美也「にぃにー! あっさだよー!!」(557)
純一「……う、う~ん……もう、朝なのか……美也、もう少し寝させてくれ…」
美也「にぃに──あ、そうじゃなかった……コ、コホン──お兄ちゃん、起きなきゃだめだよ~!」
純一「……うん? なんだよ美也……家だから別に、にぃにでもいいだろ……ふわぁ~…」
美也「な、なにいってるのかな、このお兄ちゃんは……みゃーは高校生になっても、
そ、そんな呼び方しないよっ」
純一「……? まぁとりあえず起きるけど───」
薫「………」じぃー
純一「───……へっ!? なんで薫がいるんだ、ここに!」
薫「はろー!……なに、アンタ。こうやっていっつも妹さんに起こしてもらってるの? 良い身分ね、純一ぃ」
純一「いや、それはなんていうかその……というかその前に、色々と説明してくれっ!」
数分後
純一「──……ぼくを迎えに来たぁ?」
薫「もぐもぐ……そうよー。だってアンタってば、学校くるのけっこう遅いし……なんか
待ち合わせして会うのもかったるいじゃない?」
純一「ま、まぁ…そうだけどさ…それでも、別に家に来るほどでもないだろっ」
薫「ごくっ…ごくっ……ぷはぁ。やっぱ朝は牛乳に限るわね!
──そんな釣れないこと言わないの純一ぃ……あたしとあんたの仲でしょ」
純一「どんな仲だよ……」
薫「んっと……耳をかみあった間柄?」
純一「僕は噛んでないだろっ!薫だけだ!──それと、なに普通に僕の家でご飯食べてるんだよ」
薫「いやー、あんたっちって朝ご飯豪華ね~。見てたらあたしもお腹すいてきちゃってさー」
純一「だからって食べるなよ……まぁ、今日は両親は早出だしいいけどさ……」
薫「そそそ。あたしだって無粋に家族だんらんの朝ご飯中を割っては言ったりしないわよ~。
あ、美也ちゃん。これてんきゅね~」
美也「あ、は~い」
純一「はぁ……まぁ、わかったよ。でも、来る時ぐらいは前もって連絡してくれよ」
薫「え~……それだと面白みがないじゃないの、色々と」
純一「僕は断然、面白みは無い方がいい」
薫「なによぉ、釣れないわね……ん。そしたら、なにかしら。
前もって──連絡しておけば、毎日こうやって迎えにきてもいいってワケ?」
純一「そ、それはちょっと勘弁してほしいかな……」
薫「ひっど~いっ! このあたしがあんたの為を思って迎えに来てあげるっていってあげてんのにぃ」
純一「──それ、絶対に僕の為を思ってじゃないだろ……お前が面白いからやってるだけで」
薫「あ、ばれた?」
純一「バレてる」
薫「あははー! ──ま、そうね。冗談はこのへんにしておいて……純一」
純一「ん? どうしたんだ急に」
薫「どうしたじゃないでしょ。今日は、大丈夫なの?」
純一「──うん、大丈夫。ちゃんと昨日のことは覚えてるよ」
薫「そう……それならいいわ。また記憶が吹っ飛んでるーなんて言われたら、困ってたわよ」
純一「……まぁね。僕だって少し、緊張してたよ」
純一「──今、こうやって薫と会話してたけど。これは本当に何時も通りの会話なのかって。
ちゃんと昨日からの薫との会話なのかって……」
薫「ふーん、そうなの」
純一「おい、なんだよその興味なさそうな感じは……これでも僕は困ってるんだからな」
薫「そう? 案外、大丈夫そうに見えるわよあたしには」
純一「……そうか? いや、これでも結構怖いんだけどな……
あ、でも朝から突然、薫の顔を見たからそうでもなかったかも」
薫「ちょ、こら。あたしの顔をお化けみたいな例えするのやめなさいよね」
純一「事実を言ったまでだ」
美也「──にぃに……じゃなかった、お兄ちゃん。もう朝ご飯食べたの?
みゃー早くお皿洗いたいんだけど~」
純一「あ、直ぐ食べるから待っててくれ美也」
数十分後
美也「じゃあ、美也先に出てるからね~。お兄ちゃんも遅れないようにしてよね!」
純一「うん、わかった。美也も事故とか気をつけろよ」
美也「も、もう高校生なんだからそれぐらい大丈夫だよっ。にぃにこそ気を付けなよ!」
純一「ああ、気を付けるよ。いってらっしゃい美也」
美也「いってきまーす」ぱたぱた… がちゃん
薫「ん~……兄妹っていいわね~。あたしもあんな可愛い妹欲しかったなぁ」
純一「…兄妹なんてそう良いもんじゃないぞ」
薫「そお? 美也ちゃんみたいな妹だったらあたし、これでもかって甘やかしちゃうと思うけど」
純一「それはアイツの表向きしか知らないからだよ……よし、僕も着替えるか」
薫「ん、そしたらあたしは居間に居ても良いかしら?」
純一「好きな所に居ていいよ。すぐ着替えるから」
薫「りょーかい」
部屋
純一「………」しゅるしゅる…
純一(──あれから、二日目になる今日。僕の記憶は未だにそれから継続したままだ…)
純一(十二月中旬に寝たときから、二日前にいたるまで……僕の記憶はすっかりなくなっていて。
年終わりも年明けの記憶もないまま──)
純一(今の僕は、ここにいる……)
純一(その記憶が無くなっている期間……それは様々なことがあって、僕が知らないうちに色々な人が
すっごく変わってしまっていた……)
純一(──森島先輩は彼氏が出来ていて、薫は転校することになっていて……
七咲は水泳につきっきりで、中多さんはアニメ研究部に入ってしまっていて…)
純一(それに、絢辻さんも変わっていた……)
純一(……その現実を歩んでる彼女たちは、もう僕の知っている彼女たちじゃなかった)
純一(それを知った僕は……とてもショックを受けて、一回だけ本当にくじけそうになって…)
純一「……でも、それでも。僕はどうにかここに居るんだ」
純一「例え──僕が記憶が無いとしても、僕はちゃんとここにいる」
純一「──僕は決して、諦めたりはしない。ちゃんと、ちゃんと記憶を取り戻す…つもりでいるんだから」
純一「……それに、この手紙もある」すっ…
純一「この手紙に書いてあること……そして金の仮面。
僕はこの確かなてがかりを、しっかり受け止めるんだ」
純一「………」
純一「──よし、じゃあ今日も頑張っていこうじゃないかっ!」
数分後
純一「おーい、薫。もう着替えすんだよー……って」
薫「すぅー…すぅー……」
純一「なに寝てるんだよ薫……」
薫「すぅー…むにゃむにゃ……すぅー…」
純一「くそ、僕だってこの時間帯はまだ寝てるって言うのに……
こうやって幸せそうに寝てる顔を見ると、なんだかちょっとムカつくな」
薫「すぅー……すぅー……」
純一「…………」
純一「そうだな、少し悪戯してみるか」
純一「まだ登校するまでの時間に余裕はある……」ちらっ
純一「──よし、じゃあ薫。覚悟を決めろよ」
薫「すぅー……んん……すぅー…」
純一「さて、悪戯するって言っても……意外と何も浮かばないなぁ」
純一「なんかこう、良いアイディアはないもんかな……あっ!そうだ!」
純一「前にそう──僕がまだ記憶が無くなる前のじきに、お前に……」
純一「僕は耳を噛まれていたな、そういえば」
純一「うんうん。そしたら普通はお返しをしなくちゃいけないよね。
噛まれたら噛み返す、これが僕の知っている常識だしね」
薫「すぅ…すぅー……」
純一「薫ぅー…? 僕は今からみみを噛むぞ~? いいなぁ~?」こそこそ…
薫「すぅすぅ……」
純一「よし、確認取れたな。んじゃ、さっそく……」
部屋
純一「………」しゅるしゅる…
純一(──あれから、二日目になる今日。僕の記憶は未だにそれから継続したままだ…)
純一(十二月中旬に寝たときから、二日前にいたるまで……僕の記憶はすっかりなくなっていて。
年終わりも年明けの記憶もないまま──)
純一(今の僕は、ここにいる……)
純一(その記憶が無くなっている期間……それは様々なことがあって、僕が知らないうちに色々な人が
すっごく変わってしまっていた……)
純一(──森島先輩は彼氏が出来ていて、薫は転校することになっていて……
七咲は水泳につきっきりで、中多さんはアニメ研究部に入ってしまっていて…
梨穂子はなんちゃらリホってアイドルになってたし…)
純一(それに、絢辻さんも変わっていた……)
純一(……その現実を歩んでる彼女たちは、もう僕の知っている彼女たちじゃなかった)
純一(それを知った僕は……とてもショックを受けて、一回だけ本当にくじけそうになって…)
純一「……でも、それでも。僕はどうにかここに居るんだ」
純一「例え──僕が記憶が無いとしても、僕はちゃんとここにいる」
純一「──僕は決して、諦めたりはしない。ちゃんと、ちゃんと記憶を取り戻す…つもりでいるんだから」
薫「う、う~ん……むにゃ…すぅー……」
純一「…………」こそこそ…
純一(髪をかき分けてっと……おお、指に髪の毛が絡まっちゃうよ。
本当に薫の髪の毛はすごいなぁ…)さわさわ
純一(それなのに、しっとりしとした質感…それでいて芯のある髪。
一見ただのジャングルにしか見えないけど、こうやって改めて触ってみると…)
純一(こう、なんというか……いけない気持ちになってくるよね!)
純一(あ、耳たぶ見えた! よし、じゃあさっそくかみますか……覚悟しろ!薫!)
純一「んー……」すっ
薫「すぅー……すぅ…」
純一 カプッ
薫「──んっ……すぅー…すぅ…」
純一「…………」
薫「すぅー……すぅー…」
純一「──………」もぐもぐ…
薫「んっ……んん……?……んあ……」スゥースゥー…
純一(……意外と起きないもんだなぁ。よし、もう少し強引にいってみるか!)
純一「もぐ……はむはむはむ!」
薫「ちょ……んっ!……やめ、ひゃ……!」
純一「はむはむ……かりかり」
薫「あっ……いたっ……んんっ……ひぅ…」
純一(あれ……なんだろう、お返しに耳を噛んでるだけなのに…)はむはむ
薫「すぅー……ん、あ!……だ、だめ……んっ」
純一(なんだかちょっと……あ、それ以上は考えてはダメだ純一!こ、これは決してやましい思いで
やっているわけではないんだ…!)はむはむ
薫「ひぅ……ん、いや……そこ、だめ……!」
純一(──これは紳士のたしなみ……そう、そうだよ。これは紳士たる僕のおちゃめなんだ!
だから絶対にえ、えっちぃとかそんなんじゃないんだよ!)はむはむ
薫「だ、だめよ……そん、な……あっ」
純一(う、うん……だからそうだよっ!薫もちょっと大げさな反応し過ぎだよ!
もう、これだから紳士力の足りないお子ちゃまは…)はむはむ
純一(──そうだなこれは。僕が、紳士とはいかなるものか薫に教えないとだめだな…!)すっ…
薫「んっ……」すぅすぅ…
純一(……いざ、僕の紳士力を持って──薫に、教えようじゃないか)
純一「……行くぞ、薫」すっ……
薫「──ん……ん、んん?……あれ、あたしって眠って───」
純一(秘儀、耳の中を舐め──あ、やべっ!)ぺろぺろ
薫「──え、ちょ……あひゃひゃひゃ!ちょ、なに……これ、あひゃひゃ!」
純一(ま、まずい…!薫が起きてしまった! こ、これはしかたない…!)ささっ
薫「え、ま、待ちなさい! だ、だれなの耳を舐めてるの……手を離しな──あひゃひゃ!」ばたばた
純一(なんとか視界を封じた! あ、こら暴れるな薫……ちゃんと舐めれないじゃないか!)ぺろぺろ
薫「あひゃひゃ…!ひゃ…ひゃ…!」ばたばた…
純一(こ、こうなったらもう、色々と最後まで僕の力をだしきってやる…!
どうせ後で酷い目に会うってわかってるんだから……それっ!)ぺろぺろぺろぺろ
薫「ひゃひゃ……ひゃう…ホン、ット…! や、やばいから……! や、やめて……あひゃひゃ…!」ばた…
純一「……っ!」ぺろぺろぺろ
薫「あひゃひゃ……ひゃ、ひゃ……!」ばた…
純一「……はむ、ぺろぺろ…!」
薫「んっ!…ひゃひゃ……も、もうヤメ…ひゃひゃ…っ」びく…
純一(──ん? なんだか大人しくなってきたぞ…これならもしや、
終わった後も許してもらえるかもしれない……!)
薫「あ、あんた……じゅ、じゅんいちでしょっ!? わ、あひゃひゃ──
わ、わかってんのよあたしには……っ! あ、あとでホントに覚えておき…あひゃひゃ!」
純一(──だめだ! ばれてしまってる! しかたない……ここは本気で薫を舐めるしかないな!)
薫「そ、そろそろやめないと……──んっ!?」びくん!
純一(それっ! これが僕の本気だ!)ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ
薫「ちょ──それ、は……ひぅっ……あ、だめじゅんいちっ…や、やめな、あっ」びくん…
純一「ん、んん~……!」
薫「か、噛みながら喋るな……!い、息があたって……ひゃうっ」びくんびくん…
数分後
薫「はぁっ……はぁっ…!」くたー…
純一「はぁっ……はぁっ……」
薫「はぁっ……あ、あんた…やってくれたわねホント…はぁっ…はぁっ…」
純一「はぁっ……ま、まぁね……これが僕の本気だよ……」
薫「なんかもう……あたし、怒ってたのに……こう、どうでもよくなってきたわ…」
純一「そ、そうか……僕も、なんであんなに頑張ってたのか…よくわかんなくなってきたよ…」
薫「……馬鹿ね、あんたも……もう、みみの中…べったべたじゃない……!」
純一「そ、そうだね……なんか、ごめん…」
薫「──ふ、ふん。ちょ、ちょっとトイレ借りるわよ……!」
純一「え? ……べ、別にかまわないけど…」
薫「………」
純一「ん? どうしたんだ薫、早く行きなよ」
薫「──純一、手を貸して」
純一「なんだよ…立つぐらい、自分でやれよ」
薫「……っ。い、いいから何も言わずに、手を貸しなさいってば…っ」
純一「……仕方ないなぁ。ほら、手を持って」すっ…
薫「…………」
純一「なんだよ、ほら。僕の手を握って」
薫「──……かしら…」
純一「え? なんだって?よく聞こえないぞ薫」
薫「──だ、抱きかかえてくれない、かしら……って言ったのっ」
純一「……はぁ? なんで僕が──」
薫「あ、あんただって好き勝手したでしょ!? そ、そのお返しよ…っ」
純一「……ま、まぁそれで許してくれるんなら、いいけどさ……」すっ
薫「あ……」ひょい
純一「トイレの前まででいいんだろ」
薫「あ、うん……お願い」
トイレ
純一「ほら、ついたぞ」
薫「そ、そう……ゆっくりおろしなさいよ純一」
純一「はいはい、薫お嬢様……よっと」
薫「………」
純一「なんだよ、まだ僕に頼みごとでもあるのか?」
薫「え、いやっ──そうじゃないけど、あんたって意外と……その、
体力あるのね……」
純一「え? ……んー、そうかもね。昨日だって色々とかついだ記憶もあるし…」
薫「そ、そう……へぇ、ちょっと見なおしたわ。あんたのこと」
純一「今さらだよ。お前と三年間一緒にいたんだし」
薫「……そうね。確かにそうよね」
純一「……? ほらとにかく、トイレ入れって。学校遅刻しちゃうぞ」
薫「あ、うん……あんたこそ聞き耳とかたてるんじゃないわよ!」
純一「し、しないよ…」
前スレってロミオと先輩を取り合ったやつでおk?
登校路
だっだっだっだ…!
純一「はぁっ……お、お前…トイレでなにしてたんだよ……!!
結局、遅刻しそうになってるじゃないか…!」
薫「はぁっ……う、うるさいわね! 乙女のと、トイレは長いものなのよ……!!」
純一「僕にはわからないよ…! と、とにかく急ぐぞ…!!」
薫「あ、あんたに言われなくてもわかってる……!!」ぎゅん
純一「なっ!? か、薫ひきょうだぞ!」
薫「なーにが卑怯なのよ…!これでも、足はクラスで一番なんだからね……!!」
純一「へ、へー…そうなのか……」
薫「そうなのかって──……あんたも体育の時、見てたじゃないの……っあ…」
純一「んっ!? どうした薫っ?」
薫「──なんでもないわよ、ほら校門見えてきた!あたしは先に行ってるから!」ぎゅん!
純一「え、ちょ、おま……!」
>>39
おk
このお話には前回が存在します
ご存じない方は
美也「にぃにー! あっさだよー!」
でぐぐっていただけると幸い
教室
梅原「ん?──おう、大将。今日はお偉い出勤だな」
純一「はぁっ…はぁっ……ま、まぁな……ふぅー…」がたん
梅原「今朝からお疲れとはぁー……モテル男はつらいねぇ!」
純一「なに、梅原……お前も朝からなにをいってるんだよ…あー疲れた…」
梅原「しらばっくれんなってー! 聞いたぜ聞いたぜぇ……森島先輩の話だよっ」
純一「え……?」
梅原「なにすっとぼけてんだよ大将。こちとら今朝から噂の持ちきりだぜ?
──あの難攻不落の森島先輩を落とした、一年坊主の樹里 路美雄!」
梅原「校内でもトップクラスのカップル認知度だったあの二人相手に……お前さん、
どうやらアタックしたみてぇじゃねぇか!」
純一「え……いや、梅原…その、なんというか突っ込みたいところはたくさんあるんだが…
ひとついいか?」
梅原「なんだよ、言ってみな」
純一「その──お前は、僕があの二人の前に行くってのは見てて辛いんじゃなかったのかよ…?」
梅原「……うーん、そんなこと言ったか?」
純一「言った。……それと、あれだけど記憶を問いただすようなことを僕に振るのはやめてくれ…
今はちょっとそれ、トラウマ気味なんだよ」
梅原「? まぁ、冗談だ大将。確かに俺はそんなことを言ったな。うん」
純一「……じゃ、どうしてだよ」
梅原「──いや、これはだな大将。本当は言いたくなかったんだがよ……実は俺はな、
お前さんにあんなこと言っておきながら…大将は絶対に、森島先輩の所に行くって思ってたんだ」
純一「え……そうなのか?」
梅原「ああ、そう思ってた。……だって、あんだけ頑張ってたんだぜ?
どんなときだって、お前は森島先輩のために頑張ってたのを俺は知ってる」
梅原「だからそうそう──森島先輩に彼氏が出来ても、大将は諦めないって思ってた。
だがら──まぁ、そうだな。確かにここ数日は大将の落ち込み度は凄かったが……」
純一「う、うん……そうだね」
梅原「──でも、昨日からのお前さんはちょっと違うような気がするんだ、俺は」
純一「違うような気がする?どういう意味だよ梅原」
梅原「──いや、俺にもよくはわからねぇけどよ……確かにそう感じるんだって。
こう、何もかもを忘れてるようでよ……でも、凄く頑張ってるような」
純一「……。曖昧だな、梅原なんか…」
梅原「だから俺にもわかってねぇんだって……でも、これだけは確かだ。
──噂されてるどうり、大将が森島先輩カップルに挑んで」
梅原「なにもかもひっくるめて、きれいさっぱりにしちまったってことは」
梅原「それだけで、俺はぁー……もう、わかっちまったよ大将ぅ!」ぐしぐし…
純一「え、お、おい……梅原、急に泣くなよ…みんな見てるぞ…?」
梅原「いやぁー……俺は感動してんだ。本気でよっ!…あんだけ落ち込んでた大将がよぉ…
こうやって森島先輩のことで頑張ったってことがよぉ~!」
純一「ま、まぁ……そう思われるのは、ちょっと嬉しいけどさ…」
梅原「ぐしっ──それで大将ッ! お前さんは今日から彼女もちなのか!
かぁーッ……いいねぇ!この幸せ者!」
純一「……え? 違うよ?」
梅原「……へ? い、いや大将……だって森島先輩と付き合ってるんじゃ…?」
純一「……えっと、その──振られた、かな?あはは…」
梅原「へ?た、大将……冗談キツイぜ…まさかそんなことありえるわけ…」
純一「…………」
梅原「ない、だろ…?」
純一「……森島先輩とは、付き合ってないよ。僕は」
梅原「っ……!」だっ!
純一「──ちょ……っ? 梅原っ!?どこいくんだよ!?」がしっ
梅原「なに、言ってんだよ……森島先輩の所に決まってんだろ…ッ!?」
純一「は、はぁっ!? なに、急に熱くなってんだよお前…!」
梅原「こりゃぁ──いくら俺でも許せねぇってもんだ!俺は怒ってるぞ大将ッ!
