京子「ひまっちゃんは友達が少ない」(124)

~屋上~

向日葵「ふぅ…」

京子「ひまーっちゃん!」モミッ

向日葵「ひゃあ!?」

京子「どしたのさ、ため息なんてついて?」モミ

向日葵「と、歳納先輩…」

向日葵「あ、あの、胸を揉むのは止めていただきたいのですけど…///」

京子「あ、ごめん、つい触り心地が良くて…」

京子「それで、どうかしたの?浮かない顔だけど」

向日葵「いえ、別に…大したことではございませんわ…」

京子「とてもそうは見えないけどな~」プミプミ

向日葵「あ、あの、頬を突かないでもらえると…」

京子「ごめん、何か触り心地が良くて!」ニコ

向日葵「……ぷっ、歳納先輩ったら」

京子「お、やっと笑ってくれたね、ひまっちゃん」

京子「まあ、私はあんまり頼りにならないかもしれないけどさ」

京子「話すだけでも気が楽になるって事もあるから」

京子「ちょっとお姉さんに打ち明けてみて御覧なさいって」

向日葵「歳納先輩…」

向日葵「あ、ありがとうございます、私なんかの為に…」

向日葵(歳納先輩なら、頼りになるし…悩みを打ち明けても…)

京子「友達が少ない?」

向日葵「はい…」

京子「え、でも櫻子ちゃんは…」

向日葵「あれを友達と呼べるかどうか判りませんが…仮に勘定に入れるとしても、一人です」

京子「あかりやちなつちゃんは?何時も一緒にいるんじゃなかったっけ?」

向日葵「あのお二人は…どちらかというと、櫻子の友達という感じですし…」

京子「うーん、そんな事ないと思うけど…」

向日葵「先日、櫻子に言われたんです…お前は友達が少ないから副生徒会長にはなれないって…」

向日葵「櫻子にとっては何時もの軽口のつもりだったんでしょうし、私もそのつもりで反論してたのですが…」

向日葵「あとから良く考えると…確かに、私は友達が少ないなって…」

京子「ひまっちゃん…」

向日葵「……朝、数えてみたんです…挨拶する人数…」

向日葵「櫻子は、クラスのほぼ全員と挨拶交わしてますが…私は…3人でした…」

向日葵「櫻子と吉川さんと赤座さん…この三人だけだったんです…」

向日葵「それで、わたし…わたし…」ヒック

京子「ひまっちゃん…」ナデ

向日葵「私、本当に、友達が少ないなって…何のために学校来てるんでしょう…」ヒックヒック

京子「ひまっちゃんは…友達が欲しい?」

向日葵「……はい…」グスン

京子「うん、友達いないのは、苦しいよね…」

京子「……よし、ひまっちゃん!」ガシッ

向日葵「え、え?」グスン

京子「娯楽部に入ろう!」

向日葵「ご、ごらく部に、ですか?」ゴシゴシ

京子「うん、娯楽部に入れば、ちなつちゃんやあかりとの交遊も増えるし」

京子「それに、私もひまっちゃんとちゃんと友達になりたいから、さ」

向日葵「歳納先輩…」

向日葵「…私なんかが、娯楽部に入っていいのでしょうか…」

京子「私の方からお願いしてるんだよ、ひまっちゃん」

京子「だから是非、娯楽部に来てほしいな!」ニコ

向日葵「……」

向日葵「ありがとうございます、歳納先輩…」

向日葵「私、私、娯楽部に…入りたいです…」グスン

向日葵(歳納先輩…ありがとうございます…友達を作る機会をくれて)

~娯楽部~

京子「という訳で、新入部員を紹介します!」

京子「ひまっちゃんです!」

向日葵「ふ、古谷向日葵です…不束者ですが、宜しくお願いいたしますわ…!」ペコー

一同「わーい!」パチパチパチ

結衣「向日葵さん、宜しくね」

あかり「向日葵ちゃんが来てくれて嬉しいよぉ!」

ちなつ「ちょっと意外だったけど、歓迎するよ!向日葵ちゃん!」

向日葵「み、みなさま…」

向日葵(正直、どんな反応をされると不安でしたけど…)

