村人「おいお前、そこで何している」勇者「アイテム回収ですけど?」 (29)

村人「そこに座れ」

勇者「何言って」

村人「そこに座れと言っただろ!!」

勇者「…はい」スッ

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村人「お前なんでタンスなんか漁ってんだ」

勇者「だからアイテ」

村人「答えろ!!!!」

勇者「え、いやあの、僕勇者やってるんスよ」

村人「だからどうした」

勇者「勇者一行ってホラ…教会で復活させてもらったり初対面の村人に情報貰ったりして魔王倒すじゃないですか」

勇者「だから恩恵として勇者一行って村人の家に入ったりしてアイテム回収するじゃないですか」

村人「しないわアホ!!」

勇者「なっ…しないわって…」

村人「まさか耳にしてなかったのか?勇者ともあろうものが!!」

勇者「えっ…一体何のことです?」

村人「王都で勇者の格好をした偽物が『あ、僕勇者なんで』って王都民騙して盗みを働いた事件があった」

村人「幸い犯人は捕まったものの、あれから王都以外でも『偽勇者が家の物品を盗んでいった』って村人がワンサカ王都に入ってデモブーイングの嵐だよ!!!」

村人「苦慮した王様は国全体に『勇者であれなんであれ赤の他人の家に勝手に入ったり物を盗んだりしてはならない』って王令が出した!そんな事も知らないのか!」

勇者「いえあの…僕魔王倒すために魔界行ってて知らなくて」

村人「おかげでこちとらデモに協力したのではないかって連日王兵が探りに来る始末だよ!夜中の抜き打ち検査で寝不足だわ!」

勇者「でも…」

村人「その上偽勇者がいなくなったとと思ったら今度はモノホンの勇者と来た!」

村人「魔王倒したからって王令には従えよ!!馬鹿野郎!」

勇者「…いいち…」

村人「ん?」

勇者「第一一体アンタ誰なんですか!!!可愛らしいテディベアの壁紙!タンスの上の兎さん!フリルの付いたスカートの入ったタンス!」

勇者「ここどう見ても女性の家、女性の部屋でしょう!!」

村人「…」

勇者「反論できないんですか?じゃああなた女装趣味でもあるんですか!?それとも住居不法」

村人「…ょだよ」

勇者「はぁ!?声が!」ダン「小さい!」ダン

村人「彼女の家なんだよ!!…言わせんな恥ずかしい」

勇者「あっ…」

村人「武器屋のバイト終わって彼女の部屋行ったらガサガサ音がしたんだよ…」

村人「覗いてみたら泥棒だよ!泥棒だったよ!」

村人「それとも何か!?俺の彼女の家だって疑っているのか?肌身離さず持ってる想いの詰まったラブレターでも見せようか?彼女の好物でも言ってみせようか?それともスリーサイズ暗唱してみせようか!?」

勇者「いえ…あの…」

村人「あーあーそうだよな、勇者ともあろうものは何度も命の危険にさらされてきたもんな!魔王の罠にかかって!」

村人「だから村人っぽい奴でも簡単に信じれないようになってるよな!!魔王の罠か分からないし!!」

勇者「だから…」

村人「じゃあ村人の言葉なんて全く信用できないもんな!だから王令なんて信じてなかったんだよな!」

村人「元はと言えばこんな年若い奴に勇者任せたのがダメだったんだよ、俺もそんな年くってないけど」

村人「年若い奴に任せちゃったから王令なんてわかりまてぇーん!だから盗人したいでぇーす!だもんな!」

村人「そんな奴が魔王倒して英雄扱いって子供の教育にいい訳あるか!ホント腹立つわ!」

村人「もっと社会の常識って奴を分かってからでなきゃダメなんだよ勇者ってのは。全く最近の若い者は…」

勇者「くっ…」

村人「誠意足らんなぁー!最近の若人は謝罪の一つもできないのかぁー!駄目だなぁー!!」

勇者(ここは耐えろ…ここで反論したら…)「…あの…ホントすまねッス…魔王から世界救った英雄ってことで…その…ここは一つ多目に」ガバッ

村人「でさ、ぶっちゃけ言うとアンタ本当に勇者なの?」

勇者「え、あの…これ頭の宝玉勇者の認定証になってて王様から」スッ

村人「貰ったんだ!はぁー?!?!これも税金だよ!!呆れかえるわ!!こんな犯罪者に税金やって魔王討伐させてたなんて!はぁー?!?!」

勇者(堪えるんだ…!!)ギリ

村人「悪いけどそんなので勇者かどうかなんて分かんないわー、その山吹色のお菓子じゃ分かんないわー!」

勇者「じゃあ…どうしたら証明できますか」

じゃあお前(村人)魔王倒しに魔界いってこいよ

村人「王兵でも呼んで連行させればいいんじゃない?パパパッと王様が見極めてそれでいいじゃん」

勇者(不味い…ここで王兵を呼ばれたらもしさっきの王令が本当なら牢屋行きだ…!)

