男「あと5分で俺も魔法使いか…」(488)

男「ふっざけんなよ!何が魔法使いだよ!」

そう憤慨しながらダイエットコーラをグビリと飲み下す

男「世の中に問題があるんだよ!…そもそも政治が…」

ブツブツと文句を言いながら予め買っておいたピザをテーブルに広げる
それと一緒に買っておいたホールケーキも並べ、ロウソクを立てる

男「30歳…か」

3本の大きめのロウソクを立て、それに火を灯す

時間は23時55分
男はあと5分で30歳になろうとしていた

男「何が魔法使いだ…バカにしやがって…」

それはインターネット上でまことしやかに囁かれている都市伝説
「男性が性行為を行わないまま、つまり童貞のまま30歳を迎えると魔法使いになれる」
その都市伝説は男にとって笑い飛ばせる物では無かった

男「そもそも一生童貞の何が悪いんだよ!人間なんてこれ以上増えるべきじゃないわけで…」

イライラした様子で部屋の電気を消すと
ロウソクに照らされ、テーブルの周りだけがボンヤリと浮かび上がる

男「ハッピバースデートゥー俺ー!ハッピバースデートゥー俺ー!」
男「ハッピバースデーディア俺ー!ハッピバースデー  トゥー  俺ー!!!」
男「おめでとー!ほらロウソク吹き消して!」
男「一息でだよ!!」
男「おう!!」

一人芝居を挟んでロウソクを吹き消す
一息でロウソクの炎は消え、男の狭い部屋は暗闇に包まれる

男「何やってんだか…」

自嘲ぎみに笑いながら、そのままバタンと仰向けに倒れこむ

男「泣いてない」

誰とも無しにそう呟く

男「いつからだろ…こんな風になっちゃったのは…」
男「友達も彼女もいないままただ学校を卒業して…生きるために惰性で働いて…」
男「そこまでして生きる事に執着したいわけじゃなくて…死ぬのが怖いだけで…」

ツツ…と男の目から流れた物があった

男「泣いてない」

男が再度呟く、恐らく「汗」であった物を腕で拭いながら

ムクリと起き上がり、部屋の明かりをつける

男「さてと…腹いっぱい食べて誕生日を満喫しますかね」

赤くなった目をこすりながらテーブルに視線を戻す

男「…?」

視界の端に見慣れない物が映る
『それ』は部屋の明かりを消す前までは確かに存在していなかったはずだった

男「ぬいぐるみ?」

ベッドの上にチョコンと座る『それ』は
ぬいぐるみの様にも人間の赤ん坊の様にも、はたまた小動物の様にも見えた

男がそれに目を奪われ、固まっていると

???「泣いてる」
男「うおぉ!!」

それは男のほうを向いて言葉を発した

???「え!?」

それが声を発した事に驚いた男を見て
逆にそれが驚いたような声をあげる

男「な……なんなんだよ……お前…」

男「なんなんだよ!!」
???「え…?」

それは自分に向けての言葉と思っていないのかキョロキョロと視線を動かす

男「お…お前だよ!ベッドの!!お前!!!」
???「お…俺ぇ?」

男はその言葉をうけて頷く

???「なんで……見えて…まさか」
男「な…なんなんだよ…」

???「俺が見えてる?」
男「あぁ…いつ入ってきたんだよ…」
???「いや…いつ入ってきたも何も…ずっといたけど…」
男「……ああ?嘘つくなよ!俺の部屋だぞ!賃貸だけど…」

少しの間の後それは口を開く

???「…俺はあれだよ…お前の童貞」

その言葉を男は理解できなかった

男「は?」
???「だから、ど・う・て・い!」

男「は?ど…童貞って?」
童貞「童貞は童貞だよ」
男「あの性行為をしてない男の総称の?」
童貞「そうそう、その童貞」

男は言葉を失う

童貞「まぁいきなりだから混乱するのは分かるけどな」
童貞「一応生まれてから今までずっと一緒にいたんだぞ、お前は見えてなかったけど」
男「な…?は…?何かのドッキリか?」
童貞「俺も正直驚いてるよ、何でいきなり見えるようになったのよ?」
男「冗談じゃなく?」
童貞「冗談じゃなく」

男「うん、寝よう、疲れてんだきっと」
童貞「なんでだろうなぁ…あ!」

童貞が何か閃いたように手を打つ

男「…な…なんだよ?」
童貞「あれじゃね?30になったから!魔法使いになって見えるようになったんじゃね?」
男「馬鹿言うなよ…そんな話聞いたこともない」

男は言ったものの
これほど現実離れした生物を目の当たりにし
他に理由らしい理由も浮かばないのが現実だった

男「確認するぞ?」
童貞「どうぞ」
男「お前は俺の童貞…の化身みたいなもんなんだな?」
童貞「化身?ああ!そうだな!そんな感じだ!」
男「んでお前にも何でこうなったか分からないんだな?」
童貞「そうそう」

コクコクと頷く

男「俺と生まれた時からずっと一緒にいるって…?」
童貞「おぉ、なんなら証拠もあるぞ」
男「なんだよ?」
童貞「初恋は小学校4年の時の同級生の子で、放課後コッソリ上履き舐めてたよな」
男「おぅわぁあああぁあぁああぁ!!!!!」

男「な…なんでその事を!!!」

狼狽を隠せない男に向かって童貞はなおも続ける

童貞「中学2年の時はチン毛を好きな娘の机の中に忍ばせてたな」
男「もういい!!!もうわかったから!!!やめて!!!!」
童貞「一番俺がびっくりしたのは高校1年の夏休みだな」
男「よし!そこまで!!信じた!!お前が俺とずっと一緒にいたのは信じたから!!」

男の反応を見て童貞は嬉しそうに肩を揺らす

男「…はぁ…一気に疲れた……今日はもう寝ようぜ…」
童貞「そだな、でもいいもんだな!こうやって話せるのって!」
男「…………そうだな」

チュンチュンと雀の鳴き声がし、朝の光が差し込む
ほとんど睡眠はとれなかったが、出勤の為に眠気を押し殺す

男「ん…あぁ…やっぱ夢じゃなかったか…」

チョコンと枕元に座る『そいつ』を見てひとりごちる

童貞「あ、やっぱりまだ見える?」
男「見える見える、クッキリだ」

夜中の残りのピザを咥えながらそう答える

男「そういやお前…飯は?これ食うか?」

童貞「別に何も食べないでも平気なんだけど…いいの?」
男「いいよ、冷めてて悪いけど」
童貞「一度食ってみたかったんだー!お前いっつも旨そうに食ってんだもん」

嬉しそうに残り物のピザを口に運ぶ
その姿を見て、男の顔にも笑顔が浮かんだ

男「うまいか?」
童貞「うんめぇ~!!!これ凄いな!!!こんなの食った童貞俺くらいだよ!!!」
男「……そっか」

着替えながらも男の顔から笑みが消える事は無かった

男「さて…そろそろ出勤だけど…留守番できんのか?」
童貞「ムグムグ…いや…モグ俺も行くよ一緒にモグリ」
男「いや…でも…」
童貞「誰にも見えないから平気だって、そもそも30年間ずっとそうしてきたし」
男「そうなの!?」
童貞「そうなの、つーか頑張っても5mくらいしか離れられねーの」
男「そうなの!?」
童貞「そうなの、だからさっさとセックスして俺を解放してくれな」
男「うぐぐ…」
童貞「なははは!冗談冗談!せっかくこうして話せるようになったんだし!仲良く行こうや!」

男がいつも会社に向かう前の陰鬱とした気分でない事に気付いたのはその時だった

男「おぉ…こりゃ本当に認めなきゃならんかもなぁ…」
童貞「どうした?」

家を出て男は感嘆の声を上げる

男「お前みたいなのがそこらじゅうにいる」
童貞「あー、俺以外の童貞も見えるようになってんのかー」

家の外には隣にいる童貞によく似た、けれどもどこか違う生物が溢れていた

男「あれがみんな童貞か」
童貞「そうだな、あれらがそばにいる奴は童貞か処女ってわけだ」
男「結構いるな!!お!あの娘は可愛いのに処女だぞ!!!」
童貞「まぁお前くらいの歳の奴のそばにはいないけどな」
男「……言ってくれるな」

男「これ俺にも見えない童貞とかもいんのかな?」
童貞「いやいないと思うけど?」
男「でも…あの女の子なんてどう見ても中学生くらいなんだけど…」
童貞「最近の中学生はすすんでるからねぇ…」
男「ちゅ…中学生で…」
童貞「おい!落ち込むなよ!」
男「落ち込むわい!!」

仕事に向かう足が重くなるのを感じながらも
いつも通りの電車に乗り、いつもの会社に向かう

童貞「なんかいいな!楽しいな!」
男「……そうかぁ?」

上司「おせーんだよ!!」

出社一番、待っていたのは上司、それも年下の上司の叱責であった

男「いや…でも遅刻はしてませんが…」
上司「何年やってんだよ!遅刻しなきゃいいってもんじゃねえだろ!」
男「すいません…何か…緊急の用事でもありましたか?」
上司「そういう事じゃなくてだな!年上が先に出勤してねぇと示しつかねえだろが!」
男「…すいません」
上司「アンタ自分より年下にこんな事言われて恥ずかしくないの?」
男「…………」

その理不尽な叱責はしばらく続き
男にはいつも通りの陰鬱な気持が蘇っていた

男「営業…行ってきます…」
上司「………」

周りの人間からもクスクスと嘲笑される中
男はいつも通り、営業回りに向かう

男「情けないとこ見せちゃったな」

会社を出て自嘲ぎみに童貞に向かって呟く

童貞「いつも見てたよ、心配すんな」
男「……そっか…そうだよな」
童貞「お前が悪いようには見えないんだけどなぁ…仕事もちゃんとしてるし」
男「疎ましいんだろ…きっと」

童貞「あ、帰ったら俺がパンチしてやるよ!」
男「そりゃいいな…」
童貞「ほれほれ、いつもの事なんだから元気出せって!営業行こうぜ!」
男「あぁ…」
童貞「見返してやりゃいいんだよ!んで出世しまくって美人秘書雇うの!」
男「美人秘書はいいな」
童貞「だろー!『今日の予定はどうなっとるかね?』とか言ってさ」
男「『今日は一日中私とホテルでしっぽりの予定です』なんつってな!」
童貞「なはははは!いいねいいね!!」

男に笑顔が戻る、それは昨日までの人生では考え難いほどにアッサリと

童貞「そう!その顔!暗い顔してたんじゃ取れる契約も取れないからな!」

受付嬢「こんにちは、本日はどういったご用件でしょうか?」
男「あ、あの、営業の男と申します!アポイントは取っているんですが」
受付嬢「はい、窺っております、少々お待ちください」
男「は、はい」

予定にあった会社を訪問し、受付で要件を告げる
目の前の受付嬢の横には童貞とよく似た生物が座っていた

童貞「お!目の前の娘は処女みたいだな」
男「シー!」
受付嬢「?」
童貞「お前以外には聞こえてないって、心配すんなよ」

「検討はしてみるが今回は見送らせてくれ」
相手からそう告げられ、男はいつものように訪問先を後にする

童貞「残念だったな」
男「まぁこんなもんだよ、いつもの事さ」
童貞「確かにいつもの事だ」

エレベーターの中で二人は一息つく

男「そういやひとつ気になったんだけど」
童貞「何?」
男「お前はそのへんにいる童貞とか処女の化身とは会話しないのか?」
童貞「いや、普通に会話くらいするぞ」

男「そうなの?」
童貞「ただほら、俺達は主人っつーか本体から離れられないからな」
男「あ、そうか」
童貞「だから基本的に皆が本体に合わせてるからタイミングがね」
男「なるほどなぁ…」

うーん…と男は頭を捻る

童貞「どうした?」
男「もし話したい奴とかいたら言ってくれよ?俺できるだけそいつの近くにいるようにするから」
童貞「は?い…いいよ!なんでお前が俺に合わすのよ!?」
男「え?だって不公平だろ」
童貞「いや…でもさ!」

そこでチーンという音とともにエレベーターが1階に到着した

あぶねぇ…寝かけてた

受付嬢「今日はどうでした?」
男「うぇっ!?」

いつものように去ろうとした男に
いつもとは違う声がかかる

受付嬢「契約、取れました?」

受付嬢はニコっと人懐っこい笑顔を浮かべ
男にとって少々残酷な質問を投げかける

男「あ、いや、あの、ちょっと…駄目だったみたいで…あの」
受付嬢「そうでしたか…すいません余計な事」
男「あ!いや!そんな!!謝るような事じゃ!!」
受付嬢「でも…頑張ってくださいね」

そう言ってまたニコリと優しく微笑む

童貞「ありゃ惚れてるな」
男「は?」

近くの公園で缶コーヒーのプルトップを開けたところで
童貞が男に話しかける

童貞「さっきの受付の娘だよ!ありゃお前にホの字だな!」
男「馬鹿言ってんなよ、そんなわけないだろ」

童貞の発言を笑い飛ばしてコーヒーを一口飲み下す

男「何度もあそこで断られてるからな」
男「顔くらいは覚えてるだろうけど…ただの気まぐれだろ」
童貞「いやいや…あの笑顔は惚れてるよ!」

男「童貞の妄想乙」
童貞「童貞はお前だろうが!」
男「お前なんか童貞そのものじゃねーか!」
童貞「うるせぇー!!」

ひとしきり悪口の応酬を繰り返した所で
周りの人間の危険人物を見るような視線に気付く

男「あ、えへへ…その…へへへ」
童貞「ダッサ!!!ダッサ!!!!」
男「くそっ!次だ!!次の会社行くぞ!」
童貞「おうよ!その意気だ!!次は契約取るぞ!!」

グイッと残りのコーヒーを飲みほし、男は歩き出した

上司「で?今日もまた駄目だった?」
男「いえ…今日は1件ですが…新規の契約を取れまして…」
上司「は?」

年下の上司が見たこともないような表情を浮かべる
その横で童貞が上司に向かって当たらないパンチを何度も繰り出していた

上司「…1件くらい当たり前なんだがな…下がっていい」
男「はい、失礼します」
童貞「ダッサ!ダッサ!!おら!!かかってこいや!!」

終業と共に男が口を開く

男「家で祝杯だ!!」

すまぬ…眠らせてくれ…

支援本当にありがたいです
もしスレ落ちても立て直してでも完結はさせるようにするから
申し訳ない

ちょっといい話じゃねーか・・・
>>1よ眠れ

>>1が立てるっていってるしな
俺内容だけまとめておいたから立ったら貼るよ
ただいつになるかわからんのが辛い

まぁ残ってたほうがいいことは確かだけど
俺はもう寝るです

常に一緒にいる童貞って概念に人格を与えるのは初めて見たな
しかも童貞って多くのVIPERが持ってるから、共感しやすいし

落ちるのかな

うわぁ!まさか保守があるとは思わなんだ!
本当にありがとう!申し訳ない!!

今は少ししか投下できないけど投下させてもらうよ!!
夜にもまた来るよ!!

その日の夜
男の家でささやかな、本当にささやかな祝杯があげられる

童貞「見た?あの顔!これから見返してやろうぜ!!」
男「今日は運がよかっただけな気もするけどな…」
童貞「何弱気な事言ってんの!これからこれから!」
男「まぁ乾杯だ、これからよろしくな」

カツンとジュースの缶で乾杯を交わす

童貞「この調子で順風満帆に俺も解放してくるといいんだけどな」
男「まぁそれはおいおいな…」
童貞「期待してるよ、なはは」

それからの1週間はあっという間だった
少ないながらも契約は成立し
会社でも後ろ指を指される事が、わずかではあるが減った
自覚こそないが、以前のように下を向いてばかりではなくなった

受付嬢「今日は…どうでした?」
男「おかげさまで…何とか1件契約を結んでいただける事になりまして」
受付嬢「本当ですか!おめでとうございます!!」
男「あ…ありがとうございます」
受付嬢「何か雰囲気変わりましたよね」
男「そ、そうですか?」
受付嬢「ええ、こういっては失礼ですが…暗さが無くなったと言いますか…すいません」
男「いやいや!謝らないでください!」

童貞「ありゃ惚れとるな」
男「社交辞令だろ」
童貞「いやありゃ惚れとる、間違い無い」
男「わかったわかった」

いつからか日常になりつつある
童貞との軽口を交わし、家路につく

男「あれ?」

その道中で男は見慣れない光景を目にする

男「あいつなんで一人なんだ?」
童貞「え?」

そこには童貞と似た生物がフラフラと一人で歩いていた

童貞「おーい!そこの奴ー!」
???「え?」
童貞「お前も童貞?処女?主人つーか本体は?」

矢継ぎ早に質問を投げかけると
それは自分は処女の化身だったと答えた

処女「1週間くらい前に主人が性交に及んでね」
童貞「それで解放されたってワケか」
男「どこか行くあてはあるのかい?」
処女「!?」

童貞「ああ、話すと長いけどこいつ見えてるんだよ」
処女「そ…そうなんだ…」
男「よかったら家に来るか?今から調度飯にするし」
処女「………いいのかい?」
童貞「気にすんなよ!狭いけどな!!」
男「ほっといてくれ」
処女「ふふふ」

三人で男の家に向かいながら
道すがら男が童貞を見えるようになった経緯を簡単にではあるが説明する

処女「そうか、君の主人はそういう魔法だったんだね」
童貞「君の主人は?」

処女「うん…私の主人も…魔法が使えるようになったんだ…30歳になった時にね」

家に着いて鍋を囲みながら処女はそう切り出した

男「じゃあ…30まで童貞だと魔法使いになれるってのは…」
処女「そう…都市伝説でもなんでもないよ」
童貞「で?お前の主人の魔法は何だったんだよ?俺達は見えてなかったんだろ?皆違うのか?」
処女「うん…主人の私達が見えるようになる魔法じゃなかった…」

一拍置いて続ける

処女「自分に好意を持ってくれてる人間が分かる魔法」
俺「それは羨ましいような…ショックなような…」

童貞「その魔法でアッサリ処女卒業ってわけか」
処女「そういう事」
男「でも30以上の童貞、処女なんてもっと沢山いるだろうに…」
童貞「そうだな、そのわりには魔法使いの情報なんてこれっぽっちもないな」
処女「それにもちゃんと理由があるみたい」
男「どんな?」

沸騰した鍋の火を弱めながら男が尋ねる

処女「私は解放されてからの1週間色々な所にいって色々な話を聞いたんだ」
処女「30歳以上の主人についてる童貞や処女ともいっぱい話した」
処女「それで私が私なりに出した結論がこう」

ちょいとまたここで落ちます
夜には来ると思う!申し訳ない!

保守本当にありがたい
落ちても立て直すから無理せんでくれ

          \ギニュー特戦隊/

 (^o^)─              (^o^)|  ヘ(^o^)ヘ
< |    (^o^)  (^o^)   ∟\       |∧  
 / へ  へ§へ / 丿へ\  Γ \    /

        ____
      /      \
     / ヽ、   _ノ \
   /   (●)  (●)   \    いつまで待たせるんだ
   |      (__人__)     |    
   \     ` ⌒´     /ヽ
    /              \

    (  ヽγ⌒)        ヘ   \
 ̄ ̄ ̄\__/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

    ( 嫌 生 人 こ
     ) で .き .を れ
    ( す て .疑 以

     ) ! い .い 上
    (    く  .な
     )   .の .が
    (   .は .ら

     ~、_       _
    /\__`,~~~´
   /        :::\
  .|   _ノ' 'ヽ、_   .::|
  | ノ●ゝ, 、ノ●ゝ、.:::|

  .| o゚ ,ノ(、_, )、。゚   .:::|
   \  ,rニ=、   .:::/
   /`ー`⌒´-一'´\


新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

     /::/ /    /     ‐-、    \       >>1さん・・・まだかな・・・
     /::'-イ     /  //  l:   ヽ ヽ     ,ゝニ二ヽ              rrrrr、
     77/  .: .:/   l//  |::    ヽ :',   /,イ:ト、-'::イ             /´  /
    ///  .:: ::://  .:l |   |:::.   ::! ::::! イ://::!:::`´ l          /   /
    /〈:! / ::| ::/lハ  ::| |   |:::|:. :. :::::::::l...|:| |::|ヽ!::: !          /     /
    / .:lハ .::l|-l十ト、:::ト|:.| :lハ::|:::. ::..:::::::l:::!::ヾjイ |::: |          ヽ __ノ´}
.  / .::/∧N Yた卞N| N|:.:/_立ト、:、:::::::!:::l:::/|::::! /::: l          ト--'´|

  / .::://:://| 弋ツ   ヽ'  た卞、ll:::::l::ハ|:::∧/ !::::: !          ,{    !ヽ
. 〃 .::://ノr,=ァ        弋ツノノ!イく_/   l::::: l         / |    ! }
〃 .::://:::|| l´f、   _'     _ ィ、l::::|ノ,. -、  |::::: |       /  /   |-'
!! :/イ::::∧  ``丶  `    / }ノ j!:l::!``ヽ´___!:::: |       /   l    l
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..::/::::::l::/r '´     \,.ゝ-―||<´l:::!::!´ ̄  イ__ !::::::.l!    \ニ_―--'、      !
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'ヽ::::::|l::トゝ'     {    ァ──-ト|::!:::!ニ_´   / |::!:::::!:',       \ ``  `丶l
ニ=ヽ:!:l:!::Y´     ヽ/     |!l::!!:::!    /  l::l:l::::!::゙、          丶、  `
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+ ' . '!     '!        ∧,,∧    みんな大阪人にな~れ!
.  o  '、    .'、    (`・ω・)つ━☆ ・ * 。 ,    ,   。     ゚
. ,     丶.    丶   ⊂  ノ      ・ ゚ +.          ,   。
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 .  .。   `'-、,  `ー---‐'" ,ノ   ゚  ・ ☆  ゚.     ,    ,。

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  。      ,ハ,,,ハ (ヽ_/) ∩w∩ ∧,,∧ γ''""ヽ ヘ⌒ヽフ

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     ‐''"´'''"""''"`''""`"""''''''"´'''"""''"`''""""'''"''''''"`"""''''``'

            ジョウダンヤナイデ   カメヘンガナ
       ナルカッチュウネン    ドナイヤユウネン  セヤナ  エエンチャウ?

         ,ハ,,,ハ  (ヽ_/) ∩w∩ ∧,,∧ γ''""ヽ ヘ⌒ヽフ
         ( ・ω・) (・ω・)( ・ω・)( ・ω・) U ・ω・U ・ω・)
         ( ∪∪ ( ∪∪( ∪∪ ( ∪ ∪ o(,,∪∪ つ と)
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             ビュー   ,.、 ,.、    /   /
    /    /       ∠二二、ヽ    / /
  /    /   /   (( ´・ω・`)) ちょっと田んぼの様子見てくるお

               / ~~ :~~~〈   /
       /    / ノ   : _,,..ゝ   /
    /    /     (,,..,)二i_,∠  /    

/     /     /      /  /  / /
/     /     /     /     /   /

                 ,.、 ,.、  /   /
    /    /      ∠二二、ヽ     /
  /    /   /    (     ) /    /    
                / ~~~~~〈   /  /
       / ̄ ̄ ̄\ ノ    _,,..ゝ   /
    /  ⌒⌒|⌒⌒ ~(,,,)~” O   /    /
 /   ∧,,,∧│  / 
   / (    )| 気を付けてね    /
    /o   つ   /    /       /

            ∧,,∧
           ( ´・ω・)
       ____(____)__

      / \    旦   __\
     .<\※ \____|\____ヽ
        ヽ\ ※ ※ ※| |====B=|
        \`ー──-.|\|___l__◎..|ヽ
          ̄ ̄ ̄ ̄| .| ̄ ̄ ̄ ̄|

               \|        |~

            _∧,,∧
       ___( ( ´・ω・)___ フゥ・・・

      / \    ̄旦 ̄__\
     .<\※ \____|\____ヽ
        ヽ\ ※ ※ ※| |====B=|
        \`ー──-.|\|___l__◎..|ヽ
          ̄ ̄ ̄ ̄| .| ̄ ̄ ̄ ̄|

               \|        |~

         _________
.         /             /
 ..ギャァーー!!!! /             /
  アッチー!!!! /             /
 __      /             /   バタンッ!
(__()、;.o:。 /_________/

    ゚*・/ \ ※     ※__\
     .<\※ \_____※___|\____ ヽ
        ヽ\ ※ ※ ※.| |====B=|
        \`ー──-.|\|___l__◎..|ヽ
          ̄ ̄ ̄ ̄| .| ̄ ̄ ̄ ̄|

               \|        |~

       ∧_∧

       ( ・∀・)       ))
       /つ( ̄`ヽO_ノ⌒ヽ      さてと、そろそろ寝るか
      ノ   )        \ ))
     (__丿\ヽ ::    ノ:::: )

         丿        ,:'  ))
       (( (___,,.;:--''"´``'‐'

                  /^ヾo
             ○= ノ:;☆_;;.ヽ===○
             ∥(⌒(´・ω・`n ∥  .∥ みなさん、おやすみ…
            /(_,,..てっ..,,__ ノ  ̄./i
           _,.(~ ̄        ̄ ̄~ヘ, | !
         (~ ,::::::☆:::::::::☆:::::::::::::::.''  }i |
        ノ ..:☆::::::::::☆:::::::::::☆::::."  丿

保守ありがとうございます!
心から感謝です

速度は遅いかもしれませんが投下していきます

処女「純潔を守ったまま30歳を迎えると魔法使いになる…」
処女「ただし使えるようになる魔法は個人によって違うんだ」
処女「時間を止める事ができる者や人の夢に入れるようになる者と様々」
処女「そして魔法には2種類あるの」
処女「貴方や私の主人のように自分の意思とは関係なく発動する物とそうでないもの」
男「そうでないもの?」

本来なら到底信じられる話ではないが
男が体験したこの一週間、そして
男の目の前の生物の存在はそれだけで十分な説得力があった

処女「自分の意思で『魔法を使うぞ!』と意識しないと発動しない魔法ね」
処女「けれどそれに気付く者は少ない、皆無と言ってもいい程に」
処女「それもまぁ当然だよね、30年もの時間を魔法と無縁の生活を送ってきたんだもの」

>>195
ちょっと横になるだけ、ちょっと目をつぶるだけって奴のAAくれ

>>200
    , -∧,,∧-- 、
   / (-ω-` ) /

   r-くっ⌒cソ、 / ん、起きてるよ?大丈夫起きてるよ。見てる見てる。
  ノ '、 , 、 _, ' / /  ちょっと横になるだけ。ちょっと目を瞑るだけ・・・
.(_,.       ././
,(.,_ `'ー-、_,,..ノ/

  ~`''ー--‐'


処女「魔法を発動させるには強い意志が必要になるんだと思う」
男「強い意志…?」
処女「うん、例えば時間を止める魔法を使えるようになった人がいたとしても」
処女「時間止まらないかなぁ…程度じゃ魔法は発動しない」
処女「『自分が止めるんだ!』という強い意志が必要になる」
処女「30年魔法の存在を否定され続けている人がそんな意思を持てると思う?」
処女「だから発動もしないし、誰も気づかない」

男は無言のままゴクリと唾を飲み込む

童貞「こいつはたまたま『俺達が見える魔法が勝手に発動した』って事なのか」
処女「憶測半分だけどね」
童貞「はぁ~」

処女「それで最後にもう一つ」
童貞「うん、なになに」

童貞は鍋から白菜を取り出し、ポン酢に浸しながら先を促す

処女「童貞、あるいは処女を卒業すると…魔法は使えなくなる」
童貞「あー…それはな、まぁそうだろうな」
男「え!じゃあ…もし俺が童貞卒業したらこいつと話せなくなるのか!?」
処女「そうなる…と思います」
童貞「でもまぁそこはほら、俺自身がいなくなるわけじゃねぇんだし」
男「そうかもしれんが…」
童貞「この処女みたいに縛られずに旅するのも悪くないよきっと」
男「…なんか30年も縛りつけて申し訳ありません」

ガハハと三人は笑い合い、皆で鍋をつつく

処女「こんなに楽しいのは…初めてかもしれない」
男「そりゃよかった」
童貞「ずるいよな、人間はいっつもこんなうまいもん食ってんだから」
処女「本当に」
男「もしよかったらいつまででもいていいからね」
処女「え?」
男「旅に出たいなら止めないけど…いつ来てくれてもいいし」
処女「…ありがとう」

ニコリと微笑むその顔はほんの少しではあるが
どこか寂しげにも見えた

童貞「まぁ無理に引き留めんのも無粋ってもんだよ!な!」
男「そう…だな…せっかく解放されたんだしな」
童貞「よし!飲も飲も!!」

夜も更け
男は幾分が前に眠りに落ちていた

童貞「よぅ」
処女「うん」

男の規則正しい寝息だけが聞こえる室内で
童貞と処女が静かに起き上がる

童貞「一週間だと…そろそろか」
処女「うん…もうすぐかな」
童貞「今日は楽しかったよ、ありがとな」
処女「私こそ!最後にこんなに楽しい一時を過ごせて最高だったよ」
童貞「…うん」
処女「知ってるんだね?解放された私達の結末」
童貞「そりゃな、他の奴らを何度も見てきた」

童貞「解放なんて言えば聞こえはいいけど」
処女「……解放だよ」
処女「私達だけじゃなく主人にとってもね、解放なんだから」
童貞「まぁ30年来の親友だからな、離れるのは寂しいけども…恨みはねぇな」
処女「私も、主人が処女じゃなくなった時のあの表情は忘れられないなぁ」
童貞「さっさとその表情が見てみたいもんだ」

クケケと底意地の悪そうな笑みを浮かべる

処女「あぁ…そろそろだ」
童貞「こいつには『寝てる間に旅に出た』とでも言っておくよ」
処女「お願い…」
童貞「じゃあ…また」
処女「…うん…ありがとう」

そう言い残すと
フワリと淡い光を残して処女は姿を消した

童貞「しょ……解放ね…」

「消滅」と言いかけてとっさに言いなおす

童貞「さーてと、寝ようかなぁ~」

ゴソゴソと男の横に潜り込むと
男の規則正しい寝息が少しばかり乱れた

童貞「あったけぇ~」
童貞「……あったけぇんだなぁ…この童貞野郎」

ある日受付嬢の処女が見えなくなってるんだな

眩しい光が朝の訪れを告げる
起きたばかりの男は開口一番こう切り出した

男「あれ?処女は?」
童貞「あいつなら今朝がた早くに旅に出たぞ」
男「なんでだよー、見送りもしてねぇよ!起こしてくれよ!」
童貞「別れがつらくなるんだと、あるだろ?感傷ってヤツだ」
男「でもさぁ…手土産だって何も渡してないし…」
童貞「あーあ、お前はそんなんだから童貞なんだよ」
男「なに!?」
童貞「分かってない!乙女心がこれっぽっちも理解できてない!」
童貞「まぁあいつが乙女かどうかはこの際置いといて…」
童貞「未練がましい男は嫌われるよ!!!」
男「うぐぐぐぅ!!」

男「そういやさ」
童貞「うん?」
男「あんまりいないよな?解放された童貞達って、昨日の処女見たのが初めてじゃないか?」
童貞「………あー…あれだ」
男「どれだ?」
童貞「なんかな…関西のほうに解放された童貞、処女が集まる所があるらしい」
男「関西に?」
童貞「だからこっちでは見かけないんだろ…多分」
男「…嘘くせぇなそれ」
童貞「まぁ俺が解放されたら実際にあるかどうか見てきてやるよ」
男「おお!それいいな!頼むわ!」

すっかり童貞のいる日常が『いつもの日常』になっていた

>>220

__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐―   ――――    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―

                         , ' ´              ノ     ┌┐ r‐――‐ 、
                         /   u        xzz    )       | |  | r--- 、 l
                         /          ,,,>==´ ̄     ヽ.    | | └┘ ノ ノ
                       /ミ=zx、、   i ゞ、≦xz==x      . i      | |    i"´/
                         /. ,z==、ヾ  ゝ  〃 /⌒ヽ ヾヽ    く     └┘   └┘
                     / イ/ ( ) ミ  ⌒ゝ ヽ-‐ゞ=''─-''′   厶,     ┌┐   ┌┐
                  /  ` ̄ ̄ ̄イ ´r彡 `""ヾ          ヽ   └┘   └┘
                    /    /       ヽ   。          レ、⌒Y⌒ヽ⌒Y⌒ヽ
                      {    {    {      } ι              ,'
                    i     ゝ、_ノ\__ ノ                /
                       ',
                       \      `ー-一                /
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==

―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐―   ――――    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―



何かきっかけがあれば人間は変化する
もちろん、いい意味でも悪い意味でもだが……
男にとって、いい意味で変化をもたらしたのが童貞である事は明白だった

同僚「お前なんか変わったな」
男「そ…そうかな…」
同僚「彼女でもできた?」
男「いや…そういうのは全く…」
同僚「何?童貞?まさかな、はははは」
男「あ、いや、ははは…うん…あはは」
同僚「何?マジで童貞なの?いい店紹介してやろうか?」
男「あ、いや、そういうのは…ちょっと…ほんとに…」
同僚「遠慮すんなって!新規連れてくと俺も割引になんだよ!」
男「は…はぁ…」

男「ああいうのは困るな…」
童貞「いいんじゃねぇの?童貞卒業が風俗でも」
男「そんなノリなら30年も大事に守ってねぇよ…」
童貞「それもそうだわな、なはは」

営業回りの途中で愚痴をこぼす

男「それにお前と話せなくなんのもな…」
童貞「馬鹿言ってんなよ、バカ、ドアホ、変態、ネアンデルタール人」
男「ばっ…言いすぎだろ!!」
童貞「一生童貞で結婚もしねー、子供もいねーで誰にも紹介できねー友達が一人いんのと」
童貞「嫁さん子供と家庭作って穏やかに暮らすのと」
童貞「どっちが幸せかなんて考えねーでも分かるだろうが!」
男「…………わかんねーよ…」

受付嬢「あ、今日はどうされたんですか」
男「あ、はい、あの…この前の契約について質問があるとの事だったので…」
受付嬢「そっか、また契約取れるように頑張ってくださいね」
男「あ、は、はい!ありがとうございます!」

エレベーターの中で童貞がボソリと確信をつく

童貞「お前…惚れたな…?」
男「ふぐうううっ!!!」
童貞「分かりやすい奴だなぁおい」
男「優しくされたら惚れちゃうんだよ!!あんなの反則だろ!!」
童貞「はいはい、反則反則」
男「なんだよ!悪いか!」
童貞「悪くねーよ、さっさと解放してもらいてーんだから」

それから数日がたったある日

童貞「お、今日はまたあの受付嬢のいる所か」
男「ま、まぁな」
童貞「お前が昨日2ちゃんねるで必死になって調べてたのはこの為か」
男「おう!おかげで電話番号の渡し方とか学んだぞ!!」
童貞「まぁ向こうもお前に気があるっぽいからな!楽勝だろ!!」
男「だといいけどなぁ…やばい…吐きそうだ」
童貞「はえーよ」

男は戦地へ、と言っても過言ではない心境で例の会社に向かう
けれど今日はいつもとは違う光景が待っていた

童貞「…あちゃー…」
男「いない…」

受付嬢「あ、いらっしゃいませ!今日もお仕事ですか」

いつも通りの笑顔で彼女はそこにいた

男「いや…まぁ…はい…そうです」
童貞「参ったね…」

ただし、いつもその隣に座っていた小さな生物の姿は
どこにもなかったが

男「それじゃ…仕事がありますんで…」
受付嬢「?…はい、それじゃあまた」

激しい動悸を抑えきれずにエレベータの中で蹲る

┏どうぐ━━━┓
┃ .デヴヲタ. .┃
┃┏━すてる━━━━━━━┓

┃┃  E ポスターサーベル . ┃
┃┃  E そふまっぷのたて.. ...┃
┗┃  E ぶあついしぼう   ...┃
  ┃  E えろげー  ....       ┃
  ┃  18きんのどうじんし .┏━━━━━━━━━━━━┓
  ┃  DVDボックス..     ┃童貞 をすてますか?.      ┃
  ┃→E 童貞.        ┃→  はい               ┃
  ┗━━━━━━━━━ ┃   いいえ           ┃
                 ┗━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃ それをすてるなんて、とんでもない!             ┃
┃                                 ┃
┃                                 ┃
┃                                 ┃
┃                  . .        ▼        ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



童貞「大丈夫か?」
男「だ…大丈夫…ちょっとショックだっただけだから」
童貞「そっか…まさかなぁ…あんな思わせぶりななぁ…」
男「いいんだ、大丈夫…最初から期待なんて…」
童貞「嘘つけよ…」

その後の仕事にはまるで身が入らなかったが
なんとか乗り切り帰路に着く

男「あんだけ可愛いんだし…そりゃ彼氏くらいいるよな」
童貞「まぁなぁ…でも他にも女はいるしさ…」
男「出会うきっかけすらねぇよ…30年なかったのによ…」

自虐的に笑う

ちょっとだけ席をはずします
すぐ戻ります

         し!     _  -── ‐-   、  , -─-、 -‐─_ノ
  小 童    // ̄> ´  ̄    ̄  `ヽ  Y  ,  ´     )   童 え
  学 貞    L_ /                /        ヽ  貞  |
  生 が    / '                '           i  !? マ
  ま 許    /                 /           く    ジ
  で さ    l           ,ィ/!    /    /l/!,l     /厶,
  だ れ   i   ,.lrH‐|'|     /‐!-Lハ_  l    /-!'|/l   /`'メ、_iヽ
  よ る   l  | |_|_|_|/|    / /__!__ |/!トi   i/-- 、 レ!/   / ,-- レ、⌒Y⌒ヽ
  ね の   _ゝ|/'/⌒ヽ ヽト、|/ '/ ̄`ヾ 、ヽト、N'/⌒ヾ      ,イ ̄`ヾ,ノ!
   l は  「  l ′ 「1       /てヽ′| | |  「L!     ' i'ひ}   リ
        ヽ  | ヽ__U,      、ヽ シノ ノ! ! |ヽ_、ソ,      ヾシ _ノ _ノ
-┐    ,√   !            ̄   リ l   !  ̄        ̄   7/
  レ'⌒ヽ/ !    |   〈       _人__人ノ_  i  く            //!
人_,、ノL_,iノ!  /! ヽ   r─‐- 、   「      L_ヽ   r─‐- 、   u  ノ/
      /  / lト、 \ ヽ, -‐┤  ノ  キ    了\  ヽ, -‐┤     //
ハ キ  {  /   ヽ,ト、ヽ/!`hノ  )  モ    |/! 「ヽ, `ー /)   _ ‐'
ハ ャ   ヽ/   r-、‐' // / |-‐ く    |     > / / `'//-‐、    /
ハ ハ    > /\\// / /ヽ_  !   イ    (  / / //  / `ァ-‐ '
ハ ハ   / /!   ヽ    レ'/ ノ        >  ' ∠  -‐  ̄ノヽ   /
       {  i l    !    /  フ       /     -‐ / ̄/〉 〈 \ /!


         し!                             _ノ
  小 童    /                              )   童 え
  学 貞    L_                             ヽ  貞  |
  生 が    /      , - 一 - 、_          , - 一 - 、_  i  !? マ
  ま 許    /      /      .:::ヽ、       /      .:::::く    ジ
  で さ    l       /, -ー- -、 .:::://:ヽ     /, -ー- -、 .:::://ヽ
  だ れ   i        i..::/\::::::::ヽ、::|i::::::|      i..::/\::::::::ヽ、::|i:::::レ ⌒Y⌒ヽ
  よ る   l      /7  .:〉::::::::: /::|::::::|     /7  .:〉::::::::: /::|::::::|
  ね の   _ゝ    / / .:::/   .:::::|:::::::|     / / .:::/   .:::::|:::::::|
   l は  「      i /  .:::::i   :::::::|:::::::|    i /  .:::::i   :::::::|:::::::|
        ヽ    i i;::::ヽ、 ,i   .:::::::|::::::::|     i i;::::ヽ、 ,i   .:::::::|::::::::|
-┐    ,√     i `''''''''´   .::::::::|::::::::|     i `''''''''´   .::::::::|::::::::|
  レ'⌒ヽ/ !      i-=三=- 、 .:::::_人__人ノ_  i-=三=- 、 .:::::::::ゝ、ノ
人_,、ノL_,iノ!      i       .:::::「      L_i       .:::::::::::i:::|
      /     i       .:::::::ノ  モ    了      .:::::::::::::i:::|
ハ キ  {      ゝ、_ /!`h:::::::::)  ア    |   「ヽ .::::/)::/:::|
ハ ャ   ヽ    r-、‐' // / |;;;;;;く    |     > / /  //;;/::.:::!
ハ ハ    > /\\// / /ヽ_:::::!   イ    (  / / //:::::::::::::::::ヽ
ハ ハ   / /!   ヽ    レ'/ ノ        >  ' ∠  -‐  ̄ノ
       {  i l    !    / フ       /     -‐ / ̄

翌日の男はいつかの日常の頃に戻ったようだった

同僚「どうしたよ」
男「いや…別に…」
同僚「なんか元気ねーなぁ!よし!今日あたり前の話どうよ!」
男「いや…そういうのは…」
同僚「ばっか!何があったのかは知らんがウジウジしてたって駄目なんだよ!」
同僚「それに今日俺のお気に入りの娘の出勤日なんだよ!付き合えよ!」
男「でも…」
同僚「デモもストライキもねーの、こんだけ話すようになった同僚にくらい付き合えよ」
男「………」

男にとっては確かに人間でこれだけ話すようになった人物はいなかった
だから…というわけでもないが、その日は大人しく従う事にした

歓楽街は活気に満ちていた

男「うわぁ…凄いな」

ピンク色のネオン、愛想の良い呼び込み、香水の匂い漂う女性達
それら全てが男にとって恐怖であり、新鮮であった

童貞「さすがにこのへんにゃ俺達みたいなのほとんどいねーな」
男「そりゃそうだろうなぁ…」
同僚「ん?何か言ったか?」

ブツブツ言いながら同僚の後を追う
すぐ近くにいるのに人ごみに紛れそうになる

同僚「こっちこっち!この店だ!」

男「ここは…どういう店なんですか…?」

怯えながら尋ねる

同僚「お前こういう所来た事ねーみたいだしな、いきなりソープってのもあれだし」
同僚「本番は無しだから安心しろよ」
同僚「初めてなんですーって言っとけば大丈夫だ、委ねとけ」
男「はぁ…」

まだ恐怖の勝っている男に向かって同僚はたたみ掛ける

同僚「じゃあ俺はもう予約入れてるし、お前の紹介も終わったんで楽しんでくるわ!」
同僚「お前もこういう所で多少なり女慣れしろよー」

等と捨て台詞を吐いて足早に立ち去る

         ,..-‐-- 、、        _________
       ,ィ":::::::::::::::::::;;;;;:ii>;,、    /

        /:::::::::::::::;;;;;;;;iii彡" :ヤi、   /
       i::::::::::::;:"~ ̄     ::i||li  <  3分待ってやる
        |:::::::::j'_,.ィ^' ‐、 _,,. ::iii》   |
      |:::i´`  `‐-‐"^{" `リ"    \
        ヾ;Y     ,.,li`~~i       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          `i、   ・=-_、, .:/
        | ヽ    ''  .:/
ー-- ,,__,,, |   ` ‐- 、、ノ
;;;;;;;l;;;;;;;ヽ_ ̄``''‐- 、 , -‐}

;;;;;;l;;;;;;;;;;;ヽ ̄`''‐- 、l!//{`‐-、
l;;;;;;`''=‐- \‐-ッ'´ ', ' ,ヽ;;;;ヽ\_
;;;;;;;;;;;`'‐ 、;;;;;;;;;;;>'   ', ' ,ヽ<;;;;;; ̄`'‐、

l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`'‐ /     ,   ' ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ       .┯━━━━━━━┯
;;i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l      ,    l;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;l!       1∨゙ / 丘 ノ吾〒.l
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-‐`‐-‐i''‐-、   _ ,, l;;;;;;;;;;;l::::::::::::l       | し /^し ハ .イヰ.」 .|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐'´-‐''' ´ {_,,r'' _,,r''-‐'';;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;l       ヽ______ノ

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;l┌────┴─────┴──


男「んな事言われてもなぁ…」
童貞「いいように利用されたようにしか見えんな」
男「だよなぁ…」
童貞「でもいいんじゃないか?女に慣れるって意味では」
男「失恋したばっかりの男でも?」
童貞「失恋したばっかりの男だから余計によ、お前引きずるタイプだし」
男「うぐぐう…」

そうやって尻込みしていると店員の方から声をかけてきた

店員「同僚さんに窺ってますよ!どうぞどうぞ!」
男「あ、いや…でも…」
店員「おススメの娘がいるんですよ!さぁさぁ!」

強く断る事もできず、結局はノロノロと店員の後に続く

店員「この娘なんてどうですか!新人さん!なんと処女!!」
童貞「んなワケあるかよ」
男「…ははは…」
店員「じゃあこの娘は?サービスいいよー!何でもアリよー!」
男「……」
童貞「辛そうだな、やめとくか?」
男「………いや、少しは頑張ってみる…」
童貞「…へぇ」
店員「よっし!じゃあこの娘だ!明るくて話しやすいよ!!」

今の男にとってはどんな人間がきても大差ない選択だった
誰だろうと恐怖の対象でしかないのだから

男「お任せします…」
店員「はい!任されました!また来たくなるような娘を用意しますよ!!」

待合室にいる間の時間は男にとって苦痛以外の何物でもなかった

男「吐きそう」
童貞「頑張れ、案外楽しいかもしれんぞ」
男「そりゃ…俺だって…健康な男子だからな…」
童貞「男子?」
男「オッサンだからな…セックスに興味が無いと言えば嘘になるよ?」
童貞「ですよねー、痴漢物のDVDとか好きだしな」
男「そ!それは今関係なかろう!!」
男「でもな…対人となると…おかしいだろ?怖くて怖くて仕方ないんだ」

十分な間を開けて童貞が答える

童貞「おかしいもんかよ」

その一言、たったその一言だけで男の心は幾分か軽くなる

店員「お待たせしました」

男の心臓が跳ね上がる

店員「どうぞこちらへ」
男「は…はひ」
童貞「5メートル程は離れれるから俺は部屋の外に出てるよ、ギリギリ大丈夫だろ」
男「そ…そばにいてくれよ…!」
童貞「馬鹿言うなよ、恥ずかしいだろ」
男「うぐぐぅ…お腹痛い」

ピタリとある部屋の前で歩みが止まる

店員「こちらです、ごゆっくりお楽しみください」

そう言い残してにこやかに店員は去って行った

扉を開けて部屋に入ると一人の女性がチョコンとベッドに腰かけていた
その光景は初めて童貞が見えたあの瞬間にどこか似ていた

男「ど…どうも」
風俗嬢「あ、いらっしゃいませ、初めてですか?」

愛想良く微笑みかけてくれる女性のそばには
当然ながらあの生物の姿は見えなかった

男「え…ええ…まぁ…」
風俗嬢「どうしますか?お風呂にしますか?シャワーだけ?」
男「あの…失礼かもしれないんですが…」
風俗嬢「どうしました?」
男「こういう所に来て何もせずに帰るのはアリですか…?」

風俗嬢「あ、タイプじゃありませんでしたか…すいませ…」
男「あ!違う!違う!そ、そういうのじゃないんです!」
風俗嬢「じゃあ…汚い…とか?」
男「そ、そういうのじゃないんですよ!すいません!そうじゃなくて!」
男「そうじゃなくて…その…少し…話す練習相手になって欲しいんです…」
男「俺…正直女性と話すのが苦手で…」
男「最近…まともに話しかけれずに失恋までして…」
男「友達にも迷惑かけてばっかりなんです…だから…」

それを聞いて風俗嬢の表情が明るく変化する

風俗嬢「お兄さんいい人だ!」
男「いや…全然そんな事ないんですよ…」
風俗嬢「いいよ!アタシでよかったら協力する!」

それから時間が来るまで男は彼女からレクチャーを受けた

風俗嬢「うん!だいぶよくなったよ!やっぱり前向かなくちゃ!」
男「そ、そうですか?」
風俗嬢「あ、そのどもったり後ろ向きな発言は駄目だよ!もったいないよ!」
男「あ、うん…気をつける」
風俗嬢「そうそう!」
男「変なこと頼んじゃってごめん、ほ…本当にありがとう」
風俗嬢「アタシこそ楽しちゃった気がするなぁ…あ、これアタシのアドレス」

そう言いながら風俗嬢は男にアドレスの書かれた紙を渡す

風俗嬢「いつでも連絡してね、誰にも相手されなかたっらアタシが相手したげる」

言いながら豪快に笑う彼女を見て、男の顔にも笑顔が浮かぶ

童貞「どうだった!?まだ離れれないところを見るとセックスはしなかったな!」

店を出るなり、目をランランと輝かせながら尋ねてきた

男「いい娘だったよ…凄く」
童貞「ほうほう!!」
男「なんか…少しだけど女性に対する偏見が薄らいだ気がする」
童貞「ほうほうほう!!!やったな!!!」
男「ははは、なんで俺よりお前が嬉しそうなんだよ」
童貞「嬉しいんだよ!バカ!」
男「…ははは」

童貞の言葉は男にとって何よりも嬉しかったのだが
そこはぐっと飲み込んだ

童貞「次は出会いも探していかねーとなぁ」

同僚「どうだった?」

翌日、出社した男を見つけると同僚が駆け寄ってくる

同僚「可愛い娘の多い店だったろ!」
男「それは、うん」
同僚「また行こうぜ!」
男「うん…そうだな」
同僚「えっ!?」
男「な…なんだよ」
同僚「いや…まさかお前からそんな言葉聞くとは思ってなかったからな」
男「そっか…」

男が苦笑を浮かべていると、後ろから大きな声が響く

後輩「えー!男さんそんな店行くんですかー!?」
同僚「ムッツリだよねー!」
男「いや…そんな…同僚が半ば無理矢理…それに何もしてないし…」

オロオロとうろたえる男を見て
同僚と後輩がプーっと噴き出す

同僚「だと思ったよ!もったいねぇなぁ!高い金払って!」
後輩「男さんは同僚さんみたいに汚れてないだけなんですって」
男「は…ははは」
後輩「でも何か以外ですね、男さんってこんな人でしたっけ?もっと暗くありませんでした?」
同僚「お前ねぇ、もうちょっと言い方ってのがあるでしょうが」
男「それをお前が言うか…」

男の突っ込みを聞いて、また後輩と同僚が噴き出した

童貞「なんかいいじゃん」
男「うん…俺もそう思う」

男の生活は確実に変化していた
上司の叱責も減り、翌日まで落ち込む事も無くなった

男「あ…何て言うか…ありがとうな…」
童貞「何が?何もしてないぞ?」
男「いや…いいんだ…ありがとう」
童貞「?」

首をかしげながらも童貞は続ける

童貞「そういやあの後輩の横にもいたな!化身が!」
男「ああ、いたな主人とは違って大人しそうだったな」
童貞「よし!次はあの娘にするか!」
男「そんな…節操なしじゃないんだから…」

童貞「でもあの後輩の周りにもちょいちょい処女の化身がいたしな」
童貞「あの後輩つながりで友好関係を広げて行こうぜ!」
男「そうだな、それを目標にしようか」

今後の方向性が決まり、二人は浮かれていた
だがそれも次の日、それも会社からの帰り道までのことだった

男「今日も疲れたなぁ」
童貞「いやー疲れた」
男「お前何もしてねーじゃん」
童貞「気疲れって言葉を知らんのか」
男「ああ言えばこう言う奴だな…どこで覚えんだ」
童貞「お前が知ってる事は大体知っとるわ!」

フハハと笑い合う二人の視線の先に見慣れた生物が歩いていた

男「おい、あれ」
童貞「ああ、解放された奴だな、どうする?」
男「どうするっても…あれ…?」
童貞「どうした?」

近付くにつれその化身の姿がハッキリとする
その姿は男が確かに何度か目撃した事のある姿だった

男「う…受付嬢さんの…処女だ…」
童貞「マジか!?……ああ…確かに…見覚えあるわ」

それはつい最近まであの受付嬢の横にいた処女の化身だった

童貞「……どうする?」
男「声…かけてみるか」

童貞「よう、行くあて無しか?」
受処女「あ、あんた達は」
男「する事ないなら家で飯でも食ってくかい?」
受処女「へー…やっぱり見えてたんだ、チラチラこっち見てたもんねぇ」
男「あ、ばれてた?」
受処女「でももう私の主人は他の男とくっついちゃったよ?」
男「知ってるよ、そういうの関係なしにさ」
受処女「………行ってもいいけど…」
童貞「素直じゃねぇなぁおい」

男は二人のやりとりに苦笑しながらも
受付嬢の処女の化身を家に招く

男「今日はピザでも取るか…そういや久しぶりだな…ピザ」

届いたピザを食べながらこれまでの経緯等を話す

受処女「へぇ、嘘みたいな話だけど…嘘じゃないんだよね…?」
童貞「これが嘘ならお前と俺の存在も嘘だわ」
受処女「生意気な奴…」
童貞「主人とは大違いだなお前」
受処女「そんな事無いって、私の主人なんて本当はもっとひどいもの」
男「え?」
受処女「身体こそ処女だったけどね、男なんかしょっちゅう変えてたよ」
男「マジか…」
童貞「仮にもお前の主人だろうに…」
受処女「どうかな…あんた達みたいな関係が築けてたらあるいはね…」

意味深な言葉に童貞は眉をしかめる

受処女「私を捨てたい捨てたいってのが彼女の口癖」
受処女「もちろん『処女』の認識にズレがあるのは分かってる…」
受処女「分かってるんだけどね…」

どこか自嘲気味なその言葉を二人は黙って聞いていた

受処女「でもそれもそろそろおしまい」
男「え?」
童貞「ま…」

童貞が「待て」と言う前に受処女はその言葉を口にした

受処女「今日でようやく消滅できるわ」
男「……しょ……消滅…?解放じゃなくて…?」
童貞「いやいや…まぁまぁ…ほら…見解の違いで…」

童貞が慌ててフォローにまわる

受処女「なんだ…あんた言ってないんだ…知らなかったわけないよね?」
童貞「………」
男「え?どういう事だ?何が?消滅って?」

混乱する男に向かって呆れたような、憐れむような表情を向け

受処女「そっか…調度いいや…もう私の時間が終わるから…」
受処女「ごめんなさい…」
男「な…何が!?」

知らず知らず男の語尾が荒くなる

受処女「かえって悩ませる結果になってしまったら…ごめんなさい」

言い終わらないうちに淡い光が彼女を包み…アッサリとその姿を消した

童貞「…………」
男「な…ん…なんだよ…なんだよこれ!!」

男の怒号が響く

男「解放されるだけじゃないのかよ!なんで消えてんだよ!!」
童貞「ごめん……」
男「ごめんじゃねぇよ!!!どうなったんだよ!!!消滅って何なんだよ!!!!」
童貞「その……」
男「なんでお前は……消えちまうのに…俺に…童貞捨てさせようとしたんだよ!!!!」
男「俺は…お前といい関係築けたと思って…短い期間だったけど!!!」
童貞「………」
男「俺だけかよ!!お前と話せなくなると寂しくなるとか思ってたのは!!!!」

童貞「うるせぇえええ!!!!!!」

童貞の咆哮に男はビクンと身体を揺らす

童貞「そもそもお前が30まで童貞だからこんな事なってんだろ!!!」
童貞「消えるんだよ!俺のせいじゃねぇ!!そういう仕組みなんだよ!!!!」
童貞「寂しくないかって!?寂しいに決まってんだろ!!!!!」
童貞「お前にとっちゃ短い期間でもな!!!!俺には30年なんだよ!!!!!」
童貞「家族と一緒なんだよ!!!親友より深いんだよ!!!ボケ!!!!」
童貞「でもそれ以上にお前が幸せに暮らせないと意味がねぇんだよ!!!!」
童貞「俺みたいな存在すら怪しい奴に人生左右されちゃダメなんだよ……」
童貞「駄目なんだよ…」

咆哮は段々小さくなり
最後の言葉はほとんど聞き取れない程だった

男「なんでだよ…」
童貞「………」

それから二人は一睡もしないまま夜を明かした。
会話らしい会話も無く、昨日までの二人の関係が嘘のように静まり返っていた

童貞「仕事…行かねーのか?」
男「ああ…今日はいいや…」
童貞「よくはねーだろ」
男「よくはねーな」
童貞「………」

それ以上、語り合う事もなく
一日はゆっくりと過ぎて行った

男「腹…へったな」
童貞「俺は…別に」
男「そうか…」

またたく間に一週間が過ぎる
二人の間の会話は少ないまま、ただ日々を消費する

童貞「俺が悪かったよ…」

ポツリと童貞が切り出す

童貞「消える事を隠してたのは…謝る」
男「……それで?」
童貞「でもお前は俺を捨てるべきだ…」
男「……分かった……」
男「だけど…俺は………」

男は喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ

男「俺は…お前に迷惑ばっかりかけちまってるなぁ…」

飲み込んだ言葉の代わりにそう言った

それからさらに数日後
二人の関係は以前に比べどこかぎくしゃくしていたものの
すこしずつ元の形を取り戻しつつあった

後輩「男さーん、今日皆で飲みに行きましょうって」

それと同時に男も童貞を卒業する為の努力を怠らなかった

男「うん、俺も参加させてもらうよ、出遅れた分仲良くなりたいし」
後輩「おお~前向きだー!そうやってるといい感じじゃないですか」
男「本当?」
後輩「ふふふ、どうでしょう?」
後輩「あ、そう言えば男さんの事ちょっと良いって言ってる娘もいましたよ~」
男「よし、その娘も連れてきてくれ」
後輩「あはは~」

童貞はその光景もにこやかに見守っていた

一週間も無断欠勤したら仕事は・・・なんて言ったら無粋か

>>356
すまん描写不足だったな…
休んだのは1日だけと思ってくれ

つーか投下も遅くてすまん、もうすぐ終わるから

同僚「お前後輩ちゃん狙ってんの?」
男「どうなんだろう…」
同僚「なんだそれ、狙ってるなら多分いけるぞ」
男「そうなの?」
同僚「ウィ、あの娘お前の話ばっかりしてくるもん」
男「そっか…」
同僚「何よ、その反応」
男「いや、嬉しいんだよ、素直に!」
同僚「うひひ、もうあの店は用無しってか」
男「あぁ…そう言えばあの人にもお礼しないと…」
同僚「ん?」
男「何でもない」

男は少し優しくされただけで惚れていたあの頃を思い出す
そして『あれも本当の恋じゃなかったのかもな』などと思い自嘲ぎみに笑った

次の休日
男はいつかの風俗嬢と街にいた

男「この前はありがとうございました」
風俗嬢「いえいえ、まさか本当に連絡くれるとは思ってなかったからビックリしたよ」
男「今日は奢りますから」
風俗嬢「………何かあったの?」
男「え?」
風俗嬢「無理してない?そんな感じじゃなかったよね?」
風俗嬢「何か嫌な事でもあった?」
男「ははは…そんな…そんな、嫌な事なんて…」

そこまで言いかけて男は決壊した

男「俺は……わからなくなりました…」
童貞「………」

近くの喫茶店に入ると、童貞は気をつかったのか
話しの聞こえない距離まで離れて行った

男「俺には大切な友人がいるんです」
風俗嬢「うん」
男「でもそいつは…そいつよりもっと大切な物があるからそれを優先しろと言います」
風俗嬢「…うん」
男「もちろん友人が言う事も理解できるんです…でも」
男「俺はその友人のおかげで救われたんです…」
男「俺は…そいつに恩を返したい…!!でもどうすればいいのか…」
風俗嬢「…彼女?」
男「いや!そ、そういうんじゃなくて!男友達で!!」
風俗嬢「そっか…」

しばらくの沈黙の後彼女は口を開いた

風俗嬢「友人が大切なら…友人の気持ちを尊重してあげるのも…恩返しじゃないのかな?」

男「それで友人と離れ離れになるとしてでもですか?」
風俗嬢「それを友人が本気で、建前じゃなく本気で願ってるならね」
男「そうか…そうなんだよな…分かってた…」
男「友人に恩返しなんて嘘だ…俺が離れ離れになりたくないだけだった」
男「すいません…お礼に来たつもりがまたこんな…」
風俗嬢「いいよ~なんだか出来の悪い弟みたいでお兄さんの事好きだし」
男「弟みたいなお兄さんって…なんか変な感じですね」
風俗嬢「あはは~まぁね、アタシ学無いから」
男「救われます」
風俗嬢「よし!じゃあ今日はパーっと付き合ってもらおうかなぁ!!」
男「喜んで」

その日は遅くまで二人、いや三人で遊び歩いた
カラオケやゲームセンター、居酒屋じゃないこじゃれたバーなんかにも足を運んだ

ピピピと目覚ましが鳴る
携帯を覗くとあの風俗嬢から1通のメールが届いていた

『前向きに頑張れ!昨日は楽しかったよ!ありがとう』

男「なぁ…」
童貞「うん?」
男「俺、お前を解放してやれるように…頑張るわ」
童貞「…無理すんなよ」
男「まぁ嫌だって気持ちはまだあるんだけどさ…」
童貞「うん…」
男「お前はそれを本気で望んでるんだよな?」
童貞「そうだな…寂しいのは俺も一緒だが…それは本当だ」
男「そうか…なら…なら…頑張るよ」
男「それにな!俺…ちょっと好きな人できたかもしれん!」
童貞「その人処女どころじゃないだろ?いいの?険しい道のりだよ?」
男「うむ…まぁそのへんはおいおいな…」

童貞「ありがとな」
男「何言ってんだ…こっちのセリフだ」
童貞「魔法なんてさ…信じちゃいなかったし…馬鹿にさえしてたけど…」
男「おお、俺も俺に発動した魔法がこれでよかったって心底思えるわ」
童貞「最初はどうなる事かと思ったけどな」

なはは、といつもの笑顔を見せる

男「そうだな…お前がまさか…な」

その笑顔を見て男は必死でこみ上げる『汗』を堪える

男「泣いてない」

けれどその『汗』は男の目から零れ落ちた


_________________






それから、幾年かの時間が過ぎる
あっという間、本当にあっという間にその時間は過ぎて行った






_________________

嫁「本当に私でいいの?」
男「その代わりもうあの仕事はしないでくれよ、嫉妬で死んでしまうから」
嫁「そうじゃなくて…汚いとか…」
男「馬鹿言うな」
男「こんな駄目男の子供まで産んでくれる愛しの嫁が汚いもんか」
嫁「ふふふ…ちょっと優しくしただけでここまで惚れるなんてちょろいなぁ…アタシの旦那さんは」
男「ちょろくなくなったハズなんだけどなぁ…」
嫁「できちゃった婚だし親御さんにはいい顔されないかな…」
男「まさか、この俺が孫まで連れて帰ったら喜びすぎて死んじゃうレベルだよ」
嫁「ふふふ」
男「なはははは」

男は確かに幸せだった
そこに『あいつ』がいない寂しさはもちろん未だに消えてないが

けれど
もう数カ月もすれば男の寂しさは消えうせるだろう

そして、なぜ童貞や処女の化身が
『ぬいぐるみの様にも 人間の赤ん坊の様 にも、はたまた小動物の様にも見えた』
のかが理解できるだろう

そして「赤ん坊の隣にも、もうあいつはいるんだろうな」なんて事を考えながら
いつものように『汗』を堪えるだろう

出遅れた分の幸せを今後の人生で味わう事だろう

これは
不思議な魔法使いになった駄目な男のお話



おしまい

というわけでおしまいです
長々と駄文にお付き合いいただきありがとうございました
支援や保守は本当にありがたかったです!多謝!

お涙頂戴のきめー話書いてんじゃねぇよと思われる人がいたらすいません

色々書いているのでまた何か書かせてもらいます!
見かけたら支援したってくださいwww

後輩は処女のまま30を迎えて魔法使いになるのですが
それはまた別のお話

ってことで

そんなに>>435に食い付くとは…
いつか書けるといいなぁ…

乙、ホント乙
童貞で良かった

因みに>>1はこれがss処女作、もとい童貞作かい?

>>453
いや、二次創作も入れると色々書いてるよ

ダラダラすまん、それじゃまたどこかでwww

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