女騎士「おばあちゃんが言っていた。世界はこの私を中心に回ってる」 (1000)

≪過去スレ≫
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≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。

「おまえたちの言う『丘の向こう』なんざ、とっくに私が焼いてやったわ!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385483711

おかっぱ「こんなところにいられるか……一秒たりとも……」

真神「……」

おかっぱ「(出来る事ならあれを……彼女をあそこから出してやりたい。
魔王軍に身柄を移せば、クズどもを糾弾する手札にもなり得よう。だが、どうする?
あれほどの巨体だ、コンテナに詰めた上に滑車とワイヤを使ってやっと運ぶ事ができるというほどだ……)」

おかっぱ「(しかし、口頭で事実を伝えたとて、魔王軍が動くとは思えん。
ましてや、エルフを揺さぶるには諸国から多々の容疑がかかっている魔王軍ではいささか荷が勝ちすぎる。
非常に癪だが、旧帝国情報部や連合のガサ入れが必要だろうな。可能ならば、北西に査察を頼みたいところだが……)」

おかっぱ「(いや、待てよ。何も、魔王軍を構築するクランの連中を説得せずとも、勇者とやらの関心さえ引ければいいわけか。
それならば、発破をかけるのは幾分か楽になろう……頭髪の束でも切り取って物証にすれば、アクションを起こすはずだ)」

おかっぱ「(そこで気になるのは彼女の安否だが……メリフェラのインセクトリアンにとっては女神も同然、
さすがにあのクズどもも引き渡し直後に始末するとは考え辛い。まだ猶予があるとみていいだろう……)」

おかっぱ「(さて、ここからは推察……懸念にすぎんが、否定できるだけの材料はない。
アルヴライヒがメリフェラをトカゲのしっぽ切りに利用し、各国の憎悪のベクトルをメリフェラに向ける……
勇者の敵という明確な存在は少なからず国教徒に浸透し、ゆくゆくは西欧世界でのアドバンテージになり得る。
既にメリフェラ王室側からカネは流れていると考えれば、エルフにとってメリフェラはクズ騎士のスケープゴートでしかない……)」


おかっぱ「お前達、いいか。一度しか言わん、よく聞け」

真神「な、何だ……保険を付けてくれ……二回言ってくれ……」

おかっぱ「ふざけろ」

金長狸「どうしたの、さっきから……顔色わるいよお」

おかっぱ「……クズどもを叩き潰す第一歩を今から踏み出す。死にたくなかったら言う通りにしろ」

金長狸「ま、まじで? いや、さすがに……どうしょもないとは思ってたけどさあ。こ、心の準備が」

おかっぱ「メリフェラが魔王軍、それも勇者の妾をかどわかした上にあんな肉塊にされたなど国際的に吹聴されてみろ。
クズどもが増長し、今度はメリフェラを内包する共和国に連合がなだれ込むぞ。わかるか?」

真神「それは……困るな……連合にこれ以上勢いづかれては……」

おかっぱ「アタシらはエルフの味方をしに来たんでも、連合の侵略を手助けしに来たんでもない。
大陸のうつけどもを、一神教なんつうくだらん哲学モドキから脱却させてやりに来たんだろうが」

金長狸「あうう……」

おかっぱ「……連合の蛮族どもに、これ以上でけえ顔されても困んだろォが。ここらが潮時なんだよ」

真神「そう、か……」

おかっぱ「この数か月で、有力な証拠はある程度集まった。致命的な暴露にはつながらんだろうが、
そこは魔王軍のテコ入れで奴らを殺せるまでに研磨していけばいい」

金長狸「そうねえ……」

おかっぱ「京の鬼どもとも、これでおさらばだ。目に余る暴虐の数々……二度と皇国の土が踏めると思うなよ……!!」

エルフ看護師「あら、忘れ物ですか? みなさん、もうホテルへ戻られましたけれど」

おかっぱ「ああ、忘れ物だ。すごく大事な忘れ物なんだ」

エルフ看護師「まあ……どこかで落とされにゃ」パンッ

おかっぱ「……今、けっこう銃声響いちまったな」

エルフ看護婦「ひゃあ……ああ……」

真神「問題……ない。今のところは……」

おかっぱ「搬入してからまだ1時間弱……メリフェラの連中が然るべき場所に持ってくまで猶予はある。
ああ、にゃんこ。そこのお姉ちゃん黙らせろ。証人だ、しっかり連れてく」

金長狸「がってん」

おかっぱ「……うわ、ごっつい錠前揃ってやがんな。これ、外してくれよ」

エルフ看護婦「い、嫌ああ、無理っ、無理!! あ、あなたなんなのよォ!! 外務省だとか近衛だとかの人じゃあ……」

おかっぱ「あんなゴミどもと一緒にすんじゃねぇや。さっさと開けておくれよ、そんで頼みたい事があるんだ」

エルフ看護婦「は、はあ?」

おかっぱ「そこにあるハサミでもメスでも使って、彼女の髪の毛をちょっとばかし切ってほしいんだ。それだけでいい」

エルフ看護婦「いや……いやあ、助っ……」

おかっぱ「頼むってばよ、こうしてわざわざブチ殺さないでお願いしてやってんだからさぁ。すげぇシンプルなお願いだろ?」

エルフ看護婦「ひ……は、はい……」

おかっぱ「……それと、この辺の書類も貸しておくれよ。使った早急に返却するから」

真神「(人相が日を追うごとに悪くなっていくな……)」

エルフ看護師「こ、これで……いいの……?」

おかっぱ「はぁい、ありがと。そんじゃあ次はだな……」

真神「……まだ余裕はある……なるべくメリフェラ側には……波風は立てたくないものだがな……」

おかっぱ「真神。アンタは彼女を連れて、共和国沿岸に駐留している『幕府の』本隊に合流しろ。
いいな? 間違っても、京のカスどもや松山に戻るな。アタシの本隊に戻るんだ」

真神「」

おかっぱ「必ず旧帝国領を経由してからだ。わかるな? 鉄道の使い方は教えた通りだ」

真神「ま、待て……こ、こわい」

おかっぱ「旧帝国領には現在、魔王軍が心証良くするために必死こいて警察活動を行っている。
勇者サマや魔王サマの息のかかったモルダヴィア……もしくは妖精族の連中に助けを乞え。そのまま駐屯地まで護衛でも頼み込め」

真神「……マジでか」

おかっぱ「できれば魔王軍預かりになった方が安全ではあるが……連中のバックには連合がいる。
都合のいい便利屋としては扱いづらい、まだ北西の方がマシだ。敢えてここは欲をかく、幕府本隊まで何としても戻れ」

真神「も、もう一度言ってくれ……」

おかっぱ「そして金長。アンタはアタシと東帝へ向かう。今手に入れた頭髪を始めとする物証だけは、魔王軍……
勇者へと渡さねばならん。郵送もダメだ、一度でもアルヴライヒを経由する物流にのればアタシ達の負けだ。直接運ぶ必要がある」

金長「は、はえええ……カ、カレと一緒に本隊へ戻るんじゃダメなのん?」

おかっぱ「本日中か、それとも明日一番か……いつアルヴライヒの大将がメリフェラを切るかわからん。
時は一刻を争うぞ、何としても北西や魔王軍に、早急に動いてもらわねばならん」

真神「それでは連合に貸しを作ってしまうのでは……」

おかっぱ「そうならない為にアタシ本人が行くんだよ。あのクソ騎士を刺し殺す為だけに集まった連中のもとにな」

おかっぱ「……上手く共和国の人間の顔つきに化けたな……よし、アホ犬の方は大丈夫そうか」

金長狸「わ、私らも列車に乗らないと……けっこう時間推してますよ、早く」

おかっぱ「わかっている。ここから東部方面行きに乗り込み、共和国のいずこかで南部行きに乗り換え……」

金長狸「……」

おかっぱ「ちっ、実際の時刻表から20分もずれているではないか。大雑把な大陸人め……ダイヤグラムの美しさを知らんのか」

金長狸「あのう、マナイタさん?」

おかっぱ「尻尾でも切ってやろうかこのやろう」

金長狸「……」

おかっぱ「少し時間を遅らせてでも、魔王軍の領有地まで急ぎたい……くそ、待つしかないか」

金長狸「……ちょおっと、いいですかねえ」

おかっぱ「うるさいな!」



おかっぱ「……何だというのだ、手短に話せ」

金長狸「できるだけ目線を動かさんでくださいな。こうしたまんま……そう、そうです。たまにニコッと笑って談笑してるように」

おかっぱ「……」

金長狸「改札から15メートル、ベルを持った初老の駅員の位置から10メートル。我々からざっと40メートル」

おかっぱ「……」

金長狸「……茨木の奴が、手ぐすね引いて待ち構えております」

おかっぱ「なに……!?」

金長狸「田舎とは言え、まだ正午までまだ時間がある。この駅舎の人混みはまだ解消しますまい、手を出さないのはそれが理由かと」

おかっぱ「……アルヴライヒであの大将を押さえる役を買って出た事は、ハナから偽りだったわけだ。
下衆な鬼どもの気まぐれか、それともどこかであの大将が鬼どもを飼い馴らしたか……くそ、最悪だ!!」

金長狸「それと……あんまり嗅ぎたくない匂いも、ちょっとばかし感じるんですがねぇ」

おかっぱ「匂い……? まさか」

金長狸「ワンコには劣りますが……人さまよりかは鼻は利くもんで。そのまさか、芥子に近い硫黄臭……」

おかっぱ「出所不明の有毒ガス……!? 鬼どもが持ち込んだわけでもあるまいに……」

金長狸「さあ、そこまではわかりませんで……ここでガスなんか本格的に撒かれ始めたら……」

おかっぱ「……」

金長狸「ど、どうしましょう……メリフェラ側の警察機関に知らせなきゃあ」

おかっぱ「事情聴取で何時間も費やせるほど、アタシ達はヒマを持て余してるのか!?」

金長狸「で、でも……」

おかっぱ「……ああクソ……! 仮にガス流出が真実なら、鉄道各駅で駅舎の不審物捜索でも始まるだろうよ。
最悪、上下線ともに停まっちまう。ふざけんじゃねぇ……人質に加えて鉄道まで停めてくる気か……!?」

金長狸「ああ、あうう……どうしよう、どうしよお!! 停まっちゃったら、わんわんの方も足止め食らっちゃいますよぉ!!」

おかっぱ「共和国領の一部はクズどもの息のかかったマフィアが占めている……そこで締め出されればおしまいだな。
ああクソ、仮に我々が運よく魔王軍に保護されたとしても、いくつか問題が浮上するか。
ドワーフゲットーを壊滅させたガスの持ち主はエルフ……となれば万々歳だが、京の鬼の仕業となると我々まで疑われる……」

金長狸「ガ、ガスを止めようにも……ムリだよお、絶対ムリ!」

おかっぱ「……」

金長狸「だって……わ、私たちだけで茨木の相手するとか……無理……っていうか不可能でしょお……?」

おかっぱ「……マジに最悪な事態に陥ったら、あの鬼とやりあう可能性も無きにしも非ずだな」

金長狸「」

おかっぱ「あーははは、あーチクショウ、泣きたくなってきた。やってらんねぇよ……」

金長狸「そ、そうだ! 翼竜、ワイバーンでも探せば……」

おかっぱ「それぞれある程度の距離を単独飛行できる節足人種たちの領内にそんなものがあるものか。
そもそもメリフェラでは酪農や畜産は土地を活かしての輸出分の最低限しか行われておらん、主産業は穀物だ。
更に平地や森林が多く、家畜は山羊や羊止まり。肉食竜を運用するには致命的に向いていない」

金長狸「……」

おかっぱ「……共和国までの森林を馬で突っ切るしかないな。一か所で留まる事にもリスクが伴う、その都度馬を乗り換える必要がある」

金長狸「あーうー」

おかっぱ「……善は急げだ、適当に馬を奪って逃げるぞ」

金長狸「ガ、ガスは……」

おかっぱ「うっせーなあ!! これ以上アタシにどうしろって言うんだ!? どうにもなんねェーだろぉーがよォ!!」

金長狸「ひ……」

おかっぱ「こちとらテメェらみてーなオモシロ動物じゃねェーンだよ!! 撃たれりゃ死ぬし刺されても死ぬ!
アタシは無謀な自己犠牲なんざごめんだからな!! 虫どもとガスで燻られて心中だなんてまっぴらだ!!」

金長狸「……」

おかっぱ「絶対に死んでたまるか……絶対にだ!!」

金長狸「ああ、御免よう、御免よう。大事なお馬さん借りていきますねえ」

おかっぱ「生きて戻れたら金一封渡してやろうぜ」

金長狸「馬に乗るタヌキとはこれいかに」

おかっぱ「自分で言うかね」

金長狸「はて、実に面妖な光景也。面白き事は善き事也」

おかっぱ「(帝国製9ミリ拳銃二丁にカットラス。鬼斬りの逸話でも持つ名刀の一本や二本欲しいところだ、こんなんじゃどうにもならん……)」

金長狸「……」

おかっぱ「純銀弾と一緒に一丁渡しておく、鬼の餌になりたくなかったら使え」

金長狸「うああああいやだあああああもお四国にかえりたいよおおおおおおお」

おかっぱ「お前から神様に祈ってくれるとかはしてくれんのか」

金長狸「おじい様ぁぁぁ、ひいおじい様ぁぁぁ、胃袋に収まって京の都の行脚なんて嫌ですううううう」

おかっぱ「うるせーよ!! こっちも泣きてーくらいなんだよ!! びーびー騒ぐな!!」

おかっぱ「後方、どうだ! 何か追ってきているか!」

金長狸「い、今のところは何も……! ガスの匂いも流れてこないし、ドラグーンっぽいのも来てない!」

おかっぱ「わかった。このまま森林部に入るぞ」

金長狸「あー、なんか記念碑みたいなの立ってますね」

おかっぱ「ここから南部王国領まで森続きだ、ところどころでペースを落とさねば馬が潰れるな」

金長狸「そ、そんなに広いんですか……」

おかっぱ「帝国にまたがる巨大森林地帯に北東側で繋がっているからな、帝国内で入り込んだら生きて出られんぞ」

金長狸「」

おかっぱ「(なんで狸に猿人のアタシが山林の怖さを説いてるんだ)」

金長狸「……」

おかっぱ「タヌキの癖に……」



茨木「ナマイキこの上ありんせん……四国の社ごと焼き払ってあげんしょか」

おかっぱ「四時方向! 茨木だ、構うな!」

金長狸「ひやああああああ」

おかっぱ「くそったれ、馬に追いついてくるんじゃあないぞ……!!」

金長狸「と、飛ばしすぎると危ないし! 木にぶちあたって死んじゃったら目も当てらんないし!」

おかっぱ「この馬上で銃も使えんか……軍馬でもない馬で発砲でもして転倒されたら敵わん!」

金長狸「色即是空空即是色、全てこの世は夢幻よ、目を覚ませばすべて解決っ、喝ーッ!!」

おかっぱ「現実逃避をやめろっ!! 縁起でもない、この世は夢でも幻でもないわ!!」

金長狸「一介の豆タヌキに鬼退治だなんてそんな大それたことができるわけないでしょうが!!」

おかっぱ「気を削ぐような事を言うでないわ!! いいか、あの木を越えたら二手に分かれるぞ!!」

金長狸「ふふ、二手に……?」

おかっぱ「いいな、手筈通りに! 楔と杭の使い方も頭に入っているな!?」

金長狸「は、は、は、はひっ!!」

おかっぱ「あくまで保険だ! 私とて命を捨てる気はない! 祭祀の巫女は私が担当する、わかったな!?」

茨木「……」



茨木「(状況だけ見れば……木に激突して重症。いくら小柄だとて、まず助かるまい……
馬は……そのままか。発砲でもして、馬の神経でも逆撫でしたか? 
……少なく見積もっても、時速四十は出ていた。あの速さなら、頸部は粉々……)」

茨木「(あの阿波のタヌキも……撒いたか。幕府の雇い主を見捨てて……)」

茨木「(にしても、大将の推察通りこんなに早く尻尾を出すとは。喧嘩っ早いというか、我慢が足りないというか……
火事と喧嘩は江戸の華? 思慮の足りないボンクラ……所詮は下民の産まれ……幕府も、こんな娘を我らを並べるなんて……)」

茨木「(あの肉玉の世話人を襲い、何らかの証拠を掴んだうえで、魔王軍かに亡命……
世話人はどこぞで始末されているか? 何にせよ、張っていたこの茨木には気づかなかったようだが)」

茨木「(……念には念を入れるべきだな、刻んで埋めておくくらいは)」



茨木「……運に見捨てられんしたね、お気の毒にぃ」

おかっぱ「」

おかっぱ「……死ねっ、クソ鬼ぃ!!」

茨木「!?」




茨木「……少し驚きんしたけど……もう少し足りんせん……。
不純物の混じった安物の銀弾でおすものを……やぁやわぁ」

おかっぱ「くっそ……てめぇ……離っ、せ……」

茨木「好かんわぁ……いい人ぉの為に、わっちらを冷やかして回る旅人衆は……」

おかっぱ「(片足首っ……斬り飛ばしてやったのに……三発はぶち込んでやったのにっ……!!)」

茨木「さあさ……首の骨ぇが今度こそばらけるまで、きちんと話しておくんなんし」

おかっぱ「い……いや……いやだ……」

茨木「……」

おかっぱ「や、やだ……じ、じにだくない、じぬのはいやだ……」

茨木「そうやって心配せんでも、幕府の世ももう御仕舞……老中も将軍も、先逝くあんさんと一緒でありんす」

おかっぱ「な、何でもっ……何でも話す……何でも……すっからぁ……」

おかっぱ「アタ、アタシは悪くねェんだよォ……ぜ、全部ぅ……あ、あの大将がやれって言ったんだァ」

茨木「はあ?」

おかっぱ「きょ……極東が……京と幕府で分裂してるのを知ってェ……ア、アタシに持ちかけたんだよォ……」

茨木「……」

おかっぱ「離……離してくれェ……大将のところに……幕府の部隊がいるのは知ってんだろォ……人質なんだよォ……」

茨木「(命乞い……? 出まかせにしか思えんが……)」

おかっぱ「アタシらだって……京とケンカしてえわけじゃないんだよォ……下野国までネキリを取りに行ったのだって……
あんたら鬼と戦争するつもりなんかじゃなかったんだ、開国に向けて……み、帝に大政を返す気でいるんだよォ……
ア、アタシが帰らないと……また極東が荒れちまうんだよォ……」

茨木「ネキリ……?」

おかっぱ「そう……さぁ、ネキリの太刀の杭……今は、あの狸がこの周囲に配置して回ってるはずだ」

茨木「!?」

おかっぱ「(手が……緩んだ!!)」

おかっぱ「お前らしみったれた怪異の住まう根の国までを両断する為に誂えられた陣術なんだけどさあ……」

茨木「こんガキ……!!」

おかっぱ「アタシに構ってていいのかなあ……ネキリの欠片で囲った範囲内がそのまま術の範囲になるんだぜ。
どうしてタヌキの方を追わなかったのかなぁ……エルフの大将に植えられた先入観かぁ?」

茨木「(陣術……大陸の魔法円……円陣を陰陽寮の連中が皇国龍脈を通じ組み替えたものだが……!?)」

おかっぱ「ほれ、さっさとタヌキを潰さねえと、アタシと心中する事になるぜ。
テストの回数は悲しいくらいこなせてないが、魔王軍のヴォーパル鋼での改修は受けている。どうなるかはさてさて御立合い……」

茨木「せっかく手に入れた物証まで消えてしまう事に……」

おかっぱ「物証まるごとタヌキが持っていたとしたら? テメェはまんまと引っかかっちゃったバカって事になるなあ」


(引っかかれ……追いかけろ!! 範囲はここから半径200m前後、コイツがダマくらかされてる間に範囲から出れば……!


茨木「って顔してんす、ねっ!……」

おかっぱ「がうっ!!」

茨木「ちびタヌキ!! 死なないように刻みながら鍋にしてやる、そこで怯えながら待ってろ!!」

おかっぱ「(利き腕……ちくしょう、砕かれたっ……!!)」

女騎士「仲間が増えるよ!」
三男「やったね魔術師ちゃん!」

おかっぱ「いぎゃあああっ、痛、痛っ……」

茨木「年増の癖にぃ、童みたく騒ぐんじゃあありんせん。わっちが片腕持って行かれた時よりかは……」

おかっぱ「示談……和解案にしちゃあ……乱暴だな……」

茨木「和解ィ? 冗談言いなんし、わっちがぬしら幕府と対等だと?」

おかっぱ「そうだよなあ……対等……なんかじゃあねえよなあ……」

茨木「ち……ぐだぐだ言わんでも、命までは取りんせん」

おかっぱ「ありがたい事で……できれば、もう……殴ったりしないでほしいが……」

茨木「ただ……皇国に凱旋する時には、ぬしのノドは焼き潰れて使い物にならなくなっているやもしれませんなあ」

おかっぱ「……」


茨木「……ドブタヌキ!! 今こそ雇い主に報いるべきじゃあないのかあ!? 
屋島の老いぼれも悲しむだろう、次代を担う若狸がはらわた散らして腐ってゆく様を見てなあ!!」

おかっぱ「(くされ鬼め……!!)」

茨木「お雇い主も、さっさと折れてくださいませんと……」

おかっぱ「んぐ……っ!?」

茨木「ん……ちゅ……」

おかっぱ「(こいつっ……き、気持ち悪ィ……離せ、離せえ……し、舌を入れて……やめろお……)」

茨木「……」

おかっぱ「がっ……げほ、ごっほ……てめ……てめえ……な、何……呑ませやがった……この野郎っ……!!」

茨木「……その様子を見ると、ああ、なんて初心な年増だこと!」

おかっぱ「……」

茨木「なに……毒だとかそうしたものじゃあありんせん。我々松山も、魔王軍と同じく開国を受けての実験をいくつか行っているだけで」

おかっぱ「実……験……?」

茨木「大陸の勇者の五柱……既にアニマ、アニムス……そして、未確認ながらも、シャドウやグレイトマザーまでが顕現していると聞いとります。
北西にこれ以上借りを作るわけにはいきんせん、こちらも態度で示さんと……」

おかっぱ「オカルト連中は……やっぱりオカルトに惹かれるもんなんだなあ!それじゃあ、勇者が五人いるみてえじゃあねえか……!」

茨木「逆にお聞きしたいんでありんすが……聖人に匹敵する勇者がたった1人だなんて、それこそ思い込みなのでは?」

おかっぱ「……?」

茨木「もっとも……」

おかっぱ「(……答える気はねえか……頃合いか……!)」

茨木「あんたはもう仕舞いや、大人しく江戸の長屋で客でもとっとれ、この婢僕が」

おかっぱ「猶予二十、範囲指定術士依存、起動確認! そこから離れろっ、金長!!」

茨木「(タヌキは後ろ……八時か!?)」


おかっぱ「『ネキリの杭』、反転許可……さあて、どうなるもんかね……!」

                          ..ゞヾ:''ソ"'"''""''ソ:'ソッ,
                        .ヾ''゙ .          "''ソμ,
                     ッヾ´     ノ           `..彡
                     、ゞ             ⌒)         ミ  ブワッ
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ´           -<´          彡:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            ミ         ノ                  ミ ――――――――――――――
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............       ミ                               ミ       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
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                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
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                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι

金長狸「うわ……うわ……やっべ……くそやっべ……」


金長狸「(で……でーっかい毛玉が広がって……かーっと森じゅう光って……
木が力任せに薙ぎ倒されて……マナイタさんだいじょぶかな、まじで……死んじゃったりしてないかな……)」

金長狸「(それに、馬だって……私の馬はともかくさあ……今のってやっぱり……魔王軍と企んでた『魔術』でしょお……?
根々斬りの太刀の伝承を使った陣術……もぉ、何なのぉ。おうち帰りたい……もうやだ……)」



おかっぱ「……お疲れー、やっべーくそやっべ……くそ疲れた。前が見えねえ」

金長狸「ひやああああああ」

おかっぱ「ネキリ……アンタが生きてるって事は……範囲限定は上手く行ったんだなあ……」

金長狸「うひゃあああああ」

おかっぱ「クソ鬼……体中の皮膚撒き散らして、その辺にぶっ倒れてんだろ……ざまぁ……」

金長狸「だ、大丈夫すかぁ……だ、大丈夫じゃないよねえ……」

おかっぱ「……逃げ遅れた。片腕台無しになっちまったっぽい、自分でもよくわからん」

金長狸「び、病院! お医者!! モルヒネ!!」

おかっぱ「さっき打った……泣くほど痛いもんで、喉焼けちまった。つれえ」

金長狸「(ちょっと……ネ、ネキリって何なの……ほんと、何なの……もうやだ辞表出す帰りたい)」

金長狸「あ、あの……そ、その辺の転がってるの……ととと、等身大のお人形じゃあないですよねえ……?」

おかっぱ「知らん……気づいたら、辺りでケイレンしてやがって……アタシが知るか……」

金長狸「(まじもんの死体……いや、ほとんど動かないけど生きてる……?
ネクタイ締めたフォーマルな格好の男もいれば、下着だったり薄着の若いのも……
それに……おっきな鉄の塊だったり、連合の戦車みたいなのだったりも……)」

