【安価】機動戦士ガンダム n-8《ナンバーエイト》【連邦】 (106)

前スレたち
連邦兵「安価とコンマで宇宙世紀の戦乱を戦い抜く」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402561287/)
連邦兵「安価とコンマで宇宙世紀を戦い抜く」オペレーター「0080です!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403188930/)
連邦兵「安価とコンマで宇宙世紀を戦い抜く」開発主任「月面戦争編、よ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404991211/)
連邦兵「安価とコンマで宇宙世紀を戦い抜く」NT子「月面戦争編、ラスト」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408534757/)

お久しぶりです
トリップ合ってるかな?
休んでる間に大まかなストーリーラインが完成してしまったので戦闘の流れとかは自分で決めることにしました
登場人物の名前とかは今から安価使って決めていきます
n-8の追加装備に関しても向こうグリプス戦役ぐらいまでは案が固まってるのでしばらく安価は取りません
突発的に出したVWXYZの装備は形を変えて全部使わせることにしました
あと開発主任さんだけは「エレクトーラ・オーランド」と名前が決まっています

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471692080

やたっトリップ合ってる。それにしても、前スレがほぼ2年前とは。覚えてる人いるかな?

前4スレではみんな名無し同然だったので最初に今後も大きく出番がある人達から名前決めていきます
↓5までで名前の案を出してもらってその中から良さそうなのを混ぜて作ってみます
まずは主人公連邦兵くんから名前を↓5まででお願いします

富野感あったので連邦兵くんはエルク・ジャックで行きます
ヘラジカくんとはなんとももったりしてそうな名前ですがGレコのミックの先祖かな?

一人づつこれやっていく予定でしたがあんまり人いませんね
名前の候補は混ぜればたくさんできるのでまとめていきましょう
恋人オペレーターさんとミステリアスなあの娘NT子ちゃんの名前を↓5まででお願いします

いいとこ育ち感あるオペレーターさんはシャイナ・ディッセントで
NT子ちゃんは謎っぽい感じを重視してネル・エマネリスでいきます
次もまとめて隻眼おじさんの隊長、狙撃手の連邦兵A、ロリコンライバルのゲルググJ兵さんの名前を↓5まででお願いします
なお今日の更新はこれだけで終わりです
明日この決まった名前たちでSSを書いてきます

隊長はエイブラハムから取ってアウラーム・ゴンザレス
連邦兵Aは軽そうな感じのアリソン・ハーレイ
ゲルググJ兵は悪そうな感じということでカルヴァドス・ガドウィックとなりました
お酒の名前をつけられるとは父親が酒浸りにでもなっていたのでしょうか

今日はここまでです
突然で久々で名前しか決めてないのに安価に参加してくれた人達ありがとうございました

すーぱーふみなティターンズモデルだって!?買わなきゃ(使命感)

今から投下します
話覚えてないって?自分も半分覚えてません

アリソン「敵MS数六。だが、これは……」

ジム・スナイパーⅡの頭部バイザーには高倍率カメラが備わっている。索敵網にかかったMS隊の方を見る、しかしそこに狙撃手はいない。

アリソン(――まさか。抜けられ、た!?)

スナイパーとしての、超高性能機としての圧力を盾に防衛線を単独で抜けられたのではないかと考えた。だとすれば。
自らのジム・スナイパーⅡと同じビーム・マシンガンを備えているに違いない。ならば、一定距離まででも近づければ、艦橋を落とすことすら――

アリソン「隊長!! 狙撃手に抜けられたんすよ!?」

アウラーム「なに……!? 俺が追う! 任せるぞっ」

考えうる最悪のケースを避けなければならない。一機のジム・コマンドが前線を離れた。

カルヴァドス(たやすいものだな。慢心か?)

索敵網を欺くために、遮蔽物に身を隠し続けてじっと待つゲルググJが1機月面にいた。
先に接近して仕掛けては砲火のいい的になる。確実に仕留められるだけのビームが維持できる有効射程距離までは、ただじっと待つ。
見たてをするならば、あと、二十秒。それまでに、戦艦のレーダーに引っかかってしまうかもしくは。

アウラーム「……いたッ!!」

カルヴァドス(勘のいい奴が……いなければよかったがな!!)グッ

ゲルググJが動いた。敵を振り切れれば、狙撃への道が開く。
だが、易々とそうさせるだけのアウラームではない。母艦のために意地でも食らいついていく。

アウラーム「逃がすものかァッ」

一発、二発、ビームの線条が光ってゲルググを追うが、当たらない。最大出力での巡行のはずが、距離もどんどん離されていく。
性能差、手遅れ。そんな言葉が頭によぎる。集中しなくては。当たれば、止められるのだ。

カルヴァドス「あと十秒……!」

アウラーム『砲座は反応しろ!! 何している!!』

シャイナ「……うう」

戦闘中だというのに、先ほどからシャイナの中から頭痛と気持ち悪さが治まらない。
コロニー風邪だとかそういった類のものではない。初めての経験だった。身体は気怠さなどとは無縁なのに、頭だけが重くなる。

シャイナ(なにこれ……?)

「おい、それで大丈夫なのか」

男性オペレーターが横から声をかける。どうやら、顔色が良くないことを察したらしい。

『――――ろ!!何して――』

「なに、聞こえないぞ! 粒子濃度が高いのか……少尉は少し休め」

シャイナ「でも」

「薬をもらってくるまでの間だ! すぐ戻れ」

ここではねのけると、逆に指揮への支障が出る。
自身でも何が起きているのかわからないほどに体調が思わしくないのは確かなのだ。シャイナは、言う通りに艦橋を離れ医務室を目指すことにした。
――その一瞬が命運を分けた。

アウラーム『艦橋!! 応答しろ……う!?』

急速反転。通信に意識が向いていて、それによって突然モニターの前に現れたゲルググJに困惑した。

カルヴァドス「よそ見が出たなァ!!」

密着した状況ではビームマシンガンが使えない。しかし、腕部ビーム・スポットガンをしこたま食らわせればGM程度の装甲ならば蜂の巣になることだろう。
しかしアウラームのとっさの機転で、頭部バルカンが起動した。堅牢な装甲の前にいくつもの弾丸が弾かれるが、それでセンサーに乱れが生じる。

カルヴァドス(めくらになったと! ……こいつ!)

