エレン「ジャンが死におったwwwwwwwwww」(147)

エレン「しかもwwww立体機動の訓練中にwwwwwwwww」

エレン「ミカサにいいとこ見せようとしてwwwwwwwアンカー射出に失敗してwwwwwwwwww墜落死wwwwwwwwwwww」

エレン「成績上位に入って憲兵団になる!(キリッ の末路がこれwwwwwwwwwwww」

エレン「だっせええええええええええwwwwwwwwwwwwwwww」

エレン「ジャンwwwwwwwwwwww情けないじゃんwwwwwwwwwwwwww」

エレン「やべえwwwwwwwwwwww今の面白かったじゃんwwwwwwwwww笑えたじゃんwwwwwwwwwwwwwww」

エレン「ジャンジャンうるせえじゃんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

アルミン「……エレン、もういい加減にしなよ」

アルミン「君とジャンの中が悪かったことは皆が知ってる。けど死者を冒涜するなんて」

エレン「冒涜してるつもりはねえwwwwwwwwwwwwwwww」

エレン「けどジャンの死に様は情けないwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

アルミン「いやそういうことじゃなくて……ミカサも何か言ってやってよ……」

ミカサ「私はずっと注意してきた。けどエレンに直す意思が無い以上何を言っても無駄」ハァ

夕食中

エレン「あーwwwwwwwwなんか最近メシが旨いなーwwwwwwwwww」

エレン「そうだなwwwwwwwwwちょうど一ヶ月前くらいから旨くなったwwwwwwwwwwww」

エレン「てかwwwwwwwww一ヶ月前ってwwwwwwwwwwwwジャンが死んだ日じゃんwwwwwwwwwwwww」

エレン「敗北主義者のいない食堂がwwwwwwwwwwwwこんなに平穏だとはwwwwwwwwwwwww」

アルミン「……その代わり、誰も君に声をかけなくなったけどね」ボソッ

エレン「あ?wwwwwwwwwwwwなんか言ったかアルミンwwwwwwwwwwwwwwww」

アルミン「別に。いくら鈍い君でも気づいてないはずないしね」

アルミン「分かっててそんなことするなら、もう僕も何も言わないよ」

エレン「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

翌日

エレン「ようwwwwwwwwwwミカサwwwwwwwwwwwアルミンwwwwwwwwwwwwwww」

ミカサ「おはようエレン」

アルミン「……おはよう」

エレン「つーかアルミンwwwwwwwwwwwwwお前、俺が起きたときにはもう宿舎にいなかったよな?wwwwwwwwwwwwwww置いてくなよwwwwwwwwwwww」

アルミン「…………」

エレン「あれ?wwwwwwwwwwww無視?wwwwwwwwwwwwwwwwww」

ミカサ「エレン。私はあなたに命を救われた。だから私は何があってもあなたを見捨てたりしない」

ミカサ「けど世の中のすべての人間が私のように考えているわけでもない。そんなこと分かってるはず」

エレン「知ってるよwwwwwwwお前は俺の母ちゃんかってのwwwwwwwwwwwwwww」

アルミン「……ミカサ」

ミカサ「…………分かった」

食堂にて

エレン「やっぱ立体機動はwwwwwwwwwガスを少なめに吹かすコツが必要だよなwwwwwwwwwwww」

エレン「ってあれ?wwwwwwwなんかこの言葉どっかで聞いたことあるようなwwwwwwwwwwwwwwwww」

アルミン「……」

ミカサ「……」

エレン「……wwwwwwwwwwwwwww」

エレン「おーいもしもしwwwwwwwwwwwww聞いてますかーwwwwwwwwwwwwww」

アルミン(ミカサ。今のエレンに合わせることは、何よりも本人のためにならない)

アルミン(辛いかもしれないけど、心を鬼にしてくれ)

ミカサ(………………分かってる)ギリッ

クリスタ「もうやめなよ、エレン」

アルミン(クリスタ!? 今のエレンに話しかけられるなんて、やはり天使か……)

