勇者「もうダメだわこの国」(104)

王宮 謁見の間

王様「勇者よ、お主も知っていると思うが、この国にも隣国を滅ぼした魔王が迫ってきている……」

王様「彼の魔王の力は強大無比、並び立つ事が出来るのはもはや勇者しかおらぬ…」

王様「どうか魔王を倒し、この国を救ってほしい…」

勇者「……王よ、その命、承りました。ですが………」

王様「……何じゃ、何でも言ってみろ」

勇者「それでは……王よ、あなたは何故」

勇者「女性用の水着を着ていらっしゃるのですか!!?」

王様「気分!!!?」

勇者「気分って何ですか!気分って!!!!」

勇者「ご丁寧にマントだけはちゃんと着てますし!!水着にマントとかもはやなにも着ないよりも変態度がアップしてますよ!!!!」

王様「仕方が無いであろう……このマントは、我が王家の証にして代々伝わる誇りの象徴……脱ぐわけにはいかぬのだ……」

勇者「別にマントがダメって言ってんじゃねえよ!!!!下の水着が問題なんだよ!!!」

王様「わっ!儂に裸マントをしろと言うのか!…………仕方ない……」

勇者「服を着ろって言ってるんだよ!!!あと仕方ないって何!?まるで俺が望んだみたいに言いやがって!!何でジジイのストリップショーを楽しまなきゃいけないわけ!!!?」

王様「じゃあどうしろって言うんじゃ!!水着は脱ぐわけにはいかん!マントも脱ぐわけにはいかん!儂は何を脱げばいいんじゃ!」

勇者「何で逆ギレしてんの!?普通考えたら解るだろ!!!」

王様「…………勇者よ、その通りだな。お陰で目が覚めたよ……」

勇者「おっさん……解ってくれたのか……」

王様「ああ!儂は!この古くさいマントを捨てる!!」

勇者「よりにもよってそっち捨てちゃったよこのおっさん!」

王様「ありがとう勇者よ、晴れ晴れとした気分だ」

勇者「俺は目の前で変態の誕生を見せられて最悪の気分だよコンチクショーめ」

王様「変態のではない、これは誇りだ……さて勇者よ、お主には儂が極秘で調べた魔王の情報を教えよう」

勇者「そんなことしてたのか……腐っても王だな……」

王様「儂が調べた極秘情報によると、魔王はここから3km離れた場所に城を構えておる」

勇者「い、異常なまでに近い…!」

王様「そして!その城を守るのは魔王の最高幹部達!九天王!」

勇者「言いにくい上に地味に多い…!」

王様「頼む勇者よ!民を守ってくれ…!」

勇者「…………ええ!任せて下さい!王様!」

王様「ゆ!勇者よ!ありがとう!」

勇者「いえ、世界を守るのが勇者の使命です、当然ですよ」

王様「頼んだぞ!これは、せめてもの支援だ…!」

王宮の外

勇者「やれやれ、散々な王様だったよ」

勇者「さて、王様から貰った袋の中には何が入っているかな~~」

▽ゆうしゃはふくろをあけた

▽なんと!あぶないみずぎをみつけた!

勇者「……………………」

勇者「……………………」ダダダダダダダ

勇者「……………………」ダダダダダダダ

勇者「……………………」ダダダダダダダ

バタン!

王様「どうした勇者よ!儂とのペアルックが気に入ったのか?」

勇者「しねっ!!!」ガスッ!

王様「ゴハアッ!!!」

城下町 町中

勇者「あのおっさん、結局マシな物一つもくれなかっぜ……」

筋肉「筋肉!筋肉!」

勇者「まあいいや、貯金もあるしなんとかなるだろ」

筋肉「筋肉!筋肉!」

勇者「さて、まずは仲間を見つけることから始めないとな!一人じゃ旅は出来ねぇ!」

筋肉「筋肉!筋肉!」

勇者「優秀な仲間が見つかるといいな……ちょっとドキドキだ」

筋肉「筋肉!筋肉!」

勇者「…………」

筋肉「筋肉!筋肉!」

勇者「だぁぁぁ!テメーは何なんだよさっきから!」

筋肉「これか? これはモストマスキュラーのポーズだ!」

勇者「聞いてねえよそんな事!!!何で俺の周りで筋肉筋肉叫んでるのか聞いてるんだよ!」

筋肉「……このポーズは肩や胸、腕を強調するポーズでな上半身の美しさが……」

勇者「聞いてねえって言ってんだろ!筋肉トリビアなんか知りたくもないわ!」

筋肉「……では、ダブルバイセプスのポーズで」

勇者「そのポーズした瞬間逃げるからな?」

筋肉「……………………」

勇者「……………………」

筋肉「ふんっ!!!!」キリッ!