両腕部からビーム・スポットガンが連射される。狙いのコクピットからはズレにズレて、ジム・コマンドの両腕部を焼き切るだけにとどまった。
しかし、こうなってしまえばもう返り討ちとも言っていい。両腕部が失われたことで、戦闘能力は根こそぎ奪われてしまった。

アウラーム「くおお……!」

カルヴァドス「そこで見ていろ!」

投げ捨ててあるビーム・マシンガンをマニュピレータが掴む――すでに『グレイファントム』のブリッジが射程に入っている。

アウラーム「――やめろ!!」

――光条がブリッジを一閃した。






星がきれいだな。
何が起きたんだろう? たしか、少し前まではこうじゃなかったのに。
ゆっくり思い出そう。あの時、私はブリッジにいた。だけどどうにも調子が悪くなって、少しだけ通信を任せて奥のエレベーターに向かったんだ。
ああ、だから助かったのかな。どこから来たのかわからないけど、その少し後に何か大きな光がみんなを飲み込んでしまったんです。
ビーム、だったんでしょうね。それで奥にいた私は焼かれずに済んだ。だけどそのすぐ後にブリッジから投げ出されて。
こうして、宇宙を漂ってる。

シャイナ「……あ、あ?」

死んだ。
みんな死んでしまった、私の目の前で、どうにもならずに死んでった。
『グレイファントム』も、戦いの光もみんな見えているのに、誰も私に気づいてくれない。誰も見てない。
月から離れていっちゃう。こんな暗くて誰もいない宇宙で、ひとりぼっちで。そんなのいっそ消えてしまった方がマシだった。
誰か見て。誰か、助けて。
……こっちに来て!!




エルク「――――!!」


アウラーム「くっ、お前!! 貴様は!!」

カルヴァドス「お前も逝けばいい!」

為すすべもなかった。だとしても、悔やまずにはいられなかった。『グレイファントム』の機能喪失、艦長らの戦死。
何より、妨げることすらままならなかった自分の無力さに、腹が立ってしょうがなかった。その怒りすらも今まさに奪われるだろう。
だが、無慈悲な銃火が放たれることはなかった。何かがやってきて、邪魔をしたのだ。

カルヴァドス(接近警告!?)

けたたましい警報音がゲルググJの中で鳴り響く、左側方から急速接近する機体あり。宇宙をスラスターで切り裂いて、白い流星がやってきたのだ。

エルク「――お前はあああ!!」

ガンダムn-8が、討ち果たしに来た。

今日はこれだけです
一日で書いたので短くて申し訳ない
続きは二日後ぐらいに

今日中に書きあげるの無理そうでごめんなさい
あらすじじゃないけどこれまでの時系列があったのでまとめてみました
本編じゃないんで一応sageです

0079年12月23日:ソロモン攻略戦・チェンバロ作戦。エルク・ジャックGMにて初陣・2機撃墜
同年12月27日:ア・バオア・クー攻略戦に向け発進、エルメス1号機と交戦・最終的に自滅。これにより攻略戦に遅れる
同年12月28日:コンペイ島(旧ソロモン)へ着艦・補給
同年12月29日:コンペイ島発進
同年12月31日:星一号作戦発動、遅延のおかげでソーラ・レイを免れる
     AM5:00:Sフィールドに向けMS隊出撃・交戦、連邦兵MS3機と艦1隻撃沈
     AM9:30:Nフィールドにて大型空母撃沈、Sフィールド突破開始
     AM10:40:Sフィールド大型空母撃沈、連邦兵MS2機撃墜
     AM11:40:MS隊、ア・バオア・クー内部へ工作活動のため突入開始、エルク3機撃墜
     PM0:50:ミサイル工場爆破に成功・脱出。ひとまずSフィールドは実質的に終戦する

0080年1月1日:一年戦争終結
同年3月4日:エルク・ジャック、シャイナ・ディッセント両名にグラナダへの転属命令下る
同年3月6日:コンペイ島出発
同年3月7日:エルク、『宇宙、閃光の果てに…』においてのグラナダでの最終決戦に巻き込まれる
     エルク、接収して間もない地球連邦軍グラナダ支部へ着任
     ガンダム5号機パイロット、フォルド・ロムフェロー中尉と遭遇
     同日の間にアナハイム・エレクトロニクス社グラナダ支部でテストパイロットに任命される
     ガンダム8号機再開発・量産計画始動
同年3月8日:デ - ト
同年3月9日:ガンダム8号機再開発の初期案、高機動格闘型に決定される
同年3月10日:搭載武装の初期案決定される
同年3月11日:シミュレーターにてアムロ・レイと戦闘、惜しくも敗北
同年3月16日:ガンダム8号機再開発計画、未曽有の危機に直面
3月17日:ジム・カスタムの宇宙仕様試験のためエルク、シャイナ両名AEフォン・ブラウン支社へ
3月18日:暗礁宙域における機動テスト
3月19日:月面重力下における機動テスト中にジオン残党のチベ級に遭遇、辛くも逃げおおせる
3月20日:両名AEグラナダ支社へ帰還
3月23日:デ - ト 2 回 目
3月26日:開発主任、地球連邦軍グラナダ基地にて司令と密会
3月29日:元ジオン軍の技術士官オリヴァー・マイ、ガンダム8号機開発計画メンバーに編入
4月26日:ガンダム8号機組み上げ、侵入したMSギャンと交戦・撃破
5月26日:ガンダム8号機、連邦軍へのデモンストレーションを兼ねた月面重力下のテスト終了、完成
     開発メンバーによって『ガンダムn-8《ネイト》』の呼称を預かる
5月30日:月面ジオン残党の討伐隊、『グレイファントム』を中心に結成・出航、ガンダムn-8配属される
6月1日:アフリカ戦線からのHLV撃墜任務を受け月面ジオン残党と交戦、護衛艦隊を殲滅しHLV撃墜任務達成
6月2日:司令、暗殺未遂に遭う
6月7日:輸送船撃墜事件多発、ガンダムn-8とジム・スナイパーⅡ両機によるモビルアーマー・ザクレロ改との月面上での戦闘
6月14日:デ ー ト 3 回 目
9月15日:アンマンにて不審船発見、停船命令も出すも拒否されそのまま見過ごす
     同日フォン・ブラウンとアナハイム同時にジオン残党軍により占拠される
9月17日:月面の他艦隊を加え月面都市奪還作戦の準備進む
9月24日:月面都市奪還作戦開始
     ジオン軍残党ネル・エマネリス少尉、捕虜として『グレイファントム』に収容される
9月25日:フォン・ブラウン奪還。月面ジオン軍残党全軍がアナハイムに立てこもる
     『グレイファントム』ブリッジ被弾。機能喪失

これまでのスコア:
MS:20
MA:1
艦艇:1

ミッシングリンクやりたいなーって思って123巻を立ち読みし4巻だけ買ったらクローチェ少尉という超かわいい生き物を見つけた
と思ったら終わったの0080年6月ってもう無理じゃん…
今日の夜に投下します

カルヴァドス「ぬおお……ぉ!!」

エルク(よける!)

