照「京ちゃん、カッコよくなったね」京太郎「えっ!?」(1000)


京太郎「ふぁ~あ。今日も早起きしたから、ちょっと眠みーや…」ゴシゴシ

「あの…京ちゃん」

京太郎「…優希が戻って来るまで、ちょっと寝ておこうかな…」

「京ちゃん…」

京太郎「…コーヒーって、あんま眠気覚ましになんねーのかな?」

「京ちゃんっ!」

京太郎「ん?」クルッ

照「……」モジ…

京太郎「……!」

京太郎「照……姉……さん?」

照「!」パァァ

照「……うんっ」

京太郎「照姉さんっ!」パァ


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さて…先に番外編やっちゃいたいんだけど、いいかなコレ。咲だけに

地の文付けて加筆修正しまくったんで最初から+書き溜めの量が中途半端だけど、目標としては今日中に咲編終わらすで

ただこれからちょっと出かけるんで、14時から始めます

寝不足で隈を作って長野から照お姉ちゃんが逃げ帰った日
その車中、とある座席の上

そこには、東京ばな奈を食べ終わり、うたた寝に束の間のまどろみを得る宮永照の姿があった

照(京ちゃん…京ちゃん…)

幼子が母親の名を呼ぶように、想い人の名を呼ぶ照の顔には、普段のような威圧感も、険しさも無い
歳相応の、されど天使のように美しい顔つきがあった

車内に次の停車駅を告げるアナウンスが放送される中、照は、自分がゆっくりと夢の世界へと浸っていくのを自覚していた
心地良い浮翌遊感とともに、その世界へと溶けこんで行く

まるで映画を視聴しているかのように、情景が次々に移ろってゆく

なんとなく空を見てみたいと考える。すると、子供の頃見たような、美しい夏の長野の空が、視界いっぱいに広がった
浮かぶ雲まで鮮やかな、いや、あまりにも鮮やか過ぎて却って不自然なくらいの明晰度で広がる世界

ふと、照は自分がワクワクしている事に気付いた
これから、物語が始まる
そんな予感

読書は好きだ。映画も好きだ。夢をみるのも好きだ。それを見ている間は、自分が違う存在になれたような気がして。違う人間になれる気がして。違う自分に変われる気がして

照(…早く、始まらないかな)

映画館の観客になったような気分でひとりごちる

さっきまでの醜態で、ほとほと自分が嫌になったばかりだ。丁度いい。夢とはいえ、気分転換にはなるだろう。それで嫌な気持ちは忘れよう。明日頑張るために。勇気を出すために

照(…私…私は…)

『どこまで臆病者なんだろう』
そんな言葉を胸の中で吐き出そうとする矢先、どこかで開演のブザーが鳴る音が聞こえた気がした

『これまで―』

『西東京代表、白糸台高校の麻雀部キャプテンであり、同校一軍メンバー「チーム虎姫」のリーダーであり、また現インターハイ個人戦チャンピオンでもあり、今年のインターハイ団体戦では前人未到の三連覇を目指している者達に告ぐ』


照(…は?)


『これより先は見てはならぬ…其は見ずとも良い物語』


照(何このナレーション。…夢でナレーション?)


『見ずとも良い』


照(なぜ…?)


『見れば心憂い  必ずや後悔する』


照(えっ。悪夢なのこれ?)


『これより先は  見てはならぬ物語なのだ』


照(じゃあ見るの止めたいんだけど…目瞑っても映像が浮かぶぞ)


『親しき者達よ…』

『今まで西東京代表、白糸台高校の麻雀部キャプテンであり、同校一軍メンバー「チーム虎姫」のリーダーであり、また現インターハイ個人戦チャンピオンでもあり、今年のインターハイ団体戦では前人未到の三連覇を目指している者達よ…』


照(そして、これ私にピンポイントで指名きてないか?なら見せないでよ)


『これより先は見ぬが良い…』


照(いやだから…って、ん?この声)


『見ればおまえは必ず後悔する…』


照(どこかで聞いた事が…)


『これより先は見てはならぬ物語』


照(淡!!?)


『あ、宮永先輩には、地の文がナレーションとして私の声で聞こえるんでヨロシク。ふふふふ。これは復讐です。よくも先週、私のプリンを黙って食べましたね?』


照(そんな…何故バレたんだ…)


『私は照先輩の良心の呵責です。それが本物の淡ちゃんのやり場の無い怒りと同化して具現化した、一種の夢魔です。しかもただ食べたに飽き足らず、代わりに男のおつまみプリンと入れ替えましたね?』

『お腹が空いた私の目の前に、ぷるぷるのプリン。ふんわりとろとろあまあまプリン。芳ばしいカラメルのソース。楽しみにしていた至福の瞬間が、口に入れたら冷奴もどきだった時の私の絶望が、貴女にわかりますか?』

『絶対に許さない。絶対にだ。照先輩には、これからちょっと痛い目にあってもらいます。何、ちょっとお灸をすえるだけですから。今後大天使大星淡ちゃんに意地悪しないと誓うなら、もうこんな悪夢これっきり見せないであげますよ』

『くひひひひ。ではどうぞ』




照「京ちゃん、カッコよくなったね」京太郎「えっ!?」

番外編
咲「京ちゃんの指美味しい」

※注意
本来のスレの真ルートを求めてこのスレ読む方は、今日という日付のこのIDは読み飛ばすのがいいと思います





6月
先月まで深山に残った名残雪も遂に溶け、ここ長野でも遂に梅雨が訪れる

徐々に肌に蒸し暑さを覚える時間が増え、気の早い学生の幾人かが早々に衣替えを終えた
彼らに引き摺られて、残りの学生達も間も無くその短い青春を力一杯生きようと輝き始めるだろう

太陽が彼らを見守る様に、夜の帳をやんわりと押し留める
時刻は午後5時。周りに田んぼが広がり明かりの少ないこの一帯では、先月ならもう暗くなり始めていた筈だが…まだ日は落ちない

『命短し、恋せよ乙女』

ふと、使い古されたそんな一節を今読んでいる小説に見つけ、少女―宮永咲は、胸の奥深くに刻み付ける事にした

咲(『命短し、恋せよ乙女』『命短し、恋せよ乙女』『命短し、恋せよ乙女』!…よし!覚えた!)

ここは清澄高校旧校舎、その麻雀部部室
普段ならこの時間、此処には清澄で有数の華やかなエネルギーが集い、闘志や、青春や、祈り、そして様々な想いが集まり、満ち溢れている
ただ今日に限っては、まるで咲き終えた残り香のような優しさだけがそこに在った

座る者の居ない雀卓が、束の間の休息を謳歌しようと静寂の中微睡む
その静寂を[ピーーー]事無く、殺される事無く、寄り添うように、包まれるように、すやすやと静かな寝息と、ぺらぺらと本のページをめくる音だけが部屋に響いていた

これはそんなある日の出来事。いつもと少しだけ違う日常の、いつもと全然違う二人の話

どこにでもある、お話にもならないようなお話


その1:宮永咲の視点

咲「…」ペラッ

「すー…」

咲「…」ペラッ

「すー…」

咲「…」ペラッ

「すー…」

咲「…」

「すー…」

咲(…全然集中できない)

「すー…」

咲「…」

咲(ああ~~~もうっ!全然集中できないよっ!!)

心の中でそう毒吐きながら、宮永咲は長らく気合と根性により繋ぎ止めていた読書と言う作業を、遂に放棄した
読みさし部分に丁寧に栞を挟み、丁寧に閉じる。丁寧に鞄に仕舞い、丁寧にファスナーを閉め、静かに立ち上がると、静かに寝息の主の元へ向かう

そこには、部の共有財産であるベッドを独占する(まあ、今は二人しか居ないのだが)不逞の輩が一人、ふてぶてしくも深く静かに爆睡していた
お父さんと違って鼾をかいていないところだけは評価してあげようと、咲は思う。そこだけは

咲(だからって、普通女の子と二人で無人の部屋に入って、まず最初にやる事が詰襟脱いでベッドに直行って…どーなの?京ちゃん)

京太郎「すやすやすや…」

咲「…」

恨みがましい目つきでベッドに横たわる、デリカシーゼロの無神経な無礼者を見下ろす咲
『京ちゃん』こと須賀京太郎は、当然の事そんな咲の想いを知る由もなく緩んだ顔ですやすやと穏やかな寝息を立て続ける

咲「よっこらしょ」

近くにあったパイプ椅子をベッドの脇に引き、腰掛ける咲
ここに来て丁寧で無い掛け声が出てしまったが、本人は無自覚なので誰も突っ込まない。和あたりがいたら嘆いてくれたかもしれないが

そのまま京太郎の寝顔をちらりと覗く

京太郎「う~ん…むにゃむにゃむにゃ…」

咲「…くすっ」

咲(かわいい寝顔…)

無防備な少年の寝顔に、思わず咲の口から笑い声が溢れる
それから、母親が子供に語りかけるような声で話しかけ始めた

京太郎「すー…」

咲「…あはは。よく眠っちゃって」

京太郎「すー…」

咲「徹夜でゲームしてたんだって?」

京太郎「すー…」

咲「授業中からずっと眠そうだったもんね」

京太郎「すー…」

咲「部室来るなりベッド直行しちゃって」

京太郎「すー…」

咲「で、あっと言う間に爆睡」

京太郎「すー…」

咲「…おバカ京ちゃんめ。あとでノート見せてなんて言ってきても、簡単には見せてあげないんだから」

京太郎「すー…」

咲「…幸せそうな顔だ事。本当、呆れちゃうよ…」

京太郎「うう~ん…」モゾモゾ

そういった咲の顔にこそ、この上ない幸せそうな笑顔が浮かんでいた

ちょっとした軽口を叩いた咲だが、今は普段のような(京太郎限定の)辛辣さは陰を潜めている
何故なら、咲の軽口は京太郎に対する一種の甘えだからだ

咲が京太郎をどんなに弄っても京太郎は咲を見放すこと無く付き合ってくれたし、京太郎の弄りに怒ったり、むくれたりしてみてもすぐにまた構ってきてくれる
それどころか勉強や学食のレディースランチなど、咲に頼れる部分では大いに頼って来る
昔からドン臭く自分に自信を持てずにいた咲には、そんな京太郎の反応が、自分の存在を肯定してくれているように感じられてとても嬉しかった

だからまた軽口を叩く

こんな事を言っても京ちゃんは私を嫌われずにいてくれる。こんな事を言っても京ちゃんは私を見放さないでくれる。こんな事を言っても、京ちゃんはまだ私を見ていてくれる
こんな事を言っても…こんな事を言っても…こんな事を言っても…
その確認を無意識にしてしまっている。必要とされている事を、好まれている事を確認したがってしまっている。…確認しないと怖い

好きだから
嫌われてないと、確認しないと怖いから

咲(…我ながら捻くれてるなぁ)

だから、本人の前では、必要以上に語気も強くなってしまう。強気に見せて、少しでも優位に立とうとして

咲(だってほら、恋は、惚れたら負けって言うし…って、本当に素直じゃないなぁ、私。…いっそ素直に成れたら、このモヤモヤも晴れるのに…)

『まあ、とっくに負けてるんだけどね。』情けない言葉は、頭に浮かぶ前に心の奥の、奥の、奥底で、必死に噛み殺した

咲(それに…いざ告白しても、断られたら私、ショックで死んじゃうよ…)

そんな情けない想いは、幾らでも頭に浮かんでくるのに

…京太郎の寝息は、乱れる事すら無い

咲「…」

京太郎「すー…」

咲(…私の気持ちも知らずにノンキに寝ちゃって。私は京ちゃんのせいで夜も寝れない日だってあるんだよ?わかってる?)

…我ながら随分と無茶な言いがかりだと思う。だが、八つ当たりの理由には十分だった。指に力を込める

咲「…えいっ。でこぴんっ」

ペチッ

京太郎「うぐっ…?」

手応え有り。会心の一撃。じっと京太郎の顔を見つめ、次の反応を待つ

咲「…」

京太郎「…」

無反応

咲「…」

京太郎「…」

咲「…」ズイッ

顔を近づけ、覗きこんでみる

京太郎「…すー……」

咲「…」ジー…

咲「…ふふふっ♪」

寝息が正常に戻ったのを確認し、『さて、もう少し調子に乗ってみよう』と咲の顔に悪戯っぽい笑顔が浮かんだ

咲「でこぴんしても起きないんだー?」

京太郎「すー…」

咲「じゃあ、これならどうかな~?」ギュッ

京太郎の頬を抓る咲
麻雀で鍛えられた指の握力は強い。同年代の少女と比して圧倒的に体力の低い咲にとって、体力測定では平均以上の数値を出せる数少ない分野だ

因みに、他には反復横飛びだけ何故か異常に成績が良い。実生活で役に立ったことは無いが
さらに因むと、和は反復横とびが苦手で、優希は並み居る運動部を抑え、学年女子1位だ。…まったく、何故だろうか。さっぱり理由が分からない。分からないったら分からない

京太郎「うぐっ…」

…閑話休題。結構な強さで頬を抓られた京太郎が苦しそうな声をあげる。見ると眉間にも皺が寄っていた

咲「あはは。変な顔~」

京太郎「…すー」

…起きない

咲「…ほっぺつねっても起きない…か」

諦め、立ち上がって腰を少し折り曲げ、京太郎の寝顔を覗き込む咲。ちょっと勇気を出して、京太郎の耳から結構近い距離まで顔を持っていく

京太郎「すー…」

咲「…」

京太郎「すー…」

咲「…」

京太郎「すー…」

咲「…京ちゃん?」

耳元に囁いてみた

京太郎「すー…」

反応は無い。もう一度呼びかける

咲「…おーい。京ちゃーん?」

京太郎「すー…」

やっぱり反応はない

咲「…」

京太郎「すー…」

もう一度

咲「…京ちゃん朝ですよ~」

京太郎「すー…」

返事は無い。ただのしかばねのようだ。知らんけど

咲「…」モジモジ

咲「…」ソワソワ

咲「…」キョロキョロ

咲「」チラッ

急に落ち着かない動きをし始める咲。モジモジ、ソワソワ、キョロキョロ、チラッ
まるで不審者の如く部屋を徘徊した後、周囲を確認し、最後に京太郎の顔を恐る恐る覗き込む

京太郎「すー…」

咲(…い、今なら、キスしても、バレない…かな…)

まあ、咲ったらいけない子!

京太郎「すー…」

咲「…」

コクリ

自分の細い喉が唾を飲む音が、咲の耳に嫌に大きく響いた。この音で京太郎が起きるのではと少し不安になる
それでも視線は京太郎から外せない。無言で京太郎の唇を見つめる。見つめ続ける

咲「…」

京太郎「すー…」

咲「…」

咲「…って、な、何考えてるの私はっ!」

咲「そ、そんなの、ダメに決まってるじゃない…」

ブンブンと必死に首を振り、なんとか理性で本能を押し留める。言い換えれば…ビビった

京太郎「すー…」

咲「…」チラッ

恐る恐る京太郎の顔を覗く咲。その動きは臆病なハムスターを彷彿とさせる

京太郎「すー…」

咲「…」

じーっと京太郎を見つめる咲
例えるなら…ヒマワリの種を目の前にして、周囲に危険がないかを確認しようとしているのだが、種に注意が向いてしまって警戒しきれていないハムスター

京太郎「すー…」

咲「…っ!///」

ボッと、唐突に火が出るような勢いで顔を紅く染まる
喉からは、無意識に言葉にならない鳴き声のようなモノが漏れてくる

咲「あうう…///」

京太郎「すー…」

咲「…」

ウロウロウロ。徘徊を再開

京太郎「うーん…」

咲「…」

ウロウロウロ。まだ徘徊

京太郎「さ、さき…」

咲「はうっ!!?」

ポツリと漏れた京太郎の寝言に、雷に打たれたようにビクリとする咲

京太郎「……さきぃ…」

咲「お、起きちゃった!?京ちゃんっ!」

京太郎「う…。……さきぃ…俺…」

咲(ね、寝言…?)

京太郎「…俺…は…俺は…」

咲(やっぱり寝言だ。けど、さっき、確かに『咲』って言ったよね?)

確かに自分の名前を呼んだ
京太郎がどんな夢を見ているのか、気になって京太郎の言葉に意識を集中させる。どんな小さな声でも聞き取れるように、どんな不明瞭な声でも理解できるように

京太郎「…俺は……お前を…」

咲「えっ」

咲(『咲、俺はお前を…!?』)

京太郎「うう~ん…」

咲(ま、まさか…!)

咲(咲、俺はお前を愛してる…とか!?)

咲「咲、俺はお前を!?つ、次は!?続きはなんなの!?京ちゃん!」

京太郎「…さきぃ…俺…」ムニャムニャ

咲「が、頑張って!京ちゃん!」

京太郎「…」

京太郎「」ムクッ

咲「!!」

京太郎が突如状態を起こし、半眼で虚空に向かって叫ぶ!驚く咲!!

京太郎「剣崎ぃ!!俺はお前を、ムッコロス!!」

咲「…」

咲「…は?」

京太郎「…仮面ライダーブレイドのゲーム面白いわ」コテッ

咲「えっ…」

京太郎「くー…くー…くー…」

咲「…」

咲「…」

咲「…」

咲「…死にたい」

ヘナヘナと脱力し、崩れ落ちる咲。背中が煤けて見えた

京太郎「すー…」

咲「…はあ」

咲「…読書に戻ろ」クスン

咲「…」ペラッ

京太郎「すー…」

咲「…」ペラッ

京太郎「すー…」

咲「…はあ」

咲(まさか、ゲームの寝言だとは思わなかったよ…)

咲(咲…咲…って…言ってると思ったのに。濁音どこから出てきたのさバカ京ちゃん。流石の私も挫けそうだよ…)

咲「はぁ…」ペラッ

今日はため息の多い日だ。そんな事を考えながら、もうすっかり内容が頭に入らない読書を続ける

咲「はぁ~~~…」ペラッ

ページをめくり続ける

それから間も無くの事

京太郎「うーん…のどか…」

咲(はいはい。どうせこれもまたフェイントなんでしょう。和ちゃんの名前出して私焦らせといて、また仮面ライダーの台詞とかなんでしょー。どうせ)

ムスッとした表情で本を読み続ける咲。もはや意地で読み続けている節もある

京太郎「和、可愛い愛してる…」ムニャムニャ

咲「」ピキッ

本日一番のダメージ。煤けた背中が一段と小さく見えた。小さな肩がどんどん猫背気味になっていく

京太郎「すやすや…」

咲「…あ、あはは…そうだよね。やっぱり、和ちゃんだよね。可愛いし、優しいもんね…私なんか、相手にならないよね…」ズーン

咲「…しょうがないよ。和ちゃんなら。あはは…」

咲「あはははは…」

咲「…くすん」

京太郎「美穂子愛してる」

咲「えっ」

京太郎「福路美穂子ちゃんの美乳揉みたい」

咲「えっ」

追い打ちを食らう咲。追加ダメージも結構デカイ
思い浮かぶのは、名門風越女子のキャプテンにして県個人戦1位にして超絶美人スタイル抜群家事万能性格最高完璧超人の優しい笑顔。和同様、女の子としてはやっぱり自分が敵う相手では無い

咲(っていうか、私なんかが女子として挑戦する事すらおこがましいレベル…)

京太郎「沢村智紀ちゃん意外と巨乳」

咲「えっ」

咲(た、確かに、お風呂で見た沢村さん、凄いスタイル良かったし、美人だった…)

密かに同じ地味系文系少女の匂いを感じ取っていた咲にとって、合同合宿の風呂場で見た智樹のスタイルと、半端無い素顔の美人度はとんでも無いショックだった
なんというか、裏切られた気分?を勝手に感じ、その日の晩は一人枕を濡らしたものだ。当然、あの人が京太郎に本気になったら、女の子として勝てる気はしない

京太郎「ステルスモモのおっぱい舐めたい」

咲「えっ」

咲(…誰だっけ)

…まあしゃーない

京太郎「絹恵ちゃんが可愛すぎてつらい」

咲「誰」

可愛いよね。全盛期のレコバかロベカルのPK受けさせてあげたい

京太郎「永水女子お姫様と霞さんヤバい。特に霞さん」

咲「永水女子?あの、第3シードの鹿児島の高校?確かに先鋒と大将だし強そうだけど、いきなりどうしたの…」

後に霞さんと対峙した咲は、深い絶望と決定的な挫折を覚える事になる。おっぱい的な意味で

京太郎「鷺森灼ちゃんは死ね 」

語呂が良い

咲「なんだただのおっぱい星人か」

どうやら胸の大きな人を無差別に連呼しているだけらしい。逆に特定の好きな人が居る訳では無いのじゃないかと、ほっとす…

咲「…」ペタペタ

ほっと出来なかった

咲「…」

咲「…いいもん。私はまだ成長期なだけだもん」

咲「…遺伝?私はお姉ちゃんとは違うもん。ちゃんと大きくなるもん」

咲「…大きく…なるもん…」

照さんだってまだ希望を捨てちゃあいません。お昼休みは毎日牛乳飲んでます。最近大星とか言う子が成長著しく、非常に危機感を覚えて始めてますが。いやそもそも、大正義淡様の方が、最初から上だったかも。…あ、麻雀の話ですよ?(棒)

咲「…おっぱいって、どうやったら大きくなるのかな」ボソッ

咲「ネットで調べてみよう」

つぶやき、パソコンに向かう咲。和が作ってくれたインターネットの使い方メモを頼りに、情報の海へとダイブする

ポチポチ

咲「…えーっと、メモによれば、この青いマークのところで、マウスの左側のボタンをいっぱい押せば良いんだよね?」カチカチカチカチカチカチカチカチ

咲「なんか開いた」

いっぱい開きました

咲「えっと、この検索ボタンの横に矢印を合わせて、ボタン押して…」

咲「お・っ・ぱ・い・を・お・お・き・く・す・る・ほ・う・ほ・う…っと」 カタカタ

勿論人差し指一本で打ってます

咲「あっ。出た出た。いっぱいあるなあ」

咲「それじゃあ、適当なページを選んで…っと」

咲「…ふむふむ」

咲「へー。牛乳って、あんまり意味ないんだー」カチカチ

日本人には体質的にあまり合わないらしいです。照お姉ちゃんザマア

咲「レバーがいいの?うーん…ちょっと苦手かも…」カチカチ

グラビアアイドルのMEGUMIが言ってました。レバ刺し規制されちゃいましたね

咲「あっ。あったあった、定番。おっぱい揉んだら大きくなるってやつ」カチカチ

咲「…えー?これも嘘なの~?」

咲「あ、補足がある…」

咲「えーっと…なになに?」

咲「乳房を揉むという行為自身に豊胸効果があると云う科学的根拠はありませんが…」

咲「…その行為によって、精神及び肉体的な性的刺激を受動…所謂エッチな気分や、その感覚を定期的に得続けた事で、豊胸効果を実感した人間が居ると云う報告は、多数確認されています…」

咲「…つまり、エッチな気分になる事の多い人は、巨乳になり易い…」

咲「…なんか胡散臭いなぁ。ここ」

咲「…もう止めよ」

プチッ
本体の電源直押しでパソコンを切る咲さん。ワイルド

咲「はぁ~。あんまり参考にならなかったなぁ…」

咲「…今度、さり気なく和ちゃんに聞いてみようかな?」

咲「…」

咲「…ねえ和ちゃんって、1日の中で、どれくらいの時間エッチな気分?」

咲「…ストレート過ぎて失礼だよね、これ」

咲「レバニラ好き?」

咲「…わけわかんないよね」

咲「…どうやって聞こうかな」

咲「…はぁ」

京太郎「うーん…」ゴロン

咲「わっ」

突如寝返りを打った京太郎に、驚く咲。起きたのではと恐る恐るそちらを見やる。別に今は疚しいことしてないのに

咲「…なんだ、寝返り打っただけか」

京太郎「すー…すー…」

見ると、寝返りを打った拍子に落ちたのか、布団がはだけ、京太郎の片手がベッドの脇にずり落ちていた

咲「あらら。布団がめくれて、手がベッドの外にはみ出ちゃってるよ。京ちゃん」

京太郎「うーん…」

咲「…もー。仕方ないなぁ。このままじゃ風邪曳いちゃう」スクッ

咲「仕方ないから、布団かけ直してあげる」

迅速に行動に移す咲。足早に京太郎の元へ歩み寄る。動機としては、優しさと、下心が半々

咲「…」

京太郎「すやすや…」

咲「…」

咲(て、手握っちゃうけど、仕方ないよね?)

咲(手を掴まないと、ベッドに引き上げられないもんね…?)

誰にともなく、言い訳をする。答えなど無くても、そうする他に選択肢など有りはしないのに

咲「よいしょ」ギュッ

しっかりと、両手で京太郎の手を握る咲。そのままの姿勢で一旦停止し、手の中のぬくもりを見つめてみる

咲「…」

咲(…あったかい)

咲「…それに」

咲(大きいな…京ちゃんの手)

咲「…」

咲(…私の手と比べてみよ)

京太郎の手首を片手で掴み、緩やかに丸まった指を一本ずつ優しく開く
じゃんけんのパーの形になっった京太郎の広い手の平に、自分の手の平をそっと重ねる

…ぜんぜん違う

咲「うわ。凄い。私の手のひらよりふたまわりくらい大きいや」

ぺたぺたと京太郎の手の平を触りながら呟く咲。恐る恐るだったのが、段々と触り方が大胆になってきている

咲「厚さも結構あるし、思ってたより硬い。私と大違い」

すぅー…っと、自分の手を這わせてみる。はじめ手の平を撫でるように触り

咲「…指も、長い」

指の曲線を人差し指でなぞり

咲「細くて、すらっとして、綺麗な指…」サスサス

手の平を自分の片手を乗せ、今度は手の甲を撫で始める

咲「ちょっと羨ましいな…」

最後に自分の手の平を見つめながら一言
子供っぽいプニプニの手の平がちょっと嫌だ

咲(敦賀学園の加治木さんみたいな綺麗な手が欲しかったなぁ…)

かつて対局した麗人の指を思い出す
すらっとして細く、格好良く、されど女性らしい柔らかさも忘れない美しい指。本人の凛々しい佇まいも加わって、女の自分でも惚れ惚れする程だった

咲(けど、京ちゃんの指も中々だよね。加治木さんみたいな綺麗さは無いけど、それよりゴツゴツしてて、ちょっと無骨な…男の人らしい指)

咲(綺麗だけど、逞しくて、格好良い指…)

…と、そんな事を考えながら京太郎の指を見ていると、咲の背筋にゾクリと冷たい電流が走った

咲「…ひゃっ!?」ゾクゾクッ

咲「…?…?何、今の…」

咲「…」

咲「…あれっ?」

咲「…」ジーッ

京太郎「すやすや…」

咲「…」

咲(…えっ?あれっ?)

思えば、最初の魔法の杖の一振りだったのかもしれない

咲「なんか…」

あるいはハンマーの一撃か

咲「なんか、変なの…」

とにかく、それが全ての切掛だった

咲(…別に食欲的な意味は無いけど)

咲が、己の感情に素直になる切掛

咲(すっごく…)

咲が、己の欲望に飲まれる切掛

咲(…スッゴく、京ちゃんの指が美味しそうに見えるよ…?)

ゴクリ。今度飲み込んだ唾は、細い喉をさっきよりずっと大きく鳴らして落ちていった

咲「…」

京太郎「すー…」

咲「…」

京太郎「すー…」

咲「…京ちゃーん?」

ぽつり、小さな声で呼びかけてみる咲

京太郎「すー…」

咲「…」

反応は無い

京太郎「すー…」

咲「…あ。和ちゃんが後ろでビキニに生着替えしてる」

ぽつり、今度はあんまりにあんまりな内容を呟いてみる

京太郎「すー…」

咲「…うん。完全に寝てる」

起きてたらツッコミが飛んでくるだろうね

咲「…」

咲(…ちょっとだけなら…バレない…よね…?)

恐る恐る。ゆっくり…ゆっくりと、京太郎の人差し指へ、自分の口を近づけていく
口の中は先程嚥下したばかりの唾が、レモンでも齧ったようにジュクジュクと湧き出していた

咲「…かぷ」

控えめに齧り付く

咲「ちゅぱっ」

指先を少し舐め、すぐに口を引っ込める。咲の口元から離された京太郎の指が、口内の涎を被って濡れていた

舌先で自分の唇をちろりと舐める咲
再び口内に溜まった唾を嚥下し、記憶から味を反芻する

咲(…しょっぱい)

すかさず京太郎の中指を口に含む咲

咲「ちゅぱ…」

今度は、すぐに口は引っ込めず、より口の奥へと指を飲み込んでゆく

咲(…汗の味がする)

咲「ちゅぴ…」

次々湧き出る涎が指を濡らし、舌でその涎を拭き取る様にして指を味わう

咲(…京ちゃんの…汗の味…)

咲「ちゅぷ…」

背徳感で、塩気以外の何も感じない。感じる余裕なんて無い。けど

咲(………おいしい、な…)

咲「はむっ。ちゅぴ…くちゅっ…ちゅばっ…」

後はもう、貪るように口を動かすだけだった。頭の中が真っ赤に染まり、その瞬間、咲は、ただ卑しく塩気を舐め取るだけの生き物に成り下がる

咲「あふっ」

呼吸も忘れて舐める。小刻みに舌を動かし、まだ味のある場所を探す

咲「ちゅばっ…ちゅばっ…くにゅっ…れろっ…」

味が無くなったら、次の指を舐める

咲「…ほわ。はふぅ…」

全ての指を舐め終え、満足感とともにため息を一つ。そこで我に返る

咲「…はっ!」

咲「あ、あわわわわ!?」

咲「わ、私ったら、何やってたの!?」

咲「きょ、京ちゃんの指しゃぶって、うっとりしちゃって…」

咲「これじゃあまるっきり変態じゃない!」

京太郎の手を握ったまま、小さく叫ぶ。手の中の京太郎の指は、咲の涎に塗れててらてらと光っていた

咲「もう止め止め!私変態じゃないもん!」

…手遅れじゃねぇ?

咲「京ちゃんの手をベッドに戻して…っと!」トサッ

慌てて京太郎の手をマットレスの上に戻す咲

咲「お布団かけ直してっと!」ファサッ

その手を隠すように、掛け布団を被せる

咲「も、もう私は読書に戻りまひゅ!」

態々宣言。誰も聞いていないのに。しかも噛んだ

再び本を読み始める咲
ただし、なんか読んでいる場所がおかしい
京太郎が眠るベットから雀卓を挟んで対角線上。最も距離が離れた場所にわざわざパイプ椅子を持って行って、そこで本を読んでいる

咲「…」ペラッ

京太郎「すー…」

しかも、読んでいるのは珍しい事にマンガ。しかも優希が持ってきたバトル漫画。気分を変えようと必死です
あ、勿論このマンガ、主人公はあの人です。『つ』で始まって『ん』で終わる名前の人。そう、月島さん

咲「…」ペラッ

京太郎「すー…」

咲「…」チラッ

京太郎「すー…」

咲「っ!///」ボッ

咲「~~~~っ!!///」ペラペラペラペラペラペラ

でもやっぱり集中し切れなかった様子。流石の月島さんも女の子の恋の病の前には、形無しですね(ドヤァ)

京太郎「むにゃ…うん…」

咲「っ!っ!!~~~っ!!!」ドタバタバタバタ

京太郎のちょっと切ない声に、遂に耐え切れなくなって足をドタバタと足踏みさせる咲さん

京太郎「ううん…」ゴロン

トサッ

布団が落ちる音がし、遂に咲は立ち上がって、思いっ切り息を吸い、渾身の力で叫ぶ為に口を開けた

咲(わああああああーああああーーーーっ!!!!!)

が、寝てる人が居たので我慢した。叫びたいけど叫べない心の声が、虚しく咲の胸に響く
胸中では京太郎に対し、八つ当たり気味な罵倒の言葉が次々に浮かぶ

咲(もうっ!もうっ!!なにやってるのさ、バカ京ちゃん!)

咲(せっかく直してあげたのに、すぐ布団跳ね退けて!)

咲(っ!バカッ!おバカッ!!)

咲(バカバカバカバカバカバカバカ!もう知らないんだからっ!)

咲(知らないんだから!知らないんだから!ぜ~ったい!もうかけ直してなんか、あげないんだからね!!)

咲(ふんだっ!)

咲「…」

咲「…」

咲「…」チラッ

咲「…」

咲「」ウズッ

咲「…」ソワソワソワ

咲(…け、けどやっぱり、風邪曳いたらかわいそうだし、あと一回だけかけ直してあげようかな…)スクッ

咲「…よい、しょ」ファサッ

が、結局すぐに立ち上がって布団を掛け直しに言ってしまう

咲(こういうところ、私意志弱いなぁ)

今日何度目か知れない自己嫌悪

京太郎「…くぅ…くぅ…」

咲「…」

ベッドで眠りこける京太郎の目の前に、仁王立ちする咲。じっと京太郎の顔を睨んだまま動かない。…動け

咲「っ!」ゾクゾクッ

咲(ひっ!?ま、またこの感覚っ!?)

咲「…」ソーッ

咲「…」チラッ

再び背筋に寒気を感じ、恐る恐る京太郎の指を見ると…

京太郎「すー…すー…」

咲「…」

咲「…」

咲(も…)

咲(もう一回だけ、京ちゃんの手、触ってもいい…?)スッ

咲「…」ギュッ

咲(…なんだか、安心する…)ギューッ

咲「…えへへへへ」

咲「…」チラッ

咲(…やっぱり指、おいしそう…)

誘惑に、あっさり負けてしまった

咲「…」

咲「ぺろっ…」

今度は、舌だけを伸ばして手の平を舐めてみる

咲「…んっ」

口元から溢れ出した涎が手の平をじっとりと浸す

咲「…ちゅぷっ」

小鳥が啄むように手首に吸い付く

咲「…ふあっ!?」ビクッ

また寒気を感じ、身体を大きく跳ねさせる

咲「…はむっ!」

今度は齧り付くように、指二本を咥える

咲「んふぅっ!はむっ!ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱ…」

一舐め毎に、一口毎に、理性と、遠慮と、羞恥心が溶けてゆく。溶けた感情は、涎と一緒に流れ落ちてゆく

咲(や…やだっ!)

咲「じゅぶっ!ぴちゃぴちゃぴちゃ…れろっ…」

咲(と、止まんないよぉっ!)

自らの卑しさに嫌悪感と、背徳感と、恍惚を覚える咲
顔は火照り、眼の色が変わる

咲「~っ!?」ゾクゾクッ

咲(ま、またっ!?)

咲「ひっ…!」

咲(こ、声が出ちゃ…っ!)

咲「…」

咲「…え?」

…と、ここで身体に違和感を感じ、一旦停止。盛り上がった気持ちを持て余しつつも、違和感の原因を確かめるべくソコへと手を伸ばす

咲(…なんか、お股に、違和感が…?)

手を、恐る恐るスカートの内側へと伸ばしてみる

咲(…何これ…凄い量の…愛液…?)

すると、本来ナイロンの柔らかな手触りがある筈のソコに、ねっとりとした、温かい液体の手触りが絡み付いてきた

咲(…しかも、いつもと全然違う…普段はサラサラなのに、これはネバネバして、糸まで引いてる…)

手を引き上げ、目で確認してみる。生臭い不愉快な液体が部屋の明かりを反射し、光っている

咲(と、取り敢えず、拭かなきゃ…おトイレに行って…)

京太郎「むにゃ…」

咲「…っ!」

京太郎の声が聞こえ、硬直する。こんなところを見られたら、一貫の終わりだ。変態痴女としてもう二度と口も聞いてくれなくなるだろう。それは死より怖い

咲(…けど、今離れたら…なんとなくだけど、帰ってきたら、京ちゃんが起きちゃってる気がする…)

咲(…それは…すっごく、勿体ない…かも…)

咲「…」

咲「…ちゅばっ」

結局、欲望に負けてしまった。先ほどの快楽を再び求めることを優先してしまった

咲(…もうちょっと)

咲「はぁ…んくっ…ちゅぴっ…」

これが分水嶺

咲(あともうちょっとだけ…)

咲「ちゅっ…ちゅぴっ…れろっ…」

分水嶺を超えた瞬間

ダラリと、口内に溜まった涎が堰を切って溢れ始めた

咲(あっ…)

咲「ぺろっ…ぺろっ…はむっ…」

咲(よだれ…凄いいっぱい出てきた…)

溢れた涎を零さないよう、京太郎の指に絡める。ねばっこい涎は水ほどにはすぐ滴り落ちないが、それでもすぐに重力に添って落下しようとする

咲「ぶじゅっ…ずちゅっ…じゅるるる…」

その涎を嚥下する為に、素早く指ごと口に含む。じゅるじゅると音を立て、舌で掬い取って飲み込むと、次の涎が口内から湧いて出る

咲(これ…止まんない…お股からも、愛液…止まんない…)

咲(どうしよう…)

咲「あっ…」

遂に処理が追いつかず京太郎の指からシーツへ落ちそうになった雫を、反射的に自分の手で掬う咲

咲「…」

ベトベトした液体を見て一考

咲(涎も、なんかいつもよりネバネバしてる…)

咲(…ネバネバの涎…)

咲(もし…)

咲(もしも…)

咲(…この涎…)

咲(…)

咲(……ち、乳首に塗ってみたら…)

咲(キモチいい…………かも)

咲「…」

咲「…」

咲「ん…」

制服のリボンを解き、襟元を緩める。モゾモゾと身体を動かし、そこから手を差し込む
インナーシャツをずり下ろし、小さな可愛らしい水色のブラジャーが顕になる

咲(…制服は流石に脱げないから、ブラだけ外して…っと)モゾモゾ

咲(…ん。制服ごしじゃ、外すの難しいなぁ。しょうがない、下にズラすだけにしとこ)モゾモゾ

そう考え、ブラを腹の上までずり下ろす

咲(…出来た)

制服の胸元が大きく開き、呼吸で上下するに合わせて時たま桜色の、色素が薄い可愛らしい乳首が覗く
少女らしい小粒なソレは、一生懸命にプックリと隆起していた

咲(うわっ!もうすっかり乳首立っちゃってる!…やっぱり変態だなぁ。私。…はぁ)

咲(…あと、やっぱり私、おっぱいちっちゃい…)

咲(…っ!け、けどけど!こうしてエッチな気分にいっぱいなったら、おっきくなるかもしれないんだよね!?)

咲(…京ちゃん)

咲(…協力して。京ちゃん)

心の中で京太郎に語りかけ、その手首を握る。手の平に口をつけ、口に溜まった涎を舌で塗りたくる
最後に手で涎を伸ばして…

咲(…こうして、涎でベトベトにした京ちゃんの手を…)

咲(私の、胸元に…)

恐る恐る、差し込む

咲「あっ…」

最初に手が触れた部分は、乳首。そこだけ隆起したが故の誤算

瞬間、咲の視界が真っ白になった

咲「~~っ!!」

咲(きゃあああああ!?)

頭の中で絶叫する。実際に叫ぶのだけは、理性でなく本能が押し留めてくれた。だがそれも一時しのぎにすぎない

咲(駄目ッ!これ!!声っ!出ちゃうっ!!)

咲「~っ!!」

視界が少しずつ戻ってくる。だがまだぼやけている。必死に辺りを見回す

咲(な、何か、口にくわえるもの…っ!)キョロキョロ

このままでは本当に口から悲鳴が漏れてくるのも時間の問題だ。急いで何かで口を塞がなくては。必死に辺りを見回す

咲(駄目っ!何も見当たらな…あっ!!)

咲「がぶっ!」

咲「~~~~~~っ!!!!!!」

なんとか噛み付く対象を見つけ、絶叫を噛み殺す事に成功した

咲「…」

咲(…良かった…間一髪)

だが、ほっとしたのも束の間

咲(…あれ、でも京ちゃんの寝てる、シーツくわえるつもりだったのに…)

咲(…目測間違えて、枕に噛みついちゃった…)

まるで全てのものが自分を追い詰めてくる様な感覚を脳裏に覚え、目眩を感じる咲

その感覚に従ってでは無いが…

咲「んむっ!」

状況は確かに刻一刻と咲を追い詰める方向に向かっていた

咲(ふあああ!?)

咲(いやっ!お、思わず背を丸めたから、無理な体勢になっちゃって…)

咲(乳首に…制服が擦れてるっ!)

制服のザラザラとした感触は、手の感触とはまた別の鋭い快楽を押し付けてきた。思わず身悶えする

咲「くふっ!」

すると今度は別の快楽

咲(京ちゃんの手が、私のおっぱいに押し付けられて…!)

暖かく角張った、男の手が、咲の薄い乳房を押し潰す

咲「はぁ…っ!」

京太郎「うーん…」

そして、最後に耳元で聞こえる想い人の悩ましげな声

咲(なにより、枕に噛み付いてるから、京ちゃんの顔が近いよぉおおお!!)

咲は、自分が追い詰められている事を自覚した

咲(と、とにかく、早く退けないと…)

『これ以上は壊れる』
そう判断し、今回はこれで撤退する事を決めた咲

咲(もうやだ!もう限界!今日はもう帰る!京ちゃん置いて帰る!これ以上一緒に居たら、私変になっちゃう!)

半分パニックに陥りながら、身を引こうとして

咲(ひぐっ!?)ビクッ

胸元から引き出そうとした手が乳首を擦る

咲「~~~っ!!」

反射的に身悶えし、今度は乳房を押し潰す

咲(はううううっ!?)

また身悶え

咲「っ!んふぅ!ふぅぅ…!!」

また乳首

咲「ふぅ~~~っ!!」

今度は乳房

咲(ひいいいいい!?駄目だ!今、枕から口離したら、絶対悲鳴が出ちゃう!)

快楽に一人悶えていると、依然眠りこける京太郎に動きがあった

京太郎「ん…」コロン

有ろうことか背を丸めて寝返り、枕に齧り付く咲の首筋、触れるか触れないかギリギリで止まった

京太郎「すー…」

咲(いやあああ!京ちゃん、首だけ私の方に向けて寝息立てないで!!)

咲(首筋に息吹きかかって、くすぐったいよぉおおおおお!)

咲「~~~~!!!!」

京太郎「ううん…はぁー…」

深く、長い溜息のような呼吸が一つ、咲の首筋を湿らせる

咲「ふうんっ!?」

咲(あうっ!だからくすぐったいってばっ!もうやめ…)

京太郎「ん…。咲…」

ぼそりとした、何気無い一言が京太郎の口から溢れる

咲「…え?」

突然自分の名前を呼ばれ、目線だけで慌ててそちらを見やる咲

京太郎「…お前、そんな可愛かったっけ?」ボソッ

咲(え…)

京太郎「むにゃむにゃ…」

咲「…」

京太郎「くー…くー…」

咲「…」

咲(…私の胸に深く突き刺さるその声は…)

咲(鳴り止まぬ歓声に似ている…)

咲「…」

咲(…あ。マズい。理性)プチッ

そして咲は…キレた


その1:宮永咲の視点
終わり

照ねぇちゃんまだ生きてんの?

>>76

その1.5:宮永照の視点

照「…」パクパクパク

照「」チーン

淡?「あ、死んだ。まあ、けど続き、嫌でも見えちゃうんですけどね。所詮これ夢ですし」

その1.5:宮永照の視点
終わり

その2:須賀京太郎の視点

京太郎「ん…」ピクッ

京太郎(あ…やべ…大分眠ってた…?)

モゾモゾ…

京太郎(んあ…なんだ~、この音…)

徹夜明けからの深い眠りの中
耳元で響く、モゾモゾと云う物音に、須賀京太郎はその意識を徐々に覚醒させつつあった

京太郎(また優希あたりが悪戯仕込んでんのか?)

記憶上の経験から、この怪しげな音が聞こえてきた前例をぼんやりと思い出す
確か、前ベッドで爆睡した時は、優希の奴が眠気覚ましにとゴムパッチンをかましてくれたのだ。それも、わざわざ割り箸とかで補強した、カタパルトみたいなごっつい発射台から

…最悪の目覚めだった

京太郎(…っ!冗談じゃねえ!あんなの、もう二度とごめんだっつーの!)

焦りと共に、急激に身体が起床モードへと移行する
若い身体は、生命の危機に対し非常に敏感で、頼もしさすら感じられた。こんな状況では、情けなさの方が上に立つが

…とにかく、まずは何はともあれ、目を開けよう。そう思い立ち、実行する
そこには、優希の悪知恵の粋を凝らした凶悪兵器より、よっぽどによっぽどな現実が鎮座ましましていらっしゃった

京太郎「…咲?」

咲「ひっ!?」

京太郎(…なんでそこまでしておいて、声かけられただけで悲鳴あげるかなー…)

『悲鳴をあげる…って云うか、なんか取り敢えずリアクションしなくてはいけないのは、こっちだろうよ…』。そんな事を頭に思い浮かべる。
妙に冷静なのは、目覚めたばかりでまだ頭に血が巡ってないからに違いない

京太郎(だってほら、その証拠に、今、凄い勢いで頭とか顔に血が昇ってきてるし)

すなわち、怒り半分、恥ずかしさ半分

京太郎「…って、さ、さささ、咲!?お、お前!な、何してんだよ、咲、お前!!」

自分でも何言ってるかわからなかった
取り敢えずリアクションには成功したと思う

咲「えっ!?あのっ!えっ…そのっ…」モジモジ

よく見ると、咲自身、なんだか見た目に違和感がある

京太郎(…あ。胸元がちょっとはだけてるのか。リボンが解けてて、インナーシャツがずり下がって…あれ、ブラしてねーの?コイツ…)

京太郎「って、なんでお前が動揺してんだよ!」

咲「いや…その…」

正直、眼福ものだった。確かに咲は非常に一部が貧しい娘さんだが、決して不細工ではない
小さくて臆病で、どこか小動物的な外見は、見る者の保護欲を掻き立てる様でもある

一時の気の迷いで可愛いなーと思ってしまった事も、一度や二度や三度や十度では無い

京太郎(…って、違うっ!今は、そこじゃない!論点は…最もツッコまなきゃなんねー部分は、そこじゃねぇ!)

京太郎「い、いや!取り敢えず、それはいい!それには答えなくていい!まず、こっちに答えろ!」

咲「え…あ、うん…」

なので、ツッコむ事にする

京太郎(…正直、これ聞くのちょっと…かなり怖いなー… )


京太郎「…なんで俺、裸でベッドに括り付けられてんの?」


咲「…」

京太郎「…」

静寂が重かった

咲「…」

京太郎「…」

咲「…えへっ」

京太郎「『…えへっ』…っじゃねぇえええ!!!」

叫ぶ京太郎。かつて横になったまま、ここまでシャウトしたことはあっただろうか。いや無い
これだけ怒声をあげれば、普段の咲ならビビって30分くらい近寄らなくなる。だが…

咲「…」

そうはならなかった。暗い瞳と目が合う

京太郎「…咲?」

ぞわり
妖しい熱を帯びた視線を浴び、背筋に冷たいものが走る
ねっとりとした視線は、京太郎の目をしばらく見つめた後、ゆっくりと視線を移し、今度は剥き出しの京太郎の肢体を舐めるように見つめていく

ほう…と、うっとりとした溜め息を一つ吐き出し、己に酔うたような言い回しで一言、告げる

咲「京ちゃんが、悪いんだよ…」

訳が分からない

京太郎「おい、咲…」

咲「なーに?京ちゃん」

ゆっくりと…京太郎に見せ付けるように右手をあげてゆく咲
手の平が肩あたりまで持ち上がったあたりで、一旦停める。そして今度は、柔らかく、優しく、そしていやらしい手つきで、京太郎の身体へと伸ばしてくる

背伸び臭と云うか、似合わなさを感じさせられるぎこちない動作に、最近読んだ小説か何かに毒された節もあるのだろうとも若干思うが、それでもこの状況では、どうしても…

京太郎「止めろ…」

咲「やーだよっ」

京太郎(俺は今、咲が…)

京太郎(あのちんちくりんの幼なじみの咲が…)

京太郎(小動物みたいな咲が…)

京太郎(弱虫で、臆病で、運動音痴で、ドジで、鈍臭くて…)

京太郎(けど、大切で…大切で…大切で堪らない奴の筈の咲が…!!)

京太郎「…怒るぞ」

咲「…」

咲「くすっ」

咲「…怒れば?」

京太郎(怖い…?)

挑発的な言葉と共に伸びた咲の手の平が京太郎の右肩に触れ、左脇腹へ向かう対角線上をゆっくりとなぞってゆく

幼子にも劣ら無いほどぷにぷにと柔らかい手の平は、水気をたっぷりと含んで熟した桃の果実の様な肌触りで、それでいて肌に暖かく吸い付いて離さない

咲の手がぬるりと肌を滑る度…鳥肌が立つ

京太郎(わかんねぇ…お前が何を考えてるのか、何がお前をそうさせたのか…。さっぱり訳がわかんねぇよ。咲…)

心の中で、頭を抱える京太郎。頭の中を疑問の嵐が吹き荒れる

京太郎(…けど、分からない尽くしの俺にだって、分かる事、いくつもある)

一つ
咲は今、何故か開き直っていると云う事

二つ
取り敢えず、なんでかとにかくひたすら身の安全がヤバいと云う事

三つ
今自分が、咲を怖いと感じていると云う事

そして最後に

京太郎(咲が、かつて無いほど『女』に見えてちまってる…)

咲「…京ちゃん…大好き…だよ…」

柔らかい少女の手が固く強張った少年の身体を滑る度、手の平は二人の汗を纏い、じっとりと濡れる
少年のしなやかな筋肉の形を味わうようになぞり移動を続けていた手の平は、そして遂に京太郎の左脇腹に到着した

京太郎は、こんな状況で、目の前の少女に魅了されつつ有る自分に気付き始めていた

京太郎(俺って、Mだったのかな…?)

ちょっとだけ自己嫌悪


その2:須賀京太郎の視点
終わり

その3:宮永咲の視点 2回目

咲「ふふ。そんなに強張っちゃって…。怖いの…?京ちゃん…」

怯えた様子の京太郎に、愉悦を感じながら、告げる

咲「普段、ちんちくりんってバカにしてる私が?」

精一杯に見下した声をつくり、告げる。なんとしてでもイニシアティブを取らなければいけない
こんな状況でも、気を抜いたらいつもの調子でからかわれそうで

咲「弱虫な、私が?」

普段からかわれる意趣返しの気持ちも込め、告げる

咲「鈍臭い、私が?」

普段なら、決してやれない事を、言えない言葉を、手探りに探しながら、告げる

咲「怖いんだ…私が」

咲「そりゃそうだよね?だって京ちゃん、今私に文字通り手も足も出ないんだもん」

咲(そうだ。今私は、京ちゃんを支配しているんだ)

熱に浮かされ、歪んだ欲望に取り憑かれ、振り回されている自覚はあった

咲「何されても…何も出来ないんだもん…。ね?」

けど、それに逆らうつもりはもう無かった

左脇腹に置いた手に少しだけ力を込めると、京太郎の身体が更に強張るのを感じられた

咲(硬い身体…)

男性らしい筋肉に、自分には無い物を感じ、腹の底が疼く

京太郎「咲。おい、お前、何を…」

恐怖を必死にひた隠そうとしている声

咲(隠し切れてないけど。…ふふふ。可愛いなぁ)

今のところ、全て計画通り。嗜虐心を満たそうと必要以上にわざとらしく振る舞っているが、面白いように怖がってくれている
普段絶対見れない表情なので、自分しか知らない京太郎を一人占めしてる様な気分もして、心がホカホカする

咲(それに何より、このシチュエーションは…)

咲「ふふ。あ~むっ!」カプッ

京太郎「ひっ!?」

剥き出しの胸板に、歯を立てて噛み付く
甘い噛み方だが、後くらいは残るくらいの強さで

咲「ちゅ~っ…じゅっ…じゅじゅじゅじゅっ!ぷちゅっ!」

唇を押し付け、舌でチロチロと皮膚を味わい、飲み込むように、吸引する。キスマークが付いたらいいと思う

咲(小説に出てくる、大人の悪女になった気分)

普段の自分と全く違う自分を演じ、酔いしれる咲

京太郎「あ…ぐぅ…」

咲「ふふっ。どうしたの?なんか、切なそうな声が聞こえるんですけど…」

京太郎「ば、馬鹿、お前…こんな場所でこんな事してたら…」

咲(まだ何か言っている)

胸板から口を離して見てみると、ちゃんと真っ赤なキスマークと、それを囲むような噛み跡が付いていた
一本一本の歯が小さな自分の歯跡を確認し、征服感に満足して薄く微笑む

咲「ええ~?聞こえないよぉ」クスクス

くすくすと彼の情けない声を嘲笑うように見下ろし、耳元に顔を近付けて一言

咲「…そんなにちっちゃい声で話すんなら…これくらい近くで話してくれないと、ね?」

咲「…かぷっ」

耳たぶを口に含む

京太郎「うおわぁ!?」


その3:宮永咲の視点
終わり

その4:須賀京太郎の視点

咲が、耳元で囁いてくる

シロップの様に甘く、涼風の様に心地良い声
これだけやっておいてまだ緊張でもしてるのか、普段より少しだけ呂律が怪しく、舌っ足らずになっている

得意気な感情を乗せた、優越感に浸る子供っぽい声が、薄い唇から発せられて京太郎の鼓膜を震わせる

京太郎(…くすぐったい)

そう思った瞬間、今度は振動だけでなく、耳たぶを直接にかじられた

鼓膜に伝わる音は、じゅぶじゅぶと液体が気体にかき混ぜられる音

京太郎(えっ?)

液体?
疑問に思ったのも束の間、咲の口元から溢れ出した唾が、京太郎の耳を浸す

チロッ

粘性を帯びた唾が、まるでローションのように滑らかに耳を濡らしてゆく
その中で、その液体を万遍なく肌に届ける為の道具は、舌だ
小さく、細く、熱く、ぬるぬるとした咲の舌が、耳の形をなぞりながら這い回っている

京太郎「ふわ…」

咲「…んふっ♪」

思わず洩れた声に、嬉しそうに鼻を鳴らす咲
その鈴のような声がまた、ころころと濡れた鼓膜を震わせる

その繰り返し

じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ…と蹂躙は続く

じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ…

次第に京太郎の身体から力が抜け始める。抵抗する力が奪われていく

じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ…

じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ…

京太郎の意識が溶けてゆく…

その4:須賀京太郎の視点
終わり

その5:宮永咲の視点 3回目

咲「…ふうっ」

一息つき、顔をあげると、そこには力の抜けた、弱々しい京太郎の瞳があった
再び征服欲が満たされるのを感じる。今、咲は絶好調だった
好きな人の肉体を貪る自分に、信じられない程の高揚感を覚えている。もう理性は捨てた。後は、もう、後の事なんか考えずに突っ走ろう

この後絶交されたって知るもんか。今この瞬間の快楽だけ覚えて、それだけで私は一生生きていける
変態と罵りたければ罵るがいい。私は今、この瞬間が人生の絶頂期だ。だから、やりたい事は全部やっちゃうもん

咲(次は…何しようかな…)

一旦曲げていた顔を上げ、京太郎の全身を見回す
麻雀以外では優柔不断な咲だが、今回はすぐに決められた

咲「…あはっ♪」

そこに、先ほどまでは無かったモノが、出来ていた
『ソレ』を、食べよう

咲「いただきま~すっ♪」

咲「かぷっ!」

ぷっくりと膨らんだ、少年の乳首を口に含む

京太郎「はうっ!」

咲「じゅる…じゅる…」

口から溢れるままに任せ、唾液を京太郎の胸に吐き出し、ヌルヌルに浸す

咲「うふっ」

京太郎「くううっ…!」

一旦顔を上げ、右手でそれを伸ばす

咲「んふふふっ」スリスリスリ

京太郎「はあっ!」

京太郎の胸部を全て己の唾液で濡らし終えたのを確認し、嬉しそうに頷く

咲「…うんっ!」

咲「…はーむっ♪」

最後に、もう一度乳首に吸い尽き、片腕でもう一方の乳首を抓み、クリクリと弄る

乳首を弄るのはお手の物だ。いつも目の前の人を思って、弄っていたから

咲「ちゅばちゅぱあむあむ」

吸って、舐って、舐めて、噛む

同時に片手は、クリクリと挟んだ乳首を擦り合わせ続ける

京太郎「~~~っ!!!」

咲「…」

快楽に悶えながらもなんとか声を押し殺す京太郎を見て、再び顔を上げ、話しかける

咲「ん~?…へー。京ちゃん、面白いね。京ちゃんの癖に耐えるんだ。これに」

咲「生意気」

無慈悲に告げ、すぐ再び乳首に食い付く

咲「じゅ~っ!!じゅっ!じゅじゅじゅじゅ~っ!!」

京太郎「っ!はああああっ!?」

全力で吸引する。同時に、舌先でこねくり回す
歯で削り、硬くした舌で跳ね、狂ったように舐めまわす

京太郎「あああああっ!!!?」

咲「あはははは!京ちゃん、その悲鳴かわいいっ!女の子みたいだよ!」

その裏返った叫び声に興奮する咲

興奮のあまり勢いづいて、思わずベッドに飛び乗り京太郎の腹に跨ってしまう
股の下に腹筋の硬い感触が当たり、キモチいい

さっきから愛液に濡れに濡れた下着は、もう使い物にならないかもしれない


その5:宮永咲の視点 3回目
終わり

ところで

ベッドに括り付けられている京太郎だが、一体、どのようにして括り付けられているのだろうか?