なんてたって……こりゃあ、森島先輩でも許せてもんじゃねぇ!」
純一「ちょ、待ってくれ梅原……ッ! これは色々とわけがあってだな……!」
梅原「ワケ? わけってなんだよ大将……俺にはわかってんだっ!
──あの一年坊主は、森島先輩とは本当はつきあってなかった」
梅原「一年坊主のほうの理由は噂で知ってるけどよ……森島先輩の方は俺でも予想がつくぜ!?
──あらかた、お前を色々と試そうとしたってことだろ!?」
梅原「なのによぉ……なのに、そんな全てを知っても大将は森島先輩の告白したって言うのによ…
俺のことじゃねぇのに…すっげー悔しくてよ…!」
純一「ま、まて梅原…! い、言いたいことは色々とあると思うけどっ。
と、とりあえず教室じゃみんなが聞いてるから…!」
梅原「……ッ。わかったよ……」
純一「ああ、そしたらとりあえず……人気のない所に行くぞ梅原」
梅原「あいよ……」
がらり… ぴしゃ
「………」
「………ッチ」
自動販売機前
ぴ がたん
梅原「っ……くそ……!」
純一「──ほら、梅原。とりあえず飲んで落ち着けって」ひょい
梅原「………」ぱしっ
純一「……はぁ。朝からいきなり叫ぶなよ…みんな見てたぞ?
昔からひょうきんだって思ってれば、急に熱くなんのも治ってないよな…」
梅原「……なんだよ、大将……なんでお前さんはそんなに落ちついてんだよ…」
純一「……。いいんだよ、梅原。僕は大丈夫だからさ」
梅原「ウソつくんじゃねぇよ……俺は、俺は…お前の友達だ。親友だ。だからよ…
お前が思ってることは、ちゃんとわかるってもんだ」
梅原「お前さんがあんだけ悔やんだことを──……そう簡単に、なかったことにされていいのかよ…?」
純一「……そうだね。確かに僕は……僕は、色々と落ち込んだろうと思う。
もしかしたら死にたいって思ったのかもね」
純一「でも、でも……僕は、僕だ。
いくら梅原が自信を持って僕のことを分かるって言っても、わからないことだってあるはずだ」
梅原「大将……なにをいってるんだ、俺にはさっぱりなんだが…?」
純一「あはは。そうだね、確かにそうだよ」
純一「僕は──こうなってよかったって思ってる。
確かに先輩に彼氏が出来たのは、ショックだったし……わけもわからなくなった」
純一「でも、僕は──ちゃんと知れたんだ。分からないって戸惑ってた自分を、どうにかできたんだ」
純一「僕はそれだけで十分、十分幸せなんだよ梅原……」
梅原「……大将、俺にはやっぱり何を言ってるのか全然わかんねぇよ」
純一「だろうな、ワザとそうしてる」
梅原「……。でもよ、お前さんのその顔をみちゃー……なにも言えなくなっちまった。
なんだよ、変にスッキリした顔しやがって」
純一「だからいったろ? 僕は大丈夫だって、お前が変に熱くなるから悪いんだよ」
梅原「──っだぁー!なんだよくちくしょー!! なんだか俺はぁースッキリしねぇけど、
今の大将の表情に免じて、この怒りも抑えようって思っちまった!」
純一「おう、それでいい──ありがとな、梅原」
梅原「ん? なんだよ急に」
純一「いや、だって……僕のことなのにここまで怒ってくれてさ。…ちょっと嬉しかったよ」
梅原「ったりめーだろ大将。俺はお前の親友だ、それぐらいのことで感謝されちゃー……親友って言葉が泣いちまうぜ」
純一「うん、そうだな。梅原もなにかあったら話せよ?──僕も全力で、悔しがって怒ってやるからさ」
梅原「おうっ! 期待してるぜ大将っ!」
純一「あはは……──ん、あれは……」
梅原「んお?……おいおい、噂をすればなんとやらだな」
純一「あ、ああ…そうだな──おーい!二人ともー!」
「……っあ、先輩…」
「橘先輩……」
梅原「えっ!? た、大将!?」
純一「な、なんだよ梅原……急に大声出したらびっくりするだろ」
梅原「い、いやいや……なんでそこで呼ぶんだよっ!?
だ、だってお前とアイツは……その、色々とアレだろ!?」
純一「え? ──ああ、そういうことか……」
「橘先輩、おはようございます」
純一「うん、おはよう。筋肉痛は大丈夫?」
樹里「──先輩こそ、大丈夫なんですか?」
純一「あはは…実はちょっと足がきてるんだよね。やっぱりあの坂はやばかったんだよきっと」
樹里「そうですね。確かにあの坂はきつかったです。
でも、塚原先輩のあの……動きの方が見ててきつかったですよ」
純一「あ、あれか……なんでかわからないけど、塚原先輩……僕らの前に現れては消えるみたいな……
こう、不可思議な現象を起こしてたよね」
樹里「はい。姿が消えた──と思って顔をあげたら、またそこに居る。
ぼくはその現象が気になって気になって、ランニングどころじゃなかったですから」
純一「やっぱりあの人は凄い人だ……改めてそう思ったよ」
「先輩、あの……」
純一「ん、七咲もおはよう」
七咲「はい、おはようございます……あの、突然ですけど聞いても良いですか?」
純一「え、いいよ。どうしたの?」
七咲「えっと、その……樹里君とは仲良かったですか? 先輩って」
純一「え、仲良くないよ?」
樹里「ええ、その通りです」
純一「………」
樹里「………」
七咲(仲良さそう……)
つんつん
純一「ん……?」
梅原(おい……た、大将……)
純一「なんだよ、梅原唐突に……」
梅原(な、なんでお前さんこんなにも和気あいあいと一年坊主と会話してるんだ!?
お前さんは二人の間を引き離した本人だろ……!?)
純一「まぁ。和気あいあいのつもりはないけど、そうだなぁ……」
純一「ちょっと色々とあってさ。まぁ、とりあえず会話してて気まずいことはないよ」
梅原(そ、それは……凄いな大将ッ…! 別れさせた彼氏とも仲良くなっちまったのか!?)
純一「だから仲良くなんかないって……」
樹里「──で、先輩。なんのようでぼくを呼んだんですか?」
純一「あ、えっとその……あれだよ」
純一「二人でいるところが気になってさ。僕も逆に聞くけど、七咲は路美雄とは仲いいの?」
梅原(なっ──下の名前で呼んでるだとたいしょー!?)
七咲「そういうことじゃないんですけど……同じクラスではないですし。
さっきそこで、ちょっと色々と聞かれてただけですよ」
純一「へぇ、そうなんだ──路美雄、なにを聞いてたの?」
樹里「…………」
純一「あ、えっと……そうだよね。僕が気軽に聞いていいものじゃなかったか…」
樹里「──いえ、いいんです。手間が省けました」
純一「え…?どういうこと?」
樹里「ええ、実は先輩にも聞きたかったことがあったんです。
……いや、ちがいますね。先輩じゃないと解決できないことを相談しに来たんです」
七咲「……………」
純一「ぼ、僕じゃないと解決できない問題……?」
樹里「──ここじゃなんですし、とりあえずは他の場所で」
樹里「七咲さん、どうもありがとうございました」
七咲「……え? ああ、うん。別にいいよ」
梅原「───ん、そしたら俺もそろそろ教室に戻るわ」
純一「お。そうか、もうほとぼりは冷めたか?」
梅原「……実はさっきまで全然だったんだが…こんな光景を見せられちゃな。
あがるもんもあがんねぇよ大将」
純一「そ、そうか……そしたらまた後でな」
梅原「おう、後でな。あとジュースさんきゅーな!」たったった…
七咲「──それじゃあ、先輩。私もこれで」
純一「うん、七咲もまたね。あ、また今度、七咲の泳ぎ見ても良い?」
七咲「ええ、何時でもどうぞ。ぜひ来てください──……」かぁ
純一(え、なんでそこで顔が赤く──ああ!そうだよ僕七咲とキスしてた!)
純一(な、なんで忘れてしまってたんだろう…しかも安易に呼んじゃったし!
うぅ…今さらながら、恥ずかしくなってきた…)
樹里「──……? 急にお二人とも黙りこんで、どうかしたんですか?」
純一「えっ!? い、いやなんでもないよ!うん!」
七咲「──先輩……あの、その…」すっ…
純一「え、なに七咲……?」
純一(近いよ七咲!?)
七咲「ちょっと静かに聞いててください
──私、その……先輩が誰を見てても良いんです。それは気にしません」
純一「え……?なにを、急に……」
七咲「黙って聞いててください。
えっと……いえ、すみません。本当は気にします──ものすごく気にしますけど…」
七咲「──でも、絶対に。私を……
その先輩が見てる中に、かならず私は入れといてください……」すっ…
純一「七咲……?」
七咲「……約束ですよ?先輩」
純一「え、えっと……うん、わかった。とりあえずは」
七咲「はいっ。それでは、これで」たったった…
純一「な、なんだったんだろう……七咲…」
純一(で、でも……帰り際の表情…とっても可愛かったな──)
樹里「──こほん、先輩。そろそろいいですか」
純一「ふぇっ!? あ、うん!ごめんね!」
純一(や、やばい……!!よりにもよって路美雄の前でも、森島先輩以外と
なんかこう……やっちゃった!)
樹里「…………」
純一(怒ってるよね…当たり前だよ、昨日あれだけのことを言われたんだんだ…
それを言った本人の目の前でやってしまったよ…!)
樹里「……はぁ。別にぼくは森島先輩じゃありませんけど…」
純一「え……?」
樹里「そうやって、怒られるんじゃないかってびくびくしてる先輩って、
本当に犬みたいですね」
純一「えっとその……あはは! 僕って犬みたいかな?」
樹里「実際に犬になった所を見てますしね。……まぁ、いいです。
とりあえず……今の橘先輩のこと、べつにぼくは怒ってませんので」
純一「え、でも僕は……」
樹里「──とりあえず、まだ言ってなかったことがあったんで言っておきます。
先輩、昨日は出過ぎたこと言ってすみませんでした」すっ…
純一「ろ、路美雄……?」
樹里「はっきりいって、ぼくはぼくでまだ不満に思ってます。
貴方がまだ、色んな女性と関係を持ってることは、そう簡単にはゆるせません」
純一「…………」
樹里「ぼくは……ぼくは、今でも森島先輩が好きです。だからこそ、あの人が悲しむ所はみたくない。
そうやって貴方が他の女性といちゃいちゃしてると、気が気でないです」
純一「……うん、ごめん」
樹里「ほら、そうやってあやまる所は上手い。そうやって貴方はどんどん……勘違いを起こす人を作る。
……まぁ、今のぼくがとやかくいうことはありません」
樹里「とりあえずは、ぼくは貴方が他の女性といちゃいちゃしててもどうも思わないようにします」
純一「え、それは……」
樹里「だって、貴方はそういう人なんでしょう?
また、今日も貴方は誰かの為に頑張ってる……奉仕を続けて、犬みたいに楽しませ続けてる」
樹里「ぼくが……ぼくが他人の生き方まで、どうこう言えるものでもないと、判断してんです」
純一「ちょ、ちょっとまって……それだと僕、本当に犬みたいな感じじゃないか…?」
樹里「冗談ですよ。あながち冗談とも言えないですけど
……でも、そんな先輩は尊敬しますよ」
純一「え、あ、うん……なんかありがとう。路美雄」
樹里「ええ、ですからここで本題です」
純一「本題? ああ、僕にしか解決できないってやつか…」
樹里「そうです。これは──ぼくの考える限り、多分貴方にしか解決できないと思ってます」
純一「えらく持ち上げるなぁ……僕の月のおこづかいは四千円だよ?」
樹里「お金じゃないです。別にお金には困った生活はしてませんから」
純一「ああ、そう……」
樹里「先輩、橘先輩。貴方は本当に人の為になんだってできる人だと、ぼくは思ってる」
樹里「そうだとわかったからこそ──ぼくは森島先輩を諦められた。ですから、そんなあなたに」
純一「お、おう……なんだい、路美雄」
樹里「──とある人を、救ってほしいんです」
うんこいってきます
直ぐ戻る
とある会場
がやがや…がやがや…
純一「──うっぷ……なんだよ、この人の多さは……!」
純一「人ごみに酔いそうになるって初めての経験だよ……!!」
純一「っ……!」
純一「はぁ……はぁ……なんとか人だかりから抜けれた……ふぃ~…」
純一「…………」
純一「──う~ん、すごいところだなぁ……」
純一「コミケッツマートって………」
回想
純一「人を、救う……ってまた、凄いこと言いだすなキミ」
樹里「ええ、大層なことを言ってるとは理解してます。
これを貴方に頼みたいと言ってる自分も、ちょっとどうかしてると思います」
純一「えーと、まぁ。それでとにかく話は聞くけど……
一体ぜんたい、誰を救いたいの?」
樹里「……その、あれです」
純一「? なんだよ急に言い淀んで……」
樹里「──はい、そうですね。はっきりといいましょう」
純一「う、うん……」
樹里「それはですね」
純一「それは?」
樹里「それは──」
純一「…それは?」
樹里「……ぼ、ぼくの……」
純一「僕の?」
樹里「………………………ぼくの、許嫁の人です」
純一「……………」
純一「はい?」
純一「許嫁ってお前……」
樹里「……はい、そうなんです。是非とも橘先輩にその人を救ってほしいんです」
純一「うーん……頼られるのは嬉しいけどさ。
いくらなんでも路美雄の許嫁を救うってのも……」
樹里「いえ、これはなんというか……橘先輩と近しい問題でもあるんですよ、実は」
純一「……え? どういうこと?」
樹里「……。怒りませんか?」
純一「なにをだよ」
樹里「ぼくが……その、許嫁の人の名前を言っても…怒りませんか?」
純一「なんで僕が怒るんだよー!
あはは、路美雄もまた変な奴だなぁ~。僕になんか気を使ってさ」
樹里「…………」
純一「ほらほら、いってごらんって。とりあえず名前をきくからさ。
──それにしたって、僕が路美雄の許嫁と関係があるってこと自体、なんかうそっぽいし…」
樹里「──です……」
純一「だから……───え?」
樹里「中多 紗江さんです」
純一「……なにが?」
樹里「ぼくの、許嫁が。です」
純一「……………」
樹里「──せ、せんぱい……ぼくはいいましたよ。怒らないですかって…!」
純一「…………うん、わかってる」
樹里「で、ですが……その表情は全然わかってないように思えるんですけど……っ」
純一「…………うん、わかってる」
樹里「ぜ、絶対にわかってないですって…!それ、どうやったらそんな顔できるんですか…!」
樹里「と、とりあえず昨日のぼくの言葉を思い返してください先輩……!!」
純一「…………うん、わかっ───昨日の、言葉……?」
樹里『……ぼくは、その女性とは結婚したくはないんです。
実はこうやって輝日東高に入学したのも…親の反対を押し切ってのこと───』
純一「……ああ、そうか。君はだから輝日東高に入学したんだっけ…」
樹里(戻った……こ、こわかった……)
純一「えーと、待てよ……路美雄。君はその許嫁の人ってのは最初から知ってたのか?」
樹里「あ、いいえ……昨日、両親から聞きました」
純一「両親から?その時に初めて聞いたのか?」
樹里「ええ、以前までずっと秘密にされてました──ですが、
昨日ぼくが学校を続けることを言ったら……」
純一「言ったら?」
樹里「──なんの答えもなく、ただ許嫁の名前だけ言われました」
純一「おおう……なんだか意味深だね」
樹里「そうでしょうか──ぼくはただ、元からこの学園に入ったことすら、
両親にとって計画のうちだったんじゃないかって……思ってしまってます」
樹里「なにもかも──そろった環境で生きてきました。だから、最近は…
森島先輩に認められるように一人で頑張ろうとやってきたつもりだったんですけど…」
純一(……。ただのお坊ちゃんだと思ってたけど…色々と考えてるんだな)
樹里「──こうやって、何も言われずに。そして許嫁のことを言われたら…軽くへこんでしまって…」
純一「ま、まぁ…ご両親だって路美雄のこと思ってやったことかもしれないよ?」
樹里「そうでしょうか……? 確かに両親に甘えてばっかなぼくですけど……
それでも……ぼくは……ぐすっ…」
純一(あ、なんだか泣きそうになってるな……よし、ここは僕が慰めてあげようかな!)すっ
純一(後輩のめんどうを見るのも先輩の務めだ!ここは路美雄の好きそうな話題でもだすか……)
純一(……うーんと、あれ……なんだか頭のもやもやがでてきたぞ……これってもしや。
またもや何かを思い出しそうになってるのか!?)
純一(……と、とりあえず…このもやもやを意識して、なにかを思い出して、そしてつなげる──!)
純一「──ねぇ、路美雄?」
樹里「ふぇ……?ぐすっ、なんでしょうか……?」ぐしぐし…
純一「森島先輩のひじって、舐めたことある?」
樹里「ぶっ!? な、なにをいってるんですか橘先輩!?」
純一「……いや、ふと思ったんだよね。先輩の肘ってすっごく綺麗じゃない?」
樹里「い、いや……ですから…あんた、なにいってんだ本当に」
純一「うるさいぞ一年坊主!黙って聞くんだ!」
樹里「えっ、怒られた……っ」
純一「イメージするんだ!路美雄!
──場所は校舎裏にある、パイプ小屋……」
純一「──はやる気持ちを抑えつつ、ぼろいドアに手をかける。音を立てて空いた小屋の向こうには、
人が数人入れるほどに狭いスペースに……一人の可憐な女性がいるんだ」
純一「それが──森島先輩。輝くような笑顔と共に振り返り、僕を出迎えてくれる」
樹里「──は、はい……出迎えてくれる…っ」
純一「──ねぇ、路美雄?」
樹里「ふぇ……?ぐすっ、なんでしょうか……?」ぐしぐし…
純一「森島先輩のひじって、舐めたことある?」
樹里「ぶっ!? な、なにをいってるんですか橘先輩!?」
純一「……いや、ふと思ったんだよね。先輩の肘ってすっごく綺麗じゃない?」
樹里「い、いや……ですから…あんた、なにいってんだ本当に」
純一「うるさいぞ一年坊主!黙って聞くんだ!」
樹里「えっ、怒られた……っ」
純一「イメージするんだ!路美雄!
──場所は校舎裏にある、パイプ小屋……」
純一「──はやる気持ちを抑えつつ、ぼろいドアに手をかける。音を立てて空いたドアの向こうには、
人が数人やっと入れるほどに狭いスペースに……一人の可憐な女性がいるんだ」
純一「それが──森島先輩。周りに漂うカビ臭い匂いなんて吹き飛ばすほどの、
輝くような笑顔と共に振り返り、僕を出迎えてくれるんだ」
樹里「──は、はい……出迎えてくれる…っ」
純一「そこで先輩はいう──『遅かったねっ、私少し待ちくたびれちゃったよ』ってな。
それに僕はビューティフルな返答でその場を和ませる」
樹里「ビューティフルな、返答……」
純一「そう! 和んだ空気はさらなる加速をきわめ、二人の距離を縮めて行く……そうして、
森島先輩はいうんだ……『ねぇ──私のひじ、なめてみない?』──と……」
樹里「いいますか!? いってくれますか先輩は!?」
純一「路美雄──いいか、ここは現実じゃない。イメージしろ、思い浮かべるのは良いイベント。それだけだ
そこにいかに不都合があろうとも、何も間違っちゃいない。むしろ紳士的でベストだ!」
樹里「は、はい…!」
純一「そして、僕らは近づき合い……先輩は白い肌を保持したひじを、僕の眼下に持ってきてくれる…」
樹里「ごくり……」
純一「僕は言うんだ『これが先輩のひじなんですね……とってもやわらかそうで、美味しそうです』と!」
樹里「な、なるほど……」
純一「だがな! そこで焦ってなめちゃだめだ……じっくりと見つめるんだ、じっくりとな」
樹里「見つめるんですか…?」
純一「そうだ! 見つめて見つめて…先輩の肘がもう、よくわかんなくなったとき……」
樹里「なったとき…?」
純一「──そこには、パラレルが待っているんだよ路美雄……!」
樹里「ちょ、ちょっとぼくにはわかららないんですが……特にどこらへんで…っ?」
純一「──いいか、これは僕と梅原しか知らない禁断の行為だから誰にも言うなよ?
