皇帝「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」(317)

<帝国城>

皇帝「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」

側近「どうしたんですか、いきなり」

皇帝「今、俺に向かって、童貞といっただろう!」

側近「童貞ではなく、皇帝陛下と申し上げたんですよ」

皇帝「あ、そうだったのか……すまんな」

側近「いえいえ」

側近「でも皇帝陛下って──」

側近「童貞ですよね」

皇帝「あっ、いいやがったな!」

皇帝「童貞っていった方が童貞なんだぞっ!」

側近「残念ながら、私はもう捨てました」

側近「妻も子もいますからね」

皇帝「ぐぬぬ……」

側近「まあまあ、落ち着いて下さい」

側近「陛下は先代である父君がご病気で退位されて即位されましたから、まだお若い」

側近「お世継ぎのことを考える時期もないですし、焦ることはありませんよ」

皇帝「いや……焦る!」

皇帝「父を含め、歴代皇帝は成人する前に童貞を捨ててきたと聞く」

皇帝「──が、俺はすでに成人の儀式をしたが未だに童貞だ」

皇帝「このままではマズイ」

皇帝「今のうちに捨てておかないと、ズルズルいってしまう気がするのだ」

側近「ならばせっかく皇帝の座にあるのです」

側近「権力を行使して、女性を城に呼び寄せてはどうです?」

側近「例えば隣国の王は、正妻や側室など、幾人もの女性と交わってますよ」

皇帝「いや、それはならぬ」

側近「なぜです?」

皇帝「こちらから女性を呼び寄せたら、俺がリードしなければならないだろう」

皇帝「未経験である俺に、そんな大役を果たせるハズがない!」

側近「だったら──」

側近「ボク童貞なんで手取り足取り教えて下さい、っていえばいいじゃないですか」

側近「なにせ国で一番偉いんですから、きっと優しく教えてくれますよ」

皇帝「ダメだ!」

皇帝「そんなの……みっともなさすぎる!」

側近「ではいっそ、こちらから城下に繰り出しますか?」

側近「いいソープを紹介しますよ」

皇帝「ダメだっ!」

側近「どうしてです?」

皇帝「なにしろ、一生に一度のことだ」

皇帝「できればプロは避けたい……!」

側近「強いこだわりがあるんですね」

側近「さっきから拒否してばかりですが、皇帝陛下に何かお考えがあるのですか?」

皇帝「うむ……」

皇帝「最近読んだ恋愛小説にこういうのがあった」

皇帝「ある国の王子が、身分を隠して町を歩き回るのだ」

皇帝「そこで王子は町民である美少女と出会う」

皇帝「身分のちがい、城内の権力闘争、さらには迫りくる敵国──」

皇帝「さまざまな試練が二人を襲うが」

皇帝「二人はみごと結ばれ、幸せになるという内容だ」

側近「その小説がどうかしたのですか?」

皇帝「まだ分からんのか?」

皇帝「俺は──ああいうのがやりたいんだよっ!!!」

側近(だいぶこじらせてるな、この人……)

側近「では、陛下も庶民に変装をして城下に出てみますか?」

側近「もしかしたら、小説のようないい出会いに恵まれるかもしれませんよ」

側近(ま、ないと思うけど)

皇帝「おお、ナイスアイディアだ!」

皇帝「よぉし……」

皇帝「さっそく召使に命じて、庶民っぽい服を集めさせるか」

<皇帝の部屋>

女召使「よいしょ、よいしょ」

女召使「町で買ってきた服をお持ちしましたです!」ドサッ

女召使「ご命令通り、なるべく庶民的な服を選びました!」

皇帝「うむ、ご苦労」

女召使「しっかし、皇帝陛下ともあろう方がこんな服をどうするんですか?」

皇帝「着て、城下を歩いてくる」

女召使「なんのために?」

皇帝「童貞を……捨てるためだ!」

女召使「ほうほう」

庶民の服に着替える皇帝。

皇帝「──どうだ?」

女召使「おぉ~似合ってますよ! かっこいいです!」

皇帝「うむ、そうか」ニヤッ

皇帝「よし、では出かけるとするか」

女召使「陛下、一言だけ」

皇帝「なんだ?」

女召使「陛下は立派な方です。童貞がどうとか、あまり気にすることないですよ」

皇帝「嬉しい言葉だが、そうもいかぬ」

皇帝「皇帝が童貞では格好がつかないからな」

皇帝「では行ってくる」ザッ

女召使「頑張って下さい!」

<城下町>

皇帝(ふ~む、見慣れているハズなのに、庶民として来ると雰囲気がちがうな)

皇帝(せっかく変装しているのだ)

皇帝(童貞を捨てる前に、俺が民にどう思われているか聞いてみるか)

皇帝「おい、そこの」

町民「ん、なんだよ」

皇帝「数年前、この国の皇帝が代替わりしただろう」

町民「ああ、したな」

皇帝「どう?」

町民「どうって……いい人なんじゃないか?」

町民「皇帝なのにえらぶってないし、政治もしっかりやってるし」

町民「先代が倒れられた時はどうなるか心配だったけど、あの方なら大丈夫だろ」

皇帝「ハハハ、照れるな」

町民「いや、別にアンタは褒めてないよ」

皇帝「あ、そういえば、そうだったな」

皇帝(ほっ、評判がいいみたいでよかった……)

