魔王「失脚してしまった・・・今後の生活どうしよう・・・」(1000)


魔王「明日から私はどうしたらいいんだ」

魔王「この歳で再就職なんてそうそうみつからないし・・・」

魔王「あ、そうだ・・・人間の国にいけばバイトくらいなら募集あるかも・・・」

魔王「はぁ・・・・家族がいないのが唯一の救いか・・・」



――――


とある国の酒場



勇者「あのぅ、あと一人仲間を探してるんですけど」

店主「へぇ、どんな人が好みだい?」

勇者「うーんと……できれば魔法が使える人がいいです」

店主「そうだなぁ、ちょっとまってくれよ登録者のリストを確認するから」ペラペラ


店主「お、この人なんてどうだい? 魔法経験の長いベテランさんだよ!」

勇者「紹介してください」

店主「いま呼ぶからまってろ」


店主「おーいマオウさーん! 勇者様がおよびだよー」



魔王「・・・あ、ど、ども。ご指名ありがとうございます」ペコッ

勇者「わー! はじめまして! 勇者をやってます16歳です!」

僧侶「私は勇者様のお供の僧侶です」

戦士「戦士だ」

魔王「あ、あー、そうですかぁ。みなさん若いですね」

勇者「マオウさんって魔法使いさんなんですか?」

魔王「あーはい、まぁ、魔法使いっていうか。元魔王なんですけど」

戦士「あ?」

魔王「いやー、この年にもなるとまぁいろいろありまして・・・・」

僧侶「魔王?」

魔王「えぇ、そういう役職についてたこともあります・・・」

戦士「おい勇者。こいつ頭が変みたいだからやめとこう」

魔王「えっ、あ・・・・その」

勇者「・・・うーん」


魔王「・・・そ、そうですよね。みなさん若いですもんね」

魔王「私みたいな年寄り・・・」

勇者「いいよ! 一緒にいこ!」

魔王「え・・・」

勇者「魔王さん役に立ちそうだから仲間にする! ね、いいでしょ?」

戦士「勇者がそういうんなら」

僧侶「私は勇者様のご意向に従います」

勇者「じゃあよろしくね魔王さん!」

魔王「あ、あ、どうもありがとうございます」ペコペコ

魔王「首にならないよう精一杯がんばりますので」

勇者「かしこまらなくていいよー。もう仲間なんだから」

魔王「・・・あはは」

勇者「じゃあ早速出発しよう♪」


魔王(ふぅ、なんとか仕事にありつけた・・・よし、がんばるぞ!)



▼まもののむれが現れた



勇者「うわぁ!! いっぱいきたよ!!」

戦士「くそ、初めての戦いだっていうのに」

僧侶「勝てるでしょうか……」

魔王「あーみなさん落ち着いてください。右からおおがらす、おおみみず、一角ウサギといいます」

魔王「個々の戦闘力はたいしてありませんので、冷静に動きを見極めて一撃あたえれば倒せるかと」

勇者「ほんと!?」

魔王「あー、はい。お約束はできませんが。一角ウサギの角には十分気をつけてください」

魔王「菌が沢山付着していますので、ささるとその部分が化膿してしまいます」

勇者「それは大変だ! 魔王さん詳しいね!」

魔王「えぇまぁ。前職は管理職みたいなものでしたので」

戦士「おっしゃならビビらずいくぜ!」


ザシュ


▼まもののむれをやっつけた



魔王「お見事でした」

勇者「わー! 見てた見てた!?」

魔王「はい、勇者様のご武勇拝見させていただきました」

戦士「お前は戦わないのかよ!」

魔王「そ、そうですよね。申し訳ございません」

勇者「魔王さんは十分に活躍してくれたよ!!」

魔王「そういってもらえるとありがたいです。戦闘はやや苦手なもので・・・」

僧侶「勇者様お怪我をなさってます」

勇者「え? こんなの平気!」

僧侶「いけませんよ。私が治してあげますね。ホイミ!」ペロペロ

勇者「わっ! やめてよ僧侶のそれ気持ち悪いよ!!」

僧侶「動いちゃだめですよー」ペロペロ

勇者「やめてよー!!」


魔王「・・・若いっていいですね。治癒力も盛んで・・・」

戦士「ちなみに魔王あんた何歳くらいなの?」

魔王「・・・・えっと」

戦士「すまん。ていうかいまさらだけど歳上には敬語つかうべき? なんか馴れ馴れしくってごめんな」

魔王「あ、いえ結構です。私のほうが後輩にあたりますし」

戦士「だよな! だよな! よかった。敬語苦手なんだよ」

魔王「私にはあまり気をつかわないでくれると嬉しいです」

戦士「おうおう、同世代だと思って接するよ」

魔王「この先よろしくお願い致します」

戦士「あんたが他人行儀になってどうするんだ」

魔王「あ、すいませんつい」

戦士「ま、そのうち慣れていくさ」


勇者「うあああっこっちこないでよー!!」

僧侶「勇者様! まだ治ってないとこたくさんありますよ!! おとなしくしてください!!」


――夜――



戦士「今日はここまでだな。野宿の準備すっか」

勇者「わー! 野宿はじめてなんだよ! たのしみ!!」

戦士「お前なぁ、こんな魔物だらけの森で野宿する危険わかってるのか?」

僧侶「大丈夫です! ご就寝中の勇者様には指一本ふれさせませんから」

戦士「お前が不安だよ逆に」

僧侶「え? そそそそんなっ、ほんとに何もしませんよ! ね、勇者様♪」

勇者「・・・」ゾゾッ

魔王「私闇には強いので見張り番しますよ」

戦士「まじ? でも寝たほうがいいぞ。次いつ休めるかわかんねーからな」

魔王「いえいえお気遣いなく」

勇者「おなか空いたよー!」

戦士「考える前に飯にすっか」


・・・

勇者「もぐもぐ」

戦士「そういやまだ聞いてなかったな。僧侶はどうして勇者と旅をしようと思ったんだ?」

僧侶「え?」

勇者「もぐもぐ?」

戦士「私が仲間になるより前からずっと旅してたんだろ?」

僧侶「うーんそうですねぇ。私はもともと勇者様の住む街の小さい教会で働いていたんですが」

僧侶「ずばり言うと神の啓示をうけたからです!」

勇者「ごくん。そうなんだよ! 僧侶ったらいきなり家に押しかけてきてさぁ行きますよって!!」

僧侶「はい♪」

戦士「迷惑な奴だな・・・ほかにも僧侶いただろうに」

魔王「あの、ところで勇者様は・・・失礼ながら性別は・・・? すいません見た目では判断つきにくくて」

勇者「え? ひどいよ! そんなの当然…」



どっち?


勇者「女に決まってるじゃん!! ほんとに失礼しちゃうなー」

僧侶「そうですよ。こーんなに可愛い勇者様が男なわけないでしょ!!」

魔王「あ、すいません・・・最近の若い人はほんと区別しにくくて」

戦士「・・・え? 女だったの?」

勇者「えぇ!?」

戦士「いやー悪い悪い。うん・・・・(まじかよ・・・)」

僧侶「勇者様かわいそうです・・・なぐさめてあげますね、よしよし」

勇者「いらないよ! 魔王さん聞いて! あのね、僧侶はすぐ子供扱いするんだよ!!」

魔王「そうですか・・・たのしそうですねぇ・・・」

勇者「僧侶はむにむにしてるから暑苦しいからっ! はなれてよ!!」

僧侶「えー、勇者さまぁ。もっと甘えていいんですよ?」

勇者「もう大人だから! 勇者をなめないでよ!」

魔王「えぇえぇ、勇者様はお強いですよ。先程の戦闘では見事な剣さばきでした」

勇者「でしょ!」


魔王「なるほどなるほど。あの軽やかな身のこなしはご婦人ならではの物ですよね」

勇者「うんうん。魔王さんもっと言って」

僧侶「私だってたくさん褒めてあげてますよ!?」

勇者「僧侶は黙ってご飯たべてるといいよ」

僧侶「う゛ー・・・」

魔王「魔法はまだ覚えたてにも関わらず、大変お上手でした」

勇者「だよね! だよね!」

魔王「この調子だと強力な魔法を使いこなせるようになるのはすぐでしょうね」

勇者「がんばるよ! 魔王さんいろいろ教えてね!」

魔王「はい、私なんかで役にたてるならなんでも教えましょう」

僧侶「なんでも!? だ、だめですよー! 私も手取り足取り教えたい事たっっくさんあるんですから!!」

戦士「剣は私がおしえてやる」

勇者「みんなありがと!」

僧侶「たっっっっくさん教えてあげますね!! まずはホイミから」

勇者「それはいいや・・・」


魔王「僧侶さんは回復魔法が得意なようですね」

僧侶「得意ですよー。勇者様の玉のような肌に絶対に傷を残すわけにはいきませんからね」

戦士「そんだけ向上心がありゃあうまくもなるよな・・・」

勇者「たしかに助かってるけど・・・あんまりすきじゃないなぁ僧侶のホイミ・・・」

僧侶「文句いわないでくださいよ。回復はパーティの要ですよ?」

戦士「でも私には普通にかけるよな? なぁ?」

僧侶「・・・・♪」

勇者「魔王さんはどんな魔法つかえるの? ホイミできる?」

魔王「ええとですね。ごめんなさい勇者様。私回復系は扱えないのです」

勇者「そうなんだ・・・・」

僧侶「勇者様」ギュ

勇者「・・・・」プイッ

僧侶「こっちむいてくださいよ。私たちもはや一蓮托生です」

魔王「仲がいいことは結構なことです。私にも古い友人ならおりますが、昔は楽しかった」


勇者「ふぁーなんだか眠くなっちゃったよ」

戦士「お、じゃあそろそろ寝るか」

僧侶「たき火は消したほうがいいのでしょうか?」

魔王「そうですねこの辺の魔物は獣の習性が強いので火があったほうが良いかと思います」

勇者「ほわわ・・・あしたは街へつけるといいなー・・・おやすみ・・・」

僧侶「じゃあ私も」モゾモゾ

戦士「くれぐれ勇者に変なことするなよ」

僧侶「まぁ、戦士さんったら・・・・たとえ私と言えどもさすがに外では///」

戦士「なっ・・・/// 早くねろ!!」

魔王「では戦士さんもおやすみなさってください」

戦士「・・・いいのかほんとに見張り任せちまって」

魔王「はい。これぐらい役にたたなくては」

戦士「・・・・少ししたら起きるよ。そこで交代な」

魔王「お気を使わなくても」

戦士「こっちのセリフ。じゃ、お先に。おやすみ!」




・・・・


魔王「ふぅ・・・」

魔王「人の世からみる月のなんと綺麗なことか」

魔王「私の国は濃い霧に覆われて、何も見えなかった」

魔王「というよりも、私には空を眺める暇がなかったというべきか」

魔王「・・・魔王を失脚して勇者の手伝いとは、皮肉なものだ」

魔王「だがもう過去など忘れよう」

魔王「私は新しい人生をむかえたんだ・・・いまさらなにも文句は言うまい」


僧侶「ムニャムニャゆうしゃさまー、うふふ・・・・zzz」ギュウウ

戦士「う゛ーーん、あづいーー・・・zzz」


魔王「仲間か・・・・」


勇者「・・・・zzz ・・・うん?」

勇者「ぅー・・・・ねーねー」

魔王「! おや、勇者様」

勇者「どうして起きてるの?」

魔王「見張り番です」

勇者「え!? 魔王さん見張り番しててくれたの!?」

魔王「私が好きでやってることですので、勇者様は引き続きお休みください」

勇者「でもー・・・」

魔王「私は大丈夫ですから」

勇者「目、覚めちゃったよ・・・・あ、そうだ、お話しよ?」

魔王「いいですよ。なんでも聞いてください、私がわかることならなんでもお教えいたします」

勇者「何歳?」

魔王「うぐ・・・ストレートな質問ですね・・・」

勇者「?」


魔王「うーんと・・・私にもし仮に娘がいたらきっと勇者様くらいの年頃でしょう、とだけ」

勇者「えー、わかんないよ」

魔王「大人には秘密が多いのです」

勇者「なんでも教えるっていったのになー」

魔王「勇者様は16歳なんですよね?」

勇者「そうだよ?」

魔王(にしてはちょっと幼いような・・・)

勇者「あーあ、早く大人になりたいなー。そしたらもっと力も強くなって魔物を蹴散らしちゃうのに」

魔王「旅の中で嫌でも成長しますよ」

勇者「魔王を早くやっつける力が欲しいんだ!」

魔王「そうですか」

勇者「あれ、魔王さんは魔王なんだよね?」

魔王「元、ですよ。やっつけないでくださいね」

勇者「ってことは強いの?」

魔王「・・・・・ふっふっふ、強いですよ。怖いですよ」


勇者「・・・・」

魔王「勇者様みたいな小さな子一口で食べちゃいますよ?」

勇者「・・・・ていっ」ベシッ

魔王「いたっ」

勇者「あー、よわいなー・・・魔王さん魔王むいてないよー」

魔王「・・・確かに、向いてなかったんですねえ」

勇者「向いてないからやめちゃったの?」

魔王「いえいえ、やめさせられたというべきでしょうか」

勇者「だって弱いもんね!」

魔王「・・・・ははは、まぁそういうことにしておきましょう」

勇者「じゃあ次の魔王は強いの?」

魔王「そうですねぇ、すくなくとも私よりは強いですよ」

勇者「絶対倒すよ! そしたらその後また魔王さんが魔王やればいいじゃん!」

魔王「おやおやそれだとまた魔王が生まれてしまいますよ」

勇者「あれ? そっか! じゃあ魔王さんも倒さなきゃ!」

魔王「さぁもうお休みなさってください」

勇者「えーもっとお話したいよ」

魔王「だめですよ明日起きられなくなります」

勇者「うー・・・」

魔王「寝る子は育つ。私の国でもそういう言葉はあります」

魔王「たくさん寝ないと魔力も体も育ちませんよ」

勇者「わかった・・・じゃあさ」ゴロン

魔王「?」

勇者「おやすみ魔王さん・・・明日こそいっぱいおしゃべりしようね・・・・zzz」

魔王「困った子だ・・・」ナデナデ

勇者「スゥーー、スゥーー・・・zzzz」


魔王(この小さな身体で、一体どれほどの宿命を背負っているのか)

魔王(いずれ重さに耐えかねて、すべて飲み込まれてしまうかもしれない)

魔王(人の世もまた、なんと愚かしい・・・)