おかっぱ「……」

金長狸「(……で、そのど真ん中で……多分、あの鬼? 仰向けになって痙攣してる……
あのう……これは一体、どういう状況なんでしょうかね……)」

おかっぱ「……さみい」



金長狸「うぇぇぇーん」

金長狸「だぁれかぁー、だれかぁー、たすけてくださぁーい……」

金長狸「うぇぇぇーん!!」

ティタニア「南部王国外務省から。あちらが保護した東洋人と……イヌ型妖精は、例の幕府の子達だという事が判明したわぁ」

敵兵「ほ、保護……」

ピクシー「あー、なんかバレちゃったんですかねー」

ブラウニー「ちょっとマズいんじゃないですかー……エルフの側にいらん刺激を与えちゃった感が……」

ティタニア「……先の情報部の彼女の二の舞だけは避けたい所ねぇ。あの女将軍もピリピリしてるし。
モルダヴィアあたり……デュラハン女史の部隊と共同で、彼女達を魔王軍領へ護送するのが最善かしらねぇ」

敵兵「何事もなければいいんですが」

ティタニア「それがー……タヌキちゃんの方はきゃんきゃん騒げるくらい元気らしいの。ただ、オカッパ頭ちゃんの方がねぇ……」

敵兵「……」

ティタニア「アテクシも専門じゃあないんだけどぉ……右前腕、右手骨を複雑骨折、きわめて重度の筋損傷を併発。
また、左腕部は上腕部まるごと切断。鎮痛が切れた搬送直後なんかは阿鼻叫喚だったとかぁ」

敵兵「マジですか……」

ブラウニー「あのお澄ましムッツリチビがねえ」

敵兵「(吐きそうだ……)」

あーん!おかっぱちゃんが死んだ!!
おかっぱちゃんよいしょ本&おかっぱちゃんF.Cつくろー!って思ってたのに…
くすん…ロリババア薄命だ…

・゚・(ノД`)・゚・うっうっう…ひどいよお…ふえーん!!!
この間「今、時代は極東だ!」のレスを書き込んでまだ2週間じゃないですか!!
どーして、どーして!?あれで終わり!?嘘でしょ!?
信じられないよおっあんな茨木ごときに殺られるなんてっ!!女騎士と差がありすぎるわっ!!生き還りますよね?ね?ね?
……泣いてやるぅ・゚・(ノД`)・゚・ 私はあのおそろしくツルペタな彼女が(たとえド田舎人でもさ!ヘン!)大好きだったんですよっ!!
おかっぱちゃんァッ!死んじゃ嫌だああああああっ!!
ゴミクズ先生のカバッ!!え~ん・゚・(ノД`)・゚・

ブラウニー「っていうかサァ、水さして悪いんですけど。板についてきましたよねー、この職場」

敵兵「は、はあ」

ピクシー「なんか抵抗とかないんですか? 私ら妖精と働くこの職場ぁ」

ブラウニー「世の中には、私らとまぐわりたがる趣向をお持ちの男性もいるとかいないとか」

ピクシー「死にゃしないでしょうがねぇ、性の世界は奥深いですわねぇ。本番専門でお仕事してる私の友達いるんですけどぉ」

敵兵「……」

ピクシー「……」

ブラウニー「うわぁ、空気読めてなさすぎー……このタイミングで夜の話題とかマジないわー」

ピクシー「あなたに言われたくないんですがー」

敵兵「いやもう……デスクワーク主体の職場がここまでラクとは思わなかったもので……ありがたいです」

ピクシー「(気持ち悪い)」

ブラウニー「(ボケろよ東方人)」

デュラハン「ご苦労さまでございます。迅速な対応、痛み入ります」

将軍丙「初動が遅れると厄介でしょうからね。ただでさえ共和国と南部王国の国境にほど近い森林が現場ですもの、早めに着いて良かったわ」

デュラハン「……まだ、エルフとアジ=ダハーカの勢力からの表明はないのですか」

将軍丙「まだ確認していないわ。このまま知らぬ存ぜぬで通すのか、それともどこかに擦り付けるつもりなのか……」

デュラハン「その重症の東洋人の方は、エルフの側に潜り込んでいたスパイだと聞いておりますわ。
公式に動きを見せるとは……考え辛いかと。そもそも、彼女に傷を負わせたのは本当にアジ=ダハーカの勢力だったので?」

将軍丙「タヌちゃんからの話によれば……同じ極東からやってきたイバラキの追撃に遭った……だとか」

デュラハン「……仲間割れ?」

妹「ハッ、極東の土人はやっぱり愚かですわねぇー。ろくに統制も取れない家畜ですわね、家畜」

将軍丙「(うわぁ……)」

デュラハン「……」

ゴーストアーマー「(誰だよこいつ検証に連れてきた奴)」

レプラコーン「知るかよ」

ゴーストアーマー「(お前ら妖精どもじゃねぇのかよ)」

スプリガン「(勝手に着いてきたんでしょ)」

妹「で、なんかオモチロイものはありまして? ねえちょっと、教えなさいな」

ゴーストアーマー「(こっちくんな)」

妹「うっひゃあ。何なんですのぉ、森の中でここ一帯だけゴミ捨て場みたいな有様じゃあありませんかぁ」

ブラウニー「なに勝手に入ってきてるんですかあの人!!」

妹「よくわからない鉄くずがゴロゴロ……ここでやっぱり何かあったんですわねぇ!!」

敵兵「ちょ、ちょっと!! 部外者でないにしても……そのカッコは何ですか!?」

妹「新色のオーダーメイドでしてよ、あなたの月収何か月ぶんかしらぁ?」

敵兵「そんなヒラヒラフリフリで現場検証来るなァ!!」



デュラハン「発見した蹄鉄の跡からも、やはりここで陣術が起動したのでしょう。それでこのような惨状に……」

将軍丙「……」

ティタニア「確か……あのチビ子ちゃんが接触して、ヴォーパル鋼を少し見繕ってあげたのよね?」

将軍丙「ええ。幕府……皇国の持っている冶金技術はこちらとしても魅力的だった。
勇者くんや魔王……様が有している魔術兵装の改修に有用だと」

ティタニア「……そう、天使どもが吹き込んだわけ?」

デュラハン「クシャスラーにアスモデウス……本当に信用できるので?」

将軍丙「仮にも拝火神族を古来から支えてきた存在よ。教皇領にもある程度顔が利く……愛想良くしておいて損はないはずよ」

デュラハン「そうして完成したのが、この陣術……ネキリの杭、と」

将軍丙「正直言って、状況だけ目の当たりにしても……」

ティタニア「何がどうなってるかワカンナイわねぇ。椀状にクレーターができてて、その上には妙な服を纏った男女の遺体、
そこここに転がる見た事も無い鉄屑……そのイバラキを屠る為にやむを得ずこれを起動したとして、これは一体どういう事なの?」

デュラハン「神格に対抗する為の御業……字面では叡智の教義にほど近いもののようには感じますが」

将軍丙「……見当もつかないわ」


ゴーストアーマー「(あの青肌将軍ってあんまり頭良くないんじゃないかな)」

妹「なになになになんですのぉ? ネキリ? の? クイ? 詳しく聞かせなさいな、私は情報部長ですのよ?」

デュラハン「それぞれ配布した資料にはすでに記載が……」

妹「あんな長い文なんか読めやしませんわ!! 端的に要点だけ教えなさいな、だるい連中ですわね!!」

ティタニア「ちょ……あなた、手ぶらで来たわけぇ?」

妹「御冗談を! 避妊薬にコンドーム、チョコにクッキーにビスケット、エクレアにタルトに……」

デュラハン「書類は……」

妹「捨てましたわよあんなの! 私、三行以上の長文は読む気しませんの!!」

ティタニア「確かにクセが強くてクドイ文章だったけど、それはあんまりに非常識よぉ」

敵兵「」

妹「わかってませんわね、私が常識に従う? ナンセンス! 常識は私の歩いた後に芽吹くものでしてよ? 私が最初にナプキンを取るのです!」

敵兵「(俺の文ってそんなにクドイのかな……)」

デュラハン「いいですか、ネキリというのはお教えした通り……」

妹「あ、おなかすきましたわ! お湯をくださいまし!」

敵兵「(あの首がない人……よくブチ切れないなあ……)」

トチギ「イバラキがやられたようだな」

サイタマ「だが奴は我らの中でも最弱」

グンマ「グンマー」

チバ「人間ごときに遅れをとるとは」

カナガワ「無様なものだ」

金長狸「……ひいっ!! やだ、やめて!! わたしに乱暴する気でしょ! 春画みたいに!!」

デュラハン「乱暴なんかしません、しませんから……」

ティタニア「あなたと幕府の方が用いたネキリの杭について、聞きたい事があるのよぉ」

金長狸「は、はぇ」

ティタニア「銘は不詳……シモツケノクニのネネキリ、そんな剣を媒介に使用したのよねぇ?」

金長狸「そ、そう……し、下野はわかります、根斬りそのものも……た、ただ……
何が起こったかなんて、私もよくわかんないです、ほんとです。茨木から逃げるのに必死で必死で」

妹「はぁ~? つっかえない証人ですわねぇ、ひっぱたきますわよぉ?」

金長狸「ひやあああああ」

デュラハン「お、おやめなさいな! 怖がっていますでしょう」

妹「ひゃっwwwwwwひゃっwwwwwひゃwwwwwざっこwwwwwwwwwwwwww」

ティタニア「……続けてくれるぅ?」

金長狸「はい……えっと、あのう……さっき言ったように、も、森に入って、二手に分かれて……
それで、その……根斬りの太刀の欠片を……配置したんです。森の中に、陣を敷くように……こんな円になるように、ええと」

妹「うらーwwwwwwwwww」

金長狸「ひやあああああ」

ティタニア「つまみ出しますわよぉ!?」

妹「あばばばばばwwwwwwwwwwwwwww」

ティタニア「剣の欠片ってこれよねぇ? クレーターの周囲を捜索して発見したものだけどぉ」

金長狸「は、はい……間違いないです、私が地面に刺したの……」

デュラハン「現場付近に放られていたカットラスとも異なる金属で精製されています。
極東諸島に伝わる玉鋼……それに、折り返しの鍛練手法を用いた、カタナと呼ばれる刀剣ですね」

金長狸「……わ、私……もう帰りたいです、四国のふるさと帰りたい……」

妹「んまあwwwイヌモドキの住めるような山も森もないでしょうねえwwwwwきっと開発で潰されてますわwwwwご冥福ぅwwww」

ティタニア「しばきますわよぉ!?」

妹「おおwwwwwwwwwこわいこわいwwwwwwwwwwwwww」

敵兵「(まったく、これじゃあの姉貴の方が……)」


敵兵「……」

ブラウニー「あー……クズだなぁ、あの情報部長。倒木に潰されて死ねばいいのに」

敵兵「ゲボッ、オェェェェェェッ!!!!」

ピクシー「童貞中尉がリバースですわ!!」

ブラウニー「現場汚さないでくださいよ!!」

敵兵「(一瞬……一瞬でも、あのクズの方がマシと思ってしまった……だと……?)」

勇者「……」

将軍丙「タヌちゃんと、幕府の彼女が命を賭して持ち帰ったものよ」

勇者「……そうか。手間をかけさせて、ごめんね」

将軍丙「私も、ここまで来たらもうドロップアウトなんてまっぴらだわ。西欧でやるべき事ができたもの、手間だなんて」

勇者「……」

敵兵「あ、あの……あの髪の毛って」

将軍丙「……」

敵兵「勇者さんとこの……お、幼馴染……」

勇者「……ふふ、腐れ縁です。何と言ったららいいかわかりませんが……
とりあえずは……『生きていてくれて良かった』とでもしておいてください」

ティタニア「タヌ子ちゃんの言う通りなら……何だかもう、底抜けに趣味が悪い連中よねぇ……エルフってぇ」

デュラハン「メリフェラを利用して、国際社会での心証を有利な方向に向かわせる気だったと……?」

将軍丙「状況証拠だけしか揃ってないとはいえ、あのアジ=ダハーカが背後にいると考えれば、何があってもおかしくはないわ」

勇者「……ありがとう。ネキリの杭についても、引き続き調べておいてくれるかな」

将軍丙「え……ええ。それはもう、本国へメカニズムの解明は申請してあるわ」

勇者「助かる。今はアジ=ダハーカの最大戦力を僕たちのみで抑えられるだけの確定材料が欲しい」

デュラハン「イバラキを屠ったネキリの杭の実戦運用……ですか?」

勇者「勝てる可能性があるなら、使わない手はない。無論、当面は抑止として運用するべきだとは思うけどね」

ティタニア「(ま、当然よねぇ……あんな榴弾何百発ぶんの威力を持つようなもの……クランの間でも反感を買うでしょうねぇ)」

勇者「……」





妹「榴弾何百発ぶん……鬼をも殺せる超兵器……ネキリの杭……」

妹「くききwwwwwwwwww小姉様もそんなん持ってねェーだろォーなァーwwwwwwwwwwwwwwざっこwwwwwwwwwざっっっこwwwwwww」

妹「あーwwwwやっべwwwwww欲しくなっちったなぁーwwwwwwwどーしょっかなぁーwwwwwwwどーやってぶんどろっかなぁーwwwww」

第8部 ガリア=ベルギガ編 弐

                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ 

第8部 ガリア=ベルギガ編 惨へ

                                       ー- 、 ー-、``/  
                                      _, '  ._, '  \  
                                    -------------------
                                     制作・著作 NHK



朱天「茨木が帰ってこんのう」

大嶽「どこぞで男でも漁っておるのでしょうな、あの女の下のだらしなさは我ら随一……」

朱天「大陸人ごときとまぐわうとは、見境の無さ之、百鬼の淫乱第六天魔王よ」

「そういう事を並べるのは」「いじめととられて」「しかたございませんなあ!」「おやかたさま!」「おやかたさま!」

朱天「おや、遅かったの。そっちが口を利くようになるのを見ると……うはっ、これは惨めな!!」

大獄「あーら情けない!! ヘソで紅茶の適温沸かしてしまいそうですわこりゃあ!!」

「労組に」「うったえ」「ますわよ!」「おやめください!」「おやかたさま!」「このビッチ!!」

朱天「かつて武士に叩き斬られた『片腕』……貴様、保険を使ってしまうとはのう。ああ恥ずかしや、凱旋した時にどう言い訳をするのじゃ」

大嶽「保険として腕を持っていてやった我らに、礼のひとつもないので? 親しき仲にも何とやらでしてよ」

「ごめんちゃい!」「ありがと!」「しね!!」「ちゅー!!」

大嶽「まるで北西の妖精のようですわ、ちょこまかしてこざかしい!」

朱天「チビ茨木じゃのう。のうチバラキ」

チバラキ「あんまりでございます!!」「あんまりでございます!!」「でもでも!」「やりたい事は試せたから!!」「ゆるして!!」

大嶽「やりたい事?」

チバラキ「ヨモツメノ!」「トウガン!!」「あの子で!」「ためすの!!」

朱天「鬱陶しい声じゃの!! そのノド焼きつぶすぞ!!」

チバラキ「ごめんね!」「ごめんねー!!」

朱天「……で、どうするね。ぬしが殺生石をメリフェラで起動したのは、あの大将にも知らせてないんじゃろ?」

九尾狐「あ、忘れておった。これはうっかり」

朱天「わざわざあの小童に、我々松山が本気である事を錯誤させる為だけに……何も、ぬしが表に出る事はなかったのでは?」

九尾狐「んまあ、こうして魔王軍……『ゆうしゃさま』に戦の動機を与える事には成功したのだ。聊か疲れたがな」

朱天「エルフの大将の胃に、またえらい大穴が空くのう。楽しみだのう、白面九尾清明……いいや、ダキニよ」

ダキニ「案を出したのは妾ではなく、汝ではないか。さすがに鬼はえげつないな」

朱天「稲荷の元締めにそう言われるとは、京のあやかし冥利に尽きるでな。わざわざ幕府を謀る為だけに、稲荷の子孫を演ずるとは……
そちらの方がよほど悪辣に見えるでな。あいや天晴、秩序と中庸への憎悪は我らを遥かに凌いでおるのう」

ダキニ「仮初の秩序と中庸が何をもたらす? 幕府の成立なんぞ、皇国の人間の精神の遅滞を招いただけではないか。
今ではどうかな? 女が国産みの役から背を向け、国政に土足で踏み入り……男は惰眠の中で無為なる肉欲に溺れておる。
少なくとも、妾は秩序と中庸とやらの中で、意義ある繁栄とやらは目にしておらん。新たな怠惰を得る為のクビキを引いただけだな」

朱天「さすが、古参の老害はよくわかっておられる。それでこそじゃて……」

ダキニ「口の減らん鬼だ。汝はただ戦場を求めてうろついているだけだろうに」

朱天「御前はお国の輝かしき未来の為に、この辺鄙なくそ田舎までいらっしゃったと?」

ダキニ「言うようになったな、小娘。ああそうよ、その通り。妾ほど皇国を憂いておるものは帝をのぞいて他におるまい。
秩序と中庸は、ヒトの心の哲学足りえぬ。我ら百鬼が、原初の混沌でヒトを導かねばならぬのだよ」

朱天「排泄物が食物に転ずるほどの混沌……か。文字通りクソを食って生き長らえておる大陸人を見習えと?」

ダキニ「死んだ魚の目で渡来するものを受け入れ続ける幕府の蛆どもよりかは滾っておるわ。
そもそも、妾の出自を忘れたか? 妾はもともと、大陸で信仰を集めていたのだぞ」

チバラキ「過去の栄光ー!」「昔取ったキネヅカー!」「おれっち昔はワルかったんだよねー!!」

大嶽「殺されますわよチバラキ」

雷帝「よこせ」

勇者「……」

将軍丙「……」

雷帝「あーっ、言葉が汚かったかしらぁ。ちょーだい」

勇者「……」

雷帝「かーしーて。すぐ返すから。死ぬまで借りるだけだからさぁー。いいじゃんかよォー。
あんたらまも……魔族なんか、無駄に何年も何年も生き意地汚くのさばってんだからサァー」

将軍丙「し、しかし……現物は白の城塞で保管しているとはいえ、本国でのオフィシャルクラン首長の承認を取らねば如何ともし難く……」

ゴーストアーマー「(バカ将軍……)」

ティタニア「(東欧の目と鼻の先の白の城塞にある事をバラすアホタレがどこにいるのぉ……!?)」

雷帝「んー……何か出し渋ってるねー。雷帝さん気分悪いねー。帝国さんとしてはどう思うぅ? ねえどう思うぅ?」

妹「魔物の癖にケツの穴がミニマムですわねー!! さっさと出すもん出しゃあいいのに!!
えっとぉー? なんて言いましたっけ、ネキリの杭だか楔だか言いましたっけぇ?」

ティタニア「(クズ女……!!)」

ゴーストアーマー「(こいつがばらしやがったのか……!!)」

クシャスラー「はぁ……そうでございますか、連合がね……」

勇者「ちょっとした不備で情報のリークがあったらしい。今朝も早くからよこせって言い寄ってきたよ」

ジャヒー「生き意地が汚いのはどちらかしらねえ。北に引っ込んで凍土でも耕しておればいいのに」

戦士「しかしよ、どうする気だ? これ以上連合の言いなりになるのも癪だぜ」

僧侶「でも、その……ネキリの杭? あっちに目を通させないと、またこっちに因縁ふっかけてきますよぉ」

賢者「めんどくさいわね……ゲットー査察の代金って事?」

勇者「もちろん魔王……彼女からも指示は仰ぐつもりだ。ただ……」

クシャスラー「勇者たるあなた本人の意思は定まっているのですね」

僧侶「……ど、どうするんですか」

勇者「ああ。当面は、あちらの意向通り……人員を付けて引き渡そうと思う」

戦士「正気かよ!?」

勇者「いたって正気だ。多様な状況下でのテストをすべてこなせていないとはいえ、あのリスキーな術を既に……
既に2回も実行できている。実物がなくとも、僕や魔王の兵装の改修には……まあ、差し支えはないと思う」

賢者「あなたがそう言うなら……」

戦士「あークソ……ちゃんとクランを通してるんならいいんだけどよォ……頼むぜ勇者よぉ」

勇者「すまない、僕だってあれを一時的にとはいえ手放すのは惜しい。しかし……」

戦士「あー、わかってるよ。文句はいくらでも出るがモメる気はねぇ、大多数に刃向ってもしょうがねぇよ」

勇者「……ありがとう。魔王……拝火神族の意向を実現する為には、こうした妥協も必要なんだと思う。
天上から全てを見通す秩序を成立させる為の第一歩だ。ここで連合と諍いを起こすべきじゃない」

賢者「……」

勇者「混沌から起こる戦なんて、あってはならないんだ。パワーゲームからなる中庸さを孕む平和も、それは仮初に過ぎない」

クシャスラー「心得ております……」

賢者「(……ヴォーパル鋼を用いた陣術のテストを『2回』? 聞き間違いかしら、それとも……?)」

息子「お母様、夕餉のお時間です。食堂へ参りましょう」

娘「お母様……何をなさってるの? お絵描き?」

女騎士「……そこにペンと紙があるから、あなた達ちょっと静かにしてなさいな」

息子「はあい」

娘「あ……あなた、いい万年筆持ってるのね。うらやましい」

ほ子「卿が……買ってくださいました……」

女騎士「……うーむ」



ポニテ「騎士様、お夕食の時間です……騎士様?」

騎士ほ「お姉様、どうかなさいまして?」

女騎士「おお、お前らか。ガキどもに見せてもしょうがねえや、見てくれよ」

ポニテ「はあ」

騎士ほ「まあ、お姉様にクロッキーのご趣味がおありだったんですの?」

女騎士「バカが!! 次代の戦場を席巻する新兵器を考案していたのだ」

ポニテ「ほう……興味がありますね」

女騎士「そうだろう、実際に戦火を交える人間はこぞって私の名が冠された兵器を求める事だろうよ」

騎士ほ「拝見させていただいてもよろしくて?」

女騎士「そんなに見たいかー、しょうがないなー……これなんかカッコいいだろ、84㎝大砲塔だ!」

ポニテ「」

ポニテ「……何が84㎝なのでしょう」

女騎士「口径だ、直径84㎝の砲弾を用いた超スゴイ兵器だ。砲塔ごと共和国の連中が敷設したレールで移動できるのだ。
共和国規格の車輪が備え付けてあり、砲身長ざっと40m! ガタンゴトン移動!! キキーッ到着!! これドーン撃つやろ? バゴーン!! 相手は死ぬ」

ポニテ「(8.4㎝……じゃないんだよね。84㎝……?)」

騎士ほ「お姉様、それですと砲弾一発あたり撃ちだすのにどれだけのコストがかかるのでしょう」

女騎士「知らね。そういうの私が考える事じゃないじゃん」

騎士ほ「」

ポニテ「れ、列車砲という着眼点は悪くないと思います、はい……」

女騎士「だろ? ほの字よ、あんたはそういうわけわからんところで現実主義者になるからダメなんだ。このゴミ!! クズ!!」

ポニテ「……おや、こちらは何でしょう……」

女騎士「おー、それか。何だろうなあ、当ててみなよ」

騎士ほ「……」

ポニテ「……」

騎士ほ「(何だ……?)」

ポニテ「(裁縫の……糸を巻くアレ?)」

女騎士「はい時間切れー。ほんとお前らダメだなー、頭カチンコチンなんだからなー。
正解はだな、各所にアルコール由来の固形燃料を満載させ、超スピードで回転、走行させるのよ」

ポニテ「(これが……走る……)」

女騎士「ブシュシュシュウウウウ!! ドガッシャアアア。逃げ惑うアホ連合兵にクソ魔物!! ウギョオオオー!! 相手は死ぬ」

騎士ほ「」

騎士ほ「素晴らしい発想ではあるのですが……コストの面はどうなっているのか……」

女騎士「知らねって言ってるやろ。んー、あれだ。基礎は木造だから……んーと、そうだな。こいつらの小遣いでも何とかなる。
しかしだ、こいつの真価は塹壕にこびりつくカスどもをこそげ落とす事。12.7㎜機関銃の搭載が必須なのだ。それを含めると……」

騎士ほ「(機銃!?)」

ポニテ「(これは……これはどう動くものなのだ!?)」

女騎士「いや、だがリーズナブルさを追求した兵器である事は間違いないぞ! この中に捕虜の死体でもねじ込んでおけば効果倍増だ」

ポニテ「(確かにこれが目の前まで転がってきたら怖い)」

女騎士「大型化が進めば、水上運用も可能になるのだ。シュシュシュウィィィィ!! 北西のバカどもが超焦る!! バキュンバキュン!!
残念でした!! 改修の進んだこの子に銃なんか効きません!! オババーン!! 280㎜砲がドラゴンのどてっぱらをぶちぬく!! 相手は死ぬ」

ポニテ「で、ではコレは……」

女騎士「ククク……貴様ら騎乗兵が泣いて喜びそうなシロモノだ。古来から銃剣……バヨネットというものは存在する、しかしだ。
拳銃でありながらこれはサーベルとしても使えるのだ。白兵戦では非常に便利な兵器だぞこれは。相手はどっちを使うかわかんないのだ」

騎士ほ「これは……ホルスターに収めるのですか? それとも鞘に収めるのですか?」

女騎士「知らね。最強だからそんなんいらねーの。これを装備した兵士と相対した魔物は例外なく死ぬから」

ポニテ「(あったらいいなぁそんな兵器)」

騎士ほ「……では、こちらは。カンオケに……車輪がついているので?」

女騎士「愚か者め! それは史上最大の超兵器だぞ! 厚さ3mのコンクリート製装甲壁に現行の8.8㎝を八座搭載した、
私の考えた最強のモビルトーチカのファランクス・ツヴァイだ!! 先行試作型のファランクス・アインの課題をクリアし実戦投入される予定なのだ!」