間一髪、だった。ベテランパイロットとしての勘、避ける方向の選択、ゲルググJの索敵性能。これらが今一瞬のうちにすべて万全に働いていなければ、今ごろ宇宙の塵だったろう。
突き立てられた光刃……アンク・サーベルからからくも機体を逃れさせ、冷静に頭を冷やして相手を見据える。

カルヴァドス(半壊。我々のガンダムとやりあったか)

左腕部が破壊され機能を失っている、MSの構造からして、バランサーに不調をきたしていることは疑いようもない。

カルヴァドス「倒せる……な」

以前の戦いでは、互角。それどころかゲルググJの方が小回りでは上回っていたのだ。性能が同等ならば勝てぬ道理はない。
虎の子のガンダムと旗艦が落ちたとなれば、もはや包囲は続けられまい。そうなれば、連邦に対して要求を付きつけることもできる。
慢心であるはずがない。充分な算段があって、確実に得られる戦功なのだ。

エルク「ぬう……うううっぅううう!!」

バランサーが半ば潰れていて、繊細に有利を積み重ねていく戦闘機動についてこれるはずがない。
ビーム・マシンガンを駆使して弾幕を張り、コースを制限する。ガンダムは避けてくるが、それでいい。機動が崩れた瞬間に本命弾をしこたま打ち込んでやればいいのだ。
焦る必要など、ありはしない。

エルク「うおお……!!」

カルヴァドス(だというのに、なぜだ)

そのはずだった。しばらくしてようやく気づく、それがただの楽観にすぎなかったことを。
楽観――と云うにも、いささか現実が予想を凌駕しすぎている。数える気にもならないビーム・マシンガンの弾には誰もが圧倒されるはずなのだ。
ガンダムはその一発一発の来る場所がまるで初めからわかっているかのように避けて行く。物怖じもせず、最小限の回避を持って最短でゲルググに近づいて来る。
いかなる複雑機動を取っても、これは一度もそうでなくなることがない。人間の成せる技ではない、異常だ。

カルヴァドス「なぜそうできる!?」

エルク「――殺す……!!」

カルヴァドス(……ニュータイプ? こうもなれる人間だと言うか? 馬鹿げている!!)

気になっていることがある。なぜ、ガンダムは以前見せたバルカンやガトリングを用いた射撃をしてこないのか。
弾切れ? 腕部のランチャーからも何も放ってこない。ならば、退きながら撃っていればいずれは向こうが折れる。そう思っていた矢先、死角から何か飛び込んだ。

アウラーム「n8逃がすな!!」

カルヴァドス(くたばりぞこないだと!)

アウラームのジム・コマンドがまだ動けていた。両腕部すでに欠いておきながらも、腰部のガトリング砲をばらまきつつ後退していく。
それが、今のカルヴァドスにはひどく腹立たしく思えた。あのような化け物に追われている最中に、ただの雑魚が邪魔をして来るなどと。

カルヴァドス「楯突くのならなぁ!!」

優先順位を変えた。スポットガンを連射してn-8を牽制、同時に右腕部はビーム・サーベルを抜刀。同時に、AMBACで急速反転。
実弾兵器の一発や二発の被弾などゲルググJの装甲に響くことはない。先にいなくなってもらわなくては、困る。

アウラーム(追って、くるのか!?)

バランサー不調。いきなりの軌道変更に、機能不全を起こしたジム・コマンドで反応しきれるはずもなかった。

エルク「何する!」

カルヴァドス「落ちろや!!」

アウラーム『……n8!任せる!!』

また一機、光刃の前に斃れて爆ぜる。

エルク(任せるって、隊長)

またしても死んだ。自分の目の前で、どうすることもできずに殺された。
エルクの中に少しの無力感、そして悲壮感。わっと湧いてきたそれらは、すぐに噴き上がってきた激しく濃密な怒りに塗りつぶされてしまった。
――それにn-8が応える。死者の生き返りを表す剣が、命の力を吸い取り始めた。
彼自身気づいていない。その怒りは、ニュータイプの力を以ってミノフスキー粒子に伝わり精神の外へと飛び出し始めているのだ。

カルヴァドス(……エネルギー増大? なんだ?)

エルク「きさまは」

仮にこれがしっかりと作られた、刀身を維持するIフィールドの強いビーム・サーベルであったならこのような効果は現れなかっただろう。
アンク・サーベルの不安定なIフィールドがこの力の発現を許したのだ。あり得るはずのない、超常の力。

エルク「よくも」

カルヴァドス(なにかまずいッ!)

発生器の根本を除いてIフィールドがとうとう形を保てなくなった。その切っ先が激しく放電し、放射状に数える気にもならない数の枝分かれをつくる。
ただならぬ気配を感じたカルヴァドスが、ゲルググJを全速力で後退させる。しかし、推力を収束させた直線勝負でn-8に勝てるはずがない。
n-8の右腕部が、上半身をひねらせ大きく後ろへ振りかぶる。そして、それは振り下ろされた。

エルク「よくもやったあああああァァァッ!!」

カルヴァドス「し、新兵器……!!」

五つに枝分かれして、まるで獣の爪のような形でそれはゲルググJに襲い掛かった。そして、大きく飲み込む。

カルヴァドス「がッ」バヂィッ!!