勇者「じゃあな!!!!!」ダッ!

勇者「ハア……ハア……ここまで逃げれば……」

筋肉「勇者よ、もう終わりか?」

勇者「げげぇっーー!こいつついてきてるし!!」

筋肉「先ほどはすまなかったな、ついつい筋肉への情熱を燃えたさせてしまった」

勇者「ついついでポージングするなよ……」

筋肉「さて、追いかけっこをする前の質問に答えさせていただこう、貴公が王の勅命を受けた勇者でよろしいな?」

勇者「ん? ああ、確かに俺が勇者だけど……」

筋肉「やはりか、では、単刀直入に言わせていただこう」

筋肉「私を、貴公のパーティに加えてほしい」

勇者「お断りします」

筋肉「な、何故だ!!筋肉が足りないからか!!」

勇者「どちらかと言えば筋肉がありすぎるからだな」

筋肉「ぐぅぅ!悲しみのサイドトライセプス!!!」

勇者「……じゃあ、俺はこのへんで……」

筋肉「まつのだ!」ガシッ!

勇者「グヘェ!!!」

筋肉「我にアピールする時間を頂きたい!それを見れば、貴公も意見を変えるだろう!」

勇者「ええー……まあいいや、お前の職業何だよ?戦士か?武闘家か?」

筋肉「我の職業は!魔法使いである!」

勇者「何でよりにもよってそれなんだよ!!!」

勇者「筋肉使えよ!今までお前のキャラ筋肉で統一してたじゃん!なんで職業も筋肉関係にしないんだよ!」

筋肉「ククク……我の魔法を見たらそのような言葉は言えなくなるぞ!」

勇者(……まあ、人は見かけによらないって言うしな、こいつの場合は中身も筋肉だけど……もしかしたら、こいつは実は凄い魔法使いなのかもしれないな……)

勇者「よし見せてみろよ、お前の魔法! 向こうの岩に打ってくれ!」

筋肉「承った!見るがいい!我の筋肉魔法!」

勇者「え」

筋肉「始めに!体全体をビルドアップさせる事で全身に魔力を送り込む!!!ふぬぅぅぅぅ!!!」

勇者「すでに絵が魔法じゃねえ……」

筋肉「次に!一度体全体に行き渡った魔力を全て右腕に集中!!!!その過程で右腕に筋肉も集まる!!!!」

勇者「み、右腕が異常なまでの太さに!!!正直キモイ!!!!」

筋肉「この時!副作用として右腕全ての血管がはちきれる!!!」ブシャー!!!

勇者「怖えーーーー!!!!!」

筋肉「そして!!この腕を一気に相手に振り落とす!!!食らえ!!!」

筋肉「メラ!!!!!!!」

勇者「名前だけ滅茶苦茶ザコじゃねーか!!!!!!」

ズッドドドドド!!!!!!
ゴゴゴゴゴガーン!!!!

シュウウウウウウ

筋肉「……いかがだろうか」

勇者「す、すげえ……あんなにでかかった岩がバラバラになっちまった……」

筋肉「我の筋肉魔法にかかればこの程度の事は簡単だ。どうかな?貴公なパーティに我を入れてくれるだろうか?」

勇者「ああ、あんなの見せられたらしょうがねえよ、これから、よろしく頼むぜ!」

筋肉「おお!!!よろしく頼む!!!」

勇者「でもさ、一つだけ言ってもいいか?」

筋肉「何かね?」

勇者「お前のポジション、武闘家な?」

城下町 町中

勇者「さて、あと二人は仲間が欲しい所だ」

筋肉「貴公はどのような仲間を望んでおるのだ?」

勇者「そうだなあ、マトモな奴がいいな」

筋肉「む……その言い方ではまるで我がマトモでは無いかのようではないか」

勇者「ポージングしながら町を歩いている奴の何処がマトモなんだよ」

筋肉「何を言うか、これはアブドミナルアンドサイと言って腹筋と足の美しさを見せつけるポーズである。常に美しさを見せるのは筋肉研究家とあらば至極当然でありーーー」

勇者「ああ、分かった分かったから」

筋肉「分かってくれたか!筋肉の素晴らしさが!」

勇者「……本当に、普通の、ごく普通の奴がいいなあ」

王様「待つがよい!勇者よ!」

筋肉「ぬ、貴公は」

勇者「王様のおっさんじゃねえか」

王様「儂をパーティに連れていけ!」ドン!