ポニテ「……この右下のちっちゃいのが人との比較でしょうか」

女騎士「超デカくて強いんだよ。ドラグーンなんかハエだハエ、魔王だろうが勇者だろうが尿漏れを禁じ得ぬだろうよ!
こいつの通った跡には教皇領のカビ生えた秩序だろうが、異臭を放つ薄汚い魔物どもの産む混沌だろうがチリひとつ残らん!!」

騎士ほ「(お姉様の設定はどうも外連味はありますが……いささか緻密さに欠けるのが難点ですわ)」

ポニテ「(良かった……設定か……本当に良かった)」

女騎士「あの童貞大将のヤロー、こうして私が早くもツヴァイの企画を出してやってるのに、未だアインすら完成せんとは。怠慢だな怠慢」

ポニテ「」

ポニテ「あ、あなた達はどんな絵を描いているのかなあ?」

娘「わ、わたしは……」

ポニテ「……えっと……銃かなあ?」

娘「は、はい……し、試作のものはお兄ちゃんが触った事があるみたいで……単独携行できる最大の火力っていうので。
最低でも……壁越しに歩兵を壁ごと抜けるような銃なんです。銃身の先端にはこうしたマズルブレーキを施して……
当面はシングルローダー方式でも、ゆくゆくはセミオートマに機構を改良していけないかなって……」

ポニテ「」

息子「北西の戦車開発を念頭に置くより、やっぱり対ドラグーンに特化した取り回しの良い武装の方がいいって僕は思うんですけど……
ワイバーンのウロコの持つ靱性は確かに小銃じゃあ抜けないけど、それで携行性を損なっちゃ元も子もないよ」

ポニテ「(右肩と左肩それぞれぶっ壊れて二発しか撃てなさそう)」

女騎士「いやだめだわ、そのライフルでも私のこれには敵わないわ。最強だから」

娘「そ、装弾する際のインターバルを見極めて応戦します」

女騎士「インターバルなんてないし。これフルオートで撃ちまくれるから皆殺しにできるし」

娘「ぐぬぬ」

息子「ぐぬぬ」


ポニテ「えっと、君は……何かなこれは」

ほ子「み、みないで……はずかしい」

ポニテ「(……トリュフ? 黒いキノコみたいなものが)」

ほ子「ばくだんが……いちばんつよいかとおもいましたから……」

女騎士「いや、爆弾でも傷つかないし。最強だからこのコンクリートは破れないし」

ポニテ「(物騒なお子様が揃ってるなあ……)」

ブラウニー「……」

ピクシー「仕事こないですねー」

敵兵「……そっすねえ」

ブラウニー「結局ネキリ……でしたっけ。あれも連合に取られちゃったんでしょ?」

ピクシー「あーつまんない、せっかく遠出したのに連合へのお土産探しに行っただけみたいじゃない!」

ブラウニー「射殺してやればよかったのに! それなりに銃は上手いでしょ!?」

敵兵「お、俺!?」

ピクシー「そうですよ! 腰に提げてるのは飾りですか!?」

敵兵「ほとんど飾りです……そういや、皆さん銃は……持ってないですヨネ、すいません」

ブラウニー「そりゃあねえ……」

ピクシー「持ってるだけで、私達はハダがかぶれちゃいますから。硝煙もけっこうきついんですよ」

ブラウニー「そもそも、私達に合わせたサイズの銃器が開発されてないんですよ。市場流通なんて、本国でも夢のまた夢です」

ピクシー「六分の一サイズの拳銃なんて。西欧の技術じゃ、あっという間に金属疲労で壊れちゃいますよ」

ブラウニー「それでも銃器を持った部隊戦うときには……あの気持ち悪いガスマスク被って全身防護。
もちろん翅……羽も守らなきゃいけません、地べたをえっちらおっちらです。ぶっちゃけ、私らは前線にいない方がマシなんですよ」

敵兵「なるほど……確かに、妖精族と実際に戦った事はないな」

ブラウニー「ポピュラーな武装としては……そうですね、よく使われているのはクロスボウでしょうか。
あくまで主戦場で戦う訳じゃありません、護身その他用途に扱うくらいですけどね」

敵兵「(妖精ってなんか魔法とか使わないの? クロスボウ撃つの?)」

老婆「それこそ大惨事だものね、妖精さん達がかりだされる事になるなんて。よっぽどだわ」

ピクシー「」

ブラウニー「」

敵兵「うひゃあ」

老婆「ごめんなさいねえ、立ち聞きしてしまったわねえ。悪気はなくってよ、ごめんあそばせ」

ピクシー「はあ」

ブラウニー「そいつはどうも……」

敵兵「……あ、あ、あの……どちら様、でしょうか?」

老婆「ご覧の通り、余生をそれなりに謳歌しているおばあちゃん。今日は、入院してる子のお見舞いに来たの」

敵兵「お見舞い……?」

老婆「かわいそうに、左腕をなくしてしまったらしいのよ。ご存じない? 城塞の陸軍病院で療養してるらしいのだけれど」

ブラウニー「左腕って……例の、極東の彼女でなくて?」

敵兵「(身なりといい、顔つきといい訛りといい……大陸人、それも北西諸島の人だよなあ……幕府の人間じゃないだろうし)」

老婆「病室を知っていたら、教えて下さらないかしら」

敵兵「は、はいはい。お連れしますよ」


敵兵「(のらりくらりとこの詰め所まで入ってくる辺り、カタギの人じゃないんだろうなぁ……怖い……)」

敵兵「ごきげんよう、こんにちは……」

おかっぱ「……あんたか」

敵兵「お、お加減はどうかな」

おかっぱ「猛烈にダルい。背中が痒い。術後の熱は下がったが……猛烈になんにもしたくない。帰れ」

敵兵「お客さんがいらしてるんだが……無理そうかな」

おかっぱ「片腕犠牲にしてるんだ、勘弁してくれ。ヒマでヒマでやたらめったら眠いし……」

敵兵「そ、それじゃあ出直して頂こうか……」

老婆「あら……あら? あらまあ、久しぶりねえ……大変だったわね、大丈夫なの? お熱は?」

おかっぱ「な……!?」

老婆「お腹は空いてない? ニシンのパイでも食べる? 今は持ってないけど。うふふ」

おかっぱ「め、滅相もございません……わざわざご足労頂く事でも……」

敵兵「(あ……あの傲岸不遜の鼻ペチャチビが……畏まっている……!?)」

老婆「いいのよ、暇だから。とはいえ、後発に任せるにしても……ちょっと心配だけれどもねえ」

おかっぱ「お前……か、彼女が誰だか知ってここに通したのか? これだから東方の土人は……!!」

敵兵「(やべ……これどっち答えても怒られるパターンだ)」

おかっぱ「……」

敵兵「し、失礼ですが……お名前をお伺いしてもよろしいですか……? 許可証があるのに……ほんとすいませんね」

おかっぱ「北西諸島連合王国……円卓の座、そしてエクスキャリバーを保有する一人……ディナダン卿ご本人だぞ……!」

敵兵「」

おかっぱ「こ、このような姿で……真に申し訳ありません」

ディナダン「いいのよお、大変だったんだから。力を抜いてー」

敵兵「(あっちでは超ヤバいおじいちゃん……こっちでは超エライおばあちゃんかよァ!?)」

ディナダン「……少しだけ込み入ったお話しもしたいのだけれど、本当に大丈夫?」

おかっぱ「わ、わたくしめの事などお気になさらずに……」

ディナダン「そう……では、こちらの彼は?」

敵兵「ひぃ」

おかっぱ「その男も、一応は我々の仲間です。アジ=ダハーカの正体を知る者の一人で……」

ディナダン「男性……それじゃあもしかして、アジ=ダハーカの捕虜になっていたっていう?」

敵兵「捕虜……」

ディナダン「あなたがそうだったの? すごいわねー、えらいわー。あなたって忍耐強いのね」

敵兵「……アジ=ダハーカ……あなたもあの女の事、知っているんですね」

ディナダン「それはもう……6年前の戦争で暗躍していたと聞いた数年前から。今の今まで、手を出そうとは思わなかったわあ。
若い後続の子達がどうにかしてくれると思って、このおばあちゃんはほとんど隠居同然だったものでねえ」

おかっぱ「とんでもございません。卿の口添えがあってこそ、我々幕府が動けているのです」

敵兵「(まじですごいおばーちゃんなんだなぁ……)」

おかっぱ「卿が6年前のテロの調査に乗り出さなければ、あんたは今頃共和国のあの町で女に裏切られ……ロクな目に遭っていないだろうな」

敵兵「何それ怖い」

おかっぱ「アタシがあんたに目星を付けられたのは……卿の調査書類あってこそだったんだよ」

敵兵「……?」

おかっぱ「裏付けなりはアタシ達幕府陸軍が……6年前の連合先遣隊の洗い出しは、卿が行っていた。
前に言っただろ? アタシ達は、北西諸島外務省の書類提供を基に調査をしていたってな」

ディナダン「ケイ卿をさしおいてこんな事するなんてって、若い子には少し煙たがられたかもしれないけどねえ。
けれども、あまり長い事……東西戦争の尾が引くのは良くないしねえ」

敵兵「それじゃあ……お、おばあちゃ……こちらのお方が……俺を見つけてくださった……」

おかっぱ「さっきから言ってるだろ……」

敵兵「ありがとうございます!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!!!」

ディナダン「あらあら、うふふ」

敵兵「紆余曲折ありましたが、おいしいごはんとあったかいおふとんが毎日味わえてます!! 本当にありがとうございます!!」

敵兵「(とは言ったがダマされんぞ。こういう甘いマスクを被った人間にはロクな奴がいないのだ)」

ディナダン「幕府の子達の言う事もわかるしねえ、隠居をするのは早いと思って」

おかっぱ「まさか。卿はまだまだ現役でいらっしゃる……」

ディナダン「お世辞を言っても、お菓子しかでませんよう」

敵兵「……」

おかっぱ「しかし、1人でエルダーを相手に立ち回りを演じた挙句……斬り伏せてしまうのが卿でありましょう?」

ディナダン「ああ、エルダー……エルダーねえ……」

敵兵「……」

ディナダン「……私が言えた義理ではないのだけれど。いつまでこの世にしがみついているのかしらねぇ」

敵兵「(きましたよ)」

ディナダン「我らや議会が何かをする度に、その都度口を挟んで場を停滞させる。古竜? 高等竜種?
おこがましい。おこがましいにも程がある。他の生物と関わって何かを育むわけでもない……何様なのかしらねえ」

おかっぱ「……」

ディナダン「……あら、愚痴っぽくなってしまって。ごめんねえ」

敵兵「……」

ディナダン「ああいう凝り固まった存在が後ろにいるから……円卓は今や託児所も同然。嘆かわしい……非常に遺憾な事……
栄光ある孤立も、あの身の程知らずのお蔭で思想から崩れてきていると言うのに。家畜は家畜、そう教育してやらないとねえ」

敵兵「」

ディナダン「新しい時代を作るのは、古竜でも私のような老人でもない……あなた達のような若い子なのよ。ね?」

おかっぱ「わ、我らにはもったいなきお言葉にございます」

ディナダン「そんな事言って。お国に残してきた殿方に恋慕しているのは存じていてよ」

おかっぱ「……」

敵兵「(うっひょうwwwwwwww)」

ディナダン「きっと素敵な男性なのね、あなたみたいに強かな女性が惚れ込む、包容力のある方なのでしょう」

敵兵「(あのマナイタがwwwwwナマイキマナイタwwwwwwナマイタがwwwwwふわふわになっておるwwwwww)」

おかっぱ「……」

敵兵「(愛に浮かされておるwwwwwwうひょーwwwwwwうひょー……)」

おかっぱ「か、彼の……」

ディナダン「はい」

おかっぱ「彼の蹄の音が……彼のぴょこぴょこ動く耳が……先生の艶やかな尾が、今でも頭から離れぬのです」

ディナダン「はい……はい?」

敵兵「(これはフォローできねえ)」

おかっぱ「……」

敵兵「いやはや……すごい人だったんだなあ」

おかっぱ「そうだな……」

敵兵「俺にとっては本当に救いの神だよ、マジで。ははは……」

おかっぱ「……」

敵兵「(気まずい)」

おかっぱ「……」

敵兵「(か、考えてみれば……俺より十以上年下で……片腕飛ばされて、もう片腕を鬼に踏み砕かれて……)」

おかっぱ「……何だよ、メランコリーに毒されてるとでも言いたげだな」

敵兵「あ、いいや、その」

おかっぱ「ふん。東方人なんぞに心配されるほど落ちぶれておらんわ。幸い、利き腕は元ほどでないにしろ動くようにはなるとの事だ」

敵兵「そいつは良かった……てっきり陰々鬱々としてるかと」

おかっぱ「アンタみたいに、女を寝取られ借金背負わされしてたらそうなっただろうな」

敵兵「忘れろ!! 忘れろビーム!!」

おかっぱ「……当面はだ、夢ができた。だから鬱々となどしていられるか」

敵兵「ゆ、夢?」

おかっぱ「……」

敵兵「(らしくねぇな……怖い……)」

おかっぱ「お、お嫁さんになって……赤ちゃんを産むのが夢だ」

敵兵「」

おかっぱ「……む、無論これは最終目標だ!! 今はその、カスどもの宗教改革が第一……忘れろ!! 忘れろビーム!!」

敵兵「ごちそうさまっすwwwwwwwwwwwwww」

将軍丙「あなた……一体どういうつもり!?」

妹「うっさいですわね、くっさい唾を飛ばさないでくださいまし! どういうって……」

敵兵「あんたが連合にネキリをバラしたんだろ!? 何でそんな事を……」

妹「あーあーあーハイハイハイ、わかったわかりましたわよ、私にも色々事情があるんですのよ?」

敵兵「事情……?」

妹「そうですわよぉ。あなたみたいな下っ端の三下貧乏兵士や、頭の回転も学歴も足りない青肌バカ女なんかよりずっと忙しいんですのよ?」

敵兵「(このクソガキ……!!)」

妹「そんなピーピー喚かないでくださいな……因縁つけられて困るのは情報部だけじゃなくてよ?
本当に困るのは帝国民なんですから……違いますか? そもそもぉ、そんなに連合を疑ってどうする気です? 疑心暗鬼は見苦しいですわね」

将軍丙「(裏ではさんざん連合をこき下ろしておいてよく言う……!)」

妹「それで? ネキリを遠くから持ってきた張本人はどこです? まさか、アジ=ダハーカに寝返ったとか。いやですわぁ……」

ティタニア「そうやって周囲を煽るのは辞めてくださらないかしら。戯れが過ぎるのではなくて?」

妹「は? 煽る。煽るですって。北西のお人形さんは、見た目は良くても頭の出来はトンチンカンプンですのねえ。
誰にケンカ売ってるのかわかってましてェ? 無駄口叩いて私の機嫌を損ねるのは、何人たりとも許されない事ですのよ?」

デュラハン「おやめください、ティタニア陛下も。我らクランの常任理事がこの場に出席した意味を、もう一度お考えください」

ティタニア「……」

ケルベルス「まあ、ガキの口の利き方には我らもイラついていたところだ。よく言った」

妹「ちっ……」

レギンレイヴ「魔王軍総出でガリアを取る。だが土台無理な話、さらに目下連合が絶賛横槍を入れてくる……
アジ=ダハーカとやらを恐れる勇者様が必死こいて集めたなけなしの勢力……だったかァ?」

敵兵「(どこ行っても性格悪そうな奴っているもんだなあ……)」

ケルベルス「……本国やクランでの正式な総会を通さずに派兵するのだ、そうこちらから数は出せんぞ」

将軍丙「それでも助かるわ。東帝領や一部連合領……警察活動や治安維持で、常備軍の人材はカツカツなのよ」

レギンレイヴ「おーおー、幻獣どもはケツの穴が小さいもんだなあ。こういう時こそ力を合わせてがんばんべってもんだろーが」

ケルベルス「思慮が足りずにヤンチャした挙句、国教会に排斥され続けて縮こまった北部神族が言えた義理かね」

レギンレイヴ「だまらっしゃい!! 我らが世界樹の恩恵に預かるだけ預かってからに……感謝の意が足りないんじゃないんですかねェ?
誰がクソオーガどもを駆逐して北部の治安を守ってると思ってんだァ、ケンタウリの成り損ないが調子こきゃあがって」

ケルベルス「将軍どの。この下品で不躾なワルキューレはどうにかならんのか。そちらからアース神族側に訴えて頂きたい」

レギンレイヴ「どなたかの威を借らにゃ何もできんのかよ、クソ犬が……」

敵兵「……世界樹なんてもんがあるのか」

レギンレイヴ「お、興味を持つとは連合人にしては天晴な奴だ。少しは見どころがあるな、苦しゅうないぞ。
大地を支えし神樹イグドラシル、この大陸に住まう全ての生命は畏敬を向けねばならんものを……」

ケルベルス「こういう口先三寸で他人を丸め込むのがこいつら北部神族の癌ことワルキューレだ。
このクソアマどもに魂をいじくられたくなければ、よその地で死ぬ事だな」

敵兵「き、肝に銘じま……」

レギンレイヴ「そんな風評被害に躍らされるバカじゃないよなあ? ヴァルハラはいいぞお?
女とはやり放題、酒は飲み放題首は狩り放題だ。アース神族はエインヘリアルを絶賛募集しておるぞ!」

敵兵「(まだ死にたくない)」

ケルベルス「勇者の故郷……その深部。大陸人の価値観を変え得る切り札が眠っているとするなら……」

レギンレイヴ「ふん。普通に考えて教皇領だか北西、共和国が先に家探しして掻っ攫ってそうなもんだがね」

ティタニア「探りを入れるのはそっちにした方がいいんじゃあないかしらぁ、と。当初はそう思ったもんだけどねぇ」

レギンレイヴ「だが、何かがある。お前らが大好きな勇者様がそう言ったんだろ?」

ケルベルス「博打。拝火神族の推す策にしては、分が悪い賭けだな。あるかもわからん宝探しに我らを付きあわせるとは」

敵兵「」

将軍丙「連合や共同体……それに共和国側には、西帝での岩盤補修支援という名目で発表してあるわ」

レギンレイヴ「……それ、どこのバカがそうしろっつった? 勇者様? そのオマケの金魚のフン?」

将軍丙「えと……わ、私が」

ケルベルス「バカか。魔王軍、それも小規模とはいえ混成兵団が足並みそろえて、北西と共和国の庇護の下にある西帝に支援?
まだ鉄道使って南部から未発表のまま移動した方がよかろうに、誰がそんなホラを信じるのだ。発表しちまったなら仕方ないがな」

将軍丙「……」

敵兵「(この人ウソつけなさそうだもんなぁ……)」

ケルベルス「……構わん、在共和国の連中に声をかける。適当に仕事を見繕っておく」

レギンレイヴ「まあ、いんじゃない? どこもいちいちそんな公式発表にケチつけないっしょ。こんなん強引のうちに入んないっての」

敵兵「(仕事ができる人に囲まれてると幸せだなあ……)」

ケルベルス「ところで、アンタはどう思うんだ?」

敵兵「えっ……お、俺……俺ですか?」

ケルベルス「そうだ、アンタを見て言っている。どう思うんだい、ガリア=ベルギガ」

敵兵「……」

レギンレイヴ「人食い獅子が、アジ=ダハーカのいかれた価値観に触れたいかれた東方人の意見を聞きたいってさあ」

敵兵「し、正直……マユツバだと思いましたね、何でも思い通りになり得る、影響力を持ったイツモノ……」

ケルベルス「では、今は?」

敵兵「そうですね……勇者に魔王に、それにネキリなんて見てからじゃあ……確かめる価値がないとは言えないと考えます」

レギンレイヴ「おお、浪漫がある事で」

ティタニア「魔族の使う魔術『もどき』でなく、真に神の奇跡を模倣したと言える秘法……」

ケルベルス「血筋とは違うか? 帝国か、教皇の縁者か……そんな魔術がどうのといったシロモノがあるとは、どうにも信じ難い」

敵兵「(しゃべるライオンが魔術を否定してる……)」

チバラキ「たいしょー!」「どうていー!」「くそちぇりー!」

エルフ三男「……メリフェラへの贈り物を、少しばかり汚されたらしいが」

朱天「すまんのう。怪しそうなのをマークさせておったんじゃが、このザマよ」

チバラキ「どうも」「こうも」「このざまよ!」

エルフ三男「ああ、何て事だ……素性はわからないが、大事な被検体だというのに……困ったなあ」

朱天「困ったのう、困ったのう……」

ダキニ「まるで、汝が蟲ども相手に粉をかけて謀ろうとしているようにも見えてしまうな」

エルフ三男「謀る? お得意先にそんな事する筈ないでしょう、そんな事をするメリットが僕にありますか?」

ダキニ「フフ……確かに、そうだな。そうする事でメリフェラへ憎悪を向ける事になる存在がなければなあ」

エルフ三男「例えば……人権大好き魔王軍だとか?」

朱天「メリフェラの代理母出産を見たらどう思うかのう? あやつら、人の話を聞かない事に関しては一流じゃ」

ダキニ「『叡智の教義』以後の魔王軍の後退によって、西欧に取り残されたかたちになったのが蟲どもらしいな。
さて、あの泥船に命を託す莫迦どもは、それを容認できるほど寛容かな? 連中には、蟲どもに劣等を抱く氏族もおるのだろ」

エルフ三男「元々何も詰まってないところに、勇者の革命でいきなり倫理や道徳を叩き込まれたのです。
蟲……いえ、メリフェラの民衆は、そもそも魔王軍の魔物どもとは一線を画すほどに優れていますよ。
言っていませんでしたか? 僕は血族や外見では差別しません、同じ目標を見据える人間は正当に評価しますよ」

ダキニ「ははは! それで全身脂肪で覆われてしまっては仕方がないな!」

エルフ三男「僕は彼女が不幸とは思いませんがねえ……少なくとも、僕の財布をちょっぴり埋めてくれる事はしてくれましたので」

ダキニ「肝が据わっているな、そこのクソ鬼は汝の指示に戯言で応えたのだぞ?」

エルフ三男「戯言とは?」

朱天「クク……」

ダキニ「幕府のガキに苗床の存在を告発させ、勇者とやらの憎悪をメリフェラへ集約させる。
汝はそこまで命じたわけではあるまい? ただ、あのガキに張り付いておけとだけ……」

エルフ三男「一を聞けば百を知る、ではありませんが……
そうやって人間にとって最悪な方向に物事を差し向けるのが、『鬼』というものなのでしょう?」

朱天「人の不幸はエクスタシーじゃ!」

エルフ三男「以前、幕府の彼女から聞きましてね……どうひねくれた解釈をしてくれるか、楽しみでしたよ」

ダキニ「不確定性をそのまま飲み込むのか。いつか汝の首が取られるのかもしれんぞ?」

エルフ三男「痛くないようにしてくださいね。僕は差別と区別と痛いのと魔物が大嫌いなんです」

大嶽「(……食えん男だな。元からそうした魂胆が無かったわけではなかろうに)」

エルフ三男「ま、鬼と一緒に覇権を取るのも乙なものだと思っていますよ。
このまま行けば……不本意ですが、近いうちに僕は帝国の長として君臨する事が出来る筈です」

朱天「長……摂政としてか」

エルフ三男「僕があんな入れ食い女との間に産まれたガキに、そのまま権能を譲り渡すとお思いですか?
産まれて3年……周りに探られない内に……いえいえ、情が湧かぬうちに処分しますよ」

ダキニ「汝、なかなか類を見ないクソ野郎だのう……気に入ったわ」

エルフ三男「いえいえ、極東のクソ災厄のあなた達に比べれば……」

ダキニ「では、そのクソ野郎に質問。なぜこいつはこんな目に遭ったと思う?」

チバラキ「しぬほど!」「いたかった!」「しななかったけど!!」

エルフ三男「……はて。本当に見当もつきませんね」

ダキニ「汝らがドラグーン用の鎧に用いているヴォーパル鋼、そして極東に伝わるネキリの大太刀。
この二つが合わさったものと我々は推測する。」

エルフ三男「あなた方とは極力知識を共有していたつもりですが……ネキリの大太刀とは?」

大嶽「下野国に安置されていた、退魔の太刀にございます。我らの眷属を滅したという逸話の『強度』は、皇国内指折り……」

エルフ三男「なるほど。ちょうど、あの勇者が所持するデュランダルのようなものと考えればよろしいですか」

ダキニ「そうだ。だが、あれの価値のわからん幕府は……何を思ったか、曰く付の刀身をへし折り、分割してしまった」

チバラキ「あんねー」「そしたらねー」「なんかわかんないけどー」「かけらをばらまいたのー」

エルフ三男「……?」

ダキニ「この茨木が受けた術……清浄なる魔法円を、対象の捕縛と隔離に用いる魔術と聞く。
幕府のガキは、陣術の媒介にネキリを使った。試験段階では、範囲限定とやらが安定しないだとかで凍結されていた筈なのだがな」

チバラキ「インチキだよねー」「いかれてるよねー」「まじきちだよねー」

エルフ三男「……『術効という異変』を、ヴォーパル鋼という手綱で無理やり限定させた……だとか?」

チバラキ「さてねー」「くわしー事はよくわかんなーい」「でもでもー」「ぼーぱるはがねを持ってたのはたしかだよー」

エルフ三男「ヴォーパル鋼そのものは、北西からでもアルヴライヒ側からでも入手は容易……
しかし、そんなギャンブル性の高い魔術とやらを……あの小賢しいマナイタ女が行き当たりばったりで用いるとも思えない。
例え命の危険に遭っても……そう仮定すると、どこぞで有用な試験結果を得る事ができたのかもしれない」

