真姫「変な人」【ラブライブ!】 (118)

海未「穂乃果! また授業中に居眠りしていたでしょう!」

穂乃果「でも今日は先生に怒られなかったもん!」

海未「それはことりが起こしてくれたからです! まったく、いつも迷惑をかけて…」

穂乃果「だって授業って退屈だし眠いし、仕方ないじゃん!」

海未「何が仕方ないんですか! 学生の本分は学業! 成績が落ちたらμ’sの活動だって出来なくなってしまうかもしれないんですよ!」

穂乃果「うぅっ……て、テスト前になったら誰かに勉強見てもらうから平気だもん!」

海未「その考えがそもそも間違っているんです!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん、落ち着いて…」

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凛「またやってるにゃー…」

花陽「あの二人、よくああやって言い合ってるよね…」

にこ「ホント、よく飽きないわね」

希「まぁ穂乃果ちゃんの居眠りは今月に入って七回目やし……海未ちゃんも相当溜まってるみたいやしね」

絵里「そろそろ練習を始めたいのだけど……もう少しかかりそうね」


海未「大体穂乃果はだらしなさすぎるんです! もっとシャンとしないと、しっかりした大人になれませんよ!」

穂乃果「海未ちゃんがシャキッとしすぎなだけだよ! 普通の女子高生はみんなこんな感じだって! ね、ことりちゃん!?」

ことり「えっ!?」

海未「そんなことないです! ことりもそう思いますよね!?」

ことり「ふええぇ……ことりに振られても困るよぉ…」


花陽「こ、ことりちゃん、可哀想…」

絵里「完全なとばっちりね…」

希「幼なじみやし、話も振りやすいんやろうねぇ…」

凛「……それにしても、穂乃果ちゃんを怒ってるときの海未ちゃんはちょっと怖いにゃ…」

にこ「あー……確かに普段とはちょっと違うわよね。眉間にしわも寄ってるし、アイドルとしてはどうなのかしら…」

真姫「怒ってるときまでアイドルのこと考えてる人なんていないでしょ」

にこ「にこは考えてるわよ?」

真姫「にこちゃんは例外。それはさておき、そろそろあの二人止めたほうがいいんじゃないの。練習も始められないし」

絵里「止めたいのはやまやまなんだけど…」

穂乃果「ことりちゃんは穂乃果の味方だよね?」

ことり「え、えっとー…」

海未「ことりからも言ってあげてください。このままでは穂乃果の将来が大変なことになってしまうと」

ことり「あぅー……」


絵里「…やっぱり、そろそろ助けてあげたほうがよさそうね」

希「やね。よし、ちょっと行ってこよか、凛ちゃん」

凛「ええぇっ!? り、凛は止められる自信ないよー…今の海未ちゃん、怖いんだもん…」

希「えー。でもウチ一人じゃしんどいし…」

花陽「わ、私も、ちょっと自信が……」

にこ「にこもパース。あの二人の言い争いには関わりたくないし」

真姫「……私もあんまり関わり合いたくないわ」

希「エリちー……」

絵里「はいはい、分かってるわよ。私が一緒に行ってあげるから」

希「やった! よし、じゃぁいこか」

絵里「ええ」


―――――

真姫(で、結局二人のおかげで練習を始めることが出来たけど…)チラ

穂乃果「……」ムスー

真姫(穂乃果はいまだに不機嫌ね…)

にこ「ちょっと穂乃果! そんなムスッとした顔で踊るんじゃないわよ!」

穂乃果「だってー…」

海未「穂乃果、テンポが遅れてきてますよ」

穂乃果「わ、分かってるもん!」

海未「なら直してください」

穂乃果「うー……」



真姫「……あの二人、喧嘩してるの?」

凛「どう見てもそうじゃないかにゃ?」

花陽「希ちゃんたちが止めにいったのはいいけど…お互い納得できてないままなんだろうね、多分」

真姫「ふーん……別にそんな大した理由でもなかった気がするけど」

花陽「ま、まぁ、授業中の居眠りから始まったくらいだからね…」

真姫「…めんどくさい人たちね」

凛「真姫ちゃんが言う?」

真姫「どういう意味よ…」

凛「真姫ちゃんも十分めんどくさいって意味にゃ」

花陽「り、凛ちゃん、少しはオブラートに包んで…」

真姫「大体、居眠りしていた穂乃果も悪いけど、海未もあんなに大騒ぎするほどのことでもないでしょ」

凛「確かに居眠りは凛もよくしちゃうしねー…」

花陽「よくないことではあるんだけどね…」

真姫「でもあそこまで怒らなくてもいいじゃない」

凛「んー……海未ちゃん、穂乃果ちゃんのことはよく怒ってるし……怒るのが好きなのかな…?」

花陽「そんな特殊な趣味ではないだろうけど……心配なんじゃないかな、穂乃果ちゃんのこと」

真姫「心配?」

花陽「うん、だってさっきも言ってたよ。しっかりした大人になれない、って。それで怒るってことは、穂乃果ちゃんにしっかりした大人になってほしいってことじゃないかな」

凛「にゃー…なんかお母さんみたいだね」

花陽「それが一番近いかもね。海未ちゃんもきっと、ことりちゃんと同じくらい穂乃果ちゃんのこと大好きなんだよ」

真姫「そうは見えないけど……。そもそもそれなら怒ったりしないでしょ」

花陽「でもそれだと穂乃果ちゃんが反省しないかもしれないよ。そしたら本当にダメな大人になっちゃうかもしれないし……それが心配なんじゃないかなぁ」

真姫「ふーん……」

真姫(まぁどのみち、よく分からないけど…)

真姫(…普通、その人のことが好きだったら、怒ったりなんてしないでしょ)


―――――

凛「でね、その番組がすっごく面白くてね!」

真姫「……あっ」

花陽「真姫ちゃん、どうかした?」

真姫「部室にちょっと忘れ物したみたい。ごめん、取りに行ってくるわ」

凛「あ、じゃぁ凛たちも付き合うよ」

真姫「いや、いいわ。凛は早く帰って今言ってた番組を見たいんでしょ」

花陽「じゃぁ私が…」

真姫「子供じゃないんだから、一人でも平気よ」

花陽「じゃぁ、先に帰るね…」

凛「うぅ……ごめんね、真姫ちゃん…」

真姫「いや、そんな落ち込まなくても……。また明日ね」

凛「うん! じゃーね真姫ちゃん! また明日ー!」ブンブンッ

真姫(そんなに手を振らなくても…)

真姫(……やっぱり、好きな相手にはああいう風に接するものよね、普通は)


花陽『海未ちゃんもきっと、ことりちゃんと同じくらい穂乃果ちゃんのこと大好きなんだよ』


真姫(花陽はあんなこと言ってたけど……海未はことりたちに対しては優しく接してるし、やっぱり穂乃果のことを好きだとは思えないんだけど…)

真姫(……ま、どうでもいっか。とりあえずさっさと忘れ物を取りに行きましょ)



ガチャ


海未「え? ……あ、真姫ですか」

真姫「…海未? まだ残ってたの?」

海未「はい。少しノートをつけていて」

真姫「ふーん……穂乃果たちは?」

海未「穂乃果は店番、ことりもお家のお手伝いがあるらしく、先に帰ってもらいました」

真姫「そう」

海未「このノートも普段は家で書いているのですが……今日はなんとなく部室で書きたい気分だったので」

真姫「へえ…」

海未「…真姫は何か忘れ物ですか?」

真姫「ええ。邪魔して悪いわね」

海未「いえ、全然」

真姫(まさか海未が一人でいるとは思わなかったから、ちょっとビックリしたわ)

真姫「……」チラ

海未「……」カキカキ

真姫「……ねぇ」

海未「はい?」

真姫「そのノートって何のノートなの?」

海未「μ’sの練習記録…でしょうか。正式な名前はないのですが」

真姫「練習記録? …ちょっと見てもいい?」

海未「どうぞ」ス

真姫(…綺麗な字ね。というか、これって今日の練習メニューよね。なんでわざわざこんなものを記録に……って、よく見たら下にメンバー一人一人についての考察が書いてある…)

真姫(苦手なステップとか得意なステップとか、何故かアドバイスまで……)