町民「ただ──」

町民「童貞なのが玉にキズだけどな!」

皇帝「え!?」

皇帝「ちょ、ちょっと聞きたいんだが」

町民「なんだよ」

皇帝「な、なんで皇帝が童貞……と知ってるのだ?」

町民「なんでって、常識じゃん」

皇帝「え!?」

町民「城下じゃ、だいぶ広まってるよ」

皇帝「え、え!?」

町民「というか、城下じゃ知らない奴はいないんじゃないかな」

皇帝「え、え、え!?」

町民「下手すりゃ子供だって知ってるかも……」

皇帝「え~~~~~っ!?」

その後──

女「皇帝はすばらしい方よ、童貞だけど」

老婆「陛下はええ男じゃなぁ、童貞じゃがのう! ひょっひょっひょ!」

中年「皇帝陛下? 童貞だが、いい君主だと思うぜ」

旅人「色んな国を見てきたが、彼はまちがいなく名君だね。童貞ではあるけどね」

幼女「陛下はえらくって、かっこよくって、チェリーなんだよ」

主婦「皇帝陛下っていい人だけど、雰囲気が童貞っぽいわよねえ」

少年「俺も大きくなったら、皇帝みたいな“どうてい”になるんだ!」

オカマ「皇帝陛下っていい男よねえ、童貞らしいし狙っちゃおうかしら」

<帝国城>

皇帝「──どういうことだ、これは!?」

側近「今この国は平和ですし、こういう醜聞が流布しやすいのでしょうね」

側近「まあいくら隠しても、皇帝が童貞なのは事実ですし」

側近「君主としては評価されてるようですし、よかったじゃないですか」

皇帝「よくない!」

側近「民が君主に親近感を持つというのはいいことですよ」

皇帝「親近感ってレベルじゃないぞ!」

皇帝「くっそぉ~……! どうしてこうなったんだ……!」

皇帝「俺を童貞呼ばわりする者は、いっそ罰してやろうか」

側近「皇帝侮辱罪、でですか?」

皇帝「いや、国家機密漏洩罪でだ」

側近「もう国家機密でもなんでもないですよね」

皇帝「うわぁ~~~~~っ!」

皇帝「……そういえば、我が国の歴代皇帝は退位するか死ぬかしたら」

皇帝「性質やら業績やらを反映して“~帝”と名を冠せられるだろう」

側近「お父上である先代は、慈悲深い方ですので“慈帝”」

側近「先々代は農業に力を入れたので“農帝”といった具合ですね」

皇帝「うむ、それで少し思ったんだが」

皇帝「もしかしてこのままいくと、俺は“童帝”にされてしまうのでは……」

側近「童帝……ぷっ」

皇帝「笑うな!」

側近「いいじゃないですか、絶対歴史に残りますよ……ぷぷっ」

側近「ぷぷっ、ぶっ! ど、童帝……ぶふっ! ふふふっ!」

皇帝「笑うなぁぁぁ!」

<皇帝の部屋>

皇帝「はぁ……」

女召使「どうでしたか?」

女召使「童貞、捨てられましたか?」

皇帝「いや……色々あってな。結局捨てられなかった」

女召使「そうですか……」

皇帝「だが、俺は諦めてはいない! いつか必ず……捨ててみせる!」

女召使「さっすが陛下です!」

皇帝「ありがとう」

皇帝「もし捨てられたら、真っ先にお前に伝えるからな」

女召使「はい!」

皇帝(こうなったら、あんまり気が進まないが父上に相談してみるか……)

<先代の部屋>

皇帝「父上」

先代「どうしたのじゃ、童貞息子」

皇帝「うぐっ」ピクッ

皇帝「いきなりそれですか、あなたのどこが慈悲深いのか理解に苦しみます」

先代「事実をありのままにいってやるのも、慈悲というものじゃよ」

先代「ほっほっほ」

皇帝「くっ……」

皇帝「まあいいです。ここに来たのは他でもありません」

皇帝「どうすれば童貞を捨てられるか、相談に来たのです」

先代「お前、まァ~だ初体験は素人がいいとか、ドラマチックに捨てたいとか」

先代「無謀極まりないワガママをいっておるのか」

皇帝「当然でしょう! 一生に一度のことなのですから!」

先代「あえて不可能に挑むのもまた一興、か」

先代「う~む、まあそうじゃな」

先代「ドラマチックに童貞を捨てたいのなら、やはり押しの一手じゃな」

先代「お前は優秀だが、ガンガン押すというタイプではないからのう」

皇帝「ガンガン押していく……」

皇帝「つまり男らしさに欠けている、ということですか」

先代「う~ん、まあそういうことになるんかのう」

皇帝「……なるほど」

皇帝「父上、アドバイス感謝いたします!」

<帝国城>

軍団長「側近殿」

側近「これは軍団長殿、どうかしましたか?」

軍団長「先ほど皇帝陛下が、甲冑を借りに来られたのですよ」

側近「甲冑を……?」

軍団長「なんでも“男らしさの象徴といえば甲冑だ”などとおっしゃられて……」

軍団長「もちろんお貸ししましたが、なにかご存じないでしょうか?」

側近「いや、私はなにも──」

兵士「軍団長!」

軍団長「どうした!?」

兵士「城下町で不審者を捕えたので、報告に参りました!」

側近「不審者……?」

兵士「はい、甲冑を着込んで“だれか俺の童貞をもらってくれ”と連呼しておりました」

兵士「幸い、町民に危害を加える様子はなく──というか無視されてました」

兵士「かなり抵抗しましたが、兵数人がかりでなんとか取り押さえました」

軍団長「うむ、ご苦労だったな」

軍団長「新手の変態というやつか。まったく困ったものだ」

側近(まさか……)

側近「──なにやってんです、アンタは!?」

皇帝「ハハハ、すまんな」

側近「…………」ギロッ

皇帝「……すみませんでした」

皇帝「男らしく童貞を捨てようと思いまして……」

皇帝「考えに考えた結果、あのような行動に出た次第でして……」

側近「町民に正体がバレてたら大変でしたよ!」

側近「あ~……ったく!」

側近「当分は、童貞がどうとかは忘れて下さい!」

側近「真面目にやっていれば、あなたはまちがいなく良き君主となれるのですから!」

皇帝「はい……」

<皇帝の部屋>

皇帝「はぁ……」

女召使「陛下、どうしました?」

皇帝「いや、童貞を捨てたい一心で、とんだバカをやってしまってな……」

皇帝「死にたい……」

女召使「なっ、なにをいってるんです!」

皇帝「いや、わりと本気だ」

皇帝「今回の件は、いいきっかけだったかもしれないな」

皇帝「玉座にふんぞり返って、この国の未来に想いをめぐらせていると」

皇帝「たまになにもかもどうでもよくなるんだ」

皇帝「国も、民も、部下も、自分自身さえも──」

皇帝「なにもかも捨ててしまいたくなるんだ」

女召使「そうですか……本気なんですね」

女召使「じゃあまず、あたしが先に死にます」

皇帝「は?」

女召使「うぅ……っ!」ググ…

皇帝(自分で自分の首を!?)