エレン「クリスタwwwwwwwwお前から俺に話しかけてくるなんて珍しいwwwwwwwwww」

クリスタ「……ジャンがいなくなってからエレンずっとおかしいよ」

クリスタ「あなたの気持ちはなんとなく分かるつもり。でもこんなの」

エレン「は?wwwwwwwwwwwなんでクリスタに俺の気持ちがわかんの?wwwwwwwwwwwww」

クリスタ「えっ!? そ、それは」

エレン「お前は俺の何なの?wwwwwwwwwwww勝手に人の気持ち悟ったようなこと言っちゃってwwwwwwwwwwwwwww」

エレン「神様にでもなったつもり?wwwwwwwwwwwwwみんなから天使だの女神だの言われてその気になっちゃったとか?wwwwwwwwwwwwww」

クリスタ「……!!」

ユミル「おいエレン。それ以上は私がキレるぞ」

アルミン「……僕もだ。今すぐクリスタに謝れ、エレン」

エレン「…………」

エレン「ごめんちゃいwwwwwwwwwww」テヘペロッ

バシッ

アルミン「ふざけるな!」

ザワザワ……

アニ「……なんだ。あいつ、怒れたんだな」

ライナー「ああ……アルミンがキレるなんて初めてじゃないのか?」


アルミン「エレン、正直に言って今の君の気持ちは、親友の僕にもさっぱり分からない」

アルミン「いなくなったジャンを貶すのにも、ひょっとしたら理由があるのかもしれない」

アルミン「けれどだからと言って、クリスタにまで当たるなんて許せない!!」

クリスタ「あ、アルミン落ち着いて……」

ユミル(……チッ。アルミンが手を出さなけりゃ、私がエレンの腕一本くらいへし折ってたかもしれない)

ユミル(いい友達持ってるじゃないか死に急ぎ野郎。それなのにお前は……)