――朝――



勇者「よし! 出発するよ!!」


戦士「・・・・」

僧侶「・・・・」

勇者「あ、あれれ。どうしたの? 次の街めざそうよ・・・」

戦士「・・・・」

僧侶「・・・・そ、そうですねあはは」

戦士「おまえ、次からは離れて寝ろ・・・・」

僧侶「わ、わかってますよぉ! 好き好んで戦士さんなんて抱いて寝るわけないじゃないですか!!」

勇者「よくわかんないけどケンカはだめだよー」

僧侶「いきましょ勇者様! 朝からすっごく気分が悪くなりました」

戦士「お前なぁ! ちょっとは悪びれる様子をみせたらどうなんだ」

僧侶「シクシク、危うく汚れてしまうところでした・・・・」


勇者「けがれる?」

戦士「いーのいーの! お前は前歩いてろ」

僧侶「私・・・御存知の通り聖職者なんですよ・・・なのにこんなのってあんまりです。うえーん」

戦士「どこが聖職者だ! 勇者には時も場所もかまわず抱きついてるくせによ!!」

僧侶「勇者様は子供ですから」ケロリ

勇者「子供じゃないよ?」

僧侶「子供です」ナデナデ

勇者「あふっ」

戦士「魔王、なんとかいってやってくれよぉ。こう、説教とか得意そうだし」

魔王「そうですねぇ・・・では僧侶さんに一言よろしいですか?」

僧侶「なんですか?」

魔王「あんまり邪な心をもっていると、回復蘇生魔法の精度が落ちますよ。というおせっかいを」

僧侶「ななっ・・・・・だ、大丈夫ですよぉ、やだなぁ魔王さんったら」

勇者「よこしま?」

魔王「勇者様はどうぞ安心して前を歩いていてください」



――――



▼まもののむれが現れた


勇者「わー! これ知ってる! スライムだ!!」

魔王「スライムですか・・・うーむ」

勇者「どうしたの?」

戦士「よっしゃー! 本日一発目いただきぃ!」

ベニョン

戦士「あれ? なんだこの手応え」

スライム「ピキー!」

魔王「スライムはその特有の体質から物理攻撃をほとんど無効化してしまうのです」

勇者「あははほんとだー! 叩いてもぷにぷに跳ね返ってくるよ」ベシベシ

僧侶「ゆ、勇者さま危ないですよっ!」

スライム達「ピキーーー!!!」シュルシュル


ニュルリ…

勇者「うわわっ! どうしよっ絡み付いてくるよ!!」

戦士「ふりほどけねぇ!! 畜生つかまった!!」

魔王「という結果を生むので、魔法攻撃がない状態で挑むのは無謀です」

僧侶「そんなこといってないで助けなきゃ!!」


スライム「ピキピキー!」

シュルシュル

僧侶「きゃあああ!! やめてください離して!!!」

勇者「あははは、なんかべたべたするー!」

戦士「わらってる場合か!!」

僧侶「やだっ、なんとかしてください戦士さん」

戦士「このやろっこのやろっ」ベシベシ

スライム「ピキキーーーー!!!」ニュルニュル

戦士「わぁあああごめんごめん!! もう叩かないから許して!!」


魔王「困りましたね・・・」

戦士「おい魔王! 魔法つかえんだろ!! なんとかしろって」

魔王「いえ、それが攻撃魔法なるものは使えなくてですね」

戦士「役にたたねぇなああ!!」

魔王「すいません・・・ですが大丈夫です」

戦士「なにがだよ!」

魔王「スライムの捕食行為は人体にほとんど害はありません」

僧侶「捕食って!?  これ食べられてるんですか!! きゃあああ!!」

魔王「主に人間の体表の老廃物や、体液、少量の魔力などを餌にします」

勇者「やーーくすぐったいよぉーあははは」

戦士「でっ、どうすんだよこれ!!」

魔王「いまからですと、そうですねぇ、お昼時には終わると思いますよ」

魔王「ですから安心してください。私、なにかお昼にあわせて食べられる物を探してきます」

僧侶「ちょっ、ちょっとぉ!! 薄情じゃないですか!!」

魔王「いえいえ、私には・・・・少々刺激が強い光景ですので」


僧侶「溶かされちゃったりしないんですか!?」

ニュルニュル…

魔王「ありません。毒性の強いバブルスライムだとかなり危なかったですね」

戦士「で、でもさっ!! いま他の敵に襲われたらやばいだろ!!?」

魔王「スライムの捕食中に手を出す魔物なんていませんよ。そこまでおろかじゃありません」

ニュルニュル

勇者「ひゃうっ・・・うぅ・・・あはは、なんかへんなかんじー」

魔王「・・・で、では失礼します。必ずもどってきますのでごゆるりと・・・」

戦士「おいこら! なにがごゆるりとだ! このやろ、このやろ!」ベシベシ

スライム「・・・」ムラッ

魔王「あ、捕食中に危害を加えようとすると怒ってますますひどく・・・って遅かったですね」

スライム「ピキーーーー!! ピキーーー!!」

ニュルニュルヌルヌル

戦士「わぁあああごめんなさいごめんなさいいいい!!」

僧侶「戦士さんの馬鹿ああああ!!!」


――昼頃――



魔王「ただいまもどりました。いやー川辺で良い魚が手に入りましたよ」


戦士「・・・ハァ、ハァ」

僧侶「うぅ・・・・ハァ」

勇者「・・・・んぅー・・・・」グッタリ


魔王「なかなか手ひどい目にあったようで」

戦士「ちくしょー・・・・・体べったべただ・・・・」

僧侶「許しませんあのスライム・・・・・聖職者である私をこんな恥ずかしい目に・・・・」

勇者「うぅー・・・・」

魔王「・・・」


魔王「しかしいままで以上にみなさんお肌がつやつやしていますよ」

僧侶「え?」

魔王「魔界ではスライムの捕食の習性を利用した美容がいま流行りなんです」

僧侶「ほんとですか!?」キラキラ

魔王「嘘です」

ベシッ

魔王「アイタッ・・・結構元気残ってますね」

勇者「うぅーー」

魔王「勇者様。お怪我はございませんね?」

勇者「うううう!!!」

魔王「?」

戦士「あーあー・・・怒ってる怒ってる・・・」

魔王「これがスライムという生物です。単純がゆえに危険でしょう?」

勇者「・・・最初はたのしかったのにやっぱり楽しくなかったよ!!」

魔王「そ、そうですか・・・そこは私が知る由ではありませんのでどうとも・・・・」


勇者「剣がつよくてもだめだなんて・・・」

戦士「私もしかして永遠にスライムに勝てない?」

魔王「そうですねぇ。せめて火が使えれば追い払うことはできるのですが」

僧侶「旅の商人はスライムからの護身をかねて魔法の杖などを持ち歩くそうです・・・忘れてました」

魔王「どうもいつも魔物が迷惑かけてます」

戦士「いえいえこちらこそー・・・ってお前さぁ!! 魔王なんだろ! 命令してなんとかしろよ!」

魔王「『元』です」

勇者「火の魔法をおぼえたらスライムをぶっころそう!」

僧侶「だめですよそんな下品な言葉つかっちゃ。戦士さんみたいになっちゃいますよ」

戦士「うるせーなー」

魔王「敵として立ちはだかる以上は倒すのもやむを得ないですね」

魔王「私としてはこころ苦しいものですがそれも割り切りましょう」

戦士「当然だ。魔物も味方したらいの一番にぶっ倒すからな」

魔王「はい」

勇者「うぅー・・・むかむかするなーーー」


僧侶「まぁまぁ、次に会うときまでに魔法おぼえましょ?」

勇者「うん・・・」

僧侶「お昼にしましょうか。魔王さんの採ってきてくれたお魚いただきましょう」

勇者「そうだね! いつまでも怒っててもしかたないよね!」

戦士「そうそう。切替が大事だ」

勇者「それにちょっと体も軽くなったし! とっても気持ちよかったし! よかったよね!!」

魔王「・・・」

戦士「・・・こ、こらぁあー!!」

勇者「??」

僧侶「聞かなかったことにしてあげてください///」

魔王「はい・・・」

勇者「え? 気持ちよかったよね!?」

僧侶「もうっ! 勇者様!!///」ペシペシ

勇者「お腹すいたね!」


――また夜――



勇者「わー! やっと街についたよ!」

戦士「はぁーやっとかよ・・・」

僧侶「朝のアレがなければもっと早く着いていたのに・・・」

魔王「なかなか広そうな街ですね」

戦士「とりあえず酒場さがそうぜ」

僧侶「えー、飲むんですか?」

戦士「いやいや、私の街もそうだけどこういうとこはだいたい酒場が案内所も兼ねてんだよ」

魔王「なるほど・・・」

僧侶「じゃあ行きましょうか」

勇者「おなか空いたなー。酒場でなにかおいしいもの食べれるかな?」

僧侶「そうですねぇ、私はその前にお風呂に入りたいのですが」

勇者「えー先にたべたいよー!」

僧侶「わかりました。そうしましょうねー」

―街の酒場―


店員「へいらっしゃい。4人?」

戦士「おう。どうする? ほんとにたべてく?」

店員「うちのグリル肉はうまいよ。他の街からもわざわざ食べに来る客がいるくらいだ」

勇者「食べたい食べたい食べたい食べたい!」

戦士「いくら?」

店員「飲み物をつけて一人前68Gだよ」

戦士「高いな」

勇者「食べたい食べたい食べたい食べたい!」

僧侶「お金あんまりないですよ? 今晩の宿代もいるし・・・」

勇者「えーー!!」

魔王「しかたないです先に宿を探しましょうか」

勇者「うわーーーん!! お腹すいたっていってるのにー!」

戦士「貧乏旅なんだから我慢しろって。お前それでも勇者か・・・って私ら勇者だけど割引だめ?」

店員「ムリですね」



僧侶「いきましょうか。良い匂いでますますお腹すきますし」

店員「たべてってよぉ! ほんとおいしいから」

戦士「あーわかったわかった。また来るって(そのうち)」

魔王「お尋ねしたいのですが、この辺に手頃な宿はありますか?」

店員「そうだなぁ、大通りにはたくさんあるぜ」

魔王「ありがとうございます。では行きましょう勇者様」

店員「絶対きてね!」


勇者「ぶー」

僧侶「あはは、むくれてる勇者様可愛いですっ」ナデナデ

勇者「たべたかったのにぃ・・・はぁ、しかたないか・・・さよならグリル肉」

魔王「・・・」



・・・



―宿屋―


主人「いまから宿泊かい?」

魔王「えぇ、大人3人と子供1人です」

勇者「子供じゃないって!!!」

主人「じゃあ・・・小部屋二つでいいかい?」

魔王「え? あぁ、そうですね」

戦士「金かかるじゃん一部屋でいいだろ」

魔王「ですが・・・さすがに私と一緒は・・・」

戦士「いいんじゃねーの別に」

勇者「そうだよ! 魔王さん一緒に寝ようよ!」

僧侶「なっ!! それは絶対絶対だめです! 勇者様は私と一緒に寝るんですからー!!」

戦士「こいつに誤って抱きつかれたくないから別部屋ってのはありだな・・・」

主人「・・・どっちなんだい」

魔王「・・・すいません一部屋でお願いします」



―部屋―


勇者「ぼっすーん! わぁー! 久々のベッドだ!!」

戦士「きたねーからそのまま乗るなって」

勇者「ふかふかー・・・・・かな?」

僧侶「微妙ですね・・・まぁしかたないですこの値段ですから」

勇者「よし! 早速着替えてごはんたーべよ!」ヌギヌギ

魔王「・・・では私外にいますので」

勇者「えー?」ヌギヌギ

戦士「悪いな・・・やっぱ無理してでも二部屋したほうがよかったカナ」

魔王「いえいえ。どうぞごゆっくりお着替えください。終わったら声かけてください」

僧侶「はい。なるべく急ぎます」

宿屋の筋肉店主「どっちなんだい!!!」ムキッ!!



ガチャン

勇者「魔王さんどうしたの?」

戦士「おめーはもうちょっと女らしく振る舞いな」ペシペシ

勇者「いたいっいたいよ!」

僧侶「ププ、戦士さんが言うことですかそれ」

戦士「・・・毎回これじゃ魔王が不憫だ」

僧侶「それはそうですけど。私はそんなに気にしてませんよ?」

戦士「あっそ」

僧侶「戦士さんって意外と気をつかう人なんですね」

戦士「お前たちと違ってまともな神経してるから」

僧侶「女の子ですね」

戦士「うるせー!」

勇者「早く着替えようよ。魔王さん待ってるよ!!」

戦士「・・・うい」



・・・


魔王「さて、みなさん可憐な姿にお着替えおわったことですし」

戦士「それ皮肉か? なぁ?」

勇者「えへへ。服が軽いとなんだか気分も軽くなってくるね」

僧侶「おしりは軽くなっちゃいけませんよ? うふふ」ツンツン

勇者「?」

魔王「ゴホン、ではお食事にしましょうか」

戦士「時間が悪かったなぁ。宿の食堂もうしまってるみたいだぞ」

魔王「そうですか、では外で食べましょう。屋台があったような気がします」

僧侶「いいですね」

勇者「わーい!」

魔王「の前に」

勇者「?」

魔王「先に女性陣はお風呂に入られたほうがよろしいかと」

僧侶「・・・」クンクン

僧侶「そ、そうですね・・・・」

戦士「ご飯はちょっとの間おあずけな」

勇者「!!」ガーン

魔王「私のほうがだいぶあがるのは早いでしょうから、浮いた時間に何か適当に買っておきますよ」

魔王「上がった後、部屋でたべましょう」

僧侶「いいんですか!? ありがとうございます」

戦士「じゃあお言葉に甘えて。そうさせてもらおっかな」

勇者「おいしいもの買ってきてね!」

魔王「はい」


僧侶「それじゃ♪ 勇者様いきましょ♪」

戦士「風呂ずっと入りたかったんだよ」

勇者「スライムにやられちゃってべたべたのねとねとになったもんね」

僧侶「いやんっ勇者様」


・・・



カポーン



魔王(静かだ・・・実にいい)

魔王(人の生み出した文化の中で、私はもっとも風呂というものが気に入っている)

魔王(命の洗濯とはよくいったものだな)

魔王(悔しいものだ。魔界にも大浴場を建設しようと、工事に着手した矢先にこのザマ)

魔王(完成していれば一体どれほどの民が喜んだものか)

魔王(まぁしかたあるまい。私に力と人望が足りなかった、それだけのこと)


魔王「ふぅー・・・」


魔王「先に酒でも買っておけば良かったか・・・」


・・・


カポーン


勇者「ねーねー僧侶ー」

僧侶「はい?」

勇者「自分で洗えるから・・・・」

僧侶「勇者様のお体の管理は私のつとめ」

勇者「やだ」

戦士「あはは拒否されてるぞ」

僧侶「こうやってじっくり見ないと小さな傷を見逃してしまうかもしれません」

勇者「ないよー・・・」

僧侶「ほらありました。背中に擦り傷」

勇者「えー?」

戦士「さっき勢いよく鎧脱いだときについたんじゃねーの」


僧侶「ね?」

勇者「そんなちっちゃな傷放っておけばなおるから!」

僧侶「ホイミ」

ペロリ…

勇者「ひゃああ・・・っ!! も、もー!!」

僧侶「これすごく効くでしょ?」

勇者「スライムを思い出すからやめてよ」

僧侶「む・・・失礼な物言いですね・・・」

僧侶「えいお仕置きです」ペロッ

勇者「うわああ、やめてやめて! ねちょねちょは嫌いだから!!」

僧侶「私なんてどうせスライムですよーだ」ピトッ

ヌリヌリ

勇者「うあー、助けてください助けてください」

戦士「泣かなくても大丈夫だ。このスライムは殴ったら死ぬ」

魔王X新魔王はよ!




勇者「はぁ・・・はぁ・・・やっと解放された」

僧侶「んー、やっぱお風呂っていいですねー」

戦士「あぁそうだな。だけどお前がいると気が休まらねーよ」

僧侶「私戦士さんには何もしませんのでご安心を」

戦士「魔王には?」

僧侶「しませんよぉ。歳上趣味じゃありませんし。コブ付きにも興味ありません」

戦士「コブ付き・・・か?」

僧侶「あれくらいの歳だと普通そうじゃないんですか? 所帯染みてますし」

勇者「コブ付きってなに?」

僧侶「子供がいるってことですよ」

勇者「へー、魔王さんに?」

僧侶「そうです」

勇者「いないって言ってたよ! でも大人には秘密がおおいんだって!」

僧侶「へぇ。だとしてもなんら変わりませんけどね」


勇者「魔王さんは大人だなー」

僧侶「勇者様はお子様ですよね。可愛いですよー」ナデナデ

勇者「大人っていいなー・・・えへへ」

僧侶「・・・・え?」

戦士「は!(まさか・・・・)」

勇者「大人っていいよねー・・・」

僧侶「・・・・ほ、ほーら大人ですよ! みてみてここに大人がいますよー」

勇者「・・・うるさいなぁ」ペシン

僧侶「ひゃうっ、そんなとこぶっちゃヤです」

戦士「私も勇者くらいの歳のころは大人の人に憧れてたよ」

勇者「そうなの?」

戦士「自分に足りないものを持ってるじゃん? 渋さとか静かさとか、もちろん強さも」

戦士「だから本能的に求めてしまうっていうか・・・うんうん」

勇者「だよね! 早く大人になりたいよね!!」

戦士「ん?(あ、そっちか・・・)」

きんに君「どっちだとおもってたんだい!?」


僧侶「大人になりたいだなんて勇者様、自分が子供だって言ってるようなものですよ?」

勇者「あ!」

僧侶「うふふ」

勇者「お、大人なんてよくないなー! 大人なんてどうでもいい! 子供になりたい!!」

僧侶「勇者様は大人でも子供でもきっと勇者様のままですよ」ギュ

勇者「またくっつくー、暑いから離してよ」

僧侶「ここも早く大人になるといいですね」

ペトペト

勇者「あ゛ーーーやめてよーー!!」

戦士(私ら以外の客いなくてよかったな・・・・)

僧侶「まだまだ子供なんだから」

勇者「ちがいます16歳だから! 馬鹿にしないでください!! そこさわらないでください!!」

戦士(私が16歳のころは・・・・)

戦士(もうちょっと発育よかったかな・・・うんそうに違いない)

