「世界なんて救わなければよかった」(34)

(魔王を倒してから数年がたった)

(世界は平和で、勇者の仕事なんてまるでないが魔王討伐時にもらった報酬があるから生活に不自由はない)

(しかし、周りの手伝いをしようとすれば)

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「勇者様に手伝ってもらうなんてとんでもない」

「恐れ多くて仕事が手につきません」

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(などと言われ遠ざけられる日々)

(さらに、「勇者の役目はもう終わったんだよっ、でしゃばるんじゃねぇ!」などと言って唾を吐くものまで現れ始めた)

(俺はこんな生活を送るために命がけで戦いに臨んだわけではないのに)

(こんなことになるならいっそ・・・・)






〝「世界なんて救わなければよかった」″

(周りの奴らに敬遠され、畏怖の目で見られ、平和な世の穀潰しと疎まれ、過去の偉業により煙たがられる)

(誰もが俺を”勇者”としか見ないっ、お前らと同じ”人間”として見てくれない!)

(これじゃあ敵対してないだけで魔王と変わらないじゃないか)

(平和な時代に勇者(俺)はいらないと言うなら、こんな不愉快な世界は俺がぶっ壊してやるよ)

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その後彼は姿を消した。

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~玉座の間~

側近「陛下、北村の伝令が急ぎの報告があるそうです。いかがなさいますか?」

王様「急ぎとな?よい、通せ」

伝令「ご報告いたします!我々が駐在しておりました北村に魔物の群れが襲来、北村は一部の駐在員を残し、壊滅いたしました」

側近「なんとっ!」


王様「群れをなしておったとな?」

伝令「ハッ、魔物とは思えないほどに統率がとれた群れでした・・・あれはまるで」

王様「魔王が存在していた時のようだ、と?」

伝令「はい」

王様「ふむ・・側近よ、勇者に討伐と原因究明の伝令を出せ」

側近「かしこまりました、ただちに」スタタタッ

王様「ヌシは下がってよい、報告御苦労」

伝令「ハッ、失礼いたします」


王様「魔王・・・か」

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側近「陛下、先ほど勇者への伝令が戻ったのですが・・」

王様「どうした」

側近「伝令の報告では勇者の家に向かったものの留守のようで、周辺住民に聞き込みを行ったところ最近は誰も姿を見ていないそうです」

王様「チッ、勇者などこのような時にしか役に立たんくせに必要な時におらんとは使えん奴よ」

王様「見つからぬとなれば当てにはできん。守備隊を結成し王都から離れた村に配置せよ、近い町などは外壁の強化のみでよい」


側近「遠方の村に・・ですか?たいして特産物も無いような村などは消えてしまっても構わないのでは?」

王様「たしかに村の1つや2つ消えた所で構わぬがな、すぐに兵を派遣すればそれだけで民衆は安堵するであろう?」

側近「今後に備えて先手を打つということですか」

王様「左様、何もせずに被害が増すようであれば国民の不安の矛先がこちらに向く」

王様「そうなれば、勇者は何をしている、どこにいる。などと声高に叫びかねん」

側近「そうなってしまえば勇者の足取りをつかめぬ我々は治める術がありませんな」

王様「だからこそ、やれるだけのことはしているという姿勢を見せておかねばな」



側近「では、すぐに守備隊を結成後、各村に派遣いたします」

王様「うむ」

王様(しかし、魔王がいなくなり気の抜けた雑兵共でどれだけ抑えられるか)

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・・

今日はここまで

続き投下します。

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側近「また1つ村が壊滅したようです」

王様「…こうも容易に落とされ続けるとは、全く役に立たんどころか戦力の無駄遣いであったな」

側近「そのようで」

王様「このまま兵をすり減らす訳にもいかん。外壁の無い村などは放棄、他の防壁がある町へ守備隊共々避難させろ」

側近「専守防衛、ということですか」



王様「防衛も碌にできんとなれば派遣しておく意味もない。兵が役に立たたぬなら壁に守りを補ってもらう」

王様「全く、使えん奴らよ。専守防衛の件に加え、兵の訓練を厳しくするように伝えろ」

側近「承知しました」

王様(勇者が見つかるまで持ちこたえられればよいが…)

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側近「…王様、外壁を持つ町が魔物の襲撃を受けたようです」

王様「ふむ?魔物が襲ってくるなど珍しくなかろう?」

側近「それが、外壁の中で被害を受けたそうで…」



王様「なんだと?」

側近「報告によりますと門番は刺殺されており、門周辺には目立った破損はなかったようです」


王様「つまり、町の中に…」

側近「魔物を手引きした者がいるようです」

王様「面倒な事になったな…中から開けられてしまってはどれだけ頑丈な壁があろうと意味が無い」

側近「殺害された門番は深夜から早朝の担当だったようで、目撃者は望めません」

側近「取り調べをおこなう場合、内通者がいるなどと広まれば住民は疑心暗鬼に陥るでしょうな」

王様「魔物に与するなど愚かな。調査は内密に行う、まずは巡回を増やし監視の目を光らせろ」

王様「門番は常に2人1組とし、夜間は2組を配置。かがり火も複数設置だ…それと」

側近「なにか?」

王様「勇者と共に魔王を討ち取った仲間がいたろう、奴らを探しておけ」

側近「それでしたら、住居もわかっていますから確認させるだけで済むでしょう」

王様「勇者のようにいなくなっていなければな」

側近「…はい」




王様「勇者が見つからなければ奴らに動いてもらう」

王様(勇者でも無い国民に頭を下げるなどしたくはないが)