女召使「うえぇ……」グググ…

皇帝「おい……なにをしているんだ! やめろっ!!!」

女召使「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!」

皇帝「バカ! なにを考えてるんだ!」

女召使「す、すみません……」

女召使「でも……陛下が本気で全てを捨てるというのなら」

女召使「無能ではありますが、召使であるあたしが第一号になるべきかと……」

皇帝「…………」

皇帝「すまんっ!」ギュッ

女召使「ちょ、陛下!?」

皇帝「俺は間抜けだった」ギュゥゥ…

皇帝「たかだか童貞を捨てられぬくらいで、全てを捨てるなどと!」

皇帝「それに──」

皇帝「童貞さえ捨ててないのに、全てを捨てるというのもバカげた話だ」

皇帝「俺は生きる!」

皇帝「生きて必ずや童貞を捨ててやる!」

皇帝「そしてこんな最低男に命を賭けてくれたお前には──」

皇帝「全権を賭して、俺が必ず最高の男をあてがってやる!」ギュゥゥ…

女召使「へ、陛下……」

女召使(ちょっと苦しいけど、気持ちいい……です……)

それからというもの──

皇帝「この制度は煩雑すぎる。もう少し簡略化すべきだろう」

皇帝「地方都市からの報告が滞っているな。一度自ら視察してみるか……?」

皇帝「あの地域は慢性的な水不足だ。用水路の開発を急がせろ」

皇帝「盗賊団の動きがだいぶ掴めた。軍団長に討伐隊を組織させろ」

皇帝「なにっ、隣国の王子が結婚しただと!? お、俺より年下なのに……くそっ!」



側近「陛下、近頃は今までにもまして政務に励んでおられますな」

皇帝「まあな」

側近「あの事件なら、もう気にすることはありませんよ」

皇帝「ああ、分かっている」

皇帝(──というか、暇をしているとあの事件を思い出してしまうからな)

皇帝(それに……仕事をバリバリやってると部下の能力が見えてくる)

皇帝(女召使をめとるにふさわしい男を、俺が見極めてやる!)

そんなある日のこと、城に物騒な報せが届く。

<帝国城>

側近「皇帝陛下、大変です!」

皇帝「どうした?」

側近「地方都市で、反乱が起こった模様です!」

皇帝「反乱……!?」

皇帝「たしかあそこには、行政官を派遣していたな」

側近「はい、行政官のいる役場を徒党を組んだ住民が襲撃したとのことです」

側近「幸い、行政官は手勢とともに逃れてきたため無事でしたが──」

皇帝「……分かった。とにかく、行政官に話を聞いてみるとしよう」

行政官「おおっ、皇帝陛下! お久しぶりでございます!」

皇帝「反乱が起こったと聞いたが、状況を説明してもらえるか?」

行政官「ははっ!」

行政官「ヤツらは三日前の夜、役所に襲撃をかけてきたのでございます」

行政官「むろん警備もいたのですが、反乱軍の勢いに押されてしまいました」

行政官「しかし、どうにか私と手勢は脱出に成功いたしました」

行政官「現在も、ヤツらは役所にたてこもっているものと考えられます」

皇帝「うむ……」

側近「なんということだ……!」

行政官「私はいわば皇帝陛下の手足として、地方都市に派遣されたのです」

行政官「これは明らかな反逆行為でございます!」

行政官「大至急! 討伐軍の編成をお願いしたい!」

皇帝「……ところで」

皇帝「反乱軍とやらの主張は?」

行政官「え? な、なぜそんなことを──」

皇帝「反乱軍とて、まさか暇だから反乱を起こしたのではあるまい」

皇帝「なにか理由があるはずだろう」

行政官「……皇帝を倒すだの、自分たちが国を変えるだのと叫んでおりました」

皇帝「…………」

側近「おのれ……!」

皇帝「側近の意見は?」

側近「地方都市の情勢は堅調だと報告が入っております」

側近「反逆に至る要因があるとは考えにくい」

側近「まして皇帝陛下を打倒するなどと、口にするだけでも許せぬ暴挙!」

側近「私も行政官と同様、彼らを反逆者として処理すべきと考えます」

皇帝「うむ」

皇帝「では、どうすべきだと思う?」

側近「ただちに軍を派遣して討伐すべきでしょう」

側近「これを許せば、陛下の威厳は失墜し、国が乱れます」

側近「陛下の温和な気質は理解しておりますが、ここは心を鬼にするべきかと」

皇帝「…………」

皇帝「側近、軍団長に命じて討伐軍を組織させろ」

皇帝「明日中には出動させるように」

側近「はっ!」

行政官「おおっ……! ありがとうございます!」

その日のうちに、軍団長は兵士たちに反乱の件を伝えた。

軍団長「──これは陛下の温厚なる性質につけこんだ、悪質な反乱である!」

軍団長「役所にたてこもる賊どもを、我が軍の誇りにかけて叩き潰すのだ!」

ワアァァァァァ……!



側近「頼むぞ」

側近「陛下に落ち度があるならともかく、同情の余地などまったくない!」

行政官「側近様のおっしゃるとおりでございます」

行政官「どうか手心など加えぬよう、お願いいたします」

軍団長「無論です」

<皇帝の部屋>

女召使「城内は地方都市の反乱の話題で持ちきりですよ」

女召使「どうしてこんなことになっちゃったんですかねぇ……」

皇帝「心配するな」

皇帝「明日には軍が出動する。軍団長らがすぐに解決してくれるだろう」

女召使「……そうですね!」

女召使「では、失礼します。おやすみなさい!」スタスタ

皇帝「おやすみ」

皇帝「…………」

翌朝──

<帝国城>

側近(さて、昼には討伐軍を出動させねばならん)

側近(皇帝陛下からも、兵たちを鼓舞してもらわないとな)

側近「…………」キョロキョロ

側近(そういえば、今日は朝から陛下の姿が見えないな……)キョロキョロ

召使「側近様」

側近「なんだ?」

召使「側近様宛に封書が届いております」

側近「おお、ありがとう」

側近(なんだこれは、差し出し人が書いてないじゃないか)

側近(郵便を介した形跡もない)ビリッ

側近(ということは、直接城の郵便受けに手紙を入れたということか)

側近(だれだ、こんなことをするのは……)ガサガサ…

側近「どれどれ……」



『側近へ ちょっと反乱軍のところに行ってくる。 皇帝より』



側近「ふうん……」

側近「…………」プツン

側近「なにをやってやがるんだ、あの童貞はァ!!!」

その頃、皇帝は女召使を背に、馬を走らせていた。

パカラッ パカラッ

皇帝「──今頃、側近のヤツ激怒してるだろうな」

女召使「本当ですよ、まったく!」

皇帝「……で、なんでお前がついてくるんだ」

女召使「だってあたしの仕事は皇帝陛下のお世話をすることですから!」

皇帝「はぁ……」

~ 回想 ~

皇帝(反乱軍、か)

皇帝(行政官の話だけだと、どうにも腑に落ちない点が多すぎる)

皇帝(もしそれが分かれば、和解も可能かもしれん)

皇帝(側近を始めとした重臣たちはみな、激怒していたから)

皇帝(俺から和解案など出しても、“甘い”といわれてしまうだろう)

皇帝(それに──)

皇帝(地方都市では、俺の童貞は知られていない)

皇帝(反乱軍にも女はいるはず)

皇帝(正体を隠して現地に出向き、うまい具合に解決した後──正体を明かす)

皇帝(惚れられて、抱いて、童貞卒業!)