ダキニ「プラス、わざわざ肉玉の髪を切って逃げた事をすり合わせると、ガキが魔王軍と内通していたという予想に肉付けができる」

エルフ三男「そのネキリを使った陣術、魔王軍の連中が手に入れたとすると……少々厄介かもしれませんねえ」

ダキニ「脅しをかけられる前に、こちらから王手をかけるべきだな」

朱天「ハシラの勇者……かの?」

ダキニ「アニマ。アニムス。ワイズマン。グレートマザー。シャドウ……国教会の勇者信仰の根底を形作る、まさに大黒柱だな」

エルフ三男「聖遺物でも何でもいい。教皇領の首さえ縦に振らせればいいのです。
現物がもし手に入らなくても……国際世論を味方させる材料なんか、いくらでも用意できますから。
例えば……オークと人間の間に産まれた、悲劇のウルク=ハイですとかね……」

おかっぱ「……あのクズの動きはどうだ、何かあったのか?」

敵兵「いや、まだ目立った暴れ方はしてない。エルフもメリフェラも、今の所円滑な経済交流のただなかにあるしな」

おかっぱ「そうか……まあ、アタシの予想なんかは杞憂であってくれた方がいいんだがな」

敵兵「……」

おかっぱ「あんたらは……近々共和国に出向くんだろ。勇者様の故郷だって?」

敵兵「とは言っても、ごく少数で遠足に行くみたいな任務なんだけどな」

おかっぱ「給料ドロボーが」

敵兵「ははは……」

おかっぱ「……」

敵兵「(少し見ない間に、すごく髪が伸びたんだな。それに……)」

おかっぱ「どうした、こんな所で油売ってるヒマがあるのか」

敵兵「(……前は顔の区別つかなかったけど……ちょ、ちょっと可愛い……かもしれん)」

おかっぱ「ふん……ヒマがあるんなら、何かうまいものでも買ってこい」

敵兵「お、おう……」

おかっぱ「……」

敵兵「(なんか雰囲気変わったよなあ……)」

ティタニア「またお見舞いぃ? 手ぶらでぇ? ひっじょうしきぃ」

敵兵「連日の見舞いで今月の昼食代を全部貢ぐ羽目になったんですよァ!?」

ティタニア「お熱ねぇ……」

敵兵「いや……行くたびに食べる量増えてるし! 経過が良好なのはいい事ですけど!」

ブラウニー「うっわ、サイフにされてるぅー」

ピクシー「そういえばこの人、前に女に釣られて騙されたとか……」

敵兵「やめろァ!!」

ティタニア「上官として命令するわぁ、節度は最低限守りなさぁい。別に娼婦でヌキに行っちゃダメとは言ってないんだからぁ」

敵兵「そんな下心ないですからァ!!」

ティタニア「それでなくとも……彼女の側に異性を近づけるかどうか問題視されてるってのにぃ」

敵兵「……は?」

ピクシー「東洋人って見た目に寄らないんですねぇ」

ブラウニー「子供みたいなのに、過激って言うか……南部王国の女じゃあるまいしサカりすぎだっつーの」

敵兵「……彼女、何かしたんですか?」

ティタニア「大した事でもないんだけどねぇ。異性の看護師や医師に色目使ったりコナかけようとしたり……
どっちが言いだしたんだかわからないけど、幕府との間がこじれても困るでしょう? 面会制限をかけろって声もあるのよぉ」

敵兵「そんな好色家には……全然見えなかったんですけど」

ティタニア「奇遇ねぇ、アテクシもよぉ」

敵兵「はあ……」

ティタニア「不自然だって言ってるのよぉ、だから面会制限についてはアテクシも賛成。あなたはぁ?」

敵兵「……俺も、配慮するに越したことはないと思います」

ティタニア「幕府にお返しする時、異国の子どもを孕んでましただなんて、シャレにならないしねぇ。
メンタルの面でもカウンセリングを怠らないよう、女性の担当者にも伝えておくわぁ。心的なものなのかもしれないしねぇ」

敵兵「……」

雷帝「これが……ネキリ……」

妹「ふふ……極東の田舎者、手先は器用なんですのね。この刃の輝き、嫌いじゃありませんわ」

雷帝「刃は潰されていない……本当に妖怪退治に使われたかのようですねぇ」

妹「どう扱うか、どれくらいで判明しそうなんです?」

雷帝「ひと月……いや、半分に削ってみせましょう。魔王軍の出し渋りにも、本当に困ったもので」

妹「それ、更に半分になりません?」

雷帝「10日以内に、ですと?」

妹「なりません?」

雷帝「……見返りは?」

妹「大姉様」

雷帝「……」

妹「そうですわね……今日から12……いえ、11日後に連れて参りましょう。名目は……そうですわね、東方の貴族との見合いという事で」

雷帝「……」

妹「好きに抱かせてさしあげましょう、それが望みなのでしょ? あなたの肉欲、それで満たされるのでしょ?」

雷帝「ええ……」

妹「大姉様は愛を振りまく女神……きっとまた、貴女もシルクのような肌に包まれ、恍惚に至りましょう……」

雷帝「ああ、羨ましい……あのお方と血の繋がりがあるだなんて。妬ましささえ感じてしまいます……」

妹「以前の情報部のネズミは、そんな事させてくれませんでしたものねぇ……」

雷帝「それはもう……実のお子様だけある、一度あの方に抱かれているところを見られてから、会わせてすらもらえなくなりまして」

妹「それはもう溜まっていたでしょうねぇ……私の大姉様で気持ち良くなるその為にも……」

雷帝「10日……やってみせましょう、ネキリを必ず実用化させます……」

ハイエルフ少女「お母さーん、ちょっと来てぇー」

ハイエルフ女性「どうかした? 何かあったの?」

ハイエルフ少女「おんなのひと、たおれてるの! あっちのユリのお花畑の方!」

ハイエルフ女性「まあ……! いけないわ、すぐに案内して!」

ハイエルフ少女「うん、わかったー。あっちだよ、あっち!」

ハイエルフ女性「あなたはお医者様を呼んできてちょうだい。今は大樹のふもとの小屋にいらっしゃるはずよ」




女騎士「お腹が……お腹が痛い……」

ハイエルフ女性「大丈夫ですか、私の声……聞こえますか!?」

女騎士「うううっ、うああああ」

ハイエルフ女性「すぐにお医者様が参ります、少しだけ我慢してくださいね!」

女騎士「ありがとうございます……本当にありがとう……ああうっ!!」

ハイエルフ女性「ああ、なんて事……なんて事!」

女騎士「うう……と、ところで……お、お聞きしたい事があるのですが……ううっ……!!」

ハイエルフ女性「はい……何でしょうか!?」

女騎士「端的に問う。おい耳長、テメェはこのまま生きたいか? それとも死にたいか?」

ハイエルフ女性「え……?」

女騎士「死にてえならできるだけ苦しませて殺してやる、生きたかったら楽しくなるお薬を処方してやるよ」

ハイエルフ女性「」

ハイエルフ女性「な、何を……」

女騎士「おい野郎ども!! ひっ捕らえろ、くれぐれも殺すなよ!!」

エルフ騎兵「死にたくなかったら大人しくしろ!!」

エルフ近衛兵「動くな!! 武器を捨てろ!!」

ハイエルフ女性「い、嫌ァっ、やめてえ! は、離し……」

女騎士「ヘェーイヘイヘイヘイ、今日の私は良心的だぞぉ? てめえらとおんなじように、生き死にを選ばせてやってんだからなぁー」

ハイエルフ女性「あ、あなた……どうしてこんな……」

女騎士「るせェーぞボケッ!! 死にてえか死にたくねえか私は聞いてんだ、よっ!!」

ハイエルフ女性「げふぅっ!!」

女騎士「このクズ民族が……まぁーだ滅亡してなかったのかよ、もっと念入りに焼いておくんだったぜ」

ハイエルフ女性「や、めて……ら、乱暴しないで……お願……」

女騎士「ゴミめ……おいクソアマ、てめえらどこでコソコソのさばってやがる? 言え」

ハイエルフ女性「……」

女騎士「ヘイヘイヘイヘェーイ、ダンマリかぁ? そっちがその気ならいいんだぜ? こっちは勝手に探すからよぉ」

ハイエルフ女性「な、何を……!」

女騎士「言葉通りの意味だってばよ。今度こそ勝手にさせてもらうぜえ、伝達能力に難ありのクソエルフども!!」

ハイエルフ騎士「戦える者は武器を持て!! 女子供を守るんだ!」

ハイエルフ男性「い、一体なんだって言うんだッ!!」

ウンディーネ「みんなぁー、一体どうしたのぉ?」

スクーグスロー「ずいぶん騒がしいな……」

サイレーン「奥の偏屈エルフがまたはしゃいでるんじゃないのぉ?」

ハイエルフ少年「お医者様が……?」

ホビット「お、おいッ……林の奥、何か……蠢いているぞッ!!」

ハイエルフ少年「あれって人……? 猿人だよね? あんなにたくさんの人、初めて見た……」

ウンディーネ「何しに来たのかしら……」



娘「うわぁ……空気がおいしい」

息子「ここが……ここが、僕たちの産まれた土地なんだなぁ」

エルフ騎兵「騎士様、ここからさほど離れていない位置に大規模な火災の跡を発見いたしました。
恐らくは、ここが騎士様が拉致された土地に住まう民族の集落だと思われます」

女騎士「けっ、ゴキブリみてぇな連中だな。まだ生きてやがるとは所詮は魔族よ。けがらわしい」

エルフ近衛兵「案外、楽に辿り着きましたね。あの古竜リンドヴルムは伊達ではないという事ですか」

騎士ほ「フクク……フククク……」

女騎士「なぁー、ほの字。カタルシスってあるよなぁー。わかるか?」

騎士ほ「……ええ、存じておりますわ。理性ある者はみな、抑圧や圧迫からの解放、昇華を目指して生きております故」

女騎士「そんならよぉ、最大の屈辱の跡の復讐ってのは、最高のカタルシスって言えるよなぁー……
さあ、みんなで気持ち良くスッキリしようじゃあないか……くされた田舎者をまとめて炙りだして、勇者の聖地をブン取ってやろうじゃあねえか!!」

息子「死ねえ!!」

ハイエルフ男性「あべし」

娘「化石どもめ、アタシが解体してやっからそこ直りな!!」

ハイエルフ老婆「ひでぶ」

ハイエルフ騎士「や、やめろォ!! やめろォーッ!!」

女騎士「はははははwwwww見ろよwwwwwwwあいつバカだぜ、中世の騎士ごっこでもやってんのかよwwwww」

ハイエルフ騎士「貴様ら……貴様ら一体何なんだ!? 何者だァーッ!!」

エルフ騎兵「騎士様! 集落診療所群は?」

女騎士「爆破しろ!! 当然だ。不愉快極まる、欠片も残すな」

エルフ近衛兵「教会前広場はいかがしますか、騎士様!」

女騎士「燃やせ、勇者戦像は倒せ。櫓、時計台、図書館、その他生活インフラ全て破壊しろ、不愉快だ」

息子「お母様、中州に繋がるあちらの橋は」

女騎士「落とせ、川向うを孤立させろ」

娘「あちらに見える大樹はどうしましょうか」

女騎士「叩き斬れ。構うものか、目についたものは片っ端から壊し、片っ端から食え!!」

エルフ騎兵「乾盃!!」

エルフ近衛兵「乾盃!!」

女騎士「はっはっは!! ゆかいだぜ!!11!!」

ハイエルフ少女「おかあさぁーんっ、おかあさぁーんっ!!」

ハイエルフ女性「……お願いします……やめ……やめて……もう……殴……」

女騎士「うるせーぞボケ母娘」パンッ パンッ

騎士ほ「フックククwwwwwこうなりたくなかったらwwwwそうですわねwwww全員服を脱いで投降なさいなwwwwwww
全員wwwwあまりなくですわよwwwwwwそしたら川の中に飛び込みなさいwwwwフククwwwwフカカカカカwwwwwww」

女騎士「土手の草に油まいて燃やしてやろうぜwwwwwwww
こいつらまとめてローストビーフだwwwwwwwwひゃっwwwwひゃっwwwwwひゃwwwww」

ウンディーネ「やめてええええ!!」

コボルド「やめてください、こ、こ、殺さないでえ!!」

女騎士「おっほぉwwwwwぎもぢぃぃぃwwwww排卵wwww排卵する゛ぅぅぅwwwwwwwwwww」

騎士ほ「お姉様久々にノリノリですわwwwwwwww素敵wwwwwwwwwwwww」

女騎士「おおういクズどもwwwwwwよく聞けやwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ここに医者がいたら全員残らず連れてこいやwwwwwwwwwこの私の目の前に引っ張ってきやがれwwwwwww」

ウンディーネ「お、お医者様!?」

ホビット「どういう事だ……?」

女騎士「医者だよ医者!! 連れて来たヤツだけは無傷で見逃してやらあ!! それにィ……
これ以上ヘンな事しねぇって約束してやるよぉ、何もしないで帰ってやる……わかったな、医者だぞ医者!!」



ウンディーネ「お、お医者様よ!! お医者様をみんな引き渡すのよ!!」

ハイエルフ男性「い、急げ!! 医者を探せ!!」

ハイエルフ女性「早くしないと殺されるわ!!」

ハイエルフ騎士「なんと……汚い……!!」

女騎士「きたねえのはテメェらの民族性そのものだバーカ。なんだ? ヤブ医者が見つかるまでテメェが暇つぶしに付き合ってくれるのか?」

ハイエルフ騎士「……」

女騎士「なんとか言いやがれ!! なめてんじゃねェぞクソッタレ野郎ォが!!」

ハイエルフ騎士「がはっ!!」

女騎士「よーし、望み通りテメェでしばらく遊んでやるよ……ちゃっちぃ鎧なんか剥いじまえ、おらぁ!!」

ハイエルフ騎士「や、やめろ!! やめろぉ!!」

女騎士「おーおー、貧相な体つきだこと。この耳長モヤシ女め、雑草食って生き長らえてるようなてめえが私らに敵うと思ってんのか? あ?」

ハイエルフ騎士「……くっ……こ、殺せ!!」

女騎士「はいぃ?」

ハイエルフ騎士「アルビノと産まれたとて、私は女である事、エルフである事を捨てた身だ!!
今の私は誇り高きガリアの森の騎士である! 死など恐れぬ、私は矜持を守る!!」

女騎士「はぁー? バッカじゃねぇの、矜持なんか守ったってしょうがねーだろチンカスが! 脳に蛆でもわいてんじゃねーのか? あ?」

ハイエルフ騎士「貴様のような下賤の者にはわかるまい、この私の守るべき真の宝を!」

女騎士「おーそうかいそうかい、女である事もエルフである事も捨てたのかぁ、そいつは難儀なこった。
そんじゃあよぉー、捕虜として扱わなくてもいいんだな? そいつは好都合だ、明日のテメェの配属先はワイバーンの胃袋だ」

ハイエルフ騎士「」

女騎士「私ってヒューマニズムに傾倒する慈愛ある活動家やん? だからそういう命を大事にしない発言好きじゃないんだわ」

ハイエルフ騎士「な……はぁ?」

女騎士「命を軽視する気風がはびこるから、大陸じゃ戦争がなくならないんだ……
宗教が発端にあるにしろ、それは良くない。非常によろしくない、そうだな? 命はみんな一つずつしかないんだから……」

ハイエルフ騎士「何が……言いたい!! 殺せ、貴様らなんぞに命乞いなぞ……」

女騎士「だからさぁ、大事な命なんだから死ぬときくらいこっちを気持ちよくさせろや。役に立たねえな」

ハイエルフ騎士「え……」

女騎士「いちいちテメェみてえなカスがあっちで『くっ殺せ!』こっちで『くっ殺せ!』って言われたらウザくてしょうがねぇだろ。
『どうか私の命でよろしければ奪ってくださいましお願いいたします』だろ? 矜持が大切な不謹慎なヤツはそれくらい徹底しろや」

ハイエルフ騎士「い、意味がわからない……」

女騎士「はぁ……じゃあいいよ」パンッ

ハイエルフ騎士「ぎゃうっ!!」

女騎士「あーうぜぇうぜぇ、これだから話も聞かねえ命も粗末にするって輩は嫌いだわー」

ハイエルフ騎士「いだいいっ、痛っ、うああああああ!!」

女騎士「死ぬ事が大好きなタナトフォビアの変態クソエルフのオナニーのお手伝いしちゃったなー、不愉快だなぁー、あーくせぇくせぇ」

ハイエルフ騎士「あついい、痛い痛い、痛いぃ、やだあ、死にたくないです、ごめんなさい、ごめんなさい」

女騎士「何だってー? さん、はいっ、『くっ……殺せ……矜持の方が大事です……』ぷりーず!」

ハイエルフ騎士「許っ、許してぇ、おねがいします、しにたくない、わたっ、わたし、鎧をきき、きたのも初めてでえっ、
へ、へんなことしません、言う事ききます、許して……助けてえ、やだやだやだ、死にたくないです、いのちだいじにしますう!!」

女騎士「急にうるさくなったなあ、私なんかそうやって片腿に穴空いた状態でドラグーンから落っこちたんだぞ? 我慢しろよチンカス」

ハイエルフ騎士「いっ、いっ、痛い、血がこんなに出てっ、血があ!!」

女騎士「さん、はいっ、『くっ、殺せ』。ぷりーずあふたーみー、『くっ、殺せ』」

ハイエルフ騎士「ひぇ……?」

女騎士「あーもう、殺せっつったり死にたくねぇっつったり何様だよてめえ。チンカスのくせに私に指図する気か?」

ハイエルフ騎士「あ、あ、ああ、『くっ、ころせ!』『くっ、ころせ!!』」

女騎士「よぉし、この女はおまえたちにくれてやる。好きにしろッ!!」

エルフ騎兵「さっすが~、騎士様は話がわかるッ!」

ハイエルフ騎士「」

ハイエルフ男性「こんなところに隠れていやがったぜ!!」

ハイエルフ女性「屋根の上から引きずりおろすのよ!!」

ウンディーネ「早く降りてきなさい!! 早く!!」

ハイエルフ医師「い、イヤだあ!! お願いだ、やめてくれ!! 頼むう!!」

ハイエルフ男性「ふざけるんじゃねぇ!! オレは妻を目の前でワイバーンにひき肉にされたんだぞ!!」

ハイエルフ女性「アンタが何かあの悪魔たちにケンカ売ったんじゃないの!?」

ホビット「そうだ、医者のくせにガリアを滅ぼす気か!!」

ハイエルフ医師「し、知らない……私は知らないんだ、本当だ!!」

ハイエルフ男性「オイッ、あっちの方で姿が見えなかった助産師が見つかったみてえだぜ!!」

ハイエルフ女性「あっちに先越されちゃたまんないわ……!! このヤブ医者!! いい加減にしなさいよ!!」

ハイエルフ男性「ハシゴを持ってこい!! 疫病神のヤブ医者め、ただじゃおかねぇぞ!!」



ハイエルフ医師「ああああっ……何故だ……何故、何故こんな……こんな事にィ……」

ハイエルフ医師「……あ、あれは……大樹に……ドラゴン……」

ハイエルフ医師「あいつ……あの毛の長いのは……リンドヴルムッ、という事はやはりあの…・…あの金髪の女が……!?」

ハイエルフ医師「」

ハイエルフ助産師「う……う……ゆ、許して……許……」

騎士ほ「騎士様、北西で『私に続いてもう一度』は『りぴーとあふたーみー』でしてよ? あの雌豚、きょとんとしてましたわ」

女騎士「まじかよ。いいじゃん、もうみんな帝国の言語で統一しちゃえよめんどくせえ」

騎士ほ「世界一高い塔の逸話を思い出しますわね、フクク……」

女騎士「何だそれ、折れろ」

騎士ほ「神の逆鱗に触れて、とっくに崩れてしまったそうですわ……」

女騎士「まじかよー、クソだな神様って。なあ?」

ハイエルフ医師「はっ、わ、私……か?」

女騎士「話聞いてなかったのかよ。どう思うぅ?」

騎士ほ「不愉快極まりないですわね……ペナルティ一本ですわ」

ボギッ

ハイエルフ医師「ぎゃあっ!!」

女騎士「おーい、涙目になってんじゃねーよ。まだあと19本も指はあるんだぞー?」

ハイエルフ医師「う、う、恨んでいるのか!? あ、謝る、謝る!! この通りだ、すまん、申し訳なかった!!」

バキッ

ハイエルフ助産師「あぐうっ!!」

騎士ほ「誠意が見えなーい、ですわ……あとその顔不愉快です。ペナ1」

女騎士「わりーわりー、計算ミスってたわ。あと38本だなー、ごめんちwwwwwwwwww」



エルフ騎兵「(大将閣下がいないとリミッターが外れっぱなしだなぁ……)」

女騎士「どうもテメェら……ハイエルフっつったか? 私ら猿人を見下してる感じするよなぁ?」

騎士ほ「ええ……森の奥でしみったれた暮らしを送る大便製造機の癖に」

ハイエルフ医師「そんな……そんな事はないっ、ないぞ……見下してなんて……」

ハイエルフ助産師「見下してないです!! はい……てっ、帝国ばんざい!! 皇女殿下ばんざーいっ!!」

女騎士「おー、こっちは殊勝だな。話し相手を変えてやるか」

ハイエルフ助産師「(や、やったッ!)」

ハイエルフ医師「(てめえ!! ふざけんな替われ!!)」

女騎士「テメェがその股倉いじくったくっせぇ手で取り上げたガキどもだ、仲良くしてやってくれな」

ハイエルフ助産師「」

息子「……」

娘「……ちっ」



ハイエルフ助産師「て、帝国……ばんざい……」

息子「誰が喋っていいと言ったッ!! 汚い手でお母様のお身体をまさぐった罪、指の一本や二本で消えたと思ったら大間違いだぞ!!」

娘「テメェみてぇなクソエルフに取り上げられたなんて知れたら、こっ恥ずかしくて街中歩けねぇだろォがよォ……
どう落とし前付けてくれンだぁ、ああ!? 聞ぃてンのかビチグソがよォー!!」

ハイエルフ助産師「」

女騎士「ははは、すっかり5年前の焼け跡と繋がっちまったなぁ。すっきりしたもんだ」

騎士ほ「共和国の開拓済地域から地続きで焼いてまいりました、これで森林に囲まれる事はないでしょう」

女騎士「焼いた傍から失業者どもに開墾させてるからな、さすがのクソ祖霊も畑の肥やしじゃねぇのか?」

ハイエルフ医師「……」

女騎士「笑え」

ハイエルフ医師「は、はは……」

女騎士「17本目でようやく従順になってきたなぁ、えらいえらい。そんじゃあそろそろ本題に入ろっか」

ハイエルフ医師「……」

女騎士「テメェの知ってる事を洗いざらい綺麗に話せ。変な修飾なり比喩なり使いやがったら、
表現の単語の文字の数だけグーパンだ。クチャクチャしたもったいぶりは嫌いなんだよ、わかるか?」

ハイエルフ医師「わ、わかった……」

女騎士「わーかーりーまーしーただろうがッ、このタコキムチがよォー!!」 バキイッ

ハイエルフ医師「がぼおッ!!」

女騎士「あんまイライラさせるとよおー、私だって我慢の限界があるんだよぉー? 人権派の私だってさぁー……」

ハイエルフ医師「わか……わかりました……」

女騎士「ふん。そんじゃあ……勇者の野郎を黙らせられるすんげー秘宝っての、教えてもらおうかなぁ?」

第8部 ガリア=ベルギガ編 惨

                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ 

第8部 ガリア=ベルギガ編 死へ

                                       ー- 、 ー-、``/  
                                      _, '  ._, '  \  
                                    -------------------
                                     制作・著作 NHK


秘書「ひえ……ひええええ」

エルフ騎兵「あ、デブ……いえ、ぽっちゃり秘書殿。重役出勤ですか」

エルフ近衛兵「大将がいたら養豚場のブタを見る目でニラまれるところでしたね」

秘書「だ、だってだって……こんな史上類を見ない大虐殺に加担ささささせられるなんて……」

エルフ騎兵「史上をもうちょっとさかのぼれば、いくらでもこれ以上の虐殺はあるだろうけどなぁ」

エルフ近衛兵「オレの傭兵だったじいさん、旧魔王軍のムラやマチをいくつ燃やしてどれだけ女を犯したか嬉々として語ってたからな」

秘書「野蛮っ! こわいっ!!」

エルフ近衛兵「当時としたら、れっきとした『魔物退治』だったわけじゃないですか。美徳ってのは歴史とともに変わるもんですよー」

秘書「……やっぱりエルフさんとこで働くのは無理があります……おうち帰りたい……」

エルフ騎兵「おうち帰ったって、どうせ親のスネかじってぷくぷく肥え太るだけじゃないですかー」

エルフ近衛兵「どんな倫理が正しいのかわかりゃしませんが……あの大将の下ほど働きやすい職場はないですよー?」

秘書「うそでしょ!?」

エルフ騎兵「近衛だけじゃなくて、オレ達みたいな末端の兵の名前まで覚えててくれるしー」

エルフ近衛兵「充実した福利厚生に軍属時の税率緩和……まあ、軍国主義傾倒と捉えられてる面もありますが。
それでいて金払いはいいですし……基本的にアルヴライヒ連邦は武装中立を貫いています、仕事はちゃんとしなきゃいけませんが」

