野原しんのすけ(15)「ねえヘタレのオジさん、言葉のままに歪めてみれば~?」 (986)

どうか立ちますように

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384085516

二作目です
前スレ
野原しんのすけ(15)「ベランダに女の子が引っかかってたゾ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378302253

・クレしん未来パロ×とあるです
・原作再構成と言う名の原作ブレイク
・台本形式の時とそうでない時があります
・カプはしんあいと上インの予定

以上がよろしければお付き合いください

前スレのおさらい

野原しんのすけ
今年の春から学園都市にやって来た『原石』で長点上機学園の1年生
学園都市第8位の超能力者でありながら
第七学区の武装集団のリーダーである駒場利徳に出会い『本物のスキルアウト』を目指すようになる

超能力『法則無視』【トルネードコール】
物理法則に全く従わない謎のエネルギーを生産する能力
このエネルギーの影響下にある物質、現象も物理法則に従わなくなる為
実質的には『あらゆる物理法則を無視する能力』であり
将来的には『あらゆる法則を無視する能力』になりうるが
しんのすけが使いこなせていない事と多くの研究者が彼の能力を理解出来ない為に第8位という序列である ※元ネタは劇場版 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁

スゲーナスゴイデスのトランプ・レプリカ
使用者の正義の心に応じてあらゆる願いを叶えるトランプ。
使うたびに減っていく。残り44枚+JOKER
※元ネタは劇場版 ヘンダ―ランドの大冒険

タイムパトロールユニフォームジャージSP
キーワードに反応して3回だけ変身する朱色のジャージ
また、襟を立てる事でその場に最適の服装に変わる機能を持つ
残り変身回数 2回   ※元ネタは劇場版 雲黒斎の野望

護り刀・第七沈々丸
斬るべき敵に対して抜き放つと3メートルを超す戦太刀になる懐剣
※元ネタは同上

酢乙女あい
長点上機学園1年生。しんのすけの幼馴染の少女
世界一大きな財閥グループの令嬢であり、幼い頃から英才教育を受けた
そのためあらゆる学問、武道を一通り身につけている
しんのすけの事を十年間想い続け、最近はしんのすけも気を許してきた

強能力『女帝君臨』【エンプレス】
周囲の人間が酢乙女あいに対して若干好意的になるという精神感応系の能力
本人いわく『かろうじて異能力では無い程度』の『荒事には向かない』能力

ボー
長点上機学園1年生。しんのすけの幼馴染の少年
かつて別の時間軸での未来の自分が造ったロボを再現するため
駆動鎧の技術を学びに学園都市に来た

低能力『自在化鞭』【パンゴリンズタン】
水塊を『一つだけ』『触れ続けている間』『ある程度塩分を含んだ液体に限り』思いのままに操る水流操作系の能力
それ以外の能力制限がほぼ無いため本来は大能力級のはずだが低能力とされているのは
本人は自分を『能力者』では無く『開発者』だと考え
能力判定時は早く終わらせる事を前提に受けているため

野筆ヨハネ(自動書記)
しんのすけが『ダイアナお銀』と『トッペマ・マペット』の記憶をヒントに
魔法で構築召喚した機械人形に
インデックスのから分離した『自動書記』を再封印した事で生まれたアンドロイド
外見は15歳くらいの和服美人
通称ペンデックス。自称『禁書目録』の『管理者』

前スレに予告と誘導貼ってきます

今回も投下した後誰か書き込まないと書き込めない?

立ちました
以下予告と誘導です

>>7
自分で携帯から支援する事にしました
>>8
早速誤爆してるしorz

本編は明日の夜九時に投下します

お待たせしました。これから投下します

第1話 『食い倒れ』【フードファイト】

夏休み某日 第七学区

上条「本当にいいのか?しんのすけ、参考書もらっても」

しんのすけ「うん、長点って超能力者は授業も宿題も筆記試験も無いから、オラが持ってても使わないしね」

上条「えっ?なんですかその羨ましい環境は」

自動書記「しかし、しんのすけが通う長点上機学園というのは、学園都市の高等学校で最高位なのでは?その参考書も高レベルと思われますが」

上条「あれ?もしかして上条さん居候からバカにされてる?まあ否定できませんけどね。ちくせう」

しんのすけ「あー大丈夫、元々オラは外の高校に行く予定だったから。この参考書は普通のそこそこの高校レベルだゾ」

上条「ふう、偶然本屋でしんのすけに会って本当に良かったよ」

インデックス「ありがとうなんだよしんのすけ。やったねとうま、三六〇〇円も浮いたんだよ」

自動書記「良かったですね禁書目録、今夜はごちそうですね」

上条「浮いた分が一食で消えようとしている!?いやいやツインデックスさん!?生活費とは決して食費だけでは無いのですことよ!?」

しんのすけ「あ、そうだったぺンちゃん。ほい頼まれてた例の物」

自動書記「ありがとうございます。しんのすけ」

上条「ん?しんのすけに何を頼んでたんだ?ペンデックス」
     フードファイト
自動書記「『大食闘技』の開催されている学園都市中の飲食店等のリストです。なお禁書目録ならば、出禁になるまでにリストの全店舗を3巡できると仮定して、36万円が得られる計算になります」

インデックス「これでとうまに家賃が払えるかも」

自動書記「挑戦料や電車賃を差し引いた全額を納める予定です。なお、そこから月二万円ほど私達に分けて頂ければ幸いです」

上条「お前らっー!」ガバッ

インデックス「きゃっ!?」

自動書記「どうかしましたか、上条当麻」

しんのすけ「おおっ?上条君、感動のあまりハグ?」

?「ひぃぃ!?カミやんが女の子にセクハラしとるー!?」

しんのすけ「上条君の知り合い?」

青髪ピアス「知り合いなんて温いもんやないでー。ボクとカミやんはここに居ないつっちーとで三人合わせて『デルタフォース』ってクラスでは呼ばれとる親友同士なんやでー!?」

インデックス「とうま、学校でそんな変なあだ名つけられてたの?」

青髪ピアス「でカミやん、マジメな話その子達誰?見たところダブルデート中に見えるんやけど、カミやんにそんな『友達に彼女の友達を紹介してもらう』なんてラッキーイベントありえへんし」

しんのすけ「イギリスから、こっちへ来たばかりの二人にこの街を案内中ってとこだゾ」

上条「そうそう(しんのすけナイス)」

インデックス「え?そうじゃなモガ(なにするのペンデックス!?口を塞がないでほしいんだよ)」モゴモゴ

自動書記「ちなみに、私と彼女のどちらがしんのすけの恋人に見えましたか?(上条当麻の自宅は男子学生寮です。同居が第三者に知られると追い出されてしまいます)」ヒソヒソ

インデックス「まあ本当のしんのすけの彼女はここには居ない別の人なんだけど(了解なんだよ)」コクコク

青髪ピアス「そうなん?てっきり浴衣の子はそっちの男の子の連れかと思ったんやけど。そういえば君は誰なん?」

しんのすけ「オラ、野原しんのすけ。上条君とは原石同士仲良くなりまして」

青髪ピアス「へえ、『原石』なん?珍しいなぁ」

自動書記「上条当麻、このリストにあるアイス店へ早く連れて行って下さい」

上条「と、そうだった。じゃあな青髪また学校で会おうぜ」

青髪ピアス「ああほなさいなら(くっ本当ならボクもついていきたい!!ついていきたいけども、強引に同行して女の子達の好感度を下げたら本末転倒。ここは再会できる可能性にかけてグッとがまんや!!」

自動書記「下心がダダ漏れになりこちらへ聞こえています。なお、再会する可能性はそれなりに高いと思われます」

上条「……ふう、あいつもついてくるとか言いださなくて良かったぜ」

インデックス「とうまの耳ってどうなってるのかな?一度診て貰った方がいいかも」

もう>>6じゃなくていいんじゃない?

しんのすけ「さっきの青髪ピアスってどういう人なの?」

上条「悪い奴じゃ無いんだけどな。何でもギャルゲーに例えたり、やたらテンション高かったりする。あと守備範囲のやたら広いロリコンだ」

しんのすけ「う~ん、10歳の実妹を持つオラとしてはロリコンに対する危機感が無いわけじゃないけど、昨今のロリコン=犯罪者って風潮は嫌いなんだよね(駒場さん完全アウトになっちゃうし)」

上条「ああ、そういやスキルアウトだもんな、やっぱりそういう誤解や偏見には良い感情持ってないよな。まあ青髪も犯罪者にはならないだろうし、仲良くしてやってくれよ」

しんのすけ「うん解った。それはそうとインちゃんとペンちゃん熱くない?」

インデックス「この服は『主の御加護』を視覚化したものだから、私はちっとも暑いとも脱ぎたいとも思って無いんだよ」

上条「いやシスターさんが嘘をつけないのはよく解ったから」

自動書記「着物から浴衣に衣替えした私に隙はありません。なお、この浴衣代は禁書目録にだしてもらいました。そのため以前の『大食闘技』の賞金はほぼ0です」

上条「それで、まずはアイス屋だっけ?」

自動書記「はい、現在地から、最も近い店舗です」

しんのすけ「リストを渡した後で言うのもアレだけど、宗教的に食べられない物とかは大丈夫?」

インデックス「うっ……確かに私達修道女は『嗜好品』のたぐいを口にする事は禁止されているけど。『食材』は全て主がお与え下さった『恵み』なんだから、残したりしたらいけないんだよ」

上条「アイスってこの街の税金の掛け方だと『嗜好品』扱いだけど、イギリス清教だと普通に『食材』扱いなのか?」

自動書記「いえ、イギリス清教でもアイスやチョコレートは『嗜好品』とされます、なお、果物や紅茶等も修行中の身では口にしてはならない事になっています」

インデックス「ペンデックス!?黙っていれば『嘘をついた』事にはならなかったのに!?」

自動書記「いけません禁書目録。『誤解を解く努力をしない』のは『嘘をつく』のとおなじように不誠実な事です」

インデックス「ハッ!そうだね私が間違ってたんだよ」

上条「……なんかペンデックスがインデックスのお姉さんみたいだな」

しんのすけ「と言うより、しっかり者の妹に叱られる姉ってかんじだゾ」

インデックス「で、でもいいの?貴女もアイスが食べられないんだよ?」

自動書記「いえ、私の職業は『図書館司書』であって修道女では無いので、アイスどころかチョコレートボンボンですら何の問題もなく食べられますが」

インデックス「魂の双子に裏切られた!?」

自動書記「落ち着きなさい、禁書目録。そもそも貴女もアイスを食べて良いのです」

インデックス「えっ!?どういう事?」
        ネセサリウス
自動書記「まず『必要悪の教会』とは世界中の『異教』の情報が集まる部署です。そして私達は『魔道図書図書館』なのです」

インデックス「うん?」

自動書記「『食文化』とは宗教と同じくその地によって様々です。そして『料理』や『食材』に魔術的な意味を隠している物も少なくありません」

インデックス「確かにそういう物は、私の知識の中にもたくさんあるかも」

自動書記「ならば、『魔道図書図書館』として、私達には『世界中のありとあらゆる料理を食べる』という『義務』があるのです!」

インデックス「……!!目から鱗が落ちた気分なんだよ!」

自動書記「そうです。私達は『今日が日曜日だからと言って井戸に落ちた馬を見殺しにする大人』には決してなってはならないのです」

上条「……なんか、会話が微妙にかみ合っていないような?」

しんのすけ「二人の間ではしっかり通じてるんじゃない?」

上条「で、ツインデックスさん達のお話はまとまったのでせうか?」

インデックス「うん、私はアイスを食べられるんだよ!」

しんのすけ「お、見えてきたゾ」

店のドアの張り紙
『お客様各位
まことに申し訳ありませんが、店舗改装のため、しばらく休業させていただきます』

インデックス「……」orz

自動書記「新装開店祝いで『大食闘技』を行うのでしょうか?もしくは『大食闘技』のために改装する必要があるのか。元気をだしてください、禁書目録。後者ならば、とても盛大なはずです。楽しみが延びたと思いましょう」

インデックス「ううっお口はすっかりアイスモードだったのに」

しんのすけ「じゃあモック行こうか。すぐ近くにあるから」

上条「『大食闘技』はやってないだろうけどな、炎天下だし冷たい食物で暑気払いってのは賛成だ」

インデックス「モックって所にもアイスあるの?」

しんのすけ「あるゾ。シャーベットとアイスクリームの中間みたいな飲物とか、ソフトクリームに砕いたクッキー入れてかき混ぜたやつとか」

インデックス「なにしてるの?早くいくんだよ」グイグイ

上条「現金な奴だな」

自動書記「現金といえば、持ち合わせは大丈夫ですか?上条当麻。なお、私と禁書目録は無一文です」

上条「ああ、もともと本屋で参考書買う予定だったからな。いつもより多く持って来たんだ、今日の上条さんはお金持ちですよ」ハッハッハ

ファーストフード店 店内カウンター前

インデックス「シェイクとフルーリー全種。あと……」

上条「ストップインデックス、流石にそこまでのお金持ちじゃ無い」

自動書記「禁書目録?アナタは少し自重と遠慮というモノをオ・ボ・エ・マ・ショ・ウ・ネー」ギリギリギリギリ

インデックス「痛いよペンデックス、何で頬を引っ張るのかな!?」ブニョーン

店員「あの、お客様?」

しんのすけ「シェイクのバニラ、チョコ、苺を二つずつの計六つください」

店員「か、かしこまりました」

数分後

しんのすけ「ふう、相席だけど座れて良かったね」

上条「あの~しんのすけさん?上条さんには机に巫女さんが突っ伏してるようにみえるんですが」

巫女服の少女「……」

自動書記「御覧なさい禁書目録。これが実力以上に挑戦したフードファイターの末路です」

インデックス「お腹が苦しくて動けなくなるんだね」

上条「いや、何故ツインデックスさん達は一番にそんな理由が思い浮かぶのでせうか?」

しんのすけ「巫女服のお嬢ちゃん。大丈夫?何処か痛いの?」

巫女服の少女「……く」

しんのすけ「く?苦しいの?」

巫女服の少女「……食い倒れた」

しんのすけ「……」

上条「……」

インデックス「……」

自動書記「……」ドヤァ

今夜はここまでです
次回は水曜の夜九時投下予定です

>>21
素で忘れてました

>>6改め>>1乙!

しんちゃんサイドから予告無しで誰が来るのかが楽しみで仕方ない。

巫女服で食い倒れ……クレしんにそんなキャラ居たかな?

これから投下します
>>31
あと数人学園都市に移り住んでます
>>36
少なくともコミック版のとあるには居ませんね。アニメオリジナルのキャラでしょうか?(スットボケ

第2話 『姫神秋沙』【ヒメガミアイサ】

上条「……えーと、何故に食い倒れ?」

巫女服の少女「……一個五十八円のハンバーガー。お徳用のクーポン券がたくさんあったから」

上条「うん」

巫女服の少女「とりあえず三○個ほど頼んでみたり」

自動書記「クーポン券でどの位安くなるかは知りませんが、お財布は大丈夫ですか?」

上条「いや、お財布よりお腹の心配をしろよ」

しんのすけ「で、巫女服のお嬢ちゃんは結局お腹もお財布も大丈夫じゃ無かったって事か」

巫女服の少女「どうして。お財布もだと」

しんのすけ「だって食べきれないほど頼んだだけなら持って帰ればいいのに。それをしないって事は帰りの電車賃の分もうっかりハンバーガーに使っちゃったんでしょ?」

巫女服の少女「正解。帰りの電車賃四百円。残金三百円」

しんのすけ「おういえー、学園都市の電車賃はお高いですからなー」

巫女服の少女「だから。やけ食い」

上条「いや、とりあえず三百円分電車に乗って、百円分は歩けばいいんじゃ?それかあと百円を誰かから借りるとかさ」

巫女服の少女「それは良い案」スッつ

上条「えーとっ?」ソノテハナニ?

巫女服の少女「百円」

上条「……」

しんのすけ「……上条君、オラが何とかしようか?」

上条「スマン、そうしてくれ」

しんのすけ「じゃあ巫女服のお嬢ちゃん。名前と住所を教えてくれる?」

巫女服の少女「ひょっとして。私が返さないと思ってる?」

しんのすけ「いや~百円ならあげても良いんだけどね。癖みたいなものだゾ、ツケの回収のバイトやってて。気を悪くしたなら謝るゾ」

巫女服の少女「別にかまわない。私の名前は『姫神秋沙』。三沢塾の辺りに住んでる」

しんのすけ「三沢塾か……お?」

インデックス「どうしたの?」

自動書記「……っ!囲まれています」

怪しい大人達「……」×10

上条「なっ、何時の間に!?」

姫神「心配ない」スッ

上条「あっおい」

姫神「あと百円」つ

怪しい大人「……」つ○

しんのすけ「知り合い?」

姫神「うん。塾の先生」

しんのすけ「そう、じゃあ……上条君!!その人達の頭を触って!」

上条「わっ解った!」ソゲブ

パキ―――ン

怪しい大人達「」バタッ

姫神「!?」

しんのすけ「やっぱり洗脳か何かされてたか。何回か『操られた人』を見た事があるけど、同じ目をしてたからおかしいと思ったんだゾ」

上条「それで俺に頭を触れって言ったのか」

自動書記「いつもながら、しんのすけの人生経験の豊富さには舌を巻く思いです。なお、彼等の洗脳は魔術によるものと思われます」

しんのすけ「事情を話してくれないかな?秋沙ちゃん」

姫神「貴方達。一体何者なの?」

しんのすけ「オラ達、二人共『原石』なの」

姫神「『原石』。貴方達も?」

上条「ということはお前も?」

姫神「私の事は放っておいてほしい。貴方達を巻き込むわけにはいかないし下手に騒ぎが大きくなるのもまずい」

しんのすけ「じゃあ一つだけ教えて」

姫神「何?」

しんのすけ「秋沙ちゃんは今回『被害者』なの?『共犯者』なの?」

上条「……っ」ハッ!?

姫神「……『共犯者』。私は私なりの目的の為に『彼』に協力している」

しんのすけ「りょうかーい、じゃあ邪魔はしないゾ」

姫神「ありがとう。百円も手に入ったから帰る」スタスタ

自動書記「……行きましたね、しかし『無表情で淡々と喋る』キャラがかぶっていたので内心穏やかではありません」

インデックス「ペンデックスは何を言っているのかな?」

しんのすけ「さてと、色々判ったね。黒幕は男の人だとか」

インデックス「あっそうだね、『彼に協力している』ってあいさは言ってたかも」

上条「しんのすけはすごいな……俺はあの子が共犯者の可能性なんて全く考えて無かったってのに」

しんのすけ「上条君。オラが言えた事じゃ無いけど、そんなんじゃいつか腹黒い幼女とかに騙されちゃうゾ」

上条「えっ何その具体的な予言」コワイ

自動書記「……それで、しんのすけは今回はどう動くつもりですか?」

しんのすけ「とりあえずは、今回もまずは情報収集から始めようかな」

上条「いいのか?不幸体質の上条さんに言わせてもらえばこの手の話に首突っ込むとろくな目にあわないぞ」

しんのすけ「トラブル体質のオラに言わせてもらえば、逃げてもどうせ巻き込まれるんだから自分から突っ込んだほうがずっと良い結果を生むゾ?」

上条「……真理かもな」

しんのすけ「そこに転がってる人達は『塾の先生』らしいし秋沙ちゃんは『三沢塾』の近くに住んでるって言ってたから。たぶん『三沢塾』って犯罪組織の秘密アジトなんじゃないかな」

自動書記「なるほど、表向きは塾を装うわけですね」

上条「コイツ等の誰か起こして話訊いてみるか」

自動書記「いけません、上条当麻」

しんのすけ「うっかり『周りから気づかれなくする』術か何か壊したら『10人の黒服の男が真昼間のファーストフード店で死体ごっこ』っていうちょっとした阿鼻叫喚が出来上がるゾ?」

上条「とっ……危なかった」

しんのすけ「それにこういう時って操られてる人の記憶は改竄するのが定石だゾ」

上条「手がかりは無しか」

インデックス「考えていても仕方が無いんだよ。とりあえず、場所を変えた方が良いかも」

自動書記「そうですね、ただしもう少ししたらです。なお、貴女以外の誰もまだシェイクを飲み終えていない事を考えて頂ければ幸いです」ツネ

インデックス「ごめんなさい」ホホヲヒッパラナイデ

数分後 店の外

しんのすけ「じゃあオラも『三沢塾』について調べてみるから、上条君もなにか情報入ったらよろしくね」

上条「ああ、解った」

インデックス「必ず連絡するんだよ」

上条「さてと……」

?<ニャーニャー

上条「ん?」

仔猫<ニャーニャー

インデックス「わあ可愛い。ねえとうま」

上条「ダメ」

インデックス「まだ何も言って無いんだよ!?」

上条「飼うのはダメ」

インデックス「Why don’t you keep a cat! Do as you are told!」

上条「え?何??」

自動書記「『何故猫を飼ってはいけないのか!説明してよ!』と言ったところでしょうか」

上条「ああ、なるほど。いいかインデックス?上条さん達が住んでいる学生寮はペット禁止です」

自動書記「しかし上条当麻。その理屈で言うと、私達も出て行かなくてはなりません」

上条「ぐっ!?」

インデックス「そうだよ!私達は一緒に住めるのにスフィンクスを飼っちゃいけないなんておかしいんだよ!?」

上条「もう既に名付けてる!?しかも日本産三毛猫にスフィンクス!?」

自動書記「上条当麻、騒がないで下さい。あの仔猫が逃げてしまいました。なお、捕まえるのに協力して頂ければ幸いです」タタ

インデックス「ああっ待ってよスフィンクス」タター

上条「……ああ、解った。上条さんには最初から拒否権は無かったんですね。ちくせう」

?「やれやれ、やっと行ったか。仔猫がいたのは僕にとって幸運だったかな?」

上条「お前は!?ステイル!?」

ステイル「やあ上条当麻、久しぶりだね。ちょっとあの二人には内緒で君に頼みたい事が有ってね、『人払い』を使わせてもらったよ」

上条「そういや、周りに人がいないな」

ステイル「それで、僕としては甚だ不本意なんだけど。『上』から、君と共に事件解決にあたるようにいわれてね」

上条「ああ、ペンデックスからも言われたよ。インデックスを守りたかったら、インデックスと一緒にいたかったら、俺が『首輪』の代用品になるってイギリス清教を納得させなきゃいけないって」

ステイル「今回はそのテストも兼ねてるのかな?少なくとも僕は『試験官』では無いようだけど」

上条「それで?どんな事件なんだ?今丁度別の事件をしんのすけが追ってて」

ステイル「『三沢塾』って知ってるかい?一応はこの国で一番のシェアを誇る進学塾らしいんだけど」

上条「」アングリ

ステイル「……どうしたんだ?」

今夜はここまでです
すいませんが次回は月曜まで投下できなさそうです

まだー

これから投下します

>>101
ほんとにごめんなさい今日こそ遅刻しないはずだったのに

第3話 『三沢塾』【ミサワジュク】

上条「『三沢塾』の事件ってのが、しんのすけが追ってる事件なんだよ」

ステイル「やれやれ、彼も相変わらずだね」

上条「詳しい話が聞きたいけど、その前にアイツも呼んだ方が良いか」
        こちら
ステイル「あまり魔術側の事件にこの街の超能力者である彼が関わるのは、正直避けたいんだけどね」

上条「ああ、ツインデックスとしんのすけがそんな話してたな。『条約』だっけ?」

ステイル「うん、『科学と魔術はお互いの領域に手を出さない』っていう明文化されたわけでもない漠然としたルールさ。だからこそ『抜け穴』も沢山ある」

上条「抜け穴?」

ステイル「例えば君たちみたいな『原石』は『どちら側でもある』から、今回の事件解決の為に君の右手が振り回されても問題ないわけだよ」

上条「ならしんのすけも原石だし、やっぱり……」

ステイル「そうだね、既に事件に首を突っ込んでいるなら協力した方が良いだろう」

上条「解った。今連絡する」つケータイ

ケータイ(しんのすけ)「おお上条君、もう何か情報が手に入ったの?」

上条「ああ、実は今、ステイルがその事件をおってこっちに来ててさ」

ケータイ(しんのすけ)「ステイル君もそこにいる?」

上条「ああ、替わるか?」

ケータイ(しんのすけ)「うんお願いするゾ」

ステイル「うん、しんのすけかい?」

ケータイ(しんのすけ)「ほいほい、ステイル君お久しぶり」

ステイル「君はこの件に既に首を突っ込んでいるらしいけど、『条約』については知っているだろう」

ケータイ(しんのすけ)「知ってるゾ。『だからもう引け』って?」

ステイル「いや、僕らに協力してほしい」

ケータイ(しんのすけ)「りょうかーい」

ステイル「じゃあ詳しい話をするから……」

ケータイ(しんのすけ)「ステイル君、一つだけ確認したいんだけど……犯人は魔術側、現場は科学側。この事件そのものはどちら側?」

ステイル「……うん、問題無いよ。学園都市の『上』からイギリス清教へ事件解決を依頼したからね」

ケータイ(しんのすけ)「おお~納得。オラもそっち行くから、上条君の家で待っててくれる?」

ステイル「了解だ」ピッ

上条「しんのすけはなんだって?」

ステイル「ああ、君の自宅で合流する事になった」

上条「うちで?インデックス達には秘密なんだろ、バレないか?」

ステイル「誤魔化すしかないさ。さて、『人払い』を解いたからそろそろ猫を抱えたあの子達が戻って来るころだ」

自動書記「おや、ステイル・マグヌス。久しぶりですね、この街には仕事でしょうか」

インデックス「と~ま~?どうしてスフィンクスを探すのを手伝ってくれなかったの!?」

ステイル「うん仕事だよ。それとすまないねインデックス。僕が彼を呼び止めてたんだ、ちょっと手伝ってほしくてね」

インデックス「お仕事?私も手伝える?」

ステイル「まあ待ってくれ、詳しい話はしんのすけも交えて話そう」

上条「俺の家にしんのすけも来るってさ」

自動書記「私はその前にキャットフードと猫砂を買っておきたいのですが」

スフィンクス<ニャー

上条「ああ持ち合わせが無いんだっけ」つノグチサン

自動書記「ありがとうございます、上条当麻。(足りるでしょうか?)」

上条宅前

ドア<ガチャ

インデックス「ただいまなんだよ」

上条「はいお帰りなさい」

ステイル「おじゃまします(……『ただいま』か、あの子にとって今はここが家なんだ)」

しんのすけ「おお~待ってたよ皆さん」

上条「いや何故に家の中にいる!?どうやって入った!?上条さんは確かに鍵をかけましたよ!?」

インデックス「もう、とうまったら忘れちゃったの?しんのすけは原典級霊装を持ってるから出来ない事はほぼ無いんだよ」

しんのすけ「いや今回使ったのはコレね。じゃーん『ゆるゆるの賢者の腕輪』」つブレスレット

上条「まさか、『ワープ装置』とか言うんじゃ無いだろうな」

しんのすけ「上条君おしい!正解は『ワープホール発生装置』だゾ」

上条「想像してた奴の更に数段上のヤバさだった!?」

ステイル「そんな物どうやって……」

しんのすけ「遠い所に居るとある大王から一人暮らしを始めた時にお祝いに貰ったの。もともとはそのほs……国に何時でも行き来できるようの機能なんだけど、その応用で行った事のある場所なら好きな所に行けるんだゾ」

インデックス「色々便利そうかも」

しんのすけ「そうでもないゾ?ワープホールを創るのにドアとか窓とかが必要だし、オラ以外の人が勝手に使うと次元の渦の中を永遠に彷徨うことになるし」

上条「怖えよ!」

ステイル「世界には凄い物があるんだな」

上条「とりあえず、俺は触らないほうが良さそうだな」

しんのすけ「霊装では無いと思うけどね。それでステイル君、詳しい話を聞こうか」

ステイル「あ、ああ」

上条「とりあえず、居間で良いか?」

上条宅 リビング

ステイル「うん、これくらい広ければ良いか」

しんのすけ「話すのに広い方が良いの?」

ステイル「資料を配るからね、さあ二人共、受け取るんだ!!」ババババババババ

上条「ステイルの頭の上を紙が回ってる!?」

しんのすけ「ほほう、こういう演出けっこう好きだゾ」パシ

数分後

しんのすけ「ほうほう、つまり『三沢塾』は科学信仰のカルト教団の秘密基地だったけど、このローマ正教から抜けた魔術師が悪の組織を壊滅させた。もしくは乗っ盗ったと」

上条「だいたいしんのすけの推理通りだな。気になるのは……」

ステイル「うん、その子が魔術師と『共犯者』だと名乗ったことだね」

しんのすけ「よし、ここは一つ、直接乗り込む前に助っ人を呼ぶゾ。『条約』があるから後方支援要員だけど」

自動書記「ただ今帰りました」

インデックス「おかえりなさいペンデックス」

しんのすけ「じゃ、インちゃんペンちゃん。オラ達ちょっと出かけてくるから」

上条「二人と一匹で留守番しててくれ」

自動書記「了解しました」

インデックス「はーいなんだよ」

先程のファーストフード店

しんのすけ「良かった、まだ一人だけ倒れたままだゾ」

怪しい大人「」シーン

上条「それで、助っ人って?」

しんのすけ「もう呼んだから、直に来ると思うゾ」

数分後

今回一番の被害者「野原さぁん。とびきり美味しいエクレア見つけたからおごってくれるって本当?でもいくら私がかわいいからってあんまり優しいと酢乙女先輩の嫉妬力が後で恐いゾ☆」

しんのすけ「心配ゴムヨー。優しさじゃなくてギブアンドテイクたから」アハー

食蜂「あれ?もしかして私また厄介力に巻き込まれてる?」

今回はここまでです
次回投下は月曜日の夜11時です(今度こそは絶対に守ります!)

乙ー

今回一番の被害者www

乙!
これが毎週の楽しみだわ

これから投下します
>>114
本来なら事件に関わらないはずの人なのに、色々とひどい目に会います
>>115
ありがとうございます
(基本的にレスは全部嬉しいですが)こういうレスは特に励みになります

しんのすけ「操祈ちゃんに頼みたい事は、この黒服の人から記憶を読み取って『三沢塾』の裏の顔と『姫神秋沙』ちゃんって子について調べてほしいんだゾ」

食蜂「やっぱり『裏の顔』とか厄介力の匂いがプンプンするぅ!?」ガビン

しんのすけ「本当に美味しいエクレアなんだけど……ダメ?」ジー

食蜂「ううっ……解ったやるわよぉ」クスン

ステイル「しんのすけ、彼女は何者なんだい?」

上条「……(何処かで会ったような……?)」
                         テレパス
しんのすけ「おお、紹介するね。あいちゃんの後輩で『精神感応』系最高位の……」
                                  メンタルアウト
食蜂「初めまして☆上条さんとマグヌスさん、学園都市第5位の超能力者『心理掌握』の『食蜂操祈』ちゃんです☆」

ステイル「……っ。僕らの名前を記憶から読み取ったのか、なるほど頼りになりそうだ」

上条「でもしんのすけ、こういう場合は操られていたそいつらの記憶は改竄されてるはずだって言ってただろ?」

食蜂「うーんとね、断言はできないけど私の超能力ならたぶん大丈夫なのよぉ」

上条「?なんでさ」

食蜂「記憶力ってノートの書取に例えれば良いと思うのよねぇ」

ステイル「と言うと?」

食蜂「ノートに鉛筆で何か書いたのが『記憶』としてぇ、その字や絵が掠れたり消えたりするのが『忘れる』って事よ。でもぉ、筆圧力が高かったら字が消えても何が書かれてたか判っちゃうわよねぇ」

しんのすけ「操祈ちゃんの能力なら『書き変えられる以前の記憶』も読めるんじゃないかと思って」

食蜂「まあ流石にノートのページが破りとられてたりしたら私でも無理でしょうけどねぇ」

上条「そうか、じゃあ早速」

しんのすけ「その前に上条君もステイル君も、状況のおさらいも兼ねて操祈ちゃんに説明しといた方が良いゾ」

上条「えっ?記憶が読めるのに?」

食蜂「知られたくない事まで読まれてもいいならそうするわぁ」

ステイル「……解った、説明しよう。ただ信じられない話だと思うが」

食蜂「私はオカルト関係にもぉ、信用力のある情報は在ると考えてるわぁ」

ステイル「うん、それは良かった。じゃあ説明するよ……簡単に言えば『三沢塾』はカルト教団のアジトになっていたんだが、そこに世界一巨大な宗教組織であり魔術結社である『ローマ正教』から抜け出したはぐれ魔術師『アウレオルス・イザード』が」

しんのすけ「『アウレオルス』ってどんな魔術師なの?」

ステイル「何故君が質問するんだ」

しんのすけ「いや~実はそこら辺について書かれてた紙は全部上条君の方に行ったから全然知らなくて」

ステイル「まあいい、彼は『錬金術師』だよ」

食蜂「それで、その『錬金術師』がどうしたのぉ?」

ステイル「ああ、彼はカルト教団を潰して乗っ盗ったんだ。その前にカルト教団は一人の少女を拉致監禁していたんだけど」

食蜂「それが『姫神秋沙』って子なのねぇ」

ステイル「そういう事だ。アウレオルスは彼女の持つ能力を欲して『三沢塾』を乗っ盗った。少女は今も変わらず監禁されていて、僕は事件解決を学園都市の『上』から依頼されたイギリス清教に命じられて彼女を助けに来た……はずだったんだけどね」

食蜂「『はずだった』ってぇ?」

しんのすけ「それについては長くなるからオラの記憶を読んで」ズイッ

食蜂「了解よぉ(流石は酢乙女先輩の幼馴染、凄い余裕力。まるで『我が人生に読まれて恥じる記憶無し』って感じだわぁ)」ピッ

ステイル「彼女は能力にリモコンを使うのか」

上条「あれ?なあしんのすけ、お前の能力って確か……」

しんのすけ「あ、忘れてた」ウッカリ

食蜂「NOOOOOOOO!!!!!」ガクガク

                       ・・
しんのすけ「ごめんね、オラの頭を覗こうとするとこうなるんだった」

食蜂「頭に激痛がぁ」ガンガン

上条「しんのすけの能力のせいなら、俺が触れば痛みが消えるかな」

しんのすけ「いや、激痛だけど一瞬のはずだゾ」

上条「そうか、じゃあ次は俺の記憶からさっきこの店で起きた事を読んでくれ」

食蜂「……」ピッ

上条「どうだ?もう読めたのか?」

食蜂「ええ……なるほどねぇ、『共犯者』か。それで私が呼ばれたのね」

ステイル「話を元に戻すけど、そこに転がっている男はアウレオルスに操られていた人間らしくてね。そいつから情報が得られるかい」

食蜂「う~ん?この緑髪オールバックが錬金術師ね……残念だけど巫女服の子の『目的』って言うのは何かは判らなかったわぁ」

しんのすけ「うーん、やっぱり直接乗り込むしかないか」

食蜂「じゃあ私はもういいわねぇ……」スク

しんのすけ「まだ帰っちゃダメ、騒ぎが大きくなったら目撃者達の記憶改竄してもらうから」ガシ

食蜂「」

今回はここまでです
短くてごめんなさい
次回投下は木曜日夜9時です

幻想殺し「空気読みました」

幻想殺し「頭に触ってないからノーカンっす」

ページが破られたってのは上条さんみたいに物理的に脳細胞が損壊したケースか

>>153

文字通り記憶を破りとるスタンド使いもいるがね

>>157
失われる。でもって、元に戻せないから奪った記憶を読ませるしかない

スレ違いだが露伴ならしんのすけの記憶を頭痛と戦いながら気合いで読みそう

すいません 遅れます11時に投下します

お待たせしました。これから投下します

>>147>>151-152
原作では思念波が途中で右手に触れなければ念話は可能のようですしここでもそうします
(大覇星祭の棒倒し時のクラスメイトやシェリー・クロムウェルの時の風紀委員は念話に失敗してますが)
>>153
はい、そういう意味の例えでつかいました
>>155-157>>160-161>>164-166
SAN値を削られる挿絵付きでこれまたSAN値を削られる文が書かれていそうですね
余談ですが>>1はJOJOは4部が一番好きです(ちなみに仙台市民どころか東北出身でもありません)
実は前スレの為の書き溜めを書く前『しんのすけ「杜王町に旅行だゾ」』ってネタも考えてました
ところでトニオさんの料理を食べたら露伴先生に『書き込まれた事』も治る(消せる)のでしょうかね?

