竜児「ん、大河。起きたか……」(362)

大河「むにゃ……はれ…? こころこ……?」

竜児「何処もくそもないだろ。俺ん家だ」

大河「そう……」じゅる

竜児「あーほらほら、涎垂れてるから。袖でふくな! 頼む!」

大河「………」

竜児「…めんどくさそうな目でこっちを見るなよ、そら、立て大河」

大河「やだ」

竜児「やだじゃない」

大河「……じゃあ、竜児が抱っこして起こして」

竜児「やだ」

大河「やだいうな!」

大河「この私がせっかく甘えてやってんのに……なんなの、アンタは」

竜児「そんなふてぶてしい甘え方があるかよ、ちゃんと我が身の身体で大地に立つんだ」

大河「言い方がなんかうざいんだけど……」

竜児「うざくないうざくない。俺はまったくもってうざくない」すたすた…

大河「あー…まちなさいよー…」がしっ

竜児「おうっ……急に脚つかむなよ」

大河「台所までひっぱってー」

竜児「……。ふんぬ!」

大河「………」ずりずり……

竜児「ついたぞ。……人間ごみ取り機め、ふりふりの奴着てるから埃がつきまくるぞ」

大河「……ふぅあ~…べつにアンタが変態的に綺麗にしてるから、だいじょうぶでしょ…ふぁ~」

竜児「日常的に、と言え。日常的にと。ほら、桶にお湯溜めといたから顔洗えよ」

大河「……ん~? 洗面所は……?」

竜児「……今は大黒柱が占領中だ。そろそろ俺が全力の掃除にかかる直前だと思え」

大河「……うん、悲惨な光景が浮かんで急に頭が冴えたわ。竜児、タオル」

竜児「はいよ」

大河「………」ぱしゃぱしゃ

竜児「……うめぼし、は二日酔いに効いたっけか。食べたくなる方だったか。まぁ用意しておくか」がちゃ

大河「………」ごしごし

竜児「……おう、ご飯炊けたな」ぱか

数分後

大河「竜児ぃー、やっちゃんの掃除まだー?」

竜児「おーう、もうちっとかかるわ。食べ終わったら皿、水に入れといてくれー」

大河「はいよー」

大河「………」もしゃもしゃ

大河「………」ごくん

大河「竜児ぃー! アンタのご飯も食べていーいー?」

竜児「だめだー」

大河「もしゃもしゃ……わかったー!」もぐもぐ…

竜児「もう既に喰ってるだろそれ! …まぁ、ちょっと掃除かかりそうだし別にいいけどよ…」

大河「でしょー? そろそろ学校の時間だし、そこんところ私は弁えてんのよー」すたすた…

竜児「ハラへってるだけだろうがよ……あ、ちょっと待て、いま台所にくんな……っ」

大河「え?」ぷぅん…

大河「うっ」

竜児「匂いが残ってるからまだキツイと思う──ってまてまてまて!!大河!!なにえづいてん──」

数十分後


竜児「…はっ……はっ……」だっだっ…

大河「………」たったっ…

竜児「……こりゃー大遅刻だな…はっ…はっ……!」

大河「……りゅうじ…」たっ…たっ……

竜児「……お、おう!? どうした? 早く行かねぇと授業に間に合わなくなるぞ…っ…」

大河「……お腹、いたい……」

竜児「え、マジか!? どこ? どこが痛い?」

大河「こ、ここらへん……すごく、いたい……」

竜児「ここら辺て……ここか? ここなのか?」すりすり

大河「ん……そう、そこら辺……もうちょっと上……」

竜児「そ、そうか……大丈夫かよ。今日はもう学校は休むか?」

大河「………」ふるふる

竜児「そう、か。お前が大丈夫っていうんなら……」すっ


大河「?」

竜児「なに不思議そうに見えてるんだよ、ほら、おんぶだよ」

大河「……。やだ」

竜児「やだじゃない。こうやってのんびりやってたらもっと遅くなるだろ」

大河「………」

竜児「……それとも、お前をここに置いてけぼりにしろってか」

大河「それもやだ」

竜児「じゃあ早く乗れ、大河」

大河「………」すっ

竜児「…よし、んじゃ揺れるけどお願いだから俺の背中で吐くとかごめんだぞ」

大河「…わかってるわよ。早くいきなさいって」

竜児「ん」だっだっだっだ……

学校

北村「おーすっ。高須、今日も元気か?」

竜児「……おっす。突然だが、お前の目は節穴か?」

北村「いやなに、これがお前との恒例の挨拶だと思ってだな。悪気はない」

竜児「……ま、別に気にはしてないんだけどよ」

北村「それよりも、今朝から大変だったみたいだな高須」

竜児「ん、まぁ。ちょっとな……途中で大河が腹痛いって言いだしてよ」

北村「なるほど。……それであの今朝の登場ってわけか」

竜児「……。思い出させるなよ」

北村「なんだ、狙ってのことじゃないのか」

数十分前

「え~……ここの問題は──」

がらり!

高須「す、すみません……ッ! ちょっと、お……遅れました…ッ!!」

「え、おおう。高須か──」


「──って、なんだその背負ってるのは……」

高須「え、なにって……」

大河 ぐーすか

竜児「っておい、大河? なに寝てんだよ……ほら起きろって」

大河「……ん、なに竜児ぃ……朝ご飯…?」

竜児「なに、寝ぼけてんだよ……朝ご飯はさっき食べただろ」

大河「むにゃ……でも、お腹減ってるわたし……」

竜児「それはお前が吐いたせいで……っておい! また寝ようとするな!大河!」

大河「…ごはんの時にまた起こして……ぐぅ」すやすや

竜児「……マジかよ。寝ちまった」

「……とりあえず保健室に逢坂を連れて行け、高須。後で職員室で遅刻届けを出すように」

竜児「わ、わかりました……」

回想終わり

北村「はっはっはっは! いやー朝から仲良しっぷりを見せつけられたなと俺は思ってたぞ」

竜児「……ったく。どれだけあの後、教室に戻りにくかったか…」

北村「いや、とても教室内は穏やかな雰囲気だったぞ。なにも恥ずかしがらなくてもいいだろうに」

竜児「…世間体ってもんがあるだろうが。結果的には色々と変な話ししちまったし」

北村「それはいささか、今さら感があるけどな。……高須、本当によかったな」

竜児「……おう、なんだよ急に」

北村「なに、それは俺が深く言うことじゃないだろうと思ってな……」

竜児「…………」

北村「………。そんな顔をするなら、深く突っ込んでもいいのか?」

竜児「……いや、お前の心づかいはありがてぇよ。ま、今は良い結果だと俺も思う」

北村「そうだろう? だから俺がいうのもなんだが……」

北村「櫛枝のことは気にするな、もう」

竜児「…………」

北村「ただ、それだけだ。そして、ここまでだ。んじゃ高須、次は体育だぞ早く着替えろよ」ぱっ!


竜児「お、おうわかった……って早!? 着替えるの早いな!!魔法少女かよ!!」

北村「…ふっふっふ…いい突っ込みだ、高須。この際だ、良いことを教えてやろう……」

竜児「な、なんだよ……」

北村「北村 祐作──今年、十九歳となる俺だが──未だに朝七時半からある魔法少女もののアニメを見ている!!」

竜児「あ、あれか……あれは俺も見てる。朝ご飯作りながらの時とか、暇だからな」

北村「話が早くて助かる! それでだな、
   俺はあの少女たちの早着替えがどのような経緯で行われているか日々日夜と研究しているのだ!!」

竜児「そ、そうなのか……変態だな、北村」

北村「尊敬の言葉として受取ろう!! そして毎回の変身シーンを録画し、それを巻き戻しを繰り返し観た結果……」

竜児「……見た結果?」

北村「なにもわからなかった」

竜児「だろうな。それにあれだが、お前が制服の下に体操服着てんの見えてたしな」

北村「……ふむ、高須は本当に空気を読める良い奴だな。亜美の奴に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいな」