勇者「いえあの…その他の方法は…」

村人「さぁね?あ、そうだ本物の勇者なら勇者一行勢ぞろいさせてみせてよ」

勇者「え」

村人「俺武器屋でバイトやってんだよね。もし本物なら誰か一人くらい見たことあるかも知れない。他の奴は?」

勇者「…里帰りです」

村人「そっか…じゃあ呼んできて」

勇者「あ、はい分かりました」(やっと解放された…みんなを探して誤解解かなきゃ…)ガチャ

村人「いや待て」

勇者「え?」バタン

村人「戻ってこい。危ないところだった…今アンタ逃げようとしただろ」

勇者「???」タタ

村人「仲間呼ぶフリして逃げようとしただろ!!」

勇者「いえそんなこと…」

村人「とぼけんじゃねぇよ!転移魔法で呼べよ!」

勇者「この村の外でMP切れて、で…まだ宿屋入る時間でもなかったしMP0のままで…」

村人「言い訳すんなよ!」

勇者「いえあの…」

村人「あ、そうか逃げるんじゃないよな!仲間呼んで俺を皆殺しにしようとしていたんだもんな!!」

勇者「そんな…」

村人「仲間呼んで、で細切れにして肉削いで食って骨は海に捨てる。誰も見てなきゃ失踪人扱いの素晴らしい犯罪だね!」

勇者「そんなこと…するはずないじゃないですか!」

村人「そうかよ!じゃあなんでさっき『声が!小さい!』なんて暴力的に言ったんだよ勇者ともあろうものが!」

村人「仮にアンタが勇者だったとしてさ、勇者って勇気がある者って書くからそこは認めるわ。アンタ勇気以外に何か特技あるの?」

勇者「それもう論点ズレ」

村人「ないの?なんの特技もないの?勇者なのに?!」

勇者「…モンスター倒したり…」

村人「はい出ましたモンスター討伐。近所の魔獣ハンターの方がはるかに多く狩ってるわ!他には?」

勇者「えっと…魔法使ったり…」

村人「魔法使いも魔女もこの村に山ほどいるんですけど?他は?」

勇者「…魔王とか…倒」

村人「魔王倒すのは勇者の『役割』であって『特技』ではない、はい論破。他にないの?」

勇者「えっと…」

村人「そうか、無いんだ。へぇー…ハッ!ただの勇気あって腕っぷし強いだけのダメ人間じゃねぇか!何それ!これが英雄なの?!」

村人「あ!あーあ見てよこれ。さっき地団太踏んだトコ傷になってるじゃん。どうしてくれるの?俺将来同棲してこの家に住もうと思ってたのに!」

勇者「う…」ジワ

村人ウゼェ
お前(村人)が彼女とイチャコラしてる間勇者は身を粉にして戦ってるっつー話

村人「『う』じゃねぇよ!とりあえず土下座だよ土下座!早くしろよ!」

勇者「ごめ゛ん゛…な゛ざい゛…」ボロボロ

村人「あ、あーそういう考えなの?泣けばいいと思ってるの?全く子供だねぇ!この世には泣いてすまない事もあるんだよ!!」

村人「誠意を見せろや誠意を!!」

勇者「ごめ゛ん゛な゛ざい゛…い゛ぐら゛…でも払いますから…」ズズ

村人「あ…冷めたわ。キチンと謝れば許そうと思ってたのに。お金で解決しようと思ってたの?」

勇者「あ…」

村人「『あ』じゃなくて『はい』でしょ…」

勇者「…はい…」

村人「ま、そうだよね。多くの人間殺して金奪ってきたモンスター、倒してお金ガッポガッポだもんね?お金はあるよね」

村人「で、どんなことも結局お金で解決しようと。君もしかして魔王倒さず平和的に対処できないかって示談考えてたんじゃないの?モンスター成金が」

勇者「…」グスッ

村人「答えて」

勇者「はい…あのそん゛なごどないです…」ボロ

村人「へぇ…じゃあ魔王はお金で解決できないけど俺はお金で解決できると思ってたんだ。魔王も俺も同じ尊い命なのに?」

勇者「ごめ…な…え゛っ…え゛っ…」ボロボロ

村人「泣けばいいってそんな考え、気持ちで謝罪してもらいたくないんだよこっちは」

勇者「はい゛…」

村人「わかってるの?」

勇者「はい…」

村人「え、わかったんだ。あーよかったじゃあどんな気持ちで謝ればいいの?答えて」

勇者「…」

村人「ホラ言葉が出ない。ずっとはいはい言ってれば解放されると思ってたんだね。甘いよそんなんじゃ」

村人「もういいよ君。これで分かったんでしょ、王令本物だってこと。お金でも何でもいいから払ってとっとと土下座して終わりにしよ」

