リヴァイ(ミカサ)『それを人に話したらドン引きされるのは分かっているので話しません』

男性教諭(ジャン)『ああ、そうか。そりゃ悪かったな』

リヴァイ(ミカサ)『先生こそ、彼女いないんですか?』

男性教諭(ジャン)『俺、モテないって言っただろ! いねえよ。ずっとご無沙汰だよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうですか。先生、もうちょっと外見に気遣った方がいいんじゃねえか?』

男性教諭(ジャン)『お? 綺麗にすればモテるか?』

リヴァイ(ミカサ)『まあ焼け石に水かもしれませんが』

男性教諭(ジャン)『お前なあ……(歯ぎしり)』

リヴァイ(ミカサ)『冗談ですよ。さてと、今日はもう帰ります』

男性教諭(ジャン)『勉強か? 相変わらず熱心だな』

リヴァイ(ミカサ)『いえ、この後、デートなんで』

男性教諭(ジャン)『死ね! お前は隕石に当たって死ね!』

リヴァイ(ミカサ)『ははは!』

そして舞台をはけていくリヴァイ(ミカサ)だった。










女子4(アニ)『リヴァイ、少し明るくなったね』

リヴァイ(ミカサ)『そうか?』

女子4(アニ)『うん。ちょっとだけ。いい事あった?』

リヴァイ(ミカサ)『うちの担任の先生が変な奴だから、ついつい』

女子4(アニ)『いい先生にあたったんだ。いいな。うちの担任はあんまり感じよくないよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。そりゃ残念だったな』

女子4(アニ)『名前、なんて言ったっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『あれ? 名前なんだったかな……』

女子4(アニ)『覚えてあげようよ! そこは!』

リヴァイ(ミカサ)『待て! 頑張る。頑張って思い出す……』

リヴァイ(ミカサ)『き……き……「き」なんとか先生だった筈だ』

女子4(アニ)『酷いwww「き」のつく先生って、キース先生?』

リヴァイ(ミカサ)『確かそんな感じだ! 顔は怖いが、悪い先生じゃねえな』

と、発表した瞬間、皆が爆笑した。

まさか、リヴァイ先生を担当した当時の担任男性教諭が若かりし頃のキース先生だったとは。

20年以上前のキース先生だから、今よりは少し砕けた印象の先生なんだよな。

女子4(アニ)『そっかあ。良かったね。リヴァイを理解してくれるいい先生なら』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、悪くはねえかな。あと「ボランティア部」とかいう部活動に週一で活動する事になった』

女子4(アニ)『へーそりゃ凄い。あんたが部活に入るなんて、ねえ』

リヴァイ(ミカサ)『週一だしな。金もかからんし。掃除したり、子供の相手をしたり、年寄りの話を聞くだけの簡単な活動だ。気分転換には丁度いい』

女子4(アニ)『ふふ……良かったあ。リヴァイがちょっとだけ元気になって』

リヴァイ(ミカサ)『……そんなに元気、なかったか?』

女子4(アニ)『魂がどっか行ってる感じだったからね。とりあえず、気持ちの整理ついたみたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『当面の目的が出来たからな。これからは出来るだけ、喧嘩もやらないように気を付けるさ』

女子4(アニ)『その方がいいね。問題起こしたら停学くらったり、下手すると退学になっちゃうかもしれないし』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。………誘われても女を抱かない方がいいんだろうか』

女子4(アニ)『あんたが1人に絞らないのが悪い! (バシッ)』

リヴァイ(ミカサ)『んな事を言われてもな………』

と、天を仰ぎながら女子4(アニ)と手を繋いで舞台をはけるのだった。

そんな訳でまずはリヴァイ編から先に進みます。
イザベルの件をスルーして演劇をするのは難しかったので、
リヴァイ先生もそこは吹っ切れました。

今日はここまで。次回またノシ

リヴァイ導入編だけでこれだけって、どんだけ超大作なんだw
本人監修とはいえずいぶん赤裸々な脚本だな
とりあえずこれまでのアレコレは、大体のところ来るもの拒ますなリヴァイの自業自得だということが分かった(笑)

>>543
大体そんな感じ(笑)

マリーナ『この頃のリヴァイ少年は女に誘われては誘いに乗るプレイボーイであり、またそれを知った上でも女が群がっていたので、男の嫉妬はそれはもう、凄まじいものであった』

マリーナ『挑まれてはぶちのめしていたせいで、とうとう、それが学校側に「忠告」される事態になり、一時的に短期間の停学処分となってしまった』




停学処分明け。男性教諭(ジャン)が放課後、リヴァイ(ミカサ)に説教をしていた。

男性教諭(ジャン)『はあ、全くお前はもう……特待生のくせに停学食らってどうする。2回目食らったら、奨学生の資格を剥奪されるぞ』

リヴァイ(ミカサ)『すんません……キース先生。とりなして貰って』

男性教諭(ジャン)『まあ、今回の件も逆恨みに近い事件ではあったが……お前、何でそこまで女に「弱い」んだ』

リヴァイ(ミカサ)『うっ……』

男性教諭(ジャン)『俺から見れば「サービス過剰」にしか見えんぞ。いい加減、その女癖の悪いところをなおしたらどうだ?』

リヴァイ(ミカサ)『俺の方からは決して誘っていないんですが。後、俺がこんな風にいい加減な人間だって事は周囲も了承済みです』

男性教諭(ジャン)『いい加減ねえ……俺には反対にしか見えないが』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

男性教諭(ジャン)『むしろ根は「くそ真面目」だろ。お前は。部活動をしている時や授業態度は同じお前だと思えんくらいにギャップがある。…………ハーレム王にでもなるつもりか?』

リヴァイ(ミカサ)『いえ、別にそういう訳じゃないんですが』

男性教諭(ジャン)『だったらそろそろ、ちゃんと自分と向き合ってどうにかしろ。お前に特定の「彼女」さえ出来さえすれば、喧嘩の数も少なくなる筈だ。1人、それっぽい子がいなかったか?』

リヴァイ(ミカサ)『…………いたような、いなかったような』

男性教諭(ジャン)『惚けるな。まあ、1人に絞ればその彼女を「守る」のが大変かもしれんがな。少なくとも、お前自身のその「病的」な「サービス過剰」なところは、少し見直した方がいいと思うぞ』

リヴァイ(ミカサ)『病的ですかね』

男性教諭(ジャン)『病気に見える。女を好きというより、まるで「女に尽くす事に」何か意味があるように見えるが」

リヴァイ(ミカサ)『…………尽くしているように見えますか』

男性教諭(ジャン)『普通は自分から「ナンパ」して取りにいくもんだろ。男のくせに受け身だな。リヴァイは。自分の好みじゃない女まで、自分の懐に入れる必要はないんだぞ』

リヴァイ(ミカサ)『むー……』

男性教諭(ジャン)『女の味方をするのは構わんが。いつまでも「皆のヒーロー」で居続けるのは止めた方がいい。本当に「大事な女」が出来た時に、お前、後悔するかもしれんぞ』

リヴァイ(ミカサ)『そうですか……』

男性教諭(ジャン)『今はピンとこないかもしれないが……この状態が「いい状態」だとは自分でも思ってないんだろ』

リヴァイ(ミカサ)『そうですね。確かにその通りだ』

リヴァイ(ミカサ)『少し、女子との距離を考えてみます』

男性教諭(ジャン)『冷却期間も必要だろう。必要なら、逃げ場所くらいなら貸してやるから必要な時は言ってくれ』

リヴァイ(ミカサ)『分かりました』








マリーナ『1度目の停学処分から明けた後、リヴァイ少年は今までの自分の行動を見直して女子との距離を少し取るようにした』

マリーナ『しかし時既に遅く、リヴァイを慕う女子の熱が過熱し、放課後、追っかけられるようになってしまう』

マリーナ『逃げられると負いたくなるのが人の心であり、それは当時の女子高生達も同じだった』




リヴァイ(ミカサ)『やれやれ。やっと諦めたか』

女子生徒の集団を撒いてから、ひょいと姿を現すリヴァイ(ミカサ)だった。

リヴァイ(ミカサ)『さて………帰るか』

と、とある教室の教壇から顔を出した直後、

教室に別の人の気配が入って来たのでまた慌てて隠れるリヴァイ(ミカサ)だった。

女子4(アニ)のクラスの担任教員とその他の女子生徒だった。

男性教諭(マルコ)『ちょっと君達、さすがにスカートが短すぎるんじゃないか?』

女子4(アニ)『………』

女子1(クリスタ)『校則は違反していませんけど…』

男性教諭(マルコ)『本当かなあ? ちょっと検査させて貰うよ?』

女子2(ユミル)『な……直接触ってくるとか! これ、セクハラですよね!』

男性教諭(マルコ)『何を言っている。検査だよ。検査! ほら。ひざ小僧が見えたらダメだろう? 膝が隠れるのが原則だから……』

女子3(サシャ)『ひゃああ! やめて下さい! スカートの検査じゃないですよコレ!』

女子1(クリスタ)『半分隠れているから違反じゃありません!』

男性教諭(マルコ)『全部隠すのが暗黙の了解ってやつだろう。徐々に短くして気づかせない作戦かい? まあ、誘っているのだとしたら、先生はそういうのは嫌いじゃないが…』

その直後、教壇の下に隠れていたリヴァイ(ミカサ)が飛び出して、後ろからその教員をぶん殴った。


ゴス!


っていう物凄い音がして、男性教諭が前のめりに倒れる。

女子4(アニ)『リヴァイ?! あんた何でここにいるの?!』

リヴァイ(ミカサ)『たまたまだ。苛ついたからぶん殴ってやった』

女子4(アニ)『停学明けたばっかりの癖に何やってるのよ! 馬鹿! 先生殴ったら、さすがに庇いきれないよ?!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。かもしれんな。すまん』

男性教諭(マルコ)『うっ……』

そこで男性教諭が起き出して、

男性教諭(マルコ)『今、後ろから殴ったのは誰だ?!』

リヴァイ(ミカサ)『俺だが』

男性教諭(マルコ)『貴様! 確かこの間、問題を起こした特待生だな?! 先生を殴っていいと思っているのか?! 職員会議にかけて退学処分にしてやるぞ!』

女子1(クリスタ)『待って下さい! 今のは、どうみても先生が悪い……』

男性教諭(マルコ)『ああ?! 自由をはき違えて校則スレスレの恰好をしているお前らが悪いんだろうが!! お灸をすえてやろうとしただけだったのに。暴力を振るった側の方が明らかに悪いだろうが!!!』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。それは重々承知の上だが………もう一発殴らせて貰う!』


ゴス!


男性教諭(マルコ)が再び倒れた。そしてそれを見下げてリヴァイ(ミカサ)は言い放った。

リヴァイ(ミカサ)『暗黙の了解とは何だ。そんなものは明文化されていないルールの事だろう。「膝が隠れる程度」とあるなら、その度合いは人によって解釈が異なるのは当然だろうが。もし強制したいのであれば「膝が全部隠れる程度」と初めから明記するべきだ。それをしないで、女子生徒に直接触って嫌がらせのように検査をする事の方が「悪い」ことのように俺は思えたが?』

男性教諭(マルコ)『へ、屁理屈を言うんじゃない! この世には、そういう「曖昧」な部分が多数ある! それを知らないでよくも……』

リヴァイ(ミカサ)『屁理屈だろうな。ただ、あんたは俺の知っている教師に比べたらクソだな。いやクソ以下だ。少なくとも、ここにいる女は全員、綺麗どころだからな。タイプがそれぞれ違う、いい女を「自分の趣味」で選んで触わりたかっただけだろ?』

男性教諭(マルコ)『き、貴様!』

女子1(クリスタ)『やめて! リヴァイ! これ以上言ったら、あんたの立場が悪くなる一方だよ! とりあえず、今は謝って! 私達の事はいいから!』

女子3(サシャ)『ダメですよ! これ以上、先生に逆らったら本当に退学になっちゃいますよ!』

リヴァイ(ミカサ)『断る。俺は間違った事をした覚えはない』

男性教諭(マルコ)『その言葉、後悔させてやるぞ!』

そして男性教諭(マルコ)は教室を出て行って、女子は全員、頭を抱えた。

女子2(ユミル)『カッとなり過ぎだろ。本当に停学になったらどうすんだよ…』

女子4(アニ)『気持ちは有難いけど……今のはそこまでする必要なかったよ? リヴァイ』

女子3(サシャ)『そうですよー。リヴァイが退学になったら私、嫌ですよー!』

女子1(クリスタ)『でもあの先生、何か綺麗な女子には全員、ああやって難癖つけてるらしいよ』

リヴァイ(ミカサ)『何だって? お前らだけじゃなかったのか? 被害者は』

女子1(クリスタ)『う、うーん……。スカートだけじゃなくて、上の服とかの絞り方とかも難癖つけるし。うちの高校、そこまで制服に厳しくない筈だから、よほど酷い改悪しない限りは大丈夫な筈なんだけど』

女子4(アニ)『なんかでも、そういう「動き」はあるらしいよ。校則をもう少し厳しくしようっていう』

女子3(サシャ)『ええ?! そうなんですか!?』

女子4(アニ)『うん。何でも校内の風紀が乱れすぎているから校則を厳しくしようっていう。……リヴァイが喧嘩ばっかりしていたのも原因かもしれないけど』

リヴァイ(ミカサ)『うっ……俺のせいでもあるのか』

女子4(アニ)『先生達が徐々に動き出しているらしいって、噂が出ているんだよ。来年から校則が一気に厳しくなるかもとか』

リヴァイ(ミカサ)『それは……すまない事をしたな』

女子2(ユミル)『いや、それはリヴァイのせいだけじゃねえだろ。喧嘩を起こしていたのはリヴァイだけじゃねえしな。うちの高校は「自由」なところが校風ではあるけど、それがだんだん、度を超えてきているから1回締めておこうって事じゃねえの』

女子4(アニ)『かもしれないね。はあ……何か騙された気分だけど』

女子3(サシャ)『そうですよね。自由だと思って入学したら、次の年からガラッと変わったら「何の為に」入ったか分からなくなりますよね!』

女子1(クリスタ)『でも、今は下手に反抗しない方がいいと思うな。リヴァイも出来るだけ抑えて。ね?』

リヴァイ(ミカサ)『………分かった』





マリーナ『しかし翌年、生徒達の不安は的中した』

マリーナ『校則の内容が大幅に改正されて、校則の取り締まりが一気に厳しくなったのだ』

マリーナ『リヴァイが17歳なる年。つまり高校2年生になった年の12月。その事件は起きた』

マリーナ『男性教諭達による、女子生徒の集団指導が行われたのである』

マリーナ『当時、女子高生だった生徒はのちに語る』

マリーナ『あれは「指導という名の、集団セクハラだった」と』

マリーナ『行き過ぎた「指導」が表沙汰になったのは、1人の生徒の反逆からだった』

マリーナ『そう、あのリヴァイ少年は事件が起きた次の日、単身職員室に乗り込んで、暴力事件を起こしてしまったのである』

マリーナ『この事件は当時、新聞にも掲載され、のちに講談高校の信用問題となり、信頼が失墜する事になる』

マリーナ『問題を起こしたリヴァイ少年の「名前」は公開される事はなかったが、それでもこの問題は一時、教育委員会の方でも問題となり、当時の担当教諭は辞職の道を辿る事になった』

マリーナ『そして、この問題を起こしてしまったリヴァイ少年は結果的に高校を中退させられる事になり、それ以後は仕事を転々として1人で生きていく事になる』

マリーナ『しかし高校を中退したような人間に対し、世間の風は冷たかった』

マリーナ『彼はどの職についても長続きする事はなく、クビにさせられ、所持金も底を尽きかけ、流浪の生活をしていた』

マリーナ『ヤクザにでもなって生きるしかないと、諦めかけたその時……』

マリーナ『彼の元に、1人の男性教諭が現れるのであった……』

少し間をあけて続ける。

マリーナ『リヴァイ少年が青年へ成長する過渡期とも言える年齢、つまり19歳になった12月25日に、その人物と出会った』

マリーナ『その男性教諭の名は「エルヴィン」と言った。彼は自宅付近のゴミ捨て場で、憔悴しきったリヴァイ青年と出会うのだった』

エルヴィン(アーロン)『こんなところで何をしているんだい?』

リヴァイ(ミカサ)『………』

無言でエルヴィン先生を見上げる。手には子猫のぬいぐるみ付きだ。

エルヴィン(アーロン)『一体、何をしているんだい? こんなところで。補導されるよ?』

リヴァイ(ミカサ)『俺はもう19歳だ』

エルヴィン(アーロン)『!』

リヴァイ(ミカサ)『来年になったら20歳になる。もう子供じゃねえんだよ』

マリーナ『当時のエルヴィン先生は、当時のリヴァイ先生をみて「中学生」かと思いました』

エルヴィン(アーロン)『……保護者の方はいないのか?』

リヴァイ(ミカサ)『初めからいねえよ。俺はいつも一人だった』

エルヴィン(アーロン)『…………』

リヴァイ(ミカサ)『なあ、あんた』

エルヴィン(アーロン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『この子猫、あんたが飼ってやってくれないか? 俺はこいつを助けてやれない』

エルヴィン(アーロン)『それは無理だよ。私は犬猫を飼う趣味はない』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……』

エルヴィン(アーロン)『………』

リヴァイ(ミカサ)『俺にまともに就職する能力があれば、こいつを養ってやれるんだがな……』

エルヴィン(アーロン)『!』

雷のような音のSE。この時のエルヴィン先生の心情を表している。

エルヴィン(アーロン)『就職してないのか?』

リヴァイ(ミカサ)『高校を中退したような奴は、どこもまともに雇ってくれない。運よく採用されても、トラブル起こしてすぐクビになる。所持金も残りわずかだ。後一か月、これだけで生き延びられたら奇跡だな』

と言って千円札を1枚だけ見せる。

リヴァイ(ミカサ)『こうなったらもう、生きる為にヤクザにでもなるか。連絡先、分かんねえけど、探せばどうにかなるかな……』

エルヴィン(アーロン)『何を言っているんだ。ヤクザなんてろくな職業じゃない。ヤクザなんて、やめておけ』

リヴァイ(ミカサ)『だったら他にどうすればいいんだ?』

エルヴィン(アーロン)『!』

リヴァイ(ミカサ)『あんた、他に生きる方法を知っているのか? 知っているなら、俺に教えてくれ』

エルヴィン(アーロン)『…………』

重苦しいムードの曲が流れる。当時のエルヴィン先生の心情がこんな感じだったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『すまん。見ず知らずの、あんたに聞くような事じゃなかったな』

そしてリヴァイ(ミカサ)は立ち上がり、その場を去ろうとするが……

エルヴィン先生はそれを咄嗟に引き留めたのだった。

リヴァイ(ミカサ)『……子猫引き取ってくれるのか?』

エルヴィン(アーロン)『いや……』

ごくりと唾を飲み込むSE付きだ。

エルヴィン(アーロン)『いや、引き取るのは君自身だ』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

エルヴィン(アーロン)『子猫ごと、君を引き取ろう。うちに来い』

リヴァイ(ミカサ)『はあ?』

そしてエルヴィン(アーロン)はリヴァイ(ミカサ)を無理やり抱え上げて拉致った。ここ、ミカサを持ち上げられたのが体格的にアーロン先輩だけだったから必然的にアーロン先輩がエルヴィン先生に決定したんだよな。

リヴァイ(ミカサ)『ちょ……ちょっと待て!? 意味が分からん! 俺ごと引き取るって……何考えているんだてめえは!』

エルヴィン(アーロン)『うちに着いたら詳しく話す。いいから来い!』

リヴァイ(ミカサ)『てめえ! 自分でもやってる事、意味分かっているのか?! これ、誘拐だぞ! 人を勝手に拉致るんじゃねえ!!!』

エルヴィン(アーロン)『大丈夫。ギリギリセーフだ』

リヴァイ(ミカサ)『アウトだろうが!!! ちょっと、降ろせ! 頼むから降ろせ!』

エルヴィン(アーロン)『はい、あともう少しだから黙ろうね。子猫が怖がっているよ?』

リヴァイ(ミカサ)『うぐ!』

子猫を引きあいに出されて反撃できない。

エルヴィン(アーロン)『はい、着いた。さすがに階段は抱えて登るのしんどいから歩いてくれる?』

リヴァイ(ミカサ)『何階まで登るんだ』

エルヴィン(アーロン)『私は4階に住んでいるよ。ここは教職員用のマンションなんだ』

リヴァイ(ミカサ)『てめえ教師か! 近づくんじゃねえ!!』

エルヴィン(アーロン)『教師は嫌いなのか?』

リヴァイ(ミカサ)『大っ嫌いだな。この世で1番、ゲスな職業だと思っているくらいだ』

エルヴィン(アーロン)『ははは……よほど嫌な先生に出会ってしまったようだね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、1人を除いては、だけどな……』

エルヴィン(アーロン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『まあいい。話くらいは聞いてやるが……とりあえずこいつに先にミルク飲ませてやってくれ。あんたが飼ってくれるのが条件だ』

エルヴィン(アーロン)『了解した。すぐに用意するよ』

そして場転。エルヴィン先生の部屋を再現して話が続く。

エルヴィン(アーロン)『単刀直入に言おう。私と暫く一緒に暮らさないか』

リヴァイ(ミカサ)『断る。何でいきなり他人と同居生活しねえといけないんだ』

エルヴィン(アーロン)『子猫ごと、君を引き取りたいんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『子猫だけ引き取ってくれりゃいいだろうが!』

エルヴィン(アーロン)『私は子猫の世話なんてしたことがない。君がここで世話すればいいだろう?』

リヴァイ(ミカサ)『う……』

エルヴィン(アーロン)『知らないよ? うっかり子猫を死なせてしまうかもしれない。君が直接面倒みた方が安全だと思うけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『きたねえ大人だな。ちっ……』

エルヴィン(アーロン)『暫く、ここに居てくれるね?』

リヴァイ(ミカサ)『俺は言っておくけど、男に抱かれる趣味はねえからな? 手出したら、殺すぞ』

エルヴィン(アーロン)『ん? そういう経験があるのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『というよりその可能性しか思い浮かばないんだが? この急展開は』

エルヴィン(アーロン)『そういうのじゃないよ』

リヴァイ(ミカサ)『だったらいったい何なんだ。あんたの下心は何処にある?』

エルヴィン(アーロン)『ただの勘だ』

リヴァイ(ミカサ)『はあ?』

エルヴィン(アーロン)『博打打ちの勘、かな。何かこう、降ってきたんだよ。たまにあるんだ。そういうのが』

リヴァイ(ミカサ)『芸術家が変にハイテンションで作品を作る、アレみたいな感じか?』

エルヴィン(アーロン)『それに近い感覚かもしれないね。うん。「天啓」みたいなものだ。神様がそうしろと、私にお告げしたんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『神なんて酔狂なものを信じているのか。アホな奴だな』

エルヴィン(アーロン)『もちろん、いつも信じている訳じゃないけど。今回だけは信じてみる事にしたんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『はー……』

と脱力するリヴァイ(ミカサ)だった。

リヴァイ(ミカサ)『………腹減った。頭も腹もすっからかんで深く考えたくねえ』

エルヴィン(アーロン)『だったら飯を用意しよう。何か出前でも取ろうか』

リヴァイ(ミカサ)『……助かる』

そしてカツ丼を食べる2人だった。勿論、ここでは食べるフリだけどな。

リヴァイ(ミカサ)『で? 俺は何をすればいい? ここで俺も子猫みたいに飼われるのはごめんだぞ』

エルヴィン(アーロン)『とりあえず、疲れを癒してくれればいい。寝ていないんだろう? 目の下のクマが酷いよ』

リヴァイ(ミカサ)『疲れているのは確かだが…』

エルヴィン(アーロン)『子猫も寝ちゃったよ。一緒に寝ればいいじゃないか。詳しい事は起きた時に話すから』

リヴァイ(ミカサ)『……絶対、手出すんじゃねえぞ?』

エルヴィン(アーロン)『まだ疑っているの? ないから! 絶対!』

リヴァイ(ミカサ)『ふん………』

ゴロリ、とその場で床の上で横になってスヤスヤとあっという間に眠ってしまい、その上に毛布をかけてあげるエルヴィン先生だった。








リヴァイ(ミカサ)『演劇の裏方だって?』

エルヴィン(アーロン)『ああ。今、丁度人手が足らなくてね。手伝ってくれる若い子が欲しかったんだ。未経験者でも体力があれば構わない。1から全部教えるからね』

リヴァイ(ミカサ)『俺は演劇なんかに興味を持ったことはないんだが』

エルヴィン(アーロン)『別に構わないよ。裏方はそういうのじゃないからね。物を作ったり壊したり運んだり、支えたりって感じかな』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。今日からその「裏方」ってやつをやればいいんだな?』

エルヴィン(アーロン)『うん。スタッフと混ざって作業する事になるけど。紹介してあげるから大丈夫だよ』

そしてエルヴィン先生が大道具メンバーと顔を合せる。

ここではマーガレット先輩、スカーレット先輩、ガーネット先輩、オルオ先輩、ペトラ先輩、そして俺とアルミンとマルコも大道具メンバーとして参加した。

エルヴィン(アーロン)『皆で協力していい舞台を作り上げようね』

そして普段やっている作業を皆の前で披露した。なぐりでトンカンしたり、組み立てたりだな。

最初は戸惑いながらも真面目に作業をするリヴァイ(ミカサ)が、日を追うごとにぐんぐん上達していく。

でもだんだん、女性メンバーがリヴァイ(ミカサ)の事を気に入り過ぎて、チーフ役のオルオ先輩がキレる。

チーフ(オルオ)『てめえ! 俺の女に色目使ってんじゃねえ! 殺されてえのか!』

大道具5(ペトラ)『はあ? あんたの女になった覚えはないんですけど! リヴァイ君、超仕事早いし! 文句言う暇あったら手動かしなさいよ!』

チーフ(オルオ)『うぐ!』

大道具5(ペトラ)『気にしないでいいからねーあんな馬鹿! リヴァイ君、分かんないところあったらお姉さんが教えるから』

リヴァイ(ミカサ)『は、はあ……』

大道具1(マーガレット)『はあはあ…あの細腰堪らん。触りたい』

大道具2(スカーレット)『待て待て。そこは平等に愛でないと。皆の物でしょうが』

大道具3(ガーネット)『あの身長で力持ちっていうギャップ堪らん。鼻血出る』

という変態三人娘が似合い過ぎて毎回吹く。会場もちょっと笑いが起きた。

そんなリヴァイ先生を見てオレとアルミンはすっかりしょげる役だ。

そして遂にチーフ(オルオ)がキレて修羅場と化す。リヴァイ(ミカサ)は『もう知るかああああ!』と逆キレして大道具を一か月で辞めてしまった。

リヴァイ(ミカサ)『もううんざりだ! 人が助っ人に来てやったっていうのに……男どもは嫉妬するわ、女は逆にセクハラしてくるわ! 変態の集まりじゃねえか! 大道具の女どもは! 俺は触るのはいいが、ベタベタ好き勝手に触られるのは好きじゃねえ!』

エルヴィン(アーロン)『あらら。限界だったみたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『そもそも、何でこんな真似をやらせた! エルヴィン! 俺に一体、何をやらせたいんだお前は!』

エルヴィン(アーロン)『んー答えはもうちょっと待っててくれる? 結論がまだでないから』

リヴァイ(ミカサ)『一体、いつまでこんな意味不明な同居生活を強いられるんだ俺は……(げんなり)』

エルヴィン(アーロン)『まあまあ、のんびりいけばいいよ。タダ飯食うのが嫌だっていうなら、家の事をして貰えればお小遣いあげるよ?』

リヴァイ(ミカサ)『それは家政婦として俺を雇いたいと受け取ってもいいのか?』

エルヴィン(アーロン)『気になるのであれば、それでも構わないけど』

リヴァイ(ミカサ)『その方が有難い。飯の世話とか掃除をしてやるから、金はその代金としてくれ。家賃は差し引いてもいいから』

エルヴィン(アーロン)『変なところで生真面目だねえ。リヴァイは』

リヴァイ(ミカサ)『うるせえ。男が長い間、ヒモ生活出来るか! 家政婦なら立派な仕事だろ』

エルヴィン(アーロン)『そっちの仕事もした事あるの?』

リヴァイ(ミカサ)『受けたけど、年齢で跳ねられた。若過ぎると相手に信用されないらしくてな。募集は20歳以上の女性がメインだったんだよ』

エルヴィン(アーロン)『世知辛い世の中だねえ。全く』



マリーナ『こうしてエルヴィン先生のところに転がり込んだ当時のリヴァイ先生は暫くの間、家政婦のような事をしながら一緒に生活をした』

マリーナ『そしてその一か月後、エルヴィン先生に再び「天啓」が訪れる事になる』


ここで迷子の子供を特別出演だ。

リヴァイ先生の卒業生の子供で、参加してくれる子に実際に協力して貰い、ミカサに肩車して貰う。

そしてすぐに母親が子供を回収するだけの寸劇だ。


エルヴィン(アーロン)『何故、そんな面倒な事をした?』

リヴァイ(ミカサ)『あ?』

エルヴィン(アーロン)『迷子センターにさっさと連れて行けばいいだろう? そこまでする必要があったのか?』

リヴァイ(ミカサ)『あー……』

少し迷ったように答える。

リヴァイ(ミカサ)『肩車すれば、見つけられるかなって思った』

エルヴィン(アーロン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『親も探している筈だし。迷子になった地点からあまり動かない方が、見つかる確率はかえって高いんだよ。こういう時はちょっとじっとして、様子を見る方がいい。それでも見つからない時は、さすがに迷子センターに届けるけどな。まあ、俺もよく迷子にはなるし、子供の気持ちも分かるから一緒に居てやった方がいいかなって思ったんだよ。余計なお世話かもしれんが』

そして照れくさそうにそっぽ向く。その直後、2度目の雷のSE。

エルヴィン(アーロン)『そうか。そういう事だったのか』

リヴァイ(ミカサ)『……?』

エルヴィン(アーロン)『いや、何でもない。そうだ。リヴァイ、君は酒を飲める口かい?』

リヴァイ(ミカサ)『未成年だが、飲めない事もない。なんだ? 飲ませてくれるのか?』

エルヴィン(アーロン)『裏方スタッフの打ち上げだよ。慰労会を兼ねて私が奢ってあげよう』

リヴァイ(ミカサ)『おいおい、教師の癖に未成年に酒勧めていいのか? 捕まるぞ?』

エルヴィン(アーロン)『黙っていればバレないよ☆』

リヴァイ(ミカサ)『ふん……まあ、つきやってもいいが』

そして自宅に帰ってから、酒を食らうリヴァイ(ミカサ)。

アルミンが再び立札を持って『良い子は真似しないように!』という注意書きを見せて観客は爆笑していた。

泥酔したリヴァイ(ミカサ)の手を使ってこっそり契約書を書かせて、ニヤリと笑うエルヴィン先生だった。

そして翌日。

リヴァイ(ミカサ)『は……しまった。寝落ちたか』

エルヴィン(アーロン)『やあおはよう。リヴァイ。良く寝ていたようだね』

リヴァイ(ミカサ)『今何時だ』

エルヴィン(アーロン)『朝の10時過ぎだね。ちょっと寝坊したみたいだね。今日は日曜だし。ゆっくりしていいよ』

リヴァイ(ミカサ)『あーそうか。…………ん?』

テーブルの上の契約書に気づいてしまうリヴァイ(ミカサ)だった。

リヴァイ(ミカサ)『大検の案内……? なんだこれ? ………!?』

エルヴィン(アーロン)『出願期間は4月に入ってからになるけど。今は1月末だし。試験日は8月予定だから、今から準備すれば十分間に合うよ』

リヴァイ(ミカサ)『待て! いきなり何の話だ! それに、この契約書は……』

エルヴィン(アーロン)『うん。大検受けて、1発合格して大学に入学出来なかったら、リヴァイは一生、私の物になりますっていう契約書♪』

リヴァイ(ミカサ)『おぞましい契約書を書かせるんじゃねえええ! 俺はこんなのにサインした覚えないぞ!!!』

エルヴィン(アーロン)『ごめん。酔っている時に書かせちゃった。てへっ♪』

リヴァイ(ミカサ)『書かせちゃった。じゃねえよ!!! てへって可愛く笑うな! 苛つく!!!』

エルヴィン(アーロン)『でも、大検受けてくれるよね?』

リヴァイ(ミカサ)『いやいや、頭の中を整理させろ。まず、何故俺が大検を受ける必要がある?』

エルヴィン(アーロン)『君に必要な事だからだ。その様子だと、まともに学校を卒業していないんだろ?』

リヴァイ(ミカサ)『……高校は中退したが』

エルヴィン(アーロン)『だろうね。でないとそこまでクビになる筈がない。大学を卒業すれば世界が変わるよ。まともな仕事にもありつける。資金なら心配するな。全額私が出してやる』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何でそこまでする。慈善事業にしては笑えないぞ』

エルヴィン(アーロン)『慈善事業じゃない。未来への「投資」だ。私は昨日、確信したんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『……何を』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイ、君は「教師」になるべきだ。その資質がある。その為に必要な事は全て私が協力してやろう』

リヴァイ(ミカサ)『!』

リヴァイ(ミカサ)が呆気にとられて動けない。

リヴァイ(ミカサ)『ふざけるな!!! よりにもよって何故、教職なんかつかないといけないんだ!!!』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイにはその「資質」があるからだ。何なら億単位で金を賭けてもいいくらいだが?』

リヴァイ(ミカサ)『ははは………笑えねえ冗談だな』

エルヴィン(アーロン)『私は本気だ』

リヴァイ(ミカサ)『だったら尚更笑えねえな。俺が教師だって? 天地がひっくり返ってもあり得ねえ』

エルヴィン(アーロン)『何故、そう思う』

リヴァイ(ミカサ)『俺は教師をぶん殴って中退させられた。勿論、間違った事をしたとは思っている。でも、カッとなるとすぐ人に暴力を振るうような人間が教師になんかなれるわけねえだろ。もし教師になっちまったら、暴力事件を起こしてすぐ辞めさせられるのがオチだ』

エルヴィン(アーロン)『君が暴力を振るうのには「理由」があるんじゃないのか?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、あるさ! どうしようもねえ下らない理由だがな! 殴った教師は行き過ぎた「指導」をして女子生徒を集団でセクハラしやがったからな。その指導の被害に遭った女の中には、俺のダチも含まれていた。自分でもやり過ぎたとは思ったが……あの時は教師の陰湿なやり方にキレて自分でもどうしようもなかったんだ』

エルヴィン(アーロン)『それは私が着任する前に起きた事件の事だね?』

リヴァイ(ミカサ)『………あんた、講談高校の教師だったのか』

エルヴィン(アーロン)『そうだよ。その事件については人伝えに私も聞いている。講談高校は「自由」な校風を続けていたのに、いきなりそんな方針に変えたら反発が起きるのも当然だ。確かにここ最近はヤンキーも増えて校内の風紀が若干、乱れてはいたようだが。それを正す方法としては間違っていたと私も思うよ』

リヴァイ(ミカサ)『あんたは、生徒の味方をしてくれるのか?』

エルヴィン(アーロン)『変えていくという事は、時間が必要な事だと思っている。私は「自由」を確保したまま、それでも風紀が乱れない学校こそが理想だと思っているが』

リヴァイ(ミカサ)『ははは………あんたがもっと早く講談高校に着任していれば、事件は起きなかったかもしれねえな』

エルヴィン(アーロン)『さあ? それはどうだろうね。私はまだまだ若輩者だ。出来る事なんて限られている。そもそも自分では教師という職業に向いているとは思ってないからね』

リヴァイ(ミカサ)『そういう奴に限っていい先生じゃねえか。俺は1人だけ、そういう先生を知っている』

エルヴィン(アーロン)『だとすれば、それは君にも同じ事が言えるんじゃないか?』

リヴァイ(ミカサ)『!』

エルヴィン(アーロン)『自分では「向いていない」と思っているならあえてやってみればいい。やらないで結論を出すのはそれはただの「食わず嫌い」にしか見えないけど?』

リヴァイ(ミカサ)『………………』

エルヴィン(アーロン)『勉学で分からない部分があれば、私が教えてやろう。こう見えても私は「世界史」の教諭だ。高校教育課程はどこまで習っている?』

リヴァイ(ミカサ)『高校2年の途中までだ』

エルヴィン(アーロン)『すれ違っていたんだね。残念だよ。君と学校内で出会えなかった事は』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。俺にもう少し堪え性があれば、あんたとは校内で出会っていたかもしれねえな』

エルヴィン(アーロン)『もう仕方がない事だ。まずは感覚を取り戻すところから始めよう。試験に必要なのは8~9科目だ。成績は当時、どの程度だった?』

リヴァイ(ミカサ)『特待生で合格したよ。特待生で入学したのに中退する奴なんざ前代未聞だとも言われたな』

エルヴィン(アーロン)『それは凄いね。だったら尚更教え甲斐がある。これは将来が楽しみだ』



マリーナ『こうしてリヴァイ青年はエルヴィン先生の元で暮らしながら勉学に励み、翌年の20歳の年にとある体育大に合格し、エルヴィン先生の元を去る事になる』

マリーナ『そしてその教育実習生時代に、遂にリヴァイ青年は「運命の人」と出会うのであった……』



ざわざわ……

遂にお待ちかねのシーンが来るぞ。オレも心の準備をしなくちゃな。

コンタクトをしたロングヘアの女子大生バージョンのハンジ先生に成りきって舞台に登場だ。

やっと次回でハンジ先生(女子大生)が登場です。
一旦ここで区切ります。ではまたノシ






リヴァイ(ミカサ)『教育実習、受けたくねえな……』

リヴァイ(ミカサ)『受けるのは4年次が原則らしいが、早く取る事も出来ない訳じゃないらしい』

リヴァイ(ミカサ)『4年に上がってからだと、卒論とかの関係で難しいだろうし』

リヴァイ(ミカサ)『後回しにしていたが、いい加減、受けに行く準備をするか……』




そして9月の新学期。その教育実習生は集ったのだった。

担当教員チーフ(アルミン)『えー、今年の教育実習生は3名だな。自己紹介をして貰おうか』

ハンジ(エレン)『はい! T大学在籍のハンジ・ゾエです! 講談高校のOGです! 専攻は生物です。宜しくお願いします!』

ファーラン(ジャン)『W大学在籍のファーラン・チャーチだ。専攻は数学だ。宜しく』

リヴァイ(ミカサ)『…………(*よそ向いていた)』

担当教員チーフ(アルミン)『ん? 最後の1人は、リヴァイ・アッカーマン? 自己紹介』

リヴァイ(ミカサ)『あ、はい』

リヴァイ(ミカサ)『F大学在籍のリヴァイ・アッカーマンだ。専攻は体育だ。宜しく』

担当教員チーフ(アルミン)『ふむ。今年は例年よりは少ないが仕方がないか。講談高校についてはどの程度、知っておる?』

ハンジ(エレン)『私にとっては故郷みたいな場所ですよ~卒業後もしょっちゅう帰省していますからね! 校舎の事も全部分かってますよ!』

ファーラン(ジャン)『俺はこの学校についてはあまり良く知りませんが、教育実習の依頼をして即OKが貰えたのでお願いしました。対応の早さに感心したので』

担当教員チーフ(アルミン)『ふむふむ。で、リヴァイは………まあ、お前は有名人だからな。むしろよくここに帰ってきたな』

リヴァイ(ミカサ)『戻るつもりはなかったんですが』

担当教員チーフ(アルミン)『私の事は覚えておるか?』

リヴァイ(ミカサ)『覚えていますよ。美術のピクシス先生ですよね。少し老けましたね』

ピクシス(アルミン)『あれから6年も経ったのだから当然だ。その後の行方を知らなかったから元気な顔を見れて安心したぞ。今度、一杯どうだ?』

リヴァイ(ミカサ)『遠慮します。暫く酒は自重したい気分なので』

ファーラン(ジャン)『なんだ。顔見知りばかりか。新参者は俺だけか』

ハンジ(エレン)『今度、一緒に飲みに行こうよ! 実習終わってからでもいいからさ!』

ファーラン(ジャン)『飲める口か。いいな。そういう女は嫌いじゃない』

ハンジ(エレン)『リヴァイも一緒にどう? 終わってから親睦深めようよ~』

リヴァイ(ミカサ)『馴れ馴れしくしないでくれ(プイッ)』

ハンジ(エレン)『ありゃ……』

リヴァイ(ミカサ)『俺はここに「義理」があって来ただけだ。やる事終えたらすぐ大学に戻るつもりでいる』

ハンジ(エレン)『ええ? そうなの? それは寂しいなあ。折角縁があって一緒になったのにぃ』

ファーラン(ジャン)『放っておけ。人付き合いの悪い奴はどうでもいいだろ』

ピクシス(アルミン)『まあまあ、そうツンケンするな。袖合う仲も多少の縁というもんだから、3人で仲良くするように。生物のハンジは私が担当するが、リヴァイとファーランの方には別の担当教諭がつく。紹介しよう』

フラゴン(エルド)『フラゴンだ。宜しく。体育科の教諭だ』

デニス(オルオ)『デニスだ。国語科の教諭だ。宜しく』

フラゴン(エルド)『俺達はどっちがどっちを受け持てばいいんですか?』

ピクシス(アルミン)『どちらでも良かろう』

フラゴン(エルド)『ではじゃんけんで決めようか。デニス先生、じゃんけん』

デニス(オルオ)『ポン』

フラゴン(エルド)『では私がファーランの方を受け持とう。リヴァイの方はデニス先生に頼むよ』

デニス(オルオ)『了解』


マリーナ『そして2週間程度の短い教育実習期間ではあるが、それぞれの教育実習生としての日々が始まったのだった』

マリーナ『忙しい日々の中、6年という歳月の流れを感じてリヴァイが感傷に浸りながら業務をこなしていると……』


ファーラン(ジャン)『………にしても、最近の女子高生は俺達の頃よりスカートが短いな』

リヴァイ(ミカサ)『おい、何いきなり言っている』

ファーラン(ジャン)『膝上が標準になってるだろ? 俺達が高校生の頃は膝下が普通だった』

リヴァイ(ミカサ)『俺の高校時代でも膝上の女はいるにはいたがな』

ファーラン(ジャン)『それはちょっと飛んでる子だろ。「平均」がだんだん変わってきたように感じるんだが気のせいか?』

リヴァイ(ミカサ)『時代の流れじゃないのか? そのうち太ももの真ん中あたりまでスカートを短くする時代が来るかもな』

ファーラン(ジャン)『そんな時代がきたら、教員は楽園だな』

リヴァイ(ミカサ)『ああ?! お前、今、なんつった? (ギロリ)』

ファーラン(ジャン)『冗談だ! マジに捉えるなよ。リヴァイはクソ真面目な教員だな』

リヴァイ(ミカサ)『そもそも教員になろうと思って教育実習を受けに来た訳じゃねえよ』

ファーラン(ジャン)『ああ、なんだ。お前も「嗜み」派か』

リヴァイ(ミカサ)『なんだそれ?』

ファーラン(ジャン)『教職の免許、持っているだけでも結構便利だぜ? 使わなくても、面接の時の話のネタに出来る。もし企業に受からなかった時の「保険」として持っている奴も多い。取れるんだったら一応取っておけっていうのが通説だろ? 俺もその口だが』

リヴァイ(ミカサ)『持っているだけでも便利なのか』

ファーラン(ジャン)『資格は取っておくに越したことはない。俺も教員になるかは分からんし。企業の方も視野に入れている。ま、あんまりマジで教育実習を受けに来た訳じゃないからな。お前と似たようなもんだな』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうか』

ファーラン(ジャン)『俺の事が気に食わんなら別に構わんが。俺もお前みたいな奴はあんまり好きじゃないからな。せいぜい、2週間だけお互いに我慢しようぜ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

そこで何も言い返さず、睨んでいると………

フラゴン(エルド)『おい、リヴァイ。次の体育の授業、手伝え』

リヴァイ(ミカサ)『あ?』

フラゴン(エルド)『お前はホームルームとかはデニス先生のクラスを受け持つが、授業そのものは同じ専攻の教員と一緒にやるんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『だったらどっちもまとめて俺の面倒をみてくれりゃいいじゃねえか』

フラゴン(エルド)『あ? やなこった。お前の噂は知っている。元問題児を誰が好き好んで担当するか。デニス先生に押し付けてやったんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……』

ファーラン(ジャン)『ふーん。あんた元問題児って事は、なんかやらかしたのか』

リヴァイ(ミカサ)『詳しくは聞かないでくれ。俺も話したくはない』

フラゴン(エルド)『せいぜい暴れるなよ? 今度暴れたら流石にどうにもならんからな』

リヴァイ(ミカサ)『喧嘩売っているのかてめえ……』

ファーラン(ジャン)『まあまあ、抑えろよ。教員と険悪になるなって!』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……』

ファーラン(ジャン)『面倒くせえ奴だな。本当にもう……』

と言いながら舞台をはける3人だった。





デニス(オルオ)『あー放課後のホームルームはお前に任せるから適当にやっておいてくれ。俺は先に帰るから』

リヴァイ(ミカサ)『は…? あんたいきなり何無茶振りを言い出して……』

デニス(オルオ)『帰って早く寝たいんだよ。適当にやってくれりゃいいから。じゃあな』

リヴァイ(ミカサ)『は? おい、ちょっと待て!』

リヴァイ(ミカサ)『本当に先に帰って行きやがった。嘘だろ……』

教壇の前にいきなり立たされて困るリヴァイ(ミカサ)だった。

リヴァイ(ミカサ)『あーデニス先生は急病で先に帰ってしまわれたので、今日の放課後のホームルームは俺が担当する。ホームルームって何やるんだ?』

生徒1(エーレン)『先生からのお知らせを聞いたりします』

リヴァイ(ミカサ)『連絡事項を言えばいいのか。分かった。まずは……』

と、職員会議での連絡事項を一通り伝える。

リヴァイ(ミカサ)『他に何かあるか? 俺も初めてこういうのやるから勝手が分からん』

生徒1(エーレン)『先生自身の話、聞きたいです』

生徒2(マーガレット)『質問とかしたいでーす』

リヴァイ(ミカサ)『はあ? いきなり何だ。何を聞きたい』

生徒3(スカーレット)『とりあえず、年はいくつですか?』

リヴァイ(ミカサ)『今年の12月で23歳になる。大学3年生だ』

生徒4(ガーネット)『彼女はいますかー?』

リヴァイ(ミカサ)『女の友達なら沢山いるが。彼女と呼べる女は今はいない』

生徒4(ガーネット)『今はって事は、以前はいたんですねー?』

リヴァイ(ミカサ)『…………多分』

生徒2(マーガレット)『ひどいwwww先生、もしかしてプレイボーイですか?』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、抱いた女の数だけで言えば3桁越えているかもしれんが……』

と、うっかり言った瞬間、教室内が『最低だー!!』という声で溢れかえった。

ゴミとか消しゴムが飛んできて慌てるリヴァイ(ミカサ)だった。

ここで補足説明です。

実際の教育実習は大学4年次に受けるのが原則です。
3年次に申し込んで細かい手続きをした上で、
翌年の5~6月、または9月に実習を行います。
そして自分の出身校(母校)で行いますが、母校が廃校になった場合は、
紹介を受けて別の学校に行く事になります。

このシリーズの作中では、実際の実習とは若干やり方が異なっています。
その辺はお話の都合上という事で、どうかご理解下さい。ではでは。

リヴァイ(ミカサ)『………あ、今のは冗談だ。本気にしないでくれ』

生徒5(マルコ)『本当ですか? そうは見えなかったなあ』

生徒6(ジャン)『羨ましい……! (ハンカチ噛んでる)』

生徒2(マーガレット)『特技とか、ありますかー?』

リヴァイ(ミカサ)『特技か………特技と呼べるか分からんが、バク転バク中、宙返りは得意だな』

生徒2(マーガレット)『ぜひやってみせて下さい!!』

リヴァイ(ミカサ)『ここじゃちょっと狭いから、机ひいてスペースを作ってくれ。そしたら出来る』

という訳で机をちょっと移動させて、その場で本当にバク転、バク中、宙返りを連続でやって見せたのだった。

生徒一同『『『おおおおおお!』』』

拍手喝采だった。会場も一緒に拍手をする。

リヴァイ(ミカサ)『大丈夫か? 当たらなかったか?』

生徒2(マーガレット)『余裕です!! 他には何が出来ますか?!』

リヴァイ(ミカサ)『あとは、逆立ち腕立てとか、片手懸垂とか……』

生徒2(マーガレット)『すごいww体育の先生ってのは伊達じゃないですね!』

リヴァイ(ミカサ)『唯一の特技のようなもんだからな』

生徒3(スカーレット)『腹筋とか凄そうwwww』

生徒2(マーガレット)『ちらっとでいいんでみたいです!』

と、女子がだんだん悪乗りしてくる

リヴァイ(ミカサ)『ああ? ………一瞬、だけだからな(チラッ)』

ミカサの腹筋、チラ見せきたー! 1秒だけだ。

それ以上はオレが許さん。ここのシーン、本当はカットしたかったんだけどなあ。

生徒2(マーガレット)『すごいwww』

生徒3(スカーレット)『あざーっす!!!!』

生徒6(ジャン)『先生! オレと勝負しましょう! 腕相撲で!!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ? 言っておくが怪我するぞ。ハンデやる。3人がかりでこい』

生徒1(エーレン)『いいんですか?』

生徒5(マルコ)『なら3人でやってみようか』

という訳で3対1で腕相撲だ。それでもリヴァイ(ミカサ)の瞬殺だった。

生徒6(ジャン)『つえええええ! 滅茶苦茶つえええええ!!!』

リヴァイ(ミカサ)『だから言ったのに』

生徒5(マルコ)『先生、タワーブリッジ出来ますか?!』

リヴァイ(ミカサ)『出来ると思うが……いや、さすがに技をここではかけないぞ? 怪我するからな』

生徒6(ジャン)『だったら別の技でも構いません。オレ、相手になるんでやって見せて下さい!』

リヴァイ(ミカサ)『はあ? 怪我するぞ。やめておけ。俺の技は手加減が難しい』

生徒6(ジャン)『そこを何とか! オレ、プロレス好きなんですよ!』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ……』

と、言いながら上着を脱いで本当に軽い技をかけ始める。

生徒6(ジャン)『イタイイタイイタイイタイ! マジでいてええええ!!!!』

生徒一同『『『あはははは!!!!』』』

キッツ(キーヤン)『おい! 隣のクラス、うるさいぞ! 静かにホームルームを………』

リヴァイ(ミカサ)『あ………』


シーン……


生徒にプロレス技をかけているのがバレてしまった…。

キッツ(キーヤン)『リヴァイ先生、ちょっと職員室に来ようか(ぴきぴき)』

リヴァイ(ミカサ)『あ、はい……』



マリーナ『そしてその日、リヴァイ先生はしょっぱなから他の先生に呼び出されて怒られるという伝説を残したのだった…』



あ、キース先生が笑ってる。キッツ先生、頭抱えて思い出しているようだ。

リヴァイ先生も思い出して笑っているようだ。ハンジ先生も笑っていた。

当時の生徒達も数名、会場に来ているようで「そういや、あったなあこんな事」と言い合っている声が聞こえた。

そして時間が少し経って、

フラゴン(エルド)『えー今日は柔道の授業を行う』

フラゴン(エルド)『2人1組でペアを組め。まずは俺とリヴァイ先生で見本を見せる』

フラゴン(エルド)『技、かけられる側だからな。抵抗するなよ』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……』

フラゴン(エルド)『舌打ち禁止! 俺が先輩だからな!』

リヴァイ(ミカサ)『何段だ?』

フラゴン(エルド)『初段だが?』

リヴァイ(ミカサ)『俺は5段だけどな』

フラゴン(エルド)『う………黒帯かよ』

リヴァイ(ミカサ)『とりあえず、黒だが、時間があればもう少し上も目指すつもりでいるが?』

フラゴン(エルド)(ジロリ)

リヴァイ(ミカサ)(ジロリ)

と、何故か先生同士で火花を散らす。

そして2人の技を見せ合う。あっという間に、リヴァイ(ミカサ)が優勢になって勝ってしまった。

リヴァイ(ミカサ)『……とまあ、こうなる訳だ』

フラゴン(エルド)『てめえ! 負けろって言っただろうが!』

リヴァイ(ミカサ)『俺の方が実力が上なのに何故負けないといけない。手加減の必要性を感じないから勝ったまでだ』

生徒達の拍手喝さいだった。

生徒1(エーレン)『すごいですね。あっという間に相手の懐に入り込んで勝った』

リヴァイ(ミカサ)『こんなのは基本だな。よし、次は背負い投げもレクチャーしてやろう』

フラゴン(エルド)『くそおおおお!』

とこんな感じで体育の先生同士では火花を散らし合いながら教育実習が進んでいった。





そんなこんなで生徒ウケは悪くない感じでリヴァイ先生は教育実習をこなしていく。

デニス先生はいつもやる気が無さそうな感じで、ホームルームは殆どリヴァイ先生に丸投げしていた。

初日は先に帰ると言う暴挙を起こしたが、2日目以降は一応、立ち会って様子を見守った。

そしてやっと半分の日程を済ませた頃、

デニス(オルオ)『おまえ、真面目みたいだな。もう、朝のホームルームも丸投げしていいか?』

リヴァイ(ミカサ)『え……ええ?』

デニス(オルオ)『なんか俺より話がうまいみたいだし、生徒達も懐いているようだから任せるわ。じゃ、明日から宜しく』

リヴァイ(ミカサ)『え……あ、ちょっと?!』

デニス(オルオ)が先に舞台からはける。1人とり残されるリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『なんなんだあの先生は。やる気あるのか?』

リヴァイ(ミカサ)『まあいい。少しずつではあるが、慣れてはきたから頑張るか。はあ……』

そして後半戦に突入して朝のショートホームルームもリヴァイ先生が行う事になる。

リヴァイ(ミカサ)『あー今日から朝の方のSHRも俺がやる事になった。すまんな』

生徒1(エーレン)『別にいいですよ』

生徒2(マーガレット)『今日も雑談して下さいww』

リヴァイ(ミカサ)『朝は時間が勿体ないからしない。今日は連絡事項だけ伝える』

と、やるべき事をてきぱきこなして終了する。

リヴァイ(ミカサ)『あー雑談とは違うが、今日は夕方から雨降るかもしれんぞ』

生徒2(マーガレット)『え? でも天気予報じゃ「くもり」でしたよ?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それはあくまで予報だからな。俺の勘は結構当たる。だから遅くまで残らずにさっさと帰った方がいいかもしれん。部活のある子は、遅くなるようだったら、もし雨が降り出したら傘持って来てない奴は先生の車で乗せて帰ってやってもいいぞ』

生徒2(マーガレット)『ええええ? いいんですか?! それって』

リヴァイ(ミカサ)『最近、物騒だしな。4人までなら座れるだろ。普通車だからな』

生徒2(マーガレット)『雨降れ! むしろ降れ!』

と言い出す女子も居て笑い出す教室だった。




しかしSHRを終えた後、デニス先生は初めてリヴァイ先生に忠告した。

デニス(オルオ)『あー今のはいかんよ。リヴァイ先生』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

デニス(オルオ)『ちょっと生徒との距離、近づぎ過ぎていませんか? 噂が立ったらどうするつもりですか。ダメですよ。教師と生徒は禁断の関係なんですから』

リヴァイ(ミカサ)『あくまで雨が降り出せば、の話ですよ。傘持って来てない奴が可哀想ですし』

デニス(オルオ)『そんなものは、傘を貸し出せばいい話です。学校にもいくつか貸し出せる傘くらいありますからね。遠いところから来ている子もいますけど、それは自業自得です。甘やかすだけが教育ではありませんよ』

リヴァイ(ミカサ)『はあ……すみません』

デニス(オルオ)『一応、忠告して置きましたからね?』

と、言われてちょっと頭を掻いてしまうリヴァイ先生だった。









リヴァイ先生の予想通り、夕方から雨が降り始めた。

リヴァイ(ミカサ)『ほらな。やっぱり降り出した。風が湿っていたからな…』

そして放課後、教室に遅くまで残っていた女子2名に捕まった。

生徒2(マーガレット)『リヴァイ先生ー! お言葉に甘えてもいいですかー?』

生徒3(スカーレット)『車に乗せて下さいー!』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。駐車場に一緒に行くぞ』

生徒2(マーガレット)『やったー!』

忠告はされたが、あくまで耳に入れるだけでいう事は聞かない。

そして車の付近で、リヴァイ(ミカサ)は自分の車に乗る前にある人物と出会う。

ハンジ(エレン)『わーん…どうしよー!』

リヴァイ(ミカサ)『どうした?』

ハンジ(エレン)『雨降ってる最中にコンタクト両方落としちゃったよー! 今日、眼鏡持って来てないから、全然見えないから運転して帰れないよー』

リヴァイ(ミカサ)『あー……』

と、困った顔になるリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『家、何処だ。家まで乗せていってやろうか? ついでに』

ハンジ(エレン)『え? いいの? (ぱあああ!)』

という訳で3人の女性を車の中に乗せて雨の中、帰るのであった。

ここは実際の車を運び入れる訳にもいかないから、車の中身のシートのみを舞台に運んでそれに座る。

そして先に女子生徒を送って帰ると、ハンジ先生と2人きりになるリヴァイ先生だった。

車の中で2人きり。まだブーンと走り続ける。

ハンジ(エレン)『あー助かったああ! もうどうやって帰ろうかと困ってたんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『そんなに見えないのか?』

ハンジ(エレン)『眼鏡かコンタクトがないと、全然見えないよ。この距離でもボケて見えるしね』

リヴァイ(ミカサ)『何? そんなに目が悪かったのか。お前。不便だな』

ハンジ(エレン)『いや、眼鏡持って来てなかった私が悪いんだけどね。今日、うっかり鞄の中に予備の眼鏡入れ忘れてきちゃってね。どうしようもない時は、学校に泊まろうかなって思ってた』

リヴァイ(ミカサ)『おいおい……』

ハンジ(エレン)『でも助けてくれてありがとう! 今度何かお礼させてよ』

リヴァイ(ミカサ)『別に礼をされる事の程じゃねえよ』

ハンジ(エレン)『でもでも! 助かったよ? 本当、ありがとうね!』

リヴァイ(ミカサ)『………どの辺まで見えないんだ。この距離でも見えないか? (*少しだけ、身を乗り出す)』

ハンジ(エレン)『まだボケボケだね。もうちょっと近づかないと……これでやっとはっきりかな(ギリギリまで顔を近づける)』

このシーン、ちょっとドキッとするんだよな。

会場も「おお?」という歓声が沸いた。リヴァイ先生、今どんな顔してんだろ?

舞台からはちょっと見えなかったけど。顔を離してチラリと見たら、ハンジ先生の方が顔を隠していた。

思い出して恥ずかしいんだろうな。リヴァイ先生はニヤニヤしているだけだった。

リヴァイ(ミカサ)『そいつは本当に不便だな。いっそずっと眼鏡にしたらどうだ?』

ハンジ(エレン)『いやーでも、一応、女子大生ですから? お化粧しておかないと、いろいろ問題あるかなーって思ってね』

リヴァイ(ミカサ)『眼鏡は眼鏡で乙だろう。俺は嫌いじゃないけどな』

ハンジ(エレン)『あら意外! 眼鏡っ子好きなの???』

リヴァイ(ミカサ)『嫌いじゃねえよ。外した時に気合が抜ける感じが好きだが』

ハンジ(エレン)『ん? それって結局、素顔が好きなんじゃない?』

リヴァイ(ミカサ)『女もよく「ネクタイ外す瞬間が好き」とかいうだろ。アレと似たようなもんだ』

ハンジ(エレン)『ああ、そういう事ね! それなら納得!』

リヴァイ(ミカサ)『生活に困るようなら眼鏡主体の生活の方がいいんじゃねえか? 俺もそう何度も助けてやれるか分からん』

ハンジ(エレン)『あら? もしかしてまた助けてくれるの?』

リヴァイ(ミカサ)『助けてやれる時は助けるが。そういう場面にまた遭遇するとは限らないだろ』

ハンジ(エレン)『やー気持ちだけでも嬉しいわー! 本当、ありがとう! あんたイケメンだねえ!』

リヴァイ(ミカサ)『あーまあ、良く言われるけどな』

ハンジ(エレン)『あはは! 否定しないんだ! 凄いねえ』

リヴァイ(ミカサ)『……そろそろ着いたぞ。ここでいいんだよな?』

と、車を停める音のSE。座席から降りて、おっとっと。よろけるハンジ先生だ。

リヴァイ(ミカサ)『躓くなよ。部屋まで戻れるか?』

ハンジ(エレン)『やー無理かもー』

リヴァイ(ミカサ)『雨降ってるし、滑りやすいしな。掴まれ』

そしてハンジ先生を自宅アパートの玄関まで送ってあげたリヴァイ先生だった。

ハンジ(エレン)『あーちょっと待ってね』

リヴァイ(ミカサ)『?』

ハンジ(エレン)『眼鏡眼鏡眼鏡……あーみつかんない! ま、いっか。これあげる!』

リヴァイ(ミカサ)『なんだこれは』

ハンジ(エレン)『ミニサボテンだよ! 水あんまりあげないで育てられるから初心者向きだよ。良かったら育ててみてよ』

リヴァイ(ミカサ)『観葉植物か』

ハンジ(エレン)『癒されるから。緑っていいよね。とりあえずのお礼って事で。じゃ、また明日頑張ろうね!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、また明日』

そしてミニサボテンを手の中に抱えながら、一言。

リヴァイ(ミカサ)『………サボテンって、食えるのか?』

と、言った直後、観客の笑い声がちょっとだけ漏れたのだった。










エルヴィン(アーロン)『教育実習の方は順調に進んでいるみたいだね』

サボテンをエルヴィンの自宅のリビングに置いてリヴァイ(ミカサ)が話す。

リヴァイ(ミカサ)『今のところは、な。キッツ先生には1度怒られたけど、それ以外は何とかこなしているよ』

教育実習の間だけ、エルヴィン先生の自宅に転がり込んでいるリヴァイ先生だった。実習が終わればまた大学に戻る予定だ。

エルヴィン(アーロン)『それは良かった。思っていた以上に馴染んでいるようだね』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。自分でも驚いている。案外、悪くねえって思っている自分がいる事に』

エルヴィン(アーロン)『生徒ウケはダントツみたいだしね。3人の中ではリヴァイが1番、生徒に人気あるようだよ。どんなマジックを使ったんだい?』

リヴァイ(ミカサ)『別にマジックって程じゃねえ。ただ、あいつらの相手をしていたら、ついつい放課後まで一緒になって遊んだり。昼休みも遊んでいるだけだな。たまに遊び過ぎて他の先生から苦情が来る』

エルヴィン(アーロン)『レポートとか大丈夫? 実習中は山程提出物があるでしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『それも大丈夫だ。ちゃんとやっている。生徒との関係がどういうより、俺の場合は目上の人間とのトラブルの方が多いからな。そっちの方が頭痛い』

エルヴィン(アーロン)『担当教諭とうまくいってないのかい?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、デニス先生とは別にトラブルは起こしていないが。しょっちゅう喧嘩になるのはフラゴン先生の方だな。何かと張り合って喧嘩みたいになってしまう』

エルヴィン(アーロン)『柔道5段だって言ったせいじゃない? 帯色で負けると悔しいもんね』

リヴァイ(ミカサ)『なら努力して段位あげろって話だな。俺もあと1年あれば7段までいけるとは思うが』

エルヴィン(アーロン)『黒帯で十分でしょ。それ以上欲張らなくていい。他に時間をかけるべき事は山ほどあるからね』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、確かにな。ところでエルヴィン』

エルヴィン(アーロン)『何?』

リヴァイ(ミカサ)『今日、初めてデニス先生に注意されたんだが、生徒を車で送迎するのは禁止されているのか?』

エルヴィン(アーロン)『いや別に? 私も帰りが遅くなる生徒は送ってあげたりする事もあるよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか』

エルヴィン(アーロン)『何? 注意されちゃった? あ、誤解が発生するからやめておけって事? 女子生徒を1人だけ家まで送ってあげたとか? それだったら、やめた方がいいかもね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、2人だ。しかも今回は同じ教育実習生の女も連れて行ったから3人乗せた』

エルヴィン(アーロン)『なら問題ないんじゃない? 何が問題なのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『………恐らく「雨降ったら車で乗せてやる」って皆の前で言った事かもしれん』

エルヴィン(アーロン)『ん? そんな事を言ったの? いつ?』

リヴァイ(ミカサ)『朝のSHRの時だな。最近は俺がSHRを任される事が増えて、其の時につい言ってしまったんだが』

エルヴィン(アーロン)『あーそういう事か。確かに「皆の前」で宣言したのは良くないね』

リヴァイ(ミカサ)『そうだったのか』

エルヴィン(アーロン)『そういうのを許し始めたら、中には「送迎」を期待する子が出てくるから。あくまで「偶然」そうなった事にしないといけないね。はっきりさせない方が利口だね』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。では今度から気を付けよう』

エルヴィン(アーロン)『でも凄いね。生徒を送ってあげるなんて。教職員でもそれをやっているのはごく一部の先生だけだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『ん……まあ、最近物騒な世の中だしな。特に女は、危ない目に遭わせたらいかんだろ』

エルヴィン(アーロン)『ふふ……キース先生の言っていたのは本当の事みたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『ん? 何の話だ』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイは年下の女にめっぽう弱いっていう話だよ。甘えられるのが好きみたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『別に年下だけが好きって訳じゃねえ。同級生だって好きだし、年上も、変な女じゃなければ大丈夫だ』

エルヴィン(アーロン)『いやいや、嬉しそうだよ。リヴァイ。やっぱり君は「子供」が好きなんだね』

リヴァイ(ミカサ)『そうなんだろうか? 自分じゃ良く分からん』

エルヴィン(アーロン)『だと思うよ。だからこそ、自然と君の周りには人が集まるんだ。人柄の良さがにじみ出ている』

リヴァイ(ミカサ)『俺はそんなに「いい人」でもねえけどな……』

エルヴィン(アーロン)『ああ、女を3桁抱いたから?』

リヴァイ(ミカサ)『おま、その話、何処から……ああ、生徒がしゃべったな!』

エルヴィン(アーロン)『しょっぱなの冗談にしては凄いネタを出してきたから私も笑ったよ。高校時代もなかなかのプレイボーイだったそうじゃないか。女の子、うちに連れて来たいなら遠慮しなくてもいいんだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、さすがにエルヴィンの自宅にまで連れ込もうとは思わん。やる時はラブホテルがあるし大丈夫だ』

エルヴィン(アーロン)『今、特定の彼女はいないの?』

リヴァイ(ミカサ)『高校時代の馴染みの女と大学入ってからも逆ナンされて何人か……ただ、定期的に会うというより、向こうが気がむいたらこっちに連絡をくれるから、其の時に会ってやる程度だな。サイクルはバラバラだ』

エルヴィン(アーロン)『そういうの、二股かけているって世間じゃ言うんだけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺がこういういい加減な奴だってのは女の方も全員、知っているからな。隠してない。その上で別れないって言っているから。勿論、中には「もう無理」だって言って自分から離れた女もいるが、大抵は「やっぱりリヴァイがいい」と言い出して戻ってくるから女ってのは不思議な生き物だな』

エルヴィン(アーロン)『OH……そっちの顔のリヴァイはあまり生徒の前では見せない方がいいような、見せて嫌われてしまうところを見てみたいような』

リヴァイ(ミカサ)『本当に見せたら最低野郎だと言われるだろうな。自分でもそう思っている』

エルヴィン(アーロン)『自分から「この女、いいな」って思って動いたことはないのか? 全部、誘われた時だけ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。初めての女からずっとそうだ。女の方から求められて俺が応えたケースばかりだ』

エルヴィン(アーロン)『そうか。だったらもし、そういう恋愛に出会ってしまったら、君はその時、どうなってしまうんだろ?』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

エルヴィン(アーロン)『ちょっと心配だね。今の形態に慣れ過ぎて、まともな恋愛に躓かないといいけど……』

と、言ったエルヴィン先生の言葉に今更グサッとささる「今のリヴァイ先生」だった。

リヴァイ『あいつ、今思うと預言者だったんだな』とか言ってる声がこっちまで聞こえてきて隣のハンジ先生に叩かれていた。

リヴァイ(ミカサ)『俺にまともな恋愛を求める方が間違っていると思うが』

エルヴィン(アーロン)『いやいや、分かんないって。ある日突然、自分から好きになっちゃう相手が目の前に現れたりする事もあるかもしれないよ? もしくは既に出会っているのに自覚がなくて気づいてない場合もある。今はそういう「曖昧な形」の繋がりしかないかもしれないけど。未来なんてどう転ぶか分からないと思うが』

リヴァイ(ミカサ)『でも、そういう大事な女を作ったら、なくした時に辛くないか?』

エルヴィン(アーロン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『………………あ、いや、何でもねえ。明日もある。もう寝るよ。すまん』

そして先にリヴァイ先生は部屋の奥に引っ込んで逃げたのだった。










次の日。ハンジ先生の方からリヴァイ先生に「お礼」の品を手渡す。

ハンジ(エレン)『やー昨日はありがとう! おかげで助かりました! これ、改めてのお礼だよ! 良かったら食べて!』

リヴァイ(ミカサ)『ひよこ饅頭か。可愛らしくて食べにくいんだが』

ハンジ(エレン)『味は保証するよ♪』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ。まあ、頂くけどな。で、今日もコンタクトなのか? 無理しない方がいいんじゃねえのか?』

ハンジ(エレン)『今日は眼鏡も持参しているから大丈夫だよ。万が一の時は眼鏡に戻すから』

リヴァイ(ミカサ)『そうまでして化粧したいもんなのか? 化粧しなくても十分美人だと思うが』

ハンジ(エレン)『騙されないよ! そんな事言う男に限ってチェック厳しいって、私の女友達が言っていたからね!』

ファーラン(ジャン)『なんだお前ら、いつの間に仲良くなったのか?』

リヴァイ(ミカサ)『別に』

ハンジ(エレン)『ちょっと酷くない?! もう十分仲良くなったよね?!』

リヴァイ(ミカサ)『さあな? たった1週間そこらで友人面されるのもな』

ハンジ(エレン)『お菓子持参した相手に対してそれ言う?! このドS男め!』

リヴァイ(ミカサ)『ドS? 今のがSってやつなのか? 俺は全くそのつもりはなかったが?』

ハンジ(エレン)『ひどいよおおおリヴァイが苛めるよおおおお』

ファーラン(ジャン)『お前、本当口悪いな……女相手にも容赦ねえな』

リヴァイ(ミカサ)『ククク………』

と笑いながらひよこ饅頭を頂き『美味い』と一言漏らす。

ハンジ(エレン)『美味しいでしょ? 味は保証するって言った意味分かった?』

リヴァイ(ミカサ)『まあな。だがそれはそれ、これはこれだ』

ハンジ(エレン)『もー酷い! こうなったら次は別のお菓子で釣ってやるんだから!』

ファーラン(ジャン)『いや、それはもうただ貢いでいるだけだからな。騙されるなよ』

ハンジ(エレン)『あ、そっか! 危ない危ない。危うく悪い男に引っかかるところだった』

リヴァイ(ミカサ)『まあ大体合ってる』

と言いながら、

リヴァイ(ミカサ)『次の授業の準備に行くから、俺は先に出る。じゃあな』

ハンジ(エレン)『あ、待って。だったら私も途中まで一緒に行く』

リヴァイ(ミカサ)『なんで』

ハンジ(エレン)『フラゴン先生にちょっと用事があってね。ついでだからついていくよ』

リヴァイ(ミカサ)『ふーん』

そして2人で廊下を歩き出す。その先は体育館だが……

ハンジ(エレン)『あれ? フラゴン先生いないねえ?』

リヴァイ(ミカサ)『体育館の倉庫の方にでもいるんか?』

ハンジ(エレン)『次の授業、何?』

リヴァイ(ミカサ)『確か今日からバスケの予定だった筈だ。ボールの調子でもチェックしてんのか?』

と、倉庫の鍵を持って鍵を開けた先に………

ハンジ(エレン)『!』

リヴァイ(ミカサ)『!?』

女子生徒(ペトラ)の上に覆い被さっているデニス(オルオ)先生がそこに居た。

慌てて離れる2人だが、女子生徒(ペトラ)はその隙をついてハンジ(エレン)の方に逃げてきた。

ハンジ(エレン)『だ、大丈夫?! これは一体、どういう事なの?!』

デニス先生は答えない。女子生徒(ペトラ)は泣きじゃくるだけで説明も出来ない状態だった。

その空気で全てを察したリヴァイ先生は自然と体が動いてしまい………





ゴス!




音と共に暗転。しばしの闇を作り出す。

ざわざわざわざわ……

ざわSEを使いながら職員会議でつるし上げられるリヴァイ先生だった。

ここは実際に演じてしまうと尺が大幅にとられてしまうので、音声だけで表現し、罵倒の声やら意見やら混乱の情景を作り出す。

その中央に、リヴァイ(ミカサ)が俯いて立ってまるで攻撃を全て受け入れるように堪える。

そしてそこにハンジ先生がリヴァイ先生の反対側に立って、背中合わせに立つ。

ハンジ(エレン)『確かに先に暴力を振るってしまったのは問題だったと思いますが、その現場は私も見ました! 彼女は確かに教員に組み敷かれて、泣いていました! あれは明らかにそういった行為に及ぼうとしていました!』

リヴァイ先生はその声にハッとさせられて振り向いて俯いてしまう。

ぎゅっと、拳を握って。その声に助けられるように。顔を上げて同じように立ち向かう。

リヴァイ(ミカサ)『権力を笠にしてセクハラするような奴はクソ以下だ。事に及ぼうとしていたのは明らかだった。俺とハンジが遭遇しなかったら、ずっと隠し通すつもりだったんだろ!』

デニス(オルオ)『そう見えただけでしょう。私は手を出していない。相手の衣服も乱れていなかったのに、濡れ衣もいいところだ。あの時、私はたまたま彼女と倉庫の中にいただけだ。中にいた理由はここでは話せない』

リヴァイ(ミカサ)『てめえええ………白をきるのもいい加減に……』

ピクシス(アルミン)『よさないか。2人とも』

ハンジ(エレン)『でも……!』

ピクシス(アルミン)『今回の件は、ちと微妙な問題だ。リヴァイ先生が暴力を振るった件は不問にする。その代わり、この件を表沙汰にはしないようにしてくれ』

リヴァイ(ミカサ)『この学校はいつまで腐っているんですか。これじゃ、俺が在学中の時と何も変わらない』

ピクシス(アルミン)『…………腐って見えるか。リヴァイには』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。腐っているように見える。教師も悪くねえかもしれないと一瞬でも思った俺が馬鹿だった。こんな学校、やっぱり戻ってくるんじゃなかった』

ピクシス(アルミン)『リヴァイ、少し落ち着け』

リヴァイ(ミカサ)『ああ?!』

ピクシス(アルミン)『そう、頭に血をのぼせてばかりいると「真実」が見えなくなる事もあるぞ』

リヴァイ(ミカサ)『なんだって?』

ピクシス(アルミン)『真実の全てを今は話せん。ここで言うべき事ではないからな。ただ、時が経てば、お主にも分かる時が来る。今は、一旦ひいては貰えんか』

リヴァイ(ミカサ)『………ちっ!』





そして場転。リヴァイ先生とハンジ先生が2人で話し合う。

ハンジ(エレン)『びっくりしたよ。まさか電光石火の勢いでデニス先生、殴りに行っちゃうんだもの』

リヴァイ(ミカサ)『すまん。頭に血がのぼると、つい……』

ハンジ(エレン)『いや、でもすっきりしたよ! アレはどう見ても、セクハラ……いや、それ以上の可能性もあったよ? 女子生徒も泣いていたし、間一髪だったんじゃないかな』

リヴァイ(ミカサ)『ピクシス先生の言う「真実」って何なんだ。意味が分からねえ。俺はもしかして間違った事をしちまったのか?』

ハンジ(エレン)『リヴァイ、落ち着こう。大丈夫。あんたは間違っていない。あの現場を見たら、誰でも殴りたくなる。私だって殴りそうだった。あんたが殴らなかったら、私が行っていた! 絶対に!』

リヴァイ(ミカサ)『分からない。分からない。俺は……俺は……』

ハンジ先生はここで横からリヴァイ先生をぐっと自分の方に抱き寄せて、ずっと「大丈夫」を繰り返したらしい。

それはとても長い時間のように思えたけど、そこでリヴァイ先生は、やっと落ち着いて、顔をあげた。

リヴァイ(ミカサ)『すまなかった。ありがとう。少し落ち着いたよ』

ハンジ(エレン)『どういたしまして。これでこの間のお礼、完全に返せたよね?』

リヴァイ(ミカサ)『お釣りがくるくらいだな』

ハンジ(エレン)『うん。大丈夫だからね。とにかく、元気出していこう!』

リヴァイ(ミカサ)『あ、ああ……』


ドクン………


ドクン………


ハンジ(エレン)『じゃあね。私も仕事あるから。また後で』


ドクン………


ドクン………


マリーナ『この時の事件の真相は、ここではあえて語りません』

マリーナ『それはまた、リヴァイ先生とは違う別の物語になってしまうから』

マリーナ『この時のリヴァイ先生は、自分の胸の奥深くに、この時の女性の姿を焼き付ける事になり』

マリーナ『そして、この時、自分が致命的な間違いをやってしまった事に、後で気づく事になるのです』

マリーナ『そう。教育実習が終わった後、リヴァイ先生はそれに気づいてしまうのです』






実習終了後…。

リヴァイ(ミカサ)『あ………』

リヴァイ(ミカサ)『あの女の名前、何だったっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『自己紹介していた時、ぼーっとしていたから、聞いていなかった』

リヴァイ(ミカサ)『しかも連絡先、交換すらしていない……』

リヴァイ(ミカサ)『あ、でも自宅は分かる。1度行ったからな』

リヴァイ(ミカサ)『いや、でもいきなり押しかけたらおかしくないか? 変な奴に思われるんじゃ……』

リヴァイ(ミカサ)『あああああああ?! 俺はどうしたら………』

今回はここまで。
いろいろ痛い展開もありますがすみません。
そしてやっとここでリヴァイ先生がハンジ先生に堕ちました。
でもまだハンジ先生だと認識していないので、ややこしい(笑)

ではまたノシ

(この時点で名前知らないはずだが>>573で「俺とハンジ」と言ってるよ)

リヴァイ(ミカサ)がかっこいいのは想像に難くないが、
ハンジ(エレン)はどんなもんだろう
いいシーンじゃないけどオルオさん役得おめでとうw

>>577
台本ミスってますね。すんませんorz
舞台上の台詞ミスだということで…。

数日後。

リヴァイ(ミカサ)『は! よく考えたらエルヴィンに聞けば分かるんじゃないか?』

リヴァイ(ミカサ)『あ、でもエルヴィンに聞いたら絶対ツッコミ入れられる』

リヴァイ(ミカサ)『あいつの事だ。「ん? 何? どういう事?」って根掘り葉掘り聞いてくる』

リヴァイ(ミカサ)『それをかわしきれる自信はこれっぽっちもねえ!』



一か月後…。

リヴァイ(ミカサ)『そうだよ! お礼! 菓子折りでも持参して会いに行けばいいじゃねえか!』

リヴァイ(ミカサ)『あいつだってひよこ饅頭くれたんだ! そういうのを手土産にすれば…』

リヴァイ(ミカサ)『自宅は覚えている。行ってみよう!』


マリーナ『しかし時すでに遅く、その当時のハンジ先生はリヴァイ先生が訪れた時には引っ越しをしていました』

マリーナ『ハンジ先生は元々、在籍の大学は他県にあり、教育実習の期間の前後、格安アパートを短期間、借りて帰省していただけだったのです…』



と、マリーナが報告した直後、会場がどっと笑いに包まれた。

ヘタレ過ぎるwwwwwという意味で。

ハンジ『あー本当、この時はごめんね。大学休めるの、1月程度だったからさ。丁度すれ違ってたんだよね』

リヴァイ『いいんだ……すぐに行動を起こさなかった俺が悪い』

と、リヴァイ先生が苦笑いである。

マリーナ『傷心のリヴァイ先生でしたが、時は過ぎていきます』

マリーナ『大学に戻ったリヴァイ先生は短期のアルバイトの傍ら、就職活動も視野に入れ始めます』

マリーナ『しかしどうもサラリーマンになる自分は想像出来ず、卒業後も肉体労働の仕事を掛け持ちする、今で言う「フリーター」のような生活を始めます』

マリーナ『土方仕事、宅配、トラックの運転手、舞台の裏方、高層ビルの窓の清掃等々、短期間でも稼げる仕事を掛け持ちしながら。まずはエルヴィン先生に援助して貰った金を返却しようとします』




リヴァイ(ミカサ)が大量の現金をエルヴィン先生の目の前に突き付ける。

エルヴィン(アーロン)『何の真似だい?』

リヴァイ(ミカサ)『金を返す。大学の進学に必要な分はこれだけあれば足りるよな?』

エルヴィン(アーロン)『利子までつけて返す気? 私は受け取らないよ』

リヴァイ(ミカサ)『何でだ』

エルヴィン(アーロン)『言っただろう。未来への「投資」だと。金を受け取る義理はないね』

リヴァイ(ミカサ)『俺も援助される義理はねえよ。いいから受け取ってくれ』

エルヴィン(アーロン)『やだ』

リヴァイ(ミカサ)『やだって……』

エルヴィン(アーロン)『やだやだやだやだ』

リヴァイ(ミカサ)『子供か! 何でそこまで頑なに拒否する!』

エルヴィン(アーロン)『受け取ったらリヴァイは教師になってくれない』

リヴァイ(ミカサ)『うっ……』

エルヴィン(アーロン)『教育実習も無事終えたし、後は正式に資格を取って、採用試験を受ければそれでいいじゃないか』

リヴァイ(ミカサ)『いや、無理だろ。教育実習中に問題起こしたような人間が採用される筈がねえ』

リヴァイ(ミカサ)『高校時代にもやらかしているし、もう俺は学校側のブラックリストに載ってもおかしくねえだろ』

エルヴィン(アーロン)『でも、生徒達との触れ合いは楽しかったんだろ?』

リヴァイ(ミカサ)『うぐっ……!』

エルヴィン(アーロン)『君の場合は先生との付き合いが問題なだけで、生徒とのそれはむしろ良好だった。在学当時もそうだったんだろ? 高校時代、君を慕う人間が大勢いたと、キース先生からも聞いている。女関係の逆恨みは多々あったようだが、それに関係しない男子とはうまくいっていたそうだし、大丈夫なんじゃないかな?』

リヴァイ(ミカサ)『でも……』

エルヴィン(アーロン)『とにかく、金は1円たりとも返さなくていいから。この金は、君自身がいつか必要になった時に使えばいい』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

エルヴィン(アーロン)『今すぐ答えが出ないなら待つから。それまでは別の仕事に就いても構わないよ。でも、私は待っているからね。リヴァイといつか、教師として仕事が出来る日を』

リヴァイ(ミカサ)『………分かった』




マリーナ『それからのリヴァイ先生は迷い続けました』

マリーナ『大学を卒業してからすぐに答えは出ず、暫くの間はフラフラと仕事を続けます』

マリーナ『この時、リヴァイ先生には2つの道がありました』

マリーナ『エルヴィン先生との契約はあくまで「大学を卒業するまで」であり、教師になる事までは含まれていませんでした』

マリーナ『なので、ここで選ぼうと思えば、他の仕事に就いて別の人生を選ぶ事も出来たのです』

マリーナ『リヴァイ先生が教師としての道を選んだきっかけはささいな事でした』

マリーナ『たまたま、街で居酒屋の仕事をしていた時に、教育実習時代の生徒達と再会したのです』






生徒2(マーガレット)『あ! リヴァイ先生だ! こんなところで何してんの?』

生徒3(スカーレット)『先生になったんじゃないんですか? 何で居酒屋? あ、採用試験落ちたとか?』

リヴァイ(ミカサ)『あ……お前ら、あの時の』

生徒2(マーガレット)『どもー! 20歳越えたんで酒飲みにきましたー!』

生徒3(スカーレット)『あの時は送って貰ってあざーっすwwww』

リヴァイ(ミカサ)『いや、というよりよく覚えていたな。俺の事を。もう2~3年前になるだろ』

生徒3(スカーレット)『そりゃあれだけ印象に残る教習生、なかなかいないですって!』

生徒2(マーガレット)『プロレス技をリクエストされて生徒にかける先生なんて前代未聞過ぎて超ウケたしwww』

生徒3(スカーレット)『あと、なんかいろいろ黒い噂もあったけどね。先生、実は元ヤンとか』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……やっぱりその辺はさすがにバレるか』

生徒2(マーガレット)『否定しないんだ! じゃあやっぱり?』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、そうだな。すまん……』

生徒2(マーガレット)『あははは! なんか全然、そんな感じに見えないけどね!』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

生徒3(スカーレット)『リヴァイ先生、怖くないもんね。あ、でもキレると怖いのかな?』

生徒2(マーガレット)『かもしれないね。でもあの頃楽しかったよね。2週間だけだったけど。教習生の中で1番、面白かったのって絶対、リヴァイ先生だよね』

生徒3(スカーレット)『うん。なんかこう、変な先生だなあと思いつつも、皆、絡んで突いていたよね。全部、丁寧にツッコミ返ししてくれるし』

生徒2(マーガレット)『だよねー。リヴァイ先生、教師向いていると思うけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『………………そう、見えたのか?』

生徒2(マーガレット)『あれ? 自分ではそう思ってなかったとか?』

リヴァイ(ミカサ)『あ……ああ。自分では全くそう思っていなかった』

生徒2(マーガレット)『そうだったんだー。勿体なーい。今からでも教師になればいいのに』

生徒3(スカーレット)『あ、でも金稼ぐのが目的なら教師にはならない方がいいらしいよ。企業とかに比べると給料は安いらしいから』

生徒2(マーガレット)『でも安定した仕事じゃん! 安くても安定している方がよくない?』

生徒3(スカーレット)『いやー私は大手の方がいいわ。理系だし。そっち行きたいよ』




マリーナ『今から13~14年前。つまり2000年代。この時代はバブル時代が終焉し、学生も就職に対する考え方が変わってきた時代でもありました』

マリーナ『バブル時代は「公務員」「教職」等の仕事は今よりも蔑んで見られていましたが、バブルが崩壊後、その考え方は一転し、安定した仕事を望む若者が増えてきたのです』

マリーナ『しかしこの時代から急激に少子化が進み、その採用枠も年々、減少傾向にありました』

マリーナ『そういった意味も含めて、ここでリヴァイ先生がぐずぐずしている事は、マイナスにしかなりません』

マリーナ『ここで決断出来たのは、リヴァイ先生にとっての「幸運」とも言えたでしょう』



生徒2(マーガレット)『でも大手も今は不安定なところも多いじゃない。私は公務員か教職希望だなー』

生徒3(スカーレット)『いやーでもまだまだ大手は強いよ? 四菱とか。全然待遇違うって聞くしー』

リヴァイ(ミカサ)『………すまん、お会計、して貰ってもいいか?』

生徒2(マーガレット)『あーごめんなさい! すっかり忘れてた! ええっと、はい』

リヴァイ(ミカサ)『毎度あり。またな』

生徒2(マーガレット)『うん! また来るね! リヴァイ先生!』

そして生徒達は舞台をはける。

1人残ったリヴァイ先生はレジの前で考え込んでしまった。

そして次の日、いよいよ、エルヴィン先生に胸の内を打ち明ける。






エルヴィン(アーロン)『話ってなんだい?』

リヴァイ(ミカサ)『……………生徒に会った』

エルヴィン(アーロン)『ああ、教習時代の生徒に?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。あいつら、もう2~3年も前の事なのに、俺の事を覚えていてくれたんだ。声、かけてくれて……』

エルヴィン(アーロン)『それは珍しいね。リヴァイの方もよく覚えていたね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、さすがに名前は忘れていたが、顔と声だけは覚えていたんだ。だから再会したらすぐ分かった』

エルヴィン(アーロン)『良かったね。綺麗になってた?』

リヴァイ(ミカサ)『そりゃあな。女子大生って感じだった』

エルヴィン(アーロン)『コナかけなかったの?』

リヴァイ(ミカサ)『そんな余裕はなかった。そんな事より………』

エルヴィン(アーロン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『…………いや、やっぱり何でもない』

エルヴィン(アーロン)『素直じゃないねえ、リヴァイは』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

エルヴィン(アーロン)『そういうのは「嬉しい」っていうんだよ? そういう感情、知らなかったのかい?』

リヴァイ(ミカサ)『うるさい。そんな事は分かっている。分かってはいるんだが……』

エルヴィン(アーロン)『何を迷う必要がある。君はもう知ってしまったんだろう?』

リヴァイ(ミカサ)『………ッ』

エルヴィン(アーロン)『君の中に「やり甲斐」を見出してしまった。違うのか?』

リヴァイ(ミカサ)『だけど、俺は………』

エルヴィン(アーロン)『もう諦めなよ』

リヴァイ(ミカサ)『!』

エルヴィン(アーロン)『さっさと諦めて教師になってよ。君がその道を選ぶなら、私は全力で応援する。たとえどんな手口を使ってでも、君の席を用意すると約束しよう』

リヴァイ(ミカサ)『それは、コネクションを利用して正規の採用者を蹴落とすって意味だよな?』

エルヴィン(アーロン)『世の中なんて見えない部分で皆、いろいろ悪い事をしているもんだよ。私はこの程度の事は「悪い事」だとすら思わないけど』

リヴァイ(ミカサ)『ひどい教師だな。お前は……』

エルヴィン(アーロン)『なんと言われても痛くも痒くもないね。リヴァイと一緒に仕事が出来るならこんなに幸せな事はない』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

リヴァイ(ミカサ)『俺は元々、美容師になりたかったんだがな』

エルヴィン(アーロン)『そうだったの?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。初めての女の、夢だった。もう、先に亡くなってしまったが』

エルヴィン(アーロン)『!』

リヴァイ(ミカサ)『10代の頃に先にいってしまった。俺のせいで……』

エルヴィン(アーロン)『そうか。今もフラフラしているのはそのせい?』

リヴァイ(ミカサ)『そうなるんだろうな。いや、アレは「恋愛」と呼んでいいのか自分でも良く分からん程度の淡い感情でうっかり抱いてしまったんだが……』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイ、それは客観的に見ても「初恋」と呼んでいいと思うよ』

リヴァイ(ミカサ)『だといいんだがな………』

と、自嘲気味に笑って見せるリヴァイ先生だ。

リヴァイ(ミカサ)『あいつの夢を継ぐことで何かどうなるという訳ではないが、その為に高校だけはとりあえず卒業しようと思っていた。なのに途中で中退して……エルヴィンのおかげで大学まで出して貰えたが、このまま本当に教師になってもいいんだろうか』

エルヴィン(アーロン)『未練があるのか……?』

リヴァイ(ミカサ)『あるに決まっているだろ。元々、俺自身も人の髪を洗ってやるのは好きなんだ』

エルヴィン(アーロン)『そうか………』

エルヴィン先生はそこで紅茶を差し出してひとまず落ち着かせた。

お互いに気持ちを落ち着けてからしばらく考える。

エルヴィン(アーロン)『美容師になりたいっていう話は初耳だったけど。そうか。そういう可能性もあったんだね。ごめんね。私も前もってそれを聞くべきだった』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺も言わないでいたのが悪かった。先に話せば良かったな』

エルヴィン(アーロン)『いやいや、そこは謙遜しなくていい。これは私の落ち度だよ。本人の適性と本人の希望が必ずしも合致するとは限らないんだからね』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

エルヴィン(アーロン)『私の睨んだ「適性」を押し付けてしまってすまなかった。リヴァイがどうしても美容師になりたいというなら、今なら金だってある。その資金を使えば美容学校に入りなおす事も出来る』

リヴァイ(ミカサ)『…………いいのか?』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイの人生だ。そこはもう、私の願望だけで事は進められない。そりゃあ本当は見てみたかったけどね。リヴァイが教壇に立ったり、生徒と一緒にグラウンドを駆け回ったり、体育館の壇上でお話したりする姿を』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

エルヴィン(アーロン)『うん。残念だけど、私は賭けに負けたようだ。仕方がない。それはそれで、私は構わないよ』

リヴァイ(ミカサ)『何千万、負けたと思ってやがるんだ』

エルヴィン(アーロン)『博打に負けるっていうのはそういう事だよ。別に構わないよ』

リヴァイ(ミカサ)『……………分かった』

エルヴィン(アーロン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。そこまで言うなら教師を試しにやってみるが、無理だと思ったらいつでも辞めてやるからな』

エルヴィン(アーロン)『え? 何で気が変わって……』

リヴァイ(ミカサ)『試しにやってみるだけだ。勘違いするな。エルヴィンに対する「借り」を残したまま、逃げるように別の道に行くのは俺の性分に合わん』

エルヴィン(アーロン)『ぷっ………』

リヴァイ(ミカサ)『笑うんじゃない。自分でも照れるだろうが』

エルヴィン(アーロン)『あーうん。ごめん。分かった。だったら、4月から入れるように画策しておくね』

リヴァイ(ミカサ)『別に4月からじゃなくても、来年でもいいぞ。いくらでも待つ』

エルヴィン(アーロン)『いやいや、その辺の根回しは得意分野だから大丈夫。準備して待っているから。宜しくね。リヴァイ』

そして2人は手を握り合い、リヴァイ先生はこうして教師としての道を歩き出す事になったのだった。






マリーナ『リヴァイ先生が27歳になる年の4月。その日、新しく赴任した教師は2人だけだった』

マリーナ『リヴァイ先生はその日の為に新調したスーツとスカーフを身に着けて、髪型もいつも以上に気合を入れて、自身を綺麗にして入学式に臨みました』

マリーナ『対するもう一人の女性教諭は…………3週間くらい風呂に入ってないのかな? と思われる程の髪の汚さと上下のスーツ。ズボン姿で現れます…』

マリーナ『当然、初対面の印象は最悪でした。リヴァイ先生はその女性教諭と席まで隣同士になってしまい、着任当時からイライラが募る一方でした』

マリーナ『そして、遂にその我慢の限界が訪れて、リヴァイ先生はその女性教諭を………』





放課後。職員室。リヴァイ先生が職員室に戻ると、そこにはハンジ先生だけがいた。

人の席の椅子を勝手に使って自分の椅子と繋げてごろ寝をしていたのだ。

涎を垂らして器用にごろ寝をしているハンジ先生は、なんと自分の頭をリヴァイ先生の椅子の方に向けて寝ていた。

それはつまり、リヴァイ先生の逆鱗に触れるのと同じ意味であった。

リヴァイ(ミカサ)『もう、我慢出来ねえ……』

タタンタタタン……タタンタタタン……

某映画のBGMだ。アレだ。シュワちゃんが主演の例のアレ。

リヴァイ(ミカサ)『俺はもう、ブチ切れた!!!!!』

ハンジ(エレン)『はにゃ? (*やっと起きた)』

リヴァイ(ミカサ)『もう我慢せんぞ! 覚悟しろてめえええええ!!! (抱き抱え)』

ハンジ(エレン)『ありゃ? リヴァイ先生?! あれ? もうこんな時間? どこに連れていくの???』

リヴァイ(ミカサ)『俺の家だ』

ハンジ(エレン)『え? え? 何で?! ちょ……やめて! 人を拉致って、ちょっと!? 誘拐する気? 私、何か怒らせる事、した?!』

リヴァイ(ミカサ)『てめえは俺を怒らせた。その報いは受けて貰う(ゴゴゴ…)』

ハンジ(エレン)『ぎゃああああ!? 何で? 私、何かしたっけ? 御免御免御免御免!!! 謝るから!! 許して!! お酒奢るから! ご馳走するから!!! どうか怒りを鎮めてええええ!!!!』



ああああああああ………



舞台にはける。そしてここからは音声のみ。

舞台中央にアルミンが再び登場。「見せられないよ!」の看板小僧の恰好をして舞台に待機だ。

その直後、笑いが起きて皆、苦しそうだった。

ハンジ(エレン)『やだ……やめて……本気なの?! 私、そこまで酷いことした?! 身に覚えがないんだけど?! やだってばああ!』

リヴァイ(ミカサ)『うるさい。黙って服を脱がせろ。別に犯すとかそういう話じゃねえよ』

ハンジ(エレン)『いや、自宅に連れ込んで女の服を脱がそうとしている時点で既に犯罪ですよね?! 訴えたら私、勝てるよ多分!!!』

リヴァイ(ミカサ)『好きにしろ。もしそうなれば俺は教職も辞められて一石二鳥だ』

ハンジ(エレン)『いやあああ脅しが通じない?! ちょっと、本気?! 本気で全裸にするつもり?! やだ、私、最近ご無沙汰だから、ゴムとか持ってきてないよおおおお!!!』

我ながら酷い会話だと思うけど、リヴァイ先生は声を殺して笑っていた。

ハンジ先生は恥ずかしそうに俯いているけどな。

リヴァイ(ミカサ)『いいから黙ってそこの椅子の上に座れ! 10分で終わらせてやるから』

ハンジ(エレン)『10分?! それはさすがに短すぎない?! 私、そういうのって普通は1時間くらいかけるもんだとばかり思っていたのに?!』

リヴァイ(ミカサ)『そりゃあ俺も1時間くらいかけてじっくり隅々までやってやりたいが、耐えられるのか? お前は』

ハンジ(エレン)『耐えます! 1時間耐えるから! 10分はさすがにやめて下さい!!!』

リヴァイ(ミカサ)『そうか分かった。だったらじっくりやってやる。覚悟しろ……』

モコモコ………モコモコ……

ハンジ(エレン)『ん? あれ? 髪、洗ってくれるの?』

リヴァイ(ミカサ)『髪、終わったら、体も洗ってやる。背中とか、項とか汚れが酷いぞお前』

ハンジ(エレン)『あーそっか。2か月くらいお風呂もシャワーも入ってなかったからねえ』

リヴァイ(ミカサ)『よくそんな状態で生きていられたな。お前は……』

ハンジ(エレン)『やー慣れたら大丈夫だよ? 平気平気』

リヴァイ(ミカサ)『平気になるんじゃねえ。自分で風呂入るのが面倒なら、俺が定期的にやってやろうか?』

ハンジ(エレン)『それは困る!!』

リヴァイ(ミカサ)『はあ? 何で』

ハンジ(エレン)『や、それは、その……ね? ごめん。まだ嫁入り前だし、一応……こういうの、本当は良くないんじゃ』

リヴァイ(ミカサ)『嫁入り前なら猶更綺麗にしておくべきだろうが! 人として、社会人として恥ずかしくねえのか』

ハンジ(エレン)『ううう……耳が痛い話だけどねー』

リヴァイ(ミカサ)『なら、ちゃんとしろ。ほら、シャワーかけるから目瞑れ』

ハンジ(エレン)『はぁい』

ザバー……水音も混ぜていく。

リヴァイ(ミカサ)『ほらよ。次は背中からいくぞ』

ハンジ(エレン)『はぁい』

ハンジ(エレン)『いつぶりかなー』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『人に背中洗って貰うの。もう覚えてないよー』

リヴァイ(ミカサ)『そうか』

ハンジ(エレン)『えへへ~自分でするのより気持ちいいね。うん』

リヴァイ(ミカサ)『だから、そう思うのなら俺がこれから定期的にやってやると……』

ハンジ(エレン)『いやいやいやいやいや、ダメだよ?! リヴァイ先生、彼女いないの? 誤解が発生しちゃうよ? 髪の毛とか、風呂場に残したら修羅場になるんじゃないの?』

リヴァイ(ミカサ)『ほーそういうところに気づく細かさはあるんだな。心配するな。俺は風呂掃除を毎日欠かさずやっているから髪の毛もちゃんと毎回処分している』

ハンジ(エレン)『そこ、自慢するところなの?! 世の女性の皆さんを敵に回す発言ですよね?!』

リヴァイ(ミカサ)『いや? むしろそこで痕跡を残すような男が馬鹿なんだろ?』

ハンジ(エレン)『うわードン引きするわー。プレイボーイなんだね。ちょっとそういう人は私、苦手だなあ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか? まあ、俺も女に言われてそれに気づいたから初めからそうだった訳じゃない。文句言われたらその都度、改善していっただけだな』

ハンジ(エレン)『それはそれで問題じゃないの。あー大体でイイよ。そんなに熱心に洗わなくても』

リヴァイ(ミカサ)『1時間コースを希望したのはそっちだろ? (モコモコ)』

ハンジ(エレン)『体洗うだけとは思ってなかったからね! その………ヤるのかと勘違いしました。すみません』

リヴァイ(ミカサ)『さすがにここまで汚い女を抱く趣味はねえよ』

ハンジ(エレン)『まあ、そうですよねー』

リヴァイ(ミカサ)『洗い終わった後なら、別だが』

ハンジ(エレン)『ん? 今、何か言ったー?』

リヴァイ(ミカサ)『いや別に。あとはもういいか。仕上げは自分でやれ(ポイッ)』

ハンジ(エレン)『ん? ああ、はいはい。後は自分でやれって事ね』

リヴァイ(ミカサ)『その間に風呂に湯を入れてやる。ぬるいのと、熱いの、どっちが好みだ?』

ハンジ(エレン)『ぬるいのでお願いします! 38か、39度くらいでいいよ』

リヴァイ(ミカサ)『その辺の好みは同じなのか。分かった』

そしてお湯を入れる音。ハンジ先生が湯船の中に入る。

ハンジ先生が風呂に入る間に、今度はリヴァイ先生が自分の体を洗い出す。

リヴァイ(ミカサ)『あー見たくないなら、目閉じていてくれ。俺もついでに体洗うから』

ハンジ(エレン)『え? にゃあああ!? いきなり全裸?! びっくりするよ!?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、だから見たくないなら目、閉じろと言っただろ』

ハンジ(エレン)『いやいやいや、いきなり一緒に風呂とか、ええええええ? なんか感覚おかしくない? いや、私は別にいいんだけど、…………いいの?』

リヴァイ(ミカサ)『ざっと済ませるから。3分で終わらせる』

ハンジ(エレン)『早いよ! シャワー3分でいいの?』

リヴァイ(ミカサ)『体を洗うだけなら3分から5分で十分だ。ただ、それを毎日欠かさず、1日に3回くらいシャワー浴びる。時間がある時はぬるい風呂にも入るけどな』

ハンジ(エレン)『ひゃー綺麗好きだねえ。私は真似出来ないよ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、女ならそれくらいしても別にバチは当たらんだろ。家にシャワーないのか?』

ハンジ(エレン)『いや、あるよ。というか………ええっと、その、上の階に住んでいるし』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『リヴァイ先生の真上の部屋だよ? 私、住んでいるの』

リヴァイ(ミカサ)『え……何だって?!』

ハンジ(エレン)『気づいてなかったみたいだね。その様子だと』

リヴァイ(ミカサ)『今まで一度も朝から会った事、なかっただろ。帰りも時間帯が違ったしゴミ出しにも顔合わせた事がねえ。本当に、上の階に住んでいるのか? 生活感なかったぞ?』

ハンジ(エレン)『んーだって、リヴァイ先生、私から話しかけてもなかなか振り向いてくれないしー? 嫌われているのかなーって、最近まで思っていたから。プライベートまで接触するの悪いかなって思って。こっちから話しかけるのは仕事場だけにしておいたんだよね。様子見ていたっていうか。内心、しょんぼりしていたというか……だからまさか、今日、自宅のお風呂に入れて貰えるなんて思ってもみなかったよ。私、リヴァイ先生に嫌われていた訳じゃなかったんだね?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ついさっきまで嫌いだったが』

ハンジ(エレン)『えええええそうなの? あ、でも、もう嫌いじゃなくなった?』

リヴァイ(ミカサ)『また汚い女に戻ったら嫌いになるだろうな。イライラする』

ハンジ(エレン)『ええーそこなの? そこが原因で私、嫌われていたのー?』

リヴァイ(ミカサ)『隣の席にいつも座っている俺の身にもなれ。お前の匂いがこっちまで漂ってくるんだぞ』

ハンジ(エレン)『んーそっか。や、それはもう、気にしないで☆』

リヴァイ(ミカサ)『無茶を言うな。それに、その……お前、化粧も何もしてないんだよな』

ハンジ(エレン)『いえーす! すっぴんデビューしちゃったよ』

リヴァイ(ミカサ)『それでそれだけ美人なら、その……普通にさえすれば、それなりに見える女になるだろ』

ハンジ(エレン)『見せる必要性がありません! (キリッ)』

リヴァイ(ミカサ)『見せる相手もいねえのか』

ハンジ(エレン)『まあね。今の生活の方が気楽なんだ。自由って感じで。昔の自分が馬鹿みたいだよ』

この時、雛壇のリヴァイ先生が『なあ、本当に「洗い終わった後なら、別だが」って言ったのか?』とハンジ先生に確認して『言ったよー? まあ、冗談だって思って受け流したけど?』という会話をしていた。

どうやらこの辺の記憶はリヴァイ先生よりハンジ先生の方がはっきり覚えていたそうで、台本の修正を加えた時に、ハンジ先生が「そこはちがーう!」と何度も修正してくれたんだ。

確かにこれ、やられた方からしてみれば一生忘れられない事件だよな。

リヴァイ先生はこの時点ではまだ、今のような感情は全くなかった訳だしな。

リヴァイ(ミカサ)『それは昔は綺麗にしていたという風に聞こえるが?』

ハンジ(エレン)『んん? いや、そんな事はないよ? 昔からこんな感じだったけどー?』

リヴァイ(ミカサ)『嘘をつくな。よし分かった。そういう事なら、何だったら風呂以外の事も俺がやって……』

ハンジ(エレン)『やめてやめてやめて! マジで困るから!!! もう十分だから! お腹いっぱいだから!!!』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……』

という事で一応、この時は折れてリヴァイ先生は言ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『先に上がる。飯、どうする?』

ハンジ(エレン)『え? 奢ってくれるの?』

リヴァイ(ミカサ)『何か作る。冷蔵庫の中に確か、賞味期限が明日までの豆腐があった。それメインで何か作るが』

ハンジ(エレン)『やったー1食浮いた! 晩御飯、ご馳走になっていいんだね?』

リヴァイ(ミカサ)『1人分より2人分の方が作りやすいからな。構わん』

ハンジ(エレン)『あざーす!! あざーす!! あざーす!!』

リヴァイ(ミカサ)『喜び過ぎだ。食えない物とかないよな?』

ハンジ(エレン)『うん。好き嫌いは殆どないよ』

リヴァイ(ミカサ)『もし当たっても文句言わずに食えよ』

と言いながら先に出て、ここで舞台に戻るリヴァイ先生だった。

アルミンは舞台をはけて、ハンジ先生も風呂をあがってから舞台に戻る。

実はこの間、裏方メンバーで台所を舞台上に設置して、料理の材料をそこに用意した。

ミカサが生ライブクッキングをするんだ。勿論、予め先に作っておいた物を真空パックして、それを舞台上でフライパンで温めるだけなんだけど。

ガスコンロは、鍋とかに使うアレを使用する。舞台上で火を使うのは初めての経験だったから少し緊張した。

でも料理に手慣れているミカサはアッと言う間に準備完了して、ゴーヤチャンプルーを盛り付けた。

この時もゴーヤチャンプルーを出したらしい。リヴァイ先生の得意料理のひとつらしい。

ハンジ(エレン)『うまあああああ! 何この美味さ!!! ビール超欲しいいいいい!』

リヴァイ(ミカサ)『明日も仕事あるのに酒飲むのか? 二日酔いになっても知らんぞ』

ハンジ(エレン)『大丈夫! 私の限界値は30本までだから。それを越えないなら明日に引きずらないよ!』

リヴァイ(ミカサ)『酒豪だな。女にしては珍しいな。エルヴィンは40本と言っていたが、それに近いな』

ハンジ(エレン)『そうそう。エルヴィンの方が強いよねーって、アレ? 何で呼び捨て?』

リヴァイ(ミカサ)『あれ? そういうお前も……え? まさか』

ハンジ(エレン)『んと、私、エルヴィン先生のコネで講談高校に入ったんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『え……そうだったのか』

ハンジ(エレン)『うん。あ、もしかしてリヴァイ先生もそうだったの? なんだー先に言ってよ』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、まあそうだな。なんだ。そういう繋がりだったのか』

ハンジ(エレン)『今度3人で飲みに行こうよ。きっと盛り上がると思うよ』

リヴァイ(ミカサ)『それはまた今度な。ところで、髪、濡れたままでいいのか?』

ハンジ(エレン)『ん? そのうち乾くでしょ。いいよ。放っておけば』

リヴァイ(ミカサ)『………ドライヤーくらいうちにあるのに』

ハンジ(エレン)『飯が先じゃああああ! ウマー!』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ……』

そこで立ち上がって冷蔵庫をもう1度確認する。

リヴァイ(ミカサ)『あ、チューハイ缶なら1本あった。飲むか?』

ハンジ(エレン)『ありがとう! もう大好き! えへへ~』

リヴァイ(ミカサ)『ほらよ。りんごだけどいいよな』

ハンジ(エレン)『もう何でもOKだよ! 私、飲めないお酒ないからね!』

ご機嫌で缶チューハイを空けるハンジ先生だった。

ハンジ(エレン)『えへへ~良かった~』

リヴァイ(ミカサ)『何が?』

ハンジ(エレン)『私、リヴァイ先生ともっとお話したかったんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『ん? 何で』

ハンジ(エレン)『だあって、同期だし? 隣の席だし? 仲良くしたかったんだよー』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうだったのか』

ハンジ(エレン)『それなのに入学式からずっとツンツンしているからさー。さすがの私もちょっと凹んでいたんだよね。だからついつい、椅子の上で寝ちゃったんだ。ごめんね』