竜児「それはまぁ、お前の時だけだと思うぞ。色々と空気読まないのは」

北村「そうなのか? いや、確かにアイツは外面は良い子ぶってはいるが……」

竜児「……まぁ、空気を読み過ぎててよくわからないキャラになってるのは同感だ」

「高須くん、なに失礼なこと今朝からいっちゃってくれてんのかな?」

竜児「おおぅ!? か、川嶋ッ!?」

亜美「はぁーい。今日も可愛い亜美ちゃんでーす」

北村「気配をさせて来い、亜美」

亜美「なぁにー? そっちこそあたしのキュートな気配を察しるべきだと思うなぁ」

北村「……なるほど、その悪意の満ち満ちた裏の表面を察するべきなのか。これは勉強になった」

亜美「……あぁん?」

竜児「川嶋、崩れてるぞ。ぶりっこが」

亜美「……なになにぃ~?高須くぅん、今日は朝から私の話をしてくれてたのぉ?」

竜児「……お、おう。まぁな」

亜美「きゃあ! 亜美ちゃんうーれしぃ! んでぇ、なんのお話をしてたの?」

北村「お前のぶりっこについて話してた」

亜美「祐作には聞いてねぇっつーの……高須くぅん、こんなのは放っておいて亜美に教えてほしいなぁ」

竜児「べ、別に……特には話してないな。な、なぁ北村?」

北村「そうだな。特に亜美の話はしてなかった、そういう感じだ」

亜美「そういう感じぃ~……? なにそれ、なんか感じ悪いんですけどぉ」

竜児「まぁ陰でこそこそお前の話をしてたのは謝る……それよりも、次は体育だろ? 川嶋、お前も着替えないと」

亜美「……。えっ!? 高須君……わたしの着替える姿……みたいの?」

竜児「いってねぇーよ!? いってねぇから、ほら早く行けって」

亜美「あーん、高須君つーめーたーいー」

竜児「冷たくないから、ほら。俺も着替えるからさ……」

亜美「じゃあさ!じゃあさ! あたしも着替えるから、高須君も一緒に着替えればおっけーじゃない?」

竜児「なにがだ!? 色々と駄目だろそれ!!」

北村「なん、だと……生の少女の着替えを見られるとは……高須、ちゃんと早着替えの時の様子を逐一報告頼む」

竜児「川嶋は別に魔法少女じゃねーだろ!? なにノリに乗っちゃってんだよ北村!! 」

亜美「祐作……アンタ、まさかまだあんなアニメ見てんの……?」

北村「なに、あんなとはなんだ亜美。お前は分からないだろうがな、あの一見子供アニメに見えてクオリティーの高い戦闘描写は──」

亜美「あーはいはい、聞きあきた。それ亜美ちゃん聞きあきたー。
   ……それにいっちゃうけど、別にアンタ。アニメが目的で見てるんじゃないでしょそれ」

竜児「え、そうなのか北村……?」

北村「ぐっ……なにを戯言を……」

亜美「亜美ちゃん知ってるんだよねー。あのアニメの登場人物、主人公だっけ? あれって何処をどう見てもあの馬鹿生徒会長にそっくり──」

北村 だっ!

竜児「北村!?」

亜美「……ばーか」

竜児「お、おい。いいのかあれ……目の端に涙浮かべてたぞアイツ……」

亜美「……。え、亜美ちゃんしらなぁーい。勝手に祐作が飛び出しちゃっただけでしょ~?」

竜児「お、おまっ……本当に人の心をえぐるの、うまいな」

亜美「え~? いやだな高須くぅん…………貴方ほどじゃないよ、それはね」

竜児「………え? お前なにか言ったか……?」

亜美「うぅん~? あ、亜美ちゃんそういえば着替えなくちゃいけなかったんだぁ~」

竜児「お、おう。それはさっきから俺も言ってたけどな……」

亜美「それじゃ高須君! また体育で会おうねぇ~……ちゅっ」

竜児「……。なんで高校生が投げキッスのポーズが完璧なんだよ……ま、大人でもしないけど」

竜児「………」

竜児「さて、着替えるか……」

保健室

大河「……むにゃ……」ごそ…

大河「……ん……」ぱちぱち

大河「…………」

大河「…あれ、ここどこ?」

グラウンド

北村「俺の魂……受けてみろ!! プリキュアパーフェクト北村シュート!!」どしゅ!

春田「ぬぅあ!? な、なんだよそのボールはぁ!?」

北村「……ふっふっふ。解説しよう、このボールは蹴りだされた瞬間、その凄い力で空を切り、
   その空気摩擦で回転を行い、ボールがキーパーの顔面へと突き刺さるのだ!!」

春田「それただのファインプレーじゃね!? ぐはぁ!!」

能登「は、はるたァー!?」ずささ…!!

春田「の、のとっち……俺は、もうだめかもしんね……」

能登「ああ……だが、ちゃんとお前はボールを止めたよ……!!」

竜児「ほいっ」ぽす

「ぴっ! Bチームシュート!」

能登「た、高須ぅううううううう!!」

竜児「いや、お前らが馬鹿やってるうちにボールこっちきたしよ……」

能登「そこは空気読めよお前ー!!」

春田「の、のとっち……」

能登「は、春田ッ!? どうした!? まだ息はあるか!?」

春田「……今度は、女の子に愛でられるような……ひまわりに生まれ変わりたい……ぜ」がくん

能登「はっ……春田ぁああああああ!!それすっごく微妙なチョイスだぞぉおおおおおお!!」

北村「良い奴だったよ……春田」

竜児「色々とめんどくさいからお前まで乗るなよ……先生! 春田を保健室に運んできます!」

竜児「……ほら、行くぞ春田」

春田「……あ、高須ちゃーん!まじ親切ぅー!!」

竜児「わかってるって。……授業さぼりたいんだろ、ほら」

廊下

春田「たかすっちゃーん……マジ、助かったわー! というかよく俺がキツイって気付いたというか、
   朝はけっこう弱くってさー」

竜児「ま、まぁな。というか、だから今日はめずらしくキーパー志願だったのか」

春田「そうなんよー! まぁ?ちょっと? 俺っちってば大人の階段のぼっちまったしなー!
   それでちょっと今日は朝はきついっていうかぁ~」

竜児「……」

春田「ん~? どした高須っちゃん。まじで元気ない顔してるよ?」

竜児「……まぁ、その、なんだ。大人の階段、のぼったっていうのは……」

春田「もう、みなまで言わせる気かよぉ!! あっちのほうにきまってんだろ!!もう!!」

竜児「お、おう……そうなのか。それはあれか、能登は知ってんのか」

春田「……んー。それはまだ、かな。でもでも直に教えると思うよ? だって友達だし」

竜児「そう、か……そうだよな。友達だもんな」

春田「高須っちゃんもどんどん相談とかベイベーだぜ? 俺らは友達だろ?
   そこんところよろしく!」

竜児「おう」

保健室

春田「あ、高須っちゃん。ちょい待ち」

竜児「どうした?」

春田「トイレトイレ、寝る前にしときたくってさー! もれるもれるー!」たたたっ…

竜児「……アイツ、本当に朝は弱いのかよ…」

「……竜児…?」

竜児「ん?」

がらり

大河「やっぱり竜児だ」

竜児「おう、大河。起きたのか」

大河「まぁね。それよか、なんで私保健室にいるのよ」

竜児「それはお前が起きないからだろ。だから俺がここまで寝かせにきたんだ」

大河「ふーん、そう」

竜児「なんで自分のことなのに興味が無さそうなんだお前は……」

春田ってロン毛の奴だっけ?
高須の呼び方って高っちゃんだったろ?

大河「過去のことはもうどうだっていいのよ。今は今」

竜児「……そうか」

大河「それとだけど、竜児もなんで保健室に来てるの? 授業中じゃないの?」

竜児「ああ、それが春田を連れに来たんだ。アイツ、なんか今朝からつらそうにしてたからな」

大河「へぇ~……それでアンタもサボりに来たと」

竜児「ぐっ……それはまぁ、いささか否定はできねぇけどよ……」

大河「………」

竜児「……どした、急に黙って」

大河「ねぇ、竜児。ちょっと来て」ぐいっ…

竜児「お、おいっ……なんだよ。そんなにひっぱると体操服が伸びるだろ──おおう!?」ぼふん!

大河「ふっふっふー」

竜児「な、なんだよ……急にベットに放り投げて。つぅか、本当にお前の筋力どうなってるんだ……」

大河「うるさいわよ。黙ってなさい……そりゃ!!」

うんこ行ってきます

>>55
失礼間違った
>>28
これも18で

竜児「ごふっ!」どす!

大河「……」ぎゅう…

竜児「……いや、なんだ……その。抱きついてくんのは良いんだが、もうちっと飛びつき方を考えてだな……」

大河「うるさいわね……今は黙って抱きしめなさいよ」

竜児「……はぁ。わかったよ」ぎゅ

大河「…………」

竜児「…………」

大河「……ねぇ、竜児」

竜児「なんだ」

大河「こうやってると、昨日の夜思い出すわね」

竜児「ぶっ……急になんだよ、大河…」

大河「ふっ……なに思いだしてんのよエロ犬」

竜児「先に思い出したのはお前の方だ」

大河「嘘おっしゃい。絶対に頭ん中では、アンタの方が先に思い浮かべてたでしょ」

竜児「……とりあえず、否定しておく」ぷい

大河「くくっ……まぁいいけど。わたしもわたしで思い浮かべちゃったしね、おあいこよ」

竜児「…………」

大河「…………」

竜児「…………」

大河「でも、耳ばっかせめるのはやめなさいよね」

竜児「……。……なんで今言うんだよ……」

大河「じゃあ何時言うのよ」

竜児「もうちっと場所とかだな……! あと、それをいうならお前だって首かむのやめろよっ」

大河「ばっ……ちょ、アンタなにいってんのよッ!! 恥ずかしいじゃないっ!!」

竜児「だろーが!! 俺だって恥ずかしいんだよ!!」

がらり

春田「高っちゃんごみーん! いやーデッカイ太巻きがでちまってさー!
   なんていうの、この南見ながら食べなさい!みたいなぁ……ってあれ?」

春田「高っちゃん?」

竜児(……お、おい……大河どうすんだこれ!?勢いで隠れちまったけど……!)