とある少女の話をしよう。
その少女には生まれつき特異な能力が有った。
それはある生き物を引き寄せ殺す事。
その少女が見つかった時、辺り一面が灰に覆われていた。
全てが灰で覆われた、少女を除く全ての住人が居なくなった村で、
彼女は呟いた。

「私。また殺したのね」

第4話『錬金術師』【パラケルスス】

第七学区の三沢塾。12階建てのビル4棟をその前の歩道から野原しんのすけ、上条当麻、ステイル・マグヌス、食蜂操祈の4人が見上げていた。
             ブリーフィング
「うん、乗り込む前に最後の打ち合わせをしておこう。なにか質問はあるかい?」

「アウレオルスってどういう人なの?」

「……『パラケルスス』って知ってるかい」

ステイルとしんのすけの会話に食蜂が驚きの声を上げる。

「テオフラトゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバトゥス・フォン・ホーエンハイム!?」

「えっ!?何だ!?」
                  こっち
「上条君『パラケルスス』って言ったら科学側でも有名人だゾ」

「『現代科学の祖』と呼ばれる人物の一人よぉ『人は自然が行っている事を実験室の中でも真似すべきだし真似できる。そして心の中でも真似すべきだし真似できる』って言葉を遺したわぁ」

「考えてみれば『錬金術師』ってオラたち『原石』以上に存在自体が条約違反になるけど、当時は『条約』より前の時代だしね」
                         ビッグネーム
話についていけない上条をよそに、食蜂としんのすけは伝説級の大物が出てきたと驚く。

「安心して良い、あくまでその末裔だ。伝説にあるような力は無いよ」

うろたえる食蜂をステイルがなだめる。

「あー、すまん。誰か説明してくれ」

「えっとねぇ、中世のヨーロッパにホーエンハイムって言う名前の、天才力あふれる偉大な科学者がいたの。彼は万病薬の開発に成功したと言われる程の名医でもあったそうよぉ」

「『パラケルスス』が通称で、さっき操祈ちゃんが言った長い呪文みたいなのが本名だっけ?」

「ちなみに『パラケルスス』とは『伝説の名医を超える者』と言う意味だそうだ。僕は専門外だから詳しくないけど、さらに前の時代に『ケルスス』って名医がいたらしい」

3人から続けて説明され、なお上条の頭には疑問符が浮かぶ。

「そいつのご先祖さまが偉い学者さんだってのは解った。けどしんのすけが言うように今は化学者で魔術師でもある『錬金術師』ってのは条約違反なんだろ?」

ステイルが答える。

「ああ、勿論今の魔術業界に『錬金術師』なんて職業は存在しない。彼はローマ正教にいたころは『穏秘記録官』だったよ」

「【カンセラリウス】?またオカルト力の強い語感ねぇ」

「どんなお仕事なの?」

「『魔道書』を書く仕事だよ。もっともあの子達の頭の中にあるような代物じゃなくて、あくまでも『魔術師達の為の教科書』を作る仕事だ」

ステイルの説明に頷きしんのすけが質問を続ける。

「ステイル君は、アウレオルス・イザードと秋沙ちゃんがほんとに共犯なら二人をどうするの?」

「アウレオルスは確保、姫神秋沙についてはこの街の人間にまかすさ。そろそろ行こう、急ぐ理由もあるしね」

それに上条が聞き返す。

「急ぐ理由?」

「いいかい上条当麻、アウレオルスは『ローマ正教』の人間だった。ならやはり彼等も自分達の手で型を付けたいんだよ」

「で、ローマ正教の人達は秋沙ちゃんをどう扱うか判らない、ってわけね納得だゾ」

ステイルとしんのすけは、そう言って三沢塾の自動ドアを通って行った。

「さ、私達も行きましょう。上条さん」

「あ、ああ」

三沢塾のロビーのエレベーター乗口近く、そこでステイルとしんのすけの二人は足を止めていた。
二人を見つけた上条と食蜂の二人もそこに駆け寄る。
が、しんのすけが二人を手で制した。

「二人に確認したいんだけど、『大怪我をした今にも死にそうな人』を見ても取り乱さずにいられる?」

その言葉を聞くなり上条はステイルを押しのけ、彼が背に隠していたモノを見てしまう。

「……っ!?」

血だまりに中に、
ひしゃげた鎧一式が、
中身入りでそこに置かれていた。

「ローマ正教は既に動いていたみたいだね。もっとも、失敗したようだけど」

「うぐっ」

錆のようなにおいが鼻につく。
上条の顔は青ざめ、何事かと食蜂も近づき事態に気づく。

「おい!しんのすけ!!お前のトランプなら」

「落ち着いて上条君、ちゃんと治療するから」

「普通は助からないと思うけどね、『原典級霊装使い』なんて規格外が居合わせるなんて、彼は運が良いのか悪いのか」

「な、なんで生命力ギリギリの騎士が倒れてるのよぉ?」

「じゃ、本人の口から直接きくとしますか。『スゲーナスゴイデス』!」

しんのすけが呪文を唱えるが、騎士は倒れたままだ。

「お、俺の右手のせいかっ!?」

「違うけど、念のため少し離れてて。今から『なおす』から」

しんのすけの両手には白い手袋がはめられていた。

「うん?それも霊装なのかい?」

「うん、こういう効果があるゾ」

そう言ってしんのすけが両の手で鎧に触れると、騎士の全身が一瞬光りその後にはどこにも曲がっていた跡すら無い、まるで新品の鎧に変わっていた。
どうやら中身も同様らしく、騎士が弱々しくも声を出した。

「これは……奇跡か?」

「正直に言えば、僕も信じられない気持ちだよ。なんせ折れた肋骨が肺を突き破り、肝臓は潰れ、手足の大動脈は切れていたんだから」

「えーと『パーシバル』さん?」

しんのすけが騎士の右腕に刻まれた『Parsifal』の文字を見て話しかける。

「いや私は『パルツィバル』と言う。本名では無く役のような物だが」

「パルツィバルさんはどうして室内で交通事故にでもあったみたいな事になってたの?」

「ああ、まさに車に撥ねられたかのようだった。ここの学生たちは私に全く気づいていないようで、これはどうした事かと声をかけようとしたのだが、小走りの学生とぶつかり弾き飛ばされたのだ」

それから一分もしない内に全員が外に出ていた。

「まさか、あんな手があるとは」

パルツィバルがつぶやく。
しんのすけが使った手とは『ゆるゆるの賢者の腕輪』であった。
彼がその腕輪を着けた手で戸や門などを開ければ、そこにワープホールを創ることができる。
問題は『コインの表と裏』に分けられた自分達では開けられる扉など無いことだが、そこでしんのすけはパルツィバルのカブトを借りた。
その顔を護る部分は開閉式になっており、名称を『窓』とも言う。
あとは三沢塾の外に出たしんのすけが自動ドアのまえにずっと立っていれば良いわけである。

「それで、これからどうするか」

ステイルのつぶやきにしんのすけが提案する。

「オラに任せて」

「うん?良い案があるのかい?」

「うん操祈ちゃん、アウレオルスが普段どこの部屋にいるか黒服の人の記憶には無かった?」

「校長室にいるらしいけどぉ、それが?」

「ステイル君が『一度目を通したら燃えるように』資料に細工したから確認はできないけど、あの部屋だったよね?」

しんのすけが外から見える窓を指さし、ステイルが頷く。

「パルツィバルさんはアウレオルスをどうにかしたい。オラ達は秋沙ちゃんの『共犯者』の真意を確かめたあと保護したい。で、あってるよね?」

「まあ、大体は……」

「じゃあ、本当に共犯者なら、秋沙ちゃんの事情をアウレオルスも知ってると思うんだゾ。で、操祈ちゃんが居るから直接会えさえすれば、その『事情』が判るわけだし」

「その腕輪を使って、今度は校長室に直接乗り込むわけか」

上条は納得するが、しんのすけは否定する。

「まあ、オラと手をつないでいれば他の人もワープできるけど。まずはそれでビルの屋上に行くゾ。あとは見てれば解るゾ」

全員で三沢塾ビルの屋上に向かうのだがそこで問題が生じた。

「まさか、上条さんだけいけないとは……なんとなくこんな気はしてましたよ。ええ、ちくせう」

するとビルのすぐ下で待つようにしんのすけに言われ、しばらくすると上からしんのすけがスルスルと降りて来た。

「ほい上条君、オラに掴って」

「男同士でお姫様抱っことか今の絵面ひどいな」

しんのすけが手首を軽く振ると、屋上の手すりに掛かったヨーヨーがワイヤーを巻き取り二人を持ち上げる。

「しんのすけは色々と便利な道具を持ってるな」

「スパイツール・アクションヨーヨーだゾ」

屋上に全員が揃うと、しんのすけが食蜂を抱きかかえた

「えっ?野原さん?操祈ちゃんの推理力は嫌な予感がするって言ってるゾ☆」

「おお~操祈ちゃん、たぶん正解だゾ」

そしてしんのすけは食蜂を抱えたまま飛び下りた。

「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

そして或る部屋のガラス張りの壁を突き破り着地する。
そして空いた穴から顔を出して上に向かい叫ぶ。

「ばっちりジャスト校長室!!皆もワイヤー伝って降りて来てー」

一方の屋上では

「あ~上条さんとしては非常に遠慮したいのですが……」

「うん、さっさと行け!!」

上条がステイルに蹴落とされ、ステイルがそれに続き、最後に降りて来たパルツィバルをステイルとしんのすけが受け止めた。

「唖然、こんな方法をとる侵入者がいるとは」

校長室に居た、緑の髪をオールバックにした男がこちらを向く。

「偶然、まさか貴様とはな。ステイル・マグヌス」

「うん?こういう時『顔見知り』が派遣されるのは割とよく在る事だと思うけど?」

「必然、そう言い直すとしよう。しかしいささか客人が多すぎる『分けて対応するとしよう』」

その言葉と共にステイルとパルツィバルの姿が消えた。

今夜はここまでです
手袋についての詳しい話は次回にします
次回投下は月曜日のよる11時です

第5話『黄金錬成』【アルス=マグナ】

ステイルとパルツィバルの二人は、周囲の景色が一瞬で変わった事に驚く。

「一体、何が起こったんだ!?」

「どうやら、私が倒れていたロビーのようだが……」

「ステイル・マグヌス。急に現れるとは何事ですか?そして其方は?ローマ正教所属の騎士と推測されますが」

辺りを見わたすステイルに声をかける浴衣姿の少女がいた。

「野筆ヨハネ!?何で君が此処に!?」

「神父殿、彼女は?」

「心配無い、味方だよ。出来れば此処に来てほしくは無かったけどね」

「それは解りますが、禁書目録が外に出たスフィンクスを追って行ってしまい、そこで大量のルーンカードを見つけ、
貴方が言っていた上条当麻としんのすけに手伝って欲しい『仕事』とは、三沢塾の『事件』だと彼女は推測し、走り出した彼女を私が追って来たのです」
                          イノケンティウス
「つまり僕の所為でもあるわけか。あの子を心配して『魔女狩りの王』を置いてきたのが徒になるとはね……」

「理解が早くて助かります。なお、『過保護すぎだろーが、このロリコン』と言う怨み言の一割でも理解して頂ければ幸いです」

「君、最初と正確が変わってないか」

「そんなことよりも、エレベーターに乗り上に向かった禁書目録を追わなければいけません」

彼女の言葉にステイルは違和感を覚える。

「うん?あの子がエレベーターに乗った?今は結界が機能していないのか……?好都合だが一体何の為に」

「断然、貴様らを始末するために決まっている」

その声が響くと同時、ステイル達の頭上から高熱の液体が降ってきた。
3人が飛びのいて避ける。
     リメン=マグナ
「これは『瞬間錬金』、なるほど今回の敵は錬金術師ですか」

「正解だ名も知らぬ少女よ。この鏃がわずかでも傷つけた物は錬金される」

緑髪の男が姿を現す。その手には右袖から伸びる鎖に繋がったナイフのような鏃があった。

「ふむ、見慣れぬ少女が一人増えているが敵ならば容赦はしない」

そう言って男は彼女に鏃を投げつけた。

「危ない!」

パルツィバルが少女をかばい、彼の背に鏃が当たる。
すると今度は金が融けた高温の液体になるのではなく、鎧が黄金に変わってしまった。

「……ありがとうございます、名も知らない騎士」

黄金の像になった騎士へ感謝を伝えると、少女は男を睨み付ける。

「名乗りなさい錬金術師、私はイギリス清教は第零聖堂区『魔道図書図書館』の『図書館司書』。ヨハネズペン・ライブラリアン……またの名を野筆世波音です」

「パラケルススが末裔、アウレオルス・イザードだ」

男が手元に戻した鏃を構える。

「退がれ野筆ヨハネ!コイツは僕に任せて君はあの子を早く追うんだ!!」

「ええ、分かっていますステイル・マグヌス。お互い『出来る』ことをやりましょう」

少女が舞うようにくるくると回り出した。
投げられた鏃を袖が弾く。

「何だと!?」

「私は腕を振っている間、袖を玉鋼、ダマスカス鋼とぶつけ合えるだけの強度に出来ます。そんなちゃちな刃物では傷なんてつきません」

「くっ」

男が悔しそうに顔を歪めステイルが笑い声を上げる。

「あーはっはっはっは。そうか、そういう事か」

「何が可笑しい!」

怒る男に対してステイルは涼しげに言う。

「君、気付かなかったのかい?彼女が舞いながら袖口からカードを落としていた事にさ」

「家の周りに貼られていたカードを回収するのは少し疲れましたが、それに見合う価値はあったようですね」
          イノケンティウス
「ああそうだね、出でよ!『魔女狩りの王』!!!」

炎の身体を持った巨人が現れ、錬金術師に向かっていく。

「くっ……ならばそれも金に変えるまで」

鏃を投げるが、炎で出来た巨人が腕を振うと鏃ごと鎖が途中からきえてしまった。

「無駄ですよ錬金術師、ステイル・マグヌスの扱う炎の温度は『金』の沸点を上回っています。それと、もう動けますねパルツィバル」

「ああ、勿論だ」

物言わぬ黄金の像になったはずの騎士がこちらに突出してくる。

「バカな、バカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカな」

黄金の鎧に弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた錬金術師はそのまま動かなくなった。

「やれやれ、所詮偽物じゃこの程度か」

「どうやら私とはまた別のタイプの『魔術人形』のようですね」

「神父殿は何故コヤツが偽物だと?」

「『魔道図書図書館』と聞いても何も反応を示さなかったからね。本物なら有り得ない……しかしまさか、金に変えられたのが鎧のみとは」

「それでも関節部を私が切らねばうごけませんでしたよ。貴方が私が呼びかけた時に『パルツィバルだ』と名乗ったので生きている事は判りましたが」

「うむ、司書殿には頭が下がる思いだ。見事なさくせんでしたぞ」

「僕のイノケンティウスを囮につかうとはね」

「しかし彼が偽物だとすると本物は……」

「ああ、急ごう。とりあえずは校長室だ(『アウレオルス・イザード』は手強いぞ……死ぬなよ、上条当麻)」

ステイルは口の中でつぶやきを押し殺し、3人はエレベーターに乗り込んだ。

とりあえずここまでですが、今夜中にもう一回来ます

一方、少々時を戻りこちらは校長室3人の少年少女に独りの男が対峙していた。

「なっ!?ステイル達に何をした!?」

「緑髪のオールバック……アウレオルス?」

上条としんのすけが眼前の男に問いかけた。

「当然、アウレオルス・イザードは私しか居ない」

その男、アウレオルスは問い返す。

「貴様らは何者だ?ロンドンの神父とバチカンの騎士が此処に居るのは解るが……」

「オラ達はステイル君から協力を求められました、『原石』2名と『精神感応』系最高位です」

「でもアナタに対して敵意力は無いわよぉ、ちょっと巫女服の子について聞きたいだけですもの」

「信じると思うか?まして、先程の紹介を聞いてはな」

「あらぁ、伝説の錬金術師の子孫ともあろう人が、中々用心力が強いじゃない」

「自然、油断が無いだけだ」

「ところで、オジさん。さっきの上条君からの質問の答えは?」

しんのすけの問いに、一息の間が空く。

「憮然、そう呼ばれる年齢では無い。質問の答えだが、彼等には別室に移ってもらった」
 アポート
「『転送』?オカルト関係には情報力の弱い私にはとても『錬金術師』が使う技には思えないけどぉ、まあそこら辺も含めて『見れば』良いのよねぇ」

食蜂が自身の能力を使用するためにリモコンをアウレオルスに向けようとするが

「『少女の手から滑り落ちろ』」

彼がそうつぶやくと、食蜂が手にしていたリモコンが床に落ちた。

「っ!?」

「少女よ、何をするつもりかは知らんが余計な動きは命を縮める事になるぞ。敵対する者を前にしていれば尚更な」

校長室を緊張した空気が包み……

「あ、とりあえずこのガラスの壁直しちゃうね」

しんのすけがその空気をぶち壊した。

「突然、何を言っている?」

「まあ見ててよ、ほい」

しんのすけが壁に触れると一瞬の光の後、ガラス張りの壁が、元の姿を取り戻していた。

「俄然、興味が湧いたぞ『原石』よ。貴様のその手はどの様な奇跡が宿っているというのか」

しんのすけが二ヘラと笑いながら会話を返す。

「いや~これはオラの能力じゃなくて、霊装の効果だから」

「霊装だと?どの様な代物だ」

「『妖精がくれた手袋』を再現した物で、触った物をナオせるんだゾ!壊れた物なら直せるし、病気や怪我も治せるし、なんとなんと『ケンカ中のカップルの仲』なんて言う概念的な物も治せるんだゾ」

「妖精がくれた手袋だと?……そんな神話や伝説があっただろうか?是非観察したい」

「おお、良いゾ」

しんのすけが手袋を脱ぎ、アウレオルスに手渡す。

「なんか、アウレオルスとしんのすけが仲良くなっちゃったよ」

「あれも野原さんの才能力よねぇ」

上条と食蜂が二人のやりとりを見ながら話す。

「……ふむ、確かに凄い魔力だな。感謝する、参考になった。『手袋よ、少年の手に戻れ』」

「おお~元に戻った」

食蜂がつぶやく。

「あれだわぁ、言葉の通りの事が起きる。オカルトってそこまで何でも在りなのぉ?」

「いや、俺もよくは知らないし」

アウレオルスが一息入れ話し出す。

「貴様らが知りたいのは姫神秋沙の事情だったな。今は気分が良い。話してやろう」

「……」

「偶然、あの女は特異な体質を持って生まれてきた。本人はその異能を消し去りたいと思っていて、私ならばそれが出来る」

「どうやって?」

「私はついに、錬金術師として究極の奥義に達した。名を『黄金錬成』【アルス=マグナ】と言う」

「ならとっととやれば良いじゃないか」

上条が問う。

「だが私にもあの女にやってほしい事が在る。それには姫神秋沙が持つ能力『吸血殺し』が必要なのだ!」

「オラの読んだ資料に書いてあったゾ。大能力『吸血殺し』【ディープブラッド】吸血鬼を呼び寄せて殺す能力だって」

「それが姫神が『三沢塾』にさらわれた理由だってのかよ……!!」

「そもそも、そんな超常力天井知らずな存在が実在するのぉ?」

「するゾ」

しんのすけが事も無げにはっきりと言う。

「くっく断言とは……面白い少年だ」

「それで、アウレオルスのオジさんは吸血鬼を呼んで何がしたいの?」

「憮然、だからオジさんでは無いと……まあいい。ドクに侵され、限られた時間しかイキられぬ者がいる。その物を救いたい」

上条はなんとなく理解する。
この男はきっと己にできるあらゆる手段を試して、それでも駄目だったのだろう。
この男はきっと世界中を敵にしてでも助けたい存在が有ったのだろう。
そしてそれをまだ諦めていないのだ。
諦められるものでは無いのだろう。
この男はきっと、そのためだけに、生きて来たのだろうから。

その時、校長室のドアを誰かがノックする。

「……誰だ?」

「私。入っても良い?」

聞き覚えのある声に上条がつぶやく。

「この声……姫神?」

「……入れ」

ドアが開き、そこにはやはり姫神秋沙がいた。しかしその隣には一人の修道女が居た。
上条は驚きに声を上げそうになるが踏みとどまった。

(何でインデックスが此処にいるんだ!?)

「この子が。貴方に会って話たい事があるって」

アウレオルスの眼は驚愕に見開かれる。

「君が私に話たい事だと……?」

修道女の口がゆっくりと開き、言葉を紡ぐ。

「あのねアウレオルス、私、全部思い出せたんだよ。もう二度と、何も忘れなくて良くなったんだよ」

それは、本来ならば感動的な大団円のはずだった。
それは、本来ならばこの上ないハッピーエンドのはずだった。
上条は理解した、アウレオルスの言う、『ドクに侵された者』とはかつての彼女だったのだと。

「呆然、君は一体、何を……言っている?」

それは本来ならば、祝福されるべき再会のはずだった。
しかし上条にはその時、
        何か
錬金術師の中で『幻想』が壊れる音が聞こえた。

今夜はここまでです
次回はインデックスサイドの詳しい話ですが
>>5に伏線があったのだと言っておきます

次回投下は木曜日夜11時です

手袋ってあれか……軍手の妖精さくらと一郎が
ゴム手袋の妖精と戦ってる時に軍手にされて、それを助けたお礼にくれた滑り止め付きの。

よく考えたらしんのすけって、妖精とか妖怪とか宇宙人とかだの色々関わりすぎだよな…


しんちゃんって他にも時間止める時計とか透明になれるパンツとか、チートアイテム色々持ってたよな……

いまさらながら、やっぱりレベル5だからしんちゃんも奨学金とかもらっているのか疑問に思った。土地を買って、埼玉の家と同じ家を建てているからローンが32年あるのかなと思った。

これから投下します

>>233
はい、原作34巻の『ひとりでなおっ太くん』です
>>234
一応、原作での公式設定ではボーンバンパイア等の幾つかの外伝はパラレルワールドでの事件になっています
このSSでは極力、一つの時系列(時間軸)ということで進めますが
>>235-238
スゲーナスゴイデスのトランプで、今後も要所々々でそれらが出てくると思います
>>244-245
レベル5なので結構貰っていますが殆どを児童養護施設への寄付と実家への仕送りにしているので(ただしひろしとみさえは息子からの仕送りの全額をしんのすけ名義で預金している)
奨学金の残額(しんのすけの手取り)は月5万程に+デスペラードのバイト代+自警団の給料です
駒場は自身のチームの所属メンバーにはある程度の金銭を渡しています
その調達方法はまた作中で

第6話 『完全記憶』【オモイデ】

上条達が自宅を出て少しした頃、留守番を頼まれた二人と一匹の内、インデックスがもう一人に訊ねた。

「ねえペンデックス、とうまとしんのすけがステイルから頼まれた『仕事』ってなんなのかな?」

「貴女は詳しく聞いたのでは無かったのですか?禁書目録」

「うん、聞いて無いんだよ」

「そうですか、では推測になりますが、やはり『三沢塾』の事では?塾の講師達に施された洗脳は魔術によるものと思われますし、この街で魔術絡みの事件が別件で同時に二つ起こったと考えるよりは自然かと」

「やっぱり、私達も行ったほうが良いかも」

「しかし、私達は上条当麻から留守番を頼まれたのですよ?」

インデックスの提案をヨハネは言外に却下する。

「あう……」

「ところで、スフィンクスは何処に居るのでしょうか。見当たりません」

「玄関の方かも、ちょっとみてくるね」

「……やれやれ、飼主としての自覚を持ってもらいたいものですね」

やや無責任な魂の双子たる自身の相棒にため息をつく。
さてそろそろ食事の準備でもしようかと、立ち上がりかけたその時インデックスが彼女を呼んだ。

「ペンデックスー!ちょっとこれを見てほしいんだよ」

「はあ、今度は何事ですか禁書目録」

インデックスに呼ばれ外に出たヨハネが見た物は所々に貼られたラミネート加工されたカードだった。

「これは、ステイル・マグヌスのルーンカードですね。なお、『魔女狩りの王』の為のものと思われます」

「……やっぱり、私達に護衛を置いて行くなんて、きっと危険な仕事なんだよ!私達も行くべきかも!?」

「解りました、貴女がそこまで言うのであれば止めません。ただし……」

「ありがとう!じゃあ早く行くよペンデックス!!」

インデックスが走り出す。

「……このルーンカード達を回収した後です。と言いたかったのですが……まあ良いでしょう、行き先は解ってますから」

数十秒後、カードの束を袖にしまったヨハネがインデックスの後を追った。

三沢塾前に修道服と浴衣姿の二人の少女が並んで立っている。

「此処が三沢塾ですか、ところで禁書目録」

「何?ペンデックス」

「結局スフィンクスは『歩く教会』の懐に入っていたのを忘れてただけなんて貴女馬鹿ですか」

「ペンデックスが台詞を一度も区切らずに言った!?これはもしかして相当怒ってるのかも」

「理解が早くて何よりです。なお、『帰ったら御仕置は覚悟しておけよこの洗濯板』と言う台詞も記憶して頂けると幸いです」

「あの、ペンデックス?スフィンクスが懐に居るのを忘れたんじゃなくて、服の中に入ってきたのに気付かなかっただけなんだよ?そもそも私達には『完全記憶』能力が有るわけだし」

修道服の少女、インデックスが申し訳無さそうにしながらも抗議する。

「それに、玄関口でスフィンクスが外に出たがったからこそルーンを見つけたんだよ!?」

「正直に言って、私が怒っていたのはその後の事なのですが」

「えっ!?何か怒らせるようなことしたっけ?」

「はあ、もう良いです。それより……」

浴衣姿の少女、ヨハネが眼の前のビルの屋上を指さす。

「あそこに居るのは上条当麻としんのすけ、それにステイル・マグヌスだと思われます。なお、他2名が居るようです」

「え?あ、ほんとだ」

「おや、しんのすけが飛降りました」

「ガラスを突き破って中に入ったんだよ!?」

「他の者も彼に続くようですね、アレはバチカンの騎士でしょうか?」

「わ、私達もあの部屋に急ぐんだよ!!」

二人は走り、三沢塾の中に入る。

「あ、エレベーターが在ったよ」

インデックスが走って行きボタンを押す。

「待ちなさい禁書目録、その前の血だまりが気になります。これは罠では……」

ヨハネが止めようとするが、インデックスはエレベーターに乗り、既に目的の階のボタンを押していた。
ヨハネは急いで自分もエレベーターに乗り込もうとするが、突然現れた身長2メートルの神父に視界が遮られる。
横に避けエレベーターの方を見るが、既に扉は締まり、上へ向かっていた。
ヨハネは歯噛みする。

(くっ、仕方が在りません、まずはステイル・マグヌスから現状を訊きましょう)

一方、目的の階に到着したインデックスを、意外な人物が出迎えた。

「また会った。貴方達は何なの。邪魔はしないでほしいと言ったはず」

巫女服を着た少女がスタンガン機能付き特殊警棒を片手に、其処に立っていた。

今夜はここまでです
次回投下は明日よる11時です

おつー
インさん余計なことばっかしてるようにしか見えん……

これから投下します

>>260
彼女に悪意は無いんですけどね


「あいさ、貴女の目的って何なの?貴女は誰に、どんな協力をしてるの?」

インデックスは巫女服の少女、姫神秋沙に訊ねる。
すると姫神もまた、意外そうに訊き返してきた。

「貴方達は全て知っていて。それで邪魔しに来たんじゃ無いの?」

「とうま達はそうかもしれないけど、私はとうまが危ない目に遭うかもしれないから助けに来ただけだよ」

「結局。邪魔をしに来た人の助けに来たなら。やっぱり邪魔だから帰って」

姫神が特殊警棒を構える。

「これは脅しじゃ無い。私はもう二度と誰も殺さない為なら。傷つける事もためらったりしない」

その瞳に、インデックスは確かな決意をみる。
         もの
「あいさが何か重い過去を背負っているのは解った……でも、私だってこのまま帰れ無いんだよ!」

インデックスが警棒を掴み自らの胸に押し当てる。
驚く姫神が警棒を引こうとするが、、大きな修道服の袖に包まれた、小さな少女の両手はしっかりと警棒を掴んだままだ。
ソレからは今も、バチバチという音と共に、電気が放たれているというのにだ。

「……つ。放して。帰って。お願いだから。もう彼の……アウレオルスの邪魔をしないで」

「えっ!?」

インデックスは驚き警棒を放す。

「……あいさ、お願い、正直に教えて。この事件の黒幕は『アウレオルス・イザード』なの?」

明らかに先程と違いうろたえるインデックスを不審に思いながらも頷く。

「次は。私の質問に答えて。その服は一体何」

「この服は『歩く教会』と言って、あらゆる害から着たものを護ってくれるんだよ」

薄い胸を張りながらインデックスが答える。

「歩く教会。服の形をした結界。彼が全部終わったら私に創ってくれると言った」

「え?あいさの『目的』って『歩く教会』なの?」

「そうじゃない。私は。生まれつき或るチカラを持ってる。これを失くしたり封じるのが。私の『目的』」

「じゃあ『歩く教会』を創るのがアウレオルスの『目的』?」

インデックスが首を傾げる。
しかしその為にローマ正教を抜けるだろうか?どうも今現在の状況と自身の記憶の中に居る彼が上手く噛み合わない。

「違う。彼は助けたい人がいると言ってたけど。それは私の事じゃ無い」

「じゃあ、アウレオルスの『目的』は何!?どうしてローマ正教の穏秘記録官が学園都市に居るの!?」
                        イキ
「詳しい話は知らない。けど限られた時間の中だけで存在る少女だと聞いた。そしてそのために。私のチカラが役に立つって」

インデックスの中で、最後のパズルの1ピースがはまった気がした。
彼が助けたいと望んだのは自分なのだと、その為に彼はローマ正教を抜けたのだと。
インデックスはイギリス清教に所属している、ローマ正教に所属したままでは限界が有ったのだろう。
自分が彼の事を忘れていた間も、彼は自分を救う為に東奔西走してくれていたのだ。
どれ程の追手から追われようとも、世界を敵にする事になっても、彼は諦めず、自分を救おうと道なき道を歩み続けた、走り続けた。

ならば、彼にもう足を止めて良いのだと言うのは、自分の役目だろう。
それが、彼の一切の努力や苦労を、無駄だったのだと伝える残酷な行為だったとしても。
これは、自分がやらなければならない事だ。

「お願いあいさ、私を、アウレオルスの居る場所に案内して。彼に話したい事が……ううん、話さなきゃいけない事があるんだよ」

「……もしかして。貴女が?」

修道服の少女がゆっくりとうなずいた。

数分後、インデックスと姫神秋沙の二人は校長室に居た。
驚愕の表情を浮かべる錬金術師に、インデックスが一歩近寄る。
我ながら、なんと残酷なのだろう、しかし今なお記憶を失ったふりをするなど、自分を救ってくれた野原しんのすけ、上条当麻、神裂火織、ステイル・マグヌスに対して。
何より眼の前の彼に対するこれ以上無い冒涜だと思う。

意を決して、彼女は口を開く。

「あのねアウレオルス、私、全部思い出せたんだよ。もう二度と、何も忘れなくて良くなったんだよ」

短いですが、今夜はここまでです
次回投下は日曜夜11時です
次回いよいよ(前半の)クライマックス
アウレオルスVS上条・しんのすけ戦です


かなり先だろうけど大覇星祭が楽しみだな
野原一家や春日部防衛隊集合するだろうし
相手がオリアナだから結構ギャグもやれそうだ


いくつかのスレでほぼ同時にアウレオルス戦やってて、しかもどれも熱い

もうすぐスレタイ回収かな。
そういや、上インか……御坂さんとアリサだけは上条さんがいいなぁ。

しんのすけが5歳の時にフラグを建てた人ってどのくらいいるんだろ。
クローバー幼稚園の子は覚えているんだが。

ttp://a-draw.com/src/a-draw.com_4330.jpg

ひろしが改造されるのか、ひろしの頭脳をインプットしたAIを持ったロボットが作られるのか

しんちゃんは原作、アニメ、映画含めると交友関係がかなりあるから、学園都市に来て交流関係がどれだけあるのだろうか。                                上条やインデックス、御坂達の他に駒場、浜面達スキルアウト達は分かっているけど、いつの間にか冥土帰しとも交流があったのか驚いた。                                 あと、あいがいるから恋愛に発展するかはわからないけど、しんちゃんは結構モテるからどれだけフラグが経つのか気になる。

気になったけど、幻想殺しって原石ではなかったような気が・・・。生まれつきあったけど原石とは違うとどこかで書いてあった気がする。

たぶん原作で雲川姉が「アレは原石と一緒にすんな」って貝積に忠告してる。
でも、統括理事会のブレーンの考えなんかに一般学生らが至る訳もないし
原石ってくくりとして認識しててもなんもおかしくないと思う

これから投下します

>>271
カオスな事になりそうですね。
上手くまとめられる文才が1に有れば良いのですが
>>272-274
ここと、第7位のやつと、何処でしょう?
>>275
その二人は特に、他にイイ感じの男性キャラクターが居ませんからね……
姫神と食蜂さんの相手はほぼ確定してるのですが

クローバー幼稚園の子はアニメオリジナルなんですよね
1が調べた限りでは
ミホ(10巻)
酢乙女あい(ベタボレ)
桜田ネネ(あいに嫉妬する程度)
大原ななこ(満更でもない感じ)
トモミ(36巻参照、上手く説明できない)
ちほ(35巻から、6歳の時だけど)
つばき(映画、嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ)
レモン(映画、嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦)
他に『仲良くなった女性』程度なら
屈底アツミ、十和田しずか、虫鳥あみ
マタ・タミ、吹雪丸、リング・スノーストーム、トッペマ・マペット(メモリ・ミモリ姫)
……うん、モゲロ
>>276-281
次回の映画は科学サイドのお話のようですね
今から楽しみです
>>282-284
どうなんでしょうね?
劇しんは泣かせにきますから、予告や前半では前者と思わせといて実は後者とかあるかもしれませんし
(後者だとしたら、コンニャクローン事件をもっとシリアスにした感じで、自身が偽物だと自覚したロボがオリジナルにあとをたくして敵に自爆特攻とか有りそう)
>>285-286
冥途帰しと面識があったのは、美琴、上条、駒場と会った時の、感電して気絶したスキルアウト達を彼の病院へつれて行ったからです。
後にスキルアウトとして、それなりにバイオレンスな日々(シマ荒らしや他チームとの抗争等)を過ごしてたので、(主にしんのすけの仲間達が)何回も彼の世話になってます。

原作での上条ヒロインからも、何人かはしんのすけヒロインになるかもしれません(未定ですが)
ちなみに現在のあいちゃんのライバル候補最有力なのは神裂さんとアニェーゼです(中の人的に)
>>291
>>292さんの言う通り学園都市では原石扱いです

第7話 『魔法名』【マホウメイ】

修道服の少女から真実を聞かされた錬金術師の反応は、見ていて耐えられないほどに、痛ましいものだった。

「フハハッ、フハハッ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

一しきり狂った様に嗤い続けた錬金術師は、息を大きく吸い込んだ。

「必然!!これが咎人の末路か、主は己を裏切った者を赦しはしないと!?ローマ正教を抜けた事が罪だと!?」

誰も答えぬ問いを続ける彼の姿が、上条当麻にはまるで己がそうしているかの様に見えた。
そして理解する。インデックスを助ける時、わずかでも失敗していたら自分もこうなっていたのだろうと。

「ローマ正教徒では無い者を救いたいと思う事が罪ならば、何を祈れと言うのだ!?カインの末裔の力を借りる事がそんなにも悪しき事か!?」

巫女服の少女が、駆け寄る。

「アウレオルス。お願い。気持ちを落ち着かせて」

姫神の心配して呼びかける声も、彼の耳には届かない。
その眼には、もはや生きる者としての光はなかった。

「それとも科学と魔術の領域を越えた、禁忌の扉を開いた事がか!?その為に人の血が流れた故か?」

共感もできたし、同情もした。
だが……

「悄然、生きる意味を失った以上、生きている道理も無し。『我が生命は此処に終えたり』……」

目を閉じ、ゆっくりと倒れていく。
そして……




上条当麻は彼の頬を全力で殴り飛ばす!

