古美門「リーガルハイアンチは名誉毀損?」 (42)
フジ「ええ、我々としても大事なドラマです。それを匿名をいい事に根も葉もない誹謗中傷をされるのは大変困るんですよ。
そうでしょう、古沢先生」
古沢「」コクコク
黛「そんなこと許されるわけありません。確かにいきすぎた中傷もありますが、大部分はあくまでドラマの批評なんですよ。
それを訴えるなんて言論の自由に
古美門「フジテレビさんのおっしゃる通りです!リーガルハイシーズン2は非常に素晴らしいドラマであり
これを批判する人間は思考力の欠如したボケ老人かTBSの工作員です。
是非ともフジテレビさんに勝利を勝ち取ってお見せ致します。」
フジ「さすが古美門先生、ご評判の通りですね。では、詳細につきましてはまた後日話し合いをさせていただきます。
すみませんが古沢先生も多忙なもので」
古沢「」コクコク
黛「ありえません!ネット上でドラマの批判をしただけで告訴なんて前代未聞ですよ!」
古美門「だったら我々が前例を作り上げるまでだ。とにかくリーガルハイは優秀なドラマだと証明してみせればいい。
勝訴した暁には成功報酬のみならず私が主演の2時間半ドキュメンタリー映画一本でも撮ってもらおう。
おくりびとを軽く超える大ヒットで行列が出来りゃうかもなああ!」
黛「本当にこんな裁判できると思ってるんですか!?こんな裁判をまともに取り合ってくれる弁護士がいるとは思えません!」
三木「なるほど、あのフジテレビに訴えられたんですか。それは悪質だ」
キモオタ「ええ、まさか2chでリーガルハイを叩いただけで訴えられるなんて…
でもあのドラマが糞なのは紛れもない事実ですし、それを『根拠のない不当な批評』なんて」
三木「ええ、勿論それはよーく分かっています。リーガルハイの二期は叩かれるに値する駄作であり、
貴方の批判は非常に適切です。
ですがね、悲しいことに相手の弁護士は屁理屈とゴリ押しでゴミを傑作にしてしまうどうしようもない人間なんですよ。
しかし御安心ください。わたくしが全力で奴を地獄に叩き落します」
>>>>>口頭弁論
三木「被告は10月9日、インターネット上の掲示板にて同日放送されたドラマ『リーガルハイ』第一話を
批判する内容の書き込みを致しました。
これはその一部を抜粋したものです。一部『岡田死ね』『岡田は死んで詫びろ』などとやや乱暴な言葉も見受けられますが、
大部分は非常に真っ当なリーガルハイの批評です」
三木「これらの書き込みの批判を要約いたしますと、『醍醐実検事に関する演出など、演出が過剰でありこの作品にそぐわない』
『テンポが悪い』『主人公が敗北して落ち込むなどキャラクタにそぐわないシーンが多い』
『新規層を取り込むべき第一話で持ち味の痛快なシーンが非常に少なく、一期ではあまり見られなかった
シリアスなシーンが過剰である』『岡田将生』
以上の五点が主な主張です」
三木「まず一点目、これに関しては明白です。キャラ付けの範囲を超えた不条理な演出であることは一目瞭然であり、
まるで堤幸彦作品のようではありませんか?
二点目につきましても同様、醍醐実のシーンがテンポを乱していると見て差し支えありません。他にも不要に尺を取るシーン、
過多なCMがどれほど一期の大きな魅力であった軽快なテンポを狂わせていることでしょうか?
三点目についてはまずこちらの……」
古美門「まさか三木が出てくるとはな…」
黛「ということは、何か自信があるんでしょうか…?」
古美門「あーるわけがない。古美門憎しでなりふり構わず適当な案件に飛び付いた結果だろう。三木も終わりだな」
三木「……のように、負け惜しみと屁理屈であれほど負けを認めなかった主人公が、
依頼人の罠によって挫折すると言うのは不自然極まりない。
『依頼人が自ら望んだ有罪は免責』では無かったのでしょうか?そして、彼にあれだけ楯突いていたヒロインが突如として
『パートナー』などと言い始めるなど断じてありえません。
そしてですね、このような長期的なシリアスな展開そのものが一期ではまったく見受けられませんでした。
そのために一話は通して大変暗くなりました。
何故、それを第一話でやる必要性があったのか?これには異を唱えるのは当然といえます。五点目に付いては説明は要らないでしょう。
以上より、『リーガルハイ』は最早まったくの別物です。
そして、それを指摘した被告は非常に優れた視聴者として評価されるべきではありませんか?
