オンギャーオンギャー
魔王「やかましいと言っておるのだ、静かにしろ」
赤子「ア゙ア゙ア゙アア゙ア゙ア゙ア゙」
魔王「ぇえい!禁断の魔法を使うぞ!今すぐ静かにしないと使っちゃうぞ!」
赤子「フンギャア゙ア゙ア゙アア゙ア゙ア゙アア゙ア゙」
魔王「人間如きに舐められるとはな、禁断魔法!」
大臣「おやめ下さい魔王様、私が死んでしまいます」
魔王「大臣!魔族の王である私が人間に、あの人間に舐められているのだぞ!」
大臣「この者はまだ赤子、言葉は通じません」
大臣「ましてや脅しなんて通用いたしません、人間には人間なりの接し方があるようです」
魔王「ほう、そういうものなのか・・・・・・」
大臣「宜しいですか、まずは・・・」
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オンギャアアアアアアアアアアアアアア
魔王「いないいない・・・・」
赤子「・・・?」
魔王「ばぁ」ゴゴゴゴ
赤子「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
魔王「もっと泣きだしたぞ、本当にこれで合ってるのか」
大臣「おかしいですね、書物にはそう書いてあるのですが」
大臣「もう一度やられてみてはいかがですか」
魔王「やっていられんな、人間の相手なぞ下らんだけだ」
大臣「では私がやってみましょう、いないいない・・・・」
赤子「・・・?」
大臣(第二形態)「ばぁ」シャキーン
赤子「・・・・」ビクビク
魔王「ほほう、これはこれは」
大臣(第二形態)「俺様の変身を見て泣きやむという事は、真の姿を隠している事に不満があったのか」
魔王「人間が我々魔族と今日まで戦い続けてこれたのは、本能レベルでの直感のおかげもあるようだ」
女の子「んしょ、んしょ」ペタッペタッ
魔王「立ったぞ大臣!見ろ!立ったぞ!」
大臣「ええ、見てますよ」
魔王「なんだ冷めてるな、私が間抜けみたいではないか」
女の子「ょいしょ、いしょ」ヨチヨチ
魔王「見ろぉ!歩いたぞ!大臣!大臣!」
大臣(あなたが熱すぎるんですよ)
魔王「貴様ならできると分かっていた、メリッサよ!」
大臣「・・・メリッサ?」
魔王「こいつの名前だ、メスにしては勿体ない名かもしれんがな」
大臣「昨日、徹夜していたのはその為ですか」
魔王「こいつは将来魔王になるのだ、徹夜ぐらいなら惜しまんぞ」
大臣「魔王様・・・・」
大臣「人間ですよ、この子は」
大臣「我々魔族と殺し合いをしている、人間なのですよ!」
少女「あんね〜・・・・こっち!」
魔王「ふっはっはっは、はずれだ」
少女「えー」
大臣「転移魔法を使ってましたよ」
魔王「ぎくっ」
少女「あー!おじしゃん、ずるだー」
魔王「・・・大臣、ズルダーとはなんだ」コソコソ
大臣「ずる、とは卑怯者の意です」
魔王「卑怯だと?れっきとした魔法ではないか!」
大臣「・・・・・」
大臣「では、このやくそうを運んでいただけますか」
少女「うん!」
少女「おじちゃん、やくそう持ってき」ツルッ
魔王「あ」
ドテーン
少女「ぁ・・・ぁぁああああ」ウルウル
魔王「泣くな、泣くな!」
少女「ひっ・・・」ビクッ
魔王「そんな弱い奴に育てた覚えはないぞ、強く生きろ」
少女「わ〜い」タタタ
大臣「ああ!あまり遠くへ行ってはいけませんよ!」
魔王「ふっふっふ、元気なのは良い事だ」
大臣「我々の環境下でも、適応するのですね」
魔王「初めは魔力が感じられなかったというのに、今となっては少なからず魔法を扱えるようになった」
魔王「人間には驚かされてばかりだ、この戦い・・・・」
大臣「魔王様」
魔王「分かっておる」
少女「はい!」
パサッ
大臣「おや?花の冠・・・ふふ、王になった気分です」
少女「おじちゃんのもあるんだけど・・・・・」
