京子「あ、千鶴じゃん、千鶴!ちゅっちゅ!」ダキー
千鶴「うぜえ!」バキ
京子「いたーい、千鶴のいけずぅ」プー
千鶴「……」チッ
京子「あれ、もう行っちゃうの?」
千鶴「……そろそろ図書館の退館時刻だからな」
千鶴「……歳納、お前も係の人に迷惑かける前に帰れよ」
京子「んー、私はこの漫画読んじゃってから帰るよ~」
千鶴「……勝手にしろ」スタスタ
京子「……」
千鶴(まったく、気楽に抱きついて来て、うぜえ)
千鶴(何考えて生きてんだ、あいつは)
千鶴(ま、何も考えてないか)
千鶴「あれ、図書カードがない」
千鶴(さっきの机に忘れてきたか…)
千鶴(…歳納なんたらがまだ居るだろうから、ウザいけど…)
千鶴(この本は借りたいから、仕方ない、戻るか…)
千鶴「……」チッ
千鶴「歳納なんたらは居ないか…」
千鶴(よし、今のうちにカード探してさっさと出よう)
千鶴(これだ、椅子の下に落ちてたのか…)
??「う、ひっく…ひっく…」
千鶴「……?」
千鶴(何だろう、何処からか泣き声がする…)
??「ひっく、うぅぅ、うぇぇぇ」
千鶴(まあ、私には関係ないか…帰ろう…)
??「う、うう、ちづる…うぅ…」
千鶴「……!?」
千鶴(私の名前呼ばれたぞ…)
千鶴(…誰だいったい…)
千鶴「誰だ?泣いてるの」
??「……!」フワ
千鶴「そのカーテンの裏か…」
千鶴「出てこないなら、カーテンひん剥くけど」
??「……」
京子「……」スッ
千鶴(げ、歳納なんたら…)
千鶴「……」チッ
京子「え、えへへ、京子ちゃんだよ」ゴシゴシ
千鶴「んもん見れば判る」
千鶴「何で泣いてんだ、そんなとこで」
京子「い、いやあ、ちょっと漫画読んでたら感動しちゃってさ」
千鶴「……」チッ
千鶴「悩みが無さそうでいいな、お前」
京子「……!」
千鶴「気にして損したよ」
京子「……私だって」
千鶴「あ゛?」
京子「私だって、悩みくらいあるよ」
千鶴「あ゛?何時も気楽に行動してるお前の何処に悩みがあるんだ?」
京子「………」
千鶴「無視かよ、まあ、どうでもいいがな」スタスタ
フッ
千鶴「なんだ、照明が…」
京子「き、消えちゃった?」
ガターーーーーン
カチャカチャ
千鶴「え」
京子「今の音…」
千鶴「おい!まだ中にいるぞ!あけてくれ!」ドンドン
京子「閉じ込められちゃった?」
千鶴「くそ、何とか出れないのか…!」
千鶴「窓は、駄目か、全部施錠されてる」
千鶴「携帯もつながらないし…」
京子「……だ、大丈夫、朝になったら係の人が出してくれるよ!」ニコ
千鶴「あ゛?何処が大丈夫だ、気楽に笑うな」
千鶴「こんな所で一晩明かすなんて冗談じゃない」
千鶴「連絡もなしじゃ姉さんが心配するし…」
千鶴「しかも、歳納なんたらと一緒なんて、最悪だ」
京子「……」
千鶴「そもそも、お前があんな紛らわしい事をしてなかったら私はこんな所には…」
京子「……」ウルッ
千鶴「お、おい、歳納?」
京子「ごめん、千鶴、迷惑掛けてごめん」グスン
千鶴「何泣いてるんだよお前!」
京子「泣いてないよ、けど、千鶴が心配してくれたから出られなくなったんだし」ヒック
千鶴(な、何だこいつ、いきなり泣き出して、殴ったりした時は全然平気な顔してた癖に)オロオロ
京子「……」スクッ
千鶴「お、おい、何処に行くんだ」
京子「ちょっと、出られる所がないか探してくる」
京子「千鶴は、待ってて、大丈夫、千鶴は私が出してあげるから…」グスン
千鶴「お、おまえ、泣きながら何言ってんだ」
京子「……」ゴシゴシ
京子「ほら、泣いてないでしょ?まあ、京子ちゃんに任せなさいって」ニコ