リヴァイ(ミカサ)『アレはそういう意味だったのか。嫌がらせかと思ったぞ』

ハンジ(エレン)『ええ? 何で?』

リヴァイ(ミカサ)『きたねえ髪を人の椅子に擦り付けているのかと思った』

ハンジ(エレン)『あ、じゃあ頭逆にして寝れば良かったね!』

リヴァイ(ミカサ)『そしたらきたねえ尻が俺の椅子に擦りつけるだけだろ?』

ハンジ(エレン)『ひどい! じゃあ私、リヴァイ先生の椅子の上で寝ちゃダメなの?』

リヴァイ(ミカサ)『毎日風呂に入るなら寝てもいいが?』

ハンジ(エレン)『あ……じゃあやめておきます(キリッ)』

リヴァイ(ミカサ)『お前の基準はそこなのか。微妙に傷つくぞ』

ハンジ(エレン)『もー! お前呼びじゃなくてハンジ先生って呼んでよー。ハンジでもいいけど』

リヴァイ(ミカサ)『あー悪い悪い。ハンジだな。分かった分かった』

ハンジ(エレン)『迷わず呼び捨て選んだね?! じゃあ私もリヴァイって呼んじゃうよ』

リヴァイ(ミカサ)『別に構わん。あ……でも、先生同士だと「先生」をつけあうのが普通らしいな』

ハンジ(エレン)『その辺は臨機応変でいいんじゃない? 適当で』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。じゃあ俺もそうする。気が向いたら「先生」をつけてやるよ』

ハンジ(エレン)『了解~。ねえねえ、リヴァイ。2本目なーい? (ニヤニヤ)』

リヴァイ(ミカサ)『生憎ねえな。ストックは1本だけだった』

ハンジ(エレン)『そっかー(シュン)』

リヴァイ(ミカサ)『買いにいけってか? やれやれ。明日、起きられなくなっても責任は取らんぞ』

ハンジ(エレン)『あと2本だけお願いします! あ、ウコンもついでにお願いします!』

リヴァイ(ミカサ)『まあ俺も冷蔵庫のストック、買いにいかんと思っていたから丁度いい。車出してスーパー行ってくる』

ハンジ(エレン)『うん。いってらっしゃい』


ドキッ………


ハンジ(エレン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『あ、いや、銘柄は何でもいいんだよな?』

ハンジ(エレン)『いいよー』

リヴァイ(ミカサ)『つまみ、追加いるか?』

ハンジ(エレン)『あ、枝豆あったら食べたいかも』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。時間がアレだから茹でてあるやつを買ってくる』

そして1度舞台をはけて、少し経ってから戻ってくると……

ハンジ(エレン)『ZZZZZ………』

リヴァイ(ミカサ)『ただいまーって、寝たのか』

ちょっとガッカリしている自分に気づいて肩を落とすリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『参ったな。こっちに泊めるしかねえのか。まあ、別に送る必要もねえか』

と言いつつ、眠ってしまったハンジ先生を自分のベッドの上にのせて、自分は後片付けをし終えてリビングのソファに寝る。

リヴァイ(ミカサ)『おやすみ…』

そして暗転。

何故かその直後、観客のヒューヒューの声が沸いて、ハンジ先生もリヴァイ先生も照れていた。

ハンジ『今思うと私、当時、結構酷い女だったね』

リヴァイ『いや、俺も相当アレだったな……お互い様だ』

とか何とか言っている。クスクス声が沸いていた。





マリーナ『えーっと、既に皆様はお気づきかと思いますが』

マリーナ『実は、このハンジ先生と、教習時代の同期の女性は、同一人物でした』

マリーナ『しかし当時のリヴァイ先生はその事に全く気付いておりませんでした』

と、マリーナが発表すると「ええええ?!」という声が沸き上がった。

マリーナ『無理もありません。化粧バッチリメイクの美人の女子大生と、ノーメイクの汚女が同じ人物だとは思ってもみなかったのです』

マリーナ『女という生き物はそれくらい、化粧で化けられる生き物なのです』

マリーナ『体格とか声とか雰囲気で分かるだろ? いえいえ、それもまやかしです』

マリーナ『4年という歳月は人を変えます。当時のハンジ先生は大学時代に体を鍛え上げ筋肉がつき、教習時代の頃より少しだけ背も伸びて、より男性的な体に変化していたのです』

マリーナ『故に、リヴァイ先生は本当に全く気付いていませんでした。その事を知っていたのは、当時、教習時代のハンジ先生を知っていた先生達のみであり、ごく一部の人間だけでした』

マリーナ『当時の彼らは言いました。「面白いから教えない。いつ気づくか楽しみだ」と』

と、言うと会場の観客も笑いの渦が起きた。

マリーナ『そんな訳で、ここからリヴァイ先生とハンジ先生の、まるでトムとジュリーのような喜劇が始まるのでした』

そして再び「見せられないよ!」の看板小僧のアルミンの登場だ。

これが登場する度に皆「クスクス」笑ってしまう。

ハンジ(エレン)『やだああ……ちょっと、朝からシャンプーなんて、頑張り過ぎ…ああっ!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ? 何が頑張り過ぎだ。朝シャンは常識だろうが!』

ハンジ(エレン)『やだもう! やめて! 私を綺麗にしないでよ!!』

リヴァイ(ミカサ)『断る! 俺の家に泊まった以上、俺はハンジを綺麗にする責任がある』

ハンジ(エレン)『いやないから! 意味不明な論理組み立てるのやめてくれない?!』

リヴァイ(ミカサ)『そもそも、昨日の酒の匂いが少し残っているだろうが! 体洗わないと、匂いでバレるぞ!』

ハンジ(エレン)『バレたって別にいいよ! それよりほら、時間! 今何時よ?』

リヴァイ(ミカサ)『え………』

現在、8:25だった。

8:30からショートホームルームが始まるので、いろんな意味でギリギリだった。

リヴァイ(ミカサ)『しまったあああ!!!!』

職員会議は完全にアウトであり、このままだと生徒達にも面目が立たない。

リヴァイ(ミカサ)『仕方がねえ! 今日はここで諦める! ハンジ! バンザイしろ!』

ハンジ(エレン)『へ? やだ……ちょっと! 体、勝手に拭いて……ぎゃああああ?!』

リヴァイ(ミカサ)『服は自分で着ろ!! 俺も着替える! とにかく急げ! 車飛ばしてやるから!!!!』

と、朝からバタバタしての通勤になり、8:29に何とか教室に到着した。

そう、この日、リヴァイ先生は車は飛ばしまくるわ、教室には窓から入るわ、滅茶苦茶な行動を起こしたのだ。

3年生徒1(カジカジ)『うわあああ?! リヴァイ先生が窓に貼りついてる!!!!』

開けろ、との意味を込めて窓ガラスを叩く。そして窓を開けてやると、そこからひょいっと窓から入って来たのだった。

リヴァイ(ミカサ)『間に合ったよな? ギリギリセーフだよな?』

3年生徒1(カジカジ)『ええっと、一応、8:29:40です』

リヴァイ(ミカサ)『今から出席を取る。ゲホゲホゲホ……』

3年生徒1(カジカジ)『大丈夫ですかリヴァイ先生?!』

リヴァイ(ミカサ)『すまん、少し慌て過ぎた……』

と、涙目になると、教室中がクスクス笑いだった。観客まで笑い出す。

「覚えているわー」とか「あったあった」の声が沸く。実際こんな感じだったらしい。

訂正
1年生徒1(カジカジ)『うわあああ?! リヴァイ先生が窓に貼りついてる!!!!』

3階の教室は1年生です。なんか頭の中でごっちゃになった。
間違えてしまってすみません。

そして後日。その話がナイル先生の耳に入り、リヴァイ先生は説教された。

ナイル(マルコ)『あー……言いたい事は分かるよな? リヴァイ先生』

リヴァイ(ミカサ)『すんません。朝の職員会議、すっぽかして』

ナイル(マルコ)『いや、そっちじゃなくて……窓から1年の教室に入った件だ。1年10組のクラスを担当しているから1番教室が遠いのは分かるが、やり過ぎだ。スタントマンじゃないんだから、流石にやめろ。生徒達が失笑していたぞ』

リヴァイ(ミカサ)『そ、そうですか……』

ナイル(マルコ)『ダメに決まっているだろ。ハンジ先生の方はしれっと遅れて9組の教室に入っていたそうだぞ。「めんごめんご!」で済ませる彼女もアレだが。何が起きたのか知らんが、そういう時はハンジ先生の対応でいいんだよ。遅れた理由は?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ先生の髪を洗ってやっていたら、時間配分を間違えました』

ナイル(マルコ)『は? 何でリヴァイ先生がハンジ先生の髪を洗う。同棲でもしているのか?』

リヴァイ(ミカサ)『いえ、そういう訳ではないんですが……その……えっと……』

ナイル(マルコ)『言っておくが、その理由をそのまま始末書に書くなよ。アホだと思われる。腹でも下した事にしておけ。後、窓から入るのはもうやめろ。2度目は流石に職員会議で問題になると思うぞ』

リヴァイ(ミカサ)『分かりました……』

という事があり、リヴァイ先生はげんなりするのだった。





昼休み。学生食堂でお昼を食べる2人の場転。

ハンジ(エレン)『怒られたんだってー? だから言ったのに。朝シャンとシャワーなんて必要ないって! 遅刻しないように家を出る方が大事じゃない。今度から、もうしないでね(きっぱり☆)』

リヴァイ(ミカサ)(不機嫌)

ハンジ(エレン)『もーまさか2日連続で髪洗う事になるとは思わなかったよ。髪が軽すぎて気持ち悪いんですけど?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それが普通だからな? いつものハンジがおかしいんだからな?』

ハンジ(エレン)『ここまで綺麗にして貰ったらあと3か月は髪洗わなくて済むね!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ?! お前、まだ懲りずに洗わないつもりか?』

ハンジ(エレン)『うん。極力洗わないよ。それが私のポリシーだし?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ、年いくつだ?』

ハンジ(エレン)『今年の9月で24歳になりますよ?』

リヴァイ(ミカサ)『20代も半ばの、1番いい時期の女がそんな格好でいる奴があるか!!!』

ハンジ(エレン)『それ、リヴァイの趣味の話でしょー? 私、あんたの彼女じゃないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、そうだな。だが、職員室では隣同士だし、家だって近い。俺は自分の近くにいる女がそんな風に汚れているのを見ると我慢出来ねえ性質なんだよ!』

ハンジ(エレン)『えええ? それってただの世話焼きババア……げふんげふん。ごめんなさい。箸持ってこっち構えるのは止めて。流石に危ない人だから』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……』

ハンジ(エレン)『そんなにダメなの? 他の先生は別に文句は言わないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『言わないんじゃなくて「言えない」だけだろ。酷過ぎて突っ込む勇気が持てないだけだ』

ハンジ(エレン)『そういう意味ではリヴァイは勇者だね! あはは!』

リヴァイ(ミカサ)『笑いごとか! 服だってボロボロじゃねえか。こんな色褪せた、袖の擦れた服着て白衣を着て……』

と、服をちょっとだけ触ると、当時のハンジ先生はびくっと体を引いたらしい。

ハンジ(エレン)『やだ。ちょっと、そういう風にいきなり身体を触るのは流石にやめて。そういうのは苦手なんだ』

リヴァイ(ミカサ)『あ、ああ……すまん。今のは不躾だったな』

と、ちょっと戸惑うリヴァイ先生だった。

ハンジ(エレン)『うん。触る時は言って? そしたら触ってもいいけど。いきなりはダメ、お願い☆』

リヴァイ(ミカサ)『……………すまん』

ハンジ(エレン)『うん。ほら、ここ、学生もいるし? 変な噂たったらあんたも迷惑でしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『それはどういう意味だ。何を気回しているんだか』

ハンジ(エレン)『あ、必要ない? こりゃ失礼しました! そっか。まあ、それもそうか! 御免御免! 彼女いるんだっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『いると言えばいるし、いないと言えばいないが……』

ハンジ(エレン)『うわ酷い! この女ったらし! 背中刺されるよ?』

リヴァイ(ミカサ)『よく言われるが、実際にそうなった事はないな。後ろから抱き付かれることは良くあるが』

ハンジ(エレン)『うお……久々に鳥肌立った。ガチでヤバい。ひええええ』

という、嫌悪の反応をするハンジ先生のパターンは初めての事だったらしく、この時のリヴァイ先生は眉を上げて「ほう」という興味深い顔をしたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『そうか。ハンジは俺みたいないい加減な男は嫌いなのか。なのに話はしたいって、どういう了見なんだ?』

ハンジ(エレン)『ん? だーから、同僚として仲良くしたいのよ。友達になって?』

リヴァイ(ミカサ)『彼氏には絶対したくないってタイプか? 俺は』

ハンジ(エレン)『やートラブルに巻き込まれるのは御免だよー。女同士の修羅場って怖いもん。もうそういうのはコリゴリ!』

リヴァイ(ミカサ)『昔、そういう目に遭ったのか?』

ハンジ(エレン)『ほとんど濡れ衣だねー。「人の男を獲るな」とか何とか。こっちは獲ってないし、何もしてないってのに。友達ですらない男との嫌疑をかけられたり? 嫌な目に遭った事もあるんですよ?』

リヴァイ(ミカサ)『ふむ……』

この時のリヴァイ先生は過去の女達の行動パターンから「友達になって」程怪しい物はないと思っていたそうだ。

友達→恋人の路線に乗っかろうとする女は山ほど見てきたそうで、ハンジ先生の言葉を100%信用した訳ではなかったそうだ。

でも当時のハンジ先生はガチで「友人」としてリヴァイ先生を見ていたから、徐々にそれが分かって後日、本当に驚いたらしい。

リヴァイ(ミカサ)『そういうトラブルは、それなりにイイ女がよく巻き込まれる事だと思うが。ハンジはモテるのか?』

ハンジ(エレン)『モテ………いやいやリヴァイに比べたら蟻の触覚程度だと思うよ? ちょこっと。ほんのちょこっとだから』

リヴァイ(ミカサ)『なんだその表現は。蟻の触覚って……』

と、ちょっとその表現が面白くて笑ってしまったそうだ。

ハンジ(エレン)『ええ? 分かりにくかった? ええっと、じゃあミトコンドリアとかの方がいい?』

リヴァイ(ミカサ)『蟻の触覚の方がいい。何となく言いたい意味は分かった』

ハンジ(エレン)『良かった! 分かって貰えて!』

と、万歳する。

ハンジ(エレン)『そういう訳だから改めて宜しく!』

リヴァイ(ミカサ)『断る。俺はまだ、ハンジを正式に友人として認めた覚えはない』

ハンジ(エレン)『ひどい! こんなに友好関係を結ぼうと努力しているのに?!』

リヴァイ(ミカサ)『俺と友人になりたいなら髪を洗わせろ。毎日』

ハンジ(エレン)『えええ……だったらいいや。もう諦めるー(距離取る)』

リヴァイ(ミカサ)『あ、いや。すまん。ふっかけ過ぎた。自分で洗え。風呂が嫌いなら髪だけでもいい』

ハンジ(エレン)『ごめんね☆ それは出来ない相談なんだ☆(ニコッ)』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何でだ。何故そこまで頑なに拒否する』

ハンジ(エレン)『さーてと、次の授業の準備に入ろうかなー(先に席を立つ)』

リヴァイ(ミカサ)『あ、おい……ハンジ?!』

リヴァイ(ミカサ)『訳が分からん女だな。全く……』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

リヴァイ(ミカサ)『もう少し様子見て、匂って来たらまたあいつを風呂に入れてやる(メラメラ)』

そして夏に突入した。汗ばむ季節。蝉の声が鳴く。


ドドドドドドド………


轟音と共にスクリーンにリヴァイ先生とハンジ先生の追いかけっこ映像がひたすら続く。

ここは前もって撮影をした。その映像を見つめながらピクシス先生とエルヴィン先生が登場だ。

ピクシス(アルミン)『まーたあの2人は追いかけっこしておるのか?』

エルヴィン(アーロン)『ええ……まあ。まだ諦めてないようですね。リヴァイの方は』

ピクシス(アルミン)『あやつ、ただの変態ではないか? 女子の体を洗わせろと言って迫るのは変態以外の何者でもない気がするが?』

エルヴィン(アーロン)『ええ、あれはもう病気ですね。自分で洗わないと気が済まないようです。本人は「自分で洗うなら俺もここまで言わない」とか言ってますけど。ハンジがもし自分で自分を洗い始めたら、きっとダメージが酷いと思いますよ?』

ピクシス(アルミン)『走り回ったら余計に汗掻くのに、それを分かっていてやっているのだとしたら、とんだ策士だ。男女の仲になってはいないとか言っていたが……時間の問題のような気がするぞ』

エルヴィン(アーロン)『どうでしょうかね? ただ今回のように「リヴァイ」の方から動いているというのは珍しいケースなんですよね』

ピクシス(アルミン)『ん? そうなのか?』

エルヴィン(アーロン)『はい。リヴァイは今まで「自分に寄ってきた女」にしか手を出した事がないそうですから』

ピクシス(アルミン)『では、能動的に動いているのは今回が初めてだと?』

エルヴィン(アーロン)『はい。私が知る限りではですが。あ。いや……厳密に言えば2回目になるんですが』

ピクシス(アルミン)『どういう意味だ?』

エルヴィン(アーロン)『1度目は教育実習生時代に一緒になった「綺麗な女子大生」に対してが初めてです。お礼を言う為に菓子折り持って相手のアパートを訪ねてみたら、其の時は既に遅く本人に会えなかったそうで。渡せなかった菓子を私にくれました。本人はその「理由」までは話してはくれませんでしたが、その相手を知っている私には情報が筒抜けです』

ピクシス(アルミン)『ふむ? ちょっと待て。あの時の女子大生は、ハンジだぞ? え……まさかとは思うが、あやつ、気づいておらんのか?!』

エルヴィン(アーロン)『気づいていないみたいですよ(黒笑顔)』

ピクシス(アルミン)『ふぶー! (茶吹き零す)待て待て待て。アホか? あやつはアホなのか? 同一人物だと思っておらんのか? 本当に?! 信じられん。どう見ても同じ人物だろう!』

エルヴィン(アーロン)『恐らく「化粧」と「ノーメイク」の差と、背丈が少し違う事で区別出来ているせいでしょうね。加えて「声」も以前より野太く、はっきりとした喋り方をするようになたから、女子大生時代の柔かい喋り方も抜けているので、そのせいかと思われます』

ピクシス(アルミン)『いや、でも名前で分かるのは? そこで気づくもんじゃ……』

エルヴィン(アーロン)『残念な事に、教習時代のハンジの名前を憶え損ねています。フルネームをちゃんとしっかり聞いてなかったそうで……』

ピクシス(アルミン)『あやつ、自己紹介の時上の空だったからな。自業自得だな……』

ピクシス(アルミン)『そうか。では、同一人物だと気づいた時に何が起きるかワクワクするのう……ぐふふふふ』

エルヴィン(アーロン)『ですねえ。むずむずしますよねえ』

ピクシス(アルミン)『楽しみだ。実に楽しみだ。むふふふ………』





そして季節は流れて秋になり冬に近づく頃……。

追いかけっこは一応の決着を迎える。

ハンジ(エレン)『はあはあはあ……分かった! 妥協する! 妥協するから!』

リヴァイ(ミカサ)『妥協? じゃあ毎日、風呂に入るんだな?』

ハンジ(エレン)『いや、それは無理だけど! お休みの時! リヴァイのお休みの時はお風呂、付き合うから! 定期的に一緒にお風呂に入ればいいんでしょ?! それで手を打って! お願い!』

リヴァイ(ミカサ)『休みの時って言ったら月1しかねえじゃねえか。そんな遠いサイクルでいいと思ってるのか? (ゴゴ…)』

ハンジ(エレン)『いやでも、あんたも忙しいでしょうが! お願いします! この通り! (ぺこぺこ)』

リヴァイ(ミカサ)『しょうがねえなあ。とりあえずはそれでこっちが妥協してやる』

ハンジ(エレン)『はー……(ぐったり)』

リヴァイ(ミカサ)『という訳で、早速入るぞ。明日は休みだしな』

ハンジ(エレン)『?! だったら明日でイイよね?! 人の話、聞いてました?!』

リヴァイ(ミカサ)『初回は特典サービスだ。よくある事だろ? (どや顔)』

ハンジ(エレン)『サービス過剰ですうううううう!!!!』

そして舞台からはけて再び「見せられないよ!」の小僧の恰好をしたアルミンが登場だ。

ここからは音声だけになる。本当、毎回すんません。

ハンジ(エレン)『はふう……洗って貰うのは凄く気持ちいいんだけどねえ』

リヴァイ(ミカサ)『肩がいつも凝っているな。仕事し過ぎなんじゃないか?』

ハンジ(エレン)『んーなんか、生物のもう1人の女性の先生が今度、産休に入るらしくってね。そのしわ寄せでこっちがちょっとだけ負担を持っている感じかな。だからテスト問題の作成とか、担当するクラスが来月から一気に増える事になるかも』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何だって? それは大丈夫なのか?』

ハンジ(エレン)『んーまあ、なんとかなるよ。私が人の2倍働けばいい話だし?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、でも、給料は変わらないだろ? 仕事増えるのに』

ハンジ(エレン)『ん? あーそうだったっけ? あははは……忘れてた!』

リヴァイ(ミカサ)『仕事の量が増えても給料は殆ど変らないんだ。無茶はするんじゃない。……俺も人の事は言えんが』

ハンジ(エレン)『んーでも、私この仕事気に入っているから別に構わないよ。趣味と実益を兼ねた仕事だし? 授業するの楽しいから担当クラスが増えるのはかえって嬉しいかな』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか。前向きだな。ハンジは……だったら、少しサービスしてやろうか?』

ハンジ(エレン)『え? 何? これ以上、サービスしなくてもいいよ……ああ?!』

ちょっと色っぽい声に会場もざわめいた。

そう、ここで、ちょっとエロい展開(?)が入るのだ。

ハンジ(エレン)『え……待って? 今、何したの?! あ……あああ』

リヴァイ(ミカサ)『ツボ押しだ。やり過ぎるとダメだが、首筋から肩にかけてのあたりには神経が集まっているから、この辺の筋肉が固まると体に悪いんだ。だから少し解してやる。勿論、手加減はする』

ハンジ(エレン)『あーちょっと待って待って! なんか、変な気分になるんですけど?!』

リヴァイ(ミカサ)『は? 気持ちいいの間違いだろ?』

ハンジ(エレン)『そうなんだけど。はふう……ヤヴァイ! これ、きくううううう!』

リヴァイ(ミカサ)『………はい、終わり。これだけでも大分違うだろ?』

ハンジ(エレン)『本当だ! なんか急に体がスッとした! 嘘みたい!』

リヴァイ(ミカサ)『たまにやる分には大丈夫な筈だ。毎日は出来ないが。気が向いた時にやる程度で構わん』

ハンジ(エレン)『ありがとう! リヴァイって手先が器用だね! マッサージの資格も持っているの?』

リヴァイ(ミカサ)『んー資格という程の物ではないが。柔道を習う時に身体の事はある程度勉強するからな』

ハンジ(エレン)『あ、そっか! 格闘術関連で、そういうのってあるよね! 整体師みたいなのだっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『それに近い。ただ、俺はそれを本格的にやれる程の知識はない。だから軽いツボ押し程度だ。出来るのは』

ハンジ(エレン)『十分だよ! 本当にありがとう!』

リヴァイ(ミカサ)『どういたしまして。さてと、ハンジが湯船に入る間に俺もシャワー浴びるか……』

ザバーとした水音だ。リヴァイ先生がシャワーを浴びる。

しかし1分も経たないうちに、

ハンジ(エレン)『ふー………なんか眠くなってきたあ』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『ツボ押し効きすぎたのかなあ? むにゃむにゃ……』

リヴァイ(ミカサ)『おい、待て。さすがに風呂の中で寝るな! ハンジ?!』

ハンジ(エレン)『ああ……ごめんごめん………ZZZ……』

リヴァイ(ミカサ)『ダメだな。おい、ハンジ。寝るんだったら、ここで寝るな。溺れるぞ』

ハンジ(エレン)『うん……起きる……(ヨロヨロ)』


ズルベッターン!

ドンガラガラシャーン!


SEだけでも凄い音だった。ハンジ先生がフラフラしてこの時、リヴァイ先生に向かって倒れそうになって、風呂の中の道具類がひっくり返ったそうなんだ。

裸と裸で抱き止めあって、それでもリヴァイ先生は冷静にハンジ先生を叩いて起こした。

この辺は女に慣れているリヴァイ先生だから出来た行動だろう。

オレには到底真似出来そうにない。いろんな意味でな。

ハンジ(エレン)『あああ……ごめん(シュン)』

リヴァイ(ミカサ)『大分疲れていたようだな。すまん。そんなにツボ押しが効くとは思わなかった。今度から気をつける』

ハンジ(エレン)『いやいや、いいって。気持ち良かったし。でも今日はもう寝たいかも……』

リヴァイ(ミカサ)『うちに泊まっていくか?』

ハンジ(エレン)『うん。甘えていいならー』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ』

そして服を着せてそのままおんぶして自分の部屋に戻るんだ。

衣服は当然、パジャマだな。この辺になると、ハンジ先生が泊まっていいようにハンジ先生自身の着替えを少量、ストックするようになったそうだ。

なんだろうな? これって付き合っているという段階に既に入っているとしか思えないよな。

でも、当時の2人は本当に「友人同士」だと思っていたそうだから困ったもんだよな。

舞台上に再び登場して、ハンジ先生はベッドの上で寝かされる。アルミンはそのまま退場だ。

疲れてスヤスヤ眠るハンジ先生のおでこを撫でながら、リヴァイ先生は呟いた。

リヴァイ(ミカサ)『全く………男より仕事の出来る女なんて、初めて見る』

其の時のリヴァイ先生はしみじみ思ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ、お前、分かっているのか? 新人の先生で仕事を増やされるっていう事が、どういう意味なのか』

ハンジ(エレン)『ZZZ……』

リヴァイ(ミカサ)『周りから期待されているって事だ。お前の「技術」が認められているんだ。まだ1年も経っていないっていうのに。凄いな。ハンジは……』

ハンジ(エレン)『ZZZ……』

リヴァイ(ミカサ)『それに比べたら、俺はまだまだダメ教師だな。本当に……日々、始末書を書かされてばかりいる』

ハンジ(エレン)『ZZZ……』

リヴァイ(ミカサ)『……………おやすみ。ハンジ』

そう言って、リヴァイ先生はいつものようにソファに戻る。

再び暗転だ。その隙に観客から「ここでキスするかと思った」とかいう呟きが聞こえて吹き出す今のリヴァイ先生だった。

リヴァイ『いや、んな真似しねえよ』

「ええー? していいでしょー」という野次も飛ぶ。

ハンジ『もしこの時、そういう事してたら今、絶対結婚してないよー』

「ええ?! そうなんですかー?」という驚きの声。

ハンジ『うん。リヴァイ、その辺根性あるもんね? ね?』

リヴァイ『………ノーコメントだ』

と言ってまた観客が笑っていた。





そしてまたある日。リヴァイ先生の部活動の指導のシーンだ。

柔道の指導をしている最中、リヴァイ先生が寝技について「図解」をしていたが「絵が分かりにくい」という生徒の指摘を受けて困り果てて「実際にやっているところを見せて欲しい」と言われてしまう。

リヴァイ(ミカサ)『なんだと? 男と男の絡みを見てみたいっていうのか? お前らは』

柔道部員1(キーヤン)『いや、柔道ってそういう格闘技ですし……』

リヴァイ(ミカサ)『勘弁してくれ。試合の時は我慢出来るが、指導しながらとなると、かなり長い時間、男と男の絡みを見る羽目になるんだぞ? 見る方も辛いと思うぞ?』

柔道部員2(カジカジ)『まあ、そりゃそうですけど』

リヴァイ(ミカサ)『女子部員、いねえか? あ……この学校には女子の柔道部員はいないんだったな(がっくり)』

と、珍しく大げさに落ち込むリヴァイ先生だったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『参ったな。女性で俺との絡みをやってくれそうな女は………』

リヴァイ(ミカサ)『ダメ元で頼んでみるか。ちょっと待ってろ』

そしてハンジ先生に「今度、酒奢るから、指導を手伝え」と話す。

ハンジ(エレン)『はいはい? 私は何をすればいいのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『柔道の寝技の相手になれ。手加減はしてやるから』

ハンジ(エレン)『えええええ?! 皆の前でそれやるの?! ちょちょちょっと恥ずかしいんだけど!?』

リヴァイ(ミカサ)『大七…』

ハンジ(エレン)『う!』

リヴァイ(ミカサ)『神亀……』

ハンジ(エレン)『ううううう!』

リヴァイ(ミカサ)『白影泉もつけてもいいぞ。阿櫻(あさくら)、不老泉、天明、蓬莱泉も追加だもってけドロボー(*棒読み)』

ハンジ(エレン)『あああやめて! お酒責めはやめて! 身体が……いう事をきかなくなっちゃう!』

リヴァイ(ミカサ)『ほらほら……素直になれよ。本当は欲しがっているんだろ? なあハンジ?』

ハンジ(エレン)『ああああああ!』

何の責めだよ。何でこう、リヴァイ先生が言うと途端に違う方向に聞こえるんだろうな?

観客も「エロ!」と言って笑っている。酒の銘柄は有名なのかは知らんけど。

ハンジ(エレン)『べ、弁天娘も追加して貰える?』

リヴァイ(ミカサ)『了解。日置桜も追加しておくか?』

ハンジ(エレン)『あざーっす! 精一杯やらせて頂きます!!!』

という訳でこの日を境に本当に寝技の指導はハンジ先生の協力の元、行ったそうだ。

ハンジ先生は柔道着に着替えて実際、舞台の上でやるんだよな。

ふー。このシーン、結構気合入れておかないと、やばい。

何がって? オレの方の息子が起動しないようにだよ!!!

女役やってる最中にそこ反応させたらダメだからな。バレるような角度まで持ち上げないように気をつけねえと。

精神集中だ。集中……集中。

リヴァイ(ミカサ)『まずは上からの攻め、横四方固めからいくぞ』

ミカサの胸があああ胸がああああ! 当たってるんだよな。コレ。

でも我慢だ。ひたすら我慢だ。きっと自分の顔は赤いだろうけど。

リヴァイ(ミカサ)『左腕を相手の頭の下へ入れ、首が曲がるくらいまで差し込む』

リヴァイ(ミカサ)『右手で相手の道衣をほどき、横に出し、相手の脇の下から上腕を制するようにして、左手で握る。左腕は掌を返し肘を畳につけ、一旦下がってから肩で首を決める』

リヴァイ(ミカサ)『首を決めたまま、右足で大きく円を描くようにし、膝を畳につけ相手の体に沿うように抜く。抜いた脚は、膝を曲げて相手の腰につける。以上だ』

柔道部員一同『『『『『おおおお……』』』』』

とまあこんな感じで「腕縛り」「片羽絞」「腕挫十字固」等々、いくつかの技を披露して終了だ。

かけられる方は結構、しんどい。ミカサはノリノリだったけどな。

リヴァイ(ミカサ)『………以上だ。次回は「横三角絞」を見せてやる。今日見せた技は頭の中になんとなくでいいから入れておけ。まずは技の紹介を優先する。詳しい実戦でのやり方は後回しだ』

柔道部員一同『『『『『はい!』』』』』

ハンジ(エレン)『ふーしんどかった………』

リヴァイ(ミカサ)『意外とやり易かったな。体柔いな。ハンジは』

ハンジ(エレン)『まー一応、少林寺拳法と空手は少々嗜んでいるんで……』

リヴァイ(ミカサ)『それはいい事を聞いた。次回も頼むぞ』

ハンジ(エレン)『お、お酒の方はいつ頂けるんでしょうかね?』

リヴァイ(ミカサ)『1回の指導終了に対して1本ずつでいいだろ?』

ハンジ(エレン)『全部で9回ね。分かった……頑張るよ(赤面中)』

リヴァイ(ミカサ)『10本目も用意してやってもいいぞ? まあ、それは最後のお楽しみにしてもいいが』

ハンジ(エレン)『あああもう! リヴァイの商売上手!! やればいいんでしょ! もー』

リヴァイ(ミカサ)『ククク………(ニヤニヤ)』

リヴァイ(ミカサ)『あ、帯、緩んでいるぞ』

ハンジ(エレン)『あ、御免御免……』

リヴァイ(ミカサ)『…………(帯なおしているところを見ている)』

ハンジ(エレン)『ん? 何? もう終わったから戻っていいよね?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、いいぞ。ありがとう。ハンジ』

ハンジ(エレン)『んじゃまたね~』

先に舞台からはけて、

リヴァイ(ミカサ)『……………』

リヴァイ(ミカサ)『意外と楽しかったな。うん』

と言いつつリヴァイ先生もはけていったのだった。







夜中のシーンだ。リヴァイ先生の部屋の中でのシーンだ。

リヴァイ(ミカサ)『……………もう会えないって、それは俺と別れたいって意味か』

女1(ユミル)『そうなるな。悪い。私も今年で27歳になるし……その、結婚の話が出ていて、プロポーズされたんだ』

リヴァイ(ミカサ)『……………………』

女1(ユミル)『御免。ずるずる会い続けていた私も悪いんだ。あんたの中の1番になれないの、分かっていてずっと関係を続けていたんだし。そろそろ潮時かなって、思うんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………』

女1(ユミル)『リヴァイ、少し痩せたね。新しい仕事、忙しいんだろ? 御免な。今まで無理につき合わせて……』

リヴァイ(ミカサ)『何言っているんだ。そんなのは謝る事じゃない。むしろ悪いのは俺の方だろ』

女1(ユミル)『……………止めてくれないんだな。やっぱり』

リヴァイ(ミカサ)『止めた方が嬉しいのか?』

女1(ユミル)『そりゃあ嬉しいよ。たとえ嘘でも、嬉しい』

リヴァイ(ミカサ)『…………………』

女1(ユミル)『でも、そういう嘘はつけないんだろ? それも分かっているよ』

女1(ユミル)『ごめん、でも最後に1つだけ、我儘言ってもいいか?』

リヴァイ(ミカサ)『いいぞ』

女1(ユミル)『キスして。それで全て終わりにするから』

女同士のキスシーンだけど、ここは「あくまでフリ」で済ませる。

そういうテクニックがあるんだ。仮面の王女の時に散々習ったアレだ。

女1(ユミル)『…………何でこういう時も、優しいキスなんだよ……! 馬鹿!』

リヴァイ(ミカサ)『え……』

女1(ユミル)『最低! 本当、あんたクソ野郎だ! でも、最高の男だったよ! じゃあな! 私は幸せになるから!!! あんたもさっさと誰かとくっつけバーカ!!!』

そして1人取り残されるリヴァイ先生だった。

部屋に戻ってソファに座り、落ち込んで考え込む。

その後、チャイムが鳴る。

ドアを開けると、そこには先程の女ではなく、ハンジ先生の姿が……

ハンジ(エレン)『………ごめん。なんかタイミング悪かったみたいだね。女の人、飛び出ていったけど……』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。今さっき、別れ話をされて出て行ったところだ』

ハンジ(エレン)『OH……あと5分早く来ていたらまさかの修羅場だったかもだね』

リヴァイ(ミカサ)『何しに来たんだ?』

ハンジ(エレン)『いやーこの間の精算して貰おうかと思って。お酒受け取りに来たんだけど、また今度でいいや~ごめんね~』

リヴァイ(ミカサ)『別に構わん。むしろ付き合え。酒ならジャンジャン出してやる』

ハンジ(エレン)『やーでも、さっきの彼女、戻ってくるかもしれないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『今度結婚するって言われた。プロポーズされたんだそうだ』

ハンジ(エレン)『えええ? 本当に? そ、それはご愁傷様……』

と言いつつ勝手に冷蔵庫を開ける。

酒を適当に取り出してリビングに運んでリヴァイ先生の隣に座る。

リヴァイ(ミカサ)『1杯くれ。飲みたい気分だ』

ハンジ(エレン)『ワインでいいの?』

リヴァイ(ミカサ)『何でもいい』

ハンジ(エレン)『分かった。はい、どうぞー』

トクトク……ワインをグラスに注いで一緒に飲んだ。

ハンジ(エレン)『あー美味しい♪ やっぱりワインもいいよね』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな』

ハンジ(エレン)『ビールも日本酒も焼酎も好きだけど。アルコールなら大体好きだけど』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな』

ハンジ(エレン)『もしかして、リヴァイにとっての、女の人って、私にとっての「お酒」みたいなもんなのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『好きな銘柄多すぎて1つだけ選べないの? 私はもし、1つだけ選べって言われたら迷わず選ぶよ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか? 意外だな』

ハンジ(エレン)『うん。私だったら迷わず「ビール!」って答えるね。他のアルコールも好きだけど。やっぱりひと仕事終えたあとのビールの味には敵いませんからね!』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……』

ハンジ(エレン)『勿論、他のアルコールも嫌いじゃないよ。でも、もし「選べ」って言われたらビール缶を冷蔵庫の中にぶち込むかな』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

ハンジ(エレン)『もしかして、リヴァイってそういうのがあんまり「ない」タイプなのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『自分の好みが分からないって事か?』

ハンジ(エレン)『うん。それに近いかも』

リヴァイ(ミカサ)『好みくらいなら、俺にもある』

ハンジ(エレン)『ん? どんなの?』

リヴァイ(ミカサ)『同級生から、年下の女……か?』

自分の傾向を考えてその時はそう答えたそうだ。

ハンジ(エレン)『年上ダメなんだ』

リヴァイ(ミカサ)『ダメではないが、数は少ないな。圧倒的に多いのは「年下」でついで「同級生」だ。さっきの女も同じ年の女だった』

ハンジ(エレン)『ふーん。そうなんだ』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジにも、そういうのはあるのか?』

ハンジ(エレン)『んふー?』

リヴァイ(ミカサ)『何で笑って誤魔化す?』

ハンジ(エレン)『あー……そういうの、実はまだ良く分かんない。私もあんまり人の事言えないんだよねーあははは!』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ。俺達、似た者同士だったのか』

ハンジ(エレン)『かもしれないね。いや、つきあった経験がない訳じゃないよ? でも、自分から「この人がいいなあ」って思って恋愛したこと、1度もないんだー』

リヴァイ(ミカサ)『いいとも思わずに付き合うのか、ハンジは』

ハンジ(エレン)『んー? とりあえず告白されたら「味見」感覚? でも「やっぱり何か違う!」と思ってさくっと別れる事もしばしばですよ? てへ☆』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ。お前も案外、悪い女だな』

ハンジ(エレン)『ちょちょ、リヴァイにそれは言われたくないよお! 今まで何人女泣かせてきたのよ!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ここでの意味は「いい意味」だが?』

ハンジ(エレン)『余計悪いから! いや、その………高校時代とかの話ですけどね? さすがに大学入ってからは、もうちょっと慎重にしてみたりもしたけどね』

リヴァイ(ミカサ)『ふむ…』

ハンジ(エレン)『私の場合は「自分から」別れを切り出す事しか経験してないし、別れを切り出される気持ちは分かんないけど、その……まあ、元気出して? 明日もあるしさ?』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ。慰めてくれていたのか』

ハンジ(エレン)『いやーこういう時ってどう元気づけるべきか分かんないもんだよね。ごめんね! へたくそで!』

リヴァイ(ミカサ)『自業自得だって、罵ってくるかと思っていたが?』

ハンジ(エレン)『あ、そっちの方がいいならそうするよ? やーい自業自得!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。自業自得だ。もうこれで3人目だしな』

ハンジ(エレン)『ぶふーーー! あ、そうだったんだ。もしかして、そろそろ皆、リヴァイからどんどん離れているとか?』

リヴァイ(ミカサ)『結婚するってさ。結婚を切り出せないような男とは、縁も続けられないんだろ。きっと』

ハンジ(エレン)『ひ、1人くらい自分からプロポーズしちゃえば良かったんじゃ?』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。きっと、そうするべきだったんだ。俺は。あいつらに甘えていたツケが今頃来たんだろ』

と、言って酒を飲んでしまう。

リヴァイ(ミカサ)『なんで、なんだろうな。皆、最後に「キス」してと言ったり、我儘を言ったりしてくるのに、それを叶えたら「最低馬鹿野郎!」呼ばわりだ。相手の希望を叶えたのに、何で怒られるんだろうな?』

ハンジ(エレン)『んん? 状況がイマイチ見えないであります。隊長!』

リヴァイ(ミカサ)『別れ際に皆、我儘を聞いてくれって言うから、全員叶えてやった。でも、それが気に食わなくてやっぱり最後に離れていく。あいつらは俺に「何を」求めていたんだろうか』

ハンジ(エレン)『別れる時に、我儘……ねえ。嘘ついていたとか?』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『いや、反対の行動を取って、どんな反応をするのか試した……とか? リヴァイの本心知りたかったとか? その辺かなって直感で思った』

リヴァイ(ミカサ)『俺の本心? 本心は、そりゃあ離れて行って欲しくない。って気持ちしかないけどな』

ハンジ(エレン)『それって本当に恋愛感情? ただの依存じゃなくて?』

リヴァイ(ミカサ)『…………どう違うんだ?』

ハンジ(エレン)『いや、なんとなくだけど。リヴァイって、恋愛をしているようで、してないような……いや、ハーレム作っている時点で既に普通の恋愛じゃないんだろうけど! でも、何か「変」なんだよね? 私から見ると。リヴァイみたいにハーレム作っている他の男も実際に見た事あるけどさ。ちょっとそれとは違う印象だから』

リヴァイ(ミカサ)『…………すまん。2回目だが、どう違うんだ?』

ハンジ(エレン)『ええと、そのハーレム王は自分からガンガン女をナンパしては浮気してそれが彼女にバレては凹られて……みたいな。あ、凹られるのは男の方ね。女って、浮気すると浮気相手の女より、自分の男の方を「殺したくなる」生き物みたいだからさ。ここは男と逆みたいなんだよね。男は男同士で争うけど。女は男の裏切りの方が許せない生き物らしいよ』

リヴァイ(ミカサ)『悪い。何の話をしているのかだんだん分からなくなった』

ハンジ(エレン)『だから……あんたの場合、女の方があんたを凹っている気配ないから。そういう修羅場って経験ないの?』

リヴァイ(ミカサ)『そう言えば、ねえな。1度もねえ』

ハンジ(エレン)『その時点で、普通じゃないっていうか……ごめん。私もだんだん分かんなくなってきた。1回休憩入れよう』

と言って酒を飲み干す。

ハンジ(エレン)『違和感? あるんだよね。恋愛している筈なのに「冷めて」いるような。恋愛ってこう、もっとドキドキする物じゃないのかな? 多分。いや、私も実はその「トキメキ」を経験した事がないから「多分」としか言えないんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『俺の今までの恋愛は「恋愛」じゃなかった可能性があるのか?』

ハンジ(エレン)『そこまでは言ってないけど………うーん? 私もどう言ったらいいのか分かんないんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、でもそうなのかもしれないな』

ハンジ(エレン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『俺自身、恋愛については良く分かってないのかもしれん。体を繋ぐ事は、練習すればそれなりにうまくはなるが、人の心……特に女の心はどんなに頑張って研究しても、根本的には理解出来ない部分があると思う』

ハンジ(エレン)『それはお互い様! 私も男の気持ちは分かりません! いや、女の気持ちも分かんない時もあるけど…』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。だったらハンジは「性別:ハンジ」って事か』

ハンジ(エレン)『なんか新人類みたいな扱いされてるー?! ちょっと嬉しいけどさ!』

リヴァイ(ミカサ)『嬉しいのか。それは良かった』

と、いいつつ2杯目を頂いてしまう。

ハンジ(エレン)『………えっと、何の話してたのか分かんなくなったじゃない』

リヴァイ(ミカサ)『ざっくり言えば「恋愛とはなんぞや?」って事だろ』

ハンジ(エレン)『それだ! いや、私も答えがない状態でここまで来ていますけどね』

リヴァイ(ミカサ)『俺も良く分かってない。でも、求められたら出来るだけ応えるだけだ。それ以外、やり方を知らないんだ』

ハンジ(エレン)『優しいんだね。リヴァイは』

リヴァイ(ミカサ)『さあな。本当に優しい奴は「最低」とか言われないと思うが?』

ハンジ(エレン)『あはは! もしかして「優しい」から「最低」なんじゃない?』

リヴァイ(ミカサ)『………日本語がおかしくないか?』

ハンジ(エレン)『ええ? そんな事ないよ? 優しい人なのに「最低」って言われるって事は繋がっている証拠だよ。つまりそういう事でしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジの思考回路がさっぱり分からん……やっぱりお前も「女」なんだな』

ハンジ(エレン)『あれ? 今度は女認定? もーコロコロ変えないでよー』

リヴァイ(ミカサ)『すまん。俺も少し酔ってきたようだ。普段はこんなにすぐ酔う訳じゃないんだが……』

ハンジ(エレン)『あらら。疲れているのかな? 疲れている時は酔いも早いしね。もう寝る?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。寝よう。明日がある。今日の事はまた明日考える……』

と、言ってソファで寝ようとするリヴァイ先生だ。

ハンジ(エレン)『ちょちょ、ベッドまで移動しようよ! こらー! 人の太もも枕にして寝るなー』

リヴァイ(ミカサ)『うるさい。貸し出してくれてもいいだろ……ZZZ……』

ハンジ(エレン)『金取るよ! 1万頂戴!』

リヴァイ(ミカサ)『財布から勝手に抜き取れ。適当に……ZZZ……』

ハンジ(エレン)『ええええうそーん。アバウト過ぎない? ちょっともーしょうがないなー』

この時のハンジ先生は、リヴァイ先生をおんぶしてそのままベッドに連れて寝かせてやったそうだ。

ハンジ(エレン)『戸締り出来るー? って出来そうにないね。鍵、借りてもいい? ドア閉めていくよー?』

リヴァイ(ミカサ)『だから適当にしろって言ってるだろ……ZZZ……』

ハンジ(エレン)『聞いてないな。これ……もうしょうがないなー』

そしてハンジ先生はきちんと戸締りして、鍵をかけて自分の部屋に帰ったそうだ。

ハンジ(エレン)『鍵は明日の朝、返せばいいか。じゃあね。リヴァイ。おやすみー』

と、ドア越しに挨拶してハンジ先生が帰って行き、照明がだんだん暗くなっていくのだった。

この時点ではまだお互いに合鍵を持っていた訳ではなかったそうだ。

合鍵を持つようになるのは、もう少し先の事らしい。

今回はここまで。一気に投下して疲れました。
次回はちょっと間を空けるかも? それではまたノシ

次の日の朝。目が覚めてベッドから起き出してリヴァイ先生は我に返る。

リヴァイ(ミカサ)『あれ? 朝か……いつの間に………ベッドに? ハンジと飲んでいた筈だが』

リヴァイ(ミカサ)『まさかあいつ、ベッドに運んでくれたのか? 意外と力あるな』

リヴァイ(ミカサ)『………………今、何時だ? 朝の6時か』

リヴァイ(ミカサ)『飯食ってシャワー入って準備するか……』

そして出かける準備をした時点でようやく気付いた。

リヴァイ(ミカサ)『あれ? 自宅の鍵がない。あ……あいつ、閉めて出て行ったのか』

リヴァイ(ミカサ)『鍵、あいつが持ってる筈だよな』

この時代のガラケーは今ではかなり貴重価値であるので、本物は流石に使えない。

それに似た物を小道具として作って使用した。音はSEを使ってここは表現した。

リヴァイ(ミカサ)『……………どうしよう。あいつ、出ないな』

リヴァイ(ミカサ)『鍵、閉めないで出る訳にもいかんし、どうする?』

リヴァイ(ミカサ)『ちょっとエルヴィンに相談するか……』

ルルル……

エルヴィン(アーロン)『はいはい? 朝からなんだい?』

リヴァイ(ミカサ)『すまん。ちょっと困ったことが起きた』

エルヴィン(アーロン)『うん? どうしたの?』

リヴァイ(ミカサ)『昨日、ハンジと夜、ちょっと飲んで、俺が先に寝落ちたから、ハンジが俺の部屋の鍵を持って閉めて出て行ってくれたみたいなんだが、電話しても、あいつ、出ない。まだ寝ているのかもしれんが、俺も時間ギリギリに家を出たくはない。こういう場合は、合鍵を借りられるんだろうか?』

エルヴィン(アーロン)『あーうん。ちょっと待ってね』

ゴソゴソ……

エルヴィン(アーロン)『マンションの管理人に連絡すれば合鍵は借りられる筈だよ。連れて来ようか?』

リヴァイ(ミカサ)『そうして貰えると助かる』

という訳で、マンションの管理人(キーヤン)が合鍵を貸してくれて事なきを得たのだった。

朝、2人でマンションの駐車場までの道を移動する。

エルヴィン(アーロン)『ふーん。家で飲んだんだ? ハンジと』

リヴァイ(ミカサ)『まあな。ちょっといろいろあって、付き合って貰ったんだ』

エルヴィン(アーロン)『それは良かったね。順調に仲良くなっているみたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『………何か意味深な笑みを浮かべているな? エルヴィン』

エルヴィン(アーロン)『そう? そう見える? まあ、受け取り方は自由だよ?』

リヴァイ(ミカサ)『別にヤッたとかそういう話じゃねえからな? 勘違いするなよ?』

エルヴィン(アーロン)『私はまだ何も言ってないのになあ』

リヴァイ(ミカサ)『いやらしい表情をしているからだろ。ま、ハンジの方はその気はなさそうだが……』

エルヴィン(アーロン)『ん? そうなの?』

リヴァイ(ミカサ)『俺のこのいい加減な状態を知って「プレイボーイは苦手」だって以前、言っていた。そういう男はハンジにとっては恋愛対象外なんだろ』

エルヴィン(アーロン)『ふーん。そうなんだ。リヴァイの方はその気ないの?』

リヴァイ(ミカサ)『俺は求められないのにヤる趣味はねえんだが……』

エルヴィン(アーロン)『じゃあもし万が一、気が変わって「求められたら」やってもいいんだ?』

リヴァイ(ミカサ)『んー……』

と、微妙な表情で立ち止まる。

リヴァイ(ミカサ)『どうなんだろな。ハンジは今までの女とはどれにも当てはまらないような感じもするんだが』

エルヴィン(アーロン)『曖昧な返事だねえ』

リヴァイ(ミカサ)『というより、ハンジがそういうのを求めてくるのを「想像」出来ない自分もいる。いや、実際そうなったら、俺は応えてしまうかもしれんが……』

エルヴィン(アーロン)『ずるい男だねえ。リヴァイは。その気にさせてばかりだね』

リヴァイ(ミカサ)『狙ってやっている訳じゃねえんだよ。なんか気が付いたらいつの間にか……「ん?」みたいな事態に陥る。愛されるのは有難いが、実際、周りの皆は俺のどこが良くて俺に尽くしてくれるのか、俺自身はイマイチ分かってないんだよな』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイにとっては周りに優しくするのは「息を吸う」のと同じくらい自然な事なんだね』

リヴァイ(ミカサ)『そこも変な話なんだ。そもそも、俺は人がいう程、人に「優しく」した覚えが余りなくて……』

エルヴィン(アーロン)『迷子の子供の肩車をしてあげるのは立派に優しい事だと思うけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それも今思えば、子供自身が「肩車」が「嫌い」だったら迷惑な話だろ。幸い、あの子供はそれを喜んではいたが。親によっては「人の子に何してんだ!」って思われる可能性もあっただろ?』

エルヴィン(アーロン)『そういう話をしている訳じゃないんだけど。こればっかりは「感覚」の話になるのかな』

リヴァイ(ミカサ)『俺は常々「失敗したか?」と思いつつ、衝動的にうっかりやってしまう事がある。だから出来るだけ慎重に事をやろうとするんだが、結局は衝動的にやって失敗する。自分でもたまに自己嫌悪に陥る』

エルヴィン(アーロン)『失敗に見えて実は「成功」しているから、人が集まってくるんじゃないの?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだといいんだけどな……』

と、エルヴィン先生と話しながら舞台からはけていく。

そして時間が経過して、リヴァイ先生はハンジ先生に放課後、鍵を返して貰う様に頼むのだが。

ここでまたひとつの事件が起きてしまうのだった。

ハンジ先生はリヴァイ先生に捕まるなり、その場で土下座して謝り倒した。

リヴァイ(ミカサ)『? 何で土下座する?』

身に覚えがなくて首を傾げていると……

ハンジ(エレン)『やらかしました』

リヴァイ(ミカサ)『何を?』

ハンジ(エレン)『リヴァイから預かっていたリヴァイの部屋の鍵、私の部屋の中で行方不明になったようです』

リヴァイ(ミカサ)『は? 鍵、無くしたのか?』

ハンジ(エレン)『た、多分……昨日は私も少し飲んでいたから、その……ポケットに入れたのは覚えているんだけど。朝、確認したら何故か、ポケットの中にはなくて。あるとすれば私の家の中の「どこか」にある筈なんだけど……』

リヴァイ(ミカサ)『あーじゃあ仕方ねえな。夜、ちょっとお邪魔させろ。俺も一緒に探すから』

ハンジ(エレン)『それは止めて! というか、弁償するから!!! 合鍵作って渡すから!!! それまで辛抱して!!!』

リヴァイ(ミカサ)『はあ? 何でそんな面倒臭い事を……それだと合鍵出来るまで管理人の方に迷惑がかかるだろうが』

ハンジ(エレン)『お願いします!!! 私の部屋は見ない方がいいから! その、きっと、リヴァイが見たら卒倒するから!』

リヴァイ(ミカサ)『卒倒? どういう意味だ』

ハンジ(エレン)『そのままの意味だから。あんたの為に言っているから。だからお願い! この通り!』

リヴァイ(ミカサ)『んー断る(キリッ)』

ハンジ(エレン)『ええええ……』

リヴァイ(ミカサ)『そこまで言われたら逆に見て見たくなった。多少散らかっているのは構わん。中に入れろ』

ハンジ(エレン)『こ、後悔しても……知らない……よ? (目が超泳ぐ)』








暗転。







そして出てきたゴミ屋敷の部屋。会場がざわめいていた。

裏方スタッフの総戦力によって、当時のハンジ先生の部屋に出来るだけ近づけた「汚い部屋」を舞台上に再現したのだ。

玄関を開けた直後、この時のリヴァイ先生は一瞬、息が止まったそうだ。

そしてすぐにブツブツ独り言を言い出したので、ハンジ先生は「あちゃー」と思ったそうだ。

ハンジ(エレン)『リヴァイ? あの、大丈夫? その………』

ハンジ先生はこの時、リヴァイ先生が「現実逃避」したとばかり思っていたんだけど。

実際のリヴァイ先生はこの時、既に頭の中で計算を始めていたそうだ。

何の? 決まっているだろ。ハンジ先生の部屋の掃除の段取りだよ。

リヴァイ(ミカサ)『掃除道具をエルヴィンに借りてくる。ここで待っていろ』

ハンジ(エレン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『この規模だとさすがに2~3時間はかかるな。よし。夜だから出来るだけ音はたてないように気をつけるが、今から掃除させて貰うぞ』

ハンジ(エレン)『えええええ今から?! 今、10時だよ?! それって終わる頃には真夜中だよね?!』

リヴァイ(ミカサ)『この場合は仕方がねえだろ。いいからやらせろ……(ユラリ)』

ハンジ(エレン)『待って待って待って待って! 夜だから! 近所迷惑だから! 音! うるさいって! 明日にしよう! ね? ね?』

リヴァイ(ミカサ)『嫌だ。こんな大物、便利屋のバイトの時以来だ。久々に腕が鳴る。ククク……』

と、ポキポキ拳を鳴らしたそうだ。

ここでリヴァイ先生は「お掃除モード」に完全に切り替わったらしい。

そして本当にここからリヴァイ先生は大掃除を1人で初めてしまって、3時間くらいで何とか足の踏み場を作って、ついでに鍵も見つけてしまったそうだ。

舞台上でもミカサのパーフェクト整理整頓が始まって、そのスゴ技に観客がどよめいた。

引っ越し屋さんがすげえスピードで片付けていく「アレ」を想像して貰えると分かりやすい。

ミカサもこの手の家事スキルはリヴァイ先生と匹敵する。だからこそ、再現できたシーンだった。

リヴァイ(ミカサ)『あ、あった……普通にリビングに落ちていたぞ。ポケットに穴開いていたんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『ん? あ、本当だ。右ポケット穴開いてた。やー面目ない』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ』

ハンジ(エレン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『お前、自分の仕事の机回りは綺麗にしている癖に、それ以外の場所がてんでダメ過ぎるだろ。特に台所! 生ゴミ何か月分ため込んでいたんだ?』

ハンジ(エレン)『覚えてないです。御免なさい……(再び土下座)』

リヴァイ(ミカサ)『全く……汚いのは自分だけじゃなかったのか。お前、自分にとって興味のない部分は放置し過ぎだろ。本棚の中とかは綺麗なのに……』

そう。ハンジ先生は「机の上」と「本棚」だけはきちんと整理しているという、ちょっと変わった汚女だったのだ。

ハンジ(エレン)『やーそこは、仕事する時に1番使う場所だから綺麗にしておかないと、訳わかんなくなるからね。それ以外は割とどうでもいいというか……』

リヴァイ(ミカサ)『ギャップがあり過ぎるだろ。あー来月から風呂だけじゃなく、部屋掃除も追加させて貰うからな』

ハンジ(エレン)『ええええ?! まるで家政婦みたいじゃないの! 申し訳ないよ!! いいってば! そこまでやらなくて!』

リヴァイ(ミカサ)『人の鍵を無くしかけた奴がどの面下げて断る? ああ?! (ギロリ)』

ハンジ(エレン)『あ、いや、だから……はい。すみません。リヴァイに従います(シュン)』

リヴァイ(ミカサ)『ったく……本当にお前って奴は……』

そしてその日の事を切っ掛けにして、リヴァイ先生は合鍵を作る事にしたそうだ。

1つはエルヴィン先生へ。もう1つはハンジ先生に託す事にしたそうだ。

場転後、リヴァイ先生の部屋で3人が揃って「いいの?」と互いに言い合う。

リヴァイ(ミカサ)『ああ。今後、何か急なトラブルがまた発生するとも限らん。お前たち2人になら信頼して託せるから1本ずつ、俺の鍵を預かって貰えないか』

ハンジ(エレン)『私もいいの? 1回鍵無くしかけたのに……』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジの場合は部屋がぐちゃぐちゃだったせいだろ。それは俺が今後、定期的に見張って掃除してやるから問題ない。その代り、お前の合鍵も後日、預からせて欲しい。お前が用事で家にいない時でも掃除だけは出来るようにしたい』

ハンジ(エレン)『それは別にいいんだけど………』

リヴァイ(ミカサ)『何だ? 何か問題か?』

ハンジ(エレン)『エルヴィンはどうする? エルヴィンも合鍵、預けるの?』

エルヴィン(アーロン)『どっちでもいいよ。私もリヴァイの事は信頼しているし。毎回、トラブル起きる度に管理人さんを呼び出すのも面倒だし。預けてもいいけど』

リヴァイ(ミカサ)『ならエルヴィンの分も預かろう。お互いに交換しておけば、何かあった時にすぐ助け合えるだろ』

ハンジ(エレン)『そっかー。そうだね。じゃあ、2本合鍵作って、私もリヴァイとエルヴィンに渡しておくね』

ハンジ(エレン)『えへへ~』

エルヴィン(アーロン)『どうした? ハンジ』

ハンジ(エレン)『なんかちょっと嬉しいなあって思ってね。これってまるで、家族みたいじゃない?』

エルヴィン(アーロン)『そうだな。リヴァイが家長で、私とハンジが娘と息子みたいなものか』

リヴァイ(ミカサ)『待て。1番年上が何を言っている。エルヴィンが家長だろ。この場合は』

エルヴィン(アーロン)『いや、この3人だったらリヴァイが家長みたいなものだよ。鍵の件だって言い出したのはリヴァイだ』

リヴァイ(ミカサ)『まだ結婚もしていないのに家長扱いはやめてくれ。エルヴィン。頼むからお前が家長でいてくれ』

ハンジ(エレン)『あははは! まあ、どっちでもいいじゃない! そうだ! 折角3人揃ったし、3人で飲もうよ!』

エルヴィン(アーロン)『いいよ。だったら私の部屋から酒も持ってくる』

ハンジ(エレン)『私もビールをこっちに持ってくるね! リヴァイ、お摘みお願い!』

リヴァイ(ミカサ)『まるで俺が2人の「嫁」みたいな立場だな』

エルヴィン(アーロン)『ああ、そっちの方がしっくり来るかもしれないね。その方がいいか』

ハンジ(エレン)『わーい! 一夫多妻の逆バージョンだね! 多夫一婦制?』

リヴァイ(ミカサ)『なんかいろいろ間違っている気がするが……まあいい。肉じゃがでも作る』

と言いながら3人で笑い合い、徐々に照明をフェードアウト。

この頃から徐々に3人で良く会うようになり、3人の関係がスタートしていったそうだ。

当時のエルヴィン先生はきっと、心中は複雑だったと思うんだけど。

でも、当時は本当に「楽しかった」とエルヴィン先生は言っていた。

自分の選択は間違っていなかったと、そう言っていたんだ。








そしてまた数日後。

ハンジ(エレン)『ねーリヴァイー』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ?』

ハンジ(エレン)『私の部屋、掃除してくれるのはいいんだけど、もうちょっと手加減出来ない?』

リヴァイ(ミカサ)『何で』

ハンジ(エレン)『物が片付き過ぎて、何を何処に置いたか分かんなくなっちゃって。探す時に困るんだよね。リヴァイにいちいち聞く訳にもいかないし』

リヴァイ(ミカサ)『あーだったらラベルでも貼るか。何処に何があるか「ラベル」で道案内すれば探せるだろ』

ハンジ(エレン)『ええー……それはそれで面倒だよ。私、自分の見える場所に物を置かないと探すの下手なんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『………俺と感覚が大分違うようだな』

ハンジ(エレン)『かもしれない。出来るならごちゃっとしてもいいから、こう、ザルかボールにまとめて適当に入れてくれた方がいいかな』

リヴァイ(ミカサ)『ハサミとか、引き出しに仕舞わない方がいいのか』

ハンジ(エレン)『そっちの方が助かるね。だってどの引き出しに入れたか思い出すのが面倒臭いじゃない』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。その辺はハンジのやり方に合わせよう。いくつか改善していくぞ』




そしてまた数日後。

リヴァイ(ミカサ)『お前……今、洗濯物、干しているのを直接、着替えに選んだな』

ハンジ(エレン)『ん? 部屋干ししている服が乾いているからこれでいいじゃん』

リヴァイ(ミカサ)『クローゼットに1度、仕舞わないのか?』

ハンジ(エレン)『何で? 仕舞う必要性が分からないけど』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そんなやり方だと、クローゼットの意味の方が分からなくなる。ハンジは服を「吟味」して選ばないのか?』

ハンジ(エレン)『あんまり………』

リヴァイ(ミカサ)『ショートカットし過ぎだろ。いいのかそれで』

ハンジ(エレン)『問題ないね! 普段からこんな感じだよ!』



そしてまた数日後。

ハンジ(エレン)『うーやっと終わったー!』

リヴァイ(ミカサ)『最近、痩せたな。飯は食べているのか?』

ハンジ(エレン)『あーそういえば今日、何も食べてなかった。あははは』

リヴァイ(ミカサ)『待て。今、夜の9時だぞ。丸一日食べてなかったのか?』

ハンジ(エレン)『朝もお昼も食べ損ねちゃった。てへ☆』

リヴァイ(ミカサ)『食べる時間を惜しんで仕事していたのか。倒れるぞ。そんな生活は』

ハンジ(エレン)『しょうがないじゃーん。そういう事もあるある』

リヴァイ(ミカサ)『俺も熱が出ている状態でも仕事する事はあるが、飯だけは無理やり胃に入れるぞ。体が資本なんだ。あんまり無茶するな』

ハンジ(エレン)『……………リヴァイがご飯作ってくれるなら、ちゃんと食べるけど?』

リヴァイ(ミカサ)『ほほう? 言ったな? 2言はないな?』

ハンジ(エレン)『え? 本当にやってくれるの? 半分冗談だったのに』

リヴァイ(ミカサ)『もう半分は本気なんだろ? 別に構わん。2人分作る方が作りやすいと以前も言っただろ』

ハンジ(エレン)『あーじゃあ、1食500円でお願いしてもいい? その範囲で出来る程度の物でいいからさ』

リヴァイ(ミカサ)『500円か……まあ、出来なくはないだろう。明日から用意してやる』




そして次の日の夜。

ハンジ(エレン)『冷蔵庫の中に作って入れておいたってメモがあったけど』

ハンジ(エレン)『どれどれ~』

ハンジ(エレン)『!?』

ハンジ(エレン)『ちょwwww何このクオリティの高さwww定食屋みたいwww』

ハンジ(エレン)『うわあ……凄く有難いよ。何かもう、リヴァイって職業を間違えているような気がするよ。料理人の方が良かったんじゃ……』

ハンジ(エレン)『いやいや、もしそうなっていたらリヴァイの料理を500円で食べられないからいいか。うん。そっちの道に行かなくて良かった!』

ハンジ(エレン)『いっただきまーす!』

ハンジ(エレン)『ああああ……味噌汁が胃に沁みる~』

ハンジ(エレン)『ハンバーグも美味しいなあ。リヴァイ、本当にありがとう……(しみじみ)』



そしてまた数日後。

女子生徒1(クリスタ)『リヴァイ先生~』

リヴァイ(ミカサ)『何だ? 突然』

女子生徒1(クリスタ)『リヴァイ先生って、ハンジ先生とつきあっているんですか?』

リヴァイ(ミカサ)『いいや? 別に付き合っていないが』

女子生徒1(クリスタ)『ええ? でも結構、今、噂になってますよ? 昼休みとかも良く一緒に居ますよね?』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、時々だな。そうしょっちゅう一緒にいる訳でもない』

女子生徒1(クリスタ)『怪しい~隠しているんでしょ? 本当は』

リヴァイ(ミカサ)『はいはい。好きに受け取れ』

女子生徒1(クリスタ)『えー? リヴァイ先生、ハンジ先生みたいなのがタイプなんですか?』

リヴァイ(ミカサ)『さあな? 俺も良く分からん。ただ、年下は「可愛い」と思う事もある』

女子生徒1(クリスタ)『え? じゃあ生徒も有りなんですか?』

リヴァイ(ミカサ)『ガキ過ぎるのは逆にダメだな。先生、こう見えても27歳だぞ』

女子生徒1(クリスタ)『そうだったっけ? 全然見えないー!』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。中学生の頃からあんまり顔が変わってないと自分でも思う』

女子生徒1(クリスタ)『じゃあ、卒業してからならアタックしてもいいのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『その頃にはきっと、お前も俺の事なんて忘れているだろ』

女子生徒1(クリスタ)『そんな事ないよ~! リヴァイ先生のいじわる~!』

リヴァイ(ミカサ)『あーはいはい』

同日。別の場所にて。

男子生徒1(カジカジ)『ハンジ先生、イグアナって可愛いですよね』

ハンジ(エレン)『え?! イグアナの可愛らしさに遂に気づいちゃったの?!』

男子生徒1(カジカジ)『なんか育てているうちに愛着が沸いてきました。独特のかわいらしさがあるというか』

ハンジ(エレン)『でしょでしょでしょー! イグアナって可愛いよね! よね!』

男子生徒1(カジカジ)『先生が熱心に世話しているのがだんだん分かってきた気がします』

ハンジ(エレン)『ありがとう! 生き物を大事にしてくれる生徒がいるのは嬉しいよ! これからも一緒に育てて行こうね!』

男子生徒1(カジカジ)『はい! 頑張ります!』




同日。別の場所にて。

リヴァイ(ミカサ)『校内に野良犬が迷い込んでしまったようだ(犬のぬいぐるみ抱いている)』

ハンジ(エレン)『あら可哀想~どこから来たのかな~よしよしよしよしよしよし』

リヴァイ(ミカサ)『ヨツゴロウさんじゃないんだから。よしよし言い過ぎだろ』

ハンジ(エレン)『だって可愛いもんー(デレデレ)』

リヴァイ(ミカサ)『動物なら何でも好きみたいだな。ハンジは』

ハンジ(エレン)『まあね! でも犬は学校では飼えないから、まずは張り紙出して飼い主がいないかどうか探さないと』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。そうするべきだろうな。出来るなら保健所には連れて行きたくはないが……』

ハンジ(エレン)『うちのマンション、犬と猫までならOKだよね。飼い主が見つからない場合はうちで飼う?』

リヴァイ(ミカサ)『世話出来るのか? 猫ならそんなに手間はかからんが犬は散歩とかいろいろ大変らしいぞ』

ハンジ(エレン)『そ、そっか……(シュン)』

リヴァイ(ミカサ)『飼ってやりたいのは山々だが……飼い主が見つからない場合は、新しい飼い主を探すしかないだろうな』

ハンジ(エレン)『そうだね。そうしようか……』




数日後。

リヴァイ(ミカサ)『………元彼女から連絡があった。犬、飼ってやってもいいそうだ』

ハンジ(エレン)『マジか! こんなところでリヴァイの人脈が役に立つとは?!』

リヴァイ(ミカサ)『俺もダメ元で連絡したんだが。意外とあっさりOK貰った』

ハンジ(エレン)『でもいいの? もう会わないって決めていたんでしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『女の気分なんて日によって変わるだろ。いちいちまともに間に受けなくてもいいと思うが』

ハンジ(エレン)『OH……大らかというべきか、女を舐めているというべきか。いや、当たっているんだけどね。女って、日によって気分の上下が激しいからね』

リヴァイ(ミカサ)『あいつに犬を引き渡してくる』




数日後。

リヴァイ(ミカサ)『……………何か、復縁する事になった』

ハンジ(エレン)『はい?! マジか!?』

リヴァイ(ミカサ)『俺も自分でびっくりだ。別れた3人のうち、2人は本当に結婚する事になっていたそうだが、1人だけ嘘ついていた奴がいた。そいつはハンジの言う様に、俺の気持ちを確かめたかったそうだ』

ハンジ(エレン)『なんだー良かったじゃん! おめでとう! もうその子と結婚しちゃいなよ!』

リヴァイ(ミカサ)『その方がいいかもしれない。ちょっと俺もその方向で考えてみようかな……』

と、言った瞬間、観客がざわめいた。

「え? まさかリヴァイ先生、今回の結婚、2回目なの?!」っていう意味で。

ハンジ『あー……』

リヴァイ『…………』

ハンジ『うん。リヴァイは初婚だよ。2回目じゃないからね』

と、ハンジ先生が言うと観客は更にざわめいた。嫌な予感しかしないという意味でな。






また別の日。

ハンジ(エレン)『ふふふ~ん♪ リヴァイ~おはよーって、どはあああ?! どうした?! 目の下のクマ、酷いよ?!』

リヴァイ(ミカサ)『……………ハンジ。愛って何だ?』

ハンジ(エレン)『なんか哲学的な事を言いだした?! いきなりどうしたの?!』

リヴァイ(ミカサ)『俺には分からない。いつだって、そうだ……(ブツブツ)』

ハンジ(エレン)『あかん! きのこが生えそうな勢いで腐っていく! リヴァイ! 今日は無理しないで早退した方が……』

リヴァイ(ミカサ)『どうして俺はいつもこうなるんだ。あいつは一体、何を俺に求めて……』

ハンジ(エレン)『また同じ事言い出した! ああもう! 水でもかぶってしゃきっとしなさい!』

リヴァイ(ミカサ)『そうする……』

ハンジ(エレン)『いや、本気にしないで! まだ初春だから! 夏じゃないから! ああああ?!』

リヴァイ先生、本気で水を被ろうとしたから慌ててハンジ先生が止めたらしい。

そこにエルヴィン先生もやってきて、何とか止める事は出来たんだけど。

エルヴィン(アーロン)『あーあ。なんかこじれたみたいだね。リヴァイ。今夜は私と飲もう。いいね?』

リヴァイ(ミカサ)『頼む……』







そして場転後。泥酔リヴァイ先生の登場だ。

エルヴィン先生とバーで深酒したそうだ。この時にピクシス先生も同席してくれたそうだ。

加えてこの時の記憶はリヴァイ先生は全くなかったそうなので、ここの構成は主にエルヴィン先生に監修して貰っている。

ピクシス(アルミン)『何があったんだ?』

リヴァイ(ミカサ)『こっちが訊きたい……ヒック……』

ピクシス(アルミン)『結婚を申し込んで断られたのか?』

リヴァイ(ミカサ)『んー……それ以前の会話でグダグダになった』

エルヴィン(アーロン)『どういう意味だ?』

リヴァイ(ミカサ)『分からない。何でああいう展開になったのか。俺にはさっぱり……』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイ。その子とどんな「会話」をしたのか思い出せるだけでいいから話してごらん』

リヴァイ(ミカサ)『………あいつ、最近になって視力が落ちたらしくてな』

ざわ……

勘のいい人はこの言葉で気づいたかもしれない。

リヴァイ(ミカサ)『眼鏡、新調したそうだ。その形がハンジの眼鏡と全く同じ形のフレームだったから「ハンジと同じのか」って言ったら、「ハンジって誰?」って問い詰められて。職場の同僚だって、伝えたら「何でフレームの形、覚えているの?」って言われて。「たまたまじゃないか?」って言ったら「嘘。絶対、嘘だ。あんた、そういうの、今まで口に出したことなかったでしょ」って言われて……俺は覚えがなくて。何が「そういうの」なのか意味がいまいち分からなくて……「どういう意味だ?」って聞き返したのに。「自分の胸に聞きなさいよ」って言い返されて。頭の中、混乱していたら、いきなり「私はあんたの何番目なの?」っていう話になって、こっちは「は?」ってなって……』

ピクシス(アルミン)『リヴァイ、それはお前が100%悪い』

リヴァイ(ミカサ)『俺の何が悪かったんだ……?』

ピクシス(アルミン)『他の女の名前を出したところと、その女の特徴を話した事だ。今まで「そういうの」を言った事がなかったという事は、今までのリヴァイは話した事がなかった筈だな』

リヴァイ(ミカサ)『そんな事は意識した事もなかった』

ピクシス(アルミン)『という事は、無意識にそうリヴァイ自身が「気遣って」いたか、だな。女と会う時は他の女の影は出さない。そういう気遣いを無意識に行える男だったのではないか?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そんな筈はない。過去に多々、怒られた事はある。俺はその都度改善していったまでで……』

ピクシス(アルミン)『だとすれば、無意識に「出た」情報に匂いを感じたのだろう。リヴァイの「心の中」にいる女の存在を』

リヴァイ(ミカサ)『いや、待ってくれ。俺はただ「眼鏡のフレームが同じだな」と思っただけで、そこに他意は……』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイ、もう1杯行こうか』

そしてガンガン飲まされていく。勿論、本物のお酒じゃない。ただの水だけど。

リヴァイ(ミカサ)『それじゃまるで、俺がハンジの事を女として好きでいるように聞こえるんだが……』

ピクシス(アルミン)『事実、そうじゃろう? 違うのか?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それはない。お互いに裸を見合っても何も起きない。キスもセックスもしていないし、俺自身も全くその気にならない。ハンジの事は同僚として「尊敬」はしているが「女」として見ている訳では……』

エルヴィン(アーロン)『でも、つい口に出ちゃったのは事実なんだよね?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジの眼鏡の形は女にしては珍しいだろ。男性的な太い黒縁眼鏡だし、それと同じフレームを選ぶ女が他にもいたのかって思ったくらいで、それ以上の意味はなかった』

ピクシス(アルミン)『ふむ。という事は、リヴァイは少々「男性的」な部分を持つ女性に惹かれる傾向にあるのかもしれんな』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何でそうなる』

ピクシス(アルミン)『無意識というものは馬鹿に出来ないものだぞ。ふと目につく物や記憶に残っている物。そこには何らかの「意味」を持つ場合もある。リヴァイの場合は「眼鏡」だった訳だが』

リヴァイ(ミカサ)『…………別に眼鏡そのものが好きって訳ではないんですが』

ピクシス(アルミン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『ただ眼鏡を外して時々リラックスしている女は嫌いじゃない。そう思う自分がいるのは否定しない。でもそういう「趣味」みたいなものは、多かれ少なかれ、誰にでもある話じゃないんですか』

と、ピクシス先生に食って掛かっていったらしい。

エルヴィン先生はこの時、どんどん酒を煽らせてリヴァイ先生の『深層意識』を探っていったそうだ。

ピクシス(アルミン)『ふむ。それは確かに一理ある。わしも三つ編みの女子がそれを解いた瞬間が大好きだからの』

と、ピクシス先生の趣味まで暴露したので一瞬、会場がクスクス笑いに包まれた。

エルヴィン(アーロン)『私は逆に髪の短い女性が割と好きですね。気の強い子がタイプですが』

と、また要らない情報が出て来て会場は小さな笑いに包まれた。

リヴァイ(ミカサ)『だったら、俺のそれも常識の範囲内の筈だ。何で眼鏡の件でそこまでキレられたのか分からない上に「やっぱりもう別れる!」と言い返されたのか……』

ピクシス(アルミン)『そのおなごとは、寄りを戻したいのか? だったら急いだ方がいいぞ』

リヴァイ(ミカサ)『…………分からねえ。今まで感じた事のない「重い」感情が俺の足を止めている。あいつの事を好きだと思っていたのは俺の勘違いだったんだろうか?』

エルヴィン(アーロン)『結婚を視野に入れていたのか?』

リヴァイ(ミカサ)『それも悪くないかもしれない。そう思いかけた事もあった。あいつとは、結構長い付き合いだった。高校時代……いや、中学からか。1番親身に俺に慕ってくれたのは、あの女だった』

エルヴィン(アーロン)『え……ってことは、12年くらい? ちょっと待って。そんなに長い付き合いの子がいるのに、その子とまだ「結婚」を考えていなかったの?』

リヴァイ(ミカサ)『途中で何度か音信不通になった年もあったよ。あいつも気まぐれな性格だからな。俺以外にも男がいるような事も言っていたし。友達なのか、恋人なのか。俺もどっちに捉えたら分からない時もあった。ハンジに「もうその子と結婚しちゃいなよ!」って言われて「その方がいいかもしれない」と思ったのに。何でこうなったんだ……?』

ピクシス(アルミン)『ちょっと待て。何故そこで「ハンジ」に言われた事が飛び出てくる? リヴァイ、お前、自分の事をどこまでハンジに話しておるんだ?』

リヴァイ(ミカサ)『どこまでって……俺がいい加減なプレイボーイだって事はハンジも知っている。他の女と別れる場面をうっかり見られた事もある。いろいろ、愚痴ってしまったら、あいつは「元気だして!」と励ましてくれた。あいつ、俺のような男のタイプは「嫌い」だって言っていた癖に。そういう時だけは優しいんだよな』

この時、ピクシス先生は頭抱えたそうだ。どこからツッコミ入れるべきか分からなくなったそうだ。

オレももし、この現場に居たらリヴァイ先生、1発殴っていたかもしれん。

エルヴィン(アーロン)『ハンジはそういう子だよね。あの子は優しいよ。うん』

と、冷静だったのはエルヴィン先生だけだったらしい。

リヴァイ(ミカサ)『ああ。あの時はハンジが居てくれて本当に良かったと思った。まあ、その後いろいろあいつはやらかして、鍵を無くしそうになるわ、結果的に合鍵を作る事になるんだが』

ピクシス(アルミン)『合鍵?! ちょっと待て。お主ら、合鍵まで持つような仲なのか?』

エルヴィン(アーロン)『あ、いえ。私もですけどね。3人でお互いに予備を持ち合う事になりまして』

ピクシス(アルミン)『はあはあ……すまん。わしはもう、この胃の滾りをどうしたらいいか分からん!』

と、遂にイライラし始めたピクシス先生だったそうだ。

エルヴィン(アーロン)『まあまあ落ち着いて。もう1杯どうぞ。リヴァイも飲んで』

リヴァイ(ミカサ)(グビグビ)

エルヴィン(アーロン)『つまりもうその子と寄りを戻すか戻さないか。自分でも分からないんだね?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……今回の件は俺の方から謝ってもどうにもならない気がする。というより俺自身が「何故」怒られたのか理由がいまいち理解出来ていない。そこを曖昧にして謝って、後でそれがバレた時の女の怒りは恐ろしいからな。下手に謝ると大変な事になる』

ピクシス(アルミン)『ふむ………』

リヴァイ(ミカサ)『結婚資金なら既にあるんだがな………エルヴィンに返そうと思って貯めた4000万があれば十分足りるだろ。エルヴィン、結婚資金として使うならお前も文句ねえよな?』

エルヴィン(アーロン)『むしろ使ってくれ。私としてはそっちの方が有難い』

ピクシス(アルミン)『だったら、リヴァイの年齢から考えても、いつ結婚をしてもおかしくないんだな?』

リヴァイ(ミカサ)『いつか子供が欲しいとは思っている。矛盾していますかね? この感情は』

と、どんどん酒の量が増えていく。

そろそろ20杯に近い量になって来た。問題はここからだ。

リヴァイ(ミカサ)『エルヴィンの言う通り、俺はガキが好きなのかもしれない。あいつらと一緒に居る時は、不思議と心が安らいでいる自分がいる。もし自分の子供が持てる日が来たら、きっとそいつにいろいろ教え込んで、馬鹿みたいに金をかけて遊んで甘やかしてしまうかもしれねえな』

ピクシス(アルミン)『そう思うのであれば、多少の「苦味」は飲み込んで、その「長い付き合い」のおなごともう1度向き合った方が良いのでは? わしはまだ、やり直せると思うぞ?』

リヴァイ(ミカサ)『同じ事を繰り返すかもしれない。ハンジとはまだまだこれから先、長い間付き合いになるだろうし……俺が仕事を転職すれば別ですが』

エルヴィン(アーロン)『んーそれはちょっと私の方が困るな。折角リヴァイが「その気」になって教職を始めたばかりなのに』

リヴァイ(ミカサ)『だろう? 俺にも一応、優先順位はあるからな』



ゴクゴクゴク……



遂に20杯オーバーが来た。この瞬間、雷が落ちるSEがくる。

リヴァイ(ミカサ)『………………愛とはなんだああああ?!』

エルヴィン(アーロン)『?!』

リヴァイ(ミカサ)『もう訳が分からん! 考えたくねえ! 面倒くせえええ!』

エルヴィン(アーロン)『いかん。飲ませ過ぎたようだ。リヴァイ? ほら、落ち着いて』

リヴァイ(ミカサ)『うー……ヒック………あの女に、会いたい』

ピクシス(アルミン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『まだ、礼を返していない。俺はあいつに救われた……ヒック……』

ピクシス(アルミン)『あいつとは誰だ? もしかして、教習時代の同期の女か?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだ! 名前を聞きそびれた! いや、聞いたのに忘れたのか?! どっちだ?! くそおおおお!』

ピクシス(アルミン)『ふむ。そのおなごとヤリたいのか?』

リヴァイ(ミカサ)『いや……そんな感情じゃねえ。そんなゲスな気持ちじゃない。ただ、会いたい。それだけだ。あの女に会えさえすれば、それでいい……』

ピクシス(アルミン)『なんじゃと? ヤリたい訳じゃないのか』

リヴァイ(ミカサ)『そんなんじゃない。こう、胸が暖かくなる。あの女を思い出すだけで、心臓が痛くなる。名前を聞き忘れたあの時の俺を、殴りに行きたい……馬鹿野郎!!!』

エルヴィン(アーロン)『どうどう……リヴァイ。そんなに会いたいの?』

リヴァイ(ミカサ)『会いたい。一言、もう一度、礼が言いたい……』

ピクシス(アルミン)『むう……そんなに「会いたい」相手ならそれはもう「恋」をしておるのでは?』

リヴァイ(ミカサ)『恋……? これは恋なのか?』

ピクシス(アルミン)『セックスを飛び越えて「会いたい」と願っておるのだろ?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……そこは関係ない。そりゃヤレるなら嬉しいが、ヤる為に会いたい訳じゃない』

ピクシス(アルミン)『だとすればもうそれは「恋」と呼んでも良いものだと思うが』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……この感情は「恋」なのか………ZZZ………』

そして泥酔したリヴァイ先生は眠ってしまったそうだ。

この演技を見てリヴァイ先生は『全然覚えてない。脚色してねえよな?』とエルヴィン先生に問い合わせていたけど。エルヴィン先生は『大体合ってる』と答え、ピクシス先生は『本当はもっと暴れて大変じゃったぞ?』とも言った。

そしてフェードアウト。1人残されたリヴァイ先生にだけスポットライトが当たる。

エルヴィン先生とピクシス先生は先にはけて1人ぼっちになる。


リヴァイ(ミカサ)『…………ハンジ』


と、いう名前を1度だけ呟いて、暗転。

その後、次の日の朝にハンジ先生が登場して二日酔いに陥ったリヴァイ先生を弄ったそうだ。

ハンジ(エレン)『エルヴィンから聞いたよ! リヴァイの限界値、20杯だったんだってね! 私の勝ちだね! 大丈夫?』

リヴァイ(ミカサ)『あんまり大丈夫じゃねえよ。昨日の記憶が途中から飛んでいる』

ハンジ(エレン)『あははは! 記憶ぶっ飛びおめでとう! その恐怖を越えてこそ初めて「大人」になるわけですよ!』

リヴァイ(ミカサ)『あんまり笑いごとじゃねえ……ううう。気分悪い』

ハンジ(エレン)『ウコン買ってきたからどうぞ☆』

リヴァイ(ミカサ)『後で頂く。ありがとう……』

ハンジ(エレン)『良かったね! 今日はお休みで! 今日はさすがにお風呂はお休みだよね?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……そうだな。俺は寝る』

ハンジ(エレン)『うん。じゃあお休みー。またね~♪』

と、お風呂がキャンセルになってウキウキで退場していくハンジ先生の姿を見て、

リヴァイ(ミカサ)『あ、ちょっと待てハンジ』

ハンジ(エレン)『ん? 何? なんかおつかい頼みたいの?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そうじゃねえんだが……1人で風呂には入れないのか?』

ハンジ(エレン)『そこまで強制されたくないよ! いいじゃん! 1回くらいお休みしたって!』

リヴァイ(ミカサ)『でも………』

ハンジ(エレン)『それに今は2月だし、お風呂結構寒いから、3月になってから入ればいいじゃない』

リヴァイ(ミカサ)『3月1日には卒業式がある。それまでに1回入っておかないと……』

ハンジ(エレン)『先心配し過ぎ! 其の時は当日の朝に一緒に入るよ! はい! 決定! もういいよね?』

リヴァイ(ミカサ)『朝はバタバタするから無理だろ。お前、ちゃんと起きられるのか?』

ハンジ(エレン)『起きます! 卒業式くらいはちゃんとします! だからほら、リヴァイは寝る!』

と無理やりベッドに押し戻す。

ハンジ(エレン)『もーリヴァイって、変なところで頑固だね。リヴァイが彼女に振られたのって、そういうところも原因なんじゃないのー?』

ぐさああああ!

というSEが入って会場が笑いに包まれた。

ハンジ(エレン)『潔癖症も過ぎるしー? 過保護なところもあるしー? 結構、欠点多いのに。何でモテるのかな? 不思議!』

ひどいwwwwwフルボッコwwwww

という声が聞こえた。実際はもっと一杯酷い事を言われたそうだが、そこは省略だ。

リヴァイ(ミカサ)『うるさい。傷口に塩を塗り込むな』

ハンジ(エレン)『寄り戻した彼女にまた振られたんでしょ? 何が原因だった訳?』

と、優しい声音になってベッドに座るハンジ先生。ベッドに寝ていたリヴァイ先生は起き上って……

言えない。と思ったそうだ。理由は分からないが。

リヴァイ(ミカサ)『すまん。それはハンジには言えない』

ハンジ(エレン)『という事は、余程悪い事をやらかしたんだね?』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。あの剣幕は凄かった。もうやり直せないと思う』

ハンジ(エレン)『やり直したくない、の間違いでしょ? ダメだよ。自分の感情に嘘ついちゃ』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『拗れた経験だったら私もそれなりに持っているよ。そういう時は、ちゃんと自分に責任を持たないとダメ。自分を悪人にしたくないのは分かるけど。「自分がどうしたいか」という感情から逃げちゃダメ。相手のせいにしちゃダメだよ』

リヴァイ(ミカサ)『そういう時は厳しい意見なんだな。ハンジは』

ハンジ(エレン)『んー…私も以前はそうだったからね。世間から見たら「酷い」って思われる事をするのは勇気要るし。ついつい「相手」が悪いんだって思うようにして自分の心を守っていたから。でも、それって「ずるいよ」ってエルヴィンに昔言われたの。手汚すんだったら、そこは覚悟しないとって。「悪者」になる覚悟みたいなものかな? 我を通すんだったら、いい人では居られないよ』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうか』

ハンジ(エレン)『相手から「別れたい」って言われたんだよね? 多分』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……「やっぱり別れたい」と切り替えされた』

ハンジ(エレン)『もう2回も相手から別れを切り出されたんだよね? だったらもう良くない? リヴァイ自身がそこまでその子に執着ないなら、もうその子との縁はそれまでだったって事だよ』

リヴァイ(ミカサ)『執着……か』

ハンジ(エレン)『うん。捨てられるか。捨てられないか。要はそういう事でしょ? 相手の方もその辺が知りたかったから、1回嘘ついたんじゃないのかな? ……多分』

リヴァイ(ミカサ)『………』

答えが見えないまま黙り込むリヴァイ先生だった。

そしてその時、家のチャイムが鳴る。

ハンジ(エレン)『あ、いいよ。私出るから。エルヴィンじゃない? 多分』

ハンジ(エレン)『はいはいー今出ますよー』

ハンジ(エレン)『!』

ハンジ(エレン)『エルヴィンじゃない! どどどどどうしよう! リヴァイ!』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『女の子だよ! あんたの元彼女じゃない?! うわ……ヤバい! 私、帰るね! ベランダから帰るから!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、危ないから止めろ。そこに居ていいから』

ハンジ(エレン)『絶対だめ! 修羅場になるから! クローゼット! ベッドの下! 何処でもいいから! 私を隠して!!!』

リヴァイ(ミカサ)『別に何もやましい事はしてねえだろ。堂々としてろ』

ハンジ(エレン)『無茶言わないで!!!! あ、ちょっと待ってリヴァイ!!!』

そしてリヴァイ先生はドアを開けたそうなんだ。

オレだったら同じ真似は絶対出来ない。修羅場になるの確定だもんな。これ。

女2(アニ)『あ………リヴァイ、寝ていたの?』

リヴァイ(ミカサ)『二日酔いだ。今日はあんまり気分が良くない』

女2(アニ)『……でも、靴、あるよね。誰か来ているの?』

リヴァイ(ミカサ)『客が来ている。俺の友人だ』

女2(アニ)『………そう。もう、新しい「友人」が出来たんだ』

リヴァイ(ミカサ)『職場の同僚だ。ハンジが来ている』

女2(アニ)『!』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ、こっち来い。紹介する』

ハンジ先生はこの時、本気で「アホかああああ!」と思ったそうだ。

同じ眼鏡をかけた女性同士が対峙して物凄く気まずい空気になったそうだ。

女2(アニ)『出直した方がいいみたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『別に構わん。中に入るか?』

女2(アニ)『いや、いいよ。帰る。もうここには来ないよ』

リヴァイ(ミカサ)『何で』

女2(アニ)『その人の方が大事なんでしょ? そういう事なんでしょ? 私よりも』

ハンジ先生はこの時、窒息しそうな勢いで息が出来なかったそうだ。

別に悪い事は何もしてないんだけどな。誤解なんだけど。

だから説明するべきか迷ったけど、ここでそれを言っても信じて貰えそうにないので、黙るしかなかったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『さあな。それは俺にも良く分からん』

女2(アニ)『は?』

リヴァイ(ミカサ)『2人同時に溺れたら、俺は両方助けに向かうだろう。その力も持っている。もし2人とも助けられないと思ったら、俺は自分の命を犠牲にするかもしれないな』

女2(アニ)『……笑えない冗談だね』

リヴァイ(ミカサ)『人を助けるっていう事は自分の命を懸けるって事だろ。俺は人が死ぬ様は出来るだけ見たくないと思う性質だからな』

女2(アニ)『そういう話がしたい訳じゃないんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『なら、話したい事をここで言ってくれ』

女2(アニ)『その人に聞かせてもいいの?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ、帰りたいなら帰っていいぞ』

ハンジ(エレン)『帰ります! 帰らせて頂きます!!!!』

と、まるで逃げるように帰ろうとして……

女2(アニ)『待って』

ハンジ(エレン)『!』

女2(アニ)『あなた、リヴァイの「友人」? 本当に……そうなの?』

ハンジ(エレン)『友人です! 職場の同僚です! それだけです!』

女2(アニ)『……………』

ハンジ(エレン)『う、疑いたい気持ちも分からなくもないけど、本当です! じゃあね!』

女2(アニ)『やっぱり待って』

ハンジ(エレン)『ううううう……』

女2(アニ)『リヴァイが他の女と繋がっているのはいつもの事だし、そんなのは皆、承知しているけど』

ハンジ(エレン)『でしょうね! こいつ、最低最悪のプレイボーイだもんね!!』

女2(アニ)『友人なら別にここに居てもいいのに。何でそんなに慌てて逃げようとするの?』

ハンジ(エレン)『無茶言わないで!!! どう考えても私、部外者でしょうが!! 聞いちゃイケナイ話まで首を突っ込む程、厚顔無恥じゃないからね!』

女2(アニ)『……………やっぱりこの人が本命?』

と、今度はリヴァイ先生の方を見たそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『何故そう思う?』

女2(アニ)『だって、今までこういう反応した女、いなかったじゃない。私、何度も見て来たし。他の女が居ても別に構わなかったし。遭遇した相手も「どうもー♪」くらいの軽いノリだったじゃないの』

うーん。この辺がもういろいろアレ過ぎて何も言えないよな。

大人の世界過ぎる。子供に見せていいのかな? って思う劇だよな。

まあ、純粋な子供は「?」ってなっているだけだろうけど。

あ、でもヒッチがすげええワクワクした目で劇を見ている。

あいつ、こういう「修羅場」が好きなのかな。それっぽい。

リヴァイ(ミカサ)『……………はあ』

しかしそこでリヴァイ先生は大きなため息をついたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『だったらどうした? ハンジは今までの女と毛色が違うだけだ。それだけだろ』

女2(アニ)『………否定しないんだ』

リヴァイ(ミカサ)『もう、そう思うなら好きにしろ。俺も説明するのが面倒だ。信じないなら、それでも構わん』

女2(アニ)『!』

ハンジ(エレン)『あ、あんたねえ…!』

リヴァイ(ミカサ)『今ここで「ハンジは本命じゃない。ただの友人だ」ってどんなに言っても信じないなら意味ねえだろ。俺も少々疲れた。別れたいって言い出したのはそっちだろ。もうお前の好きにしたらいい』

うわ……最低男、ここに極まりだな。好感度ダダ下がりだけど。

リヴァイ先生、このシーンOK出したんだよな。何故か。

多分、この後のシーンが重要だからだと思うけど。



ゴッ………!!!!!!