ひじっていうのはこうまげるとだな──」
樹里「──なっ、それは……!!」
数分後
純一「ははは……路美雄。お前もなかなかやるやつだな」
樹里「──いや、すみません……ぼく、なんだかこの数分間、後悔しかないです…」
純一「馬鹿言うなよ、お前ってちょっと妄想の才能があるぞ!」
樹里「はぁ……まぁ、その…とりあえず本題に言っていいですか…?」
純一「ああ、いいよ。僕も楽しくなってきたし、なんだかキミの許嫁の件も許せそうだよ」
樹里「あ、ありがとうございます……それで本題なんですけど、先輩」
樹里「中多さんとはどのくらい、仲良いんですか?」
純一「え?──あ、ああ……そうだな…」
純一(──あ、やばい…この質問はどうやって答えたものかな…。
あ、でも路美雄が僕に相談してくるってほどだし、それに……)
純一(……路美雄は少し、僕の女性関係を調べていたって言っていた…すると、少しは中多さんと
僕は仲のいい関係だったのかもしれない……よし、ここはどうにか誤魔化すか)
純一「──そうだなぁ、とりあえずは一緒に帰ったりしたぐらいはあるよ。
キミも知ってるだろ?」
樹里「ええ、まぁ──だからこそ、貴方に頼んだわけですけどね。
まぁわかりました、結論から言いますとね先輩」
純一「うん。なんだい?」
樹里「中多さんの今の現状を、打破していただきたいんです」
純一「中多さんの今を……?」
樹里「はい。中多さんはいま──その、授業にほとんど出てないのは知ってますか?」
純一「……ああ、知ってる。なんだっけか…アニメ研究部だっけ?そこに入り浸ってるとか」
樹里「その通りです。ぼくも一年ですし、許嫁の件を除いても中多さんは元から知ってました…」
樹里「……ですが、あの中多さんの変わりようは、はっきりいって酷い」
純一「う、うん…まぁ、そうだね…」
樹里「勘違いしないでほしいんですが、
べつにぼくの許嫁だからちゃんとしてほしい……とかじゃないんですよ?」
純一「え、違うの? てっきり…」
樹里「違いますよ。これは、ぼくの反抗なんです」
純一「反抗?だれに?」
樹里「両親にですよ──ぼくが両親からのレールを外れるために。
ぼくという力を見せつけるために……」
純一「んと……もう少し、詳しく教えてくれないか」
樹里「実は、中多さんのことはけっこう許嫁関係で問題になってるんです。
あのような変わりようですしね、あちらのほうも色々と大変なんでしょう」
純一「へぇー……それで、僕が中多さんを助けたら路美雄になんの良いことがあるの?
いっちゃなんだけど、今の現状の方が許嫁として結婚しない流れになってない?」
樹里「そうですね、確かにそうですけど……それじゃだめなんです。
中多さんとの許嫁がダメになっても、結局は次がある…」
純一「あ……なるほど」
樹里「中多さんの次は誰が許嫁になるかぼくもわかりませんけど……ですが、ここで一発かましてやるんです!」
樹里「今、問題になってる中多さんのことをぼくが解決したら……両親は色々と認めてくれるんじゃないかって!」
純一「……うーんと、簡単にそう上手くいくかな…?」
樹里「……わかりません。けど、先輩はいいんですか?」
純一「え?」
樹里「──今の中多さん、貴方は見てられるんですか……?」
樹里「授業も出ていない、学校も行ってない……そんな中多さんを、
貴方は見捨ててもいいんですか?」
純一「見捨てるだなんて……そんな」
樹里「ですから、先輩。どうかぼくに力を下さい……!!」ばっ
純一「え、これって──」
樹里「これ、ぼくのコネで手に入れた……コミケッツマートのVIP券ですっ」
純一「こ、こねって……すごいな路美雄」
樹里「ええ、頑張りました! 先輩……どうかこのチケットを使って、
中多さんを助けに行ってください!」
樹里「そして──そして、ぼくのことも、どうか助けてください……」
純一「路美御……」
樹里「──どうか、橘先輩。ぼ、ぼくの願いをぜひ…!かなえてください……!」
回想終わり
純一「──あいつも、必死だったんだな。色々と…」
純一(……その熱意、頑張り。僕にはよくわかる。
路美雄、まかせとけ……!僕に任せれば、なんだって大丈夫さ!)ちらっ
女性「どうぞー!こちらにも商品はありますよー!」
純一「──ハイソックスか。チェック柄なんてすごいなぁ…!」
純一「……よし、さっそく中多さんを探さないとね!」
数分後
純一「ひ、人が多すぎる……! なんだこれ、中多さんを探すってどころじゃないよ…!」
純一「す、すでに僕がどこにいるのかもわからない……!
どういうことだろう、西東ってどこで区別されてるの…!?」
純一「……はぁ。どうしよう、このまま日が暮れたら路美雄に悪いなぁ…」
めしたべる
十分まってくれ
「──ッ……!…ッ!!」
純一「──ん? なんだろ、あの機敏な動きをしている人たちは……」
「ちがう、最短ルートはそこじゃなく、階段をおり───」
「お前はd29な、俺は──」
純一「な、なにか無線機もって紙の束を持ってぶつぶつ言ってる……なんだろう、よくわからないけど
なにかしらの覇気を感じるな……!」
「───ッ───そうじゃないです!──」
純一「ん……?あれは女の子か──へぇ、凄いキレっぷりだ。なんだか仕事が出来る女性みたいだなぁ」
「──違いますっ! そこではなくて、もっと人ごみをわけて走りなさ──」
純一「うわぁ! すごい、あんだけ身体が小さいのに人ごみをかきわかえていくよ……体力あるんだなぁ」
純一「…………」
純一「あ、そうだった! 僕もぼーっと人を見てる暇なんてなかった。
中多さんを探しに行かないと……」すたすた…
「──っ!?……あ、あの人は……」
一時間後
純一「ほ、ほう……これは何という大胆なお宝本なのだろうか…!」
「もし、よかったら読まれていきますー?」
純一「えっ!? あ、じゃあちょっと読んでいきます」
「はい、ありがとうございます」にこにこ
純一(……えっ!? 中身も凄いぞ……こ、これ…席に座ってる女性が書いたのだろうか…?
なんという衝撃だ…カルチャーショックにも程があるよ……!)
純一(で、でも手が止まらない…!僕の手が読み進めるのを止めようとしない……!)
純一「……ふぅ。ありがとうございました、失礼ですが、これおいくらぐらいですか?」
「ありがとうございます!六百円になります!」
純一「はい、では千円でもかまいませんか?」
「では、おつりは四百円で!」
純一「──はい、これで。では家でじっくりよませていただきますね」
「ありがとうございましたー!」
純一「……まさか、な。僕が人前で紳士モードの突入できるとは…」
純一「──流石だコミケッツ。未知の領域に、僕をいざなうとわ……な」
純一「…………」すたすた…
純一「さて、僕はいったいここに何しにきたんだっけか───」
純一「──フ、よくわからなくなってきたよ……」
「──ま、まだよ…!はやくいきな──きゃぁ!?」
純一「ん、え、うわあああ!?」
どしん!
純一「あたた……だ、だれだ…?いきなり目の前に人が……」
「──いたぃ……」
純一「あ、すみません…!ご怪我はないですか?」
「え、あはい……大丈夫です………あっ!」
純一「……? えっと立てますか……?」
「あ、はい……ありがとうございます……」
純一「いえいえ、こちらこそ前を向いておらず……すみませんでした」
「あ、いえっ! こ、こちらこそ前を向いてなくて……その……」
純一「ご謙遜なさらずに、こちらが悪かったのですから……はて」
「…っ!?」
純一「──すみません、失礼ながら御質問させていただきたいのですが…」
「…………」
純一「以前、どこかでお会いしたことありましたか……?」
「……わたしは、その………」
純一「………………」
純一「!」
純一「も、もしや……貴方は……!!」
「………はい、私は……」
純一「さきほど購入した……『きらめけっ!ちびっこぼいんサーちゃん!』
のコスプレイヤーのかたですか……っ!!」
「なか──ぇええっ?」
純一「な、なんというクオリティ……素晴らしい、その短く切ったボブカットと。
髪の色合い……まさしくサーちゃん!素晴らしい!」
「……えっと、その───」
サー「───わ、わたし……!その、サーちゃんのコスプレをしてるものです!
どうかお気軽にサーちゃんって読んでください……っ!」ぴしっ
純一「なっ………」がくがくがく…
サー「えっ!? きゅ、急に膝を崩してどうしたんですか……っ!?」
純一「そ、その敬礼の仕方……一寸狂わぬクオリティ……!
常套句ですが…素晴らしいとしか言えません……!」
サー「あ、ありがとうございます……!」
数分後・休憩所
純一「──ふぅ。すみません、休憩所まで案内してもらってしまって……」
サー「あ、いえっ……初めての方が、ここにきたら……みんなそうなると思いますので…」
純一「そうなんですか……いやー、やっぱり人ごみの中をかきわける人は体力凄いですねぇ」
サー「い、いえ……それほどでもないです…っ」
純一「──あ、そうだ。お返しになにかおごりますよ、なに飲まれます?」
サー「え、ええとだいじょうぶです……!おごられるほどことはしてませんから…っ」
純一「いえいえ、そんなこといわないで……」
サー「…………っ…」
純一「………」
純一(──あ、あれ……? なんだか、気を悪くさせちゃったかな…?)
サー「……あの、その──」
純一「は、はい……?」
サー「その、貴方の……お名前を、聞かせてください……!」
純一「えっと……僕の名前ですか?」
サー「え、はい……飲み物をもらう代わりってのもなんですけど…変わりに、お名前を聞かせてください…」
純一「あっとその、名前でいいんですか…?」
サー「ええ、ぜひ……っ」
純一(不思議な人だなぁ…お返しに名前を聞きたいだなんて…まぁ、とりあえず名乗っておこう…)
純一「──僕の名前は橘 純一です。えっと、よろしくお願いします」
サー「あ、はい……!よ、よろしくお願いします……!」へこへこ
純一「えっ!? あ、はい僕こそ!!」へこへこ
サー「……」
純一「……」
純一「……あはは」
サー「ふふふ……」
数十分後
純一「へーそうなんだ……じゃあサーちゃんは何時もここに?」
サー「そうなんですよ~……で、色々と本を探してるんですっ。
で、今日も仲間たちと一緒に割り当てして本を探すんですよ…!」
純一「へぇ~。そしたらサーちゃんは、ゆっくりしててもいいの?
……僕がいうのもなんだけどさ」
サー「え、ええ……いいんです。もう多分、売り切れてると思いますし……それに…」ちらっ
純一「それに?」
サー「……えっと、その……こうやって橘さんとお話してるのも……
た、楽しいのでいいんです……っ」
純一「そ、そうかな? いやぁ、そう言ってもらえると僕も嬉しいかな…」
サー「っ…っ……」テレテレ
純一(可愛い人だなぁ。サーちゃん……意外と会話も弾んでるし、良い感じだ。
なんだろう、僕ってばこの人と会ったことあったかなぁ)
純一「えっと──サーちゃん、ちょっと聞きたいんだけどさ」
サー「は、はい…!なんでしょうか……っ」
純一「えーと、その……」
純一(どうしよう、この流れで何処かで会った事ありますかって言いにくいなぁ……
そしたら、あれかな…ちょっと容姿からなにか言っていって、それとなく聞いてみるか…)
純一「──その……サーちゃんの髪型は、何処で切ってもらったの?」
サー「これですか? これは近くの行きつけの美容師に切ってもらいました……」
純一「へぇ、じゃあいつもそこでその髪型に?」
サー「いえ──実はもっと前は長かったんです。ちょうど肩に垂れるぐらいはありました……」
純一「ふぅん。そしたら大分、イメージチェンジしたんだね」
サー「ええ、そうですね……この髪型の方が、色々とコスプレ用のカツラとか合わせやすいので…その、
切っちゃったんです…」
純一「そうなんだ……でも、ここから見てもサーちゃんの髪って綺麗だよね」
サー「ふぇっ!? そ、そうですか……?」
純一「うん、とっても。なんだかさらさらしてそうで……触ったら気持ちよさそうだよ」
サー「そ、そうですか……気持ち良さそう……」
サー「───えっと、それじゃあ……その…橘さん…」
純一「うん? どうしたの?」
サー「少し、その……触ってみますか…?」
純一「え、えええ!? ど、どこを!?」
サー「か、髪の毛です!」
純一「あ、髪の毛か……でも、いいの?女の子って髪の毛触れるのって嫌じゃない?」
サー「た、確かに苦手な人もいますけど……その、私は先輩になら…」
純一「え?なに?」
サー「い、いえっ! と、とにかく私は大丈夫なので……どうぞ、触ってください…!」ひょい
純一(頭を差し出された……い、いいのかな触って。
こうやって触ってくださいって言われたのはじめてかも──)
純一(──っ……また、来た。このもやもやだ……また何かを思い出しそうになってるか…?)
サー「た、橘さん……?出来れば早くお願いします…
ちょっとこの体制は、恥ずかしくて…」
純一「あっ、うん! そ、そしたら触るね……」さわさわ
純一「…………」さわさわ…
サー「ふわぁ──……」
純一「…………」さわさわ…
サー「た、橘さん──頭なでるのうまい、です……」
純一(───なん、だこれ……!
凄い、なにかを思い出しそうになってる……!今までのもやもやの比じゃない!)
純一(今まで色んな人たちと会ってきて、色んなもやもやが起こってきたけど……)
純一(これは、今起きてるもやもやは……比べ物にならないぐらいに大きい…!!)
純一(──なんだ、この子……サーちゃん。この子は一体何なんだ…!)
サー「ふふ……ふふっ…」
純一「──あれ、ああ! ごめんサーちゃん!なんかずっと撫でてたよ…!」
サー「ふふ──あ、いいですよぉ……その、気持ちよかったですから…」
サー「……はっ!? あ、あああのののすみません…!なんか私おかしくなってませんでした…っ?」
純一「え、ああ、大丈夫だったかな…?うん」
ちょと休憩
三十分ぐらいうんこしてきます
おk
今から書く
サー「す、すみません……本当に、ごめんなさい…!」
純一「い、いや僕の方こそずっと撫でて……」
サー「いや、その……私こそ…あのその……き、ききき…気持ちよくてその……はい…」
純一「………」
サー「っ……っ……っ……」
純一「──ねぇ、サーちゃん。聞いていいかな?」
サー「え、はい……なんでしょうか…?」
純一「……僕たちって、どっかであったこと────」
「──あー!いたでござるよ!」
「はあく!こっちにボスをかくにしますた!」
純一「───え…?」
サー「あ………」
「ぼ、ぼぼぼぼす!なにやってんっすすすかっ…?」
「ボスからの命令がなくて、獲物をいくつか逃してしまってっ!!」
純一「ぼ、ぼす? 獲物……?」
サー「あの……その────」
純一「えっとこの人たちは────」
サー「──しゃぁきっとしなさい!くよくよする場合じゃないです!」
「「「は、はい!」」」
サー「そんな風に慌てちゃ、手に入れられるものも手に入れられなくなります!
──ここは踏ん張りどきです、なにも諦めることはありません!」
「「「はい!!!!」」」
サー「──この地域一帯は、わたしが責任を取ります……ですから、貴方達は各持ち場に
素早くつきなさい!さぁ、はやく!」
「「「サー、いえっさー!」」」
サー「声が小さいです!!」
「「「サー!!!いえっさー!!!!」」」
サー「よろしいです! では、解散っ!!!」
ばばっ!!!!
サー「──……ふぅ。これだからあの人たちは……」
純一「……!?……!?」
サー「……あ、すみません……お見苦しい所を見せてしまって……っ」
純一「あ、いや……その…サーちゃん凄かったね、うん。かっこよかったよ」
サー「い、いえっ!そ、そんなことないですよ……えへへ…」
純一(なんだか嬉しそうだなサーちゃん……うん、まぁ凄いって思ったのは本当だしな)
純一「えっと……それじゃあこれから忙しくなるのかな?」
サー「あ、えっとそうですね……仲間たちにも激昂しちゃいましたし…」
純一「そっか。そしたら……その、サーちゃん」
サー「はい、なんでしょうか……?」
純一(──やっぱり、このもやもやだ……サーちゃんの顔…いや、主に髪の毛を見ていると…
すっごい頭がざわざわするんだ……これは、一番って良いほどに…)
純一(ここで──ここで、今彼女と別れて言いべきなのか……?
このもやもやを、ほっといても良いものか……?)
サー「…っ……?」
純一(……だめだ、もうこんな風に考えてる暇もないっていうのに────)
純一「───……黒い、りぼん…?」
サー「え、どうしました……?」
純一「──サーちゃん、その手首に巻いてるりぼん……それ、なに…?」
サー「──えっとその…これは……」
純一「いいから、答えてくれないか」
サー「っ?……えっとその、あの…これはですね──以前に髪が長かった時に付けてたやつでして…」
純一「………………」
サー「髪を切ってしまったので、その……あの…橘さん…?」
純一「……ねぇ、サーちゃん。お願いがあるんだけど……そのりぼん、少し借りていい?」
サー「え……? あ、はいっ……どうぞ!」しゅるしゅる……
純一「………ありがとう。すこし、見るだけだからね───」すっ
純一(────────いあうぇjrがwhでおpfじゃwpdgfじゃおpwqdjふぉいwさjd)
純一「──っ!!?……っはぁ!っはぁ!っはぁ!……!!」
サー「た、橘さん…!? ど、どうかなされました……!?」
純一「な、なんだよコレ───」
ジジッ…ザザァー…
『んじゃ紗江ちゃん! 今日も特訓だよ!』
『はいっ!先輩っ!』
純一「この、頭に溢れだすこれって───」
ジザザ…ざざっ……
『…そしたらジャンケンだ、負けたら背負うって感じでね』
『せ、せんぱい……!』
純一「僕の、いままでなかった───」
ジザッ……!ざざ!!
『一緒にプールだなんて、感激だなぁ』
『しぇ、しぇんぱ~い…まってくださ~い…!』
純一「──────……サーちゃん…」
サー「は、はい……?な、なんでしょうか…?」
純一「──いや、違うな。ごめん」
サー「え……?た、橘さん…?」
純一「──やめてよ、僕は君にそんな風に呼ばれたくはないんだ」
サー「え───……あ、その……ごめんなさいっ…その、わたし…」
純一「…………」
サー「……は、い…すみません…………わたし、い、色々と……
失礼でしたよね……わ、わかってたんです……」
純一「…………」
サー「と、とつぜん……はなしかけたり、とか…して…ごめい、わくとか…ぐす…
かんがえずに……ごめんさい……ひっく……」
純一「───違う、違うんだよ」
サー「えっ……ひっく…」
純一「僕が──僕が言いたいのは、そういうことじゃない。そうことじゃないんだよ」
純一「──中多、紗江ちゃん…」
「───……っ!?」
純一「全然、気付かなかったよ……髪を切るだけで、だいぶ印象が変わるんだね。
それともなんだろう、化粧も少ししてる? だいぶ大人びてる気がするよ」
「───………せん、ぱい…」
純一「うん、そうだよ。僕は先輩だ。君と同じ学校の──二年の橘 純一」
純一「そして君は僕の後輩──美也と同じクラスの中多 紗江ちゃんだ」
中多「……………」
純一「久しぶりだね。元気にしてた?」
中多「……………」
純一「だいぶ学校でもあってないもんなぁ…あ、そうだ。
美也が心配してたよ?最近、ずっと喋ってないってさ」
中多「……先輩…」
純一「うん? どうしたの紗江ちゃん?」
中多「──なんで、怒らないんですか……私を…」
中多「わたしは──わたしは、先輩の知ってる通り……学校に行ってません…」
純一「そうだね、確かに」
中多「──……それでいて、仲の良かった美也ちゃんとも、逢ちゃんとも…喋ってません…」
純一「うん。だね」
中多「そんな……そんな変わってしまった私を……先輩は、怒らないんですか…?」
純一「…………」
中多「今日だって……コミケッツで見かけたとき……とても怖かったんです…
先輩がいたって…とうとう、わたしを怒りに来たんだって…」
中多「だ、だからわたし……その……」
純一「──だからずっと、隠れながらとかで見てたの?僕のことを」
中多「…………はい…」
純一「だろうって思った。それだったら見つからないわけだよ」
純一「だって──紗江ちゃんみたいな可愛い子、そうそう見つからないわけないよ」
中多「えっ……か、かわいいですか…?」
純一「そうだよ!──まぁ、さっきまで僕は気付かなかったわけだけどね。説得力無いね。あはは」
中多「…………」
純一「ねぇ──紗江ちゃん、僕はさ。ここに紗江ちゃんに会いに来たんだ」
中多「っ───」
純一「それでね、どうしても紗江ちゃんと喋りたかった。どうなってたんだろうって。
どうして紗江ちゃんは変わってしまったんだろうって」
純一「そればっかり気になってたんだ。わかるかな紗江ちゃん」
中多「……はい、わたしも…先輩とおしゃべりしたかったです…」
純一「ありがとう。そういってくれると、嬉しいよ」
純一「──でもさ、紗江ちゃん……出来るなら僕は──学校で会話したい」
中多「っ……先輩……」
純一「みんなでワイワイとおしゃべりしながら、美也がふざけて、七咲がクールにつっこんで、
紗江ちゃんが笑って……そして僕も笑っている」
中多「……………」
純一「これが僕の覚えている──紗江ちゃんの全てだよ。
僕はこの記憶に残ってる紗江ちゃんが、全てで全部なんだ」
中多「…………」
純一「でも、今の君は僕は知らない君だ。
現実には、僕の目の前に……こんな風に変わってしまっていた紗江ちゃんがいま、ここに居るんだ」
中多「わたしは……その…っ!」
純一「……いいよ、言ってみて」
中多「わたしは──わたしは、この自分を……嫌いじゃないです!」
純一「…………」
中多「た、確かにわたしは変わってしまったかもしれない……でも、でも…こうやってかわった私は…!