向日葵(優しく迎え入れてくれた…)ホッ

京子「今日は向日葵ちゃんの歓迎式って事で、駄菓子屋でお菓子をたくさん買ってきました!」

京子「みんな、食べて食べて!」ドサー

ちなつ「わー!京子先輩、太っ腹!」

向日葵「あ、え、その…」

あかり「ありがとう!京子ちゃん!」

向日葵(どうしよう、て、展開が速すぎてついていけませんわ…)

向日葵(と、とりあえず、歳納先輩にお礼を言わないと…)

結衣「向日葵さんも、ほら、遠慮しないで」ニコ

向日葵「は、はい!」

ちなつ「このお菓子、おいしいよ♪」パリッ

向日葵「……」パリッ

向日葵(お、お礼、言えてないですわ…)

向日葵(け、けど、もうみんな、食べ始めてますし…)

向日葵(というか、私も、食べちゃってますし…)

向日葵(ど、どうしよう、今さら言ったら、空気を乱してしまいますかしら…)

向日葵(……)プスプスプス

京子「ひまーっちゃん!」ダキッ

向日葵「ちょ、歳納先輩///抱きつかないでください///」

ちなつ「あ、向日葵ちゃん気をつけてね、京子先輩、抱きつき魔だから」

ちなつ「というか、こないだまで私に抱きついてた癖に、もう鞍替えですか」

京子「え、ちなつちゃん、嫉妬?」

ちなつ「嫉妬な訳ありません!」

ちなつ「ほらほら、京子先輩、向日葵ちゃん困ってるじゃないですか、離れてはなれて!」

京子「えー、ひまっちゃん、抱き心地いいのに~」ブー

京子「よいしょっと…」ペタン

向日葵(あ、歳納先輩、私の横に座った…こ、これなら…!)

向日葵「あ、あの、歳納先輩…!」

京子「ん?なに~?」

向日葵「お、お菓子、ありがとうございます…私の歓迎式、も…」ボソッ

京子「どういたしまして!」ニコ

向日葵(い、言えましたわ…歳納先輩も、笑ってくれたし…)

向日葵(よ、よかった…)ホッ

京子「ほら、向日葵ちゃん、もっと食べて食べて!」

京子「これとか美味しいよ~?」

向日葵「は、はい、美味しいです!」

京子「ほら、あーんして、あーん」

向日葵「え、そ、それはちょっと///」

ちなつ「……」

キャッキャウフフ


結衣「あ、もうこんな時間だ」

あかり「わー、時間が経つの速いねぇ!」

京子「よし、じゃあ、今日はこれまでにしよっか!」

一同「はーい!」

向日葵(最初はどうなるかと思いましたけど…)

向日葵(先輩方と、沢山話が出来て、良かったですわ…)

向日葵(赤座さんや吉川さんとも、クラスで話す以上にお話しできましたし…)

~帰路~

結衣「京子は向日葵さんを送って行くの?」

京子「おう!もう遅くなっちゃったしね」

京子「結衣はちなつちゃんとあかりを宜しく~!」

ちなつ「京子先輩、向日葵ちゃん、また明日!」

あかり「京子ちゃん、向日葵ちゃん、ばいばい~!」

向日葵「みなさま、お疲れ様でした」

向日葵「それにしても…娯楽部って、あんなにのんびりとした部活でしたのですね」

京子「そだよ~、まったりするだけの部活ですから!」

向日葵「……以前、私が娯楽部を訪れたのは『生徒会vs』の勝負の時でしたし」

向日葵「てっきり、普段から部活内で切磋琢磨するような活動をしてるのかと思ってました」

京子「あははは、そんなの、疲れちゃうよ」クスクス

向日葵「そうですわね」クスクス

向日葵「けど、一年の間では、そういう噂が流れてるんですよ?」

京子「え、噂ってどんな?」

向日葵「学年トップの成績を誇る歳納先輩と」

向日葵「学年トップの運動能力を誇る船見先輩が作った少数精鋭の部活で」

向日葵「生徒会も一目置くほどの活動をしている…って」

京子「え、ええー、そんな目で見られてたのか、私達…」

向日葵「ふふふ、だから、実際見てそのギャップに驚いてしまって…」クスクス

京子「うん、ひまっちゃんは、やっぱり、不安そうにしてるより、笑ってる顔が可愛いよ」

向日葵「え……」

向日葵「そ、そんな…私、可愛くなんか…」

京子「少なくとも、私はひまっちゃんが、笑ってると何だか幸せな気分になれるよ~」

京子「だから、ね、もっと笑顔見せてくれると、嬉しいな」

京子「私も、ひまっちゃんが笑ってられるように、頑張るから」

向日葵「歳納先輩…」ドキ

向日葵(どうして、歳納先輩、私の事なんかをそこまで気にかけてくれるんでしょう…)