真姫「…これ、なんのために書いてるの?」

海未「今後の練習に生かそうかと思って。これを見て練習メニューを決めたりしてます」

真姫「……なんか、大変そうね」

海未「そうでもないですよ。練習メニューを組むのは楽しいですから」

真姫(そういえば合宿の時もノリノリで用意してたわね…)

海未「それに、みんなが上達していく過程を見守っていられるのは、なんというか、嬉しいですし」ニコ

真姫「……海未って笑うのね」

海未「は、はい?」

真姫「あ、ご、ごめん……思わず…」

海未「いえ……まぁ、真姫たちの前では怒ってばかりですからね。今日も迷惑をかけてしまって…すみませんでした…」

真姫「別に気にしてないけど……」

真姫(…なんかこういう姿を見てると、さっき穂乃果と喧嘩してた時とは別人みたいね。……今なら、聞いても怒られないかしら)

真姫「……ねぇ海未」

海未「なんですか?」

真姫「海未って……穂乃果のこと……どう思ってるの?」

海未「どう、とは?」

真姫「えっと……好きか嫌いかってこと」

海未「それはもちろん、好きですよ。幼なじみですから」

真姫「…その割には穂乃果にはよくお説教してるわよね。あと喧嘩とかも」

海未「ああ……なるほど。つまり真姫は、私が穂乃果のことを嫌いだから穂乃果に対して厳しいんじゃないかと、そういうことですね」

真姫「嫌いとまでは思ってないけど……まぁ、そんな感じ」

海未「誤解されるのは嫌ですからハッキリ言っておきますが、私は穂乃果のことが好きですよ。大切だと思ってます」

海未「しかしそれと同時に穂乃果に厳しくしているのも事実です。けどそれは嫌いだからとかそういうわけではなく、好きだからこそなんです」

真姫「好きだからこそって……普通は好きな人には優しくするものじゃないの?」

海未「そう出来たらいいんですけどね。私はあまり器用ではないので……穂乃果が何かをしでかす度にどうしても叱ってしまうんですよ」

真姫「……それって、嫌いってこととどう違うの?」

海未「えっと……自分で言うのも恥ずかしいですが、穂乃果のことを思って言っている、という点でしょうか」

真姫「思って…?」

海未「はい。たとえば今日の件ですけど、穂乃果が授業中に眠ってしまうと、当然穂乃果はその授業を聞けないわけですよね。そうすると授業の内容が分からなくなってしまうでしょう」

海未「そうなったら困るのは穂乃果自身です。そんな風にあの子に困ってほしくないから怒るんですよ。怒られれば、次はもうしないって思ってくれるかもしれませんから」

真姫「……つまり、穂乃果のために怒ってるってこと?」

海未「恩着せがましい言い方になってしまいますが、そういうことですね」

真姫「…けど、それでもし穂乃果に嫌われたらとか、考えないの?」

海未「え?」

真姫「……私は、友達に嫌われるのとか、嫌だから」

真姫(元々そんなに友達が多い方でもないし……だから、小さい頃から一度も友達と本格的な口論をしたことがない)

真姫(たとえば、授業中に凛が寝ていたとしても……呆れるくらいで、海未みたいに怒ったりは出来ない。だってそれで嫌われたら、きっとすごく傷つくから)

海未「……そうですね。穂乃果やことり以外の人なら、そういうことも考えてしまうかもしれません」

海未「でも穂乃果たちとは長い付き合いですし、二人は私の性格を分かってくれていますし、今更怖くなったりはしませんよ」

海未「それに、穂乃果は良い子ですから。そんな理由だけで人を嫌うような子じゃありません」

真姫「…そう」

海未「……ところで真姫、忘れ物はいいんですか?」

真姫「あっ……わ、忘れてたわ」

海未「もうそろそろ辺りも暗くなりますし、早く帰ったほうがいいですよ」

真姫「ん…。……海未は帰らないの?」

海未「私はもう少しそれを書いてから」

真姫「あ……ごめん。私、ノートずっと取ってたわね」

海未「いえ。ちょうど手が疲れてきたところでしたし、真姫が来てくれて良い休憩になりました」

真姫「……なら、いいけど」


真姫「……」

海未「忘れ物、見つかりましたか?」

真姫「ええ」

海未「では、また明日」

真姫「……また」

真姫(…なんか海未って、変な人ね)

真姫(そもそも弓道部と兼任な時点でおかしいと思ってたけど……どうしてμ’sの活動をしてるのかしら。性格的にもあまりアイドルって感じじゃないし、……穂乃果に頼まれたから?)

真姫(練習メニューだって、練習の時にリズムをとる役だって、みんなのタイムを計る係だって、別に誰に頼まれたわけでもないのに、気が付いたら海未がやってるし)

真姫(それに、誰に見せるわけでもないのに、あんな丁寧なノートまで書いて……あと作詞もしてるし。…よく過労で倒れないわね)

海未「……真姫? どうかしましたか?」

真姫「あ……いや、別に、なんでも」

海未「ならいいんですが……練習で疲れてしまったのなら、今日は早めに休んだほうがいいですよ」

真姫(普通に考えて、疲れてるのは海未のほうでしょ…)

真姫「…分かってるわよ、それくらい」フイッ

海未「余計なお世話でしたね、すみません」

真姫(…後輩がそっぽ向いて返事したら、少しは怒るくらいしなさいよ。なんで逆に謝るのよ。いや、μ’sには先輩後輩とかないけど…)

海未「では、気を付けて帰ってくださいね」

真姫「……うん」

真姫(ホント、変な人)


―――――

海未「穂乃果! そこのステップズレてますよ! ちゃんと周囲とタイミングを合わせないと、隣の人とぶつかってしまいます!」

穂乃果「ご、ごめんなさいっ」


凛「海未ちゃんと穂乃果ちゃん、今日も絶好調だにゃ」

花陽「でもなんだか昨日と違って微笑ましい感じだし、仲直りしたのかな」

凛「そうだねー。いつまでも喧嘩してたら凛たちも気まずいし、よかったにゃ」

真姫「……」

真姫(喧嘩するのも早いけど、仲直りするのも早いのね。……昨日海未が言った通り、穂乃果は海未の性格を分かってるからってことなのかしら)

花陽「…真姫ちゃん?」

真姫「ん?」

凛「ボーッとしてたけど、大丈夫? 疲れたの?」

真姫「あ、いや……あの、ちょっと聞いていい?」

花陽「なに?」

真姫「二人って、喧嘩することとかある?」

凛「喧嘩? んー……あんまりないかなぁ…」

花陽「確かにあんまり覚えがないかな……凛ちゃんはいつも私を気にかけてくれるし、私に合わせてくれるから、喧嘩にならないのかも」

凛「かよちんだっていつも凛に優しいよ! かよちん大好き!」

花陽「えへへ……私も凛ちゃんが大好きだよ」

真姫「まさかノロケられるとは思わなかったわ…」

凛「大丈夫! 凛は真姫ちゃんのことも同じくらい大好きだよ!」

花陽「私も。真姫ちゃんも凛ちゃんも、μ’sのみんなも大好きだよ」

真姫「……あなたたちってなんか、天使みたいよね…」

りんぱな「え?」

真姫(……やっぱり、海未たちの仲良しの形って、少し変わってるわね)


―――――

真姫(私が日直だからって、普通こんな量のノート、一人の生徒に持たせるものかしら…しかもすごく重いし…)

真姫(あーあ、こんなことなら、花陽と凛と一緒にアルパカの餌やり行けばよかったわ。でもあのアルパカちょっと怖いのよね。特に茶色い方は威嚇してくるし…)

真姫(……というか今更だけど、ノートが邪魔で視界がよく見えな…)


ヒョイ


真姫「え?」

海未「大丈夫ですか……って、ああ、真姫だったんですね」

真姫「あ、海未……というか、なんで私のノートを…」

海未「いえ、一人で運ぶには大変な量だと思ったので、お手伝いしようかと」

真姫「いいわよ、別に。悪いし」

海未「そういうわけにはいきません。真姫は大切な友人ですから」

真姫「……でもさっき、真姫だったんですね、って言ったわよね?」

海未「言いましたけど…それがなにか?」

真姫(それってつまり、私と知らずにノートを取ったってことじゃない。相手が友達じゃなくても助ける気だったくせに、私には友達だからって理由で通すのね。…意味分かんない)