僧侶「見てください勇者様、あれ失礼なこと考えてる顔ですよ」


・・・・・



戦士「あぁーいい湯だったな。肩が軽くなった」

僧侶「いちいち婆臭いですよ」

勇者「お腹すいたよー」

魔王「みなさん早かったですね」

戦士「いやいやわりーわりー、コイツがいなければもっと早かったんだが」

僧侶「あ、人に指さしちゃだめなんですよ」

魔王「晩御飯買ってきてますのでいただきましょうか」

戦士「酒は!?」

魔王「安酒になってしまいましたが」

戦士「よっしゃ!」

僧侶「飲むんですか?」

戦士「飲むぜー! 僧侶はまだダメだっけ? じゃあ魔王、飲もう!」

魔王「では少しだけ」


僧侶「え、私もう飲めますよ!」

戦士「そうだっけ?」

僧侶「ふふん、知ってましたか? お城より東に位置する街では18歳以上で飲めるんですよ」

戦士「ふーん? じゃあ飲もうぜ」グビグビ


僧侶「これがお酒・・・」

魔王「どうぞ」

トクトク……

僧侶「ど、どうもすいません」

勇者「ばくばくもぐもぐ。この鳥の唐揚げおいしいね!!」

魔王「おいしいですね」


僧侶「くんくん・・・いい匂い・・・」

戦士「飲めよ聖職者」

僧侶「い、いきます・・・!!」

グビッ…


僧侶「!?」

戦士「くっく、なんつー顔してるんだよ」

僧侶「うあああー! 辛っ、ていうか喉が熱い!!」

魔王「どうぞお水です」

僧侶「うぅう・・・お酒ってなにがおいしいんですか?」

戦士「おこちゃまには早かったな」

勇者「いいなーいいなー。飲みたいなー」

戦士「だめ♪ これ私の♪」ヒョイッ

勇者「ずるいよー!」

魔王「僧侶さん、こっちの葡萄酒なら飲めるんじゃないですか?」

僧侶「あ、それがいいです!! うわぁ、綺麗な色・・・」

僧侶「くぴくぴ・・・ん、こっちは飲みやすいですね!」

魔王「ええ、私も飲んでみてびっくりしました。人間はお酒も料理もつくるのが上手ですね」

戦士「魔物は酒どうしてんの? 人からかっぱらうのか?」

魔王「いえいえ、きちんと輸入してますよ。ただ量は確保できないんですよね。贅沢品です」


戦士「たえらんねーなーそれは。生きる意味半減だぜ」

僧侶「それはまた嫌な人生ですね」クピクピ

戦士「お前こそ。私はガキんころから飲んでたぜ」

僧侶「・・・・べー、規律を守らない人は神のご加護を受けられませんからねっ!」

魔王「・・・とまぁ飲む経験のあるなしでかなり趣向のわかれるものですので、基本的には禁じております」

僧侶「当然です。お酒なんていいことないじゃないですか」

戦士「飲みながら言うなよ」

勇者「・・・・」

僧侶「どうしました勇者様。むくれてるんですか?」

勇者「・・・・」

僧侶「飲みます?」

勇者「いいの?」

僧侶「だれも見てませんから、ね」

魔王「僧侶さんはほんとうに神の使いですか?」

戦士「神もたまには手元が狂うこともあるんだろ」


勇者「・・・・」じー

魔王「そろそろ隠せなくなりましたね」

戦士「なにが?」

勇者「ねーねー、その包みは何?」

魔王「では勇者様のメインディッシュにしましょうか」バサッ

勇者「うわっ! わわ!!」

魔王「お気に召しましたか?」

勇者「グリル肉だー!!」

戦士「おー、金足りたんだ」

勇者「すごい!! いい匂いだよ!! おっきいよー!!」

魔王「どうぞ召し上がってください」

戦士「てかまじで金たりたの?」

魔王「ご心配なく」

戦士「・・・もしかしてわざわざ身銭切ったか?」

魔王「・・・そんなことはありません」


戦士「はぁ・・・あんたほんとなんで魔王やってたんだよってくらいいい奴だよ」

魔王「いえいえ。勇者様が喜んでくれたらそれで良いのです」

戦士「勇者ー、ありがたがって食えよな」

勇者「・・・」

戦士「どした? 食えよ、ずっと肉肉いってたろ」

勇者「みんなで食べよ」

戦士「え?」

勇者「4人でわけてたべる!!」

魔王「優しいですね勇者様は」

勇者「きっとみんなで食べたらもっとおいしいよ!」

戦士「・・・じゃあ遠慮はできないな」

魔王「ありがとうございます」

勇者「魔王さんありがとう! ほら僧侶も!!」

僧侶「あ゛?」

勇者「え・・・」


僧侶「おいチビッ子。うまそうなもんくってんな、ウィック」

勇者「えぇ!? どうしたの? 顔真っ赤だよ大丈夫!?」

戦士「あーあ・・・はじめてのくせに調子のってがぶがぶ飲むから・・・」

魔王「戦士さんは酔わないのですか?」

戦士「あんまりな。こんなふうに酔っ払うまで飲んだことはないや」

僧侶「おい、その肉よこせよ」

勇者「やだよぉー・・・僧侶の分ちゃんとあるからさぁ」

僧侶「は? たんねーだろうが?」

勇者「こわいよー戦士なんとかしてー! お酒臭いよー」

戦士「殴ったら気絶する。これは覚えとけ」

勇者「できないよぉ・・・」

僧侶「それよりも勇者様って・・・・そこらの肉なんかよりもおいしそう」カプ

勇者「うわあああっ! うわあああやめてよぉ!!」

魔王「・・・・すこし酔いがまわってきたようなので夜風にあたってきます」

戦士「・・・おう」


勇者「のらないで!! 降りてよ!」

僧侶「スライムの捕食~」

勇者「くさい! くさいからっ!!」

戦士「床でやんな。ベッド行け」

僧侶「それもそうですね、ウィック、ヒク」

戦士「私は外で飲もっと。それじゃおやすみ」

僧侶「おやすみなさ~い♪」

勇者「ぎゃああ! おいてかないでよー! ひとりにしないで!」

僧侶「私がいるじゃないですかぁ。今晩も私と寝ましょうねぇ?」

勇者「まだ寝ないし!! 夜はこれからだもん!」

僧侶「あら勇者様、お体火照ってますねぇ・・・お酒飲み過ぎですよ?」

勇者「飲んでないもーん!」ジタバタ

僧侶「うふふふ・・・・暴れちゃほかのお客さんの迷惑ですよ?」

勇者「・・・・うぅ」



―外―


戦士「うっす」

魔王「お二人は?」

戦士「邪魔しちゃ悪いんでー」

魔王「そうですか・・・少し不安がよぎりますが」

戦士「大丈夫大丈夫。ずっとあんな感じだから」

魔王「仲がいいのは結構なことだとおもいます」

戦士「はは、あいつら姉妹みたいだろ? 私は自分にそう言い聞かせてる・・・」

魔王「・・・・」

戦士「ま、続きだ。飲もうぜ」

魔王「いえ、私はもう」

戦士「なんだよー、美女の酒を断るのかよー」

魔王「・・・わかりました、いただきましょう」

戦士「うんうん」


戦士「外のほうが月が見えていいな」

魔王「えぇ、そう思います」

戦士「なんか贅沢だ」

魔王「そうですね、美女とふたりきりで飲むなんてこの先なかなかありません」

戦士「・・・なーんかむかつくな」

魔王「すいません」

戦士「ま、いいや。ほれもう一献」

魔王「戦士さんはなぜ旅をされているのですか?」

戦士「んー、もともとは小さい村の守備隊やってたんだけどさ」

魔王「お辞めになったのですか?」

戦士「いやー・・・なんていうか、その」

戦士「・・・・村ごと壊滅しちゃってさ。そのまま仕事もなくなっちゃったのよ」

魔王「・・・・」

戦士「魔王も魔物も、許せなかったよ。私らの敵だ」

魔王「・・・・私ごときの首でよければ」


戦士「いやいいんだ。あんたの首もらっても仕方ねぇよ」

魔王「そうですよね・・・」

戦士「んでそっからしばらくさすらうようになって、流れ着いた街で賞金稼ぎしてたらあいつの目にとまったってトコかな」

魔王「なるほど・・・」

戦士「いやー昔話は気恥ずかしいな! なんで話したんだろう。酔ってるんだきっと」

魔王「ただ復讐で旅をしているわけでは、ないのですね?」

戦士「うん・・・そんな旅、もったいないだろ」

戦士「たくさん楽しいこともあるはずなんだから、目一杯楽しめたらいいなって思ってる」

戦士「簡単に過去を切り捨てることはできないけど、それに引きずられて未来まで潰しちゃだめだ」

戦士「勇者に出会って、そう思えるようになったよ」

魔王「大変良い心がけだと思います」

戦士「あんたもいまこうしてここに居るってことは、そりゃぁ私の頭じゃいくら考えても追いつかないほど、いろいろあるんだろうよ」

戦士「でもさ、しっかりと未来を見据えていれば、きっと大丈夫・・・」

魔王「未来ですか・・・」

魔王(私の未来・・・明日を生きる糧もない私の未来とは・・・・)


戦士「まだだいぶ旅は続くだろうし、ゆっくり考えればいいんじゃねーか」

魔王「そう・・・ですね・・・」

戦士「私ならいつでも相談にのるよ」

魔王「ありがとうございます」

戦士「だから私の相談にものってくれよな。ていうか愚痴につきあって」

魔王「えぇ、いつでも」

戦士「そんじゃ、そろそろ戻るか。あいつら寝てるといいんだけど」

魔王「はい」

戦士「あ、それとさ」

魔王「なんでしょう」

戦士「酔った勢いで襲うなよ♪」

魔王「ご心配なく」

戦士「・・・枯れてんのかぁ? それとも魔族ってそんなもん?」

魔王「私からすればみな娘のような歳ですので」

戦士「いねーくせに・・・」


  <⌒/ヽ___
/<_/____/

戦士の昔語りと
>魔王「私からすればみな娘のような歳ですので」
>魔王「はぁ・・・・家族がいないのが唯一の救いか・・・」
から、魔王の娘か息子を含む家族が人間に殺されてるフラグが立ってる気がした



――朝――


戦士「おーい起きろー」

僧侶「ムニャ・・・zzz」

勇者「う゛~ん・・・ぅーん・・・」

戦士「だらしねぇ格好で寝やがって」

魔王「・・・」

戦士「ほら、早く起きねーと魔王に襲われちゃうぞ」

僧侶「うにゃ・・・ふぁ・・・zzz」

勇者「う゛~~・・・」

魔王「勇者様。朝食の準備ができてるそうです」

勇者「・・・」ムクリ

戦士「おはよ。よく眠れたか?」

勇者「・・・・うん」

僧侶「キャンッ・・・どこさわってるんですかぁ・・・えへへ・・・zzz」


戦士「おーい、起きろお」ペシペシ

僧侶「うぁ!?」ムクッ

僧侶「・・・・朝ですか」キョロキョロ

勇者「おはよう僧侶」

僧侶「おはようございます。あれ、いつのまに寝たんだろう。ていうかなんだか頭が痛いです」

勇者「・・・」

戦士「飲み過ぎだばーか」

魔王「ゴホン、ではちゃんと服をきたら食堂へ向かいましょうか」

僧侶「服・・・・まぁ!」

戦士「まぁ!じゃねぇよ・・・さっさと着替えろ。素裸一歩手前じゃねーか」

僧侶「ど、どうしてこんなことに・・・はっ! 勇者様のケダモノ!」

勇者「ち、ちがうよぉ! 魔王さんきいて僧侶が昨日の晩ぎゅうううってね」

魔王「わかりましたわかりました後で聞きますから、ほら。着てください」

勇者「ありがとー」

戦士「お前らはもう少し恥ってものを知れ」

勇者「・・・はじ?」

僧侶「え? 仲間じゃないですか」

魔王「・・・」

戦士「仲間とは言えだな、さすがに魔王に失礼だろ」

僧侶「あ、そ、そうでした。きゃあ見ないでくださいっ」

戦士「なんだそのとってつけたようなポーズ」

魔王「・・・では先に行ってお待ちしております。勇者様、ちゃんと顔を洗うんですよ?」

勇者「はーい」モソモソ

戦士(まるでお守りだな・・・間違っちゃねぇけど)


僧侶「うー、昨日の記憶があんまりありません」

戦士「そりゃああんだけ飲んでたからな」

僧侶「私なにかしでかしました?」

戦士「一目瞭然」

勇者「ずっとスライムのマネしてたよ」


僧侶「スライムのマネですか・・・」

勇者「・・・」じー

僧侶「なんでしょう」

勇者「戦士のいったとおりにしたら助かったよ」

戦士「殴ったのか」

僧侶「え? え?」

勇者「僧侶なんてしーらないっ。いこ、戦士」

僧侶「えっ! ちょっとまってくださいよ! なんのことやらさっぱりなんですが」

戦士「お前はとうぶん酒禁止だ」

僧侶「そんなぁー」

勇者「許してあげないから!」

戦士「相当ひどいことしたんだな」

僧侶「うぅ・・・お酒は魔物です・・・」



―食堂―


魔王「ではつぎの進路について、検討しましょうか」

戦士「この街には滞在しねーの?」

僧侶「お買い物とかしたいですねぇ?」

戦士「金ねーよ」

勇者「もぐもぐ。もぐもぐ」

僧侶「ソーセージ一本あげますね。あとグリーンピースもあげましょう」

勇者「いらないよ? ・・・いらないからのせないで!!」

僧侶「あははいっぱい食べて大きくなるんですよ」ナデナデ

戦士「で! どうすんだよ聞いてんだろ」

魔王「北にまっすぐ進んで山を越えるか、西の平野を横切って迂回するか」

魔王「どちらにせよ目的地は一緒です」

勇者「どこにむかってるんだっけ?」

僧侶「港街ですよ。そこから船にのってお隣の島へ行くんです」


勇者「船かぁ。乗ったこと無いから楽しみだなー」

僧侶「すっごい揺れるらしいですよ」

魔王「滞在費がないので今日中にここをたつことになりますね」

戦士「来てすぐバイバイって寂しいなぁ」

魔王「ここには大衆娯楽が多そうですからね」

勇者「いいよ。勇者だもん! いこ!」

僧侶「ですね。遊びにうつつを抜かしてる場合ではありません」

戦士「・・・だな」

魔王「勇者の鑑ですね」

僧侶「え? はいけどお金があったら遊んでましたよ。ねぇ?」

戦士「・・・お前はほんとに俗な奴だな」

僧侶「あたりまえじゃないですか! 私たちくらいの歳で旅をしてる人なんてそういませんよ」

僧侶「女の子はいっぱいおしゃれして遊ばなきゃ」

戦士「そうかいそうかい。おしゃれじゃなくて悪かったね」


魔王「いえいえ、戦士さんの普段着も可愛らしいですよ」

戦士「・・・ほんと口ばっかだな」

僧侶「なにてれてるんですかぁ♪」ツンツン

戦士「照れてねーよ!」

魔王「それで、どうしましょうか?」

僧侶「ここは勇者様にきめてもらいましょう。ねぇ勇者様」ユサユサ

勇者「? もぐもぐ」

戦士「近道か遠回りかどっちがいい?」

勇者「近道! だってそのほうが早くつくし!」

戦士「だとさ」

魔王「確かに山を越えるのは近くていいんですが」

戦士「が?」

魔王「山に生息する魔物は少々凶暴ですので・・・危険も多いかと」

戦士「いい修行になるじゃん! そろそろ剣の腕をあげたかったんだ」

僧侶「そうですよ! 山ごもりです!」


魔王「そうですか、なら良いのですが」

勇者「魔王さんがいたらなにかあっても大丈夫だよね!」

魔王「いえいえ、私なんてもはやなんの力も影響力もないただの一魔物ですよ」

勇者「そうなの?」

戦士「せめて攻撃魔法がつかえればなぁ」

魔王「申し訳ないです。杖があればまだ少しは・・・」

戦士「なんでないんだよ」

魔王「この島へ来るときに路銀に変えてしまって」

戦士「はぁ・・・貧乏は罪だぜ」

僧侶「魔王さんは魔王だったのにお金なかったんですか?」

魔王「魔王は失脚すると財産を没収されてしまいますから」

僧侶「ひどい話ですね」

魔王「まぁしかたないですよ。いままでもそうしてきましたから」

戦士「大変なんだなぁ魔物の国も」

勇者「もぐもぐ・・・」



・・・


主人「おや、出発かい?」

魔王「はい。一晩お世話になりました」

主人「昨晩はおたのしみだったかい?」

魔王「え・・・」

主人「ヤルネェ! 若くて綺麗な娘っ子3人もはべらして」

魔王「んん、ゴホン。いえいえ、そういった間柄とも違いますので」

主人「ま、がんばりな。あんたらの旅応援してるぜ」

魔王「どうも」ペコリ


勇者「魔王さーん! はやくはやくー!」

魔王「はいはい、いまいきますとも。走らないでください」

勇者「グリル肉おいしかったよね! またたべにこようね! 絶対だよ!!」

魔王「えぇ、その日をたのしみにしています」



――山奥――


勇者「うすぐらいねー」

魔王「かなり深い森のようです。足元に気をつけてください」

戦士「こんなとこで敵におそわれたらたまんねぇなぁ」

僧侶「そうですね。とくにスライムとか」

勇者「スライムはやだよー。逃げようよー」

魔王「おや、近くにすでにひそんでいるようです」

勇者「えーー!?」


▼まもののむれが現れた


勇者「やっつけるよ!!」

魔王「右がグリズリー、左がキラーエイプといいます」

戦士「よっしゃ! 私じゃあ熊のほう。勇者は猿な」

勇者「うん!」


魔王「グリズリーは非常に力が強く、動きも機敏です。気をつけてください」

戦士「わかった」

熊「グルルルル」

魔王「勇者様、キラーエイプはグリズリーほどの力はないですがその分ずる賢く、奇抜な動きをしますので十分ご注意を」

僧侶「って勇者様!」

勇者「あー・・・つかまっちゃった!」

猿「ウキキィ! ウキャウ!」

戦士「おい馬鹿! なにやってんだ!!」

勇者「たすけてー・・・すごい力でふりほどけないよ・・・」

僧侶「今助けます!!」

熊「グルルルル」

僧侶「う・・・邪魔しないでください!!」

戦士「くそう。どきやがれ!」

魔王「まずいですね・・・捕まったということは・・・」

猿「ウキ・・・!」ピョンピョン


勇者「あ゛ーーーどこいくのーー!!」

猿「ウキャキャキャキャ」

僧侶「勇者様ぁー!」

戦士「ばっっかぁ・・・」

魔王「案の定つれていかれましたね」

戦士「案の定って! なんなんだよてか熊てめぇ邪魔!」

ズシュ

熊「クマァァァァアア!!」

僧侶「どうしましょうどうしましょう」オロオロ

魔王「私が後をおいかけます」

戦士「おいつけんのかよ。こんな深い森じゃどこいったかもわかんねーぞ」

僧侶「勇者様が殺されちゃいますっ!!」

魔王「それは・・・たぶん大丈夫だと思うのですが」

僧侶「どういうことでしょうか」グス


魔王「・・・繁殖期のキラーエイプはときおり人間の♀をつかまえて」

僧侶「赤ちゃんの餌にでもするんですか・・・?」

魔王「交配相手にするとききます。ボスに献上することもあるそうです」

僧侶「こう は・・・」ブクブク

戦士「お、おい! どこが大丈夫なんだよ!!」

魔王「ですから殺される心配はあまりないという意味で」

戦士「ふざけんななんで冷静なんだよ」

僧侶「勇者様が・・・・猿に・・・・」ブクブク

魔王「ひとまず僧侶さんを頼みます」

戦士「お、おう」

魔王「ここの場所を覚えておきますので、できるだけ動かないでくださいね」

僧侶「アハハ・・・勇者様が下劣な猿に・・・」

戦士「だ、大丈夫だって! きっと・・・たぶん・・・おそらく・・・」


魔王(無事だといいのですが・・・・)ヒュン ヒュン


魔王(無事だといいのですが・・・・)ヒュン ヒュン

転移魔法使ってるのかな?