以上です」
古美門「被告の主張はたいっへん幼稚で浅はかなものでしょう。演出の許せる範囲なんて何と主観的な尺度だと思いませんか?
むしろ新規視聴者のためにより分かりやすい演出で印象付けるのは至極当然。
そのためならテンポを多少犠牲にするのも無理のないことです。
また、キャラクタにそぐわないともおっしゃいましたね。視聴者に作中のキャラクタの何が分かると言いましょうか、
これまでも感動など縁の無いひねくれた主人公に素直に感動させるなどギャグのためにキャラクタを都合よく崩したシーンは
山程あります!むしろそういった都合の悪いシーンを脳内から排除して勝手に理想のキャラクタを創り上げそれを押し付ける
そんなワガママな視聴者はもはやクレーマーと言ってしまっていいのではないでしょうか。
まさに『お客様』気分でテレビすらも自分のワガママに付き合わせる!こんな人々が製作者の自由な創作を妨げているんです!
そうですよね古沢先生?」
古沢「」コクコク
古美門「そもそも、まだこのドラマは第一話なんです!古沢先生は第一話で新規のファンを取り込むことよりも、
まずは旧来のファンにこのドラマの方向性を示すことを優先したまで!あなた方旧来のファンは優遇されているんです!
それを厚かましく評論家を気取り、まるで一話を見て最終話を知ったかのような口ぶりで批判するこれこそ視聴者の傲慢!
そう思うのは私だけでしょうか?以上です」
三木「……」
古美門「ちょろいねぇーちょろ過ぎる!三木もあんな内弁慶の通ぶったキモオタ弁護するなんて耄碌したんじゃないかー?」
黛「三木先生がこのままあっさり引き下がるとは思えません」
古美門「引き下がるよあの馬鹿は!じゃなければ切り札でも何でも持って来い、ことごとく撃墜してお台場のヘドロの底にでも撃沈させてやる」
三木「まさか貴方が出廷して下さるとは、我々としても大変心強く感じております」
???「いえいえ、私はただファンのために尽くしたい、そう思ったまでです」
沢地「ですが、このようなことは事務所には許可されていないのではないですか?」
???「ええ、フジテレビさんからの要請で。しかし、私は自分の信じることを貫くまでです」
三木「素晴らしい御考えです。もう古美門に打つ手は万に一つもありません」
>>>>>尋問
裁判長「それでは証人、入廷しなさい」
黛「証人って、いったい誰なんでしょうか」
古美門「苦し紛れにキモオタのお仲間でも呼んで集団で圧力掛けるつもりなんじゃないかぁ?」
ガチャッ
???「……」
古沢「…!」
古美門「…ムカつくくらい個性が無い顔だな」
黛「…何だか、あの人どこかでよく見ているような…」
裁判長「証人、名前と職業を」
???「堺雅人、と申します。俳優として『リーガルハイ』で主役を演じさせていただいております」
古美門「」
三木「堺さんには、ドラマの内容に関して一切お話いただかないという条件で証言していただくことになっています。
それではまず、ドラマ撮影の状況についてお話いただけますか?」
堺「そうですね、リハーサルで皆さん頭を抱えていました。全然かみ合わなくて、どうしたらいいんだろう、と。
前シリーズではうまくハマって『いける!』という感覚があったんですけどね。それは僕だけかもしれませんが、
今回は消化不良を起こしていて……」
古美門「…三木め、ここまでやるか」
黛「どういうことですか、関係者には緘口令が敷かれてるんじゃなかったんですか!?」
古沢「」コクコク
古美門「君のようなバカ正直な馬鹿がどの世界にもいるということだ、あのさっぱりニヤニヤオヤジとんだ食わせ物だ」
堺「……笑いのレベルが上がったのか、スタッフも笑わなくなってきてしまって」
三木「成程分かりました。そのような雰囲気の中では面白いものが生まれるわけが無い」
三木「主演本人がこうおっしゃっているのです。これこそ何よりの証拠ではないでしょうか!