真姫「…別に」

海未「?」

真姫「というか、海未は一人なの?」

海未「はい。穂乃果たちは先に教室に戻っています」

真姫「珍しいわね、別行動なんて」

海未「そんなに四六時中一緒というわけでもないですよ。では行きましょうか。どこに運べばいいんですか?」

真姫「…職員室」



―職員室前―


真姫「手伝ってくれてありがと。助かったわ」

海未「いえ。では、また放課後に」

真姫「ええ」

穂乃果「あ、海未ちゃーん!」

海未「え、あ…穂乃果? それにことりまで…」

真姫「?」

真姫(なんか海未の顔色が急に悪くなった気が…)

ことり「あれ? 真姫ちゃんがどうしてここに……あ、もしかして海未ちゃんを手伝ってくれてたの?」

真姫「え? いや、手伝ってくれたのは…」

穂乃果「海未ちゃんってば、真姫ちゃんに手伝ってもらうくらいなら、穂乃果たちが手伝ったのにー」

ことり「そうだよー。結構プリント多かったのに、一人でいい、なんてカッコつけて…」

海未「べ、別にカッコをつけたわけでは…」

穂乃果「でも結局、真姫ちゃんに手伝ってもらったんでしょ?」

海未「う……それは…」

真姫(…話が見えない)

海未「と、というより、どうして二人はこんなところにいるんですか」

穂乃果「海未ちゃんを手伝いに来たに決まってるでしょ。断られたけど、さすがに海未ちゃん一人に任せるのは悪いなぁって思ったの」

ことり「ちょっと遅かったみたいだけどね」

海未「えっと……心配してくれたのはありがたいですけど、もうお昼休みですし、教室に戻りましょう。お昼ご飯を食べる時間がなくなってしまいますよ」

穂乃果「はーい。あ、真姫ちゃん、海未ちゃんを手伝ってくれてありがとうね」

ことり「ことりからも、ありがとう真姫ちゃん」

真姫「……」

海未「と、とりあえず、二人は先に帰っていてください」

穂乃果「? なんか変な海未ちゃん。じゃぁ先行ってるねー」

ことり「海未ちゃんも早く来ないと、ことりたちがお弁当食べちゃうよー」

海未「…まったく……」ハァ

真姫「まったく、は、こっちのセリフなんだけど」

海未「あ……えっと…」

真姫「分かりやすく説明してくれる?」

海未「えっと…真姫に会う前に、私自身も先生に、プリントを職員室に運ぶように頼まれていたんです」

真姫「…つまり海未は職員室までの道を二往復したというわけね」

海未「正確には二往復というわけではありませんが……まぁ、職員室に入ったのは二度目でした」

真姫「なら先に言ってくれればよかったのに」

海未「言ってしまったら、真姫は私に悪いと思って遠慮したでしょう。真姫の持っていた量は、どう考えても一人じゃしんどいものでしたよ」

真姫「……お節介」

海未「そ、そういう性格なんですから、仕方ないじゃないですか」

真姫「性格ね…」

海未「…真姫だって、私と同じ立場なら同じことをしたと思いますよ」

真姫「そうかしら」

海未「花陽や凛が困っていたら助けるでしょう?」

真姫「それはもちろん」

海未「それと同じですよ」

真姫「……花陽と凛は、私にとって大切な友達なんだけど」

海未「もちろん知ってますよ」

真姫「…それと同じなの?」

海未「? ええ」

真姫「ふーん…」

真姫(…海未にとって私って、そんな大切な友達なの?)


―――――

海未「穂乃果ぁっ!」

穂乃果「うわーんっ」


凛「もはやこの光景は日常だね…」

真姫「…穂乃果、今日は何をしたわけ?」

ことり「今日の授業で小テストがあったの。それがちょっと難しくて……で、穂乃果ちゃん、爆睡しちゃって…」

花陽「穂乃果ちゃんはしょっちゅう寝ちゃうね…」

真姫「……」


穂乃果「あんな難しい問題、穂乃果が解けるわけないもんっ」

海未「何を開き直ってるんですか! だから昨日一緒に勉強しようと誘ったじゃないですか!」

穂乃果「だって昨日は見たいテレビがあったから…」

海未「ほーのーかー……」ゴゴゴゴゴ

穂乃果「ご、ごめんなさい!」ビクゥッ


絵里「…あの二人は、練習のことを覚えているのかしら」

希「まぁ海未ちゃんも今回は相当怒ってるみたいやからねぇ…」

にこ「でも穂乃果のほうはやけに大人しめね」

希「今回ばっかりは自分が悪いって受け入れてるからやないかなぁ。テスト中に爆睡やしね…」

にこ「あー……まぁでも、にこもたまにやるわ。静かだから寝やすいのよ」

希「にこっちもテストは真面目に受けようね…」


穂乃果「で、でもね、海未ちゃん!」

海未「なんですか」

穂乃果「海未ちゃんが昨日、穂乃果の家に来てくれれば、穂乃果だって勉強しようと思えたよ!」

海未「……それはつまり、私が悪いと言いたいんですか?」

穂乃果「わ、悪いとまでは……」


真姫「……海未も大変ね」

凛「にゃ?」

真姫「何よ」

凛「いや、珍しいなーと思って。真姫ちゃん、今までは穂乃果ちゃんの味方してたから」

真姫「わ、私はどっちの味方でもなかったわよ。ただくだらないと思ってただけ」

凛「へー…それが今日は海未ちゃんの味方だなんて……真姫ちゃん、どういう心の変化かにゃ?」

真姫「……別に、なんだっていいでしょ」

真姫(私自身もよく分かってないし…)



真姫(…園田海未、先輩)

真姫(弓道部でもはレギュラーで、結構上手いほうらしい。人前に出るのが苦手で、恥ずかしがると途端に面倒くさい人になる。穂乃果とことりの幼なじみ。…あと、お節介な性格)

真姫(……よく考えると、私って海未のことほとんど知らないのね)


海未「あ、真姫、ちょっといいですか?」

真姫「え?」

海未「この後、少し付き合ってもらえませんか?」

真姫「いいけど……何か用なの?」

海未「はい。新曲のことで少し相談が」

真姫「ああ、なるほど……じゃぁ音楽室のほうがいいわね」

海未「そうですね。ありがとうございます、真姫」

真姫「…うん」


―――――

真姫「で、相談って?」

海未「ここのフレーズなんですけど…どうしてもしっくりこなくて」

真姫「…そう? 私は良いと思うけど」

海未「そうでしょうか…」

真姫「んー……じゃぁこうしてみたら?」

海未「ああ……なるほど。確かに、このほうがいいですね。ここは変更しましょう」

真姫「ええ」

海未「…」カキカキ

真姫「……海未って、字が綺麗よね」

海未「え? な、なんですか、急に」

真姫「いや、ノート見せてもらったときも思ったんだけど……綺麗な字だなって」

真姫「前にパパが言ってたんだけど、字は人を表すって。海未の字って綺麗だし、まさにその言葉通りだなって思ったんだけど…」

海未「……っ…///」カアアアァッ

真姫「……な、なんで、そんな赤くなってるのよ」

海未「い、いえ、字を褒められることは、あまりないので…慣れなくて…///」

真姫「そ、そう。……なんか、ごめん」

海未「ま、真姫は悪くないです! ……むしろ、ありがとうございます。褒めてもらえてすごく嬉しいですよ」ニコ

真姫「っ…」

真姫(やっぱり海未の笑顔って、なんか、見慣れないから……変な感じ)

海未「真姫?」

真姫「あ、いや……なんでもない」

海未「そうですか。あ、それからこの箇所なんですが…」


―――――

海未「今日は付き合ってくれてありがとうございます」

真姫「気にしないで。私も良い曲が作りたいし」

海未「そう言ってもらえると助かります。では、そろそろ帰りましょうか」

真姫「ええ。……って、二人で?」

海未「そのつもりですが……嫌ですか?」

真姫「嫌ってわけじゃないけど…」

真姫(海未と二人………滅多にないことだから、妙な緊張感が…)

海未「それにしても、真姫はすごいですね」

真姫「え?」

海未「ピアノも上手ですし、歌も歌えて、それからダンスも達者で。今日も作詞のことで助けてもらいましたし」

真姫「…褒めたって何も出ないわよ?」

海未「そんなつもりはありませんよ。純粋に思ったことを言ったまでです」

真姫「……海未って、時々本当に恥ずかしがりなのか分からなくなる時があるわ」

海未「そうですか?」

真姫(よくそんなストレートに言えるわね…)