この直後、ハンジ先生の右ストレートと、エルボーと掌底と、ええっと、いろいろ。

ぶちかまして、リヴァイ先生をはり倒したんだそうだ。

このシーン、本当はやりたくないけど。オレは出来るだけミカサを傷つけないように手加減しようとしたけど。

ミカサが「それはダメ」と言い出したので、オレもなるべく本気でやる。

むしろスッとするシーンだからガツンといけ! と言われてしまってオレとしては複雑だ。

目を白黒するリヴァイ先生にハンジ先生は言ったそうだ。

ハンジ(エレン)『…………リヴァイとは絶交する』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

ハンジ(エレン)『あんたがここまで酷いクソ野郎だとは思わなかった。何が「好きにしろ」よ。あんた、自分の事、何様だと思ってんの? ああああ?!』

リヴァイ(ミカサ)『えっと……あの…』

ハンジ(エレン)『ええっと、彼女さん? こんな最低な男といつまでもグダグダ付き合う必要なんてこれっぽっちもないよ! 金輪際、縁切っちまっていい!!! 絶対、寄り戻さない方がいいよ!』

女2(アニ)『えっと、あの……』

ハンジ(エレン)『私はあんたの事、結構、認めていたんだけどね! 女には優しいし、痴漢は許さない正義感はあるし! 気遣い屋だし?! だから「友達」としてまずは知ってみたいと思った! でも、あんたもやっぱり「男」なんだね。結局はただ、ずるいだけじゃないの!!!!』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

ハンジ(エレン)『彼女がどんな気持ちでここに来たと思ってるの? 私には彼女が羨ましいよ! 私、そういう意味で一途に人を好きになった事、ないんだもの! 青春を捧げた事、ないんだもの! そういう乙女を、あんたは適当にあしらった。面倒臭く感じたっていう、ただそれだけの理由でね! 二日酔いを差し引いても、今のあんたはピー(自主規制)を切って処分した方がいい程度の最悪の男だよ!!!』

女2(アニ)『あの、その辺で押さえて……』

ええっと、これでも大分、規制入れているんだ。実際はもっと長い台詞だったそうで。

リヴァイ先生、本気で呆気に取られたんだ。いや、女の人って怒らせると怖いよな。本当に。

ハンジ(エレン)『なんなら今すぐ手術してやろうか? ああ? どうする? どうする?』

マッドな表情に豹変したハンジ先生にさすがのリヴァイ先生も自分が悪かったと自覚したようだった。

リヴァイ(ミカサ)『すまん! 俺が悪かった!!!!』

と、ハンジ先生の前で土下座したそうだ。

ハンジ(エレン)『土下座の相手が違う!!!! こっちでしょ!!!』

リヴァイ(ミカサ)『すまん! 俺が悪かった!!!! (2回目)』

女2(アニ)『えっと、顔、あげていいよ? リヴァイ……』

リヴァイ(ミカサ)『いいや、俺が悪かった。まずは謝らせろ。頼む』

女2(アニ)『えええ……』

リヴァイ(ミカサ)『確かに俺は自分勝手だった。その……こいつは本当にそういう相手じゃない。これで分かったよな?』

女2(アニ)『うん。理解した! これは確かに、そういう相手じゃないね。分かった。信じる』

リヴァイ(ミカサ)『良かった。信じてくれたか……』

女2(アニ)『うん。うん。信じる。信じるよ……リヴァイ!』

会場は凄いドン引きだったな。居た堪れない空気だったけど。

ハンジ『あー若気の至りで許してね☆』

リヴァイ『ハンジはキレると本気で怖いからな……(ガクブル)』

と、いろいろ思い出してリヴァイ先生も両目を閉じていた。

あ、でも、一部の女子の間ではウケているようだ。ヒッチとか。

あいつ、腹抱えて笑ってやがる。強いなー。

ハンジ(エレン)『あーこれでOK? くっつくにしろ、くっつかないにしろ、1回ちゃんと話し合いなさい。その上で別れるならスパッと別れて、新しい男、見つけなさい! いいね!』

女2(アニ)『は、はい………』

という訳でハンジ先生は退場して、この結果どうなったかと言うと……。

場転。後日、リヴァイ先生はハンジ先生に話したそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『あー別れる事になったよ。今度こそ』

ハンジ(エレン)『あ、そうなんだ。良かったねー』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。お互いにはっきりさせないでズルズル曖昧に続けていたのが悪かった。あいつもふんぎりがついたそうだ。俺自身も、自分の気持ちとちゃんと向かい合って、結論を出した。俺はただ、相手に甘えて流されていただけだったんだってな』

ハンジ(エレン)『だよねー。流され過ぎだよね。風に吹かれる柳じゃないんだから』

リヴァイ(ミカサ)『決してあいつの事は嫌いじゃなかったんだがな。でもそれは「好き」とは微妙に違う物だと気づいたよ。あいつはずっと「それ」が欲しかったんだそうだ。それが手に入らないなら諦めると。そうきっぱり言われたよ』

ハンジ(エレン)『あー良かった! 一見落着だね! あ……』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『私、リヴァイと絶交するって言っちゃったのに、会話してるんじゃん! ダメじゃん! ええっと……』

リヴァイ(ミカサ)『すまん、絶交は取り消してくれ』

ハンジ(エレン)『ええ?』

リヴァイ(ミカサ)『というより、今日から正式に申し込みたい。俺の「友人」になってくれ』

ハンジ(エレン)『ん? つまりどういう事?』

リヴァイ(ミカサ)『あの一発で目が覚めたんだよ。今までの俺がどれだけ「アホ」だったかって。もう同時に複数の女と付き合ったり、一晩だけの関係とかは止める。今までのやり方は全部捨てて、1対1の関係からまずは始めようと思う。交際期間が短くなってもそこは守ろうと思う』

ハンジ(エレン)『そうだね! まずはそこからだね! 私もいろいろあったけど、そこだけはせめて守っていたからね!』

リヴァイ(ミカサ)『あと……すまなかったな。あの時、咄嗟に「友人だ」って言わなくて』

ハンジ(エレン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『本気だったんだな。ハンジの言葉を疑っていた俺が悪かった。今までは「友人」でいたいと言いつつそこから「恋人」のような関係か、体の関係を望む女ばかり、俺に近寄ってきていたから、ハンジの言葉も半信半疑だった。というか、限りなくクロに近いグレーだと思っていたんだよ』

ハンジ(エレン)『OH……疑われていたのね。それは確かに心外だねー』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。だから今度からはちゃんと「友人だ」って女には説明するよ』

ハンジ(エレン)『んんーそれはそれでまた問題でもあるんだけどね』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『ええっと、あんまり誇張すると、逆に「嘘だー」って思うのが人の常というか、その辺は「さあな」くらいで曖昧に濁してもいいよ?』

リヴァイ(ミカサ)『え? じゃあ何であの時、あれだけキレた?』

ハンジ(エレン)『いや、私がキレたのは友人関係である事を言わなかった事じゃなくて、相手に「好きにしたらいい」って冷たく言い放ったところだよ。あの時のリヴァイ、本当に「冷めた目」していたからね。相手に愛情がないのは分かるけど。あれはやり過ぎだと思ったのよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。俺はそんなに「冷めた目」をしていたのか。自分では自覚がなかったな』

ハンジ(エレン)『うん。相手に選択権を委ねていい場合と悪い場合、あるからね。あの場合はリヴァイが彼女に対する愛情が薄れていたのも分かっていたけどさ。だからと言って、丸投げはあんまりだと思ったの。それってただの責任逃れのようにしか見えなかったし。それだったら自分が悪役になっても「すまん。俺、お前の事、どうしても生理的に受け入れられないから無理」って言われた方がまだマシかなーって』

リヴァイ(ミカサ)『生理的に無理って、それも結構酷い振り方だな』

ハンジ(エレン)『え? 私、言った事あるよ? 大昔だけど。さすがに「酷過ぎる」って言われたからそれ以後は止めたけど』

と、ハンジ先生の過去を暴露した直後、またドン引きする人々がいた。

しかし、何故かヒッチだけが「それすっごく分かる!!!!」って共感していたので内心吹いた。

リヴァイ(ミカサ)『ほー……いつも汚らしい格好をしているお前が偉そうな事を言ったもんだな。お前の場合は「言われる側」なんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『え? そ……そんな事はないよー……多分』

リヴァイ(ミカサ)『だったら「生理的」に受け付けない感覚はお前も理解出来るんだな? だったら、俺がお前の「汚さ」を許容できない気持ちも理解出来るよな?』

ハンジ(エレン)『え? それとこれとは別だよー。微妙にニュアンスが違うって!』

リヴァイ(ミカサ)『いいや? 同じだろ。この間の休みはいろいろあったから、出来なかったが……今日の夜、やるか』

ハンジ(エレン)『いやー! 墓穴掘った! やめて! 今回くらいサボってもいいじゃん! 来月に回してよおおおお!』

リヴァイ(ミカサ)『断る。卒業式の朝なんて短い時間でやれるか! 夜、洗ってやる。この間の礼も含めてな』

ハンジ(エレン)『お礼だったらお酒の方がいいよ!! 飲ませてくれた方が余程いい!』

リヴァイ(ミカサ)『仕方ねえな。だったら妥協して「酒風呂」にでも入るか?』

ハンジ(エレン)『え? そんなのあるの?』

リヴァイ(ミカサ)『あるぞ。風呂の中に少しだけ酒を混ぜて入る方法だ。それなら入るよな?』

ハンジ(エレン)『え? なんだ……一瞬、お湯を全部「お酒」に代えて入るのかと思った』

リヴァイ(ミカサ)『それも出来なくはないが。金がかかり過ぎて札が吹っ飛ぶな』

ハンジ(エレン)『それもそうだねーというか、それだけのお酒を飲まないのも勿体ないからいいやー』

リヴァイ(ミカサ)『だったら普通の酒風呂なら入るよな? 風呂上がりにビールつけておくぞ』

ハンジ(エレン)『あああああ! それ卑怯だよおおおおお!』

リヴァイ(ミカサ)『麒麟か? 朝日か? どっちも好きか?』

ハンジ(エレン)『麒麟でお願いします!!!! (ネルトン風握手ポーズ)』




マリーナ『こうして、いろいろありながら着任1年目は怒涛の勢いで時が過ぎ去り』

マリーナ『2年目に突入した2人の教師はその後も「友人」関係を継続していきます』

マリーナ『周りからは「付き合っているの?」と多々問われる2人でしたが……』

マリーナ『リヴァイ先生はハンジ先生の提案通り「さあな」と言って曖昧に濁しました』

マリーナ『それでも2人の間には確かな「友情」が出来つつあり、それを否定する材料もこの時点ではありませんでした』

マリーナ『しかしそんな2人の関係を微妙に変える「時期」がやってきてしまいます』

マリーナ『そう。それはリヴァイ先生が30歳という節目を迎える年の事でした……』



と、マリーナのナレーションの後、一旦休憩を挟む。5分だけだけど。

この間に1回幕を閉じて、裏方スタッフが走り回るんだ。

ピクシス『ただいまより5分間の休憩に入らせて頂きます。ご観劇の皆様、今のうちに自由休憩に入られて下さい』

オレはその間、舞台裏でミカサに駆け寄って「さっきの殺陣大丈夫だったか? 当たってないか?」と確認した。

ミカサ「大丈夫。ちゃんと避けた」

エレン「オレ、もう2度とごめんだぞ。ミカサを殴る役なんて」

ミカサ「でも、他にオイシイシーンも沢山あるから問題ない。エレンに抱きしめられるシーンは美味しかった」

エレン「ああ、女子大生時代のアレか」

ミカサ「他にもエレンの膝枕とか、柔道の寝技とか……ふふ」

エレン「タフだなあミカサは……」

ミカサ「次はいよいよ、三十路編に突入する。あともうちょっと頑張る」

エレン「だな。水分、ちょっとだけ取るぞ」

あんまり取り過ぎるとダメだけど。飲まないと冬でも脱水症状起きるからな。

んで、準備が整ったら次は三十路編に突入だ。この三十路編も結構怒涛の勢いだから気合入れないとな。






マリーナ『さてさて。リヴァイ先生が30歳になる年の事ですが……』

マリーナ『この年の2月頃、ハンジ先生は突然「社交ダンス」に目覚めました』

マリーナ『リヴァイ先生は当時「なんかそういう関連のメディアにでも感化されたか?」といった程度の認識だったのですが』

マリーナ『実はそこには驚くべき「サプライズ」が用意されていたのです』

若気の至り大爆発中ですみません。
今回はこの辺で。次回またノシ








リヴァイ(ミカサ)『は? 社交ダンスの大会に出たいだって?』

ハンジ(エレン)『そーなのよ! リヴァイ、運動神経いいでしょ? 一緒に出ようよ!』

リヴァイ(ミカサ)『お前、それは嫌味か? 俺との身長差、考えろ。やるんだったらエルヴィンとの方が映えるだろ』


マリーナ『えー……この当時のリヴァイ先生の身長は160cm。ハンジ先生は170cmあり、10cmの差がありました』

マリーナ『演じているミカサさんの身長は170cmですが、ここでは想像で補って下さい』

と、マリーナが注釈を入れると会場がどっと笑いに包まれた。


ハンジ(エレン)『えっと、エルヴィンは既にそういう「資格」を持っているんだよね。だから意味がないんだ』

リヴァイ(ミカサ)『どういう意味だ?』

ハンジ(エレン)『今回の大会で「優勝」するとそういう「社交ダンス」の資格の認定になるんだよね。講師としての資格が取れるのよ』

リヴァイ(ミカサ)『あーつまり、それが欲しいから、俺につきあえと』

ハンジ(エレン)『そういう事です! お願い! 付き合って!』

リヴァイ(ミカサ)『俺は今までそういう「上品」な事は1度もやった事がないんだが』

ハンジ(エレン)『大丈夫だよ! むしろ男の方が女性を「持ち上げ」たりする場面があるから力ある男性の方がいいんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『衣装はどうするんだ? 買うのか?』

ハンジ(エレン)『レンタルも出来る筈だよ。本番だけメイクアップすればいいんじゃないかな?』

リヴァイ(ミカサ)『その大会はいつあるんだ?』

ハンジ(エレン)『12月だよ。場所はT都!』

リヴァイ(ミカサ)『関東に飛ぶのか。飛行機に乗るのは久々だな』

ハンジ(エレン)『あ、そうなんだ。私は乗り慣れているから大丈夫だよ』

リヴァイ(ミカサ)『ホテルとか予約して行くのか?』

ハンジ(エレン)『その辺は大会近くなってからパック取ればいいんじゃない? ツインで取れば安くなるし』

リヴァイ(ミカサ)『ツイン………いいのか?』

ハンジ(エレン)『え? 何が?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ハンジがそれでいいならいいんだが』

ハンジ(エレン)『あ、シングル方がいいならシングル取るよ。その辺は好みだしね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ツインで構わない』

ピクシス(アルミン)『何の話をしておるのだ? (ぬっ)』

ハンジ(エレン)『あ、ピクシス先生! 実はですねー社交ダンスを習おうと思っているんですよ!』

ピクシス(アルミン)『大会に出るのか?』

ハンジ(エレン)『その予定です! リヴァイとペア組んでいっちょ飛んできたいと思います!』

ピクシス(アルミン)『ほーそれはいい事だ。頑張って優勝してくるんだぞ』

ハンジ(エレン)『はーい! 頑張ります!』

そしてピクシス先生がリヴァイ先生を捕まえたそうだ。

ピクシス(アルミン)『リヴァイ、お前、何故「ツイン」を選んだ?』

リヴァイ(ミカサ)『え? ああ……ハンジがそうすると言ったので』

ピクシス(アルミン)『いや、今の会話は「シングルでも良い」とも言っておったぞ? 何故そこであえてシングルにいかない? ん? このドスケベめ』

リヴァイ(ミカサ)『変な言いがかりは止めて下さい。俺は別に………』

ピクシス(アルミン)『男らしくないのう……まあ良い。社交ダンスなら親密度を上げる絶好のチャンスだ。ここで男を見せろ。いいな?』

リヴァイ(ミカサ)『男を見せろと言われても……』

エルヴィン(アーロン)『やあリヴァイ。社交ダンス習うんだって? 私も協力しようか?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、聞いたぞ。お前、踊れるんだってな?』

エルヴィン(アーロン)『そういう「場」に誘われる事が多かった時期に、ついでだから習おうと思って取ったんだ。一応、一通り教える事は出来るけど。ただ、スタジオを借りてやる方が上達は早いと思うよ。学校だと、床の問題があるからね』

リヴァイ(ミカサ)『まあそうだろうな。出来ればスタジオに通いつつ、時間がある時にエルヴィンにも習う形がいいだろうな』

エルヴィン(アーロン)『じゃあその方向で考えておくね。スタジオは私がいいところを紹介してあげるよ』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。宜しく頼む』





マリーナ『そして2人は週に1度、夜通える社交ダンスの講座を一緒に受けに行く事になりました』

マリーナ『勿論、この時間帯に習いに来ている方々は社会人ばかりです』

マリーナ『何人かの大人の生徒と混ざりながら、2人は基本から習い始めました』

ダンス講師(マーガレット)『まず、社交ダンスを教える前に先に1つ、注意をしておきます』

ダンス講師(マーガレット)『社交ダンスは正式には「ボールルームダンス」または「競技ダンス」と呼ぶのが正しい言い方になります。一般の方にはなじみが薄いかもしれませんが、ダンスには「趣味で楽しむ」方々と「スポーツとして競い合う」方々に分かれています。微妙にニュアンスが違いますので、今回教えるのは「競技ダンス」の方だと解釈して下さい。美を競い合い、華麗に舞う事を目的としたダンスになりますので、練習内容はより厳しい物になると思いますが心してかかって下さい』

ダンス講師(マーガレット)『そしてこのダンスの種類ですが、大きく分けると「スタンダードモダン」と「ラテンアメリカン」に分かれます」

ダンス講師(マーガレット)『スタンダードモダンは「ワルツ」「タンゴ」「スローフォックストロット」「クイックステップ」「ヴェニーズワルツ」』

ダンス講師(マーガレット)『ラテンアメリカンは「チャチャチャ」「ルンバ」「サンバ」「パソドブレ」「ジャイブ」があります』

ダンス講師(マーガレット)『スタンダードモダンの方は女性がお姫様のようなドレスを着て踊る方、露出が多い衣装で男女が情熱的に踊るのが「ラテンアメリカン」だと覚えて下さい』

ダンス講師(マーガレット)『ダンスを審査するにあたってその基準となるものを説明します』

ダンス講師(マーガレット)『まずは「ポスチャー」または「ポイズ」です。リーダー(男性)とパートナー(女性)が組んだ時のシルエットや床にまっすぐ立つ事など踊り手の恰好を見るものです』

ダンス講師(マーガレット)『次に「リズム」です。いかに曲のリズムにのって踊っているかを見られます』

ダンス講師(マーガレット)『最後に「ムーブメント」。その種目らしさをどれ程その動きに表現出来ているかという点です』

ダンス講師(マーガレット)『本日は「モダン」の方から説明していきましょう。パートナーとまずは向かい合って下さい』

ここでエキストラも含めて皆で社交ダンスだ。

ペアはオレとミカサ。アルミンとアニ。ジャンとサシャ。マルコとミーナ。オルオ先輩とペトラ先輩。エルド先輩とニファ先輩。ユミル(男装)とクリスタだ。

この辺の指導はエルヴィン先生にやって貰った。基本的なところしかオレも踊れないけど、一斉に踊るから結構気遣う。

まずは「ワルツ」からだ。123…123…が基本の3拍子の優雅な踊りだ。

膝と足首の使い方が重要で、時計の振り子のように屈伸してもバランスを崩さない程度の力を膝と足首を使って身体全体を横にスイングさせるように送り出せばワルツらしい踊りになるそうだ。

でも口で説明するのと実際やるのは全然違う。これ、慣れるまでは結構難しかった。

そんな感じでまずは「ワルツ」から練習してその日の練習は終わった。

実際は10か月かけてマスターしていく訳だから一気には無理だ。

練習が終わって着替えてからリヴァイ先生は言ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『やっぱり少し恥ずかしいな……』

ハンジ(エレン)『えー? 何で?!』

リヴァイ(ミカサ)『他のペアは男女の身長差がちゃんとあったのに、俺達だけ逆だからな……』

と、身長ネタで自虐的になってしまったそうなんだ。

リヴァイ(ミカサ)『本当に俺がパートナーで良かったのか?』

ハンジ(エレン)『り、リヴァイじゃないとダメなんだよ!!! 大丈夫だって! あんた、運動神経は滅茶苦茶いいんだからすぐ覚えるよ!』

リヴァイ(ミカサ)『覚えるのは大丈夫だとは思うが………はあ』

と、現実を突きつけられて凹んだそうなんだ。可哀想に。

リヴァイ(ミカサ)『せめて同じくらいの身長なら良かったんだがな……ブーツはいたらダメか』

ハンジ(エレン)『は、はいたらこけた時が危ないと思うよ? 私は気にしないよ! そういうお笑い番組あったよ! 身長が逆のペアもいたよ!』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか?』

ハンジ(エレン)『エルヴィンがその番組が好きでビデオ撮っていたから、参考になるかも? って言って私に貸してくれたんだ。だから大丈夫だよ!』

リヴァイ(ミカサ)『だといいんだが……』

と言いつつも不安を残してリヴァイ先生は練習を始めたそうなんだ。

そして練習を始めた2人は常に「姿勢」を意識するようになり、胸を張るようになったそうだ。

「臍のむき」も意識して体を動かして、所謂「体幹」トレーニングに似た動きを意識するようになったそうだ。

勿論、格闘術を習う時も似たような事はするけど、ダンスの場合は「優雅」な部分をより意識しないといけないから大変だ。

流れる様な所動作っていうのかな。普段からそこを忘れないように動いていたら、ハンジ先生が急に「モテ期」に突入したらしくて、この年、告白される事が増えたそうだ。

場転。リヴァイ先生の部屋でビール片手にぐだまくハンジ先生だった。

ハンジ(エレン)『どーしよー』

リヴァイ(ミカサ)『また何か悩んでいるのか?』

ハンジ(エレン)『今年新卒の新人の先生に告白された……』

リヴァイ(ミカサ)『ほう……良かったじゃないか。付き合うのか?』

ハンジ(エレン)『いや、でも今はちょっと忙しいし、断りたいんだよね。ダンスの練習だってあるし、私、生物部の顧問に加えて4月からもう1個、顧問を掛け持ちする事になりそう』

リヴァイ(ミカサ)『掛け持ちか。何部だ?』

ハンジ(エレン)『まだ部じゃないよ。同好会。漫画研究同好会ってやつだね』

リヴァイ(ミカサ)『ふーん。お前、漫画の事を詳しかったのか』

ハンジ(エレン)『いやーあんまり。栄螺さんは好きだけど。流行りの漫画とかはあんまり分かんない。タイトルだけなら分かるけど。エルヴィンが好きだから』

リヴァイ(ミカサ)『ならエルヴィンがやればいいじゃないか』

ハンジ(エレン)『いや、エルヴィンが出来ないから私に回ってきたのよ。あれ? あんた知らなかったの? エルヴィン、今、漫研の顧問やってるの』

リヴァイ(ミカサ)『すまん。そこまでは俺も把握していなかった。あいつ、今、テニス部の顧問じゃなかったか?』

ハンジ(エレン)『そうそう。漫研と掛け持ちしていたけど、エルヴィンの方が4月から進路指導の先生も受け持つ事になりそうで、ちょっと3つは無理かも? みたいな話になって、漫研が私に回ってきたの』

リヴァイ(ミカサ)『漫研って何するんだ?』

ハンジ(エレン)『普段はそれぞれ個人で活動しているそうだけど「コミケ」っていうお祭りの時はお手伝いするくらい? あと漫画甲子園に出た場合は引率とかもするんだって。K県で開催しているんだって! 鰹のタタキ食べられるよ! うひひひ……お酒も有名どころだし、もし行けたら飲み尽くしちゃおうかな』

リヴァイ(ミカサ)『割と乗り気だな。だったら掛け持ちすればいいじゃないか』

ハンジ(エレン)『うん。だから今はちょっとーお付き合いの方は無理だなー』

リヴァイ(ミカサ)『…………ハンジ』

ハンジ(エレン)『ん? 何?』

リヴァイ(ミカサ)『お前、俺の3つ下だから、今年で27歳になるよな』

ハンジ(エレン)『そうだねー』

リヴァイ(ミカサ)『結婚とか、考えていないのか?』

ハンジ(エレン)『え? 何で急に結婚の話?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺と以前別れた女達はその辺の年齢で俺に見切りをつけて「結婚」を選択したからな。少し心配になって……余計なお世話かもしれんが、その告白された相手は新卒なら22~23歳ってところだろ? 年下はダメか?』

ハンジ(エレン)『ん~別にダメじゃないけど。優先順位ってあるじゃん? だからいいよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………』

ハンジ(エレン)『私の事よりあんたの方が心配だよ~今年で遂に三十路に突入するじゃん!』

リヴァイ(ミカサ)『12月が誕生日だからまだあと10か月も先の話だろ』

ハンジ(エレン)『そんなのあっという間だよ! ぼやぼやしていると四十路(よそじ)になっちゃうよ! リヴァイが先に結婚しなよ!』

リヴァイ(ミカサ)『うう~ん………(頭抱える)』

ハンジ(エレン)『あれ? その様子だとまた何かあった? 振られちゃった?』

リヴァイ(ミカサ)『「あんたエッチ上手すぎる。絶対他に女いるでしょ!!」とキレられてしまって、現在停戦中だな……』

ハンジ(エレン)『ぶふーっ』

ビール吹き零す勢いで吹いた。汚いけど。

それをちゃんと拭きながらリヴァイ先生は言ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『流石に俺の過去を全て話したらドン引きされるだろうしな。そこは話していないが……今のところ、ちゃんと「1人」に絞って交際しているのは事実なんだがな。信じて貰えない』

ハンジ(エレン)『そこはもう自業自得だよ! 今までのツケが回って来たね! あはは!』

リヴァイ(ミカサ)『わざと下手くそにするっていうのも難しい話だぞ。もう、俺の中である程度の「やり方」は確立しているし、最初の頃のような乱暴なやり方は、相手を傷つけるっていうのも知った以上、そのやり方では出来るだけやりたくはない』

ハンジ(エレン)『ん~………なんかから回ってるねえ。相変わらず』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。あと「潔癖症過ぎてキモイ」とか「たまにウザい」とか結構容赦ない。口の悪い女なんだが……今までの女よりはしっくりくる感覚はあるんだ』

ハンジ(エレン)『へ~いい傾向じゃないの。だったらもうちょっと頑張ってみれば?』

リヴァイ(ミカサ)『もしかしたら俺にはそういう「遠慮しない」女の方が合っているのかもしれないな。グザッと刺さっても、割とそれが悪くないと思う自分がいる』

ハンジ(エレン)『リヴァイ、それ、なんていうか知ってる? ドМっていうんだよ? あんた実はそっちだったの?』

リヴァイ(ミカサ)『さあ? ドSと呼ばれる事の方が多いが、そういう部分もあるのかもしれないな』

ハンジ(エレン)『あードSに見せかけた本性ドМだった訳ね』

リヴァイ(ミカサ)『その辺はどっちでもいいけどな。自分でも良く分からん』

ハンジ(エレン)『ぷぷぷ………リヴァイが結婚したら、ご祝儀弾むよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。それは有難いな。俺はその倍出してやろう』

ハンジ(エレン)『それは有難いね! じゃあリヴァイが先に結婚しないと!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、でも、年齢を考えるとハンジが先だろ』

ハンジ(エレン)『いやいや、リヴァイが先ですよ』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジだ』

ハンジ(エレン)『リヴァイ!』

という不毛な会話がこの辺から始まったそうだ。

もう、「お前らが結婚しろよ!!!」って外野はツッコミたいノリだよな。

リヴァイ(ミカサ)『お前も頑固だな。今回の相手を振ったら次はいつ縁があるか分からんぞ』

ハンジ(エレン)『んー別にいいよ。というか、出来れば同僚になる子とはお付き合いはしたくない』

リヴァイ(ミカサ)『職場恋愛は苦手なのか』

ハンジ(エレン)『拗れた時が大変だよ? 下手すると私の方が仕事辞めないといけなくなるかもしれないからね』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、その気持ちは分からんでもないが……』

ハンジ(エレン)『私、人を好きになってみたいんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『生徒の皆、結構、カップル出来たらイチャイチャしているじゃない? あんな感じに、情熱的に、こう……ぐっと、青春してみたいんだよね。いつかは』

リヴァイ(ミカサ)『青春を謳歌せずに過ごしたのか』

ハンジ(エレン)『いや、決してそういう訳じゃないよ? 友達もいたし、高校時代はそれなりに楽しかったし。でも「恋」だけは勉強出来なかったなあっていうのが心残りかな』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………』

ハンジ(エレン)『エルヴィンはよく「ときめき」って言うんだけどね。私、その感覚がイマイチ理解出来なくて今に来ているから。だから惚れっぽい子とか凄く羨ましいんだ! その感覚、私にも教えてよ! ってついつい思いつつ観察しちゃう』

リヴァイ(ミカサ)『デバガメじゃないんだからあまりやり過ぎるなよ』

ハンジ(エレン)『てへ☆ そうだね。遠くから見守るだけにするよ。うん』

リヴァイ(ミカサ)『なら、今度の相手は「ときめき」がないから断るのか?』

ハンジ(エレン)『そうなるね。なんて言って断ろうかな~う~ん……』

リヴァイ(ミカサ)『「私の理想は金持ちでセックスうまくてイケメンだから貴方は無理です」とか言えば?』

ハンジ(エレン)『それは極悪非道すぎるよ!!! 過去最高の悪女だよ!!!』

リヴァイ(ミカサ)『「生理的に無理です」とどっこいだと思うけどな』

ハンジ(エレン)『もー……真面目に考えてないね? 適当過ぎるよー』

リヴァイ(ミカサ)『その新卒の先生とはあまり俺は関わってないからな。教科違うし』

ハンジ(エレン)『私と同じ理科系だしね。化学の先生だから今後も何かと関わるだろうし。あんまり酷い振り方するのもなあ』

リヴァイ(ミカサ)『友達でいようと言ったら、そこから調子に乗ってくる奴もいるから難しい問題だよな』

ハンジ(エレン)『そこは流石に分かってる。あんたみたいに本当に「友達」だと思ってくれる人じゃないと続けられないよ』

ハンジ先生のこの台詞の後、観客の失笑が沸いた。

一番危ない奴が目の前にいるのにっていう意味でな。やれやれ。

ハンジ(エレン)『ぬー……相手の事が嫌いだったら逆に断り易いんだけどね。相手がいい人だと余計にこう……ねえ?』

リヴァイ(ミカサ)『言いたい事は分かるが、お前も以前「悪人になる覚悟」云々言っていただろ。手汚さない訳にはいかんなら、一気にやってしまえ』

ハンジ(エレン)『バッサリと?』

リヴァイ(ミカサ)『バッサリと、だな。一思いにヤレ』

きっと「この時の記憶」がどこかに残っていて、そのせいで甘えてしまったんだろう。モブリット先生に告白された時も、ハンジ先生、ついリヴァイ先生に甘えちゃったんだろうな。

ハンジ(エレン)『分かった。一気にやる。バッサリと。「ごめんなさい! 仕事優先したいから無理です!」でいいかな?』

リヴァイ(ミカサ)『それ言ったら「仕事に差し支えない程度でいいから付き合ってくれ」って返されないか?』

ハンジ(エレン)『あーそっか! それもそうか! ええっと…「あなたは私のタイプじゃないから無理です!」これでどうだ!』

リヴァイ(ミカサ)『そしたら「どんな人がタイプですか?」って言われるぞ。「努力して自分を変えます!」って言われたらどうするつもりだ?』

ハンジ(エレン)『うぐぐぐ……手ごわいよお。リヴァイ、あんた意外とやるね!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺自身の話じゃないぞ。………まあ、経験談ではあるんだが』

ハンジ(エレン)『女の子達にそう言われてきた訳ですね』

リヴァイ(ミカサ)『そうなるな。俺の場合は以前は「他の女とも平気で寝るようなゲスな男でもいいのか?」で半分は振り落してきたけどな』

ハンジ(エレン)『それでも半分残るのが凄すぎるよね。いいなあ。私もその手使った方がいいのかなー?』

リヴァイ(ミカサ)『ビッチを演じるつもりか? 止めた方がいいぞ』

ハンジ(エレン)『どうして?』

リヴァイ(ミカサ)『バレると思う。お前にはその「空気」がない。意外とその辺は慎重派だろ』

ハンジ(エレン)『そ、そんな事ないよ? 私、結構、ビッチじゃないかな?』

リヴァイ(ミカサ)『ふーん……』

ハンジ(エレン)『ううう……すみません。経験は3人程度です。27歳で3人って少ない方かな』

リヴァイ(ミカサ)『普通か、むしろ少ない方じゃないか? 多い女だとその年齢なら10人超える』

ハンジ(エレン)『まじかー……ううう。私ももっと経験しておけば良かったかな』

リヴァイ(ミカサ)『いや、多ければいいってもんでもないぞ。男の本音を言えば「自分」だけを知っている女が1番いい』

ハンジ(エレン)『それって「処女」が1番いいってこと?』

リヴァイ(ミカサ)『そうなるな。現実的には無理だと分かっていても男はそこに「幻想」を見る。例え嘘でも「初めて」だって言われる方が嬉しい。男はそれに騙されていると分かっていても、それに乗っかる生き物だ』

ハンジ(エレン)『そうなんだ。ええ……じゃあ私、騙されたのかなあ』

リヴァイ(ミカサ)『は?』

ハンジ(エレン)『いやーなんか、「処女はださい」みたいな事を言われて鵜呑みにしちゃったからさ』

ガタガタ! リヴァイ先生、この時本当にソファから落っこちそうになったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『誰だそんなふざけた事言った奴は! そして何で騙された! お前も!!』

ハンジ(エレン)『お、怒んないでよ! 若気の至りだよ! しょうがないじゃない。捨てちゃったもんは取り戻せないよ!』

リヴァイ(ミカサ)『タイムマシンがあれば俺が過去のハンジに説教してやるのに』

ハンジ(エレン)『過去にまでお世話焼きに来ないでよ!! 絶対見ないで! やだ!』

この「やだ!」がちょっと可愛いと思ってしまったらしく、リヴァイ先生も反省したらしい。

リヴァイ(ミカサ)『すまん。それもそうだな。俺もハンジに過去を実際に見られたら恥ずかしいかもしれん』

ハンジ(エレン)『でしょ? ええっと……話が脱線したね。つまり、どうしたらいいかな』

リヴァイ(ミカサ)『他に男がいる……だと、2番目でもいいからっていうパターンもあるし、その相手がどの程度「ハンジを好き」でいるかにもよるんじゃないか?』

ハンジ(エレン)『本気だったら、断るのは難しいって事?』

リヴァイ(ミカサ)『多分な。もしかしたら「ちょっとコナかけてみようかな」って程度かもしれないし、あんまり深く考えず、その辺は探り入れつつ断ってみたらどうだ?』

ハンジ(エレン)『そうだねーそうしてみるわー。ありがとう! ちょっと頭の中整理出来たかな?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジは頭の中の整理は早くても自分の部屋の整理は遅いよな』

ハンジ(エレン)『すんません。リヴァイに殆ど丸投げですみません』

リヴァイ(ミカサ)『まあ別にそれはいいんだが……俺も俺で問題を抱えている最中なんだよな』

ハンジ(エレン)『今の彼女さんの件? 自分から会いに行くしかないんじゃない?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。次の予定を入れる方が先だな。そうしよう』

と、あっさり方針を立ててその場で電話をして、顔面蒼白になったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『………』

ハンジ(エレン)『あれ? 電話に出ないの?』

リヴァイ(ミカサ)『着信拒否されている……』

ハンジ(エレン)『ええええ?! マジか!! いきなり?! それ酷いね……』

リヴァイ(ミカサ)『メール送ってみる』

と、何とか連絡とろうとするものの……。

返信メールを見て青ざめるリヴァイ先生だった。

そしてその場で崩れ落ちて、ハンジ先生にもたれ掛かる。

ハンジ(エレン)『ちょっと! しっかりして! 息して! 何が起きた?!』

リヴァイ(ミカサ)『「あんたの過去、人伝えに聞いた。さすがに女3桁抱いたような男は死んだ方がいい。以上」だそうだ……』

ハンジ(エレン)『ええええ?! 三桁って?! それ本当?! あんた馬鹿じゃないの?!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それは教習時代にうっかり漏らした冗談だったんだが……』

ハンジ(エレン)『って事は、相当前の話だよね。え?! その時点で3桁?! それは流石に引くわー…』

と、ハンジ先生も流石にドン引きしたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『どどどどうしたらいい。電話に出ないからメールでやりとりするしかないが、俺は文章能力がない! うまく伝えられる自信はない』

ハンジ(エレン)『うう~ん。自業自得だしね。過去のツケが今頃回ってきたんじゃない?』

リヴァイ(ミカサ)『しかし、その……何だ。今までの女に比べたら、その……』

ハンジ(エレン)『手放したくない気持ちはあっても、もう遅いかもね? どれどれ。代筆してあげよう。何て書く?』

リヴァイ(ミカサ)『ええっと……その話は誤解だ。正確な数字じゃないと……』

ハンジ(エレン)『ふむふむ「3桁は大げさだ。誇張して出回っているデマだ。信じてくれ」でいいのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『それでいい。送ってくれ』

ハンジ(エレン)『あ、返事きたー。「そういう問題じゃないだろ! あんた、私に過去の事、何一つ話さなかったのがムカつく!! 女舐めるな! もう連絡するな!」だそうですが?』

リヴァイ(ミカサ)『うわああああ……』

この瞬間、会場も爆笑した。当然の結果だもんなあ。

もう完全にorzになったリヴァイ先生が可笑しくてしょうがない。

リヴァイ(ミカサ)『れ、連絡するな……か』

ハンジ(エレン)『あーまあ、そうだよね。これは女の方は許容出来ない問題だと思いますよ? うん』

リヴァイ(ミカサ)(しょぼーん)

ハンジ(エレン)『うーん……気のきつい感じの彼女みたいだね。今までそういう子と付き合った事なかったの?』

リヴァイ(ミカサ)『今までの女がどれだけ優しい女だったか身に沁みた……(ズーン)』

ハンジ(エレン)『手放してから気づいてもねえ? もう遅いよねえ?』

リヴァイ(ミカサ)『連絡するなっていうなら、しない方がいいよな』

ハンジ(エレン)『そこは私の決めるところじゃないよ。代筆もう必要ない?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。俺は過去の自分を今から殴りに行きたい気分だ』

ハンジ(エレン)『タイムマシンは確かに魅力的だけどね。でも、未来の自分が過去の自分に会いに行って説教しても話聞いてくれるかなあ?』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『結果論って言葉、知ってる? 確かに未来から過去を見れば「あの時ああすれば」って思うけど。でももし、2番目のルートを進んだらもっと「悪い結果」になったかもしれないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『そ、それは……そうか。それもそうだな』

ハンジ(エレン)『うん。その辺は完全に「博打」の世界だから。エルヴィンが良く言うんだけどね。最後に選ぶのはやっぱり「感覚」的なものだって。理屈を飛び越えた「何か」が降ってくる時があって、それに従って人は生きるしかないんだよって、言ってたよ。今のリヴァイは、この後、どうしたい? 自分の心の声、聴いてごらんよ』

リヴァイ(ミカサ)『…………何も聴こえない。選ぶのが怖い』

ハンジ(エレン)『だったらそれは「停止」を選ぶって事だよ。彼女には連絡しない。それで様子見。はい、OK?』

その直後、もう1回メールがきたようだ。

ハンジ(エレン)『ええっと……「言い訳も無しか! やっぱりその程度にしか見てなかった訳ね! 性病にでもかかって死ね! もし街で偶然会っても絶対話しかけるなよ!」だそうです。OH……』

会場は大爆笑だった。これは酷いwww

でもしょうがねえよな。それだけの事をしてきているもんな。

リヴァイ(ミカサ)『れ、連絡するべきだったのか……(ズーン)』

ハンジ(エレン)『みたいだねー。ぐずぐずしていたのが悪かったのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………』

ハンジ(エレン)『でもひとつ勉強になったじゃない。気の強い子と付き合うデメリットが知れて良かったんじゃない?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。気の強い女と付き合う時は、グズグズしたらダメだな』

ハンジ(エレン)『失恋記念に飲むー? ワイン開けるー?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。飲むよ。とりあえず、飲む』

ハンジ(エレン)『はいはい~用意するから待っててね』

ワインをまた飲む。失恋したらワインっていうのが何とも言えない感じだが。

リヴァイ(ミカサ)『短い春だった……』

ハンジ(エレン)『何か月だったの?』

リヴァイ(ミカサ)『一か月だった。ピクシス先生に「受け身ばかりにならず、お主は自分から動いてナンパする事も少しは覚えた方がいい」って言われてバーに飲みに連れていかれて、その時に声をかけてみた女だったんだが……』

ハンジ(エレン)『ナンパで捕まえた女の人だったの。そりゃバーに飲みに行けるような女は気が強い人だろうね』

リヴァイ(ミカサ)『分かるのか?』

ハンジ(エレン)『だって私もそうですし? てへ☆』

リヴァイ(ミカサ)『……………1人で飲む事もあるのか?』

ハンジ(エレン)『んー今はないけど、昔はそうだったね。というか、私の場合は酒さえ飲めれば何処でもいいんですけどね』

リヴァイ(ミカサ)『1人で飲むなよ。飲む時はつきやってやるぞ』

この時のリヴァイ先生、色気が出ていたそうで、ちょっとドキッとするシーンだったそうだ。

でも、ハンジ先生は当時はそれを「気のせい」だと処理したそうで、慌てて誤魔化したそうだ。

ハンジ(エレン)『うん。ありがとう。だから今、こうして飲んでいるでしょ? 乾杯♪』

ゴクゴクゴク……

実際に飲んでいるのはただの葡萄ジュースなんだけど。

でもこうやってそれっぽい演技するだけでも結構ドキドキするんだけどな。

当時の2人がここから「男女」の仲にいかなかったっていうのがオレにとっては信じられない。

もしオレがミカサといつか、こうやって2人で飲む事が出来るようになったら、きっと、そのままベッドに連れ込む。

それを想像しかけて、オレはうっかり赤くなってしまった。

しまった。今、ここで赤くなるのは台本通りじゃない。脚本を無視しちまった。

それに釣られてミカサまで赤くなってしまった。ま、まずい。どうしよう!

劇が一時中断してしまった。台詞、言わないといけないのに。

でも観客は「おおお?」と反応している。

予定とは違う流れにリヴァイ先生も『ん?』と違和感を覚えたようだ。

しまった。修正しないと。修正……。

リヴァイ(ミカサ)『はー……でも、確かに勉強になったかもしれない』

あ、ミカサが先に空気読んで動いてくれた。

すまん。ここはミカサが先だったな。ちょっと頭の中、混乱しかけた。あぶねー。

リヴァイ(ミカサ)『この年になってようやく、自分の「好み」が少しずつはっきりしてきた気がする』

ハンジ(エレン)『マジか! 三十路にしてようやくだね! おめでとう!』

リヴァイ(ミカサ)『正確に言えばまだ29歳だけどな』

ハンジ(エレン)『もう三十路でいいじゃん! で? どんな感じか分かったの?』

リヴァイ(ミカサ)『気が強くて、遠慮のない、表情豊かで、年下の女だな』

ハンジ(エレン)『おおおお…4つも条件そろったんだ。いいなあ。麻雀で言うと1槓子だね!』

リヴァイ(ミカサ)『何で麻雀に例える。麻雀好きなのか?』

ハンジ(エレン)『へへへ~エルヴィンに教えて貰ったから打てますよ? 今度サンマやる? あ、ピクシス先生入れれば普通に打てるけど?』

リヴァイ(ミカサ)『徹麻になりそうだな。その面子だと。あと俺はエルヴィンには勝てる気がしないので止めておく』

ハンジ(エレン)『そこはハンデ貰えばいいじゃーん』

リヴァイ(ミカサ)『あいつはハンデくらいなんとも思わない博打打ちだぞ。勝てない勝負はしたくねえ』

ハンジ(エレン)『ちぇー……4人で遊んでもいいじゃーん。トランプとかでもいいよ?』

リヴァイ(ミカサ)『中学生じゃねえんだから……』

ハンジ(エレン)『まあそうだけど。でもいつか、今度は4人で何かしたいなあ』

リヴァイ(ミカサ)『俺もピクシス先生には最近、何かと世話になっているしな。そうだな。いつかそう出来たらいいな』

と言いながら酒を空けていく。

そしてまたリヴァイ先生の方がソファに横になったそうだ。酒の耐性はハンジ先生の方が上だから。

ハンジ(エレン)『こらー膝枕2回目か! 2万円取るぞ!』

リヴァイ(ミカサ)『勝手に抜き取れ。ちょっと太ももを貸してくれ……』

ハンジ(エレン)『え? ちょっと、今回は本気? うそーん。ここで寝る気?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、寝る訳じゃない。ちょっとだけ、休みたいだけだ』

ハンジ(エレン)『ベッドに移動した方が良くない?』

リヴァイ(ミカサ)『………面倒臭い』

ハンジ(エレン)『なら抱えようか? 私、おんぶ出来るよ?』

リヴァイ(ミカサ)『いい。本当に金、抜き取ってもいいから。ちょっとだけ、貸してくれ』

ハンジ(エレン)『………………』

観客が「おおお?」という声をあげた。この意味深なシーンにドキドキしているようだ。

そして寝る訳じゃないと言った癖に結局そこで眠ってしまうリヴァイ先生にハンジ先生は言ったそうだ。

ハンジ(エレン)『いいなあ。私、まだ1面子も揃ってない感じだよ。牌がバラバラで形にすらならない。今のリヴァイはリャンシャンテンまで揃っているみたいだね。こりゃ、リーチかけられるのは、リヴァイの方が先になるかもなあ』

と言って寝付いたリヴァイ先生を結局は抱えてベッドに戻してあげたそうだ。

そして部屋を出て合鍵で鍵をかけて部屋を出て行く。

ベッドに残ったリヴァイ先生はその日、いい夢を見たそうだ。

それはあの時の「美人な女子大生」に再会する夢だったそうだ。

夢の中では、まるで初心な少年のようにオロオロしていて、まともに話しかける事も出来ない自分が居て。

そんな自分が恥ずかしくて、でも、その女と再会出来て嬉しくて。

この時の様子はイメージ映像でスクリーンに音声無しで映して表現した。

そして朝になり、朝の感覚になって、ちょっと赤くなる。

リヴァイ(ミカサ)『……………夢か』

と、言いつつ照れくさそうに体を起こすリヴァイ先生だった。





場転。学校の体育館のあいたロビーを借りて2人で練習する。その様子をエルヴィン先生が見守る。

エルヴィン(アーロン)『そろそろ形になって来たね。2人とも。上達が早いよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか?』

ハンジ(エレン)『うん。まだちょっとぎこちない部分もなくはないけど、完成度は7割のところまできたかな』

ハンジ(エレン)『マジで? まだ練習して2か月程度だけど。もうそんなに上達した?』

>>651
訂正

場転。学校の体育館のあいたロビーを借りて2人で練習する。その様子をエルヴィン先生が見守る。

エルヴィン(アーロン)『そろそろ形になって来たね。2人とも。上達が早いよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか?』

エルヴィン(アーロン)『うん。まだちょっとぎこちない部分もなくはないけど、完成度は7割のところまできたかな』

ハンジ(エレン)『マジで? まだ練習して2か月程度だけど。もうそんなに上達した?』



エルヴィンの台詞を間違えました。すみません。

エルヴィン(アーロン)『今度、試しに実践的にパーティーに出てみる? 実際にそういう場所で踊るとまた違った感触を味わえるよ。4月10日の夜になるけど、パーティーに誘われているから君達も来るか?』

リヴァイ(ミカサ)『踊っていいのか? 俺達部外者じゃないのか?』

エルヴィン(アーロン)『別に構わないよ。私の友人枠で来るといい。衣装は私が用意してあげよう』

ハンジ(エレン)『わーい! ありがとうエルヴィン!』

エルヴィン(アーロン)『では4月の予定は1個埋まったね。当日は私の車でいいね? 2人は飲んでもいいよ』

ハンジ(エレン)『わーい! もういっちょありがとうエルヴィン!』

という訳で、お試し感覚で2人は実際の社交場にデビューを果たす事になる訳だが…。

この時、エルヴィン先生が呼ばれた「パーティー」というのは、なんと「コスプレダンスパーティー」だったのだ。

なのでダンスはどちらかというと、おまけみたいな感じで、コスプレ衣装に着替えて適当に踊っていたのだ。

リヴァイ(ミカサ)『こ……ここで踊れって言うのか? 場違いじゃないか?』

この時のリヴァイ先生は当時テニス部の顧問をしていたから「テニスの王子様達」のコスプレをリヴァイ先生とハンジ先生にさせたらしい。

ちなみにリヴァイ先生は「リョーマ」でハンジ先生が「手塚」だったそうだ。

会場には多種多様なコスプレイヤーが揃っていて、皆楽しそうにしゃべったり踊っている。

エルヴィン先生は「乾」の格好をしていたそうだ。この当時はテニヌとだんだん呼ばれ始めた時期かな。

エルヴィン(アーロン)『大丈夫だよ。むしろ今の君達なら注目の的かもしれない』

リヴァイ(ミカサ)『それはどういう意味だ?』

エルヴィン(アーロン)『踊ってみれば分かるよ』

リヴァイ(ミカサ)『音楽が全然違うんだが、いいのか?』

ハンジ(エレン)『まあ、そこは適当でいいんじゃない? このリズムで踊れるダンスなら……』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。チャチャチャに近い感じでいくか?』

ハンジ(エレン)『うん。任せるー』

リヴァイ(ミカサ)『なら復習ついでに踊ってみるか』

そしてリヴァイ先生とハンジ先生が躍り出した瞬間、周りは「リョ塚? いや、塚リョ?!」という腐った女子が注目してきたらしい。2001年~2005年くらいの間はテニヌが結構流行っていた時期だったそうで、今の「テニミュ」の原型もこの時期に出来上がったそうだ。

というのはマーガレット先輩の談だ。テニヌも結構好きなんだろうだ。先輩は。

そんな訳で、テニヌのコスプレをした2人が踊ればそれはもう、周りから見たらキャーキャー言われるのは当然の事だった。

チャチャチャは結構、他のダンスに比べたら激しい方のダンスだろう。

リズムの取り方が他のより難しいんだけどミカサは難なく踊りこなした。

苦戦したのはオレの方だ。ミカサにリードされる形で食らいつく。

そして踊り終わった後、拍手がきた。なんか照れくさくなってリヴァイ先生はすぐ逃げたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『もういい! 後は適当に酒飲んでおく』

と、さっさとフロアの端っこに逃げたそうだ。

ハンジ(エレン)『え? もう終わり? もうちょっと踊ろうよ』

リヴァイ(ミカサ)『俺はもういい。後はエルヴィンと一緒に踊ってろ』

エルヴィン(アーロン)『いいのかい?』

リヴァイ(ミカサ)『なんか知らんが好奇の目で見られているから、もういい』

エルヴィン(アーロン)『はは……流石に気づいたか。皆、萌え死んでいるよ』

ハンジ(エレン)『んーま、いっか。次はエルヴィンと踊ろう♪』

という感じで踊っているエルヴィン先生とハンジ先生を眺めていたら、リヴァイ先生は何故か妙な気分になったそうだ。

お互いに男装をしている筈なのに。その身長の差が凄くバランスが良くて優雅で、綺麗に見えて。

そんなところを気にしている自分が凄く小さな男に感じて、つい酒をかっくらってしまったそうだ。

今思うと、恐らく嫉妬していたんだろうな。エルヴィン先生の「身長」に対して。

リヴァイ先生の唯一のコンプレックスは「身長」が低い事だから。

ハンジ先生をリードするならやっぱり背が高い男の方が見栄えが良くなる。

そのことに気づいて、ちょっとだけ気持ちが凹んでいる自分に気づいたんだそうだ。

でも、そんな自分を見つめたくなくて、酒に逃げたそうだ。

気持ちは分からなくもない。オレも身長は大きい方がいいなあって男としては思うからな。

しかしそんな風に1人でいたら、なんと、リヴァイ先生、逆ナンパされてしまったそうで。

不二女子(スカーレット)『あの、一緒に踊って貰えませんか?』

菊丸女子(サシャ)『踊りましょう! 是非!』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何で。嫌だ』

不二女子(スカーレット)『くううう! クールなところがリョーマそっくり!!!』

リヴァイ(ミカサ)『???』

不二女子(スカーレット)『桃ちゃん連れて来よう! 桃! あんたもこっち来い!』

桃城男子(ジャン)『はあ? なんだ? この生意気な1年は』

リヴァイ(ミカサ)『???』

ネタがいまいち分かってない状態だったので対応に困ったそうだ。

跡部女子(アニ)『おい、越前。お前、何やってんだ。あーん?』

リヴァイ(ミカサ)『越前? 俺の事なのか?』

不二女子(スカーレット)『自分のキャラ分かんないでコスプレしてたんだ。可哀想にwww』

跡部女子(アニ)『あ、そうだったんだ。御免御免。ノリにつき合わせて』

リヴァイ(ミカサ)『はあ……』

跡部女子(アニ)『良かったら、ちょっと話さない? そっちでさ。あんたのダンス、結構格好良かったし』

リヴァイ(ミカサ)『連れがそこで踊っているんだが……』

跡部女子(アニ)『エルヴィン先生でしょ? 知ってる知ってる。呼んだのうちらだし。大丈夫だよ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

そしてリヴァイ先生の悪癖がここでも出て、結局流されて彼女らと話す事になったそうだ。

で、結局彼女達と酒を飲みながら話していたらだんだん、酔いが深くなってしまって……

遂にはまた泥酔して記憶がぶっ飛んでしまったそうだ。

で、ここからが恐ろしい事に、その時の彼女にリヴァイ先生は逆お持ち帰りされてしまったそうで。

気がついたら、その跡部女子と一晩、過ごしてしまっていたそうで。

ヤッたのか、ヤッてないのか。それすら分からない状態で朝から目が覚めて顔面蒼白になったそうだ。

跡部女子(アニ)『おはよー。昨日は楽しかったね。リヴァイ先生』

リヴァイ(ミカサ)『……………今、朝の何時だ?』

跡部女子(アニ)『朝の8時だね。あれ? どうしたの? そんなに慌てて』

リヴァイ(ミカサ)『今日は入学式だ!!! ここ、何処だ?! 講談高校との距離はどれくらいある?!』

跡部女子(アニ)『んー車で1時間くらいかなあ?』

と、言われた瞬間、orzの状態になってしまったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『嘘だろ……初日から遅刻か。しかも逆ナンパ帰りで遅刻とか……』

跡部女子(アニ)『ごめんねえ。昨日はついつい、面白かったからさ。持ち帰っちゃった♪』

リヴァイ(ミカサ)『俺はあんたと寝たのか? ヤッたのか? 記憶がないんだが』

跡部女子(アニ)『ヤッた……と言いたいところだけど、そこまではやってないよ。でも昨日は楽しかったよ。いろんな意味で』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……すまない。俺の服は何処だ。あ、でもコスプレ衣装では学校に行けない。スーツはないか? ジャージでも構わん。貸してくれ』

跡部女子(アニ)『んーリヴァイ先生に合うサイズのスーツあったかなあ。ちょっと待ってね』

と、言って開けたクローゼットの中には凄まじい数の衣装があった。

そこには男女問わずいろんな衣装が備えてあり、その在庫の凄さに面喰ったそうだ。

跡部女子(アニ)『これでいいかな? 着れる?』

リヴァイ(ミカサ)『十分だ。ありがとう。あ、名刺渡しておく。後で連絡するから。連絡くれ。衣装を返しに行くから』

といいつつ着替え始める。ここはカーテン越しの生着替えだ。着替えの様子は観客には見せない。

跡部女子(アニ)『遅刻しそうなら送ってあげようか? ヘリ使う?』

リヴァイ(ミカサ)『え? ヘリ? 自家用のヘリコプターを持っているのか?』

跡部女子(アニ)『うん。あるよー。ちょっと待ってて』

と言いつつ一度舞台をはけて、戻ってくる。

跡部女子(アニ)『飛行大丈夫だって。いいよ。送ってあげる。昨日無理させたし、そのお詫び。講談高校まで送ればいい?』

リヴァイ(ミカサ)『た、頼む……』

そして伝説の入学式が、遂に始まる。











バラバラバラバラ………

ヘリコプターの音が講談高校の上空に響いている。

ここで宙づりアクションだ。ミカサが吊るされた状態で上から吊るした縄梯子に掴まっている。

ジャッキー・チュンが映画とかで良くやっているアレだ。ガチであの状態で学校に登校してきたそうで、入学式は騒然となったそうだ。

第一体育館の生徒達はその異変に気づいてついつい、窓の外を注視した。

グラウンドの中央に降ろされたリヴァイ先生はそのまま地面に無事に着地した後、ダッシュで体育館に入ってきて、

リヴァイ(ミカサ)『…………すまん。遅刻した』

と、小さく呟いてしれっと職員用の列に合流したそうだ。

生徒達は突然の「笑ってはいけないアレ」状態に陥って失笑の爆弾を抱えたそうだ。

そして場転。再びナイル先生のお説教だ。

ナイル(マルコ)『あー言いたい事は分かるよな? リヴァイ先生』

リヴァイ(ミカサ)『はい』

ナイル(マルコ)『ヘリコプターを使って通勤してはいけないというルールはないが、常識を考えろ。しかもさっきのアレは何だ? アクションスターみたいな事をして、もし怪我でもしたらどうするんだ』

リヴァイ(ミカサ)『時間をショートカットしようと思ってあのやり方にしました』

ナイル(マルコ)『それだったらもう、普通にヘリに着陸して貰った方がいいだろ! そこ数分の差だ。どうせ遅刻しているんだから、そこはもう無理するべきところじゃないだろ』

リヴァイ(ミカサ)『ギリギリセーフを狙ったんですが、ダメでしたか』

ナイル(マルコ)『ダメに決まってるだろ。5分遅刻だ。やれやれ……普段はちゃんと時間通りに来るのに、何かトラブルが起きると滅茶苦茶な方法で時間を短縮して学校に来る癖はやめた方がいいぞ。あとちょっと酒臭い。牛乳飲んでちょっと散らして来い。いいな』

リヴァイ(ミカサ)『はい。すみませんでした……』

という訳でようやく釈放される。

その後、ハンジ先生とエルヴィン先生がバツの悪そうな顔でそーっと様子を伺った。

リヴァイ(ミカサ)『お前ら、昨日はよくも……(拳プルプル)』

ハンジ(エレン)『ごめんって! まさか逆ナンパされてお嬢様にお持ち帰りされるなんて思わなくて』

エルヴィン(アーロン)『私達が気づいた時には既に遅かったんだ。彼女からメールで後で連絡が来て、「エルヴィン先生の小さな連れを持ち帰りました。めんご☆」って言われて……あの子、気に入った人をすぐ自宅に連れ込む悪癖があるからねえ。お嬢様だから。本当、ごめんね』

リヴァイ(ミカサ)『さすがはエルヴィンの知り合いだな。人を拉致る趣味は同じってか』

ハンジ(エレン)『それを言ったらあんたもでしょうが。私を自宅に連れ込んだの、忘れたとは言わせないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『俺の場合は意味が違うんだが?』

ハンジ(エレン)『ええ? 本当に~? まあ、別にいいけどー?』

と言いつつ、

ハンジ(エレン)『それより、そのお嬢様と仲良くなったの? 新しい彼女になりそう?』

リヴァイ(ミカサ)『え? いや……それは知らん。そんな事を考える余裕はなかった』

ハンジ(エレン)『じゃあ次に会う時に頑張りなよ。今、あんたフリーなんでしょ? 逆玉の輿ってやつじゃなーい?』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか?』

エルヴィン(アーロン)『うん。あの子は超がつくほどのお嬢様なんだけど、ちょっと変わった子でね。アニメとかのオタクでもある。私がコミケで知り合った友人だよ』

という事で、なんとここでまた新しい彼女候補のような人物が現れるのであった。

もう何だろうな? リヴァイ先生の女運って一般人の100倍くらいあるような感じだよな。

リヴァイ(ミカサ)『いや、でも……その』

ハンジ(エレン)『何で尻込みしているの? いいじゃん。お嬢様』

リヴァイ(ミカサ)『…………世界が違い過ぎないか?』

エルヴィン(アーロン)『確かに住んでいる世界は全然違うけど。でもそのスーツ、リヴァイのじゃないよね。彼女に借りたんだろ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだが……返却しないといけないな。クリーニングに出してから。あ、早速メールが来ている。「間に合った? また今度遊ぼうね~リヴァイ先生(ハート)」だそうだ』

ハンジ(エレン)『彼女の方もノリいいじゃん! 悪くないんじゃない?』

エルヴィン(アーロン)『まあ、彼女はいい子だよ。私と同じくらい変わってはいるが』

リヴァイ(ミカサ)『エルヴィンとどっこいって、それは相当だな』

と頭を抱えるリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『まあその件は横に置く。とりあえず今回の件の礼は後日言いに行かないといけないしな』

という訳でその時はそこまで話して本当に後日、そのお嬢様に会いに行く事になったのだ。

リヴァイ先生の女遍歴が凄すぎてヒッチは常に大爆笑中です。
という訳で次回またノシ

ホントこんなんでよくハンジが嫁に来てくれたな…
この後落ち着いていくのか?

>>661
最初ハンジ先生が「リヴァイとどうこうなるつもりはない」と
言い切っていた理由がこれでお分かりいただけたかと思います(笑)。

>>661
あとついでに言うなら10代の頃の自分を暴露された時のリヴァイのエレンに対する反応とか。
エレンのく口を窒息させる勢いで塞いだのもなんとなく、お分かり頂けるとありがたいです。







暗転後。豪華な一室に2人で向かい合って座る。

クリーニングに出したスーツを返却しに行くと、そのお嬢様は言った。

跡部女子(アニ)『クリーニングなんて別に良かったのに。気遣い屋さんだね。リヴァイ先生は』

リヴァイ(ミカサ)『いや、その……汗掻いたしな。一応念の為だ』

跡部女子(アニ)『むしろ残しておいた方が貴重価値って言われない?』

リヴァイ(ミカサ)『…………そういう性癖なのか? お前は』

跡部女子(アニ)『うふふ? さあ、どうでしょう?』

この雰囲気、どことなくエルヴィン先生に似ていたそうだ。顔は狐っぽいけど、中身はタヌキっぽい印象の女性だったそうだ。

癖の強そうな女だなと思いつつリヴァイ先生はお礼を言った。

リヴァイ(ミカサ)『まあいいか。その辺は。この間は助かった。遅刻はしたが、大幅には遅れなかったから良しとする。あと、エルヴィンに聞いてこういうのが好きだと聞いて土産を持ってきた。良かったら貰ってくれ』

と、手土産持参だ。所謂アニメの関連グッズで、キャラの印刷が入ったクッキーだ。

跡部女子(アニ)『ありがとう! アニメイト行ってきたんだ?』

リヴァイ(ミカサ)『良く分からんが、そういう名前の店だったかな。店員に聞いて一応確認したんだが、これで合ってるか?』

跡部女子(アニ)『うん。合ってる合ってる。後で食べるね』

リヴァイ(ミカサ)『あの……ところで』

跡部女子(アニ)『なに?』

リヴァイ(ミカサ)『すまん。あの時の記憶が曖昧で、ヤッてないのは分かったが、その、手は出したんだろうか?』

跡部女子(アニ)『いやいや? キスも何もしてないけど?』

リヴァイ(ミカサ)『そ、そうか……(ほっ)』

跡部女子(アニ)『ぐだまいていただけだよ。でもその巻き方が面白過ぎて……げふんげふん』

と、思い出し笑いをしてしまったようだ。

リヴァイ(ミカサ)『そんなに酷かったのか?』

跡部女子(アニ)『んー? まあ、あんまり知らない方がいいかも? 無意識だろうし』

リヴァイ(ミカサ)『き、気になるな………俺は要らん事をしゃべったのか?』

跡部女子(アニ)『んーそれ、私が話していい事なのか分からないからノーコメントで』

リヴァイ(ミカサ)『意味深に煙にまかないでくれ。余計に気になる』

跡部女子(アニ)『えー? 聞いたら後悔するかもしれないけど?』

リヴァイ(ミカサ)『そんなにいろいろ酷かったのか? (青ざめ)』

跡部女子(アニ)『可愛いって思っちゃった。エルヴィン先生のお気に入りの先生ってリヴァイ先生の事だよね? 名前までは知らなかったけど。特徴は聞いて知っていたよ。後で紹介するって言われていたけどフライングしちゃった。予想以上に面白い先生だなって思って。ついつい』

リヴァイ(ミカサ)『そ、そうだったのか……』

跡部女子(アニ)『リヴァイ先生、今、彼女いないの?』

リヴァイ(ミカサ)『2月に振られて、それ以後はいないな』

跡部女子(アニ)『でも、好きな人はいるみたいだよ。リヴァイ先生』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

跡部女子(アニ)『忘れられない女性がいるみたいだった。私が言えるのはここまでだね。うん』

其の時、脳裏に浮かんだのが女子大生時代のハンジ先生だったんだけど。

そんな自分に気づいて慌てて頭を振ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『いや、アレは好きとかそういう感情ではなくて、その……礼を言いそびれてしまっただけで』

跡部女子(アニ)『ぷっ……あははは! もう可笑しい! 腹痛いwwww』

リヴァイ(ミカサ)『………………』

跡部女子(アニ)『御免。そう睨まないで。まあそう言うならそういう事にしておくからさ。ね?』

リヴァイ(ミカサ)『そうしてくれ。確かに忘れられないのは事実だが。別にそれ以上の感情は……』

跡部女子(アニ)『ぷぷっ…! (また吹き出す)』

リヴァイ(ミカサ)『もう帰っていいか? 用事は済んだし』

跡部女子(アニ)『あー待って待って。リヴァイ先生、今、彼女いないなら、私と付き合ってみようよ』

リヴァイ(ミカサ)『………………え?』

いきなりの展開にリヴァイ先生は流石にちょっと固まったそうだ。

こんなに風にまるで「今日は天気いいね」くらいの軽いノリの告白は初めての経験だった。

告白する時は流石にもうちょっと色気のあるムードというか、女の方が「ねえ? お願い」みたいな、こう、熱っぽさを持って迫ってくる事が多かったからだ。

跡部女子(アニ)『あーアレだったら一か月だけとかでもいいよ。先生忙しいだろうし、そこは無理させないから』

リヴァイ(ミカサ)『年、いくつだ?』

跡部女子(アニ)『20歳だよ。一応お酒飲める年齢だよ』

リヴァイ(ミカサ)『他に男がいるとかは……』

跡部女子(アニ)『それもない。先月別れたばっかり。奇遇だね。先生と似たような境遇だよ』

リヴァイ(ミカサ)『………お嬢様、なんだよな?』

跡部女子(アニ)『んー? まあ、そうだけど。そこは出来るならあんまり吟味の対象に入れて欲しくはないかな』

リヴァイ(ミカサ)『……………大学生なのか?』

跡部女子(アニ)『一応。エスカレーター式のお嬢様学校にぶち込まれてここまで来たから。最近になってやっと反抗期が来た』

通りでなんかマイペースなのかと、この時のリヴァイ先生は納得したそうだ。

跡部女子(アニ)『あ、処女じゃないけどね。この間、うっかり捨てちゃったから。あともうちょい出会うのが早ければリヴァイ先生にあげられたけど。前の彼氏にあげちゃったから。そこだけがネックかな?』

リヴァイ(ミカサ)『…………じゃあ俺が2人目?』

跡部女子(アニ)『うん。そんな感じ。先生、経験豊富そうだし。いいかも? ってピンときたんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

リヴァイ先生は頭を抱えたそうだ。

また似たようなパターンでの付き合い方になると思いつつも、前回の失敗の件も有り、やっぱり自分にはこういう恋愛の始め方の方が向いているのか? とも思ったそうだ。

跡部女子(アニ)『とりあえずでいいんだけど。ダメかな? まずは一か月。それでだめならそこで止めるし』

リヴァイ(ミカサ)『でもそうなると、余り会えないんじゃ……』

跡部女子(アニ)『この後、忙しいの?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、今日は休みだからここに来たんだが』

跡部女子(アニ)『じゃあ、やろうよ。うちで。泊まって行けば?』

リヴァイ(ミカサ)『?!』

男ならここで行くだろ! という心の声と、いやいや早すぎるだろ! という声に分かれるだろう。

以前のリヴァイ先生だったら迷わず前者だったそうだ。一晩だけの関係も珍しくなかったから。

でもこの時点のリヴァイ先生は、ハンジ先生の「拳」の痛みを思い出して少し慎重になっていた。

リヴァイ(ミカサ)『いや、それは流石にやめておく』

跡部女子(アニ)『あらら……20歳は若すぎた? もうちょい上の方が良かった? それとももっと下が良かった?』

リヴァイ(ミカサ)『20歳なら許容範囲だが、そういう問題じゃないんだ』

跡部女子(アニ)『じゃあ何が問題? あ、胸ないから? 貧乳でごめんね』

リヴァイ(ミカサ)『そこも問題ない。感度の方が大事だろ』

跡部女子(アニ)『ん? ああ、でもそれは自分では判断出来ないかも……悪い方かもしれないし』

リヴァイ(ミカサ)『そうじゃなくて……俺はまだ、お前の名前すら知らないんだぞ』

跡部女子(アニ)『あらら……うっかりしていたね。自己紹介、していなかった。御免御免』

マリア(アニ)『私の名前は「マリア」だよ。マリア・レイス。レイス家の三女。放蕩娘だよ』

リヴァイ(ミカサ)『マリア……いい名前だな』

マリア(アニ)『ありがとう。他に知りたい事はある?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、とりあえずは名前だけでいい。呼ぶ時に困るからな』

マリア(アニ)『なら後は追々って思っていいのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『………付き合うのは一晩だけ考えさせてくれないか?』

マリア(アニ)『おっと、意外と慎重派だね。エルヴィン先生から聞いていた印象とちょっと違う?』

リヴァイ(ミカサ)『昔の俺だったら迷わずOKしただろうが、今は少し変わったからな』

と言いながら帰り支度を始めるリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『明日、電話するよ。どっちにしろ、必ず連絡する。それでいいか?』

マリア(アニ)『うん。返事を待ってる』

という訳で舞台から先にリヴァイ先生ははけて、暗転となった。







チクタク。チクタク。チクタク。

時計の音が真夜中に響いていく。午前1時。その日の夜、リヴァイ先生は考え込んでいた。

マリアとの件をどう返事するべきか悩んでいたのだ。

ソファで1人座って、夜中のテレビでも適当に見ようかと思いながら、リモコンをつける素振りをする。

ここでは実際にテレビを見れるわけじゃないので、音だけでテレビがついた表現をする。

適当なお笑い番組をぼーっと見つめながら考えていると、

夜中の来訪者だ。こんな時間に来るのはハンジ先生しかいない。

一応、出てやると、ハンジ先生が酒を持って入ってきた。

リヴァイ(ミカサ)『………明日、仕事あるんだが?』

ハンジ(エレン)『でも起きてたって事は、リヴァイも飲んでたとか?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、飲んでいた訳じゃない。少し考え事をしていただけだ』

ハンジ(エレン)『そうなんだー今、ちょっといい?』

と言われたので一応、中に入れる。

いつものようにソファに2人横に並んで座って酒を飲み始める。

今回はハンジ先生だけだ。リヴァイ先生は飲まない。

ハンジ(エレン)『負けちゃったー…』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『いや、ほら、前に言っていた告白された人の件。何か私の「独特な匂い」が好きなんだそうで、風呂入ってない時の匂い、嫌いじゃないって言われたら、なんかいつの間にかOKしている自分がいました。あれー? みたいな』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ。彼氏が出来たのか。だったらめでたいじゃないか』

ハンジ(エレン)『あれ? 意外と喜んでないね? リヴァイ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そんな事はないぞ。ただ、今は俺の方も頭の中がごちゃごちゃしているからそう見えるだけだろ』

ハンジ(エレン)『あ、もしかして、例のお嬢様、付き合う事になったの?』

リヴァイ(ミカサ)『保留にして貰っている。明日中に返事をする約束をしている』

ハンジ(エレン)『マジか! 私達、同時期にパートナー出来ちゃった訳だ! すごい偶然だね!』

リヴァイ(ミカサ)『俺の方はまだOK出してない。少し迷っているんだ』

ハンジ(エレン)『え? 何で迷うの?』

リヴァイ(ミカサ)『相手から誘われてから始める恋愛だからだ。また、同じ事を繰り返すんじゃないかって気持ちがある。ピクシス先生の言う通り、自分から動いた方がいいとは思うんだが、結果的にはこっちの方が合っているのか? とも思う自分もいる。正直、揺れているんだ』

ハンジ(エレン)『相手の子が嫌いな訳じゃないんだよね?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。そういう感じでもない。以前の俺だったら迷わずOKしただろうが……』

ハンジ(エレン)『今度はちゃんと真剣なんだね』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジに殴られて反省したからな。自分の中の気持ちが見えないまま余りそういう関係にはならないようにしないといけないと思ったんだよ』

ハンジ(エレン)『以前のナンパした彼女はどの程度好きだったの?』

リヴァイ(ミカサ)『すらっと手足の長い、大人っぽい身体と、俺より少しだけ背が高かった。ハンジよりは低いけど。俺とハンジの間くらいの背丈だったな。髪は長くて、アップにしていた。目が綺麗な猫のような目で、色気のある女だなって思った。ピクシス先生にはそういう「感覚」的な物を養えと言われてな。見た目から入っても問題ないからガンガン行けと言われて、一先ず、そのバーの中で一人で飲んでいた彼女に話しかけてみたんだよ』

ハンジ(エレン)『んー? それって一目惚れ未満って感じじゃない? ビビッときた訳でもないような?』

リヴァイ(ミカサ)『その時はまだ「なんとなく」程度だった。だが実際に話してみると「案外悪くねえな」って思う自分がいた。あの時の感覚は初めて経験したが……能動的に動く事自体が嫌いという訳でもないらしい』

ハンジ(エレン)『じゃあもし、もう少し関係が続いていれば、もうちょっと進展していた可能性はあった訳だ』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。それはそうだと思う。そもそもあの女には「何で手出さないの? 何がしたいのあんた? エッチするのかしないのかはっきりしろ!」って怒られたからな。俺は生まれて初めて慎重に事を運ぼうとしたのに、そんな風に言われてブチ切れて、だったら「思いっきり抱いてやろうじゃねえか」って思って、丁寧に返したら……(ズーン)』

嫌な事を思い出して凹むリヴァイ先生だった。技が仇に成ったわけだからな。

ハンジ(エレン)『あーあ。上手過ぎて過去がバレた訳ですね。自業自得だね』

リヴァイ(ミカサ)『いい女だとは思ったよ。「恋」に育つ前にへし折ったような感覚だったが』

ハンジ(エレン)『うーん。まあ、一応それも「小さな恋」としてカウントしていいのかな? 多分。で、それと比べて今度の相手はどうなの? 好みではないの?』

リヴァイ(ミカサ)『なんていうか、多分、「エルヴィン」に似たような性格の女性じゃないかと思っている』

ハンジ(エレン)『あー類友っていうよね。私の友人も、そういうのいるけど』

リヴァイ(ミカサ)『まあそうなんだろうな。恐らく。だから、その……主導権を相手に握られそうなのが少し怖いのと、相手は20歳で、まだ向こうも「恋愛」をちゃんと経験していないような感じだったんだ』

ハンジ(エレン)『おおお……9~10歳差か。結構歳の差有るね』

リヴァイ(ミカサ)『見た目はそう見えないけどな。25歳と言っても通じそうな大人っぽさはある。ただ、この場合は今までのケースと凄く「似ている」から本当に始めていいのか……』

ハンジ(エレン)『うーん。とりあえず一か月くらい付き合っちゃえば? そこからじゃない?』

リヴァイ(ミカサ)『……相手の女と同じ事を言いやがったな』

ハンジ(エレン)『あ、そうなの? だったら尚更良いじゃない。相手も了承済みなら。味見させてって言えば? 私も何度かそれと同じ事した事あるよ。期間限定で付き合ってそこから判断するの。そうすれば以前のような「ずるずる」とした関係もしないで済むし、いいと思うけどな』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………』

そしてリヴァイ先生は結論を出したのだ。

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。そうしてみるか。ただ、その間は流石にハンジの事が出来なくなるかもしれんが、その時はお休みでもいいよな?』

ハンジ(エレン)『そこは全く問題ありません。ひゃっほーい! 休暇だ!』

リヴァイ(ミカサ)『休むのは掃除だけだぞ。風呂と飯は継続する』

ハンジ(エレン)『正直言えばご飯だけでもいいんだけどな。お風呂も休もうよ』

リヴァイ(ミカサ)『むしろ優先順位で言えば風呂が一番何だが?』

ハンジ(エレン)『あ、はい。すんません。私が悪かったです。はい』



マリーナ『という訳で、この時期、2人はなんとほぼ同じ時期にそれぞれパートナーが出来てしまったのです』

マリーナ『その間は流石に2人の距離も以前よりは少し離れ、それぞれのパートナーと向き合う時間が増えていきます』

マリーナ『しかしリヴァイ先生が別の女性と交際して一か月後……』

マリーナ『ハンジ先生の方が先に相手に振られてしまうのでした』



真夜中。また1時を過ぎた頃。

時計の音が響く中、ハンジ先生はリヴァイ先生の家に転がり込んでいた。

ハンジ(エレン)『振られたー生まれて初めて振られたー』

リヴァイ(ミカサ)『あー何が原因だ?』

ハンジ(エレン)『私の身体の匂いは好きだけど、部屋の中の汚さまでは許容出来ないから別れたいって』

リヴァイ(ミカサ)『あーそうか。最近、掃除しに行ってやってなかったからな。また昔の汚部屋に逆戻りしていたのか』

ハンジ(エレン)『そう。やっぱり「両方」OKな人なんていないよね。私の場合、どっちかを改善しろと言われて、出来るのは外見の方だけで、部屋の片づけの方はどんなに頑張ってもずっと維持するのは無理なんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『ん? 外見の方は頑張れば改善出来るのか?』

ハンジ(エレン)『あくまで「部屋の片づけ」に比べたらの話だよ。そこは最悪、美容院に行けば誤魔化せるし』

リヴァイ(ミカサ)『…………部屋の方も清掃業者に頼めば良かったんじゃねえか?』

ハンジ(エレン)『!』

そこで初めてそれに気づいた顔をしたハンジ先生だった。

ハンジ(エレン)『その手があったあああ! 私の馬鹿あああああ!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、でもよく考えたら清掃業者に毎回掃除して貰っていたら、金、いくらあっても足りねえんじゃねえか? 教職の給料だけでどうにかなるのか?』

ハンジ(エレン)『ううう……そこは部屋デートの時だけ誤魔化せば』

リヴァイ(ミカサ)『いや、将来の事を考えたらいずれは誤魔化し効かなくなるだろ。ハンジ、悪い事はいわない。これから少しは自分で自分の事を出来るようになった方がいいぞ。特に家事はいずれ必要になる「スキル」だろ』

ハンジ(エレン)『やだよお。家事なんてしたくない(プイッ)』

リヴァイ(ミカサ)『本気で嫁に行けなくなるぞ? いいのかそれで』

ハンジ(エレン)『もー一生独身でもいいよ。何かもう、面倒臭くなったー(ゴロン)』

リヴァイ(ミカサ)『おい、勝手に人の太ももを枕にするな』

ハンジ(エレン)『リヴァイも既に2回、私の太もも枕にしているでしょうが』

リヴァイ(ミカサ)『…………1回じゃなかったか?』

ハンジ(エレン)『2回ですー。1回目は寝ぼけていたけどね。いいでしょ。たまには逆でも』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

この時のリヴァイ先生、ちょっと困ったそうだ。

何故って? 男だからだよ。察してくれ。そこは。

リヴァイ(ミカサ)『まあ、いいけどな』

もし下手に動かれたらそこに刺激が加わってしまう可能性があったから、そこはそのまま手で押さえつけてやったそうだ。

ハンジ(エレン)『ちょっと。何で押さえつけるのよ』

リヴァイ(ミカサ)『ごそごそ動かれると迷惑だからな。太もも使うなら動くんじゃねえ』

ハンジ(エレン)『えええそれ酷くない? 何で私の時だけ制限あるのよ』

リヴァイ(ミカサ)『うるさい。黙って寝とけ。寝たいんだろ?』

ハンジ(エレン)『こんな高圧的な枕だと落ち着いて寝れないよ。もー』

リヴァイ(ミカサ)『だったら普通にベッドで寝ろ。その方がいいだろ』

ハンジ(エレン)『ちぇーなんか不公平な感じだなあ』

と言いつつ、起き上ってリヴァイ先生の部屋のベッドに向かおうとするハンジ先生に、

リヴァイ(ミカサ)『おい、そこは俺のベッドだぞ。自分の部屋に戻れよ』

ハンジ(エレン)『今日くらい泊めてよ。ちょっとだけ傷心なんだから』

リヴァイ(ミカサ)『…………そんなにしんどいのか?』

ハンジ(エレン)『意外としんどかった。振られるのって結構きついんだね。知らなかったよ。今までの自分、酷かったんだなあって思った』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうか』

ハンジ(エレン)『うん。泣き喚くほどの悲しさではないんだけど、アンニュイな気持ちだね。ため息は出ちゃうよ』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、職場で顔も合わせるしな』

ハンジ(エレン)『うん。それもある。あーあ。家事万能で全部丸投げ出来る男を嫁にしちゃダメかなあ』

と、言い出したハンジ先生に対して観客が吹いた。

今、目の前にそういう「男」がいるのにって意味で。

リヴァイ(ミカサ)『…………専業主夫になってくれる男と結婚したいのか?』

ハンジ(エレン)『選択するとすればそれが1番良くないかな? まあ、さすがにそれは現実的には難しいだろうけど。せめて共働き? 家事は男性側が殆どやってくれて、私は買い物とかの車の運転とゴミ出しくらいで丁度いいかな』

リヴァイ(ミカサ)『完全にそれは「男」の役割だな』

ハンジ(エレン)『もう私、男に生まれたかったよーそうしたらこんなに面倒臭い思いしなくて済んだのにー』

リヴァイ(ミカサ)『………』

そして勝手にベッドの上でぐだまくハンジ先生にリヴァイ先生はまた困ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジは女だろ。そこは否定するなよ』

ハンジ(エレン)『やだよー。女捨てたいー。いっそ、オナベにでもなろうかな』

リヴァイ(ミカサ)『女に欲情した事あるのか? そういう「感情」がないんだったらやめておけ』

ハンジ(エレン)『うう……残念ながらそういう経験はありません。いや、同性に告白された事は多々ありますけどね』

リヴァイ(ミカサ)『あるのか』

ハンジ(エレン)『私ってほら、背高いし? 仕草は元々男っぽいし? ショートヘアにしたら、すぐ男に間違われるの。髪をのばしているのはそのせい』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……なるほどな』

ハンジ(エレン)『せめてもの「女」の部分だよ。髪の毛は。でも、もう切っちゃおうかなあ』

と、髪の毛を弄るハンジ先生にリヴァイ先生は「やめろ」って咄嗟に言ってしまったそうだ。

ハンジ(エレン)『なんで? 切っちゃダメなの? ショートヘア嫌いなの?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そうじゃねえけど』

ハンジ(エレン)『じゃあいいじゃん。リヴァイ、髪の毛切ってくれない? その方がいいよ。髪だって洗いやすいでしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

其の時、思い出したのはエルヴィン先生の「好み」だ。そこには「ショートヘア」が含まれていたから。

リヴァイ(ミカサ)『ショートにしたらエルヴィンに押し倒されるかもしれないぞ』

と、脅してみると、

ハンジ(エレン)『え? 何で?』

リヴァイ(ミカサ)『あいつ、ショートヘアの女がタイプなんだってさ。気が強いと尚いいらしいぞ』

ハンジ(エレン)『そうだったっけ? ん~でも、エルヴィンとはそういう関係でいるところは想像出来ないなあ』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか?』

ハンジ(エレン)『私にとっては「限りなく家族に近い存在」なんだよね。エルヴィンは。だから、エルヴィンもそこは同じだと思うけど』

リヴァイ(ミカサ)『………』

ハンジ(エレン)『だからエルヴィンもそこは同じだと思うから大丈夫だよ』

リヴァイ(ミカサ)『だといいけどな』

ハンジ(エレン)『そんな事より! 髪切りたい! リヴァイ切ってよ』

リヴァイ(ミカサ)『…………何か嫌だ』

ハンジ(エレン)『えー何その曖昧な断り方! もーだったらいい。今度のお休みに自分で美容院行って切ってくるよ』

リヴァイ(ミカサ)『ダメだ。切るな』

ハンジ(エレン)『へ? 何で』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

咄嗟に出た言葉にリヴァイ先生自身、驚いたそうだ。

自分でも「何故」そう言ったのか分からなくて。少し混乱したそうだ。

ハンジ(エレン)『え? 切った方が髪も洗いやすくない? 乾かすのも早いし。何が不都合なの?』

リヴァイ(ミカサ)『に……』

ハンジ(エレン)『に?』

リヴァイ(ミカサ)『似合っているんだから切るのは勿体ないだろ。そこまで伸ばした髪をわざわざ切る必要はない』

ハンジ(エレン)『いやいや、超ロングヘアならその言い分は分かるけどセミロングですよ? 私の髪型は。ハーフアップ出来る程度のものですから、切るのは別に勿体ないとか言わないレベルだよ? むしろ「どっちかにしろ」というか、中途半端な長さだし……』

リヴァイ(ミカサ)『いいから、切るな。切ったら飯、もう作ってやらん』

ハンジ(エレン)『はいすんませんでしたあああ! 諦めます!!!!』

と、あっさり手の平返しをするハンジ先生に観客はクスクス笑った。

ハンジ(エレン)『なんか良く分かんないけど、そこまで言うなら切らないでおくよ。今日はここに泊まってもいい?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。別に構わん』

ハンジ(エレン)『じゃあベッド借りるね。リヴァイはソファでいい?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ』

ハンジ(エレン)『んじゃお休み。また明日~』

と言って先にハンジ先生が寝る。

そしてリヴァイ先生は何故、咄嗟に髪を「切るな」と叫んだのか自分でも良く分からず、混乱しながら、眠りにつくのだった。











場転。ぷりきゅあシリーズの音楽が流れる。

ぷりきゅあシリーズの映画館デートに連れていかれてしまったリヴァイ先生はその帰り道、相手の女が物凄く機嫌がいいのに気づいて少々驚いていた。

マリア(アニ)『本当に一緒に観てくれるとは思わなかったwww内容分かってないのに良かったの?』

リヴァイ(ミカサ)『付き合えって言ったのはそっちだろ。正直、何が何やらだったが、マリアの機嫌がいいから良しとする』

マリア(アニ)『ありがと~嬉しい~わざと連れて来たのに、本当に付き合ってくれるとは思わなかったよ』

リヴァイ(ミカサ)『やっぱりわざとだったのか』

マリア(アニ)『うん。愛されているなら付き合ってくれるかな? って思ってね。試して御免ね』

リヴァイ(ミカサ)『まあ確かに、ある意味愛の試練ではあるな」

マリア(アニ)『うん。リヴァイ先生なら、私の事、もう少し話でも大丈夫かなー』

と、喫茶店に入って席に着いて、2人は向かい合って飯を食う事にした。

マリア(アニ)『あのね。リヴァイ先生』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ』

マリア(アニ)『私、大学卒業したら、許嫁と結婚させられる予定なんだ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

付き合っているのにいきなり重い話題を持ち出されてリヴァイ先生は閉口したそうだ。

ただ、まずは相手の話を聞いてやろうと思い、先を促す。

マリア(アニ)『自由で居られるのは「今」だけなんだよね。それに気づいてから、親に内緒で遊ぶようになっちゃった。私、テレビすら大学入るまではまともに見ない生活していたし。アニメも大学に入ってから初めて観たんだよ。夢みたいだと思った。こんなに楽しい世界があるなんて、私、今まで知らなくて。それからは親に内緒でアニメや漫画を買い漁ったよ。金だけはうち、腐るほどあるし。それからはコミケとかいう存在も知って、友達も出来て……エルヴィン先生とも出会って。私、そういう「青春」を今、初めて味わっているんだ』

リヴァイ(ミカサ)『………そうか』

マリア(アニ)『うん。いけない事だって頭では分かっているんだけど。私、今が楽しくてしょうがないよ。だから今のうちに出来れば「恋」もしてみたいって思ったの。勿論、両想いじゃなくていいし、失恋したって構わない。淡い感じの物でもいい。今しかやれない事、今のうちにやっておこうと思ったの』

リヴァイ(ミカサ)『だから俺を選んだのか?』

マリア(アニ)『そう。グダグダしている泥酔したリヴァイ先生を見て「この人何かイイ!」って不思議と思ってしまって。直感で選んだ。だってあれだけ「会いたい」を繰り返す人、初めて見たんだもの』

リヴァイ(ミカサ)『その時の記憶は全くないんだが、俺はそんなに「その女」に「会いたい」とほざいていたのか?』

マリア(アニ)『子供みたいにダダこねていたよ。先生、大人なのにwwww』

リヴァイ(ミカサ)『全く記憶がねえ……(ブルブル)』

所謂、潜在意識の話だからどうしようもねえよな。これ。

マリア(アニ)『情報がもう少しあればうちの実家の力を借りて探してあげてもいいんだけどね。かなり断片的過ぎて、ちょっと無理かなとも思った』

リヴァイ(ミカサ)『マリアの実家は何をされているんだ』

マリア(アニ)『ん~まあ、昔で言う「華族」の末裔みたいな物かな。天皇家とも遠い親戚になるらしいけど。その辺はよく分からない。家は財閥の家系の血筋とかも混ざっていて、所謂サラブレットの家系みたいだね』

リヴァイ(ミカサ)『ちょっと待て。そんなお嬢様がこんなところでのほほんと飯食ってていいのか?』

マリア(アニ)『放蕩娘って言ったでしょ? 周りにはあんまりその辺は話してなくて「ただの金持ちの娘」で通しているけど。大学もレベル落として入ったのはせめてもの反抗かな。本当なら海外の大学に行かされる筈だったのを「舌噛んで死んでやる」って脅して日本の大学に入れて貰った』

リヴァイ(ミカサ)『だったらせめて関東の大学とかじゃないのか。何で九州を選んだ』

マリア(アニ)『親と少し離れてみたかったんだよね。家なら全国各地に一杯あるし。リヴァイ先生を泊めた家も、ただの別荘地の1つだよ。一応、使用人を連れて生活する事を条件に何とか許して貰ったんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『俺とは住む世界が違い過ぎるな』

マリア(アニ)『だと思うよ。だから、「結婚」はもう同じレベルの人とじゃないと無理だっていうのは分かってる』

リヴァイ(ミカサ)『……………自由になりたいとは思わないのか?』

マリア(アニ)『なりたいけど、そこまですると親泣かせるし。私、別に親を泣かせたい訳じゃないし。ただほんのちょっと、遊びたいだけ。「今」だけ限定でいいんだ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか』

マリア(アニ)『御免ね。結婚する気もない癖に誘っちゃって。もし嫌なら、ここで切ってくれていいよ。丁度、一か月以上過ぎたし、そろそろお試し期間は終了してもいいだろうし』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

この時、リヴァイ先生は別れると言う選択肢は全く見えなかったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『いや、継続で構わない。俺で良ければ、とことん付き合ってやろうじゃないか。遊ぶぞ。お前がやりたいだけ、遊ばせてやる』

マリア(アニ)『いいの?』

リヴァイ(ミカサ)『俺もお嬢様と付き合うのは初めての経験だが、それはそっちも同じだろ? 教師と付き合うのもいい人生経験になる。……元ヤンだしな』

マリア(アニ)『ぶふ! 何それ。GTAみたいじゃない。実はグレートティーチャーとか?』

リヴァイ(ミカサ)『? 意味が分からんが、俺はダメ教師だと思う。まだまだ怒られてばかりいるからな』

マリア(アニ)『やだもーそれ、超理想的じゃない! リヴァイ先生を選んで良かった!』

リヴァイ(ミカサ)『? 意味が分からんが、俺はダメ教師だと思う。まだまだ怒られてばかりいるからな』

マリア(アニ)『やだもーそれ、超理想的じゃない! リヴァイ先生を選んで良かった!』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。だったらこの後、どうする? ゲーセンでも行くか?』

マリア(アニ)『いいの? そういうの、付き合ってくれるの?』

リヴァイ(ミカサ)『体感系のゲームなら得意だ。シューティングとか』

マリア(アニ)『なら勝負しよ! ダンスダンスエボリューションで勝負しよ!』

リヴァイ(ミカサ)『なんだそれ? そんなものがあるのか?』

マリア(アニ)『踊ってバトルするゲームだよ! 楽しいよ?』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。それに付き合ってやろう。会計済ませていくぞ』

そして喫茶店を出てリヴァイ先生は当時の彼女と遊びまくったそうだ。

当時のお付き合いは「恋」と呼ぶよりもむしろ、「生徒」と一緒に遊ぶような感覚に近いものだったらしい。

だからその「マリア」という女性とは結局、キスもセックスもしないまま、最後は別れてしまったそうだ。

でもこの時に初めてリヴァイ先生は「付き合う」という事の本当の意味を知ったような気がすると言っていた。

期間にして半年未満の短い物だったそうが、それでも今でも「いい思い出」なんだそうだ。

秋になって、9月頃、マリアの方が海外の短期留学に行く事を切欠にそこで関係をお仕舞にしたそうだ。

場転。空港にて。リヴァイ先生は見送りに行ったそうだ。

マリア(アニ)『やっぱり海外に行けって言われてごり押しされたから、親の顔立てる為に留学してくるね』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。気をつけて行って来い。風邪とかひくなよ』

マリア(アニ)『うん。ありがとう。リヴァイ先生。楽しかった。この半年くらい。リヴァイ先生との時間、本当に楽しかった』

リヴァイ(ミカサ)『日本に戻ってきたら、もう会わなくていいのか? 本当に』

マリア(アニ)『あーそろそろリヴァイ先生の件、親にバレそうだから、やめておくよ。もしバレたら修羅場になるし。先生に迷惑かけられないしね』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。それは残念だな』

マリア(アニ)『うん。先生こそ、良かったの? 結局1度も手出してないけど?』

リヴァイ(ミカサ)『んー……まあ、どっちでも良かったんだがな。何となく、そういう空気にならなかった』

マリア(アニ)『それって酷くない? まあ、実は私もそう思っていたんだけど。でも、初めての彼氏より、リヴァイ先生の方が断然良かったよ』

リヴァイ(ミカサ)『そう言って貰えると嬉しいもんだな』

マリア(アニ)『あ、そろそろ時間だ。じゃあ、行ってくるね先生! 結婚したら、手紙くらいは書くから! 向こうで許嫁に会ってくる!』

リヴァイ(ミカサ)『仲良くやるんだぞ』

マリア(アニ)『うん! じゃあね!』

そして爽やかに別れて、リヴァイ先生は微笑んだそうだ。

心の中にある充実感のような物を感じて、不思議と涙は出なかったそうで。

むしろ笑っている自分に変な心地を感じて、自分でも別れが辛いのかそうでないか、分からなかったそうだ。

笑っていたのなら、きっと「辛かった」んだとオレは思うけど、当時の先生はそこまで余裕はなくて。

でも、相手の未来を想って、自分が出来る限りの事をしてあげられた事は、後悔していないと言っていた。

で、この頃、ハンジ先生はというと、

場転。またリヴァイ先生の部屋でぐだまいていたそうだ。

ハンジ(エレン)『いきなり部屋に来ないで!! って言ったのに、なんで来るかなあ~? また汚部屋見られてドン引きされて別れ切り出されたー』

リヴァイ(ミカサ)『自業自得だろ。部屋片付けないお前が悪い』

ハンジ(エレン)『そうだけどさー! 最近、本当にリヴァイも忙しそうだったし、業者に頼んで掃除して貰っても、3日で元に戻っちゃうし! 部屋デートする時は前日に片付けて貰わないと、無理だし! 連絡入れないで部屋に来られても困るよ~!』

リヴァイ(ミカサ)『部屋を綺麗にするというより、お前の場合は動線の整理が出来てないからぐちゃぐちゃになるんだろ』

ハンジ(エレン)『動線? 何それ?』

リヴァイ(ミカサ)『部屋の模様替えでもしてみたらどうだ? 自分の机回りと本棚だけは整理出来るんだから、片付けその物が出来ない訳じゃない筈なんだが……』

ハンジ(エレン)『ぬー……模様替えかあ。いろいろ変な物が出てきそうで怖いなあ』

リヴァイ(ミカサ)『俺は定期的に家具の配置とかも変えてみたりするぞ。模様替えすると、自然と大掃除になるし一石二鳥だ。必要なら手伝うが?』

ハンジ(エレン)『ううう……じゃあ試しにやってみようかな。うん……』

と、後日模様替えをする事になったそうだが……

模様替えしてもやっぱり元の木阿弥で、結果的には汚部屋の癖は改善出来なかったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『………何でやっぱりこうなるんだ? 訳分からん』

リヴァイ先生が忙しくてちょっと放置するとすぐ元に戻るのでどうにもならなかったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『仕方がない。諦めるか。また定期的に掃除しに来てやるよ』

ハンジ(エレン)『え? でもあんた、彼女は? デートする時間なくなっちゃうよ?』

リヴァイ(ミカサ)『あーお嬢様とはもう別れたよ。今はフリーだ』

ハンジ(エレン)『ええええ何でえええええ?! 折角逆玉の輿のチャンスだったのに!』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、そういう約束だったんだよ。期間限定だったしな』

ハンジ(エレン)『でも、リヴァイ、何か楽しそうだったよ? 何か今までより、ずっと良い空気だった気がするんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、そうだろうな。俺も楽しかった』

ハンジ(エレン)『じゃあ何で別れるのよー! 馬鹿じゃないの? 勿体ない!』

リヴァイ(ミカサ)『仕方ねえだろ。そういう運命だったんだよ』

ハンジ(エレン)『ええええ………何それ! かっさらえば良かったじゃん! 本当に好きなら身分の差なんて関係ないでしょ!』

リヴァイ(ミカサ)『かもしれないが、それは相手が望んでいなかった。俺も望まなかった。それだけだ』

ハンジ(エレン)『またそれー? また流されてない? 大丈夫なの? 自分の気持ち、殺してない?』

リヴァイ(ミカサ)『いいや? 何のことか分からんな』

ハンジ(エレン)『ううう………リヴァイにご祝儀渡すチャンスがまた潰れたかー…』

リヴァイ(ミカサ)『それを言ったら俺もそうだな』

リヴァイ(ミカサ)『さてハンジ。俺もちょっと時間が出来たから、今日からハンジに「花嫁修業」をさせてやろう』

ハンジ(エレン)『はい?! いきなり何の話ですか?!』

リヴァイ(ミカサ)『掃除の方はもう諦めるしかないかもしれんが、問題は「料理」の方だ。男は「料理」の出来る女には8割堕ちる。まずはそこから始めてみるぞ。俺が教えてやるからやってみろ』

ハンジ(エレン)『えええええやだああああ! 何でそんな効率の悪い事しなくちゃいけないの? リヴァイが作ればいいじゃない!』

リヴァイ(ミカサ)『俺もそういつまでもハンジの世話が出来るとは限らない。どうするんだ? もし急病で倒れたり長期入院してしまった場合は。俺がいない時、お前、餓死しかねんぞ』

ハンジ(エレン)『うぐ! それを言われると耳が痛いけど。リヴァイ、怪我だけはしないでね? 柔道の指導とか体育の授業で怪我しないでね? 車の事故もダメだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『心配してくれるのは有難いが、俺もそう万能じゃない。それに料理を教えるのは俺にとっても楽しいからな。エプロン、俺のだと短いかもしれんが貸してやる。つけてみろ』

ハンジ(エレン)『ううう……』

ちょっとだけ短いエプロンを身に着ける。ここは本当にリヴァイ先生のサイズのエプロンをする。

リヴァイ(ミカサ)『まあ何とかなるだろ。まずは包丁を持ってみろ』

ハンジ(エレン)『こう? (逆手持ち)』

リヴァイ(ミカサ)『人を殺す持ち方するんじゃない。こうだ(ぎゅっ)』

「おおおお?!」という観客の声が沸いた。ここいいよな。俺もすげえ好きなシーンだ。

包丁を持ち返させて手を触れ合う。普通、ドキッとする筈場面なのに。

当時の2人は全くその気がない。本当、見ているとイライラするよな。いい意味で。

ハンジ(エレン)『おおおお……久しぶりに包丁持った』

リヴァイ(ミカサ)『逆手持ちは固い野菜とか切る時には使うが、基本はこっちだ。まずはそうだな……りんごの皮でも剥いてみろ。りんごくらいなら俺の部屋にあった筈だ。持ってくる』

そして一度舞台をはけてりんごを持ってくる。

リヴァイ(ミカサ)『まずは効き手と逆の手、ハンジの場合は左でいいよな? で、持ってくれ』

ハンジ(エレン)『うん』

リヴァイ(ミカサ)『そしたら包丁をこう、持ち替えて……(後ろから指導している)』

「おおおお?!」という観客の声が再び沸いた。身体を相当密着させるシーンなんだ。ここは。

リヴァイ(ミカサ)『親指で皮をスライドさせる感じだな。左手でしっかり持てよ。落とさないように』

ハンジ(エレン)『うん』

リヴァイ(ミカサ)『包丁は動かすなよ。固定しろ。動かすのはりんごの方だけだ。包丁は添えるだけ。それを意識しろ』

ハンジ(エレン)『うう? あー?! (ザクッ!)』

リヴァイ(ミカサ)『馬鹿! 包丁の方は動かすなって言っただろ!』

ハンジ(エレン)『ううう……こんな繊細な動き、イライラするよお……親指切った…』

リヴァイ(ミカサ)『すまん。教え方が悪かったのか? うーん……』

ハンジ(エレン)『絆創膏、どこにやったかな? 救急箱、どこだっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『水で洗え。先に』

ハンジ(エレン)『あ、そっか。あーでも、いいや、この程度なら。舐めておけば(ペロ)』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

なんかエロい。と、思ったのは多分、オレだけではない筈だ。

ハンジ(エレン)『ん? 何?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、何でもない。絆創膏、俺の部屋から持ってくる。待ってろ』

と、言って再び舞台からはけて舞い戻る。今度はソファに座って手の手当てだ。

リヴァイ(ミカサ)『りんごの皮むきはまだ早いか。どの段階から教えて行けばいいんだろうな?』

ハンジ(エレン)『もー皮なんて剥けなくても別にいいよ。りんご食べたい時は、りんごジュースで済ませちゃえばいいじゃん』

リヴァイ(ミカサ)『ミキサーにかけるっていうのか? 皮ごと?』

ハンジ(エレン)『それくらいなら私にも出来るよ? 種はエルヴィンに取って貰ってたけど』

リヴァイ(ミカサ)『いや、結局それは人に頼んでいるじゃねえか。ダメだろ』

ハンジ(エレン)『ええー……もうリヴァイが全部やってよー。私、こういう地味な作業、苦手なんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『嘘つけ。実験とかの方が余程繊細な作業だろ。シャーレとか、顕微鏡とか触るのは繊細と言わないのか?』

ハンジ(エレン)『あれは興味のある事だから出来るんであって、料理はその、自分のお腹にたまればそれでいいからさ』

リヴァイ(ミカサ)『まずはその「意識」の方を改革させる方が先かもしれんな』

ハンジ(エレン)『意識?』

リヴァイ(ミカサ)『料理を「実験」と同じようには考えられないのか?』

ハンジ(エレン)『というと?』

リヴァイ(ミカサ)『なんていうか……こう、いろいろ試してみるとか』

ハンジ(エレン)『それってルールに縛られなくてもいいってこと? 適当に混ぜてもいいの?』

リヴァイ(ミカサ)『興味のあるやり方の方がいいだろ。とっかかりがある方が入りやすい筈だ』

ハンジ(エレン)『分かった! だったらやってみる! チョコレートを溶かしてジャムと混ぜてみるとか!』

リヴァイ(ミカサ)『甘いのと甘いのを掛け算するのか。胸やけしそうだな』

ハンジ(エレン)『あとは御酢と醤油を混ぜたらどんな味するかな? じゃがいもって、砂糖かけても美味しいのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、分量にもよるが……』

ハンジ(エレン)『分かった! そういうノリなら得意分野だよ! 新しい料理を開発してみる! リヴァイ、味見してね!』




マリーナ『えー……既に皆さんはお気づきかと思いますが』

マリーナ『ハンジ先生はここから「実験」のノリでいろんな組み合わせを試しては、没料理を繰り返し、その度にリヴァイ先生は味見して、悶絶する羽目になります』

マリーナ『そして遂に、その「究極の禍々しい物体」が出来上がってしまい、それを食した直後、リヴァイ先生は救急車で運ばれると言う珍事件を起こしました』

会場が爆笑だった。笑うしかないよな。これ。

マリーナ『ハンジ先生は「やっぱりもうやめた方がいいんじゃない? ギャンブルクッキングになるだけだよ」と思ったそうですが、リヴァイ先生は諦めず、それでも懲りずにハンジ先生に料理をさせようとして、そしてようやく10回に1回くらいの割合で何とか食べられる物を作れるようになったそうです』

再び爆笑だった。ハンジ先生が「てへペロ☆」して笑っている。

マリーナ『そしてナンダカンダありながら、いよいよこの年の12月、2人は遂は競技ダンスの本番を迎えます』

マリーナ『2人は友人となってからの初めての、2人きりの旅行に出かけます』

マリーナ『その珍道中とも言える旅の中で、リヴァイ先生の心の中に僅かな「変化」が訪れるのですが……』

マリーナ『ハンジ先生の「ある一言」のせいで、それが全て台無しになってしまうのでした』

区切りがいいのでここで一旦、区切ります。ではまたノシ











リヴァイ先生の部屋でリヴァイ先生自身が旅行の荷物を整理していた。

リヴァイ(ミカサ)『個人的な旅行をするのは久々だな。修学旅行や大会の引率等では出かけるが、こうやって仕事を離れた旅行はいつぶりか思い出せない』

ハンジ(エレン)『あんた無趣味だもんねー。たまには旅行とか行かないの? 彼女と遠方に出かけたりしなかったの?』

リヴァイ(ミカサ)『ドライブでちょっと遠出する程度はあっても、やっぱり学校の事を考えるとな。もし何か生徒に緊急事態が起きたらと思うと、なかなか踏ん切りがつかなかった。生徒が万引きや喧嘩をしたりしたら担任は呼び出されるだろ。その度に俺も走り回っていたし』

ハンジ(エレン)『そういう意味じゃここ最近、講談高校も以前に比べたら生徒達が大人しくなったよね。うちらの高校生の頃って、窓ガラスとか普通に割れていたしね』

リヴァイ(ミカサ)『俺もだ。バイク乗り回した奴らがグランドで暴れたりしていた事もあったな』

ハンジ(エレン)『なんていうか、大分「のんびり」とした空気になって来たよね。殺伐とした空気が薄れてきたというか…』

リヴァイ(ミカサ)『だからこそ、こうやって旅行に行けるんだろ? まあ、何かあった場合はエルヴィンに任せる事にはなってはいるが』

といろいろ言いながら旅行鞄に衣服を詰め込んでいく。

ハンジ(エレン)『あーちょい待ち。物、入れ過ぎ。重さ考えよう。荷物は出来るだけ減らした方がいいよ』

リヴァイ(ミカサ)『何? 何が余計だと言うんだ?』

ハンジ(エレン)『全体的に膨れ過ぎ。着替えの下着は10枚も要らないから。3泊4日の日程なんだし』

リヴァイ(ミカサ)『だが大会の時に汗を大量に掻くだろう? 向こうについてから直前に練習はしないのか?』

ハンジ(エレン)『いや、するけどさ。3泊4日なら5枚でいいよ。ホテルの中でも洗濯は出来るし、最悪、現地で下着は追加して買えばいいから』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか。いやしかし、俺は着替える頻度が多いからな』

ハンジ(エレン)『そこは多少我慢しよう。あと出来れば荷物はリュックより、ゴロゴロタイプの荷物を引っ張れる鞄の方が移動は楽なんだけどな』

リヴァイ(ミカサ)『体力の事なら心配しなくてもいい。俺は力があるからな』

ハンジ(エレン)『いや、あんた関東の旅行を舐めすぎ。関東、行った事なかったっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『………そう言えばなかった気がする』

ハンジ(エレン)『だったら、これを機会に鞄を買おう。ゴロゴロタイプ。もしくはエルヴィンのを借りるかだね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、エルヴィンに頼るのは忍びない。貸してはくれるだろうが、いい機会だから今回は自分用の鞄を新調しよう』

という訳で場転。翌日、鞄屋に足を運んで2人で鞄を買う事にしたそうだ。

沢山の「ゴロゴロ」タイプの鞄を見て考え込むハンジ先生だった。

ハンジ(エレン)『海外に行く訳じゃないからごつい奴でなくてもいいよね』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。いつか行く機会はあるかもしれないが、今回はそこまで想定しなくていい』

ハンジ(エレン)『だったら……この360度回転がきく鞄がいいと思う。見て。こうすると回せるよ』

と、その場でくるくる回して見せる。

実際、そういうタイプの「ゴロゴロ」タイプの鞄は売られている。

コミケなどに参加するお姉様方が使う必須アイテムなんだそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『ほう。回せるのか……(くるくる)』

ハンジ(エレン)『うん。これあると便利なんだよね。あと、手で持つところがこう、すぐ伸ばせる奴だと尚いい』

リヴァイ(ミカサ)『だったらもうこれで良くないか? 値段も適当だろ?』

ハンジ(エレン)『色は何色でもいいの~黒と青と緑があるよ?』

リヴァイ(ミカサ)『どれでもいい』

ハンジ(エレン)『じゃあ緑にしておこうか。私のと御揃いで』

リヴァイ(ミカサ)『ん? いいのか?』

ハンジ(エレン)『うん。大きさはリヴァイの方が一回り大きいから区別出来るよ』

リヴァイ(ミカサ)『じゃあそれで』

という訳で、似たような鞄を購入して改めて旅行の準備に入るリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『……こっちの鞄の方が荷物入るな。やっぱり10枚下着、入れたらダメだろうか?』

ハンジ(エレン)『ううーん。あんまりお勧めはしないけどね。どうしてもっていうなら、しょうがないけど』

リヴァイ(ミカサ)『着替えが足りないと不安になる。そこは一応入れておこう』

ハンジ(エレン)『あと財布は出来れば2つに分けようか。万が一、スリにあった場合、それに全部入れていたら、泣くしかないし』

リヴァイ(ミカサ)『なんだって? そんなに危険な場所なのか? 関東は』

ハンジ(エレン)『電車の中の密集率は九州のそれの比じゃないからね……リヴァイの背丈だと周りに潰されて埋もれる可能性もあるね』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。心しておく』

ハンジ(エレン)『まあ、普段からリヴァイは警戒心が強い方だから余程の事がない限りは大丈夫だと思うけど』

リヴァイ(ミカサ)『人が多いんだよな。それだけがネックだな』

ハンジ(エレン)『まあねー。でもそこはほら、旅行のテンションで乗り切ろう!』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。ホテルの方はもう手配済みなのか?』

ハンジ(エレン)『うん。言われていた通りにツインで取っておいたよ。……イビキ煩いかもしれないけど、其の時はごめんね☆』

リヴァイ(ミカサ)『耳栓も一応持っていくか……』

ハンジ(エレン)『そうしてくれると助かります』

リヴァイ(ミカサ)『普段うちに泊まる時も、たまにイビキはかいているけどな』

ハンジ(エレン)『あ、そうだったの? なんだーその時は起こしてくれて良かったのに』

リヴァイ(ミカサ)『いや、なんか可哀想で、つい』

ハンジ(エレン)『じゃあその辺は心配いらなかったのね。ありがと』

リヴァイ(ミカサ)『防寒具はどの程度必要だ? マフラーとかも要るだろうか?』

ハンジ(エレン)『そうだね。向こうはこっちより寒いかも。ホッカイロも持っていく方がいいかもね』

リヴァイ(ミカサ)『了解した(いそいそ)』

そして大体の準備を一通りそろえて鞄を閉める。

リヴァイ(ミカサ)『12月22日の夜に出発して、大会は24日と25日の2日間にかけてだったな。帰り着くのが25日の夜になるのか』

ハンジ(エレン)『うん。本当はもうちょっとゆっくりしたかったけど、まあその辺は仕方ないよね。冬休みの学校の当直の件もあるし』

リヴァイ(ミカサ)『十分だろ。むしろ3泊4日も自由に出かけられる事の方が奇跡だ』

その辺の事は、実はエルヴィン先生とピクシス先生が裏で手を回して2人に休暇を取れるように調整してくれたそうだ。

この頃から全力で応援していたんだけど、当の本人達は「有難いなあ」という程度の認識だったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『衣装の方はレンタルしたが、当日のメイクはどうする? ハンジは普段化粧をしないが、化粧道具はちゃんと持っているのか?』

ハンジ(エレン)『あ、うん。大丈夫ー持ってるよ。ほら』

と、一通り化粧道具を実際に出してくれたのでリヴァイ先生は安心したそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『なんだ。ちゃんと一通り道具は持っていたのか』

ハンジ(エレン)『うん。葬式とか結婚式に呼ばれた時くらいはちゃんとしていくからね』

リヴァイ(ミカサ)『……………1回、化粧をしたハンジを見てみたいんだが』

ハンジ(エレン)『?! 突然何言い出すの?! ダメだよ!?』

リヴァイ(ミカサ)『何故だ?』

ハンジ(エレン)『何故って………その、あの………恥ずかしいから』

リヴァイ(ミカサ)『珍しい反応だな。普通は「ノーメイク」を見られる方が恥ずかしいもんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『ううう~………』

目が泳いでいるハンジ先生だったけど、リヴァイ先生は構わず、

リヴァイ(ミカサ)『せめて口紅だけでも』

と、言って口紅を1本勝手に握ってにゅっと絞り出したそうだ。

ハンジ(エレン)『やーめーてー! こら! 人の化粧道具を勝手に触らないで!』

リヴァイ(ミカサ)『ククク………そう言われると逆にやってみたくなるな』

ハンジ(エレン)『もーこの意地悪! メイクは本番まで見せたくないよお!』

リヴァイ(ミカサ)『そういうもんか?』

ハンジ(エレン)『そういうもんです! ほら、口紅返して!』

リヴァイ(ミカサ)『……………(自分の唇に近づける)』

ハンジ(エレン)『ちょっとあんた! 何しようとしてんの?! 女装する気?!』

と、油断した瞬間をついて、

リヴァイ(ミカサ)(ひょい)

ハンジ(エレン)『!』

リヴァイ先生はこの時、本当にちょっとした「悪戯心」でハンジ先生を捕まえて口紅を勝手に塗ってやったそうだけど。

ハンジ(エレン)『ん…………』

口紅を突きつけられたら口を閉じるしかない。

勿論、綺麗に塗れた訳じゃない。大きくはみ出して、下手くそなメイクをした訳だけど。

其の時のハンジ先生の反応は、予想以上に「女らしかった」ものだから、うっかり、ドキッとさせられたそうだ。

だからやらかした後に酷い罪悪感のような物が沸いて来て、すぐに謝ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『すまん。はみ出した』

そこじゃねえだろ。っていうツッコミ入れたい謝り方だったけど。

ハンジ(エレン)『もー……リヴァイはすぐそうやって悪戯仕掛けるよねー』

と言いつつ、唇を尖らせるハンジ先生に、口紅を返してティッシュの箱を渡す。

口紅を拭いてすぐ落としている様子を見ていたら、急に居た堪れない気持ちになって目を伏せてしまったそうだ。

ハンジ(エレン)『ん? どうしたの?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、何でもない。この口紅の色、いい色だな』

ハンジ(エレン)『ん~もう大分前に買った口紅だけどね。大学入学した時に買った物だから、9年くらい前のかな?』

リヴァイ(ミカサ)『物持ちいいな。いや、辛抱して使っているのは分かるが、それにしても、減りが少ないな』

ハンジ(エレン)『たまにしか使わないからね。意外とそんなもんですよ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうか………』

ハンジ(エレン)『うん。まああんたの過去の彼女達とは全然違うかもしれないけど? 綺麗な子、ばっかりだったみたいだし?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。化粧の減りが早くて困るとか言っていたような気がする』

ハンジ(エレン)『女を維持するのは大変だからね~お金もかかるし。時間もかかるし。そういう時間、殆ど捨てて正解だった。おかげで仕事がサクサク進む』

リヴァイ(ミカサ)『でも今度の大会では「美」を競い合うんだろ? そういう部分を武器にしないと勝てないんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『あーそう言われればそうか。勝つ気でいくなら、気持ち切り替えないといけないよね』

と、ちょっと思い直したハンジ先生はこの時、言ったそうだ。

ハンジ(エレン)『ん~そういう事なら、しょうがないか。分かった。リヴァイの前で化粧姿を見せるの、初めてだけどフライングで見せてあげる。ちょっと時間かかるけど。待っていて貰える?』

と、急に気が変わったハンジ先生にリヴァイ先生は驚いたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『え? いいのか? 半分冗談だったんだが』

ハンジ(エレン)『うん。いいよ。私、今度の大会本気で優勝を狙っているからね。きっとリヴァイとなら、イケると思ってる』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

ハンジ(エレン)『お風呂、入ろうか。どうせやるなら髪も完璧にして見せてあげる。私の化粧に何か変なところがあったら言ってね。リヴァイから見て、修正したい部分があったら遠慮なく言って。その辺の目はあんたの方が肥えている筈だから』

リヴァイ(ミカサ)『あ、ああ……分かった』

そして暗転。化粧後の眼鏡のハンジ先生に、会場は少しだけざわめいた。

何故かって? ええっと。とりあえず、ド派手だったからだ。

所謂、「舞台用」のメイクで濃いメイクを乗せたから、リヴァイ先生もズコーッと倒れたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ……それ、まさか、普段もそれなのか?』

ハンジ(エレン)『いやいや! これはダンス用だから。普段はこんなんじゃないよ? ビデオとかで研究してやってみたよ。踊る時はこれくらい派手にしてもいいみたいだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか? いや、にしても何か「変」だぞ。やり過ぎなんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『そう? でもほら、参考資料、見て? こんな感じだよ?』

と、雑誌を手渡す。

リヴァイ(ミカサ)『ふむ。確かに派手ではあるな』

ハンジ(エレン)『でしょでしょ? だから問題ない筈だよ?』

リヴァイ(ミカサ)『だが、こちらのメイクは「派手」ではあっても「変」ではない。ハンジのは、派手な上に変だな。修正した方がいいと思う』

ハンジ(エレン)『そう? じゃあリヴァイならどう変える?』

リヴァイ(ミカサ)『俺だったら……』

ここからはミカサがオレのメイクを実際に弄ってくれる。

これ、もし立場が逆だったらとてもじゃないが、演じるのが無理だったと思う。

オレ、化粧なんて人にしてやれねえもん。男で触れるのってリヴァイ先生くらいじゃねえか?

リヴァイ(ミカサ)『チークの位置がズレ過ぎだな。もう少し、こう……』

と言いながら微妙に修正を入れていく。

そして本当に、微妙に変化を与えてやると、さっきとは別人のように変わった。

派手でありながら「美しい」メイクへ変貌したのだ。

やはりこの辺は「女」じゃないとうまく出来ねえよな。さすがミカサだぜ。

観客も劇的ビフォーアフターに「おおおお」と驚いていた。

リヴァイ(ミカサ)『………こんなもんか? これなら派手であっても「変」ではないと思うが』

ハンジ(エレン)『おおお! 何か違う! やっぱりリヴァイに任せて正解だった!』

リヴァイ(ミカサ)『本番もこのメイクで行くか? だったら写真撮っておくぞ』

ハンジ(エレン)『うんお願い! 写真撮らないと忘れそうだしね!』

リヴァイ(ミカサ)『分かった』

そして携帯で写真を撮るSE。その写真を見つめながら、リヴァイ先生は何か妙な心地になったそうだ。

当たり前だよな。ここでのハンジ先生、限りなく女子大生時代のハンジ先生に戻っているんだから。

でも、この時は「ちょっと似ている」程度しか思わなくてまさか「同一人物」だとは思わなかったそうだ。

加えて当時は「年月」も経っていたのが痛かった。女子大生の時と比べて7年も月日が経ってしまえば、流石に印象が変わる事もあるだろう。勿論、全く変わらない人もいるだろうが、ハンジ先生の場合はその時間のせいで外見の印象が大分「男」寄りになってしまっていたそうだ。

そして何より、この時のハンジ先生は「黒縁眼鏡」をかけていた。

メイクする時は眼鏡を外すが、目は閉じる。目を開けた時は眼鏡をかけた上でメイクの状態を見る訳だから、印象が違って当然だった。

リヴァイ(ミカサ)『………折角化粧したんだ。ちょっと外に出てみないか?』

ハンジ(エレン)『え?! 何で?! 嫌だよ!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、エルヴィンとかに見せなくていいのか?』

ハンジ(エレン)『それだったらこっちに来て貰った方がいいよ。外はちょっと……』

リヴァイ(ミカサ)『そうか? じゃあ呼んでみるか』

と、エルヴィン先生も登場するのだった。

エルヴィン(アーロン)『やあ、化粧のせてみたんだって? どれどれ……おお! いい感じじゃないか。そのメイクで踊るのかな?』

ハンジ(エレン)『その予定だよ。似合う?』

エルヴィン(アーロン)『ああ。似合っているよ。どうせならレンタルの衣装とも合わせてみたら?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ、それもそうか。衣装との色合いも考えないといけなかったのを忘れていた。すまん』

という訳で、ハンジ先生は一度舞台を引っ込んで、あの緑色のダンス衣装を着て再登場だ。

この衣装は実際にハンジ先生にあの衣装を借りた。オレと体型が似ているから出来た技だな。

女が男物を着るのと、男が女物を着るのでいえば、後者の方が楽だ。

尻がでかいから余裕がある。胸の詰め物は殆ど要らないから、余計に楽だった。

今回はここまで。キャッツアイばりに「気づかねえのかよ!」
というツッコミ入れたい気持ちですが、そこは置いて下さい。すみません。

では次回またノシ

その姿を見て自然と口元が緩む自分に気づいてリヴァイ先生は慌てて口元を引き締めたそうだ。

男って生き物は単純だよな。女が綺麗にしていると、それだけで機嫌が良くなる生き物だ。

思っていた以上の上出来にエルヴィン先生も当時、拍手したそうだ。

エルヴィン(アーロン)『うん。似合っていると思う。深緑色がとても良く似合っているよ』

ハンジ(エレン)『良かった! じゃあこれで打ち合わせは終了だね。化粧落としてくる』

リヴァイ(ミカサ)『待て。まだ化粧は落とさなくても…』

ハンジ(エレン)『何で? もうやる事やったじゃない』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、そうなんだが………』

ハンジ(エレン)『ん? 何? あんたこういうの好きな訳?』

と、言われた瞬間、リヴァイ先生、うっかり固まってしまったそうで、エルヴィン先生は爆笑したそうだ。

エルヴィン(アーロン)『ククク…………リヴァイ、今頃ハンジの美しさに気づいたの?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そういう訳じゃない。その、なんだ。化粧したんだから、たまにはそういう格好で外に出てもいいんじゃないかって思っただけだ』

ハンジ(エレン)『出かける理由もないのに? 嫌だよ。化粧落としてきまーす』

と言ってハンジ先生は当時、リヴァイ先生の提案をぶっちぎったそうだ。

リヴァイ先生はちょっとだけ残念に思いながら、頭を掻いた。

その様子につい、エルヴィン先生は笑いがこみあげてきたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『何で笑う。エルヴィン』

エルヴィン(アーロン)『ん? ついつい。リヴァイの顔がおかしくて』

リヴァイ(ミカサ)『そんなにおかしい顔をしているか?』

エルヴィン(アーロン)『うん。リヴァイ、自分で気づいてないの?』

リヴァイ(ミカサ)『何の事だ?』

エルヴィン(アーロン)『いや、まあ、何でもない。げふんげふん』

リヴァイ(ミカサ)『わざとらしい咳払いはやめろ。ハンジがあんな風に自分の中の「女」の部分を拒否するのは何か理由があるんだろうか?』

エルヴィン(アーロン)『んー………』

当時、ハンジ先生の裏事情を知っていたエルヴィン先生は曖昧に濁したそうだ。

エルヴィン(アーロン)『ま、ハンジは「仕事」に生きる事を選んだだけだよ。其の為に「女」をある程度捨てた。必要最低限の「女」でいる事を選んだだけだよ』

リヴァイ(ミカサ)『でもあいつ、決してモテない訳じゃないんだぞ? すっぴんでもコナかけられるって事はそういう事なんだろうし……』

エルヴィン(アーロン)『ハンジは中身も魅力的だからね。男のツボを良く心得ているから』

リヴァイ(ミカサ)『………それは悪女って意味でか?』

エルヴィン(アーロン)『いや、そこは多分、小悪魔くらいかな。そこまでどぎつい物じゃないんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『ふむ………多少、こずるい女は嫌いじゃないんだがな』

エルヴィン(アーロン)『リヴァイ、今、自分がどんな顔しているのか本当に気づいていないのかい?』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

エルヴィン(アーロン)『いや、まあいいや。そこは横に置いておく。旅先でトラブルに巻き込まれないように気をつけてね。特にリヴァイは初めての遠方旅行だろ。何かあったらすぐ私に知らせてくれ。もし、飛行機が飛ばないとか、不測の事態に陥ってもこっちは対応出来るようにしておくから』

リヴァイ(ミカサ)『ああそうか。天候次第ではそういう場合もあるか。その時は、別の便を使うしかないよな』

エルヴィン(アーロン)『夜行バスで帰る手段もあるにはあるが、体力的にはお勧めしない。ここからだと片道14時間くらいかかるからね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それでもちゃんとどうにかして帰ってくる。あくまでプライベートの用事なんだしな』

エルヴィン(アーロン)『…………延長したっていいんだよ? 授業がある訳じゃないんだから』

リヴァイ(ミカサ)『そうかもしれんが、他の先生達に面目が立たないだろうが。大丈夫だ。大会が終わり次第、寄り道しないでさっさと帰ってくるよ』

エルヴィン(アーロン)『むしろ寄り道して欲しいんだけどな……』

リヴァイ(ミカサ)『何か言ったか? エルヴィン』

エルヴィン(アーロン)『いや別に。あ、ハンジが元に戻ったね』

という訳で、元のメイクに戻して貰って舞台に復帰するハンジ先生だった。

ハンジ(エレン)『ふーすっきり! 顔が軽いね! やっぱりすっぴんサイコー!』

エルヴィン(アーロン)『うん。すっぴんの方が美人だね』

ハンジ(エレン)『あらそう? お上手だね! エルヴィン!』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

ハンジ(エレン)『他に何か準備しておく事ってあったかな? ……あ、生理用品、忘れてた! やばい! 買っておかないと!』

リヴァイ(ミカサ)(ぶふー!)