大河(シッ……ちょっと黙ってなさい)

春田「って、逢坂じゃーん」

大河「……なに、馬鹿ロン毛」

春田「もう俺のことそんな風によぶなってー!
   ……あ、もしかして俺のさっきの奴聞いてた……?」

大河「何も聞いてないわようんこマン」

春田「めっちゃきてるしぃ~~~~!!!うわー!!学校でウンコする奴とか思われるとか……
   俺終わっちゃってるんじゃね!?」

大河「安心しなさい。もう既に終わってるから」

春田「……え、それってこれからまた始まるとかそういうの!?俺ってばこれからの男ってワケかぁ!」

竜児(春田……お前のそのポジティブさは素晴らしいと思うぞ俺は……)

春田「つぅーか……逢坂、大丈夫なん?」

大河「え、なによ急に……」

春田「いやなにってさぁ~……そりゃまぁ、あれだよぅ。
   俺っちってばちょっとだけ分かるんだけど……逢坂、すっげー疲れてない?」

竜児(………?)

大河「……なに、アンタ私が老けたとでもいうワケ?」

春田「違うってばよーぅ。なんつうかさ、ちょっと無理してる?みたいな?
   色々と頑張りすぎちゃってんみたいなさぁ……そんな感じ?」

大河「……。アンタって本当に馬鹿ロン毛ね。なにわかったような口ぶりでもの申してんのよ」

春田「あっはー! まぁ馬鹿だってんのはわかってるけどよー……やっぱ気になるじゃん?
   こんな俺でも気になるって思うんならさー……やっぱ色々と、周りから思われてんじゃねっておもうわけよぉ」

大河「…………」

春田「……あと高っちゃんもさー、色々と話してくんねぇし。色々とあったはずなのにさぁ~……あんな疲れちまった顔してさ。
   ほら、俺馬鹿だからさ、隠れて慰めると察するとかわかんなくてよ……」

大河「……で? 結局、アンタは何が言いたいわけ」

春田「え? あ、別になにもおもちゃいねーって! ただ俺っちは思ったことをいったまでよ?」

大河「へぇそう、アンタ本当に馬鹿ね……思ったことをいってでスッキリ出来たのかしら」

春田「うん? まぁ、そうかなぁ……ま。高っちゃんは逢坂がいるし、大丈夫だとおもうからさぁ
   俺も、高っちゃんから言われるまでなにもいわないぜ~~~~」

大河「そうして。本当に」

春田「……うん。まぁ、俺っちなんか元気出てきたし、授業戻るわ~~~…高っちゃんと会ったら
   授業でたって言って置いてくれぇ」

がらら……ぴしゃ

竜児(………)

大河「……ふっ。竜児、聞いた? わたしたちって、どうやら周りから見ると疲れてるらしいわよ?」

竜児(……そうらしい、な。別にいつもと変わりないようにしてるつもりなんだが…)

大河「……気にしなくていいわよ。あんなの、特にどうだってならないだもん」

竜児(………)

大河「なに黙ってんのよ竜児」

竜児(……いや、お前が疲れてるって気付いてやれてなかったなって思ってさ…)

大河「そんなこと? 当たり前でしょ、アンタの前で私が疲れてた顔したら……」ごそ…

大河(……アンタまで、疲れた表情させそうじゃない)

竜児(………)

大河(私とアンタ、大河と竜児。それはいつだって同じでしょ)

竜児(…ああ、そうだな)

大河(どんな関係になったって、それは変わらない。そう決めたはずだから)

竜児(大河……)

大河(竜児、手を出して)

竜児(ん、おう)すっ

大河(……)ぎゅっ……

竜児(……お前、頬冷たいな。なんか)

大河(ずっと外の様子見てたから。竜児のことみてた)

竜児(……なんだよ、サッカーしてたの見てたのか)

大河(そうよ。悪い?)

竜児(わるかねぇさ。かっこよかったか?)

大河(まぁまぁね)

竜児(そら光栄だ)

大河(……竜児。ん……)

