りせ「私が生徒会長になれた理由」 (82)

~放課後~
生徒会室

向日葵「赤座さんと吉川さんに手伝っていただいたおかげで助かりましたわ」

吉川「先輩方は会議なんだし、私たちにできることがあればこれからも手伝うよ」

あかり「うん、向日葵ちゃんも櫻子ちゃんも大事な友達だからね」

向日葵「私からも今度何かお礼をさせてもらいますわ。それにしても櫻子は仕事もしないで一体どこをほっつき歩いているんだか…」

あかり「そういえばさっきから櫻子ちゃんいないね」


ガチャッ

櫻子「た、大変だ!」


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向日葵「櫻子、あなた仕事サボってどこほっつき歩いてましたの」

櫻子「いやいやそれどころじゃないんだ。わ、わわわ、私は気づいてしまったんだ…」

向日葵「何がですの?どうせくだらないことじゃ…」

あかり「櫻子ちゃんどうしたのぉ?」

櫻子「会長さんって…」

向日葵「会長さんがどうかしましたの?」

櫻子「じつは幽霊かロボットだってことが判明したんだよ!」

向日葵・ちなつ・あかり「えぇ~~~」

ちなつ「って…」

向日葵「何を言ってるんですの櫻子は、そんなわけあるはずないでしょうが」

あかり「そうだよ櫻子ちゃん、たしかに松本先輩はお人形さんみたいに可愛いけどぉ…」

櫻子「それがさ、それがだよ…この写真見てほしいんだけど」


ちなつ「卒業アルバム……?」

あかり「何年か前の学級写真みたいだけど…」

向日葵「写真がどうかしたのですか」

櫻子「いいから見ろよおっぱい!」

向日葵「う、うるさいですわ」ドレドレ


ちなつ「う~ん…」

あかり「ちなつちゃんどうしたの?」

ちなつ「この銀髪の子…どこかで見覚えがあるような?」

向日葵「たしかに、どこかで見覚えのある顔ですわね…」

櫻子「それ聞いたところ西垣先生だってさ!」

ちなつ「えっ、ちょっと待って、西垣先生って七森中学校の卒業生だったの?」

櫻子「ほら、名簿のところにも載ってるし」

あかり「本当だぁ、あかり知らなかったよぉ」

向日葵「私もそれは初耳でしたわ。でも卒業アルバムなんてどうして借りられましたの?」

櫻子「いやぁ、西垣先生が七森中出身っていう噂を聞いたもんで」

櫻子「十年以上この学校に務めている先生に真相を尋ねたら、特別に資料室の卒業アルバムを見せてくれたんだぁ」イシシ

ちなつ「へぇ、そうなんだ。でも私たちかってに見ちゃって良かったの?こういうのってプライバシーの侵害なんじゃ…」

あかり(あれれ、ちなつちゃんも結衣ちゃんの写真たくさん持っていたと思うけどぉ…どうなのかな)

