勇者「惚れた」魔王♀「えっ」(884)
勇者「大好きだ! 愛してる!」
魔王「え? えっ!?」
勇者「敵同士なのに惚れちまったんだ!」
魔王「えぇっでもっ!」
勇者「魔族でも美人だし長い髪の毛も綺麗だし文句はないぜ!」
魔王「そ、そんな///」
勇者「結婚してくれ、側近ちゃん!」
魔王「えっ」
側近「えっ」
完
魔王と勇者が結婚して平和になるSSがありふれているのなら
勇者と側近が結婚すれば良いじゃない
セフィロスやピサロみたいなのは思い浮かばんのかい
魔王「そんなあ……」
勇者「側近ちゃん!」ガシッ
側近「は、はあ」
側近(手握られてる……)
勇者「可愛い! どうか結婚して世の中を平和にしようじゃないか!」
側近「はあ、まあ兵も大分疲弊していますし」
側近「休戦するに越したことはありませんが」
勇者「よし、決定だ!」
魔王(私……勇者となら結婚しても良いかなって思ってたのに……)
世の中は平和になりましたとさ
完
勇者「お願いします!」
側近「………(ここで勇者をこちら側に引き込むことができれば、魔族に取って大きな益となる…)
勇者「頼む…!」
側近「…わかりました。私でよければ…」
勇者「マジで!?やったぁあ!!」
側近「ですが条件があります。私の伴侶となるからには魔族の一員となったも同じ。…同族に剣を向けるようなことは…」
勇者「うん!うん!」
魔王「ちょっと待ちなさい!…側近」
側近「は?…しばしお待ちを」
勇者「うん!」
・
・
・
魔王「貴方、わたくしを差し置いて寿退社ですか?…良い度胸ですね」
側近「寿退社?いえ、決して魔王様が心配されているようなことは…」
魔王「お黙りなさい!」
側近「は、はい…」
>>13
よし続けるんだ
おまえら勇者×魔王はもう飽きたとか言ってるけどこう言うのは好きなの?
側近「お、畏れながら…勇者とは人間の最大にして最後の牙でございます。ゆえにそれを我が方に引き入れられれば…」
魔王「そうではないの!」
側近「は?しかし…は!」
魔王「やっと気がつきましたか?」
側近「はっ…魔王様、私のことならば気にかけて頂く必要はございません。人間との婚姻など屈辱の極みではございますが、魔族のためを思えば…」
魔王「そうじゃありませんと言っているでしょう!?」
側近「も、申し訳ございません…厚かましいことを…」
魔王「三千路間近のわたくしを差し置いて1400歳程度の貴女が婿を迎えるなど…神が許しても魔王たるわたくしが許しません!」
側近「は、はあ?」
魔王「側近」
側近「ははっ…」
魔王「悪いことは言いません。…わたくしに譲りなさい」
側近「はあ…?」
勇者『マダー?』チンチン…
まさか俺が立てたスレで続きを書いてくれる人がいるとは
マダー? って言いながらチンチン勃ててるのか……
ほっしゅ
側近「なりません!魔王ともあられるお方が人間などと…!」
魔王「お黙りなさい。…もう決めたのです」
側近「魔王様…!」
魔王「側近。わたくしが魔王の座についてどれくらい経つと思いますか?」
側近「は?たしか…1600年ほどかと記憶しておりますが」
魔王「1653年と154日です。…1653年…わたくしは青春とも言える期間をすべてこの魔王という職業に費やしてきました…」
魔王「貴女が生まれる以前からですよ?考えられますか?」
側近「ははっ…」
④
側近「それほど長く我らが頂点に君臨される魔王様は、まさしく王に相応しい実力と貫禄と兼ね備えたお方と…」
魔王「貫禄…?」
側近「はい。威厳と言いますか、長い年限を経て磨き上げられた気迫というものが…」
魔王「…側近…わたくしはそんなに老けて…見・え・ま・す・か・?」
側近「い、いひぇ…ひょ、ひょのひょうなこひょは…!」
魔王「よろしい」
側近「…は、はい。申し訳ございません…」スリスリ…
他の貴族とお見合いする機会もなかったんだろうな……可哀想に
魔王「…わたくしもそろそろ女性としての幸せを掴みた…」
勇者「でゃあああ!!」ブンッ!
魔王「きゃあ!?」
側近「魔王様!?」
勇者「フシュウウ…!」チャキ…
側近「くっ…勇者!先程の言葉は偽り…」
勇者「魔王!貴様、俺の嫁に何をするっ!!」
側近「えっ…?」
魔王「ちょっ、ちょっとお待ちになって?わたくしは別に何も…」
勇者「側近を虐めるなァアア!!」ブン!
魔王「ひゃああ!?」
側近「勇者!落ち着け!…勇者!」
側近「なんといいますか…ま、魔族には魔族のコミュニケーションというものがあるのです」
勇者「しかし…側近のマシュマロのような頬っぺたをあいつは…!」
側近「魔王様は私を傷つけようとしてあのような行為をなされたのではありません」
勇者「………」チラッ
魔王「ほほほ…そ、そうですわよ?」
勇者「なら良いんだが…」
側近「お気持ちは嬉しく思いますが…急に暴れられては困ります」
勇者「…!」
側近「私に危害が及んだと判断した時は助けを求めますので、それまでは大人しくしていてください。…良いですね?」
勇者「うん!」
魔王「ずるいですわ!ずるいですわ!貴女ばっかり…!」
側近「そのようなことを言われましても…」
魔王「まるで姫を守るナイト…ああ、恨めしいですわぁぁ…」
側近「は、はあ?」
魔王「どうにかしてわたくしだけのナイトとなっていただけないかしら…」
側近「魔王様…それほどまでに…」
魔王「はうぅ…」
側近「………」
勇者『あ、側近ちゃーん!』
側近「…わかりました」
魔王「何がです?わたくしの気持ちがですか?嘘おっしゃい。小娘に何がわかります?幸せいっぱいのくせして…わたくしを蔑んで楽しもうというのですか…? 」
側近「ま、魔王様?」
魔王「良いですわねぇ…そういった余裕があるというのは。わたくしなど出会いもなく、ただ老いさらばえてゆくこの身を嘆くだけ…ああ、世の中とはなんて不条理な……はぁぁ…」
側近「魔王様…」
側近「そうまでおっしゃるのであれば…私にお任せくださいませ」
魔王「…よい男性を紹介してくれるのですか?」
側近「い、いえ…残念ながら私の知る限りにおいて、魔王様に見合う者は存じ上げません…」
魔王「使えない…変な期待を持たせないでちょうだい…!」
側近「も、申し訳ございません…ですが…」
魔王「なんです?」
・
・
・
魔王「なるほど、わたくしがあの者好みの女性に…」
側近「ははっ…私がいろいろと探りをいれて参ります。…とはいえ相手は人間ですので、できれば魔王様には他の有力魔族との婚姻をと思うのですが…」
魔王「なりません。そんなことを言っていたからこの歳で独り身なのです…!チャンスは…逃してはなりません!」
側近「は、ははっ…」
側近「ではこれを…」
魔王「これは…遠聴のピアス?」
側近「ははっ。勇者の言動を魔王様に伝えるため…また、私から質問等以外に、何かお知りになりたいことがあれば…」
魔王「呟けばよい…そういうわけですね?」
側近「その通りでございます」
魔王「…さすがはわたくしの側近…期待していますよ?」
側近「ははっ!お任せを…」
・
・
・
勇者「あ、もう済んだの?」
側近「はい。お待たせして申し訳ありません」
勇者「良いよ。側近ちゃんにならいくら待たされたって平気」
側近「そういって頂けると助かります。…ありがとうございます」
勇者「うん!」
魔王《側近…何を惚気てますの…》
側近「い、いえ…そのようなことは…」
勇者「どうかした?」
側近「な、なんでもありません。それより…」
勇者「うん?」
―魔王城 城下街―
勇者「あれ?さっき通って来たときはこんな場所は…」
側近「勇者が来るという情報を掴んだので、魔王様が万一に備え、街全体に幻惑の術をかけ保護していたのです」
勇者「へぇ…」
側近「この街に住む魔族すべてが兵士というわけではありません。…同胞を危険に晒したくないという魔王様の配慮でもあります」
勇者「魔族の王ってくらいだから、力がすべてとか考えてるのかと思ってたけど…意外に治世とか考えてるんだな、あいつ」
側近「えぇ」
魔王《側近…今のはGJよ、GJ!》
側近「…この先に落ち着いて話せる酒場があります。ついて来てもらえますか?(…じ、GJ…?)」
勇者「うん、わかった!」
―酒場―
サキュバス「あらん?側近様じゃないの?何かごよ…」
勇者「………」キョロキョロ…
側近「客人と少し話がしたいのでな。vipルームを貸してもらいたい」
サキュバス「お客様ねぇ…?」
勇者「…あ、初めまして。このたび、側近の夫となります、勇者で…」
側近「ま、待て!」
勇者「うん?でも側近ちゃんの馴染みの店っぽいし、挨拶くらいはしとかないと…」
側近「…貴方は人間なのですよ?私の立場と、魔族と人間の今の関係を考えてみてください」ボソボソ…
勇者「あ…」
サキュバス「ふーん…?」
側近「サキュバス。今のは聞かなかったことに…」
サキュバス「はいはい…にしてもぉ…」
勇者「………」
側近「…どうかしたのか?」
サキュバス「なかなか良い男じゃない?内から生命力がはとばしってる感じ♪」チョイチョイ…
側近「ふむ?なん…」
サキュバス「…一晩貸して?」
側近「は?」
サキュバス「だからぁ…一晩、お相手をしてもらいたいなぁ…って」
魔王《この阿婆擦れ…何を言ってますの?側近、やっておしまいなさい!》
側近「そ、それは無理です…さすがに…」
サキュバス「やっぱりダメぇ?…まぁ、旦那さんじゃねぇ…」
側近「…内密に、と言ったはずだ。わかっているのか?貴様…」
サキュバス「わかってますってぇ…うふふ♪」
側近「………」
魔王《なんて節操無しなのかしら…!側近!ここはきつくお仕置きというものを…側近!》
―VIPルーム―
側近「これで少しは落ち着けますね」
勇者「………」
側近「…どうかされたのですか?」
勇者「ん…ああ。さっき立場を考えろって言われてさ」
側近「そのことならば…申し訳ありません。とっさのことでしたのでつい語気が荒く…」
勇者「違うんだ」
側近「……?」
勇者「敵だったとしても構わないって言ったけど…側近ちゃんは立場上、俺が戦ってきた魔族達の上司…もっといえば仲間なんだよな…」
側近「それはそうですが…」
勇者「俺…今まで数えきれないほどの魔族を…そんな俺が旦那になっちゃったら、側近ちゃんが虐められるんじゃないかと…」
側近「………」
魔王《…わたくしの目に狂いはありませんでした…人間なのに魔族への配慮を…ああ、素晴らしい男性ですわぁ…》
勇者「でも…一目惚れでさ…どうしても君が欲しくて堪らなかったんだ…」
魔王《ゆ、勇者様…!》
側近「…勇者様、私が話をしたいとここに誘った理由もそこにあります」
魔族《…あ…そ、そうでした。勇者様が話しているのは側近……側…近…はぁぁ…》
側近「………」
勇者「…どういうこと?」
側近「私達はまだ互いを良く知りません」
勇者「………」
側近「…ですからもっとお互いのことを知ってから、一緒になるべきだと私は思うのです」
勇者「それは…確かにそうかもしれないね…」
側近「勇者様からの気持ちに応えたことまで否定するようなことではありませんが…」
勇者「うん?」
側近「もしかしたら私などより良い相手が見つかるかもしれませんし…焦ることはないかと…」
勇者「それだけは絶対に無いよ!それだけは!」
側近「は、はい…」
魔王《…うぅ…》
側近「髪の色や型などはやはり私のような風が好みなのですか?」
勇者「うん!まぁ、側近ちゃんならどんな髪型でも似合うだろうけど…その短めのくせっ毛とクールな雰囲気のギャップが堪らない…」
側近「は、はあ?…ありがとうございます…」
勇者「それにね!?その真っ白な肌と髪の黒のコントラストとかもすごく綺麗で…」
魔王《ふんふん…》カリカリ…
側近「そんなこと…初めて言われました…」
勇者「ほんとに?…魔族って見る目ないんだなぁ…」
側近「…あまり人間に似通った姿は敬遠されますから」
勇者「でも強い魔族って人型が多いんじゃないの?」
側近「それは…元々我々も神の子だからです。強い力を持つということは、より完璧な存在、つまり神に近づくということに……」
魔王《側近…探りはどうしましたの?》
側近「あ…そ、そんなことより勇者様?」
勇者「うん?」
―魔王城 魔王のへや♪(入るときはノックを!)―
側近「魔王様、お呼びでしょうか?」
魔王「本日はご苦労様でした。…楽しそうで何よりでしたわね」
側近「そ、そのようなことは…」
魔王「…しかし、勇者様の好みについてだいぶ知ることが出来ましたわ。ありがとう、側近」
側近「ははっ…」
魔王「後はこのメモに沿ってイメチェンをするだけですわ…うふふ♪」
側近「…他にご用は?」
魔王「特にはありませんが…何か予定でもあるのですか?」
側近「じ、実は勇者に食事に誘われておりまして…その…」
魔王「…側近んん…?」
側近「も、申し訳ございません!どうしてもと頼み込まれまして…!」
魔王「諜報員が流されてどうしますの!?食事などしたら貴女の株がまた上がってしまうではありませんか!」
側近「は、ははっ…すぐに断りの伝言を…」
魔王「…お待ちなさい」
側近「は?」
魔王「このまま食事を差し止めれば…わたくしが悪者になるのでは?」
側近「…悪者でございますか?」
魔王「だってそうでしょう?側近に仕事を与えるのはわたくししかいませんもの…」
側近「あ…確かにそうでございますね…」
魔王「そうでございますね…じゃありませんわ。…最初から貴女が断っていればこんなことには…」
側近「も、申し訳ございません…」
魔王「しかし、困りましたわねぇ…」
もう無理…寝る
明日頑張る
明日何時ごろの予定?