勇者「で、やっぱり酒場だよ酒場、仲間を探すにはあそこが一番人が集まるって言うしな」

筋肉「それであれば私がいい酒場を知っていてな、そこに行ってみるのはどうだろうか?」

勇者「お、いいねえ」

王様「聞けよ!!」

勇者(……マズイ、このままあぶないみずぎを装備してるおっさんをパーティに加えると筋肉も併せて3人のパーティーの中2人が半裸になってしまう!これはもはや勇者パーティーが変態一行みたいになる可能性がある、というか絶対なる! なんとか突き返さなければ……そうだ!)

勇者「おっさん、旅に出るって言ってもお前王様だろう?仕事はどうするんだよ?」

王様「……儂はもう、王様では無い」

勇者「……は?」

王様「何故なら!儂は王の証であるマントを捨てたからじゃ!!」

~~~~~~~回想中~~~~~~~

王様「仕方ないがであろう……このマントは、我が王家の証にして代々伝わる誇りの象徴……脱ぐわけにはいかぬのだ……」

王様「ああ!儂は!この古くさいマントを捨てる!!」

~~~~~~~回想終了~~~~~~~

勇者「そう言えばこいつ捨ててた!王家の証捨ててたよ!!」

勇者「だけど、それなら今からでもあのボロマントを取りに行けば王様に戻れるんじゃ……」

王様「甘いぞ勇者!儂がマントを放り投げた時にすでにそれは出来なかった!」

勇者「ど、どうして!」

王様「それはな……儂がマントを投げた時偶然城の外で鬼ごっこをして遊んでいたたかし君にマントがすっぽり収まったからじゃ!!!!!」

勇者「た、たかし君に!?」

王様「左様!つまり今の儂は王様ではない!たかし君が王様じゃ!!!!」

勇者「何やってんだよ!!!!!!」

勇者「おっさんから王様を取ったら変態しか残らねえじゃねえか!ただの水着を着たニートじゃねえか!」

王様「そんな訳で、儂は勇者達の旅についていって大丈夫だ!さあ!行こう!」

勇者「嫌だからな!!第一おっさん連れていっても俺達にメリットが無いじゃないか!!」

王様「……パ、パンツくらいなら、見てもいい…よ?」カアッ

勇者「何処のヒロインだよ!!おっさんがやってもキモイ以外の感想が出ねえよ!」

王様「いーやーじゃー!儂はこのパーティのセクシー担当になるんじゃー!」

勇者「よりにもよってそのポジションを狙ってたの!?一生無理だわ!!」

筋肉「国王よ諦めなさい、このパーティーにあなたを迎える事は出来ない」

勇者「おお!筋肉!言ってやってくれ!」

筋肉「何故なら!既にセクシー担当として我がいるからだ!」

勇者「お前もセクシー担当狙ってたのかよ!!!」

王様「ならば……貴様を倒せば儂がパーティーのセクシー担当になれるのじゃな……」ゴゴゴゴゴ

筋肉「そうだな、『倒せれば』の話だが」ゴゴゴゴゴ

王様「良かろう!セクシー対決じゃ!!」

筋肉「受けて立とうではないか!!どちらが勇者パーティーにふさわしいセクシーポジションか!今ここで決めよう!!」

勇者「いや、どっちもセクシーとは違うから!!!おっさんに至っては吐き気しか起きないから!!!」

筋肉「先行は貰うぞ!!我のターン!!」

勇者「何処のカードゲームだよ!?」

筋肉「ハアアアアア!サイドチェスト!!!!」

王様「ぬうっ!これは!?」

筋肉「サイドチェストは君達もよく目にするポーズだろう!やや横を向き右手で左手首を押さえて上体を対象に向けるポーズだ!このポーズは胸の厚みや腕の太さを強調する事が出来る!」

王様「それだけではない!この男!ひっそりと脚を主張している!この隠し刃のセクシーさたるや…………グワァァァァァァァ」ズザザザザザザ!!!