・・・


猿「ウキャッ」ポイッ

勇者「いたっ。なんなのーもう!」

猿達「・・・・ウキャキャ」

勇者「うわっ、お猿がいっぱい!」

猿達「ウキャウキャウキャ!」

勇者「こ、こんにちは・・・」

猿達「ウキャキャウキャキャウキャキャ!!!」

勇者「もりあがってるね・・・・・・?」

勇者「うーどうしよ・・・」

ボス猿「ウキャア!(おいてめぇら)」

猿達「キャウ!(ボス!)」

ボス猿「ウッキャアアー(俺様の花嫁探しは順調か?)」

猿A「キャウ!(私めが見つけてきました!)」


ボス猿「キャウ?(ほぅ、見せてみろ)」

猿A「ウッキャア!(これです)」

勇者「・・・お、大きいお方ですね。こんにちは・・・」

ボス猿「・・・・」

猿A「ウキャアア(お気に召しませんか?)」オロオロ

勇者「・・・・」

ボス猿「・・・・・」

勇者「顔すごくおおきいね」

ボス猿「・・・・」

猿A「ウキュウ・・・(申し訳ございません、では私どもの方で処分を)」

ボス猿「ウキャアアアアア!!(なんとスバラシイ!!)」

勇者「? 急になんなのうるさいよ!!」

ボス猿「ウキャクキャア(よくやった! まさに理想を超えた花嫁だ!!)」

猿A「キャキャキャウ!(ありがとうございます!)」

勇者「うきゃうきゃ」


ボス猿「・・・・///」

勇者「どうしたの?」

ボス猿「ウキャウ・・・(あまり熱いまなざしを向けないでおくれ・・・)」

勇者「食べるの? やだよー! 食べてもおいしくないよ!!」

ボス猿「ウキュキュウ(ああ、なんとも愛らしい仕草・・・)」

サワサワ

勇者「げっ、さわらないでよ!! 猿って手洗ってる!?」

ボス猿「ウキュウ(なんとまぁか細い腕・・・握りしめたら折れてしまいそうだ)」

勇者「なんか変な臭いするなー・・・おえー」

ボス猿「ウッキィ(我々にはない白い肌・・・絹のような毛・・・美しい)」

ボス猿「クンクン」

勇者「かがないでよ」

ボス猿「ウキュウ(そしてこの匂い・・・こんなに心おどらされる匂いはじめてだ)」

猿A「ウキョオオウ(ボスは♀にモテませんもんねー)

ボス猿「ウギィウキャキャ!(黙れ! だからこうして花嫁を集めさせているんだろ!! よくやった!!)」


勇者「これからどうなるんだろ・・・」

勇者「ばらばらにされて食べられちゃうのかな・・・」

ボス猿「・・・ウキュ/// (あまりの美しさに直視できん///)」

猿B「ウキャォオオ(ボス! これから交尾するってのに何いってるんですか)」

猿C「ウッキィウッキィ!(交尾!交尾!)」

ボス猿「ウキュ・・・(ま、まて・・・・心の準備が・・・)」

猿D「ウキャーーオオ(その前に体を清めるべきだとききました!)」

猿A「ウキ?(なら花嫁も?)」

猿B「ウッキュウウ!(さらにその前に婚約を交わす必要もあると聞きました!)」

ボス猿「ウキュウウ・・・(なるほどなるほど)」カキカキ

勇者「なに書いてるの?」

ボス猿「ウギギ・・・(婚約、お清め、交尾、出産・・・と)」

勇者「変な字だね。あはははは!」

ボス猿「ウキュ・・・(何を言っているかはわからんが・・・笑ってる顔も美しい・・・)///」

勇者「魔王さんたちのとこにもどりたいなー」

>>264
木から木に飛び回ってるんじゃね?
さらわれた場所知らないし転移魔法は使えないんじゃないか


老猿「ウッキィウキキ(ボス、勇気をだすのじゃ)」

ボス猿「ウギュギュギュウ(・・・う、しかしだな・・・こう緊張しては)」

老猿「キャッキャウウ(それでも群れの長か! さぁ、歩み寄って)」

勇者「・・・どうして怒ってるの?」

ボス猿「・・・」ジッ

勇者「怖いよ・・・」

ボス猿「ウギュウウ(・・・す、すきです)」

勇者「くさいよ・・・」

ボス猿「ウキャアア!!(人目見た時から好きでした! 花嫁になってください!!)」

ボス猿「・・・ウキャ(言った・・・言ったぞ・・!・)」

猿達「ウキョオオオオオオオ!!(結婚!結婚!交尾!交尾!)」

勇者「うるさいなぁ。つばとんでるよ!」

ボス猿「・・・ウキウキキ(爺、お前人間の言葉わかるだろ。なんて言った?)」

老猿「・・・ウッキュウウキュウ(私も愛しております・・・と申しておりました)」

ボス猿「ウッキュウウ!(本当か!! やった! やったあああああ!!)」


猿達「ウキョオオオオ!!!」

パチパチパチパチ

勇者「ん!?」

猿A「ウキョオオ!!(祝え祝え!! 木を叩け! 土を踏みならせ!!)」

猿B「ウッキイイイ!(我々の群れにもついに花嫁がやってきた! 記念すべき日だ!!)」

ボス猿「ウギギ・・・(お前ら・・・ありがとうな・・・)」グスッ


勇者「?? なんで泣いてるの?」

ボス猿「ウキョオオウ!(さぁ次は清めの儀だ!)」

猿A「ウギイイ!(温泉の準備は万全です!!)」

ボス猿「ウキ・・・ウキュキュウ(うむ・・・ではまいろうか、花嫁よ・・・)」

ダキッ

勇者「ぎゃっ! なになに・・・?」

ボス猿「ウキューー(・・・愛してるよ)」

勇者(僧侶、戦士、魔王さん・・・いまどこにいるの?)


・・・


勇者「温泉だ・・・」

チャプリ

ボス猿「ウッキィ(さ、さぁ・・・くるのだ)」

勇者「・・・」キョロキョロ

猿達「ウッキィ!ウッキィ!(清め!清め!)」

勇者「なんなの・・・? 洗って食べる気・・・・?」

老猿「服、ヌグ。ハイル。ハヤク」

勇者「えっ!? え!? しゃべれるの?」

老猿「ハヤク。ボス、マツ」

勇者「・・・うぅ、やだよぉ・・・」

老猿「ハヤク!」

勇者「えーーーん!」


魔王「大きな音がしたからきてみれば・・・やっとみつけましたよ・・・」


ボス猿「!!」

老猿「あ、貴方様は!!」

勇者「魔王さん! 魔王さーん!」

魔王「無事ですか?」

勇者「大丈夫だよ! 危うく茹でて食べられるとこだったけど!」

魔王「返してもらいましょうか」


ボス猿「あ? なんだ貴様・・・俺らの言葉がわかんのか?」

魔王「えぇ、まぁ」

ボス猿「はんっおもしれぇ、俺の花嫁を横取りしよってのか」

猿A「さっきのヘナチョコ野郎め・・・ケケ、帰れ帰れ! もうこのメスはボスのものだ」

猿B「そうだぞ! 誓いの儀まですんでるんだ!! てめぇの物にはならねぇよ!」

魔王「なるほど・・・少々厄介ですね」

ボス猿「これから俺はこの子と交尾する。てめぇをぶち殺したあとでな!!」


▼キラーエイプたちがおそいかかってきた


老猿「や、やめんか・・・」

ボス猿「おらっ、死ねぇ!!」ブォン

猿A「惨めな姿をさらせぇ!!」グワッ

猿B「ボスの嫁さんにいいとこみせるぜ!!」ヒュン


勇者「魔王さん・・・」

猿C「ウキュキュ(あなたはこっちの安全な場所へ・・・)」

勇者「さ、さわらないで!」ベシッ

猿C「ウギャウッ!」


魔王「なるほど・・・なかなか統率された動き・・・たいしたものですね」

ボス猿「ひゃはは! これでもこの辺一帯を仕切ってるからよぉ俺は!」

魔王「ですが・・・ッ」

ボス猿「さっさとくたばったほうが楽だぜぇ!!!」ブォン



老猿「やめんか馬鹿者ども!!!!!!!」

ボス猿「!!?」

猿達「!!」


魔王「・・・」

老猿「おお・・・お懐かしゅうございます・・・」

魔王「あなたは」

ボス猿「どうした爺!! 略奪者なんてぶち殺して当然だ!!」

老猿「あ、あほぅ! 言葉を慎めい!」

ボス猿「・・・ど、どうしたっていうんだよ。爺が怒るなんて普通じゃねーぞ」

老猿「こ、このかたは先代の魔王様であらせられるぞ!!」

ボス猿「!!?!」

猿達「キャウー!?!?!?」

勇者「ねーねー魔王さん、どうしたの? 大丈夫?」

魔王「大丈夫ですよ」ナデナデ


老猿「お姿拝見できてなによりでございます。長年支持しておりました」

ボス猿「あんたが魔王だって・・・?」

魔王「『元』ですが」

老猿「このかたはな、最初に魔の国の改革を打ち出した偉人なのじゃぞ」

魔王「夢なかばの失脚で、申し訳ない・・・」

老猿「きゃつらめが悪いのです。卑怯にも魔王様を陥れた」

魔王「まぁ、それほどまでに私の政策には敵が多かったということでしょう」

ボス猿「じゃああんた、いま何してるんでぇ」

魔王「ぶらり、彼女たちと旅を」

勇者「魔王さんがウキャウキャ言ってる・・・」キョトン

魔王「それで、失礼を承知で、彼女を返してほしく思うのです」

ボス猿「・・・そ、それは・・・・・・えっと・・・」

勇者「ふぁー・・・お腹すいたなー」

魔王「どうか頼みます・・・」

老猿「ぎゃあああ頭なんて下げないでください!! ボス! さっさとお返しするのじゃ」


ボス猿「うぅ・・・俺の愛しの花嫁・・・」

猿A「うおおおんボス、可愛いそうだ」

猿B「でも元魔王様の言うことならしかたない・・・」

ボス猿「・・・・」ショボン

魔王「申し訳ない。彼女は私たちにとって、とても大切な人なのです」

老猿「さぁ・・・別れを告げるのじゃ」


勇者「・・・?」

ボス猿「うきぃ・・・ウキュキュン(やぁ・・・・・・つかの間の、幸せだったよ)」

勇者「なに?」

ボス猿「ウキュウウ(この先、君と愛し合えたら、どれほど嬉しいか・・・ッ! でもッ!)」

勇者「なんで泣いてるの?」

ボス猿「ウオオオオ!(さようなら! さようなら!! 我が愛しの花嫁!! 幸せになるんだぞ!!)」

勇者「顔何回みても慣れないなぁ・・・」


ボス猿「魔王さま! 旅のご武運、我らキラーエイプ一族一同、お祈りしています!!」

魔王「・・・いきましょうか」

勇者「え、もう行っていいの? なんで?」

魔王「説得して解放してもらいました」

勇者「ふぅーん? すごいや魔王さん! ウキャウキャ言ってた!!」

魔王「彼には悪いことをしましたね。部外者が掟に介入してしまった」

勇者「ねぇねぇ、結局なんだったの?」

魔王「あなたが可愛いからいけないのですよ」ナデナデ

勇者「え? えへへ?」

ボス猿「・・・」

勇者「ん? さよなら! ちゃんとお風呂入らなきゃだめだよ!」

ボス猿「・・・」スッ

勇者「? くれるのー?」

ボス猿「・・・///」コクッ

勇者「ありがと!」


▼かわのこしまきを手に入れた



・・・


勇者「おーい僧侶ー! 戦士ー!」

戦士「!」

僧侶「ゆゆゆっ、ゆうしゃさまぁああ!!!」

ガバッ

勇者「きゃうっ」

僧侶「あぁよかったぁ・・・ご無事ですか!? ひどいことされてませんか!!?」

勇者「魔王さんが助けてくれたよ」

魔王「えぇ、危うく・・・いえ、なんでもありません」

戦士「はぁー、こいつ隣でずっと泣いててさぁ。大変だったよ。敵には襲われまくるし」

僧侶「びええええん勇者さまぁあああっ・・・あ、なんか臭いですー」

勇者「ごめんね! 心配かけてごめん!」ナデナデ

僧侶「ひっぐ・・・ほんと・・・・・・うぅっ、うっ・・・・くさいです・・」バタッ

戦士「うわお前ほんとにくさいな。猿の臭いするわ」


勇者「これお土産にもらったよ!」ヒョイ

戦士「なんだよそれだな」

勇者「うーん、腰巻?」

魔王「おそらく勇者様に着せるものだったのでしょう」

勇者「え、なんで?」

魔王「まぁ、いろいろ風習がありまして。花嫁衣裳といったところでしょうか」

戦士「お前なー危うく猿の仲間入りするとこだったんだぞ」ツンツン

勇者「へぇー」

魔王「それを笑顔でうけとったということは・・・」

勇者「?」

魔王「いえ。なんでもありません・・・」

戦士(もうこねーほうがいいよな・・・)