私は…自分で自分を好きでいられてます……!」
中多「自分の大好きな趣味で生きられる──……これがどれだけしあわせなこと、なのか…
今、本当に感じてるんです……この感情は誰に邪魔されることはありません…!」
中多「前までの…くよくよしていた自分が馬鹿みたいに思うぐらい…私は充実してる…!
なにごとにも臆病で、怖がってたわたしはもう…いなくて…」
中多「なにもかも自分で決められるこの世界──…これが私の今の、全てなんです…先輩…!」
純一「──そうだね、今の紗江ちゃんは本当にイキイキしてる。
僕が見てきた中で、一番だと思うよ」
中多「…………はい、でも先輩はやっぱり私のこと怒って──」
純一「──ううん、紗江ちゃん。僕は君を怒ったりなんかしないよ」
中多「っ……ど、どうして……!」
純一「──やっぱりそうなんだね。紗江ちゃん、君は怒って──いや、止めてほしかったんだ」
純一「君はこうやって自分の好きな場所を作れた。自分を隠さず、趣味で突っ走れる場所──」
純一「──そうやって得た場所を、周りに認めてほしかった」
純一「そうやって頑張って作り上げた場所だけど……認められることが程遠い世界だとわかっていたから」
純一「だから──君はひねくれることを、装うしかなかった」
純一「認められることのない趣味だと理解してたから…最後までやるしかなかった。
誰かが自分にいいにくるまで、誰かが自分を止めに来るまで……君は突っ走るしかなかったんだ」
純一「自分だって、おかしいことをしているってわかってる。でも、誰かに止めてもらわなきゃ止められない──」
純一「そうじゃないのかな、紗江ちゃん?」
中多「──なん、で……わかるんですか…? だれにもいったこと……」
純一「うん?……そうだな、確かになんでわかるんだろうね」すっ…
中多「ふぇ……?」なでなで
純一「それは多分、僕は紗江ちゃんのこと──すっごく大切に思ってるからだよ」
中多「せん──ぱい……」
純一「うん、いいんだ。紗江ちゃんは悪くない、むしろいいことなんだよ!
この趣味は悪くないよ、僕が──僕が認めてあげるから」
純一「紗江ちゃん、頑張ったね。君が頑張れることを見つけて、本当によかったね」
中多「……しぇ…しぇんぱぁい…っ」
純一「──ほら、いいんだ。もう戻っておいで。
僕がいるから、紗江ちゃんも戻っておいで」
中多「ぐす…しぇんぱい……しぇんぱいっ……!」だっ…!
純一「──よしよし……頑張ったね紗江ちゃん。君は凄いよ!
なんてったって、あんだけ臆病だった紗江ちゃんが激昂をあげてたんだよ?」
中多「はい、はい……っ!…しぇんぱい……っ」
純一「これだともう、美也に色々成すがままにされることもないだろうね!」
中多「ぐしゅ……み、みやちゃんにもちゃんと……ぐすす…っ」
純一「そうだね、ちゃんと謝ろうね。僕も一緒にいてあげようか?」
中多「──ぐすっ……いえっ…それは、私でも…でき、ますから……!」
純一「おお! すごいね、まるで紗江ちゃんじゃないみたいだよ!」
中多「え、えへへ……ありがとうございます、せんぱい……」ぎゅう…
純一「──うん、いいってことさ。紗江ちゃん」
「うっ…うう……良い話だぞなむし…」
「ああ、ほんとだな…うぉおおおおおおお!!」
純一「──えっ!? あ、貴方達は……!?」
中多「あ……アニメ研究部みんな……!」
「ぼ、ボスぅ…!よかったですね…やっと、やっと……!」
「本当によかったっすね……拙者は本当に感動してまする…!」
純一「え、ええっと……その…」
中多「──もしかして、みんな…無線を……?」
「はいっ!ぼす、よかったっすねっ!」
「幸せになってください!拙者も披露宴行きますから!」
中多「み、みんな……わたし、やっと解放されるみたいです…!」
「いいんですぅ!!ぼ、ボスがいた数日間……本当にわすれません!!!」
「もう、色んな戦利品だって……ボスが居なくちゃ買えませんでした!!」
中多「うん……みんな、本当にありがとう…!
わたし、わたし…っ!!」だっ…!
「「「ぼすぅうううう!!!!」」」だだだっ…!!
純一(お、おう……みんなでエンジン組んで……それだけ仲が良かったんだろうなぁ…)
「うっ…うう……良い話だぞなむし…」
「ああ、ほんとだな…うぉおおおおおおお!!」
純一「──えっ!? あ、貴方達は……!?」
中多「あ……アニメ研究部みんな……!」
「ぼ、ボスぅ…!よかったですね…やっと、やっと……!」
「本当によかったっすね……拙者は本当に感動してまする…!」
純一「え、ええっと……その…」
中多「──もしかして、みんな…無線を……?」
「はいっ!ぼす、よかったっすねっ!」
「幸せになってください!拙者も披露宴行きますから!」
中多「み、みんな……わたし、やっと解放されるみたいです…!」
「いいんですぅ!!ぼ、ボスがいた数日間……本当にわすれません!!!」
「もう、色んな戦利品だって……ボスが居なくちゃ買えませんでした!!」
中多「うん……みんな、本当にありがとう…!
わたし、わたし…っ!!」だっ…!
「「「ぼすぅうううう!!!!」」」だだだっ…!!
純一(お、おう……みんなで円陣を組んで……それだけ仲が良かったんだろうなぁ…)
数時間後・駅のホーム
中多「みんなー!! これからも頑張るんですよー!!」
「「「はい!!ボス!!」」」
中多「ボスじゃありません!!中多紗江です!!」
「「「はい!!中多ボス!!」」」
中多「違います!!ボスいらならいです!!」
「「「はい!!!中多さん!!!」」」
中多「声がちいさーいです!!」
「「「はい!!!!!──今まで本当にありがとうございました!!」」」
中多「えっ……み、みんな……」
「「「このご恩、この思い、一生忘れません!!」」」
中多「──わ、わたしも…!絶対に忘れません!!」
ぷしゅー……ぱたん がたんことん…
中多「───本当に、忘れませんよ……アニメ研究部のみんな……」
純一(──なんだかとっても、いい光景にかんじるな…いや、そうなんだろうけどさ…うん)
数十分後
純一(おー…行く時はきづかなかったけど、あれが有名な橋か……)
中多「……せんぱい…」
純一「──ん、おきたの紗江ちゃん?」
中多「はい……いつの間にか寝ちゃってました…」ごしごし…
純一「そうだね、多分泣き疲れたんだとおもうよ。もう少し寝てなよ。
駅に着いたら、起こしてあげるからさ」
中多「──はい、しぇんぱい…ありがとうございます……」
中多「あ、そうだせんぱい……ひとつだけ、気になったことがあるんですけど…」
純一「うん? どうしたの?」
中多「……えっと…その、私の勘違いじゃなかったらあれなんですけど…」
純一「うん」
中多「──しぇんぱいって……わたしのこと、名前で呼んでましたっけ…?」
純一「──え……?それは──」
中多「……いいえ、わたしもうれしいので…そっちのほうがいいですけどぉ…」
純一(どう、だった──僕は…?
確かに僕は……ここにくる前まで〝中多〟さんって言ってた気がする…)
純一(でもそれは──よくわかってないけど、紗江ちゃんのリボンを触れたおかげで…
紗江ちゃんのことを思い返して……それは僕が記憶がない時期だと思ってるんだけど…)
純一「まさか──…そのよみがえった記憶と、紗江ちゃんの記憶が合致しない……?」
中多「……? せんぱい…?」
純一「……えっ?あ、うん、ごめん紗江ちゃん……ちょっと考え事をしててさ……」
純一(どういうことだこれは……僕は何を思い出したんだ…?
紗江ちゃんのリボンを触れて、僕は……一体何を……っ)
がたんごとん…がたんごとん……
ちょっとトイレ
あんどお風呂も
純一「──え……?それは──」
中多「……いいえ、わたしもうれしいので…そっちのほうがいいですけどぉ…」
純一(どう、だった──僕は…?
確かに僕は……ここにくる前まで〝中多〟さんって言ってた気がする…)
純一(でもそれは──よくわかってないけど、紗江ちゃんのリボンを触れたおかげで…
紗江ちゃんのことを思い返して……紗江ちゃんと読んでたと気づいたんだ…)
純一(──それはまさに、紗江ちゃんと呼んでた時期が──僕が記憶がない時期だと思ってるんだけど…)
純一「……まさか──…そのよみがえった記憶と、紗江ちゃんの記憶が合致して、ない……?」
中多「……? せんぱい…?」
純一「……えっ?あ、うん、ごめん紗江ちゃん……ちょっと考え事をしててさ……」
純一(どういうことだこれは……僕は何を思い出したんだ…?
紗江ちゃんのリボンを触れて、僕は……一体何を……っ)
がたんごとん…がたんごとん……
純一(でもそれは──よくわかってないけど、紗江ちゃんのリボンを触れたおかげで…
紗江ちゃんのことを思い返して……紗江ちゃんと読んでたと気づいたんだ…)
純一(──それはまさに、紗江ちゃんと呼んでた時期が──僕が記憶がない時期だと思ってるんだけど…)
純一「……まさか──…そのよみがえった記憶と、紗江ちゃんの記憶が合致して、ない……?」
ここかな。フラグだったので明確にしたかった
直し過ぎはごめん 集中力が切れかけてる
自宅
純一「ただいま~」
美也「お帰り~……にぃに。今日はおそかった──……ねって……」
中多「──そのぉ…美也ちゃん…」
美也「──さ、紗江ちゃん……?ほんとにほんとに紗江ちゃんなの……!?」
中多「うん……わたしだよ、美也ちゃん!」
美也「さ、紗江ちゃぁん……!!」だっ!
中多「きゃっ……美也ちゃん、あぶないよ急に抱きついてきたら…!」
美也「紗江ちゃん…!紗江ちゃん…!もう、学校にも来るよね…!?
一緒にみんなでご飯食べれるよね…!?」ぎゅう…
中多「うんっ……ごめんね、ごめんね美也ちゃん……!」
美也「っ……もう、なにも言わないでどっかいくのはやめてねっ…約束だよっ」
中多「うん、約束……美也ちゃんとわたしの、約束だよ…!」
純一(よかったな美也……よし、後は……)ごそごそ…
数分後
樹里『──…ありがとうございます、先輩』
純一「おう。これでいいんだな?」
樹里『はい……本当に感謝の言葉しかありません…ありがとうございます…』
純一「いや、いいんだよ。僕だって色々と収穫があったしさ……うん」
樹里『……?そうですか、でもこれはぼくの頼みであって。先輩を巻き込んだにすぎません…
何度も言うようですが、本当にありがとうございました』
純一「いいってば。それよりも、お前も頑張らなきゃいけないんだろ?これから」
樹里『……はい、そうですね。ぼくの戦いはこれからです』
純一「ああ、頑張れよ。僕も応援してるからさ」
樹里『──それほどまで心強い言葉は、ないでしょうね…』
純一「え、なんだって路美雄?」
樹里「いえ……なんでも、先輩。最後に一つだけいいですか」
純一「なんだよ、もう頼み事はいやだぞ」
樹里「いえ──どうか頼ませてください。貴方に、ぼくから」
純一「おいおい……まったく、次はなんだっていうんだよ」
樹里「──どうか、貴方が困ったことがあったら、ぼくに助けさせてください」
純一「え……?」
樹里「貴方がどうしようもなく困った時。助けが欲しかった時。どうか僕に、
貴方を助けさせてください。お願いします」
純一「路美雄……お前…」
樹里「先輩、貴方はすごいひとだ……ぼくは本当に尊敬している。
無理だと思ってたことを、全て貴方はやってのけている」
樹里「そんな先輩がもし──困ることがあったら、それは本当に大変な時だと思います。
ですから……ぼくは…」
純一「──ちょっと待て。路美雄……お前はなにをいってるんだ?」
樹里「え……?」
純一「頼ませてくれ?どうか助けさせてください?……馬鹿言うな路美雄。
こんなこと口に出さなくても良いことだろ?」
純一「──お前とはもう、僕は友達でいるつもりだ。そんなもん、口に言う必要はないさ」
樹里「せん、ぱい……」
純一「助けが欲しかったら、遠慮なく言うつもりだよ。お前の力がひつようだったら、
僕はなんだってお前に頼るつもりだ」
樹里『はい…はい…!』
純一「そうだな、お返しにジュース一本とかでいいか?
あ、でもペットボトルだぞ!高い奴の!そこはケチらないからな!」
樹里『いいんです、缶でもぼくはかまいません…!』
純一「そ、そう? ならよかった……いや、意外とペットボトルって高い気がするんだよねぇ。うん」
樹里『はいっ……先輩。ありがとうございました』
純一「あ、うん。お前も頑張れよ」
樹里『はい……では、これで』
純一「おう、また明日な」
樹里『──では、また明日に』
ぴっ…!
純一「ふぅー……アイツも色々と行儀がいいなぁ。もうちっと楽に生きればいいのにさ」
純一「さて、お風呂にでも入るか~……うん!」
とある自宅
「───………」
「…………」パラパラ…
「──今日もカキコミは、無し──……ふんっ」
「何気に頑張ってるのねぇ……今回の〝世界〟では」
「……どんなに頑張っても、めぐる答えは決まってるのに」
「ばかみたい。本当に」
「──………」ぴくっ…
「──そうね、ちょっといいことを思いついちゃったかも」
「いいわね、これでいい」
「……見てなさい、橘 純一…」
「貴方には、絶対に幸せを迎えさせなんか──」
「──させないんだから……ッ!」
翌日
純一「────」
純一「────……」
じりりr
純一「はぃいい!」ばん!
純一「……ふわぁぁ…なんというこだろう、この僕が目覚ましより早く起きているとはね…」
純一「……これもすべて、君のおかげかい…?」すっ
純一「僕の──『きらめけっ!ちびっこぼいんサーちゃん!』…?」
純一「ふふ……流石だよ、この僕を起床時まで紳士でいさせるなんて…素晴らしい限りだ」
純一「──さて、朝のブレイクコーヒーとでも行きますかね」
居間
純一「おはよう、美也」
美也「おは──にぃに!? なんでいるの?!」
純一「ははは! なにをいってるんだ美也、僕は何時もこの時間帯だろ?」
美也「た、確かにめざましはこの時間帯にセットしてた気がするけど……
にぃにはそれを守ったことなんて、一度もないでしょ…!」
純一「舐めては困るぞ、美也……これでも僕は紳士なんだ」
美也「……なにいってるの? にぃに…」
純一「──ふむ、どうやらお子様にはまだ早いようだったな。すまないな美也」
美也「お、お子様っていうな!ばかにぃに!」ばたばた!!
純一「はっはっはっは!!なんだなんだ美也!今朝からご機嫌だなぁ!!」
純一「ついでに言うと僕もご機嫌だ!!なんか今日は良いことが起きそうだ!!」
美也「きぃー! なんなの今日のにぃに…!ちょっと気持ち悪いよ…!」
純一「照れるな照れるな。妹よ、僕の紳士力に磨きをかけないでおくれ」
教室
純一 ぐだぁ~……
梅原「……た、大将? なんか今日は一番お疲れのようだな…」
純一「あー……? ああ、梅原か。おはよう梅原…」
梅原「おう、おはよう大将。なんだよなんだよ、いくらなんでも疲れ過ぎじゃねぇかそれ?」
純一「……うん、そうなんだけどさ…昨日色々ありすぎて…なんか今になって疲れがきたんだ…」
梅原「そ、そうか……それしてもそのグダりようなダメだ。
見ててなんかこっちもだるくなってくるぜ…」ぐだー
純一「──お、梅原。九時の方向……三メートル先」
梅原「ん──おおう、これはこれは…このアングルだと…ぎりっぎりだな……っ」
純一「そうだな……もうちょっと机が低かったら…見えてたのにな…!」
「──なにアンタ達、低レベルな会話をしてんのよ」
純一「薫──これは一見、机にへばりつきがら……歩いてる女子のスカートを覗こうと風に見えるかもしれないが…
これは立派な検証実験なんだよ」ぐだぁ
薫「なによそれ、とうかそんな体制でキリッとされたもなんも伝わらないんだけど」
純一「大丈夫だよ、この会話にそんな意味は無いからさ」
薫「…認めちゃうのね。パンツを覗こうとしたことは」
純一「見えたもんはしかたないっていうだろ?なぁ梅原ぁ?」
梅原「そうだぞ棚町──人は見てしまったら仕方ない。それをどうにかできるやつなんて、いるわけないんだぜ」
純一「そうだぞぉー……僕は無罪をしちょうしまーす」
薫「……はぁ、とりあえず。あんたに用事があるのよ純一」
純一「えー……僕ぅ…?やだー……」
薫「やだぁ…じゃないわよ。ほら、しゃきっとする!」
純一「なんだよ……これからどこへ行くのか?」
薫「……まぁ、そうね。確かにちょっといくわ」
純一「……なんだよ、それって僕に関係のあることなのか…?」
薫「…………」
純一「──な、なんだよ…急に黙って」
薫「──まぁ。とりあえず、来るのよ。着たらわかるから……」ぐいっ…
純一「お、おい……! そんなにひっぱるなって……!!」
下駄箱
純一「なんだよ……ここまで連れてきて、どうしたんだよ」
薫「──ねぇ、あんた。わたしになにか隠してない?」
純一「え? な、なにを薫に隠すっていうんだよ……僕は別になにも」
薫「──なんで今、言い淀んだの?それってなにかを隠してるとかじゃないのかしら?」
純一「ば、ばかいうなよ…!」
純一(一体急にどうしたんだ薫は……僕が薫に隠すことなんて、これっぽっちも…)
純一(これっぽっちも───)
純一(………あれ?なんかちょっと色々と薫に申し訳ないようなこと、ばっかしてた気がする…かな?)
純一(で、でもそれは彼女たちと過ごしてたら自然とそうなったわけだし、それに……
薫は、僕のことを──好きだった。言ったんだ…これは今はどうとか言えることじゃない…)
薫「…………」
純一(で、でも──薫には色々と世話になったし、なにも離さないってのもあれだよな…うん…正直に話そう…)
純一「……ごめん、薫…僕、実は隠してることがあるんだお前に……」
薫「っ──……そう、そうなんだ。それで?何を隠したかいってちょうだい」
純一「う、うん……薫には、色々と記憶のことで世話になったから…正直に言うよ…」
薫「──え……?記憶って──」
純一「ごめんな薫!!お前に助けを求めたくせに……僕ってばここ数日、女の子といちゃいちゃしてばっかだんだ!」
薫「へ……?なにいってんのアンタ…?」
純一「い、いや…だからもしかしてお前が僕の記憶のことで頑張ってるのに…
僕はただ女の子と色々としてただけって……」
薫「………そ、それだけ…なの?」
純一「そ、それだけ。……だけど?」
薫「──っぷ、あははは! なによそれー!あんた本気で言ってるんでしょうね!あははは!」
純一「な、なんだよ急に笑い初めて……!」
薫「ああ、おかしっ……なによもう、本当にあんたって思わせぶりな態度とるわよねぇ~」
純一「よくわからないんだが…ちゃんと説明してくれるんだろうな、薫」
薫「え──?あはは、うんうん。説明してあげるわよ……まぁ、これのことなんだけどね」ぴらっ
純一「なにそれ、手紙?」
薫「そうね。詳細にいえばメモ用紙みたいなもんかしら……これが今朝、あたしの下駄箱に入ってたの」
純一「へー…それで?」
薫「……とりあえず、今のあんたには教えてもよさそうだから。信用してるつもりだから見せるのよ?わかってる?」
純一「あ、ああ…なんだよ、怖いなちょっと」
薫「うん、そしたら呼んでいいわよ」
純一「おう──なになに……棚町 薫の母親は直ぐに再婚するあばず……おい、なんだよこれ……!!」
薫「………。その反応は確かに知らないみたいね……
そもそも私に呼ばれた瞬間から、少し反応うかがってたけどそうでもなかったしさ」
純一「ちょ、ちょっとまってくれ……色々と聞きたいことがあるけどその前に…
薫のおばさん、再婚するの…?」
薫「──安心して純一、今の言葉で疑いは百パー晴れたわ。おめでとう」
純一「え……どういうことだよ薫」
薫「あのね、あたしのお母さんが再婚するって話をしたのは──私の記憶では、あんただけだった」
純一「え、そうなのか…でも、僕は知らないぞ?」
薫「そう、しらないはずなのよ……だってアンタは記憶がないんでしょ?」
純一「う、うん……そうだよ。こんなこと初耳だし…」
薫「そうなのよね……そこが問題」
薫「これは予測で、ただのあたしの妄想かもしれないけど……」
純一「う、うん……!」
薫「どこのどいつかが──アンタしか知らないことを、知っている。
どこのどいつかが──アンタが記憶を無くしていることをしっている……という可能性があるの」
純一「お、おう……なんでそんなことがわかるんだ?」
薫「これはあたしの場合だけで答えるから、確証はないわよ?