両手首はがっちりと拘束されている。先が輪になった荷ヒモで手首を括り、先をフレームに縛り付けてある。現状、全く動かせないと言っても良い

足首も同様だ

ただし、それだけ

他には特に拘束らしい拘束もしていない

そして咲の犯したミスが一つ

拘束の作業の途中で京太郎に気付かれるのを恐れ、また京太郎の身体を気遣って、それら拘束した荷ヒモはキツく縛られる事はなかった

しかも、結び方はチョウチョ結び

徐々に拘束は緩んでゆく

そして咲が京太郎の腹に飛び乗ったとほぼ同時、京太郎の腕の拘束は、あっさりとその役目を放棄した

その6:須賀京太郎の視点 3回目

ベッドに仰向けになった京太郎の腹の上で、得意げに咲が告げてくる
奴隷の主の様に、敗者を罵る勝者の様に、愛する人を支配したがる女のように

咲「ふふふ…ねえ?京ちゃん。今の気分、改めて教えてくれる?」

咲「部室のベッドの上で裸で括り付けられて」

咲「私に好き勝手弄くられて、玩具にされて」

咲「女の子みたいな悲鳴あげさせられて」

咲「それでも誰も来てくれない」

咲「私は、まだまだ京ちゃんの事、許してあげる気は無い」

咲「男の子として、これ以上つらくて、情けなくて、悲しいことはないよね?」

咲「…ねえ。どんな気分?」

咲「必死に考えて、私のご機嫌取れるような回答、聞かせてよ」

咲「そしたら、ちょっとくらい手加減してあげる事も、出来るかもしれないよ?」

咲「…ふふふ。けど、逆に私の機嫌を損ねるような返事したら…わかるよね?」

ここで京太郎の頬を優しく撫でる咲。取り敢えず即座に返事を返してやる

京太郎「…咲」

咲「んふ。…な~に?京ちゃん」

京太郎「…よいしょ…っと」スッ

咲「…えっ?」

気の抜ける掛け声とともに、手枷を外す。これ、返事

その瞬間、京太郎は確かに見た
目の前の魔王モードのちんちくりんが、一瞬文学少女モードのちんちくりんに移行したのを

京太郎「…ふー。やっと外れた…最後なんかすっげえあっさり外れたけど」

咲「あわわわわ?」オロオロ

慌てるちんちくりん

咲「…ハッ!」

気付くちんちくりん

咲「ふ、ふんだ!手枷が外れて、安心しちゃったの?残念でした、京ちゃん。一足遅かったね。だから京ちゃんは甘いんだよ」

取り繕うちんちくりん

京太郎「…あん?何があめーってんだよコラ。言ってみろおい」

取り敢えず、目の前の種族:魔王のちんちくりん様のご機嫌を損ねないよう、精一杯丁寧に尋ねて差し上げる

咲「ふふっ。今の私達の体勢、分からないかなぁ。確認してみるといいよ」

京太郎「…はあ」

勝ち誇り、告げるちんちくりん

京太郎(何故)

咲「これ、格闘技でいうマウントポジションってやつだよね?」

京太郎「…はあ」

咲「聞いたことあるよ。上に居る人間が絶対的に有利な、究極のポジション…」

咲「正直、この体勢になっちゃえば、もう今更手枷なんか必要無いもんね」

咲「京ちゃんは、すでに私に身体の動きを完全に支配されちゃっているんだよ」

にやり
これから弱者を嬲ろうと言わんばかりの残酷な笑顔で告げる魔王様

京太郎「ああ。なるほど」

京太郎(そりゃ、このちんちくりんが、喧嘩なんてした事有る訳ねーよなー)

正直、今までされていた事を全部水に流してやっても良いかなーと思うくらい、和んだ

流さないけど

咲「むっ。まだどこか余裕がある?」

咲「…いいよ。その余裕、ゆっくりと奪ってあげる」

咲の威圧感がとんでも無い勢いで増す。麻雀をしてる咲がたまに纏う、恐ろしい覇気
今はまるで、地区大会オーラスで天江衣に嶺上開花を直撃させた時並の圧力を肌に感じる
鳥肌が立ち、背筋が凍り付きそうな感覚

京太郎(なるほど…こりゃあ怖い)

が、

京太郎(けど別に肉体的戦闘力上がる訳でも、喧嘩の知識が増える訳でもないしな~)

つまりそういう事です

京太郎「ほい」グイッ

咲「きゃああっ!?」

片手を伸ばし肩を掴んで軽く引き寄せてやると、あっけなく無敵の魔王式マウントポジョン()は崩れ去った

京太郎(弱ッ!?)

因みにお姉ちゃんも弱いです。ソースは菫さん
彼女のどら焼きを間違えて食べた回数が5回を超えた時、遂にマジギレした菫さんにコブラツイストを食らって3時間まともに歩けなくなりました
他の部員もあまりの剣幕に手を出せなかったとか

咲「いたたた!京ちゃん!肩痛い!」

京太郎「あ、すまん。強く握り過ぎた」スッ

咲「ふー…」

京太郎「…」ギュッ

咲「…京ちゃん?」

京太郎「…」ギューッ

咲「あの…肩、離してくれないと、近いんですけど…」

今は、京太郎に覆い被さった咲を、京太郎が抱きしめたような格好

咲「…顔、近いんですけど…」

京太郎「…」ギューッ

咲「…あの…」

京太郎「」ギューッ

咲「は、恥ずかしいん…ですけど…///」モジモジ

さあ、反撃だ

京太郎「咲」

咲「はっ!はいっ!!」ビクッ

京太郎「長年俺と付き合いのあるお前ならよーく分かってると思うけど」

咲「う、うん…」

京太郎「俺は今、ひじょ~に、怒ってる」ギュッ

咲「ひゅっ!?」

ちょっと腕に力を込めてやると、苦しそうに息を詰まらせる咲

京太郎(えー…この程度の力も入れちゃ駄目か…)

慌てて力を抜いてやる
今のは、怒ってるという意思表示と、どこまで力を入れても大丈夫かの確認

京太郎「咲さぁ…お前、さっき俺が今どんな気持ちだったか知りたいつったよな?教えてやるよ」

咲「え、えっと、えっと…」オドオド

魔王様、小動物の様に震えるの図

京太郎「俺さ、すっげえ悲しかった」

咲「えっ…」

申し訳程度に出ていた魔王オーラ、完全消失。これより通常(文学少女)モードに移行します

京太郎「咲が、こんな変態みたいな事するなんて思った事も無かったから…」

咲「」パクパクパク

文学少女モード、機能停止。これより、強制的に魔王モード再起動します。ただしオーラは出ない

京太郎「けど、ちょっと嬉しいっても思っちまった。何だかんだ咲が俺の事男として好いてくれてるってのは嫌でも分かったし」

京太郎「それに、咲がすげーエロくてかわいかったから…無理やりされるのも、実は興奮してしょうがなかったし…」

文学少女モード再起動。魔王モード、機能停止し…おい、停止しろ早く。何?嫌だ?上等だコラ、前から気に入らなかったんだよテメエ。そろそろ蹴り付けようや、おう、この野郎(文学少女モードさんの御言葉)

咲「え…?そ、それって…」

京太郎「うん…」

京太郎「…なんか、すっげー変なシチュエーションで、あれなんだけどさ」

京太郎「…俺も、その、咲の事嫌いじゃないって言うか…」

京太郎「…嫌いになれないって言うか…」

京太郎「むしろ好きって言うか…」

京太郎「…我慢なんねぇ」グイッ

咲「ひゃ…」

京太郎「ちゅっ!」

咲「…っ!」カチッ

唐突に咲の顔を引き寄せる京太郎。柔らかそうな薄い唇に自らの唇をぶつける
あまりに勢いよく引き寄せられた為、二人のファーストキスは、歯と歯が盛大にぶつかり合う音の響く、格好の悪いものになった

だが、今の二人にそんな事を気にしている余裕は無い
ファーストキスの癖に、お互い示し合わせたようにスムーズに貪るような深いキスへと移行する

その6:須賀京太郎の視点 3回目
終わり

その7:二人の視点が混ざり合う

京太郎「んむっ!」

咲「はむっ!」

京太郎「くちゅっ…ぐちゅっ…ぶじゅ…」

咲「んっ…ふぁ…はふ…じゅぶっ…」

舌を絡ませ合い、唾を送り合い、受け取り合い、お互い貪る様に相手の口内に侵入し合う二人

咲「ふぅんっ!?」

京太郎「じゅっ!」

咲「んふっ…んちゅっ!」

京太郎「じゅるるる…」

咲「ふぁっ!?」

京太郎「ちゅぷっ…」

咲「くふぅんっ!?くはっ…」

咲「はっ!はっ!はっ!はっ!」

次第に咲の嬌声が増えてゆく。京太郎の責めが優勢になってゆく

彼女にとって残酷な話、麻雀しか取り柄の無い耳年増なだけの鈍臭い文学少女に、人並みのキスの技術など有る訳が無いのだ
下手糞なキスで必死に反撃しようにも、全然敵わない。咲の瞳に、情けなさからくる涙が浮かび、零れそうになる

咲「うむぅっ!」

京太郎「じゅぱっ…くちゅくちゅくちゅ…」

咲「はあああっ!?…ぎぎぎ」ググググ…

性的快感が限界に達し、京太郎のキスから逃れようと顔を背けようとする咲

京太郎「じゅぷ…」

咲「ふぁあああぁぁ!?」

当然、京太郎は簡単には逃がさない。どころか逃げようとしたお仕置きに、歯茎を舐めるように舌を這わせてみせる
面白いように悶える反応を示す咲に、今度は嗜虐心を刺激された形だ

京太郎「ちろっ…ちろっ…」

咲「ふうんっ!ふうんっ!うあっ!ひっ!ひっく!」

次に、上顎の裏側を触れるか触れないかぎりぎり程度の感触で撫でるように舐める
甘い嬌声に嗚咽が混じり始めたのが聞こえたので、そろそろキスは許してやる事にした

京太郎「…ふう」

咲「あ…ふぅ…」

キスだけで顔を真っ赤に染め、とろけるような顔で虚空を見つめる咲

京太郎「…キスだけで感じ過ぎだろ、咲。酷い事になってるぞお前」

咲「ううう~…京ちゃんが上手すぎるんだよ。何?もしかしてどっかで遊んでたの?いやらしい!最低!死ね!!」

京太郎「いや、今のファーストキスですけど…」

咲「じゃあ生まれつきのキスの天才!?この天然の変態!!」

京太郎「いやぁ…正直、俺に才能が有るからだとは思わないです。さくらんぼだって結べないし。…咲がへっぽこ過ぎなんじゃねぇ?」

咲「へっぽこっ!?」

京太郎「うん。へっぽこ」

咲「そ、そそそそ、そんな筈ないよっ!だって私、だって…だって…ううう…」

咲(…そ、そう言われたらそんな気もしてきた…)

京太郎(…コイツ、面白っ)

京太郎「ちゅーっ」

咲「はうううっ!?」

キスから解放され、久しぶりの会話にようやく人心地ついた咲の首筋に、またキスしてやる京太郎

咲(うああああああああああうあうあうあうあうあうあうああ!ぞくぞくするよぉおおおおおおおお!!)

敏感にも程がある咲の身体が、びくびくと大きく震える
抱き締めている腕に、逃げ出そうと身体に力を込めているのが京太郎に伝わってくる

逃さまいと京太郎の腕に軽く力が入るのを感じる咲
それだけでもう身動きが取れない

唇と舌をゆっくりと這わせながら、鼻でも首筋を擦る京太郎

京太郎「なんか、咲の身体。甘い果物みたいな匂いがする」

咲「やっ!匂い嗅がないでよぉ!」

京太郎「ほいほい」

腕の力が抜ける

咲「っはあっ!!」ガバッ

飛び跳ねるように身を起こす咲。目がぐるぐると渦巻きを巻いている

咲「はぁはぁはぁ…」

咲「ふうっ…ふうっ…ふうっ!」キッ

ちょっと怒ったような、恨みがましそうな視線で睨む咲

京太郎「…ふーん。まだ自分の立場が分かってないようだなぁ」

再び嗜虐心がムクムクと立ち上がってくる。やはり咲は、へっぽこなくらいが丁度良い
さっきの仕返しは、まだ済んでいない

京太郎「そんな生意気な子は、脱がせちまおっかな」

咲「はぁ…はぁ…えっ?」

京太郎「よっ」スルリ

咲「いやっ!止めて!京ちゃん!」

言いながら、素直に腕を上げて、制服脱がしに協力して差し上げる咲さん
もっと手間取ると思っていたのに、妙に息が合っていたお陰でシャツごと一瞬で脱衣完了だった

京太郎「あ…」

その下には…腹にかかったブラと、膨らみかけた剥き出しの無乳

京太郎(なんつーか…見てて哀れだ。和の母乳を煎じて飲ませてやりたい気分。いや、そんなもん有ったら俺が飲みた…ゲフンゲフン)

おっぱい星人にはちょっとアレだった

咲「…なんかよくわかんないけどムカついた」ギュッ

京太郎「いててて!」

腹の皮抓られて痛がる京太郎。自業自得

咲「ふんっ!」

京太郎(怒らせちまったか)

京太郎「…ちゅっ」

咲「はふ…ああっ!?」

京太郎が身を起こし乳首に食らいつくと、まるで対面座位のような体勢になった
気持ち良さげな声を返す咲

同時に、京太郎の左手が咲の太ももに伸び、這い回る

咲「はああああっ!?」

吸われる感触と撫で回される感触を同時に受け、跳ねる咲

京太郎(…おっぱいより、太ももの方が触ってて楽しいし)


咲「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!ああああっ!」

途切れ途切れの矯正が止まらない
京太郎が気にせず咲の身体の感触を楽しんでいると、咲の懇願にも似た謝罪の声が飛んできた

咲「きょ、京ちゃんっ!わ、私っ!もうっ!もう我慢出来ないよっ!」

京太郎「…咲?」

咲「ごめんっ!もうっ!もうっ!我慢出来ないから!」

京太郎「…ひっ!?」

そして、咲が、腰を浮かばせたと思ったら、京太郎の腰の上に、咲の腰が跨った

咲「あああああああっ!!!」

痛ましい悲鳴

京太郎「うああああああああ!?」

身悶えるような悲鳴

2つの悲鳴が混ざり合い、この話もようやく最終局面を迎える

咲「い、痛いっ!痛い痛い痛いよおっ!」

京太郎「ちょっ!馬鹿咲お前!何やってんだ!処女だろお前!?そんな事したら痛いに決まって…」

咲「うわああああああん!」

京太郎「と、とにかく、一回離れろ!このままじゃお前…」

咲「やだっ!」

京太郎「なんでだよ!」

咲「このまま…続けて…」

歯を食い縛りながら絞りだすような声で告げる咲

京太郎「そんな事言われても出来るかよ!こんな、苦しそうな…」

咲「でも…欲しいの…」

京太郎「何を!」

咲「京ちゃんとの、つながり…」

京太郎「何がつながりだ!そんな事しなくても俺ら、もう…ああ、血が出てる…なあ咲、頼むよ…」

咲「お願い…お願いだから…ねえ?せめて、もう少しだけ…この痛みを、ちょうだい…?」

京太郎「馬鹿…」

咲「ほんと…だよ…京ちゃんが寝てる間に、さ。私、こっそり変な事して、さ…」

咲「我慢できなくなって、勝手に京ちゃんの事縛って、エッチなこといっぱいして…」

咲「許してもらったのに、対等になったら気持よくさせられてばっかりで全然京ちゃんのこと気持良く出来てないし…」

咲「挙句今、また京ちゃんに甘えて、我儘言ってる」

咲「本当、私って最低…」

京太郎「…」

咲の懺悔にも似た告白に、何も言えなくなる京太郎

咲「でもね?これだけは知っておいて欲しいの。私、京ちゃんのこと、本当に好きだから。大好きだから。ずっとずっと、好きだったから!」

京太郎「…」

咲「…ごめんね。こんな事して。本当に、ごめんね。嫌いになったよね!?…私、最低だよね?最低…最低…本当、最低だ…」

咲「ううううう…」

ぽろぽろと流れる咲の涙

どうしようもなく不器用なこの少女の言葉に、京太郎の頭が一気に冷めた

京太郎(…最低なのって、むしろ俺だよ咲)

京太郎(お前が俺の事好きだって言ってくれた時から、舞い上がっちまってたんだろうな。お前の身体ばっか見て、心に触れようって、ちゃんと思ってやれなかった)

京太郎(独りよがりでお前の事弄って楽しんで、嬲りものにしてたんだ。それでお前のこと焦らせて…こんな、痛い思いまでさせて…)

京太郎「…なあ咲」

咲「…何?京ちゃん」

京太郎「やっぱ、止めよう」

咲「…」

咲の身体が強張る

咲「…やだ」

京太郎「…頑固者。いっつもお前はそうだよ。気が弱い癖して、肝心なとこで絶対譲らない」

咲「…頑固者だもん」

顔を伏せ、駄々っ子のような反論をする咲を、諭すように語りかける京太郎

京太郎「…おまけに我儘だ」

咲「…我儘だもん」

京太郎「それに、ドジ」

咲「…関係ない」

京太郎「ドン臭いし」

咲「うるさい馬鹿京ちゃん」

京太郎「…馬鹿はお前だよ。今更だけどここ部室だぞ?誰か来たらどうするつもりだったんだよ。俺もあんま言えた義理じゃないけど」

咲「…」

京太郎「…しかも生でやろうとしてた。馬鹿」

咲「…馬鹿でいいもん」

京太郎「やだよ。俺はお前不幸にしたくないし」

咲「…」

京太郎「…な?咲。今日はこれでオシマイにしようぜ?…また今度、もっと色々手順を踏んで、それからでも遅くなくないか?」

咲「…」

京太郎「咲」

咲「…」ギュッ

咲「…じゃあ、さ。京ちゃん」

京太郎「ん?」

咲「明日、私とデートしてくれる?」

京太郎「…喜んで。お姫様」

咲「私、駅前のクレープ屋のクレープ食べたい」

京太郎「ああ。好きなの頼め。特別に奢ってやるよ」

咲「そのあと清澄公園でお花が見たい」

京太郎「じゃあ、食ったら行こうか」

咲「そこでボートにも乗りたい」

京太郎「そんなのあったのか。じゃあ乗ろうぜ」

咲「ベンチに座っておしゃべりしたい」

京太郎「そうだな。話したいこと、いっぱいあるもんな」

咲「そこで、冷たいかき氷食べたい」

京太郎「いいね。最近暑いしな」

咲「…あーんってしたら、食べてくれる?」

京太郎「喜んで」

咲「えへへ…」

京太郎「やっと笑った」

咲「じゃあね。じゃあね。また次の日は、手を繋いで学校に行こう?」

京太郎「おいおい、和達と一緒だぞ?俺らがいちゃついてたら嫌な顔されないか?」

咲「なら、和ちゃんたちと合流するまででいいや。その代わり、京ちゃんは私のうちまで迎えに来ること!」

京太郎「えー…」

咲「いや?」

京太郎「全然嫌じゃない。一緒に居られる時間が増える」

咲「じゃあ、よろしく」

京太郎「へーい」

咲「あとね、もうすぐお祭りがあるでしょ」

京太郎「ああ。あったな」

咲「一緒に行きたい」

京太郎「そりゃ当然だな」

咲「で、わたあめ食べたい」

京太郎「さっきから食い物の話ばっか」

咲「うるさい」

京太郎「ごめん」

そこでようやく、咲が京太郎の腰から降りる
ゆっくりと慎重に…股からは血が少し垂れたが、あまり酷い出血量では無いようだ

それもそのはず、二人とも今回が初めての性交渉だった上、最終的に咲の腰が引けて、上手く挿入されていなかったのだ
膜は傷ついたが、破れるには至らなかった

それでも早く処置した方が良いのではと思う京太郎だが、嬉しそうに語る咲の顔を見て、やはり口を紡ぐ
自分にはどうしたら良いのかわからない

今度は普通に京太郎の脇に横になる咲
股の痛みは、今はそれほど感じない。どんなに激しい行為より、今の京太郎との何気無い会話が咲にとって何よりの幸せだった
話し足りなくて、会話を続ける

咲「それでね…夜になったら、部のみんなと夜店を回るの」

京太郎「それはまあ…部長辺り、企画してくれてるんじゃないか?」

咲「でねでね。しばらくみんなと一緒に遊んだら、二人でこっそりひと気の無い神社に抜けだして…」

京太郎「…和と優希を撒くのは骨が折れそうだ。早めにルート把握しておかなきゃな」

咲「そこで、キスしよっか」

京太郎「…」

咲「…駄目?」

京太郎「いや…そうだな。そこでキスしようか」

咲「…うん。ありがとう」

京太郎「ん…」

咲「二人で、花火も見たいな」

京太郎「行こうぜ」

咲「気になってる喫茶店があるの」

京太郎「そこも行こう」

咲「カップル割で恋愛映画一緒に見て」

京太郎「うん」

咲「ちょっと遠出で電車にも乗って」

京太郎「うん」

咲「高原ピクニック」

京太郎「体力大丈夫か?」

咲「期末テストの勉強も、一緒にしよう」

京太郎「それは是非お願い致します」

咲「いっぱいいっぱい、思い出が欲しい」

京太郎「作ろうぜ。いくらでも」

咲「…初エッチは、いつしよっか」

京太郎「…そこは、流れで」

咲「…そうだね。それが一番かも」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「…帰ろうか」

咲「…ん」

立ち上がり、二人、服を着て後始末を始める

全ての帰宅準備が済んで、部室の玄関の前に立つ
あとは鍵をかけて、終わり

ふと気になって、咲は時計を確認する
午後7時30分

咲(実に二時間半も色々とやっていた訳だ)

辺りはいい加減暗くなっていた

京太郎「さて、と。鍵掛け終わったぞ。帰ろうぜ咲」

咲「ん」

京太郎「…なあ。咲」

咲「…何?」

京太郎「…もう暗いし…送ってく」

咲「…ありがと」

京太郎「ん」

二人、歩き出す

しばらく二人、黙りこくる
コツコツと乾いた足音が二人分、無人の旧校舎に響く

校舎を出る頃には、二人どちらともなくお互いの手を固く、固く握り合っていた

咲「…」

京太郎「…」


それからしばらくして

京太郎「…なあ咲」

咲「…何?」

突然京太郎が立ち止まり、咲に呼びかける
ここは通学路用に用意された電灯が力無く灯る、何もない田んぼの畦道。何か変なものでも見つけたのかと京太郎の顔を見ると、真剣な顔でこちらを見つめている

京太郎「…すぅー…」

咲「…?」

京太郎「…」

咲「…?」


息を吸い込んで…


京太郎「…すぅー…」


吸い込んで…


京太郎「…すぅー…」


まだ吸い込んで…








京太郎「あなたの事が好きです!!!僕と付き合って下さい!!!!!」












咲「はい!!!」






京太郎「ぷっ…」

咲「くふっ…」

京太郎「くくくく…」

咲「くふふふ…」

京太郎「あははははははははは!!おいコラ咲!笑うなよ!俺すっげー真面目に言ったんだぜ?」

咲「あはははははは!京ちゃんこそ!私だって本気でお返事したんだよ?なんでそこで噴きだすのさ!」

京太郎「はははは!いやぁ。なんつうの?言った後何を今更って自分で自分にツッコんじまって!そう言う咲はなんで笑ってるんだよ!」

咲「あははは!だって、京ちゃんがすっごい真面目な顔してるんだもん!おかしくて…」

京太郎「何をー!?なんで俺の真面目顔が面白いんだよ!」

咲「あはははははははは!!だって~~!」

京太郎「このヤロっ!こうなったらお前の顔も面白くしてやる!」

咲「あはははは!ヤダ~!顔触んないでよ京ちゃんのエッチー!」

京太郎「あ!待て!咲!逃すかこの!」

咲「や~ですよ~!きゃー!にげろー」

京太郎「待てぇええええええ!」

咲「あはははは!!」

京太郎「捕まえた!」

咲「捕まった!」

「「あははははは!!」」

畦道をじゃれあいながら帰宅する二人

笑い声は絶えず、暗い夜道も恐れず進む

怖い訳が無い

ゲコゲコ蛙の合唱が聞こえるこの道が、私たちが本当の始めの一歩を踏みだした道だから

だから、一緒に歩こう、この道を

今日も、明日も、明後日も

ずっとずっと、歩いていこう

ゆっくり、ゆっくり、歩いていこう

一歩ずつ、一歩ずつ、迷いながら、けれどしっかり足を踏みしめながら

確実に、確実に

ずっとずっと、二人で歩いていこう



終わり!

照「…はっ!」

照「…夢か…」

照「…」

照「…」

照(…取り敢えず、東京に帰ったら淡をボコろう)


番外編 完!!

今日のところはコレで終わりです。ありがとうございました
全てが無計画だったんで特に後半やっつけ感が酷いんですが、終わったので良しとして下さい
イザナミに対する反骨心でやったんですが、途中で中途半端にしちまった俺は気概に乏しいのかもしれん

照お姉ちゃんの話の続きは、もうちょっと軽くてほのぼのな初代スレのノリで続けたいなぁ…

ただいま

前スレ、分岐点より少し前、キリの良さ気な点から始めますので、少し前スレと同じ展開が続きますのでご了承下さい

と、いう訳で、次

前スレ>>860から始めます

いろいろあって、長野駅前のデパート開店5分前


開店5分前
デパート正門前

京太郎「そろそろ開店だなー」

優希「楽しみだじぇ~」ワクワク


3分前
デパート隣コンビニトイレ内

咲「あううう…そろそろお店開いちゃうよぉ」

咲「…けど、緊張して、尿意が…」

咲「早く済ませなきゃ…」アセアセ


1分前
デパート裏口非常用ドア前

照「…ふん。所詮田舎のデパートか。見た目は立派でも、開店直前に入口に誰も居ないとは…」

照「第一、見窄らし過ぎる。設計者の神経を疑うな」

照「ふん。これだから田舎は嫌なんだ」


デパート、開店




照「京ちゃん、カッコよくなったね」京太郎「えっ!?」  真ルート


デパート地下一階
タコス屋

店員「いらっしゃいませー」

優希「一番乗りだじぇー!」

京太郎「だから走るなって…おっ!マジで美味そうな匂い!」

優希「これは久々の大ヒットな予感がするじょ」

京太郎「メニューも色々あんな。ビーフにポーク、チキン、ラム、シーフード…豆、ミックス…etc.すげー…」

優希「素晴らしい!」

京太郎「テイクアウトもあるみたいだけど…」

優希「この場で食う!そしてお代わりも有りだよな?」

京太郎「…ま、いいんじゃないか?」

優希「うっは~♪」

優希「はむっ!はふはふ!」ムシャムシャ

京太郎「おっ!こりゃやべえ!超美味い!」ムシャムシャ

優希「ふふふふ。来て良かっただろー?」ムシャムシャ

京太郎「おう!」ムシャムシャ



同時刻
デパート一階

咲「地下一階、地下一階…あうう。地下への階段どこぉ?」ウロウロ



もいっこ同時刻
同一階

照「まさかあれが非常口だったとは…。流石長野、わざわざ都会人向けに陰湿なトラップを用意してくれるじゃないか…」トボトボ

照「どれどれ…案内板によると、フードコーナーは地下一階か。…さっきエスカレーターを見たな」

咲「とにかく、早くエスカレーターでも、階段でも、エレベーターでもいいから、見つけなきゃ…」チョロチョロ

照「確か、あっちの方に…いや、こっちだったか…」キョロキョロ

咲「どこかなぁ…」ウロウロ

照「…む?ここはさっき見たぞ?おかしい。おのれ長野。デパート内に狐を飼って、客を惑わしてでもいるのか」グルグル

咲「あうっ!?」ドンッ

照「うわっ!?」ドンッ

咲「」ペタン

照「」ペタン

咲「いたたたた…」ジンジン

照「む…う…」サスサス

咲「あうう…誰かにぶつかっちゃった?」

照「くぅ…私とした事が、他者に迷惑をかけようとは…」

咲「はっ!あ、あのっ!すみません!私、余所見してて!お怪我ありませんか!?」ガバッ

照「む?いや、こちらこそ済まなかった。私も他の事に気を取られていてな。そちらこそお怪我は無いだ…」ムクッ

咲「えっ?」

照「ろ…う…?」

咲「…お、お姉ちゃん…?」

照「か…」

咲「え…?嘘…?な、なんでお姉ちゃんが長野に…」

照井「さ、咲!?なんで貴様がここに…」

咲「そんな…なんで…ただでさえ京ちゃんの事で大変なのに、こんなところでお姉ちゃんにまで会うだなんて…」フラフラ

照「むっ!京ちゃん!?」

咲「…私どうしたらいいのぉ…もう分けわかんないよぉ…」

照「おい咲!京ちゃんが大変とはどういう事だ!?答えろ!」

咲「…」

照「…」

咲「…ねえ、お姉ちゃん?」

照「なんだ?」

咲「…地下一階への階段…知らない?」

照「…一緒に探そうか」

地下一階
タコス屋店内

優希「ふい。ポークタコス。ご馳走様だじぇ」

京太郎「お前すげーなぁ。これでビーフとチキンとポーク完食か」

優希「こんな遠くまでなんて、滅多に来れんからな!目標は全メニュー制覇だじぇ!」

京太郎「マジか…」

優希「次はラムタコスだじぇ!京太郎はいいのか?」

京太郎「俺は今食ってる一個でいいかな…これ、ボリュームあるし。あとはコーヒー飲んでるわ」

優希「むう。そうか…」

京太郎「ラムタコスだったな?コーヒー頼むついでに頼んできてやるよ。待ってな」ガタッ

優希「おう!すまん!」



タコス屋前前

ザッ

咲「や、やっと着いた…」

照「ここに…ここに京ちゃんが…」ジーン

咲「…」ソワソワ

照「…」ウロウロ

咲「…」モゾモゾ

照「…」クルクル

咲「…ね、ねえお姉ちゃん」モジモジ

照「…な、なんだ?咲」キョロキョロ

咲「…行かないの?」

照「…お、お前こそ」

咲「…こ、怖いよ…」

照「…ふ、ふん。この臆病者め。情けない…」

咲「…」

照「相変わらずだな貴様は…方向音痴だし、鈍臭いし、泣き虫だし…」

咲「…」

照「ああ。格好悪い。情けない。無様だ。いっそ見ていて憐れだぞ」

咲「…お姉ちゃんだって迷子になりかけてた癖に」ボソッ

照「なにぃ!?」

咲「…」

照「おい、咲!貴様、姉に向かってなんだその口の利き方は!」

咲「ふんっ!お姉ちゃんに妹は居ないんじゃなかったの!?私にもお姉ちゃんなんか居ませんから!」

照「こいつ…!」

咲「べー!っだ!!」

照「あ、アッカンベー…だと!?この私に!?このちんちくりんが!」

咲「お姉ちゃんの方こそ、高3にもなってスタイルこっちに居る頃とあんまり変わってないじゃない!」

照「馬鹿を言うな!胸だって大きくなっているわ!その…3センチくらい」

咲「中学から3センチ!?」


照「う、五月蝿い五月蝿い!黙れこの無礼者!貴様に私を笑う権利など無いぞ!」

咲「なにさ!」

照「どうせ貴様も私と同じ宿命を負った、同孔の狢に過ぎんと言っている!」カッ!

咲「っ!」ビクッ

照「牢記しておくが良い!二年後、貴様が今吐いた言葉が、今度は貴様の喉を食い破らんと牙を剥くのだ!」

咲「くっ…」

照「ふはははは!己が言葉に羽根を切り裂かれる無様な貴様の姿が目に浮かぶわ!楽しみにさせて貰う!」

咲「ちゃ、ちゃんと牛乳、毎日飲んでるもん!」

照「甘い!それも既に私が通った道よ!」

咲「ううううー…」

照「諦めろ!運命とは…決して逆らえぬ、大河のうねりにも似たものよ!」

咲「あう…」ガクリ

※日本人は牛乳の吸収効率が悪いので、小魚等でカルシウムを採りましょう。また、同時に鉄分も


京太郎「すいませーん。追加注文したいんですけど…」

咲照「「!?」」

ヒュッ

京太郎「…ん?今、どっかで聞いた事有る声が聞こえたような…」キョロキョロ

店員「お客様ー?どうかされました?」

京太郎「…ああ、すみません。えっと、ラムタコスと、コーヒーを…」

店員「お待たせ致しました。はい、どうぞ」スッ

京太郎「ありがとうございます」

京太郎「さって、と。優希のとこに戻るか」スタスタ



照「…何故隠れた。臆病者」コソコソ

咲「…お姉ちゃんこそ」コソコソ

照「…」

咲「…」

照「…京ちゃんは…行ったな」

咲「…うん」

照「…よし咲。まずは説明しろ。一体何故今日、京ちゃんが長野駅くんだりまで来ている。お前は何故京ちゃんと一緒じゃない?」

照「いや、そもそもお前は何故京ちゃんに気付かれる事を恐れている?京ちゃんのことで大変…とはどういう事だ?」

照「…納得のいく説明をして貰おう」

咲「…うん。わかった。…私もお姉ちゃんに聞きたい事いっぱいあるけど、取り敢えずは時間がないから…」

咲「…まずは、お店に入ろっか」

照「ふう…いい席を取れたな」コトン

照「多少姿の確認はし辛いが、ここなら見つかる可能性は低そうだし、会話の聞き取りも容易だしな。それに延長上にトイレや注文カウンターが無いのも大きい」

咲「…」

照「さあ、咲。そろそろ事情を説明して貰えないだろうか」

咲「…うん。わかった」

咲「…ねえ、お姉ちゃん。京ちゃんの席の向かい側に…女の子がいるの、わかるでしょ?」

照「…え?」

咲「…あの子、ね。片岡優希ちゃんって言うんだけど…私の麻雀部の友達でね?」

照「な…な、なななななな…」ガクガクガク

咲「…タコスが好きで…京ちゃんと仲が良くて…それで、最近調子が悪いからって、2人で気分転換に新しく出来たタコス屋…ここなんだけど、に遊びに行こうってなって…」

照「あ、あわわわわわ…」

照「…そ、それって、デートじゃないか!」

咲「うん…それで、私も居ても立ってもいられなくて…思わずこっそり様子を見に来ちゃって…だから、私はあの2人にばれたら凄く都合が悪いから…」

照「ば…馬鹿な…そんな…!嘘だ…!」 ブルブルブル

咲「嘘だったらどんなに良かったか…」ハァ

照「…ど、どんな奴なんだ?その、なんとか優希って奴は・・・」

先「明るくて、優しいいい子だよ。それに…見てみれば分かるけど、凄く可愛い子…見てみたら分かると思うけど」

照「ほ、本当だ…遠目からだけど、確かに可愛い」

照「…はは。私では、とても太刀打ち、出来ん…な…」ガクリ

咲「やっぱりお姉ちゃんも、そう思う?」ガクリ

照「…ああ。成りは小さいが、アイドル級の容姿じゃないか…」

咲「だよね…私達姉妹みたいな地味な子じゃ、太刀打ち出来ないよね…」

照「ううう…」ジワッ

咲「ううー…」クスン

京太郎「どーだ?優希。ラムタコスは」

優希「うむ!独特の風味の柔らかいラム肉がタコスのスパイシーなソースに不思議なほどマッチして、それをシャキシャキの野菜が引き締め、香ばしいトルティーヤが全てを包み込んで調和させてるじょ!」

京太郎「そ、そうか。美味いか…」

優希「私は今、最高に幸せだじょ~…」

京太郎「ははは…」

優希「京太郎。お前も一口食うか?」

京太郎「お?いいのか?」

優希「勿論だじぇ。メニュー制覇の道はまだまだ長いしのう」

京太郎「んじゃ、お言葉に甘えて」パクッ

京太郎「うん!美味い!」モグモグ

優希「えひひ~。だろだろ~?」パクッ


照「…」

咲「…」

照「…なあ、咲。アイツ、殺していいか?」ニコッ

咲「だ、駄目だよう!」ビクッ

照「ぎぎぎぎぎ!!な、なんだアイツ!!さり気なく京ちゃんにあ~んしやがって!」ギリギリギリ

照「し、しかも!間接キスだと!?まだ付き合ってもいないのに、なんて破廉恥な!なんだあのサノバビッチ(意味分かってない)!!」ワナワナワナ

咲「…」←昨日の朝こっそり間接キスした人

照「や、やはり許せん…!あんな変態女、京ちゃんには相応しくあるまい!引導を渡してくれる!」

咲「だ、だから駄目だよ!それに京ちゃんの目の前で優希ちゃんに悪さしたら、お姉ちゃんまで嫌われちゃうからね!」

照「ぐおぉお!?あ、あのタコス女め!そこまで計算済みとでも言うのか!」

照「なんという恐ろしい相手だ…!」

咲「いやいやいや。…あ、でも」

照「なんだ!」

咲「優希ちゃん、大会では先鋒務めてる…」

照「よし、団体戦頑張れ咲。勝ち進めばどこかで当たろう?清澄とは良い試合が出来そうだ」

咲「お姉ちゃん顔怖いよ!?」

優希「ふう。ご馳走様!ラムタコス完食だじぇ!」

京太郎「お粗末さん。次は何食べる?」

優希「シーフード!…けど、その前にちょっとお花を摘みに行ってくるじょ」

京太郎「ん?そうか?なら、俺はこのまま待ってるぜ」

優希「すぐ戻るっ!」ガタッ

京太郎「行ってらー」

京太郎「…」

京太郎「…コーヒーも地味にうまいなここ」ズズズ


照「…小娘が席を外した。…どうした?」

咲「…」モジモジ

照「…咲?」

咲「ご、ごめん、お姉ちゃん。私ちょっとおトイレに…」

照「ああ。行って来い」

咲「行ってきます…」ガタッ

照「ん」

照「…」

照「…」チラッ


京太郎「」ボケーッ


照「…今なら、京ちゃん一人だけか…」

照「…」ガタッ

照「…」スチャッ

照「…」ガタッ

照「…」スチャッ

照「うう…」ソワソワ

照「くっ…やっぱり…怖い…」

照「ねえ京ちゃん。京ちゃんは、私みたいな地味な女、覚えてくれてる?」

照「…忘れられてたりしたらどうしよう」

照「嫌そうな顔されたりしたら、どうしよう…」ジワッ

照「露骨に他人行儀な態度取られたりしたら…」

照「…だが、こうして悩んでいる間にも、時間は過ぎて行く…」

照「さっさと覚悟を決めろ!宮永照!さっきの小娘が戻って来ては、尚更声をかけにくくなるぞ!」

照「…ぐううう…!」

照「ううううう~っ!」

照「…ええいっ!南無三!」ガタッ

京太郎「ふぁ~あ。今日も早起きしたから、ちょっと眠みーや…」ゴシゴシ

「あの…京ちゃん」

京太郎「…優希が戻って来るまで、ちょっと寝ておこうかな…」

「京ちゃん…」

京太郎「…コーヒーって、あんま眠気覚ましになんねーのかな?」

「京ちゃんっ!」

京太郎「…ん?」クルッ

照「ああ…良かった。…気付いてくれた」ホッ

京太郎「……」ポカーーン

照「……」モジ…

京太郎「…」

照「…えへへ」

京太郎「…あれ」

照「…ひ…ひさし…ぶり…」

京太郎「………もしかし、て」

照「私のこと…お、覚えて…る?」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…照ちゃん?」

照「………ふふふ」

照「京ちゃーん?何度も言うけど、私は君の2つもお姉さんなんだぞ?尊敬の念を込めて『照さん』と呼ぶように」

照「…ふふふっ。なんてね。…うん。照だよ。大きくなったね。…けど、一目でわかった」

照「会いたかったよ。京ちゃん」

京太郎「照ちゃん…」

照「…ふ…ふふふ…懐かしいなぁ…そうやっていつも君は、私がどんなに訂正しようとしても『さん』付けしてくれないんだ。ああ…やっぱり京ちゃんだなぁ。変わってないなぁ…」

照「うう…」ジワッ

照「本当に…グスッ…懐かしいなぁ…」

京太郎「懐かしいって…そりゃあ俺の台詞だよ。今までどこに居たんだよ。急に居なくなって、連絡取ろうにも連絡先もさっぱりわからないし…」

京太郎「今、確か高校3年生だっけ?どこの高校なんだよ。長野駅で会ったって事は、この辺の学校なのか?」

照「ん。ああ…そっか。そうだよね」

京太郎「?」

照「その件に関しては、ごめんね。ちょっと込み合った事情が有って…引っ越したんだ。今は東京の高校に通ってる」

京太郎「そうだったのかよ」

照「だから、長野で会えたって言うのは、結構偶然…いや、半分くらい偶然…かな」

京太郎「半分?」

照(…実は、ね。京ちゃんに会いたいから、わざわざ東京から京ちゃんの家まで行く途中だったんだよ?)

照「…ん。なんでもない」

京太郎「…ん?あ、そう?」

照(…ふふ。そんな事、言える訳無い、よな…)

京太郎「いや~。それにしても、びっくりしたなー。まさかこんなとこで照ちゃんに会うなんて…」

照「うん。うん。私もびっくりだよ…」

京太郎「最初一目見たときは、一瞬誰かと思ったよ」

照「え?」

京太郎「だってさー。照ちゃんって、昔から背高くて結構美人だったじゃん?」

照「えっ!?」

京太郎「けど、やっぱ高校3年生にまでなると違うね。前よりずっと美人になった…気がする。なんつーの?大人っぽくなったっつーか」

照「えっ!?あっ?えっ!?なっ…」オロオロ

京太郎「ははは。そうやっておだてられるとすーぐアワアワしちゃうとこは昔のまんまだな!」

照「こ、こら京ちゃん、年上をからかうな!それに私の事は照『さん』!照さん!!と呼びなさい!怒るよ!」

京太郎「ごめんなさーい。照『ちゃん』!」

照「もうっ!直ってない!」

京太郎「あははは!」

照「…ふふ。まったく…京ちゃんめ」

照(…まったく、悪ガキめ。そうやってすぐ調子に乗って人の事からかって…いつまで昔のノリを持ち出すんだ。私達はもう高校生なんだぞ?分かっているのか君は…)

照(…でも、お陰で昔の事、ちょっと思い出せた)

照(長野にあまり良い思いでは無いけど…けど…楽しかった思い出も、長野にはいっぱい有ったんだよね。そうだろう?京ちゃん…)

照「…」

京太郎「…照ちゃん?」

照(…ちょっと仕返ししてやれ。私だって向こうでちょっと…いや、かなり成長したんだ。君を手玉に取るくらい訳無いんだぞってところ見せてやる)

照「…けど、さ」

京太郎「ん?」

照「そういう京ちゃんの方こそ、かなり変わったと私は思うよ」

京太郎「そう?」

照「うん。まず…」

照「…背は、沢山伸びたね」

照(昔は私より小さかったのに、今は頭一つ分くらい追い越されちゃった…)

京太郎「まあね。中3で一気に伸びたんだ。昔は照ちゃん見上げてたのに、今じゃ見下ろしてるんだもんな。なんか不思議な感じ」

照(優しそうな風貌は、ちっとも変わらないね)

照「筋肉も付いた?」

京太郎「まあ、そこそこかな。クラスでも運動は結構出来るほうだし」

照(胸板も厚くなって…男の子らしくなった)

照「…それに表情もちょっとキリッとして」

京太郎「ふふん。まあね?」

照「…男らしくなった」

京太郎「…えっ!?」

照(うん。やっぱりだ。君は私の思い描いてた通り)

照「…」ジーッ

京太郎「えと…照ちゃん?」

照「…」ジーッ

照(いや、それ以上に…)

京太郎「おーい、照ちゃーん?」

照「」ゴクリ

照(い、言うか言わまいか…)

照(…京ちゃん、カッコよくなったね)

照「…」モジモジ

照(け、けど、こんな事言ったら…なんか、告白みたいだし…その…)

京太郎「…あの……照、さん?」

照(…よし。この際だ、言おう。私は勇気を出すと決めたのだ)

照「…あ、あのね?京ちゃん」キッ

京太郎「おっと、どうした?照ちゃん」

照「えーっと、ね?」

京太郎「うん?」

照「きょ、きょきょきょきょ京ちゃん、さ」

京太郎「うん」

照「えーっと、ね?その…ね?」

京太郎「うん」

照「ひゃっ!ひょよひゅなっひゃ…」

京太郎「…うん?」

照「…」

照(…噛んだ)

照「…コホン」

京太郎「…」

京太郎(相変わらず良く噛むなー照ちゃん)

照「…京ちゃん、カッ「おっ待たせだじょー!!京太郎ー!!」ね」

照「…」

京太郎「おっ。優希。お帰り」

優希「うむっ!いやあ、なんか混んでて時間かかっちゃったじょ…って、おりょ?こちらのお姉さんどちら様だじょ?」

照「…」

照「」ズーーーーーーン

京太郎「ああ。この子、俺の古い友達の照ちゃん。昔よく遊んで貰ってたんだけど、しばらく疎遠になっててよ。お前がトイレ行ってる間に偶然再開したんだ」

優希「ほー。そうなのか。私は片岡優希だじょ!よろしく、照ちゃん!」

照「…」

優希「おりょ?返事が無い…っていうか、なんかあっちの世界へ行っちゃってるじぇ。大丈夫かや?」

京太郎「おいおい、優希。これでも照ちゃん、今年高3で俺らの2個上だぞ?ちゃんと尊称付けろよ。さんとか、先輩とか」

優希「なにー?そうだったのか!道理で大人っぽい人だと思ったじぇ!すみませんでしたじょ。照さん!」

照「」

京太郎「ん。よしよし。それでいい」

優希「…って言うか、お前はなんでちゃん付けなんだじょ!先輩のこと舐めてるのかー!?」

京太郎「俺は良いんだよ。付き合い長いから」

優希「そりゃあ不公平だじょー!いいか?親しき仲にも礼儀有りと言ってな?どんなに仲良しの人でも、調子に乗って接してると愛想尽かされちゃうんだじぇ」

京太郎「俺はその言葉をお前にそっくりそのままお返ししてやるよ。いや、マジで」

優希「…はぁ~ん?何が言いたいんだじぇ!?」

京太郎「お前のそのえぐれ胸に聞いてみろ!」

優希「何を~!?このっ!犬の癖にご主人様に歯向かうとは何事だじぇ!!」ギューッ

京太郎「いててて!こら優希!顔抓んな…」

照「」

優希「くのくの」ゲシゲシ

京太郎「あー。こら優希、いい加減に…ああ。もういいや。ところで照ちゃん?」

照「はっ!な、なんだ!?京ちゃん!」

京太郎「えーっと、照ちゃんは、もうタコス食った?何にも持ってないみたいだけど…」

照「…うん?なんでそんな事聞くの?」

京太郎「いやぁ。良かったら、積もる話も有るし、ちょっと話したいなーって。まだ食べて無かったら、一緒のテーブルで食べない?」

照「え…でも…二人の邪魔じゃない…か?」チラッ

優希「ん。おお、そりゃあ良いじぇ!私も照さんとお話してみたいじょ!ねーねー。一緒に食べよー?」

照「え…あ…う…」

京太郎「もしかしてもう食べ終わったところ?」

照「…」

照(…咲と座った席にラムタコス置いたまんま…)

照「…あー…」

照「…いや。まだ何も食べてない……」

照(…許せ、咲)

優希「じゃあ決まりだじぇー!ね!ね!照さんはどれ食べる?私は次シーフードにするじょ!」

照「あ。じゃあ、私はこのスパイシーソーセージミックスに…」

京太郎「オッケー。じゃあ、俺二人の分頼んで来るよ」ガタッ

照「…」

優希「うっきうっき~♪照さん、知ってる?ここのタコスすっごい美味しいんだじぇ~」

照「…あ、ああ…そう…か」

優希「そうなんだじぇ~」

照「ふ…ふーん…」

照(…気まずい)

優希「…私タコス好きでなー。清澄も、学食にタコスがあるから入学することにして~…」

照「…あ、ちょ、ちょっとスマン!」ガタッ

優希「おりょ?」

照「ちょ、ちょっとトイレ…」ソソクサ

優希「いってらっしゃ~い」

照(とりあえず、事情だけは説明しておかないと…)スタスタ

照「…あれ。まだ帰ってきていない」

照「あいつめ…また迷ってるのか」

照「…仕方ない。事情を説明した断り書きだけはメモ紙に書いて置いておくか」

照「」カキカキ

照「…よし」

照「…あんまり待たせてもいかんよな。早く戻ろう」スタスタスタ


2分後

咲「ただいまー。ちょっと迷っちゃった」スタスタ

咲「…あれ?お姉ちゃん?」キョトン

咲「入れ違いにおトイレ行っちゃったのかな…って、あれ?なんかメモ紙がある…」

『咲へ。すまん、諸事情があって京ちゃん達と食事を摂ることになった。牽いては新しいタコスを注文する事になったので、私の分のラムタコスはお前が食べて良いぞ』

咲「…」

咲「」チラッ


京太郎「お待たせー。二人ともー」

優希「おー!待ちわびてたじょ~!」

照「ありがとう、京ちゃん」

京太郎「どういたしまして。俺もなんかもう一個食いたくなったから頼んじまった」

優希「おう!お前もだんだんタコスの魅力に嵌ってきたか?」

京太郎「いや、別に…」

優希「まあ、素直じゃないわ!」

照「ふふふ。さあ。食べよう。美味しそうだ」

京太郎「そうだね。いただきます」

照「いただきます」

優希「いっただっきまーす!」




咲「…」チラッ

冷えたラムタコス×2

咲「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

咲「…え?」

咲「…は?」

咲「…」チラッ



優希「ねーねー照さんー!この後何か用事あるー?」

照「い、いや…別に大した用事は無いが…」

優希「じゃあじゃあ、私達と一緒に遊びに行こうじぇ!」

照「は?」

優希「お姉さん良い人っぽいし、もっと仲良くなりたいじょ!」

照「けど…」

京太郎「ああ、いいねぇ。優希ナイスアイディア!久しぶりに一緒に遊ぼうぜ?」

照「い、いいの…?」

京太郎「もちろん!」

優希「だじぇ!」

照「…じゃあ」

優希「よーし!なら、これ食べ終わったらゲーセン行くじょ!!」

京太郎「さんせーい」

優希「照さんゲーセン経験は有りか?」

照「うん。たまに後輩に付き合ってUFOキャッチャーするぐらいかな…あんまり上手じゃないけど」

優希「よっしゃ!なら京太郎!私達の腕を見せてやるじぇ!きっと照さんビックリするじょ!」

京太郎「よし来たー!」

照「…ふふふ。期待してるよ」



咲「…何これ」



今日の分終わり!

おまけ番外編

その頃の白糸台

尭深「もぐもぐ」

誠子「あれ?尭深、何食べてるの?」

尭深「…ノドグロの干物。部室のコンロで焼いた」

誠子「道理で魚臭いと…って、あー。例の宮永先輩のお土産か。なんで東京駅行ってわざわざこんな変なもん土産にしたんだかあの人は。これで嫌がらせじゃなくて善意100%ってのが恐ろしい」

尭深「…初めて食べた」

誠子「だよなぁ…ってか、アンタもこんなのよくすぐ食う気になったな。あれか?もったいない精神ってやつか?」

尭深「そのつもりだったけど…」

誠子「お前、ほんと良い奴だなぁ…華の女子高生に見た事も聞いた事も無い変な魚の干物って…一応私も寮の冷蔵庫に入れてるけどさぁ」

尭深「…正直、めっちゃうまい」

誠子「あん?」

尭深「…あーん」ヒョイ

誠子「」パクッ

誠子「…もぐもぐ」

誠子「…うまっ!!?」

尭深「…ね?」

誠子「…うわっ。何コレマジヤバ。ちょっと、私も寮戻って持ってくる!」

尭深「ついでにご飯が欲しい」

誠子「心得た。10分で戻る!!」ダッ

尭深「…なんだかんだ、やっぱあの人は間違えない」

尭深「…かも」

尭深「…だったらいいな」

尭深「…ま、ちょっとは覚悟してる」

淡「ふいー…おはようございますぅ~…」トボトボ

菫「おはよう。どうした?淡。そんな疲れた顔して」

淡「いや…なんか、昨日宮永先輩にキャラメル貰った後なんですけど…」

菫「おう」

淡「普通に練習してたら、よくもあんな悪夢を見せてくれたなぁあああ!!っていきなり走ってきて」

菫「…おう」

淡「…コークスクリューきっちり食らいました」

菫「…淡。今日の帰りラーメン食いに行かないか?奢ってやろう」ホロリ

淡「ゴチです。私いつものトンコツラーメン屋がいいです。味玉も食べれたら立ち直れるかもしれません」

菫「わかったわかった。…というか、さすがに横暴すぎるな。しかも昨日一昨日と半休しておいて、今日は完全に休むと言ってきた。そろそろ叱っておこうか」

淡「まあ、いいんじゃないですか?普段なら毎日誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで練習してるのは他ならぬ宮永先輩ですし。部活が休みの日も普段は絶対って言って良いくらい練習してますし」

菫「だが…」

淡「なんだかんだ言っても私達一年生にもきっちり指導してくれますし、厳しいけど、悪い先輩だとは口が裂けても言えません。あの人はやっぱり、エースですよ」

菫「…淡?」

淡「そりゃあ普段はボケボケで横暴なところも結構ありますけどね。それくらい抜けたところが無いと、逆に完璧超人過ぎて近寄りがたいです」

菫「…」

淡「コークスクリューだって、見た目は派手ですけど、思ったよりダメージ低いって言うか…あの人運動音痴で非力ですし?あれくらい、別にどうってことありませんよ。だからそう怒らないであげてください」

菫「…おい。淡」

淡「…はい?」

菫「何で懐柔された」

淡「…コークスクリューの後、東京プリンを箱で貰っちゃいましたんで♪」

菫「安いなぁ~。お前…」ハァ

淡「何言ってるんですか!東京プリンですよ!?世界最強のおやつプリン!その中でも私的にかなりグレードの高い奴です!!滅多に買えないし!!」

菫「あー。わかったわかった。お前、本当、照の後継者だよ色んな意味で」

淡「むきー!なんですかその言い草!!なには無くともその『いろんな意味で』だけは訂正してもらいます!!」

菫「はいはい。じゃあ今回はお前の顔と東京プリンに免じて不問だ不問」

淡「やった~!宮永先輩に貸しが出来たー!」

菫「いい性格してるよお前…」

淡「えへへ」

菫「…さて。それじゃあそろそろ練習に…ん?どうした?淡。そんな嬉しそうな顔して」

淡「くふふ…。いえ。大したことじゃ無いんですけど…ね?やっぱ、あの人にもたまにはお休みくらい取って貰わないと」

菫「…?」

淡「…たまにはお休みして貰わないと、あの人との差を一気に詰められないじゃないですか。…ね?」

淡「くふふふふ♪」

菫「…はっ」

菫「頼りにしてるよ。大将」

淡「はいっ♪」


おまけ番外編:その頃の白糸台
終わり

照「あのチビぬっ[ピーーー]…」

照「タコス美味しそう、早く食べよう。 ゲームセンター超楽しみ」

お姉ちゃん…

見事全国大会を優勝した清澄高校。
しかし喜びも束の間、凱旋する咲たちを待ち受けていたのは宇宙からの侵略者だった!