エレン「いやだってwwwwwwww最初にワケ分かんないこと言い出したのはクリスタだしwwwwwwwwwwww」

アルミン「……もういい。エレンがクリスタに謝罪するまで、僕は君と話さない」スタスタ

ミカサ「あ、アルミン!」ダッ

エレン「アルミンが俺を捨てたぞwwwwwwwwwwwwwwwアルミンさんカッケーwwwwwwwwww」

食堂の外

ミカサ「アルミン、どういうつもり?」

アルミン「……ごめんミカサ。けど僕にだって譲れないところくらいある」

アルミン「それにエレンだってあんなことを言えば僕が怒ることくらい分かってたはずだ。長い付き合いなんだから」

アルミン「それを分かっていながら、エレンは僕を挑発した。何よりそれが許せない」

ミカサ「……そう。久々に思い出したけど、あなたも意外と頑固だった」

アルミン「それは君もだろ?」

ミカサ「確かに」クスッ

アルミン「……済まないけどエレンを頼むよ。自分でやっといてなんだけど、あそこまでした以上僕にはもうどうしようもない」

クリスタ「あのミカサ……アルミンは?」

ミカサ「外の空気を吸いに行った。落ち着いたら戻ってくるはず」

クリスタ「……そう」

クリスタ「私、傲慢だったのかな」

ミカサ「傲慢?」

クリスタ「エレンがあんなこと言うなんて普通じゃない、そう思ったから何か助けになれれば」

クリスタ「そう思って声をかけたんだけど、私はエレンのこと何も分かってなかったみたい」

ユミル「いいんだクリスタ。お前は悪くない」

ミカサ「確かに。クリスタは何も悪くない、悪いのはエレン」

ユミル「……驚いたな」

ミカサ「何が?」

ユミル「お前はエレンにベタベタだからな。エレンのやる事なす事すべてを肯定するのかと思ってたぜ」

ミカサ「それでエレンが幸福になるのなら、私はそうしよう。けど甘やかして幸せになれるほどエレンは愚かではない」

ユミル「……そっ、か。悪い、お前のこと誤解してたみたいだ」

ミカサ「別にいい」

クリスタ「私、アルミンを探してくるね。言っておかなきゃいけないことがあるから」タタッ

ユミル「あ、私は」

クリスタ「いいの! 一人で大丈夫だから」


ユミル「……クリスタはアルミンになんて言うんだろうな」

ユミル「『アルミンが怒るようなことをエレンにさせてしまってごめんなさい』か?」

ユミル「それとも『怒ってくれてありがとう』とかか?」

ミカサ「……分からない」

ユミル「だろうな。私にも分からん」

その頃の食堂

ザワザワ……

ライナー「エレンのやつ、どうするつもりだろうな」

ベルトルト「アルミンに見捨てられたとなると……エレンの味方になってくれる人なんて……」

アニ「……いるよ。馬鹿が、だけど」


コニー「おいエレン! お前いったいどうしちまったんだよ!!」

エレン「コニー?wwwwwwwwwww 何が?wwwwwwwwwwwwwwww」

コニー「何がじゃねえだろ……アルミンとまでケンカしちまってお前」

コニー「お前とジャンがケンカばっかりだったことは知ってるよ。それにぶっちゃけ俺もジャンはあんま好きじゃなかった」

コニー「けど今のお前はお前らしくないぞ!?」

サシャ「そうですねー。今のエレンは正直言って前のエレンとは別物ですよ」

エレン「俺らしくないってwwwwwwwwwどういうことwwwwwwwwwwww」

エレン「今ここにいる俺が俺なんだがwwwwwwwwww俺らしいってなに?wwwwwwwwwwwwwww」

コニー「……俺バカだからさ、あんま人の気持ちとか察せないんだが」

コニー「もしかしてお前が、ジャンの死をどう処理していいか分かんなくてそんな状態になってるとしたら」

コニー「それは凄く悲しいというか……上手く言えねえや」

サシャ「エレン、辛いなら辛いと言ったほうが楽ですよ?」

エレン「辛くねえしwwwwwwwww俺のどこが辛そうなんだよwwwwwwwwwwww」

サシャ「……それではエレンは、ジャンがいなくなったことなんか全然これっぽっちも辛くないと?」

エレン「当たり前だろwwwwwwwww頭の中まで芋になったってか?wwwwwwwwwww」

サシャ「分かりました。行きましょうコニー」スタスタ

コニー「え、ええ? エレンをあのままにしていいのかよ?」ワタワタ

サシャ「エレンはジャンがいなくなってむしろ嬉しい。当人がそう言うんだからそうなんでしょう」

コニー「けどよ、あいつだって素直に言えないだけかも」

サシャ「それこそ論外です。素直に悲しさを表現できないからってあんな態度を取るなんて、ただのガキじゃないですか」

サシャ「ガキがここにいちゃいけないでしょ? ここは兵士になるための場所なんですよ?」

コニー「そ、そんなことまで考えてたのか……なんかお前がすげえ遠い場所に行っちまったような気がするぞ」

サシャ(……本当はエレン自身からの受け売りなんですけど)