僧侶「う゛~~ん・・・勇者さまぁ・・・」

勇者「なんだかよくわからないけど・・・これは戦士にあげるね!」

戦士「いらねー!!」



・・・


僧侶「すっかり夜更けですね」

魔王「食べ物もまだ確保できてませんし、寝床もありません」

戦士「まいったなぁ・・・」

勇者「うぅー・・・」

僧侶「勇者様はくさいし、ご機嫌斜めでうーうー言ってるし・・・困りましたねぇ」

魔王「そうですね、せめて一息つけるところがあればよいのですが」

戦士「日がくれてから敵との遭遇もおおいぜ・・」

魔王「夕飯時ですからね」

戦士「おいおい・・・こえー事言うなよ」

勇者「うーーー」

僧侶「はいはい勇者様。おんぶしてあげますね。よいしょ(う、臭い・・・)」

戦士「甘やかすなよー」

勇者「今日はつかれた・・・眠い・・・お腹すいた・・・」


戦士「ん。明かりが見える」

僧侶「誰かいるのでしょうか。他の旅人とか・・・?」

魔王「行ってみましょう」

戦士「おいおい大丈夫かよ」


ガサガサ

僧侶「わぁ・・・!! 焚き火!」

戦士「お! みろよ! そっち温泉だぜ!」

魔王「・・・」

僧侶「ほんとですか!? 勇者様! おきてください! お風呂ですよ!」

勇者「んぅー・・・・お腹すいた」

戦士「し、しかもご丁寧に飯までおいてあるぜ!」

勇者「ごはんだー!」

僧侶「おかしいですね、やっぱり誰かいるのでは・・・?」

魔王「・・・」

戦士「でもみてると腹減ったな・・・」

僧侶「うぐ・・・そうですね・・・おーい誰かいませんかー?」

勇者「たべたいな! たべていいのかな!?」

魔王「・・・ふふ、大丈夫でしょう。いただきましょう」

僧侶「え? いいんですか?」

戦士「誰か持ち主いるんじゃねーの? 勝手に食べたら怒られるぞ」

魔王「どうやら、私たちのために用意してくれたようです」チョイチョイ

僧侶「なんですか? 下?」

勇者「あー! 猿の字だ! あははは変なのー」


  『 どうぞごゆっくり -キラーエイプ一同-』



魔王「ありがたいことですね」

戦士「わたしら・・・歓迎されてんの?」

僧侶「勇者様お猿と仲良くなったんですか?」

勇者「もぐもぐ♪」



・・・


勇者「よーし!」ヌギヌギ

魔王「・・・」

戦士「わわっお前な! そのいきなり脱ぎだすのやめろ」

僧侶「ご飯も終わりましたし、早速入りましょう! 私天然の温泉なんてはじめてです!」

戦士「こ、こらっ・・・」

魔王「それではしばらく外します。火の番でもしてますよ」

戦士「わ、悪いないつもいつも・・・」

勇者「・・・」キュ

魔王「どうなさいました?」

勇者「魔王さんも一緒に入ろうよ!」

戦士「はぁ!?!?」

魔王「えっと・・・それは・・・」

勇者「だめなの?」


魔王「だめというか・・・なんというか・・・」

僧侶「うふふ・・・私は全然いいんですよー?」

魔王「あなたはもうすこし恥じらいがあったほうが良いかと・・・」

僧侶「だって私たち仲間じゃないですか!」

勇者「そうだよそうだよ! 魔王さんだけいつも一人なんてだめだよ!」

魔王「はぁ・・・」

戦士「・・・じゃ、じゃあさ・・・勇者と僧侶と魔王で入れよ・・・」

勇者「だめです!」

僧侶「戦士さん!」

戦士「だって・・・なぁ?」

魔王「あはは。すごく神経が磨り減りそうですね」

勇者「これは勇者命令です!」

戦士「でたよ・・・そういうのわがままって言うんだぞ?」

魔王「仕方ないですね・・・」

勇者「いいの・・・? やったあ!!」



――温泉――


戦士「うお・・・(濁っててよかったぁ・・・)」

僧侶「あったかーい」

勇者「魔王さんまだかなー?」

僧侶「いい年して何恥ずかしがってるのやら」

戦士「ふつーだふつー」

僧侶「あ、でももし魔王さんがもしケダモノになったら私勇者様をお守り通せるかわかりません、きゃー!」

戦士「あーはいはい。大丈夫だから、ほらちゃんと肩までつかれって」グイッ

僧侶「やめてください! 手冷たいですよ」

戦士「 つ か れ ! 」

僧侶「な、なんなんですか・・・どうして戦士さんそんなに必死なんです」チャプン

勇者「気にしなくていいのにねぇ?」

僧侶「そうですよ。あの人枯れてるでしょ」

戦士「・・・」



魔王「どうも、枯れてて申し訳ございません」

勇者「あ! 魔王さん!」

僧侶「こっちですよー。いいお湯ですよー」

戦士「ばかあがるなっ!」グイッ

ザプン

僧侶「・・・うー」

魔王「ははは。美女と湯けむりとは、長生きするものですね」

戦士「いうほど大した歳じゃねーだろうに」

勇者「こっちきて! 隣きて!」

魔王「ふぅ、いいお湯ですね」

僧侶「お猿が使ってるんでしょうか?」

魔王「彼らは身を清めるときにしか使いませんので、普段は綺麗に保たれているんでしょうね」

戦士「・・・助かったよ。あんたがいて良かった」

勇者「ほんとだよー! あやうく食べられてるとこだった!」


魔王「この辺りは旧政党の熱烈なシンパが多いようですね。私もずいぶん助かりました」

戦士「な、なに!? しんぱ?」

魔王「いえ、ひとりごとです」

僧侶「みてみてーお肌つやつやですー」

勇者「すごーい!」

僧侶「勇者さまもつやつやー、ほれほれー」

勇者「きゃんっ、くすぐったいよぉ」

魔王「・・・」

戦士「・・・むむ」

魔王「戦士さんもお綺麗ですよ」

戦士「う、うるせー、見てんじゃねーよ」

魔王「これは失礼。ですがこう前左右を囲まれていては・・・どうしても目のやり場が・・・」

勇者「なんだかこうしてると家族みたいだね!」

魔王「家族・・・?」

勇者「家族でお風呂にはいったらこんな感じなのかなぁ?」


魔王「家族ですか・・・」

勇者「うん! 僧侶がお姉ちゃんで」

僧侶「お姉ちゃんですよー、こちょこちょ」

勇者「あははっ、で! 魔王さんがお父さんでしょ?」

魔王「・・・お父さんですか」

勇者「で! 戦士がー」

戦士「あ! や、やめろって! それは言うな!!」

勇者「え?」

戦士「・・・・」

僧侶「じー」

戦士「のぼせたからもうあがる!! じゃあな! ごっゆくり!!」

僧侶「プッ・・・戦士さんったら」

魔王「・・・・」

勇者「怒らせちゃった?」

僧侶「いえいえ。あの人恥ずかしがり屋さんなんですよー困った人ですねー」

魔王と戦士はくっついて欲しいな
僧侶と勇者は……どうでもいいやw


魔王「勇者様は、本当のご家族はどうなさっておられるのですか?」

勇者「うーん・・・」

僧侶「勇者様は南の果ての村で生まれ、ずっと一人ぼっちだったそうです」

魔王「両親はいないのですか」

僧侶「はい、そう聞いています。教父をやっていた私の叔父上様が幼い勇者様をひきとり、育てました」

僧侶「でもその叔父も病床に伏し、亡くなったのがもう3年も前」

僧侶「それ以降行方をくらました勇者様をずっと私は探していてですね」

魔王「そうですか・・・」

僧侶「ようやく情報をもとにみつけたんです」

勇者「ご飯たべてたら急にバーンっておしかけてきたんだよ!」

僧侶「心配してたんですよ?」

魔王「その三年の間はなにをなさっていたのですか?」

勇者「森で動物たちと暮らしてたよ!」

僧侶「・・・だから少し、その・・・ね? 知能が・・・」

勇者「失礼しちゃうなぁ!!」


魔王「なるほど、森暮らしですか」

魔王「いやいや、このお年にしては妙に知能と身体能力の成長がちぐはぐだと思ってたんです」

僧侶「でしょ!? だから私は今一生懸命お勉強をおしえてるんです」

勇者「きらいだよー、頭いたくなっちゃう」

魔王「私も教えられることは全てお教えしましょう」

勇者「え~~!? やだよー」

僧侶「よかったですね! 勇者様は強く賢くなきゃ!」

勇者「・・・う゛ー、魔王さーん」

ピトッ

魔王「う・・・」

勇者「僧侶ったらね、勉強おしえるときは厳しいんだよ?」

魔王「そ、そうなんですか?」

勇者「答えがわかるまでご飯抜き! なんていうの!」

魔王「それだとしつけですね」

僧侶「一番効果的でして・・・あはは」


勇者「魔王さんは優しく教えてくれるといいなー?」

キュ

魔王「う・・・」

僧侶「勇者様、魔王さんが困惑してますよ」

勇者「え?」

魔王「ゴホン・・・」

僧侶「勇者様が色っぽくて動きたくないそうです」

勇者「・・・色っぽいの? ねぇ僧侶より色っぽい!?」

魔王「え、えぇ・・・そうですね・・・」

僧侶「あ、ひどいです! 私のほうがずーーっと発育いいんですから」

ザバッ!

勇者「ふーんだ! すぐそんなの追い越しちゃうから!」

ザプッ!

魔王「・・・う」

僧侶「あっ! なんで目つぶってるんですか! そういうの結構失礼ですよ!!」



魔王「いえ、私もう若くないんで・・・」

僧侶「ふーん・・・?」

ピトッ

魔王「!」

勇者「僧侶ずるい! 魔王さんから離れて!!」

僧侶「勇者様だってお膝の上にちゃっかりのってるじゃないですかぁ」

勇者「いいじゃん! 特等席だよ!!」

魔王「・・・」

僧侶「魔王さん。目をあけてくださいよー」

魔王「・・・」

僧侶「だんまり決め込むんですかー? ならもっとひどい目にあいますよ?」

魔王「からかわないでください」

僧侶「うふふ・・・見かけによらず可愛い人ですねぇ」

魔王「・・・」


勇者「魔王さーん」

僧侶「魔王さん・・・♪」

魔王「・・・」

勇者「ねー、僧侶なんかに負けてないよね!? 色っぽい?」

僧侶「ほら、勇者様がお尋ねしてますよ。答えてあげなきゃ」


魔王「・・・やむを得ませんね」


ヒュン――――


僧侶「うぎゃっ!?」ジャブン

勇者「うええ!?」ボチャ

僧侶「・・・・?」

勇者「ま、魔王さん消えちゃった・・・」

僧侶「ひ・・・ひどいですっ!!」



ヒュン――――――


魔王「ふぅ・・・すいません勇者様僧侶さん」

戦士「・・・」

魔王「あ、どうも・・・・・・あっ」

戦士「へ、ヘンタイ!!」

ベシン!!


・・・


魔王「状況が状況でしたので・・・」

戦士「いきなり素っ裸で目の前に現れる奴がいるか!」

魔王「お目汚し失礼しました」

戦士「べつにそこまで怒ってねーけどぉ!!」

魔王「殴ったじゃないですか」

戦士「反射だ反射。まじでびっくりしたんだからな。敵かと思った」


勇者「あー! 戦士と仲良くしてるー!」

僧侶「ほんとダメな人ですね。すぐ温い方へ逃げるんだから」

魔王「いいお湯でしたね」

僧侶「・・・言いたいのはそれだけですか」

戦士「おいおい、お前らあんまりいじめるなよ」

僧侶「こんなのただのスキンシップですよ!」

魔王「どうも最近の若い子にはついていけない部分があります」

戦士「あんたほんと所帯じみてるよ・・・」

僧侶「同世代のおじさんたちと見比べるとほんと血の気のない人ですよねー」

僧侶「私の父なんて教会ほうりだして、踊り子見に行ってハッスルハッスルしてましたよ!」

戦士「それはどうかと思うな」

勇者「僧侶のお父さんってかつらかぶってたよね」

僧侶「え? いま言うことですかそれ。まぁ、見栄はってましたね・・・」

勇者「・・・じー」

魔王「・・・? 私は地毛です。あと100年はそういう予定もありません」



―――数日後―――



戦士「や、やっとふもとの村が見えた・・・」ヨロ…

僧侶「長かったですね・・・」

魔王「かなり足止めをくらいました。迂回したほうが早くいけたかも知れませんよ」

勇者「あそこが目的地?」

僧侶「あの村からさらに数日歩いたところにある港町です」

勇者「えー、まだあるの?」

僧侶「ぶーたれないでくださいよ。私だって疲れてます」

魔王「早めの休息が必要ですね」

勇者「おいしいものが食べれるといいけどなー」

僧侶「小さな村ですからね。宿があるかどうかも怪しいところですね」

戦士「ま、いこうぜ。私は安心して眠れたらどうでもいい」


魔物(やけに空気がざわついているな・・・)

魔物…だと…?



・・・


魔王「もうだいぶ近くまできましたね」

僧侶「え・・・・ねぇ・・・あれ・・・」

勇者「けむりだー・・・!」

戦士「お、おい・・・アレ燃えてんのか!?」

魔王「なぜ村から火の手が・・・!」

僧侶「い、急ぎましょう!」

魔王「先行します」


ヒュン――――


勇者「あー! まってよー!」タタタッ


魔王(まさかとは思いますが・・・!!)


ヒュン――――

>>381 誤字  ◯魔王



――燃え盛る村――


魔王「・・・・これは・・・」

小悪魔A「クキャキャキャキャ」

小悪魔B「ゲラゲラゲラ」

魔王「なぜです・・・あなたたちは積極的に人を襲う種ではないはず」

小悪魔A「キャキャキャ」

魔王「誰の命令で動いているのです」


ズズ…

デーモン「俺だよ」

魔王「! あなたは」



勇者「魔王さんまってよー!!」


デーモン「クハハ・・・こりゃあお笑いだぜ」

デーモン「世捨て人のてめぇがまさかこんな事をしてるとはな。クハハハ現魔王様が聴いたら爆笑だろうよ」

魔王「勇者様きてはいけません!」

勇者「えっ」

デーモン「ようこそお嬢さん方。俺様の領土へ」

戦士「どういうこった!」

僧侶「どうしてこんなことをするのです!!」

デーモン「地方分権ってやつさ。いまの魔王様はふとっぱらでよぉ」

デーモン「俺みてぇな貴族たちに島単位で統治することを許してくださった!」

戦士「ふっざけんなよ! そんなもんてめぇらの勝手じゃねえか!」

デーモン「あぁ? 俺の土地を俺がどうしようと当然勝手だろうが」

僧侶「ここはあなたたちの土地ではありません!!」

デーモン「だから全部奪うんだよ。土地も、命も、財産も! この力でなぁ!!」


勇者「・・・・」


魔王「地方分権ですか・・・。それは、世界征服と言い換えても?」

デーモン「そうさ! あんたがやろうとしなかったことをやってるだけだぁ!」

デーモン「頭がすげ替えられたら政策も変わる! ごく当たり前だよなぁ元魔王さんよぉ!!」

魔王「・・・ですね」

勇者「魔王さん・・・どういうことなの?」

魔王「ただ歴史を重ねることしかできない保守派のくせに、急進的改革とは笑わせる・・・」

勇者「ねぇ魔王さん!」

デーモン「てめぇみてーな口だけ野郎が上にたつとめんどくせぇんだよ」

魔王「それが閣僚たちの本音ですか」

デーモン「さぁなぁ! ただ俺たちはいままでずっと力で権威を示してきたんだろうが!!」

僧侶「そんなのよくありません!」

デーモン「てめぇらが言うかよ」

戦士「あたしらはどう言われようが魔王を潰すぜ」

魔王「えぇ、でなければ旅だった意味がありません」


デーモン「やってみろよ・・・そうだぜぇ、俺はそっちのほうがシンプルで好きだ・・・ククク」

デーモン「魔王を殺してみろ! 俺を殺してみろ! まずはこいつらに勝てるもんならなぁ!!」


ザワザワ…

▼まものの大群があらわれた



勇者「うわっ!!」

戦士「囲まれてるっ!」

僧侶「勇者様をお守りします!!」

魔王「・・・!!」


デーモン「ひゃははは! 勇者たちを血祭りにあげろ!」

デーモン「そうすれば俺は豪族・・・貴族、いや・・・魔王なることさえ可能!!」

デーモン「お嬢ちゃん達、てめぇの生まれの不幸を呪いな」


魔王(多勢に無勢・・・どうすれば・・・!)


小悪魔「クキャキャキャ!!」

大目玉「食っちまえ!!」

魔術師「ふぉっふぉっふぉ。わしらも若い子と楽しんでええんですかな」

デーモン「好きに殺れ。いたぶってもかまわんぞ」

魔術師「だが元魔王がおるぞい」

デーモン「大丈夫だ。奴にたいした魔力はない。もともとただの管理職、誰から見ても冴えないおっさんだ」

大目玉「やれやれ、なぜそんな愚鈍なものが王座についたのやら」

デーモン「同じくして愚衆どもにはヤツの戯言が物珍しかったのだ、ただそれだけのこと」

小悪魔「キャキャキャキャキャキャキャ!! コロセー!」


魔王「・・・」

勇者「ど、どうしよう・・・魔王さん・・・」

戦士「殺られるわけにはいかねぇ。勇者、びびんなよ」

僧侶「・・・うぅ」


???「……」コソ ガサガサ…


デーモン「お祈りはすんだか? 元魔王さんよぉ」

デーモン「あいつとおんなじところに送ってやるゼェ・・・!!」

魔王「・・・ッ!!!」

ヒュン――

勇者「魔王さん! いまいっちゃだめぇ!!」

デーモン「ひゃははは! 正面からくるとは馬鹿が! 頭に血がのぼってやがる! ヤッちまえ!」


魔術師「思う壺ですな! 死ねぇ!!」ボォオオ!

グレムリン「あはははくらえー!」ボゥ!

魔王「・・・クッ――」

勇者「魔王さん!!」


猿達「ウキャーーー!!」ガサガサガサガサッ

デーモン「!」

大目玉「な、なんだこいつらっ! ぐあっ、来んじゃねぇ!!」


勇者「猿さんたち!!」


デーモン「下等な山猿どもがぁあ!」

ボス猿「ウキャキャー!(貴様なに俺様の花嫁に危害くわえとんじゃ!)」

ベキッ

デーモン「ガッ・・・ペッ、蛮族がぁ!!」

ボス猿「ウキャ!(無事ですか、愛しの人よ・・・)」

勇者「猿さん! きてくれたの!?」


戦士「いまだ! 反撃するぞ!」

僧侶「はい!」


魔王「デーモン・・・お前はここで殺しておく! もうこの世界から消え去れ!」

デーモン「杖ももたねぇ魔導師風情が笑わせる!! ろくに魔法もつかえねぇくせによぉ!!」

魔王「・・・なら!」

ヒュン――



魔術師「ぐえ・・・・?」ズシュ…ボトリ


大目玉「お、おいお前・・・首が・・・」

魔術師「は・・・? が・・・・!? がああああああ!!!」


魔王「この杖・・・ずいぶんと安物だな・・・だがもらっておくぞ」


大目玉「す、すでで引き裂いただと!?」


魔王「事務職をなめてもらっては困るな」


魔王「ひさしぶりに力が湧いてくる・・・」ズズ…

大目玉「おおおお!! よくもおおお!!」

魔王「お前には魔力は必要ないな」


▼魔王は左手で空を払った


▼放たれた真空波が魔物たちの体を切り刻む



デーモン「ば、ばかな・・・お前がこんなに・・・・」

魔王「どうした。お前を助けてくれるやつはいないぞ」

デーモン「つかえねぇクソどもが!!」


戦士「形勢逆転だな」

勇者「・・・」

僧侶「・・・」

ボス猿「・・・」ポキポキ

魔王「・・・」ズズ


デーモン「はっ! 元魔王よ。てめぇ、爪を隠してやがったか」

魔王「私は力で全土を統一する気はない。ずっとそう掲げてきただろう? 行き過ぎた力など、不要なのだ」

デーモン「・・・ふざけやがって・・・! なめくさりやがって!!」

デーモン「うおおおお! まとめて消し炭になりやがれ!! ジゴ・・・スパーク!!!」バチバチ…


▼デーモンは地獄の雷を放った


魔王「そう、力はあらゆる手段にはなるだろう。それを否定しはしない」

魔王「・・・だが貴様らのように、それを結果にしてしまうおろか者共が世に蔓延っているから」

魔王「いつまでたっても平和にならないんだ!」


▼魔王は魔法反射障壁を繰り出した

▼反射した雷はその威力を何倍にもふくらませ、デーモンを飲み込んでゆく


デーモン「!!!!!」

デーモン「がああああ!!!」


勇者「!!」

戦士「なんつー光だよ!!」


デーモン「・・・が・・・は・・・あ」

魔王「まだ生きていたか。さすがにタフだな」

デーモン「な゛ぜ・・・きさまほどの・・・・・・力・・・・統治・・なん・・で」

魔王「・・・それが本当の私の業なのかもしれないな」


勇者「・・・魔王さん」

魔王「さぁ、とどめをさしてください勇者様」

勇者「・・・・でも」

デーモン「ぐぎぎ・・・があ・・・ゆう・・じゃ・・」

魔王「・・・悪虐非道の魔物にとどめを」

勇者「・・・・魔王さんがやっつけたんだから魔王さんがとどめをさせばいいのに」

魔王「・・・救ってあげてください」

勇者「・・・え?」

魔王「勇者の剣は、邪を払う聖剣」

魔王「あなたに殺されて、ようやく魔物たちは、清らかな魂と昇華し、天へと召されます」

勇者「そう・・・なの・・・?」

魔王「私は死んだことないからほんとうかどうかは知らないんですけどね」

勇者「・・・・・・うん」チャキ

デーモン「・・・ぐ・・ぁ」

勇者「・・・・・・ッ!!」ザクッ


デーモン「――」


勇者「・・・死んだ」

僧侶「・・・勇者様」ギュ

勇者「・・・」

魔王「お見事です。勇者様」

魔王(待たせてごめんな・・・仇はうったよ・・・君はこんなこと、望まないかもしれないけど)

魔王(いまの私には・・・こうすることしかできない・・・)