地球をかけた闘牌に数多の少女が傷付き倒れていく。
その圧倒的な戦力差に、世界は絶望の淵に追いやられていった。
だがその時一人の少年が立ち上がった。
その名は須賀京太郎。
咲の無念を果たすため、少女たちの仇を討つため。
京太郎は単身、怪異ひしめく戦場へ乗り込んでいくのだった……

みたいな感じのを思い付いたっていうか書いたんだけど似たようなネタ既出かな?

腐った咲の奴を書いてるきがする

それじゃあ次から始めるよー

タコスを食べ終わった3人は外に移動しました
ゲーセン前

優希「着いたじぇ!ゲーセン!!」

京太郎「おう。流石長野駅だ。俺らの地元に比べて都会だなぁ。ゲーセンもでっけえ」

照「そ、そう…か、な?」モジモジ

京太郎「そうかな…って、俺らの地元にこんだけの規模のゲーセン無いよ?カラオケとボーリングが複合してるなんて、凄くないか?」

照「う…ん…まあ、確かにこんなに色々くっついてるのはあんまり無い…かな」モジモジ

優希「まあ、照さんは東京に住んでるんだもんな。この程度の規模のゲーセンいっぱい知ってるんのであろー」

京太郎「ああ、なるほどね」

照「な、なんかごめんね。いきなり盛り下げるようなこと言っちゃって…」シュン

京太郎「いやいや。気にすんなよ照ちゃん」

優希「うむ!それに、照さんあんまりゲーセン行かないんだろ?だったらここでも十分楽しめるじょ!」

照「ありがとう…ごめん…」

京太郎「そんなかしこまるなよ照ちゃん。照ちゃんが一番年上なんだぜ?」

照「あ…う…」モジモジ

優希「こら!京太郎!」ペチッ

京太郎「いてっ!何すんだよ優希!」

優希「女性に年齢の話をするとは何事だ!だからお前はアホ何だじぇ!」

京太郎「うぐぐぐ…」

照「あ、いや、私は気にしてないから…」オロオロ

優希「だめだじょ照さん!コイツはそうやって許してくとどんどん付け上がるタイプだじょ。いいか?犬のしつけは初めが肝心で…」

京太郎「俺は人間だ!!」

優希「ほら、これは駄目な例だじょ。甘やかした犬は自分のことを人間だと思い込んでしまうのだ。飼い主も犬も不幸になるパターンだじょ…なんとかこの関係を改善せねば」

京太郎「ぐぬぬぬぬぬ…ああ言えばこう言うタコスめ…」

優希「タコスを悪口の意味で使うでない!」ゲシッ

京太郎「痛いです!」

照「ぷっ…」

優希「っ!」

京太郎「!」

照「あははははは!」

優希「照さん…」

照「あはははははは!なにやってるんだ二人とも。子供みたいな喧嘩して。あはははは」

京太郎「はは…やっと笑ったか」

優希「よかったじょ」

照「ふふふふ…さあ、二人とも。いつまでもこんな往来で遊んでいてもキリがない。それにちょっと恥ずかしいしね。中に入ろうか」

京太郎「了解!」ダッ

優希「了解!」ダッ

照「ふふふふふ…そんなに走らないでもいいのに。子供みたいだ」スタスタ



咲「…」

咲「…」スタスタ

ゲーセン内

京太郎「おおー!」

優希「すっげーじょー…」

照「本当だ。ゲームセンターって、こんなに活気があるんだね…」

優希「よっしゃ、それじゃあ、まず何するじょ!?照さん!」

照「えっ?」

京太郎「そうだな。折角だし、照ちゃんがやりたいやつを最初にやろーぜ」

照「そんな…悪いよ」

優希「何言ってるじょ!今回の主賓は照さんだじょ?一番最初のを決めるくらい、いいでしょー?」

京太郎「そうだな。あんまりゲーセン来ることも無いんだろ?だったら、楽しまなきゃ!」

照「けど…そもそも私、どんなのが有るのかさえ…よく知らないし」

優希「適当でいいから!」

京太郎「な!な!?」

照「う…そ、それじゃあ…」キョロキョロ

照「…じゃあ、あれやってみたい」スッ

優希「おお、あれは」

京太郎「なんだ?あれ」

優希「流石照さん。お目が高い」

照「え?」

照(えっ?そうなの?よくわからないから適当に指さしてみただけなのに…)

優希「なんだ。京太郎も知らんのか?あれ」

京太郎「わっかんねー。全てがわかんねー」

優希「あれはな、最近流行りの趣向を凝らした最新麻雀ゲームだじょ」

照「えっ?麻雀ゲーム?」

照(そんなのもあったんだ…)

京太郎「へー。結構面白そうだな。…だ、そうだけどどうする?照ちゃん」

照「…うん。そうだね。やってみようかな…」

照(…麻雀ゲームなら、いいとこ見せれるかも)


咲「…」コソコソ

照「…なんだこれ」

照(い、いっぱいボタンが有って、よくわからない…)

京太郎「うげ…なんだこりゃ。なんで麻雀ゲームなのにこんないくつもボタンがあるんだよ…それに、一番の謎はこのサンドバックだ。訳わっかんねー。全てがわかんねー…」

優希「うむ。これがこのゲームのハードなトコだじょ」

照「ハード?」

優希「そうなんだじぇ。この麻雀ゲームはな。まず最初にこのサンドバックをぶん殴って、それからこっちのいくつものボタンの中から正確なボタンを押して牌を捨てていかねばならんのだ」

照「…理由が分からない。どういう理屈?」

京太郎「わっかんねー。理由がさっぱりわかんねー」

優希「だと思ったじぇ。それを理解するためには、まずはこのゲームのストーリーを説明せねばなるまい」

照「ストーリー?」

京太郎「麻雀ゲームなのにんなもん有るのか」

優希「うむ。実はこれ、続編ものでな。私は前作で結構ハマったので知っているのだが…」

優希「これ、前作はいくつも有る高校の中の一つからチームを選んで、全国大会での優勝を目指すゲームだったんだじょ」

照「へえ」

京太郎「おお。なんかそれっぽい!」

優希「で、このゲームはその流れを汲んだ正当な続編だったのだが…冒頭のストーリーって言うのが存在するんだじぇ」

照「うん」

京太郎「どんなのだ?」

優希「見事全国大会を優勝した主人公の高校。しかし喜びも束の間、凱旋する主人公たちを待ち受けていたのは宇宙からの侵略者だった!」

照京太郎「「…はい?」」

優希「地球をかけた闘牌に数多の少女が傷付き倒れていく。…あ、前作は女子の大会が舞台だったんだじぇ。…その圧倒的な戦力差に、世界は絶望の淵に追いやられていった…」

照「訳がわからない。全てがわからない」

京太郎「俺もです。はい」

優希「だがその時一人の少年が立ち上がった!その名は○○○。…あ、主人公の名前は自由に付けれるじょ。面白そうだから以下京太郎な」

京太郎「おい」

優希「前作主人公の無念を果たすため、少女たちの仇を討つため。京太郎は単身、怪異ひしめく戦場へ乗り込んでいくのだった……」

優希「…っと、そこから第一ステージ開始なー」

京太郎「…で、それとなんでこの俺の身長よりでっかいサンドバックと阿呆みたいに沢山のボタンが必要になってくるんだよ」

優希「うむ。このサンドバックはな。敵のATフィールドだじぇ」

京太郎「わっかんねー以下略」

優希「敵は謎の宇宙勢力。そして闘牌方法は宇宙麻雀。敵の常套手段は、まず対戦相手の目の前にバリアを張って、牌に触れさせないことだったんだじぇ…」

優希「このサンドバックは、そのバリアを見立てたものだ。つまり、まずはこのバリアをぶん殴って破壊する」

照「取り敢えず、企画者の頭が宇宙レベルなのは分かった。じゃあ、この七色に輝くボタンは?」

優希「このボタンは、中和装置だじぇ…」

京太郎「なんでそこで中和という言葉が出るのかわっかん以下略」

優希「宇宙牌には幾つもの人体に有害な物質が素材として使われていて、牌に触るにはそれぞれを中和する7つのボタンでその物質を無害化しなくてはいけないのだ」

優希「これらの物質の中和方法を発見、技術化するまでに幾人もの若き闘牌少女達が犠牲になったんだじぇ…それは、今作主人公の恋人も…」

照「無駄にハードな設定」

京太郎「なんでそこまでして宇宙にこだわった」

優希「で、バリアの破壊と有害物質の中和を一巡毎にやってって、最終的に相手を飛ばした方の勝ちだじょ。ちなみに持ち時間有り」

優希「参考:>>180

京太郎「それ、もう麻雀ゲームの域を超えてるよな。どっちかって言うと、東京フレンドパーク的なノリだよな。もう」

照「自信がなくなってきた」

京太郎「前作やってるなら、お前ならいいとこいけるんじゃないか?優希」←自分じゃもういけると思ってない

優希「…実は前作は何度も全クリしてるのだが、今作はまだラスボスまで行けた事無いんだじょ…」

京太郎「マジか」

照「…取り敢えず、やってみる」チャリーン

京太郎(照ちゃん、チャレンジャーだ…)

優希(お手並み拝見だじぇ)



『まずは敵のバリアを破れ!サンドバックにパンチだ!  合計  100kg で打ち破れるぞ!』

照「100kg!?」

優希「照さんガンバだじょ!」

京太郎「照ちゃんガンバー!」

照「く…っ!うおおおおお!!」ペチッ

『20kg!』

照『ええっ!?』

京太郎「よわっ!」

照「このっ!」ペチッペチッ

『23kg!25kg! 合計68kg!』

優希「もう少しだじょ!頑張れ照さん!」

照「はああああああ!!」ペチッペチッ

『24kg!26kg! バリアが破れた!急いで牌を掴め!』

照「ぜえぜえ…っ!」ダッ

照「えっと…この牌は…黄色だから、黄色いボタンを押して…」アタフタ

照「これだ!」ポチッ

照「はぁはぁ」

ポイッポイッポイッ

『君の番だ!さあバリアを破るんだ!合計100kg!』

照「もう!?」

優希「走れ!照さん!」

照「うわああああああ!!」ダッ

照「やあ!」ペチッ

『18kg!』

照「じゅっ…!」

優希「頑張れ照さん!」

照「ぐぬぬ…おりゃあああああ!!」ペチペチペチペチ

『21kg!24kg!22kg!26kg!バリアが破れた!走って戻れ!』

照「ひいいいい!」ダッ

照「ぜえぜえ…つ、次は…こ、この緑の牌を捨てて…」ヨロヨロ

照「はぁはぁ…」ポチッ

ポイッポイッポイッ

『君の番だ!さあバリアを破るんだ!合計100kg!』

照「」

優希「照さん!」

京太郎「照ちゃん!」

照「ぜひ…ぜひ…」フラフラ

京太郎「…おい優希」

優希「…なんだじょ?京太郎」

照「はぁ…はぁ…」ペチ…ペチ…

京太郎「これ、無理だろ」

『14kg!12kg!』

優希「うーむ…私は3面までは結構楽に行けたんだがなぁ」

照「ふぅー…ふぅー…」ペチ……ペチ……

京太郎「化け物かお前は」

『8kg!8kg!合計42kg!どうした時間が無いぞ!』

照「ふ…ふ…はぁ…はぁ…ちょ、まって…」ペチ…

『2kg!逆に凄いな!合計44kg!』

優希「ちなみにこのゲーム、ネットで全国のスコアが見れるのだが、一番最初にこれクリアしたのは奈良のゲーセンの人らしいじょ。次が岩手。次は南大阪で、ここがハイスコア。

京太郎「そこにどんなモンスターが…」

『しまった!あと10秒で時間切れだ!急ぐんだ!』

優希「…まあ、南大阪の人は相方に殴る専門の人付けて、しかもキックまで使わせたって問題になってたが」

照「ぜえ…ぜえ…」フラフラ

京太郎「あの照ちゃん見てたら、俺は殴る専門は有りだと思う」

『7!6!5!』

優希「うむ。難易度調整が難しいので、公式でも最近はそれが推奨されてるじょ」

照「も…ダメ…だ…」バタリ

『2!1!ゲームオーバー!!』

京太郎「それを先に言ええええええええ!!」

照「はあ…はあ…はあ…はあ…」グッタリ

優希「おおう、見ろ京太郎。照さん、汗びっしょりで頬を上気させ、ぐったりしてるじょ。なんて艶っぽい…」

京太郎「うわああああ!?ちょ、照ちゃん!大丈夫か!!」

照「わ、私は…負けたのか…麻雀で…」ズーーン

京太郎「認めねー!俺はアレを麻雀とは認めねーぞおおおおお!!」

優希「…ちょっと休憩するじょ」



咲「…」ボスッ

咲「…」チャリーン

咲「…」ボスッ

店員(あの子、さっきからずっと無言でパンチングマシーンやり続けてる…)

休憩後

京太郎「…大丈夫か?照ちゃん」

照「ああ。すまない京ちゃん…」

優希「はい、これジュースだじょ」

照「ありがとう…」プシュッ

照「こくこくこく…ぷはあ…」

京太郎「それにしても、ありゃちょっと酷すぎるな。どうにもなんねーだろ」

照「…」

優希「そうだなー。照さんの体力考えたら、麻雀以前の問題っぽいしな」

京太郎「じゃあ、他のやりに行こうぜ、次は…」

照「やだ」

京太郎「…照ちゃん?」

照「もう一回アレやる」

優希「照さん…」

照(…この私がゲームとはいえ麻雀であんな無様を晒すなんて…)

照「リベンジする。もう一回やる」

優希「おおう。なんという闘争心」

京太郎「けど、本当にやめといたほうがいいんじゃないか?下手したら怪我するぞ照ちゃん」

照「ううー…やだ。復讐する」

優希(意外に駄々っ子だじぇ…)

京太郎「照ちゃん」

照「やだ」

京太郎「…」

京太郎「…はあ。仕方ない」

照「…京ちゃん?」

京太郎「わかったよ。じゃあ、俺がサンドバック殴り代行務めるから。照ちゃんは麻雀の方に専念してよ」

照「!!」

京太郎「それくらい良いだろ?このまま照ちゃんに殴るの任せたら、どっかで手首でも捻りかねねーし」

優希「そーだな。よし、行け!京太郎!日頃の修行の成果を今こそ見せるんだじぇ!!」

照「きょ、京ちゃん…!ありがとう!!」パァア

京太郎「よっしゃ。頑張ろうぜ。照ちゃん」

照「うん!」

照(おいおいおいおい!ちょっと待ってよ!)

照(こ、これって…まさか…!!)

照(初めての共同作業っていうやつじゃないか!?)

照(いいところ見せたいいいところ見せたいいいところ見せたいいいところ見せたいいいところ見せたい頑張るぞ頑張るぞ頑張るぞ頑張るぞ頑張るぞ!!)




咲「…」ベシドガバキメキョ グチャッ メリメリ ブチッ グチョグチョ ゴリッ ドーン

ウーワ!ウーワ!ウーワ! 

KO!Player Win PERFECT!!

数十分後

京太郎「ぜえ…ぜえ…つ、疲れた…」

優希「うおおおお!すっごいじぇー!照さん!」ガバッ

照「うわっ!?ゆ、優希…ちゃん?」

優希「パンチのスコアはともかく、麻雀の方で稼いだ得点と全クリ速度のスコアがなんと全国一位だじょ!」

照「え…」

照(そうなんだ…?デジタルはあんまり得意じゃないし、ボタン覚えるのにいっぱいいっぱいで何度かミスもしたんだけど…)

優希「私は鼻が高いじょ。今私は、全国一位の人とこんな間近でお話してるんだじぇ?それも友人として!まさかこんな所にこんな逸材が居ただとは…」

照「は、ははは…」

照(私が宮永照だって、もしかしてこの子気付いてないのか?…麻雀部なのに)

照(…まあ、周りにバレてあんまり騒ぎになったら遊べなくなって嫌だしな。それに私が宮永照だと気付かれたら、今みたいに接してくれなく成るかもしれないし。こっちの方がいいや)

照「そんな。たまたまだよ。間違えて牌を選んだ時に、考えてたよりも上手く手が進んだりもして、運が良かったんだ」

優希「ええー?そんな感じだったかな?」

照「そうそう。それより、大変だったのは京ちゃんだ。よく頑張ってくれたね。ありがとう」

優希「ん!そうだったな。まさかラスボスはバリア破壊に一巡1,000kgも必要だったとは…」

京太郎「ふふふふふ…最後の5巡くらいは…光が…見えた…身体が急に軽くなって、楽しくなってきて…負ける気がしなかったぜ…」フラフラ

照「ゾーンに入ってたのか…」

優希「こっちも地味に凄いことになってたんだな…」

照「まあ、兎に角だ。私はもう満足したよ。京ちゃんの息が整ったら、他のゲームをしよう。みんなは何をしたい?」

京太郎「エアホッケー…今なら誰にも負ける気がしねえ…休んでからと言わず、今行こう。すぐ行こう」ヨロヨロ

優希「おおっ!?生意気な台詞を吐きおって。ならば叩きのめしてくれる!行くじょ!照さん!」

照「ああ。そうだな。私も、今の弱ってる京ちゃんになら勝てる気がするよ」

優希「照さん&私VS京太郎だじょ!勝負!!」

京太郎「望むところだ!!」




咲「…」

咲「…」

咲「…へえ」

咲「…エアホッケーか」

照「」

優希「」

京太郎「ふふん」

照「…参った。完敗だね」

優希「おのれ須賀京太郎…む、ねん…」ガクッ

京太郎「…あー。けど、流石に疲れたわ。ちょっと休憩がてらトイレ行ってきます」ヨロヨロ

照「ちょっと、本当に大丈夫かい?京ちゃん。フラフラだよ」

京太郎「なんとか」ヨロヨロ

照「…」

照「…あ、そ、それじゃあ…」

優希「おう、京太郎!それなら、私もちょうどお手洗い行きたくなってきたし、一緒に行ってやるじょ!!」

照「あ…」

京太郎「ああ。悪いな優希」

優希「おお。まあ、今回は特別だじょ。感謝して敬え」

京太郎「言い過ぎだ」クスッ

照「…」

優希「ん?どうしかしたか?照さん」

京太郎「そういえば、今照ちゃん、なんか言いかけてたような…」

照「あ…い、いや。なんでもないよ。私も少し疲れたんでね。君等がお手洗いに行くというのなら、私はここで少し休んでるよ」

優希「…そっか」

京太郎「わかったよ。それじゃあ、また後でな。照ちゃん」

照「うん…」

優希「…じゃあ、行こうか。京太郎」

京太郎「そうだな」

スタスタスタ


照「…はぁ」

照(優希ちゃん…可愛いな…)

照(明るいし、優しいし…私みたいな怪しくて口下手な女相手なのに、今日出会ってもうこんなに仲良くしてくれてる…)

照(それどころか、懐いてきてくれて…私なんかデートのお邪魔虫だっていうのに、あんなに嬉しそうに話しかけてきてくれて…一緒に居て凄く楽しい)

照(…京ちゃんを巡るライバルの筈なのに…)

照(…嫌いになれないよ。あんなに素敵な子)

照(今だって、私がうだうだやってる間に疲れた京ちゃんを気遣って一緒にお手洗いにまで行ってくれて…)

照(…二人、お似合いだな…仲も良いし、息もピッタリだし…本当は京ちゃんともっとくっついて居たい筈なのに…エアホッケーだってわざわざ私と一緒のチーム組んでくれて…)

照(それなのに、私は麻雀で京ちゃんと一緒に共同作業だーなんて、優希ちゃんの事も蔑ろにして浮かれてて…)ジワッ

照(…私なんかじゃ、相手にならないよ。可愛さも、性格も、気遣いも…)

照(…馬鹿だ、私。こんなんじゃ、年上として二人に申し訳が立たないよ)

照(…二人が戻ってきたら、帰ろう。急用が出来たって言って)

照(…もういいや。京ちゃんには、優希ちゃんが居るんだもん。…私なんか、もう京ちゃんには必要ない…ううん。京ちゃんの、邪魔だよね)

照(…もう、京ちゃんの事、諦めよう。忘れよう。私なんかがいつまでも京ちゃんに付きまとってたら、二人に迷惑だ…)

照「うう…」コツン

照「痛…」

照「…?なんだ?何か頭に当たった…のか?」

照「ん…これ…エアホッケーのパック…?」ヒョイ

照「どうしたんだろう。どこかから飛んできたよう…な…」クルッ


咲「…」ニコニコ


照「…」


咲「…」ニコニコニコ


照「…」


咲「…」ニコニコニコニコ


照「…」


咲「…」ニコニコニコニコニコ


照「…」


咲「…」ニコニコニコニコニコニコ


照「…」


咲「…」ニコニコニコニコニコニコニコ


照「…」


咲「…」ニコニコニコニコニコニコニコニコ


照「…」


咲「何か、私に言うこと有るよね?」


照「…咲」


咲「どちら様ですか?ちなみに私、一人っ子ですけど」ニコニコニコニコニコニコ


照「…」


咲「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


照「…」ドドドドドドドドドドドドド

咲「…ところで、初めてお会いしたお姉さん?」

照「なんだ。初めてお会いした小娘」

咲「ここにエアーホッケーのパックがあります」

照「ああ。ここにも一枚ある。お前の仕業か」

咲「折角なので、私と遊びませんか?」ニコリ

照「…いいだろう」

咲「じゃあ、この台でやりましょうよ。ほら、こっちです」

照「ああ」スタスタ

咲「…」ドキドキ

照「…」ピタッ

咲「!?」

照「…ふん。バナナの皮、か」ヒョイッ

咲「…」ギリッ

照「…ゴミはゴミ箱に捨てないとな」ニヤッ

咲「!」

照「」ポイッ

咲「…」

照「…ふん。随分と狡(こす)い手を使う。雑魚が雑魚なりの知恵を絞って勝つ手段を考えたのだろうが…」

照「この程度の浅はかさでは、底が知れるというもの。今の貴様では私には勝てない」

咲「くっ…」

照「…だが、先に牙を剥いたのは貴様だ。いいだろう、後悔するがいい。私にアイスホッケーで勝負を挑んだことを」

咲「…」ギリギリ

照「…さあ。どっちが先攻だ?選ばせてやる。お前が決めろ」

咲「…そっちからどうぞ」

照「ふん。つまらん見栄を張る。素直に先攻を取っておけば多少は勝負になるやもしれんのに…な」

咲「ま、負けないもん!」

照「ふっ…吠え面をかけ…!!」ゴッ!!!

咲「っ!!!」

咲(くっ!こ、このプレッシャー…!凄い圧力…!)タジ…

照「くくく…どうした?咲。腰が引けているぞ!」

咲「ま、負ける…もんか…!」ゴッ!!

照「…ほう」

咲「ま、負けない…お姉ちゃんなんかに…絶対…!!」グググ

照「…ふん。多少は気概を示すか。…だが、その程度だ。矢張り私の敵では無い」

照「見せてやる。私の力を。そしてその圧倒的なまでの力量差に打ちひしがれるが良い!!」クワッ

咲(…来るっ!集中しろ、私!!)ググッ

照「…あ、京ちゃん」

咲「えっ!?」クルッ

照「今だ喰らえ!!」スカッ

咲「しまっ…」

咲「…た」

照「ふんっ!」スカッ

咲「…」

照「ふんっ!」スカッ

照「…」

咲「…」

照「あれ」

照「…」

照「…ふん。戯れは仕舞いだ。感謝するがいい。今、私がその気だったなら貴様は既に一度失点している」

咲「…相変わらず運動音痴だね、お姉ちゃん」

照「…お前には言われ」カチッ

照「たくない」

咲「あわわわ!会話してる時にいきなり始めないでよ!」スカッ

ピシューン ヤッタネ!赤チームゴール!

咲「こ、この卑怯者!」

照「ふん、馬鹿め。咲、お前に良い格言を教えてやる。勝てば」

ピシューン ヤッタネ!青チームゴール! 

照「…」

咲「官軍?」ニコッ

照「」ギリギリギリ

照「咲!お前、そうやって狡いてばかり使って…」

ピシューン ヤッタネ!青チームゴール! 

照「」

咲「きゅふふふ。実はもう一個パックを隠し持ってたのでした」

照「」カチッ

咲「」スカッ

ピシューン ヤッタネ!赤チームゴール!

咲「…」カチッ

照「…」スカッ

ピシューン ヤッタネ!青チームゴール!

咲「」ゴゴゴゴゴゴ

照「」ドドドドドド

カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン カチッ スカッ ピシューン

咲「ぜえぜえ…」

照「はあはあ…」

咲(マッチポイント…!)

照(くっ…まずい。ここを何とか凌がなくては…!)

咲「たあ!」カチッ

照「くっ…!」スカッ

照(しまった!外した…!)

咲(やった!勝っ…!!)

カチッ  シュー… ピシューン ヤッタネ!赤チームゴール!

咲「そ、そんな…」ガーーン

照(た、助かった…咲のパックの軌道が、ゴールから外れてたのか…しかもそれが跳ね返って咲のゴールに吸い込まれた)

照「ふふふ…どうやら、天は私に味方したらしいな」

咲「く…ぐぅ」

照「まあ、当然か。お前のような卑怯者に、天が!味方!する訳が…ないっ!」カチッ!!

カチカチカチカチカチカチッ

咲「なっ!これは…!!」

咲(!!乱反射!!)

照「どうだ!!これが貴様に見切れるか、咲!!」

咲「あわわわ…」

照「ははは!残念だったな!貴様にしては頑張ったようだが、だが未熟!」

咲「」スカッ

咲「そんな!」



照「覚えておけ!真剣勝負ではこのように切り札は最後まで取っておく」

カチッ シュー… ピシューン ヤッタネ!青チームゴール!  バンザーイ!青チームの勝ちー!!

照「」

咲「か、勝っ…た…」

照「そ、そんな…馬鹿…な…乱反射が…帰って来た…だと?」ガクッ

咲「勝った…勝ったよ…私…京ちゃん。私、お姉ちゃんに勝ったよ…!」ジワッ

照「この、私が…さ、咲に…?」ガクガクガク

咲「勝ったんだ!私が…!『あの』お姉ちゃんに…!真剣勝負で!」    ※隠し持ってたパックの差です

照「馬鹿な…あ、有り得ん…!!わ、私が…咲なんかに…!!」

咲「やったあああああああ!!お姉ちゃんに勝ったぁああああああああああああ!!」

照「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


本格熱血美少女麻雀ストーリー
咲-Saki-エアーホッケー編 episode of side-A   完!!!

咲「やーいやーい!お姉ちゃんのばーか!運動おんちー!私の事置いてけぼりになんかするからこんな目に合うんだよーだ!やーい!!」

照「おのれええええええええええ!!さきいいいいいいいいい!!お前、実の姉を馬鹿にするか!!許さない!!」

咲「あれあれぇ~?どこからか、負け犬の遠吠えが聞こえるなぁ~。どこだろうな~?しかも、妹が居ない人なのに姉名乗ってるな~。不思議だな~」

照「」ギリギリギリ

咲「あっれー?なんか、ここでうち拉がれてる人が居るけど、もしかしてこの人かな~?けど、違ったら悪いしな~。すみません。おなかでも痛いんですかー?」

照「おいっ!咲!!お前、なんだそれ!お前いつからそんなに性格悪くなった!!」

咲「さっきだよーだ」ツーン

照「ぐぐぐ…タ、タコス屋の件は悪かったから…」

咲「ホントだよ!結局あの後、私無理して二つもタコス食べたんだよ!?もうおなかきつくてきつくてしょうがなかったんだからね!?」ガルルルル

咲「しかも、トイレから帰ってふと見たら、みんなもう会計済ませてお店出てくところだったから急いで食べなきゃだったんで尚更おなかに響いたし!」

照「残してそのまま置いてくという発想はなかったのか…」

咲「そんなの食材になってくれた命や農家の人や作ってくれたお店の人に失礼じゃない!何言ってるのお姉ちゃん!!」ガオーーー!!

照「…そ、そうだな…私が悪かった…」

咲「本当だよまったく!!」

ちょい休憩

チャットネタが見たかったけどEUROとかわっかんねー

>>258
良かったら当てずっぽでも参加してみてほしいな。理由とかぶっちゃけ無いならないで十分過ぎるし
C賞D賞ならまだまだ可能性あるで
それと、アナウンスが遅れましたが、予想企画は6/28の午前4時を締め切りにします

俺はサッカー見たら仮眠とりますが、今日は休みだから起きたらまた書くね


あと、余談。さっき咲の最新話見てて、遂にトキに目覚めたわ。可愛い。病気治して健康体にした後、ちょー身体を酷使する運動させてやりたい。陸上とか格闘技とか
格闘技だったら相手は衣・小蒔(弱い。が、後が怖い)とか照(互角)とか姉帯さん(コンサドーレ札幌とACミランの力量差)とかだな

咲「ところで」

照「…なんだ」

咲「喉乾かない?」

照「…そうだな」

咲「だよね」

照「ああ」

咲「…」

照「…」

咲「…」

照「…咲?」

咲「喉乾いたよね」

照「…ああ」

咲「…」

照「…なんだ。何が言いたい」

咲「どっちが勝ったんだっけ?」ニコリ

照「」ギリギリギリ

咲「私オレンジジュースがいいなー♪」

照「ちょっと待ってろぉおおおおお!!!」ダッ

咲「…」

咲「…勝った。完全勝利。気持ちいいなぁ…」

咲「…」

咲「…はぁ。でも、私がここに居る事、京ちゃん達にばれたらメンドクサイよね…」

咲「もう帰ろうかな…」

京太郎「あれ?咲?」

優希「あれー?咲ちゃんだじぇ。なんでこんなところに?」

咲「」

京太郎「なんでお前がここに…部活はどうしたんだ?」

優希「謎だじぇ…」

咲「あー…え、えっとぉ…」

咲(し、しまったあああああ!お姉ちゃんとのエアホッケーに熱くなりすぎた!二人とも、もう帰ってきちゃったよぉおおおおお!!)

京太郎「しかもすっげー汗かいてるし…」

優希「エアホッケーでもしてたのか?」

咲「あー…えっと…その…う、うん!そうなの!」

咲「実はね?今日突然、東京に住んでる従姉妹がこっちに来る事になっちゃって!それでお父さんに言われて、従姉妹を長野駅まで迎えに来てたの!」

咲「それで、合流した後、家に行く前にちょっとゲームセンターで遊んで行こうってなって、さっきまで一緒に遊んでたの!」

優希「おお!そうだったのか!」

京太郎「しっかし、お前を迎えに寄越すとか随分とチャレンジャーだなお前の親父さん」

優希「確かに、ミイラ取りがミイラになる可能性がかなり…いやこういう場合は二次被害というのか?」

京太郎「それともか、お前の従姉妹がメダリスト級の方向音痴なのか」

咲「ううう…酷い言われようだ私…」

照「…くそっ!咲め。この私をパシリに使うなどと…後で覚えてろよ」ブツブツ

照「…あれ?京ちゃんと優希ちゃん…」

照「…げっ!咲の奴、二人に見つかったのか。あの馬鹿。…なんだか面倒な事になってきたな…」コソコソ

照「…何を話してるんだ?」


京太郎「それにしても、咲。お前、東京に従姉妹なんて居たのか。そりゃ初耳だ」

咲「う、うん…まあ…そ、そう…だ、ね…言ってなかったもんね…」

優希「どんな人なんだじょ?」

咲(うぐ…そ、そんなの設定考えてなかったよ…)

咲「…えーっとね。結構抜けてる人でね。私よりも方向音痴なんだ」

京太郎「ほえー。マジでお前より方向音痴か!」

咲「うん。それに、私より背は高いけど私より運動音痴で、2つも年上なのに胸の大きさもあんまり変わらなくて…」

京太郎「従姉妹相手とはいえ、お前が他人をそこまでdisるの初めて見た」

優希「私も。仲あんま良くないのか?」

京太郎「だったらエアホッケーなんかしないだろ」

優希「ああ。それもそうだな」

咲「あははは…」

京太郎「で、その従姉妹は今どこ行ってるんだよ?」

優希「そういえば、照さんもいないじょ」キョロキョロ

咲「あー…えっとねー…」シドロモドロ

京太郎「ん?」

優希「あれ~?照さーん!」

咲「…」

咲「え、えっとねぇ…い、従姉妹は…帰っちゃった」

京太郎「え?」

咲「と、東京の方でね。どうしても急用の用事が入っちゃったらしくて…あ、慌てて帰っちゃった」

京太郎「そうなのか」

優希「あらら。残念だったの、咲ちゃん」

咲「うん…」ズキッ

京太郎「…」

優希「…じゃあ、さ。咲ちゃん」

咲「え?」

優希「咲ちゃんも、一緒に遊ぼうじぇ」

咲「…え?」キョトン

咲「…え?え?え?」オロオロ

優希「あははは!なんでそんな慌ててるんだじぇ!なー?いいだろー?」

咲「け、けど…」

優希「いいじゃんいいじゃ~~ん!な?京太郎!」ギュッ

咲「きゃっ!ちょ、ちょっと、優希ちゃん…」

京太郎「ん。お前がいいんなら」

優希「あったりまえだじぇ!」

咲「…じゃ、じゃあ…私も…い、いい…かな…?」

優希「やったー!!」

京太郎「…そうだ、な」

照「…やあ、帰ってきていたのか。二人とも」スタスタ

京太郎「あ、照ちゃん」

優希「おお!照さん!どこ行ってたんだじょ?」

照「ん…いや、ちょっと喉が渇いたんでジュースを買いに行っていたんだよ」

優希「なんだそうだったのかー」

咲「…」

照「…」

照「…ねえ京ちゃん」

京太郎「ん?なんだ?照ちゃん」

照「…この子は誰?」

咲「…」

京太郎「ああ。そっか、悪い悪い。この子は咲。宮永咲。昔言ったことなかったっけ?中学で知り合った幼馴染の子って」

照「ああ。そう言えば聞いたことがあったね。例の子か。実際には会うのは初めてだけれど、『私の弟分の京ちゃんが』お世話になっているらしいね」

照「ハジメマシテ。照だ」

京太郎「咲。この人は照ちゃん。俺らとは2個上の同じ中学の先輩だよ。確か、当時、お前にも話した事あったよな?」

咲「…うん、覚えてるよ。こちらこそ『1年だけとはいえ』『私の幼馴染の京ちゃんが』お世話になったみたいで。ハジメマシテ。照さん」

照「…」

咲「…」

優希「ねえねえ照さん!これからは咲ちゃんとも一緒に遊びたいんだけど、いいかー?」

京太郎「そうなんだよ。咲とは偶然出会ったんだけど、急に用事が無くなっちまったらしくてさ。照ちゃんさえ良ければ、折角だし一緒にどうかな?」

照「そうだね。………いいよ。宮永さんさえ良いなら」

咲「…ありがとうございます。それじゃあ、ヨロシクオネガイシマス」

照「ああ。コチラコソヨロシク」

京太郎「?」

優希「?」

京太郎(…なんだ?この二人…すっげー重苦しい雰囲気…)

優希(なんか、不穏な感じがするじょ…)

照「…」

咲「…」

咲「…ふふ。嫌だなあ、照さん。年上の人にそんな呼び方されても、なんだかくすぐったいですよ。咲って呼んで下さい」

照「…ああそうだな、悪かった。これからは咲と呼ばせてもらうよ。君も、私が年上だからってそんなに畏まらなくてもいいよ。この二人だってざっくばらんに話しかけてきているだろう?タメ口でいい」

咲「…うん。それじゃあ、改めてよろしく。照さん」

照「いや、こちらこそ改めて宜しく、咲」

優希(あれ、馴染んだじょ?)

京太郎(気のせいだったか?…ってか、人見知りのこの二人がこんなに早く人と馴染むのも珍しいな)

照「さて、それじゃあこの後は何をしようか京ちゃん、優希ちゃん」

咲「私も、早く遊びたいな」

京太郎「あ…あー!そうだな。えーっと…な?優希」

優希「おう!」

咲照「「ん?どうしたの?」」

京太郎「こっち戻ってくる途中で、ボーリングの受付見つけてさ」

優希「ボーリングやりたい!」

咲「ボーリング…」

照「…ボーリング」

咲照「「ボーリングかぁ…」」

ボーリング場

京太郎「さて、着いた」

優希「さー!それじゃあ、第一球は私の番だじょ!京太郎ジュースかけて勝負!」

京太郎「おっしゃ!」

咲「…」

照「…」

京太郎「…って、どうした?二人とも。さっきからやけに静かだけど…」

咲「ううん」

照「なんでもない」

京太郎「そうか…?」

京太郎(やっぱ、この二人の人見知りが発動しちまったのかな…)

優希「よしゃー!ストラーイク!」

京太郎「げ!いきなりかよ!」

優希「次はお前だじょー」

京太郎「わかった!見てろくそー!」ダッ

咲「…」

照「…」


京太郎「くっそー。9本か…」ガックリ

優希「くくく。これは早くも私の勝ちっぽいかのう?」

京太郎「うっせ!まだ全然始まったばっかだろ!すぐ逆転してやるからな!」

優希「無駄無駄だじぇ。…ん。次は咲ちゃんだじょー」

咲「…あ、わ、私?」

優希「おう。頑張ってな!」

咲「うん。頑張ってみる。えっと、これで…」フラッ

咲「あわわわ」

照「…」

京太郎「おいおい、大丈夫か?」

優希「危なっかしいじょ…」

咲「だ、大丈夫だよ。…よーし」

咲「たあ!」コロッ

コロコロ…コロコロ……コロ…フラ…ゴトン…

咲「…ガータ」ガックリ

京太郎「どんまいどんまい」

優希「次があるじょ!」

咲「よーし!それじゃあ、今度こそ……たあ!」

コロコロ…コロコロ……コロ…フラ…ゴトン…

咲「…あう」

咲「…ダメかぁ」フラフラ

京太郎「…ま、まあ、次があるさ」

優希「う、うむ。まだゲームは始まったばかりだじょ」

照「…さあ、次は私だね」スッ

咲「うーん…投げ方が違うのかなぁ…こう?それともこう…」ブツブツ

照「…ふふっ。無様だね、咲」ボソッ

咲「!?」

照「よく見ているといい。私の華麗な投球フォームを」ボソボソ

咲「な…」

京太郎「頑張れー!照ちゃん!」

優希「いいところ見せるじょ!」

照「ああ。今日はどうやら初心者も居るみたいだしね。ここはお手本を一つ見せてやろうじゃないか」ニヤッ

咲(むっ)

京太郎「おお。自信満々!」

優希「これは期待できるかー!?」

照「すー…はー…」

照「…行くぞ!」ガニガニ

咲(な!?何あの投球フォーム!?)

京太郎(あれ…球を指に入れずに両手で持って、がに股で移動を始めた)

優希(なんかすっごい中腰で、格好悪いじょ…)

咲(こんなの見たこと無い…まさか、東京で上手い人に教わった必殺技とか!?)

照「…たあ!」コロッ

コロコロ…コロコロ……コロ…フラ…ゴトン…

照「…」

京太郎「…」

優希「…」

咲「…」ホッ

京太郎優希「「ど、どんまい…」」

咲(…そんなわけないか。第一、お姉ちゃんがそんなの使いこなせるはずないもんね…)

照「…も、もう1球」ガニガニ

照「…たあ!」コロン

咲(…どうせ外れるんでしょ)フフン

コロコロ…コロコロ……コロ…フラ…フラ…カコ…ポト…ポト…ポト…ポト…ポト…

『第一投 -/⊿』

照「…ふっ!」

咲「」ガーーン!!

京太郎「おおー!!」

優希「おおー!!」

照「よし!」グッ

咲「そ、そんな…馬鹿な…」

照(やった…!初めてスペア取った…!ありがとう菫。この投球フォームを教えてくれて!)

照(白糸台麻雀部ボーリング大会に向けて、せめてスコア0は避けるようにって教わったこの投げ方、役に立ったよ!)

京太郎「照ちゃんいえ~!」スッ

照「…え?」

京太郎「ん!手!手!」スッスッ

照「あ、う、うん」スッ

京太郎「照ちゃんいえ~!」パチーン

照「!」

優希「あ~!いいないいな!私も私も!いえ~!」パチーン

照(し、しかも京ちゃんにハイタッチまでしてもらっちゃった!)

咲「ぐぬぬぬ」

照「さあ、次は優希ちゃんだね?」

優希「おう!頑張るじょ!」

照「…」チラッ

咲「…!」

照「ふふん」

咲「ぎぎぎぎ」

照「ふふふふ…どうだ、見たか咲、姉の威厳」ボソボソ

咲「ぐうう…ま、マグレだよ。あんなのマグレに決まってる…」ボソボソ

照「ほう?そう思うか。なら、面白い。ここは一つ賭けをしようじゃないか」ボソボソ

咲「賭け?」ボソボソ

照「ああ。賭けだ。そうだな。どうせ私が100%勝つ勝負だ。あんまり意地悪な条件を付けるのも可哀想だから、敗者は今日の晩御飯を勝者に奢ること。これでどうだ」ボソボソ

咲「…そんな事言って、実は勝てるか自信無いだけなんじゃないの?」ボソボソ

照「ほざけ。なんなら『京ちゃんの前で裸踊りをする』にしてやってもいいんだぞ」ボソボソ

咲「なっ!」

照(…言い過ぎた。咲お願い、断って)

咲「…分かった。私だって負けるつもりは無いけど、お姉ちゃんが可哀想だからさっきの条件でいいよ」ボソボソ

照「…ふふ。契約成立…だな」ボソボソ

咲「ふふふふ。お姉ちゃん、さっきの負け、もう忘れちゃったの?今や運動神経は私のほうが上なんだよ。ちょっとくらい技術を知ってたって、このゲームの間にコツを掴んで私が勝つ」ボソボソ

照「ふふふふ。愚か者め。あんなのどう見ても事故だ。また勝負すれば私が勝つ。ボーリングなら尚更さ」ボソボソ

咲照「「ふふふふふ」」

京太郎「なんだ。なんだかんだで仲良さそうじゃん。二人でヒソヒソ話し合って」

優希「良かったなぁ、京太郎」

30分後

優希「ふむ。187点。まあまあだじょ」

京太郎「くっそ。179点負けた…」

優希「ジュース奢れ」

京太郎「はいはい…」

咲「じゅ、18点…」ズーーン

照「ふふ…ふふふふふ…はははは…!…21点。勝った!」

照(け、結構危なかった)

照「さあ咲、約束だ。後で夕飯を奢ってもらおうじゃないか」ヒソヒソ

咲「ぐううう…分かった…」

照「ふふふふ…♪」

京太郎(照ちゃん嬉しそうだなー)

優希(咲ちゃん悔しそうだじょ)

京太郎「さあ、次はどうしようかね」

優希「んー…そうだなぁ…結構遊んだしなぁ」

咲「…」

照「…」

京太郎「…じゃあ、最後、締めにカラオケでも行くか!」

優希「おう!」

咲「!?」

照「!?」

カラオケボックス内

京太郎「さーて、と。何歌おうかなー」

優希「うーん…迷うじぇ」

照「」コソコソ

咲「」コソコソ

京太郎「ん?何コソコソしてるんだよ二人」

優希「挙動不審だじぇ…」

照「い、いや…だって…その…」モジモジ

咲「ひ、人前で歌うことってあんまり無いし、その…」モジモジ

照「は、恥ずかしいって言うか…」モジモジ

咲「自信ないって言うか…」モジモジ

優希「そうかー?けど、二人とも綺麗な声してるし、歌上手そうだけどなー」

京太郎「うんうん」

咲「あう…ま、まあ、歌うのは嫌いでは無いけど…」モジモジ

照「わ、私も…その…たまーーーーに後輩達に誘われて歌いに行くことはあるんだが、あんまり流行りの歌も知らないし…」モジモジ

咲照「「そ、それに…」」

咲照((きょ、京ちゃんに歌聴かせるとか!!))

京太郎優希「「?」」

京太郎「…まあいいや。それじゃあ、誰から歌おうか?」

優希「そうだなー。やっぱ此処は咲ちゃ…」

咲「あっ!て、照さん!照さんがいいと思いまっす!!一番年上だし!!」

照「何!!?」

京太郎「あー。確かにそれもそうだなー」

優希「おー!咲ちゃんナイスアイディア!それなら文句無しだじょ!」

照「さ、咲!お前、なんてことを!」ヒソヒソ

咲「い、いいじゃん!お姉ちゃん歌上手いんだし!」ヒソヒソ

照「そ、そう意味じゃない!だいたいお前だって上手いだろうが!なんで私にそこで振るんだ!」ヒソヒソ

咲「だ、だっていきなりは恥ずかしいし…」ヒソヒソ

照「私だって恥ずかしいの!…兎に角、私は嫌だからね。お前が歌え!」ヒソヒソ

咲「やだ!…それに、もう遅いよお姉ちゃん」ヒソヒソ

照「…何?」ヒソ

咲「…あの二人の目を見て、果たしてお姉ちゃんは拒否できますか?」ヒソヒソ

京太郎優希「「」」キラキラ

照「う…」

照「…」

照「仕方ないな。じゃあ、私から行くよ」

京太郎優希「「待ってました!!」」

照(…とはいえ、本当に最近の歌はあまり良く知らないんだよな…どうしようか)

照「うーーん…」

照(…あ。思い出した)

照(…そう言えば、ちょっと前に淡が、私に物凄く相応しい歌があるからって…教えてくれた曲があったっけ)

照(綺麗な曲だったし、我ながら上手く歌えたし、よし。それじゃあ、これにしようかな)

照「うん。決めた」ピッピッ

京太郎「おお!」

優希「やた!」

咲「へー。どれどれ?なんて曲…」

咲「…テルーの唄?」

照「ゆう~やみせ~まるくものうえー」

優希「Oh…」

京太郎「照ちゃん、それは、まさかギャグのつもりなのか…それともガチか…」

照「いつもいちわでとんでいる~た~かはき~ぃっとかなしかろ~」

優希(しかもやたら上手いじぇ…)

咲(…マズい、すっごいくだらない事思いついちゃった…)

京太郎(これ…ツッコミ待ちなのだろうか、いや、しかし…)

京太郎咲優希(((…照ーの唄かぁ…)))



昔の話
照が行ったカラオケボックス

尭深「いっらなーい!なにもー!すててしまおうー…」

菫「うん。いつ聴いても尭深のLOVE PHANTOMは最高だな」

淡「なんてイメージに合わない…」

誠子「あー。はい。はい。ポテト盛り合わせとアンチョビピザLお願いします。あとコーラ2つ!」

尭深「……ホット番茶と、抹茶パフェ」

誠子「あ、すみません。追加で注文。ホット番茶と、抹茶パフェも」

淡「あっ!宮永先輩!宮永先輩!」

照「ん。なんだ淡」

淡「私、次、宮永先輩のこの曲が聴いてみたいです!ぜひ歌って下さい!」

照「ん?テルーの唄…。確か、ジブリの何かの主題歌だったか?」

淡「いい歌ですよねー」ニヤニヤ

照「ああ…まあ、うろ覚えだが、そこそこいい曲だった気はする」

淡「私、この曲は宮永先輩の為にあるような曲だと思うんです!」

照「はあ?」

淡「お願いします!私、どうしても宮永先輩のこの曲が聴きたいんです!1回だけでも!是非!歌って下さい!そしてあわよくば持ち歌に!」

照「ああ…まあ、お前がそこまで言うなら歌ってみてもいいが…うろ覚えだぞ?期待するなよ」ピッピッ

淡「ありがとうございます!!」

菫「…おい、淡…」ヒソヒソ

淡「…照ーの唄…」ボソッ

淡「…くふふふ」プルプル

菫「…お前って奴は」ハァ

しばらくして

咲「ポンッ!カンッ!チー!フリッ!テンッ!ツモ!♪」ピョンピョン

照(咲の奴め、随分と楽しそうに歌っているな)

優希「…な、京太郎。そろそろ…」ボソボソ

京太郎「…ん。わかった」ボソボソ

照「…ん?」

優希「ごめんだじょ、照さん。私らちょっと外すな」コソコソ

京太郎「ちょっとしたら戻るから、咲と二人で回しててくれな」コソコソ

照「え?ちょっと、二人とも、いったい何を…」

京太郎「じゃあ、また後でなー…」コソコソ

バタン

照「…行っちゃった」

咲「脳異常野良知恵の大笑い!煩悩に猛悪ライフ!脳異常野良知恵の大笑い!煩悩に猛悪ライフ!♪」フリフリ

咲「北北北捨てりゃポンじゃ!エゲツ金亡者!北北北捨てりゃポンじゃ!エゲツ金亡者!♪」フリフリ

照「…」

照「…なん…だと…?」

照「…」

咲「燃え上がって!燃え上がって!アガって逝け!オレは何故っ!なっぜ行っく!♪」ピョンピョン

咲「それっはーオレっのかっげ!♪鳴り止まないオレーの風ー」ピョンピョン

咲「ろーん!ろーん!…くっぴゅ」

参考:ttp://www.youtube.com/watch?v=VbwZtpjKf-g&feature=related


咲「…ふう!」

咲「あー楽しかった!…って、あれ?お姉ちゃんだけ?京ちゃんと優希ちゃんは?」

照「…」

咲「…ど、どうしたのそんな怖い顔して」

照「……咲」

咲「う、うん…」

照「…実は、な、さっきあの二人…その…」




咲「…え゙」

咲「ちょっ…ちょっと待ってよ、お姉ちゃん。それって…まさか…」

照「…ああ。有り得る…というか、可能性としてはほぼ100%と言ってもいいんじゃないのかこのシチュエーションは」

咲「そ、そんな…まさか…え…?」

咲「…」ゴクリ

咲「…すでに、二人はそういう関係だったってことなの?」

照「…」

咲「…お姉ちゃん!」

照「騒ぐな。…大きい声を出さないでも聞こえている」

咲「…」

照「…みんなでカラオケ中に、コソコソと抜け出す男女」

咲「…」

照「…しかも、普段からのあの仲の良さ」

咲「…」

照「役満だろ」

咲「やめてよ…そういう事言うの…」

照「…今頃二人は非常口を出たドアの影あたりで濃厚なキ…」

咲「やめてよ!!」

照「…」

咲「やめて…そういう事言うの…」

照「…しかし」

咲「まだ、そうだって決まった訳じゃない」

照「…」

咲「無い…筈…」グスッ

咲「う…うえ…えええ…無いもん。そんな…うう…うええ…」

照「咲…」

咲「やだ…やだよ。そんなの…京ちゃん…とられるのやだ…」ポロポロ

照「…咲」スッ

咲「…ええええ…ええええ…」シクシク

照「…私だって嫌だよ」ギュッ

咲「おねえ…ちゃ…」ポロポロ

照「…やださ…嫌だけど…」ナデナデ

照「しっしか…しかかか…仕方ないじゃないか…!」ジワッ

照「ヒッグ!」

咲「お姉ちゃん…」

照「うええ…」

咲「…」ギュッ

照「ええええええ…」

咲「う…」ジワッ

照「うえええええええええええええん!」ポロポロ

咲「ええええええええええええええん!」ポロポロ

あかん

なんか今日眠くて仕方無い。すまんが、今日はここまで

全然進んどらんのう

二人で10分ほど泣いた後

照「」スッ

咲「…おね…え…ちゃん?」グスグス

咲「…どうしたの?…今持ったそれ…マイク…?」

照「…いつまでもこうしていても、仕方ない」

照「…悔しいけど、私達は負けたんだ」

照「…いや。そもそも、土俵にすら登ることが出来なかった。臆病だったから…弱虫だったから」

照「そうだろう?咲。お前も、今日こうやって京ちゃんの後をつけて来てたって言うことは、京ちゃんに気持ちを伝えるようなこと、今までして来なかったんだろう?」

咲「…」

照「だったら…私達に優希ちゃんの事を京ちゃんを奪った人なんて思う資格は無いし…そもそも、あんなに素敵な子相手に、そんな気持ちにすらなれない」

咲「…うん」コクン

照「だったら…私達に出来る事はもう、一つしか無いだろう?京ちゃんと、優希ちゃんが幸せになれるよう、祈るだけだ」

照「そのためには、私達がこんなところで泣いていちゃダメだ」

照「…歌おう。咲。思いっ切り歌って、気持ち吹っ切って…それで、二人が戻ってきた時、笑顔でおかえりって言ってあげれるように」

照「せめて、暗い感情をあの子にぶつけないで済むように…今は、思いっ切りこの気持ちを発散させよう」

咲「…うん、うん…そうだよね。お姉ちゃん…そうだね…歌おう」

照「…ああ」

咲「…それじゃあ、私から歌って…いい?」

照「…ああ。好きにすればいいさ」

咲「…じゃあ、これ歌うね…」ピッピッピ

『FUNKY MONKEY BABYS 告白』


照「ふふ…咲は、男性歌手の歌、好きだね…」

咲「君に伝えたいことがある♪胸に抱えたこの想いを♪」

照「麻雀部で行くと…みんな男性歌手の曲を歌わないから…なんだか新鮮だよ…」

咲「うまく言葉にできないけど♪どうか聞いて欲しい♪」

照「…」

咲「いつの間にか♪夜も眠れないぐらい♪君を想っていた♪」ジワッ

照「…」

咲「眠ったって♪夢の中で探すくらい♪想いが募っていたぁ…ヒック」

照「…ううう」グスッ

咲「き…みに全部伝えった…らヒック♪この関係壊ヒック…れ…いそうで♪」

照「ば、馬鹿、お前…咲…」

咲「でも友達のままじゃ辛くて! だから全部伝えたくて…グスッ」

照「こ、こんな歌…」

咲「いざ…みの目のまえに立つと… うう…ゆ、勇気…が!臆病風に吹かれっ!♪」

照「今歌うの、反則だよぉ…!!」

咲「散々予習したフレーズ… 胸から溢れ出して忘れる…うえ…」

照「私達…出来なかったんだよ…?」

咲「熱く…っなる鼓動が痛いぐらい… ほんとに僕らしくないっ!」

照「こ、こここ、こくはくっすら!出来なかったんだよ!?」

咲「…」チラッ

咲「もうカッコ悪くてもいいや とにかく 君に聞いて欲しいんだ!」

照「ああっ!咲!今こっち見たな!?こっち見ただろ!咲!」

咲「大好きだ! 大好きなんだ!」サッ

照「読めたぞ!お前、わざとこんな歌うたって私泣かせるつもりだろ!」

咲「それ以上の言葉を もっと上手に届けたいけど♪」

照「なんて性格の悪いやつだ!誰が泣いてっ!やるもんか!負けないぞ!お前なんかに負けないからな!」ジワ…

咲「どうしょうもなく 溢れ出す想いを伝えると♪」

照「だ、誰が、お前の歌なんかで…お、お前こそ、泣きそうだし…自爆すればいいんだ、ばか…」グスッ

咲「やっぱ大好きしか出てこない…」ジワッ

照「うええええええ…」

咲「ただ それヒックだけで でも それがすべて…」

照「うわあああああああああん!!」

咲「うえええええええええええん!!」

照「ばかああああああああああああああああああ!」

咲「ごめえええええええええええええええええええん!」

照「…」ピッピッピ

咲「…あの」

照「…」ギロッ

咲「すみません…」シュン

照「…」スクッ

咲「…」

咲(…お姉ちゃんはこんな時、何歌うんだろう…)チラッ

『西野カナ 会いたくて会いたくて』

咲「!!?」


照「会いたくて 会いたくて 震える♪君想うほど遠く感じて♪」

咲「しかもすっごい上手ッ!?」

照「もう一度聞かせて嘘でも♪あの日のように“好きだよ”って…♪」

照(菫がよく歌うんで覚えた)


(中略)


照「I love you 本当は I'm in love with you baby♪」

照「I love you But still I can't tell my words of love♪」

咲(こんなスイーツなお姉ちゃん見とうなかった…)

照「「幸せになってね」と君の前じゃ大人ぶってそんなこと心の中じゃ絶対に思わない♪」

咲(ああ、感情篭ってるなぁ…さっき言ってた事と思いっ切り矛盾してるけど)

照「Baby I know 誰より君の全てを知ってるのに でもどうしてもあの子じゃなきゃダメなの? So tell me why♪」

咲(重ッ!怖ッ!!それが本音じゃないよね!?お姉ちゃん!!)