通常のビーム・サーベルのように溶断痕を残すなど、機体の外装に傷こそつけることはなかった。しかし、内部はそうではない。
電子機器で制御されたシステムの停止、すなわちモビルスーツという機能の完全喪失。そして何より、パイロットが重い火傷を負うのだ。
――後に『ビーム・バリアー』と呼ばれる技術がもたらす結果のように。

エルク「よくも、よくも……隊長……っ!!」

エルクはヘルメットの中で涙をとめどなく流し、息を荒げたままとどめを見舞おうとn-8を動かす。
今まであんなによくしてくれた隊長も『グレイファントム』のみんなも殺した。絶対に許せない、モビルスーツ戦だけであっさりと殺すだけじゃあまるで足りない。
『俺の手で殺してやる』。コクピットから引きずりだしてしたたか殴って、弾切れになるまで撃ちぬいて殺してやる、穴だらけのまま宇宙を彷徨えばいい。そうエルクは考えた。
だが、その時。精神の安定が失われて鋭敏化した彼のニュータイプ能力は、ふたたび何者かの声を捉えた。
冷たい死人の声ではない、怨みをぶつけるような声ではない。よく見聞きした、暖かく包まれるような……だが、今にも消えそうなほどにか細い。声の場所はどこに?

エルク「どこだ」

心を落ち着ける。『グレイファントム』のブリッジからもしも生きて投げ出されたならば、まだそう遠くにはいないはず。
まして月にも落ちていないとなれば、もっと上空で生きているはず。しかし、宇宙が無慈悲にそれを隠している。

エルク「……っはぁっ、どこにいるんだよおっ……!」

……『グレイファントム』から、赤く色づいたまばゆい一筋の閃光が飛んだ。全軍撤退の信号弾だった。

エレクトーラ『聞こえてるの!? 一時撤退よ! このまま崩れたらみんな死ぬわよっ』

エルク『通信って、どこから』

エレクトーラ『サブブリッジよ!! 艦橋がひとつなわけないでしょ』

エルク『シャイナさんが飛ばされたんですよ!?』

エレクトーラ『見つけて帰りなさいよ!!』

エルク『俺ひとりでなんてっ、レーダーで探してくださいよっ!!』

エレクトーラ『……ニュータイプのこと、よくわからないけど。呼ばれたんでしょう』

エルク『そうですけどっ!!』

エレクトーラ『見つけられないんなら、ニュータイプ同士引きあうんでしょ!? 彼女もニュータイプだって言うなら、甘ったれないで引き寄せなさいよ!!』

エルク『引き寄せる……!』

二発、三発。また赤い信号弾が上がる。艦隊もMSも、みなフォン・ブラウンに引き上げていく。
n-8も推進剤をかなり消費している。撤退するまでにシャイナを見つけなければならない、それが焦らせてくる。

エレクトーラ『来たんならあんたもなんとか言え!』

ネル『エルク』

エルク『なによ!?』

ネル『助けたいのが彼女なら、彼女と、自分を信じて』

エルク『…………っく!』

足元は月、天井は宇宙。いや、全天周モニターなどに頼るから――コクピットハッチを開けて、生の瞳で宇宙を見渡す。
鼓動だけが確かに生きている……瞼を閉じると、頭に方向が浮かんできた。n-8が、それに従う。

エルク『いた……っ!!いたんですよ!!』

決してぶつからないように、減速したn-8の胸部をシャイナに寄せていく。

エレクトーラ『何が!?』

エルク『シャイナさんっ!!』

シャイナ「!」

意識は失っていない様子だった。だが、様子がおかしい。

シャイナ『っ、う、あう』

エルク『な、なに?』

接触回線ごしに聞こえる辛そうな息遣い。しきりに喉のあたりを抑えて、口をぱくぱくさせているだけで言葉になっていない。
シャイナの身に何が起きているのか、エルクには知る由もなかった。

シャイナ『あっ、あ』

エルク『かっ、船に戻ります! おとなしくしててくださいッ』

シャイナを抱きしめて、n-8のハッチを閉じるエルク。
――アナハイム奪還作戦は、予期せぬ混乱によって失敗に終わった。

~二日後 フォン・ブラウン軍港~

エルク「どうなってるんですか」

軍医「あまり施設が整ってなくて、はっきりとは断定できんが……」

軍医「やはり、彼女が喋れなくなったのははっきりとした人間の死を目の前で見たりだとか、宇宙漂流のショックによるものだろう」

軍医「読み書きと聞くことのテストがはっきりとできているあたり、おそらく軽度ではあると思う。状況判断だとか思考にも問題はない」

エルク「だけど、発話が難しいオペレーターって」

軍医「話せないんじゃ無理だろ……彼女をどうするかは上が決めることだし、あまり気負うな」

エルク「はい……」

軍医「会っていってもいいぞ」

エルク「当たり前でしょう!!」

軍医「そ、そうだな……」




エルク「シャイナさん?」

シャイナ「…………」スクッ

エルク「あ、立たないで。そのままでいいです。ちょっと、頭を借ります」スッ

シャイナ「……!?」コツン

エルク「シャイナさんもニュータイプだったなら、もしかしたら……頭を通せば喋れるのかなって」

シャイナ(ち、近い……)

エルク「目の前で艦長さんたちが……死んだ、んですよね」

シャイナ「……」

エルク「自分も宇宙に投げ出されて、怖くて、パンクしちゃったら喋れなくなった……のかな」

シャイナ「……」コク

エルク「俺も正直受け入れられません」

エルク「艦長さんたちや隊長が、あんな一瞬のうちにいなくなったなんて俺は……っ、俺は、思いたくない」

エルク「でも、ひとつだけ飲み込めたように感じるんです」

シャイナ「?」

エルク「俺はニュータイプなんて嫌いでした。死んだものが生きてるものに何かをできるようになったり、死んだ人の声が聞こえる力が好きじゃないんです」

エルク「でも、なんというか……自分がそうなっていって」

エルク「そう、なっていったからシャイナさんを助けられたんです、きっと。だから」

エルク「この力も捨てたものじゃないのかもしれないって思って」

シャイナ「……」

エルク「だからもし、シャイナさんが自分の勘のせいで自分だけ助かったと思うなら、それを責めないで欲しいです」

エルク「ニュータイプも、使われ方次第……だと思いますから」

シャイナ「……っ」ポロポロ

エルク「な、泣くんですか? えーっと」キョロキョロ

エルク「ティッシュぐらい部屋に置いとけよぉ……!」

シャイナ「……っ」

エルク「あ、今笑いました!」

今日はここまでです
ああは書いたけど結局ミッシングリンクはやります
レッドライダーとかホワイトライダーとかブラックライダーだとか便利そうなのがいるのでそれ使おうと思います

一生懸命調べてるんですが0082年ってほんっっとに何もイベントないんですね
0083年はこれから第二次一年戦争になる予定です
今日もまた19時ごろ投下します

ミリタリーに疎くてよくわかんないんですけど、階級って別の国の軍隊にいても同じなんでしょうか?