皇帝(イケる!)

皇帝(これは……ドラマチックに童貞を捨てるラストチャンスなんだ!)

皇帝(よぉ~し、では側近に手紙だけ残してさっそく……)

女召使「へーいーか」

皇帝「!?」ビクッ

女召使「こんな夜遅くに、ど~こに行くんです?」

皇帝「ちょ、ちょっと地方都市までな」

女召使「ほうほう」

女召使「じゃあ、あたしも行きます」

皇帝「は!?」

女召使「あそこは遠いですし、道も険しいですよ」

女召使「絶対あたしが必要になりますって!」

皇帝「……分かった、ついてくるがいい」

女召使「ありがとうございますっ!」

~ 現代 ~

パカラッ パカラッ

皇帝「そういえば、久しく馬には乗っていなかったな」

皇帝「しっかり俺につかまっているのだぞ」

女召使「はいっ!」ギュッ

皇帝(背中に胸が……! これはいかん!)

女召使「皇帝陛下の背中、おっきいですね!」

皇帝(俺のナニもおっきくなっている……!)

パカラッ パカラッ

<帝国城>

皇帝の独走が、側近を通じて重臣たちに伝えられる。

軍団長「なんですと!?」

行政官「皇帝陛下がお一人で!?」

ドヨドヨ……

側近「召使も連れてはいるだろうが……護衛にはならん。マズイことになった」

行政官(ま、マズすぎる……!)

行政官「……軍団長殿!」

軍団長「なんでしょうか」

行政官「私にも、緊急時には兵の指揮権がございます」

行政官「先行部隊として、100騎ほどお貸し下さい!」

軍団長「いかがいたしましょう、側近殿」

側近「たしかに行政官の方が、地方都市への道は詳しい」

側近「陛下が反乱軍と接触するまでに、追いつけるかもしれん」

側近「行政官の先行を認めよう」

側近「反乱軍の討伐より、陛下の確保を優先的に頼む」

行政官「ありがとうございます!」

行政官(よし!)

夜になった。

皇帝(しまった……!)

皇帝(時間を考えずめいっぱい飛ばしてきたから、寝る場所とメシのこと忘れていた)

皇帝(仕方あるまい、今夜はメシ抜きで寝るか……)グーキュルル…

女召使「陛下! 陛下!」タタタッ

女召使「木の実と野草とキノコを採ってきました!」

皇帝「お、おい……なんかマズそうだが食えるのか?」

女召使「大丈夫です!」

女召使「調理しますんで、ちょっと待ってて下さいね」

火をおこし、木の実を砕き、野草をちぎり、キノコを裂く。

皇帝(す、すごいな……)

皇帝「──うむ、うまい!」モグモグ

女召使「ありがとうございます!」

皇帝「……しかし、お前にこんなサバイバル能力があるとは意外だったぞ」

皇帝「連れてきて正解だった」

女召使「あたしが住んでた村は貧しかったですから」

女召使「あ、でも、先代様や陛下のおかげでだいぶ豊かになったんですよ!」

皇帝「……ありがとう」

皇帝「お前のいうとおり、この国にはまだまだ貧しい地方がある」

皇帝「地方都市もそうだが、俺が行ったことすらない土地も多い」

皇帝「こうやって馬でも飛ばさねば、通行すらままならんからな」

皇帝「今回の反乱も、きっとそういうところが起因しているはずだ」

皇帝「できれば平和的に解決したいものだが……」

女召使「陛下……」

皇帝「おやすみ」

女召使「おやすみなさい!」

皇帝(草で作った布団か……。こういうのも新鮮だな)ガサ…

女召使「すぅ……すぅ……」

皇帝(可愛い寝顔をしてるな……)

皇帝(コイツ、こんなに可愛かったのか……)

皇帝(──っていかんいかん!)

皇帝「ぐぅ……」



……

………

先代皇帝「どうじゃ、息子は」

側近「非常に優秀で、次々に知識を吸収していきますよ」

側近「ただ……皇后様が亡くなられてから、精神的に塞いでいるようで……」

側近「特に女性には心を開かなくなってしまい……」

先代皇帝「ふむぅ……」

先代皇帝「やむをえん部分もあるが、アイツはいずれ上に立つ身」

先代皇帝「このままではいかんな」

先代皇帝「そういえば、この前城で雇われたいといってた女の子がいたと聞いたが」

側近「はい」

先代皇帝「その子に、息子の世話係になってもらうというのはどうじゃ」

皇太子「なんだ、お前は?」ジロ…

少女召使「今日から太子の召使になりました」

少女召使「よろしくお願いします!」

皇太子「ふん」

皇太子(新しい召使が来たと思ったら、俺よりも子供じゃないか)

皇太子(父上はなにを考えてるんだ)

皇太子「いいか、俺は女が嫌いだ」

皇太子「なぜなら母上より、すばらしい女などいないからだ」

皇太子「徹底的にイジメ抜いてやるから、覚悟しろよ」ギロッ

少女召使「はいっ!」

皇太子(はいっ、って……アタマ大丈夫かコイツ)

………

……



皇帝「……ん」

皇帝(朝か……)

皇帝(ずいぶんと懐かしい夢を見たな)

女召使「むにゃ……」ゴロン

皇帝「オイ、起きろ。討伐軍に追いつかれてしまう」ユサユサ

女召使「は、はい!」

女召使「うわっ、よだれが! す、すみません!」ジュル…

皇帝「いや、お前はそれでいいんだ」

女召使「へ?」

皇帝「なんでもない」

その後も皇帝は全速力で馬を走らせ、出発から三日後──

パカラッ パカラッ

皇帝「どうどう」

皇帝「この辺は、まったく道が整備されていないな」

皇帝「城下と地方都市を行き来する人が少ないのも無理はない」

皇帝「しかしこの分なら、今日中にはたどり着けそうだ」

女召使「着いたらどうします?」

皇帝「一般人を装って、役所に向かう」

皇帝「いったい地方都市でなにが起きているのか、たしかめねばならん」

昼になり、二人はようやく地方都市にたどり着いた。

<地方都市>

皇帝「なんだこれは……」

女召使「なんというか……静かな町ですね」

皇帝(……活気がまるでない)

皇帝(まだ日も高いというのに、どこを見ても暗く沈んでいる)

皇帝(本当にここは城下町と同じ国なのか……!?)

皇帝(しかし、報告が滞っていたとはいえ)

皇帝(最新の報告では地方都市の財政は順調だと聞いていた)

皇帝(税収も特に落ちているということはなかった)

皇帝(これはいったいどういうことだ……!?)