照「会いたくて 会いたくて 震える♪君想うほど遠く感じて♪ もう一度二人戻れたら… 届かない想い my heart and feelings♪」

咲(ああ。でも、私、こんなにこの歌本気で聴いたの初めてかも。これがかの有名な『会いたくて震える』のフレーズかぁ…)

照「会いたいって願っても会えない 強く想うほど辛くなって♪」

咲(…まさかお姉ちゃんの境遇にここまでマッチした歌詞だったとは…世の中ってよくわかんない)

照「もう一度聞かせて嘘でも あの日のように“好きだよ”って…」ジワッ

咲(…けど、言われてないからね!?私の知ってる限り、お姉ちゃんそんな事京ちゃんに言われてないからね!?…言われてないよね!!?)

照「何度も愛してると言ってたのにどうして♪」

咲(そして話がどんどん怪しい方に…エアー付き合ってる状態…?)

照「抱きしめてやさしい声で名前を呼んで もう一度」

咲(お姉ちゃん…)

照「あ、あいたくて 会いたくて 震える…うううう…」メソメソ

咲(あ、自爆した…)

さらに30分後

咲「…」ソワソワ

照「…」ソワソワ

咲照((…い、いくらなんでも遅過ぎない(か)!!?))ソワソワ

咲「…ね、ねえ…お姉ちゃん」ソワソワ

照「…言うな」ソワソワ

咲「け、けどこれって…まさか…」ソワソワ

照「言うんじゃない!」ソワソワ

咲「まけどこの遅さはまさかキスだけじゃ飽き足らずに」

照「そ!そそそそそそそそそそそそそそそそ!!」

咲「動揺しすぎ…」

照「そんなわけ有るか!」

照「だ、だだだだ、だってまだ二人、高校1年生だぞ!?そんな、いや、まさか…」

照「HaHaHa 何を言うんだい咲。冗談はよしておくれよ」ヤレヤレ

咲「お姉ちゃん、リアクションがアメリカ人みたいになってる…」

照「…だ、だってだって、そんな、京ちゃんと優希ちゃんがそんな…」

照「既に日も暮れ、ひと目もつかないカラオケボックス裏の非常口のドアの裏二人佇んでるだなんてそんな…」

照「邪魔者(わたしたち)に見つかる心配もなく、お互いやっとふたりきりに成れたねと、潤んだ瞳と上気した頬で京ちゃんを上目遣いに見やる優希ちゃんだなんてそんな…」

照「目が合った瞬間、京ちゃんが優希ちゃんの柔らかく形の良い唇に貪り付く。優希ちゃんそれに応えるように進んで京ちゃんの口内に舌を侵入させるとか…ありえないし」

照「じゅぶじゅぶといやらしい音を立てながら絡み合う濃厚なキスがしばらく続き、やがて京ちゃんの我慢の限界が訪れるとか…まさか二人に限って…」

照「舌を貪りながらも、するすると片手を優希ちゃんの服の中へ差し込む京ちゃん。抵抗しない優希ちゃんなんて想像も付かないし…」

照「ゆっくりと上着のボタンが下へ落ちてゆき、やがてブラも外れる。遂に優希ちゃんの白く幼い、剥き出しの上半身が夏の夜の蒸し暑く絡みつくような濃厚な闇に晒されるとか…考えるなよ?咲」

照「京ちゃん、興奮を抑えそっと膨らみかけの優希ちゃんの乳房へと手を伸ばす。優しい愛撫に思わず漏れる優希ちゃんの甘い声とか…はは。馬鹿らしい」

照「その声に遂に我慢できなくなった京ちゃん、一気に優希ちゃんの乳首にむしゃぶりつく…なんて、破廉恥な真似…」

照「過去何度も京ちゃんに吸い付かれてきた優希ちゃんの桜色の小さい『ソレ』は、その快楽を伴う刺激に飼いならされ、瞬時に意識を真っ白に飛ばす程の衝撃を優希ちゃんに与える…とか、まだそこまで進んでる筈ないし…」

照「それでも手を緩めること無く優希ちゃんを攻め続ける京ちゃん。段々優希ちゃんの喘ぎ声が大きくなってきてきたのでハンカチを渡す。優希ちゃん慣れた様子で、声を殺すために布を噛む…とかそもそも考えるのも二人に失礼だろ」ハァハァ

照「優希ちゃんがおもむろに京ちゃんのおしりポケットから財布を抜き出す。京ちゃん気付いてるけど無視。財布を開けて中身を確認する優希ちゃん…とか」ハァハァハァハァ

照「財布の中に手を入れ、中から一つの袋を取り出す。その薄い色の着いた半透明の袋から原色のゴムの何かを取り出した優希ちゃん、財布と開いた袋を、二人の脇に置く…とか」ハァハァハァハァハァハァ

照「そしてそのゴムを何度か手で揉んだ後に京ちゃんの下半身へと手を伸ばして…」ハァハァハァハァハァハァハァハァ

咲「いろんな意味でもうやめておねえちゃああああああああああああああああああああん!!!!」

照「はっ!」

咲「なんなの!?お姉ちゃん!なんなのもう!!なんでそんな一瞬で想像出来るの!!変態!!」

照「な、なんだと!?この無礼者!!もういっぺん言ってみろ!!」

咲「変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!」

照「うぐぐぐぐぐ…忌々しい!!なんて腹立つ妹だお前は!!お前の方が変態だ!」

咲「何を根拠に!!」

照「変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!変態!!」

咲「何さいきなり人の真似して!!」

照「…想像してみろ!今のを京ちゃんに言われたと!!」

咲「」キュン

照「ほら今キュンとした!変態!!」

咲「んなっ!そ、そういう発想があるってことは、お姉ちゃんだって考えてたんじゃないの!?変態!!」

照「!!」

咲照「「ぎぎぎぎぎぎ」」バチバチ

咲「…」

照「…」

咲照「「…はあ」」

咲「歌おうか」

照「ん」

咲「…何歌う?」

照「…『あれ』」

咲「ん」ピッピッピ

照「…ほら、咲。マイク」サッ

咲「ありがと」スッ

照「…」

咲「…」

チャラランランランラー♪

照「…」

咲「…」

『石川さゆり 天城越え』

咲「かくしきれない~ うつーりーがぁが~♪」

照「いつしかあなたにぃ~しみぃついたー♪」

咲「だれかにとられるぅ~♪」

照「くぅ~らい~ならぁ~♪」

咲照「「あなたぉおおおお!殺してぇええ!いいですかぁああああ!!」」

優希「…」ガチャッ

咲照「「!?」」ビクッ

優希「…ふう」

咲「…あれ?優希ちゃん?」

照(…なんか元気ないぞ?)

優希「ん?なんだじょ?咲ちゃん!」コロッ

咲(あれ…?)

照「…優希ちゃん、京ちゃんは?」

優希「ああ。あいつなら、追い出したじょ。今頃ゲーセンでブラブラしてるんじゃないか」

咲照「「ええ!?」」

優希「あっ!今誰も歌ってないのか?じゃあ私が歌っていーい?」

咲「い、いいけど…」

照「優希ちゃん?追い出したって、その…どういう…」

優希「マイクマイク」スッ

咲「ゆ、優希ちゃ…」

優希「…」

照「…ねえ優希ちゃん。追い出したって…なんでそんな事したの?良かったら聞かせてくれないか」

咲「そ、そうだよ優希ちゃん!さっきまであんなに仲良さそうだったのに…」

優希「…」

照「黙っていられたら私達も困るよ。喧嘩したのか?さっき部屋に入ってきたとき元気無かったよな。だったら、何が原因だ?追い出したって、京ちゃんが悪い事としたのか?」

優希「…すううううううう~~~~…」

照「おい!優希ちゃん!いい加減に…」

優希「京太郎の馬鹿やろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

咲「」キーーーン

照「」キーーーン

優希「…」

優希「…ふう。すっきりしたじょ」

咲「」

照「」

優希「ん。ごめんな。二人とも。私はもう平気だじょ。これから何があったか話す」

咲「」

照「」

優希「…って。…あれ~~~~?二人とも?どうしたの?」

優希「…」

優希「…おーい。咲ちゃん?照さん?」

咲「」

照「」

優希「…」

優希「…ハッ!こ、これは…!!」

優希「……二人とも、死んでるじょ……」

優希「あはははは!ごめんごめんだじょ!二人とも」

咲「…耳痛い」フラフラ

照「…頭痛い」フラフラ

優希「いや~。それにしても、まさかこんなでっかい声出るとは、私もびっくりだったじぇ…よっぽど堪えてたっぽいな」

咲「優希ちゃあああん…」

照「な、なんなのもう~…」

優希「ホント、ごめんな二人とも。八つ当たりっぽい事しちゃって。けど、許せ。今の私にはそれくらいする資格あってもいいと思うんだじょ」

照「何があったんだ本当、一体…」

優希「ん。私な、さっき京太郎に振られちゃった!」ニコッ

照「…え」

咲「えええ!?」

優希「咲ちゃんも知ってると思うけど、さっき私、照さんとエアホッケーした後でトイレ行ったろ。実はそこでもう京太郎には、後でカラオケ行こうって伝えてたんだがな」

優希「…あいつめ、多分薄々感付いてたんだろうな。平静に振舞ってはいたが、たまにちょっと様子が変だったりもしてたし」

咲「ちょ、ちょっと待って!?私も知ってると…って、優希ちゃん達、もしかして私が尾行してたの気付いてたの!?」

優希「私だけな。咲ちゃんタコス屋でトイレ探してうろうろしてたろ?すぐ分かったじょ。…京太郎は気付いて無いと思うよ。アイツ馬鹿だし」

咲「あう…」

照「馬鹿…」

優希「…私が声かけてカラオケ部屋出た後も、すっごい表情が硬かったんでな」

優希「その時点で私も、あ~。こりゃなんか駄目っぽいな~とは思ってたんだがな」

優希「…けど、もう今更引き下がるわけにも行かなかったし。当たって砕けろでアタックして、見事粉々になってみせてやったじょ」

優希「ふはは。いっそ清々しい気分だのう。須賀京太郎だけあって」

咲「ゆ、優希…ちゃん…」グスッ

優希「あはははは!ごめんな咲ちゃん。抜け駆けしちゃって。けど、こうでもしなきゃ咲ちゃんに勝てないと思ってたんだじょ」

咲「え…?」

優希「だって、そうだろ?咲ちゃんみたいな可愛い幼馴染…私が京太郎の立場だったら、絶対傍から手放さないじょ。死んでも嫁にする」

咲「な、ななな、何言ってるの、優希ちゃん!こんな時にからかわな、い…で…」

優希「…ふふ。ほんと、ごめんな」

優希「ごめん…ごめんね…咲ちゃん…友達なのに…こんな…裏切るような…抜け駆け…!」

咲「優希ちゃん…」

優希「うえ…」ジワッ

優希「うえええええええ…」ポロポロ

咲「あ…」

照「咲」

咲「…お姉ちゃん?」

照「抱きしめてやれ」

咲「…?」

照「友人だろ。抱きしめてやれ。…それとも、本当に裏切られたと思っているのか?」

咲「…そんな、まさか!!」

照「なら」

咲「うん。そうだね。優希ちゃんは、私の大切お友達。例え私達の間にどんな事があっても…きっと、いつまでも…」ギュッ

優希「うええええええええええええん!!ごめんな!ごめんな!本当にごめんな!咲ちゃん!咲ちゃん!咲ちゃん!!」ギューッ

咲「ううん…いいの。謝らないで。優希ちゃん、頑張ったんだもん。一生懸命、思いを伝えたんだもん」

咲「私より、優希ちゃんの方が強かっただけだから…抜け駆けなんて、死んでも思わないから…」

咲「だから…謝らないで…お願いだから…自分を責めないで…お願いだから…お願いだから…お願いだから…」

優希「えええええええええええええええええん!!えええええええええええええええええええええええええん!!!」

咲(…それに、本当に謝らなきゃいけないのは…私のほうだ)

咲(…ごめんね。優希ちゃん)

照「…」

今日の分終わり
やたらとグダってしまったゲーセン編も、あと1回で終わりです
まだ全体のプロットがそこまでしか出来てない。ヤバイ。着地点が見えない
EURO終わるまでにはなんとか綺麗に終わらせたいとは思ってるんですけどね

それでは、また明日

>>1って
もしかして

透華「ハギヨシ、この男に種付けなさい」
hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340194807/l50
の人か?

ただいま。20時になったら始めます

>>311
正直咲さんには申し訳ない事をしたと思っている。そして>>185-188の特定力には恐怖すら感じている

優希「…ありがとうな。咲ちゃん」スッ

咲「ん。もう大丈夫?優希ちゃん」

優希「うん。…大丈夫」

照「優希ちゃん…」

優希「二人とも、もう気にしないで欲しいじょ。思いっ切り泣いたらすっきりした」

咲「けど…」

照「わかった」

咲「お姉ちゃん…?」

照「…」コクン

咲「…うん」

優希「…」

優希「ふう…それにしても、びっくりしたじぇ!」

咲「…ん?どうしたの?優希ちゃん」

優希「いやあ、まさか照さんが咲ちゃんのお姉ちゃんだったとは」

咲「hんvるいうぇgヴぁmrしいえfkjヴぇうい!!?」

照「ういrc7いhgx7いあえろあhヴぁshvdf!!?」

優希「うはははは!!二人とも面白い顔してるじょ」ケラケラ

咲「ななななななななな!」

照「なんでそれを!!?」

優希「だってなー。さっき、咲ちゃん照さんの事お姉ちゃんって…」

照「さきいいいいいいいいいい!!」

咲「ごめんなさあああああああああい!!」

優希「しかも、あの宮永照がお姉ちゃんとは。いやあ、血は争えないもんだじょ。どーりで麻雀させても強いわけだ」

照「いうぱmgsvww78j,おい、jcヴぃdfすmv8dfmkvlんd!!」

咲「いおjヴぃあdふぉvm8え9vへあ、かえ89rch,g8vfd!!」

優希「うむ。その顔が見たかった」

照「き、気付いてたの!!?」

優希「当然だじょ。普通、麻雀やってる女子高生で『あの』宮永照を知らないとか有り得ないじぇ」

照「あううう…」ヘナヘナ

優希「まあ、照さんが目立ちたくなさそうだったから黙ってたんだがな。…恥ずかしいところ見られたお返し」

照「ゆ、優希ちゃん…」

優希「わーはっはっは!」

咲「あ、あの…優希ちゃん?聞きたいがあるんだけど…」

優希「なーに?」

咲「その…私たちが姉妹って気付いたのは…いつ?」

優希「確信持ったのは咲ちゃんの発言だけど、前々からなーんか、二人、似てるところあるなーって思っていたじょ」

咲「そ、その話…誰かには、した?」

照「…!!そうだ!ねえ優希ちゃん。もし君がまだ京ちゃんにこの話を伝えてないのなら、お願いだから彼にはこの話は黙っていてくれないか!」

優希「ふむ…って事は、やっぱり京太郎も知らなかったのか?姉妹なのにお互いを初対面みたいに紹介してたし、なーんか複雑な事情あるっぽいじょ」

咲「そ、それは…その…」

照「えっと…その…」

優希「…ん。まあいいじょ。あんま込み入った話聞いてヘヴィーな問題に巻き込まれたくないし」

咲「ごめん…」

照「本当にごめんね、優希ちゃん…」

優希「よっし!それじゃあ、この話終わり!次は私の話を聞いてもらうじょ!」

咲「えっ」

照「は、話?」

優希「うむ。振られた時の話。…まあ、愚痴だと思ってくれればいいじょ」

咲「け、けど…」

照「そ、それは…」

優希「おお、渋い反応。だが問答無用だじぇ」

咲「ちょ、ちょっと待って!」ワタワタ

照「まだ心の準備が!」ワタワタ

咲(と、友達が好きな人に振られたときの話なんて!)

照(どう対処すればいいのかわからない!!)

優希「…」

優希「アイツな。好きな人が居るんだと」

咲「…!!」

照「…え?」

優希「ちなみに無理言って名前も聞きだしたじょ?せめてそれぐらい聞かないと納得できないって泣き落としてな。ふふふ、どこまで言っちゃおうっかなー♪」

咲「え…えええええええええ!!?」

照「ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ優希ちゃん!その辺の話詳しく!いややっぱり駄目!!言わないで!!」

優希「おーおー。この私が圧倒的にこの場を支配してる感じ。まさに愉悦」

咲「で、でもなんでそんな事聞いたの…?」

優希「ん~?だって、二人ともアイツの事、好きだろ」

咲照「「      」」

優希「うむ。今ならお遊びの練習試合とかやったら、この二人相手にでも揺さぶりで勝てそうだじぇ。三麻してみようか?」

咲「あ、あの…その…」モジモジ

照「なんでそれを…」モジモジ

優希「同じ立場だったからな。…むしろ、あれでわかんないくらいだと、流石に女子力低すぎだじょ」

咲「きょ、京ちゃんには…」

優希「ぬっふっふ。まだ伝えてないけど、どうしようかな~。…あ、あとな。あとな。好きな人とは別に、理想の女性像とかも聞いてきたんだが…」

照「あの…優希ちゃ…優希さん。様。お肩は凝っておりませんでしょうか…多少なりとも心得がございますが」キリッ

咲「あ、ずるい!…片岡先生。平日に手作りタコスは如何でしょうか?私、その、最近お料理に凝っておりまして…登校後のおやつにでも…」

照「ああ!咲!それ反則!」

咲「そんな事言ったって、お姉ちゃんが先に始めたんでしょ!」

照咲「「やいのやいの」」

優希(この二人って…なんていうか、そういう目で改めて見たら実に姉妹してるじょ…)

優希「…ま、でもやっぱやーめた!二人にはそういう事、おしえてあーげない!だじぇ」

咲照「「    」」

優希「だって、私が振られたばっかなのに、元ライバルにそんな事教えるのもなんかムカつくしな!わははは!」

咲「優希ちゃん…」

照「…」

優希「…あ、やっぱ一個だけ教えてあげよう。京太郎の理想の体型は、ボンキュッボンだそうだじょ。…渾身の力でもってぶん殴っておいたので安心するように」

咲「ありがとうございます」ペコリ

照「重ね重ねお世話になります」ペコリ

優希「んむ!」

咲「…」ペタペタ

照「…」ペタペタ

優希「…」ペタペタ

咲照優希「「「…はぁ」」」


優希「…一個だけ言っとくじょ」

咲「ん?」

優希「私、まだ完全に諦めてないから」

照「優希…ちゃん?」

優希「…だから、二人、どっちが勝つにしても、早いとこ京太郎モノにした方がいいんじゃないか。…私が追い上げる前に」

咲「…」

照「…」

優希「…ふふ。なんてな。私から言いたいことはそれだけだ!」

咲「…」

照「…」


プルルルルルルルル

優希「おっと!…はーい!もしもしー。こちら乙女の花園だじぇ。なんのようだ。…あ、はい。はい。あと5分。了解だじょ」

優希「…さあ、出ようじぇ。待て!させておいた犬もそろそろ、ソワソワし始める頃だ!!」

ゲーセンにて

京太郎「…」ボーッ

京太郎「…はぁ」ガクリ

京太郎「…なんなんだろうな~。俺ってば」

京太郎(普段は彼女欲しいだなんだ散々吹いといて、いざ告白されたらコレだ)

京太郎「あーあ!もったいないことしちまったなーッッッ!!」

京太郎「……だァッ!!!」

京太郎「…はぁ」

京太郎(優希、泣いてたな…)

京太郎(…けど…俺は…)

京太郎(…俺は)

京太郎「…」

京太郎(…昔から、好きだったんだ。今更、この気持ちを忘れられっかよ…!!)

京太郎(自惚れじゃ無く、友人として好かれてる自信はある。あとは、それ以上の気持ちをどんな風に相手に伝えられるか、それだけなんだ。…優希が俺に見せてくれたみたいに)

京太郎(アイツの気持ちに当てられちまったのかな。…もう俺も、我慢出来なくなっちまった。この気持ちを、相手にまっすぐ伝えたい)

京太郎(…それで、どうなるのかはわかんないけど…最悪、駄目だったら駄目だっただ。当たって砕けろってのも、案外格好良いもんだって分かったしな)

京太郎(…はは。悪いな、優希。俺、お前の気持ちまで自分の告白の出汁にしちまおうとしてる。…最悪な男だな)

京太郎(…だからお前に直接こんな事言えないけどさ。けど、心の中でだけは言っておくぜ。…ありがとな)

京太郎「…よっし!」


優希「おーい!京太郎ー!」

咲「ごめんね、京ちゃん!待たせちゃった!」

照「もう外は真っ暗だ。名残惜しいけど、そろそろ帰ろうか」

京太郎「おっ、優希。咲。照ちゃん」

…ちょっと待っててな。今から今後の構想練るんで、ちょい休憩。1時間後に書くの再開予定。



あれ、ギャグが…あれ…?

優希「えー!まだ遊び足りないー!」

照「ワガママ言っちゃだめだよ、優希ちゃん。もう大分遅いしね」

咲「…そうだね。帰ろうか、優希ちゃん」

優希「むうー…」

京太郎「…そうだな。それじゃあ、そろそろ」

優希「やだー!せめて後30分!ね!お願いだじょ!」

照「優希ちゃん…」

京太郎「何がお前をそこまで駆り立てるんだよ」

優希「だって、まだUFOキャッチャーしてないじょ!!」

照「あ…」

京太郎「あっ。そういえば」

咲「え?え?え?」

優希「うむ、咲ちゃんは知らんかったか、私達な、さっき照ちゃんに、UFOキャッチャーで実力見せてやる約束してたんだじょ」

照「忘れてたよ」

京太郎「そういえばそうだったな。悪い悪い。じゃあ、それだけやったら解散にするか」

優希「おう!」

咲「あ…じゃ、じゃあ、私もやって…こう…かな…」

京太郎「当たり前だ。お前をこんな遅い時間に一人で帰らせてたまるか」

咲「えっ?」ドキッ

照「っ!」ズキッ

京太郎「明日の3面記事的な意味で」

優希「うむ。この時期に美少女女子高生行方不明事件とか、洒落にならないじょ」

咲「…」シュン

照「…」ホッ

優希「おっと、小銭が切れてたじょ。ちょっと両替してくる!」タタタタタ

照「…えっ?」

咲「あ、私も小銭無いや。ちょっと行って来るね」トテテテ

照「あっ…」

京太郎「おー。行って来い行って来い」

照「…」

照(えええええええええ!?ちょ…ちょっと待って!この状況、いきなり京ちゃんと二人っきり!!?咲あんた、なんであんな話した後ですぐに私を京ちゃんと二人に出来るの!)

京太郎「…さって、それじゃあ俺らは先に遊んでようか。な?照ちゃん!」

照「っ!あ、ああ、そ、そうだね!」

照(うええええええ!?)

京太郎「つっても、さっきから色々物色はしてたんだけどさー。俺的にどーもピンと来るものが無くって。照ちゃん、なんか欲しいもんある?」

照「え、え~っと…そ、そうだね!私もちょっと物色してみようかなっ!」

照(ひぎゃあああああああ!)

京太郎「んじゃあ、俺ももう一回、照ちゃんと一緒に見て回ろうかな。なんか見落としてた面白いもん有るかもしれないし」

照「そ、そう!?じゃあじゃあ、一緒に行こうか!うん!一緒に!」

照(ぬええええええええええ!なになに!?何なのこの状況!!)

京太郎「えーっと…どれどれ…」キョロキョロ

照「…」ソワソワ

京太郎「んー…やっぱあんま俺の欲しいものは無いかな~…」

照「…」キョドキョド

京太郎「照ちゃんは、なんか欲しいものある?」

照「うえっ!?」ビクッ

京太郎「欲しいもの」

照「えっ!えっ!あ、えっとえっと…」オロオロ

照「…あっ」

京太郎「ん?」

照「…あれ、可愛い」スッ

京太郎「あれって言うと…」

京太郎「でっかいバナナの頭にリボンが付いてる抱き枕…?…って、アレは…」

京太郎(東京ばな奈じゃねえか!!)

照(可愛い…)

※直径60cmくらいのぬいぐるみ素材。同様に、ハットを被ったイチゴも有ります

照「1回200円か。やってみる」チャリーンチャリーン

京太郎「あ、ああ…」

照「」ウイーン

照「…駄目だ」ショボン

京太郎(こりゃ難易度たっけーなー…)

照「…」チャリーンチャリーン

照「」ウイーン

照「…駄目」

照「…」イラッ

照「…500円で3回か」

照「」チャリーンチャリーン

京太郎「!?」

照「」ウイーンウイーンウイーンウイーンウイーンウイーン

照「…」イライラッ

照「…!ちょっと両替してくる!」

京太郎「待て待て待て!落ち着け照ちゃん!!」

照「けど…このまま引き下がれない!」

京太郎「熱くなったら負けだって!ここは俺に一回やらせてくれよ!」

照「!!」

京太郎「な!?」

照「うん…!」パアア

照(えっ!こ、これって…!まさか、ここで京ちゃんが取ってくれて、私へのプレゼントって展開では…!)

京太郎「よーっし。それじゃあ、俺の実力見てろよー?照ちゃん!」チャリーンチャリーン

京太郎「…あれっ」

京太郎「あ、あははは…まあ、こういうでっかいのは取るの難しいしな!流石に一回じゃ取れねーよ」

照「そ、そうだよね。うん。あはは…」

京太郎「…もう一回」チャリーンチャリーン

京太郎「」ウイーン

京太郎「…」イラッ

京太郎「…500円で3回か」チャリーンチャリーン

照「!?」

京太郎「」ウイーンウイーンウイーンウイーンウイーンウイーン

京太郎「…」ゴソゴソ

京太郎「…財布の中…小銭は100円だけか。ちょっと両替してくる」

照「ま、待って!京ちゃん!!」

京太郎「うおおおお!ここで引き下がって堪るか!男には絶対に負けられない戦いがあるんだ!!」

照「多分それ、この場面じゃないから!落ち着いてよ!熱くなったら負けだよ!」

京太郎「くっ!だからと言って!!」

照「この子は私が最初に目を付けたんだ。京ちゃんの小銭が尽きたのなら、次は私の番だよ」

京太郎「ぐう…」

照「京ちゃんはここに居て。そして私が帰ってくるまで、他の人にこれを取られないように見張ってて欲しいの」

京太郎「いや、それはマナー的に問題が…」

照「…じゃあ、取り敢えずここに居てくれればいいや」

京太郎「大丈夫?迷わない?」

照「大丈夫。そこに東京ばな奈が有るなら、私は迷わないよ」

京太郎「あ、そうですか…?」

照「じゃあ、行って来る」

京太郎「…」

京太郎「…何してよ」

5分後

優希「おっ!居た居た。京太郎!」

咲「京ちゃん!…あれ?おね…じゃなかった、照さんは?」

京太郎「あれ?さっき両替に行ったんだけど…会わなかったか?」

咲「…?うん」

優希「まさか、迷った?」

京太郎「うわ…やっぱ一人で行かせたの失敗だったか?…あと10分して来なかったら迎えに行こう」

優希「ところで、何してたのだ?」

京太郎「ああ、これな。照ちゃんが欲しいって言ってたんで、二人で頑張ってチャレンジしてたんだけど…」

優希「おお…東京ばな奈…そう言えば、今スカイツリー限定で豹柄のチョコバナナ味が売ってるらしいじょ(ステマ)」

京太郎「ああ、そういえば5月22日にスカイツリータウンの商業施設『東京ソラマチ』に新店舗オープンしたんだっけか(ステマ)」

咲「うわぁ。可愛い抱き枕…ちなみに去年の8月10日にはキャラメル味も出てるんだよっ!(ステマ)」



両替機械の前

照「…今後の新商品の展開も、目が離せないね(ステマ)」

優希「…おっ!咲ちゃんも欲しいのか?これ」

咲「うん。いいなぁ。可愛いなぁ。ちょっとやってみようかな」

京太郎(うーん…ま、いいか。まだ何個かあるみたいだし)

優希「じゃ、やってみるじょ。咲ちゃん」

咲「うん!」チャリーンチャリーン

咲「」ウイーン

咲「…」

咲「…500円で3回」チャリーンチャリーン

優希「!?」

京太郎「…」

咲「」ウイーンウイーンウイーンウイーンウイーンウイーン

咲「もういっか…」

優希「つ、次は私な!私!!」

優希「こ、こういうのにはコツがあるんだじょ…」チャリーンチャリーン

優希「」ウイーン

優希「…」

優希「…500円で3回」チャリーンチャリーン

咲「…」

京太郎「…」

優希「」ウイーンウイーンウイーンウイーンウイーンウイーン

優希「むきょおおおおおおおおおおおお!!」ドッカーン!!

優希「うおおおお!ここまできたら引き下がれないじぇ!女には絶対に負けられない戦いがあるんだじょ!!」

京太郎「お、落ち着け優希!!」

咲「そうだよ!優希ちゃん!熱くなったら負けだよ!今度こそ私が取るから!!」

京太郎「いや、待て咲!今度こそ俺が取って見せるから、ちょっと両替してくるまで待ってろ…」

優希「駄目だじょ!私がやるの~!」

やいのやいの

照「ただいま、京ちゃ…って、何やってるのみんなで…」


※この後、話し合いの結果、一人ずつ順番で挑戦する事に決まりました

そして、このキャッチャーに掛けた金額が総額5,000円に達そうかと言う頃…

京太郎(つ、疲れた…)

優希(もう誰でもいいから頼むから奴を倒してくれ…)

照(咲…頑張れ…)

もうみんな、既に意地だけでチャレンジしていた

咲「…」ウイーン

咲「…」

ポロッ

咲「!!!」

京太郎「!!」

優希「!!」

照「!!」

咲照優希京太郎「「「「やった!!!!」」」」

咲「取ったぁああああああああああああああああああ!!!」

優希「おめでとう!!咲ちゃあああああん!!」

京太郎「やってくれたな!!ついにやってくれたな!!咲!!」

照「頑張った!よくやってくれた!!ありがとう!おめでとう!!」

咲「ありがとう!みんな!本当にありがとう!みんなのお陰だよ!みんなが支えてくれたから、私、ここまで頑張れた!だから、これはみんなで掴んだ勝利だよ!!」

咲照優希京太郎「「「「わああああああああああああああああああ!!!」」」」



咲「…で、これ…どうしようか?最初、おね…照さんが欲しかったんだったよね?」

照「…いや、これは咲だって欲しかったんだろう?なら、取ったのは咲なんだし、咲の物だ。取っておくといい」

咲「…ありがとう。大事にするね」ギュッ

優希(…しっかし、ふと我に返ってみると、これって凄い構図だじょ。直径60cmのでっかいバナナを愛おしそうに抱きしめる女子高生…)

京太郎(…いかんいかんこれいかん。考えるな俺。心を無にせよ)

照(…いいなぁ。咲。けど、もう一個これに挑戦するのは、流石の私もちょっと…なんだ、その…めげる)

京太郎「…」

照「…さあ、みんな。もうそろそろ電車が無くなるよ。いい加減帰ろうか」

咲「あ…そ、そうだね!」

京太郎「あ、やべ。結局1時間近くコイツにかかりっきりだった」

優希「むう…しまった。私としたことが」

照「それじゃあ、行こう。駅に」

京太郎「そうだなっ!」

咲「うん」

優希「じゃ、みんなで駅までいこー!」

照(…結局京ちゃんと二人でじっくりお話とかは出来なかったけど…まあ、いいか。楽しかったし)

照(…私だけ、違う電車か。ちょっとだけ、寂しいけど、ね)

電車ホーム

照「それじゃあ、私はこっちのホームだから」

優希「ありがとうな、照さん。楽しかったじょ」

照「私もだよ、優希ちゃん。友達になれて良かった」

優希「私も!ねえ、携帯の番号、交換したいじょ…」

照「ああ。私の方こそお願いしたいな」

京太郎「おっ!そう言えば、俺もいいかな?折角久しぶりに会えたんだし、これからもたまには連絡取り合おうぜ」

照「そうだね。私も京ちゃんの番号、知りたいな」

咲「あ…」

咲(…いいなぁ)

京太郎「咲は…ああ、携帯持ってないんだよな。家電の番号でも交換するか?」

咲「…ん。私はいいや…」

咲(…一応、知ってるし)

京太郎「?そうか…」

京太郎(そう簡単には打ち解けれなかったか。やっぱ咲は人見知りだなぁ)

照「はい、優希ちゃんとの赤外線交換終わり。…次、京ちゃん、いい?」

京太郎「おっと、んじゃ、お願いしますっと」

咲「…」

咲(…やっぱり、いいなぁ)

照「…じゃあね。みんな。また会おう」

照(全国の会場で…敵同士だけど…ね)

優希「…」ピポピポ

照「?」ブルルル

照(あれ、メール着信…)チラッ

『from 片岡 優希ちゃん
 
 今度会うときは全国だじょ!負けないからな!』

照「…!」

優希「にひひ」ニコッ

照「…」クスッ

照「…」ピポピポ

優希「」ブルルル

優希「」チラッ

『from 照さん

 そう簡単に勝てると思うなよ?今年も優勝は私達白糸台だ』

優希「にひっ」ニコッ

照「…ふふ」

照「ばいばい!みんな!」

優希「…行っちゃったじょ」

京太郎「…ああ」

咲「…」

京太郎「…俺らもホーム行こうか」

優希「だな」



ローカル線・清澄行きホーム

優希「…って言ってもなー。お別れの挨拶してるうちに予定の電車行っちゃってたじょ」

京太郎「しまんねー。次は30分後か」

優希「退屈だじょ」

咲「うん…」

京太郎「…」

優希「…」

咲「…」

京太郎「…あ、悪い二人とも。ちょっとトイレ行って来る」

優希「おう」

咲「…うん」

京太郎「…」タタタタ


優希「…なあ、咲ちゃん」

咲「…うん?」

優希「照さんいい人だったな」

咲「…うん」

優希「美人だし」

咲「うん」

優希「優しいし」

咲「うん」

優希「自慢のお姉ちゃん?」

咲「…うん」

優希「…なんで喧嘩したの?」

咲「…」

優希「本当はあんなに仲良しなのに」

咲「…」

優希「なんか、二人とも無理して喧嘩してるような気がしたじょ」

咲「…気付いてたんだ。私たちが喧嘩してるって」

優希「私から言わせれば、喧嘩とも言えないと思うけどな。あんなの」

咲「…」

優希「…」

優希「…けど、まあ、やっぱりそれは私が口挟む問題じゃないか。いいじぇ?別になんにも言わないで」

咲「…ごめん」

優希「謝んないで。私がつらいじょ」

優希「でも、これだけは覚えておいてな」

咲「?」

優希「照さんがどんなにいい人でも」

優希「私はどっちかって言うと、咲ちゃん派だ」

新幹線ホーム

照「…あと10分…か」

照(ちょっと、名残惜しいかな。…ふふ。まさか、大嫌いな長野でこんなに楽しく過ごす事出来るなんて、ね)

照(ありがとう、優希ちゃん。京ちゃん。…それと、ごめんね。咲)

照(私、今日ここに来れて、本当に良かった。少しだけ、故郷の事、好きになれた)

照(本当に、良かったよ…良かった…良かった…)

照「…また、明日から頑張ろう」

照(そして、またいつか、みんなで遊ぼうね…)

照(…ふふ。今度は、東京だもんね。再開したら、菫や淡達の事、紹介できたらいいな…)

プルルルルルル!!

『間も無く、東京行き、新幹線が到着します』

照「…」



京太郎「照ちゃん!!」



照「…え?」



京太郎「はぁはぁはぁ…っ!よ、良かった、間に合った…!」

照「ど、どうしたの?京ちゃん、そんな息切らして…それに、帰りの電車は…」

京太郎「へへ、一本乗り過ごしちゃって」

京太郎(…まあ、実は乗り過ごさなくてもなんだかんだ理由付けて俺だけ残るつもりではあったんだけど)

照「そうだったんだ…けど、なんでこっちに?」

京太郎「忘れ物」スッ

照「…え?何、これ…ハート型の…ストラップ?」

京太郎「さっき照ちゃんが両替しに行ったときにな。残った100円でなんとか取れそうなの取っといたんだ。照ちゃんにあげたくて」

照「え…け、けど…でもなんで…」

京太郎「…だって、あそこで帰って来た照ちゃんがばな奈取っちゃったら、俺格好悪すぎだろ!」

照「」パクパク

京太郎「…余計だった?」

照「…」

照「…ううん。凄く嬉しい。ありがとう」

京太郎「…ふう。良かった。喜んでくれてほっとした」

照「ありがとう…ありがとう…本当に嬉しい…」ギュッ

京太郎「…」

京太郎「あ~…あと、ね」

照「…?」

京太郎「あと…どうしても言っておきたい事があって…その…」

ガタンガタンガタン…

照「…京…ちゃん?」

京太郎「えーっと、だ。その…あー…」ポリポリ

ガタンガタンガタン…

照「…」

京太郎「…」

ゴオオオオオオオオ…

京太郎「…俺、照ちゃんの事、好き…………なんだけど」

キイイイイイイイイイッ!!!

照「…………………………………」

照「…えっ」

京太郎「…だから、照ちゃんの事…………………………好き………………………………………………です」

照「…………………………………………………………」










照「…………………………………………え」








照「」パクパクパク

京太郎「…その…良かったら、俺と、お付き合い…して……欲しいかな…って…その…」

照「」パクパクパク

京太郎「…む、昔っから、さ。その…好き…だったんだ。実は」

照「」パクパクパク

京太郎「照ちゃん、その、今東京だしさ。…二つも年上だし、その、今更俺みたいな田舎のガキ、その、男として見てもらえないかも…と思ったんだけど」

京太郎「ご、ごめんな。いきなりこんな事言っちまって…迷惑かもしれないけど……ど、どうしても、我慢出来なくて…」

京太郎「もし良かったら…なんだけど…さ…返事…くれないか…?」

照「な、なん…で…?」

照(なんで京ちゃんが、私の事を!!?)

京太郎「…正直、もう二度と会えないと思ってた」

照「…」

京太郎「…照ちゃんがいきなり俺の目の前から居なくなって、もう何年も過ぎて…さ」

照「…」

京太郎「…正直、すっげー寂しかった。あと、ショックだった。あんなことあった後だし、やっぱ避けられちゃってんのかと思って…」

照「っ!!」

京太郎「自惚れかもしれないけど、照ちゃんの前では俺、結構格好いいところも見せられてたとか、その、傲慢で打算的な考えかもしれないけど、そういうのも考えちまってたし…」

照「そ、そんな事無い!!私、京ちゃんの事避けてなんか…!!避けてなんか…無い…」

京太郎「…ありがとう。その言葉だけで、俺、救われた気分だ」

照「…」

京太郎「…けど、さ。それだけじゃ我慢出来ないってのも…確かなんだ。照ちゃんの事…好きなんだ。大好きなんだ。大大大大好きなんだ」

照「きょ、京ちゃん…」

京太郎「その…どう…かな…東京の男みたいにおしゃれでも、スマートでも無いし、照ちゃんみたいな美人と、今更釣り合わねーかもしんねーけど…良かったら…」

京太郎「その…お、俺と、お付き合いしてください!!!」

京太郎「…ははは。情けねーな、俺。もっと言わなきゃいけない事いっぱいあるはずなのに、こんな事しか言えない…」

照「わ、私…私…その…!!」

照(嬉しい…!)



照(嬉しい…!)


照(嬉しい…!)

照(嬉しい…!)

照(嬉しい…!)

照(嬉しい…!)
照(嬉しい…!)
照(嬉しい…!)
照(嬉しい…!)
照(嬉しい…!)

照(嬉しい…!)
照(嬉しい…!)



照(嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!嬉しい…!)


照(嬉しい…!!!!!!)

照「わ、私…その…」

照(嬉しい!うれしい!嬉しい!!)

京太郎「…うん」

照(京ちゃんが私のこと…好きだったって…私の事好きだったって!!!)

照「そ、その…あの…」

照(うれしい!うれしい!うれしい!うれしい!うれしい!うれしい!うれしい!嬉しすぎて、死んじゃいそうだ!!)

京太郎「…うん」

照(私も!私も好きだよ!京ちゃん!!大好きだよ!!京ちゃん!!!!)

照「わたし、わた、わたし…わ…」

照(あとは、『うん』って!『うん』って言ったら、それだけで私達は両想いなんだ!!!)

照「えっと…あの…!その…!!」

照(『うん』って!!)

京太郎「…」

照「あの…わ、わたし…は…その…!」

照(『うんっ!!』)

京太郎「…」

照(『うんっ!!!!!!!!!!!!!』)

照「…」

照(あ、あれ…?)

照「えっと…!あ、あう…あ…あう…あ…あっ!うう…うう…!」ジワッ

照(な、何やってるの!?私!)

照「あ、あう…あうう…あ、あう…!ううー!」グスッ

照(な、なんで…?)

照「ううー!うううー!!」ポロポロポロ

照(なんで、一言、『うん』って、出てこないのぉ!?)

京太郎「…」

京太郎「…うん。悪い、照ちゃん。変な事言っちゃって。…今の、忘れて」

照「!!!」

京太郎「…そうだよな。いきなり昔の友達に会って、そんな、久しぶりに会って告白なんて…訳わかんねーよな…ごめんな…ほんとごめん、照ちゃん…」

照「あうっ…あっ!あっ!!」ポロポロポロ

照(ち、違うの京ちゃん!!)

照「そ、その…あの…」

照(わ、私!もっ!京ちゃんの事!!)

プルルルルルルル

『東京行き、新幹線間も無く発車しまーーーす』

照「あっ!」

照(あっ!で、電車!けど、あっ!うわっ!!)

京太郎「っ!」

『ドア、閉まりまーす』

照(か、帰らなきゃ!)

照「京ちゃんごめんっ!!」ダッ

京太郎「あ…」

プシューッ

京太郎「      っ!!   !!         !!?     !!!」

照「…っ!!!!」ダダダダダッ

京太郎「    !!!」

照「うわああああああああああああああああああああん!!!」

照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!」

照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!」

照「馬鹿!!馬鹿!!馬鹿!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!私の馬鹿!!!!!」

照「ごめんね!!!ごめんね!!!ごめんね!!!ごめんね!!!ごめんね!!!ごめんね!!!ごめんね!!!」

照「ごめんね!!!京ちゃん!!!!!」



京太郎「待ってくれっ!!また!!また会えるよな!!?照ちゃん!!!」

京太郎「照ちゃん!!!」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

京太郎「…」

京太郎「…くそっ!!」

京太郎「…馬鹿野郎…!!」

京太郎「馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎!!!!」

京太郎「…………俺は…………馬鹿だ…………!!!」

正直嬉しいの連打で返事しない時点でなんとなくこうなるのは読めた、てるてるかわいそす

今日の分終わり

明日休みなんで、部屋掃除終わったら昼からでも書くわ
おやすみ

>>358
ですよねーーーーーーwwwwww

照が長野から逃亡(3度目)した翌日・放課後
白糸台高校麻雀部部室前の廊下


淡「ふー!やっと授業終わったーっと。さて部活部活ー…って…あれ?どうしたんですか?皆さんお揃いで」

菫「ああ、淡か。いや何ちょっと…な」

淡「?」

尭深「…うん。ちょっと…」

誠子「ちょっと…ね…」

淡「変な先輩方…っていうか、もう早い人部活始めてる時間ですよね?どうしたんですか一体」

菫「今日は、レギュラー以外は皆休みだ」

淡「はあ?この時期に!?」

菫「…ちょっと、例のお姫様が変なんでな」

淡「…」ヒクッ

菫「…今部室の中に居る」

淡「ここから覗いてみても大丈夫ですか?気付かれたら襲いかかってきたりしませんか?あと、噛まれたりしません?」

菫「問題無い。何なら触っても大丈夫だと思うぞ」

淡「触ってもって…」

菫「見た感じの機嫌自体はな。すこぶる良いんだ。否。良すぎる。気持ち悪いくらいに」

淡「…え?」

尭深「あれはブチギレてる証拠。ただし、自分自身に」

誠子「1年は知らないかもだけど、試合で納得いかない麻雀をした日の翌日とかたま~になるんだよ。最近はそういうのもほとんど無かったんだけど…こりゃ過去最大級かもね」

菫「周りに自分の不機嫌を悟られまいと不自然に周囲に愛想を振りまく」

尭深「記者会見でも無いのに全方位営業モード」

淡「うわぉ…」

誠子「まったく…怪我を悟られないために自然に振る舞う野生動物みたいだ。他の部員も気味悪がってさ」

菫「だから私が皆を帰したんだ。…まあ、淡ならアイツの奇行には馴れてるし大丈夫だろう。ためしに話しかけてみればいいさ」

淡「はあ…」

菫「さあ、行け」クイッ

淡「…もしかして、皆さんで廊下に居たのって、私に先陣を切らせるためじゃ…」

菫「そうだ。行け」

尭深「がんば」

誠子「悪いね」

淡「せめて誤魔化すくらいはして欲しかった…」

淡「…わかりましたよ。じゃあ、骨は拾って下さいね。あと、皆さん今日は帰りに私に一個ずつお菓子を奢ること」

菫「善処する。どら焼きでいいか」

尭深「抹茶プリンあげる」

誠子「私はマックでなんかセットでも」

淡「…約束しましたからね」

淡「…はぁ」

淡「…」

淡「おっはよーございまーーーす!」ガチャッ

照「ん?ああ、淡!お疲れ様!」キラキラ

淡「ひっ!?」ゾワワワッ!!

照「もう、遅いじゃない。菫が今日は大会も近いから、レギュラーだけでミーティングだって言うからずっと待ってたのに…」

照「みんな、私がずっと待ってるのに来ないんだもん。不安になっちゃう!」プンプン

淡「す、すみません…じゅ、授業が長引いちゃいまして…」

照「そうだったの?なら仕方ないね。部活も大事だけど、あくまで私達学生の本分は勉強だもんね!」ニコッ

淡(だ、誰だこの人ーーーーーーーー!!?)

照「それにしても、来たのは淡だけ?菫達は知らない?」

淡「…」チラッ


菫「…」カキカキ

菫「」サッ

メモ『近くに居るって言ったら殺す』


淡「…」

照「淡?」

淡「は、はい!…すみません、私も良くは知りませんので…おそらくみなさんもうすぐ来るとは思うんですが…」

照「もうっ!相手は全国で地区予選を勝ち抜いてきた手強い高校ばかりなんだよ?しっかりミーティングして、相手を研究しなきゃ、油断してたら足元すくわれちゃうんだから!」

淡(言ってることは正論なのになんでこんなに心に響かないんだろう…)

照「あ。そうだ淡。ところで、お腹すいてない?」

淡「は?」

照「大切なミーティングの前に、糖分補給。ちゃんと頭回らせておかないと、ミーティングの内容が頭に入らないぞっ☆」

淡(なんだろう。本人は大真面目なのかもしれないけど、凄く馬鹿にされている気がする…)

淡「は、はあ…まあ、甘いモノは大好きですが…」

照「そうでしょ?だと思って、淡にプレゼント!」

淡「…」

照「あとでみんなが集まってから出そうと思ってたんだけど、みんなが遅いんだししょうがないよね」ゴソゴソ

淡「…」

照「…はい!じゃ~~ん。東京ばな奈~!しかも4箱も!」

淡「…おうふ」

照「ね!ね!ね!私達でみんなが来るまでに1箱食べちゃわない?実は私これ大好物なんだー」

淡(やばい…意識が遠のいてきた…)

照「…淡?」

淡「あ、す、すみません…そうですね。食べましょう。いただきます。ありがとうございます…」

照「ふふ。淡は面白いな。はいどうぞ」スッ

淡「いただきます…」

照「…」

淡「はむはむ…うん。おいひい」モグモグ

淡(なんかアレであるけど…まあいいか。東京ばな奈自体は嫌いじゃない)

照「…」

淡(うーむ。この柔らかい食感と濃厚なクリーム。流石高いだけあって結構なお味…)ホワホワ

照「…」シュン

淡「?宮永先輩、どうかしました?」

照「あっ!ご、ごめんごめん!淡が美味しそうに食べてくれるものだから、ついつい見ちゃって…」

淡「はあ…」

照「本当に、ごめん…」

淡「…?」

照「ごめん…ごめん…気持ち悪いよね私…ごめん…」

淡(なんか一気にダウナー系!!?)

淡「い、いやいや!そんな事ないですって!ただ宮永先輩は食べないのかなーって思っただけなので!」

照「えっ!?あ、そ、そう!?いや、ごめんごめん。そうだったね。それじゃあ私もいただきますっ」

淡「」ホッ

照「はむっ!もぐもぐ…」

照「」ホワ~~ン

淡(おお。マジで美味しそうな顔。口元が緩んでる)

照「うん、美味しいね」

淡(ここは話に乗って、良い感じにご機嫌を取っておこう)

淡「そうですね、最高に美味しいです。私東京ばな奈大好き!」

照「ふふ。私もだ。東京ばな奈は、昔長野に居た頃から憧れのオヤツだったんだ」

淡(口調が戻ってきた!機嫌が治ってきた?よしこの調子で)

照「だから、こっちに来て早速、初めて買って食べて、予想通り…いや、それ以上に美味しくて嬉しくて…いつか、大好きな人とこの大好きなオヤツを一緒に食べるのが夢で…」

淡「…?」

淡(…あれ?)

照「先日、ついに居ても立ってもいられなくてその夢を叶えようと勇気を出して、その人に会いに行って…いつでもいっしょに食べるチャンスは一杯あって…」ジワッ

淡(ま、マズい。地雷を踏んだ?)

照「そうしたらあんな事があって、凄くびっくりしたけど、本当に嬉しくて、けど気が動転しちゃって、何をすれば良かったのかも私は訳がわからなくなってしまって…」ブツブツ

淡(うわああああ!これはヤバイ!本格的にヤバい!怖い!面倒くさい!なんとか話題を逸らさないと…)

照「本当に…痛感したよ。私は救いようのない馬鹿だ。…いっそ死んでしまいたい」

淡「な、何言ってるんですか!!!」

照「…淡?」

淡「み、宮永先輩は馬鹿なんかじゃないです!」

淡「そりゃたまには…て言うか、しばしば…結構…かなり…アレでソレな所もありますし、私には特に実害も結構な頻度で及んでて勘弁して欲しいなーこの人とか思うことも良く有りますけど!」

淡「この私に対する偉そうな態度がムカツクんでいつか麻雀で徹底的にボッコボコにして悔しがってるを写真に撮ってネットでばら撒いてやりたいとかも思ったりしますけど!」

淡「な、なんだかんだいいところは一杯有りますよ!宮永先輩は!ほら…その…角とか…」

照「淡…具体的に褒めたとこが角だけ…」

淡「と、兎に角!そんな欠点も含めて!麻雀の強さや人格も含めて!私は宮永先輩のことは、その…嫌いじゃない…んで…」

淡「し、死ぬとか…そういうのは…無しで…お願いしたいんですが…」

淡「…なんか悲しくなっちゃいます。私を悲しませないで下さい。先輩なんですから」

照「…ごめん」

淡「まったくです」

照「…」

照「…」

淡「…」

照「…」

淡「…」

淡(し、しまったーーーーー!何恥ずかしいこと言ってるんだ私!アホか!!しかも今の何にも考えずに口から出たって事は、本音か!!アホだ!!)

照「…」

淡「…」

照「…」

淡「…」

淡(しかも会話無くなったし!)

照「…」

淡「…」

照「…」

淡「…」

淡(ううううう…沈黙が重い…)

淡(な、なにか…話題…話題は……あっ!)

淡「あ、あれ?宮永先輩」

照「…何?」

淡「い、いえ。その…卓の上に置いてある携帯…」

照「ああ。それがどうした?」

淡(あ、口元が緩んだ。これはやっぱり、聞いて欲しいからわざわざこんなところに置いたんだろうな。と言う事は私のこれからする質問は間違ってない!)

淡「可愛いストラップが着いてますけど、こんなの持ってましたっけ?」

照「あ…ああ、それは…。ちょ、ちょっと入手までの経緯に複雑な事情があるんだけど…」

淡(おお、珍しい。はにかむような、困ったような、嬉しいような、悲しいような…こんな複雑な表情も出来たんだこの人)

淡「えー?なんですか?複雑な事情って。あ、もしかして好きな人にでも貰ったとか?」

照「な!!?お、おい淡。お前なんでそんな…いや、そういう訳では…えっと…その…」オロオロ

淡(おおおー!?なんだこの反応!乙女か!!まさか弘世先輩の言ってた、例の幼馴染君の話なのかーーーーー!?)

照「あ、あの…ね?淡。こ、こういう話はちょっと恥ずかしいから…特に菫にはナイショにしておいて欲しいんだけど…」

淡(はは。まさか酒に酔わされてすでに自白済だとは思うまい。同情しますよ。宮永先輩…)

淡「えー!聞きたい聞きたい!教えて下さいよ宮永先輩!この、ハート型のストラップを受け取った経緯!」スッ

照「…は?」

淡「へー。プニプニしてるんだ。面白いですねコレ」プニプニ

照「…」ビキッ

淡「それによく見たら顔が付いてる。あはは、ブサ可愛い感じで結構いいかもー…」プニプニ

照「…淡?」

淡「なんか、この安っぽい感じがいい味出してますねー。メイドイン・チャイナって感じで…」プニプ…

照「…おい、貴様何してる」ガシッ

淡「…へ?」プニッ?