勇者「ああ!おっさんが何故かふっとんだ!!!!」

筋肉「ふん、他愛のない。行こう、我がセクシー担当だ」

勇者「お前の筋肉は恰好良いのは分かるけどセクシーなのか……?」

王様「待て!!!!」

勇者筋肉「「!?」」

王様「ハア……ハア…まだ、儂のセクシーを見せてはおらんぞ……」

勇者「おっさんが立ち上がった!!あのまま死ねばよかったのに!!」

筋肉「ふん、あのセクシーを食らって立ち上がった事は驚きに値するが、すでに虫の息ではないか」

王様「たとえ死にかけでもセクシーアピールをする事は出来る!!儂は!セクシーを諦めない!」

筋肉「ならば来い!!貴公のセクシーを見せてみろ!!」

女子「ママー、セクシー対決だってー」

ママ「しっ!見ちゃいけません!」

勇者(なんだこれ)

王様「儂のターン!!!!お着替えターイム!!!!」バサッ!

勇者「いきなりおっさんの上に暗幕が降ってきたぞ!」

筋肉「魔力を感じる、おそらく奴が独自に開発した魔法だろう」

勇者「無駄な努力だけは最大限にしてますねえ本当に!!!」

王様「筋肉よ……貴様のセクシーは見事だった!だが、儂はその上を行く!!!」

筋肉「何だと!?」

王様「これが儂の新フォーム!」バサッ!

王様「バニーガールフォームじゃああああああ!!!!」

勇者「ぎゃああああああああああ!!!!!!!」

筋肉「な……なんだこの汗は……まさか、我が恐怖しているのか?」

王様「筋肉よ……貴様は素晴らしかった……敬意を払い、一撃で葬り去ってやろう!」

筋肉「馬鹿な!馬鹿なあああああ!!」

王様「くらえ!!!バニーガールセクシーショット!!!!!」チラッ

筋肉「ぐわああああああああ!!!」ズザザザザザザ

王様「儂の勝ちだ!!!」

勇者「オエーッ、ゲロロロロロ」

筋肉「ハア……ハア…見事だ!」

王様「これで、儂をパーティーに入れてくれるな!」

筋肉「ああ、約束だからな、今日からパーティのセクシー担当はお前だ!」

王様「ありがとう!……ところで勇者は何をしておるのだ?」

筋肉「何故か道ばたでゲロまみれになって寝てるな」

王様「ふむ……勇者も初めての冒険じゃ、疲れもたまるじゃろう、寝かしておいてやろう」

筋肉「それもそうだな、どうだね、勇者が起きるまでの間すぐ近くの酒場で一杯というのは」

王様「非常に良い提案じゃの!案内しておくれ!」

筋肉「ああ!では行こうか!」

王様筋肉「「ワーッハッハッハッハッハ!!!」」

勇者「」

???「あ、あの、大丈夫ですか?」

勇者「」

???「ゲロ吐いちゃってる……お酒を飲み過ぎたのかな?……違う、顔が赤くなってない」

勇者「」

???「とりあえず、道ばたは危険だよね、運んであげよう」

勇者「」

???「うう…重いよーゲロ臭いよー」

勇者「」

???「うんしょ、うんしょ……」

城下町 教会 一室

勇者「ハッ!」

僧侶「あ、起きましたか?よかった」

勇者「こ、ここは? バニーガールのおっさんは? 筋肉の化身は?」

僧侶「……どうも混乱してるみたいですね、大丈夫です、そんな悪魔は此処にはいませんよ」

勇者「あ……君は?」

僧侶「どうも、私はこの教会に住んでいる僧侶といいます、よろしくお願いします」

勇者「あ、これはどうもご丁寧に、俺は勇者だ……ところでどうして俺はここに?」

僧侶「通りの真ん中で嘔吐物にまみれて寝ていらっしゃったので大丈夫か心配で連れてきたんですが、ご迷惑でしたか?」

勇者「あ、ありがとう!とても助かったよ!」

勇者(あの露出狂共、俺を放置しやがったな)

僧侶「勇者さん、少し失礼しますね?」

勇者「え?あ、うん」

僧侶「……はぁっ!」

シュワァァァァ!