女召使「陛下……お顔が真っ青ですけど……大丈夫ですか?」

皇帝「え、ああ、大丈夫だ。ちょっと驚いただけだ」

皇帝「気を取り直して、役所に向かおう」

役所では、農民らしき男が見張りをしていた。

<役所>

女召使「あのぉ~」

農民「なんだ、おめえたちは!?」

皇帝「皇帝だ」

農民「皇帝!?」

女召使「陛下!」ボソッ

皇帝「い、いや……童貞だ」

農民「なんだ童貞だべか、ビックリしただよ」

皇帝「ここに地方都市の住民が立てこもっていると聞いてな」

皇帝「俺たちも協力したいと思い、やってきたんだ」

農民「そりゃあ、ありがたいことだ」

農民「どうぞ入ってくれい」

役所の中へ案内される二人。

ワイワイガヤガヤ……

女僧侶「どうぞ、こちらですわ」

皇帝(おお、やはり女がいた! 童貞喪失も夢ではなくなってきたな!)

皇帝(……というか)チラッ

皇帝(反乱軍と聞いてたから多少は身構えていたのだが)

皇帝(軍というか、本当にそこらの住民が集まっただけって感じだな)

リーダー「ボクが地方都市住民のリーダーだ」

リーダー「アンタは国中を旅している童貞とのことだが……」

リーダー「なんのためにここにやってきたんだ?」

皇帝「一童貞として、今回の反乱に興味があってな」

リーダー「反乱? なんのことだ?」

皇帝「ここの行政官が、すでに皇帝に報告している」

皇帝「地方都市の住民が結集して、帝国に対して反乱を起こしたと」

リーダー「な、なんだって!?」

ザワザワ……

リーダー「本当なのか、それは!?」

皇帝「ああ、まちがいない」

皇帝(俺が皇帝だしな)

リーダー「ボクらが反乱軍だと!?」

リーダー「くそっ、なんてことだ!」

女商人「まんまとやられたわね」

女商人「あの行政官に……!」

皇帝(おお、またもや女!)

皇帝「いったいなにがあったのか説明してくれないか?」

リーダー「童貞に話したところで、今さらどうにもならないが……」

リーダー「いいだろう、話してやろう」

リーダー「この地方都市は交通の便が悪く、別段面白いもんがあるワケじゃない」

リーダー「やってくる人間なんてほとんどいない」

女商人「だからこそ、前の皇帝はここに行政官を派遣したのよ」

女商人「手の届かないところをきちんと統治できるようにってことで」

農民「最初はよかったんだがよ……」

農民「だんだんと、アイツは王様みたいに振る舞うようになったんだべ」

女僧侶「苛烈な重税をかけ、地方都市の税として国に納めた後──」

女僧侶「残りを全て自分の懐に入れるようになったのですわ……」

リーダー「いわゆるピンハネだな」

リーダー「他にも陸の孤島なのをいいことに、やりたい放題だ」

リーダー「おかげで、ここ数年で地方都市はあっという間に干からびてしまった」

女召使「そ、そんな……」

皇帝「…………」

女召使「で、でもそんな不正、すぐバレちゃうんじゃ──」

リーダー「バレるわけがない」

リーダー「地方都市の住民はこの土地を出られないよう監視されていたし」

リーダー「ヤツの部下もみんな甘い汁を吸っていた」

リーダー「首都のヤツらも行政官を信頼しているのか、ここに来ることはなかった」

リーダー「我慢の限界に達したボクらは、役所に襲撃をかけたんだ」

リーダー「警備の兵はいるし、行政官も剣の使い手だから、用心して夜中にね」

リーダー「もちろん、役人を殺せば大問題だ。ハナから殺すつもりなどなかった」

リーダー「拘束して、帝国城に連れていくつもりだった」

リーダー「するとヤツは涙を流し──」

リーダー「“全てを皇帝に話してくるから許してくれ”“それまで役所を預ける”」

リーダー「──といった」

リーダー「ヤツが善政を敷いていた時期も知ってる我々は」

リーダー「その言葉を信用したんだが──」

皇帝「行政官はまんまとお前らを反乱軍にしたというワケだ」

二人きりになる皇帝と女召使。

女召使「なんだか……思ってたのとだいぶちがいますけど……」

女召使「どうしますか、陛下……?」

皇帝「決まってるだろう」

皇帝「住民と行政官の言い分がこうも食い違う以上、どちらかが嘘をついている」

皇帝「住民と行政官、両方を裁判の場に出して正式に裁く」

皇帝「……十中八九、嘘をついてるのは行政官の方だろうがな」

皇帝「来て正解だった」

皇帝(俺の目論み通り、どうやら平和的解決ができそうだ)

皇帝(そして解決したら正体を明かし、童貞を──)

すると──

農民「た、大変だべ!」

農民「帝国の軍隊が、こっちにやって来てるべ!」

リーダー「軍が!?」

女商人「私たちを反乱軍として叩き潰すつもりね……!」

女僧侶「そ、そんな……」

ガヤガヤ……

役所のそばには、帝国軍が迫っていた。

女召使「兵隊がいっぱい来てますね……」

女召使「でもへっちゃらですよね! なんたって、ここには陛下がいますから!」

皇帝「…………」

皇帝「いや、これはマズイかもしれんな」

女召使「え?」

行政官「遠慮は無用!」

行政官「役所に立てこもるヤツらは、皆殺しにするのです!」

行政官「後から本隊を率いてくる軍団長殿の手を煩わせてはなりません!」

新兵A「はいっ!」

新兵B「はいっ!」

新兵C「しかし、皇帝陛下の捜索はいかがいたしましょう?」

行政官「…………」

行政官「どうやら知らぬうちに、追い抜いてしまったようですね」

行政官「今は陛下のことは忘れ、反乱軍の駆除に集中するのです!」

行政官「君たちのような新兵に活躍の場を与えてやるのですから、存分に働きなさい!」

新兵C「はいっ!」

皇帝「軍を率いてるのは、軍団長じゃなく行政官だ」

皇帝「……それに新兵ばかりだ。多分、俺の顔なんか知らないだろう」

女召使「えっ!? ってことは──」

皇帝「行政官は、ここの住民もろとも俺を殺すつもりのようだ」

皇帝「殺した後は、それを住民の仕業だとなすりつければいい」

皇帝「そうなればもう、自分の不正が明るみに出ることはない」

女召使「ど、どうしましょう……!」オロオロ

女召使「こっちには戦えそうな人なんて、ほとんどいないのに……!」

皇帝(まもなく攻撃が始まるだろう)

皇帝(死んでたまるか……)

皇帝(──童貞のままで!)