むしろ被告の書き込みにはこのような俳優の消化不良まで見抜いているような記述があります。
彼こそ視聴者の鑑と言えるのではありませんか?以上です」
古美門「堺さん、あなたは事務所を通してフジテレビから緘口令が敷かれていたはずです。何故出廷を?」
堺「伝えるべきことがあると感じたからです。それ以外に理由はありません」
古美門「あなたは先月までTBS系列のドラマ『半沢直樹』にご出演されていたそうじゃないですか。
『半沢直樹』はビジネスマンにターゲットを絞ったハードなシナリオでぐんぐん視聴率を伸ばし、最高視聴率は堂々の平成トップ。堺雅人も一躍大スターだ。
ところがこの『半沢直樹』、もともとTBSの期待は薄く、話数も僅か十話しか無かった。後には『リーガルハイ』の撮影が
控えているため途中で話数を伸ばすわけにもいかない。あなたはこのドラマのせいで大ヒットドラマ『半沢直樹』を切り上げ、
高視聴率の望めない『リーガルハイ』に出演せざるを得なくなった。」
堺「それが何か」
古美門「あなたは『リーガルハイ』に個人的に恨みを抱えている」
堺「そんなことはない」
古美門「いいえ抱えています。役どころも『半沢直樹』でせっかく築いたイメージをぶち壊しにするようなふざけた役だ。
そこであなたはこの裁判で『リーガルハイ』の評判を貶めようと
堺「そんなことはないと言っている!!」
裁判長「弁護人、その主張は根拠を欠いた憶測です。これ以上詰問するなら尋問を終了します」
古美門「……」
フジ「まさか、堺が証言するとは…、申し訳ございません」
古美門「まったくだ。これで状況は大逆転、裁判官共は勇敢なるイケメン俳優の告発にメロメロだ」
黛「そもそも、こんな裁判自体おかしかったんです。たとえ勝訴しても、むしろファンの『リーガルハイ』に対する信頼が失われて
古沢さんには誰も目もくれなくなるだけです。そうじゃありませんか古沢さん!」
古沢「そんなことない」
黛「えっ」
古沢「訴えようって言ったの俺だし」
黛「えっ」
古美門「本当に何も知らないなお前は…これを見てみろ」
黛「ネットの例の掲示板…ですか?」
古沢もかわいそうにな
ウジテレビ死ね
ウジはゴミ
古美門「『古沢良太』は偶像だ。肥えた視聴者は古沢良太を信頼し、ドラマ界の一筋の希望として崇め讃える。
その美しい繋がりを破壊する者がいるとしたら、悪の権化『テレビ局』だ。
ファンは古沢良太を素晴らしい脚本家として拝み、万が一その素晴らしいドラマに傷があろうものなら
全ては安っぽい視聴者に媚びて現実の見えないテレビ局の仕業でありテレビ局は悪だと結論付ける。
そして『テレビ局』という漠然としたイメージに擦り付けられた責任は他の幾千もの責任に混じって見えなくなり、
視聴者は『テレビ局は駄目だ、マスコミはクズだ』とぼやきながら相変わらずテレビを見続ける。
局の手柄は偶像の手柄、偶像の失敗は局の失敗!こうして組織は商売道具の責任を一身に背負い続けることでその経営を続けていく」
古沢「典型的だよ。俺はただテレビ局に逆らえない一脚本家って風に頷いてればいいし」
黛「そんな…」
古美門「実に素晴らしい協力関係じゃないかー、『マスコミ』でも『国』でも名前だけのハリボテを用意するだけで
愚民は勝手に石をそっちに投げてくれる。君も見習いたまえ朝ドラ」
黛「だから朝ドラじゃありません」
古美門「名前の問題じゃない!朝ドラは朝ドラなんだよ朝ドラ!」バンッ
古美門「…………ん?」
服部「おや、先日のテレビ欄をしまい忘れてしまったようですな、すみません」
黛「ん?これって、第一話が放送された日のテレビ欄ですよね?」