さすがにあけすけに言い過ぎるハンジ先生にうっかりリヴァイ先生、吹いたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『お、お前なあ……』

このシーン、正直ちょっと恥ずかしい。男のオレが「生理用品」なんて言葉を言うんだからな。

ハンジ(エレン)『予定通りにいけば大会日程と被るかもしれないんだよね。いや、ズレてくれれば幸いなんだけど。万が一の為にも用意しておかないと』

リヴァイ(ミカサ)『は? それ、本当か? コンディション大丈夫なのか?』

ハンジ(エレン)『最悪の時は鎮痛剤ぶち込みます! 問題ないよ☆』

リヴァイ(ミカサ)『いやいや、待て待て。無茶するな。体調が悪い場合は棄権するぞ。何も今年、どうしても優勝する必要はないだろ。別の大会だってあるんだろ? そっちで資格を取れば……』

ハンジ(エレン)『それじゃダメなのよおおおお!』

リヴァイ(ミカサ)『は? 何で』

ハンジ(エレン)『えええっと………んーと、その…』

エルヴィン(アーロン)『ハンジは一発合格が好きなんだよね。浪人経験ないし、試験や資格取得で今まで1度も挫折した経験がないんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『それは何気に凄いな』

ハンジ(エレン)『そ、そうなのよ! ほら、一発合格しないと気持ち悪いでしょ? だから頑張るよ!』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ……気の強い女だな。ハンジは。まあ、そこまで言うなら俺もつきやってやるが。本当にまずい状態になったらちゃんと言え。お前に必要以上に無理させてまで、こっちは資格を取りたい訳じゃないんだからな』

ハンジ(エレン)『う、うん……そこは大丈夫だよ☆(誤魔化し笑み)』

エルヴィン(アーロン)『生理中でも大会に出ないといけない場合もあるよ。女の人はそういう時が大変だよね』

ハンジ(エレン)『そうだよねー。女ってコレがあるから面倒臭いんだよねー。薬局行ってくるー』

リヴァイ(ミカサ)『待て。だったらついでに俺も買いたい物が有るから一緒に行く』

ハンジ(エレン)『え? 何買うの?』

リヴァイ(ミカサ)『愛用のポリビタンCだ。体力気力回復には必需品だろ。在庫切らしているからついでに買ってくる』

ハンジ(エレン)『だったら私が一緒に買ってくるよ。大丈夫。1人で行ってくるから』

リヴァイ(ミカサ)『そうか?』

ハンジ(エレン)『うん。いつものアレでいいんだよね? 1ダースでイイ?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。それで頼む』

ハンジ(エレン)『じゃあ行ってくるねー』

エルヴィン(アーロン)『いってらっしゃい』

そして舞台をはける。ハンジ先生を見送るリヴァイ先生に、エルヴィン先生が失笑する。

エルヴィン(アーロン)『リヴァイ、空気読もうよ』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

エルヴィン(アーロン)『生理用品を買いに行くって言う女性に「ついていく」って、普通、言わないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『え? あ………それもそうか。すまん』

エルヴィン(アーロン)『うん。ハンジだからアレで済んだけど。普通の女性ならキレられると思うよ? 自重しようね?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ちょっと待て。冷静に考えたら男が2人もいる前で「生理用品買ってくる」とほざくハンジの方がアレなんじゃないか?』

エルヴィン(アーロン)『それはそうだけど。いや、でも……ぶふっ!』

リヴァイ(ミカサ)『笑い過ぎだ。エルヴィン』

エルヴィン(アーロン)『御免御免。ついね。いや、相変わらず仲がいいなあと思ってね』

リヴァイ(ミカサ)『ナンダカンダで付き合いが長くなってきたからな。もう3年目か……』

エルヴィン(アーロン)『そうだね。まあ、君の場合は12年くらい付き合いのあった彼女とかもいた訳だけど』

リヴァイ(ミカサ)『今、何故そいつの話題を出す?』

エルヴィン(アーロン)『いや、今どうしているのかなって、思ってね。その相手の彼女が』

リヴァイ(ミカサ)『あー先に結婚した。普通に「結婚したからたんまりご祝儀よこせ」って連絡きたからな』

エルヴィン(アーロン)『それはそれで凄いね! 結婚式出てきたの?』

リヴァイ(ミカサ)『それは日程が合わなくて辞退したけど、ご祝儀はちゃんと送ってやったよ。「たんまり」がどの程度か分からないが、20万くらいで良かったんだろうか』

エルヴィン(アーロン)『それ、親戚の方の額だからね。嫌味だと思われるよ? 流石に』

リヴァイ(ミカサ)『そうか? 結構喜ばれたぞ。「あともう10万くらい欲しかったけど、まあ妥協してやる」とも言われた。俺があいつにしてしまった事に対する慰謝料みたいなもんだと思えば安い額だろ』

エルヴィン(アーロン)『凄い関係だね。いやまあ、君達がそれでいいならいいけど』

リヴァイ(ミカサ)『慰謝料については別れる時にもこっちから出そうとも思ったんだがな。あいつは一銭も受け取らなかった。「一方的に傷ついた訳じゃない。私も幸せだった時期はある。悪いのはお互い様だから」と言ってくれた。今思うと、あいつ、本当にいい女だった』

エルヴィン(アーロン)『離れてから分かる事ってあるよね。うん。分かるよその気持ちは』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。俺は本当に馬鹿野郎としか自分でも思えない』

エルヴィン(アーロン)『もういいじゃない。過去は反省するだけでいいよ。それより先の事を考えないと』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。そういう意味では周りはどんどん結婚しているようだ。俺の大学時代の男の知人も続々結婚の報告が届いている。高校時代の女のダチも、もう殆ど結婚してしまった。やはり20代の後半辺りが1番、そういう「ラッシュ」時期なんだろうな』

エルヴィン(アーロン)『何だか寂しそうだね。リヴァイ』

リヴァイ(ミカサ)『そりゃあな。あのお嬢様とも別れたし、今、一番近くにいる異性はハンジくらいなもんか』

その発言の直後、観客がまた失笑した。

もうな、ツッコミどころ満載過ぎて腹痛いよな。コレ。

エルヴィン(アーロン)『ハンジとつきあってみたらいいじゃないか』

リヴァイ(ミカサ)『いや、無理だろ。あいつにその気はない。俺の方もそうだが』

エルヴィン(アーロン)『いやいや、本当にそうなの? ハンジはともかく、リヴァイの方が』

リヴァイ(ミカサ)『そもそもハンジには俺の悪癖が全部バレているんだぞ。見苦しいところも多々見せた。あいつから見たら、俺は絶対、そういう意味では「対象外」にしかならんだろ』

エルヴィン(アーロン)『質問の答えになってないよ。リヴァイ、今はハンジから見た意見なんて聞いてない。君自身の「気持ち」はどうなの? って話なんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『今、もしハンジに手出したら、また「最低馬鹿野郎」呼ばわりされるだけだろうな』

エルヴィン(アーロン)『そうやってまたすぐ誤魔化す……やれやれ。君も相当頑固な男だね』

リヴァイ(ミカサ)『俺の事より、エルヴィン自身はどうなんだ。お前、ハンジの事、かなり気に入っているんじゃないのか?』

エルヴィン(アーロン)『そりゃ合鍵分け与えるくらいだからね。好きだよ。彼女の事は』

観客が「おお?」とざわめいた。まさかの三角関係?! みたいな。

真相を知っているオレとしては、ここは複雑にしか見えないけど。

リヴァイ(ミカサ)『だったらエルヴィンの方がハンジと付き合えばいいだろう。何でそうしないんだ?』

エルヴィン(アーロン)『んーまあ、私にもいろいろ事情があるんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『まさか種無しとか言うんじゃないだろうな?』

エルヴィン(アーロン)『いや、それはないけど』

リヴァイ(ミカサ)『だったら何だ? 俺にはエルヴィンが手を出さない事の方が不思議でしょうがないんだが』

エルヴィン(アーロン)『………………』

ここでエルヴィン先生、相当心の中で葛藤があったらしいんだ。

そりゃそうだよな。目の前に好きな人がいて、違う相手を勧めてくるんだぜ?

エルヴィン(アーロン)『…………………他に好きな人がいるんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

エルヴィン(アーロン)『片思いだ。叶わない恋だと分かっているが、自分でもどうしようもない』

リヴァイ(ミカサ)『え……ちょっと待て。エルヴィン、お前程の手練れが叶わない相手って誰だ?』

お前だよ!!!

と、言いたいところだけどここでは言えない。

観客もざわざわしている。察しのいい人は気づくだろうか? それは分からないけど。

エルヴィン(アーロン)『言ったら私は次の日に自殺するしかなくなるから言わない』

リヴァイ(ミカサ)『何だって? 分かった……そんなに手ごわい相手なら俺もこれ以上は聞かない。すまなかったな。言わせてしまって』

エルヴィン(アーロン)『いや、いい。私もずっと抱えているのは辛かったしね。でも、これ以上は「今」は聞かないでくれ。時を見て、話せる時がくれば必ず話すから』

リヴァイ(ミカサ)『そ、そうか……分かった』

その「時」が「あの時」だった訳だな。つまり、もうこの時点でエルヴィン先生は決めていたんだ。

リヴァイ先生とハンジ先生がくっつく未来を信じて、自分の気持ちは犠牲にしようと。

エルヴィン先生もある意味「男」だよな。自分のポリシーは絶対曲げないっていう意味では。

エルヴィン(アーロン)『うん、ごめんね。詳しくは話せない。こればっかりはどうしようもない』

リヴァイ(ミカサ)『いや、構わない。俺も根掘り葉掘り聞いて悪かったな』

エルヴィン(アーロン)『うん……じゃあね。私は部屋に戻るよ』

そしてどこか哀愁を漂わせながらエルヴィン先生は退場した。

この当時のリヴァイ先生は、本当にエルヴィン先生の告白に驚いたそうだ。

以後、エルヴィン先生の動向を注意深く「観察」するようになって、そしてだんだん、気づいてしまったんだ。

エルヴィン先生の想い人の相手は「自分」ではないかと。勿論、確証はない。でもたまに「熱っぽい視線」のようなものを感じる時が増えて、リヴァイ先生は咄嗟に逃げてしまったそうだ。

事実を知るのが怖くて。ここでもリヴァイ先生は「逃げて」しまったんだ。

リヴァイ先生って、格闘やらそういう「肉体的」に戦う事は強くても、精神、特に「恋愛事」に関してはどうも不器用過ぎる気質があるようだ。

これってリヴァイ先生の「欠点」だよな。別名「ヘタレ」ともいうけど。

でも、この時にエルヴィン先生に深く突っ込まなくて良かったともオレは思うんだ。

もしも「うっかり」リヴァイ先生が問い詰めたり、そういう気配を出していたら、流石のエルヴィン先生も理性ぶち切れて無理やりでもリヴァイ先生を抱いてしまっていた可能性もあったと思う。

以前、エルヴィン先生自身が「灰色も大事」と言ったのはきっとこの事が原因じゃないかと思うんだ。

はっきりさせない方がいい。そういう「時」もあるんだと。そう感じたんだろう。

この場面を見ながらリヴァイ先生は「長い溜息」をついていた。

エルヴィン先生の方を見て、半眼になっている。エルヴィン先生は笑って「私は名役者だったでしょ?」とほざいているけど。

リヴァイ先生は『そうだな』とだけ答えて観劇を続けたのだった。






空港の場面だ。搭乗手続きをしている場面だ。

受付嬢には何故かアルミン(女装)とアニとサシャの3人が演じている。

それっぽい感じで手続きを済ませてゴロゴロを引いてリヴァイ先生とハンジ先生はロビーで並んで座った。

リヴァイ(ミカサ)『いよいよだな』

ハンジ(エレン)『そうだねー。お腹すいたなー』

リヴァイ(ミカサ)『待て。今、買い物するな。向こうについてからゆっくり食えばいいだろ』

ハンジ(エレン)『そうだけどさー。しまったなあ。携帯食何か持ってくれば良かった』

リヴァイ(ミカサ)『チョコレートでも食うか? カロリーメイトのやつだが』

ハンジ(エレン)『お! 気がきくね! ありがとう!』

リヴァイ(ミカサ)『お前、旅慣れているんじゃなかったのか?』

ハンジ(エレン)『ん? 旅は割と慣れている方だけど、こういう事もあるよ。(もぐもぐ)』

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ。向こうについたら何食べるかな』

ハンジ(エレン)『とりあえず、焼鳥食べようよ。ビールで乾杯!』

リヴァイ(ミカサ)『おいおい、いいのか? 大会前にアルコールを入れて』

ハンジ(エレン)『ええ? ダメかな? あ、そうだよね。ダメかー』

リヴァイ(ミカサ)『匂いが残ってしまったらもしかしたら減点の対象になるかもしれんだろ。そこはやめておけ』

ハンジ(エレン)『そうだね。じゃあお酒はやめておくとして……ちょっと贅沢する?』

リヴァイ(ミカサ)『どんな?』

ハンジ(エレン)『ん~………お寿司とか?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、何か危ない気がする。そういう店に行ったらアルコールを自然と頼みそうな気がするぞ』

ハンジ(エレン)『う……それもそうか』

リヴァイ(ミカサ)『コンビニで弁当でも買ってホテルで食ってもいいけどな』

ハンジ(エレン)『そうだね。そうしようか』

リヴァイ(ミカサ)『………体の方は大丈夫か?』

ハンジ(エレン)『うん。問題ないよ。まだきてない』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それは逆に危ないんじゃ……』

ハンジ(エレン)『ん~被る可能性は五分五分かなあ。ま、しょうがないって』

リヴァイ(ミカサ)『…………本当に大丈夫なのか?』

ハンジ(エレン)『相変わらず過保護だねえ。大丈夫だって言ったら大丈夫だよ』

リヴァイ(ミカサ)『ならいいんだがな………』

と、腕を組みため息をつくリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『こういう寒い時は余り出歩かず、家でゴロゴロしている方が安全ではあるんだが。今頃エルヴィンはゴロゴロモードだろうな』

ハンジ(エレン)『かもねー。今年のクリスマスはエルヴィン、ピクシス先生と飲む予定以外は入ってないって言ってたよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……』

ハンジ(エレン)『雪、降るかなあ?』

リヴァイ(ミカサ)『降らない方がいいんじゃないか?』

ハンジ(エレン)『そうだね。ま、関東もそう、多く雪が降る地域でもないんだけど、クリスマスくらいは降って欲しいかなあ』

リヴァイ(ミカサ)『元気だな。ハンジは』

ハンジ(エレン)『リヴァイ、寒いの苦手だったっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『普通じゃないか? 寒いのも、暑いのも度が過ぎると嫌だと思う。夏は特に。ベタベタする感じが苦手だ』

ハンジ(エレン)『私は冬は好きだよ。お風呂入らなくても大丈夫だし』

リヴァイ(ミカサ)『……………夏に比べれば、の話だろ?』

ハンジ(エレン)『てへ☆ そうとも言うね』

リヴァイ(ミカサ)『冬はさすがにシャワーだけだと体が冷えるから湯船にゆっくりつかりたいな』

ハンジ(エレン)『銭湯、行ってみる? 神田川みたいに』

リヴァイ(ミカサ)『神田川? なんだそれ』

ハンジ(エレン)『知らないの? そういう歌があるんだよ』

リヴァイ(ミカサ)『ほう。歌えるのか?』

ハンジ(エレン)『いいよ~ええっとね、確かこんな感じだったかな』

そして「神田川」の曲が流れ始めて、それに合わせてオレが歌う。

ハンジ(エレン)『貴方は~もう忘れたかしら~♪ 赤い~手ぬぐいマフラーにして~♪』

ハンジ(エレン)『二人でいった~横町の風呂屋~♪ 一緒に出ようねって言ったのに~♪』

ハンジ(エレン)『いつも~私が待たされた~♪ 洗い髪が芯まで冷えて~♪』

ハンジ(エレン)『小さな~石鹸~カタカタ鳴った~♪ 貴方は私の~体を抱いて~♪』

ハンジ(エレン)『冷たいねって~言ったのよ~♪』

ハンジ(エレン)『若かったあの頃~♪ 何も~怖くなかった~♪』

ハンジ(エレン)『ただ~貴方のやさしさ~が~♪ こ~わ~か~あった~♪』

ハンジ(エレン)『っていう曲だよ』

リヴァイ(ミカサ)『最後の「優しさが怖い」っていうのはどういう意味だ?』

ハンジ(エレン)『ん~私もいまいち意味が分かんない。リヴァイの「優しい」から「最低」より意味分かんないんだよね』

リヴァイ(ミカサ)『優しいって言葉はいろんな言葉と繋がっているんだろうか?』

ハンジ(エレン)『人によってはそうなんじゃない? 私はそう思うな』

リヴァイ(ミカサ)『日本語ってやつはつくづく難しい言葉だな』

ハンジ(エレン)『そうだね! 日本独特の文化に繋がっているからね!』

リヴァイ(ミカサ)『いっそ、頭の中を全て相手にうまく伝える「翻訳機」でもあればいいのに』

ハンジ(エレン)『ん? どうしてそう思うの?』

リヴァイ(ミカサ)『俺は自分でも自分の「言葉」がうまくないと自覚している。自分の言いたい事がうまく、相手に伝えられない事が多いんだ。そういう意味じゃ、コミュニケーション能力の高いハンジの事を羨ましいとすら思う事もある』

ハンジ(エレン)『ふーん。そうだったんだ。意外だね』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。他にも仕事早いところも羨ましいし、何より俺より背がある事が1番羨ましい』

ぷふっと笑いが起きた。リヴァイ先生、身長コンプレックス酷いな。仕方がないけど。

ハンジ(エレン)『そうなんだ。いや、でも背丈あると面倒臭いよ? 成長痛とか。思春期にぐんぐん伸びて、夜中とか痛くて大変だったよ』

リヴァイ(ミカサ)『俺はそんな経験、したことがない……くっ』

ハンジ(エレン)『そうなんだー。うーん。私は逆に小さい方が羨ましいんだけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか?』

ハンジ(エレン)『うん。小回りきくじゃん? あと、洋服選ぶ時、サイズあるじゃん? 私の服、女性用で探すと見つからない事が多いんだよね。だから男物をわざと着る事にした。そっちの方が種類あるんだもの。ズボンを除いてだけど』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……だからボタンの留め方が俺と同じだったんだな』

ハンジ(エレン)『そうそう。女性でいたい気持ちがない訳じゃないけど。2Lサイズって、数少ないんだよね。「これ安い!」と思って買おうとしてMサイズかよ! みたいな事が多々あってげんなりするよ』

リヴァイ(ミカサ)『安い服でいいのか』

ハンジ(エレン)『消耗品だもん。安い服で十分だよ。デザインも極端に露出がなければそれでいい。色も地味系が多いかな』

リヴァイ(ミカサ)『……安い時は教えてやろうか? 俺もマメに洋服の情報は見ているし』

ハンジ(エレン)『そうして貰えると助かるな。あ、ついでだから私の分も一緒に買ってきてよ。デザイン任せるからさ。男物で十分だし』

リヴァイ(ミカサ)『男物だとサイズ変わらないか?』

ハンジ(エレン)『男物だと「L」サイズにダウンするよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……(ズーン)』

クスクス笑いが伝播していく。今のリヴァイ先生も赤くなっているようだ。

ハンジ(エレン)『ん? どうした?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺は「M」サイズだからな。やっぱりな、と思っただけだ』

ハンジ(エレン)『んーリヴァイの場合は逆に「女物」で探した方が数が多いかもしれないね。特にTシャツとか』

リヴァイ(ミカサ)『いや、肩幅が違う。そこは筋肉の量の関係で入らないんだよ』

ハンジ(エレン)『OH……面倒臭いのね。こりゃ大変だ』

リヴァイ(ミカサ)『俺の場合、筋力は平均以上だから、体のサイズを測るのが難しい。ただ、Lでもいけない訳じゃないから、ハンジの服を俺が着ても違和感はないとは思うが』

ハンジ(エレン)『なるほど。じゃあ、今、着てみる?』

「おおおおお?」と観客が沸いた。上着の交換の場面なんだ。

こう、くすぐったい場面だよな。もう、こいつらどうにかしろ! 的な意味で。

ハンジ(エレン)『リヴァイのダウンジャケット、袖がちょっと足りないかな』

リヴァイ(ミカサ)『腕はハンジの方が長いようだな』

ハンジ(エレン)『手足長いからね。多分。そっちはどう?』

リヴァイ(ミカサ)『割と着心地がいいな。この上着。どこで買ったんだ?』

ハンジ(エレン)『ええっと、大学院の頃に買った物かな。アメリカ行った時に寒くてつい、買っちゃった』

リヴァイ(ミカサ)『アメリカ? お前海外行った事あったのか』

ハンジ(エレン)『アメリカだけじゃないよ。アフリカも経験あるし、中国、後は……インドかな。所謂、生物の研究の関係で、実際に現地に行ってレポートを書いたりする事もあってね。一応、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語、辺りまでなら読み書きとおしゃべりもちょっとだけ出来るよ』

リヴァイ(ミカサ)『ぶふー!』

あまりの「才女」っぷりに流石のリヴァイ先生もぶったまげたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『え……お前、語学堪能だったのか? 英語教師になれば良かったじゃないか』

ハンジ(エレン)『いやいや? 私の場合は「論文」を読むのが1番の目的だから、おしゃべりはそこまで得意じゃないよ。ちょっとだけ。出来るのは。だって原文で読まないと意味が微妙に食い違う事もあるじゃない? 意訳され過ぎだろ! って何度もツッコミ入れたくなる事が多々あってね。こりゃ本腰入れて勉強しないと思って、独学で頑張った訳ですよ』

リヴァイ(ミカサ)『なんかこういうのもアレだが、お前もお前で俺とは違う世界の住人のような気がしてきた』

ハンジ(エレン)『ちょ……そんなにドン引きしないでよ! 傷つくよ!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、引いているとかいう話じゃない。なんていうか……素直に「凄い奴だったのか」と思っただけだ』

ハンジ(エレン)『まあ、大学も一応、難関と呼ばれる大学を出ていますからね』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。お前、それだけ「勉強」してきているんだな。俺とは全然違ったのか』

ハンジ(エレン)『リヴァイも成績は悪くなかったんでしょ? エルヴィンから聞いているよ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺の場合はただの「優等生」クラスだろ。ハンジの場合は「才女」と言ってもいいレベルだ。教師なんかより、もっと稼げる仕事に就けたんじゃないか?』

ハンジ(エレン)『ん~でも私、お金の為に仕事している訳じゃないし』

リヴァイ(ミカサ)『そうなのか?』

ハンジ(エレン)『言わなかったっけ? 「趣味と実益を兼ねている」って。この仕事、好きなんだ。単純に。それだけだよ』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、それを言ったら俺もそうなるのかもしれないが……』

そして搭乗案内アナウンスだ。

リヴァイ(ミカサ)『そろそろ移動するか』

ハンジ(エレン)『だね。上着、面倒だからこのまま行こうか』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな』

と言いながら舞台をはける。何故かここでヒューヒューの嵐だ。

上着交換して搭乗とか、意味分からんよな。本当に。

ああああああもう、ムズムズしてくる。この辺、本当に。

お互いに自覚ねえから余計にな。今のリヴァイ先生は、笑っているだけだけど。

そして場転。さすがに飛行機の中を舞台上で表現するのは難しかったので、今回は省略だ。

椅子とかを用意出来なかったんだ。だからここはカットで。

目的地についてから、ホテルにチェックインしてコンビニ弁当を食べる。

上着をそれぞれハンガーにかけて、いつものようにお風呂タイムだ。

アルミンがまた「見せられないよ!」の恰好になって登場するんだけど……

ここでリヴァイ先生を驚かせる演出だ。

リヴァイ先生は「絶対カットしろ」と言われた箇所があるんだが。

ミカサが「絶対嫌だから本番でごり押しする」と言い出した箇所がある。

ミカサは「このシーンをやる為にリヴァイ先生を演じると決めた」と言ったので、相当揉めたんだけど。

エルヴィン先生がこっそり許可出した。だからこの件についてはリヴァイ先生だけ「知らない」んだ。

あー心臓ドキドキしてきた。アルミン、やってくれ。

看板をひっくり返す。そして「と、思ったでしょ?」という文字。

ざわざわ……皆、驚いている。

2個目の看板。「でも、今回だけは特別に……」という言葉から……

アルミン『途中から、見せちゃうよ!』

「ええええ?!」という観客の声。リヴァイ先生が『え?』って顔をした。

リヴァイ『おい、ちょっと待て。ここも音声のみで行くんじゃないのか?』

エルヴィン「ごめん。どうしても、ある場面だけやりたいってミカサが言い出した」

リヴァイ『待ってくれ。それってまさか……』

エルヴィン「まあ、黙ってみようか。リヴァイ」

リヴァイ先生が暴れ出したのでエルヴィン先生とピクシス先生が抑えにかかった。

音声が流れる。水音だ。その間に裏方スタッフが舞台を走り回ってセットを構築する。

準備が出来るまでは音声で誤魔化すんだ。

さて。問題のシーンがついにやってきました。
今日はここまでにします。次回、リヴァイ先生、憤死決定です(笑)

それではまたノシ

そして準備完了後、光を一度完全に落とす。ここは本当にドキドキする。

運命の瞬間だからだ。オレは闇の中で移動して風呂釜の中に入って、肩だけヌードになり、頭はタオルで包む。

リヴァイ先生はTシャツと短パン姿だ。服を脱ぐ前にその会話をする事になるんだが。

真っ暗な状態で音だけ先に流す。ここは先に録音していた部分だ。

リヴァイ(ミカサ)『やっすいシャンプーだな。あんまり泡立たねえぞ』

ハンジ(エレン)『別にいいよ。ちょっと量を多めに出せば?』

リヴァイ(ミカサ)『じゃあ遠慮なく』

ハンジ(エレン)『ぎゃああ本気で遠慮してない!!! うわ! 加減間違えてない?! モコモコ酷いよ?!』

リヴァイ(ミカサ)『本当だな。目、しっかり瞑れ』

ハンジ(エレン)『はあい』

リヴァイ(ミカサ)『お湯流すぞ』

ザバー……

リヴァイ(ミカサ)『いつものように体もいくぞ。はい、バンザイ』

ハンジ(エレン)『はあい』

ザバー……

リヴァイ(ミカサ)『はい、終わり。あとは先に湯船の中に入っておけ』

ハンジ(エレン)『はあい』

そして照明が戻る。ここからだ。リヴァイ先生、顔面蒼白になってるけど。

本当、すんません。本気ですんません。でもやる(笑)。

ハンジ(エレン)『ねーリヴァイ』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

服を脱ごうとする前に止める。ここで例の問題の会話のシーンになるんだ。

ここは散々カットしろと頼まれた場面なんだけど。

こんな面白い名シーン、ないからな。もう、見せちゃえwwwって事になったんだ。

ハンジ(エレン)『ちょっとあんたがシャワー浴びる前に聞いていい?』

リヴァイ(ミカサ)『何だ?』

ハンジ(エレン)『いつも思うけど、あんたって、私の体を洗ってくれる時、その……おっぱいとか、あそこは触らないよね』

リヴァイ(ミカサ)『なんだ? やって欲しいのか?』

ハンジ(エレン)『いや、そういう訳じゃないんだけど! 理由、あるのかなって』

リヴァイ(ミカサ)『あー……まあな』

ハンジ(エレン)『全部、やらない理由有るんだ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな。その通りだ』

ハンジ(エレン)『何で? 他の女の子の時も同じなの? それとも……』

リヴァイ(ミカサ)『いや、他の女は全部洗ってやるが』

ハンジ(エレン)『え? 私だけ? 何で?』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

この瞬間、リヴァイ先生はエルヴィン先生、ピクシス先生、イアン先生、キース先生、あとミケ先生に押し付けられて身動きが取れなくなっていた。

5人がかりで押さえてようやく動きを止められるって言うのも凄いけど。

ミカサは絶好調で演じている。もうこの瞬間の為に練習してきたと言っても過言じゃねえ。

リヴァイ(ミカサ)『そこは人間の体で一番デリケートな部分だから力加減がとても難しい。洗ってやれない事もないが、同意がない状態では洗ってやれない』

ハンジ(エレン)『そ、そうなんだ…』

ミカサが目を細めた。いやらしく笑いながら、遂に言い放ったんだ。

あの名セリフを。

リヴァイ(ミカサ)『そこだけは、自分でやれ。まあ、洗って欲しいならやってやれなくもないが……(手首クイクイ)』


ぶふうううううううう!!!!


過去最大の大爆笑だった。いや、失笑だった。

会場は凄まじく轟いた。これは酷いwwwwwwって意味でな。

その瞬間、リヴァイ先生が『あああああああああ!』と叫んで劇を邪魔した。

リヴァイ『そのシーンはカットしろと散々言っただろうが!!!!! ハンジ、お前この事、知ってたのか?!』

ハンジ『御免なさい(ぺこり)』

リヴァイ『裏切者!!!! おまえ、これ、何で……!!!!』

ハンジ『だあって、話の都合上、ここカットする訳にはいかないってエルヴィンに言われたらしょうがないじゃん』

リヴァイ『いや、カットしても大丈夫だろ!!!! 流石にここはカットするべきだろ!』

エルヴィン「いや、他にももっとカットするべき場面は多々あると思うけどね」

ピクシス『本当じゃ。自分の一番都合の悪い部分だけ伏せようとしたってそうはいかん』

リヴァイ先生が白目向いて堕ちた。あ、現実逃避しちゃったようだ。

そしてミカサが言った。

ミカサ『再開してもいいですか?』

ピクシス『構わんよ。続けなさい』

という訳で劇は再開である。もう本当、会場は爆笑の最高潮だった。

ハンジ(エレン)『へ?!』

リヴァイ(ミカサ)『どうする? 俺はどっちでも構わんぞ(ニヤニヤ)』

ハンジ(エレン)『丁重にお断りします!!!!!』

リヴァイ(ミカサ)『ん? いいのか? やって欲しかったんじゃないのか? (もう1回手首動かす)』

ハンジ(エレン)『いやいやいやいや!!!! 無理無理無理!!! 絶対無理!!!』

リヴァイ(ミカサ)『ちっ……(舌打ち)』

ハンジ(エレン)『そんなところまで甘えられないよ! 子供じゃないんだから!!! いや、子供でもそこまでやってもらわないよ!? 普通は!』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、そうだろうけどな』

ハンジ(エレン)『あーびっくりした。まさかそういう理由だったとは』

リヴァイ(ミカサ)『何だと思っていたんだ?』

ハンジ(エレン)『いや、汚い場所だし普通に触りたくないのかなって』

リヴァイ(ミカサ)『…………………』

ハンジ(エレン)『エッチな事をする時は別だよ? だからうん。まあ、その……私の為に気遣ってくれていたのだとしたら、その、ありがとうね』

リヴァイ(ミカサ)『…………………当然だろ。その程度の気遣いは』

ハンジ(エレン)『うん。だからありがとうって事。リヴァイとのお風呂、何でこんなに楽しいんだろって、ずっと疑問に思っていたけど、その理由が分かった気がする』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『リヴァイ、本当に細かいところで優しいんだよね。だから安心していられるんだと思う。気合抜けていてもいいんだって思ったら、こう、ね? 布団の中に入っている感じ? ポカポカするんだよね。なんとなく』

リヴァイ(ミカサ)『実際は風呂の中に入っている訳だが?』

ハンジ(エレン)『比喩表現だよ! その……なんていうのかな……まあ、うん。えへへへ~』

リヴァイ(ミカサ)『結局誤魔化すのか』

ハンジ(エレン)『だってうまく言えないんだもん。お酒飲んだ時のような心地いい感じかなあ。ちょっとほろ酔いみたいな?』

リヴァイ(ミカサ)『………それは「楽しい」っていう感情じゃないのか?』

ハンジ(エレン)『そうかもね。うん。私、リヴァイと一緒にいると「楽しい」んだと思う』

リヴァイ(ミカサ)『そうか。奇遇だな。俺もだ』

ハンジ(エレン)『あれ? そうだったの?』

リヴァイ(ミカサ)『一緒にいるのが飽きないな。それだけは断言できる』

ハンジ(エレン)『あははは! よく言われます! 私、面白いねって人によく言われるし?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジのいいところの一つだろ。イイ事じゃねえか』

ハンジ(エレン)『そう? へへへ~ありがとうね!』

リヴァイ(ミカサ)『どういたしまして』

そして暗転。しばしざわめいていたが、やっとここでリヴァイ先生が意識を回復した。

リヴァイ『ちょっと待ってくれ……』

ピクシス『なんじゃ?』

リヴァイ『その……なんだ。…………皆、ニヤニヤこっちを見るんじゃねえええええ!!!!』

無理だろ。どう考えても。

公開羞恥プレイに居た堪れなくなって、リヴァイ先生は押さえつけていた先生達に『もう暴れないから手離してくれ』と言った。

そして雛壇の席に戻ってから、リヴァイ先生はハンジ先生の前で土下座した。

リヴァイ『あの時は、本当にすまなかった……』

ハンジ『いやいやいや? 別に私、怒ってないよ?』

リヴァイ『いや、調子に乗ってすまん。今思うと、あの頃の俺はアホだった。あの時の風呂で、ほんの少しその、なんだ。いや、少しじゃねえな。大分、いや、その……』

もう何言ってるのか訳わかめだな。周りは過去最高の「ヒューヒュー」だった。

ハンジ『顔あげていいよー! いや、本当に怒ってないし。むしろ私の方こそ、ごめんね? 皆の前でコレ、暴露させちゃって。止めようとも思ったんだけど、その、ねえ?』

ピクシス『過去の過ちはちゃんと振り返るべきじゃぞ? リヴァイ』

リヴァイ『おっしゃる通りです』

と、爆笑2回目だった。そしてようやく席に戻ってリヴァイ先生は皆の前で言葉を紡いだ。

リヴァイ『あーすまん。その、見ての通りだが、俺は劇中にある様に皆が思っている程「綺麗な人間」じゃねえ』

と、ちょっとだけ真面目な表情に戻って言った。

リヴァイ『この劇は出来るだけ、当時の事を振り返って再現はしているが、ある程度省略している部分もある。カットしてコレだから、元はもっと酷いと思ってくれ。そういう訳だから、俺はこの劇の中で……リヴァイ・アッカーマンの幻想をぶち壊す』

まるで某アニメの主人公のような事を言いだしたリヴァイ先生だった。

リヴァイ『そのせいで幻滅してしまった奴もいるだろう。気持ち悪いと、さすがにひくわーと思う奴もいると思う。そいつに対しては「すまない」としか言えないが、これも先生の「一部」だ。だから今後は出来るだけ、俺自身に対してあまり「綺麗な印象」を抱かないで欲しい。俺はどちらかというと、ダメ人間だと自分でも思っているし、ハンジがいなかったら、もっと人として酷い男に成り下がっていたと思っている。特にその、女関係の方面では』

と、言うとまた失笑が起きた。

すると生徒達の中から質問が飛び出した。

「3桁女抱いたって本当ですか?」という際どい質問にリヴァイ先生はこう言い放った。

リヴァイ『そこも記憶が曖昧で、実際にはよく覚えていない。ただ、10代から27歳くらいまでは本当に、ダメ男街道を驀進していたからな。ハンジが俺を殴ってくれなかったら、もっとおかしな事になっていたと自分でも思う』

「隠し子いないですよね?」という質問まで飛び出した。おいおい、OB強いな! 卒業生すげえ。

リヴァイ『いないな。もしいたら絶対女から連絡が来る筈だ。その辺については自信がある』

ハンジ『あーあんまりそれ、自慢にならないからね? リヴァイ』

あははは! と周りは笑って、ハンジ先生が呆れている。

リヴァイ『それもそうか。すまん』

ハンジ『まあ、もしも今後、浮気したらリヴァイのあそこを手術しちゃうっていう手もあるからね? 私は一向に構わないよ? うん。本当の私の「嫁」になる?』

リヴァイ『分かっている。浮気はしないと、約束しよう。今ここで、皆の前で』

おおおおおおお……パチパチパチと拍手が起きた。こりゃ生徒と先生、全員が証人だな。

意外と真面目に返されてちょっと照れるハンジ先生だった。

ハンジ『だったらいいけどね。うん……』

リヴァイ『そういう訳だ。劇の方はもうちょっと先まで物語が続く。長丁場で申し訳ないが、子供連れの方はそろそろ時間的にしんどいだろうから、先に帰って頂いても構わない。時間に余裕のある方は残って頂けると有難い。土産はこちらに用意しているので、俺とハンジでお見送りします。では、ここで一旦休憩という事で』

と、打ち合わせにはなかったけど、リヴァイ先生はそう急遽、判断して、子供連れのOBOGを先に帰らせたんだ。

もうこういう細かい気遣いは本当、リヴァイ先生にしか出来ないよな。

そんな訳で途中で劇が止まってしまったけど、続けていきたいと思う。

やっぱりちょっとだけ延長しました。
キリがいいのでここまで。

次回またノシ

リヴァイ役がミカサで良かった…
エレンだろうとジャンだろうと、男子がやっていたらなんか色々と酷いw

>>711
確かにwwwミカサじゃないと許されない感じですね。







ホテルの夜。1泊目を終えて2日目。

ホテルの練習場の部屋を借りて直前の練習に励む2人だったけど、途中でハンジ先生の体に変化が起きた。

運が悪い事に生理が始まってしまったのだ。それに気づいてハンジ先生がorzの状態になる。

ハンジ(エレン)『くそー博打に負けたあ…』

リヴァイ(ミカサ)『いや、予定通りだったなら仕方ねえだろ』

ハンジ(エレン)『ズレろー! って念じていたんだけどね。ダメだったか。最近、何でか調子いいんだよね。以前は不安定だったのに。ダンスするようになってから、何故か生理の周期まで整うようになっちゃった』

リヴァイ(ミカサ)『それだけ体にいいんだろ? たまには全身の体を動かせって事だな。ハンジも仕事するようになってからは以前よりは運動不足だったんだろ?』

ハンジ(エレン)『そりゃ現役の頃に比べればね』

リヴァイ(ミカサ)『薬は持って来ているんだよな?』

ハンジ(エレン)『うん。でもまだ「飲むほどの痛み」じゃないからいいよ。我慢出来ないところまできたら飲むから。今は練習に集中しよう』

リヴァイ(ミカサ)『休まなくていいのか?』

ハンジ(エレン)『大丈夫。直前の詰め込みの方が大事だよ』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうやって今までの試験や資格も合格してきたんだな』

ハンジ(エレン)『YES! 最後の粘りが大事だよ!』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。なら俺も本気を出す。時間の許す限り仕上げるぞ』

そして2人でダンスの練習に励んだ。ここはアドリブでいい。

ミカサと一緒にいろんなダンスの復習をしていく。其の時の気分でダンスの種類を選んでいた。

オレはミカサに全体重を預けたり、アイコンタクトだけで動きを読んだりする。

社交ダンスはペアの「一体感」を何よりも大事にする競技だから、そこが重要になってくる。

リヴァイ先生とハンジ先生が優勝した時もその「一体感」が他のペアを抜いて凄かった為に優勝出来たと言っていた。

総評で褒められたそうなんだ。身長の差という「ハンデ」を抱えながら、1度も他のペアともぶつからず、神業のようなボディバランスでハンジ先生をリードしたそうだ。

そうやって何度もハンジ先生と触れ合ううちに、リヴァイ先生の中で不思議な「感覚」が芽生えて来たそうだ。

セックスをしていないのに、まるでそれに「近い」ような感覚とでも言えばいいのか。

決して「エロい」意味でハンジ先生と触れ合っている訳じゃないのに、何故かそこに「爽快感」があって。

特に「チャチャチャ」を踊る時にそれを感じる事が多くて自分でも少しだけ戸惑ってしまう事もあったそうだ。

実際、チャチャチャの踊りを見て貰えると分かると思うけど、オレから言わせれば「エロい」と思う。

官能的な踊りと言えばいいかな。特に女性の方の動きがすげえんだよな。これ。

オレ、正直、これ、慣れるまでかなり恥ずかしかった。女の方の動きがかなり激しいから。

ハンジ先生の方も自分でもおかしいくらいテンション上がってしまって「気持ちいい」と感じていたそうだ。

今思うと、これって「疑似セックス」に近い感覚を2人で味わっていたんじゃねえかなって思うんだけど。

そこまで言うと大げさか? いやでも、踊っているうちに「気持ちいい」ってお互いに思っていたなら結構ヤバい状態だよな。

ちなみにハンジ先生は「ジャイブ」が1番好きだったそうだ。この踊りは結構楽しく踊れる。

リヴァイ先生は当然「チャチャチャ」だな。エロいの大好きな奴はこの踊りをマスターするといいと思うぜ。

まあそんな訳でオレもここでは「役得」な意味でミカサとの踊りを楽しんだ。

男女は逆だけど、オレ達の場合は身長の差が少ないから踊りやすい。

社交ダンスはほぼ同じ身長か男がちょい上くらいが理想的なんだそうだ。

オレの方が競技用のハイヒールを履いているから実際は女役がちょい上になっちまうけど。

ハイヒールの高さは7センチくらいある。だから実際のリヴァイ先生は17センチ近いハンデを持って踊った訳だ。

良く考えなくてもこれってすげえ事だよな。リヴァイ先生じゃねえと出来ねえよ。

そんな訳で一通り復習したら、また汗を掻いたので一旦舞台をはけようとする。

シャワーを浴びるかという話になって、さすがにハンジ先生が「待った」をかけた。

ハンジ(エレン)『待った! 流石に生理始まっている時には一緒に入るの無理だよ! 恥ずかしいよ!』

リヴァイ(ミカサ)『え……あ、そうだな。すまん』

と、この時のリヴァイ先生は流石に赤面して自重した。

ぷークスクスの笑い声が聞こえた。当然だよな。

この辺になるとだんだん自分が「変」になってきているって事、自覚しても良さそうなのにな。

リヴァイ先生はバツが悪そうにハンジ先生を先にシャワーに入れたそうだ。

この、待っている時の間が、何故か凄くエロく感じる。今までと逆のパターンなのに意味深なシーンに見える。

リヴァイ先生も当時は意味も分からず何故か焦って、テレビをつけたり、とりあえず先に自分の汗を拭いたりしたそうだ。

自分の心の変化が徐々に見え始めているのに。リヴァイ先生はそれを「見ないように」必死に堪えていたそうだ。

ハンジ(エレン)『はい、あがったよ。どうぞ』

リヴァイ(ミカサ)『あ、ああ……』

そそくさと自分も後からシャワーを浴びる。そしてさくっと終わらせてベッドに戻る。

リヴァイ(ミカサ)『とりあえず、昼飯食いに行くか? ホテルのレストランでいいか?』

ハンジ(エレン)『うん。いいよー』

という訳で2人でレストランに移動して昼食だ。休憩も兼ねて。

この時の昼飯はとりあえずハンバーグにしたそうだ。

運動した後は「肉」食べたいもんな。気持ち分かる。

リヴァイ(ミカサ)『体の調子はどうだ?』

ハンジ(エレン)『思っていたより体が軽いよ。いつもだったらもっと怠いし。今月は軽い方かもしれない』

リヴァイ(ミカサ)『なら良かった。明日はいよいよ本番だ。モダンの方が先だったよな?』

ハンジ(エレン)『うん。2日目がラテンだね。リヴァイはどっちの踊りが好き?』

リヴァイ(ミカサ)『あえて言えばラテンの方だな』

ハンジ(エレン)『そうなんだ。私もそうかも。じゃあ、種目は……』

リヴァイ(ミカサ)『チャチャチャだな』

ハンジ(エレン)『あーそこは違ったか。私はジャイブだね!』

リヴァイ(ミカサ)『ジャイブも嫌いじゃないぞ。2番目に選ぶならジャイブだな』

ハンジ(エレン)『あ、そうなんだ。へー』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジはチャチャチャは嫌いなのか?』

ハンジ(エレン)『んー嫌いじゃないけど、ちょっと照れくさいかな。たまに恥ずかしくなる』

リヴァイ(ミカサ)『ほう? 何で』

ハンジ(エレン)『いや、だってかなり激しいでしょうが! あと何かエロくない?』

リヴァイ(ミカサ)『そこがいいんだろ』

ハンジ(エレン)『むーこのエロ大魔王め。こら、ニヤニヤするなー!』

リヴァイ(ミカサ)『本番は恥ずかしがるなよ。照れが入ったら動きが鈍くなるからな。俺に全て預けろ』

ハンジ(エレン)『まあ、その通りだね。うん。そこは信頼するよ。お願いね』

リヴァイ(ミカサ)『………ハンジ』

ハンジ(エレン)『なあに?』

リヴァイ(ミカサ)『お前、何でこんなに俺に良くしてくれるんだ?』

ハンジ(エレン)『え? いきなり何の話?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、今回の旅行の件も含めて何もかも、全部そっちが計画を立てて手続きとかも全部ハンジがやってくれただろ』

ハンジ(エレン)『ん? そういうの得意だよ?』

リヴァイ(ミカサ)『それは知っているが、その……なんだ。俺もうまく言えないんだが』

ヒューヒュー♪

あああもう、ここもくすぐてえええ!

リヴァイ先生、困っていたんだそうだ。この時点で何かもう、「もやもや」していたそうだ。

ただ当時はその「感情」をどう呼んだらいいか分からず、戸惑っていたのも事実で。

だから拙い自分の言葉でその気持ちを伝える事しか出来なかったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『この旅行を楽しいと思っている自分がいる。その………ありがとう』

ハンジ(エレン)『やったー! 計画立てた甲斐があったよ! やったね!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。明日は精一杯、踊るぞ。優勝を獲りにいく。俺も本気を出す』

ハンジ(エレン)『リヴァイが本気出せば絶対優勝出来るよ! 私も本気出しちゃうからね!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。優勝するぞ』

そしてフェードアウト。ヒューヒューの観客の声に包まれながらいよいよ本番の日を迎える。

24日。クリスマスイブ。この時のハンジ先生は赤色のふわっとしたドレスを着ていた。

こっちは「スタンダードモダン」に合わせたから、衣装の形態が違うんだ。

深緑色の方は「ラテン」用のドレスだな。セクシーな感じだ。

しかしこの時、リヴァイ先生は初めて大会に出て、アクシデントに見舞われる。

そう。本番慣れしていなかったせいもあり、踊る途中で他のペアと何度かぶつかってしまったのだ。

それに加えて、ドレスの裾の長さにも慣れていなかったせいもあり、ハンジ先生自身、踊りにくいと感じてしまって本番では思うような力を発揮出来なかったそうだ。

そのせいで、予選敗退。意気消沈の中、25日を迎える。

ハンジ(エレン)『ううう背水の陣だね! 絶対予選突破するよ!』

リヴァイ(ミカサ)『ああ…そうだな。いくぞハンジ!』

そしてここでエキストラも含めてラテンのダンスだ! 一斉に踊るぞ!

この時のリヴァイ先生は、無我夢中で踊ったそうだ。もう、ハンジ先生の体を全部触る勢いで遠慮なく。

ヒューヒュー♪ 歓声の中、音楽に合わせて踊る。

そして何とか予選突破を果たして決勝まで勝ち進み、何と初出場にして初優勝を果たしたそうだ。

スタンダードモダンの方ではうまくいかなかったけど、ラテンの方ではうまくいったそうで、本当に優勝する事が出来たそうだ。

ここでの大会は所謂「実力認定」みたいなもので、ええっと、それを持っていると「実力」が認められるそうだ。

正式なインストラクターになる為にはこれ以外にも「講習」や「認定試験」なども別に受けないといけないそうだが、この「実力認定」を持つことでも人に教える事は出来るそうだ。

ただしこの場合は「ダンス教室」を個人的に開く事は出来なくて、所謂「体育館」等でボランティア的に教える資格、みたいなものらしい。

ちょっとその辺の詳しい話はオレ自身、半分も理解出来ていないんで、説明が下手かもしれん。すまん。

まあ何はともあれ、一応「目標達成」という事だ。めでたい事だな。

大会が終わってからすぐ空港に向かう。飛行機の時間があるからだ。

空港にて。ハンジ先生はくるくる回っていた。喜び過ぎて。

ハンジ(エレン)『良かったああああ! ラテン部門では優勝出来たあああ!』

リヴァイ(ミカサ)『良かったな。ハンジ』

ハンジ(エレン)『本当、良かったあああ! ありがとうリヴァイ!!!』

ブンブン手を取って喜び合う。可愛いハンジ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『そんなに欲しかったのか。その資格が』

ハンジ(エレン)『そりゃそうだよ!』

リヴァイ(ミカサ)『にしても、何で「社交ダンス」だったんだ?』

ハンジ(エレン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、他にも山ほど資格試験はあるのに、何でわざわざ「社交ダンス」を選んだのかと思ってな』

ハンジ(エレン)『えへへへ~…』

ここでとびっきりの笑顔だ。もう、本当に可愛かったそうだ。当時のハンジ先生は。

ハンジ(エレン)『リヴァイ、今日は何月何日ですか?』

リヴァイ(ミカサ)『12月25日だな。俺の誕生日だ』

ハンジ(エレン)『つまり、三十路になった訳ですね! おめでとう!』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、ありがとう。……で? それがどうした?』

ハンジ(エレン)『だから……プレゼントだよ』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『資格! 実力が認められた資格が、プレゼントだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『何だって?』

この時のリヴァイ先生、眉間に皺が寄ってしまったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『待ってくれ。頭の中で整理が追い付かない。つまりどういう事だ?』

ハンジ(エレン)『ん~だからつまり、誕生日プレゼントだよ。リヴァイへの。三十路記念だね!』

リヴァイ(ミカサ)『……………へ?』

間抜けな声が出てしまったそうだ。無理もないな。

ハンジ(エレン)『私は家事とか女らしい事は殆ど出来ないし、プレゼント買ってあげるのも下手だし、でもこれだったら、一生、体育教師のリヴァイの役に立つプレゼントになるかと思ってね。一発合格を狙ってみたわけですよ』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

ハンジ(エレン)『隠していてごめんね~こういうのって、ちゃんと取ってから言いたかったからさ! いや~無事に片方だけでも取れて良かったわ~』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ』

ハンジ(エレン)『ん?』

リヴァイ(ミカサ)『もしかして、お前、勘違いしてないか?』

ハンジ(エレン)『何が?』

リヴァイ(ミカサ)『高校の体育で教えるダンスは「創作ダンス」であって「社交ダンス」じゃないぞ』

ハンジ(エレン)『え? 違うの?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。全然違う。全くの別物だ。加えてその……何だ。社交ダンスは流石に授業ではやらない。いや、少なくとも「今」は社交ダンスは必要ない』

ハンジ(エレン)『えええええそうだったの?! 私、間違えちゃったの?!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、分からんけどな。将来的には必要になる場面もあるかもしれんが。まあ、資格はないよりは「あった」方がいいのも事実だが……』

ハンジ(エレン)『あっちゃー……詰めを誤ったかあ……ごめん!!! 何か勘違いしていたみたいだね! 私!』

リヴァイ(ミカサ)『いや、いい。その……俺も楽しかったしな。お前と踊れて』

ハンジ(エレン)『そうだね。私も楽しかったよ。まあ、もしかしたら飲み会の出し物とかに使えるかもしれないし、ま、いっか(てへペロ☆)』

この誤魔化し「てへぺろ☆」にリヴァイ先生はうっかりドキドキしてしまったそうだ。

そして空港で帰りを待っていると、緊急アナウンスが流れたそうだ。

何でも「大雪」のせいで飛行機が飛べない事態になり、予約していたチケットの便が全部パアになったそうで。

リヴァイ先生は「困ったな」と思ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『珍しいな。こっちはそこまで雪の降る地域じゃなかった筈だろ?』

ハンジ(エレン)『たまーにあるけどね。くる時は逆にそのギャップが酷いよ。どうする? 夜行バス捕まえる?』

リヴァイ(ミカサ)『その方がいいか……』

そしてゴロゴロ…荷物を引いて帰ろうとしたが。

其の時、リヴァイ先生は思い出したそうだ。エルヴィン先生の言葉を。

『延長したっていいんだよ?』っていう。あの言葉を。

リヴァイ(ミカサ)『…………』

立ち止まり、考え込む。

ハンジ(エレン)『ん? どうしたの? リヴァイ』

リヴァイ(ミカサ)『あ、いや……高速バスだと14時間くらいかかるから、帰るのが明日の朝になる。そのまま学校に行って仕事をするのは流石に体力的にきつくないか?』

ハンジ(エレン)『まあ、そうだね。でも、私はそれでも構わないけど』

リヴァイ(ミカサ)『……すまん。俺の方が疲れている。もう一泊、何処かに泊まらないか?』

ハンジ(エレン)『ありゃりゃ、そうなの? じゃあエルヴィンに連絡しないとね。ちょっと待ってね』

と、言って連絡はハンジ先生がしたそうだ。

ハンジ(エレン)『ごめーん! エルヴィン! こっち天候が崩れちゃってさー飛行機キャンセルになっちゃった。んで、夜行バスか新幹線で帰ろうと思ったけど、思ってたよりリヴァイが疲れちゃったみたいでね。もう1泊したいんだって。うん。いい? ごめんねー今度、お酒奢るし。延長お願い出来るかな? じゃあねー』

という会話をして電話を切る。

ハンジ(エレン)『うん。大丈夫だって。ホテル戻ろうか。同じホテルでイイ?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。泊まろう』

そして2人はホテルの方に移動した。

もう、観客は固唾を飲んで見守っている。

この時のリヴァイ先生は「半分だけ嘘」をついたそうだ。

疲れているのは本当だけど、決して帰れない程疲れていた訳ではなかったそうだ。

つまり、ハンジ先生ともう1泊泊まりたかった。その気持ちが動いたんだ。

その行動が意味するところをリヴァイ先生自身、戸惑っていたそうだ。

ホテルについてからも、ハンジ先生と目を合わせにくくて、キョロキョロしてしまって。

自分の気持ちがうまく表現出来なくて。嬉しい気持ちを押さえきれなくて。

だから取り敢えず、酒でも飲むかと思い、ビールを2人で飲むことにしたそうだ。

ハンジ(エレン)『はい、かんぱーい! 打ち上げおめー!』

リヴァイ(ミカサ)『お疲れ』

グビグビ……グビグビ……

つい、その動きを注視してしまう自分に気づいて目を伏せたそうだ。

ハンジ先生の喉の動きが、ついつい。気になってしまって。

酔っぱらったハンジ先生が可愛いと思ったそうだ。もうこれ、本当に生殺しだよな。

オレ、リヴァイ先生の事、いろいろツッコミたくてしょうがないと常々思ったけど。

この時の気持ち、オレ、理解出来る。オレも夏の「アレ」で似たような目に遭ったからな。

リヴァイ(ミカサ)『…………』

あ、ミカサが頭抱えだした。意外とその辺の演技、うまいな。

オレも出来るだけ可愛くする。てへペロ☆

ハンジ(エレン)『どんどん飲もうよ~リヴァイ、おかわりしないの?』

リヴァイ(ミカサ)『あ、ああ……頂く』

ハンジ(エレン)『はい、どうぞ☆』

女の酌でビールを飲めるって言うのはどんな気分なんだろうか。

きっと、最高だったに違いない。リヴァイ先生、当時は相当、しんどかったと思うぜ。

リヴァイ(ミカサ)『……………』

リヴァイ先生、だんだん口数が減っていったそうだ。

自分から誘うなんて、今までした事、なかった筈だからな。

ここからどうやって仕掛けるべきか。何も手札がない状態だったそうだ。

そうだよな。誘われる事ばっかり多かったせいで「誘う」時はどうすればいいか分かんねえもんな。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ』

ハンジ(エレン)『んー?』

リヴァイ(ミカサ)『疲れてないのか?』

ハンジ(エレン)『ん~疲れているけど平気だよ~なんか今、ほろ酔い気分でいい感じ~』

リヴァイ(ミカサ)『寝なくていいのか?』

ハンジ(エレン)『うん。まだ大丈夫~えへへへ』

ああああもう可愛いかっただろうな。これ。自分で言うのもアレだけど。

ミカサで脳内変換するといいオカズになる。オレの場合はマジで。

リヴァイ(ミカサ)『…………』

ミカサ、演技上手いな。すげえ、戸惑いが伝わってくる。

手、出したいのに出せない。そういう気持ち、ミカサも分かるのかな。

ハンジ(エレン)『リヴァイはもう疲れちゃった? 先に寝る?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、まだ大丈夫だが……』

ハンジ(エレン)『そう? 無理しちゃダメだよ? まだちょっと早いけど早めに寝てもいいと思うよ』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

ここで「一緒に寝ないか?」って言えないのがリヴァイ先生だよなあ。

いや、オレも言えないかもしれないけど。

リヴァイ(ミカサ)『シャワー、1人で浴びてくる。ハンジは飲んでろ』

ハンジ(エレン)『ん? 今日は一緒じゃなくていいの?』

リヴァイ(ミカサ)『生理終わってないだろ』

ハンジ(エレン)『ん? あ、そっか! ごめんごめん! あははは!』

この辺はビールのせいでちょっと頭がおかしくなっていたそうだ。

そしてシャワーを浴びて着替えて部屋に戻ると、ハンジ先生、酔い潰れて床に転がっていたそうだ。

見かねてベッドに運んでやる。その様子は、むにゃむにゃしていて。

キス、してみたいと、思ったそうだ。当時のリヴァイ先生は。

でもそこで、ハンジ先生はとんでもない発言をかます。

ハンジ(エレン)『リヴァイ……』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

いいムードだよな。もういっちゃえよ!!! っていう観客の期待が高まる。

でも悲しい事に、ここでいかないんだよな。結果的に。

ハンジ(エレン)『ありがとうね。楽しかったよ。旅行。またいつか、機会があれば一緒にどこかに行きたいね』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……そうだな』

ハンジ(エレン)『これからもずっと、友達でいようね。あんたは私の最高の親友だから』

リヴァイ(ミカサ)『………………』

友達。親友。

そう、はっきり言われて、リヴァイ先生は自分の気持ちの高ぶりを無理やり鎮めたそうだ。

相手に望まれる事。それを叶えてしまう性分がここでも働いてしまったんだ。

つまり、今までのリヴァイ先生は自分から「友人」でいたいと思った異性には「恋人」を求められて。

「恋人」でいたい相手には「友人」を求められると言う何とも難儀な事態に陥っていた訳だ。

そしてハンジ先生は寝落ちた。ZZZZ……という豪快なイビキをかいて。

リヴァイ先生はここでゆっくりハンジ先生から離れて隣のベッドに移動した。

そして出来るだけ反対を向いて寝たそうだ。ハンジ先生を見ないように。

一晩経って、起きてみると、もう昨日のような気持ちの「高ぶり」が消えている自分に気づいたそうだ。

「アレ」は一体なんだったんだろう? と当時思ったそうだ。まるで一晩の「夢」のようにも感じて現実感がなくて、以後、この時の記憶を出来るだけ「思い出さないように」心が働いたらしい。

多分、無意識だったんだろうな。それくらい、リヴァイ先生は自分に関しては「理性的」に動いてしまう人だから。

そして学校に戻るとピクシス先生に「おめでとう」と言われて「は?」と返す羽目になる。

学校にて。ピクシス先生がニヤニヤして近寄ってくる。

ピクシス(アルミン)『おめでとう。ようやく自分の気持ちに素直になったようじゃな』

リヴァイ(ミカサ)『何の話ですか?』

ピクシス(アルミン)『惚けんでも良いぞ。延長してきたんじゃろ? ホテルの宿泊。ハンジとの一夜はどうだった? ん?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ビール飲んでそのまま寝ただけですが、何か?』

ピクシス(アルミン)『………手、出しておらんのか?』

リヴァイ(ミカサ)『は? 出す訳ない。あのハンジですよ?』

ピクシス(アルミン)『…………(絶句中)』

リヴァイ(ミカサ)『まあ旅行自体は楽しかったですけどね。飯も美味かったし。でも遠方旅行は冬は行くもんじゃないですね。飛行機飛ばない時が面倒だ』

ピクシス(アルミン)『お主は本当に、ピー(自主規制)ついとんのか?』

リヴァイ(ミカサ)『ついてますが、何か?』

ピクシス(アルミン)『だったら何故、ハンジと一発やって来なかった! お主、本当のアホなのか?!』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジは俺の友人ですよ。恋人同士じゃないんで』

ピクシス(アルミン)『あんだけ親密度あげておきながらまだ言うか!! この男はああああ!』

エルヴィン(アーロン)『まあまあ、落ち着いて。ピクシス先生……その、ね? 楽しかったんだよね? 旅行は』

リヴァイ(ミカサ)『まあな。ダンスの大会もモダンは予選落ちしたがラテンの方では優勝してきた。とりあえず実力は認められたから、生徒に教える程度の事は出来るようになったとは思う』

エルヴィン(アーロン)『そのうち正式なインストラクターの方の資格も取ったらいいよ。時間があれば』

リヴァイ(ミカサ)『そっちの方はもう少し時間がかかるだろうな。まあ、いずれ追々取るよ』

ピクシス(アルミン)『信じられん。女とダンスして踊ってきて泊まってきたのにヤッてないとか……アホなのかこの男は』

リヴァイ(ミカサ)『相手がハンジなので。当然だろ』

ピクシス(アルミン)『ハンジだからこそじゃ! ええい、もうこうなったら、2人を何処か無人島にでも島流しにして…』

エルヴィン(アーロン)『ダメですよ! ピクシス先生、法律に触れます!』

ピクシス(アルミン)『しかしそうでもせんと、こやつら一生このままじゃぞ! いつまでくっつかないつもりなんじゃ! 下手するとずっとこのままじゃぞ!』

エルヴィン(アーロン)『大丈夫ですって。ね? リヴァイ?』

リヴァイ(ミカサ)『期待されても困るんだが? 俺はハンジに手を出すつもりはない』

ピクシス(アルミン)『ええい、腹が立つ。煮えくり返る。この胃の滾りをどうしたら……』

リヴァイ(ミカサ)『授業の準備があるんで、先に出ます。お先に』

と言って逃げるリヴァイ先生に対してピクシス先生は拳を握ってプルプルしたそうだ。

ピクシス(アルミン)『わしは早く、あやつらの子供が見たいんじゃあああ』

エルヴィン(アーロン)『まあまあ、落ち着いて。今夜も飲みましょう。先生』

ピクシス(アルミン)『ううう…わしだってもうそれなりの年なのに。わしが生きているうちにくっついて貰わないと困るのに』

エルヴィン(アーロン)『大丈夫ですよ。先生。今は平行線でも、いつか必ず、あの2人はくっつきますって』

ピクシス(アルミン)『だといいんじゃがのう……(トボトボ)』






マリーナ『こうしてリヴァイ先生とハンジ先生のダンス資格取得旅行は無事に終わりました』

マリーナ『しかしこの旅行を境に、リヴァイ先生の態度が微妙に変わります』

マリーナ『以前は生徒に冷やかされても「さあな」と適当に返していたのに、以後は「ハンジとはそんなんじゃない」ときっぱり否定するようになったのです』

マリーナ『その微妙な変化に気づいたのは、当時はキース先生だけでした』

マリーナ『キース先生は当時、思いました。「あれは恐らく誘って断られて拗ねたな?」と』

マリーナ『事実とは若干違いますが、ここはまあ、「大体合ってる」という事で、宜しいかと』

マリーナ『そして、30歳を越えてリヴァイ先生はますます教職が忙しくなり、翌年度、いよいよ「体操部」の新設と共に、演劇部との「顧問の掛け持ち」生活が始まります』

マリーナ『柔道部は以後、キース先生へ引き継がれ、体操部の新設と共に女子の方の顧問はハンジ先生が受け持ちます』

マリーナ『30歳を越えてリヴァイ先生はその翌年の新年の新年会で、ある「暴挙」に出てしまうのですが……』

マリーナ『では引き続き、三十路編をご覧頂きましょう』

という訳で、ちょっぴり切ないダンス資格旅行編はお仕舞です。
ダンスの資格についてはちょっと説明が長くなりすぎるので、
ある程度省略しました。詳しい事を知りたい方は自分で調べてみてね。

という訳で、次回またノシ





新年会。先生達の飲み会の席で「酒飲み比べ大会」が行われたそうだ。

優勝者にはホテル宿泊券(1泊2日)が懸賞として出された身内の大会に結構皆、マジになって参加したそうだ。

勿論、飲めない先生は飲まなくていい。あくまで希望者だけで行った大会だったそうだ。

そこでリヴァイ先生も駆り出されて飲む羽目になり、残ったのはエルヴィン先生、ピクシス先生、ハンジ先生、リヴァイ先生、ゲルガー先生の5人になった。

ゲルガー(キーヤン)『もうアウトです……ギブ』

キース(ジャン)『おおっと、ここでアウトか。残念!』

キース(ジャン)『残るは4人だ。最後まで残るのは誰になるかー?!』

そして20杯を越えた直後、リヴァイ先生の目つきがだんだん怪しくなった。

半眼になって、隣の席に座っていたハンジ先生の方を見る。

リヴァイ(ミカサ)『…………』

ハンジ(エレン)『あれ? もうギブ? 飲まないの?』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

無言でじーっと見ている。目が虚ろだったそうだ。

ハンジ先生は首を傾げて飲み続ける。この時のハンジ先生の成績は3位だったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『…………』

ハンジ(エレン)『ギブアップするなら、ギブって言わないと』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

リヴァイ先生はこの時の記憶が全くないそうだ。だからここからは周りの証言で構成している。

グラスを置いて、席を立って、ハンジ先生の腰に抱き付いてそのまま両目を閉じてハグしたそうだ。


ざわっ……


教職員の前でいきなりの「暴挙」に出て、周りは騒然となった。

ハンジ(エレン)『ちょっと! リヴァイ?! あんた何勝手に抱き付いてるのよ! こら!』

リヴァイ(ミカサ)『ん…………』

ハンジ(エレン)『やだ……ちょっと、何、やめて………顔、スリスリして、こらあああああ!』



どがしゃあああああ!!!!



そしてリヴァイ先生を無理やり掌底&蹴りを入れて引き離したそうだ。

しかし、傷を負っても尚、ゾンビのようにゆらりと立ち上がってハンジ先生にまた抱き付こうとするので「これはいかん」と流石に他の先生も思ってリヴァイ先生を後ろから羽交い絞めしたそうだ。

そしてハンジ先生が本気の一発を腹に打ち込んで気絶させて、退場させられたそうだ。

ハンジ(エレン)『ハアハアハア……酔っぱらっているからって、勝手に抱き付くな! んもー! (赤面)』

と、ちょっとだけ当時のハンジ先生も焦ったそうだが。リヴァイ先生は本当にこの時の事を覚えてないそうだ。

リヴァイ『ちっ……意識がないならもっと弄ってやれば良かったのに』

ハンジ『こらこら』

と、今の2人が言い合っている。相変わらずのエロ親父発言だ。

そんなこんなで、この「飲み会」の事件が切欠でほんの少し、ハンジ先生との距離が出来てしまったそうで、当時のリヴァイ先生は落ち込んだそうだ。

それをニヤニヤして見守るピクシス先生だった。

ピクシス(アルミン)『ククク……ほれほれ。やっぱりハンジの事を好いておったじゃろ? 酒が入ると本性が出るの。お主は』

リヴァイ(ミカサ)『違います……というより、覚えてないんですが』

ピクシス(アルミン)『教職員全員が証人じゃ! どうするんじゃ? このまま嫌われるつもりか? ん?』

リヴァイ(ミカサ)『麒麟ビール持参して謝りに行ったのに、あいつ微妙な顔しやがった。こんな事、初めてだ。一体、俺は何をやらかして……』

ピクシス(アルミン)『抱き付いてハンジの胸の中で顔をスリスリしたと言ったじゃろ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それ、絶対嘘ですよね? 嵌めようったってそうはいかない』

ピクシス(アルミン)『やれやれ……嘘じゃないんじゃがのう』

リヴァイ(ミカサ)『なんか機嫌を取らないと。どうしようかな……』

と、其の時思い出したのは社交ダンスの「ドレス」の件だった。

そうだ。あの時に借りたドレスを買い取って、プレゼントするのはどうだろう?

そう思いついたらしく、当時のリヴァイ先生は早速行動に移して本当にプレゼントしたそうだ。

でもハンジ先生はますます微妙な顔になって相手をしたそうだ。

場転。今度はハンジ先生の部屋で言い争う2人だ。

ハンジ(エレン)『いや、こんなの貰えないし。無理。いくらしたの?』

リヴァイ(ミカサ)『30万くらいか?』

ハンジ(エレン)『余計に貰えないわよ!!! あんた金銭感覚、おかしくない? 大丈夫?』

リヴァイ(ミカサ)『だから、お詫びも兼ねてやるって言ってるだろ。新年会、悪かったな』

ハンジ(エレン)『いや、要らないってば! 高過ぎるし、クローゼットの肥やしになるだけでしょ!』

リヴァイ(ミカサ)『また踊る機会があるかもしれないじゃないか』

ハンジ(エレン)『その時はまたレンタルすればいいでしょう! 体型変わったらどうすんのよコレ!』

リヴァイ(ミカサ)『大丈夫だろ。ハンジは身体が細い方だ』

ハンジ(エレン)『いや、分かんないでしょうがその辺は! どうなるかは! とにかく受け取れないよ。持って帰って。返品して来て』

リヴァイ(ミカサ)『…………何でそんなに頑なに拒否する。この間の礼としても受け取ってくれないのか?』

ハンジ(エレン)『え? お礼?』

リヴァイ(ミカサ)『誕生日のサプライズのお礼だ。お詫びじゃなくて、そういう意味なら受け取ってくれるか?』

ハンジ(エレン)『いや、まあ、うーん。いやいや、やっぱりだめ。高すぎる。30万も金出すなら最新のノートパソコン貰う方がまだいい』

リヴァイ(ミカサ)『だったらそっちはそっちで買ってやる。それでいいか?』

ハンジ(エレン)『もっとダメだよ! ちょっと、リヴァイ、あんたそんなに人に貢ぐ男だったっけ? 私、あんたの彼氏でも何でもないんだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『じゃあどうしたら機嫌をなおしてくれるんだ? お前は。新年会でやらかした事は俺は全く覚えていないんだ。飲み過ぎた俺が悪いのは分かっているが、これ以上、距離を取られるのは俺としても辛いんだが』

ハンジ(エレン)『んー……でも、その……』

リヴァイ先生は煮え切らないハンジ先生に怒って、勝手にドレスをクローゼットの中に押し込んだそうだ。

ハンジ(エレン)『あーもう! 勝手に押し込んで……』

リヴァイ(ミカサ)『うるさい。とにかく受け取ってくれ。その方がこっちの気もすむ』

ハンジ(エレン)『もーしょうがないなあ。じゃあ、お礼としてなら、受け取ってあげるわよ』

リヴァイ(ミカサ)『お詫びはノートパソコンだな。分かった。今度の休みに買ってくる。機種は何がいい?』

ハンジ(エレン)『いや、そっちも冗談だからね? 真に受けなくていいよ』

リヴァイ(ミカサ)『だったらどうしたらいい? 麒麟ビールで機嫌がなおらないハンジなんて初めてだし、俺もどうしたらいいのか……』

ハンジ(エレン)『私もそう何でもかんでも麒麟ビールで釣られる女じゃないんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『どうしたら許してくれる?』

ハンジ(エレン)『うーん……』

リヴァイ(ミカサ)『俺はそんなに酷いセクハラをやらかしたのか?』

ハンジ(エレン)『いや、酔っ払いとしては「普通」の事だからそこはいいんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『だったらハンジは「何に対して」機嫌が悪いんだ?』

そこでハンジ先生は大分悩んだそうだ。どう言えば伝えられるかを。

ハンジ(エレン)『やー機嫌が悪いとか、そういう話じゃないとは思うんだけど』

リヴァイ(ミカサ)『どういう意味だ』

ハンジ(エレン)『ごめんね。前に言わなかったっけ? 私、「突然の接触」がちょっと苦手だって』

リヴァイ(ミカサ)『あーそう言えば言っていたな。昔』

ハンジ(エレン)『そうそう。だから心の準備のないままにリヴァイに触られちゃったから、ちょっとビビっただけだよ。うん。なんかこう、「ビクッ」ってなるのが苦手なだけだから。もうあんまり気にしないでいいよ。酒の席だし。しょうがないよ』

リヴァイ(ミカサ)『なら……俺は許して貰えたと思っていいのか?』

ハンジ(エレン)『うん。大して怒っていた訳じゃないよ。ただ、ちょっと思い出すと「ビクッ」となっちゃうだけ。ごめんね』

リヴァイ(ミカサ)『はー良かったー……』

と、思いっきり項垂れるリヴァイ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジに嫌われたかと思った。俺は碌でもない男だと言う自覚はあるが、流石にハンジに見限られたら、立ち直れない。本当に良かった』

ハンジ(エレン)『あははは! 碌でもないって。自覚あるんだ』

リヴァイ(ミカサ)『今までが今までだからな。俺の場合は』

ハンジ(エレン)『んーでも、最近は以前に比べたら落ち着いているんじゃないの? もうとっかえひっかえもないし、彼女もいないんでしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『………マリアが最後の彼女だな。去年の9月に別れて以来、そう言えばいない』

ハンジ(エレン)『また新しい彼女、探さないの?』

リヴァイ(ミカサ)『んー今はそういう気分じゃないな。不思議と』

そりゃそうだろ。ハンジ先生が目の前にいるからな。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジの方もフリーなのか? そういう気配がない気がするが』

ハンジ(エレン)『んーそうだね。そう言えばそうだね。去年は「モテ期かな?」って思ったけど。結局は短い春でしたね』

リヴァイ(ミカサ)『あれから化学の先生との仲は大丈夫なのか? 気まずくないか?』

ハンジ(エレン)『いや、全然! むしろ前より仲良くなったかも。距離がある方がかえってうまくいくみたい。やっぱりどうしても「許容出来ない」部分は無理して飲み込む必要はないし。たまに私の匂いは嗅ぎたくなる事はあるらしいけど』

リヴァイ(ミカサ)『おいおい……そいつも結構、斜めの方向で変態だな』

お前が言うなああああ! だよな。コレ。

ハンジ(エレン)『それはリヴァイにだけは言われたくないよー。でも化学の先生曰く私は「臭いけど優しい匂い」なんだって。匂いにはその人の「人柄」が出てくるらしくてね。どんなに体を清潔にしても、その人間性が悪いと「嫌な」匂いがするし、汚くしていても、いい匂いに感じる人間もいるんだって。不思議だよね』

リヴァイ(ミカサ)『俺には分からん感覚だな。俺はハンジの汚れを嗅ぐ度に悶絶しそうになるんだが』

ハンジ(エレン)『だったら嗅がなきゃいいじゃないの! あんた本当にドМな時あるよね』

リヴァイ(ミカサ)『いや、その……なんだ。その度合いによって「そろそろ洗うか」とも思うし、それ自体が「嫌」な訳でもないが……俺の場合、汚れているのを見るのは嫌なんだが、同時に「綺麗にしたい」っていう欲望も沸いてきて「ワクワク」もするという、難儀な性格をしているんだよ』

ハンジ(エレン)『あー強敵に出会ったワクワク感? みたいな?』

リヴァイ(ミカサ)『丁度そんな感じだ。格闘も互角に戦えるライバルがいないとつまらんのと同じかもしれん。そういう意味じゃ、やってもやっても終わらない、ハンジの部屋の片づけやハンジとの風呂は俺のルーティーンワークになりつつある』

ハンジ(エレン)『OH……何かかえって申し訳ない気持ちになるね』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、俺自身、ストレス発散にもなっているんだが、しかし……あんまりやり過ぎるといざ、ハンジが嫁に行く時に困るよな』

ハンジ(エレン)『ん~私はずっとこのままでもいいんだけどね。結婚しないで独身でもいいよ』

リヴァイ(ミカサ)『いや、待て。子供はどうするんだ? 将来欲しいとは思わないのか?』

ハンジ(エレン)『子育てのせいで仕事を犠牲にしないといけなくなるならあまり気がすすまないね。子供は大好きだけど。両方手に入れるのは虫が良すぎないかな?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そこは産休とか育児休暇をとればいい話だろ。教師はその辺、制度が完備されているし、他の仕事に比べたら子育てはしやすい方なんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『ん~でも、ほら? その辺は「理想と現実」という壁があるじゃない? 女は子供を産んだら現役に戻るの厳しいよ。普通は辞めていくもんだよ。まだまだ』

リヴァイ(ミカサ)『でも俺の周りはもう、殆ど第一子を産んだ女が多い。やはり三十路の前後が一番、それに適した時期なんじゃ…』

ハンジ(エレン)『時代が進めばもう少し遅くても産めるようになるかもしれないよ。三十代後半が普通になる時代が来るかも?』

リヴァイ(ミカサ)『………お見合いをするっていう手もあるだろ。それじゃダメなのか?』

ハンジ(エレン)『いやー無理でしょ! 相手に申し訳ないよ! 私、欠点だらけだからね! 無理無理!』

リヴァイ(ミカサ)『そんなのは、相手も同じだろ。欠点のない人間なんてこの世に存在しない』

ハンジ(エレン)『ん~今日はやけに私をけしかけるね? そんなに彼氏を作って欲しいわけ?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、そういうつもりじゃないんだが……ふと、不安になってな』

ハンジ(エレン)『不安? 何で?』

リヴァイ(ミカサ)『このままで本当にいいのか? っていう漠然とした不安だ。いや、何が「不安」なのかと言われたら俺も答えに困るけどな』

ハンジ(エレン)『ん~むしろ私は「今」が一番「安心」しているんだけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『何故だ』

ハンジ(エレン)『仕事も最初の頃より慣れて来たし、人間関係も特に酷いトラブルもないし、まあ、反りの合わない先生もいない事はないけど。でもやっぱり、リヴァイとかエルヴィンやピクシス先生や、あとキース先生もか。ミケ先生もだね。徐々に輪が増えて来て、私としては今が「幸せ」だから特に「不安」はないんだけどなあ』

リヴァイ(ミカサ)『うーん』

ハンジ(エレン)『不安なのはリヴァイの方なんじゃない? やっぱりそろそろ「お嫁さん」が欲しい時期なんじゃないの?』

リヴァイ(ミカサ)『そういう事、なんだろうか?』

ハンジ(エレン)『リヴァイの方こそ「お見合い」してみたら? 教職なんだし、してくれる女の人はいると思うけどな』

リヴァイ(ミカサ)『いや、過去がバレた時が怖いから止めておく。もう同じ過ちはしたくない』

ハンジ(エレン)『やーでも、そんな事言い出したらあんたの方が一生独身になりかねないよ? そこは一生隠しておけば? 遠方の女性なら騙せると思うけど』

リヴァイ(ミカサ)『無理だろ。女の情報網を舐めるなよ。今はインターネットもある。メールも携帯もある時代だ。いくらでも調べようと思えば調べられるだろ』

ハンジ(エレン)『……女3桁抱いたっていうのは本当なの?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それは流石に冗談……だと思いたいが、正確な数がもう分からないんだ』

ハンジ(エレン)『来る者拒まずにヤッたあんたが悪いっていうのもあるけど、まあ、若気の至りならしょうがないよね』

リヴァイ(ミカサ)『思えば何で俺はあんなにフラフラしていたんだろうか……自分でも良く分からん』』

ハンジ(エレン)『んー寂しかったんじゃないの? 多分』

リヴァイ(ミカサ)『え?』

ハンジ(エレン)『そういう事もあるよ。寂しいと、何か自分でも「あれ?」って思うような行動する時あるからね』

リヴァイ(ミカサ)『………………』

ハンジ(エレン)『リヴァイ、両親いないんだよね? 孤児なんだっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。俺は自身の素性すら良く分からん。捨てられていたらしい』

ハンジ(エレン)『だったら、根本的にどこか「愛」に飢えているのかもしれないね。そのせいで、過剰に相手の期待に応えようとするのかもしれない』

リヴァイ(ミカサ)『愛に飢えている……か』

ハンジ(エレン)『あ、いや、ごめんね? ふと思っただけだよ。あんまり深い意味はないから。気に障ったならごめん』

リヴァイ(ミカサ)『いや、当たっているのかもしれない』

と、其の時のリヴァイ先生は不思議と「しっくり」きたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『もっと深い意味でいうなら、俺は「愛」を知らないんだ。きっと』

ハンジ(エレン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『常に思うんだ。「愛って何だ?」と。こう、良く分からない物だと思いつつ、今まで来ている。だからそれが知りたくて、ついつい流れてきたのかもしれない』

ハンジ(エレン)『おおお……まるで私と同じだね。私は「トキメキ」を追う旅を常にしている訳ですが』

リヴァイ(ミカサ)『俺も似たようなもんだ。そういう意味じゃ、俺達は似た者同士だな』

ハンジ(エレン)『本当だね! あはは! だからこそ、友達でいられるのかもしれないね』

リヴァイ(ミカサ)『そうだな』

ああああああもう! イライラするうううううう!

と、この場にピクシス先生がいたら拳をプルプルするに違いない。

あ、現に今、ピクシス先生、ツッコミ入れたくてプルプルしている。劇の中の事なのに。

ハンジ(エレン)『本当、どうしたら「恋」が出来るんだろう? 少女漫画を見てもイマイチ「ピン」と来ないんだよね。エルヴィンにいくつか「おすすめ」を貸して貰って読んだけど、理解出来ない部分が多くて途中で挫折する事もしばしばだよ』

リヴァイ(ミカサ)『どんな少女漫画を読んだんだ?』

ハンジ(エレン)『んー「不思議遊戯」と「エジプト王家の紋章」と「硝子の仮面」と「華より男子」と……少女漫画じゃないけど「乱馬1/2」と「うる☆奴ら」と「バトンタッチ」と「☆矢」と「北斗のケン」と「シティーハンターズ」と「GS御神」と……』

リヴァイ(ミカサ)『結構いろいろ読んでいるな。もはや俺より詳しいんじゃないか?』

ハンジ(エレン)『私、読むのは早い方だからね。お話は面白いけどやっぱり「恋愛」部分にはいくつか「?」が出てくるところもあってね。全部は読めなかった。あ、GS御神は横嶋君が面白かったけど。酷いスケベで、女社長に低賃金でこき使われているのが酷いなあって思ったwww』

リヴァイ(ミカサ)『あーその作品は途中までなら読んだ記憶がある様な。アレだろ? 巨乳の霊媒師の女社長と低賃金のアルバイトの男の話だろ。同じパターンで掛け合い漫才しているような』

ハンジ(エレン)『それそれ! いやー男って本当にスケベの為ならこんな事出来るの? って疑問に思ったけど』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、そこは否定しない。気持ちは分からんでもないからだ』

ハンジ(エレン)『え? リヴァイも時給200円くらいで働けるの? 命がけだよ?』

リヴァイ(ミカサ)『ん~あれだけのいい女の傍に居られるなら、まあ、そういう事もあるだろう』

ハンジ(エレン)『ひどいwwwwやっぱり男って根本的に「馬鹿」なところがあるんだね』

リヴァイ(ミカサ)『まあな。自分でもそう思う。俺も御神麗子は嫌いじゃない。あれだけ気がきつくて金にがめつくて、自分に正直な女はなかなかいないぞ』

ハンジ(エレン)『あんた悪女好きなんだwwwwウケるwwww』

リヴァイ(ミカサ)『おまけに若いだろ。たしかあれだけの容姿で20歳くらいじゃなかったか? 男の理想をある意味で注ぎ込んでいる女だな』

ハンジ(エレン)『へ~そうなんだ。いや、でもそうか。割と条件当てはまっているよね。あんたの理想と』

リヴァイ(ミカサ)『まあな。「気が強くて」「遠慮のない」「表情豊か」「年下」だからな。最近はこれに「頭がいい」も加えていいかもしれない』

ハンジ(エレン)『あ、そうなんだ。条件がまた増えたんだ』

リヴァイ(ミカサ)『多分な。マリアと付き合った時にそれを感じた。あいつもお嬢様なだけあって、頭のレベルはハンジと匹敵する程だった。会話のキレも駆け引きもエルヴィンに似たものを感じた。俺はそういう「会話のスリル」も好きだと気づいた』

ハンジ(エレン)『会話のスリル……へーそんなの感じるんだ』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。あんまり大人しい女は好みじゃないようだ。じゃじゃ馬を乗りこなす方が好きなのかもしれない』

ハンジ(エレン)『OH……リヴァイがどんどん、麻雀牌を揃えてしまう。リーチ先にかけられちゃいそうだなあ』

リヴァイ(ミカサ)『ああ……ハンジはいまだに自分の「好み」すら良く分かってないんだったな』

ハンジ(エレン)『そうなのよ! だから漫画で勉強しようと思ったんだけどね! 横嶋君は「面白い」と思ったけど、タイプと言われるとちょっと違った気もしたし……うーん?』

リヴァイ(ミカサ)『あいつはドスケベ過ぎるだろ。ハンジはあんまりスケベな男は苦手なんじゃないのか? …俺のように』

ハンジ(エレン)『ぬぬぬ…そうなのかなあ? いや、でも男の人って皆スケベだよね? スケベじゃない人の方が珍しいよね?』

リヴァイ(ミカサ)『それはそうだが………何だ。お前、以前よりは俺の事を嫌悪しなくなったのか?』

ドキッ……とする場面だった。

観客もクスクス笑っている。リヴァイ先生が少し嬉しそうだからかな。

ハンジ(エレン)『ん? 私は別にリヴァイのこと、嫌悪してないよ? 友達だし』

リヴァイ(ミカサ)『いやでも、男としては「嫌い」なんじゃないのか? プレイボーイだしな』

ハンジ(エレン)『ああ……そういう意味ね。確かにもしも、リヴァイとそういう意味で付き合うとしたら「大変そう」っていうのがまず先に来るね』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうか』

ハンジ(エレン)『うん。後ろから刺されそうで怖いよ。昔の女の逆恨みとか。リヴァイ自身の事がどうこうより、むしろそっちが面倒臭い。一夫多妻制ならまだマシだったかもしれないけど。ここは日本だしね。リヴァイとそういう関係になるのは、ちょっとあんまり考えたくないかな』

リヴァイ(ミカサ)『………まあ、そうだろうな』

と、ちょっとだけ残念そうな声音で返すリヴァイ先生にクスクス笑いがどんどん広がっていく。

自業自得だけどな。ハンジ先生の反応が正しいと思うぜ。

ハンジ(エレン)『あー唯一、理想って言えば一人だけいるかも』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『栄螺さんに出てくる波兵さん! 私、波兵さんになら抱かれてもいい!』

ズコー!

この「いつ波兵さんの事を話したか」は2人で大分記憶をたどり合ってようやく思い出したそうだ。

最初はとんと忘れていたそうだ。だからここは思い出してからが面白かったと2人共お互いに言い合っていた。

リヴァイ(ミカサ)『え……えええええ……波兵さんて、あの波兵さんだよな?』

ハンジ(エレン)『そうだよ? あの、子供をガツーンと叱ったり、家族の皆をまとめているところが好きだな。頼れるお父さんって感じだよね』

リヴァイ(ミカサ)『しかしビジュアルがその……髪の毛1本だけ生えているんだぞ? いいのか?』

ハンジ(エレン)『むしろそこが可愛い! 何で1本だけ残っているんだろうね? 不思議でしょうがないよ!』

リヴァイ(ミカサ)『これはかなり無理難題な気がしてきたぞ』

ハンジ(エレン)『うん……それは自分でも、ちょっと思ってる。波兵さんみたいに、いい男なんてなかなかいないよね』

リヴァイ(ミカサ)『いやまあ、うん。好みは人それぞれだからな。ただ、波兵さんみたいに「ガツーン」と言う男の方がいいというなら、昔堅気の人間に近いイメージだな。古風な男性だとも言うべきか……』

ハンジ(エレン)『そうなるのかな? 生まれる時代を間違えたのかもしれないね』

今考えると、これも一応、リヴァイ先生にも当てはまっているんだよな。

「ガツーン」と生徒を指導出来るし、面倒見もいいし。もしかしたら、ハンジ先生はそういう男性に弱いのかもしれない。

でも当時はそこまで考える余裕はなくて、2人は笑っていたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『いや、でも、今より昔の日本に生まれていたら、女は外で働きに出るのすら難しかっただろう?』

ハンジ(エレン)『あーそうかもね。なんかそういう話はよく聞くよね』

リヴァイ(ミカサ)『俺も人から聞いた話だけどな。俺より上の世代の女性は「若い人たちが羨ましい」とよく言っている。自由に恋愛も出来るし外で働いても咎められない。女が自分で「選択」出来る世の中になってきたのは、いい事なんじゃないか?』

ハンジ(エレン)『その分、晩婚化がどんどん進んでますけどね。少子化問題がヤバいことになりそうだけど』

リヴァイ(ミカサ)『その辺は一長一短だろうな。何かが良ければ何かが犠牲になる。そんなもんだろ』

ハンジ(エレン)『そうだよね。そう言う意味じゃ仕方ないよね。だったら私が独身でも仕方ないって事で』

リヴァイ(ミカサ)『おい。どうしてすぐ自分にすり替える。今のはあくまで「一般論」だろ?』

ハンジ(エレン)『え? 何の事かな? うふふふ~♪』

リヴァイ(ミカサ)『………………俺の大学時代の知り合いに誰かまだ独身の男、いなかったかな(携帯弄る)』

ハンジ(エレン)『やーめーてー! もうそれ、完全に世話焼きババアだから! 仲人なんて頼んでないよ!』

リヴァイ(ミカサ)『俺はハンジの花嫁姿を早く見てみたいんだがな』

この瞬間、お客さんがまた爆笑した。もう、どうしたらいいか分からない意味で。

俺も正直、腹が痛い。いや、演技中だから笑えないけどさ。

ハンジ(エレン)『ええええそうなのー?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジは普段、着飾らないから、着飾った時の映え方の差が大きいからな。個人的に見てみたい』

ハンジ(エレン)『うううう………』

と、しょんぼりする。この時のハンジ先生はまだ「20代」だったから微妙に困ったそうだ。

せめて30代であれば、徐々に戻していってもいいかな? と思っていたそうだが、まだ20代だったせいもあり、元の自分に戻る勇気がなかなか出てこなかったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『なあ、ハンジ。どうしてお前は何故そこまで「女」でいる事を毛嫌いする? 何かトラウマでもあるのか?』

ハンジ(エレン)『いやいや? お金と時間がかかるからですよ? それ以外の理由はないです』

嘘だけどな。でもリヴァイ先生も薄々それに気づいてはいたらしい。

リヴァイ(ミカサ)『ふむ……まあ、そう言われればそうなんだろうが』

ハンジ(エレン)『それに、リヴァイにそういう部分、見せても、ねえ? 何か照れ臭いしー?』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

ハンジ(エレン)『ま、見ない方がいい事もあるよ。ね? この話はおしまいにしよ?』

リヴァイ(ミカサ)『………そうか』

と、また少しだけ残念そうだったそうだ。あああああイライラするうう!

と思いつつも劇は進める。この一進一退な感じが暫くずっと続くわけだから、当時を見守っていたピクシス先生とエルヴィン先生って相当忍耐力あるよな。

リヴァイ(ミカサ)『まあでも、俺は諦めないからな』

ハンジ(エレン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジが俺より先に結婚するのを見届けるまでは死ねないな。ご祝儀は弾んでやる。50万は最低でも包んでやろうと思っているぞ』

ハンジ(エレン)『多すぎるよ!!! 何それ、あんたの金銭感覚、やっぱり変だよ?!』

リヴァイ(ミカサ)『年齢が遅くなればなるほど金額は上がっていくと覚悟しておけ。という訳でハンジ、今日も料理をするぞ。少し遅くなったが、今からやろう』

ハンジ(エレン)『またあ? もーあんたもシツコイ男だねえ。今日は何教える気?』

リヴァイ(ミカサ)『とりあえず「キャベツの千切り」だ。お前のギャンブルクッキングだけじゃダメだと気づいたからな。基本も教えつつ、新しい料理も開発する。たまに偶然「美味い」組み合わせも発見する事もあるからな。料理は創意工夫次第だ』

ハンジ(エレン)『はーもう。まあ、普段ご飯作って貰っているからしょうがないけどさー(ブツブツ)』

そしてまた、後ろからセクハラ料理教室だ。この密着感、正直堪らん。

ミカサが後ろから密着して手取り教えてくれるんだ。役得過ぎてテンション上がる。

ニヤけるのを必死に抑えながらオレも料理を頑張る。ただの千切りだけど。

リヴァイ(ミカサ)『手は猫の手にしろ。最初は慎重にしろよ。怪我しないようにゆっくりだ』

お互いの左手が重なる。こんな密着する料理教室は聞いたことねえんだけどな。

当時のリヴァイ先生はしょっちゅう、こんな感じだったそうだが、ハンジ先生も別に気に留めず受け入れていたそうだ。

むしろその感じが心地よいと感じる時もあったそうで、もうこの時点でハンジ先生もだんだん気持ちが傾き始めていたとしか思えないよな。

不器用な太めの千切りだけど、一応出来た。

それを見てリヴァイ先生も嬉しかったそうで、ハンジ先生を褒めてあげたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『よくやったぞ。ハンジ(ナデナデ)』

頭をナデナデしたそうだ。汚い髪だって分かっている癖に。

その感じが凄く優しくて、ハンジ先生も照れたそうだ。この後の工程はリヴァイ先生が引き継いで野菜炒めを作ったそうだ。

そしてこの場面はフェードアウト。音が消えて、薄暗くなって、マリーナのナレーションだ。




マリーナ『周りから見たらツッコミどころしかない2人でしたが、そんな2人にまた新たな騒動が起きます』

マリーナ『そう。この年の2月。なんと運の悪い事に講談高校ではインフルエンザが大流行して、教職員もほぼ全滅状態に追い込まれます』

マリーナ『唯一生き残ったリヴァイ先生はまるで白衣の天使のようになって、同僚や先輩達の看護に走りまわりました。同じ職員用のマンションには沢山の「戦友」がいるから当然です』

マリーナ『勿論、ハンジ先生もインフルエンザにかかってしまい、リヴァイ先生は看護に向かいます』

マリーナ『その時に、リヴァイ先生はハンジ先生を当然、世話しましたが、其の時にまた、リヴァイ先生の中に「心の変化」が起き始めるのです』

看護イベント来ました。次回、白衣のリヴァイが降臨(?)です。
嘘です。コスプレはしません。看病するだけです。

ではまた次回ノシ






暗転後。ハンジ先生の部屋で寝込む。

インフルエンザにかかった場面だ。ハンジ先生は汗だくで苦しんだそうだ。

40度近い熱と寒気と咳に悩まされて死にかける。それを心配そうにリヴァイ先生は看病してやったそうだ。

このエピソードはリヴァイ先生自身から「追加していい」と言われたので後から加えた物だ。

他の先生達に取材した時は聞けなかった物だけど、これはこれでいい話だなとオレは思った。

リヴァイ(ミカサ)『熱がなかなか下がらんな。2回目、病院に行かなくていいのか?』

ハンジ(エレン)『いやー動きたくないです。ここまで来ると寝るしかないよね。げほげほ』

リヴァイ(ミカサ)『薬はまだあるんだよな?』

ハンジ(エレン)『あるよー』

リヴァイ(ミカサ)『なくなったら言えよ。取りに行って来てやるから』

ハンジ(エレン)『ありがとーげほげほげほ』

リヴァイ(ミカサ)『辛そうだな』

ハンジ(エレン)『んーリヴァイ、もう帰っていいよ。感染したらヤバいよ。あんたが最後の砦なのに。あんたが倒れたら、他の先生達もやばいよ』

リヴァイ(ミカサ)『だろうな。分かった。そろそろ先に帰らせて貰う』

と、帰り支度をするけれど。

リヴァイ(ミカサ)『……………ハンジ』

ハンジ(エレン)『何ー?』

リヴァイ(ミカサ)『やっぱり座薬を使った方がいいんじゃないか? 1人では無理か?』

ハンジ(エレン)『1人じゃちょっと無理かな……いやいや、リヴァイにもやらせないよ? 触らないでね? あくまで40度越えたら使った方がいいかも? みたいな感じで貰った薬だからね? 使わないからね。大丈夫だよ。寝ていればそのうち落ち着くって』

リヴァイ(ミカサ)『…………』

まさかの「座薬イベント」とか。すげえよな。このイベント率。

男としては1度はやってみたいイベントだけど。さすがに恋人同士じゃない関係では出来ない。

リヴァイ(ミカサ)『………やっぱり今夜はこっちに残る』

ハンジ(エレン)『えええ? ダメだよ! もう帰って!』

リヴァイ(ミカサ)『熱が上がるかもしれないだろ。大丈夫だ。これだけ雑菌まみれの中、走り回っても俺は発症していない。恐らくいつの間にか免疫がついたんだ。きっと』

ハンジ(エレン)『いやいや、皆が治る頃にきっと倒れるから! ダメだよ! ちゃんとリヴァイも休まないと!』

リヴァイ(ミカサ)『…………………心配で眠れないだろ』

ハンジ(エレン)『え?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、何でもない。とにかく今夜はこっちに泊まる。ソファ貸してくれ。部屋は別にして寝るから』

ハンジ(エレン)『……………』

この時のリヴァイ先生の言葉は、実はハンジ先生に届いていたそうだ。

その時に感じた「何か」に正直、ハンジ先生も戸惑って、少し混乱したらしい。

そしてそれはリヴァイ先生自身もそうだった。いや、もうとっくの昔にリヴァイ先生、ハンジ先生の事を好きな筈だけど。

ただ、認めようとしていなかっただけだから。自分の気持ちから逃げていただけだからな。

ハンジ(エレン)『………感染しても、知らないからね』

と、だけ呟いてハンジ先生は眠ったそうだ。それを見守って安心してリヴァイ先生も隣のリビングのソファで眠ったそうだ。

何もしない。ただ、傍にいるだけ。

恋人同士よりむしろ強固な絆が少しずつ、出来上がっていたんだ。この時期は。恐らく。

先に目が覚めたのは当然リヴァイ先生だ。朝の朝食を作り置きして、次の先生の元へ向かう。

この時はエルヴィン先生も、他の先生達も同時期に倒れると言う修羅場だったそうで、それでも一人だけ生き残ったリヴァイ先生はのちに「救世主」と呼ばれたそうだ。

そして感染のピークが終わった頃、やっぱりリヴァイ先生、ちょっとだけ体調を崩したそうだ。

と言ってもその熱は大した事はなく、ちょっと怠い程度だったそうで。

リヴァイ先生の元々の体力の底力を皆、知る事になったのだ。

流石にその時だけは1日だけお休みを貰って眠ったそうだ。皆、勿論それを承諾している。

一人で眠って居る時に、また夢を見たそうだ。あの時の夢を。女子大生の夢を。

其の時にリヴァイ先生は気づいてしまった。

会いたいだけとか言っていた癖に、本当はその女を「抱きたい」と夢の中で思っている自分に。

でも、苦しい思いを認めたくなくて考える事を放棄したそうだ。その当時は。

気のせいにして、見ないようにした。

自分のようないい加減な人間が彼女を抱くなんて。恐れ多いような気もして。

そんな風に気怠く休暇を過ごしていたら、元気になったハンジ先生が仕事帰りに見舞いに来てくれたそうだ。

ハンジ(エレン)『熱下がった? 大丈夫?』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。大体下がった。明日は出勤できると思う』

ハンジ(エレン)『あー良かった! 他の皆も心配してたよ。ごめんね。まるで皆の「母親」みたいな事をさせて』

リヴァイ(ミカサ)『独人貴族同士はこういう時は助け合うしかないだろ。ま、乗り切ったから良しとする』

ハンジ(エレン)『そうだね。でも皆感謝していたよ。皆でリヴァイを嫁にしたいくらいだって言ってた』

リヴァイ(ミカサ)『待ってくれ。さすがに多夫一婦制過ぎる。そこまで面倒見きれんぞ』

ハンジ(エレン)『だよねえ。というか、リヴァイはさっさと結婚してここ、出て行った方がいいんじゃないの?』

リヴァイ(ミカサ)『何でそう思う?』

ハンジ(エレン)『皆、あてにしちゃうよ。リヴァイ優しいんだもん。甘えちゃうよ。私もそうだけどさ』

リヴァイ(ミカサ)『……それはまるで、俺がここを出て行ったら、ハンジと会えなくなるような言い方だな』

ハンジ(エレン)『んーそこまでは言わないけど、縁は遠くなるかもしれないね。今みたいに頻繁には会えなくなるよ。きっと』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

ハンジ(エレン)『其の時はしょうがないけどね。うん。まあ、今すぐの事じゃないだろうけど』

リヴァイ(ミカサ)『…………嫁にしたいと思う女は、いない訳じゃない』

ハンジ(エレン)『え?!』

この時、ハンジ先生はびっくりしたそうだ。彼女はいないのに、そういう事を言うのはつまり。

ハンジ(エレン)『それって片思いって事? スゴイじゃん! 何だ、いるんだったらさっさと行動起こしなよ!』

リヴァイ(ミカサ)『ただ、その女の情報が少な過ぎるんだ』

ハンジ(エレン)『………名前も分かんないの?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだ。聞きそびれた。今、どこで何をしているのかも分からない。いや、再会したとしても、向こうが俺の事を覚えているかどうかも分からない。………凄く昔に会ったきりの女なんだ』

ハンジ(エレン)『NOOOOOなんてこった………それじゃあその子をどうやって探せばいいのか』

リヴァイ(ミカサ)『探す方法がない訳じゃない。でも、会ってしまったら、俺はどうすればいいのか分からなくなると思う』

ハンジ(エレン)『そうなの? ううーん。でもそれって、その人に「恋」しているんじゃないの?』

リヴァイ(ミカサ)『周りからはそう何度か指摘されたけど、俺自身、良く分からない。探すべきなのか。探さないべきか……』

ハンジ(エレン)『ぬううううう……』

ハンジ先生も頭を悩ませたそうだ。下手な事は言えないと思って。

ハンジ(エレン)『情報が少ないっていうのは痛いかもしれないね。もし万が一、相手を間違えたら目も当てられないし。それにもし会えたとしても、それでうまくいくとも限らないしね。相手の気持ちの問題もある訳だし』

リヴァイ(ミカサ)『だろう?』

目の前にいるんだけどな。という皆の心のツッコミがきっとこの瞬間、重なったと思う。

…………ん? 何だ? オレ、間違った事言ってないよな?

ハンジ(エレン)『ぬー! 協力してあげたいけど難しいね。手がかりはないの?』

リヴァイ(ミカサ)『外見は……唯一俺が自分からナンパした女に酷似していた。ハンジより一回り小さい女で、とても綺麗な女だったよ』

ハンジ(エレン)『ああ、なるほど。その女の人に「似ていたから」ナンパしたのか。納得だね!』

もう、ぷークスクスの笑いが止まらない。

ハンジ先生は当時、まさかこれが「自分」の事だとは全く思っていなかったそうだ。

ハンジ(エレン)『もーリヴァイがどんどん先に行っちゃうね~そっか……でも年齢を考えたら、やっぱりリヴァイの方が先に結婚するべきだよ。三十路なんだから。そろそろいいよね。身を固めても』

リヴァイ(ミカサ)『あんまり三十路を連呼しないでくれ。悲しくなるだろ』

ハンジ(エレン)『いいじゃん三十路~おめでとう三十路~なんか響きがいいじゃない。三十路って言う』

リヴァイ(ミカサ)『3回も言うな。しみじみと沁みるだろ』

ハンジ(エレン)『キリがいいからいいじゃない。でもそっか……好きな人、いるのかー』

と、ちょっとだけ寂しそうな顔をするハンジ先生だった。

ハンジ(エレン)『その恋がいつか叶うといいね。もしかしたら、ずっと願い続けたら叶うかもしれないよ?』

リヴァイ(ミカサ)『そうだろうか?』

ハンジ(エレン)『うん。人生分かんないもんだよ? どう転ぶかなんて。祈ってみてもいいんじゃない』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジも祈ってくれるのか?』

ハンジ(エレン)『そりゃ応援しますよ! リヴァイがその人と幸せな結婚が出来ますようにって!』

リヴァイ(ミカサ)『ふっ……そうか。ありがとう』

そう言いながらその時のリヴァイ先生は目を閉じて少しベッドの中で眠ったそうだ。

そんなリヴァイ先生にハンジ先生は少しだけ複雑そうな表情に変わって言ったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『いいなあ。リヴァイに愛されている、その女の人、羨ましいなあ』

という、とんちんかんな事態に陥っているのに、気づいていないのは本人達だけという。

まさかの奇妙な恋愛模様を、この頃、描いていたのだという。

恐らく、オレの勘ではあるけれど、この時のリヴァイ先生は、ハンジ先生への想いから逃げる為に、夢の中の「もう一人の女」に自分の気持ちを寄せたんじゃないかとも思う。

視線の先をずらす為というべきか。ハンジ先生に余り深入りしないようにする為に夢の中に「逃げた」んじゃないかって思う。

まあその辺は、ツッコミ入れた方がいいのか。いや、入れない方がいいのか。分からないけど。

当時、若干1名は常に「イライラ」しながらそれを見守り、もう1名は「ニコニコ」しながら見守ったそうだ。

そしてフェードアウト。元気になったリヴァイ先生が職場復帰して場転。

職員会議中。ハンジ先生が居眠りして船を漕いだ。

リヴァイ先生はつついたり、蹴ったりして途中で何度も起こすけど、やっぱり寝てしまう。

もうあんまり何度も居眠りするから、脇腹を狙って突いてやろう思って手を伸ばしたら……

狙いを外してしまって胸に当たってしまうと言う場面だ。

ハンジ(エレン)『はにゃ?!』

おい、ミカサ! 今、胸というか、乳首ピンポイントで狙いやがったな!

狙い通りって顔しやがって……ちょっと喘ぎ声に近い声になりかけたぞ! あぶねー!