ライナー「よおエレン」

エレン「なんだライナーwwwwwwwwとベルトルトとアニwwwwwwwwwwwwどうした揃ってwwwwwwwwwwwwww」

ライナー「お前どうするんだ? 親友にも頭の緩い同期にも見放されて」

アニ「言っとくけど私たちはあんたのフォローなんかしないからね」

エレン「フォロー?wwwwwwwwwwwwごめん何言ってるかさっぱりわかんねwwwwwwwwwww」

ベルトルト「分からないならそれでいいさ。さよならエレン」スクッ

ライナー「じゃあな」

アニ「……格闘教練の相手、頑張って探すんだね」

エレン「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

夕食時

エレン「なんだミカサwwwwwwwwwwwwwwwアルミンはどうしたwwwwwwwwwwwwww」
ミカサ「アルミンはクリスタたちと一緒に食べてる」

エレン「俺ホントに見捨てられたwwwwwwwwwwwwwwwww」

ミカサ「……ねえエレン。私はどうしたらいいの?」

エレン「なんだどうしたwwwwwwwwwwwwwwww藪から棒にwwwwwwwwwwwwwwww」

ミカサ「私はエレンに、昔のあなたに戻って欲しい」

ミカサ「アルミンも言ってたけど、今のエレンが何を考えてそんなことをしてるのか私には分からない」

ミカサ「けど今のままでいいはずがない。エレン、どうしたら戻ってくれる? 私に出来ることならなんでもする」

エレン「ちょwwwwwwwwwwwなんでもとか言うなよwwwwwwwwwwwww年頃の男子にwwwwwwwwwwwww」

ミカサ「……エレンが望むのなら、それでも」

エレン「やめろっつってんだろwwwwwwwwwwwあwwwwwwwwwwそうだ思いついたwwwwwwwwwwwww」

エレン「ジャンの墓をぶっ壊してきてくれ」

ミカサ「……え?」

ライナー「おい、今のは俺の聞き間違いか?」

アニ「私の耳にもはっきり聞こえたけど」

ベルトルト「後には引けない場所に行こうとしてるね」

クリスタ「エレン……」スクッ

ユミル「よせ。お前じゃ無理だ」ガシッ

アルミン「……」

ミカサ「……どうしてそれでエレンが昔のように戻るの?」

エレン「なんだよwwwwwwwwwww自分にできることなら何でもするんだろwwwwwwwwwwwwww」

エレン「俺はジャンが大っ嫌いなんだよwwwwwwwwwwwwwあいつの痕跡を消して存在そのものを無かったことにしてこいwwwwwwwwwwwww」

エレン「ジャンなんて始めからいなかったwwwwwwwwwwwそうすりゃ全部元通りよwwwwwwwwww」

ミカサ(……どうすればいい。こんな頼み聞けるはずがない、けどならばどうすれば私はエレンを元に)


バキィッ!!


エレン「オウフwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」バッターン

ミカサ「!?」

マルコ「いい加減にしろよ……!!」

ミカサ「ま、マルコ……?」

マルコ「すまないミカサ、けどもう限界だ。これでもジャンとは仲が良かったほうだからね」

マルコ「この際だから言わせてもらう。エレン、今のお前に味方なんか一人もいないぞ。ミカサだってお前を殴った僕を止めようとしない。これがどういうことか分かるだろ」

ミカサ「……」

マルコ「お前、嫌われてるんだよ。前は軽く引かれる程度だっただろうが、今は明確にな」

エレン「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

マルコ「笑うな!!」ドカッ

ミカサ「お願いマルコ。どうか酷い怪我はさせないで」

マルコ「……ハッ。聞いたかエレン、頼りのミカサも助けちゃくれないぞ」

マルコ「僕だってお前のことは嫌いじゃなかった。むしろその目的意識と熱意には羨ましさすら感じてたさ」

マルコ「けど今のお前はなんだ? 口を開けばジャンジャンジャンジャン」

マルコ「僕はお前のそんな姿見たくなかった……」

ミカサ「マルコ……」

アルミン(僕もまったくもって同意見だよマルコ)

エレン「……すまなかった。お前の気持ちに感づいてやれなかった俺がバカだった」

マルコ「……分かってくれたのか?」

ミカサ「エレン……?」ウルッ

エレン「ああ、まさかマルコとジャンがそんな関係だったなんてな……」

マルコ「……は?」

ミカサ「エレン……?」

エレン「みなまで言うな。別に俺は個人の性的趣向をどうこう言うつもりは無い」

エレン「ただちょっとばかり好奇心を動かされたんだが、どっちがタチでどっちがネコ……」

ドゴォ!!