櫻子「西垣先生ならいいんじゃないー、あとで伝えとけばいいと思うし」

向日葵「でもこの写真と会長さんとどう関係してますの?」

櫻子「西垣先生の隣の子だよ」

ちなつ「この子がどうか……ってあれ」

あかり「なんか松本先輩似てるかも…」

向日葵「ですからそんなことがあるわけ…」

櫻子「ほら、本当そっくりでしょ!?」

あかり「だけどこの子笑ってるね…」

向日葵「たしかに顔つきとか会長さんにそっくりですけど…」

向日葵「会長さんがこんなににこやかなところ今まで見たことありませんし、たまたま似ているだけですわ」

櫻子「でも不思議だと思わない?会長って」

向日葵「不思議って、何がですの」

櫻子「一切喋らないし、あかりちゃんに負けじと影薄いし、それにいつも西垣先生と付きっきりだし」

あかり「櫻子ちゃんひどいよぉ」

向日葵「それであなたは何を言いたいんですの?」

櫻子「この名探偵櫻子が推理してみた」

向日葵「付き合いきれませんわ」

櫻子「だから最後まで聞けよおっぱい」

向日葵「い、いい加減に」

あかり「あかりは櫻子ちゃんの推理聞きたいよぉ」

櫻子「さっすがあかりちゃん」

向日葵「まあ赤座さんがそういうなら仕方ないですわ」

……………
……………
……………

向日葵「西垣先生が会長を生き返らせたですって?」

櫻子「もしくは会長にそっくりなロボットを作ったとも考えられる」

あかり「じ…じゃあ今の会長さんは?」

櫻子「幽霊…あるいはロボットってとこじゃないかなー」

ちなつ「でもそんなことってありえるの?」

櫻子「西垣先生と腕組んでピースしてる子、どう考えたって会長だよ。だから今の会長はこの写真から一切歳を取っていないことになる。よってそれはあり得ないと」

向日葵「ちょっとお待ちなさい、まだ根拠が足りませんわ」

ちなつ「そうだよ、全く別の人かもしれないじゃん」

櫻子「この会長にそっくりな女の子、卒業する前に事故で亡くなったらしい」

あかり「えっ…そんな」

向日葵「そんな根も葉もない噂…」

櫻子「だって卒業式の時の写真には映ってないじゃん?」

ちなつ「ほ、本当ね…」

あかり「も、もしかしたら転校したんじゃ…」

櫻子「どうやら事故で女の子が死んだのはこの4組らしいんだ」

ちなつ「櫻子ちゃん脅かさないでよ」ゾワ


櫻子「この前会長の椅子に座ったんだけど…なんか不自然に冷たかった気がしたんだ」

向日葵(た、たしかに、会長からはなんとも冷涼なオーラというか、暗いイメージがありますけど…でもそんなことを認めてしまったら)

櫻子「それにいつも西垣先生の爆発に付き合っているのに会長は無事でいるんだよ?」

あかり「でもそれなら西垣先生も同じなんじゃ…」ゾクッ

櫻子「そうだけどさ、これも会長が生身の人間じゃない可能性の一つになるんじゃないの」

ちなつ「さ、櫻子ちゃん、そそ…そんなの偶然に決まってるじゃないの…」ガタガタ

向日葵「だからって、決めつけるのは…」ゾワゾワ

櫻子「フフフ、そろそろ皆さんもお気づきのようですね」

櫻子「では最後に…」

ちなつ「…」ゴクリ

櫻子「会長の言葉を、なぜ西垣先生だけが聞きとれるんでしょうかねぇ」

あかり「……」ゾクッ

ちなつ「……」ゾクッ

向日葵「西垣先生だけが認識できる……ということは」ゾクッ

ちなつ「松本先輩は…西垣先生が作ったロボット…」ガタガタ

櫻子「あるいは未だに成仏しきれていない霊…西垣先生は会長の霊と心を通じ合わせている…」

向日葵「ちょ、ちょっとやめなさいって…」

ガチャ

ちなつ「ひぃっ」

向日葵「にっ、西垣先生?」

西垣「なんだお前らか、書類の整理は終わったのか」

向日葵「はい、一通り…」

西垣「ああ、今日はもう帰っていい。それを伝えに来た」

向日葵「は、はい…」

西垣「どうした、なんか顔色が悪いぞ」

ちなつ「い、いえ…何も」

櫻子「西垣先生って七森中出身なんですよね?」

西垣「おっ、知らなかったのか。偶然にも就任1年目に付いたのがこの学校だったわけだが」

向日葵「ちょっと櫻子…」

櫻子「先生のクラスに事故で亡くなった子がいたって聞いたんですけど」

向日葵「櫻子やめなさっ」

西垣「たしかに、痛ましい事故はあったな…」

櫻子「もしかして」

向日葵「櫻子」

櫻子「松本せんぱ」

向日葵「いい加減やめなさい!」

櫻子「ひ、向日葵何するんだよ」

向日葵「今日はこれで帰らせてもらいます。お疲れ様です」

ちなつ「向日葵ちゃん櫻子ちゃん待ってよ」

あかり「みんな待ってよぉ、あっ、西垣先生さようなら」

西垣「…」

西垣(ん、こんなところに卒業アルバムが)