>>60
12時過ぎにちょこっと。後は17、8時くらいかな…
―城下街 憩いの広場―
魔族B「ははっ…かもなぁ」
魔族A「でな?…ん?」
勇者『………』
魔族A「…人間?なんで人間がこんなところに?」
魔族B「さぁ?…まぁ、ほっとおけ。危険な人間ならここにはいない。おそらく誰かの奴隷かペットだろう」
魔族A「確かにな。ほんと、BBA様々だぜ」
魔族B「…おい。不敬だぞ?」
魔族A「いやだって魔王様って3000歳くらいなんだろ?ならもう皺くちゃなBBAだろ…」
魔族B「お前みたいな低級魔族と一緒にするな。魔王様ほどの種族となればまだまだ若い部類だ」
魔族A「マジかよ…」
魔族B「…とはいえ、女盛りという意味ではもうそう長くはない。早くよい相手を見つけて下されば良いのだが…」
魔族A「ふむ…ならちょっと立候補してみるかな」
魔族B「牛頭の分際で…身の程をわきまえろ」
魔族A「首無しのお前に言われたかねぇっての。ああ…腋の下にあるんだっけか?」
魔族B「…おい、貴様…」
魔族A「冗談だって…そう怒るなよ」
魔族B「………」
魔族A「今日は奢るからよ…な?」
・
・
・
側近「お待たせしました」
魔王「………」
勇者「あ、側近ちゃん。ううん!全然待ってないよ!…あれ?」
魔王「……!」
勇者「髪型変えたの?」
側近「え、えぇ…まぁ…」
魔王「………」
勇者「カツラ…なのかな?でもセミロングも良く似合ってる!かわいい…」
側近「はい…あ、ありがとうございます…」
魔王「………」
勇者「ぐっと大人っぽくなったね…セクシーで色っぽい」
側近「そ、そうでしょうか…?」
勇者「うん!…じゃあ案内してくれる?…あ、ごめんね?誘ったのは俺なのにエスコートできなくて…まだこの街、良く知らないから…」
側近「いえ、こちらこそ先程は街の案内も出来ず…」
勇者「いいよ。そのうちデートでもしながらゆっくりと…」
魔王「…ちょっと!」
魔王「わたくしを無視しないでくださいませ!…せ、せっかく勇気様好みに…」
側近「は、ははっ…」
勇者「…魔王?なんでこんな所に?」
魔王「そ、それは…」
側近「勇者様」
勇者「うん?」
側近「魔王様は私の身を案じて同伴して下さったのです」
勇者「…同伴…」
側近「はい。結婚を誓えど私と勇者様は昨日までは敵同士…お優しい魔王様は私事にも関わらず、万一のことを考えこのようなお心づかいを…」
魔王「…側近、GJですわ…!」ボソボソ…
勇者「側近ちゃん…」
側近「…申し訳ありません。私といたしましても、昨日の今日では拭い去れない不安というものが…」
勇者「…魔王、これを」チャキ…
魔王「えっ?…しかしこれは勇者さm…勇者の剣ではありませんこと?」
勇者「側近」
側近「は、はい…?」
勇者「君が不安だというのなら俺は剣を…いや、呪文や神の祝福…君が不安に思うものすべてを手放そう」
魔王「…ちょっ…」
側近「………」
勇者「…これでも…不安かな?」
側近「勇者様、貴方…本気で…」
魔王「…うぅ…なんで目の前でこんなラブロマンスを見せつけられなければなりませんの…」
側近「…あ」
勇者「…まぁ、信じてもらえないならそれでも構わないよ。そのうちわかってもらえると思ってるから…」
側近「そのようなことは…」
魔王「…気合いいれてメイクしてきたのに…こんな扱いって…ぐすっ…」
側近「…魔王様」
魔王「なんです?…この幸せ者ぉ…」
側近「…剣を勇者にお返し下さいませ。…まだすべてが終わったわけではありません」
魔王「…う?」
側近「度量と優しさを勇者に見せるのです…私は恋愛のことなどよくわかりませんが、相手を信頼すればこそ真の姿が見え…」
魔王「………」
勇者「側近ちゃん?どうかした?」
側近「い、いえ…なんでもありません。…勇者様のお気持ちはありがたく…」
勇者「うん!」
魔王「………」
勇者「それじゃあ行こうか。いつまでも立ち話ってのは…」
魔王「…お、お待ちなさい」
勇者「ん?なんだ、魔王?」
魔王「この剣は…お返ししますわ」
勇者「…しかし…」
側近「………」
魔王「いくら勇者が武力を放棄し、そ、側近と良い仲となったとしても…他の魔族は簡単には人間を受け入れはしないでしょう」
勇者「ふむ…」
魔王「…貴方を失うわけには行かないのです。側近のため…いえ、わ、わたくしのために……も」
勇者「側近ちゃんはわかるが…魔王も?」
魔王「それはその…そ、そう!政治的なものですわ!」
側近「…魔王様、それは…」
魔王「…さぁ、お受け取りなさいな」
勇者「………」
魔王「もし、貴方が心変わりしようとも…魔族の王たるわたくしが…う、受け止めて差し上げますわ」
勇者「…わかった」
魔王「えぇ、それでよいのです…」チャキ…
勇者「魔王」
魔王「な、なんでしょう?」
勇者「俺はお前のことを勘違いしていたのかもしれない…」
魔王「まぁ…!」
勇者「魔王ってあんがい"良い人"なんだな!」
魔王「えっ…」
勇者「側近のことや人間と魔族のこともしっかり考えてるみたいだし…これから"良い友人"としてやっていける気がするよ!」
魔王「ほ、ほほほ…そ、そう…ですか……そう…」
側近「ま、魔王様…」
勇者「よーし!それじゃあ俺の嫁と新たな友人との出会いを祝して、みんな一緒にお食事会といこうか!」
ここまでだな
後は夕方に…
勇者「今日はありがとう、側近ちゃん。…無理を言って連れ出しちゃってごめんね?」
側近「いえ…こちらこそありがとうございました」
勇者「そう言ってくれると嬉しいよ。…魔王もありがとう。事情があるとはいえ、わざわざ出向かせてしまって…すまない」
魔王「そ、そんなことはありませんわ!」
勇者「そうか…それじゃまた機会があったらよろしく頼む」
魔王「え?え、えぇ!もちろんですわ…!「
側近「…勇者様、では我々はこの辺で…」
勇者「ああ、城まで送るよ。ここまで来たんだし…魔王城まではあと少しでしょ?」
側近「しかし…」チラッ…
魔王「お、お願いしませんか…?」
側近「…では、城門までよろしくお願いします」
勇者「うん!」
・
・
・
―魔王城 魔王のへや♪(入るときはノックを!)―
魔王「指輪よ…在るべき姿へ戻したまえ」パァア…
魔王「さ、お手入れ、お手入れ…」ゴソゴソ…
魔王「それにしても今日は素敵な一日でしたわ…男日照りだったわたくしが殿方とあんなにもお話できるなん…」ポフポ…
勇者『はははっ!ほんと、側近ちゃんは可愛いなぁ…』
側近『…ご冗談を』
魔王「…はぁ」
コンコン…
魔王「どなたです?」
召使『…魔王様、いつものモノをお持ちしました』
魔王「…入りなさい」
召使『失礼します』
・
・
・
召使「…失礼しました。他にご用があれば御呼び立てくださいませ」
魔王「ええ、ありがとう」
__,,/ _, ----`ヽ :.
:. / _ ___ 、\
/ / i \ \\ :.
:. ,'./ i ヽ:. ヽ:.:.. ヽ.ヽ
,'/ / .ハ ヽ ヽ:.:.:.:. ヽ::.. ヽヽ :.
:. |i .i i .i / ヽ ト 、 \、:.:.:. ',:.',:.:.lヽ}
|i .i l :N_, -弋 \弌弋ナ:}:.:}
:. |i∧ ', :{ ,ィjモト \ イjミトイイV :. な…
.| :メヽ.', `ozZ} izN。ハ::{ なんなんですか?
:. | :ヾ_! ゝ "゙゙ ' `゙ ハ.:', :. ここ、どこですか?
| :.:_イ .:.ヽ. (二フ , イ :.:.:!:.ヽ なんであたし
:. / rィイ | :.:.ヽ: >r/`<ノ .:.::.}ヽ、\:. 貼られたんですか?
/ ∧l;l ! :.:.:.://{二 ̄ .} ..:..::リ//ハ.:\
:. / .{. ',ヾ、ヽi .:.:.{ /(^` |.:.:.:.//: : :.}: . ヽ.:.
/ / ) ヽ ヾ、ヽ:.ハ ヤ{ ∧/.-‐'": : |:.:. i ',
./ .,イ .:..} : :\ヾレ'ハ ∧__ノノハヾ、 : : : l:.:.: .ハ ',
{ /| .:.:ハ : : :i Y {ヾ`Yヽニン'ノ}: : } : : : :/:.:.:/ }:.}
V | .:.:/:.:|_,ィ' ̄ ヽ三{ `ー-ノ : イ : : :/:.:i.:{ リ
ヽ:.:{、.:.V : : ヘ : : {: : :/:.::∧|
ヽ! )人 : : :人 : : : / \! :.
" ヽ : : : : :/イ{ :.ノ: : : :.\ :.
:. \__///: :\______/: : : : : : : ヽ
/ //: : :|;|: : : : : : i: : : __: : : : ',
:. / 、 {;{ |;| . : i/. : : : : : :|
/ `Y;{. . . .|;|. : : : /i: : : : : : : : :l
魔王「………」ごそ…
【週刊 淫魔、愛の調べ 第23号】
魔王「ふんふふん♪…質問コーナー、質問コーナー♪」
~淫魔の恋☆愛指南コーナー~
Q1.「私には気になる人がいます。そこで友人に頼み、彼が私のことをどう考えているのか聞いてみた所、良い友人とのことでした。
これって脈はありますか?百戦練磨の淫魔さん!どうか教えてください!」
A1.「んー。はっきり言って厳しいかもぉ…。友人ってことはつまり、貴方は恋愛対象として見られてないってわけぇん。
でも友人経由っていう点にちょっと可能性はあるかなぁ…。種族にもよるけど、恥ずかしがってつい、"良い友人"なんて答えちゃうシャイボーイもいるにはいるわぁん。
まずは自分からアピールしてみることぉ。でなきゃちゃんとした気持ちはわからないものよぉん?