戦士「結局、滅ぼしあうしかないのかな」

魔王「そんなことはありませんよ」

戦士「でも・・・村は焼けて、人は死んで、魔王たちも・・・」

魔王「そんなことはありません。そのためにあなたたちや、私がいるんですから」

ボス猿「ウキュウ・・・」

魔王「そうですよ。私や彼らのように、手を取り合うことができる魔物もいる」

魔王「魔物には、変化の可能性が十分にあるのです。ただ彼らはしらない、あえて力を振るわない意味を」


勇者「・・・いこう。魔王を倒しに」

勇者「魔王を倒して、魔王さんが魔王になろうよ」

勇者「そうしたら・・・大丈夫なんだよね? こんな哀しい思いしなくていいんだよね!?」

魔王「そう願っています」

僧侶「一息ついたら、行きましょうか」

戦士「そうだな。いくらなんでも消耗しすぎた」

ボス猿「ウキュウ!」

勇者「あっ! ありがとー猿さんたち! 助かったよ!」

ボス猿「ウッキュウ!」

勇者「え? なぁに?」

魔王「いつでも帰りを待ってる、と言ってます」

勇者「・・・帰り? うん! 絶対みんなでこの国に帰ってくるよ!」

勇者「約束!」

ボス猿「キャウ! ウキャウウウ!!」

勇者「手がおっきくてゆびきりできないなぁー、えへへ」

魔王「事務職をなめてもらっては困るな」

魔王「くらえ、経費削減!!杖は没収な」
魔術師「ぎゃああああああああおニューの杖がああああああああ」

魔王「くらえ、眼精疲労!!事務職の苦労を味わえ」
大目玉「ぎゃああパソコン画面を近づけるなああ目が目があああ」

魔王「くらえ、年収公開!!元管理職を舐めないで貰いたい」
デーモン「ぎゃあああああお前らみるなあああああああああああああ」

魔王「くらえ、個人情報!!勇者と温泉に入りました」
ボス猿「ウキーキャーキャキャーキャキャーウキャキャーウキャー!!」

こんな感じで戦ってくれるのかと思ってた


――港町――



魔王「ようやくつきましたね。こちらには被害がでてないようでなによりです」

戦士「ふぉーーー! 久しぶりの街だー!」

僧侶「お風呂はいりたいです♪」

勇者「わー! お魚がいっぱいならんでるよー! おっきいよー! みてみて!」

魔王「買いませんよ」

勇者「買ってなんていってないよー!」

僧侶「勇者様は食べ物に目が無いですからね」

戦士「とりあえず酒買おうぜ」

僧侶「だめです! 一泊したら船にのるんですから。また酔っ払ったら大変でしょ」

戦士「お前がな」


魔王「ひさびさの休息ですし、すき放題羽をのばすのもいいでしょう」

勇者「やったぁ!」

魔王「ただし勇者様はお勉強がついてますけどね」

勇者「え~~~!? もう嫌だよー」

魔王「あらかじめ魔王を倒したあとのことを視野にいれておかないとダメなんです」

勇者「小言ばっかり・・・」

魔王「がんばって集中してお勉強できたらそこのアンチョビのサンドイッチを買ってあげましょう」

勇者「えっ!? ほんと!?」

戦士「イワシで勇者を釣る・・・」

僧侶「勇者様すぐつられちゃって可愛いですね」

勇者「さっそく宿にむかおう!」

魔王「安宿探しからですね」

戦士「街について最初にすることがそれって・・・・しみったれた旅だなぁ・・・」

僧侶「どうしてこんなにお金ないんでしょうね?」

戦士「さぁ・・・・貧乏神でもついてんじゃねーの・・・」



―宿―


店主「一部屋か二部屋か・・・」

店主「どっちなんだい!!!」ムキッ

魔王「・・・この予算で二部屋いけますか?」

店主「どっちなんだい!!」

戦士「足りないか。じゃあ一部屋で」

勇者「あのー」

店主「なんだい!」

勇者「以前会いませんでしたか」

店主「うちの兄弟はみんないろんな街で宿屋をやってるよ!!」

戦士「へぇ」

僧侶「どうでもいいですよ上の階いきましょ」

勇者「早くお風呂にはいりたーい!」



戦士「お、やっすい割には部屋風呂ついてんじゃん」

僧侶「あ、いいですねぇ。ここから海もみえますよ!」

勇者「はいりたーい!」

魔王「では私は船着場で明日の乗船手続きをしてきます。どうかごゆるりと」

勇者「・・・」ギュ

魔王「?」

勇者「えへー」

魔王「・・・・・いやいやいやいや、さすがにそれは無理ですよ。ダメです」

戦士「魔王さーん、勇者様のご指名だぞー」

僧侶「む・・・勇者様、私が体ならあらってあげますから!!」

勇者「じゃあ僧侶と三人ではいろー! この間の続き!」

魔王「!!」

戦士「しらねぇぞー・・・お と う さ ん」

魔王「グゥ・・・ほんとやることたくさんありますので、すいませんすいません」ペコペコ



勇者「にげた・・・」

僧侶「いくじなしですねぇ」

戦士「いじめんなよ」

勇者「いじめてないよ! 魔王さんすっごく喜んでたよ!」

戦士「お前が言うとそれはちょっと危ない表現だなー・・・」

勇者「?」

僧侶「罰ゲームでも考えときましょうか」

勇者「罰ゲーム! やりたいやりたい!」

僧侶「魔王さんに、です」

戦士「やっとけやっとけ。酒と昼飯かってくる」

勇者「はーい!」

僧侶「私葡萄酒で」

戦士「お前にはやんねー」

僧侶「もうっ!」



・・・・



魔王「ただいま戻りました。無事乗船許可がおりました」

魔王「・・・おや」


勇者「・・・」グデー

僧侶「おい勇者様ァ! もっとガーンと向かってこいよ、私の胸に飛び込んでこいよ」ユッサユッサ

勇者「あ゛~~~きもちわるいよー」

魔王「なんなんですかこれは・・・昼間っから・・・まったく」

戦士「あははは! でたー! 説教だー!」

魔王「戦士さんまで・・・」

戦士「お前も飲め飲めー! あ、それとも私と一緒にあそこでのむ?」

魔王「あそこ?」

戦士「 お ふ ろ ♪」

魔王「・・・・お水いれてきますね・・・」


戦士「あんだよー! 寂しい独り身をなぐさめてやってんのによー!」

魔王「余計なお世話ですし、あなたたちなんて私からしたら小娘ですよ」

戦士「その小娘に・・・あはははは! あはははは!!」

魔王「何がおかしいんですか」

戦士「プッ、真っ赤になってんのだーれだ!」

魔王「なってませんよ。ほら、これ飲んでください。あなた以前、酔うまでは飲まないって言ってたのに」

戦士「だーーーってぇ、忘れたいこといっぱいあるしぃ」

魔王(この人はこうやって鬱憤晴らしをしているのか・・・?)

戦士「ほれ、美女の酒だぞ。のまんかい」

僧侶「そうだぞー飲めー! 大人として失礼だぞー!!」

魔王「質の悪い酔っぱらいの処理をするのも大人の勤めです」

勇者「うえー・・・」

魔王「勇者様も飲んだのですか?」

戦士「この街16から飲めるんだってさー! あははは勇者のやつ馬鹿だからジュースだとおもってしこたま飲んでさー」

魔王「・・・大丈夫ですか?」


勇者「大丈夫だよ・・・ごめんね魔王さん・・・」

魔王「いえ・・・謝らなくてもいいですよ」

勇者「ごめんなさああああいいいい!! びえーー」

魔王「え・・・」

勇者「ああああああん! ごめんなさいいいい!!」メソメソ

魔王(めんどくさいことになったな・・・)

僧侶「ほぉら、せんしさんとわたし、どっちか愛してるほうのお酒のむといーよぉ」

戦士「選ばなかったら罰ゲーーーーむ!」

魔王「もうすでに罰ゲームじゃないですか」

勇者「じゃあもう一個追加だよ!!」ドン

僧侶「はぁい! 三つの中から選んでくださーい!」

魔王「・・・」

戦士「・・・ほれほれー、どうしたぁ? 迷ってるのかな? いっっっちばん好きな人の入れた酒飲めよな!!」

魔王「はぁ・・・・・・いいですよわかりました・・・」

グビッ…


グビ… グビ・・・


戦士「・・・・」

僧侶「・・・・」

勇者「ほえー・・・」


魔王「・・・ふー、これちょっと甘すぎですね」


戦士「全部のむなよぉ・・・」

僧侶「もーー! はっきりしてくださいってぇ!!」

勇者「うえええん、みんな嫌いってことだよーー!!」

魔王「・・・」

僧侶「・・・ほんとずるい大人ですね」

魔王「ずるい大人ではなくて、大人はずるいんです」

魔王「もうみなさん寝てください」


▼魔王はラリホーマを唱えた


僧侶「ふぁ・・・・zzz」

戦士「う・・・・・zzz」

勇者「びえええええ!!」


魔王「あれ・・・? もう一度」

▼魔王はラリホーを唱えた

▼しかし効果はなかった

勇者「うわあああん!! 魔王さんに嫌われたー!!」

魔王「おかしいですね・・・さすが勇者というべきか、魔法にかなり耐性があるのですね」

勇者「うぅ・・・・なんだか眠たくなってきた」

魔王「私の魔法よりお酒のほうが上ですか」

勇者「えへへ・・・魔王さぁん」のそのそ どすん

魔王「・・・う」

勇者「おやすみなさぁい・・・zzz」

魔王(参ったな・・・また動けなくなってしまった)

「魔王」と「勇者」の構図を守ってる王道RPGがDQしかないからなぁ
FF?ハハッ


魔王(この子は運命の子)

ナデナデ

勇者「うにゃ・・・」


魔王(正義の象徴。闇をきりひらく剣)

魔王(新しい世界の樹立には、絶対に必要な存在・・・)


魔王(嫌なものだな・・・どうしてこういつも私は打算的なんだ)

魔王(しかし・・・きたるべき日は、もうすぐそこまで迫っている)

魔王(なんとしてでも守りぬかねばならないな。どんな手をつかっても)


勇者「ふぁ・・・zzz」

魔王(おっと・・・これ以上なでてはいけないな)

魔王(私の手は穢れきっている・・・この子には、毒にしかならない)

魔王(それともあなたは、こんな私の悪魔の手ですら、清めてくれるのだろうか)

魔王(君がかつてそうしてくれたように・・・)

こるから…どうなってしまうんだい!?(ムキッ!!)



――――十数年前


  
 デーモン「殺してやった! ひゃはああ!!」

 ゴースト「こんなやつ束でかかればたいしたことはない!」

 デーモン「おい、どうした? なんでてめぇ手を貸さなかった」

 私「・・・」

 デーモン「ひゃはっ、なぁんてな! 俺はなんでもお見通しなんだよ!」

 デーモン「てめぇがこいつに入れ込んで、裏から小細工してたことはよ!!」

 私「・・・そんな事実は一切ない」

 デーモン「あぁ、そう答えるのが利口だぜ。出世したかったらな、クハハハ!」

 
 私「・・・」

 私「・・・・」

 私「・・・すまなかった。私のせいだ・・・」

 私「やっと・・・これから全てうまくいくと思ったのに・・・!!」  

 
 私「馬鹿だな・・・」

 私「こんなことになるなら・・・出会わなければよかった」

 私「君を弱くさせたのは私だ・・・・」

 私「私を弱くさせたのは君だ・・・・」

 

 ゴースト「おい、帰るぞ。本国の魔王様がお呼びだ。きっときゃつを始末した褒美をもらえる」

 私「・・・」

 ゴースト「おい! きいているのか」

 私「亡骸は、どこへいった?」

 ゴースト「さぁな。そのへんで喰い散らかされてるんじゃないか」

 ゴースト「楽しい戦いだったぜ。お前もくればよかったのに」

 私「・・・そうか」

 ゴースト「お前、杖はどうした? いつも肌身離さずもっていたろ」

 私「・・・あぁ、もういらないんだ」

 私「・・・魔術師は、やめたから・・・」




――――――



魔王「はっ」

勇者「わー! 魔王さん起きたよー!」

僧侶「めずらしいですね、居眠りなんて」

魔王「もう夜・・・か・・・」

戦士「いい夢みたか?」

魔王「夢・・・・・・あぁ・・・はい。お酒ぬけました?」

勇者「うん大丈夫だよ! それでね、いまから晩御飯さがしにいくんだよ!」

僧侶「魔王さんよっぽど疲れてたんですね。いいですよまだ寝てて」

勇者「うん! 魔王さんの分買ってきてあげるよ?」

魔王「いえいえ、一緒にいきますよ」

僧侶「なーんか休日のお父さんみたいでした」

魔王「はぁ・・・」




―街中―



勇者「あとでもう一回お風呂はいるんだぁ」

魔王「そうですかそうですか」

僧侶「あ! そうでした罰ゲーム」

魔王「・・・しっかり覚えてたんですね」

僧侶「だめですよ、こんどはずるいことして逃げちゃ」

魔王「あんまり難しいのは勘弁してくださいね。逆立ちで街を一周とかもできませんので」

僧侶「とーっても簡単ですよ!」

戦士「ぷぷっ。あ、いやなんでもない続けて」

魔王「?」

僧侶「発表します! 魔王さんは、この街をでるまで私達のことを『ちゃん』づけで呼んでください♪ プッ」

魔王「え・・・」

勇者「わくわく!」


僧侶「さぁ!」

魔王「・・・・僧侶さん、ちゃん」

僧侶「ぶぶー! そんなのだめでーす!」

魔王「そういう系はやめてくださいよ。私の歳を考慮してください」

戦士「した上で、だよなぁ?」

僧侶「はいもちろん!」

勇者「わくわく! はやく呼んでよ!」

魔王「・・・勇者ちゃん」

勇者「ほぅ!」

魔王「そ、僧侶ちゃん」

僧侶「うふふ・・・僧侶ちゃんだって」

魔王「せ、せんし・・・ちゃん」

戦士「・・・うわーなんかねちっこさがあってキモいなぁ。素でゾワってなった」

魔王「私もです」

戦士「なんだとぉ!!」


勇者「戦士ー、耳あかいよ」

戦士「お、おこってんだよ!」

僧侶「勇者様。戦士さんはですね、魔王さんに戦士ちゃんって呼ばれて嬉しいんですよ!」

勇者「へー」

戦士「だぁぁぁまれー」

魔王「それで僧侶さん。もう旅支度はできてるんですか」

僧侶「僧侶ちゃん。です」

魔王「・・・あなたはいつも一貫してますね」

僧侶「好きになりましたか?」

魔王「・・・そうですね。気に入りましたよ」

僧侶「ほらそうやってまたボカすでしょー。まぁそういうとこ魔王さんらしくて私は『気に入って』ますよ!」

魔王「・・・ずいぶんと手厳しい」

僧侶「だって私は勇者様一筋ですからー!」

勇者「魔王さん! もっかい呼んでー」

魔王「・・・勇者ちゃん」

戦士「旅の支度はできたよ」

魔王「そうなんですか戦士ちゃん」

戦士「!! て、てんめぇ・・・今の絶対わざとだろ」

魔王「そんなことないですよ戦士ちゃん。ルールですから」

戦士「・・・うっ、もうしらねーからな! 晩飯は各自!! 解散! 私飲み屋にいくから!」

僧侶「えーー!」


僧侶「あらら、行っちゃいましたね・・・。戦士ちゃん・・・ぷぷ」

魔王「これだれが得してるんですか?」

僧侶「罰ゲームってそんなものですよ? 常識ないですねー」

魔王「すいません・・・魔王なもので」

勇者「ご飯食べたいなー。アンチョビたべたいよー」

魔王「そうですね。では買って帰ったあと一緒に食べて」

勇者「わぁい!」

魔王「勉強しましょうね」

勇者「・・・・嫌い」



――翌朝――



主人「おはようさん。昨晩はおたのしみだったかい?」

魔王「えぇ」

主人「お、そりゃうらやましいねぇ!」

勇者「うーーー・・・痛いよー・・・歩きにくいよー・・・」

主人(えっ、こんな小さい子と!?)

戦士「あーイテー・・・調子こいでやりすぎた・・・」

主人(こっちの美人さんとも!?)

僧侶「もうっ、加減をしらないからそうなるんですよ。また魔王さん大変だったんですから」

僧侶「まぁかくいう私もかなりご迷惑をかけてしまいましたが」

主人(このべっぴんさんともかい!!! なんちゅう罪なやっちゃ!!)

魔王「お世話になりました」

主人「お、おう・・・・」


―船着場―



魔王「ほら、まっすぐ歩いてください」

勇者「だってぇ・・・頭いたいよー」

戦士「ばーーか・・・飲み過ぎるからだ・・・」

僧侶「そういう戦士さんこそ、ふらふらじゃないですか」

戦士「うるせー、店で飲んで部屋でも飲んだからそりゃこうなるって・・・」

僧侶「一日何回も飲むもんじゃありませんね・・・イツツ」

魔王「ほどほどにしてください。これから船にのるっていうのに」

戦士「潮風あびたら治るかな?」

魔王「酔いが覚めるのとはまた違いますから」

僧侶「さいてーな朝です・・・」

魔王「お酒は毒にも薬にもなるってことを体でしっかり覚えてくださいよ」

勇者「おんぶー・・・おんぶーしてー魔王さん・・・」

魔王「やれやれ・・・」

船長「さて、予約してたのはあんたたちだな」

魔王「えぇ・・・」

船長「大人三人子供一人で間違いねぇか?」

勇者「僧侶、子供だって」

僧侶「勇者様のことですよ?」

勇者「そうかな。もうお酒も飲めるし十分大人だよ! きっと聞き間違いだよね!」

船長「んじゃ。乗ってくれ。隣の島には半日ほどでつく」


魔王「よろしくお願いします」

戦士「船かー、揺れるのかなー」

僧侶「私も初めてなんです! たのしみですね!」

勇者「でも半日は暇そうだねー」

魔王「・・・勇者様」ポンッ

勇者「・・・え? 嫌だよ? 勉強しないよ?」

魔王「半日もたっぷり時間があってやりがいがあります」

勇者「嫌だよ!? 釣りするんだもん! いま決めました!!」


魔王「逃げ場はないですよ」

勇者「ええー・・・僧侶ぉ」

僧侶「だめ♪ です♪」

船長「たぶん今日は雨がふるからよぉ、船室にこもっててくれや」

戦士「だそうだぞ」

勇者「うわーーーん! いじわるな人ばっかり!!」



船員「イカリをあげろー!!」

船長「よっしゃぁいくぜ!!」

勇者「ま、まずい。こうしてる場合じゃない」タタッ

僧侶「どうしたんですか?」

船長「おいお嬢ちゃん、あんま舳先に行くとあぶねーぞ」

勇者「うひひ・・・・・・・スゥー」

勇者「 ふ な で だ ー ! !」

僧侶「あぁ・・・それがやりたかったんですね・・・」



魔王「気がすみましたか?」

勇者「すっきり!」

戦士「おまえほんとガキなのな」

勇者「ちがうよ! これは船の旅の常識だよ!?」

戦士「だれにきいた」

勇者「この人」ビッ

僧侶「いやんっ、指さしちゃヤです♪」

戦士「・・・おまえ、他にもあらぬこといろいろ吹き込んでるだろ」

僧侶「そんなことありません!」

魔王「まぁまあ、僧侶さんが勇者さんの人格形成に深くかかわってるのは確かに心配ですが」

僧侶「なんてひどい!」

魔王「決して悪い人ではないですし。それはまだ良かったなと思います」

僧侶「あ、そうですか・・・」


魔王「勇者の力とは、やはり誰にとっても絶大です」

魔王「それが右に振れるか左に振れるかで、世界情勢が大きくかわってきたりもします」

僧侶「いまはどちらに触れているんですか?」

魔王「そうですね・・・」

勇者「?」

魔王「この先、勇者様自身がどうなさるかで決まるかと」

戦士「こいつはあんまり善悪に頓着がねーからなぁ」

魔王「そうですね」

魔王(そこがまた、少し不安で、危険なのです・・・)

魔王(私は押し付けがましくも、また同じ過ちを繰り返してしまうのではないか・・・と・・・)


勇者「みんなが笑って暮らせる世界になればいいね!」

戦士「そういうことを笑顔で言えるのは世界でもお前くらいなもんさ」ムニッ

勇者「うにゃ・・・なにすんのぉ」

戦士「あはは、変な顔。ほっぺたやわらけー」



     (  ´・ω) 
    γ/  γ⌒ヽ (´;ω;`)  ごはんたべてきます…
    / |   、  イ(⌒    ⌒ヽ

    .l |    l   } )ヽ 、_、_, \ \
    {  |    l、 ´⌒ヽ-'巛(  / /
    .\ |    T ''' ――‐‐'^ (、_ノ
        |    |   / //  /

>>564
ご飯なら昨日食べたでしょ


僧侶「私にもやらせてください」ムニー

勇者「うあー! いいっていってにゃい!」

僧侶「あははははっ! たてたてよこよこ♪」グニーン

勇者「ひひょいよー」

魔王「・・・」

僧侶「魔王さんもします?」

魔王「遠慮しておきます」

僧侶「ぷにっぷにですよ! スライムよりぷにぷにかもしれませんね」

勇者「うぅ・・・」サスリサスリ

魔王「仕返ししなくていいんですか?」

僧侶「しかえししてこないから、いじめ放題なんですよー」

戦士「やめてやれ」

僧侶「最初にやったの戦士さんじゃないですかー」

勇者「うぅぅ・・・」サスリサスリ

魔王(確かにやわらかそうではあるな・・・少女特有のというか、彼女個人の特徴だろうか?)