西垣(そうか、この写真を見たのだな……)

西垣(あれからもう12年も経つのか…)




―――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――

~12年前~

七森中学校3年4組

~教室~

理沙「奈々ちゃん、奈々ちゃん、今日の理科の実験で教えてほしいところがあるんだけどっ」

奈々「おう、理科なら任せろ」

理沙「ここなんだけど…」

奈々「そうかそうか、コイルの周りで磁石を動かすと両端に電気が発生するんだ、そこでコイルと磁石を同時に動かすとな……」



理沙「奈々ちゃんありがとっ!奈々ちゃんはほんとに理科が得意だね」

奈々「まあ理科が得意っていうか、実験が好きなんだけど」

理沙「えへへ、将来は大きな大学で研究したりするのかな」

奈々「どうだろうな。まあ理科以外はそんな得意じゃないし」

理沙「りさもね、奈々ちゃんの立派な助手になれるように頑張るよ!」

奈々「そっか、よろしくな!爆発は付きものだけど」

理沙「なんで爆発させちゃうのさ」アハハ


修学旅行

担任「じゃあこれから自由行動だが、時間は厳守するように」


理沙「京都だってぇ、すごいね~」

理沙「こーんな綺麗な建物とか、何だかタイムスリップしたみたいだね~」

理沙「うわぁ~うわぁ~~」

奈々「りっちゃんってよく喋るよねー逆に関心するわ」

理沙「喋らなくなったら私じゃないと思っていいよー」エヘヘ

理沙「背は小さいけど活発なのが りさのステータスなんだからっ」

理沙「それにしても、二人きりで京都の町を堪能できるなんて最高だねー」

奈々「お、おう///」

担任「お前ら本当仲いいな、せっかく修学旅行なんだからもっとほかの子たちも誘えばいいだろう」

理沙「先生 余計な心配しないでくださいよぉ~」

担任「そうかそうか」

理沙「あっ、写真撮っていただけませんか」

理沙「奈々ちゃん奈々ちゃん~♪」ギュッ

奈々「りっちゃん、ちょっとくっつきすぎじゃ…」

理沙「いいのいいの~♪」


担任「お前らは恋人同士かっつーの」














―えっ、りっちゃんが暴走したバイクにはねられたって…

―今は…意識不明の重体…………そんな……そんな…


お通夜




奈々(りっちゃん…こんな姿になって………)ウルウル

奈々(暴走バイクだ?…ふざけんなよ……返せよ……私のりっちゃんを……返せよ……)


奈々「りっちゃん……ぐすっ…いつもみたいに喋りかけてくれよ…なぁ……これからもずっと一緒にいるって……約束……ぐすっ…」



奈々「こんなのあんまりだろぉ…」


りっちゃんの痛ましい姿の亡骸の前で 私はただひたすら 怒りと悲しみが複雑にぶつかり合った気持ちの中で 泣き続けていた。



7年後…

西垣奈々は22歳で、晴れて七森中学校の新任教員となった。


そして1年が過ぎた…

職員室

西垣(私も今年から一年生の副担任なんて…嘘みたいな話だぜ)


コンコン

「あの失礼しまーす」

「あのぉ…」

西垣「お母様ですか…えっとお子さんの名前は…?」

「1年5組の松本りせの母です…ちょっと担任の先生とお話したいことがありまして…」

西垣「あっ、すいません、担任の先生は今日休まれていて、よろしければ私が副担任ですのでお話聞きましょうか…?」

「あっ…はい…」

西垣「でしたらこんなところじゃなんなので、会議室にでも…」


~会議室~

西垣「話とはなんでしょうか…」

松本母「うちの子、会話というか人とのコミュニケーションが全く駄目で…なんといったらいいんでしょう…信じがたい話だと思われますが、いつからか声が出せなくなってしまったんです……」

西垣「声が出せない…?」

松本母「はい…話しかけられてそれに答えようとしても声が出せない…全く出せないわけではないんですが、家族ですらやっと聞きとれるか聞き取れないかくらいの声でして……」