でも、それなりに自信がある……だって、他人の悪意なんてそもそも分かりやすいにも程があるわ…!」
薫「──覚悟して聞いてね、純一。あんたは今……わけのわからないどこぞの馬の骨とも知らない奴に、
罠にはめられそうになってるかもしれないわ……」
純一「え、ええ……!? どうしてそこまでわかるんだ!?」
薫「カンよ。でもこれは女のカン」
純一「自信満々に言われても……僕はどうすればいいんだよ…!」
薫「だから女のカンって、他人の悪意に敏感なのよ。これでも高校生よ? 色々と修羅場くぐってるわよー」
純一「そ、そうなのか……凄いんだな、薫」
薫「まーねぇ。でも、それはいいのよ純一、あんた……このメモ用紙には見覚えある?」
純一「……いやぁ、ないなぁ…もちろん、筆記にも見覚えがない。明らかに僕じゃないと思うよ」
薫「……そうね、やっぱりこれは誰かの仕業だと見ていいわ」
薫「純一、気をつけなさい…」
純一「な、なんだよ…ちゃんと気を付けるさ。お前こそあぶないんじゃないんか」
薫「……あたしは大丈夫。たぶん、あたしは狙われたんじゃなくて──使わされた。ただ、それだけ」
純一「そうなのか……よくわからないけど、僕大変な目に逢ってるんだな……」
薫「理由が分かってない分、さらに最悪ね。でも。これは思っても良いじゃないしら……」
薫「確実に今回のことを起こした奴は──あんたの記憶がないことを知っている。わかっている」
薫「なら、その事件の真相を暴けば……見つかるかもしれない、アンタの記憶も」
純一「なるほど……」
ごめん目がかすんで文字が打てない
昼までには起きると思う
残ってたら続き書きます…落ちたらパー速にでも続きをかく
保守時間頼む
落ちたらな
ほ
梨穂子むにむに
梨穂子はまだかなあ!
梨穂子はまだかなあ!!
美也は俺の妹
>>284
お義兄さんじゃないですか
おk
保守どうもです
今から書くよ
薫「──でもあれよね、なんであんたその謎の人物に嫌われてるのよ?」
純一「わ、わからないよ……分かったら苦労はしないさ」
薫「まぁそうよね。でも、これはいいアドバンテージになるわ──だって、あたしが
アンタを嫌いになることが相手側の狙いだったとしても……あたしは上手くいかなかった」
純一「そうだね、こうやって和解もできてる」
薫「……そう、だから相手はあたしがあんたと〝記憶がない事実〟を共有してることを知らない……人物になる」
純一「………けっこうな人がいるんだけど。というか、ほとんどじゃないか」
薫「───………」
純一「薫?」
薫「──とりあえず、今日一日は気を付けて純一。あたしも色々と聞いて回るから。
下駄箱に誰か近づいてなかったとか、色々ね」
純一「お、おう……わかった。お前も気をつけろよ薫」
薫「てーんきゅ!」
廊下
純一(気を付けてか──……薫のことも心配だけど、なんだろうなこれって…
薫のことを悪く書いたメモ…それが僕だけしか知らない事実…)
純一(一体ぜんたい、僕は誰に嫌われてるんだ……?)
純一(……もしかして、この──)ごそごそ…
純一(──公園で見つけた手紙の、金の仮面さんが……僕のことを…?
まさか、でも…記憶がないことを知ってるのは薫とこの金の仮面さんだけだ…)
純一(それでもこの手紙は、僕を励ます内容だけだった…まるで頑張れって言ってるような。
それでいて、この記憶がない僕を知っているような…)
純一「──ああ、だめだ…全然わからないよ。僕ってばそう難しことなんて、
頭良くないし考えてもわかることないしなぁ」
純一「とりあえず……教室にでも戻るか…」
純一「……待てよ、教室……?」
『(──今、ものすごく視線を感じたような気がする…。
確かに今は、薫がいるからクラス中が注目してるけど…)』
純一「確か僕は教室で──……」
『(誰だったんだろう……とにかく確かに視線は感じたし、
それは……僕に向けてのような気がする…)』
おかえりしえん
純一「誰かに、見られていた気がしていた……?で、でもそれってただの気のせいかもしれないし…」
純一「……………っこれは!…」
純一「──きた、これだ……きたぞ。頭のもやもやだ……!!
あの時はならなかったのに、その時のことを思い返しただけで…頭のもやもやが出てきた…!!」
純一(また、なにかを思い出しそうになってるのか…? でも、これは昨日の紗江ちゃんの時とか…
今までてきたやつより、全然小さい……なにか足りないのかな)
純一(それに、昨日の紗江ちゃんのりぼんのこともある……アレを触れたら、僕は紗江ちゃんのことを全て思い出した…
──あ!しまった!)
純一「そのことを薫にいってないじゃないか! い、いまからでも言いに行かなくちゃ……!!」くるっ
だだだだ…!
体育館裏
純一「はぁっ……はぁっ……まったく、あいつは何処に行ったんだよ。
教室にもいないし、職員室にもいないしさ……うん?」
ガサガサ…
純一「なんだろう──あれは。なにか黒いのが動いてる…」
ガサガサ…ぴょこ!
純一「──……あ。お前……ぷーじゃないか」
ニャー
純一「久しぶりに見た気がするな。お前、元気にしてたか?」
ニャ~
純一「そうか、元気にしてたか。
あはは。でも、相変らず触らせてくれない位置を陣取るんだなお前さんは…」
ニャッ
純一「──うん、どこいくんだぷー。待ってくれよ」すっ
タッタッタ…
純一「おーい。待てってば、何処行くんだよ──……って、七咲じゃないか」
七咲「──先、輩……?」
純一「うん、僕だよ。こんなところでなにをしてるんだ七咲…ラーメンでも食べてるの?」
七咲「た、たべてないですよ……ただぷーに会いにちょっと…」
純一「へー……そしたら、毎日会いに来てるの?」
七咲「ええ、まぁ……今日はちょっと早めに会いに来ましたけど……」
純一「……?」
純一(どうしたんだろう? 今日の七咲、なんだか元気がないな。
具合でも悪いんだろうか?)
純一「──七咲、今日はちょっと大人しいね。なにかあったの?」
七咲「え……? い、いや…そうでもないですよ…はい」
純一「そうでもない様には見えないけど……七咲、またなにか相談でもあるの?───っっ!!?」びくん!
七咲「っ──いえ、そんな、ことは……っ…」
純一(…なん──だ、これ……またきた!頭のもやもやが……!!
これは……これは、紗江ちゃんの時と同じぐらいの……もやもやだ…!!)
七咲「──先輩、その……ひとつ聞いても良いですか…?」
純一「──え? うんいいけど……」
純一(──待て、待て待て…どうしてこのタイミングで…僕のもやもやも出てくるんだ…っ!?)
七咲「えっとその、ですね……」
純一(なんてことだ…このタイミングで出なくても良いだろ…っ!
今は七咲のことに集中しなくちゃいけないっていうのに……!)
七咲「──先輩は、私のこと軽蔑してますか……?」
純一「……はい? な、七咲……なにをいってるんだ?」
七咲「っ……いいえ、分かってるんです。私……こんな弱い私ですから、
先輩に頼りっきりで…それで、それで……」
純一「い、いやいや。待ってよ、七咲。僕はなんのことだがさっぱりなんだけど…?」
七咲「──……今日、私の机の上に…落書きがされてあったんです…」
純一「落書き──…?」
七咲「……はい、それに書かれてたことは…その、色々と酷いことをかかれてまして…」
純一「酷いことって……七咲のことを?」
七咲「はい……ちょっとそれが、こたえてしまって…こう、自分が見ないようにしてたことを…
無視をしようとしていたことを…全て…問い詰める様に書いてあって…」
純一「そ、そんな酷いことが描かれてたのか…?」
七咲「はい……それでちょっと、教室を抜け出して…ぷーに…ぷーに…」
純一(──え、ま、まさか…あの七咲が泣きそうになってる?……嘘だろう。
僕の知ってる限りじゃ、七咲は強い心を持った子だと思ってた…)
純一(それほどまで──……酷い落書きだったのかな。
誰だよ書いた奴は! 七咲をこんなことにして……!)
純一「……ん? ひどい落書き…?」
純一(……まさか、これって薫の時と同じように…謎の人物がやったことなのか!?
なんで七咲にも……いや、こんなことを考えても仕方ない)
純一「な、七咲……その落書きには、どんなことを書かれてたの?」
七咲「……………」
純一「七咲……?」
七咲「──先輩は、本当は……なにを考えているんですか…」
七咲「私が落ち込んだ時は、先輩はいつだって慰めてくれて…
困った時は、何時だって先輩は助けてくれていました…」
七咲「でも……でも、これは……私にはどうしたらいいのか……まったくわからないです…」
純一「……七咲、ごめん。もうちょっとわかるようにいってくれないか…?」
七咲「……先輩。先輩は、私のことをなんだってしってますよね…だって私は先輩に
なんだって見せてきました……その分、私も──色々と得ることもできましたし…」
純一(──なんだって見せてきた…!? お、おい…記憶がない時の僕!
いったい七咲のなにを見てきたんだ!)
七咲「ですから……先輩と会話をしてる時はいつだって楽しくて…
私の全てを知ってる人と会話するのって、こんなにも楽しいのかって…思ってました…」
七咲「……でも、でも…先輩。正直に言いたいことがあったら、言ってください」
純一「え……?」
七咲「こんな私は──こんな先輩に頼りっきりな私は……もう、今後先輩に…」
七咲「話し、かけないほうがいいでしょうか……?」
純一「なに、言ってるんだよ……七咲。あはは、話しかけない方がいいって?」
七咲「………──『貴方は依存している』…」
純一「え、どうしたの七咲。急に…?」
七咲「……『他人というものに依存し、自分の弱い部分を強いと勘違いする』…」
純一「な、七咲…それって落書きの…?」
七咲「『お前はなんだって一人じゃできない』『憧れの人というカテゴリで自分を誤魔化す』
『好きな人がいることを知ってながら知らないふり』『好きだと言わなず飼いならす』」
純一「…………」
七咲「『努力も知らず他人任せ』『見えないものにただ怖がる』『強がるだけでなにもしない』……」
純一「七咲……それは…」
七咲「『なにひとつ、お前は手に入れてない。自らの手で手に入れてない。
お前はいつも他人に任せ、恋路も誤魔化し、邪魔をし、全てを見ないふりをする』」
七咲「──これで、全部です。せんぱい……これが描かれていた落書きの内容です…」
エグすぎワロエナイ
純一「……なん、でそんなことを……」
七咲「──あはは、なんで、でしょうね……でも、でも…これも全部、その通りなんですよ…先輩」
純一「七咲……」
七咲「書かれていた落書き……全部、私はわかっていたことなんです…」
純一「で、でも……!そんなのただの落書きだろ……っ!?気にする事なんか……!」
七咲「……はい、そうなんですけど……そう、思いたいんですけど……
やっぱり、私にはもう……──…無理みたいです」すっ
純一「な、七咲…? ど、どこいくんだよ…?」
七咲「──…とりあえず、もう先輩に近づくことを止めようと思います」
純一「え…?ど、どうして…!」
七咲「いえ──…私も、ここまで色々と馬鹿なことをしてきたなって思ってたんです。
落書きに気付かされたなんて…ちょっとくやしいですけどね」
純一「七咲、何を言ってるんだよ…本当に…!」
七咲「先輩──橘先輩、今まで馬鹿な私に付き合ってくれて……その、ありがとうございました…!」だっだっだ…
純一「七咲!おい、待てってば!」
純一「な、七咲…ッ! だ、だめだよ戻ってきて!」
純一(だめだ──…っ! 今の七咲に、何を言ってもダメな気がする…!
でも、でも──ここで七咲と分かれてしまっていいのか…!?)
純一(なにか──なにかないのか!? 七咲を止める、七咲と会話できるものは…!
考えろ、考えろ橘 純一…ッ)
ニャー
純一「……ッ!!」
純一(──そうだ、わかってきた!!さっきから出てきている……このもやもや!
これって……七咲と、ぷーを同時に見たからじゃないのか!?)
純一(今だってそう──今この瞬間も、走り去っていく七咲とぷーを見ていると
最高潮にもやもやが出てきてる…!!──……ものは、ものはためしだ……!!)
純一(僕の、全ての力を使って……この場をどうにかするんだ!
七咲と離れ離れになるなんて……僕は嫌なんだっ!!)
純一「──わぉおおおおおおおおおん!!」
ニャッ!?
純一「わんわんわん!!」ばたばた!!
ニャー!? ニャニャッ!! ばたばた!!
純一(──無理だ、無理なんだぷー……今の僕はお前の天敵、犬だ!
いくらお前のようなすばしっこい奴でも…)ばたばた!
ニャァアアアア!! ばたばた…
純一「へっへっへっへ……」じりじり…
ニャァ…ニャァ… びくびく…
純一(僕の本気の犬モードの前では……敵いはしない!)ばっ
ニャッ!?
純一「──つかまえ、」
純一(─────fじゃおあじょじょあじょfjdそjふぁjそdjふぁおsjd)
純一「──ッ──ッッ!!!ッ!!」びくん…
なにしてんの橘さんwwww
純一「き──きた……これだ───」
ジザザ…! ザザ!
『先輩!今日はどこにいきますか?』
『そうだなぁ。ラーメン屋とかどう?』
純一「そう、僕は七咲と───」
ジジジ……ザザー…
『…だめなんです。先輩…』
『いいんだよ、七咲。無理をしなくて』
純一「色んな事を話して───」
ザザザ……ザザッ…
『ありがとうございますっ!先輩っ!』
『な、七咲…っ!なにもきて…っ』
純一「僕は──知っている。七咲のことを全部」
純一「…………」
純一「────行かせるか。行かせるもんか、七咲…ッ!」
うんこごめん
数分後
七咲「はぁっ……はぁっ……」
七咲「はぁっ──……これで、よかった…よかったんだ…」
七咲「……先輩には、もう迷惑はかけれない…だって長い間、迷惑をかけつづけたんだから…」
七咲「っ……え──なに……」ぽろぽろ…
七咲「なん、で……泣いてるの、わたし…」ぽろ…
七咲「ッ……!」ごしごし
七咲「──大丈夫……なにも、なにも変わらないんだから…こうやってまた、一人で頑張れる…」
七咲「頑張れるん、だから………」
だっだっだっだ……
七咲「……え、この足音は…?」くるっ
七咲「───えっ!? せんぱい!?」
純一「わん!わん!わぉーん!!七咲ぃー!!!」だだだだだ!!
七咲「え、ちょ、なんで四足歩行でダッシュしてくるんですか……!?なんかこわいです!」だっ!
警察「ああ、橘さんか。大丈夫大丈夫」
純一「──えっ!? 何で逃げるの七咲!?」だだだだ!!
七咲「に、逃げるにきまってるでしょう!? なんでそんな走り方で追いかけてくるんですか!!」だっだっだ!
純一「だってコレの方が速いから……というか待て!ぷー!僕の耳を噛むんじゃない!」だだだだ!!
ニャニャッ!
七咲「──え、ぷー? な、なんで先輩の肩……というか背中の上に…!」だっだっだ!
純一「いや、なんか捕まえた途端、急に懐いてきて……ちょ、いたい!やっぱ痛いから!」だだだだ!!
七咲「そん、な──ぷーは私以外に慣れなることないのに……っ!」だっだっだ!
純一「──ああ、そうか。七咲、ぷーの弱点は耳の裏だろ?」だだだだ!!
七咲「えっ? なんでそれを……?確か先輩にも言ったことないのに……」だっだっだ!
純一「やっぱりな。あ、七咲はたぶん言ってないと思うよ、たぶんね」だだだだ!!
七咲「せ、先輩……? なにをいって──というか脚早い……!もう私の横に…っ」だっだっだ!
だだだだ!!
だっだっだ!
純一「──七咲。どうやらもう色々と立ち止まってくれなさそうだから……この状況で言うけどさ」
七咲「ほ、本当になんでこの状況で…そんな表情を出来るんですか…っ?」
純一「良いから聞くんだ七咲。僕は言いたい事ある」
七咲「……はい、なんですか先輩……」
純一「七咲──君は別に、弱くないよ」
七咲「っ……なんですか、慰めにきたんですか……っ?
でも、私はそれを先輩に───」
純一「ああ、そうだろうね。僕に言われてもしょうがない……また、それは僕という存在に
頼ってるって事になる……そんな感じだろ、七咲は」
七咲「っ………」
純一「だから七咲は──僕に何かを言われる前に、走って行った。
僕は自分のことだから……よーくわかる。たぶん、あの時。僕は七咲を慰めてただろうね」
七咲「じゃあ──なんで、追いかけてきたんですか……っ!
わかってて、それでも私を追いかけてきて……!!」
純一「それはね───好きだからだよ、七咲が」
七咲「───……えっ…?」
純一「僕は七咲が好きだから、追いかけてきた。悲しませたくないから、
……こんなことで、七咲が離れて行ってしまうのが嫌だから」
七咲「せん、ぱい……くっ──でも、それじゃっ……!」
純一「──でもね、七咲。これじゃダメなんだろ」
七咲「えっ……?」
純一「確かに僕は……七咲のことが好きだ。その声も、足も、眼も…
そして時々見えているスカートの中の水着も……好きで好きでたまらない」
七咲「っ……」ばっ
純一「それに僕は七咲と──キスもした。あれって僕、初めてだったんだよ?」
七咲「わ、わたしもです……よ…!」
純一「そっか、これはもうけもんだね!」
純一「確かに僕は七咲が──好きだ。
でも、これじゃ七咲はもっと……苦しむことになるんだろ?」
七咲「…………」
純一「僕が君を好きっていっても……これはまた、ドつぼにはまるだけ。
好きだと言ってくれたからあの人と頑張れる、好きだから期待にこたえようとする……」
純一「──でも、それが、七咲はとてつもなく嫌になったんだろ……?」
七咲「…………」
純一「前にプールで……一人で頑張ることに挫けた七咲はさ、僕に相談してくれたよね?
それで七咲は、僕がいるから頑張れるって──あの時、言ってくれたんだと思ってるよ」
七咲「……はい、その通りです……先輩…」
純一「ありがとう、七咲。でも──君は落書きで気付いてしまった。
そんな風に頼って頑張っても、自分は何も変わってはいない……」
純一「七咲は以前までやっていた……一人で頑張ることを、僕っていうもので台無しにしてしまった──
それに気付いて、七咲は僕から離れようとしたんじゃないのか?」
七咲「…………」
純一「自分が恐ろしく弱い人間じゃないかって……人の為にじゃないと頑張れない人間になってしまったんじゃないかって」
七咲「先輩、そしたらなぜ……そこまでわかってて、私のことを追いかけてきたんですか…?」
純一「──そうだね、もうこれは僕と七咲が離れないと、七咲が納得できなくなってしまってるよね。
だからこうやって僕と七咲が会話してるのも、君には辛いはずだ」
七咲「それだったら───…」
純一「でもね、僕は知っているんだよ。七咲」
七咲「えっ……?」
純一「僕は知っているんだよ──君がどれだけ頑張れるかを。
どんな困難でも、君は一人でも……みんなに頼ってでも頑張れるって事を」
七咲「なにを、いってるんですか…先輩…?」
純一「これは七咲を見てきた僕だから言えることだ。だから、僕を信じてくれる七咲なら、
これが冗談で言ってるんじゃないってわかってくれると思う」
純一「七咲──君は将来、たぶんだけど背泳ぎで県大会に出れるはずだ」
七咲「なんですかそれ……?」
純一「これは妄想じゃない。嘘でもないよ?──ただ、絶対にある世界なんだ。
七咲はどんなことがあっても、なにがあっても……頑張れる強い子なんだよ!!」
グラウンド
純一「自分を信じてくれ七咲! 僕はそんなくよくよした七咲は見たくない!!