エレン「か、はっ」

マルコ「ざけんな!」バキッ

サシャ「……エレンが悪いですねー」

コニー「ああ、エレンが悪い。だからミカサも止めるに止められない」

ミカサ「」オロオロ

マルコ「もう僕は止まらないぞ、こうなったら言いたいこと全部言ってやる」

マルコ「ジャンがいなくなってからずっと疑問だったんだ。なんで内地で安全に暮らすことが目的だったジャンがこんな目に合わなきゃいけないのかって」

マルコ「ジャンは単に生きていたかっただけだ。そんなジャンがあんな簡単なミスで死んでしまった」

マルコ「不公平じゃないか! 死にたくなかったはずのジャンが死んで、なんで死に急ぎ野郎のお前が生きてるんだ!」

ミカサ「マルコ! それ以上は」

エレン「うるせえ!」ドガッ

マルコ「ゲボッ!?」

ミカサ「エレン!?」

エレン「ジャンはつまんねえミスで死んだ! あいつは生きたがってたとか、そんなん知るか!!」

エレン「だいいち生きていたかったとかなんだそりゃ!? 兵士なら自分の命を省みてはいけない時だってあるはずだろ!」

エレン「だから俺はジャンのことが嫌いだった! 憎んですらいた!! 当たり前だろ!!」

マルコ「……確かにそうだ。兵士には死にたくないなんて言ってられないときはあるだろう」

マルコ「けどそれはお前が特別だからだ。死に急ぎ野郎のお前はともかく、普通の人間であれば死にたくない、安全に生きたいと思うんだよ」

マルコ「そして調査兵団のような死を前提とした場所に行くか憲兵団で安全に暮らすか選べと言われれば、普通の人間は後者を目指す」

マルコ「誰もがお前みたいに特別じゃないんだ。その証拠に、周りを見てみろ」

シーン……

マルコ「誰もお前の意見に同調しやしない。それどころかお前を怖がっているぞ」

マルコ「これで分かっただろ。お前は普通じゃないんだ」

エレン「……ああそうかよ。ジャンが死んでからずっとイライラしてたが、何でか分かったぜ」

エレン「お前ら全員、ジャンが死んでから臆病風に吹かれやがったんだよ」

エレン「教官の前ではいい点欲しいからいかにも勇敢そうに振舞って」

エレン「その実、ジャンみたいなことには絶対なりたくないから日々の訓練をただ恙なくこなすことに必死になって」

エレン「ざけんなよ。お前ら全員兵士じゃねえ」

エレン「お前らが俺のこと嫌ってくれるってんなら都合がいい。俺もお前らのことが嫌いだって分かったからな」スタスタ

バタン

マルコ「……クソッ!」

ライナー「兵士、か」

サシャ「エレンの言いたいこと、分かりました?」

コニー「ああ。けどどうしろってんだ? 俺だって死にたかねえよ……」

ミカサ「……」

アルミン(最悪だ。もはやどうにもならないぞ)

アルミン(どうしてこうなってしまったんだ……)