鈍い音を立てて、アウレオルスの身体が壁に叩きつけられた。
彼は直ぐに起き上がり、信じられない様子で上条に問いかける。

「唖然、何をする!?いやそれ以前に何故私はまだ生きている……?」

上条は答えず、ただ彼をにらむ。
上条当麻には、己がこの男対しにすべき事が解っていた。

「そんな事はどうでもいい、なあ、一つだけ答えろ。錬金術師」

『助けたいと望んだ存在が既に助けられていた』?だからどうした!
たったその程度の理由で『全て』を諦めるなんて、絶対に賛成できない!

「お前は何がしたかったんだよ?本当にそれは『もうできない事』か?お前がしてきた努力は、生きて来た事は、本当に無駄だったのか?」

一瞬あっけに取られた後、アウレオルスは激昂する。
                                    アルス=マグナ
「憤然、どの口が言うか!?禁書目録の少女の呪われた運命を変えるなど、我が『黄金錬成』を打ち破る貴様の『原石』の他にあらぬだろうに!?」

上条当麻は拳を構える。

「ああ、だからかかって来いよ錬金術師。あんたから『希望』を奪ったこの右手で相手してやるよ」

「とうま!?何を言っているの!?」

錬金術の奥義に到達した魔導師を挑発する上条を心配して、インデックスが声を上げる。

「まあオジさんが怒るのも無理ないけどね。一応説明すると、上条君がインちゃんが何も忘れなくて良いようにして、オラが原典級霊装を使って記憶を取り戻したんだゾ。そういう事だからオラもオジさんの相手するゾ」

「しんのすけまで!?」

「そういうわけだ、構えろ錬金術師。思いの限り俺達元凶に怨みや怒りをぶつけてみろよ!!」

「フフッ……ハハハハハハハハハハ!!いいだろう!おいっ女!」

アウレオルスが、姫神を呼ぶ。

「何?貴方が望むなら。私も一緒に闘う」

「毅然、それには及ばない。忌々しい『原石』共と闘う前にコレを渡しておくだけだ。『貴様の為のケルト十字』をな」

アウレオルスは上条としんのすけの方を向く。

「本当にこの私とやり合う気か?後悔する事になるぞ。依然、『黄金錬成』は問題なく使えるのだからな」

上条が応える。

「ああ、本気じゃなくちゃ意味が無え。お前はこれから、テメエの中に有る余計なモンを全部ぶちまけて、それでも自分に残った『大事な物』を見つけるんだ」

しんのすけが続ける。
                センセイ
「舐めないでよね、オラの魔術の『師匠』は其処に居るインちゃんだゾ?」

「必然、ならば私から見れば孫弟子か。なるほど最期に良い死合ができそうだ」

「なるほどな、あんたとインデックスはそう言う関係か。なら尚更これで最後になんかさせないさ」

「そーそー、それこそインちゃんが『救われない』話ですからな」

「漠然、意味を理解しかねるな」

「闘えば直に解るゾ」

その時、校長室に駆け込んで来た者達がいた。
ステイル・マグヌス、パルツィバル、野筆ヨハネの三人だ。

「インデックス!?無事か!?」

「ステイル!とうま達を止めて!アウレオルスと闘うつもりなんだよ!!」

「なっ!?上条当麻!それは僕らの仕事だ」

「ローマ正教の事は私がやらねばならぬ!」

ちらりと、アウレオルスはそちらを一瞥すると、つまらなそうに言う。

「憮然、これからの闘い。『邪魔をするな』」

そのとたん、インデックスと上条当麻、しんのすけの三人意外は動けなくなる。
             アルス=マグナ
「何です!?これは、まさか『黄金錬成』!?」

ヨハネが驚き声を上げた。

「そんな!?有り得ない!!」

ステイルの叫びを、インデックスが否定する。

「ううん、アウレオルスなら出来るかも、呪文の詠唱を大人数で分担すれば、魔術師ならそれぞれの癖があってできないけど、ここの塾生を使えば。彼は医者でもあるから」

「そうか、副作用に対して適切な処置が出来るから、繰り返し実験が出来るのか」

「グレゴリオ聖歌のアレンジか!?くっ」

食蜂が口の中でつぶやく。

(なるほどねぇ、何でも言った通りになるなんて、魔法力って何でもありなのかと思ったけど、『幻想御手』に似た手でブーストしてたのねぇ)

「じゃあ始めようか?その前にもう一つの名前を聞いておくゾ」

食蜂が疑問に思いステイルに訊ねる。

「ねえマグヌスさん、『もう一つの名前』って何?」

「うん、僕達は魔法名というものを持つ、決闘のさいはコレを名乗る事から始まる」

「自然、それが魔術師の礼儀なればな。憶えておけ『Honos628』【我が名誉は世界の為に】……それが私の名だ」

「俺達は魔術師じゃないんでね、こんな名で悪いけど『幻想殺し』【イマジンブレイカー】の上条当麻だ」

「じゃあオラも上条くんに倣いまして、『法則無視』【トルネードコール】の野原しんのすけだゾ……そして!!」

しんのすけが一息間をおき続ける。

「オラは『原石』だから魔術は使えないけど……オラにだって『魂に刻みこんだ願い』は在る!!オラはインちゃんの弟子で『原典級霊装使い』、『Tempestas904』だ!良く憶えとけ!!」

しんのすけが叫び、それが闘いの合図だった。
アウレオルスは懐から針を取り出し、自らの首に当て、上条としんのすけはアウレオルスに向かって駆け出した。

今夜はここまでです
次回投下は火曜夜12時です

おつ
テンペスタは嵐として904の由来が気になるところ


904ってなんだろうと思ったら、連載開始が1990年の週刊漫画アクション9月4日号か

ローラだろうがアレイスターだろうがしんのすけと敵対した瞬間壊滅確定なんですがそれは…

いつの間にインデックスの弟子になったのだろう。

これから投下します

>>305-307>>310
904はアニメや原作でもしんちゃんのイメージナンバーとしてちょいちょい使われています(住所とか)
>>311
あの手の連中は『敵対せず』『いつの間にか味方として利用されてる』から怖いのだと思います
>>313
前スレで「インちゃんから魔術について教わってる」と
しんのすけが神裂に言うシーンが有ります(判り難いかもしれませんが)

アウレオルスが針を自身の首に突き刺し叫ぶ。

「『離れよ、原石共』!!」

次の瞬間、室内であるにも関わらず突風が吹き、二人は壁際まで押し戻される。

「くそっ風じゃ右手周辺だけ消しても意味が無いな」

「ほうほう、武器にする為の針だと思ったらまさかの鍼だったゾ」

「え?どう違うんだ」

「つまり、ドーピングって事だゾ。でもさっきまでは使って無かったから、きっと今は本気中の本気なんだゾ」

壁際で上条としんのすけの二人が相談する。

「『戦闘には必要』って事か?ならあの鍼を取っちまえばそれで終わり、なら良いけどな」

「そうだね、コッチにはタイムリミットもあるしね」
                とこ
「タイムリミット?パルツィバルの所属の本体が来るまでって事か?」

「違うゾ上条君、オジさんが『魔力を使い果たすまで』だゾ」

「そうか、魔力ってのも無限じゃ無いんだったな。でもそうなったら俺達の勝ちじゃないのか?」

「逆だゾ、これ以上無いくらいのオラ達の負けだゾ」

「……?なんでさ?」

「良い?上条君、普通は魔術師の魔力って、本人の『生命力』を材料にしているんだゾ?」

「なっ!?」

「しかもオジさんは自殺する気満々、残量なんて気にせずバンバン魔術を使ってくるはず。だからその前に決着つけないとね」

「ああ、そうだな!!」

上条は拳を握り直し、しんのすけは懐から護り刀を取り出す。
その様子を見ていたアウレオルスが、二人に言う。

「全然、口程にも無い者達だな。相談は終えたようだが、次はどうする?」

「へっ決まってる。正面突破あるのみだ!!」

上条がアウレオルスに向け走る。
一方、しんのすけは後ろの壁のガラスを『右手で』で持った懐剣の柄頭で叩き割り、『窓に大穴をあけた』。

「どういうつもりか知らんが、無駄だ。『再び風が吹き』貴様等は私に近づけん!」

吹いてきた突風に対して、上条は右手を突き出す。
しかし風の全ては消しきれず、その場に立ち止まってしまう。

「くっ!なんとか後ろに飛ばされない程度には打ち消せるけど、近づくのはちょっと骨が折れそうだな」

上条がつぶやく。
するとしんのすけの声が、アウレオルスの背後、校長室の入口から聞こえた。

「も~上条君の場合、比喩じゃすまないんだから無茶しないでよね」

いつの間にか標的の後ろを取ったしんのすけの手には3メートルを超えようかと言う戦太刀が握られていた。

「アウレオルス!」

姫神が叫び、アウレオルスが振り向く。

「断然、良い策だ。だが甘い!!『砕け散れ極東の刀剣』!!」

「オジさんこそ甘いゾ!!」

戦太刀の刀身が砕け散るが、しんのすけは、かまう事無く手に残った柄を振りぬく。
刹那、光を放ち元の姿を取り戻した第七沈々丸が、アウレオルスを襲った。

「くっ、おのれ。貴様にはその手袋が有ったか」

悪態をつきながら身を大きく引く。
その為しんのすけが振りぬいた第七沈々丸は、その切先でアウレオルスの頬を浅く傷つけるに終わった。

「敢然、やるな孫弟子よ、だが『私の傷は直ぐに治る』ぞ?」

その言葉通り、彼の傷がみるみるうちに塞がっていく。
だがその時、アウレオルスの近くには既に上条当麻が迫っていた。

「ようアウレオルス。風が止まってるぜ?」

声をかけると共に突き出された拳を、彼は首をひねる事で辛うじて避ける。

「ぐっ、ひとまず『距離をとる』!」

上条としんのすけは壁際、アウレオルスは入口近く、三人が先程の立ち位置になる。
      アポート       テレポート
「と、今度は転位か。この街の『空間転位』だと俺は飛ばせないんだけどな……あんたのその、『黄金錬成』ってのか?厄介だな」

「悠然、錬金術の奥義だ。当然、そう浅いものであるはずが無い」

「でも、まずは一手ね」

しんのすけが言い、上条が言葉を繋げる。

「ああ、2対1だから当然と言えば当然だけど……まずは一手、俺達が上回った」

アウレオルスの足元に、頬から流れ落ちた紅い雫が、染みを作る。

「ほう、先の右拳、かすっていたか」

治りかけていた頬の傷が、元に戻っていた。

その一連の様子を、息を飲んで見ていた面々が話す。

「凄まじい攻防戦です、身体が自由でも加勢出来る気がしません。なお、しんのすけが如何にして彼の背後に回ったのか、誰か説明して頂ければ幸いです」

「あのねペンデックス、しんのすけが窓ガラスに穴を開けて、その穴に飛び込んだら反対側のドアから出て来たんだよ」

「うん、恐らくあの『腕輪』の効果だろうね」

「なるほど理解しました」

アウレオルスが穴の空いた窓を見る。

「釈然、空間を歪め繋げたか。なるほど手強いな、『原典級霊装使い』並びに『原石』。だが……」

息を大きく吸い込んだアウレオルスが正面の二人に吠えた。

「俄然、其れでこそ暴れ甲斐があると言う物だ!次は殺す気で行くぞ!!」

上条は拳を握り直し、しんのすけは戦太刀を懐剣に戻し逆手に構える。
上条当麻が叫び答える。

「ああ、第2ラウンドだ。始めようぜ錬金術師!!」

今夜はここまでです
次回でスレタイ回収&『三沢塾』編完結予定
次次回からはオリジナル展開『吸骨鬼』編です
次回投下は木曜日夜12時です

乙ー

吸骨鬼か…確かソーダ水が苦手なのだっけ?

>>328

コーラで溶けるよ!

ついでに吸魂鬼も出そうぜ(適当)

>>1

これは黄金錬成持ったままでアウレオルスが仲間になる可能性が微レ存かな?

吸骨鬼って吸血鬼の親戚みたいなものかな。ボーン・キングを見るとそう思えない。関西弁とか腕からはさみ出すところとか・・・。

これから投下します

>>328-329>>331-333
弱点等の設定は作中でも書きますが判り難かったら
原作46~48巻を読んでくださいね
>>334-337
JOJOやライダーのパロネタは使う時もありますが、基本的にはクレしんととあるシリーズのみのクロスにしたいと思ってます(しん王が既に出ていますが)
>>342-344
クレしんでの原作の設定は解りませんが、このSSでは吸血鬼の亜種としています

上条当麻とアウレオルス・イザードがにらみ合う。

「行くぞ」

先に動いたのはアウレオルスだった。

「『銃をこの手に、魔弾を装填』……」

アウレオルスが前にした手に、レイピアの鍔に銃口が突き出た歪な剣が現れ、握られる。
その様子に、もはや称賛や驚きを通り過ぎて呆れたように上条が言う。

「おいおい、言った通りの現象が起こるだけじゃなく、言った通りに物が現れたりもするのかよ」

「しかもアレって『暗器銃』だゾ?郭ちゃんでも使わないようなマイナー武器なんて、オラも実物は初めて見るゾ」

「必然、使いこなせる者がいなければ、その武器やそれを扱う術も失われていくものだ」

「なるほどごもっとも。でもオジさんも、ガンマンにも剣士にも見えないけど?」

「当然、なれば工夫するまで『人間の動体視力を超える速度にて、弾丸を発射』せよ!!」

室内に一発の銃声が響き、上条の身体が壁に叩きつけられた。


「ごっ……がっ!?」

「上条君!?」

上条を心配して、しんのすけが駆け寄る。
そんな二人に対し、勝利を確信したかのように、アウレオルスが高らかに言う。

「断然、効果が在ったようだな『原石』、どうやら貴様の『幻想殺し』とやらは右手、それも拳のみに宿った能力のようだな」

「……正確には『右手首から先』だけどな。くそ、右肩がイカレちまったじゃねえか」

「必然、着弾と同時に衝撃の塊となる魔弾。周囲の骨は砕けていよう」

上条の右手が使えなくなったと知り、ステイルが毒づく。

「くそっ万事休すか!?」
                  コレ
「何言ってるのステイル君、オラには『軍手』が有るじゃない」

しんのすけが上条の肩に触れ、一瞬の光の後、肩から手を放す。

「……ん。ありがとうな、しんのすけ」

何事も無かった様に右肩をグルグルと回す上条、一方のしんのすけは、少し不安を感じていた。
実はこの手袋には5回という使用回数制限が有る、また5回使い切らなくても、現れてから30分間が経つと消えてしまう。
先程の様なことはあと何回もできないのだ。

(トランプを一枚消費してまた軍手出すなら別だけど……)

呪文を唱える隙を、眼の前の錬金術師があたえてくれるとも思えない。
顔にこそ出さないが『さて、どうしたものか』と考えていたしんのすけの耳に、インデックス達の話し声が聞こえた。


「ねえステイル、あの手袋はなんなのかな?」

「凄まじい程の魔力が見て取れます。なお、例によって『原典級霊装』と思われますが、どなたか説明して頂ければ幸いです」

「ごめん、僕も詳しくは知らないんだ」

「私の記憶力が確かならぁ、『妖精さんに貰った』とか言ってたわねぇ」

「何でも『なおせる』らしい、事実、死にかけていた『私』も凹んでいたこの『鎧』も。両方ともなおしてくれたのだ」

最後の、パルツィバルの台詞に違和感を覚える。
彼は今なんと言った?自分は『まとめて一つ』の『鎧の騎士』を治したつもりだったが、確かに『二つ』の物が治っている。
では軍手は後何回使える?今まで幾つ治した?
『パルツィバル』、『鎧』、『校長室の壁』、『第七沈々丸』……『上条当麻』。
自分の両手を見る、既に5回使ったはずだというのに、その両手は変わらず手袋をしている。

「さて、そんじゃあ反撃と行きますかね……グエッ」
リハビリ
準備運動を終えて再びアウレオルスに向かって行こうとする友人の襟を掴んで止める。

「上条君、見えない弾丸相手にどうするつもりなの!?それにオジさんだって……」

そう甘く無い、そう言おうとしてアウレオルスの方を見て、彼の頬に傷も、血の跡も無い事に気づく。

「そ、それは……エフッ、唾が変なところ入った、ゴホッ……不幸だ。ゲホッ」

友人は膝をついて咳込んでいるが、今はそんなことよりも『傷』の方が重要だ。
顔からの出血は傷の大きさの割に多くなる。当然消せるなら消した方が良い、だが……
彼が一度『幻想殺し』に治療を邪魔されてから、再びその傷について何か言った記憶は無い。つまり……

「大丈夫?上条君……(そのまま咳込んでるふりして聞いて、必勝法を思いついたから)」

「……コホッ(解った)」

しんのすけは上条の背中をさする為に屈み、小声で話し掛ける
しんのすけが背中に触った事で気管に行った唾液が取れたらしい上条が、少しの間の後了解の意を示す。
軍手は、消える事無くそこにある。
それが逆転劇の、ステイルやパルツィバル達が我が目を疑う程のワンサイドゲームの始まりであった。

やっちまった…投下中に書き込んでしまって申し訳ない…orz


(愕然、なんだ。これは……?)

アウレオルスには自身の眼の前の光景が信じられない。
自分は錬金術の奥義に到達した。いくらまだその先が在るとか、通過点にすぎないと言われていたとしても。
自分を除いては今まで誰一人として足を踏み入れた事の無い境地に達した魔導師なのだ。
並みの魔術師共とは格が違う。

(憤然、その私が何故、床に背を付け天井を見上げている!?)

始まりはしんのすけが上条をかばうように一歩前に出た時だった。

「正直言ってもう上条君は役に立ちそうに無いから、ここからはオラ一人で相手になるゾ」

「俄然、面白い、二人でも防戦一方だと言うのに一人でどうすると?」

「やってみれば解るゾ」

「やれる物ならばやって見ろ!!『先の手順を量産、十の暗器銃にて魔弾を発射』!!」

しんのすけが右に一歩ずれ、後の壁に十の穴が出来る。

「どんだけ速い弾でも、銃口の前に立たなきゃ当たらないゾ!!」

「必然、ならば広範囲に攻め撃つまで!!『十の暗器銃にて時間差を持ち、その刀身を回転射出』!!」

「おお~!?」

回転する刃による九つの連撃を、くねくねとした不思議な動きでかわし、

「おのれ、ちょこまかと!」

「キャッチ・アンド・リリース!!」

「白刃取りから投げ返してきただと!?」

しんのすけが投げ返した刃が、アウレオルスの顔のすぐ横を飛んでいく。

「くっ、ならば動きを『封じる』!!」

しんのすけの両足首がロープで縛られ、しんのすけは後ろに尻もちをつく。

「自然、両の足を封じられれば、先程の様に不可思議な動きもできまい?」

「ところがドッコイ!!」

なんと彼はその体制のまま猛スピードで近づいて来た!

「唖然、夢でも見ているのか私は!?」

「臀部の筋肉が自由なら!たとえ足が動かなくても移動にはいささかも支障は無いゾ!!」

「いや、あるだろ……」

さすがにステイルが突っ込む。


「ぬおおおおおお!!」

「ひっ!?来るなぁ!!」

その勢いを殺す事無く、ミサイルの様に飛んできたしんのすけの頭がアウレオルスの腹に激突する。
綺麗な宙返りを決めて着地するしんのすけとは反対に、アウレオルスは後方に飛ばされた。
彼は仰向けに倒れ、その周りに金色の鍼がばら撒かれた。

天井を眺めながら、アウレオルスは思う。

(奮然、負けられぬ!!)

自分は禁書目録の少女を救う為、世界を敵にまわしてでも生きて来た。
しかし、その救いたいと望んだ少女は既に救われていた。
ならば、自分は何の為に生きていたというのか。
そして、生きる意味を失い、自らの人生を終えようとすれば、今度はそれすらも邪魔される。

(ならば、せめて……)

最初は自分に死に場所をあたえてくれるつもりなのかと思ったがそれも違うようだ。
恐らく自分はまた死んでも、彼らの『手袋』と『右手』に生かされるのだろう。

(ならば、せめて……闘って勝つ!!)

アウレオルスは気づかない、既に自分に死ぬつもりがなくなっている事を。
しんのすけと上条を相手にすることで、彼の中で何かが変わり始めていた。

「はあ、何が『必勝法』だよ?俺に一仕事頼んでおいて、結局自分で片づけちまったじゃんか」

しんのすけの足についたロープを右手で消しながら、上条がもんくを言う。

「いや、どうやらオジさんはまだまだやるつもりみたいだゾ?」

しんのすけの指さす方には、起ちあがったアウレオルスがいた。

「オラもうヘトヘト、上条君お願いするゾ」

「……ああ、任せろ」

「憮然、二人がかりでも構わぬぞ?」

「いや俺一人で十分だよ」

「おのれ、どこまでも侮辱するか」

「侮辱じゃないさ。今のあんたは、『大事なことを忘れちまってる』からな。なあ、俺が最初にした質問おぼえてるか?」

「何?」


「お前は何がしたかったんだよ?本当にそれは『もうできない事』か?お前がしてきた努力は、生きて来た事は、本当に無駄だったのか?」

一字一句違う事無く上条当麻が口にする。

「一つだけ答えろと言っていた割には、質問が多いな」

「茶化すなよ。それで、しんのすけが言っていた事の意味は解りそうか?」

「『インデックスが救われぬ』という意味か。漠然、矢張りわからぬな」

「……ならやっぱりあんたは『大事なことを忘れちまってる』よ」

「憤然、何を言うか、私はインデックスの『記憶』を護りたかったのだぞ!?その私が『忘れている』!?侮辱極まりない!!」

「ならあんたは知ってるはずだろう!?『インデックスがどれだけ優しいか』を!アイツが師匠の幸せを犠牲にして手にした幸せなんかで、笑顔になれるヤツかって事くらい!!」

「!?」

「アイツを救うにはな、アイツの幸せの為に誰かが犠牲になっちゃダメなんだよ!!……俺達に出来たのはアイツの『記憶』までだ。アイツの『幸せ』には、あんた自身の幸せが必要なんだよ」

「釈然、確かに私は大切な事を忘れていたようだな」

「ようやく思い出せたかよ。なら……」

「だが私は、もはや引き返しはできぬのだ。右手を構えよ!!『原石』の少年。」

「……ああ、そうかよ。だけど俺はもう、お前に『右手』は使わない」

上条当麻が『幻想殺し』の宿った拳をズボンのポケットに入れた。
その動作を合図に食蜂操祈が叫ぶ。

「ダメよ上条さん!!『禁忌の左手』を使うつもりなのね!?」

何のことは無い、しんのすけが上条に伝えた必勝法とは『ハッタリ』だ。
しんのすけはアウレオルスの『黄金錬成』が自身の『手袋』と彼の『頬の傷』から
『言葉の通りに現実を歪める』魔術では無く、彼にとって不都合な事も含めて『思った通りに現実が歪む』魔術である事に気づき
上条に、『自分がアウレオルスの気を引いているすきに食蜂操祈を解放するように』頼んだ。
他者の『認識』すら、自由に書き変える事の出来る彼女はまさにアウレオルス・イザードの天敵と言える。だが……


「……あー、悪ぃな食蜂。作戦は中止だ」

上条のハッタリを食蜂が真実だと思いこませる。アウレオルスに対してはこれ以上無い最良の策を、上条は放棄する。

「なんだ上条君、(必勝法)使わないの?」

「ああ、その代りに、しんのすけも手伝ってくれ」

「ほーい」

ポケットから、右手を出し上条が言う。

「いくぜ、さっきはああ言ったけど。やっぱり気が変わったよ、アウレオルス・イザード。お前が、自分には救われる資格が無いって言うんなら……」

右拳を握りしめ、上条は続ける。

「まずはその、ふざけた幻想をぶち殺す!!」

「これが最終ラウンドだね、ねえヘタレのオジさん、言葉のままに歪めてみれば~?」

アウレオルスに向け二人が走り出した。

「憮然、だからオジさんでは無いと言っている。行くぞ!『暗器銃を出現、数は一つで十二分、標的に向け魔弾を発射』!!」

銃を構え、上条へ向けるアウレオルスの前にしんのすけが割込み、銃を蹴り上げる

「『どけ』!!霊装使い!」

突風が吹き、しんのすけを飛ばそうとするが……

「ヤダッ!!」

しんのすけが叫び、風が消える。

「唖然、何が起きた!?」

「ナイスだしんのすけ!じゃあなアウレオルス。一旦眠って頭冷やして来い!!」

上条の右拳が確かにアウレオルスの顎を捉えた。

「アウレオルス。起きて起きて」

数分後の校長室。姫神秋沙が気絶したアウレオルスを揺する。

「必然、やはり私は負けたか」

「それでも。生きている。そして私は貴方に生きてほしい」

「自然、ならば次の生きる理由が見つかるまでは、お前の為に、生きるとしよう」

「……」

「どうしたと言うのだ?」

少し離れて、その様子を見ていた者達が話しだす。

「ねえインちゃん、もしかして素のアウレオルスって上条くんに似てた?」

「うーん、良くわかんないんだよ」

「ところでしんのすけは、最後どうやって風を消したの?」

「良くわかんないゾ。オラの能力かも知れないけど」

「仮説を立てる事は出来ます。なお、現時点で確証はありません」

「どんな仮説なの?ペンデックス」

「しんのすけの能力は漢字標記では『法則無視』と言うそうですが、文字通りの能力ならば、あり得る。ということです」

「そうかっそれなら納得かも。『黄金錬成』は言わば『法則を自在に書き変える魔術』だから……」

「書き変わった法則を無視すれば、無効化出来るかもしれません。なお、任意で出来る事では無いと思われますが」

「何はともあれ、これで正真正銘のハッピーエンド。だよな?」

「うん、でもこれからどうするんだい?ローマ正教の騎士君」

ステイルがパルツィバルに問いかける。

「はて?神父殿が何を言っているのか。『アウレオルス・イザード』ならば、先程下で神父殿と司書殿と私の三人で退治したではありませんか」

「なるほど。うん、確かにアレは『アウレオルス・イザード』だね」

「良いのですか?パルツィバル」

「野原殿にも司書殿にも命を救われたこの身。なればお二人に恩を徒で返すような事は出来ません」


一階ロビーで気絶したアウレオルス・イザード(偽)を抱えたパルツィバルを先頭に、一行(見送りに姫神とアウレオルスも同行)が自動ドアをくぐると、そこには異様な光景が広がっていた。
喪服の女が一人、長い煙草のような物を手に立っている。
そして、彼女の周りには幾人もの鎧姿の騎士達が倒れていた。

「お前は!?」

しんのすけが声を上げた。
それに驚き、上条はしんのすけを見る。

「なんで……お前が、此処に居る……?」

彼のその声は震えていた。つい先程『あらゆる世界の法則を書き変える事が出来る』という『魔導師』を相手にし、
『書き変えられた新しい法則を一切無視することで打ち破る』という規格外の『能力』を発揮した、彼が。
まるで『絶対に勝てない化物』にでも対するかの様に。
まるで自身の感じる恐怖を誤魔化す為の様に、彼は叫んだ。

「答えろ!!ナタリー・コーツバン!!」

「ほう、私を知っているなんて、何処かで会ったかしら?」
    ボーンヴァンパイアクイーン
喪服の女『吸骨鬼の女王』ナタリー・コーツバンは妖艶な笑みを浮かべた。

今回はここまでです
次回までチョット時間がかかりそうですが一週間以内には投下します
>>338
原作の小萌先生くらいの準レギュラーになりそうです
>>354
いえいえ、どうぞお気になさらず

ところで昨日、レンタルビデオ店でクレしんDVDの4期7巻、8巻を借りて見ました
クローバー幼稚園のカスカベガーディアンズの話が2話づつはいっていて、それ目当てだったのですが
しんのすけのコンピューター技術が凄過ぎてふきました
それと7巻の最後の話で
ひろしが『おやつの時間でも無いのにしんのすけがチョコビを食べている』=『みさえがなんらかの口止め交渉をした』と推理して
まるで名探偵が真犯人を追い詰めるかのようにみさえに話すシーンは最高でした

了解
BASARAの新作ってアレか赤いロリコンが剣豪将軍になった奴か
麦のん(の中の人)は3から登場してた筈

こつみつどりょう(漢字忘れた)を思い出しながら保守

>>1またずれそうにでてきたどっかのくにのおうじはでてきますか?

>>411
あれ忍とフラグ建てた後どうなったっけ?
しんのすけがオマタ王子?から金の勲章貰いまくってたな

何らかの形でツバキちゃんが出てくれることを望んでる

どうも、前スレの予告でナタリーのファミリーネームを間違えてた1ですorz
これから投下します

>>403
あの声で「赤い人」というと1は「仮面の人」よりも「麦わら帽子を主人公に託した人」が浮かびます。
BASARAはとあるシリーズにも出演てる(中の)人が結構いますね
>>404-410
古津光度良、改めて見ると凄い名前ですね(クレしんには変な名前も珍しくありませんが)
>>411-412
あの二人は割と直ぐに出てくる予定です(次の次のエピソードの予定)
>>413-414
オマタ王子はその後(たぶん自国民の)『心が綺麗な娘』と結婚します
その式にまたずれ壮の住民達と野原一家が招待されて、しんのすけがクーデターを起こそうとしている
反政府軍に拉致されます(オマタ王子と一緒に居たため)で、色々あって

フクラ・ハギ大佐「タッタ ヒトリノ コンナ ガキニ 我軍ガ全滅 サセラレル トハ…」
ってなります
>>415
いつかやりたいですね。問題は1の涙腺がもつかですが

とある錬金術師の話をしよう。
彼は世界中に居る全ての『魔女の脅威に怯える人々』を助けたかった。
その為に魔女達が使う、魔術の対抗策を記した本を書き続けた。
時に自身の知識を集め、時に既存の魔道書を書き写し。
一月もの間、不眠不休で書き続けた事も在った。

しかし、彼がそうして作った本が、彼が助けたいと望んだ者達の為に使われる事は無かった。
彼が所属していた組織はその組織に属する者達にしか、救いの手を差しのべ無かったのだから……

それを知った彼は秘密裏に、怪しまれぬよう慎重に、自身の著書を外部に持ち出すようになった。
そしてそこで彼は出会ったのは、1年間と言う限られた時間の中を生きる少女だった。
別れの時がおとずれ、何も忘れたくないと泣く少女の涙に錬金術師は誓う。
彼女の記憶を取り戻すと、その為ならば世界中を敵にする事になってもと。
彼はその後、姿を消した。

2年の旅を経て、少女を救う算段のついた彼は、その為に必要な特異な能力を持つ者が
とらえられていると言う新興宗教団体に乗り込んだ。
そこで、錬金術師と巫女が出会った。
とらわれの巫女は錬金術師に言う。

「私。魔法使いになりたい。貴方は魔法使い?」


第8話『吸骨鬼』【ボーンバンパイア】

「ああ、必ずしも会っているとは限らないわね。」

喪服の女、しんのすけからナタリー・コーツバンと呼ばれた彼女は人差指の先を顎に着け、首を傾けながら言う。

「私がまだ只の人間の女優として生きていた頃のファンとかかしら?」

上条にはその様子が、その女が、『何か恐ろしいモノ』に見えた。
彼女は楽しげに、笑いながら話す。
彼女が立つのは倒れた騎士達の中、彼女の周りには人が斃れていると言うのにだ。
          ボーンバンパイア
「でもその様子は私が『吸骨鬼』だとも知っているようね」

その言葉に、その場に居る者達の緊張が高まった。

「Bone Vampire(生まれながらの吸血鬼)だと?まさか『真祖吸血鬼』だというのか!?」

「ううん、そうじゃないんだよ、騎士の人。……この場合のBoneは『生れつき』じゃなくて『骨』……」
    ボーンバンパイア
「つまり、『吸骨鬼』とは、血液では無く、骨を溶かして啜る吸血鬼の亜種の事です」

恐怖するパルツィバルの言葉をインデックスとヨハネが否定するが、それは僅かな慰めにもなっていなかった。

「骨!?」

「愕然、血を吸わない吸血鬼だと!?」

上条とアウレオルスがそれぞれ驚き、アウレオルスは姫神を自身の後ろに隠すように立つ。

(必然、この女に吸血鬼が引き寄せられたか。だが……)
       ディープブラッド
姫神の持つ原石『吸血殺し』は『吸血鬼を引き寄せ』、『例外なく殺し尽す』能力だ。
しかし後者にはあくまで、自らの『血』を口にさせる事が必要になる。
『骨』にもその力が宿っているかはわからない。
仮に骨にもその効力が在ったとしても……

(毅然、私が護らねば!!)