西垣(そ…それはなんとな…)

西垣「お子さんは中学校に入学されたからはまだ一度も登校されていませんよね?」

松本母「はい…体調も崩しやすい子でして、入学式当日から今日までとても学校に来れるような状態ではなくて、それもまた周りの子たちに余計に溶け込みずらくなってしまうんじゃないかって…」

松本母「小学校の頃も声を出せないことが原因でよく虐められて…周りの子たちからも仲間外れにされて、ずっと一人で…本人も苦しんだと思うんです…。でもあの子ったら…私に何一つとして心配掛けないようにして…黙って学校に通い続けてました…。学校なんて…しょうがないですよ、もしそれがいやなら特殊学級行くしかないですよ…なんて言って全く相手にしてくれませんでした」

松本母「それで七森中はいじめの少ないいい学校だという評判を聞きましたので、公立ではなくここの中学校を受験させることにしたんです……」

西垣「そうなんですか……それはさぞ…辛かったでしょうね…」


松本母「私、我が子のことがどうしても心配で……以前通っていた小学校の教師にこんなことを言われたそうです。「そ

んな歳にもなってろくな会話もできないのか」って、もちろん相手は大人ですよ、大人までもがですよ?…悔しいという

か怒りというか、本人がどんなに辛かったことか…うちの子…いや、りせは声を出すことが出来ないんです…でもそれ以

外はなんともないんです…普通の中学生なんです……勉強も人並みにできるように努力させてきました…なのに誰も認め

てくれないなんて…」




西垣「お母さんの言いたいことは十分伝わりました。ぜひ、この西垣奈々に任せてください!」

松本母「ふぇ…」

西垣「大丈夫です、安心してください。お子さんのことは私が付きっきりでサポートしますから」

西垣「まだ今年で就任2年目で頼りないかもしれませんが、だからこそ、だからこそ一人の生徒を全力でサポートしてい

かなければならないと思うんです!一人の生徒の力にもなれなくて、クラス全員の生徒の力になれるわけがないじゃない

ですかってね。りせちゃんは私が責任を持って支えます!」


松本母「うっ……ぐすん……こんなこと言っていただけたのはあなたが初めてです……どうか、どうかりせをよろしくお願いします」


――――――――――――――――――――――――――――

翌日


西垣(西垣奈々、玄関で待機中…)

西垣(うーんと、なんだか私はとてつもない責任を背負ってしまったように思えるけど)

西垣(まああえて私がその選択をしたんだからな)

西垣(いよいよ今日その松本りせっていう子が登校してくるはずなんだけれども…)


ガラガラ

西垣(りっ…りっちゃん………)

りせ「……」??

西垣(な、なんでりっちゃんが…いやいや待て落ち着け)

西垣(いくら似てるからといってな…私は松本りせという子を待っているのだ、そうだ、だから今目の前に居るのはりっちゃんじゃなくて…)

西垣「松本りせ…さんで合ってるよね?」

りせ「……!!」アタフタ

りせ「……」コクリ

西垣「ええ、私は1年4組の副担任の西垣奈々だ。わ、わからないことがあったら、私に何でも聞いてくれ」

りせ「……」コクリ

西垣「じゃあこれから教室に案内すっから、私に付いて来るんだ。いいな?」

りせ「……」コクリ



教室前

西垣「席は一番後ろの廊下側から三番目の席だ。とりあえず担任が来るまで静かに座っとけ」

西垣(言わんくても静かだけどな…)

りせ「……」コクリ

西垣「まあすぐ後ろに私が立ってるから、心配すんな」



担任「では、松本は入学式から三日間欠席で、みんなに自己紹介はまだだったよな。じゃあとりあえずここにきて自己紹介して」

りせ「……」オドオド

担任「どうした松本、具合でも悪いのか?」

りせ「……」オドオド

「どうしたのかしら…」

「さあ、喋れないのかな」

「まさか、自己紹介くらい早く済ませてくれないかな」

ザワザワ

ザワザワ


西垣「えー、私の名前は松本りせです」

りせ「…!!」

西垣「好きな食べ物は、りんごです」

りせ「…///」!!