向日葵(友達になりたいからって言ってくださったけど…)

向日葵(私を構うより、もっと他の方と友達になった方が、有意義でしょうに…)

京子「ほら、また不安そうな顔になってるよ~」コチョコチョ

向日葵「ひゃわ!?ちょ、歳納先輩///」

京子「ほらほら、笑え笑え~」コチョコチョ

向日葵「や、やめてください、歳納先輩///」クネクネ

~翌日~

~娯楽部~

あかり「こんにちわぁ」

ちなつ「こんにちわです」

向日葵「こ、こんにちわ…」

結衣「こんにちわ、みんな」

京子「お!ひまっちゃん達、来た~!」

京子「ひまっちゃーん♪」ダキッ

向日葵「と、歳納先輩、だ、抱きついて来なくても///」

ちなつ「……」

向日葵「あ、そ、そういえば、歳納先輩」

京子「ん?どしたの、ひまっちゃん」

向日葵「杉浦先輩が、『歳納京子プリントまだ出してないー』って激怒してましたよ?」

京子「うわ、忘れてた…!ちょっと出してくるね!」

結衣「まったく、お前はいつもそうだな」

京子「えへへ♪」

向日葵「……」

ちなつ「……」

あかり「……」

結衣「……」

向日葵(…みなさん、思い思いの事をやってて、会話がない…)

向日葵(ど、どうしましょう、何か話しかけた方が良いのでしょうか…)

向日葵(けど、別に空気が悪いわけじゃないし…)

向日葵(私が発言したらこの空気が壊れるんじゃ…)

結衣「あ、そういえばさ」

ちなつ「どうしたんです?結衣先輩」

結衣「こないだちなつちゃんが言ってたお菓子のレシピ、見つかったから」

結衣「今度作れたら持ってきてあげるね」

ちなつ「本当ですか!結衣先輩!

あかり「あれ美味しそうだったよねぇ」

向日葵「そ、そうですわね」

向日葵(ど、どうしよう、何のお菓子だかわからない…)

向日葵(聞いた方がよいかしら、けど、話を止めてしまうのも…)

向日葵(ああ、昨日はちゃんと話出来てたのに、どうして今日は…)


キャッキャウフフ


向日葵「……」

京子「たっだいまー!」

結衣「遅かったじゃない、京子」

京子「綾乃に超絞られてた><」

ちなつ「そりゃ、毎回プリント出し忘れてたら絞られますって、京子先輩」

あかり「京子ちゃん、大変だったねえ」

向日葵「お、おかえりなさい、歳納先輩」

京子「ひまっちゃんー!私を慰めてー!」ダキッ

ちなつ「……」

向日葵「と、歳納先輩、また///」

京子「で、随分盛り上がってたみたいだけど、どしたの?」ダキーン

結衣「ああ、こないだ言ってたお菓子あっただろ?」

京子「おう、あのドーナッツの事ね」

ちなつ「…ドーナッツじゃありませんって、あれはこれこれこーゆうお菓子です」セツメイ

京子「ああ、ドーナッツじゃなかったか、ごめんごめん!」

向日葵(そ、そういうお菓子だったのですか…)

向日葵「わ、私、先日、街のお菓子屋さんでそのお菓子見かけましたわ」

あかり「え、本当?向日葵ちゃん、今度お店教えてよぉ」

向日葵「は、はい、喜んで」

結衣「じゃあ、今度の休日にでも皆で行こうか?」

京子「結衣、ナイスアイデア!」

ちなつ「……」

京子「そういえば、ひまっちゃん?」ホホプニ

向日葵「あの、もう日常と化してますけど、頬を突きながら話しかけるのは///」

京子「呼び方、歳納先輩って、何か固い気がするなあ」

向日葵「え…」

結衣「うん、私も気になってた、私の事も、名前でいいよ」

あかり「あ、あかりも~」

ちなつ「私も前から思ってたけど、名前でいいよ?向日葵ちゃん」

向日葵「え、は、はい…ありがとうございます…」

向日葵「えっと、京子先輩、結衣先輩…」

向日葵「あ、あかりさん、ちとせさん…」

京子「うん、それでオッケー!」

向日葵(櫻子以外を名前で呼ぶことなんてなかったですわね、私…)