照「誰が触って良いと言った」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

淡「…えーっと…」プニプニ…

照「」ガタッ

淡「…あ、あの…宮永先輩…?」

照「」ギュインギュインギュイン

淡「なんか、その…腕にサイクロン的な何かが集まってるような幻影が…」

照「死ね!」ブンッ

淡「おわあっ!?」サッ

照「避けた!?」

淡「な、何するんですか!いきなり殴りかかってくるなんて!」

照「五月蝿い!無断でそのストラップに触るな!それは私のものだ!」ブンッ

淡「ひょわぁ!?お、落ち着いて下さいよ!」サッ

照「くっ…ちょこまかと…!!」

淡(あわわ。宮永先輩が運動音痴だから助かってるけど、このまま避けてるだけじゃいずれ捕まる…)

照「逃がさない…」ジリジリ

淡「ぐううう…」

照「ふん!!」ブンッ

淡「わっ!」サッ

照「たあ!」ブンッ

淡「やば、避けれな…」

淡「きゃぁ!」サッ

バキッ

照「痛っ…」

淡「~~~っ…」プルプル

淡「…」

淡「…はれ?」

照「いたたた…」

淡「あれ…殴られてない…?って…あ。無意識に先輩の携帯盾にしちゃったんだ…」

淡「…げ」

照「くっ!淡!お前、よくも私の携帯を…」

照「…」

淡「…まず」

照「あ…」

淡「えーっと…」

照「あああ…」

淡「その~…」

照「ああああああああああああああああああああああああ!!!」

淡「す、すみません…ストラップ…千切れちゃいました…ね…」

照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」

淡「うあー…」

照「わあああああああああああああああああああああん!!わあああああああああああああああああああん!!わああああああああああああああああああ!!!」

淡「…こ、これはどうしたものか…」

照「うええええええええええええええん!ええええええええええええええええええええええん!!えええええええええええええん!!!」

淡「こんな泣きまくってる宮永先輩初めて見た…ど、どうしよ…」

菫「まったく…何をやってるんだお前は」スタスタ

誠子「あーあ。可哀想に…」スタスタ

尭深「泣ーかした泣ーかした」テクテク

淡「せ、先輩方…」

菫「いじめっ子め」

淡「え…何ですかこの雰囲気。まるで私が悪いみたいな…」

照「ええええええええええええええええええええん!ええええええええええええええええん!!淡のばかあああああああああああああああああああ!!」

淡「私が悪いの!!?」

菫「ほら、照。落ち着け。大体、さっきから変だぞお前。何があったか一から話してみろ」ユサユサ

照「ヒッグ…ううえええ…す、すみれえぇええええええええ…うええええええ…」

誠子「よしよし、大丈夫ですよー。宮永せんぱーい。私達で良ければいつでも力になりますからー」

照「ええええええん。あ、ありっがとっ!せい゙ごぉおおおおおおおおおおお」

尭深「はい、冷たいお茶。落ち着いて…」

照「たかみ゙~~~~~~~~~~~!!」

尭深「ん」ナデナデ

淡「なんだこれ…」

菫「よしよし。落ち着いたら話聞いてやるから。な?ほら。特別にだっこしてやる」ギューッ

照「うん。うん。ありがと…うん。ごめんねすみれ…うん…」スンスン

菫「はいはい。そしたらちょっと休めお前」ナデナデ

照「すみれのおっぱいやわらかい…」ギューッ

菫「わかったわかった。お前は硬いな。はいはい」ナデナデ

照「…」ギューッ

菫「はぁ…」

淡「幼児退行してるし…」

照「…」ギュッ

照「…」

照「…」コックリコックリ

照「…」

照「すー…すー…」

淡「寝た」

菫「…ま、ざっとこんなものだ」

淡「…おみそれしました」

尭深「淡には、おっぱいが足りない…」

淡「ほっといて下さい!!」

誠子「まあ、なんにせよ話はこの人が起きてからだね」

淡「はあ…」

照「すやすや…」

10分後

菫「落ち着いた?」

照「…うん。すまない菫。尭深。誠子。ついでに淡」

淡「ついで…ぐぬぬぬ。まあ、私もすみませんでした。その…色々失礼なこと言ったりやったり」

照「いや。私の方こそすまない」

菫「よし、お互い謝罪は終わったな?それじゃあ、話してもらおうか。照、お前、日曜に…いや、ここ数日に何があった?」

照「…」

菫「話せ。お前、ここ数日の自分の奇行を誰にも疑問視されてないと思っていたのか?」

照「…」

菫「全国の近いこの時期にエースに身も心もあっちへフラフラこっちへフラフラされては私達も堪ったもので無いんだ。もういい加減話してくれてもいい時期だろう」

誠子「それに、私達だって、宮永先輩にはなんだかんだお世話になってきてますから。恩返し…じゃないですけど、力になれる所は、なりたいんですよ」

尭深「魚の干物のお礼もまだ。お返ししたい」

照「…」

淡「わ、私も…」

照「…淡?」

淡「私も…宮永先輩には、その…悲しい顔似合わないって言うか…その、そんな顔されてたら調子狂うって言うか…」

照「…」

淡「…その…げ、元気だして欲しいから…」

照「…」

照「…わかった」

淡「…」

照「…何があったか話す」

菫「…そうか。ありがとう」

照「けど、その前に」

菫「ん?」

照「尭深。お茶淹れてきて」

尭深「?…わかりました」

照「はい皆。東京ばな奈。みんなに均等に渡るように。あ、余った分は私のだからな。買ってきたのは私だし」

誠子「へ?」

淡「何やってるんです?」

菫「さあ」

尭深「淹れてきた」

淡「早っ!」

照「ありがとう。それじゃあみんな。聞いて欲しい。私の犯した馬鹿な間違いの話を」

菫「馬鹿な間違いねえ」

照「で、ついでに相談に乗って欲しい。これから私はどうすればいいか。何をすべきなのか」

誠子「何をって…まあ、出来る限りで」

照「でも、その前に、もう一個聞いて欲しい事がある」

尭深「もう一個?」

照「ああ。これは、最近の話じゃないんだけど…」

照「私の初恋の話」

淡「!!」

照「そして、私がこっちに来る前の、長野に居た頃の話」

照「私が、それまで一体どんな人間だったのか…」

照「それまでどんな人生を歩んできていたのか…」

照「どんな事を考えてきていたのか…」

照「物凄く恥ずかしい話なんだけど…」

照「もしかしたら、私の事を馬鹿にしたり軽蔑するようになるかもしれないけど…」

照「凄く凄く話すのが怖い話なのだけど…」

照「今まで、誰にも言えなかった話なんだけど…」

照「…でも、みんなには聞いて欲しい」

照「…お願いだから、聞いて欲しい」

淡「えっと…」

淡(なんかすっごく重そうな…だ、大丈夫なのかな私こんな話聞いちゃっても…)

誠子「おっ!もったいぶりますねー!」

尭深「なんだかワクワク。B級映画か糞アニメみたい」

淡「えっ。いや、お二方そんな軽い感じな…ってか、渋谷先輩今さらっと酷い事言いましたね」

菫「是非も無いさ。お前がそうやって大袈裟に言った相談事が私に本当に手に負えなかった事は無いんだ。今までもそうだったのなら、これからもそうだ」

淡「弘世先輩まで!?」

菫「話してみればいい。その口ぶりだと、どうやらその話は今までお前にとって随分と重荷だったらしいが…」

菫「お前のような麻雀以外ポンコツ女が一人でえっちらおっちら運んできた荷物など、我々5人で抱えればどれほどのものでも無くなるさ」

淡「…」

菫「それが仲間って奴だろう?まあ、柄じゃないがな」

淡「…」

淡「ま、私だって宮永先輩よりはしっかりものな自信ありますし。ちょっとくらいなら心の支えにはなれると思いますが」

照「…ありがとう。あと淡、あとで覚えてろ」

淡「…えへ」

照「…ふふ。それじゃあ長くなるから、お茶でも飲みながらゆっくりと話していこうか」

照「…」

照「…すーっ…」

照「…はーっ…」

照「…」

照「…あれは、私がまだ中学生だった頃の話だ…」

照「そう。たった数年前の話…」

今日の分終わりっ!

次回、てるてるの過去編(捏造)へ続く。遅くなったのは大体ここの辻褄合わせのプロット作成のせい。嘘だけど
何故京太郎が照をちゃん付けで呼ぶのか、咲と照を姉妹と認識していない理由、あとなんか適当に色々と明らかになります。嘘だけど
そして、読んでくださっている皆様、長い間お待たせしてしまい誠に申し訳ありませんでした。姉帯さんが可愛すぎるのが悪いんです。嘘だけど

あと3回くらいで終わるかな?と思います。それまでお付き合い頂ければ幸いです。それが終わったらリクエスト消化していくね

普段は出来るだけ慣れ合いはすべきでは無いと思っているのですが、せっかくのss速報なので、皆様に甘えて色々やってみたかったことをやりたい放題やらせて戴いております
自分でも気持ち悪いなと思うんだけど、そんな作者の[田島「チ○コ破裂するっ!」]文章のにもめげずにこのssを読んで、コメントを下さっている皆さんの存在有ってこそモチベーションを保てております
本当にありがとうございます

では、今日の所はおやすみ

えっとね。お待たせしました
ごめん、全然書き溜めが出来ない。なんで、もう書けるトコまででも行く事にするわ
途中から書きながらの投下になるんで、ゆっくりです。すまん

ユーロで棚上げにしてた仕事のしわ寄せが来てたの。書き溜めの時間取れると思ったのに駄目だったの

淡(その日私が聞いた話は、まるで遠い世界の、知らない人の事のようでした)

淡(なぜなら、お話の中に出てくる宮永先輩は私の知ってる宮永先輩と全く違う人のようで…)

淡(途中で「年月はこうも人を変えるんですね」と素直に溢しちゃった私は、亦野先輩にゲンコツを食らったりもするんですが、まあそれは置いといて…)

淡(兎にも角にも、それはほんのちょっっぴりむかしのはなしです)

淡(牌に愛され、高校生史上最強のチャンプとまで言われ、まるで神に選ばれたかのような才能を誇る少女の、意外な昔話)

淡(妹想いで、優しくて、どん臭い、普通の女の子の話)

淡(それは宮永照が中学3年生の頃の話でした)

3年前・ある夏の日
宮永家リビング

そこには、ソファに腰掛け、物憂げに本を読む宮永照の姿があった

照「…ふう」

照「…もう、5時か…」

照「…咲、遅いな」

一息ついて深呼吸。ふと気になって壁掛けの時計を見やると、呟く
普通の中学生1年生の女の子が帰って来る時間としては、それほど遅い時間では無い。部活をやっていたり、友人と遊んでいればこれくらいの時間に帰ってくるのは寧ろ早いくらいだ

照「…大丈夫かな」

…だが、照はソワソワと不安そうに窓から外を覗くばかりだ。妹の帰りを待つその姿はどう見ても普通の様子では無い。過保護も過ぎるように見受けられるが…

照「…あっ」

タッタッタッタ…

小走りに狭い歩幅の足音が聞こえ、安堵した声を漏らす照。雑誌をコーヒーテーブルに置き、立ち上がる。急いで玄関まで向かう

照「…」

ガチャッ

果たして玄関に辿り着くとほぼ同時、勢い良く宮永家のドアが開かれた

照「…おかえり、咲」

優しい笑顔でおかえりの挨拶を告げ、そっと腕を広げながら、靴も履かずに土間へ降りてゆく。膝を曲げ、目線を妹の高さに合わせる。足が汚れるが知ったことか。それよりも今は…

咲「…ヒッ…ヒック…ヒック…」

照「…また、いじめられたの?」

咲「…」コクン

照「そう。頑張ったね。もう大丈夫だよ」ギュッ

咲「うわああああああああああああああああああああああああん!!」

照「よしよし。もう大丈夫。もう大丈夫。もう怖くないから、大丈夫だよ」ナデナデ

咲「おねえちゃああああああああああああん!!!」

この大切な妹を、慰めてあげなくてはならない。この、最愛の、妹を

照「お姉ちゃんがついてるから。大丈夫だから。大丈夫。大丈夫だよ…」

咲「ええええええええええええええん!!えええええええええええええん!!!ええええええええええええええええええええええん!!!!」

照「…」ギュッ

妹は

咲は、いじめられっこ

臆病で

人見知りで

どん臭くて

いじめられて当然の…いじめられっこ

いじめられ、泣いて帰ってくる咲を慰めるのが、この頃の照の日常

泣き続ける妹を抱き締めながら、いつからこんな事になったんだろう、と考える
深く思い返すまでも無い。そう、あれは咲が中学生になって間もない頃の事だ

4月のある日、照が学校から家に帰ってくると玄関に咲の靴が置いてあったので、先に帰ってきていた妹とおしゃべりをしようと、部屋を訪ねることにした
(中学生にあがって一人部屋を貰って、咲は大喜びしていた)

ノックしてドアを開けて貰おうと手を差し伸ばした瞬間…部屋からすすり泣く妹の声が聞こえたのだ
その瞬間、気付けば部屋に飛び込んでいた。いつドアを開けたのかすら記憶にないくらいだった。今でもはっきりと覚えているのは、部屋の隅で小さくなって泣いている妹の姿
思わず激しい剣幕で何があったのかを問い正し、咲がいじめにあったのを知ったのは、それからすぐの事だった

大した理由など無い。強いて言うなら、ただ弱そうな獲物が目に入ったからいじめる事にしたのだろう。子供のいじめなどそんな程度のものだ
泣きじゃくる妹の前で、ただ呆然と立ち尽くすしか出来なかったその日から、咲と照にとってひたすらに辛い日々が始まった

しばらくして咲が泣き止んだのを見計らい、極力優しい様に声をかける

照「…もう、大丈夫?」

咲「…うん。ありがとうお姉ちゃん」

気丈に答える咲。目は真っ赤で、頬はクシャクシャだ。無理をしてるのがはっきり分かる。照の胸にまたチクリと鋭い痛みが走る

照「…そう」

自分の無力さに目眩を覚える

咲「お姉ちゃんが、慰めてくれたから…」

照「…」

咲「大丈夫…ありがとう、お姉ちゃん…」

照「…」

そういって笑う咲の笑顔が、悲しい

照「…ごめんね、咲」

咲「ふぇ?」

照「私がなんとかしてあげられればいいんだけど…」

咲「…」

無力感に打ちひしがられながら、思わず呟く。一度咲の担任に掛け合った事もあるが、巧妙に行われるいじめを暴く事は、照には出来なかった
照自身がいじめっ子に話を着けることも事も考えたが、逆に照が居ない時にいじめが激化する可能性を考え、それも出来なかった
親に相談するのは、二人とも考えもしなかった。最近両親の仲がギクシャクしているのには気付いている。今余計な問題を抱えさせて、これ以上二人の仲が悪くなるのだけは避けたい

照「ごめんね…ごめん…ごめん…」

だから、強く強く…ギュッと咲を抱き締める。せめて、この子の心の痛みを少しでも和らげられるように

咲「あはは…いたた…痛いよ、お姉ちゃん…」

照「ごめん…ごめん…ごめん…ごめんね、咲…」

咲「お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃん…うええええ…」

照「咲…咲…咲…」

そんな地獄のような日々を送っていた二人に、思わぬ救いの手が現れたのは、それから少し経ってからだった

照「…遅くなっちゃった。咲は、もう帰ってきてるかな」

早足で帰路に就きながら、そんな事を呟く照
友人から遊びに誘われ、断っている内に結構な時間が過ぎていたのだ

最近は咲の為にとなるべく早く帰宅しようとしているので、友達と遊ぶ事も少なくなった
さっきはそれで最近付き合いが悪いと非難を浴びていたところだ

理由を尋ねられても、妹がいじめられているからなど、友人に話せるような内容ではないので、はぐらかして謝るしか無い
ここで適当な嘘を付けないのは照の美徳でも有り、欠点でもあった

照「早く咲を慰めてあげないと…」

ようやく家の前まで辿り着いた。逸る気持ちを抑え、呼吸を整える。殊更ゆっくりと玄関を開け、靴を確認すると、咲の靴が有る。帰ってきてる

照「…すぅー…はぁー…よし」

咲の前では余裕を持って接しよう。ここで自分まで余裕を失っては、咲の心の拠り所が無くなってしまう。そうだ、今、咲には私しかいないのだから…
リビングに咲の姿を確認し、優しく、元気に挨拶の声をかける

照「た、ただいま!咲…」

咲「あ、お姉ちゃん!おかえりっ!」

照「…え?」

咲「えへへ。今日は遅かったね。久しぶりに私の方が早く帰ってきたもんね」

照「あ、そ、そうだね…」

咲「今日も暑かったね。汗かいてない?冷凍庫にアイスが有ったから、持ってこようか?」

照「えっと…」

咲「あ、でもお姉ちゃん、ちゃんと手洗ってうがいした?アイスはその後だからね!」

照「うん…」

咲「うんっ!じゃあ私、お姉ちゃんが洗面所から戻ってくる前にアイス用意しておくから、早く戻ってきてね!」

照「さ、咲…?」

咲「ん?どうしたの?お姉ちゃん」

照「ど、どうしたの…?その…」

咲「うん」

照「なんだか今日は…その…凄く嬉しそう…だけど…」

いつも苛められて帰ってきていた貴女が、今日に限ってなんでこんなに嬉しそうなの?
そんな想いを、どうやって伝えようか迷っていると、咲が察して、いや、実は言いたくて言いたくて堪らなかったのだろう。自分から話してくれた

咲「えへへ。聞いて聞いて、お姉ちゃん!実は今日ね…!」

咲の話は、興奮していた為か、ややまとまりに欠けるものだった

いつものようにいじめっ子にちょっかいを出されて泣いていたら、一人の男の子に助けられた
割りと背も高めのその子は一度も話した事の無かったクラスメートで、放課後に咲がいじめられていた現場に、偶々立ち寄ったらしい

その子は同学年の女子とはいえ複数の悪そうな子達相手でちょっと怖気づいていた様で、「いじめ、カッコ悪い。by前園」と結構ふざけた感じで注意してくれた
いじめっ子達もその間抜けな注意に毒気を抜かれたのか、それとも男子相手では分が悪いと思ったのか、引っ張っていた咲の髪を離してスゴスゴと退散していった
余りにもあっさりとしたその撤退に、咲自身も拍子抜けしてしまったくらいだ

それよりも、いじめっ子達が完全に立ち去ってから小さな声で「やーいやーい!弱い者いじめしてるんじゃねーよ、この臆病者どもー!」と急に強気?な態度で悪口を言い始めた男の子の姿が余りに滑稽で

咲は、泣きながら大笑いしてしまったという

京太郎「ああー!何笑ってんだよ、人が折角いじめっ子ども追い払ってやったのに!」

咲「あはははは!グスッ。ご、ごめんなさい!け、けど、だって、みんな居なくなってからそれって…あははは…!グスッ…ヒック」

京太郎「せめて泣くのか笑うのか、はっきりしてっ!」

咲「…ヒック…ヒック…ご、ごめんなさ…ヒック」

京太郎「…訂正。やっぱ笑ってもいいです」

咲「うぇ…ご、ごめん…なさ…ヒック…ヒック…うええええ…」

京太郎「おいおいおい。なんか、俺が泣かしたみたいになってるし…勘弁してくれよ。ダチに見つかったら俺が殺されちまう…」

咲「ううん。ごめんね。須賀君は悪くない…ありがとうね…ありがとう…ありがとう…」

京太郎「…」

咲「ありがとう…ありがとう…ありがとう…ありがとう…」

京太郎「…いじめられてたのか」

咲「…」

京太郎「そっか…」

咲「…」

京太郎「…あー…」

咲「…」

京太郎「…その、なんだろ」

京太郎「…あ、そうだ。あいつらって、クラスの連中だよな」

咲「…うん」

京太郎「…だよな」

咲「…うん。あと、隣のクラスの子も何人か。中学の時一緒だったんだって」

京太郎「はぁ。参ったなぁ。まさか自分のクラスでいじめが有ったとは。こえーなー」

咲「…」

京太郎「あ、悪い。えっと、別にお前が悪いって言ってるんじゃ無いぞ?」

咲「うん…」

京太郎「えっと…宮永だっけ」

咲「…うん」

京太郎「…ま、元気だせ」

咲「…」

京太郎「…」

京太郎「しょ、小学校の頃とか、こんなの無かったんだけどなー…」

咲「そうなの?私の学校は小学校でも有った」

京太郎「…お前もいじめられてた?」

咲「ううん。…私は、怖くて見てるだけしか出来なかった。…下手に手を出したら、私もいじめられるんじゃないかって…」

京太郎「そ、そうなのか」

咲「うん。…誰も助けてあげれなくて…遂にその子、転校しちゃった」

京太郎「おお、ヘヴィ…」

咲「…罰が当ったのかな。私があの時、あの子を助けてあげなかったから、私もいじめられるようになったのかな」

京太郎「…」

咲「…だからみんな、私の事助けてくれなかったのかな」

京太郎「あー…」

京太郎「いや、ただ単に知らなかっただけじゃね?」

咲「…え?」

京太郎「いや、だって。現に俺、今助けたじゃん」

咲「…須賀君みたいな人、中々居ないよ。私も須賀君みたいに勇気が有ったら…」

京太郎「有っても、宮永じゃどうにもならねーだろ」

咲「…だよね」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「えっと…ま、まあ、今回は女子相手だったし…俺でもどうにかなりそうかなって思っただけだし」

咲「…」

京太郎「う、運が良かったんだよ。もしあれが番長グループみたいのだったら、俺だってどうしてたかわかんないし…」

咲「…番長グループなんて有るの?この学校」

京太郎「…いや、流石に無いでしょ」

咲「だよね」

京太郎「…お前、結構ツッコミ上手いな」

咲「ごめん」

京太郎「…と、とにかく!怖いものは怖いんだ。そうやって、いじめられてた子を気にしてやれるだけ、お前は優しくていい奴なんだろ」

咲「けど…結局その子は…」

京太郎「その子を救うためにやりようとかは有ったのかもだだけどさ。だからって、宮永みたいな子にそんな、他人のために全てをかけていじめっ子と戦えなんて、言えないだろうし…」

京太郎「大体、その子だって転校して転校生デビューしてるかもだろ!」

咲「だったらいいけど…」

京太郎「だったら、その先はその子次第だ!あー!もうこの話やめやめ!暗い話しても良い事無いって!明るい話しようぜ!」

咲「明るい話って…」

京太郎「例えば、最近したおもしろい遊びとか!」

咲「最近…いじめられるから、なるべく早く帰るようにしてた。お昼休みとかは、教室で寝たふりして…」

京太郎「ですよねー!俺が悪かったですすみません!!」

咲「…」

京太郎「あう…」

咲「…えっと…」

京太郎「…うん」

咲「す、須賀君は…どんな遊び…とか?」

京太郎「…あー…そうだなー…」

咲「…」

京太郎「…例えば、この間の金曜に生物の授業で、先生が川の生き物の話してたろ。ほら、トビケラの幼虫がどうのって」

咲「うん。ザザムシの事だね。長野くらいなんだよね、あれ食べるの。たまにスーパーに置いてるけど、気持ち悪い…」

京太郎「…次の日にダチと川に行って釣りしてたんだ。そこでなんとなく石ひっくり返したらザザムシが居て…」

咲「…まさか、食べた?」

京太郎「じゃんけんして負けたほうが食べるって話になったんだけど、食べ方が分からなくて…取り敢えず揚げれば食えるだろうって焚き火起こして素揚げしてみたら、爆発した」

咲「なにそれ怖い」

京太郎「いや、マジで大惨事だったぜ。飛び散ったなんかの汁と油が驟雨の如く降り注ぎ横殴りに俺ら…ああ、全部で4人いたんだけど…を襲ったから」

咲「いきなり難しい言葉使い出した」

京太郎「そんで慌てて一旦避難しようとしたら、ダチが袖に油入れた小鍋引っ掛けて」

咲「大事件じゃん」

京太郎「それをかわそうとしたら俺、ジャケットに火が燃え移る」

咲「うわ」

京太郎「ダチ爆笑」

咲「爆笑なんだ」

京太郎「慌てふためく俺に、ダチが叫ぶんだ。川に飛び込め!!」

咲「脱ぐって選択肢は無かったの?」

京太郎「もう必死で」

咲「なるほど」

京太郎「で、飛び込んだはいいんだけど、水深がメチャクチャ浅くて、膝までしか濡れなくて」

咲「駄目じゃん」

京太郎「また友人爆笑」

咲「愛されてるね」

京太郎「どうすんだよこれ!!って半切れで叫んだら、全員でバケツに入った水ぶっかけて来やがってさ」

咲「最初からそれで良かったよね」

京太郎「そのあとでみんなして俺を抱えて一番水深深くて急流なとこに投げ込みやがった」

咲「男の子って凄い」

京太郎「為す術もなく流される俺」

咲「自然の脅威だね」

京太郎「10mもせずに岩に引っかかる俺」

咲「自然の優しさだね」

京太郎「必死こいて岩に手を着いて、ビショビショの服でみんなのとこに戻ってさ」

咲「よく風邪ひかなかったね」

京太郎「その後はもう乱闘よ。全員川に流してやったぜ。俺も流されたけど」

咲「私のいじめって、なんだか大したこと無かった気がしてきた」

京太郎「ちょっとは気が楽になったか?」

咲「え…もしかして、そのために…」ドキッ

京太郎「いや、ちょっとこの間の武勇伝を話したかっただけ」

咲「ぷっ…」

京太郎「…ま、ちょっとでも喜んでくれたんなら…」

咲「あはははははははははは!!」

京太郎「…」

咲「あははははははっはははははははははははははは!!けほっ!!ふはっ!げほげほ…っあはははははははははは!!」

京太郎「…」

咲「あははははははは!!須賀君っておもしろっ!!あはは!!あはははははははは!!」

京太郎「お、おう…」

咲「くふっ…あはは!あはははははははは!!ご、ごめ…ツボに入った…あははははは!!」

咲「はぁはぁ…」

京太郎「落ち着いた?」

咲「うん」

京太郎「そっか」

咲「うん……………………きゅふふふふ…」

京太郎「変な忍び笑いしやがって…ま、いいや。宮永って、結構明るい奴だったんだな」

咲「え?」

京太郎「お前がこんなにコロコロ表情変えてるの、初めて見た」

咲「そう…かな?」

京太郎「ああ。今のお前くらいアグレッシブな奴相手なら、誰もいじめには来ないだろ。普段人と話す時もそれくらい明るいキャラでいけよ」

咲「…けど、友達居ないし…誰とでも仲良く話せる訳じゃ…」

京太郎「…もしかして、宮永って人見知り?」

咲「…」

京太郎「…っぽいな」

咲「…うう。他人とお話する時は、どうしても気構えしちゃて…」

京太郎「…の割に、なんかお前俺相手には結構息合うよな。きもーち毒舌だし」

咲「だ、だって…なんか、その…」

京太郎「?」

咲「なんか、須賀君って、その、話やすいし…」

京太郎「初めて言われた」

咲「そう…?」

京太郎「…うーん。でも、確かにな。俺も宮永とは話ししやすいって言うか…テンポが合うんだよな」

咲「…」

京太郎「とても初めて会話したとは思えない、むしろ長年の知り合いのような…」

咲「…」

京太郎「…ああ、良い事考えた」

咲「え?」

京太郎「幼馴染」ビシッ

咲「は?」

京太郎「宮永、今から俺の幼馴染設定な」

咲「はい!?」

京太郎「実は、小さい頃から面識が有ったのです」

咲「須賀君、頭大丈夫…?」

京太郎「殴るぞ」

咲「ごめん」

京太郎「だから、俺の知り合いはお前には初めて会った人間でも、ただの他人じゃ無い」

京太郎「逆に、俺の知り合いから見ても、へー幼馴染居たんだー。じゃあこれから仲良くしてねー的な?」

咲「そう上手く行くかな…」

京太郎「大丈夫だって。俺の知り合い馬鹿ばっかだし。…それに、女の子の幼馴染って欲しかったし」

咲「それが本音!?」

京太郎「やべっ!!」

咲「…」ジーッ

京太郎「い、いやいや!そ、そそそそそんな事有りませんぞ!?」

咲「…ふふっ」

京太郎「…宮永?」

咲「…幼馴染だったら、いじめっ子から守ってくれる?」

京太郎「…」

咲「幼馴染だったら…私が泣いてる時、助けに来てくれる?」

京太郎「…」

咲「幼馴染だったら、私が困ってる時…ピンチの時…駆けつけてくれる?」

京太郎「…それって、幼馴染ってより、ゲームのお姫様と騎士の関係じゃ…」

咲「…あれ?そうかな…」

京太郎「…ま、いいけどさ」

咲「…」

京太郎「幼馴染だからな。守ってやるよ」

咲「…じゃあ、私達、今日から幼馴染だ」

京太郎「…なーんか、力関係が理不尽なことになってる気がするんですけど…」

咲「…ふふっ♪」

京太郎「…ま、いっか。それじゃあ、これからよろしくな。『咲』」

咲「!!」

京太郎「…ん?」

咲「ううん!よろしく!『京ちゃん』!!」

京太郎「うげ、京ちゃん?なんだその間抜けっぽいあだ名。初めて言われたぜ」

咲「えー。いいじゃん。可愛いあだ名だよ!」

京太郎「だって、なんだか恥ずかしい…」

咲「いいじゃんいいじゃん。京ちゃん京ちゃん京ちゃ~ん♪」

京太郎「うおーっ!なんかむず痒い!」

咲「へっへっへ~」

京太郎「覚えてろ、こうなったらこっちにだって考えがある」

咲「な~に?どうしたの、京ちゃん」ニヤニヤ

京太郎「ん。なんでもねーよ。それより、もう下校時間だ。帰らねーの?

咲「あ、そっか。そうだね。それじゃあ私はそろそろ…」

京太郎「」ニヤリ

京太郎「姫、家までお送りいたしましょうか?」

咲「」ピシッ

京太郎「」ニヤニヤ

咲「…はい?」

京太郎「姫」

咲「…ひ…め…?」

京太郎「はい。お姫様」

咲「あ、あううううう…」カアアアアア

京太郎「ぷぷっ」

咲「な、ななななななあ…」

京太郎「あははははは!なーにそんな顔真っ赤にしてんだよ!」

咲「なっ!なに言ってるのー!」

京太郎「あはははは!照れてら。可愛いぞー、ひめー」

咲「~~~~~っ!!」プルプル

京太郎「お?どうした?ひーめ!ひーめっ!宮永姫!」

咲「うわあああああん!もうっ!もうっ!もうっ!もうっ!」バシッバシッバシッ

京太郎「あはははは!いてっ!いてててて!こらやめろ姫!」

咲「う~~~~っ…」

京太郎「ん?どした?ひ…」

咲「うわああああああああああああああああん!京ちゃんのばかあああああああああああああああああああ!!」ダッ

京太郎「あー…やりすぎたか」

咲「いじわるーーーーーーーーーーーーーーーー!!」タッタッタッタ…

京太郎「咲ーーーーーー!気を付けて帰れよーーーーー!!また明日なーーーーーーーーー!!」

咲「…と、こんな感じ」

照「そっか。良かったね、咲…」

咲「うん!」

照(良かった…うん。本当に良かった…咲に、味方が…)

咲「えへへへ。ちょっとおっちょこちょいでイジワルだけど、本当格好良かったんだよ」

照「そう…良かったね…良かった…良かった…」

咲「お姉ちゃん…?」

照「うっ…うっ…うっ…」ポタ…ポタ…

咲「お姉ちゃん?なんで泣いてるの…?」

照「良かったよぉ…本当に良かったよぉ…嬉しい…こんなに嬉しいのは生まれて初めてだよぉ…本当に…良かった…」

咲「お姉ちゃん…」ギュッ

照「うええええええええええええええええええええええん!!」

咲「…ありがとう、お姉ちゃん。…私のために泣いてくれて」

照「えええええええええええええええん!!えええええええええええん!!!ええええええええええええええええええええええええええええええん!!」


その後、イジメはぱったりと止んだ。例え傍に京太郎が居なくてもだ。要は切掛だったのだ
いじめっ子に怯えずに立ち向かう意志さえ見せれば、たった一握りの勇気さえ示せば、それだけで打ち勝てたのだ

その日から咲は少しづつ変わってゆく

京太郎を通じ、いつしか友人が出来た
その友人から紹介され、更に友人が出来た
そして遂には、咲は自分から友人を作ることにさえ、成功したのだ

泣いてばかりいた弱虫は、いつしかその名の通り、花の咲くような満面の笑顔を浮かべるようになっていた

まるで今までの分を取り戻すように、今、彼女の前には沢山の「楽しい事」ばかりが広がっている

そして

だから

だから

咲は、気付かない

気付かなかったのも、仕方ない

仕方ない

仕方ない

咲は、悪くない

悪く、ないんだ…

数ヶ月後、咲はすっかりクラスに馴染み、家でも照に嬉しそうに友人の話をするのが日課になっていた
国語の点数で良い点を取った事、次から体育の授業がマラソンなので嫌な事、クラスで図書委員に立候補した所、満場一致で当選できた事、休み時間に友達としたおしゃべりの事…
嬉しかったことも、楽しかった事も、嫌な事でさえも、目をキラキラと輝かせながら、大好きな姉に語る咲

特に、『京ちゃん』の話題では、その目の輝きが一層増し、照には眩しいくらいだった

穏やかな気持で咲の話を聞き、相槌を打つ照


咲「それでね!それでねっ!京ちゃんったら…」

咲「その時、京ちゃんってば…」

咲「そうしたら京ちゃんが…」

咲「京ちゃんのお陰で…」


照「ふふ。咲は、本当に京ちゃんの事が大好きだね」

咲「んなっ!」ビクッ

照「ははは」

たまにからかってやると、ゆでダコのように顔を真っ赤に染める妹が愛しい

咲「…」

照「咲?」

咲「…私、将来は京ちゃんのお嫁さんに…」

照「そ、そう…か。あはは」

ガチ過ぎた

咲「そ、その…お姉ちゃん?あの、やっぱ、付き合う時って、やっぱり、その、わ、私から告白した方がいいのかな…」

照「…ねえ、咲」

咲「うん?」

『京ちゃん』

咲にとってのヒーロー

照「…須賀君の事、ちゃんと捕まえておかないと駄目だぞ」

咲「うん!!」

ならば、当然照にとってだって、ヒーローだ

照「そうだ。今度家に呼んだら良いよ。お姉ちゃんにも、須賀くんを紹介して欲しいな」

咲「もちろんだよ!!」

…最愛の妹を救ってくれたのだから

照「じゃあ、明日学校が終わったら連れておいで」

咲「えー!そ、そんなに急に!?こ、心の準備が…」

照「ふふ。そんなこと言ってていいの?」

咲「?」

照「なるべく早く彼氏にしちゃわないと、誰かに取られちゃうかも」

咲「っ!それは嫌!!」

照「でしょ?だったら、少しでも早く、沢山、仲良くならないと。…ね?」

咲「うん…」

照「大丈夫。咲は可愛いよ」

咲「…」

照「私が保証する。がんば」

咲「お姉ちゃん…」

照「…ね?」

咲「…ん。じゃあ、明日京ちゃんを連れてくる」

照「うん」

咲「けど、お願いがあるの、お姉ちゃん」

照「何?お姉ちゃんに出来る事なら、なんでも聞いてあげる」

咲「京ちゃんにお姉ちゃんを紹介したいから…明日は、早く帰ってきて」

照「…」

咲「最近、お姉ちゃんたまに遅いから…一応、お願い」

照「…」

咲「…大好きな人を、大好きなお姉ちゃんに紹介したいから。大好きなお姉ちゃんを、大好きな人に紹介したいから…だから、明日は早く帰ってきて欲しいの」

照「…」

咲「…駄目?」

照「…うん。わかった。なら、明日は急いで家に帰るよ」

咲「本当!?」

照「うん。…ふふ。大好きな妹の、大好きな人だもん。紹介してくれるのを楽しみにしてるよ」

咲「やったあ!ありがとう、お姉ちゃん。…私、頑張るね!」

照「うん。頑張れ、咲」

咲「…うう。けどなんか緊張してきた」

照「はは。大袈裟だよ」

咲「むうー!だってだって!」

照「咲」

咲「…どうしたの?お姉ちゃん」

照「…」

咲「?」

照「お姉ちゃんは、いつだって咲の味方だから」

咲「…ありがとう。けど、お姉ちゃん。私だって、いつだってお姉ちゃんの味方!」

照「…そう。ありがとう、咲」

咲「えへへ。あ、そうだ。あとね、お姉ちゃん。もう一個お願い」

照「ん?」

咲「今日、お姉ちゃんと一緒の布団で寝てもいい?」

照「…またか。中学生にもなって咲は甘えん坊だな」

咲「えへへ。だって、お姉ちゃんあったかいんだもん」

照「ふふ、仕方ないな。それじゃあ、一緒に寝ようか。お風呂に入って着替えておいで。私はその間に宿題を終わらせるから」

咲「うん!じゃあ、お風呂入ってくる!」

照「ああ、行ってらっしゃい」

照「…」


翌日、咲は約束通り京太郎を家に連れて来た

自慢の姉を紹介する、と言って

だがしかし、その日、午後6時に京太郎が家を出るまでに照が帰ってくる事は無かった

翌日放課後
咲が京太郎を家に誘っているのと同時刻

照(授業、終わった…!!)

帰りの挨拶と共に、弾かれたように椅子から立ち上げる照

照(早く、帰らなきゃ。今日は咲が『京ちゃん』を連れて来るんだ!早く…!早く帰らなきゃ!!)

授業道具はホームルーム中にこっそりと鞄に詰め終わっていた。そそくさと教室の後ろ側のドアへと向かう

照(急げ…急げ…急げ…急げ!!)ガラッ

教室のドアを開ける。さあ、あとは廊下を一目散に駆けるだけ…

「はーいちょっと待った、宮永さん」

…肩を強く掴まれた

照「痛…」

「あ、ごめんごめーんねー。けど、そんなに急いで帰ることないじゃんさー」

「そうそう。私らとー遊んでこうよー」

「あんたの付き合いが悪いから、こうしてわざわざ無理矢理にでも遊びに誘ってやってるんだよ。喜べよ」

「いつもの遊び場に行こうか。屋上ね」

照「…離して」

「あ?」

照「…お願い。今日はどうしても大切な用事があるの。明日だったら付き合うから…お願いだから、今日は許して」

「ざけんなっつーの。アンタの都合なんて知ったこっちゃねーんだよ」

「今日は私らの機嫌が悪いの。そんだけだから」

「遊び道具が生意気な口聞いてんじゃねーぞ」

照「…」

「なに?その目」

「調子にのってるんじゃ…」

照「っ!!」バシッ

「うわっ?」

照「…!!」ダッ

「逃げた!!」

「このガキ…!捕まえろ!」

「こいつ!」ガシッ

照「きゃっ!離して!お願い!お願いだから!!」

「うっせー!おい!早く連れてくよ!」

照(なんで…)

「なんだよお前ら!こっち見んな!」

照(なんで、いつも誰も助けてくれないの…?)

照「いやっ!」

「うぜえ!」パンッ

照「…っ!」

「黙った?よーし、それじゃあ行っくよー」

「ったく。普段抵抗なんてしない癖に…おもちゃの分際で…」ブツブツ

そう

少し前から、照はいじめられていた

運動は出来ないが、頭が良く、器量も優れ、人格者

そんな照が、友人達から距離を置き(実際には当時いじめられていた咲のために家に早く帰るようになっただけだが)、孤立した

あんなにムカツク女が一人ぼっちだ

なら、今の内にいじめてしまえ

そうして少しずつクラスの不良達にいじめられ始めた照は、徐々に友人達から本当に距離を取られ始め

今では、完全無欠のいじめられっ子

そして、いつしかその不良達の彼氏がカラーギャングだと言う噂が流れ始めた頃

照の味方は誰も居なくなっていた

まるで、いつかの妹のように

不良達にサンドバックにされながら、照は考える

照(ごめん、咲。お姉ちゃん、今日、間に合いそうにない…かも…)

髪を掴まれながら、考える

照(ごめんね。ごめんね。咲。お姉ちゃん、馬鹿だよね…昨日あんな事言っておいて…ごめんね…)

腹を殴られながら、考える

照(折角咲が勇気出してくれたのに、ごめんね。『京ちゃん』と、仲良く遊んでてね。お姉ちゃんのせいで気まずくなったり、しないでね…)

倒れ伏し蹲りながら、考える

照(…はは。ごめん…ごめんね。ごめんね。咲…お姉ちゃん、最悪だ)

背中を蹴られながら、考える

照(…お姉ちゃん、咲が…ちょっと、羨ましいって思っちゃった…)

考えるのは、絶望に潰れそうな自分を支える唯一の希望

大切な妹がくれた、不確かな希望

『いつか、誰かが私を助けてくれないかな』

『いじめっ子を追い払って、私をここから助けだしてくれる人が』

『泣いてる時に助けに来てくれて、困ってる時、ピンチの時に駆けつけてくれるゲームに出てくる騎士みたいな人』

『友達を作ってくれて、笑わせてくれて、勇気をくれる人が…」

『いつか、私にも『京ちゃん』が現れてくれないかな…』

キリが良いので今日の分終わりにしまっする

その日、照が家に帰り着いたのは、夜の8時を過ぎてからの事だった
結局、不良達が照への暴力に飽きて彼女を開放したのは、午後6時半を過ぎた後

不良達も心得たもので、面倒を避ける為に顔などの傍目に見える部分に痣を付けることはしないでくれていたが
鍛えていない照の身では、殴られたダメージが抜けて歩けるようになるまで、そしてその足で家まで帰り着くまでには、1時間強の時間を有したのだ

照「咲…咲…」

未だ痛みの引かない身体を引きずって、うわ言のように妹の名を呼び、帰宅する照

どういう訳か、日の落ちたこの時間にも関わらず、家の中は暗く、光が漏れてこない

照「二人とも、まだ帰って来てないのかな…」

最近帰りの遅い両親が、今日もまだ帰宅していないのだろうかと考える

照「…けど、咲は今日、『京ちゃん』を家に連れて来てるから家に居るはずだし…」

ズキン。頭に鈍い痛みが走る。思考が上手く回らない。まあいいや。早く家に帰って、ゆっくり休もう。ズキン。ああ、お腹も痛い。思いっきりパンチされたし…

照「…畜生、あいつらめ…」

不良達のニヤニヤとした厭らしい笑いが頭から離れない。ズキン。鈍い痛みが増してきてイライラする
ああ、なんてどうしようもない奴なんだ私は。咲との約束を破っておいて、こんな怖い顔をして家に帰るつもりか
こんな、こんな…ああ、マズい。駄目だ。お腹が痛い。頭が回らない。イライラする。ズキン。痛い。腹が立つ。痛い。痛い。痛い。ズキン…

ガチャッ

扉が開く。痛い。マズい。咲だ。急げ。平気な顔を作れ。ズキン。ああ痛い…痛い…疲れた…痛い…

照「…」

咲「あ、お姉ちゃん…」

照「…咲」

咲「…おかえり」

照「…ごめんね。遅刻しちゃった」

咲「…」

照「きょ、『京ちゃん』は、連れて来れた…の?」

咲「…うん。もう帰ったけど」

照「そっか…」

咲「…うん」

照「そっか…うん。そっか……」

咲「…ねえ、お姉ちゃん」

照「うん?」

咲「…どうして遅れたの?」

ズキン



照「…」

咲「…」

照「…」

咲「…」

沈黙が痛い。重い。息苦しい。この沈黙は、咲が怒っている証だ。こうなった咲はしつこい。なんとか誤魔化さなきゃ。それに、今日の結果も知りたいし

照「それは…」

咲「それは?」

照「…」

咲「なんでそこで黙るの?」

照「えっと…」

ああ、けどマズいなこれは。頭とお腹が痛くて、思考が全然まとまらない。咲に真実を知られるのだけは避けたいし…

照「その…」

咲「なにさ」

けど、どうやって言い訳しよう。咲は人の気持ちには鋭い子だ。下手なこと言ったらすぐに感づかれちゃうよ。こんな事なら帰る前に言い訳を用意しておくんだった

照「あの…」

咲「言えないような事なの?」

照「いや、そういう訳じゃないんだけど…」

咲「なら早く教えてよ…!!」

ああ、マズい。マズい。咲が苛ついてるよ。ごめんね咲。だけどお姉ちゃんも今結構いっぱいいっぱいなの。早く横になって痛いのを回復させなきゃ…

咲「なんで黙ってるの!!」

ああ、咲がなにか言ってるよ。怒ってる。当然だよ、私が悪いんだから。ごめん咲。ごめんね、咲。駄目なお姉ちゃんでごめんね。本当にごめんね

咲「お姉ちゃん!!」

いじめられるのって、こんなに辛いんだね。痛いんだね。ごめんね、咲。お姉ちゃんが悪かったよ。あの時、咲がいじめられていた時、私は強引にでも咲を助けるべきだったんだ

咲「…お姉ちゃん?」

私が助けてあげるべきだったんだ。あの時、咲がいじめられてるって知った時、その瞬間にでも、いじめっ子の家にでも殴りこんで、取っ組み合いしてでも、咲をいじめから救うべきだったんだ

咲「お姉ちゃん!」

だって、こんなにも、こんなにも、いじめは辛いものだったんだから。痛いものだったんだから。咲の立場を思いやってる風に見せかけて、結局私は自分が可愛いだけだったんだ
最愛の妹を見殺しにして、『京ちゃん』が現れなきゃ、咲は未だにいじめられてて、私は友達と仲良くやってて、それで、それで…

……………そ れ で 私 は

咲「お姉ちゃん!!!」

ドサリ


目が覚めた時、照は自室のベッドに眠っていた
傍には泣きじゃくる咲の姿。…取り敢えず、気付いたことを知らせようと声をかける

照「…咲」

咲「お姉ちゃん!?気付いた!良かった!」

照「…私、は…」

咲「心配したんだよ!?いきなり倒れたから…大丈夫?」

照「ん…あいたたた…」

起き上がろうとして身体に痛みが走る。起き上がるのを断念して、もう一度横になる
…と、そこである事に気付く

照「…寝間着になってる。咲が着替えさせてくれたの?」

咲「…うん。汗が凄かったから」

照「…」

咲「…」

照「…って、言う事は…」

咲「…うん」

照「…」

咲「…」

照「あの、さk…」

咲「…あの、お姉ちゃん、その…み、見ちゃった…んだけど…」

照「…」

咲「…」

照「…」

咲「…お、お腹とか…青くなってて…」

照「…」

咲「す、すり傷とかも、いっぱい有って…」

照「…咲」

咲「そ、その…み、見覚えって言うか、その…経験が有る痣って言うか…」

照「…」

咲「…お姉ちゃん、いじめられてるの?」

照「…」

咲「なんとか言ってよ!」

照「咲」

咲「なんで!?いつから!?あんなに友達がいっぱいいたお姉ちゃんが!なんでいじめられてるの!!?」

照「咲!」

咲「わけわかんないよ!私みたいに友達の居なかった子ならまだわかるとして、お姉ちゃんはクラスの中心だったじゃない!ちょっと前までは友達だっていっぱい連れて来てて!!」

照「咲!」

咲「そういえば、お姉ちゃんが友達連れて来なくなったの、私がいじめられてるのをお姉ちゃんが知ってからだよね!?ずっと気になってたの!もしかして、私がいじめられてたのに関係してるんじゃ…」

照「咲!!!!」

咲「っ!!」ビクッ

照「…関係ないよ。それは」

咲「…嘘」

照「本当」

咲「嘘だよ!!だったらなんで目を伏せたの!?お姉ちゃんの嘘を吐く時の癖…」

照「咲、質問に答えて」

咲「…っ」

照「…お父さんとお母さんには、連絡した?」

咲「…うん。した。二人ともすぐ帰るって」

照「なんて言って?」

咲「えっと…お、お姉ちゃんがいきなり倒れたって…」

照「そう。なら、咲。口裏を合わせるんだよ。私は貧血で倒れたの。いい?いじめの事なんて絶対言っちゃ駄目」

咲「で、でも…」

照「咲だってわかってるでしょ?今、お父さんとお母さんは凄く難しい状態にあるの。二人に余計な心配をかけちゃ駄目」

咲「け、けど、お姉ちゃん、その痣けっこう酷いよ…?私の時なんかと比べ物にならない位酷い怪我。最近たまに帰ってくるのが遅いのって、もしかしていじめにあってたからなんじゃ…」

照「…咲は賢い子だね。そのくらい賢いなら、わかるでしょ?今二人に私がいじめにあってるなんて知られたら、また喧嘩になっちゃう」

咲「けど!!」

照「…最悪、二人が離婚しちゃうかもしれないんだよ!!!!」

咲「…え?」

照「…」

咲「…り、りこ…ん…?」

照「…っ」

咲「り、離婚って…な、なにそれ…なんでお姉ちゃんがそんな事…」

照「…まだ決まったことじゃないけどさ。…二人が、離婚の話ししてるの、この間聞いちゃった」

咲「そ、そんな…」

照「…ねえ、咲。今私がいじめられてるなんて知られちゃったらさ。…私をいじめから遠ざけるとかそんな口実にされて、二人が別居なんて事にも…」

咲「そ、それ…は…」

照「…それは嫌でしょう?」

咲「い、嫌だよ!そんな…そんな事…」

照「じゃあ、やる事は一つしかないんだ」

咲「…」

照「…ね?」

咲「お姉ちゃん、大丈夫なの…?」

照「大丈夫だよ。今までは咲の言ってたように、私は人気者だったんだ。こんないじめ、一過性の物だよ。そうだ。はしかみたいなものだよ」

咲「…」

照「それより、京ちゃんとは、どうだったの?」

咲「へっ!?」

照「ふふ。うちで二人きりだったんでしょ?なんか素敵な事なかったの?」

咲「な、なんにもなかったよ!いきなり何言ってるのお姉ちゃん!」

照「ははは。何だ残念。咲、なら、もう一回連れておいでよ。今度はいじめにあってじゃなくて、普通にすっぽかしてあげるから」

咲「へ?」

照「二人っきりのチャンスはあんまりないかもよ?」

咲「~~~~~~~~!!」ボッ

照「あはは。顔真っ赤だ」

咲「もう!お姉ちゃんのいじわる!もう知らないんだから!!」

照「ごめんごめん。…さ、それじゃあ、咲もそろそろ寝る準備しておいで。お母さんたち帰ってきたら、私から説明はしておくから」

咲「…」

照「咲」

咲「…うん。わかった」

照「いい子だ」

咲「…」

照「心配しないの」

咲「…」

照「…ね?」

咲「…うん。わかった」

照「ん。じゃあ、おやすみ。咲」

咲「…」

咲「…おやすみ。お姉ちゃん」タタタタタ

照「…」

照「…ふう」

照「…」

照「…ごめんね。咲」


こうして、日常は守られた。それは子供たちが家族の離散の危機を防いだ事を意味し、同時に照の受難の日々が続く事も意味する
いじめは続く。受難は続く。万人に悪者をやっつけてくれる都合の良いヒーローが駆けつけてくれるなんてお伽話は無い

『京ちゃん』は現れない

照はいじめられ続ける

いじめは次第にエスカレートし、照は、次第に精神を病み始める。イライラすることが増え、性格も捻くれ始めて来る

やり場の無い怒りが彼女自身を飲み込み始め、次第に周囲への態度が変わり始める

自分の生まれた土地が憎い。周囲の人間が憎い。今の内に精々喜んでおけ。いつか必ず見返してやる、この田舎者共め…

そんなある日、照は遂に出会うのだ

彼女にとっての救いの神に

ヒーローに

彼女だけの、『京ちゃん』に

おやすみ

それは、ある秋の放課後の出来事だった

この日、照は教室の掃除当番で、いつものように誰とも会話する事無く、黙々と掃除を終わらせてすぐ、そっと消えるように教室を出た

今日は不良達は昼から何処かに遊びに行ったのか姿を見せず、照にとって久しぶりの恐怖を伴わない幸運な数時間を味わえた。無事に一日を終えられた事にほっと一息を吐く

とは言え、既にこの教室には彼女が友人と思える人間は居ない

自分を不良達からのスケープゴートにして青春を謳歌する同年代の人間達を心の底で呪いながら、帰宅の準備を早々に済まし教室を後にする

掃除で遅れた分、早く帰りたい。この腹立たしい同年代共の顔を見ずに住む場所へ。唯一の味方が居る場所へ

一刻も早く、帰りたい

そう考え、近道をしようと大通りの公園を通り抜けようと考えたのが悪かった

「おっ。宮永じゃん」

「本当だ」

照「っ!?」

照は知らなかった。その公園が最近、不良達の溜まり場になっていた事を

「馬鹿な奴だねぇ。うちらがこの辺で遊んでんの、知らなかったんだ」

「いじめて欲しくて来たじゃないの?いじめられ過ぎてドMに目覚めたとか」

「けけけけ!きもっ!」

照「……」スッ

「おい、どこ行くんだよ」

「無視しないでくれますぅ~?宮永さん」

ニヤニヤと不快な笑みを浮かべ、照を四方から囲む4人の不良達。随分と手馴れている。大方こうやって弱そうな獲物を囲ってカツアゲでもしていたのだろう

照「…どいて」

「ああ?」

「何言ってんのコイツ」

イライラが爆発し、勢い余って強い口調が出てしまう。言った瞬間にしまったと思った

「何偉そうな口利いちゃってる訳?」

「学校外だから殴られないとでも思ってんの?」

「調子のんなよ」グイッ

照「あっ…!」

案の定、すぐに実力行使が来た。4人の内一人が、徐ろに照の髪を引っ張ったのだ。慣れた痛みだが、思わず細い悲鳴が出てしまう。…悔しい

「ノコノコいじめられに来やがって。丁度いいや。金よこせよ。恵まれない子供達に愛の募金ってやつ」

照「やだ…!」

「この雑魚が!反抗してるんじゃねぇよ!」グンッ

照「あぐっ!?」

髪の毛を掴んだまま振り回される。プチプチと何本か髪が抜ける音と、激痛が走る

そこが限界だった。今日は久しぶりにいじめられない筈だったのに。早く帰って咲とゆっくりお話する筈だったのに
自分の情けなさに腹が立つと同時に、遅ればせながら目の前の4人に対する怒りが鎌首をもたげてきた

照(なんで私が、こんな底辺みたいな屑共らにいいようにいじめられなきゃいけないんだ…!!)

照「やめてよっ!!」バシッ

「うわっ!?」

「こいつ!!」

照「も、もうやめてよ!!どっか行ってよ!!なんで私をいじめるの!!!他の人でもいいじゃない!!!」

「うるせえ!お前がムカツクからいじめるんだよ!!」

「理由なんかあるか!!」

照「いい加減にしてよ!!!」

何を言っているのかよくわからなかった。口から出るのは、今まで腹の底に溜まっていた黒く卑屈な感情。憎悪。自分でも驚くぐらい醜い言葉が次々に飛び出す

照「ムカツクって言うなら、他のクラスの奴らだってムカツク奴らいっぱい居るでしょ!?私なんてもう貴方達に逆らったりもしてないよ!?他の人をいじめてよ!!」

「はぁ?何言ってんだコイツ」

照「どんなに殴られても、いじめられても!今まで私、貴方達にそんな気に触るほど反抗したことあった!?敵対したことあった!?」

照「お金だってそんなに持ってないし!いじめる意味無いじゃない!!」

照「お金欲しいならもっとお金持ってる子にたかってよ!ストレス解消したいなら、もっとなんの取り柄もないような弱い子いじめてよ!!」

照「私『達』ばっかり狙わないでよ!!」

「うっぜ。何だコイツ」

「顔面行っとく?」

「いいね。やろやろ。最近コイツ殴られてもスカした顔する様になってきたから、生意気だったんだよね。いきなりキレられてマジムカツクし」

照「っ!!」

照(なんで…!どうして…!どうして私達ばっかり、こんな目にあうの!?私ばっかり不幸な目に会うの!?なんで!?どうして!!?)