職員室はざわめいている。すぐリヴァイ先生は「すまない」と謝ったそうだが。

この時の事は、今でもはっきり覚えているそうだ。会議が終わってから一言。

リヴァイ(ミカサ)『……ちゃんと柔らかかったな』

ハンジ(エレン)『触っておきながら失礼な事言わないで! 一応、胸ありますよ? サイズ小さいけど!!!』

リヴァイ(ミカサ)『あ、いや、すまんすまん。そういう意味じゃないんだが』

ハンジ(エレン)『もーどっちでもいいけど! 流石に胸突いて起こすのは止めてよ。恥ずかしい……』

リヴァイ(ミカサ)『………………居眠りするハンジが悪い』

ハンジ(エレン)『まあそうなんだけどさー。いいじゃんちょっとくらい』

リヴァイ(ミカサ)『居眠りする度にセクハラしてやってもいいんだが?』

ハンジ(エレン)『はい大丈夫です! しゃきっと起きます! (シャキーン)』

リヴァイ(ミカサ)『………ふん』

とまあ、完全に夫婦漫才だったそうだ。

しかしこの頃、徐々に別のとある問題が発生しつつあった。

そう。リヴァイ先生が徐々に「恋心」を自身の内側に抱え始めた頃。

自分でも無意識のうちにフェロモンのような物を内側から発生させていたのだ。

所謂、「恋をすると綺麗になる」っていうアレだな。

リヴァイ先生のファンクラブの「原型」のような物がちらほら出来始めたのがこの「三十路」を越えた時期だったそうで、正式に「未公認ファンクラブ」が出来始めたのがその4年後あたりになるそうだ。

まあ当然の事と言えば当然かもしれない。人は恋をすると変わり始めるからな。

無意識に押し込めて封印をかけたとは言え、ここからリヴァイ先生のフェロモン過多は加速していったそうなんだ。

そのフェロモン過多状態に気づいたのは、まあ、エルヴィン先生やミケ先生あたりだったそうだけど。

1番最初に気づいたのはピクシス先生だったそうだ。そりゃそうだよな。年の功ってやつだろう。

そしてこの3年後。つまり今度はハンジ先生が30歳、三十路になる年の事だ。

リヴァイ先生は今度は自分がハンジ先生になにかサプライズをしないといけないとはりきっていたそうだが、ハンジ先生自身は「サプライズするより普通に居酒屋連れてってよ」と言い出したそうだ。

場転。時間経過のナレーションを入れた後、2人は居酒屋で飲んでいるシーンから再開する。

リヴァイ(ミカサ)『やれやれ。本当に良かったのか?』

ハンジ(エレン)『何がー?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ハンジの折角の三十路の記念が、こんないつもの居酒屋で過ごしていいものかと』

ハンジ(エレン)『今日は平日だしね。別にいいよ~』

リヴァイ(ミカサ)『いやしかし、俺の時と比べると随分質素というか、その……』

ハンジ(エレン)『すんませんーお摘み、枝豆を追加でー』

女将(スカーレット)『はいはい。枝豆どうぞ』

ハンジ(エレン)『あざーす!』

ハンジ(エレン)『で、何の話だったっけ?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、ここの代金、全額奢るだけで本当にいいのかって話だが』

ハンジ(エレン)『十分だよ! ありがとうね! あービール美味しい♪』

リヴァイ(ミカサ)『…………そうか』

ハンジ(エレン)『いや、本当に気にしなくていいからね? リヴァイの三十路の時、結局失敗しちゃっているし?』

リヴァイ(ミカサ)『大成功だろ。社交ダンスは今でも十分役立っている。特に演劇部の顧問に移動になってからは、演劇の舞台でも指導するようになった。シンデレラとかの舞踏会のシーンを本格的に演じられるようになって部員たちも喜んでいたよ』

ハンジ(エレン)『おお! 瓢箪から駒ですね! 思いがけないところで役だったんだ』

リヴァイ(ミカサ)『ああ。俺の場合は役者の経験はないが、裏方と殺陣と社交ダンスのおかげでそれなりに顧問として協力出来ている。体操部の方も元々運動神経があるおかげでそれなりに指導出来るし、今のところ、掛け持ちしているとはいえ問題は起きていない』

ハンジ(エレン)『体操部の方はむしろ殆どリヴァイに丸投げに近いけどね。御免ね。私、生物部が本命で。次は漫研で、その後に女子体操部だし……』

リヴァイ(ミカサ)『顧問を受け持った順番がその順番だから仕方がねえだろ。ただ、合宿の時とかは女子の方まで手が回らないからハンジにも協力して貰わないと困るぞ』

そう言えば、夏合宿の時に行方不明になったハンジ先生に対して超キレてたな。

今思うと、相当焦っていたんだと思う。あの時のリヴァイ先生。

ハンジ(エレン)『うん。それは分かってるよ。………あー今、リヴァイ、32歳だよね』

リヴァイ(ミカサ)『12月で33歳になるが、何か?』

ハンジ(エレン)『あーいや、やっぱりまだ見つからないの? リヴァイの「好きな人」』

リヴァイ(ミカサ)『ぶふー!』

ハンジ(エレン)『ちょっと! 吹き過ぎ! 何でそんなに動揺してるの???』

リヴァイ(ミカサ)『いきなりその話をされるとは思わなかったからだ』

ハンジ(エレン)『あー御免御免。で、どうなの? 見つからないの?』

リヴァイ(ミカサ)『………というより、探してはいない』

ハンジ(エレン)『ええ? 何で探さないの? 探す手段はあるんでしょ?』

リヴァイ(ミカサ)『あるにはあるが、その場合、尤も知られたくない人物に自分からコンタクトしないといけないというデメリットが発生する』

つまりピクシス先生の事だな。ククク……。

ピクシス先生、ニヤニヤして舞台見ているなあ。

ハンジ(エレン)『そ、そうだったんだ。御免』

リヴァイ(ミカサ)『いや、それにその「女」についてはもう、半分諦めてもいる。もしかしたら相手は結婚している可能性だってあるしな』

ハンジ(エレン)『年いくつだったの?』

リヴァイ(ミカサ)『多分、ハンジと同じかそれ以下くらいか? あの時の見た目から計算して、今は30歳~25歳くらいだとは思うが』

ハンジ(エレン)『相手の年もはっきり分からないんだ……』

リヴァイ(ミカサ)『言っただろ? 情報が少ないんだって』

ハンジ(エレン)『それってもう、ほとんど「一目惚れ」に近かったんだね』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、ある意味じゃそうかもしれん』

ハンジ(エレン)『うーらーやーまー! いいなあそういうの! しかもずっと思っているっていうのも、凄いよね!』

リヴァイ(ミカサ)『別に凄い事じゃない。こういうのはただの「女々しい」っていうんだよ』

ハンジ(エレン)『そうなの? でもそれだけ印象に残っているなら、やっぱり本格的に探した方がいいんじゃ……』

リヴァイ(ミカサ)(ズーン)

ハンジ(エレン)『あ、ごめん。余程のデメリットが発生するんだね。これ以上は聞かないよ』

クスクス笑いが会場に響く。ピクシス先生が『失礼な奴め』とニヤニヤしていた。

リヴァイ(ミカサ)『…………ハンジは相変わらず「波兵さん」タイプを探しているのか?』

ハンジ(エレン)『ん~? 見つかんないね! 流石に無理かも! あははは!』

リヴァイ(ミカサ)『むしろそういう古風なタイプは「お見合い」の方が見つけやすいんじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『どうだろうね? そもそも2次元を理想にしている時点でアウトな気もするんだけどな。私』

リヴァイ(ミカサ)『そんな事はないだろ。あくまで「イメージ」だ。そんな事言い出したらエルヴィンはどうなる。あいつ、いろんな女キャラに浮気しまくっているぞ』

ハンジ(エレン)『そうなんだwwwww』

リヴァイ(ミカサ)『乱馬1/2のあかねちゃんとか……ツンデレとかいうジャンルの女キャラが好きとか言っていたような』

ハンジ(エレン)『じゃあ、そういうのって持っていてもいいのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『2次元も3次元もさほど差はない。芸能人で好きなタイプを例えるのとそこまで大差ない。……以前付き合っていたマリアも似たような事を言っていた』

ハンジ(エレン)『あ、元彼女と連絡とり合ってるの?』

リヴァイ(ミカサ)『もう人妻だから手紙でのやりとりだ。メールじゃないけど、たまに連絡をくれる。海外に住んでいるから、向こうは日本よりオタク文化が大らかだけど、新刊の発売日がずれたり、定価が変わったりする事もあるから不便だとか何とか不満を漏らしていたよ。まだまだオタクを続けているそうだ。最初、自分の趣味が許嫁にバレた時は修羅場になったそうだが、日本のアニメを見せつけて逆に相手を染めてやったそうだ。今では夫婦でオタク生活をしているそうだ』

ハンジ(エレン)『強いwwwwwマジかwwwwウケるwwwww』

リヴァイ(ミカサ)『手紙には子供の写真も写っていた。セレブなオタクっていう変わった子だったが……幸せそうで何よりだ』

ハンジ(エレン)『ふーん。リヴァイ、その子の事、結構気に入っていたんだね』

リヴァイ(ミカサ)『気を遣わない相手だった。一緒に居て楽しい女だったな。付き合っていた当時はとにかく時間の許す限り遊びまくったよ。ただ、日程がなかなか合わなくて、コミケツアーにだけは一緒に連れていけなかったのが唯一の心残りだな』

ハンジ(エレン)『そっかー。あの頃ちょっと忙しそうだったのは真剣に交際していたからだったんだねー』

リヴァイ(ミカサ)『ハンジもハンジで相手がいたしな。モテ期だったんだろ?』

ハンジ(エレン)『うーん。どうなんだろ? でも汚部屋で幻滅されて逃げられたからね。何で男の人って女の部屋をチェックしたがるんだろ? そんなにそこ、大事なのかな?』

リヴァイ(ミカサ)『部屋はその相手の「人格」が現れる場所だからじゃないのか?』

ハンジ(エレン)『性格を判断する為に見るって事?』

リヴァイ(ミカサ)『だと思うぞ。部屋の感じを見れば相手の雰囲気が大体分かるだろ。ハンジの場合は「興味のある事」にはとことん愛情を注いで「その他」が大雑把になりやすい』

ハンジ(エレン)『おおおお……確かにその通りだね』

リヴァイ(ミカサ)『集中力が「有り過ぎる」んだろうな。恐らく。だからそれに没頭していると、他がおざなりになる。だからこそ仕事も早い。ハンジ自身が「その他」にも少し興味を注げば、部屋の片づけもうまく行くと思うんだが』

ハンジ(エレン)『無理だよー。それが出来れば苦労はしないよー』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、もうその辺は諦めるしかない部分かもしれんが。………家事の出来る男と付き合えば済む話だしな』

ビールを飲みながら続ける。ここは真剣に真剣に話したそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『ハンジ。お前の場合は本気で「専業主夫」に近い男を探した方がいいのかもしれんぞ』

ハンジ(エレン)『へ? そう思う?』

リヴァイ(ミカサ)『探せばいると思うんだがな……今の時代、男でも家事が万能な奴はそこそこいるだろ。勿論、間違えて「ヒモ」に成り下がる男は選んだらいかんが……お見合い、してみたらどうだ?』

ハンジ(エレン)『えーまたその話ー? 本当、リヴァイは世話焼きババアだねえ』

リヴァイ(ミカサ)『少しは真面目に聞いてくれ。もうお前も三十路に突入した。二十代のうちならいろんな相手を選べるかもしれんが、年齢を重ねて行けば、相手もだんだん少なくなってくる。「選択」出来る時間は限られているんだぞ』

ハンジ(エレン)『その台詞、そのままそっくりお返ししますー』

リヴァイ(ミカサ)『馬鹿言うな。男は独身でも、別に構わんだろ。女とは生き方が違う』

ハンジ(エレン)『いつの時代の男の考え方なのよー。今は平成ですよー?』

リヴァイ(ミカサ)『年号は関係ないだろ。お前、女が子供を産まないでいる場合の乳癌等のリスクの高さ、知らないのか?』

ハンジ(エレン)『うぐ……!』

と、ハンジ先生にとっては鬼門とも言える部分から責めてきたからハンジ先生も閉口したそうだ。

ハンジ(エレン)『……そういう生物学的観点から言われると私も弱いのよね。分かってる。自然の摂理に反する事をすれば、それだけ「リスク」を抱えるって事は……』

リヴァイ(ミカサ)『だったら………』

ハンジ(エレン)『そりゃあね、理想は二十代前半くらいに異性と結婚して第一子を産んで育てて……が女の一番、いい生き方だって事は頭では分かっていたんだけどね?』

と、ハンジ先生はビール片手に真剣に答えたそうだ。

ハンジ(エレン)『でも、選べなかったんだよね。だって、私、それ「以前」の問題を抱えているんだもの』

リヴァイ(ミカサ)『それ以前?』

ハンジ(エレン)『だからー「好きな人」がいないのよ。異性を「本気で好きになる」感覚が未だに分からないの』

リヴァイ(ミカサ)『……………』

ハンジ(エレン)『リヴァイの場合、流されてきたとはいえ、大きいのから小さいのまで、いろいろ「恋」っぽい事はしてきているじゃないの。私より恋愛経験は豊富じゃない』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺の場合もその……「恋愛」に定義していいのか良く分からん場合も多々あったが……』

ハンジ(エレン)『それでも、私が知らない物も含めて、少なくとも私よりはマシ! まあ……振られた時は流石に凹んだりもしたけど。でも案外、すぐ立ち直ったんだよね。勿論、ミケ先生がいい人だったっていうのもあるけど。今はたまーにノミニケーションに一緒に行くくらいの関係だし。そういう「距離」の関係でも、意外と大丈夫だなって思った。でもこれ、恋愛じゃないし。ん~なんか良く分かんなくなってきたあああ』

と、頭をコツコツ拳で叩く。

ハンジ(エレン)『そりゃあ私だって、ぐっときてぱっと花咲く恋が出来れば、結婚だって夢みたいですよ! でも、私を動かしてくれる「相手」がなかなか見つかんないんだもん! お見合いなんかしたら、もし「ダメ」だった場合が断りづらいでしょうが! 普通に付き合い始めるのより気遣っちゃうでしょうが! 結婚を前提だと尚更だよ!! こう、恋愛マニュアルみたいなものって世の中に沢山あるけど、そこに「答え」は載ってないし! もう面倒臭いから、今のままでいいよ!!!』

と、どんどんぐだまいてビールを煽るハンジ先生だったそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『……………そうか』

なんか勢いに負けたそうだ。リヴァイ先生も言い過ぎたと反省したそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『分かった。俺も言い過ぎた。今回はこれ以上は言わない』

ハンジ(エレン)『今回は? 今後も出来れば控えて欲しいんだけど?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、俺もそう簡単には引き下がらない。俺はハンジには本気で幸せになって欲しいと願っているんだよ』

ハンジ(エレン)『え? 何で』

リヴァイ(ミカサ)『知らん。理屈じゃない。そう「思う」んだからしょうがねえだろ』

この瞬間、会場はまた失笑の渦が起きた。

このシーン、今の時点から見ると「笑うしかない」よな。本当に。

ハンジ(エレン)『ええええええ………』

リヴァイ(ミカサ)『いい男さえ見つかれば結婚していいっていうなら、探すしかないだろ。条件に合う男を』

ハンジ(エレン)『それはそうなんですけどー……リヴァイ、ちょっと酔ってる?』

リヴァイ(ミカサ)『かもな。あ……まずい。今日俺が運転していたんだった。これ以上はまずいな』

ハンジ(エレン)『あ、そうだったね! ごめん! うっかり飲ませちゃったよ! 帰りどうしよう!』

リヴァイ(ミカサ)『まあ、この程度ならすぐ酔いも醒めるからこれ以上は飲まないでいればいい』

ハンジ(エレン)『こら! 飲酒運転はダメ絶対! 教師でしょ! 私達は!』

リヴァイ(ミカサ)『あーそれもそうだったか。すまんすまん』

ハンジ(エレン)『やっぱり酔ってるね! こりゃダメだ。これ以上は飲んじゃダメだよ。今日は酔いが早いね。疲れてたの?』

リヴァイ(ミカサ)『そりゃ掛け持ちで顧問やってりゃ忙しくもなる。疲れは溜まってる。精神的にな』

ハンジ(エレン)『それ先に言ってよー。何も誕生日に無理やり飲み屋入らなくても良かったのに。休みの日でも良かったのに』

リヴァイ(ミカサ)『馬鹿言うな。そこは多少体調悪くても相手に合わせるもんだろ』

ハンジ(エレン)『無理される方の身にもなって下さい! もう、どうしょう? お会計して、酔い冷ます?』

リヴァイ(ミカサ)『もう満足したのか? 普段より飲んでない気がするが』

ハンジ(エレン)『明日もお仕事あるんだから本気じゃ飲まないってば。今日は軽く酔えればいいの。帰ろうか。代行で』

リヴァイ(ミカサ)『…………今何時だ? あ、12時過ぎたか』

ハンジ(エレン)『うん。今日はもうこの辺でイイよ。今日はその……何かごめんね?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、別にいい。俺も説教し過ぎたかな。すまん』

ハンジ(エレン)『いやまあ、そこまで真剣に思ってくれるとは思いもよらなくてね。そこは嬉しかったから。いいよ』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……』

ハンジ(エレン)『………来年も、ここで飲もうか』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『私の誕生日。来年もまたここに来るようにしようか。今日みたいに、いろいろ話すの』

リヴァイ(ミカサ)『分かった。じゃあ来年も説教してやるからな。未婚のままだったら』

ハンジ(エレン)『あーはいはい。………それでいいよ。もう』

リヴァイ(ミカサ)『ん?』

ハンジ(エレン)『いや、何でもない。帰ろうか。すみません。会計お願いしまーす』







マリーナ『そんな訳で、ハンジ先生が三十路になった年を記念にして、以後2人は同じ飲み屋で良く飲むようになります』

マリーナ『その時の様子を目撃したりする他の教師もいたそうですが、彼らはあえて「声」はかけずに、そろーっと退散したそうです』

マリーナ『2人の事はもう、学校内の「暗黙の了解」のような扱いになっており』

マリーナ『また、それに対する憶測についても、特に否定する材料がありません』

マリーナ『傍から見ればただの「バカップル」にしか見えない状態ですが、それに気づかないのは本人達だけ』

マリーナ『そして少しの時が過ぎて、リヴァイ先生が38歳の年、つまり昨年の臨海学校の時に、また事件が起きます』

マリーナ『その時の事も、これから振り返っていきましょう……』





ハンジ(エレン)『へへへ~2年の担任になると海に来れるのが嬉しいね!』

リヴァイ(ミカサ)『はしゃぐなよ。あくまで臨海学校だからな』

ハンジ(エレン)『3泊4日も居られるなんて贅沢だねえ。いやっほおおおおおお!』

リヴァイ(ミカサ)『はしゃぐなって言っただろ! 全く……』

そして生徒達を監視しながら浜辺でのんびりしていたら……

女子生徒1(ペトラ)『リヴァイ先生、大変です!!!!』

男子生徒1(オルオ)『2組のニファが、かなり沖の方に流されています!!!』

リヴァイ(ミカサ)『何だって?! 何処だ』

ハンジ(エレン)『え……ニファが?! 何処?!』

女子生徒1(ペトラ)『あそこです! 見えますか?!』

ハンジ(エレン)『!!!!』

ここでハンジ先生、先にダッシュしてニファ先輩を助けに行ったそうなんだ。

自分のクラスの生徒だからな。当然かもしれないが、この時のハンジ先生は溺れかけているニファ先輩に気を取られ過ぎたんだ。

リヴァイ(ミカサ)『おい、ハンジ!!!!!』

制止を振り切って海に飛び込んで先に助けに行くハンジ先生だった。

リヴァイ(ミカサ)『あの馬鹿! あのエリアは離岸流の……』

離岸流というのは、巻き込まれると太平洋側、もしくは日本海側の「海」の方に流れていく急流の事だ。

これに巻き込まれると、途端に人は流される。だから離岸流のエリア付近は必ず目印があり、そこに近づかないように注意が促されるのだが。

ごく稀に、離岸流の位置が微妙に「変化」して、それに巻き込まれている事に気づかないまま、海の方に投げ出される場合があるそうだ。

ニファ先輩もこの時、自分が遠くまで来ている事に遅れて気づいて慌てたそうだ。

巻き込まれたら二次災害も十分あり得る。それを承知でリヴァイ先生は慌てて追いかけたそうだ。

もし離岸流に巻き込まれた場合は、とにかく「横」に移動していくしかない。

つまり「横泳ぎ」で流れから逃げるしかないそうなんだが、それは素人が出来るかと言われればかなり難しい技術だ。

幸いリヴァイ先生は「その救助方法」を知っていた。しかしハンジ先生はその事を知らなかったようで、ただ「助けなきゃ」という思いで体が先に動いてしまったそうだ。

>>746
訂正。
マリーナ『そして少しの時が過ぎて、リヴァイ先生が38歳になる年、つまり昨年の臨海学校の時に、また事件が起きます』

微妙に言い回しを間違えた。「38歳になる年」つまり臨海学校の時点ではまだ37歳です。
面倒臭くてすみません。要は去年の夏です。

だからハンジ先生はニファ先輩のところに追いついたものの、そこで意識を失い、一緒に溺れそうになった。

ハンジ先生も巻き込まれかけたその時、リヴァイ先生も自身の体を限界まで高めて二人を救出したそうだ。

その意識がない間、ハンジ先生は、しばし夢のような世界を味わったそうだ。

劇中では、その様子を「回想」シーンとして使用させて頂く。






ここで、高校時代のハンジ先生が登場する。

高校生ハンジ(エレン)『トキメキ?』

エルヴィン(アーロン)『そう、トキメキ。それがないと、ダメなんだよ』

高校生ハンジ(エレン)『いつか、私もトキメキに出会えるかなあ?』

エルヴィン(アーロン)『大丈夫。ハンジがハンジらしく生きられる人にいつか出会えれば、必ず………』



ザーザー雑音が入る。ノイズだ。

そして大学生のハンジ先生が登場する。



大学生ハンジ(エレン)『いや……やめて下さい!!! 何で……いやああああ!!!』

大学生ハンジ(エレン)『何で、何で…? 何で女ってだけでこんなに嫌な目に遭わないといけないの?』

大学生ハンジ(エレン)『嫌だ。女で居たくない。私の事を、女として見ないで欲しい』

大学生ハンジ(エレン)『私は今日から……「女」を捨てる!!!!』



ここ、本当はセクハラシーン入れるつもりだったけど、ミカサが「どうしても嫌だ」って言い出したので声とパントマイムだけに変更になった。

俺が他の奴らに弄られるシーンなんて見たくないんだそうだ。

エルヴィン先生もミカサの涙には弱かったようで「だったら工夫する」と言ってこの方法に変えてくれた。

こういうところ、優しいよな。エルヴィン先生。オレも正直ここは変更になって感謝している。





暗転。さあ、いよいよ人工呼吸のシーンだ。

観客が「おおおおお」とざわめいていた。ここは本当にガチで唇重ねて人工呼吸のシーンを演じる事にしたからだ。

まあ、ここはオレとミカサだから出来る事だな。うん。恥ずかしいけど。

ミカサにキスされるのであれば、どこでも構わん! 観られても構わん!

………最近、オレもだんだんふてぶてしくなったよな。

「人前でキスなんて」とか思っていた頃が懐かしい。

ニファ先輩は別の先生が助けて、意識が回復したところから再開。

実際、意識を取り戻したのはニファ先輩が先だったそうだ。

以前、ニファ先輩がやけにハンジ先生を気遣っていた理由が分かった気がする。

恐らくこの時にニファ先輩はリヴァイ先生に惚れたと同時に、真っ先に助けに来てくれたハンジ先生にも感謝したんだと思う。

そして遅れてハンジ先生も意識を覚醒。急き込んで何とか体を起こす。

ハンジ(エレン)『げほげほげほ!!!』

リヴァイ(ミカサ)『大丈夫か? ハンジ……俺が分かるか?』

ハンジ(エレン)『リヴァイ…………ごめん……私、かえって足手まといに……』

リヴァイ(ミカサ)『言うな。助かったからもういい。とにかく、助かって良かった』

「おおおおおおお」という轟きが起きた。

ラブシーン勃発だ。実際、ここで本当にリヴァイ先生、ハンジ先生を抱きしめたそうだ。

リヴァイ(ミカサ)『だがもう2度と、無茶な真似はするな。離岸流に巻き込まれた時の救助方法は、慣れている人間でも難しいんだぞ。素人が行って助けられるものじゃない』

ハンジ(エレン)『…………ごめん。本当に、ごめん……リヴァイ………ッ』

涙を零して抱擁し合ったそうだ。

この時の様子を見ていた教員はその余りのラブシーンに、助かった事以上に赤面していたそうだ。

まるで映画のワンシーンのような情景に先生達も困ったけれど、生徒の命が助かった事をまず確認して、この時の騒ぎは後日、のちの臨海学校の日程短縮へと影響を与えた。

リヴァイ(ミカサ)『はー………本当に、良かった』

くたっと、力を無くしてハンジ先生にもたれ掛かる。そしてここで、エンディングソングが流れ始める。

そう、流す曲は当然、「ときめきの導火線」だ!

ハンジ(エレン)『り、リヴァイ……?』

リヴァイ(ミカサ)『頼むからもう、俺より先に死ぬな。先に死なれたら、俺は………』

ハンジ(エレン)『え? え?』

リヴァイ(ミカサ)『いや、何でもない。でもお前、生徒の為に俺より先に動いたな』

ハンジ(エレン)『だって、だって、自分のクラスの子が溺れそうになっていたんだよ? 当然でしょ? 助けに行くよ!』

リヴァイ(ミカサ)『そうか……いや、お前も立派な「教師」だな。でもそういう「危ない」事は全部俺に任せろ。そういう時の為に俺はここにいる』

ハンジ(エレン)『え……でも!』

リヴァイ(ミカサ)『いいから聞け。俺はお前をなくしたくないんだ。お前は俺にとって、大事な………』

ピクシス(アルミン)『あーラブシーンの最中、すまんが、続きは民宿に戻ってからにして貰えんか?』


びくー!!!!


と、慌てて離れる2人に会場も爆笑した。

もう今更だけど。なんか可愛いよな。このシーン。

リヴァイ(ミカサ)『あ、ピクシス先生……』

ピクシス(アルミン)『とりあえず一旦、帰るぞ。海の事故が起きかけた以上、緊急職員会議じゃ。皆、集まるぞ』

リヴァイ(ミカサ)『はい。ハンジ、立てるか?』

ハンジ(エレン)『うん。大丈夫……』

2人で手を繋いで舞台をはける。ときめきの導火線が流れながら、1人だけ、複雑そうな表情で残るニファ先輩。

苦しそうに俯いて、そして舞台をはける。その様子にハンジ先生は全く気付かない。

ハンジ先生が舞台に1人で戻ってくる。




ハンジ(エレン)『……………あの時、リヴァイ、何を言いかけたんだろ?』

ハンジ(エレン)『いつもと表情が違った。真剣で、泣きそうで、あんな顔、初めて見たよ』

ハンジ(エレン)『…………あれ? 何か、うーん?』

ハンジ(エレン)『ふー……』

ハンジ(エレン)『体が熱いのかな? 熱っぽい気がするんだけど?』

ハンジ(エレン)『ああ、さっき溺れかけたからかな? 体力消耗したもんね』

ハンジ(エレン)『後でポリビタンCをリヴァイに貰おうっと……』






そして舞台からはけて、ここで舞台はお仕舞だ。これでこの長丁場の舞台はお仕舞になる。

今回の劇は、最後の年までは公演しなかった。何故かって?

そんなのやったら、5時間かけても劇が終わらねえからだよ!!!

相当長丁場だったんだ。最初は1時間半で脚本を構成していたのに、結局最後は2時間越えるくらいの演劇になった。

もうアレだよ。本当はもっと入れたかったエピソード、一杯あったけどな!

この辺でいいだろ! ってリヴァイ先生がぶち切った。残りは質疑応答コーナーで詳しく答えるそうだ。

幕が閉まっていく。ときめきの導火線に合わせて。

幕が1度、閉まり終わって再び開くと、エンドロールだ。

侍恋歌の時のように、皆で踊ると時間が大変なので今回は一斉に集合だ!

全員を紹介すると大変な数なのでここはメインのオレとミカサが代表してジャンの横に立つ。残りのメンバーは少し下がって、待機だ。

ジャン『えー、いかがでしたでしょうか? リヴァイ先生とハンジ先生の再現劇「愛ある選択」はこれにて終了になりますが、むしろ2人の物語はここからが急展開になります。その一部始終については、ちょっとここでは話せないので、残りは本人にバトンタッチします。リヴァイ先生、続きを宜しくお願いします!!!』


パチパチ……パチパチ……


拍手が沸いてリヴァイ先生が立ち上がる。そしてこの後のエピソードを大体、自分で説明してくれるようだ。

リヴァイ『あー……その、なんだ。すまん。その………簡単に言ってしまえば、過去の俺は「アホ」だったという事だ』

と、言い出したから皆が一斉に笑い出した。

リヴァイ『ハンジの事が本当に好きだと気づいたのは、アレだ。文化祭で皆の前でキスした時だ。あの瞬間まで、俺はハンジの事を好きでいる自分を完全に「封印」していた。ハンジ自身が「友人」でいる事を望んでいると思っていたからな』

ハンジ『あーその説は本当、ごめんなさい』

リヴァイ『全くだ。あの時、お前が「ほっぺにチューなら」なんて誘惑するからいけない』

ハンジ『ちょっと、ほっぺ指定したのに唇きたのはそっちでしょ! しかもガムテ越しだったし?!』

と、暴露すると「えええ?!」という声があがった。

生徒が「偽キスだったんですかー?」と言い出したのでリヴァイ先生が答えた。

リヴァイ『ああ。あの文化祭でのキスは「偽キス」だった。というか、ガムテ貼ってからやってなかったら、多分、俺は暴走してそのままハンジを押し倒してベロチューして、放送できないところまでやっていた可能性もある』

とか言い出したから皆、一斉に吹いた。

ハンジ『ちょっとおおお放送出来ないってどういう意味よおおおお!』

リヴァイ『そのままの意味だが?』

ハンジ『アホか! いくらなんでもそれは大げさでしょ?!』

リヴァイ『いいや? 割とマジだ。ガムテ貼らないでキスしていたら、絶対ベロチューやっていたと思うし、服をそこで脱がしてそのまま……』

ハンジ先生が蹴った。流石に自重しろという事らしい。

リヴァイ『……すまん。そう言う訳で、俺は相当前からハンジの事が好きだったんだが、本当の意味でそれに気づいたのはここ最近で、気持ちが爆発して押し倒して強引に結婚を申し込んで今に至る』

すげえ端折り方だwwwww酷過ぎるwwwww

リヴァイ『でもそうだな……エレン。ミカサ。お前たち2人が、俺とハンジをくっつけてくれた恋のキューピットだな。2人がいなかったら、俺達は結婚までゴールしなかったと思う。本当にありがとう』

エレン『ええ? そんな大した事してないですよ』

ミカサ『むしろ最初は「振られろ」と祈ってましたけど?』

皆が吹いたwwwwミカサのドS発言に。

リヴァイ『そうか。祈りが届かなくて残念だったな』

ハンジ『いやー事実上、1回振ったようなもんだけどね。うん。「もう私、あんたに甘えるのやめる」みたいな事を言ったし』

リヴァイ『その時の事はもう、思い出させないでくれ。死にそうになる……』

あははは! 皆で苦笑いだ。あの時の事は大体皆知ってるからな。

ハンジ『あー……ごめんごめん。エルヴィンから後で聞いた。私が離れた後、リヴァイ、死んだ魚のような目でのたれ死にそうになってたって?』

リヴァイ『息、止まったかと思った。心臓もな。身が凍るという事をあの時、初めて感じたよ。俺はもう、ハンジ無しじゃ生きていけないと悟った。あの時に』

ヒューヒュー♪ さり気に惚気て皆が揶揄する。

ハンジ『え……そ、そんなに? そんなに動揺していたんだ』

リヴァイ『ああ。支えて貰わないと移動も出来ない程落ち込んだ。ハンジ、もう俺を捨てないでくれ』

ハンジ『えええええ? まさかの発言だね! いや、ちょっと……大丈夫だから! 心配し過ぎだから! 顔あげて!』

と、わいわいやっていると、

ピクシス『あー夫婦の語らいは家に帰ってからゆっくりやりなさい。ところでリヴァイ、ひとつ聞きたいのじゃが』

リヴァイ『何ですか?』

ピクシス『お主、教習時代のハンジと今のハンジが「同一人物」だと気づいたのはいつ頃だったんじゃ?』

リヴァイ『ああ、その件は今年の文化祭前ですよ。正確な日付までは覚えていませんが……アレはいつだったかな』

ハンジ『あー10月1日だったかな? あんたと喧嘩して仲直りした後、おにぎり貰って、その後学生食堂行ってお昼食べていたらモブリット先生も合流して……その時に教習時代の写真を見せたんじゃなかたっけ?』

リヴァイ『さすがハンジだな。俺はそこまで詳細には覚えていなかった。すまん……』

ハンジ『いや、いいって。ねえ……今更だけど、あんたのその、前に言っていた好きな人って、大学時代の「私」で本当に間違いないんだよね』

リヴァイ『ああ。間違いない』

ハンジ『だったらもっと早く言ってよー…もう、本人目の前にいますよ! 客観的に見たら本当、この物語はツッコミどころ満載じゃないの』

リヴァイ『……確かにその通りだな。すまん。俺がアホだったとしか言えない』

ピクシス『いや、でも同一人物だと気づいたのが10月1日だったのだとしたら、その後の態度も妙じゃったの。普通、もっとテンション上がらんか? お主、いつも通りに生活しておったよな?』

リヴァイ『あーその時はその、なんていいますか……その時点では、まだ頭の中が大分混乱していて……おまけに文化祭1日目のフィーリングカップルに無理やり代役に駆り出されたじゃないですか。あの時は本当に、心臓バクバクでしたよ。平静に見せるだけで精一杯でした』

ピクシス『ほほう? ではあのフィーリングカップルに参加していた時点では、もうハンジに惚れ込んでいた事を自覚しておったんじゃな?』

リヴァイ『ん~………いや、まだ認めたくない気持ちと戦っていました。でも、ハンジが目の前で両目を瞑ってキスの準備をした瞬間、「もうダメだ」と降参したようなもんです。あの時は本当に危なかった。ガムテを持ち歩いていなかったら、あれ以上の事を本当に……』

ハンジ『リヴァイ? 家に帰ってからお説教するよ?』

リヴァイ『あ、すまん。もう言わない(キリッ)』

もう尻に敷かれ始めているぞ。いいのかそれで!

あ、昼はリヴァイ先生が嫁の立場だったんだな。そう言えば。だからいいのか?

ピクシス『しかし長かったの~出会ってから籍入れるまでにトータルで16年かかっておるぞ。お主にとっては過去最長の恋愛劇じゃないのか?』

リヴァイ『おっしゃる通りです。本当に面目ない』

ピクシス『いやいや、長編大作も見ごたえがあるからハッピーエンドになりさえすれば全てよしじゃ。時間も時間じゃし、そろそろ最後の仕上げにいくか?』

リヴァイ『宜しいですか?』

ピクシス『質問がなければ、「ケーキ入刀」の準備に入らせて頂きますが、観客の皆様、何かございますでしょうか?』

(*安価です。観客に成りきって質問して下さい。リヴァイ先生とハンジ先生への疑問質問等があれば↓にどうぞ)

ベタなところで『子供は何人欲しいですか?』とか

大作乙!ミカサも初の大役良くやった!
リヴァイの好みの条件がどんどんハンジに寄っていって笑った
演ってる二人も突っ込みたくてたまらなかったろうなw

>>754
むしろツッコミどころしかない物語になってしまいました(笑)。
でもミカサから見たらエレンと共演して美味しいシーンを沢山演じられたので大満足だと思います。
頑張った甲斐あって、リヴァイ先生を辱められましたし(笑)。

OB「はいはい!」

ピクシス『ふむ、どうぞ』

OB「子供は何人欲しいですか?」

気の早い質問きたー! いや、年齢を考えたら早くもねえのかな?

ハンジ先生36歳だしな。作るつもりあるなら急いだ方がいいかもしれねえし。

そこでリヴァイ先生は一度ハンジ先生を見てから言った。

リヴァイ『あー…ハンジの体の状態次第だな。母体にどれくらい負担をかけるのか、俺にとっても未知数だし、出来る限り多く持ちたい気持ちはあるが、人数はハンジに任せようと思っている』

ここでも人に預けちゃうのか。リヴァイ先生、本当にそれでいいのかよ。

ハンジ『その辺は婦人科で検査を受けてから判断しないといけないね。神様がきっと人数を決めてくれると思うな』

というちょっとだけロマンチックな回答だった。

そうだった。ハンジ先生、その辺ロマンチストなんだよな。

リヴァイ『時間を見つけて早めにいかないといけないな。ただ……』

ハンジ『ん? 何?』

リヴァイ『子供が出来てしまったら今度はハンジの方が俺に構ってくれなくなるかもしれないと思うと、少しだけ複雑になるな』

ハンジ『ちょっとおおおおお?! 39歳の大人が何言い出すのおおおお?!』

リヴァイ『何を言う。その手の悩みは皆、俺より先に経験しているだろ。なあ、既婚者の男どもよ』

と、言うと既婚者で既に大きな子供を持っていると思われる年齢の男性が一斉に視線を逸らした。経験者のようだ。

全員、何の事か分からんな? みたいな空気だった。

ピクシス『それを言ったら台無しじゃて。お主も子供よのう……』

リヴァイ『まだ暫くは新婚気分を味わいたい気持ちと、早く子供が欲しい気持ちが半々ですかね。実際に出来たらまた意見が変わるかもしれませんが』

ピクシス『お主の場合は子供が出来たら、親馬鹿街道まっしぐらになりそうな気がするが』

リヴァイ『かもしれません。出来るなら、女の子が欲しい』

おおおお? 意外な発言だった。

それってエルヴィン先生の嫁候補になるのに。いいのかな?

ピクシス『本当にいいのか? エルヴィン、あやつは本気でロリコンのようじゃぞ?』

リヴァイ『いや、エルヴィンの為にというより、自分の為ですよ。出来ればハンジに似た娘が1人……』

ハンジ『ん? でも父親に似た方が幸せになるって言わない? 娘は』

リヴァイ『…………俺に似た娘だと、娘が可哀想だろ』

ハンジ『そんな事ないよ! 可愛いよ! こう、キュン! とすると思うよ?』

エルヴィン「私もそう思う(キリッ)」

リヴァイ『お前には聞いてねえよ。ハンジに似た方が美人だろ。どう見ても』

ピクシス『そんな事はなかろう。リヴァイ、お主、自分の顔を気に入っておらんのか?』

リヴァイ『目つきも悪いし、顔のパーツが中央寄りだし、余り自分では「いい顔」だとは思っていませんが』

ピクシス『ふふ………まあこればっかりは博打じゃからの。自分に似た娘が出来てしまっても仕方あるまい』

ハンジ『私はリヴァイに似た方がいいと思うけどなー』

リヴァイ『いや、ハンジに似た方が……』

ピクシス『ふむ。キリがないからその辺でよさんか。さて、他に質問疑問などはないか?』

OB2「はい!」

ピクシス『どうぞ』

OB2「リヴァイ先生の好みの条件って、ハンジ先生には全部当てはまっているんですか?」

リヴァイ『ああ。勿論、全部当てはまっているぞ。「気が強くて」「遠慮のない」「表情豊か」「年下」「頭がいい」だからな』

OB2「そこに「感度がいい」も入るんですか?」

ぶふー! 劇の中で言ってたな。そう言えば。よく覚えていたなあ。

リヴァイ『あー劇中で言っていたアレか。まあ、そうだが………あががが!!!』

案の定、ハンジ先生が「反撃」した。机の下で何か攻撃したようだ。

ハンジ『そこは言わなくていいから。もー!』

リヴァイ『……すまん』

というと、クスクス笑いが漏れていった。

OB3「あープロポーズってやっぱりリヴァイ先生からですかね?」

ピクシス『ふむ。その答えは、映像を見て貰った方が早いかもしれん。見るか?』

リヴァイ『?! 待て。ピクシス先生、まさか用意して……』

ピクシス『もし要望があれば、其の時に出そうと用意は一応してきたが?』

OB3「え? みる? まさか録画しているんですか? その様子を」

ピクシス『進路指導室でプロポーズしおったからの。ばっちりRECさせて貰っておる』

と言い出したので事情を知らない卒業生たちが一斉に「やったあああ!!!」と喜んだ。

どうやらもう1回上映会をするらしい。リヴァイ先生は天井を仰ぎ、ハンジ先生は『やめてええええ!』と抵抗した。

ハンジ『公開処刑やめてええ!!! 2回目はやめて!!! 今の生徒達は大体事情を知ってるんだからもういいじゃん!!!』

OB3「えー現役だけずるいっすよーオレらもみたいですーハンジ先生ー」

ハンジ『にゃあああああ!!!! もうやめてええええ!!! リヴァイ、リヴァイも止めて!!!!』

リヴァイ『あーどうしても見たいのか? 俺も多少恥ずかしいんだが』

ハンジ『なんで「多少」なのよ! すっごく恥ずかしいでしょ!!』

リヴァイ『いや、劇中のアレに比べたらまだマシだからな。プロポーズの方が』

ハンジ『その基準は一体なんなの?! プロポーズの方が恥ずかしいよ!? どう見ても!!』

リヴァイ『そうか? 俺は風呂場のアレの方がダメージ酷かったんだが…(ズーン)』

ピクシス『まあまあ、諦めろ。ハンジ。では上映会をしながらケーキの準備に入らせて頂くが宜しいかな?』

というと、卒業生は「はーい」と返事した。

そして演劇部員は舞台から退場だ。ゾロゾロ会場の方へ戻る。

さてさて。プロポーズシーンを見るか。2回目だけど(笑)。

スクリーンを用意してプロジェクターをパソコンに繋いで上映会だ。

ハンジ『…………………』

リヴァイ『……………』

ハンジ『な、なんでニヤニヤしてるのよ~』

リヴァイ『悪い。ニヤニヤが止まらないんだ』

ハンジ『そこのソファで寝ていたんだったら、途中で言ってくれたっていいじゃない!』

リヴァイ『言いそびれたんだよ。エルヴィンとの会話を邪魔しちゃ悪いと思ってな』

ハンジ『嘘ばっかり……盗み聞きしていたくせに』

リヴァイ『ああ。まあ、実はそうなんだが』

ハンジ『もう~リヴァイは本当に意地が悪いね! 恥ずかしい~!』

ハンジ『…………………』

リヴァイ『…………』

もうこの時の2人が本当に可愛くてしょうがねえ。

皆、クスクス言いながら眺めている。ハンジ先生は顔を覆って俯いているけど。

リヴァイ先生は照れ臭そうにしているけど、一応画面は見ている。

ハンジ『ちょっと! 黙ってないで何かしゃべってよ! 居た堪れないじゃない!』

リヴァイ『ああ……悪い悪い。照れているハンジを見るのは珍しいと思って、つい見入ってしまった』

ハンジ『やめてよ! じっくり見ないで! その……自分でも、どうしたらいいのか分かんないんだから』

リヴァイ『そいつは無理な相談だ。こんなに面白い事はない……ククク……』

ハンジ『あーうーその、えっと、どうしようか』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『その、というか、それ話す前に、私から謝らないといけないね。ごめん……』

リヴァイ『何がだ?』

ハンジ『だから、その………あんたに甘えまくっていたことだよ。ペトラにぶたれて初めて、気づいた。私、物理的な部分だけじゃなくて、精神的な部分まであんたに甘えまくっていたんだって事を……』

リヴァイ『その、ペトラにぶたれたっていうのは、俺と別れた後の事か』

ハンジ『うん……あの子、半泣きで私をぶったんだよ。他の生徒がいる中で。本当に申し訳ない事を、彼女にさせてしまった………』

リヴァイ『そうか………』

ハンジ『だって、あんな事したら、ペトラ自身の周りからの評判が落ちるに決まっているじゃない。こんな私みたいなダメ教師の為に、あの子の手を煩わせたと思うと、大人として、自己嫌悪するよ………」

リヴァイ『過ぎてしまった事は悔やむな。ペトラには俺からも話しておくよ』

ハンジ『うーん……本当にごめんね』

リヴァイ『その事は後で何とかするとして。ハンジ。昼休み時間も限りがあるから、単刀直入に聞く。これからどうしたい?』

ハンジ『え? と、言うと?』

リヴァイ『ハンジはこれから、俺とどうしたいと聞いているんだ。ハンジ自身の今の素直な気持ちを聞かせてくれ』

ハンジ『ど、どうしたいんだろう……?』

リヴァイ『おい……(イラッ)』

ハンジ『いや、待って! もともと、その辺の話はエルヴィンと話して自己分析してからリヴァイと話すつもりだったのよ! 心の準備もない状態で聞かれても困るよ!!』

リヴァイ『お前は本当に面倒臭い奴だな。そんなもん、俺に直接聞けばいいだろ』

ハンジ『じゃあ、聞いていい? リヴァイは、私と、どうしたいの……?』

リヴァイ『ハンジが話してくれたら答える』

ハンジ『それってずるくない?! 人には聞いておいて、答えないってずるくない?!』

リヴァイ『うるさい。いいから答えろ。ハンジが先だ。レディーファーストってやつだろ』

ハンジ『うー……もう、しょうがないなあ。分かった。じゃあ、話す。話すけど……』

リヴァイ『ん?』

ハンジ『わ、笑わないで、聞いてね? 一応、前置きしておくけど』

リヴァイ『ああ。分かった』

ハンジ先生はそこで、区切って手で自分の胸を押さえてから言った。

ハンジ『提案したい事があるの』

リヴァイ『ああ。どんな提案だ?』

ハンジ『私達、試しに一緒に、暮らしてみない?』

ここで卒業生が「おおおおお?!」と反応した。ざわめいている。

教室の中もこの時、同じくざわめいたのを覚えている。皆ワクワクして中継を見てたっけな。

リヴァイ『それは「同棲」の提案だと受け取っていいのか?』

ハンジ『そうだね。リヴァイと一緒に暮らしてみたい。そういう感情が、今、私の中に「ある」んだけど』

リヴァイ『……けど?』

ハンジ『なんかこんな事を言っちゃうと、アレなんだけどさ。これって、よくよく考えたら、私、まるでリヴァイの体目当てに一緒に暮らしたいって言ってるようなもんだよね。あんたと一緒に入る風呂が癖になっちゃってさ。もう、他の男じゃダメになっちゃったみたいだし』

クスクス笑いが伝染した。ここは劇を見た後だと余計に笑えるよな。

リヴァイ『ああ? (不機嫌)それの何が悪いんだ?』

ハンジ『ええ?』

リヴァイ『だから、それの何が「悪い」んだ? 別に俺はそれでも一向に構わんが』

ハンジ『じゃあ、同棲してくれるの?』

リヴァイ『いや、同棲の話じゃなくて「体目当て」でも別に構わないって言ったんだが』

ハンジ『あんた、どこまでマゾなのよ?! やっぱりサドに見せかけたドМだよね?!』

リヴァイ『そんなもん、どっちでもいい。話を逸らすな。つまり、ハンジから見て俺と同棲したいという感情があって、その理由は俺じゃないとハンジに与えてやれない事なんだろ?』

ハンジ『まあ、そういう事になっちゃいますね』

リヴァイ『なら、話は早い。………断る』

ハンジ『ええええちょっと、持ち上げといて、落とすって?! アレ?! あんた、やっぱりドSだった?!』

リヴァイ『SとかМとかの話は、今はどうでもいい。それより、同棲の件は承諾出来ない』

ハンジ『えええ……断られると軽く凹むんだけど。じゃあ、今まで通りの形態なら付き合ってくれるの?』

リヴァイ『そうじゃない。そういう話じゃない』

ハンジ『ん? つまりどういう事……?』

一瞬の間。もう1回、くるぞ。

ここ、何度見てもドキドキするよな。

リヴァイ『そういう話なら………ハンジ。結婚するぞ』

ハンジ『へ………?』

リヴァイ『だから、そういう話なら「同棲」よりも俺は「結婚」の形の方がいいと言っている』

ハンジ『え………えええええええ?!』

リヴァイ『何をそう驚いている。何かまずい事、言ったか?』

ハンジ『いやいやいやちょっと待ってよ?! 何で同棲を提案して断られて「結婚」の話になるの?! 訳が分からないよ?!』

リヴァイ『訳が分からんのはお前の方だろ。ハンジ。どうして「一緒に暮らしたい」っていう感情があるのに、同棲なんてかったるい事を言い出す。同棲する意味なんてあるのか?』

ハンジ『いや、あるでしょ?! こう、段階的なものっていうか、その、物事には順序みたいなものが……』

リヴァイ『それはお互いの事をまだ良く知らない男女の為にあるようなもんだろ。俺達の場合は必要ない』

ハンジ『え? そ、そうなのかな? いや、でも、いくら付き合い長いからって、それとこれとは別なんじゃ……』

リヴァイ『別じゃない。必要性がないならする必要はない。結婚の形の方が収まりついていいし、それに俺にとっても都合がいいんだ』

ハンジ『え? リヴァイの方にメリットあるの?』

リヴァイ『大いにある。だから俺は結婚の方がいい。同棲は、却下だ』

ハンジ『えええええ……ちょっと待ってよ?! それは私の方が承諾出来ないよ!』

リヴァイ『何故だ。何が不満なんだ』

ハンジ『だって、仕事続けたいし……』

リヴァイ『俺は別に辞めろとは言わん。むしろ続けた方がいいと思っているが?』

ハンジ『家庭に入らなくてもいいの?』

リヴァイ『俺が一度でもそういう部分をハンジに求めた事あったか? 今まで全部、俺が代わりにやっていたのに』

ハンジ『そういえばそうでしたね?! でもほら……結婚しちゃったら、リヴァイのファンの子達、泣いちゃうよ? また私、恨まれちゃうし、今度こそ、暗殺され兼ねないよ?』

リヴァイ『その点については、とっておきの秘策がある』

ハンジ『秘策……?』

リヴァイ『結婚を機に、俺の方が教職を辞めればいい。俺が代わりに家庭に入ってやろうじゃないか』

ハンジ『は……? あんた、何言ってるの? 正気なの?』

リヴァイ『俺はいたって真面目だが?』

ハンジ『いや、熱でもあるんじゃないの? あんた、教職捨てるって……馬鹿じゃないの?!』

リヴァイ『そうか? 別に自分ではそうは思わんが。むしろワクワクしているぞ。これでようやく専業主婦…いや、主夫か。俺の夢が一個叶う訳だからな』

ハンジ『そんな話は初めて聞いたんですけどおおおおおお?!』

リヴァイ『今、言ったからな。そもそも俺はもともと、なりたくて教職についた訳じゃない。ある意味ではエルヴィンに嵌められてうっかり教員になっちまったようなもんだ。だから、教職に未練がある訳じゃないんだよ』

ハンジ『で、でも……リヴァイを慕う生徒達がどんだけいると思っているの? あんた、生徒を見捨てる気なの?』

リヴァイ『それについては申し訳ないとは思っているが、背に腹は代えられん。ハンジと結婚出来るんだったら、俺は教職を捨てる覚悟はある』

ハンジ『だ、ダメに決まってるでしょ! そんなの、余計に生徒達に恨まれちゃう……!』

リヴァイ『ハンジ。何もかもがうまくいく選択なんて、元々無理な話だろうが。何かを捨てなければ、得られるものは何もない』

ハンジ『そうだけど! 私だって一応、教員なんだから! 生徒達に恨まれるのは辛いんだよ?! 今までどんだけ地味で地味で地味な嫌がらせとか嫌味とか言われてきたか!!』

リヴァイ『それは陰でやられてきたんだな。どうしてそれを今まで言わなかった』

ハンジ『あんたに言ったら、余計にこじれるでしょうが! あんたの人気、加熱し過ぎて本当にいろいろヤバかったんだからね!』

リヴァイ『今まで我慢させてすまなかった。ハンジ、本当にすまなかった……』

ハンジ『や、やめてよ……優しくしないでよ。涙が出てくるじゃない』

リヴァイ『元々、泣き虫の癖に何言ってるんだ。泣け』

ハンジ『もうーいろいろぐちゃぐちゃなんですけどおおおお?!』

ハンジ『えっぐ……えっぐ…やっぱり、ダメだよ。リヴァイ』

リヴァイ『何が』

ハンジ『あんたが教職辞めたら、ダメだよ。そんな事しちゃったら、宝の持ち腐れじゃないの』

リヴァイ『その宝を独占する権利をやるっつっているのに。お前も素直じゃねえな』

ハンジ『だって、そんな事したら、私、多分、リヴァイ観察日記つけちゃうよ? イグアナ観察記録みたいにして、飼っちゃうよ? それでもいいの?』

リヴァイ『ははっ……そいつは面白いな。ハンジらしくていいんじゃないか?』

ハンジ『誘惑しないでよおおおお! 今、本気でそれをやりたい自分と理性との葛藤が始まろうとしてやばいんですけどおおおお?!』

リヴァイ『まあ、その辺はハンジに任せる。そろそろいいか? 結婚、承諾してくれるか?』

ハンジ『待ってよ! まだ承諾してない! 1ミリもOK出してないよ!』

リヴァイ『まだ抵抗するのか。しぶとい奴だな。お前も……』

ハンジ『いや、だって……その、よく考えよう。リヴァイ。冷静になって考えよう』

リヴァイ『何をだ』

ハンジ『この結婚のメリットについてだよ。私にはメリットしかない状態だけど、リヴァイの方のメリットって、何かあるの?』

リヴァイ『あー……』

リヴァイ『俺はひとつだけ、約束して貰えればそれでいい』

ハンジ『約束?』

リヴァイ『ああ。それさえ反故されなければ、俺はハンジと一緒に結婚生活はやっていけると思っているんだが』

ハンジ『それって、何?』

リヴァイ『俺と毎日、一緒に風呂に入って、俺にハンジの体を全部、洗わせる事だ。今度はもう、本当の意味で「全部」だ』

ハンジ『!!!!!!』

この瞬間、会場も皆で吹いた。

もうな、どんだけ洗うの好きなんだよって感じだよな。コレ。

ハンジ『毎日なんて絶対無理いいいいいい!!! いやあああああ!!!!』

リヴァイ『あ、毎日はさすがにふっかけ過ぎか。悪い。定期的、でいい。とにかく今までのサイクルより少し多めに一緒に風呂につきあってくれるなら、俺はそれだけで満足だ』

ハンジ『いや、それも何か、その……やっぱり私の方のメリットじゃない? あんたどんだけ謙虚なのよ』

リヴァイ『そうか?』

ハンジ『うん……その、あの……それだけのメリットで、結婚って、やっぱり変っていうか』

リヴァイ『ふん……じゃあもっと納得する材料を提供すればいいのか?』

ハンジ『出来ればそうして欲しいけど……』

リヴァイ『分かった。後で文句言うなよ』

ハンジ『?!』

ガチキスだ。音声が超エロい。水音ちゃんと拾っている。

ハンジ『ん……んー……ん……あっ……ん……』

ハンジ『はっ……あっ……ああっ………ちょ……あっ……』

ハンジ先生が机の下に隠れてしまった。見ていられないようだ。

昼休み終了のチャイムが鳴ったおかげでここで強制終了だ。

リヴァイ『ああ、次の授業か。今日はここまでしか出来なかったか』

ハンジ(ぼーっ……)

リヴァイ『という訳で、これが俺にとっての結婚する最大のメリットだ。理解出来たか?』

ハンジ(こくり)

リヴァイ『納得したか? だったら、返事を今、くれ』

ハンジ『…………はい』

リヴァイ『結婚、してくれるんだな?』

ハンジ『……はい。結婚します』

リヴァイ『良かった。籍はいつ入れる?』

ハンジ『リヴァイに任せる……(ぼーっ)』

リヴァイ『なら……面倒臭いからもう、俺の誕生日あたりでいいか? 12月25日で』

ハンジ『うん……(ぼーっ)』

リヴァイ『結婚式とか、詳しい事はまた後で決めるぞ。じゃあな。俺は授業の準備に戻る』

ハンジ『うん……いってらっしゃい……(ぼーっ)』

ハンジ『……………は! 私は、今、何を………』

ハンジ『うわあああああ勢いで結婚承諾しちゃったよおおおおおおどおおしよおおおおおお?!』

ハンジ『しかもあの、リヴァイとだよ?! キスされて、押し倒されて、承諾しちゃったよおおおおお?!』

ハンジ『何コレ?! 何コレ?! 何でこんな事になっちゃったの?! おかしくない? 何かおかしくない?!』

ハンジ『もう、私の馬鹿ああああああ?!』

以上だ。まあ、2回目だと最初の時のようなインパクトはねえけど、楽しめたぜ。

するとリヴァイ先生がちょっと面白そうにして言った。

リヴァイ『ハンジ。お前、俺がいなくなってからこんな可愛い反応していたのか。知らなかったぞ』

ハンジ『もう思い出させないでえええええ……』

ぷークスクス。今度はハンジ先生が憤死している。机の下に引き籠ったようだ。

OG「リヴァイ先生が家庭に入られるんですか?」

リヴァイ『あ、いやそれはこの後、教職員同士で話し合って辞職を取り下げる事にしたよ。教職は続ける。その方が俺もハンジと一緒に居られる時間が増えるからな』

ハンジ『リヴァイに観られたー! うわあああん!』

リヴァイ『可愛いからいいじゃねえか。ほら、あんまり引き籠るな。出て来い』

と言ってハンジ先生をひょいっと席に連れ戻すリヴァイ先生だった。

ハンジ『これもしかしてさっきの仕返し? 仕返しなの? ぐすんぐすん』

リヴァイ『いや、別に? これは俺が仕掛けた事じゃない。悪いのはピクシス先生だろ?』

ピクシス『心外じゃのう。そもそもお主らがもっと早くくっつけば良かったんじゃ。わしの拳が今まで何回震えたと思っとる』

エルヴィン「ふふふ……もう数えきれないし、覚えてないですよね」

ピクシス『全くじゃ。チャンスは数えきれないほどあったと言うのに。でもあれだけ平行線を辿っておった2人がまさか今年、一気にこうなるとは思わなかったの。最初の切欠はなんだったんじゃ?』

お? オレの方に話題がくるかな?

リヴァイ『あー。それについては、エレン。いいか?』

エレン「オレから話していいんですか?」

リヴァイ『構わん』

エレン「じゃあ遠慮なく」

という訳でピクシス先生にマイクを借りて話す事にした。

エレン『えーっと、文化祭の為の演劇の練習中、朝練の殺陣の稽古をしていた時なんですが、たまたま、朝早くハンジ先生が第三体育館に顔を出してくれたんですよ。其の時に、丁度リヴァイ先生が練習後のシャワーを浴びていて。ハンジ先生が「驚かせてやろうwww」みたいな事を言い出して、リヴァイ先生をそろーっと驚かしに行ったんですよ』

皆ワクワクして聞いているな。まあ、しょうがねえよな。

オレも逆の立場なら耳ダンボして聞いちゃうだろうな。

エレン『…………で、そこまでは良かったんですが、その「ドッキリ」が終わった後も、2人とも普通にしゃべり続けたんですよね。リヴァイ先生、裸ですからね。言っておきますけど。なのに普通に話し続けて………どこからどう見ても「おかしい」と思ったんで、オレ、ツッコミ入れちゃったんですよ。「それって普通、恋人同士くらいに親密じゃないとやりませんよ?」って』

また吹いた。今回の披露宴で皆、腹筋鍛え過ぎだよな。明日筋肉痛になりそうだ。

特にピクシス先生が肩を震わせて笑っている。

ピクシス『………なるほど。適切なツッコミをしてくれたのがエレンだった訳じゃな?』

エレン『適切だったどうかは分かりませんが……だって皆、思いますよね? オレ、間違ってないですよね?』

ピクシス『確かに。むしろ完璧過ぎる。見事なツッコミじゃったな』

エレン『ありがとうございます。で、オレの「素朴なツッコミ」がどうも、リヴァイ先生の中で「あれ?」って思わせる最初に切欠になったそうで、そこからですかね。徐々に自分が「変」だと気づいたのは。そうですよね?』

リヴァイ『その通りだ。あれが全ての始まりだったと言っても過言じゃない』

エレン『まあ、そんな訳で、そこから転がり堕ちるようにこうなった訳です。でも、最初の切欠はオレでも、リヴァイ先生を立ち直らせたのはミカサですよね?』

リヴァイ『ああ。その通りだ。ミカサの言葉のボディーブローがなければ、俺はまたあの時、ずるずる逃げていただろうな』

ミカサ『ああ……「クソちび教師は一生独身で孤独死するといい」って言い放ったアレですか?』

リヴァイ『その通りだ。それを想像した瞬間、それは絶対嫌だなと思った。死ぬ時はせめてハンジに看取られて死にたいと心の底から思ったよ』

ハンジ『あんた、そんな先の事まで考えちゃったの?! いや待って。私もリヴァイに先に死なれたら嫌だよ?! やめてよね! 縁起でもない!』

リヴァイ『あくまで例えだ。そう簡単には死なねえよ。でも……1人は嫌だと思った。それが俺を奮い立たせたんだよ』

ピクシス『そこに至るまでの時間がかかり過ぎなのが難点じゃが……まあ、終わり良ければ全てよしじゃな。これから先は2人で幸せにやっていくんじゃぞ? むしろここから先がまた新たな「スタート」じゃ。けして「ゴール」じゃないからの』

リヴァイ『はい。肝に銘じます。俺より先に結婚していった奴らも、結婚をする旨を報告したら同じ事を言ってました』

ピクシス『そういう意味じゃ周りには沢山「先輩」がおるからな。感謝するんじゃぞ』

リヴァイ『ご教授、今後も宜しくお願いします』

其の時、リヴァイ先生が立ち上がって皆に対して頭を下げると、それに合わせてハンジ先生も一緒に頭を下げたのだ。

うわ……何だろ。急にぐっと、披露宴らしくなった。夫婦って感じがする。

さっきまでのおふざけムードが一変して、リヴァイ先生が男らしい顔になった。

ケーキの準備が出来たようだから、それを運んで貰って、最後の締めをするようだ。

ケーキ入刀用のお色直しはもう本当にしないようだ。ジャージ姿と白衣のままやるのが2人らしいな。

ピクシス『では、これより、夫婦になってからの最初の共同作業を行って貰います。ケーキ入刀致しますので、カメラをお持ちの方々はどうぞ前の方にお集まりください!』

という案内に合わせてまるで記者会見並みの人が前の方に集まる。

すげえ数だな。皆スマホやガラケーやビデオカメラやらデジカメやら、あ、古いコンパクト派もいるようだけど、思い思いに写真撮りまくってる。

ケーキは何故か「抹茶色」の大きなケーキだった。和風の家に住むからかな? 色合いが和風の大きなケーキだったんだ。

そしてそれを切り分けて、皿に分けて皆に配っていく。オレもちょっと頂いた。

ケーキを皆で食べ終えた頃、ピクシス先生は言った。

ピクシス『ではこれを持ちまして、2人の披露宴の演目を全て終了させて頂きます。ご来場の皆様、本日は誠にありがとうございました!』

リヴァイ&ハンジ『『ありがとうざいました!!!』』

おおおおおお……皆で拍手喝采だった。指笛まで吹いている。

リヴァイ『皆様のお見送り、させて頂きます。ハンジ、いくぞ』

ハンジ『うん』

という訳で、2人は入口まで急いで移動して、遠方から来て下さった方を見送って行った。

オレ達演劇部や関係者はここから全員で後片付けだ。舞台の装置の撤収作業やら何やらが残っている。

ミカサ「とりあえず、終わった……(ほっ)」

エレン「終わったな。長い1日だったなー」

ミカサ「でもミスもしてしまった。恥ずかしい。ハンジ先生の名前を忘れているべき場面で「ハンジ」と呼んでしまった」

エレン「え? どこだっけ?」

ミカサ「教習時代のリヴァイ先生の場面で1度だけやってしまった……(ズーン)」

エレン「オレ、全然気づかなかった。まあ、別にいいんじゃねえか? オレ、あの時、本当に「名前」を聞きそびれていたのかな? って疑ってるし」

ミカサ「え? そうなの?」

エレン「単なる「記憶違い」じゃねえのかな? 覚えてないっていうより、オレ、リヴァイ先生、わざと「そうしていた」んじゃねえかなって思っているんだよ」

ミカサ「? どういう事?」

エレン「んー」

撤収作業をしながらのんびりミカサと話を続ける。

エレン「ま、単なるオレの「勘」だけどな。その辺の話はリヴァイ先生本人にも聞いてみねえと分からん。後で確認してみる」

ミカサ「そう……」

そんな訳でいろいろ撤収作業をしていたら、

ヒッチ「いや~面白かったよ~ミカサ! お疲れ様~!」

と、撤収作業中のオレ達にヒッチが手を振ってこっちに寄ってきた。

エレン「あ、あぶねーからこっちには来るなよ!」

ヒッチ「あ、そっかそっか! ごめんごめん! 邪魔しちゃ悪いか。また後でね~」

とひらひらしながら機嫌よく何処かに行ってしまった。

ミカサ「意外だった。ヒッチが始終、演劇に夢中になってくれていた」

エレン「だよな。あいつ、修羅場のところ、わくわくして見てたもんなあ。目輝かせていたし」

ミカサ「何だか嬉しかった。普段は余り話さない人とも演劇を通じて、繋がれる感じ」

エレン「あーそれは分かる。オレもそういう感覚あるな」

演劇の醍醐味なのかな。楽しいよな。こういうの。

そして舞台裏の片づけと掃除を大体済ませると、今度は会場の方の撤収を手伝った。

こっちはお手伝いに来ていたOBOGの方々も走り回っていた。

卒業生だから段取りは早い。慣れた手つきであっという間に元の体育館に大体戻ってしまった。

でも料理がちょっとずつ残っていた。これ、捨てるのかな。勿体ねえな。

リヴァイ「おい、残っている奴らで処理を出来るだけ手伝え! 食べてしまうぞ!」

サシャ「イエッサー!!!!!!」

すげえ気合入った返事をしてサシャが残りの食べ物を食っていた。

そのがめつい様子を見てジャンがちょっとだけげんなりしている。

あ、まずい。これは呆れている顔だ。

エルヴィン「お疲れ様。ジャン部長」

ジャン「あ、お疲れ様です。エルヴィン先生」

エルヴィン「長丁場の演劇だったけど、どうだった? 部長として」

ジャン「いやーきつかったですよ。いろいろと。途中で何回、裏で笑い死にそうになったか。今日一日だけでもかなり腹筋鍛えられましたよ」

エルヴィン「だろうね。もうどこからツッコミ入れたらいいか分からなくなるよね」

ジャン「ですよね。実際、これをリアルタイムで見守っていたエルヴィン先生とピクシス先生が1番凄いですよね。胃が痛くなりませんでした?」

エルヴィン「私よりピクシス先生が胃を痛めていたよ。キース先生もたまに頭痛を抱えていた。私は大体平常心で見守っていたけど……」

ジャン「だとしたらエルヴィン先生が1番凄いですね。イライラしなかったんですか?」

エルヴィン「んーイライラというより、ニコニコしていたかな。笑いを堪える事の方が多かったかもしれない。だってまるで、子猫が2匹、ずっとじゃれているようにしか見えないんだもの」

ジャン「いやー大人っすね。オレは無理です。ピクシス先生みたいになりそうです」

と、お前が言うなって言葉を吐いているジャンだった。

アルミンがすげえ顔してジャンを横目で見ている。隣のアニも。

オレ達は残った料理を出来るだけ片付けながら余ったジュースなども飲んでいた。

演劇公演をした後だから腹減ってたし丁度いい。残飯処理なら任せろ。

エルヴィン先生がジャンにジュースを渡していた。それを有難く頂いているようだ。

ちびちびジュースを飲みながら、ジャンは言う。

ジャン「オレ、ここ最近まで自分の恋愛観に悩んでいたけど、リヴァイ先生を見ていたら、逆に吹っ切れました。なんか自分の悩みなんて大した事なかったなーみたいな気持ちになりましたよ」

エルヴィン「まああれだけの「浮名」を流したリヴァイに比べたら他の悩みがちっぽけに見えるよね」

ジャン「男として凄まじいと思います。もはや嫉妬するのが馬鹿馬鹿しいレベルですよね」

と、いつも嫉妬するジャンがそう言うくらいだから相当だな。確かに。

ジャン「いくら誘われるからって、20代の後半まで女とっかえひっかえやっていたなんて。想像もしてなかったです。真面目そうな印象だったし、生徒に手出すのも「以ての外」みたいな感じだったから余計にそう思いました」

エルヴィン「リヴァイの場合は一種の「逃避」行為だったのかもしれないけどね」

ジャン「そうでしょうね。まあ、イザベルって子を亡くしてから狂ってしまったような感じでしたしね」

エルヴィン「うん……私も修正原稿を読んでから初めて知った部分もあったからね。正直、驚いたよ。リヴァイの行動の裏にはそんな意味が隠れていたとは思いもよらなかった」

ジャン「それを差し引いてもやっぱりリヴァイ先生は凄過ぎますよね。そんなリヴァイ先生の嫁になったハンジ先生も凄いけど」

エルヴィン「まあそこは、落ち着いたところに落ち着いたって事じゃないかな。ところで、ジャン。君の方はどうなんだい?」

きたあああああ! 絶対、その話題をふると期待していたぜ! エルヴィン先生!!

ハンジ先生はとんだとばっちり回でしたが、夫婦になったので運命共同体だということで(笑)


さてさて。リヴァイ先生とハンジ先生はひとまず落ち着いたので、
次の矛先は「ジャン」へ向かいます。ふふふ。ではまた次回ノシ

ジャン「あーもうオレの事は大体バレているんですよね?」

エルヴィン「まあ、大体話は聞いているよ」

ジャン「だったら隠さなくていいか。今、掃除機みたいに残り物を食べているのが一応、今、オレの好きな女ですよ」

エルヴィン「一応、は酷いんじゃない? サシャの食べっぷりは見ていて気持ちいいじゃないか」

ジャン「そう思えたらいいんですけどね。あれだけは、どうしても「げんなり」するといいますか」

エルヴィン「それさえなければなあ……みたいな?」

ジャン「そんな感じっすね。まあ……暫くは様子見るしかないとは思いますが」

エルヴィン「んーでも、ジャンは大学進学希望組なんだよね? サシャは恐らく大学には進学しないよ? 来年はクラス別れるんじゃないかな」

ジャン「……………え?」

と、其の時になって初めて、ジャンは今の自分がどれだけ「危うい立場」にいるか自覚した様だ。

ジャン「そ、そうだったんですか?」

エルヴィン「知らなかったのかい? うん。サシャは勉強嫌いだから大学より就職、もしくは家業の手伝いを希望していたよ。だから来年は7~10組あたりに配属されると思う」

ジャン「そ、そうですか」

おおおおおおおおお? ちょっと動揺してやがるな。あいつ。

エルヴィン「うちの学校は2年次が1~3組が大学進学希望組、4~6組までが推薦を含めて就職と進学を両方を視野に考えている組。7~10組が就職寄りの組に大体分かれるからね。勿論、途中で進路が変わっちゃう子もいるけど、そこはもう自己責任だし、学校側もこのやり方に変更してから進路指導がやりやすくなったんだよ。3年次はそのまま担任も含めて持ち上がりになるからクラス替えはないよ。サシャと同じクラスで居られるのは残り3か月程度になるんじゃないかな」

ジャン「…………」

急に現実を突きつけられてジャンの唇が少しだけ震えていた。

ヘタレだからな。あいつ。この窮地をどうするべきかパニック状態になっているのかもしれない。

エルヴィン「サシャはもう、大学に行かなくても十分、生きていける「スキル」を持っているからね。社会経験もアルバイトで先に少し経験しているし、何より親父さんのお手伝いを小さい頃からしているのが大きい。目的がそこにないなら、大学に行くのは無駄でしかないよ。彼女の場合は。だから「気が変わる」ことはほぼないと思っていた方がいい」

と、わざわざ忠告するエルヴィン先生だった。

エルヴィン「もし、ジャン自身にその気があるなら早いうちに手を打った方がいいと思うよ。グズグズしていたら、また手遅れになる。ジャンの性格を考えれば、クラスが別れてから彼女に告白するのは余りお勧めしない。勿論、それをする事はやれない事はないけど。距離が空いてしまったら、自然消滅する可能性の方が高いと思うよ」

ジャン「……………」

ジャンの目が虚ろになって来た。揺さぶりかけられて戸惑っているのが良く分かる。

そしてこの隙に、エルヴィン先生、テーブルのグラスをさり気にすり替えた。

え? 何でだ? 何で今、自分のグラスとジャンのグラスをすり替えて………

ジャンが気づいている様子はない。自分のグラスを気に留める余裕すらないようだ。

エルヴィン「リヴァイとハンジの場合は同じ「職場」という接点と「住居が近い」というアドバンテージがあったからこれだけ長くマラソンのような恋愛が出来たけど、普通はこうはいかないからね? 皆、それぞれ進路があるし、自分の人生だってある。偶然に身を任せていたら、それこそ周りはあっという間に結婚していって自分だけ1人……なんて事も十分あり得るよ。現に私がそうだからね」

ジャン「あ、エルヴィン先生、独身でしたっけ。そう言えば」

エルヴィン「うん。43歳だからね。もう私と同じ世代で独身の男はそうはいない。所帯持ちばかりだよ」

ジャン「でもエルヴィン先生の場合はもう嫁を予約しているようなもんじゃ……」

エルヴィン「あくまで「女の子」が産まれたらの話だから。私の場合は。男の子が産まれた時は流石に嫁には出来ないよ。其の時は独身で生涯を終えるつもりではいるけど」

そうなんだ。流石エルヴィン先生だ。その辺は絶対曲げないらしい。

エルヴィン「リヴァイとハンジの例はあまり参考にしない方がいいと思う。2人の場合は「特殊」な例だ。周りがいろいろけしかけて……フィーリングカップルで完全に「確保」してようやくああなった訳だから。特にサシャの場合はミスコンの「準優勝」という肩書きを持っている事を決して忘れちゃダメだよ?」

ジャン「うぐ……!」

エルヴィン「サシャ自身はまだ「初恋? 何それおいしいの?」みたいな状態だけど、それがいつまでも続くとは限らないよ。ある日突然、女の子は「覚醒」する場合だってある。ハンジみたいに「遅咲き」の場合も勿論あるけど、普通の女の子は15~18歳の間に1回くらいは「恋」のような物を経験して大人になっていく訳だからね」

ジャン「サシャが……恋………」

エルヴィン「想像出来ないみたいだね? でも女の子は一度覚醒すると早いよ? あっという間に綺麗になっていく。その時になって後悔しても遅いからね? サシャの傍には、リヴァイのような「小さな男」がいるようだし」

ジャン「!」

ここでコニーをけしかけるか! エルヴィン先生、策士だなー。

アルミンとアニもニヤニヤしながら遠くで話を盗み聞きしている。

ミカサもさり気にチェックしている。マルコだけが、ここにはいないけど。

あ、マルコはマルコでミーナと話しているようだ。何かぺこぺこしているな。お礼を言っているようだ。

そっか。舞台でのダンスのパートナーをしてくれたお礼でも話しているのかもしれない。

ジャン「それってコニーの事ですか? でもあいつ、中学時代の彼女がいるって……」

エルヴィン「ん? リヴァイとハンジの物語を見て来てもまだそれを言うのかい?」

ジャン「……………」

エルヴィン「似ていると思わないのか? リヴァイとハンジの物語と、今のコニーとサシャの状態を。私は「酷似」していると思うけどね。ただ「出会った時代」が違うってだけで。いつも大体一緒に居るんだろ?」

ジャン「いえ、いつもって程じゃ……ただ、クラスの中で一番仲いいのはコニーだとは思いますが」

現に今、ここでも残り物をサシャとコニーが奪い合う様に食っている。

あいつ、野球部だけど、今日はピクシス先生が「披露宴」を優先したから練習はお休みになったそうなんだ。

それに「タダ飯」を食える機会をコニーが逃す筈ないだろ? めっちゃ食ってる。

その様子を眺めながらジャンは言った。

ジャン「コニーも野球部の件があるからプライベートは殆ど彼女に注ぎ込んでいるらしいし、サシャと「外」で遊ぶことは滅多にしないらしいですが、たまに時間が合えば一緒に遊ぶ事もあるそうです」

エルヴィン「そりゃまずいね。彼女ともしも別れたら、今度はその時間をサシャで埋め合わせてしまうかもしれない」

ジャン「いや、それはないですよ! コニーは「プロ野球選手」になるのが夢で、其の為の練習時間、半端ないんですよ! 彼女いなくなったらきっと、そこを「練習時間」として追加して使う筈……」

エルヴィン「もし、途中で「怪我」とかしたら?」

ジャン「!」

エルヴィン「プロスポーツ選手が途中で「怪我」で挫折して転向する例なんて腐るほどあるよ。私自身も、そういう人間を多数見てきた。………私自身もそうだしね」

ジャン「え? エルヴィン先生、プロスポーツ選手目指していたんですか?」

エルヴィン「うん。昔ね。若い頃はテニスプレイヤーになりたかった。右肘を途中で傷めてしまって挫折したけど」

ジャン「そうだったんですか……」

エルヴィン「酷使し過ぎたせいだよ。生活するのには困らないけど。趣味で続けるのは出来ても「プロ」を目指すのはもう難しいだろうと言われて諦めた。怪我をしたのは14歳くらいだったな。こう見えても海外から声がかかるくらいの実力は当時、持っていたんだけどね」

ジャン「え……じゃあもしかしたら、10代でプロデビューする可能性もあったと?」

エルヴィン「そうだね。プロデビューする前に怪我してしまったから、あくまで可能性でしかないけど。つまりコニーの場合も分からないんだよ。将来がどうなるかなんて」

ジャン「…………」

ジャンが閉口してしまった。グラスを片手に悩んでいるようだ。

エルヴィン「コニーの実力はそれなりにあるのは知っているけど、野球の場合はそれに加えて「団体競技」だからね。優秀な選手が県予選大会で敗退してプロのスカウトの目から漏れる事なんて多々ある。せめて甲子園に出場しないと。なかなか日の目は出ないよ。夢はあくまで夢だからね」

と、厳しい現実を冷静に見つめるエルヴィン先生だった。

>>771
訂正

エルヴィン「うん。43歳……もう誕生日きたから44歳か。もう私と同じ世代で独身の男はそうはいない。所帯持ちばかりだよ」

誕生日が10月14日だったのを忘れていました。
この時点では12月25日なので44歳です。

>>773
訂正の訂正。

計算し直したら43歳で合ってた。
フィーリングカップルの方が間違っていたのに今、気づきました(汗)
ハンジ先生が16歳(高1)の時は、
エルヴィン先生が大学現役卒業で教師になっている場合は
22歳の筈だから、教師1年目で23歳になる筈なので、
フィーリングカップルの時点(10月3日)では42歳ですね。
すみません。今頃気づいて爆死しましたorz

エルヴィン「今の時点ではサシャもコニーもお互いの存在の「価値」に気づいていない可能性がある。ジャンがつけこむとすれば「今」しかないと私は思うけどね」

ジャン「でも、その……あの……」

エルヴィン「まだ、心の底にミカサの姿がちらつくのかい?」

ジャン「……………はい」

え? そうなのか? 何だよ。あいつ、嘘ついてやがったな!

ミカサもちょっと「ええ?」って顔をしている。これ以上食い下がったら本気で嫌われるぞ。

ジャン「いえ、だからと言ってもう、あいつらの邪魔をしたいとか、奪ってやるとか、そういうゲスな事は考えませんよ。オレはもう見守るだけです。せめてミカサが幸せでいる事を」

エルヴィン「ふむ……」

ジャン「いい思い出にしたいんです。ミカサへの片思いは。その上でサシャとの事を考えたいとは思っているんですが……」

エルヴィン「やれやれ。まだ「思い出」になんて出来る状態じゃないじゃないか。ジャン、そういう事なら君はサシャと向き合う前にやるべき事がある」

ジャン「え?」

エルヴィン「ミカサにちゃんと「言葉」で告白して振られてくる事だ。現実を直視して精算してこないといつまでも経っても「次」にいけないよ」

ジャン「え?! でも!?」

エルヴィン「丁度いいい。ミカサ、そこにいるし。ミカサ、こっちにおいで」

と言ってミカサを本当に呼びやがった。

ええええええ?! マジでここで告白をやらせるのか?!

ミカサも微妙な顔している。でも呼ばれたからにはしょうがない。

ジャンが完全に青ざめている。大丈夫なのか? あいつ。

エルヴィン「話は聞いていたね? ミカサ」

ミカサ「はい」

ジャン「え、ええええ?! 聞いていたのかよ!」

ミカサ「こんなところでそんな話をしている方が悪いと思う」

ジャン「いや、まあそうだけど……」

ミカサ「ジャン、私から質問していいかしら?」

ジャン「な、なんだよ」

ミカサ「ジャンは私に「一目惚れ」したと聞いた。私の「どこ」に一目惚れしたの?」

ジャン「…………綺麗な「黒髪」だよ」

と、ジャンは目を合わせられない状態で答えていた。

その様子をオレはアルミン達の傍で遠くから見守る。

ジャン「美しい黒髪だと思った。オレ、茶髪そんなに好きじゃねえし。綺麗だと思った。サラサラしていて、艶があって、その上で美人で……」

ミカサ「じゃあ明日から丸坊主にするか、私が茶髪になったらどうするの?」

ジャン「え、えええええ?!」

ミカサ「私はエレンが「丸坊主が好みだから坊主にしてくれ」って言われたらその場ですぐやると思う。それでも私を愛せるの?」

極論ぶちかましてきたな。いや、オレは坊主頭を流石に強要しねえよ!

ジャン「ええっと……それは、その……」

ジャンが言葉に悩んでいる。

丸坊主はさすがに許容出来ねえようだ。

ミカサ「他にも、もし「巨乳がいい」と言われたら豊胸手術をするし、「二重がいい」と言われたらプチ整形もやってみせよう。「細い子がいい」と言われたらダイエットもするだろうし、「腹筋つけるのはやめてくれ」と言われたら……筋トレもやめるかもしれない。私はそういう女なので、そういう私をジャンは愛せるの?」

ジャン「………………」

ミカサ「ジャンは私の事を「アイドル」のように愛していたのではないの? 違う?」

ジャン「……………違う」

ミカサ「どう違うの? 私はリヴァイ先生を演じていた時に感じた。人は「いい部分」だけでは構成していない。リヴァイ先生は自分のダメな部分も自覚しているし、過剰に愛される事を恐れてすらいた。私にも似たような経験はあるので、その気持ちは良く分かる。私はジャンが「私のいい部分」だけを見て愛しているのであれば、それは「怖い」とすら思う。ジャンはどうして………」

ジャン「そういう、論理的なところも好きだよ」

ミカサ「え?」

ジャン「頭が良くて、一途で、料理もうまくて、人が良くて、思いやりがあって、たまにドジで、腹筋も込みで好きだよ!!! そりゃ最初の切欠は「黒髪」だったけど、今はそれだけじゃねえよ! 出会ってからもう半年以上経っているんだぞ! いくらオレでもそれくらいは気づくに決まってるだろ!!」

ミカサ「そうなの?」

ジャン「そうだよ!!! 気持ち悪いと思われるかもしんねえけど、オレ、ミカサの事を結構常に観察していたからな。エレンと一緒にいる時も含めてな。だから、ミカサの気性の激しさも知ってるし、怒らすと怖いというのも知ったし、そういう部分も含めて好きだと思ったんだよ!!」

と、周りに人がいるのにも関わらずブチ切れていた。

皆、「なんだ?」と思いつつ注目している。

でもあいつは止まらなかった。溜まっていたんだろうな。いろんな思いが。

ジャン「でももう、届かねえんだろ? ミカサの気持ちはエレンに傾いてしまった。2人を見ていれば分かるよ。つけこむ隙なんてねえって事は……」

ミカサ「うん。ごめんなさい」

即答だった。こういう時はミカサ、バッサリいくもんな。

ミカサ「私はグズグズする男は嫌いなんだと分かったので。そこがエレンとジャンとの違い。でも、私はジャンが他の女性と結ばれる事は応援したいという気持ちはある。私の事は諦めて欲しい。今度こそ、本当の意味で」

と、言い放つと、ジャンは深く頷いた。

ジャン「…………………分かった」

と、だけ答えてそれ以上は言えなかったようだ。ミカサがこっちにやってくる。

ミカサ「これでもう、大丈夫かしら? 後はエルヴィン先生に任せていい筈よね」

エレン「ああ。にしてもミカサ、バッサリ言ったな」

ミカサ「うん。申し訳ないけど。私も私で悪い部分はあった。もっと早くこうしてあげれば良かった」

エレン「それは言うな。言わなくていい。何でも「流れ」ってもんがあるだろ」

アルミン「でも、良かったと思うよ。今の感じで皆も「ああ、遂に振られたな」って分かったようだし」

アニ「だね。以前のジャンの露骨な態度に周りもちょっと引いてた子いたからね。女子の中でのあいつの評価、だだ下がりだったし。ミカサとエレンが付き合っているの知っててまだ諦めないの? みたいな」

エレン「ああ、その辺ってやっぱり女子の目は厳しいのか」

アニ「当たり前だよ。カップルを壊そうとする男も、女も、どっちも「ゲス認定」されるに決まってるじゃない」

ジャンがジュースを一気飲みしていた。エルヴィン先生に注いで貰って。

………………何だろう。急に悪寒がしてきたな。何でだ?

ジャンの顔がどんどん赤くなってくる。え? まさか、え? いや、でも、ダメだよな。

エレン「アルミン、アルコールはもう片付けた筈だよな? 今残っているのはソフトドリンクだけだよな?」

アルミン「ん? どうだったかなー? ちょっとその辺は良く分かんないけど」

といいつつ周りを見ると、

アルミン「あー……カクテルもまだ残ってるみたいだね。大人の方も来ていたし、お酒も全部飲んでしまうんじゃない? 残ってる大人の先生達で」

と、言った直後、オレはダッシュでジャンのところに駆け寄った。

そしてジャンのグラスをひったくった。香ってみる。ヤバい。これ、アルコール入りだ!

ジャン「何しがやりゅ!」

ジャンの目の色がヤバい! これ、完全に酔ってるぞ!

エレン「エルヴィン先生!!!! 何やってるんですかこれ! 犯罪ですよ!!!」

エルヴィン「え? んー? あらら、ごめん。「間違えて」私のグラスをジャンが飲んでしまったようだね。不可抗力だ」

事故だといい訳するようだ。やばいやばいやヴぁい!

これ、隠さないと! ジャンがうっかり飲んだ事を隠さないと!!!!

と、オレが青ざめて慌てていると、そこにヒッチがやってきた。

ヒッチ「失恋記念おめでとう!! やっと正式にミカサにふられたね! ジャン!」

ジャン「ああ? 誰だっけお前」

ヒッチ「酷いwwww錯乱してるwwwwウケるwwww」

ジャン「うるさい声、だしてくんじゃねえよ!!! その口、塞いでやる!!!」

え?

えええ?

えええええええええええええええ?!

その直後、オレは見てしまった。

ジャンが、あのジャンが。

ヒッチを捕まえて、その、その場で、その……

ミカサに振られた勢いって奴かな。あとアルコールの力も入ったせいかな。

周りに人がいる中、深いキスをしたんだ。濃厚な、ディープキスをヒッチにぶちかましたんだ。

その様子を呆気に取られて見つめる一同だ。サシャも流石にそれに気づいてこっちを見ている。

コニーも、びっくりしていた。手に持っていた肉の骨、落としたしな。

ライナーとかベルトルト、あとマルコとミーナ、ユミル、クリスタ、ハンナ、フランツ、ええっと、うちのクラスの奴らは今回の劇の「エキストラ」として多数参加していたから、残飯処理も手伝ってくれていた。

だから、クラスメイトがほぼ揃っている中、ジャンはヒッチとキスしたんだ。

マルロも呆気に取られている。

何より一番呆気に取られたのはミカサだ。

ミカサは「え? サシャじゃなくて、ヒッチが本命だったの?」

と、とんちんかんな事を言いだしている。

ヒッチ「ん………んー………んんー……」

皆、動けない。どうしたらいいんだコレ。

エルヴィン先生、すげええゲスな顔して笑ってる。

ピクシス先生もこっち見ていた。これ、絶対打ち合わせしていたよな。

そして丁度その頃、リヴァイ先生達がこっちに戻ってきて、その場面を目撃した。

流石のリヴァイ先生も目を見開いて、大体の事情を瞬時に読んで、ジャンを後ろから蹴り倒した。

リヴァイ「おい。アルコールは飲むなって言っただろ。誰だ飲ませた奴は」

エルヴィン「ごめん。私のグラスを「間違えて」彼が飲んでしまったようだよ」

リヴァイ「やっぱりお前か。学生に悪戯を仕掛けるな。…………そりゃ俺も10代の頃、酒は覚えたが」

ハンジ「あーうん。右に同じく」

リヴァイ「お前もか。まあ、予想の範疇だが。ダメだぞ。おい、ここにいる奴ら、オフレコにしろよ。他の先生達には内緒だぞ」

と、ここに残っていたのはエルヴィン先生とピクシス先生とキース先生、ハンジ先生、リヴァイ先生の5名だけだったので、どうやら口裏合わせる気満々のようだ。

悪い先生達だな。本当に。まあ付き合い長いからツーカーなんだろうけど。

そしてジャンの下になったヒッチが目を白黒していた。どうやらぺたんと座り込んで立てないようだ。

エルヴィン「大丈夫? ヒッチ。立てる?」

ヒッチ「すみません……腰が抜けて立てなくて」

エルヴィン「いや、大丈夫だよ。ほら、掴まって」

と、エルヴィン先生がヒッチを。オレはジャンを回収してやってとりあえず、引き離した。

オレ、何でジャンの面倒見てるんだろ? 自分でも良く分からん。

ヒッチ「………………やばい」

エルヴィン「ん?」

ヒッチ「過去最高にキスが上手かった。あいつ、キス上手かったんだ」

エルヴィン「え? そうだったの?」

ヒッチ「はい。なんか、今までの男の比じゃない…………何、コレ。こんなの初めて経験するんだけど」

という言葉が遠くから聞こえてオレは「えええええ?」と思って振り向いた。

ミカサもオレと目があって「ええええええ?」って同じ顔をしている。

ヒッチ「どうしよう。いや、でもあの馬面だしな。いや、でも………ああああああ迷うううううう!」

エルヴィン「何を迷うの?」

ヒッチ「身体の相性、いいのかもしんない! ジャンの奴、私と! でも、その……顔が好みじゃない!」

ぶふううううううう!

やっぱりそうきたか! いや、待て待て。その発言はいろいろ問題だらけだぞ!

ヒッチの発言にエルヴィン先生が吹いていた。

エルヴィン「顔は好みじゃないのにキスは上手いと思ったんだ。珍しいねそのケースは」

ヒッチ「うん。私、こう見えてもそこそこ「面食い」だったし……でも、エッチ下手な男が多かったんですよね。なんていうか、女に「してやる」心遣いがないっていうか、「させてやってんだぞ」みたいな? 単調で、パターン化している男とばっかり当たってきたから、こういうのは初めてかも」

エルヴィン「ジャンは女に尽くすタイプだからじゃない? 女に合わせられる男はエッチ上手いよ。リヴァイがそうだしね」

ヒッチ「ええええ?! そうだったんですか?! あ、そっか! イケメンって、黙ってても女が寄ってくるから横暴になるのかな? あ、でも待って? リヴァイ先生はイケメンなのにエッチ上手いんですよね? アレ? 矛盾しているような……」

エルヴィン「んーリヴァイの場合はちょっと特殊な例だけどね。でも、普通はイケメンで女に困らないタイプの男は努力しなくても性欲処理は出来るから、エッチ下手な場合もあるよ。ヒッチは今まで、自分から彼氏を引っかけるタイプだったんだよね?」

ヒッチ「そうですね。「こいつイケメンだな♪」って思ったらとりあえず誘惑仕掛けてその気にさせてベッドイン、みたいな?」

エルヴィン「あーだったら、それはハズレくじ引いても仕方がないかもしれないね。顔がいい男は自分の「非」を認めたがらない傾向にある。プライドが高いから」

ヒッチ「ああ! 何か納得しました! 通りで何か歯向かうと、すぐ殴られていた訳だ! 私!」

エルヴィン「それは運がなかったね。ヒッチには、案外ジャンみたいな正反対のタイプが合うのかもしれないね」

ここにきて、第三の女が登場かよ。マジか。ジャン、お前大変な事になって来たぞ。

ジャンは気絶していて話聞いてないけど。アニもアルミンも流石に混乱している。

マルコがこっちにやってきた。ミーナと一緒に。2人もどうしたらいいか分からず戸惑っている。

ミーナ「最低だよージャン。アルコール入ったからと言って、まさかあのヒッチにいくなんて……」

マルコ「いや、これは僕達にも責任がある。エルヴィン先生に「けしかけた」のは僕達だし……」

アルミン「うん。そうだね。僕もまさかここまで強引な手段を使ってくるなんて思わなかった」

エレン「いや、そこは予想出来ただろ。あのエルヴィン先生なんだぞ? 容赦ねえぞ? この手の「トラップ」に関しては」

アルミン達は甘く見ていたようだ。「大人」の罠の張り方を。

アニ「うううーん。でも、そうだね。エルヴィン先生、容赦ないもんね。これは私達が悪かったかも」

アルミン「どうしよう? 今、サシャの方を見るのが正直、怖いんだけど」

ミカサ「サシャは別に平気みたい。普通にご飯を食べ続けている」

あ、本当だ。まだ残飯処理を続けている。

でも、何か様子が変だな。食べているけど「美味しくない」顔をしている。

リヴァイ先生が用意した飯だから、美味しくない筈はねえんだが。

コニーとかはソワソワしてこっちに来た。事情を知りたくて堪らない顔してやがる。

コニー「なあなあどうなってんの? ミカサに振られたのは分かったけど、何で急にヒッチの方にいったんだ?」

エレン「アルコール飲んで錯乱したからだよ。たまたまだ」

コニー「ええええ?! 酒飲んだのかよ! ダメじゃん! あ、誰かのグラスと間違えたとか?」

エレン「エルヴィン先生のグラスと間違えたそうだ。不可抗力だよ」

一応、そういう事にしておかねえとな。

コニー「まじかー災難だったなーそれ。おーい。ジャン。起きろー?」

ペチペチ。叩いてみるけど反応ねえな。どうすっかな。コレ。

ヒッチはヒッチでまだエルヴィン先生と「愛の」進路相談中のようだ。

リヴァイ先生は周りを少しずつ片付けながら残飯処理をしていて、そのヒッチの発言に対しての会話に参加していた。

リヴァイ「おい、一体何の話をしているんだ。エルヴィン」

エルヴィン「ああ……今、見てたでしょ? ジャンにキスされちゃって、そのキスが「上手かった」からどうしようって話だよ」

リヴァイ「は? 何だそれ。今のは事故みたいなもんだろ。忘れろ」

ヒッチ「無理ですよ!!! あんなに超絶上手いキステクニック持ってる男、逃したくないいいいいい!」

リヴァイ「? だったらコナかけたらいいじゃねえか。何を迷う必要が」

ヒッチ「でも、顔が好みじゃないんです!!! あの馬面が!!」

ハンジ「ぷ! それは酷いwwwww」

と、ハンジ先生もウケている。

ハンジ「あーでも、気持ちは分からなくはないかも。そういう「ここさえなければ」みたいな部分ってあるよね」

リヴァイ「おい、それはどういう意味だ。ハンジ」

ハンジ「あんたの場合は「優しすぎる」ところだね。いや、そこを好きでもあるんだけど。私以外の人間にも平等に優しいじゃない? たまに「ちぇ」って思う事もありますよ?」

リヴァイ「そうだったのか」

ハンジ「そのせいでファンクラブの件も勃発したんでしょうが。忘れたとは言わせないよ?」

リヴァイ「……すまん(シュン)」

ヒッチ「という事は我慢するしかないのかなー? あの馬面を。キステク取るならそうするしかないですよね(じゅるり)」

いかん。ヒッチが雌豚モードを発動させかけているぞ。

リヴァイ「おい、やめておけ。エッチに溺れて恋愛に嵌ったら自分の気持ちが迷走するぞ」

リヴァイ先生が言うと重みがあるな。

ヒッチ「ダメですかね? 私、体の相性が悪いのだけはどうしても受け入れられないんですけど。前の彼氏に「エッチがマンネリ化してきたから別れたい」って言ったらぶたれてそのまま音信不通になりましたよ?」

と、ヒッチが言うと、エルヴィン先生が大きく吹いて、傍にいたピクシス先生までも吹いた。

ピクシス「なんという勿体ない事を……」

エルヴィン「ですね。勿体なさ過ぎる……その男は馬鹿だな」

リヴァイ「そうだな。アホだな。ダイヤの原石をドブに捨てたな。そいつは」

ヒッチ「え? それどういう意味ですか?」

と、ヒッチは混乱しているようだ。

するとリヴァイ先生があきれ返った顔で言い放った。

リヴァイ「それは逆に言えば「エッチさえ満足させて貰えれば後は文句言わない。あなたの好きにして」とも受け取れる。そんな大らかでいい女をどうしてドブに捨てるんだ。エッチが下手なのは、8割は男の「腕」が未熟な証拠だ。リードしてやらなくてどうする。情けない男としか思えないぞ。なんでそんなのと付き合った?」

ヒッチ「ん~まあ、話してみて割と「楽しい」って思ったからかな? あと顔がそこそこイケメンだったんで」

ハンジ「あああもう、昔の私を見るようで胸が痛い」

ハンジ先生が胸を押さえている。ヒッチとハンジ先生、似てるところがあるのかな? 意外だけど。

リヴァイ「まあ、最初はそんなもんか。俺もあんまり人の事は言えないしな」

ハンジ「んー10代の頃は迷走する事もあるよね。私が言うのも何だけど」

ヒッチ「2人のお話、超面白かったですよwwww特に修羅場のところwwww」

リヴァイ「お前、そのシーン、食い入るように見てたよな。1人だけ」

ヒッチ「だって、あんなにスカッとするシーン、なかなかないじゃないですかwwww」

リヴァイ「あれでも一応、規制入れているけどな」

ヒッチ「マジですかwwww本物聞きたいかもwww」

ハンジ「あーやめた方がいいよ♪ ドン引きするってきっと」

ヒッチ「えー? 残念だなあ。私、でもあの再現劇を見て、感動しましたよ? こんな風に「劇」を見て面白いって思ったのは初めてかもしれない」

リヴァイ「そう言って貰えると、こっちとしては有難いかな」

と、苦笑するしかないようだった。リヴァイ先生は。

リヴァイ「……で、ヒッチはジャンにコナかけるつもりなのか? あいつ、今、サシャという女が好きみたいだぞ? それでもいいのか?」

ヒッチ「知ってますよ。その件は。でもあいつヘタレだから、自分からなかなかアプローチ出来なくて迷走しているみたいだし、誘いかけたら意外といけるんじゃないかな?」

ヒッチの目がやばい! あいつ、本気でジャンを堕とすつもりなのかな。

ジャンを起こしてやりたいけど、まだ起きない。

皆で「おーい」とかいろいろやってるんだけど。気絶した奴を起こすのってどうすればいいんだろ?

逆は簡単だけどな。気絶させるのは。

リヴァイ「やれやれ。肉食派か。こういうタイプの女は1度火がつくとなかなか止まらないからな……」

ハンジ「おや? まるでそういう過去がある様な言い方だね? リヴァイ? もう大体全部、過去の女の件は話したんじゃなかったの? (黒笑顔)」

リヴァイ「ん? エッチした女と、割と本気だった女は全員話しただろ?」

ハンジ「本当に? 隠すと為にならないよ? 追いかけられた女はカウントしてないの?」

リヴァイ「恐怖しか感じなかったぞ。そういう女は。言っておくが俺は「襲ってくる女」は好きじゃなかった。「誘ってくる」女とは完全に別物だぞ」

ハンジ「ふーん。そういうもんなんだ」

リヴァイ「演劇の裏方に初めて入った時がそうだったな。裏方の女の先輩達に逆セクハラされまくって、流石に逃げた。何だろうな? 女なのに「男」みたいな感じの女だった。見た目は凄く女らしいのに、中身が「男」だったんだろうな。きっと」

エルヴィン「ごめんね。彼女達、可愛い男の子が大好きだったから。好みドストレートの男の子が入ってきてテンションおかしくなってたんだよね」

リヴァイ「まあ、俺の事は横に置いて、今はヒッチの件だろ。お前、ジャンを堕とすつもりなら、もう少し見た目から変えた方がいい。お前、見た目が軽過ぎる。髪色、黒に戻した方がいいぞ」

ヒッチ「あーなんかそれっぽいですよね。いいですよ。その辺は。私、相手にある程度合わせられる女なんで」

ピクシス「ますますいい女じゃの。本当に。ヒッチを振った男は損したな」

エルヴィン「ですねえ。あー私が高校教師じゃなかったらなあ」

ピクシス「全くじゃー」

と、何故かヒッチ推しを始める2人にリヴァイ先生も苦笑している。

リヴァイ「まあ、いい女だと思うな。ヒッチは。自分の意見ははっきりしているし、相手との距離も取るのがうまい。コミュニケーション能力も高く、明るいし、合わせるところは合わせられる。ただ、ビッチなのが欠点だが、そこはまあ、相手の男の「腕」次第っていうなら、いくらでも変更はきくだろ」

ヒッチ「ですねえ。私、エッチ上手い男と出会えたら、フラフラするの止めると思いますよ。リヴァイ先生みたいに」

リヴァイ「だったら今のうちに出来るだけフラフラしておけ。俺が言うのも何だけどな」

ヒッチ「あざーっすwwww今度、私もリヴァイ先生のファンクラブに入っていいですか? 個人的に」

リヴァイ「たまに料理ブログを書く程度だけどいいのか?」

ヒッチ「男堕とすのに料理は必須科目なんでwwwネタに困ったらレシピ参考にさせて下さいよ」

リヴァイ「構わんぞ。いろいろ試してみるといい」

ヒッチ「あざーっすwww」

何かあっちはあっちで仲良くなってるな。いつの間にか。

しかし困った。こっちはジャンが起きない。というか、寝てるのかな? これは。

アルミン「諦めるしかないみたいだね。寝息立ててるし……」

アニ「そうだね。でもジャンの家まで誰が連れて帰るの?」

マルコ「うーん、僕しかいないよね。家まで連れて帰るしかないか……」

ミーナ「ええ……(しょぼーん)」

マルコ「ごめんね。この中でジャンの家、知ってるの、僕くらいだろうし」

ミーナ「そ、そうよね……」

あれ? ミーナの様子が変だな。マルコと約束していたのかな?

エレン「マルコ、ミーナと何か約束していたんだったらそっち優先してやれよ。ジャンの事は、マルコがそこまで背負うようなもんじゃねえよ」

マルコ「え? ああ……まあ、ミーナとこの後、ちょっと2人でね? まあ、その…ごめん。言ってもいい?」

ミーナ「いいよ。この際だし」

マルコ「えっと、僕達、今日から付き合います(小さいピース)」

といいう爆弾発言がきたので皆でびっくりした!

アニ「え、ええええいつの間に?! え、もしかして、社交ダンスが切欠?」

ミーナ「うん。その前からちょこちょこ誘いはあったんだけどね。でも決定打はそれかな。一緒に踊る練習してたら、だんだんその気になっちゃった」

アルミン「先越されたー(ガーン)」

マルコ「ごめんね。アルミン。さっきそういう話になったばかりだったし、後日伝えようと思ってたんだ」

なるほど。マルコがぺこぺこしていたのはその話をしていたからだったのか。

へーなんか続々とカップルが出来てきた感じだな。嬉しいなこういうのは。

ミカサ「だったらマルコはミーナを優先すべき。ジャンの家は、他に知ってそうなのは………サシャは?」

エレン「あ、可能性はあるな。おーいサシャ!」

サシャを呼ぶと、こっちを一応見た。そして駆け寄ってくる。

サシャ「呼びました?」

エレン「ジャンの家、知ってるか? こいつ、もう起きないから家まで連れて帰ってやってくれよ。1人じゃ無理なら、オレ達も手伝うからさ」

サシャ「ううーん。まあ、一応、家は知ってますけど……」

と、微妙な顔をしているサシャだった。無理もねえかな。こいつ、アホだしな。

サシャ「この場合、マーガレット先輩の自宅の方が近いので、そこで1泊させた方が早いかもしれないです。この後、一応、夜の仕事の予定が入っていたんですが」

エレン「ええええええ?! マジかそれ!!! バイトにならんだろコレ! どうすんだ?!」

サシャ「そこは私が事情を話します。間違えて飲まされて泥酔したと。先生はお酒には理解ある方なので多分、大丈夫とは思いますが……はあ」

と、ため息をついているサシャだった。

サシャ「お酒、飲んだ事が全くなかったんですかねー? 普通、匂いとかで分かると思うんですが」

エレン「なんかヤケ酒っぽかったしな。気づいてあえていったのかもしれんぞ」

サシャ「だとしたらちょっと軽蔑しますー。この後、別の仕事あるのに、そういう事したらダメですよ。らしくないですね。ジャン。いつもは真面目なのに」

と、サシャが困った顔をしていた。

サシャ「まあ、しょうがないですかね。この場合は。ジャンの荷物はどれか分かります?」

マルコ「ああ、それは僕が持ってくるよ。玄関出る時に渡すから」

サシャ「そうですね。そこはお願いします。後、ジャンをおんぶして帰るのは流石にしんどいので、ジャンの財布から金抜き取ってタクシーで迎えに来て貰いましょうか。電話で予約入れておきましょう」

と、淡々と処理をこなしていく。すげえ。なんか冷静だな。

電話でタクシーの予約を入れてしまうと、サシャは言った。

サシャ「あーなんか、ジャンってアレですねえ。いろいろアレですよねえ」

と、困惑しているようだ。言いたい気持ちは良く分かる。

ミカサ「うん……まあ、そうね。そこは否定できない」

と、ミカサまで頷いている。

サシャ「まさかヒッチにまでフラフラしていたとは思わなかったですよー。3人目ですかね。はあ」

エレン「え? サシャ、お前、ジャンの気持ち、気づいていたのか?」

サシャ「え? まあ……その、ミカサ程の強い感情ではないのは知ってましたけどね。ジャンがたまに、私の事を「気にしている」のは気づいてましたよ」

意外と察知能力高いなサシャ! オレ、てっきり気づいてないと思ってたのに。

コニー「そうだったのか。サシャ、ジャンの事、気づいてたのかよ」

サシャ「はいー。まあ、一応。でも、ジャンの方から告白してくる訳でもなかったんで、スルーしてました。そういうの、いちいち構っていたら面倒臭いですしね。私、こう見えてもそれなりにモテるんですよ? バイト先では結構コナかけられていたし、ナンパもされた事はあります。ミカサ程ではないとは思いますが」

と、ちょっとだけ大人な表情で言うサシャに皆、びっくりしていた。

サシャの意外な側面が見えて、へえええという顔になっている。

ダメだ、現代の高校生についていけねー

>>788
純粋なままで居て下さい…。すんません。
というか、自分の高校時代はこれよりもっと酷い修羅場とか……げふげふん。

いや、何でもないです。申し訳ない。昔話はどうでもいいか。

えーここから先、もっと酷い展開が待っているので、
ジャン好きな方は読むの辛いかもしれないです。
先に警告しておきます。すみませn。

アニ「そうだったんだ。サシャ、だったら今後もスルーするの?」

サシャ「私の場合、恋愛事は出来るだけ優先したくないんですよね。アルバイトしていた時に思ったんですが、その手のトラブル抱えると、何か起きた場合、女側が辞めさせられる場合が多いんですよ。私も生活かかってますし。もしもの事があったら怖いですし。今のアルバイト、絶対継続していきたいんで、ジャンと拗れるのだけは避けたいんですよね」

エレン「………何か急にサシャが大人っぽく見えてきたな」

アルミン「う、うん……意外な側面だね」

サシャ「そうですか? 私は皆の方が大人に見えますけど」

ミカサ「そうかしら?」

サシャ「はい。こんなにグダグダになっているジャンを皆で心配して介抱してあげているじゃないですか。皆、優しいですよ。社会に出たら、こんなのやったらクズ扱いされて速攻クビか、総スカン食らって退場というか……少なくとも、こんな風に誰も面倒見てくれませんよ? 社会の風は冷たいですから」

と、いきなり社会の厳しさを説くサシャに皆、度胆を抜かれていた。

サシャ「ジャンは恵まれていますよー。周りに。ちょっとその辺、気づいて欲しいんですけどね。鈍感過ぎますよね」

といいつつ、サシャはジャンを突いている。

サシャ「私はまだ残飯処理が残っているので、それが終わってからジャンを回収します。とりあえず、邪魔にならない場所にジャンを移動させて、もし起きたらその時は1人でタクシーで帰らせましょう。起きなかったら、マーガレット先輩の自宅に連れて行きます。それでいいですかね?」

エレン「あ、ああ……それでいいかな」

アルミン「そうだね。残飯処理、まだ残ってるし、そうしよう」

と、皆で方針を固めてジャンを運んだ。端っこに。とりあえず。

でも驚いた。サシャの態度に。あいつ、何か表情が他の奴らと全然違う。

アルバイト経験をしているってだけなのに、こんなに差が出るもんなのかな。

エルヴィン先生が「スキル」を十分持っていると言っていた意味が分かった気がする。

ミカサ「驚いた。サシャが1番冷静だった」

ミカサもオレと同じ意見のようだ。

エレン「ああ。オレもだ。サシャって、なんかそういう「ギャップ」があるよな」

ミカサ「うん……普段は明るくて、天真爛漫な印象だったのに」

エレン「そういえば文化祭の時もそうだったよな。やる事サクサクやっていくタイプっていうか、行動が早いというか…」

ミカサ「ユミルもそうだったけど、サシャも凄かった。勿論、アルミンもサポートをしていたけれど、それぞれの役割分担をきっちりこなしていた」

エレン「そういう意味じゃ、オレ、文化祭の時、そんな大した事やれなかったな……」

ミカサ「それを言ったら私もそうなる。受付もちょっとしかやっていない」

エレン「なんか、先を越された気分だな。高校時代にアルバイト、経験した方がいいのかなあ?」

親父は「まだ早い」って言いそうだけど。今のサシャを見ていたら急に自分が不安になってきた。

ミカサ「でもエレンは医者を希望している。両方は無理だと思う」

エレン「ああ、まあそうか。それもそうか」

ミカサ「サシャは、サシャ。エレンはエレン。私は私。そう思わないといけないような気もする」

エレン「んーまあ、それもそうか。欲張り過ぎたらダメだよな」

ミカサの言う通りだな。サシャはサシャだと思う様にしよう。

ちょっと羨ましいと思うけど。オレはオレの道を選んだんだしな。

キース「やれやれ………だから飲酒OKは止めた方がいいと言ったのに」

と、キース先生が愚痴をこっそり零した。

エレン「え?」

キース「ん? いや、何でもない。わたしは何も見ていないぞ」

と、スルーする。どうやら「そういう事」にするようだ。

エレン「そうですね。オレも何も見なかった事にします」

キース「ああ。今日の事は、全員、見なかった。突っ込まれてもそう答えるしかない」

と、キース先生は苦笑いしていた。

キース「しかし毎年毎年、いろんな事が起きるな……教師生活も大分長くなってきたが、今の高校生は可愛らしいな。本当に」

しみじみ言いながら残飯処理をするキース先生だった。

エレン「え? 可愛らしいんですか? 今のが」

キース「ああ。可愛いな。わしに言わせると」

ミカサ「どの辺が可愛いんですか?」

キース「なんていうか、…………すまん。差別用語になるかもしれんが「ゆとり」の世代の流れがそのまま流れているように思える」

エレン「ゆとり……ああ、昔は今より厳しかったんですよね。勉強のつめこみが」

キース「凄まじかったぞ。いろんな意味でな。こんな事を言ったら教師失格だろうが、飲酒は大体、10代の頃に済ませてタバコもやっていた奴も多かった。少なくとも今みたいに「騙されて酒を飲まされる奴」なんて一人もいなかったぞ。むしろ進んでこっそり皆、飲んでいた」

だめだろおおおおおおお! いろんな意味でダメだろおおおおお!!!!!