向日葵(な、なにか、緊張しますわ…)


キャッキャウフフ

誤字ですた

ちとせ→ちなつ

~帰路~

京子「よし、今日も遅くなったので、ひまっちゃんを送って行くよ」

向日葵「あ、ありがとうございます、歳納せ…」

京子「てや!」プニッ

向日葵「ひゃあ!?」

向日葵「あ、すみません、京子先輩…ですね」

京子「判ればよろしい!」

京子「ひまっちゃん、そろそろ娯楽部に慣れてきた?」

向日葵「はい、みなさんと話していて、凄く楽しいですわ」

向日葵「休日に櫻子以外と出かける約束までしてしまいましたし…」

京子「うんうん、ひまっちゃんが喜んでくれて、私も嬉しいよ!」ニコ

向日葵「京子先輩…」

向日葵(京子先輩が、私に構ってくださる理由…聞きたい…)

向日葵(けど、けど、聞くのが怖いですわ…)

向日葵(そんな質問をする私を、京子先輩は失望するかもしれませんし…)

向日葵(京子先輩からは、悪く思われたくない…)

向日葵(なら、黙って流れに身を任せていたほうが…)

京子「ひまっちゃん?」

向日葵「は、はい!」

京子「また、不安そうな顔してたよ?大丈夫?」

向日葵「あ、はい、大丈夫です…」

京子「……」

向日葵「……」

京子「明日、皆でお菓子屋さん行くの、楽しみだね」ニコ

向日葵「……!は、はい!」

~休日~

~駅前~

京子「ひまっちゃーん!こっちこっちー!」

向日葵「す、すみません、遅れてしまいましたか?」ハァハァ

結衣「いや、集合時間前だから大丈夫だよ」

あかり「お菓子屋さん、楽しみだねえ」

ちなつ「けど、この時間だとちょっと電車混んでるかもね」

ちなつ「確か、5駅くらい先にあるんだよね?向日葵ちゃん」

向日葵「あ、はい、そうですわね」

結衣「じゃあ、そろそろ行こうか?」

京子「ひまっちゃん、ナビゲート宜しくね!」

向日葵「は、はい!」

向日葵「では、みなさん、まいりましょう」

ちなつ「うっ、やっぱり、混んでる…」

結衣「まあ、5駅だし、我慢して詰めようよ」

向日葵(うう、何か申し訳ない気が…)

京子「よーし、みんな、乗ったね?そろそろ扉閉まるよ~」

あかり「あ、待って!あかりもー!」ササッ

京子「あかり、ギリギリセーフ!」

ガタンゴトン、ガタンゴトン


向日葵「あ、あれ、京子先輩、他の方たちは?」

京子「あー、何か奥の方へ流されて行っちゃったみたい」

向日葵「そ、そうですの…」

京子「~♪」

向日葵「あ、あの、京子先輩…あまり顔を見つめないで頂けると…///」

京子「えー、けど、他に見るものないし、ひまっちゃん眺めてると飽きないからさ」

向日葵「え、う、あ///」

京子「にひひひ♪」ニコ

向日葵(う、何か、京子先輩の顔、近い///)

向日葵(どうしてこんなにドキドキするんでしょう///)

京子「あ、次の駅で降りるんだよね」

向日葵「あわわ///」

向日葵「あ、そ、そうですわね、次の駅で降ります///」

結衣「ぷはー…く、苦しかった…」ガク

ちなつ「か、帰りは混雑の時間は避けましょう…」ガク

あかり「あかり、服しわくちゃだよお…」ガク

向日葵(え、そ、そんなに苦しくはなかったですけれど…)

京子「なんだよ、三人とも、貧弱だなあ!」

向日葵(あれ、京子先輩の服も、凄く乱れてますわ…)

向日葵(ひょっとして、京子先輩、壁になって私を守ってくれてた…?)

