ライナ「はあ!?ちょっと待ってくれ!」 (20)

ライナ「おっちゃん、それ本当に何かの間違いじゃねえの?」

「俺も間違いだと思ったんだけどな?間違いのような本当の話なんだよ」

ライナ「冗談だろ!?金に困って色々やったことはあったけど、帳簿上の借金はないはずだぜ?」

「ああ、お嬢ちゃんの話にあった貴族襲撃とかだっけ?」

ライナ「そうそれだ!?俺たち基本現地調達してるじゃん?だから借金なんて…」

「正確には、あんたが保証人になってる借金だな」

ライナ「保証人!?」

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「そうそう、お兄さんが保証人になってる借金の額がこの通り、えらいことになっててね」

ライナ「だから多すぎだろ!?俺ら馬鹿上司からもこんなにもらったことねえぞ!?」

「でも俺もこれ返してもらえないと倒産しちまうんだ…」

ライナ「気をしっかり持ってくれよ。ていうか、ウィニット団子店は多分エリス家が倒産させねえだろ」

「あ、ちなみに借金してたのはそのエリス家のフェリスちゃんだ」

ライナ「あいつかよ!本当に団子ローン組んでたのかよ!?」

ライナ「借金した当人は何て?」

「『あの色情狂は普段ろくなことをしないからな!たっぷり搾り取って婦女暴行できないくらいに忙殺してくれ!』」

ライナ「あいつ絶対いつか[ピーーー]!」

「『だが、私は世界が崩壊するほどの美女だから、奴に無駄な負担を掛けたりはしないがな!』ってさ」

ライナ「はあ…そういうことか、せっかく神どもの干渉がないってのに」

「なんだい?神とか干渉とかって」

ライナ「こっちの話。しっかしどう返したもんかね、この借金」

「それについて、シオン陛下から命令を受けてきました!」

ライナ「何で忌破りが国内で動いてんの?」

「さあ今日こそ捕まえるわよライナ!」

「ミルク隊長、先に陛下の言伝を」

ミルク「そうだった!?」

ライナ「で、シオンアホターレは何て?」

ミルク「『フェリスの団子好きでお困りの…』」

「手紙に書かれているので、自分で確認してください」

ミルク「ルーク!」

ライナ「こんなもん破り捨てて昼寝したいんだけど、そうも行かないんだろうな、と」

ライナ「ふざけんな!?」

ミルク「ライナ!?」

ライナ「あいつの仕事20日丸々徹夜で手伝えるわけないだろ!?」

ルーク「スフェルイエットの悪魔王が、えらく人間臭い弱音を吐くんですね」

ライナ「徹夜は10日以上から徹夜とか言ってるんだぜあいつ!?頭おかしいだろ!?」

ライナ「昨日も徹夜でこれからまた徹夜徹夜って、死ぬだろ!?やべ、本当に意識が…」

ミルク「ライナ!」

ルーク「リュートルー公爵の魔法を解くのは、『すべての式を解くもの』でも骨が折れるようですね」

ライナ「お前、何で知って…あ、これマジでだめだ…」

ミルク「ライナ!!しっかり…!」

「ライナに触るな。汚らわしい人間どもめ」

ライナ「ああ…」

「あ、起きた?」

ライナ「何でキファがいるの?ていうか、ここどこ?」

キファ「ローランドの執務室だよ」

ライナ「うええ!?また徹夜で仕事させられるじゃねえか!」

キファ「あはは、あたしも手伝うから頑張ろうよ」

ライナ「ありがとな、ていうか俺を呼びつけたあいつは、仕事馬鹿はどこ行ったんだよ?」

キファ「エリス家だって、ミラーさんに呼びつけられたらしいよ」

ライナ「エリス家?」

ライナ「しかも呼びつけたのがミラー?そういうことか」

キファ「狂った勇者(アスルード・ローランド)の死体について、説明を求められたってこと?」

ライナ「そうそうあいつの中にいる奴の、って何でキファが知ってるんだ?」

キファ「レームの時に皆で話したじゃん。『悪魔』とか『勇者』とか、この世界の外側の話」

ライナ「そうじゃなくて、『勇者』の死体がエリス家にあるって話。俺も最近知ったんだけど」

キファ「いつ?」

ライナ「レームの隣にシオンを呼びつけた時に、あいつから」

キファ「…良かった」

ライナ「何が?」

キファ「ライナとシオンが昔みたいな仲に戻って」

ライナ「ああ、『悪魔』と『勇者』で色々あったし、戦争もしてたしな」

キファ「だから、今はその仲直りした友達を大事にしてね」

ライナ「何だよそれ、お前何かあったのか?」

キファ「あたしは気にしなくていいから、今はそっちで頑張って」

ライナ「だから…!」

キファ「だって、こうしてられる時間はもう残り少ないから」

ライナ「聞けよ!」

キファ「もう一年もないからね、神様の世界からの干渉がない時間は」

ライナ「キファ!」

キファ「じゃ、元気でね、ライナ」


ライナ「待てよ、一緒にシオンの仕事やるんだろ!?」

「うなされているのかい?ライナ」

ライナ「やめてくれよ、俺、超寂しがり屋だって言ったろ!?」

「僕がついてるから、そう寂しがることはないよ」

ライナ「お前がいなくなっても俺は泣くんだよ!だから勝手に消えるな!」

「あの団子の女のことかな?一応あの人間にも借りがあるから、不本意だけど見殺しにはしない、心配しなくていいよ」

ライナ「なあ…!」

「…起きろ!ライナ!!」

ライナ「キファ!て、ティーア!?」

ティーア「おはよう、ライナ」

ティーア「ひどくうなされていたようだけど、大丈夫かい?」

ライナ「何だ、さっきのは全部夢か」