深夜

エレン「……」

マルコ「……どうしてお前がここにいるんだ」

エレン「俺がどこにいようと俺の勝手だろ」

マルコ「ここはジャンの墓だ。自分の手で破壊しに来たのか? それとも今さら罪の意識にでも苛まれたのか?」

エレン「……」

マルコ「それともう一つ聞きたい。なんでお前、さっき僕が墓参りに来たとき、逃げるように姿を隠したんだ」

エレン「…………お前の墓参りは、もっと遅い時間のはずだった」

マルコ「へえ。僕の日課を知ってたわけだ。それも正確な時刻まで」

エレン「お前こそなんで今日わざわざ時間をずらした」

アルミン「僕の差し金だよ」

ミカサ「エレン……」

エレン「……いい趣味した友達を持って俺は果報者だぜ」

アルミン「エレン。君は今日、完膚なきまでに同期から嫌われた。もう取り戻すのは無理だろう」

アルミン「だから君を助けてやるだめじゃない。僕が納得するために、真実を知りたいんだ」

ミカサ「私はあなたを守る。たとえあなたがどれだけ変わってしまっても」

マルコ「本当にいい親友だな。この二人だけは何があってもお前を見捨てないぞ」

マルコ「そんな親友に対しても、ずっとそうしてるつもりなのか?」

エレン「……」

ミカサ「お願いエレン。私にはもう、どうすればいいのか分からない……」

アルミン「言えないのは、君が僕のことをもう親友だと思ってないからか?」

アルミン「ふざけるな、こんな終わり方で納得できるはずがないだろ。僕たちがいったい何年の付き合いだと思ってるんだ」

エレン「………………」

エレン「誰にも言うな。情けない話なんだ……」

エレン「覚えてるか? ジャンが死んでから一週間くらいは、俺も大人しかったんだぜ」

アルミン「ああ。あの頃のエレンは魂が抜けたみたいだったね」

ミカサ「それから急にジャンのことを罵り始めたから、突然のことで私はすごく驚いた」

マルコ「それでお前は皆から避けられるようになった。けどそれは因果応報だろ?」

エレン「ああ、マルコ。そりゃ間違いだぞ」

エレン「お前らは気づいてなかっただろうが、ジャンが死んでから俺はずっと避けられてた」

エレン「俺がジャンの死をコケにするようになってからじゃないんだ」

アルミン「……何だって?」

エレン「もちろん今みたいに露骨じゃなかったぜ? それならアルミンもミカサも気づいたはずだからな」

エレン「けど実際そうだったんだよ。誰も俺に積極的に話しかけてはこなかったし、話してる最中も目を合わせなかったり上の空だったり」

エレン「おっと、当然だがお前らやライナーやコニーサシャは別だったぜ?」

エレン「けど他の連中……さっきマルコが言ってたような、普通の連中は俺を避けるようになった」

ミカサ「何故」

エレン「それもさっきマルコが言ってただろ。俺が普通じゃないからだよ、おそらくは」

アルミン「……え? けど今まではそんなことなかったじゃないか。僅かだけど、エレンの意見に賛同する人すらいた」

アルミン「もちろんジャンと同意見の人のほうが圧倒的に多かったとは思うけど、それでもエレンが避けられるなんてことは無かったはず」

エレン「それな、俺の想像なんだけど」

エレン「たぶんジャンがいたからこそ、俺の普通でない考え方も許されてたんじゃねーかと、ジャンが死んだ今になって気づいたんだ」

マルコ「ジャン、が?」

エレン「こういう言い方なんだけどさ、ぶっちゃけジャンって人によってはそんな好かれてたわけじゃなかっただろ」

エレン「いやこれは死者を貶めるとかじゃなくて、純粋に事実として、な?」

エレン「いやいやそれにそれにアイツの実力は誰もが認めてたし……あれでちょいちょい漢気みせたし……そこそこハンサムだからモテてたし……」

エレン「……何を言い訳してるんだ俺は?」

アルミン「いや、言いたい事はよく分かるよ」

ミカサ「ジャンはエレンと同じく、評する人物によって評価が極端に変わる人間だったと思う」

マルコ「……まあ確かにそうだろうね。ジャンは抜き身すぎたから」

エレン「でさ。コニーが前にこんなこと言ってたんだよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

コニー「ジャンの言うことが真実ってのはいくら俺でも分かるぜ?」

コニー「けどジャンに賛同するのはなんか気にくわねーってか」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エレン「たぶん、他の連中もそうだったんだろ」

エレン「みんな自分の命が大事。けどジャンと同じ考え方に収まるってのはなんだか気に入らない」

エレン「だからちょっとだけ勇気を出して、エレンみたいな死に急ぎ野郎に賛同してやろう。ひょっとしたら勇気を買ってもらえるかもしれない」

エレン「あるいはジャンの意見に賛同しつつも、ジャンほどエレンのことを目の敵にしてませんよーそこまで余裕ないわけじゃないですよー僕はオトナですよー」

エレン「そんな感じだったんじゃねえのかな。ジャンが死ぬまでは」

ミカサ「……」

マルコ「……」

アルミン(まさかそんな……いやけど、否定できない)

エレン「けどそれも、ジャンが死んでから枷が無くなった。みんな本音が顔に浮かぶようになった」

エレン「どいつもこいつも死にたくないとしか考えてねえ。そんな中では俺は異端だったんだよ」

ミカサ「私はエレンのためなら命なんて惜しくない。けど私は避けられていなかった」

アルミン「僕も、目的を果たすためなら命なんて。でもみんなは普通に接してくれた」

エレン「それこそ、マルコがさっき言ったことをみんな考えてたんだろ」

エレン「生きたがっていたジャンが死んで、なんで俺が生きてるんだ、ってさ」

エレン「死に急ぎ野郎とまで言われたのは、さすがに俺だけだったからな」

マルコ「あ……」

エレン「つか実はさ、聞いちゃったんだよ」

――――――――――――――――――――――――

エレン(便所掃除……本来はジャンの当番だったんだけどな。お前が死んだなんて、まだ実感湧かねえよ)

男子a「しっかしまさか、ジャンが死んじまうとはな……」

男子b「ああ。あいつは多分、俺たちの誰よりも死にたくなかったんじゃないか?」

エレン(……この声、同期の誰だっけ? まあいいや掃除するから出てってもらわないと)

男子c「どうせならエレンが死んでくれりゃあなー」

エレン(!?)ビクッ

男子a「お、お前めったなこと言うなよ!!」

男子c「いやだってそうだろ。順番で言えば、死に急ぎのエレンが先に死んで、優秀かつ死にたくないジャンが死ぬのは後であるべきだったんだ」

男子c「それなのに死にたくなかったはずのジャンが先にって、おかしいだろ」

男子b「……まあ確かに俺も、考えないわけじゃなかったさ」

男子b「成績6番のジャンがあんなあっさり死んじまうってんなら、ザコの俺たちが生き延びるなんて不可能なんじゃねえか、って」

男子c「だろ? エレンが死んでくれれば、少なくともこんな気分になることは無かったんだ」

男子c「むしろみんな当然だと思っただろうよ」

男子a「今の話、ここだけにしとけよ……」

男子c「構うものかよ! どうせ誰も彼も同じこと考えてるはずだ!」

男子c「いや、あの異端者だけは違うんだろうな。あいつは自分がのうのうと生き延びてるってことが」

男子a「それ以上言うな! 俺まで臆病風に吹かれちまう!」

エレン(異端者? 俺が……)