~お菓子屋さん~

京子「これが、例のドーナッツだね!」

結衣「ドーナッツじゃねーって」

ちなつ「うわあ、美味しそうな匂い…」

あかり「早く食べよう!」

向日葵「ええ、いただきましょう」


キャッキャウフフ

結衣「うん、凄く美味しかった…やっぱり、味が判ると作る目標になっていいよね」

ちなつ「結衣先輩が作ってくださるの、楽しみです!」

あかり「向日葵ちゃん、今日はありがとうね」ニコ

向日葵「ど、どういたしまして!」

京子「よし、それじゃあ、ちょっと街をブラブラしながら帰ろっか?」

一同「はーい!」

~帰路~

向日葵(今日も、凄く楽しかったですわ…)

向日葵(みなさんと、沢山喋れたし…)

向日葵(こんなに幸せな気持ちは、初めて…)

ちなつ「向日葵ちゃん」

向日葵「あ、ちなつさん、お帰りになったのでは…?」

ちなつ「うん、一旦帰ったんだけど…ちょっと気になってね」

ちなつ「一緒に帰ろ?」

向日葵「は、はい」

向日葵(ちなつさん、どうしたのでしょう、深刻な顔して…)

ちなつ「……」

向日葵「……」

向日葵(なんだろう、空気が重い…)

ちなつ「あのね」

向日葵「はい…」

ちなつ「前にほら、言ってたじゃない、京子先輩は抱きつき魔だって」

向日葵「はい…」

ちなつ「前までは、わたし、良く京子先輩に抱きつかれてたんだけど…」

ちなつ「向日葵ちゃんが入部する少し前くらいから、殆ど受けなくなったんだ」

向日葵「……そう、ですの…」

ちなつ「それで、初めて気づいたんだけど…」

ちなつ「あれって、要するに、私が娯楽部に馴染むまで気を使ってくれてたんだと思う」

ちなつ「京子先輩と結衣先輩とあかりちゃんは、幼馴染だし」

ちなつ「どうしても会話に入れない部分が出てくるし…」

ちなつ「過剰に構ってくれる事で、それをフォローしてくれてたんじゃないかなって」

ちなつ「向日葵ちゃんも……覚えあるんじゃない?」

向日葵「……」

向日葵(確かに…思い当たる点が…幾つもありますわ)

向日葵(今日も、電車で私を守って下さってたみたいですし…)

ちなつ「私はね、正直、悔しいの」

向日葵「え?」

ちなつ「私、自分では対等に京子先輩とつきあってたと思ってたんだ」

ちなつ「けど、実際は、違った、守られてた」

ちなつ「結衣先輩は、見える形で私を守ってくれるけど、京子先輩は、見えない所で、守ってくれてた」

ちなつ「そんな風に、先輩達に気を遣わせてしまってたのが、悔しいの」

ちなつ「私が、もっと強かったなら、先輩に気を使われる事もなく、対等でいられただろうなって」

向日葵「ちなつさん…」

ちなつ「もちろん、今は対等のつもりだけどね?そうじゃないと結衣先輩を狙うなんて無理だし」

ちなつ「……こんな話、誰にもするつもりはなかったんだけど」

向日葵「は、はい」

ちなつ「けど、今の向日葵ちゃんを見てると、以前の私を見てるように感じて…」

ちなつ「向日葵ちゃんには、悔しい思いをして欲しくないなって、思ったの」

ちなつ「私の話はそれだけ…!」

ちなつ「じゃ!京子先輩との事、頑張って!ばいばい!」タッタッタッ

向日葵「ちなつさん…」

向日葵(そうか、私、京子先輩に、守られてたのですわね…)

向日葵(確かに悔しいと思う…守られてた事にすら気付かない私自身の弱さが情けくて…)