誰にだって負けない鋼のような心を持ってるって、僕は知っているんだから!!」
七咲「──せん、ぱい……?」
純一「七咲──七咲、僕は信じてる。この言葉がどこまで七咲が信じてくれるかわからないけど…」
純一「それでも、僕は七咲が好きだから……大切に思ってるから、僕はこんな妄想みたいなことを言える」
七咲「…………」
純一「──頼ることは、苦痛じゃない。他人の為に頑張ることは、ダメじゃない。
それを僕に証明してくれたのは…なんてたって……七咲じゃないか!」
七咲「わたしは、そんなこと………」
純一「いいや!!!!」すいっ!
にゃっ!?
純一「七咲、お前は絶対にそうなる!!僕の言葉を信じろ!!」だっだっだ!!
七咲「せ、先輩…!?」
純一「僕は──そんな七咲は見たくない!
知らないし、見たくもないし、信じたくもない!」だっだっだ!
七咲「な、なにを郁夫みたいな訳の分からないこといってるんですか先輩……!」
純一「良いから聞くんだ七咲!よーく耳をかっぽじってきくんだぞ!──すぅううう…」だっ…
七咲「えっ───」
純一「──ぼくはななさきのことがだいすきだぁあああああああああああああああああ!!!」
七咲「」
純一「ああああああああああ──……ふぅ、すっきりした」
七咲「──な、ななななななにいってるんですか先輩…!? グラウンドの真ん中ですよ…!
これ、絶対に校舎中にっ……!?」
純一「──これで、もう大丈夫だろ。七咲」
七咲「本当に、なにをいってるんですか貴方は……!」
純一「なにって七咲──もう、これできまってしまったじゃないか。
みんなもう知ってしまった──それだったらもう、七咲は始めるしかないんだよ」
純一「いまだに七咲が……他人の為に頑張ることが、自分でダメだって思うなら。
──もう周りから固めればいい、他人の為に頑張れる自分だって。そう作り上げればいい」
七咲「せ、先輩……それってけっこう無茶なこと言ってるって…気付いてますよね」
純一「無茶じゃないさ。僕の知ってる七咲ならね。
……でも、こうしなきゃ七咲は──絶対に始めようとはしないだろ?」
純一「自分が強い人間だってことを、気付くことをさ」
七咲「──もう、先輩が何を言ってるのか…ほとんど理解できてませんよ…わたし…」
純一「そう? でも、大丈夫。僕は七咲のことわかってるからさ」
七咲「……なんなんですか、先輩。ほんとうに……はぁー…」
純一「……それで七咲、君は僕知ってる七咲になってくれる?」
七咲「……その、誰に頼っても頑張れて。一人になっても頑張れる…私ですか?」
純一「そうだよ! そんな七咲が僕は好きだ、だからそうなってほしいと思ってるよ」
七咲「……無茶苦茶ですね、本当に言ってることが支離滅裂ですよ…」
純一「わかってるさ。でも、僕はなってほしい」
純一「逃げる七咲なんて、七咲じゃないじゃないか!」
七咲「……はぁ。もう、なんていったらわからないですけど…」
七咲「──わかりました、先輩。私…頑張ります」
純一「ほんとに!?」
七咲「ええ──もう、さっきまでの色々な感情が…もうどうでもよくなってきました。
凄いですね先輩」
純一「素直に褒め言葉として受取っておくよ!」
七咲「はい、そうしてください……ん~!──そうですか、先輩って私のこと大好きだったんですね」
純一「えっ──うんっ!そうだよ……」
純一(……あ、今さらだけど僕…告白しちゃったんだ!何だ急に恥ずかしく…)
七咲「へぇー…そうなんですか。でも、私いろいろと噂を聞いてるんですけど、先輩」
純一「えっ……?どういうのかな…?」
七咲「森島先輩のカップル事件」
純一「うっ……」
七咲「…深夜にクラスメイトと徘徊。次の日そのクラスメイトと一緒に登校」
純一(か、薫のことか…?)
七咲「……とある会場で女の子と泣き合いながら抱き合う」
純一「へっ……!? なんでそんなことまで──あっ……」
七咲「………先輩、私はいくらなんでもそんな人の為に頑張るっていうのは──」
七咲「──いささか、周りに公言しにくいんですが?」
純一「えっと、あの………あはは…」
七咲「──はぁ、本当に先輩って……犬みたいにこっちに、
こっちにわんわん、そっちにわんわん──してますよね」
純一「え、えーとその……」
七咲「──まぁいいんですよ、先輩」
純一「え?な、なにが…?」
七咲「先輩は先輩らしくて、いいんです。これからもそうしてください
……そうしてくださらないと、逆に困ってしまいます」
純一「ど、どういう意味かな?」
七咲「だって──先輩は、また色々と動いていたんでしょう?
誰かの為を思って、先輩は色んな人の周りを駆け回ってた」
七咲「先輩の言葉を借りるなら──これが私が知っている先輩です」
純一「な、七咲……」
七咲「ですから──……」すっ…
純一「え、ちょ七咲───…んむ!」
七咲「──これで、少しは先輩の知ってる私になれましたか…?」す…
純一「……な、なな七咲……ッ」
七咲「ふふっ……先輩、私はすっごく素直なこです。知ってますよね?」
純一「あ、ああ…うん、前にも言ってたね…」
七咲「ですから、私も素直に言っちゃいます──先輩……」
七咲「いつかは必ず、〝一番、七咲が好きだ〟って……言ってくれることを期待してますからね」
純一「え、あうん……わかったよ…」
七咲「では、これでっ。せんぱいっ、私──頑張りますから!こっちも期待しててくださいね!」たったった…
純一「………」ぼぉー
純一「──ハッ!? いつの間にか七咲がいない……!」
純一「……でも、言ってた言葉は覚えてる。」
純一「──一番、か………」
校舎・とある廊下
「──はぁ、あたしが頑張ってる時に…あんたってなにしてんのよ」
薫「………堂々とグラウンドで告白とはね。やけちゃうわー」
薫「──……あたしは、確かにあんたが好きだった……でも、でも」
薫「……あんたが記憶がないと言われた時、あたしは少し嬉しかった」
薫「サイテーよね……だってアンタが困ってんのに。あたしはその状況が
……嘘でもいいから縋りつきたくなったの…」
薫「──記憶が無くなってしまったのなら、
もう一回やり直せるんじゃないかって……」
薫「あんたと一緒に、あたしも素直になって……
また、あの日々を過ごせるんじゃないかって……」
薫「………はぁ。なーに独り言言ってるんだろ、あたし」
薫(アイツに一度だけ、この状況になってアンタは何をしたいのって……言ったことあるけど)
薫(──それは、あたしが受け止めるべき言葉だった)
薫(この状況になって、一番戸惑ってるのは……あいつじゃない。
この私……あいつはもう、あんなに一人で走り回ってるじゃない…)
薫「──あーあ、いつ外国に行こうかなぁ……これも全部、アイツのせいねホント」すたすた…
「──……ッチ」
薫「──……あれは──」すた…
「────……本当に、グズ…─」カキカキ…
薫(メモ帳…?黒いメモ帳……そんなの使って何してんのかしら……)
薫「というか何を見てぶつぶついってんのかしら……ああ、純一か──」
薫(──ふーん……まぁ、それとなくわかってはいたけどさ)
「────」スタスタ…
薫「──あーりゃりゃ、これはご立腹のようでねぇ」
薫「……絢辻さん」
ちょい休憩
ごはんたべる
黒幕きたか
でも>>1は行ったか
放課後
がやがや…
純一「……………」
純一(な、なんだろう……なんだか周りの人の目が僕に集まってる気がする…!)
純一「……ま、なんでかは分かるけどね」
純一(グラウンドでどうどうとあんなことやってしまったんだ……そりゃ誰だって気になるさ
教室に戻ったら、梅原も無言で親指立ててきたし……なんだよアイツ。誰のミカタなんだよ…)
「おーい、純一ぃ!」
純一「……え? あ、薫」
薫「よっ! この大胆破廉恥男!」
純一「や、やめろよ……僕はそんな醜い名称は嫌だよ」
薫「なによー。だったらなんて呼べばいいのよ?」
純一「……紳士、かな?」
薫「──みみをなめたり、グラウンドの真ん中で告白するのが紳士っていいたいワケ?」
純一「ばっ……!ちょ……! なにをいってるんだよお前…!!」
がやがや!がや!
薫「いいじゃないのよぉ~……だって事実なんだから、隠すことないじゃない。ひひひ!」
純一「こ、これ以上色々とややこしくさせるなよ…!
ま、まぁ僕が勝手にやってしまったことだけどさ…!」
薫「わかってるなら宜しい。んじゃ、純一。行くわよ」
純一「……え?どこにだよ?」
薫「はぁ? なに、あんた今朝のことも忘れたの?」
純一「え……ああ、あのメモ帳の切れ端のことか…」
薫「そそそ。その件でちょっと──わかったことがあるわ。だからきなさいっての」ずりずり!
純一「ちょ、なんで引き摺るんだよ薫……!!」
薫「なんでもなんでもないの!はやくきなさいって!」
純一「どっちもなんでもになってるぞ薫──うぉお!」ずささ…!
棚町さんつええ
ファミレス
純一「………」ムスー
薫「あ。あたし、チョコレートのマフィンアラモード、トッピングはバニラ、シロップ、オレンジで~」
純一「………」
薫「ほらほら~なにいじけてんのよ。あんたも頼みなさいって、ここはあたしのおごりよ~」
純一「……じゃあ、やきそば」
薫「やきそば? 純一おなかすいてるの?」
純一「……いや、わからないならそれでいいよ薫」
薫「そう? じゃあ彼はやきそばで~。よろしく!」
薫「はぁー…楽しみ。ここのバイトやめてから、この数日きてなかったからねぇ。
ここのすぃーつ美味しいのよ?あんたにもわけてあげよっか?」
純一「別にいいよ…それよりも、なんでここなんだ」
薫「んー…だって学校じゃアンタも話しにくいでしょ?
ここのほうが輝日東高の生徒もいないしさ」
純一「まぁ、そうだけどさ……」
やきそばってwww
純一「でも、あの連れて行き方はないだろ!
僕、かばんとか全部おいてきちまったんだぞ…!」
薫「いーじゃないの。どうせアンタは、帰っても教科書見なおしたりしないんだから」
純一「ったく……それで、今日はなにがわかったんだよ薫」
薫「ん? ああ、そうね……あきたきた!きたわよ純一ぃ!スィーツがっ」
純一「……はぁ~…」
数十分後
薫「はぁー……美味しかった。やっぱりここのは最高だわ~」
純一「うん、それは認める…そのスィーツも美味しかったし、
この焼そばだって麺がちょうどいい硬さで美味しかったよ」
薫「でしょー? ここの料理長がさ、けっこう食材にこだわっててさぁ
もともとはチェーン店だから基盤の材料使わないといけないんだけど」
薫「そこを押し切っての食材の味ってのをだしてて──」
純一「──なぁ、薫。ちょっといいか」
薫「──……もう、なによ純一ぃ。あたしが気持ち良く話してるって言うのに」
純一「ああ、でもその前に話すことがあるだろ」
薫「……ま。そうね、引き延ばすのもこれぐらいにしとくわ」
純一「引き延ばしてたのかよ……なんだよ、早く言えって」
薫「──とりあえず、今回の犯人はわかったわ」
純一「ほ、ほんとうか!?」
薫「うん、まぁ……確かな証拠ってのはなかったけど。
それでもあたしのカンは告げているの……」
純一「か、かんかよ……お前、それ大丈夫なのか?」
薫「大丈夫よ!……たぶん」
純一「…………」
薫「ま、とりあえずは──今日はその人をここに呼んでるの」
純一「………え?」
純一「よんでるって……その、犯人を?」
薫「そそそ。ここに、ファミレスに呼んでみました」
純一「だ、大丈夫なのかそれ!? え、だってお前それだと……」
薫「べっつに気にしなくていいわよ。確かに悪口書かれたことはムカつくけど…」
薫「……それよりも、アンタが大切だから」
純一「か、薫……お前…」
薫「──あれぇ、今さら棚町さんの魅力に気付きはじめちゃった?」
純一「か、からかうなよっ…! ま、まぁ…感謝はしてるけどさ」
薫「そうそう、感謝してよね~。その犯人、意外と誘うのは簡単だったんだけど…」ちらっ
からんからーん…
薫「──多分、その後がすっごく大変だと思うから。純一、頑張りなさいよ?」
純一「え──一体、だれだって言うんだ──」ちらっ…
「こんばんわ。棚町さん、橘君」
純一「えっ……」
薫「こんばんわ。えっとそしたら、あたしの横に座る?」
「ええ、お邪魔しても良いかしら」
純一「なんで……」
薫「──ちょっと、あんた何黙ってんのよ。ちゃんと挨拶しなさい!」
純一「え、だって…お前……この人は…」
「いや、いいのよ棚町さん。だっていきなり私が現れた誰だってびっくりするでしょう?」
絢辻「──ねぇ?橘君?」
きたか・・・
純一「いや、そんなことは……ないよ、絢辻さん」
絢辻「…そう? よかった、でも……橘君ならそう言ってくれると思ってたわ」
純一「そ、そうかな…? あはは……いだっ!?」げしっ
薫「…………」
純一(机の下で足を……ッ! わ、わかってるよ薫、飲み込まれるなって言いたいんだろ…)
絢辻「──それで、今日はどうして私を誘ってくれたの?
委員会の仕事で色々と忙しくて……それで少し、遅れてしまったけれど」
薫「ううん、別に気にしてないわよー。
とりあえず……純一が絢辻さんに言いたいことがあるみたいなのよ~」
純一(そ、そんな直球にこっちにふるのか……!?)
絢辻「──橘君が?えっと、なにかな?」
純一「え、えーとその……あの……」
絢辻「うん?」
純一「ええっとですね……あはは…」
純一(──い、言えるわけがないよ! か、薫の下駄箱に悪口をかいたメモを入れたのかって!)
純一(──でも、僕は……)じっ
絢辻「………?」
純一(薫の勘を信じるわけじゃないけど──僕は、絢辻さんの顔を見た瞬間……)
純一(──やっぱりこの人か、って思ってしまった自分がいる…)
純一(そう思う自分を否定したい気持ちもある……でも、それよりも先に。
僕の頭の中にはあの──もやもやが起こってしまっていた)
純一(──この人は、猫を被っていると。それは事実、もう本人からそうだって
言われてもいる……ただ、それだからって犯人と決め付けるにはおかしい)
純一(でも──僕は、彼女が犯人だと思っている)
純一「──……絢辻さん、さっき僕にいったことばがあるよね」
絢辻「えっ?……えっと、なんだったかしら。ごめんなさい、思い出せないわ」
純一「……橘君ならそう言ってくれると思ってた──そう、絢辻さんは言ったんだ」
絢辻「──……そうね、確かに言ったわ。それがなにかしら?」
純一「でもさ、これっておかしいよね?僕、の勘違いだったらあやまるけど…」
純一「──僕は、一昨日貴方に酷いことを言ったはずだ」
絢辻「…………」
純一「貴方は──貴方はそう、猫を被ってると。その性格良さそうな面持ちも、
人当たりの良さそうな性格も、勉強も運動もできるのも……」
純一「ただ、貴方が周りから良い風に見られるためのかぶりものだと…」
絢辻「…………」
純一「ここまで酷いことを言った覚えはないけど……それでも同じ意味合いな事を言ってしまった。
だから、僕は貴方に聞きたい」
純一「──なんでそう平気そうな顔で僕の前にいれられるのかな?
そう平気そうに、僕を信じてるみたいな言葉をいってれたの?」
純一「僕は──あれから絢辻さんと目を合わせない様、ずっとそらしてた。
だって気まずいからね。でも、絢辻さんはそうじゃない」
純一(──思い出せ……ここまで来てるんだ、思い出すんだ僕……!!
なぜ彼女はこうやって平然としてられるんだ? これは、これは絶対に僕の記憶と関係しているはずだ…!)
純一(そもそもノープランで話を始めるじゃなかった……!
なんかみんな、真剣に僕の話をきいてるけど……なにも考えてないよ僕!)
純一「こうやって、絢辻さんは薫のお誘いだって断らずにきたんだよね?
それに、僕がいることだって知ってたはずだ」
純一(なぜ──絢辻さんはそんなことをしたんだ?
いくらなんでも、そんな自分の地位を貶める行為を簡単に……だって)
純一(いくらなんでも、僕という存在に知られたら……絢辻さんだって困るはずだ)
純一(なのに……なのに、ここは僕に会いに来たかったという線で見るのが正しいはずだ…
だから、なぜ…絢辻さんはここに……)
純一(──もしかして、怖くないのか?)
純一(ここで何かが暴露されても……絢辻さんにとって、なにも怖くない?
でもなんでだ、これは絢辻さんの人生…とまではいかないけど、それでも)
純一(残る学生生活に支障が至るのはあたりまえだ───ッッ……!?)
純一(──な、なんだよ…! またもやもやがきたっ……!!
これは大きい…確実に、紗江ちゃんや七咲と同じぐらいの奴だ……!)
純一(どうしだ…っ?このタイミング、というかいっつもタイミングが分からないから困ってるんだけど…
それでも、なにか──僕はなにか見て………)
絢辻「──さっきから黙ってしまって、どうしたの橘君」
純一「え……」
絢辻「もうっ! ちょっと寝ぼけてるんじゃない?
──私と橘君が不仲になってる…? ふふっ、橘君も面白い冗談を言うわね」
純一「え、でも僕は確かに……!」
絢辻「猫をかぶってるって? ……そうねぇ、でもそれって誰しもやってることじゃないの?
だって貴方も、高橋先生と会話してる時はねこをかぶってるでしょう?」
絢辻「誰だってやってること……そこまで重く受け止めてる橘君って…意外とピュアなのね。
誰しも日常生活でやってることを、橘君に言われても……まぁ、あのときはちょっとびっくりしたけどね」
純一「なにを、いって──……」
絢辻「ねぇ、橘君。わたしがなんで今日ここに来たかっていうとね…それはあやまりたかったの」
純一「え……?」
絢辻「……だって、一昨日のことがあるって君も言ってくれたじゃない。
あの時のこと、私もすこし気になってたんだから」
絢辻さんは裏表のない怖い人です!
純一「気になって…?」
絢辻「ええ、だって──とても橘君、困ってた顔してたんだもの。
これは委員長の私として、ほっとけるわけないわ」
純一「でも、あの時は──」
絢辻「それに、貴方が前に錯乱したときだって、私はちゃんと保健室に連れて行ってあげたわ。
覚えてる?そんな風に私は周りをちゃんと見てるつもり。だから」
絢辻「今の貴方の慌てようも、ちょっとした勘違いなのよ」
純一「勘違いなわけ──」
絢辻「私は委員長。周りのことをよく見てる──って言ったわよね?
だから橘君の…その、素行の悪さもいろいろとしってるわ……」
絢辻「……でも、私は貴方がどんなに凄いことを言っても、なにかしら困ったこと言っても
ちゃーんと聞いてあげる。意味が分からないって無視もしないし、相談にも乗ってあげるわ」
絢辻「──だから、橘くん。なにか悩みがあるなら私が聞くわよ?」
純一「な、悩みなんて──」
純一(な、なんだこれ……いつのまにか、僕がおかしくなったような感じにされてる…!?
どうして、どこでそんなことに…!?)
純一(だ、だめだ……なにもかも話のつながり断たれてしまった…
そもそも何も考えずに話しだした僕も悪いんだけど…)
純一(──だめだ、ここで諦めちゃ…ちゃんと理解するんだ。
絢辻さんはなにを知っている?──それは、僕にしか知らない事実を知っていた。
絢辻さんはなにを考えている?──それは、僕に猫を被ってることを黙ってほしい。
絢辻さんはなにを思っている?──それは、それは………)
純一(──ここだ、ここがわからない…だって、絢辻さんは…僕の知っているまでの絢辻さんと、
何かが根本的に違っているような気がするんだ……)
純一(ここはもう──素直に、絢辻さんに悪口をかいたメモのことを言った方がいいのか…?
でも──それも、さっきみたいにのらりくらりと返されそうな気がする……)
純一(元々、絢辻さんが犯人だって決めたことも薫の勘だし……これじゃ勝ち目がないじゃないか!)
純一「っ……!」
純一(──これはもう、『思い出す記憶』に頼るしかない。このもやもやをどうにかするしか……!)
純一(なにか、原因となるものは……頑張れ、僕…!