千鶴「……」
千鶴(行っちまった、何なんだ、あいつは)
千鶴(泣いたと思ったら、すぐに笑いやがって、嘘泣きだったのかアレ)
千鶴(……いや、嘘泣きじゃなかったよな)
京子「千鶴!出られそうな場所あったよ!」
千鶴「……窓とかは全部施錠してあるはずだろ」
京子「上の方の窓は手で開けられるみたい!」
千鶴「上の方って、お前、絶対届かないだろ、あんな所」
京子「本棚に登って窓に移って、そのまま窓の外の木に移れば行けると思う!」
千鶴「はぁ……無理だ」
京子「え?」
千鶴「……絶対に怪我するだろ、んな事、やらなくても判る」
京子「いや、やってみないと判らないんじゃない?」
千鶴「見れば判るだろ、無理だ」
千鶴「嫌だけど、仕方ない、今日はこのままここで夜を明かしてやるよ」
京子「千鶴」
千鶴「あ゛?」
京子「やってみないと、判らないよ」
千鶴「わからないヤツだな、絶対に、無理だ、諦めろ」
京子「いや」
千鶴「……!?」
京子「私は、最初から、諦めたりはしないよ」
京子「怖がらないで、ちゃんと自分でぶつかって、それで無理だったなら」
京子「その時には、他の方法を考えればいいからさ」
千鶴「……なんだよ、それ」
千鶴「怪我しちゃったら、元も子もないだろ」
千鶴「怖い目みるのは、誰だって嫌に決まってるんだから」
京子「うん、だから、最初は私が試します!」
京子「もし失敗しても、私はほら、痛いのとか平気だからさ」
千鶴「……勝手にしろ、泣いても知らないぞ」
京子「うん!」
京子「本は傷つけないようにするから、安心してね!」
京子「それに、無理だったとしても、本棚の上なら携帯つながるかもしれないしさ!」
千鶴「……」
京子「よいしょ、こらしょ」ヨジヨジ
千鶴(割と器用に登るな、こいつ)
千鶴(もしかして、行けるんじゃないか…)
京子「…とっ!」フラッ
千鶴「あ、危ない…!」タッ
京子「…と、危ない、足滑らせる所だった」ヨジヨジ
千鶴「……」チッ
千鶴(何で私があいつの心配してやらなきゃなんないんだよ…)
千鶴(勝手にやってるんだから、放置しといていいだろ…)
千鶴(なのに、何、ソワソワしてるんだ、私…)
京子「何とか登りきった…あとは、窓に手を伸ばして…」ノビー
千鶴「……」ソワソワ
京子「と、とどい…た…あれ」フワッ
千鶴「危ない…!」タッ
ズドーン
千鶴「いたたた…」
京子「……」
千鶴「だ、だから言っただろ!落ちるって!私が受け止めなかったらお前どうなってたと…!」
京子「……っ」
千鶴「お、おい、歳納?どうしたんだ?」
京子「え、えへへ、失敗しちゃった、ありがとう、千鶴、助けてくれて」
京子「千鶴は、怪我とかなかった?」
千鶴「歳納、私、言ったよな、失敗するからやめとけって」
京子「うん…」
京子「ごめんね、千鶴にまた迷惑かけちゃって」
千鶴「……」チッ
京子「私は、ほら、馬鹿だからさ、痛い目みないと、判らないんだ」
千鶴「……」スクッ
京子「あれ、何処行くの?」
千鶴「いちいち聞くな!……トイレ」
京子「ん、行ってらっしゃい」
千鶴「……」チッ
千鶴(誰だって、失敗したり痛い目見るのが嫌で、それを避けて立ち回ってるのに)
千鶴(それなのに、あいつは痛い目を見るの判ってて飛び込んでいく…馬鹿か)
千鶴(私は、そんな馬鹿じゃない)
千鶴(無理をせず、黙って、何も期待せずに、人間関係とかも受け流してれば、傷つきかないし、痛い目も見ない)
千鶴(それが、利口な人間なんだよ)
千鶴「……ふぅ」
京子「……!?あ、ち、千鶴、お帰り」ウルッ