古美門「……案外、名前の問題かもしれないな。」
>>>>>最終弁論
三木「……以上です」
裁判長「では、原告代理人」
古美門「大変申し訳ありませんが、我々としたことが大きなミスがございました。
そちらをこの場で訂正させていただきたいと思います」
裁判長「と言うと?」
古美門「これまでの弁論ですが、すべて『リーガルハイ』についての弁論です。『リーガル・ハイ』について、ではありません」
裁判長「……はい?」
古美門「『リーガル』『ナカポチ』『ハイ』です。中ポチを入れてしまうと去年放送された方のドラマになってしまいますので」
裁判長「つまり、シーズン1の方ですか」
古美門「違います。『リーガルハイ』と名前の酷似した別のドラマです」
三木「あ?」
古美門「ご存知ありませんでしたか三木先生。
現在放送されている『リーガルハイ』は『リーガル・ハイ』を基に古沢先生が新しくお書きになったオマージュ・ドラマなんです。
TSUTAYAの洋画コーナーに行ったことがおありですか?
『トランスフォーマー』『トランスモーファー』『地球が静止する日』『地球が静止した日』すべて完全な別物です!
『リーガル・ハイ』と『リーガルハイ』が同一作品であると誰が言えるでしょうか!?そうでしょう古沢先生!」
古沢「」コクコク
三木「そんな言い訳が通るか!」
古美門「リーガルハイの内容を『最早まったくの別物』とおっしゃったのは被告ですよ。
内容も別物、タイトルも別物ときては一体どこが同一作品だと言えるのか!」
三木「あぁ!?こんなこと堺雅人も誰も言っていない!」
古美門「当然です堺さんはドラマの内容には言及できなかったのですから。
もっとも彼は今日から一週間ぶっ続けで撮影がありますから非常に残念ながらもはや確かめることは適いませんが」
三木「黙れ!そんな屁理屈で
裁判長「被告代理人は静粛に!」
古美門「被告はまったく異なるドラマ二本を同じドラマであると誤認し、あろうことかその誤解に気付くことなく
『両者はまったくの別物である』ことを理由に罵詈雑言を浴びせました!『リーガルハイ』の名誉は無残にも傷つけられ、
のみならずその重大な誤解もネット上に拡散されてしまった。
被告の手によってドラマ界に芽吹いた新たな芽『リーガルハイ』は過去のドラマの亡霊を利用して踏み躙られ、刈り取られしまったのです。
被告のした行為はその無知が原因とは言え決して許されることではありません。
被告の犯した罪は名誉毀損どころではない。あらゆる創作活動に対する罪、
文化に対する罪だ!今の法ではこの罪を裁くことは出来ませんが、裁判長におかれましては是非厳正なる御判断を仰ぎたい」
古美門「いやー勝っちゃうねぇー!服部さん、肉追加お願いします」
服部「承知しました」
黛「こんな勝ち方しても誰も得しませんよ。フジテレビも古沢さんも絶対後悔することになります」
古美門「僕が得してるもーん。服部さん、もっと一気に焼いちゃってくださーい」
服部「おや、そろそろ『世にも奇妙な物語』が始まる時刻では?」
黛「あ、ほんとだ。テレビ借りますね」
古美門「どーせやっすい脚本家やどっかのラノベから引っ張ってきた似たような話を
毎年飽きもせずやり続けるだけなのによくもまあ飽きないもんだなぁ!」
黛「先生にはわかりませんよ、あっ始まった」
『世にも・奇妙な・物語』
古美門「」
黛「 やっぱり勝たなきゃよかったあああああああああああああ!!!! 」
チャッチャチャーチャーチャーチャチャッ
リーガゥハァイ!
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