勇者「魔王さん、なぁにじっとみて」

魔王「あ、いえ・・・」

僧侶「やりたいんでしょー。大人はすぐ我慢我慢でなかなか素直になれないんですから」

僧侶「ほらどうぞどうぞ」グイッ

勇者「うわあああっ」

戦士「他人のほほを差し出すな」

魔王「・・・」

勇者「・・・ま、魔王さん・・・」ウルッ

魔王「・・・し、失礼します」

グニッ・・・みょーん

勇者「あ゛~~!! いひゃい~~!!」

僧侶「ね?」

魔王「確かに・・・この指を掴んで決して離さない感触、スライムのそれを凌駕しているかもしれませんね」

戦士「つかんでんのはお前だろ」

勇者「はなひへ~~!!」

魔王「ハァッハァッ…勇者様の中…この私を掴んで決して離さない感触、スライムのそれを…凌駕しているかもしれませんねっ」
勇者「ぁ…いっ…」


魔王「はっはっはっは!」みょーん

勇者「わりゃわないへ!!」


戦士「魔王が笑ってる・・・」

僧侶「なんか本気で笑うと気味悪いですね」

戦士「言うな。私もちょっと思った」


魔王「はっはっはっは!」

勇者「はなへ~~!!」ジタバタ

僧侶「やっぱ魔王って悪い笑いかたするんですね」

戦士「肩書きのせいで完全にそう映ってるだけだろ」

僧侶「そうかもしれません」

船長「おぅい、そろそろ船室にいってくれー、嵐が近づいてるぞー」

僧侶「いきましょうっか」

戦士「おう」

勇者「魔王さんのばーか! もう次は絶対だめー!」


船長「ここだ。嵐をくぐりぬけたら声かけるぜ」

魔王「わかりました」


ガチャ カチャリ…



―船室―


勇者「みんなに遊ばれてヒリヒリするよぅ」

魔王「申し訳ございません」

勇者「うー・・・」

僧侶「じゃーん、そんなときは僧侶にお任せ! どんな傷も一瞬で回復!」

勇者「え?」

僧侶「うふふ、逃げ場はないですよー・・・」

勇者「なになに!? も、もしかして!」

僧侶「ベホイミ!」ちゅ レロ…

勇者「わー!! それ絶対いらないでしょ!!」


魔王「やめてくださいこんなところで。勇者様嫌がってるじゃないですか」

僧侶「・・・」じー

魔王「私の顔になにか?」

僧侶「・・・してほしかったり?」

魔王「いいえ」

僧侶「・・・してほしくなかったり?」

魔王「はい」

僧侶「フッ・・・そうやってチャンスを棒にふってるから独り身なんですよ」

魔王「余計なお世話です」

勇者「・・・うぅー、スライムよりきもちわるいよー」ゴシゴシ

僧侶「こっちはこっちで失礼しちゃいます」

戦士「最初はびっくりしたけどなんかもう見慣れた」

魔王「私には少し刺激が強いので、控えてくれるとありがたいです」

僧侶「じゃあ私と勇者様が事に及ぶときは、あの『ヒュンッ』って魔法で消えたらいいじゃないですか」

魔王「あれかなり魔力食いまして」



―しばらくして―



戦士「おかしいな」

勇者「なにがー?」

魔王「・・・確かに」

勇者「なにがー?」

僧侶「・・・どういうことでしょう」

勇者「なーにーがー!!?」

戦士「嵐に突入してんだよな? 全然揺れねぇぞ?」

魔王「・・・少し外の様子を見てきましょうか」

僧侶「危なくないですか?」

勇者「みにいこ! 嵐ってどんなのかな!」


ガッ・・・ガンガン ガチャガチャガチャ

魔王「おや・・・? 鍵がしまってます」



戦士「おっかしいな? 嵐ぬけたら呼んでくれるっていってたのに」

魔王「私が様子をみてきましょうか」

勇者「ヒュンってやつやるの!? ヒュンってやつやって!」

僧侶「そういえばあれってどういう魔法なんですか?」

魔王「目で見える光景や、鮮明に覚えている場所に移動するだけです」

僧侶「ぶつからないんですか?」

魔王「一般的な移動魔法とは違い、空間を転移していますから」

僧侶「よくわかんないですね」

魔王「魔族の中でも一部の血筋しか使えない、割りと高等な魔法なんですよ」

戦士「へー・・・まぁとりあえず頼むよ」

魔王「はい」


ヒュン――


勇者「わぁー! 何度見てもかっこいいなー」



ヒュン――


魔王(・・・霧!? いくらなんでも濃すぎる。なにも見えん)

魔王(嵐ではなかったのか・・・?)

魔王(なぜ嘘を・・・!?)

魔王(・・・だんだん晴れていく・・・)


魔王(闇・・・!!?)

魔王(もう夜・・・!? いや、違うな・・・これは・・・・ッ!!!)


魔王「なんてことだ、嵐なんてものじゃない・・・・くっ」


魔王「勇者様ァ!! いますぐ扉を破って外へ!!!」


船長「へへ。もうおそいぜ・・・クククク」

船員「ヒヒヒ・・・」ニヤニヤ

魔王「貴様ら・・・!」


バコン バタン!


勇者「魔王さん!」

戦士「な、なんだこの風景!? 真っ暗だぜ」

僧侶「おかしいです。まだ時間的には陽が高いはず!!」


魔王「答えろ・・・」ズズ

船長「へははは!! 地獄への船出だぜ魔王さんよぉ」

船長「そして勇者ご一行様!!」

勇者「!?」


船長「ようこそ、魔の国へ・・・!!」


勇者「!!」

魔王(ハメられたか・・・!)



戦士「魔の国!?」

僧侶「う、嘘です!? 魔の国へいく方法は限られているはず」

船長「人間は知らねぇ特殊な海流にのった。あとはなにもしなくても漂着するぜ」

魔王「・・・なぜだ、なぜ私たちを連れてきた」

戦士「船ごと沈めちゃかたは付くはず」

船長「魔王様はご立腹だ。てめぇだよてめぇ元魔王」

魔王「・・・」

船長「てめぇが失脚した後、国中血眼になって探したんだ」

船長「だがてめぇは見つからなかった」

魔王「・・・」

船長「どうやってかしらねぇが国外へ逃亡していたんだな」


僧侶(転移魔法・・・! ということは魔王さんは私たちの島へ来たことが!?)



船長「そして例の件だ。デーモン隊長が倒され、ようやく尻尾をあらわした」

魔王「・・・うまくあぶりだされたということか・・・村ひとつを焼き払って」

船長「へははは! いまの魔王様は実に凶悪なことを考えなさる」

船長「てめぇの性分もよくわかってる」

魔王「あぁ、やり手だな」

船長「へははは! なに冷静なふりをしてやがる。ションベンちびりかけのくせによ」

魔王「・・・ここで私たちを沈めない理由がしりたいな」

船長「当然だろうが。魔王様の力を全土に示すには、どうしてもてめぇの生首がいるんだよ!」

魔王「わかった」


勇者「ね、ねぇ・・・どういうことなの?」

魔王「どうあっても自分の手で私を殺したいようです」

船長「おまけの勇者も一緒に血祭りだ」

戦士「・・・わけわかねーこといってんじゃねぇぞ」

僧侶「・・・でも魔の国・・・魔物の総本山・・・いまの私たちには早すぎます・・・!」

直通航路が開設してあるなんて便利な世界だな


勇者「ううん。違うよ僧侶」

僧侶「・・・?」

勇者「こんなに早く魔王を倒せる日がくるなんて思わなかったもん!!」

勇者「はやければはやいほど良い!!」ブル…

僧侶「勇者様・・・」ギュ

勇者「うぅ・・・」


船長「あんしんしろよぉ。なんなら勇者はここで首だけにしてやるからよぉ」

船長「コエー思いして魔王様にたちむかわなくていいんだぜ? あ?」


勇者「う・・・」

戦士「殺すぞ」

船長「お仲間はどうでもいいんだよ。海に沈めて魚の餌にしてやる」

魔王「聞き苦しいな。あまり都合のいいことばかりべらべらしゃべらないほうがいい」

船長「あ? それはてめぇが過去数年にわたりさんざんやってきたことだろうが無能野郎」

魔王「そうだな。だから・・・私は舞い戻ってきた・・・まだやり遂げていないから」


船長「かっこつけんなよモヤシの事務のおっさんごときが」

魔王「お前たちには大きな過ちが三つある」

船長「・・・は?」

魔王「一つ。勇者様も一緒に連れてきたこと」

勇者「?」

魔王「二つ。私を連れてきてしまったこと」

船長「あ?」

魔王「三つ。私のことを知らなさ過ぎたこと」


ヒュン――


▼魔王は瞬く間に鋭い爪で海賊船長の首を切り落とした


船長「が・・・」

船員「ひぇええええ!!」

魔王「到着するまで船室でおとなしくしておけば命は見逃す」



・・・


戦士「なぁ・・・こんなこと言うのもなんだけど、あんたってやっぱり、魔王だったんだな」

魔王「・・・」

勇者「・・・」

魔王「怖いですか?」

勇者「ううん。魔王さんやさしいよ」

僧侶「魔王さんは・・・素晴らしい方だとおもいます」

魔王「そういわれると、また鈍るんですよ。魔物として」

戦士「また?」

僧侶「そうだ。聞きたかったことが」

魔王「なんでしょう。答えられることなら」

僧侶「魔王さんは、私たちの島へきたことがあるんですか?」

魔王「・・・」

魔王「そうですねぇ・・・。あれは・・・ずいぶんと血の気の盛んな頃でした――――――



――――――十数年前
 

  あの頃、私は本国より命を受け、遠征調査隊の隊士として
  
  小さな島に偵察にいっていたんです。

  そこで、彼女に出会った。

  それは、今思えば不思議な出会いでした。 



  私「なぜ剣をおさめる」

  女「君を切る気はなくなった」

  私「それは高貴なる魔族への侮辱と受け取っていいか」

  女「とんがっているな。ますます嫌いになれない」

  私「?」

  女「よければお酒でも飲まない?」

  私「わけのわからん女だ・・・」  
 
  女「よく言われる」

  

  当時、成り上がりの豪族だった私は力に溺れ、己を過信していました。

  どうしても品位と箔ほしかったので、貴族政治に身を乗り出したりもしました。

  この世のすべてを手に入れる日も近い。そう思った矢先での大敗北。

  それも女性に。屈辱でしたよ。

  ですが、ゆえに・・・彼女が気になって仕方なかったんです。

  なぜ旅をしているのか。なぜそんなに強いのか。

  なぜ、敵である私に笑顔をむけるのか。 
 
  しらずしらずに会食を重ね、私たちはうちとけていきました。


  魔物の私と人間の彼女が、です。



  女「君は利口だな。ガウーしか言えない魔物がおおくて辟易していたんだ」

  私「また私を愚弄するか」

  女「あはははっ! 魔族は冗談もつうじないのか」

  私「・・・・」


  毎日楽しかった。

 人を食ったり、戦いの技術をみにつける以外のたのしみを初めてみつけたんです。

 でも、それを幸せだと思ってはいけなかったんですね。

  だって私たちはどうあがいても、敵同士だったのですから。



 女「わかる? 力をもつものが世界を創るんじゃない」

 私「?」

 女「壊すんだよ。そっから作っていくのは、力を持たないものたち」

 女「みーんなでがんばるの」

 女「魔王は馬鹿だから嫌い。あれは力が結果になってるだけ」

 女「暴力の果てに暴力を生んで、血なまぐさい土壌しかできないよ」

 私「む・・・それは薄々感じていたが・・・」

 女「だから私が殺すのさ。力をもってね。君たちの世界を壊すの」

 私「・・・」

 女「だってこれでも勇者だもん!」



 彼女は勇者と名乗っていました。
  
 えぇ、その存在がどんな意味を持つかもちろん知っていました。
 
 でも私の偏屈な頭は理解しようとしなかったんですね。

 伝説等々で語られる、勇者という役職を担う者が、こんなに笑顔の少女だとは思えなかったのです。

 
 そして・・・審判の日は唐突にやってきました。

 全ては私のせいです。

 いうまでもなく、彼女の剣を錆びつかせたのは私で。

 私の魔物としての誇りを打ち砕いたのは、彼女なのです。
 


 デーモン「勇者なんてあっけねけもんだぜ! なにが伝説だ!!」
 
 デーモン「殺してやった! ひゃはああ!!」

 ゴースト「こんなやつ束でかかればたいしたことはない!」

 デーモン「おい、どうした? なんでてめぇ手を貸さなかった」

 私「・・・」

そこの伏線か

1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE ~輝く季節へ~ 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD ~支配者の為の狂死曲~
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
10. Dies irae

SS予定は無いのでしょうか?

Vipでたまに見る素晴らしい出来のssは同人ゲーム作者なことが多い


これマメな



――――――


魔王「・・・」

勇者「・・・魔王さん」

魔王「何もできなかった。残ったのは後悔と自責の念だけ」

魔王「その二つは混じり合い、やがて私を魔王へとのし上げる力となり・・・ただただ、虚しく・・・膨らんでいったのです」

戦士「・・・」

魔王「彼女と語りあった理想のため、奔走しました」

魔王「後ろ指をさされ、子供にまで笑われ・・・」

魔王「それでも・・・どんな苦汁を飲んでも、私は再び以前のように、力だけを求める愚か者には戻りたくなかったのです」

魔王「彼女の示してくれた一つの未来を、実現したかったのです。とんだわがままな迷惑王ですね」

僧侶「・・・いまからでも遅くないですよ!!」

魔王「えぇ・・・もちろんです。壊すよりも創るほうが大変なのですから」

魔王「私はまだ・・・戦い始めたばかりです」

魔王「上空を死鳥が旋回していますね。覚悟してください。・・・もうすぐ魔の国に到着します」



――魔の国――



勇者「うすぐらいよー・・・」

戦士「・・・しっ」

魔王「警戒しなくても大丈夫ですよ。都市部か城内にしか魔物はすんでません」

戦士「なんで?」

魔王「なにもないからです」

僧侶「たしかに・・・木も全部腐敗していて、果実のひとつすら・・・」

魔王「この国はほんとうに、なにもないのです」

魔王「だから私はつくろうとした、食料の供給ラインや娯楽施設、大浴場」

魔王「彼女におしえてもらったあらゆる文化をもとに、魔の国の改革を進めました」

勇者「ここくさーい! やだー!!」

魔王「ごめんなさいね。都市部に行けばすこしはマシになりますよ」

勇者「魔の国いけるんですか?本拠地じゃないですか!やったーー!!」


勇者「ここくさーい!やだーー!!」



戦士「覇権を極めた魔の国の実態がこれかよ・・・」

魔王「力があっても、裕福とは限りません。奪うことしかしりませんでしたから」

魔王「国としては、すこしありえない話ですよね。でも私だって長年なんの疑問もいだかなかったんです」

魔王「だから私の改革は、急進派なんていわれちゃいましたよ」

魔王「なんでもない普通の幸せを、みなに与えたかっただけなのですがね・・・」

僧侶「魔王さんが再び返り咲けるよう、私たちは助力します」

魔王「・・・いいんですか?」

僧侶「え?」

魔王「以前勇者さまともこんな話をしたことありますね」

勇者「んー?」

魔王「魔王を倒して私が次の魔王になったら。勇者様はどうするかって」

勇者「絶対絶対たおさない! 魔王さんは良い人だから」

魔王「ありがとうございます・・・」ナデナデ

勇者「こんなとこにきてまで頭なでないでよー! 子供扱いしてー!」


魔王「どうやら・・・というよりも当然、バレているようですね」

戦士「!!!」

僧侶「上です!!」


▼ダークドラゴンがあらわれた


ドラゴン「無事たどりついたか」

魔王「現魔王に会いにきました」

ドラゴン「しらじらしい。首を取りに来たと言い直せ」

魔王「はい」

ドラゴン「裏切り者と侵入者はここで俺の業火で消し炭にしてやってもいいが」

ドラゴン「それだとのちのち困るのはこっちだからな」

勇者「どういうこと? なんであのドラゴンしゃべってるの?」

僧侶「私たちの王位継承にも戴冠式などいろんな儀式がありますよね?」

魔王「先も述べましたが先代の首をふりまわすこともひとつの通過儀礼なのです」

勇者「ふーん? じゃあなんでしゃべってるの?」


ドラゴン「それは俺が・・・賢いからだ!!」


▼ダークドラゴンはやけつく息を吐いた


戦士「お、おい! 火ふかねぇっつったろ!!」

僧侶「ちがいます・・・・これは・・・きゃあああああ!!」

戦士「うああああああっ!!」

勇者「僧侶!! 戦士ぃ!!」

魔王「グ・・・姑息な」

ドラゴン「姑息? 褒め言葉だな」

ドラゴン「チッ、勇者はまぬがれたか。さすがの耐性だな」

魔王(体が・・・おもうように動かないっ)