彼の本心を知るのは怖いかもしれないけれど、成功するにしても、失敗するにしても、先に進むには避けては通れない・み・ち(はぁと)
勇気を持ってぇん!貴方にはこの私がついてるんだからぁ!当たって砕けろぉ!男なんて星の数ほどいるのよぉん?」
Q2.「最近、彼が相手をしてくれません…マンネリという言葉が頭をちらつくのですが、どのように……」
魔王「………」
魔王「…タイムリー過ぎますわ…!うっうっ…わ、わたくしなんて直接…うぅ…」
魔王「…はぁ…いっそ監禁でもしちゃおうかしら…でもぉ…それじゃ愛なんて…うぅ…」
―魔王城 魔王のへや♪(傷心中…ほっといて…)―
側近「プレートが変わっている…傷心中?」
コンコン…
側近「魔王様、側近でございます」
側近「…魔王様?」
『…ほっといて…』
側近「はっ…しかし…」
『…ほっといて…』
側近「は、はあ?」
『………』
側近「…お邪魔だったようで…申し訳ありません。…失礼いたしました」
―魔王城 側近の部屋(執務中。触れる可からず)―
コンコン…
側近「…誰だ?扉に執務中と…」
『わたくしです。…側近、少しお話がしたいのですが、時間はありますか?…』
側近「ま、魔王様!?これは失礼を…すぐに開けますので少々、お待ちくださいませ!」バタバタ…
・
・
・
側近「先程は申し訳ございませんでした。…しかし、魔王様が私の部屋まで足を運ばれるとは…どのようなご用件でしょう?」
魔王「側近…」
側近「ははっ!」
魔王「貴女はこれをどう思います?」
側近「は?」
【週刊 淫魔、愛の調べ 第23号】
側近「は、はあ?」
魔王「これはわたくしが秘密裏に購読している雑誌なのですが…」
側近「は、はあ…?」
魔王「…このページを見てごらんなさい」
・
・
・
魔王「わたくしに…脈はないのでしょうか?」
側近「…わ、私に相談されましても…」
魔王「ならば誰に相談をしろというのです?…同期はもうほとんど結婚していますし…」
魔王「…いまさら恋愛ついて相談などしたら、はぁあ…1600年も何やってたの?馬鹿なの?もう手遅れなの、ご愁傷様、愛を捨てたキャリアウーマン…とか言われるに決まっていますわ」
側近「さすがにそこまでは…」
魔王「断言できますか?…早い者はもう何人か老衰で無くなっているのですよ?」
側近「………」
ちょっと早いがお風呂
魔王「側近、他に候補でもおりますか?」
側近「は、ははっ!…しかし、恋愛相談となりますと…」
側近「…恋愛…?」
サキュバス『側近様もまだまだ子供よねぇ…あたしなんか今、15人と付き合ってるのよぉ?うふふ♪…なんなら1人あげる?』
側近「…思い当たりませんね」
魔王「そうでしょう?」
側近「…はい。申し訳ありませんでした…」
魔王「もうわたくしにはこのまま干からびてゆく魔生しかないのでしょうか…」
側近「お言葉ですが…」
魔王「…なんです?」
側近「魔王様と勇者の関係をそのままその雑誌の記事に当て嵌めるとはいかがなものかと…」
魔王「どういうことです?」
側近「そもそもお二人つい数日まで敵同士だったはずではありませんか?」
魔王「それは…そうですわね…」
側近「さらに言えばその記述の対象は魔族と魔族の恋愛でございます。…これらの点からして内容を鵜呑みには出来ないのでは?」
魔王「…なるほど」
側近「それに魔王様は一度食事をしただけで、友人と呼ばれるまでになったのです。これほど急速に信頼関係を…」
魔王「お黙りなさい。…貴女なんかファーストコンタクトで婚約までしたではありませんか?それはわたくしに対する嫌みですか?…そうなんですか?」
側近「そ、そのようなつもりは…申し訳ありません…」
魔王「…冗談ですわ」
側近「は?」
魔王「あまりに側近が勇者様に可愛がられているので、意地悪をしたくなっただけです…」
側近「ま、魔王様…!私が人間に可愛がらているなど…そ、そのようなこと…!」
魔王「ふふっ…ありがとう。側近の話を聞いて少し楽になりました」
側近「ははっ…」
魔王「そうですよね…勝負はこれからですよね…!」
側近「はい。その意気でございます」
魔王「えぇ!」
・
・
・
側近「…魔王様も女性なのだな…このようなことで弱さをお見せになられるとは…」
側近「…ん?」
【週刊 淫魔、愛の調べ 第23号】
~淫魔の恋☆愛指南コーナー♪~
側近「これは…本をお忘れに?お届けしなけれ…ば…?」
解答著:ペニー・馬田(根男社)
側近「………」
ガタッ!…バタン!
側近『ま、魔王様!これは根本から間違って…魔王様ぁ!!』
魔王「勇者様をわたくしの城へ?」
側近「はい。現在、勇者には城下の宿に滞在してもらっておりますが…」
魔王「もしや…何か良い案でも…?」
側近「は?…あ、いえ…これは統治上の問題でして…人間が魔族の街で普通に宿屋で寝泊まりするのはいささか…魔王様?」
魔王「変に期待をさせないでちょうだいと…!」
側近「も、申し訳ございません…」
魔王「…しかし、勇者様を城内にですか」
側近「勇者が牙を剥くことはないと判断致しましたが…何か問題でも?」
魔王「…貴女がいるでしょう?わたくしとて勇者様のお気持ちくらい理解しております…」
側近「…魔王様…」
魔王「まるで…そう、まるでワイバーンの前に子羊を差し出すようなものですわ…!」
側近「そ、そこまであの勇者は狂暴ではないかと存じ上げますが…それに私は子羊ではありません。牙もあれば爪も…」
魔王「男性は皆、腹を空かせた竜…淫魔の調べに書いてありましたわ。…強大な竜の前では例え虎とて餌…違いますか?」
側近「…まさか指南コーナーでは…?」
魔王「ち、違います!それとは別のコラムですわ!」
側近「ならば良いのですが…」
魔王「それに心配事がもうひとつ…」
側近「もうひとつ…なんでございましょう?」
魔王「…城内の女性達は皆、わたくしより若いということです」
側近「それは種族的な問題でもありますし、我ら魔族が気にするようなことではないと存じますが…」
魔王「確かに魔族ならばそうでしょう。しかし、人間はどう思うと貴女は考えますか?」
側近「…わ、分かりかねます…」
魔王「そうでしょう?ですから不安なのです…おばさんと思われはしないかと」
側近「魔王様は十分若く、美しくあられます!いくら成長の早い人間といえど、お、おばさんなどと…!」
魔王「…というより、種族別の単純な若さ指標でもわたくしは上位に食い込んでしまうのですけれどね…」
側近「………」
魔王「…はぁあ…」
側近「…諸事情がありまして、今後、城に滞在中はこのお部屋を使うようにと魔王様からの御達示でございます」
勇者「魔王からか…政治的、というヤツかな?」
側近「はい。…申し訳ございませんが、城下へのお一人での外出もお控えいただきたく…」
勇者「ああ、構わないよ。…君と一緒じゃなきゃ楽しくないからね?」
側近「…城内はご自由に歩かれて構いませんが、私どもにも責務というものがございまして、その点については…」
勇者「大丈夫!迷惑はかけないよ。…それと…」
側近「…何か疑問でもございますか?」
勇者「そんなに堅苦しい話し方じゃなくても平気だよ。もっと楽にしてほしいかな?」
側近「…検討しておきます」
勇者「うん」
―魔王城 魔王のへや♪(入るときはノックを!※勇者は除く)
側近「本当にこんなことをなさるのですか?」
魔王「…わたくしは男性というモノを知らな過ぎると思うのです」
側近「しかし…遠撮の法珠をインテリアに仕込むなど…あまりよろしくないのではありませんか?」
魔王「自分を知り、相手を知る。…それこそが必勝の理なのです…!」
側近「は、はあ?言わんとすることはなんとなく分かりますが…このようなこと本当に良いのでしょうか?」
魔王「しつこいですわよ?事はもはや引けぬ所ま…あ、来ましたわ…!」
側近「は、ははっ!」
ボゥ…
《ああ~素晴らしき、我がー故郷ー…》
側近「…姿が見えませんが…?」
魔王「はて?どうなさったのでしょう?」
ザバッ…
魔王「!」
側近「この音…もしや入浴中だったので…」
魔王「言われずともわかっております!…集中しなさい!」
側近「は、ははっ!」
《ふぃ~…》ペタペタ…
魔王「来ます…来ますわよぉ…!」
側近「………」
勇者《パンツどこだっけな?…あれぇ?》ポロリッ…
側近「なっ…!?」
魔王「まぁ!!…あ、あらヤダ…まぁあ…!」バサァ!
側近「ま、魔王様!落ち着きくださいませ!翼が…!魔王様!」
勇者《…無いなぁ…この間、買ったばかりなのに…》
魔王「まぁ…!まぁ…!」バサァ!バサァ!
側近「魔王様ぁ!」
・
・
・
魔王「………」
側近「魔王様、お加減の方はいかがでございましょう?」
魔王「えぇ…だいぶ良くなりました。しかし…」
側近「あの法珠は…」
魔王「危険ですわね…様々な意味で」
側近「はっ…直ちに外し、厳重に封印して参ります」
魔王「…少し残念ですが」
側近「魔王様?なにか…?」
魔王「い、いえ…なんでもありませんわ」
カラン…
サキュバス「はぁい。いらっしゃっ…あら?」
『邪魔するよ。…サキュバス、久しぶりだねぇ』
サキュバス「これはこれは…地の四天王様、お久しぶりですわぁ…」
アラクネ「よしとくれよ。今じゃ引退してただの機織り娘さ…」
サキュバス「娘、ですかぁ?」
アラクネ「…なんだい?」
サキュバス「いえ、なんでも…うふふ♪」
アラクネ「相変わらず生意気なガキだねぇ…」
サキュバス「…性分ですから」
アラクネ「まぁ良いよ。…魔王んとこ来るのは久しぶりでね、なんか面白い話はあるかい?」
サキュバス「面白い話ねぇ…あ!あるある…取っておきのが!」
アラクネ「へぇ…?」
―魔王城 魔王のへや♪(入るときはノックを!※勇者は除く)―
コンコン…
側近『魔王様、側近でございます』
魔王「…何用ですか?」
側近『…お客様がおいでです』
魔王「お客様ですか?はて?そのような予定は…」
・
・
・
―魔王城 応接間―
魔王「………」
アラクネ「お、来たね。いやー、久しぶりだねぇ…魔王」
魔王「何をしに城まで来たのです?…毒蜘蛛女」
アラクネ「おやおや、友魔に向かってずいぶんじゃないかい?」
アラクネ「まぁ、元気そうで安心したよ」
魔王「ならばすぐに帰ってくださいませんこと?…わたくし、貴女に付き合っていられるほど暇ではありませんの」
アラクネ「そう言わずに…それよりさ、聞いたよ?」ニヤニヤ…
魔王「…何をです?」
アラクネ「あんた、側近にまで先を越されたんだってぇ?…あたしゃもう可哀相で可哀相で…居ても立ってもいられず、城に押しかけちまったよ!アハハッ!」
魔王「…くぅう…!!」
アラクネ「…で?側近のお相手とやらはどこだい?なんでも珍しい種族だとか…」キョロキョロ…
魔王「…貴女には関係の無いことですわ」
アラクネ「そう言わないでおくれよ?…あの鼻垂れ娘のお婿さんだろぉ?…気になるじゃないのさ」
魔王「蜘蛛が野次"馬"根性とは少々、おかしいのではなくて?…それに側近は優秀な部下ですわ。鼻垂れ娘などと蔑むのはおやめなさい」
アラクネ「すまないね。昔から見知った仲、と言いたかったんだよ。悪気はないんだが…あたしゃこの通り口が悪くてねぇ」
魔王「………」
アラクネ「それにあたしは野次馬ってんじよなく、網に引っ掛かった噂話は美味しく頂くっていうのが蜘蛛の流儀なだけさ」
魔王「相変わらず腐った性格をしてますわね…」
アラクネ「まぁ、性分ってヤツさねぇ…こればっかりはどうにも…」
魔王「………」
勇者「あれは?」
側近「あれはアラクネ様ですね。前任の地の四天王様です」
勇者「地の四天王?巨大なモグラだったと思ったんだけど…」
側近「魔族の地位継承は世襲ではありませんから…地にゆかりのある魔族もいろいろといるのです」
勇者「へぇ…」
側近「あの方は大変な噂好きでして…おそらく何かを嗅ぎ付け、この城へやって来たのだと思います」
魔王『…!…!?』
アラクネ『……。………?』
勇者「…魔王とはずいぶん親しい様子だね」
側近「魔王様とは同期生ですので…また、アラクネ様は現魔王様の治世初期において、魔王6柱と呼ばれた方の一人でもあります」
勇者「6柱?…四天王じゃなくて?」
側近「詳しいことは省きますが、2席がぽつりぽつりと空席になってしまい、魔王様はその穴を埋めることがなく、現在の四天王制に至る、といった所です」
勇者「ふーん…」
魔王『…?……!!』
アラクネ『………!』
勇者「…出て行かなくて良いの?」
側近「…あまり会いたい御仁ではありませんので、もう少し様子を…」
勇者「…虐められたのか?」チャキ…
側近「そうではありません。…剣をお納めください」
勇者「うん…」