このもやもやをどうにかする…!近くにあるはずなんだ、この原因が!)
純一「………?」じっ
絢辻「………?」
純一(顔──? いや、違う。そうじゃない…顔ならいつも見てた。
だからってもやもやが起こったことは……ちょっとだけだった)
純一(じゃあ、何にこれは反応して───)
純一「…………絢辻さん、少し。聞いても良いかな?」
絢辻「あら、相談かしら? いいわよ、それをききに此処に来たようなものだから」
純一「ありがとう。絢辻さん……そしたらさ、明日の日程教えてくれない?」
絢辻「っ……え?明日の日程かしら?」
純一「うん、お願いするよ」
∧
/ ̄ ̄ ̄\
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/\@ ̄/\  ̄ @ | / ̄\
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絢辻さんは裏表のない素敵な人です。
絢辻「そうね──……ちょっと待ってて。えっと…」ごぞごぞ
純一「……………」
絢辻「あったあった。これね、この生徒手帳に──きゃっ」がたん!
薫「───じゅ、純一…っ!? あんたなにやって…!」
純一「──あった、薫」
薫「え、なによ…?」
純一「これだよ、この絢辻さんが持ってる生徒手帳……これ、お前が開いてみてくれ」
薫「あ、うん……それじゃ」すっ…
絢辻「…………手が痛い、橘君」
純一「ごめん……でも、離せないよ」
薫「……あ、ホワイトページが破られてる…それも、これって…」
[][]
[ ̄ ̄ ̄/ 「| [][] 人人人
 ̄/ 〈 | ニニコ 人人人 ノ ヽ
/ ∧ヽ | | ノ ヽ < き じ >
/_/ Ll Lニニニコ ツ < イ チ >< ゅ ゃ >
rrr 、 ,. -──- 、 < ナ ェ >< イ イ >
rヽヽミヽ∩ /.:∠二二ヽ:.\ < ゴ ン >< l l >
\ ノ、 /.:.::/:/ V.:ハ∧.:.ヽ.:ヽ < ォ ジ >< ン ン >
\_ ,r' 、 {.:.:/V∩ ∩ レレ'.: | } < ォ >< ! ! >
く.:.:.:.\ Ⅵ ∪ ∪ i.:.:l.:.| < ォ >< >
\.:.:.:.\ i⊂⊃「 ̄|⊂つ l.:.| <!! >< >
\.:.:.:. \ヘ、 ヽ_ノ . イ.:.l.:.ト、 < > `Y^Y^Y´
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\.:.V./ヽ.:lィ芥 V.:.://.:.:.:)
〈/.:.:.:.\ /.:.://.:i.:.:.:.\ ヒ ュ ッ
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アマガミ公式だけじゃなく、アンソロのAAの増えないかな
絢辻「…………」
純一「……そうだよ、薫。そのページは多分…薫の悪口を書かれていたページだと思う」
薫「……といことは、これは…」
純一「僕が知っている絢辻さんは、学校の配布である生徒手帳を…そうそう破くなんてしないと思う。
だってそれだけでも、評判は下がる所は下がるしね」
純一「……でも、こうやって破かれた跡がある。そして薫、あのメモと合わせて見て」
薫「あ、うんっ──……切れ目、ぴったりだわ」
絢辻「…………」
純一「うん、これで犯人はわかった。絢辻さん──……貴方が悪口をかいた、犯人だ」
絢辻「…………どうして、いきなりメモが思いついたの?」
純一「それは──その……」ちらっ
薫「?」
純一「──男の、勘ってやつだよ」
/:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. : : \: ヘ\',\: : : : : :ハ_,、` }: : f
/:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. : : :\ヘ ` `ヽ: : : :リハ//: : ;'
/:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :.i:. :. :. :. :. :. :. :. : : : ヽ' ',: : / / ,': : : !
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,':. :. :. :. :. :. :. :. :. :i:. :. :.i| :. :. :. :. !:. :. :. :. :. :. :. :. :|!: : : : ハ |/ r' 'ル: :|
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,' :. :. :. :. :. :. :. :. :. :ハルレ! !ルユ_リル下 :. :. :i|:. :. :. :. : |:. : :i: : : , ,' ∨
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三ニヽ | ,イ_ノ`ー' i三三三三三三三三三三三三>'////∧ } O | / i/////
三三 >ーく` /` <三三三三三三三> ´クー-r-= _///∧ { 」 - ‐´ |/////
三三 | ヽ /-、 ,. -――`===´― ////  ̄ ̄ ̄`=<r‐' { !/////
三三 | / //// ヽ ヽ i/////
三三 i _/ /////f ', { / !/////
三三 | /´ ///////.| i ', '/ |/////
純一(本当は──頭のもやもやが酷く反応する物をみていたら、
ちらっとカバンから手帳らしきものが見えて……)
純一(頭のもやもやが大きくなったから──とりあえず突っ込んでみたんだけど…
よかったぁー!合ってて!外れてたらもう、僕はどうなってたやら…!)
薫「それで……あんたは聞かなくていいの?」
純一「……え?なにを?」
薫「記憶よ、記憶──いったでしょ。今朝に、あんたしか知らなかったことを。
この犯人──絢辻さんが知っていた事実があるじゃないの」
絢辻「……………」
純一「あ、そうだった……絢辻さん、僕は貴方に言うことがあるんだ」
絢辻「……………」
純一「あ、絢辻さん……? ど、どうしたの急に黙って──」
絢辻「───ククク…アハハッ…!」
薫「絢辻、さん……?」
絢辻「──あっはははははは!!これじゃあ何のためにこの〝世界〟で頑張ったのかしら!!
ホント滑稽ね私ってっ!」
純一「絢辻さん……!?」
絢辻さんが子ども産むエンドが一番好きです
あと薫のBADも好き
純一「なにをいって……世界…?」
絢辻「あはははは──ええ、そうよ橘くん……いや、それとも別の言い方がいいかしら?」
絢辻「橘? ジュン? 純一君? それとも呼び捨てで純一?
──ああ、これもあったわね……あ・な・た?」
純一「なに、をいってるんだよ…絢辻さん…?」
絢辻「なにをいってるですって?──馬鹿言わないでちょうだい…あなたが全部全部全部…
私の全てを何回も壊して言ったくせに……」
純一「壊すって……僕はなにも……」
絢辻「ええ、知らないでしょうね! 今のあなたはのんきに今を生きるだけ!
なーんにも知らないくて、なーんでも知ってる橘君……ほんっと幸せ者ねっ!」
絢辻「その幸せが──多大な不幸で成り立ってることも知らないで、そうやって笑っていられるんだから
無知は本当に良さそうでいいわぁ……うんうん」
薫「……絢辻さん、ちょっといいかしら」
絢辻「──あら? なにかしら棚町さん…はやく家に帰らなくてもいいのかしら?
今日もまた知らない男性とお母様は、色々としてるんじゃなくて?」
薫「ッ……!!」
/: /: : : イ: : : : : i|: : : : :ハ : ハ: : : :ヽ
/: /: : : : i|: : : :i: :||: : : : : :',: : :', : : : ハ
. ,': /: : : : ,イ: : i: :|:Ⅳ: : i: : : : ',: : :i: :ト: : :ハ
i: ,': : :i : : : : : |: :|: : : : :|!: : : |i : : |: :|: : : : ',
|:,: : : :|: : i|: : i|: :|i: : : :i: ハ: : :| !: : |i: |!: : : : i
!: : : :,イ: :i|!: : i|:_:ハ: : : |: !|: : 斗十ト!: ト: : : :|
. |: :i: : i|: :从f:´ハ: 「下: :|!:!Ⅵリ ィヒ-、!"' リ、: : !
|: :|: : : : :i ハr'ぅ下、 ' ゛' " ' ,イぅ:ハ ヽ ハ : ',
i: ,' : f`ヽ:', ヘ ヒ::::::ハ 弋り ' ハ∧: :',
. j:,: : :ハ rヽ' `ー' j-': : : : ,
f´`ヽ: ゝ、ハ i ハ: : : : : :',
j ヽ _,∨. `ー'、 ´ /.`i: : : : : : ,
,.-‐-} >、ヽ-ハ´`ヽ. \ ー - ´ / . . L: : : : : :,
_,r―' ,'/_ /`二´-'´ヽ',. . .`. .、 /. ._,. -才'ー=r-'.,_
、 ! Y `´ ハ. . . . . .` ー ´., ≦ / / ̄`ゝへ
ハ ,i ゝ、 _,.==fノー--- __,./ j-―'/ ̄ ̄7ー-、/_`∧
ヽ ヽ,、_ノ`ーr' _`_,.ノ_ ノ / / _ / f /\i
ヽ<`ー _ >'. . . . . . . ` ー―-/_,./ -‐/ ´ r=、ー=┴ニ ̄ \{,
ハ{,\`´ i  ̄ハヽ.`>、. . . . . . . . . { f i ゝ、 ` ー- 、 ` 、 \
\ゝ`二ニ彡' ∧ ', |i ` ー―---!_!___{___! -≧ _、 ,._ `ー- ` ヽ
つまり我妻ユノ状態か
ヤンデレかわいい絢辻さんか……いけるッ!
薫「あ、あんた奴は……!!」がた!!
純一「ちょ、やめろって薫!!」
絢辻「──フン、なによそれぐらいのことで。馬鹿みたいにうろたえて…本当に馬鹿みたい。
たったそれだけのことで傷つくの? はっ、本当に貴方って弱い人間ね」
薫「──純一ぃ……やばいわよ……本気で止めなさい。あたしのこと……!!」
純一「もう止めてるよ!! どっからそんな力だしてんだよ!!」
絢辻「いいわね、そうやって仲良しそうにワイワイ騒げて……羨ましい限りだわ。
でもね、そうもしてられるのどうぜ……あと少しだけよ」
純一「なにをいってるんだよ絢辻さん…!!僕にはまったく理解できないよ…!?」
絢辻「へぇ~…やっぱりそうなんだ。こうやって直接、貴方と〝このこと〟を
会話したことは──記録に残ってなかったけど…いいわよ。教えてあげるわ」
絢辻「ねぇ、橘くん……私とのキス──覚えてる?」
純一「え……?キス…?」
絢辻「ええ、そうよ。そしたら次は神社の前で手帳を燃やしたことは?
あれは感動的だったわねぇ~…だって猫をかぶるのをやめた話よ?」
純一「なにをいってるの……?絢辻さん…?」
>>421訂正
薫「あ、あんた何をッ……!!」がた!!
:::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::;イ:::::::::::: ハ::l;:::::::::::::',ヽ:::::::::l-ヘ::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::/ l:::::::::::::l !:l ';::::::::::::∨';:::::::l __ ヽ:::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::{::::::::::::;イ:/ j::::::::::::::l l:l ヽ:: :: :',二';::::l==ミ;::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::///、 !:: :::: .::八 ll ∧: .:. ::l,-rミ:::! ';::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::;:::::::::::i::::::::///ニ;ミl:: .:: .::/, 、iヽ二ヘ::.::::::lヒ_ノ!:! ,,, ';::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::;:::::::::l;::::::l l/,,,,,_`i:::::::::// `゙ _';::::::::!―‐リ" ̄ }:::l、:::::::::::
:::::::::::::::::::::;:::::::ハ:::::{ (ノ:::)l:::::::/ ';::::::! l:/ }:::::::::::
::::::::ヽ:::::::::}:::::/ ';:::l ,.ゞ'"7::::/ ' }::::l ノ /:::::::::::
::::::::::::ヽ::::::;::/ ヘl"´ /:::/ i! |:l /:::::::::::::: あんたって人はー!」
::::::::::::::::ヽ//\ /::/ __ l::l /:::::::::::::::::
:i::::::::::::::::〃::::::::\ j:/ ,. -‐'''''''二ユl/ /::::::::::::::::::
ハ:::::::::::::/:::ヽ:::::::::::\ /′ ,/_,.-'''"´ ヽ /:::/::::::::::::
';::::::::::::::::::::::`、ー 、:゙ヽ、 j` _, --、 ヽ /イ}:::::::::::::::::
}::::::::::::::::::::::::::\ ``''''- { / ̄ `'''r、! ,イ~:::::::::::::::::/
/イ::;l::::::::::::::::::::::l丶 { _/ } l /|:::::l:::::::::/
/:ハ::::::::::::::::::::lーヽ、 丶ヽ j j , ' |; イ:::/
/´ ス:;l::;l::::::::::八:::::::i::ヽ、 ヽヽ _ ノ_ノ , ' l' j/
. / / l/ ';::::::/ l:;i:::/lハ ヽ、 ` 二二二 - '´ / ',
,.-'´ l:::/ '´j/ ', 丶、 -‐''" ̄ / ',
これは橘さんは責任持って絢辻さんを孕ませるべき
絢辻「そしたら次は手帳をばれたときは?
──あの時はごめんなさい、首といたかったでしょう?でもね」
絢辻「私はもっともっともっともっと痛かったのよ?
そのあとに待ち受ける未来、終わり、全てが貴方のせいで潰れたのよ?」
絢辻「──貴方はそれを、知ってるの?わかってるの?でも笑っていられるの?
知らないからって、貴方は前を見てられるの?」
絢辻「私は……私は、貴方のせいで全てが見えないのに……それなのに」
絢辻「貴方だけが──幸せになるのはゆるせない」
純一「っ………」
絢辻「──これ、見覚えはあるかしら?」すっ…
純一「え、それは……──ッ─ッッ──!!」
純一(もやもやが……きた!?
なんで、これはさっきの生徒手帳に反応したんじゃ…!?)
純一(でも、今はこの──黒い、手帳を見たら……反応してる…!?)
薫VS絢辻さんの水面下の戦いはすごくよかった
ってかこれと涙イベント以外にももっと修羅場イベントがほしかった
放っておくとこの時間は簡単に落ちるよなー
純一(でも──そうだよ、確かに僕は絢辻さんが出した生徒手帳には、もやもやを
感じては無かった……カバンの中の時、僕はこっちの手帳に反応してたのか…?)
絢辻「何やら少し、見覚えがあるようね橘君。
そうじゃなきゃ困るわ……だって、私だけが知っている真実なんていやだもの」
絢辻「だって──もう、逃げられないんだもの。だから橘君……」すっ
純一「え……?」
絢辻「──一緒に、不幸になりましょう?」
絢辻「──不幸になれば、また終わるわ。エンドを迎えれば、また終わる。
貴方が不幸になり続ける限り、貴方はどんどん繰り返す」ぱらぱら…
絢辻「そうやってそうやってそうやって続けて行く限り……私の不幸もどんどん溜まる」
絢辻「──いいでしょう?これって、いつまでも橘君と一緒よ、私は」
純一「なん、なの…その手帳は…?」
_
,...ィチ"三三ミチ三ニぇ.、
,ィチ三三三三三三三三ニミt、
/三三三三三三三三三三三ミぇ、
,.'、 ヾ三三三三三三三三三三三ミ:ム
/三ヽ.._  ̄¨¨¨'''ー-=ニ三三三三三三ハ
/三三三三三三三ミ/三;':三l!三ミt、ヾ三三三!
. /三三三三三チ'l三_/l三/l三l!三ミ|三it、`''ー--'|
/ニ三三ア/Vミア゙ !ミ/_ノ`ヽlニ:l!|ミlミliニ:l|三lニ:izzl!
,.'-三三ア./、} l/ ィ三三t〈 ノミ//ニ/'"7lヽl!ミ/三l!
., 'ニ三三ハ' 、〈 ゙' 三チ' i ´",三Yルミ/ニア
, 'ニ三三三i三ヽ._ `¨ 三/ /゙/ミルア
, ',イ三三三ミiニア´ l 、 { ¨ /ミ/
,.',イ三三三チ/;;;;;l 、 ヽ、 、 ‐' ,..'ミ;'l
,'ィ三ソ三三ア;;;;;;;;;;,. ヽ. \ `ニ―' ,..ィチミ|ニl.!
.,ィチ'"¨゙ヽ、ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,. ヽ. \_ ,.. -チ三三/lミ|lノ
,イ";;;;;;;;;;`ヽ,;ヽ. ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;l \/ l゙ー-<三彡' ,'ミ/
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;ム ゙;;;;;;;;;;;;;;;i .,ィチliミヽ |;;;;;;l l;'::::l!  ̄
AAをレイプ目にしてみた
絢辻「ん? そうねぇ……大分前の私は貴方に──悪口の書かれた手帳、
って言ってた記録があるわね」
純一「記録……?」
絢辻「その時の私は嬉しくても、ちょっと怖がってたみたいよ。
真実をばらされたら、誰だって怖いものね。だから記録に残ってるの」
純一「絢辻さん、その手帳は一体何なんだ…!?」
絢辻「──不幸手帳。私はそう呼んでる、貴方が繰り返してきたほとんどすべての終わり…
それについて、私が関わったことの事実が詳細に書かれてるの」
純一「わけがわからないよ…?僕がくり返してきた終わり…?」
絢辻「ええ、わからないでしょうね。でも、私には分かってる。
貴方が行ってきた全ての行い、私にはわかってる」
絢辻「この手帳に書かれてることは全て事実──変わることのない、貴方が行っていた物」
絢辻「わたしは、それをゆるさない」
これが私の未来日記、名づけて「腹黒日記」よ!
絢辻「だから──さぁ、よんで橘君……」すい…
純一「え……これ、を僕が…?」
絢辻「ええ、そうよ。読んでくれるだけでいいの。
そしたらおしまい。すべてがね」
純一「…………」すっ…
薫「………純一…?」
純一「──すべてが、終わる…?」
絢辻「そうよ。安心して、貴方は別に変わることは無いわ……ただ、
私と同じ時間を繰り返すだけ。そうやって何も変わらないだけ」
純一「──変わらない…?」
絢辻「そう、そうよ橘くん……貴方の活躍は、この世界での活躍は私も見てたわ。
頑張ったわね、きつかったでしょう?」
絢辻「──でも、その結果…貴方は自分が望んだ世界を見つけたかしら?
自分が頑張ってやった世界…それはちゃんと望んでいた世界だったかしら?」
純一「僕は……僕は…」
絢辻「頑張ったけれど、貴方は──ちゃんと後悔なくできたかしら?
この世界を守って、後悔なく今に居る?」
りほこ、スト子とは何だったのか
せっかくなんで黒沢さんと先生とひびきちゃんも幸せにして欲しかった
純一(僕は──この記憶のない所から始まって……今、至る。
それまでの間…色んな事があった気がする…)
純一(まるっきり変わってしまった世界……自分が知らない世界。
そこに放り投げられた僕は……それでも頑張ると決めた)
純一(色んな人と出会って、みんなと協力し合って。何でもかんでも頑張った)
純一(時にはくじけそうになったり──時には叫んだり──時には慰めたり──)
純一(──時には頑張ったり──時には犬になったり──僕は、走って行ったんだ)
純一(──その結果、周りは幸せになった…と、僕はおもう……僕の思う限りの幸せが、
出来あがったって思う…)
純一(でも……絢辻さんの、言葉が気になるんだ…)
純一(終わらない世界……これが、もし絢辻さんの言う通り…繰り返されることなんだと…
本当に、本当にそうだというんだったら──)
純一(僕はこれからの日常を、耐えきることができるんだろうか……?)
純一(終わらないことが決まっている日常。絢辻さんの変貌……それが、それが…
重く頭に圧し掛かってる…今の生き方は正しいのか?やりなおすべきじゃないのか?)
純一(僕には────)
薫「しっかりしなさい!この馬鹿純一!!」
アクユウ
流石紳士の嫁
純一「──へ……?薫……?」
薫「なーに、わけのわからない嘘っぽい猫かぶりにほだされてんの!」
純一「で、でも……僕は…」
薫「──……はぁっ! アンタって本当に、思わせぶりな態度が上手いわね…!
あたしがあんたが大丈夫だって思ったのが、馬鹿だったわ…っ」
薫「こいつの何の言葉に釣られたかわからないけど…ッ!
あんたは別に、なにも悪くないわよ!」
純一「薫……僕は、悪くないのか……?」
薫「当たり前でしょ! なーにいってんだが……そんなの、あたしが見てきてるじゃない。
全部が全部、そうじゃないけれど──それでも、あたしはあんたを見てたから!」
薫「アンタは悪くない、だから──こいつの言う通りになる必要は、まったくない!」
純一「薫……」
薫「そもそもなに……終わらない現実? 繰り返される不幸?
──ねぇ、絢辻さん…貴方こそ大丈夫なの?」
絢辻「…………」
薫「そんな中学生みたいなことを言って……まだ頭の中成長してないんじゃない?