竜児(……大河…)すっ…


一時間後

竜児「……はっ!? 寝ちまってた!?」

大河「……なによ今更」


竜児「いや、なにか色々と夢中になりすぎて飛ばしまくってた気が……!」

大河「へ、変態野郎……!!」

竜児「いや、そういう意味じゃなくてだな……ってあれ?授業は?」

大河「…さっき先生が保健室に来たから、わたしが色々と誤魔化しておいたわよ」

竜児「お、お前が……?」

大河「……なによ、わたしが嘘が苦手だと言うワケ?」

竜児「いや、こうやって保健室にいるってことは上手く嘘を付けたんだろうって思うが……」

竜児「……その、なんだ。シャワーとか大丈夫か?」

大河「もう済ませたわよ。部活とかで使う奴で」

竜児「お、おう。そうか……なんかすまん」

大河「べっつにぃー。終わったら終わったで急に寝ちた奴に、なにも思うことはあっりませーん」

竜児「おう……本当にすまん」

大河「……ふん、そしたら今日の晩御飯、豪華にしてくれたら許してあげる」

竜児「……とんかつで二枚だ」

大河「四枚」

竜児「ぐ……」

大河「あーあ、一人でこそこそと……シャワー室まで行って、アンタの色々なものを洗い流すの大変だったなぁー」

竜児「さ、三枚だ!! 泰子にもやる分を考えるとそれしかダメだ!! どうかそれで勘弁してくれ!!」

大河「……とんだ下衆犬だよ……この私をとんかつ三枚で釣ろうなんてね…」

竜児「わかった!!明後日もお前の好物にしてやる!!それでどうだ!?」

大河「………」

竜児「………」

大河「ま、いいわよ。許してあげる」

竜児「……ふぅ」

大河「じゃあ、決着ついたところで。そろそろ行くわよ授業に」

竜児「おう……どうすっかな。食費……俺の分を差し引いて……」

大河「くよくよ悩むんじゃない!!」げし

竜児「いてぇっ!?」

教室

北村「おっと、高須。戻ったか」

竜児「おう、いや、心配掛けてすまねぇな。
   聞くとお前も俺の仮病の嘘をついてくれたらしいじゃねぇか」

北村「なぁに、どうってことない。これも生徒会長の務めだ」

竜児「……関係ないよな、それ」

北村「それよりか、高須……今朝よりもスッキリした表情になってるな」

竜児「え、そうか?」

北村「そうだな、まるで一仕事終わったような……まさか…高須…お前……!」

竜児「え!? いやいやいやそうじゃなくてだな北村ァ!? えっとそのなんていうかだな……!!」

北村「……魔法少女の変身ポーズを…取得したな……?」

竜児「何言ってんだ、お前」

北村「ははは。冗談はさておき、その様子だとよく眠れたようだな」

竜児「そう、だな。よく眠ってたみたいだった」

北村「そうか。なら逢坂がよくしてくれたんだろう。感謝しないとな」

竜児「……まぁな」

「あっれ~? 高須くん大丈夫?」

竜児「……おう、川嶋。もう大丈夫だ」

亜美「そうなのぉ。すっごく心配したんだよ~? だって急に倒れたっていうから~」

竜児「お、おう。そうだな、心配かけてすまねぇ」

亜美「ううん~……別にいいんだけどねぇ。それよりも高須くん、ちょっとこっちきて」

竜児「え、お、おう……」すたすた


廊下・自動販売機前

亜美「………」すたすた…

竜児「お、おい川嶋……何処まで行くんだよ」

亜美「……」すた

竜児「……どうしたんだ? こんなところまで連れてきて……」

亜美「……」くるっ

亜美「えいっ☆」ぷしゅー

竜児「え、なん──ごほっ?!ごほごほっ!!」

亜美「そーれっ。それれ~」ぷしゅ~

竜児「ちょ、おま、なに吹きかけてんだ川嶋……!?」

亜美「ん~……これぐらいかなぁ。よし、おっけー高須くん。これで匂い取れた」

竜児「げほッ……なんだよそれ、急になにしやがんだ……」

亜美「……ねぇ高須くん、あのチビとイチャコラすんのはもう──大丈夫だけどね」

竜児「え……?ごほごほ……」

亜美「そうやって安易に匂いとか──身体に染みつかせて学校歩くのはどうかと思うよ?」

竜児「……なに、俺、変なにおいしてる?」

亜美「うーんと、可愛らしく言うなら……女の子の匂い?」

竜児「お、おう……それはなんともまぁ……」

亜美「ナニ保健室でやってたかは知らないけど~……亜美ちゃんは感心しないなぁそういうのぉ」

竜児「す、すまん……なんか気を使わせちまって…」

亜美「……ん、別にいいよ。ただあたしだけが先に気付いてよかったね」

竜児「お、おう。そうだな」

亜美「…………」

竜児「…………ど、どうした川嶋。まだなんかあんのか?」

亜美「ねぇ、高須君。聞いていいかな」

竜児「なん、だよ。どうした…?」

亜美「まぁ、ちょっと気になることがあって───あ、櫛枝さんだっ」

竜児 びくっ

竜児「っ……!」くるっ

竜児「…………」

竜児「……。川嶋…」

亜美「う・そ☆」ぐいっ

竜児「……お前…」

亜美「もうっ。そんなに怒らなくても良いじゃない、ただの気まぐれ。ほら、あたしはいつだってそうでしよ?」

竜児「………」

亜美「亜美ちゃんはいつだって、なんだって知ってるの。だからこうやったらいいなぁとか、
   どうだったらいいなぁっていつも思ってる」

亜美「──だから高須くん、なに怯えてるの?」ぎゅう……

竜児「……おい、腰に抱きつくなよ…」

亜美「んー? なに、よく聞こえない」

竜児「っ……だから、抱きつくなって……ッ!!」

亜美「聞こえないよ、全然」

竜児「川嶋……ッ! いい加減にしないと怒るぞ……ッ」

亜美「………ねぇ、高須君」

竜児「……なんだよ」

亜美「亜美には、高須君の声が全然聞こえない。まったく聞こえないんだよ」

竜児「……嘘つけ、聞こえてるじゃねぇか」

亜美「ううん、聞こえてない。高須君の声が……心の声が聞こえない」

竜児「なん、だよ……北村じゃねぇけど、本当に魔法少女にでもなったのか川嶋」

亜美「…そうだね、あたしは魔法少女亜美たん。いつも人の悩みを聞いて陰でこそこそ頑張る少女」

竜児「おい、なにか語り始めたぞ……」

亜美「健気で可憐な亜美たんは、いっつも一人で隠れて人々の悩みを解決しているの」

竜児「……それ、自分で言ってて恥ずかしくないか?」

亜美「恥ずかしくないよ? だって本当のことだもん──だけど亜美たんはいっつも不器用で、
   周りを幸せにしようとするんだけど、全然ダメ。いっつも失敗」

竜児「…………」

亜美「でも、魔法少女亜美たんは頑張るの。失敗でも、それをどうにか見繕って綺麗にして。
   誰もが心配なく頑張れる幸せな空間にする……でも、それ自体が失敗だった」

竜児「川嶋……」

亜美「だからそのうち願いは……一人だけを幸せにしたいになってたの。だから私は心から決めて、頑張って、超頑張って……
   それで得たのは───バットエンド。誰もが幸せをと願ったのに、何時の日か変わってしまった願いは…」

亜美「彼と一緒に、あたしを苦しめ続ける」

竜児「……それが魔法少女亜美たん、か?」

亜美「そうだよ。可愛いでしょ?」

竜児「そう、か?……俺にはそう思えないな…」

亜美「そうなの? 高須君はその魔法少女は可愛く思えない?」

竜児「……俺には、その魔法少女は可哀そうにしか思えない。
   一人でずっと頑張ったのに、それが報われないまま終わりだなんて……俺は嫌だ」

亜美「…そう。でもね高須君、その魔法少女は……ひとつの魔法の言葉をかけてあげれば幸せになれるんだよ」

竜児「魔法の言葉……?」

亜美「うん、そう──それはね、とっても幸せに満ちた言葉で、どんな辛いことでも跳ね返してくれるほどの強い言葉。
   だけどね、それはとっても──重たくて口に出せれない」

竜児「………」

亜美「力強くって、力あふれる言葉なのに……でも、使いずらい。確かにそこにあるのに、誰もが見て見ないふりをする。
   ……だって重たいから、自分ではとっても使えないから」

竜児「……そんなたいそれたモノを亜美たんは欲しがってんのか……」

亜美「そう、だね。確かにそうだよ。亜美タンは欲しがってる。そうすればバットエンドじゃない──私はね」

亜美「……ねぇ、高須くん。最後に聞いていいかな?」

竜児「……なんだ、川嶋」

亜美「今でも、櫛枝さんのこと好き?」

おうid変わっとる
うんこいってきま

竜児「………」

亜美「………」

竜児「……俺は──」ぱしっ

亜美「──やっぱダメ。いっちゃダメ高須君」

竜児「………」

亜美「…ごめんね? ちょっと今のは、さ。あ、亜美ちゃん揺れかけちゃったから……ね?」すっ…

竜児「……川嶋…?」くる…

亜美「……高須君、ごめんなさい。変なこと言っちゃって」

竜児「お、おい……大丈夫か? なんか鼻声になってるぞ…?」

亜美「えっとその……あれだよ、さっきのスプレーが鼻に入ったかもね……ぐす。じゃあ高須君、またね」たっ

竜児「おいっ……川嶋…っ!」

竜児「川嶋………」

竜児「………」

竜児「………」

竜児「俺は──俺は、さっきなんて言おうとしたんだろうか」

竜児「………」

竜児「……櫛枝、か……」

放課後

大河「りゅーじぃー」だらん

竜児「おう……大河、帰るか」

北村「高須ー!んじゃ明日な!」

竜児「おう、お前も生徒会がんばれよー」

大河「……竜児、なんかまたお腹痛くなってきた…」

竜児「……マジかよ。そしたらなんか帰りに薬買っていくか」

大河「……」ふるふる

竜児「なんだよ、薬いらないのか?」

大河「なんかね、すっぱいもん食べたい」

竜児「……すっぱいもの?
   だったら帰ってから家にある泰子の特性うめぼしでも食べろよ」

大河「うん……うん?」

竜児「どうした?」

大河「……吐きそう」

竜児「待て。冗談だろ?」

大河「ッ…ッ…」びくんびくん

竜児「まて!!なんかそれインコちゃんで見た事あるぞその動き!!背中がびくんびくん動くあれ!!」

大河「ッ───」

竜児「──ぉおおおおお!!!トイレにいってこぉおおおおい!!!」

トイレ

竜児「おーい……大河ぁー! 大丈夫かー?」

竜児「……返事がねぇ。なんだよ、ただえさえこの面で女子トイレ前でたってんのもつらいのに……」

竜児「……ま、つらいのは大河の方か。仕方ない、ここは頑張って待つしかないな」

竜児「……それにしても、急にどうしたんだアイツ。お腹痛いやら、吐きそうになるやら……」

竜児「それに、すっぱいもの……とか……たべたく、なる……」

竜児「…………」

竜児「え、マジで?」

個室

大河「うぉおおえぇぐぇへっへぇ……」

大河「っ………」ジャー…

大河「……例え女の子だとしても、出しちゃいけないような声出した気がする……わたし…」

大河「……というか、わたしどうしちゃったんだろ……そこまで生理は酷くない方だと思うんだけど」

大河「………」

大河「あれ? 生理?」

ガンガンガン!!

大河「に、にゃあ!?」

竜児「た、たた大河!? 大丈夫か!? お前大丈夫かよ!!」

大河「だ、だれだテメー不審者ァー!! ここが女子トイレだとわかっての犯行かァー!?」

竜児「ち、ちげーよ俺だよ竜児だ!! びびってねぇで開けろって!!」

大河「だ、だれがびびってなんか……あれ? 竜児?」

竜児「そうだ竜児だ、だからここ開けてくれ!! 頼む!!」

大河「え、言われなくても開けるっていうか……」かちゃ

竜児「大河ッ!!」がちゃ!!

大河「え、ちょ、本当に竜児っ? なんでアンタ女子トイレに……」

竜児「そんなぁこたぁーどうだっていいんだよ!!」

まじやばいうんこごめん

うんこに謝るな

>>143
ごめちょっ笑ったらお腹いたうんこでるごめん

竜児「それよかお前!!………も、もしか、もしもしかしてよ……」

大河「…噛みまくってるわよ竜児」

竜児「すまん、とりあえず落ちつく……………ふぅ。つぅかめっちゃお前の口周り汚ッ!」

大河「ッ~~~!!な、なにみてんのよっ!!!」ごしごし!