側近「…勇者様」
勇者「うん?何、側近ちゃん?」
側近「ひとつお願いがあるのですか…」
アラクネ「ねぇ、紹介しとくれよ?婚姻すれば嫌でも広まるだろ?」
魔王「これは個体的な問題ですわ。周りが口を出したり、耳を澄ませたりすることではありません」
アラクネ「…あんたは真っ先にケチつけそうなもんだがねぇ?」
魔王「そ、そのようなこと…あるはずがありませんでしょう?」
アラクネ「へぇ…?」
魔王「な、なんですの?…もう良いですしょう?帰りなさい、いますぐ!さっさと!ダッシュで!」
アラクネ「嫌だね」
魔王「これは命令です!」
アラクネ「あたしゃただのパンピーだもの。命令って言われてもねぇ…」
魔王「この…!」
側近「何を騒いでおいでなのです?アラクネ様?」
アラクネ「おや!久しぶりだねぇ、側近!…でも騒いでるのはあたしじゃなくてこっちじゃないかい?」
魔王「誰のせいだと…!」
側近「申し訳ございません。アラクネ様の声はよく通りますので…」
アラクネ「そりゃそうだね!アッハッハ!」
側近「………」
魔王「よくぞ言いましたわ!流石はわたくしの側近!その調子でこのしつこい害虫を追い出してしまいなさい!」
アラクネ「…ほんとにあたしの方がうるさいのかねぇ?」
アラクネ「それでぇ?フィアンセとやらをさっそく紹介して貰おうじゃないのさ?」
側近「フィアンセ?…フィアンセなどとんでもございません」
アラクネ「あん?」
側近「…紹介致します。こちら私が躾ております、奴隷の勇者という者でございます。…勇者、アラクネ様に挨拶を」
勇者「………」ペコリ…
魔王「…ど、どれ…?」
アラクネ「奴隷?…見た所、人間みたいだけど…」
側近「はい。先日、手ずからつまかえて参りました、生きの良い奴隷でございます」
アラクネ「そんなことはどうでもいい。…あたしゃ、あんたの噂のフィアンセってのを拝みに来たんだけどねぇ?」
側近「噂の発信元は大方、検討が付きます。…酒場のサキュバスでございましょう?」
アラクネ「その通りだけど…」
側近「…あの者は享楽を得ることに全てをかけておりますゆえ、面白おかしく話を脚色したのでございましょう」
アラクネ「…ふーむ」
魔王「………」
アラクネ「…まぁ良いさね。どちらが嘘をついているにしても、婚姻の報でもって真実はわかる、と」
側近「そういうことでございますね」
アラクネ「………」
―魔王城 城門前―
アラクネ「悪かったねぇ、いきなり邪魔をして」
魔王「…まったくですわ」
アラクネ「今度はお土産持参で参城するとするよ。楽しみに待ってな?」
魔王「結構です。…側近、後は任せますわ。街の外まで追い出してちょうだい」
側近「かしこまりました。…街の外までお見送り致します」
アラクネ「…相変わらず生真面目なことだねぇ」
側近「ベヒモスを出しましょう。少々お待ちくださいませ」
アラクネ「あいよぉ」
―魔王城 城下街 凱旋門通り―
ドドドド…
ベヒモス『ブモォォオ!!』
アラクネ「おほぉ!流石は魔王直属の輸送魔、早い早い…!」
側近「あまりはしゃがれぬよう。ベヒモスは揺れますので」
アラクネ「あたしの八本ある手足をナメてもらっちゃこまるねぇ…暴れ狂うベヒモスにだってしがみついて見せるさね」
側近「…ならばよいのですが…」
アラクネ「伊達じゃないってのさぁ!ほらぁ!もっと飛ばしな、ウスノロォ!」
ベヒモス『ブモォォオ!!』
ドドドドド…
・
・
・
―城下街 大門前―
アラクネ「そんじゃま、世話になったね」
側近「今後は先に御一報を頂けると助かります。…旦那様にもよろしくお伝え下さいませ」
アラクネ「うちの飲んだくれによろしく言ったってなんの得にもにりゃしないよ。アハハッ!」
側近「それでは私はこれで…」
アラクネ「…ああ、そうだ」
側近「…何でございましょう?」
アラクネ「ここに来る途中で人間の勇者が魔王城に乗り込むってぇ噂を聞いたよ?」
側近「………」
アラクネ「それが気になって魔王んとこの城下街まで来て見たんだけど…どうやらガセだったようだねぇ?」
側近「お心づかいはありがたく…しかし、噂に惑わされ、真を見逃さぬよう…アラクネ様の噂好きはよく存じておりますが…」
アラクネ「んでもさぁ…」
側近「……?」
アラクネ「その噂を聞き付けて魔王城に行ってみれば、人間の奴隷がいたってのもまた、なかなかに妙な話だとは思わないかい?」
側近「…ただの偶然でしょう。人間からの最大最強の刺客が、私のような者の奴隷として甘んじていると思われるのですか?」
アラクネ「人間からのねぇ…まぁ、確かにそうだね。悪いねぇ…邪推だったみたいだよ」
側近「普通の方は邪推といえどそこまで突拍子もないことは思い付きませんよ?」
アラクネ「噂に躍らされちまってんのさ。どれがほんとかわかりゃしない」
側近「………」
アラクネ「昔はこんなことなかったんだがね…。やれやれ…歳はとりたくないもんだよ」
側近「…僭越ながら、アラクネ様はまだお若くていられると」
アラクネ「そうかい?…ありがとうよ」
側近「………」
―魔王城 テラス―
魔王「はぁ…疲れましたわ…」
勇者「ずいぶん威勢の良い魔族だったなぁ…」
魔王「えぇ、本当に彼女は昔か…ゆ、勇者さm!?…側近と一緒に見送りに行ったのではなかったのですか?」
勇者「側近ちゃんが可愛い芝居を打ってたからね。…ボロが出たら困るだろ?」
魔王「…そういえば何故、側近と勇者はあのようなことを?」
勇者「あのアラクネってヤツに噂をばらまかれたくないから、って言ってたよ」
魔王「…側近…なんて出来る子…!」グッ!
勇者「…俺も人間と魔族の、しかもそれなりの地位の魔族との婚姻なんて事前の根回しが必要だと思ってね」
魔王「あ…そ、そうですわね…」
勇者「俺からも少し聞きたいことがあるんだが…良いか?」
魔王「は、はい…構いませんが…なんでしょう?」
勇者「さっき、側近ちゃんから魔王6柱って言葉を聞いたんだけど…」
魔王「ああ、確かに以前はそのような制度をとっておりましたね。…しかし、どのような経緯でそんな話に?」
勇者「うん。あのアラクネってのの説明からちょっと触れて……」
魔王「………」
・
・
・
ガチャ…
側近「魔王様、ここにおられましたか。ただいま戻り…」
魔王『…と、アラクネが寿退社した時までは穴埋めをしていたのですが…その頃はもう人間との争いはほとんどなく…』
勇者『へぇ…確かに数百年間、魔族との戦いはなかったって、こっちの歴史書にもあるよ』
魔王『そちらも歴史書の編纂などをしているのですか?』
勇者『うん。…でも俺達人間は身内でも争うから…栄枯盛衰って言うんだけど、所々抜けてたりする』
魔王『人間は炎のように激しく、また短く生を歩みますからね…』
勇者『まぁ、確かに普通は魔族ほど長くは生きられないからなぁ…』
魔王『…長く生きるというのもそれほど良いものではありませんよ?』
勇者『なんで?』
魔王『…女性などは特に…こ、婚期を逃しますもの…』
勇者『はははっ!婚期って…!』
魔王『わ、笑わないでくださいまし!』
側近「………」
パタン…
側近「買い出し、ですか?」
勇者「うん。…この間さぁ、下着を買ったと思ったんだけど…どうも買い忘れてたみたいなんだよね…」
側近「下着…」
勇者《パンツどこだっけなぁ…あれぇ?》
側近「…ぁ…」カァァ…
勇者「うん?どうかした?」
側近「い、いえ!なんでもありません!」
勇者「……?」
側近「は、話はわかりました。しかし、以前も言ったように、お一人では出掛けて欲しくありません」
勇者「覚えてるよ。だから側近ちゃんにデートがてらついて来て貰おうと思って…」
側近「…デートかどうかはわかりませんが、買い物程度でしたら……?」
勇者「側近ちゃん?」
側近「…そういえば魔王様も何か欲しいとおっしゃられていたような?…勇者様、ついて来てもらえますか?」
勇者「う、うん?…なんだかさっきから様子がおかしいけど大丈夫?」
側近「…最近、ちょっと根を詰めておりまして…ああ、別に対したことではないのです」
・
・
・
―魔王城 魔王のへや♪(入るときはノックを!※勇者を除く)
勇者「………」
魔王「はあ?買い物ですか?…よろしいのでは?側近、付いていって差し上げなさいな」
側近「…しかし、魔王様も何か買い出しをしたいものがあると聞いた覚えがあるのでございますが…」
魔王「わたくしが?…はて?そのようなものありましたかしら?」
側近「確かに聞いた覚えがあるのでございます…!」ズイッ!
魔王「は、はあ?…そう言われましても…は!」
側近「思い出されましたか!?」
魔王「え、えぇ…た、確かに…その…なんと言いますか…ほ、欲しい物がありましたわ!」
側近「やはりそうでございますか!…勇者様」
勇者「うん?」
側近「先程は快諾をしましたが、できれば私は仕事を優先したいのです。少し急ぎですので…」
勇者「あ、そうなの?…ごめんね、忙しいのにこんな時間取らせちゃって…」
側近「いえ、この程度のことならばまったく問題はありません。しかし、案内となると時間を取ら…」
魔王「で、でしたら…」
勇者「うん?」
魔王「よろしければわたくしが…その…付いて行って差し上げましょうか?…ほ、欲しい物もありますし」
勇者「…魔王が?」
魔王「え、えぇ…わたくしの方は時間もありますし、たまには城下を散策するのも良いかと思いまして…」
勇者「ふーむ…」
側近「滅多に無い羽伸ばしの機会でございましょう。どうぞごゆっくり…」
魔王「…側近、礼を言いますわ。ありがとう…」
側近「なんのことでしょう?お礼を言わねばならないのは私でございます。…このような雑用を押し付けてしまい申し訳ございません」
魔王「…側近、貴女って子は…」
勇者『魔王ー、準備はまだかー?』
側近「…どうやらお相手が待ちくたびれているようでございます。…さ、お早く」
魔王「…ありがとう。…勇者!今、参りますわー!」バサァ!
勇者『おお…そっから飛ぶのかぁ…そりゃ余裕で準備も出来るわなぁ…』
魔王『単に女性の準備には時間が掛かるだけですわ。…お待たせして申し訳ありません』
側近「………」
勇者『いや、そんなでもないよ。…それじゃよろしく頼む』
魔王『はい!』
側近「…さて、それでは久しぶりにゆっくり読書でも…ふぁあ…」
側近「………」
側近「…昼寝も良いかもしれませんね。良い天気ですし…」
r'丁´ ̄ ̄ ̄ ̄`7¬‐,-、 /
r'| | | |/ >、 /
! | | | |レ'´/| | 待 て
| | | /\ | |l /⊂う |
| | |__∠∠ヽ_\ | リ / j ヽ あ わ て る な
|´ ̄ O  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`! 〉
l'"´ ̄ ̄ヾ'"´ ̄ ̄`ヾ::幵ー{ / こ れ は 孔 明 の 罠 だ
⊥,,,,,_、 ___,,,,,ヾ| l::::::| |
lヾ´ f}`7 ヘ´fj ̄フ | l::i'⌒i | そ ん な 事 は 無 理 だ
l ,.ゝ‐イ `‐=ニ、i | l´ ( } ヽ
l { U | l 、_ノ ∠ヘ
l / ̄ ''ヽ、 | l ヽ_ \,_________
! ハ´ ̄ ̄ ̄`ト、 |亅〃/\
,人 f ´ ̄ ̄ ̄``ヾ j ,!// {_っ )、
// `ト、__iiiii______,レ'‐'// _,/ /スァ-、
,.イl{ { 々 !/´しllllト、 ̄`ヽ、 // /´,.-、 /彑ゝ-{スァ-、
,.イ彑ゝ-'l l ( (,) レシ′ !l `ソァ'´ _ノ7{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑{
ュゝ-{、彑l l ` -イヘ !l // /⌒ヽヾ/_ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、
{、彑ゝ-'l l f⌒Yハ ', !l/ / ヽ_う ノ /-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ
このスレ金曜から続いてるのかよwww
魔王「もう少し派手なものがよろしかったのではありませんか?」
勇者「…下着は質素で良いよ。それに元々、衣類とかには頓着しない方だから…」
魔王「そうなのですか?勇者というからにはもっときらびやかなものを好むのかとばかり…」
勇者「確かに民衆が望んだ勇者ってのはきらびやかな英雄だろうけどね。肝心なのは中身だよ」
魔王「え、えぇ…そ、そうですわよね…!」グッ!