リーダー(あの帝国軍のいきり立ちようから察するに)

リーダー(まちがいなくヤツらはボクたちを皆殺しにするつもりだ!)

リーダー(こんなことになるなんて……! どうすれば……! あああ……!)

皇帝「おい、リーダー」

リーダー「な、なんだ!?」

皇帝「帝国軍は到着したばかりで、攻撃開始までもう少し時間があるはず」

皇帝「今のうちに仲間に、窓や扉を障害物で塞ぐよう、指示してくれ」

皇帝「あとは大量の砂と、狩猟用の網を持ってこさせてくれ!」

リーダー「そんなことをして、どうなる!?」

皇帝「籠城する」

リーダー「籠城!? こっちは素人集団だ、勝負にならない!」

皇帝「向こうも新兵ばかりだ! 死にたくなければ、さっさとしろ!」

リーダー(通りすがりの童貞のくせして偉そうに……!)

リーダー(だが、なぜだろう……なんだか逆らえない雰囲気がある)

リーダー「わ、分かった……! やってみよう……!」

新兵A「い、いよいよか……!」ドキドキ

新兵B「オイ、あまり緊張するなよ! しくじるぞ!」ドキドキ

新兵A「お前こそ!」ドキドキ

行政官(経験を積ませるという名目で連れてきたが、やはり頼りないですね)

行政官(しかし、反乱軍はろくな武器も持たない素人の寄せ集め)

行政官(……十分皆殺しにできる)

行政官(もうあの中にいるかもしれない、皇帝ごとね!)

行政官「よし、準備のできた者から入り口から突入するのです!」

行政官「一人も逃がしてはなりませんよ!」

ガンッ! ガンッ! ガンッ!

新兵A「このドア、ビクともしないぞ!」

新兵B「こっちの窓もだ!」

新兵C「出入り口が全て封鎖されてる!」

行政官「…………」

行政官(籠城か……! てっきり逃げまどうものとばかり……)

行政官(私をあっさり逃したヤツらに、こんな知恵や度胸があるとも思えませんね)

行政官(やはり、中には皇帝がいる!)

行政官(マズイ……後続の軍団長の部隊が到着するまでに)

行政官(なんとしても皇帝を殺さなければ……!)

ガンッ! ガンッ! ガンッ!

リーダー「ふぅ、間一髪だったな」

皇帝「この役所は頑丈だ。ヤツらの装備では壁を破壊することはできない」

皇帝「しばらくは持つだろう」

女商人「でも、私らが袋のネズミってことにはかわりないわよ!」

農民「んだんだ」

皇帝「任せろ。俺は攻めるのは苦手だが、守りには長けている」

リーダー(さすが童貞)

女召使(陛下……かっこいいです!)

攻められた事の無い城と、攻めた事のない兵士云々…。

行政官「ばかな・・この私が・・二度も・・
きさ・・ま・・はいったいな・・にもの・・

ウボァー」

>>152
つまり今は
敵が童貞
皇帝が処女か・・・


こ れ は 勝 つ る

ぺえすをあげなさい

ガンッ! ガンッ! ガンッ!

新兵A「かなり封鎖が固いぞ!」

新兵B「攻城戦の演習はまだ受けてないしなあ……」

新兵C「これは軍団長の部隊を待った方がいいんじゃ……」

行政官(なにをグズグズしている……!)

行政官「一点突破です!」

行政官「どこか封鎖が脆いところを見つけて、そこに全員で突撃するのです!」

新兵A「な、なるほど!」

新兵B「よし、手分けして弱い部分を見つけよう!」

新兵C「おう!」

皇帝「全部の入り口を完璧に封鎖するのは無理だ」

皇帝「色んな入り口からなだれ込まれるのが一番マズイ」

皇帝「だからここはあえて──」

皇帝「侵入させる」

皇帝「一ヶ所手薄な入り口を作っておけば、帝国軍はそこから入ってくるハズだ」



ガンッ! ガンッ! ガンッ!

農民「よぉ~し、こっちから開けてやるべ!」

新兵A「うわっ、急に開いた!? お、押すな──!」

ドドドドドッ!

>>160
策士童貞

やだ、かっこいい///
私も童貞になりたい///

なるほど
完璧と見せかけて少しの弱みを見せれば女が寄ってくるのか
さすが皇帝

ええねん
わいが支援したる

皇帝「今だ! 砂と網をかぶせろ!」

バサァッ!

「うわぁっ!」 「ひぃ~っ!」 「お、押すなぁっ!」

大量の砂と、手製の網で、帝国軍の一団が一網打尽となった。

新兵B「行政官様、先に入った20名が捕らわれました!」

行政官「くっ……なにをやってるのです!」

新兵B「や、やはり軍団長の本隊を待つべき──」

ズバッ!

新兵B「ぐわあああぁっ! いだいぃぃぃぃぃっ!」

行政官「…………」イライラ

行政官「キサマら! 死んでも中になだれ込め!」

行政官「私に斬られたくなければな!」

ここまできたら
行政官「え~い童貞とて構わん!斬れい!斬り捨てい!」となるわね

死に物狂いになる新兵たち。

農民「な、なんだべ!?」

女商人「出鼻をくじいたと思ったのに!」

女僧侶「さっきより、すごい勢いですわよ!」

リーダー「みんな、用意した砂や網で応戦するんだ!」

ワアァァァァァ……!

皇帝(行政官め!)

皇帝「リーダー、ここは任せる! なんとか死守してくれ!」

リーダー「童貞、アンタはどこへ行くんだ!?」

皇帝「別の出入口から外へ出る!」

皇帝「帝国軍の後ろにいる、行政官をなんとかする!」ダッ

リーダー「わ、分かった! 童貞、アンタに全て託す!」

女召使(陛下……!)

ワアァァァァァ……!

行政官(よしよし、あれならば時間の問題だ)

行政官(反乱軍と皇帝を殺せば、私の不正はどうにでもごまかせる!)

行政官(皇帝は反乱軍に殺されたことにすればいい!)

だが──

ザシャッ!

行政官「だ、だれだ!?」

皇帝「行政官……」

行政官「こ、皇帝陛下!? なぜこんなところに!?」

皇帝「俺はもう、全てを知っている」

皇帝「あの兵たちは俺の命令は聞くまい。すぐに攻撃をやめさせろ」

1vs1が始まるわけですね
わかります

行政官はあの地獄から帰ってきたお方なんだぞ!


