阿笠「できたぞ!嫌な記憶を消し去るスイッチじゃ!」 (63)

コナン「おお、やるじゃねえか博士!」

阿笠「まず対象となる人間に照準を合わせるのじゃ。そして1回スイッチを押すごとにその人間の嫌な記憶だけが1つずつ消し飛ぶからの」

コナン「すげぇ!それじゃあちょっくら借りていくぜ!」

阿笠「世のため人のために使うのじゃぞー」

――学校

歩美「コナン君おはよー」

元太「よぉ、コナン」

コナン「ああ、おはよう」

光彦「あ!コナン君おはようございます!」

コナン「オラァッ!」ボゴォッ

光彦「うぐッ……!」ガクンッ

コナン「ラァッ!ハァッ!ギュクシッ!」ドゴッ バギッ ズゴッ

光彦「うげぇッ……!ガハッ……!グギギギ……ゲホォッ!」ドバァッ

歩美「な、なにやってるのコナン君!?光彦君血を吐いてるよ!?」ガタガタ

元太「や、やめろよコナン!なんで光彦をボコボコにしてんだよ!」ガタガタ

コナン「バーロー!理由なんてねえ!光彦がここにいるから殴ってるんだ!」バシッ

光彦「ぐッ……はぁはぁ……コナン君……や、やめてください……」ピクピクッ……

コナン「さてと……照準を光彦に合わせてっと……」ポチッ

光彦「はぁはぁ……あ、あれ……どうして……僕は傷だらけなのでしょうか……?い、痛い……体中が痛いけど……思いだせません……ハ、ハハハ……うぐ……げほォッ!」ドバァ

歩美「う、うわあ!また血を吐いてる!」ガタガタ

元太「ひいい……!」ガタガタ

コナン「ああ、こいつらにも嫌な光景を見せちまったな……照準を合わせて……」ポチッ ポチッ

歩美「え?なんで登校早々光彦君満身創痍なの?うわぁ……血吐いてるし……」

元太「気持ちわりいなあオイ」

コナン(博士……久々にナイスな発明だぜ!こいつはよォ~!)

灰原「……工藤君、また円谷君になにかしたでしょう?」

コナン「ん?灰原か……そい」むにゅっ

灰原「!!ちょ、ちょっと!なにするのよ!」

コナン「バーロー!揉みたいときに揉むためにメスはいるんだろうがよ!」むにゅむにゅむにゅ

灰原「や、やめ……!」

コナン「ほい」ポチッ

灰原「……あれ?工藤君、私になにかした?」

コナン「してねえよ」

灰原「そう……とにかく、あまり円谷君を玩具にしないようにね」

コナン(博士……このスイッチがあれば世の中に童貞はいなくなるぜ……!)

――下校時刻、帰り道

とぼとぼ

光彦「はぁはぁ……どうしてかわからないけれど体中が痛いです……僕は無事に家まで辿りつけるのでしょうか……歯は欠けてるし……目の下は腫れてるし……げほぉッ!」ガクッ

光彦「う……だ、だめです……もう歩けません……」バタッ

JK1「!?え?君、大丈夫!?」

JK2「この子傷だらけじゃない……」

JK3「君、立てる?家まで送って行こうか?」

光彦「え、えっと……」

JK1「ほら、掴まって」もにゅっ

JK2「顔、汚れてるよ」ふきふき

JK3「じっとしてね。絆創膏貼っておくから」ペタッ

光彦「あ……ありがとうございます……」

――光彦宅前

光彦「あの、お姉さんたち……ありがとうございました……家まで送ってもらっちゃって……」

JK1「いいよ、いいよ。そんなかしこまらなくても」

JK2「早く治るといいね」

JK3「それじゃあ私たち行くね。お大事に」

トコトコトコ……

光彦「……」

光彦(優しいお姉さんたちでした……あれが大人の女性の匂い……う、うへへへ……どうして怪我をしたのかは思い出せませんが得しちゃいました……)ニヤニヤ




コナン「……」

コナン(こっそり跡をつけてみりゃあ、光彦の野郎……一人だけいい思いしやがって……!光彦のくせによぉ!)

コナン(許さねえぞ光彦……)ピッ プルルルルル……

コナン「もしもし?博士か?大至急『楽しかった記憶を根こそぎ消し去るスイッチ』を作って光彦の家まで来てくれ……ああ、そうだ。光彦だ……奴は越えちゃいけないラインを越えた……!」

――1時間後

阿笠「できたぞ!『楽しかった記憶を根こそぎ消し去るスイッチ』じゃ!」

コナン「さすがだぜ博士!」

阿笠「わしの科学力は世界一じゃ!さっそく光彦君で試してみるとするかの」

コナン「よっしゃ!光彦ー!出てこーい!早く出てこねえとドアを蹴破るぞー!」ガンガンガンッ!

阿笠「光彦くーん!隠れても無駄じゃぞーい!出てくるんじゃー!」ガンガンガンッ!