何より今自分の背で震える彼女は、もう誰も殺したく無いと泣いていたのだ。
誰かを殺すくらいなら自分を殺すと決意した少女に再び殺せとはあまりにも酷だろう。

「『吸血鬼』、ねえ……」

喪服の女は笑みを消し不機嫌に言う。

「あんな食事の際になんの食器も使わない野蛮な種族と一緒にするな」

手にした長い煙草のような物を愛おしげに一撫でした後、ナタリーがこちらを睨んだ。
その冷たい、何処かヒトらしからぬ瞳に上条は驚く。

(なんつう眼をしてやがる……)

その時、アウレオルスの後ろから顔をのぞかせ、ナタリーを睨み返しながら姫神が言った。

「確かに。あなたはあの人達と違う。あの人達は。私達と何も変わらない……誰かのために泣いて。誰かのために喜ぶ。そんな人達だった。あなたは何者?」

「ほう……お前からうまそうな匂いがするぞ。お前が『吸血殺し』だな?」

ナタリーが姫神に向かい歩き出す。

「『近づくな』っ!!喪服の女!!」

アウレオルスの『黄金錬成』が発動し、それが戦闘の合図となった。

短いですが、今夜はここまでです
次回投下は月曜日の夜11時です

乙ー

ナタリー強いな

上条『インデックスのご飯づくり』

しんのすけ「あいちゃんの相手」

これから投下します
>>445
その強さには秘密と言うか、理屈が在ります
詳しくは次回明かされます
>>454-455>>459
言った本人にとっての「骨が折れる」では無く、聞いた吸骨鬼側が骨が折れる言葉だと思います

「くそっ、どうすりゃ良い!?インデックス、しんのすけ」

「落ち着いて上条君、さっきも言った通り吸骨鬼に吸われても死ぬわけじゃ無いし、ましてや吸骨鬼になるわけでもないから。それにこの騎士さんもお助けしないと」

「あの女には何か、食べる以外の目的があるみたいだったんだよ。なんにせよ時間はまだあるかも」

「理屈は解る、けど、でもっ!!……あーくそっ」

上条が頭を抱える。するとガラスが割れる様な音がした。
 イマジンブレイカー
「『幻想殺し』が何かを壊した?……なっ!?」

「どうしましたか?上条当麻」

「食蜂が、姫神に変った……?でもだとすると本物の食蜂は?」

「とうまは何を言っているのかな」

「大丈夫。私が攫われるより。ずっと安心。彼女には自分を守れるだけの能力が有るから」

巫女服の少女が上条に話しかける。

「おい姫神!?どうして」

「その前に。上条君はアウレオルスの頭を触って」

「あ、ああ」

言われた通り上条がアウレオルスの頭を触ると、彼は一瞬驚いた顔をして直ぐに安堵を浮かべた。

「成程、そう言うことか……『この場に居る者から誤認の術が解けよ』」

アウレオルスがそう言うと、驚きが残りの全員にも広がった。

「みさきがあいさになった!?」

「うん!?つまりどういう事だい?」

「奴等に攫われたはずの巫女殿が突然現れた!?」

「ほほう、とりあえずは。操祈ちゃんグッジョブですな」

「しんのすけ、それはどういう……ああ成程そう言うわけですか」

それぞれが一通りの反応をしめした後、姫神が続ける。

「もう事情が解った人も居るみたいだけど。一応説明する。実は私と自分が入れ替わって誤認されるように。食蜂さんが能力を使った」

「つまりあの女、しんのすけはナタリーって言ってたな。アイツが攫って行った姫神は実は食蜂ってことか」

姫神がうなずく。

「じゃあ、まずはこの人を治しちゃおうか。パルツィバルさん鎧脱がすの手伝って」

しんのすけがその場に一人だけ残った、先程上条が殴りつけた騎士を指差して言った。


「そうだ野原殿、吸骨鬼に喰われた者はどうなるのだ!?死ぬわけでも同族になるわけでも無いとは一体……」

「うん、それと奴の弱点なんかも聞いておきたいね」

パルツィバルとステイルがしんのすけに詰め寄る。

「吸骨鬼はストローを首に突き刺して骨を吸うんだゾ。で、骨を吸われた人はボーンレス症候群って状態になるんだゾ。……こんな風にね」

鎧を脱がされた騎士の身体は、不自然に柔らかく、グニャリと半分空気の抜けたゴム風船の様につぶれていた。

「ボーンレス症候群か、確かにまるで骨を失ったようだね」

ステイルの言葉にしんのすけ先を続ける。

「正確には骨は無くなったんじゃなくて、液体になっているんだけどね。で……」

しんのすけは上条の右腕を掴んでその先を横たわる騎士に着けた。
しかし何の変化も無い。

「見ての通り、ボーンレス症候群自体は現代医学の領域ってわけだゾ。……オラも詳しいわけじゃ無いけどね。インちゃんは何か知ってる?」

しんのすけはインデックスに水を向ける。

「記録によると吸骨鬼は、古代ウエズリー王国で滅びたはずだったんだよ。でも十年前に吸骨鬼の王が使っていたと言う骨でできたストローが大英博物館から盗まれて、その数日
後から世界各地でボーンレス症候群の発症者が発見されるようになったんだよ」

「まあその後色々あって復活した吸骨鬼達の王、『ボーン・キング』はたおされて。吸骨鬼は何人かの生き残りを残すだけになったんだけど……あのナタリーは十年前にボーン・キ
ングの愛人だった奴だゾ……良し治った」

騎士は顔色も良くなり安らかに寝息を立てている、それを見てパルツィバルがしんのすけに礼を言う。

「私のみならず仲間まで……重ね重ね忝い」

「気にしないで、それより奴らの弱点についてだけど、『炭酸水』と『聞いただけで骨が折れるような言葉』だゾ。簡単なのなら『草むしり』とか『ルーティンワーク』とか」

「必然、本家の吸血鬼が神父の『神に祈る言葉』に退けられたと言う伝説も在る。奴らも言霊にしばられるか」

「うん、だとすると炭酸水は聖水にあたるのかな?」

アウレオルスとステイルが勝機有りと気合を入れるが、しんのすけは残念そうに言った。

「でも炭酸水はダイバースーツとかでガードされちゃうし、疲れる言葉も指で耳を塞ぐ程度で無効化されちゃんだゾ」

「じゃあ。どうするの?」

姫神の問いかけにインデックスが応える。

「うーん、ボーン・ブレイドが有れば勝てるかもしれないけど、アレのオリジナルは十年前から行方不明だし」

「ボーン・ブレイド。って何」

「古代ウエズリー王国の人間国宝、刀鍛冶『カッターナ・ツクリテーナ』が作った『骨を断つ剣』です。なお、アウレオルスの『黄金錬成』や、しんのすけの『スゲーナスゴイデ
スのトランプ』でも主観により全く同じ物は作れないと思われます」

ヨハネの説明に、その場にの空気が重くなる。
この空気を変えようと、上条が口を開いた。

「そ、それよりしんのすけ、ホラー映画みたく吸われた奴が手下になるわけじゃ無いなら、どうしてあの騎士達は襲って来たんだ?」

「そういえば、ナタリーが操作系の魔術を使っていたとしたら。不自然なところがありましたね」

「うん、とうまが殴ったらほんの一瞬だけど一切の魔術が使えない瞬間が在るはずなのに、
あの女が殴られた時も騎士の動きはスムーズだったかも」

上条の疑問をしんのすけは何でもないように答えた。

「ああ、それは多分。この街の『暗部組織』が協力してるんだと思うゾ」

「暗部組織?」

「この街にはお金次第でどんな仕事も引き受ける傭兵集団が非公式に幾つも在るんだゾ。まあ大抵は何処かのお偉いさんのお抱えだけどね。で、当然ほとんどは自分の能力を活か
して仕事をするんだけど、『水流操作』はそんなに珍しい能力でもないからね」
 ハイドロハンド
「『水流操作』!?そうか騎士達は骨が溶けてたから……」

「くっあの女吸骨鬼だけでも厄介だと言うのにその上学園都市の能力者がついてるのか」

パルツィバル悔しそうに拳を握る。

「うーん益々不利な状況ですな。策が無いわけじゃ無いけど、とりあえずアウレオルスのお兄さん、ダメもとで炭酸水創ってくれる?」

「悄然、ダメで元々……か。む?そういえば貴様はオジさんと呼ばなくなったな」

「うん、さっきまでは老け込んでてオジさんに見えたけど、今はとてもいい顔をしてるよ、アウレオルスのお兄さん」

「自然、本来の顔つきになったのだろう。私は、まだ18だからな」

「「「え?」」」

何人かの声が重なって聞こえた。

「憮然、誰だ今驚いたのは」

いつの間にか皆の顔に笑みが浮ぶ。

「うん、しんのすけは何か策があるんだったね?おしえてくれ」

「おお、それはねステイル君」

しんのすけが、話し出そうとしたとき、一人の女性がそこに駆け寄って来た。

「良かった、やっと人に会えたー。夏休み中の真昼間だっていうのに突然周りにだれも居なくなって不安だったのよ」

綺麗なアメリカ人女性がしんのすけ達に話しかけた。


一方その頃、三沢塾からそう遠くない第七学区某所。ナタリーの隠れ家。
攫われた食蜂操祈はと言うと、震えていた。

(上条さぁん、野原さぁん。早く助けに来てぇ!!リモコン入ったバッグいつの間にか無くなってるぅ!!)

「ふふ、可哀想に。そんなに震えて……安心して良いわ、貴女に生きていてもらわなくちゃいけないのだから」

そう言うと、ナタリーは跪かせた騎士の一人の、その頬を蹴り飛ばした。

(な、何のつもり)

「不思議そうね、無理もないか。これから行う儀式には『歯』が必要なのよ。ふふ、顎の骨も溶けているから簡単に歯が抜けるわね」

ナタリーはかがんで床に散らばった歯を拾う。

「今、三沢塾周辺はコイツらバチカンの騎士達が施した『人払い』の術式がほどこされているわ。私はそれに魔力を流し込んで、もっと強力にするのもっと範囲を広げるの」

歌うように、ナタリーは食蜂が姫神秋沙だと、『吸血殺し』だと思い込みながら話しかける。
            ボーンバンパイアハンター
「そうすればあの忌わしい『吸骨鬼狩り』の連中も入って来れない、でも貴女に引き寄せられて私の仲間は世界中から集まるわ。」

ナタリーは食蜂の頬を撫で、狂気に満ちた笑顔で続ける。

「勿論あの蛮族共も集まってくるでしょうね。でもアイツらは貴女に殺される、だから私の仲間だけが残る」

(な、なんなのこの女の『木原』顔負けの狂気力は……!?)

「だからその為に貴女に逃げられるわけには行かないの。だから『骨抜き』にするわね」

食蜂の首に骨でできたストローが刺さり、身体の内部で骨が溶かされ一息に吸われた。
ナタリーの顔が憤怒に染まる。

「コイツ!?『吸血殺し』じゃ無い!?」

ナタリーは先程拾い集めた騎士の歯を外に投げばら撒く。

「古きギリシア、アレスの泉、カドモスが討ちたる竜の牙を摸する!! 『Regina020』が命じる!!」

怒鳴るように、呪文を唱える彼女の足元に、食蜂がグニャリと倒れた。

今夜はここまでです

果たしてしんのすけの策とは!?
ナタリーが行おうとしている儀式とは!?
人は居ないはずの空間に一人残されていたアメリカ人女性とは!?(バレバレですね)

次回はオリジナルの魔術戦、とあるの世界観に合わせられれば良いのですが
次回投下は木曜日夜11時です

これまでの操祈ちゃんの被害リスト
・本来無関係な事件に巻き込まれる
・しんのすけの頭を覗いて激しい頭痛に襲われる
・想い人に頭を撫でてもらうチャンスが潰れる
・強制紐無しバンジージャンプ
・上条の作戦変更により、大活躍のはずが空気に
・騎士に腹パン←New
・敵に攫われる←New
・ボーンレス症候群にかかる←New

乙です。
操折ちゃんマジ受難
報われて欲しいわ

殺されてもおかしくなかったのに骨を吸われただけってのは運が良かったと思う
悪運が強いというかダイ・ハードというか

>>478
それでも上条さんを上回る不幸体質なのは違いない

(やたら酷い目に遭う割に紙一重で生き延びまくるという面がそっくりだよなと思っただけなのに)

しんちゃんって暗部のことをどこで知ったのだろう。絹旗と知り合いだけど絹旗から知ったとは考えにくいし・・・。

そもそも異能生存体自体が主人公補正に対する開き直りみたいなもんやし

>>501
アレイスターと知り合いなんじゃないの?

駒場さん経由じゃないのか?

どうも、おひさしぶりです。>>1です
間を空けてしまい申し訳ありませんが次回投下は7日の夜9時頃になりそうです

以下レス返しです

>>475>>478>>483
超電磁砲のコミックを読む限り原作でも『上条さんに匹敵する不運キャラだなぁ』と1は思いました。
原作の上条さんはなんだかんだで自分は『幸せ』なんだって断言してますし
>>494-497
キリコと言えばBJのドクターキリコしか知らない1としては
>>494に当てはまるキャラクターは『戯言使い』の『いーちゃん』が一番最初に思い浮かびます
上条さんの不幸体質は『周りの不幸をしょいこむ』タイプですが、不幸体質には『周りを巻き込んで不幸になる』タイプもあるという事ですね
ところでそう考えると原作のねーちんとしんのすけの『幸運体質』も対照的ですね
>>502
1は『主人公補正では無く○○と言う能力』みたいな作品が好きなんですが、なかなか出会えません。
だから劇しんのオラ嫁でボーちゃんがOBAKAパワーについて説明した時は目から鱗でした
>>501>>503-508
一応しんのすけもレベル5なので暗部組織にスカウトされた事があり、その時は怪しそうなので断り
その後>>507さんの言う通り駒場さんから詳しい話を聞きました。
ちなみに前スレにも『暗部組織』『猟犬部隊』という単語が駒場さんとの会話にでてきています

来年は投下ペースをもう少し上げたいですね
それではみなさんよいお年を

設定やカタログスペックなど関係ない強キャラが主人公ならそれは主人公補正ではなく実力だと納得される
主人公でなくても強キャラとして描写される程度の力量を示せる者ならば言わずもがな(例:空条承太郎、赤木しげる)

主人公だから運よく何とかなったという描写はある程度は仕方がない
しかし度が過ぎると「主人公補正にも程がある」「ご都合主義」などと酷評されるだろう
例えば「金庫のダイヤルを適当にいじっていたら運よくロックが解除された」的な展開では盛り上がらない

そんな話の都合を作中に存在させた設定と言えば
ブリーチの崩玉(望む方向へ導く能力)ぐらいしか思いつかないな
(「ご都合主義で出来ている」と言われることさえある作品なので例としては不適切かもしれない)

第9話『吸血鬼』【ヴァンパイア】

突然現れたアメリカ人女性を見て、しんのすけが驚きの声を上げる。

「おお!?お姉さんは!!」

「しんのすけの知り合いなのか?」

「あら?何処かで会ったかしら?私は貴方を思い出せないのだけど」

上条がしんのすけに訊ねるが、当の女性は知らない様子であった。

「まあ十年前に一回会っただけだしね。クリアランスセール・マースオさん、だよね?」

「ええ、そうだけど。貴方は……ん?十年前……ああっ!?」

何か思い出したらしいその女性、クリアランスセールはトラウマがよみがえったかのように鳥肌をたて震えだす。

「ど、どうしたのお姉さん!?」

その時、何かに気づいたらしいインデックスが叫んだ。

「気をつけて!!この人は『吸血鬼』なんだよ!!」

一瞬の間が空き、最初に反応したのはアウレオルスだった。
咄嗟に姫神を背にかばう。

「奮然、この女の血は断じて吸わせんぞ!女、先程の『ケルト十字』を……」

「うん。もう着けてる。食蜂さんと入れ替わる時に。彼女から着けるように言われた」

姫神が自身の能力を封じる霊装を身に着けた事を知り、アウレオルスは安堵する。
一方しんのすけはインデックスの言葉に納得していた。

「成程『吸血鬼』ですか、道理で十年経ってもお姉さんが若いままと言うわけですな~」

手を打つしんのすけに上条が驚いて訊ねる。

「十年ぶりに会ったのに若いままって、見るからに怪しいじゃねえか!?何故にそんなフレンドリー!?」

「歳を取らないってだけなら、オラの友達にも何人か居るしね。上条君の身近にも居るでしょ?」

「あれ?しんのすけに俺の母親の事話したこと有ったっけ?」

「いや、オラは担任の先生の事を言ったんだけど……なに?上条君の母ちゃん若いままなの?良いなぁ、羨ましいゾ」

長くなりそうな二人のやりとりに、ステイル割り込んで待ったをかけた。

「うん、楽しくおしゃべり中のところに悪いんだけど、結局そこで震えている彼女は『敵』って事で良いのかな」

ステイルの疑問にしんのすけが答える。

「それはどうかな?さっき秋沙ちゃんが言ったように、吸血鬼も人間も根本的にはそう変わらないし。とりあえずはお姉さんの話を聞くとしますか」

しんのすけが彼女の肩に手を置く。
手袋の効果によるものか震えが止まり、それに気づいた彼女は何処かぎこちなくもしんのすけに微笑む。

「ありがと、だいぶ楽になったわ」

「どーいたしまして。それで?お姉さんは吸血鬼なの?」

「ええそうよ、君はあの時のボウヤ……確か、野原しんのすけって言ったかしら?」

「おおそうだゾ。思い出してくれて嬉しいゾ」

「まあもともと日系人の古宇森の親戚でもない限り、あなたの一家くらいしかこの国に私の名前まで知ってる人なんか居ないはずだしね」

「コウモリって?」

インデックスが訊く。

「マースオ家に仕える執事よ。ところで……白い修道服なんて初めて見たけど、貴女はシスターよね?」
             シスター
「そうだよ、私は敬虔なる修道女なんだよ」
わたし
「吸血鬼が怖くないの?普通十字教徒なら警戒するか、敵意を表すものよ。そっちの神父と騎士とスーツの男みたいに」

女吸血鬼がこちらを向いたため、呼ばれた三人はさらに警戒心を強め、ステイルがカードを構えるが、しんのすけが彼に下すよう手の動きで伝える。

「大丈夫、お姉さんはそれほど悪い人じゃ無いから」

インデックスが同意する。

「うん、私もそう思うかも」

ステイルがしぶしぶカードを懐にしまい、言った。

「しんのすけの知り合いらしいけど、そこのところを詳しく説明してくれるかな」

「詳しくも何も、ほんとに十年前に一回会っただけだゾ?家族でキャンプの帰りに山の中で迷っていたところを助けてくれて、一晩泊めてもらったってだけ」

上条がふと疑問に思った事を口にする。

「さっきクリアラ……えーっと?」

「クリアランスセール・マースオよ。呼びにくければクリアで良いわ」

「解った、それでクリアはさっき、なんで震えていたんだ?」

彼の問いかけにクリアではなくしんのすけが応える。

「いや~、実はオラの父ちゃんが料理を作ったんだけど……」

「「だけど?」」

インデックスと上条の声が重なった。

「餃子だったんだゾ。ニンニクたっぷりのね」

「ああ、なるほど。でもよくしんのすけは十年も前の事を覚えてたな」

「ふふふ、上条君。オラは美人のお姉さんが関わる思い出なら、インちゃんにも負けない記憶力を発揮するのさ!!」

「完全記憶能力!?」

上条は納得したが、インデックスは更に続ける。

「吸血鬼の弱点はニンニクって、それって迷信じゃ無かったの?」

「勿論全ての吸血鬼にニンニクが効くわけじゃ無いんだけどね。もしかしたらマースオ家は吸血鬼とか関係なしに単なる大蒜アレルギーなのかもしれないわね。」

苦笑いを浮かべながらクリアが答え、しんのすけが彼女に謝った。

「あの時は恩を仇で返してしまいまことに申し訳なく……」

「良いのよ、気にしないで。でもまさかあの時のボウヤにまた会うなんてね……なかなかイイ男に成ったわね」

「いや~それほどでも~。で、本題だけどお姉さんはどうしてココに?」

「(吸血鬼の感覚では)少し前に、何処かで吸血鬼の傍系だか亜種だかがバカな事をしたらしくて。おかげで世界各地の『吸血鬼狩り』の連中が張り切りだしちゃってね。日本語では何て言ったかしら?『高飛び』、『疎開』……『逃亡』は何か違うわね」

「この場合、適切なのは『避難』でしょうか、なお、『何故よりによって学園都市を?』と言う私の疑問に答えて頂ければ幸いです」

「いや、良い手ですぞ司書殿。この街は退魔師には入りにくい街ですからな」

クリアが説明を続ける。

「それで、私はこの街に一人隠れ住んでたのだけど、今日は『美味しそうな甘い匂い』を追っていたらいつの間にか周りに誰も居なくなっていて」

「自然、やっと目にした私達に話しかけてきたわけか」

「うん?こう言っちゃなんだけど巫女に修道女に騎士に神父……よく声をかける気になったね?」
                   バンパイアハンター
「『甘い匂い』も突然弱くなるし、最初は『吸血鬼狩り』の罠に掛かったのかとも思ったけど……ソレっぽく無かったから、特にその二人は」

クリアがしんのすけと上条を目線で示す。

「匂いが。突然弱くなったのは。私が原因」

姫神がアウレオルスの背から出て一歩前に出る。

「貴女が?」
   ディープブラッド
「私。『吸血殺し』だから。ついさっき封印したけど」

「『吸血殺し』!?封印が間に合って良かったわ。運がわるければ死んでいたわね、私が」

その時、しんのすけは違和感を覚えてクリアに訊ねた。

「待ってお姉さん、匂いは『弱く』なったの?『消えた』んじゃなくて?」

「ええ、そうよ。今もかすかに漂ってきてるわ」

しんのすけは俯き少し考える。
食蜂は自身が姫神だと誤認されるように『心理掌握』を使った。
しかし彼女自身の知識に無い物(吸血鬼が感じ取る『吸血殺し』特有のフェロモンのような物)まで誤認させる事ができるのだろうか?
だとしたら……

「ねえ秋沙ちゃん、操祈ちゃんは……」

しんのすけが何を言いたいのか理解した姫神が肯く。
しんのすけが顔を上げる。

「クリアお姉さん、実は周りに人が居なくなったのは『吸骨鬼』が関わっていて、それでチョット手伝って欲しいゾ」

「成程ね、またあのバカ共が……ええ、構わないわ」

「ありがとう」

礼を良い、息を大きく吸い込む。

「上条君、インちゃん、ペンちゃん、秋沙ちゃん、パルツィバルさん、アウレオルスお兄さん……勝って終わらせに行くゾ!」

仲間達にしんのすけの自信に満ちた力強い声が響く。


「……うん?僕の名前は?」

赤毛神父の呟きは黙殺された。

今回はここまでです
と言うわけで謎のアメリカ人女性はクリアランスセール・マースオでした
今回はシリアスな中でのギャグパートでした
小説形式のままでも誰がどの台詞か判り難いところが無かったのなら良いのですが

第10話『蒔かれし者』【スパルトイ】

「勝ちに行くのは良いんだけど……」

クリアがしんのすけに話し掛ける。
        ボーンバンパイア
「あのバカ達……『吸骨鬼』が、周りに人が居なくなった事と関係があるって所。詳しくおしえてちょうだい」

クリアの言葉にはパルツィバルが答えた。

「実は私は仲間達と共にとあるはぐれ魔術師の討伐にこの街を訪れていたのだが、その為に『人払い』の術式を三沢塾周辺に施したのだろう。しかしその仲間達が吸骨鬼に攫われてしまったのだ」

「成程ね、つまりその人達を取り戻せば術は解除できるのね」

「でも。ローマ正教の騎士達も。敵に操られている」

「厄介な事ね」

姫神の補足にクリアがため息をつく。

「ところでそこで寝ている騎士はもう大丈夫なの?操られているんでしょう?」

先程一人だけ残された騎士を差し言う。

「うん多分ね。でも眠ったまま外に置いとくのも危ないし。アウレオルスのお兄さん、お願いするゾ」

「承知した『転位せよ、眠る騎士』」

アウレオルスが騎士を転位させる。

「私のダミーと同じく三沢塾の隠し部屋の一つに飛ばしておいた」

「そういえば、いつの間にか居なくなってたな」

クリア、アウレオルスを除いた、その場の全員が上条の言葉に共感した。
一人、ダミーについて知らぬクリアが純粋に感想を述べる。

「へえ、凄い魔術ねえ」

「当然、私は魔導師なのだからな」

状況の説明が一区切りついたので、しんのすけは皆を集め、説明する。

「じゃあ、さっき話そうとした『策』を話すゾ。その前にまずは秋沙ちゃん、説明をお願い」

姫神が肯き、口を開らく。

「食蜂さんは。私が能力を封印する直前に私の髪を数本抜いて。自分のスカートのポケットに入れていた」

「釈然、誤認の術と併せ、より確実に身代わりとなったか」

「食蜂って?」

知らぬ人名が出たため、クリアが訊ねた。

「『食蜂操祈』ちゃん、他人の認識や記憶を書き変えたり、頭の中を覗いたりする能力を持っていて、それを使って吸骨鬼に自分が『吸血殺し』だと思いこませたんだゾ」

「それで、『吸骨鬼』にさらわれちゃったんだよ」

しんのすけとインデックスが答える。

「成程ねえ。で、その子は封印される前の『吸血殺し』の髪を持っている。私はその匂いを追えば良いのかしら?」

「うん、お願いするゾ。クリアお姉さん」

クリアが了解するのを確認し、ステイルが先を促す。

「それで、肝心の君の言う『策』ってのは何なんだい?」
                   アルス=マグナ
「重要なのはアウレオルスのお兄さんの『黄金錬成』なんだけど、アレって何処でも使える?」

「いや、三沢塾の内部と近辺でしか使えぬが」

それを聞いたしんのすけがトランプカードを一枚手にし、少し悩んでいる様に呟いた。

「ペンちゃんの時みたいに『複数の記憶を組み合わせて再現』……上手く行けば良いけど……―――『スゲーナスゴイデス』!!」

カードが赤い光に変わり、その光がしんのすけの手の上で新しく形を創る。
数瞬の後、彼の手には一振りの細剣が握られていた。

「唖然、記憶を再現すると言って言たが、それは先程私が使用した暗器銃か?」

「うん、使い慣れてる武器が良いと思って。ほい」
                  レイピア
そう言ってしんのすけはアウレオルスに細剣を差し出す。

「歴然、先の手袋にも勝るほどの凄まじい魔力をこの暗器銃から感じるぞ。この霊装はどの様な奇跡を内包すると言うのか」

「勿論ただの暗器銃じゃ無いゾ。実はそれはね……お?何この音?」

しんのすけが新たに創った霊装の説明をしようとした時、ガチャガチャと妙な音が近づいて来た。
その音はまるで、
何十もの人が列をなし行進するような足音と、何百もの蟲達があげた断末魔のような怪音にも、聞こえた。

音が更に近づき、しんのすけ達はその正体を知る。
それは、何千もの骨がぶつかり、こすれ、軋む音だったのだと理解した。

今、彼らの眼にはこちらに歩いてくる数十セットの人骨が写っていた。

 スパルトイ
「『蒔かれし者』!!ギリシャ神話に出てくる魔導人形なんだよ!」

インデックスが声をあげ、上条が少し怯えた様に彼女に訊ねる。

「インデックスさん!?名称や由来よりも弱点プリーズ!?」

「折れようが砕けようが直ぐに元通りに再生するかも!だからとうまの手も多分効かないんだよ」

「ほうほう、ステイル君の炎の巨人みたいな超速再生系の能力は上条君の天敵ですからな」

インデックスの説明にしんのすけが納得する。

「気をつけろ、上条当麻。来るぞ!!」

ステイルが警告する。
すると今まで歩いていた骨組み達が一瞬立ち止まり、一斉に襲いかかってきた。

「ステイル・マグヌス。セオリー通りであるならば……」
           イノケンティウス
「わかっている!!やれ『魔女狩りの王』!!」

ヨハネがステイルに声をかけ、ステイルはカードをばらまきながら自身の奥義たる魔術を発動させる。

「そうか!折るとか砕くじゃなくて『燃やす』なら!?」

上条の言葉にヨハネが首肯き、説明を加える。
 スパルトイ    スケルトン
「『蒔かれし者』は、『生ける骸骨』の元の伝説とも言われる者達です。勇者カドモスが斃した竜の牙を地に蒔くよう女神に教わり、蒔いた牙が不死の兵士達に成ったと言う伝説です」

後半をインデックスが引き取る。
 スケルトン
「『生ける骸骨』についてなら沢山伝説が在るから、対処法は高温の火で一気に焼き尽くすことなんだよ」
                       ゴーストシップ
「なお、『生ける骸骨』の伝説は大航海時代以降、『幽霊船』となった船の乗組員達の白骨化した遺体が元とする説も有力です」

インデックスの説明に、更にヨハネが補足する。

「二人共説明してる場合じゃ無いゾ。見て!ステイル君の炎の巨人が!?」

しんのすけの声にそちらを見れば、魔女狩りの王が触れた蒔かれし者から白い煙がもくもくとわき上り双方の姿を隠そうとしていた。


「修道女殿!あの煙は!?」

パルツィバルの問いにインデックスが答えた。

「魔力は感じないんだよ!ただの湯気みたいだけど……」

煙はなおも広がり、辺りを包み込んでしまった。

「視界封じ、成程これが狙いでしたか。なお、ぐっ!?」

「どうしたペンデックがっ!?」

「とうま!?ペンデックス!?」

「二人共大丈夫!?ちょっ!?どさくさに紛れてオラに絞め技かけてるの誰―!?」

伸ばした自分の手も見えない濃霧の様な煙の中で互いを心配して声を掛け合う。
その時アウレオルスが顔色を変えた。

「まさか!?くっ『風よ吹け!霧を晴らせ!』」

濃霧が消えるとその場には、
十数体の蒔かれし者達と、
魔女狩りの王と両手の炎剣で蒔かれし者達と戦うステイルと、
たった今、眼の前の蒔かれし者を殴り飛ばしたパルツィバルと、
空を飛び、空中に避難していたクリアと、

恩人である不幸少年と魂の双子である図書館司書を今にも泣きそうな顔で探すインデックスと、

三人がその場に居ない事に気づき顔を青ざめながら、、蒔かれし者の一体にコブラツイストをかけているしんのすけが居るだけであった。

そくざにしんのすけが叫ぶ。

「アウレオルスのお兄さん!!蒔かれし者の全員に金縛り!!」

「承知、『止まれ骨組み共』!!!!」

「連れ去られた三人の行き先は多分操祈ちゃんと同じ所!クリアお姉さん、案内して!!」

「解ったわ!!」

クリアがしんのすけの手を取り飛ぶ。

「貴方達、此処は任せたわよ!?」

「ステイル君達もあとから必ず来てよ!?」

心配する声を残し、しんのすけとクリアは空を飛んでいった。


「釈然、吸血鬼ならば空も飛べるか」

「うん、『あとから必ず来てよ』……か」

「神父殿、魔力はあとどれ程……?」

「ふん、あったら僕も連れて行くように彼女に頼んでいたさ。君もそうだろう?」

ちらりと、アウレオルスに目をやる。

「自然、今かけている金縛りもあと一分もせぬ内に解けよう」

「厄介ですな。このテの魔導人形は何かしらの命令を受けその通りに働くはず」

「当然、この場から消えた半数は『拉致』、残った半数がその邪魔者の排除だろう」

「うん、しんのすけも襲われていたみたいだし連れて行く条件は『黒髪』かな?『吸血殺し』かどうかの判断は蒔かれし者には無理だろうしね」

「さて、そろそろ金縛りが切れる頃」

パルツィバルの言葉通り、蒔かれし者達がゆっくりではあるが徐々に動き出した。

「はあ、魔術無しで何分イケるかな……やれやれ、僕も覚悟を決めるか」

蒔かれし者達はゆっくりと歩き出し、三人を取り囲むように移動する。
円が完成し、今にも襲いかかってこようかと言うその時、
蒔かれし者の後ろから若い女性の声がした。

「仲間達とはぐれたと思ったら人が怪物に襲われてる現場に出くわすなんてね……お前達に怨みは無いけど、放っておくわけにもいかないんだ。……御免」

次の瞬間、蒔かれし者一体の首が斬られ、頭が地面に落ちる。
すると不死であるはずの蒔かれし者の体が崩れ落ちた。

「愕然、何が起きた?」

アウレオルスの声など無視するように、蒔かれし者達は女性に向かって行く。
一体がたおされた事で彼女を排除の最優先対象にしたのだろう。

「へぇ、この『ボーン・ブレイド』を相手にしようっての?そのいきや良し!!」

好戦的に笑う彼女の手には、先に行くほど幅が広くなるという独特な形状をした西洋剣が握られていた。

今夜はここまでです。またしても遅れてごめんなさい
対吸骨鬼最強の助っ人登場
ナタリーは『骨』にまつわる神話から魔術を使います

次回投下は月曜夜11時の予定です

ノアの洪水のあとノアとその妻はゼウスにこういわれた
「母の「骨」を投げよ、さすれば人間は今ひとたび増えていくだろう。」
妻はそんな非道いことは出来ないと嘆いたが、
ノアは「母とは、全ての母親たる大地、骨は石の事、であれば父はその対、天である」
と、理解した。
ふたりが石を拾い、歩きながら後ろに放り投げていくと、妻が投げた石は女に、ノアの投げた石は男になったという。

つまり骨の魔術は突き詰めていくと人体錬成も可能になるってことなんだよ!

>>592に訂正をお願いします



「修道女殿!あの煙は!?」

パルツィバルの問いにインデックスが答えた。

「魔力は感じないんだよ!ただの湯気みたいだけど……」

煙はなおも広がり、辺りを包み込んでしまった。

「視界封じ、成程これが狙いでしたか。なお、ぐっ!?」

「どうしたペンデックがっ!?」

「とうま!?ペンデックス!?」

「二人共大丈夫!?ちょっ!?どさくさに紛れてオラに絞め技かけてるの誰―!?」

伸ばした自分の手も見えない濃霧の様な煙の中で互いを心配して声を掛け合う。
その時アウレオルスが顔色を変えた。

「まさか!?くっ『風よ吹け!霧を晴らせ!』」

濃霧が消えるとその場には、
十数体の蒔かれし者達と、
魔女狩りの王と両手の炎剣で蒔かれし者達と戦うステイルと、
たった今、眼の前の蒔かれし者を殴り飛ばしたパルツィバルと、
空を飛び、空中に避難していたクリアと、

消えた巫女服の少女を探すアウレオルスと、

恩人である不幸少年と魂の双子である図書館司書を今にも泣きだしそうな顔で探すインデックスと、

三人がその場に居ない事に気づき顔を青ざめながら、、蒔かれし者の一体にコブラツイストをかけているしんのすけが居るだけであった。

そくざにしんのすけが叫ぶ。

「アウレオルスのお兄さん!!蒔かれし者の全員に金縛り!!」

「承知、『止まれ骨組み共』!!!!」

「連れ去られた三人の行き先は多分操祈ちゃんと同じ所!クリアお姉さん、案内して!!」

「解ったわ!!」

クリアがしんのすけの手を取り飛ぶ。

「貴方達、此処は任せたわよ!?」

「ステイル君達もあとから必ず来てよ!?」

心配する声を残し、しんのすけとクリアは空を飛んでいった。

「待って、私も一緒に行くんだよ」

その後をインデックスが追い、ステイルがその後ろから声をかける。

「インデックス!?いくら君に『歩く教会』が有ると言っても無茶だけはしないでくれよ!?」

「心配してくれてありがとうステイル。三人もあとから必ず来てね!?」

一度立ち止まって振り向き、そう言ってインデックスは再び走りだした。
あとにはステイル、アウレオルス、パルツィバルの三人が残る。

空を見上げ、アウレオルスがつぶやいた。

第11話『古津光度良』【コツミツドリョウ】

 スパルトイ
『蒔かれし者』達にさらわれた上条達三人は、ナタリーの前に連れてこられていた。
彼女の足元によこたわる人影に気づき、上条の顔がこわばる。

(あれは食蜂!?くそっ、この状況を何とかしないと……!!)

三人共、手を後ろにまわされ、その両手は蒔かれし者にしっかりと握られていた。
そんな上条、ヨハネ、姫神の順に並んでいる三人を一通り眺め終えると、ナタリーが話し出す。
                               こ
「あら?私は『黒髪』を連れて来いって命じたのに、一人だけ金髪の娘が居るのはどういう事かしら?」

(食蜂操祈の能力の影響下にあるようですね……ならば……)

そこに勝機を見たヨハネが口を開く。

「彼女はつい先程まで、かつらをつけていました。なお、ここに連れてこられる途中ではずれてしまいました」

ヨハネは目で、他の二人に『何も喋るな』と伝え、話を続ける。

「あなたは『黒髪』を連れてくる条件に指定したようですが、見ての通り、しんのすけを連れてくる事に失敗しています」
         ディープブラッド
「だから?この中に『吸血殺し』が居るのなら、あのガキなんてどうでもいいでしょ」

ナタリーの声が不機嫌の色を強くする。

「『この中に居る』……そう思いますか?」

「……そうね、貴女達の誰からも『吸血殺し』特有の甘い匂いがしないわね」

(どうやら、アウレオルスの創った『姫神秋沙の為のケルト十字』は想定通り作用し、彼女の能力を封じているようですね)

一人、ヨハネはナタリーに悟られ無いように内心笑みを浮かべた。
しばし考えるようなしぐさの後、ナタリーは蒔かれし者達に命令する。

 あなたたち
「蒔かれし者はそのままその子達を捕まえておきなさい。私は今度こそ確実に『吸血殺し』を捕える為に残りの者達と共に出てきます」

上条達の手を掴んでいる三体の蒔かれし者が肯く。
ナタリーがその三体を残し出て行き、上条達がその場に残された。

「……どうやら、私のハッタリが功を奏したようですね」

「すごい話術。貴女の嘘は。本物の詐欺師顔負け」

「……褒められているきがしません、ところで上条当麻」

「な、なんだ!?」

一人拘束から逃れようとジタバタとあがき続ける上条にヨハネが話かける。

「動かないでください、この拘束からの脱出方法を思いつきました」

そう言われ、上条は大人しくなる。
彼が両足を振り上げていた時も今も、彼の手を掴む蒔かれし者は直立不動を貫いている。

(なるほど、ナタリー・コーツバンの「『そのまま』捕まえておけ」と言う命令を忠実に守っているようですね。しかしそれが確固たる自我を持たないタイプの魔導人形の限界です!!)