竜児「ぎゃぁあああ!!なに制服の袖で拭いてんだよー!!」

大河「あ、あんたがみるからでしょ!!わたしは悪くない!!」

竜児「悪いわ!!」

先生「ごらぁー!!何女子トレイで騒いでるんだー!!!」

大河「……やばいわね。竜児、ここ何階?」

竜児「…二階だ。窓の外は体育館裏」

大河「なるほどね……竜児、めくらましは頼んだ」

竜児「おうっ……ってマジか!?」

帰宅路

竜児「いてて……マジで死ぬかと思った……」

大河「ふんッ。あれぐらいの高さでなにいってんの」

竜児「二階だぞ!? した土だったからいいものの……それよか、カバンとか靴とか置きっぱなしだ…」

大河「財布は?」

竜児「…一応、ある。携帯もあるし、後で北村にでも連絡してから持ってきてもらうか……はぁ」

大河「なら、いいじゃない。万事おっけーよ!」

竜児「どこがだよ………ってあ!!」

大河「な、なによ? 急に大声あげて──」

竜児「そ、そそそそうだよ大河ぁ!? お前大丈夫かよ!!」

大河「はぁ? なに、わたしがどこか怪我でもしてるようにみえるの?」

竜児「ちげーよ!!そうじゃなくて、お前じゃなくて、俺のとかじゃなくて、その……!!」

大河「お前の?俺の?」

竜児「……赤ちゃん?」

竜児「………」

大河「………」

竜児「………」

大河「………ぶっほ」けらけら

竜児「な、なんで笑うんだよ大河……ッ!そこは驚く所だろ!?」

大河「い、いや……だって……あ、あんた……ぶっ……ぶっはははっはっは!!」

竜児「いやいやマジだって!だってほらお前、お腹痛いって言ってただろ!?」

大河「で、でもだからって……いきなり赤ちゃんとか、…真面目な顔して……くっ」

竜児「ば、馬鹿言うんじゃねぇ! それにすっぱいもんとか食べたいっていってたじゃねぇかっ」

大河「くくっ……なに、そしたら私はすっぱいもんとか食べたくなったりしちゃ……妊娠ってワケ?」

竜児「くっ……それじゃあさっきの吐き気はなんだよ。あれはなんだ、単なる生理現象ってわけか?」

大河「あたりまえでしょうに。あれは女の子ではけっこうあったり……する…もん……」

竜児「…大河?」

大河「……まって。わたし何時、生理来たっけ」

竜児「お、おい……どうしたんだ急にぶつぶつ…」

大河「ひぃふぅみぃ……」ぴこ、ぴこ

竜児「なにか数え始めたぞ……」

大河「………」

竜児「た、大河?」

大河「やばいマジかも」がくんっ

竜児「おおう!?急に膝着くなよ…!痣が出来るぞ…!」

大河「りゅ、竜児……」

竜児「なんだよ……あ、よかった。血はでてねぇみたいだ…」

大河「妊娠、してるかも……」

竜児「……。いや、うん、だから俺もいったじゃねーかよ……」

大河「……言ってたわね、うん」こくこく…

竜児「と、とりあえずは今日は帰るぞ大河……おぶっていくから背中乗れな」

大河「……」こくこく……

自宅

大河 ぼぉー

竜児「ほら、お茶だ。うめぼしもつけとくぞ」

大河 こく…

竜児「………」ずずっ

大河 もちゃもちゃ……

大河「すっぱ……」

竜児「だろ。泰子のうめぼしは最高にすっぱい」

大河「お茶お茶……ずずあっつィ!!」

竜児「ば、馬鹿……ゆっくり飲めよ!」

大河「……竜児、みず…」

竜児「はいよ」

大河「……」

大河「……わたし、赤ちゃんできたんだ……」

大河「…そう、なんだ……」

竜児「ほら、水だ。むせないようにゆっくり飲めよ」

大河「うん……」

大河「こくっ……こくっ……ごぱぁっ!!」

竜児「絶対にやると思った! ほらな! きちんとタオル用意しておいてよかった!」

大河「うっ……うう……鼻に入った……」

竜児「ティッシュティッシュ……ほら、鼻の中拭けよ。あんまり突っ込むなよ。鼻血だすから」

大河「わかった……ふ、ふんぐっ……」

竜児「待て、やっぱ俺がやるから手を離せ」

大河「……。ほれ」ずぃ

竜児「…なに偉そうに顔面こっちに向けるんだよ。ほら、もうちっとこっち向け……そうそう」

大河「………ふぇ、ひゅうじ…」ごしごし

竜児「なんだよ……」

大河「…ほろものはまふぇ、はんにふる?」

竜児「……まだ早くないか、それは」

大河「……ほぉう? わたひぁほうはおもふぁいないふぇ……ふぇ……ぶぇっくしょん!」

竜児「おう……俺の右手をなんて悲惨なことにしてくれたんだお前は……」

大河「ふぉめん……」

竜児「別にいいよ。それよか、もっと大事なことがあるだろ」

大河「…………」

竜児「学校とか、色々だ。お前が妊娠したってことは……まだ確証はないけどよ。
   それでもこうやって色々と症状がでてんなら、まずは病院だ」

大河「…………」

竜児「検査とかしてもらって、ちゃんとした答えがでてから……」

大河「……ずずっ。やっちゃんに言うの?」

竜児「…ああ、そうだ。泰子に言う」

大河「………大丈夫?竜児」

竜児「な、なにがだよ。俺は大丈夫だ」

大河「…本当に? 頑張ってやっちゃんに言える?」

竜児「あ、当たり前だ。たとえなんて言われようとも、ちゃんと言うぞ」

大河「そう……私が言うのもなんだけど、やっちゃんすっごく喜びそうね」

竜児「そう、だな……」

大河「うん。それと同時に、すっごく怒りそう」

竜児「…………」

大河「まだ妊娠したってわかったわけじゃないけど……それでも、やっちゃんは知ってるんだと思う。
   いつかはこうやって悩んで、二人して一緒に自分の所に言いに来るんだって」

竜児「まぁな。だって泰子は超能力者だもんな……」

大河「なにそれ? ま、確かにやっちゃんは不思議な雰囲気を感じるけどね」

大河「──でね、竜児。これは私からの約束なんだけど」

竜児「おう、どうした?急に」

大河「あのね竜児。私はどんなことがあっても……竜児について行くから」

竜児「おう…」

大河「いっぱいいっぱい辛いことがあっても……竜児から離れない。そんな私を約束して」

竜児「……わかった。これから先、ずっと俺の後についてこい大河」

ふろはいってきま
十二時にはもどります

うんこもいってくる
すぐもどってくるよ

大河「………」

竜児「………」

大河「……ねぇ、竜児…」すっ…

竜児「大河……」

がちゃ

北村「おーす! きぃたぞきぃたぞきぃたむらくぅんー……魔法少年北村祐作、ここにさんじょ」

竜児「………」

大河「き、きたたむらむら……ッ」

北村「高須、すまん」

竜児「……ああ、そこにカバン頼む」

北村「おう、了解した。では、お二人とも……アデュ!」ばっ!がちゃん!

竜児「本当にあいつはなんていうか……不幸な奴だな」

大河「きたた……」

竜児「……おーい、大河ー。もどってこーい」



泰子「ぐっひゅー! やっちゃんのおかえりだよー!」

竜児「……おう。夜飯食べずに頑張ったな、泰子」

泰子「なになにぃ~……りゅうちゃん起きて待っててくれたろぉ~……えへへ、ありがとぉ」

竜児「いや、いつもまってるだろ俺は。そら、はやく化粧落とすんだ。そこに置いてるから」

泰子「そのまえにトイレ~」

竜児「トイレで寝るなよー。後カギを閉めるなー」

泰子「はぁーい」

竜児「……ふぅ。毎度よくあんだけ酔えるもんだ……」

竜児「…………」

竜児「……大河はちゃんと寝たのか心配だ」

回想

大河「とりあえず、今日は自分の部屋で寝る」

竜児「お、おい……大丈夫かよ?」

大河「なぁーにがよ。別にまだ生む直前でもあるまいし」

竜児「で、でもよ……母身はたいせつにしろってよく言うし……!」

大河「黙ってなさい野郎が」

竜児「お、おう……」

大河「……たかが野郎の分際で、なにをわかったことをいってんのよ。
   これは私の身体。一番、私がわかってんの。男が口を出すなっての」

竜児「……心なしか口が悪くなってないか大河……いやまぁ、北村に見られたのはあれだけどよ…」

大河「ち、ちがわい!!……んで、今日は晩御飯いらないからね」

竜児「飯もいらねぇのか? いや、本当はすっげー具合悪いとかそんなんじゃ……」べたべた…

大河「あぁー!!もう、うっとしいぃ!!なんでアンタがへろへろしてんのよ!!もう帰るから!!」

竜児「た、大河ァー!! 暖かくして寝ろよぉ~!!」

回想終わり

竜児「し、心配だ……あいつのことだから、腹出して眠ってそうだ……!!」

竜児「………」

竜児「よし、見に行こう」


逢坂宅・玄関前

竜児「……合鍵を入れてっと」がちゃ

竜児「たいがぁー……入るぞー……」

竜児「……。返事が無い、よし入ろう」

竜児「……」すたすた…

竜児「──うっ。なんだこの匂い……まさかアイツ……ッ!!」がらり!