勇者「まぁ…その民衆を見事に裏切って俺はここにいるんだけど…」
魔王「………?」
勇者「…だから俺の中身は薄っぺら。勇者ってのは名ばかりのただの人間さ」
魔王「それで…よろしいのですか?」
勇者「うん?何が?」
魔王「同胞の期待に応え、わたくしを倒そうとは…もう思わないのですか?」
勇者「うーん…」
魔王「………」
r'丁´ ̄ ̄ ̄ ̄`7¬‐,-、 /
r'| | | |/ >、 /
! | | | |レ'´/| | 待 て
| | | /\ | |l /⊂う |
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{、彑ゝ-'l l f⌒Yハ ', !l/ / ヽ_う ノ /-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ
勇者「例え君を倒したとしても魔族全てが滅びるわけじゃないだろ?」
魔王「それはそうですが…多少なりとも打撃は受けると思いますわ。…しかし、すぐに次の魔王が誕生するでしょうね…」
勇者「じゃ、どのみち民衆の期待には永遠に応えられないな。あいつらの期待ってのは魔族が世界から完全に駆逐されることだから…」
魔王「………」
勇者「…それに俺にはもう人間のためとか、世界を救う、なんて気持ちはさらさら無いんだ」
魔王「それは何故ですか?…側近と出会ったからですか?」
勇者「いや、違うよ。側近ちゃんのことは守りたいとは思うけど、出会うずっと前から俺は旅の意義を見失ってた」
魔王「………」
勇者「神から啓示を受けた最初の頃は、魔族を…いや、魔王を討ち滅ぼすことが俺の使命だと思ってがむしゃらに剣を振り回してた」
勇者「けど旅を続けてると…何て言うか…周りとの温度差ってのを感じたんだ」
魔王「…どういう意味でしょう…?」
勇者「…俺がいなくても世界は回るってことだよ。襲ってくる魔族に徒党を組んで対抗し、領地を広げるために魔族の領地に攻め入る…」
魔王「………」
勇者「そこに俺は必要ない。そう感じた。…実際、そのうち誰も本当の意味で勇者ってのを必要としなくなったしね」
勇者「どの国にも属さないが、国を二、三、簡単に吹っ飛ばせるくらいの力を持つ冒険者…なんて各国のバランスを崩壊させる要因でしかないだろ?」
魔王「………」
勇者「魔族に対抗するってきっかけを作ったのは俺かもしれないけどね。先陣を切ったことで俺の役目は終わってるんだ…」
勇者「こちら側にいてもそれは同じだと思う。あまり接する機会はないけど、魔族もやってることは人間とほとんど変わらない…そうだろ?」
魔王「わたくしは…勇者様以外に人間と触れ合ったことがありませんので、なんとも言いづらいのですが…おそらくは同じだと思いますわ…」
勇者「だからいまさら俺が君を討った所でなんの意味もない。もちろん、他の魔族もね」
魔王「………」
勇者「後は勇者って肩書を捨てて、側近ちゃんみたいな良い子をお嫁さんにして、子供を作って…そうやって余生を楽しみたい。…そう思ってる」
魔王「…そう…ですか」
勇者「いままで切り捨ててきた魔族達には批難されるかもしれないけど、それは命を懸けた戦いの結果だ。文句は言わせない」
魔王「………」
勇者「最後のはちょっと虫が良すぎるかな?…でもまぁ…いま話したことが今の俺の全てだよ…」
魔王「………」
魔王「………」
勇者「あ…ごめんね?せっかくの休暇なのにこんな重たい雰囲気にしちゃって…」
魔王「いえ…そのようなことは…」
勇者「でも…」
魔王「…わたくし…」
勇者「うん?」
魔王「わたくしは…勇者様に謝らねばならないのかもしれません」
勇者「…え?」
魔王「わたくしが魔王の座についてより1600年あまりが経ちます…」
勇者「そ、そんなに?…ってことは少なくとも魔王は1600歳以上…?魔族ってほんと長寿なんだな…」
魔王「あ、あの…年齢のことはあまり…」
勇者「あ…ごめん、話しの腰を折っちゃって…」
魔王「…いえ、構いません。それほど長い話ではありませんから…」
勇者「………」
魔王「この間、6柱のことについて聞かれましたでしょう?」
勇者「ああ、争いが無いから減らしたっていう…」
魔王「はい。…では何故、減らしても構わないほど人間との争いが無くなったと勇者様はお考えになられますか?」
勇者「…何故って…あれ…?」
勇者「確かにおかしい…なんで今頃になってまた人間と魔族が争ってるんだ…?」
魔王「………」
勇者「どういうことなんだ?…これは?」
魔王「…それは…」
勇者「…魔王?」
魔王「…それは、わたくしが人間の魔族の接する境界面に広大な幻術をかけていたからなのです」
勇者「…なん…?」
魔王「互いが同族に見えるのならばそれは異種間の争いとは写りませんでしょう?」
勇者「そ、それは確かにそうかも知れないけど…なら、なんで今頃それを解いたりなんかしたんだ?解かなければまた争うなんてことは…」
魔王「…わたくしはそのことを謝りたいのです。勇者様…」
勇者「………」
魔王「わたくしは幻術に秀でた一族の出で…中でもとりわけ力の強い魔人です」
勇者「………」
魔王「また、魔族も人間同様には歳を経る事に力を増して行き、個体差はあるものの、一定の年齢となるとそれ以上は成長しなくなるのですが…」
勇者「………」
魔王「…わたくしの場合、齢2983を越えてなお、増大し続けているのです…そしてその力をもうコントロール出来ない…」
勇者「自分の力をコントロール出来ないって…」
魔王「ある程度まで…そんなに力を使わないのならばコントロールできます。しかし…境界全体を覆うほどの力となると…もはや暴走しかねません…」
勇者「…暴走するとどうなるんだ?」
魔王「わかりません…ですが、ろくなことにはならないと思いますわ…」
勇者「だから術を解いたのか…」
魔王「…はい」
魔王「…わたくしは当初、術を解いてもただ元の状態に戻るだけだと考えていました…」
勇者「違ったのか?…今の状態は何かおかしいのか?」
魔王「…はい…今、さっき違うと知りましたわ…」
勇者「…さっき…」
魔王「…勇者様、貴方が違うのです」
勇者「…俺…?」
魔王「人間と魔族の争いは、双方ともが霞より抜け出し、在るべき姿に戻っただけのことです…でも貴方は…」
勇者「………」
魔王「…貴方だけが世界から外れてしまっていた…わたくしのせいで…」
勇者「………」
魔王「本当に…っく…なんと言ったらっ良いのか…うっく…申し訳…ぅ…」
勇者「…俺が…世界から…外れた…?」
魔王「…うぅぅ…!」
すまん。そろそろ寝る
明日には終わると良いなぁ…
勇者「……わかった…だから、泣くな」
魔王「…う、うぅ…ですが…!」
勇者「背中、こっちに向けてみてくれ」
魔王「……?」クルッ
勇者「はあっ!」
パンッ、パパンッ!パパンッ!
魔王「…っ!?ん、んっほおおおおおお!!」
勇者「どうだ!んっ!あ、中で出すぞ!」パパンッ
魔王「あっおう!ちょ、早くね!……よし、中で!」
勇者「いっぐのおおおおおおお!!」ドピュッ
魔王「わたくしもですのおおおお!!」プシャッ
側近「幸せですううううう!!!」ブリィ!ミチミチッ
誰か保守目安頼む
>>354
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
お前らマジ頑張れ
保守
まだかな
ほしゅ
はよ起きろ
ほし
もう少しかな?
再開マダー?
保守怠るなよ?
待つ
ほ
ho
保守
待つ
待つほ
保守
保守
はよ
保守
保守
こりゃ落ちるな
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
ほ
ほしゅ
支援
ほしゅ
絶対に落とすな!
せめて何時再開か知りたいな…
まつか
ほっし
ほしゅ
絶対に落とすな
はよ
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
支援
まつ
まつ
落とすな
保守
はよ
はよ
保守
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
保守
④
④
④
h
も
つ
ほ
ま
ほ
ま
ほ
ほ
ほしゅ
ほしゅ
ほ
も
④
④
ほしゅ
ほ
ほしゅ
ほ
保守
④
④
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
も
も
も
も
も
も
保守
保守
保守
保守
もっとよく見たらID:iIIbiiyx0とID:9Qg/psgdOが二人で保守するスレだった
保守
>>619
たぶん一人じゃないかな?かな?