ヨハネは自身の両手が後ろでしっかりと固定されているのを利用し、腹筋を使って両足を上げ、上条の右手首へ爪先をのばす。

そして、上条の右手首の関節を外した。

「あだぁぁぁぁぁ!?」

「野筆さん。一体何を」

上条の叫びも姫神の問いも耳に入らぬように、彼女は冷静に、関節が外れた事で可動域が広くなった『幻想殺し』を足で動かし、蒔かれし者の肘にその中指の先を触れさせる。
これにより上条の手を掴んでいた蒔かれし者の右腕が途中で切断された。
その隙をついて蒔かれし者から離れた上条にヨハネが叫ぶ。

「本体と離れた以上、腕を固定する蒔かれし者の手は簡単に外せるはずです!!」

その言葉通り、上条の両手は既に自由であった。



数分後、蒔かれし者三体は肋骨部分が複雑に絡み合い互いに身動きが取れない状態という愉快なオブジェになっていた。

「ふむ、再生のオンオフ切り替えが出来ないというのは弱点にもなりますね。しかも硬い体では自身で壊しての分離も出来ないようです」

「何。これ」

「名づけるならば、現代アート『人骨知恵の輪』と言ったところでしょうか。」

「なあ、俺の右手このままなの?痛いし不便なんだけど」

「貸して上条君。私がはめてあげる」

姫神が上条の手を取る。

「えっ!?そんな、痛っ!?……くない?」

「私。医学関係は強い」

「へえ、上手いもんだな」

「脱出のためとはいえ、先程はすみませんでした。上条当麻」

「まあ良いさ、おかげで助かったし。気にすんな」

手首数回曲げ、感覚を確かめる上条にヨハネが言う。

「さて、長居は無用です上条当麻。食蜂操祈を抱き上げてくれますか?」

ヨハネに言われ、食蜂を抱き上げる上条がそういえば、と二人に訊く。

「なあ、姫神は能力を封印してここに居るし、封印する前の髪を持った食蜂もここに居る……ナタリーはどこに向かったんだ?」

「おそらくは三沢塾でしょう。あそこならば姫神秋沙の封印前の毛髪や、姫神秋沙自身の移り香が残っているでしょうから」

「何か。私の体臭がきついみたいで。嫌」

「体臭というより、フェロモンに近いと思われますが」

「でも。色香じゃなくて。『美味しそうな匂い』……」

「あ、あーところでさ」

『体臭について』というガールズトークに気まずさを覚えた上条が話題をそらす。

「何。上条君」

「運良くペンデックスの嘘に騙されてくれて助かったよな!?それも自分が直接行くなんてさ」

「うん。騙せたとしても。またあの骨達だけを差し向ける可能性も在った」

「まあ、私はそれでも良かったのですけどね」

「え?なんでさ?」

「ナタリー・コーツバンにとって、あの場に残ったメンバーの中で、『吸血殺し』の、つまり姫神秋沙の変装である可能性が有る者は禁書目録のみだからです」

「え?インデックスまで奴等に捕まっちまったらますます不利なんじゃ……」

「お忘れかもしれませんが上条当麻。私と禁書目録が二人揃えば、魔神級の魔術を行使できるのですよ?」

「ああ!?」

上条は納得と共に驚愕する。
どちらでも良かったとは、この浴衣姿の少女は一体なんて先まで考えていると言うのか。

「『吸血殺し』の可能性が有る以上、彼女は殺さずにここに連れてこられます。その時はナタリー・コーツバンに『竜王の殺息』【ドラゴン・ブレス】を撃ち込む予定でした」

まるでどう転んでも『計画通り』とでも言わんばかりに黒い笑みを、彼女は浮かべたつもりだったが、元が無表情であるためそれが二人に伝わる事は無かった。

(ふむ、ネタがスルーされるというのは辛いものですね。なお、今後も表情を使ったネタはスベルと思われます)

「野筆さん。大丈夫?」

突然黙りこんだ彼女を心配して姫神が顔を覗き込む。

(しんのすけの話では、私のモデルとなった者の一人はむしろ『ヤンデレ顔芸』キャラだと言うのに何故私は無表情なのでしょう?……無表情キャラは今後大量に登場しそうですね。なんでしょうこの言い知れぬ不安は)

ヨハネがそんな事を考えているなど知らない上条は彼女はインデックスを心配しているのだろうと思い、つとめて明るく言う。

「ま、何にせよ運良くナタリーがこの姫神こそが『吸血殺し』だと気づく事無くペンデックスに騙されてくれて万々歳だな」

言って違和感が有る事に気づく。
           ラッキー
不幸体質である自分が『運良く』?

「へぇ、なるほどねぇ。そう言うことだったのね」

三人がその声がした方を向くとそこには、吸骨鬼の女王ナタリー・コーツバンが立っていた。

一方三沢塾前、蒔かれし者に囲まれていた三人、ステイル、アウレオルス、パルツィバルの眼の前には現在、一人の女性が立っているだけだった。
彼女が手にした剣に切られた蒔かれし者は全て粉になり崩れ落ちてしまった。
ステイルが彼女に問う。

「うん、味方なら心強いんだけどね。君は何者なのかな?」

彼女は懐から出した煮干を咥え満面の笑みで答える。
    コツミツドリョウ
「私は『古津光度良』『吸骨鬼狩り』【ボーンバンパイアハンター】をやってるの」


今回はここまでです
このタイトルなのに良ちゃんが出てきたところで続きます
TVアニメでいえばAパート終了でCMへといったところです

次回投下は木曜日の夜の予定です

上条の幸運は綱手の博打に通ずる物があるな
上条は幸運=不幸の前触れ(助かったと思ったらそれすら計画通りだった等)
綱手は大勝=不吉の前兆(スロットで大当たり=大蛇丸と対面、クジで一等=ナルトが暁と接触)

上条さんは素の運勢は実はかなり強い方だけど、周りはそれより遥かに大きい加護補正があるから結果として致命的に運が悪いと想像。
戦闘時の悪運の強さは咄嗟すぎて神様が介入しきれないからこっちの面が強く出ると解釈している。

俺は今まで不幸だののたまいながらラッキースケベだのなんだかんだでいい目に遭ってる奴しか知らない
俗に言う悪運が強い連中だ。

たまには
近くで歩いてるだけで事件の犯人にされ
近くで窃盗が合った時、盗まれた品と同じものを持っていたと言うだけで捕まり
人を助けると虐めていたと誤解され、さもなくば手柄をかすめ取られ
人を看取ったら殺したと誤解され、治療すれば余計なお世話だと蔑まれ
まさしく運どころか悪運すら尽きていて、古今東西ありとあらゆる神に見放されたレベルの不幸さで
それでもなお、笑顔を絶やさず、世界を怨まず、人を助け続ける鉄壁のメンタルを持った主人公を見てみたい。

これから投下します

>>618
敵も計算高い奴が多いですから、そうなっちゃうんでしょうね
>>619
上条さんの不幸体質が「『幻想殺し』によって『幸運』を打ち消しているため」が公式設定だとしたら
原作でのここ一番での悪運の強さには説明が欲しいですよね
某SSではハデス先生の『冷血』と似た方式でしたが、結局『中条さん』って何者なんでしょうね
>>620
「エンジェル伝説」をお勧めします。最後の手段としては「デロリンマン」もあります
1は「デロリンマン」は1話だけしか読んだことがありませんが

瞬く間に十数体の『蒔かれし者』達を切りふせた女性、古津光度良と名乗った彼女に、ステイルが挨拶を返した。

「『吸骨鬼狩り』、ね。よろしく、僕はステイル・マグヌス。イギリス清教所属の魔術師だ」

パルツィバルとアウレオルスの二人も彼に続いて自己紹介をする。

「私はパルツィバルと言う。ローマ正教の騎士だ」

「……イザードだ」

アウレオルスは一人、警戒したまま姓だけを伝えた。
そんな彼に良は苦笑いを浮かべる。

「まあ警戒するのも無理ないか。いきなり『吸血鬼狩り』って言われても信じられないよね」

「いや、私も魔術側に身を置く者だ」

「そうなの?そっちの二人は見るからにそうだけど、てっきり巻き込まれた塾の先生かと思ったよ」

「……まあ、間違っているわけでは無いな」

ステイルが良に訊く。

「しかし退魔師の類が良くこの街に入れたね」

「あ、私たちのリーダーは元大学教授の考古学者でもあるから、そこら辺は大丈夫だったみたい」

学者としての確かな立場があるのならば、この『学問の街』にも入りやすいだろうと、ステイルは納得して質問を続ける。

「君が仲間達とはぐれた理由でもあるんだけど……君はナタ」

「ところでさ、誰か煮干持って無い?私のはさっきので最後でさ。実は私ある理由で『特異体質』ってヤツで、定期的にカルシウムを口にしないとすごくイライラしちゃうんだよね」

しかしステイルの質問は彼女の言葉に遮られてしまった。
ステイルがアウレオルスに顔を向け、言った。

「……たのむよ」

「これくらいならば、魔力の消費も小さかろう。『乾燥した小魚を彼女の手に』」

良が自分の掌の中に突然現れた煮干に目を輝かせ、食べ始める。

「ありがとう!!君若いのに凄いね!?」

「……それ程貴様と変わらぬと思うが」

「いやーこう見えてアラサーだよ?」

その様子に呆れながら、ステイルがパルツィバルにぼやくように話す。

「うん、彼女、ずいぶんマイペースな女性のようだね」

「この自由さ、野原殿にも通じるものがありますな」

「しんのすけにかい?よしてくれ。あんな性格の人間が複数人居るなんて想像するのも御免だ」

すると二人の会話に良が反応し、加わった。

「……『野原』、『しんのすけ』!?貴方達、しんちゃんをしってるの!?」

「む、野原殿の知り合いか?」

(さっきの女吸血鬼に続いてまたか、段々神裂が不憫に思えてきたな……)

気を取り直して、ステイルが説明する。

「君はナタリー・コーツバンを知っているか?今しがた、しんのすけの友人である少女達を連れ去っていったよ」
    しんのすけ
「当然、我が孫弟子はそのあとを追っている」
ナタリー・コーツバン
「『吸骨鬼の女王』!!私たちがこの十年間追い続けた女……!!今奴は何処に!?」

「それが判れば僕たちもそこに向かっているさ」

「依然、魔力が尽きかけている以上、足手纏いにしかなれぬかもしれんがな」

「何か手掛かりは無い?例えばしんちゃんの友達がさらわれた理由とか……」

パルツィバルが悔しげに答える。

「最初に連れ去られた少女は身代わりになったのだ。『吸血殺し』の少女の……その髪を身に着け、本人の能力を封じる事で」

「だが結局その後、本人もさらわれてしまってね。手掛かりと言えば手掛かりだけど、僕達にはここから先を知る為の術も持って無いし、有ったとしてもそれを使うだけの魔力も残って無い」

話しても良い物かと数秒考えた後、彼女は口を開いた。

「……私なら多分、その最初にさらわれた女の子の居場所が解る」

「本当かい!?なら直ぐに……」

その時、四人の耳に、聞きなれぬ少女の声が響いた。

「ダメダメー。依頼人の隠れ家にはいかさないよーう?」

ローブ付きのマントで身体と顔を隠した、小柄な人影が。
数人の鎧騎士を引き連れてこちらに歩き、近づいて来ていた。

短いですが、今夜はここまでです
意外な人物登場(一応伏線ははって在ったつもりです)

すみませんが次回投下まで少し(一週間ほど)空きますが
今後もよろしくお願します

こ…コイツッ!まさか……まさかそんな事ォッ!

>>633

発声器官さえあれば人間と会話出来るって時点でシロは犬じゃない
他の犬なら喋れるようにしても言葉の練習からになるだろうし

これから投下します

>>634
その人の名前は保根田教授ですね

第12話『偶像の理論』【グウゾウノリロン】

「依頼人?」

その少女の言葉に良が聞き返し、ステイルが短く説明する。

「しんのすけの推理ではナタリーはこの街の暗部組織、所謂『傭兵集団』を雇っているはずだとの事だったけど……うん、どうやらビンゴのようだね」

「傭兵集団ねえ。じゃあこの鎧の騎士達は人間なのね?……斬り殺さないように気を付けよ……」

「ソウソウ、気を付けてよ~?なんせこの人達は私に操られているだけなんだから」

フードを被った少女は嘲いながら言う。
少女が手を前に出すと、彼女を護るように騎士達が進み列を作る。

「なっ!?」

良は驚きながら事実かと眼で問い掛ける様にステイル達の顔を見る。
苦々しげにパルツィバルが答えた。

「……狩人殿、本当だ。彼等は、共に本国から来た私の仲間……」

「そんな!?」

「しかし!!」

パルツィバルが声を張り叫ぶ。

「しかしためらいは無用!!皆、敵の手駒として生かされているくらいならば自ら死を選ぶ者達!!されど吸骨鬼によりかけられた病ゆえそれすらでき無いのだ!!」

息を吸い、続ける。

「ならば!!私達の手で『主の懐』へと送り届ける事がせめてもの情け!!」

それは、自分に言い聞かせている様でも在った。
パルツィバルとて、仲間達の死を望んでいるわけでは無いのだ。
だから、良は言う。

「それは違うよ!」

「狩人殿!?しかし……」

「貴方が、私達が彼らにするべき事は『助ける』事だっ!!『殺す』事なんかじゃない!!」

彼女の声には強い意志が宿っていた。
しかしそんな彼女の言葉を嘲う、マントの少女の声がその場に響く。

「ノンノン、綺麗事もけっこうだけど、口だけじゃね」

「もちろん、実行できるだけの実力もあるつもりだけど?要は、貴女独りを倒せば良いみたいだしね」

「アリャリャ、こちらの人手事情はお見通しってわけか」

「へぇ、本当に独りなんだ」

「オオゥ、これは口を滑らせたかな?」

言葉とはうらはらに、その声には余裕が感じられた。
その様子を訝しく思いながらも、良は得物を構える。

(私達と騎士達の距離は約5メートル。更に2メートル弱離れて『マントの少女』が居る……)

その独特の構えは、まるで鞘に刀を納めているかのようだった。

(私なら、一息の内に騎士を飛び越えて彼女に一太刀を入れられる!!)

次の瞬間、ステイル達の視界から良が消え、鋼がぶつかり合う音が響く。


「忽然、鬼狩りの女が消えた!?」

「あそこだ!」

ステイルが指差した場所は騎士達の列の後方、良はマントの少女と向かい合って立っていた。
そして、
その足元に、一人の騎士が斃れていた。

「ゾゾッおねーさん強いじゃん。西洋剣で居合切りなんて初めて知ったし」

少女が手首を上に曲げた。
すると斃れていた騎士が起き上がり、手にした剣を良に向け振るう。
良はその剣を避けつつ大きく後ろに飛び上り、元の立位置までもどる。

「デモデモ、甘いねー。今の攻撃が剣の腹で殴るんじゃなくて、斬り殺すつもりで剣を振ってたら私にも刃が届いていたカモよ?」

マントの少女は笑いながらこちらを挑発する。

「まあその場合、この騎士もマップタツだけどね?」

鎧の胴の部分を大きくへこませた騎士を指さし嘲う。

「くぅっ仲間達をよくも……!!」

パルツィバルが奥歯を噛み締め、言った。

「うん、どうやら騎士達は彼女を護る様に動かされてしまうようだ」

「当然、見れば解る。自然、今の要はその対処法だろう」

ステイルの分析をアウレオルスが切り捨てる。

「うん?じゃあ君にはそのアイデアが何か有るのかな?」

「悄然、あまり好ましい手段ではないがな……」

「選り好みできるような状況じゃ無いだろ?」

「解っている。鬼狩りの女、先程の煮干を少し返してくれ」

良が手渡した煮干をアウレオルスが口にする。

「今は僅かでも魔力を回復させておきたい」

「確かに何かしら食べれば少しくらいは回復するかもしれないけど、この状況じゃ焼け石に水だろう」

ステイルの言葉に彼は首肯しながら応えた。
    アルス=マグナ
「必然、『黄金錬成』は使えて二回程度であろうな」

「なるほど、アレなら上手く使えば二回だけでもイケる……かな?」

良が隣に居たパルツィバルに訊ねる。

「あるすまぐな?って何なの?」

「先程、小魚の保存食を出した術だ。本来はもっと様々な事ができるのだ」

アウレオルスが一回目の黄金錬成を発動させる。

「『身代わり分け与えた魔力よ我が身に戻れ』」

「その方法が在ったか。そういえばダミーの方はほとんど術を使う事無く倒されていたな」

ステイルが感心した様に言った。

「依然、そう多く『黄金錬成』が使える様になるわけでは無いがな」

マントの少女が手を振り下し、騎士達を動かす。

「フフーン、さっきの戦いは観てたからね。呪文を唱えさせる時間は与えないよっ」

しかし次の瞬間、金属同士がぶつかるかん高い音がし、騎士達の鎧が金色へと変わっていった。
                リメン=マグナ
「これは、私がダミーから受けた『瞬間錬金』!?」

「うん、良い手だ。これなら彼らを殺す事無く拘束できる」

「えっ!?イザードさん、何をしたの?」

三者三様の反応をする仲間達をチラリと見、アウレオルスは良の質問に答える。

「『瞬間錬金』と言う、その名の通りこの鏃にてわずかでも傷をつけたモノを瞬時に金に変える術だ。それで彼等の鎧を一塊の黄金にした」

彼は袖から伸びた鎖とその先についた刃を見せる。

「成程、鎧がそのまま拘束具に早変わりってわけね」

「憮然、だが一人、仕留め損ねたようだ」

その言葉通り、マントの少女を護る騎士が一人だけ残っていた。

「ラッキー、一人は無事みたいねー」

少女が改めてその騎士に剣を構えさせる。
アウレオルスは騎士から眼を話す事無く、ステイルに訊ねた。

「先程私が放った鏃は、確かにあの者が持つ剣をとらえていたはず。失敗の原因が判るか?ステイル・マグヌス」

「当たっていて欲しくない推理ならできたけどね……バチカンの騎士君、今残った彼の名前は?」

「『ランスロット』と言うが、神父殿。それが……?」

パルツィバルの台詞を聞き、アウレオルスが呟く。

「釈然、『偶像の理論』が働いたか。厄介な事だ」

彼の眼に映る騎士、その手に持った剣は、禍々しい黒い光を纏っていた。

今夜はここまでです

良ちゃんとマントの少女の口調が上手く再現できなくて苦労しました
(特に良ちゃん、原作だと年上や目上に対して丁寧語で話していたから地の口調が解り難い)

次回投下は木曜の夜10時です。

オマタさんも出て欲しいけどアツミが出てるってことはアニメ基準なのかな

これから投下します

>>660
北与野博士はおいおいだす予定ですが、使いどころの難しいキャラなので番外編日常パートまで待ってください


「ああそうか、『ランスロット』だもんね……」

良も納得した様に言う。
あの事件以前はごく普通の博物館で警備の仕事に就いていた彼女だが、この十年間『吸骨鬼狩り』として生きる中で、自然と魔術に関する知識も身についていた。

『偶像の理論』とは魔術における基本の一つであり、要約すれば『神話や伝説に似ているモノはそのチカラを得る』と言うものだ。
状況、人物、道具を問わず働くこの理論は、『神裂火織』のような『聖人』、つまり生まれつき『神の子のチカラの一部を持った人間』を創る事が在る。
ところが『聖人』の中には十字教徒ではない者も居る。
つまり『偶像の理論』は、そこに人の意思や都合など無関係に偶然により働く事も在るのだ。

今眼の前に居る騎士が握る剣も、その一例と言える。
                      アロンダイト
「うん、つまり彼が持っているアレは、かの魔剣『仲間殺し』ってわけだ」

ステイルが呟く。

かつて、『湖の騎士』と呼ばれた男が居た。
その男は親友でもあった自身の仕える主君の妻と道ならぬ恋をし、それが元で仲間達数名を殺し追われる身となった。
その男の名が『ランスロット』であり、親友は『赤き竜の王』【アーサー・ペンドラゴン】
世に言うアーサー王である。
      アロンダイト                   カリバーン
伝説上の魔剣『仲間殺し』は『ランスロット』の愛剣であり時に『王たる者の剣』と同一視され、
それゆえ一説には『エクスカリバー』と同等のチカラを持つとされる。
               オリジナル
「まあ『偶像の理論』はせいぜい伝説上の数十分の一から数億分の一のチカラが宿るだけだ。それ程不利な状況じゃ無い」

ステイルが周りを励ますように言った。

「断然、バチカンの騎士はさがっていろ。万が一にもこれ以上『状況の再現率』が上がるのは避けたい」

アウレオルスに言われ、パルツィバルがステイルの後ろに下がる。


「自然、私が相手となろう。ロンドンの神父は魔力切れ、バチカンの騎士が斬られればより魔剣のチカラが強くなる。鬼狩りの女、もう一人は頼めるか?」

良が苦笑いしつつ答える。

「それが妥当な選択ね。正直、『アロンダイト』相手に『ボーン・ブレイド』じゃ相性が悪いわ」

マントの少女に視線を向け続ける。

「でも大丈夫なの?貴方のさっきの術も、『アロンダイト』相手じゃ相性最悪だと思うけど……」

伝説上の『アロンダイト』は、幾ら切り結ぼうとも刃こぼれなど一つもせず、それどころかその刀身に傷一つ無かったと云われる。
一方、アウレオルスの『瞬間錬金』は相手にわずかでも『傷をつける』事が発動の条件になっていた。

『決して傷つかぬ剣』と『傷つける事が条件の術』

良の言う通りその相性は最悪と言えた。


「当然、ならば戦い方を変えるまで」

アウレオルスが先程しんのすけが創った暗器銃付きのレイピアを構え、言った。

「フフーン、相談は終わったかな?」

マントの少女が手を上に挙げる。
それに応じ、操られる騎士が剣を構えこちらに向かって来た。

「ぐっ!?」

アウレオルスは辛うじてレイピアで騎士の剣を受けるが、続く連撃に防戦一方となってしまう。

「イザードさんがアイツを押さえていればっ……!!」

騎士がマントの少女から離れた隙をつき、良が一息で距離を詰めた。

「ヤバッ!?」

良が十年来の愛剣を振るう。
マントの少女が慌てて身を屈め、ボーン・ブレイドの切先がフードを斬り落とした。

「何っ!?」

そのフードに隠されていた顔が露わになり良が驚く。
それはまるで、水銀でできた人形のようであった

「人形!?」

「アハハー、私本人だと思った?」

人の形をした、銀色の何かが嘲う。
いやその声は人形が着けた、ネックレスから聞こえていた。
どうやら、小型スピーカーになっているようだ。

どろりと、マントから伸びた手が溶け、鞭のような形状になる。

「サテサテ、ばれちゃったんなら仕方ない。今からコッチも闘うよーう」

鞭を振る水銀人形と、先程と同じく居合切りの構えをとった良が向きあった。

今回はここまでです。
次回投下は土曜日の夜11時です
次回でランスロット対アウレオルス、液体金属の人形対良ちゃんの決着がつきます

乙。 この間見つけてようやく追いついた。応援している。

誇り高きバチカンがプロテスタント由来の武器をか・・・

遅刻してすいません。これから投下します

>>669
おお!新しい読者様ですか、今後もよろしくお願いします
>>671
『とある魔術の禁書目録』の世界では(新教その物は在っても)英国国教会(プロテスタント)が存在しないのか、
イギリス清教(カソリック)の王室派が国教のようですし
原作でも『バチカンの騎士団のオリジナルはイギリス』だとステイルが言ってますし
この世界での『アーサー王伝説』も旧教に属するかと

というか1は知らなかったんですが、
『アロンダイト』ってプロテスタント由来の伝説だったんですか?


一方、アウレオルスはマントの少女が正体を現した事にも気づけぬほどに、窮地に立たされていた。
今まで剣がアウレオルスに受けられれば、すぐさま剣を引き次の攻撃を出してきた騎士が、受け止めらられた剣を力ずくで押して来たのだ。
アウレオルスは本来、剣士でも騎士でも無い。操られている騎士がどれ程の力を発揮するかは解らないが、象牙の塔の住人であるアウレオルス以下と言う事は無いだろう。

「必然、なればこそ万策を尽くすのみ!!」

鍔迫り合いの中、アウレオルスが暗器銃の引き金をひいた。
銃声が響く。

「……悄然、かの王の時代には未だ存在しなかった銃撃ならば、あるいは『傷つかぬ』特性も働かぬはずと期待したが」

どうやらこの剣に付いた暗器銃からは、上条に対して使用した『衝撃に変わる魔弾』を撃ち出すように、しんのすけは創っていたらしい。
そして実体の無い弾丸では『アロンダイト』を破壊するには及ばなかったようだ。
だが騎士は後方に弾き飛ばされ、アウレオルスはとりあえずは窮地から脱け出す事に成功した。

その同じ頃、向かい合っていた良と人形にも動きがあった。
人形の首にある小型スピーカーから声がする。

「オオゥ、私としては依頼人が標的を確保するまでの時間稼ぎができれば、それで良かったんだけどね……」

腕をひき、鞭を下に垂らす。

「スーツのお兄さんには色々奥の手があるみたいで、騎士一体じゃ手に余るみたいだし、ここはお姉さんをチャッチャと倒して加勢に行くカニャ?」

人形が前に腕を振る、鞭がグンと伸び空を切り裂いて進むが、既にそこに良は立っていなかった。

「アレアレ?これはどう言う……」
        ・・・
「人形が相手なら手加減しなくて良いから楽でイイね」

その声は人形の背後から聞こえた。

「なっ!?」

人形が振り向こうとすると、その頭部が『ボタリ』と、地面に落ちた。
するとコントロールを失ったのか、体側もドロリと溶けながら崩れ落ちていく。
              リキッドシャドウ
「操作出来ない!?馬鹿なっ私の『液化人影』がたった一太刀でっ!?」

混乱する声が地に落ちたネックレスから鳴り続ける。
それを良が拾い上げ、数秒じっと見ると有る事に気付き言った。

「へぇ、こんな小さいのに、スピーカーだけじゃなくてマイクやカメラもちゃんとついてるんだ」

「くっ……流動する液体金属の身体は実質無傷のはずなのに……何故!?」

スピーカーからの声は、まだ通信が切れていない事を証明していた。

「私の愛剣『ボーン・ブレイド』は特別な効果が有ってさ。『ほぼ主成分のみで身体が構築されているモノに対して最高の殺傷力を持つ』って言うね」

「そんなっ……!?」

「で、そんなに動揺してるけどいいの?アッチでイザードさんと戦っている騎士も貴女が操っているんでしょう?」

「っ!!……そうだ!!まだあの騎士がいた!!……フフーン、心配無用。私が操作しない時にはオートで動くように依頼人が何か細工していたわよ!!」

その時、金属がぶつかるかん高い、それでいて何処か鈍い音が周りに鳴り響いた。
良が驚きそちらを見ると、アウレオルスが倒れ、その顔のすぐ横の地面に彼のレイピアが突き刺さっていた。
先程の妙な音は騎士の剣とそのレイピアがぶつかったのだろう。
そうと直ぐに解るほど、その細剣に付いていたフリントロック式の銃の銃身の根本、剣の鍔の辺りが曲がって割れ、中の火薬がサラサラと零れていた。

「イザードさん!?」

良が心配して駆け寄るが、アウレオルスは直ぐに立ち上がる。

「漫然、油断した。憮然、火薬が口に入ったか……」

彼は口もとを拭い血の混じった唾を吐き捨てると、再び暗器銃を握る。
そして己の身体に起こった、ある事に気づく。

「……これは!?」

その驚き様に、ステイルが心配して声をかける。

「まさか、魔剣の攻撃を受けた事で何か呪われたか!?」

しかしアウレオルスの次の反応は、誰も予想しない物だった。

「フハハハハハハッ!!何たる偶然!いや何という必然!自然、だからこその『偶像の理論』!!」

何事かと眼を丸くする三人をよそに、彼は呪文を唱える。

「『直れ、原典級霊装の特性はそのままに』」

彼が手にした暗器銃付きのレイピアが元の姿に戻る。
呪文を唱える隙を騎士が見逃すはずも無く、すかさず攻撃してくる。
良はその手にまだ先程のネックレスを持っていたため、愛剣を構えるのが数瞬遅れてしまった。
騎士の刃が喉元に迫る中、彼はただ、一言を発する。

「『動くな』」

たったそれだけで勝敗が決した。


「操作が!?他の騎士の様に金にされた様でも無いのに!?」

良が落としたネックレスのスピーカーからはヒステリックな少女の声が聞こえた。

「悠然、だが過信はしない」

そう言うと、暗器銃のから火薬を取り出し掌に乗せ、再び呪文を唱える。

「『妙薬は騎士の口の中へ、万病を克服せよ』」

手の上の火薬が消える。
すると騎士がばたりと倒れた。

「さて、傭兵の女。騎士の金縛りは解除したが、まだ操れるか?」

「……ムカツク、貴方解ってて聞いてるでしょ」

事態に着いて行けない者代表、ステイル・マグヌスが漸く口を挿む。

「うん?つまり、どういうことだい?」

「歴然、この女の能力は水銀……『液体』の『金属』を操るという物のようだ」

「ああそうか。カルシウム(Ca)も金属だもんね」

良の言葉に肯き、話を続ける。

「自然、ならば『ボーンレス症候群』が治れば『融けた骨』つまり『液体のカルシウム』が身体から無くなる、ないし正常な量にもどるのだ」

「その前だっ!何故君は『黄金錬成』を連発できたんだ!?」

「うむ、『偶像の理論』が関係するようだが……」

ステイルとパルツィバルが詰め寄る。
魔力を回復させられる術があるならばすぐにでも使い、インデックス達の後を追いかけたかった。

「まず、ランスロットに偶像の理論が働いたのは、『ランスロット』と言う『名前』と、『かつての仲間と敵対する』という『状況』ゆえだ」

「うん、それで?」

「そして、『アロンダイト』の偶像の理論が働いたのは、『ランスロット』の持つ剣だからだ」

「つまり?」

魔術に関する知識は持っていても魔術師では無い為、やや魔術側の話に疎い良が訊ねる。
パラケルスス
「『私』が使う剣にもまた『偶像の理論』は働くと言う事だ」

その言葉で、ステイルは理解する。

「そうか!『AZOTH剣』か!!」

「神父殿、『AZOTH剣』とは一体……?」

パルツィバルの問い掛けにはアウレオルスが答えた。

「我が先祖『初代パラケルスス』の愛剣である霊装だ。その柄の中に万病薬が入っていたと言う、な。ふむ、コレは『新AZOTH剣』とでも呼ぼうか」

「それで中の火薬にその『万病薬』としてのチカラが宿ったってわけね」

良がポンと手をうつ。

「うん、じゃあそろそろ行こうか。だいぶ時間を使ってしまったからね」

ステイルが話を先に進める。

「アウレオルス、道すがら僕の魔力を回復させてくれ」

「承知した、ところでステイル・マグヌス、アレは如何する?」

アウレオルスが指差したのは、地面のネックレスであった。
するとそこから得意げな少女の声が聞こえてきた。

「フフーン、今依頼人から連絡があって、私の仕事は無事終了だってさ。急いだ方がイインじゃない?」

アウレオルスの顔色が変わる。

「急げ!!鬼狩りの女、案内できるのだろう!?」

「わ、わかった。コッチよついて来て」

良が走り出し、その後を男三人が追う。

その場に取り残されたネックレスに付いたカメラとマイクから、周囲に誰も居なくなった事を確認している少女が、そこからそう遠くなく、それでいてナタリーの『人払い』の範囲外という、学園都市内某所に居た。

「ヤレヤレ、今回は危ない橋を渡ったなぁー」

液体金属の人形には、二本の角のような物が有ったが、その少女の髪型はツインテールで、
少女は看護師のような、看守のような変わった服装をしていた。

小太りの少年がやってきて少女に声をかけた。

「警策さん、ハカセが呼んでましたよ」

「リョウカイ馬場ちゃん、直ぐに行くよ」

少女の名は『警策看取』【コウザクミドリ】後に起こる大きな事件のカギと成る人物であった。


今回はここまでです。重ね重ね遅刻してすいませんでした。

今回の3つの出来事

1 ヘタ錬さんが新装備をゲット
2 マントの少女が戦線離脱
3 みんなのアイドルBABAちゃん初登場

……すいません。本編のギャグが足りない気がしたので

と言うわけで、マントの少女は警策看取さんでした。
>>630さんの予想は当たってたんでしょうか?
彼女と『みーちゃん』が同一人物だとしたらこのSSの大覇星祭編(あとなんスレかかるんだろう?)までに明らかになれば良いんですが

次回からはいよいよラスボス、ナタリーが相手です
蒔かれし者も警策さんの騎士達も、ナタリーにとっては小技でしか在りません
10対1でもものともしません

次回投下は来週の日曜夜10時を予定しています
しばらく週一投下が続きそうですが今後もおつき合いください

ランスロットにアロンダイトにアゾット剣か
共通点が多くてどうしても某作品の事を思い浮かべちゃうな

確かに火薬は薬だけど…火薬(ガンパウダー)って薬は薬でも麻薬じゃないか?

