ショタ魔王 「指切りげんまん」 側近 「嘘ついたら針千本飲~ます」(122)

魔王 「……」ウトウト

側近 「……眠いですか?」

魔王 「……」 コクリ

側近 「……」 ナデナデ

魔王 「……落ちつく」

側近 「魔王様は寂しがり屋ですか?」

魔王 「……ひ、一人でだって眠れるから、そんなのじゃない」

側近 「いつの間に……、頼もしくなりましたね」 クスッ

魔王 「……僕だって」

側近 「……?」

魔王 「……なんでもない」

魔王 「……僕はもう一人でだって眠れるのに、側近も一緒に眠るの?」

側近 「ええ、ベッドは一つしかありませんから」

魔王 「……新しいのを作ったらいい」

側近 「資源は大事ですから、無駄なことには使えません」

魔王 「……ベッドを二つ作るのは、無駄なことなの?」

側近 「ええ、とっても無駄なことです」

側近 「それに、魔王様が私と一緒に眠ることを心から拒むと仰るのでしたら」

側近 「わざわざベットを買わずとも、私がソファで眠ればいいだけの話です」

魔王 「……風邪を引いちゃう」

側近 「魔族はどうやっても死にませんから、風邪を引いたって大丈夫です」 ニコッ

魔王 「でも、風邪を引いたら苦しい」

側近 「私は、強いですから」

魔王 「……僕よりも?」

側近 「……ふふっ」 クスッ

魔王 「……側近の意地悪」

-寝室-

魔王 「……」 ギュッ

側近 「……甘えん坊さん」

魔王 「……ご、ごめんなさい」

側近 「……魔王様は、強くなられたのでしょう?」 ナデナデ

魔王 「……うう」

側近 「……別に、私は構いませんよ?」

魔王 「いいの……?」

側近 「私はあくまでも、魔王様にお仕えする身ですから」

魔王 「……本当に?」

側近 「身を案じてくださるのですか?」

魔王 「……うん」

側近 「まったく……」 クスッ

側近 「これじゃあどちらが側近なのか、わかったものじゃありません」 ナデナデ

魔王 「……うう」

魔王 「……明日は、オークに修行をつけてもらわないといけないんだよね」

側近 「魔王たるもの、体も心を強くなければなりませんから」

魔王 「痛いのは嫌だなぁ……」 ハァ

側近 「痛みも知らないと、強くはなれませんよ?」

魔王 「……そうなの?」

側近 「ええ、現実に痛みは付き物ですから」

魔王 「……でも、痛いのは恐い」 ギュッ

側近 「大丈夫ですよ、魔王様はやればできる子です」ポンポン

魔王 「……そう……だよね」 グスン

側近 「ええ……ですから、今日のところはもう眠りましょう……」

魔王 「……うん」

魔王 「……あった、かい……」zzz

側近 「……」 ナデナデ

側近 「……眠った」

側近 「寝顔のなんと可愛らしいこと……」

魔王 「……側近、歩くの早いよ……」 zzz

側近 (……ずっと、こんな生活が続けられたなら、どれだけ幸せだろう)

側近 (でも……)

側近 (……やめよう、今は……)