魔王「…わたくしは当初、術を解いてもただ元の状態に戻るだけだと考えていました…」
勇者「違ったのか?…今の状態は何かおかしいのか?」
魔王「…はい…今、さっき違うと知りましたわ…」
勇者「…さっき…」
魔王「…勇者様、貴方が違うのです」
勇者「…俺…?」
魔王「人間と魔族の争いは、双方ともが霞より抜け出し、在るべき姿に戻っただけのことです…でも貴方は…」
勇者「………」
魔王「…貴方だけが世界から外れてしまっていた…わたくしのせいで…」
勇者「………」
魔王「本当に…っく…なんと言ったらっ良いのか…うっく…申し訳…ぅ…」
勇者「…俺が…世界から…外れた…?」
魔王「…うぅぅ…!」
ho
エサやってないでスルーしとけよ、幸い保守しなくても大丈夫そうなんだから
埋まったら埋まったで立て直すなりSS速報に立てるなりすりゃあいいんだから
しえん
しえん
si
ほ
ほ
>>626
はやめに立ててきた
保守
保守
ho
保守
保守
いなくなったっぽい?一応貼っとくぉ
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
俺がミス
―魔王城 魔王のへや♪―
コンコン…
側近「魔王様、側近でございます。お加減はいかがでしょう?」
側近「…食事も進んでいないご様子。あまり酷いようでしたら、医者などをお呼びして参りますが…」
『………』
側近「魔王様…」
―魔王城 勇者の部屋―
側近「この前、街から帰ってきた時から魔王様のご様子がおかしいのですが…何か心当たりはありませんか?」
勇者「…側近ちゃんの期待に応えたいとは思うけど…今はそっとしてやってくれないかな…?」
側近「何か知っているのですね!?なら教え…」
勇者「…ごめん…俺からはなんとも…」
側近「…ゆ、勇者様…?」
勇者「ごめんね…」
パタン…
側近「………」
―魔王城 テラス―
側近「…魔王様だけでなく、勇者様まで…街で一体何があったというのでしょうか…」
『知りたいかい?』
側近「…誰だ!?」
アラクネ「ちょいとぶりだねぇ…側近?」
側近「あ、アラクネ様!?…何故また…いや、どうやってここに…!?」
アラクネ「ああ、前ん時にゃ言いわすれたけどさぁ…あたしにはコイツもあったんだわねぇ…」ピィン…
ワイバーン『ゴァアア!!』バサッ…バサッ…
側近「…蜘蛛の糸…」
アラクネ「ま、そんなわけでベヒモスかは振り落とされないばかりか、ワイバーンにだってくっつけるってわけさねぇえぇえ…」ビヨンビヨン…
アラクネ「…ちょいと!ブラブラとあたしを揺らすんじゃないよ!このポンコツ!」
ワイバーン『ゴァアア…』バサッ…
側近「………」
―魔王城 客間―
側近「せっかく来ていただいた所、申し訳ないのですが…今はアラクネ様に付き合っている余裕はないのです」
アラクネ「のようだねぇ…ピーチクやかましい魔王が岩戸隠れしちまってるみたいだしねぇ?」
側近「…魔王様は職務中なのでございます。ゆえに余裕がないと…」
アラクネ「街を覆ってる幻術すら消えちまってるって言うのにかい?そりゃ、職務放棄ってもんじゃないのかね?」
側近「それは…」
アラクネ「側近」
側近「…なんでございましょう?」
アラクネ「生真面目過ぎるのがあんたの悪い癖さ…いまさら取り繕ってもあたしにゃ通じないってわかってんだろ?」
側近「………」
アラクネ「いい子だね。…そんじゃまぁ、本題に入ろうかね」
側近「…私に何を?」
アラクネ「あんたじゃないさ。んでもねぇ…少し前に面白いネタを仕入れたんでね、おすそ分けでもしてやろうかと思ってさぁ?」
側近「結構です。興味がありませんので」
アラクネ「そうかい?…噂の発信元はここなんだけどねぇ?」
側近「魔王城から…?召使が外に情報を漏らすなど、そんなはずは…」
アラクネ「そんなんじゃないよ。もっと信憑性ってのが高い…ああ、あったあった」ペリッ…
側近「……?」
アラクネ「ほーら、コイツをごらんよ?」
側近「…それは…遠聴のピアス?」
アラクネ「ま、そういうわけさ」
アラクネ「この間ここに来た時に、いくつか張り付けてったんだけどさぁ…まさかこんなに早く網に掛かるなんて思わなかったよ?アハハッ!」
側近「…アラクネ様、どういうことです?…魔王城にこんなものを仕掛けるなど、反乱と言われても言い逃れは…」
アラクネ「睨まないでおくれよ?…そもそも魔族全体に関わるような重大事項を秘匿してたのはあんたらの方じゃないのさ?」
側近「………」
アラクネ「まぁ、まずはあたしの話を聞いてみることさね。…どうやらあんたは仲間外れのようだしねぇ…?」
側近「…わかりました。お聞きしましょう」
アラクネ「そうそう。お歳頃だからって跳ねっ返りなんかしてないで、年長者の言うことはおとなしく、素直に聞いてりゃ良いのさ」
側近「………」
・
・
・
アラクネ「…とまぁこんな所だね」
側近「…まさか…ただの外出でこのような話になっていようとは…」
アラクネ「馬鹿だねぇ…これはあんたのせいでもあるんだよ?」
側近「私の…でございますか?」
アラクネ「あんたのことだ…どうせ魔王が勇者に会う時は、腰ぎんちゃくよろしく、いっつもくっついてたんだろ?」
側近「………」
アラクネ「魔王もあれでシャイな所があるからねぇ…気にしてることほどあんたがいるようなときにゃ話さないさね」
側近「………」
側近「…しかし、よく魔王様に盗聴具など…」
アラクネ「直接仕掛けたんじゃないよ。マヌケが罠に引っ掛かっただけさね…」
側近「不敬な…」
アラクネ「テラスから飛び降りる癖、まだ直ってなかったんだねぇ…」
側近「………」
アラクネ「昔っからあの娘は物腰は丁寧なくせに、やんちゃな所が…」
アラクネ「…っと、あたしゃこんなくだらない話をしに来たんじゃなかったんだよ」
側近「…くだらなくはありません。灼ではありますが…魔王様のため、参考にさせていただきます」
アラクネ「言うねぇ…でもあんたにネタを教えてやったのはただの気まぐれさね」
側近「……?」
アラクネ「本命は別ってことさ。…そんじゃまぁ、案内しとくれよ?」
側近「魔王様ならば…」
アラクネ「そっちじゃないよ。勇者んとこさ」
側近「勇者様?…一体何にされるおつもりで?」
アラクネ「んー?ただの説教だよ、説教」
側近「…本当でしょうか?」
アラクネ「…うたぐり深い女だねぇ…取って喰うとかそんなんじゃないさね…」
側近「返り討ちが関の山かと思いますが…」
アラクネ「…そういう意味じゃあ、無いんだがねぇ…」
側近『…?どうぞ、こちらへ…』
アラクネ「ピュアだねぇ…」
側近『何か?』
アラクネ「なんでもないよ。今、行くさね」
―魔王城 勇者の部屋―
勇者「…あんたは…」
アラクネ「また会ったねぇ…"勇者"様?」
勇者「…帰ってくれ」
アラクネ「ずいぶんじゃないのさ?あたしゃ、側近にどうしてもって言われたからこうやって来たってのに…」
側近「えっ…?」
勇者「…側近ちゃんが呼んだの?」」
側近「いえ…そのようなことは…」
アラクネ「…さっきの話を聞いたんなら…あんたも同罪だよねぇ?」ボソッ…
側近「…はい。よ、呼びました…」
勇者「なんで…?」
側近「ま、魔王様が最近、ふさぎ込みがちですので旧友であられる、アラクネ様に……」
・
・
・
勇者「…盗聴だって?」
アラクネ「まぁ、簡単に言えばね。…ねぇ?」
側近「…お言葉ですが、私は先日のことには関与しておりません」
アラクネ「先日のことには…ねぇ?」
側近「………」
勇者「…腐った性根をしているな、お前」
アラクネ「あたしの旦那は文字通り腐ってるんでね?あたしの性根にも移っ…」
側近「も、申し訳ありません」
勇者「あ、いや…側近ちゃんは聞いただけなんだろ?そんなにかしこまって謝ることじゃないよ」
側近「は、はい…」
勇者「…謝るべきはコイツだよ」
アラクネ「可愛いってのは得だわねぇ?…側近?」
側近「………」
勇者「…おい!」
アラクネ「はいはい…悪かったよ、ごめんなさいって…」
アラクネ「でもまぁ、そのおかげであんたは助言を受けれる訳だし、その辺は感謝してもらいたいねぇ?」
勇者「そんなものはいらない。…これは俺と魔王の問題だ」
アラクネ「か弱い女が泣きながら懺悔してるのを、ただ、ぼーっと突っ立って見てただけの男にどうにか出来ることなのかい?」
勇者「それは…」
アラクネ「甲斐性無しっちゃあ、あんたのことだわねぇ?え?」
勇者「…突然あんなこと言われて…どうしろって言うんだよ、俺に…」
アラクネ「やれやれ…あの娘も可哀相に…タマ〇ン二つ、ちゃんとくっついてんのかい?」
勇者「なんでお前なんかにそこまで言われなきゃなんないんだよ…」
アラクネ「女の扱いがなってないからさね。…あんた、まさか男が好きってわけじゃないんだろう?だったらさぁ…」
勇者「そんなわけないだろ…!」
側近「………」カァァ…
勇者「…はぁ」
側近「…お疲れ様です」
勇者「君が苦手って意味が身に染みてわかったよ…」
側近「………」
アラクネ「アハハッ!まぁそう言わずに…っとそんじゃ説教はこの辺りにして始めようかね」
勇者「…何を?まだ何かあるっての?」
アラクネ「ああ、魔王が言ってることは若干、的外れだってことさね」
勇者「……?」
アラクネ「あの娘は自分のしたことが人間の勇者…つまりあんたを生んだ要因だと思ってるらしいけど…」
勇者「………」
アラクネ「本当はそうじゃないんだよ。魔王がなんかしたから勇者が孤独になったってわけじゃないのさ…」
側近「ならば…どういう?」
アラクネ「人外の…というより魔族さえぶっちぎってる力を持った英雄、なんて馬鹿なもん作ったのは神だってことさね」
勇者「神…」
アラクネ「そうさ。…魔族5万年の歴史を紐といても"勇者"なんて記述はほとんどないんだよ」
側近「…12度ほど出現したことがあったと私は記憶していますが…」
勇者「…そんなもんなのか…勇者の数ってのは…」
アラクネ「そのうちの10回は魔王に返り討ちだけどねぇ」
アラクネ「まぁ、そいつらもそれなりにはあたしら魔族に打撃は与えてはいるけど、所詮は局所的なもんってやつさ」
側近「…そこまではわかりかねますが…」
アラクネ「勉強不足さねぇ…ったくこれだから最近の若いもんは…」
側近「…アラクネ様…」
アラクネ「はいはい…説教はしないよ。…わかってるさね」
アラクネ「魔王を討ち滅ぼした勇者は3人いる」
側近「3人はお認めになるので…?」
アラクネ「まぁねぇ…その時代の魔王を滅したうえ、魔族の勢力をがっつり押し込むまでされたら認めるしかないだろ?」
側近「…それは…はい」
アラクネ「一人目は古すぎて、あたしらん中でもほとんど伝説だ。でも後の二人については記述がある」
アラクネ「二人目は3万年前、征服王と呼ばれた第19代魔王ん時、三人目は8千年前の狂王、第39代魔王ん時、とねぇ」
側近「人間を滅亡寸前まで追い詰めた2大魔王…」
アラクネ「そうさ。つまり、人間がよっぽど危なくなった時に勇者ってのは現れれんのさ。それもバカみたいにクソ強いヤツがね」
側近「それが本物の勇者であると…?」
勇者「………」
アラクネ「だってさ?話が良すぎるだろ?だから神が作ったってあたしは言うのさ。…力を持った魔王を神に代わって倒すためにねぇ」
勇者「………」
アラクネ「ま、そんなわけで、魔王がどうこうして世界から外れたってより、元から外れてんのさ、あんたはね」
側近「…しかし、それは全てアラクネ様の推測ではありませんか?その話しぶりでは勇者様が…本物の勇者かも定かではありません」
アラクネ「…痛い所をついてくるね」
側近「当然でございます。…ただの憶測に因って、これ以上魔王様を苦しめるわけにはまいりません」
アラクネ「…それじゃあ、あたしゃどうしようもない道化だね。あーあ、遠路はるばる来たってのに大失敗だーよ」
勇者「…アラクネ」
側近「…勇者様?」
アラクネ「んー?」
勇者「なんでお前は今の魔王が神に…俺に討たれる大魔王って思うんだ?別に人間を追い込んではいないだろ?」
アラクネ「…そりゃ、魔王の幻術ってのがあまりに強力すぎるからさ。しかも、最近じゃコントロール出来ないときた…」
アラクネ「暴走してどうなるかは知らないけど、際限の無い幻の中に閉じ込められちまったら人間も魔族もみんな滅んじまうだろ?」
勇者「………」
アラクネ「ま、神がちょっかい出してきてるとして、その理由ってのはタイミング的にこれだとあたしゃ思うね」
勇者「なら俺はそうなる前の保険ってことか…」
アラクネ「!…そう!あたしもそう思うんだよ!…あんた、見かけに依らずなかなか鋭いねぇ!」