「おい、宮永」

照「な、なに…?」

「どうしてお前をいじめてるか教えてやろうか」

照「…」

「お前が『お前』だからだよ。特に理由なんて無いの。強いて言うなら、浮いてるからかな?誰からも距離があるから、いじめやすいんだよ」

照「…っ!!」

「ねーねー。後で彼氏に連絡しようか?何人か飢えてるの連れてきて、ハメ撮っちゃおうよ。高く売れるかも」

「おっ。いいねー」

照「ひっ!?」

「さ、そんじゃやりますかー」

照「い、いや…」

照「来ないで…」

照「誰か…」

照「助けて…」

金髪「何してんの?」

照「…えっ?」

「…ああ?なんだこの金髪」

金髪「いや、お姉さんたち何してんのって」

「すっこんでろよチビ。格好付けてナイト気取りか?お姫様よりちいせー奴がなにしてもダッセーし、そんなんしてもモテねーんだよキメーな」

金髪「いや、そんなつもりじゃねーし」

「見てわかんないのかよ、アタシら今、カツアゲやってんだよ。わかったらとっととどっか行けよガキ」

金髪「いや、カツアゲにしてはちょっとバイオレンス感多くねえっすか?」

「ふざけたガキだな。お前からも毟ってやろうか?」

「ナマ言ってんじゃねーぞ?アタシの彼氏はカラギャンやってんだぞ。テメーなんか速攻ボコられるからな」

金髪「…」

「何黙ってんだよ」

金髪「早くどっか行けよ。俺はこの子に用が有るんだよ」

「ああ!?」

金髪「怒るぞ」

「ふざけんなよ。今から彼氏呼ぶわ。ボコって貰うから覚悟しろよ」

金髪「いいのっかなー」

「なんだよ」

金髪「俺は『あの』佐藤さんに可愛がって貰ってるんだぜ」

「!?」

「さ、佐藤さん…!?」

「『あの』佐藤さんって、もしかして『あの』福西組の佐藤さんの事…か?」

「あ、『あの』狂犬で有名な佐藤さんか…」

「や、やべえな…」

金髪「そうそう。その佐藤さんに可愛がって貰ってる俺が、どこの誰だか知らねーがお前らの彼氏?にやられたって言ったらよ。お前、そのカラギャンごと潰されるかもよ」

「くっ…」

金髪「ほら、今ならまだ無かった事にしてやるから。早くどっか行け馬鹿野郎」

「…くそっ!行くぞ!」ダッ

「あ、待ってよ!!」ダッ

照「…」

金髪「…行ったか」

照「…」ポカーン

金髪「…ふう」

照「あの…」

金髪「…佐藤・鈴木・田中はどこにでも居る…」ボソッ

照「…はぁ?」

金髪「ふへぇ…流石にビビったぁ!福田組ってなんだよ。あれか、爽やかヤクザか。マジビビったわー。退いてくんなかったらどうしようかと思ったよ」

金髪「女とは言え、俺より年上だし4人だしなぁ…」ブルブル

照「君…」

金髪「あ、すみませんねお姉さん。本当はもっと格好良い助け方したかったんですけど、4人相手はちょっと…」

照「…どうして私を助けてくれれたの?」

金髪「へ?ん~…なんでって…」

照「…」

金髪「…なんとなく?」

照「…」ズルッ

金髪「…」

金髪「…うん、なんとなくだ。なんとなく…」

京太郎「…なんとなく、お姉さんが知り合いに似てたもんだから……」


それが、照と、『照の京ちゃん』との出会いだった

今日の分終わり

正直スマンかった。みんなの寛大さに甘え過ぎてた。あと1週間以内に絶対終わらすわ。俺がサポやってるコンサドーレ札幌に誓う

プロットは最後まで書いた。EURO企画の方の賞品ss2本も構想は固まった

カンちゃんシリーズも、大体最後までの筋は決まった。こっちはちょっと壮大に風呂敷広げ過ぎだけど

もうちょっとだけお付き合い下さい

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今まで長らくお付き合いいただきありがとうございました。本当に申し訳ない
今日と明日の夜の投下で終わる目処付いたから(震え声)

照「…」

呆気にとられ固まる照に、声をかける京太郎。心配そうな様子の中にも、少しだけ得意気な表情が見え隠れしており、それが幼い感じがして、照は可愛いらしいと思う

京太郎「…ところで、うわ。お姉さん、大丈夫?怪我してない?」

照「…」

京太郎「ああ、ほら。ちょっとそこのベンチに行って座ろうか。消毒液と絆創膏が鞄の中に入ってるから、怪我してたら言ってくれたら使っていいから」

照「…」

京太郎「ほら、な?歩ける?」

照「…うん」コクン

京太郎「そっか。よし、それじゃあ行こう。な?」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…どうかした?」

照「…やっぱりあるけない」

京太郎「…そうっすか」

腰が抜けていた

照「…」

京太郎「…参ったな」

照「…」

京太郎「…ほら。手貸すから、ゆっくりで良いから歩こう?な?…ここに居たら、目立ってしょうがない」

照「…うん」

京太郎「ん」スッ

照「…」スッ

京太郎「よし、それじゃあゆっくり歩くよ?」

照「…」コクン

スタ スタ スタ

京太郎「…」

照「…」

照「…初めてだ」ボソッ

京太郎「…ん?なんか言った?」

照「…ううん。なんでもない」

京太郎「…そっか」

照「…うん」

照「…初めて男の子に手、握られちゃったなって」

京太郎「って!なんでもなくねーじゃんか!」ズサッ

照「…ふふ」

京太郎「え、ちょ、お、おれ、その、そんなつもりじゃなくって!その!」ワタワタ

照「冗談だよ。もう一人で歩けるから。…ありがとう」

京太郎「…うう。なんか、いきなり気恥ずかしくなってきちまったじゃんよー…」ブツブツ

照「…ありがとうね」

京太郎「…」

照「…初めて、誰かに助けて貰ったなって…」

京太郎「…そっか」

照「…」

京太郎「…ん。ベンチ、着いた。お姉さん、座る。傷見せる」

照「なんでカタコト?」クスッ

京太郎「…」プイッ

照「…照れてるの?」クスッ

京太郎「むっ。…って、俺、一応恩人ですよね?お姉さんの」

照「はは。ごめんごめん」

京太郎「…ったく。これだから年上は苦手なんだよ…」ブツブツ

照「そういう君は、一年生?」

京太郎「そうっすよ。はい、傷無いか見せて下さい」

照「今日は大丈夫だよ。髪の毛掴まれただけだし」

京太郎「…『今日は』?」

照「あっ…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…今日だけじゃないのか」

照「…」

京太郎「…いじめられっ子ってやつ?」

照「…」

京太郎「…そっか」

照「…」

京太郎「…あの、俺…」

照「あっ!!」

京太郎「うおっ!?」ビクッ

照「お、おもいだした!今日ははやく家にかえらないといけない用事があったんだった!」

京太郎「棒読み…」

照「というわけで、ごめんね!わたしはこれで帰るから!」

京太郎「あ、ちょっと…」

照「本当にごめん!それじゃあバイバイ!!」ダッ

京太郎「ちょっと!お姉さん!?おーーーーーーーーーーーい!!」

照「~~~~~~~~っ!!」タッタッタッタ

京太郎「…」

照は逃げた

その金髪の少年との会話を打ち切って、逃げてしまった

照「何故そうしちゃったんだろうね」

淡「…」

照「彼が、会って間もない自分の問題に、深くまで踏み込もうとした気配を察したからかな」

照「正直に話しても、どうせいじめられっ子な自分を馬鹿にされるのがオチだと思ったのかも?」

照「ううん。違う。きっと、幻想を抱きたかったから」

照「この世には、私の悩みなんて何の問題でもない風に振る舞って、どんな困難からでもあっさりと私を救ってくれるヒーローが存在するんだって、そんな都合の良い幻想を信じていたかったんだ」

照「いじめから守ってくれて、孤独から救ってくれて、友達を作ってくれて、一緒に笑い合ってくれる。そんなヒーローが居ると信じていたかった」

照「私さえ拒絶しなかったら、そんな救いは有るんだって、私にも『京ちゃん』が出来る可能性はあったんだって、未だに信じていられるからって」

照「今思えば、結局彼の事を信じていなかったんだろうなって思う。どうせ気まぐれで私を助けてくれただけなんだって…その時は、まだ」

照「けど、私はその瞬間、同時に浮かれてもいたんだ。まるで全ての悪い事が、この瞬間に解決されたんだって勘違いしたってくらいに」

照「家に帰った時、私は満面の笑顔だったらしい。妹が、お姉ちゃん、どうしたの?って聞いてきてさ」

照「クスクス笑う妹を不思議に思った私が逆に尋ねたら、お姉ちゃんなんだか嬉しそう!…って、あの子まで嬉しそうに笑ってて」

照「笑顔の理由は教えてあげなかったけどね。まだこの記憶を独り占めしていたかったんだ。思えばこれがまたややこしい事になった原因かもしれないんだけど」

照「…けど、その日は。その日だけは本当に嬉しくて、久しぶりに二人で笑い転げまわったよ」

照「…本当に楽しかった」

照「しかも次の日、珍しい事にいじめっ子達は私を無視したんだ。…そうだな。訂正しよう。私と咲が楽しく過ごせた期間は、もう少し長かった。数日ほどかな。相変わらず友達は居なかったけどね」

照「そうだ。数日ほどいじめは無かった。私はホッとしたよ。あれがきっかけで、遂にいじめが無くなったんじゃないかと」

照「…けど、そうじゃなかった。いじめが再開したのは、彼に出会ってから4日後の事だ」

照「どうやら、いじめっ子達は彼が私の味方であるのかを探っていたらしい。行きがかりに助けられただけの関係だというなら怖くないとばかりに、数日間の分を取り戻すようにいじめられたよ」

照「この頃から、痣になる暴力が増えだした」

照「私は耐えたよ。もしかしたらあの時彼と話をしていたらいじめから開放されたんじゃないかって、何度も自分を呪った。けど、その度に自分に言い聞かせた」

照「いじめっ子達の彼氏が本当にカラーギャングなら、彼を巻き込むわけにはいかなかっただろ?って。私がいじめられて済むなら、それで良かっただろ?って」

照「ふふ。自分を誤魔化す言い訳ばかり上手くなっていたよ」

淡「…」

菫「…」

照「…そして、それから更に事が起こったのは、数日後の放課後だ。私は一時期のように授業が終わると同時に教室から一目散に逃げ出すのが日課だった」

照「この頃のアイツらは蛇みたいだったよ。今までは学校の外まで逃げ切れば私の勝ちだったけど、学校の外まで追いかけてくるようになったんだ」

照「勝率は…5分5分ってところかな。アイツらは明らかに楽しんでいた。鬼ごっこのつもりだったんじゃないかな。捕まったら適当な所に引き釣りこまれてボッコボコ」

照「この日は駅までの途中で捕まって、前回の時の公園に引きずり込まれたんだ」

照「…殴られながら彼がまた助けに来てくれないかって、うっすら思ったけどね。そうそう都合は良くなかったよ」

照「随分盛り上がっちゃったらしくて、ボロ雑巾みたいにされて。アイツらの気が済んで立ち去った後、私はもう立ち上がる気力も無かった」

照「このまま夜までここで寝てたら、危険だってのは気付いてたんだけどね。もうどうにでもなれって思って、そのまま意識を落としちゃった」

照「…目を覚ました時、私は真っ暗な公園のベンチで横になっていた。傍にはあの時の少年が座ってた。…その時の気持ちは…なんていうか、言葉では言い表せない感じだったな」

照「…複雑だったけど、いじめっ子達に対する感謝の言葉すら、脳裏を過ぎったよ」

全身に鈍い痛みを感じ、照は意識を覚醒させる。傍に誰かの気配を感じるが、嫌な感じはしない。むしろ、優しい気配に守られているようで、安心する

照「…ん」

京太郎「…あ」

照「いたた…あ、あれ?私…」

辺りを見回すと、ここはさっきの公園のようだ。但し、自分がいじめられていた場所とは少し離れている
横になっているのに視線が高い事と、背中の硬い感触で、自分がベンチの上で横になっていることに気付いた

京太郎「お姉さん、大丈夫?」

照「君は…」

隣の気配の正体にも気付く。…この間の彼だ。ゆっくりと身を起こし、彼の顔を見る。今にも泣きそうな、心配そうな顔だ

京太郎「そうですよ。この間の奴です。お姉さん、またアイツらにやられたんですか?」

照「ぐ…」ズキッ

そうだった。私はまたアイツらにやられたんだ。さっきまでの殴る蹴るの暴行を思い出し、身体が痛みを思い出す
その様子に、心配そうだった彼の表情が険しさを増す。怒気を孕んだ彼の形相に、思わず照の身が縮こまる

京太郎「ひっでぇ怪我だ…。この間の比じゃねぇ。幾らなんでもやり過ぎだろうが…!!」

照「…」

京太郎「なあ、今までずっとこんないじめされてたのか!?」

照「…うん」

京太郎「なんで黙ってるんだよ!」

照「…」

京太郎「先生だったり!友達だったり!相談してみろよ!!」

照「…嫌だ」

京太郎「はぁああ!?」

照「…みんな、信用出来ないもの」

京太郎「何ふざけたこと言ってんだよ」

京太郎「黙ってたらやられっぱないに決まってるだろうが!!なんで誰にも頼らないでほっといてんだよ!こんなボロボロにされといて、いい加減洒落で済まねーだろうが!!」

照「嫌だ…!いじめっ子も嫌いだけど、あんな奴らも信用出来ない!!」

京太郎「どうしてだよ!!」

照「どうしてもだよ!!!」

京太郎「…」

彼の激しい口調には情緒不安定になった照の神経を逆なでし、応える照の口調も荒くなる。溜まりに溜まったイライラが、遂に発散場所を求めて噴出する
かつての友達連中にも、先生にもぶつけられなかった怒り。いじめっ子には怖くて口をつむぎ、不仲の両親には遠慮して、咲には隠すしかなかった泣き言を、行きずりの少年にぶつける

…自分でもわかっていた。これはただの八つ当たりだ。彼は何も悪くないのに。むしろ助けてくれた側なのに。手を差し伸べようとすらしてくれたのに

照「今まで、何回だって相談した!妹の時に何度もしたよ!!けど、先生たちはずっと黙ったまんまだった!助けてくれなかった!!」

照「私の友達だってそう!今までずっと仲良くしてたのに、私がいじめられてるの知ってて、それでも黙ったまんま!いじめられてるの見ても、見て見ぬ振り!!」

照「そんな人達の事、どうやって信じればいいの!?」

京太郎「…」

照「逃げても逃げても追ってくるいじめっ子達、それを見て目を逸らす友達だった人!先生達は妹がいじめられてた時、私が掛けあってもなんにもしてくれなかった!」

照「どうせみんな私達の事なんてどうでもいいんだ!自分の事が可愛くて、怖い人には逆らえなくて、面倒な事には関わりたくない!人間なんてそんなもんなんだ!他人なんて信じられるもんか!」

照「君だってあの時、最初からアイツらがカラーギャングの関係者だって知ってたら、助けてくれた!?」

照「本当は女の子ばっかりだったから、自分でもなんとかなるって、そんな程度の軽い気持ちで助けただけじゃないの!?」

照「さっき、今までの比じゃない怪我って言ったよね!?そうだよ!君がつまんない正義感で下手に手助けしてくれたばっかりに!こんなにもいじめがエスカレートしたんだよ!?」

照「君のせいだ!!君のせいで私はこんなにいじめられてるんだ!!」

照「どうせ下手に希望を抱かせるくらいなら、気まぐれに助けないでくれれば良かったよ!中途半端に助けないでよ!!いい迷惑だよっ!!」

京太郎「…」

照「…はぁ…はぁ…っ!!」

京太郎「…」

照「…なんとか言ってみなよ!」

京太郎「…わかったよ」

照「…?」

京太郎「…アンタ、ガキだな」

照「…ガ、キ…?」

京太郎「うん。ガキ」

照「は?何言ってるの?君。君こそまだ1年生でしょ?私3年生だよ?そっちがガキじゃない。それにチビだし」

京太郎「身長は確かにまだアンタよりは低いけど…っていやいや。何だよその言い草。それにまるで俺が悪いみたいな」

照「だって、本当にあの後いじめが酷くなったし…」

京太郎「それに、この間だってなんか言い訳していきなり逃げたのそっちだ」

照「…うぐ」

京太郎「ありがとうも言わないで、さ。助けてもらってアレはないだろ」

照「…」

京太郎「ガキー」

照「うるさいチビ」

京太郎「…恩知らず」

照「恩着せがましいよ」

京太郎「ひねくれ者」

照「マセガキ」

京太郎「…はぁ」

照「…」

京太郎「…あ゙ーーーーー…」

照「…」

京太郎「…アンタ、名前は?」

照「…」

京太郎「…おーなーまーえー。なんて言うんですかー」

照「…先にそっちが名乗るのが礼儀だよ。子供はそんな事もわからないの?」

京太郎「子供だからわかりませーん。それに、子供だからいーやーでーすー」

照「…」

京太郎「…」

照「じゃあ私も名乗らない」プイッ

京太郎「あ、そ」プイッ

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…照だよ」ボソッ

京太郎「…ん?」

照「…なんでもない」

京太郎「あっそ」

照「ん」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…そっか」

照「ん?」

京太郎「照って名前なのか」

照「…っ!」

京太郎「なるほどねー。照ってのかー。ふーん。で、名字は?」

照「て、『照』!?」

京太郎「ん?どうした?照」

照「こ、コラ!君!」

京太郎「んー?」

照「な、なに!?その呼び方!」

京太郎「ん?何って、何が?」

照「わ、私は年上だよ!?呼び捨てにしないでよ!ちゃんと敬意を払って!」

京太郎「つっても、いじめられっ子相手に敬意払えって言われてもなー」ツーン

照「この…!」イライラ

京太郎「ま、どうしてもって言うなら?わかったよ。それじゃあこう呼ぶことにするわ。てーる『ちゃん』」

照「はぁああああ!?」

京太郎「ん?どうした?照ちゃん」

照「ちゃん!?ちゃんって何!?もうっ!もうっ!もうっ!!」

京太郎「うん。ぴったりだわ。照ちゃんって。ガキっぽいし」

照「むぅうううううううう!!」

京太郎「あはは。むくれてやんの。可愛いぞ?照ちーゃん」

照「か、かわ…」

京太郎「照ちゃん可愛い」

照「あああああああああああああ!」

京太郎「照ちゃん可愛い」

照「こらっ!馬鹿にして!」

京太郎「照ちゃん可愛い」

照「ああっ!こら!こら!こら!!君っ!もう!こらっ!」

京太郎「あはははは。おもしれーなー照ちゃんって」

照「ああもおおおおおおおおお!馬鹿ぁあああああああ!!」

京太郎「で、照ちゃんの名字はなんてーの?」

照「だ、誰が教えるもんか!」

京太郎「あ?なんでだよ照ちゃん」

照「ま、まだ照ちゃんって…!…じゃなくって!君の方こそ名前教えてくれてないじゃない!」

京太郎「だーかーら。名字教えてくれたら俺の方も教えてやるよ照ちゃん」

照「んもー!またぁあああ!」

京太郎「あはははは!」

照「うううう…」

京太郎「…で、名字」

照「…教えません」プイッ

京太郎「えー?なんでだよ」

照「どうしてもです」プイーーッ

京太郎「だったら、俺も名前おしえませーん」

照「…」

京太郎「…」

照「いじわる」

京太郎「いじわるです。ガキなので」

照「…本当にガキだ」

京太郎「名字は?」

照「教えるもんか」

京太郎「ガキー」

照「クソガキ」

京太郎「貧乳」

照「うるさい馬鹿」

京太郎「馬鹿です。ガキなので」

照「…」

照「…じゃあ、君の事なんて呼べばいいの?」

京太郎「んー?そうだなー。それじゃあ、ア・ナ・タ(はーと)とか」

照「発想がおっさん臭いよ」

京太郎「…」

照「…ふんっ」

京太郎「…じゃあ、通称きょ「本名じゃないなら、やっぱり言わないでいい」」

京太郎「…ん?」

照「…君がちゃんとした自分のフルネーム言うまで、『君』って呼ぶから」

京太郎「…」

照「わかった?『君』」

京太郎「…強情すなぁ」

照「そっちこそ。自分の本名言うだけだよ?」

京太郎「照ちゃんが名字言ったら教えるけど」

照「やだ」

京太郎「年上の余裕見せてもいいんじゃない?」

照「年長者に敬意を払ってよ」

京太郎「だかーらー…って…」

照「…?」

京太郎「…照ちゃん」

照「…なに?」

京太郎「…へへ。やっと笑顔になったな」

照「…え?」

京太郎「顔、笑ってる」

照「…」ペタペタ

照「…」

京太郎「…俺さ。照ちゃんよりチビだし、ガキだし、大したこと出来るかはわかんないけどさ」

京太郎「けど、あの時からいじめが酷くなったていうなら、確かに俺にも責任あるだろうしさ」

京太郎「それに折角友達になれたんだし、それなら俺は照ちゃんの事助けたいよ。なんか手を貸せることあったら、なんだって言ってくれよ」

京太郎「…力になりたいんだ」

照「…」

京太郎「…照ちゃん?」

照「…とも…だち…?」

京太郎「ああ。…友達だよな?」

照「友達…」

照「…友達」

照「…友達?」

京太郎「え。もしかして嫌っすか」

照「…」

照「…ううん。嬉しい」

京太郎「…ほっ」

京太郎「それじゃあ、明日っから放課後は一緒に遊ぼうぜ?この公園でさ」

照「え…け、けど、この公園は…」

京太郎「アイツらの溜まり場だってか?だからいいんじゃん。この間は俺にビビって撤退したんだし、俺らがきまぐれで助けた関係じゃなくて仲良しだって知ったら、きっとアイツらも手出さなくなるって」

照「そう…かな」

京太郎「そうそう!」

照「けど…怖いよ?」

京太郎「怖いけど」

照「アイツ等女の子だけど、沢山居るよ?喧嘩になったら君一人で勝てる?」

京太郎「いざとなったら照ちゃん手伝ってよ」

照「えー…」

京太郎「『えー』じゃ無しに!いじめっ子との喧嘩は、相手にめんどくさい奴って思わせたら勝ちなんだから」

照「けど、殴られたら痛いよ?」

京太郎「今と何違うんだよ」

照「…」

京太郎「…」

照「…ああ」ポン

京太郎「…」

照「確かに」

京太郎「…照ちゃんって、見た目と違って天然なんだな」

照「…?」

京太郎「…まあいいや」

照「はあ」

京太郎「あとは、あいつ等のバックにカラーギャング?が居るんだって?」

照「…うん。そいつ等が来たらどうする?」

京太郎「…まあ、そいつ等が来たら任せろよ」

照「…大丈夫?」

京太郎「…ん。まあ、一応考えはある」

照「おおー」

京太郎「…」

照「…ねえ」

京太郎「…ん?」

照「…頼っても、いい?」

京太郎「…」

照「……いい?」

京太郎「ああ。任せろって!」

照「…うん。じゃあ」

照「頼っちゃう」

翌日の放課後、照は必死に走って公園まで辿り着く。そこには、タバコを吸って缶ビールの缶を足元に転がした彼の姿。少し幻滅する
それでも兎に角いじめっ子から逃れたい一心で彼に話しかける。居心地の悪い気分でつまらない雑談を続けていると、しばらくして後をつけていた筈のいじめっ子達の気配が消えた
頃合いを見て、京太郎が呟く

京太郎「…連中、行ったっぽい?」

照「…うん」

京太郎「ま、ざっとこんなもんってな」

照「…けど、びっくりした。君、タバコ吸うんだ。それに、お酒も…」

京太郎「ん?あー。これ?ははは。これはさ」

照「…」

京太郎「本当は吸わないんだけど、さ。ダチに貰ってきたんだ。まっずいわコレ。あと、空き缶はそこのゴミ箱から漁ったやつね」

照「…」

京太郎「ふふん。どーよ?対いじめっ子への威嚇用ってやつ?不良っぽさの演出とも言うかな」

照「…ぷっ」

京太郎「ふふ。どうだい?悪っぽいだろう。くくくく…」

照「あはははは!」

京太郎「あははははは!」

照「あはははは!バカみたい!」

京太郎「へ?」

照「だ、だって!不良っぽく見せるための小道具にタバコとお酒って!」

京太郎「あれ…へ、変だった?」

照「変って言うか…発想が子供っぽいよ!」

京太郎「…」

照「あはははは!可愛いなぁ、君は!子供っぽくて!あはははは!」

京太郎「…くすん」

照「あははははははは!」


再びいじめっ子から開放された照。けれど、照は連日、放課後になる度に急いで教室を飛び出す
原因はいじめっ子では無く、友達。クラスに馴染む気はもう無かった。彼女にとって唯一の友達に会うために今日も照は教室を飛び出す。そして益々クラスから浮く

けど、どうでも良かった。楽しい日々は続く。胸には、未だに名前を教えてくれない意地悪な少年への確かな友情と、微かな恋心

絶対に私が名字を教える前に、向こうに名乗らせてやる。そんな子供っぽい感情を示す事が出来る相手は、今の照には彼しか居なかった

何をするでもなく、二人公園で会話を続ける日々

いじめの事も、クラスからの孤立も、両親の不仲も忘れて、夕方まで一緒に笑い合う

歯車が狂った事に照は気付かない

いつ狂い始めたのかも分からない

いや、もうとっくに狂っていたのだろう。ずっとずっと前に

けど、それが明らかになったのは、それからしばらくして

季節は巡り、秋

その頃、照は進学する高校に迷っていた

10月27日

京太郎「へっくし!…ふー。寒いなー。今日は」

照「そうだね。もうすっかり秋だ。そしてもうすぐしたら冬」

京太郎「げっ。思い出させるなよ。雪積もったら嫌だなぁ」

照「地面が凍ったら嫌だね。私、毎年転んじゃうんだ」

京太郎「あー。俺も俺も。去年なんて、折角一度も転ばずに雪解け迎えれそうだってのに、何にもないトコで後ろからダチに突き飛ばされて完全試合達成ならずだったんだぜ」

照「ふふ。それは残念」

京太郎「それにしても…冬が終わったら、俺も2年生かー。そして照ちゃんは進学だ」

照「え?」

京太郎「どこに行くの?」

照「そ、それは…」

京太郎「うん」

照「…」

照(…なんて答えよう。未だに迷ってるんだよね。風越女子に進学して麻雀部をやってみたい気もするし、近い清澄でもいいかなと思ってるし…あとは…)

照「えっと…」

京太郎「…もしかしてまだ迷ってる?」

照「…うん」

京太郎「早く決めちゃえよ」

照「わかってるけど…」

京太郎「…照ちゃんが進学したら、流石にもうこうして会うのは難しくなるのかな」

照「…」

京太郎「…それまでに名字教えてくれていいんだぜ?」

照「き、君こそ、随分と強情だな!そろそろ名前教えてよ」

京太郎「えー?だから言ってるだろ?照ちゃんが名字教えてくれたらって」

照「私の台詞だよ!」

京太郎「ちぇー」

照「…もうっ!」

京太郎「…へへ。ま、そうだなぁ。そしたら、照ちゃんの進学校名でもいいかな」

照「…え?」

京太郎「照ちゃんが進む高校決めて、それ教えてくれたら俺の名前教えてあげる」

照「…」

京太郎「もし照ちゃんが遠くの高校に行く事になって何処に進むかわからなかったら、このままじゃ連絡の取りようも無くなっちゃうだろ?」

照「…うん」

京太郎「だから、さ。流石に進学と同時にハイサヨナラじゃ、寂しいしさ」

照「…」

京太郎「…へ、偏差値近かったら、同じ高校目指すかも…」ボソッ

照「…え?」

京太郎「…」プイッ

照「ねえ、君、今なんて…」

京太郎「な、なんでもねー!」

照「…そっか」

京太郎「そ、そう!」

照「…じゃあ、さ。受験受かったら教えてあげるよ」

京太郎「っ!」

照「けど、受かってからだからね。言っておいてそこ落ちたら格好わるいし」

京太郎「わ、分かった!絶対だぞ!」

照「…うん」

京太郎「頑張れよ!応援してるからな、照ちゃん!」

照「うん。ありがとう。それじゃあ、今日はちょっと大事な用事有るから、私はもう帰るね」

京太郎「あ…そういえば今日はなんかあるって言ってたっけ。駅まで送ってこうか?」

照「大丈夫だよ。最近はいじめっ子達も大人しいし」

京太郎「…本当に?」

照「うん。ありがとう。それに、買い物もしたいし」

京太郎「んー。まあ、照ちゃんがそう言うなら…」

照「それじゃあ、私は帰るね。バイバイ」

京太郎「ん。じゃーなー」

照「…さて、と」

照「…」

照「…あは」

照「…偏差値が近かったら、私と同じ高校を目指すかもっ…か。あはは」

照「…うん。決めた」

照「進学校は、清澄にしよう」

照「風越と違って共学だし、近いし、学力はそこそこ。麻雀部は無いけれど、そんなのどうだっていい」

照「2年したら、もしかしたら、あの子と一緒の高校に通えるんだ」

照「こんなに楽しみな事は無いよ」

照「ああ、楽しみだな。あの子と同じ校舎に通えるんだよ?あの子の先輩になれるんだよ?」

照「素敵だな…とても素敵だ」

照「…おっといけない。早くお店に予約していた玩具を取りに行かないと」

照「今日は咲の誕生日だもんね」

照「最近あんまり元気が無かったよな。最近あんまり話を聞いてあげてなかったけど、京ちゃんと喧嘩でもしたのかな?」

照「最近は私も放課後帰るのが遅くて、いっぱい構ってあげられてないから。今日こそは盛大に祝ってあげなくちゃ…」

照「早く玩具を受け取って、急いで帰って、パーティーの準備を手伝わなきゃ」

照「今日は早めに帰ってくるように伝えておいてあるし、急いで準備しなきゃ」

照「ふふふふふ…」

京太郎「…行っちゃった、か」

京太郎「…はぁ。俺ってば情けない」

京太郎「さっさと名前くらい教えればいいのに」

京太郎「そしたら照ちゃんももっと打ち解けて心許してくれるだろうになぁ…」

京太郎「そ、そんでもって…こ、告白も…」

京太郎「…しっかし、今更切欠も無しにこっちから名前告げるのもアレだったてのはわかるけど、なんだよ進学校決まったら教えるって」

京太郎「つまりそれまで名前伝えれないって事じゃん」

京太郎「名前も知られてないのに告るわけにいかないし…」

京太郎「…先延ばしかよカッコ悪い。臆病もんだわ俺…はぁ」

京太郎「…帰ろう」

京太郎「おお、そういえば、こんな早くに帰るの久しぶりかも。最近は放課後照ちゃんとダベってばっかだったしなー」

京太郎「…ダチとの付き合いも蔑ろにしちゃいかんよな。うん。アイツら、俺が年上の女の人と会ってるって知ってから俺に冷たいんだよなー」

京太郎「…しゃーない。咲に説得と橋渡し頼むか。アイツら、咲の言う事はちゃんと聞くし」

京太郎「…そう言えば、咲とも最近、放課後遊んで無かったなー」

京太郎「…って」

京太郎「…」

京太郎「…」

京太郎「…コンニチワ」

「コンニチワ」

「おい、なんだ?このガキ。お前、知ってんのか?」

「結構前に話した事あったんだけど、覚えてない?私らのイジメ対象庇った生意気なガキの話」

「ああ。コイツが」

「もーアイツなんかどーでも良かったんだけどさ。偶然会っちゃったんなら仕方ないよね」

「なになに?どうすんの?コイツ」

「折角だしやっちゃってよ。喧嘩、得意なんでしょ?」

「一捻りだな」

「そういえば、佐藤さんの件、嘘だったんでしょ?ムカつくし、またいじめ再開しようかな」

京太郎「あ、ヤバいこれ…」

京太郎「…」

京太郎(…はぁ。仕方ない。奥の手、使いますか)

京太郎(これだけは使いたくなかったんだけどなー…)

咲「…」テクテク

咲「…今日は誕生日、か」

咲「…はぁ」

咲「結局、京ちゃんは今日も放課後すぐにどっかに行っちゃった」

咲「ここしばらく、ずっとだよ。確かに友達は他にもいっぱい出来たけど…私は、京ちゃんと1番遊びたい…」

咲「…寂しいなぁ。誕生日だっていうのに、寂しいよ…」

咲「…京ちゃん」

咲「…」

咲「…ん?なんだろう、救急車…?」

咲「公園のほうだ。何かあったのかな?ちょっと見に行ってみよう」

宮永家

照「…咲、遅いな。まったく。どこほっつき歩いてるんだか」

照「…でもまあ、昔は考えられなかったことだよね。友達と放課後遊ぶようになったって事だし、京ちゃんには、感謝しなきゃだ」

照「でも、今日くらいは早く帰ってきて欲しいだけどな。咲の誕生日だし」

照「…あ。でも、もしかしたら京ちゃんにお祝いしてもらってるのかも?それなら遅くなるのもしかたないのかも」

ジリリリリ

照「…ん?電話だ」

照「はい、宮永ですが」

照「ああ、咲か。どうしたの?え?今病院?」

照「ちょっと、落ち着いて話して。何があったの?うん、うん」

照「え?京ちゃんが喧嘩で怪我した?」

照「…だから落ち着いて、咲。大丈夫。大丈夫だから。うん。今お姉ちゃんも行くね。うん。それじゃあ待ってて。すぐ行くから。うん」

照「大丈夫だよ、咲。泣かないで。お姉ちゃんがついてるから」

照「うん。うん。それじゃあ、今から行くから、待ってて」

照「…」プツッ

照「…」

照「…咲、待っててね。すぐ行くからっ!」

ちょっと用事出来たんで外します。結構出来てるから、切り良いトコまでは今晩中には投下します

病室

咲「ヒック!…ヒッ!ヒック!!」

京太郎「…」

咲「うえええ…えええええ…えええええ…」

京太郎「…」

咲「京ちゃん…京ちゃん…京ちゃああああん…うえええええええ…」

京太郎「…ん」

咲「!!」

京太郎「…あれ、俺…」パチッ

咲「京ちゃん!!」

京太郎「…あ?…ここ…どこ…」

咲「京ちゃん!ここ、病院だよ!京ちゃん、悪い人に殴られて…」

京太郎「あー…頭痛てえ…くっそ」ボー…

咲「京ちゃん!京ちゃん!!」

京太郎「…あれ。照ちゃん」

咲「…」

咲「…え?」

京太郎「…?なんで俺の名前…?言ったっけか?」

咲「え?」

京太郎「…あはは。そんな泣くなよ照ちゃん。ひっで~顔してるぜ…いたたた」

咲「…京…ちゃん?」

京太郎「悪い、嘘。まだ目がまともに動いてないわ。頭打ったからかな。グラグラしてるんだ。気持ち悪い」

咲「京ちゃん…」

京太郎「ぐう…悪い、ちょっと目閉じるな。本格的に気持ち悪い。ああ、そうです。俺、京ちゃん…ははは。なんだか、アイツに言われてるみたいで変な感じだなぁ」

咲「ねえ…京ちゃん?何のこと?それに照ちゃんって…」

京太郎「…ほら、前にも話した事あんじゃん。俺の幼馴染の子でさ。ドン臭い奴がいるんだーって。宮永咲って言うんだけど、照ちゃんにそっくりでさ」

京太郎「…初めて会った時も、最初一瞬アイツがいじめられてるのかって思っちまったくらいなんだぜ。まあ、アイツはチンチクリンだけど。…はは。これナイショな」

咲「…京ちゃん」

京太郎「…ああ、ごめんごめん。会った事も無い奴の事言われてもどうしようもねーよな」

咲「…」

京太郎「あ~…しっかし、どっかのタイミングで名前言っちゃったっけなー。くっそぉ。ごめんなさい。覚えてねーや…」

咲「…」

京太郎「くっそ。畜生。格好悪いなぁ。なんかモヤモヤするし、改めて自己紹介させてくれないか?照ちゃん」

京太郎「…俺、須賀京太郎って言います…ヨロ…シ…ク…」

咲「…」

京太郎「……ごめん。ちょっと眠いから、寝るわ」

咲「…」

京太郎「…すう…すう…」

咲「…」

咲「…」

咲「…」

咲「…」

咲「…」

咲「…」

ガチャッ

照「…咲?病院の人にこの部屋だって聞いたんだけど…」

照「…って」

照「この子は…!!」

咲「…」

照「…咲?」

咲「…やっぱり」

咲「…知ってるんだ」

照「…咲」

咲「…ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃん、この子の事、知ってるんだ」

照「…」

咲「ねえ、お姉ちゃん。答えてよ。知ってるんでしょう?」

照「…」

咲「当然だよね。だって、さっきこの子、私の顔見て、『照ちゃん』って言ってたもん」

照「…っ!」

咲「ねえ、お姉ちゃん。ねえ。ねえ、答えてよ。なんでさっきから黙ってるの?ねえ」

咲「ねえ、知ってるんでしょう?お姉ちゃん、『京ちゃん』の事」

照「…この子が」

照「…『京ちゃん』だったのか」

咲「っ!!ふざけないでよ!!!」

照「咲」

咲「なにそれ!?なんなのそれ!!?ふざけてるの!?馬鹿にしてるの!!?ねえ!!」

照「咲、落ち着いて」

咲「落ち着け!?落ち着けって何さ!!この状況でどうして落ち着いていられるの!!!」

照「咲、京ちゃんが起きちゃう」

咲「うるさいっっっっ!!!!!」

照「…」

咲「ねえお姉ちゃん!お姉ちゃん!!なんで私がこんなに怒ってると思う!?ねえ!?お姉ちゃん!!」

照「…」


咲「お姉ちゃんが私にナイショで京ちゃんに会ってたからだと思う!?最近お姉ちゃんが私にあまり構ってくれてなくなってた原因がそれだったからだと思う!?京ちゃんと知り合ってたのを私に黙ってたからだと思う!?」

咲「違うよ!!全部違う!!そんな事よりも、もっと酷いよ!!そんな事全部どうだって良くなるくらい酷い!!!」

咲「京ちゃんがなんで怪我したと思う!?私聞いちゃったよ!最初に救急車を呼んでくれた人が、一部始終見てたって!!」

咲「京ちゃん、不良の人に散々に暴行受けてたって!!殴られながら、蹴られながら!!必死に土下座してたって!!なんでだと思う!?原因はお姉ちゃんだよ!!」

咲「お姉ちゃん、前にいじめてた人の彼氏がカラーギャングだって、話してくれたことあったよね!?その人だよ!!きっとその人に、復讐されたんだ!!」

咲「京ちゃん、言ってたらしいよ!!いくら殴ってくれてもいいから、これで手打ちにしてくれって!!この通りです、この通りですって!!頭地面に叩きつけながら必死に叫んでたって!!!」

咲「何もかも全部お姉ちゃんのせいじゃない!!!」

照「そ…そんな…」

咲「お姉ちゃんのせいだよ!!!お姉ちゃんのせいで京ちゃんがこんな目に合ったんだ!!!」

咲「いじめられてるからって!!京ちゃんに助けを求めたから!!!」

咲「お姉ちゃんなんかが…お姉ちゃんなんかが京ちゃんに近づくからいけなかったんだ!!!」

照「…」

咲「出てって!!!」

照「……さい」

咲「出てってよ!!!」

照「……さ…」

咲「今すぐここから出てけ!!!!」

照「五月蝿い!!!!!」

パンッ

咲「……」

照「さっきから黙ってたら…なにさ…!!」

照「咲は、私の気持ちなんか知らないんだ」

咲「…」

照「すぐに京ちゃんに会えて、仲良くなって。すぐにいじめも無くなって。友達だって出来て、学校で嫌なこと有ったって帰ったら私に泣きつけばいいんだ」

咲「…」

照「咲ばっかりズルい!私には京ちゃんと一緒に居る権利すら無いって言うの!?一生いじめられてろっていうの!!?そんなの不公平だ!!!」

咲「っ!!よく言うよ!私にずっと黙って京ちゃんと密会してたくせに!しかも自分の素性も隠して!?私の姉だって事も説明しなかったの!?」

照「だから、私はこの子のことを京ちゃんだって知らなかった!!」

咲「信じられるわけ無いじゃない!!!」

照「っ!!」

咲「ねえ…」

咲「…それとも、私のお姉ちゃんだって、知られるのが嫌だったの…?」

照「…」

照「…ああ。そうだよ」

咲「…」

照「お前なんかの姉じゃなければ良かった…」

照「お前なんか、妹じゃない!!!」

咲「~~~~~っ!!!」

咲「っ!!帰る!!!」ダッ

照「あ…」

バタンッ!!!

照「…」

照「…あ」

照「…ああ」

照「…ああああ」

照「ああああああああ!!」

照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

数時間後
照は、まだ病室に居た
先ほどの姉妹喧嘩の騒ぎを聞きつけて遅れ馳せながらにやってきた看護婦に叱られて、追い打ちのように意気を消沈させた照は、項垂れたまま備え付けの椅子に座り続ける

途中、京太郎の両親がやってきた。眠っている息子の顔を見て、ほっと一息吐く彼の両親に、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、涙が零れた

挨拶もそこそこに、医者と話をしに行くので出来れば様子を見ていて欲しいと頼まれた照は、また所在無さげに椅子の上で京太郎の顔を見る

布団の上からでもわかるのは、包帯でぐるぐる巻きにした額だけだ

他にどんな怪我があるのだろう、後遺症は残らないだろうか、と心配でまた涙が溢れる

両親が戻って来た

肋が数本折れていたらしい。他にも打撲、内出血などは無数にあるが、後遺症になりそうな怪我は無し。ただし何週間かは入院することになるらしい

説明を受けて、次に照が咲から聞いた事情を話した。彼らは黙って聞いていた。途中何度も嗚咽が止まらなくなり、辿々しくもなんとか説明を終えた頃、今度は京太郎が目を覚ました

京太郎本人から、照の話とは全く違う、彼が絡まれた喧嘩に乗ったという話を聞いた彼の家族は、子供達に何も言及する事無く、今は入院に必要な道具を取りに家に戻っている

照は、動けない

固まったまま椅子に座り、じっと俯いたまま、何も話せない

照は泣いていた

声もなく、泣いていた

しばしの逡巡の後、京太郎は意を決したように、照に話しかける

京太郎「…なあ、照ちゃん」

照「…」

京太郎「…照ちゃん」

照「…」

京太郎「…泣かないで。照ちゃん」

照「…無理、だよ…」

京太郎「…」

照「…全部、聞いたよ。なんで、逃げなかったの?なんで、そこまでしてくれたの?なんで、お父さんたちに、嘘の原因、教えたの?」

照「…なんで。なんで、なんで私を助けてくれるの?そこまでして」

照「なんで私なんかのために。なんで私なんかのために。なんで、どうして…」

照「なんで…なんで…なんで…?なんで?なんでそんなに優しいの?」

京太郎「…俺もさ。実は、昔いじめられっ子だったんだ」

照「…え」

京太郎「…ずっと前な。小学校低学年とかそんくらい。ちょっと体弱くってさ。まあ、照ちゃんみたいにひでーもんじゃなかったけどね」

照「…」

京太郎「…で、その後急に身体丈夫になって。割とヤンチャな友達も増えて…はは。その後、どうなったと思う?」

照「…わかんない」

京太郎「…いじめっ子になった」

照「…」

京太郎「…嘘だと思う?」

照「…」

京太郎「そう。マジ話ね、これ。…話すの、照ちゃんが初めてなんだぜ?」

照「…そう」

京太郎「何考えてたんだかね。あの頃は」

照「…」

京太郎「…ああ。本当、何考えてるんだかなぁ俺。こんな話して、照ちゃんに嫌われそうだって思っちゃった。当たり前だ。いじめから助けてようとした友達は、実はいじめっ子でしたってか。ああ、俺の馬鹿」

照「…」

京太郎「…ごめんな。けど、なんかどうしても話したくなっちまって」

照「…」

京太郎「…懺悔でもしてるつもりなのか俺は」

京太郎「…ああ。本当、馬鹿…」

京太郎「…馬鹿…馬鹿…馬鹿野郎…」

照「…本当だよ」

京太郎「…だよなー…」

照「うん」

京太郎「…」

照「…そんなので、私は『京ちゃん』を嫌いにならないよ」

京太郎「…」

照「…そりゃあ、びっくりしたけどね」

京太郎「…」

京太郎「…いじめられて、いじめて、いじめて、いじめて…で、ある日いきなり気付いたんだよな。『あ、俺コイツの事別にいじめたくていじめてるわけじゃねーわ』って」

京太郎「…ノリでやってたんだよ。いじめられてる間は一体どんな深い理由があって!とか、色々原因考えたりもしたけど、やる立場になって分かった。…いや、全員が全員ってわけじゃないのかもしれないけど、さ」

京太郎「…気付いて、駄目になった。もうそいつの事いじめられなくなった」

京太郎「同時に、今までいじめてきた奴らの事を振り返って怖くなった。俺はコイツらに一体どれだけの嫌な想いをさせて来たんだろうって」

京太郎「…その後は、いじめは止めろ!!って立ち上がれれば最善だったんだろうけどな。すぐには無理。いじめるふりして庇うとか、蹴散らすふりして本当にいじめられるの回避させる、とかその程度しか出来なかった」

京太郎「…ダチもみんな俺と大して変わんなかったよ。中学上がって、ちょっと大人になったら、いじめグループは自然消滅。リア充グループもどきの誕生だ」

京太郎「…糞だったよ。いじめ過ぎて壊れそうになって、転校しちまった子も居た」

京太郎「…本当、いじめ、格好悪い、だ」

照「…それで、助けてくれたの?」

京太郎「…」

照「…今までいじめてた人達の分、いじめを無くそうって。いじめられっ子を助けようって」

京太郎「…どうなんだろうね。それでも結局、俺は今までいじめてきた奴らにとっては、ずっといじめっ子だ」

照「…」

京太郎「許してくれなんていえねーよ。俺だって昔俺をいじめてた奴らは、未だに許せない」

照「…」

京太郎「自分勝手だろ?」

照「…」

京太郎「…幻滅した?」

照「…それでも」

照「…私にとって、京ちゃんは、ヒーローだった」

京太郎「…」

照「…私が会った京ちゃんは、いじめられっ子でもいじめっ子でも無くて、私を助けてくれるヒーローだったから」

京太郎「…」

照「だから、もし京ちゃんが今までの事を悪かったと思って、私の私を助けてくれた事を誇りに思えるのなら」

照「…京ちゃんは、今までにいじめて来た子達に恨まれながら、私みたいに困ってる人達を助けていけばいいんじゃないかな」

京太郎「…」

照「そうしてる内に、もしかしたら、君にいじめられて来た子達の中でも、今の君を知って許してくれる、なんて事があるかもしれない」

京太郎「…俺」

照「…期待しちゃ駄目だよ。私はあのいじめっ子達が今後改心したって、簡単に許してあげれる自信は無いから」

京太郎「…ああ」

照「…でも、君が望むなら」

照「私は、君と一緒に、その子達に謝ってあげる」

京太郎「…照…ちゃん…」

照「…薬、効いてきたのかな?眠そうだよ」

京太郎「…る…ちゃ…」

照「今日はもう、おやすみ。…また来るから」

京太郎「まっ……て…俺…たえ…い…と……」

照「…ばいばい」

京太郎「…る…ゃ…」

バタン

淡「…」

照「…と、言って別れたものの、その後私が京ちゃんに会う事は何年も無かったんだ」

誠子「どうして?」

照「咲が…妹が私と彼が会うのを良しとしなかったんだ。何度かこっそり病室に行こうとしても、常にアイツが病室に居たし、彼の退院後は彼にベッタリになった」

照「…私は、アイツに責められるのが怖かった。京ちゃんが怪我したのは、紛れもなく私のせいだったから。だから、文句も言わなかった」

照「…いや。それも実は言い訳で、京ちゃんに会うのが怖かったのかも知れない。その証拠に、公園に行くのを避けるようになった」

照「ついでに、進学校を白糸台に変えた。…まあ、これは私達姉妹の喧嘩が原因で元から危うかった両親の関係に亀裂が入って、別居が決まったって言うのも大きな原因ではあるんだけど」

照「次第に私もアイツとは険悪な関係になっていってね。妹とは、こっちに来るまでずっと険悪なままだったよ」

照「…だから、アイツが突然一人で東京に来た時は、驚いた」

照「『今までごめん』って、謝られたんだ」

照「京ちゃんが、妹にもさっきと同じ話をしたらしいんだ。話すのは2人目だったらしい」

照「それがアイツに心境の変化を与えたそうだ」

照「…けど、今度は私の方が苛立ってしまって。京ちゃんが傍に居るからって余裕ぶってるのかこの野郎って」

照「まるで、完全に妹に京ちゃんを取られてしまったような気になってしまったんだ」

照「…昔話はこんなとこかな」

淡「そんな話があったんだ…」

菫「なるほどね。そんなこんなで変な性格の歪み方はしたが、なんとかグレずに済んだ、と」

照「…」

菫「…ふう。少し疲れたな。照。それで、それが最近の挙動不審にどう繋がってるかだが」

照「ああ、それは…」

菫「長い話は却下だ。三行で話せ」

淡「エエエエエエエエエエエエ!!?」

菫「うるさいなぁ。何を驚いてるんだ淡は」

淡「いや、だって!さっきまでの話聞いて!ええ!?」

尭深「」カチカチ

淡「何スマフォ弄ってるんですか渋谷せんぱああああああああああああああああああい!!?」

誠子「それでさー。うん。うん。だから頼むよー。そっちだって悪い話じゃ…」

淡「いつの間に電話してるんですか亦野せんぱああああああああああああああああああい!!」

照「…」

淡「ああ!ほら!!宮永先輩黙りこくっちゃって…」

照「京ちゃんに会いに行った」

照「告られた」

照「テンパッて逃げた」

淡「本当に纏めちゃった!!」

菫「馬鹿だろお前」

淡「ひっでええええええええええええええええええええええええええ!!!」

照「…」ショボン

菫「…はぁ」

淡「ちょっと!!この人でなしども!!」

菫「なんださっきから五月蝿い淡。その人でなしてのは私達の事か」

淡「あったりまえです!!」

照「…」

淡「あのですねえ!この鬼畜ども!折角宮永先輩が勇気出してこんなヘヴィなはなししてくれたのに、なんですかこの態度!畜生ですか!」

菫「って言われてもなぁ…いや、馬鹿だろ。なんだこの救いようのない青臭いコミュ障の昔話は。私なら恥ずかしくて墓の下まで持っていく」

淡「っきいいいいいいいいいいいいい!!」

菫「五月蝿いなぁ…」

淡「あああああああああああ!!」

菫「誠子」

誠子「アイアイサー」キュッ

淡「ゴフッ」

菫「もういいぞ。少しは血の気は収まったか?」

淡「血の気が引きました」

菫「よし。…で、誰に頼んだんだ」

誠子「ああ。最近内に良く取材に来る記者に」

淡「…は?」

誠子「スクープやるからって言ったら、今すぐ車で来ると」

淡「へ?」

菫「よし。尭深。清澄までの地図は」

尭深「バッチ」グー

菫「ん。それじゃあ、車来るまでに各自準備しておくように」

淡「…へ?」

菫「…照」

照「…」

菫「照!!」

照「」ビクッ

菫「お前も準備しろ。急げよ。これから清澄へ行くから」

照「…え」

菫「話は分かった。お前の凹んでる理由も分かった。ついでに解決法も分かった。だから解決に行く」

照「ちょ…」

菫「拒否権は無いぞ。今までお前には3年間散々振り回されてきたんだ。最後の最後で渾身の力で振り回してやる」

照「ま…」

菫「要は、お前がその『京ちゃん』に想いを伝え返せば全部解決なんだろう?簡単じゃ無いか」

照「ば、馬鹿言うな!そんな簡単な話しじゃ…」

菫「簡単ですぅー。お前が勝手にややこしくしてるだけじゃないか。テンパッて逃げてなければ今頃ハッピーエンドだろ?浮かれたお前を私がぶん殴ってそれで終わってたはずだろ?なんでこんな面倒な事にしてくれてるんだ。ふざけやがって」

照「む、無茶苦茶…」

菫「無茶苦茶なのはお前だ。『京ちゃん』の身になれ馬鹿。想い人に一世一代の懺悔したと思ったらいつの間にか蒸発されて、数年後に奇跡的に出会って思い切って大告白したら逃げられて…可哀想過ぎて泣きそうになったわ。アホか」

淡「言われてみれば…」

照「うぐ…」

菫「しかも、お前の話だと妹もその子が好きなんじゃないのか?よく今まで無事だったと思うよ。運の良さだ・け・は!流石だと言っておいてやる。馬鹿」

淡「確かに奇跡ですよね」

照「おふ…」

誠子「先輩。車が来たみたいです」

菫「よし。それじゃあ行くか」

尭深「これ、カーナビです」スッ

菫「ありがとう。借りておくよ」

照「…」

菫「照」

照「はい」

菫「さっきの反論は」

照「ありません」

菫「ん。じゃあ行くぞ」

照「はい」

泡(あの宮永先輩が子羊のようだ…)

菫「じゃあ、誠子。尭深。明日の部活は任せた。私と照はサボりだ」

誠子「了解」

淡「…」

菫「…淡」

淡「は、はい!!」

菫「……お前も来るか?」

淡「…」

照「あの…菫。一応私がメイン…」

淡「…お願いします。私も連れて行って下さい。弘世先輩」

照「淡まで…」

菫「…ふ。いいだろう」

照「…」

菫「行くぞ。こんなのは、要は行動なんだ。さっさと行ってさっさと済ませるに限る。だろう?照」

照「はい」

誠子「今から行けば、最短で明日の日の出前くらいまでには長野に到達するでしょう」

菫「よし。わかった。なら、現地に着いたら即効連絡して呼び出せ。連絡先は勿論知ってるんだよな?」

照「さっき聞いたけど…日の出前に連絡って常識的にどうなの」

菫「お前が言うな」

淡「ばっさりだ…」

菫「さて…それでは諸君。…行くぞ!!」

照「…はい」

淡「…はい」

数時間前
長野→清澄の在来線の中

京太郎「…くー…くー…」

咲「…」

優希「…なあ、咲ちゃん」

咲「…なに?優希ちゃん」

優希「…私は、早く告白しちゃった方がいいと思うじぇ」

咲「え…」

優希「…ん。なんでもない」

咲「それってどういう…」

優希「まだ清澄まで時間あるよな?私は寝るじょ」

咲「あ…」

優希「おやすみ」

咲「…」

優希「…すー…すー…」

咲「…」

咲「…私…」

咲「私は…」

咲「…」

ガタン…ガタン…ガタン…

今夜の分終わり
明日の夜、サッカーが終わった頃から最終回

清澄駅ホーム

優希「さて…それじゃあ、私はさっさと帰るじょ。じゃあな、お前ら」

京太郎「…ん。おう…」

咲「うん…」

優希「…はぁ」

優希「じゃーーーあーーーなーーー!!」

京太郎「うおっ!?」ビクッ

咲「きゃっ!?」ビクッ

優希「ったく…な~に二人してテンション下げてるんだか」

咲「…」

京太郎「わ、悪い悪い…ああ、じゃあな。また明日…」

優希「…京太郎。もしかして」

京太郎「?」

優希「…ん。なんでもないじょ」

京太郎「?」

優希「咲ちゃん」

咲「…うん。また明日。ばいばい」

優希「…ん」

咲「…」

優希「…京太郎」

京太郎「なんだよ」

優希「もう暗いし、咲ちゃん一人で帰らすの、心配だじょ。お前、送ってってやれ」

咲「はっ…!?」

京太郎「…分かった」

優希「うっし!」

京太郎「お前はどうすんだよ」

優希「私のような強者はお前ごときの見送りは不要よ」

京太郎「なんだよそりゃ」

優希「ふっふっふ。…じゃあ、任せたじょ」

京太郎「…」

咲「ゆ、優希ちゃん…」

優希「咲ちゃん」

咲「…なに?」

優希「…」

咲「…」

優希「にひっ」

咲「あ…」

優希「じゃあね~~~~」タッタッタッタッタッ

咲「優希…ちゃん…」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「…」

咲「あ、あの…京ちゃ…」

京太郎「行こうぜ。咲」

咲「…うん」

京太郎「…」スタスタ

咲「…」スタスタ

京太郎「…」スタスタ

咲「…」スタスタ

京太郎「…」

咲(…沈黙が、重い。京ちゃんと二人っきりで歩いて、家まで送って貰って…本来は凄く嬉しいはずなのに、居心地が悪いよ)

京太郎「…」

咲(…さっき電車の中で優希ちゃんに言われた言葉が頭に響いてるから?)