竜児「ぎゃー! キッチン周りがシンクの汚れとかそういうレベルじゃないぐらいに汚れてる!!」

竜児「おっと……収まれ高須右手よッ……今はその欲望を解き放つ時ではないからな……ッ!!」

竜児「……ッ……まってろ、キッチンの汚れ。お前は明日が命日だ……さて、寝室だ……」

寝室

竜児「たいがぁ……起きてるかー……」

「すぅ……すぅ……」

竜児「……ん、寝てるようだな」

竜児「………」こそこそ……

竜児「………」そっ…

大河「くひゅ~……すやすや…」

竜児「……えらい幸せそうに寝てやがんなコイツ。つぅか、よくこんなふわふわな服で寝れるな…熱くないのかよ…って」


竜児『た、大河ァー!! 暖かくして寝ろよぉ~!!』


竜児「……そうか、あの言葉ちゃんと聞いてたのか……大河、ごめんな」なでなで…

竜児「ってめっちゃ汗かいてるぞお前!? これはダメだろ!!」

大河「うぅ~ん……うるさい……ッ」

竜児「ぐっ」ぱしっ

大河「ううん……? なに、今、竜児……?」

竜児「……」

大河「……ううん……すやすや……」

竜児「……寝ちゃうのかよ。もうちっと危機とか感じろよそこは……」

竜児「…………」

大河「すやすや……竜児ぃ~……そこのしょうゆとって~……」

竜児「……はぁ。少しタオルで拭いて行くか…」

数分後

竜児「……よし、こんなもんでいいだろ。少し軽めの服装に着替えさしたし」

大河「むにゃむにゃ……」

竜児「……大河、頑張れよ。俺も頑張るから、お前も頑張れ」

竜児「…………」

「それはいささか、今さら感があるけどな。……高須、本当によかったな」

「……あと高っちゃんもさー、色々と話してくんねぇし。色々とあったはずなのにさぁ~……あんな疲れちまった顔してさ。
 ほら、俺馬鹿だからさ、隠れて慰めると察するとかわかんなくてよ……」

「──だから高須くん、なに怯えてるの?」

竜児「なぁ、大河……俺は──今、幸せなのかな」

竜児「色々なことをやってさ、今はお前と一緒にいる。確かにそれはそうだ……
   でもよ、それと一緒に俺は……色々なモンを無くしちまったんじゃないかって思う」

竜児「別にそれが悪いってワケじゃねぇ……自分で望んでやったことだしな。それでいいと思う。
   ──でもよ、それが俺たちだけじゃない他人に思われてたら……どうなんだろうな」

竜児「…………」

竜児「それは単に逃げてるだけじゃないかって……俺は思う。頑張って頑張った先に会った答えだとしても、
   それが良いんだって思い続けても……やっぱり他人と自分は違うんだ」

竜児「──だから、俺は思うんだよ。大河」

竜児「俺たちは確かに幸せだ。なにがあっても、なにがおこっても幸せであり続ける。そうじゃなきゃいけない」

竜児「俺たちは逃げ続けなきゃいけない……そう、そんな道しか残ってないんだ」

竜児「……、どうなんだろうな。この答えは。俺にはさっぱり……」

竜児「……わかんねぇよ……」

竜児「………」

竜児「……もう帰るな、大河。風邪なんか絶対にひくなよ」

竜児「………」すっ…

竜児「……ちゅ」

竜児「……。よし、いくか───」

竜児「──ん、これは……」

竜児「……櫛枝の、写真……?」

竜児「なん、で枕もとに……いや、俺も驚き過ぎだろ……だって、そんなの…」

竜児「……当たり前、じゃないだろ……大河…」

竜児「………」

竜児「大河……」

「大河大河……うっさいわねアンタ…」

竜児「おおう!? お、起きてたのか……っ?」

大河「あんだけ身体をこねくり回されたら、誰だっておきるっつーの……ふわぁ…やっぱり来たわね」

竜児「なん、だよ……俺が来るのわかってたのか?」

大河「ったりまえでしょ。それぐらいわかってなきゃ、アンタの子なんて孕まないわよ」

竜児「……お、おう……そうか…」

大河「なに照れてんの? ちょっとアンタ本当に馬鹿」

竜児「馬鹿言うなよ……それともうちっと、オブラートに包んだ言い方をしてくれ。
   こう……貴方と私の愛の結晶……みたいな?」

大河「なんかやだ」

竜児「俺もやだ」

大河「別に言い方はどうだっていいでしょ。
   私は……もしかして生まれてくるかもしれないこの子を、可愛いと思えば、それで」

竜児「そう、だけどよ……まぁ、そうだな。確かに可愛いと思えばそれでいい」

大河「……アンタに似ないことを心底願うけど」

竜児「それはお互い様だ」

大河「そうね……例えば私の容姿で、アンタの性格っていうのが完璧じゃない?」

竜児「……おう、軽く考えてみたが……完璧じゃねそれ?」

大河「そうそう! だからかわいー女の子で、生真面目で、他人のことを何時でも思いやって、
   馬鹿みたいにはしゃいで、料理も上手くて、勘違いされやすくて………」

竜児「あとは……とってもいじっぱりで、なきむしで、がんばってるくせに報われなくて、
   勘違いされやすい奴……」

大河「なによそれ、わたしのこといってるでしょ!」

竜児「お前もだろ」

大河「私は一応、褒めた感じにしたわよ!!アンタはなんか悪ぐちっぽい!!」

竜児「気のせいだ」

大河「……まぁいいわよ。そんな感じで、めちゃくちゃ人生に苦労しそうな子が生まれそうね」

竜児「……あれ? 大丈夫かこれ?」

大河「大丈夫よ。だって、私たちがいるもの」

大河「生まれてくる子に、たーんと愛情を注ぐの。そうやって生まれたこは絶対に良い子のはずよ。
   だってそうじゃなきゃ、私は神を噛み殺すわ」

竜児「……なんか上手いこと言ったようだけど、全然説得力無いぞそれ…」

大河「ノリでうけとんなさい。……だからね、竜児。私たちは生まれてくる子に幸せをあげなきゃいけない。
   溢れるぐらいに、抑えきれないぐらいに、それもうたーくさん与えてあげるのよっ」

竜児「そうだな……確かに、そうじゃなきゃいけねぇな」

大河「でしょ! だからその分、私たちはちゃんと……幸せの補充をしなきゃいけない」

竜児「補充…?」

大河「そう、補充。今でも確かに幸せだけど……それだけじゃダメ。全然足りない。
   だからそれをもらいに、受け取りに、わたしたちは行かなくちゃダメ」

竜児「……。大河、まさかお前……」

大河「行くわよ」

竜児「……でも、それは………」

大河「行かなくちゃダメ、竜児。いい?きいて」

竜児「……いやだ、聞きたくない…俺は……」

大河「ダメよ! 聞きなさい、ちゃんとその垂れた耳をおったててわたしの言葉を聞きな!」

竜児「──大河……」

大河「──明日、学校に行ったら直ぐに病院に行く」

竜児「ッ……!」

大河「もちろん、アンタもよ。……それと北村君、あとばかちーも」

竜児「お前……本当に言ってんのか……?」

大河「本気よ。本気じゃなかったら、私はそんなこといわない。絶対に」

竜児「…………かよ…」

大河「なによ」

竜児「……お前は、辛くないのかよ……」

大河「辛くないわよ」

竜児「うそ、つけ……馬鹿野郎。お前が一番、つれーくせに……」

大河「馬鹿言わないで。私は──辛くない、こうやって生きていけてるし、なにも囚われずに…」

大河「竜児と幸せになってる」

竜児「…………」

大河「辛いとか、辛くないとか、もうそんなのどうだっていい……私、いったよね?
   過去のことなんかどうだっていい。今は今よ」

竜児「……だが、それだと俺らは……」

大河「言っちゃダメ竜児。どうだっていいって私は言ったけど、確かにそれは……薄情だけど、
   ──囚われたまんまじゃ先も見えないから」

竜児「……お前、どうしてそんな……」

大河「……ん、なに竜児?」

竜児「……いきなり、強くなっちまったんだよ。俺が知ってる逢坂 大河は……もっと弱い奴だったぞ」

大河「……そうね、アンタの言う通り、わたしはすっごくクヨクヨしてて、表ばっか強気になって、
   肝心なことがちゃんとなってない奴だった」

大河「保健室でいったあの──どうだっていいって言葉も……本当はただのカラ元気だった」

大河「私も……竜児と同じように、目の前にある幸せを形どるのに必死だった。
   隠れて見えない幸せを求める様に、いっつもアンタと求めあってた」

竜児「………」

大河「──でも、それじゃダメなのよ。わかったの、竜児。それがだめなんだって。
   ちゃんと決めなきゃいけないんだって」

大河「だって──もう、見えたんだもん。幸せが、ここにあるって。私たちの幸せの形が
   ちゃんとここにあるって。見えないとかじゃない、私の中にちゃんとあんのよ?」