真姫「……大体、すごいって言うなら海未だってそうじゃない」

海未「私はピアノは弾けませんよ」

真姫「でも弓道は出来るでしょ」

海未「それは……そうですね」

真姫「…意外と素直に認めるのね」

海未「弓道をしているのは事実ですし」

真姫「……それに、歌だって、私は上手いと思うわ。ダンスももちろん」

真姫「あと、お節介だけど優しいし、人に気を使えるし、穂乃果の面倒もよく見てるし、偉いと思う。本当に。もうちょっと休めばいいのにって思っちゃうくらい」

海未「……」

真姫「…何よ、そのポカンとした顔は」

海未「あ、いえ……真姫がそこまで褒めてくれるなんて意外だったので、つい驚いてしまって」

真姫「私だって人を褒めることくらいするわ」

海未「ふふ、そうですね。ありがとうございます」ナデナデ

真姫「っ……、な、なんで頭撫でるのよ」

海未「えっと…なんとなく、ですね」

真姫「……バカにしてる?」

海未「し、してませんよ。ただ真姫の言葉が嬉しかっただけです」

真姫「ならいいけど…」

真姫「……」

海未「……」ナデナデ

真姫(…あったかい)

真姫「……いつまで撫でてるの」

海未「あ、すみません…迷惑でしたね」パ

真姫「別に迷惑ってわけじゃないけど…」

海未「では、帰りましょうか」

真姫「……うん」


―――――

真姫(……海未に頭を撫でられた。多分初めてのことよね)

真姫(そもそも誰かに頭を撫でられること自体、小さい頃以来だけど…。乱暴に撫でる人もいたからそのたびに髪型が崩れちゃって、あんまり好きじゃなかったのよね)

真姫(………けど、今日は不思議と嫌じゃなかった)

真姫(…海未の撫で方が優しかったからかしら)

今日の投下はここまでにします
明日には完結すると思います

お付き合いいただき、ありがとうございました

>>1です
カプ表記忘れて申し訳ない
次から気をつけます

投下していきます


―――――

真姫「……」ジー


穂乃果「海未ちゃん、海未ちゃん! 今のところのステップ、よくなかった!?」

海未「そうですね。いつものミスもなかったですし、完璧に近かったです」

穂乃果「やったー! ふふ、実はひそかに自主練してたんだよ!」

海未「それは偉いですね。この調子で他の部分も頑張りましょう」ナデナデ

穂乃果「うんっ、穂乃果頑張る!」


凛「今日は平和的だにゃ」

花陽「やっぱりこうして見ると二人は仲がいいね」

真姫(……なんだ。海未って誰が相手でも頭撫でたりするのね。……って、私は何をガッカリしてるのよ。意味分かんない)

凛「…真姫ちゃーん?」

真姫「何よ」

凛「いやー……気付いてるのかにゃ?」

真姫「何が?」

花陽「えっと……真姫ちゃん、さっきからずっと海未ちゃんばっかり見てるよ?」

真姫「えっ……、ちょ、ちょっと考え事してただけよ」

凛「えー、でも今の顔はどう見ても…」

真姫「どう見ても…何よ?」

凛「恋する乙女の顔だったにゃ」

真姫「…………………はぁ?」

凛「わっ、真姫ちゃんの目が氷みたいに冷たいにゃ!」

真姫「凛が急に意味分かんないこと言うからでしょ。何よ、恋って」

凛「も、もののたとえだよー……声まで冷たいにゃー…」

花陽「凛ちゃんをかばうわけじゃないけど、私もちょっとそう思っちゃったかも」

真姫「花陽まで何言ってるのよ…」

花陽「でもさっきの真姫ちゃん、いつものきりっとした感じじゃなくて、ぽけーっとしてて、可愛かったよ」

真姫「ぽ、ぽけーって……そんなに間抜けな顔してた?」

花陽「心ここにあらずって感じだったかな。それでじーっと海未ちゃんの方見てるから、なんだか恋してる女の子みたいだった」

凛「そう、それ! 凛もそういうことが言いたかったんだよ! さすがかよちん!」ギューッ

花陽「えへへ」

真姫(別に抱きつく必要はないんじゃ……って、それより、花陽にまで言われるくらいだから、相当ボケっとしてたのね)

真姫(私たちは休憩中とはいえ、一応練習中なんだし…シャキッとしないと)

真姫(……そうよ。別に海未のことなんて気にしてないし。海未が誰の頭を撫でてようと、そんなの私には関係ないわ)

海未「真姫、凛、花陽」

真姫「!?」ズササササアアアァァァッ

海未「ど、どうしたんですか!?」

凛「すごい勢いで後ずさったにゃ…」

真姫「い、いきなり声かけられたら誰だって驚くわよ!」

海未「す、すみません。穂乃果たちの練習が一区切りついたので、次は真姫たちの番ですよと、呼びに来たのですが…」

花陽「じゃぁすぐ準備するね」

海未「はい、お願いします。私は先に向こうで待っていますね」

花陽「はーい」

真姫「……」ドキドキ

凛「……真姫ちゃん、ひょっとして本当に恋する乙女なの?」

真姫「そ、そんなわけないでしょ! ただビックリしただけよ!」

凛「そっか」

真姫(大体、海未も海未よ。いきなり出てきたらビックリするじゃない。海未はずっと練習してるものだと思ってたんだから)

真姫(………ん?)

真姫「ねぇ花陽。海未って、さっき穂乃果たちのリズム取ってたわよね?」

花陽「え? うん。リズムはいつも海未ちゃんがやってくれてるから」

真姫「で、次は私たちのリズムを取るのよね」

花陽「多分そうじゃないかな」

真姫「…じゃぁ海未っていつ休んでるの?」

凛「みんなが休んでるときじゃないかにゃ?」

真姫「……そう」

真姫(いつも四:四に分かれて交代で練習して、後半は全員で踊ってるけど…)

真姫(…今思えば海未の休憩時間って、他の人に比べてほとんどないってことになるんじゃないの…?)

海未「あ、三人とも準備は出来ましたか?」

花陽「うん。待たせてごめんね、海未ちゃん、ことりちゃん」

ことり「ううん。ことりもリストバンド忘れちゃって、今取ってきたばかりだから、大丈夫」

凛「じゃぁ四人そろったことだし、早速練習始めるにゃー」

真姫「あ、あの……ちょっといい?」

凛「にゃ? 真姫ちゃん、どうかした?」

真姫「リズムは、海未が取るの?」

海未「? はい。私の仕事ですから」

真姫(…よく見たら、海未も少し汗かいてる。手拍子しながらみんなの振りのチェックして、声あげて指導してれば、踊ってなくても疲れるわよね)

真姫「……私、別の人がいい」

海未「え?」

真姫「海未以外の人と交代して」

花陽「ま、真姫ちゃん?」

凛「海未ちゃんじゃ嫌なの…?」

真姫「え? ……あっ、そ、そういうことじゃなくて、海未が嫌とか、そういうわけじゃなくて…」

真姫(い、今のはちょっと言葉足らずだった気がする……ちゃんと説明しないと、私が海未を嫌ってると思われちゃう…)

海未「………そういうことですか。分かりました」

真姫「え?」

海未「では、誰かに交代してもらいましょう。ただ、残りの四人は今練習を終えたばかりなので、始めるのを少し待ってもらっていいですか?」

真姫(……海未、気にしてないのかしら。それとも気にしてないフリしてるだけ…?)

ことり「うん、ことりは全然いいよ」

花陽「私も…」

凛「凛もいいけど……、あ、あの、海未ちゃん」

海未「なんですか?」

凛「あのね、真姫ちゃんの今の言葉は…」

海未「…大丈夫ですよ。分かってますから」

凛「分かってるって…」

真姫「…どういう意味よ」

海未「え?」

真姫「…さっきの言い方じゃ、誤解されたって仕方ないと思うわ。それに対して、分かってるって……。つまり海未は、私が海未のこと嫌ってると思ってるの?」

海未「あ、あの、真姫、何を言ってるんですか?」

真姫「何って………、…え? そういうことじゃないの?」

海未「えっと……私は、真姫が私の体調を心配してくれているのかと思ったのですが…」

真姫「………え? つ、通じたの? あの言い方で?」

真姫(海未ってエスパーか何かなの…?)