勇者「え?…なん…?」
側近「…アラクネ様?」
アラクネ「今回の場合ってのはさ、まだ神にとっての実害ってのは無いんだよ」
勇者「ただ元の姿に戻ったってことか…?」
アラクネ「そうそう…別に人間が滅びる勢いで減っていってるわけでもないしねぇ」
勇者「………」
アラクネ「自分がいなくとも世界は回るってのは、なんとも上手い表現さ…うんうん」
側近「…アラクネ様」
アラクネ「わかってるさね。…あたしが言いたいのは」
勇者「……?」
アラクネ「あんたは世界から外れたとかそういうことを気にする必要なんかないってことさ。…あのバカの勘違いもそうだけどねぇ」
勇者「………」
アラクネ「力なんか使わなきゃ良い。…使わなきゃ周りもわかんないしねぇ」
勇者「…アラクネ…」
アラクネ「そうだろ?…あんたらは今、こうやって側近やら召使やらと一緒に普通に生きてんじゃないのさ」
側近「…珍しいのですね」
アラクネ「何がだい?」
側近「人間に肩入れするなんて…」
アラクネ「そんなんじゃないよ。こういう時は男から行かなきゃ意味が無いってだけさ」
側近「は、はあ?」
アラクネ「魔王にもついに春かぁ…感慨深いねぇ…」
側近「………」
アラクネ「…あんなに乙女してる魔王なんて初めてみたよ。…あ、この場合は聞いたかねぇ?」
側近「…アラクネ様」
アラクネ「応援したくもなるじゃないのさ…あんたには悪いかもしれないけどねぇ?」
側近「そのようなことは…」
アラクネ「ま、2号に収まるって手もあるさね。悪いけどここは涙を飲んでもらっ…」
側近「…に、2号でございますか?」
アラクネ「おや、知ってたかい?」
側近「アラクネ様!?」
―魔王城 魔王のへや♪―
コンコン…
勇者「…魔王、俺だ。開けてくれ」
魔王『………』
勇者「魔王」
魔王『勇者様に…合わせる顔がありませんわ…』
勇者「…聞こえているなら良いよ。そのまま聞いてて…」
魔王『…そ、そのようなことは…ぅー…お、お待ちくださいませ…』
・
・
・
カチャリ…
魔王『…ど、どうぞ…』
勇者「…ああ、ありがとう」
《…ど、どうぞ…》
アラクネ「いいよ!いいよ!…滑り出しは上々さぁね!」
側近「…アラクネ様…貴女という方は…」
アラクネ「なんだい?良い所なんだから黙ってな!…まさかまだつけっぱなし…いや脱ぎっぱなしかね?…まぁ、いずれにしてもコイツは嬉しい誤算だよ…!」
側近「………」
パキッ…
アラクネ「あっ!?」
側近「…お止めください」
アラクネ「…側近…あんた、あたしに喧嘩売ってんのかい?」
側近「そうではありません。しかし…」
アラクネ「あ?」キチィ…
側近「えっ!?あ…さ、さすがにこのようなじょ、状況で盗聴などと言いますのは…ま、魔王様のためにも…」
アラクネ「………」キチキチ…
側近「…お、お止めくださいませ!先程は応援をと…あ、アラクネ様ぁ!?」
魔王「…な、何かご用でしょうか?」
勇者「用っていうか…この間のことで俺…あれ?」
魔王「や、やはりそうですか…本当に何と謝罪すれば良いのか…」
勇者「魔王?」
魔王「はい?」
勇者「…なんだか少し…縮んだ?」
魔王「縮ん…あっ!?」バタバタ…
勇者「……?」
魔王「ゆ、指輪よ…我が衣となりて…なりて……」
魔王「………」
勇者「何か…まずかった…のかな?」
魔王「…いえ…」
魔王「…思えは全ての元凶はこのような偽りでしたわね…なのにわたくしはまた…」
勇者「つまり…それが君の本当の姿ってことなのか?」
魔王「…それは…わかりません」
勇者「え?」
魔王「…わたくしは見た者の見たい姿となってその目に写ります」
勇者「見たい姿…」
魔王「…はい…唯一の例外はわたくし自身…」
勇者「…ふーむ…」
魔王「…魔王となるにあたって自身の姿を固定するため指輪の魔力を使っていたのですが…」
勇者「…うぅむ…」
魔王「…勇者様の目には…わたくしは今、どう写っておりますでしょうか?」
勇者「どうって言われても…」
魔王「………」
勇者「…全体的に縮んだ魔王にしか見えない…」
魔王「…え?」
勇者「身長とかスタイルとか?…全体的にスケールが小さくなった感じに見える…」
魔王「え?ちょっ…それは…まさかそんなはずが…ど、どどどうしましょう…!」
勇者「……?」
魔王「…ゆ、指輪よ…我が衣とな…だ、ダメですわ…!ダメ!二度としないってさっき誓いましたのに…!」
勇者「魔王?」
魔王「勇者様が…ご覧になっているのが…わたくしの本当の姿です…」
勇者「そうなの?」
魔王「はい…間違いありませんわ…」
勇者「へぇ…」
魔王「………」
勇者「………」
魔王「…あ、あまりじろじろと見ないでくださいまし!わたくしにとってはすっぴんみたいなものなのです…!」
勇者「ご、ごめん…」
魔王「…はぁ…一体、何故…うぅ…」
勇者「…これも俺が勇者だからなのかな…」
魔王「……?」
勇者「さっきアラクネが来てね…」
魔王「アラクネがまた来ているのですか?…いやらしいですわ…どうせまたわたくしがふさぎ込んだとかいう噂を嗅ぎ付けて…」
勇者「…似たようなもんだけど、ちゃんと心配はしてたみたいだよ」
魔王「…どうでしょうか」
勇者「でね、俺や魔王のことについて彼女なりの考えを聞かされた」
魔王「アラクネの…?」
勇者「うん。ちょっとまだ消化しきれてないけどね…」
魔王「…しつこいですからね。彼女の話は…」
勇者「ふふっ…確かにそうかも」
勇者「…で、アラクネが言うには俺は元から世界の外の存在で、それは神の意思だってさ」
魔王「…馬鹿馬鹿しいですわ。勇者様が元からだなんて…わたくしが術さえ解かなければ…今でも貴方は人間の世界で…」
勇者「かもしれないね。…でも考えたんだ」
魔王「?…何をですの?」
勇者「術が解かれて、世界が揺らいだから俺は弾き出されてここにこられたんだろうってね」
魔王「………」
勇者「俺は今の生活が好きだよ。のんびり城の中庭で過ごしたり…」
勇者「魔族のちんぷんかんぷんな本を解読しようとしたり、たまに側近ちゃんや魔王とお茶したり…」
魔王「………」
勇者「…魔王が泣き出しちゃった時に、そうじゃない、それでよかったって言えればよかったんだけど…
魔王「勇者様…」
勇者「アラクネいわく、甲斐性無しってヤツでさ…」
魔王「…でも…」
勇者「うん?」
魔王「…それで本当に良いのですか?この城で受け入れられても…魔族全体に受け入れられはしません。…どちら側に立つこともできず…」
勇者「…そうじゃないよ」
魔王「はい…?」
勇者「俺は俺を受け入れてくれる場所が嬉しいって言ってるんだ」
魔王「場所…」
勇者「俺は人間の世界から来たんだよ?…同族でもいがみ合ってるんだ、全部に認めて貰おうなんて思っちゃいない」
魔王「………」
勇者「君達に受け入れられた、それだけで十分なんだよ」
魔王「ゆ、勇者様…!」
―魔王城 側近の部屋―
側近「ふがっ!ふがあっ!…んんっ!」モゾモゾ…
アラクネ「…さすがに今の四天王を呼ぶのは無理かねぇ…」カリカリ…
側近「ぷはっ!!」
アラクネ「えぇと…後は…」
側近「お止めください!アラクネ様!双方の了承も得ず、勝手に披露宴などと…!」
アラクネ「良いんだよ。あの魔王のことだ、どうせ勘違いして舞い上がるに決まってんだから…」
側近「しかし…!」
アラクネ「問題はあの勇者だよ。どうも達観した感じが…素直に押し倒してくれてりゃ良いんだけどねぇ…」
側近「ゆ、勇者様はそんなことなさりません!」
アラクネ「…とくれば先手を打って首輪付けとかにゃならんってわけさね。…頼んだよ?」
ハーピィA「わかりましたー」
側近「ま、待て!貴様は私の伝書ハーピィ…ではないか!?前任の四天王様の命といえどそう簡単に…」
ハーピィB「わかるー?」
パーピィC「んーん。わかんない」
側近「ッ…この馬鹿とr…」
アラクネ「うるさいねぇ…」キチキチ…
側近「!…あ、アラク…ふがぁ!?」
アラクネ「んんー…楽しみだねぇ…」
側近「…ふが…ぅ…(…魔王様…勇者様…申し訳…ありません…)」
アラクネ「待ってなよぉ、魔王!あんたの遅れて来た春は、このあたしがしっかりと花を咲かせ、実を付けるさせてあげるさねぇ!アーッハッハッ!」
―魔王城 中庭―
魔王「ふふんふん♪」
側近「…ご機嫌でございますね…」
魔王「えぇ♪わたくしなどがあの勇者様の帰る場所となれていたなんて…うふふっ♪」
側近「そうでございますか…」
魔王「…側近は元気が無いようですが…どうかしましたか?」
側近「ええまぁ…私は…ちょっと頭が痛とうございまして…」
魔王「それはいけませんわね…あまり根を詰めてはなりませんよ?いつでも休暇を願いでで構いませんからね?」
側近「…はい…ありがとうございます」
魔王「…本当に調子が悪いようですが…大丈夫ですか?」
側近「…はい…重ね重ねのお気遣い痛いいります、魔王様…」
魔王「……?」
―魔王城 側近の部屋―
側近「………」ガサッ…
《魔王様、ついにご結婚とのこと…竜族を代表して……》
側近「………」ガサッ…
《まずは有翼族を代表して祝辞を。魔王様、この度は……》
側近「………」ガサッ…
《魔王様……》
側近「………」ガサッ…
《ついにこの時が!我々…》
側近「………」グシャ!
側近「…こんなもの…こんなものどうしろというのだ!?どの書状も祝辞の嵐…!どうやってごまかせと言うのか…!」
側近「………」
アラクネ『んじゃあたしは帰るけど…後は任せたよ!…しっかりおやりよ?』
側近「…アラクネ様ぁ…」
―魔王城 勇者の部屋―
コンコン…
勇者「ん?誰?」
側近『側近です…少し相談したいことが…』
勇者「ああ、構わないよ。鍵は開いてる」
側近「はい。ありがとうございます…」
・
・
・
勇者「それで相談って?」
側近「…まずはこれを読んでみてください。数枚を翻訳してきましたので…」
勇者「う、うん…?」ガサッ…
《イェーイ!魔王、見てるー?クラーケンだよぉ?書状見てほんと驚いちゃった!でも賞味期限ギリギリで間に合っ……》
勇者「………」ガサッ…
《ハァイ!やったな、魔王!コノヤロー!竜族を代表してダァーッ!って祝福する……》
勇者「………」ガサッ…
側近「はぁ…」
《……卵は300個くらい産んでくれよな!それじゃあパーティーで会おうぜ! リザードマン代表より》
勇者「………」
側近「どうしたら良いのでしょうか…」
勇者「…どうしたらと言われても…何かおめでたいことがあって、一発芸大会でもするの?」
側近「どこをどう読めばそうなると言うのです!?」
勇者「で、でも…みんなおめでとうとか卵がどうとしか書いてなくて…」
側近「え?…そ、そんなはずは…」ガサガサ…
勇者「まぁ、書面での翻訳は難しいだろうし…口頭でお願いしても良いかな?」
側近「は、はい…も、申し訳ありません…」
勇者「えっ!?魔王が結婚するの!?」
側近「そういう内容の書状の返書が溢れかえるほど来ているのです…」
勇者「そっかぁ…そりゃおめでたいよねぇ…」
側近「…魔族全体にこんな話が出回ってしまっては…悪戯でした、では済みません…一体、どうすれば…」
勇者「側近ちゃん…」
側近「…はい?何か良い案でも…」
勇者「いつか俺達もこういう手紙…貰えるといいね?」
側近「…そうではありません!真面目に考えてください!」
勇者「あ…ご、ごめん…」
側近「…これが私のこととして出回ったのならまだ救いがあったものを…アラクネ様…貴女はどうしてこう…はぁ…」
勇者「うん?」
勇者「相手が…俺…?」
側近「…はい」
勇者「なんでそんな話になってんの!?」
側近「それは…この前、アラクネ様がいらした時に、アラクネ様が勝手に魔王印を使った書状を送ってしまったのです…」
勇者「…あの時か…」
側近「…私はアラクネ様の暴挙を止めることが出来ず、このようなことに…」
勇者「そんなもん…どうすりゃいいの…」
側近「…ですからこうやって相談に…」
勇者「…初対面ときちゃんと斬っとけばよかった…」
側近「…私も止めなかった方がよかったかと少し思っています…」
両方うざいから黙れ、埋めるな
勇者「魔王に差し止めて貰うのは?」
側近「無理です。威信を失ってしまいます。ただでさえ、魔力をコントロール出来なくなり、低級魔族には在位に疑問を持つ声も上がっていると言うのに…」
側近「…むしろ魔王様が喜々として物事を運びかねません…」ボソッ…
勇者「替え玉は?」
側近「この披露宴は公的な行事です。問題の先送りに、さらに重しを乗せるようなものです」
勇者「出席者に幻術を仕掛けるのは?」