ティーア「君には僕が、僕たち神の眼保持者がついているから、寂しがることはないよ」

ライナ「ええ、俺そんなことまで寝言で言ってたの!?」

ティーア「気になるなら、寝言の内容、全部話そうか?」

ライナ「やっぱいい!何か知りたくねえ!」

ティーア「そう?じゃあやめておくよ」

ライナ「そういや、ここローランドだよな?何でティーアがいるんだ?」

ティーア「君を迎えに来たからだよ」

ライナ「俺を?」

ティーア「ああ」

ライナ「俺を迎えに来たって、どういうことだよ」

ティーア「神の眼保持者の代表として、スフェルイエット民国第4の王として、ライナ、君を迎えに来たんだ」

ライナ「おい、俺まだこっちに来てそんな経ってないぞ。ていうか、キファは?あいつ今どうしてる?」

ティーア「そのことにも関連してる。とにかく、事情が変わったから、一度帰らなきゃいけないんだ」

ライナ「ちょ、ちょっと待てよ、キファに何があったんだよ!?」

ティーア「ことは一刻を争うから、移動しながら話すよ」

ライナ「じゃあフェリスも連れて帰らないと、て、あいつも何かに巻き込まれてたような」

ティーア「下で待ってるから、すぐに準備してきてくれ」

ライナ「待てって!」

ティーア「じゃあ、行こうか」

ライナ「だから、ちゃんと説明しろよ。キファのこと、フェリスのこと、何が起きたのかも」

ティーア「団子の女は知らないけど、何かあったとすれば多分、同じところだろうね」

ライナ「だから、どこだよ?」

ティーア「ガスタークだよ」

ライナ「ガスタークって、同盟の話はどうなったんだよ!?」

ティーア「詐欺師の話だと、断られたらしい」

ライナ「あいつのことだし、敵を欺くには味方から、とかじゃ…」

ティーア「それはないよ。奴らの人質にされた交渉材料がこちらの重要人物だからね」

ライナ「重要人物…おいまさか」

ティーア「そう、キファ。君の友達だよ」

ライナ「くそ!すぐに…!」

ティーア「待ってくれ、ただ行っても僕らは目を抉られるだけだ」

ライナ「でもキファが…!」

ティーア「詐欺師も現地にいるから、そうすぐには殺されないはずだ。とにかく落ち着いて欲しい」

ライナ「分かった…とりあえず話を続けてくれ」

ティーア「二人のことだけど、既に殺されているということはないと思う」

ライナ「未来眼の誰かが見たのか?」

ティーア「そうじゃないよ、詐欺師からの情報だけど、ガスタークはローランドと同盟を結びたがってるらしい」

ライナ「じゃあローランドと関わりの深いフェリスとキファは手出しこそされてても、生かされてはいるって?」

ティーア「そうなるね。同じ人間でも時勢によっては簡単に[ピーーー]。これだから人間は…」

ライナ「お前、それエーネの前でも言えるのか?」

ティーア「やめてくれ、それに関しては僕もまだ気持ちの整理がついてないんだ」

ライナ「お前、あいつになんて言って国を開けたんだよ」

ティーア「…同盟を結びたい国と交渉してくる、と、それもスフェルイエットの公式な王として、とだけ」

ライナ「納得してないだろ、ていうか、公式に来てたのか!?」

ティーア「当然だろう?そうでなければ義手の男を筆頭に攻撃されて、こうして話す余裕がなくなるよ」

ライナ「クラウか…確かにやりそうだな」

ティーア「まあ、そんな情勢だから、一度戻って対策を…」

ライナ「なあ、ヴォイスは信頼してキファに託したんだよな?」

ティーア「さあ、人質を兼ねた病人の体で、ほぼ単独で送り出したらしいけど」

ライナ「なら信頼されてるんだな、あいつが重要な交渉を適当にするとは思えないし」

ティーア「そうかな」

ライナ「そうさ、だから俺はこのまま親父の魔法の解き方を調べる」

ティーア「それは、二人を見捨てる、ということかな?」

ライナ「信頼してるから任せるんだよ、まあ、フェリスの方はお前に探してもらえると嬉しいんだけど」

ティーア「彼女には僕も恩があるから引き受けるけど」

ライナ「ああ、任せた。神共の干渉が再開するまでもう一年ないからな」

ティーア「ローランドからスフェルイエットまでの所要時間を考えると、確かに往復する余裕はないね」

ライナ「だな、ああ昼寝王国の完成は遠いな…」

ティーア「昼寝王国?何だい、それは」

ライナ「俺が昔書いた論文に、ちょっとな」

人が死ぬのは嫌いだ。
[ピーーー]のも嫌い。
泣かれるのだって、泣くのだっていやだ。

人生を選べないというのはどういう気持ちだろう?
家族が死ぬのは?
好きな人が死ぬのはどうだろう?
誰もそんなこと望まないはずなのに、なぜか世界は、そんな無意味な悲しみばかりを、笑いながら欲しがる。

何かを無理矢理にかなえたいと思ったことはなかった。けど、変えなきゃ悲しいし、もうなにも失いたくないから……
めんどうくさい話だが……
そろそろ前へ進もうかと思う。いままでずっと、目をそらしてきたけど、必要なら、自分の過去だって見つめてみよう。

そして、
もう誰もが、なにも失わない世界を手に入れるために。
あの子も、キファも泣かないし、タイルやトニー、ファルは死なないし、シオンは思いつめなくてもいいような世界。
みんなが笑って、昼寝だけしてればいいような世界へ。

         ライナ・リュート

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