エルフ騎兵「外国人部隊の設立は、教皇領のハト派では賛否分かれているみたいですけど。
でもまあ、トップが形態で雇用の差別をしないってのは大きいですよ。味方も増えますし、何より戦術規模での作戦行動が柔軟になる」

秘書「(まさかの上司にしたい人材ナンバーワンだった)」

エルフ近衛兵「どうです、このまま外務省から軍部の広報担当にでも」

秘書「うーん……大将イケメンだし、お給料いいし……でも、でもなぁ……
あの怖いブロンド美人さんのお財布ってのが心配なんですよねぇ……」

エルフ騎兵「大丈夫大丈夫、カネなんてウチの銀行に預金するアホ富豪から利息ふんだくればいいんですから」

エルフ近衛兵「副業の銃器製造も、帝国や北西に次いでずいぶん軌道に乗ってきましたしねー。
なかなか贅沢というのは個人レベルではしないもので、国庫は昔に比べて潤ってるくらいですよ、はっはっは」

秘書「(あーこれ知ってるー、死の商人ってやつだー)」

エルフ騎兵「もっとも、今じゃ銃は国外の子会社から逆輸入しなきゃいけないわけですからね」

秘書「わざわざ外国で作らせてるんですか? こっちの軍も、規模は小さいわけじゃない筈なのに」

エルフ騎兵「自国の常備軍で扱う兵器こそ国内の造兵廠で客車とまとめて製造してますけども、
輸出で外資に変える為の商品が兵器では特定国家への肩入れととられてしまいます。中立(笑)になってしまいます」

エルフ近衛兵「銃器部門だけ遠い遠い北西にあったりしますからね。現地で大将みずから人材をヘッドハンティングしてますし、
品質はどこの国にも負けない自信があるとかないとか。」

秘書「大将働きますねー……」

エルフ騎兵「どこぞのピザニート女数千万人分の働きですねえ」

秘書「」

エルフ近衛兵「そうむくれないでください、本当に丸パンみたいですよ」

エルフ騎兵「連合や共和国の粗悪銃を使わずに済むのも、帝国内でのM&Aにも積極的な大将のおかげなんですからー」

エルフ近衛兵「あなたに支給されてる大口径のガバメントモデルだって、ものすごく信頼性の高い傑作なんですから。
ガワは北西のガンスミスが組み立ててはいますが、企画設計は国内企業のアルヴアームズ社で行われたんですよ」

秘書「え、これ?」

エルフ近衛兵「バカですかやめてくださいよ!! 何でこっちに銃口向けるんですか!!」

エルフ騎兵「うわ、ピッカピカの新品だ……」

秘書「だって、拳銃の講習なんてお役所の一回きりしか受けてないんですから……」

エルフ近衛兵「ブタに真珠だった」

女騎士「うーん、本当にここはいい場所だ。小鳥のさえずりにここちよい風、そしてすこし体を起こすと広がる焼野原」

秘書「……こげくさい」

女騎士「ふぁー、ねむい……天気もいいし、最高のハンモック日和だ……そういや、あの騎士くずれはどこだ?」

秘書「えっと……奥の方で……」

騎士ほ「命の尊さと素晴らしさを私たちで教育してやっている最中ですわ……手始めに新しい命を孕ませるところからです……」

女騎士「そもそも私とあんたは祖霊さんの文句のつけようがないくらいの母親だからなぁ。
『私の』繁栄の為に尽力してる私がガタガタうざがられるイワレなど無い。ははははは」

リンドヴルム「……」

女騎士「よぉー、どんな気分だあ? 旦那様よお」

リンドヴルム「それがキミの望みであるなら……あの子達の為になるのなら、仕方あるまい……」

女騎士「レイプ魔」

リンドヴルム「……」

女騎士「返事はどうしたァ? 強姦魔。シカトしてんじゃねぇよてめぇ、おいコラ!!」

リンドヴルム「……すまない」

女騎士「エルダーってその程度だもんなァ。北西でシャシャってるとかいう高等竜種? バカくせぇ。
バカの極みだが、その中でもひときわ目立つ強姦嗜好の反社会的思想を持つ最低最悪、ドブネズミにも劣る古竜の恥」

リンドヴルム「……」

女騎士「それがテメェだあ。わかってるよな? あ? わかってんな? わかってんならハイエルフのメスども孕ませてきな」

リンドヴルム「」

女騎士「嫌なのか? そっか、嫌か……嫌ならしょうがないよな……責任持つって聞いたのになあ。
強姦魔のクソドラゴン、エルダーの風上にも置けないウジムシはウソまでつくのか。死ねよ、消えちまえ」

リンドヴルム「……」

女騎士「どこに出しても恥ずかしい旦那で困ったもんだあ。年中股倉をいきり立たせていやがる」

騎士ほ「お姉様を謀り、害なした邪竜ですわ」

女騎士「違いねえ。まあもっとも、私の心は太陽の如く輝く清浄な気を今でも放ち続けておる」

騎士ほ「その通りですわ……」

女騎士「……あのヤブ医者はどうした?」

騎士ほ「先ほど『ジョワユーズ』なる単語をようやく口にいたしました。これまでの曖昧模糊かつ抽象的でイライラする供述と合わせれば、
騎士様がかつて1年を過ごした……現在の焼け跡方面に、何かしらの手掛かりがあると考えられます」

女騎士「あー、想像つくな。これからガリアの田舎者どもには帝国語を標準語とする、ここの現地語はムカつくからな。
書いたら罰金。喋ったら罰金。口答えしたら罰金、現地語で口答えしたら死刑。決めた、今決めたからな」

騎士ほ「仰せのままに」

女騎士「ふん……ジョワユーズねえ。何だろうな」

騎士ほ「継承権の正当性を主張出来うる……現在の主要国のパワーバランスをひっくり返せるようなものとなると、共和国憲法の草案……?」

女騎士「えー何それツマンナーイ、もっと面白いモンがいいー」

騎士ほ「ええと……それではやはり教皇領のご機嫌取りに使える聖遺物……」

女騎士「ツマンネェなあ、もっとあんだろぉ?
王家の紋章的なのが刻まれた台座、そこにぶっささる名剣!! それを抜く事を許されたのは英雄の血筋にある者のみ!!」

騎士ほ「フクク……いやだ、お姉様ったら」

女騎士「」

騎士ほ「」

エルフ騎兵「聖堂跡地の地下にこんな空洞が……」

騎士ほ「い、入口付近のカタコンベにしても、かなり歴史的価値がありそうなものですが……ま、まさか……こんなものが……」

女騎士「王家の紋章的なのが刻まれた台座にピッカピカの剣が刺さってやがる……」

騎士ほ「……ふむ。おい、ハイエルフ。貴様が先に通路を歩け」

ハイエルフ医師「ひい……」

騎士ほ「何してる。背筋をただし直立しろ」

ハイエルフ医師「あ、あ、足の……指まで砕かれて……ム、無理なんだ……許してくれ……」

騎士ほ「直立『しろ』と言ったんだ。頼んだわけじゃあない、こちとらは貴様に命令しているんだぞ? 見苦しいから立て」

ハイエルフ医師「うっ……うぐう……」

騎士ほ「そのまま通路を抜けて剣を抜いて来い」

ハイエルフ医師「だ、ダメだ……で、伝承では……あれは、ジョワユーズは……・選ばれし英雄のみを愛する聖剣、ハイエルフのオレでは……」

騎士ほ「抜いて来いって言ったんだ。同じことを二度言わせる気か?
貴様ら汚らしいハイエルフが下品な罠でも仕掛けていないとも限らんだろ。そんな通路をお姉様に歩かせる気か?」

ハイエルフ医師「ひ……ひい……」

騎士ほ「四肢を叩き斬られて放り込まれたくなかったら早くしろ。
お姉様はともかく私は気が短いのだ、早く!早く早く早く早く早く早く早く!!」

ハイエルフ医師「ぬっ……抜くなんて無理だァ、手指だって……」

騎士ほ「……通路そのものは大丈夫そうですわね」

女騎士「横からヤリでも突き出てくりゃあおもしれえのになぁ」

ハイエルフ医師「お、お願いだァ……ち、治療をさせてくれェ」

騎士ほ「ご苦労だったな、ハイエルフ。貴様の役割はもうおしまいだ」

ハイエルフ医師「は……」

騎士ほ「次の貴様の勤務地はメリフェラだ。元気なインセクトリアンのゆりかごとなって愛されるがいいさ」

ハイエルフ医師「な、何だ……何だそれッ、やめ……」

エルフ騎兵「はーい撤収ー」

ハイエルフ医師「やめろ……ヤメロッ、離せ!! 離してくださいッ、やめてくれええええええええええ」

女騎士「地下で響くんだから騒ぐんじゃねーよボケ」

騎士ほ「ともあれ、それらしい収穫があって何よりですわ……」

エルフ近衛兵「すぐに回収しま……ん……? ぬ、抜け……ねぇ……」

騎士ほ「そんな馬鹿な。接合部で錆びているんですの……ふっ……!」

女騎士「おーい、ここまで来てそりゃねぇだろー。早く抜けよー」

騎士ほ「くはっ……おかしいですわね、これでは台座を破壊するほか……」

女騎士「抜けねーわけがねぇだろーがよぉー、どきな!!」



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騎士ほ「」

女騎士「」

エルフ近衛兵「」

女騎士「……抜けたじゃねーか」

騎士ほ「そう……ですわね」

女騎士「うん、まぁ……綺麗な剣じゃねーの」

エルフ近衛兵「まさしく中世初期の法具と呼ぶにふさわしい……」

女騎士「これが勇者をぶっ殺してくれるスゲー剣なのかぁ? 柄はキンキンで派手だけどよぉー」

騎士ほ「教皇庁の認定が得られれば、正式な聖遺物にはなりましょうが……」

女騎士「鞘は……壁にかかってるコレか。なんか拍子抜けだなー、遠出してこれじゃあ遠足と変わんねーじゃん」

騎士ほ「ま、まあ……無駄足ではなかったわけですし」

女騎士「ちっ……あー、コレ邪魔だし重いから持っといてよ。おねがい」

エルフ近衛兵「御意おぎゃあああああああ重ぇぇぇぇぇ」

女騎士「」

騎士ほ「」

エルフ近衛兵「肩が折れたあー!!! 痛えええええええ」

女騎士「じょ、冗談やめろよ……こええだろ……」

騎士ほ「……お、重い……本当に……も、持ち上がりませんわ……」

女騎士「やめろって……もういいよ、コレきもちわりいから置いてこうぜ……とんだガラクタじゃねぇか……キッモ……」

騎士ほ「で、でもお姉様は抜いた張本人ではありませんか」

女騎士「やだよこんなきもちわりー剣……エルフとはいえ軍人の肩ぶっこわす程重いんだろ……」

騎士ほ「しかし、さきほどお姉様は高々に振り上げていたではありませんか」

女騎士「それは……その……あれだろ、遠心力とか……振り子の原理的なアレだろ……?」

騎士ほ「もう一度……持ってみてもらえますか?」

女騎士「筋肉モリモリマッチョマンの変態のお前が持てねえ物を私が持てるわけねえだろうが……」

騎士ほ「ものは試しでございます、持って帰れるに越した事はありませんわ」

女騎士「うぇー、きもちわるい……」

騎士ほ「……」

女騎士「……そんなスゲー重いわけじゃねえな。私をバカにしてんのか?」

騎士ほ「め、滅相もございませんわ! 私どもにはまともに保持する事すらできない聖剣、という事は……」

女騎士「えーヤダ何それ怖っ!! 私のお前らと一緒がいいんだけど! なんだこの剣きもちわる!!」

騎士ほ「……とりあえず、持って帰ってみましょう」

女騎士「ジュンジュワーだかジョビジョバだか知らねえが……ほんときもちわりいなガリアって……最悪だわ……」

女騎士「ペッ!! ホコリっぽい地下の真上は不毛の焦土ときた。あーもう最悪、お風呂入りたーい」

息子「お帰りなさい、お母様!」

娘「宝物はあったんですか……?」

女騎士「えっと……コ、コレ……」

息子「剣?」

娘「すごい……骨董品かなあ」

女騎士「なんか気持ち悪くて……ずっと頭蓋骨に囲まれてたようなものやし……」

娘「ずがいこつ」

息子「お墓にあったんだ……」

女騎士「欲しけりゃあげるわ、ほい」

騎士ほ「!? ス、ストッ……!!」

息子「で、でも……せっかく見つけたのに……」

娘「わあ、すごくきれいな刀身。見て、お兄ちゃん」

女騎士「気に入ったんなら持って帰んなさいな」

息子「ほ、本当!?」

騎士ほ「(カタコンベに安置されていた聖剣……帝国の大学を調べてみる価値はありそうですわね)」

息子「あ、騎兵さん! これも収容しておいてくれますか」

エルフ兵「はいはい、了解です若様おぎゃああああああああああ重ぇぇぇぇぇぇぇ」

娘「」

姉「おなかすきましたわぁー」

エルフ三男「……そっすね、今食ったばっかっすね」

黒服「……」

エルフ三男「おい君」

黒服「はい」

エルフ三男「……少ないけど、これ」

黒服「は……は?」

エルフ三男「あーっと……これで息抜きでもしてきたらどうかな? 連日護衛で疲れてるでしょうに」

黒服「し、しかし……」

エルフ三男「いいから……じゃあもう五万付けよう。彼女に何かいいもの買ってあげなさい」

黒服「……で、では……少しだけ……一服してまいります」

エルフ三男「はい、いってらっしゃい」

姉「いってらー」

エルフ三男「……」

姉「うふふー。うふふー」

エルフ三男「あーあ……どうすっかな、帰りてぇ……」

エルフ三男「……あ、このラザニアうめぇ」

チバラキ「たいしょー!」「こうかんど」「かせがねぇのかー?」

エルフ三男「稼いでどうするんですか、そんなもん」

姉「あらー、妖精さん? かわいいわねぇー」

チバラキ「おっす!」「おら」「いばらき!」

姉「おーっす」

エルフ三男「……はぁ」

チバラキ「きゅうびの」「おねえからの」「しれいはー?」

エルフ三男「今までファックした中で二度と会いたくない種族は、だったっけ……さすが妖怪、頭おかしいよあんたら」

チバラキ「よくおぼえてたなー」「どうだったー?」

エルフ三男「もう目の前でバレてっから……」

姉「オーガの男の子とはもうしたくないわねぇー、うふふ。おなか裂けるかとおもったぁ」

エルフ三男「帝国のジャガイモはうめぇな……」




妹「くきききwwwwwwwwww何も知らずにメシを貪ってやがるなwwwwwwww」

妹「クソビッチ小姉様のセフレこと、エルフの御大将wwwwwwwwwwwwwクソッタレめwwwwwww」

妹「このままネキリで吹き飛ばしてやるwwwwwwwwwwwwwwwうひぇひぇひぇひぇwwwwwwwwwwwwwww」

妹「クソボケがwwwwwこの私を差し置いてあんなイケメンをキープだなんて言語道断wwwwwwwブッ殺してやりますわぁwwwwww」

敵兵「マジかよ……退くわ……」

妹「」

敵兵「あんたそこまで腐ってたのかよ……」

妹「どどどどど、どうしてここが……というか、あなた……! ガリアとやらに行ったんじゃないですの!?」

ブラウニー「その態度の悪さであなた、監視がつかないとでも思ってるんですか」

ピクシー「まったく……」

敵兵「伝承にしか残ってないような聖地の割り出しが半月そこらでできるわけないだろ、当分は東西領の国境で足止めだよ」

妹「知ってましたわ!! このロクデナシ、試しただけでしてよ!!」

敵兵「やっぱりあんたがネキリをブン取ったのかよ、どんな手を使ったんだか知らねえが、早いとこ魔王軍に返しなよ」

妹「いやですわねぇ……先見の明がない末端のザコは。これは外交を円滑に進める為の手段のひとつでしてよ、連合にも良い顔をせねば」

敵兵「ったく……先のテロから、東帝では旧帝国の機関はあんまり好かれてないのは分かってるだろ?
あんたの身の安全の為にも、あんまりフラフラしてるんじゃない。さっさと情報庁に帰んなよ」

妹「……」


妹「(あー……うぜえ。こいつらもなんかウザくなってきたな……ちゃっちゃと小姉様をぶっ殺してくれると思ったら、てんで役に立ちゃあしねえ)」

妹「(やっぱりこの私が動かなきゃいけないんじゃん……私と大姉様がいなきゃどうにもならねえのに、何考えてんだか……)」

妹「(……決ーめた。皆殺しだ、みんなみんな死んじまえ……そうと決まりゃあ、範囲の外にスタコラサッサだぜぇ……)」

妹「(すんげぇ破壊兵器のネキリを要人暗殺のピンポイントな目標に用いるなんて、やばいな……私ってやっぱ天才かも……)」

妹「(アハトアハトで狙撃する、みたいな画期的な逆転の発想……くきき、バレやしねぇだろぉなぁ。
警察も共和国もネキリなんぞわかりゃしねぇ……魔王軍も連合軍も、好んで公の場でネキリの名なんぞ出さんだろうしよぉ)」

妹「(不義には鉄槌を、悪には正義の裁きを、ですわ……そう、このネキリは執行者たる私の手に渡るべくして渡ってきたのです……くききき……)」

妹「(予想効果範囲は……多く見積もって、半径500m。あの御大将さえブチ殺せればいいんです……大姉様は……ま、アドリブでどうにかしましょう)」

妹「(トリガーは地脈に対し法儀済純銀製の小刀を突き立てる事……連合もなかなかいい仕事をしてくれる……)」



妹「はいはい、わかりましてよ!! 帰りますから離してくださいまし!!」

敵兵「あっ、ちょ……待ちなよ! 共和国への同行だけど……こら、おいっ!!」

妹「きゃ……やめてくださいまし、ちょっと……きゃあッ!!」

カチン

                          ..ゞヾ:''ソ"'"''""''ソ:'ソッ,
                        .ヾ''゙ .          "''ソμ,
                     ッヾ´     ノ           `..彡
                     、ゞ             ⌒)         ミ  ブワッ
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ´           -<´          彡:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      ヾ            、_)               ミ ――――――――――――――
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            ミ         ノ                  ミ ――――――――――――――
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............       ミ                               ミ       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;....彡...........................              ...............................ミ.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                 ゙/゙ゾ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙ヾ ゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι

僧侶「予定人員の輸送計画はこれ……ようし、完璧ですよ勇者様。勇者……さま?」

勇者「……ねえ、みんな。あれ……あれは……」

戦士「今……なんか光ったよな?」

将軍丙「え、ええ……何があったのかしら」



女騎士「んぁー……雷かあ?」

息子「何か、空で光りました……」

娘「雲一つない青空なのに? 見間違いよ、お兄ちゃん」

騎士ほ「湖の反射ではなくて? 目は大丈夫ですか、お姉様」



エルフ近衛兵「あれー?」

エルフ文官「どうしたよ」

エルフ近衛兵「いや……今の時間だと、山の間から帝国の宮殿の頭が見える筈なんだけど」

エルフ文官「スモッグで隠れてるだけだろ、あのへんは大気汚染がやべぇからな……それか、こうして昼間っから酒飲んでるからだろ」

エルフ近衛兵「ヘンだなあ……」

姉「きゃああー、なぁにぃー?」

女性「キャアアアー!!」

男性「な、何が起きてるんだッ!? うわああッ!!」

エルフ三男「クッ……立ってください!!」

姉「は、はぁい?」

エルフ三男「立て!! 死にたくなきゃ言う事聞け!!」

姉「はぁーいー」

エルフ三男「(ウィンドーが軒並み砕けた……爆破テロ? 魔王軍と連合、更には共和国が目を光らせるこの国境沿いで!?)」

姉「うう、すごい音……耳、きーんってしたぁ」

エルフ三男「手を離すな、騒ぐなよ女」

姉「はぁい」

エルフ三男「(ち……SPを撒いたのはミスったな。護身用の9㎜、武装したテロリスト相手には不安だが……行くしかあるまい)」

ウェイター「み、皆さん、机の下……カウンターに隠れて!! 早く!!」

女性「キャアアー、いやぁぁー」

エルフ三男「(……バカの一つ覚えみたく騒がないのは救いだな。そこはあの騎士様の血のおかげか)」

姉「あ、さっきのテリーヌ残ってる。これ食べていいの? ねーえー」

エルフ三男「」

敵兵「痛……っててて……」

ブラウニー「死ぬう、死んじゃうぅ……」

ピクシー「シールドが無ければ即死だった……」

敵兵「……な、何だ……爆弾……? あの情報部長さんは……」

ブラウニー「ううー、まだ頭クラクラするぅ」

ピクシー「爆弾テロ? あの部長さんが?」

敵兵「わからない、わからないが……大通りに出てみるしかないな……」



敵兵「……」

ブラウニー「あー……あーっと……」

ピクシー「……あ、阿鼻叫喚っていうんですよねぇ、東洋では……」

敵兵「いや……というか……何だろう、これ……これ、どうなってるんだ……」

ピクシー「どうもこうも、地面を力任せにえぐったようなこのクレーター……」

ブラウニー「どう見てもこれ……ネキリ、ですよね……でも、便宜的に敷かれた国境線代わりの鉄条網や壁は辛うじて残ってる……」

ピクシー「残ってるっていうか……不自然だよ!! どうして壁……境界だけ、綺麗とは言えないけど残ってるわけ。あのすごい爆発で!?」

ブラウニー「そもそもこれ……爆発が起こったわけ?」

敵兵「……規模からして、爆発なんか……火薬なんかじゃねぇよな……建物も何もかも……ととと、と、『東帝領』まるごと削られ……」

ブラウニー「」

ピクシー「」

ブラウニー「ば、ばかいってんじゃねーっすよ、混乱してるだけ、そっすよね?」

ピクシー「ちょっと待って、状況整理しましょ。さっきまで私達……あの御大将やふわふわ長女がいたのは東帝!」

敵兵「お、おう……」

ピクシー「私達は生きてる! つまり、東帝は無事!! オーケイ!?」

敵兵「おう……」

ブラウニー「……あははは、じゃあああやってクレーターになっちゃってるのは西帝かー。よかったー」

敵兵「おっきなクレーターだなあ」

ピクシー「……」

敵兵「シャレになってねぇ……せ、西帝、どうなっちまったんだ……? た、高台のここから地平線が見えるって……」

ブラウニー「ネキリ……ぜ、絶対ネキリよ!! あの女が、あの女がやったに決まってる!!」

敵兵「そんな事より救護活動!! もしネキリなら、クレーターの中心近くにはけが人が……!!」

ピクシー「あばばばばばばば」

敵兵「くそ……あの一族、ロクな事しやがらねぇ!!」

ゴーストアーマー「共和国東部国境警備隊から入電、付近の被害甚大、死傷者さらに増大するとの事!」

レプラコーン「北部北西諸島軍から入電、状況の説明を求められています……!!」

将軍丙「救助隊を編成、現場ではデュラハン常任理事の指示を仰いで!!」

戦士「ここ一帯、帝国分割線付近だけの被害だけじゃねぇのか!?」

僧侶「帝国中央付近からの応答、すべてありません!」

ティタニア「飛行隊、アテクシに続きなさい!! 被害状況の確認に向かうわぁ!!」

賢者「ま、待って! 万一ゲットーで使われた有毒ガスが撒かれでもしたら……!!」

ティタニア「待てない! 一刻の猶予を争うのよぉ!!」

勇者「地上部隊は僕とケルベルス常任理事に続いてくれ。部隊編成後、救護班と原因特定の為の調査班に分かれる」

賢者「ゆ、勇者くん……!」

ケルベルス「たまに帝国に顔を出してみればこれだ……飛行隊、ティタニア理事の指揮下に入れ。救援物資搬送急げ」

ハーピィ「了解であります!」

レギンレイヴ「我らも動くぞ、媚を売るチャンスだ」

ブリュンヒルデ「死神が救援活動するなんて、世も末よねぇ。ラグナロクも近いわこりゃ」

ラーズグリーズ「けが人に死人のみなさーん! 北部神族、皆さまの安心をお約束する北部神族をよろしくどうぞぉー!!」

将軍丙「情報部を張らせていた彼から連絡は?」

レプラコーン「ありません……南部王国森林駐屯地から入電、こちらも被害多数!」

勇者「……時間が惜しい。今は救助を最優先にすべきだよ」

ティタニア「同感だわぁ……ああもうっ、ガリアの場所もはっきりわかってないってのに!!」

ティタニア「言葉が出ないわぁ……」

ハーピィ「さ、さっきまであった建物が……軒並みなくなっちゃった……!!」

ティタニア「この被害の有様……先日のネキリと恐らくは同じもの……!! 強烈な閃光、その跡には鉄屑が散乱するのみ……」

ハーピィ「てっきりすぐそこに爆心があるのかと思いましたけど……どうなってるんですか……?」

ティタニア「きりがないわぁ、降下しましょ……辺りを飛行した程度じゃ、被害の全容なんかわかりゃしないわぁ」




ブラウニー「この小刀……多分、あの女が魔術に使ったものですよね……!」

敵兵「くそ……ネキリの起動で確定かよ!」

ピクシー「お、おかしくないですかあ!? ネキリって、囲ったその中だけを……ばばーんって攻撃するんですよね?」

敵兵「そう、とは聞いているけど……」

ピクシー「それじゃあ……こ、ここが爆心じゃないとおかしくないですか? 私たちが木っ端微塵になってないと、おかしくないですか!?」

ブラウニー「……確かに、理屈に合わない……よねぇ」

敵兵「何か、目標が別にあったか……彼女とは別口の方法でネキリを起動させ、行使しただとかか?」

ピクシー「それか……」

ブラウニー「……暴発……とか?」

勇者「皆さんっ、御無事でしたか!!」

敵兵「お、おかげさまで……!」

ピクシー「死ぬかと思いましたよォ、もぉー」

勇者「……例の彼女は?」

敵兵「め、面目ない……逃げられました。小刀の一本を残して……」

勇者「小刀?」

ブラウニー「これですよぉ、これこれ。多分……ネキリの欠片を加工して作った、カタナの模造ですよね?」

勇者「連合がいきなりネキリを嗅ぎ付けてきたのは、彼女が内通していたからという事ですか」

敵兵「恐らくはそれで確定かと……それで、それでこんな事に!!」

勇者「……今はとにかく人手が足りません。旧首都……西帝全土から応答がない状況です、救援活動に協力してください」

敵兵「それはもう……!」

勇者「これは……恐らく、今世紀……いえ、旧魔王軍との戦乱に匹敵する規模の死傷者に昇る災厄です。
国土の半分が、一瞬にして人知を越えた巨大な力に蹂躙されたのです……! 災厄……いや人為的な事件……!!」