勇者「こ、これは回復呪文!?」

僧侶「はい、勇者さんはずっと道で寝ていたでしょう?体が疲れているかと思って」

勇者「すげえ!回復呪文が使える奴なんてそうそういないのに!僧侶ちゃんは天才なんだな!」

僧侶「あはは、天才だなんて恥ずかしいです。そんなに煽ててもこれしか出せませんよ?」コトッ

勇者「これは?」

僧侶「私のげぼ……仲間が集めてくれた薬草で作ったハーブティーです、体があたたまりますよ?」

勇者「……ほんとだ、体がポカポカする!!」

僧侶「喜んでくれて幸いです」

勇者「……ん?あれ?」

僧侶「どうしました?」

勇者「いや……なんだか……急に眠くなって……」

僧侶「ふふ……眠いのなら、寝てもいいですよ?部屋は沢山ありますから」

勇者「そっか……じゃあ、言葉に甘えるよ……」

僧侶「はい、おやすみなさい」

勇者「そうりょちゃん……よかったら……おれの……なかま……に……くぅ……」

僧侶「ふふふふ……」

僧侶「うふふふふふふふふふふ」ニタァ…

勇者「…………ハッ!」

僧侶「おはようございます、勇者さん」

勇者「……えっと、何故かまた場所が変わってるようだけど此処は?」

僧侶「教会の地下にある拷問部屋ですね」

勇者「……どうして俺の手に手枷がはまってるのかな?」

僧侶「いやですねぇ、逃げ出さないようにに決まってるじゃないですか」

勇者「……………僧侶ちゃんが腕に持ってるそれは?」

僧侶「ムチですね」

勇者「…………………このまま俺を返してくれる可能性は?」

僧侶「ありませんっ!」

勇者「ちくしょーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

勇者「待って!話し合おうよ僧侶ちゃん!せっかく人と人は話し合うことができるんだからさ!!」

僧侶「……出来るわけないでしょう?」

勇者「待って!!イヤだ!!!!待ってくれえ!!!」

僧侶「ふふふ……問答無用です!さあ!勇者さん!」

勇者「うわーっ!!」

僧侶「私をムチで叩いてください!!!!!」

勇者「…………は?」

僧侶「早く!早く!この愚かな雌豚をムチで滅茶苦茶にして下さい!!!!」

勇者「い、嫌だ!どうして俺が叩かなくちゃいけないんだ!!」

僧侶「え?……だって、勇者さんって超鬼畜ドSなんでしょう?」

勇者「おい、その噂誰から聞いた」

僧侶「えっと……町内噂リーダーのママさんが、『勇者さんは元国王を街中で水着姿にさせて歩かせる超鬼畜ど変態ですわ!』って……」

勇者「あいつか!!!セクシー対決の時になんか言ってたあの親子か!!!」

僧侶「その話を聞いた時、私!ビビっと来たんです!その人なら私の理想のご主人様になってくれるって!!」

勇者「ビビっとこないでくれよ!!違うから!!嘘と偶然から出た誤解だから!!!」

僧侶「またまた、国王を路上プレイさせたのはあなたなんですから、謙遜しなくていいんですよ」

勇者「話聞いてねー!!!!」

勇者「とにかく!俺は僧侶ちゃんを叩いたりなんかしないぞ!絶対にだ!」

僧侶「……どうしても、叩いてくれないんですか?…………それなら」

僧侶「私が勇者さんを叩いてやるぅーーー!!!」

勇者「なんで!?」

僧侶「私に叩かれるかそれとも私を叩くか!選んで下さい!!!」

勇者「最悪の2択だぁぁぁぁ!!!」

僧侶「だ、大丈夫ですよ?私、お父さんにせがまれて無理矢理叩かされた事ありますから!!ムチで叩くのも慣れてるんです!!!」

勇者「おまえのお父さん最悪の変態だな!!!この国のおっさんロクな奴がいねぇよ!!」

僧侶「ど、奴隷って呼ばなきゃ怒ってくる以外にはいいお父さんなんです!!バカにしないで下さい!!!」

勇者「条件が厳しすぎるからね!?娘に自分の事奴隷って言わせるって最低な行動だからね!?」

僧侶「さ、さあ!!!さあ!!決めて下さい!!叩くか!叩かれるか!!!……あと5秒!!」

僧侶「ごーーお!!!」

勇者(手枷は解けない、多分逃げれない、叫んでも外に届かない!……なら!)

僧侶「よーーん!!」

勇者「そ、僧侶ちゃん!分かった!国王のおっさん叩いていいから許してくれ!!」

僧侶「さんにーいちぜろ!!!!!!」

勇者「あっ!!いきなり早くカウントしやがったこいつ!!!」

僧侶「気のせいです!!決してあのジジイの姿を想像して気分が悪くなったからじゃありません!!」

勇者「ごめん!確かに俺が悪かった!!」

僧侶「もう叩きますよ!?いいですね!?」

勇者(くそっ!万事休す!)

僧侶「とりゃーーー!!!!」シュバッ!!

ドッカーン!!!!
ガラガラガラガラ!!!

僧侶「きゃあ!」

勇者「て、天井が割れた!!!」

「とおっ!!!」シュタ!