エレン「えええええええどんな青春時代ですかそれ……」

キース「それだけ「不良」や「ヤンキー」が多かった時代もあったんだよ。勿論、勉強の方のつめこみも凄い学校もあったが。恋愛事も四角、五角形の関係とかざらだったし……」

ミカサ「四角? 三角関係じゃなくて、ですか?」

キース「ああ。そういう「修羅場」を経験して皆、大人になっていくんだよ。今のうちに思う存分、「修羅場」を経験しておいた方がいいぞ。それが許されるのは「今」だけだからな」

と、キース先生もリヴァイ先生並みに凄い事を言いだした。

キース「ジャンのような例なんか、まだ可愛い方だぞ。振られた腹いせに他の女に逃げるなんて。振られた瞬間、女を殺しにかかる男とか、そういう人間だって世の中には沢山いるんだからな」

それを聞いてぞっとした。確かに、それはあるかもしれない。

キース「そういう意味じゃ、今の子達は「荒波」に余り慣れていないような印象を受けるな。でも、味わっておいた方が大人になった時に絶対役に立つから、こういう「トラブル」は「いい勉強」だと思っておいた方がいいぞ」

エレン「トラブルが「勉強」ですか……」

キース「教科書では教えてくれない「社会勉強」だよ。サシャも言っていただろ? 「ジャンは周りに恵まれている」と。わしもそう思う。社会に出た時に、そのギャップに苦しまないといいがな」

と、言いながら先生はアルコールの処理をしているようだ。

エレン「キース先生もいろいろあったんですか? その……恋愛事のトラブルは」

キース「この年になればいろいろ経験はする。わしはリヴァイ程、モテる男ではないから、あの手のトラブルは抱えた事はないが……」

エレン「聞いちゃダメですかね?」

キース「ん? わしの恋バナを聞きたいのか?」

ミカサ「是非」

ちょっと酔っている今なら聞けるかもしれない。ちょっとだけ調子に乗ると、

キース「ふん……まあ、その、なんだ。教師と生徒の禁断の恋愛、とかな?」

エレン「え、ええええええええ?! あるんですか? キース先生!」

キース「あるぞ。もっとも、当然その恋は叶わずに終わったけどな。でもわしだけではないぞ。教習時代リヴァイがぶん殴ったデニス先生もその「禁断の扉」を開けてしまって、大変悩まれていた」

エレン「え………」

ちょっとそれ、聞いていい話なのかな。なんかまずい気がしてきたけど。

エレン「それ、オレが聞いてもいい話ですか?」

キース「もう時効だろう。デニス先生も退職されたし、当時の生徒も成人していて子供もいる。リヴァイは「セクハラ」として誤解したあの事件は、本当は「恋愛」だったんだよ」

ミカサ「そ、そうだったんですか……」

うわあああああ。衝撃の事実を知ってしまった。

それ、リヴァイ先生知ったら、自己嫌悪に陥るだろ。絶対。

エレン「あの、その事をリヴァイ先生はご存じなんですか?」

キース「勿論、知っておられるよ。そのせいでリヴァイは自分がいかに「馬鹿」だったかを思い知らされて、酷く落ち込んでいた。その時も、ハンジ先生が大分慰めていたからな。そんな風に優しくされたら、堕ちない訳がないだろう?」

ミカサ「待って下さい。リヴァイ先生は教習時代のハンジ先生との事は最近知ったばかりです。慰められたのなら、その事情を話された時に流石にお互いの事に気づいてもいいのでは……」

キース「何を言っておる。リヴァイの性格は大体分かるだろ。真相を知った後も、ハンジにはその事は「話さない」状態で落ち込んでいたんだよ。ハンジから見たら「何で落ち込んでいる」のか全く分からない状態だったそうだが……それでも「元気出して」と言われ続ければ、そりゃもう「女神」のような存在にしか見えないだろ」

エレン「ううーん。ハンジ先生、リヴァイ先生をピンポイントで堕としまくっていたんですね。今思うと」

キース「無意識だろうけどな。狙って落とすその手の恋愛ではない。自然と惹かれあってあの形に収まった。時間がかかり過ぎたのが難点だけどな」

と言いつつ嬉しそうにしているキース先生だった。

キース「リヴァイの高校時代の姿を知っているわしから見れば、あやつも大分変わったよ。高校時代のリヴァイは何処か、「死にたがっている」ようにすら見えた。まるで某漫画の白髪のギャンブラーのように。生きる意味を見出せなくて彷徨っていたようにすら思えた。誘われたら女を抱いていたのはただの「現実逃避」だったのか、それとも「贖罪」だったのか。イザベルを亡くした件はわしも再現劇のおかげで初めて知ったが、合点がいったよ。リヴァイの行動はどこか「病的」に見えたし、そこに「恋愛感情」は一切見えなかった。ただ、心の傷を癒す為に人の肌を求めていただけだったんだろうな。今思うと」

エレン「そうですね。それだけ、イザベルって子の死が辛かったんでしょうね」

ミカサ「その気持ちは分かります」

オレとミカサはお互いに片親亡くしているからな。

痛いほど、気持ちは分かる。

キース「初恋のような相手と結ばれた直後に亡くした訳だからな。以後の恋愛事に積極的になれないのも無理はない。それでもハンジという存在がリヴァイの傍に現れて良かったと思う。その縁を結んだエルヴィン先生も凄いと思うが………エルヴィン先生も当時は大変辛そうではあったよ」

エレン「あー……エルヴィン先生、リヴァイ先生の事を本気で好きだった訳ですしね」

キース「ああ。エルヴィンも当初は「そっち」に目覚めた自分に戸惑っておった。自分はどこまで「鬼畜」な人間なんだろう? と笑うしかないと。自分を責めておった時もあったよ。しかし気持ちは分からんでもない。リヴァイは家事能力に関しては女子のそれを上回る。女に産まれていたら、嫁にしたいと思う男は山ほど現れただろうな」

エレン「まあ、家事仕事が出来る女性は魅力的に見えますよね」

ミカサ「そうなの?」

エレン「そういうもんだよ。だからオレ、GWの時、ミカサの家事能力の高さをあんまりジャンにアピールして欲しくなかったんだよ」

ミカサ「そ、そうだったのね……」

エレン「すまん。オレもあの時、もっと素直にそう言えば良かったんだけどな。あの頃はまだ、オレも「揺れていた」時期だったし。決定打は「夏」の事件だけど、本当は出会った当初からミカサには惹かれていたと思うんだ」

と、オレはミカサに言ってやる。

エレン「初めて会った時のハイキック、まだ忘れられないもんな。見事だったぜ。あのパンチラ」

ミカサ「パンチラ?! え……パンツ見ちゃったの? エレン」

エレン「見えちゃったんだよ。しょうがねえだろ。見えちゃったもんは……」

ミカサ「は、恥ずかしい……(真っ赤)」

キース「はははは……お前たちは「パンチラ」が切欠に恋に堕ちたのか。可愛いカップルだな」

エレン「いや、まあ、オレの方はそうってだけですけどね」

ミカサ「もー! (ドン!)」

と、軽く1度叩かれてしまった。恥ずかしがってるけど、嫌ではないらしい。

キース「仲良くやっているようだな。2人は」

エレン「はい。恋人ですし、家族でもありますから」

キース「ふむ。今が1番いい時期だからな。思う存分、楽しめよ。「青春」を」

エレン「はい!」

そしてようやく残飯処理が終わって体育館を全て片付けて解散となった。

何だか怒涛の一日だったような気がするが、キース先生に言わせたら「可愛い」もんらしいから、あまり深く考えないようにする。

多分、未来にはもっと恐ろしい「修羅場」が待っているのかもしれない。だからいちいち落ち込んでいたりはしていられない。

キース先生に言われて気づいた。確かに「振られた腹いせ」に「相手の女を殺す」男だって世の中には沢山いる。

その言葉にハッとさせられた。オレ、もっとミカサの事をちゃんと守らないといけないと思ったんだ。

ジャンがヘタレな奴で幸いだった。他の女に逃げる程度の「優しい」奴だったんだからな。

オレはそう思いながら、疲れた体を引きずって、でも不思議な高揚感を持ちながら玄関まで移動した。

皆、思い思いに今日の出来事を振り返っているようだ。

ジャンはまだ起きない。マルコとアルミンが支えてタクシーに乗せてサシャとマーガレット先輩と一緒に乗り込んでいた。

マーガレット「いやー今日のジャンの事件、母の読み切りの漫画のネタにさせて欲しいくらいだわ。ふふふ……」

エレン「ゲスいですよ。先輩」

マーガレット「まあね。私、元々ゲスいから。にしし」

と言いつつ笑いながらジャンを回収していった。

マルコはミーナと一緒に帰るようだ。皆、それぞれ思い思いに帰って行く。

ライナー「うむ……ジャンの奴はその、アレだ。いろいろダメな部分もあるが、根は悪い奴じゃない筈だよな? 多分」

と、ライナーが戸惑っていた。

エレン「あー今は何か迷走しているみたいだけどな」

ライナー「ふむ……いやしかし、流石にヒッチに流れるとは予想もしていなかったぞ。大丈夫なのかあいつは?」

と、優しい気質のライナーが額に汗を掻いて心配している。

ベルトルト「ううーん。ヒッチは流石に僕も無理かな。狙われたら怖い……(ガクブル)」

と、うっかり想像して怯えるベルトルトがちょっとだけ可愛かったな。

アニ「あーでも今回の件は私達も責任あるんだ。けしかけたの、私達だし」

アルミン「うん……正直、今頃になって罪悪感が沸いてきた。エレンが前に「悪い方に転がったらどうするんだよ。目も当てられないだろ」みたいな事言ったけど、当たってたね。エレンの判断の方が正しかったのかもしれない」

エレン「いや、それも結果論だから気にしちゃダメだろ」

アルミン「そうだけど……」

エレン「まあでも、大丈夫じゃねえか? 多分。サシャの方が冷静だったし、そこまで酷い事にはならないんじゃねえか?」

コニー「いやーどうだろうな? オレ、今のジャン、危ないと思うぜ。いろいろと」

エレン「そうか?」

コニー「うん。振られた直後って、不安定になるからな。オレも経験あるし」

アルミン「え? そうなの?」

コニー「今の彼女と、喧嘩して別れてまた復縁して……って経験あるからな。夏の甲子園の前後でさ、ちょっと野球部の練習が忙しくなりすぎて音信不通になりかけた時に、修羅場を1度、経験したんだよ。「放置し過ぎるな!」ってさ。それからはメールだけでもマメに連絡入れるようにしたし、電話は毎日1本入れるようにした。会えないけど、そういう「ツール」を使ってでも繋がっておかないと、あっという間に崩れるんだなって思ったしな」

エレン「コニーですらそういう経験あるのか」

コニー「オレの場合は感覚的には「遠距離恋愛」に近いもんなあ。練習と恋愛の両立って結構難しいんだなって思った。その代わり勉強は完全におざなりだけどな。にしし」

エレン「コニーの場合は来年はもう10組決定みたいなもんだな」

コニー「だと思うぜ。別にいいよ。勉強しようと思ってここに入った訳じゃねえし。まあ、皆と進路別れるのは寂しいけどな。でも会おうと思えば同じ学校だし、会えるし」

と、コニーは笑っている。

コニー「多分、オレとサシャは10組になるのはほぼ確定じゃねえかな? サシャも進学は希望してねえもん。就職優先で考えている筈だし。最悪の時は親父さんの家業の手伝いでいいって言ってたしな」

ユミル「あーそれ言ったら私も10組になるかもしれん。就職希望だし」

エレン「え? ユミル、大学行かないのか?!」

ユミル「ああ。大学はちょっと、後回しにしようと思ってる。社長になるなら、一番最初に必要なのは「社会勉強」だろ? まずは1回就職して仕事してみて、金を貯めまくってから、必要な大学が出てきたらその時点で大学に行く。順番が皆とは逆だけど。そっちの方がいいと思ってな」

エレン「へーそうなんだ」

クリスタ「うん。私も10組寄りになるかも。高校卒業したら、芸能プロダクションを受けようと思ってる」

ミカサ「芸能人になるの?」

クリスタ「成れるかどうかは分からないけど、1度挑戦だけはしてみようと思うんだ。ダメだった時は、またその時に考えるよ」

アルミン「だったら演劇部の方に加入したらいいのに」

クリスタ「お誘いは嬉しいけど、今は野球部のマネージャー業があるからね。あんまりフラフラするのも印象悪いし……演劇も楽しかったけど、私の場合は出来れば「バラドル」方面で考えているんだ」

アルミン「バラドル?! えええええ?! 全然そんなイメージないよ?!」

クリスタ「そう? 私、お笑い番組とかも好きだよ? 人を笑わせる職業って最強の「サービス業」だと思わない?」

ユミル「まあ、クリスタの場合は「天然ボケ」路線か、「小悪魔系」か、その辺になりそうだけどな」

と、皆思い思いに未来を漠然と考え始めたようだ。

アルミン「そうなんだ……バラドルかあ……」

クリスタ「イメージ崩れちゃった? でも私、根はこんな感じだよ? 無理やりお酒飲まされたり、熱湯風呂にだって入ってもいいと思ってる。ちょっと古いネタだけど。お笑いの司会者にいろいろ弄られたりしてみたいな。テレビ観るのは元々好きだし、勉強の方も下から数えた方が早いしね。あと、ユミルとも同じ方向になるし。そっちがいいかなって思って」

アルミン「あううう……」

アルミンも落ち込んでしまった。ジャンと似たような運命になったみたいだな。

クリスタ「まあ、ダメだった場合はしょうがないけどね。其の時はユミルのところに転がり込んで、一緒に暮らそうと思ってる。いいよね?」

ユミル「むしろ最初から一緒に生活してもいいと思ってるけどな」

えええええええ?!

まさかの「同棲」宣言にオレは驚いた。あ、いやここでは「友人同士」のフェアの意味かもしれんけど。

アニ「アルミンは結局、医者と弁護士、どっちの方向で考えているの?」

話題を変えようとアニが言った。すると、

アルミン「あー…何か調べれば調べる程、僕って弁護士の方が向いている気がしてきた。確かに医者も魅力的ではあるんだけど、医者の場合は「体力」の方面で不安が出て来たね。僕、風邪とかしょっちゅうひくし、医者の不養生になりかねないなあと思ったから、今は弁護士の方で考えているよ」

アニ「じゃあ、いつかアルミンの『異議あり!!』が見られるかもしれないね(ニヤニヤ)』

アルミン「いや、アレはゲームの話だからね?」

と、言いつつ苦笑いしているアルミンだった。

ミカサ「アニは結局、看護師を目指すの?」

アニ「うん。成績も問題ないし、何より「安定」と「金」が魅力的に見えたからそっちで行こうと思ってる。針とかもぶっさすの、好きだし、いいかなって」

エレン「ドSか……」

アルミン「ドSですね」

ライナー「ドSだな」

ベルトルト「………(赤面中)」

アニ「ん? 何の事? 私、ドSじゃないよ? 白衣の天使になるよ? (ニヤニヤ)」

エレン「いや、アニの天職のような気がするな。うん」

アニ「エレンは結局、どうなったの?」

エレン「オレか? オレは……成績次第だな。医者を目指すけど。もしかしたら浪人しないとなれないかもしれない」

ミカサ「そうなの?」

エレン「2~3回は浪人するのが当たり前の世界らしいから。親父も1回浪人してから医者になったって昔言ってたしな。親父の場合は、医者を目指した時期がちょっと遅かったから、仕方ないって言ってたけど。高校3年の春からだったかな? 本格的に勉強をし始めたのは。1年と2年の頃は進路が見えなかったせいで遊んでしまったから、そこから驚異的に勉強して、実質2年間で成績を上げて医学部に受かったらしいから」

ミカサ「努力の人なのね」

エレン「みたいだな。オレも勉強頑張らねえとな。下の方でもいいから、ギリギリでもいいから入れてくれる医学部探さないといけないな」

アニ「ミカサは結局、どうしたの?」

ミカサ「私も医者になる。エレンと同じ方向にする」

アニ「そうなんだ。じゃあいつか、一緒の職場で働けるかもしれないね」

ミカサ「そうなるといい」

ベルトルト「皆凄いなあ」

と、遅れてベルトルトが発言した。

ベルトルト「僕はまだ、なんとなくエルヴィン先生に勧められた「秘書」関連の仕事を見ているだけなのに」

ユミル「秘書でいいんじゃねえか? ベルトルさんはそういうの得意だろ?」

ベルトルト「なのかな? まだ自信はこれっぽっちもないけどね」

と、消極的だけど、ベルトルトもそんな風に話して皆、解散していった。

長い1日が終わり、自宅に帰り着くと、一気に疲れが出てきた。

やべええ。風呂に入る気力がねえ。

長丁場の演劇だったからな。というか、本当は1時間半の予定だったのを「直前」で「追加シナリオ」入ったせいで、こんな状態になったんだ。

何で追加シナリオ入れたのかは、その理由は劇中を見て貰えば大体は分かると思うけど、リヴァイ先生は今回の劇で本当に「リヴァイ・アッカーマン」を捨てる覚悟を決めたそうだ。

自分が恥をかくことで、幻想をぶち壊せるなら。

それでハンジ先生を守れるならば、捨てると言い切ったんだ。

だから、直前になって「もう少し恥の上乗りをする」と言ってエピソードを完成させて追加を入れた。

正直、エルヴィン先生はそれを見て「無茶ぶりするねえ」と言ってたけど、シナリオを読み終えてから即座に「追加しよう」と言い出したんだ。

まあ、この時のやりとりがあったから、エルヴィン先生が「どうせやるならアレもこっそりやろうか」となり、OKを出した。

リヴァイ先生が憤死したシーンだな。あのシーンに関してはミカサはずっと「やりましょう」と推していたから決まった時はすげえ喜んだな。

そんな訳で怒涛の12月だった訳だ。あーもう、疲れて超眠い。

布団敷いて、その上に寝た。もう何もしたくねえ……。

と思っていたら、

ミカサ「エレン、おやすみのキス……」

エレン「眠い……ミカサからしてくれええ」

ミカサ「あらら……じゃあ遠慮なく」


ぶちゅうううううう


エレン「?!」

すげえキスがきた。おいおい! ちょっと! バキュームじゃないんだから!

エレン「ん………おい、ちょっと待て! おい、ミカサ?!」

ミカサ「ん……」

エレン「んー……こら、もう……」

ダメだ。ミカサが発情モードだ。でもオレも疲れているんだけどなあ。

どうするかな。眠いのと理性と本能がごちゃ混ぜになって、意識が虚ろになる。

こういう時って、どうするべきかな? 眠気を優先するべきか、ミカサを優先するべきか…。

ミカサ「うふふ……エレン、眠そう」

エレン「眠いよ。今日は1日疲れたよ。ミカサは疲れてないのか?」

ミカサ「全然。むしろ興奮している。劇の興奮がまだ体に残っている」

エレン「あー『仮面の王女』の時のオレみたいだな」

ミカサ「そうなの?」

エレン「オレも主演を演じた直後はなんかふわふわしていたからなあ。その勢いで告白したようなもんだし」

ミカサ「そうなのね。だったら突然、告白されたのも頷ける」

エレン「…………今、したいのか?」

ミカサ「ちょっとだけ。でも疲れているなら無理は出来ない。冬休みにも入るし、焦る必要はないので、今日は一緒の布団で寝るだけにする」

エレン「汗臭いけどいいのか? 風呂入る気力ねえけど」

ミカサ「いい。私も風呂には明日入る。この匂いに包まれていたい……」

あ、ミカサがスリスリしてきた。可愛いなあ。

そうだな。また明日もある。今日はとりあえず、1回寝よう。

そしてまた、明日考えよう。明日は明日だ。うん。

エレン「おやすみ……」

半分眠った状態で、オレはミカサにそう言って、一気に深い眠りについたのだった。

やっと怒涛の冬公演編が大体終わりました…。


あとちょっと気になった事があるんで安価、ではないんですが、
今後の展開について相談を。

ペトラがハンジ先生をぶったり、エレンが変態の道へ覚醒(笑)したり、
ジャンが迷走したり、読者にとって「心臓に悪い」展開がきた時に、
意見を下さるのは有難いのですが、
私の場合、そこに重要な「伏線」を張っている場合も多々あるので、
(特にペトラの時がそうでした。オルオ×ペトラの大事な伏線だったので)
その辺のツッコミ自体は有難いんですが、
今後はどうしていったらいいか迷っています。

一応、今回は「ジャン」が中心に今後は展開していく予定ですが、
正直言って、ジャン好きな方には本当にしんどい展開になります。
なので、一応今回は「予告」させて頂きましたが、
あまりに「予告」ばかりすると、物語を読む上での「面白さ」が欠けていくのも否めません。

驚かすよ? って言いながら「わ!」って大声を出すようなもんです。
それって確かに「安全」ではあるんですが、面白さが「半減」しないかなー?
という懸念もあるので、今後どうするべきか迷っています。

ここの板は若い方が多いのは分かっているんですが、
この物語、正直言えばまだまだ「ぬるい」です。本気出して書いてないです。
だから読者を置いてけぼりにする可能性もあるんですが、
もうちょっと「手加減」入れた方がいいんですかねー? 迷います。

進撃の巨人読み慣れている読者層なら「しんどい」展開大丈夫かなー?
と甘く見ていた私が悪かったとは思いますが、
今後、「しんどい」という意見が多い場合は、
展開をちょっと変更していくかもしれません。

なので、その辺は「どの程度」までなら大丈夫なのか知りたいので、
もし意見があれば↓にどうぞ。宜しくお願いします。

特に何も意見がなければ、現状維持で進めます。ではまたノシ

エレンとミカサが仲よい展開がやだ
現実に男が拒絶してるカップルは険悪ですぐ別れる
現実にエレンとミカサが居たらミカサの方が突然裏切ると決まってる

諌山先生はミカサのことを考えてない
拒絶するエレンがすごく好きなわけ無い
ミカサは現実にありえない女

ミカサはエレン以外とくっつけてあげたほうがいいよ

意見沢山ありがとうございます。
実は一番懸念していたのは>>801さんの言われる

エレンがミカサを拒否する展開

の展開を入れるべきか入れないべきか迷っている段階です。
2人にとっての最大の「試練」が未来で待ってる状態ですが、
これ書いちゃうと、エレミカ好きにとって一番「しんどい」
かなーと思って、そこんとこどうしようか迷ってました。
ジャンの「しんどい」展開よりも「更にしんどい」かもしれないんで、
そこはやめるべきか、否か、ぬるい方でいくべきか、
キレキレでいくべきか………。

まだそこまでの展開に時間があるので、
その辺は調整しながら決めていきますね。

ご意見、ありがとうございました!

あと自分が「ぬるい」と言っているのは、
講談高校の殆どの先生方を「理解ある大人」として描いている点です。
実際の先生達はこんなに「いい先生」ばっかりじゃないですしね。
酷い先生達もいっぱいいました。人として。
でも、いい先生もいました。まさに社会の縮図だと思います。

あと実は自分の周りには「ヒッチ」みたいな「ビッチ」が普通にいたんで、
高校生もピンキリです。
マルコとミーナのようにさくっとカップルになっちゃう2人もいたし、
リヴァイ先生とハンジ先生ばりに「まだくっつかないのかよ!」
と言いたくなるようなカップルもいたし……。

まあその辺は、多少の脚色も加えて、現実と空想をうまい具合に
ミキシングして面白おかしく書いていこうと思っています。

講談高校の先生たち、いい先生かはビミョー
確かに「この生徒たち」にとっては「理解ある大人」なんだろうけど
価値観は色々やね
面白いからいいやw

>>808
いあ、自分の学生時代の頃に比べたらの話です。あくまで(笑)。

曲者ぞろいの先生達なので、
ある意味じゃ校長先生の胃痛の種になっていそうですけどね。

ミーナはサムエルと抱き合ったり並んで歩いてるので公式ではサムエルの彼女では?

高校時代に遊んでおいたほうがいいよね。充分理解ある大人だよ

>>810
すみません。そこは見逃していました。
ではマルコにも「青春」を経験させないといけないですねー。にしし。

すみません。
これ以上はちょっと雑談になってしまうので、ここまでで打ち切ります。
雑談苦手な方もいらしゃるので、これ以上は自重して下さい。

次は「ジャン」にスポットが当たります。
いろんな意味で「イタイ」青春をさせるので、
ジャンのファンの方は覚悟を決めておいてください。すみません。





12月26日。怒涛のクリスマス公演が終わった次の日。

俺は朝目が覚めてからまだ暫くは「ぼー」としていた。

ミカサもまだ寝ている。何だろうな。この変な感じは。現実に帰ってきたような感じとでもいえばいいのかな。

すげえ長いシナリオのRPGゲームをクリアした直後の、エンディングを見終わった後のような虚脱感に近いかもしれん。

とにかく疲労感があるんだけど、精神的には満たされているような。そんな感じだ。

今日はどうしようかな。冬休みだし。部活の方はどうなるんだろうか。

ジャンに確認するべきだろうか。でも昨日の今日だし連絡してもいいんかな。不安だ。

もしかしたら今日は部活の方も「お休み」になるかもしれない。

まあいいや。とりあえず困った時はアルミンに相談だ。電話してみよう。

アルミン『はいはい。おはよーエレン』

エレン「おはよー。今日は部活どうする? 一応学校行った方がいいんかな?」

アルミン『あーそう言えば何も決めてなかったね。どうしよっか。一応、学校に行ってみる?』

エレン「部活はいつも午後からだから、飯食ってから一応、集まってみるか。アルミン学校来るか?」

アルミン『うん。いいよー。昨日の反省会もしたいしね。集まろうか』

という訳で昼飯を食べてから身支度してオレとミカサとアルミンはとりあえず学校に行ってみる事にした。

公演が終わった直後だから特にやる事もないんだけど。

音楽室に行ってみると、そこにはいつものメンバーが先にわいわい集まっていたんだけど。

ん? 何だ? 何か空気が重いな。どうしたんだろう?

アニ「あー………参ったね」

先に音楽室に来ていたアニが渋い顔をしていた。

エレン「ん? どうしたんだ? 何かあったのか?」

マルコ「ジャンがまた、いろいろやらかしたみたいだ」

エレン「え?! あれ以上のこと、何かやらかしたのか?!」

というかジャンの姿がないな。まだ来てねえのかな。

ペトラ「ええっと……うん。ちょっとジャン、猛省中らしいよ」

と、3年の先輩達も全員集まってくれている。

エレン「何が起きたんですか……?」

マーガレット「あーうん。どうしようか。この問題、どこまで人に話していいのかな」

スカーレット「まあうちらは部外者だけどさ。一応知っておいた方がいいかもよ」

マーガレット「かなあ? まあここまで来たからには仕方がないか」

と、腹をくくったみたいだ。

マーガレット「んー……ジャン、今度はサシャと修羅場った」

エレン「………は?」

何だって? どういう事だ?

マーガレット「昨日のさ、ジャンの様子が変だったじゃない? 昨日はうちの仕事、締切前とはいえ、余裕のある感じだったからそこまで切羽詰ってなかったのが幸いだったけど。それでもやっぱりさ、仕事持っている状態で酒飲んで仕事にならない状態になっていたジャンに対して、サシャもイライラしていたみたいでね。ジャンの酔いが結局、朝まで醒めなかったんだよ。うちの母は「まあこういう事もあるよ」って笑って許していたけどね」

そうなのか。その辺はやっぱり大らかなお母さんなんだな。

マーガレット「で、朝から酔いが醒めてから、ジャンが我に返って平謝りしてくれたんだけど。サシャがそこで「酒だと分かって飲んだのか」「そうでないのか」を確認したらしいんだよね。そしたらジャンは「分からない」と答えたの。どうも途中から味が急に「美味しい」って思って飲んだらしくて。何か変だなって思いつつ飲んじゃったんだって。あの時はジャンもほら、冷静じゃなかったし。味の違いに気をつける余裕がなかったんだろうね。だから「酒かもしれない」と思いつつ飲んだようなそうでないような。曖昧な状態だったんだって。だから私、其の時に朝からすぐ、エルヴィン先生にメールで聞いてみたんだよね。ジャンに飲ませたお酒の値段は1本いくらの奴ですか? って。そしたら「1本500万の高級のやつ。自分用にたまに飲んでいるやつだよ」って返事が来て、母に確認したら「そら気づかないわ! 美味過ぎて素人にはお酒だと分からないくらいの美味い酒だったんだね」って言っていたから、恐らくジャンは本当に「分からない」状態で飲んだと思うんだよね」

まあ、エルヴィン先生ならそれくらいの高級の酒を飲みそうだよな。

マーガレット「でも、サシャの方はその返事に対して「ジャンって仕事を舐めていませんか?」とか「ジャンはぬるい。ぬるすぎです」とキレだして、口論になっちゃって。サシャ曰く「怪しい」と思った時点で飲むべきじゃなかったと言い出してね。まあサシャの方が正論なんだけど。その言葉にジャンもカッとなってしまって、「アルバイトなんだから別にいいだろ!!」って言い返して、サシャがジャンをぶん殴った」

ひええええええ……サシャ、すげえな。

あいつ、仕事に関してはすげえ真面目なんだな。さすがアルバイターだ。

マーガレット「まさか私もサシャの方がジャンに手出すとは思わなくてね。慌てて止めに入ったけど。サシャはその後、先にうちの家を出て行ってしまって……ジャンも一応、自宅には帰ったけどさ。母も母で「参ったわね~」と困惑してしまってね。母は「まあ騙されて飲まされたのならしょうがないわよ」っていうダメ親だからいいんだけど。どっちかというとサシャが今、一番キレていて、どうしようもない状態になったんだ」

うわああああ……なんか凄まじい事になって来たな。

どうすんだ。コレ。もうどんどん事態が悪化していく一方じゃねえか。

アニ「どうしよう……軽はずみな気持ちで煽るんじゃなかった」

アルミン「うん。何か話を聞けば聞くほど罪悪感が……」

マルコ「だね。ジャン、今日はこっちに来ないかもしれないね」

ミカサ「……………」

ミカサの落ち込みっぷりが酷い。

今回の騒動の原因は「自分」だと思っているようだ。

エレン「ミカサ。自分を責めるな。これはお前のせいじゃねえ」

ミカサ「でも……でも……!」

エレン「けしかけたのはオレ達だ。これはもう「連帯責任」だと思う。お前の責任じゃねえよ」

アニ「うん。ミカサ、絶対自分を責めないで。これは私達「全員」の責任だよ」

アルミン「うん……ミカサは全然悪くないよ。悪いのは僕達だ」

ミカサ「うううう………」

と言ってもミカサも責任を感じているんだろう。

でもこればっかりはどうしようもねえよ。ミカサはジャンの気持ちには応えられないって判断したんだから。

遅かれ早かれいずれは決着をつけないといけなかったんだ。

それがたまたま「昨日」だったってだけで、避けて通る事は出来なかったんだから。

ペトラ「ねえねえ。その……けしかけたとか何とかって何の話?」

と、ペトラ先輩が首を傾げた。

オレはアルミンに目で合図して、頷いたので事の流れを大体話す事にした。すると、

ペトラ「あちゃー……なるほど。そういう事だった訳ね。通りでジャンの様子が何かおかしいと思ったわ」

オルオ「エルヴィン先生にけしかけたらそりゃあ強引な手を使うに決まっているだろ」

エルド「あの先生、その手の「トラップ」仕掛けさせたら容赦ねえぞ」

グンタ「うまくいく場合はいいが、それで失敗して破局したカップルもいるんだぞ」

エレン「ああ、やっぱりそうですか」

だろうな。何でもかんでも「成功」する訳ねえもんな。

リヴァイ先生とハンジ先生のアレだって、成功したから良かったものの。

失敗する可能性だって十分にあった筈だ。

ペトラ「ううーん。あんまり人の恋路に茶々入れるのは良くないって事よね。これを教訓にしてもう今後はあんまり首を突っ込まない方がいいわよ」

アルミン「そうですね。身に沁みました」

オルオ「ああ。こういうのってなる様にしかならねえって」

ペトラ「うん……ジャンは根は悪い子じゃないから余計に可哀想ね」

エレン「あいつ今、どうしてんだろな……」

どん底に堕ちていそうだな。大丈夫かな。

今回の件はあいつ自身が悪い部分も勿論あったけど、不可抗力の部分もある。

キーヤン「あー……そっとしておくしかないんじゃないんですかね」

カジカジ「うーん。今、下手に触るとますますこじれそうだよね」

マリーナ「そうだね。デリケートな問題だし…」

と、カジ達まで心配してくれているようだ。

アーロン「どうしようもない感じだな」

エーレン「うーん。本当に困ったね」

と、皆思い思いにジャンを心配していた。

あいつ、意外と愛されていたんだな。こんな事態になってもジャンを責める奴がいないのか。

アニ「…………サシャと仲のいいユミルとクリスタの助けを得た方がいいかもしれない」

アルミン「え? 2人にも話すの? 事情を」

アニ「でないとますます拗れるんじゃないかな。余計なお節介かもしれないけど」

マルコ「でも、2人は野球部のマネージャー業で忙しいんじゃないかな」

アニ「うん。だから部活が終わってから夜、ちょっと時間を作って貰って話すしかないね」

と、話していたその時、

クリスタ「ごめーん。昨日の演劇で使った衣装、間違えて家に持って帰っていたから返却しに来たよ」

と言ってクリスタとユミルが音楽室にやってきた。

アニ「あ、丁度良かった。2人、今、時間ある? ちょっと話したい事があるんだけど」

ユミル「ん? いいけど。どうした?」

と、いう訳で、アニが一通りの事情を2人に大体説明した。

するとその説明で「なるほど」という顔をした2人だった。

ユミル「なんかジャンの様子がおかしいと思ったらそういう事だったのか」

クリスタ「お酒、エルヴィン先生のと間違えて飲んじゃったんだね」

アニ「まあね。その……けしかけたのは私達だし、エルヴィン先生もきっとジャンの為を思ってした事なんだとは思うけど、今回はその、失敗して拗れちゃったんだよね。サシャが今、キレてるらしいからどうしたもんかと思って」

ユミル「ううーん。サシャがキレたっていうのは珍しい事かもしれんな」

クリスタ「そうだね。サシャは滅多にキレないよ。でも、そういう事情ならキレてもおかしくないかも」

ユミル「だな……あいつ、金を得る為なら超真面目に働くタイプだ。だからそういう「いい加減な態度」の従業員と揉めた事あるって前にも言ってたな」

クリスタ「そうそう。やたらナンパばっかりして仕事しない男とか」

ユミル「そのくせ、悪いのは女の方みたいな扱いされて店長と揉めた事もあるって言ってたしな」

エレン「そうなのか………」

ユミル「従業員同士のトラブルも結構あるぞ。真面目に働く奴ばかりじゃねえからな。その分、真面目な奴が負担を負う場合も多い。サシャはその辺「シビア」な考え方だから、仕事に対する姿勢が悪い奴はすげえ毛嫌いするぞ」

うわああ……ジャンの奴、どんどん好感度が下がっているな。

ユミル「ううーん。でもこの場合って、ジャンは本当に「不可抗力」なんだよな? ジャンは「分からない」って言ってたなら、わざとじゃないんだろ?」

エレン「らしいぜ。そのエルヴィン先生が飲んでいた酒は1本500万くらいする奴らしくて、素人だと区別出来ないくらい「美味い酒」だったらしいし」

ユミル「だったら尚更、そこまでキレるのも「妙」だな」

アニ「え?」

ユミル「いや、だって……わざとじゃねえんだろ? そりゃ「わざと」だったらサシャがキレるのも頷けるんだが、わざとじゃねえんなら、流石にそこまで「キレる」のはおかしくねえか? サシャはそこまで度量のない女じゃねえよ?」

クリスタ「そうだよね。「人間だからミスはあります!」が口癖だったし」

ユミル「フォローし合うのは当たり前だって言ってたしな。チームでやる場合は。そういう部分を「許す」のも仕事のうちだとも言っていた。いちいち気にしていたら仕事にならんからな。仕事はその日だけの物じゃねえし。次の日にはまた「新しい仕事」が舞い込んでくるから、気持ちの切り替えが大事だって、いつも言っていたのに……」

そうなのか。なるほど。確かにそれは一理あるな。

ミカサ「もしかして、だけど」

其の時、ミカサが口を挟んだ。

ミカサ「サシャの中に「ジャン」への嫉妬の感情があったのかしら?」

エレン「え? どういう意味だ?」

ミカサ「サシャは「ヒッチ」とジャンのキスを見てしまっている。その「苛立ち」のせいで冷静でいられなかったのだとしたら、その……キレたのも頷けるんだけど」

と、言い出すと一同は「!」を合わせて驚いた。

アニ「え……その可能性、あるのかな?」

ミカサ「分からない。あくまで「可能性」だと思うけど。普段のサシャらしくないのだとしたら、そこに「嫉妬」の感情が混ざっているような気がする」

恋愛経験値のあるミカサが言うんだ。これは案外、当たっているかもしれねえぞ。

するとそこにペトラ先輩も頷いて、

ペトラ「あり得るかもしれない。サシャの中でジャンへの気持ちがどの程度あったのかは分からないけど。少なくとも「同僚」としてそれなりに「尊敬」している男が他の女とキスした挙句、仕事もまともに出来ない状態になったら、いろんな意味でイライラするかも」

エレン「それって、サシャの潜在意識の中に「ジャン」への想いがあるかもしれないって事ですか?」

ペトラ「少なくとも、もしもオルオがジャンと同じ事したら私もサシャみたいにオルオをぶん殴ると思うしね」

オルオ「俺はそこまで馬鹿な真似はしねえよ」

ペトラ「分かんないわよ? 酒に泥酔すれば。リヴァイ先生だってお酒で多々失敗してきているし?」

オルオ「ううーん……」

と、オルオ先輩も微妙な顔をしている。

オルオ「まあ、それをあえて「仮定」として考えるのであれば、サシャの「苛立ち」は「泥酔した事」じゃなくて「自分以外の女とキスした事」に対する苛立ちかもしれないのか」

ミカサ「可能性はあると思います」

オルオ「ううーん。でもだとしても、この場合、どうやったらサシャって子の「怒り」が鎮まるんだ? ジャンがサシャに謝ってもどうにもならん気がするぞ」

エレン「そうですね。というか、本来ならマーガレット先輩のお母さんが「叱るべき」場面だと思うんですが」

マーガレット「あーごめんね。その辺、うちの親、緩いからさ。うん」

スカーレット「ダメ親だよね」

マーガレット「本当はけじめつけさせる為にも叱った方が良かったんだろうけどね。そしたらサシャの気も済んだかもしれないけど。でもうちの親、そういうの苦手なのよ。自由人だから」

エレン「そうですか………」

マーガレット「漫画家ってそういう「普通の感性」の人間じゃないからやれる職業でもあるんだよね。所謂世間のはみ出し者というか……一般の社会の常識の世界で生きている訳じゃないからさ。その辺は本当に「個人主義」で生きているのよ。だから先生によってはジャンみたいな事をやらかしたら「速攻クビ!」っていう先生も勿論いるよ? でもうちの場合は、そういうのやったら、アシスタントに「来てくれる若者」がいなくなっちゃう恐れもあるし。だから多少のトラブルは大目に見ているんだよ。勿論、許した理由はそれだけじゃないけどね。普段からジャン、真面目にうちで仕事やってくれているし、フォトショだって覚えて上達しているし。なんかもう、このままずっとうちのアシスタントで働いてくれないかなあって勢いで急成長しているんだよね。ジャンは根は真面目だし。手先は器用だし。根性もそれなりにあるし。だから、もしジャンが普段から「仕事出来ない子」だったら、うちの親も流石に許してないよ。ジャンにはとても感謝しているし。だったらたまの「失敗」くらいは許してあげないとって思ったんじゃないかな? うちの母親は」

という訳で1回ここで区切ります。
あいたたたーな青春模様ですみません。ジャン、強く生きろ。

ではまた次回ノシ

エレン「ううーん……」

そういうものなのか。だとしたらオレもこれ以上何も言えない。

よその家の事だしな。それ以上の事を言うのもただの押し付けのように思える。

と、皆でそれぞれジャンの心配をしながらぐだぐだしていると、そこにエルヴィン先生が音楽室にやってきた。

エルヴィン「やあ皆。今日は昨日の反省会をするのかな? 結構集まっているようだね」

ミカサ「エルヴィン先生、あの……ジャンが」

エルヴィン「ん?」

エレン「ジャンがまだ来ていないんです。その………昨日、間違って酒飲んだせいでいろいろトラブルが勃発しちまったようで」

エルヴィン「ふむ。詳しく聞かせてくれるかな?」

という訳でエルヴィン先生にも大体の概要を話してみた。すると、

エルヴィン「ああ……そういう事か。分かった。だったら私が直接サシャの家に出向いて説明してくる。きちんと釈明してくるから。サシャのおうちを知っている子は私に教えてくれるかな?」

と、急に真面目な表情になってエルヴィン先生は身支度を始めた。

ユミル「だったら私が付き添います。クリスタは野球部に戻れ」

クリスタ「いいの?」

ユミル「クリスタがいなくなるとうちの野球部のやる気が半減するからな。いいよ。ちょっと抜けてくる」

エルヴィン「ピクシス先生には私から説明しておこう。ではユミル、サシャの自宅まで案内を頼む」

という訳で急遽、エルヴィン先生がサシャを宥めに行く事になったようだ。

これで少しはサシャの怒りが収まるといいんだが……。

アルミン「エルヴィン先生が直接サシャに説明すれば少なくともジャンが「わざと」飲んだ訳じゃないって事は伝わるよね」

エレン「ああ。きっと伝わる筈だ。………多分」

確証はないけれど。でも今よりは事態は良くなると信じたい。

部長がいない状態だったので、副部長のマルコが皆の前で声を出した。

マルコ「ジャンがいない間は出来る事がないから、今日はどうしようか」

アニ「ああ……反省会も部長無しでやる訳にもいかないしね」

オルオ「少し待ってみたらどうだ? もしかしたら誤解が解けて後から学校に来るかもしれないぞ」

ペトラ「そうね。ジャンを信じてみましょう」

という訳で先輩達の言葉もあり、オレ達はそのまま待機する事にした。

そして一時間くらい経ってからエルヴィン先生とジャンとサシャの3名が音楽室にやってきた。

あれ? 何故かサシャの顔が赤いし、おどおどしている。キレている様子はないようだ。

ジャンは頭を掻いている。何か様子が変だぞ。

エルヴィン「待たせたね。昨日の誤解は私が解いてきたらもう問題ないよ」

マルコ「え? 誤解が解けたんですか?」

エルヴィン「ああ。サシャはジャンの言葉を信じたよ。彼は決して「わざと」酒を飲んでいないと。不可抗力だったってね」

サシャ「……………すみません(シュン)」

何をどうやって説得したんだろう? サシャがもう全然、怒ってないようだ。

ジャン「はあ」

ジャンはジャンでため息をついている。

ジャン「結構、オレ、傷ついたんだけどな………」

サシャ「本当にすみません。まさかあんなに「ジュース」の味に似た「酒」だったなんて……試飲させて貰って分かりました。あの「味」では確かにジャンが間違えるのも無理ないです。本当にすみませんでした」

え? つまりそれってもしかして?

エレン「サシャにも「あの酒」を飲ませたんですか?」

エルヴィン「ここだけのオフレコにしておいてね? 誤解を解くにはこの方法しかないと思ってね。昨日ジャンがうっかり飲んでしまった「酒」を一口だけサシャにも飲ませた。酒というより限りなく「ジュース」に近い味の酒だったから彼女もこれでようやく納得したよ」

サシャ「本当に本当にすみませんでした……」

ジャン「……………」

ジャンがサシャと目を合せない。そりゃそうだよな。誤解とはいえぶん殴られたんだし。

気まずいよな。どうしたらいいか分かんねえよな。

サシャ「あの……その………どうしたら許して貰えますかね?」

ジャン「…………」

サシャ「あの! 私、何でもしますから! お詫びに! ジャンの気が済むまで!」

ジャン「何でもする………? (ピクン)」

サシャ「はい! そしたら許して貰えますかね? 私、何をしたらジャンに許して貰えますかね?」

ジャン「……………」

ジャンが一度、目を伏せた。

何だ? 何か考え込んでいる様子だけど。

ジャン「だったら……………オレに奉仕しろよ」

サシャ「え?」

ジャン「3か月だけでいい。期間限定で、オレの「所有物」としてオレに奉仕しろ。そしたら許してやってもいい」

サシャ「!」

えええええええ?! 何だそれ?! 何処のギャルゲーの世界だよ!!!!

おま、ちょっと、周りの女子、ドン引きしているぞ?! いいのかよそれで!!!

サシャ「ええっと、それって……つまり「小間使い」みたいなものですか?」

ジャン「まあそういう事だな。オレの荷物持ったり、肩でも揉んだりして貰おうか」

サシャ「分かりました! 3か月ですね! その程度ならお安い御用です!」

えええええええええ?!

そしてサシャも了承しやがった?! ちょっと待て!!!

アルミン「ええええジャン、それは幾らなんでもアレ過ぎるよ……」

ジャン「ああ?」

マルコ「まさか、サシャにあんな事やこんな事を……」

ジャン「何想像してやがる。そんなんじゃねえよ」

アルミン「いやだって、そういう意味じゃないの?」

ジャン「サシャも言っただろ。「小間使い」だって。パシリに行かせたりするだけだよ」

エレン「本当か? 手とか出す気じゃねえよな?」

ジャン「アホか。オレはそこまで鬼畜じゃねえよ。せいぜい、サシャをこき使ってやろうって話だよ」

それならいいんだが………。

ん?

あれ?

今、何か、一瞬、あいつ。

頬が赤くなって、すぐ消えたけど。

ん? あ! これってまさか………!

エレン「あーそういう事か(ニヤニヤ)」

ジャン「あ? 何か言ったか? エレン」

エレン「いや別に? 何でもねえよ」

そうかそうか。あいつ、この「お詫び」を「チャンス」に変えるつもりだな?

サシャを「こき使う」フリをしながらサシャとの時間を増やすつもりなんだ。

なーんだ。そういう事かよ。こいつもややこしい奴だな。

サシャ「では早速何から始めましょうか?」

ジャン「あー今日は昨日の反省会をしたいから、サシャもついでに残っておけ。他のバイトは入ってないんだろ?」

サシャ「今日は流石にお休み入れていますので大丈夫です」

ジャン「だったらオレの隣に座っておけ」

サシャ「了解です!」

おおおおおおお?! これは、もしかして。

やっぱりそうだ。ジャンの奴、「お詫び」を利用してサシャの傍にいる作戦に出たのか。

ヘタレだな! いやでも、案外これ、いいのかもしれない。

一緒にいる時間を徐々に増やしていくつもりなんだ。あいつは。

何だかいじらしい作戦に思えた。ジャン……あいつ、成長したな!

ジャン「あー遅くなって悪い。今から昨日の舞台の反省会をざっとやるけど」

と言いながらジャンが昨日の台本を出してダメだし会をした。

ジャン「昨日は初の「長丁場」の演劇だったからいろいろ戸惑いも多かったと思う。でも皆最後までやりきって無事に怪我もなく終える事が出来て良かったと思う。お疲れ様でした」

と、部長らしい挨拶をする。

それからいくつかの気になった点をそれぞれ出し合って、次の演劇の『糧』にする。

役者は裏方の欠点をダメだししたり、裏方は役者のダメ出しをしたり。

この「ダメだし」作業は公演が終わったら必ず1回ざっとやってしまう。

そして次の公演に繋げるようにしていく。経験値を全員で一気にUPしていくんだ。

ジャン「………以上かな。気になる点は」

マルコ「だね。今回の教訓は次回の演劇にも利用していこう」

ジャン「今日は昨日の演劇の様子を皆で観て終わるか。ビデオ撮影していたんですよね?」

エルヴィン「うん。ナナバ先生に頼んでおいたからね。大丈夫だよ」

ジャン「だったら部室で皆で昨日の演劇を観るぞ。今日はそれが終わったら解散ってことで」

という訳で昨日の演劇を今度はオレ達が観る事になった。

うおおおおおビデオで観るとまた違った感触がある。

恥ずかしいな。いろいろと。振り返ると急に恥ずかしくなってくる。

リヴァイ先生が憤死したシーンは何度見ても笑えるな。

男5人がかりで押さえつけているんだもんな。すげえ。

ミカサがすげえエロい手首の動きをした瞬間、爆笑が起きた。

この手首「クイクイ」は禁じ手だな。もう1回、リヴァイ先生の前でやったら窒息させられそうだ。

ミカサ「このシーンは家で何度もこっそり練習した(どや顔)」

エレン「マジか。そんなにやりたかったのか」

ミカサ「うん。だってこのシーンが1番、辱められると思って。ククク……」

ドSな顔してやがる。楽しそうだなオイ。

エルヴィン「いや、女の子なのによくやったよ。ミカサ。男役なのに結構頑張ったよね」

ミカサ「意外としっくりきました。三村の時もそうだったけれど。私は「男役」にあまり抵抗感がないようです」

エルヴィン「まるで家宝塚学園の男役のようだね。そっちの道でやっていけそうだね」

ミカサ「そうでしょうか? まあそこまでは無理だと思いますが」

とかいろいろ雑談しながら演劇を観て、今日の活動はここまでとなった。

そしてその帰り際、エルヴィン先生が「サシャの調査は無事に終わったよ」とオレ達にこっそり報告してきた。

調査? ああ! サシャの「潜在意識」の件か。

アルミン「あのその件なんですけど、エルヴィン先生、取り下げて貰えませんか?」

エルヴィン「ん? どうして?」

アルミン「今回の件でその、やり過ぎたって反省したので。これ以上は2人の間に茶々を入れない方がいいと思って」

アニ「私達が悪かったと思います。もうやたらな真似はしない方がいいと思いましたし」

マルコ「これ以上はそっとしておいて欲しいんです」

エルヴィン「ん? そう? 折角サシャの「潜在意識」が分かったのに? いいんだ?」

アニ「はい。拗れた場合の恐ろしさを身に沁みて理解したので」

エルヴィン「ええ? 拗れた? 全然拗れてないと思うけど? 見てよ。ジャンとサシャの様子を」

アルミン「いや、でもそれは「仲直り」したから、たまたま………」

エルヴィン「んー……勿体ないねえ。私はジャンとサシャのルートが動き出したように思ったんだけどな」

オレも実はそう思っている。これはジャンにとっての「チャンス」だ。

クラス替えまでにサシャとの距離を詰める「最初で最後」のチャンスだと思う。

アルミン「いや、でも…………」

エルヴィン「今度の事は私が悪かった訳だし、サシャがそこまでキレるのはどう考えてもおかしいよね? それが意味するところを君達は気づいていないのかい?」

ミカサ「それってつまり、やっぱり「ヒッチの件」を………」

エルヴィン「100%そうだね。サシャの「無意識」が動き出したよ。ジャンルートも十分あり得る可能性が見えてきた。ここでジャンがどう動くかは分からないけど、まだ試合は始まったばかりだよ」

とエルヴィン先生が悪い顔をする。

エルヴィン「ふふ……「小間使い」として傍に置くなんてジャンらしいじゃないか。臆病な彼らしい精一杯の作戦だよ。でも、これで首の皮一枚繋がったね。残りの3か月以内に何かが起きれば一発逆転ホームランもあり得るよ」

エレン「エルヴィン先生はジャンを応援するんですか? 以前はコニー推しだったのに」

エルヴィン「ふふふ……先程のサシャの様子を見て気が変わったんだよ。あれはまだ「小さい芽」かもしれないが、確実に「嫉妬」のような物を感じていたとみて間違いない。ヒッチとのキスを快く思っていない自分にサシャ自身はまだ気づいてはいないようだけど」

おおおおお。嫉妬していたんだったら、可能性あるぞ!

ミカサも頷いていた。やっぱりミカサすげえ! 女の勘ってやつだな!

ミカサ「私も似たような経験があるので分かる。その……ニファ先輩とか」

エレン「そうか。やっぱりあの時、ミカサ……」

ミカサ「嫉妬くらいする。島に取り残されていたのだから」

あああもう。あの時のオレの馬鹿!

でも、感謝もしねえといけねえな。「嫉妬」は「恋」の始まりみたいなもんだからな!

アルミン「そうですか………」

でもアルミン達は先程の事があってこれ以上は乗り気ではないようだ。

アルミン「でも今回はたまたま運が良かっただけのように思います」

アニ「私もそう思います。これ以上は見守るだけの方がいいような」

エルヴィン「んーでも、私は君達がジャンの味方になってあげた方がいいと思うけど」

エレン「どういう意味ですか?」

エルヴィン「ジャンには「第3の女」がいる事を忘れたのか? ヒッチは今、作戦準備期間に入っているよ。嬉しそうにジャン攻略について私にいろいろ情報を聞いてきたからね」

アルミン「えええええ?! まさかエルヴィン先生、ヒッチの味方するんですか?!」

エルヴィン「私はヒッチの味方はしないよ。でも、ヒッチは私の「助力」なんか「必要ない」からね。言っている意味、分かるよね?」

皆、青ざめた。これは何だか波乱の予感しかしねえぞ。

エルヴィン「ヒッチの男に対する執着は相当な物だよ。初心なジャンが陥落しないといいけどね……」

と、一抹の不安を残すような発言をしながらエルヴィン先生が去って行った。

アルミン「ひえええええ……ヒッチ、本気でジャンにロックオンしているんだ」

アニ「どうしよう。ヒッチの男への執着は私も十分知ってるし。誘惑かけられたら、ジャンも堕ちるかもしれない」

ミカサ「そうだろうか?」

アニ「うん。あいつ、本当、狙い定めた男に関しては100%堕としてきた。落とせなかった男はまだ1人もいない筈だよ」

エレン「ううーん。ジャンの奴、ヒッチの事、どう思っているんだろうな?」

マルコ「一緒に写真撮ってあげたくらいだから、嫌いではないんじゃないかな? たまに2人で話している時もあるしね」

ミカサ「ヒッチが一方的に話しかけているだけだった気もするけど」

アニ「いや、それでもやっぱりヒッチは危険だよ。ジャンに注意しておかないと……」

アルミン「でも何て言うつもり? ジャンはもしかしたら、「あの時」の事を「覚えていない」可能性もあるよ?」

と、アルミンが言うと一同は固まってしまった。

そうだった。リヴァイ先生もそうだったけど、記憶が飛ぶタイプの酔い方だったら「忘れている」可能性もある。

中途半端ですみません。眠いのでここまで。
続きは次回。ではまたノシ

確認するのがこええ。どうするんだよ。

ジャン「おい。まだくっちゃべってるのか? 早いところ教室閉めるぞ」

と、こっちにジャンがやってきた。サシャと共に。

サシャ「そろそろ帰りましょう! へへへ~荷物お持ちします」

ジャン「おらよ。丁寧に扱えよ」

と、自分の荷物を本当にサシャに預けやがった。

何だこれ。ムズムズしてくるんだが。

あ、ミカサもオレと同じような顔している。ムズムズしているようだ。

そして皆で校門を出てそれぞれの家に帰って行った。

それぞれの心の中にいろんな「不安」の思いを抱えながら……。






12月27日。土曜日。

その日も一応ジャンから連絡があって演劇部の集合がかかった。

今年最後の活動にするらしい。明日からは本格的な冬休みだ。

ジャン「あー今日は部活動というより、演劇部で『忘年会』みたいにして皆で遊ぼうと思うんだが、何処か遊びに行かないか?」

エレン「おーいいかもな。慰労会みたいなもんか」

ジャン「まあな。何処に行きたい?」

アルミン「うーん……カラオケとかでいいんじゃない?」

ジャン「カラオケでいいか?」

マーガレット「いやー今の時期はカラオケは混雑するんじゃないかな? 忘年会のシーンズンだよ」

ジャン「あーそう言われればそうっすね。じゃあ別のところにします?」

アニ「だったら、近場の遊園地とか? 皆で行くのも悪くないんじゃない?」

マーガレット「いいかもね!」

ジャン「じゃあ今回はそっちにしますか。遊園地嫌いな奴いるか?」

と、一応確認したけど誰も挙手しなかった。

ジャン「全員、遊園地はOKか?」

エレン「むしろ大好きだな」

ミカサ「同じく」

ジャン「だったら一旦、家に帰って遊園地に再集合って事でイイか? 着替えなおしてからまた集まるぞ」

ヒッチ「こんにちは~」

と、其の時、話題の人物がなんと突然、音楽室にやってきた。

え……髪色が全然違う! 髪が「黒」に染まっている。

制服の着方も真面目だ。一瞬、ヒッチだと分からないくらいに印象が違う!

ジャン「………誰だお前?」

ヒッチ「やだなあ。私だよ。ヒッチ。ちょっとだけイメチェンしてみたんだけど」

ちょっとどころじゃねえよ! 別人かと思ったぞ!

髪の色は黒で、くせっ毛はそのままだったけど、メイクの印象も全然違う。

所謂ちょっと「凛とした」イメージに変わっていた。ジャンが好きそうな感じの。

ジャン「はあ?! え……なんか別人みたいに変えたな」

ヒッチ「似合う?」

ジャン「ああ。似合ってる。そっちの方が断然いいじゃねえか」

エレン「!」

いかん! いきなり食いついてやがる! あいつ本当に「そういうの」が好きだな!

ヒッチ「良かったあ。こういうメイク、初めてやってみたからちょっと不安だったんだよね」

ジャン「そうなのか? そっちの方がいいぞ。いつものケバケバしいメイクよりそっちの方が断然いい」

ヒッチ「うふふ~ありがとう~今日は演劇部の活動、やってるの?」

ジャン「いや、今日はこれから忘年会だな。これから皆で遊園地に遊びに行く予定なんだが」

ヒッチ「そうなんだ~私、今日1日暇だから、ついでに参加してもいい? この間の公演、すっごく感動したからさあ。皆ともっとお近づきになりたいなあ」

ジャン「ああ……お前、すげえ食いついて観てたよな。ありがとよ。いいぜ。一緒に来るか? 遊園地の場所は分かるか?」

ヒッチ「1番近いところだよね? だったら分かるよ」

ジャン「まあ、近場のとこで済まそうって話になったしな。私服に着替えてから再集合って事になった」

ヒッチ「了解~♪ ありがとう。じゃあ皆、また後でね♪」

うわあああああすげえええええ!

懐の入り方がすげえ自然だった。ジャン、お前、本当にそれでいいのか?

アニ「ジャン、最低」

ジャン「はあ? 何で」

アニ「あんた、サシャルートに入ったんじゃなかったの? ヒッチ、あんたの事を狙ってるのに」

ジャン「は? ねえだろ。何でヒッチがオレを狙うんだよ」

マルコ「………やっぱり覚えてないんだ?」

ジャン「何の話だよ?」

エレン「あー……お前、ヒッチとキスしたんだけど。この間」

ジャン「…………? なんの冗談だよ」

エレン「やっぱり覚えてなかったか。泥酔した直後、ヒッチが絡んできたから、そのままぶちゅううってすげえディープなキスをヒッチにぶちかましていたぞ」

この世界は残酷だ。真実を伝えた瞬間、ジャンの顔色が真っ白になった。

ジャン「は? じょ、冗談だよな?」

ミカサ「本当。あの時のジャンは一気に泥酔してしまった……ので」

ジャン「……………」

滝汗きたな。絶体絶命のなるほど君ばりの。

ジャン「え………じゃあまさか、ヒッチが恰好を変えてきたのって、オレ好みに合わせてきたって事か?」

アニ「そういう事になるね。ヒッチは相手の男の「好み」に合わせるタイプだから」

そう、アニが言い切った瞬間、ジャンの奴、ぶわっと顔を赤面した。

ジャン「いや、ちょっと待て。何だそれ。ちょっと待て。待ってくれ!」

すげえ動揺してやがる。あいつ、嬉しいのか。

ジャン「なんだコレ。心臓バクバクしてきたんだけど。え? え? あいつ、オレとのキスで、オレに堕ちたって事か?」

アニ「正しくはあんたの「キステク」に堕ちたんだって。ジャン、自分で意識してないのかもしれないけど、キス上手いらしいよ。ヒッチに言わせると」

エレン「超絶キステク持ってるとか言ってたな」

ジャン「覚えてねえよおおおおおおおおおお!!!!」

と、叫んでその場にしゃがみ込むジャンだった。

ジャン「待ってくれ! オレ、人生の初キスを泥酔した挙句、ヒッチに捧げてしまったのか?!」

マルコ「初めてだったんだ」

ジャン「当たり前だろうが! オレ、童貞なんだぞ! 彼女もいたことねえよ! どんなキスをしたかも覚えてねえって、あんまりだろおおおおおお!!!」

だよなあ。乙って感じだよな。可哀想だけど。

ジャン「しかもそのキスが「あのヒッチ」に評価されるって! 意味分からねえ! あいつ、男いっぱいいた筈だよな! 過去の男の記録をオレが塗り替えたって事だよな?!」

アニ「段違いに「上手い」って言ってたよ」

ジャン「あああああああああああ?!」

真っ赤になって悶絶し始めた。無理もねえか。

ジャン「待ってくれ! 何だこの急展開は! ヒッチの事は、ただのビッチとしか思ってなかったのに! まさかこんなの、ねえだろおおおお!」

床に転がってゴロゴロし始めた。あーあ。

アニ「知らないよ? あいつ男にロックオンしたらマジで凄いからね。ジャン、断るなら早めに断った方がいいよ」

ジャン「断るに決まってるだろ!!! あーだから遊園地についてくるって言い出したのか。あいつ……」

と、言ってやっと立ち上がった。

ジャン「分かった。教えてくれてありがとよ。知らないでいたらもっとまずい事になってたわ。エレン、助かった」

エレン「いや、まあ………別にいいけどさ」

誰かが言わないといけない事だったしな。

ジャン「そういう事ならオレ、サシャ誘ってみるわ。ヒッチと2人となるのは危険過ぎる。ちょっと電話してみよう」

と、言い出してサシャに連絡を取るけれど………

直後、肩を落とすジャンだった。

ジャン「マジかよ……こういう時に限って別のバイトが入ってやがるとは……」

サシャを誘い出せなかったらしい。どうすんだ。この場合。

ジャン「あーでも、1回OK出したのに来るなって言えないよな。仕方がねえ。今日だけはヒッチに付き合ってやるしかねえか」

ミカサ「ジャン、あまり中途半端な優しさは良くない。断るならさくっと断った方がいい」

ミカサが言うと重みがあるな。ジャンもすぐ頷いた。

ジャン「ああ。そうするよ。というか、オレ、キスの事を全く覚えてねえからな。きっとその「キステク」の件は泥酔していたせいで「たまたま」そうなっただけだろ。素面の時も同じように出来るかどうかなんて、分からねえし」

と、言い訳しながら、頭を振るジャンだった。

そして皆1度家に帰宅して着替え直して遊園地に再集合した。

ヒッチが先に入り口で待っていた。なんか可愛い格好をしている。

下は脹脛までのレギンスで、上はゆったりとしたチュニックタイプだ。

ミスコンの時のイルゼ先生が着ていた服の組み合わせに近い。

それを見た瞬間、ジャンがすげえ動揺してしまったのがこっちにも伝わってきた。

ジャン「なんだあいつ、すげえ可愛い………」

ミカサ「…………ヒッチに乗り換えるの?」

ジャン「いやいやいやいや! 乗り換えないからな! 絶対に!」

ヒッチ「何の話~?」

ジャン「何でもねえよ!! さっさとチケット買って中に入るぞ!」

という訳で皆でぞろぞろ遊園地で遊ぶことになったんだけど………

すげえ。伊達に男を堕としてきてねえな。ヒッチ、さり気にジャンの隣のポジションキープしてやがる。

ああああああ! あれは伝説の「当ててんのよ」作戦だ!

ジャンの二の腕にしれっと捕まって自分の「胸」を相手に押し付ける作戦のようだ。

屈むと胸がチラ見出来るみたいで、ジャンが一瞬、胸の方に意識が吸い寄せられるのが分かった。

アニ「………やっぱりジャン、最低」

ミカサ「ううーん……」

ミカサですら困惑している。

マーガレット「うひひ……本当にヒッチ、ジャンにロックオンしかけて来たんだ?」

エレン「みたいですけど……あいつ女の免疫ねえからグラグラしてますよ」

マルコ「でも確かにあの大きな胸を押し付けられたらグラッとくるかも」

アルミン「うん……気持ちは分からなくないかも」

エレン「そうかあ? オレ、あそこまで露骨な女は好きじゃねえけどな」

なんていうか、わざとらしい女が苦手なんだよな。クリスタの時もそう思ったけど。

「狙ってるな」って思った瞬間、冷める性質みたいなんだよな。オレの場合は。

ジャンの様子が気になったのでオレはミカサの事はアニに任せて暫く様子を遠巻きに見ていた。

とりあえず遊園地に来たら乗り物に乗らないといけないけど、どれにしようかな。

ジャン「ヒッチ、あの……この間の件だけどさ」

ヒッチ「ん?」

ジャン「オレ、泥酔していた時にヒッチにキス、ぶちかましたんだってな?」

ヒッチ「うん。そうだけど? 何、もう1回してみたい?」

ジャン「しねえから! その、忘れてくれないか? 事故チューみたいなもんだし」

ヒッチ「無理だよ。あんなに気持ちいいキス、私、初めてしたんだもん」

ジャン「!」

ヒッチ「忘れられないよ。ジャンのキス。あんなに温かくて優しくて気持ちいいキス、生まれて初めての経験だった。私、数えきれない程、今までキスしてきたけど、あんたのが歴代1位のキスだったよ。最高だった」

ジャン「いや、だからそれは泥酔していたせいだろ? 素面の時はそんなん、出来ねえよ絶対!」

ヒッチ「分かんないよ? 試しに後でしてみる?」

ジャン「絶対しねえから! それにオレはサシャの事が好きで……!」

ヒッチ「知ってるよ。だから私は2番目でイイ」

ジャン「!」

愛人宣言かよ。やっぱりそうきたか。

ヒッチ「なんなら「お試し」でもいいと思ってる。そんなに「重く」考えなくていいよ。私、元々そういう女だし。どうしてもダメになったらやめてくれてもいいし。だから、1回だけでもいいからシテくれない?」

そうヒッチが誘惑を仕掛けたら、急にジャンの奴の空気が冷たくなった。

あ……なんかまずい。ジャンは「この気配」になるとキレる一歩手前だ。

ジャン「そうやって自分を安売りするんじゃねえよ」

ヒッチ「え……?」

ジャン「自分を安く売るなって言ってるんだよ。だからお前は「ビッチ」って呼ばれるんだろうが」

ヒッチ「あはは…そうかもね。でも別にいいよ? 事実だし」

ジャン「オレが嫌なんだよ! オレとキスしたいっていうなら、そういうところ、変えろ! オレは尻軽女は好きじゃねえんだよ!!! もっと自分を大事にしろよ!!!!」

ヒッチ「!」

ジャン「オレに近づくな。今日はもう、しょうがねえからつきやってやるけどさ。べたべたはするな。迷惑だ。オレもこれ以上、最低な男にはなりたくねえんだよ」

ヒッチ「…………………」

ヒッチが目を丸くしてやがる。何か様子がおかしいな。

ジャンがヒッチから離れてこっちにやってきた。大きなため息をついている。

ジャン「あーもう。しんどい……」

マルコ「お疲れ」

ジャン「あのクソビッチ。本当に厄介だ。もう誰か再教育してやって欲しい……」

と項垂れているけど。

なんか、さっきからヒッチの様子が本当に変だ。顔が赤い気がするんだが。

>>836
訂正というか、挿入です。
間違えてカットしてしまった。

ジャン「お前、勝手にくっつくな! やめろ! 恥ずかしいだろ!!」

ヒッチ「ええ? 何でダメなの? いいじゃん」

ジャン「良くねえよ! 頼むからちょっと離れろ! (ドン!)」

あ。うっかり引き離しやがった。ヒッチがこける。

ヒッチ「あん……」

ジャンが青ざめた。やり過ぎたって思ったようだ。

ジャン「あ……悪い」

ジャンは優しい奴だからな。こけたヒッチに手を差し伸べる。

ヒッチ「もう、照れちゃって~分かった分かった。やり過ぎたから、手繋ぐだけにしよ?」

と言って、ぐっと恋人繋ぎを仕掛けてきた。それに対してジャンはそっぽ向いて困っている。

うわあ……グダグダだな。ジャンの奴。あいつ、意外と押しに弱いのか?

アニがすげえ冷めた目でジャンを見ている。アニはいい加減な男が嫌いらしい。

アルミン「あちゃー……アレは僕でも拒否出来ないなあ」

マルコ「ううーん。手、差し伸べちゃうよね。アレだと」

アニ「あっそ」

と言ってアニはミカサの方に近寄った。

アニ「男って最低。いこ。ミカサ」

ミカサ「う、うん……」

と言って2人で先に行ってしまった。ミカサも困惑している様子だ。

やれやれ。どうなるんだろうな。この変則三角関係は。

ヒッチがもう1回ジャンとキスして、そこで「やっぱり違う」って思ってくれたら話が早いような気もするが、もしもう1回キスして「やっぱりイイ!」と思ったらもっとダメだしな。


の後に>>836
のシーンに繋がります。すみません。

ヒッチ「自分を大事にしろ……なんて初めて言われたかも」

と呟いて、頬を掻いているようだ。

ん? 何か嫌な予感がしてきたぞ。寒気がする。

ヒッチ「こんなに堕ちない男って初めてかも……やばい。楽しい!」

やっぱりか! 追う女は逃げられると余計に燃えるのか!

リヴァイ先生が「襲ってくる女」は苦手だと言っていた理由が分かった気がする。

こりゃあ災難だな。ジャンの奴。あいつ、女運ねえなあ。

アニとミカサは2人でティーカップに先に乗っていた。ミカサに手を振ってやると、困惑顔で返してきた。

アニの機嫌が最高潮に悪いらしい。ジャンのいい加減な状態が気に食わないようだ。

ミカサ自身はそこまで機嫌が悪い訳ではないようだ。

ティーカップから降りてこっちに戻ってくると、ミカサは言った。

ミカサ「アニが思っていた以上にイライラしているみたい。どうしたらいいだろうか?」

エレン「ミカサはイライラしていないのか?」

ミカサ「え? 何故? 全然」

エレン「お前、ジャンとヒッチがくっついてもいいのか?」

ミカサ「私自身はヒッチでもサシャでもどっちでもいいと思っている。くっついてくれさえすれば」

エレン「へーそうだったのか」

ミカサ「うん。私はそこまでジャンに思入れはない。好きにすればいいと思う」

エレン「そういうもんか」

ミカサ「アニは純粋な部分があるので男の浮気は許せないタイプみたい。「愛ある選択」の劇の台本を読んだ時もリヴァイ先生に対しての嫌悪感が凄まじかった……ので、リヴァイ先生を苛めるメンバーが増えて其の時はちょっと嬉しかったけど」

OH……ミカサの奴、リヴァイ嫌いの仲間が増えて嬉しそうだな。

まあ、今はその話は横に置いて。

ミカサ「私はヒッチでもいいと思っている。とにかくジャンはさっさと彼女を作るべきだと思う。彼自身、それを願っているなら猶更」

エレン「まあそうだな。ジャン自身は「彼女欲しい」ってずっと思ってる訳だしな」

ミカサ「うん。手を伸ばす勇気があれば大丈夫だと思う。サシャであれ、ヒッチであれ。ただ、両方はダメだけど」

エレン「そりゃそうだな。あ………ヒッチがこっちに来たぞ」

ヒッチがニコニコしながら手を振ってこっちに来た。

ヒッチ「ジャンに怒られちゃったよ~ミカサ~慰めて~」

ミカサ「どう慰めたらいいのだろうか?」

ヒッチ「ん~よしよしってしてくれればいいかな?」

ミカサ「分かった。ではよしよししよう」

という訳で何故かヒッチの頭をミカサが撫でている。すると、ジャンが釣られてこっちを見た。

ジャン「おま! 何やってんだよ!!!」

ヒッチ「えへ☆ ミカサに甘えちゃった。ジャンが意地悪言うからさ~」

ジャン「おま、ミカサから離れろ! ミカサにお前のビッチを感染させるんじゃねえ!」

ヒッチ「それちょっと酷くない~?」

とケラケラ笑ってジャンに引っ張られていく。

うわ…あいつ、ウインクしてきた。今の、作戦だったんだ。

ミカサ「凄い。ヒッチは本当に「やり手」のようね」

エレン「ああ……あいつ、成績も悪くないし、頭いいってのも嘘じゃねえみたいだ」

策士だな。アルミンもそういうところたまにあるけど。

恋愛事に関してだけはヒッチも負けてないかもしれん。孔明の罠に引っかからないといいが…。

そんな訳で一抹の不安を抱えながら遊園地で遊んでいたら、着ぐるみのうさぎがこっちに近寄ってきた。

しゃべらないけどな。何かジェスチャーで楽しませてくれるようだ。

エレン「おお……なんか動きが楽しい奴だな」

ミカサ「何かくれるみたい。ん? 風船?」

エレン「なるほど。風船を配っているのか。1個貰っておくか」

という訳でうさぎから風船を頂く。腰に適当に繋いでおくか。

周りを見たら風船を持っている小さな子供もいるようだ。

あ。木に引っ掛かって、子供が1人泣いている。親は「諦めろ」って言ってるけど。

あーどうしょうかな。風船、持ってるけど。子供にあげてもいいかな。

オレは適当に貰っただけだしな。そう思って様子を眺めていたら……

ヒッチ「ねえ、ジャン! 私を肩車してよ」

ジャン「はあ?! 何で」

ヒッチ「あの子可哀想じゃん。風船とってあげようよ。肩車して取ればいけそうな高さじゃない?」

ジャン「いや、それだったらオレとマルコでやるわ。マルコ、頼む」

マルコ「ああ、いいよ」

ヒッチ「ちっ……」

太ももでジャンの頭を挟もうとしたんだな。隙あらば狙ってるなあ。ヒッチの奴は。

ジャンとマルコが肩車をして風船を取ってやっていた。子供は「ありがとう!」と喜んでいたけど。

ジャン「…………よく気づいたな」

ヒッチ「何が?」

ジャン「いや、子供の事だよ。オレ、すぐに気づかないでスルーしそうになったし」

ヒッチ「あ、そうだったの? うーん。私、元々子供好きだしね」

ジャン「え……意外だな」

ヒッチ「そう? 子供可愛いじゃん。私、将来、子だくさんの大家族を形成するのが夢なんだ」

ジャン「…………」

ヒッチ「まあ性欲強すぎるだけかもしんないけどwwwだから旦那になる男はある程度「技」を持ってる男じゃないとダメだと思うんだよね~」

ジャン「あっそ」

と言いながらジャンはヒッチから離れていく。それを追いかけるヒッチだ。

その様子をうさぎがじーっと見ている。あれ? さっきみたいに動いていないな。

キビキビした動きがなくなった。あんなに滑らかに動いていたのに。

俯いて、落ち込んでいるようにも見える。どうしたんだろうな? うさぎさん。

あ……うさぎさんがどっか行った。おいおい、仕事放置していいんか?

エレン「………………」

何だろうな? 何か変な心地になった。あと走り方が、何処かで見覚えがある。

あの本気の走り方。何処かで見覚えが……。

エレン「!」

いや、まさかな。まさか。

でも、今日、別のバイトだって言ってたし、可能性あるのか?

エレン「あのうさぎさん、まさか中身、サシャじゃねえよな」

ミカサ「え?!」

エレン「いや、体育祭の時の本気走りのサシャの走り方に似ていた気がして……」

パン食い競争の時のサシャはかなり前傾姿勢で走っていた。ちょっと独特なフォームだったんだ。

短距離で走る時は、奔り方に「癖」が出やすい。いや、気のせいかも分からんが。

ミカサ「追いかけよう。エレン」

エレン「ああ。一応、追いかけてみるか」

2人でうさぎさんを追いかけてみた。すると茂みの中で頭が外れて………

やっぱりサシャだった。何だか辛そうな顔で俯いていてこっちに気づいていない。

そしてハッと我に返ってこっちに気づいた。

サシャ「あ、ミカサ、エレン。奇遇ですね」

顔が引きつっている笑顔だった。

サシャ「すみません~ちょっと疲れちゃったんで休憩しようと思って」

と言いながらタオルで頭を拭いているサシャだった。

サシャ「夏場に比べれば楽ですが、着ぐるみのバイトは重労働ですからね~」

と話を誤魔化しているのが見え見えだ。

ミカサ「サシャ、大丈夫?」

サシャ「大丈夫ですよ。休憩入れたらまた仕事に戻りますし」

ミカサ「いえ、その事ではなく、その……あの……」

サシャ「ん? 何の事ですか? 何が言いたいのか分からないですけど」

エレン「サシャ。ミカサはまだ何も言ってねえぞ」

サシャ「!」

サシャの顔が強張った。もう間違いない。

あいつ、ジャンとヒッチが仲良さげにしているところ、見ちまったんだ。

だから1回逃げたんだ。そうに違いない。

サシャ「…………………ジャンって、いつもフラフラしてますよねえ」

と、愚痴を零し出したサシャだった。

サシャ「ヒッチとお似合いですよね。フラフラしている者同士。案外くっついたらうまくいきそうですよね」

ミカサ「サシャ……」

サシャ「何ですか?」

ミカサ「サシャ自身は、ジャンの事をどう思っているの?」

サシャ「ただの職場の同僚ですよ? あとクラスメイトです」

エレン「サシャ、お前、今、自分がどんな顔しているのか気づいてねえのか?」

エルヴィン先生がよくリヴァイ先生に言っていた言葉を思い出す。

こういうのって本人より客観的に見れる「他人」の方が案外先に気づくもんなんだな。

サシャの顔が歪んでいるんだ。こんな顔のサシャ、今まで見た事ねえぞ。

いつも笑っていて明るくて。元気いっぱいのあの「サシャ」が。

辛そうに顔を歪めているんだぜ? これってもう、サシャ自身の心の中に「ジャン」がいる証拠じゃねえか。

サシャ「え? どんな顔、しているんですか?」

エレン「すげえ辛そうで泣きそうな面してんぞ。本当は嫌なんだろ。ジャンが他の女と仲良くしている姿を見るのは」

サシャ「そんな事ないですよー。私、別にジャンの彼女でも何でもないんですよ? そんな事、ある訳……ない…で……」

その直後、サシャの体が勝手に涙を零した。

溢れてきたみたいだ。感情より先に体が動いたようだった。

サシャ「あれ? あれ? 何で私、泣いているんでしょうか? あれ? 目にゴミでも入ったんでしょうか?」

エレン「サシャ! 違う! それは違うぞきっと!」

ミカサ「私もそう思う。サシャ、それは「悲しい」って感情の筈」

サシャ「違います! 私は悲しくなんかありません! だって私はジャンの彼女ではないですし!」

認めるのが怖いんだ。きっと。怯えている。

サシャはきっとこれが「初めての感情」なんだ。きっと。

だから訳が分からなくて怯えているんだ。気持ちは分からなくもねえけど。

エルヴィン先生の言う通りだった。サシャの潜在意識の中に「ジャン」の姿はあったんだ。

だとしたら、それを「表」に出してやらないと。

エレン「サシャ。大丈夫だ。それは正常な感情だ。認めてもいい感情なんだ」

サシャ「な、何を言っているんですか? 私は、そんなんじゃありません! 別にジャンが別の女の子とどれだけ仲良くしようが、私には関係ありませんから!」

エレン「サシャ! 逃げるな! 逃げたら逃げるだけ、後で大変な事になるんだぞ!」

リヴァイ先生がいい例だろうが! 16年間逃げたツケが一気に回ってきた時は死ぬかと思ったと本人も言ってたしな。

こういうのは避けて通れない「道」なんだ。気づいたらもう、後戻りは出来ねえものなんだよ。

だけどサシャは首を左右に振っている。どうあっても認める気はないようだ。

サシャ「いやですいやですいやです! 私はジャンの事を、そういう意味で好きな訳ではありません! 同僚としては尊敬していますが、異性として好きな訳ではないんです!」

と、其の時、




ガサ…………




足音がした。

今、1番、ここに居てはいけない人物が、ヒッチと共にこっちに来たんだ。

ジャン「なんか騒がしいなと思って来てみれば……サシャがいたのか」

サシャ「!」

ジャン「お前、今日別のバイトだって言ってたよな。遊園地の着ぐるみのバイトだったのか」

サシャ「そう……です」

ジャン「だったらこんなところでサボるなよ。まあ、休憩していただけなのかもしれんが。あんまり長く休憩すると怒られるだろ。給料減らされたくなかったら、さっさと持ち場に戻れよ」

サシャ「わ、分かってますよ! 水分補給をしに来ただけですから! では!」

そしてサシャがうさぎさんに戻って仕事に戻って行った。

今のサシャの言葉をあいつ、聞いていたのかな。どうなんだろう。

ヒッチ「……………………また、叶わない片思いするつもり?」

ジャン「……………」

ヒッチ「聞こえたでしょ? あの子、逃げてるじゃない。自分の気持ちから。ミカサの時とは違うケースだけど。望みないんじゃないの?」

ジャン「はあ? 何馬鹿な事言ってやがる」

其の時、ジャンは嬉しそうに笑っていた。不思議と。

ジャン「望みがねえだって? 逆だろ? アレを聞いてそう思うような奴はただの馬鹿だろ」

ヒッチ「え……?」

ジャン「やばい。オレの方も燃えてきた。そういう事ならオレも手加減しねえ。全力でサシャを追いかけてやる!」

ヒッチ「え?! 何で? だって、今……異性として見てないって叫んで……」

ジャン「あんなもん、嘘に決まってるだろ! くそ……何だよこれ。やべえ。ウズウズしてきた!」

と、超喜んでいる。あいつ、前向きだな。

そうか。ジャンも今のサシャの言葉を聞いてそう思ったのか。だったらいいんだが。

ジャン「こんな感情、初めてだ。くそ………ミカサの時と全然違う! サシャの奴、覚悟しろよ」

と、ニヤニヤ気持ち悪いくらいの笑顔になった。

その瞬間、今度はヒッチの方が顔面蒼白になってふらっと倒れそうになったんで、ミカサが支えてやった。

ミカサ「ヒッチ……?」

ヒッチ「嘘でしょ……? 何でそうなるの?」

ミカサ「…………」

ヒッチ「だって今、サシャ、逃げたじゃない。何で追いかけようと思えるの?」

ミカサ「恐らくジャンは私で耐性がついたんだと思う」

ヒッチ「え?」

ミカサ「私が絶望的にジャンを拒否したので、ジャンは拒否される事に慣れてしまっている。だとしたら、サシャ程度の「拒否」はジャンにとっては「拒否」に値しないのでは?」

所謂「免疫」が出来ちまったようなもんだよな。恋愛の。

つまりジャンにとってはミカサとの恋は無駄ではなかった事になるのか。

いや、むしろ必要だった「過程」だったのかもしれない。

リヴァイ先生が、長年だらだら付き合った女達や、ナンパした女やマリアさんとの事があったように。

失敗した「恋」は次の「恋」に繋げられるんだ。きっと。

だとしたら今度こそ、ジャンはうまくいくかもしれない。今のあいつなら。

サシャを「堕とせる」かもしれない。

ヒッチ「待ってよ。でもそれでも、拒否されている事には変わりなくない? ジャンの奴、ドМなの?」

ミカサ「ある意味では。そうだと思うけど」

ヒッチ「ええ? そうなの? いや、待って。でも、私、キスされた時、ドSなんだと思ってた。だって凄かったよ? 中に入ってくる感覚が。その、容赦なくて、その………」

エレン「ドSもドМもさほど差がないんじゃねえか? リヴァイ先生がそんな感じだっただろ?」

そもそも人間ってどっちの要素も「ある」んじゃないかと思ってるしな。

それがどういう場面で出てくるかが人それぞれで、違うってだけで。

ヒッチ「えええ……まあ、分からなくはないけど。そっか。だったら、ジャンはもう諦めた方がいいのかなあ」

アニ「諦めな。あんたが引っ掻き回すと碌な事にならないよ」

と、其の時、アニもこっちにやってきた。

アルミンとマルコも実はそっと様子を見ていたようだ。遠巻きに。

ヒッチ「うう~ん……初めての黒星かあ。連勝記録がジャンでストップするとは思わなかったなあ」

と、ヒッチが頭を掻いている。

ヒッチ「せめてもう1回だけキスして確認してみたかったんだけどね~まあしょうがないか。うん。ジャンの事は諦めるしかないみたいだね」

ミカサ「諦めるの?」

ヒッチ「うん。深追いはしないよ。男なんて世の中に腐るほどいるし。ジャンのキステクは惜しいけど。タイミングが悪かったんだったらもうしょうがないよ」

とヒッチは言っているのでとりあえず、ひと段落かな。

でもその時、ミカサは言った。

ミカサ「本当に………いいの?」

ヒッチ「ん? 何で?」

ミカサ「いえ……ヒッチはジャンの事が好きなのかと思っていたから」

ヒッチ「ううーん。顔は好みじゃないけどね。キステクは大好きだけど」

ミカサ「いえ、そういう意味ではなく、ジャン自身を気に入っているように見えたので」

ヒッチ「……………」

その直後、ヒッチの顔が強張った。

ヒッチ「ん? それってどういう意味?」

ミカサ「ヒッチもちゃんとジャンの事を好きなのだと思っていた」

アニ「いや、それはないでしょ」

ミカサ「いいえ。でないとあの時のような、嬉しそうな顔はしないと思う。遠目に見ていたけど。ジャンが「もっと自分を大事にしろよ!!!」と叫んでいたのはこっちにも聞こえていた。あの時のヒッチ、凄く嬉しそうに見えた」

ヒッチ「……………」

ミカサ「あの、余計なお世話かもしれないけれど、ヒッチ自身もリヴァイ先生と同じように「本気の恋」を今までしてきていなかったのでは? だからこそ、フラフラ彷徨ってしまっていたのではないかと思ったのだけど」

ヒッチ「そう、見える?」

ミカサ「私のあくまで主観だけど」

そう言い切ると、ヒッチはぐたーっと項垂れてミカサに倒れ掛かった。

そして凄い勢いで笑いまくったのだ。

ヒッチ「やっぱりね~そうだよね。そんな気がしてたんだよね。私も実は」

ミカサ「そうだったの?」

ヒッチ「うん。だからこそ、凄い感情移入が出来たの。リヴァイ先生の事も、ハンジ先生の事も! まるで自分を見るようだったんだもの! ハンジ先生の「とりあえずお試し」とか。リヴァイ先生の「好きにしろ」発言とか! あの2人、最高だと思ったの! あんなに赤裸々に恋愛観を話してくれる先生、今までいなかったし! 私、自分の事、異常だと思ってたから凄く安心したんだよね。でも異常でもしょうがないか。私は私だしって開き直っていたけど。それでも、やっぱり「同じ感覚」を持ってる人が他にもいるって知ったら、凄く嬉しかったんだよ」

なるほどな。だからあれだけ食い入るように見ていたのか。ヒッチは。

ヒッチ「そうなのよ。私今まで「本気の恋」した事ないんだよ。多分、ハンジ先生のいう「トキメキ」を追う旅をしてきたんだと自分でも思うよ」

ミカサ「だったら、その相手は「ジャン」ではないの?」

ヒッチ「ん~それはまだ分かんない。でも、最初にジャンに会った時から何か「引っかかる」ものはあったのは事実なんだよね」

と言ってヒッチはミカサから一度離れた。

ヒッチ「あの頃のジャンはミカサに夢中だったからね。4月のあの時点でずっとミカサを視線で追いかけていたから。最初は「キモイwwwこいつwww」って思いながら観察していたんだ。でもその「一途」なところが凄く羨ましくて。私には絶対真似出来ないって思ったの。だからついつい、からかっちゃって。あいつも反応が面白いし? だから私、ジャンの事は「嫌いじゃない」とは思うんだ」

アニ「意外……あんた、そういう事いうの初めてじゃない?」

ヒッチ「自分でもそう思うよ。でもあの馬面だしね? そこんとこの葛藤はまだあるかな?」

と、てへぺろしているヒッチだ。

ヒッチ「でもどうなんだろ? 今のジャンはもうサシャにベクトルが向いているしね。あんまり深追いすると拗れそうだし。そこはちょっと1回冷静に置いて考えてみる。客観的に自分を見てみたいんだ」

アニ「…………本気なの?」

ヒッチ「だからまだそれは分かんないってば。もしかしたら明日には違う別の男を追いかけてるかもしれないし?」

アニ「いや、あんたが「冷静に自分を見てみたい」なんていうの初めてだしさ」

ヒッチ「そうだったけ? 言わなかっただけじゃない? 私、自分を「客観視」する癖は常につけているよ? というか、男堕とす時の『必須テクニック』だし」

アルミン「ええええ……そうなの?」

ヒッチ「そうだよ? それは男にも言えるけどね。モテたいんだったらまず「自分」を「客観視」する癖をつける事。相手から「どう見られている」かを常に意識する事。これが出来ないと絶対うまくいかないよ? 今回の私の場合はとにかく「ジャンの懐」に入る必要があったから、とりあえず「ジャンの好み」に寄せていった。でも、だからと言って私が「ミカサ」をトレースしたってうまくいくわけないじゃん? だからそこはあくまで「ちょっとだけ真似」するに留めて、残りは自分の「キャラ」で売っていく。この辺の「変化」を上手に使っていく事がモテる為のコツだよ?」

うおおおおお何かすげえ事言い出したな。ヒッチの奴は。

ヒッチ「その点じゃ、ミカサは凄いよね。私の場合はミカサの域までは自分を変える事は出来ないと思う。聞いたよ。丸坊主だってやってやるって」

ミカサ「ああ………あの時の事を聞いてたのね」

ヒッチ「当然でしょwwwジャンの振られるところ見ない訳ないじゃんwwこっそり気配隠して観察していましたよwww」

ミカサ「でもエレンはそういう事を言いだす人じゃないから大丈夫」

エレン「当たり前だろ。何が悲しくて丸坊主にさせなないといけないんだよ」

ミカサ「あくまで例えだけど。でも、私はエレン次第だと自分でも思っている。もうそういう生き方の「自分」でいいと思っている」

エレン「…………」

ミカサ「御免なさい。エレンに負担をかけるのは分かっているけど。でも私は「そういう女」なのだと自覚している。これはもう仕方がない事だと思っている」

エレン「オレとしては複雑だけどな。でも、自分の「好み」が全くない訳じゃないんだろ?」

ミカサ「なんとなくの程度だと思う。その熱は「浅い」ので変更がきく程度のものだから」

エレン「じゃあエッチな下着をつけて欲しいって言えばつけてくれるのか?」

ミカサ「ど、どんな……? (ドキドキ)」

エレン「ん~? 黒のレースとか? あ、紫とか白もいいなあ」

とか言っていたら後ろからアニに頭を小突かれた。

アニ「ミカサを辱めるのはやめて。というか、ミカサもデレデレしない」

ミカサ「ごめんなさい(シュン)」

アニ「なるほどね。だったら今回のケースは今までとちょっと違う訳ね? ヒッチ」

ビッチ「微妙にね。まあ皆が「やめろ」って止めるなら諦める程度の物かもしれないけど」

ミカサ「…………」

ミカサの眉間に皺が寄っているな。複雑なんだろうな。心境としては。

ヒッチとは友達って程ではないにしろ、女は女の気持ちが分かる筈だ。

サシャを応援してあげたい気持ちの方が強いとは思うが、ヒッチがもし「本気の恋」に発展する場合はどうしたら良いのか分からないのだろう。

ヒッチ「そんなに深刻にならないでいいよ。ま、もしも私が本気の恋に発展しても、そこで振られそうな気もするけどね。でもそれはそれでもいいんだ。私、もっと「気持ちいい」ことがしたいだけだと思うし」

ミカサ「まるでマリアさんのようね」

ヒッチ「考え方は近いかもしれないね。別に叶わなくてもいいんだよ。恋愛ってその「過程」の方が「実」みたいなもんじゃん? だからちょっと私も冷静に考えてみるよ」

じゃあねって言ってヒッチは先に帰って行った。

ジャンはいつの間にか姿を消していた。恐らくサシャを追っていったのだろう。

アニの機嫌は少し落ち着いていた。いろいろ思うところが出てきたようだ。

アニ「ちょっと驚いたかも。今までのヒッチと様子が違ったしね」

ミカサ「なのだろうか?」

アニ「うん。全然違った。遊び以上本気未満なのかもしれないけど」

ミカサ「だとしたらもう、余り邪魔も出来ない。本人がやりたいようにやらせるしかないような」

アニ「そうなんだろうけど………はあ」

と、アニはため息をついた。

アニ「何か一人でイライラしたりやきもきしたり、馬鹿みたい。他人事なのに。何で私、いつもこうやって他人に振り回されるんだろ」

ミカサ「それがアニの良いところ。アニはクールなようでいて、中身はそうでもない」

アニ「褒めても何も出ないよ。ミカサ」

アルミン「まあまあ。後は僕達は僕達でアトラクションを楽しもうよ。ジャンはサシャを追いかけちゃったし。放っておけばいいよ」

エレン「それもそうだな」

ジャンの様子を見ていたらちょっと安心した。多分、だけど。

今度こそ、うまくいくんじゃねえかな。本当に「多分」だけど。

そんな風に思いながら残ったオレ達はオレ達で遊園地を楽しんだ。

途中でマーガレット先輩達やカジ達のグループと合流したりしながらあちこち回っていたらあっという間に夕方になり、ジャンも戻ってきた。

あ、サシャと一緒に戻ってきた。どうやら今日の仕事は終わったようだ。

手荷物をやっぱり持たせている。あいつ、サシャを本気でこき使うようだ。

サシャ「酷いです。着ぐるみのバイトが終わった直後なのにまた別の労働をさせられてます」

ジャン「小間使いやるって言っただろ。まあ、今日はこの後、オレの部屋まで来て貰うけどな」

サシャ「えええええ?! 部屋まで荷物を運ぶんですか?! 鬼ですよ……」

ジャン「家にホットケーキがあったような気がするんだけどなあ」

サシャ「あ、いきますお供します! (キリッ)」

馬にぶら下げた人参作戦じゃねえんだから。いや、引っかかるサシャも悪いけど。

マルコ「おおお……自宅の部屋に連れ込む気なんだ。ジャン、やるね。今までと全然違う」

アルミン「うん。なんか吹っ切れた顔しているよ。ゲスいけど」

エレン「だな。でも良かったんじゃねえの? とりあえずは」

ミカサ「うん。いいと思う」

と言いながら、オレ達はジャンとサシャの様子をそっと見守ってニヤニヤするのだった。

サシャ「ホットケーキ……えへへへ」

ジャン「あー……家に帰ったらオレの部屋でちょっといろいろやって貰おうかな」

サシャ「え? 何をするんですか?」

ジャン「ん? デッサンのモデルの相手だよ。サシャ、脱いで貰うからな」

サシャ「えええええええヌードですか?! それは流石に無理ですよおおお!」

ジャン「ん? 誰もヌードなんて言ってねえだろ。期待したのか? (ニヤニヤ)」

サシャ「い、いやいや、そんな訳ないじゃないですか。期待したのはジャンなのでは?」

ジャン「オレはどっちでもいいけどな。まあ、服着ている方が練習にはなるんだが、ヌードはヌードで勉強になるしな」

サシャ「いやああああ! ジャンはドスケベですね! 絶対嫌ですよ! ヌードは!」

ジャン「だからヌードじゃねえって言ってるのに。勘違いしたのはそっちだろ?」

と、まあ何だか既視感のある会話をしている。

ああ………ここにもリヴァイ先生×ハンジ先生のような漫才カップルが誕生か。

ミカサがニヤニヤしている。何だか嬉しそうだ。

エレン「ん? どうした?」

ミカサ「いえ……ジャンがもう、すっかり吹っ切れたような顔をしているので」

エレン「みたいだな。完全に気持ちがサシャの方に向かったみたいだな」

あいつもいろいろあったけど、気持ちが切り替わって良かったぜ。

ミカサへの恋は辛かっただろうけど。でもそれを乗り越えて新しい恋に迎えたなら。

今が幸せならそれでいいと思う。頑張れよ。ジャン。

今日はここまで。やっとジャン×サシャの始まりです。
ここに来るまでが長かったな…いや、作中のリヴァイ×ハンジよりは短いけど。
長く感じたのは執筆期間的な意味で、です(笑)。

ミカサとの事を吹っ切るまでの流れをどう持っていくかに迷いました。
ジャンみたいな一途な子がそれを諦めるのだとしたら何か「切欠」ないとなーと思ってこうなった。

途中で何度かジャンミカいやだーの声とか、
いい加減ジャンうぜええwwwwとか思わせてしまってすみません。
むしろこのジャン×サシャまでの壮大な「伏線」だった訳でして。
そこんとこご理解頂けたら幸いです。

リヴァハンが正直あまりにも長すぎたから短くてびっくりした
でもこれくらいがいいな
とりあえず乙

>>851
すみません。
あくまで「始まり」なのでジャン×サシャも長くなるかもです。
むしろ波乱の幕開けなので、ここからが本腰入れて頑張ります。

あとリヴァイ×ハンジ編が長くなったのは2人の年齢のせいもあるかもです。
遅咲き過ぎた恋だったので歴史が長くなってしまって……本当、すみません(笑)。
















12月31日。大晦日の日は流石に親父もお休みだ。

家で年越しそばを家族で食べながらテレビを見る。今年も笑ってはいけないアレシリーズをやるようだ。

去年も大晦日にあったような気がする。ひたすら「笑ってはいけない」んだけど、結局は吹いて「アウトー!」になる。

くだらないテレビを家族で一緒に観て笑っていたら電話がかかってきた。

エレン「はいはい。あ、アルミンか」

アルミン『やあエレン。今年の初詣どうする?』

エレン「ん~うちは家族でいつもの神社に行くけどな。元旦に」

アルミン『あ、じゃあエレン達はパスかな』

エレン「ん? どうした? あ、もしかして皆で集まっていくのか?」

アルミン『うん。アニとマルコとジャンとサシャとあとライナー達も来るみたい。でも出かけるのが夜からで、午前0時に合わせて行こうって話だけど、親がダメっていう場合はダメだよね』

エレン「ちょっと待ってろ。父さんに確認する」

という訳で親父に相談してみたら「それだけの大人数で行くなら行って来ていいよ」との話になった。

ミカサ「ちょっと早く初詣に行くの?」

エレン「ああ。アルミン達が集まるらしい。一緒に行かないかってさ」

ミカサ「待って。夜出るなら、着物を着る時間が取れない…」

エレン「え? 初詣に着物で行くつもりだったのか?」

ミカサ「うん………」

エレン「あーそっか。ならどうするかなー」

ミカサの母「何時から? 0時に合わせるならあと3時間くらいあるからお母さんも手伝えばいけるわよ。着せてあげるわ」

ミカサ「いいの?」

ミカサの母「一人で支度すると時間かかるものね。いいわよ。今から着替えましょ」

という訳で急遽、テレビは打ち切って着替える事になった。

おおおおお。着物は着なれているのかな? 今度は女装の和装だ。綺麗だなあ。

ミカサ「年に一度、お正月の時だけ着物を着るので」

エレン「へーそうなんだ。オレも着たくなってきたなあ」

ミカサ「お父さんが来ていた着物、まだある?」

ミカサの母「あるわよ。待って。ちょっと出してくる」

という訳で亡くなった親父さんの着物を借りる事になった。

オレとミカサは和服に身を包んで初詣に向かう事になった。

きっと皆、びっくりするだろうなあ。ククク……。

そしていつもの馴染みの神社の前で待つと、そこにはいつものメンバーが全員集まっていた。

あ、マルコの隣にはミーナも一緒に来ている。こっちもそういや出来立てカップルだった。

皆、思い思いの冬服ファッションだけど、着物組はオレとミカサだけだった。

アルミン「着物着てきちゃった! スゴイ! 気合入ってるね!」

エレン「ミカサの家は毎年、正月だけは着物なんだってさ。なあミカサ」

ミカサ「うん」

エレン「皆は普通の恰好だな。お前らも着物着てきたら良かったのに」

アニ「いや、1人じゃ流石に着付けが出来ないよ。演劇部の時は皆でやったけど」

ミカサ「私も母に着せて貰った。アニが着たいなら今からでも手伝うけど」

アニ「いやいや、今年はそこまでしなくていいって」

といいつつ皆でわいわい境内の中でスタンバイだ。時刻はまだ11時30分くらいだ。

ジャンとサシャがいつものように言い合っている。

あ、今日はコニーもこっちに来ているようだ。

コニー「それ酷くねえか? 3か月もパシリ契約って! 一週間くらいでいいじゃん! 許してやれよ。サシャが可哀想だろ」

ジャン「嫌だね。オレの心の傷は根深いんだよ。サシャに「最低」だとか「ぬるい」とか散々言われたからなあ」

サシャ「ううう……本当にその件は御免なさい。私の勘違いでした」

コニー「いや、だからもう、いいじゃん。誤解だって分かったんだし。サシャもサシャで反省しているし。いい加減許してやってもいいと思うけどなー」

と、コニーは度量が大きいようだ。サシャの味方をするらしい。

ジャン「ふん……オレはまだまだ手放す気はねえよ。とことん、サシャにはオレに尽くして貰わないとな」

と言い切っているその様子を遠目で見ていたライナーがぽつりと一言。

ライナー「ジャン、あいつも相当の変態だな」

ベルトルト「ううーん……」

と、言ってちょっとげんなりしている2人だった。

サシャ「はい。尽くします。誠心誠意、尽くさせて貰います……」

と、しみじみ言い出すサシャが何だか可愛かった。あ、ジャンも顔が赤い。

あいつ、言わせたいんだな。

あれ? でもあいつ、Мだと思っていたけどサシャ相手だとSに切り替わるのかな?

多分、そうなんだろうな。サシャを相手にする時とミカサと話す時の顔、あいつ全然違うもんな。

コニー「ジャンをあんまり調子に乗らせない方がいいと思うぞ? サシャ、あんまり酷い要求されたら断っていいんだぜ?」

サシャ「その辺は今のところ大丈夫です。自分が出来ない要求はされてないですし」

ジャン「サシャ、お茶持って来ているか?」

サシャ「あ、はいはい。持参してますよ。どうぞ」

どはあああああ! あいつ、お茶持たせていたのか。用意周到だなオイ!

コニーがポカーンとしている。びっくりだよな。これは。

あ、ちなみにうちの場合はミカサが「自発的」にこっちが何も言わなくても「お茶」は携帯してくれるんだけどな。

うちの彼女の方が上だからな。言っとくけど(どや顔)。

コニー「おま、それ、まるで……アレだろ?! なんか、アレだろ?!」

あ、流石にコニーがツッコミ入れたくてしょうがない顔をしている。

ジャン「ああ? 何がアレだよ。別にいいだろ? (ズズズ)」

お茶を飲みながら待機中だ。ジャン、本当にアレ過ぎるよな。

そして飲み残しはサシャに預けて「残りはサシャが飲んでいいぞ」と言って手渡している。

サシャも遠慮せずに飲んでいる。うは! やべええ!

皆の前でもう、堂々とやる事にしたようだ。ジャンもやるようになったな。

コニー「うわあ……それは流石にオレ、引くわージャン、極悪非道じゃねえか」

ジャン「何のことか分からねえな? オレは「償い」をして貰っているだけだし」

サシャ「そうです。器物を破損したら弁償するのと同じです。心を傷つけたら、誠意を見せるしかないんです」

とサシャも承諾しているようだ。

コニーは頭を抱えていた。頭痛がするらしい。

コニー「サシャが悪い男に引っかかっているような気分だ」

アニ「いや、ような、じゃなくて実際引っかかっているけどね」

アルミン「うん。ジャンって悪い奴だよねー」

と、陰でこそこそ言い合っているアルミン達だった。

でもミカサはニコニコして機嫌がいい。ジャンとサシャを温かく見守っている。

エレン「機嫌がいいな。ミカサ」

ミカサ「うん。サシャがとても嬉しそう」

エレン「分かるのか?」

ミカサ「お茶を貰って飲み終わった時の顔、凄く可愛かった」

と、こっちはこっちでチェックしていたようだ。

さて。適当に雑談していたら時間が経ったのでそろそろ移動開始するか。

今日はいろんな人が大勢、初詣に備えて夜中から待機中だ。

午前0時を回った後、ぞろぞろと団体参拝客が前へ移動し始めた。

御賽銭入れて、手を合わせて2015年の抱負や目標を神様に報告する。

今年はとにかく成績を上げる! そしてミカサとイチャイチャするぞ!

と、いうまあ本音爆発のお参りをして移動すると、コニーがふと立ち止まった。

ん? どうしたんだろ? 急に立ち止まって。

コニー「………………」

何か凄い顔になっているな。皆もコニーの異変に気付いたようだ。

ライナー「どうした? コニー」

コニー「何でここにヒロがいるんだ」

ライナー「え?」

コニー「オレの彼女だよ。あいつ、今日、予定入ってるからオレと初詣無理だって言ってた癖に」

え…………ちょっと待て。それってまさか。

コニー「今、知らん男と歩いてた。あいつ……まさか!」

いかん、コニーがキレかかっている。

コニーが凄い顔で飛び出していった。人ごみをかき分けて彼女のところに向かったようだ。

コニー「ヒロ!」

ヒロ「あ………コニー」

コニー「何でここにいる? 隣の男、誰だよ」

ヒロ「…………………」

隣の男「あれ? 前の彼氏とは切れたんじゃなかったの? コニーは元彼じゃないの?」

ええええええ?!

やばい! 修羅場勃発だ! これ、まずいぞ!