敵兵「史上最大……ここ、こ、国土の……はんぶん……」

エルフ三男「すみません、何があったのですか!?」

巡査「爆破事故かもしれないしそうじゃないかもしれないし、
危ないのは確かだけど断言はできませんので後ほどの上司からの公式な応答をお待ちください」

エルフ三男「使えん!!」

姉「みんな大騒ぎねぇー、たいへぇん」

エルフ三男「(狙われる謂れは……いくらでも思いつく、しかし三国にもケンカを売る事になるこの強引な行為……
正気とは思えん、宗教極右派の特攻か? そこに理知的な思考は介在しておらんとはいえ……!!)」

姉「あうっ、あうっ、走るの速いぃ」

エルフ三男「(邪魔な女め……!)」

姉「はふー、つかれたー」

エルフ三男「(……いや、少し自意識過剰すぎるな。何も僕をピンポイントで狙ったものではなかろう。
僕は殺すのならもっと有効な手段がある筈だ、こんな情報部OBと会食しているところをわざわざ狙うバカもおるまい。
そんな博打を打つ奴がいるものか、公安や連合側に即座にマークされる……)」

姉「あー、あれ何ー? キモチわるいよぉ」

エルフ三男「……うっぐ……!?」



エルフ三男「(鉄条網に引っかかっているもの……なんだ、あれは……建物のドアほどもある鉄屑……
そこから……猿人が……鉄屑の表面から……生えているのか? 埋め込まれているのか……!?
どんな技術を用いれば、あんな有様になる!? 何が起こったんだ!?)」

姉「うう、かわいそぉですねぇ」

エルフ三男「(痙攣してはいるが、長くはあるまい……鉄と肉が癒着して、ところどころからは出血している……
鉄と肉が癒着? 我ながら何を言っているのか……おかしくなりそうだ……!!)」

エルフ三男「アルヴライヒ連邦の施設へとひとまず向かいます、構いませんね!? 後で文句言わんでくださいよ!」

姉「うん、わかったー。わたし、エルフさんの国はじめてー!」

エルフ三男「(非常に興味はあるが、長居は無用! まずは状況を把握しなければ……! 圧倒的に情報が足りない!)」

姉「ふぅ、ふぅ、ふぅ……ふぅっ?!」

エルフ三男「(ク、クソッ!! 街道は使えないッ!!)」

姉「ん……どうしたんですかぁ? いきなり路地に引っ張り込んで……」

エルフ三男「(畜生……何故だッ……なぜ、魔王軍……それも、勇者どもがこんな国境線にいる!?)」



勇者「……」

ケルベルス「勇者、どうした。防護服がじきに到着する、すぐに着用できるように……」

勇者「野暮用ができた」

ケルベルス「野暮用……何だそれは、ふざけている場合か? 冗談は聞きたく……」

勇者「デュランダルを使う、書類認証をよろしく頼む。すまない」

ケルベルス「勇者ッ、おい!!」

勇者「(エルフの総大将……!! 姿を隠したつもりか? 後ろめたい事があると見た……
あの女に内通している事、どれだけ繕おうが無駄だ。洗いざらい、知っている事を吐いて頂く……!!)」

エルフ三男「チクショウッ、チクショウチクショウチクショウ、チクショウッ!!」

姉「ちくしょうー」

エルフ三男「(いくら僕でも、この状況での申し開きは、負けはせんでも少なくとも一方的に勝てはしないだろう……!!
奴らのバックには連合がいる、メリフェラやあの被検体について追及されれば非常にまずい!!)」

姉「はふっ、はふっ、はふっ、つかれたー」

エルフ三男「(この女を人質に……イヤ、それもダメか!? この状況ならいくらでも死などでっち上げられる!
OBのこいつに人質としての価値は期待できん、女ごとダルマにされて連行されちまう……!!)」


勇者「大将閣下!! アルヴライヒ連邦陸軍大将閣下!! いるのでしょう、ご協力していただきたい!!」


エルフ三男「(夢想家のクソガキが……)」

姉「閣下ぁ?」

エルフ三男「ああクソ……!!」

チバラキ「おーおー」「苦しんでるねー」「つらそうだねー」

エルフ三男「やめろ……今、お前達と遊んでいる暇はない」

チバラキ「嬉しい限りだよー」「さいっこーだねー」「人の不幸はえくすたしー」

エルフ三男「な……!?」

チバラキ「ものすごい憎悪」「あの勇者はかかえてるよー」「幕府のガキが下準備してくれたからねー」

エルフ三男「ハッ……お前ら、僕の破滅を狙ってたってのか?」

チバラキ「うぬぼれんなよー」「われらにとっちゃ」「誰の破滅でもかまわねーんだよー」「ぼけー」

エルフ三男「この……クソ野郎どもがぁ……!!」

姉「閣下、どしたの?」

エルフ三男「クク……僕を駒……役者の一人に見立てていた? ふざけるな……身の程知らずの魑魅魍魎どもめ……
自惚れているのはどっちだ、たかが島国のド田舎で、田ゴ作相手に威張りくさって税に入ってたくされ神が……!!」

姉「閣下、だいじょぶだよ、あんしんして」

エルフ三男「コマはお前達なんだよ、依然変わりなく……コマがプレーヤーに意見してんじゃあねぇぞ……!!」

チバラキ「いせいがいいなあ!!」「ふぬけのさむらいにみせてやりたいもんだ」「大将はこっから抜け出せると?」

エルフ三男「僕がクソガキ相手に小便たれながら命乞いすると思っているのか? そう言うのが見たいなら余所に行っちまえ……!!」

姉「おしっこしたいの? 閣下、閣下ぁ」

エルフ三男「うるせぇぞクソアマ……! 今考えてんだよ、頭スポンジのテメェがどうにかできる事はねぇぞ……!!」

姉「でもぉ、でもわたし、閣下のフィアンセだもん。閣下が心配だもん」

エルフ三男「喋るな、黙れ……! 黙れよ……」



勇者「(……威嚇すら、もうしてこない。弾切れか? 重火器の類などは持っていないか。完全に単独……?)」

勇者「大将閣下。やっとお話ししていただけますでしょうか?」

エルフ三男「……」

勇者「……ごきげんよう、閣下。手を煩わせないでいただきたいものですが」

エルフ三男「魔王軍は躾がなっていませんね、ガキの口の利き方がなっていない」

勇者「失礼いたしました、このテロリスト野郎。人道的な扱いをして欲しかったら、頭の後ろで手を組め」

エルフ三男「とんだワルガキだ、救いがない」

勇者「手を組め、そして……人質をこちらに引き渡せ」

姉「はぇ……」

エルフ三男「見逃してくれませんかね。彼女とランチを楽しみに今日は来ただけですんで」

勇者「これまでの僕らへの行いを忘れたのか? 誰がお前達の虚言を信じるのだ」

エルフ三男「先の騒動で生き残った仲じゃないですか。若いくせに頭の固いガキですね」

勇者「頭の固い老害に言われたくないな。また鬼に助けでも乞うのか?」

エルフ三男「……」

勇者「それとも見捨てられたか? 妖魔にすら愛想を尽かされるとなると、いよいよ悪辣だな」

エルフ三男「やはり、口の利き方に何のある勇者様だ……!」

勇者「(顔を突き合わせるまでに、あの朱天とかいう鬼と相対するとは思ったが……護衛が本当にいないのか?)」

エルフ三男「もしや、先の爆発……僕が仕組んだ事だと言いたいのですか?」

勇者「おや、何か後ろめたいことがあるので? 僕には見当がつかないが……」

エルフ三男「この状況でわざわざ僕を追ってくるという事は、そちらには何らかの手掛かりがあると考えられますが」

勇者「とんでもない。前科者の総大将に当たりをつけてきただけですよ」

エルフ三男「(ウソだな。チビの茨木による僕への何らかの誘導作用はあったにせよ、このガキが僕を追う事にした決め手は他にある筈だ)」

勇者「(連合を通し、あの女がネキリを誤作動……それが本当に誤作動かどうか、今は確かめるすべはない。
理由なき災厄を振りまくのがアジ=ダハーカの常道……内通するこの男が関与していないとも考え辛い。
そもそも、放置しておく理由もない……ここで殺してしまっても、別段大きな問題はなかろう。あの邪魔な巨人のように……!!)」

エルフ三男「それでは、今回はなんの確定材料もなく僕を追ってきたので? ひどい話だ」

勇者「自分が今まで何をしてきたか思い出してみるんだな」

エルフ三男「はて……愛する女性の入浴を覗いたのは一回きりです。命を取られるほど重い罪なのですか?」

勇者「そうさ。あの女を愛しているなんて、どうかしている。あの女に毒されてしまったんだ、あなたは。もう手遅れだよ」

エルフ三男「ああひどい、なんと傲慢な。大勢の怪我人を尻目に、ノゾキの罪しかないの断罪を優先するのですか」

勇者「価値があるのは未来だ。善き未来の為には、禍根を断ち切るために努力する必要がある。
僕の仕事は、お前達という大陸の癌を斬り殺す事なんだよ」

エルフ三男「まるで、先の爆発は僕を殺す為にあったような言い草ですねぇ」

勇者「あれに巻き込まれていてくれれば、大勢の怪我人の下に迎えたんだ。手を煩わせるなと言っただろ?」

エルフ三男「あなたも大概クソッタレなようだ、ロクな死に方しませんよ」

勇者「(ネキリの事は……知っていると思っていいな。鬼どもとつるんでいて、知らない筈はない……)」

エルフ三男「(自意識は過剰な方が丁度いいのか? まさか、ネキリとやらを本当に僕にぶつけるつもりだったのか?)」

勇者「それでは……何か、言い残す事は?」

エルフ三男「(デュランダル……勇者の聖剣か……)」

勇者「(出資者兼ブレーンを潰せば、残るは死に体も同然。アジ=ダハーカに向けてのチェックメイトだ……秩序に刃向う屑どもが!!)」

エルフ三男「何が救世の勇者だよ、ざけんじゃねぇぞボケナス。僕にとっての光を愚弄した時点で、テメェはオレにとっての悪魔なんだよ。
二十年も生きてねえガキが、チャチな正義感振りかざして万人の哲学に潜り込んでどうこうできると思ったら大間違いだ。
人の信仰に口出しするヤツァ、神でも救世主でも勇者様でも何でもねえ。ブッ殺すべきケンカ相手に過ぎねえんだよ」

勇者「……」

エルフ三男「信じる者は救ってやる、信じないお前らは死ね。この枠組みを取っ払ったような虚言で民衆をだまくらかしやがってよぉ。
もう一度言ってやるぞ、他人の教義にドロかけたテメェは勇者様でも何でもねえただのクソガキだ! 死ねバーカ!」

勇者「耳長のクソジジイが死に際に調子こいた事言ってんじゃねぇぞ!! 老害のくせに声がでけぇんだよ!!」

エルフ三男「……!?」

エルフ三男「がふっ!!」

姉「か、閣下ぁ……閣下、閣下、ねえ……」

勇者「あの女に関わると、そこまで厚かましくなるのか……お山の大将とはいえ、今まで社会的な生活を送れていた事を不思議に思うよ」

エルフ三男「ゲホッ……ガホッ……」

勇者「この老害が……世紀をまたいだ老人にはろくな奴がいない。状況もわかってねぇくせに、自分の物差しが絶対だと信じ込んでいる。
井戸の底から空を見上げて、それが世界の全てだと豪語している。哀れを通り越して殺意を覚えるよ。老人はクズだ」

エルフ三男「クク……ガキがいきってんじゃねェや」

勇者「劣化したテメェの脳細胞が処理できるように簡単に言ってやる。ろ・う・が・い。
役に立たない、周りを腐らせる、足並みをわざと乱れさせる、すすんで他人の嫌がる事をする社会のゴミだ」

エルフ三男「(本気で……みぞおち蹴っ飛ばしやがって……!!)」

勇者「おい老害、死ぬ前に愚痴らせろよ老害。おい老害。聞いてんのか老害。まだ死ぬんじゃねェぞ老害。
若いうちから老害のおつかいばっかりさせられてさぁ……ウンザリなんだよ、老害に持ち上げられても嬉しくねぇしよぉ」

エルフ三男「ガキは……大人の言う事聞くもんだ、クソガキ」

勇者「自分達の気持ちわりい皺だらけのツラの代わりに、勇者の僕を顔役に使うんだ。
まわりは枯れた老害だらけ、会う先々でも老害老害。こうしてそれなりの立場に就いても、老害の世話は続く。
何が旧魔王軍だクソが……何が勇者だよバカバカしい!! ザッケやがってよぉー!!」

エルフ三男「産まれの……不幸を恨むんだな、勇者様よお」

勇者「枯れ枝風情が!! 僕に、指図、するんじゃあ、ない!!」

エルフ三男「がっ、がほっ」

勇者「挙句の果てには、アジ=ダカーハ。僕と魔王の邪魔をする悪鬼に与するのもまた老害のお前だ。
忌々しい、忌々しい、忌々しい……一族を断絶させてやっても気が済まん、ヤツの末代まで殺し尽くしてやる……」

エルフ三男「(まさか……こ、この女も殺す気か……!?)」

姉「あのぅー、怒ってるの? 閣下、勇者さんを怒らせちゃったの?」

勇者「……」

エルフ三男「逃げろ女!! 殺されるぞ、走れ!!」

勇者「声のでかい老害は嫌いだと言ったはずだ」



エルフ三男「ぎっ!?」

勇者「……アジ=ダハーカの……血縁……大将閣下、これはやはり……」

エルフ三男「(肩が……外された……!!)」

姉「ど、どぉして? わわ、わたし、こ、殺されちゃう? ごめんね、たぶん私が悪いの。わたし、頭あんまし良くないから」

勇者「癪に障る喋り方だ。中身を伴わせるのは無理だろう、少しは魔王のように聡明に喋ってみろ」

姉「ん……なあに?」

勇者「あの女の猫撫で声にそっくりで不愉快だ……耳障りなんだ、よっ!!」

姉「ぎゃっ!!」

エルフ三男「(この男……!!)」

姉「ふ、ふぇぇん、ど、どおしてこんな事するのぉ、痛、痛いぃ、お顔痛いぃ」

勇者「そうやって何人の罪のない人を誑かしてきた? お前もそこで床舐めてる老害と一緒だな、クソアマめ」

姉「やだ、やだぁ。へんな事しないでえ、乱暴なのはやあ、やなのお」

エルフ三男「バカ……女……!!」

姉「たすけてぇ……たすけてぇ、バルムンクさぁん……こわいぃ……」

勇者「な……!?」

勇者「……僕に、何した?」

姉「ふぁぁぁ、いやぁ、やめてくださぁい……かんにんしてぇ」

エルフ三男「(女の提げている剣がひとりでに抜けた……!? そのまま、柄頭でガキを突き飛ばした……!)」

勇者「バルムンク……? そう言ったのか、答えろよ!!」

姉「ひい……も、もう嫌……たすっ、たすけて、バルムンクさん、お願いぃ……」

エルフ三男「女、剣を抜けッ! そいつは……そいつはお前の御守り神だ!!」

姉「お、おまもり? バルムンクさんが?」

エルフ三男「こわいものからお前を守る御守り神だ!! 抜け!!」

勇者「バル……ムンク……五柱の……勇者の……?」



姉「わ、バルムンクさん、きれい……」

エルフ三男「(黄金の柄……群青の宝玉……そして、あの輝く刀身……模造品ではない、この凄み……本物の聖遺物!?)」

勇者「お前が……五柱……!? お前みたいな老害が……」

エルフ三男「バカが!! 引っかかりやがって、テメェみてえなケツの青いガキなんざ、デュランダルぶらさげてようが勝ち目はねぇんだよ!!」

勇者「この……!!」

エルフ三男「それとも演説で想像力がオシャカか!? この路地じゅうにオレが逃げてる最中に買収した浮浪者がいて、
テメェの暴露の証人になってるだとか考えも及ばなかったのか? オレを脅した時点でテメェの負けだ、この殺人未遂犯がよぉ!!」

勇者「デタラメ言ってんじゃねぇーぞ!!」

エルフ三男「なにも浮浪者じゃねぇかもしれねえ、テメェが知らねえだけでオレの部下がいるかもしれねえなあ!!
おっと、また暴言だ!! 一字一句書き取らせてるからなぁ、救援活動ほっぽって、ご趣味の殺人に励んでおられましたってなあ!!」

勇者「ぐ……!!」

エルフ三男「彼女はいわば保険だよ保険、キの字に刃物とはよく言ったもんだ、
デュランダルなんつーあぶねえもん振り回したバカ相手する為の保険だよ! まだ因縁つける気か?
リスクでけぇよなぁ、五柱の勇者同士でやりあうのはよぉ!! どうすんだ? やんのか、やんねぇのか!?」

勇者「この……このゲス野郎ォォがッ!!」

勇者「すまない。作業に合流する」

ケルベルス「どこで何をしていた、しかもデュランダルを使うとは……」

勇者「大した事じゃあない、結局デュランダルも使わなかった。崩れたがれきから声がしたかと思って」

ケルベルス「……なら、いいんだが。いつまでもガキのつもりでいるな、お前はもうクラン内でも相応の責任を持っているんだぞ」

勇者「申し訳ない。今後は気を付ける、本当にすまなかった」

ケルベルス「オレからとやかく言うつもりは無い、引き続き救援の指揮にあたれ」

勇者「ああ、押しつけてしまって本当に悪かった」

ケルベルス「……」



ケルベルス「『デュランダルは使わなかった』ねえ……」

ケルベルス「こちらとしても、全部を容認しておくわけにはいかねェんだよ……」

ケルベルス「信じてやりてぇのはヤマヤマだが、ウソつくならばれねえウソついてくれよなぁ……
オレ、言ったよなぁ。オレの側からも飛行隊を出すってよォ。どうしてあの切れ者が見えてねえとでも思ったんだか……」

エルフ三男「(うおおおおおおおおおおお)」

姉「ふぇぇぇん、ふぇぇぇぇん」

エルフ三男「(ヤッベェェェェ、マジで死ぬかと思った、マジで。500年で五本の指に入るくらいヤバかった)」

姉「閣下ぁ、閣下おきてぇ、閣下ぁ、肩がいたいの? 肩? おんぶしてあげるからぁ」

エルフ三男「(三国による開発が盛んな国境線沿いに浮浪者なんているわけねぇ、いたとしてもジプシーくらいのもの、
食うに困る程に飢えた路上生活者なんざ飢饉が起きた時くらいにしか出ねえ……あのガキの土地勘が無かった事が幸いした……)」

姉「閣下ぁ、閣下ぁ」

エルフ三男「(オマケにごく少数の近衛の付き人も駅前で待機、SPも離れさせてる状況……
完璧にハッタリだハッタリ、孤立無援で、しかも無能オブジイヤーのクソ女しかいなかったんだからな……)」

姉「ねえ、閣下ってばぁ」

エルフ三男「痛い! いたいいたい!! そっちの肩ですそっちの肩!!」

姉「あーうー」

エルフ三男「(……疲れた……200年は寿命縮んだ……あークソ、でもまだ爆発……ネキリの騒ぎは収まってねぇのか……ちくしょう……)」

妹「オギャッ!!」

ティタニア「動くな。抵抗をやめろ」

妹「ひ、ひやあああああ、ひ、ひでえ事しやがってよぉぉー、ふ、ふくらはぎに穴あけやがったァァ……」

ティタニア「取り押さえろ」

ゴーストアーマー「はっ!」

オーク騎兵「はーいはい、大人しくしろなー」

妹「痛ッ、痛ぇぇッ、やめ、離せえ!! あ、足にクロスボウの矢がブッ刺さってんだぞッ、乱暴すんじゃあねえッ!!」

ティタニア「16時20分、容疑者を確保……」

妹「ハァ!? よ、容疑者……何言ってんですかぁ、私、何かしたって言うんですかぁ?」

ティタニア「東方連合国憲法修正第五条。ひとつ、あなたには黙秘権がある。ひとつ、これからの供述は、
法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。ひとつ……」

妹「話を聞きなさいなァ!!」

ティタニア「あなたには弁護人の立会を請求する権利がある。ひとつ、自ら弁護士を立てる事ができなければ、公選弁護人を付ける権利がある」

妹「だ、黙れ……黙れえッ、うるせーぞッ、ハエ女がッ、私を誰だと思ってんだ!! 私は……」

ティタニア「北西では必ずやってる警告なのよぉ、良心的でしょお?」

妹「私はアジ=ダハーカの血縁だぞォ!? どうなるかわかってんだろうなぁ、てめぇら皆殺しだぁ!! 離せ、離しやがれ!!」

ティタニア「あらそー、怖いわねぇー。お話しはブタ箱で聞きましょうねぇー」

敵兵「……」

妹「ど、ど、童貞中尉よぉー、こっち見ただろテメェ!! テメェなら小姉様の怖さは知ってんだろ、こいつらやめさせろォ!!」

敵兵「ああ、そうですね……」

妹「ふざっ、ふざっけんな、ザコども……あ、あたし知らねえ、あたしゃあ何もやってねェーぞォ!?
あたしゃ悪くねぇ、あたしじゃなけりゃアジ=ダハーカだ!! あのクズ女がやったんだ、そうに違いねえ!!
離せ離せ離せ、離せよ痛ぇぇんだよ!! あたしゃ悪くねぇ、あたしを誰だと思ってやがる!! ざけんじゃねーぞ魔物どもがあ!!」

リンドヴルム「……」

女騎士「ふぁー」

息子「ふぁー」

娘「ふぁー」

ほ子「ふぁー」



騎士ほ「はぁ……女神と天使たちが、まどろみのなかでする欠伸……美しいですわ、可愛らしいですわ……」

エルフ近衛兵「ほんっといい所ですよねー、ここ。あったかいし空気もおいしいし」

騎士ほ「ハイエルフどもも一掃したし、避暑地にはもってこいですわね……別荘でも建てようかしら……」

エルフ近衛兵「いいお考えですな! 共和国もこんな僻地が観光地に相応しいとは夢にも思いますまい!」

騎士ほ「フクク……おうい古竜!! 寝たふりしてるんじゃあない!!」

リンドヴルム「む……」

騎士ほ「どうだね! 愛する妻と子供を、その軽やかな体毛で抱きとめる快感は!!」

リンドヴルム「……」

騎士ほ「フククク……! 貴様は彼女に認められつつあるんだよ、この私が保証してやろう!!
6年にわたる献身、私の目から見ても天晴なものだぞ! 彼女の罵倒は愛情表現でもある、わかるな!!」

リンドヴルム「……」

騎士ほ「どうした、恥じる事などないぞ!! 幸福だと、一言でいいから言ってみろ!!
紆余曲折あれど大した事ではない、ちっぽけな人間だとしても人生とは山あり谷ありなのだ!!」

リンドヴルム「わた……わたしは……」

騎士ほ「愛する者への注力は、生物の本能に基づく尊ぶべき美徳(ウィルトゥース)だ!! それを咎めるカミなぞ信じるな!!
貴様の愛する者こそがカミなのだ!! ガリアという苔生した僻地に縛られるほど、エルダーは矮小な存在ではないだろう!!」

リンドヴルム「認……める……認めるよ……」

騎士ほ「さあ古竜よ、高らかに愛を叫ぶがよい!! そして……」

リンドヴルム「わたしは今……幸せなのだ……」



騎士ほ「そして……お姉様の為に、これからも馬車馬のように働き続けよ……フクク、フククククク……!!」

第8部 ガリア=ベルギガ編 死

                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ 

第8部 ガリア=ベルギガ編 誤へ

                                       ー- 、 ー-、``/  
                                      _, '  ._, '  \  
                                    -------------------
                                     制作・著作 NHK



何故だろう、実際には女騎士ちゃんのがゲスイこといっぱいしてるのに勇者の方がクズな気がしちゃう

やっぱり受験は大変だったのね

今回で逆に勇者に共感できるようにんったのだが少数派か…

アジ=ダハーカの存在なんて一部の奴しか知らんわけだし、勇者達は三男が内通してるって確信してるけど表沙汰にはなってない
今回の勇者の行動は無関係な中立国首領を聖剣で脅迫した上に同伴してた一般女性に暴行加えたってことにしかならんだろ
おまけに所属組織を老害呼ばわりしたわけだから社会的に死亡確定

>>620
アレだけの腐臭に晒されて清く正しいままとか
そっちの方が胡散臭さいわな
>>614
勇者もかなり闇堕ち寸前だけど
女騎士ちゃんの方が勇者よりマシみたいに言うなら
そいつは流石に頭オカシイ
>>623
勇者もまだまだ中途半端なんだよね
有無を言わせず後ろから切り捨てて放置で調度良いぐらいなのに
未だ建前に拘ってgdgd

勇者程度で屑認定されるなら
女騎士ちゃんは何のカテゴリーに入るのか興味ある

勇者・100点では無い(不正もする)から0点
女騎士・0点では無い(評価すべき面もある)ので80点
な感じかね?