僧侶「だ、誰ですか!あなたは!」

「誰か……だと?我の名前を知らぬか、ならば教えてやろう!我は!芸術の体現者!!!」

筋肉「筋肉である!!!」

勇者「き、筋肉!!!」

筋肉「待たせて悪かったな勇者よ、少々貴公の筋肉を探るのに時間がかかってしまった」

勇者「おう!筋肉を探るって何だよとかそもそも放置するなよとか言いたい事は沢山あるけど今はどうでもいいや!助けてくれ!」

筋肉「承った、すぐに助けよう」

僧侶「き……筋肉の悪魔!あなたに勇者さんは渡しません」

筋肉「ふむ、雑魚ほど良く吠える……」

ゴゴゴゴゴゴ!!!!!!

勇者(絵だけ見ると筋肉が100%悪者に見える……)

筋肉「見せてやろう!!!風の筋肉魔法を!!!」

僧侶「風の筋肉魔法!?」

筋肉「まずは!前と同じように全身の筋肉のバンプアップを行う!!!ハァァァァ!!!」

僧侶「くっ、なんて熱気!ですが、長いタメが必要な技なら好都合です!その間に近づいて倒してあげます!!」ダダダダ!!!

ガンッ!!!!

僧侶「痛いっ!?……何これ!?目の前に透明な何かがある!」

王様「嬢ちゃん、ショーがいくら刺激的だからってお触りはNGなんじゃよ?」

勇者「おっさん!居たのか!」

王様「見えない壁を作り出す魔法!マジックミラールーム!!!」シュタ!

僧侶「か、壁!?なら回り込めば避ける事が出きるはずです!そうすればこんな魔法の意味なんて……」

王様「ふむ確かに。しかし、どうやら目的は達成出来たようじゃのう、筋肉よ」

筋肉「うむ……既に両腕に筋肉を集め終えた!!!!」

僧侶「し、しまった!ジジイの目的は時間稼ぎ!最初からそれを狙っていたんですか!!!!」

筋肉「ハァァァァア!!!」ブゥン!ブゥン!

勇者「筋肉が正拳突きをはじめた!?」

筋肉「我の拳の突き出すスピードは時速約1200km!!!その拳の繰り出される事により起きる風圧は!辺りを完全に吹き飛ばすに至る!!!!!」

筋肉「これぞ範囲攻撃型筋肉魔法!!!バキである!!!!」

勇者「相変わらずやってる事すごいのに名前がショボすぎる!!!!!!」

筋肉「フォアアアアアアア」ブォン!ブォン!

僧侶「キャアアアアア!!」

勇者「うああああああ!!俺まで巻き添え食らってる!!!」

ドサッ

筋肉「ふっ……敗北が知りたい」

勇者「お前……さっきおっさんに負けてたじゃねえか……ぐふっ」

ドサッ

▽ゆうしゃはちからつきた!

勇者「…………ハッ!」 

筋肉「目覚めたか、勇者よ」

勇者「ああ……もういっそ死にたかった」

王様「全く勇者よ、聞くところによると勇者は今日3回も気絶しておるらしいな、少々メンタルが弱いんじゃないのか?」

勇者「おまえらと比べたら誰だって弱いわ」

僧侶「勇者さん、ご無事で何よりです」

勇者「うん、君のせいだからね?君が変態だったせいだからね?」

僧侶「へ、変態だなんて……そんな……ひどいです」

勇者「あ…………ごめ」

僧侶「ああ、でもそんな罵倒が嬉しいっ!!言葉責めされてるっ!今、私勇者さんに言葉責めされてますぅ!!」

勇者「やっぱり変態だ!絞り立て100%フレッシュ変態だ!」

筋肉「確かに……我以外変態のパーティというのは少しな」

王様「このパーティにマトモな人間は儂しかいないからの」

僧侶「勇者さん!!私を筋肉の悪魔やクソジジイと一緒にしないで下さい!!」

勇者「いや、全員変態だから!!迷うこと無い変態だから!!」

筋肉「しかし勇者よ、そう言う貴公も変態ではないか」

勇者「はあっ!?何処がだよ!」

筋肉「着ている服を見てみろ」

勇者「……服?」

▽勇者はあぶないみずぎをそうびしている!

勇者「……………」チラッ

王様「……………」

王様「…………礼はいらん!」グッ!

勇者「やっぱお前かよ!!!!!」

勇者(クソっ!どうしてこんなに俺の周りに変態が集まるんだ)

僧侶「勇者さーん、私も勇者さんとおそろいにするためにあぶないみずぎ着てみました!どうですか?」

勇者(このままじゃあ俺の旅が変態一行の布教活動みたいな感じになってしまう!そんなの認めてたまるか!)