二股かけていたのか。こういうのって生で見るのは初めてだ。

コニーの顔に血の気がない。青い顔のまま立ち尽くしている。

ヒロ「……………コニーは元彼だよ。もう知らない」

コニー「はあ?! 何だよそれ?! オレ、悪い事したのか?!」

ヒロ「クリスマスイブも、クリスマスも、どっちも予定あけてくれなかったでしょ」

コニー「いや、それは部活と学校の用事があったからだし……」

ヒロ「その前の休みもそうだよね。その前も。ずっと電話とメールだけはちゃんと連絡してくれたけど。もう無理。こんなに放置され続けるなら付き合い続ける意味ない。野球部が忙しいのは知ってる。だったらせめて、野球部の用事がない時くらいは私を優先してくれたっていいじゃない」

コニー「いや、だって、オレ、学校に友達もいるし、用事だってあったし……」

ヒロ「ならその用事が終わってから1分でもいいからお互いに会えば良かったじゃん」

そして彼女は冷たく言い放ったんだ。

ヒロ「コニーは一体、何の為に私と付き合ってたの?」

コニー「そんなの、好きだからに決まってるだろ!」

ヒロ「それは「過去」の私であって「今」の私じゃないと思う。もう野球部のマネージャーとでもつきあったら?」

うわあああああこいつ、酷いな。

幾らなんでも言い過ぎだ! コニー、震えているぞ。

コニー「何でそんな事、言うんだよ……」

ヒロ「野球部で頑張っているコニー、好きだったけど。もうあの頃の私じゃない。ごめん。もう連絡しないで」

と、彼女は言い切って別の男と去って行った。

元旦からこれって、きつ過ぎるだろ。コニー、呆然自失だぞ。

コニーが倒れそうになった。それを最初に支えたのは、なんとサシャだった。

サシャ「コニー! しっかりして下さい! コニー!!!」

心配そうに声をかけている。サシャもどうしたらいいか分からないようだ。

サシャ「息してますか? 私の事が分かりますか?! 意識をちゃんとして下さい!」

コニー「あ、ああ……」

そしてやっと我に返ってコニーが力を取り戻した。

コニー「そっか……オレ、クリスマスに学校でタダ飯なんか食ってる場合じゃなかったんだな」

そういえばクリスマスはリヴァイ先生とハンジ先生の結婚披露宴だった。

コニーはタダ飯に釣られてそれに参加していたんだ。

あの行事はあくまで「学校の用事」というか、流石に「他校生」までは来ていなかった披露宴だった。

OBOGは多数来たけれど。あくまで「講談高校」の関係者のみで行った披露宴だったんだ。

つまりそういう場に「他校生」はただの部外者だから。

コニーも気を遣って彼女を呼ぶという事はしなかったんだろう。

でも、リヴァイ先生の事だから、きっと「話せば」「OK」を出したかもしれない。

それをしなかったのは、コニー側の落ち度になるんだろうか。

と、其の時、

ピクシス「ふむ。年々、着物の美女が減っておるのう。残念じゃ」

エルヴィン「全くですね。正月くらいは着物美人を拝みたいところですが」

ハンジ「うひゃー人多いね~おや? あそこにエレン達がいるよ? リヴァイ!」

リヴァイ「ああ……お前らも来たのか。初詣に」

キース「ん? コニー・スプリンガーの様子が変だが……気分でも悪いのか? 人に酔ったのか?」

と、先生達5人組がこっちに気づいた。

コニーはピクシス先生に縋り付くように駆け寄った。

ピクシス「どうした? コニー。何かあったのか?」

コニーは項垂れて何も言えない状態のようだ。

コニー「すんません。監督。明日、明日1日だけ、休みを下さい」

ピクシス「ふむ? 2日から野球部の練習を再開する予定じゃったが、何か用事が出来たのか?」

コニー「…………たった、今、彼女にフラれました」

ピクシス「!」

一同は驚いた。ピクシス先生の目が急に鋭くなって、

ピクシス「………中学時代の彼女じゃな? 例の娘か」

コニー「はい。初詣で、他の男に乗り換えたところを見ました。もう「彼氏じゃない」ってはっきり宣言されてしまって」

ピクシス「ふむ……」

と、ピクシス先生は困った顔をして一同を見まわした。

ピクシス「ここじゃ話を聞くのに不都合じゃな。リヴァイ、自宅を借りても良いか?」

リヴァイ「構いませんよ。お前らも来るか?」

エレン「コニーが良ければ」

コニー「一緒に居てくれ。頼む」

コニーが頭を下げた。どうやら今から反省会をするようだ。

エルヴィン「では安産祈願は私が代わりに買っておこう。君達は先に戻るといい」

ハンジ「ごめんね。頼んじゃっていい?」

エルヴィン「ああ。後でそっちに合流するから」

ん? 今、何て言った?

ミカサ「今、安産祈願って……」

ピクシス「ああ。ハンジは今、妊娠しておるよ。大体2か月だそうだ」

エレン「えええええええええ?! 早くないですか?!」

ピクシス「リヴァイが一発命中させたんじゃよ。流石じゃの。ククク……」

OH……そっちの腕も一流か。マジか。いや、めでたい事だけどな。

って、リヴァイ先生の事はとりあえず横に置いて。

今はコニーの事だ。一同は全員、リヴァイ先生の自宅にお邪魔する。

フラれたばかりのコニーは皆に縋りたい様だ。

今、ここにいるのはオレとミカサとアルミンとアニとマルコとミーナとジャンとサシャとライナー、ベルトルトだ。

今回はユミルとクリスタだけ欠席だ。多分、ユミルがクリスタの「ナンパ避け」で連れて来なかったか、もしくはあっちは2人だけで初詣に行っているか、だな。

コニーはグズグズに泣いていた。余りの突然の出来事に何も出来ないでいるようだ。

コニー「うううう………」

ピクシス「話の流れを聞いても良いか?」

コニー「はい……」

そしてコニーは静かにお茶を飲みながら話を始めたのだった。

コニー「さっき、初詣に行った帰り、ヒロが別の男と歩いているのを偶然見かけて、問い詰めたら、もう完全にヒロの心が相手の方に行っていました。オレは声をかけた時点で既に「元彼」扱いだったみたいで。電話やメールではやりとりしていたのに。ちゃんと約束通りにしていたのに。ヒロの心はオレから離れていたんです。オレ、別れを切り出されるまで全然気づかなくて…」

ピクシス「ふむ。まあ……難しい問題じゃな。野球と恋愛の両立は、マネージャーと選手でも難しい。それを他校生とここまで続けられたコニーの方が凄いのじゃぞ」

コニー「そうなんですかね」

ピクシス「遠距離恋愛のような状態じゃったろ? 野球部の生活は普段から朝の4時から夜の10時までほぼフル活動じゃからな。彼女と会う時間は相当限られた筈じゃ」

コニー「ですね。でもどうやら、クリスマスイブとクリスマス、両方の予定を彼女に「合わせなかった」のが原因なんじゃないかって思います。オレ、リヴァイ先生の披露宴の方に出ちゃったし」

リヴァイ「ん? 彼女も連れてくれば良かったのに。別に他校生の入場は禁止してなかったぞ」

コニー「いや、でも学校の行事だし、彼女の方が気遣うんじゃないかって、思ったんですよ。其の時は」

ハンジ「ん~人によるかな? 私はタダ飯とタダ酒飲めるなら何処でもついていくけどね」

リヴァイ「だろうな。ハンジはその辺、あまり人見知りもしない性格だしな」

コニー「はい。彼女、繊細な部分もあったし、その、慣れない場所に連れてくるのも何だしと思っていたんで、其の時はただ「学校の行事があるから」って事で会うのを断ったんです。でもあいつは「終わってから1分でもいいから会えば良かった」って言ってて。今、思えばそうですよね。オレ、馬鹿だからそれに気づかなくて、あいつの「不満のサイン」を見逃してしまった」

ピクシス「ずっかけてしまったんじゃな。付き合いが慣れてくるとよくある事じゃ」

コニー「ですよね。オレ、あいつの事、だんだん「雑」に扱っていたのかもしれない……」

ピクシス「反省は十分に出来ておるようじゃな。だとしたらそれはもう、コニーにとって「必要」な経験だったのじゃよ。別れを受け入れろ。その上で新しい女子を見つけなさい」

コニー「いや、暫くは無理です。オレ、野球に打ち込みます」

ピクシス「ダメじゃ。コニーのような「ノリノリ」タイプは精神に大きくプレイが作用される。お主を支えてくれる「女」は居た方がいい。コニーはモテる方じゃろ? 大丈夫じゃ。すぐ新しい女子は見つかるよ」

コニー「でも………オレ………」

ピクシス「リヴァイとハンジの劇をお主も観ておったじゃろ? 時が経てば自然と「笑い話」に出来る時が必ず来るんじゃよ。いい経験をさせて貰ったと思って感謝するのじゃ」

コニー「ううううう………!」

コニーが泣いていた。号泣していた。

その辛そうな表情をジャンも眺めている。

あいつにとっては昨日の出来事のようなもんだもんな。

コニーの辛さを一番理解出来るのは恐らくジャンだろう。

コニー「明日、1日だけ休んでもいいですか?」

ピクシス「構わんよ。腹でも当たった事にしておく。ライナー、ベルトルトも口を合わせてくれ」

ライナー「分かりました」

ベルトルト「了解です」

という訳でコニーはそこで一通り泣いて先に一人で帰ろうとして、

そこにサシャが駆け寄った。

サシャ「コニー、あの………明日、私、スケジュール空けましょうか?」

コニー「え……?」

サシャ「ご飯、食べに行きましょう! あの、奢りますから! ちょっとだけ!」

ジャン「!」

ジャンの顔が強張った。あいつ、まさかサシャが自分からコニーに向かうとは思わなかったみたいだな。

ジャン「…………オレも何か奢ってやろうか? フラれる辛さはオレも分かるしな」

コニー「ありがとう。でも、いいよ。今は1人になりてえんだ。落ち着いてからでいい」

と、コニーはその優しさを拒絶して一人で先に帰って行った。

その様子をサシャは心配そうに見つめている。

エルヴィン先生はずっと黙り続けていて、コニーの様子を見ていた。

ピクシス先生が宥めている間も何も話さなかったのが奇妙だった。

何か、意味深に注意深く観察しているような。そんな空気だった。

オレ達は暫く何も言えない状態で客間に正座して座っていた。

この人数でも全員、部屋に入る和室の客間部屋だからよく考えなくてもリヴァイ先生の家って広いよな。

エルヴィン「ふむ………」

エルヴィン先生が考え込んでいる。何か嫌な予感しかしないんだが。

でもそれを聞くのが怖くてオレは何も言わなかった。

ミカサもオレと似たような顔をしているようだ。

そしてとりあえずオレ達は夜中だからタクシーで家まで帰った。

時刻は夜の2時過ぎだった。結構遅くなってしまったな。

親父達は意外とまだ起きていた。もしかしたら待っていてくれたのかな?

グリシャ「おかえり。人が多かったのかな?」

エレン「ああ、初詣だしな。夜は多かったよ。やっぱり」

グリシャ「そうか。体が冷えているだろう。風呂でも入って温まってから寝なさい」

ミカサ「はい」

という訳でオレ達は一緒に風呂に入る事にした。

交際が親父に正式に認められてからは、オレとミカサは一緒に風呂に入る事を許可されたから、時間が合えば一緒に入っていた。

でも風呂の中でミカサが微妙な顔をしていた。だよなあ。オレも今、同じ事を思ってるぜ。

ミカサ「サシャ、コニーに真っ先に駆け寄った」

エレン「あーまあなあ」

ミカサ「まるで、溺れたハンジ先生を助けようとしたリヴァイ先生みたいだった」

エレン「だよなあ」

ミカサ「もしかして、今のサシャは心の中に「2人の男性」がいるのかしら?」

エレン「ジャン自身がそうだった訳だしな。十分あり得ると思うぜ」

ミカサ「……………そうね」

ミカサが湯船の中で困った顔をしていた。向かい合ってお湯で遊ぶ。

ミカサ「サシャの幸せを考えれば、どちらがサシャの相手として相応しいのかしら」

エレン「何とも言えねえなあ。オレは……」

外野が口出す事じゃねえしな。こればかりは。

ミカサ「………コニーの彼女の言い分も分からなくはない」

エレン「ん?」

ミカサ「私とエレンは、こうして一緒に風呂だって入れるし、寝るのも一緒の布団で寝られるし、ご飯も一緒だし。学校も一緒。部活も同じ。一緒にいる時間は他のカップルに比べると段違いに多いと思う」

エレン「あーそう言われたらそうなるな」

ミカサ「その「時間」が減っていけば不安になると思う。例え1分でもいいから「会いたい」と思うのは女としては当然の「思い」だと思う」

エレン「1分でいいのかよ」

ミカサ「もっと言うなら30秒でも構わない。会えないなら、会いに行きたい。それが「恋」なのでは?」

エレン「………それ考えたらオレ達、すげえ贅沢な恋人同士なのかもしれねえな」

ミカサ「そうね。それは私も思った。今、こうしている瞬間の「価値」を私は知るべきだったと思う」

エレン「そうだな。オレもそう思う。コニーには悪いけど。オレ、すげえ思ったよ」

こうやってミカサと一緒に居られる「時間」があるって事はすげえ「贅沢」なんだ。

というか、一緒に暮らしている時点でアドバンテージあり過ぎるよな。ある意味では。

リヴァイ先生とハンジ先生ですら、「同じマンション」だったし。

リヴァイ先生達より更に「近い」関係なんだよな。オレ達って。

そう思ったら急にミカサと「したく」なっちまった。

風呂の中でヤる訳にもいかんけど。なんか急にキスしたくなってきて。

ミカサを見つめていたら、ミカサもその気っぽい表情で見つめてくる。

エレン「………生理の予定日、明日だったっけ?」

ミカサ「うん。予定では。なので今日は、やろうと思えば出来る日」

限りなく「安全日」ではある。だったら、もういいかな。

姫初めって言葉もあるくらいだし。舞台も終わったし。

リヴァイ先生もテスト明けにやっちまった訳だし。タイミングとしてはベストかもしれない。

エレン「ミカサ、もう眠いか?」

ミカサ「全然……今日の事があったせいで何か、興奮して逆に眠れない気がする」

エレン「だよな。オレもだよ。コニーの事、すげえ可哀想だったもんな」

ミカサ「うん……」

エレン「こんな時に不謹慎かもしれんけど……オレ、今日、ミカサと最後までやってみたい」

ミカサ「…………うん。私も」

エレン「オレの部屋でいいか? 勿論、ゴムはつけてやるからさ」

ミカサ「うん。そうしよう」

そしてオレ達は身体を拭いて、服を着て部屋に戻った。

夜中の3時前だけど。まだ眠気が来ねえ。

何だろう。この不思議な感覚は。

人の別れを見た後だってのに。不謹慎だって詰られそうだけど。

オレ、ミカサとすげえ繋がりたいって思った。

いや、人の別れを見たからこそ、離れたくないって思ったのかもしれないけど。

とにかくこの日、20015年の1月1日。元旦にオレはミカサとの一夜を決意した。

今まではアレだ。ゴム手袋で変態プレイとかしちまったけど。

今回は普通に出来る。だからそういう方向は今回は封印する。

ミカサを自分の部屋の布団の上に寝かせてお互いに両目を閉じる。

重ねていく。唇を。体温を。

温かい。何度キスしてもこの「温もり」の幸せには勝てない気がする。

テクニックとかはまだまだ稚拙かもしれない。

だからこそ、丁寧にミカサの反応を観察するんだ。

ミカサ「ん………」

静かに始めていく。リヴァイ先生に習った事を思い出しながら。

服の上から1時間以上、触る。

服は半脱ぎ。ええっと、後はなんだっけ?

いかん。忘れた。まあいいか。「適当」で。

もうミカサの体を触っているとだんだんマニュアルがどうでも良くなってくる。

いや、自分勝手だと自分でも「思う」んだが、何か「誘導」されるんだよな。

こう………ミカサに吸い寄せられるような「感覚」があるんだ。

唇が可愛い。鼻だって、すっとまっすぐ伸びて綺麗だ。

ニキビねえし。肌も艶々。このレベルをずっと保っているミカサの努力が伺える。

ミカサは暇があれば必ず「顔面マッサージ」をして「リンパの流れ」を良くしている。

それをすると、顔の張りが違うそうだ。そういう「マメ」な努力をコツコツしている。

いつもありがとうな。ミカサ。

そういう「まめまめしい」ミカサが本当に好きだ。オレは。

ミカサ「んー……」

舌を絡めると、唾液が漏れていく。糸がひくくらい、ねちっこいキスもする。

ふわふわのキスもするし、噛みつくようなキスもする。

もう、全部だ。ミカサとだったらいろんなキスが出来るしな。

ミカサ「ああ………エレン、もっと触って」

エレン「この辺とか?」

乳首を狙い撃ちする。もう固い。やっぱりミカサは「エッチ」な体してんな。

キスだけで感じてこんな風に変わっちまう。

ミカサ「ああ……」

服の上から触っても分かる。乳首の反応が。

風呂上りはブラジャーないからやりやすい。ふわふわをどんどん楽しんでいく。

ごくり。1回ツバを飲み込む。

何か腹の底からぐるるる……って唸るような声が聞こえてきた気がした。

オレの中の「何か」が「飢えている」のが分かる。

でもまだ解放しない。まだ早い。

あいつに「バトンタッチ」する前に「理性」の方のオレでミカサとのエッチを楽しむ。

「本能」のオレはメインディッシュだ。今はまだ、前菜を食うつもりでゆっくり食していく。

バイキングの時もそうだった。野菜を先に食べないと体に悪いからな。

いきなりがっつくのは、マナーがなってないだろうし。

ミカサの乳房を服の上から丁寧に愛撫していく。するとミカサがだんだんうっとりした表情で天井を見上げた。

ミカサ。視線を逸らすな。今はオレを見てくれ。

エレン「ミカサ……オレを見ろ」

ミカサ「ん……」

頷いてくれた。こっちを見た。

ミカサの瞳の中にオレがいる。ミカサから見た時にも写るのかな。

不思議だ。ミカサの目が柔らかい。

笑っているのか。そうか。ミカサの目が笑っているんだ。

幸せだと思った。今、この瞬間が。壊したくない。ずっとこのままでいたい。

ミカサ「ああ……」

エレン「ミカサ……好きだ。愛している」

ミカサ「私も……愛してる」

お互いに自然と言葉が溢れて、もう1回キスをした。

目を閉じて、手を握り合って。何だろうな。この感じ。

デートした時にがっついた時のような感じじゃねえ。

生理の時に血に触れた時ともまた違う。

電話でエッチした時とも、また違う。

このセックスは「今まで」とは「違う」って事しか分からなかった。

うまく言えないけど。これってもしかして、リヴァイ先生の言っていた「スロー」の方のやり方なのかな。

丁寧に丁寧に薄い皮を剥いでいくような感じだ。

バームクーヘンを1枚ずつ剥いて食べる様な感覚に近い。

ミカサ「ん……エレン………ああ……」

キスを続ける。ミカサの服の上からでも全身にキスをする。

特に首筋にキスをすると、身を捩って可愛い声を出してくれるようだ。

この時、ふと思い出したのはリヴァイ先生とハンジ先生が歌っていた歌の中の一曲だ。

☆矢の曲なんだけど。後で歌詞を確認して凄くいい歌だなって思ったんだ。

和訳が大体こんな感じの曲だったけど。


When I look into your eyes I realize
(あなたの瞳を見つめて知りました)

That my love for you will never ever die
(あなたへの愛が永遠に死なないと)

Together for the rest of our lives
(2人の命が続く限り)

I always want you here by my side
(あなたにはわたしの隣にいて欲しい)


何も言わず抱きしめた

貴方の優しさを

忘れる日はないの

You are my reason to be
(あなたはわたしの生きる理由なのです)

You are a dream come true
(あなたは目の前に現れた夢)

You are everything to me
(あなたはわたしのすべて)

You are so beautiful
(あなたはとても美しい)

You are my reason to be
(あなたはわたしの生きる理由なのです)



和訳を読んだ瞬間、何故この曲を2人が選んだのか意味を理解した。

これはリヴァイ先生から見たハンジ先生であり、またハンジ先生から見たリヴァイ先生でもある。

そしてオレにとっても。ミカサから見ても同じかもしれない。

You are my reason to beというフレーズが凄く共感出来るんだ。

As I lay here all alone in my bed
(わたしが1人ベッドで眠っていると)

The thoughts of you keep runnin' through my head
(ふと、あなたのことが頭をよぎります)

When you're here the time goes by so fast
(あなたといる「今」はとても早く過ぎ去り)

The present disappears into the past
(遠い過去へ消えてゆきます)


ミカサと出会ってから今日の日まであっという間だった。

「今日」という日もいつか「遠い過去」へ消えていく事になるだろう。

遠い「未来」から見たらきっと。


Of all the people in the Universe
(この宇宙に住む多くの人達の中)

Who would ever guess I'd find you first
(すぐにあなたに出会えると誰が思ったでしょうか?)

I'm so lucky that you're here with me
(あなたの傍にいること、それがわたしの幸せなのです)

You are my reason to be
(あなたはわたしの生きる理由なのです)



You are a dream come true
(あなたは目の前に現れた夢)

You are everything to me
(あなたはわたしのすべて)

You are so beautiful
(あなたはとても美しい)

You are my reason to be
(あなたはわたしの生きる理由なのです)



I never knew, how good it could be
(わたしを愛してくれるあなたに会うまでは)

Till I had you you loving me
(人生がこんなに素敵だとは知りませんでした)


You are uh You are so beautiful to me

You are everything to me

You are my reason to be...


ミカサが大きく身を捩り始めた。辛そうだ。

ミカサ「あああ……エレン、ん……あ……」

声が漏れるけど、オレは唇を塞いで打ち消した。

もう多少聞かれてもいいや。夜中だけど。もう知らん。

タオル出してくるのが面倒臭かった。

ずっとキスで口を塞いでやれば声漏れも押さえられる筈だ。

ミカサ「ん……ん……ん……」

ミカサの口の中が気持ちいい。吐息が漏れる度に「二酸化炭素」を循環する感覚がある。

吸っていいのか知らんけど。まあいいや。死にはしない。

服の上から乳首を擦り続ける。柔らかい刺激を続けていくとだんだんミカサの身の捩り方が激しくなってきた。

ミカサ「あ…あ……エレン、もう……早く、下を触って……!」

おねだりがきた。脱がせていいのかな?

オレはミカサの服をゆっくり剥いでいった。オレ自身も、全部脱いで布団をかぶりなおした。

ミカサは濡れるのが早いみたいだから、リヴァイ先生がいう程丁寧な前戯じゃなくてもいけそうではあるが。

でも、オレとしては濡れるのが早いからこそ、焦らしてやってみたい気持ちもある。

顔を下げてミカサのあそこに顔を近づけてみる。

濡れていた。すげえビチョビチョだ。やっぱり濡れるの早いんだな。

ぬるぬるするそこに鼻を近づけて、舌の先で弄ってみる。

ミカサ「んー……」

ミカサが声を漏らさないように堪えているようだ。

今日はタオル噛ませてないからな。だから余計にしんどいんだろうな。

ゾクゾクしてきた。やっぱり声は聞いた方が興奮の度合いが増す気がする。

ミカサは困っているだろうなと思いつつ、オレは太ももを触りながら、ミカサのあそこに直接、愛撫を仕掛けた。

舌を上下に動かして、丁寧につついたり、回したり。

その度にミカサの体の痙攣が起きて感じているのが伝わって来た。

ミカサ「あ……あ! あ! あ!」

短い喘ぎ声が続いていく。親父達にバレてるだろうけどもういいや。

親父達も今頃、部屋でヤッてるかもしれんし。あとついでに言うなら親父の寝室は「防音」だ。

ラブホテルもびっくりな完全防音の部屋の夫婦部屋だから、気遣わないでセックス出来る仕様になっている。

……………今度、親父達がいない時にこっそり部屋借りてミカサとやろうかな。

とか下らない事を考えつつ、オレはミカサのあそこを丁寧に愛撫し続けた。

ミカサ「ああ……あああ……ん……んーはあ……エレン、エレン……もう、いきそう……」

イキそうだという話だったので1回止めた。

ミカサ「ええええ……何で止めるの?」

エレン「あーちょい休憩」

ミカサ(しょぼーん)

あ、今、(´・ω・`)の顔になった。超可愛い。

何だよ。そんなに一気にイクところまでイキたかったのか。せっかちだな。

エレン「そんな可愛い顔するなよ」

ミカサ「だあって……」

エレン「一気にイク方が好みなのか?」

ミカサ「かもしれない」

エレン「じゃあ次はイカせる。指、入れてみるぞ」

ミカサ「うん……」

思い出した。指は3本入るようになってから挿入だったな。

1本目。余裕だ。2本目。ちょっときつそうだ。ミカサが一瞬、目を細めた。

まだ早いようだ。だろうな。まだまだこれからだ。

指を中に入れたり出したりをそーっと繰り返しながら、ミカサの気持ちいい部分を指の腹で擦っていく。

ミカサ「ああ………あう……ん……うう……」

唇は太ももの内側をなぞって舐めていく。左手は尻の方だ。

優しく撫でて3点同時にやってみる。するとミカサのバウンドが激しくなってきた。

ミカサ「あ……や……ああ……あああああ!」

バシ!

いってー!

ミカサの膝がオレの体に当たっちまった!

無意識だったみたいだけど。善がり過ぎて事故が起きてしまった。

ミカサ「! 大丈夫エレン?!」

ミカサが慌てている。いや、このくらいは大丈夫だけど。

ミカサ「抑えていたのに……ううう」

そう言えば「うっかり怪我させなくない」って以前言ってたな。

そっか。善がり過ぎた時の反動で怪我させたくないから、あの時に渋っていたんだな。

ミカサ「エレン、やっぱり私を拘束して」

エレン「は?」

ミカサ「やっぱり怖い。もし善がり過ぎてエレンを蹴ってしまったらと思うと……」

エレン「いや、別に蹴っても構わねえけど」

ミカサ「でも骨を折ってしまったら……」

エレン「折れても別にいいよ」

ミカサ「私が嫌! 絶対いや! 私を縛って! エレン!」

うううーん。初めての挿入なのにいいのか? それじゃまるでSMじゃねえか。

どうしたらいいんだ。コレ。

ミカサ「エレンに万が一の事があってはいけない。縄でも何でもいい。エレン、私を縛って」

エレン「縄あったかなあ?」

一度布団から出て、部屋の中を探してみるけど流石に「縄」は見つからなかった。

エレン「あーなわとび用のならあったけど、これでいいのか?」

ミカサ「それで構わない。それで私の力を封じ込めて欲しい」

無茶苦茶だなあ。本当に。

うーん。こういう時は、発想を逆転させた方がいいかもしれんな。

エレン「あえて暴れて貰おうかな」

ミカサ「え?」

エレン「ミカサが頑張ればいいんだよ。騎乗位、やってみっか」

という訳でポジションチェンジだ。頑張ってみよう。

エレン「ほら。ミカサが上に乗ってみろ。オレはミカサのおっぱいを下から拝んで楽しむからさ」

ミカサ「う、うん……(ポッ)」

挿入はまだしないけど。ミカサに乗って貰った。

うひょーいい眺めだな。マーガレット先輩の家で体位のモデルした時の事を思い出すぜ。

おっぱい揉み揉みさせて貰おうか。下からだけど。

ミカサ「あ……エレン……やん……」

えへへへ~いいなコレ! アングル最高だな!

ミカサ「や……乳首、や……」

乳首を下から掬うように何度も刺激を与えるとミカサの顎が上下に揺れた。

ガクンガクンしているぜ。おもちゃみてえに。

ミカサ「あああ……ああ……ん……やあ……やああん」

乳首だけでイケるかなこれ? 意外といけそうな気配だ。

ミカサ「や……や……ああ……」

あ、もう力が入らなくなって倒れて来た。騎乗位でいられなくなったみたいだ。

背中に指を添わせて耳元に唇を寄せて。暫くそのまま撫でていた。

尻の方にも手を寄せて。後ろから尻の穴にもちょっとだけ触ってみる。

ミカサ「いやああ……直接はらめええ……」

エレン「ああ、すまん。別に中には入れない。悪い悪い」

ミカサ「…………入れないの?」

エレン「え?」

ミカサ「入れるかと思った」

エレン「いや、今、ダメって言っただろ」

ミカサ「そう言った方がいいのかと思って」

同人誌の読み過ぎだ! ミカサ、誘惑テクニックを磨き過ぎ!

エレン「いや、そこまでざーとらしくしなくていいからさ」

ミカサ「そうなの?」

エレン「オレ、あんまり「わざとらしい」演技が苦手なんだよ。たまにクリスタがやり過ぎているところ見て引いた事あったし」

ミカサ「そうなの? エレンはクリスタが苦手なの?」

エレン「ん~女としては、だな。アルミンは逆に好きみたいだけど」

ミカサ「そう……良かった」

エレン「だからミカサもあんまり、マニュアルばっかり読まなくていいからな。素直が一番だろ? こういうのは」

ミカサ「うん……じゃあ、入れて」

エレン「へ?」

ミカサ「お尻、触ってもいい。正直、あの時、開発されるような変な感覚があって、新しい自分に目覚めてしまった。責任取って欲しい」

エレン「えええええそうだったのか?!」

ミカサ「責任取って欲しい。責任取って欲しい。責任取って欲しい」

エレン「何回も言うなよ。怖いから! 分かった! 責任取るから!!!」

あーでも、ゴム手袋ここにねえんだよな。1回下に降りるの面倒だなー。

ミカサ「………直接触ったらやっぱり危ない?」

エレン「粘膜を傷つける恐れがあるんだよ。爪の中に雑菌あるからな。それが直接体の中に入ったらダメなんだ」

病院とかでも直腸の検査をする時は必ずゴム手袋してからするからな。

だからそういうプレイをする時も「雑菌」に気を付けるのは常識らしい。

ミカサ「そうなのね。だったら今日は諦める。また今度で」

エレン「そうだな。それがいい。また今度でイイよ」

今日は別に尻を使う必要性がないからな。

ミカサの「子宮」に入れられるならそっちの方が断然いい。

尻はあくまで「予備」みたいなもんだ。そっちに触れない時の為の。

だから今日はこっちに専念する。尻の方を通過してもっと前の方に指を届かせる。

ミカサ「あう……ん……うあ……はあ」

あそこを擦りながらミカサの乳首に吸い付いてみる。

おっぱいは出ないけど。オレも昔はこんな風に母親に吸い付いていたんだろうか?

赤ちゃんの時の記憶はないけど。でも、その時の事をもしも「覚えていたら」きっと比べられただろうな。

いつか遠い未来、ミカサが母乳出るようになったら吸い付いて飲んでみたいな。

とか言ったら変態の烙印を押されそうで怖いけどな。

………もう手遅れか。うん。

ミカサ「エレン……エレン……ああ……あああああ!」

ミカサがオレの上に乗ったまま一度イッたみたいだ。

がくんと、急に体の力が抜けたような衝撃がきた。

とりあえず1回目。カウント間違えないようにしないと(笑)。
姫初めエッチで初エッチになりました。キリがいいからいいよね?

ではまた次回ノシ

ミカサ「はあ…はあ…はあ……はー……(がくり)」

エレン「1回イッたみたいだな」

ミカサ「イッたあ………(ふにゃあ)」

ぶふー! なんだその間抜けな顔は!

やべえええええ! なんかもう、こっちも滾ってくる!

んー! ぶちゅうううっと乱暴なキスをして、オレは体勢を入れ替えた。

騎乗位でいこうかなって思ったけど気が変わった。やっぱり正常位でいこう。

ミカサのあそこは一度イカセたら大分指が入りやすくなった。2本入れても痛がらない。

3本入れてもそこまで抵抗しない。やっぱり先に一度女の方をイカせた方が挿入しやすそうだな。

そこを確認した後、オレは布団から出て、バスタオルやコンドームを用意した。

ミカサの下にバスタオルを敷いておく。コンドームのつけ方は個人的に何度も練習したから大丈夫だ。

手早く装着を済ませて、コンドームの上に少しだけローションを塗り付ける。

エレン「ミカサ。痛くなったらすぐ言えよ」

ミカサ「うん………」

準備を整えてからミカサの上に覆い被さった。

尻を支えながら少しずつ挿入を試みる。

狭い。やっぱり女の体の中は狭いんだな。

でも少しずつ、本当に少しずつ前に進む。ミカサの表情を注意深く観察しながら。

ミカサの胸に食いついてみた。乳首に刺激を与えたら、子宮の入り口が一緒に動いた。

脈動が伝わって来た。それに乗せるようにして、また一歩。奥へ行く。

ミカサ「あああ……あああ………」

苦しそうだ。出来るだけ痛い思いはさせたくねえけど。

1回止めるべきか? でもミカサは首を左右に振った。

ミカサ「一思いに、一気に、いって!!」

そうか。ならもう遠慮はしねえ。押し進める!



ぐっ………!



完全に入った。今、この瞬間、オレとミカサは繋がった。



ドクドクドクドクドク……………


心臓が高鳴る。すげええ。なんだこの感動は。

やった。オレ、入ったんだ。コンドーム越しだけど。すげえ温かい。

急に涙が出て来た。自然と零れてきたんだ。

ミカサも泣いていた。感動を一緒に分かち合っているんだ。

暫くそのままで動けなかった。お互いに何も言えない。

そして10分くらい動けないでいたら、ミカサから言い出した。

ミカサ「動かないの?」

エレン「動いていいのか?」

ミカサ「動かないとセックスにならないような?」

エレン「まあ、そうなんだけどさ。ククク………」

なんかもう、浮かれ過ぎてやばい。

エレン「痛くねえか?」

ミカサ「予想していたような痛みはない。全く痛くない訳じゃないけど。生理痛よりは痛くない」

エレン「そっか。女の人って生理痛で痛みに慣れているのかな」

ミカサ「そうだと思う。だから動いていい」

エレン「んじゃ、ゆっくりいくぞ………」

腰を前後に振ってみる。すると、ミカサがまたあの「ふにゃ顔」に変わった。

ミカサ「ああん………」

かわええ……滅茶苦茶可愛いな。ミカサの「ふにゃ顔」は。

普段が「キリッ顔」の方が多いから気合抜けているとすげえギャップがある。

ああ。だからなのかな。オレ、ミカサには「リラックス」して欲しいのかもしれん。

そういう「寛いでいる時のミカサ」を見たくてしょうがなかったのかな。

だからゲームで誘惑して、サボらせたり、家事仕事を休ませたかったのかも。

ミカサ「ああ……ああ……エレン……もっと、もっと奥に突いて……」

エレン「ああ……どんどん突いてやる」

ミカサとオレのあそこが上手い具合にしっくりくる感覚がある。

凸凹が噛みあっている感じだ。正常位で良かったみたいだ。

体位の参考書には「女の子宮の位置によってベストな体位が変わる」とあったから、心配していたんだよな。

正常位でそこまで痛がらないって事は、恐らくミカサは「上つき」タイプの女なんだろう。

もし「下つき」タイプだった場合はバックからの挿入がお勧めとあったから、かえって良かった。

バックは挿入が他の体位より難しいらしいとあったから出来るなら「正常位」もしくは「騎乗位」で挑戦したかったんだ。

腰の前後の振りを徐々に大きくしていく。まだまだこっちはHP残ってるからな。

とか油断していたら、急にぐっと吸い込まれる感覚が来た。

う……なんだこれ?! ああ……まずい。ミカサの身体が気持ち良すぎて、まずい。

入れたばかりなのにイクなんて、恥ずかしい!!

一旦、休憩しよう。早漏過ぎるのは良くねえ。ふー。

ミカサ「エレンの意地悪……」

エレン「いや、今、オレ、イクところまでイキそうだったから1回止めたんだよ」

ミカサ「? イッていいのでは?」

エレン「早過ぎるだろ! もうちょっと待て。この感じをもっと楽しみたいんだよ」

このふわふわで幸せな時間を引き延ばしたい。一気に味わうのは勿体ないだろ。

ミカサ「ふふ……それもそうかも」

エレン「だろ? だから休憩を挟みながらでいいんだよ」

ミカサ「うん……」

幸せなセックスだった。

もうずっとこのまま繋がっていたい気持ちになった。

でもそういう訳にもいかないし、何よりオレも「絶頂」に行きたい。

山の山頂に辿り着くような。あの達成感を味わいたい。

小刻みに腰を前後に振る。ミカサの表情がもっと「ふにゃふにゃ」になってきた。

顔に力が入ってない。普段、どれだけ「気合」を入れているのか良く分かる。

もう完全に「別人」だ。今のミカサの顔を知っているのは「オレ」だけだろう。

そう思うと急に興奮が増した。今、オレ、ミカサを独占してんだよな。

涎が零れている。目が虚ろで、涙を拭う気力もなくて。

声を押さえる余裕もない。善がり続けるミカサをオレは責め続けた。

腰の動きと一緒に乳首も当然、弄っている。ちょっと強めに捩じるとまた、子宮が疼く感覚が伝わってきた。

ああ。口でされている時の感覚に近いけど、それを更に「強化」したような気持ち良さだ。

吸い込まれる。ミカサの中に。もう我慢出来ない。

オレの方もそろそろ限界に近付いてきた。

一気にイク。腰の速度を加速する。弓なりに、ミカサの背中が反った。


ミカサ「ああああああ………!」


コンドームの中に出した瞬間、すげえ吸い付きがきた。

ミカサもほぼ同時にイッてくれたようだ。2回目の「イク」感覚はさっきより激しかったみたいだ。

終わった後、気怠い感じがきた。眠い。

繋がったまま、眠ってしまいたいけど。どうしようかな。

ミカサが起きない。あ、堕ちたみたいだな。スースー寝息が聞こえてきた。

…………抜くの面倒だからこのままでいいか。

オレは半眼の自分に甘えながらそのまま目を閉じた。

ミカサの股の間から赤い鮮血が零れている事に気づかないまま、眠ってしまった。

だから朝、目が覚めた時にそれに気づいてオレは「ああああ?!」と叫んでしまった。

ミカサ「どうしたの? (むにゃむにゃ)」

エレン「血が……」

ミカサ「あ……」

エレン「すまん。すぐ気づいて洗うべきだった。時間経ったら落ちにくいよな」

ミカサ「大丈夫。こっそり落としてくる」

と、ミカサがささっと着替えて後始末をしようとするけど、

エレン「いや、オレがやるから! やり方教えてくれればやるから!」

ミカサ「そう? じゃあ2人で洗おう」

という訳でおばさん達が起きてこないうちにこっそり後始末をした。

結構、血が出てたんだな。最中は気づかなかったけど。

所謂「処女膜」が破れると大体皆、こうなるらしいけど。

ミカサを「女」にしたんだよな。オレ。

オレも「男」になった訳だけど。

なんか不思議な感覚だった。越える前は「ドキドキ」が凄かったけど。

越えてみたら意外と「なーんだ」って感触が強い。いや、勿論楽しかったけどな。

でも思っていた以上に「大変な事」ではなかった。なんていうか「えい!」って一度乗り越えてしまえば、以後は普通に出来る様な感じだ。

出来なかったバク転が、コツを掴んで出来るようになった感覚かな?

それとも、食べられたかった苦手な食べ物を食えるようになった感じかな?

まあ、何でもいいけどな。とにかくオレは一歩、「大人」になったんだ。

階段を一段、登ったんだ。ミカサと一緒に。

そう考えると自然と笑みが零れて、ミカサを労わりたい気持ちになった。

ミカサ「ん?」

エレン「朝飯はオレが適当に作るよ。今日くらい休め」

ミカサ「いいの?」

エレン「こういう時くらい、オレにさせろよ。いいだろ? ま、下手くそな飯だけどさ」

ミカサ「ううん。任せる」

なんかもう、既に新婚さんみたいな生活だけどな。オレ達。

一緒に暮らせるアドバンテージに感謝するしかねえ。

きっと他の恋人たちより贅沢な関係なんだ。その事に、心から感謝しよう。

そう思いながらオレは、冷蔵庫を開けて卵やら何やら取り出して朝飯を作った。

卵焼きやサラダ。味噌汁。ご飯は冷蔵庫の冷や飯があったからそれを温めて食べる。

幸せだと思った。本当に。だからこそ、壊したくないと思った。

コニーの事は凄く残念だったけど。でもあいつはモテるからきっと大丈夫だ。

これからどうなるかは分からねえけど。でも、あんまり悲観する事はねえよな。

他にイイ子は沢山いるし。何よりサシャが傍にいる。

三角関係になる可能性はあるけど。でも、それはそれで仕方がないと思う。

オレとミカサとジャンもある意味では三角関係だった訳だし。

リヴァイ先生とハンジ先生とモブリット先生もそうだった。

加えて言うなら、リヴァイ先生とハンジ先生とエルヴィン先生だってそうだった。

でも落ち着くところに落ち着いた。時がくればきっと、そうなるから。

だから、立ち向かうしかねえと思った。「自分自身の心」に。

サシャはそういう意味ではまだ「自分の気持ち」を正面から見れない状態みたいだけど。

根が「臆病」なのかもしれないな。気持ちは分からなくはねえけど。

ミカサ「修学旅行……」

エレン「ん?」

ミカサ「修学旅行の時は気をつけないといけない」

エレン「ん? 何で?」

ミカサ「計算通りで行けば、性欲が高まる時期になる」

エレン「マジか! いや、そうか」

ううーん。重なっちまうのか。それはまずいなあ。

でも修学旅行を休む訳にもいかんしな。そこはどうにかしないと。

ミカサ「うん。1月14日から18日まで、危ない時期なのでドンピシャ」

エレン「そっか…………分かった。覚悟しておく」

と、未来を案じながら2人で朝飯を食っていると、

ミカサ「サシャの事、だけじゃないけど」

エレン「ん?」

ミカサ「私はむしろ、アニの方が心配」

エレン「ん? 何で? え? まさか、アニも好きな人がいるのか?」

ミカサ「ううーん。確証はないけれど。もしかしたらっていうのは、ある」

エレン「え? 誰だよ。まさかジャンとかじゃねえよな?」

ミカサ「いや、ジャンではなく………………」

エレン「あ、確証がないなら話さなくていいや。すまん。聞いたオレが悪かった」

ミカサ「いえ、可能性としては五分五分くらいだと思うので、一応話しておきたい」

エレン「…………誰だろ?」

思いつく人物が出てこない。すると、ミカサは言った。

ミカサ「………アルミン」

エレン(ぶふー!)

お茶を拭き零した。え? え? 本当に?!

エレン「アニがアルミンを好きかもしれないって思ってるのか?」

ミカサ「でないと、遊園地でのあの「苛立ち」に説明がつかない」

エレン「ええ? どういう事だ?」

ミカサ「ジャンがヒッチにフラフラしている時、ジャンに対してというより、アルミンが「アレは僕でも拒否出来ない」みたいな事を言った瞬間、凄い怖い顔になった」

エレン「あー……」

そっか。なるほど。だからアニの奴、機嫌が悪くなったのか。

ミカサ「自覚はないのかもしれない。でもあの時の夜叉のようなアニの顔、正直怖かった」

エレン「ミカサもたまにそうなるけどな」

ミカサ「うん。私もちょっと自重しようと思った。出来るだけ」

エレン「そっか……でもアルミンもクリスタに失恋したようなもんだし、いいんじゃねえかな? 2人がくっつけば」

ミカサ「ううーん。でもアニにはもう1人、アニを好きでいる男の子もいるし」

エレン「………ベルトルトの事か」

ミカサ「エレンも気づいていたの?」

エレン「まー球技大会でのサッカーしていた時のベルトルトを見ていたら自然と気づいたよ」

ミカサ「そう。私は文化祭の時に確信した。甘味所で結構、楽しくしゃべったそう」

エレン「ああ、聞いたのか。其の時の事を」

ミカサ「そうそう。ベルトルトの奢りで、ライナーも交えて食べてきた時の様子を知って、これはベルトルトの方に気があるとしか思えなかった」

エレン「なんかもう、いろいろ複雑な感じになって来たなー。これに加えてライナーからクリスタへのベクトルもあるわけだろ?」

ミカサ「ライナーはまだクリスタとユミルの件は気づいてないと思うけど」

エレン「なんかそれっぽいな。気づいたら大変な事になりそうだな」

ミカサ「うん……ユミルとクリスタは本格的に付き合う事になったそうだから」

エレン「え………それ、本当か?!」

ミカサ「うん。メールでこっそり教えてくれた。クリスマス公演でユミルとクリスタも男女ペアに扮装して踊ったのが切欠で、そういう空気になったそう」

エレン「すげ! 社交ダンスのカップル成立率すげえな!」

こりゃあリヴァイ先生がハンジ先生に堕ちた筈だよな。

あれだけ密着すればだんだんその気になってもしょうがねえよ。

オレとミカサの場合は最初からその気だったけど。そうじゃない場合は戸惑うかもしれんな。

エレン「そうかーそういう意味じゃアルミンもアニとペア組んだ訳だし、意外とくっつくかもしれんな」

ミカサ「だといいけど………」

エレン「ん? どうした? 何か不安なのか?」

ミカサ「いいえ。その………うーん」

エレン「煮え切らないな。アルミンに何か問題あるのか?」

ミカサ「その、アニは「博打」をする男が苦手だから」

エレン「………………」

その言葉で何となく意味を察したオレだった。

エレン「あーうん。アルミン、意外と「博打好き」だからなー」

文化祭の時のごり押し具合や、ジャンとの茶々入れを見て貰えば分かると思うが。

アルミン、意外とそういう「気質」は持っているんだよな。

仕掛けて、その結果を楽しむっていうか。たまに失敗して落ち込む事もあるけど。

というか、麻雀も出来るし頭使うゲーム好きだしな。

多分、成人したら「賭け事」を趣味にしそうな気配はある。

エルヴィン先生と似た部分を持ってるからな。アルミンは。

ミカサ「だからその点だけが心配。アニの親父さんも博打で身を崩しかけた事があるそうだから、出来るならそういう男とは結婚したくないって言ってるけど」

エレン「理性と本能は別物だからなあ。親父さんが博打好きなら、また同じような男に惹かれる可能性もあるって事だな」

ミカサ「つまりそういう事。アルミンがもし「博打」に目覚めてしまったら流石にちょっと許容は出来ない。友人としては」

エレン「難しい問題だな。オレは博打にそこまで興味ねえけど。アルミンはちょっと、その気質は持ってるっぽいからな」

あとコミケの時の金の使いこみ方とかな。一気に3万使ったあたり、金銭感覚がオレとちょっと違う。

行くときは一気にいくタイプなんだよ。アルミンは。

ミカサ「そういう意味ではベルトルトの方が「安全」な男のような気がする。最初は公務員を希望していたそうだし」

エレン「それっぽいよな。確かに。でも、その辺はもう、本人達がどこまで「許容」出来るかによるよな」

アルミンはアルミンだしな。博打好きな気質も含めてアルミンだからしょうがねえよ。

ミカサ「うん。出来るなら、アニには幸せな選択をして欲しいけど。苦労をかける男とは付き合って欲しくないけど……本人が相手を好きになった場合は仕方がない」

エレン「大丈夫だって。アルミンはそこまで酷い身の崩し方はしねえと思う。あいつ、運がいいからな」

ミカサ「そうなの?」

エレン「ああ。うまくいえないけど………土壇場に強いぞ。オレとは違った意味で」

でないとオレもアルミンの友達をやってないと思う。

エレン「まあ、まだ本人達の自覚がない状態なら何とも言えないけどな」

ミカサ「そうね。こっちがやきもきしてもしょうがない気がする」

と、いろいろ話していたら朝飯を食い終わった。

ミカサ「あ……片付けくらいは私がやる」

エレン「いいのか?」

ミカサ「うん。手持ち無沙汰の方が落ち着かない」

エレン「分かった。じゃあ後は任せるよ」

という訳で皿洗いをミカサに任せてオレはテレビを見たりした。

親父達が降りて来た。ちょっと遅い起床だな。

グリシャ「おはよう。エレン。ミカサ」

エレン「おはよー父さん」

ミカサ「おはようございます」

グリシャ「………………………」

親父が微妙な顔をしていた。

いや、言いたい事は分かるけど。出来ればスルーしてくんねえかな。

グリシャ「おせち料理はお昼でいいか。朝は普通の朝食を食べようかな」

と言いながら、ツッコミたい事をスルーしてくれたようだ。助かる。

そして親父は冷蔵庫から自分の食べたい物を取り出して自分で適当に料理をした。

ミカサ「母さん、まだ起きてこない……」

グリシャ「ああ。ちょっと寝坊しているよ。寝かせていていいから」

ミカサ「……………分かった」

ミカサも何となく気づいたようだな。

まあ、親父は親父達できっと昨夜はお楽しみでしたねって事だろ。言わないけどな。

グリシャ「そう言えば冬休みがあけたら修学旅行の予定だよね。エレン」

エレン「ああ。確か14日から19日の5泊6日だったかな」

グリシャ「入金は新学期が始まってからで良かったのかな」

エレン「ああ。確かその筈だ。13日までに入金してくれって知らせがあった」

グリシャ「了解。忘れないうちに入金しておくね」

親父の場合、2人分をいっぺんに支払ってくれる訳だから感謝しねえとな。

エレン「…………親父」

グリシャ「ん? なんだい?」

自分の分の朝飯を軽く摘まみながら親父がこっちを見た。

エレン「あの、さ。親父から見て、オレの成績、どう思う?」

グリシャ「ん~医者になれるかなれないかって意味かな?」

エレン「うん。正直言えば、まだ全然足りてねえと思うんだけど」

グリシャ「でも一気に成績が上がって来たんだろ? だったら問題ない」

エレン「医者ってでも、もっと頭がいるよな」

グリシャ「何が言いたいのかな? エレン」

エレン「…………可能性、何パーセントだと思う?」

正直言えば今、オレはオレ自身を客観視出来る状態ではなかった。

だから「本音」の意見が聞きたくて其の時、親父に聞いたんだけど。

グリシャ「それはエレンの努力次第だよ。私が決める事じゃない」

エレン「ううう……」

グリシャ「数学の成績が伸び悩んでいる事を気にしているのかな?」

エレン「はっきり言えばその通りだ。オレ、結構頑張ったんだけど。思っていたより伸びなかったし」

グリシャ「エレンの場合は数学の「最終問題」だけは何故か正解するよね」

エレン「ああ……そうだな」

自分でも良く分からんが。最終問題は何故か得意だ。

グリシャ「それってつまり「応用力」はあるっていう証拠だと思うよ」

エレン「応用力……」

グリシャ「最終問題は必ず「頭を捻って答えを出す」問題がくるからね。そこをクリア出来る力はあるんだから、他の基礎的な問題も頑張れば何とかなると思うよ」

エレン「だといいけど……」

ううーん。まだ不安があるんだよな。

アニとの勝負の件もあるし。実力テストで結果出してえけど。

グリシャ「エレン。焦ったらダメだよ。エレンはようやく本腰を入れて勉強を始めたばかりだし、部活動の方の両立もしないといけない。成績は徐々に伸びていく時と、伸び悩む時期もある。焦ってペースを崩したら遠回りになるだけだ」

エレン「そっか……」

グリシャ「勉強するのもいいけれど、ペースを崩さない事の方が大事だよ。地味だけど。その努力は実を結ばない場合でも必ず「糧」になるから。出来る限り頑張りなさい。浪人したいっていうなら、父さんは反対しないから」

エレン「え……浪人、してもいいのか?」

グリシャ「一発合格出来る人間ばかりじゃないからね。父さん自身も1回浪人経験をしているし。親がしているのに子供には「するな」なんて言えないよ」

エレン「そっか……」

ありがてえけど。でもあんまり過保護にされ過ぎているような気もする。

グリシャ「あともし、途中で「気が変わった」場合も遠慮なく言いなさい。私自身も、高校時代、進路についてはフラフラしていたしね。医者だけじゃなくて、もし他の職業にも興味が出てきたらそっちも視野に入れていい。勉強はするに越したことはないけれど。進路を最終的に決めるのは「高校3年生」になった時点でも構わないよ。父さんがそうだった訳だしね」

エレン「そっか………じゃあもしも途中で「やっぱり医者は無理かも」って思ったら、進路を変えてもいいのか」

グリシャ「うん。挫折する人間の方が圧倒的に多いからね。医者の道は。目指してくれるのは親としては嬉しいけれど。それに固執し過ぎて他の事がおざなりになり過ぎるのも良くないよ。エレンの「部活動」での活動はエレン自身の「一生の財産」になると思っていていい。十代の頃の「経験」こそが、一番必要な「勉強」であるから」

と、まるでキース先生のような事を言いだす親父だった。

エレン「そっか……ありがとう。父さん」

グリシャ「他に何か悩み事はない? 父さんも普段忙しいし。あまりゆっくり話せないからこういう時くらいしか話せないしね」

と、親父が歩み寄ってくれる。

エレン「ううーん。悩みって程の事じゃねえけど……」

過ったのはジャンやコニーやアルミンや、その他の恋愛模様だった。

エレン「……親父は十代の頃、三角関係とか経験した事ある?」

グリシャ「恋愛事の悩みかい? 私はモテた訳じゃないからそういう経験はないかな」

エレン「そっか……」

グリシャ「ミカサを狙う男が他にもいるのかな?」

エレン「いや、そっちの件はもう解決したからいいんだけどさ」

グリシャ「ふむ」

エレン「なんていうか……周りがさ。ちょっといろいろ、ゴタゴタしそうな気配なんだよ」

グリシャ「ああ。そういう意味か。だったら父さんも沢山、見聞きはしてきているよ」

エレン「周りは結構、そういうのあったのか?」

グリシャ「私自身の話ではないけれど。確かに十代の頃は複雑な恋愛模様は周りではよく起きていたね」

親父も経験しているのか。やっぱりそういうのって通るべき「道」なのかな。

グリシャ「四角、酷い時は六角関係もあったねえ」

エレン「六って……それ、酷いな」

グリシャ「うん。全員片思いっていう、不毛な恋愛模様だったけど。でも結局6人ともグループ交際みたいな感じでわいわいやっていたようだった。均衡が崩れた時に、それぞれパートナーが出来て、結局はカップルが3組出来たから良かったけど」

エレン「へーそういうのもあるんだ」

グリシャ「後はそうだな……やっぱり二股関係の修羅場とかかな。結構、そういう激しい恋愛模様もやってる奴は普通にやっていたしね。当時の私にとっては「別の世界」のような感覚だったけど」

エレン「あー自分が経験しないと分かんないもんな。やっぱり」

グリシャ「そうだね。私の場合は恋愛については遅咲きだったと思うよ。医者になった後に初めて「恋愛」を経験した訳だから」

と、親父がしみじみ言っている。

グリシャ「でもそういうのって、人それぞれだからね。早い人もいれば遅い人もいる。エレンもそういうので「やきもき」する事もあるかもしれないけど。あまり「深入り」しない方がいいよ。話は聞いてあげた方がいいけど。結局はなるようにしかならないと思うしね」

エレン「あーやっぱりその辺は親父とオレ、考え方が似ているんだな」

グリシャ「親子だしね。まあ、そうだろうね。そういう意味ではエレンは皆より「早咲き」だったんじゃないか?」

エレン「ああ。2番目くらいかな? 周りで1番早かったのはコニーだけど。2番目はオレかもしれん」

グリシャ「だとしたら、今ぐらいからどんどん、そういう「話」が沸いてくる時期だろうね。父さんの時もそうだった。高校1年の後半くらいから高3の始め辺りまでがそのピークだったように思う。高校3年生に入ると一気に「進路」の関係が出てくるから、恋愛事も少しは落ち着いたけれど」

エレン「そっかーだったらもうしょうがねえかな。うん。分かった。オレも腹括る」

グリシャ「巻き込まれそうな気配なのか?」

エレン「それはまだ分かんねえけど。いろいろ「ううーん」と思う事は出てきそうな気配かな」

グリシャ「まあそうだろうね。でもそれも「青春」だしね。いいなあ。若いって」

と、親父が何故か「ニヤニヤ」している。

エレン「親父も新婚さんだろ」

グリシャ「それとこれとは別だよ。エレン。時が過ぎてから分かる。十代の頃の「輝き」は年を取ってからしか分からないんだ」

エレン「うう……そうなのか」

今、言われても分かんねえよな。そう言われても。

もしかしたら10年後、20年後、親父と同じ事を言いだす自分がいるかもしれんけど。

少なくとも「今」のオレには全く理解不能だった。

そんな訳で抱えていた「もやもや」は親父に話したら少しすっきりしたような気がする。

そして冬休みの間は部活も殆どお休みして勉強に打ち込んだ。

部活動の方は特に先の予定もなかったし、集まりたい奴は集まって練習していたみたいだけど。

オレの場合はちょっとお休みさせて貰った。勉強の方を優先したかったからだ。

あっという間に冬休みは終わり、実力テストも終わった。

順位は前回と全く変わらなかった。やっぱり今のオレの限界は「ここ」あたりになるようだ。

アニ「ふふん。エレン、あと1回だからね。チャンスは」

アニに負けてしまった。くそ! 次こそは負けたくねえ!

ミカサ「アルミンとの差が出て来た。悔しい…」

ミカサはミカサで落ち込んでいるようだ。どうやら今回も「2位」だったそうだ。

ミカサ「むむむ………何故? 何が原因なのかしら?」

エレン「あーもしかして、オレに付き合って勉強していたからじゃねえか? ミカサ自身の勉強の時間、削ってオレに教えてくれただろ」

ミカサ「いや、そんな筈は……」

エレン「うーん。あんまりミカサにばっかり甘えるのも良くねえのかな」

ミカサ「ええええ……(ガーン)」

エレン「いや、ミカサが落ち込む事じゃねえだろ?」

ミカサ「エレンに教える方が優先なので、2位のままでいい(キリッ)」

エレン「そ、そうか? うーん。なんか悪い気がするな」

ミカサ「そもそも、2位でも十分成績はいいのでこれ以上を望む方が贅沢だと思う(キリッ)」

エレン「うーん」

まあ、2位でも十分点数的には医者の進路には届いている成績ではあるんだが。

どうしたもんかな。やっぱりオレ、塾とか行くべきなのかな。迷う。

いろいろ思うところもあるけれど。とりあえず、次は修学旅行の件だ。

1月10日。土曜日。この日は修学旅行の班を決めるロングホームルームが行われた。

もう来週の事だしな。ぱぱっと決めないといけない。

クリスタ「えーっと、修学旅行の班は7人を1つの班にした5つのグループに分かれます。グループごとに自由行動を取って貰いますので、計画表を立てて13日までに提出して貰います」

と、結構バタバタなスケジュールだった。

ただまあ、冬休みの間に大体の「案」は皆、予め考えてはいた筈だから、そこは問題ないか。揉めるとすれば「どこを選ぶか」になるだろう。

オレは当然、ミカサとアルミンとアニと組んだ。残り3人は誰と組むかな。

マルコ「ごめん。今回は僕はミーナと組みたいから、ハンナ達のグループに合流してもいいかな?」

ミーナとハンナは割と仲いいみたいだしな。まあしょうがねえか。

ジャン「ああ。彼女優先してやれ。オレは……どうしようかな」

ジャンはサシャと組みたいだろうけど。サシャはどうするつもりかな。

コニー「サシャ! この間の研修旅行では別の班だったから、今回は組まねえか?」

サシャ「いいですよー。組みましょう」

ジャン「!」

ジャンが焦っている。やっぱりそうだよな。

ジャン「…………」

助け船になるか分からんが、オレはサシャとコニーに声をかけた。

エレン「だったらお前らうちの班に来いよ。ジャンも含めれば3人だし。丁度7人集まるし」

ジャン「………いいのか?」

エレン「その方がいいだろ? 班が分かれるよりはマシだろ?」

ジャン「………助かる」

ジャンがこっそり礼を言った。嬉しそうで何よりだな。

コニー「お? いいのか? サンキュ! エレン!」

そんな訳で、修学旅行の班分けは大体こんな感じに分かれた。


【修学旅行班分け】


1班 エレン ミカサ アルミン アニ ジャン サシャ コニー

2班 ライナー ベルトルト ユミル クリスタ マルロ ヒッチ ダズ

3班 マルコ ミーナ フランツ ハンナ サムエル ミリウス ナック

4班 トーマス トム その他モブ

5班 その他モブ



今回、オレが何故か班長になってしまった。じゃんけんで負けたからだけど。

まあいいか。別に。そんなに大した大役でもないしな。

そんな訳で、14日、15日、16日の京都の自由行動の計画を皆で立てる事になった。

17日、18日は長野のスキー旅行だから特に決める事はない。

19日の午前中には長野を出発して夕方までには学校に帰る予定だ。

観光案内のパンフレットにチェックをつけてサシャがニヤニヤしている。

コニーも行きたい場所が沢山あるようだ。アニも何気にパンフレットに沢山付箋をつけているし、アルミンに至っては……言わなくても分かるかな。すげえ下調べをしてきているようだ。

という訳で修学旅行編です。
京都のどこに行かせるかまだ決めてないので、希望があれば採用します。
特に何も希望がなければ定番コースになります。良ければ↓にどうぞ。

修学旅行の行き先も伏字の方が良かったかな。まあいいか(笑)。
京都と長野で決定しちゃったんで、ここだけはそのままいきます。

ではまた次回ノシ

特に希望もないようなので定番コースでいきまーす。

自由行動が出来るのは15日になる。14日は団体で決まったコースを移動して、15日は丸一日班ごとに自由に行動出来る。

16日は移動日で、17日と18日がスキー研修になる。

19日には帰還する。大体そんな感じの修学旅行の予定だ。

学校によってはもっと長い日程の修学旅行もあるそうだ。

海外に行く高校とかもあるらしい。すげえよな。贅沢だよな。

コニー「集英高校はオーストラリアに行くらしいぜ」

エレン「オーストラリア?! すげえなそれ!」

コニー「あそこは金かける学校だからなあ。あと白泉高校はフランスとか言ってたような」

エレン「おおおお何か次元が違うな」

ミカサ「私は国内の方がいいと思う」

アルミン「国内で十分だよ。日本語が通じる方がいいって」

アニ「だよね。外国語だと会話が不安だし」

サシャ「ですねえ。日本にも一杯いいところはありますよ」

ジャン「…………」

ジャンが無口だな。何か考え込んでいるようだけど。

エレン「あーどうする? 自由行動の大体の日程考えないといけないけど」

ミカサ「団体で移動するのは「金閣寺」「龍安寺」「仁和寺」の3つよね」

エレン「14日の方はそうだな。その3つを主に見に行くコースを巡るみたいだ」

ミカサ「だったら自由行動の時はそれ以外の場所を見て回ろう」

エレン「そうだなー。清水寺とかは基本かな? 二条城も一応見てみるか」

基本的な観光名所は押さえた上で、他に行きたい場所は……

コニー「はいはいはい! オレ、映画村行きたい!」

アルミン「あ、僕もそこは絶対行きたいと思ってた」

アニ「偶然だね。私もだよ」

サシャ「いいですね! 皆でお姫様になりましょう!」

ジャン「あー……いいかもな」

エレン「ミカサもいいか?」

ミカサ「うん。お姫様になってみたい」

エレン「じゃあ自由行動は「清水寺」「二条城」「映画村」の3つでいいか」

あんまり多く回ると1個あたりの時間が短くなるからな。

午前中は「清水寺」「二条城」に行って、午後は丸々映画村で遊ぼうかな。

ヒッチ「あ~そっちの班も映画村に行くんだ?」

と、その時、ひょいっとこっちの班に顔を出してきたヒッチだった。

ジャン「ああ……満場一致だな。そっちも行くのか?」

ヒッチ「うん。ライナーがすっごい推してね。映画村で1日遊ぼうって話になったよ」

ユミル「まあ、クリスタをお姫様に扮装させたいんだろうな」

ヒッチ「だよね~」

と、ヒッチは割と誰でも仲良くなれるようで、向こうの班のメンバーともあっさり馴染んでいた。

エレン「オレ達は午後からだな。午前中は一応、基本的な観光名所を押さえておく」

ヒッチ「ふ~ん。まあいいんじゃない?」

と、其の時、ヒッチが何か思い出したように言った。

ヒッチ「あーでも、今回の修学旅行、他の高校とも日程が被るらしいよ」

エレン「そうなんだ。どこと?」

ヒッチ「小学館高校とだったかな? 私の中学の時の元彼が教えてくれたよ」

コニー「!」

其の時、コニーの表情が一瞬、強張ったのが分かった。

サシャもだ。何だ? 何かあるのかな。

ヒッチ「他校の生徒ともすれ違うかもしれないね。クリスタ、ナンパされないように気をつけないと」

ユミル「その点は本当にそう思う。クリスタ。当日はサングラスでもしておけ」

クリスタ「ええええ……そんなあ」

と、微妙な顔をしているクリスタだったけど。

サシャ「……………」

サシャが微妙な顔をしている。何だ? 何かあるのかな。

コニー「あーまあ、大丈夫だろ。多分」

サシャ「ですかねえ?」

コニー「うん。そう何度も偶然は起きねえだろ。もう、元彼女だし。もし会ってもスルーするよ」

エレン「え? まさか、元彼女って、小学館高校の生徒なのか?」

コニー「ああ、まあな。でも、もう大丈夫だ。休みの間に気持ち整理したしな」

と、コニーは苦笑いだった。

その様子を心配そうに見つめているサシャを複雑そうな顔で見つめるジャンだ。

ジャン「コニー。修学旅行の時、何か奢ってやろうか?」

コニー「ええ? いいのか?」

ジャン「言っただろ? 落ち着いたらって。アイスとか、向こうで食べる機会があれば奢ってやるよ」

コニー「なんか悪いな……本当にいいのか?」

ジャン「気持ちは分からんでもないからな。まだ暫くは気持ちの整理をする時間が必要だろ」

コニー「まあな。…………あの時は悪かったな。ジャン」

ジャン「ああ?」

コニー「オレ、ジャンがフラれてるところを見て、笑ってたしな。自分がその立場になってみて初めて、その気持ちが分かった。オレ、ひでー奴だったよ」

ジャン「あー……そうだったのか」

コニー「ああ。だからオレの方こそ、ジャンに何か奢るよ。お互いに交換しようぜ」

ジャン「まあ、別にいいけどな」

ヒッチ「………ん? え? コニーまさか、別れたの?」

と、其の時になって初めて話題に気づいたヒッチが言った。

コニー「元旦にフラれたんだよ。偶然、向こうに二股かけられていたの知ったんだ」

ヒッチ「ええええ……それはご愁傷様。でも勿体ないなあ。私だったら絶対、コニーを手放さないけどなあ」

コニー「え? なんで?」

ヒッチ「だってコニー優しいでしょ? 他校生同士で結構長く付き合ってたんでしょ? しかも野球部だし。忙しいでしょ? それでも時間作って彼女と付き合えるんだからいい男に決まってるじゃん」

コニー「あーでも、最近はちょっと、あんまり時間作って会ってなかったんだよ。その不満が爆発したみてえだ」

ヒッチ「放置したの、どれくらい?」

コニー「秋大会に入ったあたりだから、11月は殆ど会ってねえな」

ヒッチ「ええ……それってちょっと我儘過ぎない? 私、遠距離恋愛も経験あるけど、2か月くらい会えないのって普通だよ?」

エレン「そうなのか」

ヒッチ「言わなかったっけ? 最長で1年だったって。その相手が遠距離だったの。まあ、遠距離だったからこそ、1年続いたのかもだけど。でもその相手が、歴代で1番エッチ上手かったから我慢したよ?」

ジャン「お前は……」

ジャンが半眼になっている。無理もねえけど。

ヒッチ「おっと。ごめんごめん。だからまあ、一か月や二か月会えない程度に他の男に流れるのって、ちょっと変だね」

コニー「そうなのか?」

コニーが首を傾げていた。

オレも心境としては同じだった。

ヒッチ「いや、私にみたいにフラフラしている女子なら話は別だよ? でもそもそも、スタートの時点で他校生同士で付き合うなら、相当な「愛」がなければ始めようと思わないじゃん? 私は相手の女の子の事は全く知らないけど。私みたいに飛んでる子じゃなかったんでしょ?」

コニー「まあ、普通の女の子じゃねえのかなあ?」

ヒッチ「だとしたら、尚更「妙」だね。まさか…………いや、でもなあ」

と、何か引っかかるものを感じたようだった。

アニ「どういう事? 何か裏があるっていうの?」

ヒッチ「裏というか……いや、確証のない事を話すと違った場合が怖いから言わない方がいいかも」

コニー「そこまで言って引っ込めるなよ! 何かあるのか???」

ヒッチ「怒らないで聞いてね? あくまで私の「推察」だからね?」

と、前置きしてヒッチは言った。

ヒッチ「もしかしたら、本当の理由が「別」にあるのかも」

コニー「ん? どういう意味だ? オレが放置し過ぎたせいじゃねえのか?」

ヒッチ「ううーん。コニー側の「浮気」を疑ったとか? そういう噂を聞いたとか? リヴァイ先生とハンジ先生が若い頃に一度、修羅場ったシーンあったでしょ? あれみたいに、他に「本命」がいると勘違いしたとか……?」

コニー「本命? んな馬鹿な。オレ、彼女が本命だったぞ」

ヒッチ「だから「勘違いしたか」だよ。そういう情報を誰かから「意図的」に情報操作されて、気持ちを揺さぶられて……コニーにダメージを与えたいと思った「誰か」がいるとか。コニー、野球部じゃん? 小学館高校の生徒に恨まれるような事、した覚えない?」

コニー「そりゃあ、去年の県予選で小学館高校を破って優勝した訳だから……………まさか」

そこでコニーは思いつく事があったようだ。

コニー「まさか、試合に負けた「腹いせ」でオレの彼女を奪ってやろう、みたいな話か? それって」

ヒッチ「確証はないけど。でも、可能性はあるかも?」

コニー「マジかよ。可能性、あるんだとしたら、絶対許せねえ………!!!」

もしそうだとしたらオレも許せねえな。それは。

それはつまりコニーの元彼女を「利用」した「嫌がらせ」って事になる。

サシャ「で、でも……証拠は何処にもないんですよね?」

ヒッチ「だから、あくまで「推察」って言ったでしょ? そこんとこの裏付け捜査、したいんだったら……まあ、協力してあげなくもないけど」

コニー「……………」

ヒッチ「分かんないけどね。真実は。本当にコニーの「放置」が原因だったのかもしれないし。でも、そういう「恋愛事」を利用した「復讐」って割とある話だからさ。気をつけた方がいいよ。私自身は流石にそういうの経験ないけどさ。結構、見聞きはしてきているからさ」

すげえな。ヒッチより更に「上」のビッチが世の中には存在するらしい。

そういう人間とは関わらないのが1番だとは思うが。

ユミル「そういう話なら、もしかしたら元彼女の方は「サシャ」の存在を「勘違い」した可能性あるかもな」

サシャ「え?!」

其の時、ユミルがいきなり口を挟んだのでサシャが驚いた。

サシャ「な、何で私ですか?! あり得るとすれば野球部のマネージャーの方じゃないんですか???」

クリスタ「ううーん。いや、私は「サシャ」も十分あり得ると思う。だってサシャ、甲子園に応援に行ったでしょ。あの時、元彼女さんとも会ったじゃない」

サシャ「ええ……会いましたけど。でも、コニーの元彼女さんと会うのは私、初めてじゃないですよ? コニーとは中学が同じですし、元彼女さんの事は私も昔から知っていますし」

ユミル「いや、まあそうだけどさ。あの時、サシャの方が元彼女より先にコニーに会っただろ? 偶然とはいえ。その時の空気、正直微妙な感じだった気がするんだが」

コニー「…………………そうか。だったらあいつ、オレとサシャの事を勘違いした可能性もあるのか」

サシャ「ええええ?! それ、困りますよ! 誤解です! 誤解は解いた方が」

コニー「いや、今更だ。今言ってもしょうがねえよ。もう別れたんだし。誤解が解けたとしても、もう元には戻れねえよ」

と、コニーががっくりしていた。

コニー「そっか。なんかもう、どうしようもねえな。元彼女の事は忘れる努力をする。あんまりゴチャゴチャ考えたら、野球の方がおざなりになっちまうしな」

ジャン「だろうな。でもあんまりオーバーワークはするなよ。コニー。怪我したら元も子もないぞ」

コニー「その辺はピクシス監督にも厳しく言われたよ。練習に逃げるなって。練習メニューは逆に減らされた。こういうのは「時間」が「自然」に解決してくれるって。そう言っていたよ」

サシャ「何だか申し訳ないです……」

今度はサシャが落ち込んでいた。

コニー「気にするな。勘違いした方も悪いだろ。オレ、別にリヴァイ先生みたいに「否定しない」行動なんかしてねえし。サシャとはちゃんと「友達」だってずっと言ってきたし。もうあいつの事はいいんだよ」

と、コニーはサシャを責めなかった。

こういうところが本当に「優しい」よな。コニーは。

仲間思いっていうのかな。リヴァイ先生程の極端な物じゃねえけど。

コニーが「モテる」のはオレも頷けるぜ。

サシャ「…………」

でもサシャ自身は余計に落ち込んでいるようだ。真実が分からないから余計にそう思うんだろう。

ヒッチ「大丈夫だって。コニーはモテるから新しい彼女、すぐ作ればいいじゃん。何なら立候補してあげようか?」

コニー「いや、流石にヒッチはオレ、無理。お前、ビッチ過ぎるだろ」

ヒッチ「あはは~フラれちゃったwwwだったら私の友達、紹介しようか?」

コニー「似たような女紹介されそうでこえええよ! 遠慮する!!」

と、コニーは笑っていたけれど。

その様子をジャンは複雑そうに見つめていた。

カラ元気なのが分かるからだろうか。ジャンはコニーの気持ちも分かるし、サシャの気持ちも分かるのかもしれない。

今の時点ではサシャの中に「2人の男性」がいる事に、サシャ自身、気づいていないようだけど。

いつ、「着火」するかなんてわかったもんじゃない。

リヴァイ先生とハンジ先生の劇の例があるから余計にそう思うんだろうな。

ヒッチ「ああそう? じゃあしょうがないね。まあ、そのうち新しい彼女出来るって」

コニー「ピクシス監督にも同じ事を言われたよ。オレ自身はまあ、その……彼女と付き合っている間に他の女にも告白された事もねえ訳じゃねえけど」

アニ「そうだったの?」

コニー「まあ、甲子園出場したくらいだし。野球部は活躍と比例してモテていく法則があるからな」

ライナー「うぐ……ではもっと早く野球部に入部してれば、俺もモテていたかもしれないのか」

と、其の時、外野でそっと様子を見ていたライナーが言った。

コニー「だから早く野球部来いって言ったんだよ!!! オレ、何回勧誘かけたと思ってんだよライナー!!」

ライナー「すまなかった。いや、あの頃は俺も弓道部に興味があって……」

クリスタの間違いだろ?

コニー「まあいいけどな。ライナーとベルトルト入ったおかげで、うちの野球部の攻撃の幅も広がったし。ライナーが正捕手に上がってからはキュクロのストレートも急速が上がったし。150キロ超えたからな」

ジャン「マジか! え……ちょっと待て! ライナーが正捕手って、フランツはどうなったんだ?」

コニー「ああ。フランツは補欠に下がった。準レギュラーみたいな感じかな。でも、ライナーはサブポジで「ショート」もやってるから、ポジションチェンジする時はフランツがキャッチャーやるけど」

エレン「………それが決まったのって、もしかして秋頃か?」

コニー「そうだけど。何で?」

エレン「いや……何でもねえ」

そうか。フランツがサボっていたのはそのせいだったのか。

ミカサも思い出しているようだ。フランツとハンナがデートしていた時の事を。

コニー「そういう訳で、今の打順はオレが3番でライナーが4番でベルトルトが5番でキュクロが6番で、クリーンナップが充実してきたから結構、打撃力もあるんだぜ。おまけにベルトルトが「投手」もやり始めたから、キュクロだけに負担をかけずに済んでいるのも大きい。秋大会には調整は間に合わなかったけど。2年次は去年よりいいところまで行けるんじゃねえかなって思ってる」

アニ「え……待って。ベルトルト、投手始めたの?!」

と、其の時、ぶったまげたのはアニだった。

ベルトルト「う、うん……実はそうなんだ」

アニ「待ってよ。ベルトルトに投手って、酷過ぎない? こんなに気弱で繊細な奴なのに」

コニー「繊細だからこそ、いいんだよ。ベルトルトにボール投げさせてみたらすげえコントロールが良かったんだ。急速も悪くねえし。中継ぎとしては優秀なんだぜ? 何よりライナーとのバッテリーがすげえうまいし。セカンドもやってるけど。ライナーと組ませたらうまくいくみたいだから監督がそう決めたんだよ」

エレン「へーなるほど。そういう事か」

ベルトルト自身が言っていたもんな。ライナーと組みたいって。

つまりバッテリーと二遊間を2人で受け持っているのか。

アニ「ほ、本当に大丈夫なの? 炎上しそうで怖いけど」

コニー「あーたまにあるけどな。でもその時はキュクロが交替してばしっと締めるから大丈夫だよ。ベルトルトもキュクロがいるから投げられるってのもあるよな」

ベルトルト「そうだね。僕一人だけだったらとてもじゃないけど投げられないよ」

ユミル「ベルトルさんが覚醒すればうちはもっと強くなれそうだけどな」

ベルトルト「うう……ごめん」

コニー「いやいや、十分貢献しているぜ? ベルトルトの球速140キロ超えているし。変化球もすぐ覚えたし。お手本のような投手だよな」

ベルトルト「まだカーブとスライダーしか投げられないよ」

コニー「2種類をすぐ覚えた時点ですげえって。それにストレートも加えたら3種だろ。野球初めてまだ1年経ってねえのにすげえよ。マジで」

と、何気にベルトルトも優秀らしい。

ジャン「すげえな。ベルトルト。もう変化球を覚えたのか」

ベルトルト「僕の場合はストレートを投げるより変化球の方が投げやすいのもあるけどね」

ジャン「いや、それでもオレもカーブとスライダーをちゃんと覚えるのには1年かかったぞ」

コニー「普通はそんくらいかかるからな。投げ方を覚えて、試合で使える「状態」まで持っていくのに」

ジャン「ああ。練習でただ「投げる」のと「試合で使える」のは別物だからな」

と、すっかり野球談議になってしまっている。

そろそろ時間かな。チャイムが鳴った。

クリスタ「あ、しゃべってたら終わっちゃったね。とりあえず、計画表出来たなら貰ってもいい?」

エレン「ああ。いいぜ。ほらよ」

と、ざっとした計画表をクリスタに渡して回収させた。

そして休み時間になった。皆それぞれの席に戻るけど。

サシャ「…………はあ」

サシャが深いため息をついていたのに気づいたのはきっと、オレだけじゃなかっただろう。

でも声をかける事はしなかった。今ここで突いたら余計にいろいろ拗れそうな気がしたからだ。

サシャ「………食欲がないなんて、いつぶりですかね」

と、いう独り言をいいながら、サシャは教室を1人で出て行ってしまった。

その様子を見守りながらミカサも言った。

ミカサ「………………追いかけた方がいいのだろうか?」

エレン「分かんねえ。でも追いかけたいならオレは止めねえよ」

ミカサ「………やめておく。まだその必要はないと思う」

エレン「そっか」

ミカサ「うん。サシャは冷静に「自分」と「相談」するべき「時期」だと思う。その上で、必要になれば手助けしてあげたい」

エレン「そうだな。女のミカサの方が親身になれるだろうしな」

ミカサ「多分。私の手が必要な時は、そうする」

と言いながら、次の授業の準備に入るオレ達だったのだった。

ええっと。リヴァイ×ハンジ編の既視感を覚えながら、
ジャン×サシャとコニー×サシャが同時進行していくような展開になってきました。

今回はここまで。ではまたノシ










リヴァイ「あー3学期は定番のマラソンの授業になる。冬は走るのが定番だ」

と、2限目の体育でリヴァイ先生が新しい授業内容を発表した。

リヴァイ「男子は毎年20キロ、女子は10キロ走る。2月9日はマラソン大会を行うからそれに向けて少しずつ練習を始めていく。いきなり20キロ走ると普段、走っていない奴が肉離れを起こす可能性もあるので、徐々に走る距離を増やしていく方針にする。今日は軽く5キロ走って貰ってそのタイムを測っていく形にする」

という説明があった後、グラウンドをぐるぐる走る練習が始まった。

今回は男女混合の練習になった。珍しい。

普段は男女別れて体育の授業を行うんだが、マラソン大会だけは別のようだ。

女子はまず3キロ走らされるようだ。グラウンドの外周トラック1周で大体1キロなので、女子は3周、男子は5周走る。

皆、今日は最初のマラソンの授業なのでのんびり走っている。

徐々に体を慣らしていくのが目的なので本気で走っている奴はいない。

と、思った其の時、

コニー「あれ? 皆、おせーな! スピード出さねえの?」

と、先頭を走っていたコニーが後ろの方を気にした。

ジャン「しょっぱなからスピードは出さねえよ。今日は軽いランニングだろ」

コニー「えええ? のんびり走り過ぎじゃねえか?」

と、コニーは普段、野球部で走らされているからか息を全く切らしていない。

ジャン「コニー達は普段から走ってるからだろ。まあ、オレ達演劇部も走るのは走るけど」

エレン「オレ達の場合はタイムはあんまり気にして走らないからな」

ジャン「ああ。それより走りながら早口言葉を言ったり、軽い羞恥プレイをやらされるからな」

エレン「そうそう。劇の台詞をいいながら走ったりな」

コニー「あはは! それはそれでもおもしれーな!」

と、コニーがこっちを気にしながら走っていると、

リヴァイ「ビリだった奴には罰ゲームが待ってるぞ。トップには褒美をくれてやる」

と、タイムを測っていたリヴァイ先生がいきなり言い出したので男子全員「げ?!」って顔をした。

エレン「マジっすか?!」

ジャン「やべえ! 罰ゲームは受けたくねえな!」

コニー「オレはむしろトップを狙うぜ!」

と、コニーは先に行ってしまった。そういう事ならオレも負けていられない。

ミカサ「また物で釣って……いやらしい男」

と、其の時、ミカサが後ろから追いついてきた。

エレン「リヴァイ先生がいやらしいのは今に始まった事じゃねえだろ?」

ミカサ「そうだけど………何だか癪に障る」

と、言いつつミカサと同じ速度で走っていると、

アニ「女子は貰えないのかな」

と、現金なアニが話題に食いついた。

エレン「男子だけじゃねえの? 女子はリコ先生が担当しているし」

アニ「そう。残念……」

と、ちょっぴり残念そうにするアニだった。

アルミン「ううう……罰ゲームは嫌だなあ」

1周遅れで追いついたアルミンが愚痴っていた。

アルミン、足が遅いもんな。クラスでも後ろから数えた方が早い。

エレン「アルミン! 頑張れ!」

後ろから追いついたオレはアルミンの背中に声をかけた。

アルミン「エレンに追いつかれた?! やばい!」

1周遅れに気づいたアルミンがスピードを上げたけど。やっぱり足が遅い。

ミカサ「アルミン。気持ちだけ焦ってもダメ。手足をゆっくり大きく振って」

アルミン「こう?」

ミカサ「そうそう。同じペースを続ける方が大事。焦ってはいけない」

アルミン「分かった。こうだね」

と、アルミンのペースが徐々にアップしていった。おお。流石ミカサだな。

エレン「長距離走は焦ったらダメだもんな。ペース崩れると戻すのに時間かかるし」

ミカサ「そうそう。罰ゲームが嫌ならこのペースでいけばきっと大丈夫」

エレン「ああ。アルミンより遅い奴、1人いるもんな」

ダズって言ったかな。あいつ、運動神経良くねえみたいだしな。

そんな感じでその日は軽い距離を休憩を挟んで何度か走った。

5キロ×3回走ったから、合計では15キロ走ったけど、間に5分休憩を挟んでいるから問題ねえな。

本番はぶっ続けで走る訳だからこれよりもっとしんどい筈だ。

20キロならハーフマラソンみたいなもんだからな。普段から時々走る癖をつけていて良かった。

普段から走っていない奴らは少々しんどそうな顔をしていたからだ。

リヴァイ「ふむ。トップはコニーだったな。よし、褒美をやろう」

と言いながらリヴァイ先生は怪しげな封筒をコニーに手渡したのだった。

コニー「中身何かな~おおお! バイキングのチケットっすか!」

リヴァイ「タダ券だ。肉を食って筋肉をたんまりつけるといい」

コニー「あざーっす!!!」

サシャ「う……いいなあ」

リコ「女子も実は用意しているぞ。こっちはケーキバイキングの方だが」

ざわ……

女子の方が「何で走り終わってからそれ言うんですかああ!」と抗議の声をあげた。

リコ「ん? 私はリヴァイ先生程、優しい教師ではないからな。ククク……マラソンの授業の初回特典だ。以後はご褒美つかないからな」

えええええ……

「真面目に走れば良かったー」という声が聞こえた。

リコ「女子はミカサだな。おめでとう。ケーキバイキングに行ってくるといい」

ミカサ「ありがとうございます」

ミカサがチケットを受け取って戻って来た。

リヴァイ「さて。罰ゲームはダズだな。お前には追加メニューだ。これをやろう」

と言って何だか怪しげな……リストバンドかな? を渡されたようだ。

リヴァイ「1キロの重りをつけたリストバンドだ。次の体育の授業の時もこれを手首につけて走って貰うぞ」

ダズ「ええええ……まるでDBの修行みたいじゃないですか」

リヴァイ「まあその通りだな。ちなみにこの「重り」は次回の「ビリ」にリレーしてく形にする。順位を上げたら重りから解放されるから頑張れ」

ダズ「とほほ……」

なるほど。そうやって運動が苦手な奴に無理やり「モチベーション」を与える訳だな。

リヴァイ「走るのは足の力より「腕の振り」の方が重要だからな。腕の振り方が雑になればなるほどリズムよく走れなくなる。だから家でも腕をしっかり上下に振る練習をしておけ」

ダズ「分かりました……」

リヴァイ「今日の授業は以上だ。次回も同じペースでやっていく予定だ。レベルを上げるのはもう少し先になるから安心しろ」

と言ってその日の授業は終わったのだった。

ミカサ「ケーキバイキングのペアチケットを貰ってしまった」

エレン「今度はミカサが貰ったのか。良かったな」

ミカサ「エレン、ケーキ好き?」

エレン「おう! 甘いもんは好きだぞ」

ミカサ「恥ずかしいとかは思わない?」

エレン「んにゃ全然。ミカサと一緒に行けるなら何処でもついていくさ」

ミカサ「………そう(ポッ)」

お? ミカサが赤くなった。よしよし。

いいデートの機会に恵まれてラッキーだな。

コニーの方もペアチケットなのかな? コニーは誰と行くのかな。

コニー「ペアチケットだな。誰誘おうかな~」

サシャ<●><●>

コニー「サシャ?! 目が怖ええよ! 一緒に行きたいのか?」

サシャ「バイキングなら何処でも誰とでも一緒に行きますよ(じゅるり)」

コニー「そっかーこれ、ペアチケットだから、まあいいか。サシャ一緒に行くか?」

サシャ「行きましょう! 是非!」

食欲の方はもう回復したみたいだな。良かった。サシャはやっぱりこうでないとな。

あ、でも、ジャンがすげえ微妙な顔しているな。今度は別の男と一緒に行くのかって顔している。

コニー「あーでも、待てよ。これ、期限が来週までだな。来週は修学旅行あるし、行けるのは11日~13日の間になっちまうな。だったら野球部の練習と被るからいけねえや」

サシャ「え? そうなんですか? 1回くらいさぼっちゃえばいいんじゃないんですか?」

コニー「いやー空気読めねえ奴になりたくねえからやめとくわ。こういうの、バレたら後が怖いし。サシャに譲るよ」

と、サシャはそのペアチケットをコニーから譲り受けてしまった。

サシャ「えええ? 本当にいいんですか?」

コニー「しょうがねえよ。まあ、修学旅行でもたんまり飯を食う気でいるし、いいよ。サシャが一緒に行きたいと思う奴と行って来れば?」

と、本当にコニーにチケットを譲り受けてサシャは「ありがとうございます!!!」とお礼を言っていた。

サシャ「えへへへ~明日はオフなので早速行ってきましょうかね~」

ジャン「………………」

サシャ「だ、誰と一緒に行きましょうかね~」

ジャン「………………………………」

ああもう! ジャン、自分から行けよ!! 明日は暇だって!

今、演劇部は繁忙期じゃねえから、スケジュールの調整は出来るだろ!!

イライラするな! もう! ジャン、ヘタレ返上しろよ!!!

サシャ「………………………」

サシャもサシャで誘えないのかよ!!! ああもう。

目線が合っても、お互いに話を切り出せないみたいだ。

サシャ「明日、誰か暇な人、いますかね~?」

独り言みたいにして言っている。ジャン、チャンスだぞ!!

中途半端ですが、ここまで。
もう眠いので限界です。次回またノシ

ジャン「……………」

ミカサ「サシャ、そのチケットのバイキング、場所は同じホテルだろうか?」

サシャ「あ、待って下さい。ああ……この間のホテルとは別のところみたいですが、そっちのチケットと同じホテルのようですね」

ミカサ「だったら一緒に行く? 同じホテルであるならその方がいいと思う」

サシャ「そうですね。だったらこの間と同じようにして行きますか?」

エレン「そうだな。ジャン、明日暇か?」

ジャン「ああ、まあ……明日は暇だけど」

やれやれ。結局またオレ達が助け船を出す事になった。

オレ、ピクシス先生がリヴァイ先生とハンジ先生を見守ってイライラしていた当時の気持ちを今、理解した。

ピクシス先生、本当に忍耐強く見守っていたんだな。その忍耐力に敬意を覚えるぜ。

そんな訳で2回目のグループデートだ。今回はオレとミカサはケーキオンリーになるけど。

11日の夜、以前のようにまた駅で待ち合わせしてホテルのバイキングへ一緒に行く事になった。

今回はアルミン達は尾行しないらしい。前回の拗れかかったアレを反省したそうだ。

まあオレも今のジャンには尾行は必要ないと思ってるしな。

今回のバイキングは普通のバイキングとケーキバイキングが合体しているので、ケーキオンリーのオレ達はケーキのみ食べる事になる。

今日のミカサは体調も普通なのでゆっくり食べられる。

小さくカットされたケーキを皿に盛って食べる。チーズケーキとかショートケーキとか。

サシャ「えへへ~修学旅行では抹茶系の甘味を征服したいですね」

と、サシャはサシャで小皿をつつきながら話した。

ジャン「そうなのか?」

サシャ「京都と言えば抹茶系です! もう凄いんですよ! どこのお店にもすぐ行けるように頭の中に店のリストをインプット済ですから! 通りかかった店、全部征服したいくらいですよ!」

ミカサ「和風スイーツの聖地とも言えるかもしれない」

サシャ「そうなんですよおお! 超楽しみですううう!」

と、テンションがあがりまくっているサシャだった。

そんなサシャの様子を、以前より柔らかい視線で見守っているジャンだった。

前は「げんなり」していたのにな。もう慣れたのかな。そんな感じだ。

サシャ「抹茶大福……抹茶ぜんざい……抹茶ロールケーキ……ぐふふふ」

ミカサ「みたらし団子も美味しそうだった」

サシャ「ですよねえ! マップルの案内に沢山書いてありましたよね!」

ミカサも甘味所を既にチェック済みのようだ。可愛いなあ。

何だろ。女子がスイーツで盛り上がっている様子って可愛いよな。

そういう「可愛い私」を演じているアレじゃないから余計にな。

サシャは「ガチ」でスイーツが好きだしミカサも好きだし。

サシャ「あーでも、一個だけ修学旅行では懸念があるんですよねー」

ミカサ「何?」

サシャ「例のコニーの元彼女の件ですよー。はあ。考えると憂鬱になりますー」

と、サシャが珍しく愚痴を零し出した。

サシャ「私、コニーとは本当に「友達」と思っているんですけどねえ。元彼女さん、コニーとは小学校から同じだったそうですし、私はコニーとは中学からですが、歴史で言えばコニーは元彼女との縁の方が長いんですよ」

エレン「へーそうだったのか」

サシャ「はい。だからコニー、本当は相当落ち込んでいると思うんですよ。表面上は元気にしていますけど。もし、私のせいで誤解が生じてそうなったのだとしたら、本当に辛いです………」

と、サシャが箸を1回止めて愚痴った。

ジャン「その、ヒッチの言っていた「腹いせ」で「元彼女」を奪った説っていうのは、可能性あるんかな」

エレン「ううーん。どうなんだろうな? ヒッチは裏付け捜査するなら協力してやらなくもないとか言っていたけど」

ミカサ「でも、それがもし「本当」にそうだった場合、コニーはどうなるだろうか?」

ジャン「…………真っ先にぶん殴りに行きそうで怖いな」

エレン「オレでも殴りそうだ。でも問題起こしたら甲子園に行けなくなるだろ」

ジャン「野球部はそういう「不祥事」を起こしたら致命的だからな…………まさか」

エレン「ん?」

ジャン「相手の本当の狙いって「そこ」じゃねえのか?」

エレン「え? つまりどういう事だよ」

ジャン「だから、元彼女を奪って「嫌がらせ」する事も目的だったのかもしれんが、そこからコニーを「挑発」して自分を殴らせるのが「最終的な目的」だとしたら、やばいぞ」

サシャ「え………それって、もしかして講談高校の出場そのものを潰す作戦って事ですか?!」

ジャン「いや、分かんねえけどな。確証のある話じゃねえし。でも、コニーには「真実」に近づけない方がいい気がする」

エレン「修学旅行先でうっかりコニーの「耳」に情報を入れないように注意してやった方がいいかもしれんな」

ジャン「ああ。ちょっとこれは裏付け捜査、した方がいいかもしれん。ヒッチに電話してみるか」

と、其の時、ジャンがヒッチにコンタクトを取った瞬間、サシャはぴくっと微妙な顔になった。

おおおーい。ジャン。それは「今」やらなくてもいいんじゃねえか?

とも思ったが止める事はやめておいた。

サシャは微妙な顔をしているが「嫉妬」は恋の起爆剤だしな。

ミカサもそれを察知して「やっぱり」という顔をしている。

ジャン「ヒッチか? 今、いいか? いや………コニーの元彼女の件何だけどさ。ちょっと心配になる事が出て来たから、裏付け捜査をやっぱりこっそりやって欲しいんだよ。ヒッチなら出来るよな? ああ。コニーには悟られないように頼む。ああ。お前の言う通りだよ。オレ達も「それ」を心配してんだ。もしそれが「真実」だとしたら、コニーがぶちキレかねないからな。頼むぞ。ええ? 今度デート?! それは却下だ! あー……分かった。貢げってか。そっちならいいけど。分かった。頼んだぞ」

と、言って電話を切った。

おいおい。今「貢げ」って言葉が聞こえたぞ。

ジャン「やれやれ。服買って♪とか言われちまったな」

サシャ「!」

おおおお? サシャの全身が毛が逆立っているような感じだ。

でも、言い出せないんだな。微妙な顔で堪えている。

サシャ。そこは「貢がないで」って素直に言った方がジャンが喜ぶんだけどな。

ジャン「まあいいか。適当に買ってやれば。コニーの件は修学旅行中、全員で注意深くしておこうぜ。うっかり小学館の生徒と接触して、コニーがもし「万が一」暴れたら、問題になるからな」

サシャ「そ、そうですね。コニーの為にも、そうしましょう」

と、サシャは自分の気持ちを押し殺したようだ。

ミカサ「男の嫉妬はとても怖い」

と、其の時、ミカサがぼそりと言った。

エレン「ん? どういう意味だ?」

ミカサ「恐らくその相手の男は「コニー」の「才能」にとても嫉妬しているんだと思う。野球部として活躍しているコニーを何としてもで「引きずり降ろしたい」と思っているのかもしれない」

エレン「そうだな。そうなんだろうな。きっと」

ミカサ「私も中学時代、自分の「学力」を男子に嫉妬されて絡まれて大変だった事もある」

ジャン「え? 何でだよ。頭いい女はいいじゃねえか」

エレン「オレもそう思うけどな。嫉妬されたのか」

ミカサ「(こくり)男より頭がいいのが許せない。みたいな感じで言いがかりをつけられたり……」

サシャ「それは大変でしたねー」

ミカサ「男の人は女の人より嫉妬深いような気がする。特に「才能」に関しての「嫉妬」は女のソレとは比較にならない」

ジャン「気持ちは分からなくもねえけど」

エレン「まあ、なあ」

と、男同士で微妙な顔をするオレ達だった。

ミカサ「女の場合は「幸せ」そうだと嫉妬する。いい男と付き合っている女は嫉妬されたり。でも女同士は「頭の良さ」や「運動神経」等の嫉妬はあまりきかない。そういうのは男の人の方が「嫉妬」するんだと思う」

エレン「まあその通りだろうな。オレもそういう「部分」がねえ訳じゃねえし」

ジャン「ああ。そうだな。そういう意味じゃ、コニーは嫉妬されて当然の立場だ。甲子園に出場するわ、彼女とはラブラブ。遠距離恋愛っぽくても続いているって、順風満帆過ぎるもんな」

ミカサ「うん。だからと言って、それを他人が壊していい理由にはならない。コニーには絶対、暴れさせないようにしないと」

エレン「そうだな。野球部員が問題を起こしたら今までの努力が全部無駄になっちまう」

ジャン「ああ。絶対、皆でコニーを守ってやろうぜ」

と、其の時の4人のメンバーは飯とケーキを食べながら誓い合ったのだった。







13日。ヒッチから早速、裏付け捜査の結果が出たらしくその報告がきた。

昼休み。オレとミカサとアニとアルミンとジャンとサシャはヒッチの報告を聞いて青ざめる羽目になる。

ヒッチ「ビンゴだったよ。小学館の生徒の伝手を頼って情報を集めたら……コニーの元彼女の今の彼氏、あんまり評判のいい男じゃなかった」

ジャン「って事はやっぱり……」

ヒッチ「その元彼女が好きで奪ったとかの話じゃないっぽいね。しかもその男、どうも「誰か」に頼まれて元彼女に手出したみたいな話だったよ」

エレン「それって、奪った男が犯人じゃねえって事か?」

ヒッチ「巧妙だね。主犯格は別にいる。でも、そこまでは私も特定出来なかった。容疑者としてあげられるのは小学館高校の野球部全員だろうけど。あそこも野球には結構力を入れている学校だし。人数が多すぎて絞り込みは出来なかった」

ヒッチの情報網の凄さに感服した。たった2日程度でそこまで調べ上げたのか。

アニ「………許せない」

男関係では純粋なアニが怒りに燃えていた。

アニ「手出してきた男も、コニー恨んでいる男も許せない。そいつらが茶々入れなければコニーは今も幸せだった筈じゃないの」

ヒッチ「付き合い始めて9か月目に入るあたりだったんでしょ? 3の倍数は気をつけないと。別れやすいっていうしね」

ミカサ「そうなの?」

ヒッチ「最初の3週間。そして3か月。6か月。9か月。1年過ぎたら3年目が危ないってよく聞くね」

ミカサ「肝に銘じておく(キリッ)」

オレ達の場合は2月頃を特に気をつけないといけないな。丁度半年になるしな。

ヒッチ「そういう訳だから、私ももうちょっと調査を続けるけど。でもコニーにとってはあまり「いい情報」じゃなかったから、気をつけておいてね。もしコニーの耳に入ったら、多分、修羅場が勃発するよ」

ジャン「ああ。分かってる。ありがとうな。ヒッチ」

ヒッチ「ま、こういうのは得意中の得意だからね~ところでジャン。服買ってくれる約束、いつ果たしてくれる?」

ジャン「修学旅行が終わってからでいいだろ」

ヒッチ「修学旅行中でもいいんだけどな~」

ジャン「分かった。だったらテキトーなのを見つけてテキトーにやる。サイズはMでいいよな」

ジャン「Lでもいいよ。私、ゆったり系の服が好きだしね」

アニ「え? 何でジャンがヒッチの服を買う約束してるの?」

ジャン「コニーの裏付け捜査の件のお礼だよ。オレがヒッチに裏付け捜査を頼んだからな」

アニ「…………やっぱりジャンって最低」

ジャン「何でだよ?!」

アニ「別に」

アニがやっぱりジャンのいい加減なところにキレている。

サシャはジャンとヒッチのやり取りを微妙な表情で見守っている。

アルミンも同じ顔だ。アルミンは「ううーん」と唸って、

アルミン「ジャン、フラフラするのは止めようよ」

ジャン「はあ? オレ、フラフラしてねえよ」

アルミン「いや………まあ、いいや。うん」

アルミンはそれ以上言えないようだ。オレもあえてツッコミは入れない。

サシャは俯いて何も言えないようだ。こういうところ、やっぱりサシャは「臆病」なのかな。

サシャは「そういうのは止めて下さい」って言えない性格のようだ。

ヒッチ「あ、そうそう。私達の班も午前中、やっぱり別のところを回る事になったよ。コースを変更したんだ」

ジャン「映画村で1日遊ぶんじゃなかったのか?」

ヒッチ「ええっと、調べなおしたら清水寺に「縁結び」の神社があるって分かったから、それを知ったライナーが「予定変更するぞ」と言い出したwwww」

ミカサ「ああ。そう言えばそのようにマップルにも載っていた。見過ごしていたの?」

ヒッチ「みたいだね。そっちも清水寺には行くんでしょ? 午前中、よろしくね」

と、ウインクひとつ残してヒッチは去って行った。

エレン「清水寺の縁結びの件はオレ、知らなかったけど。まあいいか」

アニ「むしろグッジョブじゃない?」

ミカサ「グッジョブ。エレン」

エレン「適当に「名所」をあげただけだったんだが。かえって良かったな」

ミカサと縁結びの願掛けしに行こうかな。むふふ。

ジャン「…………」

サシャ「…………」

ジャンとサシャは互いに見合って何も言わない。

ああもう、こっちのカップルはリヴァイ先生とハンジ先生よりイライラするな!

どっちも先になかなか仕掛けない。平行線のまま行く気なのか?

アルミン「縁結びの神社か……僕もお参りしようかな」

アニ「アルミンも彼女欲しいの?」

アルミン「そりゃあこれだけ周りでわいわいやられるとね……」

アニ「ふーん」

アルミン「アニもお参りする?」

アニ「一応ね。金の稼げる安定した仕事を持つ男が見つかりますようにって願掛けしてくる」

アニはそこだけは絶対に譲らないらしい。

アルミンが将来「弁護士」になれれば十分「その相手」として相応しいと思うんだけどな。

アルミン「ははは……アニはその辺抜け目がないね」

アニ「お金の苦労をして育った訳だしね。うちのクソ親父のせいで自己破産寸前までいって大変だった時期もあるんだ。だから持ち直した時は本当に「死ぬかと思った」し、お金で苦労するのは二度と御免だと思ったの」

アルミン「そうだったんだ………」

アニ「博打は身を滅ぼすよ。だから賭け事をする男だけは絶対、ダメだね。私の場合は。それ以外は、多少不細工だろうが、体が細かろうがデブだろうが大目に見るよ。男は見た目じゃない。絶対「中身」だと思ってる」

アルミン「もしかして、アニのお父さん、結構イケメンだったりする?」

アニ「いや、その辺は普通だと思うけど。割と女にはモテるタイプかも。だから女関係でも面倒臭い事が多々あって……本当、ダメ親父だから困ったもんだよ」

アニの「浮気性の男が嫌い」な理由はやっぱり親父さんが関係しているようだ。

アニ「だから私は絶対、親父みたいな男とは結婚しない。いい男が見つからない場合は独身でもしょうがないとすら思ってる」

ミカサ「アニ、それは幾らなんでも大げさ……」

アニ「結婚して不幸にだけはなりたくないんだよ。リヴァイ先生とハンジ先生は幸せな結婚が出来たからいいけど。リヴァイ先生のアレも、今は収まっているから許してやれるんだろうけど。もし復活したら本当にあそこ手術して大学の研究用に保管してやってもいいと思うよ」

エレン「アニ、折角削った「本当の台詞」をここで言うなよ」

実はあの時の「台詞」には「あんたのあそこを大学の研究用に保管させてやろうか?」っていう言葉が入っていたそうだ。

それは流石に「あんまりだ」という事で舞台上ではカットになったけどな。

いや本当。そこをちょんぎる想像は男としては最もしたくない想像のひとつだからやめて欲しい。

アニ「ああ。ごめん。でも女から見たらそれくらいの事、してやりたいくらい浮気は許せないもんなんだよ」

サシャ「激しいですね~」

アニ「サシャだって浮気は許せないんじゃないの?」

サシャ「わ、私ですか? ど、どうでしょうかねえ~?」

と、曖昧に誤魔化すサシャだった。

サシャ「私はその辺の事は良く分かりません。恋愛をした事がないので……」

また誤魔化し笑いだ。ジャンが半眼でそれを見つめている。

サシャはまだ「認める」気はさらさらないらしい。

この辺の攻防に決着がつかない事にはジャンも一歩踏み出せないよな。

サシャ「でもそうですね。いつか……いつか将来は、彼氏が欲しいなあって気持ちがない訳ではないですよ」

ジャン「!」

サシャ「誰かと一緒に暮らしてみたい気持ちはあります。デートだって、してみたいですし。彼氏の奢りで」

ミカサ「そうね。以前、サシャは言っていた。「一緒に居て楽しい」「飽きない」「料理上手」な相手が見つかるといい」

サシャ「よく覚えていましたね!? 言った自分が忘れていましたよ! それを話したのは確か研修旅行の時でしたっけ?」

ミカサ「そう。研修旅行のお風呂でいろいろ理想を語り合った」

ミカサ達のお風呂の様子を盗み聞きしたのも今ではいい思い出だな。

アニ「そういう意味じゃ、サシャはコニーが割と理想の相手じゃないの?」

サシャ「ええ? そうですかね? ううーん」

サシャは首を傾げている。

サシャ「確かに一緒に居て楽しい相手ではあるんですが………コニーは本当にそういう意味でドキドキした事がないんですよね」

アニ「分かんないよ? 今はそうでも。ハンジ先生みたいに気が変わるかも?」

サシャ「や、やめて下さいよ変に煽るのは! あの劇はあくまで「ハンジ先生」がそうだったって話で、私にそのまま当てはまる訳ないじゃないですか!」

アニ「ハンジ先生もずっとそうやって抵抗していたのにねえ」

と、アニはジャンの事が気に食わないせいなのか、コニー推しになったようだ。

と、其の時、昼休みが終わるチャイムが鳴った。

話はここまでだ。それぞれ自分の席に戻った訳だけど………。

サシャ「ドキドキしたのは、コニーじゃないんですけどね」

と、独り言のような言葉が後ろから聞こえて「ん?」となった。

振り向くと、目が合ってしまった。サシャは慌てて「な、なんですか?」と誤魔化し笑いを浮かべた。

オレは「何でもねえよ」とあえて突っ込まないで前を向いた。

今の台詞を分析するなら「コニー以外の誰か」には「ドキドキ」した経験があるという事になる。

やれやれ。それを「恋」っていうんだけどな。土俵際に追いやられている癖にまだ粘るのか。

隣のジャンは今のサシャの声、聞こえていたのかな。

微妙な顔で前を見ている。こっちと目が合って「何だよ」と言われた。

エレン「いや、まだまだ前途多難だなって思ってな」

ジャン「ん? 別に。全然。この程度の障害は「障害」のうちに入らねえよ」

エレン「へー前向きだな。お前。以前と比べて変わったな」

ジャン「ミカサで耐性ついたからな。サシャが「彼氏」を「欲しい」と思っていると聞けただけでも上出来だ」

と、ニヤリと気持ち悪い笑みをこっそり浮かべているジャンだった。











そして14日。修学旅行当日になった。あっという間に当日が訪れた。

バスの中でクラスの人数を確認するキース先生だったが……

キース「あーまたコニーが来ていないのか?」

コニー「オレ、もう来てますよ?」

キース「何?! いつも遅刻魔のお前がこういう時は真面目だな!」

コニー「当然っす! 修学旅行は気合入っているんで!」

キース「では誰が遅刻しているんだ? 1人まだ来ていないぞ?」

遅れているのはなんとジャンだった。その直後、滑り込みセーフで駆けつける。

ジャン「遅れてすんません!!!!!」

汗だくで走って何とかバスに間に合った。1分遅刻だ。

キース「あーまあ、1分程度だから良しとする。急いで席につけ!!」

今回のバスの席順は出来る限り班のメンバーが近くなるように決まっていた。

オレ達は1班だから右側の前列に固まっていた。2班の余りの奴と隣同士で座る。

ジャンの隣はヒッチだった。ヒッチは「何で遅れてくるのよwww」と笑っていたが。

ジャン「すまん………昨日の仕事がちょっとな」

ヒッチ「ああ。漫画家のアシスタントしていたんだっけ?」

ジャン「そうだ。緊急でちょっと、夜呼び出されてな。昨日は1時間しか寝てねえ」

ヒッチ「えええええ……過酷だね。何で修学旅行の前日に呼び出されているのよ。断れば良かったのに」

ジャン「そういう訳にもいかねえよ。金を貰っている身分だし。あとヒッチにも奢る約束しているしな」

ヒッチ「おお? これは期待していていいのかな?」

ジャン「猫の全身ツナギでいいか? 寝間着とかで使うようなアレで」

ヒッチ「ちょっとwwwキャラものかよwwwウケるwwww別にいいけどさあ」

とか何とか楽しそうに話しているのが後ろの方で聞こえる。

オレはミカサと、その後ろにアニとアルミン、その後ろにはサシャとコニーが並んで座っていて、その後ろにジャンとヒッチが座っているんだが。

バスが動き出してからコニーが身を乗り出して後ろに話しかけていた。

コニー「なあなあ。アシスタントって、そんなに忙しいのか?」

ジャン「いや、昨日は特別だ。オレ、作画の手伝いしているから。頁が急遽、増量したから来てくれって頼まれたんだよ」

サシャ「では明日から先生、忙しいんでしょうか?」

ジャン「恐らくな。でもオレも今日から修学旅行だし。流石に修学旅行をサボる訳にはいかんだろ。だから昨日の夜の時点で出来る範囲だけでアシしてきたんだよ」

サシャ「私には声がかからなかったんですが……」

ジャン「電話入ったのが10時過ぎていたからな。女の子をそんな時間に出歩かせたくなかったんだろ。多分」

サシャ「ううう……呼んで貰えたら私も行ったんですけどねえ」

ジャン「いや、そこは流石に気遣うだろ。オレは男だからこういう時も動けるけど。女は夜出歩くもんじゃねえよ」

サシャ「男女不平等ですー(ズーン)」

コニー「いやーでも、気持ちは分かる。うちの野球部も女子マネージャーは8時までには絶対家に帰すからな。部員は9時まで練習やっているけど。女子は危ねえよ。夜は遅くならん方がいいって」

ヒッチ「ん~でも待って。深夜って確か、18歳未満は働いたらダメなんじゃなかったけ?」

ジャン「法律上はそうなるな。だから深夜に呼びだされる時はオフレコだ。経理上は時間帯を変えて記録するんだよ」

本当はやってはいけない事だけどな。真似しちゃダメだぞ。

ヒッチ「ええ……それって不当なやり方じゃない? 深夜に働けばもっと稼げるのに。ジャン、要領悪すぎない? 残業手当がついてないようなもんだよ?」

ジャン「あーその辺は頭では分かってはいるんだが、オレ、今のアルバイト、気に入っているから別にいい」

と、ジャンが言っている。

ジャン「今の仕事、クビにならん限りは続ける予定だし、18歳になったらちゃんと深夜手当の経理にしてくれる約束だしな。大学に行っても今のアルバイトは続ける。地元の大学を受けるつもりだしな」

ヒッチ「ジモティーになるんだ。へー。私、てっきり県外に出るかと思ってた」

ジャン「自宅から通える大学に行くつもりだよ。ヒッチは高校卒業したらすぐ働く予定だったっけ?」

ヒッチ「ん~そのつもりだったんだけど、親が「学力ある癖に何でわざわざ水商売になるの?!」ってキレかかっているから、どうしたもんかと。とりあえず、女子大に行って箔をつけておくのも悪くないかなあって、気持ちが揺れているんだよね」

コニー「女子大に行ける学力あるなら行った方がよくねえか?」

サシャ「私もそう思いますー」

ヒッチ「そう? やっぱりそうかな~? まあ女子大生やりながらバイトで水商売もやれなくはないし、そっちでもいいかなって気もしているけどね」

ジャン「そっちの方がいいんじゃねえか? だったら来年は大学進学組になるのか」

ヒッチ「ん~まあ、多分そうなるかな? とりあえず、栄養学を学べる女子大にでもいこうかと思うよ。私、料理好きだし。栄養士の資格でも一応、取っておこうかな」

ジャン「そのままそっちの方面で仕事に就いてもいけそうな気がするけどな。ヒッチは要領いいだろ」

ヒッチ「いや~でも金の稼ぎがね~水商売に比べたら稼げないからね~私、金使い荒いし」

と、ヒッチはまだまだ進路がフラフラしているようだ。

ヒッチ「コニーとサシャは就職組だっけ?」

サシャ「そうですね。そっちを希望しています」

コニー「オレもそっちだな。ドラフト会議に呼ばれるのが夢だけど」

ヒッチ「じゃあこうやって話せるのも1年のうちだけかもしれないね」

サシャ「え? クラス別れても遊べばいいじゃないですか」

ヒッチ「うーん。どうだろ? クラス別れたら授業の進度も変わってくるし。遊ぶ時間がなくなるかもしれないよ」

ジャン「大学進学組と就職組では時間割が変わってくる。オレも受験体制に入ったら流石にバイトの頻度は一時的に落とすよ」

サシャ「あ………そうなんですか」

ジャン「当たり前だろ。3年になったら進路決まるまではお休みさせて貰うつもりだ。先生にはもうその話は先に通してあるしな。だからこそ、今のうちは無茶な呼び出しにも対応しているんだよ」

と、ジャンは計算高く考えているようだ。

サシャ「そ、そうだったんですか………」

サシャの声が急に萎んでいくのが分かった。

サシャ、その気持ちの正体にそろそろ気づいてもいいんじゃねえか?