~『サラブレッド』格納庫~

アリソン「……よう」

エルク「ああ」

アリソン「彼女さんはどうだった」

エルク「元気そうだった」

アリソン「そうかぁ……」

エルク「うん……」

アリソン「……死んじまうもんなんだな。こんなにあっさり」

エルク「そうだな」

アリソン「そうだなって……お前、なんでそんなにけろっとしてんだよ」

エルク「平気じゃあないさ。ただ、一応仇は取ったからな」

アリソン「……あいつをあの時落としてさえいりゃあ、隊長も死ななかったし、俺たちも『サラブレッド』に移ることなんかなかった」

アリソン「ニュータイプってのがよくわかんねえけどさ」

アリソン「あの野郎が死んだなら、もう一回殺す方法ってのはないのか? できれば俺の手で」

エルク「やめといた方がいい」

アリソン「え」

エルク「死ぬってのは安らぎだろ。どうにもならなかったら誰でも死んで終われる」

エルク「生きてるのなら、死んだ奴はほっといてやりなよ。逆もそうだ」

エルク「触れ合っちゃいけないものなんだよ。わかる? ……わかるように言ったよな?」

アリソン「いや、まぁ、わからんでもないが」

アリソン「……なんか、お前って奴がわからんようになってきた」

エルク「そう?」




エレクトーラ「じゃあとりあえず、改修の内容を説明しとくけど……」

エレクトーラ「……何その顔。もちっとしゃっきりできないの?」

エルク「いや……最近何度も壊しちゃって申し訳ないです」

エレクトーラ「ニュータイプだからってみんな避けられるわきゃあないでしょう。ああいうエース相手なら特に」

エレクトーラ「左腕部なんだけど、想像してたよりきれいに逝ってくれたおかげで出撃までには何とかなりそう」

エルク「具体的にどういう風に?」

エレクトーラ「一年戦争の頃から『サラブレッド』には五号機が載ってるでしょ。昔は四号機が一緒に載ってたわけね」

エルク「アンク・サーベルの、提供元でしたっけ」

エレクトーラ「だから、その名残で余剰パーツがたくさん置いてあるわけ。それをみんなn-8に回してもらったの」

エレクトーラ「セカンドロット・ガンダムのお仲間で規格がバッチリ合ってるから、機体バランスも考えて両腕部に四号機のをまるまるくっつけたわ」

エルク「強制射出装置は排除、ってことですか?」

エレクトーラ「まぁ……ね。惜しいんだけども、あの技術が使えるようになるのはもうちょっと先ね」

エレクトーラ「Bst仕様用のショルダー・ユニットってのも貸してもらったわ、推力が上昇してる。四号機さまさま」

エレクトーラ「それで、ここからは武装面。干渉するし腰部ガトリングは排除したから」

エルク「えっ、便利なのに……!」

エレクトーラ「つけられないもんはしょうがないじゃない。ツイン・ビーム・スピアも回収できなかったし、排除」

エレクトーラ「そのかわり武器はたんまり持たせるから。バズーカ二丁と予備弾倉あるだけ付けてあげる、みんな落としてきなさい」

エルク「そんなに持たせていいんですか」

エレクトーラ「どうせ終わったらオーバーホールだもの。それに」

エレクトーラ「…………」

エルク「そ、それに?」

エレクトーラ「……あのさぁ、ニュータイプのくせに言わせるの?」

エルク「え?」

エレクトーラ「生きて帰ってこいってことよ!! ったく!!」

エルク「……了解。絶対戻ります」

エレクトーラ(……ニュータイプ、ねぇ)

マイ「主任、少し話が」

エレクトーラ「ああ、予備弾倉の保持? 腰部と脚部と、テールバインダーに二つづつよ」

マイ「……つくづく驚かされます。同規格とはいえ、こんな高性能機が急場の組み換えで動かせるようになるとは」

マイ「ガンダムという機体の構造がいかに優れているか思い知らされているようだ」

マイ(モビルスーツの可能性を見せたのがザクならば、完成させたのはガンダムか……)

エレクトーラ「奇しくも高機動化ってのは次の装備の設計思想といっしょね」

マイ「V型装備ですか」

エレクトーラ(……今のあいつ的には、さしずめ『ヴェンジネイト』ってとこかしら)

エレクトーラ「……あなた、ニュータイプに関わったことってある?」

マイ「は?」

エレクトーラ「ジオンは随分ニュータイプをあてにしていたそうじゃない」

マイ「いえ……私は技術士官でした、しかし開発の道でなく、評価の道を進みました」

マイ「ましてニュータイプとまで行くと、技術ではなく思想ですから。縁がありませんでした」

エレクトーラ「そうよね……」

エレクトーラ(……知りたい。ニュータイプって、何者?)

エレクトーラ(どうやって生まれる? どうやって力を振るう? どこまでできるの……?)

エレクトーラ(戦闘記録にあったサーベルの過剰な出力上昇、あの現象はいったい……)

~『サラブレッド』ブリーフィングルーム~

フォルド「……よっ。また会ったな」

エルク「大尉」

フォルド「『グレイファントム』のこと……残念だったな。わかってると思うが、今からは俺が『サラブレッド』のMS隊隊長としてお前らの命を預かる」

アリソン「……」

フォルド「んじゃあ、作戦の説明に入る。敵はどうやら、アナハイムの防衛システムを掌握してしまったらしい」

エルク「それじゃあ、自動砲台なんかが俺たちを狙ってくるってことですか」

フォルド「そうなる。単純な戦力比なら三倍だからな……向こうの戦力不足を補うための手なんだろうが、そういう固定目標の始末にはうってつけな機体がいる」

アリソン「……俺、ですか」

フォルド「スナイパータイプの狙撃であらかた砲台を始末し、防衛網に穴を開けて突入する。敵のスナイパータイプは撃墜を確認しているから飛び込める」

フォルド「俺の五号機は上空からガトリング掃射で制圧。アナハイムの守りが崩れたと見たら突入の指示を出す、一気になだれこめ」

フォルド「敵は恐らく防衛システムを活かすために市街地で格闘戦を仕掛けてくるだろう。充分注意しろ!」

エルク「了解」

フォルド「弔い合戦だと思え。作戦は明日だ、スタンバっとけ!」

今日はここまでです
フォルドが大尉なのはあの短期間でMS撃墜25MA撃墜1と戦艦撃墜6で昇進してないわけないよなぁと思ったからです

今日は更新できなさそうで申し訳ない
マジで何もないんで0082は飛ばすことにしました
0083からは「ニュータイプの明確な定義」がもたらされたりガンダム開発計画がオシャカにならなかったりと完全に別世界になると思います