のばら

あと五分で来なかったら寝る

行政官「こやつが皇帝陛下という証拠はどこにもない!反乱軍の一味だ!者共、であえ!であえ!」

行政官「全てを知ってしまわれた、のですか……」

行政官「私が地方都市で重税をかけて、私腹を肥やしていたことも」

行政官「哀れな住民を反乱軍に仕立てたことも」

行政官「挙げ句、それを隠ぺいするために陛下のお命を奪おうとしたことも──」

皇帝「……認めるのだな?」

行政官「ふふ、ふふふ……」

行政官「それらは全て嘘なのでございますよ」

皇帝「!」

行政官「今役所に立てこもっているのは反乱軍であり、あなたは偽皇帝です」

行政官「なぜなら本物の皇帝は反乱軍の手で死んでいるのですから……」

行政官「私はこの剣で、偽皇帝を成敗しなければなりません」ジャキッ

皇帝「この地方都市の惨状は、全て俺の責任だ」

皇帝「生きて責任を取るためにも、この剣で我が身を守らねばなるまい!」チャキッ

計算?



・・・?

       __                                        _,,
      _.ノ, `ヽ                 r、          ,.-、    r、, -'"rァ `)
   ∧,.=、l /      r,       _    く ヽ {,_ヽ_,..、    /`) ,ノ ,r'、  r' ノ,コ ヾー'
   {. r='_ ,'_     /r'.,イ,}  .ノ.〉    l. 〔_,.- '  ,r'  ノヽ'! l'ニ'、.V ノ  `'^_=' r,`ヽ
    ヽ ー' r'   r_´ `ノil ;_/, '   ヾ´ /.ヽ  '‐、   ヽ-1 l_,ヽ`' `,ン   ヽ ニ r /
   く..ク ''_ r’   / ,〈 ヽ,´,r'  ,,   ,>,冫/.ノ } r'   / .iゝ-,ヾ l´     _ーァ ,.. =ヽ
  (`~_ ,. ヽ>\  ` ヽ' .〈_rヽ..ノ }  く_r' .,r',ハヽ/./  く_,r1.lヽ ..コ |.  r‐'´-┐|
  ` /,rァ, {(<ヽ`ヽ、     `ー'    ノ_/  ヽノ      l_} ` ヽ..」  `'´ .、l l
  `ー'ゝ' J `'゙ `~´                                 ヽ'

ギィンッ!

行政官が皇帝めがけて斬りかかる。

キィンッ!

ガキンッ!

キンッ!

行政官(なんという堅い守りだ!)

皇帝(俺の剣は攻めはヘタクソだが、守りは一級品と評された)

皇帝(このままじっくり守って、チャンスが来るのを待つ!)

  (⌒ヾ三>ー、
 // ̄ ̄  )彡\

`/ミ|    |弐三ヽ
f三|    |三|三|
|ニノ二ヽ /二\ニ|三|

|ニ|<●y /●> E|三|
|ニ|  ̄/  ̄ ̄ L|三|
 ハ  L__へ  ノLノ
 | ___  ∧

 |      / \
  \____/  /
  ∧  /  /

 /| ヽ/  /
/ ヽ/  /

キィンッ! ギンッ! ガギッ!

行政官(くそぉぉぉっ!)

行政官(どう斬りかかっても、全てガードされてしまう!)

行政官(なんとかして、皇帝から攻撃させなければ──)

行政官(攻撃させる……怒らせる……挑発……)

行政官(ウワサによると皇帝は──)

行政官「く、くくく……くくっ」

行政官「すばらしい守りですね」

行政官「さすがに未だに童貞を守っておられるだけのことはあります」

皇帝(うぐっ……)

皇帝「ふ、ふん、それがどうし──」

行政官「なんでもマザコンが過ぎて、女に興味が持てなくなっていたとか」

行政官「なんなら墓でも掘り返して、母親で童貞を捨てたらどうです?」

皇帝「きっ……」

ゲスい

ゲ(…-チ)ス

童貞よ、怒りを感じるぞ。
ダークサイドがお前を呼んでいるのだ!

♪ ∧,_∧      ゲーチス♪(ッパーン)ゲーチス♪(ッパーン)ゲーチス♪(ッパーン)ゲーチス♪(ドュルルル)
   (´・ω・`) ))     アーーアーー(デケデケドンwwww) アーーアーアーアーアーー(デケデケドンwwww)
 (( ( つ ヽ、   ♪ アーーアーー(デケデケドンwwww) アーーーア↑ーーー(デンデーンwwww)
   〉 とノ )))     デンドン♪デンドン♪デンドン♪デンドッドッドン♪ デンドンデンドドッドッドッドドドン♪
  (__ノ^(_)      デーッデーデケデケデーンデケデケデーンデケデケデーン♪
    ∧,_∧ ♪  ゲェェェェェェェチス♪(デケデケデケドーンww)デケデケデーンww(ドンドコドンドコドンドコドコドン)
  (( (    )   ゲェェェェェェェェチス♪ドンドコドンドコドンドコドン♪ポンポコピロピロポンポコピロピロポンポコピロピロピロピロピロピロ
♪   /    ) )) デケデケドーンww デケデケドゥーンwwデケデケデンデン(グワァーン)デケデケデンデンwwデケデケデンデンwwデンデケデンデンww
 (( (  (  〈  ポンポコピロピロポンポコピロピロポンポコピロピロピロピロピッロポンポコピロリポンポコピロピロティロリロリロリ
    (_)^ヽ__) ゲェェェチス♪ ゲェェェチス♪(ドンwwドンww) ゲェェェチス♪(ドンwwドンww) ゲェェェェェチス♪(ドンwwドンww)

皇帝「キサマァァァァァッ!!!」

皇帝が怒りの剣を振るう、が──

スカッ

皇帝「あっ」

行政官「さすが童貞、攻めはヘタのようで」

皇帝「し、しまっ──」

ザシュッ!

行政官「む!?」

皇帝「あ……っ!」

女召使ですね
わかります

童貞ディフェンスの 法則が 乱れる!
 


挑発されたぐらいで・・・(意味深)

ドサッ……

女召使「へ、へいか……」

皇帝「お前、どうしてここに!?」

女召使「あたしは……しごとは、へいかの、おせわを……」

女召使「すること、ですから……」ガクッ

皇帝「お、俺なんかをかばって……」

行政官「ちいっ……だが次の一撃で──」ジャキッ

皇帝「…………」

行政官「!」ビクッ

俺「おれの・・・仕事は・・・>>1をしえ・・んすること・・ですから・・・」

行政官が「童貞とはいったい・・・ウゴゴゴゴ」まで眠らない!