千鶴「……何だ、お前、また泣いてたのか?」
千鶴「………さっきは私が言いすぎたから…」
京子「……」スッ
千鶴「……お前、ちょっと足見せてみろ」
京子「い、いやん、千鶴のえっち…つっ…!」
千鶴「冗談言ってる場合じゃないだろ!」
ヌギヌギ
千鶴「…腫れてるじゃないか、さっき落ちた時に捻ったのか」
京子「あれー、そうだったの、気付かなかったよ!」
京子「全然痛くないし、別に大丈夫じゃない?」
千鶴「……」サワッ
京子「……つっ!」ウルッ
千鶴「泣くほど痛いのに、何でお前は我慢するんだ!」
京子「だ、だって…」グス
京子「だって、泣いたら、千鶴、心配するでしょ…?」グス
千鶴「……!」
千鶴「お前馬鹿か!泣きたい時は泣けよ!わかんないだろ!」
京子「いやだよ、千鶴の前で泣くなんて!」
京子「どうしても我慢できないなら、私は隠れて泣くもん!」
千鶴「な、何なんだお前…何でそんなに泣くの隠す!」
京子「だって、だって!」
京子「む、昔の私、ずっと泣き虫だったから…」
京子「泣いてたら、誰かが、私の心配してくれるから、ずっと泣いてた」
京子「結衣達が友達になってくれたのも、結局は私が泣いてたのが理由で…」
京子「…自分から『友達になろう』って手をさし延ばして、それを断られて傷つくのは、怖いよね…」
京子「だから私は、ずっと、泣いて皆の気を引いてた…」
京子「けどね、結衣が私を守ってくれて、あかりが私に元気を分けてくれたから」
京子「こんな私にも『自分から友達を作れるような強い子になろう』って勇気が生まれたの」
京子「その時に、もう泣いて誰かの気を引くのは止めようって、決めたの」
京子「傷つくのを怖がらずに、自分から頑張って手を差し出そうって」
京子「……」ゴシゴシ
京子「だから、ちゃんと友達になりたい子の前では、絶対に泣かない」
千鶴「友達になりたい子って…」
京子「千鶴の事だよ」
千鶴「お前……私があんだけ殴ったりしてたのにまだそんな事を…」
京子「うん、そんな事くらいで諦めたりなんかしたくないくらい千鶴の事が好きだから」
京子「本当に千鶴から大嫌いだって言われない限りは諦めないよ」
千鶴「……最初に泣いてたのは、私が冷たくしたからか?」
京子「…最初も泣いてません」
千鶴「いいから、正直に言え」
京子「……ごめん、私、強くなろうと思ってるんだけど」
京子「まだ弱いままだから、だから…」グスン
京子「……」クルッ
京子「少々お待ちください…」ゴシゴシ
千鶴(歳納、何も考えてないと思ったけど…)
千鶴(色々考えて、私に接してたんだな…)
千鶴(私がいくら邪険にしても、諦めずに…)
千鶴(本当は泣き虫のくせに、我慢して…)
千鶴(何時も傷つかないよう他人を拒絶してた私とは大違いだ…)
千鶴「ふぅ…」
京子「千鶴…?」
千鶴「歳納、もう私の前で泣いてもいいぞ」
京子「え、けど…」
千鶴「友達になりたい相手の前では泣かない、だったよな」
京子「…うん」
千鶴「じゅあ、私とお前は、今から友達だ」
千鶴「だから、泣いてもいいぞ…」
京子「え、え、も、もう一回言って…」
千鶴「……」チッ
千鶴「二度も言わせるな!私とお前は、友達だから、その、泣いてもいいって///」
京子「ち、ちづる…千鶴ー!」ダキッ
千鶴「お、おい、何抱きついてんだ!」
京子「だって、千鶴が友達になってくれるって言ってくれたんだもん!」ニコー
千鶴(う、私の心境の変化が原因かな、笑顔が凄く可愛く感じるぞ///)
京子「そして、やっぱり…足痛い…」ピクピク