大河「──竜児、決めて」

竜児「っ………」

大河「ここまで言った後であれだけど、私はアンタに従う」

竜児「大河……」

大河「言ったでしょ? 私はアンタについて行く、何処にだって。辛くきつくても、
   私はアンタと一緒」

竜児「…………」

大河「悲しくて、つらくて、死にたいって思っても……一緒にいてあげる。
   わたしと、あんたと──この子と一緒に」


大河「………」

竜児「………」

大河「………」

竜児「……俺は───……」


~~~~~


病院

北村「──うむ、許可はおりたぞ。三人とも」

亜美「……お疲れ祐作。なに、アンタっていっつも見舞いに来てたんだ」

北村「まあな。元は同じ球技を慣れしたんだ仲だからな」

亜美「そ。強いのね」

北村「腕っ節がか? ははは、そりゃーいまさらってもんだ」

亜美「だれもいってねーつぅの……さて、御二人さん。行けるみたいよ」

大河「そう、わかったわ」

竜児「……おう」


病室前

北村「ここだ」

竜児「……そう、か。ありがとな北村」

北村「なーにお安い御用だ。これも生徒会長の務めだ」

竜児「……そう、か…」

北村「──そして、お前の友達である務めでもあるしな」

竜児「北村……」

北村「あと、逢坂もな!」

大河「ん。ありがと北村くん」

亜美「……とりあえず、今は二人で行ってきたらどお?」

竜児「……川嶋、お前は後でいいのか?」

亜美「……。亜美ちゃんは後でいいの、つもる話もあるしさ」

大河「私もばかちーは最後でいいと思う。でしょ、ばかちー」

亜美「……ちっ。うるせチビ…じゃあ、先に帰っててよね。あたしも終わったら勝手に帰るから」

北村「……。そうだな、じゃあ亜美。高須たちが終わるまであっちで談笑でもしとくか」

亜美「はぁ? 超嫌なんですけどー」

竜児「お、おう……大河、本当にいいのか本当に? アイツが終わる時まで残ってなくて…」

大河「……見られてたくないんでしょ。泣き顔」

竜児「……ああ、そうか……」

大河「……んじゃ、行くよ竜児。ドア開けてちょうだい」

竜児「っ………おう、開ける」ぐっ

大河「……」

竜児「ッ………」

大河「……」ぎゅ…

竜児「──大河…?」

大河「一人じゃダメなら、私も一緒に開ける。それでいいでしょ」

竜児「……。ああ、わかった。一緒にあけよう」

がらり……


ぴー…ぴー…ぴー…

竜児「──……よう、櫛枝」

大河「──みのりん、元気にしてた?」

竜児「…最初にあってから、だいぶあってないけどよ…何時も通りか、可愛くてびっくりだ」

大河「…ちょっと。それ私がいるのに失礼じゃないのよ」

竜児「え、あ、当たり前だろっ……お前が一番に決まってる、ぞ」

大河「ばっ、ちょ、みのりんの前で変なこと言わないでよ!!みのりん暴走しちゃうでしょ!!」

竜児「そ、そうか? いやだって、あの時の顔とかすっげー可愛いし……ってハッ!?」

大河「ぎ、ばば、馬鹿犬ぅ!! こんなところでなに、アンタは…ッ!!発情犬!!」

竜児「じ、事実を言ったまでだぁ! それにここは病院だからちょっとは静かにしろ!!」

大河「はぁーっ……はぁーっ……そうね、確かに叫んだ私もわるかったわー……っ」

竜児「お、おう……わかってくれたなら、よかった…」

竜児「とりあえず、そこに座るか……」すと

大河「そうね……よいしょ」すとん

ぴー…ぴー…ぴー…

竜児「…………」

大河「──ねぇ、みのりん。
   わたしね、ちゃんとこうやってみのりんと会ったのって……修学旅行前だよね」

大河「私がヘマしちゃって……雪やまのなか落ちちゃって。みんな騒いでたらしくて…
   そんときのこと、ほとんど覚えてないんだけどね」

竜児「…………」

大河「聞いた話だと、まっさきに助けに行こうとしたのって……みのりんらしいじゃない?
   わたし、それを聞いた時……すっごく嬉しくて。本当に涙が止まらなかったんだよ」

大河「──でもね、その後の方がもっと……涙が止まらなかったんだよ…」

竜児「──櫛枝、お前は本当に凄い奴だと思う。確かに……あの時、俺は少し躊躇をした。
   大河らしい光を見つけて、確かにちょっと迷ったんだ……」

竜児「だけどお前は、そんな感情も無視して……櫛枝は、お前は、突っ込んでってた。
   友達の為って、自分を犠牲にしてでも行くって、そんな感じがした……」

大河「本当に感謝してるの。みのりん、こんな馬鹿な私を助けてくれて……
   本当に本当に、返しきれないぐらいに感謝してるの」

ぴー…ぴー…ぴー…

大河「……」

竜児「──俺も、お前に謝りたかった。ちゃんと俺さえ行ってれば、お前になにもおこらなかったんじゃなかったって
   何度も何度も自分を恨んだ。死にたいって思ったし、お前が……いつか起き上がって、俺を罵倒してくれんのを待ってた…」

竜児「……そのうち、お前の見舞いに行くのが辛くなってきて……いつまでこんなことが続くんだって、俺は……俺は…
   ……その怖さから、お前から……逃げたんだ…っ…」

竜児「……だって──ごめん、という言葉が……こんなにも軽いて思わなかったんだよ。
   だから、だから……俺はお前から逃げたんだ。いつまでも謝り続ける恐怖から、そんな乾いた現実から……俺は…」

大河「……私も一緒。みのりん、私も助かって。いの一番にみのりんの所にいったよ。
   そのときの慌てようって言ったら、膝に一生消えないくらいの傷ができたぐらいに」

大河「そうやって、着いた場所には……寝たきりのみのりんがいた。
   まるで眠ってるように、ぐーすか授業中に眠っちゃってるみたいに寝ているみのりんがいたの」

大河「でもね、そのみのりんは起きなかった。悪戯書きしても、わきをくすぐっても、髪をみつあみにしても……
   みのりんは起きなかった。ぜんぜん……起きてくれなかった」

大河「何度も何度も、お見舞いに行ったよ。そのたびに今日起きた事とか、色んな事を話したよね。
   ばかちーがまた煩いとか、北村君が筋肉凄かったとか──」

大河「──私と、竜児が、付き合ったとか」

大河「わたしはいっつもみのりんに言ってたよね。
   みのりん、なんで起きないの? 竜児が本当に……私の彼女になっちゃうよって」

大河「……みのりん、こんな私を、心から恨んでる?
   なんの決着もつけないまま、わたしが竜児と付き合ったこと……恨んでるはずだよね」

大河「そう、だよね………」

竜児「大河……」

大河「ううん、竜児。最後まで言わせて──ねぇ、みのりん」

大河「わたしは……わたしはねみのりん──竜児のことが大好きなんだ!
   好きで好きでたまらなくて、いっつも一緒に居なくちゃ壊れちゃいそうになるぐらいに大好き」

大河「この気持ちは誰にも負けない自信があるの! たとえみのりんにだって負けやしない!」

大河「ぐしゅ……だ、だってね…そうしないと、みのりんに申し訳ないもんっ……!!」

大河「こうやって、わたしたちだけ幸せで……げほっ……じゅるる…なにもかも手に入れて…!!」

訂正


大河「何度も何度も、お見舞いに行ったよ。そのたびに今日起きた事とか、色んな事を話したよね。
   ばかちーがまた煩いとか、北村君が筋肉凄かったとか──」

大河「──私と、竜児が、付き合ったとか」

大河「わたしはいっつもみのりんに言ってたよね。
   みのりん、なんで起きないの? 竜児が本当に……私の彼氏になっちゃうよって」

大河「……みのりん、こんな私を、心から恨んでる?
   なんの決着もつけないまま、わたしが竜児と付き合ったこと……恨んでるはずだよね」

大河「そう、だよね………」

竜児「大河……」

大河「ううん、竜児。最後まで言わせて──ねぇ、みのりん」

大河「わたしは……わたしはねみのりん──竜児のことが大好きなんだ!
   好きで好きでたまらなくて、いっつも一緒に居なくちゃ壊れちゃいそうになるぐらいに大好き」

大河「この気持ちは誰にも負けない自信があるの! たとえみのりんにだって負けやしない!」

大河「ぐしゅ……だ、だってね…そうしないと、みのりんに申し訳ないもんっ……!!」

大河「こうやって、わたしたちだけ幸せで……げほっ……じゅるる…なにもかも手に入れて…!!」

大河「ぐすっ……ねぇ、みのりん。正直に話すから、怒らないできいてね?」

大河「私たちって……みのりんの、いや、違うね───みのりんから、逃げるために……付き合ったと、いってもいいの」

大河「こんなこといったら、みのりんすっごく怒るでしょ? でもね、そうしないとお互いに……
   もう本当に、だめになりそうだったから……」

竜児「……ああ、本当に俺と大河は元に戻れなくなりそうだった…。
   櫛枝っていう囲いに囚われて、なんにも動けなくなってたんだ」

竜児「……でも、そんな不純な付き合い方でも、好き合い方でも──今の俺なら、はっきりとお前にも言える」

竜児「櫛枝、俺は大河が大好きだ。この世で一番、なによりも好きで好きでたまらない。
   細い腕だって、小さな背だって、全部好きだ。その口から出る言葉は全て独占したいぐらいに」

竜児「俺は、逢坂 大河を愛してる」

竜児「櫛枝……櫛枝、本当にありがとう。お前に心から感謝してる。軽い言葉だと思っていい、軽薄な奴だと思っていい。
   だけど……だけど、俺に言えるのはそれだけなんだ。本当に、本当に」

大河「わたしも──本当にありがとう、みのりん。私を助けてくれて、竜児と……付き合わせてくれて。
   本当に、ありがとう……みのりん」

ぴー…ぴー…ぴー…

大河「…それじゃ、行くね。みのりん」

竜児「お、おい……大河。あれは言わなくていいのか?」

大河「あれ?」

竜児「あれって……あれに決まってるだろ…?」

大河「──あーあれね、もう。せっかちね竜児は」

竜児「いや、そもそもそれを言いに来たんじゃないのか今回……」

大河「ま。それは次回にしよ──別に今回が最後のお見舞いってわけじゃないでしょ?」

竜児「ま、まあそうだが……それじゃあ次の時に、言うか」

大河「話のネタはいっぱいあったほうが、みのりんも喜ぶでしょ」

竜児「……そうだな。コイツはそういうやつだ」

竜児「──じゃあ、また明日。櫛枝」

大河「──じゃあ、また明日ね。みのりん」

がらり… ぴしゃ

竜児「………」

大河「………」

竜児「……これで、よかったのか」

大河「よくないでしょ。みのりん、多分カンカンよ」

竜児「…そうだな。起きたときが楽しみだよ」

大河「そん時は、頭を一発ぐらい殴られなさいよ」

竜児「お前もな」

大河「アンタもね」

「……ふふっ…」
「……ははっ…」

竜児「笑っちゃいけねぇとは思うが……やっぱすっげー楽しみでな」

大河「そうよ、楽しみなさい。みのりんが起きたらまず、めいいっぱいの幸せを……いち早く届けてあげるの」

竜児「どうやって?」

大河「……そうね、例えば……」

大河「生まれてきた赤ちゃんを、見せてあげるとか?」

竜児「……バッチシじゃねぇか!それ!」

大河「でしょ! だから検査に……うっ」びくん

竜児「な、大河!? どうした!?」

大河「うそ、マジで吐きそう……」

竜児「うそだろ!? これはもう病院に連れて行くしか……ってここだ病院!!」

北村「おーい、どうした高須──逢坂!? なんだその草食った犬みたいな動きは!?」

亜美「え、ちょっとアンタ大丈夫なの!?」

北村「た、高須…!? こ、これはいったいなんだっていうんだ……!?」

竜児「あ、いや、これはちょっとな……なんていうかその……」

亜美「──祐作、産婦人科に連絡。毎回、病院きてるなら場所わかるでしょ」

北村「わ、わかったぞ! まかせとけ!」びゅん!

大河「うっく……くく……」

亜美「大丈夫? 胸が苦しい? 吐き気が来るのに、なにも吐けない感じ?」

大河「っ…っ……」こくっこくっ

亜美「そう──そうなの、わかったわ。高須君、早く手ノリタイガーを背負って!!」

竜児「お、おう!」

亜美「ベットでもいい、とにかく楽な体制でいられるような場所を探して!!ここら辺でそんなのなかったから
   多分、上階か下階にあるはずだから!!」

竜児「お、おぉう!!」

だっだっだっ…!!


亜美「ねぇ、高須君……貴方は本当に頑張んなきゃだめよ」

竜児「……おう、わかってる!!」

亜美「魔法少女は言ってる──貴方は幸せになれたって、だからもう私の魔法はいらないんだって」

竜児「そうか!! 確かにそういってるんだな!?」

亜美「うんっ……だから、私も──魔法少女亜美たんも、次の幸せにしたい人を選びに行くの!」

竜児「いいな! それだと万事おっけーだ!!」

亜美「あたりまえでしょー! だから高須君、貴方に最後の魔法の言葉をかけてあげる──」

竜児「なんだよ!!川嶋!!」

亜美「──逢坂 大河を幸せにできなかったら、亜美ちゃんがその幸せを盗みに来るよってね!!」

竜児「心配ご無用だ!! それはないからな!!」

亜美「……あたりまえだっつぅーの!」

竜児「──あ、あった! あのソファーとかいいんじゃないか!?」

亜美「……そう、ね。こういうときはベットがいいんだけど、勝手に使ったら怒られそうだし」

竜児「悩んでる暇はねぇ! ──よし、大河。具合はどうだ?」

大河「───」

亜美「……ね、ねぇ…これって白目むいてない…?」

竜児「た、たいがぁー!?だ、だだだ大丈夫かー?!」

大河「────……ふぇ?」

亜美「あ、起きた……ッ!!大丈夫なの!?」

竜児「たいが!?」

大河「………あ、みのりんなんでこんなところいるの? おはよー」

竜児「まて!!そっちは──なんだ?これはいい方なのか?」

亜美「だめにきまってるでしょ! 起きなさい!!」びしっばしっ

竜児「おおう……安静な場所って言うのに……お前の行動は過激だな!」

亜美「ばか、どこ、いってんのよ!」ばしばしばし

大河「んッ…ぐはっ……ごほっ…!」

亜美「これぐらいで、死にそうになっちゃ困るのよ!!」ばし!

大河「……~~~ッ!!いったいばかちぃいいいいいいいいいいい1!!!」ごすっ

亜美「うごげッ」

竜児「か、川嶋…? なんか聞いちゃいけないような声が聞こえたような…それよか大河!?」

大河「……あー、死ぬかと思った…」

竜児「多分、色々とあぶなかったと思うけどな!? と、とりあえず何か飲むか……?」

大河「うん……ずびびッ……リポビタンD……飲みたい、竜児」

竜児「それ飲んだら元気でるな!? 頑張れるな!?」

大河「うん、頑張れる……」

竜児「よし、買ってくる!!動くなよ!!あと北村きたらそれにしたがっとけよ!!」


だだだだ…!

竜児「……っ」

竜児「……どうしよう、まじで俺……」

竜児「すっげー…すっげー……」

竜児「──幸せだこれ……ッ!!」

北村「──高須ぅ!? どこだ逢坂はぁ!?」

竜児「おう!? こ、この階のソファーがあるところだ!」

北村「わかった!」