別れが近づいている事にサシャもようやく気付いたようだ。

ジャンはジャンの人生があるし、サシャにはサシャの人生がある。

曖昧な関係のままでいたら、いつかは離れ離れになる。

オレとミカサみたいにお互いの気持ちを「確認」しねえと。2人の未来はねえぞ。

ジャン「あー眠い。今頃になって眠くなってきた。バスの移動中、眠ってもいいかな」

ヒッチ「待ってよ。移動って言っても30分もないよ? 寝るんだったら新幹線の中で寝なよ」

ジャン「あー30分もあるなら十分だ。寝かせてくれ……」

ヒッチ「マジかwwwウケるwwwwジャンが芸能人みたいになってるwww」

ジャン「ZZZZ………」

ヒッチ「本当に寝入ったね。こりゃ起こすの可哀想だね(小声)」

サシャ「ですね……(小声)」

と言って後は後ろの席が静かになったけど………。

ヒッチの隣で眠れるのか。それを考えた時、オレはちょっと思った。

あいつ、サシャの事は好きなんだろうけど。

ヒッチはヒッチで結構、気に入っているんじゃねえのかな。

ミカサ「…………ジャン、やっぱりまたフラフラしているように思うのだけど(小声)」

エレン「ううーん。ヒッチの事は「嫌いじゃない」んだろうけどな(小声)」

ミカサ「あれさえなければ、いいのに(小声)」

エレン「それは言うな。しょうがねえよ。ジャンだからな(小声)」

ミカサ「はー(小声)」

と、ミカサが呆れている。無理もねえけど。

今頃、ジャンは夢の中だろう。30分でも眠れるあいつの器用なところはすげえけど。

そんな訳で駅に移動して新幹線で移動だ。

その移動途中で、他の学校の生徒達とも遭遇した。

再春館高校とかベネッセ高校の制服も見かけた。他県の高校も今の時期に修学旅行をやるみたいだ。

そして小学館高校の制服もあった。青学ランに青いセーラー服だ。ラインが赤色でリボンが黄色の可愛い制服だ。

列車の席のレーンは別だったけど。一瞬だけ小学館の生徒とすれ違ってコニーが微妙な表情になったのを見かけてオレ達は警戒を強めた。

新幹線の中で何かあるって事はないだろうが、それでも警戒するに越したことはない。

ジャンはバスの中で寝て、新幹線の中でもやっぱり寝ていた。

座ったまま眠れる特技を身につけたようだ。すげえな。いびき掻いて寝てやがる。

今回はサシャが隣に座った。疲れているジャンを横目で見ながら心配そうに見つめている。

コニー「新幹線の中でトランプでもやろうかと思ったけど、ジャン寝てるしなあ」

ライナー「ん? ではこっちの班と合同でやるか?」

コニー「ジャン起きねえかな?」

ユミル「静かにやればいいんじゃねえか?」

コニー「いやー無理だろ。オレ、絶対叫んだりはしゃいだりする自信しかねえ」

エレン「だったらトランプは諦めようぜ」

コニー「でも折角の移動なのになあ。ジャン、勿体ねえな」

ミカサ「起きたら起きた時でいいのでは?」

アニ「しっかり寝ているし、多少騒いでも起きない気がするけど」

コニー「かなあ? じゃあちょっとだけ遊ぶか?」

という訳で、出来るだけ静かに気を遣いながら2班と合同でババ抜きや切札をしたりした。

一応、ジャンに気を遣いながら皆で遊んだ。

今回はマルコだけ欠席だけどな。マルコはマルコで3班の連中と仲良くやっているようだ。マルコは人当たりがいいから割と誰とでも打ち解けられる。何より彼女が出来たばっかりだしな。嬉しそうに談笑しているようだ。

ミカサ「あう………」

ミカサがババを引いたようだ。ミカサは運が絡むゲームはあまり得意じゃねえんだよな。

切り札とか頭を使うのは得意だけどな。運ゲーになると途端に弱くなる。

そんな感じで皆と遊んでいたらあっという間に駅に着いた。

ジャンを起こしてやると、やっと頭が動き出したのか目が開いた。

ジャン「あー良く寝た。京都に着いたのか」

コニー「ジャン、全然起きなかったなー。オレ達、結構トランプで遊んでたんだけどな」

エレン「だな。たまにはしゃいでいたけど、起きなかったな」

ジャン「そうだったのか? 全然気づかなかったぜ」

サシャ「勿体ないですねー。皆と遊んで楽しかったのに」

ジャン「あーまあ、それはもうしょうがねえよ。夜は逆に目覚めていそうだからその時に遊ばせてくれ」

という訳で宿に移動だ。古風ではあるが大きな旅館に皆で移動したら……。

コニー「…………」

コニーが真っ先に微妙な顔になった。オレも同じ顔になってしまった。

まさか、旅館の宿泊先も小学館高校と被るとは思わなかった。

オレ達講談高校は3階で、小学館高校は2階のフロアを独占しているようだ。

つまり下の階に降りる時はどうしても、小学館の生徒達とすれ違う可能性がある訳だ。

部屋は301号室だった。女子は302号室だ。和風の大部屋で男女に別れて寝泊まりする予定だが。

荷物を旅館に置いてからオレはコニーに聞こえないように他のメンバーに言った。

エレン「コニーを絶対、この旅館に泊まっている間は1人にするなよ。誰かが1人、傍についていてやれ」

サシャ「了解です!」

ジャン「ああ。勿論だ」

アニ「うん。下手な接触をさせないように注意するよ」

ミカサ「了解した」

アルミン「怪しい人物を見つけたら皆にも情報を回すね」

と、他のメンバーでコニーを守る約束をした。

被るのは恐らくこの「京都」の日程だけだと思うしな。

ここさえ乗り切ればきっと大丈夫だ。そう思ってオレ達は一致団結した。

昼食を取って午後は集団でコース見学だ。

定番の金閣寺からスタートだ。観光客のピークは秋頃になるらしいが、冬は修学旅行生が訪れる事が多いそうだから、それなりに人は多かった。

コニーが小学館の女子生徒の制服を見かける度に微妙な顔になっているのが分かる。

やっぱりまだ「完全」には吹っ切れてはいないんだろうな。

小学生の頃から縁のあった女の子とやっと付き合って、9か月で別れるなんて誰も予想してなかったしな。

皆でぞろぞろ金閣寺の中を歩いて移動する。案内の方の説明を聞きながら見学をする。

案内人『正式な寺号は「鹿苑寺(ろくおんじ)と言います。もとは公家の西園寺家の山荘。室町幕府3代将軍・足利義満が譲り受け、さらに手を加えて豪勢で個性的な山荘に造り上げました……』

という案内人の説明を聞きながら金閣寺を皆で見学していく。

そして案内が終わるとそこでクラスごとの記念撮影会になった。

卒業アルバムの記念用に撮影するそうだ。全員が集まってカメラマンに向かって笑顔を向ける。

背の小さい奴は前列だ。ライナーやベルトルトは後ろの方で立っている。

オレはさり気なくミカサの隣をキープして写真に写った。ジャンはオレの後ろの列に立った。その隣にはサシャがいる。サシャはちょっとびっくりしていたが、ジャンが「こっち来いよ」と呼んでいたので素直に従ったようだ。

そして「龍安寺」「仁和寺」も問題なく見学をこなして夜の7時には宿に戻る事になった。

結構、あちこち歩き回った気がする。個人的には「仁和寺」が一番格好良かったな。

寺の雰囲気とかが重厚感があって良かった。すげえ落ち着く寺だったんだよな。

夜の7時半には夕食を取って、夜の8時から入浴開始だった。

夕食は京都らしい献立が出た。湯葉とか豆腐とか。天ぷらとか。上品なおかずが出て来たんだ。

小鉢に分けられた料理が沢山出て来て、すごく「まめまめしい」料理だと思った。

味は薄味だったけど、上品な味わいだと思った。本当はもうちょっと量を食べたいくらいだった。

料理を残さず全部食べると風呂の準備に入った。

オレ達は班ごとに時間帯が決まっているので早めに行動を起こす。

1班と2班と3班が合同で同じ時間帯に入る。後半は4班と5班が入る。

入浴時間は1時間ずつだ。オレ達の班は8時から9時までに入らないといけない。残りの班は9時から10時までだ。

夜の11時には消灯だ。朝は7時が起床予定時刻となっている。

風呂の中でコニーが疲れた表情を見せていた。やっぱり精神的に辛かったんだろうな。

コニー「……………」

いつもはこういう時は真っ先に「元気」で周りに話しかけるコニーが黙り込んでいる。

その空気を察して皆もあまり口を開かない。でもそんな重い空気を打ち破る奴がいた。

ナック「なあジャン、お前たちの班は明日どこから見て回るんだ?」

3班のメンバーのナックだ。こいつはたまにジャンとしゃべっているので、仲は悪くないんだろうな。

ジャン「ああ……清水寺からだな。その後は二条城に行って、午後から映画村の予定だけど」

ナック「やっぱり皆、清水寺には行くんだな。うちの班も行く事になったぜ」

ジャン「結局3班とも清水寺は被ったのか」

ナック「午後は嵐山方面に行くけどな。パワースポットを拝みに行く事になった」

ジャン「へーパワースポットがあるのか」

ナック「野宮神社ってところもにも縁結びのご利益があるらしいぜ? 清水寺だけじゃねえみたいだ。あと嵐山方面にはスイーツ関連の店も結構あるみたいだし、皆で食べ歩く予定だな」

エレン「へー嵐山方面にはそういう店があるのか」

ナック「嵐山だけじゃねえけどな。京都にはあちこち和風の甘味所があるから、女子は今からウキウキしているんじゃねえかな」

アルミン「僕も個人的にはウキウキしているけどね」

エレン「アルミン、甘いの好きだもんな」

アルミン「まあね」

と、明日の事で話しているけど、コニーは憂鬱な顔でいる。

もしも元彼女と今も縁が続いていたら途中でこっそり抜け出して、彼女と一緒に甘い物とか食べられたんだろうけどな。

そういう行動を取ったとしても、オレ達はコニーを責めなかったと思う。

というか、多分、今回の修学旅行で似たような事をする奴はちらほらいるんじゃねえかな。多分。

エレン「オレ達の班は二条城の周辺で昼飯を食うつもりでいるけどな」

ナック「だったら京都駅周辺まで降りた方がいろいろ店も多いぜ? 土産も買えるし、昼はそっちで食べた方がいいと思うけど」

エレン「そうなのか。分かった。じゃあ女子とも話してみる」

と、そんな感じで適当に話しながら風呂に入っていたら………

小学館高校の生徒と思われる奴らが入って来た。

その気配を感じてすぐコニーは風呂から上がった。あんまり顔を合わせたくないみたいだな。

同じ野球部の奴らみたいだ。丸坊主の奴らが団体で入って来たので気配を感じてコニーは先に上がって行った。

その視線の交錯の中、1人だけ異様に鋭い視線でコニーを見つめている男がいた。

ジャン「あいつ……どこかで見覚えがあるな」

エレン「ああ。はっきりとは思い出せないが」

ジャン「決勝大会に出ていた奴かな。ううーん。記憶が曖昧なのがなあ」

エレン「アルミンだったら覚えているかな」

アルミン「え? 何の話?」

エレン「いや、今風呂に入って来た坊主の団体だけど、多分小学館高校の生徒だと思うんだが、あいつら、決勝大会に出てた奴らだったかなって」

アルミン「あーどうだろう? 僕も流石にそこまでは覚えてないよ」

エレン「そっか……」

アルミン「でも、コニーが先に出て行ったって事はそういう事なんじゃないのかな?」

ジャン「かもな」

と、微妙な気持ちになりながらオレ達もコニーより少し遅れて風呂から上がる事にした。

そして男子の部屋に戻り、風呂から全員上がると、早速皆で適当な男子会が始まってしまった。

まずつるし上げられたのは……オレだった。

サムエル「さてと、エレン。暴露して貰おうか」

エレン「な、何をだよ……」

サムエル「惚けるなよ。彼女持ちは全員、いろいろ吐かせるからなこの野郎!!!」

トーマス「ご指南、お願いします」

トム「お願いします」

ミリウス「お願いします」

ライナー「よろしく頼むぞ」

ベルトルト「実はちょっと聞きたいかも……」

ライナーとベルトルトもかよ! つか、男子の殆どがニヤニヤしやがって!!!

エレン「えっと……何を聞きたいんだよ」

まずいな、この空気。要らん事まで根掘り葉掘り問い詰められそうだ。

サムエル「まずはアレだな。もうヤッたのか、まだなのか。そこんところを確認したい」

エレン「ぶふー!」

いきなりそこからかよ!!! 

アルミン「もう付き合い始めて5か月目あたりだよね。そろそろ手出したんじゃない?」

アルミンまでゲスい顔して聞いてくる。全く悪ノリしやがって…。

エレン「ノーコメントだ。その件に関しては人に話したくねえ」

サムエル「って事は、ヤッたんだな。その顔はヤッたな?」

エレン「や………やってねえよ」

嘘をつく事にした。なんかこういうのって人に話していい事じゃねえと思うし。

ナック「即答じゃなかったな。これはヤッてるな。もうヤッたに違いねえ」

エレン「や……やってねえって言っているだろ?!」

サムエル「嘘だな。絶対、嘘だ。エレンは嘘をつく時に、鼻がひくつく癖がある」

エレン「?!」

え? マジか?! 思わず鼻を隠すと……。

アルミン「んな癖がある訳ないでしょ。エレン。墓穴掘ったね?」

エレン「のsdjsんdg;sg………!!!」

しまった!!!! 嵌められた!!! これでバレちまった!!!

オレは慌てて布団の中に隠れて逃げた。すると、サムエルとナックが2人がかりで布団を剥がそうとしてきやがった。

サムエル「え~れ~ん~? ヤッたんだろ? 童貞卒業おめでとう。その戦果の程を聞かせて貰おうか?」

ナック「どうだったんだ? ん? 参考までに聞かせて貰おうか? ああ?」

エレン「いやだー! 絶対、話したくねええええええ!!!」

ジャン「あーもう、その辺でやめておけよ。2人とも」

と、其の時、意外にもジャンの奴が止めに入ってくれた。

ジャン「エレンとミカサの場合、ヤッてねえ方がおかしいだろ。あんだけ毎日、人目も憚らずイチャイチャしているんだし」

ナック「いいのか? ジャン」

ジャン「オレはもうミカサにフラれたしな。いいんだよ。それより今は別の女の事の方が大事だから」

ナック「今は………もしかして、サシャの事か?」

ジャン「ああ。もうバレているのか。そうだけど?」

ナック「マジか……お前、タフだな。失恋したばっかりなのにもう次の女にいけるのか」

ジャン「むしろ失恋したからこそ、次に行けるんだよ。新しい恋のおかげで失恋の傷は完全に癒えたからな」

と、ジャンは嬉しそうに笑っている。

ジャン「オレの経験上、失恋に一番効く薬は「次の恋」だと思う。実際に経験してみて分かったが、失恋は決してオレにとっては「無駄」じゃなかった。ミカサにフラれた経験があるからこそ、次の恋に立ち向かう勇気が持てたと思っているんだよ」

ナック「な、なんかジャンが急に大人っぽい顔つきになりやがった」

サムエル「ああ……何か先を越された気分だな」

ジャン「人の事をどういういう前にお前ら自身はどうなんだ? 好きな女、いねえの?」

サムエル「うぐ!?」

ナック「いや、まあ……気になる程度の女はいない訳じゃねえけど」

ジャン「ほほう? だったらここで吐いて貰おうか? 2人とも!」

と、今度はジャンがナックとサムエルを捕まえに行った。オレも加勢する。

ナック「ぎゃあああ!!! エレンまで加勢しやがって!!!」

エレン「さっきのお返しだ。さあさあ、吐いちまえよ。2人とも!!」

ミリウス「オレは知ってるけどね。2人の好きな女」

ナック「やめろおおおお!!!!」

サムエル「話すな!!! 馬鹿!!! ミリウス!! やめてくれ!!!」

とかいろいろ騒いでいたら、キース先生が不意打ちで部屋に訪れた。

キース「消灯10分前だ! 寝る準備をしてさっさと寝ろ!!! 騒がしいぞ!!」

エレン「すんませーん」

キース「くれぐれも消灯時間は守る様に。夜中に女子を部屋にこっそり連れ込んだら……明日の自由時間はないと思え」

と、一応、念押しして去って行った。

怖い怖い。確かに連れ込んだら罰則ものだけどな。

オレは便所に行く事にした。寝る前に一応な。

皆には「便所に行く」と言っておいて部屋を出た。

そして便所の付近でミカサが待っていた。

ミカサもミカサで顔が赤い。あーなんかコレ、吐かされたっぽいなあ。

ミカサ「エレン、御免なさい」

エレン「ん?」

ミカサ「ミーナに捕まった……エレンとヤッた事を成り行きで吐かされてしまった」

エレン「悪い。オレもサムエル達に捕まった。その、成り行きでバレたけど」

ミカサ「そうだったの? だったらお互い様なのね」

エレン「すまん………」

ミカサ「ううん。だったらいい。もう隠す必要はない」

エレン「………………ミカサ」

もう隠さなくていいのか。だったらいいのかな。

今、ここでキスしたいな。

吸い寄せられるように、顔を近づけると………

小学館高校男子1「あーしっかしあの女、大した事なかったなあ」

と、男子の声が聞こえて来た。

小学館高校男子2「ああ、ヒロとかいう女だろ? 期待していたより下手クソだったんだろ」

小学館高校男子1「まあな。あの講談高校の野球部のコニーとかいう奴の彼女だっていうから、手出したけどさ。コニーって野郎も大した趣味じゃねえな。あんな「普通」の女を彼女にしていたとは。あいつ、あれだけ甲子園で活躍するような男だぜ? もっと上の女を狙える筈なのに。勿体ねえよな」

小学館高校男子2「なんか噂では結構、モテる奴らしいよな。あれだけ打てるバッターだし、将来も有望株なんだろ?」

小学館高校男子1「ああ。オレだったらあの女程度に収まらないな。コニーの立場なら。まあ、オレも野球部の奴らに頼まれたから手出してみたけど……最近、ちょっと重いしさ。適当なところで手切ろうかなって思ってるんだよな」

小学館高校男子2「その方がいいかもしれねえな。重い女はあんまり深入りしねえ方がいいぞ」

小学館高校男子1「だよな。まあ、1か月程度遊んだら、バイバイしていい程度の女かな。個人的な感想を言えば」

と、イケメン風の男2人組が男児便所に近づきながらそういう話をしていた。

元旦ですれ違った時のあいつに間違いねえ。あの元彼女の隣にいた男だ。

ミカサの目が鋭くなっていた。オレは慌ててミカサを押さえた。

ここで問題を起こしたらまずい。

騒ぎを起こしてコニーに気づかれたらもっとまずい。

オレ達は奴ら2人には気づかれないようにそっと移動して、非常階段の方へ逃げた。

そしてあいつらが便所から出て廊下を歩いて去っていくところを見届けてから言った。

ミカサ「本当に碌な男じゃなかった」

エレン「ヒッチの情報が正しかったみてえだな」

ミカサ「許せない。なんとしででも天誅を……」

エレン「待て。この問題はコニーの問題だし、オレ達が首を突っ込んでいいのか……」

ミカサ「間接的でもいい。嫌がらせをしてやりたい」

エレン「オレもそれは同意だが、でもどうやって……」

ミカサ「皆で明日、考えよう。あいつらに復讐するプランを練るといい」

エレン「まあ、そういう話を考えさせたらアルミンとかいろいろ考えてくれそうだけど」

でもいいのかな。コニーのデリケートな問題だしな。

オレ達が勝手に首を突っ込んでいいのか。迷う。

オレ個人としてはそりゃあ、嫌がらせを仕返ししたい気持ちはあるけど。

でももしそのせいで、コニーに事がバレたらと思うとなあ。

オレはミカサに「ちゅ」という軽いキスだけして、その日は言った。

エレン「あんまり軽はずみな行動はしちゃダメだぞ。カッカする気持ちは分かるけどな。ちょっと一晩、置いてから考えようぜ」

ミカサ「う………うん」

という訳でミカサの頭をナデナデして気を鎮めてやった。

そして部屋に戻って寝る。修学旅行1日目に早速気になる事件が起きたけど。

とりあえずは棚上げして、オレは両目を閉じて眠る事にしたのだった。






修学旅行2日目。15日の自由行動では早速清水寺に向かう事になった。

皆、考える事は殆ど同じだったみたいで、5班中、4班がまずこの「清水寺」を選んだようだ。

「縁結び」目当てにこっちに来たようだ。皆、思い思いに願掛けをしている。

オレは当然、ミカサとずっと一緒に居られますように。って願った。

願わくば、リヴァイ先生とハンジ先生のように「結婚」って形で結ばれたい。

今はまだそこまでは出来る関係じゃねえけど。順調に交際を続けていけたらいつかは。

そう願いながら願掛けをしてきたんだけど。

ジャン「…………」

サシャ「…………」

ああああもう! こっちのカップルはまた睨み合ってやがる! 面倒くせえ!!

いつまで平行線でいる気だよ。つば競り合いじゃねえんだから。

サシャ「し、仕事運を高められるように祈願しましょうかね」

ジャン「ああ。オレは成績が上げられるように祈願しようかな」

おいいいいいい?! 何やってんだ?! お互いに嘘ついてどうすんだよ?!

イライラするぜ……ピクシス先生じゃねえけどさ。胃の滾りがこう……。

アルミン「あははは……エレン、ピクシス先生と同じ拳の振り方しているよ?」

エレン「すまん。ついつい。あいつら見ていると、ピクシス先生みたくなっちまう」

アルミン「気持ちは分からなくないけどね。でもよく見て? こっそり恋愛のお守り買ってるよ? お互いにバレないように」

エレン「本当だ……アホだなあいつら」

アルミン「だねえ。エレン達はもう買ったの?」

エレン「ああ。ミカサと御揃いで買ったぞ」

ミカサ「その辺は抜かりない(キリッ)」

アルミン「そうなんだ。僕も一応買ったけど。僕もいつか良縁に恵まれるといいなあ」

其の時、オレはふと気になってアルミンに聞いた。

エレン「アルミンは、アニと付き合いたいとは思わねえのか?」

アルミン「え? 何でそこでアニの名前が出るの?」

エレン「いやー結構、普段から仲良くしているだろ? アニとは」

アルミン「うーん。話は合うけどね。でも、アニの方がそういう意味で僕の事を見てないと思うよ?」

と、しれっと質問をかわすアルミンだった。

この返答例はリヴァイ先生も同じような事をやっていたよなあ。

アルミン「それにアニは好みの女の子じゃないし……それはアニも同じだと思うよ」

と、コニーの傍についているアニを横目に言うアルミンだった。

ミカサ「アルミンはクリスタの事をまだ諦めてないの?」

アルミン「うぐ………! そこに触れられるとは思わなかったな」

ミカサ「クリスタの事は諦めた方がいいと思う。その………」

アルミン「いや、その件については僕も薄々察しているので言わなくてもいいよ。ミカサ」

ミカサ「そう……」

アルミン「うん。見ていれば分かるよ。今もほら、ユミルと一緒にニコニコしているじゃないか」

ユミル達も清水寺に当然、来ている。

傍目には女子同士のじゃれあいに見えるだろうけど。

手の繋ぎ方が「恋人同士のアレ」だから、見る人が見れば分かると思う。

アルミン「僕のクリスタへの思いは、淡い恋だったのかな」

エレン「ん?」

アルミン「いや、残念な思いは当然あるんだけど。ジャンがミカサにフラれた時のようなしんどさはなかったんだ。諦めがつくっていうか……その程度の物だったのかなって、自分ではそう思っているよ」

エレン「そうか」

アルミン「うん。楽しかったけどね。だからクリスタの件はもういいんだ。それより今は新しい恋を探してみたいよ」

エレン「そっか」

そういう意味なら今はそっとしておこう。

コニーは恋愛祈願のお守りをアニと一緒に買っていた。

コニーは「新しい彼女が出来ますように!」と叫んでいる。

アニ「そうだよ。その意気だよ。コニー。あんたいい男なんだからすぐ新しい彼女出来るって」

コニー「おう! 今度こそ、彼女をもっと大事にするぜ!」

と言い合っている。

少しずつだけどコニーの表情に明るさが見えて来た気がする。

時間が解決するのを待つしかねえもんな。多分、こういうのは。

小学館高校男子1「講談高校の生徒だよね? ちょっといいかな?」

エレン「?!」

と、其の時、見覚えのある声が遠くから聞こえた。

クリスタをナンパしている男がいる。小学館高校の例のあいつだ。

ユミル「ああ?! ナンパならよそでやりな! クリスタはあんた程度の男が声をかけていい女じゃねえんだけど?!」

小学館高校男子1「いやいや、声かけているのは金髪の子じゃないよ。あんたの方だよ? 君、可愛いね。オレ、君みたいに気強そうなのがタイプなんだけど?」

ユミル「はあ?! 何寝言言ってるんだ?! 馬鹿じゃねえの?!」

小学館高校男子1「全然、本気。ねえ、今日はそっちも自由行動なんだろ? ちょっと抜け出して……」

その様子を見ていたクリスタが間に入った。

クリスタ「他校の女子をナンパするなんて最低。やめて下さい!」

小学館高校男子1「ああ? あんたみたいにガキ臭いのは好みじゃねえよ。やっぱりこう、すらっとした大人の女っぽい女の方が色気があっていいよな」

と、ユミルの髪を勝手に触ろうとしたから、クリスタがキレた。

金蹴りかまそうと膝蹴りをしようとしたけど、華麗にかわして「おっと」と逃げた。

小学館高校男子1「メルアドと番号だけでも渡しておくよ。じゃ、また後で」

と言ってその男は無理やりユミルに紙切れを渡して去って行った。

ユミルが鳥肌立っているようだ。その様子を見ていたオレ達は「大丈夫か?」と声をかけた。

ユミル「大丈夫じゃねえよ!!! なんなんだあいつ!!! 気持ち悪い!!!」

コニー「………………」

コニーの目の色がまずい。今の現場はコニーも目撃していた。

コニー「あいつ、ヒロの今の彼氏だよな。なんでヒロをほっぽいてナンパなんかしてやがるんだ……?」

ユミル「え? どういう事だ? コニー」

コニー「あいつ、オレの元彼女の今の彼氏なんだよ。何でユミルなんかに声かけて……」

クリスタ「ちょっと、コニー。ユミルなんかに、っていうのは失礼だよね」

コニー「だって、ユミルはブスだろ。あいつ、ブス専だったのか?」

と、言うとユミルがコニーにげんこつをかました。

コニー「いってー!?」

ユミル「私はブスな方だという自覚はあるが、お前に言われるとムカつく」

クリスタ「ユミルはブスじゃないよ! 美人だよ! 現に今、ナンパされたじゃない!!」

ユミル「いや、私もまさか人生初のナンパが、コニーの元彼女の今の彼氏からくらうとは思わなかったが……何か妙だな。一体、どういう事なんだ?」

コニー「オレにも良く分からねえよ。もしかして、ヒロは悪い男に引っかかっただけなのかな……」

しまったな。コニーには奴を近づけたくなかったのに。

まさか向こうから接触してくるとは思わなかった。どうするべきかな。これは。

事情を大体知っているオレ達の班は目線だけで会話した。

アルミンが左右に首を振った。知られてしまった以上は隠せないと判断した様だ。

アルミン「コニー。落ち着いて聞いて欲しい」

と、アルミンが代表してコニーに事情を話した。

アルミン「ヒッチに協力して調べて貰ったんだけど……コニーの元彼女さんの今の彼氏さんは、あまり評判のいい男じゃないみたいだよ」

コニー「そ、そうなのか?」

コニーがヒッチの方を向いて問い合わせる。するとヒッチが頷いて答えた。

ヒッチ「まあね。割とイケメンだし? あと結構ナンパな男で、今みたいに「大人っぽい女」が好みで良く自分から声かけるような男らしいよ」

コニー「待ってくれ。だとしたら、ヒロは真逆じゃねえか。あいつ、オレと身長も変わらないし、顔だって童顔で……」

ヒッチ「まあ、その通りだね。つまり「好み」だから手出した訳じゃないって事だよ」

コニー「…………」

ヒッチ「コニー。私の個人的な意見になるけどさ。寄りを戻したい気持ちがまだあるなら、私はイケると思うよ」

コニー「!」

ヒッチ「まあ1回裏切った女を許容出来るか否かはコニー次第だけどね」

コニー「ヒロは悪い男に引っかかっただけの可能性があるのか」

ヒッチ「そうだね。見てたでしょ? あいつ、碌な男じゃないよ。私が言うのもアレだけど」

コニー「…………………」

コニーは複雑そうに両目を伏せた。

コニー「でも、ヒロ自身の気持ちがもう、オレにはないんだぜ? 寄り戻すっつっても、どうやって……」

ミカサ「元彼女さんの目を覚まさせた方がいいと思う」

其の時、怒りに燃えたミカサが一歩前に出た。

ミカサ「ユミル。ユミルを餌にして、浮気現場を元彼女さんに目撃させたらどうだろうか?」

ユミル「ははーん。一芝居打つわけだな? なるほど」

クリスタ「だ、ダメだよ!! それでもしもの事が合ったらユミルが危険だよ!!!」

ユミル「私は別に一芝居をうっても構わんが……コニー次第だな。どうする?」

コニーは迷っているようだ。

真実を元彼女さんに伝えるべきなのか否か。

もしかしたら今も、元彼女さんは今の彼氏さんを信じ切っている可能性もある。

今が「幸せ」なのだとしたら、それをぶち壊していいのか。迷っているようだ。

コニー「やめておくよ。もうあいつとは関わらない方がいいと思う。あいつが悪い男に騙されているんだとしても、オレが口出す事じゃねえし」

ジャン「そうだな。オレもその方がいいと思う。というか、元彼女側にも自業自得の部分もあるしな」

ミカサ「でも……!」

ジャン「ミカサ。コニーがその気ねえんなら、オレ達は口出せねえよ」

ミカサ「ううう……」

アニ「後ろから殴りつけたい気分だけど」

ミカサ「同じく。タワーブリッジをかけてやりたい気分だけど」

ミカサまで筋肉マンの技を言うようになっちまったな。

気持ちは分からんでもないけどな。でも、コニーがそう言う以上、オレ達は何も出来ない。

サシャ「……………」

サシャは何も言えないようだった。複雑な顔で黙り込んでいる。

ライナー「ふむ。何だかややこしい事態になっているようだな」

ベルトルト「コニー、大丈夫?」

マルロ「面倒臭い事には関わらない方がいいぞ」

ダズ「うーん……」

と、ライナー達も反応に困っているようだ。

コニー「ああ。皆、空気悪くしてすまねえ。もうオレの事は放っておいていいからさ。もう考えないようにするし。いいんだ」

と、言ってコニーは無理やり自分の顔に笑顔を貼りつけたのだった。

そして午後からはライナー達の班とは分かれて、オレ達は二条城の方へ移動して、お昼は駅周辺で外食をした。

お土産も一緒についでに買った。ロッカーに預けて、次は映画村に移動したんだけど。

映画村でライナー達と合流したのはいいんだけど。

ちょっと油断した隙に、オレ達はコニーの姿を見失ってしまったんだ。

エレン「しまった! コニーは何処だ?!」

ジャン「え? あれ……あああああ?! あいつ、どこ行った?!」

サシャ「さ、さっきまで一緒に居たのに……?!」

ミカサ「衣装チェンジしている間に、何処かへ行ってしまったのだろうか?」

そうなんだ。団体で衣装チェンジしている待ち時間にコニーの姿が消えたんだ。

どうしよう。あいつを今、1人にしたらやばい気がする。携帯で連絡を入れてもコニーが出ない。

サシャ「もしかして、元彼女さんと連絡とったんじゃないんですかね」

ユミル「え?」

サシャ「コニーの性格を考えたら、無関係のユミルを巻き込みたくなかったのでは?」

アルミン「だったら、1人で話をつけに行ったって事?」

サシャ「あり得ますよ! 元彼女さんに信じて貰えるか分かりませんが、コニーならきっとそうします!」

ジャン「なんてこった…………修羅場が勃発するに決まっているのに」

エレン「急いでコニーを探すぞ! 絶対、あいつに間違いを犯させるな!」

オレ達全員、ライナーの班にも協力して貰って、映画村の中を走り回った。

オレは忍者の恰好をしていたから走り易くて助かった。ミカサもオレと御揃いの格好になったから、走り易くて助かった。

困ったのはサシャとかアニとかクリスタだった。町娘の恰好だったり、お姫様の恰好になっていたから、移動が大変だったんだ。

それでもオレ達はコニーを探しまくった。今のあいつを独りにしちゃいけねえ!!!

そして野生の嗅覚をもつサシャが一番早くコニーの姿を見つけた。

コニーは案の定、元彼女と今の彼氏と、3人で対峙して話し合っていたようだった。

コニーが叫んでいる。目の色が変わった。やばい。まずい!!!!

コニーが今の彼氏を殴りかかろうとした瞬間、サシャがコニーの足にスライディングをかまして、ジャンが上から覆い被さった。

オレとミカサも遅れてコニーに突撃して、ユミルやクリスタ、ライナー、ベルトルトも一斉にコニーの暴挙を止めた。

サシャ「早まったらダメです!!! コニー!!! 甲子園に出られなくなってもいいんですか?!」

コニー「!」

ジャン「そうだぞコニー! ここで暴力事件を起こしてみろ! 予選大会の出場の権利も剥奪されるだろ!! 不祥事は厳禁なんだからな!!!」

サシャとジャンの叫びがコニーの心に届いたのか、コニーは力を無くして項垂れた。

ヒロ「人の男を殴ろうとするなんて最低………もう連絡しないでって言ったのに」

エレン「!」

騙されているんだとしても、今の発言は許せなかった。

コニーがどれだけ心配しているのか、人の気もしらねえで…。

相手の男は困惑しているようだった。事態を把握出来ずに、そしてユミルと目が合って「げっ」って顔をしていた。

そこでユミルが言ったんだ。すげえ人の悪い笑みを浮かべて。

ユミル「あれれ~? そこに居るのはさっき私にナンパしてきた男じゃないですか? 人にメルアドと電話番号を渡してきた癖に、彼女いたんだ~? 最低な男だねえ♪」

ヒロ「え………?」

ユミル「証拠ならここにあるぜ~? ほら? この紙切れのアドレス、あんたの番号で間違いないんだろ~?」

と言ってわざと元彼女さんの方に確認をするユミルだった。

ヒロ「ど、どういう事なの………?」

小学館高校男子1「いや、その………それは、その……」

ヒロ「私の事、騙していたの?!」

小学館高校男子1「…………すまん。頼まれていたんだよ。ヒロに手出してくれって」

ヒロ「はあ?! 何それ?! 意味分かんない! 一体誰が……!」

ヒッチ「小学館高校の野球部員だね? 捕手の男でしょ?」

と、其の時、ヒッチがズバリ言った。

ヒッチ「去年の県大会決勝で、コニーが盗塁決めた時に捕手をやっていた男が犯人だよね? こっちはもう裏取ってるし。白を切っても無駄だよ? ふふん♪」

ヒッチが絶好調で脅している。こういう事にかけてはヒッチは一級品の腕を持っているようだ。

小学館高校男子1「ちっ………バレていたのか」

ヒロ「そんな……」

小学館高校男子1「そうだよ! オレは野球部員のそいつとダチだから、頼まれてコニーの彼女に手出したんだよ。逆恨みにも程があるとは思ったけどな。コニーさえ潰せば、次の大会ではきっと勝てるってあいつ、言い出して。もしコニーを精神的に潰すのに成功したら金出してやるって言ってきたから、つい……」

ヒロ「…………」

元彼女さんが顔面蒼白になっている。無理もねえけど。

コニーの目の中の「怒り」はまだ消えていなかった。当然だ。

オレだって本当はこの「クソ野郎」を殴ってやりたかった。

でもそんな事をしたらオレ達も「演劇部」に迷惑がかかるからな。

寸前で怒りを噛み殺した。全員、背負う物があるから。下手な真似は出来なかったんだ。

小学館高校男子1「バレちまったならもうしょうがねえか。ヒロ。もう別れようぜ」

ヒロ「え………」

小学館高校男子1「オレ、別にお前の事が好きで手出した訳じゃねえんだよ。というか、オレの好みの女じゃねえし。そっちの背の高い女の方が断然いいし」

ユミル「こっちからお断りだ。死ね。クソ野郎」

小学館高校男子1「やべえ。そういうの遠慮なく言える女、オレ、本当に好きなんだよね」

ユミル「変態かよ。近づくな。気色悪い」

小学館高校男子1「まあまあ、そう言わず」

クリスタがキレていた。それを後ろからダズが引き留めている。

誰かあいつを殴ってくれ。本当に。一発だけでイイから!!

そう考えていたら、サシャがゆらりと立ち上がって、その男の方へ近づいて、一発はり倒したんだ。

それはもう凄い破裂音だった。往復ビンタが炸裂して、男は地面に座り込む。

サシャ「ぬしゃなんばいよっとか………」

小学館高校男子1「は?」

サシャ「ふざくっともたいがいにせえよ!!!! あたは人の心ばなんとおもっとっとか!!!!」

な、何を言っているんだ? サシャ?

方言かな? 九州弁を更に崩した言い方で叫んでいるようだ。

サシャ「こぎゃん男は、ハンジ先生じゃなかばってん、手術した方がよか!!! 引っこ抜いて反省させないかん!!」

ジャン「サシャ!!! おさえろ!!! やり過ぎると退学になるぞ!!!」

サシャ「くやしかあああああ!!!!」

サシャを後ろから羽交い絞めして、暴れるサシャを必死に抑えるジャンだった。

その騒動に気づいて映画村のスタッフの人達が集まって来た。

流石にそこで男の方も反省して「すんません」と一応、形だけで謝った。

小学館高校男子1「いやいや、大丈夫ですよ。大した事ないんで。気にしないで下さい」

と、今起きた事件については不問にするようだ。

小学館高校男子1「女にぶたれるのは別に構わんよ。いい女なら猶更な。ま、男に殴られたらやり返すけど。今日のところは退散するし、もうヒロには手出さないし。これきりって事で」

ユミル「地獄に落ちて死ね」

小学館高校男子1「まあ、そう言わずに。じゃあオレはこの辺で」

と言ってその最低最悪の男は去って行った。

取り残された元彼女さんは呆然自失の状態で座り込んでいた。

誰も声をかけられない。コニーがようやく立ち上がって、元彼女さんに手を差し伸べた。

コニー「ヒロ………大丈夫か?」

ヒロ「ご、ごめんなさい……私、酷い事を………」

コニー「騙されたんだろ。だったらしょうがねえよ」

ヒロ「あの、コニー……私……その……」

コニー「…………ごめん」

でもその時、コニーは言ったんだ。

コニー「寄りを戻したい気持ちはあったけどさ。もう無理だ。オレ達も別れよう」

ヒロ「…………………」

コニー「っていうか、今回の件でオレ、痛感した。甲子園行きたいような男が彼女を作っちゃダメだって」

ヒロ「でも、今回の事は……私が悪いんだし」

コニー「彼女にかける時間も全て練習に費やすよ。オレ、本気でプロ野球選手になりてえんだ。だからもう、こういう「恋愛事」とかで頭悩ませたりしちゃいけねえって思った」

ヒロ「……………」

コニー「ヒロはヒロで新しい男、見つけろ。今度はちゃんと騙されないように気をつけろよ」

そう優しく諭してコニーは元彼女さんと今度こそ、本当の別れを果たしたのだった。

ヒッチ「………いいんだ? コニー。寄り戻せたんじゃないの?」

コニー「かもな。でもいいよ。今はそれより小学館高校との因縁を解決させる方が先だ」

コニーの目は本気だった。

コニー「今年も絶対、連覇してやる。見てろよ。甲子園出場を決めて今年こそ優勝してやるかな」

と、決意を新たにしたようだ。そして、コニーはサシャの方を見て言った。

コニー「サシャ。オレの代わりに怒ってくれてありがとう。すげえスッとした。でももう2度とああいう事、するなよ。もしサシャが退学になったら、オレ、罪悪感で死にそうになるからな」

サシャ「退学したって良いですよ。私は別に部活動に入っている訳でもないですし。誰にも迷惑はかけませんから」

ジャン「だとしても、コニーの言う通りだろ。相手の男が女に甘い奴だったから良かったものの……」

と、ジャンも宥めている。

コニー「そうだよ。サシャがいなくなったら、オレ、寂しいしな」

サシャ「う………」

そうきっぱり言われてようやく反省するサシャだった。

そして何とかひと騒動に決着がついて、皆が安心した其の時………。

コニーが意外な事を言ったんだ。

コニー「ジャン……サシャを止めてくれてありがとうな」

ジャン「あ、ああ……まあ、あの場面じゃ止めるのが普通だろ」

コニー「そうだけどな。でも、皆にも助けられた。本当に感謝するぜ」

ジャン「その恩は甲子園に行く事で返せよ。オレ、期待しているからな」

コニー「ああ。分かってる。…………ジャン」

ジャン「ん?」

コニー「オレ、サシャの事、好きかもしんねえ」

ジャン「!?」

彼女を作らない宣言をしたばっかりなのに。えええええ?!

その様子をこっそり見守っていたオレとミカサとアルミンとアニが仰天していた。

ジャン「…………」

コニー「でも、今回の事があったから、別に告白するとかそういうのは考えてねえけど」

ジャン「けど……何だよ?」

コニー「もし、高校卒業しても、サシャがフリーのままだったら……その時は告白する」

ジャン「!」

コニー「ジャン、お前もサシャの事、好きなんだろ? だったら今のうちに先に告白しろよ。オレは野球の事を優先するからさ」

ジャン「えっと……その……」

コニー「ジャンがヘタレのまんまだったら、オレ、本気でサシャにアプローチするからな。じゃ、そういう事で」

と言ってコニーはジャンの傍から離れて行った。

でもジャンは立ち尽くして何も言えないようだった。

アルミン「トライアングラー勃発だね。ジャン」

アニ「もう、猶予は残されてないよ? つまりジャンがいかないなら、コニーが行くって事だよね?」

エレン「宣言されちまったな。オレの時よりコニーの方が男気あっていいじゃねえか」

ミカサ「コニーは男らしい。確かに。ジャン、どうするの?」

と、皆で囲んでやると、ジャンは真っ赤になった。

ジャン「ど、どうするって言われても………」

アニ「修学旅行中に告白した方が良くない? この際だし」

アルミン「言えてる。グズグズしている場合じゃないような気がするなあ?」

ニヤニヤニヤニヤ。四人で一斉にニヤニヤすると、ジャンは顔を隠して逃げ出した。

エレン「あ……逃げちまった。またヘタレだなあ」

ミカサ「そろそろ年貢の納め時だと思うのに」

アルミン「だねえ。どうなるんだろうねえ?」

アニ「ククク………」

サシャは今、ユミルとクリスタの方に混ざって甘味所で御団子を食べて休憩している。

そのサシャの方を見ると「?」という顔をしていたのだった。








そんな訳で映画村で皆で楽しく写真撮影をしたり遊んだりしたらあっという間に2日目の日程が終わり、3日目に突入した。

3日目は殆ど移動日なので特にする事もない。京都の旅館をチェックアウトした後はバスに乗って高速を使って長野へ移動する。

昼飯はバスの中で弁当を食べる。サシャはお土産を待ちきれなくて先に開けて自分で食べたりしていた。

予定では夕方の5時ごろに長野のホテルに到着する予定だ。

長野では部屋の取り方がツインなので、男子は2人組を組んで宿泊する。

オレは当然、アルミンとペアを組んだ。ミカサはアニと組んでいる。

ジャンはマルコと、ライナーはベルトルトと、コニーはフランツと組んでいた。

そして意外だったのがサシャだ。サシャはなんとヒッチとペアを組んでいたのだ。

ユミルはクリスタと組んだからサシャが余るのは仕方がないが、それにしても異色のコンビのような気がする。

ペアが余った奴はシングルの部屋で寝泊まりするというちょっと寂しい状態だが仕方がない。

ただ、このツインの宿泊には「穴」がある。

そう。ペアをこっそり入れ換えれば男女での宿泊も可能という点だ。

キース先生の点呼の後にこっそり入れ替わってしまえばバレない筈なので、皆、それ画策しているらしいが。

ミカサも当然、その事を打診してきたので、オレ達はホテルに到着してからアルミンとアニに相談した。

アルミン「あーつまり、僕とミカサが入れ替わって実際は泊まる訳だね?」

ミカサ「お願いしたい。アルミン。アニ。2人にしか頼めない」

アニ「いや、まあ別にいいけど………アルミンはいいの?」

アルミン「まあ僕も別にいいよ? うん。エレンとミカサの仲は既に知っているし、こういう場合は当然一緒に居たいだろうし」

アニ「そう………」

アニがちょっとだけ照れていた。ふふふ。

という訳でホテルの「部屋交換作戦」は、段取りをつけておいた。

ミカサは自分の事だけでなく、アニの反応を見てニヤニヤしている。

ミカサ「やっぱりあの反応、怪しい」

エレン「オレも思った。アニの奴、満更じゃねえのかもしれねえな?」

ミカサ「2人には悪いけど。私は私でイチャイチャしたいので一石二鳥」

エレン「だよな」

と、2人でこそこそニヤニヤして夕食へ向かう。

ホテルの食事だ。京都の時とはまた違った食事の内容だった。

京都は和風中心だったけど。長野は洋食中心だった。

夕食を食ったら部屋に戻って8時からの入浴を済ませる。

風呂上がりのミカサと遭遇してオレの心臓は急に高鳴りが激しくなった。

おっと。まだ一緒は居られないんだった。消灯時間が過ぎてからだったな。

アルミンと部屋に戻る。部屋の番号は501号室だった。

501~510号室までが男子が使用して、511~517号室までが女子の部屋だ。

ミカサとアニは511号室だ。間違えないようにしないとな。

アルミン「ええっと……今回、入れ替わり作戦を執行するペアは結構いるみたいだね」

エレン「だろうなあ」

アルミン「頭の中を整理しておいた方がいいかもしれないね。ちょっとメモしておこうか」

と言ってアルミンはノートを取り出した。

アルミン「まずは現在の皆の大体の部屋割りを書きだすよ」

【男子の部屋割り】

501号室…エレン・アルミン

502号室…ジャン・マルコ

503号室…ライナー・ベルトルト

504号室…コニー・フランツ

505号室…サムエル・ナック

506号室…ミリウス・トーマス

507号室…マルロ・ダズ

【女子の部屋割り】

511号室…ミカサ・アニ

512号室…ユミル・クリスタ

513号室…サシャ・ヒッチ

514号室…ミーナ・ハンナ


アルミン「でも実際はこうなる予定らしいんだよね」

と言ってアルミンは修正を加えたバージョンの部屋割りを書き込んだ。

【男子の部屋割り】

501号室…エレン・ミカサ

502号室…マルコ・ミーナ

503号室…ライナー・ベルトルト

504号室…フランツ・ハンナ

505号室…サムエル・ナック

506号室…ミリウス・トーマス

507号室…マルロ・ダズ

【女子の部屋割り】

511号室…アルミン・アニ

512号室…ユミル・クリスタ

513号室…サシャ・ヒッチ

514号室…ジャン・コニー


アルミン「こうやってみると、うちのクラスは随分性に乱れているようにも思えるね」

エレン「それは言うなよ。いや、うちのクラスはカップルが多いとは思うが」

アルミン「しかもジャンとコニーの隣の部屋にサシャとヒッチがいるからね。もしかしたらヒッチがコニーと入れ替わって仕掛けるかもしれないし?」

エレン「もしそうなったらジャンの童貞がやばいんじゃねえか?」

アルミン「奪われそうで怖いねー。まあその辺は流石に交替はしないとは思うけど」

エレン「だといいけどな」

と、一抹の不安を感じながら話していると……

ジャンがオレ達の部屋に逃げ込んできた。何だ?

ジャン「ぜーはーぜーはー」

息切らしてやがるな。何だ? 何だ?

ジャン「すまん。少しここで匿ってくれ」

アルミン「誰から?」

ジャン「ヒッチだよ!! あいつ、本気でオレを襲ってこようとしてきやがったから逃げて来た!!!」

アルミン「あちゃー遂にロックオンが本格的になって来たんだ?」

ジャン「何度言っても「無理だ!!!」って断っているんだけどな! 「お願いだから一発やらせて♪」って、男の台詞じゃねえか! あいつ、頭おかしいんじゃねえか?!」

ジャンが真っ赤になって胸を上下させている。

エレン「でも満更でもないんだろ? ヒッチの事は嫌いじゃねえんだろ?」

ジャン「そりゃ、嫌いかと言われれば嘘になるが……だからと言ってエッチが出来る相手じゃねえよ! オレ、流石にそこまで最低な男にはなりたくねえよ」

と、相変わらず女運の悪い(?)ジャンが困惑していたようだった。

エレン「ううーん。でもお前、今夜は514号室で寝る予定なんだろ? ヒッチの部屋の隣だぞ」

ジャン「あ………そう言えばそうだったな。まずいな。それ……」

と、今頃になって現実を見つめたジャンだった。

ジャン「あーどうすっかな。今更マルコに「やっぱり無理」とは言えねえし。すまん。アルミン、知恵を貸してくれ」

アルミン「ううーん。エレンとミカサと総とっかえするとか?」

エレン「ん? だったらオレ達が514号室で寝るのか?」

アルミン「ジャンとコニーが501号室で寝たら流石にヒッチも気づかないんじゃない?」

ジャン「エレン、頼んでもいいか?」

エレン「まあ、別にいいけど。その場合はコニーの了承も必要じゃねえか?」

ジャン「分かった。コニーに確認してみる。電話してみるわ」

という訳でその場で話をつけると、コニーはすぐ「OK」を出してくれたそうだ。

ジャン「OKだって。エレン。すまねえが、総とっかえ頼むわ」

エレン「分かった。オレとミカサは514号室に今夜泊まる事にする」

という訳でミカサにも連絡を入れて入れ換えの段取りを決め直した。


【男子の部屋割り】

501号室…ジャン・コニー

502号室…マルコ・ミーナ

503号室…ライナー・ベルトルト

504号室…フランツ・ハンナ

505号室…サムエル・ナック

506号室…ミリウス・トーマス

507号室…マルロ・ダズ

【女子の部屋割り】

511号室…アルミン・アニ

512号室…ユミル・クリスタ

513号室…サシャ・ヒッチ

514号室…エレン・ミカサ


ややこしいけどつまりこれが実際の部屋割りだな。

バレないように気をつけないといけないな。キース先生が見回りに来た「後」に交換しねえといけない。

ジャン「じゃあそういう事でいいか? オレはギリギリまでここに居て、キース先生の点検が終わり次第、こっちの部屋に戻ればいいよな」

アルミン「そうなるね。ちょっと忙しくなるけど、僕達も部屋の交換をするつもりだし」

そんなこんなでいろいろ打ち合わせして、ジャンには1回部屋に戻って貰った。

そしてキース先生の「点検」が終わり、消灯時間が訪れた直後、オレ達は行動を起こした。

時間差で移動する。2人一気に移動すると怪しまれるからだ。

部屋の交換が済んだ後は内側から鍵をかける。

やっと2人きりの時間だ。ミカサとのラブラブな時間が過ごせる。

今日は「危険日」だから挿入はやっちゃいけないけど。

ゴムつけてやればいいんじゃねえかって意見もあるだろうけど。

ゴムも100%避妊出来る訳じゃねえからな。そういう時期は流石に避けるべきだろう。

だからオレはミカサと一緒に布団の中でじっくりイチャイチャを堪能しようと思っていたんだが……。

ミカサとベッドインしていた最中、ドアをドンドン叩く音が聞こえた。うるせえ!

仕方がないから開けてやると、外に居たのはヒッチだった。

ヒッチ「あれ? 何でこっちの部屋にエレンがいるの? もしかしてミカサもいる?」

エレン「すまねえけど、部屋をシャッフルさせて貰った。あいつが今、何処の部屋で寝ているかは言えねえな」

ヒッチ「ええええ……マジでか。逃げられたかー」

ミカサ「ヒッチ。ジャンはヒッチとはそういう関係にはなりたくないそうだから、無理強いはしてはいけない」

ヒッチ「ん~そうなんだろうけどね。私もまだ諦めがつかないんだよねー」

と、ヒッチがちょっと色っぽい顔になって言った。

ヒッチ「多分、私、ジャンが好きだと思うんだよね。ワクワクするっていうのかな? ジャンを追いかけるの、だんだん楽しくなっちゃって。2番目でもいいからさ。付き合ってくれないかなって、思い始めている自分がいるんだよね」

エレン「そうだとしても、その戦法で迫るのは逆効果じゃねえか?」

ヒッチ「あはは……そっかーやっぱりそうみたいだね。分かった。今夜は諦めて引くとするか。お2人も頑張ってね♪」

と言ってヒッチが去って行った。やれやれ…。

これで諦めてくれるならいいんだが。そう思いながらミカサとベッドインし直すと……

携帯電話が鳴った。誰だよ?! 今度は誰が邪魔してきた?!

電話の相手はジャンだった。あいつ、文句言い出してきた。

ジャン『ヒッチに部屋がバレたぞ!! 何で部屋から出た! 顔出したらバレるに決まってるだろうが!』

エレン「あードアをずっとドンドン叩いてきたからしょうがねえだろ。うるさいとキース先生が点検に来ると思ったし」

ジャン『そうかよ……あああ待てヒッチ! こら! ああ……離れろ馬鹿!!!』

プープープー

携帯が切れた。何か向こうは向こうで騒がしそうだな。

ジャンの童貞が今夜、あぶねえかもしれないが、知らん。

自業自得だしな。ヒッチを「無意識」に堕としたジャンが悪い。

オレ達は出来る限りの事はしてやったんだし。部屋の交換がバレたんだったらもう諦めた方がいいかもな。

そんな感じでジャンの事は放置してミカサとキスしようとしたら……

今度はミカサの携帯が鳴った。イライラしながら電話に出る。

ミカサ「はい……サシャ?」

サシャから電話がかかってきたそうだ。どういう事だ?

ミカサ「えええ……分かった。ちょっと待って」

ミカサは一度口を離すと、

ミカサ「コニーがサシャの部屋に来ているそう。流石に男女一緒に寝泊まりするのはアレだから、私と一緒に寝て欲しいと言ってきている」

エレン「ええええええ……」

なんじゃそりゃああ? えー何でそうなるんだよ?!

ミカサ「どうしよう? もし一緒の部屋で一晩を過ごしたら間違いが起きないとも限らない」

エレン「ううーん。待ってくれ。ちょっと頭を整理する」

この場合、今、501号室にジャンとヒッチがいて、513号室にサシャとコニーがいるんだよな?

シャッフルし過ぎて頭が混乱しそうになる。とりあえずどうするべきかな。

ミカサ「サシャと一緒に居てあげるべきだろうか……?」

エレン「ううーん。サシャはコニーとは流石に一緒の部屋では寝られないんだよな」

ミカサ「みたい。コニーも寝る場所が無くなって困っているそう」

エレン「だよなあ。あ……そうだ」

確か、女子は1人余っている子がいたような。女子は15人だから奇数だ。

だからその子と交渉して、オレとミカサがシングルで寝ればいいんだ。

エレン「1人余ってる女子いたよな。その子の部屋とオレ達を交換したらいいんじゃねえか?」

ミカサ「つまり、その女子とサシャが同じ部屋で寝るの? それは難しいと思う」

エレン「ダメかな?」

ミカサ「普段、あまり関わりのない子と一緒に寝るのは流石にちょっと……」

エレン「そうか」

ミカサ「サシャが人見知りしない性格ならともかく。ああ見えてサシャは人に慣れるのに時間がかかる方だから無理だと思う」

エレン「あーじゃあもう、しょうがねえか。ミカサとサシャで同じ部屋で寝るしかねえか」

ミカサ「みたいね。ここは折れるしかないかもしれない」

エレン「しょうがねえな。コニーをこっちに呼ぶか」

という訳で何でか良く分からんが成り行きでオレはコニーと同室になる事になっちまった。

コニー「悪い……なんかヒッチがジャンのところに押しかけて来たからさー流石に空気読んだ方がいいかなって」

エレン「ジャンはサシャの事が好きなんだけどな」

コニー「それも知っているけど……とりあえず放置してきた。オレ、関係ねえし?」

エレン「まあ、そらそうだけど」

やれやれ。ミカサとのラブラブな時間をお預けされちまったな。

コニー「悪いな。ミカサとの時間を邪魔しちまって」

エレン「まあ、もう諦める。サシャも流石にコニーと同室は無理だって言ったんだろ?」

コニー「いやーまあ、そうだな。うん。いくら友達同士でもそこは線引きしねえとな」

と、コニーは照れている。

そんな訳で、その日はとんだ騒動に巻き込まれて部屋をシャッフルしまくった。

翌日の朝。部屋から出ると、ジャンが何故か513号室から出て来た。

サシャに怒られている。アレ? あいつ、501号室でヒッチと寝たんじゃなかったのか?

ジャン「誤解だサシャ!! オレも何でこっちで寝ているのか分かんねえんだよ!」

サシャ「ミカサは何処ですか?! ミカサは一体どこに……」

ジャン「知らねえよ! ミカサと一緒に寝たのか?!」

と廊下でわいわいやっている。

ミカサがヒッチと一緒にこっちにやってきた。

ヒッチ「おはよー。ジャン。サプライズ、びっくりした?」

ジャン「は?」

ミカサ「御免なさい。実はあの後、ジャンと私はこっそり、ジャンが寝ている隙にジャンをヒッチと一緒に部屋に運んで、部屋を交替した……ので」

ええええマジか? もしかして打ち合わせしていたのかな?

何というからくりだ。びっくりだぜ。

サシャ「酷いですよおおお! ミカサ、騙しましたね?!」

ミカサ「御免なさい。荒療治をした方がいいかと思って」

ヒッチ「うふふふ………既成事実は作れた?」

ジャン「んな訳ねえだろ! 今の今まで爆睡しただけだ!! 起きたら隣のベッドにサシャいるし、心臓止まるかと思ったぞ!」

ヒッチ「やばいwwwwジャンの顔が面白すぎるwwww」

ジャン「ドッキリ仕掛けるのも相手を選べよ!!! 冗談にしては笑えないだろうが!!!」

と、真っ赤になって反論している。

エレン「あーミカサ。その打ち合わせはいつの時点でかわしたんだ?」

ミカサ「私がサシャの部屋に移動した後、ヒッチからこっそりメールが来た。ジャンを眠らせたから、協力してくれって」

エレン「じゃあ最初から狙っていた訳じゃねえんだな?」

ミカサ「私も後から協力しただけ。本当ならエレンと一緒に一晩過ごしたかったけど。そういう話なら協力しようと思った」

エレン「やれやれ……」

ヒッチの策略にまんまと乗せられた訳だな。オレ達も。

ヒッチ「ふふふ~ジャン~? 今回だけのサービスだよ♪ 2度目はないからね?」

ジャン「は?」

ヒッチ「いつまでも逃げられると思ったら大間違いだよ? 私が本気出したら、ジャンの童貞なんてさくっと奪えちゃうからね? ふふふ♪」

ジャンがドン引きしていた。ヒッチが完全に野生の雌豹の顔に変わった。

その瞬間、サシャの方も目を鋭くした。細めてヒッチを見つめている。

サシャ「……………」

ヒッチ「だからこの旅行中に自分の気持ちをちゃんと整理してよね。私もいつまでも待ってる女じゃないんだから。じゃあねー」

と言ってヒッチが先に去って行った。

ジャンはサシャの方を見て、サシャは目を逸らしてしまう。

ジャン「サシャ……あの……その……」

サシャ「言い訳なんてする必要はないですよ」

ジャン「え?」

サシャ「何でヒッチとくっつかないんですか? あれだけ愛されているのだから、ヒッチとくっついたらいいじゃないですか」

えええええ?! サシャ、何言ってるんだお前?!

ツンデレにも程があるだろ?! ミカサもびっくりしているぞ?!

ジャン「オレはヒッチの事は別に、そういうんじゃねえよ」

サシャ「でも満更じゃないんですよね? でないと一緒の部屋で過ごしたりしないですよね?」

ジャン「それはあいつが無理やりオレを追いかけてくるからだろうが!!」

サシャ「そうですか? 本当にそうですか? ジャンの方にも油断があるんじゃないんですか?」

いかん。だんだん険悪な空気になってきた。まずいぞこれ。

ジャン「オレがいつ油断したっていうんだよ!!!」

サシャ「ヒッチに洋服を買ってあげる約束をしたじゃないですか! それが油断じゃないなら何なんですか!!」

ジャン「はあ?! 何でその話がいきなり……」

サシャ「ヒッチがジャンの懐の中に入ろうとしているのは見え見えじゃないですか! 本当にその気がないんだったら、服なんか買ってあげてはダメですよ!!!」

ジャン「!」

その瞬間、ジャンの顔色が変わった。

あ……何か、やばい。これは、まずい。

キレているアレじゃないけど。その……多分、今、男のアレというか。

ええっと、なんていえばいいかな。「スイッチ」みたいなもんかな。

ジャンの顔が急に変わって、サシャの方に一歩、近づいていって。

壁ドンがきた。

少女漫画でやる定番のアレだ!!

生で目撃するのは2度目になるが、こっちのそれは、本物の「壁ドン」だ!

ジャン「サシャ……こっちを見ろ。オレの顔を見て、言えよ」

サシャ「あ…………」

ジャン「それってつまり、お前、ヒッチとオレの関係を「嫉妬」しているって受け取っていいんだよな?」

サシャ「いや……違います! そんなんじゃ、そんなんじゃありませんよ……!」

ジャン「じゃあ何で今、涙目になってんだ? サシャ……」

うわあああ!! 顔が近い! 近い!

朝っぱらから少女漫画の王道ぶっぱなすなああああ!!!

オレも少女漫画にそう詳しい訳じゃねえけど! 部室に転がっていた少女漫画に壁ドンが載っていた程度にしか知らんけど!

サシャ「あ……そ、それは……」

ミカサ「ジャン。朝なので。朝食を食べにいかないと」

そこで冷静にミカサがツッコミを入れたのでジャンも一応離れたけど。

ジャン「………………サシャ。後でな」

どうやら逃すつもりはないようだ。ジャンの目が男のそれに変わっていた。

発情しかけたジャンの恐ろしさにサシャがへたり込んだようだ。

サシャ「うううう………」

涙目になってへたり込んだサシャにミカサが手を伸ばす。

ミカサ「サシャ……」

サシャ「何ででしょうか? 私、何でこんな風になっちゃったんでしょうか?」

ミカサ「…………」

サシャ「ミカサもこんな風になった事、あるんですか?」

ミカサ「ある。去年の夏に、私も同じようにドロドロした感情に悩まされた」

サシャ「だったら、それは相手の事を「好き」って事なんでしょうか?」

ミカサ「普通はその感情を「嫉妬」と呼ぶ。それは相手を独占したい証拠」

サシャ「じゃあ私は、やっぱり、ジャンの事が好きなんでしょうか……?」

ミカサ「私から見たら、そうとしか思えない。サシャはジャンの事が好きなんだと思う」

ミカサがそう指摘してやると、サシャはその場でわんわん泣き出してしまった。

サシャ「嫌です! 何でよりによってジャンを? あんなに女にフラフラする男、嫌ですー!」

まあ、気持ちは分からなくもない。ジャンの過去が過去なだけにな。

サシャ「ジャンと一緒に居ても楽しくはないし、むしろイライラしたり、ムカムカする事も多いんですよ?! 私の理想とかけ離れているのに、何でこんな事になったんでしょうか……?」

ミカサ「理想と違う人を好きになる事もあるのでは?」

サシャ「ミカサもそうだったんですか?」

ミカサ「うーん? 私も場合もそうだったかもしれない」

エレン「え?」

ミカサ「短気な人は苦手だと思っていた。だけど好きになった人は短気な人だった。そういう事もあると思う」

OH……そうだったのか。何だか申し訳ねえな。

ミカサ「ジャンは確かに「今」はフラフラしているけど。でもきっと、恋人が出来たら変われると思う。リヴァイ先生のように」

エレン「そうだな。オレ、ジャンはきっとリヴァイ先生と同じように一途に一人の女を愛せる男だと思うぜ」

リヴァイ先生自身、本気の恋に出会って初めてフラフラするのをやめた訳だしな。

サシャ「そんなの、分からないじゃないですか! ジャンのフラフラする癖が抜けなかったら、もし恋人になっても苦労するだけじゃないですか!」

ミカサ「その時はジャンの男性器を握り潰すか切断してやればいい」

OH……やめてくれ。ハンジ先生のアレを皆、真似するんじゃねえよ。

思わず股間を防御したくなるような心地になってしまったが、サシャは首を左右に振った。

サシャ「そんなところ、触りたくもないですー! そういう事、したくないんですー!」

ミカサ「そうなの?」

サシャ「そういうのは、恥ずかしいです! 手を繋ぐのだってドキドキするのに、そんなの……そんなの……」

うわ……サシャが真っ赤になって顔を伏せている。両手で顔を隠している。

やべえ。これは可愛い。そういう「行為」に対してそこまで恥じらいがあるんだ。

これはジャンが見たらもう、完全に「オオカミ」に覚醒するぞ。

ミカサはそこまで恥じらわない方だから余計に新鮮に感じてしまった。

サシャ「そ、想像したら、ダメなんです。体が震えるし、自分が自分じゃないみたいで、頭が熱くなって……こんなの、私が求めている「恋愛」じゃないんです! 私が求めていたのはもっとこう「のんびり」と「ほっと」するような、ほのぼのとした幸せで良かったんです! こんなに激しい感情、嫌なんです! 私は……私は……」

ミカサがそこでサシャを正面から抱きしめてやった。

恋愛の「先輩」として、ミカサがサシャの感情を受け止めてやったんだ。

ミカサ「サシャ。それはもう、ジャンに「惚れている」段階だと思う。もう逃げられない。サシャはジャンに「捕まって」しまったのだと思う」

サシャ「ううううう…………やっぱりそうなんですかあ?」

ミカサ「認めた方がいい。ジャンと一緒にいる時間が増えたせいでそうなってしまったんだと思う」

サシャ「ですかねえ……漫画のアシスタントで一生懸命に頑張っているジャンを見ていたら、自然とそうなってしまったみたいですー……」

エレン「ああ。あいつ、頑張り屋だもんな。根は真面目だし」

勿論、目的があればの話ではあるんだが。

学校の部活の事も「内申点」が目当てだし、仕事も「金」が目当てだとは思うが。

それでも、ちゃんと「目的」がある場合、ジャンは真面目にやる。そういう男だ。

サシャ「はいー。私、バイト先でいろいろ苦労してきたんですよ。こう見えても、男関係のトラブルも多々ありました。仕事を真面目にしない男に絡まれたり。足を引っ張られたり……ジャンはそういうのが一切なくて、一緒に仕事やっていて「やりやすい」って感じてしまって……」

ミカサ「うん」

サシャ「自分の体調が多少悪くても、先生がピンチの時は必ず駆けつけるし、細かい気配りも出来るし、几帳面だし、私がミスしても「しょうがねえな」って言いながらもフォローしてくれたり……」

ミカサ「うん……」

サシャ「演劇部の部長さんの時の顔もそうでした。ジャン、意外と面倒見いいんですよね。周りをよく見ていますし、決して周りに無理はさせないし、自分じゃ「部長は向いてない」といいつつ結局はリーダーやっていますしね」

エレン「だよな」

サシャ「何で女関係だけ、フラフラするんですかああ! アレさえなければ、私だって……私だって………」

サシャがわんわん泣きじゃくった。その様子に遅れて気づいたアニとアルミンが廊下に出て来た。

アニ「な……なんでサシャが泣いているの???」

アルミン「まさか、またジャンが何かやらかして……」

エレン「いや、そういうのじゃねえよ」

ミカサ「今、サシャはやっとジャンへの気持ちを自分で認めた」

アニ「え?! そうなの?」

サシャ「もう捕獲されてしまいましたあああ………あああああ」

と、泣きじゃくってしまうサシャにアニも「よしよし」としてやった。

アニ「そっか……もう白旗あげた訳だね。だったらジャンを堕とすしかないね」

サシャ「ううう……でも、今のジャンはヒッチにもフラフラしているんですよお?」

アニ「そんなの、サシャがちょっと本気出せば大丈夫。ヒッチなんか寄せ付けない魅力がサシャにはあるよ」

アルミン「そうだね。ジャンもサシャの事が好きなんだから。後はちゃんとお互いに確認し合えば大丈夫だよ」

サシャ「うううう………」

其の時、部屋に籠っていたコニーが顔を出した。

コニー「なんか、サシャ、泣いているのか? 大丈夫か?」

サシャ「コニー………」

コニー「泣き声が聞こえてきたから流石にちょっと気になって……大丈夫か?」

サシャ「もう大丈夫です。いや、大丈夫ではないですけど、大丈夫です」

コニー「どっちだよ? まあいいけどさ。あんまり思いつめるなよ? 皆だっているしさ。大丈夫だって」

サシャ「はい………」

そんな訳で、サシャがようやく土俵際から足を出して負けを認めたおかげで、次のステージに行けると思った。

身支度をして朝飯を食べる為に下の階に降りると、ヒッチとジャンが先に席について待っていた。

その横にはライナー達の班も居て、ジャンはライナー達の班と混ざって先に朝飯を食べていたようだった。

サシャはまだビクビクしている。ジャンとは目を合わせられずに距離を取っているようだ。

ジャンの方はじっとサシャを見ているけどな。その視線は凄く熱っぽい気がするけど。

大丈夫かな。今のあいつ。サシャに対して「ムラムラ」し過ぎてねえといいけど。

スキー研修1日目は朝食をとった後に午前9時からスタートとなった。

インストラクターの男性と女性がそれぞれコーチについてレクチャーしてくれる。

一通りの滑り方を習った後は各自で練習だ。

オレとミカサはスキーは初めての経験だったが、割とすぐ慣れて、すいすい滑る事が出来た。

特にミカサの上達は早かった。インストラクターの先生が驚くくらい上達していった。

オレの方も慣れるのは早かったけど、たまに転んだ。まあそこはご愛嬌って事で許してくれ。

エレン「うわ! ミカサどいてくれ! ぎゃあああ!」

うっかり転んでミカサの上に突っ込んでしまった。

ミカサ「んもー」

と、ミカサをクッションにしてしまった。大丈夫かな?

エレン「大丈夫か? 怪我してないか?」

ミカサ「大丈夫。それより、その……あの……」

エレン「ん?」

ミカサ「皆に、見られている……ので」

エレン「あ、悪い悪い」

リア充死ね! の視線が突き刺さっていた。自重しよう。

コニーとかはスノボの方にも興味があるようで、そっちのレクチャーも受けてそっちで滑っていた。

スノボの方も希望者はレクチャーを受けられる。どうせだから両方習っておこうかな。

オレとミカサはスノボの方のレクチャーも受けて、そっちの練習もしてみた。

するとミカサはスキーより更に見事な滑りを見せた。

ミカサ「スノボの方が滑りやすい。楽しいかも」

エレン「そうなんだ。へー」

ミカサ「エレンはどっちが好き?」

エレン「オレもスノボの方が楽しいかもな!」

と言いながら一緒にスノボですいすい滑ってみた。やっべー楽しい!

そんな訳で午前中、3時間くらい雪の上で遊んでいたらあっという間に昼になった。

体動かしたから腹減ったぜ! ロッジに戻って昼飯を食う事にした。

ロッジの中で焼き肉を食う事にした。焼肉を見ると研修旅行での事を思い出すな。

サシャ「焼肉奉行は私に任せて貰います(キリッ)」

と、何故かサシャがやる気満々で仕切りだした。

どうやらレア、ミディアム、ウェルダン、全部の焼き方を網羅するみたいだ。

微妙な時間の秒数を体で測って次々と肉を「3つ」に分けていく。

サシャ「3種類の焼き方、全部いけますので。好きなのをどうぞ」

エレン「おおおおいいのか? サシャ」

サシャ「はい! 私は全部の焼き方が好きなので、全部マスターしました!」

ジャン「何気にすげえな。サシャは……」

サシャ「焼肉大好きですからね! さあさあどうぞ!」

と言いながらサシャの焼き方で肉を頂く。うめー!

サシャ「ではそろそろ、良い肉を出しましょうかね。うへへ」

エレン「え? 何だよ。最初からいい肉出してなかったのか?」

サシャ「ふふふ……皆さんに出したのは「安い方」のお肉です。美味な方は後から焼くのが玄人のやり方なんですよ。皆さんは既に先に腹に肉を入れているので、まだ食べてない私が優先して残り物を頂きます」

エレン「ずる賢い奴だなー」

アルミン「まあまあ。いいじゃない。焼いてくれた人にねぎらう意味でも」

アニ「だね。いい肉はサシャに譲ってもいいよ」

サシャ「あざーっすwwww」

と言いながら後から焼いた肉はサシャが主に食べてしまう事になった。

本当に焼肉が大好きなんだな。遅れてむしゃむしゃ食ってる。

その様子をジャンはじっと見ていて、肉汁が頬から零れた其の時、サシャに「零れてる」と注意した。

そしてさっと、店のナフキンを使ってサシャの頬を勝手に拭いた。

その直後、真っ赤になってガタガタと動揺を示したサシャがすげえ可愛いかった。

サシャ「い、いきなり何するんですかああああ!」

ジャン「ああ? きたねえから拭いてやっただけだが?」

サシャ「そんなの頼んでないですから! もうやめて下さいよ!!」

ジャン「ああ。悪い。気に障ったか。でも口の周りくらいは拭いた方がいいかと思ったんだよ」

サシャ「~~~~!!!」

うおおおお……ジャンもやるようになったな。サシャ相手にどんどん攻めている。

そして会計を済ませて再びスキー研修に戻った訳だけど。

サシャはジャンと距離を取っていた。好きなのに逆の行動を取っているようだ。

コニーの後ろに逃げるようにしている。コニーもコニーで困っているようだな。

コニー「おい、サシャ。隠れている場合じゃねえだろ?」

サシャ「で、でも………」

コニー「もうジャンの事、好きなら好きって言ってしまえばいいじゃん。ジャンもサシャの事、好きみてえだし?」

サシャ「やめて下さい!!! その、はっきりジャンにそう言われた訳ではないですよ?」

コニー「でもなあ………」

コニーはちょっと照れている。コニー自身も心境の変化が出て来たからサシャとの接触は複雑なんだろうな。

そしてその隙に今度はヒッチがジャンに絡んできた。その様子にサシャがびくっと反応するけど。

でも、様子が違った。以前と比べてジャンはヒッチとちゃんと距離と取って話している。一歩、引いたんだ。

その距離感にヒッチも「あれ?」って顔をしているし、サシャも驚いていた。

そして適当なところで話を切り上げてしまった後は「サシャ! こっちにこい!」と呼びつけていた。

サシャ「うううう………」

ジャン「来ねえならこっちから行くけど?」

サシャ「行きますー!」

と、サシャがジャンに呼び出されていた。

取り残されたヒッチは少し顔色が変わっていた。何だろうな。

苦痛を堪えている顔だった。ヒッチ、あいつもしかして、本気で……。

アニ「今頃、自分の本当の気持ちに気づいたの? ヒッチ」

ヒッチ「アニ……?」

アニ「堕ちない男だから楽しいって感情だから近づいたんじゃなかったの?」

ヒッチ「………………………」

ヒッチの表情が以前とは違った。やっぱりそうなんだ。

あいつ、自分でも気づかないうちに、だんだん、ジャンに嵌っていたんだな。

ヒッチ「最初はそうだったんだけどね。うん……ちょっとやばいかも。この感覚は」

アニ「…………」

ヒッチ「こういうの、初めての経験なんだよね。絶対、堕ちそうにない男に気持ちが向くのって。痛いんだけど。苦しいけど。でも、何でか良く分かんないけど。サシャと一緒にいるジャンの事も好きでいる自分もいるのよ」

アニ「そうなんだ」

ヒッチ「うん。これって不毛な恋愛だよねえ? でも止められない。本当、私、何であの馬面とキスしちゃったんだろ?」

と、苦笑を浮かべて一人で何処かに消えていくヒッチだった。

そして午後のスキー研修中、アルミンがアニからレクチャーを受けていた。

アルミンは「あわわわ」と言いながら何度もへたり込んで失敗してなかなか滑れないようだった。

ライナーやベルトルトはすいすい滑っている。

ジャンもマルコも運動神経は悪い方じゃないからコツを覚えたら後はどんどん滑っていたけど。

アルミンと、あとはダズもか。男子では2名だけがまだコツを掴めなくてうまく滑れないようだった。

アニ「むー何が原因なんだろうね? 教え方が悪いのかな?」

アルミン「いや、アニの教え方はうまいと思うよ。僕の運動神経が悪いだけだよ」

アニ「うーん。もういっそ、上級者コースに行って荒療治した方がいいのかな?」

アルミン「骨折しちゃうから無理だよ! 流石に修学旅行先で怪我はしたくないよ?!」

アニ「それもそうだけど。でも、いいの? 滑れないとつまんないでしょ?」

アルミン「ううーん。そりゃあつまらないけど。でもしょうがないよ」

と言いながらアルミンは諦めたようだ。

女子の方はクリスタが何度も転んでいた。クリスタもあんまり運動神経がいい方じゃねえのかな?

ユミルはもうすいすい滑っている。あいつも運動神経いい方だからな。

うまく滑れない者同士、ベンチに座って休憩する事にしたようだ。

クリスタ「はううう……水泳の授業の時を思い出すなあ」

アルミン「ああ。あの時もクリスタ、コツをつかむまでうまくいかなかったね?」

クリスタ「なんか、体の使い方が悪いみたいなんだよね。無意識に。何が原因か良く分かんない」

アルミン「クリスタは馬には乗れるんだよね」

クリスタ「うん! 乗馬は好きだよ! 馬に乗る時は、馬と一体化する気持ちで乗っているしね」

アルミン「だったら、スキーの板とも一体化する気持ちで滑ったらどうかな?」

クリスタ「え? どういう事?」

アルミン「いや、あくまで感覚的な物だけど。道具をあまり意識しないで滑ってみるとか?」

クリスタ「ううーん。難しいね。でもそうだね。ちょっと試しにやってみるね!」

という訳でクリスタは練習を再開して、そして何と、それ以後、うまく滑れるようになったみてえだ。

へー。こういう事もあるんだな。感覚の意識を切り替えるだけでこうも違うのか。

そのクリスタのはしゃぎぶりにアルミンも嬉しそうにしていた。

アニがその様子を見て「まだ吹っ切れてないんじゃないの?」と言い出した。

アルミン「な、なんの事……?」

アニ「クリスタの事だよ。あんたもあんたでヘタレだね。告白しないつもりなの?」

アルミン「告白しても無駄だよ。クリスタはユミルと付き合っているみたいだし。女同士で付き合っているって事は、男にはあまり興味がないって事だろ?」

アニ「そういう意味じゃなくて……ジャンみたいに、ちゃんと「けじめ」をつけなくていいのかい? って意味だよ」

アルミン「いいよ。相手の迷惑になるだけだしね」

アニ「でも、そんな状態じゃ「次の恋」には行けないんじゃないの?」

アルミン「………………それでもいいのかもしれない」

えええ? いいのかよ。アルミン!

アルミン「片思いでも、報われない想いでも、それを否定されない方が楽なのかもしれない。ジャンがミカサにフラれるところを見て、僕もぞっとしたんだよ。現実を直視する勇気を持つのは凄く大変だなって思った」

アニ「でもジャンは、アレがあったからこそ、今はサシャを追いかけているんだよ? もう「過去」の物としてちゃんと受け入れているのに」

アルミン「そうだね。ジャンはそういう意味では精神的にタフな男なんだと思うよ。自分ではそう思ってないみたいだけど。よく皆から「ヘタレ」って言われているけど。本当のヘタレは僕みたいな臆病者の事を言うんだよ」

と、アルミンが自虐的になっていた。

アニ「やれやれ………」

其の時、アニが呆れた声を漏らしてアルミンの隣に座った。

アニ「気持ちは分からなくはないんだけどね。ジャンをけしかけた私が言うのもアレだけど。曖昧なままの方がいいって思う気持ちは分からなくはないけど」

アルミン「そうなんだ」

アニ「うん………周りを見ていると「凄いなあ」って思うよ。特にエレンとか。あいつ、手出してくる奴を「殺す」って本気で言ったからね」

うわあああその件は蒸し返さないでくれえええ恥ずかしい!!!

アルミン「え? どういう事?」

その件はまだアルミンにちゃんと話してないんだよな。

折を見て話さないといけないとは思っていたんだけど。

アニ「エレンが一度、腹痛いって便所に籠った事あったでしょ? 練習中に。その直前に、マルコとジャンと私でエレンと話していて。其の時に「浮気」について話していてね。マルコがエレンに指摘して、エレン、自分の本当の気持ちに気づいたみたいでさ。ねえ? エレン」

呼び出されてしまったので、渋々アニとアルミンのところに近づくオレとミカサだった。

エレン「悪い。その件についてはいずれアルミンにも話すつもりだったんだけど」

タイミングを逃して今の今まで話す機会を逸していた。

アニ「そうだったんだ。あの時はアルミンとミカサ、2人で話し込んでいたしね」

アルミン「うん……つまりどういう事?」

アニ「もしもミカサが浮気したら、最初は「自分の甲斐性の無さ」が原因だから自分の反省が先だって言ってたんだけど。マルコに「それはどうなの?」みたいな事を言われて、考え直したら、やっぱり「ミカサに手出してくるような奴は殺したい」って気持ちに気づいたんだよね」

エレン「……………すまん」

アルミン「なるほど……」

アルミンがびっくりしているな。当然だな。

アニ「でも私あの時、凄いと思ったよ。エレンの「凶暴」なところはゾッともしたけど。それだけ「好き」って気持ちがあるのは、怖い反面、嬉しいとも思える。ミカサは愛されているんだなって思ったら、ちょっと羨ましいなあってすら思ったよ」

ミカサ「そうだったの?」

アニ「うん。あんたたち、凄く羨ましいカップルなんだよ? 私だけじゃないと思うけどね。こう思うのは」

アルミン「僕も同意かな。なんかもう、切っても切れない感じだよね」

そう言われると途端に照れくさくなるな。

エレン「アルミン……その件でオレ、アルミンに頼みたいって思ってたんだ」

アルミン「ん?」

エレン「オレ、カッとなると本気で人を殺しかねないくらい馬鹿な奴だからさ。もしそういう時が「本当」に来たら……オレをどんな手を使ってでもいいから「止めて」くんねえかな」

アルミン「うん。勿論止めるよ。僕はエレンを犯罪者にしたくないからね」

エレン「…………いいのか?」

アルミン「止めるに決まってるでしょ。え? 何で止めないと思うの?」

エレン「…………そうか」

あっさり同意してくれるアルミンに感謝した。

オレ、周りに恵まれているな。本当に。

過去の話をここでするべきか迷ったが、今ここにはミカサもアニもいる。

詳しい事はまたアルミンと2人きりになった時に話そう。

でもとりあえず、「約束」はしてくれたから安心した。流石アルミンだ。

アルミン「うん。エレンはカッとなると暴走する癖があるからね。もう付き合い長いんだし。分かってるよ。その辺の事は」

エレン「そうか」

アルミン「だって僕をいじめっ子から助けてくれた時も過剰防衛仕掛けたでしょ? あの時も相手の男の子、殺しかねないくらい反撃したしねえ」

アニ「え? 何その話。どういう事?」

アルミン「僕は昔、苛められていたんだ。子供の頃は。それをエレンが助けてくれてね。自分も凹られながら。身体張って助けてくれたんだ。その時からだよ。僕がエレンと友達になったのは」

と、遠い目をしてアルミンが語り出した。

アルミン「もう10年近く前になるっけ? 小学校にあがる前くらいだったよね」

エレン「ああ。多分その前後かな? オレははっきり覚えてねえけど」

アルミン「僕は覚えているよ。うん。小学校にあがる前くらいだったかな? エレンは6歳になったばかりだったと思う」

エレン「そうだったか? うーん。まあ確かその辺だったような気もするが」

ミカサ「その頃からエレンは勇敢な男の子だったのね」

エレン「いやー無謀だったと思うけどな。5対1で喧嘩して凹られたりしていたからな。ガキの頃だけど」

6歳くらいの時の記憶だけど、自分より年上の男の子と喧嘩したりしていたな。

アルミン「うん。でもそこで僕はエレンに救われて……それからだよね。エレンと僕の付き合いが始まったのは」

エレン「そう言えばそうだな。思えば長い歴史だよなー」

と、何故か昔話に花を咲かせる事になってしまった。

アルミン「うん。だから大丈夫だよ。エレンが暴走しそうになったら僕の出番だと思ってる。だから安心して欲しい」

エレン「そっか………ありがとうな。アルミン」

アルミン「いいって。僕も普段からエレンにはいつも勇気を貰っているから。エレンがいるだけで心強いって思う事も多いんだ」

ミカサ「その気持ちは良く分かる」

エレン「え? そうなのか?」

アニ「あーそうかもね。確かにエレンは何か不思議な魅力があるのかも」

エレン「えええ? み、皆で急にオレを持ち上げるなよ!」

照れくさくて反論すると、皆にクスクス笑われてしまった。

アニ「話が脱線したけど……アルミンはクリスタには結局、告白しないの?」

アルミン「何でその話題に戻るの?! 女の子って本当、話題を山手線みたいに戻すよね?!」

アニ「だって私、女だし? ふふふ……アルミンも正式にフラれた方が今後の為にはいいかと思うけど?」

アルミン「気持ちは分からなくはないとか言ってた癖に……」

アニ「フラれたら、慰めてあげてもいいんだけど?」

アルミン「え?」

アニ「私で良ければだけどね? ま、よしよしくらいはしてあげるからさ」

アルミン「……………」

アルミンが複雑な表情に変わったみたいだな。

アルミン「それって、アニの胸の中で泣いてもいいって事?」

アニ「?! 何ふざけたこと言ってるの? そんなんじゃないよ! (プイッ)」

アルミン「いや、ごめん。調子に乗りました! えっと、膝枕をお願いします」

アニ「リヴァイ先生じゃないんだから!!! 調子に乗り過ぎ! やっぱりやめた!」

アルミン「ええ……そんなあ……」

と、こっちはこっちで仲がいい。

あーもう。こっちもくっついてしまえばいいのにな。勿体ねえ。

ミカサがクスクス笑っている。オレと同じ事を考えているようだ。

そんな感じでスキーやスノボをしながらわいわい雑談もしつつ楽しく過ごしていたらあっという間に時間が過ぎた。

全員の点呼を済ませてホテルに戻ろうとしたんだけど……

キース「おい。サシャ・ブラウスとジャン・キルシュタインの姿が見えないが、あの2人は何処に行ったんだ?」

エレン「え?」

キース「時間内にロッジに戻れと言ってあった筈なのに。誰か2人の行方を知らないか?」

ざわざわざわ………

皆、行方を知らないようだ。嫌な予感がする。

キース「まさか、コースを外れて遭難しているのか?」

キース先生が携帯で連絡を取ろうとしたが、繋がらないようだった。

キース「まずいな。仕方がない。班ごとに固まって2人を捜索するぞ。捜索隊を展開して2人を見つけるぞ」

スキー場のスタッフも勿論含めて緊急の捜索が始まった。

時刻は夜の6時だ。この時間帯は流石に空が薄暗くなっている。

だから懐中電灯を持参しての捜索になった。あいつら、どこに迷子になってるんだよ。

アルミン「まさかの遭難イベントが来るとは……ゲームとかじゃよくある事だけど」

アニ「ううーん。参ったね。雪が吹雪いていないだけマシだけど」

アルミン「吹雪いていたらもっとヤバかったね。なんかそういうシチュエーションってよく聞くけど、本当にそうなると胸が痛いよね」

アニ「エレンが夏に島流しに遭った時もそう思ったね」

エレン「面目ねえ……」

今度はジャンの番なのか。なんかそう思うと、前回のオレのアレも申し訳ない気持ちになった。

と、いろいろ考えて捜索をしていたら、結構あっさりあいつらが見つかった。

サシャをおんぶしてジャンが歩いている。スキー板を脇に抱えながらだからのろいけど。

ジャン「すまん……サシャが捻挫した」

エレン「えええええ?!」

ジャン「こいつ、調子に乗ってどんどん先に進んで滑っていたからさ。転んで右足を捻挫したんだよ。だからここまで背負って運んできた」

あちゃー。なるほど。そういう事だったのか。

アルミン「小屋に籠って2人でやらしー事でもしているかと思った」

サシャ「何馬鹿な事を言っているんですか?! ヤッてませんよ?!」

アニ「顔赤いよ? サシャ?」

サシャ「いやあああああ!? (顔隠し)」

ジャン「……………ホテルに帰ったらテーピングするぞ。幸いだったな。大した怪我じゃなくて」

サシャ「ううう………すみません」

と、ジャンに背負われたサシャが真っ赤になっている。

もうこれ、完全に堕ちているようにしか見えないんだがな。

そしてその日の夜の部屋割りは………ええっと、今夜はどうなるんだっけ?

アルミン「あー何か昨日はシャッフルし過ぎてわけわかめだったらしいね? エレンは」

エレン「総とっかえの後に結局、ミカサはヒッチと寝た訳だからな。今夜こそはミカサと一緒の部屋で寝たいんだが……」

アルミン「今夜は総とっかえしなくてもいいんじゃないかな? ミカサをこっちに呼べばいいと思うよ」

エレン「そうだな。そう何度もジャンに気遣う必要はねえよな」

という訳で17日の夜はミカサに501号室に来て貰う事になった。

ジャンは今夜、こっちに来ないので騒動も落ち着いたのかな? 多分。

ミカサとゆっくり夜を過ごせる。その事に感謝しながら、ミカサとの夜を楽しんでいたら……

隣の部屋から「女の声」が聞こえた。ええっと。おい。ちょっと待て。

隣はマルコとミーナだったよな? ええっと。声、殺してねえな。あいつら。

ミカサが真っ赤になって困っている。先を越された気持ちで一杯だけど。

ミカサ「今の声……多分、イッた時の声よね?」

エレン「だろうな。あいつら………ヤるならヤるでもうちょっと工夫しろよ」

いや、オレもあんまり人の事は言えないんだが。

何か先にやられてしまうとちょっとだけげんなりする自分がいる。

まあいいや。気持ちを切り替えよう。修学旅行中にイチャコラするカップルはオレ達だけじゃねえしな。

ミカサにキスの雨を降らせて集中していく。今日はスキーやスノボで体を動かしたからちょっとだけ疲れてはいるんだが。

疲れている時ほどムラムラするのは何故だろうな? 男にはそういう時がたまにある。

矛盾していると自分でも思うんだけどな。体の疲労感と比例してムラムラが高まる時があるんだ。

クリスマス公演の時みたいに疲れ切っている時はダメだけど。

程よい疲労感っていうのかな。軽く運動した後の方が乗り気になれるという事はある。

だからオレはベッドの中でミカサにキスをした。胸の突起を指で軽く触って、優しく優しく愛撫を仕掛ける。

ミカサ「ん………」

ミカサは胸を触ってやるとすぐ「溶ける」からな。

表情が緩んでいくのを見るとキスをしたくなる気持ちが止まらなくなる。

胸の弾力を楽しみながらオレはキスの位置を少し下げて顎や首筋に移動した。

ミカサ「あ………ん………」

今日のミカサは危険日だから、挿入するところまではやらないつもりだけど。

色っぽい声が聞こえてくるとだんだんその事を忘れそうになる自分がいた。

ダメだぞ。自重しろよ。今日はミカサを弄るだけだからな。

そう、自分に言い聞かせながらオレは少しずつミカサの服を剥いでいった。

前ボタンを外して手を胸の中へ滑り込ませる。直接肌に触れるとその温かさにびっくりした。

え? 熱でもあるんかな? ちょっといつもより熱くねえか?

エレン「ミカサ。熱あるのか? いつもより熱ある気がするんだが?」

ミカサ「え? そうなの? そんな感じではないけど」

エレン「んー気になるから一応、測っておくか」

という訳で体温計を使って熱を測ってみると……

エレン「あー37.3度か。微妙に熱いな。自覚なかったのか?」

ミカサ「みたい……喉も咳もなかったので、風邪ではないと思う。多分、旅行のせいでテンションがあがっているだけでは?」

エレン「子供みてえだな」

ミカサ「だって……」

ミカサが赤くなってもじもじする。

ミカサ「え、エレンと、その……イチャイチャ出来るかもと思うと、ついつい」

エレン「ぶふー」

ミカサがもじもじし始めた。そんなに楽しみだったのか。

ミカサ「風邪ではないと思うので、続けて欲しい」

エレン「いいのか?」

ミカサ「うん。体もきつい訳ではないし、単純にテンションが上がっているだけだと思う」

エレン「んーそうか。じゃあ続けてもいいかな?」

という訳でベッドインしなおしてオレはミカサとの長い長いキスを楽しんだ。

やべえ。危険日のミカサはテンション上がり過ぎだろ。顔の艶とかも普段よりいい。

可愛らしさが増すのは自然の摂理なんだろうけどさ。

まさか熱までちょっと上がってくるなんて思いもしなかった。

だから、オレもだんだん調子に乗ってしまって……。

頭の中の理性の鎖が緩んでいくのを感じていた。

服を脱がせた後はミカサの胸に食いついた。乳首に吸い付いて、下から掬い上げるような舌の動きを続ける。

ミカサ「ん……ん……あ…はあ……」

おっと。隣の間違いをミカサにさせる訳にもいかねえな。

脱がせた服を使ってミカサの口を塞いだ。縛ってすまん。声漏れ防止だ。

ミカサ「ふぐ………」

こうするしかねえもんな。本当は声聞きたいけどな。

もしキース先生が声漏れに気づいて点検にきたら………

ん? 待て。そうだよな。さっき声漏れしたから、キース先生、点検に来てもおかしくねえよな。

そう気づいてオレは一気に現実に戻された。そして慌ててミカサに服を着せる。

ミカサ「え? もうやめるの?」

エレン「いや、さっき隣で声漏れしただろ? キース先生、点検に来るかもしれんぞ」

ミカサ「あ! そ、それもそうね……」

エレン「1回元に戻っておこう。万が一バレたらまずいからな」

という訳で名残惜しいけど今日はここまでにしてアルミンに戻ってきて貰った。

オレの勘は当たった。ミーナの声漏れのせいでキース先生も流石に気づいたようで、念の為に2回目の点検に来たんだ。

間一髪だった。間に合った。オレの部屋はアルミンが戻ってきてくれたおかげで事なきを得たけど。

他のペアはどうだろうな? 最中に夢中になっていたら、間に合わずにキース先生に見つかった可能性もあるけど。

そんな訳で18日はペア交換がバレた組は反省させられていた。

スキーは中止になってロッジで待機になったそうだ。

とばっちりを食らったジャンとマルコはシュンとしていた。

サシャは捻挫中なので今日はどのみち、スキーは出来なかったけどさ。

コニーが一番がっかりしていたようだ。協力者も連帯責任らしい。

オレは咄嗟に判断してバレたかったから良かったけどな。あー良かった。

エレン「マルコ、お前ら、もうちょっと自重しろよ」

マルコ「うう……面目ない」

ミーナ「御免なさい。その、初めてだったから」

と、出来立てカップルは赤面して皆に野次られていた。

マルコ「まさかあんなに大きな声が漏れるとは思わなくて……その、本当にごめん」

コニー「まあでも、童貞卒業おめでとうって事だよな? 良かったな。マルコ」

マルコ「うううう……まさかすぐにバレる事になるとは思わなかった(顔隠し)」

という訳でこっちのカップルも無事に通過点を通り越したようだ。

フランツ「まあまあ。昨日は1日滑ったし、今日はロッジでのんびりするのも悪くないよ」

ハンナ「そうだよ。ゆっくり皆でおしゃべりしていればいいじゃない」

と、謹慎処分中なのに呑気な馬鹿夫婦だった。

エレン「ま、それでいいならいいんじゃねえか? オレ達は最後のスキーを楽しむけどな」

コニー「くそー! 裏切者!」

エレン「咄嗟にすぐ「やべえ」って気づいたからな。オレ達も間一髪だったし」

と言いながらオレ達はその日の最後のスキーを十分に楽しんだ。

アルミンは2日目になるとちょっとだけ滑れるようになってアニが小さな拍手をしていた。

アニ「やれば出来るじゃないの。あと1日練習出来たらもっと滑れたかもね」

アルミン「かな?」

アニ「あんたの場合、基本的な筋力が足りてないだけかもね? 運動神経そのものは普通にあるんじゃないのかな」

アルミン「そうなのかな?」

アニ「うん。クリスタは筋力は足りていて使い方を間違えるタイプみたいだけど。アルミンの場合は筋トレしたら結果が違ってくるかもよ?」

アルミン「だといいんだけどねえ」

と言いながらアルミンもアニとちょっとだけ仲が良くなっていたようだ。

そして長野の最後の夜。この日は流石に部屋交換はせずにアルミンとの夜を優先した。

2人きりの今なら、話せるかもしれない。そう思ってオレは思い切ってその日の夜に「オレの過去」についてアルミンに話す決意をしたんだ。

アルミンは初めは驚いてオレの話を聞いてくれたけど、次第に「なるほど」と納得して普通の顔に戻った。

アルミン「そういう事か。なるほど。エレンは一度、そういう「修羅場」を潜り抜けた経験があったんだね」

エレン「………すまん」

アルミン「謝る事じゃないよ。だからたまに変に「大人ぶっている」時があったんだね。無意識の内に、そういう「凶暴な自分」を抑え込んでいた訳だ」

エレン「気づいていたのか?」

アルミン「気づかない訳ないだろ? 僕との付き合い、長いんだから。エレンがたまに「ん?」と思うような事を言う事があるなっていうのは薄々気づいていたよ」

エレン「そうだったのか……」

アルミンの観察力はやっぱりすげえな。

>>948
訂正

とばっちりを食らったジャンとコニーはシュンとしていた。


とばっちりはジャンとコニーですね。間違えました。

アルミン「だから「止めて欲しい」って言い出したんだね。分かった。言葉の重みが予想より重くて正直びっくりしたけど。そういう事なら僕も腹をくくるよ」

エレン「すまねえ」

アルミン「いいって。そもそも、ジャンみたいにミカサに横恋慕しようとする奴の方が人道的に間違っているんだから。エレンがイライラするのも当然だよ?」

エレン「今のジャンはもう、その気はねえけどな」

アルミン「まあね。でも、別の男がミカサを狙わないとも限らないからね。分かった。エレンの気持ちは理解出来たから。「ヤバい」と思った時はどんな手を使っても止めるからね」

エレン「頼む……」

アルミン「うん。こういうのって持ちつ持たれつっていうでしょ? コニーの件もそうだし。やっぱりそういうのって助け合ってこそじゃないのかな?」

と、アルミンは笑ってオレの事を受け入れてくれた。

良かった。ドン引きされなくて。アルミンはオレにとっての最高の「親友」だ。

そして長野の夜を無事に過ごして、バスと新幹線を乗り継いでオレ達の修学旅行はあっという間に終わったのだった。

5泊6日って長いかなって思っていたけど意外と短く感じた。

もっと贅沢を言うならあと2~3日は旅行してもいいかなって気分だった。

特に京都とか、駆け足の見学だったしな。もう1回、個人的に他の寺も見てみたいと思ったくらいだった。

そして19日の夕方というか、夜に近いくらいの時間に家に帰り着いて、荷物を自分の部屋に置いた。

着替えとかを洗濯籠に放り込んで、お土産とかをおばさんに渡して、一先ず自分の部屋であぐらをかいて。

旅行中の事を思い出したり。ニヤニヤしたり。

ふーと一息ついていたら、ミカサがオレの部屋にやってきた。

着替えてこっちに来てくれた。ん? どうしたんだろうな?

ミカサ「エレン。そう言えば、忘れていたのだけど」

エレン「ん?」

ミカサ「エルヴィン先生から借りていた「風と共に去りぬ」のディスク、まだ返していなかったように思う」

エレン「ああああ! しまった! 借りっぱなしだったなそう言えば!」

実は文化祭の後、エルヴィン先生に風と共に去りぬの話を振ったら「持ってるよ?」って話だったから、もうエルヴィン先生に借りたんだよな。

そして2人で続きを見て「いい映画だなー」と感動したんだよ。

んで、クリスマス公演の件でバタバタしているうちに、返却するのを忘れていたんだ。完全に。

だからテレビの周辺を整理していたら、もっと忘れていた事を思い出した。

エレン「あああああ?!」

ミカサ「どうしたの?」

エレン「オレ、アルミンにも借りっぱなしだった物があった!」

ミカサ「アルミン? どれ?」

エレン「ガキの頃の演劇の録画だよ。前に言っただろ? オレ、王子様を演じたって」

ミカサ「そうだった。録画があるの?」

ミカサが身を乗り出してこっちに近寄って来たんで、オレも頷いた。

エレン「アルミンの亡くなったおじいちゃんが昔、撮っててくれていたんだ。仮面の王女の時の参考になるように見直したんだけど、借りたまま返すのすっかり忘れていたぜ」

と、そのディスクを漁っていたら、ミカサが「見たい」と言い出した。

エレン「え? 見るのか?」

ミカサ「小さい頃のエレンを見てみたい(わくわく)」

エレン「まー別にいいけどさー」

と、いう訳でミカサとは初めてそのディスクを鑑賞する事になった。

うはー。小さいオレが王子様やってるぜ! アルミン、相変わらず可愛いなあ。

と、ついついデレデレしてみていると………

あれ? ミカサの様子がおかしいな? 顔が固まっている。

そして突然泣き出して、ボロボロに泣き出して、え? 何で泣くんだよ?!

エレン「どうしたミカサ?! な、何で泣いて……」

その直後、ミカサは一度部屋を出て何かを持ってきた。

その「物」というのは、「マフラー」と「手袋」だった。

エレン「………え?」



ドクン………



見覚えがあった。大分、汚れているけど。血の跡らしきものもあるけど。

そのデザインは、オレの母さんが昔、作ってくれた物と酷似している。

ミカサ「エレン、これ、見覚えある?」

エレン「ああ……あるけど。え? 何でミカサがそれを持っているんだ?」

ミカサ「エレンがくれた。私にくれたの」

エレン「……………え?」



ドクン………



心臓が、また、跳ねた。

今、ミカサは何を言って……・

ミカサ「小さい頃のエレンの映像を見て確信した。あの時、私と母を救ってくれた少年は「エレン」よね?」

エレン「え? え? え?」

ミカサ「雪の降っていた真冬、私の命を助けてくれたあの少年は、エレンよね?!」

エレン「………………」

待ってくれ。まさか。まさか………

ミカサ「車を奪って、襲われた男達をひき殺した。私もあの時、加勢してあいつらを殺してやった。あの時のエレンの指示がなかったら、私はここに生きていない!」

エレン「じゃあ、本当に………?」

あの時の、あの女の子は、ミカサなのか?

本当に、本当に、そうなのか?

するとミカサはひとつ強く頷いて、泣きじゃくったんだ。

ミカサ「エレンで間違いない! このマフラーと手袋がその証拠! 見覚えがあるのよね? エレンのくれたマフラーと手袋で間違いないのであれば……!」

その瞬間、オレ、もうなんか、頭の中が訳わかんなくなっちまって。

雷に打たれるような感覚、なんてもんじゃねえ。

頭の中、真っ白で、やばい。

震えて、何も言えなくて。涙が、自然と溢れてきて……。

弱弱しく、ミカサを抱き留める事しか出来なかったんだ。

ミカサ「こんなに、こんなに近くにいたなんて……!」

エレン「ああ……オレも気づかなかった。まさか、こんなに近くに……」

リヴァイ先生とハンジ先生の劇のアレの比じゃねえよな。コレ。

お互いに気づかないまま、恋愛していたそれの比じゃねえよ。コレ。

オレ達の方が酷いじゃねえか! こんなに、近くに、近くに、居たのに…。

その直後、オレ達は自然と見つめ合って、もう、何も考えられなくなった。

キスして、キスして、ミカサがオレの上に覆い被さってきて。

頭の中が焼けつくような感覚を味わいながら、オレは服を脱いで、ミカサも脱がせて。

理性が吹っ飛ぶって、こういう事を言うんだな。前戯も碌に出来ないような、激しい繋がりを求めてしまったのに。

ミカサも全く嫌がらないでオレを受け入れてくれた。きっと、痛かっただろうに。

身体を解しきれていない段階で挿入をやっちまって。

というか、もっと大事な事を、オレはこの時、忘れてしまって。

気がついたら、その………。

オレは「避妊具」を使わないまま、ミカサの中に「出して」いたんだ。

我に返って青ざめた。

オレ、何をした。

何をしでかした。

やるべき事、ちゃんとやらずに、やってしまった。

っていうか。

何だ。コレ。

ゴムが「ある」状態でのセックスと、「無し」の状態でやるのじゃ、雲泥の差があった。

まるで今までのセックスが遊びのような。疑似的というか。

「本物」のセックスの気持ち良さを知ってしまって、オレは頭の中がおかしくなりそうだった。

そうか。

リヴァイ先生が「懸念」していた事って、もしかして……。




ミカサ「ううん……」



ミカサがまだ眠っている。横で幸せそうに眠っている。

そんなミカサを見ていたら急に罪悪感が芽生えてきた。

危険日は避けたとはいえ、その可能性がない訳じゃない。

何よりあくまであれは「予測」であって、100%回避出来る訳じゃねえんだ。

学生の内は中出しだけは絶対やっちゃいけないって思っていたのに。

オレはやらかしてしまった。本当に、クズ野郎だ……。

そしてオレはこの時、決意した。

ミカサには詰られるかもしれない。反対されるかもしれない。だけど。





エレン「オレ………ミカサと離れて暮らさないとまずいかもしれない」





そう、呟いて、其の時のオレは自分の顔を覆う事しか出来なかったのだ。










ミカサ「この長い髪を切る頃には」2へ続く。

…………という訳で、遂にやっちまったエレンでした。
この後はミカサ視点に戻って過去回想と話の続きになる予定です。

エレンパートが長くなってしまってすみません。
ミカサパートではリヴァイ先生とハンジ先生の方はある程度省略でもいいかな?

とりあえず、続きが気になるところですがこのスレではここまでです。
残りは雑談にでも使用して下さい。ではまた次のスレでお会いしましょう。ノシ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月08日 (金) 18:02:26   ID: Ou5QK7uQ

いい加減ジャンはミカサ諦めて欲しいんだけど。
ウザいなぁ。

2 :  SS好きの774さん   2014年08月09日 (土) 20:59:20   ID: UtE5dAF6

一々、ジャンの反応を伺うエレンもどうかと思う。
"お前には関係ない"位言って欲しいよ。

3 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 11:41:55   ID: NGz4t72W

ジャンが先に告白しても絶対にミカサはOKしてないよ。

4 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 20:09:46   ID: CjSuksFn

あぁー、エレンの行動にイラっとするわぁ〜。
ミカサが現場見てたら冷めるんじゃ?

5 :  SS好きの774さん   2014年08月29日 (金) 13:14:01   ID: FwmhAGVA

エレンとミカサはこのままで良いよ。
そのまま波風立てないで欲しい。
他はどうでもいい。

6 :  SS好きの774さん   2014年09月07日 (日) 12:00:17   ID: xokQiza0

コニーは新しい恋を始めて欲しいな。
間違ってもヨリを戻す事がないことを祈る。

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