側近「…一時的には効果があるかもしれませんが、末端までは…」
勇者「………」
側近「………」
勇者「…じゃあ、そのまま俺が婚約者になるとどうなる?」
側近「一部は問題なく受け入れると思います。勇者という肩書は伊達ではありませんから…」
側近「しかし、大多数は反対、撤回を求めて今度は抗議の嵐でしょうね」
勇者「…それが一番マシな気がする」
側近「私もそれしかない、と考えていました。…それに…」
勇者「うん?」
側近「失礼ですが、勇者様には寿命の問題があります。長くとも数十年も経てば…」
勇者「俺は死んで白紙に戻る、と」
側近「…はい…」
勇者「…それで行こう。アラクネの糸に操られてる感は否めないけど、まずはこの騒ぎを乗り切らないと…」
側近「はい。ではそのように…」
側近「おかげで決心がつきました。ありがとうございます」
勇者「いや…」
側近「………」
勇者「しかし、魔王の婚約者か…」
側近「…お嫌ですか?」
勇者「嫌って感じではないけど…意識なんかしたことなかった相手だからね。急に言われて戸惑ってる感じ…かな?」
側近「…では本当に結婚してしまうのはお嫌ですか?」
勇者「…え?」
側近「………」
勇者「…側近ちゃん?」
側近「…失言でしたね。申し訳ございません」
勇者「………」
側近「では失礼します」
勇者「あ、ああ…」
パタン…
勇者「…魔王と?俺が?」
・
・
・
―魔王城 魔王のへや♪(鍵は開いてますわ♪)―
コンコン…
側近「魔王様、側近でございます。少々、問題がございまして…」
魔王『はい、どうぞ。中で聞きますわ』
側近「ははっ…」
魔王「そうですか…アラクネはそんなことを…」
側近「はい。そこで勇者様にも了解を取り、通常通りに披露宴を行う運びとしました」
魔王「まぁ…!」
側近「日取りにつきましては後ほど…また反対派のことも考慮し、招待客は上級魔族から小数を…」
魔王「…あぁ…わたくしが勇者様と…」
側近「…ま、魔王様?」
魔王「………」ポー…
側近「………」
―魔王城 テラス―
魔王「明日はついにわたくしと勇者様の結婚披露宴…ですか…」
魔王「………」
魔王「…ふっ…」
魔王「うふっ…うふふっ♪やりました…」
魔王「…やりましたわぁ!アラクネもたまには良いことをするではありませんか!」
魔王「クラーケンにも!グリフィンにも!…もう行き遅れなどとは言わせません!」
魔王「あぁ…勇者様との披露宴…待ち遠しいですわぁ…」
魔王「…その・あ・と・は…」
魔王「結婚!!」
魔王「まぁー!まぁー!結婚ですって!結こ…」バッサッ…バッ…
勇者『結婚してくれ! 側近ちゃん!』
側近『えっ?』
魔王「………」
魔王「…側近は…勇者様のことをどう思っているのでしょうか…」
―魔王城 披露宴会場(中庭)―
ワイワイ…
クラーケン「ねぇ、これじゃ水が足んないの…持ってきてくれる?」チャプ…
召使「失礼しました。ただいまお持ちします」
クラーケン「…あと狭い」チラッ…
マーメイド「………」ツーン…
クラーケン「あんたに言ってんだけど?」
マーメイド「…うるさいですわね。わたくしの尻尾は一つ。貴女は10本…どちらが邪魔かは一目瞭然でしょう?」
クラーケン「そんでも詰めろって言ってんの」
マーメイド「なんてわがままな…こんな墨吐き女とは同じ生け簀になど入っていたくありませんわ…」
クラーケン「あ?」
マーメイド「水がどす黒く汚れてます…詰めろとは言いません、出て行け」
クラーケン「魚もどきが何言ってんの?あたしに喰われたいの?」
マーメイド「…なんです?やるってんですか?」
グリフィン「ちょっと、止しなよ」
グリフィン「めでたい席で見苦しい…」
クラーケン「グリフィン…」
古竜「そうじゃぞぉ…」プルプル…
マーメイド「あら?」
古竜「わしがまだ若い頃はなぁ…マーメイドは尾ビレ一本で砂漠を跳び歩きぃ…クラーケンはその足でもって山を登ったもんじゃぞぉい…」プルプル…
クラーケン「何が悲しくてんなとこあたしらみたいな種族がいなかくちゃなんないのよ?」
マーメイド「…ほっときなさいな。朦朧してるのですわ。お年寄りですもの」
クラーケン「竜族代表だかなんだか知らないけど、朦朧じじぃよこすこたないのに…」
グリフィン「お、おい…お前ら!」
クラーケン「なによ?」
グリフィン「竜族に向かってなんてことを…私は知らんぞ!?」
マーメイド「え?」
ズズズ…
クラーケン「………」
古竜「貴様らぁ!身の程をわきまえんかぁあああ!!」ゴァ!
―控室―
《…ズズゥン…》
アラクネ「なんか始まったみたいだねぇ…」
側近「ならば止めに行ってくださいませ」サッサッ…
魔王「………」
側近「私は手が離せませんので」サッサッ…
アラクネ「…化粧なんか指輪でパァーってやりゃ良いじゃないのさ」
側近「指輪は使えません。結界を張っていますから。でなければ…」
《…ズズズゥン…》
側近「…城が崩れてしまいます」
アラクネ「あー、なるほどねぇ」
魔力「…アラクネ」
アラクネ「…わかったよ、行きゃ良いんだろ?あたしゃvip待遇だってのに…仕方ないねぇ」
側近「………」
アラクネ「あ、そうだ」
魔王「なんです?」
アラクネ「よく似合ってるよ、そのドレス」
魔王「…ありがとうございます」
アラクネ「…まぁ、中身がどんな化け物かは知らないけどねぇ?」
魔王「…アラクネ、わたくしは術で嘘偽りなく姿を固定していると昔から…」
アラクネ『はいはい。お綺麗だわねぇ…』
魔王「アラクネ!?」
パタン…
側近「…もう少しで終わりますのでご辛抱を…」
魔王「あ、ごめんなさい…」
側近「いえ…」サッサッ…
魔王「………」
側近「…こんな所でしょうか」
魔王「ありがとう。側近」
側近「アラクネ様は濁されましたが…本当にお綺麗でございますよ、魔王様」
魔王「………」
側近「…いかがなされましたか?」
魔王「…本当に良いのでしょうか…」
側近「……?」
魔王「勇者様のお気持ちを無視してこのようなことを…」
側近「…すぐに婚姻というわけではありません。今回の披露宴は火消し前の下準備のようなものでもございますので…」
魔王「…それに…」
側近「はい?」
魔王「貴女のこともあります…勇者様のお気持ちを貴女はどう思っているのです?」
側近「………」
側近「…私のなどことなど気にかけて頂く必要はございません。私の全ては魔王様、ひいては魔族全体の…」
魔王「側近」
側近「ははっ…」
魔王「貴女はわたくしに良く尽くしてくれています」
側近「ありがたいお言葉…」
魔王「…ですが心配でもあるのです」
側近「は?」
魔王「仕事一筋ではわたくしのように成り兼ねませんよ?…行き遅れになりたいのですか?」
側近「そ、そのようなことは…微塵も…あ…い、いえ…これは魔王に対する…」
魔王「ふふっ…」
側近「ま、魔王様?」
魔王「…貴女はわたくしにとって妹のような存在でもあるのです」
側近「………」
魔王「そんな貴女の気持ちを無視してまでこんなことをするつもりはありません」
側近「魔王様…」
魔王「…わたくしとてこの先どうなるかくらいの予想はつきます」
魔王「今後の人間の動きによっては、なし崩しに婚姻まで事が運ぶことも十分に考えられるでしょう…」
側近「………」
魔王「ですからその前に…貴女の気持ちを知っておきたいのです」
側近「…わかりました…魔王様」
―勇者控室―
召使「それでは失礼します」
勇者「ああ、ありがとう…」
召使「………」
勇者「どうかしたのかな?」
召使「…勇者様、しっかり魔王様をエスコートしてくださいね…!」グッ!
勇者「う、うん?」
召使「あのお方はお優しく、また知力、魔力とも優れた王であるのですが…ちょっと抜けてますから…」
勇者「ははっ…わかってる」
召使「ありがとうございます。では…」
パタン…
勇者「………」
コンコン…
勇者「召使?…まだ何か?」
側近『申し訳ありません。召使ではなく、側近です』
勇者「側近ちゃんか…どうぞ」
・
・
・
側近「失礼ます」
勇者「側近ちゃんが来たってことは魔王の準備が終わったのかな?」
側近「はい。間もなく披露宴が始まりますのでお迎えに…」
勇者「そっか…」
側近「………」
―回廊―
勇者「………」
側近「魔王様もお綺麗でしたが…」
勇者「うん?」
側近「…勇者様もまた凛々しく、颯爽としておられますね」
勇者「…馬子にも衣装だよ」
側近「お世辞ではないですよ。本当に…」
勇者「…ありがと、側近ちゃん」
側近「はい」
勇者「………」
側近「………」
勇者「………」
側近「…魔族側の感情を抜きにして考えるのならば…」
勇者「……?」
側近「勇者を確実にこちらに引き込めるこの婚姻は、魔族全体に多大な益をもたらします」
勇者「急にどうしたの…側近ちゃん?」
側近「その点を中心に説得を続ければ…反対派も簡単に丸め込めるでしょう」
勇者「………」
側近「…最後にもう一度、不躾な問いをすることをお許しください」
側近「魔王様を…妻として迎えてはいただけませんか?」
勇者「………」
側近「………」
勇者「…それは…」
側近「それは?」
勇者「…出来ないよ」
側近「…そう、ですか…」
勇者「自分の気持ちはわかってるんだ…なのにそれを無視して他の誰と添い遂げるなんてしたくない」
側近「…残念です」
勇者「…今はね」
側近「…は?」
勇者「心は変わってくもんでしょ?まだ婚約なわけだから、全てが決まったわけじゃないし…」
側近「…ずるい言葉ですね」
勇者「これが精一杯なんだよ…魔王だってすごく良い娘だってのは城で暮らすようになって良くわかった」
側近「………」
勇者「王なのに偉ぶった風でもなく、ドジで、ちょっとぬけてて、乙女チックな所もあって…」
勇者「とても可愛いらしい人だと思う」
側近「………」
勇者「でも、君がいる…俺にとっては君が一番なんだよ」
側近「まだ…ですか?」
勇者「その言い方にはトゲがあるね…」
側近「今さっき、最低の男ぶりを見せてくださったのは勇者様ではありませんか?」
勇者「…確かにね…ごめん」
側近「くだらない問答でしたね。…申し訳ありません」
勇者「………」
側近「さぁ、扉の向こうで魔王様がお待ちです。…仕事の時間ですよ?」
勇者「…わかってる」
側近「ご健闘を…」
勇者「ははっ…そりゃどっちのかな?」
側近「………」
パタン…
アラクネ「っかあぁ!!煮え切らないねぇ…!あの男はさぁ…!」
側近《…相変わらずよいご趣味をお持ちで》
アラクネ「そうでもないさねぇ…」
側近《………》
アラクネ「いまさらだけどさぁ…あんなの魔王に押し付けて大丈夫かい?」
側近《…この状況はアラクネ様の一存では?》
アラクネ「あ、アハハッ……だーね」
側近《しかし…》
アラクネ「あん?」
側近《状況や場に流され、自分を偽ることのなかった所は…誠実な夫としては評価に値すると思います》
アラクネ「あんたにとっちゃね…魔王にお墨付きだってもらっただろ?…これで良いのかい?」
側近《私に結婚願望はありませんし…》
アラクネ「へぇ…ま、若いうちはみんなそう言うさね」
側近《それに…》
アラクネ「お?実の所…なんかあったりするのかい?」
側近《えぇ…でも…》
アラクネ「うん?」
側近《…それはアラクネ様には秘密でございます》
パキッ…
アラクネ「ああぁぁあ!?」
―魔王城 披露宴会場(中庭)―
アラクネ「ちょいとぉ!?やめとくれよ!そういうのはさぁ!…あぁもう気になるじゃないのさぁ!!」
グリフィン「アラクネ様…そろそろ始まります。お静かに…」
アラクネ「うるさいね!わかってるんだよ、そんなことは…!」
グリフィン「は、ははっ…」
ファンファンファファファンファーン!
グリフィン「ファンファーレ…ではいよいよ…?」
アラクネ「はぁあ…もうひとつ仕掛けときゃよかったよ…」
『おぉ…いよいよ…』
『どのようなお方か…』
アラクネ「…つまんないねぇ…」
・
・
・
―回廊―
パキン…
側近「………」
側近「…それに…」
側近「いざとなれば2号という手もあるのでしたしね…」
側近「…まぁ、そんなことを心配するほどの時を共に過ごせるとは思いませんが…」
側近「…せめて魔王様の方だけでもなんとかして差し上げたいものです」
《ファンファンファファファンファーン》
側近「幕が上がりましたか…」
側近「…これからますます忙しくなりそうですねぇ…」
《おおぉお!?》
終わり
落とし所が…長々とすまん
保支絵ありがとう
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