向日葵(けど…それ以上に、何だろう、胸が痛い…)ズキ

向日葵(京子先輩にとって、私は、なんなのでしょう…)ズキ

向日葵(ちなつさんと同じ…ただの、後輩なのでしょうか…)ズキズキ

向日葵(私は…私は、京子先輩の事を…)ズキズキズキ

~屋上~

向日葵「ふぅ…」

京子「ひまーっちゃん!」ダキッ

向日葵「ひゃあ!?」

京子「どしたのさ、またため息なんてついて?」

向日葵「きょ、京子先輩…」

京子「今日、部活来なかったね、何かあった?」

向日葵「すみません…」

京子「謝らなくってもいいよ、大丈夫だから」

向日葵「……」

京子「ひまっちゃん?」

向日葵「京子先輩は、どうして…」

向日葵「どうして私を、守って下さるんです?」

京子「……」

向日葵「ちなつさんのように、自分から娯楽部を訪れた方を守るのは…判ります」

向日葵「けど、本来無関係だった私を娯楽部に引き入れてまで…どうして…?」

京子「うーん、ひまっちゃんが、私と似てたから…かな」

向日葵「京子先輩と…?」

京子「私もね、子供のころは臆病で泣き虫で…」

京子「友達とか全然いなかったから」

向日葵「京子先輩が…泣き虫…」

京子「けどね、結衣とあかりは、私が泣いてたら、友達になってくれた」

京子「守ってくれて、前へ進む勇気を与えてくれた…」

京子「おかげで、こんな私でも、一歩一歩、進んで来れてる」

京子「あの日、泣いてるひまっちゃんを見てたら、胸が痛くなったんだ…」

京子「ああ、この子は私と同じだなって思った」

京子「涙のせいで、周りが見えなくなって、前に進む勇気がなくなってる」

京子「だから、今度は、私がこの子の友達になりたいって」

京子「前へ一歩踏み出す為の勇気を分けてあげたいって」

京子「その勇気が育つまで、守ってあげたいって、思ったの」

向日葵「京子先輩…」

京子「うう、何か恥ずかしい事を口走った気がする…///」

向日葵「恥ずかしくなんか、ないです」ヒック

京子「ひ、ひまっちゃん?」

向日葵「ゆ、勇気…ちゃんと、貰いました…」グスン

向日葵「京子先輩からも、ちなつさんからも、勇気、一杯もらいました…」ヒック

向日葵「ありがとう、ございます…」ヒックヒック

京子「ひまっちゃん…」ナデナデ

向日葵(そう…一歩踏み出す勇気…いまこそ、出さないと…)

向日葵「京子先輩…」グスン

向日葵「私…私、京子先輩の事が…」

京子「……」


チュッ



向日葵「……!?」

京子「私、向日葵ちゃんの事が、好き///」

京子「最初は、友達になりたいと思ってたけど」

京子「向日葵ちゃんを見てると、守ってあげたい以上の気持ちがわいてきて…好きになっちゃった…」

京子「私は、勇気がなくて、今まで一歩踏み出せなかったけど…」

京子「やっぱり…やっぱり、我慢できなくて///」

京子「ごめん……」

向日葵「///」ポー

京子「向日葵ちゃん?大丈夫…?ごめんね、いきなり…」

向日葵「きょ、京子先輩…わ、私も…私も、京子先輩の事が」


向日葵「京子先輩の事が…」


向日葵「好きです」


京子「……!」

~後日~

~娯楽部~

向日葵「もう!みなさん、ちょっと散らかし過ぎですよ!」

結衣「あ、ごめん、今片づけるよ」ポリペリ

京子「もう、ひまっちゃん、プリプリしないでよ、可愛い顔が台無し」ポリポリ

向日葵「な、可愛くなんてありません///」

京子「まあまあ、これでも食べて落ち着いて?あーん」

向日葵「そ、そんな物では、買収されたりしません!///」

向日葵「ほら、ちなつさんも、手伝ってくださいな」

ちなつ「はいはーい」

向日葵「ふう、綺麗になりました…」

ちなつ「向日葵ちゃんが来てくれるようになって、ほんと、部室に綺麗になったよね」

あかり「あ、あかりのお菓子、まだ食べてたのに…」グスン

京子「流石、ひまっちゃん、私の嫁の事だけはあるよ~!」ダキッ

向日葵「よ、嫁じゃ、ありませんから///」

京子「そだね、嫁じゃなくて恋人だし…」ムニムニ

向日葵「ちょ、胸は、止めてください///」

京子「もう、ひまっちゃん、遠慮しないでいいんだよ?」

京子「ほら、勇気を出して、禁断の扉に一歩踏み出そうよ…」

京子「ひまっちゃん、ハアハア、ひまっちゃん…」スリスリ

向日葵「ちょっと、ほ、本当に、そこは…あ///」

結衣「あ、ちなつちゃん、お茶が飲みたいな」

ちなつ「はい、ちょっと待ってて下さいね」

あかり「あわわわわわ。京子ちゃん達///」

向日葵(京子先輩たちに貰った勇気のおかげで)

向日葵(今ではすっかり娯楽部に馴染みました)

向日葵(けど、えっちな事をしてくる京子先輩の恋人としては)

向日葵(まだ馴染むのに時間がかかりそうです…)




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