――――――――――――――――――――――――


ミカサ「……許せない」

アルミン「どうして僕たちに言ってくれなかったんだ! 親友だろ!?」

エレン「お前らに何とかできるような話じゃなかったよ。むしろ三人揃って異端者扱いされて終わりだっただろうな」

マルコ「……だから誰にも助けを求めず、か」

マルコ「けどそれなら、何でジャンを侮辱した? こんな言い方も悪いが、嫌うやつは嫌わせておけばよかった」

マルコ「あんな態度をとってしまっては、エレンを避ける連中に、お前のことを嫌う口実を作ってしまうようなもんじゃないか」

エレン「……それは、俺が弱くなったからだ」

アルミン「弱くなった、って。そんなはずない、ぼくのほうがずっと弱いし、エレンは対人格闘で」

エレン「そういうことじゃねえよ」

エレン「俺さ、ガキのころは友達とか少なくても平気だったんだ。事実アルミンとミカサしかいなかったしな」

エレン「それは俺たちの考えが理解されなかったからだ。外に出たいなんて考えの異端者、理解されるはずがなかった」

エレン「けどここに来て事情が変わった。俺の巨人を駆逐する、外の世界に出るって意見が肯定されたんだ」

エレン「少なくとも、肯定されたように俺には思えた」

エレン「俺は認められた。結果としてそれは勘違いだったんだが、あの時の俺はすげえ嬉しかったんだ」

エレン「けど真実はどうだ? ジャンがいなくなったら、みんな俺を『自分とは違う』って目で見るんだよ」

エレン「そうだ。あいつらまるで、俺を異端者どころか化け物みたいに」

ミカサ「エレン!」ガシッ

エレン「……ミカサ?」

ミカサ「もう、いい」ギュッ

ミカサ「もういい、から」グスッ

エレン「……」

エレン「……うっ、くぅぅ…………」ポロポロ

エレン「うぁ、ぅぁぁぁぁぁ…………」

アルミン「……エレン」

なぜ俺はマジキチスレタイのスレを口開けてよんでいるのか

エレン「俺さぁ、ヤだったんだよ……」

エレン「化け物みたいに見られるのは……仲間はずれにされるのは……」

エレン「けど、それでもどうしようもないってんなら……前みたいに戻れないってんなら……」

エレン「俺、もうどうしていいかわかんなくてさ」

エレン「だったらもう徹底的に嫌われちまえって思って」

エレン「それに皆が俺を嫌うなら、俺だって遠慮なく皆のことを嫌いになれる」

エレン「どうしてそんな結論に至ったのか、未だにわかんねえよ……けどあのままじゃ、俺、ダメになりそうで……」

エレン「だから俺、ジャンの死をダシにしてみんなのこと挑発して」

エレン「ジャンが死んだってのに、俺は自分の都合の心配ばっかで……こんな俺、嫌われても仕方ねえよ、無理ねえよ」

マルコ「だからせめてもの罪滅ぼしのために、誰もいない時間を狙ってジャンの墓参りに来てたのか」

エレン「すまねえジャン……あの世で面合わせて謝りたいけど、こんな俺は地獄行きだよな……」

ミカサ「うん、うん……ごめんねエレン」

アルミン「こんなことにも気づけなくて、何が親友ってんだよ……くっそぉ!」

エレン「マルコォ、俺、ジャンにひでえこといっぱいしたよな」

マルコ「ああ、間違いない」

エレン「こんな俺、嫌われて当然だよな」

マルコ「……そうかもしれない」

エレン「けど俺はもともと異端者だったんだから、これが普通なんだよな?」

エレン「普通じゃない俺は嫌われて除け者にされて当然だったんだよな? むしろ今までがおかしかったんだよな?」

マルコ「……」

マルコ「普通の人間であれば、死にたくないと思うのと同じように、嫌われたくない、除け者にされたくないと思うよ」

マルコ「その点からいえば、エレン、お前は普通だったのかもな」

エレン「……マルコ、お前、ひどいこと言うんだな」

マルコ「ああ。お前はジャンを侮辱したからな」