海未「昨日言ってくれたじゃないですか。もうちょっと休めばいいのにと思っている…って」

真姫(…そういえばそんなこと言ったっけ。でもそれだけで?)

ことり「…ふふ。それに真姫ちゃんの表情、すごく分かりやすかったよ?」

真姫「えっ?」

ことり「眉が下がって、すごく心配そうで。あんな顔してたら、海未ちゃんのこと心配してるんだなぁって思うよ。ね、海未ちゃん?」

海未「そうですね。真姫は優しいです」

真姫「べ、別に、優しくなんて……」

海未「優しいですよ。私のことを心配してくれて本当に嬉しいです…ありがとう」

真姫「っ……、い、いや、その……///」

凛「真姫ちゃん、顔真っ赤だにゃ」

花陽「り、凛ちゃん、そんなストレートに指摘しちゃダメだよ…」

真姫「っ~………私、ちょっと顔洗ってくる!!」ダッ

海未「え、ま、真姫?」



真姫(何なのよあれ。なんであんな嬉しそうな顔でお礼言うのよ…!)

真姫(しかもなに、ありがとう、って! いつもは、ありがとうございます、しか言わないくせに! 本当に嬉しいときは敬語がとれたりするものなの? 私が心配したことがそんなに嬉しかったってこと?)

真姫(……海未…)

ことり「真姫ちゃーん」

真姫「!?」ビクッ

真姫「こ、ことり? なんでここに…」

ことり「だって真姫ちゃんがいないと練習が始められないから、迎えに」

真姫「あー……ごめん。すぐ戻るわ」

ことり「顔は洗わなくていいの?」

真姫「え?」

ことり「真っ赤になってるよ?」

真姫「え、ほ、ホントに?」

ことり「うん。まぁすぐ元に戻るとは思うけど……それにしても、真姫ちゃんは分かりやすいねー」

真姫「…何がよ」

ことり「好きなんだよね? 海未ちゃんのこと」

真姫「………凛たちにも同じこと言われたわ。ことりもだけど、色眼鏡で見すぎよ」

ことり「そうなの? じゃぁ海未ちゃんのこと好きじゃないんだね」

真姫「…当たり前でしょ」

ことり「そっかぁ。じゃぁことりが海未ちゃんをとっちゃっても、問題ないよね?」

真姫「…………、は?」

ことり「だって海未ちゃん可愛いんだもん。昔から好きだったんだよ。アピールしても、いつも穂乃果ちゃんのことばっかりで全然気づいてくれないけど」

真姫(穂乃果のことばっかり……)

真姫(…って、今気にすべきはそっちじゃないわね)

真姫「……本気で言ってるの?」

ことり「ことり、嘘は嫌いなんだよね」

真姫「……そう」

ことり「…真姫ちゃん、言うなら今だよ? 海未ちゃんのこと、本当はどう思ってるの?」

真姫「………分からない」

真姫「分かるわけ、ないじゃない。だって、海未と出会ってまだ数ヶ月だし、まだ全然海未のこと知らないし…」

ことり「じゃぁ、真姫ちゃんが知っている海未ちゃんはどんな人?」

真姫「どんなって……、誰にでも優しくて、お節介で、自分のことよりも他人のことばかり考えてて…誰にも感謝されなくても、裏で色々頑張ってて」

真姫「…怒った顔ばっかりしてるのかと思ったけど、笑顔が、その、可愛くて……照れた顔とかも、可愛いって思うけど、えっと…」

ことり「はい、ストップ。全部聞いてたらなんかこっちが恥ずかしくなっちゃいそう」

真姫「こ、ことりが言えって言ったんでしょ!」

ことり「言えじゃなくて、聞いただけだけどね。けど今の真姫ちゃんの顔、恋する乙女ーって感じだったよ?」

真姫「…それも凛に言われたわ。そのフレーズ流行ってるの…?」

ことり「ふふ。で、真姫ちゃんは海未ちゃんのことをどう思ってるのかな?」

真姫「…………変な、人」

ことり「へ、変な人?」

真姫「だってそうでしょ。どれだけ裏で頑張ったって、誰にも気付かれてなきゃ、やってる意味ないじゃない」

真姫(海未があんなノートを書いてることなんて、きっと誰も知らないんだろうし…)

ことり「んー…? なんのことを言ってるかは分からないけど、意味がないなんてことはないよ」

真姫「何でよ」

ことり「だって、頑張るっていうのは、誰かに認められるためにすることじゃないもん」

ことり「海未ちゃんのどの頑張りのことを言っているかはさておき、海未ちゃんが頑張るのはいつだって自分か誰かのため。でも真姫ちゃんの言い方的に、きっと誰かのための頑張りのことを言ってるんだよね」

ことり「だったら海未ちゃんは、その頑張りが誰かの役に立ったら、それだけで良いって思うんじゃないかな」

真姫「……誰にも気付かれてなくても?」

ことり「うん」

真姫「……いつもありがとうとか、そんな当たり前のことさえ言われなくても?」

ことり「海未ちゃんはそういう人だから」

真姫「……意味分かんない」

ことり「あはは……けど、誰も気付いてないっていうのは、嘘だよね?」

真姫「え?」

ことり「だって、少なくとも真姫ちゃんは知ってるんでしょ? 海未ちゃんが頑張ってること」

ことり「なら真姫ちゃんが言ってあげたらいいんじゃないかな。海未ちゃんに、ありがとうって」

真姫「……私なんかに言われたって、海未は喜ばないわ」

ことり「そんなことないよ。海未ちゃん、真姫ちゃんのこと大好きだよ?」

真姫「えっ……ほ、ホント?」

ことり「うん。まぁ凛ちゃんや花陽ちゃんのことも好きだろうけど」

真姫「………ああ、そう」

真姫(ただの後輩としての、好き、なのね……まぁ当たり前だけど…)

ことり「…今の反応といい、もう答えは出てるんじゃないかな?」

真姫「………そうね。私は海未のこと、多分好きよ」

ことり「うん。素直が一番だよ」

真姫「け、けど、多分だから、まだ確定はしてないからね」

ことり「うん」ニコニコ

真姫「…怒らないの? ことりも海未が好きなんでしょ?」

ことり「ふふ。ことりね、嘘は嫌いだけど、冗談は嫌いじゃないんだよね」

真姫「………は?」

ことり「ごめんね。さっき言ったことは冗談なの」

真姫「」


―――――

絵里「ワン、ツー、スリー、フォー! ワン、ツー、スリー、フォー!」パン、パン


真姫(ことりにすっかり騙された……何が冗談よ、こっちは真剣に話してたっていうのに…)

真姫(しかも、う、海未のことが……す、好きなんて、そんなことまで言わされて……)チラ

ことり「…?」ニコー

真姫(ああもう…!)

絵里「真姫ー、ちょっと遅れてるわよ」

真姫「分かってるわよ!!」

絵里「!?」ビクッ

絵里(えっ、私なにか真姫を怒らせるようなことしたっけ…?)