なおってるやんか

やったー。復活してたー!!
これから投下します。

>>687
アーサー王が女性でバイセクシャルの運命的で致命的な作品でしょうか?
1はその作品はたまにクロスSSを読むくらいでよく知らないのですが
>>688
基本的な黒色火薬の成分は硝石(硝酸カリウム)、木炭(炭素)、硫黄ですから
粉薬として飲んだら期待できる効果は食欲不振、虫下しとかでしょうか?
黒色火薬を飲み薬として使用した場合の責任は持てませんが
>>695-701
>>たいへんお待たせしました
でもそのおかげでこれからしばらくは毎日投下できそうです


第13話『決戦開始』【バトル・スタート】

舞台は再びナタリーの隠れ家へと戻る。
上条、姫神、ヨハネの三人を前に、突然現れたナタリーは愉快気に言った。

「まさか二人揃えば『魔神』級なんて存在が居るとはね……『蒔かれし者』達を足止めに向かわせて正解だったわ」

「それで、何故貴女はここに?ナタリー・コーツバン」

ヨハネの質問にナタリーが答える。
                       ディープブラッド
「貴女がさっき自分で言った事だけど、残っている『吸血殺し』の可能性はあの銀髪の修道女だけ……でもそれならあの子が『吸血殺し』であるよりも、貴方達の誰かが上手くチカラを隠してるって方が、まだありえそうな話よ。ね?」

ヨハネが苦々しげに呟く。

「くっ……狂気じみた言動だと言うのに、冷静に回る頭も持ち合わせてましたか」

「そ、私がこの場から居なくなったと思わせれば、油断してボロを出すと思ったのだけれど。大当たりだったわ」

一歩前に出た上条が叫ぶ。

「お前は姫神に何をさせるつもりだ?ただ単にコイツの骨を食いたいってわけじゃ無いんだろ!?」

その上条の問い掛けには応えず、ナタリーは目線をこちらに向ける事も無く、歌うように話す。
 ハロー
「もしもし、聞こえているかしら?『吸血殺し』が手に入ったから、もう帰ってくれていいわよ?」

姫神をかばうように立ち、上条が言う。

「帰れって言われて『ハイソウデスカ』って帰れるかよ!」

ナタリーは心底興味が無いといった態度で、上条に返す。

「……貴方に言ったのでは無いのだけどね……」

「なるほど、では何かしらの『通信術式』ですか。なお、魔道図書図書館の図書館司書である私に気づかれずに使用した以上、彼女の魔術の腕は、最低でも『魔導師』級と判断されます」

より警戒を強めたヨハネに、ナタリーが自分の耳元を指さしながら言う。

「いや、ただの小型通信機」

言われてみれば確かに、おそらく学園都市製であろう、『耳飾りと言うには少々不自然な何か』がそこに在った。

「……」

「……」

「二人共。ドンマイ」

早とちりをして気まずそうにする仲間を姫神が励ました。


「……まあでも」

ナタリーが言う。

「貴方達にもう用が無いってのも、私の魔術が魔導師級ってのも……どっちも間違ってないけどね」

言い終えると同時、彼女は指をはじいた。
すると肋骨が絡まり身動きがとれずにいたはずの三体の『蒔かれし者』達が分離し、上条達に襲いかかってきた。
上条達は三人共、ナタリーの方を向いていたため、背後からの強襲であった。

「うおっ!?」

「くっ」

上条が驚きつつもとっさに右手を突き出し、ヨハネが姫神と『蒔かれし者』の間に入り鋼の硬さと重さを持たせた浴衣の袖で、襲ってきた彼等を殴り飛ばした。
奇襲に失敗したとさとったナタリーが、部下三体をその場に待機させこちらに話かける。

「へぇ、やるじゃない。今のは完璧にすきをついたつもりだったんだけど?」

ナタリーは楽しげに嗤う。
                        こ
「で、『何が目的か』……だったかしら?そこで寝てる娘には話たんだけど」

少し離れた、床によこたわる食蜂を指さし、彼女は続けた。

「強固で膨大な『人払い』の術式、その中に『吸血殺し』がいれば何が起きるかしら?」

「なるほど、仲間を集める事が目的ですか。なお、吸骨鬼だけではなく吸血鬼も集まって来ると思われますが……」

「……っ!?」

彼女が言わんとする事を理解しつつも、ヨハネは苦々しげに言葉を濁すが、その続きを察した姫神が顔を青ざめる。

「そんな……そんな目的の為に姫神を利用するってのかよっ!?誰も殺さないって誓ったコイツを!!」

上条が激怒し、叫び声を上げた。  ワラ
しかしそんな上条を、ナタリーは鼻で嘲う。

「ハッ!『目的』!?仲間を集める事が?そんなのは『手段』でしかないわよ」

「じゃあ。貴女の。目的とは一体何?」

姫神の問いに、ナタリーは狂気に満ちたエミを浮かべ答えた。

「……十年前のあの日、我等が王はヒトの子に討たれた。だがあのお方は何度でも黄泉帰る」

「まさか!?」

「どうした!?ペンデックス!?」

驚愕するヨハネに上条が声をかける。
ボーン・キング
「『吸骨鬼の王』の遺体は、大英博物館に保管されています……つまり」

その先をナタリーが自身で続けた。

「そこへの襲撃に頭数が必要なのよ。そして黄泉帰ったキング様の元、この世界はあるべき姿を取り戻す」

「あるべき姿?」

上条がナタリーに聞き返す。
             ワタシタチ            エサ
「ええ、ただの人間なんて『吸骨鬼』から見れば所詮家畜、食糧でしかないもの」

今は亡き想い人の遺品であるストローを愛おしげに一撫でして、視線を上条に戻し、続ける。

「より優れた者達が劣っている物達を支配するのは、自然の摂理でしょう?」

あまりに身勝手な主張に、上条が怒りに任せ拳を握りしめたその時



「亜種風情が、雑種ごときが、私達から派生した下等種族の分際で、大きな口を叩くじゃないか」



自分以上の怒りに満ちた声が、ナタリーの背後から聞こえた。

今夜はここまでです
続きは明日の夜に投下します

次回、しんのすけの魔法名がフルで明かされます


魔法名披露まで裸で待ってる


しんちゃんはよ
吸骨鬼らへんのDVDってTSUTAYAで借りられるかな…

これから投下します

>>710
服を、着て下さい
>>711
100%の自信はありませんが、確か吸骨鬼編はアニメ化していなかったと思います
原作漫画では46~48巻に収録されています


時は少々戻り、しんのすけ、クリア、インデックスの三人がステイル達から離れて程なくの頃。
しんのすけとクリアは追いかけてきたインデックスに気づき地面に降りて来ていた。

「インちゃん、大丈夫?」

空を飛ぶ二人を追い、さっきまで全力で走っていたために息を切らすインデックスをしんのすけが心配して話かけた。

「だ、大丈夫なんだよ」

肩で大きく息をしながら返事をする彼女に、クリアがすまなそうに言う。

「御免なさい、私が二人共運べれば良かったのでしょうけれど……」

「そんなっ!謝らないでよ。むしろ私が足手纏いになっているのが悪いのであって、クリアは悪くないんだよ!?」

二人の会話は、しんのすけが地面に落ちていたある物を見つけた事で遮られた。
しんのすけがそれを拾い上げインデックスに見せる。

「ねえインちゃん、これって……」

「うん、みさきが持っていたのと同じバッグかも」

「だね、リモコンが何本も入ってるし」

しんのすけが見つけたのは、星マークのついたバッグだった。

「リモコン?」

若い女性向けのバッグの中に大量のリモコンが入ってと言う異様な光景に、クリアが首を傾げ、しんのすけが説明する。

「あのね、操祈ちゃんは能力を補助するためにリモコンを使うんだゾ」

「えっ!?じゃあ今はそれを持って無いわけだから……」

「そうだね、急ごう!クリアお姉さん、『匂い』はどの方向から来てる?」

クリアの不安をしんのすけは肯定して案内を頼む。

「アッチから……あっ!?」

ある方を指差したクリアが驚いて声をあげた。

「……その方向で正解みたいだね。お姉さんはインちゃんを抱えて空へ、オラの真上3mを維持して」

「わかったわ」

しんのすけの指示にクリアとインデックスが従う。
クリアが指差した先には、こちらに向かってくる『蒔かれし者』達が居た。


しんのすけが護り刀を構える。戦太刀には変えない。
必ずしも斃さなくてはいけないわけでは無い。
要は一気に駆け抜ければ良いのだ。
重い武器は不利になる。

「行くゾ!!」

しんのすけが走り出した。
蒔かれし者の群れは十体弱、八体といったところだろうか。

(まず一体!)

双方の距離が縮まり、群れの先頭に居た蒔かれし者がしんのすけに掴み掛るが、しんのすけはその手を懐剣で受け、弾く。
すぐさまその横を抜いて走り続ける。

(二、三、四!!)

しんのすけはまるで階段でも登る様に、二体目の腰骨、三体目の鎖骨、四体目の頭蓋を踏みつけ、飛び上った。

(五!六!!七!!!)

一気に三体の蒔かれし者の頭上を飛び越していく、着地点には丁度最後の一体が居た。
 ラスト
(八体目ォ!!!!)

落下の勢いを殺す事無く、更に自ら足を突き出し八体目の顔面を蹴り砕く。
しかし……

「しまった!?」

頭部が塵と化したと言うのに、その蒔かれし者はしんのすけの足を掴んだのだ。

「わわっ!?油断したゾ」

足を掴まれた為に上手く着地できず、彼は地面に激突する。
幸いな事にダメージは無いが、直後に背後から襲いかかってきた七体の蒔かれし者によって取り押さえられてしまった。

「どうしようクリア!?しんのすけが……」

インデックスが叫ぶ。

「待って何か様子が変よ!?」

クリアがしんのすけの埋まっている骨組みの山を指さす。
直後、骨組みが四方に吹き飛ばされた。
その中心には両手でしっかりと戦太刀を握ったしんのすけが立っていた。

「もう油断しないゾ!できれば使いたくなかったけど……」

しんのすけは自分を取り囲んだ位置で再生していく蒔かれし者達に対して叫び、一枚のカードを取り出す。
彼が起動の為の呪文を唱えようとした時、しかしそれを止める声が聞こえた。

    その
「うん、使う必要はないよ」

「当然、使い捨てであるのならば、温存すべきだな」

その言葉とほぼ同時、飛んできた火の玉が八体の蒔かれし者を包んだ。

「お待たせしました、野原殿」

「ステイル君!アウレオルスのお兄さん!パルツィバルさん!そっちは片付いたんだね!?」

声がした方を向き、追いついてきた仲間の姿を確認する。
そして女性が一人、新たに加わっている事に気づく。
……その女性が、かつて自分が口付けした人だという事にも

「良ちゃん!?あっそうかっ!ナタリーを追って!?」

「うん、久しぶり。しんちゃん」

再会を喜ぶ二人の元にインデックスと共にクリアが降りて来て質問する。

「知り合いなの?」

「うん、しんのすけのね。僕らとは初対面だ」

ステイルが紫煙を吐きながら答えた。

「ところで、貴方達はどうやってここに?」

「あ~実は私……」

クリアの次の質問に良が答えかけて言いよどむ。
その様子に、アウレオルスが呟いた。

「釈然、混血か」

「やっぱり判っちゃうか。でも誓って言うけどナタリーの仲間なんかじゃないよ」

「歴然、お前が人間として、『吸骨鬼狩り』として生きて来たことに嘘は無いと解る。必然、疑いはせぬさ」

「うんうん、オラも保証するゾ。良ちゃんは悪い奴じゃ無いって」

「断然、それよりも急がねば。先程交戦した敵が『依頼人から連絡があり、自分は仕事を終えた』と言っていた」
    その
これ以上混血事で話しているつもりはないと、アウレオルスが急かす。

「ええ、そうね。いきましょうか」

目的地であるナタリーの隠れ家は、そこから割と近くに在った。
しんのすけ達の七人は今、内部の様子を壁越しに探っていた。
どうやら今はナタリーが上条達を相手に自身の目的を語っているらしい。

「……ねえ、しんのすけ。この壁切り裂ける?」

どうやら、ナタリーの演説は聞くに堪えれない物だったらしく、クリアが暗にヤレとしんのすけに言う。

「無茶言うね~まあ出来るけど」

言われた通りしんのすけが壁を切り裂くと、クリアは中に入って行った。

「さ、オラ達も入りますか」

しんのすけを先頭に全員隠れ家の中に入る。


「インデックス!!しんのすけ!」

仲間達の姿を見て、上条が喜びの声を上げる。
インデックスとアウレオルスが連れ去られた三人に駆け寄った。

「ふん!蛮族の女か、それに古津光度良……っ。貴様の事は忘れたことは無い……よくもあの日、あの方をっ!!」

良に向け憎悪をあらわにするナタリーだが、直ぐにエミを取り戻す。

「まあ良いわ。邪魔モノ達が一ヶ所に集ったと思えば好都合だわ」
     タクト
ストローを指揮棒の様に掲げ、ナタリーが続けた。

「『Regina020』【主人の留守を守る者】それが私のもう一つの名前よ……殺す前に名乗るのが魔術師の作法……だったわよね?」

作法に則り各々が名乗る。

まずは、掌に火を乗せた赤毛の神父が……

「『Fortis931』【我が名が最強である理由をここに証明する】うん、いい名前だろ?」

次に、巫女服の少女を護るべく彼女の前に立つ錬金術師が……

「『Honos628』【我が名誉は世界の為に】……毅然、互いに名乗ったからには引けぬと知れ」

修道服と浴衣の、二人の少女は声を揃え……
「「『Dedicatus545』【献身的な子羊は強者の知識を守る】なんだよ(です)」」

そして、懐剣を構える少年が……

「『Tempestas904』【理不尽なまでの奇跡】、だゾ……さあ覚悟はイイ?ナタリー・コーツバン。お前の言う、『吸骨鬼にとって人間はエサ』だとか『優れた者が劣る者を支配する』なんて……」

辺りに鈴の音が鳴り響く。
         オヤクソク       コワ
「そんなおバカな『法則』は徹底的に『無視』してやるゾ!!!」

今回はここまでです
映画公開まであと一か月……
楽しみです


904と数が多い割には珍しそうな魔法名やね

>>725
数字は被った時に判別するためのものだから同じ魔法名を持つ人が904人いるってわけじゃないんじゃない?
間違ってたらすまん。あと長文失礼しました

あの数字って順番関係ないのか
ねーちんが000だからその魔法名にした順番だと思ってたすまぬ

>>729
ひろし死んでしまうん…?

が、ガンバ!

お待たせしましたこれから投下します
>>725>>731
確か>>727-728さん達の通りだったと思います
>>732
予告を見る限り、ロボとーちゃんも『助けられなかった誰か』になってしまいそうですね
>>740-746
ありがとうございます

第14話『切り札』【オクノテ】

しんのすけが戦太刀を抜き、周りに指示を飛ばす。

「クリアお姉さんとインちゃんペンちゃんは秋沙ちゃんとアウレオルスお兄さんの所へ!!」

「わ、解ったわ」

「させない!!」

クリアが返事をし、移動しようとするがナタリーが邪魔をする。
彼女がストローを振ると、それに応じて一体の蒔かれし者がクリアの前にとんだ。

「うん、邪魔だよ!!」

しかしその蒔かれし者をステイルが炎剣で串刺しにしておさえる。

非戦闘員は護衛付で一ヶ所に集める、乱戦時のセオリーだ。
今はまだ敵方はナタリー独りに蒔かれし者三体のみだが、彼女にどんな隠し玉が有るか判らない。
蒔かれし者を増やすなどして、もっと大人数での乱戦に持ち込まれる可能性が高い。
だから移動するならばまだ敵の数が少ない今のうちが良い。

そうしたしんのすけの指示に込められた言外の意図を、最も早く、最も的確に理解したのがステイルだった。

「今のうちに!!」

「ありがとう!!」

ステイルに礼を言い、姫神のもとに駆け寄る三人を冷めた眼で見ながら、ナタリーが呟く。

「やっぱり三体では多人数戦は無理ね……増やすか」

ナタリーは懐に手を入れ何かを取り出す。

「アレは。人の『歯』?」
            スパルトイ
「まさか!?皆気をつけて!『蒔かれし者』を増やす気かも!!」

姫神がナタリーの手に有る物に気づき、インデックスはその意図に気づく。

「そうはさせないっ!!」

良がボーン・ブレイドを振り上げナタリーに切りかかった。
しかしナタリーのそばに居た2体の蒔かれし者の内、片方が良の手首を掴み攻撃を防ぎ、もう一方が無防備な鳩尾に膝を突きさした。

「かはっ……!?」

「良ちゃん!?」

良はその場で崩れ落ち、気を失ってしまったようだ。
しんのすけの呼びかけにも反応がない。

「捕えなさい!!」

「させるかよ!!」

倒れた良を捕まえるよう命令するが、上条が飛び出しそれを阻止する。
右手で蒔かれし者達を破壊、牽制しながら彼女を抱きかかえると姫神の所へ気絶した良を預けた。

「頼めるか?」

「うん。任せて」

ナタリーが口笛を一吹きし、両手をパチパチと合わせる。

「オミゴトオミゴト。あーあ、人質を取れば後は楽かと思ったのになあ」

上条の行動を止めようともしなかったナタリーは、ニヤニヤとワラいながら嘯いた。

「くっ!何という余裕な態度。先程クリアの邪魔をしたのが一体だけだったのは護衛を残すためでしたか」

ヨハネが言い、ナタリーが返す。

「手駒が三体なら実質攻めに動かせるのは一体のみ、でも直ぐにもそうじゃ無くなるわ」

ナタリーが手にしていた歯を辺りにまき散らした。
するとソレらはみるみるうちに『蒔かれし者』達へと変わっていく。
そして、自らの歯を折りナタリーに渡していった。

「まさか!?無限増殖だとでも言うのですか!?」

「で、でも本来なら『蒔かれし者』の材料は『竜の牙』なんだよ!?人の歯じゃあ……」

うろたえるツインデックスに、ナタリーが答える。

「ええ、その通り。コピーのコピーがどんどん像がボヤケテくる様に、コマの歯でコマを創ってもどんどん弱くなる。け~ど~……?」

言わんとすることを察したアウレオルスが顔をしかめた。

「釈然、質よりも量か」

その台詞が正解なのだと言うように、その場に骨格標本が次々に出来ていった。

「まずは、こんなモノかしらね」

ナタリーは眼前で列を作る『蒔かれし者』共に対して満足げに肯く。

「狩人殿が倒れ、こちらは9人。先程までは1対10……骨組共を入れても4対10だったと言うのに……」

「うん、数の利は向こうに移ってしまったようだね」

パルツィバルとステイルが冷汗を顔に浮かべ会話する。

「やれやれ、20体は居そうだね」

「彼奴女の崩さぬ余裕は自信の現れだったか。追い詰められてなおも、この様な奥の手が有ろうとは……」

パルツィバルの言葉にナタリーが大きく嘲笑う。

「ハッこの程度の術、ちっとも奥の手なんかじゃないわよ!?」

「なんだと!!?」

「でもそうね、私はシンセツだから教えてアゲルわ」

ナタリーが指を三本立てた手をこちらに突き出し言った。
            オクノテ
「私にはあと、三種類の『切り札』があるわよ?」

短いですが、今夜はここまでです
(自分で書いといてアレですが……ナタリー、どこの冷蔵庫様だよ?)
投下再開しましたので、今後ともよろしくお願いします

某イケメルヘン「いま誰か俺を呼んだ?」

乙、私はまだ変身を2回残してる的な?

この間やってたB級グルメのやつは何がやりたいのかイマイチわからんかったが、ロボとーちゃんはかなりの名作の予感がヒシヒシ
というか予告編とあのポスターだけで泣けるレベル、というか軽く泣きそうになった

乙です
未元物質に常識が通用しないという法則もいつの日か徹底的に無視されてしまうんだね

>>757

ある意味法則無視に一番弱いのが垣根なんだよな
法則無視同士がかち合う訳だけど、
あくまで「この世に存在しないから既存の物理法則に縛られない」っていう常識(アタリマエ)の非常識と
「この世に存在しているものなのに既存の物理法則を無視する」っていう非常識(アリエナイ)世界の常識(トウゼン)

垣根じゃ勝てない

>>759
でも第二位と第一位は安定した圧倒的火力を持っているから短期決戦に持ち込まれると危ない
ただ、条件次第では第一位、第二位を倒せる「番狂わせ」の能力なんだよな『法則無視』

>>760
どちらかといえば相手が解析とか終了させる前に、手数を持って倒していくタイプだと思うが

二人とも能力の性質的に解析には向いてるから、長引けば長引くほどきつくなってくような

しんのすけの行使してる魔術は、魔術じゃなくて魔法だからな

宗教定義の特殊能力ではなく、まさに一般人の想像する魔法

どうも映画を明後日観に行く予定の1です。
これから投下します

>>756
あくまでも1の主観・解釈ですが、
グルメッポーイ(A級グルメ機構)の理念も本来は全否定できる様なものでは無かったのだと思います
『世界中の全ての人類に最高水準の食事を』と言う理想はキング牧師にも通じる素晴らしいものです
しかし彼等はそれにエスノセンタリズムとひどく上から目線な歪んだノブレスオブリージュを加えてしまいました(そのため矛盾が多い)
またグルメッポーイはとある魔術の禁書目録でおなじみの『本当は自分が間違っている事に気づいている』『誰かに暴走を止めて欲しい悪役』なのだと思います
ラストの「ほら……やっぱり、美味いじゃないか」のシーンは彼に感情移入してみればあの涙も納得ですよ
>>757>>759
彼の出番は割と早くきます
>>760
しんのすけが自分の意思で能力をコンスタントに引き出せない(超常現象を起こせない)っていうのがネックですね
現時点では無意識の内に受動的に発動する能力ですし
次スレではそこら辺が少し改善されますが
>>761
そこら辺は次スレで詳しく書く予定です
>>762
原石なので魔術は使えないのです。
このSSでは一応『スゲーナスゴイデスのトランプ』等の魔法も、と禁サイドなりの理屈付けがされています


ナタリーの宣言に何人かが恐怖を覚えた。

「この数のホネ達以上のテが三つもあるのかよ」

退きぎみの上条の声にヨハネが話しかける。

「ですが上条当麻。切り札が何枚有ろうが、使わせる事無く終わらせれば良いだけです」

「あら、ソッチこそ随分な自信ね。それとも現実逃避かしら?」

挑発するナタリーをヨハネは睨み返す。

「これだけの数の『蒔かれし者』。生み出すだけならば、吸骨鬼の生命力を持ってすれば容易いでしょうが、操作となるとそうはいきません……禁書目録」

「うん!何かステイルのルーンカードみたいな、術式を補助する道具があるはず……見つけた!!」

「何!?」

ナタリーが余裕を崩し、とっさに左手をかばう様に右手で隠した。
   ・・
「あの指輪!!」

インデックスが指差す、隠された左手には指輪がして有ったらしい。

「なるほど、ソロモンリングの下級レプリカですか。なお、『使い魔に命令する』類の霊装としては最適な選択と思われます」

「え?つまりどういう事だ?ペンデックス」

一人納得した様子のヨハネに上条が問い掛け、それにはしんのすけが答えた。

「エットね、携帯電話の電波が直接通話相手の携帯電話に送られるんじゃなくて、一度アンテナ基地や衛星に送られるみたいな物だぞ」

「……悪い、解らねぇ」

「つまり、あの指輪が高度な遠隔操作を可能にしていると言う事です。なお、この霊装の元となった伝説は……」

しんのすけの説明では良く理解出来なかった上条にヨハネが補足する。
その昔『ソロモン』という名の王が居り、70を超える数の悪魔を使役していた。
その悪魔達との契約の証こそが『小さな指輪』なのだそうだ。

「もっとも、歴史上実在したソロモン王は当時異例であった『信仰の自由』を認めた中々の名君であったそうですが」

そして偶然だがパラケルススにまつわる伝説にも『悪魔使いの指輪』があり、
それらソロモン王以外の物も総称して『ソロモンリング』と呼ぶ事もあるそうだ。

ヨハネが説明を続けようとするが、ステイルが遮った。
            オリジナル
「ソロモンリングなんて『原型』が存在し無いゆえに解釈の幅が広い代物だ。『使い魔に命令する』以外の効果は無いと願いたいね」

「オリジナルが存在しない?どうして!?」

しんのすけが訊ねる。

「『実在しないから』です。彼は約三千年前の人物ですが、彼に纏わる伝説はほぼ西暦、紀元後からのものです」

「つまり『後付け』ってわけさ。もっとも伝説なんてたいていはそんな物だとおもうけどね」

「よく解んねぇけど、とにかくナタリーの指輪を壊せば良いんだな!?」

それだけ理解すれば充分と、上条が意気込む。

「……ふふ、そうね。確かにこの『指輪』を失えばチョット不味い事になるわね」

ナタリーは隠すのをやめ、左手の指から指輪をはずした。
そしてそれを此方に見えるように指輪を持った右手をかかげる。
    ・・
「でも、こうすればどうかしら?」

そう言うと彼女はその指輪を自身の後方へと放り投げた。

「何!?」

投げられた指輪はやがて重力に従い、一体の蒔かれし者の手へと落ちた。
するとその蒔かれし者が一目散に走り出した。

「私が追います!!」

その背中をヨハネが追いかけるが、他の蒔かれし者が行く手を遮る。

「ステイル・マグヌス、アウレオルス・イザード、援護をたのみます」

「うん、言われなくても!!」

「断然、良い判断だ」

ヨハネが言うや否や、ステイルの火の玉と、アウレオルスの放った『衝撃の魔弾』が邪魔をする蒔かれし者達を吹き飛ばした。

指輪を持ち、逃げる蒔かれし者をヨハネが追い走る。
じきに両者が遠ざかり見えなくなると、ナタリーが言った。

「これで8対1……ああゴメンナサイ8対20だったわね」

「ほうほう、つまり大事な物を敵から守るには自分の手元に置く場合と、敵の手が届かない場所に遠ざける方法も在るというわけですな」

「しんのすけ!?感心してる場合か!?」

上条が問う。

「ステイル達も、あのままペンデックスを行かせて良かったのか?」
    レイソウ
「うん、指輪を壊すために誰かが奴を追わなきゃいけない。確かに『壊す』だけなら君の方が適任だし足も彼女より速いかもしれないね」

「だったら!?」

「でももしもあの霊装が壊れることで発動する術式や何かが有ったら?」

「なっ!?」

「しかもそれを掛けたのは魔導師級の相手だ。解析出来るのは魔道図書図書館である彼女かインデックスのどちらかだけだ」

しんのすけがステイルの続きを引き継ぐ。

「当然あの人骨さんも抵抗するだろうし、足の速さで言ってもインちゃんよりペンちゃんが適任なんだゾ」

上条はヨハネを一人行かせたことにまだ納得は出来なかったが、ならば此方を一刻も早く片づけてしまえば良いとナタリーに目を向けた。

「相談は終わったかしら?ダラダラと戦うのも面倒臭いし、早速切り札を一枚使わせてもらうわよ」
           タクト
オーケストラの指揮者が指揮棒を掲げる様に、ナタリーがボーンストローを構えてこちらに言う。

「そう言う台詞は敗北フラグだゾ?」

「これを見ても同じことが言えるかしらね!!?」

振られる指揮棒のさす先に、蒔かれし者達が集まり、一本々々にバラけ、積み重なっていく。
そしてそれは遠目で見れば、白い巨人の様に見えるのであろう姿と成る。

「『がしゃどくろ』!!日本の妖怪なんだよ!?」

「正解!!これが私の切り札の一枚よ」

モザイク画。そう呼ぶにはあまりに歪な『絡み合った十数組の人骨』が
大きな人の形に組上がった。
その身の丈は4.5mはあるだろう、『巨人』。
その名の通り動くたびにガシャガシャと不気味な音が鳴る。

「……マジかよ」

上条が呟く。
その顔には冷や汗を浮かばせている。
そしてそれはステイルをはじめ他の男達も同様であった。
しんのすけでさえ、苦々しげにナタリーを睨みつけていた。
しかし……

「でも。これで8対2。また数の利がこちらに来た」

「そうだよ。それにペンデックスがすぐに霊装を壊して帰ってくるんだよ!!」

「ええそうね言うほど不利になったわけじゃ無いわ。ほら男共、いつまでアホ面さらしてるのよ」

女達は諦めない。怯えない。恐れない。
男たちが勝つと、勝てると信じるが故に。
そして……

「なあ、ステイル」

「うん、なんだい?上条当麻」

その想いは、男達に伝わる

「こういう時って女の方がずっと強いな」

「そうだね、そして僕達みたいな『バカな男』は、せいぜい彼女達に精一杯カッコイイところを見せようと強がるだけさ」

「ああ、見せてやろうぜ!!カッコイイところってヤツをな」

上条の顔に覇気が戻る。
ステイルが肯きナタリーに身体を向ける。
そんな二人に、後方支援のアウレオルスとパルツィバルも表情を改めた。

そんな様子にいよいよ堪えられなくなったようにナタリーが言った。

「ああっ暑苦しい!!鬱陶しい!!変なテンションアップスイッチ入ってんじゃないわよ!!」

スーハーと、一度深呼吸をした後にストローでしんのすけを指して言った。

「ソッチのクソガキは気づいてるみたいね。お友達にもおしえてあげたら?」

「野原殿、彼奴女は何を……」

ナタリーの言葉にパルツィバルが訊ね、上条達はしんのすけを見る。

「巨人が小さいんだゾ」

「「「……は?」」」

仲間達の声が重なった。

今夜はここまでです
続きは明日夜九時に投下します
しんのすけは決して
『巨人に期待してたら思ってたより小さかったからガッカリしている』
わけではありませんよ?


この世界観だとアクション仮面やカンタム、もえPは過去の作品となったのか、それともシリーズ化しているのか?

?「僕の愛しのエリザが人形だとぉぉお!?貴様ァァァ!」

マイナーだけど空飛ぶ布団のふーとんとか出てこないかな
魔術礼装としてなら出せる気がする

これから投下します

>>772
アクション仮面は続いてます
原作でも20年後まで続いてる(オラ嫁)作品ですしこっち(現実)の世界の仮面ライダーも40年以上続く作品ですから
カンタムも同様です。今回の映画で初代カンタムが復活するらしいですし
ただこのSSではもえPの後番がカナミンと言う設定です
風間君、カナミンに無茶苦茶ハマりそうですよね
>>774
ファウストさんは元居た場所にお帰りください
そういえば1は原作の旧約2巻でホーエンハイムの子孫やアレイスターが出てきたので
今後もそう言う設定の新キャラに期待してたんですがほぼでませんでしたね(新約でオティヌスがきましたが)
某武装する探偵達の学園物との差別化でしょうか?
>>775
ふーとんはいつか出す予定です
ただスゲーナスゴイデスのトランプで呼び出せる(生み出せる)のはあくまでも
しんのすけの記憶を元にしたレプリカなので、ふーとんは本人を出したいですね

第15話『必殺の秘策』【ベスト・タクティクス】

 スタイル
「体型が変わらずに身長が2倍になったら、体重と言うか体積は8倍に成るはずなんだゾ」

しんのすけが口を開く。

「うん?つまり?」

ステイルが聞き返す。

「身長が3倍なら体重はなんと27倍……だから」
           スパルトイ
ナタリーが生み出した『蒔かれし者』はの数は20
その内1体は術式の要となる霊装を持ち出し避難。
つまり19体が巨人の構築に使われたと言う事になる。

『がしゃどくろ』の体積が『蒔かれし者』の19倍ならば
『がしゃどくろ』の身長は『蒔かれし者』の約2.668倍となるはず。

「目測で蒔かれし者の背の高さは1.8m。だから1.8×2.668の約4.8mが巨人の身長のはずなんだけど……」

眼の前の『がしゃどくろ』は4m半ばと言った大きさであった。
わずかながら5m近いとは思えない。
つまり……

「オラ達の注目が巨人に集った隙に、アイツは多分3体の蒔かれし者を何処かへやったって事だゾ」

「なんだと!?」

しんのすけに向いていた視線がナタリーに集まる

「正解よ。ちなみに、何処へ行かせたと思う?」

ナタリーが嗤いながら問いかけた。

「しらじらしい、彼女を追わせたのだろう」

「彼女ってペンデックスの事か!?」

ステイルの返答に上条が聞き返す。

「ええそのとおりよ、追う側だった自分がまさか追われる側とは思わないでしょ?今頃4
体で挟み撃ちね」

「それが狙いだったのか!?」

「ええ、『群れからはぐれた獲物』を『確実に仕留める』それが『最善の戦術』でしょう」

「で、でもあの指輪は本物の霊装だったんだよ!?」

まさか自分が誤ったのかと、最初から策であったと言うナタリーにインデックスが反論した。
     フェイク フェイク     ルアー
「当然よ、偽物が偽物と判る魚に疑似餌を使うほどバカじゃないわ」

だから本物をつかうのだと事も無げに言う。

「意外とギャンブラーなんだね。見誤ったよ」

ステイル掌に火をともしながら言った。

「あら、勝てる賭けしかしないわよ?だからこそ十年間逃げ続けられたんだし」

「うん、なら今回も逃げ出すべきだったね!!」

ステイルが火の玉を投げ、がしゃどくろの足首を狙う。

「無駄よ」

ナタリーは言葉通りがしゃどくろを動かしもしなかった。
火の玉が当たり骨の巨人の足首に火柱が立つがそれだけあった。
火は一瞬燃え上がった後すぐに消えた。

「なっ!?」

アウレオルスがいまいましげに呟く。

「釈然、同体積の物なら表面積が小さい物ほど燃えにくいと言う事か」

「ふふ科学の基礎知識よね。加えて言うなら『がしゃどくろ』の再生速度は『蒔かれし者』を大きく上回るわ」

ナタリーがストローを構え直し言う。

「さてまずはアカゲザルとクソガキとウニ頭の三人を潰せば良いのかしら?私としては後ろの子達も一度に来てくれると楽なのだけど」

今は前衛にしんのすけ、上条、ステイル。
後衛にはパルツィバルとアウレオルス、その二人の後ろに姫神とインデックスとクリア、気を失った良という陣形であった。

「野原殿、敵の言う通りにするのは癪だが、雑兵が居なくなった以上後衛は減らしても良いのでは?」

パルツィバルが提案した。

「そうだね、とはいえ不意討ちは怖いしアウレオルスお兄さんはソッチに残ってよ」

ナタリーが言った「3体の蒔かれし者はヨハネを仕留めに行った」というのは嘘かもしれない。
その辺に隠しこちらの隙を伺っている可能性もある。
しんのすけにそう言われ、パルツィバルのみ前に出た。

「結局増えたのは一人だけか。まあ良いわ、さあ、戦闘再開といきましょうか!?」

ナタリーがストローを振り、叫ぶ。
すると4人に向かってがしゃどくろが走り出した。
まるで砲弾、その巨体に似合わぬ速さで近づいてくる。

「速いゾ!?皆気をつけて」


一方逃げた蒔かれし者を追って来たヨハネは、自身が追われている事に気がついていた。

「追われていますね。4対1になるのは不利と思われます」

眼の前の蒔かれし者を追いながら策を考える。
                    ・・・・
「……良し、必殺の秘策を考え付きました。あの場所に追い込みつつ誘導するとしましょう」

その顔には自信が満ちていた。

今夜はここまでです
しんのすけが頭良すぎる気もしますがオラ嫁の世界ではあのボーちゃんに匹敵する科学者だったようですし
これくらいは(使う計算式そのものは単なる掛け算ですし)ありかなと思いました
前スレでもインデックスの記憶容量1パーセントあたりの魔道書の冊数とか計算してましたし

どうもすみませんごぶさたしています。
1です。
生存報告とお詫びと投下予告とレス返しに来ました。
まず、間を開けてしまって本当にゴメンナサイ
なんとか6月1日の9時には投下再開できそうです。
以下レス返しです

>>785
はい、原作コミック全50巻と新クレ1~2巻とSIN-MEN全3巻はもっています
ただ映画のDVDは5本しか持ってません(ブリブリ王国の秘宝、オトナ、戦国、カスカベボーイズ、ケツだけ爆弾)
>>786-787
違和感がなければなによりです
>>788
未来マンも(劇しんのキャラは基本的に全員)出したいんですけどねチョットいつになるか解らないです
遅くてもロシア編まで行けばかなりのオールスターでやれそうですが
>>790
46~48巻です。特に47巻は吸骨鬼編以外にも徳郎先生の最期が描かれてるのでお勧めです
>>795
屈底親子(一家)がまたずれ壮に住んでいるのはアニメオリジナル設定ですがキャラクター自体は原作にもでてきます
ちなみにスーザン小雪は劇場版の『伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』にはでてきます
>>798
ブログとかTwitterとかはしていませんね。なんかゴメンナサイ
>>789>>796
映画『逆襲のロボとーちゃん』見てきました
平日の真昼間と言う事もあって、1ふくめ5人しか居ませんでした
だから遠慮無く泣けました。(比喩でなく泣きました。こんなに泣いたのは某哀しみの戦騎が死んだ時以来です)
ストーリーについての詳しいネタバレを避けますが一つだけ言いたい事があります。

冒頭のカンタムの映画の設定が漫画と映画で違っていました

漫画 18年前の闘いで死んだはずの主人公カンタムJrの父、初代カンタムとその妻シーラが敵ボス体内で生き続けてた→家族(ジョン含む)の力が合わさってついに最後の敵を倒したぞ!!
映画 なんかカンタムJrの仲間達が大量に出て来て大人数合体で敵を倒した

マンガ読んでこのシーンを音声付き動画で観れると思ってワクワクしてた1の期待を返せ―――!!!
いや後から冷静に良く考えて見ると映画版も感動的な話なんですけどね
初代カンタムは原作の上条さんみたいに祖国も友人も家族も親戚一同も……それら全部を敵にして戦い続ける物語だったんですけど(ジョン少年と出逢えなければ本当に独りで戦ったでしょう)
それが18年かかって今は、カンタムJrと山田ジョンにはあれだけの仲間がいる
というのはモエル展開ですし(フォーゼのフュージョンスイッチみたいな)
ただ山田ジョン(27)って全世界推定五千万人以上居る全あわきんを敵にする事に……おや、こんな時間に誰か来たみt

>>1のクレしん愛に不覚にもワロタ
原作コミック50巻俺も欲しいんだけど金が無くて踏みとどまってるんだよな
>>1は50巻集めるのにどの位金が掛かったの?

続き楽しみに待ってます!