西垣「みんなとたくさん思い出をつくって、友達になりたいです。みなさんよろしくお願いします」

西垣「と言っているそうだ」


担任「西垣先生?」

ザワザワ

「えっ、どういうこと?」

「さあ、でもあの子が思っていることを代わりに言って上げたんじゃないのかな」


休み時間

「りんごが好きなんだぁ、かわいいね。私、松本さんの友達になってもいいよ」

「あっ、私も私も~」

「名前「りせ」っていうんだね、可愛いね」

「りせちゃんはどこの小学校から来たの?」

りせ「……///」オロオロ


西垣「まあこれでいいスタートを切れただろう」


帰りの会

日直「起立、気をつけ」

「さようなら」

ガタガタ
「今日帰って何するー」

「暇だしカラオケでも行かない?」

ポンッ

りせ「……!!」

西垣「よっ、松本。どうだ、クラスには馴染めそうか?」


りせ「…」スタスタ

西垣「お、おいっ…また明日な松本―」

りせ「…」スタスタ



翌日 ―金曜日―

教室

西垣(今日松本は休みか……)



―――――――――――――――――――――

月曜日

松本は来なかった…


火曜日

来ていない…


水曜日

……


担任「西垣先生、松本さんのことで…」

西垣「はい…」

担任「じつは……」



――――
――――――
西垣(なんでだよ…私何しちまったんだよ…)



―――
――――――

「もう教室には顔を出したくないと本人は言っているそうなんです。西垣先生心当たりが何かありますでしょうか?」


――――――――
西垣(私の自己紹介のせいなのかもしれない)

西垣(何わかった気で居やがってんだよ私、松本のこと、何も分かってやれてないじゃねぇかよ…)







ピンポン

「はい、松本です」

西垣「七森中学校一年生副担任の西垣ですが」

「西垣先生、お忙しい中わざわざすいません。どうぞ中へお入りください」

西垣「まつ…りせちゃんのことなんですが」

松本母「とても西垣先生のことを気に入ったご様子でしたよ」

西垣「そっ…そんな」

松本母「どうしたらいいか困っているところを、先生が代わりに自己紹介をしてくださって、それも自分が思っていたこととほとんど同じことを言ってくれたって、いつになく嬉しそうに話してましたよ」

西垣「そう…ですか。それなら良かったんですけれども…」

松本母「だけどあの子…私は一人で十分なんだって、これ以上みんなを傷つけちゃうの嫌だって…」

西垣「…!!」

松本母「どんなにクラスのみんなが優しく話しかけてくれても、私は何も言葉で返すことはできない。それが今までで一番辛かったって…」

西垣「すいません、私の力不足でした…ぐすっ…」

松本母「西垣先生が謝ることないです。こちらからは感謝仕切れないです…。でも、りせにとって、こんなに大勢の子に

話しかけられることは生まれて初めての経験だったようで、本人も気持の整理が付かなかったんだと思います…」


西垣「今…りせちゃんは?」

松本母「自分の部屋だと思いますが…お呼びしましょうか?」

西垣「は、はい…、私も直接本人と向き合いたいので。ですが本人の意思も大事にしたいんであまり無理には…」

松本母「いえいえ、本人も一人で退屈していると思いますから大丈夫ですよ」

西垣「はぁ…」


松本母「りせ、西垣先生が来てらっしゃるわよ~」

松本母「もう、りせったら…」

松本母「こら、寝たふりしたってだめよ、西垣先生が心配して来て下さったんだから…」

西垣「いえいえ、いいですよ。病気だとか、そういうことじゃなくて少し安心しましたし」

西垣(そうだな…)