海未「……」ジー

凛「…って、結局海未ちゃんは休まずに凛たちを見てるんだけど…」

花陽「う、うーん……でもほら、座ってるし、あれは休憩してるんじゃないかな?」

凛「ああ、なるほど…」

真姫(…どうでもいいけど、あんまり見ないでほしい。なんか指導されるわけでもないのに見られるのは恥ずかしいし)

真姫(……あ、そっか。あのノートを付けるから、みんなのことは見ておかなきゃいけないのね)

絵里「凛、花陽、あまり喋らないでねー」

花陽「は、はいっ」

凛「はーい」

絵里「ま、真姫ー、今度はちょっと速いわよ?」

真姫「はい」

絵里「…」ホッ


―――――

真姫「……」チラ


穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃーん、帰りにクレープ屋さん寄っていかない?」

ことり「うん、いいよー」

海未「私もいいですよ」

穂乃果「やった! じゃぁいこいこ!」ギュッ

海未「引っ張らなくてもついていきますよ」

ことり「穂乃果ちゃんはせっかちさんだからねー」


真姫(……手、繋いでる。ま、まぁ、幼なじみだしね、あれくらいは普通よね)

凛「真姫ちゃーん、帰ろー!」

真姫「あ、うん」

真姫「……ねぇ、凛、花陽」

花陽「ん?」

真姫「……く、クレープ屋、寄っていかない?」

りんぱな「え?」


―――――

穂乃果「あれ? 凛ちゃんたちだ!」

凛「にゃ? あ、穂乃果ちゃんたち! 三人もここに来てたんだねー、奇遇ー」

穂乃果「ホントだね~。ここのクレープ美味しいもんね!」

花陽(…た、多分だけど、)チラ

ことり(偶然じゃないだろうね)チラ

海未「珍しいですね。真姫が寄り道だなんて」

真姫「まぁたまにはね…」

真姫(……何やってるのかしら、私。凛と花陽を巻き込んでまで、こんなところに来て…)

穂乃果「うーみちゃん! ね、海未ちゃんの食べてるやつ、一口ちょーだい?」

海未「いいですよ。はい」

穂乃果「わーい! あーんっ」パクッ

真姫「うぇっ!?」

穂乃果「? 真姫ちゃん、どうかした?」

真姫「あ、いや……」

穂乃果「そう?」

真姫(お、幼なじみだしね……別に深い意味はないわよね…。凛だってよく花陽のもの食べてるし…)

穂乃果「それにしても海未ちゃんのやつ美味しいねー。あ、真姫ちゃんも食べてみる?」

真姫「えっ」

海未「一応私のものなのですが……何故穂乃果が聞くんですか」

穂乃果「一口くらいいいじゃん、海未ちゃんのけちー」

海未「別にあげないとは言ってないでしょう。真姫、よかったら食べますか?」ス

真姫「え、あ……で、でも…それ…」

海未「? 嫌いな味でしたか?」

真姫「ち、違う、けど…」

真姫(海未が食べたやつを私が食べたら、か、間接……っ…///)

穂乃果「? なんか真姫ちゃん、顔が赤

ことり「穂乃果ちゃん! それよりことりのやつも食べる? 美味しいよー」

穂乃果「ほんと!? 食べる食べる!」

ことり「うん。おいでおいでー」チッチッチッ

穂乃果「わーいっ」タッタッタッ

ことり「はい、あーん♪」ス

穂乃果「あーんっ……んー、美味しい!」パアァッ

ことり「よかったねー」ナデナデ

凛(なんだか動物の餌付けを思い出す光景だにゃ…)

海未「穂乃果は忙しないですね」

真姫「そ、そうね」

海未「…えっと、真姫。いらないなら、普通に断ってくれていいですよ」

真姫「あ、や、い、いる。もらうわ」

海未「そうですか。じゃぁ、はい、あーん」ス

真姫「あ、あーんって…」

海未「…ことりの真似をしてみたのですが、割と恥ずかしいですね。なかったことにしてください…」

真姫「う、うん。……えっと、いただきます」

海未「はい、どうぞ」

真姫「…」パク

海未「どうですか?」

真姫「……うん、美味しい」

真姫(…緊張して、正直味はよく分からないけど…)

海未「よかったです。あ、真姫のも一口貰っていいですか?」

真姫「えっ……あ、う、うん。どうぞ」ス

海未「ありがとうございます」パク

真姫「……ど、どう?」ドキドキ

海未「とても美味しいですよ」

真姫「そ、そう。ならよかった…」

海未「はい」

真姫「……」

真姫(……ことりとの会話のせいで、海未のこと妙に意識して、まともに会話できない…)


―――――

海未「あ、真姫、凛、花陽」

真姫「っ!?」ビクッ

真姫「」サッ

海未「え、えっと…?」

凛「真姫ちゃん…なんで凛の後ろに隠れるのかにゃ?」

真姫「な、なんとなくよ…」

真姫(うぅ……なんかあれ以来海未のことを変に意識しちゃって、全然話せてない……あーもー…!)

花陽「ところで海未ちゃん、穂乃果ちゃんたちは?」

海未「穂乃果は少しお手洗いに。ことりはお昼ご飯を忘れたらしくて、購買部に買いに行っています」

凛「あれ? じゃぁ海未ちゃんはなんで廊下に?」

海未「あー……えっと、二人がいないと、暇だったので…」

凛「暇で廊下に出てるの?」

海未「教室でただ座ってるよりはマシかなぁ、と。穂乃果たちが帰ってきたら、迎えられますし」

凛「ふぇー…海未ちゃんは本当に穂乃果ちゃんたちのことが好きなんだね!」

真姫「!」

海未「ま、まぁ、二人とも幼なじみですから」

凛「そっかー。凛もかよちんのこと大好きだから、その気持ちはよく分かるにゃ!」

花陽「り、凛ちゃん…」

真姫(……そういえば、前に海未自身が言ってたっけ。穂乃果のこと、大切だって。ことりも、海未はいつも穂乃果のことばかりだって言ってたし…)

真姫(…もしかしたら、海未は穂乃果のこと……そういう意味で、好きなのかしら…)

海未「……真姫?」

真姫「…」

海未「…真姫」ポン

真姫「っ……え、あ…な、なに!?」

海未「いえ、なんだかボーッとしていたので……大丈夫ですか?」

真姫「あ、う、うん、平気」

海未「そうですか。よく分かりませんが、体調がすぐれないなら無理しちゃダメですよ」

真姫「…うん」

凛「じゃー海未ちゃん、凛たちは屋上でご飯食べてくるから、また放課後にねー」

海未「はい。また」

真姫「……またね、海未」

海未「はい」


真姫「……はぁ」

凛「にゃ? 真姫ちゃん、どうかしたの?」

真姫「別に…」

花陽「…あのね、真姫ちゃん。多分、そんなに心配しなくてもいいと思うよ」

花陽「海未ちゃんと穂乃果ちゃんは仲良しだけど、それは多分、真姫ちゃんが思っている形とは違うと思うから」

真姫「……花陽、ありがとう」

花陽「ううん」

凛(なんの話をしてるかさっぱりだにゃー…)


―――――

海未「では、少し休憩にしましょうか」

穂乃果「ふわーっ、疲れたー!」ゴロンッ

ことり「ほ、穂乃果ちゃん、屋上で横になったら服が汚れちゃうよ」


海未「真姫」

真姫「! な、なに?」

海未「また作詞のことで相談にのってもらってもいいでしょうか…?」

真姫「ええ、もちろん」

真姫(曲作りのことなら、海未のこと意識せずにちゃんと話せそうね…)ホッ

海未「ありがとうございます。最近少し調子が悪くて…」

真姫「分かるわ。私もたまに曲が思いつかないときがあるから」

海未「真姫はそういう時どうしてますか?」

真姫「んー……凛や花陽と話して、気分転換してるわ」

海未「なるほど……確かに煮詰まりすぎるのもよくないですしね」

真姫「ええ。軽く息抜きも入れないと、しんどくなっちゃうし」

海未「では、付き合ってくれますか?」

真姫「え?」

海未「私の息抜きに」

真姫「え、あ……わ、私でいいの? 穂乃果とか、ことりのほうが、適任だと思うんだけど…」

海未「もちろんあの二人と話しているのは楽しいですけど……最近、真姫と話すのも楽しみの一つなんです」

真姫「うぇっ!?」

真姫(た、楽しみって……え、なんで…)

海未「μ’sが出来て数ヶ月も経つのに、真姫とはあまり話したことがなかったので。…正直、少しだけ嫌われているのかなと思っていたくらいなんですよ」

真姫「き、嫌ってるわけないじゃない!」

海未「はい、今はちゃんと分かってます。だから真姫ともっと色々話したいと思ったんです」

真姫「海未……」

海未「…あ、でももちろん、真姫が暇なときに付き合ってくれればいいので。無理強いはしたくないですし」

真姫「……私も、海未と、話したい」

海未「…ふふ、そう言ってもらえると、すごく嬉しいです」

真姫「……、うん」

真姫(海未が私と話したいって言ってくれた……海未が……、嬉しい…)