千鶴「お、おい、大丈夫か!?いきなり動いたりするから…」ナデナデ
京子「ふふふ、ち、千鶴に撫でられてる…わーい…」グスングスン
千鶴「痛がるか喜ぶかどっちかにしろ!」
京子「ふう、横になったら大分、楽~」ゴローン
千鶴「そうかよ」
京子「首がちょっと苦しいけどね、誰か膝枕してくれないかな~?」チラチラ
千鶴「こっち見んな」
京子「ちぇーっ、千鶴のどけちー」プー
千鶴「……判ったよ、今まで冷たくしたお詫びだ」
京子「…え?」
千鶴「ほ、ほら、膝枕、してやるから」
京子「……!」
京子「ち、千鶴がデレた///」
千鶴「デレてねえ!」
京子「~♪」
千鶴「首、痛くないか?歳納」
京子「痛くないよ、柔らかくて気持ちいい~♪」
千鶴「そうか……」
千鶴(何だろう、さっきまで憎かったヤツなのに、本当に、愛おしい気持ちが…)
千鶴(そうか、私は、不安だったんだろうな…)
千鶴(私の心に踏みこんで来ようとする歳納の意図が判らなくて)
千鶴(ずっと、歳納に何か打算や偽善があるんだと思ってた…)
千鶴(けど、歳納は純粋に私と親しくなりたいんだって、さっき判ったから…)
千鶴(だから、今まで溜まってた歳納への想いが、噴き出してるんだ…)
千鶴「…今まで気づかなかったけど、歳納の髪は、綺麗だな」ナデナデ
京子「ありありがとう、千鶴…///」
千鶴「うん、私の方こそ、ありがとう、歳納」
千鶴「私を、大切に思ってくれてたてた気持、凄く嬉しかった」
京子「千鶴……」
千鶴「これからも、お前の事を、いろいろと教えて欲しいな」
京子「……うん」
~翌日~
~娯楽部~
京子「という事がありまして!朝になってやっと係員さんに発見されて解放されたんだ~!」
結衣「今日の朝、居なかったのはそれが原因だったのか…」ジー
ちなつ「災難でしたね、京子先輩」ジー
あかり「あはは、大変だったね、京子ちゃん」ジー
千鶴「……」
結衣「それで、千鶴はどうしてここに…」
千鶴「歳納とは友達になったからな」
千鶴「離れたくないからついてきた」
千鶴「それに、歳納の事をもっといろいろ知りたいし」
結衣「そ、そうか」
京子「もう、千鶴は甘えん坊だなあ」ツンツン
千鶴「…うん、私は今まで姉さん以外に甘えた事はなかったから」
千鶴「歳納、甘えさせてくれ」
京子「お、おう、なかなかに積極的…」
千鶴「変わりと言ってはなんだが、ちゅっちゅしても構わないぞ?」
京子「え、そ、それ、え///」
千鶴「何時もちゅっちゅって言ってたじゃないか」
京子「え、けど、みんな見てるし、千鶴とそういう事するのは嫌じゃないけど///」
京子「ま、まずは友達から始めましょうって事で///」
千鶴「いいじゃないか、歳納、ちゅっちゅ」
京子「ちょ、千鶴、や、やめ///」
千鶴「歳納、ちゅっちゅ」
京子「////」
千鶴「……」
チュ
京子「うわわわ//////」
結衣「うわわわわわ!」
ちなつ「うわわわわわわ!」
あかり「うわわわわわわ!」
千鶴「クスッ、お前ら、面白いやつらだな」
千鶴(あ、私、姉さん以外の人の前で笑ってる)
千鶴(こんなこと、初めてだ…)
千鶴(歳納、お前と一緒にいると、私はいろんな初めてを表に出せるみたい)
千鶴「歳納」
京子「う、え、な、なに///」
千鶴「昨日、私の事を好きだって言ってくれたよな」
京子「うん」
千鶴「私も、お前の事が好きみたいだ」
千鶴「だから、これからも…」
一緒に居てね
完
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