咲(…早く告白した方が良いって…そんな、いきなり言われても、私は…どうすれば)

京太郎「…」

咲(それに、京ちゃん、さっきから元気が無い)

咲(ううん。正確には、さっき長野駅のホームでトイレに行ってから。あれから帰ってきた時、京ちゃん、目に見えて落ち込んでた)

咲「…」

京太郎「…咲」

咲(何かあったの?京ちゃん。電車の発車時間ギリギリに帰ってきて、電車に乗ったと思ったらすぐにふて寝みたいに眠っちゃって…ちょっと怖かったよ)

咲「…」

京太郎「咲?」

咲「あ…う、うん。なに?」

京太郎「お前んち、どっちだったっけって」

咲「え?」

京太郎「いや、お前んち行くの久しぶりだったから。ちょっと記憶曖昧で」

咲「あ、それは…」

咲「…あれ?」

咲「…わかんない」

京太郎「…お前に聞いた俺が馬鹿だった」

咲「むっ…」

京太郎「しっかし参ったなー」

咲「…う」

京太郎「どうすっかね」

咲「えっと…」

京太郎「仕方ねーなー。スマフォで確認すっか。住所は流石に覚えてるよな?」

咲「うん…って、馬鹿にしすぎ!」

京太郎「ははは…で、住所は?」

咲「あ、えっとね…」

咲「ん。この道見覚えあるよ。ここからなら大丈夫」

京太郎「そっか。じゃあもう地図は見なくて大丈夫か」

咲「けど、おかしいなぁ。いつも通ってる道のはずなのに…」

京太郎「それはあれだな。今がもう真っ暗だからだ」

咲「…」

京太郎「夜道は、いつもと違って見えるもんだ」

咲「…」

京太郎「ま、しかたねーよ」

咲「…なんか」

京太郎「ん?」

咲「なんか、優しいね。京ちゃん」

京太郎「…そうか?」

咲「うん。いつもなら絶対私の事からかい倒すのに」

京太郎「…」

咲「…なにかあったの?」

京太郎「…」

咲「その…さっき、の。長野駅で」

京太郎「んー…」

咲「…」

京太郎「まあ、な」

咲「…」

京太郎「…」

咲「…あの」

京太郎「…」

咲「…何があったか…聞いてもいい?」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「…どうすっかなー」

咲「…」

京太郎「ん~…」

咲「…」

京太郎「…誰にも言うなよ?」

咲「…」

京太郎「…実は、さっきさ」

咲「…うん」

京太郎「ふられちった」

咲「え…」

京太郎「…さっき、電車の待ち時間に。照ちゃんに、さ。告白しに行ったんだわ」

咲「…」

京太郎「…好きです!っつってさ。そしたら、泣かれちゃった。で、ごめんね!って言われて、そのまんま新幹線に乗ってっちまった」

咲「…」

京太郎「まさかあんだけ拒否られるとはなー。せめてお友達のままで…くらいだったらまだ良かったんだけど…いや。これもやっぱヘコむか」

咲「…」

京太郎「以上」

咲「…」

京太郎「…昔から、ずっと好きだったんだ。諦めかけてたんだけど、まさかの偶然の再開で、テンション上げすぎちまったんかね」

京太郎「そりゃ冷静に考えて、昔ちょっと一緒に遊んだガキなんかに今更告られてもどーせいっちゅーねんって感じだわな」

咲「…なにそれ」

京太郎「…悪い。キモかったか?引いた?」

咲「…」

京太郎「…そりゃそうだよな」

咲「…」

京太郎「…っと。着いたんじゃね?確かここだろ。お前んち」

咲「…」

京太郎「…じゃ、俺は帰るから」

咲「…って」

京太郎「さって…と。それじゃあ、また明日な。咲」

咲「待って…」

京太郎「お、今日はそう言えばまだまだオリンピックやってるよな。よし、ダッサイふられ男はコンビニ寄って菓子でも買って、自棄食いしながら朝まで生観戦…」

咲「待って!!」

京太郎「…どうした?」

咲「…ちょっと、待ってて…!!」

京太郎「…はぁ」

咲「いい!?待っててね!絶対待っててね!!絶対絶対!黙って帰ったら駄目だからね!!」

京太郎「お、おう…」

咲「っ!!」ダッ

バタン ダダダダダダ

ドタン バタン ドタン バタン ゲシッ                ウギャアアアアアアアア!!

京太郎「?」

バタン

咲「おまたせ!!」

京太郎「お、おう…」

咲「あ、あのね!?京ちゃん!」

京太郎「ああ」

咲「…きょ、今日、お父さんお仕事で帰って来れないんだって」

京太郎「え…?けど、お前んち電気点いて…」

咲「…消し忘れて出てっちゃったんだって。置き書きしてあった」

京太郎「いや、それはなんかおかしくな…」

咲「だ、だから!!!」

京太郎「はい」

咲「…せ、折角だから…わ、私。京ちゃんの自棄食いに付き合ってあげるよ」

京太郎「…」

咲「…うちでテレビ、一緒に見てかない?」

京太郎「咲…」

咲「…う、うち、さ。テレビ結構大きいし、お菓子も飲み物もいっぱいあるし、その、私の他には誰も居ないから大声出しても迷惑にならないし…」

京太郎「…」

咲「え、えっと…あ、そうだ。それに、今から家に帰ってたら見逃しちゃう競技も、今から私のうちで見たらいっぱい見れるし…」

京太郎「…」

咲「…ど、どう…かな?」

京太郎「…」

咲「あ、か、勘違いしないでよ!あくまで京ちゃんの残念会の自棄食いに付き合ってあげるのがメインなんだからね!」

京太郎「…」

咲「…って、わけなんですが」

咲「い、いかがでしょうか…」

京太郎「…はは。ありがとうな。…それじゃあ、お言葉に、甘えちまおう…かな」

咲「…」

京太郎「…なんて」

咲「う、うん!!じゃあ、入って!」グイッ

京太郎「おっとっと…」

長野行きの車の中

淡「」ソワソワ

照「…淡?」

菫「…どうした淡」

淡「えっと…その…ま、まだ長野には着かないんでしょうかね」

照「いや…まだまだだけど」

菫「やっと首都高を出たところだぞ」

淡「うぐぐぐ…」

照「どうしたの?」

淡「えっと…その…お、お小水が…」

照「ああ」

菫「淡。どんまい」

淡「ええええ!?」

菫「我慢しろ。事態は一刻を争うんだ。…最悪、黙っててやるから」

淡「お、鬼!悪魔!人でなし!」

菫「くー…」

淡「うわああああああん!寝たふりしたこの人ーーー!」

照「菫…それは流石に淡が可哀想…」

記者「って言うか、私の車の中でおしっこなんか漏らさないでよ。記事にしちゃうわよ」

淡「そんなんされたら自[ピーーー]るぅううううううう!!」

菫「仕方ないな…記者さん。次のパーキング停まってあげて下さい」

照「お願いします」

記者「もとからそのつもりだわよ…っていうか、もう着くわよ」

淡「ほっ…」

記者「はい、到着。行ってこーい」

淡「ありがとうございますううううう!!」タタタタ

記者「ついでに、悪いけど私もちょっとコンビニ行ってくるわ。眠気覚まし買ってくる」スタスタ

照「…」

菫「お前も行ってこい」

照「えっ…」

菫「気分転換も必要だろ。ついでに適当に菓子でも買ってくればいい」

照「…」

菫「今からソワソワしても、仕方ないだろ?今の内にちょっとリラックスしておきなさい」

照「…うん。じゃあ、ちょっと行ってっくる」

菫「あ、ついでにコーヒー買ってきてくれ。UCCのブラックのな。財布は出すの面倒だからお前の奢りでいいぞ」

照「…」

菫「なんだその顔。ほら、行け」シッシ

照「…はい」スタスタ

コンビニ

照「…菫、最近酷くない?」

照「…えっと。お茶と、お菓子買ってこう。あとは、菫のはなんだっけ。…あれ?ミルク入りのコーヒーだっけ。…あれ」

照「まあいいや。このカフェオレにしよう。ミルクと砂糖たっぷりのほうが美味しいし」

照「淡にもなんか買っていってあげよう。コーラでいいかな」

照「…消臭ガム買ってこう」

照「えっと、あと、あぶらとり紙も」

照「…ん?」

照「…あ。折角長野に行くんだし、時間有ったら久しぶりに実家に寄ってもいいかな。みんなに昔の話したら、すっきりしちゃった。咲とも仲直りしたい…」

照「…うん。それじゃあ、これを買っていこう」ヒョイヒョイヒョイ

照「あとは…」チラッ

照「…えっ?」

照「そ、そんな…」

照「なんでコレがここに…!!?」



車内

照「ただいま」

菫「おかえり」

照「はい、コーヒー」スッ

菫「サンキュ…って、これ、カフェオレ…はぁ。お前は…」

照「?」

菫「…まあいい。で?随分と大量に荷物を抱えているけど、どうしたんだ?適当に菓子でも…とは言ったが、車内で宴会でも始める気か」

照「ふふ…」

菫「…?久しぶりに笑ったな」

照「見ろ、菫」

菫「んあ」

照「奇跡だ」ガサガサ

菫「なにが…って」

照「じゃーん。東京ばな奈」

菫「…まあ、高速のコンビニって、たまに名物とか置いてるよな」

淡「すいませーん!おまたせしましたー」タッタッタ

記者「おらぁ!!気合入ったぁ!!」タッタッタ

照「2個はお土産。後は私が食べる」モックモック

淡「うわ…また東京ばな奈だ…」

菫「…見てるだけで胸焼けしそうだ。やっぱりブラックが良かったな」

記者「うおおおおおおお!!レッドブル8本効っくぅうううううう!こっから先はぶっとばすぞおおおおおおお!!」

淡「え…」

記者「振り切るぜ!!!!」

淡「なにを…」

ギュルルルルル  ブオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

宮永家

咲「…」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「…」

咲「オリンピック、凄いね」

京太郎「ああ…」

咲「…お菓子、食べないの?」

京太郎「ん…まだいいや」

咲「そっか…」

京太郎「うん。もうちょっとテレビ見るのに集中する」

咲「…」

京太郎「…」

咲「……い」

京太郎「…咲?」

咲「…京ちゃんはズルイよ」

京太郎「…あ、ああ、悪い。お邪魔してる立場なのに、1番テレビ見やすい正面のソファに座っちまって」

咲「…」

京太郎「…あれ、そうじゃなくて?」

咲「…」

京太郎「咲?おーい」

咲「…ううん。その通り」

京太郎「ごめんごめん。今どけるから…」

咲「いいよ」

京太郎「え?」

咲「そのままでいい」

京太郎「…」

咲「…」スッ

京太郎「ちょ!?」

咲「…私が京ちゃんの隣に座るから」

京太郎「お、お前…!」ドキドキ

咲「」ピトッ

京太郎「あわわわわ」

咲「…ねえ」

京太郎「は、はい!?なんでしょう!!」

咲「…これって、今どっちが勝ってるの?」

京太郎「え?あ、テ、テレビか!?え、えっとな!これは…」

咲「…」

京太郎「それで、これは…こういうルールで…」

咲(…京ちゃん)

京太郎「で、これはこっちが…………で………」

咲(京ちゃん…)

京太郎「この大会のルールだと……で……………の場合は…」

咲(京ちゃん…!!)

咲(好き)

咲(大好き)

咲(大大大大大好きだよ)

京太郎「……だって…………ってルールで…俺の好きな………は……」

咲(愛してる)

咲(…けど、京ちゃん)

咲(私、私、私…!!)

咲「…」

咲(私は……っっっっっ!!)

咲「…ありがとう」ボソッ

京太郎「…へ?」

咲「…」

京太郎「…咲?」

咲「…」

咲(…私は、京ちゃんには告白しないよ)

咲「…」

京太郎「…寝ちまったのか?」

咲(好きだけど。愛してるけど。告白しないよ)

咲「…」

京太郎「…そっか。寝ちまったか…」

咲(うん。私は…眠ってしまったの)

京太郎「…」

咲「…」

咲(…京ちゃんの好きな人が、お姉ちゃんなのなら…)

咲(私は、京ちゃんに告白しないんだ)

咲(絶対に。絶対に告白してあげないんだ…)

咲(してあげないんだから…)

咲(…京ちゃんが、言っちゃったから悪いんだよ?)

咲(私が、それを知ってしまったから…)

咲(だから、告白しないんだよ)

咲(…京ちゃん、今私が身体を寄せた時に、ドキドキしてくれたでしょ?)

咲(…だから、告白してあげないんだよ)

京太郎「…咲」スッ

咲「…」

京太郎(…止めた。寝てる咲に何しようとしてんだ俺は。頭撫でるつもりか。さっきの今で。…馬鹿野郎。これ以上屑になる気か俺は)

京太郎「…はぁ」

京太郎(…咲がもたれ掛かってるし。動けないな)

京太郎(…俺も、寝よう)

京太郎「…」

咲(…京ちゃんが、お姉ちゃんを好きだから悪いんだよ)

咲(京ちゃんが、お姉ちゃんに告白したから悪いんだよ)

咲(…京ちゃんの中の私が、お姉ちゃんに負けてたって、知ってしまったから)

咲(…だから、私は、告白しないんだ。私は京ちゃんに告白しないよ。京ちゃんが私に告白してくれるなら応えてあげるけど)

咲(…お姉ちゃんに、負けたまんまじゃ、応えてあげないんだから)

咲(京ちゃんは寂しんぼだから、もしかしたら今私が本気で告白したら、応えてくれるかもしれないけど)

咲(…けど、それをしたら、お姉ちゃんにも、優希ちゃんにも顔向けが出来ないから)

咲(…だから)

咲(…だから、ねえ京ちゃん)

咲(…私、馬鹿だよね)

咲(…だけど、決めたんだ)

咲(…京ちゃんを、本気で惚れさせてやるって。お姉ちゃんに勝って、京ちゃんの告白に『しょうがないなー』言って応えてあげるって)

咲(それまで、京ちゃんの1番はお姉ちゃんで良いよ)

咲(けど、絶対に負けないから)

咲(…負け…)

咲(…怖いけど)

咲(不利かもしれないけど)

咲(今のままじゃ、お姉ちゃんがその気になったらあっという間に終わってしまうけど)

咲(…時間もないし、勝ち目も全然見えないないけど)

咲(…それでも、私はこんな不器用な戦い方をする自分を、誇りに思える。肯定できる。だから、闘う)

咲(…)

咲(…私)

咲(…馬鹿だなぁ)

咲「…」

京太郎「…すう…すう…」

咲「…」パチッ

京太郎「…すう…すう…」

咲「…京ちゃん?」

京太郎「…すう…すう…」

咲「…寝たの?」

京太郎「…すう…すう…」

咲「…寝たんだね」

咲「…」

咲「…京ちゃん」

咲「…待っててね」

咲「それと」

咲「ごめん」

咲「…あとは」

咲「…ばーか」

咲「…」

咲「…」チュッ

咲「…」

咲「…ほっぺただけは、貰っておくよ」

咲「…」

咲「…」

咲「…」

咲・京太郎「「…すう…すう…」」

未明
清澄

記者「着いたぁああああああああああ!!…すみません。体力の限界ですので休ませて下さい」

菫「…着いた、か。ご苦労さまです。ふう。流石に田舎だけあって清々しい空気だ」ノビー

淡「うぐぅ…」フラフラ

照「ごふぅ…」フラフラ

菫「なんだお前ら。随分とフラフラじゃないか」

淡「だって…あの激しい運転…」ヨロヨロ

照「…」

菫「情けない…これからが本番だというのに…」

淡「化物ですか先輩の体力」

照「えう…」

菫「…照?」

照「うぷ…」

菫「…おい」

照「…ごぷ」

菫「おい!」

淡「ちょ!?まさか…!」

記者「ま、待って宮永さん!せめて車の外に…」

照「えろろろろろ…」ゴッポォォ

記者「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」

淡「うわぁ…」

菫「やっちまいやがった…」ハァ

照「ギボジワルイ」ウルウル

記者「」

淡「高速の車の中であんなに甘いもの食べるから…」

菫「…おい。大丈夫か?」

照「まずい。死ぬ」

菫「参ったな…流石にこんな状態のコイツにターゲットを会わせるわけにもいかないし…」

淡「どこか、休める場所とかありませんかね」

記者「」

淡「…記者さん、真っ白になってます。…すみません。せめて安らかに…」ナームー

菫「この辺はとんでも無い田舎だしな。休憩出来そうな場所あるか?ホテルとか、カフェとか、マンガ喫茶とか」

照「…無い。間違いなく」フラフラ

菫「むむむ…」

淡「かと言って、宮永先輩のゲロまみれの車の中は…」

菫「却下だ」

照「その辺の道端でも大丈夫…」

菫「却下。虫が多い」

淡「じゃあ、どうしましょうか」

菫「…照」

照「なに…」

菫「…お前の家はどこだ」

照「…?」ポヘ?

菫「いや。お前の実家だよ。こんな時間に訪ねるのもアレだが、実家なら休憩くらい出来るだろうが」

淡「あ、ナイスアイディア」

照「えー…」

菫「なんだ。嫌そうな顔だな」

照「なんか咲に顔合わせにくいっていうか…」

菫「お前、今更なぁ…」

照「むぅ…」

菫「兎に角だ。この辺は虫多いし、暑いし、私はいい加減一刻も早くクーラーの効いた室内に行きたいんだよ」

淡「それが本音ですか」

照「菫、酷い」

菫「五月蝿い。いつまでも駄々捏ねてるとそのトコロテンのような頭をシェイクするぞ」

照「ごめんなさい」

淡(この人にだけは、本当に逆らわないようにしなければ…)

菫「分かったな?それじゃあ早く案内しろ。迷ったらシェイクだ」

照「はい」

淡「あの…」

菫「ん?」

淡「記者さんは…」

記者「」

菫「…記者さん」

記者「あ、は、はい…」

菫「今晩中には東京に戻りたいので、車の中綺麗にしておいて下さい」ニコッ

記者「…」

菫「ありがとうございます。では、よろしく。…さ、行くぞ、照」ズンズン

照「はい…」トボトボ

淡(哀れな…って)

淡「…」チラッ

記者「…」

淡「…えっと」

記者「…?」

淡「…よ、よろしくお願いします!」ペッコリン

記者「…」

淡「弘世先輩ー!宮永先輩ー!待ってくださいよー!」トテテテテ

宮永家

京太郎「…ん」パチッ

咲「あ、起きた?」

京太郎「咲…」

咲「おはよ」

京太郎「…おはよう。今何時?」

咲「まだ5時前だよ」

京太郎「なんだよ。ぜんっぜん寝てねーじゃん…」

咲「ふふ…狭いソファーの上に二人だったからね。無理な体勢でよく寝れなかったのかも」

京太郎「」ドキッ

咲「京ちゃん?」ズイッ

京太郎「あ、ああ…なんでもない」

咲「そっか」

京太郎「お、おう…あ、そういえば今日学校じゃん。授業道具取りに行かなきゃ…」

咲「まだ結構時間はあるよ?」

京太郎「そうだけど、風呂入ってねーしシャワーくらい浴びてきてーし」

咲「…うちの浴びてく?」

京太郎「はぁ!?」

咲「…ふふふ。なんちゃって」

京太郎「お前なぁ…」

咲「あはは!」

京太郎「んじゃ、行くぞ。お邪魔しました…」

咲「ちょっと待って」

京太郎「なんだよ」

咲「私、早起きしたから、朝ごはん作ってたの」

京太郎「…」

咲「ついでだから、食べてかない?」

京太郎「…いいの?」

咲「うん。あと、私はもう食べたし、これからシャワー浴びてくるから」

京太郎「…」

咲「私が上がってきたら、一緒に学校行こ?」

京太郎「…」

咲「京ちゃんが家でシャワー浴びてる時間くらい、外で待ってるから」

京太郎「咲…」

咲「それじゃあ、行ってくるね。あ、ご飯は炊飯器から好きなだけよそって良いよ!おかわりもご自由に!」タタタタ

京太郎「…行っちまった」

京太郎「もう配膳されてるし」

京太郎「目玉焼きに、味噌汁に、肉じゃが?」

京太郎「…ま、いっか。折角だし、いただきますか」

京太郎「…」ゴソゴソ

京太郎「…」パクッ

京太郎「…ん」

京太郎「んまい」モグモグ

京太郎「…」モグモグ

京太郎「…」モグモグ

京太郎「…」モグモグ

京太郎「…」モグモグ

京太郎「…ごちそうさまでした」ペッコリン

咲「ふう。いいお湯だった」スタスタ

京太郎「ぶふっ!」

咲「あれ、どうしたの?京ちゃん」

京太郎「…いや、なんでもないです」

咲「そう?」

京太郎「…」

京太郎(すでに制服だけど…湯上りだから髪濡れてて艶っぺー!?)

京太郎(くっそ…!なんなんだよ昨日から!このぉ…咲の癖にぃい…!)

咲「…ご飯、どうだった?」

京太郎「ん。美味かったよ。ごちそうさま」

咲「そう。良かった。お粗末さま」ニコッ

京太郎「…」

咲「洗い物は帰ったらするから、じゃあ、もう出ようか」

京太郎「ん?あ、ああ…そうだな」

道端

照「あれ…えっと…」キョロキョロ

菫「…」

淡「…」

照「えーっと…こっちがあれで、あっちがそれで…えっと…」

菫「…おい。ジモティ」

照「あれ…」ウロウロ

淡「宮永先輩って…」

照「あ、こ、この道!この道なんだか見覚えがある!」

菫「当たり前だ」

淡「…さっきもこの道通りましたよ」

照「…困った。道が変わってる」

菫「お前の生まれ故郷は不思議のダンジョンか」

淡「ああ。それなんか納得しました」

照「あれ?なんで?あれ?」

淡「迷ったんですね…」

菫「まさか本気で生まれ育った故郷で道に迷う奴が居るとは…」

照「あううう…あ、こ、こっち…かも…」

菫「おい、淡。コインランドリー探せ。コイツ一回乾燥機で回してやる」

淡「落ち着いて下さい弘世先輩」

照「しまったな…どうやって私はこの町で生きてきたんだろう」

菫「本当にな…」

照「…キボジワルヒ」

淡「またですか!?」

菫「ほら、道端行け。幸いこの辺田んぼばかりだ。お前の酸っぱいゲロも肥料になろう」

照「オボロロロロロロ…」

淡「…私、なんだか泣けてきました」サスサス

菫「それにしても…ふう。どうしたものか。このままじゃ我々はこのド田舎で遭難してしまうかもしれん」

淡「人様の街を…」

照「…はぁ。はぁ」

淡「…あ、もう大丈夫ですか?」

照「ん」

淡「…なんか、この人随分大人しくなりましたね」

菫「そうだな。麻雀部では威張り腐ってる癖にな」

照「…」

淡「…」

菫「ん?何か言いたそうな顔だな」

淡「いえ。何も」

菫「そうか」

淡(逆にこの人は何故こんなに理不尽なのだろうか)

照「…っ」ピクッ

菫「…ん?」

淡「どうしたんですか?宮永先輩」

照「…ねえ、何か聞こえない?人の声…」

淡「え?ん…言われてみれば確かに」

菫「おお、丁度いいじゃないか。道を尋ねられる」

淡「あ、確かに」

照「…」

菫「良かった、これで遭難を免れられるぞ。早く道を押しえて貰って宮永家に行こう。流石に歩き疲れた」

照「…」

淡「そうですね。私もお腹すいちゃいましたし…シャワー借りられないでしょうか」

照「…」

菫「…照?」

照「…この声」

淡「…宮永先輩?」

照「…聞き覚えがある」

菫「は?何を…」

照「あっちだ…!」タッ

菫「あ。おい、照…!」

淡「えっ!?えっ!?えっ!?」

菫「淡!ぼさっとするな!追うぞ!」ダッ

淡「あ…は、はい!!」ダッ

咲「          」

京太郎「           」

咲「             」

京太郎「             」



淡「…そして、勢い良く走っていった割にコソコソ後ろをつけるんですね」コソコソ

照「…うん。あの子達が、妹の咲と、私の好きな人の須賀京太郎君」コソコソ

淡「良くあの遠距離で確認できましたね。今だって顔を確認出来るような距離じゃないのに」

照「二人は私の大切な人だもん」

淡「…そうですか」

菫「…何を話してるかは聞き取れないが随分親しげじゃないか。それにこんな時間に二人で歩いて…もう付き合ってるんじゃないのか?今は朝帰りに的な」

照「」ガーーーン

淡「弘世先輩!」

菫「いや、でもあれはどう見ても」

照「…」クスン

淡「ほらぁ。また凹んじゃったじゃないですかぁ…」

菫「面倒くさい…わかったわかった。まだ付き合ってない付き合ってない」

淡「…」

照「…そう、かな」

菫「ああ。大丈夫だ」

照「」ホッ

淡「信じた!?」

菫「しかし、それでもあの二人が随分仲良さそうなのは間違いないぞ」

照「あわわわわ」オロオロ

淡「面倒な人だなぁ…」

菫「どうする?照。まさかここで会うとは色々と手間が省けた感じではあるが…」

照「こ、心の準備まだ出来てないよ…」

菫「だよなぁ…」

照「ど、どどどどうしよう、ねえ、菫、淡…私…」

淡「それに、妹さんもいる前じゃ、ちょっと…」

照「そ、そうだよ。今は咲が居るし。駄目だよ。それにもし二人が本当に付き合ってたら私…」

菫「ったく…」ボリボリ

淡「…菫先輩?」

菫「…照。お前、そこでちょっと待ってろ」

照「…へ?」

菫「行くぞ。淡」

淡「へ?」

菫「私に考えがある。上手いことあの妹ちゃんをターゲットから引き離すぞ」

照「え?」

菫「照。私達がここまでするんだ。まさか私達の頑張りを無視してこのままウダウダしてるなんて情けない真似で終わるんじゃないだろうな」

淡「ちょ!?強引過ぎませんそれ!?」

菫「大丈夫、別に危害を加えるわけでは無いさ。ただちょっと照の告白までの時間稼ぎをさせて貰うだけだ」

淡「なんか怖いですよ。言っておきますけど、私は不良の真似事なんて絶対にしませんからね」

菫「馬鹿言うな、私がそんな真似するわけないだろ。なあ?照。お前ならわかるだろ」

照「い、妹に手を出すなよ…!」

淡「ほら、信用されてない!」

菫「あれ…おかしいな」

照「い、幾ら菫だって、咲に危害を加えるなら私だって…」

淡「信頼ってなんなんでしょうか…」

菫「めんどくせえなぁ…」

淡「そういうのが悪いんですって!」

菫「ったく。兎に角、行くぞ。照。このままそこで縮こまってたらもうどうなっても知らんぞ。どうしても妹が心配なら、告白の結末だけ着けてから来い」

淡「妹さん人質!?」

菫「今まで色んな事から逃げてばかりで、情けないと思わないのか」

照「…」

菫「いじめから逃げて、妹と向き合うことから逃げて、自分の気持から逃げて、挙句に好きな人からの告白からすら逃げて。次は何から逃げる気だ?麻雀か?学校か?人生か?」

照「…」

菫「一個でも最後まで立ち向かって見ろよ。お前、確かに麻雀はバケモノだけど、このままじゃ壁にぶつかったらそこで終わるぞ」

菫「…麻雀だけじゃなくてもさ。他になんにも取り柄の無いお前だけど、それでも逃げずに立ち向かえばなんとか打ち勝てるものだって今までの人生には幾らでもあったはずなんだよ」

照「…」

菫「立ち向かえ。お前がさっき妹を私から守ろうとしたろ。そんな風に立ち向かえ。一人が怖いなら私達に頼れ。お前が望むなら、私達が幾らでも力になってやるから」

菫「お前、長野は敵ばかりで、友達が居なかったって言ってたよな?じゃあ、今はどうだ?私は?淡は?誠子は?尭深?他の麻雀部やクラスの連中は?」

照「…」

菫「例えどれだけダメ人間のお前でも、友人の私達の力が有れば、お前、幾らでも強くなれるだろう?」

菫「だから、安心してぶつかってこい。戦うべき時に戦ってこい。勇気出してやりたい事、やるべき事やって、結果見届けて、自分の限界知ってこい」

菫「失敗したら笑ってやるから。一緒に泣いてやるから。成功したら一緒に喜んで笑ってやるから」

菫「…それで、私が困ってたら、お前が私を助けてくれればそれでいい」

照「…」

菫「逃げるな。たまには逃げてもいいけど、今だけは逃げるな。逃げるべき時は逃げていいから。今だけは絶対に逃げるな」

照「…」

菫「…行くぞ。淡」スッ

淡「あ…」

照「…」

淡「…宮永先輩」

照「…」

淡「私も、戦ってきます」

照「…」

淡「だから、待ってます」

照「…」

淡「…っ!」タタタタタ

咲「それでね、京ちゃん…」

京太郎「…ん?」

咲「…京ちゃん?」

菫「おはよう、少年少女達」スタスタ

淡「えーっと…お、おはようございます」

咲「…?お、おはようございます…」

京太郎「…誰?」

菫「ああ、失礼。私は東京の白糸台高校というところの人間だよ。3年生にして麻雀部部長の弘世菫だ」

淡「お、同じく1年の大星淡です」

京太郎「…はぁ」

咲「えっ。白糸台って…お姉ちゃんの…」

京太郎「へ?」

菫「その通り。宮永照はうちのエースだ」

京太郎「えっ」

菫「そう。宮永照。…私達は親しみを込めて『照ちゃん』と呼んでいるがね」ニヤリ

淡(嘘ばっかり…)

京太郎「えっ!?」

咲「…何の用…ですか?」

菫「ん?何。大したことじゃない。これは恥ずかしながら今まで知らなかった事だが、我等が絶対的なエースに、なんと妹さんが居ると言うじゃないか」

菫「あの子は恥ずかしがり屋でなかなか自分の事を話さないから、まあ無理もないのだけれどね」

咲「…」

菫「それで、今日は君をスカウトに来た」

咲「は…」

京太郎「はぁあああああああああああああああああ!?」

淡(この人、悪役やったら板につくなぁ…)

菫「おや、何を驚いているんだい?」

京太郎「ふ、ふっざけんじゃねぇよ!!」

菫「至って真剣だが」

京太郎「尚更悪い!!」

菫「クククク。おや、何故だい?」

京太郎「何故って…全国前にしたこの時期に、王者がチャレンジャーの戦力引き抜きに来るって、どういう了見だってんだよ!」

菫「おや、と言うことは君達も全国に出るのか、初めて知ったよ。なにせ我々は王者なので、下々の者には興味が無い」

京太郎「この野郎…!!馬鹿にしやがって」

淡(初出場校はダークホースになりやすいって、いっつも入念に調べまくってる癖に)

菫「そう言われてもね。本当にこの子の存在を知ったのは最近なんだ」

京太郎「それは残念だったな!行くぞ咲!」

咲「あ、う、うん…」

菫「いいのかい?」

咲「…え、えっと…ごめんなさい…」

京太郎「だとよ!悪いけどお引き取り願おうか!王者様!!」

菫「本当にいいのかい?」

咲「…?」

京太郎「咲!耳貸すな!早く行くぞ」

咲「う、うん…」

菫「君の姉から、君宛てにと言って預かっている物があるんだが」スッ

咲「えっ…」

淡(あ…宮永先輩がコンビニで買ったっていう、妹さんへのお土産が入った袋。いつの間に)

菫「実は私もまだ中身を検めてはいないんだが…君にどうしても渡して欲しいと言われているんだが」

咲「…」

京太郎「咲!」

菫「…私と、サシで話をしないか。丁度すぐそこに神社がある。そこで二人きり、ゆっくりとな」

咲「…わかりました」

京太郎「咲!」

咲「大丈夫だよ。京ちゃん。この人、雑誌で見たことある。本当に白糸台の部長さんだ」

京太郎「けどよ…」

咲「…お姉ちゃんの名前を出したって言う事は、きっと本気でしたい話があるんだ。危ないことされるとも思えない」

菫「懸命な判断だ」

淡「ひ、弘世部長…?」

菫「なんだ?淡」

淡「い、いや…なんですかこの状況。サシで話って…私が一緒に来た意味一瞬で無くなっちゃったじゃないですか。私どうすればいいんですか」ヒソヒソ

菫「さあね」

淡「絶句です」

菫「…お前、昨日から言いたい事あったんじゃないのか?コイツに」

淡「…へ?」

菫「お前、東京には小学生の時に転校してきたんだって?」

淡「…」

咲「…あの」

菫「…ああ、すまない。ちょっと打ち合わせをね」

京太郎「…咲」

咲「大丈夫だよ。…待ってて、京ちゃん」

京太郎「…わかったよ」

菫「こいつは人質だ。私がこの子に危害を加えたら、コイツをいじめ殺して良いぞ」

淡「ふえっ!?」

京太郎「誰がんな事するかよ!」

菫「ふふ。そうだったか失礼。それじゃあ行こうか」スッ

咲「はい」スッ

京太郎「…」

淡「…」

京太郎「…」イライラ

淡「…」ダラダラ

京太郎「…」イライラ

淡(ど…)

淡(どどどど…)

京太郎「…」イライライラ

淡(どおおおおおおおおおおおおおおおしよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)

京太郎「…チッ」

淡「」ビクッ

京太郎「…あ?」

淡(なんか嫌な予感はしてたんです。確かにしてたんです。宮永先輩の話聴いてた時に、ちらっと確かに思ってたんです!)

淡(ま、まさか…まさか…まさか…!って!うっすらと嫌な予感はしてたけど、だけど、だけど!顔見た後にああ、やっぱりって思ったけど!だけど!)

淡(まさか、宮永先輩が好きになるような人だし、なんだかんだ言って人畜無害そうな感じの人だって思ったのに!信じたかったのに!)

淡(それでも一応なんか確かめなきゃいけないと変な使命感覚えてノコノコ付いてきたけど!)

淡(もうずっと前だし、名前も覚えてなかったし、顔もうろ覚えだったし!流石にトラウマ克服したと思ってたのに!!)

淡(思い出してしまったぁあああああああ!!この人だ!!間違いない!!5年2組の須賀京太郎だあぁあああああああああ!!!)

淡「」ガタガタ

京太郎「…おい」

淡「ひゃぃっ!!?」ビクッ

京太郎「…なんでそんなビビってんだよ」

淡「す、すみ、すみま、すみません…」ガタガタ

京太郎「…ん?」

淡(ひいいいいいい!)

京太郎「…アンタ、どっかで見たことあるような…」ジーッ

淡「そ、そうですか!?私アナタはじめて見ましたけど!お初にお目にかかると思いますけど!!けど!!」

京太郎「そうだっけ…まあ、確かにそうか。俺に東京の知り合いなんか居ないはずだし…」ブツブツ

淡(そしてとっさに誤魔化してしまったぁあああああ!ああああ!だから嫌だったんです!弘世先輩の鬼!悪魔!弘世菫!あの人が傍にいるならって一緒に飛び出したのに!)

淡(なんで私とコイツが二人きりになる状況作り出してくれちゃってるんですかぁあああああああああああああ!!?しかも敢えて挑発しまくって印象と機嫌悪くした後に!!)

淡「あわわわ…」ボソッ

京太郎「…ん?」

淡「ひゅっ…」

京太郎「…」

淡(し、しまった…この口癖」。『あわわわ』って、昔からの癖なんだった。下手に使ったら思い出されてしまう…)

京太郎「あわわわ…って…」

淡(手遅れ!?)ビックーーーン

京太郎「なあ、アンタ」

淡「は、はひ!?」

京太郎「悪い。さっき不意だったから、名前良く聞き取れなかったんだ。もう一回教えてくれるか」

淡「あわわわ…」

京太郎「そう、その口癖。なんか引っかかるっつーか…」

淡「…」

淡(うわああああん!どうしましょう宮永せんぱぁあああああい!!)

淡「あのぉ…」

京太郎「ああ」

淡「そのぉ…」

京太郎「…」

淡「あー…」

京太郎「…」

淡「…」

京太郎「…」

淡「…」

京太郎「…」イライラ

淡(イライラしていらっしゃるぅううううううう!!)

淡(どうしようどうしようどうしようどうしよう)

淡(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい)

淡(嫌。コイツからのいじめが耐えがたくて、わざわざ長野から東京まで転校してきたのに。もう二度とコイツに会う事なんて無いと思ったのに)

淡(いじめられるのが嫌で、地味な外見が原因なのかもって悩んだ挙句に怖い外見になろうとアイツの髪の色真似て染髪までしたのに)

淡(それが…それが、なんでこんな状況になってるの!?)

京太郎「なあ。答えろよ。オイ」イライラ

淡(いやああああああああああああああああああ!!何にも変わってないじゃないコイツ!!)

京太郎「なあ…アンタ」

淡(宮永先輩!コイツ、やっぱり駄目ですって!外見は確かにちょっと丸くなった…ってか柔和そうな顔にもなりましたけど、やっぱりコイツ悪い奴です!)

淡(正解です!告白に応えないで正解でしたよぉおおおお!宮永先輩がコイツ彼氏としてうちの部室に連れてきたりしたら、私ストレスで死にますから!!)

京太郎「…」

淡(無言で睨むなぁ!!あああああもうっ!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げ…)

淡「…逃げ?」ピタッ

京太郎「…?」

淡「…」

京太郎「…なぁ「大星淡です」」

京太郎「…へ」

淡「大星淡です。覚えてませんか?この名前」

京太郎「大星…淡…」

淡「はい。まあ、見た目はこの通り大分大人っぽくセクシーになってたので、外見で気付かれないのは仕方ないかも知れませんが」

淡「…ってか、タメだし敬語使う必要ないよね。須賀京太郎」

京太郎「おお…ぼし…」

淡「思い出せないって言うなら自己申告すれば良いよ。その瞬間ぶん殴ってやる」

京太郎「…お前、まさか…」

淡「思い出した?」

京太郎「…俺が、昔いじめてた」

淡「正解。じゃあ、殴られても仕方ないって、自分でもわかってるよね?」

京太郎「は…」

淡「[ピーーー]!!」バキッ!!

京太郎「いってぇ!?」

淡「ふん。思わず禁止用語を使ってしまいましたが。まあ、これで私の怒りはわかりましたね?この糞野郎」

京太郎「…大星」

淡「ったく…宮永先輩には、今度プリンの王様プリン・ア・ラ・モード奢ってもらわなけりゃ気が済みませんよ本当に」ブツブツ

京太郎「…あの」

淡「なんですか?この下郎」

京太郎「げろ…い、いや。その、待ってくれよ。お前には色々言いたい事も聞きたい事もあるんだ」

淡「私には聞きたい事も教えたい事もありませんが」

京太郎「…」

淡「…はぁ。なんですか?一個だけ聞いてあげます」

京太郎「…その、昔は、すみませんでした」

淡「はっ。別に今更貴方に謝罪されても私の心には響きません。自分の気を済ませたいなら、穴掘ってその中でごめんなさいって繰り返してればいいんじゃないですか」

京太郎「それでも、言わせて欲しいんだ。…あの頃は俺が馬鹿だった。大星が嫌がってるのに、くだらない理由でお前に嫌がらせ繰り返して」

淡「知りませんよ。いじめっ子の心境なんて聞きたくもありません」

京太郎「…」

淡「…けど、まあ、それでも貴方のお陰であるものもありましたし」ボソッ

京太郎「え?」

淡「…いくつか、教えてあげてもいいって思った事がありました。時間が無いので手短に」

京太郎「時間が無い…?」

淡「1つ。私は強くなりましたよ。貴方なんかよりずっと強く。もう負けません。いつだって相手になってやります」

京太郎「…」

淡「2つ。けど、私が貴方を許す事はありません。少なくとも現時点では、よっぽどの奇跡が起こらない限りは」

京太郎「…」

淡「3つ。でもまあ、私が自分より弱い奴を恐れる事はもう無いです。覚えておくといいですよ。私の心は健全です」

淡「そしてもう1つなんですが…」

淡「…照ちゃんは、我々だけでは面倒見切れません。貴方のせいで無駄に元気なので、とっとと保護義務を果たして下さい」

京太郎「へ?」

ドドドドドド

照「あわあああああああああああああああああ!!」バキイイイイッ

淡「ごふっ」

京太郎「」

淡「」ドサッ

照「京ちゃん!京ちゃん!?いきなり淡に殴られてたけど、大丈夫!?怪我は無い!?ちょっと淡!何話してた知らないけど、いきなり殴る事ないじゃない!!」ギューッ

京太郎「へ?へ?へ?照ちゃん?へ?」

照「京ちゃん!京ちゃん!京ちゃん!痛くない!?大丈夫!?ねえ!ねえ!ねえ!えええええええええん!!」

京太郎「えーっと…」チラッ

淡「…ふん。なんですか、もう話す事はありません」サスサス

京太郎「…まいったな…」

淡「…。あー、そうだ。じゃあ、もう一個だけ教えてあげましょう。これ、実は今までで一番重要な話かもしれないんですが」

淡「私はプリンが大好きです。以上。じゃあ、言いたい事言ったのでどっか行きます」ムクッ

京太郎「ちょ、待てって、大星!お前さっきから何言って」

淡「嫌です。…宮永先輩。先輩には良く分かんないかも知れませんけど、私は勇気を出しました。なんか、今なら矢でも鉄砲でも来いって感じです」

照「淡?」

淡「勇気を出してみた先達としてアドバイスを言うとですね。勇気出すと、すっきりしますよ。気持ちいいです。モヤモヤが晴れます」

淡「あとは、宮永先輩次第だと思いますんで。じゃあ、頑張ってください」

照「…」

淡「では」スタスタスタ

照「…」

京太郎「…」

淡「あ、ところで須賀京太郎。余計な事言ったらぶっ殺しますから。私には完璧超人なりのイメージってもんがあるんで」

淡「…ふんっ」スタスタ

京太郎「…なんも言うなってか」

照「京ちゃん?」

京太郎「…照ちゃん。はは。半日ぶり…くらい?」

照「…うん。そうだね」

京太郎「…まさか、こんな早く再会する事になるとはなぁ」

照「…」

京太郎「…何か、用だった?」

照「…うん」

京太郎「落し物したとか」

照「…ちょっと違う」

京太郎「じゃあ、間違えて誰かのもの持ってっちゃったとか」

照「それもハズレ」

京太郎「忘れ物?」

照「それも、あるかな。でもちょっとハズレ」

京太郎「…」

照「…正解は、迷子。道を間違えちゃったんで、正しい道の歩き直し。そのスタート地点まで、歩いてる最中なの」

京太郎「…」

照「いっぱい、いっぱい、さ。私、迷っちゃったんだ」

京太郎「照ちゃん、方向音痴だしな」

照「本当だよ。だから、何回だって迷って、変な道行っちゃって。気付いたらいっつも暗い道だったり、険しい道だったり、寒い道だったり。心細くていっつも泣いていた」

照「…けど、昨日、今まで歩いて来た道をふと振り返って見て気付いたの。その度に誰かが私の腕を引いてくれたから、今私はここに居る」

照「行き先もわからずに歩いてきたけど、それでもなんとか道を踏み外さずに引っ張ってもらって、ここに居る」

照「さっきの偉そうな奴とか、生意気そうな奴とか、他にも東京には殺し屋みたいな奴とか、お茶ばっか飲んでる奴とか。後は、咲とか。他にもいっぱい。いっぱい手を引いてくれた」

照「…その中でも、京ちゃんは、私が1番怖い道を歩いてる時に、一緒に歩いてくれてたんだ。矢が降ってきても、爆弾降ってきても、なんでも無い振りして、傷だらけになって」

照「私、お姉さんなのにいっつも子供みたいにベソかいて道を歩いてたんだ。誰かに手を引っ張ってもらうまで蹲って。本当、頼りない子だったと思う」

照「…でも、それだけじゃ駄目なんだ」

照「私は方向音痴だから。この先もきっと誰かに手を引っ張って貰わなきゃ歩けない」

照「けど、この先はきっと、自分で行くべき場所を決めなきゃいけないんだ。暗い道を照らすのは、私がやらなきゃ駄目なんだ。歩くのは、自分の意志で歩かなきゃ駄目なんだ」

照「一緒に歩いてく人を支えてあげたい。擦れ違う人を励ましてあげたい。迷った人を照らしてあげたい」

照「私を今まで支えてくれてきた人たちのように、今度は私が誰かを支えてあげたい。私が今此処に在れるように、誰かが其処に在れるようにしてあげたい。その為に、迷子から抜け出したい」

照「だから私は、戻ってきたの。この、君が居る街に」

照「…ねえ、君。名前、教えてくれるかな。私の名前は宮永照。東京の、白糸台高校に通う3年生。特技は麻雀。宝物は、妹の宮永咲」

照「…君が、いじめっ子から助けてくれた子」

京太郎「…っ!!」

照「…受かった高校。教えたよ」

京太郎「…お、俺っ!!」

京太郎「…俺は…!」

京太郎「…俺は、須賀京太郎!!長野の、清澄高校に通う、1年生!!麻雀部員だけど、麻雀は素人。ペットはカピバラ。好きな人は…!」

照「…」

京太郎「好きな人は…!!」

照「…うん」

京太郎「照ちゃんだよ!!!」

照「うん…!」

京太郎「…~~~~っ!!」

照「…やっと、迷子から抜け出せた」

照「やっと、追いついた」

照「やっと、捕まえた」

照「やっと、隣を歩ける」

照「やっと、声を届けられる」

照「ねえ、京ちゃん。じゃあ、忘れ物、返すね」

京太郎「…」

照「…これは昨日の忘れ物だけど…」

照「…『私も好きです』って」

照「『私はすぐ迷子になるので、どうか私が迷わないよう、あなたの手を繋いで下さい』って」

照「『その代わり、私はあなたが道を見失いように、照らし続けます』って」

照「『どうか、私と一緒に道を歩いてください』」

照「『あなたの横で歩かせてください』」

照「『大好きです』って、言い忘れた言葉を。初めて会ったその瞬間から暖めていた想いを乗せて、あなたに渡します」

照「どうか、受け取ってください。京ちゃん、大好きだよ」

照「付き合おう」

照「…」

京太郎「…ありがとう」

京太郎「改めて…よろしくお願いします…!!」

照「…うんっ!!」

神社の階段のてっぺん

淡「…はぁ」スタスタ

菫「ああ、淡。ご苦労」

淡「ご苦労って…なんですかその、計画通り…!!みたいな顔。なんですか。私の事どこまで知ってるんですか先輩は」

菫「いやあ、お前の親御さんからな?実は、入部に当たって、相談があったんだ。この部に不良系は入部することは有り得ないんでしょうかって」

淡「は…」

菫「素晴らしい親御さんじゃないか。お前が小学校の頃いじめられて転校してるのを気にして、色々手を尽くしてくれてたらしいぞ。お前、ちゃんと感謝しておけよ」

淡「」パクパク

菫「まあ、私も顧問の先生から聞いた話だが。そんな話を聞いたら私も少々気になってな。小学校やらの経歴は全部調べた。いやあ、まさか照と同じ地域出身だとは。魔境かここは」

淡「あわわわ…」

菫「はっはっは」

咲「…はぁ」

淡「…あ、妹さん…良かった。〆られて無かった」

菫「誰がんな事するか。照の買ってきた土産を二人で食ってたんだ。特等席の神社の階段の上から観戦しながらな」

淡「何を買って…って、うわ。東京ばな奈」

咲「…うええええ…京ちゃぁん…」モックモック

淡「しかも泣きながらもすっごい食べてるし」

菫「好物らしい」

淡「はぁ…」

咲「うええええええ…」グスグスモグモグ

淡「なんか、悪いことした気になってくるなぁ」

菫「お前が彼を殴った時、この子も飛び出しそうになってたんだぞ」クスクス

淡「それは…うん。ごめんね」

咲「いいの。全部話はきいたから。私が口挟める問題じゃ無いと思うし…」シクシクモグモグ

淡「…良かったら元いじめられっ子同士仲良くしましょうか。私が元いじめられっ子っていうのは、トップシークレットだけど」

咲「うん…うん…」シクシク

菫「お、もう全部食ったのか」

咲「…うええええ…もっとありません?」チラッ

菫「中々したたかな…照よりしっかりものじゃないか?この子。だがすまん。もう無い」

咲「うえええええええええ…!!」

菫「…はぁ」

淡「…今度、長野代表で東京来るんだっけ?日持ちしないけどマジキチレベルの美味しさって噂の東京ばな奈バウムブリュレ奢ってあげる」

咲「ううううう…ありがとうございますぅ…」シクシク

菫「…やれやれ」ナデナデ

淡「…あ」

菫「…む?」

咲「…ああぁ~!」

照「…ねえ、京ちゃん」

京太郎「…ん?何だ?照ちゃん」

照「…キス…しよ」

京太郎「…え」

照「…いや?」

京太郎「い、いやじゃない…ってか、その…むしろ嬉しいくらいだけど…その…」

照「?」

京太郎「は、恥ずかし…」

照「ふふ…」

京太郎「わ、笑うなよ!」

照「可愛い」

京太郎「うう…なんだこれ。いきなり照ちゃんが大人になったみたいだ」

照「何言ってるんだ。私は京ちゃんより、2つもお姉さんなんだぞ?ちゃん付けじゃなくて、照さんって呼ぶべきだ」

京太郎「…照」

照「な!?」

照「なわわわわわ!?きょ、京ちゃん!?今、な、なんて…」

京太郎「付き合ってるんだし、呼び捨てでも良くねぇ?」

照「こ、この!馬鹿!」

京太郎「あははは!ごめんごめん。でもこんなんで動揺するようじゃまだまだだーね」

照「もうっ!もうっ!もうっ!」ポカポカ

京太郎「いって!あは!ごめんって!」

照「~~~~~っ!」

京太郎「で、えっと、なんだっけ。えーっと…」

照「…」

照「…キス…だよ」スッ

京太郎「…へ?」

照「キス」

チュッ

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…ぷは」

京太郎「…」カチコチ

照「…ふふふ。びっくりした?」

京太郎「…」

照「あー。これは完全に固まってるな。ふふふふふ」

京太郎「…」

照「どうだ。見たか。これが年上のお姉さんの実力だ。まいったか」

京太郎「…ハッ」

照「…ふふ。気付いた?京ちゃん」

京太郎「あ、あわわわわ」オロオロ

照「ふふふ。可愛いなぁ」

京太郎「て、照ちゃ…照ちゃん!」

京太郎「うわ…うわ…やっべえ…俺、今照ちゃんとキス…うわ…うっわ…やべ…うわ…顔あっつ…」

照「あはは。その反応、初キスだったかな?」

京太郎「な、なんだよ、その余裕っぽい反応!まさか照ちゃんコレが初じゃない!?」

照「いや、コレが初だよ」

京太郎「へ?」

照「…ふふふふ。顔アッツイ…駄目だ。もう立ってられない」チジコマリ

京太郎「…」

照「あうううう…恥ずかしい…」

京太郎「…えっと…」

照「マズイ。死ぬ。恥ずかしくて死ぬ。あう。あうううう…」キュー

京太郎(この生き物かわええ…)

照「と、ところで、京ちゃん?」クルッ

京太郎「あ、は、はい」

照「…は、初キス…どうだった?」

京太郎「どうって…」

照「その…き、気持ち良かったとか。男の子の唇って思ったより弾力有ってびっくりしたとか。そういうの」

京太郎(そういう感想だったのか照ちゃんは)

京太郎「…あー。そうだなぁ」

照「うん。正直に言って」

京太郎「…まず、照ちゃんが近づいて来る度にどんどんいい匂いがして」

照「うん」

京太郎「すっげー胸がどきどきして」

照「うん」

京太郎「唇が触れた瞬間に、ものすごい柔らかい感触が唇を擽って」

照「うん」

京太郎「照ちゃんの体温を、今まで感じた事が無いくらい身近に感じられて、嬉しくなって」

照「…うんっ!」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…京ちゃん?」

京太郎「…ほんのり、ゲロ臭かった」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…ごめん」


終わりっ!!

取り敢えず、一旦寝ます

起きたら後でちょっと書きます
今後の話等含めて

さて、これで『照「京ちゃん、カッコよくなったね」京太郎「えっ!?」』の真ルートを完結とさせて頂きます

何度も浮気したりサッカーに気を取られたり、すみませんでした
完結までちょうど2ヶ月でした。こんな行き当たりばったりの拙いssにここまで根気強く追いかけて下さった皆様方は、本当に我慢強く付き合ってくれたと思います
本当にありがとうございました

ただ、まだこのスレでやったEURO企画の方のssが終わっておりません。それと、何故か一瞬でバレた、並行してやってた腐部屋シリーズの方も

特に前者はこのスレで決まったものですので、ちゃんと賞を取った人に分かるようにしたいと思っております
なので、ちゃんとやったよ!ってのを確認してもらえるように、vipで始める前にこのスレをアナウンス用に残しておきます
最低でもEUROの賞品ssが終わるまでは、もうちょっとだけこのスレを生き延びさせようかなと。あとは浮気してssやった場合の報告などもします
もし良かったら、たまにその確認にでも良いので来てくれると嬉しいです

ちなみにうっすらと考えてる今後の予定としては、

腐部屋

京太郎×アラフォー

玄×灼→レジェンド

腐部屋(完結編)

って感じです。順番は適当に変わるかも知れませんが

それと五輪の優勝予想はしませんし、淡ルートも咲ルートもありません。自分のssで2回も3回も妹やら後輩やらに寝取られたら、照ちゃんが泣きます

ただ、ssちゃんとやったかの確認だけにこんなスレ来るのもあれだろうなーとは思いますので、見捨てられないように今までのssを踏まえた、後日談的な短篇を時たま投下します

本編はなんでか重い話になっちゃったので、緩い感じにします。マジでなんでこうなったかわからん

フザけた無法地帯ノリで適当に思いついたのを投下して行きますので、適当に読んで下さい

それじゃあ、今から考えて1レス投下するで

『今更かよ!!』

京太郎「…」モジモジ

照「…」モジモジ

菫「あー…ところで。青臭い青春してるお二人。そろそろいいだろうか」スタスタ

京太郎「おうわぁ!?」ビクッ

照「ひゃっ!?す、菫!いつの間に!」ビクッ

菫「…随分ディープな二人の世界を構築していたんだな。さっきお前らがキスしたあと、神社から降りてきたんだ」

淡「そんな風に言ったら、神様みたいですね。実際は社までの階段の上から降りてきただけですけど」

京太郎「お、おおぼし…」

淡「ああ~ん?何言ってるんですかこの糞野郎は。私の名前はおおぼしです。お・お・ぼ・し。この私の高貴な名前を間違えて覚えてたとか、マジムカつきますね。殺しますよ」

京太郎「あ、す、すみません…」

照「…淡?どうしたの?…さっきの手を出したのといい、もしかして、京ちゃんと、知り合い…だったの?」

淡「ええ。私も驚きましたけどね。まさかまさかの知り合いでした」

照「…まさか、元カノとか」

淡「ご心配なさらず。宮永先輩が思ってるような関係では多分絶対にありません。強いて言うなら、私とコイツの関係は敵同士です。宿敵です。倒すべき相手です」

照「きょ、京ちゃんに手を出さないで…」

淡「出しませんよ。手が穢れます。それにすでに私はコイツを超えたのが確定のようですし、眼中にありません」

京太郎「…」ズーーン

照「…京ちゃん凹んでる。…淡、ぶっとばす」

京太郎「…照ちゃん。いいんだ。俺が悪いんだから」

照「…そう?」

淡「ええ。そうです。コイツが悪いんです。まあ、理由は…いずれ話してあげてもいいですが、今はまだナイショですね」

咲「…お姉ちゃん」

照「あ。…咲」

咲「…」

照「…あ、え、えっと…その…これは…」

咲「…おめでとう。…お似合いだよ。二人とも」

照「…」

京太郎「…って、あー!」

咲・照「「ん?」」

京太郎「そういえば!驚愕の事実!」

咲「え?」

照「何?」

京太郎「二人!姉妹だったんだな!?」

咲・照・淡「「「…」」」

菫「…はぁ」

京太郎「道理で似てるとはなーんか思ってたんだ!なんだよもう!それならそうと早く言ってくれよ!めっちゃビビったぜ…って。あれ?皆さん…?…え。なんですかその『駄目だコイツ』みたいな冷たい目は」タジ…

京太郎「…や、やめて…すみません…ごめんなさい。そんな目で見ないで!いやあああああああ!変な趣味に目覚めちゃうううううううう!!いやああああああああああああ!!!」

淡「キモい!!死ねっ!!!」ゲシッ

終わり

『反省』

淡「おおほしって言おうとして言い間違えました。これも全て須賀京太郎のせいです。ぐぬぬぬぬ…」

終わり

透華「ハギヨシ、この男に種付けなさい」
ハギヨシ「衣様を騙してニンジン食べさせたらクビにされた」
和「訴訟も辞しませんよ、腐女子ども!」

イッチが戻ってきた!