愛と狂気を感じる。

1です。これから投下します
今回パルツィバルが不憫です

>>802
1~25巻は貰ったものですので26巻からで三千円弱って所です
運が良ければBOOK OFFで一巻108円で全巻手に入りますよ
>>803
ありがとうございます
>>804
今後狂気の割合が大きくなる可能性があります

しばらくヨハネが走ると彼女が追っていた蒔かれし者が突如足を止めた。
      ・・・・
(まずい……あの場所まではまだ少しの距離がある)

蒔かれし者がこちらに振り向いたがヨハネは止まらない。
今最もまずい状況は、前に居る1体と後ろに居る3体とに囲まれてしまう事だ。
眼前の蒔かれし者の背後に回る事ができれば、それでも4対1には変わらないが、囲まれるよりはましだ。

「まるでアメフトやラグビーの選手みたいです……ね!!」

捕まえようと腕を広げた蒔かれし者の脇をしゃがみ込みながら走り抜ける。

「なお、実物を観た事は無いのですが……なかなか、上手く行ったようですね」

そのまま走り続ける。
チラリと後ろに目を向けると案の定4体の骨組が追いかけて来ていた。

「やはり追ってきましたか」

しばしの間逃げるが、じきに追いつかれてしまった。

「けっこうな距離を走ったと思われますが、どうやら『人払い』の効果範囲拡大は既に行われていたようですね……こちらとしても好都合ですが」

周りに人影は無い。
半ば予想していた事だが今や人払いの範囲は『三沢塾の周囲』と言うよりも『第七学区の一部』と言える程に広がっているようだ。
ローマ正教の騎士達が施した術式ならば、三沢塾とその周辺だけで目的は果せるのだから、まず間違いなくナタリーの仕業だろう。

「さて、追いつかれた事ですし、そろそろ戦闘再開といきましょう」

言いながら後ろに蹴りを放つ。
蹴り飛ばされふらつく一体を他の三体が受け止める。
再び一体のみが向かって来る。
再び蹴り飛ばすが、それからはいたちごっこだった。

「……なるほど、何としてでも取り囲みたいようですね」

一体が足止めに徹し、その隙に三体が左右と後方に回り込むつもりなのだろうか。
一度に四体でかかってくれば良いものを、一体のみで向かって来る。
あるいは時間稼ぎが目的なのだろうか、一体ずつたおすのならば単純に考えて四倍の時間が掛かる。

「早く『指輪』を破壊して加勢にもどりたいのですが……」

何度も向かって来る人骨に不気味さをおぼえ、それでも視線は蒔かれし者達から外さず、
しかし知らぬ内にじりじりと後ずさっていた。


「……っ!?」

背に壁か何かが当たり、自分が退いていた事に気づく。

「……ふふ、たかが骨格標本相手に恐怖を感じるなど、元は禁書目録管理用術式が生んだ
疑似人格が、随分と人間らしくなったものですね」

恐怖を自覚した事で、逆にそれが滑稽だと笑い飛ばせた。
そうだ、何を恐れる事がある物か。
相手はたかが骨格標本ではないか。
イギリス清教のトップ最大主教が施した術式に、原典級霊装使いが肉体を与えた。
魔術人形として最高位とも言える我が身に比すれば、眼の前の骨組達の何と粗雑な事か。

チラリと背後に目をやる、どうやら壁の様な物は自販機であったらしい。

「どうやら、移動しながらの攻防は功を奏したようですね」

彼女がそうつぶやいた時、一体の蒔かれし者が今一度襲いかかった。
ヨハネはその敵を、その肘と手首の間を掴み取り、すれ違いざまに身体ごとグルリと半回転させ、自販機の側面に叩きつけた。
続けて頭蓋よ砕けろと言わんばかりに、勢い良く身体をもう一回転させて回し蹴りを放つ。
しかしその脚はかわされ、自販機のみがズドンと快音を鳴らした。
かろうじて頭部の粉砕をのがれた蒔かれし者が、ショルダータックルの様な反撃をしてきたが、それは避けられぬ程の速度は持って無かった。

「意外と反応速度は高いようですね」

攻撃を避けた骨に、また自身の右足の甲の痛みに顔をしかめながらも、彼女は宣言する。
        チェックメイト
「なお、これにて『詰み』と思われます」

彼女の足元には一本の飲料缶が転がっていた。
先程の蹴撃の際、自販機から吐き出された物だ。

今の状況はヨハネの前に四体の蒔かれし者が一ヶ所に集まっている。
その中心へと、足元の缶を蹴り上げ、走る。
放物線を描き最前の一体の肋骨に向かう飲料缶を蒔かれし者の手がキャッチした直後
刃と化した浴衣の袖が、飲料缶を切り裂いた。

真っ二つに分かれた缶にはこう書かれていた


『ヤシの実サイダー』


中身の液体が爆ぜる様に周囲に飛び散り、濡らす。
すると蒔かれし者達が解けるように崩れ落ちていった。

その様子を眺めながらヨハネはつぶやく。
 ・・・・
「この場所に在る自販機は、金銭がなくても飲物が手に入ると言う事を覚えていた完全記憶能力の勝利ですね。なお、炭酸飲料が一発ででたのは幸運でしたが……さて」
             ユビワ
白い水溜りの中から目的の『霊装』を拾い上げ確認する。

「ふむ、特に罠の類は無いと思われます」

そう言うと、彼女は指輪を石畳の地面に落とし踏み潰した。

そしてこちらは16体もの人骨で構築された巨人、『がしゃどくろ』とそれを操るナタリーを相手にする上条達。

「くそっ!?パルツィバ―――ル!!」

上条が叫ぶ先には、胸部をへこませた西洋甲冑が横たわっていた。

「まず一人、アンタ達はあと何分持つかしら?」

ストローを愛おしげに舐め上げたナタリーが言った。

今夜はここまでです
騎士さん、せっかく最前線に出たのにほぼ出番なし
余談ですが今回の話は某『漫画家対陳腐な悪戯』がモチーフになってます

乙乙
炭酸で溶けるってのは原作しんちゃんも意識してるのか

新クレヨンしんちゃんってどうなんだ?
作者変わってるし手を出しにくいんだが

>>818
絵柄そのものはクレヨンしんちゃんなんだけど物語が初期に戻っちゃったみたい
まつなが先生が男にときめいてたりするから徳郎先生の話は無かったことになったのかね
原作初期とかアニメに近づいたクレヨンしんちゃんって感じかな

作者を失ったクレしんって
記憶を失った上条みたいだよな……

どこも違っちゃぁいないっていうのに知ってる人からすると何故か違和感を感じる

つばきちゃんの「中の人」は春日部か学園都市かどこかにいるんだろうか。
たぶんそれなりに年を取ってると思うけど。

どうも、>>800でSHIN-MENがSIN-MENになってるミスに気づいた1ですorz
これから投下します

まあでも『罪を背負う者達』とか『罪深き者達』って言うのもアメコミ風のヒーローらしくて、これはこれでありですね
>>813-817
原作で吸骨鬼が溶けたのは『ものすごいチョー炭酸ジュース』ですが、アレも市販品であることには変わりませんし
また古代ウエズリー王国時代にも『ボーン・ブレイド』以外の対抗策が何かしら(疲れる言葉も除いて)有ったはずなので(例えば天然の炭酸泉等)
市販の炭酸飲料でも効果が有る事にしました
余談ですがきつい炭酸水ってマジで口にした瞬間吐き出しちゃいますよ(実経験)
『ものすごいチョー炭酸ジュース』は結構人気商品だったようですから普通に美味しいと思えるレベルの炭酸でしょうし
このSSでは『ヤシの実サイダー』はそこから40年後(クレしん原作から10年+学園都市の内部系飲料なので更に30年)の炭酸飲料なので
炭酸系清涼飲料水に求められる『爽やかなシュワシュワ感』とかでは大きく『ものすごいチョー炭酸ジュース』を上回ってる可能性もありますね
>>834
あの世界が『映画』である以上、演者さんがいる可能性はありますが。彼等と出会うことはないでしょうね
>>818
買ってます。読んでます。普通に面白いですよ?ただ
>>821
の方の言う事も理解出来るのでそういう時は『続編』と言うよりもSHIN-MENみたくスピンオフとして読めば楽しめると思います(とある日常のいんでっくすさんの様に)
>>820
1はアニメに近いって印象ですね
※注意
新クレ3巻をまだ買ってない方へ
原作25巻を読んだ直後に読むと興奮して変な声が出るよ(実体験)

第16話『諦めない理由』【タタカウワケ】

「大丈夫だゾ上条君、鎧の防御力のおかげで気絶しただけみたい」

しんのすけが敵からの攻撃を避けながら上条に言う。
敵は身の丈4mを超す巨人、その腕はただ振り回されただけでも十分過ぎる攻撃と成る。
つい先ほど幾度かの攻防の後、重い鎧に身を包んだパルツィバルがついに避けきれず殴り飛ばされ、
彼は壁に叩きつけられてしまった。

「うん、彼にとって甲冑姿だったのは、幸か不幸か判断に迷うところだね」

ステイルがナタリーに火の玉を投げつけながらぼやく。
火の玉は全て彼女に届く前に巨人によって防がれていたが、少なくともそうする事によってこちらへの攻撃回数を減らす事ができていた。

「おい、しんのすけ!!お前の『手袋』で……」

パルツィバルを治療するよう頼む上条に、ステイルが待ったをかける。

「ダメだ。今しんのすけが抜けたらその隙を突かれて全滅しかねない、彼を治すのはアイツを倒した後だ」

「了解だゾ、ステイル君。とは言えどうしたもんかね~」

先程からこちらからの攻撃は決定打とならずにいた。
直ぐに再生、回復する『がしゃどくろ』が相手では攻撃が半ば無効化されているようなものだ。
ならば、とインデックスの指示をあおぎながら効果のありそうな『巨人の退治法』や『巨人殺しの神話』を再現するように戦ってみたのだが……
しんのすけが肩をすくめる。

「『定規で身長を測る』も『上から見下ろす』もダメだったからね~ハア、やれやれだゾ」

それに続くようにインデックスが言った。

「元々『がしゃどくろ』は英雄譚の敵役とかじゃないから、明確な退治法が無いんだよ。しいていえば『目競』って妖怪と同一視された時は別だけど、このがしゃどくろには眼球がないからその方法は使えないだよ」

「インちゃん、何か他の方法は無いの?」

「『巨人殺し』の有名な神話には他に『石礫で鼻を撃つ』、『踵の腱を斬る』ってのもあるけど……」

「骨だけだから鼻も腱も無い、と。さっきオラがダメもとで試してみた『うなじを削ぐ』も案の定ダメだったし」

「その神話は私の知識にも無いかも」

「まあ神話じゃなくてバリバリのサブカルチャーだし」

さて如何したものかと相談を続けようとしたところでナタリーが口を挟んだ。

「ごちゃごちゃと五月蠅いわね、もう諦めたらどうかしら?」

「諦められるわけ無いでしょうが」

しんのすけが言った。
             ハッピーエンド
「十年前、キングを倒してデメタシデメタシだと思ったら、続きが在った」

しんのすけは一瞬クリアへと目をやり、続ける。

「キングやナタリー達のせいで、クリアお姉さん……マースオ家の皆みたいに親切で善良な人達がハンターに追われるようになってたなんて、オラは今日まで知らなかったゾ」

『親切』や『善良』と言った単語に罪悪感を感じたのかクリアが胸をおさえ顔をしかめていたが、幸い仲間達がそれに気づく事は無かった。
     私たち   蛮族共              ハンター
「それは『吸骨鬼』と『吸血鬼』を一括りにした考えを持った鬼狩連中のせいでしょ」

一緒くたにされて正直こちらも不快だとナタリーは吐き捨てる。
そんなナタリーに対してしんのすけはうつむき、悲しげに言う。
おバカな人達
「そうだね、一番悪いのはそんな『盲目的正義』なんだろうけど……」

下に向けた視線をナタリーに戻し、真っ直ぐに彼女を見ながら、彼は続けた。
                         ヒト それ以外
「だからこそ、お前の目的が達成されたら、今度こそ人間と吸血鬼達とで全面戦争になるかもしれない。それに何より……」

しんのすけは親指を姫神にむける。

「そのお嬢ちゃんにね、もう誰も殺させるわけにはいかないんだゾ」

ステイルが苦笑交じりに言う。

「君にとって全面戦争の阻止よりそっちの方が重要なのか……」

「まあ、そう言うなよステイル。その方がしんのすけらしくて良い」

上条がステイルに言った。

「それに俺も、『世界』がどうだとか『戦争』がどうだとかって話よりも、こっちの方が解り易い」

「うん?君も彼にどくされたのかい?」

「そうじゃねえけどさ。こうして知り合っちまった以上、姫神にもクリアにも、笑っていてほしいだろ?」

「そうそう、オラもそれが言いたかった」

しんのすけは姫神を指していた片手を愛刀に戻し八相に構え直すと、言葉を続ける。

「これだけ戦う理由が揃ってたら、諦めるなんてできないでしょ?」

上条君達もそうでしょ?と言うように両隣に立つ二人に視線をむける。
ステイルはやれやれと肩をすくめ、上条が笑いながらうなずいた。
ナタリーは呆れたように、しんのすけへ言う。

「赤の他人の為に死ぬなんて、やっぱりニンゲンは劣等種ね」

「死なないし。それに赤の他人だろうが『かわいいお嬢ちゃんときれいなお姉さんの為』なら、オラはけっこう頑張れるゾ」

ニヘラと笑みを浮かべ、しんのすけはそう言った。
そんな彼の表情を挑発と受け取ったのか、ナタリーが苛立ちと共に言葉を返す。

「死なない?そう、じゃあ試してみようかしらっ!?」

彼女が指揮棒を振るい、巨人は腕を大きく後方へ引き一瞬だけピタリと止まったのち、その腕をしんのすけ目掛けて突き出した。

今夜はここまでです
久しぶりの投下だと言うのに短くてゴメンナサイ
続きは明日夜9時の予定です

新クレも結構面白いですよ
特に新刊の3巻は待望のぶりぶりざえもんの冒険の続きが載ってましたし(作者が代わったのであきらめてた)
いつかジミテロ団とアクション仮面・娘の決着も見たいですね

やっぱりしんちゃんの根本的なところはいつまでも変わらないんだろうなぁ

新約10巻の再構成に期待(ゲス顔)

1です。これから投下します
>>847
このSSは『原作再構成という名の原作ブレイク』なので
新約のキャラも早めに出ます

「おわっ!?」
              スイカ
真っ直ぐに自分に向かって来る西瓜程の拳を、しんのすけは戦太刀を上から叩きつける事でそらす。
連撃に移るかと思われた巨人を、しかしナタリーは引き戻した。
その際ナタリーの顔にわずかだが焦りの色が浮かび、それに気づいた二人が呼びかけ合う。

「しんのすけ!!」

「上条君!!」

ナタリーが舌を打つ。
それによりステイルも二人が何に気づいたか理解する。

「うん、どうやら彼女が霊装の破壊に成功したようだね」

「そういうこと。さっき巨人の動作と動作の間に隙間ができたしね」

「ペンデックスが無事だと判ったのは良いけど、操作用の霊装が壊れてもその程度のマイナスしかないのか……」

上条がやっかいだなとつぶやく。
しかし弱気になっているわけでは無い事は声色から伝わる。

「ふん、眼の前の一体位なら霊装の補助が無くなったところで……」

「違うゾ。重要な事は、ソコじゃない」

巨人の操作性が落ちた事で蒔かれし者達の敗北を察したナタリーだったが、直ぐに気持ちを切り替え毅然と言い放つ。
しかし、しんのすけは指摘する。

「大事なのはペンちゃんがフリーに成ったってこと。そしてペンちゃんには吸骨鬼の弱点は話してある」

ナタリーが冷汗を浮かべながらも言い返す。

「なるほど、それならあの娘が帰って来る時には両手に缶ジュースでも持っていそうね。でも……」

息を整えるためか一拍間を置くと、挑発するように言った。

「吸骨鬼の弱点を知るのは、私も同じ。当然その対策はしているわよ?」

「確かにお前自身はそうだろうね。でも……人骨さん達は違うんじゃない?」

「っ!?」

ナタリーのその表情の変化が、正解を語っていた。

「まあ、必ずしもペンちゃんがジュースを持って来るって決まったわけじゃ無いから、ある意味賭けなんだけどね……」

わざとらしく弱気な声で、わざとらしく顔をくもらせて、うつむき彼は言う。
そして顔を上げると、しんのすけは笑みを浮かべ言いきる。

「ちなみにオラは、イカサマ無しのギャンブルなら負けたことがない」

彼の隣、やや後に立つ上条には口の端が上がるのが見えただけだったが、
正面のナタリーにはその笑顔は恐怖を与えたらしく、彼女はヒッと短く息を飲んだ。

「な、ナンナノこのガキ……?勝てナI……?waタ死が負ケLu????……違う!」

思考を切り替えるように頭をブンブンと振り、しんのすけを睨むと視線を左右に動かす。
そうして見えたのは先程殴り飛ばし、壁際に伏したままの騎士と、真先に仕留めた因縁の女。

「ふふ……そうよね、使い魔を失えばこの人数を相手にするのはチョット不利ね。なら帰って来る前に全員潰せば良い」

それならばその後、浴衣の少女が駆けつけても人数で不利になる事は無い。

「さて、まずは……」

まず前衛三人を一人ずつ順番に、確実に仕留めていこう。より確実に弱い順に……
あのえたいの知れないガキは後回しだ。
もう一人の黒髪のガキも、あの右拳はやっかいだ。
ならば……

「うん!?またパターンが変わった?」

巨人を操り、その腕を標的へと振るう。
何度避けられようが他の二人がどんな妨害をしてこようが、ナタリーは執拗に赤毛の神父ステイルを狙い続けた。

今夜はここまでです。
ステイル君ピンチ

しんのすけの笑顔って正面から見るのはわりとホラーな気がする
ちなみに1が想像するのは『龍が如くOTE』の第二章OPでゾンビの口にショットガンの銃口ねじ込んだ時の真島の兄さんの笑顔
狂気が狂喜してる感じの

次回も明日夜9時の予定です

そもそも禁書読んだことなかったりする

一つ一つの事件を解決する方式なんだから、別にどれかを解決してそれで終わりでもアリなんじゃないの
なるべく色々やってみて欲しいけど

エンジェル伝説やらなんやらのクロスが書かれてるこのご時世に何を言ってるんだか

モノによってはシティーハンターとかガッシュも居るんだぜ?
まだシティーハンターやらエンジェル伝説やらガッシュがまだ旬だとでも言うつもりか?

1です。これから投下します
今回ギャグ色強めです
>>864
原作禁書を読んだ事の無い人にも楽しんで頂けたら幸いですが
1にそこまでの文才は無いので(1は1なりに頑張りますが)
原作小説は漫画化もしているので一度は読んでみてはいかがでしょう
>>867-869
1自身好きだったSSがエタる悔しさと言うか悲しさは知っているので
(上条さんがパーマンになるのとか一方通行がジョジョオタクになるのとかハリーポッターのキャスティングクロスとか)
完結出来るように質を落とさぬよう気を付けつつ投下速度を上げるべく精進します

紳士の1すき

「くそっステイルに集中攻撃かよ!?」

ステイルと巨人の間に身体を入れ右手を構えた上条が毒づいた。
しかし巨人は上条を無視し、(元々ナタリーが操っているのだが)体格を生かしてほぼ真上からステイルに拳骨を振り下ろす。

「アクション・ヨーヨー!!」

しんのすけが巨人の肘にヨーヨーを巻き付け、背負い投げの要領で全身の力を使いワイヤーを引っ張る事で
ギリギリその拳はステイルをかすめるにとどまった。

「上条君はオラを支えて。オラ一人じゃチョットこれきつい」

ワイヤーを引きちぎろうと腕を引く巨人と、その場に踏ん張る事で綱引の様な状況になった
しんのすけが上条に助けを求める。

「お、おう解った」

上条が応え、しんのすけを支える。
ナタリーは巨人に腕を引かせる動作を続けながらも、視線をステイルから外してはいない。

「これはまずいゾ上条君。ステイル君はもう、火の玉を何発も撃ってるしね」

「えっそれはどう言う……あっそうか魔力の元は!?」

「そ、『生命力』。だから使うほど『体力』も減っていくし、疲れれば動きも鈍くなるからね」

「さっきのパルツィバルみたいにか」

しんのすけと上条が話す通り、ステイルは既に肩を上下させている。
あとそう何度も攻撃を躱したり防いだりは出来ないだろう。

一方ナタリーはと言うとこの膠着状態から脱する方法を思いついたようだった。

「なるほどね。そのワイヤー、かなりの強度を持つみたいね……『がしゃどくろ』!力ずくで振り回しなさい!!」
ストロー
指揮棒をグルリと回す。
すると指示を受けた巨人が、その腕を大きく回した。

「うわっ!?」

「おおおおおお?」

上条はしんのすけから引きはがされ、しんのすけはワイヤーと共に振り回された。
何回転かの後、巨人の肘に巻き付いていたヨーヨーが外れしんのすけは飛んでいく。
そしてある意味で上条当麻以上に運の悪いことに定評のある少年、ステイル・マグヌスは、しんのすけが飛ばされたその先に立って居た。


「ゴフッ―――!?」

さながら砲弾と化した仲間を、彼は避ける事が出来なかった。
しんのすけとステイルが共に数メートル後方に飛ばされ、アウレオルスの足元に転がった。
直ぐにしんのすけが起き上がりステイルを気遣う。

「大丈夫ステイル君!?酷い!誰がこんなことを!?」

「うん!?君だよ!?」

返事の直後ステイルは咳き込み、床に赤いしみが広がる。

「もー、そんなにボロボロならツッコミなんてしなきゃいいのに」

そう思う位ならば何故ボケるのかと視線でステイルが問う。

「上条くーん!ステイル君もチョット戦うのは無理みたい」

しんのすけが独り前線で戦う上条に伝える。

「解ったからお前は早く戻って来てくれ!!いくらなんでも俺一人じゃ……」

「リョウカーイ」

しんのすけが前線へと戻って行く。
しかしナタリーは今度はしんのすけを無視するかのようにたんたんと上条に攻撃を仕掛ける。
アウレオルスにはそれがひどく不気味に思えた。

「愕然、このような相手に私達はかてるのか……?」

「勝てるさ」

独り言のつもりでつぶやいた言葉に返事があり、やや驚いて声のした方を見ると、
良が剣を杖にしながらも、いつのまにか起き上がり立っていた。

「貴方なら……勝てる」
       キュリオディーラー
確かにかつては『骨董屋』とまで呼ばれた、一戦に何十もの霊装を持ち込んでいた頃の自分であれば、
炭酸の雨を降らせるのも、あるいは簡単だったのかもしれない。

「し、しかしこの『新AZOTH剣』では……」

しかし自分は錬金術の奥義に達したとおごり、今手に有るのは暗器銃一つ。

その時、しんのすけが此方に向かって言った。

「アウレオルスのお兄さん!!剣を掲げて呪文を唱えて!!『空間を変じる』って」

反射的に言われた通りにする。

「くっ『空間を変じる』!!」

しかし何かが変わった様子はない。

「まさか、失敗した!?チョットお兄さーん黄金錬成の感覚で炭酸水の雨をふらしてみてよ」

しんのすけが再び指示を出すがアウレオルスは動けずにいた。
黄金錬成は三沢塾の周囲でしか使えない。
雨を降らせと言われても、どうすれば言いか判らずにいた。

「どうしたの?イザードさん。煮干を出した時みたいに、雨をふらせてよ」

良が叫ぶ。
    パラケルスス
「やれよ錬金術師!今すぐ強炭酸水を創れ!!貴方にはそれが出来るんだ!!!」

その気迫に一歩後ずさったアウレオルスの震える背中に姫神が手を添える。

「ヘタレないで。貴方なら出来る。貴方が自分を信じられなくても。私は貴方を信じてる」

迷いが溶けていく気がした。

「『降り注げ、炭酸の雨』!!」

錬金術師の力強い声が響き、『骨の巨人』の周囲に炭酸水が雨の様に降り注いだ。






「お待たせしました。なお、炭酸飲料の入った350ml缶2本を持って……あれ?」

そしてこの場に急ぎかけつけながらも、僅かに登場のタイミングを逃した浴衣の少女が呆けた声をもらした。

今夜はここまでです
ペンデックスさんのキャラがもう原型をとどめて無い……
まあ自重する気は有りませんが
>>872
頭に『変態と言う名の』が付きそうな1ですが今後もよろしくお願いします

空間を変じて三沢塾の空間と同一にしたのかね

一日空いただけなんだけど、心配になってきた。大丈夫かな…

このSS面白いからエタらないでほしい。

忙しいのかそれとも体調がすぐれないのか…ひとまず現状報告だけでもお願いいたします。

投下してからまだ四日なのに報告とか……
前スレから合わせると一年近く続けてるんだしもうちょっと待ってやれよ

1です。ここ数日は来れずにゴメンナサイ
これから投下します

>>882
心配させてすいません
>>883
ありがとうございます。
間が空いてしまう事は在るかもしれませんが、エターなることだけは避けたいと思っています
>>884
まさか両方が正解とは思わなかったでしょう
我ながらスケジュールも体調も管理できない1の無能っぷりにビックリです
>>886-888
毎日更新できそうと言っておきながら三日しかもたなかったダメな1でゴメンナサイ

第17話『雷神の槌』【ミョルニル】

突如室内であるにもかかわらず降り出した雨は、骨の巨人『がしゃどくろ』を溶かし崩していった。
そしてやがて雨は止み、雨雲も消えていく。
ナタリーはただ呆然と立ちつくし、その様子を眺めていた。

「こっ……これはまさか、『アラ・コラ・マイッタ・マ・イッカ法術』の『ヘンジル空間』!?」

そんな時、インデックスが驚きの声を上げた。

「『ア法』!?なぜアウレオルスが『ア法』を使えるですか!?」

彼女とは分離以前に得た記憶・知識を共有する魂の双子であるヨハネもまた、信じられない現象に驚き、空間を変じた当人アウレオルスへ問い掛ける。

「唖然、私にも何が如何なっているのか……だが不思議と『黄金錬成』が発動すると言う『確信に近い自信』が有った。この剣の効果なのだろうか?」

手にした『新AZOTH剣』をまじまじと見つめながら、アウレオルスが答えた。

「その剣は確か、しんのすけが創ったのでしたね。なお、『複数の記憶を組み合わせて』とのことでしたが」

「しんのすけは『ア法』を知ってたのかも」

「そういう事。まあオラ自身が使えるわけじゃ無いけどね」

ナタリーが呆けている今の内にと、仲間のもとにパルツィバルを運んで来たしんのすけが答えた。

「アウレオルスお兄さんの『黄金錬成』と『ヘンジル空間』は似てたからね」

この空間内であれば、『黄金錬成』を三沢塾と同じように使えるはずだと、アウレオルスに話す。

「愕然、『ただの暗器銃じゃ無い』とは言っていたが、無限の火薬と衝撃の魔弾だけではなかったのか」

「他にも刀身の回転射出とかもあるけど、やっぱり一番の目玉は『ヘンジル空間』作成機能だゾ」
サプライズ
悪戯が成功した子供の様な無邪気な笑顔で、しんのすけは自慢げに語る。

「つまりこの『新AZOTH剣』が有れば、何処でも『黄金錬成』の使用が可能と言うわけか」

「おっ、名前付けたんだ。じゃあついでにこの『手袋』にもなんか良い名前を……」

横になったステイルを両手で触りながら、しんのすけがアウレオルスに言う。
                         アスクレピオス
「む?固有の名称は無かったのか。ならば、そうだな『魔法軍手』と言うのはどうだ?」

「……ねえ、いくら骨の巨人を倒したからって気を緩めすぎじゃないかしら?」
ナタリー
本人はそのままなのだと、談笑を続けそうな空気にクリアが注意を促した正にその時、
その場にナタリーの呵々大笑が響きわたった。

「アハハハハハハハハハハ―――……」

その声が収まると、息を大きく吸い、そして叫ぶ。

「舐めるな下等種族どもがぁっ!!使い魔がやられたところで痛くも痒くもナイわぁっ!!」

ナタリーが腕を振ると辺りに歯がばら蒔かれ、次々と新たな『蒔かれし者』が産まれた。
しかし彼等は此方に襲いかかることは無く出入り口を塞ぐべく移動する。
ディープブラッド
「『吸骨殺し』さえ手に入れば、リョウ以外は逃げようとドウでも良かったが……もはや許さん」

先程までは『吸血殺し』である姫神を手に入れる事が目的であり因縁の相手である良の他はどうでも良かったが
姫神以外を皆殺しにする方に気が変わったようだ。
彼女は続けて呪文を唱える。

「古きミッドガルド、雷神は槌を振い、山羊の亡骸に祝福を与える」

膨大な魔力が彼女を包み、インデックスがそれを周りに伝えた。
        高度な大魔術
「気をつけて!『第二の切り札』が発動したのかも!?」

ナタリーが言う。
       テイクツー       クランクアップ
「さて……第二ラウンドと……いえ最終決戦といきましょうか」

今夜はここまでです
>>881
と言うわけで正解は『ヘンジル空間を作成して黄金錬成を使えるようにした』でした
ただし時間がゆっくりになるとかの効果はでていません

次回の投下予告は出来ませんが遅くても一週間以内に投下します

1です。
短いですがこれから投下します
896-899
お待たせしました

ナタリーがボーンストローを服の内にしまい、此方に向かい歩く。
彼女の一番近くに立っていた上条が身構え、叫ぶ。
         アルス=マグナ
「アウレオルス!!『黄金錬成』が使える様に成ったんならサポート頼むぞ!!」

奥義を取り戻した錬金術師は、勿論それに応えた。

「釈然、敵方が独人である以上下手に前線を増やすよりも他は後方支援に徹するが吉か」

暗器銃の銃口をナタリーに向け、呪文を唱える。

「『対象を金縛りにした後、魔弾を射出!!衝撃の魔弾にて両腕の骨を砕く!!』」

此方に向かい歩いていたナタリーが立ち止まった直後、二発の銃声が鳴り彼女の左右の手があらぬ方向に曲がった。
そんなナタリーの前に上条が立つ。

「こんな状態になってるアンタを殴るのは気が引けるけど、姫神を狙う以上容赦はしない……ちょっと寝ててくれ!!」

上条が突き出した己の右拳がナタリーに触れ、ガラスが割れる様な音がした刹那……
上条当麻の身体は、ノーバウンドで壁まで飛ばされた。

「上条君!?」

しんのすけが駆け寄る。

「……ぐ、いったい何が?」

背中から壁に叩きつけられ地面に落ちた上条が、なんとか上体を起こしながら呟く。

「たぶんだけど、上条君が殴ったことでアウレオルスお兄さんがかけた金縛りが解けるから、ナタリーが動けるようになって上条君はカウンターくらったんだと思うゾ」

上条に触れながら、しんのすけが説明する。

「『たぶん』だとか『思う』だとか妙にあやふやだな?」
     ・・・・・・
「オラにも見えなかったからね」

しんのすけらしからぬ言い方が引っかかり、上条が聞き返したが
その返事に絶句した。

「まあ、考えてみれば後出しのカウンターなんだから速さで早さを補うのは当然ですな」

そんな上条をよそに、しんのすけは一人納得してうなずいていた。

「でも良くそのていどのダメージですんだよね、上条君。下半身を置いてけぼりにして上半身だけ飛んでっても不思議じゃ無かったのに」

「怖えよ!それどこの心眼さんだよ!?」

さらりと恐ろしい事を口にした友人にツッコミをいれる。
しかしスルーされたらしく、彼は考察を続けた。

「攻撃を受ける直前に自分から後方の飛んだとか?」

「無意識にか?」

「『身体が覚えている』ってやつかもね」

会話をとりあえず切り上げ、ナタリーの方を見る。
ナタリーの前には今、アウレオルスが立っていた。


「釈然、その『速度』こそが貴様の二枚目の切り札か」

自分はあの少年が右手に宿した『原石』により金縛り解除されるであろう事は予想していた。
それ故に『黄金錬成』で直接骨を砕くのではなく魔弾の必中を念じたのだ。
しかし実際には金縛りの効果が切れるとほぼ同時に反撃を決めたではないか。
しかも粉砕骨折したはずの、その両腕でだ。
その瞬間は見えなかったが、上条当麻が飛んで行った直後、ナタリーは両手を前に突き出して立っていた。
そして今彼女は動作を確認する様にすっかり回復したらしき腕を動かしている。
自分の眼には写らぬ程の『速さ』そしてダメージを受けた直後に回復しているという再生の『早さ』恐らくこれが奴の切り札なのだろう。
と、アウレオルスは推測する。

「必然、此方も油断はできぬな。『死滅せよ四肢の筋細胞』!!」

再び『黄金錬成』を発動する。
しかしナタリーはわずかの間グラついただけで、直ぐに何も無かったかのように歩き出した。

「有り得ん!!両の手足が死人の物になったようなモノなのだぞ!?『回復』では……っ!?」

そこまで言って、ある可能性に気づく。
ちょうどインデックスとヨハネもソレに気がついたようだ。

「ひょっとしてこれは、もしかすると治癒や回復の魔術じゃ無いのかも!?」

「ええ、どうやら『蘇生術』のようです。なお、先程の呪文から『北欧神話』由来の魔術だと思われます」

良とクリアが双子に訊ねる。

「「何か解ったの!?」」

「はい、恐らく『雷神』と『槌』はそれぞれ「トール」と『ミョルニル』の事……」

「祝福される山羊の亡骸は『タングリスニとタングニョースト』の事なのかも」

二人が説明するには、北欧神話において雷神トールが旅先で泊めてくれた家族に山羊鍋を振舞った。
「決して骨は傷つけるな」
と、それだけ注意して。
そして翌日、その骨に相棒たる槌ミョルニルを振れば山羊はたちまち生き返ったと言う。

「なお、山羊は二頭おり、この内一頭は腿骨が割られていたため脚が曲がっていたそうですが」

「今は関係無いんだよ。大事なのはこの術が『骨さえ無事なら肉片の一かけらも残って無くても甦る』術って事」

良がそこで疑問を挿む。

「えっでも骨が無事じゃ無きゃ回復に支障がでるんだよね!?」

先程アウレオルスはナタリーの両腕を砕いている。
しかしナタリーはその腕も含め問題無く回復していた。

「それは多分、あの『蒔かれし者』のせいかも」

インデックスが出入り口を塞ぐ骨格標本達を指さし言った。

「うん、なるほどね。そう言う事か」

ステイルはそれで理解したが、クリア達は説明を続けてくれと双子に目でうったえる。

「つまり、ナタリーは自分自身を『蒔かれし者』の一体に見立てているのです」

ヨハネが言うには、それにより『折れようが砕けようが骨だけなら元に戻る』効果がでているのだそうだ。
『骨さえ無事なら肉片の一かけらも残って無くても甦る』そして『折れようが砕けようが骨だけなら元に戻る』
この二つの組み合わせは此方にとって最悪と言えた。

「そんな。じゃあどうすれば?」

姫神が訊ねる。

「当然、やるべき事は先程と同じだ」

今回はここまでです
次回は明日もしくは明後日に投下します

把握
面白いので待ってます

大丈夫ですか?一週間たちましたけど…

公式で過去条さんとみさきちの馴れ初めキタ――――――!!!!!
どうもおひさしぶりです。1です
これから投下します
>>909-912
ありがとうございます
>>913
御心配おかけしました

その問いに答えたのはアウレオルスであった。
彼にも彼女たちの会話は聞こえていたらしい。

「それほどの大魔術、霊装の補助無しには困難。必然、其れを見つけて破壊すれば良い」

確かにやるべき事は先程と変わらない。
問題はそれがどこにあるか、そしてそれをやり遂げる前にこちらが全員倒されてしまうのではないかと言うことだ。

「おしゃべりしてる余裕なんてあるのかしらっ!?」

ナタリーがそう言い終えるやいなや、アウレオルスとの距離がつまる。

「っ『転位せよ』!!」

アウレオルスは『黄金錬成』により反対側の壁近くに転位させる事で再び距離をとった。
しかしナタリーは舌打ち一つする間に壁際からこちらの1メートル手前程まで移動する。
流石に『黄金錬成』には多少の警戒心を持ったようだ。
そこで立ち止まりアウレオルス達の様子をうかがっている。

「まただ、あのスピードは?身体能力の強化系の術も使っているの?」

良が疑問を口にする。

「さて、どうかしらね」

ナタリーは答えず、ただそれだけを返した。
今の彼女は人間を見下してはいるが見くびってはいない。
油断から情報を提供する等と言う愚行をおかすはずも無かった。

「憮然、至極単純な理屈であろう」

しかし医者でもあるアウレオルスには、既にその絡繰りを理解されていた。

「完全な回復……『蘇生』が有るならば、いくらでも筋肉を酷使できる」

先程からの高速移動も、上条をメートル単位で突き飛ばした怪力も(しんのすけの見立てでは上条が自分で飛んだのだが)それで説明がついた。
要するに所謂『火事場の馬鹿力』だ。
ただし『翌日に筋肉痛』なんてレベルでは無く、『今後一生歩く事も立つことも出来なくなる』レベルでの……
しかしそれ程にまで酷使されダメージを受けた筋肉、筋組織も筋繊維も『蘇生』されるのだから厄介だ。

「へぇ、解ったところで……何か対策があるのかしら?」

ナタリーが挑発するように言うが、アウレオルスは平然と答えた。

「貴様のその超速攻撃はその性質上連続では不可能。自然、回復の為に数秒のインターバルが必要になるからな」
                   アルス=マグナ
「確かに隙ができるわね。でもアナタの『黄金錬成』だっけ?それはソッチも同じよね」