西垣「明日の休み時間は先生と過ごそうか。出来れば明日早めに学校に来るといいぞ。松本のためにいいものをみせてあげるぞ」

松本母「本当今日はわざわざありがとうございました」

西垣「いえいえ、恐縮であります…。先生は会えるのを楽しみに待ってるからな」

りせ「……」スースー

りせ(いいもの…何だろうな…)スースー

りせ(西垣先生、とっても優しい人だな……)スースー

りせ(明日…頑張って学校行ってみようかな…)スースー


次の日


西垣「おはよーっ、松本。先生うれしいぞ」

りせ「……」コク

西垣「では…」

西垣「ここからは秘密任務だ。とりあえず私に付いてくるんだっ」ヒソヒソ

りせ「……?」



―理科準備室―

西垣「松本、見ての通りここは理科室だ。まあ正確に言うと理科準備室といって、理科の実験に使う道具が置いてある場所なんだが」

りせ「……」

西垣「とりあえず、今から私がする実験を息をこらして見てほしい」

西垣「袋の中にこの二種類の粉末を加えてだな、火を付けると…」

ボガーーーーンッ (´⌒;; 


りせ「……!!」

西垣「みたいな感じで爆発する。どうだ?」

りせ「……」

西垣「まあ「はぁ?」だよな。そこでだ、次はこの粉末とこの粉末を合わせたものに火をつけると」


ボハッ

キラキラ☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆ キラキラ☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆ キラキラ☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆


西垣「どうだ?七光していてとっても綺麗だろう。誰も考えやしないような実験をして何度も爆発を起こしているうちに、世界に一つだけの化学反応が起こったんだ。どうだ?すごいとは思わないか?」

りせ「…」コクリ コクリ

西垣「おお、松本もわかるかー。この爆発に爆発を重ねて辿りついた奇跡のロマンを」

西垣(ははは、何言っちゃんてんだ私~)

りせ「…」コクリ コクリ

西垣(でも松本の目がとても輝いているように見える…)

りせ「…!!」

西垣「松本がそこまで言うんだったら、もう一つとっておきの爆発を見せてやろうじゃないか」

りせ「…」ウウン ウウン

西垣「えっ、今みたいな綺麗なのが見たいって?」

西垣「いやいや、爆発ほど美しいものはないぞ。それもデカければデカいほどいい」

りせ「…」オロオロ

西垣「そう焦るなって、学校が全壊するほどではないからな」

りせ「…」オドオド


ボガァァァァァァァァァン


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~給食時間~

りせ「…」パクパク

りせ「…」パクパク


りせ「…」ガチャッ

スタスタスタ…




ガラガラ

西垣「おっ、松本来てくれたか~」

りせ「……」

西垣「そうかそうか、松本は私とたくさん話をしたいのだな。いいぞいいぞ」

りせ「……」


西垣(本当にこれでいいのか…松本が心の中でどう思ってるかなんて正直のところ私にはわからない。

今はただ、少しでも松本の表情やしぐさを見て、気持ちを感じ取ることしかできない…)

西垣(それにしても、喋らないことを除けば本当そっくりだな…りっちゃんに)
.
.
.
.
.
.
.