割とマジで寝る
朝まであったらいいなぁ

皇太子「なあ……こんなイビられて、イヤにならないのか?」

少女召使「全然! あたしの仕事は陛下のお世話をすることですから!」

皇太子「やっぱりどこかおかしいよ、お前」



皇太子「母上ほどじゃないが……お前も少しはいい女だな」

少女召使「今なにかいいました?」

皇太子「い、いや……なんでもない」



皇太子「……俺は皇帝になんかなりたくないっ!」

少女召使「じゃあ、あたしが太子に変装しますから、そのスキに城から逃げて下さい!」

皇太子「え!? いやいやいや、そんなことできるワケないだろ! 冗談だ!」

少女召使「冗談だったんですか……でも」

少女召使「もし本当に逃げたくなったら、あたしはいつでも協力しますよ」

皇太子「…………」

皇帝(お前がいなければ……)

皇帝(俺は今でも女嫌いだっただろうし、皇帝であることを放棄していたかもしれない)

皇帝(……ありがとう)

皇帝(俺がしっかりしていれば──)

皇帝(行政官をここまでのさらばらせることもなかったし)

皇帝(住民たちを戦わせることもなかったし)

皇帝(お前をこんな目にあわせることもなかった……!)

皇帝が行政官を睨みつける。

行政官(怒っている、怒っている……好都合だ!)

行政官(さあ攻撃してこい! 次の一撃で決めてやる!)

皇帝「無礼者がっ!!!」

行政官「!?」ビクッ

皇帝「我は第10代帝国皇帝である!!!」

皇帝「この我に、刃を向けるとはなにごとか!!!」

行政官「は……はうっ!」

行政官(な、なんだこの迫力は……)ガタガタ

行政官(ここで皇帝を斬らねば私は破滅する)

行政官(破滅すると分かっているのに──)

行政官(コイツ、いやこの方を斬る? で、できるワケがない……)ガタガタ

行政官(刃を向けることすら……でき、ない……!)

行政官「ひ……」

行政官「ひぃぃぃぃぃっ!」ガバッ

股間からの一撃クルカ!!?

ガバ(マン)ッ

皇帝の声は、戦っている者たちにも届いた。

新兵A「俺は皇帝の顔も声も知らないが……分かる」

新兵B「うぅっ……お、俺もだ……!」

新兵C「あのお方は、皇帝陛下だ!」

農民「あの人は皇帝だべ! たとえ皇帝じゃなくても皇帝だべ!」

女商人「うん……間違いないわよ」

女僧侶「驚きですわ……」

リーダー(とても信じられないが──)

リーダー(あれほどの迫力を見せつけられては、信じざるを得ないな)

リーダー(童貞は……皇帝だった!)

………

……



皇帝(あれからすぐ軍団長の後続部隊が駆けつけ──)

皇帝(地方都市の惨状は全て明るみに出た)

皇帝(行政官は部下共々捕縛され、裁判にかけられている)

皇帝(そして俺は──)

皇帝(二度とこういうことが起きぬよう、交通網を発達させることを決意した)

皇帝(この帝国内から、孤立した町や村をなくすために……)

俺が…俺たちが童貞だ

皇帝(あと……あの事件以来、俺はモテるようになった)

皇帝(モテ期到来である)

皇帝(人生に一度あるとかないとかいわれるモテ期が、ついにやって来たのだ)

皇帝(俺は積極的に各地方を視察するようになったが)

皇帝(行く先々で、女性から声援を送られる)

皇帝(悪い気はしない)

皇帝(むしろいい気分だ)

皇帝(童帝まっしぐらだった俺が、ついにスポットライトが浴びる時がきたのだ)

皇帝(だが、立場が変わって分かることもある)

皇帝め・・・
おれたちを裏切りやがったか

童貞保護条例はよ

裏切り者は死刑
反逆を起こすとき

<帝国城>

側近「いよいよ今日ですね」

先代「うむ」

側近「皇帝陛下は本当にご立派になられました」

側近「あの事件で、多くのものを得たようです」

先代「そうだな、アイツにならばこの国を任せられる」

先代「じゃが、失ったものもある」

先代「いや……今日これから失うというべきか……」

>>260
チェリー

きさまら はんらんぐんだな!!
俺も混ぜろください

童貞軍が反乱起こすぞ

魔法使いへの道を
諦めるのか童帝

<皇帝の部屋>

皇帝「──職場復帰、おめでとう」

皇帝「すでに見舞いの時に伝えたが……」

皇帝「今日ここで俺の童貞を奪って欲しい」

皇帝「お前を傷つけられ、モテ期を経て、俺はようやく気づいた」

皇帝「俺はお前をずっと抱きたかったのだ」

女召使「陛下……」

女召使「あ、あたしなんかで……よかったら……」

女召使「よろしく、お願い……します……」カァァ…

皇帝「よ、よし……」ゴクッ

皇帝(あ、焦るな……俺は皇帝だ)ドクンドクン

皇帝(あの行政官たちを威厳だけで屈服させたのだ、自信を持て!)ドクンドクン

命・・夢・・童貞・・・
どこからきて・・どこへいく・・・?


そんなものは!!この私が全部破壊する!!!

俺の童貞か…?
欲しけりゃくれてやるぜ

>>274
アーッ!





アーーーーーーーーーーーッ!

ゴ、ゴクリ・・・

アッー!な

>>281
スマソッー!

皇帝(まずは男らしく押し倒す!)ガバッ

女召使「あっ……」ドサッ

皇帝(次は……服を脱がさねば)

皇帝(胸のボタンを……)ムギュッ

女召使「痛っ!」

皇帝「げっ!」

女召使「へ、陛下……もっと優しくして、ね……?」

皇帝「ご、ごめんっ!」ゴクッ

皇帝「えぇ~と、えぇ~と……」キョドキョド

皇帝(い、いかん! 早くも、どうすればいいのか分からなくなった……!)

女召使「ふふ、今夜は長くなりそうですね……」

皇帝「そ、そうですね……」ゴクッ

………

……

300年後──

歴史書にはこう記されている。



【10代皇帝(大陸暦619~702 在位:636~702)】

9代皇帝“慈帝”の長子。

若くして帝位を継いだ後、自身の世話係だった女性を皇后に迎える。

政治、産業、外交とあらゆる場面で優れた手腕を発揮した。

特に地方官吏の腐敗を目の当たりにした経験から、国内の交通網の発達に力を注いだ。

この時代、いくつもの道路が整備され、帝国領内が一つになるきっかけを作った。

まさしく国が大きく発展する道を築き上げたといっても過言ではない。

彼がいなければ、今日の帝国の隆盛はなかったかもしれない。

死後、10代皇帝はその功績を称えられ“道帝”の名を冠せられた。





<おわり>



最後までどうていか

結局どうていと呼ばれ続けるのは何かしらの運命か乙

今頃あの世で結局どうていって呼ぶんかい!って憤慨してそうだなww

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