―――――

凛「…にゃ? あれ、海未ちゃんじゃない?」

真姫「!」ガタッ

凛「真姫ちゃん?」

真姫「た、多分何か用だと思うから、行ってくるわ」タッ

凛「なんか最近の真姫ちゃん、アクティブだね」

花陽「うん。上手くいくといいね」

凛「上手くって…なにが?」

花陽「そのうち分かるよー」ナデナデ

凛「にゃー…?」ゴロゴロ


真姫「海未」

海未「あ、真姫……よかったです、気付いてくれて。よその教室に入るのは気が引けるので…」

真姫「一年の教室なんだし、そんなに緊張することもないでしょ」

真姫「それより、何か用?」

海未「はい。これを届けに」

真姫「? なにこれ。プレゼントか何か?」

海未「クッキーです」

真姫「クッキー? ……もしかして、海未が作ったの?」

海未「いえ、ことりが」

真姫「あ、そう……。……というか、どうしてそれを海未が届けに来るの?」

海未「私もよく分からないのですが……ことりに頼まれてしまいまして。凛たちは私が来た方が喜ぶから、と」

真姫(……凛たちというか、絶対私に向けての言葉よね…)

海未「ことりが来たほうが絶対いいとは思ったんですけど、どうしてもと言われてしまって。すみません」

真姫「いや、謝ることないわよ。……わ、私は、その、海未が来た方が…」

海未「え?」

真姫「…な、何でもないわ」

海未「そうですか…? では、この残りの二つは凛と花陽に渡してあげてください」

真姫「あ、うん。……もう帰るの?」

海未「はい。まだお昼を食べてないので」

真姫「そ、そう」

真姫(なら引き止めるわけにもいかないわね…)シュン

海未「…また部室で会いましょうね」

真姫「! う、うん、また」

海未「ふふ。ことりのクッキー、すごく美味しいですから、味わって食べてあげてください」ナデナデ

真姫「っ…」

真姫(頭…また撫でてくれた。…やっぱり海未の手、あったかい)

穂乃果「海未ちゃーん!」

海未「穂乃果?」パッ

真姫「あ……」

穂乃果「なんでこんなところに? あ、もしかして穂乃果を迎えに!?」

海未「違いますよ。何度も職員室に呼ばれるような子を迎えに来たりはしません」

穂乃果「むー……じゃぁなんでここにいるの? 真姫ちゃんたちに用だったの?」

海未「はい。ことりに頼まれて、少し配達を。今ちょうど終わったところです」

穂乃果「そっかー。じゃぁ海未ちゃん、教室戻ろ」グイ

海未「引っ張らなくても分かってますってば」

真姫(また手……私はまだ一度も繋いだことないのに…)

穂乃果「真姫ちゃん、また部室でね」

海未「真姫、また放課後に」

真姫「あ…うん。またね」


真姫(……花陽はああ言ってくれたけど、やっぱりあの二人は…)


―――――

穂乃果「海未ちゃん、一緒に帰ろー」

海未「あ……すみません穂乃果。やりたいことがあるので、今日は少し残ります」

ことり「ことりたちも手伝おうか?」

海未「いえ、平気です。二人は先に帰っていてください」

穂乃果「えーでも海未ちゃん一人じゃ寂しいでしょ?」

海未「子供じゃないんですから……。…あ、でもそれなら…、真姫」

真姫「え、なに?」

海未「よかったら私と一緒に残ってくれませんか?」

真姫「へ?」

穂乃果「なんで真姫ちゃん? 穂乃果だって暇だし、残るのにー」

海未「新曲のことで相談したいことがあるんですよ」

穂乃果「あ、なるほど。それなら穂乃果はお役に立てそうにないね」

ことり「じゃぁ穂乃果ちゃん、一緒に帰ろっか」

穂乃果「うんっ。あ、真姫ちゃん、海未ちゃんをよろしくねー」

ことり「ふふ。真姫ちゃん、頑張ってね」

真姫「え、ちょ、ちょっと…」

凛「じゃー海未ちゃんは逆に真姫ちゃんをよろしくね!」

花陽「真姫ちゃん、頑張ってね」

にこ「ホントはアイドルはそういうの禁止なんだけど……まぁ野暮なことは言わないわ。頑張ってねー、真姫ちゃん」

絵里「よく分からないけど……とりあえず頑張ってね、二人とも」

希「ファイトやでー、真姫ちゃん」

絵里「…ねぇ、なんでみんな真姫を応援してるの? 海未は? 可哀想じゃないの」

希「エリちは可愛いなぁ」ナデナデ

絵里「え?」



パタン


真姫(……私、まだ残るとは言ってないんだけど…)

海未「えっと……じゃぁ、頑張りましょうか」ニコ

真姫「……うん」

真姫(まぁ、残らないって選択肢なんて、無いけど)



海未「すみません。私のワガママに付き合わせてしまって」

真姫「いや、全然。…私も曲作るのとか…その、す、好きだから」

海未「そうですか。なら頑張っていきましょう」

真姫「ん。……というか、曲を作るためだとしても、別に穂乃果たちが一緒でもよかったんじゃないの?」

海未「え?」

真姫(まぁ私は海未と二人のほうが嬉しいけど…)

真姫「海未は、穂乃果たちがいたほうが楽しいんじゃない?」

海未「……」ンー

海未「……あの、真姫」

真姫「ん?」

海未「ヒかないでくださいね」

真姫「え?」

海未「私は多分、真姫と二人になりたかったんです」

真姫「…………えっ? そ、それって、どういう…」

海未「きっと真姫と仲良くなりたいんだと思います」

真姫「……な、仲良く?」

海未「はい。前にも言いましたよね、真姫と話すのが楽しみになっていると」

真姫「うん…」

海未「その思いの延長です。話すのが楽しい、もっと仲良くなりたい……なんて、穂乃果以上に子供のようなことを言ってますね」

真姫「……私は、嬉しいけど。海未がそう思ってくれて」

海未「そう言ってもらえると救われます。…でも、やっぱりこういうことはよくないですね」

海未「今度からは穂乃果たちもちゃんと誘うことにします」

真姫「え……、あ、でも、やっぱり曲を作るときは、二人のほうが…」

海未「第三者の意見があったほうが捗ると思いますよ」

真姫「でも……」

真姫(それだと、海未と二人の時間が出来ない……いや、ついさっき穂乃果たちもいたほうがとか、自分で言っちゃったんだけど…)

海未「それに、私はあまり話を振るのが得意ではないですし、穂乃果たちがいたほうが真姫も楽しいでしょうから」

真姫「っ……う、海未!!」

海未「…ど、どうかしましたか?」

真姫「……と、……りの………、…しい」

海未「えっと……すみません…声が小さくてよく聞こえないのですが…」

真姫「だから! 海未と二人きりのほうが私は嬉しいって言ってるの!」

海未「……そ、そうですか。えっと、それは、なんというか……ありがとうございます、で、いいんでしょうか…?」

真姫「……」

海未「…嬉しいです。真姫も私と同じように思ってくれていたなんて」ニコ

真姫(あ、笑った……今まで見た中では一番嬉しそう。……でも海未はきっと、私が海未と友達として仲良くなりたいって思ってるのよね…)

真姫(……けど、それでもいいんじゃないの? あの時の言葉は、ことりに乗せられて言っただけ。私は本当は、海未のことを友達として好きなだけなんじゃないの?)