~~~

亜美「……あ、来た祐作!! 遅い!!」

北村「すまん!何か色々と、迷ってた!直に先生もくる!」

竜児「大河、聞こえるか?」


大河「……聞こえるわよ、みんなして騒ぎすぎ、ホント」

竜児「当たり前だろ! お前のことなんだ、みんな心配するにきまってる!!」

大河「…みのりんも?」

竜児「当たり前だ!たぶん、この中で一番心配してるだろうさ!!負けねぇけどな!」

大河「ふっ……馬鹿ね、みのりんには流石に勝てないよ、アンタじゃ」

竜児「はんっ……なにを言ってるんだ。俺はお前を大好きなんだぞ」

竜児「この気持ちは、誰にも負ける気はしねぇ……!!」

北村・亜美(ばかっぷる……)

竜児「んん、大河。……起きろ、起きるんだ」

大河「起きてるわよ……竜児、ちゃんと起きてる」

竜児「そうか、だったら──」

竜児「──元気な赤ちゃん、見にいくぞ!!」


owari

え?
いつ時間飛んだの?
え?

はい、終わりました。
ご支援ご保守ありがとうございました

なんでこんな展開になったのか
いまでもわかりません。

ご質問等あったら受け付けます
なかったら落としてください

それではみなさん ノシ

>>318
レントゲンみたいなので見る奴を想像してちょ

>>317
ごめん、わかりにくかったみたいなので変更

大河「……聞こえるわよ、みんなして騒ぎすぎ、ホント」

竜児「当たり前だろ! お前のことなんだ、みんな心配するにきまってる!!」

大河「…みのりんも?」

竜児「当たり前だ!たぶん、この中で一番心配してるだろうさ!!負けねぇけどな!」

大河「ふっ……馬鹿ね、みのりんには流石に勝てないよ、アンタじゃ」

竜児「はんっ……なにを言ってるんだ。俺はお前を大好きなんだぞ」

竜児「この気持ちは、誰にも負ける気はしねぇ……!!」

北村・亜美(ばかっぷる……)

竜児「だから大河…元気な赤ちゃん産んで、……櫛枝を飛び起きさせるぞ!」

大河「まだ早い、ちゃんと妊娠してんのかもわかってないのに」

竜児「そうか、だったら──」

竜児「──ちゃんと赤ちゃんいるか、しっかり見にいくぞ!!」

これでわかるかな
とりあえずなんか最後グダグダでごめん
では、うんこにいってきます。

読んでくれた方、ありがとでした

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