魔王 「……もうお腹いっぱい……」 zzz

側近 「……寝顔を眺めよう、そうしよう」

これにて区切り

このssはファンタジーモノの皮を被った甘々なおねショタssです

-朝-

魔王 「……ふぁぁ」

魔王 「……側近?」

「お目覚めですか? 魔王様」

魔王 「側近……どこにいるの?」

側近 「すぐ近くにいます」

魔王 「……もう着替えてる」

側近 「側近の朝は早いですから」

魔王 「……いつもいつも、ありがとう」

側近 「いえいえ、私は魔王様にお仕えする身ですから」 ニッコリ

魔王 「……でも、僕なんかに仕えても側近が得することなんて」

側近 「優しいのですね、魔王様は」 ナデナデ

魔王 「そうかな……?」

側近 「そうですよ、朝食の準備は整えておきました」

魔王 「もうそんな時間なんだ」 グゥゥ

魔王 「……あっ」 ポッ

側近 「腹が減っては戦はできませんよ?」

魔王 「……うん」

-食卓-

魔王 「……このお味噌汁、おいしい」

側近 「ふふ、手間暇掛けた甲斐がありました」 ニコッ

魔王 「……側近は食べないの?」

側近 「私はもう食事を済ませましたので、ご心配には及びません」

魔王 「……そっか」

魔王 「もっと早く起きればよかった」

側近 「ああ……確かに早起きは三文の得と言いますしね」

魔王 「側近と一緒にご飯が食べられるのも、得だよね」

側近 「……」

魔王 「……側近?」

側近 「動かないでください、口にご飯粒が」

魔王 「えっ? いいよ、自分で取れる」

側近 「魔王様のお手を煩わせる必要はありません」 ヒョイ

魔王 「わっ!」

側近 「……可愛い魔王様」 クスッ

魔王 「むっ、側近が馬鹿にする」

側近 「可愛いと言われるのは嫌ですか?」

魔王 「うん……、なんだかむずむずするから」

側近 「……どのあたりがむずむずするので?」

魔王 「胸のあたり……かな」

側近 「病気ですね、私に治療させてください」 ジィィ

魔王 「……なんだか怖いよ、側近」

魔王 「どちらかっていうと、カッコいいって言われたいな……」 モグモグ

側近 「食べながら話すのは行儀が悪いです」

魔王 「あっ、そうだった」 ゴックン

側近 「……女子から黄色い声援を浴びたいなんて、魔王様も男の子なのですね」

魔王 「そんなこと言ってないし、どこをどう見たって僕は男だってば!」

側近 「女の子の恰好をすれば女の子に見えますよ、魔王様は」

魔王 「……ううっ」 グスン

側近 「……涙目も可愛いです」 ゴクン

>>16 訂正 黄色い声援→黄色い嬌声

魔王 「女の子からそういうこと言われたい、みたいなことはあんまり考えたことないかなぁ……」

側近 「やはり魔王様は女の子なのですよ」

魔王 「そうじゃなくて!」

魔王 「ほら、僕って魔王だから、あんまり外を自由に出歩けないし」

魔王 「あんまり女の子とお話する機会もないから……」

側近 「魔王様はいつも私という女の子とお話するじゃありませんか」

魔王 「側近は女の子っていうか、なんていうか……」

側近 「……魔王様ったら、私を女の子扱いしてくれない……」

側近 「ああ、魔王様にとっての私はただの醜いババアでしかないのですね……」

魔王 「そんなこと言ってないってば!」

魔王 「だって、側近は大人だから、女の子っていうのはおかしい気がして……」

側近 「……醜いババアではないと?」 チラッ

魔王 「うん、だって本には肌がもちもちですべすべなのは、若い証って書いてあったし」

魔王 「それに、そ、その、美人、だし……」 モジモジ

側近 「……ああ、魔王様!」 ガバッ

魔王 「うわっ!」

―――――

「おい、側近、魔王、いるか?」

側近 「……その声は、オーク」

オーク 「ああ、入るぞ」 ガチャッ

側近 「……お早いことで」

オーク 「……俺の顔を見るのがそんなに嫌か?」

側近 「……別に」

オーク 「……そうかい」


魔王 「……あ、オーク」

オーク 「よう坊主、相変わらず貧相な体つきだなおい」

魔王 「言わないでよ、わかってるんだから」

側近 「……私が留守の間魔王様を頼むわね、オーク」

オーク 「おうよ、任せとけ!」

魔王 「側近、どこかへ行っちゃうの?」

側近 「ええ、いつものことですが、集落の魔族たちの様子を見ておきたいので」

側近 「そのついでに、食材の調達ですかね」

魔王 「……僕も一緒に」

側近 「ダメです」

魔王 「……どうして?」

側近 「魔王様はもう少し、魔王としての自覚をお持ちください」

魔王 「魔王だからこそ、色んな魔族と話さないと……」

側近 「……万が一、魔王様が集落で人間に出くわしたらどうするつもりですか?」

オーク 「……まあ、ただの人間ならいいんだけどよ」

側近 「人間の中でも別格の勇者なる存在は、魔族の命を奪えるのですよ?」

魔王 「……」

側近 「なに、あまり遅くはなりませんから、ご心配には及びません」

魔王 「……じゃあ、待ってる」

側近 「それでいいのです、それでは行ってきます」 タッタ

オーク 「さて、任されたぜ」

魔王 「また、修行?」

オーク 「おうよ、魔王たるもの体も鍛えておくべきだ」

魔王 「……うん」

広い庭

魔王 「痛ッ……!」

オーク 「どうした坊主!坊主の力はその程度か!」

魔王 「僕だって……!」 バシッ

オーク 「拳に力が入ってねえ! もっと腰を入れて打ってきやがれ!」

魔王 「……てりゃッ!」

オーク 「隙だらけだ!」 ドカッ

魔王 「……ッ」

オーク 「……このぐらいにしとくか」

魔王 「……」 ゼェゼェ

魔王 「やっぱり、オークは強い」

オーク 「伊達に体を鍛えてるわけじゃねえんだよ」

魔王 「……魔法でなら負けないのに」

オーク 「何言ってやがる、最後に頼れるのは己の拳だけだ」

魔王 「……手が千切られたら、拳は使えなくなる」

オーク 「体を鍛えときゃ、千切られないように立ち回れんだよ」

オーク 「……それに、もし手足を千切られたとしても、放っておけば生えてくる」

魔王 「……本当に?」

オーク 「ああ」

側近 「……もう、日も傾いているのね」

「はってりゃっ!」

「動きが直線的すぎるぜ!」

側近 「……オーク、加減というものを覚えていればいいのだけれど」

側近 「ただいま戻りましたー……」

魔王 「あ、側近、おかえり!」 ギュゥゥ

側近 「ふふ、魔王様は相変わらず……ん?」 ナデナデ

側近 「……オーク」

オーク 「な、なんだよ」

側近 「魔王様が傷だらけじゃない」 ギロッ

オーク 「……側近はこいつに過保護過ぎんだよ」 ハァ

側近 「……わかっているの? オーク」

側近 「万が一にでも魔王様が死ねば……」

側近 「魔王様の力によって生き長らえている私達は、みんな死んでしまうのよ?」

オーク 「……何言ってんだ」

オーク 「魔族も魔王も、殺しても死なねえだろ」

側近 「……」

オーク 「手足をもぎ取ったところでまた生えてくる」

オーク 「頭をぶち抜かれたとしても、時間が経てばそのうち再生しやがる」

オーク 「俺たちは不死なんだよ、呪われてんだよ」

側近 「……確かにそうね、でも魔王様は私達とは違うわ」

魔王 「……?」

魔王 「僕は、側近たちとは違う?」

側近 「……当然ですよ、なんたって魔王なんですから」 ナデナデ

魔王 「……側近?」

側近 「……魔王様は、気にしなくたって構いません」

側近 「ただ、生きてさえいてくれれば、それで……」

魔王 「……うん」


側近 「……さてと、しんみりとした空気はこれでおしまいにして」

側近 「さっさと汗を流してしまいましょうか」 ニコッ

オーク 「よし、それなら俺も」

側近 「オークはお引き取りください、どうぞ」

オーク 「……冷たい奴だと思わねえか? 魔王よぉ」

魔王 「……さよなら、オーク」

オーク 「……そうかい」 トボトボ

これにて区切り

このスレが落ちない限りぼちぼちやっていきます

-風呂-

魔王 「……お風呂だって、もう一人で入れるのに」

側近 「そんなこと言って、足を滑らせて頭を打ったりでもすれば……」

魔王 「……そんなに頼りなく見える?」

側近 「ええ」 ニコッ

魔王 「……手まで繋いでいるのも」

側近 「心配ですから」 ニコッ

側近 「お背中、お流しいたします」

魔王 「いいの?」

側近 「私は側近ですから」

魔王 「……嫌なら、別にこんなことしなくてもいいのに」

側近 「嫌ではありません、寧ろご褒美です」

魔王 「ご、ご褒美……?」

側近 「ええ、ご褒美です」

側近 「痒いところはございませんか?」 ゴシゴシ

魔王 「うん、大丈夫みたい」

側近 「……羨ましいぐらい弾力のある肌です」

魔王 「そうかな、側近とそんなに変わらないと思うよ……?」

側近 「子どもほど柔らかい肌じゃありませんよ、私のは」

魔王 「……うーん、僕にはよくわからないや」

側近 「魔王様の頬は、もうずっと触れていたいです」 プニッ

魔王 「わわっ、側近?」

側近 「……ふふっ」 プニプニ

側近 「頭を洗いますから、魔王様は目を閉じていてください」

魔王 「うん、わかったよ」

側近 「……」 ゴシゴシ

魔王 「……う、ううん」

側近 「……くすぐったいですか?」 シャァーッ

魔王 「……うん、ちょっとだけ」

側近 「……もう少しの辛抱です」

チャポン

魔王 「……結局一緒に入るんだ」

側近 「そのほうが暖かいじゃありませんか」

魔王 「……でも、ちょっと狭いような」

側近 「あまり広い湯船じゃありませんから、ね……」

魔王 「……」

側近 「でも、こうすればいいだけの話です」 ピタッ

魔王 「わわっ、こんなに密着してたら、熱くて上せちゃいそう」

側近 「その時は冷やして差し上げます」

魔王 「……側近にくっついてたら、傷が癒えてきた」

側近 「治療魔法で癒していますから」

魔王 「……だからなのかな、体がなんだかぽかぽかするのは」

側近 「……」 ナデナデ

魔王 「……あと、なんだか眠く」

側近 「お風呂で寝たらダメですよ、魔王様!」

魔王 「でも、こうしていると……」

魔王 「これはこれで安心する……気がする」

側近 「安心するだけ……ですか?」

魔王 「うん、それだけ」

側近 「まだ無垢な魔王様……もう食べちゃってもいいですよね?」

魔王 「た、食べるなんてそんな痛いこと……」

側近 「……魔王様!」 ギュッ

魔王 「そ、側近!?」

側近 「いつの日か、魔王様も穢れていくのでしょうけど……」

側近 「それでも私は魔王様にお仕え致します!」

魔王 「え、ええ……?」

魔王 「……って、苦しい、苦しいよ側」

側近 「……はっ!?」

-居間-

側近 「風呂上りは冷えた牛乳が美味しく感じられるそうです」

魔王 「まだ気分が……」

側近 「……ごめんなさい」

魔王 「ううん、でも気を失うぐらい強く抱きつかないでほしい……な」

側近 「……はい」

魔王 「……うん、牛乳美味しい」

側近 「新鮮な牛乳ですからね、当然といえば当然です」

魔王 「側近は飲まないの……?」

側近 「牛乳は味がしつこいから苦手でして……」

魔王 「むっ、好き嫌いはダメっていつもいう側近が好き嫌いしてる」

側近 「……飲もうと思えば飲めますよ? ええ、飲めますとも」

魔王 「なら、飲んでみてよ」

側近 「……構いませんよ?」

側近 「魔王様の牛乳、おいしく頂きます」

側近 「……」 ゴクゴク

魔王 「ま、まだ飲むの……?」 ハァ

側近 「ええ、魔王様の牛乳を残すだなんてもったいない」

魔王 「も、もう無くなっちゃうよ……」

側近 「無くなったって、また飲めます」

魔王 「……そうだけど」

側近 「……案外、飲めるものですね」

魔王 「僕の飲んでた牛乳を飲み干すなんて、酷いよ……」

側近 「……もう一杯、どうです?」

魔王 「側近はコーヒーが好きなの?」

側近 「ええ、ほろ苦さが癖になります」 ススッ

魔王 「……僕は苦いから嫌い」

側近 「いつか、魔王様にもわかる日が来ますよ」

魔王 「そうなのかな……?」

側近 「ええ、私だって昔は嫌いでしたから」

魔王 「……今ではこんなに美味しそうに飲んでるのに?」

側近 「私にも、色々あったものですから」 ススッ

魔王 「ねえねえ、側近」

側近 「はい、なんでしょう」

魔王 「側近って、何歳?」

側近 「私は永遠に20歳ですよ?」 ニコッ

魔王 「……本当に?」

側近 「それぐらいに見えませんか?」

魔王 「……うん」

側近 「なら、それでいいじゃないですか」

側近 「……ああ、魔王様」

魔王 「なに……?」

側近 「女性に年齢を尋ねるというのは、相手からすれば失礼にあたります」

魔王 「どうして?」

側近 「魔王様も、小さい、ですとか頼りない、と私が言うと腹が立つでしょう?」

魔王 「……それ、いつも側近が言ってる」

側近 「それと同じですよ」

側近 「女性は、年齢を気にするものです」

魔王 「……ふーん」

魔王 「……ねぇ、側近は昔なにをしてたの?」

側近 「昔もなにも、私はずっと魔王様にお仕えしているじゃありません」

魔王 「それよりも前のこと」

側近 「……」

魔王 「側近は色んなことを知っているから」

側近 「魔王様が無知なだけです」

魔王 「……そんなこと、ない」

側近 「確かに、読み書きや魔法において魔王様の右に出る者はいないかもしれません」

側近 「ですが、世界は広いのです」

魔王 「……そうなの?」

側近 「……ええ」

側近 「私は、魔王様よりもほんの少し、この広い世界を知っているだけです」

魔王 「……僕も知りたいな」

側近 「……もし、人間達が私達を脅かなくなったなら」

側近 「その時は、私と旅にでも出てみますか?」

魔王 「……うん!」 キラキラ

側近 「……」

―――

魔王 「……うーん、なんだか眠い」

側近 「そろそろお休みになられますか? 魔王様」

魔王 「……側近はまだ眠らないの?」

側近 「私は今日中に片付けなければならない用事がありますので」

魔王 「……どうしても?」

側近 「明日は休みたいものですから」

魔王 「……僕と一緒にいると、お休みなのにゆっくりできないんじゃ」

側近 「いえいえ、寧ろ癒されますよ」

魔王 「……本当に?」

側近 「ええ」

側近 「……それに」

側近 「私達がずっと一緒に居られるとは限りません」

魔王 「そんな寂しいこと……」

側近 「……『勇者』がいなければ、私もこんなことは言いません」

魔王 「……勇者」

側近 「ええ、私達魔族の敵です」

魔王 「……どうして、人間は僕らを脅かすの?」

側近 「……私達が化け物だからです」

魔王 「……見た目は、人間と変わらないのに?」

側近 「私達は満月の夜を除いて、人の姿を取ることができます」

側近 「私達が人間と変わらないように見えるのは、そのせいです」

魔王 「……」

魔王 「……ねえ、側近」

側近 「なんでも仰ってくださいな、魔王様」

魔王 「もし、僕らが別れることになったとしたら」

魔王 「……もう側近とも話せなくなるんだよね」

側近 「……魔王様」

魔王 「……もう二度と話せなくなるのは、寂しい」

側近 「……魔王様が私を必要としなくなる日まで」

側近 「私は、傍にいますよ」 ナデナデ

魔王 「……本当に?」

側近 「ええ、ですからそんな悲しそうな顔をしないでください」

魔王 「……なら、指切りしてよ」

側近 「指切り、ですか……?」

魔王 「うん、指切り」

魔王 「一緒に旅したり、一緒に居ようってことで、指切り」

側近 「破ったら針千本……飲めるでしょうか?」

魔王 「破るのが前提なんだ」プク-

側近 「拗ねないでください、冗談ですから」 ニコッ

側近 「……さて、お話はこれぐらいにしておきましょう」

魔王 「え……?」

側近 「お休みになられるのでしょう? 魔王様」

魔王 「……あっ」

側近 「さあ、魔王様は寝室へ」

魔王 「……どうせなら、側近が寝るまで起きてる」

側近 「魔王様が寂しいからですか?」 クスッ

魔王 「そ、そんなんじゃない!」

魔王 「僕は寧ろ、側近が寂しいんじゃないかって……」

側近 「……お心遣い、感謝します」 ナデナデ

魔王 「……側近?」

側近 「ですが、私は大丈夫です」

魔王 「本当に?」

側近 「ええ」

魔王 「……わかった」

魔王 「おやすみ、側近」

側近 「おやすみなさい、魔王様」

魔王 「……」 タッタ

側近 「……」

側近 「……私も、頑張らないと」

魔族たちの集落-

側近 「……状況は?」

魔族 「はっ、我々の軍勢は現在、順調に人間達の拠点に向けて進行中とのこと」

側近 「当然の結果ね」

側近 「なにせ、私達魔族が命を落とすことはない」

側近 「どんな傷も放っておけばいずれ癒えるし、寿命を迎えることもない」

側近 「急所をつけば命を落とす人間とは、訳が違う」

魔族B 「ですが、やはり『勇者』の存在が……」

側近 「……勇者、やっぱり勇者か」

オーク 「はっ、そうだろうよ」

魔族B 「オーク様!」

魔族C (相変わらず、化け物のような姿をしていらっしゃる……)

魔族B (か弱い女性を襲いそうな、醜い姿を好んで取るとは……)

オーク 「なにせ、あの勇者には俺たちを殺すための『力』が備えてやがる」

側近 「……ええ、神の洗礼だかなんだか知らないけど」

魔族C 「勇者といえど所詮人間、故にありとあらゆる策で殺害を試みているのですが……」

側近 「……結果は?」

魔族C 「……」

側近 「……そう」

「……大変そうだねぇ」

魔族B 「……なんだ、この小娘は」

魔族C 「迷子じゃねえのか?」

側近 「……竜娘」

竜娘 「迷子だなんてひどいよ、たっだいま!」

オーク 「……竜娘か、勇者連中の偵察を終えたのか?」

竜娘 「ああ、そのこと」

竜娘 「勇者なら、魔族を率いて物量戦を仕掛けたら殺せたよ」

竜娘 「……まあ、あたし自身の力もあるけどね」

側近 「……!?」

オーク 「……何?」

竜娘 「……そう、殺したはずなの」

オーク 「……どういうことだ?」

竜娘 「蘇ったのよ、あたしたちみたいに」

側近 「……詳しく聞かせて頂戴」

竜娘 「うん、勇者を殺した場所の近くには教会があったんだけどね」

竜娘 「勇者を殺したら、何故だかその勇者の死体が消えちゃったの

竜娘 「で、死体を探そうと近くの教会に立ち寄ったら、勇者が生き返ってたってわけ」

オーク 「……教会、か」

竜娘 「……あいつ、本当にただの人間?」

オーク 「ただの人間のはずないだろ、なにせ俺たちを殺せるんだからよ」

側近 「……」

竜娘 「……ねえ、久しぶりに休んでもいいよね?」

側近 「……構わないわ」

竜娘 「ありがと、おやすみ」 タッタッタ

魔族B 「……あのような娘まで使うのですか」

側近 「……あの子が言い出したから、使っただけ」

オーク 「認めたくはねえが、アイツはああ見えて並みの魔族よりも強いぜ」

魔族C 「……」

魔族C 「勇者は、我々の集落の存在に気づいているとのこと」

側近 「……そう」

魔族C 「……如何いたしましょう?」

側近 「……勇者は蘇る、か」

オーク 「……こいつは、厄介だなァ」

側近 「そうね、動ける魔族のうちのいくらかを……」

側近 「この世界の教会の破壊に回すことにするわ」

側近 「勇者の討伐隊には、勇者の足止めを命じるわ」

側近 「……ただし、命を大事に」

側近 「いいわね?」

魔族 「はっ!」 タッタッタ

側近 「……」 ハァ

オーク 「あの坊主の前での振る舞いとは、えらい違いだぜ」

側近 「私も魔族の上に立つ以上は、それ相応に振る舞わなきゃ不味いでしょう」

オーク 「別に、お前がどんな振る舞いをしてようが……」

オーク 「お前に異を唱える奴は、俺がどうにかしてやるのによ」

側近 「……独裁者になりたいわけじゃないわ」

側近 「それに、貴方にそんなことを頼んだら見返りが恐いし」

オーク 「信用ないんだな、ほんとによ」

側近 「……それよりも、勇者」

オーク 「……まさか不死身だとはな」

側近 「性質的には、寧ろ私達に近い気がするわ」

オーク 「でもよォ、アイツは一応人間なんだろ?」

側近 「人間の皮を被った化け物かもしれないわ」

オーク 「……」

オーク 「側近、お前はこれからどうする気だ?」

側近 「今まで通り、側近としての仕事をするつもり」

オーク 「……お前のやってることは、王の役目だろうが」

側近 「……魔王様は、生きてさえいればそれでいい」

オーク 「……坊主の世話から魔族軍の采配まで、大変なこった」

側近 「魔王様のお世話は、別に苦じゃない」

オーク 「……どうだか」

側近 「好きでもないと続かないわ」

オーク 「……あの坊主が好きなのか?」

側近 「恋はしてない」

オーク 「……あいつに似ているだろ、坊主は」

側近 「魔王様は魔王様であって、彼じゃない」

オーク 「……割り切ってるようにはみえねえな」

側近 「私は割り切ってるつもり」

オーク 「そうかよ」


側近 「……オーク」

オーク 「どうした、改まって」

側近 「貴方にも、前線に出てもらうことになるかもしれない」

オーク 「……坊主を守るためにか?」

側近 「結果的にはそう」

オーク 「……仕方ねえな」

側近 「……」

オーク 「そんな顔すんなって」

側近 「静かになると思って」

オーク 「……俺は殺される前提か?」

側近 「……」

オーク 「ひでえな、おい!」

側近 「……」

オーク 「……いつから、そうなっちまったんだよ」 タッタ

側近 「……そう」

側近 (……彼は、もうこの世にはいない)

これにて区切り

-次の日-

魔王 「……ふあぁ、今日も良く寝た」

側近 「……」 zzz

魔王 「側近? いつの間に……?」

側近 「……」zzz

魔王 「……起こしたら迷惑かな」

魔王 「たまには、僕が頑張らないと」

側近 「……!」

側近 「……寝過ごした」 ムニャムニャ

側近 「魔王様は……」 キョロキョロ

側近 「……魔王様!?」

-食卓-

魔王 「……あ、目が覚めたんだね」

側近 「……魔王、様?」

魔王 「今日は、僕が朝ごはんを作ってみたんだ!」

側近 「……よく、一人で作れましたね」

魔王 「何度か側近の手伝いをしてたら、作り方を覚えちゃって」

側近 「……」

魔王 「……た、卵焼きは焦がしちゃったけどね」

側近 「……」 ウルウル

魔王 「……ごめんなさい、不味かった……?」

側近 「台所に、よく手が届きましたね……」

魔王 「届かなかったから台を使ったんだけどね、あはは……」

側近 「……焦げたからなんですか、いただきます」 パクッ

魔王 「……ど、どうかな」

側近 「……おいしい」

魔王 「本当!?」

側近 「毎日作っていただきたいぐらいです、ええ」

魔王 「……それだと、側近の料理が食べられなくなっちゃう」

側近 「……もう、魔王様ったら」 ポッ

魔王 「……赤くなってるけど、もしかして風邪引いちゃった……?」 ウルウル

側近 「いえ……」

側近 「そんなことを言っていただけるのは、今となっては魔王様ぐらいのものです」

魔王 「……まだまだ、料理は側近には程遠いや……」

側近 「経験ですからね、仕方ありません」

側近 「この卵焼きだって、充分食べられます」

魔王 「……そうかな」

側近 「そうですとも」

側近 「……ふう、お粗末様でした」

魔王 「食べるのが早いね、側近」

側近 「ええ、まあ」

魔王 「そういえば、側近は昨日どこに?」

側近 「少し、集落のほうに」

魔王 「……勇者に関係すること?」

側近 「それもあります」

魔王 「ほかにもあるの?」

側近 「魔王様が知る必要のない雑務ですよ」

魔王 「また、それだ……」

側近 「いつか、機会があれば話すかもしれませんけど」

魔王 「……来るのかな、本当に」

側近 「来ない方が、幸せなのかもしれませんね」

魔王 「ごちそうさま!」

側近 「さて、食器をお下げします」

魔王 「……いつもありがとう、側近」

側近 「側近として、当然のことをしているまでです」 ニコッ

側近 「少しかかりますから、魔王様は適当に暇でも潰していてください」

魔王 「……うん」

側近 「……」 カチャカチャ

魔王 「……」 ペラッ

側近 「……」 カチャカチャ

魔王 「……」 ウトウト

側近 「……我ながら改心の出来です、洗い物ですけど」

側近 「……洗い物が終わりました、魔王様」

魔王 「ありがと、側近」 ペラッ

側近 「なにを読んでいらっしゃるので?」 チラッ

魔王 「これ? オークが面白いから是非、だって……」

側近 「オーク、ですか……」

魔王 「小説なんだろうけど、僕にはよくわからないや」

「受け入れるんだな、ケッヘッヘ」グビビッ

「い、いや……! け、ケダモノ!」

「いいじゃねえか、エルフさんよォ」

「ひ、ヒギッ!」

「いい締まりだぜ、ぐへへ……」

「痛い、でも……」

「……ウッ!」

「い、いいわ、中に、中に……!」

ドビュビュー


側近 「……魔王様、私は少し出かけてきます
でもご心配なさらず、あまり遅くはなりませんから
ただ……、今晩の肉が固くて臭いものになるかもしれませんね
私の服に赤い模様が出来ているという可能性も……
でも、魔王様はなにも心配しなくて構いません」

魔王 「……側近、恐い」

側近 「私はいたっていつも通りですよ?」 ニッコリ

これにて区切り

まだ残ってたのか、保守してくださる方ありがとうございます

側近 「ただいま戻りました、魔王様」

魔王 「おかえりなさい、側近……」

魔王 「……血だらけになってる!?」

側近 「私が怪我をしたわけじゃありませんから、ご心配には及びません」

魔王 「……なら、返り血?」

側近 「魔族は不死身ですから、手足をもいでも放っておけばまた生えてきますよ」 ニコッ

魔王 「やっぱり、今日の側近はなんだか怖い……」

側近 「別に、私は魔王様に対して怒っているわけではありません」

側近 「……さてと、お風呂に入ってきます」

魔王 「じゃあ、僕も……」

側近 「なりません」

魔王 「……どうして?」

側近 「今魔王様に触れると、魔王様が穢れてしまいます」 ニコッ

魔王 「……?」

-5分後-

魔王 (……側近はお風呂に入った)

魔王 (側近が恐くなったのは、僕がオークから借りた本を読んでからだ)

魔王 (……そんなに、恐ろしいことが書いてあったのかな)

魔王 (……男性器っていうのは、確か)

魔王 (え、ええ、もしかして……)

魔王 (……でも、欲望を解き放ったって?)

側近 「……上がりましたよ魔王様……魔王様?」


魔王 「……側近」

側近 「はい、なんでしょうか」

魔王 「あの本に書いてあった描写……」

側近 「あれは忘れてください」

魔王 「……どうして?」

側近 「魔王様には早すぎます」

魔王 「またそれだ……」


魔王 「またそれだ……」

側近 「魔王様は、私を見ても何も感じないでしょう?」

魔王 「ううん、凄く落ち着くよ?」

側近 「今はそれでいいのです」

魔王 「い、良いの……?」

側近 「ええ、魔王様はそのままでいてください」

魔王 「……う、うん」


側近 「さて、さっきのことは忘れて、なにかして遊びましょう」

魔王 「時間は大丈夫なの?」

側近 「予定は入っていません」

魔王 「……お仕事はいいの?」

側近 「今のところは様子見ですね」

魔王 「様子見?」

側近 「ええ、様子見です」

魔王 「それで、なにするの?」

側近 「魔王様の望まれることでしたら、なんでも」

魔王 「……僕の望むこと?」

側近 「ええ」

魔王 「うーん、でもこの家でできることなんて……」

魔王 「……それじゃあ、お絵描きしようよ」

側近 「お絵描き……何をお書きになられるので?」

魔王 「うーん、やっぱり側近?」

側近 「私、ですか?」

魔王 「うん、だって一番身近なんだもの」

側近 「……もう、魔王様ったら」 ギュゥッ

魔王 「や、やめてってば!」


側近 「それで、私はどのようなポーズを取りましょう」

魔王 「……ポーズ?」

側近 「絵を描くということはそういうことなのでしょう?」

魔王 「えっと……」

側近 「あ、もしかして服を」

魔王 「よくわかんないから普通にしててよ」


魔王 「……」 カキカキ

側近 「……」 ジィー

魔王 「……」 チラッ

側近 「……」ジジィィィ

魔王 「側近、なんだか落ち着かないよ……」 ソワソワ

側近 「私のことは気にしなくても構いませんから、どうぞ作業をお続けください」

魔王 「う、うん……」

魔王 「……描けた」

側近 「どれどれ、見せて頂けますか?」

魔王 「うん、これ」 っ

側近 「味があって悪くない絵です」

魔王 「……やっぱり下手?」

側近 「いえ、お上手ですよ」 ナデナデ

魔王 「……えへへ」

寝る

保守、支援ありがとうございます


側近 「魔王様!」

魔王 「……側近? どうかしたの?」

側近 「聞けば、人間の女たちはこの日、好きな異性にチョコレートを手渡すんだとか」

魔王 「……僕たち、魔族だよね?」

側近 「細かいことは気にしなくても構いません」

魔王 「よくないと思うよ、だって僕たちは人間に攻め込まれてるって……」

側近 「気にしなくて構いません」


側近 「さあ、魔王様」っ

魔王 「……これが、チョコレート?」

側近 「私の手作りです、ですから不味ければ捨てていただいても」

魔王 「側近、もう食べていい?」 キラキラ

側近 「ええ、どうぞごゆっくり」 ニコッ

魔王 「ああ、美味しかった」

側近 「……」

魔王 「……側近」

側近 「……」 ニヤニヤ

魔王 「……おーい、側近?」フリフリ

側近 「……あっ、はい、なにか御用でしょうか!?」

魔王 「ううん、ぼーとしてたから」

側近 「も、申し訳ありません」

側近 「決して魔王様の食べっぷりと可愛さに骨抜きだったわけでは……」

魔王 「……」 ジィー

魔王 「せっかくこんなおいしいものを食べさせてくれたから」

魔王 「側近には……お礼、しなきゃ」

側近 「お礼は、今日してはなりません」

魔王 「……そうなの?」

側近 「ええ、ちゃんとお礼をする日がありまして」

魔王 「……そうなんだ」


魔王 「……でも、すぐにお礼できないのはいやだなぁ」

側近 「……」 ナデナデ

魔王 「ごめんなさい、側近……」

側近 「そのお気持ちだけで十分ですよ」 ニコッ

魔王 「……ありがとう」

区切り、時期外れだということは重々承知

支援、保守ありがとうございます
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