真姫(……でも、穂乃果に対して感じたあの思いは、どう考えても……)

海未「真姫?」

真姫「あ……ごめん。ちょっと考え事してた」

海未「そうでしたか。…もう大丈夫そうですか?」

真姫「ええ。……あの、海未」

海未「なんですか?」

真姫「海未は……穂乃……いや、絵里と希が仲良くしてたら、どう思う?」

海未「え? 絵里と希ですか? ……えっと、普通に、仲良しだなぁと思いますけど」

真姫「じゃぁ…ことりと…花陽なら?」

海未「微笑ましいなぁ、と」

真姫「なら………、穂乃果と、他の誰かなら?」

海未「えっと……同じですよ。仲良しだなと思うだけです」

真姫「えっ」

海未「えっ?」

真姫「…や、妬かないの?」

海未「やく? ……ああ、ヤキモチのことですか?」

真姫「う、うん」

海未「そりゃ小さい頃は少しは妬いたりもしましたが……もうそんなの今更ですよ。大体、穂乃果は友達が多いのでいちいち妬いていたらキリがありません」

真姫「……海未って、穂乃果のことが好きなんじゃないの?」

海未「好きですよ。…確か前にも言いませんでしたっけ」

真姫「あ、や、そうじゃなくて……その、恋愛対象、として」

海未「…………、えっ!?」

海未「れ、恋愛って……そ、そんなわけないじゃないですか。穂乃果は大切な友人です」

真姫「ほ、ほんと?」

海未「当たり前です。……どうしたんですか。こんな話をするなんて、真姫らしくないですよ」

真姫(…海未が穂乃果のことをそういう意味では好きじゃないって聞いて、安心してる……ってことは、やっぱり、そういうことなのよね)

真姫「……あ、あのね、海未」

海未「はい」

真姫「…わ、私、海未のこと……、あの、へ、変な人だと、思ってた」

海未「へ、変…?」

真姫「だって、なんか一人でノートつけてたり、練習のときも気が付いたら指揮とってたし、弓道部に入ってるのにμ’sにも入ってるし…」

海未「えっと……もしかして真姫は私のこと、嫌いだったりしますか…?」

真姫「そ、そうじゃなくて……変な人だって思ってたけど、でも、今はそれだけじゃないの」

真姫「……私、海未が好き」

海未「…私も好きですよ、真姫のこと」

真姫「っ……そうじゃなくて、私の好きは………海未と、付き合いたいって……海未に、私のこと一番に考えてほしいって…そっちの意味の、好き」

海未「……」

真姫「……」

真姫「……海未?」

海未「…あ、す、すみません、呆けてました」

真姫「…私、一応告白したんだけど…」

海未「だ、大丈夫です、ちゃんと聞いてました。えっと……あの……い、いきなりのことなので、なんて答えればいいか迷うのですが…///」

真姫「……ま、迷うの?」

海未「え? そりゃ…迷いますよ」

真姫(…告白しておいてなんだけど、即答で断られるかと思ってた…。……も、もしかして、少しくらいは希望があったりするのかしら)

真姫「……う、海未。私、海未が好き……ほ、本当に…大好き、だから……」

海未「っ……、あんまり好きと連呼しないでください…恥ずかしいです」

真姫「言ってる私のほうが恥ずかしいわよ…」

海未「……。あの、真姫……正直、私は恋愛云々のことは、よく分かりません」

真姫「……でしょうね。そんな感じするわ」

海未「う……、で、でも、真姫に好きだと言われて、素直に嬉しいです」

海未「……ですから、あの」ス

真姫(…手? 握手?)

海未「わ、私と、お付き合いを前提としたお友達から始めてください!」

真姫「……………あ、あの、海未?」

海未「なんでしょうか」

真姫「それは……その、付き合うことと、どう違うの?」

海未「……私はまだ、恋というものがよく分かっていません。真姫のことを…その、そういう目で見たことがなかったので」

海未「なので、これからは見るようにします。ですからそれまで期間を与えてほしいんです」

真姫「……それで、前提とか言ってもいいの? 私を好きになれなかったら、海未が辛いんじゃないの?」

海未「えっと……あの、私は今すごくドキドキしています」

真姫「そ、そう…/// …私も同じだけど」

海未「はい。だからきっと、私は真姫のことを好きになります」

真姫「なにその自信…」

海未「自分のことですから、自分が一番よく分かります。それに、真姫は可愛いですし、魅力的ですから」

真姫「っ……ば、バカじゃないの!?」

海未「えっ、な、なにがですか?」

真姫(なんでそういうことは照れずに言えるのよ…!)

真姫「……で、どうして…その、好きになれるって確証があるなら……期間が必要なの? それなら、別に今すぐでもいいじゃない」

海未「…それは、真姫が私を見限るための期間です」

真姫「………ハァ?」

海未「ま、真姫……目が氷のように冷たいです…」

真姫「冷たくしてんのよ。見限るって、なにそれ、意味分かんない」

海未「…私は、真姫が思うほど強くはないんです。特に、恥ずかしいことは苦手で…」

海未「だから……その、真姫を意識すると…多分、取り乱したり、狼狽えたりします。いつも以上にカッコ悪い姿を見せると思います」

真姫「……それで、それを見た私が海未を見限るかもしれない、って言いたいの?」

海未「はい」

真姫「……………バカじゃないの?」

海未「や、やめてください、その、ゴミを見るような目つき…」

真姫「あのね、海未のカッコ悪いとこなんてもう散々見てきてるわよ。チラシ配りは嫌がるし、衣装のスカート丈にいつも文句つけてるし、ステージに上がる前だってガチガチになってるでしょ」

海未「う…」

真姫「海未は、そういう姿も全部ひっくるめて、海未なんだから。それくらいで嫌いになるわけないでしょ」

海未「真姫…」

真姫「…海未のこと、もっと知りたい。海未にも…私のことたくさん知ってほしい。……だから、私と付き合ってください」

海未「………、はい、喜んで」

真姫「……本当に後悔しない?」

海未「しません」

真姫「…よく言い切れるわね」

海未「さっきも言ったじゃないですか。自分のことは自分が一番よく分かっているんです」

真姫「……海未って、ホントに変な人ね」

海未「褒められているんでしょうか…」

真姫「半々くらいね」

海未「むぅ……でもそれなら、こんな私を好きになった真姫も、同じくらい変ですよ」

真姫「………別に私は、海未と一緒ならそれでもいいけど」

海未「……真姫」ギュッ

真姫「っ……な、なに、急に…」

海未「すごく可愛かったので」

真姫「…そ、そう……///」

真姫(……手を繋ぐことよりも、抱きしめることのほうが、スキンシップとしては上位よね)

真姫(……なんて、今更穂乃果に対抗心燃やすなんて……私も海未のこと言えないくらいにはカッコ悪いわね)


―――
――



凛「あ、穂乃果ちゃんたちだにゃ!」

花陽「ホントだ」

真姫(海未…)

凛「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃん、おはよーっ」

穂乃果「あ、凛ちゃん! おはよー!」

ことり「おはよー……って言っても、もう夕方だけど」

花陽「三人も今から部室だよね。一緒に行こうよ」

穂乃果「うん、いこいこー」

真姫「…あの、海未」ポン

海未「っ!!」ビクッ

真姫「?」

海未「あ、ま、真姫、おはようございます」

真姫「あ、うん。おはよう」

海未「………」ソラシ

真姫「……あの、なんでそんな右斜め上を見てるの?」

海未「…なんとなく、です」

真姫「あ、そう」

真姫「……」ジー

海未「………っ///」

真姫(まさか照れてるの…? …そういえば昨日、そんなこと言ってたっけ。……つまり、私のことちゃんと意識してくれてるってことよね)

穂乃果「? 海未ちゃん、なんか顔赤くない?」

海未「へ、あ、赤くなんてないですよ!」

穂乃果「そう? ならいいけど、風邪なら無理しちゃダメだよ。あ、そうだ凛ちゃん、昨日のテレビ見た?」

凛「見たにゃー!」

海未「…はぁ……穂乃果にまで悟られてしまうなんて……」

真姫「早く慣れないとね」ギュ

海未「!? ま、真姫……なんで手を…」

真姫「…いいでしょ。うらやましかったんだから」

海未「え? うらやましい…?」

真姫「海未には分からないわよ。それより、これくらいで照れてたら何も出来ないじゃない」

海未「で、ですが……その……こういうことには、不慣れなので…///」

真姫「…そ、そんなの、私だって同じなんだから、年上な分、海未が頑張ってよ」

海未「μ’sの間に先輩後輩は関係ないと、絵里が…」

真姫「それはμ’sでの話でしょ。二人の時は無効に決まってるじゃない」

海未「う……が、頑張ります……」

真姫「ん。……好きよ、海未」

海未「っ……あ、えっと、わ、私もです…///」

真姫(…耳まで真っ赤にして、可愛い。海未と付き合えるなんて夢みたい。今なら死んでもいい…って、さすがに大げさだけど)

ことり「あのー…真姫ちゃん?」

真姫「え?」

花陽「あ、あのね、私たちさっきからずっと後ろにいたんだけど……会話が、丸聞こえで…///」

ことり「仲が良いのは良いことだけど、そういう話は二人きりの時にしたほうがいいんじゃないかな…?」

真姫「」

海未「真姫? どうかしましたか?」

真姫「私、ちょっと死んでくるわ」

海未「!?」



―終わり―

これで終わりになります
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました

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