私のことを心配するより先に、自分のおつむの心配したらどうかと思うわ!」
絢辻「──そうねぇ…確かに。棚町さんがご心配されてることも、わかってるわ」
薫「…なによ、なにがいいたのアンタ」
絢辻「──ねぇ棚町さん。後悔してない?」
薫「なに、アンタ私にも色々といってくるワケ?はんッ、馬鹿ねアタシには──」
絢辻「転校するのよね、棚町さん」
薫「っ……それが、なによ…っ!」
絢辻「だから転校するんですってね──……ただ、私が言いたいのはそれだけ」
薫「──アンタ、それは……っ!」
絢辻「うん? どうしたのかしら……まさか、私が言う前に気付いちゃったのかしら?
あらあらぁ、あんだけ橘君に言ったのに…そういう考えはちゃっかりなのね」
薫「……っ…」
絢辻「そしたら敢えて私から言ってあげるわ。──棚町さん、ここで私の言う通りにして
いただけるなら──その、悩みもどうにかできるわよ?」
絢辻「もっとも、この私の言葉を信じるのだったらねぇ?」
純一「か、薫……どうしたんだ顔色悪いぞ…?」
薫「──純一、あたし……」
純一「なんだよ、お前どうしたんだよ…?」
薫「───……」
純一「薫……?」
絢辻「──そんなに責めないで上げて?橘君、彼女も必死なのよ?」
純一「え…?」
絢辻「彼女は、一番貴方を見てきたって言ってたでしょう?その分、誰よりも不幸を感じてるの。
何もできない状況にただ後悔して、表向きには楽観的に装ってる……なんて健気なんでしょうね」
薫「……………」
絢辻「──棚町さん。貴方は悪くないわ、それはね? この世界が悪いの。
この悪い歯車が回ってるこの世界……それがすべて悪いの」
絢辻「それをわかってしまえば──後は話が早いわ。
あとは背中を押すだけ、ただ、それだけで終わるのよ」
薫「っ…………」
絢辻「彼が──不幸になれば、この世は終わる。
そして新しい世界が生まれて……貴方は救われる」
薫「…………」
絢辻「これが突拍子もないことだって思ってるでしょう?
──でも、貴方は信じせざるおえない。だって縋るしかないんだもの」
絢辻「いいわね? 棚町さん……私は今から、手帳を橘君に見せるわ」
薫「…………」
純一「薫……!! 絢辻さん、僕は……!」
絢辻「ううん、わかってる。わかってるのよ橘君。
貴方は悪くない……だから認めてあげて」
純一「え……?」
絢辻「今までの貴方の頑張りを。この世界での頑張りを認めてあげて。
……それが今から先、どこかで消え去る前に」
純一「……本当に、僕が…不幸を、終わりを迎えたら……」
絢辻「みなまでいわなくていいわ。もうわかってるでしょう?
──今、貴方が終わらせてあげるの、ここで」
絢辻「いつ終わってしまうか分からない現実──今、ここで貴方の意志で
終わらせるの。それがどれだけ幸せのことなのか……わかる?」
絢辻「………」
純一「………僕は……この、世界がすきだよ」
絢辻「ええ、そうね。私も好きだわ」
純一「だから、こうやって…絢辻さんと喋ってるのも…意外と悪く思ってないんだ」
絢辻「ええ、そうね。私も思ってるわ」
純一「だから…だから……僕は、いつか終わってしまうと言うのなら…
──やっぱりそれはいやだ…」
絢辻「ええ、そうね。私も感じてるわ」
純一「──絢辻さん、僕に…その手帳を読ませてほしい」
絢辻「───ええ、わかった。私も読んでほしいわ」
純一「…………」
絢辻「はい、橘君。大切に受け取ってね」すっ
純一「──うん、わかったよ。絢辻さん……」すっ…
しえん
絢辻(──やったわ…やったわ!!この手で!!私はこの手で復讐してやった!!
その手帳を読めば、確実に不幸になる!!それだけの恨みをこもった物を見れば!!あなたは!!)
純一「………」
絢辻(ざまーみなさい!!橘純一!!!あんたは不幸になればいい!!)
絢辻(せっかく作り上げた今を、すべて投げ捨てて!私の思うつぼになったらいいのよ!!)
絢辻「──……どうしたの?橘君、はやく受け取ってよ」
純一「──うん、そうだね。じゃ受け取るよ」
絢辻(なにぐずぐずしてんのよ……はやく、はやく、はやく!!)
純一「最後にいいかな、絢辻さん」
絢辻「え、どうかしたかしら?橘君…」
絢辻(なにやってんだよ橘純一!!のろま!!)
純一「うん、絢辻さんにとっては……どうでもいいかもしれないけどね」
絢辻「……どういう意味かな?」
純一「僕は、君の不幸の理由を知りたいんだ」
純一「──だから、僕はこの手帳をうけとるんだよ──ッッ─ッ!!!!」びくん
出た!
橘さんの固有結界「108匹ワンちゃん」だ!
純一(─────あfじゃsjふぁjsdfじょsjどじゃsjぁsvlwjだlfj
ふぁじょsjdふぉあdじょふぃじゃそdjふぉあsjどjふぁおjsどいじゃ
fじゃおfじゃおいsjdふぉいあjsどいjふぁそjdふぉじゃそdじjfじ)
純一「──ッ─ッッ───………」
純一(……これが、絢辻さんの過去…)
ザザザザザァアアアアア…
『■■■■…っ!』
『■■■■っ!!』
純一(なにもかもを思い出す───)
ピガァアアガガガ…
『■■す■よ──』
『ああ■■もだよ──』
純一(こうやって、絢辻さんと僕は──)
ジガガガジッザァアアア…
『契約よ、橘君…』
『う、うんわかったよ…』
純一「──………うん、わかったよ。絢辻さん」
絢辻「……何を言ってるの?まだ、開いてもいないじゃない」
純一「いや──これで十分なんだ。
絢辻さん……僕は君に言いたいことがあるんだけど、いいかな?」
絢辻「……なにかしら?」
純一「えっとその……──どうしたらそんな風に皮をかぶれるの?」
絢辻「……いきなりすぎて、話が分からないのだけど。
橘君、こんな無駄な会話するよりも先に──」
純一「聞きたいんだ。お願い、聞かせてよ」
絢辻「……橘君、私はこれでも優しい方よ。
大切な手帳を貴方に貸してる時点で、私にとっては苦痛になってるの」
純一「あ、そうなんだ。絢辻さん、今は苦痛なの?」
絢辻「──……いえ、言い方が悪かったわね。そうじゃなくて私は…」
純一「苦痛じゃなくて?」
絢辻「……橘君、私をおちょくってるの?」
純一「おちょくってなんかないよ!
ただ、今のは、絢辻さんの本音じゃないかなぁっ……って思ったんだ」
絢辻「──いやぁねぇ、橘君。手帳を貸すぐらいどう手ことないわよ?
ちょっとしたじょーだん。だからほら、早く読んじゃって」
純一「あ、そうなの?でもさー…この手帳って、なんだか古くかんじるよねぇ」
絢辻「っ……そうかしら、でも。私は気にいってるからいいのよ」
純一「あ、気に言ってたんだ? ごめんね絢辻さん……僕、そんなことも
気付けなくて……」
絢辻「…いいわよ、別に。それよりも早く……よんじゃってよ」
純一「あ、でもまって! この手帳ってよく見ると……あそこのスーパーで買える奴じゃない!?
高そうなものだって思ってたら、意外と安いのコレ?」
絢辻「ッ……橘君、いいかげんにしないと──」
純一「──怒ってくれるの?絢辻さん」
絢辻「っ……何を急にいいだすのよ…っ!
怒るわけないじゃないの、ほら、私って委員長だし──」
純一「それがどうしたの?」
絢辻「え……?」
純一「絢辻さんが委員長でどうしたの? ──絢辻さんが怒っちゃなにが悪いの?
どっちにしったって、僕にはどうにだって思わないよ」
絢辻「なにをいって、るのかしら……橘君?」
純一「絢辻さんこそ。いつまで隠しての?
僕に言わないで、なにを一人でいつまでも隠してるのかわからないけど…」
純一「もう、大丈夫。全て知ってるから、隠さなくても良いよ」
絢辻「──……。貴方、なにをいってるの?
言ってることがすべて理解不能なんだけど」
純一「──僕は、君を振った。君は一人クリスマスツリーで待つ」
絢辻「ッ……!?そ、それは……!」
ちょい休憩
めまいする
oh……
ほ
おいおい大丈夫かほしゅ
純一「別の子に告白をする──君は何も言わずに去っていく」
絢辻「──なん、で…読んでもないのに……知ってるの…?」
純一「──やっぱり、絢辻さんは知らないんだ……僕はなぜこうなのか」
絢辻「え……?」
純一「……ふぅ、ずっとおかしいと思ってたんだ。
思い返す記憶は全部、みんなと合致しないんだもの──」
純一「──よし、じゃあ言ってあげようかな。絢辻さん、僕は君を知らないんだ」
純一「どうして絢辻ここまでそうなのか、どうして僕をここまで思ってくれてるのか…
僕は記憶にはないんだよ」
絢辻「なにを、いってるの…?そんなの、世界が終われば記憶だって──」
純一「そうだね。そういう感じなんだろうね──この世界って」
絢辻「橘君…?あなた、なにをいって……?」
純一「でも、知らないってのはそういうことじゃないんだ」
純一「僕は実は……少し、記憶がなくなってるんだよ。十二月の中旬から、今の今まで」
純一「そしてそれは──色々な条件で、こうやって思い返すことがある。
今回は……たぶん、絢辻さんの手帳だったんだろうね」
りほこは・・・?僕のりほこは?
>>496
梨穂子なら俺の横でポロツキー食べながら雑誌読んでるよ
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE ~輝く季節へ~ 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD ~支配者の為の狂死曲~
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
10. Dies irae
SS予定は無いのでしょうか?
>>500
たまに見かけるけどこれはなんなんだ
絢辻「………?」
純一「……だろうね。こんなことを絢辻さんに言っても伝わらないんだろう、だってこれは別のことだ。
だから今は、絢辻さんのことを言いたいと思う」
絢辻「わたし、のこと……?」
純一「そうだよ。偉くしおらしくなってしまったけど……絢辻さん」
純一「僕は〝絢辻 詞〟と会話がしたいんだけど。いいかな?」
絢辻「……………」
純一「……ダメかな?」
絢辻「──わたしはわたしよ、誰でもないし、それに…」
純一「ああ、だめだよ絢辻さん……ぜんぜんなってない」
絢辻「どういうこと……っ?」
純一「たぶんだけど、この世界の僕は──ちゃんとクリアできてないんだ。
絢辻さんと会話をしていない……ちゃんとした絢辻さんと会話をしていない」
華麗にしえん
純一「だから──思いだされる記憶と、今の絢辻さんとに違いが出てるんだ」
絢辻「わけ、がわからないわよ……本当に、なにをいってるの…?」
純一「──記憶がなかった僕が、どんなふうに君と接してたのかは…
今の僕にはわからない。でも……とりあえず、言ってみようかな」
純一「可愛いね絢辻さん、どうしてそんなにも可愛いの?」
絢辻「えっ……なに、急に橘君……!?」
純一「え? 突然じゃないよ?
今までの僕は…ずっと絢辻さんのこと、可愛い人だって思ってた」
絢辻「なっ、なにをいって……!」
純一「それにクラスで人気者だし、頑張りやだし、みんながやりたくない仕事もやって、
努力家で、負けず嫌いで……ちょっとひねくれてるけど、そこがまた可愛い」
絢辻「う、うう……じょ、冗談いうのやめないさよ…っ」かぁー
純一「これ、本気で僕が思ってることだよ? 全部ウソじゃないさ、本気の本気」
し
今のところ
救済済み、七咲、中多、ラブリー
まだ、りほこ、薫、スト子
救済中、絢辻さん
だな
絢辻「で、でもなんで急にそんなことをいうのよっ…!?」
純一「それはこっちのセリフだよ、絢辻さん。
もう一度言うけど、いきなりえらくしおらしくなったね絢辻さん」
純一「さっきまでの悪役溢れる気高い絢辻さんは…どこにいったの?
なんていうかその……絢辻さんって、けっこう脆いよね?」
絢辻「そ、そんなことないわよ! あ、わたしは……わたしは弱くない!!」
純一「──そうだね、絢辻さんは弱くないよ。強くてカッコイー人だ。
でも、それでも絢辻さんも人間だよ?」
純一「絢辻さんは凄いけど、それでも可愛い一人の女の子だ。
さっきみたいに、みんなを陥れたりするけど……やっぱり可愛い絢辻さんだ」
絢辻「あんまり……か、可愛いとか言わないで……よ…っ!」
純一「あはは。照れてる絢辻さんも可愛いね。
──だからさ、この手帳はいらないんだよ」
絢辻「え………」
純一「──君は確かに僕はから受けた不幸を……知っていると思う。
絢辻さんは頭がいいから、溜まって行くメモ欄がどういったものなのか直ぐに気付いた」
純一「これが繰り返される世界で受けた──不幸の叫びなんだって。
自分自身が繰り返し続けた、その叫びなんだって」
純一「絢辻さんは──それを読んでどう思ったのかはわからないよ。
でもこうやって、僕の不幸を望んでいるっていうのなら……凄く傷ついたんだと思う」
純一「だって絢辻さんって、猫かぶってるから……周りのことに影響されやすいもんね」
絢辻「ちょ、ちょっと!なにを急に…!」
純一「だって、周りを気にするから猫を被ってるんじゃないの?
──だから、絢辻さんはメモ欄に溜まって行く不幸の叫びを気にし始めた」
純一「これが…本当に我が身に起こってることなのかって。自分が知らない自分が、
誰かによって不幸にされている……それが他人を信じない様生きてきた絢辻さんにとって」
純一「完璧に生きようとする自分を否定されてるようで……嫌だったんじゃないのかな」
絢辻「っ………」
純一「……って僕は思うんだ、うん」
純一「──なんだか急に上から目線で絢辻さんに行っちゃったけど…
結局はそう、僕がいいたのはさ……」
純一「……絢辻さん。これから僕と、友達になろうよ」
絢辻「──え……?」
純一「友達だよ、絢辻さん。僕と友達になろう
──僕は、べつにこの手帳の僕じゃないんだからさ」
純一「手帳の中に書かれた僕じゃなく、
……今、絢辻さんの目の前にいる僕が橘純一だよ」
絢辻「…………」
純一「なにも怖がることは無い──僕はなにも裏切ることは無い。
裏切った僕の過去? そんなの知ったこっちゃないよ」
絢辻「橘君……」
純一「今は今なんだよ、絢辻さん。どうか僕の声を聞いてくれ。
過去か未来かわからない……手帳の言葉を信じるよりも」
純一「──僕は、今の可愛い絢辻さんに声を聞いてほしいと思ってる!」
店員「」ヒソヒソ
純一「聞こえてるんだよね? 僕の声が、目の前に居る僕の声が!
そんなぼろい手帳より、生の僕が言ってあげるんだ!」
純一「僕は──必ず不幸にはしない!絢辻さん、僕の声聞こえる?」
絢辻「…………」イラ
純一「聞こえてるよね? だから、もっと僕の声を聞いてよ!
絢辻さん、可愛いよ。ねこかぶってても、ちょっとドジっ子な所とかすっごくかわいい!」
絢辻「…………」
純一「例えばそうだなぁ…こうやって手帳のことでショック受けてるのも…可愛いよ?
なんというか、本当に受けたことのないのに…そこまでショックだったなんて…
その時の絢辻さんを、後ろからそっと抱きしめてあげたいよ!うん!」
絢辻「…──さい」
純一「それにそれに!思いだしたことなんだけど…絢辻さんて髪がいい匂いだったよね!
いいなぁ、もっかいさわりたいなぁ…あ、そうだ!友達になったきっかけに匂い
かがせてくれないかな!もっかい嗅ぎたいんだよ!」
絢辻「──…るさい」
純一「え? なになに?どうしたの? あ、もしかしてもうかがせてくれるとか?
ほんとに?わぁーありがと僕ってば本当に幸せものだなぁ──」
必要とあらば犬になったり四足走行したり制服のままプールに飛び込んだりラジバンダリ
絢辻「──ぅるさいっていてるのっ!!」ばちーん!
純一「絢辻さん絢辻さ──わふぅん!」ばたん…!
絢辻「──はぁ……はぁ…ほんっと、わんわん吠える……駄犬なこと…っ!」
純一「…あ、絢辻さん……?」
絢辻「──お座り」
純一「え……?」
絢辻「お座りっていってるの。あ・た・し」すっ…
純一「は、はいい!」ばばっ
絢辻「──あら、なにを人の言葉を発してるのかしらー……貴方は犬でしょ?」
純一「わ、わんっ……!」
絢辻「声が小さい」
純一「わ、わぉーん!!」
絢辻「三回まわりなさい。そしてまた叫ぶの!」
橘さんマジブレねぇ
純一「へっ…へっ…へっ…!」くるくるくる
純一「わぉーん!!」
絢辻「よろしい。伏せで待機しておきなさい」
純一「わふぅーん……」すっ…
絢辻「──はぁ……うん。よし、あたしはあたし」
絢辻「あたしであって、私でもある。これは完璧!」
絢辻「棚町さん──ごめんなさい、お見苦しい所を見せたわ」
薫「──……そうね、なんというか、
知り合いの残念な所を見せつけられたというかそんな感じね」
絢辻「まぁ、それもでしょうけど。これは私からの謝罪です。
──ごめんなさい、私は貴方に酷いことをいってしまったわ」す…
薫「………」
絢辻「私は──その、上手く説明できないけれど……」
絢辻「私は、さっきまでの私とは違う……なんて曖昧なことしか言えないわ。
ただはっきりと言えるのは、こうやって貴方に素直に謝れることだけよ…」
薫「……ごめん、ちょっといいかしら?」
絢辻「……なにかしら?」
薫「それ、絢辻さん──本気で言ってないでしょ?」
絢辻「………流石は、橘くんのお友達なのかしら。意外とバレるものね」
薫「そりゃそうよ。あんだけアンタの騒ぎようを見ておいて、
そう簡単にすみませんでしたって言われても、信用なんかできないわ」
絢辻「……元から、許してもらおうなんて思ってはいないの。
言ったことはどこまでも酷い言葉なのはわかってる…だから」
絢辻「言葉一つで許してもらおうなんて、さらさらない」
薫「……」
絢辻「──だから、なんでもいって。
私が出来る全てを使って、私は貴方に贖罪をするわ」
絢辻「誰かを陥れたい……全力で期待にこたえるわ。
学力をあげたい……完全に秀才にしてみるわ。
恋をしてみたい……十全を持ちして叶えるわ」
絢辻「貴方は──貴方には、それだけのことを私はやってしまったのだから。
貴方の無理難題にもすべて、答える。期限も貴方の好きに決めていい」
薫「……はぁ。堅苦しいわね絢辻さん…」
絢辻「え……?」
薫「──あれだけクラスで人気者のクセして…一回でも裏がばれたら、
そんなにも不器用にもなるものなのっ?」
薫「化けの皮が剥がれたってこういうことねー。
ま、あたしはどうだっていいんだけどさ……」
薫「──とりあえず、そうねぇ。じゃあかなえてもらいましょうか一つ」
絢辻「……なにかしら、私が出来ることであれば」
薫「そうね……とりあえず、全身全霊をもって──この犬に謝りなさい」
犬「わふぅ?」
絢辻「──それだけで、いいのかしら…?」
薫「ええ、いいわよ。それでチャラにしてあげる。
それと期限とやらも今日まででいい……今すぐかなえてくれたらだけどね」
絢辻「──わかった。それでいいのね?もう後悔はないのね?」
薫「……ないわよ。それは、自分でどうにかするもんでしょ?」
絢辻「──……そう、ね。そうよね……」すっ…
犬「わふっ! わん!」
絢辻「………」なでなで…
絢辻「──橘君、わたしはね…ずっと君のことをみてたわ」
犬「………」
絢辻「貴方が頑張ってた所を、ずっと見てたわ。何に対しても、全力で
向かっていく……そんな貴方を見てた」
絢辻「でもね、それに対して──私は恨みを持つしかなかった。
私が知ってる橘君は……非道で、トラウマを植え付けるそんな奴…」
絢辻「そんな、そんな、貴方しか知らなかった……だから、そうやって
頑張るあなたを……私は知らないのに──この現実では、貴方しかないの」
絢辻「頑張り続ける橘君──これしか、私の前には映らなかった。
そんな頑張る貴方を恨み続ける私が……どうしても、どうても…許せなかった」
絢辻「なんでこんなにも憎いのに…なんで貴方は凄いの?
こんなにも嫌いなのに…素敵なことばかり起こすの?」
絢辻「私は……もう、そんな橘君のことを見てられなくなって…」
絢辻「作戦を実行させた──貴方しか知りえないことを、知り合いの子たちに広める」
絢辻「そうやって──橘くんを不幸にさせようとした」
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