理想論振り回す奴が
しばしばガチ悪党より嫌悪される理由って何なんだろう
勇者サイドは少なくとも詐欺師では無いだろうに

例えば、仕事を出来もしない奴にグダグダと文句を言われて気分が良いか?
言うだけなら誰でも出来るし判ってる、実際に目の前で示せれば問題ないけど
出来てない挙句に否定してた事すらしてる時点で文句を言う資格が無い

理想論者がガチ悪党より嫌われるのは、他人に強要するのもある
人の精神てのは面白い構造をしていて、好きでも無い相手や見ず知らずの相手に強要されるとストレスを感じるようになってる
しかし、逆に人名救助や避難時、専門家による物の扱い方を教える時などは強要されてもある程度ストレスが少なくなる
実際に行動を示したり、その行為自体に実績がある訳だからだ

>>636
なまじ反論出来ないだけに悪逆無道の輩より煙たがられると
「真っ当に生きる」のが如何に難しいか、って事ですな

>>638
反論も何もないよ
実績もない、行動を示してるようでその実は否定してる奴等と何一つ変わらない失笑物だ
勇者一行は大言だけを言って扇動する嘘吐き野郎、女騎士は大言だけじゃなく実績を残してる
他人が人を判断するにあたって、性格なども大事だろうけど実績を残してるか残してないか

例えば>>638が会社を左右するプロジェクトを任せる人事になったとして
ルール違反何度かしてるけど実績を残しまくってる社員A、ルール違反していながら実績が何一つない口だけの社員B
どちらを信用する?会社を世界、人事を国のお偉いさん、社員Aを女騎士、社員Bを勇者に置き変えると良い

もしBがルール違反もしてないで実績を1回でも叩き出してるなら、Bに任せるだろうけど
価値観は人によって千差万別、それを他人に強要をする理想論者は一種の極悪人だよ

>>642の基準で言うなら
勇者・口ばっかの新米社員
女騎士・恐喝横領殺人なんでもござれのガチ犯罪者、存在がバレた時点で会社終了

女騎士ちゃんってリアルで例えるなら
得意先担当者の娘レイプして
それをネタに脅迫して契約とるタイプかと

長文の割に「口ばっかりの理想主義」と「裏では手段を選ばない」としょっぱなから矛盾ラッシュなのが笑える
女騎士にいくら握らされたんだ

美少女(子持ち)
ダーク(ズ)ファンタジー
王(様もぶち[ピーーー]外)道

ところでスレタイのおばあちゃんはまだか
長いこと全裸で風邪を引きそうなのだが

クソ、こんな事なら靴下を履いておくべきだったか

         メ _|\ _ ヾ、
       メ / u 。 `ー、___ ヽ

      / // ゚ 。 ⌒ 。 ゚ u  / つ
     / //u ゚ (●) u ゚`ヽ。i l わ
     l | | 。 ゚,r -(、_, )(●) / ! ぁぁ
     ヾ ! //「エェェ、 ) ゚ u/ ノ あぁ

     // rヽ ir- r 、//。゚/ く  ああ
   ノ メ/  ヽ`ニ' ィ―' ヽヽヾ  ぁあ
   _/((┃))_____i |_ ガリガリガリガリッ

  / /ヽ,,⌒) ̄ ̄ ̄ ̄ (,,ノ   \
/  /_________ヽ  \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


           _|\ _
         / u 。 `ー、___ ヽ
        / ゚ 。 ⌒ 。 ゚ u  / つ
       /u ゚ (●) u ゚`ヽ。i  わ
       | 。 ゚,r -(、_, )(●) /  ぁぁ
     il  ! //「エェェ、 ) ゚ u/  あぁ
 ・ 。  || i rヽ ir- r 、//。゚/ i   ああ
  \. || l   ヽ`ニ' ィ―'  il | i  ぁあ
 ゚ヽ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ダンッ

。 ゚ _(,,) よくも騙したな  (,,)_ / ゚
 ・/ヽ|             |て ─ ・。 :
/  .ノ|________.|(  \ ゚ 。
 ̄。゚ ⌒)/⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒ヽ\  ̄ 。


12月4日現在 作成:魔王軍在東帝総務部広報課


12月1日

15:20 旧帝国西部領・旧首都シュティレンヒューゲル西部上空にて巨大隕石が爆発。4日現在、隕石の規模は直径約100メートルと推定
    爆発の衝撃によって発生したと思われる地震も確認されている(在東帝魔王軍国境警備隊調べ)

15:52 東帝・東方連合臨時政府首相を本部長とする災害対策本部を設置。
    被害規模、死傷者救助を被害予想地域全域へ指示。公共施設解放等の被災者支援プログラムを各地実施

16:15 東方連合情報庁、北方共同体および北西諸島連合王国政府へ正式支援を要請

17:32 東帝国境線中央市街地域内での死傷者数が三万人を突破、医療施設における備蓄の不足が各地で発生

18:14 魔王軍所属飛行部隊、ならびに共和国軍を中心とする調査隊による被害規模の推定記録調査書が発表。
    窓ガラスの破損等軽微なものを除外した範囲は半径1400㎞、全壊建屋はシュティレンヒューゲル市内のみで900棟超

18:48 北西諸島連合王国外務省、高等竜種との共同派兵を決定。災害対策支援部隊を編成

19:32 死者、行方不明者が10万人を突破

20:02 共和国軍国境駐屯部隊、南部王国領内を拠点に救助活動を開始

20:52 連合・魔王軍による支援物資搬入が開始。国境沿いにおける収容体制は尚も苛烈をきわめる

21:49 西帝における主要インフラの被害額が今年度共和国予算歳出額の五倍強と推定される

23:21 北西諸島連合王国軍航空部隊、共和国沿岸へ到達

12月2日

05:30 魔王軍・拝火神族首相、72時間の壁を各支援部隊に向け強く提言。自らの被災地入りも仄めかす

10:15 北西諸島、被災区域西部へ到着。共和国各機関と合流し救援活動を開始

11:23 北部神族、レギンレイヴ魔王軍常任理事代理を通しラジオで被災地への全面的支援を発表

13:30 死者、行方不明者15万人を突破

16:45 南部王国国境線沿いにおいて、収容されていた被災者数人が下痢、嘔吐を訴え医療機関へ収容
    当該施設での診断の結果、チフスへの感染を確認。隔離・消毒対策が取られる

17:30 帝国内河川の氾濫が確認。旧帝国の杜撰な護岸工事を元とする二次災害と思われ、水銀を含んだ汚染水が各地へ流入

19:12 共同体側国境線沿い市街において、破裂したガス管から引火、大規模な火災へと発展。死傷者は200人前後にのぼった

20:00 二次災害を含んだ死者、行方不明者18万人を突破(共和国災害対策本部調べ)

12月3日

02:15 東帝国境線地区内で女児のチフス感染者が発生。魔王軍医療機関によりただちに隔離

02:40 ティタニア常任理事を中心とする部隊による公衆衛生の改善を目的としたチームが編成

05:21 西帝北部国境線沿い地域において、暴徒と化した被災者による公共施設襲撃が相次ぐ
    首謀者は被災者を煽り二次被害を拡大させようと画策するも、北西諸島ドラグーン部隊によって射殺される
    本日、首謀者の男性が共同体右翼政党に傾倒する過激派である事が判明

07:30 教皇領、領内への被災者の受け入れを表明。南部王国内敷設鉄道を利用したピストン輸送により行われる予定

隕石が爆発かー、怖いなー
その隕石は爆発するレアメタルでも積んでたのかと
この世界じゃ隕石云々、宇宙とかの研究は進んでないし問題ないよね!

>首謀者は被災者を煽り二次被害を拡大させようと画策するも、北西諸島ドラグーン部隊によって射殺される
>本日、首謀者の男性が共同体右翼政党に傾倒する過激派である事が判明
まさか童帝大将?

そんな癒しな存在ならば、例え虫との子どもを大量に膿んでても癒しだよね!

チビ将校「閣下……閣下、閣下! こちらですぞ、閣下……」

エルフ三男「……」



チビ将校「いや、冷え込んでまいりましたな。こんな時こそメリフェラや南部王国で冬を越したいものですが」

エルフ三男「ええ、まったく……」

姉「おなかすいたー」

チビ将校「おお、気が利かんで申し訳ありません。すぐに何かあたたかい物をお出しいたします」

エルフ三男「助かります。白湯のようなシチュー一杯の為に炊き出しに参加するなどごめんですから」

姉「……あー、閣下……ごめんなさい、お服よごしちゃった」

チビ将校「御召し物もご用意しますかな?」

エルフ三男「ちっ……さっきのコジキの血か。病気でも持ってたら事です、着替えさせてもらってください」

姉「はあい」

チビ将校「血……?」

エルフ三男「心配しないで。死体は雪で埋もれるでしょうし……この状況です、射殺など茶飯事でしょう」

チビ将校「三国の駐在兵が目を光らせていてもそんな有様ですか」

エルフ三男「少しは娘さん達を連れて散歩でもしてきたらいかがです? 寒さで目が覚めますよ」

チビ将校「いやいや……可愛い愛娘にもしもの事があってはかないませんので」

エルフ三男「(猿人の割に、性の嗜好がインセクトリアン……なかなか見る所があるな、パイプを作っておいて正解だった)」

エルフ三男「被災してから二、三日、ほとんど路上に放られていましたからね。いざこざのお蔭で肩を壊しまして……」

チビ将校「それで、その三角帯というわけですか。災難でしたな」

エルフ三男「応急処置を受けている最中にも、連れがフラフラどこかに行ってしまうもので。胃痛がおさまりませんでしたよ」

チビ将校「しばらくはここでお休みください、ひと月ぶんの備蓄はございますので」

エルフ三男「恩に着ます」



養女「とうさま、おしょくじはおさかなにいたしましょうか。それとも……」

チビ将校「お客人には体力を付けて頂きたい。塩で絞めた熟成肉が地下にあるから、それを使いなさい」

養女「はい、とうさま」

エルフ三男「……驚いた、てっきり性処理の為の便器扱いをしているかと思いましたが」

チビ将校「私が? とんでもない……立ちんぼのメスどもではあるまいし」

エルフ三男「ははは、下半身産業で外資を稼いでいる僕らエルフの目の前でそれを言いますか」

チビ将校「それは、その……いやはや、申し訳ありません。
しかし、エルフの皆さまがたと我々猿人の女どもは比べるまでもなく大きな差が……」

エルフ三男「別に怒っちゃあいません、すこしイジワルをしただけです。
可愛がっていてくれているようでひと安心ですよ、メリフェラに対する僕の顔も立ちます」

チビ将校「便宜を図って頂き、感謝の言葉もございません。
国内ではケンタウリの人権屋が幅を利かせるばかりで、節足人種の進出は遅々として進まない……」

エルフ三男「さぞ、あのフカフカの尾腹の魅力に取りつかれたのでしょうな」

チビ将校「彼女の魅力を語らせれば、今夜一晩では終わりませんぞ」

エルフ三男「(変態相手の商売はこれだからやめられねえ)」

エルフ三男「巨大隕石が爆発……ねえ」

チビ将校「『大いなる試練の到来』『悪魔の矢が帝国を貫く』……東帝の新聞一面です。
一方、こちらは北西諸島の。いささか右翼に傾いたものですが……『神の鉄槌くだる』『後進国への神罰か』」

エルフ三男「器用な隕石ですな。まるで研磨したかのように、大地をきれいに削り取っていくなど」

チビ将校「十中八九、原因から事実に何らかの圧力がかかっている。閣下もそうお考えで?」

エルフ三男「字の読み書きができて且つ、最低限の頭があれば誰でもわかります」

チビ将校「……お察しの通り、大衆紙やサロンではそのような陰謀論がまことしやかに囁かれているようでして」

エルフ三男「何でもかんでも陰謀論で片づけるのは、あまり好きじゃあありません。思考停止は一番してはいけない事です」

チビ将校「失礼。おっぱじめる寸前に死んだあのハゲがよく口にしていたもので」

エルフ三男「(何だそれ面白すぎるだろ)」

チビ将校「しかし、それでは何でしょうか。連合の新兵器の実験か、それとも、北西のエルダーの乱心か。
もしかすると、本当に神々の逆鱗に触れた者たちへの天罰?」

エルフ三男「……それとも、薄汚い魔物どもの仕業か」

チビ将校「だとすればお笑いぐさです。絵に描いたようなマッチポンプではありませんか」

エルフ三男「バカですからね。何にせよ、どうにかしてアルヴライヒ……もしくは共和国に出たいところです」

チビ将校「例の検疫……ですかな」

エルフ三男「古めかしい感染症が今になって猛威を振るっていると聞きます。さっさとこんなところからはおさらばしたいのですが」

チビ将校「上下水道の処理機能劣化が祟ったのでしょう。躍起になって出入国に制限をかけていますな」

エルフ三男「電話線も寸断、郵便もアウト……ああ、僕らが何をしたって言うんでしょうかねぇ」

チビ将校「仰る通りです」

チビ将校「バルムンク……? 帝国に伝わる叙事詩に登場する聖剣ですか」

エルフ三男「そして、大陸の勇者信仰に関連する聖遺物でもある。あの彼女が提げていた剣がそれだったらしい」

チビ将校「俄かには信じ難い……」

エルフ三男「僕とて今でも信じられませんよ……婚約者が伝説の聖剣を嫁入り道具に持ってくるなど!」

チビ将校「しかし、それで閣下は窮地を脱する事が出来たのでしょう? その……勇者に追われていたとかの」

エルフ三男「目の前で鞘から飛び出すのを見れば、タダのなまくらでない事は信じざるを得ません。
あの状況でトリックなど仕掛ける余裕なんてない、ましてやあのおとぼけブロンドにそんな器用なマネはできないでしょうし」

チビ将校「……仮にあれが本物だとして、そもそも彼女はどこでバルムンクを手に入れたのでしょうな」

エルフ三男「どこで……」

チビ将校「御存知の通り、彼女はあのアジ=ダハーカの実の姉……公表されておらず、裏付けもされてないゴシップとはいえ、
6年前の東西分割以降は、皇族と同じような軟禁を強いられてきました。こうして閣下と外出ができるようになったのも、つい最近の事なのですよ」

エルフ三男「予想できる事柄としては……彼女の下いたポストのある情報部のバックには連合情報庁がいる。
教義を信仰する東方教会のシンパが、帝都占領時に偶然バルムンクを発見。回収し、彼女へは護身の為に……」

チビ将校「……」

エルフ三男「……持たせるわけがありませんね、寒さで頭がやられたみたいだ」

チビ将校「お忘れですかな、彼女……彼女の子どもは何人いるか覚えていますか?」

エルフ三男「17人」

チビ将校「なぜ、そんなにも彼女は出産を繰り返す必要があったのか。
単に体の頑強な色情狂という可能性も……まあ、無きにしも非ずでしょうが」

エルフ三男「……最初こそ共和国の軟派男であれ、以降のガキの父親は東方の富裕層……だとでも?」

チビ将校「そう考えれば、バルムンクが彼女の手に渡った理由や、過剰なまでの軟禁が行われたわけも説明できませんか?」

エルフ三男「……」

エルフ三男「それなら、連合は血眼になって彼女を探していそうなものですね。教会が勇者の一人であると崇め、
聖剣までアトリビュートと言わんばかりに持たせておいて、つまらん隕石の爆発で死にました、なんて言えませんでしょうに」

チビ将校「少なくとも、彼女はともかくバルムンクをそのまま放棄するとは考え辛いですな」

エルフ三男「(……あのレストランで護衛を買収して撒いた事はあながち間違いではなかったという事か)」

チビ将校「ですが、やはりこの惨事の説明がつきませんなぁ……結局のところ、何なのでしょうか。
連合の新型爆弾とでも言ってくれれば、まだ納得が行きますのに」

エルフ三男「わざわざ主要三国とも自然災害のように見せかけているところを見ると……
救援が開始されるはるか以前の段階で、いずれかの二か国の間で談合でも組み上がったのではないでしょうか。
最速で、事件の当日……特に、魔王軍による諸国への要請は異常なくらいスムーズでしたし、それに……」

チビ将校「ふむ……」

エルフ三男「ああ、どうも僕なんかは原因を人為的なものに持っていきたくてしょうがないようです。忘れてください」

チビ将校「左様で。夜も更けてきたようですし……夕食を召し上がったら、早めにお休みください、閣下」

エルフ三男「そうさせてもらいます。すみません、お世話になります」


エルフ三男「(間違いなく、ダキニや鬼どもが言っていたネキリ……だな。
魔術など今でもほとんど信じていないが……連中が指向性を持たせて運用できるとなると厄介だ。
やはり、あの幕府のチビガキ……もっと早い段階でくびり殺しておくべきだったか)」

エルフ三男「……」

姉「……」

エルフ三男「どういうつもりだ。僕にそんなつもりはないぞ」

姉「はぇ」

エルフ三男「自分のベッドに戻れ、早く寝てしまえ」

姉「……」

エルフ三男「だから、やめろって言ってるだろ」

姉「ええと、ええと、やめるんですかあ。お部屋暗いのに」

エルフ三男「僕は夜這いを仕掛けてくるような安い女に童貞は捧げないぞ」

姉「でもお、みんなこうすると喜んでくれたよお」

エルフ三男「みんなとはどのみんなだ、自分の認識だけが全てだと錯覚するバカ女め。もっと視野を広げろ」

姉「それに、わたしは閣下のフィアンセだから!」

エルフ三男「(くそ……なまじ騎士様に顔は似ているから殴るに殴れん)」

姉「閣下、おいしいもの食べさせてくれるし、お洋服いっぱい着せてくれるから、好きだよお」

エルフ三男「(騎士様の血縁でなかったらそんな事するものか)」

姉「こんなにわたしと遊んでくれる人、閣下がはじめて! はじめて男の人の顔、覚えたよお」

エルフ三男「そいつはどうも」

姉「いつもはね、みんなお顔はフードとかマスクとかで見えないの……してる最中はぶつし、あついし、いたくてこわいの」

エルフ三男「その顔で次に下世話な事ほざいたら本当にぶん殴るぞ」

姉「ひやああああ」

エルフ三男「(これが目も当てられんブスだったらバルムンク奪って殺してるんだがな……)」

デュラハン「正気ですかッ、勇者様!?」

勇者「いたって正気だ。予定通りの日程でガリア=ベルギガ地方へ聖地探索に向かう」

ゴーストアーマー「まだ被災者は増えます、あなたがここを離れては……!!」

勇者「僕が離れて、何か問題でもあるか? 僕の細腕では、ガレキの一つも持ち上がらないのに?」

デュラハン「そういう問題ではありませんわ、あなたは……あなたは勇者なのですッ、それなのに……」

勇者「だから、僕がこの場で手をこまねいている事で何人の民が救われるんだと聞いている。
僕は合理的に動きたいだけだ、今アジ=ダハーカが行動を起こしたらどうする? 今以上に被害が出るぞ」

ケルベルス「……」

レギンレイヴ「い、言いたい事ァわからんでもないけどさァ……」

勇者「今だからこそ、任務を分割して多面的に行動しなくてはいけない。アジ=ダハーカの討伐は、
救助活動と並行して行うべきだ。代替案があるなら教えてもらいたい」

レギンレイヴ「だ、代替……」

勇者「アジ=ダハーカという狂犬を野放しにし続けて! 追跡を中断した結果、何かあったら!?
キミ達は、その対処ができるというのか!? 僕たちが流動的に動かなくてどうする!」

セベク「……」

勇者「(都合が悪くなればこうだ……替わりの案も出さず、ただ無計画に騒ぎ立てるのみのカスども……!!)」

勇者「それに……僕らは依然として有利な状況にはない。連合の側からあの悪魔の妹についての追及があれば、
僕たちの立場は一晩のうちに崩れる事もありうるんだぞ!? 中世期の混乱に逆戻りしたいというなら……」

レギンレイヴ「(誰か反論しろよ……特に理由はねえけど反対しとかねぇとカッコ悪いだろ)」

勇者「かの霊鳥ガルーダの眷属を一撃のもとに屠るほどの戦力を、あなた方は現状の戦力で相手にできるというのか?」

戦士「(げえッ!!)」

賢者「(そ、そこまでバラしちゃう!?)」

セベク「ガルーダ……!? どういう事だ……!!」

勇者「後に彼女から発表させる」

僧侶「」

敵兵「やっと俺達のぶんのメシにありつける……ありがたいもんだ、しっかり面倒みてくれるなんて」

ピクシー「昼ごはん食べられてなーいー!!」

ブラウニー「労組に訴えなきゃ……三食食べられないなんて人権侵害だ……」

敵兵「妖精さん贅沢すぎィ!!」

ブラウニー「社畜根性きっもーい!! 贅沢しなきゃエライとか思ってそうできっもーい!!」

ピクシー「あらあら立派でぶっとい鎖ですことー!!」

敵兵「こちとら朝も早よからオークさん達と混じって土嚢だとか石鹸だとか消毒用アルコール運んできたんですよァ!!」

ブラウニー「ご苦労さんでした」

ピクシー「じゃあそのままガリアで秘密兵器探してきてください。あるかどうかもわかりゃしませんが」

敵兵「は……」

ブラウニー「ティタニア理事からの指示です、勇者様のお手伝いをしてこーいって」

敵兵「ガリアって……こんな時にですか? すごい周りから文句言われそうなんですけど」

ピクシー「まあ、今回の件がアジ=ダハーカとは無関係とは誰も言いきれないですし……躍起になるのは納得いきますよ」

ブラウニー「そんな極悪人が大陸中を遊びまわってるのっておっそろしー状況よねー」

敵兵「……とりあえず、今は休ませてくださいよォ」

ピクシー「どうせ極東のセフレのところ行くだけじゃないですか」

ブラウニー「あらやだお盛ん」

敵兵「おれは童貞だ!!!1!!」

ティタニア「……」

敵兵「(なんかスッゲー疲れてる・・…隈だらけやん……)」

ティタニア「ああぁ。おはよぉぉぉ」

敵兵「御疲れ様です、かなり辛そうですが……」

ティタニア「こちとら当日から2時間しか寝てねーってのよぉ……つれーつれー……マジ寝てないからつれーわー……」

敵兵「(マジで寝てないんだろうなぁ……)」

ティタニア「でぇ……あぁ、あなたガリア遠足組だったわねぇ……明日の1100……共和国経由で向かう予定だからぁ……」

敵兵「は、はい。臨時異動の連絡はこちらの部署に届いていますので。ところで……」

ティタニア「なぁにぃ……」

敵兵「例の、幕府の彼女ですけれども……」

ティタニア「……あー……言ってなかったかしらぁ……言えてないわよねぇ……ふぁ……」

敵兵「はあ」

ティタニア「あなたとも3日くらい顔合わせてなかったもんねぇ……早めに教えてあげたかったんだけどぉ」

敵兵「……」

ティタニア「ベッド空ける為に、白の城塞から外部の公立病院に移ってもらったのぉ……だから、ここにはいないのよぉ……」

敵兵「……それで?」

ティタニア「……めでたく面会謝絶。特にぃ、異性が近寄る際には許可が必要だからぁ……どうすんのぉ、今だったら付き合ってあげるけどぉ……」

敵兵「」

ティタニア「あぁ、眠いぃ……」

敵兵「……」

ティタニア「この奥よぉ、入ってぇ……」

敵兵「(消毒液臭くない……患者に目立った外傷があるわけでもないみたいだし……)」

ティタニア「あふ……どっかでベッド借りちゃおうかしらぁ」

敵兵「あの……ここって……」

ティタニア「……お察しの通りぃ、心の病気を治すところよぉ」

敵兵「(遠くで聞こえる唸り声……動物とかじゃあねぇんだな……)」

ティタニア「もっとも、北西の真似っ子でしかないんだけどぉ……要は、とりあえずヘンな子をレッテル貼りして閉じ込めておく為のゴミ箱。
明確な治療法もないしねぇ、その手の子はぁ……あ、オフレコで頼むわよぉ……スキャンダルは男女関係以外ごめんだからぁ」

敵兵「わ、わかってます……」

ティタニア「そもそもぉ……理性……思考の発達にレッテル貼ってカテゴライズするなんて土台無理なのにぃ……
そんな複雑なもの、まだ治療するだけの技術なんてないわぁ……この先数百年、完璧な対処なんて無理よねぇ……」