掃除してたら信長の野望・革新見つけたんでずっと革新漬けでした(小声)
書き貯めて二日後の夜ぐらいにはまた投稿します、次の次で月面企業戦争は終わりです

ながーーーーいこと待たせてほんとにごめんなさい
19時半ぐらいから投下します

調べてたら一年戦争のころだとハイパーバズってカートリッジ式じゃなかったのか、にわか晒した…
腕部のマルチランチャーの弾薬ってことにしときます

~一日後9月28日 『サラブレッド』格納庫~

キルスティン『いいか、艦砲射撃による援護には期待するな。民間への被害は最小限に留める』

フォルド『そのためのモビルスーツ隊です』

キルスティン『向こう側も出資者が出資者だ、アナハイム内部の偵察によるとそれを恐れて向こうは艦を地下へとしまいこんでいる』

キルスティン『上層へ出てくるモビルスーツ隊を全滅させ市街地を制圧するのだ』

キルスティン『『グレイファントム』からの二機はそれぞれ狙撃戦、近接戦特化MSと聞いている。今回の任務にうってつけの二機には期待する!』

エルク『n8了解』

アリソン『02了解!』

フォルド『……これが終わればいよいよ艦長も退役か?』

キルスティン『大尉との腐れ縁が切れるようで何よりだ。n8・02両機発艦、狙撃ポイントへ移動せよ』

キルスティン『奴らもなかなか頭が切れるようだ。ミノフスキー通信と通常の通信回線、どちらもギリギリ使えない程度の粒子散布濃度を維持して来ている』

キルスティン『通信が不通となるだろう。不測の事態が起こった場合、先行する二機は個々の判断で動け』

エルク『了解っ』

エルク(……やっぱり変な気分だ)

エルク(どうしてこう落ち着ける。艦長さんやみんなが死んだってのに、俺はどうにもすっきりした気分がしてならない)

エルク(ニュータイプだとか言われ始めた頃のもやが晴れた感じだ。なんで俺はこうなった?)

オペレーター『ガンダムn-8発進用意!』

エルク『了解。ガンダムn-8、発進』グッ

ガギギギギギッ!!ドヒャアアアァァァッ!!

エルク(敵を倒していればわかるかな?)

アリソン『エルク!砲台がみんな落ちるまでしっかり守ってくれよ、このスナイパータイプに並べる速さのはお前一機だけだっ』

エルク『了解。近接援護は問題ない』

アリソン『そりゃあアナハイムへの被害ゼロとはいかねえだろうが、俺も基部だけを狙って爆発させないようにできるか試みる』

エルク『そんなことできるのか』

アリソン『フォン・ブラウンの技術者連中がな。このビーム・マシンガン、連射と狙撃に切り替えられるような技術があるなら』

アリソン『ビームの収束率を上げることもできるんだろうからやってみせると。それだから、やらせた。二日でできるようなもんなのかね』

エルク『ふうん』

アリソン『狙撃ポイントに到達。ま、やってみるさ』ガシン…

伏射姿勢をとったジム・スナイパーⅡのセンサーバイザーが降りて、精密射撃体勢が完成する。
ブリーフィングの際、既に自動砲台の構造はアリソンの頭に叩きこまれている。高収束ビームで基部だけを撃ちぬき焼き切ればよいのだ。
慎重に狙いを定め――撃つ。高出力・高収束のビームは間近で見てもまるで糸のような細さで、正確に基部を焼き切りひとつの砲台から攻撃力を奪った。

アリソン『次』

この一射でコツを掴んだ。すばやく狙いを切り替え、二基目の砲台を無力化する。
この狙撃ポイントで狙えるのはこの二基のみだ。狙撃地点を悟られないためにも、目標の沈黙を確認し次なる狙撃ポイントへと移動する。

アリソン『……どんなもん!』

エルク『やるじゃん』

同じスナイパー・タイプか、艦砲射撃の射程でもなければこの狙撃を同じ距離から止める術など存在しない。
モビルスーツを出して防ごうものなら市街地に隙が生まれる。そうすれば、MS隊突入のための隙が生まれる。
時間をかけただけあって、アナハイム攻略戦はそういう二手三手先が既に決まっている作戦に仕上がっていたのだ。
――だが、例外もあった。

ジオン兵「砲台沈黙!次々にやられてます、これは」

艦長「報告にあった例のスナイパータイプだろう……くそ、カルヴァドスの機体がああなっていなければ……」

通信士「艦砲射撃ならどうです」

艦長「……なんだと?」

通信士「いくらスナイパータイプのモビルスーツだからって、戦艦の砲に比べたら」

艦長「馬鹿か!こんな場所で艦が墜ちたらどうなる」

通信士「そんなのは出資者の理屈でしょうが!」

艦長「なっ」

ジオン兵「……そうですよ、我々は軍人で、しかもジオン軍人でしょう」

ジオン兵2「そうだ!顔も見せない企業の使いっ走りで何がジオンの軍人ですかっ」

ジオン兵「砲台が落ちるなら対空砲火で落とせばいい!」

通信士「艦長指示を!」

艦長(こ、こいつら……!)