西垣「これから松本に少し大事な話をしよう」

りせ「……」

西垣「とは言っても、松本に言えることは一つ。お前はお前らしくあれ、ということだ」

りせ「……」


西垣「今までのお前はお前らしくなかったんだと思う。自分は人と話せないんだって決めつけて、小さく縮こまって。

でも本当のお前は違うんだ、どうせ叶うことが無いような事でも、今自分の出来ることを精一杯やって、自分を褒めるん

だ。そう、ほんの小さいことでも一生懸命やって、誇れる自分になるんだ。それが本来のお前なんだ、

そうじゃなくてもそう思うんだ。一度きりの人生なんだぞ…」



りせ「……」


―――――――――――――
――――――――――


担任「これから役員決めを行いたいと思う。まずはじめに議長を務めてくれる人」

佐伯「はい」

担任「じゃあ佐伯頼むな。委員長から順に決めて行ってくれな」

佐伯「では、クラス委員長への立候補はいますか」

佐伯「いないようなので、推薦を」

西垣「小さな手が上がってるぞ」

佐伯「あっ、えと、松本さん…?」

担任「松本、本当に大丈夫なのか?姿勢は素晴らしいが、お前は書記でも十分立派なんだぞ」

りせ「……」

西垣「他に立候補がいないのであれば、ぜひ私に引き受けさせてください、だそうだ」

佐伯「他にクラス委員長に立候補する人はいませんか」

佐伯「では、ぜひ松本りせさんに委員長をやってもらいたいという方は拍手をしてください」

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佐伯「クラス委員長は松本りせさんに決定しました」


担任「じゃあ、松本はそうだな…本来ならここで議長に代わって進行を務めるのだが…」

担任(さすがに厳しいよなぁ…)

りせ「……!」

西垣「やらせてもらえないか、だそうだ」

担任「そうか。ならできるとこまでだな…」


りせ「……」

西垣「副会長の立候補、だそうだ」

如月「はい、私やります!」

りせ「……」コクリ

……
……
……
……
……

如月「松本さん、よろしく。私にも遠慮せずにたくさん頼ってね!」

りせ「…」ギュッ

如月(えっと、手握られちゃった……)

西垣「それが松本の「ありがとう」らしい」

如月「そうなんだ、松本さん、どういたしまして!」

りせ「……///」

西垣「とってもうれしいそうだ」



1年後
――――――――

そして、松本りせは 自分にとってとてつもなく大きな壁を乗り越えようとしていたのであった。


生徒会長立候補。


職員会議

教員A「それはさすがに無理があると思いますよ」

教員B「喋れないんじゃねぇ、演説も出来ないし」

教員C「でも今回は生徒会長の立候補者が誰もいないらしいんですが」

教員B「それじゃ自動的に当選じゃん」

教員A「いや、信任投票であれば最低でも6割以上の生徒票が必要だと校則に書いてある」

教員A「もし満たなければ、その年の生徒会長は不在ということにもなり得る…」




教員D「ねえ君さ、社会の評点5付けてあげるから無理にでも生徒会長に立候補してくれない?」

西垣「まあ信任投票だし、黙っていれば受かるというのが実際のところなんだが…」

西垣「もちろん手は抜かないでやり通すつもりだぞ」

りせ「……」コクリ

西垣「おう、松本もいい意気込みじゃないか」

中瀬(りせのクラスメイト)「西垣先生!」

西垣「どうした中瀬」

中瀬「じつは…」

西垣「決戦投票!?」

中瀬「はい、もう締め切りは過ぎたはずなんですが、急遽立候補するらしくて…」

西垣「厄介だな…」


噂では何らかの圧力がかけられたということであった。
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――――――――――――――――

松本りせをなんとか当選させてあげたい。


それが西垣奈々、そしてクラスメイトたちの思いであった。

そして迎えた全校演説当日

松本りせの演説に限って、クラス総出で行うことになった……。


これが実際に行われた、松本りせのクラスメイトたちによる演説の様子である……

美穂(一年生からのクラスメイト)

「私は松本りせさんが手を抜いたところを見たことがありません。松本りせさんは、とても頑張り屋さんです。苦手なこ

とに対しても、最後まで一生懸命に取り組むのが松本りせさんです。松本りせさんならこの学校を

より良いものにしてくれると思います。皆さんの清き一票をよろしくお願いします!」

心美(今のクラスメイト)

「給食の時、私は牛乳をこぼしてしまいました。その頃の私は、まだクラスに溶け込めていませんでした。

当然誰も手伝ってはくれないなと思っていた時、真っ先に駆けつけてくれたのが松本りせさんでした。ですが…ぐずっ…

ですが私は最低です……りせさんが同じく給食をこぼしてしまった時、私は見て見ぬフリをしてしまいました。

それなのに…ぐずっ…それなのに、りせさんは私が給食の味噌汁をひっくり返してしまった時、真っ先に手伝いに来てく

れました…りせさんは何も言わずに一生懸命私の手伝いをしてくれました。松本りせさんはそんな方です。

どうか、松本りせさんに、皆さんの清き一票を…ぐすっ…お願いします!」




そして、とうとう


西垣(私が研究に研究を重ねて改造した録音機…故障していなければいいが)