勇者「いえ王令は知らな」

村人「ああそうだったね!全く重箱の隅を突くが如くウジウジと。また俺の時間が過ぎたよ、折角彼女の部屋でくつろごうと思ってたのに」

村人「そんなんだから彼女できないんだよ」

勇者「…!」ブチ

村人「女って付き合ってる相手が子供だと疲れるらしいしね。ママのところへ行って母乳でも吸って来れば?『ママーいじめられたよー』ってさぁ!」

勇者「ざけんな」グサ

村人「え…」ドサッ

勇者「さっきからうっさいんだよ!床の傷!?そんなの修理してもらえばいいだろ!」

村人「俺…刺され…っ…」

勇者「税金泥棒だの社会の落伍者だのうるさいんだよ!!お前ら誰がこの世界に平和をもたらしたと思ってるんだよ!勇者だぞ!」

勇者「第一俺の村がモンスターに襲われてピンチだったからモンスター倒してなし崩し的に魔王討伐に出かけることになったんだよ!好きでガキから勇者やってるんじゃねぇよ!」

勇者「この頭の飾り物もつけたくてつけてる訳じゃねぇよ。王様から宿屋に『この飾りつけた者が泊る時料金安くしろ』って言われてるからつけてるんだよ!!」

勇者「じゃなきゃつけんわこのダサ飾り!!おまけに調べてみたらこれ宝玉じゃなくてただのガラス玉だし!!」

勇者「魔王討伐遅れたのも各地で山賊なり海賊なりを成敗してたからだよ!!ていうかお前等武器商人が一番ムカつくわ!!この無能無才能人間が!!」

勇者「モンスターがボスでもないのに俺に依頼押し付けんなよ!酒場の飲んだくれ共に頼めよ!!山賊とか海賊とか団結して倒せよ!!武器商人が武器提供してさ!!」

勇者「ていうか村の周囲のモンスターぐらい村まで来れたんだから村人と酒場の用心棒団結して集団で対処して殲滅しろよ!!」

勇者「村出た瞬間被弾とかザラでボスに傷受けずにたどり着けたことなんて一度もないわ!!頭を使えよこの野郎!」

勇者「才能も無く!努力もせず!そのくせ努力する人間の足しか引っ張れないような奴は!目を瞑ってどっか隅っこ挟まって!口だけ開けて雨と埃だけ食ってやがて氏ね!!」ブン

ザクッ ピタッ

勇者「な…」

村人「伊達に武器屋でバイトしてなくて…な!」ブン

勇者「ぐっ…」ザク

村人「お前の剣より鎧3着の方が重かった…ぜ」カチャン

勇者(しまった回復してなかったからHPが…)ガクッ

村人「はぁ…」(勝った…!)

ガチャ

女村人「ただい…!」

村人「!おかえり、侵入者を撃退したよ…ただ…呼んでくれないかな、医者と王へ…」ガクッ

女村人「だ、誰か!王兵と医者呼んで!誰か!誰かー!」

マスター「おや、久しぶり」

戦士「ああ、ちょっと隣町行っててな。1年ぶりくらいか」

マスター「面白い話があるんだ。最近村を襲ってた盗人が逮捕されたらしい。本物の勇者だ」ゴニョ

戦士「ああその事件なら詳しく知ってるぞ。勇者とは一度目の魔王討伐で一緒に行った仲だしな。もっともその討伐は失敗したし、きつくて俺はすぐやめたけどな」

マスター「王令を知らなかったと言い張ってるんだと。にしても魔界と言えど王令くらいは耳に届くはずなのに、なんでだろうね。はい、いつもの」タン

戦士「それの事だが…もしかして俺が原因かもな」

マスター「ん?何でだい?」

戦士「魔王討伐一回目に俺が隊列を崩しちまって魔王から妙な光線を浴びたんだよ。俺は喰らわなかったんだが勇者は…」

戦士「その光線自体は威力が無かったんだが…まさか勇者、自分に都合のいい事しか聞こえなくなったとか」

マスター「考えすぎだよそいつは」

戦士「だよな」グビ

マスター「ま、被害にあった女村人も無事でよかったよ」

戦士「あの娘可愛いから競争率高いよな。俺も一時好きだった」

マスター「おっ?まさか勇者と娘を巡ってトラブってパーティー抜けたのか」

戦士「茶化すなよ。勇者はその気はなかったさ。それにアイツガキだし」

マスター「だねぇ…」キュッ

戦士「ま、これで女村人は枕を高くして寝られるだろう。なにせ」

戦士「村を襲う盗人と、彼女を狙うイカれたストーカーが同時に逮捕されたんだからな」



終わり


ムカついたけど面白かった、村人ザマァ

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