僧侶「あ、あの……勇者さん?」

勇者(こいつらを置いていくしかない……なんか全員有能なのが腹立つけどそれはそれこれはこれだ)

僧侶「勇者さんが無視する……」シクシク

勇者(そうとなれば決行に移す!よし!)

僧侶「あ!でもなんか気持ちいい感じ!なんでだろ!!」

勇者「みんな!聞いてくれ!」

勇者「今から旅に必要なアイテムを手分けして買いにいこうと思う、お金を渡すからその範囲内でアイテムを出来るだけ沢山買ってきてほしい」

王様「ふむ! ワガママだった勇者もついに旅に出る決心がついたか、関心関心」

勇者「筋肉は食べ物を、僧侶は回復アイテムを、おっさんは防具を、俺は武器を買ってくる、いいな?」

筋肉「プロテインはオヤツに入るだろうか?」

勇者「鳥のササミとかゆで卵とかばかり買ってきたら筋トレ禁止だからな?」

王様「時に勇者はおどりこのふくとバニースーツどちらが好きかね?」

勇者「やいばのよろいかな? ツッコミにも使えるから」

僧侶「あの……」

勇者「ダメ」

僧侶「!?」

勇者(よし、これで全員をバラバラに行動させる事が出来る!)

勇者(バカ達が買い物をしている間に俺は一人で旅に出てしまう! 一人だと厳しいだろうけどバカと一緒よりは何倍もマシだ、その先の村で仲間を見つけてもいい! まさに完璧な作戦!)

勇者「よし! じゃあ行動開始だ!」

王様「よし、では行こうか勇者よ」

勇者「……は?」

筋肉「うむ、何事も速いほうがよい、貴公も急ぐべきだ」

勇者「……へ?」

僧侶「行きましょう? 勇者さん」

勇者「ちょっ! なんでみんなで一緒に行こうとしてるんだよ!」





僧侶「だって、そこにイオンがありますもん」


勇者「イオーーーーーーーン!!!!!」

勇者「なんでイオンがあるんだよ! おかしいだろ! 何がとは言えないけどおかしいだろ!」

僧侶「便利ですもん、仕方がないですよ」

勇者「違うだろ! ふつうは武器屋とか防具屋とかあるだろ!? そこはどうしたんだよ!」

筋肉「……頑張ってはいたのだがな」

王様「資本主義じゃもん、当然の成り行きというものじゃ」

勇者「もっとファンタジーらしくしろよ!」

僧侶「何言ってるんですか、ほら、行きますよ」

勇者「もう嫌だ…………」

イオン店内

王様「よっしゃ! 太鼓の達人しようぜ!」

筋肉「我はクレーンゲーム!」

僧侶「キノピオで最速タイム狙います!」

勇者「ゲームコーナーに行こうとするな!」

筋肉「ふん、武器など勝手に買ってくればいい、どうせ我の武器はこの筋肉、それは変わらぬのだからな。だから我は貴公らが買い物をしている間にラオウ昇天を狙う」

勇者「カッコいい事言ってるみたいな空気出してるけど本当は遊びたいだけなの解ってるからな?」

僧侶「防具屋には行かなくてもいいですよね、筋肉の化け物以外装備ありますし」

勇者「はたしてあぶないみずぎは装備と言えるのか」

王様「見てみて! 薬草を体に張り付けてみたぞ! これぞ新世代のセクシー「森ガール」じゃ!」

勇者「売りもので遊んでんじねえ!」

イオン店内 武器屋

勇者「いいか!? 真面目に自分の武器を選ぶんだぞ! 変なもの持ってきたらキレるからな!」

王様「解ったっ!」ヒュンッ!

筋肉「承知したっ!」ダッ!

僧侶「了解ですっ!」フワッ!

勇者(水を得た魚のようだ……嫌な予感しかしない……)

1時間後

勇者「………………よし、全員揃ったな」

王様「………………」ドドドドドド

筋肉「………………」ドドドドドド

僧侶「………………」ドドドドドド

勇者(凄い気迫を感じる……こりゃもしかしたら大当たりかもしれん)

勇者「よし、じゃあ王様からゲットしたブツを見せてもらおうか」

王様「おうっ!!!」どん!