マルコ「ジャンだけじゃない。お前はみんなを侮辱した。僕のことも殴った」

エレン「…………そうだったな」

エレン「ごめんマルコ、ごめんみんな、って……今さら遅いよな…………」

男子a「おいマルコー、そろそろ飯にしようぜ」

マルコ「ああ、もうそんな時間か」

男子b「おいおいしっかりしろよ。お前は成績6番だぜ? そんなんでどうするんだよ」

……あれから、つまりジャンが死に、エレンの胸の内を聞いてから数ヶ月が経った。

結局エレンを取り巻く環境は変わらず、もはや「死に急ぎ野郎」という不名誉な代名詞はエレンという人名に取って代わってしまった。

エレンは人が変わってしまい、周囲に誰も近づかせないような気配を纏わせるようになった。そんなことになくても誰も近づきゃしないだろうに。

もちろんミカサとアルミンだけはそんなこと気にせず、昔のようにエレンにくっついている。

今では三人揃って異端者扱いだ。エレンがそうなることを望んでなかったのは二人とも気づいていただろう。

ただ、今の状況を良しとしちゃいないだろうが、それでもエレンが未だ壊れずにやってこれたのはミカサとアルミンが絶対に見捨てなかったからだろう。

男子c「なあお前ら、どこに入団するんだ?」

マルコ「えーと、僕は……」

コニー「……俺は憲兵団かな」

女子a「まあそうだよねー。誰だって死にたくないし……いや、特に意味があってのことではないけど」

男子b「まあ、そりゃ、死にたくはないよな」

マルコ「……」

ジャンの最期を思い浮かべてるだろうに、誰もジャンの名前そのものは口にしやしない。ジャンは本当にいなかったことになってしまったようだ。

成績優秀のジャンでも死ぬときはあっさり死ぬという事実が皆には耐えがたかったんだろう。

今ではジャンの名前を口に出しただけでも異端者扱いだ。僕はそうなりかけたが、自分の身がかわいかった僕は皆と共にジャンをいなかったことにした。

これじゃ僕もエレンのこと言えないよな、そんなことは分かってるさ。

それこそ「普通の人」なんじゃ?

マルコ「ミカサは……どうするのかな……」

男子c「ああ? そりゃ死に急ぎ野郎と一緒に死に急ぎ兵団だろ」

男子b「いくらミカサが優秀でも、そう長くはないだろうな」

女子a「なんで死にたがるんだろうねー」

それとこの状況、非常にマズいことになってると考えるのは果たして僕だけなのだろうか?

エレンを馬鹿にするだけでなく、調査兵団そのものを疎かにしている。

そして異常なまでに死を恐れている。

もちろん普通の人間なら死を恐れる、けどこれはあまりにも……。

憲兵だって事件や犯罪と戦って命を落とした人はたくさんいる。

駐屯兵だって、例えば事故や火災から人命を助けるためにその身を犠牲にした人はいくらでもいる。

僕らは、そんな時にすら命を惜しんでしまうんじゃないのか?

マルコ「……お前のせいだぞ、ジャン」

ジャン。君があんな下らないことろで死んでしまってなければ、こんなことにはならなかったんだろうに。


ドッゴォォォォォォォォォォォン!!!!!!!


僕のそんな思いをこめた呟きは、突如として湧き上がった轟音にかき消された。

その音はあまりにも大きく、まるで、とてつもなく大きな何かが、大きくて固い何かを、例えるなら壁のようなものを破壊したかのような。

そんな、音だった。




おわり

エレンは馬鹿だけど、頭悪いなりに考えたり悩んだり出来る子だと思います。
鈍感もミカサラヴもキチガイも好きですが、こういうエレンも増えてくれたら僕としては嬉しいです。

それでは読んでくださった皆さんありがとうございました。

ピクシとか「敵」について会話してたのは印象的だな
アルミンも「え?」ってなってたし

ピクシスと だった

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