艦長(……いや、待てよ)

艦長「奪取した軍港のMSや資材は各艦に輸送してあるな」

通信士「もちろんです!一泡吹かせましょう」

艦長「よろしい」

艦長「全ての艦に伝えろ。これより、アナハイム空域から全速離脱する!!」

通信士「はいッ!」

通信士「……え?」

艦長「難しい事ではない。市街地や工場を質に取られるのを恐れたかアナハイムは包囲の形を取られてはいない、つまり向こうはろくに手出しができん」

艦長「フォン・ブラウン側の逆方向……グラナダに撤退すればいい。観測によれば敵艦隊はまだ遠い、MS戦で制圧を試みるだろうから当然の事だ」

艦長「長射程の狙撃ビームなど、モビルスーツではそうそう何度も撃てるものでもない。砲台がすべて落ちれば狙撃の心配もなくなる」

通信士「しかしそれでは!!月面で散った仲間たちはいったい」

艦長「我々がここで沈もうものならそれこそ無駄死にだ」

艦長「アナハイムを囮にして我々は撤退する。生きていれば使いっ走りに非ず、ジオン軍人として次の戦いがいずれ来よう」

艦長「それともここで企業のために奴らに捕まるのか?」

ジオン兵「しかし、グラナダは今や連邦の勢力権下では……隠れて入港することなど」

艦長「それはどうかな……早く全艦に伝えろ!肝はタイミングだぞ」

通信士「は、はッ」

アリソン『全基無力化!』

二度のポイント変更を経て、ようやくのことだった。対空用の砲台は全て無力化され、モビルスーツが安全に突入できるようになっている。
手筈は整った。ジム・スナイパーⅡは抑えたとはいえ高出力の狙撃ビームを何度も撃ち、エネルギーの欠乏を起こし始めていた。
早急に帰投して補給を行った後、また戦線に復帰しなければならない。

エルク『早めに戻れ、俺が受け持つから』

アリソン『……待て、軍港が開くぞ?なんだ』

センサーバイザーに内蔵された高倍率カメラがアナハイム軍港の異変をキャッチした。ハッチが次々と開き始めている、その数六。

アリソン『……せ、戦艦!みんな出てきやがるぞ!?』

エルク『なんだって?』

エルク達には意図が読めない。これまでの戦いで艦載機も大きく減った、わざわざモビルスーツ隊の的になる為に出てきた訳ではないはず。

エルク『……特攻でもしてくるつもりか』

アリソン『やべェぞ!どうにかしねえと』

エルク『補給しないとお前は何もできないだろ。ミノフスキー粒子が撒かれてる、ついでに伝えに行ってきなよ』

アリソン『お前はどーすんだよっ』

エルク『受け持つって言ったぞ。モビルスーツが来たら俺がここで食い止める』

アリソン『一機でかよ……くそ、死ぬなよ!』

ジム・スナイパーⅡがポイントを離れゆく。敵の意図が読めない状況下だが、前線を下げて敵に隙を与えるわけにもいかない。
圧倒的戦力差を抱えているとはいえ、引け腰で戦えば必ず損害を許すことになるだろう。そうさせては駄目だ、故にn-8が単騎で残る。

エルク『踏ん張るしかない』

しかし、直後に妙な光景を見る。向こう側に見える敵艦隊が次々とサイド・ノズルを吹かして艦首を後ろに回している。
敵にメインエンジンを向けて陣取るというのは、もはや撤退以外にありえない。そこでエルクはようやく気づいた、向こうは戦う気などすでにさらさらないのだと。
それが、とても気に障った。不愉快で仕方がなかった。

エルク(何の真似だ。逃げるって?ここまでやっておいて)

操縦桿を握る指と掌に、さらなる怒りの力が籠る。出力を上げて敵艦を追い始めた。

エルク(ひとりも逃がすか。戦場に来ている人間っていうのは、殺してもいいんだぞ!!)

n-8の深紅のツインアイに憎しみが注ぎ込まれ、センサーが敵艦から発進した多数のモビルスーツを捉える。その数、十は下らない。
この時点で戦力差ゆうに9:1。アナハイムの上空で、月面の歴史に残る交戦は今この瞬間に開始された。
推力差によって先に接敵したのは四機のゲルググ小隊。先頭の一機がビーム・ライフルを発射し、n-8を牽制するがまるで当たらない。

エルク(街に落ちる前に爆発させるっ)カチッ

目当てをつけて、そのゲルググに左のハイパー・バズーカが発射された。やや遅らせ、続けてもう一発。
完全に軌道を先読みしたその一撃は、避けられない。頭部が成すすべなく吹き飛ばされ、力なく月面へ――
――いや、遅れて放たれたハイパー・バズーカ弾頭が背部を直撃する。かくしてその機体は月の地面に尻もちをつけることなく爆散した。

エルク「ひとつ」

仕留められた仲間の仇だと言わんばかりに、残されたゲルググ三機が猛然と迫る。しかし、その動きはあくまで冷静さによって統制されている。
単純な射撃攻撃ではガンダムを撃破することはできない、と考えた小隊長はこうさせた。まず残り二機が両翼について射撃での牽制。
それに、まるで振り子のような軌道をとらせる。すると二機が交差する瞬間は中央の小隊長は敵から様子が見えなくなる。
隙を作って、格闘戦で一気に仕留める――これまで三人もの連邦のエースパイロットを葬ってきた伝統の戦術だった。

エルク(こうか!?)

それも、この瞬間までである。
不規則な軌道から放たれるビーム・ライフル弾を、エルクはすべて避けるばかりか逆にそのまま突っ込んでいく。
二機が交差する瞬間……真正面が詳しく見えないのは、小隊長も同じことだ。エルクにはその隙が見えていた。
前進と同時に振り上げられた脚部が、真正面の角つきゲルググの頭部の装甲を砕きまるでサッカーボールのように蹴り飛ばす。
そして、その勢いのまままるでサマーソルト・キックのようにAMBAC効果で上下前後が反転。これをバーニアで制御。

エルク「ふたつ、みっつ」

振り子軌道を取っていた二機を背後からロック・オン――同時に、トリガー。命中。二機同時に、バズーカを受けて爆発。
体勢をそのまま、ハイパー・バズーカを置いて下へ。モニターが死んで、敵はn-8を見失っている。
――アンク・サーベルが、激しいプラズマとともに引き抜かれる。その次には、すでに角つきゲルググは股下から左肩までを袈裟懸けに、真っ二つに溶断されていた。
爆発する前、引き返しざまに切り離された脚部をもう一度切断しておき、ハイパー・バズーカ二丁を回収。そして、爆発。

エルク「よっつっ」

エルク(街の事を考えれば、もっと細かくしておきたかったけど……!)