バタンッ

光彦「ちょ、ちょっと!玄関をガンガン叩くのはやめてください!……あ!コナン君に博士……!?ど、どうしたんですか!?」

阿笠「今じゃ!照準を光彦君に向けてスイッチを押すんじゃ!」

コナン「もうやってるぜ!オラァッ!」ポチッ

光彦「!?」ビクンッ

しゅうううううう……

光彦「あ……あれ……どうしたんでしょう……な、涙が出てきます……」ポロポロ

コナン「博士!これは成功したのか!?」

阿笠「ああ!おそらく成功じゃ!光彦君の人生の中のあらゆる楽しかった思い出が消し飛んだんじゃ!」

コナン「すげぇ!」

阿笠「後に残るのは痛ましい思い出、悲しい思い出、恥ずかしい思い出など負の記憶だけじゃ!光彦君は今、それら、負の記憶に打ちひしがれておるのじゃ!」

コナン「やったぜ!」

光彦「あ、あぁ……僕はなんのために生きているのでしょう……誰にも愛されず……誰からも必要とされない……」ぶつぶつ

阿笠「光彦君が何かぶつぶつ語っておるぞい」

光彦「……生きるってなんなのでしょう……生きる喜びって一体……僕はどうしてこの世界にいるのでしょう……僕は……僕は……」ポロポロ

コナン「なにいってんだこいつ……」

光彦「う、うう……うわあああああああッ!」ダッ

タッタッタッ

阿笠「!?ど、どうしたんじゃ!?いきなり走り出したぞい!?」

コナン「なんだか知らねえが追いかけっぞ!博士!」ダッ

――どこかの屋上

ひゅうううううう……

光彦「……」

コナン「はぁはぁ……やっと追いついたぜ光彦……」トコトコ

阿笠「ほら、こっちに来るのじゃ光彦君、そっちは柵が無いから落ちてしまうぞい」トコトコ

光彦「来ないでください!!」

コナン&阿笠「!」

光彦「僕は……僕は……もう嫌なんです……こんな世界……嫌なことしかないこんな世界が……だからもう……楽になりたいんです……!」

コナン「ま、まさか光彦……おまえ死ぬつもりなのか!?」

阿笠「光彦君!考え直せ!阿呆なことを言っていないでこっちに来るのじゃ!」

光彦「あなたたち……僕の名前を知っているんですね……お気遣いありがとうございます……でも、もういいですから……」

コナン「な!?光彦は俺たちが誰なのかわからないのか!?」

阿笠「彼の楽しかった記憶は根こそぎ消し飛んだからの……その記憶の中にはわしらとの出会いの記憶もあったのじゃろう……」

コナン「くそッ!どうしてこんなことになっちまったんだ……!」

光彦「……」トコ……トコ……

コナン「ま、まずい!このままじゃあ光彦は本当に飛び降りちまう!」

阿笠「まだ間に合う!光彦君を助けるんじゃ!」

コナン「で、でもどうすんだよ!?」

阿笠「こうなりゃヤケじゃ!嫌な記憶を消すスイッチを連打して光彦君の記憶を空っぽにするのじゃ!そうすればなんとかなる気がするぞい!」

コナン「わかったぜ博士!うおおおおおおおおおおお!!!!」ポチポチポチポチポチポチ

光彦「……!」ビクンビクンッ

コナン「がああああああああああああああ!!!」

ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ…………

光彦「……!!」ビクンビクンビクンッ

ピロリロリーン♪

コナン「は、博士!今の音は!?」

博士「光彦君の嫌な記憶がすべて消し飛んだのじゃ!今のはこれ以上消す記憶がないことを知らせる音じゃ!これで光彦君の絶望も消え去ったことじゃろう!」

コナン「やったぜ!」

光彦「あばばーwwwwwwwじょろろびーにょおおおwwwwww」ぴょんぴょん

コナン「!?お、おい!博士!光彦の様子がおかしいぞ!?」

阿笠「こ、こいつはいかん!スイッチで光彦君の脳をいじくり倒したうえに、記憶を消し過ぎたせいで光彦君の人格が崩壊してしまったのじゃ!彼の記憶は空っぽになったがこのままでは……!」

光彦「うっぷんぶるけwwwwwwすぽぽぽぽぽwwwwwww」ぴょんぴょん

コナン「やばい!博士!光彦がぴょんぴょん飛び跳ねてやがる!危険だ!」

阿笠「あわてるな!こんなこともあろうかと奥の手を用意してある!ほら、このカプセルシューターで光彦君を狙い撃つのじゃ!」

コナン「なんだこれ!?」

阿笠「実は先日光彦君にイタズラをしたときにこっそり記憶のバックアップを取っておいたのじゃ」

コナン「な、なに!?」

阿笠「今の光彦君にならこの記憶カプセルを撃ちこめば彼の記憶は再構成される。元の光彦君に戻ってくれるはずじゃ」

コナン「でかしたぜ博士!」

光彦「おっぱんぽんwwwwwwぴゃーーーいwwwww」ぴょーん

ひゅううううーーーー……

阿笠「!?い、いかん!あーだこーだやってるうちに光彦君がついに落ちたぞい!」

コナン「まかせろ博士!!カプセルは一発のみ……絶対に外せない……!」カチャッ

ひゅうううううーーーーー……

コナン「……光彦ォッ!目を覚ますんだあああああああ!!」グッ

ダンッ!!!

ひゅううううううーーーー……

ズギョッ

光彦「痛ッ!あ、あれ……ここはどこでしょう……?やけに浮遊感がありますが……あ!そうだ!今日は夕飯がハンバーグなのでした!早く食べ」


グチャアッ


コナン&阿笠「!!」


光彦「……」グチャリ…… シーン……

コナン「……み、光彦……そ、そんな……!カプセルは……命中したのに……くそッ!くそぉッ!」ダンッ

阿笠「……あまり自分を責めてはいかん……きっと光彦君は記憶を取り戻し、幸せな気分で逝けたはずじゃ……せめて人間らしく死ねたはずじゃ……誰も悪くない……すべては運命が決めたことなのじゃ……」

コナン「くそッ……くそォッ……!くそォォォォォォ!!」


光彦は転落死した……光彦はもうこの世のどこにもいない……
だが俺たちは彼のことを決して忘れない……
喜びも悲しみも、俺たちはこの胸に刻みつけて明日を生きていくんだ……

おわり

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