ドラゴン「俺の息は皮膚、粘膜、器官、あらゆる場所から体内に侵入し、対象を麻痺させる」

ドラゴン「貴様は魔法の使い手としては国でも五指に入るほどだが・・・相手が悪かったな」

魔王(まずい・・・勇者様をまもらなければ・・・)

勇者「魔王さん! 僧侶! 戦士!!」


ドラゴン「くははは! 勇者、三人はもらっていくぞ」

勇者「ま、まって!!」

ドラゴン「一人で魔王城まで来い。ま、無理だろうがな」

ドラゴン「貴様程度の実力では街の門番に殺されるといったところか」

魔王(勇者様・・・)

ドラゴン「飢えた民どもの糧にでもなり、その生命を終えるがいい」

ドラゴン「いや、それで済めば御の字だな」

勇者「!!」

魔王「きく・・・な・・・・」

ドラゴン「貴様のような熟れる前の小娘でも娶りたいやつは山ほどいるだろう。そっちに期待でもしてみるか?」

ドラゴン「くははははは! もう会うことはないだろう。さらばだ」


バッサバッサ・・・



勇者「あ・・・・あ・・・連れてかれちゃった・・・」


勇者「ど、どうしよう・・・魔王さん・・・」

勇者「うぅ・・・どうしたらいいの!」

勇者「みんな殺されちゃう! 殺されちゃうよぉ!!」

勇者「うっ・・・うっ・・・」

勇者「なんで、泣いちゃうの・・・だめ・・・勇者なのに・・・」


勇者「助けて・・・魔王さん・・・」

勇者「なんにもできないよ・・・スライムもたおせないのに・・・」

勇者「・・・・うっ」

勇者「うわああああああん!」

勇者「あああああああああん!」




――――――



――魔王城――


―謁見の間―


現魔王「がははははは! 笑いがとまらないぁ、なぁ?」

ドラゴン「まったくですな」

現魔王「勇者も元魔王も同時始末できるなんざ。ぎゃはははは!」

ドラゴン「国民集会の準備をすすめましょう」

現魔王「おうよ。俺はいまにもこいつの生意気な首をはねたくてはねたくてしょうがないのよ」

ドラゴン「となりの娘二人はどうしますか?」

現魔王「ばらしてくっちまうってのもいいが・・・そこはまぁ、げひゃひゃ」

現魔王「俺様に挑んできたことを死ぬほど後悔させてやるってもんよ!!」


魔王(う・・・・下衆が・・・)

僧侶(勇者様・・・)

戦士(体が動かねぇ・・・こんなとこで・・・こんなとこで死ぬのかよ・・・っ!)


現魔王「なんだ? その反抗心丸出しの面は」

戦士「!」

オーガ「げひ、げひ」

悪騎士「ぎひゃははは」

僧侶「!!」

現魔王「お楽しみといこうぜぇ、魔王さんよぉ」

魔王「よ・・・せ・・・・」

現魔王「てめぇのお仲間が絶望にまみれる姿、みせてやるよ」

僧侶「や、やだ・・・」

戦士「さわ、んな・・・ッ!」

ドラゴン「俺の息をすったら向こう一週間はうごけねぇぜ、ぎゃはは!」

ドラゴン「おいお前ら。俺も混ぜろぉ! ムラムラむしゃくしゃしてんだ」

オーガ「げひ、げひひ」

魔王「やめ・・・ろ・・・」



 やめてくれ・・・その子達は・・・

 頼む・・・お願いだ・・・

 もう、嫌なんだ・・・・・あんな失望感・・・二度とごめんだ・・・

 死んだって、死にきれやしない


悪騎士「サービスしろよぉ!」ビリィ!

僧侶「いやぁあああ!!」 

オーガ「げひ、げひひひ」サワサワ

戦士「あっ、く・・・・ッ!!」


 
 運命? 宿命?

 そんなふざけたものをこの子たちに託す愚かな神がいるなら、死んでしまえ!

 死なないなら・・・私が殺してやる・・・

 なにもかも・・・殺して・・・壊してやる・・・

 だから・・・・・



魔王「もうやめてくれ」


▼魔王はたちあがり、うつろな目でどこかあてのない空間を見つめている


ドラゴン「ばっ! 何!? 俺の息から自力で!?」

僧侶「魔王・・・さん・・・?」



▼魔王の全身からゆらりゆらりと闇が解き放たれる


魔王「嫌なんだ」


▼闇はやがて収束し、不気味で大きな、新たな肉体へと形作られていく

戦士「なにが・・・!?」


▼闇から伸びた異形の腕が悪騎士を引き裂いた

▼闇から放たれた業火をあっという間にオーガを消し炭に変えた

現魔王「なっ!! なんだこれは・・・!」


魔王「もういい」


戦士「魔王・・・お前は・・・!!」


現魔王「ばかな! おい! どういうことだ!!」

ゴースト「きゃつめは元は闇の魔導師・・・! まさかこんな術を」


魔王「壊すだけなら、これでいいんだ・・・」


▼巨大な腕はダークドラゴンをつかみ、ひきよせる

ドラゴン「や、やめろおお!! お前は公約でずっと不殺を」


▼ダークドラゴンはにぎりつぶされ、この世のすべての邪悪を孕んだものに噛み千切られた


魔王「クク・・・」

僧侶「魔王さん・・・なんて・・・なんてお姿に・・・!!」

ゴースト「こ、こやつは世界を滅ぼす気ですぞ!!」

現魔王「グ・・・させるか! 俺が直接ぶちころす!!」



▼ソレは周囲にただよう闇をちぎりとり、光線のごとく速度で正面へとなげつけた


現魔王「ぎゃああああっ!!! 俺の腕がぁあああああ!!」

ゴースト「魔の国の闇をすべて吸い取っているのか!!」

現魔王「なんだとぉ・・・・!!! 俺の国で暴れてんじゃねええ!!!」


▼化物の腕は、大きく空をなぎ払った

▼無数の刃となった闇の風が正面の物体を切り刻む


現魔王「ぁ・・・・・」バラッ…

魔王「モウ。いいンダ」

魔王「もう、何もいらない・・・なにも」

魔王「私は・・・全てを・・・」


僧侶「魔王さん! 正気にもどってぇ!!」

戦士「このままじゃ私らもやべーぞ、ただでさえうごけねーんだ。天井が崩れたら終わりだ・・・」



――腐敗した森――



勇者「うええええん、ああああああっ!」

勇者「ひっぐ・・・うっく・・ううう・・・」

勇者「・・・う?」

勇者「・・・・な、なんだろう」

勇者「闇がうすくなっていってるような・・・」

勇者「向こうの空の色がどす黒くなってる・・・」


オーク「きゃっほうう! お嬢ちゃん!!!」

勇者「!!」

オーク「迷子かい? 俺と遊んでかない? もちろん、死 ぬ ま で ♪」

勇者「あ・・・あぁ・・・どうしよっ」

オーク「びびんなよ可愛いなぁへっへっへ」

勇者「うぅ・・・・」

勇者「やめて!」に期待



オーク「・・・・ん? なんだこの感じ」

勇者「・・・闇が・・・ううん、世界が溶けていってるのかな」

オーク「は・・・? ぁ・・・」ガクッ

オーク「な、なんだ? 力がハインねェぞ、おいおいおいおい!」

オーク「どういうことだってのぅ!! お嬢ちゃぁあんなんかした?」

勇者「なにか見えた! ・・・あれは、化物?」

オーク「城の方か・・・な、なんだあのバカデケェ腕・・・!! あんな怪物ここにゃいねぇぞ・・・」

勇者「・・・魔王・・・さん?」

オーク「あ・・・やばい・・・意識が・・・」

勇者「大丈夫!?」

オーク「うぇへへ・・・おいおいおい、俺は・・・魔物だぜ・・・アンタの敵だろ」

勇者「・・・・」

オーク「ちくしょ・・・」

勇者「いかなきゃ・・・私・・・なんで泣いてたんだろう、ばか」

現魔王2「現魔王がやられたようだな」
現魔王3「フッ、元魔王にやられるとは現魔王四天王の面汚しめ」
現魔王4「だが奴はこの中でも最弱だったしな」



勇者「・・・・何が起きているの? 魔王さん・・・」

 魔王『勇者様』
 

勇者「僧侶・・・・・・・」
 
 僧侶『勇者様ぁ!』

 戦士『勇者!』


勇者「みんなに・・・・・」
 
勇者「みんなに・・・! 会いたいよ・・・ッ!!」










ヒュン――――……




魔王「アアアアアア!!」


▼ソレは、絶え間ない破壊を望み、闇を世界へとまきちらした



戦士「もう限界だ・・・」

僧侶「世界が・・・歪んでいきます・・・」


▼ソレには理性や情などなく、ただただ・・・滅びを欲した



戦士「なぁ僧侶・・・」

僧侶「なんです?」

戦士「やりのこしたことある・・・」

僧侶「やまほど」

戦士「・・・だよな」

僧侶「・・・戦士さんも、死に切れないでしょ」



戦士「うん。でもさぁ、私がこうなることを私が自分で選んだわけじゃん?」

僧侶「そうですね」

戦士「なりゆきとはいえ、やっぱ、勇者の仲間をするって」


戦士「覚悟いくらあってもたりゃしねぇよなぁ」

僧侶「うっく、グズ、ばか。あなたが泣いたら私も・・・うううあああああ」

戦士「死ぬときくらいはさ、グズ、かっこよくクールにだれかかばって死ねるかなって、おも゛ってだ」

戦士「なのによ・・・首から下まったく動かないなんてさ、情けないよな・・・ばっかみてー」


僧侶「・・・・あぁ、闇がせまってきます」

戦士「・・・・魔王・・・立派な・・・魔王になっちゃってさ・・・はは」


魔王「・・・グオオオオオオオ!!!!!!!」

ズズ・・・

ゴゴゴゴ




――――ヒュン


勇者「とまって」

魔王「ゴゴ・・・・ゴゴ」


戦士「・・・・ゆう、しゃ・・・?」

僧侶「勇者さま・・・? 勇者様!?」



勇者「ねぇ・・・・魔王さん・・・だよね?」

魔王「ゴオオオオ!!!アアアアアアアア!!」

勇者「・・・・泣いてるんだね。わかるよ」

勇者「魔王さん、優しいから・・っ!」


魔王「アアアアアアアアアア!!!」


▼ソレは巨大でいびつな腕を大きくふりかぶった



魔王「ア゛ア゛アアアアアアアアアア!!!」


 
ゴースト「まるで地獄がよんでるようだぜ・・・」

ゴースト「にしてもあの小娘・・・正気か、あんな化物に立ち向かうなんて俺はごめんだね」

ゴースト「けっ。馬鹿な魔王め、力に飲み込まれよった」

ゴースト「・・・・だがあれこそが、我らが永久の歴史をかけてたどりつきたかった、進化の果てなのかもしれん」

ゴースト「力だけの世界の到達点・・・ククク、おもしろくなるぞ!」

ゴースト「ひひゃははははは!! あああアアアアアあああああああああっ」

ゴースト「ガ――――――



▼巨大な腕は周囲のすべての闇の力を集め、さらに膨らんでゆく


勇者「・・・」

勇者「魔王さん・・・」



 殺してくれ・・・

 だれでもいい・・・私を・・・滅ぼしてくれ


 そうだ、貴様でいい。私を・・・

 苦しいんだ・・・
 
 少女よ・・・貴様は・・・誰だ・・・


 いや、知っている・・・?


 貴様は・・・

 きみは・・・・・

 
 あなたは・・・?



勇者「勇者です!! 魔王さん! 勇者です!!」

魔王「ガガガガアアアアアアアアアアア!!」


 この子は・・・運命の子

 正義の象徴・・・


魔王「コロシテクレ・・・コロシテクレ・・・」

勇者「・・・・魔王さん。いま・・・助けてあげます・・・」


 闇をきりひらく剣
 
 新しい世界の樹立には・・・絶対に必要な存在・・・


魔王「コロシテクレ・・・コロシテ・・・」

勇者「はい・・・わかりました」


 あなたは、こんな私の悪魔の手ですら、清めてくれるのだろうか

 君が・・・かつてそうしてくれたように・・・


勇者「魔王さん!!!!!」


ヒュン――――――



▼勇者は魔王の懐へ転移し、聖なる剣で

▼魔王の巨大な心臓を貫き



▼すべての力を注ぎ、振り払った



魔王「ガッ・・・」



 そうか・・・

 あなたは・・・・私の・・・
 
 どうりで・・・ふふ、おかしな気分になったものだ


魔王「私は・・・つくづく愚かだな・・・」


勇者「――」


魔王「なんにもないなどと・・・そんなこと、なかったのに・・・」




 僧侶『魔王さん!』

 戦士『魔王!』


 小さきものたちよ・・・


 勇者『魔王さぁん!!』ニコニコ

 
 儚き少女よ・・・


 女『あいかわらず、とんがっているな』

 女『好きだよ。愛してるかも』


 君は・・・笑うだろうか・・・  

 笑ってくれたら・・・いいな

 
  


 
▼ソレの滅びの咆哮は、大気を震わせ

▼世界中に、ひとつの歴史の終わりと始まりを告げた


 
戦士「魔王・・・」

僧侶「見てください・・・魔の国に・・・光が」

戦士「あぁ、見えてるよ。見えてるさ」

戦士「あいつがずっとほしくてほしくてたまらなかった・・・輝きだよ」


僧侶「勇者様は・・・?」


勇者「・・・・」

勇者「ありがとう。魔王さん・・・おかあさん」

勇者「僧侶、戦士・・・お、おっ・・・ぉ、お父さん!!お父さん!!!お父さん!!!!!」

勇者「おとうさん!! おとうさん!!! おとうさん!!!!」

勇者「私! 勇者です!! 勇者です!! 魔王娘の・・・・勇者です!!!!」



勇者「いま・・・私たちの・・・冒険は終わり」

勇者「世界を創る・・・ほんとうの・・・たたかいが・・・」

勇者「はじまり・・・ましたっ!!」

勇者「みていて、ください・・・っ」

勇者「魔王さん・・・ッ!」



勇者「うわあああああああああああああ!!!!」





▼その日、ようやく世界は誕生した


▼勇者はそれを守り、育て、次へと紡いでいく運命を


▼その小さな体で、背負うことになった



――――数ヶ月後


ポンッ ポンッ


勇者「あれ? ここ印鑑もれてるよー! もー!」

オーク「す、すいませんへへ」

勇者「はい! またもってきてねー!」

僧侶「勇者様、まもなく東の王とのご会食の時間ですよ」

勇者「あれ、もう?」

僧侶「ほら、はやくきがえないと」

勇者「わかってるよー。いつまでも子供扱いしないでよ!」

僧侶「はいはい、お酒のめるようになってからいいましょうねー」ナデナデ

勇者「うーー! この国では16歳からのめるようにします!」

戦士「あはは、独裁だ」

勇者「冗談だよぉ・・・えへへ」



僧侶「窓の外をごらんください」

勇者「んー?」ヌギヌギ

僧侶「・・・すこしづつですが、この国は綺麗になっていってます」

勇者「そうだねー」

僧侶「勇者様が、邪悪を全て祓ってくれたおかげですよ」

勇者「・・・・うん」

僧侶「お父上も、喜んでいることでしょう・・・ううん、魔王さんって呼んだほうがいいですよね」

勇者「ちゃんと魔王さんの仕事全部ひきつげるかなぁ・・・」

僧侶「大丈夫ですよ!」

戦士「あぁ、私らもいる!」

僧侶「それに、魔王さんの娘さんなんですから」

勇者「うん!」ニコッ

僧侶「・・・・・・・きゃんっ、可愛いっ勇者様!」ムニッ

勇者「ぎゃうううーー王様になにをするかー!!」


僧侶「あははっ! いつまでもぷにっぷにでいてくださいねー」

勇者「やだ! ぜっっったい大人になる! 魔王さんみたいになる!」

戦士「ムリムリ!」

勇者「なるもん!」

戦士「あんな所帯染みたのになりたいのか?」

勇者「かっこいいもん!」

僧侶「じゃあまずは家庭をもたないとですねー」

勇者「家族ならいるよ!」ギュ

僧侶「あら?」

勇者「えへへ」ギュ

戦士「お?」

勇者「ね?」ニコニコ

僧侶「・・・・えぇ。お姉ちゃんですよー」ナデナデ

戦士「・・・・じゃあ私は・・・お、お母さん!?」

僧侶「ついに認めましたね」


勇者「魔王さん!」


▼勇者は空へむかって呼びかける


勇者「家族って・・・いいね!」

勇者「しってるでしょ! とってもあったかいんだよ!」

勇者「だからね、魔王さん!!」


▼勇者は空へむかって呼びかける


勇者「ありがとう!! わたしたちはここにいるよ!!」


▼いつか、魔王のあたたかい魂が、迷わず帰るべき場所へ辿りつけるように


勇者「魔王さん!! ずっとずっと!!」

勇者「大好きだよ!!」



▼END

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom