エレン「ママ」サシャ「よしよし」 (66)
進撃の巨人ssです。
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食堂
ギャーギャー ワーワー
ミカサ「アルミンおはよう。あれは……?」
アルミン「おはようミカサ。またエレンとジャンが喧嘩してるみたいだね……」
ジャン「だいたい何が駆逐してやる~だよ」
エレン「何だと!」
ジャン「立体機動もまともにできないやつがよく調査兵団なんて言えたもんだ。お前なんて最初の調査で巨人に食われて終わりだな」
エレン「……じゃあ勝負でもするか?」
ジャン「勝負?」
エレン「このあと立体機動の訓練だろ。どっちが多く討伐したかで勝負だ! 俺の実力を見せつけてやる!」
ジャン「おおいいぜ。その代わり、負けたやつは罰ゲームな」
エレン「罰ゲーム?」
ジャン「簡単だ。負けたほうが勝ったほうの言うことを聞く。どうした? おじけついたか?」
エレン「いいぞ、のぞむところだ!」
立体機動訓練
ジャン「よしもらった!」ザシュッ
エレン「くそっ!」
ジャン「ははははは。残念だったなぁ!」
エレン(こんなことじゃダメだ……巨人どもを残らず駆逐するって決めたのに!)
エレン「! あそこに……! ハアアア!」
ジャン「おせぇよ!」ザシュッ
エレン「おいジャン!」
ジャン「ハンッ、妨害なしなんて言ってないだろ。これは勝負だからな」
エレン「くっ……」
男子宿舎
アルミン「討伐数はジャンの勝ちだったみたいだね」
ジャン「よっしゃああ!」
ライナー「喜びすぎだろ。ジャン」
コニー「お、勝負が決まったみたいだな」
ライナー「ああ。ジャンの勝ちだ」
ベルトルト「エレンも結構よかったけどね」
アルミン「うん。そうだね。エレンは少し力が入りすぎてた。そこを直せば、きっと次は勝てるよ」
ジャン「こいつが? 俺に? むりむり」
エレン「なんだと!」
ライナー「おいやめろ二人とも。教官に聞かれたらどうする」
エレン「……」
ジャン「まあとにかく今回は俺の勝ちだ。おいエレン。負けたやつは……わかってるよな?」
エレン「ああ、罰ゲームだな……勝ったお前が決めるんだろ」
ジャン「おう。さ~て、どうするかな」ニヤニヤ
エレン「さっさと言えよ」
ジャン「いやいや、ここは慎重に決めねえとな。どんなことでもやってくれるだろ?」ニヤニヤ
アルミン「ちょっとジャン。規則に違反したりするものはダメだよ?」
ジャン「大丈夫だってアルミン。立体機動ができないこいつでもできるものにしてやるさ」
エレン「ぬかせ。お前の出す罰ゲームなんて巨人に比べたら大したことないな。なんだってやってやる!」
アルミン「ちょっとエレン!」
ジャン「う~ん……よし! 決めた!」
エレン「なんだ?」
ジャン「芋女にパンをもらえ。ママ~パンが欲しいよ~って言って甘えながらな」ビシッ
エレン「…………はあ!? なんでそんなことしなくちゃならねぇんだよ!」
ジャン「今なんでもやってやるって言ったのはお前だろ、エレン?」ニヤニヤ
ライナー「なかなかキツい罰ゲームだな」
アルミン「うん。甘えることはもちろん、パンをもらうのも、一筋縄じゃいかないだろうね」
コニー「ていうか無理なんじゃねえか。サシャのやつが人から飯を奪うことはあっても……」
ベルトルト「与えることはなさそうだよね……」
ジャン「へっ、だからこそだ。これでこいつは約束も守れねえ嘘つき野郎か、でなけりゃ永遠に芋女なんかに甘え続ける気持ち悪い男にしかなれねえってことだ」
ライナー「永遠って……」
アルミン「ジャン……これは単なる罰ゲームだ。もう少し何か、もっとこう……」
エレン「いや、いいんだアルミン」
アルミン「エレン……」
エレン「わかったぜジャン。約束は守る。これでいいだろ?」
ジャン「おう楽しみにしてるぜ!」
コニー「性格悪いなあお前」
ジャン「ほっとけ」ハッハッハ
アルミン「エレン、大丈夫なの?」コソコソ
エレン「ああ、ちゃんと考えてるさ」コソコソ
翌日 食堂
ジャン「おい、エレン」ニヤニヤ
エレン「わかってるって.....」ガタッ
ミカサ「エレン……? どこに行くの?」
エレン「すぐ戻る」
サシャ「はむ、はふ! う~ん、やっぱりパンは美味しいですねぇ!」
ユミル「毎日毎日、よくもまあ飽きずに美味そうに食えるもんだな。呆れるぜ」
クリスタ「うふふ、でも何だかこっちまで元気になっちゃうね」
ユミル「そうか?」
サシャ「あれ、二人ともどうしたんですか。いらないなら私に……」
ユミル「やるわけねえだろ。これから訓練だってのに」
クリスタ「ごめんねサシャ」
サシャ「そうですか……」
エレン「サシャ」
サシャ「あれ、エレン? どうしたんですか」
エレン「パン欲しくないか」フリフリ
サシャ「パァン!?」
エレン「うわ! びっくりした! ちょっと待て!」
ジャン「ちょっと待つのはてめえだエレン! まさか渡したパンをもらうんじゃないだろうな。ずるいぞ!」
エレン「先にずるいこと考えたのはお前だろ! それにサシャからもらえって言っただけでサシャのをもらえとは言ってなかっただろ!」
ジャン「くっ!」
クリスタ「何の話?」
エレン「罰ゲームでな、俺がサシャからパンをもらわなくちゃいけないんだ……」
ユミル「くだらねえ……」
ジャン「けっ、だけど、罰はそれだけじゃないだろ」
エレン「ああ……」
サシャ「えーと……」
エレン「サシャ、これから言うのは罰ゲームだからな。とりあえず、これから言うことに乗ってくれたら、明日、報酬としてパンを分けてやるよ。いいな?」
サシャ「ほ、ほんとですか!?」
エレン「ああ……い、いくぞ!」
エレン「ま、ママ!パンが欲しいよ~!」
サシャ「……」
ユミル「」ブフォ
クリスタ「……」ポカーン
ジャン「ぷっ、だーはっはっはっ! けっさくだな! おーいみんな! エレンが愛しのママを見つけたみたいだそ!」
エレン「くそっ、このクズ野郎.....おい、早く渡せよサシャ!」
サシャ「あの~すいませんエレン」
エレン「え? あれ? お前、パンは……?」
サシャ「パンはもう食べちゃいました」
エレン「はあ!? いつのまに!? 俺の分まで!」
ジャン「ほぉ、ってことは」
エレン「ジャン……」
ジャン「また同じのを見れるってことだな~」ニヤニヤ
エレン「.....」
エレン「だああぁ! あの馬面め!」
アルミン「あはは……災難だったねエレン」
エレン「だったじゃねえよアルミン。災難は現在進行形で続いてるんだ」
ミカサ「それは問題」
エレン「そう問題……ってミカサ!?」
ミカサ「エレンはパンを食べられなかった」
エレン「ああ……おかげで腹が減ってしかたない……」
ミカサ「そこで、ここにパンがある」
エレン「分けてくれるのか?」
ミカサ「もちろん。ただし条件がある」
アルミン「まさか……」
ミカサ「そう。私にも――」
エレン「却下だ!」
ミカサ「……なら、あげない」パクッ
エレン「お、おい!」
ミカサ「サシャばかりずるい」
エレン「ずるいって何だよ。気持ち悪いだろ、あんなの。ああ、思い出しただけでも寒気がしてきた……」
アルミン「まあ、今回は不運だったよ。次はさすがに成功するさ」
エレン「だといいな……」
食堂
エレン「サシャ」
サシャ「あ、エレン」
エレン「ほらパンだ。食うなよ。わかってるよな? 次こそ頼むぞ」
サシャ「あの~けっきょく私はどうすれば」
エレン「言わなかったか?」
サシャ「パンを食べるのに夢中で……」
エレン「はぁ……前のは罰ゲームで、俺はお前からパンをもらわなきゃいけないんだ」
サシャ「へえ、何かで負けたんですか?」
エレン「そんなのどうでもいいだろ。とにかく、パンを渡してくれるだけでいい」
サシャ「ママっていうのは?」
エレン「ぐっ、文句ならジャンに言えよ。あいつの思い付きだ。ていうか」
シーン
エレン「なんでこんなに周りが静かなんだよ……」
ジャン「……」ブッ
エレン(あいつの仕業か……)
ユミル「……っ」ククッ
クリスタ「ちょっ、ユミル……」コソコソ
エレン(くそっ! 言いずれぇ!)
サシャ「エレン?」
エレン「ああこうなりゃやけだ! ママ……パンが欲しいよ!パンをおくれ!」
ジャン「……ブフォオ! だーはっは、ゲッホゲッホ」オエッ
エレン(こ、この野郎……)
ユミル「ひゅーひゅー」
クリスタ「ユミル……」
ミカサ「…………」ジー
アルミン(こんなに注目されちゃって。かわいそうにエレン)
サシャ「……」
エレン「おい、サシャ! はやく――」
サシャ「……」パクッ
エレン「は?」
サシャ「……」モグモグモグモグ
エレン「な、何してんだよ!」
サシャ「……」ゲフー
エレン「お、お前……」
サシャ「ごちそうさまです!」
エレン「バカ野郎が!」
ジャン「だーはっはっはっはっは!」
男子宿舎
アルミン「ジャン。もういいだろう。あれだけの注目の中でエレンは十分に辱めを受けた。ゲームの罰にはもう十分だ」
ジャン「ほう。どう思うよエレン」
エレン「……」
ジャン「俺としては別にかまわないぜ。十分おもしろいもんも見れたからな。いさぎよくあきらめたらどうだ?」
エレン「……! だれが! できないからって、失敗したからって、あきらめる理由にはならない! 巨人退治と同じだ!」
アルミン(この場合はあきらめても支障ないと思うけど……)
エレン「明日もやる! 恥をかいても、成功するまであきらめない! やってやる!」
アルミン「エレン……」
エレン「いいんだアルミン。というかサシャのやつはどれだけ食い意地張ってんだ? あれだけのことも我慢できないほどだったか?」
アルミン「そのことだけど、エレン。たぶんサシャは明日もパンを食べてしまうと思うんだ。だからその……」
エレン「アルミンもあきらめろって言うのか?」
アルミン「あきらめろとまでは言わないけど。でも、よく考えてみてよ。もし明日サシャがパンを食べたら、明後日もパンを持っていってあの罰ゲームをしなくちゃいけない。そしてその日にパンを食べられたら、さらに次の日も同じように罰ゲームをしなくちゃいけない。だからサシャはパンを食べることで、次もまたパンをもらえることになるんだ」
エレン「なっ……!」
アルミン「だからエレンがやめない限り、エレンはパンを取られ続けることになる」
ジャン「おいエレン。お前さっき言ったこと覚えてるよな?」ニヤニヤ
エレン「ぐうううぅ……!」
アルミン(それからというもの)
エレン「ママ!」
サシャ「っ!」バクバクバク
アルミン(エレンは食事の度に)
エレン「ママ!」バッ
サシャ「……!」サッ
アルミン(サシャからパンをもらおうと)
エレン「ママああ!」
サシャ「……」ムフー
アルミン(奮闘していた)
ある日
エレン「くそっ! またダメだった!」
アルミン「エレン……」
ミカサ「エレン、いい加減にしてほしい。エレンがやめればそれで済むこと。それか私にマ――」
エレン「あともうちょっとなんだ! あいつが食うタイミングや動きも分かってきたし、俺のママって言う速さもかなりよくなってる。あとはどれだけ素早く奪えるかだ。さっきのはかなり惜しかったし」
アルミン(何かおかしな方向に向かってるよエレン……みんなも、もうエレンとサシャに飽きちゃったみたいだし)
ミカサ「でも今日の訓練は兵站行進。力をつけておくべきだった」
エレン「大丈夫だって。今までもやってこれただろ」
ミカサ「そんなことない。エレンはいつもがんばりすぎる。最近はそのせいか上手くできていない。少し休むべき」
エレン「さぼれって言うのか?」
ミカサ「そうじゃない。訓練の合間にも休むことはできる」
エレン「それじゃあ手抜きになっちゃうじゃないか!」
アルミン「ようするにエレン。全力疾走するだけじゃ長く走れないから休むことや力をぬくことも大切だってことだよ」
エレン「……」
アルミン「わかったかい?」
エレン「いや……そうこうしてる間にも巨人はずっと俺たちを、人類を食べようと壁に向かってきてる! 俺は走り続けてやる!」
兵站行進
キース「アルレルト! 遅れているぞ!」
アルミン「はぁ……はぁ……」
アルミン(やっぱりこの訓練……体力のない僕にはキツい……せめて、みんなに置いて行かれないようにしないと!)
キース「どうしたイェーガー! アルレルトと共に開拓地に行くことにしたのか!」
アルミン「!?」
エレン「……」ゼーゼー
アルミン(エレンが僕に並ぶなんて……!)
アルミン「エレン! 少し休ませてもらおう! やっぱり無理してたんだ!」
エレン「いや、大丈夫だ。ちょっと体に力が入らないだけで……」ハァハァ
アルミン「だからそれだよ! それに、ちゃんと食べないからだ!」
エレン「はは。食事の大切さがよく分かったな」ハァハァ
アルミン「はは、じゃないよ。訓練が終わったら――」
エレン「あ……?」ドサッ
アルミン「エレン!」
アルミン(……! 単にこけたんじゃない……気を失ってる!?)
キース「何をしている!」
アルミン「教官! 彼を医務室へ行かせてください!」
キース「くっ! さっさと馬に乗せろ!」
アルミン「ありがとうございます!」
食堂
ガヤガヤ
クリスタ「ねえ聞いたユミル? エレン、倒れちゃったんだって」
ユミル「知ってるよ。ジャンがふれまわってミカサに睨まれてたからな」
クリスタ「心配だね。大丈夫かな」
ユミル「お前が気にすることないだろ。まあ、どこかの誰かさんには、少し気にする必要があるかもしれないけどな」チラッ
サシャ「う、うぅ……やっぱり私のせいですよね……」
クリスタ「そ、そんなことないよ」
ユミル「どうだろうな。普段から熱心に訓練してる上に飯まで半分に減らしてりゃわかんないぞ……ん?」チラ
クリスタ「あ、ミカサだ。お見舞いに行ってきたのかな?」
ミカサ「……」ゴゴゴ
クリスタ「……怒ってるね」
ユミル「あーおい、サシャ、逃げたほうが――てもういねえか」
医務室
医者「よし問題なさそうだね。他にどこか悪いところはない?」
エレン「いえ何も。問題ありません」
医者「うん。元気そうでなによりだ。食欲もあったみたいだしね」
エレン「それではもう……」
医者「ん? ああ、ダメダメ。今夜はここで寝なさい」
エレン「え?」
医者「しばらく安静にしてること。いいね? それじゃあ」バタン
エレン「…………まじかよ」ボフッ
エレン(アルミンもミカサも行っちまったし……夜は寝るだけとはいえ、なれない部屋で一人は少し心細いな……)
エレン「って何言ってんだ。ガキかよ俺は」
サシャ「何がですか?」
エレン「いやだから……ってサシャ!?」ガバッ
サシャ「はい。そうですよ」
エレン「何やってんだよ。もうすぐ消灯だろ?」
サシャ「何って、お見舞いに決まってるじゃないですか」
エレン「ノックくらいしろよ……」
サシャ「もう寝てたら悪いなと思って……」
エレン「はぁ……」
サシャ「あのエレン、その……」
エレン「?」
サシャ「すいませんでした」ペコ
エレン「……何がだよ」
サシャ「その……エレンが倒れちゃったのは、私がパンを取ったからで……」
エレン「そんなのわかんないだろ。診断結果も疲労がたまってるってだけだったしな」
サシャ「それでもあやまりたいんです。エレン、本当にすいませんでした!」
エレン「別にいいよ……なあサシャ」
サシャ「……?」
エレン「俺からもあやまっとく。悪かったな」
サシャ「え? 何がですか?」
エレン「罰ゲームのことだ。ジャンが考えたとはいえ、罰ゲームの道具にされるのはいやだっただろうし……それに、同期の男からあんなふうに呼ばれるのもな」
サシャ「……」
エレン「だからあやまらせてくれ。ごめん」
サシャ「……エレン。エレンはどうして私がパンを、エレンに渡すべきだったパンを、食べ続けたと思いますか?」
エレン「え? そりゃ……お前が芋女だからだろ?」
サシャ「いっ!? どういうことですか! ひどいですよ!」
エレン「あ、いや、ようするに食べるのが好きだからだろって」
サシャ「むぅ……たしかに好きですけど……でも違います。6……5……4割くらいしか当たってません」
エレン(ほとんど当たってるんじゃないのか……)
エレン「じゃあ、残りの6割……パンを取った理由は何なんだよ」
サシャ「ママって呼ばれたかったんです……」
エレン「マ……え?」
サシャ「だから、ママって呼ばれたかったんですよ!」
エレン「は? はああぁぁ!?」ドンビキ
サシャ「ひかないでください!」
エレン「いや、ひくだろ普通。どんな趣味してんだよ!」
サシャ「趣味じゃないですよ! たまたまです、たまたま!」
エレン「何だよたまたまって!?」
サシャ「だからその……最初にエレンがママって言ったときにですね……」
エレン「あ、ああ……」
サシャ「エレンはあのとき平静を装ってましたけど、たぶん目の前にいた私にしかわからなかったんですけど、少し、顔が赤くなってたんです」