敵兵「……」




敵兵「(三重の鉄の扉……こんなに厳重に収容、いや……監禁するような理由があったのか……?)」

ティタニア「まあ、あなた達はおんなじ釜飯食った仲だからねぇ……一応、どうなったか見ておくといいわぁ……」

敵兵「……あの、この……ドアの隙間から……ハミ出てるのは……」

ティタニア「……」

敵兵「か……髪の毛……?」

敵兵「(うげえッ……あ、青臭いって言えばいいのか……? こりゃあ……)」

ティタニア「妄言や徘徊が目立つようになったのは先週から。劇症が確認されたのは一昨日……
ああ、大丈夫よぉ……男に輪姦されてたってような事は無かったらしいし」

敵兵「(病室の壁や床を覆ってるの……ぜ、全部髪の毛かよ……)」

ティタニア「何せ誰も彼女の母国語なんかわかんないしねぇ……症状も症状だし」

敵兵「(髪の束の中心……あれが……)」

ティタニア「ここまで大人しくさせるのに、診察に当たった精神科医の片目と看護師の鼓膜、右手首が犠牲になったわぁ。
お気の毒だけど社交辞令……拘束衣に加えて轡と目隠し。それと、一応聴覚も制限させてもらったわぁ」

敵兵「……」

ティタニア「生きてるわよぉ、心配しないで。生に満ち溢れて困るくらいなんだから」

敵兵「生……?」

ティタニア「……」

敵兵「あの……も、もがいてる! 俺達が来てから……苦しいんじゃないんですか!?」

ティタニア「ちっ……『匂い』もダメか……」

敵兵「匂い……!?」

ティタニア「雄の匂い。あなたのを嗅ぎ付けて、発情してるのよぉ……この子」

敵兵「はあ!?」

ティタニア「タヌ子ちゃんが同席した時、この子が何を叫んでいるか教えてもらったの。
『私を使って』だとか、『子供をください』、『この子をを産ませてください』、だとか」

敵兵「何すか……それ……」

ティタニア「『ミズコ』だとか『ウブメ』、『ユキオンナ』……極東のそうした伝承が絡んでいるとは聞いたけどぉ……
アテクシらじゃあお手上げ。こうして他人を傷つけないようにしてあげる事だけなのよぉ」

敵兵「マジ……かよ……」

ティタニア「髪に隠れて見えないだろうけど……この子、あなたより体大きくなってるからね」

敵兵「確……かに……」

ティタニア「はじめの内は節々の痛みを訴えて……その内、臀部。お尻の骨が痛いって騒ぎ始めて。
今じゃ、日に二、三度ハーネスとベルトを緩めてやらないとって有様よ」

敵兵「……」

ティタニア「地母神の呪いだとかかしらねぇ……やだ、アテクシったら、柄にもない事を」

敵兵「な、治らないんですか……コレ……」

ティタニア「この機関に収容されてるって事を考えて頂戴。今までにないケースだから、アテクシもしばらくは通うつもりだけどぉ……」

敵兵「……うぶっ」

ティタニア「何かしらねぇ……フェロモンとでも言えばいいのかしらぁ。
あなた達異性は、彼女からの匂いを嗅ぐとアルコールに酔ったような酩酊感を覚えるって言うのよねぇ」

敵兵「まさに、今……頭酔っぱらってます、少し……」

ティタニア「……出直しましょう、吐いていらっしゃいな」

敵兵「何でだ……何があったってんだよ……」

女騎士「あー飽きた飽きた。もォ当分行かんでもいいな」

息子「でも、たまにはあそこ行きたい……かも」

娘「まだ探検したりないよね、お兄ちゃん」

女騎士「ヒマな御大将にでも連れて行ってもらいなさい、私はとりあえず田舎は向こう半年くらいいいや」



騎士ほ「……召集? 私にですか?」

エルフ近衛兵「はい、北西諸島から」

騎士ほ「モルドレッド卿ではないのですか?」

エルフ近衛兵「いえ……連合王国の竜騎兵団側からの要請のようです」

騎士ほ「私に何をしろというのかしら」

エルフ近衛兵「……先日の、西帝における災害対策支援の事かと。
確か、メリフェラ来訪からこちらまで国外視察の名目でお越しになられたのですよね」

騎士ほ「ええ。卿から話が通っている筈ですが……」

エルフ近衛兵「返事を遅らせるのは良くないのではないでしょうか……北西をあまり刺激しない方が……」

騎士ほ「……しょうがありませんわね。あの兵長姉弟……もう私は直下の部下ではないというのに。
分かりました、向かいましょう。救助活動へは、一度でも適当に参加しておけば文句も出ないでしょうし」

エルフ近衛兵「どうか、お気を付け下さい。お子様は我々が責任を持ってお預かりいたします」

騎士ほ「……共和国内で足止めを食らっているのも時間の無駄ですしね。確か、まだ鉄道も復旧していないのでしょう?」

エルフ近衛兵「30年かけて敷設した線路がオジャンらしいですからね……もうメチャクチャらしいですよ」

騎士ほ「了解。ならば、ペンドラゴンで直接帝国内へ向かいましょうか。私一人なら、本日中には着くはずですわね……」

エルフ近衛兵「(ワイルドだなぁ……)」

女騎士「帝国がブッ飛んだだあ!?」

騎士ほ「お、お姉様……初耳だったんですの?」

女騎士「知らねーよ!! 何だブッ飛んだって!! 文字通りブッ飛んだのか!?」

騎士ほ「ハンモックで新聞をお読みになっていたのは……」

女騎士「自慢じゃねぇが読み書きでガキどもに敵うとは思ってねぇぞ」

騎士ほ「」

女騎士「つーか何だよマジで何なんだよブッ飛んだって。布団か何かか帝国の国土は」

騎士ほ「い、隕石が上空で爆発したという発表が魔王軍と連合の側から……」

女騎士「バカじゃねぇの、どうせ連合のシミッタレと魔王軍のションベンタレが変な事やったもんでパチこいてるだけだろ」

エルフ近衛兵「いえ、しかし断定は未だできないのです……連絡手段も未だ途絶しており……」

女騎士「じゃあ断定『させろ』!! 連合のチンカスと魔王軍のゴキブリがやったって言いふらせ!!」

エルフ近衛兵「」

女騎士「西側の経済支援は主に北西と共和国が政策としてコツコツやってたんだ。
それをツミキ崩すみてえにブッ壊されたとなりゃ、政府側はともかく共和国民は堪忍袋の緒がメタメタだろ」

エルフ近衛兵「いや、さすがにそこまでは……」

女騎士「ふん!! 共和国民の中には6年前にコイツがやったテロを根に持ってるヤツもいるだろ!!
それを匂わせつつ扇動させりゃあ無能な愚民どもはちょちょいのパーだぜ!!」

騎士ほ「では、さっそく上空からビラを撒いてまいります」

エルフ近衛兵「(行動速いなぁ)」

活動家「隕石の爆発は連合の狂言だー!!」

活動家「議会は汚職を認め辞職せよぉー!!」

活動家「伝統ある共和国家のツラ汚しめぇー!!」

女騎士「爆発の影響は既に国境線沿いの民衆に現れているぞー!! 」

活動家「共和国民の人権を守れー!!」

女騎士「連中は爆風のみならず毒を撒き散らしたのだァー!! 北部や東部、その他各地で見られる感染症はチフスなどではないぞォー!」

活動家「チフスなどではないぞォー!!」

女騎士「今に毒は脳にまで回り、血をムラサキ色に変容させ、血尿が止まらなくなり、全身の穴という穴から下痢を吹き出して死ぬ毒の死病だァー!!」

活動家「マジか」

女騎士「魔王軍の魔物どもが独自に開発した最低最悪の細菌兵器だァー!! 表に出るなァー、感染するぞォー!!」

活動家「感染するぞォー!!」



エルフ近衛兵「(6年前を思い出すなぁ……)」

勇者「」

敵兵「」

戦士「オイ、オイあれ……あれって……」

賢者「あのデモ隊に混じってるあの女、あれ……」

敵兵「(え……まさか……まさか、あの女が……こんな堂々と……いや、まさか……)」

勇者「……デュランダル限定A解放、使用時間無期予備申請開始」

敵兵「(な、何で……何であの女……共和国に……!? ま、まさか……あい、あいつ……ガリアも目指してるのか……!?)」

勇者「見つっ、見つけ……見つけた……ははは、ははははっ、見つけた……」




警察官「こ、こら! キミ達、予定と内容が違……」

活動家「やべ、めんどくせーぞ!」

女騎士「かてぇ事言うなよマッポがよぉwwwwww楽しく行こうじゃねェかwwwwww」パンッ パンッ

警察官「ぐわ……じ、実銃!?」

女騎士「当たんねーwwwwwwwww」




勇者「見ぢゅけたあああああああああああっ、うはっ、はははははははっ、ははははははぁ!!!!」

敵兵「」

勇者「ははははははっ、僕は!! 僕は!! 僕の選択は、僕の旅は、僕は間違っちゃあいなかった!!」

敵兵「あ、あの勇者さん」

勇者「そこぉぉぉ、動くんじゃあないぞおおおお、ブッ殺してやる、僕が、僕がこの手で殺してやる!!」

敵兵「ゆ……」

勇者「あああああっ、最高の気分だあ!! だぁめじゃないかぁ、アジ、アジ、アジ、アジ=ダハーカぁぁぁぁ、
おまっ、おまっ、お前がっ、お前が人の前に出てきちゃあああ、おと、おとなしく、してなきゃさあああああああ」




女騎士「うわ……うわ、何アイツ。屋根なんか上っちゃって薬やってんのかよ……」

女騎士「ハッスルしてんなぁ……人間ああなったらおしまいだね、あーやだやだ」

女騎士「あ、落ちた。死んだか」

女騎士「すげー、ガッツあるなぁ。頭おかしいわ」

女騎士「うへ、キモいあいつ。私の事見てんの? キモいなヨソ行け」

女騎士「……え、ちょ……ちょ、待……あいつ、あいつヤバくね? 刃物持ってね? マジ頭いかれてるって、マジ……」



勇者「やっぱり、やっぱりお前、お前だ……お前だ、殺っ、殺してやるよお、この僕が!!」

女騎士「……」


女騎士「キモ……誰だお前……」

女騎士「おまわりさぁーん、軍人さぁーん、ちょっと熱くなっちゃった人いるみたいなんですけどー」

おまわりさん「はーい君君、何してるのかなー。ちょっと大人しくしようわらば」

軍人さん「ヘンな事しないでねー、お薬抜けたらおうち帰してあげるかひでぶ」

女騎士「」

勇者「ずっと、ずっと、てめえを、わ、忘れた日は無かったんだぜ、よお……6年前から……」

女騎士「は、はあ!? 何言ってんだよテメェ……マジモンのキの字だぜ、おい誰か!! 誰かこのバカやめさせろ!」

勇者「やっと……み、み、きひっ、見つけたんだ……逃が、逃がしゃあしねェからな……」

女騎士「私ゃテメェなんか知らねえよ、人違いだバカたれ! ヨソ行って暴れろよ、こ、こっちくんな!!」

勇者「……」

女騎士「きめぇんだよ! 寄るんじゃねぇ!!」パンッ パンッ

勇者「……」

女騎士「(えっと……何かな今の。どうやって剣なんかで銃の弾を切り払うのかな? 踏み込みが足りなかったかな?)」

勇者「こんなもんじゃあ、ないだろ……違うだろお、もっと、もっと抵抗しろよぉ、アジ=ダハーカさぁぁん!!」

女騎士「だぁから!! テメェみてえな知り合いなんかいねーよ!! 消えやがれ!!」



敵兵「ゆ、勇者さん、ちょっと落ち着いて!!」

戦士「どうしちまったんだアイツ……!!」

賢者「勇者君、勇者君!!」



娘「……お兄ちゃん、あの面子」

息子「ああ……覚えてる」

娘「殺……殺してやらなきゃあ、勇者の連中だよ……!!」

エルフ騎兵「おふた方! 騎竜で騎士様を回収したら即時撤退! いいですか、即時撤退です!」

娘「なんで……ですか……」

エルフ騎兵「デュランダルには敵いません、お忘れですか! 勇者との直接戦闘は不利です!」

娘「やってみなきゃあわかんねェだろォがァ……次ァ負けねえ、負けられねえンだよ……母様を助けにゃあ……!!」

息子「だめだ、今は救出を最優先……いいね」

娘「よかねェ!! 母様の敵、敵を放っておくのか!!」

息子「お前は敵にかまけてお母様を放っておくのか!! 親不孝者のバカ娘が、そんな女はぼくの妹でも家族でもないぞ!!」

娘「……あ、う……」

エルフ騎兵「いいですね! 今回随行させているのはクロウクルアッハです! 
ただでさえ勇者相手には不利な上、機動力ではメリジェーヌに劣ります、極力逃げる事をお考えください!」

娘「りょう、かい……」

息子「了解。出るぞ!!」



レギンレイヴ「うげ、マジできやがった……」

ラーズグリーズ「んもう、せっかくラジオで宣伝したのにこんなお仕事なわけぇ?」

ブリュンヒルデ「しかも依頼主は身内、おまけに疑う先も身内……」

レギンレイヴ「ターゲットの勇者サマも大ヘマやりやがるし……あー、最近やってらんねぇや」

ラーズグリーズ「とりあえずぅ、あの2騎のドラグーンやっつけたら、勇者サマ捕まえて撤収。おーらい?」

ブリュンヒルデ「異議なーし」

レギンレイヴ「はぁーあ。いっきまーすよっと」

ブリュンヒルデ「ひでぶ」

ラーズグリーズ「ぷげら」

レギンレイヴ「」

娘「お兄ちゃん……お母様を助けて、おねがい」

息子「了解。そちらは任せる」

レギンレイヴ「……」

娘「3対2とか、こっちはハンデ認めちゃいねェんだけどなぁー……きたねえクソ女だよ、まったくなあ」

レギンレイヴ「は、はははは……おい、おい、お前らァ! ね、ね、寝てんじゃねーよ、お前ら!!」

ブリュンヒルデ「」

ラーズグリーズ「」

レギンレイヴ「し、死神だろ……ア、アタシらワルキューレだろ……お迎えに来て頂く側だぜ、おいィ……」

娘「ようし、サシでやるかァ? 勇者の取り巻きにしちゃあ殊勝なこった、こいよ」

レギンレイヴ「(ド、ドジこいたァ~~~ッ!!)」

娘「……おい、命乞いはどォした? 聞こえねェぞォ?」

レギンレイヴ「(て……手柄を立てて褒美をもらうつもりが、こいつはいかーん!!
ユングヴィ閣下はお怒りになる、こいつらを始末するのは無理だ!! チクショー!!)」

娘「……」

レギンレイヴ「きょ、今日はこれぐらいにしておいてやるわ、蛮族がァ……
その腕っ節があれば、来るべきラグナロクでも相応の褒美が与えられようものだが……どうだ、私と共にヴァルハラへ」

娘「行かねーよブッ殺すから」

レギンレイヴ「ヴァルハラはいいぞォ、ささ、酒はの、飲み放題……く、首は狩り、狩り……」

娘「テメェの首を今すぐ狩れれば満足だから行かねェよ、ナメてんのか? あ?」

レギンレイヴ「すいませんでしたァーッ!! 何でもするんで命だけは助けてくださァーい!! おねがい!!」

息子「お母様ァァァッ、今っ、今そこに向かいますッ!!」



女騎士「タイム」

勇者「……」

女騎士「タイム!! タイムタイムタァーイムッ! タイムだっつってんだろ!! き、聞けボケェ!!」

勇者「お前は……そうやって適当な呪詛を吐き散らして……まずは、ノドをカキ散らしてやる……二度と……」


ケルベルス「タイム。タイムだ、勇者」


女騎士「なっ……!」

勇者「……」

女騎士「(モフモフのわんわんだ……)」

ケルベルス「……自分が何をしてるか、わか」

勇者「そこの!! クソ女をブッ殺すんだよ!! どかねぇとテメェもたたっ殺すぞクソ犬が」

ケルベルス「やめろと言ってる!! いいか、既に二人が犠牲になっている。オレの言っている事が」

勇者「やっぱテメェらはダメだな……老害が。散々犠牲の上で私腹を肥やし……
いざこうして僕が犠牲を乗り越え目標を達成する直前になったら……そうやって目の前で邪魔しくさる……」

ケルベルス「何だ……何を言ってぶべら」

女騎士「」

勇者「口を利くのもめんどくせえ……ほんと邪魔だ、そこのクソブロンド殺せねえだろうがァ……」

女騎士「ひ、ひい、ヤメロ、くんな!! くんじゃねーボケ!! やだ、やだやだ!! きもちわりー!! やーだ!!」

勇者「殺してやる、ころっ、殺すぅ」

女騎士「か、カネ! い、いっくらでもカネでも、薬! 何でも薬やる!! やるから!! な、何でもやるから!!
い、いや、いやだ!! し、死にたくない、何でも、何でもやるからどっか行けぇ!!」



息子「かあさまから、離れろおおおおッ!!」

勇者「ぐっ……!! ドラグーンがあ!!」

息子「勇者の……聖地の剣なら、僕を、母様を救ってみせろ……ジョワユーズッ!!」

勇者「ジョワ……ユーズ……!? デタラメをッ!!」

息子「消えろッ、母様の敵!! 死ねッ!!」

勇者「邪魔すんなら殺すって言ったろォがッ!!」



息子「があっ!!」

女騎士「」

息子「母っ、かあさま……」

勇者「ザッケんじゃあねぇ……何で……何で、僕ばっかり……こんな目に……ふざけんなよ……」

女騎士「いやーちょっと待って!! 待った! き、きっと今日は運がねぇ日なんだよ、出直せ! な!? そうしよう!!」

勇者「いつもいつも……みんなで邪魔しやがって……クソが……」

女騎士「お願い! 死にたくありません!! 死ぬのはやだ!! ぜったいやだ!! やーだ!!」

勇者「その命乞いを踏みにじったのはお前だろ……しっかり殺してやるよぉ、うく、くくくく、くく」

パンッ

息子「ぎゃっ!!」

勇者「!?」

息子「あっ……痛……ああうっ……!! お母……様……な、んでぇ……」

女騎士「あ、あのガキは敵だ!! お友達の私達の敵だ、早く逃げよう……ほら、な!!」

息子「おかあさま……おかあさまぁ……」

勇者「……」

女騎士「(やべえ、もう弾がねぇ……クソが……!! ぜ、絶対に生き延びてやる……しし、死んでたまるかよ……くだらねー!!)」

女騎士「(しめたぜ……騎竜は無事だ、あれに乗って……)」

勇者「お前……はっは、やっぱ生きてちゃダメだわ……もう、ダメだ……」

女騎士「(うわ、うわうわうわうわっ!!)」

勇者「死ぃぃぃ、ねぇぇぇぇぇっ!!」

女騎士「うおああああっ、やめ、やめろ、やだ、やめ、あぶねえ!!」

勇者「死ねッ、死ね!! 死んでしまえ!! 動くんじゃあねえッ!!」

女騎士「あぶっ、あぶねっ、あ、当たったらどーすんだよォ、し、死んじゃうじゃねェかよォー!!」

勇者「デュラン……ダル……どこが聖剣だよォ……この、このゲス女一人殺せねえで……何が……」

女騎士「(た、弾もねえし予備の銃もねえ……く、くそくそくそくそ……か、かくなる上は……)」

勇者「チョコマカ……動くんじゃあねえよ……てめえ!!」


女騎士「(かくなる上は……あの子の持ってきた、あのスゲエ剣しか……ねえ!!)」


勇者「ナマクラがああっ!!」

女騎士「うおおおおおっ!! やだ!! やだやだ死にたくない!! お前が死ね!! 死ね!! 死ねばぁーか!!」

勇者「がっ……ぐ……!!」

女騎士「うひゃあああああああああ」

勇者「てん……めぇ……」

女騎士「さ、刺さった!? 刺さっちった……?」

ズボァー

女騎士「おわァー、ぬ、抜けちった」

勇者「がっは!!」

女騎士「うわ……うわ、キッタネ!! おわ、くんな!! きもちわり、くんじゃねーよ!!」

勇者「おかっ……おかし……勝てねぇじゃねぇか……!! デュランダル……ふざけんじゃあ……ねぇぞぉ……!!」

女騎士「うおおおきめぇ、真冬も近ぇのに頭あったけぇのはほんと困るぜ……」

息子「かあ……さま……」

女騎士「世話の焼ける!! とっととずらかるぞ!!」

息子「……はいぃ」

女騎士「あんな刃物振り回すバカの相手なんかこれ以上してられっか!! 糞が!」

女騎士「……」



勇者「が……ぐ……くそ……が……血、血が……倒れてなんか……いられねえ……」

女騎士「ちょりっすwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

勇者「ごろ……す……ぶっごろす……ころ……」

女騎士「お前のその剣も高そうだよなーwwwwwwwwwwwwいいなーwwwwwwwww憧れちゃうなwwwwwwww」

勇者「……」

ドズッ

勇者「ごあっ……!!」

女騎士「キレ味もいいみてえだし……デュランダルっつったか? わりーなー、お土産貰っちゃってwwwwwwwwwww」

勇者「」

勇者「返っ……がえ、がえぜぇ、やめ……ろぉ……」

女騎士「おいーwwwwwwwwwやーめーろーよーwwwwwwwwww」

勇者「やべろお、がえぜ……おまえなんがが……デュランダル……かのじょがくれた……剣……」

女騎士「あんだってぇー!? さっきテメェ、さんざんこの子ディスってたじゃねーかよォー!! かわいそーになぁーデュラ公なぁー!!」

勇者「がえ……せ……」

女騎士「ンだよ、オメェが取り落としたんだろォ? 取得物横領は私にゃ適応されねぇんだよ、諦めなチンカス」

勇者「お前……なんがに、まげるはず……ないんだ、この……ぼぐが……勇者は、負けちゃ……」

女騎士「デュラ……んとかに……勇者……あ、あー!! 勇者!! お前勇者か!!」

勇者「」

女騎士「ハッハー、無様なもんだな勇者サマよぉー!! 人魔共存は実現しましたかぁー?
まあ、オメーらの足りねえ脳ミソじゃ無理だろーがなァー!! すぐ魔王も地獄に叩き込んでやっから安心して死にな!!」

勇者「ぢ……ぐ……しょう……」

女騎士「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃwwwwwwwwwwwかっかっか、えひゃひゃひゃひゃwwwwwwwwwwwwwww
テメェのような刃物を昼間っから振り回すバカガキが勇者なら私ゃ創世の女神だなぁwwwwwwwwwwwwww」

勇者「……」

女騎士「さんざんコケにしてくれやがってよぉ、ガリアなんつー名前も知らねード田舎からやっと帰ってきたってのに。
都会派のこの私がどんだけ辛かったか想像できるかぁ? ようやく文明に浸れると思ったらテメェなんぞにカラまれてよぉ……」

勇者「……ガリ……ア?」

女騎士「おーおー、随分血ィ出てんなー。御愁傷様、女神サマの私に刃向った酬いだ、苦しんで死ねwwwwwwwww
はははは、ひゃっひゃっひゃっひゃwwwwwwぁぼ」


敵兵「何が女神だ、この邪神がっ!! 彼から、離れ……ろ……?」


女騎士「うおおお、ビビった!! な、何だよォ!! だ、誰が撃ちやがったんだァ!? どこだァ!?」


敵兵「(えっと……何かな今の。どうやって剣なんかで銃の弾を切り払うのかな? 踏み込みが足りなかったかな?)」

敵兵「負傷者回収急げ!! 撤収する!!」

女騎士「オゥコラァー!! 今撃ったの誰だボケェー!! 今名乗り出たら私直々に苦しめて殺してやるから出てこい!!」

敵兵「勇者から離れろ!! 言う事を……!」

女騎士「テメェかぁ、身の程知らずはァ!! おゥ、テメェどこのバカだ? 共和国のお役人かぁ? ご苦労なこって」

敵兵「いう事を聞けッ、アジ=ダハーカ!! このクズ女が!!」

女騎士「て、てめ……!!」

敵兵「(勇者さんの剣……クソ、コイツが妙なチカラを持ってるってわけか……!)」

女騎士「テメェは……クック、そうか……テメェ、のたれ死にもしねェで勇者にケツを売り渡しやがったのかァ」

敵兵「(オレの事は覚えてるんだ……)」

女騎士「裏切り者のクソ童貞野郎が、こんな所にシャシャり出てきやがってよォ。わざわざ私に殺されに来たのかァ?」

敵兵「(要求……クソ、コイツ相手にどう交渉すればいい!? 何かで弱みを握るか……いや、無理か!?
コイツは勇者さんの言う通り、自分の命以外はすべて捨て去れる女……交渉なんぞ……!!)」

女騎士「おーお、そうかァ……ケツを掘ってくださる勇者サマが恋しいワケかぁ? とんだカマホモだぜ!!」

敵兵「挑発は無駄だ、彼を返せ」

女騎士「じゃあテメェはそこで死ね。簡単だろ、コメカミの真横でトリガーを引くだけだぜ」

敵兵「な……に……」

女騎士「できるかなぁ? 魔物に魂を売るほど生き意地のキタネぇテメェにできるかなぁ?
なぁ? ほーら、がーんばれwwwwwwwがーんばれwwwwwwこわいぞこわいぞがーんばれwwwwwwww」

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           .′ . イ / /    '″ _r心'”,     | ‘.   {
           .′   .斗=''"芯        . : :|     |  .}    、
            i     |`、 ゞ'’ /       |     |_,ノ       、  寝るぞーっ!!
            |      |,: :     `      , -┐|      |    i     、
            |      | ,      ___. - ニ ',_ノ|    .′         丶 
    ./>''"⌒ヽ .l      |.‘.    └―='"´   |     ′   ′       ヽ
   [,,'"    ‘.∧    Ⅵ ヽ、          |    ′   '       /
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女騎士「私は最初っから最後までクライマックスだぜえ!!」 - SSまとめ速報
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