>>789
ククク…お盆休み突入…ッ!
こっちに友人居ないんで予定無し…ッ!!

>>790
俺たちは友達だろう?

思い出したかのように小ネタシリーズー『放課後』

照と京太郎が付き合う事になった日・その放課後
旧校舎にて

京太郎「…ふう。授業終わった。さて、今日も部活頑張ろうかね。…って、まあ、練習っつーより雑用なんですがねー」

京太郎「…ま、しょうがねーよな。もうすぐ全国が近いんだ。弱っちい俺でも、少しでもみんなの力になんなきゃな」

京太郎「…頑張ろ。色々と」

京太郎「…」

京太郎「…うん。行こう」

京太郎「ちわーっす」ガチャッ


和「あ、須賀君」

まこ「ようやっと来たか。いや、来てくれたか」

和「待ってましたよ」

京太郎「…へ?」

和「須賀君にお客さんです」

京太郎「お客さんって…」

照「…」チョコン

京太郎「て…」

照「…はろー」フリフリ

京太郎「照ちゃん!?」

まこ「京ちゃんに会いに来たーっつって、さっきいきなり来てな。どーしても帰る気配無いから、お前さんが来るの待っとったんじゃ…」

和「なんで現チャンピオンがここに…」

京太郎「え?…あれ?…マジで…?え?さっき、朝にあれから別れて、みんなで東京に帰るって…」

照「車がね。どうしても匂いがとれなくて。菫がこんな車で帰れるかー!って。匂いとり切れなかった罰として、私達は記者さんのお金で電車で帰ることになって」

京太郎「なんかよくわかんないけどすっげー気の毒な…」

照「でね。帰りの分の電車賃はもう貰ったから、私は明日の学校に間に合えばいいからってことで、今日は実家に泊まって、明日の朝一で帰る事にしたんだ」

京太郎「はあ…」

照「だから、もうちょっとだけ一緒に居れるよ」

京太郎「…」

照「ふふ…びっくりしたよ。まさか京ちゃんが麻雀部に入ってたなんてね」

京太郎「誰から聞いたんだ?」

照「菫が調べてたみたい」

京太郎「あのスケバン通り越して女帝みたいだった人か。こえー…」

照「ね。私が麻雀教えてあげようか」

京太郎「へ?」

照「ほら、私チャンピオンだし。すごく強いんだよ。ここの部員の人たちの話だと、京ちゃんまだ初心者らしいし…」

京太郎「そ、そりゃあ、教えて貰えるもんなら俺はありがたいけど…」チラッ

和「…一応言っておきますが、私達は同席出来ませんよ?県代表同士が練習試合出来ない大会規定がありますので」

京太郎「うん。知ってる。…って訳だけど。面子もいねーし」

照「…あ」

京太郎「…」

照「しまった。忘れてた…」

京太郎「どーしよっか。何する?」

照「…あー。じゃあ、私、京ちゃんの後ろで見てても良い?京ちゃんの闘牌見てみたい」

京太郎「それも結構…」

和「堂々の敵情視察宣言とほぼ同義なんですが…」

照「…おおう。言われてみれば」

まこ「なんだかのー」

照「…」ショボン

和「目に見えて落ち込んでます…」

まこ「…仕方ない。京太郎、席に着きい」

京太郎「え?」

まこ「今おるはわしとお前と和だけ。サン麻じゃし、そうそう手の内明かすことにはならんじゃろ」

京太郎「え!?」

和「いいんですか?」

まこ「仕方なかろう。なんか死にそうな勢いで顔も青ざめてきとるし。角も元気無くなっとるし。その代わり東風戦一回じゃぞ」

照「!!」パアアア

まこ「その代わり、それで仕舞いじゃぞ」

和「まあ、仕方ないですね」

照「うん…!ありがとう広島弁の人!」

まこ「まあ、たまにはの」

和「それじゃあ、須賀君。席についてください。早速始めましょう」

京太郎「お、おう」

照「頑張って、京ちゃん!」

ガチャッ

「みんなー。おっつかれー!」

照「…あ、誰か来た?」

まこ「なんだ部長か。タイミングの悪い」

和「お疲れ様です。部長」

京太郎「お疲れっす」

久「んー。お疲れー。って…」

照「ん?」クルッ

久「…」

照「…」

久「うおぅ!?チャンピオン!?」ビクッ

照「ひっ!?」ビクッ

照(ヤ、ヤンキー!?) ←元いじめられっ子

久「えー!?うっそ!?なんで!?なんでこの人がこんなトコに!?えー?うっそ。マジで!?」

照(『なんでテメー如きがあたし等のシマに入って来てやがんだよ。テメー正気かコラ。あ!?ナメてんのかマジでおう』!?)

久「うわー。うわー。びびったー。こんなびっくりしたの久しぶりかも…誰かに会いに来たとか?」

照(『テメー、一人でこの部室に来るなんていい度胸じゃねーか。久しぶりに血が見てーぜ。地獄の鬼に会わせてやろうか』!?何言ってるのこの人怖い!!)

照「」ガタガタ

まこ「なんか怯えちょる」

和「どうしてでしょう?」

京太郎(なんとなく理由分かるけど、言ったら怒られそうで言い出せない…)

京太郎「えーっと…その…その子、俺の連れでして…」

久「あら、そうだったの」

照「」サササッ

まこ(京太郎の背中に隠れた)

和(部長から逃げるように移動しました)

京太郎「…照ちゃん。紹介するよ。この人、うちの部長の竹井久」

久「竹井久です。はじめまして。チャンピオン。須賀君の知り合いだったのね」

照「…よ…ョロシク…」ボソボソ

久(なんだ。同じ宮永姓だから咲に会いに来たのかと思ったのに)

久(…ってか)

久(これって、確実に私、怖がられてるわよね)イヒッ

和(…部長が悪そうに笑ってます)

まこ(あ。これ碌な事にならん)

久「…」ウーーン

京太郎(なんか悪い事企んでる…)

照「」ブルブル

久「…うん」ボソッ

照「…?」

久「…おい、須賀ァ(ドスの利いた声で)」

照「ヒッ!?」ビクビクッ

京太郎「部長…」ハァ

久「なに女の前だからってぼけっと突っ立ってやがる。いつものヤツ買って来いやぁ」

京太郎「いつものヤツって…」

京太郎(この人は…)

照「あうう…」ガタガタ

久「あー…ほら。えっと…タバコと、酒と…えっと、あと、日本刀」

京太郎「日本刀!?」

和「いつもの!?」

まこ「どこにカチコミかます気じゃい!!」

照「あわわわわ」オロオロ

久「あはははは!」

京太郎「ってか、照ちゃんはこんなの信じるなよ…」

和「けど、部長って日本刀似合いそう…」

まこ「おどりゃぁすどりゃぁの世界で切った張ったしてそうな雰囲気は確かにあるが」

久「仁義無き広島弁使いに言われとーない!」

照「…へ?」

種明かし

久「ってわけでしたー」

まこ「コイツは…」

和「すみませんすみません」ペコペコ

照「…」ポカーーーン

京太郎「こういう人なんだ。敵に回さない方がいいぞ」

久「って、まあ、そういう事でしたー。…ごめんね?チャンピオン」

照「…」

まこ「いかん。放心状態じゃ」

和「これは…もうしばらく帰ってきそうにありませんね…」

久「ま、それならそっちのが好都合」

まこ「ん?」

久「流石にチャンプ相手にねー。サンマで東風戦一回とは言え、手の内見せるのはちょっとアレだしー。優勝までの最大のライバルでしょ?」

まこ「…ま、まあ…」

久「じゃ、こうして呆けちゃった以上、ご退場願うのが筋かなー」

まこ「…用心深いやっちゃなー」

和「けど、このままのこの人を一人帰らせるわけにもいかないような…」

照「」ポケーーーー

久「…ん。それもそうか。なら、須賀君」

京太郎「…へ?」

久「この人とはお知り合いなのよね?」

京太郎「…は、はい。まあ」

久「ん。なら、さ。今日はもう部活は良いから」

京太郎「…」

久「この子、おうち…だか、どこだか知らないけど、帰る場所に連れてってあげて」


(取り敢えず)終わり

おっしゃー、ありがとうございます。ageのアドバイスくれた人、感謝
>>792はイケメンだってはっきりわかんだね

そして、アラフォーリクエストの長屋さん、先に来たね。じゃあ、アラフォーの先にやるよ。しかも安価でやるよ。けど今日はもう遅いし、明日からやるよ
大体昼くらいからss速報で始めようと思いますが、よろしいですか?それまでにちょっとシステムの整備もしたいのですみませんが
あと、タイトルも今ちょっと考えてるとこなんで、このスレで一回書き込んでから立てるのでそれで判断してください
それと、もし可能なら、リクエストの長屋さんはトリップとか付けれませんか?
面倒をかけてすまないんだけど、あなたのリクの結果なのでちょーーーーーーーーっとだけ、特別な権利を付与したいので

詳しいシステムの紹介は、始める時にそっちのスレの方で書きます

大阪さんは、すみません。もうちょっとだけお待ちください。こっちが終わったら書きますので、お許しください
遅まきながら野球の人だったんですね。マジ神懸かって色々凄いね。あと、試合予想してるね?(暗黒邪笑)

とりあえず、これくらいかなー

アラフォーの奴も楽しみにしてますぜー!

自分のも、ゆっくり待ってます。
スレを認知されていたという驚き。
野球サイドの人間なのにニワカ知識でサッカー予想当てちゃってすまんな。

あと、いまさらだけど、トトカルチョシステムパクりましたごめんなさい(事後報告)

これでええんかな?
明日のお昼かー、楽しみにしてるで!!

あ、もちろん。長屋さん、トリップ付けるの面倒だったらいいです。その辺はノリで何とでもするので

>>812
法廷で待ってる

っと、まあ、今日はこの辺にしておきます。もし質問などあれば、答えられる範囲で答えます。ただし今日はもう寝るので、寝て起きたら。おやすみなさい

>>813
ありがとう。面倒掛けてごめんね。では今度こそおやすみなさい

思い出したかのように小ネタシリーズー『かえりみち』

京太郎「…で、なんか部活から追い出されるみたいにして出てきた訳だけど…」

照「…」

京太郎「照ちゃん、この後…」

照「一回、うちに帰る」

京太郎「だよ、ね」

照「うん。お父さんにも一回会っておきたいし、咲にだって…」

京太郎「だよな。せっかくここまで来たんだしな」

照「うん…」

京太郎「…一緒に行こう。送ってくよ」

照「ありがとう」

京太郎「はは…まさかそんな事は無いと思うけど、万が一地元で迷子になられてもアレだしな」

照「…」

照「そ、そんなことは…無いと」

照「…思うよ」ボソッ (←小声)

照(今朝迷ったけど…流石に思い出したし)

京太郎「ん?」

照「なんでもない。行こう」

京太郎「おう」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…照ちゃん?」

照「…ね、ねえ、京ちゃん」

京太郎「…ん?」

照「…手、つないでもいいかな」

京太郎「…へ?」

照「やっぱり迷子になるの、怖いから」

京太郎「…」

照「一緒に、歩いて行きたいの」

京太郎「…」

照「…だ、駄目…かな」

京太郎「ん。そうだな。じゃあ、手、繋ごうか」

照「うん。ありがとう」

京太郎「…ってかさー」

照「うん?」

京太郎「俺も照ちゃんの家、うろ覚えしー」

照「ええ!?けど、咲の家だし…」

京太郎「いやあ参った参った。咲の家だろ?ここしばらく行ってなかったしなー」

照「嘘だっ!」

京太郎「ホントだって」

照「嘘くさい。だって、今朝先と一緒だったし」

京太郎「さーね?」

照「むう…」

京太郎「だから、さ」スッ

照「…ん?」

京太郎「照ちゃんが、俺の手引っ張ってってくれない?」

照「…」

京太郎「…駄目?」

照「…いいの?」

京太郎「んあ?」

照「私、実は帰り道、うろ覚えかも」

京太郎「俺も覚えてないし、おあいこだ」

照「道間違えるかも」

京太郎「ま、寄り道みたいなもんでしょ。地元だし」

照「迷子は情けないよ?」

京太郎「なんとかなるさ。ついでに面白いもん見っけたりしてな」

照「変なトコに行っちゃうかも」

京太郎「照ちゃんとなら、怖くない」

照「怖い人に会ったらどうする?」

京太郎「照ちゃんの腕、引っ張って逃げる」

照「何処に行く?」

京太郎「何処へでも」

照「そっか。なら、いいや」

京太郎「おう」

照「京ちゃんに手、引っ張ってもらえるなら、それでも良いな」

京太郎「最終手段ですよ?」

照「わかってる」

京太郎「ん。じゃあ、行くか」

照「うん」

照「帰ろう」

京太郎「行こう」

照「私の家へ」

京太郎「照ちゃんの家へ」

照「…」

京太郎「…」

照「…ふふっ」

京太郎「…なんて、あはは、やっぱ照ちゃんも文学少女だ。咲にノリがそっくり…」

照「えいっ!」ギュッ

京太郎「…っ!」」

照「…」ギューッ

京太郎「…」

照「…」ギューッ

京太郎「て、照…ちゃん?」

照「私の前で他の子の話題出した罰」

京太郎「…」

照「…妹の咲だからって、許さないよ。私は嫉妬深いんだ」

京太郎「…」

照「だから、罰。京ちゃんはこのまま私をぎゅっ…と抱きしめる事」

京太郎「…」

照「じゃないと拗ねるから」

京太郎「…」

照「わかった?京ちゃん」

京太郎「…」

照「…京ちゃん?」

京太郎「…」

照「あれ?京ちゃ…」

京太郎「それ…」

照「…え?」

京太郎「もう罰でもなんでもねーよな」ギュッ

照「ひゃっ!?」

終わり

さげてひっそりとやったのによくきづいたな。かがわせんぱつだ。ねれない

香川真司マンチェスターユナイテッドデビュー記念小ネタシリーズ『うどん』

京太郎「そして、案の定迷ったという…どこの田んぼ道だここは」

照「あれ…?お、おかしいな。確かに思い出したと思ってたんだけど」

京太郎「あはは…ま、まあ、久しぶりに帰ってきたんだろ?仕方ない仕方ない」

照「うう…も、申し訳ない」

京太郎「いいって。こうして迷っても、照ちゃんと二人きりで歩けるんなら楽しいよ」

照「京ちゃん…」ジーン

京太郎「…」

京太郎(今のはちょっとクサすぎた…)カアアア

照「…うん。私も、楽しいよ」

京太郎「へ?あ、そ、そう?」

照「」コクコク

京太郎「…しかし、そろそろ真面目に軌道修正もしなきゃな。このままじゃ折角部活早退したのに、日が暮れちまう」

照「う…」

京太郎「それに、照ちゃんも歩きっぱじゃ疲れるだろ?」

照「…うん」

京太郎「よし。そうと決まったら、どこか人に道を聞けそうな場所は…」

照「人、歩いてないしね」

京太郎「お?なんだあそこ」

照「え?」

京太郎「ほら、あそこ。なんか旗が出てる」

照「本当だ。あれは…うどん屋?」

京太郎「うどん屋かぁ…そう言えば、腹減ったな」

照「確かに。私もちょっと小腹空いたかも」

京太郎「…寄ってかないか?ついでに道も聞けるかも」

照「うん。いいよ。行こうか」


店内

京太郎「おじゃましまーす」

店員(アフロ)「はいらっしゃーい!」

京太郎「えーっと…二人なんですけど、大丈夫ですか?」

店員「どうぞ空いてますよー。彼女さんとお二人ですか?」

照「かの…!?」ビクッ

京太郎「あ、はい」

照「ひゅあっ!?」クルッ

店員「可愛い彼女さんですねー」

照「ふぁう!?」クルッ

京太郎「えへへ。でしょ~。今日付き合い始めたばっかりなんですよ~」

照「ふうぅうっ!?」クルッ

店員「それはおめでとうございます!それならこのイカの天ぷらサービスしちゃいますよ」

京太郎「ラッキー!ありがとうございます!」

店員「ところで、注文決まってます?」

京太郎「ああ、じゃあ、釜玉で」

照「私はぶっか…あっ!ざ、ざるで!!」

京太郎「?」

店員「わかりましたー」

照「…」カアアア

京太郎「どうした?照ちゃん。急に顔真っ赤にして」

照「な、なんでもっ!ないっ!よっ!」

京太郎「はあ…?」

店員「はいおまちー」

照「あ、来た!ほ、ほら京ちゃん、うどん来たよ!」

京太郎「あ、どうもー」

店員「どーぞどーぞ」

京太郎「…うん、美味い。イカの天ぷらも」

照「…。うん、本当だ。美味しいね」

店員「ありがとうございますっ!」

京太郎「驚いたな、こんなに美味い店が近くにあったなんて」

照「私もこっちに居た頃は知らなかった」

店員「最近始めたばっかりでしてね。宣伝が下手だったのか、まだあんまりお客さんも来てくれないんですよ。ガラガラでしょ?」

京太郎「確かに。勿体無い」

店員「だからこうしてお客さんについつい話しかけちゃうんですけどねー」

京太郎「あはは…」

店員「迷惑だったら引っ込んでますが。…もし良かったら、馴れ初めを聞いても?」

京太郎「あっ!聞いてくださいよ!俺が片思いしてたんです。それで、しばらく離れ離れになってたんだけど、色々あって偶然再会して…」

店員「へえ、中々運命的かつドラマチックじゃないですか」

照「そんな。私も京ちゃんのこと、好きだったんだよ?むしろ私の方が先に惚れてたと思うけど…」

店員「おお、流石お熱い!」

京太郎「いーや。それは無いね」

照「え?なんで?」

京太郎「だって、一目惚れだったもん」

照「…」

京太郎「…ね?俺の勝ち」

照「…ううん。残念。私の勝ち」

京太郎「へ?」

照「私、ね。京ちゃんに会う前から、京ちゃんのこと、きっと好きだったから」

京太郎「いや、それって反則だろ。そういう事言うなら、俺は照ちゃんの事前世から好きだったとか言っちゃうぞ」

照「いや、そういうのじゃなしに」

京太郎「?」

照「咲に、京ちゃんの話、聞いてたから」

京太郎「…」

照「名前も知らない、顔もわからない、会ったことも無いその頃の『京ちゃん』だったけど」

照「その頃の『京ちゃん』は、私にとっては咲を救ってくれた恩人で、もうとっくに私のヒーローで、憧れの人で」

照「格好良い、初恋の人」

京太郎「…」

照「…だったの」

京太郎「…おうふ」

照「だから、私の勝ち」

京太郎「…参りました」カアアア

照「…は、恥ずかしいなぁ」カアアア

店員「…このわかめの天ぷらはサービスです」スッ

終わり

うっっっっひょううううううっ!!!!



あ、自分レアル・マドリードしか応援したことないので

お題『腐部屋のてるてるとここの照が遭遇したらどうなるのか見てみたい』

京太郎「…ちゃん。照ちゃん!」

照「…ん?」パチッ

照「…あれ?私…」

京太郎「やっと起きた」

照「…?」キョロキョロ

照(…ここ、どこ?)

京太郎「大丈夫か?うどん食って店出て、歩いてたらいきなり倒れたんだぞ?照ちゃん」

照(うどん?なんでうどんなんて…あれ?私、さっきまでネットしてて、眠くなっちゃって…ああ。やっちゃった。アミバとの口喧嘩中に寝落ちちゃったのか)

照(っていうことは、これは夢かな?ああ、嫌だなぁ。アイツに逃げたって思われてたら)

照(実際は私の優勢だったのに) ※劣勢でした

照「私は…」

照(取り敢えず早く起きなきゃ。変な体制で寝たら体痛くなるし、風邪ひいたら菫にも怒られる…)

京太郎「さっきの店の人に道も聞いたし、ようやく照ちゃんもわかる道に出て、家に帰れる…って、どうしたんだよそんな不思議そうな顔で…」

照(…ん?)

照「…イケメンだ」

京太郎「えっ」

照「…あれ?ここ…長野」キョロキョロ

京太郎「や、やだなぁ、照ちゃん。そんな、いきなりイケメンだなんて、ちょ、恥ずかし…」

照(あどけない感じの可愛い顔した、かなりのイケメン…)

照(この子なら…)

照「ねえ、少年」

京太郎「…はい?」

照「ちょっと質問に答えて欲しいんだけど」

京太郎「…どうしたの?照ちゃん」

照(なんで私の名前を?…まあいいや)

照「大事な話なんだけど」ジーッ

京太郎「う、うん」ドキッ

京太郎(な、なんだ?照ちゃん、なんだか急に雰囲気が…いつものポヤポヤじゃなくって、鷹みたいに鋭い…)

京太郎(こんな照ちゃんも新鮮で良い…!!)

照「挿すのと挿されるの、どっちが好み?」

京太郎「…は?」

照「掘るのと掘られるのでは?」ズイッ

京太郎「…おっしゃってる意味が分かりかねるのですが…」

照「ガチムチの男と、超絶美形な中性的な男、どっちが好み」ズズイッ

京太郎「て、照…さん?」

照「これは、とても大事なことだよ。ねえ、答えて。お願い…!!」ジーッ

京太郎(は、初めて見る…!こんなに力のある照ちゃんの瞳…!!)

京太郎(まるで、ネコ科の大型獣に獲物にされたような緊張感!…肉食系の照ちゃんとかなにそれエロい…!)

京太郎(…けど、なんか俺の本能が全身全霊を持って警報を鳴らしてるぞ!?誰だこの子は!!)

照「ねえ」ズズイッ

京太郎「うぐぐ…」ズサッ

照「ねえ、君。ちょっと。何にもしないから、私と一緒に東京に行かない?」

照「上野駅のトイレに、君にピッタリなデートスポット知ってるんだ。あ、それとも、駅前のサウナに行こうか。大丈夫。足首にロッカーの鍵巻いて、声を掛けてくれた人にホイホイ付いて行ってホテルでその様子をカメラに納めてくれれば…」

京太郎「だ、だだだだだ、誰だお前は!!」

照「…誰?誰って…」

照「宮永照」

京太郎「嘘だっ!!!」

照「ほら、行こう」グイッ

京太郎「ちょっ!?いやぁあ!」

照「ほら、ほら。さあ。行くよ」グイグイ

京太郎「いやあああ!?なんか怖いいいいい!?」

照「不思議だな。普段だったら現実の知らない男の人相手にこんな事したら反撃が怖いから絶対出来ないのに、君にだったらこれぐらいしても大丈夫な気がするよ」ズーリズーリ

京太郎「うおおおおおっ!?なんだ!?照ちゃんなのにこの人力強ええ!?わけわかんねー!」

京太郎「…いや、俺の身体が照ちゃんに逆らうことを拒否してるのか!?おおおおいいいいい俺の身体!!ここは抗え!なんだかよくわかんねえけど、ここは抗わなきゃマズイ場面だあああ!!」

照「よいしょ。よいしょ。あとで動画をすこニャン達にも見せてあげよう。ふふ。私がこんな大手柄を立てたなんて知ったら、アミバは悔しがるぞ」ズーリズーリ

京太郎「いやああああああああああ!!!」

「ま、まて!!」

照「…ああ?」

照「きょ、京ちゃんに手を出すな!」

照「なんだお前は」

照「み、宮永照だ!」

照「宮永照は私だ」

照「違うよ!私だよ!」

照「私だって」

照「だから私…って、もういいよっ!京ちゃんに何をしようとしてたの!」

照「へえ、京ちゃんっていうのかこの子は。何って…ガチホモに目覚めさせるという崇高な使命が」

照「そんなの絶対にゆるさないよ!!」

照「…許さないだと?」

照「そ、そうだよ!京ちゃん嫌がってるじゃない!離してよ!」

照「嫌だね」

照「そ、それに、ホモ…だ、なんて、き、気持ち悪い」

照「なんだと?…お前、言ってはいけないことを言ったな」

照「くっ…!」ビクッ

照「ホモを気持ち悪い?ふざけるなよお前。私を本気で怒らせた。それに弱そうな外見をしているな。潰す」

照「わ、私だって負けないよ!不良っぽい外見してるけど、貴女だって十分弱そうだし!」

照「は?何言ってるんだお前。髪に変な角みたいな癖付けやがって。その角へし折ってやろうか」

照「そ、そっちこそ、どんなに凄んだって、なんだかポカーンとした雰囲気消せてないんだからね!」

照「良い度胸だ。ぶっ飛ばしてやる」ジリッ

照「わ、私だって…京ちゃんを守るためなら…」ジリッ

京太郎(なんなんだこれは)

照「はああああ!!」

照「やああああ!!」

菫「ロン(ダブルラリアット)」ゴシャァ!!

照照「「ごふうっ!!?」」

京太郎「あ、今朝のスケバンの人」

菫「やあ、少年」

照「す、菫…?どうしてここに…」

照「あれ、帰ったんじゃ…」

菫「記者と淡は帰したが、私だけまだ残った」

照「それってもしかして、この異変を察知して、私が心配で…?」キラキラ

菫「いや。観光で」

照「…」

照「す、菫!助けて!なんか変な女が私の邪魔をするんだ!」

照「ち、違うよ菫!この変な女がいきなり京ちゃんを攫おうとして…」

菫「同じ声でしゃべるな。というか、分裂するな。酷く迷惑だ」

照「ぶん…」

照「れつ…?」

菫「なんだ。ドッペルゲンガーか?どっちかあるいはどっちも」

照照「「私、こんなヤツと全然似てない!!」」

京太郎「…」

菫「…めんどくさい」

京太郎「えーっと…俺、多分どっちがどっちかわかるっすけど…」

菫「おお、流石だな」

京太郎「は、はあ…」

菫「けど大丈夫だ」

京太郎「へ?」

菫「取り敢えず、二人共倒すから」

京太郎「たお…」

菫「ロン(腹パン)」ドゴォ!!

照照「「ごふううう!!?」」

照(菫は…)

照(夢のなかでも)

照(怖かった…)

照「」ドサッ

照「」バタッ

照「…」

照「…あれ?」パチッ

京太郎「あ、起きた」

照「…京ちゃん?私…」

京太郎「照ちゃん、覚えてない?うどん食べ終わって、俺と店員さんがダベってる間に寝ちゃったんだよ」

照「え…」

京太郎「で、道も聞いたから、照ちゃんおぶってそのルート辿ってる最中」

照「あ…」

京太郎「もうすぐだぜ。家」

照「も、もう、いい…よ。降りるよ。私、自分で歩ける…」

京太郎「もうちょっと」

照「い、いいって…」

京太郎「いいじゃん」

照「だ、だけど…」

京太郎「こうして照ちゃんおぶってると、さ。照ちゃんの重みを感じて」

照「そ、それって、私が重いって事…?」プクッ

京太郎「ははは。ううん。そうじゃなくって…」

照「…じゃあなに」

京太郎「この重さが、この先俺が守んなきゃいけない人の重みかーって。噛み締めてるとこだから」

照「…カッコつけ」ギュッ

京太郎「…へへ」

終わり

風呂あがってから書いたから、30分くらいで書いたのかコレ
…カオス

夕方少し前
宮永家・リビング

照「やっと着いた…は、良いけど」ハァ

京太郎「…まさか、家に誰も居ないとは。照ちゃんが合鍵持ってて助かった」

照「お父さん、帰ってくるの遅いから」

京太郎「そっか」

照「咲は…わかんないけど」

京太郎「いや、アイツは今日はまだ部活でしょ」

照「そっか」

京太郎「うん」

照「…」

京太郎「…」

照「…」ソワソワ

京太郎「…」ソワソワ

照「…お、お茶でも、飲む?」

京太郎「…い、いいかな?」

照「う、うん…」ゴソゴソ

照「…ごめん。無かった」ショボン

京太郎「そ、そっか…」

照「うん…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」ソワソワ

照「…」ソワソワ

京太郎「…えーっと…」

照「…お父さん、帰ってくるの遅いから」

京太郎「…」

照「…咲も、部活だったね」

京太郎「…う、うん…」

照「…」ソワソワ

京太郎「…」ソワソワ

照(…私、何期待してるのバカ)カアアアアア

京太郎(照ちゃんの言わんとしてることって…やっぱ、そう…だよな?…勘違いじゃ…ない…よな?)

照「…」ソワソワ

京太郎「…」ソワソワ

照(つ、付き合って初日に、その…せ…あの、だ、抱き合おうとか、そんなの、まるっきり変態じゃない…)

京太郎(今日いきなり襲ったりしたら…嫌われたり…しないよな?でも女の子ってシチュエーション大事にするって言うし…)

照「…」ソワソワ

京太郎「…」ソワソワ

照(あんまり女の子の方から積極的すぎると引かれるって聞いたことあるし…けど…)

京太郎(もじもじしてる照ちゃんヤバイ…可愛い…襲いたい…)

照(…けど、ずっと貯めこんできた想いが、溢れて爆発しそうなんだよ…!!)

京太郎(もうずっと貯めこんできた想いが、溢れて爆発しそうなんだよ…!!)

照(ねえ、京ちゃん)

京太郎(なあ、照ちゃん)

照(もし、君が私のことを、愛してくれてたって言葉)

京太郎(照ちゃんが俺の事好きだったって言葉)

照(嘘じゃなかったら…)

京太郎(…信じていいんだよな?)

照(ううん。疑うべくもない)

京太郎(…決まってるよな)

照(だったら、君も、私と同じハズ)

京太郎(同じ事、考えてる…そうだよな?)

照京太郎((だったら…!!))

照(受け止めて…この思い…!!)

京太郎(感じさせてくれ。照ちゃんの、重さを!!)

照京太郎「「あ、あの…!!」」

照「…」

京太郎「…」

照「…何?」

京太郎「…照ちゃん」

照「…うん」

京太郎「…俺、今、ちょっと自惚れてるんだけど」

照「何?」

京太郎「俺、今、照ちゃんとちょっと、同じ事考えてる気がする」

照「…奇遇だね。私も。言ってみて」

京太郎「…こんな、こんな、急にこんな事して…もしかしたら、引かれちゃうかもって…怖いんだけど」

照「…ううん。引かないよ」

京太郎「…照ちゃんと抱き合いたい」

照「…うん」

京太郎「…いいの?」

照「…やっぱり同じ事思ってたから」

京太郎「…引かないの?付き合って、こんな、1日目で…がっつき過ぎって」

照「それだけ京ちゃんが私の事、愛してくれてるって事でしょ?心が通って、次に求めるのは身体に決まってる」

京太郎「照ちゃん…」

照「…それに」

京太郎「…」

照「私の方が、京ちゃんを抱き締めたいって、想い、強いんだから」

京太郎「…どうしてそう思うの?」

照「だって」

照「私の方が京ちゃんの事好きだもん」

京太郎「…むっ!」

照「ふふふ」

京太郎「いーや!俺の方が好きだね!」

照「残念。私だよ」

京太郎「俺だ!」

照「私!」

京太郎「じゃあ証明してみせる!」

照「どうやって?」

京太郎「抱いてだ!」ギュッ!

照「ひゃっ!?」ドサッ!

京太郎「なあ照ちゃん。俺、考えたんだけど、やっぱり言葉だけじゃ、どうしても伝えきれない想いってあるんだ」ギュッ

照「ちょ、ま、待って…」

京太郎「どうしても伝えたくて、知って貰いたくて、今まで何度も考えて、考えてそれでも伝えきれなかった想いが、あるんだ」

照「きょ、きょうちゃ…」

京太郎「それはどうしても、どうしても、どうしても、どうしても!伝えたい想いで。どれだけ君の事愛してるかって、たったそれだけの言葉なんだけど」

照「お、落ち着いて…」

京太郎「どれだけ知恵絞っても…どれだけ悩んでも…どうしても出てこないんだ。だって、この想いは、俺だけの物だったから」

照「京ちゃん!!」

京太郎「伝えたくて、伝えたくて、伝えたくて。けど、叶わなかった。付き合ってまだ数時間程度しか経ってないけど、一生分だって悩んだ気がするのに、考えれば考えるほど無理なんだ…」

京太郎「だって、この想いを表現出来る言葉が存在しねーんだもん」

照「…」

京太郎「…けど、たった一つだけ、伝える方法があったんだ。それは凄く単純な事で。方法で」ギュッ

照「…」

京太郎「…こうして、抱き合ってたら…伝わるんだ。伝えられるんだ。照ちゃんの鼓動と、俺の鼓動」

照「…」

京太郎「…生きてるって、こういう事、言うんだよな」

照「…」

京太郎「…抱き合って、照ちゃんの体温と、俺の体温を、伝え合うんだ。体温っていう、今までに生きてきた証そのものを」

照「…」

京太郎「生きてきた証と生きてきた証をくっつけて、お互いに、伝え合って…」

照「…」

京太郎「…好きだ」

照「…私も」

京太郎「…はは。やっぱ、違う。いつもの『好きだ』って想いより、ずっと強い」

照「…私も、だよ」

京太郎「…」

照「京ちゃんの想いが、頭じゃなくて、心に直接伝わってくる感覚」

京太郎「…」

照「あったかい感覚」

京太郎「…」

照「愛おしいって感覚」

照「『京ちゃんが好きだ』って感覚と、『私が京ちゃんを好きだ』って感覚」

京太郎「…」

照「そして優しい感覚。……ねえ、京ちゃん」

照「好き」

京太郎「好きだ」

照「好き」

京太郎「好きだ」

照「大好き」

京太郎「大大好きだ」

照「大大大好き」

京太郎「大大大大好きだ」

照「…愛してる」

京太郎「…俺も」

照「…けど、やっぱり私の方が好きな気持ちは大きいかな」

京太郎「いーや。これはどう考えても俺のが大きいって」

照「…くすっ」

京太郎「…ははっ」

照「じゃあ、試してみよっか」

京太郎「良いよ」

京太郎「じゃあ…」

京太郎(キスを…)スッ

照「あっ!!ちょ、ちょっと待って!!」

京太郎「…へ?」ピタッ

照「…お、お願いがあるの。その前に」

京太郎「…?」

照「い、一回離して…」

京太郎「…あ、ああ…」スッ

照「…」

京太郎「…どうしたの?」

照「そ、その…大変申し上げにくいんですが…」

京太郎「はあ」

照「…歯を」

京太郎「…ハオ?」

照「…歯を、磨いてきてもよろしいでしょうか」

京太郎「…」

照「…い、行ってくるね!」トタタタタ

京太郎(…気にしてたんだ。ゲロのこと…)

照「あ、あとね!京ちゃんは、私の部屋で待ってて!2階の、奥の部屋だから!!」

京太郎「おおう…そういえば、ここリビングだもんな。万が一途中で誰か帰って来たら…」ブルブルッ

同時刻
清澄高校

咲「…ふう」

和「…」

咲「…はあ…」

優希「…」

咲「…」クスン

和「…どうしたんですか?」ヒソヒソ

優希「…駄目だった…か」ヒソヒソ

和「駄目だった…って…!咲さんまさか!?」

優希「ばっ!の、のどちゃん!声が大きいじょ!」

和「って!優希!貴女こそなんでそんな、咲さんを応援するような発言を…」

和「…」

優希「…気付いた?」

和「…すみません。私が軽率でした」

優希「ううん。いいの。それより、ごめんな」

和「…別に、私は何も…本当に、何の力にも…」クスン

優希「良いよ。のどちゃんのお陰で私は元気になれる」

和「…」

優希「咲ちゃんも優希ちゃんも、フラれたじょ」

和「…」

優希「…けしかけたの、悪かったのか…な」グスン

和「…」

優希「けど、あの時は…私、だって、このままだったら照さんに取られるって…!ヒック」

和「…」

咲「…優希ちゃん」

優希「…咲ちゃん」

和「咲さん…」

咲「…あはは。二人共大きい声出し過ぎ」

優希「あ…」

和「…うかつでした」

咲「あはははは…」クスクス

和「…」

優希「咲ちゃん…その…ご、ごめん…」

咲「…ううん。いいの」

優希「…」

咲「私、お姉ちゃんに負けちゃったから」

優希「…」

咲「二人、付き合うって」

優希「そうか」

咲「…うん」

和「…」

咲「つ、つき…あう…って…」グスッ

優希「そうかああああああ!」グスッ

咲「うわああああああああああん!!」

優希「ああああああああああああああああん!!」

和(やれやれ…)

咲「ええええんえんえんえん!!付き合うって!二人!付き合ってさ!」

和(参りましたね。これは…)

優希「そっか…そっかぁ…!!」

和(まさか、一気に二人共…ですか。慰めるのに骨が折れそうです)

和「…けど、まあ」

咲優希「「うわああああああああああああああああん!!」」

和「…二人共、狡いです」ジワッ

和「…そんなに泣かれたら、私も、なんだか悲しくなってくるじゃないですか!」ギュッ

和「…」グスッ

咲優希和「「「うわああああああん!!」」」

和(恋に破れた友人達と一緒に泣ける私は、幸せものです)

和(こんなにも綺麗で眩しい恋の行く末を、2つも見届けられたのですから)

咲優希和「「「ああああああああああああああああああああ!!」」」

和(願わくば…)

和(私も、いずれ)

和(貴女達とその想いを共有出来れば)

和(恋心っていう感情…)

和(…それまでは、この中で私が一番子供ですね)

咲優希和「「「うああああああああああああああああああああああああああ!!」」」

宮永家・照の部屋…の、ベッドの上

照「…」チョコン

京太郎「えーっと…」チョコン

照「…あ、あの」

京太郎「…はい」

京太郎(…なんで俺ら、正座してんだろ)

照「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします」ペッコリン

京太郎「こ、こちらこそ、お願いいたします…」ペッコリン

照「…」

京太郎「…」

照「…ど、どうしよっか」

京太郎「ど…どうするって…と、取り敢えず?」

照「と、取り敢えず…」

京太郎「…服脱がしていい?」

照「…」

京太郎「…」

照「…じゃあ、私が京ちゃんの服脱がす?」

京太郎「…なんか、恥ずかしいなそれ」

照「…うん」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…歯よく磨けた?」

照「うん。京ちゃんは何してた?」

京太郎「えーっと…ガム食って、口臭予防して…照ちゃんの部屋見てた」

照「あんま見ないで。その…帰ってくるの久しぶりだったし、埃とか溜まってる…お父さんも咲も掃除あんまりしてくれなかったみたい」

京太郎「そっか…」

照「うん…」

京太郎「…」

照「…あ」

京太郎「…ん?」

照「…ゴム」

京太郎「あ」

照「どうしよ」

京太郎「…買いに行こう」

照「…」

京太郎「いや。その…ね?ほら、いろいろと」

照「…確か、近所に怪しい自動販売機が有ったはず…」ノロノロ

京太郎(しまらねえ…!圧倒的…っ!!しまらねえ…っ!!)

同時刻
白糸台高校

菫「ただいま」

淡「あ!帰って来た!」

誠子「お疲れ様です!」

菫「ああ。尭深、GPSありがとう。返すよ」

尭深「お役に立ちました?」

菫「ああ」

淡「…どうでした?」

菫「なんだ淡。お前キャラ割れたのに変えないのか?」

淡「何の話だか私には分かりかねますが!!」

菫「冗談だ」

淡「なんて性格の悪い…」ワナワナ

菫「まあ、今更だしなぁ」

淡「だからそういう事を言わないの!!」

菫「あ?」ギロッ

淡「なんでもございません…」シュン

誠子「あの…弘世部長…」

菫「ん?」

誠子「それで…その…」

尭深「結果…」

菫「…?淡から聞いてないのか?」

誠子「それが、弘世部長が帰ってくるまでは秘密ですーの一点張りで…サバイバルナイフ突きつけても」

尭深「お茶かけて髪の毛収穫するって脅しても口を割らなかった」

菫「お前らもさらっと…」

淡「この人ら、本気かどうかいまいち判断付かないんで真剣に怖かったんですからね!」

菫「まあ、お前らも全然喋らんからキャラ掴めんしなぁ…」

誠子「ひどっ!?」ガーン

尭深「今更!?」ガーン

淡「自分はなんか暴君化してるくせに!」ガーン

菫「はっはっはー。淡後で面貸せ」

淡「いやだーーー!殺されるー!!」

誠子「で、部長」

尭深「詳細はよ」

菫「おお、そうだった」

淡「うううう…よくよく考えたら、本当にあの金髪小僧如き恐れるに足らずだった。何しろここは魔境…暴君と天然と殺し屋とお茶お化けの統治するゴッサムシティ…」ブツブツ

菫「…概ね成功さ」

誠子「よっし!」

尭深「いえー」ピース

菫「…だがなぁ」

誠子「…?何か問題が?」

淡「だったらあの須賀京太郎って雑魚殺しに行きましょうか!先輩たちで!私見てるだけでも!」

尭深「淡うるさい」

菫「…ん。まあ、問題っつーか…ははは…な?」

淡「…?」

菫「…あのボンクラに、まともなオツキアイが出来るのかなっと」クスッ

誠子「ああ」

尭深「ああ」

淡「ああ」

菫「…ま、後は、我々の預かり知らぬところではあるけどね」

淡「…そっか。それくらい、か」

菫「なんだ?何か不満でも?」

淡「…ん。いや、そんな不満があるってわけではないんですが…」

菫「…?」

淡「貸しもあることだし、こっち来た時はプリン奢らせないとなーって」

菫「…はっ。好きにしろ」

淡「…ふふっ。ええ。彼女さん諸共に♪」

10分後
照の部屋

京太郎「ぜ…は…ぜ…は…」

照「はぁ…はぁ…あ、危なかった…ご近所のおばさんと危うくエンカウントするとこだった…ギリギリ買ってるとこバレなかった…」

京太郎「今思えば、場所だけ聞いて俺一人で行けば良かった…」

照「汗かいちゃった…」

京太郎「俺も…」

照「シャワー…」

京太郎「…」

照「…どうしよっか」

京太郎「…もうなんか色々面倒臭い」

照「…臭いかも?」クンクン

京太郎「いいよ。照ちゃんさえ良ければ」

照「…ばか。…良いよ」

京太郎「馬鹿で結構!」ガバッ

照「あ…」

京太郎「…照ちゃん、あったかい」

照「…熱いくらいだよ」

京太郎「じゃあ、制服…脱がすよ」

照「うん…」

京太郎「…」プチ…プチ…

京太郎「…手、上げて」

照「…」モゾモゾ

京太郎「…ブラウスもいい?」ファサッ

照「…うん」

京太郎「…」プチ…

照(…ほんと…熱い…よ…)モゾモゾ

京太郎「…脱げた」ファサッ

照「いちいち言わないで…」

京太郎「…ごめん」

照「次、私。制服脱がすね。あと、その下の、Tシャツも」

京太郎「なんか恥ずかしい…」

照「…私も恥ずかしかったから良いの」プチ…プチ…

京太郎「…」

照「…Tシャツ、脱がすの難しい」ゴソゴソ

京太郎(…上半身ブラ姿の照ちゃん、目の前…近い…)

照「んしょ…んしょ…」ゴソゴソ

京太郎「もが…」

照「…」

照「…ふう。やっと脱がせられた」ファサッ

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…えっと」

照「…スカート、は…自分で脱ぐね」モゾモゾ

京太郎「…俺も、じゃあズボン自分で脱ぐ」カチャカチャ

照「…」ポイッ

照(靴下も)ポイッ

京太郎(靴下も)ポイッ

照「…」

京太郎「…」

照「…か、カーテン…閉める」シャッ

京太郎「…」

照「…あ、あと、布団の中、早く入って」ゴソゴソ

京太郎「う、うん…」ゴソゴソ

照「…」ピトッ

京太郎「…」ピトッ

照「…ふう」ギュッ

京太郎「…はあ」ギュッ

照(…あったかい)

京太郎(やわらかい…)

照「…」ギューッ

京太郎「…」ギューッ

照京太郎((いつまでもこうしていたい…))

照「…」ウト…ウト…

京太郎「いやいやいや」

照「…ハッ」

京太郎「うとうとするの早すぎ」クスクス

照「…面目ない」

京太郎「…何、すれば良いのかな。最初」

照「…キスしたい」

京太郎「キス?」

照「うん。抱き合ったまま…キス」

京太郎「ん」チュッ

照「うん…」チュッ

京太郎「ちゅ…くちゅ…」

照「…ちゅ…うん…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…ぷは」

照「…はふ」

照「…」ギュッ

京太郎「…」ナデナデ

照「…えへへ」

京太郎「かわいい」

照「好き」

京太郎「俺も好き」

照「大好き」

京太郎「俺も大好き」

照「ちゅっ」

京太郎「…」

照「…くちゅ…ちゅぱ…」

京太郎「ん…ふ…くちゅ…」

照「…ん…」

京太郎「…ふ…くちゅ…ちゅ…」

照「…んふ…はふ…」ギュッ

京太郎「はっ…ん…ちゅっ…」グイッ

照「はあ…っ!ちゅっ!んふ…!」

京太郎「くっ…ちゅぱ…じゅぶ…!」

照「ふう…!は…はふ…!はっ!くちゅ…!」

京太郎「ちゅ…じゅるっ!」

照「…じゅぶぶぶ…!」

京太郎「…っ!ぷはっ!」

照「…ぷは!」

京太郎「は…っ!は…っ!」

照「…えへへ」

京太郎「…参った」

照「…私の勝ち」ギュッ

京太郎「はいはい…」ナデナデ

照「…」

京太郎「…」

照「…かぷっ」

京太郎「…何してんの」

照「はまはみ」

京太郎「首筋甘噛み?」

照「ふん」

京太郎「…」

照「…ちゅーーー…」

京太郎「いたたた…」

照「…ぷは」

京太郎「…」

照「出来た」

京太郎「何が?」

照「キスマーク」

京太郎「…」

照「私のキスマーク。京ちゃんにマーキングできたよ」

京太郎「…じゃあ俺も」グイッ

照「ひゃ!?」

京太郎「ブラずらしてー」ゴソゴソ

照「わ、わ、わ、力づくはずるいよ!」

京太郎(左乳房の、上の方…心臓のあたり…ここかな)

京太郎「ちゅ…」

照「はうっ!?」

京太郎「ちゅーーーーーー…」

照「あふ…はあ…」

京太郎「ちゅーーーーーーーーーーーーー……」

照「ちょ…き、京ちゃ…なが…」

京太郎「じゅぷっ」

照「ひゃっ!?」

照(口から漏れたヨダレが…身体を伝ってく…変な感覚…!)

京太郎「…ぷはっ」

照「はふうっ!」ブルブルッ

京太郎「…あれ、ちょっと青い?」

照「や、やり過ぎだよ!」

京太郎「わ、悪い悪い…」

照「もう怒った!」ゴロン

京太郎「お!?」グルン

照「悪い京ちゃんにはお仕置き!」

京太郎「お仕置きって…」

照「上から押さえつけたまんまで、いっぱいキスマーク付ける!」

京太郎「ちょ…」

照「ちゅっ!」

京太郎「うわ!この…じゃあ俺だって!ちゅっ!」

照「ふわっ!?」ブルッ

京太郎「ちゅっ!ちゅっ!ちゅっ!」

照「や…あう…」

京太郎(…おっぱい吸うのって、赤ちゃんっぽいかな)ゴソッ

照「あ、駄目、そんなにブラずらされたら…」

照(乳首見えちゃう…)

京太郎「…乳首見えた」

照「あうう…」

京太郎「ほんのりピンクで、小さめの乳首」

照「や、やめて…言わないでよ…」

京太郎「ピーンと勃ってる。ぷっくりしててまるっこい」

照「ううううー!」

京太郎「なんかおいしそう」パクッ

照「ひっ!」

京太郎「…もにゅ…こり…ころ…」

照「あうううー!ああーーー!!は…はふ…」

京太郎(もう片っぽも、手で弄っちまえ)コリッ

照「んーーーー!!んーーーーー!!」モゾモゾ

京太郎(必死で声押し殺す照ちゃんも可愛い…)

京太郎「…」

京太郎(…股の方も、弄ってみたい)ゴソッ

照「っ!!」ビクッ

照「や…っ!」

照(や…京ちゃん、パンツ…触って…)

京太郎(なんか、濡れてる…)サス…サス…

照「ふんぁ…っ!」

照(やだ…やめてよ。私、濡れてる…から…汚い…よ…)

京太郎(なんか、エッチだ)サスサスサス

照「あ…はう…は…!」

照(そ、そっちがそのつもりなら、こっちだって!反撃!)モゾッ

京太郎「あっ!?」

京太郎(ちょ…!股間…弄られ…!?)

照(…これ、そうだ…京ちゃんの、お、おちんちん…)ナデナデ

照(硬い…熱い…変なの…)

京太郎「う…あ…」

照(可愛い声…気持ちいいの?パンツ越しでも)サスサス

京太郎「あ…あう…」

京太郎(ぎこちない手つき…だけど、自分で扱くのと全然勝手が違う…照ちゃんにされてると思うと、それだけで、ペニスが破裂しそうな程充血してる…!)

照「…」ゴソッ

京太郎「ちょ…」

照「えい!脱がすよ!」ズルッ

京太郎「うわわわ」

照「抵抗しないで!お尻上げてよ!」ズルズル

京太郎「あわわわわわ」

照「もう!京ちゃん!」

京太郎「わ、分かった分かったから…」スッ

照「…よっしょ…」モゾモゾ

照「…取れた!」ポイッ

京太郎「…」

照「これで京ちゃんは全裸だね」フフン

京太郎「そっちだってほぼパン一のくせに」

照「う…」

京太郎「そんなに裸になりたいなら脱がしてやる」ゴソゴソ

照「きゃーーー」

京太郎「嬉しそうな悲鳴」

照「ふふふ」

京太郎「ブラは…このホックか?えーっと…」ゴソゴソ

照「違うよ。こうだよ」

京太郎「あ、そっか。じゃあこうやって…」ゴソゴソ

照「…」

京太郎「取れた」ポイッ

照「…お気に入りの下着だから、あんまり乱暴に扱わないでね」

京太郎「ご、ごめん…」

照「ううん…」

京太郎「…さ、最後、パンツ、脱がすよ」

照(シーツ…汚れちゃう…ま、いっか)

京太郎「…足、開いて」

照「恥ずかしい」

京太郎「良いから」

照「良くない」

京太郎「無理やり脱がしたら下着伸びちゃう」

照「…」スッ

京太郎「…良い子」モソモソ

照「…~~~~っ!」

京太郎「…はい、完了」トサッ

照「…」ギュッ

京太郎「また抱きついてくる。甘えんぼ」

照「甘えんぼだもん」

京太郎「そっか」ギュッ

照「…」ギュッ

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…ねえ」

照「…ん?」

京太郎「入れて良い?」

照「…良いよ」

京太郎「…そっか」

照「…うん」

京太郎「じゃあ、そっと入れるね」

照「うん」

京太郎「痛かったら言えよ」

照「うん」

京太郎「そしたらすぐ止めるから」

照「…うん」

京太郎「…」モゾッ

照「…ねえ」

京太郎「ん?」

照「君の身体、ギュってしてて良い?」

京太郎「勿論」

照「ありがと」

京太郎「どういたしまして」

京太郎「お姫様」

照「…っ!!」

照「京ちゃん…!!」

京太郎「ん?」

照「好き!!」

京太郎「…俺も。照ちゃんが好き」

京太郎「愛してる」ツプ…

照「あ…!」ズキッ

照(痛っ!!?)

京太郎「…痛い?」

照「…だい…じょう…ぶ…」

照(い、痛い…っ!痛い…よ…!す、凄く…!)

京太郎「…ゆっくり…いくよ」

照「う…ん…っ!」

照(けど…いやだ…)

照(逃げてたら…進めない…そんなの…嫌だ!!)

照「入れて…」

京太郎「…」

京太郎「…入れるよ」

京太郎(ゆっくり…丁寧に…)

京太郎「…」ツ…

照「はふ…!」

京太郎「照ちゃん!?」

照「あ…うう…!」

京太郎「やっぱり…」

京太郎(今回はもう、ここまでに…)

照「キス…」

京太郎「…」

照「キス…しながら…が、いい…」

京太郎「…」

照「キスしながらだったら…我慢できるから」

京太郎「…」

照「続き…して」

京太郎「…ちゅっ」

照「…はふ…」

京太郎(…ごめんな)

京太郎「ちゅぷ…」ツツ…

照(痛っ!)

照「…っ!は…はふ…ちゅぱ…ちゅるっ…」ジワッ

京太郎「ちゅ…くちゅ…ちゅぴ…」ツツ…

照「んは…!ちゅ…!じゅるるるっ!」ポロッ

照(あ、な、涙…で、出ちゃ…!)

京太郎「…」ギュッ

照(…あ)

照(…力強く…抱きしめられて…)

照(…あはは)

照(痛いくらいだけど…)

照(気が紛れて…良いな…これ…)

京太郎「…ちゅ…」ツ…




ツプッ

1時間後

京太郎「…」ボーッ

照「…」ボーッ

京太郎「…大丈夫?」

照「…うん。ごめんね。背中大丈夫?」

京太郎「いいよ。照ちゃん、痛かったんだもんな。思わず力入って爪が食い込んだだけさ」

照「…ありがと」

京太郎「ううん。俺こそ」

照「…シーツ、血が付いちゃった」

京太郎「…はは。俺も焦ったわ。話には聞いてたけど」

照「困ったなぁ…シーツの替えどこにあったっけ。それとお父さんにバレないように処分もしなきゃ…」

京太郎「いっそ報告しちゃう?付き合ってますって」

照「私が帰って来てるのも知らないのに…ショックで寝込んじゃうよ」

京太郎「ははは…だよなー…流石にちょっと早い…」

照「不良になっちゃった」

京太郎「照ちゃんは大丈夫だよ。不良とは程遠い。清く正しい子のまんま」

照「…」

京太郎「…って、まだ抱き合ったまんまのこの体勢で言ってるんじゃ、説得力無いか?」

照「…」ギュッ

京太郎「…」

照「…まだ、このままが良い」

京太郎「…甘えんぼ」

照「甘えんぼだもん」

京太郎「…ま、そこが可愛い」ナデナデ

照「…ねえ、京ちゃん」

京太郎「ん?」

照「カッコよくなったね。君は、本当に」

京太郎「えっ!?」

照「…昔からカッコよかったけど、さ。昨日、見違えたもん」

京太郎「…照ちゃんだって、昔よりずっと可愛い」

照「昨日より、さっき格好良かった。さっきより、今」

京太郎「…」

照「男の子は、そうやって少しずつ大きくなってくんだね」

京太郎「女の子だって一緒さ。照ちゃんは、どんどん可愛くなっていく。けど、それ以上に、綺麗になってくんだ」

照「…ばか」

京太郎「…」

照「…ね、京ちゃん」

京太郎「ん」

照「好きだよ」

京太郎「…」

照「…」

京太郎「…俺も」





京太郎「好きだよ」



終わり

思い立ってそろそろ埋めようと思った

今後のSSのアナウンスはアラフォースレで行います
トト当選者の大阪さん、すまんけど、リクエストSSやる時、確実に伝えるために野球スレにちょっとだけお邪魔してもよろしいですか?
近いうちにVIPでやりますんで

一応、タイトルだけは決まってるんでここで言うと

玄「『ハルちゃん』には負けないのです!」

となります

こっちでこれ読んで知ってる人も、見かけたら読んでくれたら嬉しいです、が。こっちの企画だとかそういうのはナイショにしてくれたらもっと嬉しいです。では

初々しさ出そうと狙ったんだけど、なんかあれあれ?って感じだねw

もしコメントとかあったら、今や還暦のアラフォースレにしてくれたら嬉しいな

じゃあまた後でねー

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