思うだけで世界の在り様を変える『黄金錬成』、しかし意図的な改変にはその内容を『言葉にして口に出す』必要がある。
ナタリーは攻撃の直後に、アウレオルスはその間に、双方共に比喩で無く致命的な隙が有った。
後の先を取れれば、互いが互いに瞬殺可能と言う状況。
しかしそれ故に下手に動けず、両者は無言でにらみ合う。

「要するに、インデックス達が霊装を見つけるまでの時間稼ぎをすればいいんだろ」

「カナミンの再放送あるから5時にはお家に帰りたいけどね」

その膠着状態を破ったのは、ナタリーの背後をとった二人。
しんのすけと上条が台詞と共に懐剣と拳を構えていた。

「しまったわね、白スーツを警戒するあまり背中に立たれるまで気付かなかったなんて」

ナタリーはゆっくりと両手を頭の高さまで上げる。しかし勿論それは降参を示したものでは無い。

「だけどアンタ達も……迂闊に近付き過ぎじゃないかしらっ!?」

ナタリーが上条に向け裏拳を放つ。
それは目視可能な速度を超え、上条を襲う。
しかし上条はその拳を紙一重で避けると、伸びきった腕の手首を掴み取り全力で引っ張った。

「なっ!?」

上条とナタリーの立ち位置が入れ代わる様に移動する。
放り投げる様に上条が手を放し、その先に待ち構えていたしんのすけが斬りかかった。
ナタリーは懐剣を迷う事無く腕で受ける。

「あら『峰打ち』なんて、私をナメ過ぎよ」

元々腕が斬り落とされても直ぐにその部位が『蘇生』するため自分の身体で受けたのだが
しんのすけの手にした刃は彼自身の方を向いていた。


「ちょっ!?これマズイかも!!」

そこから変則的な鍔迫り合いに持ち込まれたしんのすけが助けを求める。
それを受けて直ぐに上条が向かう。
攻撃を一度避けられている上条に警戒したのかしんのすけから離れ向き直る。
上条としんのすけの二人掛かりでの猛攻にナタリーは防戦一方となるが、
あの『速度』を回避に使われれば、二人の攻撃が当たる事は無かった。

「自然、決め手に欠けるか」

自分も参戦しようと一歩前に踏み出した彼の袖を姫神がつまんで止めた。

「待って」

アウレオルスを姫神は不安げに見つめる。
    かお
「そんな表情をするな、女」

彼は少女を安心させるよう微笑み言う。

「そうだな、では一つ約束をするとしよう」

「約束。それはどんな?」

「今回の件が終わったら、お前にも魔術を教えてやろう」

覚えていた。
初めて逢った時の会話を、彼は覚えていた。
それが嬉しくて、生来の無表情が緩むのを隠すために下を向く。

「ちょっとお兄さん!?死亡フラグ立てて無いで早く助けて!?」

しんのすけの叫びでアウレオルスは再びナタリーに銃口を向ける。
それに気づいた上条としんのすけが慌ててナタリーから離れた。

「『魔弾に更なる効果を加える』」

小さく口の中で呟いた後、アウレオルスは引き金を引いた。
衝撃の塊である不可視の弾丸はナタリーに向かって進む。
しかし当然ながら、弾丸よりも速く動ける彼女に当たる筈も無く、しゃがみ込んだ彼女の頭上、数十センチ程の位置で破裂音が鳴る。
攻撃を回避できたと確信し、アウレオルスをしとめに動こうとしたその時、彼女に上から押しつぶすような負荷がかかり転んでしまった。
その様子を見たインデックスが驚き声を漏らす。

「今のは!?『十字架の重み』!?」

本来は幾つものロザリオを繋ぎ合わせて作られる、『七肢の燭台』を模した首飾り型の霊装
が持つ魔術の一つだが
彼はその効果のみを魔弾に付与していた。

「くそがっ!!」

ナタリーが悪態をつき起き上がる。
前に進もうとしたところで足元が爆ぜ再び転ぶ。
     ロータスワンド
「今度は『蓮の杖』!?」

その後も、アウレオルスが手にした暗器銃から打ち出される『魔弾』は、多種多様な効果を持ってナタリーを翻弄し続けた。
そんなアウレオルスの戦い方を見ていたステイルが呟く。
          キュリオディーラー
「凄まじいな。アレが『骨董屋』と呼ばれていた頃の……彼の本来の戦い方か」

一戦につき何十もの霊装を戦場に持ち込み、その全てを駆使する事で正面からの戦闘を避け、
知を用いて敵を罠にかけ、自身は無傷で帰還する。

「型にハマれば、まさかこれ程とはね……」

炎剣等、比較的直接戦闘向きの魔術を身につけた自分は、そんなアウレオルスを
所詮は戦う勇気の無い臆病者と軽く見ていた。
しかし現状、自分はもはや戦力外となり、アウレオルスは前線で戦っている……

「もっと強く……成りたいな」

悔しさや情けなさを吐き出すステイルにヨハネが話しかける。

「飲みますか?ステイル・マグヌス。なお、少量ながら魔力の回復も期待できると思われます」

差し出されたヤシの実サイダーを受取り、一息に飲み干して咳き込む。

「炭酸飲料をそんな風に飲んではいけません」

「ほっといてくれ。それより肝心の『霊装』は見つかったのかい?」

指摘され恥ずかしくなったステイルが話題を変えるが、ヨハネもインデックスも暗い顔をした。

「あれだけのダメージを受けて、その度に蘇生術は発動しているのに、『霊装』の有る場所がまだ判らないんだよ」

インデックスに続いてヨハネも説明する。
           ミョルニル
「元となった神話から、『雷神の槌』を模した物であると思われますが……」

つまり金槌、丁字型の金属塊、あるいは円柱状(本体)と棒状(柄)の二つに分かれている可能性もあるが、そういった物はナタリーの装飾品には見当たらなかった。
そもそも彼女がダメージを回復させる際に『魔力の中心点』となっている箇所が見つからないのだ。

「うん?それはつまり、身につけていないんじゃないか?」

その説明を聞いてステイルはある仮説を立てた。
ナタリーは『がしゃどくろ』を操る為の『指輪』も、自分から離す事で安全を確保しようとした。
あの時はヨハネとインデックスを引き離しつつヨハネを確実に討ち取る為に囮にしていたが、本来の目的はそうであるはずだ。
ならば、今もそうしている可能性は高いと思える。
だが離れすぎては意味がない、この場の何処かに隠しているのではないだろうか。

「君達は、ナタリーをよく見ていてくれ。僕は今から『霊装』の位置を炙り出す」

手に火の玉をともし、ステイルは二人に呼び掛ける。

「了解しました、しかしステイル・マグヌス。魔力の残量は大丈夫ですか」

「さっきのジュースで回復したからね。とは言えこれがこの戦いで、僕が使える最後の魔術だ」

手にした火の玉を、大きく振りかぶって投げる。
それは壁に、地面に、天井に、当たっても消える事無くバウンドし方々に進み続けた。

「っ!?おいステイル!!無差別攻撃かよ!?」

「君らならなんの問題もないだろう?現にしんのすけの方は気にしてないようだしね」

既に数回程、縦横無尽に飛び回る火の玉が我が身を掠めている上条が文句を言うが、ステイルは面倒臭げに肩をすくめる。
一方、彼の言う通りしんのすけはアウレオルスのサポートを受けナタリーと戦っていた。

「『為虎添翼』!!」

戦太刀の姿となった第七沈々丸をナタリーの手首、親指の付け根へと振り下ろす。

「甘いっ!!」

しかしその攻撃は躱されナタリーのカウンターが決まり、しんのすけは蹴り飛ばされた。
先程の上条が飛ばされたのとは反対側の壁ぎわに、身をひねり着地する。
直ぐにまたナタリーに向かって行こうとする彼を、インデックスの声が止める。

「待ってしんのすけ!!多分その近くに蘇生術の核となる『霊装』が在るのかも!?」

「なっ!?何故!?」

インデックスの言葉に誰よりも反応したのはナタリー本人だった。
そんなナタリーに、ヨハネが得意げに説明する。

「先程、ステイル・マグヌスが放った火の玉が、今しんのすけが立って居る位置に向かった時、アナタの表情に僅かながら変化がありました」

インデックスも後に続く。

「もっと言えば、しんのすけをそっちに蹴った時も『しまった』って顔をしてたかも」

「なお、現在進行系で。アナタの反応は状況証拠には充分だと思われます」

言われ、悔しげに奥歯を噛み締めるナタリーに精神的な追撃が入る。

「なるほどさっきの跳ね回る火の玉にはそんな意味が有ったのか。じゃあもう消して良いよな!?なんかもう狙われている気すらしてきたんだけど!?」

先程から不幸にも自分に向かって来る火の玉を消して良いかと、上条がステイルに確認をとる。

「うん、どうぞご自由に?」

上条は火の玉を右手で殴り消すと、ナタリーとしんのすけの間に入った。
一方、自分の近くに『霊装』が在ると言われたしんのすけは、辺りを見回してソレをさがしていた。
そうして、並んでいるドラム缶が目にとまる。

「何か隠すなら、この中に在るのかもしれませんな」

ナタリーが特にそれを阻止しようと動いていないのでハズレかもしれないが、そう思わせる為にわざと動かない可能性もある。
そしてそれは正解だったらしく、ドラム缶の中に『棍棒に似た太く長い骨』を見つける。

「くっ」

「それで間違いないかも。『偶像の理論』が働くには充分な素材なんだよ」

ナタリーが焦りを見せ、インデックスがあれこそが『霊装』だと太鼓判を押す。
ドラム缶が『円柱状の金属』を、『棍棒に似た太く長い骨』がハンマーの柄の部分に当てはまる。

「上条君、頼んだゾ」

しんのすけが上条に向けて『棍棒に似た太く長い骨』を投げる。

「ねえ『雷神の槌』の『偶像の理論』が働くなんて、あの骨は一体なんなの?」

クリアは弧をえがくソレを見ながら、ふと気になり双子に訊ねた。

「実際にバイキング達が活躍していた時代。彼等はネイティブカナディアンの先祖等、様々な異民族と交流がありました」
          ドヴェルグ
「その内のどれかが『黒子人』のモデルになったって説があるんだよ」

『黒子人』とは北欧神話において『雷神の槌』を含め様々な『神々の武器』を制作した種族だ。

「そして北極圏の異民族にはある大型海獣のある骨を、『ハンマー』として使う文化が有りした。もっとも『槌』では無く『棍棒』と言う意味でですが」

「つまり。アレって……」

その節名でクリアは察し、姫神、良と共に複雑な表情になった。

「そう、セイウチのインケイコツなんだよ」

飛んできたソレを上条がしっかりとその右手で掴む。
ガラスが割れる様な音と共に、白い棍棒が砕け散った。

「ハア、やれやれだゾ。まさかミョルニルの記号を満たすのにインケイコツをつかうとはね。……ドラム缶のお嬢ちゃんが聞いたらなんて言うかな?」

上条の側まで歩いてきたしんのすけが独り言を呟く。

「お手柄だな、しんのすけ。良かった蹴られたとこも大丈夫そうだな」

「いや~それほどでも。壊したのは上条君だし、あの辺りに在るって言ったのはインちゃんだしね」

「ところでインケイコツってどこの骨なんだ?スネ?」

「哺乳類の約15%には無い骨だよ。知らないんなら知らないままの方が良いと思うゾ」

敵からそれ程離れていないにもかかわらず、談笑する二人をナタリーが怒鳴りつける。

「終わったと思ってんじゃ無いわよ!!最後の切り札を見せてやるわよ!!!」

言い終えるやいなや、なんと彼女は自分の鳩尾の横に手を刺し入れ肋骨を一本無理矢理に引き抜いた。

「げぇっ!?」

「おわ!?」

上条としんのすけ二人の表情が驚愕一色に染まる。

「まさかっ!?『イブの誕生』を模した魔術!?」

インデックスが叫ぶ。
十字教徒ならば、誰もが知る『最初の女性』の名と創造主がその際に何を材料にしたか。
他にナタリーの行動を説明できる知識は無かった。

「そう言う事!!」

ナタリーは肋骨をストローと共に、クリア達が入って来た穴から外に投げた。

「なっ、なんのつもりだ!?」

上条が怒鳴るように問う。

「敵に教える義理があるのかしら?」

その直後、ナタリーと蒔かれし者達の身体が大爆発を起こし隠れ家を瓦礫に変えた。







上条達を埋めた瓦礫の側に、落ちていた一本の骨、それはどんどん肉が付いていきやがて人の形と成る。
それは他ならぬナタリー自身であった。
彼女の最後の切り札は、確かに元は『最初の女性』の誕生だが、大分オリジナルのアレンジが加えられている。
肋骨から生まれるのは自分自身だ。分離するまでの記憶も引き継ぐ。
そして敵方は全員瓦礫の下、彼女の完全勝利だ。

「さてと、『吸血殺し』の娘を掘り出さないとね」

生きたままで手に入らなかったのは惜しいが、まあ良い。
抜け落ちた髪にすら効果が在るのだから、死体にも充分な利用価値が有るだろう。

「ん?」

ふと脇腹に痛みを感じる。
この身体には肋骨を引き抜いた穴などまだあるはずも無いのにだ。
疑問に思い身体を見れば自分は服を着ていた。
どういうことだ?
この術は肉体を完全に複製するが、衣服は効果の範囲外のはず……
           ユメ
「お早うオバサン、イイ悪夢は見れたかしらぁ?」

前から誰かの声がして、そちらを向けば金髪の少女がそこに立っていた。

「なん……だと?」

彼女の存在を認識した途端に周囲の景色がガラリと変わる。
自分は脇腹に指先を少し食い込ませた姿勢で首から下が硬直していた。
そしてその少女の横には黒髪の少年二人が立っていた。
そこから少し離れた位置には白スーツの男、赤毛の神父、巫女服の少女、白い修道服の少女、浴衣を着た少女、洋剣を杖にする女とそれに肩を貸す女。
その足元には横になった西洋甲冑。
まるで時間が戻った様に、しかしそれは有り得ない。
故に、理解できてしまった。

「あ……あ……」

奴等は瓦礫に埋まってなどいない。隠れ家は瓦礫になどなっていない。蒔かれし者も自分も爆発などしていない。
自分はボーンストローを投げてなどいない。肋骨も投げてなどいない。そもそも自分は肋骨を引き抜いていない。

「何時からだ!?私はお前の術にっ……!?」

錯乱気味に、眼の前の少女に問うが、返って来るのは冷笑。

「あらぁ?じゃあ逆に訊くけど……」

黒い笑みを浮かべ、少女は言い放つ。

「一体いつから『心理掌握』を遣っていないと錯覚していたのかしらぁ?」

「操祈ちゃんそれ絶対『一度言って見たかった台詞』でしょ」

ボーンレス症候群に罹り倒れていたはずの少女、食蜂操祈がそこに居た。

今回はここまでです
お待たせしてすみませんでした
次回 第18話 『竜王の顎』【ドラゴンストライク】を御期待ください
来週水曜日夜九時に投下します

帽子おじさん「作者がアナタを殺せる訳ないでしょう?それは封印っス」
ヨン様「馬鹿な!今更仲間面して助けにきたとでも言えというのか!?」
のコラが大好きです

1です。これから投下します

第18話 『竜王の顎』【ドラゴンストライク】

何故、食蜂操祈がここに居るのかを説明するには、十数分程、時間を遡る必要がある。

「うーん、これはまずい展開かもしれませんな~」

「え?なんでさ」

壁際に居る二人の眼には今、アウレオルスが『黄金錬成』を使いナタリーを移動させ距離をとった場面が写っていた。
上条にはアウレオルスが優勢に見えたが、しんのすけの下した真逆の評価を疑問に思い理由を問う。
 ・・
「相性が悪過ぎるからね」

「相性?」

「まあ、だからこそ今のうちにその『対策』をしておくとしますか。行こう上条君」

そうして結局、上条にはしんのすけの言う『まずい展開』の真意は解らなかったが、しんのすけの『対策』とは食蜂操祈の復活であった。
そしてナタリーの注意がアウレオルス一人に向いている隙にそれを実行した……

「バカなっ!?キサマは『骨抜き』にしたはずだ!!」

場面は再び現在へ戻り、ナタリーが食蜂にほえる。
               チート
「野原さんの『手袋』って本当に便利よねぇ」

「だが私があのクソガキから目を話したのはウニ頭を蹴り飛ばしてから背後を取られるまでの僅かな間だ!!」

現状の説明やその後の行動を指示する時間的余裕は無かったはずだ。

「確かに充分な説明力も無しに、リモコンだけ渡されてあとは放置だったけど……私って臆病なのよぉ」

「……それが何だ」

どうにかこの金縛りを解いて窮地から脱しなければと考えながら、ナタリーは食蜂との会話を続ける。

「加えてオカルトに関しては知識力も無い、だからこそ、用心力だけは人一倍でねぇ。私がまず最初にした事は、『オバサンが私を認識できなくする』事よ……」

そうして真先に自身の安全を確保した後、その場の誰かしらから記憶を読み取れば、現状把握は容易い。

「なるほど……ではあの時には既にか。そして私が最後の切り札を使おうとした時にも臆病であるが故に私を封じれたわけか」

「アナタの理解力が高くて助かるわぁ」

食蜂は笑う。
ナタリーは今、首から下の身動きがとれない。
既に勝敗は決したと言わんばかりの笑顔に、ナタリーは苛立ちをおぼえるが、冷静をよそおう。
既に策は考え付いた、ココからの逆転勝ちは決して不可能では無い。
要は自分をあのウニ頭の少年に殴らせれば良いのだ。
そしておそらく彼は、自身が馬鹿にされるよりも友人を侮辱される事に怒るタイプの人間だろう。
ならば……
                               ワタシ
「それで、私をどうするつもりかしら?確かに白スーツの男の術は『吸骨鬼』でも簡単に殺せるでしょうけど」

ナタリーに言われ上条は気づく。
アウレオルスの『黄金錬成』であれば、『不死』であるはずの彼女を確実に殺せる事。
そして何故、彼が先の攻防でソレをしなかったかを。
しんのすけが言っていた、『相性』とはどう言う意味かを。
         ディープブラッド
「でも良いのかしら『吸血殺し』?アナタを護る為に彼が私を殺すのは、アナタ自身が私を殺すのとドウ違うの?」

ナタリーはえぐる、姫神の傷を、心を。

「アナタはコレからも殺し続けるのね。アナタが生きている限り、誰かがアナタを護る為に」

ビクリと、姫神が反応したのに満足気にナタリーは続ける。

「いえきっと……例えアナタが死んだとしても、その死体が利用されて、アナタはいつまでもいつまでも『殺し続ける』わね。なんて哀れな」

「てめえっ!!」

ナタリーの思惑通りに上条が怒りを見せる。
しかし彼の前に掌をかざして止める者が居た。

「アウレオルス?」

上条は冷静な彼を不思議に思った。
ナタリーの台詞には、誰よりも彼が怒ってもおかしくないはずなのにと。
そんなアウレオルスがゆっくりと話し出した。

「当然、貴様に言われずとも理解している。この女の為には私もまた、誰一人として殺してはならぬとな」

「あら、じゃあどうするつもりよ」

「……『降れ、炭酸の雨』」
                       スパルトイ
ナタリーの問いには答えず、『黄金錬成』を使い『蒔かれし者』達を溶かす。

「……使い魔の破壊は出来ても私は殺さないとでも言いたいのかしら?」

「魔力の残量を試しただけだ。釈然、あと一度ならば問題なさそうだ」

『黄金錬成』で何かするつもりのようだが、何をするつもりなのだろうか。
上条には解らなかったが、その場で彼の意図を理解していた者が一人居た。

「ほいほーい、ほんじゃま始めますか」

しんのすけが手袋をした両手を、しっかりとナタリーの背中にはりつけた。

「なんのつもりかしら?」

ナタリーが問う。
            アスクレピオス
「オラのこの原典級霊装『魔法軍手』は、触れたモノを何でもナオス事ができる……」

アウレオルスが続きを引き取る。
       ・・
「その状態で、こうすれば如何なるか……『転位せよ、吸血殺しの血よ』」

「がっ!?」

ナタリーの身体から灰が噴き出す。

「もしかして。私の血を!?」

「口内と体内に直接、数的程『転位』させた」

姫神に対し、アウレオルスが答えた。
おそらくこの方法を、しんのすけは三沢塾前の広場でナタリーに会った時には思いついていたのだろう。
吸骨鬼に対し何か策は無いかと訊ねた時、彼は『黄金錬成』の使用条件をまず気にしていた。
加えて彼の『手袋』の効果。
結局は聞きそびれた『策』だが、アウレオルスが理解するためのヒントは充分出揃っていた。
そして元は自分のアイデア、アウレオルスが何をしようとしているのか、しんのすけにはすぐに解った。

「スゴい、これが『吸血殺し』……一歩間違えば私達もこうなっていたのかもね」

クリアが顔を青ざめ、良は思わず口元をおさえる。
全身から灰を吐きながら、ナタリーがうめき続けている。
姫神秋沙が生まれ持った持った原石『吸血殺し』は、その血を口にした吸血鬼を『例外無く殺し尽す』モノだ。
亜種や傍系である吸骨鬼であったも、その能力から逃れるすべは無い。
一方しんのすけが持つ『手袋』はあらゆるモノを直し、治す。
使用回数制限が無くなった今、こちらもまた例外は無い。
ならばその両方の効果を受けているナタリーはどうなるか……

「灰が。止まった」

しんのすけが手を放す。
ナタリーは生きていた。
元々彼女は吸骨鬼達の王ボーンキングの血を受け継ぐ子孫であっても、その事を知るまでは普通の人間として生きていた。
人の骨を啜る事で先祖返りとなったが、本来ならただの人間と何も変わらない。
『吸血殺し』がナタリーを殺し続け、『魔法軍手』がナタリーを治し続けた結果、人間としてのナタリーだけが残った。

「……あ……あ」

ナタリーはまさに茫然自失となっていた。
凄まじい喪失感に襲われて居るのに、膝をつくこともできない。

「終わったな。少女よ、拘束を解いてやれ」

そんなナタリーの様子を見て、アウレオルスが食蜂に言った。

「解放して大丈夫なの?」

クリアがアウレオルスに訊く。

「問題ない、奴は『魔導師級』と名乗っていたが高度な術は膨大な魔力に物を言わせて無理に行使していたにすぎん」

「じゃあ」

「自然、その魔力の源である不死性が失われた今、奴には抵抗する手段が無い」

食蜂も納得して彼女にかけた能力を解除しようとリモコンを向け、言いにくそうに申し出る。

「リモコンの電池力が切れてる見たい、なんだけどぉ」

「じゃ、上条君。頼んだ」

「ん、解った」

しんのすけに言われ上条がナタリーに触れようと近づく。
その時、食蜂は驚愕した。心について、誰よりも知る彼女だからこそ気づけた。
ナタリーの眼は、まだ死んでいない!!

今夜はここまでです
明日夜9時に投下する分でこの吸骨鬼編は完結予定です

1です。これから投下します
遅刻してゴメンナサイ
今回チョット新刊(超電磁砲10巻)のネタバレありです。

「気をつけて!!上条さん!!」

「え?」

食蜂が上条に注意するよう呼びかけるが僅かに遅かった。
既に彼の指先はナタリーに触れていた。

ナタリーは

金縛りが解けるや否や

上条の手首を掴み取り

うつむけになる様に引き倒すと

肩甲骨の辺りに足を乗せ、身体を固定すると

彼の右腕を、肩からヒキチギッタ。

「キャアァァァァァァァァァ!?」

悲鳴が上がる。それは食蜂のものかインデックスのものであったが
しかし上条のものでは無かった。

「甚だ腹立たしいケド、逃げさせてもらうわ!!『コレ』さえあれば、どんな魔術結社が相手でも取引ができるモノ」

血の滴る、『幻想殺し』の宿った右腕を掲げてナタリーは言う。

「憤然、貴様!!」

「ふんっ」

ナタリーは横たわる上条を向かって来たアウレオルス目掛けて蹴り飛ばすと、出口に向かい走り出した。
彼女のすぐ後ろに居たしんのすけは既に上条を治しに行こうと動いていたために反応が遅れ、逃亡を許してしまう。

「野原さんコレ!!」

食蜂がリモコンをしんのすけに投げる。
大きく目標から逸れて飛んで行くリモコンに、しんのすけは放ったヨーヨーを巻き付け手元に引き寄せる。

「操祈ちゃんパス!!」

しんのすけはキャッチしたリモコンが手の中で一瞬光を発したのを確認すると、すぐに食蜂へと投げ返した。
食蜂はソレを額にぶつけ、涙目になりながらもすぐに拾い上げてナタリーに向けボタンを押す。

「……チッ」

ナタリーが出口一歩手前で足を止め、舌を打つ。

「良いのかしら?私にかまってて。その子、死んじゃうんじゃない?」

どうやら食蜂が止めたのは下半身のみらしく、上半身をひねり上条を指さすが、ナタリーの眼は驚きと恐怖で染まる。

「俺か?俺は平気さ」

上条当麻は立ち上がっていた。
その顔には薄く笑みを浮かべ、幽鬼の如くナタリーに一歩、また一歩と近づいていく。
その異様な雰囲気に、彼を心配する味方達も、誰も声をかける事もできずにいた。

「なあ、ナタリー・コーツバン……」

上条は、本当は平気などでは無かった。
今も意識を失いそうな激痛に襲われている。
だが彼は、『余裕』を『平然』を、『圧倒的強者』を演じ続ける。

「確かにお前は強かったし厄介な相手だったよ……」

幸いにして、今この場所はアウレオルスが『黄金錬成』を使える様に変えられた空間だ。
それが誤解であっても、無意識下の認識さえも、現実を歪め真実にしてしまう秘術。
アウレオルスが『上条当麻は右腕がちぎれても平気だ』と思いこめばその通りに成る。
アウレオルスが『ナタリーは上条当麻にはかなわない』と思いこめばその通りに成る。

「けど一つミスしてる」

左手の人差指を立て、彼は演技を続ける。
今、仲間達は『あそこまで追い詰められてもなお諦めなかった』ナタリーを、その強靭な精神力に畏怖していた。
ならばこそ、そのナタリーを恐怖させれば、アウレオルスの眼に上条当麻はそれ以上の存在に写るはず。

「お前は俺の右腕をもぎとった……だがなあ」

上条は思う。
今自分を襲ったのは『片腕を失う』と言う『不幸』なんかじゃ無い!!
『片腕を失ってなお平気な男を演じるチャンスを得た』と言う『幸運』だ!!

「お前、俺の能力が右手だけだと思ってねえか?」

そして上条当麻は、その幸運を掴み取る。

「ヒッ!?」

ナタリーが短く悲鳴を上げる。
彼の失くなったはずの右腕、その切断面から、
何か透明なモノが形に成ろうとしていた。

「何なのよ!?何なのよソレはぁぁぁ!?」

ソレはやがてドラゴンの頭部の姿と成り、ナタリーに襲いかかる。

「「「なんか出て来たあああぁぁぁ!?」」

クリア、良、しんのすけが驚き叫ぶ。
他の者達もあまりの事態に開いた口が塞がらない様子だ。
そのドラゴンは『幻想殺し』と似た、もしくは同質の力を持っている様でその牙の先がナタリーに触れた瞬間、彼女の身体が自由になった。
身を大きくそらし初撃を回避すると、『右手』を捨ててその場から転がる様に逃げ惑う。
しかしそれも、長くは続かなかった。

「「「増えたああああああぁぁぁ!!???」」」

何時しか上条の右肩から延びるドラゴンが、更に七頭追加されていた。

「……そんな、私は……負けるワケには……」

文字通りの八方塞がりとなったナタリーに、竜達の大顎が、容赦なく襲った。
やがてドラゴン達は消え、その場には仰向けに寝る喪服の美女だけが残っていた。

そして数秒後……

「はっあまりの事にボーっとしてた」

まずしんのすけが我に返り、上条の腕を治そうと彼に近寄って見れば、その右腕は既にキレイサッパリ治っていた。
         は
「え?ひょっとして生えてきた?」
          イカサマ
「いや、ちょっとしたトリックだよ。後で説明するからさ」

じきに仲間達が彼の本に集まり、その腕を確認する。

「……ん、うん」

倒れていた喪服の女が目を覚ます。

「……此処は?私は……?」

しかし倒れる前の彼女とはあまりにも雰囲気が違っていた。
       な
「唖然、記憶を失くしているのか?」

辺りを見渡すと、彼女は弱弱しく不安げに此方に問い掛けて来た。

「坊やは……?私の坊やは何処?」

翌日、上条当麻はカエル顔の医者、通称『冥途帰し』の病院に一応の検査入院していた。今はその病室に関係者達が集まっていた。

「結局、ナタリーの『目的』って何だったんだろうな?」

上条の疑問に食蜂が応える。

「憶測になるけどぉ、『家族と共に暮らしたい』。ただそれだけだったんじゃないかしらぁ」

「家族と共に?」

「ほらナタリーと同じように子孫である古津光度さんは、煮干を食べないと不快力が大変な事になる人だったでしょう?」

同じように、ナタリー・コーツバンもまた、何かしらの特異体質だったのではないだろうか。
そしてそれ故に実の両親や親戚からも気味悪がられていたとしたら……
自分を受け入れてくれた吸骨鬼こそが彼女にとって『家族』になるのではないだろうか。
それが食蜂の推理だった。
 チャイルドエラー
「『置き去り』でなおかつ原石って言う子供を探したら何人か見付かったんだけど、その中に吸骨鬼に似た能力の子が一人居たゾ。名字もズバリ、『コーツバン』ね」

幼い我が子の安全の為に『学園都市』に預けたまでは良かったが
世界中の吸骨鬼狩りに追われる身である自分には我が子を迎えに行くことは出来ない。
再び共に暮らす為には、今在る世界の在り方から変えなければならない。
母と名乗り出る事も出来ない十年を、彼女は何を思い生きて来たのだろう。

「最後は上条さんの『右手』を奪って、それで色んな組織との交渉力を得ようとしていたわよね」

とてもじゃないが彼女が最初に言っていた『仲間を集め』、大英博物館を襲撃し『王を復活させ』
『吸骨鬼が人間を支配する世界を創る』為の交渉材料には足りない様に思う。

「たぶん、子供だけ回収して、何処かに保護でも求めるつもりだったんじゃない?」

しかし結局は謎のままだ。
食蜂が言うには彼女の記憶もまた、上条の様に『ページごと破られて』いるそうだ。
もっとも感覚的には『まるで最初から書かれていなかったかのように消えている』と言う物らしいが。

「まあ、今から話すのは、そんなナタリーの『その後』だ」

ステイルが説明する。

「今、彼女は『記憶喪失の患者』としてこの病院にいる。だからね……さっきしんのすけが調べた子供と一緒に住むことになると思うよ」

「へ?」

「ここの医者は『患者に必要な物は何でも揃える』がモットーなんだろ?」

「冥途帰し先生なら、学園都市のIDも用意するだろうね」

しんのすけがステイルの問いかけに答える。

「そういや、あの二人はどうしたんだろ?」

ナタリーに関する話が終わり、上条はここにはいない二人について訊ねた。
この部屋にはあの事件にかかわった全員が揃っているわけじゃ無い。
人払いの術式が消えるとクリアは第七学区の何処かにある自宅(しんのすけの予想では『学舎の園』内だそうだ)に帰って行った。
良も彼女の仲間達が探しに来て、彼らと共に次の目的地に向かった。
ローマ正教の騎士達はアウレオルス・ダミーを手土産に祖国に帰った。
上条が聞きたいのは、姫神とアウレオルスについてだった。

「うん、三沢塾内から彼と彼女の私物はすっかり消えていたらしい」

「『外』に行ったのか……じゃあもう会うことは無いのかね」

ちゃんと別れの挨拶ぐらいしたかったが……
           このまち
「いや、夏休み明けには学園都市に帰って来ると思うよ」

「へ?」

上条は本日二度目の間抜けな声を漏らす。

「姫神秋沙の学籍は、とある高校へ転校手続がすまされていた。行方をくらませるつもりならわざわざこんな事はしない」

だから夏休み明けにはその学校に通う為にかえってくるはずだと、ステイルは言った。
その後ステイルは次の仕事があるからとイギリスに帰って行き、食蜂も『またね』と意味有り気な台詞と表情を残して退室した。
しんのすけはいつの間にか居なくなっており、彼が座っていた椅子には一枚のメモ用紙が置かれていた。

『お大事に』

しんのすけらしい。そう思いながら上条当麻は眠る為に眼を閉じた

「とうまとうま~、マスクメロン味のポテトチップスだって!!買っても良い?」

「いけません禁書目録。上条当麻は睡眠中のようですからじゃましては……」

もっとも彼が安眠できたのかは神のみぞ知る。

同時刻 京都山中某所

「問然、本当にこれで良かったのか?」

「うん。正直少し迷ったけど。これが最善だと思う」

後日、灰に覆われて人が居なくなったとされていたとある村に、人が戻り、大量の灰が何処かへ消えた。と言う都市伝説が新しく作られ、
その都市伝説の部隊とされる村の住人達が、村人はもう一人居たはずだという奇妙な違和感を感じることになるのだが。
これはまた別の物語。

第0/0話 そして外伝へ……

数日後、しんのすけは路地裏を歩いていると、とある男女二人組に呼び止められた。

「久しぶりだな」

「おお、眼帯のお嬢ちゃん。学園都市に来てたんだ」

「オレもいるよ」

「あら、女装家のお兄さんも来たんだ。二人きりで?ダメだよ親離れしなくちゃ」

「いや、こいつは別にオレの母親ってわけじゃ……」

「全く世界中アチコチ行ったけど、『とーるちゃん』がマザコンなのは何処も一緒だゾ」

「聞けよ、て言うか在ってたまるか。そんな世界の法則!!」

長い金髪をした、どこか女性的な顔立ちをした少年がしんのすけにツッコむ。

「鍛冶師のお嬢ちゃんとドラム缶のお嬢ちゃんは来て無いの?」

「ああ、その事で貴様の力を借りにきたのだ。野原しんのすけ、いや『光明のバルドル』よ」

まるで愛おしい我が子の名を呼ぶように、
マントにトンガリ帽子で眼帯を付けた少女は、
しんのすけを『バルドル』と呼んだ。

以上で、このスレは完結です。
というわけで、
『妹達』編の前に(かなり迷いましたが)過去編とか『その頃カスカベでは』とか『乱雑解放』編とかの外伝集、短編集用のスレ立てます。
建てたら予告と誘導はるので千までは埋めないでくださいね。

最後に、ここまでおつき合いくださいまして誠にありがとうございました
次スレもどうかよろしくお願いいたします。

駒場さんがくれたスプレーっていつ使ったの?

眼帯の子はオティヌスでいいんだよね?

グレムリンにはきれいな人と助けなきゃいけない人がいっぱいいるからな

全員の望みはしんのすけいれば叶いそうだし

お待たせしました
>>971-972
幻想猛獣の口にメガヘガデルⅡと一緒に放り込みました(幻想猛獣が消化酵素を体内に持っているか不確かなため)
>>973
はいそうです
>>956-967>>980
次スレでその内投下します

以下予告と誘導です

「確かに『木原』は、優秀な科学者だ。でも『優秀な木原』は、科学者失格だ」
    オーバーサイエンス
―――『木原以上』の二つ名を持った科学者志望の少年

「良しナンナちゃん、新入りの君にお兄さんが『グレムリン』結成の物語を聞かせてやろう」

―――農耕神にして全能神たる雷神の名を冠した魔術師

「僕は『絶対の幸運』に護られているんだ!!」
ブラックカジノ
―――違法賭博場の用心棒を勤める小学生

「『王たる資質を持った者』を調べるのが我々の仕事でして」
   ボス
―――幼女にこき使われる執事気質の苦労人


とある科学と魔術の法則無視 外伝集
酢乙女あい(15)「『乱雑解放』【ポルターガイスト】を調査しますわ」
酢乙女あい(15)「『乱雑解放』【ポルターガイスト】を調査しますわ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409836335/)

このSSまとめへのコメント

1 :  ccc   2014年01月02日 (木) 17:51:47   ID: SWPppooj

面白いです。応援してます。

2 :  SS好きの774さん   2014年02月27日 (木) 22:30:03   ID: EiFMRH_d

スレ落ちちゃった?

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