ザザザッ ザザザザッ

「こんにちは、この度生徒会長に立候補しました、松本りせです。私が生徒会長に当選したら……」


西垣「よし、録音テープの効果は抜群だ。後は松本を信じて祈るだけだ」

「今までの私は、人に迷惑をかけてまで生きるくらいなら、生きている意味なんてないんじゃないかと思っていました」


「そんな私に西垣先生は、一人じゃ何もできないことは決して、恥じるべきことではないと言ってくれました」



「私は首を傾げました。すると西垣先生は、じゃあお前はこれまでの人生も、これからの人生もも、

ずっと一人で歩いていたつもりなのか、ずっと一人で歩いていくつもりなのか、と聞かれました。


そして、西垣先生は私に言いました。少なくとも、私…」


――――――――――――――――――――――――――――
西垣「…少なくとも、私はお前が今までの人生を一人で歩いてきたとは思わない。

だからって、お前を見捨てることのほうが、お前を支えてきた存在にとって何よりも辛いことなんじゃないのか?お前が

その助けを拒むことによって、不幸になるのは本当にお前自身だけなのか……」


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「私はすぐに自分の思っていたことが恥ずかしくなりました。そしてその時から私は少しずつ変わっていきました。

とくにこれといった意識はしていません。ただ、少なからず私を支えてきてくれた人に恩返しをしたいと思うと、

無意識に行動に出るようになりました」


「そのきっかけを作ってくださったのも、今の私があるのも、全て西垣先生のおかげです。

心から感謝しています。素晴らしい家族、素晴らしい友人、そして、素晴らしい先生。

出会いを与えてくれた神様、おかげで私は今で十分幸せ者です。ここまで耳を傾けてくださったみなさん本当にありがと

うございました。」



――――会場は盛大な拍手で包まれた



―――松本の目からは涙がこぼれていた

「ぐすっ…続いて、生徒会副会長候補の杉浦綾乃さん、演説お願いします」

綾乃「えぇ…ぐすん……あ…ええ、生徒会副会長候補の杉浦綾乃です…ぐすっ…」ウルウル

綾乃(こ…こんないい話の後に私の演説なんて…)ウルウル


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翌日、投票の結果、全体票の八割を獲得するという形で、松本りせが見事生徒会長に当選した。



西垣(りっちゃん、私さ、やっと人生に生きがいを感じれたような気がするな…)

西垣(頑張ってきてよかった…)グス



―――――りせ、お前が生まれてきてくれてありがとう






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向日葵「なんだか私、会長が幽霊かロボットかなんてどうでもいい気がしてきましたわ」

櫻子「ええ、なんでー」

向日葵「会長と西垣先生との間にどんな過去があろうと、私たちが首を突っ込むことではないですわ」

櫻子「もぉ向日葵つまんねーの」

ガチャ

綾乃「あら、二人ともご苦労さん」

櫻子「あっ、杉浦先輩~、一つ聞きたいことがあるんですけど」

綾乃「何かしら」

櫻子「会長って幽霊ですよね!?」

綾乃「ななな、何言ってるのかしら。そんなわけないでしょ」

櫻子「だって会長さん夏でも冷たそうじゃないですか」

千歳「会長さんはもともと体温が低い方て聞いとるで?」

櫻子「えっ、そうなんですか…」

向日葵「そういえば、会長さんはどうやって生徒会長に当選されたのでしょうか」

千歳「そうやなぁ、話せばなごうなるけど」

綾乃「そうね、あなた達にも聞かせたいわね…どんな障害があっても、決して諦めようとしなかった会長は凄い人なのよ」

向日葵「会長さんの過去話ですか…」

櫻子「聞きたいです!」



~Fin~
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物語はここで一旦終結です。


松本りせちゃんの未だ知られざる過去、本当のことは誰も知り得ないことですが、

少しでも西りせを支援出来ればと思って書きました。

ここまで読んで下さった方ありがとうございました。

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