王様「ククク……勇者よ、今まで「クソジジイ」だの「変態おっさん」だの「アイカツおじさん」などと好き勝手言いおって、だがそれも今日までよ」

勇者「最後のは言った覚えが無いけどな!」

王様「今回、儂が手に入れたのは100しか作られなかった伝説のアイテム! その道のマニアが舌を出してほしがるような伝説の力を持つアイテムよ!」

勇者「おお! 期待が持てる!」

王様「さあ勇者よ! 儂が手に入れた財宝に恐れおののくがよい! これが儂の手に入れた!」



王様「今大ブレイク中の超人気アイドル賢者ちゃんのサインじゃあああああ!!!」

勇者「何テメーサボってサイン会行ってんだよおおおお!!!」

勇者「次! 筋肉!」ビリビリッ!

王様「堪忍やから! 堪忍やから破らんといてーや!」

筋肉「…………」

勇者「あん? どうした筋肉」

筋肉「…………我もだ」スッ

勇者「お前もサイン会行ってきたのかい!!」

筋肉「い、否! 我は王とは違うぞ! まだ切り札がある!」

勇者「切り札?」

筋肉「ああ! 我の左手は!」

筋肉「賢者ちゃんと握手をして貰っている!」ドン!

勇者「ただ握手会に出ただけやんけ!」

勇者「僧侶ちゃん! 君はサイン会に行ってないよね!」

僧侶「勿論です! 私が勇者さんの命令を無視してあんな女のサインを貰いに行くわけがないじゃないですか!」

勇者「それじゃあ武器も!」

僧侶「はい! えへへ、頑張っちゃいました」

勇者「やった! 正直バカ共2人と同じだと思ってた!」

僧侶「見てください! これが私の武器!」



僧侶「携行式対戦車ロケット弾RPG-7です!」

勇者「…………」

僧侶「…………」ドヤァ

勇者「僧侶ちゃん」

僧侶「何ですか?」

勇者「君はよくやってくれた」

僧侶「はい」

勇者「でもね……」

僧侶「?」

勇者「あれはダメ」

僧侶「はい」

勇者「ダメなんだ……」

僧侶「はい」

勇者「何も買わずに町を出よう、もう、それ以外に君たちを制拠出来そうにない」

僧侶「……はい」

▽ゆうしゃは諦めた!

ゆうしゃ  レベル20
ぶき  つっこみ
ぼうぐ あぶないみずぎ
EX  じょうしき

きんにく  レベル35
ぶき  きんにく
ぼうぐ きんにく
EX  きんにく

おうさま レベル10
ぶき  なし
ぼうぐ あぶないみずぎ
EX  セクシーダンス

そうりょ  レベル15
ぶき  じょおうさまのムチ
ぼうぐ あぶないみずぎ
EX  どえむ

▽ゆうしゃのぼうけんがはじまった!

スライム「俺はスライム、最弱の名前を与えられた小さい存在さ……」

スライム「ひょんな事で生まれてきちまってから数年、どうやら運だけはあったらしく、こうしてシガレットを味わう事が出来るまでになった」

スライム「神様ってヤツはクソ食らえだと思ってるけどよ、酒とシガレット、こいつを生み出してくれた事だけは感謝してもしきれねぇ」

スライム「喉をシガレットで埋め尽くす、煙が残っている喉を酒で洗い流す、たまんねぇ」

スライム「さて、そうしている間に仕事の時間だ、よれたスーツを着て、出かけなきゃな」

勇者「なんでそんなに……」

勇者「ハードボイルドなんだよ!!!!」グシャ!

スライム「ピギィ!」

僧侶「そりゃ生き物なんですから色々な性格がありますって」

勇者「濃さの問題だよ、これからの旅でいちいちこんな濃い性格のキャラが出てきたら俺が保たないわ」

僧侶「なんと自分本位な…」

勇者「ところで筋肉は?」

僧侶「ああ、彼なら……」

筋肉「最近の奴等は筋肉の見た目ばかりを意識しすぎていて中身を全く見てない、本当の筋肉とは中身が一番に大切であるのに全く嘆かわしい」

スライム「わかる」

僧侶「あそこでスライムと意気投合してます」

勇者「何してんの!?」

勇者「オラァァァァーーー!」

スライム「ピギィ!」

筋肉「スラ太あああああ!」

勇者「よし……っておっさんは!?」

僧侶「おっさんなら……」

王様「しょ……しょこりゃめにゃのおぉぉぉ! 感じちゃうぅぅぅ!」

スライム「ええんか ここがええんか」

僧侶「あそこでスライムプレイをしてます」

勇者「馬鹿ばっかりじゃねーか!!」

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