残り五機の混成部隊がこちらに向かってきている。敵の抵抗を考えれば、生き残るために被害を気にしている余裕はない。
しかし、ひとつ。ここでエルクは思いつく、敵艦隊の背後を取っているのであれば、艦隊を目指せば街に残骸が落ちることはない。
艦隊を守るために艦載機は必ず来る、敵艦がこっちに尻を向けたままなら向かい来る火線も微々たるものだ――何より艦を落としに行ける。

エルク「行くぞ!」

n-8が突進する。すれ違いざまに見えた機影は、おそらくはザク・タイプが三機。他には何やらデカ物を担いだドムがモニターに見えている。
もう一機は?――目の前に来た。しかし、どういうわけかトリガーが反応しない。

エルク「GM!?」

識別信号のせいで火器にセーフティがかかっている。照準補正も、ロック・オンもできない。アナハイム軍港に存在していた、出荷前の機体の鹵獲である。
その動揺に付け込んだ敵のGMはすかさずビーム・スプレーガンを発射する。しかし、規格外の高機動を誇るn-8には命中しない。

エルク(落ち着け!スプレーガンの有効射程じゃ、機動戦でそうそうひっかけれるもんじゃないっ)

操縦者はジオン軍人、機体特性をよく理解していない。いくら照準が作動しないとはいえやりようはある。ロックできないのは向こうも同じだ。
照準の補正が働かない以上GMは後回しでもよい。別の機体を見つける、高機動状態で安定しない照準をどうにか抑えて、撃つ……当たらない。
ハイパー・バズーカは、威力と引き換えに弾速が遅い。エルクにはバズーカの当て勘がまだ備わっていなかった。

エルク(右にあと二発、左は三発。戦艦を落とすなら、この威力はとっておきたいが)

コンソールを叩いて、マルチ・ランチャーの装填弾薬を確認する。今、必要なのは左腕に装填されているものだった。

エルク(眩しい中で当てられるかは……俺次第か!)

覚悟を決める、狙いをつける。そして、左腕部に搭載された三連装マルチ・ランチャーの閃光弾が発射された。
本来なら自分を巻き込むことを想定した武装ではない、だがエルクは目を瞑りながらもこれを発射した。
効果範囲内の三機ほどのMSが自殺行為同然の行動に巻き込まれる。閃光弾の激しい光は、当然ながら瞼を閉じただけで全てを防げるようなものではない。
敵のMS操縦士にとって残念だったのは、エルク・ジャックには瞼が閉じても、もう一つの視覚があるということだった。
視界を絶ったままブースト移動し、照準を合わせ、左のハイパー・バズーカを発射する。実弾とはいえ旧式MSのザクⅡF型を落とすには充分すぎる火力であった。

エルク「いつつ!」

瞼を開いて、超常の力に因らない視覚を取り戻す。真っ先に目に入ったのは、お互いが近くに寄っているザクⅡが二機。
どちらも眼が利いておらず混乱している様子である。あらぬ方向に向けてバズーカ弾を発射していることからそれが察せた。
ハイパー・バズーカ二丁をまた放り投げて、接近する。だが距離が近すぎてサーベルを抜いている余裕がない。

エルク(格闘プログラム!)

手近にいたザクの頭部動力パイプがn-8の右腕に掴まれる。しばらく引いて、押す。
嫌な音を立てながら、豚鼻のようなエア・インテークごとパイプは引きちぎられた。そして、宇宙空間を吹き飛び片割れのザクⅡに衝突する。
なおもn-8が迫る。左腕でアンク・サーベルを引き抜き、フォローに入らんとする火線をバレルロールで避けつつ、通り過ぎるように二機の動力部を溶断した。

エルク「むっつ、ななつ!――っぐあ!!」

組み付かれる。マシンガン弾を切らしたドム・タイプが、半ば特攻気味の突撃で背中からn-8の両脚部をがっちりと抑えている。
そして、その軌道が問題だった。n-8を月面へと引きずり降ろそうと、全速力で降下している。

『ガンダム死ねよやぁ!!』

エルク「何しにきたああぁ!!」

接触回線で敵操縦士の声が聞こえてくる。敵の声。ジオン軍人程度がガンダムn-8と俺を殺そうなどと、なんと腹立たしいのだろう。
n-8の全スラスターが燃え盛る憎悪を表すかのように全開となって炎を灯す。捕まえられたのならば、それを利用すればいい。
n-8を軸にして、ドムを遠心力で振り回すことを思い立ったのだ。大きな円を描く軌道で逆にドムだけを月面へと叩きこむ。

『うっ……!うおおっ、う゛っっあ゛』

エルク『消えてなくなれ!!』

二回転ほどの後に思いきり脚部を動かし、ドムをそのまま月面へと弾き飛ばす。その勢いで叩きつけられては、もはや戦闘中に失神から回復することはできない。
とどめを刺さんと月面へ降りるエルクに、ニュータイプとしての勘が敵の接近を告げた。頭上!
自由の女神がごとく左腕のサーベルを上に掲げて、そのまま敵のGMを真っ二つにした。
通り過ぎていくGMが月面で爆発するころには、n-8もコクピットハッチ第一層と腰部装甲を溶解されていた。

《ガンダム――――!!》

エルク「やっつ……危なかった」

月面へと降下、そして仰向けになってスパークするドムを見下ろすn-8。見れば、その傍らには何か巨大な実体剣のようなものが落ちている。

エルク「墓標にしてやるよ。そしたら月でずっと暮らせるだろ」

マニュピレータが実体剣を逆手持ちに掴む。どうやらヒート・サーベルの類で、発振させることはできないがコクピットを貫くだけなら充分な質量だ。

《き、さま》

エルク「死ぬのはお前らなんだよぉっ!!」

ドム自身の超大型ヒート・サーベルは、容易にそれ自身のコクピット・ブロックを操縦者ごと圧潰させる。
灰色の大地に突き立ったそれはまるで、本当に月に建った墓石のような様相を呈していた。

エルク(やっぱり。なんとなく、殺した後に声を聞いても前より気は楽な感じだ)

エルク(ニュータイプとして成長したってことかな? それは、ちょっと嬉しいな)

ハイパー・バズーカを回収したなら、次は向こうに見えている戦艦だ。戦艦にはたくさんの人間がいるが、それをいっぺんに死なせたのなら。
それでも、今のエルクには耐えられる気がしていた。何やら出所のつかめぬ自信が満ちあふれていたのだ。

とりあえずここまでです
次で月面編はほんとに終わりです

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