大臣「喜ばれますよ、渡してきなさい」
少女「う、うん」
少女「おじちゃん」
魔王「・・・貴様か、なんだ」
少女「これ・・・・」
魔王「これは?」
少女「おはなのかんむりをつくったの」
魔王「冠か、私には不要だ」
魔王「大臣、大臣」
大臣「どうかしましたか、こんな時に」
魔王「・・・ハナ」
大臣「はい?」
魔王「ハナという名前を、考えてきた」
大臣「ハナ、ですか」
魔王「何か言いたい事があるなら甘んじて受けよう」
大臣「かつて人間のメスの名前でなかったわけではありません」
大臣「ですがメリッサではなくて良いのですか」
魔王「構わん、人間は人間らしいのが一番だと気付いた」
大臣「・・・・・・」
魔王「どうしたのだ、大臣よ」
大臣「魔王様」
大臣「魔王様は・・・・我々魔族の為に粉骨砕身してくださりました」
大臣「だからこそ、魔王様に仕えて来ました」
大臣「ですが、我々にとってもっとも大事なのは魔王様自身でございます」
大臣「あの子を連れて隠居なさられようと、あなたの幸せは我々の幸せだという事を分かってほしいのです」
大臣「おはようございます、今日はあなたの名」
大臣「まったく、あの子はすぐいなくなる」
大臣「魔王様、魔王・・・・」
大臣「・・・・・」
大臣「良いのです、あなたの幸せこそ私の幸せ」
大臣「どうかご無事で」
少女「あ、おはよー」
魔王「どうだ大臣、ハナが被せてくれたお花の冠だぞ」
大臣「よくお似合いかと・・・・」
ハナ「見て見て、ほら」ボォッ
ゴブリン「ひゃっひゃっひゃっ」
ドラゴン「ガァァァァァァァァ」ブォッ
ハナ「へへ、同じだね」
ゴブリン「ァブェヂュヂュヂュギュー」
ハナ「これは魔法だよ、ゴブリン族には魔力がないからできないけど」
ゴブリン「ァギャアギャ・・・・」
ハナ「そんなしょんぼりしないで、身軽さなら魔物一のゴブリンでしょ!」
ゴブリン「アギャアギャアギャアギャアギャ」タタッタッタッ
ハナ「あ、待ってよ〜」
魔王「ゴブリンやドラゴンには、人語を聞き取れたり話せるような知能はないというのに」
大臣「不思議な子ですが、良い事だと思いますよ」
魔王「・・・・そうあってほしいものだ」
大臣「人間がすぐそこまで進軍しています」
魔王「やはりこうなるか、歴史は繰り返すのだな」
魔王「ハナだけは助けてやりたいのだが」
大臣「さすがに人間も同族を殺したりははないはずです」
魔王「だが我々の手で育て」
ハナ「おはよー」
大臣「おや、よく眠れましたか」
ハナ「まあね、何してたの〜」
魔王「貴様には関係のない事だ」
ハナ「・・・ねぇ」
ハナ「おじさんは僕の事が嫌いなの?」
魔王「何?」
ハナ「僕が人間だから、嫌いなの?」
大臣「ハナ、よしなさい」
魔王「ふん、私がどう思おうが勝手だろう」
ハナ「人間も魔族も、そう大した違いなんてないのに!」
魔王「貴様!」
バシィン
ハナ「ぃっ!?」
ハナ「あ・・・」
魔王「だ、大臣・・・・?」
大臣「人間も魔族も、本当は・・・・・」
大臣「違いがないのかもしれません」
魔王「・・・・・」
魔王「大臣を殴ってしまった」
魔王「私は何をやっているんだ・・・・」
魔王「ハナ、起きているか」
ハナ「・・・どうしたの」
魔王「話がしたくてな、いいか?」
ハナ「いいよ、ベッドに入って」
魔王「ああ、一緒に寝てほしいのか?」
ハナ「大臣が言ってた、仲良くなる方法」
魔王「・・・・すまなかった」
ハナ「ううん、僕の方こそごめんなさい」
魔王「気にするな、私にも非がある」
ハナ「あのね、また怒られちゃうかもしれないけど」
ハナ「人間と魔族でも、仲直りできるんだよ」
魔王「ハナ・・・・・」
ハナ「僕と仲直りできたんだから、大臣ともできるよ」
魔王「ああ、そうだな・・・ありがとう」
なんだこりゃって何が?