側近「では、そのように」

王様「下がってよい」

側近「失礼いたします」サッ スタスタ

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短いけど今回はここまで

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側近「警備を強化してから町内部では目立った問題は起こっておりません」

側近「ですが、魔物の襲撃はより活発になっているようです」

王様「ふむ…外壁は耐えられるのか?」

側近「それに関しては事前に強化、戦闘後の補修を行っているため物資が続く限り問題ありません…しかし」


王様「疲労か…」

側近「はい…度重なる戦闘、補修、巡回。これでは気が休まりません」

王様「守ってばかりでは長くは持たんか…では、奴らに動いてもらうとしよう」

側近「勇者パーティーですか?」

王様「そうだ。未だ勇者は見つかっておらぬが待っていては疲弊するばかりだ」

側近「では迎えを出します。数日中には集まるかと」

王様「今残っているのは何人だったか?」

側近「使える者は3名ですね。戦士、魔法使い、僧侶になります」

王様「ずいぶんと少ないな」

側近「魔王との戦闘で命を落とした者もいますが、大半はパーティー解散後に死亡、行方不明となっています」

王様「内容は?」

側近「武闘家、弓使いが魔王戦で死亡。解散後につきましては…」

側近「まず盗賊ですが、勇者に同行、助力したために執行猶予をつけたのち処刑」

王様「あぁ…そのようなこともあったな」

側近「次に商人が事業に失敗し破産。首を吊り自殺」

側近「吟遊詩人は酒場での演奏中に酔った客と揉め事となり、頭を打った際打ち所が悪く死亡」

王様「なんとも間抜けな死因だな」

側近「賢者が老衰により死亡」

側近「次に行方不明者ですが、こちらは2名です」

側近「船乗りが航海に出たまま消息不明」

側近「賞金稼ぎが賞金首の討伐に向かい、その後存在が確認されていません」


側近「最後に踊り子ですが、こちらは存命です」

王様「先ほど使えるのは3名と言ったが、踊り子は使えんということか?」

側近「はい。貴族に買い取られたようで、現在は子を身篭っております」

王様「なるほどな」

側近「ですから使えるものは先の3名となります」

王様「では使える奴らは何をしておるのだ?」

側近「…戦士が農作業、魔法使いが魔道書作成、僧侶は教会にいます」

王様「そうか。下がってよい」

側近「ハッ」

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続きはまたそのうち

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側近「勇者パーティーが到着したようです」

王様「やっと来たか。連れてまいれ」

側近「はっ」

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側近「勇者パーティーをお連れしました」

王様「御苦労、さて…よくきてくれた」

魔法使い「ご無沙汰しております」

僧侶「陛下も息災のようでなによりです」

戦士「ご用件は?」

魔法使い「ちょっ!?失礼でしょ!」ボソボソ

王様「構わん。こちらが呼びだしたのだからな」

戦士「ほれ、いいってよ」

魔法使い「はぁ…全く、時々あんたが羨ましいわ」

戦士「ありがとさん。けどよ、こっちだって仕事があるなか来てるんだぜ?」

  「ここでへーこらしたところで土は耕せない。俺にはやるべきことがあんだよ」



王様「畑仕事をしているのだったな?」

戦士「あぁ、そうだ」

王様「その仕事、辞めてもらいたい」

戦士「あ?今なんつった?」

王様「魔物の活動が活発になっているのは知っているな?」

戦士「知らねえほうがどうかしてる」

王様「呼び寄せた理由はそのことだ。原因の究明、又は排除をしてもらう」



戦士「俺達で?勇者はどうした?」

王様「捜索はしている。しかし、目撃者すらなく未だに見つかっておらん」

戦士「それで泣きついてくるとは…王国の兵は無能ばかりなのか?」

魔法使い「いいかげんにしなさいっ、言葉が過ぎるわよ」

    (まぁ、無能って所は否定できないけど)

戦士「チッ…わかったよ、まかせる」

魔法使い「えぇ、あんたはちょっと頭冷やしておきなさい」

    「それで、我々は今後どのようにすれば?」

王様「うむ、まずは魔物の内通者が潜伏していると思われる町へ向かってもらう」

魔法使い「わかりました。いくつか条件をつけてもよろしいですか?」

王様「できる限りのことは応えよう」

魔法使い「まずは農作業の人員派遣、旅の資金援助を。それと今後必要に応じて支援していただければ」

王様「よかろう」

魔法使い「人手さえあれば、あんたがいなくてもいいわよね?」チラッ

戦士「…まぁな。魔物が襲ってくるなら人ごとじゃねぇし、やってやるよ」

僧侶(私、空気ですね…)

魔法使い「では、まず一度戻り、身支度が済み次第出発の報告に参ります」

王様「うむ。支度金を出しておこう、城を出る前に受け取ってくれ。側近、用意しておけ」

側近「はい、ただちに」スタスタスタ

王様「用意が済むまで城で待機してくれ。食事がまだなら食堂を使ってくれて構わんよ」

魔法使い「ではお言葉に甘えて。失礼いたします」サッ

戦士「」チラ

僧侶「」ペコリ

………… 
……
王様(期待しているぞ、私のためにもがんばってくれ)

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