エレン「……」
サシャ「恥ずかしがりながらママって呼んでくるエレンが、少しかわいくて……」
エレン「……」
サシャ「それで、パンをあげて終わりにするのは、なんだかもったいないなぁって思ったんです……」
エレン「……」ドンビキ
サシャ「だからひかないでくださいよ!」
エレン「わ、悪い……」
サシャ「うぅ……ですから……エレンがあやまる必要はないんです」
エレン「そ、そうか。じゃあ次からはちゃんとパンをくれるってことでいいんだよな?」
サシャ「それなんですけどエレン。お願いがあるんです」
エレン「お願い?」
サシャ「最後に私に……おもいっきり甘えてくれませんか?」
エレン「はあ!? いやに決まってんだろ! やっぱりたまたまじゃなくて普通にお前の趣味なんじゃないのか!?」
サシャ「もうそういうことでいいですから、お願いします!」
エレン「いやいや、なんでそんなことにつきあわなきゃ……」
サシャ「これで最後ですから!」ウルウル
エレン「うっ……と、特別だぞ。少しだけだからな!」
サシャ「ありがとうございます!」
エレン(なんでこんな状況に……)
サシャ「エレン?」
エレン(サシャがベッドに腰掛けて)
サシャ「ほら、はやくしてください」ポンポン
エレン(膝枕しようとしてる……)
サシャ「エレン」ポンポン
エレン「……わ、わかってる」
エレン(サシャは恥ずかしくないのか……?)
エレン「……」ポフッ
エレン(……! な、なんだこれ……!)
サシャ「むふふー」ナデナデ
エレン(やわらかいし……あたたかいし……)
サシャ「いい子いい子」ナデナデ
エレン(なんか……安心する……)トローン
サシャ「うふふ~」ナデナデ
エレン「……」ジー
サシャ「?」ナデナデ
エレン(あらためてみると……サシャって綺麗なんだな……)
サシャ「エレン。これ見てください」フリフリ
エレン「それは……パンか?」ボー
サシャ「はい。はじめてですよごはんを残したのは。食べさせてあげますね」ニコッ
エレン「あ、ああ……」
サシャ「ほら。言うこと、あるでしょう?」
エレン「……! ……マ……」
サシャ「マ?」
エレン「ママ……パンが欲しい……」
サシャ「フフッ。はい、あーん」
エレン「……」モグモグ
サシャ「かわいい……」ナデナデ
エレン(ああ、なんだこれ……)
エレン「……」ゴクン
サシャ「少しずつ食べさせてあげますからね。あーん」
エレン「……」アーン
サシャ「雛鳥みたいですね……」ナデナデ
エレン(だめだ……)
エレン「ママ……」
サシャ「! はい……ママですよ」ナデナデ
エレン「ママぁ……」ギュッ
サシャ「はいはい。あーん」ギュッ
後日
エレン「おりゃああ!」ザシュッ
サシャ「はあっ!」ザシュッ
ジャン「エレン! サシャ! よくも俺の獲物を!」
エレン「お前がちんたらしてるからだろ。いくぞサシャ!」
サシャ「やったー! 感謝しますよジャン!」
ジャン「きたねぇぞ!」
キース「ふむ。エレン・イェーガー。一時は成績が落ち込んでいたが、盛り返したようだな。肩の力が抜け、かなりリラックスしているようだ……」
ミカサ「エレンすごい。日に日に上達してる」
エレン「そうか?」
アルミン「うん。絶好調だね。サシャとのあれもやめたみたいだし、もう倒れる心配もないんじゃないかな」
ミカサ「あれは一生の不覚だった。私が意地を張らずちゃんとしていればエレンが倒れることもなかった。これからはいっそう気をつけないと……」
アルミン(でもかまいすぎると……)
ミカサ「! エレン、口元がスープで汚れている。かぶれるといけない」
エレン「ちょ、やめろミカサ!」
ミカサ「やめない」グイッグイッ
エレン「もういいって!」ガタッ
ミカサ「まだ食べ終わってない。座って」
エレン「部屋で食うんだ!」スタスタ
ミカサ「あ……」
アルミン(こうやって逃げられちゃうんだよね……)
エレン「……!」
エレン「サシャ!」
サシャ「あ、エレン」
エレン「サシャ。その……」
サシャ「またですか?」
エレン「あ、ああ……いつも、悪いな……」
サシャ「いいんですよ。ほらおいで?」
エレン「ん……」ギュッ
サシャ「エレンは甘えん坊さんですね」ギュッ
エレン「ママ」
サシャ「よしよし」ナデナデ
おしまい
ありがとうございました
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