勇者「ついにここまで来たか、魔王はすぐそこにいるんだ」
国王「200の兵と共に、魔王を討とう」
勇者「はい、俺が先陣を切ります」
国王「頼んだぞ、勇者よ・・・・・」
ハナ「・・・・それで僕がさー」
大臣「ハナ」ガタッ
ハナ「な、なに?」
大臣「魔王様の所へお行きなさい」
ハナ「まだ食べ終わって」
大臣「早く!」
ハナ「!」
タッタッタッ
大臣「魔王様、万歳」
バタン
勇者「魔王覚悟!突撃!」
「うおおおおおおおおおおおおおお」
「キシャァァァァァァァァァァァァァ」
ハナ「おじさん!」
ハナ「それに・・・みんな?」
魔王「ハナ、隠れていなさい」
ハナ「みんなどうしたの、大臣も様子がおかしかったし」
魔王「ハナ、ハナ」
ハナ「分かってるよ、人間が攻めてきたんでしょ!」
ハナ「でも仲直りできるって!話しあって手をとりあって!」
魔王「ハナ!」
ギュッ
ハナ「おじさん・・・・」
魔王「魔族も人間も、背負う魂の数が多すぎた」
魔王「ゴブリン、ハナを頼む」
ゴブリン「アギュギュ」
ハナ「ああ!おじさん!おじさん!」
魔王「ハナ、ありがとう」
魔王「私の心に咲いてくれて、私を咲かせてくれて」
勇者「殺してやる…あの魔族のように…」
ハナ「魔王のことかあああああああああ!」ヴィイイイイッン
勇者「お前が魔王か、一人では不安のようだな」
魔王「ここにいる者達は戦わん」
勇者「一騎討ちでもしようってのか」
魔王「私の命と引き換えに、この者たちを助けてほしい」
勇者「なに?」
魔王「頼む、この通りだ」
国王「な!?魔王が土下座だと!?」
勇者「・・・魔王以外の命は助けてほしいと」
国王「・・・・・・」
国王「そちらも辛いのだな、他の者の命だけは保証しよう」
勇者「それじゃ・・・魔王、覚悟はいいな」
魔王「魔物が一体いたはずだ、そこまで連れて行ってくれ」
勇者「俺が倒したやつか、いいだろう」
ゴブリン「ギャギャギャギャギャ」
ハナ「僕は行かなくちゃいけないんだ、血は繋がってないし種族も違うけど」
ハナ「みんな家族なんだ」
魔王「大臣・・・・」
勇者「魔王、首を前へ」
魔王「ああ、いいだろう」
魔王(大臣、色々と世話になった)
勇者「では行くぞ、魔王」
魔王(成仏する前に、仲直りをさせてくれ)
魔王「来い、勇者!」
勇者「ふん!」
ザシュ ゴトッ
勇者「魔王討伐完了、ここは任せたぞ」
兵士「はい、お任せくださ」
「おじさん!?」
勇者「うん?」
ハナ「おじさ・・・大臣まで・・・・・」
勇者「我々の中に女がいたか?」
兵士「いえ、そんなはずは・・・」
勇者「おい、どこから来たのだ」
ハナ「僕は・・・・・僕は!」ゴゴゴゴ
勇者「みんな下がれ!強大な魔力を感じるぞ!」
兵士「ひぃっ!」
「ハナ、仲直りできましたよ」
ハナ「大臣・・・?」
「ハナから教えてもらった方法でな」
ハナ「おじさん・・・・」
「次は、ハナの番です」
「魔族同士でできたのだ、人間同士でもできるはずだ」
「人間も」
「魔族も」
ハナ「違いは・・・・・ない!」
国王「勇者よ、女が走って行かなかったか」
国王「これは・・・女を殺したのか?」
勇者「いえ、自分から横たわっているだけです」
国王「何故そのような事を?」
勇者「分かりません、魔力を感じましたが敵ではないようです」
国王「事情はあとで聞くとしよう、今はこのままにしておくのが良かろう」
勇者「ええ、同感です」
ーーーー時が流れてーーーーー
ゴブリン「アギャギャジュジュ」
男の子「ハナ姉ちゃん、これはなんて言ってるの?」
ハナ「お腹がすいた、って言ってるのよ」
男の子「へー、僕もすいた」
ハナ「また明日いらっしゃい、次はドラゴンと話そうね」
男の子「ばいばーい」
ハナ「ばいばい」
(あれから人間と魔族が共存して、僕はかけ橋になっています)
(色んな人から酷い事を言われたりもするし、泣きたくなる時もあるけど)
(おじさんの娘だから、泣かないもん!)
(強く生きろって意味が、分かりました)
(今、私は咲いています)
終わり
用事がギリギリ間に合わないので急いで書きました
不満とか色々言われても泣いちゃいます、人間に育てられたので
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